<1> # 愛 ## 愛[あい] ## 愛情[あいじょう] ## 情愛[じょうあい] ## 慈愛[じあい] ## 恋愛[れんあい] ### 使い分け例 **愛**・・・「苦しむ人に愛の手を差しのべる。」「子への愛。」「男女の愛。」「隣人への愛。」「芸術への愛。」「真理への愛。」 **愛情**・・・「手紙で愛情を打ち明ける。」「桜の花への愛情。」「仕事への愛情。」 **情愛**・・・「老夫婦のこまやかな情愛。」 **慈愛**・・・「仏像の慈愛に満ちた眼差し。」 **恋愛**・・・「友情から恋愛に発展する。」 ### どう使い分けるか **愛**は、相手(対象)の価値を認め、大切にすること、の意で、五つの中で最も基本的・包括的であり、対象は、具体的なものから抽象的なものまで、物質的なものから観念的なものまで、非常に広い。 **愛情**は、対象に対して持つ愛の気持ちの意で、対象となるのはかなり広く、人間だけでなく生物、更には「仕事」や「音楽」などのような物事も入るが、<愛>の対象に比べれば具体的で、「神」や「真理」などを対象とするのは違和感がある。 **情愛**は、かなり意味が狭く限定され、親しい相手(肉親や夫婦など)に対する、持続的で深い沈潜的な愛情を言う。 **慈愛**は、主体が「仏」「母」などのことが多いが、親子、師→弟子のように上から下へ一方的に与える愛である。それと対照的なのが**恋愛**で、これは男女が互いに恋し合い愛し合うこと、つまり相互に求め合い与え合う愛と言えよう。 | | 若い男女の間の― | 肉親の間の― | 仏の―にすがる | 真理への― | ―の手をさしのべる | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **愛** | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | **愛情** | ○ | ○ | | | | | **情愛** | | ○ | | | | | **慈愛** | | ○ | ○ | | | | **恋愛** | ○ | | | | | <2> # 挨拶 ## 挨拶[あいさつ] ## 会釈[えしゃく] ## お辞儀[おじぎ] ### 使い分け例 **挨拶**・・・「初対面のあいさつ。」「仲人の挨拶。」「指名されて挨拶をする。」 **会釈**・・・「軽く会釈して席に着く。」 **お辞儀**・・・「お辞儀の仕方がぞんざいだ。」「深々とお辞儀をした。」 ### どう使い分けるか **挨拶**は、動作よりも言葉の方に重点があり、**会釈**・**お辞儀**のように黙ったままする場合はない。会ったときや別れるときの言葉だけでなく、儀式や会合で祝意・謝意・趣旨などを述べるときにも言う。 <会釈><お辞儀>は、ともに頭を下げる敬礼の動作だが、<会釈>は軽い場合、<お辞儀>は深くより丁重な場合に言う。 # 愛する ## 愛する[あいする] ## 好む[このむ] ## 好く[すく] ## 恋する[こいする] ## 惚れる[ほれる] ## 慕う[したう] ### 使い分け例 **愛する**・・・「子を愛する。」「国を愛する。」「愛し合う男女。」「文学を愛する青年。」 **好む**・・・「英雄色を好む。」「議論は好むところだ。」 **好く**・・・「だれにでも好かれる性質。」「あの人を好いている。」 **恋する**・・・「友人の妹に恋している。」 **惚れる**・・・「惚れて通えば千里も一里。」「あの男の気っぷのよさに惚れた。」 **慕う**・・・「母を慕う。」「故国を慕う。」「その先生の学風を慕って入門する。」 ### どう使い分けるか **愛する**は、慈しみ大切にする、の意で、異性間の愛情だけでなく、広く人にも事物にも用いるが、やや改まった感じがし、文章語的である。 **好む**と**好く**はよく似ているが、<好む>の方が客観的で冷静な感じが <3> あり、恋愛感情としての〈好く〉は、〈好む〉には言い換えられない。 恋するは、特に相手を異性として好く場合に使うのが普通である。 〈愛する〉に比べ、相手を自分より高くみる感じがあり、その点で〈慕う〉に近い。 惚れるは、〈愛する〉が抽象的であるのに対して、より感覚的・具体的で、ある人やその人柄を対象とすることが多く、俗語的である。 慕うは、人に隠した心の中で人や物を追う意が原義で、離れたものや目上の人・自分より優れたもの・大きなものに対して、仰ぐような気持ちで心の中に追い求めたり、それにならおうとしたりする意。したがって「子を―」「生徒を―」などとは言わない。 〔注意〕〈好く〉が終止形で使われることはあまりない。 # 曖昧 ## 曖昧[あいまい] ## あやふや ## 有耶無耶[うやむや] ## 朧気[おぼろげ] ## 漠然[ばくぜん] ### 使い分け例 **曖昧**・・・「曖昧な表現でごまかす。」「曖昧模糊。」 **あやふや**・・・「彼は言うことがどうもあやふやで頼りない。」「知識があやふやだ。」◎不確か。 **うやむや**・・・「責任の所在をうやむやにする。」「事件がうやむやに終わる。」 **おぼろげ**・・・「おぼろげな記憶をたどる。」「人影がおぼろげに見える。」 **おぼろ**。 **漠然**・・・「漠然と思い描く。」「漠然たる不安におののく。」 ### どう使い分けるか **曖昧**は、ずるさやごまかしを含んでいる場合にもよく使う。 **うやむや**は、〈曖昧〉より更にごまかしの意味合いが強く、意図的にはっきりさせないような場合に使うことが多い。 **あやふや**は、ずるさやごまかしと言うよりも、その人自身がはっきりわきまえていないため確かな表現ができない場合に使うことが多く、頼りない感じを含む。 **おぼろげ**は、記憶がはっきりしない場合などに使うことが多い。や <4> **漠然**は、意味上<おぼろげ>に近い。漢語なのでよりかたい感じがある。「漠然と」は話し言葉でもよく使われるが、「漠然たる」はかなりかたい感じの文章語である。 # 会う ## 会う[あう] ## 逢う[あう] ## 遭う[あう] ## 遇う[あう] ## 出会う[であう] ## 出くわす[でくわす] ## 巡り会う[めぐりあう] ## 落ち合う[おちあう] ## 遭遇する[そうぐうする] ## 邂逅する[かいこうする] ### 使い分け例 **会う**・・・「応接間で客と会う。」「五時に駅前で会おう。」 **逢う**・・・「明朝彼女と逢う。」「逢い引き。」 **遭う**・・・「夕立に遭う。」「交通事故に遭う。」「災難に遭う。」 **遇う**・・・「道で旧友に遇う。」 **出会う**・・・「町角で旧友に出会う。」「反撃に出会う。」「すばらしい作品に出会う。」 **出くわす**・・・「思わぬ所で知人に出くわす。」「事件に出くわす。」 **巡り会う**・・・「三十年ぶりに姉妹が巡り会う。」 **落ち合う**・・・「喫茶店で落ち合う。」「二つの川が落ち合う所。」 **遭遇する**・・・「敵に遭遇する。」「難問に遭遇する。」「雷雨に遭遇する。」 **邂逅する**・・・「思いがけぬ人と邂逅する。」「師との邂逅で私の一生の道が決まった。」 ### どう使い分けるか **会う**の本義は、集まりあうことであるが、人と人があう場合は、どんなケースでもこの語は使える。約束してあう場合は**逢う**を使うことがある。 **遭う**は、偶然にあう意で、**遇う**も同じ意味であるが、人とあう場合は後者を多く使う。この場合も<会う>を使うことは可能。 **出会う**は、外で偶然に人に会う以外に、思いがけない事件にあっ <5> たり見聞をしたりする意で、「茶屋でー」のように男女が忍びあう、「者ども出会え」のように出て来て相手をするなどは古風な用法である。 **出くわす**は、<出会う>よりも偶然性を強めた口頭語で、もっと強く<出っくわす>というくだけた言い方もある。 **巡り会う**は、長い間別れていた者が思いがけず出会う、の意。 **落ち合う**は、あらかじめ約束した場所に出向いて一緒になる、の意。また、川が合流する意もある。 **遭遇する**は、<遭う>や<遇う>の意の漢語的表現であるが、普通よくない事にあう場合に使う。 **邂逅する**は、思いがけなく出会う、の意。人生上の運命的な出会いをするといった意味にも使うかたい文章語。 〔注意〕<出会う>は<出合う>、<巡り会う>は<巡り合う>とも書く。<出くわす>は<出会す・出交す・出喰す>とも書けるが、普通かな書き。 # 煽る ## 煽る[あおる] ## おだてる ## 唆す[そそのかす] ## けしかける ## 焚き付ける[たきつける] ## 扇動する[せんどうする] ## アジる ### 使い分け例 **煽る**・・・「集会で激しい口調であおる。」「言葉巧みに客をあおって買わせる。」「国民をあおって、戦争に駆り立てる。」 **おだてる**・・・「子供をおだてて、お使いをさせる。」「おだてられてその気になる。」 **唆す**・・・「友だちを唆して柿を盗ませる。」「悪事を唆す。」 **けしかける**・・・「犬をけしかけて、かみつかせる。」「住民をけしかけて反対運動を起こさせる。」 **焚き付ける**・・・「あることないことを並べて人をたきつける。」「友人をたきつけて交渉に行かせる。」 **扇動する**・・・「群衆を扇動し、暴動を起こす。」「聴衆を扇動し、議場を混乱に陥れる。」 **アジる**・・・「学生運動家が大声でアジる。」「組合大会でアジる。」 ### どう使い分けるか **煽る**は、風を送り火勢を強める <6> 意が原義で、競争心・購買欲を増大させる場合などに使う。 **おだてる**は、甘言で人を釣る、**唆す**は、悪いことをさせる、**けしかける**は、犬に声をかけて相手に向かわせるように、自分の思う通りにやらせる。 **焚き付ける**は、火をつけて燃やすように、相手の感情を刺激する意で、これらは個人や小人数に対して使う。 **扇動する**・**アジる**は、多数の人・大衆を対象として、ある運動などを起こさせる場合に使い、後者は、アジテーションの略「アジ」の動詞化した俗語で、もとは左翼運動用語。 〔注意〕<扇動>は<煽動>の書き換え。 # 明かり ## 明かり[あかり] ## 灯[ひ] ## 灯火[とうか] ## 灯し火[ともしび] ### 使い分け例 **明かり**・・・「明かりを少し暗くしてくれ。」「部屋に明かりがつく。」 **灯**・・・「街の灯が消える。」 **灯火**・・・「灯火親しむべき候。」「灯火管制。」 **灯し火**・・・「窓辺にまたたくともし火。」「風前のともし火。」 ### どう使い分けるか 照明のための光としては、現在は電灯を使うのが普通で、それを俗に「電気」と言うこともあるが、電灯に限らずに照明用の光を指す語としては**明かり**が一般的。 **灯**は、最近ではわずかに古い感じがする。 **灯火**は、ややかたい文章語。 **灯し火**は雅語的で、また、あまり明るいものには用いない。 <明かり>は<灯>の意味のほかに、「月のー」「雪―」などと、明るい状態を表すのにも使う。 # 上がる ## 上がる[あがる] ## 揚がる[あがる] ## 挙がる[あがる] ## 上る[のぼる] ## 登る[のぼる] ## 昇る[のぼる] <7> ### 使い分け例 **上がる**・・・「二階に上がる。」「地位が上がる。」「物価が上がる。」「成績が上がる。」 **揚がる**・・・「天ぷらがからっと揚がる。」「花火が揚がる。」「積荷は全部陸に揚がった。」 **挙がる**・・・「二、三人の手が挙がった。」「名が挙がる。」 **上る**・・・「坂を上る。」「頭に血が上る。」「隅田川を上る舟。」 **登る**・・・「木に登る。」「山に登る。」「階段を登る。」 **昇る**・・・「日が昇る。」「天にも昇る気持ち。」 ### どう使い分けるか **あがる**とのぼるの基本的な区別は、<のぼる>がだんだん上へ行く意で途中の経過に重点を置くのに対し、<あがる>は一気に上に行く、またその結果の到達点や上にあるという状態に重点が置かれることである。 また、<のぼる>は、自力で、あるいは、みずから上に行く場合に、比較的多く使われる。 漢字の使い方は、<あがる>は**上がる**が一般的で、**揚がる**は空中に高く向かう、水上・水中から陸に移る場合に、**挙がる**はあがったものがよく見えるようになる場合に使う。 <のぼる>は、下のものが上へ行く意で**上る**、山など高い所へ行く意で**登る**、日・月・雲などが勢いよく上がる、空高く行く意には**昇る**を使う。 | | 最上階に― | 坂道を― | 滝を― | 物価が― | 名声が― | 太陽が― | 位が― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **あがる** | ○ | | | ○ | ○ | | ○ | | **のぼる** | ○ | ○ | ○ | | | ○ | ○ | 〔注意〕<あがる><のぼる>という基本動詞は非常に多義的で、ここではそのごく一部を記したにすぎない。 # 赤ん坊 ## 赤ん坊[あかんぼう] ## 赤子[あかご] ## 赤ちゃん[あかちゃん] ## 嬰児[えいじ] ## 乳児[にゅうじ] ## 乳飲み子[ちのみご] ## 嬰児[みどりご] ## ベビー ### 使い分け例 **赤ん坊**・・・「赤ん坊に乳を含ませている女がいた。」 <8> **赤子**・・・「赤子の手をひねるような、簡単なことだ。」 **赤ちゃん**・・・「かわいい赤ちゃんですね。」 **嬰児**[えいじ]・・・「嬰児殺しの容疑で逮捕。」 **乳児**・・・「当保育園では乳児から五歳児まで預かります。」 **乳飲み子**・・・「乳飲み子を抱えて働きました。」 **嬰児**[みどりご]・・・「みどりごをあやす。」 **ベビー**・・・「ベビー用品売場。」「ベビーゴルフ」 ### どう使い分けるか **赤子**→**赤ん坊**→**赤ちゃん**の順にくだけた言い方になる。おなかの中の子を言う場合もある。また、幼いことを強調し、世間知らずだの意味で、「まだ赤ん坊だ」などと使う。同じ意味に<ねんね>もある。 **嬰児**[えいじ]→**みどりご**、**乳児**・**乳飲み子**は漢語→和語の対であるが、<みどりご>は新芽のような生まれたばかりの子の意で、大体三歳くらいまでを指し、雅語として詩歌によく使われる。<乳飲み子>は、まだ非常に手間のかかるものというニュアンスで使われる。 児童福祉法では満一歳に満たない者を<乳児>(それ以上小学校就学期までは幼児)と言う。 **ベビー**は、「一服」などのように造語成分として多く使われ、「ーゴルフ」などのように「小型・ミニ」の意味にも使う。 〔注意〕 「赤子」という語は君主を慕う人民の意である。 # 明らか ## 明らか[あきらか] ## 明白[めいはく] ## 明快[めいかい] ## 明瞭[めいりょう] ## 明晰[めいせき] ## 自明[じめい] ## 歴然[れきぜん] ### 使い分け例 **明らか**・・・「失敗するのは火を見るより明らかだ。」 **明白**・・・「明白な証拠を示せ。」 **明快**・・・「明快に答える。」「単純明快。」 **明瞭**・・・「発音を明瞭にする。」 **明晰**・・・「明晰な頭脳。」 **自明**・・・「こちらが正しいのは自明だ。」 **歴然**・・・「間違いは歴然としている。」 <9> 「それは歴然たる事実だ。」 ### どう使い分けるか **明らか**は、はっきりしていて確かである、の意。「月のーな夜」のように光が明るい意で使うこともあるが、この場合は、文章語といってよい。 **明白**は、<明らか>をやや強調したもので、もっと強く「明々白々だ」という言い方もある。 **明快**は、<明白>より更に強調され、快いほどはっきりして、筋道が通っているの意。 **明瞭**は、確か・疑いないの意よりも、はっきり見分けられ感得できるの意の方に重点がある。 **明晰**は、頭脳の働きが筋道だってはっきりしているのに言うことが多い。 **自明**は、<明白>より強い。 **歴然**は、一層文章語的であり、特に「歴然たる」はかたい。 〔注意〕「瞭・晰」の字は常用漢字でないため、<明瞭><明晰>は公用文・新聞などでは普通かな書きにしたり、別の語に換えたりする。<自明>は「―に」の形はなく、「―な」は普通「の」を用いて「自明の理」のように言う。 # 諦める ## 諦める[あきらめる] ## 断念する[だんねんする] ## 観念する[かんねんする] ## 思い切る[おもいきる] ### 使い分け例 **諦める**・・・「進学を諦める。」「身の不運を諦める。」 **断念する**・・・「資金難のため拡張計画を断念する。」 **観念する**・・・「敵に追い詰められ、もはやこれまでと観念する。」 **思い切る**・・・「立身出世を思い切る。」 ### どう使い分けるか **諦める**には、実現不可能と認めて望みを捨てる・運命的なものを仕方のないものと考えてそれに従う、の二義があり、**断念する**は前者と、**観念する**は後者と同じである。また<観念する>は「・・・を観念する」とは言えない。 **思い切る**は<諦める>より強くきっぱりとした感じがある。 〔注意〕<思い切る>には決心するの意もあり、「思い切った・・・」「思い切って・・・する」はそれに由来する表現。 <10> # 飽きる ## 飽きる[あきる] ## 倦む[うむ] ## 飽き飽きする[あきあきする] ## うんざりする ## 退屈する[たいくつする] ### 使い分け例 **飽きる**・・・「四、五時間たつとさすがに遊びにも飽きた。」 **倦む**・・・「倦まずたゆまず励む。」 **飽き飽きする**・・・「退屈な長い話で飽き飽きした。」 **うんざりする**・・・「どれもこれも甘い物ばかりでうんざりする。」 **退屈する**・・・「言葉の分からない映画は退屈する。」 ### どう使い分けるか **倦む**は**飽きる**よりもやや古めかしく文章語的。**飽き飽きする**は、<飽きる>を強調した語で、**うんざりする**は同じ意味をより感覚的に表すときに使う。 以上の四語は、その物事に対し興味を失った結果そうなるのだが、**退屈する**は、初めから興味をひく物事がない場合になる。 # あした ## あした ## 明日[あす] ## 明日[みょうにち] ## 翌日[よくじつ] ### 使い分け例 **あした**・・・「あした天気になあれ。」「あしたはあしたの風が吹く。」 **明日**[あす]・・・「あすは晴れるでしょう。」「あすの日本を担う若い人たち。」 **明日**[みょうにち]・・・「本日と明日の日程を発表するので注意されたい。」 **翌日**・・・「翌日もその事件は起こった。」 ### どう使い分けるか **あした**は、<明日>[あす]よりもくだけた言い方で、口頭語として最も普通。 **明日**[あす]は、「将来」の意で使うこともある。 <11> **明日**[みょうにち]は、改まった言い方で、文章語である。 右の三つは、きょうの次の日のことだが、**翌日**は、過去のある日を基準としてその次の日の意味である。文章語で、同義の<明くる日>もやや文章語的である。 | | ―山に登る | ―は雨だろう | 雨の―の本番 | 本日と― | その― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **あした** | ○ | ○ | | | | | **明日**[あす] | ○ | ○ | | | | | **明日**[みょうにち] | | | ○ | ○ | | | **翌日** | | | | | ○ | 〔注意〕<あした>は本来「朝」の意味で、現在でも雅語として詩歌によく使われる。 <明日>はアスともミョウニチとも読めるので、文脈から判断できず、どちらかの読みを期待する場合はかな書きにするかルビをつける。 # あたふた ## あたふた ## そそくさ ## そこそこ ## うろうろ ## まごまご ### 使い分け例 **あたふた**・・・「突然の来客であたふたしながら茶の用意をする。」「あたふたと家に駆け込む。」 **そそくさ**・・・「負けてそそくさと引き上げる。」 **そこそこ**・・・「食事もそこそこに出掛ける。」 **うろうろ**・・・「出口が分からずうろうろ探し回る。」 **まごまご**・・・「急な指名でまごまごする。」 ### どう使い分けるか いずれも擬態語。**あたふた**は、予期していないことが起こったりして急ぎあわてるさま。**そそくさ**は、早くしようと気ぜわしく事を行うさま、**そこそこ**は、「・・・もそこそこに」の形で、何かを十分やりとげず中途で打ち切って先を急ぐさま。**うろうろ**は、どうしてよいか分からないままにあわてて動き回るさま、**まごまご**は、どうしてよいのか分からずあわてるところは<うろうろ>と同じだが、<うろうろ>のように動き回ることはせずに躊躇している状態を言う。 〔注意〕<そこそこ>は「彼と付き合うのはーにしろ」、接尾語的に「千円一の品」などとも使う。 <12> # 新しい ## 新しい[あたらしい] ## 真新しい[まあたらしい] ## 新た[あらた] ## 新鮮[しんせん] ## フレッシュ ### 使い分け例 **新しい**・・・「新しい洋服。」「新しい思想。」「新しい人。」 **真新しい**・・・「真新しいノート。」「真新しいワイシャツ。」 **新た**・・・「新たに設けた道。」「人生の新たな出発。」 **新鮮**・・・「新鮮な野菜。」「新鮮な山の空気。」「新鮮な発想。」「何もかも新鮮に感じられた。」 **フレッシュ**・・・「フレッシュな感覚。」「アイディアがフレッシュだ。」 ### どう使い分けるか **新しい**は、具体的なものにも抽象的なものにも使い、現代的・進歩的の意味もある。 **真新しい**は、新しさを強調した語であるが、<新しい>と異なり具体物にのみ用いる。 **新鮮**と**フレッシュ**は、同じ意味であるが、後者は果物・空気などの物よりも感じ・発想などに使うことが多い。前者はどちらにも使われる。 **新た**は、前の物事に代わったり付け加わったりする場合に用いる。また、改めて始める場合に言う。文章語的である。 # 当たり前 ## 当たり前[あたりまえ] ## 当然[とうぜん] ## 尤も[もっとも] ### 使い分け例 **当たり前**・・・「勝って当たり前だ。」「当たり前の女の子。」 **当然**・・・「謝るのが当然だ。」「当然の結果。」「当然行くべきだ。」 **尤も**・・・「彼の言うのももっともだ。」 ### どう使い分けるか **当たり前**と**当然**は、後者の方がやや文章語的である。大体同じ <13> 意味だが、前者に「一の女の子」のように「普通」の意味もあるのに対し、後者にはそれがない。後者は副詞としても使われる。 **尤も**は、人の言動を当然だと肯定する場合に使う。 〔注意〕<もっとも>は「・・・、もっとも例外はあるが」のように、ただしの意味の接続詞にも用いる。 # 扱う ## 扱う[あつかう] ## 操る[あやつる] ## 捌く[さばく] ## 操作する[そうさする] ### 使い分け例 **扱う**・・・「本を大切に扱う。」「総務課で扱う事項。」「客を大切に扱う。」◎取り扱う。 **操る**・・・「小舟をうまく操り、岸に着ける。」「手下を操る。」 **捌く**・・・「手綱をさばく。」「たまった事務をさばく。」「巧みにばちをさばく。」 **操作する**・・・「機械を操作する。」「帳簿を操作してごまかす。」 ### どう使い分けるか **扱う**は、物や事を対象とする場合にも、人を対象とする場合にも使われる。 **操る**は、物をうまく動かして使う意では<扱う>とも共通性があり「小舟を扱う」とも言える。しかし<操る>は動かして使うべき物について言うので、「本を操る」とは言わない。人を対象とする場合は、それを自分の思い通りに動かす意味なので、<扱う>とはかなり異なる。 **捌く**は、混乱する複数の物事を巧みに扱い処理する、扱いにくい道具をうまく使いこなす、商品を売り切る、などの意味がある。 **操作する**は、物を対象とする場合は<操る>と大体同じだが、<操る>は簡単な道具、<操作する>は複雑な機械を扱うときに使うことが多い。物以外の場合にも、「言葉を操る」「概念操作」のように、表現の硬さで使い分けられることが多い。人を対象とする使い方は<操作する>にはない。 | | 機械を― | ばちを巧みに― | 本を大切に― | 受付事務を― | 世論を巧みに― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **扱う** | | | ○ | ○ | | | **操る** | | | | | ○ | | **捌く** | | ○ | | ○ | | | **操作する** | ○ | | | | | <14> # 熱さ ## 熱さ[あつさ] ## 暑さ[あつさ] ## いきれ ## 熱気[ねっき] ## 暑気[しょき] ## 炎熱[えんねつ] ## 炎暑[えんしょ] ## 酷熱[こくねつ] ## 酷暑[こくしょ] ### 使い分け例 **熱さ**・・・「お湯の熱さを計る。」「熱さに思わず手を引っ込める。」 **暑さ**・・・「暑さ寒さも彼岸まで。」「暑さに弱い。」「暑さに向かう。」 **いきれ**・・・「人いきれでのぼせる。」「草いきれ。」 **熱気**・・・「熱気消毒。」「異様な熱気に包まれる。」 **暑気**・・・「暑気を払う。」「暑気あたり。」 **炎熱**・・・「炎熱地獄。」「炎熱の道を行進する。」 **炎暑**・・・「炎暑に耐えて働く。」 **酷暑**・・・「酷暑の折柄一層御自愛ください。」 ### どう使い分けるか **暑さ**は、気温の不快に感じるほどの高さ、またその程度や時候を言うときに使う。 **熱さ**は、それ以外の温度の高い状態に用いる。 **いきれ**は、むされるような熱気やにおいを言う古風な語で、現在では「人―」「草―」の形で使うことが多い。 **熱気**は、温度の高められた気体・空気、また高揚した意気込みや雰囲気を言う。また、高い体温や病気などによる熱の意味もある。 **暑気**は、夏の暑さの意。「一払い」とは暑さを忘れるため酒宴などをすること。 **炎熱**は、火の強い熱気(「炎熱地獄」は「焦熱地獄」のこと)から、**炎暑**と同じく真夏の燃えるような厳しい暑さの意となる。 **酷熱**も、どうにも我慢できないほどの熱さの意から、多く**酷暑**と同義に使われる。<酷暑>は、非常に厳しい暑気。 〔注意〕<熱気>は高い体温、発熱の意があるが、その意味ではネツケまたはネッケ(漢字は同じく「熱気」)と言う方が多い。 <15> # 集まる ## 集まる[あつまる] ## 集合する[しゅうごうする] ## 集う[つどう] ## 会する[かいする] ## たかる ## 群がる[むらがる] ## 群れる[むれる] ### 使い分け例 **集まる**・・・「広場に集まって騒ぐ。」「同情が集まる。」「寄附が集まる。」 **集合する**・・・「全員校庭に集合する。」「役員を集合する。」 **集う**・・・「音楽会に集う人々。」 **会する**・・・「一堂に会する。」 **たかる**・・・「ありが砂糖にたかる。」「安売り店の前に人がたかる。」「先輩にたかる。」 **群がる**・・・「タンポポが群がって生えている。」「高層ビルが群がって立つ。」「やじ馬が群がる。」 **群れる**・・・「鳥が群れて飛ぶ。」「海岸に人が群れている。」 ### どう使い分けるか **集まる**は、人や動物だけでなく、「同情が―」「寄附金がー」のように抽象的な事柄や金銭などにも使う。目的などなく偶然集まる場合もある。 **集合する**は、人について、「役員をー」のように他動詞としても使う。 **集う**・**会する**は、目的をもっての集まりの場合で、前者はやや古風で雅語的、後者はかたく文章語的である。 **たかる**は、虫や動物が獲物などに集まる場合によく使い、人間について言う場合にも、軽蔑的なニュアンスがある。集まる意でなく、ねだったり脅し取ったりする場合にも使う。 **群がる**は、**群れる**よりも集団が乱雑で、人や動物だけでなく、植物や建造物などについても言う。 # 当てる ## 当てる[あてる] ## 充てる[あてる] ## 宛がう[あてがう] ## 当てはめる[あてはめる] ## 充当する[じゅうとうする] ## 充用する[じゅうようする] ## 適用する[てきようする] <16> ### 使い分け例 **当てる**・・・「球を壁に当てる。」「胸に手を当てる。」「草に光を当てる。」 **充てる**・・・「教育費に充てる金。」「保安要員に充てる。」「仕事場に充てる。」 **あてがう**・・・「子供に絵本をあてがう。」「受話器に耳をあてがう。」 **当てはめる**・・・「言葉を当てはめる。」「我が身に当てはめて考える。」 **充当する**・・・「利益は施設費に充当する。」「人員を充当する。」 **充用する**・・・「借金の返済に食費を充用する。」 **適用する**・・・「新しい規程を適用する。」「第二条第三項を適用する。」 ### どう使い分けるか 「あてる」という語にはいろいろな意味があるが、ほとんどの場合**当てる**が使われる。そのうち、その物事のために使う、仕事や任務を分担させる、の意では**充てる**も使われる。そのほかでは、「母にあてた手紙」の場合に「宛」、「矢を的にあてる」「生水にあてられる」の場合に「中」が使われることもある。 **あてがう**は、適当に見積もって与える、またぴったりと当ててくっつける、の意。 **当てはめる**は、ある物事をうまく合うように持ってくる、の意。 **充当する**は、金品や人員をある目的や用途に当てる、**充用する**は、本来の用途でなく、他の足りないところに充てて用いる、の意で使う。 **適用する**は、**当てはめる**の意の漢語的表現で、特に、法規を具体的な事例に当てはめて用いる、の意で多く使われる。 # あなた ## 貴方[あなた]/あんた/君[きみ]/お前[おまえ]/貴様[きさま]/お宅[おたく]/貴下[きか]/貴君[きくん]/貴兄[けいえ]/貴殿[きでん]/貴方[きほう] ### 使い分け例 **あなた**・・・「あなたのご趣味は何ですか。」「あなた、ごはんよ。」 **あんた**・・・「おれはあんたが好きだ。」 <17> **君**・・・「君と僕だけの秘密だよ。」 **お前**・・・「お前はいい子だね。」「お前とはもう口を利きたくない。」 **貴様**・・・「貴様などに分かるもんか。」「貴様とおれとの仲だ。」 **お宅**・・・「おたくはご承知でしょう。」 **貴下**・・・「貴下のお手紙拝見致しました。」 **貴君**・・・「貴君の健康を祈る。」 **貴兄**・・・「貴兄の成功を祈ります。」 **貴殿**・・・「貴殿を当会名誉会員に推薦致します。」 **貴方**・・・「貴方のお考えをお聞かせ願いたい。」 ### どう使い分けるか 日本語の対称(第二人称)代名詞には、英語のyouに当たるような広く使えるものがなく、使い方に苦労する。古語の「なんぢ」のような元からの対称はあまりなく、また、本来は敬語であったものが多い。 **君**も**お前**も**貴様**も本来は敬語であったが、次第にくだけた、ぞんざいな言葉となった。 **あなた**は微妙で、これも敬意の度が薄れて、今では目上の人にはあまり用いない。しかし、昭和二十七年国語審議会建議の「これからの敬語」には、相手を指す言葉としては<あなた>を標準の形とするとあり、公用文では普通<あなた>を使っている。手紙文では<あなた>を「貴方」「貴男」「貴女」などと表記して使うことがある。会話では<あなた>は、同等の相手に対しても、女性はよく使うが男は親しい間ではあまり使わず、初対面の人とか、あまり親しくない相手に使うことが多い。やや親しい相手には代わりに、**お宅**が使われることがある。これは本来相手の家を指し、その意味では目上にも使える敬語である。しかし、対称としては<あなた>と同じくごく軽い敬意しかなく、目上には使えない。**あんた**は<あなた>よりぞんざいだが<お前>より少し敬意がある。 **貴下**・**貴君**・**貴兄**(姉)・**貴殿**は、すべて書簡用語で、後のものほど敬意が高まる。いずれも普通男性が使う。 **貴方**は、個人に対してだけでなく、相手方の組織・機関などをも言う敬語である。 <18> # 侮る ## 侮る[あなどる] ## 見縊る[みくびる] ## 見下す[みくだす] ## 見下げる[みさげる] ## 蔑む[さげすむ] ## 軽んじる[かろんじる] ## 軽蔑する[けいべつする] ### 使い分け例 **侮る**・・・「弱敵と見て侮るな。」 **見くびる**・・・「そう見くびったものではない。」 **見下す**・・・「人を見下したような態度。」 **見下げる**・・・「女を脅すとは見下げた男だ。」 **蔑む**・・・「蔑むような目つき。」 **軽んじる**・・・「人を軽んじる。」「約束を軽んじる。」 **軽蔑する**・・・「貧しいからといって人を軽蔑するな。」 ### どう使い分けるか 全語にほぼ共通する意味としては、相手を軽く見てばかにする、ないがしろにするということ。 **侮る**は**見くびる**よりも文章語的である。 **見下す**は、**見下げる**よりも相手をばかにした感じが強い。「見下げた・・・」は「軽蔑すべき・・・」の意の慣用連語で、「見下した・・・」には置き換えられない。 **蔑む**は、**軽蔑する**と同義であるが、古風な文章語である。 **軽んじる**は、他語と違って人間以外のものにも用い、大切にしないでいい加減に扱うことを言う。 # 暴く ## 暴く[あばく] ## ばらす ## 素っ破抜く[すっぱぬく] ## 暴露する[ばくろする] ### 使い分け例 **暴く**・・・「不正を暴く。」「墓を暴く。」 **ばらす**・・・「内情をばらすぞ。」「秘密をばらす。」 **素っ破抜く**・・・「スキャンダルをすっぱ抜く。」「政党間の密約を新聞がすっぱ抜いた。」 **暴露する**・・・「倒産寸前の会社の経営実態を暴露する。」「陰謀が暴露する。」 <19> ### どう使い分けるか **暴く**は、本来「墓をー」のように、土を掘って物を取り出す意で、自分も前は知らなかったことを探り、かつ発表する場合に使うのに対して、**ばらす**は知っていて秘密にしていたことを発表してしまう場合に使う。<ばらす>は、「ばらばらにする」が元の意味で、俗語。 **素っ破抜く**も俗語だが、新聞の記事などの場合に使われカラっとした感じである。また不意に、大々的に、のニュアンスがある。 **暴露する**は、<ばらす>と同義の漢語的表現であるが、「陰謀が―」のように自動詞(ばれるの意)にも用いられる。 〔注意〕<暴露>は<曝露>の書き換え。 # 危ない ## 危ない[あぶない] ## 危うい[あやうい] ## 危なっかしい[あぶなっかしい] ## 危険[きけん] ## 剣呑[けんのん] ## 物騒[ぶっそう] ### 使い分け例 **危ない**・・・「危ない所で遊んではいけません。」「落ちそうで危ない橋。」「彼は明日来ると言ったが、危ないもんだ。」 **危うい**・・・「危ういところを助かる。」「危うく一命をとりとめた。」 **危なっかしい**・・・「危なっかしくて見ていられない。」「酔っぱらいの危なっかしい足取り。」 **危険**・・・「深夜の外出は危険だ。」「危険な思想。」「生命の危険。」 **剣呑**・・・「崩れやすいけんのんながけ。」 **物騒**・・・「物騒な世の中。」「物騒な物を持ち歩くな。」 ### どう使い分けるか **危ない**と**危うい**は、「国がー」というように同じ意味に用いるとき、後者の方が文章語的である。また前者には例の三番目のように、「当てにならない」の意味での用法があり、後者には、連用形<危うく>で、「やっとのことで」の意味の使い方がある。 **危なっかしい**は、見るからに危ない感じだ、の意で、<危ない>よりもそれを見る者の不安な気持ちが <20> 強い。 | | ―空模様 | 逃げろ、―ぞ | 間に合うか― | あんな―手付きは見てられない | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **危ない** | ○ | ○ | ○ | | | **危うい** | ○ | | ○ | | | **危なっかしい** | | | | ○ | **危険**は、災難の可能性の大であることを客観的に表現する。 **剣呑**は、<危なっかしい>の俗語的な言い方。 **物騒**も危険な感じを表すくだけた表現であり、「ーな物」はピストルなどの凶器を言う。 # 油 ## 油[あぶら] ## 脂[あぶら] ## 脂肪[しぼう] ## 油脂[ゆし] ## オイル ### 使い分け例 **油**・・・「ごまの油で揚げる。」「油を絞る。」「機械に油を差す。」「油を流したような海面。」「油が切れて元気が出ない。」 **脂**・・・「豚肉の脂。」「脂が乗ったさんま。」「鼻の脂。」「脂ぎった顔。」 **脂肪**・・・「脂肪の多い食品。」「脂肪太り。」「皮下脂肪。」「脂肪油。」 **油脂**・・・「油脂を原料にせっけんを作る。」「油脂工業。」 **オイル**・・・「サラダオイル。」「オイルカラー。」「エンジンオイル。」「オイルダラー。」 ### どう使い分けるか 常温で液体のものを**油**、固体のものを**脂**と書き、一般に前者は植物性、後者は動物性であるが、前者には石油も含む。また、後者のうち肉のあぶらを「膏」と書くこともある。<油>は活動の原動力となるもの(酒など)の比喩として使うこともある。 **脂肪**は、動植物体に含まれる不揮発性のあぶらで栄養素の一つ。普通常温で固形の脂を指すが、栄養学では油と脂を含めて言う。化学では、<油>に当たるものを脂肪油、<脂>に当たるものを<脂肪>として区別する。**油脂**は、油と脂の総称であるが、石油は含まない。 **オイル**は、食用油、燃料用の油、潤滑油、また油絵の具などの意に広く使う。 <21> # 怪しい ## 怪しい[あやしい] ## 可笑しい[おかしい] ## 疑わしい[うたがわしい] ## 訝しい[いぶかしい] ## 不審[ふしん] ### 使い分け例 **怪しい**・・・「怪しい物音がする。」「明日の天気は怪しい。」「あの二人は怪しいぞ。」「彼の英語は怪しいものだ。」 **おかしい**・・・「様子がおかしい。」「頭がおかしいのと違うか。」 **疑わしい**・・・「それが本物かどうか疑わしい。」 **訝しい**・・・「その話にはいぶかしい点がある。」 **不審**・・・「言動に不審な点がある。」「不審な男。」 ### どう使い分けるか **疑わしい**は、対象が疑念をもたれるべき状態だという意味を表し、**いぶかしい**はその原因を突きとめたいという、主観的な気持ちをより強く含むニュアンスがある。**不審**は、<いぶかしい>と同義の漢語。みなやや文章語的である。 **怪しい**・**おかしい**は、疑わしいの意に加え様子が変だの意味があり、特に後者ではその方に力点がある。「彼の英語は怪しい」は、何となく変で、正しさが疑われるという場合で、「彼の英語はおかしい」は、変であることがもっとはっきりしている場合である。<怪しい>には、当てにならない、の意もある。二人の男女の間に特別な関係があるらしいという場合には両者同様に使う。 # 誤り ## 誤り[あやまり] ## 過ち[あやまち] ## 間違い[まちがい] ## 失敗[しっぱい] ## 失策[しっさく] ## 過失[かしつ] ## 過誤[かご] ### 使い分け例 **誤り**・・・「文字の誤りを正す。」「判断の誤り。」 **過ち**・・・「過ちを犯す。」「若い二人の過ち。」「過ちを反省する。」 **間違い**・・・「この答えは間違いだ。」「道中間違いがないように。」 **失敗**・・・「交渉は失敗に終わる。」「受 <22> 験に失敗する。」 **失策**・・・「二塁手の失策でランナーは三塁に進む。」 **過失**・・・「過失による事故。」「業務上過失致死。」 **過誤**・・・「過誤を無くしよう。」 ### どう使い分けるか **誤り**は、表記・計算・判断などについて、**過ち**は、行為について改まった言い方として用い、**間違い**は、両方の意味を兼ねて広く使われるほか、事故・万一の事などの意味も表す。 **失敗**も**失策**もやりそこないであるが、後者は軽い意味に使われる。 <誤り><過ち><間違い>などは、その事の本になる判断が正しくないため起こるもので、<失敗><失策>は方法・手順・技術などの不足で起こるもの。例えば、「花を描け」と言われて「鼻」を描くのは<誤り>で、「花」を描くつもりだったが花に見えないものを描いてしまった場合は失敗である。 **過誤**は、<誤り>、**過失**は、<過ち>の意の漢語であるが、後者は法律用語としては「一致死罪」など、注意を欠いて結果を予見しないことを意味する。 # 荒い ## 荒い[あらい] ## 粗い[あらい] ## 荒っぽい[あらっぽい] ## 粗っぽい[あらっぽい] ## 荒荒しい[あらあらしい] ## 手荒い[てあらい] ## 粗暴[そぼう] ## 粗野[そや] ### 使い分け例 **荒い**・・・「波が荒い。」「気性が荒い。」「金遣いが荒い。」 **粗い**・・・「粒が粗い。」「網の目が粗い。」「きめが粗い。」「計画が粗い。」 **荒っぽい**・・・「人使いが荒っぽい。」「荒っぽい荷扱い。」 **粗っぽい**・・・「仕事が粗っぽい。」「粗っぽい造り方。」 **荒荒しい**・・・「荒々しく戸を開ける。」「荒々しい息遣い。」 **手荒い**・・・「子供に手荒いまねをするな。」「手荒く荷物を投げる。」 **粗暴**・・・「粗暴な振る舞い。」「すぐに人を殴る粗暴な男。」 **粗野**・・・「粗野な言動。」「粗野だが人はいい。」 <23> ### どう使い分けるか **荒い**は、勢いや動きが激しくすさまじい、性向や行為が度を越えて激しい、の意。 **粗い**は、織物・編み物の目や粒が大きい、表面がざらざらしている、やり方が大ざっぱである、の意。 **荒っぽい**と**粗っぽい**は、それぞれ<荒い>、<粗い>を強めた口頭語的な言い方であるが、どちらも人間の態度や言動について使い、「荒っぽい波」、「粗っぽいきめの肌」のような使い方はしない。 **荒荒しい**も、<荒い>の強調表現であるが、この語も自然や物については使わず、かなり文章語的である。 **手荒い**は、扱い方が乱暴だの意で、<手荒だ>という形容動詞もほぼ同義に使われる。 **粗暴**と**粗野**はどちらも性質や行動が荒々しいさまを言うが、前者は乱暴だ、後者は品がない点を強く言う言葉である。 # 洗う ## 洗う[あらう] ## 濯ぐ[すすぐ] ## 漱ぐ[すすぐ] ## 濯ぐ[ゆすぐ] ## 洗濯する[せんたくする] ## 洗浄する[せんじょうする] ### 使い分け例 **洗う**・・・「髪を洗う。」「波が岸を洗う。」 **濯ぐ**[すすぐ]・・・「洗濯物をすすぐ。」 **漱ぐ**・・・「口をすすぐ。」 **濯ぐ**[ゆすぐ]・・・「牛乳瓶をゆすぐ。」「口をゆすぐ。」 **洗濯する**・・・「下着を洗濯する。」 **洗浄する**・・・「胃を洗浄する。」 ### どう使い分けるか **洗う**は、水や薬品・洗剤などで汚れを落とす、の意。 **濯ぐ**[すすぐ]は、洗剤などを使わず、水・湯だけの場合に言う。 **漱ぐ**は、水などで口中の汚れを洗い落とす意。 **濯ぐ**[ゆすぐ]は、<濯ぐ>[すすぐ]とほぼ同じ意味だが、特に揺り動かしてすすぐ場合を言う。口頭語では<ゆすぐ>の方がよく使われる。 **洗濯する**は、衣類などの汚れを洗い落とす意、**洗浄する**は、本 <24> 来医学用語で、局部・患部の汚れを洗い流す意である。 〔注意〕「恥をすすぐ(そそぐ)」の場合、漢字表記は「雪ぐ」である。 <洗浄>は<洗滌>の書き換え。 # あらかじめ ## 予め[あらかじめ] ## 前以て[まえもって] ## 予て[かねて] ## 予予[かねがね] ### 使い分け例 **あらかじめ**・・・「ご欠席の場合はあらかじめお知らせください。」「あらかじめ想像せざるを得なかった。」 **前以て**・・・「前もって電話してから出かけた。」「前もって打ち合わせる。」 **かねて**・・・「うわさはかねて聞いていた。」「かねてより話のあったこと。」 **かねがね**・・・「その件はかねがね承っておりました。」 ### どう使い分けるか **あらかじめ**は、事に際して前もってしておくさまを表す副詞で、**前もって**よりも改まった言い方。 **かねがね**は、**かねて**を強調した語。 現時点で未来のこと、過去のある時点でそれから起こることに備えるのが<あらかじめ><前もって>、現時点また過去の一時点の前に何かしていたのが<かねて>である。(したがって過去の事柄では同じように用いられる場合がある。)なお、<かねて>は「かねての」「かねてより」などと言うことができる。 | | ―約束していた話 | 注意しておけ | ―夢みていた事 | うわさの― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **前もって** | ○ | ○ | | | | **かねて** | ○ | | ○ | ○ | | **かねがね** | | | ○ | ○ | # 争い ## 争い[あらそい] ## 喧嘩[けんか] ## 諍い[いさかい] ## 啀み合い[いがみあい] ## 抗争[こうそう] ## 闘争[とうそう] ### 使い分け例 **争い**・・・「主導権争い。」「法廷での争い。」 **喧嘩**・・・「子供の喧嘩に親が出る。」「口喧嘩。」 **いさかい**・・・「若い衆のいさかいが絶え <25> ない。」「年寄りにいさかいの仲裁を頼む。」 **いがみ合い**・・・「兄と弟のいがみ合い。」「仲間同士のいがみ合い。」 **抗争**・・・「派閥間の抗争。」「二大暴力団の抗争。」 **闘争**・・・「民族独立の闘争を支援する。」「反原発闘争。」 ### どう使い分けるか **争い**は、**喧嘩**と同義にも用いるが、「法延でのー」のように公の場所で黒白を決しようとする場合にも使う。 **いさかい**・**いがみ合い**は、古風な言い方で、大きな組織・団体でなく私的な関係で使うが、後者は肉親や仲間など近しい間柄に多く使われる。 **抗争**・**闘争**は、他語に比べてかたい文章語であるが、後者は「賃上げー」のように組合運動や社会運動などで、要求を通すために闘う場合によく使われる。 # 表す ## 表す[あらわす] ## 現す[あらわす] ## 顕す[あらわす] ## 示す[しめす] ## 表する[ひょうする] ## 表出する[ひょうしゅつする] ## 表現する[ひょうげんする] ## 表記する[ひょうきする] ## 標記する[ひょうきする] ### 使い分け例 **表す**・・・「都会の印象を音楽で表す。」「喜びを顔に表す。」「名は体を表す。」「温度の変化をグラフで表す。」 **現す**・・・「姿を現す。」「頭角を現す。」「本性を現す。」「効果を現す。」 **顕す**・・・「善行を世に顕す。」 **示す**・・・「証明書を示す。」「手本を示す。」「道を示す。」「難色を示す。」「上昇傾向を示す。」 **表する**・・・「敬意を表する。」「哀悼の意を表する。」 **表出する**・・・「心の不安を表出する。」 **表現する**・・・「喜びを全身で表現する。」「作者の気持ちを簡潔に表現する。」 **表記する**・・・「平がなで表記する。」「表記された金額。」 **標記する**・・・「JISマークを標記する。」「題目を標記する。」 ### どう使い分けるか **表す**は、思想や感情を文章・絵 <26> 画・音楽・表情などにして表に出す、また物事の内容を具体的な形にして示す、の意。**現す**は、隠れていて見えなかったものを外から見えるように表面に出すの意で使う。原則として、後者は具体的な形のある物、前者は抽象的な事柄について用いる。 **顕す**は、はっきりと世間(人々)に知らせるの意。 **示す**は、相手に分かるように何かを見せたり、指さしたりして教える、感情や意志を言葉・表情・態度などに表して相手に分からせる、などの意で、<表す>よりも相手に知らせる、分からせるという意図が強い。 **表する**は、言葉や形にあらわすことで、儀礼的な文などに多く使う文章語。 **表出する**は、精神内部のものを言葉や表情・身ぶりで外に表す意。 **表現する**は、表情や身ぶりだけでなく、言語・音楽・絵画などの形で表し、伝達しようとする、の意。 **表記する**は、言葉を文字や記号で書き表す意で、物の表面に書き記すの意もある。 **標記する**は、目印として付ける、また標題として文書の初めに書き記す、の意である。 # 有り難い ## 有り難い[ありがたい] ## 忝い[かたじけない] ## 勿体ない[もったいない] ## 恐れ多い[おそれおおい] ### 使い分け例 **有り難い**・・・「そうしていただくと有り難い。」「有り難い法話を聞く。」「ありがとうございます。」 **かたじけない**・・・「御配慮まことにかたじけなく存じます。」「かたじけない。拝借いたす。」 **もったいない**・・・「捨てるのはまだもったいない。」「もったいないお言葉を賜る。」 **恐れ多い**・・・「恐れ多くて頭が上がらない。」「そんな恐れ多いことは申し上げられない。」 ### どう使い分けるか 感情の表現としては**有り難い**が普通の言い方で、尊くもったいないの意味でも使う。 **かたじけない**は、<有り難い>の <27> 意の古風な言葉で、手紙文などに用いる。 **もったいない**は、身に過ぎて<有り難い>、の意だが、今では、惜しいの意に使う方が多い。 **恐れ多い**は、もったいなくて恐縮だの意。元は、高貴な人の前で恐縮だ、の意で、普通の会話用語ではない。 # 合わせる ## 合わせる[あわせる] ## 併せる[あわせる] ## 合併する[がっぺいする] ## 併合する[へいごうする] ## 合同する[ごうどうする] ## 合体する[がったいする] ## 統合する[とうごうする] ### 使い分け例 **合わせる**・・・「手を合わせて拝む。」「力を合わせる。」「話を合わせる。」「時計を合わせる。」「答えを合わせる。」 **併せる**・・・「隣国を併せる。」「二つの会社を併せる。」「両者を併せて考える。」「併せて御健康を祈ります。」 **合併する**・・・「三町村が合併する。」 **併合する**・・・「辺地の学校を併合する。」「隣国を併合する。」 **合同する**・・・「組織を合同する。」 **合体する**・・・「機械の二つの部分が合体する。」 **統合する**・・・「部局を統合する。」「A公団とB公団が統合する。」 ### どう使い分けるか **合わせる**は、二つ以上のものを一つにする、調和のとれたものにする、基準になるものと一致させる、照合する、調合する、合奏するなどいろいろな意味があるが、**併せる**は、他のものを付け加えて一緒にするの意にのみ用い、「併せて・・・」という場合はそれと同時にの意の接続詞的な用法。 **合併する**と**併合する**は、どちらも二つ以上の組織体を合わせて一つにする、また一つになるの意であるが、強いて区別すれば、「A村とB村がー」の場合は前者を、「C市がA村をー」の場合は後者を使う。つまり前者は自動詞として、後者は他動詞として使われることが多い。 **合同する**は、独立している二つ以上の団体や組織を一つにする、また一つになる、の意、**合体す** <28> るは、二つ以上の物事を一つに合わせる、また一体となる、の意で、この両語は自動詞として用いる方が多く、その場合前者ではそれぞれが独立性を保ったまま協同する。 統合するは、二つ以上のものをまとめて一つにするの意。 | | 大国が隣国を― | 三社が対等に― | 両手を― | 本体価格に箱代を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | 合わせる | | ○ | | | | 併せる | | | ○ | ○ | | 合併する | | ○ | | | | 併合する | ○ | Δ | | | # 慌てる ## 慌てる[あわてる] ## うろたえる ## まごつく ## 狼狽する[ろうばいする] ### 使い分け例 **慌てる**・・・「遅刻しそうになり慌てる。」「財布を忘れて慌てる。」 **うろたえる**・・・「旧悪がばれてうろたえる。」「株が暴落してうろたえる。」 **まごつく**・・・「突然英語で名前を聞かれまごつく。」「道が分からずまごつく。」 **狼狽する**・・・「味方敗北の報に、全員狼狽する。」「突然の出来事に狼狽する。」◎周章狼狽する。 ### どう使い分けるか **慌てる**と**うろたえる**は似ているが、前者は、するべきことは一応分かっているけれども焦って落ち着きを失っている場合、後者は、どうすべきか分からず焦り困惑している場合に使う。 **まごつく**は、どうすべきか分からない点で〈うろたえる〉に近いが、焦りせく気持ちが〈うろたえる〉より軽い。 **狼狽する**は、〈慌てる〉〈うろたえる〉に相当する漢語的表現で、かたい言い方だが意味は広い。 | | 不意の出来事に― | 締め切りが迫り― | 悪事がばれ― | 道が分からず― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | 慌てる | ○ | ○ | | | | うろたえる | | | ○ | Δ | | まごつく | | | | ○ | | 狼狽する | ○ | | | | # 安全 ## 安全[あんぜん] ## 安泰[あんたい] ## 安穏[あんのん] ## 平安[へいあん] ## 平穏[へいおん] <29> ### 使い分け例 **安全**・・・「身の安全を図る。」「作業の安全を期す。」 **安泰**・・・「横綱の地位は当分安泰だ。」「わが社の安泰を祈る。」 **安穏**・・・「安穏な老後。」「安穏な心。」 **平安**・・・「精神の平安を保つ。」「世の中がいつまでも平安であるように。」 **平穏**・・・「日々平穏に過ごしている。」「世界はこのところ平穏だ。」 ### どう使い分けるか **安全**・**安泰**・**安穏**は、全体についてでなく、ある個人や集団、ある場などについて言うことが多いのに対し、**平安**・**平穏**は世の中・世界の全体についてもよく使う。 <安泰>は、<安全><安穏>に比べると、ただ無事なだけでなく、特権的な、あるいは有利な地位などについて言うことが多い。 <安穏><平穏>は<安全><安泰>より消極的・受動的な感じがある。 <安穏><平安>は心の状態についても言う。 # 言い訳 ## 言い訳[いいわけ] ## 言い逃れ[いいのがれ] ## 申し訳[もうしわけ] ## 弁解[べんかい] ## 弁明[べんめい] ### 使い分け例 **言い訳**・・・「これで言い訳ができる。」「言い訳がましい。」 **言い逃れ**・・・「どうあがいても、言い逃れはできない。」「見苦しく言い逃れをしようとする。」 **申し訳**・・・「申し訳のないことを致しまして。」「申し訳が立つ。」 **弁解**・・・「失敗の弁解をする。」「子に代わって弁解します。」 **弁明**・・・「君の弁明を聞こう。」「彼のために弁明する。」 ### どう使い分けるか **言い訳**は、自分の過失や、失敗に正当な理由があることを主張すること。若干利己的(または卑劣)というニュアンスが含まれ、**言** <30> **い逃れ**では、一層このニュアンスが強く、**申し訳**にはこれがない。<言い逃れ>は、自分の罪や責任を何としても回避しようとして、あれこれ言うことだが、<申し訳>は自分の非を認めた上で、正当な理由があればそれを説明して了解を得ようとすることである。 **弁解**は、<言い訳>が自分のためにするものであるのに対して、他のためにするものをも言う。 **弁明**は、<弁解>とほとんど同義だが、<弁解>の方がやや<言い逃れ>や<言い訳>に近いものがあり、<弁明>は正々堂々としている。 〔注意〕<釈明>には、<弁明>と同じ意味のほかに、解釈して明らかにすること、の意味がある。 # 言う ## 言う[いう] ## 喋る[しゃべる] ## 話す[はなす] ## 語る[かたる] ## 述べる[のべる] ## 申す[もうす] ## 仰る[おっしゃる] ### 使い分け例 **言う**・・・「意見を言う。」「氏が演説で言ったこと。」「あれっと言った。」「松という木。」「手紙で言ってやる。」 **喋る**・・・「とりとめもないことをしゃべる。」「しゃべりちらす。」 **話す**・・・「見たことを話す。」「私の考えを話します。」 **語る**・・・「昔を語る。」「真相を語る。」 **述べる**・・・「事件の経過を述べる。」 **申す**・・・「ただ今申した通り・・・。」 **おっしゃる**・・・「先生がおっしゃった。」 ### どう使い分けるか **言う**は、基本的には思ったことを言葉で表現する意で、広く使われている。口で言うのが普通だが、時には書き言葉についても使う。 **喋る**・**話す**は、書き言葉については使わず、また、一語や二語の短い場合には使わない。前者はとりとめもない内容で口数多い感じであり、後者はある程度まとまった内容である。また前者はやや俗語的である。 **語る**は、<話す>より文章語的で、内容的にも<話す>ことより改まった、まとまりのあることに限られることが多い。また自分の行為に <31> は使わない。 **述べる**は、〈話す〉のやや改まった言い方。〈語る〉ほど改まった感じではなく、自分が述べる場合も使う。また、口で言うのでなく文章で表す場合にも使う。 | | 真相をー | 「あれっ」とー | 私がー | の「なにわ節」をー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **言う** | O | O | O | O | | **話す** | O | O | O | - | | **語る** | O | - | Δ | O | | **述べる** | O | O | - | - | **申す**は、〈言う〉の謙譲語。 **おっしゃる**は、〈言う〉の尊敬語。 # 家[いえ] ## 家[いえ]/うち/家屋[かおく]/住宅[じゅうたく]/住居[じゅうきょ]/住まい[すまい] ### 使い分け例 **家**・・・「家が建ち並ぶ。」 **うち**・・・「うちを建てる。」「うちへいらっしゃい。」「うちの学校。」 **家屋**・・・「土地・家屋に税がかかる。」 **住宅**・・・「小世帯用の住宅。」「公団住宅。」 **住居**・・・「住居変更の届。」「住居移転の通知。」 **住まい**・・・「ひとりずまいの寂しさ。」「ようやく自分のすまいを持てた。」 ### どう使い分けるか **家**は、人が住む建物。家族や家系を意味することもある。 **うち**は、**家**とほぼ同義に用いられるが、家の中を表したり、「ーの学校」のように自分の属するグループを示すなど〈家〉よりも用法は広い。 **家屋**は、主として法律、行政等の公的場面で、財産として見るときに使う。 **住宅**は、住むための家、**住居**は、ある人の住む家または所、の意で、ともに文章語的な言い方。 **住まい**は、本来、住む(住み続ける)ことの意(前の例)で、転じて住む家の意(後の例)になった。 # 意外[いがい] ## 意外[いがい]/案外[あんがい]/予想外[よそうがい]/思いがけず[おもいがけず]/思いもよらず[おもいもよらず] <32> ### 使い分け例 **意外**・・・「意外に優しい人だった。」「意外な事件。」 **案外**・・・「案外、難しかった。」「案外にうまいじゃないか。」 **予想外**・・・「予想外の進展。」「予想外に健闘した。」 **思いがけず**・・・「思いがけず人に出会う。」「思いがけぬ出来事。」 **思いもよらず**・・・「思いもよらず賞を頂く。」「思いもよらぬ幸運。」 ### どう使い分けるか **意外**・**案外**とも、思っていたことと実際とが非常に違うさまを表すが、<案外>が前からの予想に比べて違いがあるときに使うことが多いのに対して、<意外>は、予想もしていなかったようなときに使うことが多く、驚きの程度が強い。 **予想外**は、<意外>より更に驚きが強い感じがある。また、<予想外>の方が、客観的にだれもが感じるような場合によく使われる。 **思いがけず**は、<予想外>に相当する和語。 **思いもよらず**は、<思いがけず>の、より文章語的な言い方。 # 粋 ## 粋[いき] ## 小粋[こいき] ## 垢抜け[あかぬけ] ## シック ## スマート ### 使い分け例 **粋**・・・「粋に装う。」「粋な造りの家。」「粋な話しぶり。」「粋なはからい。」 **小粋**・・・「小粋な身なり。」「小粋に振る舞う。」 **垢抜け**・・・「彼女も長い都会暮らしであか抜けしてきた。」 **シック**・・・「シックなアクセサリー。」「インテリアがとてもシックだ。」 **スマート**・・・「彼は背が高くスマートだ。」「スマートな着こなし。」 ### どう使い分けるか すべてに共通した意味は、洗練され格好いい様子。 **粋**は、服飾・動作・行為・趣味などについて人にも物にも広く使う。 **小粋**は、見た目の人の様子に限定される。また、どことなくちょっと粋、といった意味合いもある。 <33> 〈粋〉は本来江戸、特に花柳界風の美意識を表す言葉なので、今でもそのニュアンスがある。 **垢抜け**は、結局は〈粋〉と同じ意になるが、野暮でない・田舎くさくないさま、の意味合いである。 **シック**には都会風に、上品さと落ち着きの加わった感じがある。 **スマート**は〈シック〉より軽快で活動的な感じがある。体形がすらりとしていることにも使う。 〔注意〕〈垢抜け〉だけは「する」がついて動詞となる。他は形容動詞語幹。 # 生き返る[いきかえる] ## 生き返る[いきかえる]/蘇る[よみがえる]/蘇生[そせい]する/復活[ふっかつ]する ### 使い分け例 **生き返る**・・・「死者が生き返る。」「雨で草木が生き返る。」 **よみがえる**・・・「記憶がよみがえる。」「死の海はよみがえった。」 **蘇生する**・・・「人工呼吸で蘇生した。」 **復活する**・・・「昔の祭を復活する。」「キリストが復活する。」 ### どう使い分けるか **生き返る**・**よみがえる**ともに、生命を取り戻す、衰えていたものが元気を出すという同じ意味の語だが、〈よみがえる〉は忘れていたものを思い出す意にも使う。また、〈よみがえる〉の方が文章語的である。 **蘇生する**は、〈よみがえる〉の漢語的表現だが、「記憶がー」のような比喩的な言い方はしにくい。 **復活する**も、生き返る意だが、キリストの復活のほかは主として、滅んでいた習慣・行事などが再び取り行われる意に使う。 | | 雨で草木がー | 遠い記憶がー | 古い行事がー | 原案をー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **生き返る** | O | O | O | - | | **よみがえる** | O | O | O | - | | **蘇生する** | O | - | - | O | | **復活する** | O | O | O | O | # 息巻く[いきまく] ## 息巻く[いきまく]/いきり立つ[いきりたつ]/当たり散らす[あたりちらす]/怒鳴り散らす[どなりちらす] <34> ### 使い分け例 **息巻く**・・・「ただではすまさんと息巻いた。」「おれを何だと思っていると息巻いた。」 **いきり立つ**・・・「いきり立つ彼を抑えるのに苦労した。」 **当たり散らす**・・・「だれかれかまわず当たり散らす。」 **怒鳴り散らす**・・・「周りをねめ回して怒鳴り散らした。」 ### どう使い分けるか **息巻く**は、怒りのため、また相手を脅すため、激しく荒々しく相手に言い立てる意で、**いきり立つ**は、激しい怒りで興奮する意。前者は言い立てる動作に重点を置き、後者は当人の怒りの感情に重点を置く。 **当たり散らす**は、快くない気持ちを、周囲の無関係の人達にぶつけて発散させる意。 **怒鳴り散らす**は、大声をあげてさんざんに周りの人達を怒る意。<当たり散らす>もこれも、周りの人に責任があるとは限らない。 # 生き物 ## 生き物[いきもの] ## 動物[どうぶつ] ## 畜生[ちくしょう] ## 獣[けもの] ## 生物[せいぶつ] ### 使い分け例 **生き物**・・・「草木も生き物である。」「言葉は生き物だ。」 **動物**・・・「野性の動物を保護する。」 **畜生**・・・「人間は畜生の仲間ではない。」「犬畜生に劣るやつ。」 **獣**・・・「鳥や獣。」「けだものの本性を現す。」「あの男はけだものだ。」 **生物**・・・「火星に生物は存在するか。」 ### どう使い分けるか **生き物**は、広義では生命あるもの一般を指すが、狭義では動物を指す。また後の例のように、活動し変化するものを比喩的に言う。 **動物**は、植物と並ぶ生物の二大区分の一つで、人・鳥・獣・虫・魚などの総称である。ただし人間を含まない場合もある。 **畜生**は、人間を除いた<動物>の意。ただし、魚や虫にはあまり言わない。卑しめて言う言葉で、人をののしる時にも使う。 <35> **獣**は、動物の哺乳類のうち、全身毛で覆われているもののこと。人道にもとる人間をののしって言う比喩的用法もある。(この場合は「ケダモノ」) **生物**は、<生き物>と同義の漢語だが、比喩的表現はあまりせず、「言葉はーだ」などと言わない。 # 行く ## 行く[いく・ゆく] ## 赴く[おもむく] ## 出向く[でむく] ## 出掛ける[でかける] ## 参る[まいる] ## いらっしゃる ### 使い分け例 **行く**・・・「三十分で行く。」「うまくいった。」「パリへ行く。」 **赴く**・・・「大阪へ赴く。」「快方に赴く。」 **出向く**・・・「私の方から出向きます。」 **出掛ける**・・・「散歩に出掛ける。」 **参る**・・・「ただ今参ります。」「昨日こちらに参りました。」 **いらっしゃる**・・・「いつアメリカへいらっしゃいますか。」「うちにいらっしゃい。」「ずっとここにいらっしゃるのですか。」 ### どう使い分けるか **行く**は、こちらからあちらへ移るという意味で、移る目的があってもなくても用いる。また物事が進行する、事が運ぶという意味でも用いる。イクよりユクの方がやや改まった感じである。 **赴く**は、目指すところのはっきりした移動について言う。また、ある状態に向かう意でも使う。文章語。 **出向く**は、目的をもってある所へ出掛ける意。あえてこちらからというニュアンスが含まれる。 **出掛ける**は、行く先より、出て行くことに重点を置いた表現。「散歩に―」は<出向く>でなく<出掛ける>。 **参る**は、<行く><来る>の謙譲語。いらっしゃるは、<行く><来る>「居る」の尊敬語。 # 意見 ## 意見[いけん] ## 見解[けんかい] ## 所信[しょしん] ## 考え[かんがえ] <36> ### 使い分け例 **意見**・・・「自分の意見を主張する。」「反対意見。」 **見解**・・・「見解の相違がある。」「政府の公式見解。」 **所信**・・・「本会議で所信を表明する。」 **考え**・・・「へたな考え休むに似たり。」 ### どう使い分けるか **意見**は、ある問題についての考えのこと。「―する」はその考えに従って他人を戒める意味になる。 **見解**も、ある問題についての考えのことだが、<意見>よりも公の問題についての公的に発表される考えなどに使われることが多い。やや堅苦しい言い方。 **所信**は、公的な場で表明される、ある問題についてのある人の確信ある<考え>を言う。かなりかたい文章語。 **考え**は、前三語の意味をすべて含み広い意味で使われる日常語。 # 威厳 ## 威厳[いげん] ## 威光[いこう] ## 権威[けんい] ## 威信[いしん] ## 威風[いふう] ### 使い分け例 **威厳**・・・「威厳に満ちた顔つき。」 **威光**・・・「葵の紋の威光。」「親の威光で出世する。」 **権威**・・・「幕府の権威も地に落ちた。」「斯界の権威。」 **威信**・・・「国家の威信を高める。」「威信の低下。」 **威風**・・・「威風あたりを払う。」「威風堂々。」 ### どう使い分けるか **威厳**は、堂々として厳かな様子。相手に近寄りがたい印象を与える状態を言う。 **威光**は、多くの人が自然に敬い服すような威勢のこと。<威厳>が主として相手に直接的印象として与えられるものであるのに対して、地位とか金力とかの勢いを言うことが多い。 **権威**は、人々を従わせる力を言うが、暴力的な強制力でなく知的・道徳的などの精神的な力を言うことが多い。「斯界のー」のように、その分野で最高に権威のある人、オーソリティーの意もある。 <37> | | 王者の― | ―に満ちた顔 | ―を疑われる | 親の―を笠に着る | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **威厳** | ○ | ○ | | | | **威光** | ○ | | | ○ | | **権威** | ○ | | ○ | | | **威信** | | | ○ | | **威信**は、権威に伴う信頼感の意。<権威>あっての<威信>である。 **威風**は、威勢・権威のある様子のこと。威厳がみなぎって周囲になんらかの作用を及ぼすような場合に使うことが多い。 # 勇ましい ## 勇ましい[いさましい] ## 勇敢[ゆうかん] ## 勇壮[ゆうそう] ## 勇猛[ゆうもう] ## 雄雄しい[おおしい] ## 凛々しい[りりしい] ### 使い分け例 **勇ましい**・・・「勇ましく飛び立つ。」「勇ましいたすき姿。」「勇ましい行進曲。」 **勇敢**・・・「言論の自由のために勇敢に戦う。」「勇敢な発言。」 **勇壮**・・・「勇壮な陣太鼓の響き。」 **勇猛**・・・「勇猛な戦士たち。」 **雄雄しい**・・・「雄々しく苦難と戦う。」 **凛々しい**・・・「凛々しい若武者姿。」 ### どう使い分けるか 六語に共通に含まれる意味は、恐れず戦う、または戦おうとするさま。 **勇ましい**が、最も基本的で、広く使われる。 **勇敢**は、行動や心について使い、静止状態の姿の様子には使いにくい。 **勇壮**は、男らしく強く盛ん、の意が加わる。 **勇猛**は、たけだけしいの意が加わり、やはり静止した姿の様子にはやや使いにくい。 **雄雄しい**は、男らしいの意が元の意味だが、一般的に勇ましく力強い意に使う。 **りりしい**は、きりっと引き締まって勇ましいの意で、見た目の姿に言うことが多い。 # 意志 ## 意志[いし] ## 意思[いし] ## 意向[いこう] ## 意図[いと] ## 志向[しこう] ## 指向[しこう] <38> ### 使い分け例 **意志**・・・「意志の強い男。」「意志薄弱。」 **意思**・・・「犯行の意思あり。」「意思表示。」 **意向**・・・「相手の意向を確かめる。」 **意図**・・・「君の意図が分からない。」「彼が意図した仕事である。」 **志向**・・・「福祉国家を志向する。」 **指向**・・・「指向性アンテナ。」 ### どう使い分けるか **意志**は、あることをしたい、成し遂げたいという積極的な心の働きを言う。 **意思**は、<意志>とほぼ同義であるが、特に積極的でなくても、何かをしたい、また、したくないと思う考えを、広く言う。法律用語としては<意思>を使う。 **意向**は、何をどのようにするかの大体の考え。<意志>は、あるかないか強いか弱いかが問題になることが多く、<意向>は、何をどうするか、が問題になることが多い。 **意図**は、あることをしようと考えること。また、その目的や内容。<意向>より具体性を帯びる場合に使う語。 **志向**は、一定の目的目標に心が向くこと。<意向>より意志的であり、<意志>に比べどちらを向くかに重点が置かれる。 **指向**は、心に限らず一般に物事がある方向に向くことを言う。 〔注意〕<意図><志向><指向>は、「する」がついて動詞となるが<意志><意思><意向>はそうならない。 # 苛める ## 苛める[いじめる] ## いびる ## 虐待する[ぎゃくたいする] ## 嬲る[なぶる] ## 苛む[さいなむ] ### 使い分け例 **苛める**・・・「悪童が亀をいじめる。」 **いびる**・・・「嫁をいびる。」 **虐待する**・・・「動物を虐待する。」 **嬲る**・・・「監禁されなぶられる。」 **苛む**・・・「自責の念にさいなまれる。」 ### どう使い分けるか **苛める**は、弱いものを苦しめ痛めつける意で、広く使う。 <39> **いびる**は、苛める行為がより陰険であり、また心理的な行為で、相手は普通人間である。 **虐待する**は、<苛める>と同義の漢語的表現。相手は人間・動物を問わない。やや文章語的な言葉。 **嬲る**は、弱い相手を面白がって苦しめいじめる意。<いびる>より更に悪質である。 **苛む**は<苛める>と同義の文章語。ただし、例のような慣用的言い回しの中で使われることがほとんどである。 # 異常 ## 異常[いじょう] ## 異状[いじょう] ## 非常[ひじょう] ## 別状[べつじょう] ## 別条[べつじょう] ### 使い分け例 **異常**・・・「物価が異常に高い。」「精神に異常をきたす。」 **異状**・・・「診断の結果異状を認める。」「室内に異状が見られた。」 **非常**・・・「非常に美しい。」「非常の事態に持ち出す書類。」 **別状**・・・「生命に別状はない。」 **別条**・・・「日々別条なく暮らしている。」 ### どう使い分けるか **異常**は、正常と異なる、の意で、<異状>より広く使われる。 **異状**は、異常な状態の意。<異常>は名詞・形容動詞語幹として使い、<異状>は名詞のみである。 **非常**は、通常でない意で、<異常>のようにマイナスの価値評価を伴うものではない。「非常に美しい」は強く褒めているのだが、「異常に美しい」では素直に褒めているのでなく何か変だという感じを含む。 **別状**は、語義を書けば<異状>と同様になるが、使い方は例のような場合のほかはあまりないが、この場合に<異状>はあまり使わない。 **別条**は、普通とは違った事柄の意。やはり使い道は極めて狭い。 〔注意〕 新聞では<別状>も<別条>と書いている。 # いじる ## 弄る[いじる] ## 捻くる[ひねくる] ## 弄ぶ[もてあそぶ] <40> ### 使い分け例 **いじる**・・・「鉛筆をいじる。」「会則をいじる。」「楽器をいじる。」◎いじくる。 **ひねくる**・・・「ステッキをひねくる。」「俳句をひねくる。」 **もてあそぶ**・・・「小刀をもてあそぶ。」「人の気持ちをもてあそぶな。」「政治をもてあそぶ。」 ### どう使い分けるか **いじる**は、本来、用もないのに、手でなでたりひねったりする意だが、趣味で何かものを扱う意や、しっかりした方針もなく、物事にまれこれ手を加えるなどの意もある。後の二つには、わずかに軽侮の念が含まれる。 **ひねくる**は、物について言うときは、手に持ってあれこれ動かしてみる意。ほかにいろいろ言葉や理屈を考え、さまざまに言い回してみる、などの意がある。 **もてあそぶ**は、小さい物を対象とする場合は〈いじる〉〈ひねくる〉の意を含み手で持って遊ぶ意。なお、〈いじる〉は、自動車・庭などのようなかなり大きな物についても言うが、〈ひねくる〉〈もてあそぶ〉は、手に持てる程度の小さい物を対象とする。〈もてあそぶ〉はほかに、自分の自由に慰みものにするという意味もある。この場合は抽象的なものも対象となる。 | | 玩具を― | 火を― | 車を― | 言葉を― | 策を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | いじる | ○ | ○ | ○ | | | | ひねくる | | | | ○ | | | もてあそぶ | ○ | | | | ○ | # 意地悪 ## 意地悪[いじわる] ## 邪険[じゃけん] ## 邪悪[じゃあく] ## 陰険[いんけん] ## 刺々しい[とげとげしい] ### 使い分け例 **意地悪**・・・「わざと人の嫌がることを言う意地悪な男。」「意地悪な目。」 **邪険**・・・「人の頼みを邪険に断る。」 **邪悪**・・・「平気で人を殺すような、邪悪な性格。」「邪悪のはびこる世。」 **陰険**・・・「陰険なたくらみ。」 **刺々しい**・・・「刺々しい目つき。」 ### どう使い分けるか **意地悪**は、人に対して悪意を持っ <41> # 一段と[いちだんと] ## 一段と[いちだんと] ## 一際[ひときわ] ## 一入[ひとしお] ## 一層[いっそう] ### 使い分け例 **一段と**…「一段と寒さが厳しい。」「ほかの諸国に比べ一段と豊かだ。」「弟は兄より一段と大きい。」 **一際**…「ひときわ目立つ服装。」「皆の中でひときわきれいだった。」 **ひとしお**…「ひとしおうれしさが増す。」「嘆きもひとしおであった。」 **一層**…「結婚後一層美しくなった。」「一層努力する。」 ### どう使い分けるか いずれも、あるものの状態が、他のものや他の時点の状態に比べてかなりはっきりした差のあるさまを言う語。 **一段と**は、他の語に比べ語感が強く差が大きい感じがする。二つのうちの一方についても、多くの中の一つについても使われる。 **ひときわ**は、二つのものや場合の比較ではなく、多くのものと比べ、一つだけ目立つようなとき使う。客観的な状態について言う。 **ひとしお**は、主観的な心情などについて言うことが多い。「彼は―体が大きい」は**ひとしお**ではなく**ひときわ**、「喜びが一身にしみる」などは**ひとしお**がよい。 <42> みる」などは〈ひとしお〉がよい。 **一層**は、前後の比較や二つの比較の場合に使い、「皆と比べー美しい」などとは言えない。 # 一生[いっしょう] ## 一生[いっしょう]/生涯[しょうがい]/一代[いちだい]/終生[しゅうせい]/一期[いちご] ### 使い分け例 **一生**・・・「松五郎の一生。」「稲の一生。」「ご恩は一生忘れません。」 **生涯**・・・「波乱の生涯を終える。」「生涯教育。」 **一代**・・・「一代記。」「一世一代。」 **終生**・・・「終生忘れ得ぬ出来事。」 **一期**・・・「これが一期の別れとなる。」 ### どう使い分けるか **一生**は生まれてから死ぬまでの間を言い生物全般に用いる。 **生涯**は〈一生〉と同義であるが、主として人間に用いる。 **一代**は〈一生〉の意味もあるが、別に一人の君主の在位期間やある人物が主人としてその地位にある期間などの意味もある。 **終生**は、現在では〈一生〉〈生涯〉と少し異なり、生涯のある時点から終わりまでの意で、ほとんど副詞的に使われる。文章語。 | | 忘れ得ないー | 幸福なー | 鮭のー | 引退後は田舎で暮らした | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **一生** | O | O | - | - | | **生涯** | O | O | O | O | | **一代** | - | - | - | - | | **終生** | O | - | - | O | | **一期** | - | O | O | - | **一期**は、〈一生〉〈生涯〉と同義だが、かなりかたい文章語。 〔注意〕〈一期〉は「一期」とは別語。 # 一生懸命[いっしょうけんめい] ## 一生懸命[いっしょうけんめい]/懸命[けんめい]/必死[ひっし]/一心[いっしん]/夢中[むちゅう] ### 使い分け例 **一生懸命**・・・「一生懸命駆ける。」「一生懸命になる。」 **懸命**・・・「長い間懸命に働いた。」「懸命の努力。」 **必死**・・・「必死に釈明して許された。」「必死の覚悟。」 **一心**・・・「一心に祈る。」 **夢中**・・・「夢中で逃げた。」 <43> ### どう使い分けるか **一生懸命**は、元は「一所懸命」で、一所を命がけで守ろうとすることだが、今では「熱心に」の意で、遊びに類するようなことにでも言う。**懸命**も同義だが、**一生懸命**のように「に」をつけないで副詞的に使うことはない。 **必死**は、死を覚悟するほど全力を尽くして何かをしようとする様子で、**一生懸命**より切迫した感じがある。 **一心**は、一つの事に心を集中すること。**一生懸命** **必死**に比べ、より具体的な事柄について持続して打ち込む様子に言う。 **夢中**は、何かに心を奪われ我を忘れる様子で、他の語がいずれも意識的に努力するのに対し、無意識的である。 # 一方[いっぽう] ## 一方[いっぽう] ## 片方[かたほう] ## 他方[たほう] ### 使い分け例 **一方**…「一方はがけ、他の三方は森だ。」「一方のグループにだけ肩入れする。」「金は減る一方だ。」「よく仕事する一方、よく遊ぶ。」 **片方**…「道の片方ばかり人が歩く。」 **他方**…「にぎやかな人だが、他方さみしがりやの面もある。」 ### どう使い分けるか **一方**は、一つの方向や方面、または、二つあるもののうちの一つの意。用言につく場合は、一つの方面にだけ片寄っていること、また、〜しつつ他方で、の意になる。 **片方**は、二つあるもののうちの一つの意。**一方**の例の後ろの二つのような使い方はない。 **他方**は、一つの事柄に対比的に他の事柄を並列するとき使う。 | | 乱暴だが、―気はいい | 靴の――をぬぐ | 税金が増すが―手当もついた | | :--- | :---: | :---: | :---: | | **一方** | ○ | | ○ | | **片方** | | ○ | | | **他方** | ○ | | ○ | # いつも[いつも] ## 何時も[いつも] ## 常に[つねに] ## 始終[しじゅう] ## 終始[しゅうし] ## 普段[ふだん] <44> ### 使い分け例 **いつも**…「いつも健康だ。」「いつも失敗している。」 **常に**…「三角形の内角の和は常に二直角である。」「常に彼は正しい。」 **始終**…「始終もめごとが起きる。」「始終腹がすく。」 **終始**…「見合いの間、終始うつむいていた。」「終始一貫。」 **普段**…「普段食べたことのない料理。」 ### どう使い分けるか **いつも**は、どんな時も、の意。同じ状態が連続する場合にも、同様の事柄が頻繁に起こる場合にも使う。 **常に**は、どんな時も、の意のほか、「時」の視点なしに、どんな場合にも、の意でも用いる。**いつも**よりやや文章語的である。 **始終**は、同じ動作や事柄が断続して頻繁に起きるさまを言う。**いつも**のようにある状態が連続している場合には使わない。 **終始**は、ある期間の始めから終わりまでいつも、の意。 **普段**は、変化のない状態が続いている場合に用いる。同義語の**平素** **平生**はかたい文章語。 # 移転[いてん] ## 移転[いてん] ## 移住[いじゅう] ## 転居[てんきょ] ## 引っ越し[ひっこし] ## 移動[いどう] ## 異動[いどう] ### 使い分け例 **移転**…「市役所が移転した。」「住居移転。」 **移住**…「カナダへ移住したい。」「集団の移住。」 **転居**…「海の近くへ転居する。」 **引っ越し**…「田舎へ引っ越しする。」 **移動**…「午後は理科室へ移動する。」「民族移動。」「高気圧の移動。」「視線の移動。」 **異動**…「連絡先の異動を生じる。」「人事異動。」 ### どう使い分けるか **移転**は、役所・会社・個人の住居などの場所が変わること。動物や自然現象には用いない。人間について「私(彼)がーする」と言うのは、 <45> 他の四語はよいが**移転**は不適当である。 **移住**は、人が永住の目的で住所を移すことであるが、主として海外へ移り住むことを言う。 **転居**も人が住所を移すことであるが、**移住**と異なり、短期間移る場合も言い、大規模な集団の場合には言わない。 **引っ越し**は**転居**の意味で日常会話に用いる。 **移動**は、一般的に位置を変えることで、人・動物・自然現象・抽象的なものなど広い範囲で用いる。 **異動**は、ある人の地位・勤務・住所などが変わること。 [注意]「異同」は、**異動**とは全く意味が異なり、複数のものの間に相違があること。**異動**「異同」に「する」がついて動詞になることはない。 # 居眠り[いねむり] ## 居眠り[いねむり] ## 転寝[うたたね] ## 仮寝[かりね] ## 仮眠[かみん] ## 仮睡[かすい] ### 使い分け例 **居眠り**…「いすにかけたまま居眠りをする。」「授業中に居眠りをする。」 **うたた寝**…「だらしなく茶の間の畳の上でうたた寝をしている。」 **仮寝**…「事務所で二、三時間仮寝をする。」「仮寝の旅を続ける。」 **仮眠**…「深夜勤務の前に仮眠を取る。」 **仮睡**…「汽車の中で仮睡の一夜を明かす。」「考えているうち仮睡してしまう。」 ### どう使い分けるか **居眠り**は、何かをしている途中で寝るつもりはなくついそのまま、(横にならずに)眠ること。 **うたた寝**も、特に寝るつもりはなしに眠ることだが、横にはなる場合を言う。 **仮寝**は、少しの間、ちゃんとした寝支度をせずに眠ること、また旅先で眠ること、の意。前の意では**仮眠**と同じ。 **仮眠**は、忙しい時などに、短時間、寝支度はしてもしなくても眠ることで、普通眠る意志がある場合に言う。 **仮睡**は、**居眠り** **うたた寝**の意の漢語で、かたい文章語。 <46> # 今[いま] ## 今[いま] ## 現在[げんざい] ## 目下[もっか] ## 現今[げんこん] ## ただ今[ただいま] ### 使い分け例 **今**…「今電話中だ。」「今はハイテクの世の中だ。」「今帰った。」「今行くよ。」 **現在**…「現在の日本。」「現在地をお知らせください。」「現在進行中。」 **目下**…「目下の急務。」「目下検討中。」 **現今**…「現今の政治状況。」 **ただ今**…「ただ今のお話、楽しく拝聴いたしました。」「ただ今参ります。」 ### どう使い分けるか **今**は、過去と未来の境の時間を言う。その幅は最初の例のような短時間の場合も次の例のように長い場合もある。また第三、第四の例のように直前の過去や直後の未来を言う場合もある。 **現在**は、**今**と大体同義の漢語だが、直前の過去や直後の未来の意味はない。 **目下**は、さしあたって今の意。**今** **現在**は、かなり長い時間も表すが、**目下**は短い時間に限る。また、**現在**よりかたい文章語である。 **現今**は、逆にかなり長い時間の場合に使う。**目下**より更にかたい文章語。 **ただ今**は、**今**とほぼ同義だが、長い時間を指すことはない。また、**今**に比べやや文章語的、かつ丁寧な言い方である。 # 意味[いみ] ## 意味[いみ] ## 意義[いぎ] ## 訳[わけ] ### 使い分け例 **意味**…「語句の意味を調べる。」「彼には意味のないことに思えた。」「急いだ意味が分かった。」 **意義**…「意義ある生活をせよ。」「同じ意義を持つ語。」 **訳**…「この文章は訳が分からない。」「それには深い訳がある。」「訳の分からない困った人。」「訳はない仕事。」 <47> 「それじゃあ悲しい訳だ。」 ### どう使い分けるか **意味**は、言葉や表現の表す内容を言う。また価値・理由・動機などを意味することもある。 **意義**は、主として事柄の価値を言う。物の価値について「この宝石の―」などと言うことはない。また**意味**のように理由・動機を意味することはなく、言葉の表す内容、の意では単語の場合に限られる。 **訳**は、**意味**と同じく、表現や事柄の表している内容・理由や動機の意に用いられるが、ほかにも用法が広く、物事の道理、難しい事情(こと)、「~のはず」などの意味でも使われる。 | | ―を説 明する | 人生の― | 不明の文章 | ―もなく悲しい | 語の―を書く | 遅れた― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **意味** | ○ | ○ | ○ | | ○ | | | **意義** | ○ | ○ | | ○ | | | | **訳** | | | ○ | ○ | | ○ | # 居る[いる] ## 居る[いる] ## 居る[おる] ## いらっしゃる ### 使い分け例 **居る**[いる]…「公園に子供が三人いる。」「まだ泣いている。」「わたしは昨日は学校にいました。」 **居る**[おる]…「いつも家におります。」「わしはここにおる。」 **いらっしゃる**…「午前中は事務所にいらっしゃいますか。」「来月三日にアメリカへいらっしゃるそうです。」「こっちへいらっしゃい。」 ### どう使い分けるか **居る**[いる]は、人や動物がある時間同じ場所に存在する意。また動作作用状態が連続していることを示す補助動詞としても用いる。 **居る**[おる]は、**居る**[いる]のやや古風な言い方。「ます」をつけない場合、**居る**[いる]よりやや尊大な感じがあり、「おります」は「います」に比べ丁寧な感じがある。 **いらっしゃる**は、**居る**[いる] **居る**[おる]の尊敬語として用いられ、また「行く」「来る」の尊敬語としても用いられる。**おいでになる**は同義だが、やや改まった感じが増す。 [注意] **おいでになる**は連語。 <48> # 色色[いろいろ] ## 色色[いろいろ] ## 種種[しゅじゅ] ## 様様[さまざま] ## 多様[たよう] ### 使い分け例 **色色**…「色々な道具。」「色々な遊び。」「人の生き方にも色々ある。」「色々試してみる。」「虫の色々。」 **種種**…「種々の薬草。」「花の種々。」「種々あります。」「種々雑多。」「種々相。」 **様様**…「様々な意見。」「様々に工夫する。」「ものの考え方は人によって様々である。」 **多様**…「多様な文化。」「多様性。」 ### どう使い分けるか **色色**は、種類がたくさん入り混じっているさま。比較的近い性質のものが多数ある場合にも使う。 **種種**は、**色色**と同義の漢語で文章語である。 **様様**は、**色色**に比べると、中に含まれるものの間の違いを強調する感じがやや強い。また、**色色**よりやや文章語的である。 **多様**は、**様様**と同義の漢語で、よりかたい文章語。**種種**は副詞的にも使われるが、**多様**はその場合**多様に**となる。「多様の」とは今はあまり言わず、一方、「種々性」と言うこともできない。 # 陰気[いんき] ## 陰気[いんき] ## 憂鬱[ゆううつ] ## 陰鬱[いんうつ] ## 沈鬱[ちんうつ] ## 鬱鬱[うつうつ] ## 鬱陶しい[うっとうしい] ### 使い分け例 **陰気**…「陰気な冬の日本海側の気候。」「自殺者の記事を読み陰気になる。」 **憂鬱**…「毎日雨で憂鬱だ。」「憂鬱を吹きとばす。」「何となく憂鬱だ。」 **陰鬱**…「雲の垂れ込めた陰鬱な風景。」「暗い話を聞き、陰鬱になる。」 **沈鬱**…「悲報に接し、一同沈鬱な面持ちになる。」 <49> **鬱鬱**…「うつうつとして気が晴れない。」「うつうつたる心境。」「鬱々蒼々。」 **鬱陶しい**…「梅雨に入り毎日うっとうしい。」「あいつはうっとうしいやつだ。」 ### どう使い分けるか **陰気**は、暗くじめじめしたさま。広く様々なものについて使うが、主に客観的な物事について言い、自分の心について言う場合もそれを客観化して言う感じがある。それに対して、**憂鬱**は主体の心のあり方・状態がふさいで晴れ晴れしないさま。 **陰鬱**は、意味は前二語の中間という感じだが、二語よりかたい文章語。 **沈鬱**は、重苦しい気分でふさぎこむさまで、かたい文章語。単なる天気などに起因するのではなく、深い精神的原因がある場合に使う。 **鬱鬱**は、意味は**憂鬱** **陰鬱**とほぼ同じだが、「―と」「―たる」の形でしか使わない。「―たる」は非常にかたい文章語である。 **鬱陶しい**は、**陰鬱**とほぼ同義のくだけた日常語。天気が悪いときなどに用いることが多い。また、うるさくて煩わしいという意もある。 | | ―な空模様 | ―な気持ち | 性格が―だ | ―な家庭 | ―くさい話 | 陰気な性質の男性 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **陰気** | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | **憂鬱** | ○ | ○ | | | | | | **陰鬱** | ○ | ○ | | | ○ | | # 浮き浮きする[うきうきする] ## 浮き浮きする[うきうきする] ## ほくほくする[ほくほくする] ## わくわくする[わくわくする] ## 浮かれる[うかれる] ## 浮き立つ[うきだつ] ### 使い分け例 **浮き浮きする**…「デート前で浮き浮きしている。」 **ほくほくする**…「競馬でもうけほく <50> ほくしている。」 **わくわくする**…「期待で胸がわくわくする。」「わくわくする冒険映画。」 **浮かれる**…「花見で浮かれている。」「いつまでも浮かれているなよ。」 **浮き立つ**…「浮き立つ心を抑える。」「世の中が浮き立ち誰も落ち着かない。」 ### どう使い分けるか **浮き浮きする**は、楽しさうれしさのために心がはずんで落ち着かない意。期待感も含まれる。 **ほくほくする**は何か良い物を得て喜んでいる意。「期待で―」とは言わない。 **わくわくする**も期待感のある場合によく使うが、**浮き浮きする**より緊張した感じ、または躍動する感じがある。スリルのある楽しさの期待を表す場合もある。 **浮かれる**は、**浮き浮きする**にほぼ同じだが、時に非難の意が込められる点が異なる。 **浮き立つ**は、**浮き浮きする**と同義のほかに、その場・世の中などの全体の雰囲気が落ち着かず騒がしい、の意がある。 # 動き[うごき] ## 動き[うごき] ## 蠢動[しゅんどう] ## 胎動[たいどう] ## 動向[どうこう] ### 使い分け例 **動き**…「機敏な動き。」「内閣改造の動き。」「人事で大きな動きは見られない。」 **蠢動**…「欲望の蠢動。」「利権屋の蠢動。」 **胎動**…「改革の胎動が見られる。」 **動向**…「世界経済の動向に注目する。」 ### どう使い分けるか **動き**は、動くこと。例の最初は運動・動作、次は変化・動揺、最後は位置の変動の意味で使われている。 **蠢動**は、うごめくことの意。虫が動くように、絶えず少しずつ動く場合に使う。 **胎動**は、母胎内の子が動くことから、内部から少しずつ表面に現れようとする動きに用いる。 <51> **動向**は個人や集団の心の動く方向で、その時の人々の考えの傾きかげんを表す。 # 嘘[うそ] ## 嘘[うそ] ## ほら ## 偽り[いつわり] ## 空言(空事)[そらごと] ## 虚偽[きょぎ] ## 虚言[きょげん] ## でたらめ ### 使い分け例 **嘘**…「嘘をついて責任を逃れる。」「嘘字を書く。」「楽しいと言えば嘘になる。」「嘘をつけ!!」「ここで王手をかけるのは嘘だ。」 **ほら**…「彼はほらばかり吹く。」 **偽り**…「偽りの証言で人を陥れる。」「偽りの愛。」「うそ偽り。」 **空言(空事)**…「絵空事は通じない。」 **虚偽**…「虚偽の証言。」「虚偽の申告。」 **虚言**…「虚言癖のある人。」 **でたらめ**…「でたらめを言うな。」「でたらめな男。」 ### どう使い分けるか **嘘**は、本当でないことを相手が信ずるように言う言葉。また、誤って本当(適当)でないことを言う(する)こと。 **ほら**は、実際よりもおおげさに言うこと。**嘘**は全く事実でない場合もあるが、**ほら**は幾分かは事実である。**嘘**つきよりも**ほら**吹きの方が陰湿でない。 **偽り**は、事実と食い違うことをわざと言うこと。**嘘**はわざとでない場合もあるが、これは意識的である。**嘘**と結びつけて強める時にも使う。やや文章語的。 **空言**は、現実とかけ離れた空想的な内容の事柄、また、うそ偽り。古い言葉で最近はあまり使わない。「絵空事」は美化された、あるいは誇大なことの意でよく使う。 **虚偽**は、「うそ偽り」の意の漢語。真実でないことを誤って、または故意に真実だとすること。文章語。 **虚言**は、他人を欺くための**嘘**の意の漢語で、かたい文章語。 **でたらめ**は、いいかげんで、勝手気まま、事実に合わないことや、首尾一貫しないことを出まかせに言ったりすること。人間の性格を言い表すこともある。 <52> # 打つ[うつ] ## 打つ[うつ] ## 叩く[たたく] ## 殴る[なぐる] ## ぶつ ## はたく ### 使い分け例 **打つ**…「転んで頭を打つ。」「手を打って喜ぶ。」「球を打つ。」「むちで打つ。」 **たたく**…「感嘆して手をたたく。」「人の頭をたたく。」「壁をたたく。」 **殴る**…「下士官が新兵を殴る。」 **ぶつ**…「彼女は、いじわる、と言って軽く彼の肩をぶった。」 **はたく**…「ほこりをはたく。」「財布をはたく。」「相手の出てくるところをすかさずはたいて土俵にはわせた。」 ### どう使い分けるか **打つ**は、手や道具を使って、瞬間的に強く力を加える意。口語では人に対する動作には言わない。 **たたく**は、反復する動作の場合に使うことが多く、「手を打つ」と「手をたたく」を比べると**打つ**は一回で**たたく**は連続の感じである。相手は人間でも物でも使う。 **殴る**は、普通殴る方も、殴られる方も、共に意志を持った人間の場合に使う。相手がこらえきれないほど強くぶつ。**打つ** **たたく**よりも語感が強い。 **ぶつ**は、**打つ**の転化だが、**殴る**と同じく普通人間を対象とする。ただし**殴る**より軽い。 **はたく**は、平手や平たい物でたたく。相撲の「はたき込み」は平手で行う。**たたく**は平たい物を使わないでもよい。また、**はたく**はそれによって何か(ほこり・お金など)を払いのける意が含まれることがある。 | | 手で― | げんこつで― | 憎まれ口を― | 金釘を― | 柱に― | 演説を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **打つ** | △ | △ | | ○ | ○ | ○ | | **叩く** | ○ | ○ | ○ | | | | | **殴る** | | ○ | | | | | | **ぶつ** | ○ | ○ | | | | | | **はたく** | ○ | | | | | | # うっかり[うっかり] ## うっかり[うっかり] ## つい ## 思わず[おもわず] ## 無意識に[むいしきに] ## 知らず知らず[しらずしらず] <53> ### 使い分け例 **うっかり**…「うっかり触ってけがをする。」「うっかり話せない。」「うっかりすると消えてしまう。」 **つい**…「あまり熱いのでつい離してしまった。」「酒はやめようと思いながら見るとつい手が出てしまう。」 **思わず**…「驚いて思わず跳び上る。」「見事な技に思わず歓声を上げる。」 **無意識に**…「無意識に歩き回る。」 **知らず知らず**…「言葉は知らず知らず覚えた。」 ### どう使い分けるか いずれも抑えようとすれば抑えられることを、意図しないで行うさまを表す言葉である。 **うっかり**は、よくない結果を引き起こす(引き起こした)行為を不注意から行ってしまう場合に使う。 **つい**は、やはり、しないほうがいいことを、不注意からというより、こらえきれずにしてしまう場合、また、習慣やくせが不必要な場面で自分で気づかずに出る場合などに使う。 **思わず**は、前の二語のように抑えるべきことというわけではなく、また習慣やくせというわけでもなく、ある事柄に対して自分で気づかずに反応する場合に使う。 **無意識に**は、**思わず**とほぼ同義だが、**思わず**が瞬間的であるのに対し比較的持続的な場合にも使う。 **知らず知らず**は、無意識に徐々にそのことが増大する場合によく使う。 | | ―口を滑らす | 触ると火傷する | 悪いと 思いつつ―長居する | ―見事と叫ぶ | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **うっかり** | ○ | ○ | | | | **つい** | ○ | | ○ | | | **思わず** | | | | ○ | # 美しい[うつくしい] ## 美しい[うつくしい] ## 麗しい[うるわしい] ## 綺麗[きれい] ## 優美[ゆうび] ## 艶やか[あでやか] ### 使い分け例 **美しい**…「素顔が美しい。」「美しい自然。」「美しい兄弟愛。」「美しい話に感動した。」 **麗しい**…「見目麗しい。」「麗しい女性。」「麗しい友情。」 **綺麗**…「見た目にきれいだ。」「きれいな空気。」 <54> 「きれいに傷は癒えた。」 **優美**…「一流品だけに、形も色も優美だ。」「立居振舞の優美な人。」 **あでやか**…「あでやかに着飾る。」「ほほえみがあでやかで色っぽい。」 ### どう使い分けるか **美しい**は、目や耳また心に快く感じられる様子であるという意。外面的なものについても、精神的なことについても広く使う。 **麗しい**は、**美しい**が使える言い回しにはほとんど同様に使えるが、文章語的(雅語的)で、意味的にもより上品な感じが加わる。 **綺麗**は、**美しい**よりも日常語的で精神的なものについてはあまり使わず、表面的に受け取る美しさを言う。「きれいに」は、すっかりの意にもなる。 **優美**は、**麗しい**のように雅語的ではないが、**美しい**よりやや文章語的である。意味的には**美しい**より上品さが感じられる。「美しい友情」のような場合に**優美な**は使えない。 **あでやか**は、古語(あてやか)では女性が人の注目を集めるほどきれいなさまの意で、上品さを失わない場合に使ったが、現代では、華やかでなまめかしい美しさを表すのに使われる。 # 移り変わり[うつりかわり] ## 移り変わり[うつりかわり] ## 推移[すいい] ## 変遷[へんせん] ## 変化[へんか] ## 変動[へんどう] ### 使い分け例 **移り変わり**…「季節の移り変わり。」 **推移**…「情勢の推移。」 **変遷**…「交通機関の変遷。」「古代から近代に至る都市の変遷。」 **変化**…「心境の変化。」「一年前と今とでは大きな変化が見られる。」 **変動**…「株価の変動。」「社会情勢の変動。」 ### どう使い分けるか **移り変わり**と**推移**は、同義の和語と漢語で、前者の方が平易でやわらかい感じがするという以外に違いはない。時のたつにつれて物事が変化してゆくことの意。 **変遷**は、他の四語が時間の長短に関係なく使われるのに対して、 <55> 少なくとも数年間というような、長い時間の中での、大きな物事の動きについて使われる。したがって「私の生活のー」「季節のー」などとは言わない。 **変化**は、他の四語が途中の経過も含め問題にするのに対し、前後二つの時点の比較に重点がある。 **変動**は、社会的な物事の動きに使われることが多い。また、一定の方向への必然的な動きではなく、予測の困難な、方向も定まらない動きという感じがある。 # 腕[うで] ## 腕[うで] ## 手[て] ## 腕前[うでまえ] ## 手腕[しゅわん] ## 才腕[さいわん] ## 手並み[てなみ] ### 使い分け例 **腕**…「腕を上げる。」「腕のある職人。」 **手**…「手が足りない。」「手に負えぬ。」 **腕前**…「おれの腕前を見せてやる。」「師匠の腕前には脱帽だ。」 **手腕**…「経営の手腕。」「政治手腕。」 **才腕**…「財政再建に才腕を揮う。」 **手並み**…「お手並拝見。」 ### どう使い分けるか 人間の体の部分としての腕と手の違いは、簡単に言えば**腕**は手首から先を含まず、**手**はそれを含むということ。能力・技量の意味では、**腕**には「並以上の」という感じが伴うことがあるが、**手**にはそういうことはない。また「手が足りない」などの場合は「人手」と同じで、(働く)人、の意。 **腕前**は、**腕**よりも更に肯定的に使われる度合が強い。 **手腕**は、**腕** **腕前**が趣味・スポーツや職人的技術について言うことが多いのに対して、複雑で広範な精神的能力を要するものについても言われ、**才腕**となると後者を言うことの方が多い。 **手並み**は、**腕前**や**手腕**などと大体同じ意だが、例のように相手や他人の技量の程度をはかるような意味の文脈で使われることが多い。 # 奪う[うばう] ## 奪う[うばう] ## 取り上げる[とりあげる] ## 奪取する[だっしゅする] <56> ## 巻き上げる[まきあげる] ## ひったくる ## ふんだくる ### 使い分け例 **奪う**…「力ずくで奪う。」「地位を奪う。」「生命を奪う。」 **取り上げる**…「うまくだまして犯人から刃物を取り上げる。」「規則によって取り上げる。」 **奪取する**…「要衝を奪取する。」「政権を奪取する。」 **巻き上げる**…「お金を巻き上げる。」「子供の小遣いを巻き上げる。」 **ひったくる**…「夜道でバックをひったくられる。」 **ふんだくる**…「少し飲んで高い料金をふんだくられる。」 ### どう使い分けるか **奪う**は、他人のものを、相手の意思に逆らって自分のものにする意。 **取り上げる**は、**奪う**より多少相手を納得させる雰囲気がある。しかし相手の不利益は変わらない。 **奪取する**は、前の二語より語感が強く、積極的・攻撃的な感じがある。また抽象的文脈で多く使う文章語。 **巻き上げる**は、相手をだましたり、脅したりして自分のものにする場合で、いくらか時間をかける感じがある。 **ひったくる**は、相手の持っている物を強引に瞬間的にすきをみて奪う場合で、対象は普通、具体的な物や金であり、やり方は直接的・身体的である。次の**ふんだくる**と共に俗語。 **ふんだくる**は、**ひったくる**のように身体的な行為に限らず、むしろ、相手の弱味に付け込んで法外な金品を取り上げる場合によく使う。 # 旨い[うまい] ## 旨い(甘い)[うまい] ## 美味しい[おいしい] ## 美味[びみ] ## 甘美[かんび] ### 使い分け例 **うまい**…「うまい酒を飲みたい。」「うまい汁を吸う。」 <57> 「うまい話は要注意。」 **おいしい**…「おいしいお餅ですこと。」 **美味**…「まことに美味なる料理である。」「美味を追求する。」 **甘美**…「甘美な果物。」「甘美なメロディー。」「恋人同士の甘美な語らい。」 ### どう使い分けるか **うまい**は、味がよい意。**おいしい**に比べややぞんざいな感じがある。上手だ・具合がよい、などの意もある。 **おいしい**は、味がよいの意の丁寧語。上手だの意では使わない。 **美味**も**うまい**と同義でかたい文章語。日常の口語ではほとんど用いない。 **甘美**は、甘くうまいことの意。食べ物の味についてよりも、芸術作品などが感覚的に快い場合に使うことが多い。やはり文章語と言ってよいが、**美味**よりは会話中にも使われる。 [注意] **うまい**は、上手だ、の意味の場合「上手い」「巧い」などとも書く。ただし、常用漢字表では「うま(い)」と読む漢字はない。 # 生まれ付き[うまれつき] ## 生まれ付き[うまれつき] ## 生来[せいらい] ## 生まれながら[うまれながら] ## 先天的[せんてんてき] ### 使い分け例 **生まれつき**…「頭の良さは生まれつきだ。」「生まれつきの醜男。」 **生来**…「生来の怠け者。」「生来うそをついたことがない。」 **生まれながら**…「生まれながらの大名。」「生まれながらにして不幸な星のもとにあった。」 **先天的**…「先天的な才能。」「先天的な病気。」 ### どう使い分けるか **生まれつき**は、生まれたときからそういう性質を持っていることで、良い意味にも悪い意味にも使う。 **生来**は、**生まれつき**と同じ意味のほかに、生まれて以来このかた、の意味もある。**生まれつき**のように述語になる用法はない。文章語。 **生まれながら**は、**生まれつき**とほとんど同義だが、**生まれつき**が人の性格・性質について言う <58> のに対して、そのほかに境遇・運命などにも言う。徳川三代将軍家光が自分を「一の天下人」と言ったのは有名。 **先天的**は、〈生まれつき〉と同義の文章語。ただし、〈生まれつき〉は名詞(副詞にも使う)で、こちらは形容動詞語幹。 # 敬う ## 敬う[うやまう] ## 尊ぶ[とうとぶ] ## 尊敬する[そんけいする] ## 崇める[あがめる] ## 崇拝する[すうはいする] ### 使い分け例 **敬う**・・・「郷土の生んだ偉人を敬う。」「恩人を敬う。」「祖先を敬う。」 **尊ぶ**・・・「聖人を尊ぶ。」「武勇を尊ぶ。」「家宝として尊ぶ。」 **尊敬する**・・・「兄を尊敬する。」「先生を尊敬する。」 **崇める**・・・「神仏をあがめる。」 **崇拝する**・・・「恩師を崇拝する。」「教祖を崇拝する。」「自然崇拝。」 ### どう使い分けるか いずれも対象に高い価値を認め(対象が人間なら、自分より高いものとし)大切にし礼を尽くす意。 **敬う**は、主にある程度具体的な人間(的なもの)を対象とする。やや文章語的である。 **尊ぶ**は、〈敬う〉とほとんど同義だが、「大切にする」意が〈敬う〉よりやや強く、また、人間以外の事物にも比較的よく使われる。「たっとぶ」とも言う。〈敬う〉よりも文章語的である。 **尊敬する**は、漢語的な言葉だが、現在では〈敬う〉よりよく使われる日常語。対象的にも広く、軽い敬意の対象の場合にも使われる。 **崇める**は、〈敬う〉〈尊ぶ〉以上に、高いものを対象とする。文体的にも、〈敬う〉〈尊ぶ〉より文章語的。 **崇拝する**は、〈崇める〉の漢語的表現。〈崇める〉よりいくらか一般的で「先生を―」などは〈崇める〉より〈崇拝する〉のほうが自然。 | | 恩師を― | 天神様を― | 友達のAを― | 親を― | 国宝を― | 規律を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 敬う | ○ | | | ○ | | | | 尊ぶ | | | | | ○ | ○ | | 尊敬する | ○ | | ○ | ○ | | | | 崇拝する | ○ | ○ | | | | | <59> # 羨む[うらやむ] ## 羨む[うらやむ] ## 羨望する[せんぼうする] ## 妬む[ねたむ] ## 嫉妬する[しっとする] ## 焼き餅を焼く[やきもちをやく] ### 使い分け例 **羨む**…「隣の子のあめをうらやむ。」「昇進した友をうらやむ。」 **羨望する**…「先進国の繁栄を羨望する。」「羨望の的。」 **妬む**…「同僚の出世をねたむ。」「ねたんで悪口を言う。」 **嫉妬する**…「幸運な仲間を嫉妬する。」「恋人の浮気に嫉妬する。」「嫉妬心。」 **焼き餅を焼く**…「ほかの女と話しただけで焼き餅を焼く。」 ### どう使い分けるか **羨む**は、自分より恵まれている他人の状態に自分もなりたいと思う、の意。「羨ましい」は日常語だが、こちらはわずかに文章語的。 **羨望する**は、その漢語的表現で、かたい文章語。 **妬む**は、前の二語の意に加え、その相手をもっと悪い状態に引きずり下したいと思うという意。悪い意味で使われる。やや文章語的。 **嫉妬する**は、**妬む**の漢語的表現だが、次項の意味で使われることが**妬む**よりはやや多い。これもやや文章語的である。 **焼き餅を焼く**は、**嫉öt**の意味のうち特に男女間の愛情に関する意味で使われる俗語。**妬む** **嫉妬する**に比べマイナスイメージは軽く、むしろ笑いの対象となるような場合が多い。 # うるさい[うるさい] ## 煩い[わずらわい] ## 喧しい[やかましい] ## 騒がしい[さわがしい] ### 使い分け例 **うるさい**…「うるさい蠅だ。」「うるさく小言を言う。」「映画については彼はちょっとうるさい。」 **やかましい**…「くいを打つ音がやかましい。」 <60> 「やかましく注意する。」 **騒がしい**…「猫の鳴き声で騒がしい。」「教室の中が騒がしい。」「世の中が騒がしくなった。」 ### どう使い分けるか **うるさい**は、「五月蠅」とも書くように、音やものがまつわりついて不快である、の意。相手が煩わしく思うほど多弁である意にも使う。 **やかましい**は、不快な音がする、の意。どちらかといえば、**うるさい**は音・声は小さいがくどくどしつこいのに対し、**やかましい**は、音・声が大きくて不快な場合に使う。物理的な音の大きさでなく言い方が厳しい場合にも使う。 **騒がしい**は、静かな雰囲気を破る音や声で、落ち着かなさを誘うときに使う。極端に静かにしなければならない音楽会場などで、少し雑音が入ったりした場合、**やかましい**よりも、**騒がしい**がふさわしい。 # うれしい[うれしい] ## 嬉しい[うれしい] ## 楽しい[たのしい] ## 喜ばしい[よろこばしい] ## 愉快[ゆかい] ### 使い分け例 **うれしい**…「合格と聞いた瞬間うれしくてはね上った。」「ほめられてうれしい。」「うれしい涙。」 **楽しい**…「家族旅行はずっと楽しかった。」「楽しい新婚生活。」 **喜ばしい**…「緑が増えて喜ばしい。」「彼の受賞はまことに喜ばしい。」 **愉快**…「愉快な仲間。」「愉快な小説。」 ### どう使い分けるか **うれしい**は、思いどおり事が運び、欲求が満たされて、晴れ晴れとした良い気持ちだ、の意。 **楽しい**は、気持ちよく明るい気分で、できればそれを続けたい思いがある、の意。**うれしい**は一過性、**楽しい**は持続性の感情である。 **喜ばしい**は、よい結果でうれしいと思う気持ちを第三者的立場で言う言葉である。自分の「合格」を**喜ばしい**とは言わない。この中でただ一つ文章語的。 <61> **愉快**は、気持ちよく楽しいことで、使える範囲が広く、他の三語のどれとも通じる場合が多い。ただし、瞬間的、感激的なうれしさの場合は**愉快**とは異なり、「愉快な涙」などとは言えない。 [注意] **愉快**は形容動詞語幹。以前は名詞としても用いたが、今はほとんどその用法がない。 # うろつく[うろつく] ## うろつく[うろつく] ## ぶらつく ## 彷徨う[さまよう] ## 流離う[さすらう] ### 使い分け例 **うろつく**…「その辺は野犬がうろつく。」「盛り場をうろつく。」「変な男がうろついている。」 **ぶらつく**…「池の周りをぶらつく。」 **さまよう**…「難破した船のようにさまよう。」「吹雪の中をさまよう。」「心の闇をさまよう。」 **さすらう**…「国中をさすらう。」「自然を友とし、行方定めずさすらう旅。」 ### どう使い分けるか **うろつく**は、はっきりした目的なしに、ぶらぶら歩く意味と、あまり褒められない目的を持って様子をうかがいながら、歩き回る意味がある。 **ぶらつく**は、別に目的もなく、歩くことを楽しみにゆっくり歩く、の意。 **さまよう**は、目的はあるがどっちへ行ってよいか分からず迷い歩く意が元だが、ただ、当てもなく歩き回る意味にも使われる。**うろつく** **ぶらつく**は歩く範囲が比較的狭いが、**さまよう**は世界中でもよい。また、物理的空間だけでなく、精神世界でもよい。文章語的。 **さすらう**は、住み家を定めず、目的なしに気の向いたまま旅を続ける意。**さまよう**と同じく範囲は広く、また精神的な意味でも使う。やや文章語的である。 | | 知らない土地を― | アメリカ大陸を― | 銀座を― | 怪しい男が― | 出口を求め― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **うろつく** | ○ | | ○ | ○ | | | **ぶらつく** | ○ | | ○ | | | | **さまよう** | ○ | ○ | | | ○ | | **さすらう** | ○ | ○ | | | | <62> # 運[うん] ## 運[うん] ## 運命[うんめい] ## 運勢[うんせい] ## 宿命[しゅくめい] ## 定め[さだめ] ### 使い分け例 **運**…「運がよい。」「このゲームでは運に見放された。」 **運命**…「運命に従う。」「こういう一生を送る運命だったのだ。」「人類の運命。」 **運勢**…「強い運勢がある。」「今年の運勢。」 **宿命**…「暗い宿命を背負って生きる。」「宿命の対決。」 **定め**…「悲しい定めに泣く。」「これが定めというものさ。」 ### どう使い分けるか **運**は、理性で計り知ることのできない物事の巡り合わせの意。良い悪いの評価を伴って使われる。 **運命**は、やはり理性で計ることのできない、物事の成り行きの意だが、**運**は比較的軽く小さな事にも使われ、**運命**は大きく長期的な物事について言う。あらかじめ決定されているものとするのが普通だが、「―を切り開く」のような使い方は、運命も人為によって変えられるとする考え方に基づいている。 **運勢**は、その人に備わっている将来の運。**運**より長期的・総合的だが、**運命**ほど大きくない。 **宿命**は、逃れようとしても逃れることのできない、決定されている運命。「―を切り開く」とは言えない。 **定め**は、定まっている**運命** **宿命**のやわらかい言い方。しかしやはり文章語的ではある。 # 運搬[うんぱん] ## 運搬[うんぱん] ## 運送[うんそう] ## 輸送[ゆそう] ## 運輸[うんゆ] ### 使い分け例 **運搬**…「机を隣の教室まで運搬する。」 **運送**…「トラックでの運送。」「運送会社。」 **輸送**…「被災地への物資の輸送。」「船舶輸送。」 <63> **運輸**…「通信と運輸の歴史。」「運輸省。」「運輸産業。」 ### どう使い分けるか **運搬**は、かなり大きな物を運び移すこと。手荷物などでは言わない。距離は近くても使う。 **運送**は、個人で持ち運ぶことにはめったに使われない。主に営業として荷物・客を目的地まで運ぶことに使う。**運搬**のように近距離の場合にはあまり使わない。 **輸送**は、大量の物・人を遠くまで運ぶこと。**運搬** **運送** **輸送**の順で規模が大きくなり、距離も長くなる。 **運輸**は、**運送** **輸送**などを総合的に言う抽象度の高い語で、個々の具体的な行為には使わない。 [注意] 最後の**運輸**を除き、「する」がついて動詞となる。 # 絵[え] ## 絵[え] ## 図画[ずが] ## 絵画[かいが] ## 絵図[えず] ## イラスト ### 使い分け例 **絵**…「花の絵を描く。」「この絵の作者はゴッホです。」「絵かき。」「絵本。」 **図画**…「図画の時間。」「図画工作。」 **絵画**…「絵画・彫刻・工芸の各部門。」「十九世紀フランス絵画。」「絵画展。」 **絵図**…「吉良邸の絵図。」 **イラスト**…「イラストの多い本。」「イラストで説明する。」 ### どう使い分けるか **絵**は、最も一般的で広く使われる。 **図画**は、**絵**、または、絵を描くことの意で、小学校で主に使われる(「図画工作」は小学校の教科名)。 **絵画**は、**絵**と同義ではあるが、具体的な個々の絵についてはあまり使わない。かたい文章話。 **絵図**は、古い言葉で、**絵**の意と建物や庭などの平面図の意とがある。 <64> **イラスト**は、広告や書物の中の説明図や挿し絵の意。 # 永久[えいきゅう] ## 永久[えいきゅう] ## 永遠[えいえん] ## 悠久[ゆうきゅう] ## 恒久[こうきゅう] ## 永劫[えいごう] ### 使い分け例 **永久**…「永久にさびない金属。」「永久歯。」「永久運動。」「永久追放。」 **永遠**…「永遠の真理。」「永遠の眠り。」「永遠の愛を誓う。」 **悠久**…「悠久の昔。」「悠久の大地。」「悠久の大河の流れ。」 **恒久**…「恒久の平和。」「恒久化。」 **永劫**…「未来永劫。」 ### どう使い分けるか いずれも基本的には、長くいつまでも続くこと。 **永久**は、ある時点以降という意味合いが強い。また、物質的な物についてもよく使う。五語の中で最も日常的な語。 **永遠**は、物質・物体についてはあまり使わない。文章語的である。 **悠久**は、はるか遠い過去から現在まで続いてきた(これからも続く)という意味合いがある。 **恒久**は、特に一定不変の状態が続くという意味合いが強い。**悠久**とともにかたい文章語。 **永劫**は、**永遠**と同義だが、元来は仏教語で、非常にかたい文章語。 | | ―の天体の運行 | 二千年の歴史 | ―の設備 | ―的な真理 | ―に滅びないであろう | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **永久** | | | ○ | | ○ | | **永遠** | | | | ○ | ○ | | **悠久** | | ○ | | | | | **恒久** | | | ○ | | | # 選ぶ[えらぶ] ## 選ぶ[えらぶ] ## 選る[よる] ## 選択する[せんたくする] ## 選考する[せんこうする] ## 選抜する[せんばつする] ## 選出する[せんしゅつする] ### 使い分け例 **選ぶ**…「方法を選ぶ。」「配偶者を選ぶ。」 <65> **よる**…「品物をよる。」「より分ける。」「より好み。」「より取り見取り。」 **選択する**…「五つの案から二つを選択する。」「進路を選択する。」 **選考する**…「応募者を選考する。」「書類で選考する。」 **選抜する**…「各地方から選抜されたチーム。」「試験によって選抜する。」 **選出する**…「委員を選出する。」「東京から選出された議員。」 ### どう使い分けるか **選ぶ**は、適当なものを複数の中から取り出す意。 **よる**は、**選ぶ**と同義だが、単独ではあまり使わず、他の語と結合した複合語がよく使われる。 **選択する**は、**選ぶ**と同義で、対象は人・物・事柄と広い。この語以下の語はどれも漢語的文章語。 **選考する**は、よく調べて適任者を選び出す意。**選択する**と異なり使い道は狭く、対象は人間、主体は官庁・企業などで、「結婚相手を―」などには使えない。 **選抜する**も、やはり適当な人をえらぶ意だが、**選考する**が一人を選ぶ場合でも使うのに対し、多勢の中から複数を選ぶときに使う。 **選出する**は、**選考する** **選抜する**が上位者・権威ある者による下位者の選択であるのに対して、大勢の人々がその中から代表や委員・議員などを選挙などによって選ぶ場合に使うのが普通。 [注意] **選考**は**詮衡**の書き換え。 # 延期[えんき] ## 延期[えんき] ## 延長[えんちょう] ## 日延べ[ひのべ] ## 順延[じゅんえん] ### 使い分け例 **延期**…「試験日の延期。」「開幕を一日延期する。」「最終日を十日延期する。」 **延長**…「睡眠時間の延長。」「会期を延長する。」「直線ABの延長が直線CDと交わる点。」 **日延べ**…「花見は来週に日延べしよう。」「興行は好評だから十日間日延べする。」 **順延**…「運動会は十月十日、ただし雨天の場合は順延する。」 <66> ### どう使い分けるか **延期**は、予定の期日・期限を先に延ばすこと。定まっていた期間の終わりを延期すれば、結果として期間延長と同じことになる。 **延長**は、長さを延ばすことで、時間的長さの場合には、予定されていた時間や期間を長くすること。期間を延長すれば、結果として終わりの時点が延期されることになる。 **日延べ**は、**延期** **延長**両方の意味で使われる。ただし、**日延べ**は一日単位の延期(長)であるのに対して、**延期** **延長**は時・分・月・年のどれを単位にしてもよい。文体的には、現在**日延べ**はやや古い感じがあり、**延期** **延長**を日常語と言ってよいだろう。 **順延**は、状況を見ながら、一日また一日というように少しずつ期日を延ばすこと。 # 追う[おう] ## 追う[おう] ## 追いかける[おいかける] ## 追跡する[ついせきする] ### 使い分け例 **追う**…「二日後には合流すべく、本隊を追う。」「羊の群を追う少年。」「手ではえを追う。」「理想を追う。」「先人の足跡を追う学究の日々。」 **追いかける**…「交差点まで追いかけることにした。」 **追跡する**…「逃亡する犯人を追跡する。」「衛星の軌道を追跡する。」 ### どう使い分けるか **追う**は例にあげたように広くさまざまな意味に使われる。 **追いかける**は**追う**の最初の例の場合、つまり、先行するものに追いつこうとして後から急いで行く、の意味でだけ使われる。**追っかける**は音便形で意味は全く**追いかける**と同じだが、やや俗語的な調子がある。 **追跡する**は、**追いかける**の意 <67> 味のほかに、跡をたどるの意味もあり、これは**追う**にもあるが、**追跡する**の方が文章語的である。 # 応接[おうせつ] ## 応接[おうせつ] ## 応対[おうたい] ## 接待[せったい] ## 持て成し[もてなし] ### 使い分け例 **応接**…「来客の応接に追われる。」 **応対**…「電話での質問にてきぱきとした応対をする。」「応対が悪い。」 **接待**…「見学者にお茶の接待をする。」「料亭での接待。」「接待外交。」 **もてなし**…「先輩の家で温かいもてなしを受ける。」 ### どう使い分けるか **応接**・**応対**は言葉による受け答えが中心になるが、**応接**の方が丁寧で、直接会う場合に限られる。**応対**はより事務的で、電話の場合でも言う。 **接待**・**もてなし**も客に対するものだが、受け答えの意味は薄く、饗応すること。手段も言葉より飲食など他のものが中心になる。**接待**は会社など組織として行う場合、**もてなし**は個人や家庭がする場合に使うことが多い。 [注意] **応接** **応対**は「する」がついて自動詞となり、**接待**は同じく他動詞になる。**もてなし**の動詞**もてなす**も他動詞。 | | 来客への― | 電話での― | 料亭で客を―する | 客と―する | 客をお―する | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **応接** | ○ | | | ○ | | | **応対** | ○ | ○ | | ○ | | | **接待** | | | ○ | | | | **もてなし** | | | | | ○ | # オーケストラ[おーけすとら] ## オーケストラ[おーけすとら] ## 管弦楽団[かんげんがくだん] ## 交響楽団[こうきょうがくだん] ## 楽団[がくだん] ## 楽隊[がくたい] ## バンド ### 使い分け例 **オーケストラ**…「オーケストラボックス。」「シンフォニーオーケストラ。」 **管弦楽団**…「管弦楽団の演奏。」 **交響楽団**…「世界有数の交響楽団。」 **楽団**…「吹奏楽団。」「楽団専属の指 <68> 揮者。」 **楽隊**…「行進の先頭を行く楽隊。」 **バンド**…「ブラスバンド。」「ジャズバンド。」「仲間で作ったバンド。」 ### どう使い分けるか **オーケストラ**は、次の**管弦楽団**と同義で、現在日常的には**管弦楽団**よりよく使われる。劇場の舞台のすぐ前の楽団員席を指すこともある。 **管弦楽団**は、管楽器・弦楽器及び打楽器から成る演奏団体で、規模は大小さまざまである(最小は室内管弦楽団の二十人ぐらい)。最大規模のものを**交響楽団**とも言う。交響曲を演奏しうる編成の管弦楽団の意。 **楽団**は、管弦楽団や交響楽団の略称としても使うが、一般にはそれより小規模な器楽の合奏団を言い、内容も軽音楽を主とする場合が多い。 **楽隊**は、隊列を作って演奏する音楽隊・軍楽隊の略称。 **バンド**は、**楽団**とほぼ同義で、吹奏楽団(ブラスバンド)などにも使うが、現在ではジャズ・ロックその他の軽音楽を演奏するものを指すのが普通。 # 大らか[おおらか] ## 大らか[おおらか] ## 鷹揚[おうよう] ## 闊達(豁達)[かったつ] ## 寛闊[かんかつ] ## 開豁[かいかつ] ## 磊落[らいらく] ## 寛大[かんだい] ## 寛容[かんよう] ### 使い分け例 **大らか**…「大らかな歌風。」「大らかな気持ち。」 **鷹揚**…「鷹揚に構える。」「鷹揚な態度。」 **闊達(豁達)**…「闊達で明るい性格。」「自由豁達な作風。」 **寛闊**…「寛闊な度量。」「寛闊な衣裳。」 **開豁**…「開豁な気性。」「峠を越えると前方は開豁な草原だった。」 **磊落**…「磊落に笑う。」「豪放磊落な挙動。」 **寛大**…「寛大な処置。」 **寛容**…「寛容な人柄。」 ### どう使い分けるか **大らか**は、細かいことにこだわら <69> ず、ゆったりしているさま。 **鷹揚**もほぼ同義で、前者は心・気持ちについて、後者は振る舞い・態度について言うことが多い。(大様と鷹揚は本来は別義であるが、音が近いため混同して使われる。) **闊達(豁達)**は度量が広く、物事にこだわらないさまを言う。文章語。 **寛豁**と**開豁**も**闊達** **豁達**とほぼ同義であるが、前者はだてで派手好きの意に使うことがあり、後者は「―な高原」のように、前が広く開けていて眺めが良いことの意にも使う。 **磊落**は、気が大きく快活で、小事にこだわらないさまを言う。 **寛大**は、心が広く大様なさま、**寛容**は、寛大でよく人を受け入れ、過失をとがめだてしたりしないさまを言う。以上の五語もみな文章語。 # 大笑い[おおわらい] ## 大笑い[おおわらい] ## 高笑い[たかわらい] ## 馬鹿笑い[ばかわらい] ## 大笑[たいしょう] ## 爆笑[ばくしょう] ## 哄笑[こうしょう] ## 朗笑[ろうしょう] ### 使い分け例 **大笑い**…「みんなでどっと大笑いする。」「そいつは大笑いだ。」 **高笑い**…「顔を見合わせて高笑いする。」「ばかの高笑い。」 **馬鹿笑い**…「酔っぱらってばか笑いをする。」 **大笑**…「呵々大笑。」 **爆笑**…「珍プレーに爆笑する。」「爆笑の渦。」 **哄笑**…「満場が哄笑する。」「哄笑がわく。」 **朗笑**…「教室から朗笑が聞こえる。」 ### どう使い分けるか **大笑い**は、あまりのおかしさに大きな声で笑うことであるが、「物笑い」と似た意味に使うこともある。 **高笑い**は、あたり構わず大きな声で笑うことで、得意になっている場合が多い。 **馬鹿笑い**は、ばかみたいに途方もない大声で笑うことで、はしたないという感じを伴う言い方。 **大笑**は、「呵々ー」の形で使うことが多い。「呵々」は「あはは」に相 <70> 当する擬音語。 **爆笑**は、大勢が一度にどっとはじけるように大声で笑うこと。 **哄笑**は、大口を開けて大声で笑うことで、**爆笑**と同じように大勢の人に使うことが多いが、はじけるようにという感じではない。 **朗笑**は、大きな声で楽しそうに笑うこと。 **哄笑** **朗笑**は文章語。 # 犯す[おかす] ## 犯す[おかす] ## 侵す[おかす] ## 冒す[おかす] ## 干犯する[かんぱんする] ## 侵犯する[しんぱんする] ## 侵略する[しんりゃくする] ## 侵食する[しんしょくする] ## 浸食する[しんしょくする] ## 侵害する[しんがいする] ## 冒涜する[ぼうとくする] ### 使い分け例 **犯す**…「法を犯す。」「罪を犯す。」「暴力で女性を犯す。」 **侵す**…「国境を侵す。」「人権を侵す。」「不治の病に侵される。」 **冒す**…「危険を冒す。」「雨を冒して決行する。」「作物が霜に冒される。」「神聖を冒す。」「藤原姓を冒す。」 **干犯する**…「統帥権を干犯する。」 **侵犯する**…「領空を侵犯する。」 **侵略する**…「周辺諸国を侵略する。」 **侵食する**…「人の領域を侵食する。」 **浸食する**…「川水が岸壁を浸食する。」 **侵害する**…「著作権を侵害する。」 **冒涜する**…「国法を冒涜する。」「神を冒涜する所業。」 ### どう使い分けるか **犯す**は、法律・規則・道徳に反する行為をする、また女性の操を奪う。 **侵す**は、他国や他人の領域に不法に入り込む、他人の権利・権限を損なう。 **冒す**は、困難や障害を押し切って目的のことをしようとする、身体や作物などに害を与える、神聖・尊厳なものをけがす、他人の姓を名乗る、などの意がある。 右の説明は大体の原則であって、「他国・権利を―」は**侵す**の代わりに**犯す**も使われ、「病魔が―」の場合は**侵す**も**冒す**も使われる。また、「過ち・矛盾・面を―」の場合は**犯す**も**冒す**も使われる。 **干犯する**は、他の管轄に干渉し、 <71> その権限を犯す、の意で、非常にかたい文章語。 **侵犯する**は、他国の領土や権利をおかす、**侵略する**は、他国に侵入してその領土を奪う、の意。 **侵食する**は、他の領域・なわばりなどを次第におかして食い込む意で、同音異字の**浸食する**は、風雨や流水が岩石や地表を少しずつくずす意。 **侵害する**は、他人の所有・権利をおかす、**冒涜する**は、神聖なもの・清らかなものをおかしけがす、の意で、後者は特にかたい文章語。 [注意] **侵食** **浸食**は**侵蝕** **浸蝕**の書き換え。 # 臆病[おくびょう] ## 臆病[おくびょう] ## 小心[しょうしん] ## 小胆[しょうたん] ## 内気[うちき] ## 弱気[よわき] ## 気弱[きよわ] ## 怯懦[きょうだ] ### 使い分け例 **臆病**…「自分の臆病を恥じる。」「臆病者。」「新企画の実行に臆病な社長。」 **小心**…「小心を隠す。」「小心者。」「小心翼々たる男。」 **小胆**…「小胆をあざける。」「小胆な者ほど徒党を組みたがる。」 **内気**…「内気が災いする。」「内気な女性。」 **弱気**…「弱気を出す。」「ともすれば弱気になりがちだ。」「弱気の商い。」 **気弱**…「夫に死なれて気弱になる。」「気弱な性格。」 **怯懦**…「怯懦をののしる。」「怯懦な振る舞い。」 ### どう使い分けるか **臆病**は、物事を恐れやすい性質。また不必要に用心深いさま。 **小心**は、気が小さいことで、「小心翼々」はいつもびくびくしているさまを言う。 **小胆**は、**小心**とほぼ同義の文章語で、度量が小さいという意味もある。 **内気**は、おとなしく控え目な気質。 <72> **弱気**は、結果について悲観的で、消極的になりがちなさま・性格を言う。また、取引用語では相場が将来下落すると予想することを言う。 **気弱**は、気が弱いことで、取引用語には用いない。 **怯懦**は、臆病で意気地がないさまの意で、かたい文章語。 # 贈る[おくる] ## 贈る[おくる] ## 差し上げる[さしあげる] ## 贈与する[ぞうよする] ## 贈呈する[ぞうていする] ## 進呈する[しんていする] ## 献呈する[けんていする] ## 献上する[けんじょうする] ### 使い分け例 **贈る**…「中元の品を贈る。」「賛辞を贈る。」「声援を贈る。」「故人に勲五等を贈る。」 **差し上げる**…「お食事を差し上げる。」「手紙を差し上げる。」 **贈与する**…「宅地の一角を贈与する。」 **贈呈する**…「記念品を贈呈する。」 **進呈する**…「試供品を進呈する。」 **献呈する**…「恩師に自著を献呈する。」 **献上する**…「宮様に名産を献上する。」 ### どう使い分けるか **贈る**は、感謝・祝福・支援などの気持ちを表すために、相手に有形・無形の物を与える、また、死者に勲位などを与える(追贈する)、の意。 **差し上げる**は、「与える」の謙譲語。 **贈与する**は、金品を贈り与える意。 **贈呈する**は、正式の形で、改まった気持ちで物を差し上げる、の意。 **進呈する**も、人に何かを差し上げる、の意であるが、丁寧さの度合いは**贈呈する**に比べやや少ない。 **献呈する**は、目上の人に心を込めて物を差し上げる、**献上する**は、高貴な人に差し上げる、の意で、いずれも儀礼的なかたい文章語である。 <73> | | 名産品を― | 粗品を― | 閣下に名菓を― | 恩師に自著を― | 試供品を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **贈呈する** | | ○ | | | | | **進呈する** | | ○ | | | ○ | | **献呈する** | | | | ○ | | | **献上する** | ○ | | ○ | | | # 遅れる[おくれる] ## 遅れる[おくれる] ## 後れる[おくれる] ## 遅延する[ちえんする] ## 遅滞する[ちたいする] ## 延滞する[えんたいする] ### 使い分け例 **遅れる**…「時計が五分遅れる。」「知恵の遅れた子。」「発車が遅れる。」「授業に遅れる。」 **後れる**…「流行に後れる。」「妻に後れる。」「人前で後れた様子もない。」 **遅延する**…「工事が遅延する。」 **遅滞する**…「業務が遅滞する。」 **延滞する**…「家賃が延滞する。」 ### どう使い分けるか **遅れる**と**後れる**は、進み方が基準よりおそい、決まった時刻に間に合わないとき前者を、他と比べてそのものよりあとになるとき後者を用いる。したがって、たとえば「知恵が―」の場合、発達の速度の観点からは**遅れる**、人との比較の観点からは**後れる**と考えられる。ただし、先立たれる、気おくれするという意味で**後れる**を用いる以外は、大体**遅れる**ですませているのが普通。 **遅延する**、完成や結末が遅れたり長引いたりする意。 **遅滞する**は、物事がとどこおり、予定通り進まない、の意。 **延滞する**は、支払いや納入が期日より遅れ、とどこおる、の意。 # 厳か[おごそか] ## 厳か[おごそか] ## 厳粛[げんしゅく] ## 荘重[そうちょう] ## 荘厳[しょうごん] ## 森厳[しんげん] ## 厳然[げんぜん] ### 使い分け例 **厳か**…「厳かな声で告げる。」「式典を <74> 厳かに執り行う。」 **厳粛**…「厳粛な雰囲気。」「死は厳粛な事実である。」「厳粛な倫理。」 **荘重**…「荘重な音楽。」「荘重な文体。」「荘重な儀式。」 **荘厳**…「荘厳な礼拝堂。」「荘厳に神事を進める。」 **森厳**…「森厳な境内。」 **厳然**…「厳然たる態度で臨む。」「厳然たる事実。」 ### どう使い分けるか **厳か**は、威厳があって重々しいさまで、人の態度についても、儀式などについても言う。 **厳粛**はそれとほぼ同義であるが、物事の存在が厳しく動かしがたいさま、道徳的に厳しいさまの意にも使う。 **荘重**は、厳かで重々しく、力強い感じを与えるさま。 **荘厳**は、人を厳粛な気持ちにさせるほどにいかめしいさまで、前者は音楽や口調などにも使うが、後者は主に建物や儀式について言う。 **森厳**は、身の引き締まるほど**荘厳**なさまの意。 **厳然**は、人が威厳があって近づきがたいさま、物事が厳かで動かしがたいさまを言う。 [注意] 「荘厳(しょうごん)」は、仏像・寺院を飾り立てること、また、その飾りの意となる。 # 起こる[おこる] ## 起こる[おこる] ## 興る[おこる] ## 起きる[おきる] ## 生じる[しょうじる] ### 使い分け例 **起こる**…「地震が起こる。」「戦争が起こる。」「変化が起こる。」 **興る**…「国が興る。」「学問が興る。」 **起きる**…「朝早く起きる。」「倒れた稲が起きる。」「風が起きる。」「腹痛が起きる。」「トラブルが起きる。」 **生じる**…「かびが生じる。」「疑惑が生じる。」「原料の値上がりが赤字を生じた。」 ### どう使い分けるか **起こる**は、ある事態が新たに生じるの意。**興る**は、勢いが盛んになるの意。 **起きる**は、目を覚ます、寝床から出る、寝ずにいる、横になった <75> ものが立ち上がる、などの意であるが、**起こる**と同じ意味にも使われるようになった。この二語はほとんど区別できないが、現在ではむしろ**起きる**の方が多用され、より口頭語的である。 **生じる**は、生えるの意から転じて、物事が起こるの意に使われるが、**起こる**よりも文章語的である。他動詞としても使う。 # 怒る[おこる] ## 怒る[おこる] ## 怒る[いかる] ## 立腹する[りっぷくする] ## 憤る[いきどおる] ## 憤激する[ふんげきする] ### 使い分け例 **怒る**[おこる]…「彼が遅れたのでおこっている。」「騒いで母におこられた。」 **怒る**[いかる]…「不作法に対していかる。」 **立腹する**…「侮辱され立腹する。」 **憤る**…「政治の乱れを憤る。」 **憤激する**…「卑劣な行為に憤激した。」 ### どう使い分けるか **おこる**と**いかる**は、ともに不満・不快な気持ちの高ぶるのを言う。**おこる**にはほかに、「叱る」意味があるが、**いかる**にはない。**おこる**は日常よく使う口語だが、**いかる**はやや文章語的。 **立腹する**は、**いかる**と同義の漢語的表現で更に文章語的な言い方。〈腹を立てる〉と言うと、**いかる**より口語的である。 **憤る**は、**いかる**の度合いが強められており、**憤激する**は更に強い感じを表す。ともに文章語。 [注意] **怒る**はイカルともオコルとも、どちらにも読める。 # 抑える[おさえる] ## 抑える[おさえる] ## 押さえる[おさえる] ## 制する[せいする] ## 抑制する[よくせいする] ## 抑圧する[よくあつする] ## 制圧する[せいあつする] ## 圧迫する[あっぱくする] ## 弾圧する[だんあつする] ## 抑止する[よくしする] ## 制止する[せいしする] ### 使い分け例 **抑える**…「インフレを抑える。」「生長を抑える。」 <76> 「怒りを抑える。」「反対派を抑える。」 **押さえる**…「紙の端を押さえる。」「両手で耳を押さえる。」「証拠を押さえる。」「急所を押さえる。」 **制する**…「発言を制する。」「感情を制する。」「機先を制する。」 **抑制する**…「情欲を抑制する。」「ストを抑制する。」 **抑圧する**…「表現の自由を抑圧する。」「欲望を抑圧する。」 **制圧する**…「デモ隊を制圧する。」「敵を制圧する。」 **圧迫する**…「胸を圧迫する。」「生活を圧迫する増税。」 **弾圧する**…「民主化運動を弾圧する。」 **抑止する**…「戦争を抑止する力。」 **制止する**…「乱暴な行為を制止する。」 ### どう使い分けるか **押さえる**は、上から力を加えて動きを封ずる、他の者が手出しできないように確保する、大事なところを把握する、などの意。 **抑える**は、悪い状況の広がるのを食い止める、感情を表さないようにこらえる、力で相手の自由や活動を封じる、などの意で、前者は具体的な物に、後者は抽象的なことに用いることが多い。 **制する**は、押しとどめる、支配する、自分に従わせるなど、**抑える**の意に近いが、「法をー」のように、制定する、の意もある。 **抑制する**は、勢いが盛んになるのを抑えて止める。 **抑圧する**は、行動や欲望を無理に抑えつける。 **制圧する**は、威力で相手の勢力や気持ちを抑えつける、の意味である。 **圧迫する**は、強い力で押しつける意で、比喩的には押し迫り脅かす、威圧する、の意にも使う。 **弾圧する**は、支配者側が権力や武力で反対勢力を抑えつける場合に使う。 **抑止する**も**制止する**も、それをさせないように抑え止める、の意であるが、前者は戦争などの大きな場面に、後者は身近な人の言動に使う。 | | 力で― | 自由を― | 情欲を― | 増税が生活を― | 反対運動を― | 敵を完全に― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **抑制する** | | | ○ | | | | | **抑圧する** | ○ | ○ | ○ | | | | | **制圧する** | | | | | | ○ | | **圧迫する** | | | | ○ | | | <77> # 収める[おさめる] ## 収める[おさめる] ## 納める[おさめる] ## 収納する[しゅうのうする] ## 受納する[じゅのうする] ## 納入する[のうにゅうする] ## 納付する[のうふする] ## 収拾する[しゅうしゅうする] ## 収束する[しゅうそくする] ## 収用する[しゅうようする] ## 収容する[しゅうようする] ### 使い分け例 **収める**…「どうかお収めください。」「勝利を収める。」「成果を収める。」「目録に収める。」「調停案が紛争を収める。」 **納める**…「倉庫に納める。」「月謝を納める。」「注文の品を納める。」「見事に舞い納める。」 **収納する**…「税を収納する。」「古道具を蔵に収納する。」「稲を収納する。」 **受納する**…「匿名者からの寄付金を受納する。」 **納入する**…「製品を期日までに納入する。」「すべての会員が会費を納入する。」 **納付する**…「固定資産税を納付する。」 **収拾する**…「事態を収拾するには一か月かかる。」 **収束する**…「事態が収束する。」「収束する数列。」 **収用する**…「空港予定地を収用する。」 **収容する**…「難民を収容する施設が足りない。」 ### どう使い分けるか **収める**と**納める**は、「蔵に・原稿用紙一枚に・権力を手中にー」のように、中にきちんと入れる、受け取って自分のものにするの意の場合は互用される。「効果・成功をー」のように、成果をあげる意では**収める**、「税金・商品を―」のように、金品を受取人に渡す意では**納める**を使う。**納める**には終わりにするの意もあり、多く接尾語的に用いる。また、**収める**には「混乱を―」のように落ち着かせるの意があるが、この場合は「治める」も使われる。 **収納する**は、公共機関が金品をその会計に納め入れる、不要な品を押入れや箱にしまう、農作物を <78> 取り入れる。 **受納する**は、贈り物などを受け取って納める、の意。 **納入する**と**納付する**は、品物や金銭を納める意であるが、後者は義務づけられた税金などを国や役所に納める場合に使う。 **収拾する**は、混乱した状態を収める意。**収束する**も、ほぼ同義であるが、この語は自動詞にもなる。また、数学や物理で「収斂」の書き換え語として使われるが、この場合「集束」とも書く。 **収用する**は、国家などが公共の用に使うため特定物件の所有権を取り上げる意。 **収容する**は、人や物を一定の場所・施設に入れる意で、容疑者や犯罪者を一定の施設に入れる場合にも言う。 # おしゃべり[おしゃべり] ## 御喋り[おしゃべり] ## 無駄口[むだぐち] ## 口軽[くちがる] ## 駄弁[だべん] ## 多弁[たべん] ## 饒舌[じょうぜつ] ## 多言[たげん] ### 使い分け例 **おしゃべり**…「女同士のおしゃべり。」「おしゃべりな男。」「あれはおしゃべりだから気をつけろ。」 **無駄口**…「むだ口をたたく。」 **口軽**…「口軽だから信用できない。」 **駄弁**…「駄弁を弄する。」 **多弁**…「飲むほどに多弁になる。」 **饒舌**…「饒舌をふるう。」「饒舌家。」「饒舌な文体。」 **多言**…「多言を要しない。」 ### どう使い分けるか **おしゃべり**は、とりとめもない会話、また必要以上に口数の多いさま、また、そういう人の意で、日常普通に使われる語。 **無駄口**は、くだらないおしゃべりの意。 **口軽**は、おしゃべりで軽々しくものを言う、特によく秘密を他に漏らすさまであるが、「ーな芸人」のように話し方がなめらかなの意もある。なお、「軽口」は軽妙な話、気のきいたしゃれを言うが、**口軽**の意に使うこともある。 **駄弁**は、**無駄口**の意の漢語。 <79> 「だべる」という俗語はこの語を動詞化したもの。 **多弁**は、口数が多いこと、**饒舌**も、ほぼ同義であるが、くどいという感じを伴う。なお、「冗舌」はむだ口の意で、多少意味がずれるが、**饒舌**の代用漢字として使うことがある。 **多言**も、**多弁**とほぼ同義であるが、よりかたい文章語。 # 遅い[おそい] ## 遅い[おそい] ## のろい[のろい] ## 鈍い[にぶい] ## まだるっこい ## 緩慢[かんまん] ## 鈍重[どんじゅう] ## 遅鈍[ちどん] ### 使い分け例 **遅い**…「歩き方が遅い。」「遅い電車。」「物分かりが遅い。」 **のろい**…「計算がのろい。」「のろいバス。」「反応がのろい。」 **鈍い**…「動作が鈍い。」「頭の働きが鈍くなる。」 **まだるっこい**…「まだるっこい仕事ぶり。」 **緩慢**…「緩慢な川の流れ。」「緩慢なプレー。」 **鈍重**…「鈍重な動作。」 **遅鈍**…「遅鈍な男。」 ### どう使い分けるか **遅い**は、動作や作用に時間がかかる、頭や心の働きが鈍い、の意。また「桜の開花がー」「今からではもうー」のように、基準になる時期より後だ、間に合わない、の意もある。(この場合の反意語は「早い」)。 **のろい**は、意味も用法も**遅い**と同じであるが、じれったいという感じを伴う。 **鈍い**は、動作や反応がのろい、頭の働きが遅い、の意で、本来は刃物の切れ味が悪いさま、また光や音がはっきりしないさまも言う。 **まだるっこい**は**まだるい**の強調形で、のろのろしていてじれったいほどだの意で、どちらも見ている側の感じを言うくだけた言い方。 **緩慢**は、動きや変化がゆっくりしているさまで、「―な処置」という場合は手ぬるいの意。 **鈍重**は、動作や反応が鈍くのろいさま、**遅鈍**は、動作が遅く頭の働きが鈍いさまの意で、どちらもかたい文章語。 <80> # 恐る恐る[おそるおそる] ## 恐る恐る[おそるおそる] ## 恐々[こわごわ] ## びくびく ## 怖ず怖ず[おずおず] ## おどおど ## 戦戦恐恐[せんせんきょうきょう] ### 使い分け例 **恐る恐る**…「丸木橋を恐る恐る渡る。」「恐る恐る貴人の前へ出る。」 **こわごわ**…「猛犬にこわごわ近寄る。」 **びくびく**…「叱られないかとびくびくする。」 **おずおず**…「おずおずと職務質問に答える。」 **おどおど**…「おどおどした目つき。」 **戦戦恐恐**…「悪事がばれないかと戦々恐々としている。」「戦雲がみなぎり戦々恐々たる日々。」 ### どう使い分けるか **恐る恐る**と**こわごわ**は、こわがりながら、の意であるが、後者の方がより口語的で、また、前者の持つ、ひどくかしこまりながらの意はない。 **びくびく**は、不安や恐怖のために絶えずおびえ恐れるさま。「体を一震わす」のように小刻みに動く様子を表す用法もある。 **おずおず**は、びくびくしながら、の意の雅語的な表現で、しりごみしながら動作が進まない様子を表し、おどおどは、恐怖や不安や自信のなさから、態度が落ち着かない様子を表す。 **戦戦恐恐**は、個人がよくない事態を恐れてびくびくする場合だけでなく、世間や民衆が大変な事になりはしないかと恐れおののく場合にも使う。**戦々恐々たる**は非常にかたい文章語。 [注意] **戦戦恐恐**は**戦戦兢兢**の書き換え。 # 恐れる[おそれる] ## 恐れる(畏れる)[おそれる] ## 怖がる[こわがる] ## 脅える[おびえる] ## 怖じける[おじける] ## 恐怖する[きょうふする] ## 畏怖する[いふする] ## 懸念する[けねんする] ## 危惧する[きぐする] <81> # 恐れる[おそれる] ### 使い分け例 **恐(畏)れる**・・・「敵を恐れる。」「冷害を恐れる。」「神を畏れぬ所業。」 **怖がる**[こわがる]・・・「雷を怖がる。」「暗闇を怖がる。」 **脅える**[おびえる]・・・「物音に脅える。」「不安に脅える。」 **怖じける**[おじける]・・・「おじけて口も利けない。」「大勢の観客におじける。」 **恐怖する**[きょうふする]・・・「危険を察知して極度に恐怖していた。」 **畏怖する**[いふする]・・・「厳格な祖父を畏怖する。」 **懸念する**[けねんする]・・・「先行きが懸念される。」 **危惧する**[きぐする]・・・「企画の成功を危惧する。」 ### どう使い分けるか **恐(畏)れる**は、恐ろしいと思う、びくびくする、②悪い結果にならないかと心配する、③もったいないと思い、かしこまる、の意で、③は〈畏れる〉と書くことが多い。 **怖がる**は、こわいと思い、それを態度に表す、の意。 **脅える**は、怖がってびくびくする、の意であるが、「・・・に脅える」の形をとり、・・・に不安などの抽象語も入るのが他の語と違う。 **怖じける**は、びくびくして、しりごみする、の意に使う。 | | 暗闇を | 冷害を | 大勢の客に | 失恋(を・に) | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **恐れる** | ○ | ○ | ○ | | | **怖がる** | ○ | | | | | **脅える** | | | | ○ | | **おじける** | | | ○ | | **恐怖する**は、生命に危険を感じてこわくなる、の意。(ただし動詞として使うことより名詞「恐怖」で使うほうが多い)。 **畏怖する**は、威圧を感じて恐れおののくの意の文章語。 **懸念する**は、気にかかって不安に思う。 **危惧する**は、成り行きや結果を心配し恐れる、の意の文章語。 〔注意〕〈恐れる〉の①は〈怖れる〉〈懼れる〉、②は〈惧れる〉とも書き、〈怖がる〉は〈恐がる〉、〈脅える〉は〈怯える〉とも書く。 # おっちょこちょい ## おっちょこちょい ## 軽薄[けいはく] ## 軽軽しい[けいけいしい] ## 軽はずみ[かるはずみ] ## 軽率[けいそつ] ## 軽佻[けいちょう] <82> ### 使い分け例 **おっちょこちょい**・・・「すぐ図に乗るおっちょこちょいな男。」 **軽薄**[けいはく]・・・「軽薄な発言。」「軽薄な才子。」⇔重厚。 **軽軽しい**[けいけいしい]・・・「軽々しい振る舞い。」「そんな事を軽々しく言うな。」 **軽はずみ**[かるはずみ]・・・「軽はずみな行動。」 **軽率**[けいそつ]・・・「あの発言は軽率だった。」 **軽佻**[けいちょう]・・・「軽佻な人物。」 ### どう使い分けるか **おっちょこちょい**は、考えや行動に慎重さを欠くさまを言う俗語。**軽薄**は、それとほぼ同義の漢語で、個々の言動よりも主に人柄や性格について言う。 **軽軽しい**は、慎重に考えないで物事をするさま、**軽はずみ**は、深くも考えず、その場のはずみで調子に乗ってするさまで、**軽率**は、それと同義の漢語である。 **軽佻**は、〈軽薄〉とほぼ同義のかたい文章語で、「―浮薄」の形で使うことが多い。 # 音[おと] ## 音[おと] ## 音[ね] ## 声[こえ] ## 響き[ひびき] ## 轟き[とどろき] ## 鳴り[なり] ### 使い分け例 **音**[おと]・・・「大きな音がする。」「足音。」 **音**[ね]・・・「鈴のねが聞こえる。」「虫のね。」「鐘のね。」 **声**[こえ]・・・「人の声がする。」「虫の声。」「鐘の声。」「秋の声。」 **響き**[ひびき]・・・「鐘の響きが聞こえる。」「響きのよい言葉。」「エンジンの響き。」 **轟き**[とどろき]・・・「滝の轟き。」「雷の轟きが聞こえる。」「波の轟き。」⇔唸り **鳴り**[なり]・・・「楽器の鳴りがよい。」「鳴りをひそめる。」「耳鳴り。」「海鳴り。」 ### どう使い分けるか **音**[おと]は、空気の振動が耳に伝わって聞こえるものを言う一般的な語で、**声**[こえ]は、人間や動物の声帯などから発せられる音を言う。 **音**[ね]は、音のうち、比較的小さな美しい感じのものを言う。 **響き**は、周りに伝わってくる音声や震動で、〈音〉が物理的な現象を言うのに対し、〈響き〉は聞こえ <83> てきてからだに感じる情況も含めて言う。 **轟き**は、〈響き〉のうち、遠くから伝わってくる大きくて比較的低い音を言う。 **鳴り**は、〈響き〉と同義だが、比較的やわらかい音に多く用いる。 # おどけ ## おどけ ## 茶目[ちゃめ] ## 剽軽[ひょうきん] ## 滑稽[こっけい] ## ユーモラス ### 使い分け例 **おどけ**・・・「人前でおどけを演じる。」「おどけ者。」 **茶目**[ちゃめ]・・・「茶目っ気のある人物。」「この子はお茶目さんだ。」 **ひょうきん**・・・「彼はなかなかのひょうきん者だ。」 **滑稽**[こっけい]・・・「滑稽な演技をする。」「彼が表彰されるとは滑稽だ。」 **ユーモラス**・・・「彼のユーモラスな態度にみんな笑った。」 ### どう使い分けるか **おどけ**は、「お道化」からきた言葉とも言われ、わざとふざけた真似をして人を笑わせることを言う。 **茶目**は、無邪気ないたずらなどで人を笑わせる様子。子供などのかわいらしい動作を言う。 **ひょうきん**は、気軽で面白いことばかり言ったりしたりする様子。〈おどけ〉は行動について言うが、〈茶目〉〈ひょうきん〉は性格的なものをも言う。 **滑稽**は、その場にいる人が思わず笑ってしまうような面白いことを言ったりしたりする様子。また、その言動がくだらないので失笑の対象になるような、マイナスの評価を与える場合もある。 **ユーモラス**は、軽妙で面白い様子。〈滑稽〉と大体同義であるが、下品でなく、人間的で、マイナスのイメージはない。 # 男[おとこ] ## 男[おとこ] ## 男性[だんせい] ## 男子[だんし] ## 男の人[おとこのひと] ## おのこ ## 野郎[やろう] <84> ### 使い分け例 **男**[おとこ]・・・「男の子。」「男の世界。」「強盗の容疑で中年の男を逮捕する。」「細君に男ができる。」⇔女。 **男性**[だんせい]・・・「立派な男性。」「男性会員。」「男性歌手。」⇔女性。 **男子**[だんし]・・・「男子の生徒」「成人男子。」「男子従業員。」⇔女子。「男子一生の仕事。」 **男の人**[おとこのひと]・・・「男の人に助けられる。」 **おのこ**・・・「おのこたるもの弱音は吐かぬ。」⇔おなご。 **野郎**[やろう]・・・「野郎ばかりの集団。」「馬鹿野郎。」 ### どう使い分けるか **男**は、人の性別の一つで女に対比される方を言い、最も一般的に用いられる語である。 **男性**は、青年期以後について用いる場合が多い。また、〈男〉に比べいくらか敬意が含まれ犯罪者などには言わない。やや文章語的。 **男子**は、男の子供を指して言うほか、大人の男、また、特に立派な男について言う場合がある。最後は文章語。 | | トイレ | 権者 | 行員 | な | の仕事 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **男** | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | **男性** | ○ | | ○ | ○ | | | **男子** | | | ○ | | ○ | **男の人**は、〈男〉と同じ意味だが、多く女性が〈男〉を指して呼ぶ場合に使われる口頭語。 **おのこ**は、〈男〉の雅語的な言い方として用いる。 **野郎**は、〈男〉をののしったり冗談めかしたりして言う語である。 # 脅す[おどす] ## 脅す[おどす] ## 脅かす[おびやかす] ## 威嚇[いかく]する ## 脅迫[きょうはく]する ## 強迫[きょうはく]する ## 恐喝[きょうかつ]する ### 使い分け例 **脅す**[おどす]・・・「刀を抜いて脅す。」⇔脅かす。 **脅かす**[おびやかす]・・・「平穏な生活を脅かす。」「社長の地位を脅かす。」 **威嚇する**[いかくする]・・・「ピストルを空に向けて撃ち犯人を威嚇する。」 **脅迫する**[きょうはくする]・・・「爆破予告をして企業を脅迫する。」 **強迫する**[きょうはくする]・・・「強迫して遺言状を書か <85> せる。」「強迫観念。」 **恐喝する**[きょうかつする]・・・「下級生を恐喝して金を巻き上げる。」 ### どう使い分けるか **脅す**は、相手に危害を加える様子を見せて金品や行動を無理に要求する、の意。 **脅かす**は、武力や実力を誇示して、相手の安定した状態を損なわせる、の意。〈脅す〉が具体的な強要の言動が伴うのに対し、これは必ずしもその必要はない。 **威嚇する**は、〈脅す〉と大体同じ意味の漢語的な言葉であるが、相手に何かの行動を要求するのではなく、行動を規制することに目的がある。 **脅迫する**は、相手に害を加える旨を告げて何かを実行させようとする意で、刑法で用いる語である。〈脅迫する〉は相手に恐怖心を起こさせるだけの目的の場合にも用いるが、**恐喝する**は、主として金品を奪う行為を言う。 **強迫する**は、相手を恐れさせて自由な意思決定を妨げる意で、民法上の用語。「強迫観念」は心理学用語で、意思に逆らって心中に割り込んで離れない病的観念。 # 訪れる[おとずれる] ## 訪れる[おとずれる] ## 訪ねる[たずねる] ## 訪問[ほうもん]する ## 来訪[らいほう]する ## 見舞う[みまう] ### 使い分け例 **訪れる**[おとずれる]・・・「母校を訪れる。」 **訪ねる**[たずねる]・・・「友人を会社に訪ねる。」 **訪問する**[ほうもんする]・・・「恩師の家を訪問する。」 **来訪する**[らいほうする]・・・「友人が突然来訪する。」⇔往訪する。 **見舞う**[みまう]・・・「被災者を見舞う。」 ### どう使い分けるか **訪れる**は、人に会うためにその場所に行く場合に使う。 **訪ねる**は、〈訪れる〉と同義だが、より口語的な言い方である。 **訪問する**は、改まった形で人の家などに行く場合に用いる。〈訪れる〉と同義の漢語的な文章語である。 **来訪する**はこちらに会うために先方から来る、の意。 <86> **見舞う**は、病気や災害で苦しんでいる人を慰めに行ったり手紙を出したりする、の意。 # おとなしい ## おとなしい ## 優しい[やさしい] ## 穏やか[おだやか] ## 温和[おんわ] ## 柔和[にゅうわ] ### 使い分け例 **おとなしい**・・・「子供がおとなしく遊ぶ。」「おとなしい人物。」 **優しい**[やさしい]・・・「優しい性格の持ち主。」 **穏やか**[おだやか]・・・「穏やかな人柄。」「穏やかに話し合う。」「穏やかな海。」 **温和**[おんわ]・・・「温和な性格。」「温和な天候。」⇔穏和。 **柔和**[にゅうわ]・・・「柔和な顔の老人。」 ### どう使い分けるか **おとなしい**は、動作や態度、性質が物静かで落ち着きがあり、逆らったりしない、の意味。 **優しい**は、素直でおとなしい、の意もあるが、思いやりや情があって好ましいの意もあり、この場合、暖かく包み込むような感じがある。〈優しい〉はほかに優美である、の意もある。 **穏やか**は、心が平静で、他と争ったり事を荒立てたりしない性質や様子を言う。また、物事が順調で静かである状態も言う。 **温和**は、〈穏和〉とも書き〈穏やか〉のややかたい表現である。 **柔和**は、いかにも優しい顔付きで、相手に警戒感を与えない様子を言い、多く表情について使う。 # 踊り[おどり] ## 踊り[おどり] ## 舞[まい] ## 舞踊[ぶよう] ## 舞踏[ぶとう] ## ダンス ## バレエ ### 使い分け例 **踊り**[おどり]・・・「踊りを踊る。」「阿波踊り。」「盆踊り。」「民謡踊り。」「踊り子。」 **舞**[まい]・・・「能の舞を舞う。」「獅子舞。」「舞姫。」「舞扇。」 **舞踊**[ぶよう]・・・「日本舞踊。」「舞踊劇。」 **舞踏**[ぶとう]・・・「舞踏会。」 **ダンス**・・・「ダンスパーティー。」「フォークダンス。」 **バレエ**・・・「クラシックバレエ。」 <87> ### どう使い分けるか **踊り**は、音楽などの拍子に合わせて身体を動かし、喜怒哀楽の感情を表現するものを言う。 **舞**は、音楽などに合わせて身体を動かし、ある主題を象徴的、様式的に表現するものである。〈踊り〉よりも静かな動きを主とする。また〈舞〉は〈踊り〉より雅語的な感じがある。 **舞踊**は、〈舞〉と〈踊り〉の総称。和風洋風を問わず広く用いる。 **舞踏**は、西洋風の〈踊り〉を言う、かなりかたい文章語。**ダンス**は、ほぼ同じ意味で使う日常語。 **バレエ**は、音楽に合わせて劇場で演じられる舞踊劇である。ヨーロッパで発達した。 # 衰える[おとろえる] ## 衰える[おとろえる] ## 寂れる[さびれる] ## 廃れる[すたれる] ## 落ちぶれる[おちぶれる] ## 衰弱[すいじゃく]する ## 衰微[すいび]する ### 使い分け例 **衰える**[おとろえる]・・・「気力が衰える。」「容貌が衰える。」「国の力が衰える。」 **寂れる**[さびれる]・・・「町が寂れてひっそりしている。」 **廃れる**[すたれる]・・・「流行が廃れる。」「伝統が廃れる。」 **落ちぶれる**[おちぶれる]・・・「往年のスターも落ちぶれた。」「落ちぶれたかつての名家。」⇔零落する。 **衰弱する**[すいじゃくする]・・・「機能が衰弱する。」「全身が衰弱する。」 **衰微する**[すいびする]・・・「文化が衰微する。」「工業力が衰微する。」 ### どう使い分けるか **衰える**は、盛りを過ぎ勢いが弱まる、**寂れる**は、社会的に活気や生気がなくなり寂しくなる、の意。〈衰える〉は一般的に広く使われるが、〈寂れる〉は社会的状況を言い人の様子には用いない。 **廃れる**は、人の勢いが衰える、などの意もあるが、それより、世間で使われなくなる、流行がやむ、の意でよく使われる。 **落ちぶれる**は、最盛期を過ぎてみじめな状態になることを言い、人物や家・会社などに用いる。 <88> | | しにせが | 町が | 容貌が | 長髪の流行が | 町一番の名家が | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **衰える** | ○ | △ | ○ | | | | **寂れる** | | ○ | | | | | **廃れる** | ○ | ○ | | ○ | | | **落ちぶれる** | ○ | | | | ○ | **衰弱する**は、〈衰える〉と同義の漢語的な言い方だが、体力や神経などについて用いることが多い。 **衰微する**は、〈寂れる〉と同義の漢語的な言い方で、国家や町あるいは文化などの勢いのような社会的現象に用いられることが多い。 # 驚く[おどろく] ## 驚く[おどろく] ## びっくりする ## たまげる ## 驚嘆[きょうたん]する ## 驚愕[きょうがく]する ## 仰天[ぎょうてん]する ### 使い分け例 **驚く**[おどろく]・・・「大きな物音に驚く。」 **びっくりする**・・・「値を聞いてびっくりする。」 **たまげる**・・・「暗がりから人が出てきたのでたまげた。」 **驚嘆する**[きょうたんする]・・・「役者の妙技に驚嘆する。」 **驚愕する**[きょうがくする]・・・「訃報に接し驚愕する。」 **仰天する**[ぎょうてんする]・・・「知らせを聞いて仰天する。」「びっくり仰天した。」 ### どう使い分けるか **驚く**は、予期しない事態に突然出会って、一瞬心が大きく動揺したり感激したりする、の意。 **びっくりする**は、突然未知の事態に接して、心に大きな衝撃を覚える、の意。〈驚く〉よりも動揺の度合いが強い感じがあるが、ややくだけた表現に使う。 **たまげる**は、意識を失いそうになるほど心に衝撃を受ける、の意で、〈びっくりする〉より更に口語的な表現に使われる。 **驚嘆する**は、よい出来ばえや思いがけないすばらしい出来事に接して、大いに感激する場合に言う。〈驚く〉よりも感心している度合いが強い。 **驚愕する**は、〈驚く〉の意の漢語的な言い方であるが、悲しみ、恐れなどの気持ちを伴うことが多い。 **仰天する**も、同じく漢語的な語であるが、意外性に接した瞬間的な単なる強い驚きの場合に使う。 <89> # 同じ[おなじ] ## 同じ[おなじ] ## 同一[どういつ] ## 同様[どうよう] ## 同然[どうぜん] ## 等しい[ひとしい] ### 使い分け例 **同じ**[おなじ]・・・「みんな同じ服を着ている。」「同じ誤りを繰り返す。」「点数を同じにする。」「同じ釜の飯を食う。」「彼も私も学校が同じだ。」 **同一**[どういつ]・・・「同一の服装をする。」「同一賃金をもらう。」「同一人物。」 **同様**[どうよう]・・・「家族同様に扱う。」「それと同様の物と交換する。」 **同然**[どうぜん]・・・「紙屑同然の書類。」「勝負はついたも同然だ。」 **等しい**[ひとしい]・・・「二辺の等しい三角形。」「財産など無きに等しい。」 ### どう使い分けるか **同じ**は、二つ以上の物事の性質や状態に違いが認められない様子を表す。話題になっている二つの物事が別のものではなく一つのものである場合も言う。 **同一**は、〈同じ〉と同義の漢語だが、体言を修飾する場合に、〈同じ〉はそのまま、〈同一〉は「同一の」の形になる。 **同様**は、様子や状態がひどく似ていることを言う。〈同一〉よりも類似性がやや少ない。 **同然**は、実際には〈同様〉というほど似てはいないが、根本的な性格において変わりがないという判断を表す。 **等しい**は、二つのものの間に差異がなく一致した感じが見られる様子を言う。〈同じ〉〈同一〉の場合と違って、あれとこれとが一つのものである場合に用いることはない。 # おののく ## 戦く[おののく] ## わななく ## 身震い[みぶるい]する ## 身の毛が立つ[みのけがよだつ] ## 戦慄する[せんりつする] ### 使い分け例 **おののく**・・・「恐怖におののく。」 **わななく**・・・「緊張で全身がわななく。」 **身震いする**[みぶるいする]・・・「思っただけで身震いする。」 <90> **身の毛立つ**[みのけだつ]・・・「余りの惨状に身の毛立つ思いがした。」◎鳥肌立つ。身の毛が(も)よだつ。 **戦慄する**[せんりつする]・・・「戦慄すべき犯罪。」 ### どう使い分けるか **おののく**は、恐ろしさや寒さでぶるぶると体全体が震える場合に言う。実際に体が震えなくても、非常に恐怖を感じるときなどにも言う。文章語的である。 **わななく**は、恐怖や寒さなどで体の全体や一部分がぶるぶると小刻みに震える場合に言い、〈おののく〉以上に文章語的である。 **身震いする**は、寒さ・恐怖や嫌悪感で体が震える場合に言う。持続するものではなく瞬間的に震える場合である。 **身の毛立つ**は、恐ろしさで寒気がして肌がぞくぞくっとする、の意。寒さの場合には用いない。 **戦慄する**は、恐怖や怒りで体が震えるような気持ちになる、の意。寒さによる場合には使わない。文章語である。 # お化け[おばけ] ## お化け[おばけ] ## 化け物[ばけもの] ## 怪物[かいぶつ] ## 妖怪[ようかい] ## 幽霊[ゆうれい] ## 亡霊[ぼうれい] ### 使い分け例 **お化け**[おばけ]・・・「早く寝ないとお化けが出るよ。」「お化け屋敷。」 **化け物**[ばけもの]・・・「化け物の正体を見る。」 **怪物**[かいぶつ]・・・「怪物を退治する。」「彼は政界の怪物である。」 **妖怪**[ようかい]・・・「妖怪変化が現れる。」 **幽霊**[ゆうれい]・・・「夜な夜な幽霊が出る。」 **亡霊**[ぼうれい]・・・「毎夜亡霊に悩まされる。」 ### どう使い分けるか **お化け**は、このグループ中最も平易あるいは幼児語的である。 **化け物**は、動物などが別の姿に身を変えたもの、または正体の知れないものが現実にはあり得ない異様な姿で現れるものを言う。 **怪物**は、得体の知れない怪しいものを言い、〈化け物〉の文章語的表現である。また、その言動や力量などが普通と大きく違っている人 <91> を指して比喩的に言う。 **妖怪**は、何がそれに化けているのか分からない不思議なものを言う。〈怪物〉よりも正体不明度が高い感じがある。 **幽霊**は、死者の魂が迷い出たものを言う。〈化け物〉と違い、人間の姿を取るとされる。**亡霊**もほぼ同じ意味で用いられるが、鎧兜を着用するなど生前の具体的な姿をしていることが多いという。 # 覚える[おぼえる] ## 覚える[おぼえる] ## 記憶[きおく]する ## 銘記[めいき]する ## 暗記[あんき]する ## 暗唱[あんしょう]する ### 使い分け例 **覚える**[おぼえる]・・・「単語を覚える。」「人の顔を覚える。」「こつを覚える。」「快感を覚える。」 **記憶する**[きおくする]・・・「心の奥に記憶する。」 **銘記する**[めいきする]・・・「心に銘記すべき言葉。」⇔銘じる。銘ずる。 **暗記する**[あんきする]・・・「テキストを暗記する。」◎そらんじる。そらんずる。 **暗唱する**[あんしょうする]・・・「人の前で詩を暗唱する。」 ### どう使い分けるか **覚える**は、認識した事項を頭に入れ、忘れないようにする、の意。ほかに、感じる、体得する、などの意もある。 **記憶する**は、〈覚える〉の漢語的な言い方である。ただし、感じる・体得する、などの意はない。 **銘記する**は、大切なことを心に刻み付けて絶対に忘れないようにする、の意。「心にー」が慣用の言い方だが、同義の〈銘じる〉は「肝にー」と言うのが慣用である。文章語。 **暗記する**は、何も見ないでもその文句がそっくりそのまま復元できるに覚える場合に言う。同義の和語〈そらんじる〉は、より文章語的である。 | | 金言を数多く | 英単語をまるごと | 人の顔をすぐ | 師の言葉を心に | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **覚える** | ○ | ○ | ○ | ○ | | **記憶する** | | | ○ | | | **銘記する** | | | | ○ | | **暗記する** | | ○ | | | **暗唱する**は、文章などを暗記していて、見ないで言う、の意。 <92> # お参りする[おまいりする] ## お参りする[おまいりする] ## 詣でる[もうでる] ## 参拝[さんぱい]する ## 参詣[さんけい]する ### 使い分け例 **お参りする**[おまいりする]・・・「お宮にお参りする。」「祖先の墓にお参りする。」 **詣でる**[もうでる]・・・「毎朝氏神に詣でる。」 **参拝する**[さんぱいする]・・・「神社を参拝する。」 **参詣する**[さんけいする]・・・「寺に参詣する。」 ### どう使い分けるか **お参りする**は、神社や寺院、墓などに拝礼のため出掛けて行く、の意で**詣でる**は、〈お参りする〉と同義の文章語である。 **参拝する**・**参詣する**は、やはり同義の、漢語的な文章語である。神社の場合〈参拝する〉〈参詣する〉のどちらも用いるが、寺院の場合は〈参詣する〉を用いることが多い。 # 思い付き[おもいつき] ## 思い付き[おもいつき] ## 閃き[ひらめき] ## 着想[ちゃくそう] ## 発想[はっそう] ## アイデア ### 使い分け例 **思い付き**[おもいつき]・・・「よい思い付きだ。」「それは思い付きの対策に過ぎない。」 **閃き**[ひらめき]・・・「ひらめきのある文章。」 **着想**[ちゃくそう]・・・「着想が奇抜な小説。」 **発想**[はっそう]・・・「発想を転換する。」 **アイデア**・・・「いいアイデアだ。」 ### どう使い分けるか **思い付き**は、ふと浮かんだ考えで、良い考えの場合もあるが、気まぐれな詰まらない考えという意味合いで言う場合もある。 **閃き**は、瞬間的にぱっと浮かんでくる優れた考えを言い、良い意味で用いられる。 **着想**は、ある事業や計画を始めたり進めたりする上での工夫を言う。〈思い付き〉よりも大きな構想をもった事柄に使う。 **発想**は、その問題をどう扱うかについての考えで、〈着想〉がもっと進んだ状態を展望しているのに対し、初期の段階で浮かんだ工夫を <93> 言う。また、芸術作品などで思想を、ある形に表現することなどの意味の使われ方もする。 **アイデア**は、〈着想〉とほぼ同じ意味で用いられる外来語だが、くだけた感じである。 # 思い遣り[おもいやり] ## 思い遣り[おもいやり] ## 情け[なさけ] ## 同情[どうじょう] ## 哀れみ[あわれみ] ## 憐憫[れんびん] ### 使い分け例 **思いやり**[おもいやり]・・・「思いやりのある人。」 **情け**[なさけ]・・・「情けがあだとなる。」 **同情**[どうじょう]・・・「同情を寄せる。」「被災者に同情する。」 **哀れみ**[あわれみ]・・・「哀れみを請う。」 **憐憫**[れんびん]・・・「憐憫の情を催す。」 ### どう使い分けるか **思いやり**は、人の身の上や気持ちを推し量っていたわることで、**同情**は同義の漢語。日常的には後者の方がよく使われ、対象への感情もより直接的である。 **情け**は、人間としての温かい感情の意で、やや古風な語。「―を交わす」という場合は男女の愛情のこと。 **哀れみ**は〈憐れみ〉とも書き、かわいそうだと思うこと。**憐憫**は、同義の漢語でかたい文章語。これらは〈思いやり〉や〈同情〉よりも少し高い所から対象を見ている感じがある。 # 表[おもて] ## 表[おもて] ## 表面[ひょうめん] ## 外面[がいめん] ## 外面[そとづら] ## 上辺[うわべ] ### 使い分け例 **表**[おもて]・・・「葉書の表に書く。」「畳の表を替える。」「表で遊ぶ。」「表の理由。」⇔裏。 **表面**[ひょうめん]・・・「地球の表面。」「水の表面。」「表面を繕う。」 **外面**[がいめん]・・・「外面は立派な建物。」「外面的な美しさ。」⇔内面。 **外面**[そとづら]・・・「そとづらはいいが家では暴君だ。」⇔内面。 **うわべ**・・・「うわべを飾る。」「人間はうわべだけでは分からない。」 ◎うわ <94> つら。うわっつら。 ### どう使い分けるか **表**は、相対する二つの面のうち、前方・外側・正式・正面など、そのものの代表的な面や見えている部分を言う。 **表面**は、そのものを形成している一番上側や外側の部分、つまり外から見ることのできる面を言う。物体の場合、表面・裏面を対語と言うことは必ずしもできない。 **外面**[がいめん]は、〈表面〉よりも、外に向かって見せようとする面というニュアンスが強い。内実の伴わない見せかけの意を含む場合も多い。 **外面**[そとづら]は、〈外面〉と同じ意味のほか、特に、身内でない外の人に対するときの態度の意がある。やや俗語的な言葉。 **うわべ**は、物の外側に現れていて見える部分を言う。〈外面〉の日常語と言える。同義の〈うわつら〉〈うわっつら〉は、やや俗語的な感じがある。 | | 物事の | 葉書の | 地球の | 的な美しさ | を取り繕う | はよくて家では暴君だ | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **表** | ○ | ○ | | | | | | **表面** | ○ | | ○ | | ○ | | | **外面**[がいめん] | | | | ○ | | | | **外面**[そとづら] | | | | | | ○ | | **うわべ** | ○ | | | ○ | ○ | | # 趣[おもむき] ## 趣[おもむき] ## ムード ## 雰囲気[ふんいき] ## 情趣[じょうしゅ] ## 風情[ふぜい] ## 情緒[じょうちょ] ### 使い分け例 **趣**[おもむき]・・・「趣のある庭園。」「話の趣は承知した。」 **ムード**・・・「其の場のムードを損なう。」「険悪なムード。」 **雰囲気**[ふんいき]・・・「職場の雰囲気が明るい。」 **情趣**[じょうしゅ]・・・「情趣の深い邦楽。」 **風情**[ふぜい]・・・「寂しげな風情でたたずんでいる。」「退屈そうな風情で居る。」 **情緒**[じょうちょ]・・・「下町の情緒。」「情緒が安定している。」⇔情調。 ### どう使い分けるか **趣**は、何かが醸し出されていて、しみじみと感じられる味わいを言う。また、物事の主旨を言うこともある。やや文章語的である。 **ムード**は、その場に醸し出され <95> る気分や状態を言う。〈趣〉が主として良い状態を言うのに対し、良否にかかわらず用いる。日常語。 **雰囲気**は、〈ムード〉よりややかたい表現として用いられる。 **情趣**は、しみじみと心を打たれるような好い味わいのある様子を言い、〈趣〉よりさらに文章語的である。 **風情**は、その場の情景から感じられる風流でいかにも好ましい様子を言う。〈情趣〉と同じ意味で使われるほか、単にそこから受ける感じも言う。 **情緒**は、感情や心の動きを誘い出すその場の気分的環境である。心理学では、喜怒哀楽などの心の動き(=情動)を言う。 # 親方[おやかた] ## 親方[おやかた] ## 親父[おやじ] ## 親分[おやぶん] ## 巨頭[きょとう] ## 首脳[しゅのう] ## 旦那[だんな] ## (檀那)[だんな] ## ボス ## マスター ### 使い分け例 **親方**[おやかた]・・・「親方の世話になる。」 **親父**[おやじ]・・・「うちのおやじ。」「課長からおやじに頼んでください。」 **親分**[おやぶん]・・・「山賊の親分。」「親分風を吹かす。」⇔首領。⇔子分。 **巨頭**[きょとう]・・・「政界の巨頭。」「巨頭会談。」 **首脳**[しゅのう]・・・「首脳部。」「首脳会議。」 **旦那**[だんな]・・・「うちの旦那さんは優しい。」 **ボス**・・・「背後にボスがいる。」「ボス政治。」⇔顔役。領袖。 **マスター**・・・「酒場のマスター。」 ### どう使い分けるか **親方**は、その社会で後継者を指導・養成する責任を持った立場の有識経験者を言う。職人の棟梁や芸人の主人、相撲の年寄りなどのことである。 **親父**は、子が父親を言うほか、店・会社などの主や長を言ったり、単に中年すぎや老年の男を指して言ったりする。いずれもくだけた言い方である。 **親分**は、徒党を組んで行動する集団の頭を言う。悪事を働く集団に用いることが多い。 **巨頭**は、大きな組織の中で最も重要な位置にあり、実権を持って <96> いる人物の一人一人を言う。 **首脳**は一人一人でない集団をも言う。〈巨頭〉とともに文章語。 **旦那**は、使用人の側から言う自分たちの雇い主、商人の得意先や客、妻に対する夫、一家の主人、取り締まられる側から言う警官など色々に使う。ただし男に限られる。 **ボス**は、日本では普通〈親分〉の意味のくだけた言い方である。 **マスター**は、もともと熟練者の意味であったが、今は商店や酒場の経営者や店長・支配人などを呼ぶ言葉として用いられている。男に限る。 〔注意)〈旦那〉はもと梵語で寺院の施主の意味である。その意味では「檀那」と表記する。 # 及び[および] ## 及び[および] ## 並びに[ならびに] ## 又[また] ## 且つ[かつ] ## 乃至[ないし] ### 使い分け例 **及び**[および]・・・「本体及び付属品。」 **並びに**[ならびに]・・・「新聞並びに放送で発表する。」「淑女並びに紳士諸君。」「父及び母並びに親族。」 **又**[また]・・・「詩人でもありまた彫刻家でもある。」「食べてもよい。また食べなくてもよい。」 **且つ**[かつ]・・・「驚きかつ喜ぶ。」「必要かつ十分な条件がそろう。」 **ないし**・・・「修業年限は三年ないし五年。」「東京ないし横浜から出港する。」 ### どう使い分けるか **及び**は、前に述べた事柄に、同じ条件にあり、同じ範囲に含められるものを付け加えて述べるときに用いる。 **並びに**は、〈及び〉に似ているが、二つの事柄を同列対等に置いて述べるときに用いる。〈及び〉の場合、前後のものは必ずしも対等でない。 **又**・**且つ**は、接続詞としては、共に上に述べた事柄のほかに、別の観点の事柄も共存することを表すときに用いる。〈且つ〉のほうが文章語的である。なお、〈又〉は、二つの事柄がどちらをとっても同じだという場合にも使う。 <97> **ないし**は、「甲ー乙」という場合、甲から乙まで、の意で、範囲を限定することを表す。また、「または」「あるいは」と同じ意味でも使われる。かたい文章語。 〔注意〕 いずれも接続詞としてのみ取り上げたが、〈又〉〈且つ〉にはそれぞれ副詞としての別の意味がある。 # 降(下)りる[おりる] ## 降(下)りる[おりる] ## 落ちる[おちる] ## 下がる[さがる] ## 下る[くだる] ## 下降[かこう]する ### 使い分け例 **降りる**[おりる]・・・「山を降りる。」⇔登る。「霜が降りる。」「車を降りる。」「職を降りる。」 **落ちる**[おちる]・・・「階段から落ちる。」「成績が急に落ちる。」 **下がる**[さがる]・・・「ズボンが下がる。」「物価が下がる。」「成績が下がる。」⇔上がる。「三歩下がる。」 **下る**[くだる]・・・「坂を下る。」「天竜を下る。」「東海道を下る。」⇔上る。 **下降する**[かこうする]・・・「気球が下降する。」「水銀柱が下降する。」「物価が下降する。」⇔上昇する。 ### どう使い分けるか **降りる**は、人間や物体などが下方に向かって移動し、今までよりも低い位置に到達することを言う。人の場合、意図的な動作である。また、中から外に出ることや位や役目から退くことにも用いる。 **落ちる**は、人・物体などが重力で自然に下方へ移動することや、急速に一挙に低い位置や段階に行くことを言う。 **下がる**は、一方の位置や段階に対してより低い位置や段階に変わったことが認められることを言う。抽象的な価値や度合いの移動にも使われる。〈降りる〉が起点から離れて移動することに重点があるのに対し、〈下がる〉は移動の結果の到達点に重点がある。 **下る**は、高い位置から低い位置に向かって移動することを言い、川の上流から下流へ、また都や駅の起点から遠ざかることにも用いる。〈降りる〉よりも移動の経路が長い場合に使う。 <98> | | 山を | 川を | 階段を | 一階に | 値段が | 成績が | 車を | 職を | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **降りる** | ○ | | | ○ | | | ○ | ○ | | **落ちる** | | | ○ | | ○ | ○ | | | | **下がる** | | | | ○ | ○ | ○ | | | | **下る** | | ○ | | | | | | | **下降する**は、〈降りる〉とほぼ同義の漢語的な言い方だが、かなり高い所から下方へ移動する場合の使用が多い。 # 終わり[おわり] ## 終わり[おわり] ## 仕舞(終)い[しまい] ## 終末[しゅうまつ] ## 終了[しゅうりょう] ## 終結[しゅうけつ] ## 終焉[しゅうえん] ## 最終[さいしゅう] ## 最後[さいご] ## 最期[さいご] ## 果て[はて] ## 末[すえ] ## 末尾[まつび] ## ラスト ### 使い分け例 **終わり**[おわり]・・・「仕事はこれで終わり。」「一年の終わり。」「手紙の終わり。」⇔始め。初め。始まり。 **仕舞い**[しまい]・・・「映画を仕舞いまで見る。」「店を仕舞いにする。」 **終末**[しゅうまつ]・・・「事件は終末を迎えた。」⇔結末。 **終了**[しゅうりょう]・・・「行事の終了は四時である。」 **終結**[しゅうけつ]・・・「戦争は終結に向かう。」⇔終決。終息。 **終焉**[しゅうえん]・・・「英雄の終焉の地。」 **最終**[さいしゅう]・・・「最終の電車。」「最終回。」 **最後**[さいご]・・・「本日最後の番組。」「列の最後の人。」⇔最初。 **最期**[さいご]・・・「木曽義仲の最期。」⇔臨終。末期。 **果て**[はて]・・・「地の果てから現れる。」「旅路の果て。」「果てのない欲望。」 **末**[すえ]・・・「今月の末には帰国する。」「末は博士か大臣か。」「末の問題。」 **末尾**[まつび]・・・「名簿の末尾に加える。」 **ラスト**・・・「映画のラスト。」「ラストでゴールインする。」⇔トップ。 ### どう使い分けるか **終わり**は、何か連続してきた物事が、これ以上先には続いていかなくなること、また、そういう一番端の部分。 **仕舞い**は、今までやっていたことにかたを付けてやめることで、ある行為におけるひと区切りについて言う。 **終末**は、いろいろな経過をたどった事件や物語の結果が出る部分を言う。 **終了**は、終わること・終えること <99> の意の漢語。行為・動作の〈終わり〉であり、「一年の一」「手紙の―」とは言わない。 **終結**は、今まで難航していた事態や物事が解決する段階に来ることを言う。論理学では、仮説から推論によって得られる結論を言う。以上三語は文章語。 **終焉**は、静かに落ち着いて生命を全うし死ぬ、の意の漢語。また、安定した老後を言うこともある。非常にかたい文章語。 **最終**は、時間的にみた最も後の部分をいい、**最後**は、空間的に並んだ順番の最も後の部分をも言う。**最期**は、生命の尽きる時のことで、人の死について用いる。この意味で〈最後〉を使っても誤りではない。 **果て**は、自分の位置から見て一番遠い端の部分を言う。また、物事をし尽くしたところ、行き着いたところの意にも用いる。 **末**は、ある期間や区間の一方の端で、自分にとって遠い方の部分を言う。また、余り大切でない方の部分を言うこともある。 **末尾**は、文や番号などひと続きのものや、表や列の順番などの後ろの方を言う。 **ラスト**は、〈最後〉のくだけた言い方として、またスポーツ用語として用いる。 # 恩[おん] ## 恩[おん] ## 恩恵[おんけい] ## 恩義[おんぎ] ## 恩顧[おんこ] ## 恩典[おんてん] ### 使い分け例 **恩**[おん]・・・「親や師の恩。」「恩を忘れる。」「恩を与える。」「恩に着せる。」⇔恵み。お蔭。 **恩恵**[おんけい]・・・「天候の恩恵を受ける。」「法の恩恵に浴する。」 **恩義**[おんぎ]・・・「恩義を感じる。」 **恩顧**[おんこ]・・・「日頃の恩顧に感謝する。」 **恩典**[おんてん]・・・「大赦の恩典にあずかる。」 ### どう使い分けるか **恩**は、目上の者が相手のためを思って純粋な気持ちでする、情け深い言動を言う。日常語。 **恩恵**は、自然や公共団体などが与え、その人が豊かで幸せになるような状況や行為を言う。〈恩〉が個人的な関係を主とするのに対 <100> し、〈恩恵〉はもっと広い立場を含んだ言い方である。 **恩義**は、人から受けたありがたい行為で、報いて返さなければならないと心の中で感じているものを言う。 **恩顧**は、目上から掛けられた情けや恵みのことで、文章語的表現である。 **恩典**は、情けや恵み深い処置や制度のことを言う。 〈恩〉以外の四語は文章語である。 # 女[おんな] ## 女[おんな] ## 女性[じょせい] ## 女子[じょし] ## 婦人[ふじん] ## おなご ## 乙女[おとめ] ### 使い分け例 **女**[おんな]・・・「女の子。」「女の園。」「まだ女を知らない少年。」「彼の女。」「女すり。」⇔男。 **女性**[じょせい]・・・「女性の社会進出。」「女性解放運動。」「女性議員。」⇔男性。 **女子**[じょし]・・・「女子大学。」「女子プロゴルフ。」「女子従業員。」⇔男子。 **婦人**[ふじん]・・・「こちらのご婦人方。」「婦人警察官。」「婦人参政権。」 **おなご**・・・「おなご衆の仕事。」 **乙女**[おとめ]・・・「乙女の感傷。」 ### どう使い分けるか **女**は、人の性別の一つで男でない方をいい、最も一般的に用いられる日常語である。 **女性**は、青年期以後について用いる場合が多い。〈女〉は、男が特に恋愛や性の対象としての意で使ったりするが、〈女性〉にはそれがない。また、わずかに敬意が込められているようである。やや文章語的である。 **女子**は、子供や若い女について言うが、成人した女に用いることもある。後者は複合語の場合が多く、文章語的である。〈女性〉のような敬意は感じられない。 **婦人**は、成人した女で、〈女性〉に比べ、更に少し敬意が感じられる一方、やや古い感じもある文章語である。 **おなご**は、〈女子〉の古風な言い方で関東ではあまり使わないが関西では日常語的である。 **乙女**は、少女や、若い清純な女性を言う語である。 <101> # 改革[かいかく] ## 改革[かいかく] ## 変革[へんかく] ## 革新[かくしん] ## 改良[かいりょう] ## 改善[かいぜん] ## 革命[かくめい] ### 使い分け例 **改革**[かいかく]・・・「社会制度を改革する。」「機構の改革を図る。」 **変革**[へんかく]・・・「日本経済が変革を遂げる。」「選挙民の意識を変革する。」「社会の変革期。」 **革新**[かくしん]・・・「保守と革新。」「技術を革新する。」「革新的な意見。」⇔保守。 **改良**[かいりょう]・・・「改良を加えて、騒音の少ない機械にする。」「米の品種を改良する。」 **改善**[かいぜん]・・・「食生活の改善。」「体質改善を図る。」「会議のやり方を改善する。」 **革命**[かくめい]・・・「自由と平等をうたい革命を起こす。」「フランス革命。」「産業革命。」 ### どう使い分けるか **改革**・**変革**は、ほぼ同義で、入れ換え可能なケースが多いが、〈改革〉は制度・機構・方式など、形のはっきり定まっているものについて言うことが多く、〈変革〉は比較的形のはっきりしない大きな物事について言うことが多い。また「する」をつけて動詞にする場合、〈改革する〉は他動詞だが、〈変革する〉は自動詞・他動詞両方に使える。 **革新**も、前二語と非常に似ているが、これまでの古いやり方やあり方を新しいものに変えるという点を強調した言葉である。制度や機構などについても使うが、慣習・因習などの打破という意味合いで使う傾向がある。 **改良**・**改善**は、よりよく変える点で似るが、〈改善〉がやり方・あり方などを変えてよい方向へと持っていくのであるのに対して、〈改良〉は形を持つ物について用いることが多い。「生活の仕方を改良す <102> る」とは言わない。 | | 古い制度を | 農地を | 技術を | 意識を | 生活を | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **改革** | ○ | ○ | | | | | **変革** | ○ | | | ○ | | | **革新** | ○ | | ○ | ○ | | | **改良** | | ○ | ○ | | | | **改善** | | | | | ○ | **革命**は、社会の根本からの重大で全体的な変革・改革を言う。比喩的には「意識―」などのように広く使う。 〔注意) この六語中、〈革命〉だけは「する」がついて動詞となることがない。 # 会議[かいぎ] ## 会議[かいぎ] ## 協議[きょうぎ] ## 合議[ごうぎ] ## 会談[かいだん] ## 審議[しんぎ] ### 使い分け例 **会議**[かいぎ]・・・「会議を開いて運営方針を定める。」「役員たちが会議する。」 **協議**[きょうぎ]・・・「三者の代表が協議する。」「協議離婚。」 **合議**[ごうぎ]・・・「共有の土地を、合議の上で売却する。」「合議して決める。」 **会談**[かいだん]・・・「各国の首脳が集まって会談する。」「巨頭会談。」 **審議**[しんぎ]・・・「税制問題を審議する。」「中央教育審議会。」「予算審議。」 ### どう使い分けるか **協議**は、対立的でまとまりにくい問題に各当事者の意見にかなった解決を得るための協調的な話し合いであることが多く、〈合議〉とともに話し合いの手続きや形式にはこだわらない。 **会議**は、三人以上集まるのが普通だが、〈協議〉〈合議〉は二人の話し合いでもよい。 **合議**は〈会議〉より、また比較的〈協議〉よりも公的な意味合いは薄い。「協議会」「審議会」の言葉はあるが「合議会」とは言わない。 **会談**は、組織の代表者が公的な立場で話し合うこと。 **審議**は、提出された原案について検討・評議する意味が加わる。 # 外人[がいじん] ## 外人[がいじん] ## 外国人[がいこくじん] ## 異邦人[いほうじん] ## 異人[いじん] <103> ### 使い分け例 **外人**[がいじん]・・・「日本にも外人が多く住んでいる。」⇔邦人。 **外国人**[がいこくじん]・・・「外国人の観光客。」 **異邦人**[いほうじん]・・・「彼のような人は、我々の中では異邦人と言える。」 **異人**[いじん]・・・「我が国にもかつて異人の残していった文物がある。」「異人館。」「長崎の、昔異人さんの住んだ館。」 ### どう使い分けるか **外人**は、外国人を略した俗語。公的な言葉としては〈外国人〉を使う。 **異邦人**も、もとは外国人の意だが、今では、自分のよく知らないゆかりのない類の人を比喩的に言うことが多い。〈外国人〉より文章語的である。 **異人**は、古風な言い方で、特に西洋人を指した。 # 改正[かいせい] ## 改正[かいせい] ## 改定[かいてい] ## 改訂[かいてい] ## 修正[しゅうせい] ## 訂正[ていせい] ### 使い分け例 **改正**[かいせい]・・・「条例(条約)を改正する。」「鉄道ダイヤの改正。」「規約改正。」 **改定**[かいてい]・・・「運賃の改定。」「価格を改定する。」 **改訂**[かいてい]・・・「辞書を改訂する。」「改訂版。」 **修正**[しゅうせい]・・・「法案を修正する。」「軌道修正。」 **訂正**[ていせい]・・・「誤字を訂正する。」「先の報告に訂正を加える。」 ### どう使い分けるか いずれも改め直す意。 **改正**・**改定**は、法令・規約などについて多く用いるが、〈改定〉はその場合、主に数値の変更について使う。 **改訂**は、現在では多く書物の内容などを改め、作り直す場合に使う。 **修正**は、完全に誤りとは言えないものを、よりよく直すことを言う。また、法案・議案など、「案」の段階で直すのは〈修正〉である。 **訂正**は、言ったり書いたりして発表したものの間違いを正すこと。書物の場合、〈改訂〉のように書 <104> 物そのものを作り直すわけではない。〈修正〉〈訂正〉は器物や機械などの故障・破壊を直して復元させることや、仕組み・社会体制を直すことには言わない。 | | 全面的に | 一部を | 条約を | 料金を | 軌道を | 発言を | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **改正** | ○ | ○ | ○ | | | | | **改定** | ○ | ○ | | ○ | | | | **改訂** | ○ | ○ | | | | | | **修正** | | ○ | | | ○ | | | **訂正** | | | | | | ○ | # 概要[がいよう] ## 概要[がいよう] ## 概略[がいりゃく] ## 大意[たいい] ## 要約[ようやく] ## 粗筋[あらすじ] ## 大綱[たいこう] ## アウトライン ### 使い分け例 **概要**[がいよう]・・・「事件の概要。」「会社の概要。」「概要次のように話した。」⇔大要。 **概略**[がいりゃく]・・・「経過の概略を説明する。」「講義の概略。」「概略それでよろしい。」「商店は概略閉店した。」⇔大略。 **大意**[たいい]・・・「文章の大意をまとめる。」「話の大意をつかむ。」 **要約**[ようやく]・・・「共同声明の要約をのせる。」◎要旨。「内容を要約する。」 **粗筋**[あらすじ]・・・「源氏物語のあらすじ。」⇔梗概。 **大綱**[たいこう]・・・「計画の大綱ができる。」⇔細目。 **アウトライン**・・・「論文のアウトライン。」「計画のアウトラインを描く。」◎輪郭。 ### どう使い分けるか **概要**と**概略**は、簡単に言えば共にあらましで、ほとんど同義である。ただ、両方とも副詞的用法があるのだが、前者はその場合、言語活動を示す言葉の修飾に限られ、後者は、例のようにそれ以外の使用例がまれにある点が異なっている。 **大意**は、文章や話のあらましで、後の〈粗筋〉に近いが、小説やドラマなど以外の文章について言うことが多い。 **要約**は、文章などの要点をつかみまとめること。またそうしてまとめられた言葉(文章)。後の意では〈要旨〉と同義になる。また、〈大意〉とも近いが、〈大意〉がいわ <105> ば元の文章を相似形で縮小した感じがあるのに対して、〈要約〉は結論に重点を置き、その他の部分は大きく略している。 **粗筋**は、小説・戯曲などのストーリーのあらましを言い、論説文や説明文などについては言わない。同義語の〈梗概〉はかなりかたい文章語で、〈粗筋〉は日常語。 **大綱**は、計画・方針・法案などの全体の最も基本的な骨組み。箇条書きし得るようなものである。 **アウトライン**は、〈大綱〉に近いが、〈大綱〉よりラフな感じがある。本来の意味は、物体の周囲の形を表す線=輪郭であり、〈輪郭〉ともども、物事のあらまし、の意に使われている。 # 会話[かいわ] ## 会話[かいわ] ## 対話[たいわ] ## 面談[めんだん] ## 対談[たいだん] ## 会談[かいだん] ## 鼎談[ていだん] ## 座談[ざだん] ## 談話[だんわ] ## 懇話[こんわ] ## 懇談[こんだん] ### 使い分け例 **会話**[かいわ]・・・「会話がはずむ。」「英会話。」 **対話**[たいわ]・・・「親子の対話が欠けている。」 **面談**[めんだん]・・・「採用は面談の上で決める。」 **対談**[たいだん]・・・「対談の内容を公表する。」 **会談**[かいだん]・・・「両国の首脳が会談する。」 **鼎談**[ていだん]・・・「三党首が鼎談する。」 **座談**[ざだん]・・・「座談の名手。」「座談会。」 **談話**[だんわ]・・・「談話室。」「総理の談話。」 **懇話**[こんわ]・・・「俳文学懇話会。」 **懇談**[こんだん]・・・「父兄と懇談する。」 ### どう使い分けるか **会話**は日常生活における話のやりとり、**対話**は二人が向かい合って話すこと、**面談**は面会して直接に話をすることを言う。 **対談**は二人で向かい合って相談したり、特にあるテーマについて語り合ったりすること、**会談**は面会して話し合うことであるが、責任ある立場の者の公的な場合に使う。 **鼎談**は三者会談の意(鼎は三本の足のある器)。 **座談**は数人が同席して気楽に話し合うことで、「一会」はある問題について自由に形式ばらずに話す会合を言う。**談話**はくつろいで <106> 話をするという意と、公的な事柄について形式ばらないで行う意見の発表という意とがある。 **懇話**と**懇談**はどちらも打ち解けてじっくりと話し合うことで、全く同義と言ってよいが、前者は「―会」という形以外にあまり使われず、後者には相談するというニュアンスを含んで使われる場合がある。 # 変える[かえる] ## 変える[かえる] ## 換(替)える[かえる] ## 代える[かえる] ## 改める[あらためる] ## 変更[へんこう]する ## 交換[こうかん]する ## 変換[へんかん]する ## 交替(交代)[こうたい]する ### 使い分け例 **変える**[かえる]・・・「顔色を変える。」「態度を変える。」「方針を変える。」 **換(替)える**[かえる]・・・「机の脚を換える。」「バケツの水を換える。」「宝石を金に換える。」「言い換える。」 **代える**[かえる]・・・「挨拶に代える。」「何物も命には代えられない。」 **改める**[あらためる]・・・「日を改めて参上します。」「態度を改める。」「金額が正しいかどうか改める。」 **変更する**[へんこうする]・・・「予定を変更する。」「決定を変更する。」 **交換する**[こうかんする]・・・「部品を交換する。」「交換条件。」「意見を交換する。」「チリ紙交換。」 **変換する**[へんかんする]・・・「光を電気に変換する。」「漢字変換。」 **交替(交代)する**[こうたいする]・・・「勤務を交替する。」「選手交代。」 ### どう使い分けるか **変える**は、そのもの自体の様子やあり方をかえる場合に使う。例えば状態・性質・位置・考え方など。 **換(替)える**・**代える**は、そのものとは別の他の何かにかえる、の意。中で、〈代える〉は、本来そうでない他の役目をさせる、代理・代用をさせる、の意。 **改める**は、あり方・やり方を特に新しくする、改善するなどの意味合いで使うことがある。検査する、吟味する、などの意も表す。 **変更する**は、ほぼ〈変える〉と同義の漢語的表現と言ってよい。ただし、「顔色を―」などとは言わ <107> ない。 **交換する**は、ものとものとを取り換える、引き換える、の意だが、物質とは限らず「意見をー」などの使い方もある。 **変換する**は、物事を別の性質のものに変える場合に使う。ほとんど物理・数学などの分野に限られ、人間の性質・態度などを変える場合などには使わない。 **交替(交代)する**は、一つの任務で人がかわる場合に使う。 # 返る[かえる] ## 返る[かえる] ## 帰る[かえる] ## 戻る[もどる] ## 引き返す[ひきかえす] ### 使い分け例 **返る**[かえる]・・・「貸した金が返る。」「北方領土が返ってくる。」「軍配が返る。」「答えが返ってくる。」 **帰る**[かえる]・・・「客が帰る。」「旅から帰る。」「外国で生まれた子が両親の国に帰る。」「一週間ほど実家に帰る。」 **戻る**[もどる]・・・「盗まれた金が戻る。」「交差点に戻る。」「来た道を少し戻る。」「体力が元に戻る。」「夫と別れ実家に戻る。」 **引き返す**[ひきかえす]・・・「途中から引き返す。」 ### どう使い分けるか **返る**は、物や事が元の所に移る、また元の状態になる、の意。返事が来る、上下・表裏が逆になる、などの意もある。 **帰る**は、人や動物が、元の場所や本来あるべきところに移る、の意。物については言わないが、乗物は例外。ただし「船が港にー」などは擬人法とも言える。 **戻る**は、人にも人以外の物事にも使われ、〈返る〉〈帰る〉と同義で使われる場合も多い。しかし、〈戻る〉の動作の到達点は単に前に居た所であるのに対して、〈返る〉〈帰る〉では、本来あるべき所の意味合いがある。外国生まれの子供が初めて祖国に行くのに〈帰る〉を使い得るのはそのためである。また〈帰る〉は、人などの位置の移動であるが、〈戻る)は状態・性質が元のようになる場合にも使う。「実家に戻る」というのは、単に体が移動するだけでなく、家族関係の変化を意味する <108> が、「実家に帰る」ではそういう意味にはならない。 | | 貸した金が | 家に | 故郷に | 来客が | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **返る** | ○ | | | | | **帰る** | | ○ | ○ | ○ | | **戻る** | ○ | ○ | | | **引き返す**は、人・動物・乗物についてのみ使われ、その場合のへ戻る〉と共通する用法が多いが、違いは、〈引き返す〉が目的地まで行かずに途中から進行経路を逆行する場合にだけ使われることである。 # 顔立ち[かおだち] ## 顔立ち[かおだち] ## 顔付き[かおつき] ## 容貌[ようぼう] ## かんばせ ## 表情[ひょうじょう] ## 相好[そうごう] ### 使い分け例 **顔立ち**[かおだち]・・・「整った顔立ち。」「子供っぽい顔立ち。」 **顔付き**[かおつき]・・・「険しい顔付きになる。」「真剣な顔付き。」 **容貌**[ようぼう]・・・「容貌の優れた人。」「容貌魁偉。」 **かんばせ**・・・「花のかんばせ。」 **表情**[ひょうじょう]・・・「明るい表情になる。」「表情が豊かだ。」「気持ちを表情に表す。」「表情をとらえる。」 **相好**[そうごう]・・・「孫を見てうれしさに相好を崩す。」 ### どう使い分けるか **顔立ち**は、その人その人に大体きまった顔の様子の意。顔のつくり。目鼻立ち。対して、**顔付き**は、その時その時の表情の感じを言うことが多い。 **容貌**は、〈顔立ち〉の意の漢語で文章語。 **かんばせ**は、顔の様子。〈顔立ち〉が形について言うのに対して、色なども含めて言う。日常語としてはあまり使わない雅語的な言葉である。「花のー」は美しい顔のことを言う。 **表情**は、〈顔付き〉とほとんど同じ意だが、顔だけでなく、しぐさ・態度などに表れたものを含む場合がある。 **相好**も顔付き、顔の表情の意だが、「ーを崩す」という慣用句で使うことが多い。 <109> # かかわる ## 係(関)わる[かかわる] ## 関係[かんけい]する ## 関する[かんする] ## 関連[かんれん]する ## 掛かり合う[かかりあう] ## 関与[かんよ]する ### 使い分け例 **かかわる**・・・「君の仕事に僕がかかわる。」「人権にかかわる問題だ。」 **関係する**[かんけいする]・・・「私はその仕事に関係する者です。」「天候が生産高に関係する。」「事件に関係がある。」 **関する**[かんする]・・・「植物に関する詳しい知識。」「我関せずという態度。」 **関連する**[かんれんする]・・・「今の話題に関連する発言でしたら、どうぞ。」「関連会社。」 **掛かり合う**[かかりあう]・・・「他人のことに掛かり合いたくない。」 **関与する**[かんよする]・・・「今回の事業計画に我々も関与する。」「犯行への関与。」 ### どう使い分けるか **かかわる**と**関係する**は同義の和語と漢語的な語。**関する**も同義だが、文章語的である。**関連する**もほとんど同義だが、〈関する〉に比べかかわりあう二者の間はわずかに距離が大きい感じがある。例えば「花に関する話」と「花に関連する話」では、前者は花そのものの話でもよいが、後者は花に関係のある、しかし、花そのものではないものの話というふうになる。〈かかわる〉〈関係する〉は「事件に一人」と言えるが〈関する〉〈関連する〉は普通そういう言い方をしない。 **掛かり合う**は、人が物事や人とかかわる・携わることに言い、「生物に―資料」などとは言わない。 **関与する**は(人が)直接にかかわり入り込む、参画する意。 〔注意〕〈関する〉は普通終止形で使わない。 # 垣根[かきね] ## 垣根[かきね] ## 塀[へい] ## 垣[かき] ## 囲い[かこい] ## フェンス ### 使い分け例 **垣根**[かきね]・・・「竹を編んだ垣根。」「垣根越 <110> しに話す。」 **塀**[へい]・・・「刑務所の高い塀。」「土塀。」「板塀。」 **垣**[かき]・・・「石垣。」「竹垣。」「生け垣。」「玉垣。」「みずがき。」「垣越し。」 **囲い**[かこい]・・・「家のまわりに囲いをする。」 **フェンス**・・・「フェンスを張る。」「アルミフェンス。」「金網のフェンス。」 ### どう使い分けるか **垣根**・**塀**はいずれも自分の家や屋敷とそれ以外の土地とを仕切る囲い。〈垣根〉は木や竹などで作る簡単なもので比較的低く、すき間も多い。〈塀〉は土・石・板・コンクリート・ブロックなどで作られ、隔絶の効果がより大きなもの。 **垣**は、〈垣根〉と同義だが、より古風で、複合語の一部としてのほかは日常あまり使わない。〈垣根〉は「垣の根元」の意もあるが、普通は「根元」の意味なしに前述の意味で使う。 **囲い**は、物の四方をふさぐこと。また、そのための物で垣根や塀のことも言う。 **フェンス**は、〈垣根〉〈塀〉の意で、特に球場のグラウンドを囲む塀には〈フェンス〉を使う。 # 書く[かく] ## 書く[かく] ## 記す[しるす] ## 認める[したためる] ## 記述[きじゅつ]する ## 記入[きにゅう]する ## 記載[きさい]する ## 記録[きろく]する ### 使い分け例 **書く**[かく]・・・「字を書く。」「文章を書く。」「小説を書く。」 **記す**[しるす]・・・「出来事をノートに記す。」「名前を記す。」「マークを記す。」「心に記す。」 **したためる**・・・「手紙をしたためる。」「日記をしたためる。」 **記述する**[きじゅつする]・・・「詳細に記述する。」 **記入する**[きにゅうする]・・・「必要事項を記入する。」 **記載する**[きさいする]・・・「雑誌に記載する。」「名前の名簿への記載。」 **記録する**[きろくする]・・・「議事を記録する。」「病状の記録。」 ### どう使い分けるか **書く**は、文字・絵・図、また文章(詩・小説・日記・手紙)など広く目 <111> 的語になるが、**記す**は「絵を―」「小説をー」と言わない。その代わり「心に―」のような使い方がある。〈書く〉の方が日常語的である。 **したためる**は、「書き記す」の意では日記・手紙などについて使うが限られており、かなり古風である。 | | 日記を | 持ち物に名を | 遺書を | 小説を | 心に | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **書く** | ○ | ○ | ○ | ○ | | | **記す** | | ○ | | | ○ | | **したためる** | ○ | | ○ | | | **記述する**は、考えを書き記して述べる意。当然文章になる。これに対して**記入する**は、書類・表などの中に書き入れる意で、書かれるものは語句や記号でもよい。**記載する**は、書類や書物の中に載せる意。〈記入〉が筆記具を使う動作であるのに対して、そういう動作を言うのではない。 **記録する**は、後に残すため記し留める意。映像や音声についても使う。〈記載する〉が、ある程度きちんとした文書や書物の中に、であるのに対して、〈記録する〉は書物の中とは限らず、メモなどを含む。 〔注意〕〈したためる〉は食事をするの意に使うこともある。 # 隠す[かくす] ## 隠す[かくす] ## 秘める[ひめる] ## 秘する[ひする] ## 潜める[ひそめる] ## 匿う[かくまう] ## 隠匿[いんとく]する ## 隠蔽[いんぺい]する ### 使い分け例 **隠す**[かくす]・・・「子どもを背中に隠す。」「金を隠す。」「不安の色は隠せなかった。」「真実を隠す。」⇔現す。 **秘める**[ひめる]・・・「心に秘めた思いを打ち明ける。」「謎を秘めた遺跡。」 **秘する**[ひする]・・・「名を秘する。」 **潜める**[ひそめる]・・・「声を潜めて話す。」「世論に押され悪徳業者も影を潜めた。」「鳴りを潜める。」 **かくまう**・・・「犯人をかくまう。」 **隠匿する**[いんとくする]・・・「食料を隠匿する。」「犯人を隠匿する。」「隠匿物資。」 **隠蔽する**[いんぺいする]・・・「建物を幕で隠蔽する。」「事実の隠蔽。」⇔暴露する。 ### どう使い分けるか **隠す**は、最も一般的に、他人に <112> 知られないように、見えないようにする、の意。 **秘める**は、普通、物や人を目的語としない。**秘する**は同義だが、より文章語的である。 **潜める**は、目立たないように小さくする意味にも使う。 **かくまう**は、人を隠すことに用い、隠すこと自体をこっそりと行うことを言う。 **隠匿する**は、〈隠す〉〈かくまう〉の意の漢語的な言い方だが、物について言うことが多い。 **隠蔽する**は、蔽い隠す意。 # 駆け回る[かけまわる] ## 駆け回る[かけまわる] ## 駆けずり回る[かけずりまわる] ## 飛び回る[とびまわる] ## 奔走[ほんそう]する ## 東奔西走[とうほんせいそう]する ## 狂奔[きょうほん]する ### 使い分け例 **駆け回る**[かけまわる]・・・「運動場を駆け回る。」「就職のために駆け回る。」 **駆けずり回る**[かけずりまわる]・・・「資金集めに駆けずり回る。」 **飛び回る**[とびまわる]・・・「みつばちが野原を飛び回る。」「金策に飛び回る。」 **奔走する**[ほんそうする]・・・「基金調達に奔走する。」「企画実現のために奔走する。」「先輩の奔走のおかげで助かる。」 **東奔西走する**[とうほんせいそうする]・・・「東奔西走して材料を集めた。」「東奔西走の日々。」 **狂奔する**[きょうほんする]・・・「両陣営とも選挙運動に狂奔する。」「地上げ屋の狂奔。」 ### どう使い分けるか **駆け回る**は、あたりをあちこち走り回る、転じてあちこち忙しく回って尽力する、の意。**駆けずり回る**はそれを強調した、やや俗語的な表現。**飛び回る**も元の意味から転じて、同じような意味に使われる。 **奔走する**は駆け回って物事がうまく運ぶよう努力する、またあれこれ世話をする意で、**東奔西走する**はこれを強調した表現。これらは「運動場をー」のようには使わない。 **狂奔する**は事に熱中してなりふりかまわず奔走する意であるが、「興奮した馬がー」のように使うこともある。 <113> # かすか ## 幽(微)か[かすか] ## うっすら ## ほんのり ## 仄か[ほのか] ### 使い分け例 **かすか**・・・「かすかに動いた。」「かすかにほほえむ。」「かすかな記憶をたどる。」「かすかに息をしている。」 **うっすら**・・・「うっすら目を開く。」「うっすら記憶にある。」「うっすら耳にする。」「雪がうっすら積もる。」 **ほんのり**・・・「桜がほんのり色づく。」「ほんのり甘い。」 **ほのか**・・・「ほのかに香る。」「ほのかに秋の気配が感じられる。」「ほのかな恋心。」 ### どう使い分けるか **かすか**は、視・聴・臭・味などの感覚がとらえる微弱な様子を表す語で、心の動き、気配などにも言い、この四語の中では最も広く用いる。だが、物理的なことに比較的よく用い、「うっすら笑みを浮かべる」「ほんのり甘い」「ほのかに香る」などの、奥に控えていて全面的には現れないゆえのムードや味わいには欠ける。逆に「かすかに息をする」を他では表さない。 **うっすら**は、物のほか、意識などの表面に浮かび見えるものの様子によく使う。 **ほんのり**・**ほのか**は、色・光・味などの手でつかめないようなものの表現によく使い、暖かみを感じるものにあてることが多い。〈ほのか〉は、「―に聞く」などとも使う。やや文語的。 〔注意〕〈うっすら〉〈ほんのり〉は副詞。他の二つは形容動詞語幹。 # 形[かたち] ## 形[かたち] ## 形[なり] ## 型[かた] ## 形式[けいしき] ## 型式[かたしき] ## 類型[るいけい] ## 典型[てんけい] ## 様式[ようしき] ## タイプ ## パターン ## スタイル ### 使い分け例 **形**[かたち]・・・「美しい形の山。」「形ばかりのあいさつ。」「形を整える。」 **形**[なり]・・・「洋服の形がくずれる。」「壁に <114> 手の形がつく。」「借金のかた。」 **型**[かた]・・・「石膏で型をとる。」「型紙。」「演技の型を習得する。」「型にはまる。」「新しい型の人間。」「小型乗用車。」 **形式**[けいしき]・・・「お供えの形式。」「手紙文の形式。」「結婚式の形式。」「形式張る。」「形式主義と内容主義。」 **型式**[かたしき]・・・「古い型式の機械。」「型式証明。」 **類型**[るいけい]・・・「社会現象を類型によって分ける。」「人物がみな類型的でつまらぬ。」 **典型**[てんけい]・・・「この作品は後期ロマン派の典型である。」「典型的な職人気質。」 **様式**[ようしき]・・・「一定の様式に従う。」「ゴシック様式。」「生活様式を変える。」 **タイプ**・・・「新しいタイプの車。」「くよくよするタイプの人。」「荒れやすいタイプの肌。」 **パターン**・・・「行動のパターン。」「新しいパターンを作り出す。」「ワンパターン。」 **スタイル**・・・「生活のスタイルを頑として変えない。」「小説に独特のスタイルを生み出した。」「スタイルブック。」 ### どう使い分けるか **形**は物の姿、格好の意。 **形**も大体同義だが、一語として使うことはあまり多くなく、例の一、二は、〈かたち〉と言ってもよい。だが最後の例は特殊な意味で、〈かたち〉とは言わない。 **型**は、個々のものの形の元になるもの、②規範あるいは習慣としての一定の形式、③同類の多数のものに共通の形や形式、などの意がある。〈型〉はタイプやモデル、〈形〉は具体的な個々のものの形状・ありさまと考えるとわかりやすい。〈型〉の②は「形」と書くこともある。 **形式**は、人間の作るもので、内容に対する外面的なもの、またはそうする決まりになっている一定の型。対して**型式**は機械・自動車・航空機などにおいて、構造・形などの特徴による型。 **類型**は、似た型、または同類のものを**典型**は、同類のものの中の模範、または同類の特徴を最もよく表しているもの。いずれもその型であるという共通性はあるが、「類型的」が(同類のものと比べて)特徴がないさま、「典型的」が(同類のものの中でも特に他の類に比べ)特徴的で <115> あるという観点の違いがある。 **様式**は、〈形式〉が具体的な形をとらえて言うのに対して、その全体に共通の特徴をとらえたもので、より抽象的である。 **タイプ**は、その類に共通する形(=型)。物事のやり方の型の意は表さない。対して**パターン**は、決まった型や様式によるやり方、の意も表す。 **スタイル**は、様式、姿、格好のほか文体や作風についても言い、「ーブック」の例では特に服装の型を言い、「ーがいい(人)」というのは体型を指す。 | | 新しい | の挨拶 | 学者 | コロニアル | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **型** | ○ | ○ | ○ | | | **形式** | | ○ | | | | **タイプ** | ○ | | ○ | | | **スタイル** | | | | ○ | # 悲しみ[かなしみ] ## 悲(哀)しみ[かなしみ] ## 嘆き[なげき] ## 憂い[うれい] ## 悲哀[ひあい] ## 哀愁[あいしゅう] ## 悲嘆[ひたん] ## 悲観[ひかん] ### 使い分け例 **悲しみ**[かなしみ]・・・「悲しみに打ちひしがれる遺族。」「悲しみを乗り越える。」⇔喜び。 **嘆き**[なげき]・・・「嘆きを訴える。」 **憂い**[うれい]・・・「憂いに満ちた表情。」「備えあれば憂いなし。」 **悲哀**[ひあい]・・・「人生の悲哀を感ずる。」 **哀愁**[あいしゅう]・・・「哀愁の漂う街。」「哀愁を感じさせるメロディー。」 **悲嘆**[ひたん]・・・「子を失い悲嘆にくれる。」 **悲観**[ひかん]・・・「将来を悲観する。」「悲観的な見方。」⇔楽観。 ### どう使い分けるか **悲しみ**は、心に痛みを感じ泣けてくるような気持ちを表す。 **嘆き**は、悲しみや苦しみ、憤りなどが深く、ため息の出るような感じであること。 **憂い**は、心の閉ざされるような憂鬱な悲しい気持ち。「後顧の―」などでは心配・不安の意。一つの事態から直接引き起こされる場合も多い。 **悲哀**は、そこはかとなくひっそりとしているが切なさに似た悲しみ。 **哀愁**は、物悲しい感じを客観的に印象などとして表す。味わい・ <116> 趣にも言う。〈憂い〉〈哀愁〉は、〈悲しみ〉のように直情的でなく漂うような悲しみであり、「ーをこらえる」「―を乗り越える」のようには言わない。 **悲嘆**は、悲しみ嘆くこと。 **悲観**は物事の考え方に言う。 [注意]〈憂い〉は〈憂え〉の転。 # 必ず[かならず] ## 必ず[かならず] ## きっと ## 絶対(に)[ぜったいに] ## 必定[ひつじょう] ### 使い分け例 **必ず**[かならず]・・・「正義は必ず勝つ。」「朝は必ず早く起きる。」「必ず来るとは限らない。」 **きっと**・・・「きっと明日は晴れるだろう。」「きっと成功すると思う。」 **絶対(に)**[ぜったいに]・・・「明日の試合は絶対に負けられない。」「絶対そんなことはない。」 **必定**[ひつじょう]・・・「昇格は必定と心得る。」「必定われらは勝つ。」 ### どう使い分けるか **必ず**は、客観的に論理的に、それ以外はあり得ない、という気持ちを断定的に表すとき多く使う。 **きっと**は、強い確信を持っているが、あくまでも自分の推量だという気持ちで言うときに用い、後に「だろう」などの推量表現を伴うことが多い。「あの時は―驚いたことだろう」などを〈必ず〉で言い換えることはできない。〈きっと〉はかなり口頭語的で、かたい表現には適さない。 **絶対(に)**は、〈必ず〉以上に断定的で、また、〈必ず〉よりも、主体的な意志を表すときに使う。 | | 彼は―勝つ | 彼は―帰ったのだろう | ―出頭せよ | ―来ないよ | ―反対だ | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **必ず** | ○ | | ○ | ○ | | | **きっと** | | ○ | | ○ | | | **絶対(に)** | | | ○ | ○ | ○ | **必定**も、〈必ず〉より強い感じで、その点〈絶対〉に近いが、意志を表すというより客観的な見通しについて言う感じが強く、その点は〈必ず〉に通じる。ただし非常にかったい文章語。 〔注意〕〈絶対〉〈必定〉は名詞だが、副詞としても(あるいは副詞的にも)使われる。 <117> # 必ずしも[かならずしも] ## 必ずしも[かならずしも] ## 強ち[あながち] ## 一概に[いちがいに] ## 満更[まんざら] ### 使い分け例 **必ずしも**[かならずしも]・・・「必ずしもいいことばかりでない。」「必ずしも気に入りはしない。」「必ずしもその道に進むものでない。」 **あながち**・・・「あながちそうとは言えない。」「あながちばかにできない。」 **一概に**[いちがいに]・・・「一概に悪いと決めつけられない。」 **まんざら**・・・「まんざらばかではない。」「まんざら食えないわけでない。」「まんざらでもない話。」 ### どう使い分けるか いずれも後に否定の表現を伴い、絶対でない意を表す部分否定の用法がある。 **必ずしも**は、否定的なものの否定にも、肯定的なものの否定にも使え、また、客観的な事柄の可能性にも、考え方・とらえ方の適否についても使え、応用が広い。 **あながち**は、考え方・とらえ方について、必ずそうと考える(とらえる)ことはできない、のように言う。〈必ずしも〉〈一概に〉よりもやや文章語的。 **一概に**は、おしなべて、どんなことにも一様に当てはめてとらえる(ことはできない)という場合に使う。 **まんざら**は、否定的なものの否定=肯定、というような言い回し方で使う。ただし、「―でもない」は慣用句で、かなりよい、の意。かなり俗語的な響きがあり、かたい文脈にはそぐわない。 | | ―不当だとは言えまい | ―いやではない | ―成功するとは限らない | ―でもない出来栄え | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **必ずしも** | ○ | | ○ | | | **あながち** | ○ | | | | | **一概に** | ○ | | | | | **まんざら** | | ○ | | ○ | # かなり ## 可成[かなり] ## 大分[だいぶ] ## 余程[よほど] ## 随分[ずいぶん] <118> ### 使い分け例 **かなり**・・・「今日はかなり暑い。」「かなりの腕を持っている。」「かなりの人出。」「ここに住んでもうかなりになる。」 **だいぶ**・・・「だいぶ楽になった。」「結婚してだいぶ経つ。」⇔大分。 **よほど**・・・「よほど疲れたのだろう。」「今日はきのうよりよほど暑い。」「彼は、よほどの事がなければ話さない。」「よほど聞いてみようかと思った。」⇔よっぽど。 **随分**[ずいぶん]・・・「ずいぶん昔。」「ずいぶん大きくなった。」「子どもを捨てるなんてずいぶんな話だ。」 ### どう使い分けるか いずれも程度の甚だしい様子を表す。 **かなり**は、非常にというほどではないが思う以上に相当に。初めの例の場合、〈よほど〉とは言わない。 **だいぶ**は〈かなり〉と同程度だが、「の」を伴って名詞を修飾する使い方はしない。 **よほど**は、〈かなり〉〈だいぶ〉より少し程度が強い感じがある。「の」を伴わず程度を表す場合、推量か比較の文で使われる。最後の例は、「思いきって」の意で、〈よほど〉特有の用法。 **随分**は、〈よほど〉と同程度。〈だいぶ〉と同じく「の」を伴って名詞を修飾する使い方はしない。終わりの例のように「ひどいこと」の意味もある。(この場合の〈随分〉は形容動詞語幹) # 金持ち[かねもち] ## 金持ち[かねもち] ## 富豪[ふごう] ## 長者[ちょうじゃ] ## 大尽[だいじん] ## 金満家[きんまんか] ## 資産家[しさんか] ## 素封家[そほうか] ### 使い分け例 **金持ち**[かねもち]・・・「彼は金持ちだ。」「金持ちになる。」 **富豪**[ふごう]・・・「富豪の息子。」「大富豪。」 **長者**[ちょうじゃ]・・・「百万長者。」「長者番付。」「村の長者。」 **大尽**[だいじん]・・・「大尽風を吹かす。」 **金満家**[きんまんか]・・・「そんなぜいたくは金満家でなければできない。」 <119> **資産家**[しさんか]・・・「製糸業で成功し資産家として名を成す。」⇔財産家。 **素封家**[そほうか]・・・「素封家に生まれつく。」 ### どう使い分けるか **金持ち**は広く一般的に、財産を多く持っている者を言う。 **富豪**は「大金持ち」の意の漢語。〈金持ち〉よりスケールが大きい感じがある。 **長者**は〈金持ち〉の古い言い方。 **大尽**は〈金持ち〉、また遊廓で大金を使う人。やはり古い言葉である。 **金満家**は、〈金持ち〉という以上に、金を有り余るほど持っているという意味合いがこめられた表現。 **資産家**は、金に限らず土地・家屋・証券など財産を多く持っている人、の意味合いがある。ちなみに、「資産」は、法律では、資本にすることができる財産を言う。 **素封家**は代々続いた財産家。 # かむ ## 噛(咬)む[かむ] ## 噛み砕く[かみくだく] ## 齧る[かじる] ## 咀嚼[そしゃく]する ## 噛み付く[かみつく] ## 食い付く[くいつく] ## 齧り付く[かじりつく] ### 使い分け例 **かむ**・・・「上下の歯をぐっとかむ。」「よくかんで食べる。」「犬に足をかまれた。」「歯車の歯をかませる。」 **かみ砕く**[かみくだく]・・・「奥の歯でかみ砕く。」「かみ砕いて話す。」 **かじる**・・・「せんべいをかじる。」「古典文学を少しかじった。」 **咀嚼する**[そしゃくする]・・・「咀嚼して飲み込む。」「内容を咀嚼する。」 **かみ付く**[かみつく]・・・「政府にかみつく。」「犬にかみつかれる。」 **食い付く**[くいつく]・・・「ステーキにかぶりと食いつく。」「難しい仕事だが、食いついて何とかやっていく。」「魚が餌に食いついた。」 **かじり付く**[かじりつく]・・・「大きなりんごにかじりつく。」「机にかじりついて勉強する。」「石にかじりついてもやる。」 ### どう使い分けるか **かむ**は、上下の歯を(強く)圧し合わせる、そのことによって物を断ち砕く、物に歯を立てる(つき <120> さす)、などの意。 **かみ砕く**は、物をかんで砕く意と、そのように物事を分かりやすく説明する意とがある。 **かじる**は、かたい物を少しずつかみ砕く意。転じて、難しい事を少しだけ研究する、の比喩的意味もある。 **咀嚼する**は、かんで砕くの意のほか、理解を自分のものにするまで意味をよく考える、の意がある。 **かみ付く**は、相手が痛いと感じるほど歯や牙をつき立てる意で、転じて、大きなもの、上のものに攻撃的に批判を加える、の意にも使う。「食物に―」とは言わない。 **食い付く**は、かみ付く、またはかみ付いて離れない(かみ砕く意まではない)意で、食べることのほか人や物事に対する姿勢についても言う。 **かじり付く**は、かたくて大きなものを一生懸命かじる、の意。転じて困難な大仕事に強い熱意をもって取り組む場合に使う。執念を感じさせる言葉である。 | | ステーキに | サメが | 上役に | 甘い話に | 机に | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **かみ付く** | | ○ | ○ | | | | **食い付く** | ○ | ○ | | ○ | | | **かじり付く** | | | | | ○ | # からかう ## からかう ## 冷やかす[ひやかす] ## 茶化す[ちゃかす] ## 揶揄[やゆ]する ### 使い分け例 **からかう**・・・「相手がどう出るかちょっとからかってみた。」「小さい子をからかう。」 **冷やかす**[ひやかす]・・・「新婚夫婦を冷やかす。」「冷やかしの客。」 **茶化す**[ちゃかす]・・・「ひとのまじめな話を茶化す。」「照れて茶化す。」 **揶揄する**[やゆする]・・・「世相を揶揄する。」「警察を揶揄するような文句の挑戦状。」 ### どう使い分けるか **からかう**・**冷やかす**はほぼ同義にもなるが、〈からかう〉は言葉によらずちょっかいを出してもてあそぶような場合にも言い、「猫をー」とも言えるが、〈冷やかす〉にこの用法はなく、相手の高まった気分 <121> や好調に目を付けてする場合に言い、物心つかない年少の者などを相手とすることもない。「冷やかし客」では、買うつもりがないのに商品について尋ねるなどする、の意。茶化すは、まじめな話を冗談のようにしてしまう、またそのようにしてごまかす意。〈からかう〉〈冷やかす〉ほど意図的でなく、ふざけるのがすきな性格から自然にそうしてしまう場合が多い。揶揄するは、〈からかう〉とほぼ同義の漢語的な言い方だが、〈からかう〉がごく軽い気持ちでする小さな行為にも使うのに対して、比較的大きな相手に、悪意をもって、皮肉など、ある程度知的な手段でする場合に使う。かなりかたい文章語。 # 絡む[からむ] ## 絡む[からむ] / 絡まる[からまる] / 纏わる[まつわる] / もつれる[もつれる] ### 使い分け例 **絡む**・・・「糸が絡む。」「色々な理由が絡んで事態は複雑だ。」「この計画にはA社が絡んでいる。」「酔って人に絡む。」 **絡まる**・・・「門柱に蔦が絡まる。」「仕事の問題に家庭の事情が絡まる。」 **纏わる**・・・「足に着物の裾がまつわる。」「足元に子犬がまつわる。」「彼の成功にまつわる話。」 **もつれる**・・・「糸がもつれる。」「話がもつれる。」 ### どう使い分けるか **絡む**・**絡まる**は、どちらも物についても事柄についても使え、ほとんど同義だが、意志のある場合は**絡む**を使う。主体が人の場合、相手に難題を吹きかけ困らせる、の意になる。 **纏わる**は、物の場合は**絡む**と同義だが、人などの場合、**絡む**の意とは違う。子供が母親にまつわるのは母親を慕うからである。ある物事に関連する、の意の場合は、**絡む** **絡まる**ではややマイナスイメージがあり、**纏わる**ではそれがない。 **もつれる**は、他の三語がいずれも何か相手がありそれに「―する」のに対し、それ自体で**もつれる**の <122> であり、「何かに」もつれるのではない。 | | ひもが― | 諸事情が― | 酔漢が― | 金が― | 沼に― | 伝説 | 話が― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 絡む | | ○ | ○ | ○ | | | ○ | | 絡まる | ○ | | | | | | | | まつわる | | | | | | ○ | | | もつれる | ○ | | | | ○ | | ○ | # 枯れる ## 枯れる[かれる] ## 萎れる[しおれる] ## 萎む[しぼむ] ## 萎びる[しなびる] ## 萎える[なえる] ### 使い分け例 **枯れる**・・・「木が枯れる。」「やせても枯れても、プロ選手。」「芸が枯れる。」 **萎れる**・・・「花がしおれる。」「不成功にしおれる。」 **萎む**・・・「花がしぼむ。」「風船がしぼむ。」「期待がしぼむ。」 **萎びる**・・・「野菜がしなびる。」「しなびた肌。」 **萎える**・・・「足がなえる。」「心がなえる。」「なえた衣類。」「植物がなえる。」 ### どう使い分けるか **枯れる**は、水気がなくなり、生物としての機能が失われる意。 **萎れる**は、生気がなくなり弱々しくぐったりする意。 **萎む**は、生気をなくして縮む、ふくらんでいるものが小さくなる意。 **萎びる**は、生気がなくなり、しわがよったり乾いたりする意。 以上はみな、広く物事や人間の様子をも比喩的に表す。 **萎える**は、手足がしびれたり、力が抜けたりの意がもとの意味で、力が抜けてぐったりとする、また気力がなくなる、くたくたになる、萎れてぐったりとするなどの意味を表す。 # かわいい ## 可愛い[かわいい] ## 可愛らしい[かわいらしい] ## 愛くるしい[あいくるしい] ## 可憐[かれん] ### 使い分け例 **かわいい**・・・「かわいいしぐさ。」「我が身がかわいい。」「かわいいところがある。」◎憎い。「かわいい木の芽。」 <123> **かわいらしい**・・・「かわいらしい子供。」「かわいらしい洋服。」「かわいらしい車。」◎愛らしい。◎憎らしい。 **愛くるしい**・・・「愛くるしい目。」 **可憐**・・・「可憐な表情。」「可憐な少女。」 ### どう使い分けるか **かわいい**は、対象となるものの様子を表すほかには、そのものへの自身の愛着を表す。こうした主観的な意味合いがあるのに対して、**かわいらしい**は、かわいいと思わせる様子であるの意で、対象となるものの客観的な印象を表す。したがって、「我が身がかわいい」を「我が身がかわいらしい」とは言えないのである。〈かわいい〉〈かわいらしい〉は、小さいものについて言うことが多く、小さいということを表すこともある。〈かわいらしい〉の同義語〈愛らしい〉はやや文章語的な言い方。 **愛くるしい**は、やはりやや文章語的で、たいへん〈かわいらしい〉の意。〈愛らしい〉よりも強意の表現。人の表情・顔立ち・しぐさといった様子に言う。 **可憐**は、〈かわいらしい〉と同義だが文法的性質が異なり(形容動詞語幹)、また漢語で〈愛らしい〉以上に文章語的である。 # かわいそう ## 可哀相[かわいそう] ## 気の毒[きのどく] ## 哀れ[あわれ] ## 不憫[ふびん] ## 痛ましい[いたましい] ### 使い分け例 **かわいそう**・・・「一人ぼっちでかわいそうだ。」「こんなこともできないとはかわいそうなやつだ。」 **気の毒**・・・「大病をして気の毒だ。」「彼に気の毒なことをした。」「気の毒な我利我利亡者だ。」 **哀れ**・・・「哀れな末路。」「自分が哀れでならない。」「哀れな行い。」 **不憫**・・・「我が子が不憫だ。」「孤児を不憫に思う。」 **痛ましい**・・・「痛ましい最期を遂げる。」「痛ましい事故の跡。」 ### どう使い分けるか いずれにもかわいそうに思う意味があるが、**気の毒**は客観的にそのようだと感じる意がなかでも <124> 強く、対して**哀れ**は、惨めだ・情けないの意を表す、または含むことがあり、対象となる人(他人または自分)について悲しむ気持ちを表す主情的な表現と言える。 以上三語は、見下げたという意味を表すこともある。 **不憫**は、かわいがる気持ちからかわいそうに思う、いじらしく思う意もある。 **痛ましい**は、見ているのがつらいほどに痛々しくかわいそうだ、の意。 # 乾かす ## 乾かす[かわかす] ## 干す[ほす] ## 乾燥する[かんそうする] ### 使い分け例 **乾かす**・・・「洗濯物を乾かす。」「ぬれた手を乾かす。」 **干す**・・・「蒲団を干す。」「魚を干す。」「干し物。」「干し柿。」 **乾燥する**・・・「衣服を乾燥する。」 ### どう使い分けるか **乾かす**は、物の表面を水気のない状態にする、の意。洗濯物は大体薄い物で、表面と内部に分けられないから〈乾かす〉と言える。 **干す**は、〈乾かす〉とよく似ており、言い換えられる場合もあるが、本来の意味は〈乾かす〉と少し異なり、物の表面だけでなく内部でも水分を非常に少なくする場合に使う。蒲団をしんから湿気のないようにするのは〈乾かす〉より〈干す〉がふさわしい。 **乾燥する**は、乾くまたは乾かすの意の漢語的な言い方で、やや文章語的である。〈乾く〉や〈乾かす〉に大体置き換えられるが、逆に「心が乾く」「舌の根も乾かぬうちに」のようなのは慣用的なものなので、〈乾燥する〉では置き換えられない。 # 代わる代わる ## 代わる代わる[かわるがわる] ## 代わり番こに[かわりばんこに] ## 交互に[こうごに] ## 入れ替わり立ち替わり[いれかわりたちかわり] ## 取っ替え引っ替え[とっかえひっかえ] <125> ### 使い分け例 **代わる代わる**・・・「出席者が代わる代わる意見を述べる。」「新年の挨拶に客が代わる代わる訪れる。」 **代わり番こに**・・・「一つの踏み台に三人が代わり番こに乗る。」◎交替で。「ステーキとパンを代わり番こに食べる。」 **交互に**・・・「赤い椅子と白い椅子を交互に置く。」◎互い違いに。「何人かが交互にボールを打つ。」「ジャンプとステップを交互に行う。」 **入れ代わり立ち代わり**・・・「見舞い客が入れ代わり立ち代わり訪れる。」 **取っ替え引っ替え**・・・「新しいドレスを取っ替え引っ替え着て現れる。」 ### どう使い分けるか いずれも一つの物や事の状態が変わることでなく、ある物や事が別の物や事と代わり合うことを表す。 **代わる代わる**は、単に別のものと入れ代り同じものは繰り返さない場合にも言う。 **代わり番こに**と**交互に**は、一定の範囲での物・人・動作が、A、Bと代わって、またA・・・という繰り返しの形で代わり合うことに言う。これらは例のように、動作の主体(~が)が代わるのにも、対象(~を)が代わるのにも使う。〈代わり番こ〉は、子供がよく使う。 **入れ代わり立ち代わり**は、人の出入りが頻繁に続く様子に言う。 **取っ替え引っ替え**は物や相手を替えることに言う。一定の範囲内で繰り返し替える場合もあるが、次々と新しく替える点を特に突いた言い方。無節操や軽々しさを批判する響きのあることもある。 # 考える ## 考える[かんがえる] ## 思う[おもう] ## 思考する[しこうする] ## 思索する[しさくする] ## 考察する[こうさつする] ## 思慮する[しりょする] ## 考慮する[こうりょする] ### 使い分け例 **考える**・・・「雨になるだろうと考えて傘 <126> ### どう使い分けるか **考える**は、用例によって、思う・思い付く・判断する・見込む・熟慮する・思案する・考案する・配慮するなど様々に置き換えられ、知的な判断をする場合に広く用いる。 **思う**も、考える・感じる・慮る・念じる・慈しむ・恋するなど、表す意味は広いが、**考える**が知的作用を表すのに対して情意による作用を含むのが普通である。 **思考する**は、あるテーマについて道を見いだすべく考える意で、文字面に触れて言えば**思う**よりも**考える**作用が不可欠と言える。 **思索する**は、特に深く広く思い考える場合に言い、単純な問題や日常生活上の問題を考えるのに言うのは適さない。 **考察する**は、学問的に厳密に調査・実験・観察などの結果を踏まえて知的判断を行うのによく使われる。 **思慮する**は、慎重にいろいろに思い考える意。「する」をつけず名詞で使うことの方が多い。**思索**に比べ、実生活的である。ただし、何について考えるかは狭く限定されない場合が多い。 **考慮する**は、**思慮する**よりも、考える対象が具体的に「~を」「~について」のように示されることが多い。 | | 日本の将来を | 彼の立場を | 科学的に | どうか | 親心 | 子を | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **考える** | ○ | ○ | ○ | ○ | | | | **思う** | ○ | | | ○ | ○ | ○ | | **考察する** | ○ | | ○ | | | | | **思慮する** | ○ | ○ | | | | | | **考慮する** | ○ | ○ | | | | | 〔注意〕**思う**の例の後ろ三つの場合、**想う**とも書く。 <127> # 頑固[がんこ] ## 頑固[がんこ] / 頑な[かたくな] / 強情[ごうじょう] / 意固地(依怙地)[いこじ] / 片意地[かたいじ] ### 使い分け例 **頑固**・・・「言い出したら聞かない頑固な性格。」「古来の製法を頑固に守る。」「頑固な汚れで、なかなか落ちない。」「頑固な頭痛。」 **頑な**・・・「誰が申し入れてもかたくなに拒否し続けた。」 **強情**・・・「強情に、自分の非を認めない。」「強情を通す。」 **意固地**・・・「意味がないと知りながら意固地に続ける。」 **片意地**・・・「片意地な態度。」「片意地を張る。」 ### どう使い分けるか いずれも周囲に対する態度や気質について言う。 **頑固**は、一定の考えや考え方を頑として変えない様子を言う。個人の性格・気質だけでなく、比喩的に物事についても言う。 **頑な**は、人の説く道理に堅く従おうとしない様子を言うので**頑固** **片意地**と同義の例が多いが、やや古風で文章語的である。きまじめ・潔癖といった人間の固さに触れて言う場合が多い。 **強情**は**頑固**に比べると、主張や信念をその裏付けとするというよりも、単に自分の言い出したことを曲げない様子に言う。 **意固地**は、意地を通すことがよくないと分かっていてもそれを続けるような様子。 **片意地**は、周囲の事情を顧みず自分の一つの考えを通そうとする様子。**頑固**に比べて、考えの根本から狭い範囲に固執しているという場合が考えられる。 前の三語は肯定的評価を伴うこともあるが、後の二語は否定的に用いるのが普通である。 # 観賞[かんしょう] ## 観賞[かんしょう] / 鑑賞[かんしょう] / 賞美[しょうび] / 賞玩[しょうがん] / 玩味[がんみ] ### 使い分け例 **観賞**・・・「庭園を観賞する。」「菊花の観賞会。」「観賞魚。」 **鑑賞**・・・「音楽を鑑賞する。」「芸術鑑賞。」「鑑賞眼。」「文学鑑賞。」 **賞美**・・・「松の枝ぶりを賞美する。」 **賞玩**・・・「骨董品を賞玩する。」 **玩味**・・・「秀句を玩味する。」「熟読玩味。」 <128> ### どう使い分けるか **観賞**は、自然などの美しさを楽しみ味わいながら見ること。対して**鑑賞**は芸術作品を味わうこと。 **賞美**は、誉めたたえながら、そのよさを味わうこと。 **賞玩**は、珍重する、またおいしいと言って食べる(=賞味する)意で、**賞美**とともに、味わうよりたたえる意が重くなる。 **玩味**は、食べ物の味をよく味わうこと、また理解を自分のものにするまで意味をよく考え味わうことで、**賞玩**とともに食べる行為にも用いる。 # 簡単[かんたん] ## 簡単[かんたん] / 簡明[かんめい] / 簡略[かんりゃく] / 簡素[かんそ] / 手軽[てがる] ### 使い分け例 **簡単**・・・「簡単な仕組み。」「簡単な説明。」複雑。「簡単なクイズ。」「簡単に応じる。」「簡単に手に入る。」 **簡明**・・・「簡明な表現。」 **簡略**・・・「簡略な式。」「簡略に記す。」煩(繁)雑。 **簡素**・・・「簡素な食事。」「簡素なたたずまい。」「事務の簡素化。」 **手軽**・・・「手軽に持ち運べる。」「手軽に作れる。」「手軽な道具。」 ### どう使い-分けるか **簡単**は、仕組みなどの単純さと、扱いや理解のたやすさとを表し、そのどちらの意も兼ねる場合も多く、単純化して容易にするような場合は安易・安直な様子を表すこともある。 **簡明**は、「簡単明瞭」の意で簡単で分かりやすい様子。説明などに言う。 **簡略**は、やり方が略式である様子。説明・手続きなどに言う。 **簡素**は、飾り気などがなく質素な様子。 <129> **簡明** **簡略** **簡素**は、簡単な形にしてある様子を言い、「私にはこのくらい簡単だ」のような行いやすい意はない。 **手軽**は、扱いが簡単で手間がかからない様子。 # 姦通[かんつう] ## 姦通[かんつう] / 密通[みっつう] / 不義[ふぎ] / 不倫[ふりん] ### 使い分け例 **姦通**・・・「人妻と姦通する。」「姦通罪。」 **密通**・・・「男女の密通。」「敵に密通する。」 **不義**・・・「不義を働く。」「不義の子。」正義。 **不倫**・・・「不倫な関係。」「不倫の恋。」 ### どう使い分けるか **姦通**は、法や倫理に反して男女が情を通ずること。具体的には妻や夫のある者がその相手以外の異性と肉体関係をもつこと。ただし、かつて日本の刑法にあった姦通罪は、夫をもつ女性と他の男性との関係にのみ適用され、妻をもつ男性と夫のいない女性との関係には適用されなかった。これは男女平等の現憲法の原則に反するので、姦通罪の規定は昭和二十一年に削除されている。 **密通**・**不義**も**姦通**の意に似るが、法にでなく倫理に照らして言う。**不義**は男女の関係に言う前に道義に外れることを言い、その行為というより関係や様子に重きのある言い方。「不義密通」の言い方もある。**密通**は密かに通知することも言う。**不義**は**姦通**よりさらに古い表現。 **不倫**は、倫理的に許されないことであり、そうした男女の関係にも言う。この四語の中では近年最もよく使われる。 # 感動[かんどう] ## 感動[かんどう] / 感銘(肝銘)[かんめい] / 感激[かんげき] / 感心[かんしん] / 感服[かんぷく] ### 使い分け例 **感動**・・・「素晴らしい出来栄えに感動する。」「深い感動を覚える。」 **感銘**・・・「師の言葉に深い感銘を受ける。」「感銘を深くする。」「この作品に感銘した。」 **感激**・・・「親切な行為に感激する。」「遂に感激の優勝を果たした。」 **感心**・・・「彼のまじめさに感心する。」「飲酒は感心できない。」「感心な子。」 **感服**・・・「見事な腕前に感服した。」 <130> ### 使い分け例 **感動**・・・「素晴らしい出来栄えに感動する。」「深い感動を覚える。」 **感銘**・・・「師の言葉に深い感銘を受ける。」「感銘を深くする。」「この作品に感銘した。」 **感激**・・・「親切な行為に感激する。」「遂に感激の優勝を果たした。」 **感心**・・・「彼のまじめさに感心する。」「飲酒は感心できない。」「感心な子。」 **感服**・・・「見事な腕前に感服した。」 ### どう使い分けるか いずれも、単に感じるというのとは違い、何らかの原因によって心に深くまたは強く感ずること。 **感動**も**感銘**も同じ心の動きについて用いることができるが、〈感銘〉が一つの感慨に至りそれが落ち着き動かしがたいものとなる点をとらえて言うのに対して、〈感動〉はその感慨への動きをとらえて言う。「感銘が高まる」「感銘の一瞬」とは言わない。 **感激**は、自身の上に興奮するような急激な喜びが直接もたらされる場合に多く用いそれに対して〈感動〉〈感銘〉〈感心〉〈感服〉は直接自分にかかわらないものにも意味や価値を読み取るところに始まり、比較的持続的だと言える。 **感心**は褒めるに価する、またはなるほどと深く感じ入るほどであるという意。「ーできない」はよくないという評価を婉曲に表す。 **感服**は、自分はかなわないと敬服するほど感心すること。 | | 立派な処置に―する | 深い―を覚える | ―的な場面 | ―の至りだ | ―な話だ | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 感動 | ○ | ○ | ○ | | | | 感銘 | ○ | ○ | | | | | 感激 | | | ○ | ○ | | | 感心 | | | | | ○ | | 感服 | ○ | | | | | # 機会 ## 機会[きかい] ## 時機[じき] ## 好機[こうき] ## 折[おり] ## 潮時[しおどき] ## チャンス ## タイミング <131> ### どう使い分けるか **機会** **時機** **好機** **潮時**はいずれも基本的には何かをするのによい時を言う。 **機会**はきっかけとなる時。特によいという意味でなくても用いられる。意味合いはさまざまで、**折**や**チャンス**「きっかけ」など用例によって言い換えられる。 **時機**は適当な機会・時。**機会** **潮時** **折**と言い換えられることが多い。 **好機**は特によい機会を言う。したがって「よいー」とは言わない。 **折**は、機会と言い換えられる場合もあるが、基本的には「時」の意で、「ーからの雨」のように、ちょうどその時という意味、また「厳寒のー、お体大切に」などのように時節の意味でも使われる。 **潮時**は何かを始める、または終えるのに最もよい時・頃合いの意。ある物事の流れの中でのいつということである。「千載一遇の好機」「チャンスをものにする」などの例と比べると、「潮時を心得る」のようにややさめた言い方になる傾向がある。 **チャンス**は、**好機**と同義だが**好機**はかなりかたい文章語で**チャンス**はくだけた日常語。また、「絶好の好機」というのは変だが、この場合**チャンス**なら言える。 **タイミング**は、動作・行為をするのによい時を見計らうことの意で、意味的には他の語とは異質である。「グッドー」と言えば、好機をうまくとらえることの意味になる。 <132> # 器械[きかい] ## 器械[きかい] / 機械[きかい] / からくり[からくり] / 仕掛け[しかけ] / マシン[ましん] ### 使い分け例 **器械**・・・「医療器械。」「器械体操。」 **機械**・・・「機械の操作。」「機械的。」 **からくり**・・・「からくり人形。」「のぞきからくり。」「からくりを見破る。」 **仕掛け**・・・「ぜんまい仕掛けで動く。」「奇術の仕掛け。」「仕掛け花火。」 **マシン**・・・「マシンの操縦。」「マシンガン。」「ピッチングマシン。」 ### どう使い-分けるか **器械**・**機械**は、ある程度以上の複雑な構造を持った道具、使うとき、それ自体の形の変化や動きがあるものを言うことが多い。**機械**は規模の大きい、動力を備えたもの、**器械**は規模が小さく簡単で動力を備えていないものと区別することが多いが、必ずしもはっきり分けられない。 **からくり**・**仕掛け**は、道具を動かすために仕組まれる装置やその装置の原理を言う。**からくり**は古い言い方で、近代的な機械装置を言うのはふさわしくない。人が付いて操り動かすものである。比喩的に計略の意もある。**仕掛け**は器械や装置そのものよりも、その仕組みを言うことが多い。一時で役目の終わるものにもよく使う。 **マシン**は、英語 machine(=機械)からきた語だが、日本では特に競走用の自動車やオートバイなどを言うことが多い。 # 効(利)き目[ききめ] ## 効(利)き目[ききめ] / 効果[こうか] / 効能[こうのう] / 効用[こうよう] ### 使い分け例 **効き目**・・・「薬の効き目が現れる。」「僕が言っても、彼には効き目がない。」 **効果**・・・「練習の効果が現れる。」「殺菌効果のある石鹸。」 **効能**・・・「薬の効能を表示する。」 **効用**・・・「鶏の鳴きまねなんぞでも何かの効用はある。」「うその効用。」 <133> ### どう使い分けるか **効き目**と**効果**は大体同義の和語と漢語。かたい文章語的文脈では**効果**を使う。望んだ通りの結果、また、そのしるし、の意。**効果**はそのほかに「成果」に近いニュアンスを持ち、「予想以上の一を収める」は**効き目**で言い換えられない。「効き目が上がる」なども言わない。演劇・放送などで使う「音響効果」の略としての「効果」も**効き目**とは言わない。 **効能**も**効き目**とほぼ同義だが、ものの「はたらき」に視点を合わせた言葉なので、**効果**のように行為の結果については用いず、物(薬など)の効き目に使うことが多い。「効能を収める」「効能が上がる」とは言えない。 **効用**は、効き目の意もあるが、基本的には「効き目のある用途」。 # 聞く[きく] ## 聞く[きく] / 聴く[きく] / 尋ねる[たずねる] / 問う[とう] / 伺う[うかがう] / 聴取[ちょうしゅ]する / 聴聞[ちょうもん]する / 傾聴[けいちょう]する ### 使い分け例 **聞く**・・・「波の音を聞く。」「誰かに聞こう。」「言うことを聞かない子。」 **聴く**・・・「ホールで音楽を聴く。」「講義を聴く。」 **尋ねる**・・・「駅までの道を尋ねる。」「お尋ね者。」「ルーツを尋ねる。」 **問う**・・・「名を問う。」「正否を世に問う。」「責任を問う。」「男女の別は問わない。」 **伺う**・・・「お名前を伺う。」「先生のお宅に伺う。」 **聴取する**・・・「事情を聴取する。」「ラジオの聴取者。」 **聴聞する**・・・「各界の代表者から聴聞する。」「聴聞会。」 **傾聴する**・・・「博士の話は傾聴する必要がある。」「傾聴に価する。」 ### どう使い分けるか **聞く**は、広い意味・用法があり、自然と耳に入ってくる場合にも使うが、**聴く**が使えるのは、聞こうとする意志をもって熱心に聞く場合である。また**聞く**は、人の言葉に従う、質問する、などの意もあるが、**聴く**はそういう意には用いない。 <134> 自然と耳に入ってくる場合にも使うが、**聴く**が使えるのは、聞こうとする意志をもって熱心に聞く場合である。また〈聞く〉は、人の言葉に従う、質問する、などの意もあるが、〈聴く〉はそういう意には用いない。 **尋ねる**・**問う**は、ともに、質問するの意があるが、〈尋ねる〉には、行方の分からないものを探し求める意、探求するの意もあり、〈問う〉には、取り調べる、追求する、問題にする、などの意もある。ともに必ずしも聴覚によらない行為にも用いることができる言葉である。 **伺う**は、〈聞く〉〈問う〉〈尋ねる〉の謙譲語。お聞きする、お尋ねする、お訪ねするの意。 **聴取する**は、聴き取る意。ただし例のような狭い用法しかない。 **聴聞する**は、人の話を聴く意。特に行政当局がある事の関係者の意見を聞く場合に言う。 **傾聴する**は、〈聴く〉より更に熱心な場合に言う。 | | 事情を― | 少々お―したい | お話の― | 前例を― | 歴史に― | 責任を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 尋ねる | ○ | ○ | | | ○ | | | 問う | | | | ○ | ○ | ○ | | 伺う | ○ | ○ | ○ | | | | # 岸 ## 岸[きし] ## 渚[なぎさ] ## 浜[はま] ## 磯[いそ] ## 岸辺[きしべ] ## 海岸[かいがん] ## 海辺[うみべ] ### 使い分け例 **岸**・・・「岸にたどり着く。」 **渚**・・・「渚に打ち寄せる波。」 **浜**・・・「浜で日干しをする。」 **磯**・・・「磯の香。」「磯釣り。」 **岸辺**・・・「岸辺に棲息する生物。」 **海岸**・・・「海岸通り。」「海岸線。」 **海辺**・・・「海辺を散歩する。」「海辺の町。」 ### どう使い分けるか **岸**は、海・河川・湖・池などから上がったすぐの陸地。 **渚**は、海・大きな河・湖など波の寄せるような所におけるその波打ち際。水と陸とが相寄った辺り。 **浜**は、海や湖などに沿った平地。多くは砂浜だが、石浜もある。 <135> **岸辺**は、岸のほとり。更に上がった陸や、沖あいに対して言う。 **海岸**は、海と陸が接する所。**海辺**より狭い範囲の場所。 **海辺**は、海のほとり。海の近くの土地を言う。 # 技術[ぎじゅつ] ## 技術[ぎじゅつ] / 技巧[ぎこう] / 技能[ぎのう] / テクニック[てくにっく] ### 使い分け例 **技術**・・・「操作技術が身に付く。」「技術革新。」「技術援助。」 **技巧**・・・「技巧を凝らす。」「技巧に走りすぎる。」「技巧的な表現。」 **技能**・・・「技能検定。」「特殊技能。」 **テクニック**・・・「テクニックを教わる。」「テクニックを要する。」 ### どう使い分けるか **技術**は、「編集―」の場合は一般的な、物事をうまくし遂げるわざの意だが、「―者」の場合は、科学技術(自然科学を応用し人間の生活に実際に役立てる技術)を意味することが多い。 **技巧**は、技術の巧みさ。**技術**に比べ、具体的・特殊・末梢的なことについて言う。芸術やスポーツの分野で使うことが多い。 **技能**は、技術を含めた、物事を行う腕前・技量。特定の事柄について個人が果たす力について言うことが多い。 **テクニック**は、英語technic。技術・技巧と言い換えられる。 # 基準[きじゅん] ## 基準[きじゅん] / 規準[きじゅん] / 標準[ひょうじゅん] / 水準[すいじゅん] / レベル[れべる] ### 使い分け例 **基準**・・・「比較の基準。」「採点の基準を設ける。」「労動基準法。」「建築基準。」 **規準**・・・「規準に従った行動。」「地価の規準となる公示価格。」 **標準**・・・「給与が一般サラリーマンの標準に達する。」「標準的な家庭。」「標準値。」「標準語。」「標準服。」 **水準**・・・「我が国の技術力も世界の水準に達した。」「生活水準が高い。」「知的水準。」「水準器。」 **レベル**・・・「知的レベルが高い。」「生活のレベル。」「君はレベルが低い。」「事務次官レベルの会議。」 <136> **水準**・・・「我が国の技術力も世界の水準に達した。」「生活水準が高い。」「知的水準。」「水準器。」 **レベル**・・・「知的レベルが高い。」「生活のレベル。」「君はレベルが低い。」「事務次官レベルの会議。」 ### どう使い分けるか **基準**は、判断・行動などのもととなるよりどころ。それを比較の材料とすることによって程度などが分かる。 **規準**は、社会的に通用させる行動や判断の手本となる規範・決まり。〈基準〉に比べるとやり方・あり方のようなものの手本と言える。が、互いに意味が重なる場合も多く、区別なく使われることは多い。〈基準〉〈規準〉ともに〈標準〉に比べ具体性や精確さがあることが多い。 **標準**は、物事の程度を知るためのおよその目安、平均的な程度、また一般的なあるべき姿、などの意がある。 **水準**は、ある集団の平均的な程度(標準)の高さ。個人の能力などの程度についても言う。〈基準〉や、あるべきものとしての〈標準〉は定めるものだが〈水準〉は計るもの。 | | ―に従う | ―以下の体重 | 比較の― | 社会生活の― | 一般的な家庭 | 生活―が高い | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **基準** | O | O | O | O | - | - | | **規準** | O | Δ | O | O | - | - | | **標準** | Δ | O | Δ | Δ | O | - | | **水準** | - | O | - | - | - | O | | **レベル** | - | O | - | - | - | O | **レベル**は、〈水準〉とほぼ同義だがほかに段階・クラスの意がある。 # 気性[きしょう] ## 気性[きしょう]/気質[かたぎ]/性分[しょうぶん]/気立て[きだて]/気心[きごころ]/根性[こんじょう] ### 使い分け例 **気性**・・・「気性が激しい。」「進取の気性。」 **気質**・・・「気質が荒い。」「気質は多血質でけんかっ早い。」 **性分**・・・「じっとしていられない性分。」「細かいことが気になる性分。」 **気立て**・・・「気立てのいい娘。」 **気心**・・・「気心の知れた人。」「気心が分 <137> ### どう使い分けるか **気性**は、感情面における生まれつきの性質。**気象**とも書く。ただし**気象**は天候の状態のことをも言う。 **気質**は**気性**と同義のほか、心理学用語として、個人の感情の傾向で、いくつかのタイプに分類されるものを言う。なお、同じ漢字を当てることもある「かたぎ」は、同じ職業や身分などに特有の気風や性格を言う。 **性分**は、生まれもった性質。その性質からどうしてもそうなってしまうという具体的言動とともに言ううことが多い。 **気立て**は、備わっている心の持ちよう。評価を伴う言葉である。物事や人を受け止めるときの様子から、また若年の、特に女性に向けて言うことが多い。 **気心**は、他人につかめるかどうかの点からとらえる気持ちや性質。 **根性**は、根本的なものの考え方に添ってしみついた性質。「ーがある」では根気強く頑張りぬく精神を言う。 # 季節[きせつ] ## 季節[きせつ] / 時節[じせつ] / 時候[じこう] / シーズン[しーずん] / 季[き] ### 使い分け例 **季節**・・・「春夏秋冬の四つの季節。」「杉の花粉の飛ぶ季節。」「私にも夢見る季節があった。」 **時節**・・・「桜の時節。」「時節に合わせて明るい歌を歌う。」「今の時節、倹約する人は少ない。」「時節到来。」 **時候**・・・「時候の挨拶。」「暖かい時候に合った服。」 **シーズン**・・・「スリーシーズン。」「海水浴のシーズン。」「入学シーズン。」 **季**・・・「この句には季がない。」「冬季。」「雨季。」「年季が明ける。」 ### どう使い分けるか **季節**は、春夏秋冬の四つの一つ一つ。また、一年の内のある特徴的な一時期。また、人生などの特徴的な一時期を比喩的に「・・・の季節」と言うこともある。 <138> **時節**は、**季節**の意のほか、社会のその時の情勢の意。そのことをするのによい機会の意もある。 **時候**は、その季節の気候、の意。 **シーズン**は、**季節**と同義の外来語だが、「入学の季節」は「入学シーズン」となるようなちょっとした違いがある。 **季**は、一語として使うのは俳句の用語(四季おりおりの景物、または季語の意)に限られる。造語成分として**季節**の意で「冬季」「雨季」などと用いる。ちなみに「冬期」「雨期」などの言葉もあり、これらは「冬の期間」「雨の期間」の意だが、実際には同じになる場合が多い。 # 基礎[きそ] ## 基礎[きそ] / 基本[きほん] / 根本[こんぽん] / 基盤[きばん] / 基[もとい] ### 使い分け例 **基礎**・・・「医学の基礎を学ぶ。」「会社の基礎を固める。」「基礎的な訓練。」「基礎控除。」 **基本**・・・「柔道の基本の技を学ぶ。」「基本に帰って考え直す。」「基本的に間違っている。」「基本的人権。」「基本方針。」 **根本**・・・「根本方針。」「根本理念。」「根本的な改革。」 **基盤**・・・「活動の基盤を築く。」「財政基盤。」 **基**・・・「国家の基を築く。」 ### どう使い分けるか **基礎**は、その上に何かが積み重ねられる土台としてあるもの。 **基本**は、物事の成立するための、土台というより常により所となるもの。**基礎**の意味を表すこともあるが、**基礎**が「―工事」「―訓練」のように具体的に定められるものであるのに対して**基本**の方はより抽象的であると言える。また、**基礎**はプロセスの初めの段階であるのに対して、**基本**は全段階を通じての大切なことである。 **根本**は、更に抽象的で、具体的な物や技術ではあり得ず、考え方・理念・精神などについて言う。 **基盤**は、それの上に立って生活や活動が可能となるようなものに言うことが多い。 <139> **基盤**は、それの上に立って生活や活動が可能となるようなものに言うことが多い。 | | 経営の― | ―となる技術 | ―を固める | 学説の―を揺るがす | 基本的人権の― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 基礎 | | ○ | ○ | | | | 基本 | | | ○ | | ○ | | 根本 | | | | ○ | ○ | | 基盤 | ○ | ○ | | | | **基**は、〈基礎〉〈基本〉を含めた意。和語であるが、むしろ他の語より文章語的である。 # 汚い ## 汚い[きたない] ## 薄汚い[うすぎたない] ## 汚らしい[きたないらしい] ## 不潔[ふけつ] ## むさくるしい ### 使い分け例 **汚い**・・・「汚い音。」「汚い手で触るな。」「汚い色。」「汚い言葉を使う。」「やり方が汚い。」「金に汚い。」◎きれい。 **薄汚い**・・・「薄汚い服。」「薄汚い根性。」「まったく薄汚いやつだ。」 **汚らしい**・・・「何か汚らしい格好。」「何とも汚らしい顔だなあ。」 **不潔**・・・「掃除をした手で料理をしては不潔だ。」「不潔な行為。」 **むさくるしい**・・・「むさくるしい身なり。」「むさくるしい部屋ですが、お入りください。」 ### どう使い分けるか **汚い**は、見た感じ、聞いた感じが不快である、衛生的でない、のほか卑劣だ、よこしまだ、品がないなど広い意味で使われる。「金に―」などは、けちで金に執着する様子。 **薄汚い**は、全体的にどことなく汚れているという意。単に汚さが薄いというだけでなく、はっきりしないところからくる気味悪さや侮蔑感を伴うこともある。 **汚らしい**は、汚く見える、汚い感じがする、の意。 **不潔**は、不衛生の意を表すが、「清潔」とともに行為・考え方や人柄についてもよく使う。 **むさくるしい**は、きちんとしていない、さっぱりしていない、の意で、身なりや部屋の中の様子に言うことが多い。自分の住まいに招く時に「一所ですが」などと謙遜して言う。見た目の感じを表すもので心が汚れているという意味は表 <140> # 気取り[きどり] ## 気取り[きどり] / 見え[みえ] / 虚栄[きょえい] / 虚飾[きょしょく] ### 使い分け例 **気取り**・・・「気取りのない人柄。」「夫婦気取りで歩く。」 **見え**・・・「見えっぱり。」「見えも外聞もない。」「見えで高価な品を買う。」「見え坊。」 **虚栄**・・・「虚栄を張る。」「知的虚栄心としての学問好きもある。」 **虚飾**・・・「虚飾に満ちた生活。」「虚飾のない人。」 ### どう使い分けるか **気取り**は、体裁を飾って、上品ぶったりもったいぶったりすること。また、それらしい様子をすること。他人の目をごまかそうという意識よりも、本人がそうなったような気持ちの場合が多い。 **見え**は、他人から見られるその人の様子(=体裁)。また、体裁を考えてうわべをよく見られようとすること。「見栄」とも書き、芝居の「ーを切る」は「見得」とも書く。 **虚栄**は、実態・実質がそうでないのに見かけをよく見られようとすること。**見え**の後の意味と同じだが、文章語であり、日常のちょっとしたことを表す場合には**見え**のほうがよく使われる。 **虚飾**は、外見に見合った中身がなく外見がよいものに見えるように偽り装った、そのうわべ。**見え**の前の意味に当たる文章語。個々の行いについてでなく、性格や生活態度などについて用いることが多い。 # 気抜け[きぬけ] ## 気抜け[きぬけ] / 気落ち[きおち] / 力落とし[ちからおとし] / 拍子抜け[ひょうしぬけ] ### 使い分け例 **気抜け**・・・「その後は気抜けの状態だ。」「君がいなくなって気抜けした。」 **気落ち**・・・「気落ちも無理ない。」「失敗続きで気落ちする。」落胆。 **力落とし**・・・「ご家族を亡くされてお力落としでしょう。」 **拍子抜け**・・・「あっさり勝ってかえって拍子抜けだ。」 <141> ### どう使い分けるか **気抜け**は、気持ちに張りがなくなり、ぼんやりとした気分になること。 **気落ち**は、がっかりして気持ちがしぼむこと。 **力落とし**もほぼ同義で、気を落として活力や張り合いを失うこと。多く「お力落とし」の形で弔意を表すのに使う。 **拍子抜け**は、勢い込んでいたのが不意にその必要がなくなり、力が抜けること。肩透かしを食ったようにそれまでの調子をもてあます感じがある。 〔注意〕**力落とし**だけは「する」がついて動詞になることがない。 # 厳しい[きびしい] ## 厳しい[きびしい] / 手厳しい[てきびしい] / 厳重[げんじゅう] / 厳格[げんかく] / 峻厳[しゅんげん] / 峻烈[しゅんれつ] ### 使い分け例 **厳しい**・・・「暑さが厳しい。」「仕事に厳しい態度。」「厳しい表情。」「厳しい処分。」 **手厳しい**・・・「手厳しい批判を浴びる。」手緩い。 **厳重**・・・「厳重な戸締まり。」「厳重に注意する。」 **厳格**・・・「厳格な人柄。」「厳格な教育。」 **峻厳**・・・「峻厳な態度。」「峻厳な山容。」 **峻烈**・・・「峻烈な批判。」「峻烈な気性。」「峻烈な取調べ。」 ### どう使い分けるか **厳しい**は、考え方、態度、状況、雰囲気などさまざまに使われる。 **手厳しい**は、他人に対する攻撃的な態度・扱いに言う。「一育て方」とは言わず、**厳しい**よりも痛烈な感じもある。 **厳重**は、事の処置などにおいて手落ちがないようにと入念で厳しい様子。人柄などには言わない。 <142> 様子。人柄などには言わない。 **厳格**は、甘やかさない様子。相手(または自分)に対するいい加減でない気持ちや考えに基づいての態度や人柄に言う。その人の固さも感じられる表現。 **峻厳**は、非常に厳しくいかめしい様子。山の様子などにも言う。 **峻烈**は、非常に厳しくはげしい様子。人の態度や言動について言う。 # 寄付 ## 寄付[きふ] ## 寄贈[きぞう/きそう] ## 寄進[きしん] ## 献金[けんきん] ## 醵金[きょきん] ## 義捐金[ぎえんきん] ## 募金[ぼきん] ## カンパ ### 使い分け例 **寄付**・・・「寄付を募る。」「調度品を施設に寄付する。」「寄付金。」 **寄贈**・・・「蔵書の寄贈。」「寄贈した品物。」 **寄進**・・・「灯籠を神社に寄進する。」 **献金**・・・「政治献金。」 **醵金**・・・「醵金を募る。」「関係者どうしが醵金する。」 **義捐金**・・・「被災地に送る義捐金を募る。」 **募金**・・・「募金する。」「募金を募る。」「街頭募金。」「募金運動。」 **カンパ**・・・「資金カンパ。」「カンパに協力する。」「カンパしてくれ。」 ### どう使い分けるか いずれも無償で金銭または品物を提供することに言う。 **寄付**は、金品を贈ること、またその金品を言うが、個人にでなく団体に贈る場合に使う。 **寄贈**は、品物を贈る場合に使い、贈呈のような意味。 **寄進**は、社寺などに金品を寄付すること。 **献金**は、ある目的を援助するため金銭を寄付すること、またその金銭。 **醵金**は、ある事業のため複数の人間が金銭を出し合うこと。またその金。 **義捐金**は、不幸や災害などに見舞われた人への慈善を目的とした寄付金。 **募金**は、寄付金などを集めること。 **カンパ**は、kampaniya(ロシア <143> 〔注意〕**義捐金**は、新聞では**義援金**と書く。**義損金**を除いてみな「する」がつき動詞になる。 # 決まり[きまり] ## 決まり[きまり] / 規則[きそく] / 規約[きやく] / 規定[きてい] / 規程[きてい] / 規律(紀律)[きりつ] / 法[ほう] / 法律[ほうりつ] / 定め[さだめ] / ルール[るーる] ### 使い分け例 **決まり**・・・「校内では上履きを履く決まりになっている。」「私は毎日七時に起きるのが決まりだ。」「決まりを付ける。」 **規則**・・・「規則を定める。」「戸籍法施行規則。」「規則的な配列。」「規則正しい生活。」 **規約**・・・「生徒会の規約。」 **規定**・・・「前項の規定に従う。」「意味解釈の規準を規定する。」「体操の規定種目。」「概念規定。」 **規程**・・・「勤務規程。」「図書貸出規程。」 **規律**・・・「規律のある暮らし。」「規律正しい態度。」 **法**・・・「人間は法の下に平等だ。」「健康法。」 **法律**・・・「法律によって権利を行使する。」「法律家。」 **定め**・・・「定めを守る。」「花はいつか枯れる定めにある。」 **ルール**・・・「試合のルールを決める。」「交通ルール。」「社会のルール。」 ### どう使い分けるか **決まり**は、決まっていることという意味で規則・規定・法則・慣習などのほか決着・落着など、表す意味は広い。最も日常的な語である。 **規則**は、成文化された決まりを言うのが普通だが、法令などより具体的で細かい決まりを言う。慣習などは指さない。ただし、「一正しい」などは、この意を離れて法則や秩序の意で使われている。 **規約**は、比較的狭い特定の組織内の約束事としての規則に言う。 **規定**は、規則や、法令の条文に定めてあること、の意。全体としてでなく、個々の条文について言う。「―する」と言えるように、決める行為をも言う。 <144> **規程**は、組織の内部の執務などに関する規則で、**規定**と異なり、一連の条項の全体を言う。 **規律**は、秩序ある生活や運営を保つための決まりを漠然と総体的に言う言葉で、具体的な成文化したものではない。現在では「秩序」と同義で使われることが多い。 **法**は、**法律**の意のほかに、物事の仕方、道理など多くの意味がある。 **法律**は、国家が定める決まりで、日本では国会で決めたものを言う。ちなみに国の行政機関の出すものは政令・省令・訓令などであり、地方公共団体で定めるものは条例である。 **定め**は、規則・決まりの意としては古い言い方。自然に決まっていた慣習・傾向や、人為の及ばない運命の意でも使う。 **ルール**は、英語rule(=規則)。スポーツや遊びの決まりごとに使うことが多い。その場の取り敢えずの取り決めや、明文化はされていないが、守るべきものとして常識化したものに言うことも多い。 | | 〜を守る | 〜正しい生活 | 朝飯前の散歩が〜だ | 前項の〜する通り | 〜する | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **決まり** | ○ | | ○ | | | | **規則** | ○ | ○ | | | | | **規定** | | | | ○ | ○ | | **規律** | ○ | ○ | | | | # 決める[きめる] ## 決める[きめる] / 定める[さだめる] / 決定[けってい]する / 決する[けっする] / 裁定[さいてい]する / 認定[にんてい]する / 判定[はんてい]する ### 使い分け例 **決める**・・・「担当を決める。」「心を決める。」「決めてかかる。」「技を決める。」 **定める**・・・「法に定める。」「行く当て定めぬ旅。」「的を定める。」 **決定する**・・・「予算を決定する。」「最終的には自分で決定する。」 **決する**・・・「意を決する。」「雌雄を決する。」「まなじりを決して戦う。」 <145> る。」「まなじりを決して戦う。」 **裁定する**・・・「中央労働委員会が裁定する。」 **認定する**・・・「資格を認定する。」「事実と認定する。」 **判定する**・・・「優劣を判定する。」 ### どう使い分けるか **決める**は、それより動かなくなるというきっちりとした感じが出るのに対し、**定める**は、決めて落ち着かせる意で、秩序・統制・安定などにつながるものによく使われる。 **決定する**は、具体的なテーマについてはっきりとそう決め(ま)る意で、「心をー」とは言わない。 **決する**は、語勢の強い表現で、はっきりと決ま(め)るニュアンスやそれへの強い意志などが表れる。 | | 運命をー | 方針をー | 黒白をー | 勝敗がー | 技をー | ねらいをー | 意をー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **決める** | O | O | - | - | O | O | - | | **定める** | O | O | - | - | O | - | - | | **決定する** | - | O | - | O | - | O | - | | **決する** | O | - | O | O | - | - | O | **裁定する**は、物事のよしあし・理非を裁いて決める意。 **認定する**は、事実・資格としてそれに当たるかどうかを判断して認める意。主に公の機関が審査などを通して行うもの。 **判定する**は、はっきりと見分けて決める意。優劣・勝敗・正邪など、どちらとするかの判断において はっきりさせる場合に使う。 〈裁定する〉〈認定する〉〈判定する〉は、第三者的、また客観的な目や、立場で行うものと言える。 # 気持ち[きもち] ## 気持ち[きもち]/心持ち[こころもち]/気分[きぶん]/心地[ここち]/気色[きしょく]/心情[しんじょう]/感情[かんじょう]/情緒[じょうちょ]/情操[じょうそう] ### 使い分け例 **気持ち**・・・「気持ちを込める。」「気持ちが定まる。」「空気が悪くて気持ちが悪くなった。」「ほんの気持ちです。」 **心持ち**・・・「酒に酔ってよい心持ちだ。」「心持ち多いくらいだ。」 **気分**・・・「褒められて気分がいい。」「病気で気分が優れない。」「ほろ酔い気分。」「新婚気分。」 <146> **気色**・・・「相手の気色をうかがう。」「気色の悪い模様。」 **心情**・・・「心情を吐露する。」「悪いことだが、心情的には分かる。」 **感情**・・・「感情をあらわにする。」「感情的な発言。」「国民感情。」理性。 **情緒**・・・「情緒不安定。」同情動。「南国の情緒を醸す。」情趣。 **情操**・・・「豊かな情操を育てる。」「情操教育。」 ### どう使い分けるか **気持ち**が表せる意味は広く、心・考え・気分・心情・心理・心境・感触など、そのつどさまざまな言葉で置き換えられるが、基本的には、心の状態のことである。 **心持ち**は、漠然ととらえた**気持ち**。気分のようなものに近く、考えなどの意味合いは薄い。気立ての意味もある。やや古風な表現。 **気持ち** **心持ち**とも「一右寄り」などの例では、ほんの少しの意味を表す。 **気分**も漠然とした気持ちであるが、楽しいなどのほか身体面の快不快にも言う。「新婚ー」などでは、いかにもそれらしい気持ちを言う。 **心地**は、物事にじかに触れている時に身体または心の全体に受けた感触に言う。 **気色**は、顔に表れた気分。または物事に対して抱く快不快などの気分や感じ。 **心地** **気色**は**気持ち** **感情**と違って「込める」ことはできない。 **心情**は、心の内容を知情意とする場合の、情意(感情・意志)の側面としての**気持ち**。比較的非理性的な側面での心の状態。 **感情**は、物事に感じて起こる、快不快と結びついた気持ち。喜・怒・哀・楽など。 **情緒**は、一種独特の雰囲気の中で誘い起こされるさまざまな感情。また、その雰囲気。また、一時的で急激な感情の動き。後者はemotionの訳である。 **情操**は、美的・知的・道徳的などの価値判断の基になる、高度で複雑な感情。**情緒**が一時的であるのに対し、持続的なもの。 〔注意〕**情緒**は慣用でジョウチョと読むことが多い。 <147> # 着物[きもの] ## 着物[きもの] / 衣服[いふく] / 衣類[いるい] / 被服[ひふく] / 衣装(裳)[いしょう] / コスチューム[こすちゅーむ] ### 使い分け例 **着物**・・・「着物を着なくても過ごせる暖かさ。」「洋服を脱ぎ着物を着る。」 **衣服**・・・「衣服を身にまとう。」「衣服の管理。」 **衣類**・・・「衣類の整理をする。」 **被服**・・・「家庭科で被服の勉強をする。」「被服費。」 **衣装**・・・「衣装持ち。」「舞台衣装。」「衣装合わせ。」 **コスチューム**・・・「豪華なコスチュームを身にまとう。」「コスチュームプレー。」 ### どう使い分けるか **着物**は、着る物という意味で衣服の全般をも言うが、洋服に対して和服を指すことが多い。 **衣服**は、身にまとう物、着る物。和服か洋服かを問わない。 **衣類**は、身につける物であり、服とは言えない靴下や帽子なども含まれる。 **被服**は、衣服・着物の意のかたい文章語。 **衣装**は、衣服・着物の意であるが、見せるもの、見られるものというニュアンスが強く、アクセサリーなどを含めた全体について言うことも多い。また舞台の演技者の衣服を言う。 **コスチューム**は英語costume(=衣装)に基づく。ある時代や地方などを表す民族衣装、また舞台衣装、ほかに婦人服におけるひとまとまりの衣装、などの意で使うことが多い。「ープレー」は、ある時代の衣装で演ずる劇のこと。 # 救助[きゅうじょ] ## 救助[きゅうじょ] / 救出[きゅうしゅつ] / 救済[きゅうさい] / 救援[きゅうえん] ### 使い分け例 **救助**・・・「人命の救助。」「川に溺れた人を救助する。」「救助隊。」 **救出**・・・「人質の救出。」「坑内からけが人を救出する。」 <148> **救済**・・・「難民の救済。」「貧苦から人々を救済する。」 **救援**・・・「被災者の救援。」「侵略された国を救援する。」 ### どう使い分けるか **救助**は、遭難した人を危険から救い助けること。 **救出**は、危険な所に閉じ込められている人を救い出すこと。**救助** **救出**は精神的な救いには使わない。 **救済**は、困窮から人を救うこと。精神的な不幸からのそれも言う。 **救援**は、回復や再起に不足しているもの(金品・人手など)を提供して力を添えてやる援助の意味合いが強い。**救助** **救出**は即、命にかかわる危険から救うことだが、**救済** **救援**はそれほど緊急ではない。その代わり対象の人数が多くて長期になることが多い。 # 急に[きゅうに] ## 急に[きゅうに] / 俄[にわ]かに / いきなり[いきなり] / 矢庭[やにわ]に / 突然[とつぜん] / 不意[ふい]に / 出し抜け[だしぬけ]に ### 使い分け例 **急に**・・・「このところ急に日が長くなった。」「事態は急に進展している。」「急に腹が痛くなった。」 **にわかに**・・・「にわかには返答できない。」「雷鳴とともに空はにわかに闇と化した。」 **いきなり**・・・「いきなりそんなことを聞かれても答えられない。」「入社していきなり課長に任命される。」 **やにわに**・・・「戸外を見やると、やにわに外へ走り出た。」 **突然**・・・「突然雨が降り出した。」突如。 **不意に**・・・「不意に肩を叩かれ驚いた。」 **出し抜けに**・・・「出し抜けにおかしなことを言うなよ。」 ### どう使い分けるか **急に**は、極めて速く事態が変わるさま、また、思いがけず、前触れもなく、の二様の意味がある。 **にわかに**は、**急に**と同義の、かなり文章語的な和語。 <149> **いきなり**は、**急に**の後半の意味(思いがけず。前触れなく)と同じだが、有意志的な動作に限られ、その動作が相手にとって思いがけないことであるさまを言う。自然現象には用いない。 **やにわに**は、**いきなり**と同義だが文章語である。同じく自然現象には使えない。 **突然**は、**いきなり**と同義の上、有意志的な動作に限らず、自然現象などにも使う。同義の**突如**は**突然**より文章語的な漢語。 **不意に**も、**突然**と同義だが調子が弱く、また、より日常的な語。 **出し抜けに**は、**いきなり**と同じく意志のある動作について使う。その動作に対する非難めいた感じが少し付きまとう。 # 清い[きよい] ## 清い[きよい] / 清らか[きよらか] / 清潔[せいけつ] / 清浄[しょうじょう] ### 使い分け例 **清い**・・・「清い流れ。」「清い心。」「清い交際。」 **清らか**・・・「清らかな調べ。」「清らかな恋。」 **清潔**・・・「部屋を清潔にしておく。」「清潔な人柄。」「清潔な政治。」不潔。 **清浄**・・・「清浄な空気。」「心は清浄で一点の汚れもない。」「清浄な気分で新年を迎える。」 ### どう使い分けるか **清い**は、汚れていないですがすがしさが伴うような様子を言う。 **清らか**を**清い**と比べると、**清い**のほうは客観的な認識として、**清らか**のほうは、自分はそう思うという主観的な認識として言う違いがある。どちらも人間の内面に触れて言う場合には、純粋で利己心や俗悪なところがない意。 **清潔**は、衛生上のことのほかに、人柄や行為の印象にも言う。物質的なものについて言うことがかなり多いことや、「澄んでいる」という言い換えが当たらない場合が多いことは、**清い** **清らか** **清浄**と違う。 <150> **清浄**は、物質面では空気や水、抽象的な面では心やムードとしての空気などによく使い、「澄んでいる」という言い換えが大方当てはまる。「恋・恋愛・一票・人柄」などについては言わない。 # 教師[きょうし] ## 教師[きょうし] / 教員[きょういん] / 教官[きょうかん] / 教育者[きょういくしゃ] / 先生[せんせい] / 師[し] / 師匠[ししょう] ### 使い分け例 **教師**・・・「国語の教師。」「家庭教師。」 **教員**・・・「教員免許状。」「教員の養成。」「教員組合。」 **教官**・・・「大学の教官。」「少年院の教官。」 **教育者**・・・「教育者にあるまじき所業。」「研究者にして教育者。」 **先生**・・・「中学校の先生。」「外科の先生。」「先生だいぶご機嫌だね。」 **師**・・・「師と仰ぐ。」「師の恩。」 **師匠**・・・「小唄のお師匠さん。」「学問上の師匠。」 ### どう使い分けるか **教師**は学問や技芸を教える人で、「ピアノー」のように学校以外でも使い、また宗教の指導者の意もある。 **教員**は学校で教育職務に従事する人で、職員・事務員と区別して言う。 **教官**は国立の学校や研究所で教育・研究を職務とする公務員で、私立大学の教員を指すのは俗用。 **教育者**は、教育に従事する人であるが、生徒の手本となるような人格者という敬意や自戒を込めて用いられることが多い。 **先生**は学問や技芸を指導する人で、そのほかに医師・代議士・弁護士などの敬称として使われるが、親しみやからかいの気持ちを込めて言うこともある。 **師**は学問や技芸・宗教上の指導者を敬意を込めて言う語で、代名詞や接尾語としても用いる。 **師匠**は技芸や遊芸などを教える人で、芸人の敬称としても用いるが、学問上の直接の先生を言う場合もある。 <151> # 共同 ## 共同[きょうどう] ## 協同[きょうどう] ## 協力[きょうりょく] ## 互助[ごじょ] ## 助け合い[たすけあい] ### 使い分け例 **共同**・・・「共同で経営する。」「共同炊事場。」「共同募金。」◎単独。 **協同**・・・「両国の協同により開発する。」「協同一致。」「協同組合。」 **協力**・・・「美化に協力する。」「協力を惜しまない。」 **互助**・・・「互助の精神。」「互助会。」 **助け合い**・・・「歳末助け合い運動。」 ### どう使い分けるか **共同**は、共に事を行うこと、また同等の資格で関係すること。 **協同**は、心や力を合わせ共に事を行うこと。〈共同〉のように例えば単に場所・物・権利などを共有することなどには使わないが、比較的新しい用法として〈共同〉を〈協同〉の意味で使うこともある。 **協力**は、力を合わせることに重点をおいた語。〈共同〉〈協同〉は複数の者が対等の立場で事を行うが、〈協力〉では主たるものに対する助力もある。 **互助**は、同等の立場や資格の人が互いに助け合うことに言う。 **助け合い**は、助けたり助けられたりの関係であり、〈互助〉と同義の和語で日常的な言葉。 | | ―の精神 | ―して運営する | ―して運動する | ―して事を挙げる | ―を求める | 一年―の議会議員 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 共同 | | ○ | | | | ○ | | 協同 | | ○ | ○ | ○ | | | | 協力 | | | | | ○ | | | 互助 | ○ | | | | | | | 助け合い | ○ | | | | | | # 巨大 ## 巨大[きょだい] ## 膨大[ぼうだい] ## 莫大[ばくだい] ## 多大[たたい] ## 甚大[じんだい] ## 絶大[ぜつだい] ## 至大[しだい] ### 使い分け例 **巨大**・・・「巨大なドーム。」「巨大な都市。」「巨大な資本。」 **膨大**・・・「膨大な宇宙。」「膨大な計画。」「膨大する予算。」 **莫大**・・・「莫大な財産。」「莫大な損失。」 **多大**・・・「多大な費用。」「多大な努 <152> **甚大**・・・「甚大な影響を受ける。」「被害は甚大だ。」 **絶大**・・・「絶大な権力。」「絶大な御支援を賜りますように。」 **至大**・・・「至大な構想に驚嘆する。」「至大な功績。」 ### どう使い分けるか **巨大**は、同類の他のものより規模が並外れて大きいさま。**膨大**は形や数量が非常に大きいさま。本来は膨れて大きくなること。 **莫大**は数量だけでなく、程度がこの上なく大きいさまを言う。 **多大**も数量・程度が大きいさまを言うが、他の語ほどではない。「一の」の形も多く用いる。 **甚大**は程度が甚だしく大きいさまを言うが、多く好ましくないことについて使う。 **絶大**は人間の力や行為がこの上なく大きいさまを肯定的に言う。 **至大**もこの上なく大きいさまで、構想や効果など無形のものについて言う非常にかたい文章語。 〔注意〕**膨大**は本来の意のほかは**厖大**の書き換え。 # 嫌う[きらう] ## 嫌う[きらう] / 嫌がる[いやがる] / 厭う[いとう] / 憎む[にくむ] / 嫌悪[けんお]する / 憎悪[ぞうお]する / 忌む[いむ] / 忌避[きひ]する ### 使い分け例 **嫌う**・・・「友達に嫌われる。」「外出を嫌う。」「壁は湿気を嫌う。」「所構わず現れる。」好く。好む。 **嫌がる**・・・「人に嫌がられる。」「働くのを嫌がる。」「人の嫌がることをするな。」 **厭う**・・・「労をいとう。」「世をいとう。」慕う。好む。 **憎む**・・・「罪を憎んで人を憎まず。」「憎めないやつ。」愛する。可愛がる。 **嫌悪する**・・・「無神経な態度を嫌悪する。」愛好する。 **憎悪する**・・・「裏切った相手を憎悪する。」 **忌む**・・・「友引の葬式を忌む風習。」「不正を忌む。」 **忌避する**・・・「徴兵を忌避する。」 <153> ### どう使い分けるか **嫌う**・**嫌がる**は重なる意味用法も多く、好意を持たない、避けるの二方向をそれぞれ持つが、**嫌がる**は、**嫌う**・避けたいなどの気持ちを様子に表すという意味合いで使うこともある。 **厭う**は**嫌がる**の古い言い方とも言え、嫌がって避ける意。健康面などでいたわる意もある。 **憎む**・**嫌悪する**・**憎悪する**は自身がそこから遠ざかりたいというよりも、対象の存在を否定したいくらいにひどく嫌う、いやだと思うことを表す。なお「悪」は憎むの意。**嫌悪する**は、感覚的な好みとして言う感じが強い。**憎悪する**は**憎む**よりも激しい憎しみが感じられる。 **忌む**は、嫌い避ける意だが、けがれや縁起、また煙ったさから遠ざけることに言う。 **忌避する**は、嫌がって、そうならないようにと強く避ける意。 # 霧[きり] ## 霧[きり] / 霞[かすみ] / 靄[もや] / スモッグ[すもっぐ] ### 使い分け例 **霧**・・・「霧が降る。」「霧が立ちこめる。」「夜霧。」「夕霧。」「霧を吹く。」 **霞**・・・「霞が立つ。」「朝霞。」「夕霞。」「春霞。」「目に霞がかかる。」 **靄**・・・「靄がかかる。」「朝靄。」 **スモッグ**・・・「光化学スモッグ。」 ### どう使い分けるか **霧**は、水蒸気の凝結した細かい水滴で、地表や海面の近くに漂う。平地では秋に多く、雅語としては秋のものだが、気象用語としては季節はない。人が液体を細かくして空中に飛ばした場合にも言う。 **霞**は、水滴に限らずちりなども含めて空中に浮遊する微細なもののために、空や遠くの景色がぼんやりと見える現象を言い、**霧**と違って「ーを浴びる」「ーにまかれる」ということはない。また「ーがたなびく」では薄雲のように帯状に見える現象を言う。目がはっきり見えないことを表す場合には「翳み」とも書く。秋の霧に対して、**霞**は春のものとされている。 **靄**も煙などを含めて言う。**霧**のように大気中に低く立ちこめるが**霧**より湿度は低く見通しはよい。 <154> **霧**も煙などを含めて言う。〈霧〉のように大気中に低く立ちこめるが〈霧〉より湿度は低く見通しはよい。 **スモッグ**はsmog(smoke煙+fog霧の合成語)。排煙・排気ガスなどが雲や霧のように立ちこめたもの。大気汚染と言える。 | | 朝― | 夜― | 春― | ―がたなびく | ―のたちこめた冬の夕 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 霧 | ○ | ○ | | ○ | ○ | | 霞 | ○ | | ○ | ○ | | | 靄 | ○ | | | | ○ | # 切る ## 切る[きる] ## 伐る[きる] ## 斬る[きる] ## 截る[きる] ## 切断する[せつだんする] ## 断裁する[だんさいする] ## 裁断する[さいだんする] ## カットする ### 使い分け例 **切る**・・・「指を切る。」「縁を切る。」「スイッチを切る。」「スタートを切る。」「風を切る。」 **伐る**・・・「木を伐る。」 **斬る**・・・「人を斬る。」 **截る**・・・「布を截る。」 **切断する**・・・「パイプを切断する。」「鉄板を切断する。」「切断面。」 **断裁する**・・・「紙を断裁する。」「断裁機。」 **カットする**・・・「髪をカットする。」「賃金カット。」「ボールをカットする。」 ### どう使い分けるか **切る**は、最も広く用いられ、〈伐る〉〈斬る〉〈截る〉もこの表記で表せる。特に使い分けるとすれば、**伐る**は木を、**斬る**は人を、**截る**は紙や布などを切る場合に使う。 **切断する**・**断裁する**は、物を断ち切ることに使い、〈断裁する〉は主に紙を、製本などで型に合わせて切る場合に使う。 **カットする**のcutは「切る」意だが、日本語としては切り除く、削除する、切り捨てるなどの場面・意味で用いられる。 # 着る ## 着る[きる] ## 纏う[まとう] ## 着ける[つける] ## 羽織る[はおる] <155> ### どう使い分けるか **着る**は、上半身を含めて服を身につける意。 **纏う**は、身にぐるっと覆った全体をとらえて言う。 **着ける**は、身につける物であれば衣類のほかアクセサリーなどの場合にも使う。「付ける」とも書くが、「付ける」は他の意味も多い。 **羽織る**は、衣服の上に肩から背中に引っ掛けるように着る場合に言い、袖を通していてもいなくても言う。 # 議論[ぎろん] ## 議論[ぎろん] / 論議[ろんぎ] / 討論[とうろん] / 討議[とうぎ] / 論争[ろんそう] / ディスカッション[でぃすかっしょん] ### 使い分け例 **議論**・・・「議論を闘わす。」「運営方針について議論する。」 **論議**・・・「税制についての論議。」「本対策の是非を論議する。」 **討論**・・・「自然破壊について討論する。」「政治討論会。」 **討議**・・・「対策を討議する。」「意見発表の後、討議に入る。」 **論争**・・・「党のあり方を巡る論争。」「激しく論争する。」「文学論争。」 **ディスカッション**・・・「ディスカッションする。」「パネルディスカッション。」 ### どう使い分けるか **議論**は、問題点について結論や合意点を求めて互いの意見に批判も加えながら意見を出し合うこと。 **論議**は、ほぼ**議論**に同義だが、**論議**の方が問題が狭く限定され、核心に迫る煮詰まった話し合いである場合が多い。 **討論**も**討議**も、を詳しく調べ問いだすための**議論**。**討議**は具体的な方向を目指して、詳しい問題に入り込む場合が多く、**討論**の方が意見の出し合いの意が強く、話し合いだけでは具体的な施策が求められないことを前提とした場合に使われることが多い。いずれも話し合いの形式の整った場合が多く、社会問題を扱う特定の公式的な話し合いやその名称に多く使われる。 <156> **論争**は、勝つことを意識においてする話し合い。 **ディスカッション**は英語discussion(=討論・討議)。「パネルー」は、聴衆の前で専門家が討論し、質問を受けるもの。 # 近所[きんじょ] ## 近所[きんじょ] / 近隣[きんりん] / 近辺[きんぺん] / 辺り[あたり] ### 使い分け例 **近所**・・・「近所に住む。」「近所付き合い。」「近所迷惑。」「近所合壁。」遠方。 **近隣**・・・「近隣の家。」「近隣の村々。」「近隣諸国。」 **近辺**・・・「駅の近辺。」「東京近辺。」「机の近辺。」 **辺り**・・・「神社の辺りを散歩する。」「辺りの気配。」「今日辺りには帰ってくるだろう。」 ### どう使い分けるか **近所**は、自分の住まいの近くで、その範囲では、どの家のどの人と具体的に知っているような近い所を言う。 **近隣**は、**近所**がその家に近い所の意味であるのに対し、それだけでなく、市町村や国段階での近い所をも意味する。 **近辺**は、その指す範囲が**近所** **近隣**に比べるとやや漠然としている。また、より狭い段階でも使い、「机のー」などは**近所** **近隣**では不適である。 **辺り**の意味用法は、**近辺**に近いが、空間的にとらえる範囲は更にさまざま(周囲、一帯など)で漠然としている。また「ころ」「ぐらい」といった時間や程度の大体にも言う。 | | 〜の家々 | 〜付き合い | 〜諸国 | 大阪〜 | 机の〜 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **近所** | ○ | ○ | | | | | **近隣** | ○ | | ○ | | | | **近辺** | | | | ○ | ○ | | **辺り** | | | | ○ | ○ | <157> # ぐいぐい[ぐいぐい] ## ぐいぐい[ぐいぐい] / ぐんぐん[ぐんぐん] / どんどん[どんどん] / ずんずん[ずんずん] / とんとん[とんとん] / どしどし[どしどし] / めきめき[めきめき] ### 使い分け例 **ぐいぐい**・・・「ぐいぐい綱を引く。」「ぐいぐい酒をあおる。」 **ぐんぐん**・・・「成績がぐんぐん上がる。」「他者をぐんぐん引き離す。」 **どんどん**・・・「どんどん戸をたたく。」「どんどん出世する。」 **ずんずん**・・・「ずんずん歩く。」「木はずんずん大きくなった。」 **とんとん**・・・「とんとん話が進む。」「とんとん拍子。」 **どしどし**・・・「応募者がどしどし来る。」「どしどし言い付けてください。」「どしどしと上がり込む。」 **めきめき**・・・「めきめき力をつける。」 ### どう使い分けるか **ぐいぐい**は、力を込めて引いたり押したりする様子や、勢いよく物事を続けてするさまを表す。 **ぐんぐん**は、物事の進み方の速い、また力強いさま。**ぐいぐい**は動かす力の強さに、**ぐんぐん**はそれによる物事の動きに視点の置かれた表現。 **どんどん**は、物を強く連打する音のさまのほかは、**ぐんぐん**と同じに使える。 **ずんずん**は、進んで行く様子が力強いさま。積極的で振り返らない感じがある。ほかに物事の変化や進行が速いさまを表す用法では**どんどん**よりも、ぬきん出るような感じが表れる。 **とんとん**は、物事が(を)順調に運ぶさま。「―たたく」などは擬声語で、別の用法である。 **どしどし**は、物事が次から次へと滞りなどがなく続くさま。ためらいや遠慮などのない感じも表れる。 **めきめき**は、成長・進歩・伸展などが目立って速いさま。 <158> # 食い違い[くいちがい] ## 食い違い[くいちがい] / 齟齬[そご] / 矛盾[むじゅん] / ジレンマ[じれんま] ### 使い分け例 **食い違い**・・・「二人の意見に食い違いがある。」「歯車の食い違い。」 **齟齬**・・・「発言に齟齬を来す。」 **矛盾**・・・「論理に矛盾がある。」「矛盾した態度。」自家撞着。 **ジレンマ**・・・「親孝行も、恋もしたいというジレンマから逃れられない。」 ### どう使い分けるか **食い違い**は、互いの不一致・ずれ。同一人物の二つの言動の**食い違い**は、後の**矛盾**と同じになる。 **齟齬**は、**食い違い**と同義の漢語。極めてかたい文章語。 **矛盾**は、つじつまの合わないことを言い、**食い違い** **齟齬**と違って、別のの人間のそれぞれの方向が違っているような場合ではなく、同じ人間または同じ仲間の幾つかの発言が背き合い論理性がないことに言う。中国の故事成語。文章語的だが、かなり日常的にも使われている。 **ジレンマ**はdilemma。二つの望みがあり、一方を果たすと必然的にもう一方が果たせなくなるために、その間に挟まって動きがとれないこと。現実の**食い違い**の中で、論理の**矛盾**を避けようとして陥る板挟みの状態である。 # 苦情[くじょう] ## 苦情[くじょう] / 文句[もんく] / 難癖[なんくせ] / 異議[いぎ] / 物言い[ものいい] / クレーム[くれーむ] ### 使い分け例 **苦情**・・・「苦情を訴える。」「苦情が絶えない。」「苦情処理。」 **文句**・・・「いつも文句ばかり言う。」「文句が多い。」「文句をつける。」 **難癖**・・・「難癖をつける。」 **異議**・・・「異議を唱える。」「異議を申し立てる。」 **物言い**・・・「物言いがついて取り直し。」 **クレーム**・・・「取引先にクレームをつける。」「判定にクレームがつく。」 <159> ### どう使い分けるか **苦情**は他から受ける損害や不利益に対する不平・不満。**文句**はそういう状態に対する言い分の意である。 **難癖**は「―をつける」という形で使い、ちょっとした欠点を見つけて悪く言うこと。 **異議**は他と異なる意見や考えの意で、「ーあり・なし」のように使うが、特に他人の意見や行為を不服とする場合に使う。(なお、同音の「異義」は「同音―語」のように異なった意味の意)。 **物言い**は相撲で行司の判定に審判委員が異議を申し立てることで、一般に**異議**の意にも使われる。なお、「―が悪い」は言葉づかい、「―の種」は口論の意である。 **クレーム**は貿易で売り手の契約違反に対する損害賠償の請求の意であるが、一般に異議申し立て・苦情の意にも使われ、「ーがつく」「ーをつける」の形になることが多い。 # 悔しい[くやしい] ## 悔しい[くやしい] / 残念[ざんねん] / 無念[むねん] / 口惜しい[くちおしい] ### 使い分け例 **悔しい**・・・「試合に負けて悔しい。」 **残念**・・・「せっかくの運動会が中止になって残念だ。」「君に会えなくて残念だ」 **無念**・・・「この度の敗訴は無念だ。」 **口惜しい**・・・「ここで逃したとは口惜しい。」 ### どう使い分けるか **悔しい**は、屈辱感や敗北感のため腹立たしく、忘れられない、諦めきれないといった主観的な感情に言う。 **残念**は、改めて考えれば果たせた方がよかったと思う、という程度の軽い気持ちにも言う。また**悔しい**より客観的な響きがあり、屈辱感は少ない。 **無念**は、心底残念でならない意。心に掛けていたことが果たせなかったり失ったりしてとりかえしのつかない場合に使うことが多く、恨めしく思う気持ちが含まれていることが多い。屈辱感などには**悔しい**のほうがよく使われる。つくづく残念だという意味で「残念無念」の言い方もある。 <160> **口惜しい**は、残念だ、悔しいの意。もう少しで果たせたことができなかったというような場合に、残念だ、の意で使われる。やや文章語的な古風な言葉。 # 倉(蔵)[くら] ## 倉(蔵)[くら] / 倉庫[そうこ] / 物置[ものおき] / 納屋[なや] ### 使い分け例 **倉(蔵)**・・・「米蔵。」「蔵出し。」「旧家の倉(蔵)で古文書を見つける。」 **倉庫**・・・「穀物の倉庫。」「材料の倉庫。」「倉庫業。」 **物置**・・・「この部屋は物置に使う。」「冬の間クーラーは物置にしまう。」 **納屋**・・・「農具は納屋にしまう。」 ### どう使い分けるか **倉**は、家財や商品などを火災や盗難などから守り保管しておく建物。**倉**と**蔵**の違いは現在明確ではなく、熟語は慣用でどちらかを書くことが多い。やや古い。 **倉庫**も倉だが、材料・製品などの品物を貯蔵・保管する建物として一時的にそこに物を置いておくようなものであることが多い。「倉庫業」の例では他人の物を預かるための建物・設備を言う。 **物置**は、当面使わない物や雑具などを入れておく場所。独立棟とは限らず、規模が小さい。 **納屋**は、ほぼ物置小屋と言え、独立棟として設けたもの。 # 暮らし[くらし] ## 暮らし[くらし] / 生活[せいかつ] / 暮らし向き[くらしむき] / 生計[せいけい] / 家計[かけい] ### 使い分け例 **暮らし**・・・「日々の暮らし。」「暮らしが立つ。」「つましい暮らし。」 **生活**・・・「地方で生活を営む。」「芸術家らしい生活を送る。」「芸術と生活。」 <161> 家としての生活。」「記者生活にも慣れた。」「生活環境。」「生活を助ける。」「生活水準。」「生活力。」 **暮らし向き**・・・「暮らし向きは派手なようだ。」「暮らし向きはよくない。」 **生計**・・・「漁業で生計を立てる。」 **家計**・・・「家計を預かる。」「家計を助ける。」「家計は火の車。」「家計簿。」 ### どう使い分けるか **暮らし**・**生活**ともに、暮らすこと、生計の意で使われる。〈生活〉のほうが生きること全般に関して言われ、〈暮らし〉は、日常生活、または生計の意に主として使われる。 **暮らし向き**は、経済面から見る生活ぶり。 **生計**は、暮らし・生活の意味だが、経済によって成り立っているという意味での生活に言う。 **家計**は、その家の収支の状態。 | | ―を助ける | 日々の― | ―を営む | ―を立てる | ―を預かる | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 暮らし | ○ | ○ | ○ | ○ | | | 生活 | ○ | ○ | ○ | ○ | | | 生計 | | | | ○ | | | 家計 | ○ | | | | ○ | # 比べる ## 比べる[くらべる] ## 照らし合わせる[てらしあわせる] ## 突き合わせる[つきあわせる] ## 対比する[たいひする] ## 対照する[たいしょうする] ### 使い分け例 **比べる**・・・「背の高さを比べる。」「私に比べて君は堅実だ。」「プロには比べられない。」◎比較する。 **照らし合わせる**・・・「過去のデータと照らし合わせてみる。」「原文と照らし合わせる。」◎照合する。 **突き合わせる**・・・「帳簿を突き合わせる。」「一字一字突き合わせる。」 **対比する**・・・「去年の業績と対比する。」「外国と対比して考える。」 **対照する**・・・「西洋史と日本史を対照する。」 ### どう使い分けるか **比べる**は、二つ以上のものを並べ、その異同・優劣を調べる、の意。優劣を見ることから、競う・競わせる、の意にもなる。 **照らし合わせる**は、二つのものを比べ異同を詳しく見る、の意で、 <162> # 繰り返す[くりかえす] ## 繰り返す/反復[はんぷく]する/重ねる/重複[じゅうふく]する/ダブる/蒸[む]し返[かえ]す ### 使い分け例 **繰り返す**・・・「失敗を繰り返す。」「歴史は繰り返す。」 **反復する**・・・「同じ言葉を反復して覚える。」 **重ねる**・・・「練習を重ねる。」「この件についても重ねてお詫びします。」 **重複する**・・・「意味が重複する表現。」 **ダブる**・・・「同じ説明をダブってする。」「二つの映像をダブらせる。」 **蒸し返す**・・・「話を蒸し返す。」 ### どう使い分けるか **繰り返す**は、同じことを二度または何度もする、という意。 **反復する**は、同じ事を何度も繰り返す場合に言う。「失敗をー」とは言いにくい。 **重ねる**は、最初の例や「苦労をー」のような例では、一度でなく何度もそれを繰り返す、といったニュアンスがあるが、二番目の例では一度繰り返す、といった感じである。 **重複する**は同じ物事が重なる意。「・・・を重複する」の形(他動詞)はない。 **ダブる**は、英語doubleから作られた動詞で、同じことを二度する、二つのものが重なる、の意。 **蒸し返す**は、一度決着のついたことをまた問題にすること。「一のはよくない」という否定的な評価を含んで使う場合が多い。 <163> くるくる 風にあおられて回っている。」 ### 使い分け例 **くるくる**・・・「こまがくるくる回る。」「糸をくるくる巻き付ける。」「くるくるよく働く。」「くるくる方針が変わる。」 **ぐるぐる**・・・「体に縄をぐるぐる巻き付ける。」「ぐるぐる腕を回す。」「町の中をぐるぐる探し歩く。」 **くるりくるり**・・・「風向計がくるりくるり向きを変える。」「くるりくるり態度を変える。」 **くるんくるん**・・・「凧がくるんくるん ### どう使い分けるか いずれも同じ音の繰り返しによる語で、「くるっと」「ぐるり」などと比べると連続的な動き(特に回転)を表していることが分かる。 ここに掲げたものに限らず、擬音・擬態語は、清音は比較的軽い感じ、濁音は重い・力のこもった・やかましいなどの感じがある。 **くるくる**は**ぐるぐる**に比べると、軽やかに調子よく動く感じ。〈ぐるぐる〉は〈くるくる〉に比べ、重さの感じられるものの動き、大きな動きを表すのに適する。 **くるりくるり**は、こまのように円いものの等速回転運動ではなく、一回転することが目にわかり、一回転ごとにリズムが感じられるようなものの様子に使う。 **くるんくるん**は〈くるりくるり〉よりも更にリズムの強弱が大きい感じがある。 〈くるくる〉〈くるりくるり〉〈くるんくるん〉は、態度や方針を変える様子にも言うが、変わりすぎてよくないという評価が込められている場合が多い。 # 苦しみ[くるしみ] ## 苦しみ[くるしみ]/苦痛[くつう]/苦悩[くのう]/悩み[なやみ]/苦悶[くもん]/煩悶[はんもん]/煩悩[ぼんのう] <164> ### 使い分け例 **苦しみ**・・・「心臓の苦しみを訴える。」「産みの苦しみ。」「生活の苦しみ。」 **苦痛**・・・「足腰に苦痛を感じる。」「家でじっとしているのも苦痛だ。」 **苦悩**・・・「いかに生くべきかの苦悩。」 **悩み**・・・「生活の悩みを抱える。」 **苦悶**・・・「現況に活路を見いだすべく苦悶する。」「苦悶の表情。」 **煩悶**・・・「自らの行いに煩悶する。」 **煩悩**・・・「煩悩を捨てる。」「百八煩悩。」 ### どう使い分けるか **苦しみ**・**苦痛**は、体だけでなく心に感じるものをも言う。 **苦悩**は、苦しみ悩むこと。身体的な苦しみには言わない。精神的な〈**苦痛**〉に比べると、抽象的なものについて言う。文章語である。 **悩み**は、難問を解決できないでいること。〈**苦悩**〉に比べ、具体的な場合、また軽い場合にも言う。 **苦悶**は、〈**苦悩**〉や〈**苦痛**〉が激しく、悶えるほどに苦しむことを特に言う。肉体的苦痛の場合にも使う。以下二語も文章語。 **煩悶**は、解決できない悩みでもだえ苦しむこと。「煩」の意からも、さまざまに思い乱れる意が強い。肉体的苦痛については使わない。 **煩悩**は、身心の安息を妨げる、どんな人間の中にももともとある欲望や邪念を言う仏教用語。 〔注意〕〈**苦悩**〉〈**苦悶**〉〈**煩悶**〉は、それぞれ「―する」の形の動詞になるが〈**苦痛**〉〈**煩悩**〉はそうならない。 # 苦労[くろう] ## 苦労/苦心[くしん]/労苦[ろうく]/辛酸[しんさん]/辛苦[しんく]/辛労[しんろう]/心労[しんろう] ### 使い分け例 **苦労**・・・「金に苦労する。」「苦労して作り上げる。」「人生は苦労が絶えない。」「苦労性。」「苦労人。」 **苦心**・・・「いい色に仕上げるのに苦心した。」「苦心惨憺(澹)。」 **労苦**・・・「彼の労苦になんとか報いてやりたい。」 **辛酸**・・・「辛酸をなめる。」「辛酸を味わう。」 <165> **辛苦**・・・「辛苦して家業を再興する。」「艱難辛苦を乗り越える。」 **辛労**・・・「筆舌に尽くしがたい辛労を重ねた。」 **心労**・・・「心労が重なり、病気になる。」 ### どう使い分けるか **苦労**は、困難とたたかい、労力を費やすこと。心身のどちらの面のことにおいても使う。 **苦心**は、ある限られた事柄に関してあれこれと頭を使うこと。能動的・積極的なもの。人生における漠然とした苦労などには言わない。 **労苦**は、主に仕事そのものの苦労に言う。 **辛酸**は、厳しく辛い思いや苦しみ。降りかかってくるさまざまな苦労を言う場合が多く、「ーをなめる」と言っても、進んでするという意味ではない。 | | ーを重ねる | ーを嘗める | 彼のーに報いる | 親にーをかける | 修業中のー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **苦労** | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | **苦心** | | △ | | | | | **労苦** | | | ○ | | | | **辛酸** | | ○ | | | △ | | **辛苦** | | | | | ○ | | **辛労** | ○ | | | | | | **心労** | | | | ○ | | **辛苦**は、辛い苦しみを言うが、生活・仕事上のという響きがある。 **辛労**は、特に大変なひどい骨折りを言う。同音の**心労**は精神面だけの苦労を指す。 〈**苦労**〉〈**苦心**〉は日常語と言ってよいが、他は文章語。 〔注意〕〈**苦労**〉〈**苦心**〉〈**辛苦**〉は、それぞれ「―する」と動詞になるが、他は名詞として使うだけである。 # 刑[けい] ## 刑/罰[ばつ]/刑罰[けいばつ]/処罰[しょばつ]/処刑[しょけい] ### 使い分け例 **刑**・・・「懲役二年の刑を言い渡す。」「刑を終える。」 **罰**・・・「罰を与える。」「罰金を科す。」「天罰。」 **刑罰**・・・「刑罰に処する。」「何人も法律に定める手続きによらなければ、刑罰を科せられない。」 <166> **処罰**・・・「処罰を受ける。」「厳重に処罰する。」 **処刑**・・・「殺人罪で処刑される。」「処刑台。」 ### どう使い分けるか **刑**は犯罪者に罰を与えることで、法律に従うもの。 **罰**は悪い行い(や規則違反など)に対する懲らしめとして使い、法に従うものとは限らない。 **刑罰**は罪を犯した者に加える制裁。特に法に背いて罪を犯した者に国家が加える制裁を言う場合もある。この場合、〈**刑**〉と同義だが、〈**刑**〉の方が具体的である。 **処罰**は刑罰に処すること、罰すること。その行為を言う。 **処刑**は刑に処する意だが、特に死刑を行うことの意に言うのが普通である。 # 経過[けいか] ## 経過/成[な]り行[ゆ]き/いきさつ/顛末[てんまつ]/過程[かてい]/プロセス ### 使い分け例 **経過**・・・「一年が経過した。」「その後の経過を伝える。」「経過は良好。」 **成り行き**・・・「成り行きを見守る。」「成り行きでこうなった。」 **いきさつ**・・・「決定までのいきさつ。」 **顛末**・・・「事の顛末を話す。」 **過程**・・・「調査の過程で既に明らかだ。」「変化の過程を追う。」「成長の過程。」 **プロセス**・・・「さまざまなプロセスを踏んで仕上げられる。」「結果よりもプロセスを重んじる。」 ### どう使い分けるか **経過**は、単に時間を経ることを言う場合と、事態の変化していく実際の様子を言う場合がある。 **成り行き**は、結果に至る進行の実際の様子で、〈**経過**〉とほぼ同じだが、「ーに任せる」のように結果を不測の未来としてとらえる感じの用法があり、〈**経過**〉とこの点が異なる。 **いきさつ**は結果につながる途中の事情。 <167> **顛末**は、事の初めから終わりまでの詳しい事情。どちらも結果から溯っての途中の事柄を言うので、「顛末を話す」はもとより「いきさつを話す」と言えば、まずは結果までの全体をとらえている。したがって〈**成り行き**〉のように「―に任せる」ということはない。 **過程**は、結果に至るまでの道筋・通り道。〈**いきさつ**〉などのように初めから結果までの全体ではなく途中である。また、〈**いきさつ**〉などのように過去のことだけでなく、現在進行中のことも未来のこともある。 **プロセス**は、英語process。〈**過程**〉と同義のほか、手順・手続などの意もある。 # 計画[けいかく] ## 計画/企画[きかく]/企[くわだ]て/企[たくら]み/目論見[もくろみ]/計略[けいりゃく]/策略[さくりゃく]/謀略[ぼうりゃく] ### 使い分け例 **計画**・・・「旅行の計画を立てる。」「事業計画。」「計画経済。」「計画的犯罪。」「計画した通り事が進む。」 **企画**・・・「新商品販売の企画。」「営業部の企画会議。」「企画立案能力。」 **企て**・・・「つまらぬ企ては捨てよ。」「壮大な企て。」 **企み**・・・「会長を降ろそうという企み。」 **もくろみ**・・・「もくろみがまんまと成功する。」「もくろみが外れる。」 **計略**・・・「人質奪還の計略。」「城攻めの計略。」 **策略**・・・「詐取の策略を練る。」「策略に引っかかる。」 **謀略**・・・「敵の謀略にはまる。」「国際麻薬シンジケートの謀略。」 ### どう使い分けるか **計画**・**企画**は、意味の違いがわかりにくいが実際には互いに言い換えられないケースが多い。〈**計画**〉は、確かに実現できるという客観的な根拠があるものとして立てられ、〈**企画**〉は、新しく発案する計画というニュアンスを持ち、必ず成功する保証はないが、可能性に賭けるものとして立てられる、と言えようか。企業活動の中では〈**企画**〉が多く使われる。 <168> | | 催し物の | 家族旅行の | 新商品の | 来年度の | 新番組の | 犯罪を | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **計画** | ○ | ○ | | ○ | | ○ | | **企画** | ○ | | ○ | ○ | ○ | | **企て**は、〈**企画**〉に対応する和語で日常的にはあまり使われないが、〈**企画**〉より内容の漠然としているものが多い。 **企み**は、隠れてするよくない企て、といったニュアンスで使われる。 **もくろみ**は、内心ひそかにするニュアンスはあるが〈**企み**〉のように悪いことという感じはない。 **計略**・**策略**は、自分の都合のよいように事を運ぼうとするためのひそかな計画。〈**策略**〉の方が相手を欺く感じが強い。 **謀略**は、相手を陥れるための(策略)。かなり大きく手の込んだ悪質のものを言う。 # 傾向[けいこう] ## 傾向/趨勢[すうせい]/大勢[たいせい]/風潮[ふうちょう]/時勢[じせい]/時流[じりゅう] ### 使い分け例 **傾向**・・・「私はすぐに弱気になる傾向がある。」「高齢者人口は増加の傾向をたどる。」「現代文学の傾向。」 **趨勢**・・・「世の趨勢には勝てない。」同趨向。 **大勢**・・・「大勢には影響がない。」「反対意見が大勢を占める。」「天下の大勢。」 **風潮**・・・「物を大切にしない社会の風潮を反映する。」 **時勢**・・・「時勢に後れる。」「勤勉が褒めたたえられないご時勢になった。」 **時流**・・・「時流に乗る。」「時流に染まらぬ気概。」 ### どう使い分けるか **傾向**は、物事がある方向に向かう、そうなっていくこと。〈**風潮**〉との間で言い換えとなることも多いが、〈**風潮**〉は世相としてとらえて使い、好ましくないこととして言う例が多い。〈**傾向**〉は個人のことについても使う。個人にしろ社会にしろ、比較的確かな動きとしてとらえたものを言う。 **趨勢**は物事が移り進んでゆくありさま、成り行き。社会的動向を表すのに使う。 <169> **大勢**は大体の形勢を言い、それが「ーに従う」のように特に世の中のそれを指して使われることもある。時に大きな権勢の意。〈**趨勢**〉とともに「動向」に近い意。 **風潮**・**時勢**・**時流**は時代による移り変わりとしてとらえる点で似るが、〈**時勢**〉は個々の現象についてでなく世の中全般をひっくるめて動的にとらえて言うニュアンスがあり、「昨今の若者の風潮」を〈**時勢**〉では言い換えられない。〈**時流**〉は、その時どきの社会の風潮・傾向を動的にとらえて、それに従うとその時の社会の波に乗れるというニュアンスで使う。〈**時勢**〉は〈**時流**〉に比べ、大きな世の変化の中での必然的なものと言える。 # 掲示[けいじ] ## 掲示/表示[ひょうじ]/標示[ひょうじ]/展示[てんじ] ### 使い分け例 **掲示**・・・「日程の掲示。」「掲示物。」「ポスターを掲示する。」 **表示**・・・「意思を表示する。」「品質表示。」 **標示**・・・「町名を標示する。」「標示板。」 **展示**・・・「作品を展示する。」「展示即売。」 ### どう使い分けるか **掲示**は、人々の見える所に知らせたい事柄を書いて掲げること、またその文書。 **表示**は、おもてにはっきりと表し示すことを言い、人目に付く所に掲げるなどの意味合いはない。表にして示すことにも言う。 **標示**は目印として示すこと。また目印となる文字・記号・図など。 **展示**は多くの人に見せるために並べること。作品などの観賞のためという場合もあり事務的な意味合いの特にない点が〈**掲示**〉〈**表示**〉〈**標示**〉と違う。 # 敬服[けいふく] ## 敬服/感服[かんぷく]/心服[しんぷく]/心酔[しんすい]/傾倒[けいとう] <170> ### 使い分け例 **敬服**・・・「君の熱心さには敬服する。」 **感服**・・・「見事な腕前に感服する。」 **心服**・・・「多くの人が心服を寄せる。」 **心酔**・・・「師匠の芸に心酔する。」「西洋文化に心酔する。」 **傾倒**・・・「カントに傾倒する。」「川端文学に傾倒する。」「紛争解決に全力を傾倒する。」 ### どう使い分けるか **敬服**は、すっかり感心して自分より上だと尊敬するような場合に使う。 **感服**もほぼ同義だが、尊敬の念は前者が、感動は後者がやや強いというニュアンス。 **心服**には、心からの尊敬の意のうえに、相手に付き従う意が加わる。 **心酔**は、対象の価値を高く評価し尊敬するあまり、冷静さを失って夢中になるという感じがある。 **傾倒**も、心をひかれ夢中になることだが、〈**心酔**〉に比べると冷静かつ理性的な感じがある。 # 怪我[けが] ## 怪我/傷[きず]/負傷[ふしょう]/傷害[しょうがい] ### 使い分け例 **怪我**・・・「足に怪我をする。」「怪我人。」「あの人に近付いては怪我をする。」「怪我の功名。」 **傷**・・・「傷を負う。」「机に傷が付く。」「心の傷。」「名前に傷が付く。」「傷だらけ。」 **負傷**・・・「事故で負傷する。」「負傷者。」 **傷害**・・・「他人に傷害を負わせる。」「傷害事件。」 ### どう使い分けるか **怪我**は、事故や過失による、〈**傷**〉を含む身体の損壊。比喩的に、過ち・痛い目の意もある。 **傷**は、体の皮膚や筋肉などに負う損傷を言う。「無傷」の例では広く〈**怪我**〉の意になるが、普通、骨折などは〈**怪我**〉とは言っても〈**傷**〉とは言わない。また物に付く跡や、不名誉、欠点、精神的な痛手にも言う。 **負傷**は、けがを負う(受ける)こと。 <171> この「傷」は骨折なども含めた広い意味。 **傷害**は、けがを負わせること、つまり〈**負傷**〉させること。 # 景色[けしき] ## 景色/風景[ふうけい]/眺[なが]め/光景[こうけい]/情景[じょうけい]/見晴[みは]らし/眺望[ちょうぼう]/シーン ### 使い分け例 **景色**・・・「松島でも最も景色の美しい所。」「一面の雪景色。」「春景色。」 **風景**・・・「風景画。」「町の風景。」「人々の働く風景。」「心象風景。」 **眺め**・・・「眺めがよい。」「眺めが利く。」「見事な眺めだ。」 **光景**・・・「仲良く遊んでいる光景はほほえましい。」「あの時の悲惨な光景が目に浮かぶ。」 **情景**・・・「場面の情景を思い浮かべる。」「情景描写。」 **見晴らし**・・・「見晴らしがよい。」「見晴らし台。」 **眺望**・・・「ここからは眺望が利く。」「高台から眺望する。」「眺望台。」 **シーン**・・・「二人が出会うシーンを演ずる。」「映画のワンシーン。」 ### どう使い分けるか **景色**・**風景**は、自然界の様子を言う。ただし、〈**風景**〉は、自然以外の町や人々の見える場面のありさまをも言う。 **光景**は、自然について言うときは〈**風景**〉と同じだが、人間の登場する場面では、〈**風景**〉が、比較的人間も自然の一部と同様に見たありさまなのに対し、人間(人生)的関心をより強く持ってとらえたありさまと言える。 **情景**は、普通、自然の風景などでなく、人間(たち)の営為の一場面としてのありさまであり、文章・演劇などの描写の対象としてよく使われる。 **眺め**は、眺めて見える景色や情景。具体的な景色を言うので、「風景を描く」とは言っても単に「眺めを描く」とは言わず、「ここからの眺めを描く」などになる。また「眺めがよい」は見える風景のほかに見え具合(遮るものがないなど)を言い、これらは〈**光景**〉などでは言い換えられない。 <172> | | ―のよい場所 | ―が利く | ―台 | ―を観賞する | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **景色** | ○ | | | ○ | | **風景** | | | | ○ | | **眺め** | ○ | ○ | ○ | | | **見晴らし** | ○ | | ○ | | | **眺望** | | ○ | ○ | | **見晴らし**は、特に遠く広く見渡せること。「眺めが美しい」とは言うが「見晴らしが美しい」とは言わない。「見晴らしがいい」と言えば、見えるものは美しく気持ちがよい、の意が含まれるのが普通。 **眺望**は、〈**眺め**〉と同義の漢語。「望」は遠くに見る意。 **シーン**は英語 sceneで、映画や演劇などの場面に言う。場面であるから状況を含むもので一瞬を静止画像のように、また特に視覚的にとらえるニュアンスはない。 # けち ## けち/しみったれ/吝嗇[りんしょく]/守銭奴[しゅせんぬ] ### 使い分け例 **けち**・・・「金持ちなのにけちな人。」「けちな仕事。」「けちな根性。」 **しみったれ**・・・「しみったれで高い物は買わない。」「しみったれた料簡。」 **吝嗇**・・・「吝嗇で財をなした人。」 **守銭奴**・・・「彼は金持ちだが守銭奴と言われ嫌われている。」 ### どう使い分けるか **けち**は、物惜しみする様子。金品に限らず、時間や労力などにも言う。また大したことのない、見下げたなどの意もある。 **しみったれ**は、〈**けち**〉に意味・用法はかなり似るが、〈**けち**〉よりじめじめした感じがあり、侮蔑感が強い。ぱっとした見栄えのする感じがない意で考えや態度、生活ぶりなどにも言う。 **吝嗇**は、〈**けち**〉とほぼ同義の漢語だが、〈**けち**〉の転義はない。 **守銭奴**は、お金を使わずに貯めることに極度に執着する様子やそういう人を言う。〈**けち**〉〈**しみったれ**〉〈**吝嗇**〉が既にあるものを惜しんで使わないことを言うのに対し、増やそうとすることも含め、またお金だけに言う。 〔注意〕 「しみったれ(た・・・)」の場合は動詞「しみったれる」の連用形。 <173> # 決行[けっこう] ## 決行/敢行[かんこう]/断行[だんこう]/強行[きょうこう] ### 使い分け例 **決行**・・・「討ち入りの決行。」「体育祭は雨天決行とする。」「ストライキを決行する。」 **敢行**・・・「開会式は悪天候の中で敢行された。」 **断行**・・・「組織改革を断行する。」「熟慮断行。」 **強行**・・・「賃下げを強行する。」「国会での法案の強行採決に反対する。」「強行突破。」 ### どう使い分けるか **決行**は、思い切って事を行うこと。後の三語の意味に皆含まれる基本的な意味である。 **敢行**は、字面の通り敢えて行うことであり、何らかの不都合や不安に対する打開が見られないまま、それでもやってみるというニュアンスで用いる。 **断行**は、かなり思い切って踏み切る場合に使い、強い意志で立ち向かうだけの困難が前提となる。 **強行**は、むりやり行うこと。自身の不都合や周囲の反対や不都合を押して強引に行うこと。 いずれも語感として大がかりな事に用い、個人的な日常のちょっとしたことには用いない。 # 決心[けっしん] ## 決心/決断[けつだん]/決意[けつい]/踏[ふ]ん切[ぎ]り ### 使い分け例 **決心**・・・「辛くても頑張ってやる決心がつく。」「マラソンを始めようと決心する。」 **決断**・・・「決断を迫られる。」「どちらを採るか決断する。」「決断力。」 **決意**・・・「決意を固める。」「入団を決意する。」 **踏ん切り**・・・「職を変えようと思うが、踏ん切りがつかない。」「ようやく踏ん切りがついた。」 <174> ### どう使い分けるか **決心**は、心に掛けていたテーマについて、意志を定めることや定まった意志を言う。〈**決断**〉〈**決意**〉と違う点は例の第二のように、覚悟くらいの意でも用いられること。 **決断**は、意志とともにある決定に言う。〈**決心**〉はそうなる見込みが現実的には立たない内にも言えるが、それに現実的な実行の決定を下した場合は「決断した」になる。〈**決心**〉〈**決意**〉と違って「決断を固める」とは言わない。 **決意**は、意志を決定すること。自身の気持ちをはっきりとした方向・態度に位置付ける場合に言う。「決意を新たにする」のように心意気が核を成すものと言える。 | | マラソンを始める | 踏ん切りがつかない | 決断を迫られる | 決意を固める | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **決心** | ○ | | | | | **決断** | | | ○ | | | **決意** | ○ | | | ○ | **踏ん切り**は、思い切って物事に乗り出す決心。単に調子としてそうする弾みがつかないような場合にも使う。 # 欠点[けってん] ## 欠点/弱点[じゃくてん]/短所[たんしょ]/難点[なんてん]/欠陥[けっかん]/あら ### 使い分け例 **欠点**・・・「怒りっぽいのが欠点だ。」「欠点のない作品。」美点。 **弱点**・・・「物知りの彼にも経済観念がないという弱点がある。」「相手チームの弱点は守備だ。」「弱点を握る。」 **短所**・・・「長所を伸ばし、短所を改める。」「この機械の短所は、作動が遅いことだ。」長所。 **難点**・・・「この製品の難点は重いことだ。」「難点は軽薄なところだ。」 **欠陥**・・・「この型の車にはブレーキ系統の欠陥があった。」「欠陥商品。」 **あら**・・・「人のあらを探す。」「あらを隠す。」「あらが見える。」 ### どう使い分けるか **欠点**は、補う必要があると思われる不十分なところ。人柄においては〈**短所**〉とほぼ同じ。 **弱点**は、〈**欠点**〉の意のほか、明らかにない弱みを言うこともある。 <175> いずれの場合もある程度認めた存在に対して言い、また攻められると困るような点を言う。 **短所**は、できる・できないといった面から見たよくないところ。性能・機能などにも言い、人の容姿については〈**難点**〉とは言っても〈**短所**〉とは言わない。 **難点**は、不足・不十分というよりよくない点であり、文句を付けるべきところという意味合いで使う。解決が難しい問題点の意でも使う。 **欠陥**は、なくてはならないものが欠けているという意味合いで使う。例えば「一商品」は、単によくないものでなく商品として成り立たないもの。 **あら**は、よく見ないと目立たないような難点に言う。基本的には、はたがとらえるものとして言う。 # けなす ## 貶[けな]す/こきおろす/腐[くさ]す/けちをつける/謗[そし]る/詰[なじ]る/非難[ひなん]する ### 使い分け例 **けなす**・・・「人の作品をけなす。」 **こきおろす**・・・「とことんこきおろす。」 **腐す**・・・「せっかくの労作をくさされた。」 **けちをつける**・・・「人の仕事にけちをつける。」 **そしる**・・・「不誠実な態度をそしられた。」 **なじる**・・・「悪徳行為をなじる。」 **非難する**・・・「彼の態度を非難する。」 ### どう使い分けるか **けなす**は、人や物事を悪く言うの意。〈**けなす**〉〈**こきおろす**〉〈**腐す**〉〈**けちをつける**〉は、価値や出来不出来を、〈**そしる**〉〈**なじる**〉〈**非難する**〉は、善悪を問題にする場合が多い。「悪徳行為をけなす」「不誠実にけちをつける」とは言わない。 **こきおろす**は、ひどくけなす意。 **腐す**は、小さなあらを殊更に取り上げて非難するような場合に言う。 **そしる**は、人を対象に悪く言う意。 <176> **なじる**は、悪いところを責め問うことで、相手に直接向かってすることになる。 **非難する**は、社会・倫理的に問題だとして、また客観的に言う場合が多い。 # 原因[げんいん] ## 原因/理由[りゆう]/訳[わけ]/事由[じゆう]/要因[よういん]/素因[そいん] ### 使い分け例 **原因**・・・「風邪が原因で欠勤する。」「故障の原因を探る。」結果。 **理由**・・・「風邪を理由に休む。」「自然保護を訴える理由。」「正当な理由。」「提案理由。」 **訳**・・・「出掛けた訳を聞く。」「訳もなく悲しい。」「まだ何も訳のわからない子供だ。」 **事由**・・・「欠席の事由を記す。」 **要因**・・・「倒産の要因。」 **素因**・・・「この度の狂乱物価の素因は十年前の政策の中にある。」「病気の素因。」 ### どう使い-分けるか **原因**は、ある物事を起こしたもとになったもの。客観事実としてのそれを言う。 **理由**は、〈**原因**〉の意味を含めた意味で使う場合もあるが普通は判断の論理的な根拠となる事情や事柄を言う。〈**原因**〉と違って何らかの判断のもとになるものであり「故障(病気)の理由」などとは普通は言わない。 **訳**は、〈**原因**〉〈**理由**〉〈**事由**〉に置き換えられる場合が口語では多く、表す意味は広い。一般的な物事の道理や、漠然とした事情や理由を表すこともある。 | | 家出したー | 病気のーは過労だ | ーもなく悲しい | 玄米を食うー | 雨をーに中止 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **原因** | ○ | ○ | | | ○ | | **理由** | ○ | ○ | | ○ | ○ | | **訳** | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | **事由**は、理由や原因となる事実。特に出来事の訳を言う。非常にかたい文章語。 **要因**は、主要な原因。また必須の因子。 **素因**は、もととなる原因。直接の原因に対する、そもそもの事情や素地・下地などを言う。特に病気のそれを言うこともある。 <177> # 元気[げんき] ## 元気/活気[かっき]/生気[せいき]/意気[いき]/血気[けっき] ### 使い分け例 **元気**・・・「飲んで元気を出す。」「新入生は元気な声で答える。」「病気かと思ったら、元気じゃないか。」 **活気**・・・「町に活気があふれる。」「活気あるチーム。」 **生気**・・・「生気を失う。」「雨で草木も生気を取り戻した。」 **意気**・・・「意気揚々。」「人生意気に感ずる。」 **血気**・・・「血気盛んな年頃。」「血気にはやる。」 ### どう使い分けるか **元気**は、心や体の活動のもととなる力、また、それのある様子。病気に対する健康の意もある。 **活気**は、活動の様子から感じられる生き生きとした勢いのある雰囲気。情景としてとらえる感じがある。個人についてよりも集団・組織について言うことが多い。 **生気**は、生き生きとした気力や様子のほか、植物のみずみずしさにも言う。 **意気**は、気立て・気概といった精神における勢いを言う。 **血気**は、燃えるように盛んな意気や活力を言い、人について言う。冷静さを欠くというニュアンスもある。 # 健康[けんこう] ## 健康/健[すこ]やか/健全[けんぜん]/強健[きょうけん]/強壮[きょうそう]/健勝[けんしょう]/壮健[そうけん]/丈夫[じょうぶ]/達者[たっしゃ]/タフ ### 使い分け例 **健康**・・・「健康を祝す。」「毎日健康に暮らしている。」「健康的な常識。」 **健やか**・・・「健やかに成長する。」「健やかな考え。」 **健全**・・・「健全なる精神は健全なる身体に宿る。」「健全な娯楽。」 **強健**・・・「強健な肉体。」 **強壮**・・・「強壮な若者。」「強壮剤。」 <178> **健勝**・・・「御健勝にてお過ごしのことと存じます。」 **壮健**・・・「御壮健でなによりです。」 **丈夫**・・・「丈夫に育つ。」「まだ足は丈夫だ。」「丈夫で長持ちする家具。」 **達者**・・・「達者で暮らす。」「足腰が達者だ。」「口の達者な人。」 **タフ**・・・「タフな活動家。」「タフガイ。」 ### どう使い分けるか **健康**は心身共に異状なく元気なさま、**健やか**はそれと同義の和語で雅語的。**健全**は、人体だけでなく、「―な財政」のように組織の状態などにも用いる。これらの語は他語と違って精神面にも使う。 **強健**と**強壮**は、どちらも体が強くて丈夫なさまを言うが、後者には精力が強いという意味もある。 **健勝**と**壮健**は、健康がすぐれて元気なさまを言うが、「御ー」の形で手紙文に使うことが多い。 **丈夫**は、〈**壮健**〉とほぼ同義であるが、人間以外の物の堅固なさまも表す。 **達者**も〈**壮健**〉とほぼ同義であるが、〈**丈夫**〉と同様に、足や腰のような体の部分の働きが優れている場合にも使う。また、この語は「英語がー」、「世渡りがー」のように熟達して巧みだ、心臓が強く抜け目がない、などの意にも使われる。 **タフ**は、心身共に頑強なさまを言う。 〔注意〕「丈夫(じょうふ)」は、一人前の男子・ますらおの意。「偉丈夫」の「丈夫」はその例。 # 謙遜[けんそん] ## 謙遜/謙虚[けんきょ]/謙[へ]り下[くだ]る/謙譲[けんじょう] ### 使い分け例 **謙遜**・・・「謙遜な態度。」「そのようなご謙遜を。」「駄作ですと謙遜する。」「謙遜表現。」不遜。 **謙虚**・・・「謙虚な気持ち。」「謙虚に人の話を聞く。」傲慢。横柄。尊大。 **へりくだり**・・・「極端なへりくだりもまた人を不快にさせる。」「へりくだった態度。」 **謙譲**・・・「日本人らしい謙譲の美徳。」「謙譲語。」 <179> ### どう使い分けるか **謙遜**はへりくだること。つまり相手に対して自身を低い者として卑下する態度をとること。 **謙虚**は、控えめにつつましく、おごらない様子。他の人に価値を認めるものがあれば受け入れ従うような気持ちや態度がある様子。 対して〈**謙遜**〉〈**へりくだり**〉〈**謙譲**〉は個々の態度についても言い、社交辞令的なものも含め相手を立てるという形をもって表すもの。 **へりくだり**は、〈**謙遜**〉の意の和語。「へる」は自分を低くする意。 **謙譲**は、〈**謙遜**〉とほぼ同義だが、より文章語的で用法が限られる。 〔注意〕〈**謙遜**〉は「する」がついて動詞となるが〈**謙虚**〉〈**謙譲**〉はそれがない。 # 限度[げんど] ## 限度/限界[げんかい]/極限[きょくげん]/際限[さいげん]/きり/限[かぎ]り ### 使い分け例 **限度**・・・「忍耐にも限度がある。」「貸付金の限度額。」 **限界**・・・「力の限界まで出し切る。」「森林地帯の限界。」 **極限**・・・「生きるか死ぬかという極限の状況に置かれた。」 **際限**・・・「際限もなく話し続ける。」 **きり**・・・「ぜいたくを言えばきりがない。」「仕事のきりをつける。」 **限り**・・・「力の限りを尽くす。」「欲望には限りがない。」 ### どう使い分けるか **限度**も**限界**も、物事の範囲や程度の、これ以上は無いという区切り・境目、の意であるが、〈**限界**〉が空間的な境目にも使うのに対して〈**限度**〉は使えず、「森林地帯の限度」などとは言わない。 **極限**は、達することの極めて難しいぎりぎりの限度の意で、容易に達し得る区切りの場合には、「貸付額の限度」のように、〈**限度**〉はよいが〈**極限**〉では不適当である。 **際限**は、〈**限度**〉のように「ーがある」とは言わず、「―がない」のように否定的な表現を伴なう。また〈**限界**〉のように空間的なものに使われることは、〈**際限**〉にもない。 **きり**は、終わり、あるいは中断できる区切りの意で、 <180> 「きりもなく話す」と言えば〈**際限**〉と同じだが、「仕事のきり」「ちょうどきりがよい」などは〈**きり**〉特有の用法。 **限り**は〈**限度**〉と同じに使われるような場合も多いが、「力のある限り働く」のように前の修飾語とともに連文節として後の用言を修飾する用法、「一回限り」のように接尾語的に複合語を作る用法などは〈**限り**〉だけのもので〈**限度**〉では置き換えられない。 | | 忍耐にもーがある | 極限の状況に置かれる | 森林地帯のー | 貸付額のー | きりもなく話す | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **限度** | ○ | | | ○ | | | **限界** | ○ | | ○ | ○ | | | **極限** | | ○ | | | | | **際限** | | | | | ○ | | **きり** | △ | | | | ○ | | **限り** | ○ | | | ○ | | 〔注意〕「そう言ったきり口をつぐんだ。」の〈**きり**〉は別語(助詞)。 # 行為[こうい] ## 行為/行動[こうどう]/行[おこな]い/仕業[しわざ]/所行[しょぎょう](所業[しょぎょう])/作為[さくい] ### 使い分け例 **行為**・・・「親切からの行為。」「不法行為。」「国事行為。」「道徳的行為。」「恥ずべき行為。」 **行動**・・・「良識にかなった行動をとる。」「素早く行動する。」「行動的な人。」「自由行動。」「行動様式。」 **行い**・・・「考えを行いに表す。」「日頃の行いを改める。」 **仕業**・・・「誰の仕業か、壊れている。」 **所行(所業)**・・・「許されぬ所行。」 **作為**・・・「作為の跡がうかがわれる。」「作為的。」 ### どう使い分けるか **行為**は、行い、特にしようという意志のある行いを言う。広く使われる。 **行動**は、特に実際に体を動かしてする場合に言う。実行の意もある。「一半径」のように動き回ることそのものを言う例は他の語では言い換えられない。 <181> **行い**は、生活において実際にするの全般に言うが、また特に倫理面から見た場合のそれを言うこともある。 **仕業**・**所行**は、よくない行いである場合に使う。〈**仕業**〉は和語で日常語。〈**所行**〉は、漢語でかたく古い文章語。 **作為**は、殊更に手を加えた作り事としての行為。法律用語としては、人の行為のうち積極的なものを言う。 # 好意[こうい] ## 好意/厚意[こうい]/志[こころざし]/愛想[あいそ]/親切[しんせつ] (深切[しんせつ]) ### 使い分け例 **好意**・・・「人の好意を無にする。」「好意的な見方。」「好意を抱く。」悪意。 **厚意**・・・「日頃の厚意に感謝する。」 **志**・・・「お志はありがたく思います。」 **愛想**・・・「愛想が尽きる。」「愛想がよい。」「何の愛想もしない。」 **親切**・・・「親切から言うのだ。」 ### どう使い分けるか **好意**は、相手を好ましく思う気持ちやそこからの親切心。 **厚意**は思いやりのある心で、好感情は特に表さず、〈**好意**〉よりも深さや手厚い感じが表れる。他の人の行為を読み取って言う。 **志**は〈**厚意**〉を相手に差し向ける気持ち。 **愛想**は、好意の意もあるが、接遇の仕方としての表情や言動そのものを言う場合が多い。 **親切**は、〈**厚意**〉〈**志**〉のような改まった、また特定の人向けの感じ、〈**愛想**〉の、表に表そうとする感じなどが特にない心遣いの多くがこれで表せる。日常的で自然の人情による気持ちも表しやすい。「深切」と書けば心から思う気持ちが強調される。 # 後悔する[こうかいする] ## 後悔する/悔[く]いる/悔[く]やむ/懺悔[ざんげ]する/反省[はんせい]する <182> ### 使い分け例 **後悔する**・・・「進学しなかったことを後悔する。」「後悔先に立たず。」 **悔いる**・・・「軽率だったと悔いる。」 **悔やむ**・・・「退学を悔やむ。」「母の死を悔やむ。」「失敗が悔やまれる。」 **懺悔する**・・・「罪を神に懺悔する。」「彼女に対して懺悔したい。」 **反省する**・・・「一日を反省する。」「反省して悪かったと謝れば許す。」 ### どう使い分けるか **後悔する**・**悔いる**・**悔やむ**は、ほぼ同義。〈**後悔する**〉〈**悔いる**〉では前者が漢語的な言い方だが、後者の方が文章語的である。どちらも、そのような結果を招いた自身のあり方を責める気持ちとして言うことが多い。〈**悔やむ**〉は自責より結果そのものが非常に残念だという気持ちから出ることが多い。 **懺悔する**は、自身の罪を悔い改める誓いとして神や他人に告白すること。宗教的な思想や倫理観による罪悪の観念に基づく点は、〈**後悔する**〉などと違う。 **反省する**は、悪くなかったかどうかと振り返る意。〈**後悔する**〉などと違って意識的に行えるもの。 | | 悪い事を
したとー | 損をしたとー | 犯した罪をー | 彼の失敗をー | 日に三度ー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **後悔する** | ○ | ○ | | | | | **悔いる** | ○ | ○ | | | | | **悔やむ** | | | | ○ | | | **懺悔する** | | | ○ | | | | **反省する** | ○ | | | | ○ | # 豪華[ごうか] ## 豪華/豪勢[ごうせい]/豪壮[ごうそう]/デラックス ### 使い分け例 **豪華**・・・「豪華な衣装。」「豪華絢爛。」 **豪勢**・・・「豪勢な生活。」「豪勢な料理。」 **豪壮**・・・「豪壮な邸宅。」 **デラックス**・・・「デラックスな車。」 ### どう使い分けるか **豪華**はぜいたくで華やかなさま。〈**豪勢**〉よりも視覚的な華やかさを表しやすい。 <183> **豪勢**は、人を驚かせるほどぜいたくなさま。惜しまず景気よく何かをする勢いが感じられる。 **豪壮**は、外見から受ける感じが、規模的にも大きく派手で、立派であるさま。堂々とした感じが表れる。 **デラックス**は、フランス語deluxeを英語読みして日本語に取り入れた語。ほぼ〈**豪華**〉の意だが、高級だというニュアンスも出る。 # 講義[こうぎ] ## 講義/講演[こうえん]/口演[こうえん]/演説[えんぜつ]/弁論[べんろん]/スピーチ ### 使い分け例 **講義**・・・「哲学の講義。」「大学で講義する。」「講義録。」 **講演**・・・「A博士の講演を聞く。」「国際関係について講演する。」 **口演**・・・「なにわ節の口演。」「高座で口演する。」 **演説**・・・「演説をぶつ。」「公会堂で演説する。」「街頭演説。」 **弁論**・・・「弁論大会。」「検察側の最終弁論。」 **スピーチ**・・・「披露宴のスピーチ。」 ### どう使い分けるか **講義**は学問を解説すること、特に大学での授業を言う。 **講演**は聴衆に対してある題目について話をすること。 **口演**は落語・講談などの口頭の芸を演じることを言う。 **演説**は大勢の前で自分の主義・主張や意見を述べることで、〈**講演**〉が講義的であるのに対し、より情意的で、時に扇動的である。 **弁論**も大勢の前で意見を述べたり論じ合ったりすることであるが、法律語では訴訟当事者が法廷で行う申し立てや陳述を言う。 **スピーチ**は〈**演説**〉と同義にも使うが、普通には式場などで多くの人を前にしてする短い話を言う。 # 高級[こうきゅう] ## 高級/高等[こうとう]/上級[じょうきゅう]/上等[じょうとう] <184> ### 使い分け例 **高級**・・・「高級な内容の話。」「高級品。」「高級官僚。」「高級料理店。」「高級志向。」低級。 **高等**・・・「高等な技術。」「高等動物。」「高等裁判所。」下等。初等。 **上級**・・・「上級の学校。」「上級生。」「上級裁判所。」「上級審。」下級。初級。 **上等**・・・「上等の品。」「これだけ出来れば上等だ。」「上等兵。」下等。 ### どう使い分けるか **高級**は、等級や程度の高いこと。定められた段階によるのでなく一般よりも高い意を多く表す。商品の品質など暮らし向きと関係のあることでの例が少なくない。 **高等**は、等級・程度・品位が高いことなどに使い、手続き上や進化・熟達などの段階における例が多い。品質は表さない。 **上級**は上の等級・階級、また特に学級を表す。品位や品質などは表さない。 **上等**は、高い等級のほか、特に実質に目を向けて品質や状態が優れてよいことを言う傾向がある。 # 合計[ごうけい] ## 合計/総計[そうけい]/累計[るいけい]/通算[つうさん]/合算[がっさん] ### 使い分け例 **合計**・・・「合計が出る。」「合計する。」「合計八人。」「合計金額。」 **総計**・・・「費用の総計を出す。」同総和。小計。 **累計**・・・「今月までの累計。」「得票数を開票の終わった順に累計する。」同累算。 **通算**・・・「通算五回の優勝。」「通算すると五年になる。」同通計。 **合算**・・・「諸経費の合算。」「夫婦の収入を合算する。」同加算。 ### どう使い分けるか **合計**は、全部を合わせて数えることにもその数えた数にも言う。 **総計**は「小計」に対して言う全部の合計。計算の手続きにおける違いは問わない。 **累計**は、小計を順々に加えていくこと。また、そうして得られるその時点その時点の合計。 <185> 最終的には全体の合計と同じになる。 **通算**は、全部をひっくるめて計算すること。総計。 **合算**は、合わせて計算すること。計算して出た数を言うのではない。 # 剛健[ごうけん] ## 剛健/剛直[ごうちょく]/硬骨[こうこつ]/無骨[ぶこつ](武骨)/不屈[ふくつ] ### 使い分け例 **剛健**・・・「剛健な気性。」「剛健な校風。」「質実剛健。」柔弱。 **剛直**・・・「剛直な男。」「性質が実に剛直で、節を曲げない。」 **硬骨**・・・「硬骨の士。」「硬骨漢。」 **無骨**・・・「無骨な手。」「無骨な体つき。」「無骨だが優しそうだ。」 **不屈**・・・「不屈の精神。」「不撓不屈。」 ### どう使い分けるか **剛健**は心身の強くたくましいこと。集団の気風などにも言う。 **剛直**は気性が強く信念を曲げないこと。正しいと思うことへと向かう感じも表れる。 **硬骨**は、意志が固く、みだりに信念を曲げたり容易には屈したりしないことで、気性を超えた意志の強さ、固さが表れる。 **無骨**は、ごつごつしていて洗練されていないことだが、特に無作法・無風流などにも言う。「生来のー者で」とは謙遜して言うが必ずしも性格とは言いがたい。 **不屈**は、困難にくじけず屈せず意志を貫く様子。〈**硬骨**〉と違って誘惑に負けないなどのことではない。また激しさ、固さ、正しさ、無鉄砲などのニュアンスはない。 # 降参[こうさん] ## 降参/降伏[こうふく](降服)/屈伏[くっぷく](屈服)/投降[とうこう]/帰順[きじゅん] ### 使い分け例 **降参**・・・「降参の白旗を上げる。」「この暑さには降参だ。」 <186> **降伏(降服)**・・・「敵国に降伏する。」「無条件降伏。」 **屈伏(屈服)**・・・「相手に屈伏する。」 **投降**・・・「力尽き投降する。」「投降兵。」 **帰順**・・・「敵に帰順する。」 ### どう使い分けるか **降参**は、戦いや争い事に負け、相手の意に従うこと。日常の私的なことにも使い、また閉口しお手上げだ、の意もある。 **降伏**は、戦いに負け相手の要求や命令に従うこと。国どうしの公式的なことに言う。以下文章語。 **屈伏**は、戦いとは関係なく相手に対して折れ従うこと。 **投降**は、自らの意志によって降参すること。国ではなく、将兵や軍隊について言う。 | | 敵にーする | この暑さにはーだ | 相手の圧力にーする | 勧告する | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **降参** | ○ | ○ | ○ | | | **降伏** | ○ | | | ○ | | **屈服** | | | ○ | | | **投降** | ○ | | | ○ | **帰順**は、敵対関係にあった相手に服従すること。 # 交渉[こうしょう] ## 交渉/折衝[せっしょう]/談判[だんぱん]/外交[がいこう]/渉外[しょうがい]/駆[か]け引[ひ]き ### 使い分け例 **交渉**・・・「賃上げの交渉。」「労使で交渉する。」「交渉を絶つ。」「没交渉。」 **折衝**・・・「政府間の折衝を重ねる。」 **談判**・・・「誘致問題で談判する。」「膝詰め談判。」「談判は決裂した。」 **外交**・・・「外務省は外交を担当する。」「外交使節。」「保険の外交。」 **渉外**・・・「他社との渉外に当たる。」「会社の渉外部。」 **駆け引き**・・・「駆け引きなしの商売。」「恋の駆け引き。」 ### どう使い分けるか **交渉**は、ある事をかなえるために相手に掛け合うこと。また、人との関わり・交際の意。 **折衝**は、利害の一致しない者どうしの交渉を言い、駆け引きのニュアンスも濃い。国家間、労資間などのことに言う。文章語。 <187> **談判**は、相手に掛け合うこと。懸案だった事柄に強硬な態度でけりを付けるという場合が多い。〈**交渉**〉に比べ古い言葉。 **外交**は、外国との交渉。また、商売などで勧誘や外部との交渉に当たること。「一官」は前者の、「一員」は後者の例になる。 **渉外**は、外部との交渉、の意。 **駆け引き**は、相手の状況や出方に応じて出方を加減し自分側に有利に事が運ぶようにすること。交渉上の技術である。 # 功績[こうせき] ## 功績/手柄[てがら]/功労[こうろう]/業績[ぎょうせき]/功[こう] ### 使い分け例 **功績**・・・「文化活動に功績のあった人。」「功績を上げる。」「功績を残す。」「功績が大きい。」 **手柄**・・・「手柄を立てる。」「お手柄。」「手柄話。」 **功労**・・・「功労に報いる。」「会社にとって最大の功労者。」 **業績**・・・「優れた業績を残す。」「会社の業績を伸ばす。」「業績を上げる。」「業績不振。」 **功**・・・「関ヶ原の合戦で功を立てる。」「取締役として功があった。」「功成り名遂ぐ。」 ### どう使い分けるか **功績**は、社会(特定の社会の場合もある)や世間への寄与・貢献という点で認められる優れた成果・手柄。「―を立てる」「優れたー」とは言わない。 **手柄**は、〈**功績**〉に比べ、その場限りのことに言う傾向があり、「永年のーをたたえる」など、〈**手柄**〉では不適当である。 **功労**は、労を尽くしたことをその成果に加えて言う。 **業績**は、事業や研究などの上の実績を言い、〈**功績**〉は社会への貢献など公的なイメージがあるが、〈**業績**〉には、それは特にない。またより具体的なものについて言う。 **功**は、成功を収めた結果・仕事。「―を焦る」のように成果に重きがある。「ーを奏する」では効き目、「年のー」では経験の蓄積、年功の意。文章語。 <188> # 公然[こうぜん] ## 公然/大[おお]っぴら/明[あ]け透[す]け/オープン ### 使い分け例 **公然**・・・「公然の秘密。」「公然たる事実。」「公然と詐欺まがいの行為を働く。」「彼女の家に公然と出入りする。」 **大っぴら**・・・「こんな忙しい時に大っぴらには休めないよ。」「事を大っぴらにする。」 **明け透け**・・・「明け透けに何でも話し、慎みというものがない。」同あけっぴろげ。 **オープン**・・・「内部事情をオープンにする。」「オープンな付き合い。」 ### どう使い分けるか **公然**は、世間に知れ渡っている様子、または世間に対して隠し立てしない様子。 **大っぴら**は、隠し立てをしない様子のほかに、あえて人々の目に映るような形でする様子も言う。 **明け透け**は、話したり見せたりする内容に包み隠す点がなく、そのままに表す様子。 〈**公然**〉〈**おおっぴら**〉〈**明け透け**〉がそのようにしないほうがよいという批判めいた響きを持ち得るのに対し、**オープン**は、本来隠すべきことではないという考え方や気持ちに基づくものと言える。 # 構想[こうそう] ## 構想/筋[すじ]/筋書[すじが]き/梗概[こうがい]/ストーリー/プロット ### 使い分け例 **構想**・・・「小説の構想を練る。」「新しい事業の構想がまとまる。」「構想が煮詰まる。」 **筋**・・・「話の筋を話す。」「筋が複雑な映画。」 **筋書き**・・・「筋書きを読む。」「筋書き通りに事が運ぶ。」 **梗概**・・・「物語の梗概を記す。」 **ストーリー**・・・「ストーリーを作る。」「ストーリー性。」「ストーリー漫画。」 <189> **プロット**・・・「小説のプロットを立てる。」 ### どう使い分けるか **構想**は、成そうとする物事について組み立てた考え。内容や構成など構成要素から成る全体をとらえて言う。 **筋**は、物語の展開のおおよそ。 **筋書き**は、筋を書き表したもの。一般的な事柄の仕組んだ段取りを言うこともある。 **梗概**は、内容のあら筋。小説や戯曲などで言うが非常にかたい文章語。 **ストーリー**は、物語の意とその筋(書き)の意がある。 **プロット**は、全体の構成・筋立て。どこに何を配するかという意味から、小説などのほか、一冊の本の内容構成といったストーリー性のないものにも使う。 # 広漠[こうばく] ## 広漠/茫漠[ぼうばく]/茫洋[ぼうよう]/洋洋[ようよう]/渺渺[びょうびょう]/縹渺[ひょうびょう]/蒼茫[そうぼう] ### 使い分け例 **広漠**・・・「広漠たる大平原。」 **茫漠**・・・「茫漠たる原野。」「茫漠とした意見。」 **茫洋**・・・「茫洋たる大海。」「茫洋とした人物。」 **洋洋**・・・「洋々たる太平洋。」「前途洋々。」 **渺渺**・・・「渺々たる天空。」同渺茫。 **縹渺**・・・「縹渺たる荒野。」「神韻縹渺。」 **蒼茫**・・・「蒼茫たる草原。」 ### どう使い分けるか **広漠**は遮る物もなく広がっているさま、**茫漠**は果てしなく広くとりとめのないさま、また内容がはっきりしないさま、**茫洋**は広くて見当もつかないさま、またつかみどころのないさまも言う。 **洋洋**は水が満ち満ちて限りなく広がっているさま、また将来が希望に満ちているさま、**渺渺**は遠くはるかまで果てしなく広がっているさま、 <190> **縹渺**はそれとほぼ同義であるが、かすかではっきりしないさまの意もある。 **蒼茫**は見渡す限り青く広がっているさま。 〔注意〕 いずれも「―たる」「―と」の形がある。 # 幸福[こうふく] ## 幸福/幸運[こううん](好運)/幸[しあわ]せ(仕合わせ)/幸[さいわ]い/ラッキー ### 使い分け例 **幸福**・・・「幸福を求める。」「幸福な暮らし。」 **幸運**・・・「幸運にも入賞できた。」「数々の幸運に恵まれる。」不運。 **幸せ**・・・「君のような人に出会えて幸せだ。」「幸せ者。」 **幸い**・・・「不幸中の幸い。」「役立ててもらえれば幸いだ。」「幸い(にして)、怪我はなかった。」 **ラッキー**・・・「ラッキーな試合展開。」 ### どう使い分けるか **幸福**は、恵まれ満ち足りている(と感ずる)こと。生活の全般においての様子や感じに言う。 **幸運**は、運がよいこと、またよい巡り合わせ。 **幸せ**は、〈**幸福**〉と意味・用法の重なることも多いが、〈**幸せ**〉は「ーがよい」に表れるように巡り合わせ(がよいこと)が基本の意味である。 **幸い**は、幸せの意のほか、望ましい、都合がよいなどの状態(である)の意。動詞の用法で「悪天候がーして交通渋滞を免れた」はよい結果をもたらす意。 | | ―を願う | ―にも入賞できた | 幸せを味わう | 君のような人にー恵まれる | もっけのー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **幸福** | ○ | | ○ | | | | **幸運** | ○ | ○ | | ○ | ○ | | **幸せ** | ○ | | ○ | ○ | | | **幸い** | | ○ | | | | **ラッキー**は英語lucky(=幸運な)。 # 公平[こうへい] ## 公平/公正[こうせい]/公明[こうめい]/フェア <191> ### 使い分け例 **公平**・・・「公平に分け与える。」「公平を欠く。」「公平無私。」不公平。 **公正**・・・「試合を公正に行う。」「公正取引委員会。」 **公明**・・・「公明な裁決。」「公明正大。」 **フェア**・・・「フェアな態度。」「フェアプレー。」 ### どう使い分けるか **公平**は、どれにも偏らず同じように平等に扱うこと。 **公正**は、公平で正しいこと。 **公明**は、隠し立てするような点がなく公平であること。 〈**公平**〉は人に対する待遇、〈**公正**〉〈**公明**〉はそれを踏まえた物事の行い方によく使われる。 **フェア**は英語fair(=公正)。〈**公正**〉のほうが公的な事柄によく使われる。 # 高慢[こうまん] ## 高慢/傲慢[ごうまん]/横柄[おうへい]/尊大[そんだい]/不遜[ふそん] ### 使い分け例 **高慢**・・・「高慢な人。」「高慢な態度。」「高慢の鼻を折る。」「高慢ちき。」 **傲慢**・・・「傲慢な態度。」「傲慢無礼。」 **横柄**・・・「横柄な口の利き方。」「横柄に構える。」 **尊大**・・・「尊大に構える。」「尊大ぶったところがある。」 **不遜**・・・「不遜の振る舞い。」 ### どう使い分けるか いずれもほぼ「謙遜・謙虚」と反対の意で「―な態度」のように使う。 **高慢**は、うぬぼれが強く高ぶっていること。例えば自身の才能や美貌、地位などを鼻にかけてなど。 **傲慢**も〈**高慢**〉に似るが、おごり高ぶって、振る舞いが人を侮るかのように自己本位、勝手気ままなことに言う。 **横柄**は、特別なおごりがあるなしにかかわらず、態度が偉そうで礼を欠いている様子を言う。〈**傲慢**〉よりも具体的な個々の言動をとらえて言うことが多い。 **尊大**は、おごりというより思い上がって人を見下した態度であること。いかにも偉そうにという感じは〈**横柄**〉に似る。 **不遜**も思い上がった態度だが、〈**尊大**〉に比べ、偉そうにというより、へりくだるべきところをそうしないことである。 <192> # 越(超)える[こえる] ## 越(超)える/越(超)す[こす]/超越[ちょうえつ]する/超過[ちょうか]する ### 使い分け例 **越(超)える**・・・「川を越える。」「作業は年を越えて続く。」「十人を越(超)える。」「常識を越(超)える。」「立場を越(超)える。」 **越(超)す**・・・「峠を越す。」「度を越(超)す。」「元気に越したことはない。」「年を越す。」「よそへ越す。」「家へお越しください。」 **超越する**・・・「科学を超越する思想。」「世俗を超越した高僧。」 **超過する**・・・「規定時間を超過する。」「超過料金。」「超過勤務。」 ### どう使い分けるか 「越」は目的を達するための通過点としての何かを通り過ぎる、つまりこえてその先まで進む場合、「超」は抽象的な意味で、基準や範囲の外に出るなどの場合に使う。ただし、「越」は両方使える。 **越える**・**越す**は同じ場合に使えることも多いが、一方だけが持つ意味用法として、〈**越える**〉には、制限・枠などの外に出る、の意が、〈**越す**〉には「~に越したことはない」の用法、時を経過する、引っ越す、行く・来る、の意がある。 **超越する**は、標準や次元をはるかにこえる意で、具体的な場所を通りすぎる意味には使わない。また、数値では表せない。 **超過する**は、決められた時間や数量をこえる、の意。 | | 越える | 越す | 超越する | 超過する | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | 山をー | ○ | ○ | | | | 度をー | ○ | ○ | | | | 想像をー | ○ | | ○ | | | 世俗をー | ○ | | ○ | | | 所定の時間をー | ○ | ○ | | ○ | # 凍る[こおる] ## 凍る/凍[い]てる/凍結[とうけつ]する <193> ## 氷結[ひょうけつ]する/凍[こご]える/悴[かじか]む/凍[し]みる ### 使い分け例 **凍る**・・・「水が凍る。」「土が凍る。」「身も凍る恐ろしさ。」 **凍てる**・・・「大地が凍てる。」「星の凍てそうな夜。」 **凍結する**・・・「路面が凍結する。」「話し合いは凍結したまま。」 **氷結する**・・・「湖が氷結する。」 **凍える**・・・「手が凍える。」「凍え死ぬ。」 **かじかむ**・・・「手がかじかみ結べない。」 **凍みる**・・・「道が凍みる。」「今日は凍みる。」「凍み豆腐。」 ### どう使い分けるか **凍る**・**凍てる**・**凍結する**・**氷結する**はいずれも物が低温のため固まる意だが、比喩的にも使う。特に〈**凍てる**〉はやや古風な語で比喩の用法の方が多い。 〈**凍結する**〉〈**氷結する**〉は特に固く凍り付く場合に使うが、〈**凍結する**〉は水を含め物について、〈**氷結する**〉は水について言う。 **凍える**は、寒さで感覚が麻痺するなどして体の自由が利かなくなる意。**かじかむ**は手や足が、寒さ・冷たさで思うように動かなくなる意。 **凍みる**は、凍る意と冷え込む意とがある。 # 心[こころ] ## 心/物心[ものごころ]/心理[しんり]/精神[せいしん]/心神[しんしん]/内面[ないめん] ### 使い分け例 **心**・・・「心の成長。」「心が広い。」「優しい心の持ち主。」「心ある人。」「女心。」「絵心。」体。身。 **物心**・・・「物心がつく年頃には父がいなかった。」 **心理**・・・「当事者の心理。」「心理描写に優れた小説。」「心理作戦。」「心理学。」 **精神**・・・「精神を集中する。」「たくましい精神。」「精神障害。」肉体。物質。 **心神**・・・「心神を喪失する。」「心神耗弱。」 **内面**・・・「顔かたちより内面の美しさ。」「内面描写。」「内面生活。」外面。 <194> ### どう使い分けるか **心**は、人間の知覚・感情・意志などにおける精神作用の総合(「心身」の心)を言う場合と、考え・気持ち・情けその他に特に言う場合とがあり、後者の場合、〈**心情**〉〈**心理**〉〈**精神**〉にも置き換えられる。 **物心**は、世の中の事や人間の気持ちなど物事がわかる人間としての心。「ーが(の)つく」の形で使うのが普通である。 **心理**は、状況に対応する心の働き。〈**心情**〉に比べると、それを生む状況と直接に結びついている、やや反射的で動的なものと言える。 **精神**は、「―医学」では肉体に対する心、「スポーツマン―」では心の持ち方、「憲法のー」では則るべき考え方の根本、理念を言う。〈**心**〉でも特に高度の能力としての心を言うのが普通で「赤子のー」とはあまり言わない。 **心神**は、心や精神。学術用語や法律用語として表れるかたい文章語。 **内面**は、人間の、身体に対する、心や精神の面。 # 答え[こたえ] ## 答え/応答[おうとう]/返事[へんじ](返辞[へんじ])/返答[へんとう]/回答[かいとう]/解答[かいとう] ### 使い分け例 **答え**・・・「計算の答え。」「先方からの答えを待つ。」 **応答**・・・「応答を待つ。」「無線で応答する。」「質疑応答。」 **返事**・・・「『はい』と返事をする。」「色よい返事を待つ。」「返事を出す。」 **返答**・・・「呼んでも返答がない。」「返答を急いでほしい。」 **回答**・・・「アンケートの回答。」「行政側の回答。」質問。 **解答**・・・「試験問題の解答。」「住宅難の問題に解答が得られない。」問題。 ### どう使い分けるか **答え**は、答えるという行為と、答える内容のどちらにもなる。また〈**応答**〉〈**返事**〉〈**返答**〉〈**回答**〉〈**解答**〉のどの意味も表せる。 <195> 〈応答〉〈返事〉〈返答〉〈回答〉〈解答〉のどの意味も表せる。 **応答・返事・返答**は、質問や呼び掛けに対する答えではあるが、〈応答〉は、反応して答えるという行為を言う。〈返事〉は手紙の返信の意もある日常語。〈返事〉〈返答〉は、行為も内容も言う。 **回答**は、質問や要求に対する答え。文書による公式のものによく使う。 **解答**は、問題を解いて答えを出すこと、またその答え。他に難問題を解決する策や案。 # ごたごた ## ごたごた/ごちゃごちゃ/雑然[ざつぜん]/乱雑[らんざつ]/混沌[こんとん](渾沌[こんとん]) ### 使い分け例 **ごたごた**・・・「ごたごた並べる。」「ごたごた詰め込む。」「社内は人事異動でごたごたしている。」 **ごちゃごちゃ**・・・「頭の中がごちゃごちゃしてきた。」「ごちゃごちゃ言われてうるさい。」 **雑然**・・・「雑然とした部屋。」 **乱雑**・・・「乱雑に物を置く。」「字を乱雑に書く。」 **混沌**・・・「解決の見通しもなく混沌とした情勢だ。」「混沌とした風景。」 ### どう使い分けるか **ごたごた**は、物の集まり具合が雑多で無秩序な様子。事態が紛糾する様子にも言う。 **ごちゃごちゃ**は、多くのものが入り乱れて集中している様子。〈ごたごた〉が物の内容にまとまりがないのにも言うのに対し、位置関係・配し方に言う。 **雑然**は、整然としていない様子で、かなり漠然と辺りの雰囲気に言うのに対し、**乱雑**は具体的にどれと指摘できるような様子に言う。 | | 物がー並んでいる | 字をー書く | 話がーしている | ーが起こる | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **ごたごた** | O | - | O | O | | **ごちゃごちゃ** | O | - | O | O | | **雑然と** | O | - | - | - | | **乱雑に** | O | O | - | - | **混沌**は、さまざまなものが入り混じって判然としないさまを言う。 <196> # 固着[こちゃく] ## 固着/膠着[こうちゃく]/癒着[ゆちゃく]/固定[こてい]/定着[ていちゃく] ### 使い分け例 **固着**・・・「部品を接着剤で固着する。」「固着観念。」「固着物。」 **膠着**・・・「会談は膠着状態になる。」「膠着語。」「戦線の膠着。」 **癒着**・・・「傷口の癒着。」「政界と財界の癒着。」 **固定**・・・「椅子を床に固定させる。」「固定客。」「固定給。」「固定観念。」 **定着**・・・「新法が定着する。」「定着液。」 ### どう使い分けるか **固着**は、他の物にしっかりくっついて離れないでいること。「―観念」などの用法もあるが、普通物について言う。 **膠着**は、粘りついて離れない状態になること。また、ある状態が固定して一向に変化しないこと。後者では〈**固着**〉に似る。 **癒着**は、裂かれた、または離れているべき皮膚や膜などがくっつくこと。利益のため二者が必要以上に強く結びつき合うことにも言う。 **固定**は、一つの場所や一定の状態から動かないこと。 **定着**は、ある定まった場所、地位などにしっかりとくっつくことで、なじむ意もある。 # 事[こと] ## 事/事柄[ことがら]/物事[ものごと]/事物[じぶつ] ### 使い分け例 **事**・・・「事ここに至る。」「それは事だ。」「君のことが好きだ。」「食べたことがない。」 **事柄**・・・「あった事柄を説明する。」 **物事**・・・「すべての物事に興味がある。」 **事物**・・・「証拠となる事物。」「存在するあらゆる事物。」 ### どう使い分けるか **事**は、形やその位置がその存在を示すことのできる「もの」に対して、 <197> 現象・出来事・関係などを言う。 **事柄**は〈**事**〉の内容に当たるものを指して言う。ありさま、事情など。「事が起きる」に対し「事柄が起きる」とは言わない。また〈**事**〉に比べ抽象的な用法は少なく具体的な場面に対応して使われることが多い。 **物事**は物と事とをひっくるめて思考・行動の対象となる一切を指す表現。かなり漠然としたとらえ方になる。 **事物**は〈**物事**〉と同義の漢語。ただし、〈**物事**〉は「事」に、〈**事物**〉は「物」に重点の置かれる傾向がある。前の三語は日常語だが、〈**事物**〉はかたい文章語。 # 言葉[ことば] ## 言葉/文句[もんく]/辞[じ]/語[ご]/言語[げんご]/文言[もんごん](文言[ぶんげん]) ### 使い分け例 **言葉**・・・「言葉を使って伝える。」「言葉を換える。」「言葉を濁す。」「難しい言葉。」「お言葉を頂戴する。」 **文句**・・・「歌の文句。」「あいさつの文句。」「文句を言う。」 **辞**・・・「開会の辞。」「辞を低くする。」 **語**・・・「語を次ぐ。」「次から二つ語を選べ。」「語形。」「熟語。」 **言語**・・・「世界の言語。」「人間は言語を有する。」「言語感覚。」「言語に絶する。」「言語学。」 **文言**・・・「文言として記された真情。」 ### どう使い分けるか **言葉**は、〈**文句**〉〈**辞**〉〈**語**〉〈**言語**〉〈**文言**〉のいずれの意味としても使う。ものの言い方、語気などの意味で使うこともある。また小説や戯曲などの会話や、旋律を伴わない独白などの部分にも言う。場合によっては「詞・辞」とも書く。 **文句**は、文章中の語句。文の形のものも、文の一部のものもあるが、あまり長くないもの。〈**言葉**〉のように広い意味は表さない。ほかに言い分・苦情などの意。 **辞**は、ある特定の目的を持つひと続きのまとまった〈**言葉**〉。日常語とは言いがたく、形式ばった場合に限られる。 **語**は、一つ一つの〈**言葉**〉、つまり単語。 <198> **言語**は、個々の表現についてではなく、抽象的に言う場合や、総体的・体系的な〈**言葉**〉を言うときに使う。文章語で日常的には〈**言葉**〉と言うことが多い。 **文言**は、手紙・文章の中の文句・表現をとらえて言う。文章語。 # 子供[こども] ## 子供/小児[しょうに]/児童[じどう]/少年[しょうねん]/年少者[ねんしょうしゃ] ### 使い分け例 **子供**・・・「私の子供の頃。」「子供っぽい男。」「子供が出来た。」大人。親。 **小児**・・・「小児科。」「小児病。」 **児童**・・・「児童の保護。」「児童憲章。」 **少年**・・・「少年よ大志を抱け。」「少年少女。」「少年文学。」「少年期。」少女。 **年少者**・・・「年少者の労働を禁止する。」年長者。 ### どう使い分けるか **子供**は、大人に対する子供のほか、親に対する子を指す。 **小児**は、大人に対しての〈**子供**〉と同義の文章語。医学の分野で使う。 **児童**は、〈**小児**〉と同義だが、法律でよく使う。学校教育法では小学校に通う年齢の子供に当て、児童福祉法では十八歳未満の者を言う。やはり文章語。 **少年**は、成年に対して子供、または少女に対して男の子を言う。大体幼児期を越え青年に達する前くらいがその時期に当たる。少年法では二十歳未満、児童福祉法では小学生以上十八歳未満に言う。使用頻度は高いがやや文章語的である。 **年少者**は、年若い、また幼い者。年端がいかず成熟していない者。何歳から何歳までという決まったものはない。 # 断る[ことわる] ## 断る/拒[こば]む/拒否[きょひ]する/拒絶[きょぜつ]する/辞退[じたい]する <199> ## 固辞[こじ]する/突[つ]っ張[ぱ]ねる ### 使い分け例 **断る**・・・「誘いを断る。」「誤解のないよう一言趣旨を断っておく。」 **拒む**・・・「要求を拒む。」「来るものは拒まず。」 **拒否する**・・・「相手の要求を拒否する。」「乗車を拒否する。」「登校拒否。」承諾する。 **拒絶する**・・・「参加を拒絶する。」「拒絶反応。」 **辞退する**・・・「出場を辞退する。」「賞を辞退する。」 **固辞する**・・・「強く就任を要請されたが固辞する。」 **突っぱねる**・・・「その意見を突っぱねる。」 ### どう使い分けるか **断る**は、申し入れを受けないと言い渡す意と、事前に承諾を求める意とがあり、いずれもそれを相手に伝える動作・行為に意味の重点がある。対して**拒む**は、相手に伝える行為より、受け入れないという気持ちに重点がある。〈**拒む**〉には、進もうとするものを妨げる、の意があるが、やや文章語的である。 **拒否する**・**拒絶する**は、〈**拒む**〉の漢語的な言い方だが〈**拒絶する**〉のほうが強くきっぱりと受け付けないニュアンスを表す。 **辞退する**は、遠慮などから自身が退く形で立場・役目を断る意。 **固辞する**は、固く辞退する意。 **突っぱねる**は、とんでもないという調子で初めから強い勢いで相手の要求をはねつける意。 # この頃[このごろ] ## この頃/近頃[ちかごろ]/最近[さいきん]/この所[ところ] ### 使い分け例 **この頃**・・・「この頃雨が降らない。」「この頃は冬でも暖かい。」 **近頃**・・・「近頃は不景気だ。」「近頃めっきり寒くなった。」「近頃迷惑な話。」 **最近**・・・「最近の流行。」「最近彼に会った。」 **この所**・・・「このところ鳴りを潜めている。」「このところの好景気。」 <200> ### どう使い分けるか **この頃**は、少し前から今まで。「―は冬でも暖かい」ではここ何年、「―は日が長い」ではここ数日の間を表す。ちなみに「このころ」は「このころが懐かしい」のように今話題にしている時期を指して言う。 **近頃**・**最近**は、今に近い過去から現在までを漠然と指す。〈**最近**〉は、近い過去の一時点を指す場合もある。「近頃の(最近の)若い人」は期間を言う例、「最近引っ越した」は一時をとらえていう例。前者の例では〈**この頃**〉と同じ意味になる。〈**近頃**〉には、古い言い方だが、甚だの意もある。〈**最近**〉は、空間についても最も近いという意味で用いる。 **この所**は、これまでの一連の流れの中での一時期としてとらえ、また特に今を強調して言うことが多い。何日・何年には当てるが何十年に当てては言わない。 | | ―は不景気だ | ―見た | ―引っ越した | これは―迷惑千万 | ―は皆高学歴だ | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **この頃** | ○ | ○ | ○ | | ○ | | **近頃** | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | **最近** | ○ | ○ | ○ | | ○ | | **この所** | ○ | ○ | ○ | | | # 好み[このみ] ## 好み/好[す]き/嗜好[しこう]/愛好[あいこう] ### 使い分け例 **好み**・・・「夫の好みに合わせた食事。」「洋服の好みがうるさい。」「派手好み。」「最近の好みは気に入らない。」 **好き**・・・「好きこそものの上手なれ。」「君が好きだ。」「好きな仕事。」「好きにしろ。」「好き者。」嫌い。 **嗜好**・・・「嗜好が偏る。」「煙草を嗜好する。」「嗜好品。」 **愛好**・・・「ゴルフの愛好者。」「日本画を愛好する。」「愛好家。」 ### どう使い分けるか **好み**は、好きだと感じるものの傾向。**好き**は、傾向に限らず、唯一個の具体的なものを対象とする場合にも言い、対象への気持ちが直線的と言える。「君が好きだ」を「君が好みだ」と言っても少なくとも愛情表現にはならない。〈**好み**〉は世間が関心を持っているもの「洋服の好みがうるさい。」 <201> # 媚びる ## 媚びる[こびる] ## 諂う[へつらう] ## 阿る[おもねる] ## 迎合する[げいごうする] ## 追従する[ついしょうする] ## 胡麻をする[ごまをする] ### 使い分け例 **媚びる**・・・「重役に媚びる。」「視聴者に媚びるようなCM。」 **へつらう**・・・「お得意様にへつらう。」 **おもねる**・・・「時流におもねる。」「会社におもねる。」 **迎合する**・・・「他人の意見に迎合する。」「権力に迎合する。」 **追従する**・・・「上役に追従する。」 **ごまをする**・・・「上司にごまをする。」 ### どう使い分けるか いずれも気に入られようとしての振る舞いに言う。 **媚びる**は、甘えたり相手の顔を立てるような様子をしたりして喜ばせ気に入られようとする意。もとは、女の、男に対するなまめかしい態度に言う語だが転じて広く使われる。 **へつらう**は、自分よりも力のある人に対する場合が多く、男女関係の中では使わない。よく「媚びへつらう」とも言う。**おもねる**もほぼ同義だが、かなり古風で文章語的である。**へつらう**のほうが日常よく使うが、世間・世論を対象にしてはあまり言わない。 **迎合する**は、自分の考えを曲げて相手に気に入られようとする意。しかるべき自分の考えや立場があることを前提に言う。 **追従する**は、機嫌をとること。ちなみに**追従する**は他人の言うことにそのまま従う意。 **ごまをする**は、機嫌をとって自分の利を図るような様子に言う。相手が団体である場合には言わない。**媚びる**、**迎合する**、**追従する**とともに個々の行為や態度に言うことができるが、**へつらう**、**おもねる**は一貫して言える態度をとらえて言うことが多い。 <202> # 細かい ## 細かい[こまかい] ## 些細[ささい] ## 瑣末[さまつ] ## 微細[びさい] ## 末梢的[まっしょうてき] ## ささやか[ささやか] ## 微小[びしょう] ## 微少[びしょう] ### 使い分け例 **細かい**・・・「細かく刻む。」「神経が細かい。」<>粗い。 **些細**・・・「些細なことを気に掛ける。」<>重大。 **瑣末**・・・「瑣末な事に追われて仕事にならない。」 **微細**・・・「微細な説明。」「微細な調査。」「微細な文様を描く。」 **末梢的**・・・「話が末梢的なことに終始する。」<>根本的。<>本質的。 **ささやか**・・・「ささやかな楽しみ。」 **微小**・・・「菌類の微小な世界。」<>巨大。 **微少**・・・「被害は微少である。」 ### どう使い分けるか **細かい**は、ごく小さい、小さい事にまで及ぶ、などの意。 **些細**は、取るに足りないようなつまらないことである様子。 **瑣末**は、事が重要でない細かいことである様子。「瑣(些)末の」の形が多い。 **微細**は**細かい**と同様、形状の小ささ、詳しさなどを表すが、ごく細かい様子。 **末梢的**は、根幹に対する枝葉のことである様子。全体における位置付けや重要度から言う。 **ささやか**は、大それていないちょっとした、規模の小さい様子。 **微小**は物理的な大きさについて言う。肉眼ではとらえにくいような極めて小さい様子に言う。 **微少**は、量がごくわずかな様子。 # 困る ## 困る[こまる] ## 弱る[よわる] ## 苦しむ[くるしむ] ## 窮する[きゅうする] ## 困窮する[こんきゅうする] ## 困惑する[こんわくする] ## 迷惑する[めいわくする] ## 手古摺る[てこずる] <203> ### 使い分け例 **困る**・・・「生活に困る。」「まじめに働かないで困ったやつだ。」 **弱る**・・・「金がなくて弱った。」「結婚を迫られ弱る。」 **苦しむ**・・・「病気で苦しむ。」「理解に苦しむ行動。」 **窮する**・・・「返答に窮する。」「窮すれば通ず。」 **困窮する**・・・「不景気で困窮する。」「生活困窮家庭。」 **困惑する**・・・「仲裁にならず困惑する。」「子供にはしゃがれ親父は困惑の体。」 **迷惑する**・・・「彼の怠慢でこちらが迷惑した。」「世間に迷惑をかける。」 **てこずる**・・・「面倒な問題で解決にてこずった。」「この子はてこずらせる。」 ### どう使い分けるか **困る**は、**苦しむ**意もあるが、うまい対処ができない意が必ず含まれる。 **弱る**は、一義として困る意があるが、**困る**に比べ、しんから困っていない調子が少しある。 **苦しむ**は、対処できても身につらいことを表し、精神的また肉体的の両方に言う。 **窮する**は、直面した事態に手も足も出ない場合に言う。 | | 金がなくてー | 返答にー | 彼女に甘い声でねだられー | 貧困生活にー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **困る** | ○ | ○ | ○ | ○ | | **苦しむ**| ○ | | | ○ | | **弱る** | ○ | | ○ | | | **窮する** | | ○ | | ○ | | **困窮する**| | | | ○ | **困窮する**は、大きな事でひどく困る場合に使う。また特に生活に困る意味でも使う。 **困惑する**は、とるべき態度の判断がつかないで困る、の意。その場のことに使う表現。 **迷惑する**は他人の所行などにより、嫌だと思うような目にあう場合に使う。 **てこずる**はスムーズな処置ができずもてあまし、かなり手間取る意。 # ごみ ## ごみ ## 塵[ちり] ## 埃[ほこり] ## 屑[くず] ## 塵芥[じんかい/あくた] ### 使い分け例 **ごみ**・・・「ごみを捨てる。」「ごみ処理。」 <204> 「目にごみが入る。」 **塵**・・・「ちりが積もる。」「ちり一つない部屋。」「ちりほども疑わない。」 **埃**・・・「ほこりが舞う。」「ほこりを吸う。」「綿ぼこり。」「土ぼこり。」 **屑**・・・「壊されてくずになる。」「鉄くず。」「人間の屑。」「星屑。」 **塵芥**…「塵芥焼却場。」 ### どう使い分けるか **ごみ**は不要になって後は捨てられるだけの(捨てられた)物の総称として使われ、**塵**、**埃**、**屑**などの言い換えとなることもある。広義には自然にたまった埃・土・砂などをも含む。 **塵**は小さなごみに言う。空気中に浮いている目に見えないほどの物も含み、自然にたまった土・砂・埃などにも言う。ほかに値打ちのないもの、または極めてわずかなことのたとえ。 **埃**は、すぐ舞い上がるほどのごく細かいごみ。 **屑**は、無用で、ちぎれ砕けるなどして利用価値や商品価値として半端なもの。**ごみ**、**塵**、**埃**のようにその場を汚している物という意味合いはない。役に立たないつまらない人や物にも言う。 **塵芥**は「塵・芥・ごみ」の意の漢語。つまらないもの、軽いもののたとえともなる。 # 込(混)む ## 込(混)む[こむ] ## 込(混)み合う[こみあう] ## 立て込む[たてこむ] ## 混雑する[こんざつする] ## 雑踏する[ざっとうする] ## ごった返す[ごったがえす] ### 使い分け例 **込む**・・・「道路が込む。」「予定が込む。」「枝が込む。」「ずいぶん手の込んだ仕事だ。」<>すく。 **込み合う**・・・「車内が込み合う。」「電話が込み合う。」 **立て込む**・・・「仕事が立て込む。」「家が立て込んでいる。」 **混雑する**・・・「通りが車で混雑する。」「混雑の緩和。」 **雑踏する**・・・「年末の街は買物客で雑踏する。」「盛り場の雑踏。」 **ごった返す**・・・「境内は参詣者でごった返した。」 <205> ### どう使い分けるか **込む**は、物・人・事柄の集中に言う。 **込み合う**は、込んで自由に動きがとれないくらいだという当事者に視点を置いた表現。 **立て込む**は、人の集まり、用件の重なり、家の立ち並びに言う。集中してゆとりのない様子を表すが、それによる直接の不都合・不自由は特に表さない。 **混雑する**は、特に無秩序・無統制に物や人が込み合う様子に言う。 **雑踏する**は、思うように歩けないほど人で込み合うことに言う。戸外やかなり広い場所でのことに言うことが多い。 **ごった返す**は、**混雑する**と似るが、人の集まりに言う。**込み合う**よりも騒然とした感じが表れる。 # 頃 ## 頃[ころ] ## 折[おり] ## 際[さい] ## 節[せつ] ### 使い分け例 **頃**・・・「子供の頃。」「五月頃。」「もう帰る頃だ。」「食べ頃。」「徳川の頃。」 **折**・・・「折に触れて思う。」「折も折。」「前にお会いした折。」「猛暑の折。」 **際**・・・「その際に見た。」「緊急の際の備え。」「この際どっちでもいい。」 **節**・・・「その節はお世話になりました。」「当節は物騒だ。」 ### どう使い分けるか いずれもある物事のある、またはあった時を指す。 **頃**は幅のあるおよその時を表し、時節・時代なども表される。 **折**は時機、場合の意。タイミングとしての時を言う。時節の意もある。 **際**は、「雨天のーは中止」のように、時というよりもケース・場合として言う感じがある。 **節**はやや改まった表現。 # 転ぶ ## 転ぶ[ころぶ] ## 転がる[ころがる] ## 転げる[ころげ] <206> ## 倒れる[たおれる] ## 転倒する[てんとうする] ### 使い分け例 **転ぶ**・・・「つまずいて転ぶ。」「七転び八起き。」「どちらに転んでも悪い展開にはならない。」 **転がる**・・・「ボールが転がる。」「床に転がって寝る。」「ラジオなら家にいくらでも転がっている。」 **転げる**・・・「急坂を転げ落ちる。」「笑い転げる。」 **倒れる**・・・「柱が倒れる。」「疲労で倒れる。」「政権が倒れる。」 **転倒する**・・・「足を踏み外して転倒する。」「気が転倒する。」「本末転倒。」 ### どう使い分けるか **転ぶ**は、**転がる**、**転倒する**、物事の方向が変わる、の意がある。 **転がる**は、回転しながら移動する、または転倒する意。物が雑然とまたはいくらでもあるという意も表し、**転げる**にこの意味・用法はない。一方「笑い転がる」とも言わない。 **倒れる**には、回転の要素はない。病気で床に伏す意や、病気・事故などで死ぬ意、権力の失墜・倒産などにも言う。 | | つまずいてー | 丸い石がー | 笑い(で)ころげてもだえー | 樹木が風でー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **転ぶ** | ○ | | | | | **転がる**| | ○ | | | | **転げる**| | | ○ | | | **倒れる**| | | | ○ | | **転倒する**| ○ | | | | **転倒する**は、ひっくりかえるというのに近く、人が転んで膝をつく程度には使わない。 # 壊れる ## 壊れる[こわれる] ## 崩れる[くずれる] ## 潰れる[つぶれる] ## 崩壊する[ほうかいする] ## 壊滅する[かいめつする] ### 使い分け例 **壊れる**・・・「時計が壊れる。」「話が壊れる。」<>直る。 **崩れる**・・・「山が崩れる。」「体の線が崩れる。」「天気が崩れる。」「千円札が崩れる。」「相好が崩れる。」「生活態度が崩れる。」<>固まる。 **潰れる**・・・「実が潰れる。」「会社が潰れる。」「来客で一晩潰れた。」 **崩壊する**・・・「建物が崩壊する。」「政 <207> 権が崩壊する。」 **壊滅する**・・・「都市が壊滅する。」 ### どう使い分けるか **壊れる**は、砕け破損する、機械などが故障する、の意。 **崩れる**は、壊れ落ちる、砕けてばらばらになるといったニュアンスや均整を失う意味が出せる。 **潰れる**は、物理的な意味では押すなどの外からの圧力によって、形が内側へと歪んだりすることに使い、「地震で壁が崩れる」の言い換えはできない。また「箱が潰れる」は一個一個の箱の形が壊されることを表すが、「箱が崩れる」では多数の箱を積み上げた全体の形が壊れ、上のものが落ちるという意になる。 **壊れる**にある「故障する」の意は**崩れる**にはないが、**潰れる**は「のどがー」のように体の機能に関して使う。 | | 時計がー | 山がー | 会社がー | 堤防がー | 建物がー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **壊れる** | ○ | | | | | | **崩れる** | | ○ | | ○ | | | **潰れる** | | | ○ | | | | **崩壊する**| | | | | ○ | **崩壊する**は崩れ壊れる、潰れる、のいずれをも表す。 **壊滅する**は、ひどく壊れて(壊されて)無くなること。この二語は漢語的文章語。 # 今後 ## 今後[こんご] ## 将来[しょうらい] ## 未来[みらい] ## 行く末[ゆくすえ] ## 先々[さきざき] ### 使い分け例 **今後**・・・「今後は気をつけます。」「今後の身の振り方。」<>従来。 **将来**・・・「将来の夢。」「将来のある身。」「将来性。」<>過去。 **未来**・・・「人類の未来。」「未来都市。」「近未来。」<>過去。 **行く末**・・・「子の行く末を案じる。」<>来し方。 **先々**・・・「先々安心だ。」「行く先々で歓待される。」 ### どう使い分けるか **今後**は、これから。今(に近い時点)から先。**将来**、**未来**、**行く末**、**先々**は今を含まない。 **将来**は「将に来らんとす」の意でこれから来る、来るべき時という意 <208> 味合いで使う。 **未来**は「未だ来らず」で、まだ来ていない、見通しや予測の立たない時というニュアンスで使うことが多く、**将来**よりも今に遠い時を指す場合が多い。 **行く末**は将来の成り行きを不安・期待などをもって見るときに使う。 〔注意〕**今後**、**将来**、**先々**は副詞的用法があるが他の二語にはない。 # 今度 ## 今度[こんど] ## 今回[こんかい] ## この度[このたび] ## 今般[こんぱん] ### 使い分け例 **今度**・・・「今度の実験はうまくいった。」「今度会うのが楽しみだ。」 **今回**・・・「今回初めて参加した。」<>前回。<>次回。 **この度**・・・「この度はおめでとうございます。」 **今般**・・・「今般の御計画。」<>先般。<>過般。 ### どう使い分けるか **今度**は今回・この度を指す場合と次回・この次を指す場合とがある。 **今回**は前回・次回に対するが、回数を数えるようなものでない場合にも使う。 **この度**は改まった言い方。口調としてやや丁寧。 **今般**は**この度**の意の文章語でかたい非常に改まった言い方。 いずれも副詞的にも使う。 # こんな ## こんな ## こういう ## かかる ### 使い分け例 **こんな**・・・「こんな珍しい品見たことがない。」「こんなものいらない。」「私の話はこんなところだ。」「天気がこんなですから。」 **こういう**・・・「こういう類の仕事。」「こういう状況だ。」◎こうした。 **かかる**・・・「かかる事態は憂慮に堪えない。」 ### どう使い分けるか **こんな**は、「この」の婉曲な言い方 <209> 「このような」から転じた口頭語だが、単に「このような」の意にとどまらず、ある状態や程度などを強調し、注目させる働きがある。また、「ーものいらない」のように、「これしきの」と同様の意味で、見下したり軽く見たりするニュアンスもある。 **こういう**は、このような、の意で、**こんな**と同義のようだが、**こんな**にある「たかがこれしきの」といったような軽蔑的な意味合いはない。 **かかる**は、「かくある」のつづまったもの。このような、の意の文語で、非常にかたい表現の中で用いられる。 # さ # 裁決 ## 裁決[さいけつ] ## 裁定[さいてい] ## 裁断[さいだん] ## 裁量[さいりょう] ## 決裁[けっさい] ### 使い分け例 **裁決**・・・「当局の裁決する事柄。」 **裁定**・・・「委員会の裁定に従う。」 **裁断**・・・「先輩の裁断に任す。」 **裁量**・・・「経営を裁量する。」 **決裁**・・・「社長の決裁を仰ぐ。」 ### どう使い分けるか いずれも物事の善悪・理非・適否を裁いて決定する意。**裁断**が最も一般的な用語で、**裁定**は労働委員会の仲裁裁定などに、**裁決**は法律用語としては行政庁の訴願や申請に対する決定・処分の意に使う。 **裁量**は各人の自由な判断による処理、**決裁**は権限を持つ上級者が部下の案件の可否を決定することを言う。 # 財産 ## 財産[ざいさん] ## 資産[しさん] ## 財[ざい] ## 家産[かさん] ## 身上[しんじょう] ## 身代[しんだい] <210> ### 使い分け例 **財産**・・・「親の財産を当てにする。」「財産所得。」 **資産**・・・「資産の凍結。」「流動資産。」 **財**・・・「一代で財を築く。」「生産財。」 **家産**・・・「家産を傾ける。」 **身上**・・・「身上をつぶす。」「身上持ち。」 **身代**・・・「一人で大きな身代を築く。」 ### どう使い分けるか **財産**は個人や団体の持つ金銭的価値のあるものの総体、**資産**は個人や法人の所有する、経済的価値のある有形無形の財産の意で、日常語では「財産家=資産家」のように同義にも用いるが、法律的には後者は資本とすることができる財産を言う。 **財**は文章語として**財産**の意に使うが、経済学では人間の欲望を満たすものの意。 **家産**は一家の財産で、**身代**は一身の財産。結局はほぼ同義。前者はかたい文章語で、後者は古風な言い方。**身上**も同様に古風な語で**財産**の意であるが、「―の苦労」のように所帯(のやりくり)の意にも使われる。 〔注意〕「身上(しんじょう)」は、一身に関すること(「―書」)、また、その人の本領といった意味の語。 # 災難 ## 災難[さいなん] ## 災害[さいがい] ## 災禍[さいか] ## 災厄[さいやく] ## 難[なん] ## 災い[わざわい] ### 使い分け例 **災難**・・・「とんだ災難にあう。」 **災害**・・・「災害に備える。」「災害対策を講じる。」 **災禍**・・・「災禍の跡も生々しい。」 **災厄**・・・「身に災厄が降りかかる。」 **難**・・・「危うく難を免れる。」 **災い**・・・「口は災いのもと。」<>幸い。 ### どう使い分けるか いずれも人に突然ふりかかる不幸な出来事の意。**災難**は主に個人的に、天災・人災・損害の大小にかかわらず用いるが、**災害**は地震や台風、戦争や事故などで広範囲に被害を受けた場合に使う。 **災禍**は**災害**、**災厄**は**災難**とそれぞれ同義の、かたい文章語。 <211> **難**も**災難**の意の文語的表現であるが、この語には「―を言えば」、のように欠点、困難の意もある。 **災い**は、意味内容は最も広いが、やや古めかしい語で、決まり文句以外にはあまり使われない。 〔注意〕「禍」も**わざわい**と読むが、常用漢字表にはない読み。しかし「―を転じて福となす」などには使う。 | | 不慮のーが降りかかる | ーの跡も生々しい | とんだーだったね | ー対策本部 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **災難** | ○ | | ○ | | | **災害** | ○ | | ○ | ○ | | **災禍** | ○ | ○ | | | | **災厄** | ○ | | ○ | | # 材料 ## 材料[ざいりょう] ## 原料[げんりょう] ## 原材料[げんざいりょう] ## 資材[しざい] ## 素材[そざい] ## 資料[しりょう] ## データ ### 使い分け例 **材料**・・・「料理の材料を買う。」「サルを研究の材料に使う。」「作文の材料を探す。」「景気好転の材料。」 **原料**・・・「石灰石はセメントの原料。」 **原材料**……「原材料を輸入に頼る。」 **資材**・・・「建築用の資材。」 **素材**・・・「この靴下の素材はナイロン。」「不倫を素材にした小説。」 **資料**・・・「研究資料を集める。」 **データ**・・・「データ不足の論文。」「データバンク。」 ### どう使い分けるか **材料**は、①加工して製品にするもと、②研究・調査の結論を出すもと、③作文や芸術作品の題材、④相場や景気を変動させる原因、などの意。 **原料**も加工品製造のもとの意であるが、**材料**と違って、もとの物質が製品になったときその性質を残していないものを普通言う。 **原材料**は原料と材料、**資材**は材料として役に立つ物質を言う。 **素材**は物をつくるもとになる材料の意であるが、芸術作品の題材の意(**材料**③)にも使われる。 **資料**は研究・判断の基礎にする材料(②)の意で、**データ**もほぼ同義であるが、後者は、コンピューターでプログラムを運用できる形に記号化・数字化された資料の意に最近はよく使われる。 <212> # 捜す ## 捜す[さがす] ## 探す[さがす] ## 探る[さぐる] ## 尋ねる[たずねる] ## 漁る[あさる] ## 捜索する[そうさくする] ## 捜査する[そうさする] ## 探索する[たんさくする] ### 使い分け例 **捜す**・・・「忘れ物を捜す。」「家出人を捜す。」 **探す**・・・「仕事を探す。」「適当な助手を探している。」 **探る**・・・「ポケットを探る。」「情勢を探る。」「箱根の新緑を探る。」 **尋ねる**・・・「母を尋ねて三千里。」「道を尋ねる。」「由来を尋ねる。」 **漁る**・・・「神田で古本をあさる。」「のら犬がごみ箱をあさる。」 **捜索する**・・・「遭難者を捜索する。」 **捜査する**・・・「犯人を捜査する。」 **探索する**・・・「史料を探索する。」 ### どう使い分けるか) **捜す**と**探す**は、人や物を見つけようとして行動する、の意で、同義に用いられるが、強いて区別すれば、前者は見えなくなったもの、後者は欲しいものをさがす場合に用いる。 **探る**は、見えない物を手足などで捜し求める、が原義と言えようが、そっと様子や事情を調べたり推し量ったりする、美しい風景などを訪ね求める、などの意がある。 **尋ねる**は、所在の分からないものを捜し求める意のほか、不明の事を他人にきく、物事の根源・根本などを探り求める、などの意もある。 **漁る**は、欲しい物を求めて探し回る意で使うが、原義は「のら犬がごみ箱をー」のように、えさを求めてうろつくの意。 **捜索する**は、捜し求める、**捜査する**は、捜し調べる、**探索する**は探り求めるの意で、それぞれよく似通っているが、法律用語としては、**捜索**は裁判所や捜査機関が犯人・証拠物の発見のため、身体・物・家を強制的に探査する場合、**捜査**は捜査機関が犯人と犯罪事実に関する証拠を発見・収集する場合に使う。 <213> # 作者 ## 作者[さくしゃ] ## 著者[ちょしゃ] ## 筆者[ひっしゃ] ## 書き手[かきて] ## ライター ## 作家[さっか] ## 文士[ぶんし] ## 文人[ぶんじん] ## 物書き[ものかき] ### 使い分け例 **作者**・・・「源氏物語の作者。」「この彫刻の作者。」「作者不詳。」「狂言作者。」 **著者**・・・・「昆虫記の著者。」「著者略歴。」「著者自身の註。」 **筆者**・・・「この手紙の筆者。」「この文章の筆者。」「筆者はそう思います。」 **書き手**・・・「この記事の書き手は誰か。」「当代屈指の書き手。」 **ライター**・・・「覆面のライター。」「ルポライター。」「シナリオライター。」 **作家**・・・「純文学の作家。」「放送作家。」「陶芸作家。」「劇画作家。」 **文士**・・・「三文文士と自称する。」 **文人**……「文人墨客の交友。」「文人画。」<>武人。 **物書き**・・・「売れない物書き。」 ### どう使い分けるか **作者**は、ある芸術作品を作った(作る)人を言うのが普通だが、「狂言―」「座付―」などの場合は職業としての**作家**の意になる。 **著者**はその書物を書き著した人、**筆者**は、その文章や書画を書いた人で、どちらも職業名ではない。**筆者**は、文章中で自身を指して言う場合もある。 **書き手**は、その文章を書く(書いた)人の意だが、文章や書画に巧みな人を言う場合もある。 **ライター**は、これら四語と同じく、その文章を書いた人の意にも使うが、文章を書く職業としても言う。 **作家**は、芸術活動の創作を職業とする人で、特に小説家や劇作家を指すことが多い。**文士**はその意味の**作家**の古風な言い方。 **文人**は、詩文・書画など文雅の道に携わる人の意で、職業作家に限らない。 **物書き**も、文章を書くことを職業とする人。作家やライターが、一種の謙称として自分について使うことが多い。 <214> # 叫ぶ ## 叫ぶ[さけぶ] ## 怒鳴る[どなる] ## 喚く[わめく] ## 絶叫する[ぜっきょうする] ## 怒号する[どごうする] ### 使い分け例 **叫ぶ**・・・「火事だ!と叫ぶ。」「政界の浄化を叫ぶ。」 **怒鳴る**・・・「芝生に入るなとどなる。」 **わめく**・・・「酔っぱらいがわめく。」 **絶叫する**・・・「助けを求めて絶叫する。」 **怒号する**・・・「広場で怒号する群衆。」 ### どう使い分けるか **叫ぶ**は、大声をあげる、また、世間に対し強く主張する、の意。 **怒鳴る**は、非常に大きな声で、または特定の相手をしかりつけて叫ぶ、**わめく**は、興奮して大声で何やら叫び騒ぐ、の意。 **絶叫する**は声を限りに叫ぶ、**怒号する**は怒ってどなる意で、どちらもかたい文章語。風・波の激しく荒れ狂うさまを「海がー」などと表現することもある。 # 避ける ## 避ける[さける] ## 避(除)ける[よける] ## 躱す[かわす] ## 逸らす[そらす] ## 回避する[かいひする] ## 退避する[たいひする] ## 待避する[たいひする] ### 使い分け例 **避ける**・・・「難を避ける。」「人目を避ける。」「混乱を避ける。」 **よける**・・・「水たまりをよけて通る。」 **かわす**・・・「危難から身をかわす。」「敵の攻撃をかわす。」「批判をかわす。」 **そらす**・・・「相手から目をそらす。」「話をそらす。」「球をそらす。」 **回避する**・・・「事前に危険を回避する。」「責任を回避する。」 **退避する**・・・「安全地帯に退避する。」 **待避する**・・・「列車が待避する。」 ### どう使い分けるか **避ける**は好ましくない事物から離れた位置をとる意。**よける**はそれとほぼ同義だが、より口語的で、「誤解をー」、「明言をー」のような抽象的な用法はない。 <215> **かわす**はとっさの体の動きでよける意。「批判を―」のようにうまくそらして難を避ける意にも使う。 **そらす**は面倒を避けるために向きを変える意のほかに「球を―」、「好機を―」のように、不注意で受け損う意もある。 **回避する**はよくない結果を恐れて避けようとする意で、具象物には用いない。**退避する**は危険を避けて安全な所に移る、**待避する**は危険が過ぎるまで、あるいは他の列車が通過するまで避け待つことである。 # 下げる ## 下げる[さげる] ## 提げる[さげる] ## ぶら下げる[ぶらさげる] ## 垂らす[垂らす] ## 吊る[つるす] ## 吊す[つるす] ## 掛ける[かける] ### 使い分け例 **下げる**・・・「頭を下げる。」「価格を下げる。」「地位を下げる。」「軒にすだれを下げる。」「腰に手ぬぐいを下げる。」 **提げる**・・・「かばんを提げる。」 **ぶら下げる**・・・「胸に勲章をぶら下げる。」「買物袋をぶら下げる。」 **垂らす**・・・「幕を垂らす。」「束ねた髪を後ろへ垂らす。」 **吊る**・・・「蚊張を吊る。」「谷に橋を吊る。」 **吊す**・・・「提灯を吊す。」「軒に干し柿を吊す。」 **掛ける**・・・「服をハンガーに掛ける。」「壁に絵を掛ける。」 ### どう使い分けるか **下げる**は、前三例のように、ある位置・段階から低い位置・段階へ移す意であるが、上端を固定して下に垂らすの意にも使う。 **提げる**は、特に、手にさげて持つ場合に使う。 **ぶら下げる**はつり下げる・手にさげるの意で、ややくだけた言い方。 **垂らす**は、布や糸を上で支えてぶら下げるの意であるが、液体を滴らすの意もある。 **吊る**も**吊す**も、上端を引っ掛けて支え、落ちないようにすることであるが、前者はその位置を保たせること、後者はそこから垂れ下げる場合に多く使う。 **掛ける**は、何かでとめたり支えたりする意では他語と共通である <216> が、ぶら下げたり垂らしたりすることよりも離れたり落ちたりしない方に力点がある。この語は非常に多義的であるが、「賞金を―」「心にー」などの場合は**懸ける**、「橋・電線を―」などの場合は**架ける**を用いる。 | | すだれをー | 看板をー | 腰に剣をー | 醬油をー | 額に髪をー | 土俵際でー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **下げる** | ○ | | ○ | | ○ | | | **垂らす** | △ | | | ○ | ○ | | | **吊る** | ○ | ○ | ○ | | | | | **吊す** | ○ | ○ | ○ | | | | | **掛ける** | ○ | ○ | | | | ○ | # 差し迫る ## 差し迫る[さしせまる] ## 押し詰まる[おしつまる] ## 切羽詰まる[きりつまる] ## 切迫する[せっぱくする] ## 急迫する[きゅうはくする] ## 緊迫する[きんぱくする] ## 窮迫する[きゅうはくする] ### 使い分け例 **差し迫る**・・・「手形の期日が差し迫る。」「特に差し迫った用事はない。」 **押し詰まる**・・・「納期が押し詰まる。」「今年も押し詰まってきた。」 **切羽詰まる**・・・「切羽詰まって悪事を働く。」 **切迫する**・・・「試験の期日が切迫する。」「事態が切迫する。」 **急迫する**・・・「国際関係が急迫する。」 **緊迫する**・・・「緊迫した空気が流れる。」「緊迫した国際情勢。」 **窮迫する**・・・「財政が窮迫する。」「失 ### どう使い分けるか **差し迫る**は、なすべき期日・期限、困難な事態が間近に迫る意。 **押し詰まる**はほぼそれと同義であるが、年の暮れが近づく意を表すのはこの語の独特な用法。 **切羽詰まる**は、土壇場に追い詰められ、抜き差しならなくなる意。 **切迫する**は**差し迫る**と同義の、**急迫する**は**切羽詰まる**に似た意味の漢語的表現で、かたい文章語。和語の方は個人的な場合にも使うが、漢語の方は大状況に多く使う。 **緊迫する**は、情勢が緊張し、油断できない状態になる、の意。 **窮迫する**は経済的・金銭的に切 <217> 羽詰まる意で、個人の家計についても用いる。 〔注意〕**切迫する**は「呼吸が―」のように呼吸や脈が小刻みに速くなる意にも使う。 # 差し支え ## 差し支え[さしつかえ] ## 差し障り[さしさわり] ## 障り[さわり] ## 支障[ししょう] ## 故障[こしょう] ### 使い分け例 **差し支え**・・・「差し支えがあって出席できない。」 **差し障り**・・・「差し障りが起こって行けない。」 **障り**・・・「縁談に障りがあると困る。」 **支障**・・・「本業に支障を来す。」 **故障**・・・「建設計画に故障が生じる。」「外部から故障が入る。」 ### どう使い分けるか **差し支え**は何かをするのに都合の悪い事情の意で、**差し障り**よりも口語的。ただし後者には、「話すとーがある」のように具合の悪いことが起こりそうな事情の意もある。 **障り**は**差し障り**の古風な言い方で、**支障**はその文章語的表現。 **故障**は機械や体の一部に異常があること、また、事態の進行を邪魔するもの(=**支障**)の意。「故障を申し立てる」の場合は支障ありと異議を唱えることである。 〔注意〕「…して差し支えない」はしてもよい(許容)の意を表す。「お障りなくお過ごし・・・」の**障り**は病気の意。 # さっき ## さっき ## 先程[さきほど] ## 先刻[せんこく] ## 今し方[いましがた] ## 最前[さいぜん] ### 使い分け例 **さっき**・・・「さっきはごめんね。」 **先程**・・・「先程お伝えした通りです。」<>後程。 **先刻**・・・「先刻からお待ちです。」「わたしはそんな事は先刻承知だ。」<>後刻。 **今し方**・・・「つい今し方帰っていった。」 **最前**・・・「最前お電話した者です。」 <218> ### どう使い分けるか いずれも時間的に少し前の意で、名詞にも副詞にも用いる。 **さっき**はやや俗語的で、**先程**は少し改まった言い方、**先刻**は更に改まった文章語的な言い方である。「そんな事は―承知だ」の場合は前から・既にの意。 **今し方**はたった今の意で、時間的隔たりは一番少ない。やや古風な**最前**は、時間的には**先程**と**今し方**の中間ぐらいの感じである。 # 察する ## 察する[さっする] ## 察知する[さっちする] ## 推し量る(測る)[おしはかる] ## 推量する[すいりょうする] ## 推察する[すいさつする] ## 推測する[すいそくする] ## 憶測する[おくそくする] ### 使い分け例 **察する**・・・「敵の気配を察する。」「御心中お察し申し上げます。」 **察知する**・・・「危険を事前に察知する。」 **推察する**・・・「彼の気持ちを推察する。」「お喜びのほど御推察いたします。」 **推し量(測)る**・・・「相手の意図を推し量る。」「敵の出方を推し量る。」 **推量する**・・・「彼女の胸中を推量する。」 **推測する**・・・「事件の行方を推測する。」 **憶測する**・・・「憶測して発言するな。」 ### どう使い分けるか **察する**も**推し量る**も、他の事をもとにしてある事について考え、見当をつける、の意。日常語としては後者は前者ほど使われない。また、前者には、他人の心中を思いやる(同情する)、の意もある。 **察知する**は、推し量って知る、**推察する**は、他人の事情や心中を推し量る、の意。前者は知的な働きの場合、後者は心情的・共感的なものも含む働きの場合といった違いがある。 **推量する**と**推測する**は、ほとんど同義で、「五年後の人口をー」という場合はどちらの語も使える。強いて区別すれば後者の方がやや <219> 客観性が強く、「当て推量」、「推測統計学」のように置き換えられない使い方もある。 **憶測する**は、正当な前提や根拠なしにいい加減な推測をする意。 | | 心中をー | 余りある | 人口動向をー | 自分勝手にー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **察知する** | | ○ | | | | **推察する** | ○ | | | | | **推量する** | ○ | ○ | ○ | | | **推測する** | | | ○ | | | **憶測する** | ○ | | | ○ | 〔注意〕**憶測**は**臆測**の書き換え。 # さて ## さて ## 扠(扱・借)[さて] ## ところで ## それでは ## では ### 使い分け例 **さて**・・・「さて、話は変わって・・・。」「方々探したが、さて見つからない。」 **ところで**・・・「ところであの件はどうなりましたか。」 **それでは**・・・「それでは開会します。」「君も行くか。それでは僕も行こう。」 **では**・・・「では次の問題に移ります。」 ### どう使い分けるか **さて**と**ところでは**別の話題に転じるときに使う語。前者の方がやや改まった言い方で、後者の方が話題を急に変える感じが強い。 **さて**は、古風な文章や書簡文では前書きから本論に入るときなどに使う。 **それでは**は話の初め・終わりの切れ目を示す語で、**さて**、**ところで**よりも軽く、場面を切り替えるときに使い、**では**はそれを簡略化した話し言葉である。 **さて**は今までの話を受けて、そうして・ところがの意に、**それでは**、**では**は前の事柄を受けて、それならの意に使う用法もある。 〔注意〕「さて、どうしようか」の**さて**、別れのあいさつとしての**それでは**は感動詞。 # 騒ぎ ## 騒ぎ[さわぎ] ## 騒動[そうどう] ## 騒乱[そうらん] ## 騒擾[そうじょう] ## 暴動[ぼうどう] ## 動乱[どうらん] <220> ### 使い分け例 **騒ぎ**・・・「どんちゃん騒ぎ。」「火事騒ぎが収まる。」 **騒動**…「地震騒動。」「米騒動が全国各地に広がった。」 **騒乱**・・・「騒乱が続いて農民が苦しむ。」 **騒擾**・・・「騒擾罪で起訴される。」 **暴動**・・・「各地で暴動が相次ぐ。」 **動乱**・・・「武力で動乱を鎮定する。」 ### どう使い分けるか **騒ぎ**は、やかましい声や音を立てるところから混雑・もめ事までを言い、**騒動**は、それよりやや大規模なもので、「お家ー」のように権力争いを言うこともある。 **騒乱**は、事変が起こって社会秩序が乱れること、**騒擾**は、社会秩序を乱すこと。法律用語に「騒擾罪」があるが、新聞などでは「騒乱罪」と書くのが普通。 **暴動**は、共通の要求のもとに徒党を組んで起こす大規模な暴力的騒動、**動乱**は、もっと深刻な、国家の安危にかかわるような騒乱を言う。 〔注意〕「・・・どころの騒ぎではない」は、事の重大さや程度の甚だしさを強調する言い方。 # 触る ## 触る[さわる] ## 障る[さわる] ## 触れる[ふれる] ## 接する[せっする] ## 接触する[せっしょくする] ## 抵触する[ていしょくする] ### 使い分け例 **触る**・・・「お尻に触られる。」「足に何か硬い物が触る。」「手で触って確かめる。」「気に触る。」 **障る**・・・「耳に障るいやな音。」「夜ふかしは体に障る。」「気に障る。」 **触れる**・・・「電線が枝に触れる。」「冷たい空気に触れる。」「法に触れる。」「目に触れる。」「怒りに触れる。」 **接する**・・・「タイヤの地面に接する部分。」「額を接して密談する。」「客に接する。」「円に接する直線。」 **接触する**・・・「車が塀と接触して壊れる。」「接触不良。」「他人と接触するのを避ける。」「外国との接触。」 **抵触する**・・・「法に抵触する。」 <221> ### どう使い分けるか **触る**と**触れる**は、どちらも二つのものがくっつく場合に言い、同じ用法の場合も多いが、**触る**は二つのもののどちらか一方あるいは両方が人間または人間の部分である場合に限られ、**触れる**は物と物でもよいという違いがある。また、**触れる**では一方が気体や電流などもよいが**触る**ではそういうものはない。**触れる**はほかに、抽象的なものと何らかの関係を持つ意のさまざまな使い方がある。 **障る**は、物事が目や耳などにさわりそれが害や邪魔と感じられる場合に言うが、「気に―」は**触る**も使う。 **接する**は、物と物の場合は**触れる**とほぼ同じ意と、直接触れてはいなくて非常に近づいている意とに使われる。人と人の場合には会う、交際するなどの意になる。 **接触する**は、**接する**と重なる場合も多いが、例えば「客にー」の場合、**接触する**では単に会うのではなく、特定の目的を持って関係や連絡をつける、といったニュアンスがある。 | | 体にー | 気にー | 冷気にー | 手と手がー | 某国スパイとー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **触る** | ○ | ○ | | ○ | | | **障る** | ○ | ○ | | | | | **触れる** | ○ | ○ | ○ | ○ | | | **接する** | | | | ○ | ○ | | **接触する**| | | | | ○ | **抵触する**は、**触れる**の漢語的な言い方だが、特に法などに違反する意で使うことが多い。かたい文章語。 # さん ## さん ## 様[さま] ## 君[きみ] ## 殿[どの] ## 兄[けい] ## 嬢[じょう] ## 氏[し] ## 女史[じょし] ### 使い分け例 **さん**・・・「田中さん。」「おじさん。」「魚屋さん。」「お隣りさん。」 **様**・・・「中村様。」「おばさま。」「宮様。」「仏さま。」 **君**・・・「おはよう、鈴木君。」 **殿**…「高橋一郎殿。」「学校長殿。」 **兄**・・・「渡辺兄によろしく。」 **嬢**・・・「写真の中央が川上文子嬢です。」 **氏**……「山田正男氏の見解。」「受賞四氏の略歴。」 <222> **女史**・・・「山下女史の新しい作品。」 ### どう使い分けるか **さん**は、人の名前や人を表す語などに付けて、軽い敬意や親愛の情を表し、**様**は、人名や神仏名などに付けて敬意を表し、**君**は、多く男性間で、同輩か目下の人に付けて軽い敬意を表す。相手を呼んだり紹介したりするときは**さん**、手紙のあて名などでは**様**が現在の標準的な用法。呼称に**様**を付けるのは改まった言い方。 **君**を異性間で使うことが最近はよくあるが、正格的ではなく、**さん**の方が丁寧。 **殿**は公式の場面や文書で相手の姓名や官職名に添える敬称、**兄**は、男性同士の手紙文で親しい先輩・同輩の姓名に添える敬称。前者は堅苦しい語で、公文書以外で使用するのは古風。 **嬢**は未婚の若い女性、**女史**は女性の学者・芸術家・政治家などの名前に添える敬称。**氏**は人の姓名に付けて敬意を表すが、数詞に付ける場合もある。これらの語は第三者的に使い、相手に対する呼称ではない。なお、**氏**には所属する氏族「徳川氏」、婦人の実家を示す用法「妻紀氏」があるが、これは敬称ではない。 **兄**、**氏**、**女史**は接尾語以外に、「兄の御意見を伺いたい」、「氏は広島の出身」、「女史の専門は国文学」のように代名詞としても使う。 〔注意〕**さん**、**様**には「お・ご」のついた語に添えて「ご苦労さん」「お疲れさま」とあいさつの言葉とする用法があるが、この場合も**さん**より**様**の方が丁寧である。 # 残酷 ## 残酷[ざんこく] ## 残虐[ざんぎゃく] ## 残忍[ざんにん] ## 冷酷[れいこく] ## 酷薄[こくはく] ## 惨(酷)い[むごい] ## 惨たらしい[むごたらしい] ### 使い分け例 **残酷**・・・「残酷な仕打ち。」 **残虐**・・・「残虐な犯罪。」 **残忍**・・・「残忍な性格。」 **冷酷**・・・「冷酷な処分。」 <223> **酷薄**・・・「酷薄な心の持ち主。」 **むごい**・・・「むごいことを言う。」 **むごたらしい**・・・「むごたらしい殺し方。」 ### どう使い分けるか **残酷**は理由なく人畜を苦しめるひどい行為・態度、**残虐**はひどい殺し方や傷つけ方をするさま、**残忍**は無慈悲なことを平気でする性質を言う。 **冷酷**は思いやりのない、対人的な心情の冷たさ、**酷薄**は思いやりのなさを強く言う語である。 **むごい**は無慈悲で残酷である意、**むごたらしい**はそれを強調した言い方であるが、「むごたらしい事故現場」のように、物事の状態が見るに堪えないほど痛ましい、悲惨だという意味にも使う。 # 散歩 ## 散歩[さんぽ] ## 散策[さんさく] ## 漫ろ歩き[そぞろあるき] ## 漫歩[まんぽ] ## 遊歩[ゆうほ] ## 逍遙[しょうよう] ### 使い分け例 **散歩**・・・・「日課の散歩に出掛ける。」「犬を連れて散歩する。」 **散策**・・・「高原の散策を楽しむ。」 **そぞろ歩き**・・・「土手をそぞろ歩きする。」 **漫歩**・・・「盛り場を漫歩する。」 **遊歩**・・・「川沿いの遊歩道路。」 **逍遙**・・・「春の野を逍遙する。」 ### どう使い分けるか どの語も気晴らしや健康のためにぶらぶら歩く意であるが、**散歩**が一番普通に使われる。**散策**はやや気取った言い方。 **そぞろ歩き**は雅語、**漫歩**は漢語の文章語で、散歩よりも当てもなくのんびり歩くという感じが強いが、かなり古風な言い方である。 **漫歩**は新聞のコラムなどで、「政界―」のように比喩的に使われることがある。 **遊歩**は比較的新しい語で、「―道」のように造語成分として使われることが多い。**逍遙**は古風な文章語で、ぶらぶら歩きながら想を練るといった場面にふさわしい。 <224> # し # 死 ## 死[し] ## 死亡[しぼう] ## 死去[しきょ] ## 没[ぼつ] ## 死没[しぼつ] ## 物故[ぶっこ] ## 落命[らくめい] ## 逝去[せいきょ] ## 長逝[ちょうせい] ## 永眠[えいみん] ## 他界[たかい] ## 往生[おうじょう] ## 昇天[しょうてん] ### 使い分け例 **死**・・・「死をもって償う。」「死の灰。」「愛犬の死を悲しむ。」<>生。 **死亡**・・・「死亡の原因。」「死亡届。」「事故で二名死亡。」 **死去**・・・「惜しまれながら死去する。」「親友の死去を悲しむ。」 **没**……「平成元年没。」「長崎にて没。」 **死没**・・・「死没者の霊を慰める。」 **物故**…「物故者名簿。」「異境で物故する。」 **落命**・・・「航空機事故で落命する。」 **逝去**・・・「父君の御逝去をお悔やみ申し上げます。」 **長逝**・・・「旅先で長逝する。」<>永逝。 **永眠**・・・「薬石効なく永眠致しました。」 **他界**・・・「天寿を全うして他界する。」 **往生**・・・「往生を遂げる。」 **昇天**・・・「安らかに昇天する。」◎上天。 ### どう使い分けるか **死**は人以外の生物にも使うが、ほかはすべて人間にのみ使う。 **死去**が死んでこの世を去るという、感情をこめた語であるのに対し、**死亡**は人の死を事務的・客観的に表現する語。したがって、「事故で二名死亡」、「親友死去の報」の**死亡**と**死去**は置き換えられない。 **没**は死んだの意で、墓碑や年表・略歴などで死亡年月日や場所を簡潔に示すときに使う。**死**では言い換えられない。**死没**は死亡と同義の文章語。**物故**も**死去**と同義のやや古風な語で、「一者」はある団体に所属する人について言う。**落命**は不慮の災難や戦い <225> で死ぬ場合に用いる。 **逝去**は**死去**の尊敬語で、目上の人や儀礼的な場合に用いる。 **長逝**は永久に逝きて帰らぬこと、**永眠**は永遠の眠りにつくことで、**死去**の婉曲な言い方である。 **他界**は人間界から他の世界へ行くこと、**往生**は死んで極楽に生まれ変わることで仏教語、また**昇天**は死んで天国に赴くことでキリスト教用語であるが、信仰に関係なく一般の人の死にも使われている。ただ**往生**は、「悪路に―した」、「―際が悪い」などの俗語に多用されるので、死去の意にはあまり使われない。ただし、「大往生」とは言う。 〔注意〕**没**、**死没**は**歿**、**死歿**の書き換え。 # 強いて ## 強いて[しいて] ## 敢えて[あえて] ## たって ## 無理に[むりに] ## 無理遣り[むりやり] ## 強引に[ごういんに] ### 使い分け例 **強いて**・・・「強いて行くことはない。」 **敢えて**・・・「あえて苦言を呈する。」 **たって**・・・「たって(の)お望みとあれば、…。」 **無理に**・・・「二人の仲を無理に引き離す。」 **無理やり**・・・「無理やり(に)連れて行く。」 **強引に**・・・「強引に口説き落とす。」 ### どう使い分けるか いずれも無理を押しても物事をす るさまを表す言葉。 **強いて**は、相手の意志に逆らってもやらせるのが原義であるが、自分について言う場合は「強いて(=敢えて)言えば」のように**敢えて**とほぼ同義になる。 **敢えて**には「一事を構える」のようにわざわざの意もあり、また「一驚くに足りない」のように、打消しを伴って取り立てての意になることもあるが、いずれも文章語的である。 **たって**は、無理を承知でぜひと頼む場合に使い、この語もやや文章語的である。 **無理に**は、最も普通に用いられる <226> **強いて**、**あえて**、**たって**、**無理に**、**強引に** 語。**無理やり**はそれを強めた語で、**強引に**とほぼ同義であるが、より口語的な言い方。どちらも〈強いて〉よりも相手に押し付ける度合いが大きい。 | | ー頼む | ー言うな | ー採決する | 驚くに足りない | ーの所望 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **強いて** | O | Δ | - | O | - | | **あえて** | O | - | O | O | - | | **たって** | O | - | - | - | O | | **無理に** | O | Δ | O | O | O | | **強引に** | - | - | O | - | O | 〔注意〕〈無理に〉〈強引に〉は形容動詞の連用形。 # 叱る[しかる] ## 叱る[しかる]/叱責[しっせき]する/窘める[たしなめる]/戒める[いましめる] ### 使い分け例 **叱る**・・・「騒ぐ子を叱る。」「犬を叱る。」 **叱責する**・・・「部下を叱責する。」 **たしなめる**・・・「無作法をたしなめる。」 **戒める**・・・「子供のいたずらを戒める。」 ### どう使い分けるか **叱る**は、荒い声でとがめ注意する意で、人間だけでなく家畜などにも使う。 **叱責する**は〈叱る〉よりも強く響く文章語で、監督者が下の人の責任を問う場合などに使う。 **たしなめる**は、穏やかに叱る意で、相手の反省を促す。対して、**戒める**は、もっと強く、懲らしめるの意もあり、再び同じ過ちを犯さないよう叱ることである。 なお、〈戒める〉には前もって注意する(「自らをー」)、ある行為を禁ずる(「金品の授受をー」)の意味もある。 # 仕組み[しくみ] ## 仕組み[しくみ]/骨組み[ほねぐみ]/組み立て[くみたて]/仕掛け[しかけ]/構造[こうぞう]/構成[こうせい]/機構[きこう]/組織[そしき]/システム[しすてむ]/メカニズム[めかにずむ] ### 使い分け例 **仕組み**・・・「ロボットの仕組み。」「結末の仕組みがおもしろい。」 **骨組み**・・・「ビルの骨組み。」「論文の骨 <227> 組みができる。」 **組み立て**・・・「組み立て式の棚。」「文章の組み立てを分析する。」 **仕掛け**・・・「簡単な仕掛けのカメラ。」「種も仕掛けもない。」<>からくり。 **構造**・・・「機関車の構造。」「建物の構造。」「汚職の構造を解明する。」「社会の構造。」 **構成**・・・「文章の構成を示す。」「構成の巧みな絵。」「家族構成。」 **機構**・・・「人体の機構。」「行政機構を改革する。」「国連の機構。」 **組織**・・・「社会の組織。」「組合を組織する。」「筋肉組織。」 **システム**・・・「新しいシステムを導入する。」「システムエンジニアリング。」「流通システム。」 **メカニズム**・・・「ワープロのメカニズム。」「流通のメカニズム。」 ### どう使い分けるか 和語と漢語は大体**仕組み**―**機構**、**骨組み**―**構造**、**組み立て**―**構成**と対応し、和語の方が日常語的、漢語の方が文章語的である。外来語は**システム**―**組織**、**メカニズム** - **仕掛け**・**機構**と対応する。 これらの対応には多少意味のずれはあり、**仕組み**は**機構**にはない計画・工夫の意味がある。**骨組み**は基本的な、あるいは大づかみの構造を言い、**構造**は細部の仕組みについても言う。**組み立て**は単純で具体的な物について多く用い、**構成**のように複雑な、あるいは抽象的な事柄にはあまり使わない。 **組織**は構成分子が有機的なまとまりを持つ仕組みで、生物学では形や作用の同じ細胞の集団を言う。**システム**はこの意味では使われず、人間の作る組織、または方式の意に用いる。この語には体系という意味もある。 **仕掛け**はからくりと同義に用いることがあるが、こういう軽い意味は**機構**や**メカニズム**にはない。後の二つは機械装置にも社会組織の仕組みにもほぼ同じ意味に使われるが、**メカニズム**は機械関係では俗にメカと略称されることがある。 # 仕事 ## 仕事[しごと] ## 職業[しょくぎょう] ## 職[しょく] <228> ## 職務[しょくむ] ## 業務[ぎょうむ] ## 作業[さぎょう] ## 働き[はたらき] ## 労働[ろうどう] ## 勤労[きんろう] ### 使い分け例 **仕事**・・・「遅くまで仕事をする。」「やりがいのある仕事。」「仕事を探す。」 **職業**・・・「教師を職業とする。」 **職**・・・「職に就く。」「手に職を持つ。」「校長の職にある。」 **職務**・・・「職務を遂行する。」 **業務**・・・「業務上の過失。」 **作業**・・・「本日の作業。」「現場で作業する。」「手作業。」 **働き**・・・「働きに出る。」「抜群の働き。」 **労働**・・・「庭仕事もなかなかの労働だ。」「労働省。」 **勤労**…「勤労奉仕。」「勤労所得。」 ### どう使い分けるか **仕事**は頭や体を使って働くこと、**職業**は生計を立てるために日常従事する仕事の意で、**仕事**は**職業**と同義にもなるが、「水―」、「針ー」のようにもっと幅広く使う。 **職**は**職業**の意のほかに、それに必要な技能の意にも、また役目・地位の意にも使う。この場合は**職務**に近い。 **職務**は仕事として担当している任務、**業務**は日常継続して行う職業や事業などの仕事の意で、「運転士のー」は**職務**と同義になるが、「商店主のー」の代わりに**職務**とは言わない。 **作業**は一定の手順に従って仕事をすることで、内容の具体的な仕事に言う。たとえば、運送**業務**における荷積み**作業**といったようにである。 **働き**は動いて仕事・役目をすることで、**仕事**と同様に意味が広いが、「頭のーが鈍る」のように機能・作用を意味することもある。 **労働**は収入を得るために働くことで、どちらかと言えば、「精神労働」より「肉体労働」を指すことが多い。 **勤労**は心身を労して仕事に勤めることで、「勤労者」は「労働者だけでなく中小商工業者や自営農民なども含める。 〔注意〕**仕事**は物理学では、ある物体に力を作用させ、その位置を移動させることを言う。 <229> # 事実 ## 事実[じじつ] ## 現実[げんじつ] ## 実際[じっさい] ## 真実[しんじつ] ### 使い分け例 **事実**・・・・「事実が明るみに出る。」「その件の事実関係を知りたい。」「事実そう言われている。」 **現実**・・・「夢が現実になる。」「世の中の現実は甘くない。」<>理想。 **実際**…「老人ホームの実際を見る。」「実際に試してみる。」「彼には実際腹が立つ。」 **真実**・・・「真実を究明する。」「先生は真実のみを教えてくださった。」「真実困った話だ。」<>虚偽。 ### どう使い-分けるか **事実**はある事柄が(表面には見えなくても)客観的に見てあった(ある)ということを言い、**現実**は、観念や理想でなく現に事実として存在する実際の状態を言う。 **実際**は、そのような現実をあるがままに見、それにどう対応していくかという立場から使われる。 **真実**はうそ偽りのないこと、本当の意で、その内容が観念的な事柄か具体的な事柄かということには関係がない。 | | ―に反する | ―に即して考える | ―、その通りだ | ―に起こる | ―を明らかにする | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **事実** | ○ | | | ○ | ○ | | **現実** | | ○ | | | | | **実際** | | | ○ | ○ | | | **真実** | ○ | | | | ○ | 〔注意〕**現実**以外の語はそのまま副詞的にも使われる。(それぞれの最後の例) # 事情 ## 事情[じじょう] ## 実情[じつじょう] ## 実状[じつじょう] ## 実態[じったい] ## 実体[じったい] ## 内情[ないじょう] ## 内実[ないじつ] ### 使い分け例 **事情**・・・「複雑な事情が絡む。」「やむを得ない事情で欠席する。」 **実情**・・・「実情を訴える。」 **実状**・・・「実状に合わない計画。」 **実態**…「高山植物の実態調査。」 **実体**・・・「夢の実体は何か。」 <230> **内情**・・・「敵の内情を探る。」「政界の内情を暴露する。」<>内幕。 **内実**・・・「職場の内実を告げる。」 ### どう使い分けるか **事情**は、物事がある状態に至ったいきさつ、それに基づく今の有り様、さらにそれにより何かをする(しない)理由の意にもなる。 **実情**と**実状**は、実際の状況の意で同義に用いるが、前者には「―を尽くす」のように真情(本当の気持ち)の意もある。 **実態**は**実情**、**実状**とほぼ同義であるが、事の次第よりも物事の外面的な状態の方に重点がある。 **実体**は事物の本体・実質の意で、哲学用語としてはさまざまな現象・作用の根底にある不変の本質を言う。 **内情**と**内実**は内部の事情の意で、ほぼ同義であるが、前者は表向きにできないというニュアンスをもって使われることが多い。 〔注意〕「実体(じってい)」は実直の意。**内実**は「一困っている」と副詞的にも使う。実のところの意。 # 辞職 ## 辞職[じしょく] ## 辞任[じにん] ## 退職[たいしょく] ## 退任[たいにん] ## 離職[りしょく] ## 離任[りにん] ## 失職[しっしょく] ## 失業[しつぎょう] ### 使い分け例 **辞職**…「辞職の意志を固める。」 **辞任**・・・「議長の辞任を認める。」「委員を辞任する。」 **退職**・・・「退職の勧告。」「定年で退職する。」「退職処分。」<>就職。 **退任**・・・「議長の退任を迫る。」<>就任。 **離職**・・・「病気のため離職する。」「閉山による離職。」<>着任。 **離任**・・・「離任のあいさつ。」「離任式。」<>就任。<>着任。 **失職**…「現在失職中だ。」 **失業**・・・「勤務先の倒産で失業する。」「卒業しても就職できない者が多く失業人口が増大している。」 ### どう使い分けるか **辞職**は職を、**辞任**は職務・任務を自分の意志でやめること。 **退職**と**退任**はそれぞれ職・任務を <231> 規程によりやめることであるが、やめさせられる場合も含む。 | | 責任をとりーする | 会社をーする | 議長をーする | ーを命ずる | 内閣総ー | 定年でー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **辞職** | ○ | ○ | | ○ | ○ | | | **辞任** | ○ | | ○ | ○ | ○ | | | **退職** | | ○ | | ○ | | ○ | | **退任** | | | ○ | | ○ | | **離職**は**退職**、**失職**の第三者的表現であり、それをぼかした婉曲な表現としても使う。**離任**は任務を離れることのほかに、任務は続けるが転勤のため前の任地を離れる場合にも使う。 **失職**と**失業**はほぼ同義で、職業を失う(っている)ことだが、後者は前者よりも広く使われ、「一者対策」のように、働く意志・能力があるのに職が得られないでいることなどの意にも使う。 # 静か ## 静か[しずか] ## 物静か[ものしずか] ## 静粛[せいしゅく] ## 静寂[せいじゃく] ## 閑静[かんせい] ## 森閑(深閑)[しんかん] ### 使い分け例 **静か**・・・「静かな山道。」「海が静かだ。」「静かな政局。」「静かな子。」 **物静か**・・・「もの静かな住宅地。」「もの静かに話す。」「もの静かな人柄。」 **静粛**・・・「御静粛に願います。」 **静寂**・・・「静寂な夜の空気。」 **閑静**・・・「閑静な屋敷町。」 **森閑(深閑)**…「森閑たる境内。」「深閑とした奥の院。」 ### どう使い分けるか **静か**は物音がしないでひっそりしている場合のほか、物事の動きが少ない、人が穏やかで口数が少ないなどの意を表す。**物静か**はもっとひっそりした感じで、人間については言葉や態度が落ち着いているさまを表す。 **静粛**は人が物音や声を立てないで静かにしていることを言うのに対し、**静寂**は辺りが物音もせず静かなさまを言う。**閑静**は、環境がもの静かで住み心地がよい場合に使う。 **森閑**は、**静寂**とほぼ同義であるが、人気がなくしんと静まり返っている感じが一層強く、かたい文章語である。特に「―たる」はか <232> たく古風である。 # 自然に ## 自然に[しぜんに] ## 独りでに[ひとりでに] ## 自ずから[おのずから] ## 自ずと[おのずと] ### 使い分け例 **自然に**・・・「自然に発火した。」「自然に鼻歌が出てくる。」「夜が更けると自然に眠くなる。」 **ひとりでに**・・・「火はひとりでに消えた。」「戸がひとりでに開く。」「湯が沸くとひとりでにスイッチが切れる。」 **おのずから**・・・「大人になればおのずから分かる。」「事実はおのずから明らかだ。」 **おのずと**・・・「黙っていてもおのずと知れる。」「おのずと頭が下がる。」 ### どう使い分けるか 意味の上では大差なく、「時がたてば―解決する」にはどの語も入れられる。強いて区別すれば、**自然に**は、その物の性質から・必然の成り行きで、**ひとりでに**は、他の助けなしに、**おのずから**・**おのずと**は、そのものの本質から、の意。 **おのずから**は、文語としてあった語で、文章語。**おのずと**はそのように由緒正しい語ではないが、**自然に**、**ひとりでに**などに比べれば、やや文章語的である。 〔注意〕**自然**はそのままでも副詞になり、また**自然と**という言い方もある。「自然(と)そうなる」。 # 死体 ## 死体[したい] ## 死骸[しがい] ## 死屍[しし] ## 遺体[いたい] ## 屍[しかばね] ## 亡骸[なきがら] ### 使い分け例 **死体**・・・「犬の死体。」「死体遺棄罪。」 **死骸**・・・「小鳥の死骸を埋める。」 **死屍**・・・「死屍累々たる戦場。」 **遺体**・・・「遭難者の遺体。」<>遺骸 **屍**・・・「生けるしかばね。」 **なきがら**・・・「なきがらに取りすがる。」 ### どう使い分けるか **死体**・**死骸**は人にも動物にも用い <233> るが、鳥や虫には後者を使うのが普通。**屍**は〈死体〉に相当する古語で、これらは肉体を主とした表現である。 これに対して**遺体**〈遺骸〉は人格を主とした、丁寧な言い方で、人間以外の動物には用いない。**なきがら**は〈遺体〉の古風な雅語的表現。 **死屍**はかたい文章語で、「ー累々」「―に鞭打つ」のようなきまり文句以外にはあまり使わない。 〔注意〕〈死体〉〈死骸〉は〈屍体〉〈屍骸〉とも書いたが、現在前者が普通。 # 親しい ## 親しい[したしい] ## 近しい[ちかしい] ## 睦まじい[むつまじい] ## 親密[しんみつ] ## 懇意[こんい] ## 心安い[こころやすい] ## 気の置けない[きのおけない] ### 使い分け例 **親しい**・・・「親しい友人。」「親しく付き合う。」 **近しい**・・・「ごく近しい間柄。」「お近しく願っています。」 **睦まじい**・・・「睦まじく話し合う。」「仲睦まじい夫婦。」 **親密**・・・「家族ぐるみの親密な交際。」◎疎遠。 **懇意**・・・「懇意にしている人。」◎昵懇。 **心安い**・・・「だれとでも心安くなる。」 **気が(の)置けない**・・・「彼とは気が置けない仲だ。」◎気が置ける。 ### どう使い分けるか **親しい**は、一番普通な基本的な日常語。ただし、「一親等」は血縁が近いことを示す。**近しい**はやや改まった言い方。**睦まじい**は男女や家族の仲のよい場合に多く使う。 **親密**は〈親しい〉を強めた文章語で、人間どうしだけでなく、国どうしなどにも言う。**懇意**は大人どうしに使い、子供や男女の間には用いない。 | | ―友人 | 近い― | ―関係 | ―に付き合う | ―に話す | 知り― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 親しい | ○ | | ○ | ○ | | ○ | | 近しい | | ○ | ○ | | | | | むつまじい | | | ○ | | ○ | | | 親密な | | | ○ | ○ | | | | 懇意な | | | | ○ | | | <234> **心安い**はくだけた日常語。ただし、「お心安くおぼしめせ」のような古風な用法では安心だの意。 **気が置けない**は、気遣い・遠慮がいらない、つまり親しい・心安いの意。 〔注意〕 「親しく御覧になる」などの**親しく**は直接・みずからの意。**気が置けない**を、気が許せない、と解するのは誤り。 # しっかり ## 確り[しっかり] ## がっしり ## がっちり ## かっちり ### 使い分け例 **しっかり**・・・「しっかり(と)つかまれ。」「頭はまだしっかりしている。」「しっかりした息子。」「しっかり食べる」 **がっしり**・・・「がっしりした体。」「がっしり(と)組み立てる。」 **がっちり**・・・「がっちり(と)スクラムを組む。」「最終回だ、がっちりいこう。」「がっちり(と)ためこむ。」 **かっちり**・・「鍵がかっちり(と)かかる。」「かっちり(と)した格好。」 ### どう使い分けるか **しっかり**は、構成の堅固さ、**がっしり**は、組み立ての強固さ、**がっちり**は、組み合わせの緊密さ、**かっちり**は、軽量物の結合の緊密さを言う。 ほかに**しっかり**は意識や言動・態度の確かさや、十分にの意でも使う。 **がっちり**は抜け目のなさも表し、ちゃっかりより重々しく使われる。**かっちり**も「一組んだスケジュール」のように具体物以外にも使われる。 # しつこい ## しつこい ## くどい ## 執拗[しつよう] ## 執念深い[しゅうねんぶかい] ### 使い分け例 **しつこい**・・・「しつこい料理。」「しつこい風邪。」「しつこく文句を言う。」◎しつっこい。 **くどい**・・・「くどい味。」「話がくどい。」 **執拗**・・・「執拗な抗議。」「執拗に食い下 <235> がる。」 **執念深い**・・・「かたきを討とうと執念深くつきまとう。」 ### どう使い分けるか **しつこい**と**くどい**は、色や味や香が濃すぎてうるさいという場合はほぼ同義。人間の言動や態度については、前者はどこまでもつきまとう、後者はくどくどと言い続けるの意で、「しつこい風邪」のように、**しつこい**を**くどい**には置き換えられない場合もある。 **執拗**と**執念深い**は人間の性格・態度について用い、前者は意地っ張りでしつこいさま、後者はしつこく思い込んであきらめないさまを言う。 # 実行 ## 実行[じっこう] ## 実践[じっせん] ## 実施[じっし] ## 施行[しこう/せこう] ## 執行[しっこう] ### 使い分け例 **実行**…「不言実行。」「選拳での公約を実行に移す。」「計画だけで実行が伴わない。」 **実践**・・・「理論を実践に移す。」「実践躬行。」 **実施**・・・「値上げを実施する。」「計画を実施に移す。」 **施行**・・・「試験を施行する。」「法令の施行に関する規則。」 **執行**……「執行機関。」「執行猶予。」「予算を執行する。」 ### どう使い分けるか **実行**は計画や理論を実際に行うこと。**実践**は自分自身で実行すること。**実施**は制定された法律や決められた計画を実際に行うことで、個人的な行為ではない。 **施行**は**実施**と同義にも使うが、法律用語としては公布された法令を実際に発効させること。 **執行**は行政・司法上の決定事項や団体の議決機関の決定を実際に実現する場合に使う。 | | 道徳のーを見合わせる | 計画をーする | 委員のー | 条例をーする | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **実行** | | ○ | | | | **実践** | ○ | | | | | **実施** | | ○ | ○ | ○ | | **施行** | | | | ○ | | **執行** | | | ○ | | <236> 〔注意〕「施行(せぎょう)」は仏教語で、僧や貧民に物を与えること。 # 質問[しつもん] ## 質問[しつもん]/質疑[しつぎ]/尋問[じんもん]/審問[しんもん]/査問[さもん]/諮問[しもん] ### 使い分け例 **質問**・・・「各党の代表質問。」「質問攻めにあう。」 **質疑**・・・「発表が終わり質疑に入る。」「質疑応答。」 **尋問**・・・「職務尋問。」「不審尋問を受ける。」 **審問**・・・「当事者を審問する。」 **査問**・・・「査問委員会を設ける。」 **諮問**・・・「文部大臣の諮問を受ける。」「首相の諮問機関。」 ### どう使い分けるか **質問**と**質疑**はほぼ同義であるが、国会では後者は議題の内容を明確にするために行うこと、前者は議題に関係なく内閣に説明を求めることと区別する。 **尋問**は、裁判官や警察官が職務上の必要から口頭で質問すること。**審問**は、裁判所が関係人に書面・口頭の陳述の機会を与えてきくこと。 **査問**は、事件の関係者に質問して実情を調査すること。 **諮問**は、機関や学識経験者に政策上の意見を尋ね求めること。 〔注意〕〈尋問〉は〈訊問〉の書き換え。 # 失礼[しつれい] ## 失礼[しつれい]/失敬[しっけい]/無礼[ぶれい]/非礼[ひれい] ### 使い分け例 **失礼**・・・「失礼の段お許しください。」「お先に失礼。」「あっ、失礼。」 **失敬**・・・「失敬なやつだ。」「ここで失敬するよ。」「人様の物を失敬する。」 **無礼**・・・「無礼を働く。」「無礼な態度。」 **非礼**・・・「非礼をわびる。」 ### どう使い分けるか **失礼**は、文章語・口頭語の両方に <237> 一番広く使われる。会話では人と別れるとき、ものを尋ねたり頼んだり、軽くわびるときのあいさつ語。「ーしちゃうわ」は人の無礼を非難する女性語。 **失敬**は、もっと軽い意味で、主に会話で男性が使う。人の物を無断で持って行くこと・盗むことの意もある。 **無礼**は古風な言い方、**非礼**はもっとかたい文章語で、礼儀外れを非難する度合いは順に大きくなる。 # 芝居 ## 芝居[しばい] ## 演劇[えんげき] ## 劇[げき] ## 狂言[きょうげん] ## ドラマ ### 使い分け例 **芝居**・・・「芝居がはねる。」「芝居のうまい役者。」「一芝居打つ。」 **演劇**・・・「演劇を鑑賞する。」「高校の演劇部。」 **劇**・・・「学芸会ではお姫様の役で劇に出た。」「翻訳劇。」 **狂言**…「顔見世狂言。」「狂言強盗。」 **ドラマ**・・・「深刻なドラマ。」「ホームドラマ。」 ### どう使い分けるか **芝居**・**演劇**・**劇**は同義語だが、口頭語としては**芝居**が一番普通であり、**演劇**は文章語。**芝居**は狭義では歌舞伎や新派のものを言う。 **劇**は造語成分として多用され、単語としては学芸会などの子供のお芝居の意に使うことが多い。 **芝居**と**狂言**は、比喩的に、人をだますための作り事の意にも使う。他の三語はこの使い方をあまりしない。 **ドラマ**はテレビやラジオの番組の演劇の意で使うことが多く、「一を書く」の場合は戯曲の意。 # 字引 ## 字引[じびき] ## 字書[じしょ] ## 字典[じてん] ## 辞書[じしょ] ## 辞典[じてん] ## 事典[じてん] ### 使い分け例 **字引**・・・「字引を引く。」「生き字引。」 **字書**・・・「字書で画数を確かめる。」 <238> **字典**・・・「漢和字典にない現代語。」 **辞書**・・・「辞書に当たる。」「こまめに辞書を引く。」 **辞典**…「用例の豊富な英和辞典。」「ことわざ辞典。」 **事典**・・・・「分野別の事典。」「百科事典。」 ### どう使い分けるか 内容的には**字書**・**字典**は漢字中心、**辞書**・**辞典**は言葉全般、**事典**は事物の解説を主にしたもの。 全体をひっくるめた呼び名では**辞書**が普通で、**字引**はやや古風で通俗的な感じになった。 書名などでは**辞典**が最も多く、漢字を扱うものでも「漢和辞典」とも言う。**辞典**と**事典**の区別も厳密ではなく、「理化学辞典」「ことわざ事典」とかなり自由に使われている。 〔注意) 同音で紛らわしいため、**事典**を「ことてん」、**辞典**を「ことばてん」、**字典**を「もじてん」と呼んで区別することもある。 # 自分 ## 自分[じぶん] ## 自身[じしん] ## 自己[じこ] ## 自我[じが] ## 己[おのれ] ## 自ら[みずから] ## 我[われ] ## 我が[わが] ## エゴ ### 使い分け例 **自分**・・・「自分のことは自分でやれ。」 **自身**・・・「自身の考えを述べる。」 **自己**・・・「冷静に自己を見つめる。」 **自我**・・・「自我に目覚める青年期。」 **己**・・・「己の本分を尽くす。」 **自ら**・・・「自らを高しとする。」「自ら命を絶つ。」 **我**・・・「熱戦に我を忘れる。」「我こそはと思う者は来い。」 **我が**・・・「我の意識。」「我を張る。」 **エゴ**・・・「エゴを徹底的に分析する。」「エゴを捨てろ。」 ### どう使い分けるか **自分**が最も普通の用語で、強調するときは「自分自身」と言う。 **自身**は他の語の下について、「彼―」「計画―はよい」のようにそのものの意になる。単独で用いれば**自分**よりも文章語的。**自己**も**自分**の改まった言い方。**自我**は <239> 哲学や精神分析の用語で、天地一切のものに対立する自分、自分に対する意識の意。 | | ―の非を悟る | ―を見つめる | ―意識 | ―が問題 | ―がやりました | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **自分** | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | | **自身** | ○ | | | | ○ | | **自己** | ○ | ○ | | ○ | | | **自我** | | ○ | ○ | ○ | | **己**や**自ら**は自分自身の雅語的な言い方。**我**や**我が**は「我にもなく」「我を折る」などの慣用句で使われる。後者は我意の意になることが多い。 **エゴ**は本来は自己・自我の意であるが、「―に走る」「一丸出し」のようにエゴイズムの略語としてマイナスの意味に用いることが多い。 〔注意〕**自分**は、わたくしの意(第一人称代名詞)にも使うが、かたく古い感じである。 **己**は、お前の意の代名詞や「一、今に見ていろ」のような感動詞としても使う。が、前者は死語に近い。 **自ら**は、二番目の例のように副詞として使う場合の方が多い。 # 資本 ## 資本[しほん] ## 資金[しきん] ## 元手[もとで] ## 元金[がんきん/もときん] ### 使い分け例 **資本**・・・「資本は生産の三要素の一つ。」「資本家。」「資本主義。」「顔の広さが私の資本だ。」 **資金**・・・「資金を調達する。」「逃走資金。」「軍資金。」「結婚資金。」 **元手**・・・「退職金を元手に商売をする。」「この商売は体が元手だ。」 **元金**・・・「元金を出し合う。」「元金だけでも返す。」<>利息。<>利子。 ### どう使い分けるか **資本**は経済用語としては厳密に定義されるが、事業をするのに必要な基金を言う一般的な意味では、**資金**も和語の**元手**や**元金**も同じように使われる。 **資金**は、営利以外の特定の目的に使われる金を指す場合もある。 **資本**と**元手**は、比喩的に、利益を生む大切なものの意にも使われる。 **元金**は、**資本金**の意のほかに、利子に対する元の金=元金(がんきん)の意もある。 <240> # 自慢 ## 自慢[じまん] ## 己惚れ[うぬぼれ] ## 慢心[まんしん] ## 自賛[じさん] ## 自負[じふ] ## 自任[じにん] ## 自尊[じそん] ## 気位[きくらい] ### 使い分け例 **自慢**・・・「お国自慢。」「足の速さを自慢する。」 **うぬぼれ**・・・「うぬぼれが強い。」 **慢心**・・・「慢心が敗北を招いた。」 **自賛**・・・「自賛して笑われる。」 **自負**・・・「総裁としての自負。」「第一人者と自負する。」 **自任**・・・「指導者をもって自任する。」 **自尊**・・・「自尊の念が強い。」「自尊心。」 **気位**・・・「気位が高い。」 ### どう使い分けるか **自慢**は自分や自分に関係のあることを他人に誇るのに対し、**うぬぼれ**は自分で実力以上に内心で思い込むこと、**慢心**は更に強くおごり高ぶる心が身についた状態を言う文章語。 **自賛**は「自画―」に由来し、自分で自分のことを褒めること。 **自負**は内心での強い自信、**自任**は自分の能力に対する自分自身の思い込みで、度が過ぎれば**うぬぼれ**同様マイナスの意味となる。なお、同音の「自認」は「失策を―する」などと用い、誇らしさなどとは無縁の異義語である。 **自尊**は**うぬぼれ**と同義であるが、「独立ー」のように自分を大事にし誇りを持つ意にも使う。**気位**は「自尊心」に似ているが、自分の生れや育ちによる品位を誇るようなニュアンスがある。 〔注意〕**自賛**は**自讚**の書き換え。 # 閉める ## 閉める[しめる] ## 閉じる[とじる] ## 閉ざす(鎖す)[とざす] ### 使い分け例 **閉める**・・・「窓を閉める。」「栓を閉める。」「店を閉める。」<>開ける。 **閉じる**・・・「水門が閉じる。」「本を閉じる。」「幕を閉じる。」<>開く。 **閉ざす**・・・「門を閉ざす。」「心を閉ざす。」<>開く。 <241> 閉ざす・・・「道を閉ざす。」 ◎開く。「雪に閉ざされた村。」 ### どう使い分けるか **閉める**は物を動かして透き間をふさぐ、**閉じる**は開いていたものをふさぐ、**閉ざす**は出口や通路をふさぐの意で、「窓をー」のようにどの語でも使える場合は、〈**閉める**〉が最も口語的で〈**閉ざす**〉はやや文語的。また、「窓がー」と自動詞に使えるのは〈**閉じる**〉だけである。 〈**閉める**〉〈**閉じる**〉には終わりにするの意もある。「店をー」は一日の営業の終わりと廃業の両意。 〔注意〕「栓をしめる」には〈**締める**〉も使う。「財布のひもを―」「張薄を―」などは〈**閉める**〉でなく〈**締める**〉。 # 習慣[しゅうかん] ## 習慣[しゅうかん] / 慣習[かんしゅう] / 風習[ふうしゅう] / 慣行[かんこう] / 慣例[かんれい] / 習わし[ならわし] / しきたり ### 使い分け例 **習慣**・・・「習慣は第二の天性である。」「早起きの習慣。」「早婚の習慣。」 **慣習**・・・「その土地の慣習に従う。」「慣習法。」 **風習**・・・「雪国の珍しい風習。」 **慣行**・・・「職員旅行は毎年の慣行だ。」 **慣例**・・・「慣例となった春季闘争」 **習わし**・・・「これが世の習わし。」 **しきたり**・・・「古いしきたりを改める。」 ### どう使い分けるか **習慣**は**慣習**と同義に使うこともあるが、一般には前者が個人のもの、後者が広く社会に広がったものを指す。**風習**は、〈**慣習**〉よりも規制力の弱い風俗習慣。 **慣行**と**慣例**は比較的新しい、狭い範囲の事柄にも使われる。 | | 土地の―に従う | 早起きの― | 鳥葬という― | 通り―の儀式 | ―化したスト | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **習慣** | ○ | ○ | | | | | **慣習** | ○ | △ | ○ | | | | **風習** | ○ | | ○ | | | | **慣行** | | | | ○ | ○ | | **慣例** | | | | ○ | ○ | **習わし**は〈**慣習**〉や〈**風習**〉、**しきたり**は〈**慣例**〉に相当する和語で、後者の方が若干社会規範的な意味合いが強い。 <242> # 修業[しゅうぎょう] ## 修業[しゅうぎょう] / 修行[しゅぎょう] / 修練(修錬)[しゅうれん] / 修養[しゅうよう] / 研修[けんしゅう] / 研鑽[けんさん] ### 使い分け例 **修業**・・・「修業証書。」「花嫁修業。」 **修行**・・・「諸国を歩いて修行する僧。」「武者修行。」 **修練(修錬)**・・・「武道を修練する。」 **修養**・・・「修養が足りない。」 **研修**・・・「夏期に英会話を研修する。」「新人の研修期間。」 **研鑽**・・・「多年研鑽を積む。」 ### どう使い分けるか **修業**は学術・技芸を習って身につけること、**修行**は仏の教えを修習し行うことであるが、転じて学芸・武道を身につけるよう努力する意にもなったので、〈**修業**〉と混用される場合もある。 **修練**は精神や技芸を磨き鍛えること、**修養**は徳性を磨き人格を高めることで、精神・人格に重点がある。 **研修**は学術などを磨き修めることであるが、現在では仕事を覚えさせるために行う実習や訓練の意に使うことが多い。 **研鑽**は着実に研究することで、やや古風なかたい文章語。 # 秀才[しゅうさい] ## 秀才[しゅうさい] / 天才[てんさい] / 俊才[しゅんさい] / 奇才[きさい] / 鬼才[きさい] ### 使い分け例 **秀才**・・・「秀才の誉れが高い。」「本校一の秀才。」 ◎鈍才。 **天才**・・・「数学の天才。」「日本一の天才ピアニスト。」 **俊才**・・・「木谷門下の俊才。」 ◎俊秀。 **奇才**・・・「奇才ぶりを発揮する。」 **鬼才**・・・「一代の鬼才。」 ### どう使い分けるか **天才**は各分野で生れつき抜群の <243> 才能を持つ人。**秀才**は学校の成績や学問上の業績の優れた人、**俊才**は〈**秀才**〉と同程度の評価であるが、勉強や学問以外の分野にも使われる。 **奇才**は世にまれな、**鬼才**は人間離れのした才能(の人)で、芸術の分野で使うことが多いが、経営的手腕などにも用いる。 # 収集[しゅうしゅう] ## 収集[しゅうしゅう] / 拾集[しゅうしゅう] / 採集[さいしゅう] / 採取[さいしゅ] ### 使い分け例 **収集**・・・「ごみを収集する。」「切手の収集。」 **拾集**・・・「破片を拾集する。」 **採集**・・・「昆虫採集。」「方言の採集。」 **採取**・・・「薬草を採取する。」「指紋の採取。」 ### どう使い分けるか **収集**は不用品を集める、貴重品を集めるのどちらの場合にも使う。(後者はもと〈蒐集〉)。 **拾集**は落ちている物を拾い集めること。 **採集**は標本や資料にするため採り集めること、**採取**は鉱物や植物や指紋などを調査や利用のために選び取ること。 [注意]〈**収集**〉や〈**拾集**〉と同音の「収拾」は「―がつかない」「事態を―する」などと使い、混乱した状態をうまく収める意。 # 住所[じゅうしょ] ## 住所[じゅうしょ] / 居所[きょしょ] / 居所[いどころ] / 居住地[きょじゅうち] / 所在地[しょざいち] ### 使い分け例 **住所**・・・「住所を定める。」「住所変更届。」「住所不定。」 **居所**・・・「居所を変える。」「居所不明。」 **居所[いどころ]**・・・「居所を知らせる。」「虫の居所が悪い。」 **居住地**・・・「彼らの居住地は海辺だ。」 **所在地**・・・「A社の所在地を探す。」「県庁所在地。」 <244> ### どう使い分けるか 法律語としては生活の本拠となる**住所**に対して、多少の期間継続して居住する場所が**居所**。**居所[いどころ]**は、〈**住所**〉〈**居所**〉の意も含み、もっと広く、居る所の意で使う。 **居住地**は**住所**と**居所**の併称の意もあるが、普通には生活の場所を狭く限定しないで言う。 **所在地**はあるもの(人に限らない)の存在する土地の意。 # 執着[しゅうちゃく] ## 執着[しゅうちゃく] / 執心[しゅうしん] / 執念[しゅうねん] / 固執[こしつ] / 妄執[もうしゅう] ### 使い分け例 **執着**・・・「古い家に執着を感じる。」「生に執着する。」 **執心**・・・「地位に執心する。」「彼女に御執心だ。」 **執念**・・・「執念を燃やす。」「執念深い男。」 **固執**・・・「自説を固執する。」「少年時代の記憶への固執。」 **妄執**・・・「妄執にとらわれる。」 ◎妄念。 ### どう使い分けるか **執着**は愛着よりもずっと強く、ある物事に心が強くとらわれること。**執心**は何かを手に入れたいとしつこくこだわること。**執念**は強い執着を持ち続ける気持ち。 **固執**は自分の意見・主義を頑固に守ることで、「・・・を固執する」とも「・・・に固執する」とも言う。 **妄執**は仏教語で、迷いの心から起こる執念の意。かたい文章語。 # 終了[しゅうりょう] ## 終了[しゅうりょう] / 完了[かんりょう] / 終結[しゅうけつ] / 完結[かんけつ] / 終止[しゅうし] / 終息[しゅうそく] / 満了[まんりょう] / 修了[しゅうりょう] ### 使い分け例 **終了**・・・「試合終了。」「予定の仕事を <245> **終了する**。」◎開始。 **完了**・・・「準備完了。」「大工事が完了する。」 **終結**・・・「争議が終結する。」 **完結**・・・「連載小説が完結する。」 **終止**・・・「終止符。」「文が終止する。」 **終息**・・・「戦火が終息した。」 **満了**・・・「任期が満了する。」 **修了**・・・「修了証書の授与。」 ### どう使い分けるか **終了**は予定通りに事が終わる(終える)こと、**完了**はなすべき事が完全に終わる(終える)こと。 **終結**は物事に決着がつくことで〈終決〉とも書く。〈終結〉は論理学や数学では仮説から導かれた結論―帰結の意となる。**完結**はひと続きの仕事や作品が終了してまとまること。 **終止**は終わりの意で、主に文法や音楽の用語として使う。**終息**は混乱状態が終わり絶えること。**満了**は定められた期間が終わること、**修了**は定められた学業・課程を終えること。 〔注意〕〈終息〉は〈終熄〉の書き換え。 | | 難工事が―する | 仕事が―する | 準備を―する | 試合の― | 戦争の― | 連載小説の― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 終了 | | ○ | | ○ | | | | 完了 | ○ | | ○ | | | | | 終結 | | | | | ○ | | | 完結 | | | | | | ○ | # 趣旨 ## 趣旨[しゅし] ## 趣意[しゅい] ## 主意[しゅい] ## 主旨[しゅし] ## 要旨[ようし] ## 論旨[ろんし] ### 使い分け例 **趣旨**・・・「募金の趣旨をくむ。」「申請書の趣旨を理解する。」 **趣意**・・・「本会設立の趣意。」「話の趣意をつかむ。」「趣意書。」 **主意**・・・「文章の主意をくみ取る。」 **主旨**・・・「反核を主旨とした冊子。」 **要旨**・・・「談話の要旨をまとめる。」 **論旨**・・・「論旨明快な主張。」 ### どう使い分けるか **趣旨**はその事を何のためにするかという目的やねらい、**趣意**はしようと思い立った動機や目的。また、文章や話については、〈趣旨〉は言おうとしている事柄、〈趣意〉は述べようとしている考え・意味に重点がある。特に区別しないで使うことが <246> 多いが、「趣旨書」とは言わない。 **主意**は文章や話の内容の中心的な意味、**主旨**は中心となる事柄やねらいの意である。 **要旨**は内容の主要な点、またそれを短くまとめたものを言う。**論旨**は議論や論文の主旨・要旨の意。 〔注意〕〈**主意**〉は、意志を重んじる(「主意主義」)、主君の意志、の意味もある。 # 手段[しゅだん] ## 手段[しゅだん] / 手立て[てだて] / 方法[ほうほう] / 方策[ほうさく] / 方便[ほうべん] / 仕方[しかた] / 仕様[しよう] / 遣り方[やりかた] / 遣り口[やりくち] / 術[すべ] ### 使い分け例 **手段**・・・「最後の手段に訴える。」「目的のためには手段を選ばない。」「金を出世の手段に使う。」 **手立て**・・・「てだてを講じる。」 **方法**・・・「安易な方法をとる。」「方法的に間違っている。」「方法論。」 **方策**・・・「万全の方策を立てる。」 **方便**・・・「うそも方便だ。」 **仕方**・・・「操作の仕方を教わる。」「勉強の仕方が悪い。」 **仕様**・・・「何とか仕様はあるだろう。」 **やり方**・・・「やり方が分からない。」 **やり口**・・・「やり口が汚い。」 **すべ**・・・「なすすべがない。」 ### どう使い分けるか ある目的を達するための計画的な操作が**方法**で、**手段**はその一部となる個々の段階について言うことが多い。**手立て**はそれと同義の和語でやや古風な語。〈**手段**〉には、目的達成のために役立つものの意もある。 | | ―を講じる | 卑劣な―に出る | 悪人の―に乗る | ―的な誤り | ―を立てる | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **手段** | | ○ | ○ | | | | **手立て**| ○ | | | | ○ | | **方法** | | | | ○ | | | **方策** | | | | | ○ | **方策**は難事を解決するための手立てや手段。 **方便**は一時的な手段の意(本来は仏教語)。 **仕方**は〈**方法**〉よりも軽い意味に使う日常語。**仕様**も同様であるが、「一書」のように専門語として使う場合がある。**やり方**は〈**仕方**〉よりももっとくだけた言い方 <247> で、改まった文章などには用いない。**やり口**は多く公正・正当でないやり方を指す俗語。 **すべ**は手段・方法の意で雅語的。 〔注意〕〈**仕方**〉〈**仕様**〉は「かわいくて仕方がない」「仕様のない子」などとも用い、この〈**仕様**〉は会話ではショウと言うことが多い。 # 出現[しゅつげん] ## 出現[しゅつげん] / 現出[げんしゅつ] / 発現[はつげん] / 顕現[けんげん] / 現前[げんぜん] ### 使い分け例 **出現**・・・「救世主の出現。」「新製品が出現する。」 **現出**・・・「地獄図を現出する。」 **発現**・・・「民族精神の発現。」「練習の成果が発現する。」 **顕現**・・・「神の啓示が顕現する。」 **現前**・・・「理想社会が現前する。」 ### どう使い分けるか **出現**は隠れていたもの・知られていなかったものが現れ出ること、**現出**はある状態・情景が実際に現れ出る(ようにする)ことで、〈**出現**〉よりも使用範囲が狭い。 **発現**は内部にある力や効能が実際に現れ出ること、現し出すこと、**顕現**は普通は目に見えないものが具体的な形をとって現れる、はっきり形を現すことを言う。 **現前**は名詞としては目の前にあることの意で、「―の事実を直視する」のように使う。 # 出身[しゅっしん] ## 出身[しゅっしん] / 出[で] / 生まれ[うまれ] / 出自[しゅつじ] / 育ち[そだち] ### 使い分け例 **出身**・・・「岩手県の出身。」「東大出身。」「学者出身の大臣。」 **出**・・・「北海道の出。」「東大出。」「名門の出。」 **生まれ**・・・「大正十二年生まれ。」「生まれは九州。」「商家の生まれ。」 **出自**・・・「人麿の出自を調べる。」「出自は明らかでない。」 **育ち**・・・「育ちがよいせいかのんびりしている。」「氏より育ち。」「下町育ち。」「お嬢様育ち。」 <248> ### どう使い分けるか **出身**は「出身地」、「出身校」、及び経てきた身分を言う語。**出**はそれのやや平俗な和語。 **生まれ**も経歴に関する点は同じで、出生年、生地、生まれた環境・家柄を言う語。 **出自**は主にどんな家柄の出かを言う語で、昔の人についてはよく用いるが、現代人にはあまり使わない。 **育ち**は育てられた環境や育てられ方を言い、接尾語的に用いることが多い。 〔注意〕「水の出が悪い」などの場合の〈**出**〉は、出方・出る量の意。「稲の育ちが早い」などの〈**育ち**〉は、そのものの育ち方・育ち具合の意。 # 出発[しゅっぱつ] ## 出発[しゅっぱつ] / スタート / 門出[かどで] / 出立[しゅったつ] / 巣立ち[すだち] ### 使い分け例 **出発**・・・「出発を延期する。」 ◎到着。「わずかな資金で出発する。」 **スタート**・・・「選手たちが一斉にスタートを切る。」「新しいメンバーでスタートする。」 **門出**・・・「夫の門出を見送る。」「人生の門出を祝う。」 **出立**・・・「明日の未明に出立するつもりだ。」 **巣立ち**・・・「希望に燃えて広い社会へ巣立ちをする。」 ### どう使い分けるか **スタート**は競技用語として多く使うほかは、意味も比喩的な用法も**出発**とほぼ同じ。 **門出**は戦いや長旅に出ること、転じて新しい生活に出発する意のやや古風な語。**出立**は旅立ちの意の古風でややかたい語。 **巣立ち**はひなが巣を離れることから、若者が親元や学校から社会へ出て行くことを言う語。 # 順[じゅん] ## 順[じゅん] / 順序[じゅんじょ] / 順番[じゅんばん] / 順位[じゅんい] / 序列[じょれつ] <249> ### 使い分け例 **順**・・・「順を追って話す。」「小さい順に並ぶ。」 **順序**・・・「順序よく並べる。」「順序通りに進める。」 **順番**・・・「ようやく順番が来る。」「順番を待つ。」 **順位**・・・「成績の順位が上がる。」「順位争い。」 **序列**・・・「年功序列。」「序列をつける。」 ### どう使い分けるか **順序**は一定の基準による配列、**順番**は順序を追ってその番になること。**順**は「順不同=順序不同」、「順に順番に」のように〈**順序**〉と〈**順番**〉の両義を持つが、口頭語としては後者の方が紛れが少ない。 なお、「順序を踏む」と言う場合の〈**順序**〉は物事を行う手順の意。 **順位**はある順序に従って決めた位置・地位、**序列**は成績・年齢・地位など一定の基準で配列した順序の意で、後者はより文章語的。 # 瞬間[しゅんかん] ## 瞬間[しゅんかん] / 一瞬[いっしゅん] / 瞬時[しゅんじ] / 刹那[せつな] / 瞬く間[またたくま] / 束の間[つかのま] ### 使い分け例 **瞬間**・・・「決定的な瞬間を写す。」「その瞬間、ハンドルを切った。」 **一瞬**・・・「一瞬の出来事。」「よそ見した一瞬追突する。」「一瞬たじろぐ。」 **瞬時**・・・「瞬時も目を離せない。」 **刹那**・・・「衝突した刹那気を失った。」「一刹那たりとも忘れない。」「刹那主義。」 ◎劫。 **瞬く間**・・・「またたく間に通り過ぎる。」 **束の間**・・・「つかの間のしあわせ。」 ### どう使い分けるか **瞬間**も**一瞬**も**瞬時**もまばたきするなどのごく短い時間の意であるが、修飾語を受けある特定の時間を言うときは〈**瞬時**〉は使えない。〈**一瞬**〉は最も短かさが強調された感じで、また、「―たじろぐ」のように副詞的にも使う。 **刹那**にも〈**瞬間**〉〈**一瞬**〉のような用法があるが、もと仏教語でやや <250> 古風な語である。 **瞬く間**は〈**瞬間**〉と同じ漢字を使っているが、用法は〈**瞬時**〉に近く、「その瞬く間」とは言わない。 **束の間**は他の五語よりもいくらか幅のある時間を言う。 | | ―の出来事 | その― | ―にして崩壊する | 一息に五杯― | 幻― | 月の― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **瞬間** | ○ | ○ | ○ | | | | | **一瞬** | ○ | △ | ○ | | | | | **瞬時** | | | ○ | | | | | **刹那** | ○ | ○ | ○ | | | | | **瞬く間**| | | ○ | | | | | **束の間**| | | | | ○ | ○ | # 詳細[しょうさい] ## 詳細[しょうさい] / 精細[せいさい] / 委細[いさい] / 子細[しさい] ### 使い分け例 **詳細**・・・「詳細は追って通知する。」「詳細な説明。」 **精細**・・・「精細を極める描写。」「精細な注解。」 **委細**・・・「委細は面談の上。」「委細承知した。」「委細構わず。」 **子細**・・・「子細は追って発表する。」「子細あって辞職した。」 ### どう使い分けるか **詳細**は詳しく細かいこと。また詳しい内容の意。 **精細**は〈**詳細**〉よりも念入りできめ細かいが、詳しい内容の意はない。 **委細**は〈**詳細**〉とほぼ同義であるが、形容動詞にはならない。「―承知した」の場合は細かな点まで・万事の意、「―構わず」という熟語は事情がどうあってもの意。 **子細**は〈**委細**〉と同じく詳しい事情の意であるが、その事情が簡単に言えない・表に出せないというニュアンスをもつ場合がある。「子細ない」は差し支えないの意。この語も形容動詞にはならず、「子細に」は副詞。 # 承知[しょうち] ## 承知[しょうち] / 承認[しょうにん] / 承諾[しょうだく] / 承引[しょういん] / 受諾[じゅだく] ### 使い分け例 **承知**・・・「承知の返事をする。」「今度や <251> ったら承知しない。」 **承認**・・・「申し出の承認を求める。」「辞職を承認する。」 ◎拒否。 **承諾**・・・「執筆を承諾する。」 **承引**・・・「まげて御承引下さい。」 **受諾**・・・「受諾の旨を回答する。」「就任を受諾する。」 ◎拒絶。 ### どう使い分けるか **承知**の原義は内容をよく知っていること、その上で相手の願いや要求を聞き入れる意になる。 **承認**も正当・妥当と認めた上で、申し出を承知すること。法律語では国家・政府・交戦団体の国際法上の地位を認めることの意もある。 **承諾**は承知したと引き受けること、**承引**は同義の改まったかたい言い方。 **受諾**もほぼ同義であるが、「降伏勧告のー」のように受動的に承諾させられる意の場合がある。 # 象徴[しょうちょう] ## 象徴[しょうちょう] / 表徴[ひょうちょう] / 徴表[ちょうひょう] / シンボル / 表象[ひょうしょう] ### 使い分け例 **象徴**・・・「ハトは平和の象徴。」「政治腐敗は現代の象徴的な現象なのかもしれない。」 **表徴**・・・「選挙制度は民主社会の表徴。」 **徴表**・・・「快眠は健康の徴表の一つ。」 **シンボル**・・・「ハートは愛のシンボル。」「この店のシンボルマーク。」 **表象**・・・「表象は記憶によって再生される。」「知覚表象。」「記憶表象。」 ### どう使い分けるか 〈**シンボル**〉の訳語として〈**象徴**〉〈**表徴**〉〈**表象**〉の三つがあったが、現在では**象徴**が一般的で、抽象的なものを具体的な形で表すことである。 **表徴**は、ある物事の、外面に表れたしるしで、〈**象徴**〉と似通った点があるが、**表象**は、哲学用語として、意識に現れる外界の対象のかたち―心像の意で、〈**象徴**〉とは全く違った意味に使われる。 **徴表**はメルクマールの訳語で、ある事物の、他と区別するしるしとなる性質を言う。 <252> **シンボル**は、〈**象徴**〉の意のほかに、もっと軽く、ある意味を持たせた記号や形の意で使うことも多い。 # 情熱[じょうねつ] ## 情熱[じょうねつ] / 熱情[ねつじょう] / 激情[げきじょう] / 熱意[ねつい] / 熱気[ねっき] ### 使い分け例 **情熱**・・・「音楽に情熱を燃やす。」「仕事への情熱が薄れる。」 **熱情**・・・「熱情を込めて語る。」「熱情あふれる手紙。」 **激情**・・・「一時の激情に駆られる。」 **熱意**・・・「仕事に対する熱意が欠ける。」 **熱気**・・・「熱気を帯びた口調。」 ### どう使い分けるか **情熱**はある物事に対して激しく燃え立つ感情、**熱情**は熱心な気持ち・熱烈な愛情を言い、ほとんど同義で互換して使える場合が多い。しかし、「一家」、「一的なひとみ」などは、〈**熱情**〉で置き換えられない。 これらに対して、**激情**は持続的でない、一過的なものを言う。 **熱意**は目的を達成しようとする意気込み、仕事への熱心さを言う。 **熱気**は高揚した意気込みのほかに、「異様なーに包まれる」というようにその場の気配や雰囲気を言う場合もある。 | | ―が冷める | 仕事への― | 静かな― | 音楽に― | 一時的な― | ―に駆られた犯罪 | 会場の― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **情熱** | ○ | ○ | ○ | ○ | | | | | **熱情** | ○ | ○ | ○ | ○ | | | | | **激情** | | | | | ○ | ○ | | | **熱意** | | ○ | | | | | | | **熱気** | | | | | | | ○ | 〔注意〕〈**熱気**〉は「一消毒」のように物理的な意味にも使う。 # 消滅[しょうめつ] ## 消滅[しょうめつ] / 消失[しょうしつ] / 喪失[そうしつ] / 紛失[ふんしつ] / 遺失[いしつ] / 散逸[さんいつ] ### 使い分け例 **消滅**・・・「自然消滅。」「法律の効力が消滅する。」「文字が消滅する。」 <253> **消失**・・・「権力の消失。」「意欲が消失する。」 **喪失**・・・「記憶喪失。」「すっかり自信を喪失する。」 **紛失**・・・「紛失届。」「書類が紛失する。」 **遺失**・・・「遺失物取扱所。」 ◎拾得。 **散逸**・・・「古文書の散逸を防ぐ。」 ### どう使い分けるか **消滅**も**消失**も消えて無くなることで、「権利のー」ではどちらを使っても同義であるが、具体物には前者を使うのが普通。また「時効」「一処分」のような法律語には前者だけが使われる。 **喪失**は、主として抽象的・精神的なものを失うことを言う。 これに対して以下の三語はすべて具体物を失うことを言い、**紛失**はどこかに紛れこんで所在が分からなくなること、**遺失**は落としたり忘れたりすること、**散逸**はばらばらになって行方が分からな いことであるが、書物や文献について用いる。 # 正面[しょうめん] ## 正面[しょうめん] / 前面[ぜんめん] / 前方[ぜんぽう] / 向かい[むかい] / 真正面[ましょうめん] / 真っ向[まっこう] / 真向かい[まむかい] ### 使い分け例 **正面**・・・「正面を見つめる。」「正面玄関。」 ◎背面。側面。「仕事に正面から取り組む。」 **前面**・・・「建物の前面の入り口。」「減税を前面に押し出した政策。」 **前方**・・・「前方に見える山。」「百メートル前方の展望台。」 ◎後方。 **向かい**・・・「向かい側に座る。」「お向かいさん。」 **真正面**・・・「真正面の峰。」「真正面からぶつかって行く。」 ◎真っ正面。 **真っ向**・・・「真っ向唐竹割り。」「真っ向から反対する。」 **真向かい**・・・「真向かいの席。」 ### どう使い分けるか **正面**は、①まっすぐ前の方向、②物の表の側、③物事にまともに対応することで、「―切って非難を浴びせる」は③を強調した言い方。 **前面**は、物事の前の面であるが、〈**正面**〉②に含まれる正式のという <254> た意味を持たない。 **前方**は、前の方向・方面の意であるが、〈正面〉や〈前面〉のように比喩的・抽象的に用いることはない。 **向かい**は、正面から向かい合うことで、〈前方〉よりも近接している。 **真正面**は、〈正面〉①③を強めた言い方で、口頭語ではそれを更に強めて〈真っ正面〉と言うことが多い。 **真っ向**は、本来額の真ん中の意であるが、「一から勝負する」などの場合は〈真正面〉とほぼ同義である。**真向かい**は、〈向かい〉を強調した語で、〈真正面〉や〈真っ向〉のような比喩的・抽象的な用法はない。 # しょげる ## しょげる ## 気落ちする[きおちする] ## 塞ぐ[ふさぐ] ## 沈む[しずむ] ## 滅入る[めいる] ## 消沈する[しょうちんする] ## 落胆する[らくたんする] ## 鬱屈する[うっくつする] ### 使い分け例 **しょげる**・・・「試験に落ちてしょげる。」 **気落ちする**・・・「失投して気落ちする。」 **塞ぐ**・・・「一日中ふさいでいる。」「気がふさぐ。」 **沈む**・・・「沈んだ面持ち。」「愁いに沈む。」「物思いに沈む。」 **滅入る**・・・「気のめいる話。」 **消沈する**・・・「選に漏れて消沈する。」「意気消沈。」 **落胆する**・・・「負けて落胆する。」「失望落胆。」 **鬱屈する**・・・「鬱屈した日々を送る。」◎鬱結する。 ### どう使い分けるか **しょげる**は、失望して元気がなくなる、の意で、やや俗語的。「しょげ返る」「しょげ込む」はこれを強調した言い方。**気落ちする**は、がっかりして気が弱る、の意。これに対し、失望や期待外れといったはっきりした原因なしに、気分が晴れず憂鬱になるのが**塞ぐ**で、**沈む**もこれに近いが、「愁い(物思い)にー」といった場合は〈沈む〉を使う。 <255> 〈**塞ぐ**〉や〈**沈む**〉は相手や第三者について言うが、**滅入る**は、何かに触発されて自分が沈んだ気分になる場合に言うことが多い。 **消沈する**は、〈**しょげる**〉と似た意味で、「意気―」の形で多く用いる。 **落胆する**は、〈**気落ちする**〉の漢語的な言い方。**鬱屈する**は〈**塞ぐ**〉よりも「ふさぎこむ」に近い意味のかたい文章語。 〔注意〕〈**消沈する**〉の〈消沈〉は〈銷沈〉の書き換え。 # 処置[しょち] ## 処置[しょち] / 処理[しょり] / 処分[しょぶん] / 始末[しまつ] ### 使い分け例 **処置**・・・「寛大な処置を願う。」「応急処置を施す。」 **処理**・・・「事務を処理する。」「製品に熱処理をする。」「ごみ処理場。」 **処分**・・・「不要品を処分する。」「退学の処分を受ける。」 **始末**・・・「火の始末をする。」「紙や鉛筆を始末して使う。」 ### どう使い分けるか **処置**は①判断を下してその物事の取り扱い方を決めること、②病気や傷の手当てをすること、**処理**は①事件・事務をさばいて始末をつけること、②製造工程で材料に加工すること、**処分**は①物事の取り扱い方を決めてかたをつけること、②規律・規則を破った者を罰すること、**始末**は①物事の決まりをつけること、②浪費を慎むこと。 右の各語の②はそれぞれ独自の意味を表すが、①はよく似ている。このうち〈**始末**〉が一番日常的であるが、改まった文章にはあまり用いない。〈**処分**〉は余計な物・不要な物を始末するときに多く使う。〈**処置**〉と〈**処理**〉はほぼ同義であるが、前者はその人の判断に、後者はある規準・手続きによる点に重点がある。 | | ―の仕方 | 事件を―する | ごみを―する | 骨折の― | 事務を―する | 違反者を―する | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **処置** | ○ | ○ | | ○ | | ○ | | **処理** | | | ○ | | ○ | | | **処分** | | | ○ | | | ○ | | **始末** | ○ | ○ | ○ | | | | [注意] いずれも「する」がついて動詞 <256> になる。ただし、〈**始末**〉に事の始めと終わり・事の次第などの意味もあり、この場合はそうならない。 # しょんぼり ## しょんぼり / しおしお / すごすご / 悄然[しょうぜん] ### 使い分け例 **しょんぼり**・・・「一人しょんぼり(と)立っている。」「落第してしょんぼりする。」 ◎しょぼんと。 **しおしお**・・・「叱られてしおしお(と)家に帰る。」「不合格と聞きしおしお立ち去る。」 **すごすご**・・・「断られてすごすご(と)引き返す。」「負けてすごすご帰る。」 **悄然**・・・「悄然と立ち尽くす。」「悄然たる後ろ姿。」「孤影悄然。」 ### どう使い分けるか **しょんぼり**は元気なくしおれているさま、**悄然**はそれに相当する漢語で、かたい文章語。 **しおしお**もほぼ同義であるが、帰る・去るなどの動作に使うのが普通。**すごすご**も元気なくその場を離れるさまを表すが、その場所に未練を残している点がく**しおしお**〉とは異なる。 # 知らせる[しらせる] ## 知らせる[しらせる] / 告げる[つげる] / 教える[おしえる] / 報じる[ほうじる] / 告知[こくち]する / 報知[ほうち]する / 報告[ほうこく]する ### 使い分け例 **知らせる**・・・「正午を知らせるサイレン。」「目で知らせる。」「わが方の底力を知らせてやる。」 **告げる**・・・「別れを告げる。」「春を告げる鳥。」「風雲急を告げる。」 **教える**・・・「数学を教える。」「人の道を教える。」「道順を教える。」「秘密を教える。」 **報じる**・・・「ラジオが正午を報じる。」「台風の接近を報じる。」 ◎報ずる。 **告知する**・・・「納税期日を告知する。」「受胎告知。」 <257> **報知する**・・・「事件を報知する。」「火災報知器。」 **報告する**・・・「近況を報告する。」「調査内容を報告する。」 ### どう使い分けるか **知らせる**は、言葉や合図で人が知るようにする、実態を相手に分からせる、の意、**告げる**は、言葉や声や音で、事態や意志を知らせる、の意で、〈**知らせる**〉よりも文章語的である。 **教える**は、知識や技芸を身につけさせる、行動や考え方について注意を与えて導く意であるが、もっと軽く、自分の知っていることを相手に知らせるという意にも使う。 **報じる**は、物事を、特に新聞・ラジオなどで、知らせることで、かたい文章語である。 | | 内情を― | 住所を― | 時を― | 急を― | 虫が― | 別れを― | 犬に芸を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **知らせる**| ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | | | **告げる** | | | ○ | ○ | ○ | ○ | | | **教える** | ○ | ○ | | | | | ○ | | **報じる** | | | ○ | ○ | | | | **告知する**は、連絡事項を関係者に告げ知らせる(「告知板」)、**報知する**は、事件などを告げ知らせる、の意で、どちらもかたい文章語。 **報告する**も、告げ知らせる意であるが、与えられた任務の経過や結果、調査内容などを述べる場合に使うことが多い。 〔注意)〈**報じる**〉には、「師恩にー」「一矢を―」のように、報いるの意もある。 # 知らぬ顔[しらぬかお] ## 知らぬ顔[しらぬかお] / 素知らぬ顔[そしらぬかお] / 何食わぬ顔[なにくわぬかお] / 澄まし顔[すましがお] / ポーカーフェース ### 使い分け例 **知らぬ顔**・・・「呼んでも知らぬ顔だ。」「人の足を踏んで知らぬ顔をしている。」 ◎知らん顔。 **素知らぬ顔**・・・「知り合いに会ったが、素知らぬ顔で通す。」 **何食わぬ顔**・・・「一枚かんでいながら、何食わぬ顔で話を続ける。」 **澄まし顔**・・・「ボタンがとれていたが、すまし顔で人前に出る。」 <258> **ポーカーフェース**・・・「勝負師のポーカーフェース。」 ### どう使い分けるか **知らぬ顔**と**素知らぬ顔**はどちらも、知っていても知らない顔つきをすることで、前者の方がより口頭語的で、日常会話では〈知らん顔〉と言うことが多い。 **何食わぬ顔**はもっと積極的に、自分は何の関係もないといった顔つきをすること、**澄まし顔**は平然さを装って気取り顔をすること。 **ポーカーフェース**は心中を表に出さない無表情な顔で、トランプのポーカーで手のよしあしを相手に読みとられないように表情を押し隠すことに由来する語。 # 調べる[しらべる] ## 調べる[しらべる] / 取り調べる[とりしらべる] / 調査[ちょうさ]する / 検査[けんさ]する / 点検[てんけん]する / 検閲[けんえつ]する / 査察[ささつ]する ### 使い分け例 **調べる**・・・「事故の原因を調べる。」「語の意味を辞書で調べる。」「機体を調べる。」「帳簿を調べる。」「被告を調べる。」 **取り調べる**・・・「容疑者を取り調べる。」 **調査する**・・・「古代の遺跡を調査する。」「事故現場を調査する。」 **検査する**・・・「血液を検査する。」 **点検する**・・・「機械の内部を点検する。」 **検閲する**・・・「手紙を検閲する。」 **査察する**・・・「被害状況を空中から査察する。」「工場を査察する。」 ### どう使い分けるか **調べる**は、①必要な知識を得るためにあれこれ見聞きする、②異状や違反がないか確かめる、③あれこれと問いただす、の意で、**取り調べる**は右の①の意もあるが、多くは③の意で使い、捜査機関が容疑者から事情を詳しく聞き出すことを言う。 **調査する**は、〈**調べる**〉の①~③に相応する漢語的な言い方だが、「辞書で調べる」のような軽い意味 <259> には使わない。 **検査する**は、ある基準のもとに異状や不正がないかどうか調べる(〈**調べる**〉の②)、の意で、**点検する**は、それを一層念入りに一つ一つ調べる場合に言う。 **検閲する**は、信書・出版物・映画などの内容を強権的に取り調べる、の意で、現憲法では禁止されている。 **査察する**は、状況を調査・視察する意で、大掛かりな場合に使う。 # 退く[しりぞく] ## 退く[しりぞく] / 引く[ひく] / 引き下がる[ひきさがる] / 退く[のく] / 立ち退く[たちのく] / 退去[たいきょ]する / 退出[たいしゅつ]する / 退却[たいきゃく]する / 退散[たいさん]する / 撤退[てったい]する / 引退[いんたい]する / 隠退[いんたい]する ### 使い分け例 **退く**・・・「一歩退く。」 ◎進む。「御前を退く。」「政界を退く。」「三回戦で退く。」 **引く**・・・「潮が引く。」「兵を引く。」「身を引く。」「会社を引く。」 **引き下がる**・・・「客間から引き下がる。」「説得されて引き下がる。」「役員から引き下がる。」 **のく**・・・「そこをのいてくれ。」 **立ち退く**・・・「借家を立ち退く。」 **退去する**・・・「国外に退去する。」 **退出する**・・・「役所から退出する。」 **退却する**・・・「敵が退却する。」 **退散する**・・・「恐れをなして退散する。」「群集が退散する。」 **撤退する**・・・「占領地から撤退する。」 ◎撤収する。 **引退する**・・・「現役を引退する。」 **隠退する**・・・「故郷に隠退する。」 ◎退隠する。 ### どう使い分けるか **退く**は、後退する、退出する、引退する、敗退するなどの意味を持つ最も基本的な語。**引く**は非常に多義な語であるが、〈**退く**〉と同義に用いる場合は、「潮・出水が―」、「身・手を―」以外はやや古風な言い方。**引き下がる**は、〈**引く**〉を強めた語であるが、「すごすごとー」はこの語独特の用法。 <260> **のく**は、古語では〈**退く**〉とほぼ同義に多用されたが、現代語としては「どく」の意以外にはあまり使わない。**立ち退く**も、現在では主に、今の居所を引き払ってよそへ移る意に使う。 **退去する**は、多く強制的に立ち退かされる場合に使われ、**退出する**は、貴人の前や改まった席などから引き下がる場合に使う。 **退却する**は、戦争や競技で負けて後方へ下がる、**退散する**は逃げ去る、または方々に立ち去る、の意で、「そろそろ退散しよう」のような言い方もある。**撤退する**は、陣地などを取り払って退去する意であるが、**退却**と違って自分から進んで行う。 **引退する**は、現役・第一線から退く、**隠退する**は、社会的活動をやめて静かに暮らす、の意で、どちらも知名人に使うのが普通。 〔注意〕〈**引く**〉も〈退く〉と表記することがある。 # 自立[じりつ] ## 自立[じりつ] / 独立[どくりつ] / 独り立ち[ひとりだち] / 一本立ち[いっぽんだち] / 自主[じしゅ] / 自律[じりつ] ### 使い分け例 **自立**・・・「自立の精神。」「自立経営。」「親会社から自立する。」 **独立**・・・「勤めている店をやめ独立を考える。」「植民地から独立する。」 **独り立ち**・・・「家を出て独り立ちする。」 **一本立ち**・・・「親元を離れて一本立ちする。」 **自主**・・・「自主外交を貫く。」「自主性に乏しい。」「自主独立。」 **自律**・・・「自律して生活する。」「自律的行動。」 ◎他律。 ### どう使い分けるか **自立**は他からの支配や援助を受けずに自分の力でやってゆくことで、**独立**も個人や団体についてはほぼ同義に使うが、一国が他国の支配を受けず完全に主権を行使する「独立国」の意では〈**自立**〉は用いない。なお、「独立家屋」の場合は、単独に存在する、の意。 **独り立ち**と**一本立ち**はどちらも <261> 個人の**自立**・**独立**の意の口語的表現で、後者の方が語感としてキリッとした感じが強い。 **自主**は他から保護や干渉を受けずに独立して行動すること、**自律**は自分の立てた規範に従って自分の行動を規制することを言う。 〔注意〕〈**自主**〉を除き、「する」がついて動詞になる。 # 新人[しんじん] ## 新人[しんじん] / 新顔[しんがお] / 新参[しんざん] / 新入り[しんいり] / 新米[しんまい] / 新進[しんしん] / フレッシュマン / ニューフェース ### 使い分け例 **新人**・・・「大学野球部新人戦。」「彫刻界の新人。」 ◎旧人。 **新顔**・・・「新顔のウェートレス。」「さっき出たアナウンサーは新顔だ。」 ◎古顔。 **新参**・・・「新参者のくせに生意気だ。」「雑用を新参に押し付ける。」 ◎古参。 **新入り**・・・「新入りの者です。よろしくお願いします。」 **新米**・・・「新米の店員で何もわからない。」 **新進**・・・「新進気鋭の作家。」「新進のピアニスト。」 **フレッシュマン**・・・「フレッシュマンに期待するところ大である。」 **ニューフェース**・・・「今年期待のニューフェース。」 ### どう使い分けるか いずれも、ある集団に新しく仲間入りした人、ある社会に新たに登場してきた人を意味する語である。 **新人**は最も基本的、客観的な語であるが、特殊な意味として、人類進化の過程で原人・旧人に次ぐものを指す場合もある。 **新顔**は〈**新人**〉とほぼ同義であるが、「人事異動で部内にーが目につく」といった用法もある。 **新参**は、もと、主君・主人に新たに仕えること、また、その人の意で、やや古風であり、**新入り**と同様、期待感よりも未熟・駆け出しの感じが強い。ただし、新入[しん にゅう]という漢語にはその臭いはない。 <262> **新人**、**新顔**、**新入り**、**新米**、**新進** **新米**は本来は新しい米の意だが、人間の〈新入り〉の意の場合は新前粒の転で、仕事に慣れない未熟な者という意の最も強い語である。 **新進**は、ある分野に新しく進出して認められること(また、その人)。 | | ―の部員 | 私はーです | ―気鋭の作家 | ーの歓迎会 | ーらしい活躍 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **新人** | O | O | O | O | O | | **新顔** | O | O | - | O | - | | **新入り** | O | O | - | O | - | | **新米** | O | O | - | - | - | | **新進** | - | - | O | - | O | **ニューフェース**はもと映画界の新人俳優の意であるが、芸能界以外でも、将来への期待を込めて新人・新顔の意に使われる。 **フレッシュマン**は大学や会社へ新しく入った人の意で、〈新人〉とほぼ同義である。 # 親切[しんせつ] ## 親切[しんせつ](深切[しんせつ])/情け深い[なさけぶかい]/優しい[やさしい]/手厚い[てあつい]/懇ろ[ねんごろ]/懇切[こんせつ]/懇篤[こんとく] ### 使い分け例 **親切**・・・「親切な忠告。」「親切に道を教える。」 **情け深い**・・・「情け深い親方。」 **優しい**・・・「優しい看護婦さん。」「優しく見守る。」「優しい音色。」 **手厚い**・・・「手厚いもてなし。」「手厚く看護する。」 **懇ろ**・・・「懇ろに世話をする。」「懇ろに語り合う。」「懇ろな仲。」 **懇切**・・・「懇切に指導する。」 **懇篤**・・・「御懇篤なるお言葉を賜る。」 ### どう使い分けるか **親切**は相手の身になって優しい態度で対処するさま、**情け深い**は思いやりの心が強いさまで、後者は上の者から下の者への親切心を言う。 **優しい**は人に対して思いやりがあり、接し方が穏やかなさまを言うが、「一物腰」「一音色」のように上品で美しいの意にも使う。 以上の語が主として人柄や性格について言うのに対して、以下の語は行いや仕方について言う。 **手厚い**は取り扱い方やもてなし方が親切で丁寧なさま、**懇ろ**はそれとほぼ同義のやや古風な語である <263> が、「―な仲」のように親密なの意もある。 **懇切**と**懇篤**は〈**懇ろ**〉〈**手厚い**〉の意の漢語でかたい文章語であるが、後者は「ごーな」の形で手紙や改まったあいさつなどに多く使う。 # 侵入[しんにゅう] ## 侵入[しんにゅう] / 浸入[しんにゅう] / 進入[しんにゅう] ### 使い分け例 **侵入**・・・「賊が裏口から侵入する。」「家宅侵入罪。」 **浸入**・・・「汚水の浸入を防ぐ。」「濁流が浸入する。」 **進入**・・・「車の進入を禁止する。」「危険地帯に進入する。」 ### どう使い分けるか **侵入**は他の領域に不法に入ること、**浸入**は土地や建物に水が入り込むこと、**進入**は進んで行ってその場所に入り込むこと。 **侵**は人間が侵すこと、**浸**は水がしみこむことを意味する字。 # 心配[しんぱい] ## 心配[しんぱい] / 気掛かり[きがかり] / 虞[おそれ] / 不安[ふあん] / 懸念[けねん] / 危惧[きぐ] / 憂慮[ゆうりょ] / 気苦労[きぐろう] / 心労[しんろう] / 心痛[しんつう] / 杞憂[きゆう] ### 使い分け例 **心配**・・・「先生に心配をかける。」「子供の将来を心配する。」「雨が心配だ。」「切符の心配をする。」 **気掛かり**・・・「夫の健康が気掛かりだ。」 **虞**・・・「病気が長引くおそれがある。」 **不安**・・・「不安に襲われる。」「不安な一夜を明かす。」 **懸念**・・・「先行きに懸念を抱く。」「結果を懸念する。」 **危惧**・・・「危惧の念を抱く。」「工事の完成を危惧する。」 ◎危懼。 **憂慮**・・・「憂慮に堪えない。」「憂慮すべき政界の現状。」 **気苦労**・・・「気苦労が絶えない。」 **心労**・・・「御心労をおかけします。」 **心痛**・・・「心痛の余り寝込んだ。」 **杞憂**・・・「杞憂に過ぎない。」 <264> ### どう使い分けるか **心配**は先行きのことを案じて思いわずらうことで、**気掛かり**と**虞**もほぼ同義であるが、〈**気掛かり**〉は主に形容動詞、〈**虞**〉は名詞としてしか使えないので、用法はかなり限定される。なお、〈**心配**〉は気を使って世話をするの意もある。 **不安**は気掛かりで落ち着かないさま、**懸念**は気にかかって不安に思うことで、前者は〈**心配**〉や〈**気掛かり**〉よりもやや文章語的であり、後者は文章語である。 **危惧**は成り行きや結果を心配しおそれること、**憂慮**も同様に悪い結果にならないかと心配し気遣うことであるが、かたい文章語である。 **気苦労**は心配や気遣いによる精神的な苦労で、**心労**は同義の漢語であり、**心痛**はそれよりも深く心を悩ます場合に言う。 **杞憂**は中国古代の故事に基づく成語で、無用な心配・取り越し苦労の意である。 # 進歩[しんぽ] ## 進歩[しんぽ] / 進化[しんか] / 発達[はったつ] / 発展[はってん] / 伸展[しんてん] / 進展[しんてん] / 展開[てんかい] ### 使い分け例 **進歩**・・・「長足の進歩を遂げる。」「都市工学が進歩する。」 ◎退歩。「進歩的な思想。」 ◎保守。 **進化**・・・「生物の進化の過程。」「人は猿から進化した。」 ◎退化。 **発達**・・・「心身が発達する年ごろ。」「技術の発達が著しい。」「発達した低気圧。」「犬は嗅覚が発達している。」 **発展**・・・「町の発展に尽くす。」「大事件に発展する。」「御発展のようで結構ですね。」 **伸展**・・・「国力の伸展を図る。」「事業を伸展する。」 **進展**・・・「話し合いが進展を見せる。」「捜査が進展する。」 **展開**・・・「新たな観点から議論を展開する。」「事件が意外な展開を見せる。」「眼下に大草原が展開する。」 ### どう使い分けるか **進歩**は、次第によい方・望ましい <265> 方へ進み変わっていくこと。 **進化**は、生物が長い年月の間に単純で下等なものから複雑で高等なものへ変化することで、比喩的に物事の**進歩**・**発展**の意に使うこともある。 **発達**は、成長して完全な形に近づくこと、規模が大きくなること、外界によく適応した状態に達すること、などの意。 **発展**は、勢いや力がのび広がるこ と、一層高く盛んな段階に移っていくこと、手広く活躍することなどの意。 **伸展**は、勢いやその及ぶ範囲がのび広がること・のばし広げること。 | | 文化が―する | 技術の― | 芸術一派の― | ―的思想 | 心身が―する | 町が―する | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **進歩** | ○ | ○ | | ○ | | | | **発達** | | ○ | | | ○ | ○ | | **発展** | ○ | | ○ | | | ○ | | **伸展** | | | ○ | | | | **進展**は勢いが進んでその力が広がることで、俗に**進歩**・**発展**の意にも使われる。**展開**は、物事が停滞なく次々に新しい段階に進展していく・進展させることで、場景が広々とひろがること。 〔注意〕〈**展開**〉は、数学で、立体の表面を平面上に広げること、「式(a+b)²をーする」などの場合の意に使う。 〈**発達**〉は質的な成長、〈**発展**〉は量的に広がること、〈**伸展**〉はある方向での伸びに重点を置く語である。 # 信用[しんよう] ## 信用[しんよう] / 信頼[しんらい] / 信任[しんにん] / 信託[しんたく] / 信憑[しんぴょう] ### 使い分け例 **信用**・・・「店の信用にかかわる。」「君の言葉を信用する。」「信用機関。」 **信頼**・・・「信頼を裏切る。」「子を信頼する。」「信頼度の高い機械。」 **信任**・・・「社長の信任が厚い。」「現内閣を信任する。」「信任状を提出する。」 **信託**・・・「国民の信託にこたえる。」「金を銀行に信託する。」「信託統治。」 **信憑**・・・「信憑性が乏しい。」「信憑するに足る証言。」 ### どう使い分けるか **信用**は、確かだとして受け入れること、また確かだという人望・評 <266> 判で、経済用語としては支払い能力のあることをもとにした取引の状態で、クレジットの訳語。 **信頼**は信じて頼りとすること、**信任**は信用して物事を任せることで、後者は国会の「一投票」、外交使節の「―状」など特定の用語にも使う。文章語。 **信託**は信用して委託すること。法律では一定の目的に従い他人に財産の管理・処分をさせる意。 **信憑**は信じてよりどころとすることで、かたい文章語。 # 親類[しんるい] ## 親類[しんるい] / 親戚[しんせき] / 親族[しんぞく] / 血族[けつぞく] / 血縁[けつえん] / 姻戚[いんせき] / 姻族[いんぞく] / 縁者[えんじゃ] / 身内[みうち] / 身寄り[みより] ### 使い分け例 **親類**・・・「親類の家に泊る。」「彼の家とは親類付き合いをしている。」 **親戚**・・・「彼は遠い親戚に当たります。」 **親族**・・・「はとこまでは親族だ。」「親族会議を開く。」 **血族**・・・「祖父の命日に血族が集まる。」 **血縁**・・・「彼女とは血縁関係はない。」 **姻戚**・・・「姻戚もお祝いに参加した。」 **姻族**・・・「三親等内の姻族は親族とされる。」 **縁者**・・・「親類縁者を漏れなく招く。」 **身内**・・・「身内の者だけで式を挙げる。」 **身寄り**・・・「身寄りのない老人。」 ### どう使い分けるか **親類**は家族以外の**血族**・**姻族**の総称で、日常普通の用語。**親戚**はそのやや改まった言い方。 **親族**は民法上では、六親等内の**血族**および配偶者、三親等内の**姻族**を指す。文章語。 **血族**は血筋のつながった一族で、**血縁**もほぼ同義であるが、前者には養親子のように法律上認められた者も含まれる。 **姻戚**も**姻族**も結婚によってできた親類の意で、一般的には前者が、法律では後者が用いられる。 **縁者**は〈**親類**〉と同義のやや古風な語で、近世では姻戚を指した。 **身内**は家族やごく親しい親類、また同じ親分につく子分たち。 <267> **身寄り**は親類縁者の意であるが、いざという時頼りにできるというニュアンスが含まれる。 〔注意〕〈**身内**〉は「―がしまる」のように、からだ全体の意にも使う。 # 粋[すい] ## 粋[すい] / 精粋[せいすい] / 精髄[せいずい] / 神髄(真髄)[しんずい] / エッセンス / エキス ### 使い分け例 **粋**・・・「科学技術の粋を集める。」 **精粋**・・・「伝統芸能の精粋。」 **精髄**・・・「王朝文学の精髄をなす作品。」 **神髄(真髄)**・・・「芸の神髄に触れる。」 **エッセンス**・・・「東洋美のエッセンス。」 **エキス**・・・「カント哲学のエキス。」 ### どう使い分けるか **粋**は最高水準にあるもの、**精粋**はまじりけがなく最もよいところ、**精髄**は物事の一番優れた大切なところ、**神髄**は学芸の最も肝心のところ、その道の奥義を言う。 **エッセンス**は物の本質的要素で〈**神髄**〉、**エキス**も物の本質的な最も大事なところで〈**精粋**〉とほぼ同義であるが、後者の方がやや古風。これらは「バニラエッセンス」、「梅肉エキス」のように薬物・食物の有効成分を抽出・濃縮したものにも使う語である。 [注意]〈**粋**〉は「―を利かす」「―な人」のように、人情に通じ物わかりがいい、花柳界や芸人社会に通じ「いき」であるの意にも使う。 # 炊事[すいじ] ## 炊事[すいじ] / 料理[りょうり] / 調理[ちょうり] / 割烹[かっぽう] ### 使い分け例 **炊事**・・・「炊事当番。」「交代で炊事す <268> る。」 **料理**・・・「料理が上手だ。」「魚を料理する。」「日本料理。」「おいしい料理。」「強敵を料理する。」 **調理**・・・「調理師。」「肉を調理する。」 **割烹**・・・「割烹を見習う。」「割烹着。」 ### どう使い分けるか **炊事**は食物の煮炊きをすること、**料理**は、材料に手を加え、食べられるようにすること、またそうしてできた食べ物も言う。転じて「強敵をーする」のように、物事をうまく処理するの意にも使う。 **調理**は、〈**料理**〉と同義であるが、仕事として大勢の料理を作る場合によく使われる。〈**料理**〉のように、できた食べ物の意味はない。 **割烹**は日本風に食物を調理することで、「ーを経営する」のように「割烹店(日本料理の店)」の略として使う場合もある。 〔注意〕〈**割烹**〉は「―する」とは言わない。 # 推薦[すいせん] ## 推薦[すいせん] / 推奨[すいしょう] / 推賞(推称)[すいしょう] / 推挙(吹挙)[すいきょ] / 推輓(推挽)[すいばん] / 推戴[すいたい] ### 使い分け例 **推薦**・・・「推薦状。」「学生を企業に推薦する。」「A氏御推薦の品。」 **推奨**・・・「良書として推奨する。」「君の推奨した人を採用する。」 **推賞**・・・評論家がこぞって推賞した映画。」 **推挙**・・・「長老の推挙で大臣になる。」「幹事に推挙する。」 **推輓**・・・「部長に推輓する。」 **推戴**・・・「名誉総裁に推戴する。」 ### どう使い分けるか **推薦**はよいと思う人や事物を取り上げて他人にすすめること、**推奨**はある品・人・事柄が優れていることを述べて人にすすめることで、意味は似通っているが、「―入学」、「A氏を委員にー」などの場合は〈**推奨**〉は用いない。 **推賞**は、ある品・人・事柄が優れているのを人に向かって褒めること。以上の語は人にも物にも用いるが、以下の語は人についてしか言わない。 <269> | | 全員一致で―する | 助手に―する | 委員に―する | 口を極めて―する | 私の―する品 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **推薦** | ○ | ○ | ○ | | ○ | | **推奨** | | | | | ○ | | **推賞** | | | | ○ | ○ | | **推挙** | ○ | ○ | ○ | | | **推挙**は、ある官職・地位・仕事に適当な人として、その人を上の人にすすめること。 **推輓**は〈**推挙**〉とほぼ同義の、古風でよりかたい文章語。 **推戴**は、ある人を敬って組織などの長になってもらうこと。 # ずうずうしい ## ずうずうしい / 厚かましい[あつかましい] / ふてぶてしい / ずぶとい ### 使い分け例 **ずうずうしい**・・・「ずうずうしく真っ先に取る。」「ずうずうしいにも程がある。」 **厚かましい**・・・「厚かましく他家に上がり込む。」「厚かましいお願いで恐縮ですが・・・。」 **ふてぶてしい**・・・「ふてぶてしく放言する。」「ふてぶてしい面構え。」 **ずぶとい**・・・「ずぶとく構える。」「ずぶとい神経の持ち主。」 ### どう使い分けるか **ずうずうしい**は普通の人なら遠慮してやらないことを平気でやるさま、**厚かましい**は恥知らずで遠慮がないさまで、似た意味であるが、後者は第二の例のように自分のことについて改まった場面で使うこともある。 **ふてぶてしい**は大胆で無遠慮なさまで、心情よりも外面的な態度について多く使う。 **ずぶとい**は神経が太くて少々のことにはびくびくしない、また横着なさま。 # 清清しい[すがすがしい] ## 清清しい[すがすがしい] / 爽やか[さわやか] / 涼やか[すずやか] / 清涼[せいりょう] / 爽快[そうかい] / 清新(生新)[せいしん] ### 使い分け例 **すがすがしい**・・・「すがすがしい高原の <270> 朝。」「すがすがしい態度。」 **爽やか**・・・「さわやかな五月の風。」「さわやかな笑顔。」「弁舌さわやかに語る。」 **涼やか**・・・「涼やかな目元。」「涼やかな音色。」 **清涼**・・・「清涼な谷水。」「清涼飲料水。」 **爽快**・・・「爽快な気分。」「身も心も爽快になる。」 **清新**・・・「清新な作風。」「画壇に清新の気を吹き込む。」 ### どう使い分けるか **すがすがしい**は、清らかで気持ちがよいさま、**さわやか**は、さっぱりとして気分のよいさまで、ほぼ同義であり、どちらも自然にも人間的なものにも使うが、後者の方が心理的な快さの意味合いが強く、また「弁舌ー」のように明快でよどみがないの意にも使われる。 **涼やか**は、涼しそうですがすがしい感じのするさま。 **清涼**は、冷たくさわやかなさまを言うが、造語成分として多く用いる。 **爽快**は、気分がさわやかなことで、物には用いない。 **清新**は、さわやかな感じを与えるほど新しみがあることで、人間的な事柄に使う。 # 過ぎる[すぎる] ## 過ぎる[すぎる] / 経つ[たつ] / 経る[へる] / 経過[けいか]する ### 使い分け例 **過ぎる**・・・「夏が過ぎる。」「上京して早くも三年が過ぎる。」「四十歳を過ぎる。」 **経つ**・・・「月日がたつ。」「上京してからもう大分たつ。」 **経る**・・・「長い歳月を経る。」「幾多の困難を経て完成する。」 **経過する**・・・「十五分経過する。」「事態は望み通りに経過する。」 ### どう使い分けるか **過ぎる**は空間的にも、時間的にも、また程度についても用いるが、時間に関しては、時が移ってある期間が終わる、時がたつ(経過する)、ある時点を越える、の意味がある。 <271> **経つ**は、時間が過ぎていく意。なお、文語的な用法だが、新しい年・季節になるという意の〈たつ〉は、「秋(春)立つ」のように、〈立つ〉と書く。 〈経つ〉は「時がー」と言うが、**経る**は「時を―」と言う。〈経る〉の方が文章語的である。また、〈経る〉には、ある過程・段階を通る、の意もある。 **経過する**は、時間が過ぎていく意のほかに、時間が進むに従って物事が移り変わっていく意にも用いる。 | | 出発後五分ー | 今年もー | 月日がー | 正午をー | 完成後大分ー | 順調にー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **過ぎる** | O | Δ | O | O | O | O | | **経つ** | O | O | O | - | O | - | | **経る** | O | O | O | - | O | O | | **経過する** | O | O | - | - | O | O | # 直ぐ[すぐ] ## 直ぐ[すぐ]/直ぐに[すぐに]/すぐ様[すぐさま]/直ちに[ただちに]/じき/じきに/即刻[そっこく]/即座に[そくざに] ### 使い分け例 **すぐ**・・・「すぐ来て下さい。」「もうすぐ春だ。」「すぐ怒る人。」 **すぐに**・・・「今からすぐに行く。」「風が吹くとすぐに倒れる。」 **すぐさま**・・・「すぐさま実行に移す。」 **直ちに**・・・「直ちに現場に向かう。」「この事から直ちに証明される。」 **じき**・・・「もうじき正月だ。」 **じきに**・・・「父はじきに帰ってきます。」 **即刻**・・・「デモ隊は即刻解散せよ。」 **即座に**・・・「質問に即座に答える。」 ### どう使い分けるか **すぐ**と**すぐに**は時を置かず、またちょっとしたことにも簡単にの意を表すが、「すぐそば」のように距離が近接している場合は〈すぐに〉は用いない。**すぐさま**は〈すぐに〉と同義であるが、やや古風な言い方。 **直ちに**は〈すぐ(に)〉と同義のやや改まった言い方で、「部屋の前からー海が広がる」のように直接・じかにの意味もある。 **じき**と**じきに**は時間をあまり置かないさまで、〈すぐ(に)〉よりもやや時間の経過がある感じである。〈じき〉は「―隣にある」のよう <272> に距離が近いことも表す。 **即刻**は〈**直ちに**〉の意の漢語で、**即座に**はすぐその場での意。 # 凄い[すごい] ## 凄い[すごい] / 物凄い[ものすごい] / 凄まじい[すさまじい] / ひどい / 甚だしい[はなはだしい] ### 使い分け例 **凄い**・・・「すごい目つき。」「すごい腕前。」「すごく怒られた。」 **物凄い**・・・「ものすごい形相。」「ものすごい人気。」「ものすごく驚く。」 **すさまじい**・・・「すさまじい剣幕。」「すさまじい売れ行き。」「あれで大スターとはすさまじい。」 **ひどい**・・・「ひどい仕打ち。」「ひどい雨。」「ひどく寒い。」「ひどい出来。」 **甚だしい**・・・「誤解も甚だしい。」「甚だしく寒い地方。」 ### どう使い分けるか **凄い**は、ぞっとするほど恐ろしい、恐ろしいほど優れている、の意。連用形を副詞的に用いて非常にの意を表すが、若者の会話では「すっごく」とも言う。 **物凄い**は〈**凄い**〉を更に強めた語で、基本的な用法は同じ。 **すさまじい**は〈**物凄い**〉とほぼ同義で、やや文章語的であるが、「・・・で・・・とはすさまじい」の形であきれかえるほどひどいの意を表すのはこの語独特の用法である。 **ひどい**は残酷だ・むごい、程度が甚だしい、の意を表し、連用形では非常にの意になるが、「―作品」の場合は程度が悪いの意。 **甚だしい**は、程度が激しいの意であるが、マイナスの価値の程度について言う。 # 少し[すこし] ## 少し[すこし] / ちょっと / 少少[しょうしょう] / 些か[いささか] / 僅か[わずか] / 僅僅[きんきん] ### 使い分け例 **少し**・・・「もう少し欲しい。」「少し行くと駅がある。」 **ちょっと**・・・「この品はちょっと高い。」「もうちょっとで終わる。」「君にはちょっと難問だ。」「ちょっと見当がつかない。」 <273> **少少**・・・「塩を少々加えます。」「少々難しい。」「少々御猶予願いたい。」 **些か**・・・「いささか疲れました。」「いささかの配慮。」 **僅か**・・・「わずかばかりで恐縮です。」「残りはわずか三つ。」 **僅僅**・・・「僅々五年前の出来事。」 ### どう使い分けるか **少し**は、数量・程度が少ない、時間・距離が短いさま。 **ちょっと**も、数量・程度がわずか、時間・距離が非常に短い、の意であるが、やや俗語的。「―いける味」のようにかなりの意、下に打ち消しの語を伴って、簡単には(・・・ない)、の意にもなる。 **少少**も分量・程度が少ないの意であるが、「―お待ち下さい」と言うとき、〈**ちょっと**〉よりも〈**少し**〉、それよりも〈**少少**〉が改まった丁寧な言い方になる。 **些か**はほんの少しの意の、やや古風な雅語的な表現。 | | ―お待ちください | もう―で着く | ―疲れた | ―の事で許す | は―もない | ―は許せない | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **少し** | ○ | ○ | | ○ | ○ | | | **ちょっと**| ○ | ○ | | ○ | ○ | ○ | | **少少** | ○ | | | | | | | **いささか**| | | ○ | | | | **僅か**は数量が非常に少ないの意で、**僅僅**は同義の漢語であるが、数詞に添えて使う。 # 勧める[すすめる] ## 勧める[すすめる] / 薦める[すすめる] / 誘う[さそう] / 持ち掛ける[もちかける] / 仕向ける[しむける] / 勧誘[かんゆう]する / 勧奨[かんしょう]する / 奨励[しょうれい]する ### 使い分け例 **勧める**・・・「一読を勧める。」「発明・発見をすすめるための賞。」 **薦める**・・・「優秀作品として薦める。」 **誘う**・・・「旅行に誘う。」「眠りを誘う。」 **持ち掛ける**・・・「縁談を持ち掛ける。」 **仕向ける**・・・「勉強するように仕向ける。」「意地悪く仕向ける。」 **勧誘する**・・・「保険に勧誘する。」 **勧奨する**・・・「酪農を勧奨する。」 **奨励する**・・・「スポーツを奨励する。」 ### どう使い分けるか **勧める**は、よいと思うことを人にするように言う、その事が盛んにな <274> るよう励ます、の意で、「酒・座ぶとんをー」は飲食物などを客に供する場合に言う。 **薦める**は、ある人(第三者)・物・事を採用するように進言する場合に言う。 **誘う**は行動を一緒にするように勧めること、「眠りをー」などの場合は自然にそうなるように仕向ける、の意。 **持ち掛ける**は、話をして働きかける意、**仕向ける**は、他人や動物がある行為・動作をする気持ちになるように持っていく意で、「意地悪く!」の場合は特定の態度で人に接する、の意で、古風な表現。 **勧誘する**は、勧めて誘い入れるの意、**勧奨する**は、そうするのはよい事だと積極的に勧める、の意、**奨励する**はよい事だからやるようにと一般の人に言う、の意である。 # 捨てる[すてる] ## 捨てる[すてる] / うっちゃる / 放り出す[ほうりだす] / 投げ出す[なげだす] / 擲つ[なげうつ] / 放棄[ほうき]する / 廃棄[はいき]する / 遺棄[いき]する / 委棄[いき]する ### 使い分け例 **捨てる**・・・「ごみを捨てる。」「泣く子を捨てておく。」「故郷を捨てる。」「希望を捨てる。」「煩悩を捨てる。」 **うっちゃる**・・・「紙くずを窓からうっちゃる。」「仕事をうっちゃって帰る。」 **放り出す**・・・「学業をほうり出す。」「厄介者をほうり出す。」 **投げ出す**・・・「仕事を投げ出す。」「命を投げ出してかかる。」 **なげうつ**・・・「身命をなげうつ。」「全財産をなげうって援助する。」 **放棄する**・・・「試合を放棄する。」「権利を放棄する。」「戦争放棄。」 **廃棄する**・・・「不良品を廃棄する。」「条約を廃棄する。」「廃棄処分。」 **遺棄する**・・・「死体を遺棄する。」「幼児を遺棄する。」「遺棄罪。」 **委棄する**・・・「相続権を委棄する。」 ### どう使い分けるか **捨てる**は①不用の物として投げ <275> 出す、②構わないでほうっておく、③愛情をかけていたものを見放す、④無駄だと努力をあきらめる、⑤物事に対する執着をなくする、などの意があり、**うっちゃる**はその①・②に相当するやや俗語的な言葉で、相撲の技では「土俵際でー」と言い、土壇場で逆転するの意に使う。 **放り出す**は、乱暴に投げ出す意で、〈**捨てる**〉の④の意にも使う。 **投げ出す**も同じ意味に使われるが、何かのために大切なものを差し出すというプラスの意にも使われる。 **なげうつ**は、これと同じ意味のやや古風な雅語的な言葉である。 **放棄する**は、自分にかかわりのないものとして投げ捨てる意であるが、有形物には用いず、無形物や抽象的な事柄に使う。**廃棄する**は、不用なものとして捨てる意であるが、条約などを一方的に無効にする意にも使う。どちらもかたい文章語。 **遺棄する**と**委棄する**は、どちらも、捨ててほったらかしにする意であるが、法律的には前者は遺棄罪となる行為(要保護者を扶助しないことや、死体・人骨を放置すること)を、後者は所有権を移転させる一方的意思表示を言う。 〔注意〕〈**放棄する**〉は〈抛棄する〉の書き換え。 # 拗ねる[すねる] ## 拗ねる[すねる] / 僻む[ひがむ] / 捻くれる[ひねくれる] / いじける ### 使い分け例 **すねる**・・・「すねて泣く子。」 **ひがむ**・・・「すぐにひがむ性質。」 **ひねくれる**・・・「性格がひねくれる。」「ひねくれた言い回し。」 **いじける**・・・「いじけた性格を直す。」 ### どう使い分けるか **すねる**は、自分の気持ちを分かってもらえないので、わざと逆らった態度をとる、の意、「世を―」は不平・不満を率直に表さず、意地を張って世を捨てた態度をとる場合に言う。 **ひがむ**は、物事を素直に受け取らず、被害妄想的に、自分に不 <276> 利であるとゆがめて思い込む、の意で使う。 **ひねくれる**は「―た枝」のように物の形状がゆがむ意、転じて、性質や考え方がねじけて素直でなくなる意。 | | 叱られてー | 挫折してー | 物の見方がー | 苦労しすぎて性格がー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **すねる** | O | O | - | - | | **ひがむ** | - | Δ | O | Δ | | **ひねくれる** | - | Δ | Δ | O | **いじける**は、寒さや恐さでちぢこまって元気が無くなる意で、転じて、自信を無くして臆病で消極的な性質になる、の意。 # 素早い[すばやい] ## 素早い[すばやい](素速い[すばやい])/手早い[てばやい](手速い[てばやい])/すばしこい/はしこい/機敏[きびん]/敏捷[びんしょう]/敏速[びんそく]/敏活[びんかつ] ### 使い分け例 **素早い**・・・「すばやく身をかわす。」「すばやい処置。」 **手早い**・・・「手早く着がえる。」「手早く料理する。」 **すばしこい**・・・「すばしこく動き回る。」回すばしっこい。 **はしこい**・・・「なかなかはしこい子だ。」 **機敏**・・・「機敏な措置をとる。」「機敏に行動する。」 **敏捷**・・・「敏捷な守備動作。」 **敏速**・・・「敏速な処理。」 **敏活**・・・「敏活な行動。」 ### どう使い分けるか **素早い**は動作や反応が速い、**手早い**は物事をするのがすばやいの意で、後者は手でする動作には限らないが、前者のような頭の回転の速さの意は含まない。 **すばしこい**は全身的な動作がきびきびとしてすばやい、**はしこい**は利口で挙動が速いの意で、後者には抜け目がないの意もある。口頭語では〈すばしっこい〉〈はしっこい〉とも言う。 **機敏**は〈素早い〉、**敏捷**は〈すばしこい〉の意の漢語で、**敏速**は身のこなしよりも仕事ぶりなどのすばやさに多く使う。**敏活**はとっさに頭が働いてすばやく行動することで、頭の回転の速さの方に重点 <277> がある。 # 狡い ## 狡い[ずるい] ## 狡たい[こすたい] ## こすっ辛い[こすっ辛い] ## 悪賢い[わるがしこい] ## 抜け目がない[ぬけめがない] ## 狡猾[こうかつ] ## 老獪[ろうかい] ### 使い分け例 **ずるい**・・・「ずるいやり方。」「ずるく立ち回る。」 **こすい**・・・「やりくちがこすい。」 **こすっからい**・・・「こすっからい男。」◎こすからい。 **悪賢い**・・・「あいつは悪賢くて油断がならない。」 **抜け目がない**・・・「欲には抜け目がない商売人。」 **狡猾**・・・「狡猾な手段。」 **老獪**・・・「老獪な策略家。」 ### どう使い分けるか **ずるい**は自分の利益のためにうまくごまかして立ち回る性質だ、知らん顔をしてすべきことを怠けるの意で、**こすい**はほぼ同義の俗語的な言い方。けちだ、の意もある。**こすっからい**は〈こすからい〉を強めた言い方で、けちでずるいという意味の俗語。 **悪賢い**は悪い方面によく頭が働く意で、〈ずるい〉よりも意味が広い。**抜け目がない**は自分の利益になることによく気がついて手抜かりがない意を言い、〈ずるい〉や〈悪賢い〉ほど暗い感じを伴わない。 **狡猾**は、〈ずるい〉さまの意の漢語で、**老獪**は経験を積んでいて悪賢いさまを言う。 # 生育 ## 生育[せいいく] ## 成育[せいいく] ## 発育[はついく] ## 生長[せいちょう] ## 成長[せいちょう] ### 使い分け例 **生育**・・・「苗の生育が遅い。」「作物が育する。」 <278> **成育**・・・「稚魚の成育法。」「順調に成育する。」 **発育**・・・「発育不全。」「発育盛りの子。」「すくすく発育する。」 **生長**・・・「稲の生長が悪い。」「苗木が生長する。」 **成長**・・・「成長の早い子。」「精神的に成長する。」「成長株。」 ### どう使い分けるか **生育**は生まれ育つこと、作って育てること、**成育**は育って大きくなることで、前者は植物に、後者は人や動物に多く使う。 **発育**は、生物が次第に育って大きくなることで、動物・植物に限らないが、人間の赤ん坊や子供によく使う。 **生長**は植物が伸び育つこと、**成長**は人や動物が育って成熟すること、後者は物事の規模や内容が大きくなることにも使う。 # 制作[せいさく] ## 制作[せいさく] / 製作[せいさく] / 作成[さくせい] / 作製[さくせい] / 調製[ちょうせい] / 創作[そうさく] / 創造[そうぞう] / 造成[ぞうせい] / 製造[せいぞう] / 生産[せいさん] ### 使い分け例 **制作**・・・「テレビ番組の制作。」「壁画を制作する。」「卒業制作。」 **製作**・・・「模型飛行機の製作。」「工具製作所。」「部品を製作する。」 **作成**・・・「予定表の作成。」「試験問題を作成する。」 **作製**・・・「用具の作製。」「地図を作製する。」 **調製**・・・「報告書の調製。」「礼服を調製する。」 **創作**・・・「家具の創作。」「詩三編と創作一編。」「文芸作品を創作する。」 **創造**・・・「文化の創造。」「創造力。」 ◎模倣。「天地を創造する。」 **造成**・・・「造成地。」「山林の造成。」「宅地を造成する。」 **製造**・・・「製造業。」「洋紙を製造する。」 **生産**・・・「米の生産を減らす。」「電気製品を生産する。」「国民総生産。」 ◎消費。 ### どう使い分けるか **制作**は、絵画や彫刻や映画や放 <279> 送番組を作ること、**製作**は道具や機械を作ること、**作成**は文書や計画を作ること、**作製**は物品や図面を作ることで、〈**製作**〉と同義に使うこともある。 **調製**は規則または注文や好みに合わせて作ること、**創作**はある物を初めて考え作り出すこと、文学・芸術作品を作ること、またその作品(特に小説)。比喩的に、うそ・作りごと。 **創造**は自分の力で新しいものを作り出すことで、神が宇宙・万物を作ることにも言う。 **造成**は手を加えてすぐ人間が使えるようにすること、**製造**は原料に手を加えて商品を作ること、**生産**は人間生活に必要な物資を作り出すことを言う。ただし、「国民総―」の場合はサービスを作り出すことも含まれる。 # 正式[せいしき] ## 正式[せいしき] / 本式[ほんしき] / 正規[せいき] / 本格的[ほんかくてき] / オーソドックス ### 使い分け例 **正式**・・・「正式な手続きを踏む。」「正式に婚約する。」 ◎略式。 **本式**・・・「茶道を本式に習う。」「装備だけは本式だね。」 ◎略式。 **正規**・・・「正規には認められない。」「正規に登録された選手。」 **本格的**・・・「本格的に華道を習う。」「本格的な夏の訪れ。」 **オーソドックス**・・・「オーソドックスな手法に従う。」 ◎正統的。 ### どう使い分けるか **正式**は一定の手続きをきちんと踏まえたさま、**本式**は省略などしない本来の形式によるさまで、ほぼ同義であるが、前者は社会的に公認されたの意、後者は本格的だの意で使うことがある。 **正規**は、正式の規定にかなっているさま、**本格的**は本来の正しい方式に従っているさま、また本調子であるさまを言い、格調が高いことを意味する場合もある。 | | ―に柔道を習う | ―のルール | 格好だけは―だね | ―な手続き | ―な冬 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **正式** | | ○ | | ○ | | | **本式** | ○ | | ○ | | | | **本格的**| ○ | | | | ○ | <280> **オーソドックス**は伝統的・正統的であるさまを言う。 # 性質[せいしつ] ## 性質[せいしつ] / 性格[せいかく] / たち / 性向[せいこう] / 特性[とくせい] / 属性[ぞくせい] / 本性[ほんしょう] / 素質[そしつ] / 資質[ししつ] ### 使い分け例 **性質**・・・「柔和な性質。」「水に溶けやすい性質。」 **性格**・・・「性格の不一致。」「性格の異なる団体。」 **たち**・・・「我慢強いたち。」「たちの悪い風邪。」 **性向**・・・「何にでも口をはさむ性向がある。」「消費性向。」 **特性**・・・「特性を生かす。」 **属性**・・・「銅の属性を利用する。」 **本性**・・・「人間の本性に基づく行為。」「生酔い本性違わず。」 **素質**・・・「ピアニストの素質がある。」「素質に磨きをかける。」 **資質**・・・「音楽家としての資質に欠ける。」 ### どう使い分けるか **性質**は人間の持って生まれたたち、事物の本来の特徴、**性格**は先天的な気質と後天的な影響とによる人間の感情や意志の傾向、事物に特有な傾向や性質で、前者が先天的なものを主とするのに対して、後者は後天的なものをプラスして考える言い方。**たち**は気質だけでなく体質も含め、事物については良い・悪いの観点からみた性質を言う。 **性向**は、性質の傾向であるが、個人だけでなく集団社会にも用いる。**特性**はそのものに特有の性質、**属性**は事物の性質・特徴の意で、ほぼ同義だが、後者は哲学では実体の本質的な性質を言う。 **本性**は、本来的な性質、普段は隠れていて見えない生まれつきの性質(「―を現す」)の意で、正気・本心の意にも使う。 **素質**も**資質**も生まれながらの性質や才能の意であるが、前者は将来発展するもととなるもの、後者は生まれつきという点に比重のかかった言い方である。 <281> # 背負う[せおう] ## 背負う[せおう] ## 負う[おう] ## しょう ## 担う[になう] ## 担ぐ[かつぐ] ### 使い分け例 **背負う**・・・「赤ん坊を背負う。」「一家を背負う。」「責任の一半を背負う。」 **負う**・・・「荷を負う。」「義務を負う。」「深手を負う。」「先人に負う所が大きい。」 **しょう**・・・「ランドセルをしょいます。」「借金をしょってしまう。」「あいつずいぶんしょってるね。」 **担ぐ**・・・「神輿を担ぐ。」「会長に担ぐ。」「御幣を担ぐ。」「まんまと担がれた。」 **担う**・・・「重荷を担う。」「次代を担う若人。」「衆望を担う。」 ### どう使い分けるか **背負う**は、荷物などを背中に載せる、苦しい仕事や条件を身に引き受けて責任を持つ、の意で、**負う**は、これらの意味の他に、傷などを身に受ける、恩恵などを被る、の意を表す。**しょう**は、〈背負う〉から転じた俗語的な言い方で、「しょってる」の形でうぬぼれるの意にも使う。 **担ぐ**は、荷物などを肩に載せる意で、人を祭り上げる、また、人をだますの意にも用い、さらに「縁起を―」「験を―」などの慣用句もある。**担う**は〈担ぐ〉よりも文章語的で、自分の責任として引き受けるという抽象的な表現に多く使う。 | | 重荷 | 責任 | 債務 | 次代 | 重傷 | 片棒 | 衆望 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **背負う** | ○ | ○ | ○ | | | | | | **負う** | ○ | ○ | ○ | | ○ | | | | **担う** | ○ | ○ | ○ | ○ | | ○ | ○ | | **担ぐ** | ○ | | | | | ○ | | # 是非[ぜひ] ## 是非[ぜひ] ## 理非[りひ] ## 正否[せいひ] ## 当否[とうひ] ## 可否[かひ] ## 良否[りょうひ] ## 善し悪し[よしあし] ### 使い分け例 **是非**・・・「事の是非を論じる。」「善悪。「制度のあり方を是非する。」 <282> **理非**……「理非曲直を正す。」 **正否**・・・「事の正否を見定める。」 **当否**・・・「事の当否は問わず。」「当否を検討する。」 **可否**・・・「共学の可否を考える。」「可否同数。」 **良否**・・・「製品の良否を判定する。」 **善し悪し**・・・「品のよしあしを見分ける。」「正直すぎるのもよしあしだ。」 ### どう使い分けるか **是非**は、良いか悪いか、サ変動詞として、よしあしを判断する、の意。「―もない」「―に及ばぬ」の成語は、やむを得ない・仕方がないの意になる。 **理非**は道理に合っていることといないことで、〈是非〉とほぼ同義のかたい文章語。 **正否**は正と不正、正か不正か、**当否**は正当か不当かで、ほぼ同義であるが、後者には適当かどうかの意味もある。 **可否**と**良否**はどちらも〈善し悪し〉とほぼ同義であるが、前者は賛成と反対、賛成か反対かの意にも使う。 **善し悪し**はいいか悪いかの意のほかに、「ーだ」の形で、いい点も悪い点もあって一概には決められないの意を表す。 > [注意] 「是非を論じる」の〈是非〉は名詞だが、「ぜひ来て下さい」「ぜひとも合格したい」のように、あとに願望や命令の表現を伴って実現を強く望む気持ちを表す〈是非〉は副詞。 # 全快[ぜんかい] ## 全快[ぜんかい] ## 全治[ぜんち] ## 根治[こんち] ## 治癒[ちゆ] ## 平癒[へいゆ] ## 快癒[かいゆ] ## 本復[ほんぷく] ## 快気[かいき] ### 使い分け例 **全快**・・・「全快を祝う。」「全快して退院する。」 **全治**……「全治二週間のけが。」 **根治**・・・「根治の難しい病気。」「水虫が根治する。」 **治癒**・・・「治癒の見込みが立たない。」「手の傷は治癒した。」 **平癒**・・・「平癒を祈願する。」「難病が平癒する。」 <283> **快癒**・・・「御快癒を祈ります。」 **本復**・・・「本復を祝う。」「病が本復する。」 **快気**・・・「快気祝いを送る。」 ### どう使い分けるか **全快**は病気や傷が完全に治ることで、うれしい、おめでたいという気持ちを含めて、日常最も普通に使われる語。 **全治**もほぼ同義であるが、病気よりも傷に、また診断当初の見込みとして「―二か月」のように使うことが多い。 **根治**はやっかいな病気が完全に治ること、根本的に治すことの意であるが、多く他動詞的に使う。 **治癒**は手当ての結果病気や傷が治ることで、最も基本的・客観的な言い方。 **平癒**は、病気が治り健康な状態にもどる意のやや古風な語で、簡単な病気には使わない。 **快癒**も**本復**も〈全快〉とほぼ同義の語で、前者は手紙文などに主に使い、後者はもっと古風な文章語。 **快気**は全快の意だが、主に「―祝い」の形で使われる語。 > [注意] 八語すべて「する」がついて動詞になる。 # 全然[ぜんぜん] ## 全然[ぜんぜん] ## まるきり ## てんで ## とんと ## 一向[いっこう]に ## 皆目[かいもく] ## 更更[さらさら] ## 少しも[すこしも] ## ちっとも ## 毛頭[もうとう] ### 使い分け例 **全然**・・・「何の事か全然分からない。」 **まるきり**・・・「話がまるきり合わない。」 **てんで**・・・「てんで話にならないよ。」 **とんと**・・・「とんと覚えがないね。」 **一向(に)**・・・「何と言われても一向に気にならない。」 **皆目**・・・「犯人については皆目見当がつきません。」 **更更**・・・「あなたを疑う気持ちは更々ない。」 **少しも**・・・「一緒に酒を飲んでも少しも心を許さない。」 **ちっとも**・・「ちっとも遊ばない。」 **毛頭**・・・「反対する気など毛頭ない。」 <284> ### どう使い分けるか これらの副詞は下に打消しの語や否定的表現を伴って使う。 **全然**・**少しも**が最も基本的な語で、**まるきり**・**てんで**・**とんと**・**ちっとも**はくだけた言い方、**皆目**・**毛頭**はやや改まった表現、**更更**はやや古風な語である。 右の例文はすべて打消しの語を伴っているが、〈全然〉〈まるきり〉〈てんで〉は、「全然不可能だ」、「まるきりだめだ」、「てんで無意味だ」のように打消しではないが否定的な表現を伴う場合もあり、更に俗語的用法では、否定的表現も伴わない場合がある。 また、〈とんと〉や〈一向(に)〉も、「とんと忘れていた」、「何を言われても一向(に)平気だ」のように否定語を伴わない用法がある。 | | ―ない | ―進まない | ―だめだ | ―平気だ | ―忘れていた | それで―驚かない | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **全然** | ○ | ○ | ○ | | | | | **まるきり** | ○ | ○ | ○ | | | | | **てんで** | ○ | ○ | ○ | ○ | | | | **とんと** | ○ | ○ | | | ○ | | | **一向に** | ○ | ○ | | ○ | | | | **ちっとも** | ○ | | | | | ○ | # 僧[そう] ## 僧[そう] ## 僧侶[そうりょ] ## 坊主[ぼうず] ## 坊[ぼう]さん ## 和尚[おしょう] ## 住職[じゅうしょく] ## 法師[ほうし] ### 使い分け例 **僧**・・・「修行中の僧。」「破戒僧。」 **僧侶**・・・「僧侶の読経。」 **坊主**・・・「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。」「なまぐさ坊主。」 **坊さん**・・・「お寺の坊さんを呼ぶ。」 **和尚**・・・「和尚さんがお経をあげる。」 **住職**・・・「西光寺の住職。」 **法師**・・・「法師の説教を聴く。」 ### どう使い分けるか **僧**も**僧侶**も出家して仏門に入った人の意であるが、前者は造語成分として使う方が多い。 **坊主**は寺の主僧、あるいは一般に <285> 僧の意で、**坊さん**はそれを親しんで呼ぶ語(直接には「お坊さん」と言う)であるが、〈坊主〉は「―頭」の連想から「山が丸ーになった」、あるいは男の子供や大人を親しみやからかいをこめて「やんちゃー」、「三日ー」などと言うので、本来の意味に使われる方がむしろ少ない。 **和尚**は弟子から師の僧を呼ぶ語であるが、一般には〈僧侶〉や〈住職〉と同じ意に使われる。オショウは禅宗での称で、宗派によってはカショウ、ワジョウと言った。 **住職**は寺の長である僧、**法師**は仏法によく通じてこれを広める僧の意であるが、後者は、現在では「荒―」「影―」などとは用いるが、単独で使うことはあまりない。 # 騒音[そうおん] ## 騒音[そうおん] ## 雑音[ざつおん] ## ざわめき ### 使い分け例 **騒音**…「騒音公害を防止しよう。」 **雑音**・・「ラジオに雑音が入る。」「周りの雑音を断つ。」 **ざわめき**・・・「木々のざわめき。」「場内のざわめきが静まる。」 ### どう使い分けるか **騒音**はうるさく感じる音、**雑音**は通信路に入り込むよけいな音、**ざわめき**はどことなくざわざわする声や音。〈騒音〉も〈雑音〉も不快な音であるが、〈ざわめき〉の快・不快はその場の状況による。 〈雑音〉は比喩的に、関係者以外の無責任な口出しの意味にも使う。 > [注意] 「楽音」に対する「噪音」も今は〈騒音〉と書き換える。 # 想像[そうぞう] ## 想像[そうぞう] ## 空想[くうそう] ## 夢想[むそう] ## 幻想[げんそう] ## 妄想[もうそう] ### 使い分け例 **想像**・・・「想像もつかない。」「想像をたくましゅうする。」「想像上の動物。」 **空想**・・・「空想が広がる。」「未来を空想する。」 <286> する。」 **夢想**・・・「夢想だにしなかった。」「天下を取ることを夢想する。」 **幻想**・・・「幻想を抱く。」「幻想的な絵。」 **妄想**・・・「妄想にふける。」「被害妄想。」 ### どう使い分けるか **想像**は、実際に知覚に与えられていない物事を心の中に思い浮かべること。 **空想**は、もっと自由奔放に、現実にはあり得ないことをあれこれ思い巡らすことを言う。 **夢想**は夢の中で思うこと、また夢のように当てもないことを心に思うことで、〈空想〉とほぼ同義であるが、古くは夢で神仏のお告げがあることを言った。 **幻想**は、非現実的なことをとりとめもなく思い浮かべ、時には現実との区別がつかないでいることを言う。 **妄想**は根拠のない想像をすること、更にそれを事実であると堅たく信じる病的心理を言うが、本来は仏教語(モウゾウとよむ)で、邪念を意味する。 | | ―にふける | ―をたくましくする | ―を抱く | ―だにしない | 幻想的な― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 想像 | | ○ | | | | | 空想 | ○ | | ○ | | | | 夢想 | ○ | | | ○ | | | 幻想 | ○ | | ○ | | ○ | | 妄想 | ○ | | ○ | | | # 損なう ## 損なう[そこなう] ## 損ねる[そこねる] ## 損じる[そんじる] ## 壊す[こわす] ## 害する[がいする] ### 使い分け例 **損なう**・・・「器物を損なう。」「命を損なう。」「品位を損なう。」「ボールを受け損なう。」「忙しくて昼食を食べ損なう。」 **損ねる**・・・「飲みすぎて健康を損ねる。」「機嫌を損ねる。」「資格を取り損ねる。」 **損じる**・・・「茶器を損じる。」「名声を損じる。」「文字を書き損じる。」◎損ずる。 **壊す**・・・「おもちゃを壊す。」「建物を壊す。」「胃をこわす。」「話をこわす。」「縁談をこわす。」 **害する**・・・「健康を害する。」「感情を害する。」「風致を害する。」「主君を害する。」 <287> ### どう使い分けるか **損なう**は、物を壊す、人を死傷させる、何かの状態を悪くまたは不正常にする、などの意で、動詞の連用形に付いて、失敗する、機会を失うの意を表す。**損ねる**は〈損なう〉の少しくだけた言い方で、基本的な意味・用法は同じであるが、物や人を壊したり死なせたりする意には使わない。 **損じる**も〈損なう〉とほぼ同義で、より文章語的であるが、動詞の連用形についた場合、その機会を逃すという用法はない。**壊す**は〈損じる〉とほぼ同義の和語であるが、不注意ではなく、意図的に行う場合にも使う。また、「縁談をー」などもこの語独特の用法。 **害する**は傷つける、損なうの意味のほかに、「主君をー」のように殺害するの意にも使う。 # 粗雑[そざつ] ## 粗雑[そざつ] ## 雑[ざつ] ## いい加減[いいかげん] ## 大雑把[おおざっぱ] ## 大まか[おおまка] ## 雑駁[ざっぱく] ### 使い分け例 **粗雑**・・・「粗雑な細工。」「考え方が粗雑だ。」 **雑**・・・「雑な文字。」「仕事が雑だ。」 **いい加減**・・・「いいかげんな答弁。」「いいかげんに仕事をやる。」 **大雑把**・・・「大ざっぱな仕事ぶり。」「大ざっぱに見積もる。」 **大まか**・・・「大まかに話す。」「金におおまかだ。」 **雑駁**・・・「雑駁な知識を並べ立てる。」 ### どう使い分けるか **粗雑**は、あらっぽくていいかげんなさま、**雑**もほぼ同義の少しくだけた言い方で、乱雑だの意もある。 **いい加減**は無責任、大ざっぱなさま、また生ぬるいの意。 **大雑把**は、大づかみで細かい点に注意しないさま。 | | 仕事が―だ | ―な品物 | ―な経理 | ―な神経 | ―な文字 | ―に見当をつける | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **粗雑** | ○ | ○ | | | ○ | | | **雑** | ○ | | | | ○ | | | **いい加減** | ○ | ○ | | | | | | **大雑把** | ○ | | ○ | | | ○ | <288> **大まか**も〈大雑把〉とほぼ同義であるが、〈大雑把〉が雑だというマイナスの評価があるのに対し、これはこせこせしていないというプラスの評価で使うことがある。 **雑駁**は、知識や考えが雑然としてまとまりに欠けるさまを言う文章語である。 > [注意] 〈いい加減〉は「ーの湯」「ーにしろ」のように、適度の意の連語、また「―いやになる」「一年をとっている」のようにかなり・だいぶの意の副詞としても使う。 # 育てる[そだてる] ## 育てる[そだてる] ## 養う[やしなう] ## 育む[はぐくむ] ## 養育[よういく]する ## 扶育[ふいく]する ## 育成[いくせい]する ## 養成[ようせい]する ### 使い分け例 **育てる**・・・「子を育てる。」「朝顔を育てる。」「弟子を育てる。」「才能を育てる。」「民主主義を育てる。」 **養う**・・・「妻子を養う。」「牛馬を養う。」「部下を養う。」「人を見る目を養う。」「英気を養う。」「病を養う。」 **育む**・・・「両親に育まれる。」「自由の精神を育む。」「二人の愛を育む。」 **養育する**・・・「三人の子を養育する。」 **扶育する**・・・「恩師の遺児を扶育する。」 **扶養する**・・・「老いた両親を扶養する。」 **育成する**・・「苗を育成する。」「後継者を育成する。」「自立心を育成する。」 **養成する**・・・「技術者を養成する。」「体力を養成する。」 ### どう使い分けるか **育てる**は、生物が順調に成長するように世話をする意で、能力を身につけさせたり、情操や思想をよい方向に伸ばさせたりする場合にも言う。**養う**は家族の生活や動物の面倒を見る意で、能力や活力を身につけ、豊かにする場合にも言う。前者は成長させること、後者は生活させることに重点がある。 **育む**は、親鳥がひなを育てる、が原義で、〈育てる〉と同義の雅語的な言葉。 **養育する**は、子供を自分の手元 <289> で養い育てる意、**扶育する**は、世話をして育てる意で、後者は実子でない場合に使う。**扶養する**は、子供に限らず、家族や肉親の生活上の世話をして養う場合に言う。 **育成する**は、立派なものになるように育てあげる意。 **養成する**は、教え導いて技術や能力を身につけさせる、の意で用いる。 # 聳える[そびえる] ## 聳える[そびえる] ## 聳え立つ[そびえたつ] ## そそり立つ[そそりたつ] ## 峙つ[そばだつ] ## 屹立[きつりつ]する ### 使い分け例 **聳える**・・・「雲にそびえる峰。」「塔が秋空にそびえる。」 **聳え立つ**・・・「雲の上にそびえ立つ山。」 **そそり立つ**・・・「眼前にそそり立つ超高層ビル。」 **そばだつ**・・「南アルプスのそばだつ山々。」 **屹立する**・・・「屹立する高峰。」「高層ビルの屹立する街。」 ### どう使い分けるか **聳える**は山や建物が他を見下ろすように高く立つ、の意で、比喩的に「斯界に―巨匠」などとも言う。**聳え立つ**はその強調語、**そそり立つ**はその雅語的な言い方である。 **そばだつ**は他に比べてひときわ険しく高くそびえ立つ、の意。 **屹立する**は同義の漢語的表現でかたい文章語。 # そば ## そば ## 傍ら[かたわら] ## 脇[わき] ## 傍[はた] ## 際[きわ] ## 辺[ほとり] ### 使い分け例 **そば**・・・「駅のそばの公園。」「いつもそばにいてほしい。」「教わるそばから忘れる。」 **傍ら**・・・「机の傍ら。」「母の傍らで子が遊ぶ。」「仕事の傍ら勉強する。」 <290> **脇**・・・「議長のわきの席。」「わきから口を出す。」「話をわきにそらす。」 **はた**・・・「はたの見る目。」「はたの迷惑も考える。」 **際**・・・「がけの際に立つ。」「窓際。」「いまわの際。」 **ほとり**・・・「湖のほとりのホテル。」 ### どう使い分けるか **そば**も**傍ら**もある人・物のすぐ近くの所の意で、後者はやや古風な文章語。時間的には、前者は「教わるーから忘れる」のように、…するとすぐ、後者は「仕事のー、勉強する」のように、…と同時に一方での意を表す。 **脇**は胸の側面で腕の付け根のすぐ下の所が原義で、転じて、少し離れた横を言い、更に転じて「話をーにそらす」のように本筋をはずれた横の意にも使う。 **はた**は場所よりも第三者的な立場、周辺の人の意が強く、「道のー」「池のー」などのはた(端)はふち・へりの意。 **際**は物の端や物と物との境目の意で、「・・・際が」と接尾語として用いるときは、・・・のすぐそばの意になる。時間的には「いまわのー」、「別れー」のように、・・・しようとする時の意。 **ほとり**は主に水のある場所の近くやその辺りを言う。 | | ―から口を出す | 社長の―に控える | 池の―の茶店に寄る | 道の―の店 | 駅のすぐ― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **そば** | ○ | | | | ○ | | **傍ら** | ○ | ○ | | | | | **脇** | ○ | ○ | | | | | **はた** | | | ○ | ○ | | | **際** | | | | ○ | | # それぞれ ## 其其(夫夫)[それぞれ] ## 各[おのおの](各各) ## 銘銘[めいめい] ## 個個[ここ] ## 一一[いちいち] ## 各自[かくじ] ## 各人[かくじん] ### 使い分け例 **それぞれ**・・・「それぞれが責任を持つ。」「好みは人それぞれ違う。」「どの詩もそれぞれすばらしい。」 **各(各各)**・・・「各が意見を述べる。」「人はおのおの性格が異なる。」「どの辞書も各々特色がある。」 **銘銘**・・・「切符はめいめいが買う。」「めいめいの判断に任せる。」「銘々皿。」 **個個**・・・「個々の意思。」「個々に契約する。」 <291> 「個々別々。」 **一一**・・・「一々の例は省略する。」「いちいち文句をつける。」 **各自**・・・「弁当は各自が持参せよ。」 **各人**・・・「各人の自由に任せる。」 ### どう使い分けるか **それぞれ**も**各**も多くのものの一人一人・一つ一つの意で、副詞的にも使うが、後者の方が改まった言い方である。**銘銘**は人についてしか使わない。 **個個**は幾つかのものの一つ一つ・一人一人の意であるが、副詞的には使わない。**一一**は一つ一つについて漏れなく・ことごとくの意で、副詞として使うことが多い。 **各自**も**各人**もおのおのの人・めいめいの意で、前者の方がよく使われるが、後者には「一各説」、「一各様」などの成語がある。 | | ―の意見で | ―切符は買え | ―の辞書は特色がある | ―に特に提出せよ | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **それぞれ** | ○ | | ○ | | | **各** | ○ | | ○ | △ | | **銘銘** | ○ | ○ | | | | **個々** | ○ | | | | # ぞんざい ## ぞんざい ## 投げ遣り[なげやり] ## 杜撰[ずさん] ## 疎略(粗略)[そりゃく] ## 疎漏[そろう] ### 使い分け例 **ぞんざい**・・・「品物をぞんざいに扱う。」「ぞんざいな口を利く。」 **なげやり**・・・「仕事がなげやりだ。」「なげやりな態度。」 **杜撰**・・・「ずさんな工事。」「管理がずさんだ。」 **疎略(粗略)**……「客扱いが疎略だ。」 **疎漏**・・・「疎漏のないように。」 ### どう使い分けるか **ぞんざい**は物事のやり方・扱い方が乱暴なさまで、特に口の利き方が丁寧でないときよく使う。 **なげやり**は心を込めないで物事をする、また無責任な態度をとるさまを言う。 **杜撰**は、物事に誤りや手抜きが多くいいかげんなさま、**疎略(粗略)**は、物事のやり方、特に人の扱い方がなげやりでぞんざいなさま、 <292> **疎漏**は、物事のやり方が大ざっぱで手落ちの多いさまを言う。この二語は文章語。 # 対応[たいおう] ## 対応[たいおう] ## 呼応[こおう] ## 照応[しょうおう] ## 適応[てきおう] ## 順応[じゅんのう] ### 使い分け例 **対応**・・・「英語とドイツ語の対応関係を調べる。」「気力に対応する体力がない。」「政府の対応を求める。」 **呼応**・・・「互いに呼応して行動する。」「副詞の呼応。」 **照応**・・・「照応の妙。」「主語と述語が照応しない。」 **適応**・・・「彼の性質はその仕事に適応している。」「適応の速さ。」 **順応**・・・「環境への順応が速い。」「世間に順応する。」 ### どう使い分けるか **対応**は、二つの事物がある要素や性質をめぐって相対する関係にあること、また状況や相手の動きにふさわしい行動をとることに用いる。それに対して**呼応**は、両者のつながりがより緊密で、互いに通じ合っているような場合を言う。文法用語としては、ある語句に対して決まった語句が規則的に現れる現象を言う。 **照応**は主に、物事や文章などで、両者が互いに関連したり、対応していることで、〈呼応〉や〈対応〉には相対する両者に動きがある場合が多いのに対して、この語には静的な感じがある。 **適応**は、ある状況・条件などにうまく合うこと、また合うように自分の行動の仕方を変えること。 **順応**は、〈適応〉の後半に相当する。 # 対抗[たいこう] ## 対抗[たいこう] ## 対決[たいけつ] ## 対峙[たいじ] ## 拮抗[きっこう] <293> ### 使い分け例 **対抗**・・・「クラス対抗で試合する。」「A社に対抗しB社も新商品を出す。」 **対決**…「両者対決の日が迫る。」「最終日に対決する。」 **対峙**・・「源平両軍は、川を挟んで対峙した。」「米ソの対峙が続いた。」 **拮抗**・・・「勢力の拮抗。」「両チーム、攻撃力は拮抗している。」 ### どう使い分けるか **対抗**は、互いに向かい合う勢力が優劣、勝敗を争って張り合うことの意。その勝敗に決着をつけるという意味合いが強いときには**対決**を用いる。**対峙**は、山が向かい合ってそびえ立つように、相対する両者が対立したまま動かない場合に使う。 **拮抗**は、相対するものの力量、勢力が同じくらいで、互いに一歩も譲らぬような場合に用いる。 # 大衆[たいしゅう] ## 大衆[たいしゅう] ## 民衆[みんしゅう] ## 公衆[こうしゅう] ## 人民[じんみん] ## 国民[こくみん] ## 庶民[しょみん] ### 使い分け例 **大衆**・・・「大衆に受ける文学。」「大衆食堂。」「大衆運動。」 **民衆**…「自由を求めて立ち上がる民衆。」「民衆芸術。」 **公衆**…「公衆の面前で恥をかく。」「駅前で公衆に訴える。」「公衆電話。」 **人民**・・・「人民の人民による人民のための政治。」「人民戦線。」 **国民**・・・「国民の権利と義務。」「国民所得。」「ドイツ国民。」 **庶民**・・・「庶民の暮らしがよくなる。」「庶民に手の届かない高い家。」 ### どう使い分けるか いずれも社会を構成する、世間一般の人々を言うが、視点の違いがある。**大衆**は、知識人に対する大多数の一般人、また、金持ちに対する大多数の一般人という意味合いがある。それに対して、**民衆**は、国家や社会を構成する人々の間の支配・被支配の力関係の中で用いられることが多く、その中で、積極的に働きかけをす <294> る被支配層の人々、政治的意識のある〈大衆〉といった感じがある。 **公衆**は、その地域に住む、あるいは、その場所に居合わせる一般の人々を言い、〈大衆〉〈民衆〉〈人民〉〈庶民〉のように階級・階層として見たものではない。 **人民**は〈民衆〉とほぼ同義であるが、近年は主に左翼運動の中でブルジョアジーに対するプロレタリアートという意識をにじませて用いた。「人民戦線」は、ファシズムに反対する広範な団体や個人の結集した共同戦線のこと。 **国民**は、国家への所属の視点から、その国を形づくる一般の人々を言う。〈公衆〉と同様、階級・階層として見たものではない。 **庶民**は〈大衆〉とほぼ同義だが、日常生活の暮らしぶりの視点から、平凡な暮らしを営んでいる普通の人々を言う。〈大衆〉は「大多数」に、〈庶民〉は「平凡な暮らし」に意味の重点がある。 # 大体[だいたい] ## 大体[だいたい] ## 大概[たいがい] ## 大抵[たいてい] ## 大凡[おおよそ] ## 凡そ[およそ] ## 殆ど[ほとんど] ### 使い分け例 **大体**・・・「大体のところ満足だ。」「大体終わった。」「大体そんなことをする君が悪い。」「大体五十キログラム。」 **大概**・・・「スーパーでは大概の物を売っている。」「いつも大概家にいる。」「うそは大概ばれる。」 **大抵**・・・「彼は大抵のことは知っている。」「並大抵の苦労でなかった。」 **おおよそ**・・・「事件のおおよそはもう分かっている。」「おおよそ三十人くらい集まった。」 **およそ**・・・「出席者はおよそ三十人。」「およそ意味のない話だ。」 **ほとんど**・・・「ほとんどの人が眠った。」「ほとんど落ちるところだった。」 ### どう使い分けるか **大体**は、名詞としては大部分の意。副詞として用いる場合も〈おおよそ〉〈大抵〉〈ほとんど〉とほぼ同じ意味だが、例の第三のようなもともと、そもそも、と同じ意味は〈おおよそ〉〈大抵〉〈ほとんど〉にはない。 **大概**も〈大体〉とほぼ同じだが、 <295> 〈大体〉〈おおよそ〉〈およそ〉のように大ざっぱな量を言う場合には使えず、「大概二十キロほどの距離である」とは言わない。 **大抵**は、〈大体〉よりももっと全部に近い大部分という感じがある。また〈大概〉と同じく、大ざっぱな量を表す用法はない。〈大概〉と異なり、普通・並々の意がある。 **おおよそ**は、物事の量やありさまをおおづかみに示していることを表す。「いつも―家にいる」「うそはーばれる」のような事柄の起こる可能性について言う場合に〈おおよそ〉は使えない。 **およそ**は、〈おおよそ〉の転で、用い方はほぼ同じであるが、副詞として用いる場合、下に打ち消しを伴って、まったく、全然の意味を表す。 **ほとんど**は、〈大抵〉とほぼ同義であるが、第二例のように、もう少しのところでとか、すんでのことでを意味する場合は〈ほとんど〉だけである。 | | ―そんな態度は悪い | ふだん―家にいる | ―三十人は集まった | ―のことでは驚かぬ | 並―の苦労ではなかった | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **大体** | ○ | | ○ | | | | **大概** | | ○ | | ○ | | | **大抵** | | | △ | ○ | ○ | | **おおよそ** | | | ○ | | | | **およそ** | | | ○ | | | | **ほとんど** | | | | ○ | ○ | # 大変[たいへん] ## 大変[たいへん] ## 非常に[ひじょうに] ## 大層[たいそう] ## 甚だ[はなはだ] ## 極めて[きわめて] ## とても ## 滅法[めっぽう] ## とびきり ### 使い分け例 **大変**・・・「この本は大変やさしい。」「大変な人出だった。」 **非常に**・・・「今年の冬は非常に暖い。」 **大層**・・・「今年のテスト問題は大層難しい。」「大層な数。」 **甚だ**・・・「甚だ迷惑な話だ。」 **極めて**・・・「それは極めて重大な事柄である。」 **とても**・・・「まずくてとても食べられない。」「とても無理な話だ。」「君はとてもきれいだ。」 **滅法**・・・「あの男は滅法力が強い。」 **とびきり**・・・「とびきり上等の洋服。」 ### どう使い分けるか いずれも事物の程度や数量などが甚だしいさまを表すのに用いる副詞または副詞的な語。 <296> **大変**・**非常に**・**大層**はほぼ同義であるが、〈大変〉が最も口語的であり、また、〈大層〉は他の二語よりやや程度が弱い感じである。 〈非常に〉は形容動詞の連用形。〈大変〉〈大層〉は形容動詞語幹でもある。形容動詞としては、「ーな数」に〈大変〉〈大層〉は適当だが〈非常〉は不適当といった違いがある。〈非常(に)〉は前二者と異なり、それ自体に「大」という意を含まないのである。**甚だ**・**極めて**はどちらもやや文章語的な和語だが、後者の方が程度が大きい。 **とても**は、これらの語と共通の意味としては最も口頭語的な和語。打ち消しを伴う「とうてい」の意の用法は〈とても〉だけにあるもので〈大変〉などにはない。なお、同義の〈とっても〉は、話し言葉で用い、一層強めた感じがする。 **滅法**・**とびきり**はほかの語より更に程度の甚だしさを強調している感じがある。〈滅法〉は仏教語からの転。〈とびきり〉は肯定的に使うことが多い。 # 体面[たいめん] ## 体面[たいめん] ## 体裁[ていさい] ## 面子[めんつ] ## 見栄[みえ] ## 沽券[こけん] ### 使い分け例 **体面**・・・「社長の体面を保つ。」「体面を重んずる。」「体面上。」 **体裁**・・・「体裁が悪い。」「詩の体裁を整える。」「お体裁を言う。」 **面子**・・・「面子にこだわる。」「親の面子をつぶす。」「面子が立つ。」 **見え**・・・「見えをはる。」「見えで高価な毛皮を買う。」 **沽券**・・・「このまま黙っていては、沽券にかかわる。」「沽券が下がる。」 ### どう使い分けるか **体面**は世間から見られたときにおかしくない、それ相応の表向きの外観やありさまを言い、**体裁**は、外見の意のほか、外から見られたときの自分の状態についての感じを表す。「体面が悪い」とか「詩の体面」とかは言わない。 **面子**は〈体面〉と同義であるが、いくぶん俗語的な響きがある。また「面子が立つ」「面子を立てる」は慣用的な言い回しで、〈体面〉で言 <297> うときは「体面を保つ」などのように言う。 **見え**は、自分を実際以上によく見せようとすること。「―をはる」という慣用的な言い方を〈体面〉<体裁〉〈面子〉〈沽券〉で言うことはできない。 **沽券**は、〈体面〉や〈体裁〉が主に見かけ・外観を意味するのに対して、その人の品位とか値打ちについて使われる。 # 耐える[たえる] ## 耐える[たえる] ## 堪える[こらえる] ## 忍ぶ[しのぶ] ## 我慢[がまん]する ## 辛抱[しんぼう]する ## 忍耐[にんたい]する ### 使い分け例 **耐える**・・・「苦しみに耐える。」「地震に耐える構造。」 **こらえる**・・・「笑いをこらえる。」「涙をこらえて歩く。」 **忍ぶ**・・・「恥を忍んで人前に出る。」 **我慢する**・・・「今の子供は我慢することを知らない。」「眠けを我慢する。」 **辛抱する**・・・「どんなつらいことも辛抱してやりぬく。」 **忍耐する**・・・「忍耐するにも限度がある。」 ### どう使い分けるか いずれも、苦しさやつらさを我慢したり、外部から加えられた力や刺激などに負けないで持ちこたえる意で用い、互いに他の語と置き換えられる場合も多い。 **耐える**は、物がその主体となることもありうるが、他の五語は人だけが主体になる。(擬人化された物はもちろん別。)また、〈耐える〉は自動詞であり、「・・・を耐える」という言い方はできない。 **こらえる**は、苦しみやある感情を我慢するというより、表面に出るのを抑えるという意に使う場合が多く、「涙を―」は他の語に置き換えにくい。 **忍ぶ**は自分の内に生じた精神的苦痛にじっと耐える意で、特に「恥をー」という場合、他の語は使えない。 **我慢する**は、感覚的なもの、外部からの刺激に耐える場合に比較的よく使うが、**辛抱する**はどちらかというと精神的なものをこら <298> える場合が多く「暑さをー」などは〈我慢する〉がふさわしい。 **忍耐する**は、やや文章語的な言い方。おもに精神的な苦痛に耐える場合に使い、自然現象とか生理現象にはあまり使わない。 > [注意] 〈堪える〉は「聞くに―」「感にー」などと使う語だが、〈耐える〉と同義でも使う。 # 絶える[たえる] ## 絶える[たえる] ## 途絶える[とだえる] ## 断絶[だんぜつ]する ## 全滅[ぜんめつ]する ## 絶滅[ぜつめつ]する ### 使い分け例 **絶える**・・・「子孫が絶える。」「消息が絶える。」「石油の備蓄が絶える。」「息が絶える。」 **途絶える**・・・「車の流れが途絶える。」「便りが途絶える。」「話が途絶える。」 **断絶する**・・・「国交を断絶する。」「家系が断絶した。」 **絶滅する**・・・「恐竜は絶滅した。」「犯罪を絶滅する。」 ### どう使い分けるか いずれも今まであったもの、続いてきた状態・動作などがそこで終わりになったり、切れてしまったりする意。 **絶える**は、これまで続いてきた状態などがいったん切れる。また、最終的に終わりになる、の意であるのに対して、**途絶える**は、一時的に、多くは急にふっとそこで切れるというニュアンスをもち、再び元の状態に戻る可能性も含ませている。死ぬ意味の「息が絶える」を、〈途絶える〉ではおかしい。 **断絶する**は今まであったものが、まったく断ち切れてしまう意で、〈途絶える〉を強調した感じの漢語的な言葉。 **絶滅する**は、生物あるいは人間が作りなす物事が残らず滅び無くなってしまう意で、生命のない自然物(例えば石炭など)には言わない。これも強い調子のある漢語的な言葉で、〈断絶する〉と共に文章語である。 # 高飛車[たかびしゃ] ## 高飛車[たかびしゃ] ## 居丈高[いたけだか] ## 頭ごなし[あたまごなし] <299> ## 高圧的[こうあつてき] ## 威圧的[いあつてき] ### 使い分け例 **高飛車**・・・「相手の弱腰に付け込んで高飛車に出る。」「高飛車な口ぶり。」 **居丈高**・・・「居丈高に構える。」 **頭ごなし**・・・「頭ごなしにどなりつける。」 **高圧的**・・・「彼の高圧的な態度が嫌いだ。」「高圧的な当局の姿勢。」 **威圧的**…「威圧的な態度で迫る。」 ### どう使い分けるか **高飛車**は相手の立場に構わず、いきなり自分の態度や意見を押し出して相手の意表をつくような場合に用いる。 **居丈高**は、「いたけ」(座っているときの背の高さ)を高くすることで、相手を威圧するような態度で応対する意に用いる。 **頭ごなし**は、相手の言い分に耳を傾けず、最初からがみがみ言ったり、どなりつけたり、叱ったりするような場合に使う。 **高圧的**と**威圧的**はほぼ同義で、〈高飛車〉〈居丈高〉が主に個人の態度に言うのに対して、もっと巨大なものについても言える。自分の意見や態度を相手に押し付ける度合がより強い感じがある。 〈高圧的〉はどちらかというと目に見える外面的な圧力で相手に迫る場合に用いるが、〈威圧的〉は更に内面的な圧力がそれに加わり、相手を圧倒する力がより強い。 # 妥協[だきょう] ## 妥協[だきょう] ## 歩み寄り[あゆみより] ## 譲り合い[ゆずりあい] ## 互譲[ごじょう] ## 妥結[だけつ] ## 折り合い[おりあい] ## 協調[きょうちょう] ### 使い分け例 **妥協**・・・「今度の内閣は三派妥協の産物だ。」「人生では妥協することも必要だ。」 **歩み寄り**・・・「問題の解決には、両者の歩み寄りが必要である。」 **譲り合い**・・・「席の譲り合い。」「譲り合いの心が大切である。」 **互譲**・・・「互譲の精神を養う。」 **妥結**…「労使徹夜の折衝の末妥結を <300> みる。」「交渉が妥結する。」 **折り合い**・・・「両者の折り合いをつける。」 **協調**・・・「他人と協調する心に欠ける。」「労使の協調により解決を図る。」 ### どう使い分けるか **妥協**は、互いに意見や利害が対立しているときに、一方または両方が自分の意見を抑えたり、譲り合ったりして事をまとめることで、どちらかというと相手に自分を合わせ、不本意ながらも自分の意見や立場を抑えるというネガティブな響きを持つ。 **歩み寄り**は〈妥協〉に比べて表現がやわらかく、条件や主張などの一致点を求めて互いに自分の立場を譲り合うことで、〈妥協〉のようなネガティブな響きはない。「妥協の産物」に〈歩み寄り〉は使えない。 **譲り合い**は順番とか権利などを互いに相手に譲ろうとすることで、「席の譲り合い」に〈歩み寄り〉は使えない。態度や姿勢というよりも、心や精神のあり方を表す。 **互譲**は〈譲り合い〉と同義の文章語でかたい表現。〈互譲する〉の形はない。 **妥結**も、意見や立場の対立する両者が、互いに譲り合って話をまとめることであるが、個人というよりも、結社、団体など組織間の交渉に用いられる。 **折り合い**は、「―がつく」「―をつける」という形で用いる。 **協調**は、利害・立場や意見などの異なるものが、互いに譲り合い、力を合わせるという点に力点が置かれ、積極的で前向きの姿勢がある。「協調の精神」とか「彼には協調性がある」に〈妥協〉は使えない。 | | ―の精神 | ―の産物 | ―が成立する | ―を図る | ―の美徳 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **妥協** | | ○ | ○ | | | | **歩み寄り** | ○ | | ○ | | | | **互譲** | ○ | | | | | | **協調** | ○ | | | ○ | ○ | # 卓越[たくえつ] ## 卓越[たくえつ] ## 抜群[ばつぐん] ## 卓絶[たくぜつ] ## 傑出[けっしゅつ] ## 超絶[ちょうぜつ] ### 使い分け例 **卓越**・・・「卓越した才能の持ち主。」 <301> **抜群**・・・「抜群の成績で卒業する。」 **卓絶**・・・「卓絶した文章で読者を魅了する。」 **傑出**・・・「傑出した政治手腕。」「彼は文武両道に傑出している。」 **超絶**・・・「古今に超絶した偉業。」 ### どう使い分けるか いずれの語も他と比較にならぬほど飛び抜けて優れていることに用いる。 **卓越**は文章語でかなりかたい表現。サ変動詞として用いることが多い。 **抜群**は名詞および形容動詞として用い、サ変動詞〈抜群する〉はない。多数の中で他と比べて特に飛び抜けていることの意。それに対して〈卓越〉は、特に他との比較を意識せず、絶対的に飛び抜けていることの意。「抜群の成績」を〈卓越〉に置き換えることはできない。 **卓絶**は〈卓越〉とほぼ同義であるが、〈卓越〉はどちらかというと総合的な能力、才能、人格など事柄の本質的側面について用いることが多いのに対し、〈卓絶〉は更に個々の具体的な事柄について用いる。「卓越した能力」に〈卓絶〉は使わない。 **傑出**は個々の具体的な事柄より、より全体的な能力、手腕、人物の偉大さに用いる。「傑出した人物」に〈卓越〉は使えない。 **超絶**は、他のものとは比べることができないほど、はるかに優れていることの意。 # 確か[たしか] ## 確か[たしか] ## 確実[かくじつ] ## 着実[ちゃくじつ] ## 正確[せいかく] ## 的確[てきかく](適確) ### 使い分け例 **確か**・・・「これほど確かな証拠はない。」「この男の身元は確かだ。」 **確実**・・・「当選は確実だ。」 **着実**・・・「着実に準備を進める。」「仕事の進め方が着実だ。」 **正確**・・・「彼の時計は正確だ。」 **的確**・・・「的確な指示を与える。」 ### どう使い分けるか **確か**も**確実**もほぼ同義の和語と <302> 漢語だが、〈確か〉は、自分の主観的判断で事実に限りなく近いことを表すのに対して、〈確実〉は自分の判断でどう、ということよりも客観的な事実にウェイトを置く。 **着実**は落ち着いて確実に物事を処理することで、一歩一歩事を進めていく行為や態度に用いる。 **正確**は、事物そのものの正しさ、間違いのないことを示す。 **的確**は、判断や表現などの意識の働きに多く用い、事物の本質から外れない正確さを表す。 | | ―に答える | ―に行う | ―に進める | ―な情報だ | 彼の合格は―だろう | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **確か** | | | | ○ | ○ | | **確実** | | ○ | ○ | ○ | ○ | | **着実** | | ○ | ○ | | | | **正確** | ○ | ○ | | ○ | | | **的確** | ○ | ○ | | | | # 足す[たす] ## 足す[たす] ## 加える[くわえる] ## 添える[そえる] ## 追加[ついか]する ## 添加[てんか]する ## 付け足す[つけたす] ### 使い分け例 **足す**・・・「七に五を足す。」「水を足す。」「砂糖を足す。」 **加える**・・・「彼女を仲間に加える。」「スピードを加える。」「原稿に手を加える。」「敵に一撃を加える。」 **添える**・・・「贈り物に手紙を添える。」「病人に手を添える。」「花を添える。」 **追加する**・・・「注文を追加する。」「言葉を追加する。」 **添加する**・・・「人工甘味料が添加してある。」「食品添加物。」 **付け足す**・・・「説明を付け足す。」「材料を付け足す。」 ### どう使い分けるか **足す**も**加える**も、すでにあるものに、何かを増し加える場合に用いるが、〈足す〉は、すでにある同質のものの不足を埋め合わせるときに使う。〈加える〉は、例えば、すでに塩は入っていたが、それに新たに砂糖を加える、というように、異質のものを付け加える場合に使う。また相手に影響を及ぼすような行為に用いる場合も〈足す〉ではなく〈加える〉を使う。 **添える**はややニュアンスが異なる。 <303> すでにある主となるものに補助的に何かを付ける場合に使う。また〈足す〉や〈加える〉は、数えることができる事物について使うことが比較的多いのに対し、〈添える〉は、言葉や行為でそばから補ったり、すでにある事物を引き立たせるために付け加える、というような意で使うことが多く、その場合〈足す〉や〈加える〉は使えない。 **追加する**は、後から増やしたり、付け加えたりする意のかたい表現で、特に不足している事物を補う場合に使う。 **添加する**は、すでにある本体に何か別のものを添え加える場合に使う、ややかたい文章語。食品に色や味、香料などを添えるような場合によく使われる。 **付け足す**は〈足す〉とほぼ同義で、すでにあるものに同じ性質のものを補い加える場合に使う。しかし、言葉や説明、注などを〈付け足す〉と言うとき、〈足す〉は使わない。 # 助ける[たすける] ## 助ける[たすける] ## 救う[すくう] ## 手伝う[てつだう] ## 援助[えんじょ]する ### 使い分け例 **助ける**・・・「おぼれた人を助ける。」「家計を助ける。」「図表が文意の理解を助ける。」 **救う**・・・「命を救う。」「気分的に救われる。」「救いようのないやつ。」 **手伝う**・・・「食事の支度を手伝う。」「友人の店を手伝う。」「折からの強風も手伝って火は広がった。」 **援助する**・・・「資金面で援助する。」 ### どう使い分けるか **助ける**は、力を貸して相手にそれ以上の悪い事態を避けさせる、の意。「助け出す」の形で〈救う〉により近い意味になる。なお「命を助ける」は手を下してそうする場合と、逆に手を下さないことによって、つまり殺さずに見逃す場合とがある。 **救う**は、よくない状況の中から人を抜け出させる、の意。精神的なことにもよく使われる。 **手伝う**は、その活動の主軸となる人の補佐として力を貸す、の意。また事が順調に進むように力 <304> を貸すのであって、危険や困難の中における場合とは限らない。 〈助ける〉〈救う〉と違って精神面に力を貸す意味では使わない。 **援助する**は、後押しとして力を貸す意なので、〈手伝う〉のように、相手に付いたままでするという意にはならない。 # 戦い[たたかい] ## 戦い[たたかい] ## 闘い[たたかい] ## 戦争[せんそう] ## 戦[いくさ] ## 戦闘[せんとう] ## 合戦[かっせん] ## 対戦[たいせん] ### 使い分け例 **戦い**・・・「源平の戦い。」「ワーテルローの戦い。」「日米の戦い。」 **闘い**・・・「労使の闘い。」「難病との闘い。」 **戦争**・・・「戦争を放棄する。」「また戦争する気か。」 **戦**・・・「戦の庭(戦場)。」 **戦闘**・・・「国境で戦闘を交える。」「最初に戦闘する部隊。」「戦闘機。」 **合戦**・・・「川中島の合戦。」「東西両軍が関が原で合戦した。」 **対戦**・・・「強豪チームと対戦する。」 ### どう使い分けるか **戦い**は、〈闘い〉より一般的・包括的である。**闘い**はどちらかと言えば規模の小さいものに使う。また、具体的に目に見えるものでない困難や苦痛に立ち向かうという場合は〈闘い〉の方がふさわしい。 **戦争**は武力による国家間の戦いだが、比喩的に用いて「受験―」「交通―」などとも言う。 **戦**は戦争の雅語的な言い方。**戦闘**は、戦争において直接武力を行使することを言う。 **合戦**は古めかしい語であるが、「紅白歌―」などと使われる。 **対戦**は敵味方になって戦うことで、現在では試合や競技についてよく使う。 # たちまち ## 忽ち[たちまち] ## 見る見る[みるみる] ## 見る間に[みるまに] ## 瞬く間に[またたくまに] ## 一瞬[いっしゅん]に ## 立ち所に[たちどころに] <305> ### 使い分け例 **たちまち**・・・「宝くじがたちまち売り切れる。」「空がたちまち曇る。」 **見る見る**・・・「顔が見る見る青くなる。」 **見る間に**・・・「雑居ビルが見る間に炎に包まれた。」 **瞬く間に**・・・「様相が瞬く間に変わる。」 **一瞬に**・・・「魚雷を受け船が一瞬にして沈む。」 **立ち所に**・・・「難問をたちどころに解決する。」 ### どう使い分けるか いずれも極めて短い時間の間に、状態が変わったり、ある事態が起こる場合に用いる語である。 **たちまち**に比べて**見る見る**は、実際見ている目前で刻々と変わっていく様子を示す度合が強い。 **見る間に**は、「見ている間に」ということで、事態の変わっていく様子というより、その時間の短さを示す場合に使う。 **瞬く間に**・**一瞬に**は、見る間もないほどのごく短い時間に事が変化する、その時間の素早さ、短さを更に強調する。 **立ち所に**は、ややニュアンスが異なる。例えば「雪が―消える」とか「顔が―赤くなる」とはあまり言わないように、自然的、生理的な変化には使わない。〈立ち所に〉は、人間の意思や行為が何らかの形で関与して、事態が即座に変わる場合に用いることが多い。 # 断つ[たつ] ## 断つ[たつ] ## 絶つ[たつ] ## 裁つ[たつ] ## 断絶[だんぜつ]する ## 絶縁[ぜつえん]する ## 切断[せつだん]する ### 使い分け例 **断つ**・・・「糸を断つ。」「酒を断つ。」 **絶つ**・・・「交わりを絶つ。」「消息を絶つ。」 **裁つ**・・・「布を裁つ。」「着物を裁つ。」 **断絶する**・・・「家系が断絶する。」「国交を断絶する。」「親子の断絶。」 **絶縁する**・・・「親類と絶縁する。」「ゴムで絶縁する。」「絶縁体。」 **切断する**・・・「足を切断する。」 <306> ### どう使い分けるか **断つ**は、物を刃物などで二つ以上に切り離したり、物事を途中で遮る場合に用いる。 **絶つ**は、今まで続いてきたつながりや関係が切れてしまったり、そこで終わる場合に用いる。 **裁つ**は、衣服を作るために布を切る、の意。 **断絶する**は〈絶つ〉とほぼ同義だが、漢語的な言い方でかたい文章語。「親子の縁を絶つ」に〈断絶する〉はあまりふさわしくない。 **絶縁する**は、人とのつながりや縁を絶つ場合や、電気・熱などが伝わるのを断ち切る場合に用いる。「親類とー」に〈断絶〉は使えない。 **切断する**は、長く続いている物を断ち切ることで、〈断つ〉が二つ以上の部分に分かれることを強調するのに対して、〈切断する〉は切り離す動作を強調する。 # 妥当[だとう] ## 妥当[だとう] ## 穏当[おんとう] ## 順当[じゅんとう] ## 適当[てきとう] ## 適切[てきせつ] ### 使い分け例 **妥当**・・・「妥当な意見。」「妥当性。」 **穏当**・・・「彼の意見はまあ穏当だ。」 **順当**・・・「順当に勝ち進む。」「順当な結果に満足する。」 **適当**・・・「適当な大きさに切る。」「適当な土地が見つかる。」「適当に判断する。」 **適切**・・・「彼の指示は実に適切だ。」「適切な指導。」 ### どう使い分けるか **妥当**は、物事の判断や処置が道理にかなって無理がなく、ぴたりと当てはまる場合に用いる。 **穏当**は〈妥当〉に比べて、多少の相違、不満はあるとしても一応道理にかない、穏やかで当たり障りのないさま。 **順当**は、物事の順序や結果が予想通りに進んだり、道理にかなっていることで、「―に勝ち進む」に〈妥当〉や〈穏当〉は使えない。 **適当**は、ある状態、分量、性質、程度などが物事や人に比較的うまく当てはまる場合に用いる。当てはまる度合がかなり緩やかで、 <307> | 適切 | 穏当 | 順当 | | :--- | :--- | :--- | | **―な結果になる** | ○ | △ | ○ | | **―に判断する** | ○ | ○ | | | **―に事を進める**| ○ | | ○ | | **―を欠く** | | ○ | | | **―性** | ○ | ○ | | 「―にやれ」のような場合、いい加減の意にも用いるが、その場合〈適切〉は使えない。 **適切**は、その場や事物にぴったりと当てはまる場合に用いる。「―な助言」に〈適当〉は使えない。 # 例える[たとえる] ## 例(喩・譬)える/準(擬)なぞえる/見立てる/見なす(看做す) ### 使い分け例 **例える**・・・「彼女の美しさを花に例えるとバラの花だ。」 **なぞらえる**・・・「人生を旅になぞらえる。」 **見立てる**・・・「花びらが舞うのを雪に見立てて、花吹雪と言う。」 **見なす**・・・「正解と見なす。」 ### どう使い分けるか **例える**は、ある事柄を分かりやすく説明するために、それと似通った具体的な物を引き合いに出す場合に用いるが、**なぞらえる**は、二つのものを互いに似通った性質を持つものとして比べてみるという意味を持つ。**見立てる**は、目的を持って、ある物を他の物だと見る、の意。 **見なす**は、やや判断の下しにくいようなものを、仮にそうではないかと判断して取り扱う、また、本来異なるものを法律上同一視する、の意。他の三語と語義的にやや異なる。 # 楽しみ[たのしみ] ## 楽しみ/娯楽[ごらく]/歓楽[かんらく]/享楽[きょうらく]/慰安[いあん] ### 使い分け例 **楽しみ**・・・「読書を楽しみにする。」「孫の成長が楽しみだ。」 **娯楽**・・・「娯楽番組が少ない。」「人の生活に娯楽は必要だ。」 <308> **歓楽**・・・「歓楽におぼれる。」「歓楽街。」 **享楽**・・・「享楽にふける。」「享楽主義。」 **慰安**・・・「従業員の慰安のため本日休業。」「老人を慰安する。」 ### どう使い分けるか **楽しみ**は心が満ち足りてくつろいだ気分で安らいだり、何かをしみじみと味わったり、自分の好きな事をすることなど、一般的に広く用いられる。また楽しい事を期待したり、心待ちにする場合にも用いる。 **娯楽**は〈楽しみ〉と同義の漢語だが、やや遊びの要素が強い感じがある。 **歓楽**は、人の感覚を喜ばせる楽しみに用い、**享楽**もほぼ同義であるが、前者の方がより具体的な場合が多い。 **慰安**は、自分でなく他人の労をねぎらったり、心を慰めたりする場合に用いる。 # 多分[たぶん] ## 多分[たぶん] ## 恐らく[おそらく] ## どうやら ## 蓋し[けだし] ### 使い分け例 **多分**・・・「多分成功するだろう。」「多分大丈夫でしょう。」 **恐らく**・・・「午後は恐らく雨になるでしょう。」「恐らく明日は行くことになろう。」 **どうやら**・・・「どうやら救助されたようだ。」「どうやら雨らしい。」 **蓋し**・・・「けだし名言である。」 ### どう使い分けるか **多分**は、副詞としては、かなり確度の高い推量を表す場合に使う。 **恐らく**もほぼ同義であるが、〈多分〉のように名詞の用法はなく、また、やや文章語的である。この二語は推量の助動詞「う」「よう」などを伴うのが普通。 **どうやら**は、十分にはっきりした根拠ではないけれど、周りの様子や状況から、何となくそうではないかと推定する(推量に基づき判断を下す)場合に用い、推量ではなく、推定の助動詞「らしい」「ようだ」「そうだ」などを伴うのが普通である。ほかに、何とか・どうにかの意もある。 <309> **蓋し**は、かたい文章語で他の三語より更に確度が高く、十中八九まず間違いないだろうという、確信的な推定を表す。断定の助動詞を伴うことが多い。 | | ―成功するだろう | 明日は―雨だろう | ―失敗するようだ | ―暮らしを頂戴している | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **多分** | ○ | ○ | ○ | | | **恐らく** | ○ | ○ | ○ | | | **どうやら** | ○ | ○ | ○ | ○ | # 食べ物[たべもの] ## 食べ物[たべもの] ## 食い物[くいもの] ## 食物[しょくもつ] ## 食料[しょくりょう] ## 食糧[しょくりょう] ### 使い分け例 **食べ物**・・・「食べ物を粗末にするな。」 **食い物**・・・「食い物の文句を言うな。」 **食物**・・・「米を主要な食物とする国民。」 **食料**・・・「食料を買いだめする。」 **食糧**・・・「食糧の生産が落ちる。」 ### どう使い分けるか **食べ物**は日常生活のなかで最も広く用いられ、人間や動物の生命維持に必要な穀類、野菜、肉など食べられる物すべてを言う。そのまま食べられる物という意味で、すでに料理した物、加工した物を言う場合が多い。 **食い物**は、〈食べ物〉と同義。本来敬語であった〈食べ物〉が普通の語になったのにつれ、こちらは今では、ややぞんざいな言葉になった。 **食物**は、〈食べ物〉がそのまま食べられる物を指す場合が多いのに対し、そういう限定なしに一切の食べられる物を言う。 **食料**は〈食物〉と同義にも用いるが、缶詰めとか魚、生野菜、肉など、主食以外の食物を言うことが多い。 **食糧**は、主に米、麦など主食となる食物を言う。 # 食べる[たべる] ## 食べる[たべる] ## 食う[くう] ## 食らう[くらう] ## 食する[しょくする] ## 召し上がる[めしあがる] ## 頂く[いただく] ## 喫する[きっする] <310> ### 使い分け例 **食べる**・・・「ご飯を食べる。」 **食う**・・・「そろそろ飯でも食おうか。」 **食らう**・・・「大飯を食らう野郎だ。」「酒を食らう。」 **食する**・・・「米を食する民族。」 **召し上がる**・・・「どうぞお先に召し上がって下さい。」 **頂く**・・・「おいしく頂きました。」 **喫する**・・・「茶を喫する。」「たばこを喫する。」「大敗を喫する。」 ### どう使い分けるか **食べる**は、もとは、〈食う〉「飲む」の謙譲語・丁寧語だったが、現在その意識は薄れ、日常最も広く用いられる。また現在、飲み物の場合は用いない。 **食う**は、〈食べる〉に比べ、現在いくぶん粗野な感じに響く。 **食らう**は〈食う〉よりさらにぞんざいで粗野な感じがある。 **食する**は漢語的な文章語で、普段の会話には用いない。 **召し上がる**は、〈食う〉の尊敬語。**頂く**は同じく謙譲語・丁寧語。 **喫する**は、飲食する意の非常に固い文章語で、転じて「大敗を―」のようにも用いる。 # だます ## 騙す[だます] ## 欺く[あざむく] ## ごまかす ## 担ぐ[かつぐ] ## 偽る[いつわる] ## 誑かす[たぶらかす] ### 使い分け例 **だます**・・・「だまして、にせものを買わせる。」「子供をだまして寝かせる。」 **欺く**・・・「人目を欺く明るさ。」「親を欺いて、こっそり金を持ち出す。」 **ごまかす**・・・「税金をごまかす。」「話を、笑ってごまかす。」「数をごまかす。」 **担ぐ**・・・「彼は人を担ぐのがうまい。」「今度は、まんまと担がれたな。」 **偽る**・・・「名前を偽る。」「所得を偽って申告する。」「自分を偽る。」 **たぶらかす**・・・「女にたぶらかされるな。」「彼をたぶらかして金を巻き上げる。」 ### どう使い分けるか **だます**は、本当でない事や物を <311> 本当だと思い込ませる意。 **欺く**も、〈だます〉とほぼ同義であるが、すでにその人が持っていた判断や期待に背いてだます意味合いを持つ。〈だます〉より文章語的である。 **ごまかす**は、本当の事や内容、姿などを、その場や表面を取り繕って隠したり、変えたりする意で〈だます〉〈欺く〉の対象語が人間であるのに対し、物事や数量のことが多い。 **担ぐ**は、あまり事は深刻ではない、だます側にそれほど悪気があるわけではなく、まただまされる側もそれほど痛手を受けるのでもない場合に用いる。 **偽る**は、〈だます〉〈欺く〉と同義でも使うが、〈ごまかす〉のように本心や事実と食い違うことを言ったりしたりするという、行為の不真実に重点が置かれた使い方が多い。文章語。 **たぶらかす**は、うまいことを言ったり、ごまかしたりして、相手の正常な判断を迷わしたり、失わせる場合に用いる。 | | 他人を― | 身分を― | 金を― | 期待を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **だます** | ○ | | ○ | | | **欺く** | ○ | | | ○ | | **ごまかす** | | | ○ | | | **偽る** | | ○ | | | # 駄目[だめ] ## 駄目[だめ] ## 台無し[だいなし] ## ふい ## おじゃん ### 使い分け例 **駄目**・・・「ただ口で言っても駄目だ。」「甘やかして子供を駄目にする。」「もうこれ以上どうにも駄目だ。」 **台無し**・・・「今までの努力も、これで台無しだ。」「しみが付いて、洋服が台無しになった。」 **ふい**・・・「せっかくのデートをふいにする。」「縁談がふいになる。」「今までの苦労がふいになる。」 **おじゃん**・・・「雨で試合がおじゃんになった。」「彼の一言で計画はおじゃんだ。」 ### どう使い分けるか **駄目**は、かなり広く用いられる。何かをしても、予想通りにならなかったり、思うような結果になら <312> なかったり、好ましくない結果になることの意に用いる。また役に立たなくなったり、してはいけないこと、やってもできない、不可能なことの意にも用いる。 **台無し**は、〈駄目〉が人、物、事柄のいずれにも用いるのに対し、物、事柄が駄目になることで、人には使えない。〈駄目〉より、更にその程度がひどい状態になることを表し、特に何かをした結果に焦点を合わせて用いる。 **ふい**は、それまでの努力や予定、もう少しで手に入る物や事柄が急に一切失われる意に用いる。 **おじゃん**も〈ふい〉とほぼ同義。計画し期待していたことが駄目になる意で、おしまいだという意味合いを含む。くだけた表現。 # 試す[ためす] ## 試す[ためす] ## 試みる[こころみる] ## 試験[しけん]する ## 試行[しこう]する ## 確かめる[たしかめる] ### 使い分け例 **試す**・・・「腕前を試す。」 **試みる**・・・「実験を試みる。」 **試験する**・・・「耐久性を試験する。」 **試行する**・・・「幾度も試行する。」 **確かめる**・・・「事の真偽を確かめる。」 ### どう使い分けるか いずれも事の真偽、良否、実力などを実際に当たって確かめてみる場合に用いるが、**試す**は、すでに事前に分かっている実力、程度などが実際にその通りかどうかを調べてみるという意味合いを強く持つ。 それに対して**試みる**は、あらかじめどんな結果になるか分かっていない場合、不確実なものを調べる場合に用いることが多い。したがって、〈試みる〉は、実際に確かめようとする行為にウエイトが置かれ、〈試す〉は、自分でそうだと認知する側にウエイトが置かれる。「切れ味を試す」に、〈試みる〉は使えず、「試し切りを試みる」とは言える。 **試験する**は、物の性質や状態など、あるいは人の能力、知識などを調べ、検査する、の意。あらかじめ定められた順序、規定などに <313> 従って行われる場合に用いることが多い。 **試行する**は、〈試みる〉の意のかたい漢語的文章語。「試行を重ねる」とか「試行錯誤」などの用法が多い。 **確かめる**は、〈試す〉とほぼ同義。単に人や物の能力、性能などに限らず、事柄全般の事実関係を確認する場合に広く用いる。「能力を試す」に、〈確かめる〉は使えるが、「事実を確かめる」に〈試す〉は使えない。 | | うまく行くか― | 新しい方法を― | 実力を― | 彼の真意を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **試す** | ○ | | ○ | | | **試みる** | ○ | ○ | | | | **試験する** | ○ | | ○ | | | **試行する** | | ○ | | | | **確かめる** | ○ | | ○ | ○ | # ためらう ## ためらう ## 怯む[ひるむ] ## たじろぐ ## 躊躇う[ためらう] ## 躊躇[ちゅうちょ]する ### 使い分け例 **ためらう**・・・「馬に乗るのをためらう。」「結婚をためらう女性が増えたようだ。」 **怯む**・・・「敵の攻撃にもひるむことなく前進する。」「どんな困難にもひるまない。」 **たじろぐ**・・・「相手の剣幕にたじろぐ。」 **躊躇する**・・・「参加を躊躇する。」「急激な事態の変化に躊躇する。」 ### どう使い分けるか **ためらう**は、何か事をする場合、しようかどうかと迷って行動に踏み切れず、ぐずぐずする場合に用いる。 **躊躇する**は、〈ためらう〉の意のかたい漢語的文章語。 **怯む**と**たじろぐ**は、ともに相手の気力や威勢に押されて、今までの姿勢が崩される場合に用いるが、〈たじろぐ〉がその外面的姿勢、態度に重点が置かれているのに対し、〈怯む〉は、それによって気力が失われるという、心の動揺に重点が置かれる。「行くのをためらう」に〈たじろぐ〉も〈怯む〉も使えないように、〈ためらう〉はいまだ行動に踏み切れない状態であるが、 <314> この二語はすでに一歩踏み出していたことが前提である。 # 段段[だんだん] ## 段段[だんだん] ## 次第に[しだいに] ## 漸く[ようやく] ## 追い追い[おいおい] ## 漸次[ぜんじ] ### 使い分け例 **段段**・・・「空が段々明るくなる。」 **次第に**・・・「次第に成長する。」 **漸く**・・・「目的地にようやくたどり着く。」「ようやく日が暮れる。」 **追い追い**・・・「天気は追い追い回復するだろう。」 **漸次**・・・「手術の後、漸次快方に向かう。」 ### どう使い分けるか **段段**は、物事の状態がある方向に向かって順々にゆっくり移り進んで行く様子を表す。 **次第に**もほぼ同義であるが、やや改まり、文章語的。 **漸く**は、長い時間かかったり、手間取ったりした後、待っていたことが実現するような場合に用いる。 **追い追い**は、〈段段〉〈次第に〉とほぼ同義であるが、「段々回復してきた」に〈追い追い〉が使えないように、これからそのようになる、という場合に用いる。 **漸次**は、かたい文章語。 > [注意] 〈漸次〉をザンジと言うのは誤り。 # 違い[ちがい] ## 違い[ちがい] ## 差[さ] ## 差異[さい](差違) ## 相違[そうい](相異) ## 格差[かくさ] ## 較差[こうさ] ## 食い違い[くいちがい] ### 使い分け例 **違い**・・・「考えの違い。」「値段の違い。」「性質の違い。」「色の違い。」 **差**・・・「差が開く。」「貧富の差。」 <315> **差異**……「生活習慣の差異。」 **相違**・・・「事実と相違する。」「見解の相違。」「相違ありません。」 **格差**・・・「大卒と高卒の賃金格差。」 **較差**・・・「一日の気温の較差。」 **食い違い**・・・「主張の食い違い。」 ### どう使い分けるか **違い**は、他の事物と性質、状態、程度、数量などが同じでない意で広く用いられる。 **差**は、大小・高低・優劣・価値などの隔たりで、〈違い〉より意味が狭い。 **差異**は、〈違い〉と同様な意の漢語だが、単純な具体的数量の差には使わない。かたい文章語。 **相違**も〈差異〉と同様の漢語だが、特に二つの事物と比較してその間で違うという意識が強い。〈違い〉と同じく「―ない」の言い方がある。また、このグループ中ただ一つ「―する」と言える。やや文章語的。 **格差**は、価格、資格、品質、等級など、格付けの上での違いを表し、**較差**は、ある範囲の中での最大と最小、最高と最低など、両極にあるものを比較したときの違いを表す。 **食い違い**は、本来同じであってほしい、うまくかみ合ってほしいものが、そうではない場合に用いる。 | | 二人の意見に―がある | 各国の文化に―がある | 主張と行動に―がある | 箱の重量に―がある | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **違い** | ○ | ○ | ○ | ○ | | **差異** | ○ | ○ | | | | **相違** | ○ | | ○ | | | **格差** | | ○ | | | | **食い違い** | ○ | | ○ | | # 力一杯[ちからいっぱい] ## 力一杯[ちからいっぱい] ## 精一杯[せいいっぱい] ## 極力[きょくりょく] ## 力の限り[ちからのかぎり] ### 使い分け例 **力いっぱい**・・・「力いっぱい押す。」「力いっぱい働く。」 **精一杯**・・・「精いっぱいの努力をする。」「精いっぱい譲歩した。」 **極力**・・・「隣国の改革を極力支援する。」 **力の限り**・・・「力の限り叫ぶ。」 ### どう使い分けるか **力いっぱい**は、あるだけの力を出 <316> して能動的に何かをする場合に使う。 **精いっぱい**は、〈力いっぱい〉と同じようにも使うが、「―の譲歩」のように、能動的な力でなく、耐えられる限度ぎりぎりまでの意味合いがあり、その場合〈力いっぱい〉は使わない。 **極力**は、ややかたい漢語表現。精神的な、または抽象的な努力をする場合に用いることが多い。 **力の限り**は、〈力いっぱい〉とほぼ同義であるが、やや文章語的。 # 知識[ちしき] ## 知識[ちしき] ## 知見[ちけん] ## 教養[きょうよう] ## 素養[そよう] ## 蘊蓄[うんちく] ### 使い分け例 **知識**・・・「幅広い知識を持つ。」 **知見**・・・「知見のある人。」 **教養**・・・「あの男は教養がない。」 **素養**・・・「彼には文学の素養がある。」 **蘊蓄**・・・「蘊蓄を傾ける。」 ### どう使い分けるか **知識**は、ある事物についていろいろと知ることや、その知られた内容を言う。 **知見**は、知識と共にそれに基づくものの考え方、見解を含み、「彼とはーが異なる」と言うとき、〈知識〉は使えない。 **教養**は、いろいろな知識や学問を身に付けることによって養われる心の豊かさや品位を表す。 **素養**は、日ごろの練習や訓練、修養によって身に付けた技能、知識、教養を表す。「詩の知識」と言うと、詩に関する単なる知識の意だが、「詩の素養」と言うと、知識だけでなく創作も含めた、より奥行きのある能力を言う。 **蘊蓄**は、学問や技芸に関する、更により深い知識を言い、用法はそれだけ限られてくる。 # 地方[ちほう] ## 地方[ちほう] ## 地帯[ちたい] ## 地域[ちいき] ## 地区[ちく] ## 区域[くいき] ### 使い分け例 **地方**……「東北地方。」「地方へ転勤する。」 <317> 「地方選出議員。」 **地帯**…「豪雪地帯。」「工業地帯。」「安全地帯。」 **地域**・・・「地域の暮らしを守る。」「地域に根ざした活動。」「汚染地域。」 **地区**…「文教地区。」「地区代表。」 **区域**…「遊泳禁止の区域。」 ### どう使い分けるか **地方**は、地理的に区分されたある一定の地域、また、ある方面の土地を指して言う。また「―の文化」と言うように、中央すなわち首都及びそれに準ずる大都市に対して、そのほかの地域や田舎という意味でも使われる。 **地帯**は、〈地方〉よりも範囲は狭いが、それでもある程度の広がりを持ち、しかも特定の自然環境、産業、目的などの条件、性質を持つ地域を言う。 **地域**は、「―社会」というように、地形・文化・行政など人間の生活の場として区画された土地を言う場合に使う。 **地区**は、人間の生活と密接に結びついたある目的のために人為的に区分された一定区域の土地を言う。 **区域**は、区切りをした範囲で、地区と同様にも使うが、特に土地とは限らないでも使われる。 # 中止[ちゅうし] ## 中止[ちゅうし] ## 中断[ちゅうだん] ## 中絶[ちゅうぜつ] ## 休止[きゅうし] ### 使い分け例 **中止**・・・「雨で旅行が中止になる。」「会議を中止する。」 **中断**・・・「臨時ニュースで番組が中断する。」「交渉は一時中断となる。」 **中絶**・・・「騒音で演奏を中絶する。」「中絶の手術をする。」 **休止**・・・「雪のため運転を休止する。」 ### どう使い分けるか **中止**は、行っていたことを途中でやめたり、また予定していたことが何かの理由で取りやめになったりすることを言う。〈中止〉の場合は、その後がすぐには続かず、そこで一応事が終わってしまうのに対し、**中断**は一時的に途切れるが、またその後で続くと予期され <318> る場合である。 **中絶**は、それまで行われていたことが途中で止まり、絶えてしまうことで、〈中止〉では再開の見通しがないわけではないが〈中絶〉の場合それを考えていない。「妊娠中絶」の略として用いることが多い。 **休止**も、続けていた何かの活動や作用をやめることで、ある区切りや単位のはじめからやめる場合に使い、その途中からやめる場合には使わない。 # 中途半端[ちゅうとはんぱ] ## 中途半端[ちゅうとはんぱ] ## どっち付かず[どっちつかず] ## 不徹底[ふてってい] ## 宙ぶらりん[ちゅうぶらりん] ### 使い分け例 **中途半端**…「仕事が中途半端に終わる。」 **どっち付かず**・・・「どっち付かずの態度では困る。」 **不徹底**・・・「連絡が不徹底で申し訳ない。」 **宙ぶらりん**・・・「彼の反対で計画が宙ぶらりんになる。」 ### どう使い分けるか **中途半端**は、物事がやりかけになっていて未完成の状態、また〈どっち付かず〉であいまいなさまを言う日常語。漢語ではない。 **どっち付かず**は、二つの内どちらかに決めなければならないのに、なかなか決まらないようなあいまいな態度などに用いる。 **不徹底**は、ややかたい漢語で文章語。物事のやり方や、手順に関して、十分でなく、中途半端になる場合に使うことが多い。 **宙ぶらりん**は、何か計画していたり、予定していたことが急に進まなくなり、といってはっきりやめるでもない状態になってしまう場合に用いる。 # 調子[ちょうし] ## 調子[ちょうし] ## 具合[ぐあい] ## 塩梅(按排・按配)[あんばい] ## コンディション <319> ### 使い分け例 **調子**・・・「バイオリンの調子を合わせる。」「いばった調子でものを言う。」「体の調子がよい。」「ふとした調子に忘れる。」 **具合**・・・「うまい具合に彼をだますことができた。」「腹の具合が悪い。」 **あんばい**・・・「味のあんばいがよい。」「近頃胃のあんばいが悪い。」 **コンディション**・・・「絶好のコンディションで試合に臨む。」 ### どう使い分けるか **調子**と**具合**は、人間の体や物事の運び、動きの状態を表す場合、ほぼ同義で、どちらでも同じように使える。しかし、音の高低とか人間の声や言葉、文章などの持つ独特のニュアンスといった意味の〈調子〉に、〈具合〉は使えない。また物事のふとしたはずみとか勢いを表す意味の〈調子〉、例えば「―が出る」とか「そのー」という場合にも〈具合〉は用いない。 〈具合〉は、「機械の動きが悪い」のように、物事のより具体的で動的な状態に用いることが多く、その場合〈調子〉は使えない。また、「手ぶらではーが悪い」という場合にも〈調子〉は用いない。 **あんばい**は、「塩梅」と書く場合は、味付けの加減の意、転じて物事の具合・加減・調子。「按排・按配」と書く場合、「仕事の進め方の一を考える」と言うように、ほかとのバランスを取りながら配置したり処理することの意。 **コンディション**は、何かを行うときの、人の健康状態や調子、また物の状態のよしあしを表す。 # 長所[ちょうしょ] ## 長所[ちょうしょ] ## 美点[びてん] ## 利点[りてん] ## 取り柄[とりえ] ### 使い分け例 **長所**・・・「長所を生かす。」 **美点**…「彼女の美点は優しさだ。」 **利点**・・・「この新車には利点が少ない。」 **取り柄**・・・「何も取り柄がない。」 ### どう使い分けるか いずれも備えている性質や働きの <320> 中の優れている点を表す。 **長所**は人にも機械などの物の場合にも広く用いるが、**美点**は人について使うだけで物に対して使わない。 **利点**は、そのものがもつ自分にとっての有利な点の意で、〈美点〉と逆に物や事について使うだけで、人の場合は用いない。 **取り柄**は、〈長所〉とほぼ同義であるが、〈長所〉が、人や物、事柄などのいずれにも用いられるのに対して、〈取り柄〉は人について用いることが多い。しかも「正直だけが彼のーだ」のように、全体としてはあまりぱっとしないが、その中でわずかに一つ、二ついい点があるというような場合に使うことが多い。 # ちょうど ## 丁度[ちょうど] ## まるで ## 恰も[あたかも] ## 宛ら[さながら] ### 使い分け例 **ちょうど**・・・「彼の濃いひげはちょうどブラシのようだ。」「旅行の費用はちょうど十万円だ。」「体にちょうど合う服。」 **まるで**・・・「まるで夢のような話。」「まるで話にならない。」 **あたかも**・・・「あたかも雲のようにわき起こる。」「時あたかも満月の夜。」 **さながら**・・・「事故現場は地獄絵さながらである。」「さながらピエロのように化粧の濃い女だ。」 ### どう使い分けるか **ちょうど**は、数、大きさ、位置、時刻などが自分の望みや予測、あるいは一定の基準にぴったり合うさまを言う意味もあるが、ここの他の語と同様、比喩として物事が他のものとほとんど同じである場合にも用いる。何か自分の意識の中にイメージがあってそれとぴったりという意味合いが強い。 **まるで**は、たとえられる二つのものが全体として完璧に同じようであることを表す。「・・・のようだ」を伴うことが多い。また、「・・・ない」という否定語を伴って、少しもその状態でないことを表す。 **あたかも**は、比喩用法の場合のくちょうど〉とほぼ同義だが、文章語的。 <321> | | ―鳥のように飛ぶ | ―身体に合う服 | 時は―夏である | 実物―の迫力 | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **ちょうど** | ○ | ○ | ○ | | | **まるで** | ○ | | | ○ | | **あたかも** | ○ | | | | | **さながら** | | | ○ | ○ | 数・大きさ・位置などがぴったり合うさまを言う用法はない。ただ「時―」でちょうどその時の意を表す用法があるが、古風な文章語である。 **さながら**は、そっくりそのままの意。「…さながらの」の言い方がある。文章語的。 # 直接[ちょくせつ] ## 直接/直截[ちょくせつ]/直[じか]に/ダイレクト ### 使い分け例 **直接**・・・「彼に直接話をする。」「直接税。」⇔間接。 **直截**・・・「表現が直截である。」 **じかに**・・・「火でじかに焼く。」 **ダイレクト**・・・「ボールがダイレクトに飛ぶ。」「ダイレクトメール。」 ### どう使い分けるか **直接**は、間に他の人や物を置いたり挟んだりしないで、対象にじかにかかわる場合に用いる。 **じかにも**ほぼ同義であるが、〈直接〉が抽象的な関係やかかわり方にも使うのに対して、〈じかに〉は具体的な動作に重点が置かれ、より口頭語的である。 **直截**は、ためらうことなくずばりと表現したり、直ちに物事を決める意に用い、かたい文章語。 **ダイレクト**は、直接的の意。「―メール」は、マスコミなどの媒体なしに直接客に郵送される広告。 # 直観[ちょっかん] ## 直観/直感[ちょっかん]/勘[かん]/第六感[だいろっかん]/インスピレーション/閃き[ひらめき] ### 使い分け例 **直観**・・・「真理を直観する。」 **直感**・・・「危険を直感する。」 **勘**・・・「勘の鋭い男。」「打者としての勘がいい。」 **第六感**・・・「第六感が働く。」 <322> ### 使い分け例 **インスピレーション**・・・「インスピレーションを受ける。」 **ひらめき**・・・「この作品には、彼の才能のひらめきが感じられない。」 ### どう使い分けるか **直観**は、考えたり思い巡らしたりの推理をしないで、直接、瞬間的に物事の本質をとらえること。かたい文章語。 **直感**は、理性によらず、直接感覚的にとらえること。直観ちょっかんよりは日常的な語。 **勘**は、理性でも感覚(五感)でもないような何かによって、直接、瞬間的に物事の本質や意味、事情などを素早く感じ取る心の働き、能力を言う。直感ちょっかん以上に日常語的だが意味はあいまいである。 **第六感**はかんとほぼ同義であるが、「―が鋭い」とは言わない。かん以上に非感覚的なものという感じがある。 **インスピレーション**は、霊感に当たる外来語で、まるで天からの啓示ででもあるかのように、突然ひらめく考えや判断。超越的な存在からの働きという意味合いを持ち、「―を受ける」「―がわく」という使い方をすることが多い。 **ひらめき**は、優れた才能や鋭い感覚から、一瞬火花のように感じられる。その才能の輝き、感覚の鋭さを言う。したがって、他の類語と用法がやや異なる。 # 沈黙[ちんもく] ## 沈黙[ちんもく] ## 無言[むごん] ## 黙秘[もくひ] ## だんまり ## 無口[むくち] ## 寡黙[かもく] ### 使い分け例 **沈黙**・・・「沈黙を守る。」「非難を恐れ沈黙する。」 **無言**・・・「無言の行。」「無言で見つめ合う。」 **黙秘**・・・「取り調べに黙秘する。」「黙秘権。」 **だんまり**・・・「だんまりを決め込む。」 **無口**・・・「無口な女。」⇔おしゃべり **寡黙**・・・「彼は寡黙な人である。」 <323> ### どう使い分けるか **沈黙**・**無言**は、共に黙って何も言わないことだが、前者は「―する」と言い、後者はそう言わない。逆に後者の「―で見つめる」に前者は当てられない。 **黙秘**は、質問に対して何も言わないで黙っていること。特に取り調べなどで自分に不利になるようなことは言わないで沈黙を守る、という場合に用いる。 **だんまり**も、黙秘もくひとほぼ同義であるが、黙秘もくひが法律用語でもあるかたい文章語であるのに対して、だんまりだんまりは古風だが平俗な感じの言葉である。 **無口**は、無言むごんのように黙って何も言わないということではなく、口数が少ないことで、主にその人の性格を言う。 **寡黙**も無口むくちとほぼ同義であるが、その人の性格を言う場合にも、そのときの状態を言う場合にも、どちらが多いということなく使う。 無口むくちは日常的な口頭語で寡黙かもくは漢語の文章語。 # 対[つい] ## 対[つい] ## 組[くみ] ## 番[つが]い ## ペア ## コンビ ## ツイン ### 使い分け例 **対**・・・「対の湯飲み茶碗。」 **組**・・・「五枚の座布団が組になっている。」「二人一組。」「隣組。」 **つがい**・・・「つがいの小鳥。」 **ペア**・・・「ペアで踊る。」「ペアの座席。」 **コンビ**・・・「あの二人はいいコンビだ。」 **ツイン**・・・「ツインタワー。」「ツインベッド。」「ツインの部屋。」 ### どう使い分けるか **対**は、物や人が二つそろって一組になる場合に用いるが、**組**は二つ以上幾つかの物や人が一緒になって一組になっている場合に用いる。「組体操」についは使えない。 <324> **つがい**は、特に一組となった動物の雄と雌を言う。 **ペア**は、ついとほぼ同義の外来語。二つまたは二人そろって一組になることで、意味の上では**コンビ**も同じであるが、コンビコンビは英語のcombinationから来ていることからも分かるように、両者の間の結びつきに重点を置いた表現。物にはあまり用いられない。 **ツイン**は、対になっていることで、特にホテルで一室に二つベッドを備えていること、またその部屋の意でよく使う。 # 遂[つい]に ## 遂[つい]に ## 結局[けっきょく] ## 詰[つ]まる所[ところ] ## とうとう ## 所詮[しょせん] ### 使い分け例 **遂に**・・・「遂に山頂にたどり着いた。」「彼は遂に姿を現さなかった。」 **結局**・・・「結局そうせざるを得ない。」「結局は負けるさ。」 **詰まる所**・・・「つまるところ本人次第だ。」 **とうとう**・・・「とうとう合格した。」「とうとうやつも観念したか。」 **所詮**・・・「所詮かなわぬ相手だ。」「所詮蛙の子は蛙か。」 ### どう使い分けるか **遂に**は、それまで長い時間がかかったり、努力を続けたりして、ある事態となる意。また、下に否定的表現を伴うと、その否定的状態が最後まで続いてしまったことを表す。 **とうとう**もほぼ同義であるが、遂についによりもその事柄への期待感が濃厚で、長い時間の末やっとそうなったという気持ちが強い。 **結局**は、その事柄に至るまでに途中いろいろな方法・手段を試みたり、さまざまな経過の後、最後はそうなってしまうという意。 **詰まる所**は、あれこれいろいろ考えてみたが、それらを最終的にまとめた結果、要するにこういうことになるという場合に用いる。結局けっきょくとほぼ同義。 **所詮**は、詰まる所つまるところの意のかたい漢語。否定的な結論や判断を伴うことが多い。 <325> # 使う[つかう] ## 使う[つかう] ## 遣[つか]う ## 用[もち]いる ## 使用[しよう]する ## 費[ついや]す ### 使い分け例 **使う**・・・「定規を使う。」「人をあごで使う。」「トリックを使う。」 **遣う**・・・「人形を遣う。」「周りに気を遣う。」 **用いる**・・・「竹を用いた細工物。」「学者を用いる。」「新工法を用いる。」「部下の意見を用いる。」 **使用する**・・・「ワープロを使用する。」「使用者。」「使用人。」 **費やす**・・・「労力を費やす。」「時間を費やす。」 ### どう使い分けるか **使う**は、物や人を働かせ、ある目的のために役立たせる意。 **遣う**は物事を工夫して用いる意。 **用いる**も道具や方法などには使うつかうと同じように使えるが、人や意見を用いるもちいるという場合に見られるように、機能・能力などを尊重して使うという意識を伴うことが多い。やや文章語的。 **使用する**は、使うつかうと同義の漢語的な言い方で文章語的。「使用者」は使う人であり、「使用人」は使われる人である。 **費やす**は、金銭・労力・時間・言葉など大切なものを使う場合に用いられ、その際、使って無くなるという点にウエイトが置かれる。 | | 竹を細工に | 労力を― | 従業員を見る | 部下の意見を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | 使う | ○ | ○ | ○ | ○ | | 用いる | ○ | △ | ○ | ○ | | 使用する | ○ | | | | | 費やす | | ○ | | | # 疲れる[つかれる] ## 疲[つか]れる ## くたびれる ## 疲労[ひろう]する ## ばてる ## 困憊[こんぱい]する ### 使い分け例 **疲れる**・・・「体が疲れる。」「読書に疲れる。」「機械が疲れる。」 **くたびれる**…「働きすぎてくたびれる。」 **疲労する**・・・「心身ともに疲労する。」 <326> 「この服もくたびれてきた。」 **ばてる**・・・「徹夜してばてる。」 **困憊する**・・・「疲労困憊する。」 ### どう使い分けるか **疲れる**は、何かを使い過ぎ、負担をかけたために、もとの働きが鈍ったり衰えたり、元気が無くなったりする、の意で、肉体・精神両面に使う。また、ある物事を長く続けて嫌になるという場合も、「ゲームにー」のように用いる。また、比喩的に機械・物質などの機能低下にも使う。 **くたびれる**は、疲れるつかれるのややくだけた言い方であるが、肉体の疲れには使っても、「心がー」とは言わない。また体全体の疲れを表しても、「目がー」とはあまり言わないように、部分には使わない。また、物など長く使って、古くなって弱る場合にも用いる。 **疲労する**は、疲れるつかれるの漢語的な言い方で、文章語。 **ばてる**は、もうこれ以上動けなくなるほど疲れ果てる意の俗語。 **困憊する**は、ばてるばてるとほぼ同義のかたい漢語的な言い方で文章語。単独で用いるよりも、「疲労―」と、重ねて用いる場合が多い。 # 付[つ]き合[あ]い ## 付[つ]き合[あ]い ## 交[まじ]わり ## 交際[こうさい] ## 交友[こうゆう] ### 使い分け例 **付き合い**・・・「彼とは長年の付き合いである。」「付き合いの悪い男。」 **交わり**・・・「交わりに加わる。」「交わりを結ぶ。」 **交際**・・・「彼との交際を断る。」 **交友**……「交友関係は多くない。」 ### どう使い分けるか **付き合い**は、**交際**とほぼ同義のくだけた和語。付き合いつきあいは、人と人とのつながりの意であるが、交際こうさいは、お互いに親しい気持ちを抱いている人と人とのかかわり合い、の意である。付き合いつきあいは本心はそうしたくないが、義理で交際するという意にも用いるが、交際こうさいにはそのようなマイナスイメージはない。 <327> **交わり**は、付き合いつきあいに比べ、より狭い範囲での親密な間柄、仲間としての関係に多く用いる。 **交友**は、交際こうさいが幅広い一般の人間関係を言うのに比べて、その範囲が狭く、友人としての関係に力点の置かれる語。 # 次々[つぎつぎ] ## 次々[つぎつぎ] ## 続々[ぞくぞく] ## 立[た]て続[つづ]け ## 続[つづ]けざま ## 矢継[やつ]ぎ早[ばや] ## 陸続[りくぞく] ## 連綿[れんめん] ### 使い分け例 **次々**・・・「人が次々に死んでいった。」 **続々**……「大判小判が続々出てきた。」 **立て続け**・・・「立て続けに負ける。」 **続けざま**・・・「車が続けざまに追突する。」 **矢継ぎ早**・・・「矢継ぎ早に質問する。」 **陸続**・・・「群集が陸続と詰め掛ける。」 **連綿**・・・「数世紀に渡り連綿と続いている。」「連綿体。」 ### どう使い分けるか **次々**は、物事がある順序をもって後から後から続くことで、時間的連続性に重点が置かれているのに対して、**続々**は数量の多さに重点を置いた表現。 **立て続け**は、**続けざま**とほぼ同義で、ある物事が連続して起こったり行われたりする場合に用いるが、立て続けたてつづけの方がより短時間のうちに頻繁に連続して起こる度合いを強調する感じがある。 **矢継ぎ早**は、主体の働きかけや意思がより積極的な場合、つまり話とか質問のように言葉を用いた積極的な行為に多く用いられる。 **陸続**は、ひっきりなしに続くさまの意のかたい文章語。 **連綿**は、物事が長く続いて絶えることのない意でやはり文章語。 # 尽[つ]きる ## 尽[つ]きる ## 果[は]てる ## 無[な]くなる(亡くなる) ## 払底[ふってい]する ### 使い分け例 **尽きる**・・・「食べ物が尽きる。」「愛想が尽きる。」「悲惨の一語に尽きる。」 **果てる**・・・「旅が果てる。」「宴が果てる。」「異国に果てる。」 <328> **無(亡)くなる**…「気力が無くなる。」「時間が無くなる。」「父が亡くなった。」 **払底する**・・・「備蓄の原油が払底する。」 ### どう使い分けるか **尽きる**は、今まであったものがだんだん減って無くなる意。「・・・に尽きる」の形で、その事柄が徹底している意にも用いる。 **果てる**も、ずっと続いていた物事が終わる意に用いるが、尽きるつきるよりも行動や行為について言うことが多い。死ぬという意にも用いる。やや文章語的。 **無くなる**は、尽きるつきるよりくだけた表現で日常よく用いる。人が死ぬ意では「亡」の字を書く。 **払底する**は、すっかり無くなるの意のかたい文章語。 〔注意〕果てるはてるは、「困り果てる」のように動詞連用形について、「すっかり・・・する」の意に用いることも多い。 # 償[つぐな]い ## 償[つぐな]い ## 代償[だいしょう] ## 弁償[べんしょう] ## 補償[ほしょう] ## 賠償[ばいしょう] ## 報償[ほうしょう] ### 使い分け例 **償い**・・・「償いを求める。」「罪の償い。」 **代償**・・・「壊したガラスの代償を払う。」「勝利の代償は大きかった。」 **弁償**・・・「弁償を申し出る。」「無くした本を弁償する。」 **補償**・・・「遺族が補償を要求する。」「損害を補償する。」 **賠償**・・・「損害賠償。」「相手国の被害を賠償する。」 **報償**・・・「僅少な報償金。」「国家が報償する。」 ### どう使い分けるか **償い**は、①相手に与えた損失に対して金品を出すこと。②自分の犯した罪や過ちを金品や労力によって埋め合わせをすることで、この②の意味は他の五語にはない。 **代償**には、償いつぐないの①のほかに、本人の代わりに償いをすること、またある事を成就するために必要な犠牲や損害の意もある。 <329> | | 相手に―を要求する | 損害の―をする | 隣国に―を請求する | 紛失本の―をする | 犯した罪の―は大きい | 幸福の―を求める | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **償い** | ○ | | | | | | | **代償** | | | | | ○ | ○ | | **弁償** | ○ | △ | | ○ | | | | **補償** | ○ | ○ | ○ | | | | | **賠償** | ○ | ○ | ○ | | | | 人の代わりに償いをすること、またある事を成就するために必要な犠牲や損害の意もある。 **弁償**も**補償**も**賠償**も基本的な意味は〈償い〉の①と同じであるが、〈弁償〉は個人的な、小さな損害の場合に使い、六語中最も日常語的である。〈補償〉は大きな事故や、公的な性格のものに使う。〈賠償〉は法律語としては他人の権利を棄損した場合に、また国家どうしの場合に使う。 **報償**は国や公共団体が弁償・賠償することで、この語には報復という意味もある。かたい文章語。 〔注意〕〈代償〉は「―する」という形では使わない。 # 作る[つくる] ## 作る/造る/拵える[こしらえる]/制作[せいさく]する/製作[せいさく]する/製造[せいぞう]する ### 使い分け例 **作る**・・・「本棚を作る。」「詩を作る。」 **造る**・・・「池を造る。」「酒を造る。」 **こしらえる**・・・「団子をこしらえる。」「家をこしらえる。」 **制作する**・・・「絵画を制作する。」「映画制作会社。」 **製作する**・・・「工具を製作する。」 **製造する**・・・「食品を製造する。」「自動車製造工場。」 ### どう使い分けるか **作る**は、それまでなかったものを新しく生み出すとか、創造的あるいは精神的な行為の場合に用いる。ただし、建造物・醸造などの場合には**造る**を用い、原料・材料などを加工してつくるものにも、〈造る〉を用いることがある。 **こしらえる**は、ややくだけた表現で、材料に手を加えて形のある物を作り上げる場合に用いる。「詩を―」とは言わない。 **制作する**は、芸術作品などを作る意で、**製作する**は、道具や機械などを作る場合に用い、**製造** <330> # つたない ## 拙[つたな]い ## 拙[まず]い ## 下手[へた] ## 稚拙[ちせつ] ## 拙劣[せつれつ] ## 不器用[ぶきよう](無器用) ### 使い分け例 **つたない**・・・「つたない文章。」 **まずい**・・・「食べ物がまずい。」「質問の仕方がまずい。」「まずい所でばったり出会う。」「まずい顔。」⇔うまい。 **下手**・・・「下手な絵。」⇔上手だ。 **稚拙**・・・「この作品は稚拙だ。」 **拙劣**・・・「拙劣な方法。」 **不器用**・・・「不器用な手つき。」 ### どう使い分けるか **つたない**は、出来がよくないとか、上手でない意で、特に文章・詩・絵・字・楽器の演奏など技芸一般に関して用いる。 **まずい**は、つたないつたないと同義の、くだけた言い方として使う。原義は食べ物の味がよくない意で、ほかに具合が悪いとか、容姿などが醜いとかいう意味でも使うが、これらの意味はつたないつたないにはない。 **下手**は、つたないつたないがやや文章語的であるのに対して、ややくだけた言い方。「一料理」にまずいまずいを使えば味が悪い意だが、下手なへたなを使えば、(結果としては同じでも)料理技術を言うことになる。 **稚拙**は、幼稚で技量不足の意、**拙劣**は、非常に程度が低く下手という意。 **不器用**は、手先などが器用でないこと、要領が悪くぎこちない意に使う。下手へたに比べ、不器用ぶきようは生まれつきのニュアンスが強い。 # 慎む[つつしむ] ## 慎[つつし]む ## 謹[つつし]む ## 謹慎[きんしん]する ## 控[ひか]える ### 使い分け例 **慎む**・・・「行動を慎む。」「酒を慎む。」 **謹む**・・・「謹んで申し上げます。」 **謹慎する**・・・「しばらく謹慎する。」 <331> **控える**・・・「食事の量を控える。」 ### どう使い分けるか **慎む**は、調子に乗って過ちを犯したり、軽はずみなことをしたりしないように十分気をつける意に用いる。また、度を超さないように控えめにする意にも用いる。 **謹む**は、うやうやしくかしこまる意で、相手に深い敬意を表しへりくだる謙譲表現として用いる。「謹んで・・・」の形でよく使う。 **謹慎する**は、反省の気持ちを込めて表立った言動を差し控える場合に用いる。ややかたい漢語的な言い方の文章語。 **控える**は、慎むつつしむが他者に配慮しての心情・態度に重点が置かれるのに対し、単に自制して物事の量や程度を少な目にする意で使う。慎むつつしむよりはくだけた言い方である。 # 務め[つとめ] ## 務[つと]め ## 勤[つと]め ## 勤務[きんむ] ## 任務[にんむ] ## 役目[やくめ] ## 義務[ぎむ] ## 責務[せきむ] ## 使命[しめい] ### 使い分け例 **務め**・・・「親としての務めを果たす。」 **勤め**・・・「今月で勤めを辞める。」「朝のお勤め。」 **勤務**・・・「会社の勤務時間。」 **任務**・・・「部長の任務を果たす。」 **役目**・・・「それは君の役目だ。」「お役目ごくろうさん。」 **義務**・・・「納税の義務。」⇔権利。 **責務**・・・「教師の責務は重い。」 **使命**・・・「使命感がないとできない。」「これは私の使命である。」 ### どう使い分けるか **務め**は、個人的に、あるいは家庭や組織の中で当然果たさなければならないことの意。 **勤め**は、会社・役所などに雇われて仕事をすること、またその仕事の意。また、接頭語「お」を付けて、僧侶などが毎日行う勤行の意にも用いる。 **勤務**は、勤めつとめと同義のややかたい漢語の文章語。 **任務**は、務めつとめとほぼ同義のややかたい漢語の文章語で、個人的・私的な務めにはあまり用いない。 <332> 組織の中で上からの命令によってする仕事とか、割り当てられた仕事の場合に用いるのが普通。 **役目**は、任務にんむと同義だが、公的なあるいは正式の場面での用語としては任務にんむが使われ、役目やくめはくだけた日常語として現在では使われる。 **義務**は、それぞれの立場に応じて、人が必ず果たすべき務めのことで、法律上、道義上の強制意識が務めつとめ任務にんむなどより強く伴う。文章語である。 **責務**は、責任と義務、あるいは責任を伴う大切な務め。文章語。 **使命**は、そうするのは天の声だと思われるほど強い自覚を持って行う仕事の意の文章語。 # 募る[つのる] ## 募[つの]る ## 募集[ぼしゅう]する ## 公募[こうぼ]する ## 集[あつ]める ## 徴集[ちょうしゅう]する ### 使い分け例 **募る**・・・「参加者を募る。」「作品を募る。」「寄付を募る。」 **募集する**・・・「自衛官を募集する。」「論文を募集する。」「アイデアを募集する。」 **公募する**・・・「教授を公募する。」 **集める**・・・「人手を集める。」「生徒を講堂に集める。」「関心を集める。」 **徴集する**・・・「兵士を徴集する。」 ### どう使い分けるか **募る**は、単に人や物を集めるのではなく、広く呼びかけ集める意。ほかに、「恋しさがー」のようにある状態・感情・現象などの勢いがますます強くなる場合にも用いる。 **募集する**は、募るつのるの漢語的言い方だが、募るつのるより日常的に使う。しかし「寄付を募る」に募集するぼしゅうするが使えないように、人や、人の生み出す案や作品などを対象とするのが普通である。 **公募する**は、つてなどによらず、広く一般に公表して公平に募集する、の意。 **集める**は、広く呼びかけてという意味は特になく、とにかく多くの人や物、興味や関心などを一か所に寄せさせる意。 <333> 所に寄せさせる意。 **徴集する**は、国や公共団体が目的に応じて人や物を強制的に集める、の意で、かたい文章語。なお、会費とか税金を集める場合は〈徴収する〉を用いる。 # 妻[つま] ## 妻[つま]/細君[さいくん]/女房[にょうぼう]/家内[かない]/愚妻[ぐさい]/かかあ/夫人[ふじん]/奥様[おくさま]/奥さん[おくさん]/おかみさん ### 使い分け例 **妻**・・・「妻の座を守る。」 **細君**・・・「君の細君は美人だね。」 **女房**・・・「うちの女房は可愛いやつだよ。」「あいつの女房は気取り屋だ。」 **家内**・・・「家内と相談して決めます。」 **愚妻**・・・「これが愚妻でございます。」 **かかあ**・・・「おれのかかあはうるせえやつでね。」 **夫人**・・・「夫人同伴の参会者が多い。」「社長夫人。」 **奥様**・・・「奥様はお元気でいらっしゃいますか。」 **奥さん**・・・「あの人の奥さん、どれ。」 **おかみさん**・・・「店のおかみさん。」 ### どう使い分けるか **妻**は、文章語としては最も一般的な言葉で、尊敬の意も、特にへりくだった気持ちもない。 **細君**は、親しい間柄の相手に用いる。自分の妻についても他人の妻についても使うが、いずれも同輩以下の相手に言う。 **女房**は、自分または第三者の妻をやや軽い気持ちで言う場合に用いる。話し相手の奥さんを指して、「君のーは」とは言わない。また相手が目上の場合に、「私のーは・・・」とは言わない。 **家内**は、それほど親しい間柄とも言えない一般の相手、また目上の相手に対して、自分の妻をややへりくだって言う場合に用いる。 **愚妻**は、自分の妻をかなりへりくだって言う文章語。しかし文章語としても今日あまり用いない。 **かかあ**は、自分の妻を指すぞんざいな俗語で、よほど親しい間柄かくだけた雰囲気の場合以外は用いない。「あいついつもーの言うなりだ」のように、相手や第三者の <334> 俗語としても最近は少ない。 **夫人**は、他人の妻を敬って言う漢語の文章語。「あなたのー」とは言わないように、第三者の妻に対して用いることが多い。 **奥様**は、相手の妻に対しても第三者の妻に対しても用いる敬った言い方。 **奥さん**は、奥様おくさまのくだけた言い方。軽い敬意がある。 **おかみさん**は、他人の妻に対するかなりくだけた言い方。特に商売を営む人の妻を指して言うことが多い。また料理屋・飲食店・美容院などの女主人の意にも使う。また「うちのかみさんは・・・」のように、「お」を除いて自分の妻を指して用いることも多い。 # つまり ## つまり ## 結局[けっきょく] ## 要[よう]するに ## すなわち ### 使い分け例 **つまり**・・・「つまりこういうわけだ。」 **結局**・・・「三転四転したが結局君が勝ちだ。」 **要するに**・・・「要するに辞任せよということだ。」 **すなわち**・・・「革命の原動力すなわち民衆の力こそ未来を切り開く。」 ### どう使い分けるか **つまり**は、その前の言葉や話の内容を最終的にまとめたり、言い換えたりする場合に用いる。 **結局**は、途中いろいろな経過があった末、最終的にこういう結果・結論になるのだという気持ちを強調する意味合いがある。つまりつまりが単に直前の内容のまとめ、言い換えに重点を置くのに対して結局けっきょくは最終の結論・結果に重点を置く。 **要するに**も、前二者とほぼ同義であるが、今まで述べてきたことの大切なポイントを分かりやすく、要約するという気持ちが強い表現。 **すなわち**は、副詞ではなく接続詞であるが、前の事柄を受け、それがその後に続く事柄と同じであることを表す用法があり、この場合、「つまり」と同義になる。 <335> | | それは君の問題だ | 父の重態が続く | 戦えば勝つ | 父が―死ぬ | 祖父が―死ぬ | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **つまり** | ○ | △ | | | | | **結局** | | ○ | ○ | ○ | | | **要するに**| ○ | | | | | | **すなわち**| | △ | | ○ | △ | # 積む[つむ] ## 積む/重ねる/積み重ねる[つみかさねる]/積み上げる[つみあげる]/積み込む[つみこむ]/盛る[もる] ### 使い分け例 **積む**・・・「本を何冊も積む。」「俵が積まれている。」「車に荷物を積む。」「練習を積む。」 **重ねる**・・・「紙を一枚重ねる。」「セーターを重ねて着る。」「重箱を三つ重ねる。」「失敗を重ねる。」 **積み重ねる**・・・「本を積み重ねる。」「経験を積み重ねる。」 **積み上げる**・・・「米俵を高く積み上げる。」「れんがを積み上げる。」 **積み込む**・・・「船に牛を積み込む。」 **盛る**・・・「料理を皿に盛る。」「土を盛って墓とする。」「趣向を盛る。」 ### どう使い分けるか **積む**は、ある程度体積のある物を次々に上に載せる場合に言い、紙など薄い物では言わない。車や船などに物を載せる意もある。「練習」など抽象的なものについて言うときは、それの結果が残って次々に大きくなる場合である。 **重ねる**は、薄い物についても使える。重ねられる両者が大体同形で、また平面があり、それを合わせる場合に使う。「練習を―」とも言うが、その場合〈積む〉のように、成果が段々大きくなる意は特になく、「繰り返す」と同じ。 **積み重ねる**は、〈積む〉と〈重ねる〉の両方の意味を合わせ持ち、体積のある、大体同形で平面を持つ物を次々と上に載せる意である。抽象的なものについても言う。 **積み上げる**は、高く積むの意。 | | 本を― | 米俵を― | カードを― | 経験を― | 失敗を― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **積む** | ○ | ○ | | ○ | ○ | | **重ねる** | | | ○ | ○ | ○ | | **積み重ねる** | ○ | △ | ○ | ○ | △ | | **積み上げる** | ○ | ○ | △ | | | **積み込む**は、車・船などに物を載せる意の〈積む〉に、「入れる」意を強調した語。 <336> **盛る**は、容器に飲食物などを満たす、土などをうず高く山のように積み上げる、などの意。 # 積もり[つもり] ## 積[つ]もり ## 心積[こころづ]もり ## 意図[いと] ## 魂胆[こんたん] ### 使い分け例 **積もり**・・・「彼女と結婚する積もりだ。」「死んだ積もりでがんばる。」 **心積もり**・・・「旅行費用の心積もりをしている。」 **意図**・・・「君の意図はよくわかる。」「政府の今回の声明の意図は何か。」 **魂胆**・・・「ちくしょう、そういう魂胆だったのか。」 ### どう使い分けるか **積もり**は、そのときはそうしようと前もって持っている意図や心構え、また、金額などを予測すること(見積もり)の意。また、実際にはそうでないのに、そうであるような気持ちを持つことの意にも使う。 **心積もり**は、自分の心の中だけででの見積もりや予定のこと。「死んだーで」のような使い方はできない。 **意図**は、何かをしようと考えること、また、その内容。積もりつもり心積もりこころづもりが私的・個人的に考えていることに重点を置くのに対して、意図いとは公的なものにも用い、また、比較的よく考えられた確かなものに用いることが多い。 **魂胆**は、心の中の、隠された意図やたくらみの意で、マイナスの評価を伴い用いることが多い。 # 辛い[つらい] ## 辛[つら]い ## 苦[くる]しい ## 切[せつ]ない ## やるせない ## 辛気臭[しんきくさ]い ### 使い分け例 **辛い**・・・「痛くて辛い。」「仕事が辛い。」「部下に辛くあたる。」 **苦しい**・・・「息が苦しい。」「家計が苦しい。」「苦しい弁明に終始する。」 **切ない**・・・「切ない思い。」 <337> **やるせない**・・・「不合格でも誰に文句も言えずやるせない気持ちだ。」 **辛気くさい**・・・「辛気くさい仕事。」 ### どう使い分けるか **辛い**と**苦しい**とは、ほぼ同義で、肉体的、精神的両方の苦しさに用いる。しかし辛いつらいには、第三の例のように冷酷さを表す使い方があるが、その場合苦しいくるしいは使えない。また苦しいくるしいには、必要な金銭や物が乏しくなって生活が圧迫される場合(第二の例)、言っていることに無理がある場合(第三の例)の使い方があるが、それらの場合辛いつらいは使えない。 **切ない**は、さびしさ・悲しさ・恋しさといった、胸が締めつけられるような精神的・感情的辛さの場合に用いる。主に自分の主観的感情について使い、生理的・感覚的辛さには使えない。 **やるせない**は、辛いつらい切ないせつないより更に、辛い気持ちをどこにも持っていきようがないという、やりきれない気分を強調する言葉。 **辛気くさい**は、事柄が込み入ってなかなかうまくいかず気が晴れない意に用いる。 # 釣[つ]り合[あ]い ## 釣[つ]り合[あ]い ## 均衡[きんこう] ## 平衡[へいこう] ## 均斉[きんせい](均整[きんせい]) ## バランス ### 使い分け例 **釣り合い**・・・「上着とズボンの色の釣り合いがいい。」「てんびんの釣り合いがとれる。」 **均衡**・・・「軍事力の均衡が破れる。」「貿易不均衡。」「財政的均衡。」「均衡予算。」 **平衡**・・・「彼は平衡感覚が鈍い。」「動物の平衡器官。」「平衡交付金。」 **均斉(均整)**…「均斉のとれた容姿。」「均斉美。」 **バランス**・・・「バランスを崩す。」「バランス感覚を持った考え方。」「軍事バランス。」 ### どう使い分けるか **釣り合い**は、日常的に使う和語で具体的な物や事柄について広く用いるのに対して、**均衡**はかたい漢語の文章語で、目に見えない抽象的な力関係に多く用いる。 <338> **平衡**も均衡きんこうとほぼ同義だが、運動などにおける身体の安定状態やそれを保つ感覚については平衡へいこうを使う。なお「一交付金」とは、地方自治体間の財政的バランスを保つため国が地方自治体に交付する金のこと。 **均斉**は、主に身体や物の形が外から見て釣り合いがとれて美しく安定感のある場合に用いる。 **バランス**は、前の四語すべてと「平衡交付金」などの公的な用語である熟語は別にしてほとんど言い換えられる。近年では、最も日常語的と言える外来語(英語balance)。 # 提案[ていあん] ## 提案[ていあん] ## 提出[ていしゅつ] ## 提議[ていぎ] ## 発議[はつぎ] ## 上程[じょうてい] ### 使い分け例 **提案**・・・「議題の提案を急ぐ。」「機構の改革を提案する。」 **提出**・・・「レポートの提出。」「議案の提出。」「証拠を提出する。」 **提議**・・・「野党の提議に応じる。」「環境問題を提議する。」 **発議**・・・「部長の発議により、その問題が討議された。」 **上程**・・・「議案の上程。」「衆院の本会議に上程する。」 ### どう使い分けるか **提案**は、会議などで論議するために議案や考えを出すこと、またその議案や考えの意に用いる。しかし議会用語としては、「議案の提出」と言い、その場合提案ていあんは使わないようである。 **提出**は、報告・意見・証拠・議案などをある場に出すこと。 **提議**は、会議などに論議すべき問題を提出すること、またそれを更に結論を求めて論議する意に用いる。 <339> **発議**は、議題なり議案なりをしかるべき会議に初めて持ち出すこと。また、合議体で議員が議事の開始を求めること。 **上程**は、議案を会議にかけることを言う。公的な会議以外はあまり用いられない。 # 抵抗[ていこう]する ## 抵抗[ていこう]する ## 反抗[はんこう]する ## 反発[はんぱつ]する ## 歯向[はむ]かう(刃向[はむ]かう) ## 逆[さか]らう ## 背[そむ]く ## 盾突[たてつ]く ### 使い分け例 **抵抗する**・・・「弾圧に抵抗する民衆。」「非暴力抵抗運動。」 **反抗する**・・・「教師に反抗する生徒。」「反抗期。」 **反発する**・・・「偉ぶって仲間に反発される。」 **歯向かう**・・・・「親分にはむかう。」 **逆らう**・・・「時の流れに逆らう。」 **背く**・・・「上官の命令に背く。」「親の期待に背く。」「妻に背く。」 **盾突く**・・・「上司にたてつく。」 ### どう使い分けるか **抵抗する**は、外から加えられる力や圧迫をはね返そうとする意に用いる。 **反抗する**は、外からの力というより、親とか目上の者、権力ある者に対して、その支配下にある者がその意見・主張・制度などに批判をくわえて従わない意に用いる。抵抗するていこうするより攻撃的な感じがある。 **反発する**は、反抗はんこうのように上の者に対してというわけでなく他人の言動に反対の気持ちや言動を持つ意。 **歯向かう**は、反抗するはんこうするのくだけた表現。 **逆らう**は、「風にー」のように、物事の勢いや自然の流れとは反対の方向に進む意にも用いるが、その場合他の語は使えない。 **背く**には、期待とか気持ちを裏切るという意が強い。 | | 命令に― | 親に― | 年ごろの友の発言に― | 流行に― | 誘惑に負けまいと― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 抵抗する | △ | △ | | ○ | ○ | | 反抗する | ○ | ○ | | △ | | | 反発する | | ○ | ○ | | | | 歯向かう | ○ | ○ | | | | <340> **盾突く**は、口答えしたり、反抗する態度に重点を置いた表現。 # 停滞[ていたい] ## 停滞[ていたい] ## 停頓[ていとん] ## 足踏[あしぶ]み ## 行[い]き悩[なや]み ## 立[た]ち往生[おうじょう] ### 使い分け例 **停滞**・・・「低気圧の停滞。」「連休で郵便物が停滞する。」 **停頓**・・・「業務の停頓。」「会議の進行が停頓する。」 **足踏み**・・・「生産量が足踏み状態である。」「成長が足踏みしている。」 **行き悩み**・・・「行き悩みを感じる。」「交渉の行き悩み。」 **立ち往生**・・・「雪のため立ち往生の車。」「難問に立ち往生する。」 ### どう使い分けるか **停滞**は、物事が一つ所にとどまってなかなか先に進まないことで、停頓ていとんと共にややかたい文章語。 **停頓**は、人為的原因で物事が生き詰まり、同じ状態にとどまる、の意。したがって「寒気団の停滞」に停頓ていとんは使わない。 **足踏み**は、停滞ていたい停頓ていとんの意のくだけた言い方。「一状態」の形で使うことが多い。 **行き悩み**は、更に前進したいとか、物事を解決したいという気持ちがありながらそうならない場合に用いる。 **立ち往生**は、前にも後にも進めないような状態の意に用いる。行き悩みいきなやみが、この先どうしてよいか分からないという気持ちであるのに対して、立ち往生たちおうじょうは外的な原因でどうにも動きがとれないという面が強調される。 〔注意〕行き悩みいきなやみは動詞として使う方が多い。 # 丁寧[ていねい] ## 丁寧[ていねい] ## 丁重[ていちょう] ## 慇懃[いんぎん] ### 使い分け例 **丁寧**・・・「あいさつの仕方が丁寧だ。」「丁寧に字を書く。」⇔乱暴。 **丁重**・・・「丁重に断る。」 <341> **慇懃**・・・「慇懃な態度で接する。」「慇懃無礼。」 ### どう使い分けるか **丁寧**は、人に対して礼儀正しく、相手の立場や気持ちを考えて細かく心遣いする意に用いる。また物事に対して、注意深くきちっとする意に用いる。 **丁重**は、人に対する応対の場合に使い、丁寧ていねいより更にその慎重さや敬意の度合いが強い。 **慇懃**は、きわめて丁寧で礼儀正しい意で、かたい文章語。なお「一無礼」は、表面は極めて丁寧であるが、心の中では尊大である、の意。 〔注意〕丁重ていちょう鄭重ていちょうの書き換え。 # 手紙[てがみ] ## 手紙[てがみ] ## 書簡[しょかん] ## 信書[しんしょ] ## 書状[しょじょう] ## 文[ふみ] ## 雁書[がんしょ] ## 便[たよ]り ## 音信[おんしん] ## 音沙汰[おとさた] ## 消息[しょうそく] ### 使い分け例 **手紙**・・・「手紙を書く。」 **書簡**・・・「大統領からの書簡。」 **信書**・・・「信書を交わす。」「信書の秘密。」 **書状**・・・「書状をしたためる。」 **ふみ**・・・「ふるさとにふみを送る。」 **雁書**・・・「雁書が参る。」 **便り**・・・「息子から便りが来た。」「彼の病気を風の便りに聞く。」 **音信**・・・「音信が途絶える。」 **音沙汰**・・・「半年も音沙汰がない。」 **消息**・・・「消息がない。」「山で消息を絶つ。」「消息文。」 ### どう使い分けるか **手紙**は、日常広く使われるが、広い意味では「葉書」も含め、狭い意味では封書を言う。 **書簡**は手紙てがみの改まった語で、主に公的なものに用いる。 **信書**は個人の間でやりとりする手紙。 **書状**は、相手に伝えるべき用件などを比較的改まった調子で書いた文書や手紙。改まった相手に対して用いる。 **ふみ**は手紙てがみの意の雅語、**雁書**は漢語の文章語でともに古風。 <342> **便り**は手紙てがみよりやや雅語的な響きがある。特に近況などを知らせる手紙に用いる。そのほか「花のー」のように、ある事に関する情報の意にも用いる。 **音信**は、手紙などによる知らせや連絡の意で、**音沙汰**と同じく多くは否定的表現を伴って用いる。 **消息**は、人がどうしているか、物事がどうなっているかその様子の意で「一不明」のように用い、またそうした様子を伝えるものとして、知らせ・手紙てがみの意にも使う。 # 敵[てき] ## 敵[てき] ## 敵[かたき] ## 仇[あだ] ## 仇敵[きゅうてき] ## ライバル ### 使い分け例 **敵**・・・「敵と戦う。」「痴漢は女性の敵。」「公害は人類の敵。」 **敵**・・・「商売がたき。」「父のかたきを討つ。」「目のかたきにする。」 **あだ**・・・「あだを討つ。」「恩をあだで返す。」「好意がかえってあだとなる。」 **仇敵**・・・「仇敵に出くわす。」「不俱戴天の仇敵。」 **ライバル**・・・「ライバルに勝つ。」「ライバル意識。」 ### どう使い分けるか **敵**は、戦いや競争・試合などの相手、また、害を与えるものの意に使う。 **敵**は、古くはてきとほぼ同義であったが、現在は何かで競争したり競り合う相手の意に「・・・がたき」の形で用いることが多い。またあだあだと同じく、恨みのある相手にも用いる。 **あだ**は、かたきと同じく、恨みを返すべき憎い相手の意に用いるほか、悪意のある仕返しや、予想に反して害となって返ってくる事柄にも使う。 **仇敵**は、てきあだあだにもある、恨みや憎しみのある相手の意に用いる漢語。てきよりもうかたい文章語である。 **ライバル**は、恨みとか憎しみとはあまり関係なく、よい意味での競争相手、好敵手の意に用いることが多い外来語。(英語rival) <343> | | 敵を討つ | 敵の将兵 | ―の好意 | 好意が―となる | 学問上の― | 癌は人類の― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 敵 | ○ | ○ | | | | ○ | | 敵 | ○ | | | | | | | 仇 | ○ | | | ○ | | | | 仇敵 | ○ | | | | | | | ライバル | | | | | ○ | | # 手際[てぎわ] ## 手際[てぎわ] ## 手口[てぐち] ## やり口[くち] ### 使い分け例 **手際**・・・「手際よく料理する。」「交渉の手際が悪い。」 **手口**・・「あの事件と手口が同じだ。」「巧妙な手口の犯罪。」 **やり口**・・・「強引なやり口にあきれる。」「やり口が汚い。」 ### どう使い分けるか **手際**は、物事を無駄なく処理する手並みや方法の意に用い、「一がよい」「ーが悪い」という形で使うことが多い。 **手口**は、主に犯罪や悪事のやり方・手段の意に用い、悪いイメージが伴う。 **やり口**も、実際に何かを行うときの手段・方法の意であるが、「一が汚い」のように、公正・正当でないやり方に用いることが多い。 # 弟子[でし] ## 弟子[でし] ## 門人[もんじん] ## 教[おし]え子[ご] ## 生徒[せいと] ### 使い分け例 **弟子**・・・・「落語家に弟子入りする。」「大工さんが弟子をとる。」 **門人**…「内村鑑三先生の門人となる。」同門弟。門下生。 **教え子**・・・「教え子の結婚式に招かれる。」「林先生の教え子。」 **生徒**・・・「麻生中学の生徒。」「彼は私の生徒だった。」 ### どう使い分けるか **弟子**は、特定の師匠や先生について教えを受け修業に励む者を言い、単に学問のみならず広く芸道・技芸・スポーツなどにわたり、また、師も特に著名な人でなくても用いられる。 <344> **門人**は、学問や芸術・技芸などの上で一家をなす特定の先生について教えを受けている弟子に用いる漢語の文章語。 **教え子**と**生徒**は、同じように、学校で教えを受ける者を言う。生徒せいとは、ある学校に在籍している者を言うのが本来の用法で、また、現在教えを受けている者に使うが、教え子おしえごは「○○高校の―」とは言わず、個々の先生との関係で使い、しかも過去に教えた者にも使う。 # 手[て]なずける ## 手[て]なずける ## 丸[まる]め込[こ]む ## 抱[だ]き込[こ]む ## 懐柔[かいじゅう]する ## 籠絡[ろうらく]する ### 使い分け例 **手なずける**・・・「ライオンを手なずける。」「部下を手なずける。」 **丸め込む**・・・「怒る妻をことば巧みに丸め込む。」 **抱き込む**・・・「わいろを贈って政治家を抱き込む。」 **懐柔する**・・・「相手を懐柔する。」 **籠絡する**・・・「甘い言葉で籠絡する。」 ### どう使い分けるか **手なずける**は、動物や人などをうまく取り扱って自分の思う通りになるように仕込んだり、味方につける意に用いる。 **丸め込む**は、自分と意見を異にする者などをうまくあしらって、自分の思い通りにすること。 **抱き込む**は、丸め込むまるめこむが巧みな手段で相手をうまくだますというニュアンスを持つのに対して、だますというより利益を与えて相手を自分の側に引き込み利用する、というニュアンスを持つ。 **懐柔する**は、抱き込むだきこむの意のややかたい漢語的文章語。**籠絡する**は丸め込むまるめこむ意の非常にかたい漢語的文章語。 # 手本[てほん] ## 手本[てほん] ## 模範[もはん] ## 範[はん] ## 規範[きはん] ## 亀鑑[きかん] ## 標準[ひょうじゅん] ## 見本[みほん] <345> ## ひながた ## モデル ### 使い分け例 **手本**・・・「習字の手本。」「手本を示す。」 **模範**・・・「生徒に模範を示す。」「模範青年。」 **範**・・・「範を垂れる。」「全社員の範たるべし。」 **規範**・・・「社会の規範を作る。」「規範文法。」 **亀鑑**・・・「教育者の亀鑑たれ。」 **標準**・・・「標準を超える体重。」「標準語。」 **見本**・・・「見本の商品。」「まるで節約家の見本のような人。」「見本市。」◎サンプル。 **ひながた**・・・「宇宙船のひながた。」◎模型。「休学届のひながた。」 **モデル**・・・「車のモデル。」「マンションのモデル・ルーム。」「この作品のモデルは実在する人。」 ### どう使い分けるか **手本**は、元来習字や絵などを書くときの模範となる書画、またその本のこと。また模範となるべき人の状態・行為の意にも用いる。 **模範**は、見習うべき立派な手本の意の漢語だが、人の状態や行為についてしか用いない。 **範**は模範もはんと同義のややかたい文章語。**亀鑑**も同義で非常にかたい文章語。 **規範**は、物事を判断・評価したり行動したりするときの、よりどころとなる規準の意で、具体的な人の状態・行為には使わない。かたい文章語。 **標準**は、物事の程度を判断したり比べたりするときのよりどころとなる一般的な目じるし・基準のことで、「一的家庭」のように、一般的・ごく普通の、という意にも使われる。 **見本**は、商品などで全体の質や状態が分かるように示す品物のこと。比喩的に人にも使う。 **ひながた**は、実物を小さくかたどって作った物で、模型の意の和語。また、決まった形式の書類の書き方見本の意もある。 **モデル**は、模型・型式・見本、また小説・絵画などの素材となる人物・ファッションモデルなどの意に広く用いられる外来語。 | | 子供の―となる | 習字の―を示す | ―の答案を作る | 商品の― | 範を垂れる | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 手本 | ○ | ○ | | | | | 模範 | ○ | | ○ | | ○ | | 範 | | | | | ○ | | 見本 | | | | ○ | | <346> # 衒う[てらう] ## 衒[てら]う ## ひけらかす ## 見[み]せびらかす ## 気取[きど]る ## 恰好[かっこう]つける ## 振[ふ]る舞[ま]う ## 勿体[もったい]ぶる ### 使い分け例 **衒う**・・・「彼は奇をてらうことのない飾り気のない人柄だ。」「学をてらう。」 **ひけらかす**・・・「才能をひけらかす。」 **見せびらかす**・・・「彼氏からもらった指輪を見せびらかす。」 **気取る**・・・「気取った歩き方。」 **恰好つける**・・・「そんなに恰好つけてもすぐぼろが出るよ。」 **ぶる**・・・「彼は人前に出るといつもぶるんだよね。」 **もったいぶる**・・・「もったいぶった口調で話す。」 ### どう使い分けるか **衒う**は、目立つような振る舞いをして自慢したり、知識や才能などがあるかのように振る舞う意に用いる。物を自慢する意には使わない。 **ひけらかす**は、衒うてらうよりも更に自分の持っているものを、得意になって人前に示す意で、事柄、物両方に使う。 **見せびらかす**も、自分の持っているもの、特に物質的な物を自慢そうに人に見せる意に用いる。 **気取る**は、単に自分の持っているものというのでなく、自分の存在全体にかかわることでいいところを人に見せようとする場合に用い、**恰好つける**はほぼ同義の俗語。 **ぶる**も同義であるが、「学者―」のように接尾辞としての使い方が多い。動詞としては俗語的。 **もったいぶる**は、必要以上に重々しく偉そうに見せかける意。 # 出る[でる] ## 出[で]る ## 出現[しゅつげん]する ## 現[あらわ]れる ## 表[あらわ]れる ## 現出[げんしゅつ]する ## 現前[げんぜん]する <347> ### 使い分け例 **出る**・・・「水が出る。」「幽霊が出る。」「音が出る。」「顔色に出る。」 **出現する**・・・「救世主が出現するのを待つ民衆。」「新製品の出現。」 **現れる**・・・「偉大な大統領が現れる。」 **表れる**・・・「彼の気持ちがこの文によく表れている。」 **現出する**・・・「夢に見た光景が現出した。」「奇跡の現出。」 **現前する**・・・「現前する事実は疑えない。」「現前の情景に目を見張る。」 ### どう使い分けるか **出る**は、このグループの語の中では最も一般的に幅広く用いられる。意味も広く、ここの例はその一部である。 **出現する**は、隠れていたり、知られていなかったりした物が、はっきり形をとって現れてくることの意に用いる。ややかたい文章語。「新星の出現」とは言うが、「月が雲間から出現」とは言わないように、日常の自然現象や動植物にはあまり使わない。 **現れる**は、今までなかった物や見えなかった物、あるいは隠れていた物が人に知られるようになる意に広く用いる。また物や人だけでなく、「効果がー」のように事柄一般にも使う。 **表れる**は、思想・感情など心の内側のものが具体的な形となって表面に出てくる場合に用いる。 **現出する**は、実際に現れ出る意で「夢の中にー」とは言いにくい。 **現前する**は、目の前に現れ出る意で、現出するげんしゅつするより更に具体的ではっきりしている場合である。 # 天気[てんき] ## 天気[てんき] ## 天候[てんこう] ## 空模様[そらもよう] ## 日和[ひより] ## 雲行[くもゆ]き ### 使い分け例 **天気**・・・「今日は天気がいい。」「やっと天気になる。」 **天候**・・・「向こう三日間は天候に恵まれる。」「今年の夏の天候。」「農業は天候に左右される。」 **空模様**・・・「はっきりしない空模様。」 <348> 「両国の間は険悪な空模様だ。」 **日和**・・・「結婚式にもってこいの日和。」「行楽日和。」「日和が良い。」「日和見主義。」 **雲行き**・・・「どうも雲行きが怪しい。」 ### どう使い分けるか **天気**には、晴天という意で用いる場合もあるが、この使い方は天候てんこうにはない。 **天候**は、ある期間内の天気の意に使う。 **空模様**は、天気の具合や様子を言うが、「―が良い」とは言わず、天気が悪くなりそうな場合に多く使う。そこからまた、比喩的に、物事の(心配な)成り行きにも用いる。 **日和**は、特に行楽とか式など何かをするのにふさわしい天気、という意で用いる。「一見」は比喩的に用いる。 **雲行き**も空模様そらもようと同じく、あまり天気の状態が良くない、これからだんだん悪くなるという場合に使う。転じて物事の(心配な)成り行きや形勢にも使う。 | | 明日の―予報 | ―が不順だ | はっきりしない― | 今日はよい―だ | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | 天気 | ○ | | | ○ | | 天候 | | ○ | | | | 空模様 | | | ○ | | | 日和 | | | | ○ | # 伝達[でんたつ] ## 伝達[でんたつ] ## 伝言[でんごん] ## 言付[ことづ]け ## 人伝[ひとづて] ## 申[もう]し送[おく]り ### 使い分け例 **伝達**……「注意事項の伝達。」「部長の意向を課長が伝達する。」「情報伝達機関。」「大衆伝達。」 **伝言**・・・「帰省する友に母への伝言を頼む。」「母に伝言する。」「伝言板。」 **言付け**・・・「上京する友に言付けをする。」「言付けを聞く。」同言伝。 **人づて**・・・「人づてに聞く。」「人づてで言ってやろう。」 **申し送り**・・・「全員に漏れないように申し送りをする。」「先方へ手紙で申し送りをする。」 ### どう使い分けるか いずれも「伝える(=人を介して知らせること)」意を基本的に持つ。 **伝達**は、伝えることの意の漢語でかなりかたい文章語なので、「うわさをーする」などとは言わず、公的な場面である程度重要な事柄について使う。なお「大衆一」は、マスコミュニケーションの訳。 <349> **伝言**は、個人的・私的な場合に使い、言葉を伝えること、伝える言葉、両方の意味がある。 **言付け**は、伝言でんごんと同義の和語だが、やや古い感じがあり、伝言でんごんの方がむしろ日常語的であろう。動詞言付けることづけるには、物を人に頼んで先方へ渡す、の意もある。 **人づて**は、他人を通して伝えることで、伝言でんごん言付けことづけに似ているようだが、誰か具体的な人を通じてと特に意識しないこと、「―する」「―る」などの動詞がないこと、「ーを頼む」とは言わないことなど、かなりの違いがある。 **申し送り**は、多くの人の間で、AからB、BからC、CからDというように順々に伝えていくこと。ほかに、手紙や電話などで離れている相手方に言ってやることの意味もある。 # 同意[どうい] ## 同意[どうい] ## 賛成[さんせい] ## 賛同[さんどう] ## 賛助[さんじょ] ## 支持[しじ] ### 使い分け例 **同意**・・・「同意を求める。」「結婚に同意する。」 **賛成**……「賛成多数と認める。」「議案に賛成する。」⇔反対。 **賛同**・・・「大方の賛同を得る。」「趣旨に賛同して寄付をする。」 **賛助**……「賛助会員。」「賛助して出演する。」 **支持**・・・「大衆の支持を受ける。」「あなたの支持する政党は。」 ### どう使い分けるか **同意**は他人の意見と同じ意見を持つこと、それを言動で示すこと。 **賛成**は他人の意見や提案を良いと認めて同意すること、**賛同**もほぼ同義であるが、賛否を問われる場面で言うのは賛成さんせいであり、「彼の意見にーだ」と言う場合に賛同さんどうは不適当だ。 <350> **賛助**は会や事業の趣旨に賛成して力を貸すこと、**支持**は主義・主張に賛同して後押しすること。前者は多く個人的、後者は国民・住民・組合など多数者にも使う。 # どうか ## どうか ## どうぞ ## 何[なに]とぞ ## くれぐれも ## 何[なん]とか ### 使い分け例 **どうか**・・・「どうかよろしくお願いします。」「この古新聞どうかならないかな。」「今日、私はどうかしている。」 **どうぞ**・・・「どうぞお先に。」 **何とぞ**・・・「何とぞお許し下さい。」 **くれぐれも**・・・「くれぐれもよろしくお伝え下さい。」 **なんとか**・・・「なんとかして下さい。」「なんとかなるさ。」 ### どう使い分けるか **どうか**は、相手に丁寧に頼むときに用いるが、その場合**どうぞ**も使える。どうかどうかは、少し無理とは思うがそこを何とかと願う気持ちが強いが、どうぞどうぞは表現がいくぶんやわらかい感じ。またどうかどうかは、なんとかならないかと願ったり、何か様子が変だと思ったりというような場合にも使うが、そういう場合には、現在どうぞどうぞは使わない。 **何とぞ**は、どうぞどうぞとほぼ同義であるが、相手に願う気持ちが更に強い。やや古風な言い方。 **くれぐれも**は、十分に念を入れるように相手に申し入れる場合に使う。やや改まった言い方で、手紙とか別れるときのあいさつの中で用いることが多い。 **なんとか**は、実現は難しいかもしれないが、そこを無理しても、と願う気持ちを強く表す。また、十分とは言えないがそれに近い程度になるだろう、という場合にも用いる。 # 動作[どうさ] ## 動作[どうさ] ## 動[うご]き ## 振[ふ]る舞[ま]い ## 挙動[きょどう] ## 素振[そぶ]り <351> ### 使い分け例 **動作**・・・「動作がのろい。」「運転動作。」 **動き**・・・「心臓の動きが止まる。」「今日は体の動きがいい。」「動きがとれない。」「株価の動き。」「社会の動き。」 **振る舞い**・・・「振る舞いに気をつける。」「傍若無人の振る舞い。」 **挙動**・・・「あの男の挙動に注意せよ。」「挙動不審。」 **素振り**・・・「悲しそうなそぶりをする。」「うれしそうなそぶりが感じられる。」 ### どう使い分けるか **動作**は、人が何かをするときの体の動きを表す。 **動き**は、単に人の体の動きだけでなく、あらゆる物事の位置や場所の変動や状態や情勢などの変化を表す。 **振る舞い**は、動作どうさが体の動きそれ自体に視点を置いているのに対して、特に人の前での態度・行動や動作の仕方の意に用いる。すなわち周りの人々との関係に視点を置いた言葉である。 **挙動**は、外に現れた人の動作や行動のことで、一般に「―が怪しい」とは言うが「―が立派」とは言わないように、マイナス評価を伴うことが多い。 **素振り**は、そうした動作や行動、態度などに感じられる気配とか、そこに現れた喜怒哀楽といった心的状態について用いる。挙動きょどうがその行動・動作に伴うその人の意図や目的に視点を置くのに対して、素振りそぶりはその態度・動作に感じられる感情に主として視点を置く。 # 道徳[どうとく] ## 道徳[どうとく] ## 徳[とく] ## 公徳[こうとく] ## 倫理[りんり] ## 人倫[じんりん] ## モラル ### 使い分け例 **道徳**・・・「道徳を守る。」「道徳教育。」「公衆道徳。」 **徳**・・・「徳のある人。」「才あって徳なし。」 **公徳**……「公徳心を高める。」 **倫理**・・・「倫理の研究。」「政治倫理。」「倫理学。」 <352> **人倫**・・・「人倫にもとる行為。」 **モラル**・・・「モラルの向上に努める。」 ### どう使い分けるか **道徳**は、人が社会生活をする上で、他の人や社会に対して守るべき行為の基準を言う。 **徳**は、その人の身に備わっている優れた人柄や品性・行いの意に用いる。 **公徳**は、公衆道徳のことで、特に社会とのかかわりに視点を置いたかたい文章語。「一心」の形で使うことが多い。 **倫理**も、道徳どうとくとほぼ同義の、よりかたい文章語。道徳を学問的対象とする場合に使うことが多い。倫理学の略としても用いる。 **人倫**は、何よりも人としてあるべき、またどうしても守るべき倫理道徳の意のかたい文章語。 **モラル**は、道徳どうとく倫理りんりと同義の外来語(英語 moral)。最近では倫理りんり道徳どうとくより気軽に使われ、日常語化している。 # 時[とき] ## 時[とき] ## 時間[じかん] ## 時刻[じこく] ## タイム ## アワー ### 使い分け例 **時**・・・「時のたつのは早い。」「ゲームに時を忘れる。」「時が迫る。」「天候の変わりやすい時。」「変革の時。」「時を待て。」所 **時間**・・・「時間を守る。」「食事の時間。」「時間を超越する。」⇔空間。 **時刻**・・・「到着の時刻。」「時刻は3時をまわりました。」 **タイム**・・・「タイムを計る。」「タイムを求める。」「ティータイム。」「タイムカード。」 **アワー**・・・「ラッシュアワー。」「一キロワットアワー。」「ゴールデンアワー。」 ### どう使い分けるか **時**は、過去・現在・未来へと流れ続く時間として、またある一点に定められた瞬間的な時、ある長さの時間としての時、時期・季節の意味の時、時代あるいはチャンスといったようにさまざまな場合に使われる。 **時間**は、空間に対立する時の全体概念としての意味、またその流れの一点から一点までの間の長さのある時の意だが、俗には時刻じこくの意にも用いる。 <353> ときを「じ」と読んで「三時」と言えばある一点の時であるが、「三時間」と言えばある長さの時を表す。 **時刻**は、時計が刻々と刻む時間のある一点を言う。時の長さを言うことはない。 **タイム**は時間じかん時刻じこく両方の意で使うが、一語で使う場合、競技などでそれに要した時間や、ルールなどで決められた一定の時間の意のことが多い。またタイムアウトの略として、競技一時休止の意にも使う。 **アワー**は、英語hourは名詞だが日本語としてはほとんど他の外来語に付けて用いられる。意味は、時・頃・折・時代・単位として時間などいろいろ。 # 時々[ときどき] ## 時々[ときどき] ## 時折[ときおり] ## 折々[おりおり] ## 折節[おりふし] ## 時[とき]たま ## 時[とき]に ## 時[とき]として ### 使い分け例 **時々**・・・「渋谷には時々出掛けます。」 **時折**・・・「両親が時折訪ねてくる。」 **折々**……「四季折々の楽しみ。」「折々電話をかける。」 **折節**…「折節訪れる。」「折節外出中でした。」 **時たま**・・・「彼とは時たま会う。」 **時に**・・・「普段はおとなしいが、時に怒ることもある。」「時に、君の仕事はうまくいってるかね。」 **時として**・・・「たいていは家にいるが、時として出掛けることもある。」⇔同時に。 ### どう使い分けるか **時々**と**時折**はほぼ同義で、そんなにひんぱんではなく、しばらく間をおいては何かを繰り返す場合に用いる。時折ときおりの方が、時々ときどきに比べて、まれというわけではないが繰り返される度合いがそれほど多くない場合に用いるようである。また、やや改まった感じで文章語的である。時々ときどきは日常語。 **折々**は、「ーのうた」のように名詞として、その時その時の意にも用いるが、副詞としては時折ときおりとほぼ同義でより改まった感じの文章語。 <354> **折節**は、更に古い感じ。名詞としては折々おりおりと同じ意味があり、副詞としては折々おりおりの意のほかにちょうどその時といった意の使い方もある。 **時たま**は、時々ときどき時折ときおりよりも繰り返される度合いがずっと少なく、たまにそのことが行われる場合に用いる日常語である。 **時に**は、時たまときたまとほぼ同義だが、「何かのはずみにそういうこともある」といった感じを伴う場合に使うことが多い。ほかに、「ところで」の意の接続詞的用法もある。 **時として**は、時にときにと同じ。ただし、「ところで」の意はない。 # 解く[とく] ## 解[と]く(溶[と]く) ## 溶[と]かす(解[と]かす) ## ほどく ## ほぐす ### 使い分け例 **解(溶)く**・・・「ひもの結び目を解く。」「粉を水に溶く。」「髪を解く。」「緊急警報を解く。」「問題を解く。」「怒りを解く。」⇔結ぶ。 **溶(解)かす**・・・「チーズを溶かす。」「絵の具を溶かす。」「髪をくしで解かす。」 **ほどく**・・・「なわをほどく。」⇔しばる。 **ほぐす**・・・「糸のもつれをほぐす。」「緊張をほぐす。」「卵をほぐす。」 ### どう使い分けるか **解く**は、今まで結んであったり縛ってあったりしたものをばらばらに分け離す、固形物や粉を液体に入れ、全体として液状にする、また、乱れたものを整えたり、絡んでいるものを分け離す、などの意。そこから今まできちっと整えられていた設備、組織、状態などをゆるめたり解除したりする意にも用いる。 **溶(解)かす**は、固形物や粉を加熱したり液体を加えたりして液状にする、の意で、「チーズをー」は解くとくではおかしい。また、髪の乱れを整える意もある。 **ほどく**も、基本的な意味としては解くとくの最初の意味と同じで、くだけた日常語。解くとくが広く、組織・状態・抽象的内容の事柄などに用いられるのに比べてほどくほどくは具体物以外は使えない。 <355> | | 髪を― | 糸のもつれを― | 緊張を― | 謎を― | 荷物を― | 卵を― | チーズを― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **とく**| ○ | ○ | ○ | | | | | | **とかす**| ○ | | | | | | ○ | | **ほどく**| | ○ | | ○ | ○ | | | | **ほぐす**| ○ | ○ | ○ | | | ○ | ○ | くだけた日常語。〈解く〉が広く、組織・状態・抽象的内容の事柄などに用いられるのに比べて〈ほどく〉は具体物以外は使えない。 **ほぐす**は、何か塊のような状態のものを細かくさばいて分ける意で、「卵を―」に〈ほどく〉は使えない。また何かの精神的圧迫をやわらげる場合にも用いる。 # 独自[どくじ] ## 独自/独特[どくとく]/特有[とくゆう]/固有[こゆう] ### 使い分け例 **独自**・・・「独自の判断で行う。」「独自に調査する。」「独自性。」 **独特**・・・「日本語独特の表現。」「バラの独特の色。」「彼の独特の声。」「一種独特。」 **特有**・・・「この花特有の香り。」 **固有**・・・「民族固有の文化がある。」 ### どう使い分けるか **独自**は、他のものと異なり、それ自身だけにある、そのものだけで、の意で、人間の働き・行為・考え方・生き方やあり方などに用いることが多い。 **独特**は、そのものだけが持っている特別な性質であることの意、人にも物にも広く用いる。「―に研究する」には〈独自〉が妥当で、〈独特〉は使えず、「―の研究方法」にはどちらも使える。また「―性」では〈独自〉、「一種―の」では〈独特〉だけが使える。 **特有**は、他にはなくそれだけに備わっていることの意で、特に備え持つということに重点を置く言葉。 **固有**は、もともとそのものに自然に備わっていることの意に用いるかたい文章語。 # 特徴[とくちょう](性質) ## 特徴/特長[とくちょう]/特色[とくしょく] <356> ### 使い分け例 **特徴**・・・「横顔に特徴のある男。」「特徴的な話し方。」 **特長**・・・「燃費の安いのがこの車の最大の特長だ。」 **特色**・・・「各人の特色を生かす。」「ゴッホの絵の特色。」 **特質**・・・「日本美術の特質。」「アメリカ外交の特質。」 ### どう使い分けるか **特徴**は、ほかのものと比べて特に目立つ点とか区別されるところの意に用いる。 **特長**は、ほかのものと比べて特に優れている点とか、そのものだけに備わっている長所を言う。特徴とくちょうにはこの評価の意識はない。 **特色**は、ほかのものと比べて違う点、またほかより優れた点を合わせ持つ場合に用いる。特徴とくちょう特長とくちょうの二つの意味を同時に持ち、人や芸術作品などの場合、「持ち味」というくだけた表現に置き換えることもできる。 **特質**は、特長とくちょう特色とくしょくのように価値評価の意味を含む語ではない。一方、特徴とくちょうと比べ、具体的な物より、大きな抽象的な事柄について使うことが多い。 # 特別[とくべつ] ## 特別[とくべつ] ## 特殊[とくしゅ] ## 格別[かくべつ] ## 別格[べっかく] ## 並[なみ]外[はず]れ ### 使い分け例 **特別**・・・「特別の列車編成。」「今日は食事が特別うまい。」「特別扱い。」「特別室。」「特別まずくもない。」 **特殊**・・・「特殊な材料を用いる。」「特殊な書体。」「特殊技能。」 **格別**・・・・「今日の寒さは格別だ。」「格別のご愛顧。」 **別格**・・・「彼女だけは別格の扱いだ。」 **並み外れ**・・・「並み外れの大きな体。」「並み外れに大きい。」 ### どう使い分けるか **特別**は、普通一般のものと違い、特にそれぞれ区別されるさま。副詞としても使い、その場合、打ち消しを伴うと「それほど」の意。 <357> 消しを伴うと「それほど」の意。 **特殊**は、性質や内容の点で普通のものと特に違っている場合に用いる。「一料理」の例で〈特別〉と〈特殊〉を比べると、前者は価値の高い物、後者は変わった物というニュアンスの違いがある。 **格別**は、普通とは違って状態などの程度が甚だしく大きい(高い)さま。また副詞としても〈特別〉とほぼ同義に使える。 | | ―な扱いをする | ―に取り扱う | ―な性質を持つ | 今日の暑さはーだ | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **特別** | O | O | - | O | | **特殊** | - | - | O | - | | **格別** | O | O | - | O | | **別格** | O | O | - | - | | **並み外れ** | - | - | O | O | **別格**は、特別に取り扱われる地位。名詞である。 **並み外れ**は、〈格別〉とほぼ同義の和語。ただし、副詞はない。 # 年月[としつき] ## 年月[としつき]/歳月[さいげつ]/日月[じつげつ]/月日[つきひ]/春秋[しゅんじゅう]/星霜[せいそう]/光陰[こういん] ### 使い分け例 **年月**・・・「過ぎ去った年月。」「年月を経る。」「長い年月をかける。」 **歳月**・・・「歳月の流れ。」「歳月人を待たず。」 **日月**・・・「日月の進歩が著しい。」 **月日**・・・「月日が定まらない。」「月日の立つのは早い。」 **春秋**・・・「春秋に開かれる学会。」「春秋を経る。」「春秋に富む。」 **星霜**・・・「努力を重ねること幾星霜。」 **光陰**・・・「光陰矢のごとし。」 ### どう使い分けるか いずれもある程度以上の長さの時間を言う言葉。 **年月**は、何年か以上の長さを言うのが普通である。〈としつき〉は和語で、やや雅語的響きを持ち、〈ねんげつ〉はややかたい表現の中に用いる。意味は全く同じ。 **歳月**も同義で、より改まった文章語。日常語としてはあまり使わないが「一人を待たず」は漢詩に基づくことわざで、〈歳月〉を使う。 **日月**は、〈歳月〉と同義の文章語だが、「じつげつ」と言う場合、太陽と月の意もある。 **月日**は、〈年月〉〈歳月〉とほぼ同 <358> **春秋**は、四季のうちの春と秋の両シーズンという意もあるが、歳月さいげつと同義にも用いられる。特に未来の時間を言うことが多い。また、一年の意もある。 **星霜**・**光陰**は、いずれも過ぎ去っていく年月、長い時間を表す文学的な文章語。意味として差はないが、「幾ー」は星霜せいそうを使うことが多く、「一矢の如し」はことわざで光陰こういんに決まっている。 〔注意〕月日つきひをガッピと言うと、何月何日という日付けの意になる。 # 年寄[としよ]り ## 年寄[としよ]り ## 老人[ろうじん] ## 高齢者[こうれいしゃ] ## 老齢[ろうれい] ## 老体[ろうたい] ## 老骨[ろうこつ] ### 使い分け例 **年寄り**・・・「年寄りを大切にする。」「この年寄りが知っていることをお話ししましょう。」「お年寄り。」 **老人**・・・「老人の問題を考える。」「老人問題。」「老人ホーム。」 **高齢者**・・・「高齢者の人口が多くなる。」「高齢者福祉。」 **老齢**・・・「老齢の人優先の席。」「老齢年金。」 **老体**・・・「老体をいたわる。」「ご老体。」 **老骨**・・・「老骨にむち打って働く。」 ### どう使い分けるか **年寄り**はくだけた和語で、改まった場面ではあまり使わない。自分を指しても使える。他人を言う場合「お年寄り」が普通。 **老人**は年寄りとしよりよりやや文章語的な漢語。 **高齢者**は、老人ろうじんよりかたい文章語。「高齢化社会」という言葉と共に、近年よく使われるようになった。 **老齢**は、老人ろうじんの意味ではなく、年齢が高いこと。老人ろうじんの意で「老齢者」と言うのはあまり聞かれない。かたい文章語。 **老体**は、本来老いた身体の意だが、老人ろうじんの意にも使い、特に「ご老体」と言えば「お年寄り」の意の漢語である。ただし、「ご老体」には、「お年寄り」と異なり少々やゆ的な調子が感じられることがある。 <359> | | ―を大切に | ―問題 | ―福祉 | ご―の冷や水 | ―の席 | ―にむちうってがんばる | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | 年寄り | ○ | | | ○ | | | | 老人 | ○ | ○ | | | | | | 高齢者 | | | ○ | | | | | 老体 | △ | | | ○ | | | **老骨**は、本来の意味の老体ろうたいに同じ。老人ろうじんの意はなく、「ご―」とも言わない。 # 途中[とちゅう] ## 途中[とちゅう] ## 中途[ちゅうと] ## 途上[とじょう] ## 中頃[なかごろ] ## 中程[なかほど] ## 半[なか]ば ### 使い分け例 **途中**・・・「会社に行く途中。」「宿題を途中までする。」 **中途**・・・「話を中途で遮る。」「中途採用。」「中途退学。」 **途上**・・・「発展の途上にある国。」 **中頃**・・・「昭和の中頃。」「試合の中頃から調子が出る。」 **中程**・・・「島の中程にある小山。」「中程の成績。」「話の中程。」 **半ば**・・・「九○年代半ば。」「研究半ばにして病に倒れる。」「半ば無意識に叫ぶ。」 ### どう使い分けるか **途中**は、ある目的地に至るまでの間のどこかの地点、また物事の終わるまでの間のどこかの時点の意。 **中途**は途中とちゅうと少しニュアンスが異なり、本来のあり方でなく物事の半ばに何かが起こるという意識が強く、そうした用い方が多い。途中とちゅうより少し文章語的である。 **途上**はややかたい文章語。物事が進行している途中の意に用いる。 **中頃**は、ある時代とか期間の中程、また進行している物事の真ん中あたりの意に用いる。時間的な流れの中程であって、空間的な中途の意には使わない。 **中程**は、進行中の物事について時間的な中頃の意にも、空間的な真ん中あたりの意にも使う。また品質・順位・程度などの真ん中あたりの意にも用いる。 **半ば**は、数量的なもの、また場所や期間、進行中の物事の真ん中あたりの意に、幅広く用いられる。副詞的に、物事の程度が中位だという意味で使う用法もある。 <360> # とっくに ## 疾[とっ]くに ## 疾[とう]に ## 疾[とう]から ## 早[はや]く ## 夙[つと]に ### 使い分け例 **とっくに**・・・「彼はとっくに家に帰ったよ。」 **とうに**・・・「子供はとうに寝た。」 **とうから**・・・「競技はとうから始まっている。」 **早く**・・・「早く明治初期にその兆しはあったのである。」「両親とは早くに死に別れた。」「朝早くから起きている。」 **つとに**・・・「計画はつとに敵に察知せられた。」「つとに学に志す。」 ### どう使い分けるか **とっくに**は、時間的にずっと前に何かが行われたり何かの状態が終わっている場合に用い、**とうに**もほぼ同義。いずれもある行為や状態がかなり早い時点に終わっていて現在にまで続いていない。 **とうから**はそうした行為や状態が現在も行われていたり続いていたりしている場合に用いる。 **早く**は、形容詞「早い」の連用形が副詞化した(あるいは副詞的に使われる)もので、前の三語との意味の違いは、今よりずっと前というだけでなく、ある物事が始まってからあまり時間がたっていない時にその事(事件や現象など)があった、という意味合いを持つことである。 **つとに**は、雅語的な言葉で、早くからの意と、幼少の頃からの意とがある。文語としては、朝早くの意もあるが、現代の口語では使われない。 # とにかく ## とにかく ## 何[なに]しろ ## ともかく ## ともあれ ## とまれ ### 使い分け例 **とにかく**・・・「とにかく挑戦してみよう。」 **なにしろ**・・・「なにしろ手ごわい相手だった。」 **ともかく**・・・「ともかく助かってよかった。」 <361> た。」「実力はともかく挑戦するだけでもたいしたものだ。」 **ともあれ**・・・「何はともあれ、本人の気持ち次第だ。」 **とまれ**・・・「とまれ全力を尽して事に当たるべきである。」 ### どう使い分けるか **とにかく**は、いろいろ問題があって結果はどうなるか分からないが、ある決心をしたり行動に踏み切る場合に用いる。 **なにしろ**は、他の事はさておいて、この事は無視できないとか強調したいという場合に使う。 **ともかく**は、〈とにかく〉と同義に用いることが多いが、「・・・ならともかく」「・・・はともかく」の形で、その事はさておきという意にも用いる。この場合〈とにかく〉は使いにくい。(ただし使うという説もある) **ともあれ**も、〈とにかく〉とほぼ同義であるが、文章語的である。「何は―」の形で用いることが多い。 **とまれ**は〈ともあれ〉の転で、いずれにしてもの意。かなり気取った文章語。 # 飛ぶ[とぶ] ## 飛ぶ/跳ぶ[とぶ]/飛行[ひこう]する/跳躍[ちょうやく]する/飛躍[ひやく]する/飛翔[ひしょう]する ### 使い分け例 **飛ぶ**・・・「鳥が飛ぶ。」「ジェット機が飛ぶ。」「ヒューズが飛ぶ。」「うわさが飛ぶ。」 **跳ぶ**・・・「とび箱を跳ぶ。」「バッタが跳ぶ。」 **飛行する**・・・「むささびが飛行する。」「大西洋横断飛行。」 **跳躍する**・・・「砂浜で跳躍する。」「跳躍運動。」 **飛躍する**・・・「学力が大きく飛躍する。」「ときどき考えが飛躍する。」 **飛翔する**・・・「天空を飛翔する。」 ### どう使い分けるか **飛ぶ**は本来の地上を離れて空中を移動する意のほか、元の場所や形から切れて離れる、空中に散 <362> る、うわさ・命令などが広く伝わる、などのさまざまな意に用いる。 **跳ぶ**は、地面から跳ね上がる場合に使う。 **飛行する**は、地面を離れて空中を移動するという〈飛ぶ〉の意の漢語的文章語。羽根や翼のある生物や航空機などの人工物に用いることが多い。 **跳躍する**は、〈跳ぶ〉の意の漢語的文章語。 **飛躍する**は、〈跳躍する〉よりもスケールが大きく、空中に高く飛び上がること。また、そうした物理的位置変化のみならず、物事が急速に進歩向上する意、思考・論理などが正しい順序を越えて先へ進んでしまう意などにも使う。 **飛翔する**は、羽根や翼などのあるものが大空をゆうゆうと飛び行く意に用いる。かたい文章語。 # 止(停・留)まる[とまる] ## 止(停・留)まる/留まる[とどまる]/静止[せいし]する/停止[ていし]する ### 使い分け例 **止(停・留)まる**・・・「機械が止まる。」「バスが停まる。」「出血が止まる。」「小鳥が枝に留まる。」「目に留まる。」 **とどまる**・・・「今の職場にとどまる。」⇔去る。「出国希望者はとどまるところを知らない。」 **静止する**・・・「地球は静止することがない。」「静止しているようなこま。」 **停止する**・・・「操業を一時停止する。」「車が私の前で停止した。」「下まで転がり停止した石。」「思考停止。」 ### どう使い分けるか **止まる**は、今まで動いていたものが動かなくなったり、続いていたものが終わりになる場合に用いる。〈停まる〉〈留まる〉より広く使われる。〈停まる〉は、今まで動いていたものがある場所でその動きをやめる、移動をやめる場合に使うが、これは〈止まる〉でもよい。〈留まる〉は、今まで動いていた鳥や虫などがある場所につかまってじっと動かない場合に使うが、また「ホックがうまく―」のように固定する意にも使う。これらは〈止まる〉で <363> もよい。また人の五感や意識にとらえられる意にも用い、この場合は〈止まる〉とは書かない。 **とどまる**は、今いる場所や、地位・役職などから動かないでいる意に用いる。また物事の動きなどがある限度内におさまってそれ以上に出ることがなくなる場合にも使う。 **静止する**は、全然動かなくなる意。物理的な動きに関して言い、精神的な活動などには使わない。 **停止する**は、途中でやめる意で、物理的にも精神的にも言う。またほかの語は自動詞だがこれは他動詞にも使う。 〔注意〕「停」のト(マル)、「留」のトド(マル)の読みは、常用漢字表にはない。 # 取り敢えず[とりあえず] ## 取り敢えず/差し当たり[さしあたり]/一先[ひとまず]/一応[いちおう]/差し詰め[さしずめ]/当面[とうめん] ### 使い分け例 **取り敢えず**・・・「取りあえず準備だけはしておけ。」「取りあえず何かやってみろ。」 **差し当たり**・・・「さしあたり五万円渡しておく。」「さしあたり止血する。」 **ひとまず**・・・「今日はひとまずこれで終わりにしておこう。」 **一応**・・・「一応よくまとめてある。」「一応この辞書を使っていて下さい。」 **差し詰め**・・・「さしずめ生活はなんとかなる。」「希望者はさしずめ彼だけだ。」 **当面**・・・「当面の目標は大学受験だ。」 ### どう使い分けるか **取り敢えず**は、他のことはさしおいて、まず始めにすることはこの事だという場合に用い、**差し当たり**もほぼ同義であるが、緊急の措置として何かが行われる点に重点を置いた表現。 **ひとまず**もほぼ同義であるが、〈取り敢えず〉〈差し当たり〉が比較的差し迫った場面に用いるのに対して、〈ひとまず〉は次の行動や状態に移るまでの一つの区切りとして何かをするという場合に使う。 **一応**は、〈ひとまず〉と同じように <364> | | ―生活ができる | 準備が済んだ | ―名案はない | ―これできた | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **一応** | ○ | ○ | ○ | ○ | | **とりあえず**| ○ | | | ○ | | **さしあたり**| ○ | | ○ | ○ | | **ひとまず** | ○ | ○ | | ○ | あとできちっとするつもりであるが当面これで済ますという場合に使う。また、十分とは言えないが何かが一通り整っている場合にも使う。 **差し詰め**は、先のことは分からないが今のところこうだ、と言う場合に用いる。また、いろいろ考えたり検討してみたが、結局こんなところに落ち着くのでは、といった意にも用いる。〈差し当たり〉より、現時点ではこのことよりほかに道はない、という限定する感じが強い。 **当面**は、〈差し当たり〉とほぼ同義で、名詞およびサ変動詞として用いる。さしあたって処理・解決しなければならない必要性の強い場合に用いる。 # 努力[どりょく] ## 努力/頑張り[がんばり]/骨折り[ほねおり]/奮闘[ふんとう]/精進[しょうじん]/刻苦勉励[こっくべんれい] ### 使い分け例 **努力**・・・「努力の結果試験に合格する。」「懸命に努力する。」 **頑張り**・・・「頑張りが利く若さ。」「頑張りを期待する。」 **骨折り**・・・「むだな骨折りは嫌だ。」「骨折り損。」「お骨折りください。」 **奮闘**・・・「奮闘して勝利を得る。」「孤軍奮闘。」 **精進**・・・「精進を怠らない。」「芸道に精進する。」「精進料理。」 **刻苦勉励**・・・「日夜刻苦勉励の結果、難関を突破する。」 ### どう使い分けるか **努力**は、ある目的に向かって力を尽くして励む意。 **頑張り**は、〈努力〉とほぼ同義のくだけた言葉。ただし、「―が利く」を「努力が利く」とは言わない。〈頑張り〉より動詞「頑張る」を用いるほうが多い。「頑張れよ」のように、人を励ます言葉としてよく用いる。また、意志・主張を押し通したり、意地を張る場合にも用い <365> # とんだ ## とんだ / とんでもない / 以ての外[もってのほか] ### 使い分け例 **とんだ**・・・「とんだ目に会う。」「とんだ悪党だ。」「とんだ失敗をした。」 **とんでもない**・・・「とんでもないことをしてくれたな。」「おれがうそつきだなんて、とんでもない。」 **もってのほか**・・・「カンニングをするなんて、もってのほかのことだ。」 ### どう使い分けるか **とんだ**は、予想や思いもつかない事柄、取り返しのつかないほど大変なこと、常識では考えられないあきれたようなことなど、多く悪いことの程度が甚だしい意に用いる。 **とんでもない**もほぼ同義であるが、どちらかといえば〈とんだ〉に比べ思いがけないといった意外性に重点が置かれる。したがってまた、相手の言うことを強く否定する場合にも用いる。 **もってのほか**も、思いもよらぬ意外性を強く表現するが、〈とんだ〉や〈とんでもない〉が自分のことにも相手、また第三者のことにも用いるのに比べて、〈もってのほか〉は自分のことには使わず、相手や第三者を強く非難する場合に使う。 <366> # な # 内緒[ないしょ] ## 内緒/内密[ないみつ]/内内[ないない]/秘密[ひみつ]/機密[きみつ] ### 使い分け例 **内緒**・・・「家族に内緒で出掛ける。」 **内密**・・・「内密に調査する。」 **内内**・・・「このことは内々にしてほしい。」「内々に相談する。」 **秘密**・・・「外部には秘密にする。」「二人だけの秘密。」「秘密文書。」 **機密**・・・「国家の機密事項。」 ### どう使い分けるか **内緒**は、表沙汰にはせず隠しておくことを言う。**内密**と同じ意味だが、〈内密〉が間柄の親疎を問わず一般的に使われ文章語的であるのに対し、〈内緒〉は仲間内の私的な行動に用いられることが多く、くだけた言葉である。 **内内**は、すっかり隠し通すのではなく、公に発表する前に内輪どうしでひそかに話を通じておくようなときに用いる。 **秘密**は、公的個人的を問わず他に隠して知らせないこと一般に使うが、**機密**は、国や役所など公の機関のことに限られる。 | | ―にしておく | ―に調査する | ―で旅に出る | ―の話をする | ―で済ませる | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **内緒** | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | **内密** | ○ | ○ | △ | | ○ | | **内々** | ○ | | | ○ | ○ | | **秘密** | ○ | | | ○ | | 〔注意〕〈内緒〉は〈内証〉の音がナイショに転じたのに〈内緒〉の字を当てたもの。 # 内心[ないしん] ## 内心/本心[ほんしん]/本音[ほんね]/心中[しんちゅう]/真意[しんい] ### 使い分け例 **内心**・・・「内心はほっとしている。」 **本心**・・・「本心を打ち明ける。」「ようやく本心に立ち返った。」 <367> ### どう使い分けるか **内心**は、表情や動作などに現れていない心の中を指す。 **本心**は、感情や判断まで含めて広く心の中をある程度客観的に表すのに対し、**真意**は、話や文章の本当の意味や意図に重点を置いた使い方をする。また〈本心〉は本来の正常な意識の働きについても用いられる。 **本音**は、心の中を言葉に表したもので、建て前に対し、はっきりとは言葉に出して公にできない個人的な心の中の意に使われることが多い。 **心中**は、心の中に思っている内容を指し、〈本心〉とほぼ同じ意味で使われる。 〔注意〕「心中(しんじゅう)」と言う語は情死のことを言うが、元々互いの心中を誓い合ったところから出ている。 # 内容[ないよう] ## 内容[ないよう] / 中身[なかみ] / 実質[じっしつ] / 内実[ないじつ] / 内包[ないほう] ### 使い分け例 **内容**・・・「包みの内容を調べる。」「この本は内容がない。」⇔形式。 **中身**・・・「箱の中身を捨てる。」「中身の濃い話をする。」 **実質**・・・「見かけよりも実質に重点を置く。」「実質的な論議。」 **内実**・・・「会社の内実を聞く。」「内実を暴露する。」 **内包**・・・「可能性を内包する。」「内包と外延。」⇔外延。 ### どう使い分けるか **内容**は、そのものの内部を形作っているもので、容器などに入っている実体のあるもの、また話や文章によって表されている事柄や意味について言う。**中身**もほぼ同じ意味で用いられるが、〈内容〉に比べてくだけた言葉である。 〈内容〉や〈中身〉が物理的に取り出すことのできるものも表すのに対し、**実質**は、中に含まれている抽象的な意味を表す。 **内実**は、外部の人間には見えない内部の様子について使い、会社や団体などの組織の内部を指すことが多い。 **内包**は、そのものの内部に、ある事物を含んでいること。また論理学の用語で、ある概念の中に含まれるすべてのものに共通の性質の意。前者の意の場合のみ「ーする」の形がある。 <368> 内実は、外部の人間には見えない内部の様子について使い、会社や団体などの組織の内部を指すことが多い。 **内包**は、そのものの内部に、ある事物を含んでいること。また論理学の用語で、ある概念の中に含まれるすべてのものに共通の性質の意。前者の意の場合のみ「―する」の形がある。 # なお ## 猶(尚)[なお]/但し[ただし]/ただ/尤も[もっとも] ### 使い分け例 **なお**・・・「なお、詳細は改めて御連絡致します。」 **但し**・・・「行ってもよい。ただし、夜間はだめだ。」 **ただ**・・・「この品はとてもいい。ただ、値段が高い。」 **もっとも**・・・「彼の成績は素晴らしい。もっとも、数学は別だが。」 ### どう使い分けるか いずれも付け加えて述べるときのつなぎの語。**なお**は、単純な追加であるが、**但し**・**ただ**・**もっとも**は、条件や例外を補説するときに使う。〈但し〉はやや改まった言い方で、〈ただ〉はそのくだけた言い方。〈もっとも〉は急いで付け加える感じがあり、「・・・だが」という形で終わることが多い。 〔注意〕「なお四、五日の余裕が欲しい」、「ただ平安を祈るのみ」の〈なお〉や〈ただ〉は副詞。 # なおざり ## 等閑[とうかん]/忽せ[ゆるがせ]/粗略[そりゃく]/蔑ろ[ないがしろ]/疎か[おろそか] ### 使い分け例 **なおざり**・・・「この分野は今までなおざりにされて来た。」 **ゆるがせ**・・・「ゆるがせにできない問題だ。」 **粗略**・・・「客を粗略に扱う。」「彼の意見を決して粗略にしてはいけない。」 **ないがしろ**・・・「勉強をないがしろにする。」「親をないがしろにしてはいけない。」 <369> ### どう使い分けるか **なおざり**は、そのことが大切なことと知っていて、当然払わねばならない注意を払わず、打ち捨てていい加減にしておくことを言う。 **ゆるがせ**は、そのことが大事なことであることに気付かずに、注意を怠りほうって置くことを言う。 **粗略**は、細かいところまでは注意をしないで、不十分な扱いをすることを言う。 **ないがしろ**は、本来なら大事に扱ったり尊敬したりしなければならないものを軽んじることで、人を対象とすることも多い。 **おろそか**は、やり方がいい加減な様子。〈ないがしろ〉が意識的な行為について言うのに対し、これはいつの間にかそうなっている状況を言う。 # 直す[なおす] ## 直す[なおす] / 治す[なおす] / 改める[あらためる] / 正す[ただす] / 修理[しゅうり]する ### 使い分け例 **直す**・・・「文章を直す。」「機嫌を直す。」「規約を直す。」 **治す**・・・「病気を治す。」 **改める**・・・「本の記述を改める。」「日を改めて出直す。」「かばんの中身を改める。」 **正す**・・・「間違いを正す。」「姿勢を正す。」「襟を正す。」 **修理する**・・・「故障した時計を修理する。」 ### どう使い分けるか **直す**は、悪いところをよい状態にする意に用い、**治す**は、特に人間や他の生き物の、病気の場合に使われる。 **改める**は、古いものを新しいものに入れ替えたり、新しいよいものにしたりすることに用いられるほかに、間違いがないかよく調べることにも使う。必ずしも前の状態が間違っていなくてもよりよい状態を求めるときに使われる。 **正す**は、間違っているものやゆがんだり格好の悪いものを正式の状態に戻す意で、〈直す〉よりも厳密さを求める度合いが強い。 **修理する**は、機械類の故障を直す場合に限って用いられ、人の身体や行動、あるいは抽象的な事柄には使わない。 <370> | | 悪い風習を― | 姿勢を― | 規約を― | 壊れた機械を― | 襟を― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | 直す | ○ | | ○ | ○ | | | 改める | ○ | | ○ | | | | 正す | ○ | ○ | | | ○ | | 修理する | | | | ○ | | # 直る[なおる] ## 直る[なおる] / 治る[なおる] / 癒える[いえる] / 治癒[ちゆ]する / 回復[かいふく]する ### 使い分け例 **直る**・・・「悪い癖が直る。」「故障が直る。」「二人の仲が直る。」 **治る**・・・「風邪が治る。」 **癒える**・・・「病気がいえる。」「痛みがいえる。」「心の痛手がいえる。」 **治癒する**・・・「けがはすっかり治癒した。」⇔平癒する。 **回復する**・・・「健康が回復する。」「時間の遅れが回復する。」「信用が回復する。」 ### どう使い分けるか **直る**は、悪い状態であったものが元のよい状態になる、また、正しくなる、訂正される、の意。 **治る**は、病気の状態から健康を取り戻したときに使う。**癒える**も、病気、けが、痛みなどが治る場合に用いられるが、古風な言い方である。**治癒する**もほぼ同義だが漢語的な言い方で文章語である。 **回復する**は、悪い状態であったものがよい状態になって元通りになる、また一度失ったものを取り戻す意味にも用いる。〈直る〉が具体的、短時間的に元に戻る場合に使われるのに対し、〈回復する〉は、総合的、長期的な状態の場合に使われる。〈回復する〉は、機械の故障が直る場合などには使われない。 # 中[なか] ## 中[なか] / 内[うち] / 内部[ないぶ] / 中身[なかみ] ### 使い分け例 **中**・・・「家の中。」「嵐の中を行く。」 **内**・・・「胸の内。」「今日の内に行く。」 **内部**・・・「建物の内部。」「内部告発。」「内部の人間。」⇔外部。 **中身**・・・「袋の中身。」 <371> ### どう使い分けるか **中**は、何かの仕切りで囲まれていたり、何かと何かとに挟まれていたりしている部分を客観的に言う。 **内**は、自己を中心として仕切りのこちら側を言う。また時間的な範囲を言う場合〈内〉を用いて、〈中〉は使わない。 **内部**は、ものの内側の部分。時間的範囲内の意には使わない。また、組識の中、または組織の中の人の意にも用いられる。 **中身**は、何かの内側に存在する具体的内容物を指す。 # 仲違い[なかたがい] ## 仲違い[なかたがい] / 不和[ふわ] / 絶交[ぜっこう] / 断交[だんこう] / 反目[はんもく] / 確執[かくしつ] ### 使い分け例 **仲違い**・・・「仲たがいの原因。」「友人と仲たがいする。」 **不和**・・・「家庭の不和。」 **絶交**・・・「君とは絶交だ。」「親友と絶交する。」 **断交**・・・「隣国と断交の状態にある。」「両国は断交している。」 **反目**・・・「両者の反目。」「民族同士が反目する。」 **確執**・・・「父との間に確執を生じる。」「十年来確執してきた両者。」 ### どう使い分けるか **仲違い**は、人と人との付き合いの関係が悪くなることを言い、グループや国家間などには使わないのが普通である。 **不和**は、互いの気持ちがしっくりとせずかみ合わない関係について言い、家庭内の仲に使うことが多い。 **絶交**は、〈仲違い〉などの結果交際を全くやめることで、友人関係によく使われるが、家族には用いない。 **断交**も相手との交際をやめることだが、国家間の場合に使う。 **反目**は、単に仲が悪いだけではなく、互いに対立してにらみ合う関係を言う。 **確執**は、互いに自説を主張して少しも譲らず、関係が悪くなることを言う。 〔注意〕〈不和〉だけは「―する」の形がない。 <372> # 仲直り[なかなおり] ## 仲直り[なかなおり] / 和解[わかい] / 和睦[わぼく] / 講和[こうわ] / 和平[わへい] / 手打ち[てうち] ### 使い分け例 **仲直り**・・・「けんかをやめて仲直りする。」 **和解**・・・「会社の争議の和解が成立する。」「争っていた夫婦が和解する。」 **和睦**・・・「和睦を勧める。」「敵国と和睦する。」 **講和**・・・「講和を結ぶ。」「講和条約。」 **和平**・・・「和平工作。」「和平の実現を望む。」 **手打ち**・・・「争いも、そろそろ手打ちの時だ。」「契約が終わって手打ちをする。」 ### どう使い分けるか **仲直り**は、日常生活上のちょっとした争いをやめて、元に戻すことを言い、大人どうしの場合にも子供どうしの場合にも使う。 **和解**は、〈仲直り〉よりも正式あるいは公式なもので、団体の間や裁判沙汰になったような場合などに用いられる。子供どうしのけんかなどには用いられない。 **和睦**は、戦争をやめて元の平和な状態に戻すことで、局地的な戦争や規模の小さな紛争にも用いるが、**講和**は、国と国との間などの大規模な戦争の場合に言い、国際的関係を元の状態に戻すことである。**和平**は、講和によって実現した平和な状態を言う。 | | 隣人と―する | 敵国と―する | 相続争いが―する | 子供同士が―する | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | 仲直り | ○ | | | ○ | | 和解 | | | ○ | | | 和睦 | | ○ | | | | 講和 | | ○ | | | **手打ち**は、和解や契約が成立したとき、一同が手を打って祝ったところからきており、和解の場合に用いるのは古風な、また、俗語的な言い方である。 (注意) 〈和平〉〈手打ち〉には、「ーする」の形がない。後者の動詞形に相当するのは「手を打つ。」 <373> # 仲間[なかま] ## 仲間[なかま] / 同士[どうし] / 同志[どうし] / 同僚[どうりょう] / 同輩[どうはい] / 同類[どうるい] / 一味[いちみ] / 一同[いちどう] / グループ ### 使い分け例 **仲間**・・・「仲間に合図する。」「遊び仲間に加わる。」「仲間外れ。」 **同士**・・・「好きな者どうしが一緒になる。」「同士討ち。」「仲間どうし。」 **同志**・・・「同志的結合。」「同志を募って会を結成する。」 **同僚**・・・「同僚に相談する。」「前の職場の同僚と飲む。」 **同輩**・・・「同輩とは仲良くしている。」「同輩のよしみ。」 **同類**・・・「同類が相集う。」「あの連中の同類とみなす。」 **一味**・・・「強盗の一味が捕まる。」「一味に加わる。」 **一同**・・・「一同の者が起立する。」「有志一同より。」 **グループ**・・・「グループ交際。」「コーラスのグループに入る。」「生徒を二つのグループに分ける。」 ### どう使い分けるか **仲間**は、物事を一緒にする人々の集まりについて言い、広く一般的に使われる。**同士**もほぼ同じ意味で用いられるが、「隣ー」のように他の語の後に付けて集団を表す場合が多い。 **同志**は、同じ目的、理想、志望を持った人々の集まりを言うが、〈同士〉と誤用される傾向がある。 **同僚**は、同じ職場に勤める者どうしを言い、先輩や後輩も含む。 **同輩**は、年齢や経歴などがほぼ同じ間柄を言い、同じ職場や学校に同じ頃入った人に使う。 **同類**は、そのものと同じ種類のものを指し、人に用いるのはややくだけた言い方になる。 **一味**は、特に悪事などを働く仲間に用いる。 **一同**は、構成員の一人一人に重点を置かず、全体をひっくるめて呼ぶときに用いる。 **グループ**は、何か共通の目的や類似点があって集められたり分けられたりした集団を指す。〈仲間〉が心を合わせ一緒になって何かを行う集団であるのに対し、〈グループ〉は単に同じことをするだけで集合していて、互いがあまり親しくない場合にも用いられる。 <374> # ながら ## ながら / つつ / がてら / 旁々[かたがた] ### 使い分け例 **ながら**・・・「歩きながら考える。」「狭いながらも楽しい我が家。」 **つつ**・・・「酒を飲みつつ語る。」「台風は北上しつつある。」 **がてら**・・・「散歩がてら立ち寄る。」「夕涼みがてら町を歩く。」 **かたがた**・・・「報告かたがた礼を言う。」「お見舞いかたがたお伺いする。」 ### どう使い分けるか **ながら**は、別々の動作が一つの主体によって並行して行われる場合や、二つの矛盾するかに見える動作が共存する場合に用いられる。 **つつ**は、二つの動作が同時に並行して行われる場合や、その動作が反復して行われ、多くの場合今も引き続き行われている場合に使われ、〈ながら〉と同じ意味も受け持つがやや古風で文章語的である。また〈つつ〉には矛盾するかに見える動作の共存を表す用法はない。 **がてら**は、あることをするとき、それを良い機会にして別のこともしてしまう場合に用いられる。 **かたがた**もほとんど同じ使い方がされるが、書簡文など改まった丁寧な表現に用いることができる。 # 無(亡)くす[なくす] ## 無(亡)くす[なくす] / 失う[うしなう] / 紛失[ふんしつ]する / 喪失[そうしつ]する ### 使い分け例 **無(亡)くす**・・・「物をなくす。」「財産を無くす。」「母を亡くす。」⇔無(亡)くする。 **失う**・・・「地位を失う。」「気を失う。」「面目を失う。」「友人を失う。」 **紛失する**・・・「時計を紛失する。」「書類の紛失に気づく。」 **喪失する**・・・「自信を喪失する。」「記憶喪失。」 <375> ### どう使い分けるか **無(亡)くす**と**失う**は、それまで持っていた重要なものなどを意に反してどこかへやってしまうことで、具体的なものにも抽象的なものにも用いる。〈なくす〉のほうがややくだけた言い方である。人を対象とする場合、〈失う〉は必ずしもその人の死を意味しないが、〈なくす〉では、その人に死なれることである。この場合の〈なくす〉は〈亡くす〉と書く。 **紛失する**は、物など具体的なものを失うことで、〈失う〉に対して漢語的な文章語である。 **喪失する**は、心理的、精神的なものを失うときに用いる。 # 和やか[なごやか] ## 和やか[なごやか] / 仲がいい[なかがいい] / 和気藹藹[わきあいあい] / 睦まじい[むつまじい] ### 使い分け例 **和やか**・・・「和やかに食事をする。」「和やかな気分。」 **仲がいい**・・・「あの子供たちは仲がいい。」「仲のいい夫婦。」⇔仲が良い。 **和気藹藹**・・・「和気藹々とした職場。」「和気藹々裏に散会する。」「和気藹々たる家庭。」 **睦まじい**・・・「むつまじい夫婦。」「家族がいつもむつまじく暮らす。」⇔仲睦まじい。 ### どう使い分けるか **和やか**は、気分が和らいでゆったりしている様子を言い、人と人との関係だけでなく、個人の表情や心情にも言う。 **仲がいい**は、友人どうしが親しく付き合っている様子を言い、主として子供どうしに使うが、夫婦の間柄などにもくだけた表現として使うことがある。修飾語となるとき〈仲のいい〉と言うこともある。 **和気藹藹**は和やかに打ち解けた様子を言い、会議や団体など、集団の雰囲気について用いる。 **睦まじい**は、気が合って、けんかやもめ事がない様子を表し、主に兄弟や夫婦など家族関係に用いる。 <376> # なぜ ## 何故[なぜ] / どうして / なんで / 何故[なにゆえ] ### 使い分け例 **なぜ**・・・「なぜ泣くの。」「父が怒っているのはなぜだろう。」 **どうして**・・・「練習量の不足をどうして補おうか。」「どうしてこんなことがわからないのか不思議でしょうがないよ。」「どうして死ねよう。」「なかなかどうして立派だよ。」 **なんで**・・・「なんで学校を休んだのだろうね。」「なんで僕がそんなばかなことを言えようか。」 **何故**・・・「なにゆえ我々は敗れたのか。」「なにゆえ民衆は立ち上がったのか。」 ### どう使い分けるか **なぜ**は、どのような原因・理由でそうなのかという疑問や不審の気持ちを表す。 **どうして**は、どのような方法や手段で、の意。また、〈なぜ〉の意。反語的な用法もある。ほかに、見かけや予想に反して、いやはや、などの意もある。 **なんで**は、〈なぜ〉とほぼ同じ意だが、反語的な用法もある。ややくだけた話し言葉的な語である。 **何故**は、〈なぜ〉とほぼ同じ意味で用いられるが、古風なかたい言い方である。 # 撫でる[なでる] ## 撫でる[なでる] / 擦る[こする] / 摩る[さする] ### 使い分け例 **撫でる**・・・「子供の頭をなでる。」「髪をやさしくなでる。」「高原の風がほおをなでる。」 **こする**・・・「タオルで体をごしごしこする。」「目をこする。」 **さする**・・・「腰をさする。」「腕をさする。」 ### どう使い分けるか **撫でる**は、指先やてのひらを何かの表面に軽く触れながら、繰り返しある方向に動かす。 **こする**は、何かの表面に押し当てて前後左右などに強く動かす。手だけでなく、布や道具を使う場合も指す。何かの刺激を与えることを目的にした動作に用いられる。必ずしも繰り返しの動作でなくてよい。 **さする**は、何かの表面に指やてのひらを当てたまま、強い刺激を与えない程度に滑らかに動かす。人間や動物の身体が対象となり、身体の痛みを和らげる場合に用いられる。〈撫でる〉よりも力を入れる感じがある。 <377> **撫でる**、**こする**、**さする** **こする**は、何かの表面に押し当てて前後左右などに強く動かす。手だけでなく、布や道具を使う場合も指す。何かの刺激を与えることを目的にした動作に用いられる。必ずしも繰り返しの動作でなくてよい。 **さする**は、何かの表面に指やてのひらを当てたまま、強い刺激を与えない程度に滑らかに動かす。人間や動物の身体が対象となり、身体の痛みを和らげる場合に用いられる。〈撫でる〉よりも力を入れる感じがある。 | | 腕をー | 子供の頭をー | かわいがりー | 顔をー | ごしごしー | てのひら同士をー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **撫でる** | O | O | O | - | - | - | | **こする** | Δ | - | - | O | O | O | | **さする** | O | - | - | O | - | O | # 何気無く[なにげなく] ## 何気無く[なにげなく]/何となく[なんとなく]/ふと ### 使い分け例 **何気無く**・・・「何気なく外に目をやる。」「何気なく振る舞う。」 **何となく**・・・「何となく来てしまった。」「何となくいい気持ちだ。」 **ふと**・・・「ふと思い出した。」「ふと立ち止まる。」 ### どう使い分けるか **何気無く**は、はっきりした意図を持ってやったのではなく、という意味のほか、相手にそれと悟られまいとして、の意味を表し、特に自分の行為について言う。 **何となく**は、特に意識しないで何かをする場合に用いるほか、特にどの点がそうだと限定できないという気持ちも表す。この場合〈何気無く〉では不可。 **ふと**は、偶然そのことが起きたり、理由もなくそうしたい思いに駆られたりする場合に用い、〈何気無く〉と似ているが、相手に悟られまいという意味のときには使えない。また、急にあることが起こるという意味にも用いる。 # 何しろ[なにしろ] ## 何しろ[なにしろ]/何分[なにぶん]/何せ[なにせ] <378> ### 使い分け例 **何しろ**・・・「何しろ勉強が第一だ。」「何しろあの始末だから。」 **何分**・・・「何分夜のことで行けない。」「何分子供をよろしく。」 **何せ**・・・「何せ急なことで。」 **とにかく**・・・「とにかくやってみる。」「とにかく朝食は取るべきだ。」 ### どう使い分けるか **何しろ**は、どうなったところでそのこと自身は変化しないだろうという気持ちを表す。 **何分**は、あれこれ考えてもその事実に変わりはないという気持ちを持ちながらも相手に何か依頼するような、あるいは何かの取り扱いについて相手に期待するような場合に、やや改まった感じで使う。 **何せ**は、〈何しろ〉とほぼ同じ意味で用いられるが、俗語的である。 **とにかく**は、どんな事情があるにせよ、はっきり言えばこうなのだ、という気持ちを表す。〈何しろ〉より意志的な感じがある。 # 何やかや[なにやかや] ## 何やかや[なにやかや] / 何くれ[なにく] / 彼此[あれこれ] / 彼此[かれこれ] ### 使い分け例 **何やかや**・・・「何やかやと心配する。」「何やかやで金を使う。」 **何くれ**・・・「何くれと世話を焼いてくれた。」「何くれと面倒をみる。」 **あれこれ**・・・「あれこれと準備する。」「あれこれ考え過ぎるな。」 **かれこれ**・・・「かれこれ難しいことを言うな。」「かれこれ十二時だ。」 ### どう使い分けるか **何やかや**は、互いに関係する項目に特別な制限がないことを一括して示す。 **何くれ**は、これと言って限定せず、いろいろな点に渡ることを示す。〈何やかや〉が良いことにも価値のないことにも用いられるのに対し、〈何くれ〉は相手に好感を持っている場合に使われる。 **あれこれ**は、いろいろな事物や人について、まとめて言う。〈何やかや〉がやや古風な言い方であるのに対し、日常語的である。 **かれこれ**は、あまり取り立てて言うほどのことでもないことを大ざっぱに指して言う場合にも用いる。 <379> # 生意気[なまいき] ## 生意気[なまいき] / 小生意気[こなまいき] / 小賢しい[こざかしい] / 小憎らしい[こにくらしい] / 利いた風[きいたふう] ### 使い分け例 **生意気**・・・「大人の真似をして生意気だ。」「息子は生意気な年ごろだ。」 **小生意気**・・・「小生意気なことを言うやつ。」「小生意気な中学生。」 **小賢しい**・・・「こざかしい口を利く。」「こざかしく立ち回る男だ。」 **小憎らしい**・・・「小憎らしい態度を取る子供。」「小憎らしいほど落ち着いている。」 **利いた風**・・・「利いた風なことを言う。」 ### どう使い分けるか **生意気**は、それ程でもないのに一人前の言動をする様子や、見たり聞いたりするといかにもしゃくに触るという気持ちを起こさせる様子を言う。**小生意気**は、いかにも生意気である様子を言い、場面によって〈生意気〉よりも強い意味と軽い意味を表すことがある。 **小賢しい**は、そんな能力もないのに利口ぶっていっぱしのことをする様子。相手の態度を非難して言う表現である。 **小憎らしい**は、やることが生意気で、全く憎いという程ではないがしゃくに触るという感じを表す。いい大人には使わず、年少者について言うことが多い。 **利いた風**は、分かりもしないのによく知っているというような態度を指して言う。 # 怠ける[なまける] ## 怠ける[なまける] / 怠る[おこたる] / ずるける / さぼる / 骨惜しみ[ほねおしみ]する / 油を売る[あぶらをうる] <380> ### 使い分け例 **怠ける**・・・「仕事を怠ける。」「宿題を怠けて遊びに行く。」 **怠る**・・・「勉強を怠る。」「注意を怠る。」「義務を怠る。」 **ずるける**・・・「会社をずるける。」「当番をずるける。」 **さぼる**・・・「授業をさぼる。」「練習をさぼる。」 **骨惜しみする**・・・「骨惜しみせずに働く。」「成功したければ、骨惜しみをするな。」 **油を売る**・・・「どこで油を売っていたのか。」「勤務中に油を売る。」 ### どう使い分けるか **怠ける**は、それをするだけの余裕があり本来すべきであることを知っていながら、しないで無駄に過ごす、の意。 **怠る**は、本来すべきであることをしないでいる、の意。〈怠ける〉が分かっていてやらないのに対し、〈怠る〉はついうっかりしてやらなかったことも含んでいる。 **ずるける**・**さぼる**は、〈怠ける〉とほぼ同義だが、俗語である。〈さぼる〉の方が新しい。〈怠ける〉が、手を抜く感じが強いのに対し、〈ずるける〉〈さぼる〉は全くしない場合に多く用いる。 | | 勉強を― | 会社を― | 泳ぐための努力を― | 学校を― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | 怠ける | ○ | | ○ | | | 怠る | ○ | | ○ | | | さぼる | | ○ | | ○ | **骨惜しみする**は、実力をすっかり出し切らず労苦をいとう意味で、〈怠ける〉よりも意識的にそうするという感じが強い。 **油を売る**は、仕事などをするべき時間に無駄話などをして時間を空費する意味で、そういう人をからかって言う場合が多い。 〔注意〕〈さぼる〉はサボタージュ(仏語sabotage)の省略形を動詞化したものである。 # 生半可[なまはんか] ## 生半可[なまはんか] / 生齧り[なまかじり] / 一知半解[いっちはんかい] / 半可通[はんかつう] / 知ったか振り[しったかぶり] ### 使い分け例 **生半可**・・・「生半可な知識を持つ。」「生半可な気持ちではいけない。」 **生かじり**・・・「生かじりの知識。」「生かじりのフランス語。」 **一知半解**・・・「一知半解の徒。」 **半可通**・・・「半可通が芸術論を振り回す。」 **知ったか振り**・・・「彼は何でも知ったか振りをする。」「知ったか振りはよくない。」 <381> ### どう使い分けるか **生半可**は、知識や言動が中途半端で正確さや徹底を欠く状態。 **生かじり**は、そのことについて十分な知識を持っていない状態を言い、知識の場合に限って使う。 **一知半解**は、知識が浅く不十分な様子で、〈生かじり〉と同義の漢語。 **半可通**は、よく知らないのに知識があるような顔をして振る舞うことで、そうした人物を指して言う場合も多い。 **知ったか振り**は、実際は知らないのに知っているような素振りをすること、あるいは人を指す。〈半可通〉と同義の話し言葉である。 # なまめかしい ## 艶めかしい[なまめかしい] / 色っぽい[いろっぽい] / 妖艶[ようえん] / 婀娜っぽい[あだっぽい] ### 使い分け例 **なまめかしい**・・・「なまめかしい浴衣姿の女性。」「なまめかしい素振り。」 **色っぽい**・・・「色っぽい女。」「身のこなしが色っぽい。」 **妖艶**・・・「妖艶な美しさの女性に目を奪われる。」「妖艶な姿態。」 **あだっぽい**・・・「あだっぽい年増。」「あだっぽい身のこなし。」 ### どう使い分けるか **なまめかしい**は、女性の、美しさの中に異性の心をそそるような魅力が感じられる様子を言う。 **色っぽい**は、女性に異性の情欲をそそるような感じが見られる様子を言い、〈なまめかしい〉と違い必ずしも美しさを要しない。ややくだけた言葉である。 **妖艶**は、女性の姿が異性を誘惑しそうにあやしい美しさを持っている様子を言い、かたい漢語の文章語である。 **あだっぽい**は、女性が異性の情欲をそそるような魅力を身体全体から発散している様子で、〈色っぽい〉よりさらに濃厚にセクシーさがあり、年少の女性には用いることが少ない。 <382> # 波[なみ] ## 波[なみ] / 波浪[はろう] / 波濤[はとう] / 波乱[はらん] ### 使い分け例 **波**・・・「波が立つ。」「時代の波。」 **波浪**・・・「波浪注意報。」「波浪が岸壁を洗う。」 **波濤**・・・「波濤を乗り越え進む船。」「万里の波濤。」 **波乱**・・・「波乱に満ちた一生を送る。」「一波乱ありそうだ。」 ### どう使い分けるか **波**は、水面などに高低が生じて、それが次々に移動して伝わる現象。また、次々に押し寄せるもののたとえに用いられる。 **波浪**は、〈波〉と同義の文章語で、主に海の表面波に用いる。 **波濤**は、大きな波を言うかたい漢語の文章語である。 **波乱**は、大小の波の意から転じて、物事に起伏や変化のある様子を言い、もめ事や騒ぎなどの意にも使われる。 〔注意〕〈波乱〉は、〈波瀾〉の書き換え。「波」は小波、「瀾」は大波のことである。 # 並べる[ならべる] ## 並べる[ならべる] / 連ねる[つらねる] / 配列(排列)[はいれつ]する / 羅列[られつ]する ### 使い分け例 **並べる**・・・「皿を並べる。」「店先にはたくさんの品が並べられている。」「不平不満を並べる。」 **連ねる**・・・「家が軒を連ねる。」「車を連ねて行進する。」 **配列する**・・・「五十音順に配列する。」「配列の仕方が悪い。」 **羅列する**・・・「項目を羅列する。」「肩書きの羅列。」 <383> ### どう使い分けるか **並べる**は、何かを次々に隣り合わせに置く意で、必ずしも列にならないでよい。また、幾つかのことを続けて言う場合にも用いる。 **連ねる**は、何かを、つながって列になるように次々に置いて、始めから終わりまで途切れていない状態にする、の意である。 **配列する**は、一定の順序を決めて何かを並べる意である。 **羅列する**は、ずらりと並べ上げる意で、必ずしも決まった順序でなくアトランダムでよい。 | | 皿を― | 項目を― | 講堂に椅子を― | 名簿に名を― | 渡り鳥が列を― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | 並べる | ○ | ○ | ○ | | | | 連ねる | | | | ○ | ○ | | 配列する | | ○ | ○ | | | | 羅列する | | ○ | | | | # 似合う[にあう] ## 似合う[にあう] / 似付かわしい[につかわしい] / 相応しい[ふさわしい] / 打って付け[うってつけ] ### 使い分け例 **似合う**・・・「よく似合う服。」「富士には、月見草がよく似合う。」 **似付かわしい**・・・「いかにも彼に似つかわしい話だ。」「子供にはその程度の品が似つかわしいだろう。」 **ふさわしい**・・・「学生にふさわしい服装。」「実力にふさわしい地位。」 **打って付け**・・・「その仕事は彼にうってつけだ。」「自分にうってつけの役割だ。」 ### どう使い分けるか **似合う**は、対象物との間に齟齬や違和感がなく、互いに釣り合っている感じである、の意で、一般的に使われる語である。 **似つかわしい**は、ぴったり当てはまる感じで、ちょうどよい取り合わせであるときに使う。必ずしも良い意味だけでなく、その辺が分相応だという程度にも用いられる。 **ふさわしい**は、対象が理想的なあるいは好ましいとされる基準にぴったりと合い、しっくりと調和している感じである場合に言う。 **打って付け**は、その人の性格や能力などが与えられた資格や条件などにいかにもぴったりと合う様子を表す。〈ふさわしい〉よりは現実的な程度について用いる。 <384> # 匂い[におい] ## 匂い[におい] / 薫(香)り[かおり] / 香[か] / 臭み[くさみ] ### 使い分け例 **匂い**・・・「におい袋。」「ガスのにおいがする。」「生活のにおい。」 **薫(香)り**・・・「懐かしい浜風の薫り。」「花の香りが漂う。」 **香**・・・「木の香のする新居。」「磯の香。」 **臭み**・・・「魚の臭みが取れない。」「あの人は官僚の臭みが抜けない。」「臭みのある演技。」 ### どう使い分けるか **匂い**は、あるものから漂ってきて鼻で感じられる刺激を言い、よい場合にも悪い場合にも使う日常語である。また、それらしい雰囲気があるという場合にも用いる。 **薫(香)り**は、いつも身辺に漂わせておきたいと思うようなよい匂いを言う。**香**は、〈薫(香)り〉と同じ意味で用いられるが、雅語的である。〈薫(香)り〉も〈香〉も嫌な匂いに用いられることはほとんどない。 **臭み**は、かぐと嫌な感じがする匂いを言う。また、わざとらしい嫌な感じのする様子を言うときもある。 # 賑やか[にぎやか] ## 賑やか[にぎやか] / 騒がしい[さわがしい] / 繁華[はんか] / 盛況[せいきょう] ### 使い分け例 **賑やか**・・・「市場の中はにぎやかだ。」「にぎやかな人。」⇔寂しい。静か。 **騒がしい**・・・「騒がしい都会。」「憲法論議で騒がしい。」 **繁華**・・・「駅前の繁華な商店街。」「繁華街。」 **盛況**・・・「会場は満員の盛況だ。」 <385> ### どう使い分けるか **賑やか**は、人や物がたくさん集まってきて陽気で活発な様子や人声や物音が盛んに聞こえる様子、人が陽気にしゃべる様子を言う。 **騒がしい**は、不必要な音声や情報が聞こえてきて、心が落ち着かない様子。多く不快感を伴う。 **繁華**は、人がたくさん集まっていてにぎわう様子。〈賑やか〉と違い、物が豊富に出そろっているような場合には用いない。 **盛況**は、その催しや物事が盛大に行われていたり、活気があったりする様子を表す。特別な催し事などの盛大な様子に用い、町の様子など日常的なにぎわいには使わない。 # 握る[にぎる] ## 握る[にぎる] / 掴む[つかむ] / 撮む[つまむ] / 把握[はあく]する ### 使い分け例 **握る**・・・「柄を握る。」「手に汗を握る。」「武力によって実権を握る。」「大金を握る。」 **掴む**・・・「本を二、三冊一しょにつかむ。」「手掛かりをつかむ。」「幸運をつかむ。」 **つまむ**・・・「菓子をつまむ。」「鼻をつまむ。」「とろといかをつまむ。」 **把握する**・・・「麻薬常習者たちの実態を把握する。」「文章の内容を把握する。」 ### どう使い分けるか **握る**は、そろえて曲げた手の指とてのひらとで物をしっかりと持つ動作を言う。また、何か欲しいものを手中に納め、離さないという意も表す。 **掴む**は、何かを指で保持する動作を言い、〈握る〉が指同士がつきてのひらを使うのに対し、〈掴む〉は指同士は離れ、また指だけで持つ場合が多い。あるものを偶然手に入れる場合にも用いる。 **つまむ**は、小さな物を指先や二本の棒状のもので軽く挟んで持つ意で、〈掴む〉が主として指を五本とも使用するのに対し、〈つまむ〉は普通二、三本しか使用しない。すしなどは、作るときには〈握る〉と言い、食べるときには〈つまむ〉と言う。 | | ゴルフボールを― | 証拠を― | すしを― | 幸運を― | 鼻を― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | 握る | | ○ | ○ | ○ | | | 掴む | △ | ○ | | ○ | | | つまむ | | | ○ | | ○ | **把握する**は、手でしっかりと〈握る〉意が原義だが、要点を理解したり、支配力を手に入れたりするなどの比喩的な使われ方がほとんどである。 <386> **掴む**、**つまむ**、**握る** **握る**は、ゴルフボールをー、証拠をー、すしをー、幸運をー、鼻をー い、食べるときには〈つまむ〉と言う。 | | ゴルフボールをー | 証拠をー | すしをー | 幸運をー | 鼻をー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **掴む** | O | O | - | O | Δ | | **つまむ** | - | - | O | - | O | | **握る** | O | O | O | O | - | **把握する**は、手でしっかりと〈握る〉意が原義だが、要点を理解したり、支配力を手に入れたりするなどの比喩的な使われ方がほとんどである。 # 逃げる[にげる] ## 逃げる[にげる]/逃れる[のがれる]/ずらかる/逃亡[とうぼう]する/逃避[とうひ]する/亡命[ぼうめい]する/エスケープ[えすけーぷ]する ### 使い分け例 **逃げる**・・・「追っ手から逃げる。」「檻から逃げる。」「嫌な仕事から逃げる。」 **逃れる**・・・「戦乱の地を逃れる。」「からくも虎口を逃れる。」「責任を逃れる口実を考える。」 **ずらかる**・・・「護送中にずらかる。」「見つかる前にずらかる。」 **逃亡する**・・・「犯人が逃亡する。」「海外への逃亡を企てる。」 **逃避する**・・・「現実から幻想の世界に逃避する。」「逃避行を続ける。」 **亡命する**・・・「第三国に亡命する。」「亡命者。」 **エスケープする**・・・「午後の授業をエスケープする。」 ### どう使い分けるか **逃げる**は、追ってくる者に捕まらないように離れようとする意。また、差し迫る危険や面倒な状況から身を避ける意。 **逃れる**は、危険な状態から遠ざかる、嫌なことをしないでもいい状態になる意で、〈逃げる〉が目前の危険から身を避ける意なのに対して、〈逃れる〉は目の前に迫っていなくても予想される危険な範囲の外に脱出する意である。 **ずらかる**は、悪事などを働いている者が姿や行方をくらます意で、俗語である。 **逃亡する**は、〈逃げる〉の意の漢語的な文章語である。 **逃避する**は、本来責任を持って <387> # 日光[にっこう] ## 日光[にっこう] / 日[ひ] / 陽光[ようこう] / 日差し[ひざし] / 天日[てんぴ] ### 使い分け例 **日光**・・・「日光が当たる。」「日光浴。」 **日**・・・「日に焼ける。」「日当たり。」 **陽光**・・・「陽光が降り注ぐ。」「明るい陽光に包まれる。」 **日差し**・・・「夏の日差し。」「やわらかな日差しを浴びる。」 **天日**・・・「天日にさらす。」「天日で乾かす。」 ### どう使い分けるか **日光**は、太陽から来る光線を言う、やや文章語的だがよく使われる漢語。**日**は同義だがもっと日常的な和語。 **陽光**は、明るい暖かなイメージを伴う太陽の光で、好ましい意味合いで用いられる。 **日差し**は、直射してくる太陽の光を言い、強弱の程度について述べるとき使うことが多い。 **天日**は、熱を伴う太陽の光について、それを何かに利用する場合に使われる。 〔注意〕「天日(てんじつ)」という語は太陽自体のこと。 # 煮る[にる] ## 煮る[にる] / 炊く[たく] / 茹でる[ゆでる] / 湯掻く[ゆがく] / 蒸す[むす] ### 使い分け例 **煮る**・・・「魚を煮る。」「甘辛く煮る。」 **炊く**・・・「飯を炊く。」「大根を炊く。」 **ゆでる**・・・「卵をゆでる。」「野菜をゆでる。」 **ゆがく**・・・「野菜をざっとゆがく。」 **蒸す**・・・「もち米を蒸す。」「冷えた飯を蒸す。」「タオルを蒸す。」 <388> ### どう使い分けるか **煮る**は、材料を水の中に入れて火に掛け、熱を通す料理法を言う。多くの場合、調味料を入れて味を付ける目的を持つ。 **炊く**は、米などに水を加え、熱を通して食べられるようにする意。魚などについては、関東での〈煮る〉と関西での〈炊く〉とは同じ意味で用いられている。 **ゆでる**は、熱湯で味を付けずに火を通す意で、塩などを少量入れる場合を含む。 **ゆがく**は、あくを抜く目的などのために熱湯の中に少しの間浸す意である。〈ゆでる〉よりも短時間である。 **蒸す**は、湯気となった熱い水蒸気を当てて、その物に十分熱を通す、の意。 # 似る[にる] ## 似る[にる] / 似通う[にかよう] / 類する[るいする] / 類似[るいじ]する / 相似[そうじ]する / 近似[きんじ]する ### 使い分け例 **似る**・・・「子が親に似る。」「似た話。」 **似通う**・・・「二つの絵はどこか似通うところがある。」「君と彼とは境遇が似通っている。」 **類する**・・・「球技などに類する行為は禁止する。」「これに類する品物。」 **類似する**・・・「猿は人間に類似する。」「類似した品に注意する。」 **相似する**・・・「二つ並んだ建物の形が相似している。」「相似形。」 **近似する**・・・「近似した二つの方法。」「近似値を求める。」 ### どう使い分けるか **似る**は、あるものに別のあるものを比べたとき、形や性質などが互いに同じように見える意。 **似通う**は、並んだものの間に共通する点がある意。〈似る〉が一方のあるものを基準にして比べるのに対し、〈似通う〉は同等の関係で比較して言う。 **類する**は、あるものと同じ種類や範囲に属している意を表す。以下四語は漢語的な文章語である。 **類似する**は、二つ以上のものの間に共通する点が多く見られることを言う。〈似る〉と同義の漢語的な言い方。 **相似する**は、二つのものが丸写しをしたようにそっくりで、見分けが付けにくい意を表す。 **近似する**は、あるものがその基準となる既知のものと、そっくりではないが極めて近い状態である意を表す。 <389> | | それに似た事 | 性格が父に― | 子の顔が父に― | 犯罪に行為が― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | 似る | ○ | ○ | ○ | | | 似通う | | ○ | ○ | | | 類する | | | | ○ | 〔注意〕「相似」は、幾何学において二つの図形の片方の縮尺を変えるともう一方のものと完全に重ね合わせられる関係を言う。 # 俄か雨[にわかあめ] ## 俄か雨[にわかあめ] / 村雨[むらさめ] / 夕立[ゆうだち] / 時雨[しぐれ] / 驟雨[しゅうう] ### 使い分け例 **にわか雨**・・・「にわか雨に遭いずぶぬれになる。」同)通り雨。 **むら雨**・・・「野路のむら雨。」 **夕立**・・・「雷を伴い夕立が降る。」同)白雨。 **時雨**・・・「冷たい時雨に降られる。」 **驟雨**・・・「驟雨一過。」「驟雨来る。」 ### どう使い分けるか **にわか雨**は、局地的に急に降り出し、短時間でやむ雨を言い、特に季節には関係なく呼ぶ。 **むら雨**は、むら気の雨、あるいはむらのある雨の意、または群がって降る雨の意と言われ、〈にわか雨〉と同義の古風な言い方で雅語である。 **夕立**は、夏の暑い日の午後、急に曇り、多くは雷を伴って一時的に激しく降り、しばらくしてやむ雨のことである。他の季節には使わない。 **時雨**は、晩秋から初冬にかけてひとしきり降ったかと思うと、また晴れたりして定めない雨を言う。他の季節には使わない。 **驟雨**は、〈にわか雨〉や〈夕立〉の意の漢語でかたい文章語である。 <390> # 人気[にんき] ## 人気[にんき] / 人望[じんぼう] / 評判[ひょうばん] / 受け[うけ] ### 使い分け例 **人気**・・・「彼はクラスで人気がある。」「人気が落ちる。」「人気歌手。」 **人望**・・・「人々の人望を集める。」「人望がきわめて高い大統領。」 **評判**・・・「評判の高い本。」「彼について悪い評判が立つ。」「前評判。」 **受け**・・・「彼は友人の受けがいい。」 ### どう使い分けるか **人気**は、その社会で好感をもって受け入れられ、名が知られていることを言う。 **人望**は、立派な人としてその社会に受け入れられることを言う。〈人気〉よりも尊敬や信頼の度合いが強い。 **評判**は、そのもののよしあしについての世間の評価。〈人気〉や〈人望〉がプラスのイメージを持って使われるのに対し、〈評判〉は良い意味でも悪い意味でも話題になることを言う。人物以外にも用いる。 **受け**は、周りの人がその人から受ける感じや評価のこと。話し言葉的な言い方である。 # 人間[にんげん] ## 人間[にんげん] / 人[ひと] / 者[もの] / 人物[じんぶつ] / 人柄[ひとがら] / 人格[じんかく] / 人類[じんるい] / キャラクター ### 使い分け例 **人間**・・・「人間は考える葦だ。」「彼は人間は悪くないのだが。」「人間は万物の霊長である。」「人間失格。」 **人**・・・「人にあるまじき行い。」「人が悪い。」「人に笑われる。」 **者**・・・「外部の者は入るな。」「私はこういう者です。」「よそ者。」「悪者。」 **人物**・・・「得体の知れない人物。」「彼はなかなかの人物である。」「人物評価。」「登場人物。」「人物画。」 **人柄**・・・「人柄がよい。」 **人格**・・・「彼女は人格が優れている。」「人格を形成する。」「人格者。」「人格崩壊。」 **人類**・・・「人類の繁栄。」「人類愛。」「民族を超えた人類共同の目的。」 **キャラクター**・・・「彼のキャラクターが面白い。」「主人公の母はこの劇に不可欠のキャラクターだ。」 <391> ### どう使い分けるか **人間**は、〈人〉同士のかかわりから見た社会的な存在を言う。動物の一類としての〈ひと〉の意でも使う。また、個人の性格としての人柄の意、能力や道徳性をもった個人としての〈人物〉〈人格〉の意でも使う。 **人**は、基本的には〈人間〉と同じ意味だが、ほかに、世間一般の人、自分以外の他人などの意で使われる。 **者**は、〈人〉と同じ意味で用いられるが、形式名詞であり、修飾語を付けて使う。軽い卑下、相手への軽視を込める場合がある。 **人物**は、個々の人、その人が持っている性格や能力・素質など、また、才能のある人、などを言う。 **人柄**は、道徳面から見た個人の性質や性格や品位を言う。 **人格**は、道徳面から見た人の性格や品位を優れたものとしてとらえて言う語であったが、単に個の人間としての資格を指して言う場合もある。 **人類**は、学術上の分類として他の動物と区別して言う言葉だが、特に他の動物との区別の意味ではなく、民族や国家を超えた〈人〉全体を意味する場合も多い。 **キャラクター**は、性格や〈人格〉、また登場人物などの意。 # 抜き差しならない[ぬきさしならない] ## 抜き差しならない[ぬきさしならない] / 退っ引きならない[のっぴきならない] / 二進も三進もいかない[にっちもさっちもいかない] / 動きがとれない[うごきがとれない] ### 使い分け例 **抜き差しならない**・・・「事態は悪化しとうとう抜き差しならない羽目に陥った。」 **のっぴきならない**・・・「のっぴきならない事情が出来て欠席する。」 **にっちもさっちもいかない**・・・「金詰まりでにっちもさっちもいかない。」 **動きがとれない**・・・「規則に縛られ動きがとれない。」 <392> ### どう使い分けるか **抜き差しならない**は、これ以上事態が進行せず、どうすることもできない。どうにもやり繰りがつかず、そこから逃れられないという意味を表すのに対し、**のっぴきならない**は、ある事態に直面し、引くに引けずどうしてもしなければならないさまを言う。 **にっちもさっちもいかない**は、行き詰まってしまい、これ以上進むことも退くこともできない、の意。〈のっぴきならない〉が急にそうした事態が起きたときに使うのに対し、これは徐々にその状態になったときに用いる。 **動きがとれない**は、動こうにも動けず、自由に振る舞えないことを言い、特に事態の進行とは関係なくどの場面でも用いる。 # 温もり[ぬくもり] ## 温もり[ぬくもり] / 暖(温)かみ[あたたかみ] / 暖(温)かさ[あたたかさ] ### 使い分け例 **温もり**・・・「太陽のぬくもりの残る布団。」「肌のぬくもり。」同)温み。 **暖(温)かみ**・・・「布団にはまだ暖かみが残っていた。」「暖かみのある家庭。」 **暖(温)かさ**・・・「春の暖かさが近づいてきた。」「人の心に暖かさがある。」⇔涼しさ。冷たさ。 ### どう使い分けるか **温もり**は、物の内部にこもっている適度の熱から受ける感じを言う。普通、体温程度。 **暖かみ**は、熱の発生源に近づいたり触ったりして受ける感じを言う。〈ぬくもり〉より温度がやや高い感じ。また、物理的な温暖だけでなく、人情の厚さなど心理的なものにも使われる。 **暖かさ**は、やや高くて快い温度を身体全体で受ける感じを言い、心理的なものにも用いることができる。〈暖かみ〉よりも温暖の空間的範囲が広い。 <393> 身体全体で受ける感じを言い、心理的なものにも用いることができる。〈暖かみ〉よりも温暖の空間的範囲が広い。 # 濡れる[ぬれる] ## 濡れる/潤う[うるおう]/湿る[しめる]/浸る[ひたる] ### 使い分け例 **濡れる**・・・「池に落ちて服が濡れる。」「しっぽり濡れる。」 **潤う**・・・「雨で庭の樹木が潤う。」「観光客で町が潤う。」 **湿る**・・・「夜露で薪が湿る。」「湿った気持ち。」 **浸る**・・・「田畑が水に浸る。」 ### どう使い分けるか **濡れる**は、物の表面に水が付く意。比喩的に、男女が情を通じる意も言う。 **潤う**は、本来水分を必要とするものがそれを得る状態を言う。また、不足していたものが何かの理由で豊かになることにも用いる。 **湿る**は、普段乾いているものが水分を含む状態を言う。直接水がかからなくて、空気中の水分を吸ってなる場合にも使う。 | | 雨で土地が― | 夜露で薪が― | 部屋の空気が― | 好景気で懐が― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **濡れる** | ○ | | | | | **潤う** | ○ | | | ○ | | **湿る** | ○ | ○ | ○ | | **浸る**は、水の中に入り、表面まですっぽりと水をかぶる、の意。 # ね # 寝転ぶ[ねころぶ] ## 寝転ぶ/寝そべる/横たわる[よこたわる]/伏(臥)す[ふす]/横臥[おうが]する/寝転がる[ねころがる] ### 使い分け例 **寝転ぶ**・・・「芝生の上に寝転ぶ。」 **寝そべる**・・・「寝そべって本を読む。」「犬が長々と寝そべっている。」 <394> ### どう使い分けるか **寝転ぶ**は、身体を水平に倒し横になってごろりと寝る、の意。 **寝そべる**は、身体を倒し腹ばいになったり横になったりしてくつろいだ姿勢をとる場合に使う。〈寝転ぶ〉は人間の動作について言うが、〈寝そべる〉は動物にも使う。 **横たわる**は、身体を床や地面に水平にして身体を伸ばす場合に言い、文章語的である。また、大きな物、長いものが目の前に置いてある様子を表すこともある。 **伏す**は、①うつむいて体を地面や床につける、②腹ばいになる、③横になって寝る、の意。文章語的な言い方。②③は〈臥す〉とも書く。 **横臥する**は、身体を横たえて寝るという意のほかに、横の方を向いて寝るという意もある。かたい文章語。 **寝転がる**は、〈寝転ぶ〉と同じ姿勢を取るが、力を抜いて何もしない状態を強調した言い方に用いる。 # ねじる ## 捩(捻)る[ねじる] / 捻る[ひねる] / 捩る[よじる] / 縒(撚)る[よる] ### 使い分け例 **ねじる**・・・「水道の栓をねじる。」「手ぬぐいをねじってはちまきにする。」 **ひねる**・・・「スイッチをひねる。」「頭をひねって問題を解く。」「ひねった問題。」 **よじる**・・・「体をよじって笑う。」 **よる**・・・「糸の先をよって針に通す。」 ### どう使い分けるか **ねじる**は、棒状の比較的固いものを力を入れて何回も回し、変形させる、の意。 **ひねる**は、比較的柔らかい材質のものをあまり無理をせずに軽く回す意。また、ちょっと違った考えを出す意にも用いられる。 **よじる**は、軟質のものをからまるように回して向きや形状を変える意である。また、身体を回転させるような動作にも言う。 **よる**は、繊維のような細長いものを繰り返し回転させて固めたり形を整えたりする場合に言う。 <395> ように回して向きや形状を変える意である。また、身体を回転させるような動作にも言う。 **よる**は、繊維のような細長いものを繰り返し回転させて固めたり形を整えたりする場合に言う。 # ねだる ## ねだる/せがむ/せびる ### 使い分け例 **ねだる**・・・「幼児が母親に菓子をねだる。」 **せがむ**・・・「遊園地につれて行ってくれとせがむ。」「靴を買えとせがむ。」 **せびる**・・・「親に小遣いをせびる。」「チップをせびられる。」 ### どう使い分けるか **ねだる**は、いつまでもぐずぐずと何かを欲しがって甘える意。 **せがむ**は、主として目上の人に何かの行動や物を甘える気持ちで要求する意で言う。〈ねだる〉が主として物品そのものを要求するのに対し〈せがむ〉は何かをしてもらう行動を要求する場合が多い。 **せびる**は、甘える要素が少なくなり、無理やり要求を通そうとする姿勢が強い。特に金銭を強要する場合に使うことが多い。 | | 小遣いを― | 菓子を― | 公園に行くのを― | 寄付金を― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **ねだる** | | ○ | | | | **せがむ** | | ○ | ○ | | | **せびる** | ○ | | △ | ○ | # 値段[ねだん] ## 値段/値打ち[ねうち]/価値[かち]/価[あたい]/値[ね]/価格[かかく]/代価[だいか]/価額[かがく]/金額[きんがく] ### 使い分け例 **値段**・・・「値段の張る商品。」「値段が付けられない。」同音語に**値**。 **値打ち**・・・「一万円の値打ちがある品物。」「人間としての値打ち。」 **価値**・・・「一見の価値がある。」「人類にとって価値の高い業績。」 **価**・・・「千円の価をつける。」「一文の価もない。」 **値**・・・「春宵一刻値千金。」「xの値 <396> ### どう使い分けるか **値段**・**価**・**価格**・**代価**は、物品などを売買する際の、そのものの値打ちを金銭の額で表したもの。〈価〉〈代価〉は、金額で表される値段の意味を離れ、物事の価値の意を表すこともある。〈値段〉は日常語、〈価〉はやや改まった古風な語、〈価格〉〈代価〉は文章語。 **値打ち**は、そのものが持っている尊さや役に立つ度合いを言う。「千円のー」とは言うが、実際の売買の〈値段〉として言うのではない。〈値段〉が物質的なものについて言うのに対し、精神的な物事について言う場合も多く、金額で表すのは特殊な場合である。 **価値**は、〈値打ち〉とほぼ同義の漢語で、やや文章語的である。 **値**は〈価〉と同じ意味にも使うが、数学上のある記号の表す数値の意では〈値〉の方を使う。 **価額**は、その価格に相当する金額の意で売買でない場で多く用いる。 **金額**は、物品の売買の値段に限らず、一般的に金銭の数量を言う。 # 熱心[ねっしん] ## 熱心[ねっしん] / 真剣[しんけん] / 真摯[しんし] / 一生懸命[いっしょうけんめい] / 一心不乱[いっしんふらん] ### 使い分け例 **熱心**・・・「教育に熱心な親。」「仕事熱心を褒められる。」「不熱心。」 **真剣**・・・「真剣に問題に取り組む。」「真剣に生きる。」「真剣さに驚く。」 **真摯**・・・「彼の真摯な態度には胸を打たれる。」「真摯な生き方。」 **一生懸命**・・・「一生懸命に働く。」⇔一所懸命。 **一心不乱**・・・「一心不乱に看病する。」 <397> ### どう使い分けるか **熱心**は、情熱を持って一つの物事に打ち込み、他に心を動かされない様子を言う。何か具体的な作業に集中している場合が多い。 **真剣**は、ごまかしや遊びの気持ちが全くなく、本気になって物事に取り組んでいる様子を言う。具体的な卑近な態度や行為だけではなく、抽象的なもの、例えば生き方などについて用いることもできる。 **真摯**は、まじめに、ひたむきに何かに取り組んでいる様子で、〈真剣〉より比較的抽象的かつ高尚なものについて言う、かたい文章語である。 **一生懸命**は、力の限りを尽くして何かをする様子。持っている体力や精神力などの力を使って何の行為をする意味合いである。 **一心不乱**は、一つのことに集中して雑念が起こらないことを言う。〈熱心〉よりもなりふり構わず没頭しているという語感がある。 〔注意〕〈一生懸命〉は〈一所懸命〉が元の形である。 # 熱中する[ねっちゅうする] ## 熱中する[ねっちゅうする] / 没頭[ぼっとう]する / 専念[せんねん]する / 凝る[こる] / 耽る[ふける] ### 使い分け例 **熱中する**・・・「工作に熱中する。」 **没頭する**・・・「研究に没頭する。」 **専念する**・・・「学業に専念する。」 **凝る**・・・「ゴルフに凝る。」「凝るたち。」 **ふける**・・・「朝まで読書にふける。」 ### どう使い分けるか **熱中する**は、ある一つのことに情熱を傾けて集中する、の意。 **没頭する**は、他のことを忘れてその一つのことだけに心を注ぎ、夢中になる、の意で、〈熱中する〉よりも時間的に長期にわたる。 **専念する**は、ある一つのことにだけ絞ってかかりきりになる場合に言い、自分の判断でそうしているという冷静さがある。 **凝る**は、度を越してあることに心を集中させる意。常識的な線を越えて完璧さや高い到達度を求める傾向を言う。趣味など、生活上余裕のある分野で用いることが多い。 **ふける**は、一つのことに異常なまでに心を奪われる、の意。無意識のうちにそういう状態になってしまったという感じがある。 <398> # 眠る[ねむる] ## 眠る[ねむる] / 寝る[ねる] / 寝入る[ねいる] / 寝付く[ねつく] / 寝込む[ねこむ] / まどろむ ### 使い分け例 **眠る**・・・「一時間ほど眠る。」⇔覚める。「山奥に宝物が眠る。」 **寝る**・・・「ベッドで寝る。」⇔起きる。 **寝入る**・・・「いつの間にかぐっすり寝入る。」「寝入ったところを起こす。」 **寝付く**・・・「赤ん坊はすっかり寝付いた。」「病気で寝付いている。」 **寝込む**・・・「こたつの中で寝込んでしまった。」「風邪を引いて寝込む。」 **まどろむ**・・・「しばしまどろむ。」「木陰でまどろむ。」 ### どう使い分けるか **眠る**は、心身の自律的な活動がやみ、一時無意識の状態になる、の意。比喩的に、価値あるものが活用されずにいる場合にも言う。 **寝る**は、基本的には、何もしないで横になる意だが、〈眠る〉意で用いる場合も少なくない。 **寝入る**は、すっかり眠ってしまい、多少の刺激では目覚めない状態になる、の意。また、眠り始める意でも使う。 **寝付く**は、眠る状態になり始める意だが、病気で床に就く場合にも用いる。 **寝込む**は、深い眠りに落ち、前後不覚になる、の意だが、寝るつもりでなかったのに寝てしまったという気持ちが働く。また、病気で〈寝付き〉、その後長く床に就く場合にも言う。 **まどろむ**は、しばらくの間とろとろと眠る意で、本式に眠るのではない。雅語的。 | | しばらくぐっすりと― | 永遠に― | 病気で三日― | 窓辺のいすで― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | 眠る | ○ | ○ | | | | 寝る | | | ○ | | | 寝込む | | | ○ | | | まどろむ | | | | ○ | <399> # 念入り[ねんいり] ## 念入り[ねんいり] / 入念[にゅうねん] / 周到[しゅうとう] / 細心[さいしん] / 丹念[たんねん] / 克明[こくめい] / 綿密[めんみつ] ### 使い分け例 **念入り**・・・「念入りに見直す。」「念入りな化粧。」 **入念**・・・「入念に荷作りをする。」「入念な点検を要す。」 **周到**・・・「周到な準備をする。」「用意周到。」 **細心**・・・「細心の注意を払う。」「細心な用意。」 **丹念**・・・「故障箇所を丹念に調べてくれた。」 **克明**・・・「事件を克明に報告する。」「克明なメモ。」 **綿密**・・・「綿密な計画を立てる。」「綿密な観察。」 ### どう使い分けるか **念入り**は、細かい点にまでよく気をつけて何かをする様子を表す。 **入念**は、〈念入り〉と同義の漢語で、文章語。 **周到**は、準備や注意がよく行き届いていて間違いや漏れのない状態を言う。〈念入り〉が何か具体的な作業をすることについて言うのに対し、これは前もっての心構えのような抽象的な内容にも用いる。 **細心**は、注意が細かいところにまで行き届く様子だが、心の持ち方の状態に用い、具体的な行為について、例えば「―の荷作り」などのように言うことはあまりない。 **丹念**は、心を込めて何かを丁寧にする様子を言うが、その行為者の真情に感ずるような気持ちで使う。 **克明**は、どんな小さなことも見逃さず、細かく気を配っている様子。物事を冷静に処理している感じがある。 **綿密**は、注意が隅々まで行き届いている様子。〈入念〉とほぼ同義だが、心の持ち方などよりも行為自体の厳密さを要求する時に使う。 <400> # 除く[のぞく] ## 除く[のぞく] / 退ける[どける] / 除(退)ける[のける] / 退ける[しりぞける] / 外す[はずす] ### 使い分け例 **除く**・・・「名簿から除く。」「雑草を除く。」「二十歳未満は除く。」「不安を除く。」 **どける**・・・「大きな石をどける。」 **のける**・・・「障害物をのける。」「仲間からのける。」 **退ける**・・・「密談のため人を退ける。」「主張を退ける。」 **外す**・・・「彼はメンバーから外しておく。」「タイミングを外す。」 ### どう使い分けるか **除く**は、不必要なものをそこから取り出して無くす、の意で「不安」などのように精神的なものについても言う。 **どける**は、その場から他の場所へ移動させる意で、物について言う。 **のける**は〈どける〉とほぼ同義であるが、人を排除する意に用いることがある。 **退ける**は、何かをある範囲からより低い位置に遠ざけたり、意見などを取り入れようとしないでおいたりする場合に言う。 **外す**は、今まで、あるいは本来そこにあったものを他のところに移す場合に言う。〈除く〉は要らなくなって捨てる場合に言うが、〈外す〉は捨てるわけではない。また、本来の意図とは違うことをする意もある。 # 望む[のぞむ] ## 望む[のぞむ] / 願う[ねがう] / 希望[きぼう]する / 願望[がんぼう]する / 期待[きたい]する ### 使い分け例 **望む**・・・「一層の発展を望む。」「君に望む。」 <401> むのは勤勉さだ。」 **願う**・・・「友人に援助を願う。」「旅の無事を願う。」 **希望する**・・・「取りあえず進学を希望する。」「明るい希望。」 **願望する**・・・「世界平和を願望する。」「切なる願望。」 **期待する**・・・「彼の将来に期待する。」「新しい政策への期待。」 ### どう使い分けるか **望む**は、現在や将来によい見通しを立てて、そうなってほしいと思う、の意で使う。 **願う**は、そうなればよいと思うことを神仏や他人に伝えるなどしてその実現を切に考える、の意。〈望む〉が要求する感じであるのに対して、〈願う〉には他に依頼する気持ちがある。 **希望する**は、〈望む〉と同義でやややかたい漢語的な言い方。これはやや漠然とした要求にも使うのに対し、**願望する**は、目標を定め、その実現を強く欲している場合が多い。 **期待する**は、望ましいことが起きるように心の中で当てにして待っている、の意。主として他人の行動や状態について言い、自分のことには用いない。 # 後程[のちほど] ## 後程/今に[いまに]/其の内[そのうち]/後で[あとで]/何れ[いずれ]/追って[おって]/近々[きんきん・ちかぢか]/やがて ### 使い分け例 **後程**・・・「すぐは無理ですがのちほど伺います。」 **今に**・・・「今にきっと立派になる。」「今に見ていろ。」 **その内**・・・「そのうち雨になるだろう。」「そのうち何とかしよう。」「雪が解けると、そのうち草が芽生え始めた。」 **後で**・・・「またあとで会おう。」「彼の発言があとで問題になった。」 **いずれ**・・・「いずれ来るであろう。」 **追って**・・・「詳細は追って知らせる。」「離任の挨拶状が届き、追って絵はがきがきた。」 **近々**・・・「近々結婚の予定だ。」 **やがて**・・・「雪はやがて消えるだろう。」「それからやがて雨もやんだ。」 ◎**まもなく**。 <402> ### どう使い分けるか **後程**は、現在を起点にして少し時間がたってからを言う。改まった言い方。 **今に**は、近い将来にきっとそうなるということを想定して行う判断や決意を表す場合に使用する。時間の範囲は〈後程〉より漠然としている。 **その内**は、現在からそれ程たたぬ内を指し、〈後程〉がある行為をすることにつながるのに対し〈その内〉はある状態がくる場合にも使う。また〈今に〉以上に時間の範囲は広く漠然としている。 **後で**は、〈その内〉よりも時点をある程度限定しようとする気持ちが強く、〈後程〉と同義だが話し言葉的である。 **いずれ**は、〈その内〉よりも、それがいつになるのか不明な場合に用いる。やや文章語的である。 **追って**は、〈後程〉に近いが、もっと短時間の内という感じがある。引き続いての意で用いる。公文書や書簡などで使用することが多く、やや文章語的である。 **近々**は、すでに予定されていて近い将来にそれが実現することがかなりはっきりしている場合に用いる。従って推量表現にはあまり使わない。 **やがて**は、その時点からそれ程たたない時間を言う。 〈その内〉〈後で〉〈追って〉〈やがて〉は、現在だけでなく過去や未来のある時点も基準にできる。 # 伸ばす[のばす] ## 伸ばす/延ばす[のばす]/伸長[しんちょう]する/伸張[しんちょう]する/伸展[しんてん]する/延長[えんちょう]する ### 使い分け例 **伸ばす**・・・「枝を伸ばす。」「背筋を伸ばす。」「長所を伸ばす。」⇔縮める。 **延ばす**・・・「道路を延ばす。」「時間を延ばす。」⇔縮める。 **伸長する**・・・「脚立を伸長させる。」「国力を伸長する。」⇔縮小する。 **伸張する**・・・「国威を伸張する。」 **伸展する**・・・「経済力を伸展する。」 <403> **延長する**・・・「鉄道を延長させる。」「試験時間を延長する。」「期間延長。」▷短縮する。 ### どう使い分けるか **伸ばす**は、長さや高さを増す、縮んでいたり曲げてあったりしたものをまっすぐに長くする、の意。具体的な長さを持ったものばかりでなく、売り上げや勢力のような数量や力などに使うこともできる。 **延ばす**は、〈伸ばす〉と同じ意味で用いるが、〈伸ばす〉がそのもの自体の長さを長くする意であるのに対し、〈延ばす〉は同質のものを付け加えて長くするという違いがある。 **伸長する**は、長さや高さを増す意で、〈伸ばす〉と同義の漢語的文書語。 **伸張する**は、物や勢力をのばし広げる意、**伸展する**は、物事の勢いや勢力範囲をのばし広げる意で、どちらもかたい漢語的文章語。また、この二語と〈伸長する〉は自動詞他動詞両用になるが、他の三語は他動詞として使われるだけである。 **延長する**は、時間や区間を付け加えて増す意で、〈延ばす〉と同義の漢語的な言葉でやや文章語的である。 # のんびり ## のんびり / 悠悠[ゆうゆう] / 悠然[ゆうぜん] / 悠長[ゆうちょう] / ゆっくり ### 使い分け例 **のんびり**・・・「週末をのんびり暮らす。」「のんびりした性格。」 **悠悠**[ゆうゆう]・・・「虎が悠々と寝そべっている。」「船が悠々通れる。」「悠々たる態度。」「悠々自適。」 **悠然**[ゆうぜん]・・・「時間が迫っているのに悠然と構えている。」「悠然たる山容。」 **悠長**[ゆうちょう]・・・「悠長にたばこを吸っている場合ではない。」「悠長な話し方。」▷性急。 **ゆっくり**・・・「ゆっくりと風呂に入る。」「二人がゆっくり座れる椅子。」 ### どう使い分けるか **のんびり**は、いろいろな制約を受けず、心の向くままにゆっくり行動する様子を言う。 <404> **悠悠**[ゆうゆう]は、慌てず騒がず自然体において行動する様子。また、十分に余裕がある様子。〈のんびり〉が精神的に緊張がほぐれた状態なのに対し、〈悠悠〉は精神的にはしっかりし自信を持って行動している感じがある。〈悠悠たる〉はかたい文章語。 **悠然**[ゆうぜん]は、普通なら慌てたりためらったりするのに、何のこだわりもなく振る舞う様子。〈悠悠〉とほぼ同義だが、周囲の動向を意に介さないという語感がある。文章語で、特に〈悠然たる〉はかたい感じがある。 **悠長**[ゆうちょう]は、寸刻を争うときなのに急ごうとせず、周囲のものをやきもきさせる様子。あまりよくない評価を伴うことがある。 **ゆっくり**は、時間をかけて落ち着いて何かをしたり、余裕があったりする様子。〈のんびり〉と同義に用いられることが多いが、精神的な状態ばかりではなく、時間的にのろい状態を言う用法がある。 # は # 配付[はいふ] ## 配付[はいふ] / 配布[はいふ] / 頒布[はんぷ] / 配達[はいたつ] / 配送[はいそう] / 配給[はいきゅう] ### 使い分け例 **配付**[はいふ]・・・「教科書の配付。」「必要書類を配付する。」 **配布**[はいふ]・・・「選挙公報の配布。」「ビラを配布する。」 **頒布**[はんぷ]・・・「試作品を無料で頒布する。」「銘菓頒布会。」 **配達**[はいたつ]・・・「郵便配達。」「朝早く牛乳を配達する。」 **配送**[はいそう]・・・「贈答品の配送業務。」「全国各地に配送する。」「配送課。」 **配給**[はいきゅう]・・・「米を配給する。」「映画の配給元。」 ### どう使い分けるか **配付**は一人一人に配ること、**配布**は広く行き渡るように配ることであるが、法令用語では後者に <405> 統一されている。 **頒布**は多くの人に配り与えることで、〈配布〉に似ているが、「頒布会」などと言う場合は、特定の人に有料で品物を分ける意である。 **配達**は郵便・新聞・品物を家々に配り届けること。 **配送**は荷物や品物を方々に分けて送ること。また、配達と発送の意。本来の漢語ではない。 **配給**は数量に限りのある物を割り当てて渡すことを言う。戦中戦後の物不足の時、生活必需品が少量ずつ国民に配給された。 | | 家々に
して回る | 公報を
―する | 郵便物の
― | 試験問題を
―する | 食糧の
制度 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **配布** | ○ | ○ | | ○ | | | **配達** | ○ | | ○ | | | | **配送** | △ | △ | ○ | | | | **配給** | | | | ○ | ○ | # ばか ## ばか / 愚か[おろか] / 愚かしい[おろかしい] / 暗愚[あんぐ] / 愚昧[ぐまい] / 蒙昧[もうまい] / 愚鈍[ぐどん] / 魯鈍[ろどん] ### 使い分け例 **ばか**・・・「ばかなやつだ。」「ばかな事をしたもんだ。」「ばかに暑い。」 **愚か**[おろか]・・・「愚かな男。」「言うも愚かな事。」「愚か者。」 **愚かしい**[おろかしい]・・・「愚かしい振る舞い。」「愚かしいことを言うな。」 **暗愚**[あんぐ]・・・「暗愚な国王。」 **愚昧**[ぐまい]・・・「愚昧な人の考え。」 **蒙昧**[もうまい]・・・「無知蒙昧な人々。」 **愚鈍**[ぐどん]・・・「愚鈍なたち。」「愚鈍な人物。」 **魯鈍**[ろどん]・・・「すこぶる魯鈍な男。」「魯鈍な性質。」 ### どう使い分けるか **ばか**は知能の働きが鈍い、の意のほかに、まともに取り扱う値打ちのないほどくだらない、普通では考えられないほど甚だしい、の意にも使う。 **愚か**は〈ばか〉よりも文章語的で、「言うもーな(言うまでもない)」の形は「語る・問う・聞く」などの動詞にのみ用いる。**愚かしい**はばかげているの意で、やや古風な語。 **暗愚**は〈愚か〉の意の漢語。 **愚昧**と**蒙昧**もほぼ同義で、前者は愚かなため、後者は知識が不十分なため、道理の分からないさ <406> まを言う。 **愚鈍**は頭が悪く満足な働きのできないさまを言い、**魯鈍**もほぼ同義であるが、心理学では精神薄弱の程度として、魯鈍は白痴・痴愚よりも軽微な場合に使う。 # 計る[はかる] ## 計る[はかる] / 測る[はかる] / 量る[はかる] / 計測[けいそく]する / 計量[けいりょう]する / 測量[そくりょう]する / 測定[そくてい]する ### 使い分け例 **計る**・・・「時間を計る。」「計り知れない恩恵を受ける。」 **測る**・・・「標高を測る。」「面積を測る。」「距離を測る。」「物差しで測る。」 **量る**・・・「目方を量る。」「升で量る。」 **計測する**・・・「直線距離を計測する。」 **計量する**・・・「ばねばかりで計量する。」 **測量する**・・・「土地を測量する。」 **測定する**・・・「体力を測定する。」 ### どう使い分けるか **計る**は、ひとまとめにして数える、の意で数量や時間に、**測る**は、水の深さを調べるのが原義で、長さ・高さ・深さ・速さ・面積などに、**量る**は、穀物の重さを調べるのが原義で、目方・分量・容積に用いる。なお、〈計る〉は、〈図る〉や〈謀る〉と同じく、企てる・欺くの意に、〈測る〉と〈量る〉は、推しはかる(推測する・推量する)の意にも使われる。 **計測する**は、数量・長さ・重さを、**計量する**は、重さや分量を、**測量する**は、地形や土地の位置・面積などを、**測定する**は、長さ・重さ・速さ、その他の量や価値を、いずれも器械や器具を使ってはかることを言う。 〔注意〕「測」や「量」は熟語になると原義にこだわらず幅広い意を持つ。 # 剝ぐ[はぐ] ## 剝ぐ[はぐ] / 剥がす[はがす] / 剝く[むく] / 殺ぐ[そぐ](削ぐ) / 削る[けずる] <407> ### 使い分け例 **剥ぐ**[はぐ]・・・「杉の皮をはぐ。」「身ぐるみはがれる。」「官位をはぐ。」 **剥がす**[はがす]・・・「壁紙をはがす。」「布団をはがす。」「つめをはがす。」 **剝く**[むく]・・・「みかんをむく。」「きばをむき出す。」「目をむく。」 **そぐ**・・・「竹をそぐ。」「ごぼうをそぐ。」「感興をそぐ。」 **削る**[けずる]・・・「鉛筆を削る。」「予算を削る。」「リストから名を削る。」 ### どう使い分けるか **剥ぐ**も**剥がす**も、表面の薄い物を離し取る、身に着けている物を脱がせる、の意であるが、「切手(ポスター)を―」と言う場合は後者を用いることが多い。「官位をはぐ」の場合は、剝奪するの意で古風な表現、「つめをはがす」の場合は、意図的でなく、不注意でそうした場合を言う。 **剥く**は、中にある物を取り出すために、外側を覆っている物をはがし取ることで、「りんごの皮を―」と言うのに対して、皮が必要な場合は〈剝ぐ〉〈剝がす〉を用いる。「目を―」は、目を大きく見開く意。 **そぐ**は、物の先を斜めに切り取る、薄く削り取る意で、「耳(鼻)を―」は昔の刑罰で、耳(鼻)を切り落とす意。「興味(気勢)を―」の場合は、減らしたり無くしたりする意。 **削る**は、刃物で物の表面を薄くそぎ取る意で、「人員を―」の場合は、削減する、「条文を―」の場合は、削除するの意。 # 白状[はくじょう] ## 白状/告白[こくはく]/自白[じはく]/自供[じきょう]/懺悔[ざんげ]/吐露[とろ]/披瀝[ひれき] ### 使い分け例 **白状**・・・「旧悪を白状する。」「二人の仲を白状する。」「もういいかげんに白状しなさいな。」 **告白**・・・「愛の告白。」「犯した罪を告白する。」 **自白**・・・「自白を強要する。」「拷問されて自白する。」 **自供**・・・「犯人の自供。」「犯行を自供 <408> **懺悔**[ざんげ]・・・「懺悔を聞く。」「頭を垂れて懺悔する。」 **吐露**[とろ]・・・「真情の吐露。」「自由への憧れを手紙の中で吐露した。」 **披瀝**[ひれき]・・・「決意を披瀝する。」「胸中の披瀝。」 ### どう使い分けるか **白状**は、秘密や隠していた悪事を人前でありのまま言うこと、**告白**は、それまで隠していたことを正直に相手に打ち明けることで、前者は必ずしも深刻感を伴わず話し言葉的、後者は文章語的である。 **自白**は、自分の秘密を白状すること、**自供**は、容疑者などが取り調べに対し自分から述べることであるが、前者は法律語としては、民事事件で相手の主張を肯定し自分に不利な点を認めること、刑事事件で自分の犯行であると肯定することを言う。 **懺悔**は、過去の罪過を悔い、神仏や人に打ち明けて許しを請うこと。 **吐露**は、自分の意見や心情を包み隠さず打ち明けること、**披瀝**は、心中の考えをすっかり打ち明けることで、どちらもかたい文章語でほぼ同義であるが、後者は「所信ーの演説」のように積極的な意味によく使われる。 〔注意〕〈懺悔〉は、仏教ではサンゲと言う。キリスト教では、新教の懺悔に相当するものを、旧教では告解と言う。 # 激しい[はげしい] ## 激しい[はげしい] / 激烈[げきれつ] / 猛烈[もうれつ] / 強烈[きょうれつ] / 熾烈[しれつ] / 痛烈[つうれつ] / 熱烈[ねつれつ] / 激甚[げきじん] ### 使い分け例 **激しい**・・・「激しい気性。」「雨が激しく降る。」「激しい練習。」「変化が激しい。」「人の行き来が激しい。」 **激烈**・・・「激烈な地震。」「激烈な競争。」 **猛烈**・・・「猛烈なタックル。」「猛烈に眠い。」「猛烈に勉強する。」 **強烈**・・・「印象が強烈である。」「強烈なパンチ。」「強烈な色彩。」 <409> **熾烈**[しれつ]・・・「熾烈な戦闘が続く。」「攻撃は熾烈を極めた。」 **痛烈**[つうれつ]・・・「痛烈なヒット。」「痛烈に批判する。」 **熱烈**[ねつれつ]・・・「熱烈な恋愛。」「熱烈に応援する。」 **激甚**[げきじん]・・・「激甚な被害。」 ### どう使い分けるか **激しい**は、勢いが鋭く強い、甚だしい、しきりに行われる、の意で、**激烈**は、勢いや程度が非常に激しいさまを言う。ただし、後者は自然・社会現象には使うが、人間の性格や行為には用いない。 **猛烈**は、勢い・作用が激しいさま、程度の甚だしいさま、**強烈**は、力・作用が強く激しいさまを言うが、前者は人間の生理や行為、後者は印象や色・音などの強さを表す。 **熾烈**は、戦いや競争が燃え立つように激しいさまを言う非常にかたい文章語。 **痛烈**は、攻撃や批判が非常に激しく行われるさまを言う。 **熱烈**は、熱中したり、興奮したりして、感情が激しくなったさまを言う。 **激甚**は、程度が極めて甚だしいさまで、損害などについて使うことが多い。 # 励ます[はげます] ## 励ます[はげます] / 力付ける[ちからづける] / 勇気付ける[ゆうきづける] / 激励[げきれい]する / 鼓舞[こぶ]する / 督励[とくれい]する / 鞭撻[べんたつ]する ### 使い分け例 **励ます**・・・「受験勉強の子を励ます。」 **力付ける**・・・「先輩に力づけられる。」 **勇気付ける**・・・「落胆した友人を勇気づける。」 **激励する**・・・「選手を激励する。」「激励の言葉。」 **鼓舞する**・・・「士気を鼓舞する。」 **督励する**・・・「部下を督励する。」「督励を受ける。」 **鞭撻する**・・・「弟子を鞭撻する。」「何とぞ御指導御鞭撻のほどを。」 ### どう使い分けるか **励ます**は、言葉をかけたりして <410> 元気づくようにしむける意で、「声を―」の場合は強くする意。 **力付ける**は、不幸や不遇にめげそうな人に元気を出せと励まし力が出るようにしてやる意。 **勇気付ける**は、何かを恐れたり自信を失ったりしている人を励まして、やる気を起こさせる意。 **激励する**は、〈励ます〉の意の漢語的な言い方でやや文章語的。 **鼓舞する**は、集団を対象として意気を奮い立たせる意で、やや古風な表現。以下三語は文章語。 **督励する**は、仕事や任務を進めるため、監督して激励する意。 **鞭撻する**は、むち打つが原義で、戒め励ます意であるが、現在では改まったあいさつや手紙文などに形式的に使うことが多い。 # 端[はし] ## 端[はし] / 縁[ふち] / 縁[へり] / 片端[かたはし] / 先端[せんたん] / 末端[まったん] / 端末[たんまつ] ### 使い分け例 **端**・・・「ひもの端。」「本の端を折る。」「道の端に寄る。」「言葉の端をとらえる。」「枝の端。」「本を端から順に読む。」 **縁**[ふち]・・・「茶わんの縁。」「池の縁を巡る。」「色糸で縁をとる。」 **縁**[へり]・・・「川のへりに立つ。」「畳のへりが擦り切れる。」 **片端**・・・「糸の片端。」「話の片端。」◎片っ端に。 **先端**・・・「棒の先端。」「流行の先端を行く。」「先端的な行動。」 **末端**・・・「枝の末端。」「指令が末端まで届く。」「末端価格。」 **端末**・・・「端末装置を設置する。」 ### どう使い分けるか **端**は、細長い物や広がりのある物の中央から最も遠い部分、転じて中心でない一部分、不要な切れはし、また物事のはじめの意も表す。 **縁**[ふち]と**縁**[へり]は、広がりのある物の端であるが、前者はまわりの部分と、「目のーを赤くする」のようにその外側も意味する。後者は畳・ハンカチ・カーテンなどの端に付ける布や飾りの意も表す。 **片端**は、一方の端、わずかな部分の意で、「―から・・・する」などと <411> いう場合は〈片っ端〉と言うのが普通。 | | 板の― | 糸の― | コップの― | 畳の― | 話のほんの―を聞く | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **縁**[ふち] | ○ | | ○ | | | | **縁**[へり] | ○ | | | ○ | | | **片端** | | ○ | | | ○ | **先端**は、細い物の先であるが、〈尖端〉の書き換え語として、時代や流行などの先頭の意を表す。 **末端**も物の端の部分であるが、組織や機構の中枢から最も遠い部分の意にも使う。 **端末**は、電気回路における電流の出入り口、電子計算機で、入出力装置を取り付ける部分を言う。 〔注意〕〈はし〉は〈はじ〉とも言う(特に関東に多い)。はじっこ。 # 恥[はじ] ## 恥[はじ] / 赤恥[あかはじ] / 辱め[はずかしめ] / 恥辱[ちじょく] / 屈辱[くつじょく] / 羞恥[しゅうち] ### 使い分け例 **恥**・・・「恥の上塗り。」「恥を忍ぶ。」「恥を知れ。」 **赤恥**・・・「人前で赤恥をかく。」「赤恥をさらす。」 **辱め**・・・「満座の中で辱めを受ける。」 **恥辱**・・・「恥辱をすすぐ。」「人々の面前で恥辱を被る。」 **屈辱**・・・「左遷の屈辱に耐える。」「屈辱感を味わう。」 **羞恥**・・・「羞恥を覚える。」「羞恥心。」 ### どう使い分けるか **恥**は、自分の過失・弱点からくる引け目、他人から受けた侮辱であるが、恥ずべきことを恥ずかしいと思う廉恥心の意もある。 **赤恥**は、ひどい恥の意。 **辱め**は、相手に恥をかかせるような仕打ち、**恥辱**は、その同義の漢語で文章語。 **屈辱**は、屈服させられて受ける恥の意。以下二語も文章語。 **羞恥**は、他人に対して恥ずかしく思う感情を言う。 # 初め[はじめ] ## 初め[はじめ] / 始め[はじめ] / 始まり[はじまり] / <412> ## 起こり[おこり] / 起源(起原)[きげん] / 原初[げんしょ] / 原始[げんし] / 始原[しげん] ### 使い分け例 **初め**・・・「年の初め。」「初め別の人かと思った。」▷終わり。おしまい。 **始め**・・・「御用始め。」「始めからやり直す。」▷終わり。おしまい。 **始まり**・・・「授業の始まりが遅れる。」「けんかの始まりは何か。」 **起こり**・・・「事の起こりは双方の誤解からであった。」「祭の起こり。」 **起源(起原)**・・・「人類の起源を研究する。」「言語の起源を探る。」 **原初**・・・「宇宙の原初。」「物語の原初的な形式。」 **原始**・・・「仏教の原始の姿。」◎元始。「原始時代。」「原始林。」 **始原**・・・「始原にさかのぼる。」 ### どう使い分けるか **初め**と**始め**は、前者が時に関して「最初」、後者が事に関して「開始」の意の場合が多い。 **始まり**は、物事が始まること、また、事の起こり・きっかけの意。 **起こり**は、物事の始まり、事のきっかけの意。日常の小さな出来事のきっかけの意に多く使う。 **起源**は、幾つもの時代を経てきた物事の始まりの意の文章語。 **原初**は、物事の一番初め・初期の段階の意を表すかたい文章語。 **原始**は、物事の初めが原義で、自然のままで変化や進歩がなく、未開であることを言う。**始原**は、〈原始〉の原義と同じで、かたい文章語。 # 恥じる[はじる] ## 恥じる[はじる] / 恥じ入る[はじいる] / 恥じらう[はじらう] / 含羞む[はにかむ] / 照れる[てれる] / 赤面[せきめん]する / 慙愧(慚愧)[ざんき]する ### 使い分け例 **恥じる**・・・「無学を恥じる。」「横綱の名に恥じない成績を残す。」▷誇る。 **恥じ入る**・・・「深く恥じ入る次第です。」「ただ恥じ入るばかり。」 **恥じらう**・・・「花も恥じらう乙女。」 **はにかむ**・・・「はにかんでうつむく。」 **照れる**・・・「褒められて照れる。」 **赤面する**・・・「人前で赤面する。」「赤 <413> 面の至りです。」 **慙愧(慚愧)する**・・・「慙愧に堪えない。」「不敏を深く慙愧する。」 ### どう使い分けるか **恥じる**は、自分の欠点や罪過を認め、人の軽蔑や笑いを受けると感じて、堂々とできない気持ちになる意で、「・・・に恥じない」は、その地位や名誉にふさわしいの意。 **恥じ入る**は、深く恥じる意で、両語ともやや改まった言い方。 **恥じらう**は、〈恥じる〉ような態度・表情をする意。**はにかむ**もほぼ同義だが、より雅語的。どちらも若い女性や子供について言うことが多い。 **照れる**は、〈恥じる〉が他人の軽蔑・嘲笑をつらく感じるのであるのに対し、多くの場合、賞賛や好意などを受け決まり悪い様子をする意で、やや俗語的である。 **赤面する**は、恥ずかしさのために顔が赤くなる意。 **慙愧(慚愧)する**は、〈恥じ入る〉の意の漢語的なかたい文章語。 # 果たす[はたす] ## 果たす[はたす] / 遂げる[とげる] / 仕上げる[しあげる] / 遣り遂げる[やりとげる] / 遂行[すいこう]する / 完遂[かんすい]する / 達成[たっせい]する ### 使い分け例 **果たす**・・・「大役を果たす。」「責任を果たす。」「有り金を使い果たす。」 **遂げる**・・・「望みを遂げる。」「哀れな最期を遂げる。」「進歩を遂げる。」 **仕上げる**・・・「一日で仕上げる。」「絵を仕上げる。」 **やり遂げる**・・・「難事業をやり遂げる。」「なんとか無事にやり遂げた。」 **遂行する**・・・「任務を遂行する。」「事業の遂行に全力を尽くす。」 **完遂する**・・・「目標を完遂する。」「計画完遂まで努力を続ける。」 **達成する**・・・「使命を達成する。」「目標達成まで、あとわずかだ。」 ### どう使い分けるか **果たす**は、しようと思ったこと、しなければならないことを全部し終える意、**遂げる**は、しようと思っていたことを最終的に目的通 <414> に表現する意で、「目的を―」の場合は同じ意味になるが、後者の方がやや文章語的である。 〈果たす〉は、動詞の連用形に付いて、「―果たす」の意になり、〈遂げる〉は、最終的にそういう結果になるの意を表す用法がある。 **仕様**は仕事などにおいて、具体的な物事を完成させる意を表す。 **やり遂げる**は、物事を最後までやり通す意で、**遂行する**は、同義の漢語的な言葉。 **完遂する**は、完全に遂行する意、**達成する**も、目指していたことを成し遂げる意で、ほぼ同義であるが、前者はやり通すこと、後者は成就することに重点がある。 〔注意〕〈遂行〉をツイコウ、〈完遂〉をカンツイと読むのは誤り。 # 働き[はたらき](仕事) ## 働き/機能[きのう]/性能[せいのう]/能力[のうりょく]/力量[りきりょう]/器量[きりょう] ### 使い分け例 **働き**・・・「頭の働きが鈍る。」「引力の働き。」 **機能**・・・「ワープロの機能。」「胃の機能。」「議会が正しく機能する。」 **性能**・・・「性能のよいカメラ。」「性能アップ。」 **能力**・・・「能力を生かす。」「運動能力。」「当事者能力がない。」 **力量**・・・「政治家としての力量が問われる。」「力量の差。」 **器量**・・・「指導者としての器量に欠ける。」「器量を上げる。」 ### どう使い分けるか **働き**は、仕事をすること、その能力、その結果としての実績などが本来の意味であるが、そのほかに、活動する能力―機能、他に及ぼす力―作用などの意も表す。 **機能**は、道具・機械・器官・機関などの働く能力、また、ある仕組みの中でそのものの役割を果たすことで、法律では機関がその権限内で活動できる能力を言う。 **性能**は、機械などの特性と能力の意。 **能力**は、物事を成し遂げること <415> できる力で、法律では「責任―」のように一定の事柄について必要とされる資格を言う。 | | 優れた―を
発揮する | 言葉の― | 主婦としての― | 処理―のよい機械 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **働き** | ○ | | | | | **機能** | ○ | | | ○ | | **性能** | ○ | | | ○ | | **能力** | ○ | ○ | ○ | | **力量**は、物事を成し得る力の程度の意であるが、〈能力〉と違って、人間以外の物に使うことはない。 **器量**は、地位や役目に応じた対応の能力であるが、「ーを上げる」と言う場合は面目を意味する。なお、「―がいい」と言う場合は、主として女性の容貌の意である。 〔注意〕〈機能〉だけ、「ーする」の形がある。 # 発火[はっか] ## 発火[はっか] / 引火[いんか] / 点火[てんか] / 着火[ちゃっか] / 出火[しゅっか] ### 使い分け例 **発火**・・・「自然発火。」「石炭が発火する。」「発火装置。」「発火点。」「連隊が野外の発火演習を行う。」 **引火**・・・「引火点。」「たばこの火がガソリンに引火する。」 **点火**・・・「点火を確認する。」「カスに点火する。」「自動点火。」 **着火**・・・「ようやく薪に着火する。」「着火点に達する。」 **出火**・・・「出火現場。」「台所から出火する。」 ### どう使い分けるか **発火**は、火が燃え出すこと、また、銃砲に火薬だけ詰め、実弾を入れずに空砲を撃つこと。 **引火**は、燃えやすい物が他の火や熱によって燃え出すことを言う。 **点火**は、火をつけること、また、火をともすことであるが、爆発などを起こして機関を始動させるために発火の操作をすることも言う。 **着火**は、〈発火〉や〈点火〉の意であるが、「着火点」は「発火点」と言う方が普通で、可燃物が自然に燃えはじめる最低温度の意を表す。 **出火**は火事を出すことを言う。 <416> # 発生[はっせい] ## 発生[はっせい] / 発祥[はっしょう] / 生起[せいき] / 惹起[じゃっき] / 勃発[ぼっぱつ] / 突発[とっぱつ] / 激発[げきはつ] ### 使い分け例 **発生**・・・「事故の発生を防ぐ。」「伝染病が発生する。」「台風が発生する。」「害虫が発生する。」「個体発生。」 **発祥**・・・「文明発祥の地。」「仏教の発祥した時。」 **生起**・・・「争乱生起の原因。」「日常生活において生起する諸問題。」 **惹起**・・・「混乱と不安を惹起する。」「軽率な行動が重大事件を惹起した。」 **勃発**・・・「第一次世界大戦の勃発。」「国民全体を巻き込む大事件が勃発した。」 **突発**・・・「事故の突発。」「突発的な症状。」「けいれんが突発する。」 **激発**・・・「住民運動の激発。」「怒りが激発する。」 ### どう使い分けるか **発生**は、物事や現象、あるいは生物が新しく生じることで、生物学では個体における形態形成の初期過程を言う。 **発祥**は、歴史的な事象が起こりはじめることで、社会的事象については〈発生〉は望ましくないことに多く使うが、〈発祥〉はめでたいこと、よいことに使うのが普通。 **生起**は、現象や事件が現れ起こること、**惹起**は、引き起こすことで、どちらもかたい文章語であるが、後者は好ましくない状態に多く使う。 **勃発**も**突発**も、突然起こることであるが、前者は戦争などの大事件に、後者は事故や病気の症状などに用いる。 **激発**は、事件が次から次へと起こること、また急に激情が起こったり、激しい行動を取らせたりすることを言う。 # 発表[はっぴょう] ## 発表[はっぴょう] / 公表[こうひょう] / 披露[ひろう] / 発布[はっぷ] / 公布[こうふ] / 公示[こうじ] <417> に/告示に ### 使い分け例 **発表**・・・「調査結果の発表。」「当選者を発表する。」「ピアノの発表会。」 **公表**・・・「資料の公表をはばかる。」「資産を公表する。」 **披露**・・・「新作を披露する。」「披露宴。」 **発布**・・・「新憲法を発布する。」 **公布**・・・「三十日以内に公布する。」 **公示**・・・「総選挙の期日を公示する。」 **告示**・・・「内閣告示。」「官報に告示される。」 ### どう使い分けるか **発表**は、新しい事実や考え・作品を広く世の人に、または関係者に知らせ示すこと、**公表**は、表向きにして世間一般に広く知らせることで、客観的な事柄を当事者間に限らずに発表することを言う。 **披露**は、新作や技能、あるいは縁組みや開業などを広く知らせることであるが、「失敗談を―する」のような使い方もする。 | | 会談内容を―する | 調査結果を―する | 新作を―する | ―をはばかる | 開店を―する | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **発表** | ○ | ○ | | | | | **公表** | ○ | ○ | | ○ | | | **披露** | | | ○ | | ○ | **発布**は、新しくできた大事な法律などを国民に広く告げ知らせること、**公布**は、新しく定められた法律・命令・条約などを国民に公表することで、後者は法律用語であり、官報で行われ、拘束力発生要件とされる。 **公示**と**告示**は、公の機関が、決定した事柄を一般の人に広く知らせることで、使い分けは明確でないが、公職選挙法における投票日については、国会議員の総選挙と通常選挙では前者、その他の場合は後者を使う。 # 話し合い[はなしあい] ## 話し合い/相談[そうだん]/談合[だんごう]/用談[ようだん]/要談[ようだん] ### 使い分け例 **話し合い**・・・「話し合いの場を持つ。」「話し合いが行き詰まる。」 **相談**・・・「相談して決める。」「相談に乗る。」「人生相談。」 <418> **談合**・・・「町内会の談合。」「業界の談合が露見する。」 **用談**・・・「客と用談する。」「用談中。」 **要談**・・・「首脳と要談を行う。」 ### どう使い分けるか **話し合い**は、相談や交渉をすること、**相談**は、どうするかを決めるために話し合うことの意と、自分ではよくわからないことについて他の意見を述べてもらうことの意とがある。 **談合**は、〈話し合い〉や〈相談〉と同義であるが、現在は入札価格を事前に関係者だけで決める意に使うことが多い。 **用談**は、仕事上などの用事について話し合うこと、**要談**は、重要な事柄について話し合うことを言う。 # 華やか[はなやか] ## 華やか[はなやか] / 華々しい[はなばなしい] / 派手[はで] / 派手やか[はでやか] / 華麗[かれい] / 華美[かび] ### 使い分け例 **華やか**・・・「華やかな衣装。」「華やかに開幕する。」「華やかな生涯。」 **華々しい**・・・「華々しい活躍。」「華々しく開店する。」 **派手**・・・「派手な柄の着物。」「派手な顔立ち。」「派手に泣き出す。」▷地味。 **派手やか**・・・「派手やかに装う。」「派手やかな身なりの婦人。」 **華麗**・・・「華麗なダンス。」「華麗に着飾る。」 **華美**・・・「華美な服装。」「生活が華美に過ぎる。」 ### どう使い分けるか **華やか**は、美しくて明るく、心が浮き立つ感じを与えるさま、また勢いが盛んで人目を引くさま、**華々しい**は、華やかさと活気があって人目を引くさまで、人の行動などに主に用いる。 **派手**は、明るい色彩や大きな図柄などが人目を引くさま、また年齢にそぐわない装いの華やかさを言う。俗語的に、態度や行動が人目を引くほど大げさなさまにも使う。 <419> **派手やか**は、人目を引く華やかさが感じられるさまを言う。「ーに泣く」のような使い方はない。 **華麗**と**華美**はほぼ同義で〈華やか〉の意の漢語だが、後者は、派手でぜいたくだの意味で使われることが多い。 # 阻む[はばむ] ## 阻む[はばむ] / 遮る[さえぎる] / 食い止める[くいとめる] / 塞き止める[せきとめる] / 妨げる[さまたげる] / 遮断[しゃだん]する / 阻止[そし]する / 阻害[そがい]する / 妨害[ぼうがい]する ### 使い分け例 **阻む**・・・「行く手を阻む。」「近代化を阻む。」 **遮る**・・・「暗幕で光を遮る。」「発言を遮る。」「視線を遮る。」 **食い止める**・・・「延焼を食い止める。」「物価の上昇を食い止める。」 **せき止める**・・・「川をせき止める。」「伝染病の流行をせき止める。」 **妨げる**・・・「安眠を妨げる。」「重任を妨げない。」 **遮断する**・・・「交通を遮断する。」「外部の音を遮断する。」 **阻止する**・・・「乱入を阻止する。」「実力阻止の構えを見せる。」 **阻害する**・・・「産業の発展を阻害する。」「健全な発育を阻害する。」 **妨害する**・・・「営業を妨害する。」「安眠妨害。」 ### どう使い分けるか **阻む**は、他のものの進もうとするのを邪魔して止める、**遮る**は、物事を途中で邪魔して先へ進まないようにする、間を隔てて向こうを見えなくする、の意。 **食い止める**は、よくない状態がそれ以上進むのを防ぎ止める、**せき止める**は、流れなどを遮って止める、転じて物事の進行・拡大を抑えて防ぎ止める意で、この二語は多くはプラスの意味に使う。 **妨げる**は、物事の進行を邪魔する意で、「・・・を妨げない」の形は許容する意であるが、主に法令や規定で使われる。 **遮断する**は、流れを切って一時止める意で、交通・光・音・熱など <420> に使う。 **阻止する**は、ある事が行われるのを邪魔して食い止める意。 **阻害する**は、物事の進行や生物の成長を妨げる意、**妨害する**も、何かが行われるのを邪魔する意であるが、意図的になされる場合は後者を用いる。 〔注意〕〈阻止〉は〈沮止〉、〈阻害〉は〈阻碍〉、〈妨害〉は〈妨碍〉の書き換え。 # はびこる ## はびこる / 蔓延る[はびこる] / 蔓延[まんえん]する / のさばる / 横行[おうこう]する / 跳梁[ちょうりょう]する / 跋扈[ばっこ]する ### 使い分け例 **はびこる**・・・「雑草がはびこる。」「疫病がはびこる。」「悪がはびこる。」 **蔓延する**・・・「伝染病が蔓延する。」「軽薄な風潮が蔓延する。」 **のさばる**・・・「大きな松がのさばる。」「悪徳業者が世にのさばる。」 **横行する**・・・「悪徳商法が横行する。」「やくざの横行ぶりは目に余る。」 **跳梁する**・・・「山野を跳梁する。」「各国スパイの跳梁。」 **跋扈する**・・・「悪徳商人が跋扈する。」 ### どう使い分けるか **はびこる**は、草木が茂って広がる、転じてよくないものが勢いが強くなって幅を利かす意、**蔓延する**は同義の漢語的な文章語。 **のさばる**は、思いのままに大きく場所を占める、威張って勝手気ままに振る舞う意、**横行する**は、威張って勝手気ままに歩き回る意(「横行闊歩」の形でよく使う)、悪事が平然と行われる意を表す。 | | 悪徳商法が― | 雑草が― | 汚職が― | 悪人が― | 疫病が― | でかい顔をして― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **はびこる** | ・ | ○ | ○ | ○ | ○ | | | **蔓延する** | | | | | ○ | | | **のさばる** | △ | ○ | | ○ | | ○ | | **横行する** | ○ | | ○ | ○ | | | **跳梁する**は、躍り上がって跳ね回るが原義で、はびこって自由に行動する意を表すかたい文章語。 **跋扈する**は、大魚が水中に仕掛けられたかごを跳び越えて行くが原義で、のさばって、勝手気ままに振る舞う意を表すかたい文章語。「跳梁跋扈」の形で使うこともある。 <421> # 速い[はやい] ## 速い[はやい] / 早い[はやい] / 速やか[すみやか] / 迅速[じんそく] / 急速[きゅうそく] / 早急[さっきゅう]・[そうきゅう] / 速急[そっきゅう] / スピーディー ### 使い分け例 **速い**・・・「速く走る。」「読むのが速い。」「速い流れ。」▷遅い。 **早い**・・・「今年は桜の開花が早い。」「朝早く起きる。」「寝るにはまだ早い。」▷遅い。 **速やか**・・・「速やかな回復。」「速やかに返答する。」 **迅速**・・・「迅速な処理。」「迅速に行動する。」 **急速**・・・「急速な進歩。」「インフレが急速に進行する。」 **早急**・・・「早急に解決したい。」「公害に対して早急の措置が望まれる。」 **速急**・・・「速急に対策を立てる。」 **スピーディー**・・・「スピーディーに事を運ぶ。」「スピーディーな社会情勢の変化。」 ### どう使い分けるか **速い**は、かかる時間が少ない意、**早い**は、時刻や時期が前の方である(まだその時になっていない)意を表す。ただし〈速い〉の意で〈早い〉を使うことも多い。 **速やか**は、手間取らず速いの意のやや古風な言い方、**迅速**は、同義の漢語。 **急速**は、物事の起こり方・進み方が速いことを言う。 **早急**は、事をするのに急を要するさま、**速急**は、それをやや強めた言い方であるが、一般には前者を使うことが多い。 **スピーディー**は、〈迅速〉とほぼ同義で、〈急速〉の意にも使う。 〔注意〕〈早急〉は漢音ではソウキュウだが、慣用でサッキュウと言う方が多い。 # はやり ## 流行[りゅうこう]・[はやり] / 流行[りゅうこう] / 風靡[ふうび] / ブーム / ファッション / トレンド <422> ### 使い分け例 **はやり**・・・「はやり風邪にかかる。」「今年のはやりの服装。」 **流行**・・・「感冒が流行する。」「流行の先端を行く。」「最近の流行歌。」 **風靡**・・・「一世を風靡する。」「天下を風靡した思想。」 **ブーム**・・・「古代史ブームが起きる。」「土地ブームに沸く。」 **ファッション**・・・「ファッションショー。」「ファッションに関心を持つ。」 **トレンド**・・・「トレンドカラー。」「若者の心を捕らえるトレンド。」 ### どう使い分けるか **はやり**と**流行**は、ほぼ同義で、一時的に世間に広がることであり、病気の場合も、好みや風潮の場合もあるが、前者はやや古風な言い方。 **風靡**は、風が草木をなびかせるように、大勢の者をある方向へ従わせることで、かたい文章語。 **ブーム**は、英語boomで、非常な勢いで一時的にはやること、にわか景気の意。 **ファッション**は、英語fashionで、流行の意であるが、主に服飾について言い、**トレンド**は、傾向・動向の意で、服飾に限らず多用されるようになった目新しい語である。英語trend。 # 破廉恥[はれんち] ## 破廉恥[はれんち] / 恥知らず[はじしらず] / 恥曝し[はじさらし] / 厚顔無恥[こうがんむち] / 鉄面皮[てつめんぴ] ### 使い分け例 **破廉恥**・・・「破廉恥極まりない行為。」「彼こそ破廉恥なやつだ。」 **恥知らず**・・・「恥知らずな行い。」「この恥知らずが。」 **恥曝し**・・・「恥さらしな振る舞い。」「一門の恥さらし。」 **厚顔無恥**・・・「厚顔無恥な男。」「やつの厚顔無恥ぶりには腹が立つ。」 **鉄面皮**・・・「鉄面皮にも金をせびりに来た。」「彼の鉄面皮には参った。」 ### どう使い分けるか **破廉恥**は、恥ずべきことをしながら、それを恥とも思わないさまで、 <423> 「―罪」は詐欺・窃盗・贈収賄など、道徳に反する動機・原因による犯罪行為を言う。 **恥知らず**は、〈破廉恥〉に相当する和語であるが、そういう行為をする人も意味する。**恥曝し**は、恥を世間にさらけ出すこと、また、その人の意であるが、それによって関係者が不面目な思いをさせられる場合に言う。 **厚顔無恥**の〈厚顔〉は厚かましいこと、〈無恥〉は恥知らずの意で、それぞれ単独でも使うが、両語を重ねることによって、その意を強めたもの。 **鉄面皮**も、つらの皮が鉄のように固いことで、〈厚顔無恥〉とほぼ同義に使うが、かなりおおげさな表現である。 # 繁盛[はんじょう] ## 繁盛(繁昌)[はんじょう] / 繁栄[はんえい] / 隆盛[りゅうせい] / 隆昌[りゅうしょう] ### 使い分け例 **繁盛**・・・「商売繁盛。」「繁盛する店。」 **繁栄**・・・「一家の繁栄を祈る。」「国家が繁栄する。」 **隆盛**・・・「隆盛を極めた唐の文化。」「帝国の隆盛期を迎える。」 **隆昌**・・・「ますます御隆昌の段お喜び申し上げます。」「国運隆昌。」 ### どう使い分けるか **繁盛**は、商売や事業がにぎわい栄えること。 **繁栄**は、国家・会社・家族などが栄えて発展することで、〈繁盛〉と違って大規模な集団にも用いる。やや文章語的な言葉。 **隆盛**は、勢いが他を圧して盛んなさまで、文化のような営利でない面にも使う。繁栄よりかたい文章語。 **隆昌**も大いに栄えることで、非常にかたい文章語。 〔注意〕〈隆盛〉〈隆昌〉は「―する」の形がない。 # 反省[はんせい] ## 反省[はんせい] / 内省[ないせい] / 自省[じせい] / 省察[せいさつ] <424> ### 使い分け例 **反省**・・・「一日を反省する。」「反省の色がない。」・ **内省**・・・「自己の言動を内省する。」「深い内省から生まれた作品。」 **自省**・・・「深く自省する。」「自省の念が起こる。」 **省察**・・・「自己を省察する。」「省察を加える。」 ### どう使い分けるか **反省**は、自分の言動やあり方を振り返って考えてみることで、最も一般的な用語。他の語と異なる点は、「罪を深くーする」のように今後再びしないよう自戒するの意があること。 **内省**は、「一的な態度(性格)」というように、自分の心の中へ、奥へと入り込む意が強く、心理学では内観と同義である。 **自省**は、自分でという点を強調した(ただし動機としては他から促される場合もある)文章語。 **省察**は、もっとかたい文章語で、ただ内心を振り返るだけでなく、深く観察し考察することを表す。 # 反対[はんたい] ## 反対[はんたい] / 逆[ぎゃく] / 逆様[さかさま] / 逆さ[さかさ] / 逆しま[さかしま] / あべこべ ### 使い分け例 **反対**・・・「早いの反対は遅い。」「道の反対側。」「反対の方向。」「事実はその反対だ。」「反対を唱える。」(最後の例について)賛成。 **逆**・・・「逆に数える。」▷順。「たばこを逆にくわえる。」「考え方が逆だ。」「逆は必ずしも真ならず。」 **逆様**・・・「逆様のまま落ちる。」「順序が逆様になる。」 **逆さ**・・・「本を逆さに持つ。」「逆さまつげ。」 **逆しま**・・・「富士が逆しまに映る。」「逆しまなことを教える。」 **あべこべ**・・・「前と後ろをあべこべに着る。」「それでは話があべこべだ。」 ### どう使い分けるか **反対**は、①対の関係にあるもののもう一方、②物事の位置・方向・順序などが本来の状態と入れ違いになっていること、③意見や <425> | | 順序が―だ | ―の方向 | その案には―だ | 本を―に持つ | 真っ― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **反対** | | | ○ | | | | **逆** | | ○ | ○ | | ○ | | **逆様** | ○ | | | ○ | | 提案に賛成しないことを言う。 **逆**は、〈反対〉の②とほぼ同義。数学や論理学で仮定と結論を入れ換えたものを言うこともある。 **逆様**は、物事の順序・上下・表裏などが通常とは反対になっているさまを言う。**逆さ**は、その略だが、「―富士」「―言葉」などの造語成分にもなる。 **逆しま**は、〈逆様〉と同義の雅語的な言葉で、よこしまの意に使うこともある。 **あべこべ**は、〈反対〉の②の意の俗語的な言い方で、改まった文章などには不向きである。 # ひ # 被害[ひがい](災難) ## 被害/被災[ひさい]/遭難[そうなん]/受難[じゅなん] ### 使い分け例 **被害**・・・「地震で大きな被害を受ける。」「被害状況を視察する。」 **被災**・・・「被災の報。」「被災した人に話を聞く。」⇔罹災。 **遭nan**・・・「冬山の遭nanが相次ぐ。」「漁船が遭nanする。」 **受難**・・・「造船業界にとって受難の年となる。」「受難劇。」 ### どう使い分けるか **被害**は、天災・人災や他人の不法行為や犯罪で危害・損害を受けること、またその危害・損害を言う。 **被災**は、風水害・火災・地震などの災害に遭うことで、〈被害〉は、小さな損害にも使うが、この語は大きな災難の場合に使う。 **遭難**も、災難に出会うことであるが、特に登山・航海・航空中の場合に使う。 **受難**も、苦痛や災難を受けることであるが、精神的な苦痛の場合もある。しかし、単に〈受難〉と言 <426> えば、キリストが十字架にかけられて刑を受けた苦難を指す場合が多い。 〔注意〕〈被害〉には「―する」の形がない。 # 光る[ひかる] ## 光る[ひかる] / 輝く[かがやく] / 照る[てる] / 映える[はえる] / 煌めく(燦めく)[きらめく] / 閃く[ひらめく] ### 使い分け例 **光る**・・・「涙が光る。」「監督の目が光る。」「一段と光る作品。」 **輝く**・・・「宝石が輝く。」「希望に輝く目。」「優勝の栄冠に輝く。」 **照る**・・・「こうこうと照る月。」「照る日曇る日。」 **映える**・・・「夕日に映える紅葉。」「その着物によく映える帯。」 **きらめく**・・・「指輪のダイヤがきらめく。」「きらめくリズム。」「きらめく知性。」 **閃く**・・・「稲妻がひらめく。」「名案がひらめく。」「旗がひらめく。」 ### どう使い分けるか **光る**の「目がー」は監視する、「野山に新緑がー」は美しく映える、「巧打がー」はずば抜けていて目立つの意。 **輝く**は、まぶしいように光るから転じて、「喜びに―顔」「連続優勝にー」のように、喜びや希望や名誉で華々しく見える意を表す。 **照る**は、日や月が光を放つ、晴れるの意で、「夕日にー山」の場合は〈映える〉の意味。**映える**は、光に照らされて美しく輝く、また調和して引き立って見えるの意であるが、「はえない人物」という場合は「栄え」を用いることもある。 | | 月が― | 真珠が― | 目が― | 夕日に―紅葉 | 一段と―作品 | 希望に―未来 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **光る** | ○ | ○ | ○ | | ○ | | | **輝く** | ○ | ○ | ○ | | | ○ | | **照る** | ○ | | | | | | | **映える** | | | | ○ | | | **きらめく**は、きらきらと光り輝く意から、輝かしいもののたとえにも用いる。 **閃く**は、一瞬鋭く光る意から、瞬間的に思い浮かぶ意にも用いる。また、旗などがひらひらする意も表す。 <427> # 引き立てる[ひきたてる] ## 引き立てる[ひきたてる] / 取り立てる[とりたてる] / 守り立てる[もりたてる] / 押し立てる[おしたてる] / 擁立[ようりつ]する ### 使い分け例 **引き立てる**・・・「後輩を引き立てる。」「壁の絵が部屋を引き立てる。」「気を引き立てる。」 **取り立てる**・・・「主任に取り立てる。」「取り立てて言う事もない。」 **守り立てる**・・・「幼君をもり立てる。」「全員で投手をもり立てる。」「主家をもり立てる。」 **押し立てる**・・・「大義名分を押し立てる。」「委員長に押し立てる。」 **擁立する**・・・「第三皇子を擁立する。」「新人候補を擁立する。」 ### どう使い分けるか **引き立てる**は、特にその者に目をかけて重く用いたり、援助したりする、また目立ってよく見えるようにする、励ますの意があり、「戸をー(横に引いて閉める)」「犯人を―(無理に引っぱって行く)」という用法もある。 **取り立てる**は、目をかけて抜擢する・登用する、また「取り立てて言う」は特別のものとして言及する意で、ほかに「借金を―」という用法もある。 **守り立てる**は、世話をして一人前にする、みんなで勢いづける意で、衰えかけたものを再興する意もある。 **押し立てる**は、「旗をー」の意から転じて、前面に掲げて強く主張する、推挙して表面に立てる意となる。 **擁立する**は、周囲からもり立てて高い地位や役に就かせる意で、もとは君主について言った語。 〔注意〕〈押し立てる〉は、人を推挙する場合は〈推し立てる〉とも書く。 # 弾く[ひく] ## 弾く[ひく] / 弾ずる[だんずる] / 奏でる[かなでる] / 奏する[そうする] / 調べる[しらべる] / 弾奏[だんそう]する / 演奏[えんそう]する <428> ### 使い分け例 **弾く**・・・「三味線を弾く。」「ピアノを弾く。」「弾き語りを聞く。」 **弾ずる**・・・「琴を弾ずる。」「琵琶を弾じつつ詩を吟ずる。」 **奏でる**・・・「一曲奏でる。」「バイオリンを巧みに奏でる。」 **奏する**・・・「雅楽を奏する。」「音楽を奏する。」 **調べる**・・・「少女の調べる琴の音に人々みな心を打たれる。」 **弾奏する**・・・「ギターは指を直接弦に当て弾奏する。」「弾奏楽器。」 **演奏する**・・・「大ホールでピアノを演奏する。」「コーラスの演奏会。」 ### どう使い分けるか **弾く**は、弦楽器・鍵盤楽器、**弾ずる**は、弦楽器を鳴らす意で、後者は文章語的な言い方。 **奏でる**は、主として管楽器・弦楽器を鳴らす意で、雅語的な言葉である。 **奏する**は、音楽を演じる意のほかに、「功をー」の形で効果をあげる意、また奏上するの意にも使う文章語。 **調べる**は、いろいろな意味があるが、音楽関係では、楽器の音律を合わせ整える(=調律する)の意と、奏でるの意がある。前者は現在ほとんど使われず、後者は雅語的な言葉である。 **弾奏する**は弦楽器を弾く意。 **演奏する**は、人々の前で音楽を奏する意で、楽器の種類や数は問わない。 # 秘訣[ひけつ] ## 秘訣[ひけつ] / 骨[こつ] / 呼吸[こきゅう] / 極意[ごくい] / 奥義[おうぎ] / 秘伝[ひでん] / 奥の手[おくのて] ### 使い分け例 **秘訣**・・・「上達の秘訣。」「成功の秘訣。」 **こつ**・・・「仕事のこつを覚える。」「スピーチのこつをつかむ。」 **呼吸**・・・「商売の呼吸を飲み込む。」「その呼吸を忘れるな。」 **極意**・・・「剣道の極意を会得する。」「極意を伝授する。」 **奥義**・・・「茶道の奥義を究める。」 <429> **秘伝**・・・「秘伝の技。」「秘伝の妙薬。」 **奥の手**・・・「いよいよ奥の手を出してきた。」「奥の手は隠しておけ。」 ### どう使い分けるか **秘訣**は、人に知られていない特別な良い方法の意で、「料理のー」のように日常的な事柄にも使う。 **こつ**は、物事をうまくやる上での要領・勘どころ、**呼吸**は、物事を巧みに行う微妙な調子の意で、ほぼ同義であるが、前者の方がくだけた言い方。 **極意**は、学芸や武道でその道を究めた人だけにわかる深い境地の意。 **奥義**は、学芸や武道で、奥深いところにある最も重要な秘訣の意である。 **秘伝**は、特定の人にしか伝授しない奥義の意。 | | ビジネスの― | 上達を飲み込む | 腹八分が健康の― | ―が合わない | 歌道の― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **秘訣** | ○ | | ○ | | | | **こつ** | ○ | ○ | | | | | **呼吸** | ○ | ○ | | ○ | | | **極意** | | | | | ○ | **奥の手**は、〈奥義〉と同義であるが、転じて、とっておきの得意な手段という意味で日常的に使われる。 # ひたすら ## 只管(一向)[ひたすら] / 一途[いちず]に / 直向き[ひたむき]に / 偏に[ひとえに] / 専ら[もっぱら] / 専一[せんいつ]に / 一[いつ]に ### 使い分け例 **ひたすら**・・・「ひたすら歩き続ける。」「ひたすら神に祈る。」 **一途に**・・・「いちずに精進する。」「いちずに思い詰める。」 **ひたむきに**・・・「ひたむきに道を求める。」「ひたむきに愛する。」 **偏に**・・・「ひとえにおわび申し上げます。」「ひとえに君のおかげだ。」 **専ら**・・・「専ら輸出用だ。」「専ら商売に力を注ぐ。」「専らのうわさ。」 **専一に**・・・「御自愛専一に。」「仕事を専一にしなければならない。」 **一に**・・・「成否は一に君の今後の努力次第である。」 ### どう使い分けるか **ひたすら**と**一途に**はほぼ同義で、 <430> ただそればかりに心を向け他を顧みないさまを表すが、前者は外に表れる行為や態度に、後者は主体の気持ちに比較的重点が置かれ、「一座り続ける」「―謝る」などでは前者、「―思い込む」で後者と使い分ける。 **ひたむきに**も、〈一途に〉とほぼ同義であるが、「勉強一途に・・・」のような言い方に〈ひたむきに〉は使えない。 **偏に**は、〈ひたすら〉の意のほかに、ただその事だけで他に理由はない、全くの意も表す、改まった表現。 **専ら**は、その事ばかりの意で、〈一途〉の意にも使うが、「権力をーにする」の場合は独占することを言う。 **専一に**は、その事柄にだけ専念することで、手紙文の決まり文句によく使われる。**一に**は、〈偏に〉や〈専ら〉とほぼ同義の文章語的な言葉。 〔注意〕〈一途に〉〈ひたむきに〉〈専一に〉は、形容動詞の連用形。 # 悲痛[ひつう] ## 悲痛[ひつう] / 沈痛[ちんつう] / 悲愴[ひそう] / 悲壮[ひそう] ### 使い分け例 **悲痛**・・・「悲痛な面持ちで別れを告げる。」「悲痛な叫び。」 **沈痛**・・・「沈痛な表情。」「沈痛な声。」 **悲愴**・・・「悲愴な顔つきで父親の臨終に駆けつける。」「悲愴な思い。」 **悲壮**・・・「悲壮な最期を遂げる。」「悲壮な決意で敵地に向かう。」 ### どう使い分けるか **悲痛**は、非常な悲しみで心が痛む様子、**沈痛**は、悩みや苦しみをこらえて痛々しい様子を言うが、これらは表情や声に表れたさまで、「―な気持ち」という使い方はしない。 **悲愴**は、悲しく心が痛む様子で、外に表れたものにも内心の気持ちにも使う。**悲壮**は、悲しみの中にりりしさのある様子で、結果を恐れない雄々しい様子を言う。 # 必要[ひつよう] ## 必要[ひつよう] / 入用[にゅうよう] / 入り用[いりよう] <431> ## / 所要[しょよう] / 必須[ひっす] ### 使い分け例 **必要**・・・「必要は発明の母。」「必要悪。」「必要な経費。」「必要条件。」 **入用**・・・「地図が入用だ。」「入用の足しにする。」 **入り用**・・・「入り用な物をそろえる。」「いくらお入り用ですか。」 **所要**・・・「運動会の所要の経費。」「所要時間。」 **必須**・・・「必須の条件を挙げる。」「必須アミノ酸。」 ### どう使い分けるか **必要**は、何かをする場合、そのもの無くしては成立しえないような大切なことの意。(なお、〈必用〉は必ず用いなければならないことの意の文章語で、〈必要〉とほぼ同義であるが、現在ではあまり使われない。) **入用**は、用を足すために必要であることで、必要な費用の意にも用いる。なお、〈入用〉は〈必要〉よりも必要の程度が低い場合にも使われる。**入り用**は、その和語的なくだけた言葉。 **所要**は、ある物事をするのに必要なこと、また、実際に行って費やしたことの意に使われる。 | | ―な経費 | ペンが―になる | ―の条件 | ご―だけ立てます | ―時間 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **必要** | ○ | ○ | ○ | | | | **入用** | ○ | ○ | | ○ | | | **所要** | ○ | | | | ○ | **必須**は、必要の意を強めた文章語。 # 人柄[ひとがら] ## 人柄[ひとがら] / 人となり(為人)[ひととなり] / 人格[じんかく] / 人品[じんぴん] / 品性[ひんせい] ### 使い分け例 **人柄**・・・「話しぶりに人柄が表われる。」「あの人はお人柄です。」 **人となり**・・・「友人の人となりを語る。」 **人格**・・・「高潔な人格の持ち主。」「子供の人格を認める。」「人格のない社団。」 **人品**・・・「人品骨柄。」「人品卑しからぬ老紳士。」 **品性**・・・「教養が品性を養う。」「品性下劣な男。」 <432> ### どう使い分けるか **人柄**は、その人の性格・気質・品位などのにじみ出た人間性で、「おー」の形で人柄のいいさまを言う場合にも使う。**人となり**は、生まれつきの人柄の意で、古風な言い方。 **人格**は、人の品格の意で、〈人柄〉と同義にも使うが、心理学では行動の主体、社会学では共同生活の主体、特に倫理学では道徳行為の主体としての個人を意味する。そして法律上では、権利・義務の主体となりうる資格を言う。 **人品**は、その人の品位・なりふり、**品性**は、道徳的な面から見たその人の性格を言う。品位や品格は人にも物にも用いるが、〈品性〉は人にだけ使う語。 # 皮肉[ひにく] ## 皮肉[ひにく] / 当て付け[あてつけ] / 当て擦り[あてこすり] / 風刺[ふうし] / 嫌味[いやみ] ### 使い分け例 **皮肉**・・・「皮肉な言い回し。」「皮肉な笑い。」「運命の皮肉。」 **当て付け**・・・「当てつけの行為。」「当てつけがましい態度を取る。」 **当て擦り**・・・「当てこすりを言う。」「当てこすりと受け取られる。」 **風刺**・・・「風刺が利いている。」「世相を風刺する。」「風刺画。」 **嫌味**・・・「嫌味たっぷりに言う。」「嫌味な男。」「嫌味を並べる。」 ### どう使い分けるか **皮肉**は、事実と反対のことを言ったりして、遠回しに意地悪く非難すること、また意地悪に見えること、さらに結果が予期に反して具合の悪いことになるさまを言う。 **当て付け**も**当て擦り**も、他の事にかこつけて悪口や皮肉を言うことで、前者よりも後者の方が遠回しであるが、本人に伝わることを期待している点は同じ。 **風刺**は、それとなく皮肉ることであるが、対象が社会的な事象や人物で、権威を恐れずに批評することを言う。 **嫌味**は、〈当て擦り〉とほぼ同義であるが、現在ではむしろあえて <433> 相手に不快な気持ちを起こさせること、あるいは嫌らしく気取ったさまという意味で使われることが多い。 〔注意〕〈風刺〉は〈諷刺〉の、〈嫌味〉は〈厭味〉の、それぞれ書き換え。 # 批評[ひひょう](評判) ## 批評/評[ひょう]/批判[ひはん]/論評[ろんぴょう]/講評[こうひょう]/評価[ひょうか]/評定[ひょうてい]/品評[ひんぴょう]/品定め[しなさだめ] ### 使い分け例 **批評**・・・「的確な批評。」「映画の批評を読む。」「新刊書を批評する。」「批評家。」 **評**・・・「選者の評を聞く。」「評を書く。」 **批判**・・・「市民の批判を浴びる。」「批判が強まる。」「人の行いを批判する。」 **論評**・・・「新作に論評を加える。」「新聞の論評。」「首脳会談について論評する。」 **講評**・・・「審査員の講評を聞く。」「模擬試験の結果について先生が講評する。」 **評価**・・・「高く評価する。」「評価の定まらない作品。」「五段階評価。」 **評定**・・・「勤務評定。」「価格を評定する。」 **品評**・・・「作物をあれこれ品評する。」「バラの品評会を開く。」 **品定め**・・・「特産物の品定め。」「役員の品定めをする。」 ### どう使い分けるか **批評**は、物事のよい点・悪い点などを取り上げて、その価値を決めること、**評**は、〈批評〉を簡略化した言い方で、「下馬―」「映画―」のように造語成分となる場合も多い。 **批判**は、物事のよしあしなどを論理的に評価・判定することで、普通、否定的な評価の場合に用いる。 **論評**は、事件や作品の内容やよしあしについて論じ批評すること、**講評**は、指導的立場から説明を加え、理由をはっきりさせながら批評することを言う。 **評価**は、品物の価格、人物や物事の価値を論じて決めることで、 <434> # 暇[ひま] ## 暇[ひま] / 暇[いとま] / 余暇[よか] / 休暇[きゅうか] / 閑暇[かんか] / レジャー / バカンス ### 使い分け例 **暇**・・・「食事をする暇もない。」「暇を見て出掛ける。」「商売が暇だ。」「勤め先が嫌になり暇を取る。」 **いとま**・・・「応接にいとまがない。」「店員にいとまを出す。」「二、三日いとまをもらう。」「いとまを告げる。」 **余暇**・・・「仕事の余暇に絵を描く。」「余暇を活用する。」 **休暇**・・・「休暇を取って海外旅行をする。」「有給休暇。」 **閑暇**・・・「悠々と閑暇を楽しむ。」 **レジャー**・・・「レジャーウェア。」「レジャー産業。」 **バカンス**・・・「夏のバカンス。」「バカンスをハワイで過ごす。」 ### どう使い分けるか **暇**は、①何かをするための時間、②事を行うのに都合のよい機会、③手があいていること、④主従・夫婦の縁を絶つこと、⑤休暇の意があるが、④⑤は古風な用法で、「―を取る・出す・やる」などは両方の意味にとれるが、現在はあまり使わない。 **いとま**は〈暇〉と同義の雅語的な言葉であるが、「暇な」に相当する形容動詞の用法はなく、逆に辞去・別れの意の「おーする」の用法は〈暇〉にはない。 **余暇**は仕事を離れて自分の自由に使える時間、**休暇**は勤務先や学校で休日以外に制度として認められた休みを言う。 <435> | | ―が 増える | ―な時 | ―なお 仕事 | ―を 取って遊ぶ | 休暇に遊ぶ | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **暇** | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | | **いとま**| ○ | ○ | ○ | ○ | | | **余暇** | ○ | | | △ | ○ | | **休暇** | ○ | | | | ○ | **閑暇**は〈暇〉の③の意の漢語で、かたい文章語。 **レジャー**は〈余暇〉、**バカンス**は〈休暇〉の意であるが、共にその間の遊び・保養・旅行などに重点を置いて使われる。 # 評判[ひょうばん](批評・人気) ## 評判/世評[せひょう]/噂[うわさ]/取り沙汰[とりざた]/風評[ふうひょう]/風聞[ふうぶん]/風説[ふうせつ] ### 使い分け例 **評判**・・・「評判になる。」「評判が悪い。」「評判の美人。」「評判を落とす。」 **世評**・・・「世評を気にする。」「世評の高い作品。」 **噂**・・・「うわさをすれば影。」「世間のうわさに高い人。」 **取り沙汰**・・・「あれこれ取りざたする。」 **風評**・・・「風評が立つ。」 **風聞**・・・「とかくの風聞がある。」 **風説**・・・「風説が流れる。」 ### どう使い分けるか **評判**は世間の人の下す評価、またよいもの・立派なものとして名高いこと、**世評**も世間の評価の意であるがやや文章語的。 **噂**はその場にいない人についてあれこれ言うこと、また、世間で言いふらすあまり確かでない話の意で、**取り沙汰**も世間でうわさをすることの意であるが、やや古風。 **風評**はある人についての世間の評判・うわさ、**風聞**は風の便りに聞くうわさで、どちらも多くよくない内容について言う。**風説**も世間のうわさの意で、特に根拠のない作り話を言う。 # 平たい[ひらたい] ## 平たい/平べったい[ひらべったい]/平ら[たいら]/平らか[たいらか]/偏平[へんぺい]/平坦[へいたん] <436> ### 使い分け例 **平たい**・・・「平たい顔。」「平たい皿。」「平たく削る。」「平たく言えば。」 **平べったい**・・・「平べったい石。」「平べったく伸ばす。」 **平ら**・・・「平らな山。」「地面を平らにする。」「平らな気分。」「どうぞお平らに。」 **平らか**・・・「平らかな道。」「平らかな世の中。」「心中平らかでない。」 **偏平**・・・「偏平な胸。」「偏平足。」 **平坦**・・・「平坦な土地。」「平坦な調子でしゃべる。」「前途は平坦でない。」 **坦々**・・・「坦々たる平野。」「坦々とした生活。」「坦々たる試合展開。」 ### どう使い分けるか **平たい**は横に広がって厚みが薄い、表面が平らで凹凸がないさまを言い、「―く言えば」の場合は分かりやすくの意。**平べったい**は〈平たい〉を強めた俗語的な言い方。 **平ら**は平面に凹凸や高低がないさまで、〈平たい〉の持つ薄いという意味は含まない。〈平ら〉は気分が落ち着いているの意もあり、「おーに」は足を崩して楽に座ることを言う古風な言い方。**平らか**は、土地の平らなさまよりも、世の中が平穏無事であり、心が満足して安らかであるさまの意に使う方が多く、やや文章語的な語。 **偏平**は〈平たい〉の意の漢語。 **平坦**と**坦々**は〈平ら〉の意の漢語であるが、後者は変わった事がなく平凡に過ぎる意にも使う。 〔注意〕〈偏平〉は〈扁平〉の書き換え。 # 広げる[ひろげる] ## 広げる[ひろげる] / 広める[ひろめる] / 拡大(郭大)[かくだい]する / 拡張[かくちょう]する / 拡充[かくじゅう]する ### 使い分け例 **広げる**・・・「包みを広げる。」「間口を広げる。」「店を広げる。」「縄張りを広げる。」 **広める**・・・「見聞を広める。」「学問を世に広める。」「名を広める。」 **拡大する**・・・「勢力を拡大する。」「顕微鏡で拡大する。」「規模が拡大する。」「拡大鏡。」▷縮小する。 **拡張する**・・・「道路を拡張する。」「領 <437> 土を拡張する。」「軍備を拡張する。」「胃拡張。」 **拡充する**・・・「教育施設を拡充する。」 ### どう使い分けるか **広げる**は、包んだり閉じたりしてある物を開く、幅・面積や範囲・規模を大きくする、の意、**広める**は、広い範囲に行き渡るようにする、広く知られるようにする、の意で、後者は具体物には用いない。 **拡大する**は、広げて大きくする、また、広がって大きくなる、の意、**拡張する**は、規模や範囲を大きく広げる意で、「事業・計画をー」のようにどちらでも使える場合もあるが、後者は自動詞にはならない。 **拡充する**は、組織や設備を拡張し充実させることを言う。 # 品行[ひんこう] ## 品行[ひんこう] / 操行[そうこう] / 素行[そこう] / 行状[ぎょうじょう] / 行跡[こうせき] / 身持ち[みもち] ### 使い分け例 **品行**・・・「品行方正な優等生。」「品行を正す。」 **操行**・・・「操行点は甲。」「操行が悪い。」 **素行**・・・「素行を調査する。」「素行が悪い男。」 **行状**・・・「行状を改める。」「行状記。」 **行跡**・・・「日ごろの行跡がよくない。」「不行跡を働く。」 **身持ち**・・・「身持ちの正しい人。」 ### どう使い分けるか 戦前の学校には操行という評価項目があり、優秀な者は「品行方正」と賞された。現在でも、品行は道徳的な面から見た行いの意で使われ、**操行**は、以前ほどには使われないが、規律や言いつけへの忠実さ・まじめさから見た行い・態度の意で使う。 **素行**は、平素の行いの意であるが、「―調査」という場合には生活態度をも含めた少し広い意味になる。**行状**や**行跡**も〈素行〉とほぼ同義であるが、やや古風な言い方で、前者には「行状記」の熟語があり、後者は「不行跡」の形で使う <438> 方が多い。 **身持ち**は〈品行〉とほぼ同義の古風な語で、男女関係についての行いを指すことがある。 # 不幸[ふこう] ## 不幸[ふこう] / 不運[ふうん] / 不遇[ふぐう] / 不仕合わせ(不幸せ)[ふしあわせ] / 薄幸[はっこう] / 薄命[はくめい] / 非運(否運)[ひうん] / 悲運[ひうん] ### 使い分け例 **不幸**・・・「不幸な生涯。」「不幸中の幸い。」「親戚に不幸があった。」▷幸福。 **不運**・・・「不運な事故。」「人の運不運は定めがない。」▷幸運。 **不遇**・・・「不遇な晩年を送る。」「身の不遇をかこつ。」 **不仕合わせ(不幸せ)**・・・「不仕合わせを嘆く。」▷仕合わせ(幸せ)。 **薄幸**・・・「薄幸の佳人。」 **薄命**・・・「薄命の一生。」「佳人薄命。」 **非運**・・・「非運が続く。」「非運の闘将。」 **悲運**・・・「悲運に見舞われる。」 ### どう使い分けるか **不幸**は、幸福でないこと、また身内の者に死なれることも言う。 **不運**は運の悪いこと。 **不遇**は、運が悪くて才能・人物にふさわしい地位や境遇を得ていないこと。 **不仕合わせ**は、不幸・不運の意の柔らかい言い方。 **薄幸**は、仕合わせに恵まれないこと。 **薄命**は〈薄幸〉と同義でも使うが、もう一つの意の、寿命が短いこと・早死に、の方が多く使われる。 **非運**は、〈不運〉と同義の文章語であるが、努力しても報いられないというニュアンスがある。 **悲運**は、悲しい運命の意で、悲しいという感情に重点を置いて使う言葉。 〔注意〕〈薄幸〉は〈薄倖〉の書き換え。 <439> # 不細工[ぶさいく] ## 不細工(無細工)[ぶさいく] / 不格好[ぶかっこう] / 不体裁[ふていさい]・[ぶていさい] / 無様(不様)[ぶざま] / みっともない / 見苦しい[みぐるしい] / 醜い[みにくい] / 醜悪[しゅうあく] ### 使い分け例 **不細工**・・・「不細工な仕上げ。」「不細工な顔。」 **不格好**・・・「不格好な松の木。」「不格好な身なり。」 **不体裁**・・・「不体裁な格好。」「不体裁なまねをするな。」 **無様(不様)**・・・「無様な姿。」「不様な負け方。」 **みっともない**・・・「みっともない振る舞い。」「みっともない風をするな。」 **見苦しい**・・・「見苦しい服装。」「見苦しい態度。」 **醜い**・・・「顔が醜くゆがむ。」「醜い肉親の争い。」「醜い心。」 **醜悪**・・・「醜悪な形相。」「醜悪な利権争い。」 ### どう使い分けるか **不細工**は、細工がまずく体裁が整っていないさま、また目鼻だちが整っていないさま、**不格好**は形や格好が悪いさま、**不体裁**は見かけや外聞の悪いさま、**無様**もほぼ同義で、状態だけでなく行為についても言う。 以上の四語は客観的な様子に、以下の四語はそれから受ける主観的な感じ・判断に重点がある。 **みっともない**は体裁が悪くて人には見せられない。**見苦しい**は見ていていやになるほどみっともない。 **醜い**は姿・形が見た目に不快なほどだ、また行為がいやしくていやな感じがする、の意で、**醜悪**はそれを強調した漢語である。 | | ―な作り | ―な身なり | ―な顔 | ぶざまな負け方 | みっともない行為 | 見苦しい行い | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **不細工な** | ○ | | ○ | | | | | **不格好な** | ○ | ○ | | | | | | **ぶざまな** | | | | ○ | | | | **みっともない** | | | | | ○ | | | **見苦しい** | | | | | | ○ | | **醜い** | | | | | | ○ | 〔注意〕〈不格好〉の「格好」は「恰好」の書き換え。なお、「活字が小さくてみにくい」は「見にくい」と書く。 <440> # 不思議[ふしぎ] ## 不思議[ふしぎ] / 奇怪[きかい] / 奇妙[きみょう] / 奇異[きい] / 怪奇[かいき] ### 使い分け例 **不思議**・・・「いくら考えても不思議でならない。」「危ないところを不思議に助かった。」「世界の七不思議。」 **奇怪**・・・「犯人の奇怪な言動。」「山中の奇怪な出来事。」「奇怪なことをおっしゃる。」◎きっかい。 **奇妙**・・・「彼の占いは奇妙に当たる。」「奇妙な格好で町を歩く。」 **奇異**・・・「説明のつかない奇異な現象。」 **怪奇**・・・「複雑で怪奇な事件。」「怪奇映画。」 ### どう使い分けるか **不思議**は、原因や理由が分からず、釈然としないさま。 **奇怪**は、〈不思議〉より非合理性が強い感じがある。転じて、許しがたい・けしからぬ、の意にもなる。〈きっかい〉は強調表現。 **奇妙**は、〈不思議〉と同義でも使うが、風変わりの意味にも使う。 **奇異**は、〈不思議〉の意味の上に珍しさがより強調される。 **怪奇**は〈奇怪〉と同義でも使うが、「許しがたい」の意はなく、グロテスクの意味もある。 〈不思議〉〈奇妙〉は口頭語だが、その他は文章語的である。 〔注意〕「不思議に」の意味で「不思議と」の形も現在では使われる。 # 不精[ぶしょう] ## 不精(無精)[ぶしょう] / 物臭[ものぐさ] / 骨惜しみ[ほねおしみ] / 横着[おうちゃく] / 怠惰[たいだ] / 懶惰[らんだ] / 怠慢[たいまん] ### 使い分け例 **不精(無精)**・・・「不精を決め込む。」「筆不精。」「無精して電話で済ます。」「不精ひげ。」「不精者。」 **物臭**・・・「ものぐさを直せ。」「物臭なやつ。」「こんな物臭は見たことがない。」 **骨惜しみ**・・・「骨惜しみしないでしっかり働け。」 **横着**・・・「横着を決め込む。」「横着な <441> 男。」「横着して手を抜く。」「横着者。」 **怠惰**・・・「怠惰を悔い改める。」「怠惰な日常。」勤勉。 **懶惰**…「生来懶惰を好む。」「懶惰な日々を送る。」 **怠慢**・・・「怠慢のそしりを免れない。」「職務怠慢。」「怠慢な仕事ぶり。」 ### どう使い分けるか **不精**も**物臭**も、ちょっとのことも面倒くさがってやらないことで、前者は「出―」「ーひげ」などと熟して使うことも多いが、後者のようにそういう性質の人の意はない。**骨惜しみ**は、骨を折るのをいやがること、**横着**は、できるだけ骨を折らないで得をしようとすることを言う。 **怠惰**は、するべきことをしないで怠けるさまで、**懶惰**はそれとほぼ同義の一層かたい文章語。 **怠慢**は、怠けて仕事や義務をおろそかにするさまで、<怠惰>が性質や生活態度を言うのに対し、行為の仕方を言う。 | | ーを決め込む男 | ーな生活 | ーして手を抜く | ーな仕事ぶり | ーな職務 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **不精** | O | O | | | | | **横着** | O | | O | | | | **怠惰** | | O | | | | | **怠慢** | | | | O | O | 〔注意〕〈懶惰〉をライダと言うのは誤り。 # 防ぐ[ふせぐ] ## 防御する[ぼうぎょする] ## 防衛する[ぼうえいする] ## 防備する[ぼうびする] ## 防戦する[ぼうせんする] ## 防止する[ぼうしする] ## 防護する[ぼうごする] ### 使い分け例 **防ぐ**…「敵を防ぐ。」「侵略を防ぐ。」「水害を防ぐ。」「事故を未然に防ぐ」 **防御する**・・・「敵の侵入を防御する。」 **防衛する**・・・「祖国を防衛する。」「タイトルを防衛する。」 **防備する**・・・「辺境を防備する。」 **防戦する**・・・「全住民が一丸となって防戦する。」 **防止する**・・・「青少年の非行を防止する。」「交通事故を防止する。」 **防護する**・・・「洪水から村を防護する。」 <442> ### どう使い分けるか **防ぐ**は、①敵を遮って侵されないようにする、②災害が起こらないようにする、の意で、以下の六語のうち、前四語は①、後二語は②に属する。 **防御する**は、敵の攻撃を防ぎ守る、**防衛する**は、危害だけでなく、所有権が侵されるのを防ぎ守る、の意にも言う。**防備する**は、外敵などを防ぐ備えをする、**防戦する**は、相手の攻撃を防ぐために戦う意で使う。 **防止する**は、よくない事が起きないように手を打つ、**防護する**は、危険や災害を防ぎ、それから守る、の意に言う。 〔注意〕〈防御〉は〈防禦〉の書き換え。 # 不足[ふそく] ## 欠乏[けつぼう] ## 欠如[けつじょ] ## 払底[ふってい] ### 使い分け例 **不足**・・・「人員の不足を補う。」「認識不足だ。」「資金が不足する。」「相手に不足はない。」 **欠乏**・・・「ビタミン欠乏症。」「酸素が欠乏する。」 **欠如**・・・「日本の政治家の国際感覚の欠如が問題だ。」「公徳心が欠如している。」 **払底**・・・「食糧の払底。」「在庫品が払底する。」「この職種を希望する人材は払底している。」 ### どう使い分けるか **不足**は、足りないこと、不十分の、意で、人にも物にも、また抽象的な事柄にも用いる。なお、「相手に―はない」などの場合は不平や不満の意である。 **欠乏**は、必要な物の補いがつかず不足することで、人や抽象的な事柄には用いない。 **欠如**は本来あるべきものが欠けていることで、<欠乏>と対照的に抽象的な事柄について使う。 **払底**は、必要な物が無くなって補充がつかない状態にあることで、具体物について使うが、「人材が―する」のように資源としての人に使うことはある。 <443> # 付属[ふぞく] ## 付属(附属)[ふぞく(ふぞく)] ## 直属[ちょくぞく] ## 所属[しょぞく] ## 帰属[きぞく] ## 従属[じゅうぞく] ## 服属[ふくぞく] ## 隷属[れいぞく] ### 使い分け例 **付属(附属)**…「機械に付属する部品。」「国立大学の附属高等学校。」 **直属**・・・「直属の部下。」「内閣に直属する機関。」 **所属**・・・「大学所属の建物。」「野球部に所属する。」 **帰属**・・・「会社への帰属意識。」「国庫に帰属する。」 **従属**・・・「従属的な地位。」「強国に従属する。」 **服属**・・・「服属を強いる。」「大国に服属する。」 **隷属**・・・「隷属から脱する。」「隣国に隷属する。」 ### どう使い分けるか **付属**は、機構上本体となるものに付き従っていることで、物や組織について言う。**附属**が本来の用字で、法令・公用文では「附属機関、附属学校」とするが、一般には<付属>が使われている。 **直属**は、直接に属すること、直接に指揮・監督を受けることで、人や機関について言う。 **所属**は、ある事物や個人が団体や大きな単位の一員となること、その命令や管轄を受けること。 **帰属**は、決まった人や団体に従う意のほかに、財産や権利が特定の人や団体の所有物になる意もある。 **従属**は、他のものの下に付き従うこと、そのものの支配を受けること。 **服属**は、他のものに服従し、家来となって従うこと。 **隷属**は、他の支配を受けてその言いなりになること。 # 普段[ふだん] ## 日頃[ひごろ] ## 平生[へいぜい] ## 平素[へいそ] ## 日常[にちじょう] ## 平常[へいじょう] <444> ### 使い分け例 **普段**・・・「普段の心がけが大切だ。」「ふだん思っていること。」「普段着。」 **日頃**・・・「日ごろの努力のたまもの。」「日ごろ欲しいと思っていた品。」◎常日頃。 **平生**・・・「平生通りの営業。」「平生から注意する。」 **平素**・・・「平素はおとなしい。」「平素の御無沙汰をおわび申し上げます。」 **日常**・・・「平穏な日常を送る。」「日常起こること。」「日常茶飯事。」 **平常**・・・「平常の業務につく。」「平常八時に閉店する。」 ### どう使い分けるか **普段**と**日頃**は、ほぼ同義であるが、後者には、このごろ・近ごろの意もある。〈常日頃〉は〈日頃〉をやや強めた語。 **平生**・**平素**は<普段>よりも改まった文章語で同義だが、習慣として表のような使い分けがある。 **日常**も<平生>と同じく、特別なことのない普通の日々の意であるが、「一生活」「一会話」のように造語成分としてもよく使われる。 | | ーの行い | ーがけ | ー通りの営業 | ーのぶさたをわびる | 平穏無事なー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **普段** | O | O | | | | | **日頃** | O | O | | | | | **平生** | | | O | | | | **平素** | | | | O | | | **日常** | | | | | O | | **平常** | | | O | | | **平常**は、いつもと同じの意で、名詞だけでなく、副詞的にも用いることは他の語と同じ。 〔注意〕〈普段〉の本来の用字は不断〉であるが、「不断の努力」、「優柔不断」の場合は意味が違ってくる。 # 普通[ふつう] ## 通常[つうじょう] ## 一般[いっぱん] ## 尋常[じんじょう] ## 並[なみ] ## 平凡[へいぼん] ## 凡庸[ぼんよう] ### 使い分け例 **普通**・・・「普通のやり方。」「普通の成績。」「こう書くのが普通だ。」特別。「普通六時ごろに起きる。」 **通常**・・・「通常の手続きをとる。」「通常郵便物。」「通常九時に閉店する。」 **一般**・・・「一般の会社。」「世間一般に知られている。」「一般にこの辺は物価が高い。」「党利党略に走る点では革新も保守と一般だ。」 <445> **尋常**・・・「尋常な手段では解決しない。」「この痛みは尋常ではない。」 **並**・・・「並の人物。」「にぎりずしの並。」「十人並の顔。」 **平凡**・・・「平凡な絵。」「平凡に暮らす。」非凡。 **凡庸**・・・「凡庸な役人。」 ### どう使い分けるか **普通**は、特に他と異なったところもなく、ごく当たり前でありふれているさまを言い、副詞では、たいていの意になる。**通常**は、<普通>とほぼ同義で、やや改まった言い方。 **一般**は、特殊の事物・場合にだけでなく、広く認められることで、普通(の人々)と普遍の意があるが、「ーに」「一的」と言う場合は、すべて、と若干の例外を除いて概して、の両意に使う。なお、「AはBとーだ」では、同様の意。 **尋常**は、異常なところがなく、ごく普通なさまの意で、かたい文章語。 **並**は、よくも悪くもない中程度(のもの)、の意で、「世間―」「平年―」のように名詞の下に付け、それと同程度であることを表す。 **平凡**は、ありふれていて、特に優れたところや変わったところのないさまで、**凡庸**もほぼ同霊であるが、この語は人にのみ用い、かたい文章語。 〔注意〕<並>は名詞の下について、並んでいる、同じことが続く、の意にもなるが、その場合「家並み・軒並み・月並み」のように「み」を送る。 # 復活[ふっかつ] ## 復旧[ふっきゅう] ## 復元(復原)[ふくげん(ふくげん)] ## 復興[ふっこう] ## 再生[さいせい] ## 再現[さいげん] ## 再興[さいこう] ## 更生[こうせい] ## 新生[しんせい] ## リバイバル ### 使い分け例 **復活**・・・「行事の復活を図る。」「敗者復活戦。」「予算の復活折衝。」「キリストが復活する。」 **復旧**・・・「復旧工事。」「ダイヤが復旧する。」 **復元(復原)**・・・「古代遺跡を復元する。」「船の復原力。」 **復興**・・・「古典芸能を復興する。」「文芸復興。」 <446> **再生**・・・「人工呼吸で再生する。」「再生の道を歩む。」「とかげの尾の再生。」「記憶が再生する。」「再生紙。」「録音再生装置。」 **再現**・・・「犯行現場の再現。」「往年の名場面を再現する。」 **再興**・・・「主家を再興する。」 **更生**・・・「悪の道から更生する。」「会社更生法。」「更生タイヤ。」 **新生**・・・「新生児。」「新生を誓う。」 **リバイバル**・・・「名画のリバイバル。」「リバイバルブーム。」 ### どう使い分けるか **復活**は、いったんやめになっていたものを改めて生かすこと、また特にキリスト教では蘇生の意に使って「一祭」を祝う。 **復旧**は、壊れたものを(が)元通りにする(元通りになる)こと。 **復元(復原)**は、元の位置・状態に返る(返す)ことで、<一図>では<復元><復原>を区別なく使うが、傾いた船が元に戻る場合は<復原>を使う。一般には<復元>の方が多い。 **復興**は、一度衰えたものを(が)再び盛んにする(盛んになる)ことで、**再興**と同義だが、後者は国や家について使うことが多い。 **再生**は、①生き返ること、②心を入れ替えて新しい生活をすること、③生物が失った体の一部を再び作り出すこと、④(心理学で)過去の経験を意識の中に再現すること、⑤廃物を加工して再び使えるようにすること、⑥録音・録画したレコードやテープから元の音や映像を出すこと、を言う。 **再現**は、一度消え失せた事態・光景を(が)また出現させる(出現する)ことを言う。 **更生**は<再生>の②・⑤とほぼ同義で、ややかたい文章語。 **新生**は、生まれたばかりの意のほかに、<再生>の②と同義に用い、特に信仰を契機とする場合に使われる。 **リバイバル**の原義は再生・復活で、古い映画や歌を再び上演すること、また再流行すること。 | | ーのめどが立つ | ーを誓う | 衰退産業のー | 更生事業 | 更生ー品 | ーする力 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **復活** | O | | O | | | | | **復旧** | O | | | | | | | **復元** | | | | | | O | | **復興** | | | O | | | | | **再生** | O | | O | | | O | | **更生** | | O | | O | O | | 〔注意〕<更生>は、「甦生」(蘇生と同義)の書き換えとしても使われる。 <447> # 船出[ふなで] ## 出船[でふね] ## 出港[しゅっこう] ## 出帆[しゅっぱん] ## 出航[しゅっこう] ### 使い分け例 **船出**・・・「神戸港から船出する。」「新しい人生への船出。」 **出船**・・・「出船の時刻。」「出船を見送る。」入り船。 **出港**・・・「出港の合図。」「漁船が次々と出港する。」入港。 **出帆**・・・「出帆を延期する。」「夜明け前に出帆する。」 **出航**・・・「出航手続き。」「定刻に出航する。」「羽田空港からの出航。」 ### どう使い分けるか **船出**も**出船**も、船が港を出ることを言う古風な語。前者は新しく社会生活や結婚生活を始めることのたとえによく使われ、後者は出ていく船のことも言う。 **出港**は、船が港を出ること、**出帆**もほぼ同義で帆船に限らず使われるが、前者よりも情緒的に使われることが多い。 **出航**も船が航海に出ることであるが、航空機の出発の意もあり、現在ではこの意味の方が多い。 # 船乗り[ふなのり] ## 船員[せんいん] ## 海員[かいいん] ## 水夫[すいふ] ## マドロス ### 使い分け例 **船乗り**・・・「船乗りになった若者。」 **船員**・・・「朝日丸の船員。」 **海員**・・・「海員組合。」「海員名簿。」 **水夫**・・・「甲板掃除をする水夫。」 **マドロス**・・・「マドロスパイプ。」 ### どう使い分けるか **船乗り**も**船員**も、船に乗り組んで仕事をする者の総称で、後者の方がやや改まった言い方。 **海員**も<船員>とほぼ同義であるが、船長は含まない。 **水夫**は、雑役に従事する下級船員の旧称で、正式の呼称は水手。しかし、現在はどちらもあまり使われない。 **マドロス**は、船員・水夫の意で、かつては流行歌などにしばしば登場したが、この語もあまり使われなくなった。元が英語でなく、オランダ語(matroos)であるせいかもしれない。 <448> # 部分[ぶぶん] ## 一部[いちぶ] ## 一部分[いちぶぶん] ## 局部[きょくぶ] ### 使い分け例 **部分**・・・「悪い部分を取り除く。」「部分的にはよく出来ている。」「部分品。」全体。 **一部**・・・「一部の人々の意見。」「事件の一部を知る。」全部。 **一部分**・・・「資金の一部分を負担する。」 **局部**・・・「局部麻酔。」「局部的な問題。」局所。 ### どう使い分けるか **部分**は、全体を幾つかに分けたものの一つ一つの、の意で、例えば日食・月食の場合に皆既食以外はすべて「一食」と言うように、量には関係がない。 **一部**と**一部分**は、どちらも、全体の中のある部分の意で、基本的には同義であるが、量的には前者が全体の半分より少ない部分、後者が全体から大部分を除いた(わずかな)部分というニュアンスで使うことが多い。なお、前者は双書など一そろい、書物や雑誌の一冊の意にも使う。 **局部**は、全体の中の限られた一の部分、特に体の一部分を言い、陰部の意に使うこともある。 # 不満[ふまん] ## 不満足[ふまんぞく] ## 不平[ふへい] ## 不服[ふふく] ## 不本意[ふほんい] ## 心外[しんがい] ### 使い分け例 **不満**・・・「不満を抱く。」「不満が残る。」「不満な様子。」「欲求不満。」 **不満足**・・・「不満足な結果に終わる。」 **不平**・・・「不平を鳴らす。」「不平を並べる。」 <449> 「不平分子。」 **不服**・・・「不服を申し立てる。」「不服な面持ち。」「裁定に不服だ。」 **不本意**・・・「不本意な結婚。」「不本意ながら承知する。」 **心外**・・・「心外な批評を受けた。」「君の言い分は心外だ。」 ### どう使い分けるか **不満**も**不満足**も、物足りなく思うことで、ほぼ同義であるが、後者は前者のように「―を言う」「―がたまる」の形、すなわち名詞として使うことはまれで、たいてい形容動詞として使われる。 **不平**は、不満で気持ちがおさまらないこと、またその気持ちを表した言葉を言い、**不服**は、相手の言い分や態度が不満で服従できないこと、その気持ちを表す。 | | ―を言う | ―な面持ち | が残る | ―を鳴らす | ―の申し立て | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **不満** | O | O | O | | | | **不平** | O | | | O | | | **不服** | | O | | | O | **不本意**は自分の望み通りでないこと、本意に反するさま、**心外**は予期に反して裏切られたような気がするさまを言い、前者は自分自身の行動について、後者は相手の言動に対して残念だというときに使う。 # 麓[ふもと] ## 山麓[さんろく] ## 山元(山本)[やまもと] ## 山裾[やますそ] ## 裾野[すその] ### 使い分け例 **麓**・・・「ふもとの温泉に泊る。」 **山麓**・・・「山麓の村を訪れる。」 **山元(山本)**・・・「山元がかすんで見える。」 **山裾**・・・「山裾の桃の畑。」 **裾野**・・・「富士の裾野。」「運動の裾野を広げる。」 ### どう使い分けるか **麓**は山の下の方の部分を言い、形状には関係しない。**山麓**は<麓>と同義の漢語で文章語。**山元**は山のふもとの意であるが、別義に、山の持主、鉱山・炭坑の現場、の意もあり、後者で使う方が多い。後者は<山本>とは書かない。 <450> **山裾**は、山のふもとのなだらかに広がった所を言い、**裾野**は山のふもとが緩やかに広がった野原の意で、主に成層火山の低い部分を構成する緩斜面を言う。第二の例のように比喩的にも使う。 # ふるさと ## 古里(故里・故郷)[こり(こり・こきょう)] ## 故郷[こきょう] ## 郷里[きょうり] ## 郷土[きょうど] ## 生地[せいち] ### 使い分け例 **ふるさと**・・・「ふるさとは遠くにありて思うもの。」「心のふるさと。」 **故郷**・・・「故郷の山河。」「第二の故郷。」「精神上の故郷。」 **郷里**・・・「郷里へ帰る。」「郷里の父母。」 **郷土**・・・「郷土を愛する。」「郷土の誇り。」「郷土芸能。」 **生地**・・・「芭蕉の生地を訪れる。」 ### どう使い分けるか 前の四語は、その人が生まれ育った土地という意味。 **ふるさと**はやや雅語的な和語、**故郷**・**郷里**は漢語で、この二つの中では前者がより抽象的で範囲も広い感じがある。 これらはその土地を離れている場合に使うが、**郷土**は現在もその土地に住んでいて、「一の発展のために尽くしたい」のように使うことができる。また、この語は「―色」「一史」のように他の名詞の上に付けてその地方の意を表す。 **生地**は生まれた土地の意で、そこで育ったかどうかには関係なしに用いる。 # ぶるぶる ## がくがく ## がたがた ## わなわな ### 使い分け例 **ぶるぶる**・・・「怖くてぶるぶる震える。」「寒さで体がぶるぶる震える。」「指先がぶるぶる震える。」 **がくがく**・・・「足ががくがくと震える。」「ひざががくがくする。」「入れ歯ががくがくしている。」 **がたがた**・・・「寒くてがたがた震える。」 <451> 「怖くて足ががたがたする。」 **わなわな**・・・「恐ろしさでわなわな震える。」「怒りのあまりわなわなと身を震わす。」「唇をわなわなと震わせた。」 ### どう使い分けるか **ぶるぶる**は寒さや恐怖で、体が連続して小刻みに震えるさま。 **がくがく**は寒さや疲労、恐怖や興奮のため、足やひざが小刻みに震えるさま。また固定しているべきものが緩んで動くさま。 **がたがた**は、寒さや恐怖で体が小刻みに揺れ動くさまであるが、<ぶるぶる>ほど小刻みではない。 **わなわな**は、寒さや興奮・恐怖などで体がけいれん的に震えるさまを言うが、体の動きよりも不安や怒りという心理的衝撃の表現に重点がある。 <わなわな>以外の語は擬音語としても使う。<ぶるぶる>は「車が―と振動する」、<がくがく>は「机の脚がーと動く」、<がたがた>は「窓がーと鳴る」「バスがでこぼこ道を一走る」、また「今さら一言うな」、さらに転じて「彼のいないチームはーだ」のように使われる。 | | 寒くてー震える | 指がーと震える | 唇をー震わす | ひざがーする | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **ぶるぶる** | O | O | | | | **がくがく** | | | | O | | **がたがた** | O | | | | | **わなわな** | Δ | | O | | # 風呂場[ふろば] ## 浴室[よくしつ] ## 湯殿[ゆどの] ## 浴場[よくじょう] ## バスルーム ### 使い分け例 **風呂場**・・・「タイル張りの風呂場。」 **浴室**・・・「浴室へ案内する。」 **湯殿**・・・「古めかしく大きな湯殿。」 **浴場**・・・「旅館の大浴場。」「公衆浴場。」 **バスルーム**・・・「バスルームでシャワーを浴びる。」 ### どう使い分けるか 浴槽と洗い場のある部屋(脱衣室を含めることもある)を一般に**風呂場**と言い、文章語では**浴室**、古風な言い方では**湯殿**と言う。 **浴場**は旅館や寮などの大きな風呂場、または料金を取って風呂に入れる風呂屋を言う。 **バスルーム**は洋式の浴室の意に使う。英語 bathroom から。 <452> # 文[ぶん] ## 文章[ぶんしょう] ## 文句[もんく] ## 文辞[ぶんじ] ## センテンス ### 使い分け例 **文**・・・「文を練る。」「文は人なり。」「文の構造。」「文武両道。」 **文章**・・・「簡潔な文章。」「文章語。」 **文句**・・・「聖書の文句を引用する。」「歌の文句を忘れた。」「文句を言うな。」 **文辞**・・・「華麗な文辞を並べる。」 **センテンス**・・・「長いセンテンス。」 ### どう使い分けるか **文**は普通には<文章>と同義にも使うが、国語学的には文法上の言語単位の一つで、幾つかの語が結びつき何らかの思想を表す最小単位として完結した形を持つものを言う。「美しい花」は普通には文ではなく、「花は美しい。」は文である。また、<武>に対して学問・芸術の方面を指すこともある。 **文章**はあるまとまった思想や感情を表すために、文を連ねたもの。また、話し言葉に対しての書き言葉、韻文に対しての散文を言うこともある。 **文句**は文章中の語句の意であるが、「ーを付ける」のように言い分・苦情の意に使う俗語的な用法もある。 **文辞**は文章の言葉、または文章の意で、かたい文章語である。 **センテンス**は文法用語としての<文>の意味に使うのが普通。 # 文化[ぶんか] ## 文明[ぶんめい] ## 文物[ぶんぶつ] ## 文芸[ぶんげい] ## カルチャー ### 使い分け例 **文化**・・・「文化の創造。」「文化の普遍性。」「ギリシア文化。」「文化遺産。」「文化的生活。」 **文明**・・・「文明が進む。」「文明の利器。」「物質文明。」「文明開花。」野蛮。 <453> **文物**・・・「西欧の文物を吸収する。」 **文芸**・・・「文芸復興。」「文芸作品。」「大衆文芸。」 **カルチャー**・・・「カルチャーショック。」「カルチャーセンター。」 ### どう使い分けるか **文化**は人間が社会の成員として学習によって獲得し、創造していく物質的・精神的成果のすべてであるが、世の中が開け進んで生活が便利になることの意に使うこともある。 **文明**は<文化>の後の意とほぼ同義で、これに精神的な豊かさも含めるが、物質文化=文明と言う場合もある。 **文物**は学問・芸術・宗教など、文化の産み出したものの意で、やや古風な語。 **文芸**は学問と芸術、また言語によって表現される芸術(詩・小説など)の広狭二義があるが、現在では多く後者の意に使う。最初の例(ルネサンスの訳語)では広義。 **カルチャー**は文化・教養の意であるが、「ーブーム」と言われるように、文化や教養のもつ重々しく古めかしい感じを避けて使うことが多い。英語 culture から。 # 分解[ぶんかい] ## 分割[ぶんかつ] ## 分離[ぶんり] ## 分別[ぶんべつ] ## 分裂[ぶんれつ] ## 分化[ぶんか] ## 分散[ぶんさん] ## 分断[ぶんだん] ### 使い分け例 **分解**・・・「組織の分解。」「古い時計を分解する。」「空中分解。」「水の電気分解。」 **分割**・・・「三十回の分割払いで買う。」「土地を分割する。」「分割して統治する。」 **分離**・・・「政治と宗教の分離。」「中央分離帯。」「研究班を分離する。」「蒸留して混合物を分離する。」 **分別**・・・「ごみを分別して収集する。」「分別書法。」 **分裂**・・・「意見の対立から組合が分裂する。」「細胞分裂を繰り返す。」「精神分裂病。」 **分化**・・・「最近の学問の世界では専門の分化が著しい。」「生物体の組織が分化する。」 **分散**・・・「兵力を分散する。」「光が七色に分散する。」 <454> 「得点の分散を調べる。」 **分断**・・・「敵の分断をはかる。」「通信網が分断される。」「台風のため各地で道が分断された。」 ### どう使い分けるか **分解**は一体となっているものが(を)個々の要素や部分に分かれる(分ける)こと、化学では、化合物が二種以上の別の物質に分かれる化学変化を言う。 **分割**は一つのものを幾つかに分けることで、「する」がつく場合自動詞にはならない。 **分離**はいっしょになっていたものが(を)別々に分かれる(分け離す)こと、化学では、一定の方法で物質を分けて取り出すことを言う。 **分別**は種類によって区別・区分すること。「する」がつく場合他動詞としてのみ用いる。 **分裂**は一つのまとまりが幾つかの独立した部分に分かれること、また生物体の細胞や核が分かれて増殖すること、**分化**は社会機能や学問、また生物の発生の過程で、等質・単純なものが異質・複雑なものに分かれていくことを言う。この両語は「する」がつく場合常に自動詞として用いる。 **分散**は一つ所にあったものが(を)ばらばらに分かれる(分け散らす)ことで、物理では光や音などの波動について言う。統計では、測定値のばらつきの度合いを示す数値で、この場合、「する」がついて動詞になることはない。 **分断**は一つにまとまっている・つながっているものを断ち切って別れ別にすることを言う。 〔注意〕「分別(ふんべつ)」はくぶんべつ>とは別の語で、物事の道理・善悪・得失を常識的に判断すること、またその能力、の意。 # 紛争[ふんそう] ## 紛糾[ふんきゅう] ## 悶着[もんちゃく] ## 揉め事[もめごと] ## ごたごた ## いざこざ ## トラブル ### 使い分け例 **紛争**・・・「両国間に国境をめぐり紛争が起こる。」「六十年代の終わりに学園紛争が各地であった。」 <455> **紛糾**・・・「議論が紛糾する。」「事態は紛糾を極める。」「あの家は相続問題で紛糾している。」 **悶着**・・・「一悶着起こす。」「おやつをめぐってちょっと悶着している。」「悶着の原因を作るな。」 **もめ事**・・・「夫婦の間でもめ事が絶えない。」「人望のある山田さんがもめ事を収める。」 **ごたごた**・・・「彼はいつもごたごたを起こす。」「隣の家ではごたごたしているようだ。」 **いざこざ**・・・「隣人といざこざを起こす。」 **トラブル**・・・「お前が家庭内のトラブルの元だ。」「エンジントラブル。」 ### どう使い分けるか 意見や主張の対立によって、混乱状態にあるのを**紛争**、物事がまとまらずもめるのを**紛糾**と言う。したがって後者は「する」をつけ、動詞として使うことが多いが、前者はあまり「する」をつけない。 **悶着**は<紛争>よりもスケールの小さいケースに使う。それのもっとくだけた言い方が和語の**もめ事**である。 **ごたごた**は本来多くのものが雑然としている状態を表す擬態語で、名詞のほかに副詞、「する」をつけて動詞としても使う。 **いざこざ**は、親しかるべき家庭内や隣人とのいさかいを言う。 **トラブル**は、<紛争><いざこざ><もめ事>などの意のほか、機械などの故障の意でも使う。英語 troubleから。 # 平気[へいき] ## 平然[へいぜん] ## 平静[へいせい] ## 泰然[たいぜん] ## 悠然[ゆうぜん] ## 悠揚[ゆうよう] ### 使い分け例 **平気**・・・「平気を装う。」「こんな傷なんか平気だ。」「平気で遅刻する。」 **平然**・・・「平然とうそをつく。」「平然たる態度。」 **平静**・・・「心の平静を失う。」「平静な物腰。」 <456> 腰。」「市中は平静を取り戻した。」 **泰然**・・・「泰然として事に当たる。」「泰然自若。」「泰然たる山容。」 **悠然**・・・「悠然として南山を見る。」「悠然たる構え。」 **悠揚**・・・「悠揚迫らぬ態度の老先生であった。」「悠揚と応対する。」「悠揚たる姿。」 ### どう使い分けるか **平気**は落ち着いて穏やかな気持ちが原義で、物事に動じない、威力や困難に負けないさま、俗語的には大丈夫・構わないの意を表す。 **平然**は平気なさまの意の文章語であるが、この両語は「平気で・平然と罪を犯す」のように悪事をやるのに罪悪感を持たない、というマイナスの意味にも使う。 **平静**は〈平気〉の原義とほぼ同義であるが、何も事件がなく静かだの意にも使う。 **泰然**と**悠然**は落ち着いていてものに動じないさまで、前者はどっしりと、後者はゆったりとした感じであるが、〈平然〉のようにその場その時の様子でなく、身についた態度・性格を言う。 | | 態度 | ―うそを つく | ―として 装う | ―として死に就く | ―を失う | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **平気(な)** | ○ | ○(で) | ○ | | ○ | | **平然(たる)**| ○ | ○(と) | ○ | ○ | | | **平静(な)** | ○ | | | | ○ | | **泰然(たる)**| ○ | | ○ | ○ | | **悠揚**は〈悠然〉とほぼ同義で、こせこせしないという感じが一層強い。 # 閉鎖[へいさ](閉める) ## 閉鎖/封鎖[ふうさ]/閉塞[へいそく]/密閉[みっぺい] ### 使い分け例 **閉鎖**・・・「夜間及び休業日には正門を閉鎖する。」「閉鎖的な性格。」「工場閉鎖。」 **封鎖**・・・「国境を封鎖する。」「侵略国に対して制裁として経済封鎖をする。」「預金の封鎖。」 **閉塞**・・・「港口を閉塞する。」「閉塞した時代。」「腸閉塞。」 **密閉**・・・「容器の口を密閉する。」「密閉された部屋でCO中毒になる。」「密閉状態。」 <457> ### どう使い分けるか **閉鎖**は、窓や入り口を閉じること、比喩的には、内にこもって外部との交流をしないこと、また、組織・機関が活動をやめることを言う。 **封鎖**は、出入りできないように封じ込めること、また経済活動をとめることを言う。 **閉塞**は、閉じてふさぐこと、また閉じられて他とつながらなくなること。 **密閉**は、びんや部屋などをすきまなくぴったりと閉じることで、大規模な事柄には使わない。 いずれも文章語だが、特に<閉塞>はかたい言葉である。 # へこむ ## 凹む[へこむ] ## 凹(窪)む[くぼむ] ## 引っ込む[ひっこむ] ## 落ち込む[おちこむ] ### 使い分け例 **へこむ**・・・「地面がへこむ。」「へこんだやかん。」「反論されてへこむ。」「五千点へこんだ。」 **くぼむ**・・・「道のくぼんだ所に水がたまる。」「過労で目がくぼむ。」 **引っ込む**・・・「少し腹が引っ込む。」「やせて引っ込んだ目。」「通りから引っ込んだ家。」「田舎に引っ込む。」 **落ち込む**・・・「病気で目が落ち込む。」「道路の落ち込んだ所。」「クレバスに落ち込む。」「売り上げが落ち込む。」「失恋して落ち込む。」 ### どう使い-分けるか **へこむ**は、力が加わって表面の一部分が周りより低くなる意で、マイナスの状態になったことを強調する言い方。負けて屈服する、損をするの意に転用される。やや俗語的な言葉。 **くぼむ**は、その部分だけが周りより落ち込んで低くなる意。 **引っ込む**は、突き出ていた部分が元に戻る、奥まったりくぼんだりする、また人が目立たない所に退く、の意。 **落ち込む**は、その部分だけが周りより目立ってくぼむ意。深い穴や水の中に落ちるのが原義で、業績などが悪化する、気分が沈むの意に転用される。 <458> # ベテラン ## エキスパート ## オーソリティー ### 使い分け例 **ベテラン**・・・「経理のベテラン。」「ベテランぞろいのチーム。」 **エキスパート**・・・「幼児教育のエキスパート。」「橋梁工学のエキスパート。」 **オーソリティー**・・・「理論物理学のオーソリティー。」 ### どう使い分けるか **ベテラン**は、老練者・古強者の意で、職能・芸能・スポーツなどの分野の人に使う。 **エキスパート**は専門家の意で、技術・学問の分野で使う。原語の持つもう一つの意の熟練者という用法は少ない。 **オーソリティー**は、その方面の権威者、大家の意で、学界などで使われる。抽象的な「力」としての「権威」の意では使われない。 # ベランダ ## バルコニー ## テラス ### 使い分け例 **ベランダ**・・・「ベランダに出て涼む。」「ベランダに鉢を並べる。」 **バルコニー**・・・「バルコニーから手を振る。」「バルコニーでふとんを干す。」 **テラス**・・・「テラスにいすを持ち出す。」「テラスで客とお茶を飲む。」 ### どう使い分けるか **ベランダ**は、洋式の建物の、外側に張り出した広縁で、たいていひさしがある。 **バルコニー**は、洋式の建物の、室外に張り出した、手すりの付いた台で、屋根はない。 **テラス**は、洋式の建物の、床と同じ高さで庭などに張り出した台のような部分で、ひさしはない。 なお、和風の建物でも、庭に面した広い縁側や廊下をベランダと言うことがある。 <459> # 返却[へんきゃく] ## 返還[へんかん] ## 返済[へんさい] ## 返納[へんのう] ## 返上[へんじょう] ## 返戻[へんれい] ### 使い分け例 **返却**・・・「図書の返却期限。」「応募原稿は返却しません。」 **返還**・・・「優勝旗の返還。」「領土を返還する。」 **返済**・・・「借金の返済を迫られる。」 **返納**・・・「奨学金を返納する。」 **返上**・・・「位階を返上する。」「休日返上で働く。」「汚名を返上する。」 **返戻**・・・「委託商品の返戻。」 ### どう使い分けるか **返却**は、借りたり預ったりした物を持ち主に返すこと、**返還**は、一度手に入れた物や預かった物を元の所有者に返すことで、前者は主に私的な、後者は公的な行為に使う。 **返済**は、借りていた金品を期限通りに返すこと、**返納**は、借りていた物や金銭を元の所や所有者に返し納めることで、後者は公の場合が多い。 **返上**は、本来お返し申すという謙譲語であるが、現在ではもらったものを返すという意味で使うことが多い。 **返戻**は、<返却>とほぼ同義のかたい文章語。 | | 応募作品のー | 優勝旗のー | 借金のー | 奨学金のー | 領土のー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **返却** | O | | | | | | **返還** | | O | | | O | | **返済** | | | O | | | | **返納** | | | | O | | | **返上** | | O | | O | | # 変装[へんそう] ## 扮装[ふんそう] ## 仮装[かそう] ## 偽装[ぎそう] ## カムフラージュ(カモフラージュ) ### 使い分け例 **変装**・・・「犯人は警官に変装して逃走した。」 **扮装**・・・「忍者の扮装をする。」 **仮装**・・・「仮装大会。」「仮装行列。」「仮装パーティ。」 <460> **偽装**・・・「偽装した兵士。」同擬装。 **カムフラージュ**・・・「戦車をカムフラージュする。」 ### どう使い分けるか **変装**は、別人と思わせるためのものであるのに対して、**扮装**はその意味のほかに役者が演ずる役柄に合わせて装うことを言い、**仮装**は、仮装ぶりそのものを見せ物として行うものであり、人間以外の物の姿に似せることもある。 **偽装**・**カムフラージュ**は、装いに限らず、人目をごまかすための行動を言う。また人でなく建物・車両・兵器などを覆ったり色を変えたりして人目をごまかすことにも言う。<偽装><擬装>はかたい文章語で、現在ではフランス語 camouflageからきた<カムフラージュ>が、日常語と言ってもよい。 # 辺地[へんち] ## 僻地[へきち] ## 辺土[へんど] ## 辺境[へんきょう] ## 奥地[おくち] ## 秘境[ひきょう] ### 使い分け例 **辺地**・・・「辺地の教育。」「過疎に悩む辺地の村。」 **僻地**・・・「山間僻地。」「へき地手当。」 **辺土**・・・「辺土に骨を埋める。」 **辺境**・・・「辺境を守る。」 **奥地**・・・「アフリカの奥地。」 **秘境**・・・「アマゾンの秘境。」 ### どう使い分けるか **辺地**も**僻地**も、都会から遠く離れた交通不便な土地の意であるが、後者が常用漢字でないため、前者が多用されるようになり、後者はやや古風な感じになった。 **辺土**もほぼ同義であるが、よりかたい文章語。 **辺境**は都から遠く離れた国境地帯が原義で、<辺土>と同義にも使う。 **奥地**は海岸線や文化の開けた所から遠く離れた内陸の地域、**秘境**は人があまり訪れず、様子が世に知られていない所の意であるが、現在では前者は日本国内についてはあまり言わず、後者は「―の温泉」などと観光宣伝の決まり文句として手軽に使われている。 <461> # 便利[べんり] ## 重宝[ちょうほう] ## 調法[ちょうほう] ## 簡便[かんべん] ## 軽便[けいべん] ### 使い分け例 **便利**・・・「便利な電化製品。」「便利に出来ている机。」「駅に近くて便利だ。」 **重宝**・・・「重宝な道具。」「先日頂いたお品重宝しています。」 **調法**・・・「調法な電子レンジ。」「皆に調法がられる。」 **簡便**・・・「簡便な方法。」「簡便に食欲を満たしてくれる。」 **軽便**・・・「旅行用の軽便なカメラ。」「軽便かみそり。」 ### どう使い分けるか **便利**は何かをするのに都合がよいこと、うまく役に立つこと、**重宝**と**調法**は使って便利なこと、便利だと思って利用することで、よく似た意味だが、後二者には前者の「交通にーな場所」といった好都合なの意はなく、前者には後二者のような「―する」「―がる」といった用法はない。<重宝>は大切な宝物(ジュウホウとも言う)、<調法>は調伏の法が原義であるが、同音のため同じ意味・用法で使われている。ただし、一般には前者の方を多く見かける。 **簡便**は簡単で便利なさま、**軽便**は手軽で便利なさまで、ほぼ同義だが、「方法・扱い方がーだ」と言う場合に後者は使わない。 # 遍歴[へんれき] ## 遊歴[ゆうれき] ## 巡歴[じゅんれき] ## 周遊[しゅうゆう] ## 行脚[あんぎゃ] ### 使い分け例 **遍歴**・・・「諸国を遍歴する。」「人生遍歴。」「恋愛遍歴。」 **遊歴**・・・「諸国遊歴の旅。」「一年間アジア各地を遊歴した。」同歴遊。 **巡歴**・・・「古城巡歴の旅。」「国内の名所を巡歴する。」 **周遊**・・・「北海道を五泊六日で周遊する。」「周遊券。」 <462> **行脚**・・・「行脚の僧。」「遊説行脚の途につく。」「平和のため全国を行脚する。」 ### どう使い分けるか **遍歴**は広く各地を巡り歩くこと、転じてさまざまな経験をすること、**遊歴**はほぼ同義のより古風な語で、前者の持つ比喩的な意味は持たない。 **巡歴**はある目的を持って方々を巡り歩くことで、その目的を示して用いるのが普通である。 **周遊**はあちこちを旅行して回ることで、現在最も普通に使われる。 **行脚**は僧が各地を巡り歩いて修行すること、転じて何かの目的で各地を巡ることを言う。 # 傍観[ぼうかん] ## 静観[せいかん] ## 座視[ざし] ## 黙視[もくし] ### 使い分け例 **傍観**・・・「傍観者。」「拱手傍観。」「人の不幸を傍観する。」 **静観**・・・「静観の態度。」「事態を静観する。」 **座視**・・・「座視を決め込む。」「座視するに忍びない。」 **黙視**・・・「黙視の姿勢。」「黙視するに忍びない。」 ### どう使い分けるか **傍観**は当事者ではないという態度で眺めていること、**静観**は事の成り行きを静かに見守ることで、前者は何もしないでと非難の意味を込めて使われることが多いが、後者は小さな事故などでなく、社会的・政治的な事柄に多く使われ、慌てて動かないが事と次第によっては行動に移るというニュアンスを含む。 **座視**はそばで見ていながら事にかかわろうとしないこと、**黙視**は干渉しないで事の成り行きを黙って見ていることで、ほぼ同義であるが、前者の方がより消極的である。なお「黙止」は黙ってそのままにしておくこと。 〔注意〕<座視>は<坐視>の書き換え。 <463> # ほうっておく ## 放って置く[ほうっておく] ## ほっとく ## ほったらかす ## 捨て置く[すておく] ## 放置する[ほうちする] ## 放任する[ほうにんする] ### 使い分け例 **ほうっておく**・・・「ほうっておくと命が危ない。」「子供一人をほうっておくとは。」ほっておく。 **ほっとく**・・・「年寄りをほっとくのか。」「用事をほっといて遊びに行く。」 **ほったらかす**・・・「家事をほったらかして出歩く。」「宿題をほったらかす。」 **捨て置く**・・・「進言を捨て置く。」「つまらん事は捨て置け捨て置け。」 **放置する**・・・「駅前に自転車を放置するな。」「重病人を放置する。」 **放任する**・・・「自覚するまで放任する。」「放任主義。」 ### どう使い分けるか **ほうっておく**は手をつけずに成り行きに任せることで、口頭語では<ほっておく>と言う。それが更につづまると**ほっとく**となる。 **ほったらかす**はそれを強めた言い方で、どちらも俗語的な表現。 **捨て置く**は<ほうっておく>と同義で、やや文章語的。**放置する**も同義で漢語的な文章語。 **放任する**は、物ではなく人について用い、干渉しないでしたいようにさせておくこと。 # 外[ほか] ## 他[た] ## 別[べつ] ### 使い分け例 **外**・・・「ほかを探してみる。」「彼のほかは全員集まった。」「ほかに理由はない。」「思いのほか難しい。」「あやまるほかない。」 **他**・・・「他に類例を見ない事件。」「居を他に移す。」「顧みて他を言う。」 **別**・・・「別の部屋で寝る。」「見ると聞くとは別だ。」「明日は別に予定はない。」 <464> 「公私の別を明確にする。」 ### どう使い分けるか **外**は、場所・人・物・時間・事柄などについて、取り上げた以外のもの、程度や事柄がある基準のそとにあること、**他**は、特定の事物・場所以外の事物・場所、特定の人以外の人・自分以外の人の意で、両者の意味は共通する部分が多いが、後者はかたい文章語で、決まり文句によく使う。 **別**は、事物や状態が同じでないこと、特別なこと、またけじめ・区別の意を表す。 ここで一番厄介なのは<ほか>の表記の仕方で、「ーの人」「AI三名」のように実質名詞の場合は「外(他)」、「そのーに」「・・・よりーはない」のように形式名詞(または助詞)の語は「ほか」とするのが普通であるが、<外>は「そと」、<他>は「た」と読めるので、かな書きにすることが多い。 〔注意〕 常用漢字表では「他」に「ほか」の訓を認めていない。 # 朗らか[ほがらか] ## 晴れやか[はれやか] ## 明朗[めいろう] ## 快活[かいかつ] ## 陽気[ようき] ## 陽性[ようせい] ## 潑刺[はつらつ] ### 使い分け例 **朗らか**・・・「朗らかな五月晴れ。」「朗らかな人。」「朗らかに笑う。」 **晴れやか**・・・「晴れやかな青空。」「晴れやかな表情。」「晴れやかな舞台。」 **明朗**・・・「明朗な好青年。」「明朗な政治。」 **快活**・・・「快活な性格。」「快活に振る舞う。」 **陽気**・・・「いつも陽気な人。」「今日は私も何だか陽気になった。」陰気。 **陽性**・・・「陽性な人。」陰性。 **潑刺**・・・「潑刺たる若者たち。」「潑刺と行動する。」「潑剌とした精神。」 ### どう使い分けるか **朗らか**は、空が晴れ渡り雲一つないさま、また気持ちが明るくてわだかまりのないさま、**晴れやか**もほぼ同義で、空や心が明るくすっきりとした様子を言うが、そのほかに華やかだの意もある。 **明朗**は性格が朗らかなさまを言うが、人事についてうそやごまかしがないの意もある。 **快活**は、明るく元気で生き生きしているさま。 <465> が、人事についてうそやごまかしがないの意もある。 〔注意〕〈活発〉は〈活潑〉の書き換え。 **快活**は、明るく元気で生き生きしているさま。 | | ―に振る舞う | ―に笑う | ―な性格 | ―な青空 | ―な家庭 | ―な衣装 | ―な会計 | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **明朗** | ○ | ○ | ○ | | ○ | | ○ | | **朗らか** | ○ | ○ | ○ | | ○ | | | | **晴れやか**| | | | ○ | | ○ | | **陽気**は、性質や気持ちが明るく快活なさま。別に、天気の意。 **陽性**は、陽気な性質。〈陽気〉は一時的のこともあるが、〈陽性〉は持続的である。別に、医学用語で、検査の反応がはっきり現れることも言う。 **潑刺**は、動作や表情や気持ちなどに生気があふれて明るく元気であるさま。 # 褒める[ほめる] ## 褒(誉)める/称(讃)える[たたえる]/持て囃す[もてはやす]/賞[しょう]する/称賛(賞賛)[しょうさん]する/賛美[さんび]する/激賞[げきしょう]する/絶賛[ぜっさん]する ### 使い分け例 **褒める**・・・「子供の成績を褒める。」 **称える**・・・「故人の徳をたたえる。」「御名をたたえる。」同音で**褒め称える**。 **もてはやす**・・・「新人歌手をもてはやす。」「最近もてはやされている歌。」 ◎**褒めそやす**。 **賞する**・・・「成績優秀につきここにこれを賞する。」「秋の月を賞する。」 **称賛(賞賛)する**・・・「努力を称賛する。」 **賛美する**・・・「祖国を賛美する。」「神の徳を賛美する。」 **激賞する**・・・「漱石が激賞した作品。」 **絶賛する**・・・「演奏を絶賛する。」 ◎**褒めちぎる**。 ### どう使い分けるか **褒める**は、同等または目下の人の優れている点を認めて良く言う意、**称える**は、すばらしいという気持ちを言葉や態度で示す意で、対等以上の人に敬意を持って使う改まった言い方。 **もてはやす**は、多くの人が口々に <466> **褒める**、**たたえる**、**賞する**、**称賛する**、**賛美する** **褒める**、の意だが、多く「―される」という受け身形で、人気がある・世間で評判だ、の意を表す。 **賞する**は褒めるの意で賞状などに多く使われ、また「月(花)を―」の場合はめでる・楽しむの意で、かたい文章語。 **称賛する**は、〈称える〉と同義の漢語的な、**賛美する**もほぼ同じで、「彼の行為(作品)をー」の場合は共通に使えるが、「祖国(人生・神の徳)をー」のようなかたい抽象的な表現には後者を用いる。 | | その行いをー | 優秀な成績をー | 神の徳をー | 栄誉をー | 人生をー | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **褒める** | O | O | - | - | - | | **たたえる** | O | O | O | O | O | | **賞する** | O | O | - | O | - | | **称賛する** | O | O | O | O | O | | **賛美する** | - | - | O | O | O | **激賞する**は、非常に褒めたたえる、**絶賛する**は、褒めちぎるの意の漢語的なかたい文章語。 〔注意〕〈称賛・賞賛〉、〈賛美〉、〈絶賛〉の「賛」は「讚」の書き換え字。 # 掘る[ほる] ## 掘る[ほる]/穿つ[うがつ]/抉る[えぐる]/刳る[くる]/掘削[くっさく]する/剔抉[てっけつ]する ### 使い分け例 **掘る**・・・「スコップで穴を掘る。」「井戸を掘る。」「石炭を掘る。」 **穿つ**・・・「点滴石を穿つ。」「トンネルをうがつ。」「うがった事を言う、と感心する。」 **抉る**・・・「りんごのしんをえぐる。」「脇腹をえぐる。」「問題の核心をえぐる。」「肺腑をえぐる一言。」 **くりぬく**・・・「目玉をくりぬくぞ。」「山をくりぬいてトンネルを造る。」 **掘削する**・・・「トンネル工事で岩盤を掘削する。」 **剔抉する**・・・「政界の腐敗を剔抉する。」 ### どう使い分けるか **掘る**は、地面・岩盤・木に穴を開ける、地中に埋まっている物を取り出す、の意で言う。なお、「彫る」は木・石・金属に文字や絵を刻み込む、またいれずみをする、の意。 **穿つ**は、穴を開ける意で比喩的に物事の真相や人情の機微を的確 <467> に指摘する意にも使う。雅語的である。「靴・袴を―」の場合ははくの意であるが、古風で現在はほとんど使われない。 **えぐる**は、刃物などを突き刺して回し、その部分を取り出す、の意で、比喩的には、物事の核心を鋭く突く、心に強烈な衝撃を与える、の意を表す。 **くりぬく**は、えぐって穴を開けたり、中の物をえぐり出したりする意で、比喩的な用法はない。 **掘削する**は、地面や岩石を削ったり、掘って穴を開けたりする、の意。かたい文章語。 **剔抉する**は、えぐり出すが原義で、隠された悪事や不正を暴き出す意に使う。かたい文章語。 〔注意〕〈掘削〉は〈掘鑿〉の書き換え。 # 本[ほん] ## 本/書[しょ]/書物[しょもつ]/書籍[しょせき]/図書[としょ]/冊子[さっし]/ブック ### 使い分け例 **本**・・・「本にまとめる。」「漫画の本。」「彼は本の虫だ。」「本屋。」「古本。」「貸し本。」「文庫本。」 **書**・・・「書をひもとく。」「座右の書。」「法律書。」「書店。」「良寛の書を鑑賞する。」 **書物**・・・「書物を大切にする。」「古い書物に書いてある。」 **書籍**・・・「書籍を購入する。」「書籍の編集。」 **図書**・・・「図書の目録。」「参考図書。」 **冊子**・・・「小さな冊子を刊行する。」「薄っぺらな冊子。」 **ブック**・・・「ブックカバー。」「スタイルブック。」「ノートブック。」 ### どう使い分けるか **本**は、最も日常的な口頭語で、造語成分としても多用される。 **書**はかたい文章語で、軽い内容のものには使わない。筆跡・書法・手紙などの意もあるので、使い方に注意が必要。 **書物**は、やや古風な言い方。 **書籍**も同義であるが、雑誌と区別するために使うことがある。ただし、郵便局の「―小包」の場合は両方を含む。 <468> # 本拠[ほんきょ] ## 根拠地[こんきょち] ## 根城[ねじろ] ## 牙城[がじょう] ## 巣窟[そうくつ] ### 使い分け例 **本拠**・・・「東京のAビルに本拠を置く。」「この雑誌を本拠にした評論活動。」 **根拠地**・・・「未明に根拠地を出発する。」「運動の根拠地。」 **根城**・・・「駅裏のマンションを根城にして活動する。」 **牙城**・・・「敵の牙城に迫る。」「保守の牙城を揺るがす。」 **巣窟**・・・「暴力団の巣窟を襲う。」「悪の巣窟。」 ### どう使い分けるか **本拠**は、生活・活動の中心となる場所、**根拠地**は目的を遂行するのに必要な態勢を整える場所で、<根拠>自体に<本拠>とほぼ同じ意味があるが、理由・よりどころという抽象的な意味にも使うので、場所を言うときは下に「地」を付けて使うことが多い。 **根城**は、出城に対して大将のいる本城、転じて組織や個人の活動の根拠地、**牙城**は、城内で大将のいる本丸、比喩的に大きな団体・組織の中心部を言う。前者は和語で、かたい文章にはあまり使わず、逆に後者はやや大仰な文章語である。 **巣窟**は、盗賊や悪党の住みか・隠れ家などで、いい意味には使わない。 # 本国[ほんごく] ## 自国[じこく] ## 祖国[そこく] ## 母国[ぼこく] ## 故国[ここく] <469> ### 使い分け例 **本国**・・・「本国へ送還される。」「イギリス本国。」 **自国**・・・「自国の利益を図る。」他国。 **祖国**・・・「幼くして祖国を離れる。」「祖国の再建のために献身する。」「祖国愛。」 **母国**・・・「母国の土を踏む。」「母国語。」 **故国**・・・「故国を懐かしむ。」 ### どう使い分けるか **本国**は、その人の国籍のある国、また、植民地でない元からの国土。 **自国**は、自分の(国籍のある)国。 **祖国**は、祖先以来住んでいる自分の国の意で、現在そこにいる場合も国外にいる場合も同じように使う。<本国><自国>よりも感情を込めて使われる語である。また、諸民族の分かれ出た元の国の意もある。 **母国**と**故国**は自分の生まれ育った国の意で、主に外国にいる人が(特に後者は)使う。後者の方がより文章語的。なお、前者には分かれて独立する前の元の国、後者には故郷の意もある。 # 本当に[ほんとうに] ## 本に[ほんに] ## 実に[じつに] ## 真に[しんに] ## 誠に[まことに] ## 正に[まさに] ## 正しく[まさしく] ### 使い分け例 **本当に**・・・「今日は本当に寒い。」「本当にありがとう。」「彼は本当にサッカーが好きだ。」 **本に**・・・「ほんに困ったことです。」「ほんにこの子はしょうがない。」 **実に**・・・「実に愉快だ。」「実に嘆かわしい。」「彼の下積み生活は実に十年に及んだ。」 **真に**・・・「彼こそ真に勇敢な男と言うべきだ。」「真に国を思うなら金もうけばかり考えるな。」 **誠に**・・・「誠に残念です。」「誠に申し訳ございません。」「誠に感謝に堪えません。」 **正に**・・・「正にその通り。」「芳紀正に十八歳。」 <470> 「まさにそうあるべきだ。」「まさに出発せんとしている。」 **まさしく**・・・「あの声の主はまさしく彼だ。」「事態はまさしく危険な方面に突き進んでいる。」 ### どう使い分けるか **本当**には、心からそう思ったり感じているさま、また事実が甚だしいさまで、日常会話では<ほんとに>とも言う。**本**には<本当に>とほぼ同義で、かなり古風な言い方。 **実**には、本当に・実際にという実質的な意味は薄れ、すばらしい・あきれ果てたなどの気持ちを込めて下の語の意味を強める。 **真**には、本当に、また真剣にの意の文章語。 **誠**には、心からその通りだと思っているさまを表し、改まった表現に多く用いる。 **正**には、確かに・間違いなく、の意。漢文訓読調の、当然(・・・すべきだ)、ちょうど今(・・・しようとしている)の意の場合はかな書きにする。 **まさしく**は、疑いなく・確かにと判断するさまを表す、かたい文章語。 # ぼんやり ## ぼうっと ## ぼやっと ## ぽけっと ## ぽかんと ## きょとんと ## 茫然と[ぼうぜんと] ## 呆然と[ぼうぜんと] ### 使い分け例 **ぼんやり**・・・「ぼんやりとかすんで見える。」「ぼんやりした記憶。」「ぼんやりと外を眺めている。」 **ぼうっと**・・・「もやで遠くの山がぼうっとしている。」「頭がぼうっとする。」 **ぼやっと**・・・「疲れてぼやっとしか見えない。」「ぼやっと突っ立っている。」 **ぽけっと**・・・「釣糸を垂れ、ぽけっと水面を見ている。」 **ぽかんと**・・・「口をぼかんと開けて見とれる。」「ぽかんと穴が開く。」「ぽかんと宙を見ている。」 **きょとんと**・・・「何を聞いてもきょとんとしている。」 **茫然と**・・・「茫然と見守るのみ。」「前途は茫然として分からない。」 <471> **呆然と**・・・「呆然と立ち尽くす。」 ### どう使い分けるか **ぼんやり**は、物の形・記憶・頭の働きがぼけてはっきりしないさま、他に心を奪われたり気が抜けたりしているさまを言い、また気の利かない人・状態の意もある。 **ぼうっと**は、かすんで見えるさま、意識がぼんやりするさまを言い、〈ぼんやり〉よりも感覚的である。また、別に「―燃え上がる」のような用法もある。 **ぼやっと**は、〈ぼんやり〉とほぼ同義であるが、もっとくだけた言い方で、外から見える様子を言うことが多い。**ぼけっと**は何も考えず緊張を緩めているさまで、俗語的な表現。 **ぽかんと**は、気抜けしたように口を大きく開けるさま、他に心を奪われたり事情が分からなかったりしてぼんやりしているさまを言う。別に「―頭をたたく」などの用法もある。**きょとん**とは、どういうことなのか事情が分からず、ぽかんとしているさまを言う。 **茫然と**と**呆然と**は、気が抜けたりあきれたりした余り、ぼんやりしているさまを言うが、前者には漠然としてとりとめがないさまの意もある。 | | ―突っ立っている | 遠くに―見える | 父の急死に―する | ―した記憶 | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **ぼんやり** | ○(と) | ○(と) | ○ | ○ | | **ぼうっと** | ○(と) | ○ | ○ | ○ | | **ぼやっと** | ○(と) | ○ | ○ | ○ | | **茫然と** | | | ○ | | | **呆然と** | | | ○ | △ | # ま # 毎日[まいにち] ## 毎日/日々[ひび]/日日[にちにち] ### 使い分け例 **毎日**・・・「毎日、ジョギングを続ける。」「毎日の仕事が楽しい。」 **日々**・・・「彼女は寂しい日々を送っている。」「想い出のふるさとの日々。」 **日日**・・・「日々是好日。」 <472> **日ごと**・・・「病気は日ごとに回復した。」「日ごとの勤めを重荷に感じる。」 ### どう使い分けるか **毎日**は、連続した期間の一日一日が同じ状態で繰り返されるということを表す。漢語だが日常語である。 **日々**は、<毎日>とほぼ同義の和語だが、やや文章語的である。 **日日にち**は、<日々か>よりも更に一日一日の区切りが強く、けじめをつけて物事をしていく感じがある。漢語でかたい文章語。 **日ごと**は、一日一日とたつにつれての意が強く、事態が進んでいく様子を示す。 # 曲がる[まがる] ## 折れる[おれる] ## 曲折する[きょくせつする] ## 湾曲する[わんきょくする] ## 撓む[たわむ] ## 撓う[しなう] ## 屈折する[くっせつする] ### 使い分け例 **曲がる**・・・「地震で柱が曲がる。」「右に曲がると学校が見える。」「曲がった性根をたたき直す。」 **折れる**・・・「次の角で右に折れる。」「針が折れる。」「組合が会社側に折れて交渉が妥結する。」 **曲折する**・・・「曲折した山道が続く。」「曲折した人生を送ってきた。」「種々の曲折を経る。」 **湾曲する**・・・「脊椎が湾曲する。」「この入り江は湾曲している。」 **たわむ**・・・「釣りざおがたわむ。」「雪で枝がたわむ。」「決心がたわむ。」 **しなう**・・・「マットの上で体がしなう。」「むちがしなって空を切る。」 **屈折する**・・・「光は水の中で屈折する。」「屈折した心理。」「屈折率。」 ### どう使い分けるか **曲がる**は、まっすぐであった事物がそうでなくなる(弓形やくの字形になる)意。「正しい状態から外れる」意から、「ひねくれる」意にもなる。 **折れる**は、固くてもろい物が曲げる力を受け、二つに分かれてしまう意。「道を左にー」のような場合では、急に方向転換する意で、<曲がる>に置き換えることができる。また、譲歩する、妥協する、の意もある。 <473> **曲折する**は、折れ曲がるの意で、「曲折した・・・」の形で使われることが多く、また、「紆余ーを経る」のように、主に物事の複雑な経過を言う場合に使う。 **湾曲する**は、弓形に曲がる意を表す。がっちりした、比較的大きく広いものなどが曲がる場合に使う。 **たわむ**は、木や棒などが反り曲がる意で、**しなう**は、より弾力性のある物がしなやかに曲がる意。 **屈折する**は、急角度に曲がる意で、光や音などが別の媒体に入る時に境目で方向を変える意を表す。「屈折した心理」のように、ただのゆがみではなく、複雑で、なかなかすぐには本心がつかめない心理状態にも使われる。 〔注意〕<湾曲>は<彎曲>の書き換え。 # 撒く[まく] ## 蒔(播)く[まく] ## 撒き散らす[まきちらす] ## ばら撒く[ばらまく] ## 振り撒く[ふりまく] ### 使い分け例 **撒く**・・・「水をまく。」「尾行をまく。」 **蒔く**・・・「まかぬ種は生えぬ。」「庭に朝顔の種をまく。」 **撒き散らす**・・・「ばい菌をまき散らす。」「ビラをまき散らす。」 **ばら撒く**・・・「選挙で金をばらまく。」「豆をばらまく。」 **振り撒く**・・・「愛嬌を振りまく。」「清めの塩を振りまく。」 ### どう使い分けるか **撒く**は、物を散らし落とす意。「尾行をー」は、後をつけてくる者を途中でごまかし、はぐれさせる意。 **蒔く**は、芽を出させるために、種を地面に散らす意。 **撒き散らす**は、辺り一面に広く乱雑に散らす意で、相手や周りの人が迷惑するようなものをばらまく場合に使い、マイナスのニュアンスを持つ。 **ばら撒く**は、物をあちこち広い範囲に散らす意。物品・金銭など大勢の人に気前よく配る意に使われることが多い。 **振り撒く**は、盛んに辺りにまき散らす意。 <474> # 真面目[まじめ] ## 生真面目[きまじめ] ## 誠実[せいじつ] ## 実直[じっちょく] ## 律儀(律義)[りちぎ] ## 忠実[ちゅうじつ] ## 几帳面[きちょうめん] ### 使い分け例 **真面目**・・・「これはまじめな話だ。」「まじめに仕事をする。」 **生真面目**・・・「きまじめで冗談も通じない。」「きまじめすぎる青年。」 **誠実**・・・「誠実さを欠く。」「どんな質問にも誠実に答える。」「誠実な態度。」 **実直**・・・「謹厳実直。」「実直な職人。」「実直に働く。」 **律儀(律義)**・・・「律儀な性格。」「律儀に出席する。」「父は昔かたぎの律儀者だった。」 **忠実**・・・「言いつけを忠実に守る。」「忠実に写生する。」「忠実な部下。」 **几帳面**・・・「几帳面に日記をつける。」「几帳面な人。」 ### どう使い分けるか **真面目**は、本気であること、また真心を込めること。 **生真面目**は、非常にまじめであることの意であるが、融通が利かないというニュアンスを持って使うことが多い。 **誠実**は、言動がまじめで真心がこもっていること。 **実直**は、きまじめで正直なさまを言う。 **律儀**は、まじめ一方で、礼儀や義理を固く守ることであるが、馬鹿正直の意に使うこともある。 **忠実**は、言いつけ通りにまじめにやること、また「原文に―な翻訳」のように、元のものの内容・体裁を損なわずにその通りにすることの意もある。 **几帳面**は、行動がまじめで決まりによく合うさま、また物事を隅々まできちんとするさまを言う。 | | ―な人柄 | ―で融通が利かない | ―な話 | | :--- | :---: | :---: | :---: | | **真面目** | O | | O | | **生真面目** | O | O | | | **誠実** | O | | | | **実直** | O | | | | **律儀** | O | O | | | **忠実** | O | | | 〔注意〕「真面目(しんめんぼく・しんめんもく)」は<まじめ>とは別語で、そのものの本来の姿の意。 <475> # 増す[ます] ## 増える[ふえる] ## 殖える[ふえる] ## 増やす[ふやす] ## 殖やす[ふやす] ## 増加する[ぞうかする] ## 増殖する[ぞうしょくする] ### 使い分け例 **増す**・・・「川の水が増す。」「教養が増す。」「とりでの人数を増す。」「花を植えて町の美観を増す。」減る。 **増える**・・・「車の数が増える。」「体重が増える。」減る。 **殖える**・・・「財産が殖える。」「市の人口が殖える。」減る。 **増やす**・・・「収入を増やす。」「人数を増やす。」減らす。 **殖やす**・・・「財産を殖やす。」「貯金を殖やす。」減らす。 **増加する**・・・「人口が増加する。」「兵力を増加する。」「交通事故は増加の一途をたどる。」減少する。 **増殖する**・・・「財産を増殖する。」「資本が増殖する。」「ばい菌の増殖を抑える。」「細胞が増殖する。」 ### どう使い分けるか **増す**は、ものの数・量が多くなる(自動詞)、また、数・量を多くする(他動詞)意を表す。個別に数えられるものと、抽象的なものとのいずれにも用いられる。<増(殖)える><増(殖)やす>に比べて、やや文章語的である。 **増える**も、ものの数・量が多くなる意を表すが、個別に数えられるものだけに用いられる。財産などが多くなる場合には、**殖える**を用いる。両者共自動詞であり、その他動詞がそれぞれ**増やす**と**殖やす**である。 **増加する**は、<増す>とほぼ同義の漢語的な文章語。 **増殖する**は、財産や生物などの数・量が多くなる(自動詞)、また、数・量を多くする(他動詞)意を表す。かたい文章語。 <476> # 貧しい[まずしい] ## 貧乏[びんぼう] ## 貧困[ひんこん] ### 使い分け例 **貧しい**・・・「貧しい生活を送る。」「貧しい才能。」「語彙にが貧しい。」「心の貧しい人。」 **貧乏**・・・「貧乏な人。」「貧乏暮らしに嫌気が差す。」「年を取って貧乏する。」「器用貧乏。」 **貧困**・・・「貧困家庭に育つ。」「知識の貧困は覆いようがない。」 ### どう使い分けるか **貧しい**は、財産や金銭が非常に少ないため、経済的に苦しい生活状態にあることを言う。また、経済状態以外にも、内容が質的・量的にによくないの意を表す。 **貧乏**は、経済的な欠乏状態にあることで、主に個人について用いる。経済状態以外の意は持たない。<貧しい>がやや文章語的なのに対して、これは漢語だが日常語である。 **貧困**は、経済的に生活に困っている状態の意のほかに、精神・知識などの面で、内容的によくないさまを表す。 # まだ ## 未だ[いまだ] ## 未だに[いまだに] ### 使い分け例 **まだ**・・・「仕事がまだ終わらない。」「彼はまだやって来ない。」「まだほかにもある。」 **いまだ**・・・「真理いまだわからず。」「いまだかつてない暴挙。」既に。 **未だに**・・・「彼からいまだに何の連絡もない。」「いまだに援軍が到着しない。」「いまだに覚えている。」既に。 ### どう使い分けるか **まだ**は、その時の状態が変わらないで、ずっと続いている様子。また時間・距離・分量などが予想や予定基準を越えていない状態を示す。日常語である。 **いまだ**は、あとに否定の語を伴って、「今になってもまだ・・・(ない)」の意で使われる。「方法はまだある」などのように、ほかにもある意を示すときは、<いまだ><未だに>で言い換えることはできない。文章語的である。 **未だに**は、<いまだ>と言い換えられることが多いが、「ーかつてない」は<いまだ>だけの用法である。 <477> # 又は[または] ## 若しくは[もしくは] ## 或いは[あるいは] ## 乃至[ないし] ### 使い分け例 **又は**・・・「晴れまたは曇りの空模様。」「父または母がお伺いします。」 **若しくは**・・・「国立もしくは公立大学に進学する。」 **或いは**・・・「列車か、あるいは車で行くことになるでしょう。」「この時間だとあるいは留守かもしれない。」 **ないし**・・・「中国人ないしは日本人。」「百ないし二百。」 ### どう使い分けるか **又は**と**若しくは**は、どれか一つを選択するものとして、二つ以上の物事を並列する場合に使う。法令では、並列する語が三つ以上ある時は「A、B又はC」と、一番あとの語の前に<又は>を使い、その前は「、」でつなぐ。この場合、A・B・Cは三者同列である。また選択の段階に違いがある場合、大きな段階に<又は>を使い、小さい方に<若しくは>を使い、「A若しくはB、又はC」などとする。この場合は、とを並べているのである。<文は>は日常語だが、<若しくは>は文章語的である。 **或いは**は、前の二語と同義でも使うが、やや文章語的な感じがあり、日常の会話では<又は>がよく使われる。ほかに副詞で「もしかすると」の意でも使わる。 **ないし**は、<又は>と同義の文章語でもあるが、ほかに、幅のある数量などを、その幅の上下を示して言うときにも使う。 # 真っ暗[まっくら] ## 暗黒[あんこく] ## 闇[やみ] ## 暗がり[くらがり] <478> ### 使い分け例 **真っ暗**・・・「まっ暗な洞窟を探検する。」「お先まっ暗。」 **暗黒**・・・「宇宙は暗黒の世界だ。」「暗黒街のボス。」「暗黒面。」 **やみ**・・・「一寸先はやみだ。」「やみからやみへ。」「やみ市」「心のやみをさ迷う。」 **暗やみ**・・・「暗やみを手探りで歩く。」「暗やみに葬る。」「未来は暗やみ。」 **暗がり**・・・「暗がりは怖い。」「世間の暗がりで生きる。」 ### どう使い分けるか **真っ暗**は、暗くて何も見えない状態を言う。「お先―」のように、前途に何の夢も希望もなく、見通しがつかない状態にも使う。 **暗黒**は、真っ暗なこと。「一面」は、社会・文化などの暗い悲惨な面を言い、秩序、道徳が乱れたり、文化・文明が開けていないことにも使う。 **やみ**は、光が無くて、まっ暗なこと、またその所。比喩的な意味として、見通しの立たないこと、人目につかない所、正規の手続きによらない違法な取り引きをすること、思慮や分別が無い状態、などがある。 **暗やみ**は、<やみ>とほぼ同義だが、<やみ>の比喩的用法のうちの「一市」などには使わない。 **暗がり**は、暗い所を言うが、比喩的に人目につかない所を言う。 # 真っ先[まっさき] ## 先頭[せんとう] ## トップ ## 一番乗り[いちばんのり] ### 使い分け例 **真っ先**・・・「あの中の真っ先にいるのが父です。」「真っ先に駆けつける。」・「真っ先かけて作る。」 **先頭**・・・「列の先頭に立つ。」「賞金獲得競争では彼が先頭をきる。」後尾。 **トップ**・・・「トップでゴールした。」「トップニュース。」「トップ会談。」「トップマネージメント。」 **一番乗り**・・・「敵陣へ一番乗りした。」「一番乗りを果たす。」 <479> | | ―にいる男 | ―に立つ | ―はもう勝てない | ―を切って泳ぐ | クラスの― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **真っ先** | ○ | ○ | | ○ | | | **先頭** | ○ | ○ | ○ | | ○ | | **トップ** | ○ | ○ | ○ | | ○ | ### どう使い分けるか **真っ先**は、集団の中で、位置的に、または時間的に一番先であること。 **先頭**は、列を作って進む一番先。競争で一番先に立つことも言う。 **トップ**は、首位。先頭。首脳・幹部。英語topから。 **一番乗り**は、目標や目的の場所に〈真っ先〉に乗り込むこと。〈真っ先〉は目標に到達する途中の状態にも言うが、これは到達した結果についてだけ言う。 # 全く[まったく](全然・皆) ## 全く/すっかり/悉く[ことごとく]/そっくり/有りっ丈[ありったけ]/残らず[のこらず]/洗い浚い[あらいざらい] ### 使い分け例 **全く**・・・「彼と全く同じ考えだ。」「あの子は全く英語が話せない。」「全く情けなくて、涙が出るよ。」「全くもってばかばかしい。」 **すっかり**・・・「すっかり春らしくなった。」「すっかり売り切れた。」 **ことごとく**・・・「ごちそうをことごとく平らげた。」 **そっくり**・・・「利益をそっくりもらう。」「昔の建物がそっくり残っている。」 **ありったけ**・・・「小遣いをありったけはたいて車を買った。」「ありったけの力を出す。」⇔ありっきり。 **残らず**・・・「氷は残らず融けた。」「残らず白状する。」 **洗いざらい**・・・「秘密を洗いざらい打ち明ける。」「洗いざらい持ち去る。」 ### どう使い分けるか **全く**は、完全にその状態であるさま。下に否定表現を伴って、全然の意も示す。また、本当に、実際にの意もある。 **すっかり**は、一つ残らず、また、完全にの意で日常語。 **ことごとく**は、すべて・一つ残らずの意の文章語。 **そっくり**は、副詞として、そのま <480> # 祭り[まつり] ## 祭礼[さいれい] ## 祭典[さいてん] ## 祭祀[さいし] ### 使い分け例 **祭り**・・・「今宵の祭りはにぎやかだ。」「時代祭りの衣装は豪華なものだ。」「港祭り。」「さくら祭り。」 **祭礼**・・・「稲荷の祭礼に寄附をする。」 **祭典**・・・「オリンピックはスポーツの祭典だ。」「映画の祭典。」 **祭祀**・・・「伝統的祭祀。」「祭祀料。」 ### どう使い分けるか **祭り**は神や仏、祖先の霊に奉仕して、霊を慰めたり、鎮めたりして、感謝・祈願する儀式。また、それに伴う行事や催し。転じて、記念・祝賀あるいは宣伝などのために行うイベントも言う。 **祭礼**は、<祭り>に比べると狭い意味に使われ、神社などの祭りだけを言う。 **祭典**は、祭りの儀式が原義だがにぎやかな催し「フェスティバル」の意で、神社の祭りとは関係のない祭りを言うのが普通。 **祭祀**は、<祭り>の本来の意味のかたい漢語の文章語。イベントなどには言わない。 # まとめ ## 締め括り[しめくくり] ## 総括[そうかつ] ## 統一[とういつ] ## 統合[とうごう] ## 統括[とうかつ] ### 使い分け例 **まとめ**・・・「この単元のまとめを学習する。」「ボス猿は群れのまとめをする。」「話のまとめがへただ。」 **締め括り**・・・「一年の締めくくりは大きい。」 <481> をつけまとめること。〈まとめ〉よ りも、結着をつけるという意味合 いが強調されている。 **総括**は、個々のものを全体を見 通した上でひとまとめにすること で、会議での意見のまとめ、会社 の責任者としての役割など広い範 囲のものをまとめる場合に使われ ることが多い。 **統一**は、組織的・系統的にたくさ んの個々のものを一つにまとめる こと。 **統合**も〈統一〉とほぼ同義だが、 特に、二つのものを合わせて、一 つにする意味が強い。 **統括**は、まとめて一つにくくるこ と。また一つにまとめて取り締ま ること。同音の〈統轄〉は後の意 味と同じ。 # 迷う[まよう] ## 迷う[まよう] / 惑う[まどう] / 戸惑う[とまどう] / さ迷う[さまよう] / 混迷する[こんめいする] / 低迷する[ていめいする] ### 使い分け例 **迷う**…「道に迷う。」「路頭に迷う。」「心の迷う原因は女だ。」 **惑う**…「あちこちと逃げ惑う。」「四十にして惑わず。」 **戸惑う**…「初めてでとまどうことが多い。」 **さ迷う**…「生死の境をさ迷う。」「盛り場をさ迷う。」 **混迷する**…「混迷する世界情勢。」 <482> 「混迷の底にうごめく。」 **低迷する**…「景気が低迷する。」「成績は下位を低迷している。」 ### どう使い分けるか **迷う**は、事態の複雑さ、多様さに、はっきり見極めがつかず、心が混乱し、判断がつきかねている状態を表す。目標がつかめなかったり、悪い誘惑に対抗できなかったり、心や魂が成仏できないでいるときなどに使う。 **惑う**は何をしたらよいのか、考えがまとまらず、うろたえる、の意。かなり古風な文章語で、日常会話ではあまり使わないが、ことわざ・慣用句などや、複合語の中でよく使われる。 **戸惑う**は、もともと寝ぼけて方角を見失い、うろうろする場合に言ったもので、手段や方法がわからなくなる意。 **さ迷う**は、当てもなくあちらこちら歩き回る、さすらう、の意。 **混迷する**は、事柄が入りまじって見通しがつかない状態である、の意。道理や理性での判断が失われ、心が迷う、の意もある。 **低迷する**は、悪い状態から抜け出せず、活動が鈍るの意。元来は、雲が低くさ迷い漂う意味。 〔注意〕〈混迷〉は、後の意味では〈昏迷〉の書き換え。 # 周り[まわり] ## 周り[まわり] / 回り[まわり] / ぐるり / 周囲[しゅうい] / 周辺[しゅうへん] ### 使い分け例 **周り**…「湖の周りを散歩する。」「身の周り。」「周りの人々。」 **回り**…「少し遠回りになる。」「火の回りが早く、逃げ遅れた。」 **ぐるり**…「家のぐるりに木を植える。」 **周囲**…「城の周囲に堀を巡らす。」「周囲の目。」 **周辺**…「周辺に気を配り、警戒する。」「駅の周辺の土地。」 ### どう使い分けるか **周り**は、そのものの近い範囲を示し、そのものを取り囲んでいる辺りやものを言う。それに対し、**回り**は、回ることの意で、動作 <483> 中心に使われる。 **ぐるり**は、〈周り〉を表す俗語的な言い方で、限定の度合が大ざっぱとなる。 **周囲・周辺**は、〈周り〉より範囲が広く感じられる。また、〈周囲〉は「―の目」のように、周りにいる人や物の意にも使い、〈周辺〉はやや広い場所を示す。 | | 家の―を 取り巻く | ―の人々 | ―の目 | 駅―の 土地 | 都市の― 一部 | 五キロ― | 湖の― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **周り** | ○ | ○ | | | | ○ | ○ | | **ぐるり** | ○ | | | | | ○ | ○ | | **周囲** | ○ | ○ | ○ | | ○ | ○ | ○ | | **周辺** | | | | ○ | ○ | ○ | | # 真ん中[まんなか] ## 真ん中[まんなか] / 中央[ちゅうおう] / 中心[ちゅうしん] / 真っただ中[まっただなか] ### 使い分け例 **真ん中**…「顔の真ん中に鼻がある。」「街の真ん中に広場がある。」 **中央**…「中央分離帯に乗り上げる。」「広場の中央に噴水を作る。」「中央政府。」 **中心**…「円の中心。」「街の中心。」「中心人物。」「文化的中心。」 **真っただ中**…「青春のまっただ中。」「今は春のまっただ中だ。」「事件のまっただ中にいる。」「組織のまっただ中で活躍している。」 ### どう使い分けるか **真ん中**は、もののちょうど中央の位置を言う。一つのものの中央の意味にも、「兄弟のー」のように、幾つかあるうちの中央の意にも使う。 **中央**は、線状・面状の形をしたものの真ん中。また、組織の中で、決定や指示を下す重要な部署も言う。 **中心**は、真ん中の位置。社会や組織の一番大事な箇所、また重要な人物も言う。「文化のー」のように抽象的内容の事柄にも用いる。 **真っただ中**は、まさにその最中の意。〈真ん中〉が空間的な意味で使われることが多いのに対し、〈真っただ中〉は空間的にも、時間にも、また、組織や出来事などのように、時間とも空間とも言えない位置についても使われる。 <484> # 見落とす[みおとす] ## 見落とす[みおとす] / 見過ごす[みすごす] / 見逃す[みのがす] / 看過する[かんかする] ### 使い分け例 **見落とす**…「信号を見落として事故を招く。」「注意書きを見落とす。」 **見過ごす**…「話をしていたため名場面を見過ごしてしまう。」「老人が前にいたのを故意に見過ごす。」 **見逃す**…「ストライクを見逃す。」「お情けで見逃す場合もある。」 **看過する**…「この誤りは看過するわけにはいかない。」 ### どう使い分けるか **見落とす**は、見るべきことを、うっかり見ないでしまう、また、見ても気がつかないでしまう、の意である。 **見過ごす**は、意識して、見ることを避け、関係しない場合と、うっかり見落とす場合とがある。 **見逃す**も、見るつもりでいながら、あるいは、見ているのに、うっかりして気がつかないで過ごしてしまう意と、悪いことをしている者を、気がついていても知らないふりをて、注意もしないでおく意とがある。 | | 字の誤りを― | バントのサインを― | 同僚の過失を― | 絶好球を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **見落とす** | ○ | | | | | **見過ごす** | ○ | ○ | | | | **見逃す** | | | ○ | ○ | | **看過する** | | | ○ | | **看過する**は意識的に見逃す意味で、「許す」意味合いである。 # 見掛け[みかけ] (▽体面) ## 見掛け[みかけ] / 見てくれ[みてくれ] / 外見[がいけん] / 外観[がいかん] ### 使い分け例 **見掛け**…「人は見かけによらぬもの。」「見かけ倒し。」 **見てくれ**…「着物姿に靴では見てく <485> れが悪いよ。」「見てくれを繕う。」 **外見**…「外見ばかり飾っても仕方がない。」「外見だけはいい人。」同外面。 **外観**…「建物の外観は立派だが、設備に問題がある。」 ### どう使い分けるか **見掛け**は、ちょっと見た感じ、外からの印象、の意。「―倒し」は、外は立派だが実質は劣っていること。 **見てくれ**は、「見て呉れ」から来た語で、外に対して見せる様子・体裁の意。よく見せようという意識が働いて作られるものという香味合いがあり、その点が他の語と少し異なる。 **外見**は、外に見せる(外から見える)様子を言い、必ずしも作るものではない。 **外観**は、規模の大きなものを外から眺めた様子を言う。建物や街などに言うことが多い。 # 水け[みずけ] ## 水気[みずけ] / 水分[すいぶん] / 湿り気[しめりけ] / 湿気[しっけ] / 湿り[しめり] ### 使い分け例 **水け**…「水けをよく切ってから干す。」「水けの多いくだもの。」 **水分**…「水分を補給する。」「人の体も大部分水分だ。」「水分がほとんどなくなるまで乾燥する。」 **湿り気**…「湿り気を帯びた空気。」「土に湿り気を与える。」 **湿気**…「梅雨時の湿気に注意。」「地下室の空気は湿気が多い。」 **湿り**…「湿りを帯びた髪。」「いいおしめりだった。」 ### どう使い分けるか いずれも物に含まれている水についてのいろいろな言い方。 **水け**は、会話の中で使われることが多く、日常生活に関係の深い物、水菓子や洗濯物に含まれる水で、〈湿り気〉や〈湿気〉に比べ、多量の水があると感じられる場合に言う。 **水分**は、文章語で、固体・液体・気体を問わず、物に含まれる水を指している。 **湿り気**は、固体や気体で、人が <486> 感覚的に感じとれる程度に水分があるさま。干物などでも多少の〈水分〉はあるが、〈湿り気〉があるとは言わない。 **湿気**は、気体の場合に言い、「―のある土」とは普通言わない。 **湿り**は、湿ること・潤うことの意だが、「お―」の形で、適度に雨が降るさま、また、その雨をも言う。 # 淫ら[みだら] ## 淫ら[みだら] / 猥褻[わいせつ] / 卑猥[ひわい] / 猥雑[わいざつ] / 尾籠[びろう] ### 使い分け例 **淫ら**…「淫らな言葉。」 **猥褻**…「猥褻な行為。」「猥褻な文書。」「猥褻罪で逮捕される。」 **卑猥**…「聞くのも恥ずかしい卑猥な唄。」「卑猥な目つき。」 **猥雑**…「猥雑な都会。」「猥雑な見世物。」 **尾籠**…「尾籠な話で恐縮ですが。」 ### どう使い分けるか **淫ら**は、性に関して乱れて締まりがないさま。 **猥褻**は性についてみだらな感情を起こさせたり、みだらな行為をしたりするさまで、法律では「―罪」のようにこの語を用いる。 **卑猥**は、慎しみがなく、下品でみだらなさま、**猥雑**は節度なく入り乱れて下品なさまで、共に性に関して乱れて締まりがない、の意にも使う。 **尾籠**は、話題が大小便などに関係があって、口にすることがはばかられるさまで、他の四語と違って、セックスには直接関係がない。 # 見通し[みとおし] ## 見通し[みとおし] / 見込み[みこみ] / 予想[よそう] / 予測[よそく] / 予見[よけん] ### 使い分け例 **見通し**…「景気の見通しが立たない。」「見通しは明るい。」「神はすべてお見通しだ。」「見通しが利く。」 **見込み**…「今夜、犯人は逮捕される見込みだ。」「見込みのある男だ。」「勝てる見込み。」 **予想**…「競馬の予想。」「戦争はすぐ <487> 終わると予想したのだが。」 **予測**…「来年の日本経済を予測する。」「降雨量の予測。」 **予見**…「地震を予見する。」「株の動向は予見できない。」同予知。 ### どう使い分けるか **見通し**は、将来をあらかじめ推測すること。また、将来・未来に限らず、見えにくいものを見抜くこと。洞察。この意で使う時は、「お」をつけて使われることも多い。なお、本来の意味は遠くまで見渡すことである。 **見込み**は、将来の見通しの意のほかに、将来の可能性や望みの意もある。たぶんに心の底にあいまいさを残した言い方になる。 **予想**は、前もってどうなるか見当をつけることで、頭で想像して判断をつけておくような場合に使う。 **予測**も、前もって将来を推測すること。〈予想〉に比べ、客観的な確かな根拠を持つ場合に言う。 **予見**は、あらかじめ知る意で、〈予想〉〈予測〉よりもはっきり確実にわかる場合である。したがって、外れるかもしれないような場合に「―する」とはあまり言わない。 # 皆[みな] (▽全く) ## 皆[みな] / 総て[すべて]・凡て[すべて]・全て[すべて] / 全部[ぜんぶ] / 全体[ぜんたい] ### 使い分け例 **皆**…「そこにいる皆が賛成した。」「品物は皆売れた。」同みんな。 **すべて**…「すべての力を出す。」「もはや すべておしまいだ。」 **全部**…「全部が悪いのではない。」「ごちそうを全部食べた。」 **全体**…「島全体が緑一色だ。」「全体、私には重すぎる仕事だったのだ。」「一体全体何があったのだ。」 ### どう使い分けるか **皆**は、名詞として格助詞を伴うと、その場の人すべて、全員、を言う。副詞としては、残るところがなく完全に、すっかり、の意を表す。同義の〈みんな〉は、話し言葉でだけ使う。 **すべて**は、名詞では、たくさんあるものの全部、副詞では、何もかも、みな、の意となる。〈皆〉を名 <488> 詞として使う時は、ほとんど人間を指すが、〈すべて〉は人にも事物にも用いる。 **全部**は、たくさんある個々のもののすべて。副詞的にも使われ、すっかりの意。 **全体**は、〈全部〉に比べ、個々のものがただ集まっているのではなく、一つの統一体をなしている場合の、その丸々すべて、の意味合いがある。副詞では、そもそも、もともと、の意。強い疑問を表す時にも使う。「一体―」の形で使われることが多い。 | | ―の力を 結集する | 君の責任だ | 家が焼けた | ―で働く | 金が―だ | ―の像 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **皆** | | | | ○ | | | | **すべて** | ○ | ○ | | ○ | ○ | | | **全部** | | | ○ | ○ | ○ | | | **全体** | | | ○ | | | ○ | # 身なり[みなり] (▽形) ## 身なり[みなり] / 出で立ち[いでたち] / 形振り[なりふり] / 体裁[ていさい] / 風采[ふうさい] / スタイル ### 使い分け例 **身なり**…「身なりを整えて出掛ける。」「身なりに構わないで働く。」 **いでたち**…「物々しいいでたちの出陣。」「たいそうないでたちだな。」 **なりふり**…「なりふり構わず働く。」 **体裁**…「体裁を繕う。」「体裁が悪い。」「お体裁を言う。」 **風采**…「風采が上がらない男。」「異様な風采の人。」 **スタイル**…「彼はスタイルを気にする方だ。」「古いスタイルの音楽。」 ### どう使い分けるか **身なり**は、体の格好・体つきのこと。また、衣服を身につけた様子及びその服装のこと。 **いでたち**は、外出する時などの大げさな身支度を言う。物々しい様子から、昔は武士が戦場に出掛けるときの身支度を言うことが多かった。もともとは、旅に出掛けること、出立つの意だったが、この意では現在あまり使わない。 **なりふり**は、「構わない」「構わず」を伴って、身なりや姿、格好を意識せずに働く意味に用いる。 **体裁**は、世間体や見えから他人を意識して格好を繕うような場合 <489> に言う。身なりだけでなく、いろいろな事物について使い、「おーを言う」などもその一つで、口先だけの、相手の気に入るようなことを言う、の意である。 **風采**は、見かけの姿の意。容貌・容姿・服装などの全体を言う。 **スタイル**は、格好・体つき、様式、型、文章の文体、服装の型など幅広く用いられている。 # 醜い[みにくい] ## 醜い[みにくい] / 見苦しい[みぐるしい] / みっともない / 醜悪[しゅうあく] ### 使い分け例 **醜い**…「醜い顔の猿。」「醜い権力争い。」▽美しい。 **見苦しい**…「見苦しい姿をお目にかけで恐縮です。」「そんな言い訳をするのは見苦しいぞ。」▽見よい。 **みっともない**…「みっともない髪形。」「みっともないまねをするな。」 **醜悪**…「賄賂を受け取る政治家は醜悪だ。」 ### どう使い分けるか **醜い**は、見て不愉快な感じを与えるさまを言う。姿・容貌などが美しくないことだが、内面的・道徳的に汚く悪どい意にも使う。 **見苦しい**は、外に表れた姿・容貌・態度などの醜い場合に使い、心の内の醜悪さには言わない。 **みっともない**は、やはり外に表れた姿・容貌・態度などについて言うが、世間的に体裁が悪い・恥ずかしいときに使う。 **醜悪**は、〈醜い〉よりも一層汚らしく、ひどい状態を指して言い、嫌悪する様子がはっきりしている。 # 見抜く[みぬく] ## 見抜く[みぬく] / 見通す[みとおす] / 見破る[みやぶる] / 見透かす[みすかす] / 洞察する[どうさつする] ### 使い分け例 **見抜く**…「うそを見抜く。」「本質を見抜く。」 **見通す**…「神はすべて見通している。」「全体を見通す。」「先を見通す力。」 <490> 「遠くまで見通すことができる。」 **見破る**…「正体を見破られる。」 **見透かす**…「仏像の目は人間の心を見透かしているようだ。」 **洞察する**…「人の心を洞察する。」「洞察力。」 ### どう使い分けるか **見抜く**は、物事の表面に表れていない本当の性格や状態を、はっきりと見てとる意。 **見通す**は、〈見抜く〉にある、うそがうそとわかる、の意味の使い方はなく、広く深く目を届かす、の意。将来の動向がわかるという意味もあり、これは〈見抜く〉にはない。また、一目で遠くまで見渡せるという意味で使うこともある。「深夜映画を全部見通した。」のように、初めから終わりまで見続けるの意にも使われる。 **見破る**は〈見抜く〉に近いが、うそを暴く意味合いが〈見抜く〉以上に強い。 **見透かす**は、隠そうとしている相手の胸中や将来の成り行きなどをはっきり見てとる意。〈見抜く〉〈見破る〉に比べ、最初からよくわかっている意味合いが強い。 | | 腹の中を― | 景気の動向を― | うそを― | 霧の中を― | 変装を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **見抜く** | ○ | | ○ | | | | **見通す** | ○ | ○ | | ○ | | | **見破る** | | | ○ | | ○ | | **見透かす** | ○ | | | | | **洞察する**は、〈見抜く〉とほぼ同義の漢語的文章語だが、「うそを洞察する」とは言わない。また、その力がより強く大きい感じがある。 # 見放す[みはなす] ## 見放す[みはなす]・見離す[みはなす] / 見限る[みかぎる] / 見捨てる[みすてる] / 見切る[みきる] ### 使い分け例 **見放(見離)す**…「医者に見放される。」「親も見放すような息子だ。」 **見限る**…「会社を見限ってやめた。」 **見捨てる**…「彼女は彼を見捨てて、上京した。」 **見切る**…「冬物商品を見切る。」 ### どう使い分けるか **見放す**は、世話・看護・保護・指導などを見込みがないとしてやめる、 <491> の意。 **見限る**は、見込みがないものとして、相手にしたりかかわりをもったりすることをやめる、の意。人に対しても物事に対しても使う。 **見捨てる**は、援助を必要としている相手を無視して顧みないようにする、の意。〈見放す〉とほぼ同義だが、冷酷な感じが強い。 **見切る**は、惜しいけれどあきらめて見捨てる、の意。思い切ってのニュアンスがある。特に商品を安くして売る意がある。ほかに最後まで見届けるの意もある。 | | 師も―出来の悪さ | 医師の―た患者 | 古い商品 を― | 友人を―て逃げる | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **見放す** | ○ | ○ | | | | **見限る** | ○ | △ | ○ | ○ | | **見捨てる** | | ○ | | ○ | | **見切る** | | | ○ | | # 身振り[みぶり] ## 身振り[みぶり] / 仕種[しぐさ](仕草) / 所作[しょさ] / 科[しな] / ジェスチュア ### 使い分け例 **身振り**…「身振りを交えて話す。」「身振り手振り。」 **しぐさ**…「かわいい犬のしぐさ。」「こびるようなしぐさ。」「彼のいじわるなしぐさが気に入らない。」「しぐさの下手な役者。」 **所作**…「ちょっとした所作にも人柄が出る。」「所作事。」 **しな**…「しなよく銚子を取る。」「しなを作る。」 **ジェスチュア**…「ジェスチュアまじりの片言でしゃべる。」「あれは単なるジェスチュア。」 ### どう使い分けるか **身振り**は、意志や感情を表し伝えようとする体の動き。 **しぐさ**は、何かをするときの動作や表情。物事のやり方、俳優の演技の意に使うこともある。 **所作**は、その場に応じた身のこなし。 **しな**は、ちょっとしたしぐさや振る舞いを言うが、特に女性が嬌態を示すことに使う。 **ジェスチュア**は〈身振り〉と同義であるが、本気でそうするつもりのない見せかけの動作の意にも使う。 <492> # 見回り[みまわり] ## 見回り[みまわり] / 巡視[じゅんし] / 視察[しせつ] / パトロール ### 使い分け例 **見回り**…「夜間の見回りに出掛ける。」「牛舎の見回り。」 **巡視**…「管内の受持地区を巡視する。」「巡視船。」 **視察**…「議員の海外視察。」 **パトロール**…「パトロール中の警官に職務質問された。」 ### どう使い分けるか **見回り**は辺りを警戒したり、集団を監督したり、動植物を観察するために見て回ること。 **巡視**は、警戒・監督のために、あちこち見て回ることで、観察のための見回りには言わない。 **視察**は、その場所に実際に出掛けて行って、様子を調べたり、見たりすることで、公の立場で行うことに使う。 **パトロール**は、狭い意味に使われ、警官が犯罪や事故等を防止するため担当地域を見回ること。英語patrolから。 # 未来[みらい] ## 未来[みらい] / 将来[しょうらい] / 今後[こんご] / 行く末[ゆくすえ] / 前途[ぜんと] / 先先[さきざき] / 行く行く[ゆくゆく] ### 使い分け例 **未来**…「未来に大きな希望を抱く。」「未来形。」「未来永劫人類は生存できるか。」 **将来**…「将来の展望が開けてきた。」「将来医者になりたい。」「将来性を考えて選ぶ。」 **今後**…「今後の身の振り方を考える。」「今後は気をつけますのでお許しください。」 **行く末**…「行く末は夫婦にと誓い合った。」「行く末が思いやられる。」 **前途**…「前途は多難だ。」「前途有望。」 **先先**…「先々のことを考えると、心が重くなるよ。」少々人の生活はさせてやりたい。 <493> **行く行く**…「息子にゆくゆくは店を任せるつもりだ。」「対策はゆくゆく考えよう。」 ### どう使い分けるか **未来**は、仏教用語では、のちの世、来世の意だが、普通は(この世で)現在より先の時間を指す。将来を含むことも、将来より先を言うこともある。 **将来**は〈未来〉と似ているが、人間の寿命を基準にして言うことが多く、〈未来〉より時間的には短いニュアンスがある。また、副詞的にも使われる。 **今後**は、これから先。以後。現時点をはっきり意識しての言い方。これにも副詞的用法がある。 **行く末**も同義。特に子供の成長の行く手を言う。 **前途**は、〈将来〉とほぼ同義だが、副詞的用法はない。 | | ―を占う | ―を誤る | ―ある青年 | ―の動向 | 長く連れ添う | 洋々 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **未来** | ○ | ○ | | ○ | | ○ | | **将来** | ○ | ○ | ○ | ○ | | | | **今後** | | | | ○ | | | | **行く末** | | | | | ○ | | | **前途** | | ○ | ○ | | | ○ | **先先**も前途の意。副詞的用法もある。ただし、普通「行く方々の場所」の意で使われることが多く、「行く―で騒動を起こす」などと言う。 **行く行く**は副詞で、副詞的用法の場合の〈将来〉と同義。また歩きながら、行きながら、おいおい、の意もある。 # 無[む] ## 無[む] / 空[から] / 空[くう] / 空っぽ[からっぽ] / 虚(空)[うつろ] / 空白[くうはく] / 空虚[くうきょ] / 虚無[きょむ] ### 使い分け例 **無**…「彼の好意を無にするつもりか。」「無に等しい。」「無の思想。」「無資格。」「無関係。」▽有。 <494> **から**…「からの箱。」「胃をからにする。」「から元気。」「から回り。」 **空**…「むなしく空をつかむ。」「剣先は空を切った。」「色即是空。」 **空っぽ**…「中身が空っぽの箱。」「頭が空っぽ。」 **うつろ**…「中のうつろな洞窟。」「彼の目はうつろだった。」 **空白**…「空白のページ。」「気を失っていた間の記憶は空白である。」「空白の時間。」 **空虚**…「定年後、空虚な生活を送る。」「空虚な内容の演説。」 **虚無**…「虚無的な生き方。」「虚無主義。」 ### どう使い分けるか **無**は何もない、存在しないこと。またむだになること。造語成分として使うことも多いが、「―愛想」「―一文」「―一物」などの場合は「ぶ」と読まれる。 **から**は中身が何もないこと。また、表側だけで、実質が伴わない意にもなる。 **空**は、空間・そらの意味と〈から〉の意味とがあるが、〈から〉が具体的内容の事柄を言うのに対し、多く抽象的・観念的事柄について言う。仏教用語では世の中のすべての現象は仮の姿で実体は存在しないという意味を表す。 **空っぽ**は、〈から〉の意の俗語。 **うつろ**は、〈から〉の意のやや雅語的な言葉。〈から〉にはない、ぼんやりしているさまの意もある。 **空白**は何か書かれているはずのところが、何もなく白紙の状態になっていることで、全く内容の無いことにも使う。 **空虚**は、中身が空っぽの意だが、普通は、抽象的な物事の、内容や価値が無くむなしいことを言う。 **虚無**は〈空虚〉と同義だが、空っぽの意味で使われることは少ない。世の中の真理、価値観、人間存在そのもののむなしさ・無意味さを言う。ニヒリズムを「虚無主義」と訳す。 # 向かい合い[むかいあい] (▽向く) ## 向かい合い[むかいあい] / 差し向かい[さしむかい] / 対面[たいめん] / 対座[たいざ] ### 使い分け例 **向かい合い**…「向かい合いの座席。」 <495> 「二つの建物が向かい合いで立っている。」同向かい合わせ。 **差し向かい**…「彼と彼女は見合いで差し向かいの座に着いた。」 **対面**…「二十年ぶりに生みの親との対面を果たす。」「対面交通。」 **対座**…「無言の対座が続く。」「客と対座する。」 ### どう使い分けるか **向かい合い**は互いに正面を向いて対する位置関係。人にも物にも使う。一対一と限らない。 **差し向かい**は二人で向かい合うことで、特に親しい男女が相対する場合に使われる。 **対面**は、〈向かい合い〉の意もあるが、それよりも、二人の人間がじかに会い顔を合わせる、の意で使うことが多い。 **対座**は、向かい合ってすわること。 # 昔[むかし] ## 昔[むかし] / 往時[おうじ] / 往年[おうねん] / 過去[かこ] / 昔日[せきじつ] / 古[いにしえ] ### 使い分け例 **昔**…「彼に昔の面影は無い。」「十年ひと昔。」「江戸の昔。」 **往時**…「町並みに往時の繁栄ぶりがしのばれる。」 **往年**…「彼女の往年の歌声がよみがえる。」 **過去**…「過去を悔やむ。」「過去形。」▽未来。 **昔日**…「街道はすっかり寂れて、昔日の面影は無い。」 **いにしえ**…「古城に立っていにしえをしのぶ。」 ### どう使い分けるか **昔**は、時間的に現在から遠く隔たった以前、過去の一時期を言う。「ひとー前」では、十~十二年を単位として数えた過去。 **往時**は、過ぎ去った時を言うが、その当時は勢いがあって、繁栄していた香味合いがある。 **往年**は、過ぎ去った年、時代。ある人間の元気だった過去の時を指して言うことが多い。 **過去**は、〈往時〉などの限定された昔の時点をも指すが、過ぎ去った年月、時間を大きくとらえて言う。〈往年〉が人間的な側面を持つ <496> のに対し、〈過去〉は過ぎ去った時間を客観的にとらえている。 **昔日・いにしえ**は、文章語の漢語と和語。過去を回想し、懐しむ時などに使われる。詩や和歌に用いられることが多い。 # 向く[むく] (▽向かい合い) ## 向く[むく] / 向かう[むかう] / 立ち向かう[たちむかう] ### 使い分け例 **向く**…「正面を向く。」「鏡の方を向く。」「タレントに向いている。」「女の子に向く遊び。」 **向かう**…「鏡に向かう。」「素手で向かっていく。」「基地から頂上に向かう。」「春に向かう。」 **立ち向かう**…「富士に立ち向かう。」「強敵に立ち向かう。」「難局に立ち向かう。」 ### どう使い分けるか **向く**は、ある方向・方角に自分の正面(またはその面)がまっすぐに(直角に)なるようにする。また、うまく合う、適する意にも使う。 **向かう**は、相対する、赴く、の意。また「春にー」のように、時の移り変わりでその状態になろうとする意にもなる。 **立ち向かう**は、大きなものに意志的に相対する、の意。〈向かう〉にある、相対するの意を強めたもの。「立ち」は強調の接頭語。 # 無邪気[むじゃき] ## 無邪気[むじゃき] / 純真[じゅんしん] / 無心[むしん] / 純情[じゅんじょう] / 天衣無縫[てんいむほう] / あどけない ### 使い分け例 **無邪気**…「犬と無邪気に戯れる。」「無邪気な笑顔。」 **純真**…「人を疑うことを知らない純真な心。」 **無心**…「幼な子は無心に遊ぶ。」 **純情**…「純情な彼女はぽっと顔を赤らめた。」 **天衣無縫**…「彼の振る舞いは天衣無縫で憎めないところがある。」 <497> **あどけない**…「成人式を迎えるというのに、まだあどけない顔だ。」 ### どう使い分けるか **無邪気**は、何の悪意もなく、素直なこと。子どものあどけなく、かわいい状態をも言う。 **純真**は、心が素直で、私欲が無く、人をだましたり疑ったりしないさま。 **無心**は、心に迷いや欲がなく、世間の悪に染まっていない、素直なさま。もっとも「―する」となると、金品などを遠慮もなくねだる意味になる。 **純情**は、相手を信じ、純真で、世間ずれしていない心。小さい子どもについては言わない。 **天衣無縫**は、飾り気が無く、自然な行動をする性格。詩歌・文章などで技巧を凝らしたものでなく、飾り気がなく、自然で美しい、完全なものも言う。 **あどけない**は、することが幼なくて愛らしいさまを言う。初々しくて、子供っぽさを感じる場合に使う。〈純真〉〈無心〉〈純情〉は心のさまを言うがくあどけない〉は外見について言う。 # 結ぶ[むすぶ] ## 結ぶ[むすぶ] / 結わえる[ゆわえる] / 繋ぐ[つなぐ] / 縛る[しばる] / 括る[くくる] ### 使い分け例 **結ぶ**…「靴のひもを結ぶ。」「友情で結ばれる。」「条約を結ぶ国々。」「努力が実を結ぶ。」「感謝の気持ちでスピーチを結ぶ。」 **結わえる**…「船を杭に結わえる。」「ひもを結わえる。」 **つなぐ**…「犬をつなぐ。」「手をつなぐ。」「顔をつなぐ。」「望みをつなぐ。」 **縛る**…「荷物をロープで縛る。」「生徒を規則で縛る。」 **くくる**…「罪人をくくる。」「首をくくる。」「腹をくくる。」「括弧でくくる。」 ### どう使い分けるか **結ぶ**は、つなぎ合わせる・関係づけるの意。ほかにまとまった形にする(なる)の意もある。 **結わえる**は、ひもや縄などで結ぶ意。心や抽象的なものには言わ <498> ない。 **つなぐ**は、物が離れないよう結び止める、離れているものを接続する、長く続くようにする、などの意がある。 **縛る**は、巻きつけて結ぶ意と、自由に振る舞えないよう制限する意とがある。 **くくる**は、物を結んだり、束ねたりする意と、物事をまとめ、締めくくる意とがある。 # むちゃ ## むちゃ / むちゃくちゃ / めちゃくちゃ / めちゃめちゃ / 無法[むほう] / 不法[ふほう] ### 使い分け例 **むちゃ**…「むちゃを言う。」「一度にたくさん食べるなんてむちゃだ。」「むちゃに高い値段。」 **むちゃくちゃ**…「あいつの言うことはむちゃくちゃだ。」「むちゃくちゃな運転。」「むちゃくちゃに暑い。」 **めちゃくちゃ**…「めちゃくちゃな論理。」「衝突で車はめちゃくちゃだ。」 **めちゃめちゃ**…「めちゃめちゃに壊れる。」 **無法**…「無法がまかり通る。」「無法な振る舞い。」「無法地帯。」 **不法**…「相手から不法な言いがかりをつけられた。」 ### どう使い分けるか **むちゃ**は、筋道が立たなくて乱暴なこと、また程度が普通ではないこと。 **むちゃくちゃ**は、前者を強調した言い方。 **めちゃくちゃ**は、〈むちゃくちゃ〉の意味のほか、形あるものがどうにもならないくらいに壊れるさま。 **めちゃめちゃ**は、〈めちゃくちゃ〉の意味のうち、どうしようもなく壊れる意の方で使われ、筋道の通らない意ではあまり使われない。 **無法**は、法律・規則・道理などがなく、またそれらに外れ乱暴であること。 **不法**は、法律などに外れること、道理や常識から逸脱してひどいことの意。〈無法〉の方が程度がひどい感じがある。 <499> # 目[め] ## 目[め] / 眼[まなこ] / 目玉[めだま] / 目の玉[めのたま] / 瞳[ひとみ] ### 使い分け例 **目**…「目を見開く。」「目から鼻へ抜ける。」「びっくりして目を回す。」「辺りに目を配る。」「目をつける。」「読者の目。」「疑いの目。」「目が利く。」「目が高い。」「つらい目に遭った。」「台風の目に入る。」「網の目。」「のこぎりの目。」「碁盤の目。」「秤の目。」「目減り。」「見た目がいい。」 **眼**…「しっかり眼を開いて見よ。」「寝ぼけ眼。」「血眼。」「どんぐり眼。」 **目玉**…「目玉をむいて怒る。」「これは目玉商品だ。」「目玉が飛び出るほどの値段だ。」「お目玉を食う。」 **目の玉**…「私の目の玉の黒いうちは勝手なまねはさせないよ。」 **瞳**…「美しい瞳の少女。」「瞳を凝らして遠くを見る。」 ### どう使い分けるか **目**は、元来の、物を見る器官としての意味以外にも極めてたくさんの意味がある。接尾語としての「目」を除いても、①物を注意深く見ること。(「目を配る」など)②その立場で見ること。(「読者の目」など)③物を評価する力。(「目が利く」など)④物事に出遭うこと。経験。(「つらい目」など)⑤目に似たもの(「台風の目」など)。⑥物と物とのすき間。間の区切り。線状の区切り。(「網の目」など)⑦目盛り。(「秤の目」など)⑧ものの外見。様子(「見た目がいい」など)とあげられ、それぞれに比喩的な用法や、慣用句が数えきれないほどある。 **眼**は、物を見る器官としての〈目〉の意味に限られ、比喩的用法や慣用句も〈目〉ほど多くない。やや古風で雅語的である。 **目玉・目の玉**は、〈眼〉の意のややくだけた日常語だが、〈目玉〉には購買意欲をそそるような安い商品の意、また、しかられること <500> の意もある。特殊な比喩的用法である。 **瞳**は、瞳孔の意もあるが、普通には目の意で使われる。「美しい」というニュアンスが感じられ、特に女性、子どもの目を言うことが多い。 # 名誉[めいよ] ## 名誉[めいよ] / 栄誉[えいよ] / 誉れ[ほまれ] / 栄え[はえ] / 栄[えい] / 栄光[えいこう] / 光栄[こうえい] ### 使い分け例 **名誉**…「一門の名誉。」「名誉を傷つける。」「大変名誉なことだ。」「名誉教授。」▽不名誉。 **栄誉**…「入賞の栄誉に輝く。」「栄誉に浴する。」「栄誉礼。」 **誉れ**…「郷土の誉れ。」「秀才の誉れが高い。」 **栄え**…「栄えある受賞。」「見ばえ。」「出来ばえ。」 **栄**…「優勝の栄に輝く。」「拝顔の栄を賜る。」「受賞の栄に浴する。」 **栄光**…「勝利の栄光。」「かつての栄光を取り戻す。」 **光栄**…「身に余る光栄。」「授賞を光栄に思う。」 ### どう使い分けるか **名誉**は、世間から与えられる輝かしい評判とそれに伴う栄光、またそれに対する自覚を意味するが、「―会長」などは地位を表す名詞にかぶせて、功績を記念して与える意である。なお「―職」は給料を受けずに公職に従事することを言う。 **栄誉**は優れていると褒めたたえられることで、〈名誉〉とほぼ同義であるが、「ーなこと」などの使い方が少ない点は〈名誉〉と異なる。 **誉れ**は、〈栄誉〉と同義の古風な和語で、どちらも文章語である。 **栄え**も、〈誉れ〉と同義だが、例をはじめとする幾つかの決まった結びつきでしか使われない。 **栄**は〈栄誉〉よりもかたい文章語で、目上の人に対するへりくだった言い方の中で使うことが多い。 **栄光**は輝かしい誉れの意で、〈栄誉〉よりも強い表現。瑞光(さいきのよい光)の意に用いることもあ <501> **光栄**は人に認められ、うれしく、名誉に思うさまを言い、〈栄光〉と異なり「ーなこと」と言える。 | | 一族の― | ―な受賞 | 優勝の―に輝く | ―の至り | 名作の― | ―職 | ―が高い | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **名誉** | ○ | ○ | | | | ○ | | | **栄誉** | ○ | ○ | ○ | ○ | | | | | **誉れ** | ○ | | | | ○ | | ○ | | **栄光** | | | ○ | | ○ | | | | **光栄** | | ○ | | ○ | | | | # 迷惑[めいわく] ## 迷惑[めいわく] / 当惑[とうわく] / 困惑[こんわく] ### 使い分け例 **迷惑**…「人の迷惑も考えず騒ぐ。」「人に迷惑をかける。」「野良猫には迷惑している。」 **当惑**…「当惑の色を隠せない。」「突然話しかけられ当惑する。」 **困惑**…「選択を迫られ困惑する。」「非常に困惑を感じる。」同困却。 ### どう使い分けるか **迷惑**は、他人のことで困ったり、いやな思いをしたりすること。 **当惑**は、どうしたらよいかわからず迷いとまどうこと。事情がよくわからない時に使う。 **困惑**は、〈当惑〉とほぼ同義だが、困ったという気持ちが〈当惑〉より強い感じがある。〈迷惑〉は他者の行為が原因となるが、〈当惑〉〈困惑〉の原因はいろいろな事態・状況である。だから、〈迷惑〉はかける者と受ける者の関係が常に意識され、かける者への非難の気持ちがあるが、〈当惑〉〈困惑〉ではそうとは言えない。 # 珍しい[めずらしい] ## 珍しい[めずらしい] / 稀(希)[まれ] / 稀有[けう] / 稀覯[きこう] / めったにない ### 使い分け例 **珍しい**…「世にも珍しい出来事だ。」「珍しい品物が手に入った。」 **まれ**…「大地震はまれにしか起こらない。」 **稀有**…「連続殺人事件は稀有な犯罪と言えよう。」 **稀覯**…「稀覯の古書。」「稀覯本。」 **めったにない**…「あんな状況で生き残るなんて、めったにないことだ。」 <502> ### どう使い分けるか **珍しい**は、目新しいの意。初めて出会うものに対し、強い好奇心を持ったり、しばらく会わなかった人や見なかった事物に強い関心を寄せたりする時に使う。注意をひかれ、生き生きした感情を伴う。 **まれ・稀有**は、共に、ごく少なく珍しいさまを言うが、後者の方が、漢語のせいかその度合いが強い感じがある。後者は文章語。 **稀覯**は、まれにしか見ることができないことで、古い書物について言うことが多い。かたい文章語。 **めったにない**の「めった」は「むやみ」の意だが、この連語では、〈まれだ〉の意になる。日常語。 # 芽生える[めばえる] ## 芽生える[めばえる] / 芽ぐむ[めぐむ] / 芽吹く[めぶく] / 萌える[もえる] / 発芽する[はつがする] ### 使い分け例 **芽生える**…「つくしが芽ばえる春。」「二人の間に愛情が芽ばえた。」 **芽ぐむ**…「柳が芽ぐむ北上の岸辺。」「木々がようやく芽ぐんできた。」 **芽吹く**…「からまつの芽吹く時。」「雑木林は一斉に芽吹いた。」 **萌える**…「若草萌える丘の上。」 **発芽する**…「朝顔が発芽した。」「発芽状態。」「発芽率。」 ### どう使い分けるか **芽生える**は、草木の種や枝から芽が出始める意。主に草が生え始める場合に言う。比喩的に物事が起こり始めることにも使う。 **芽ぐむ**も同義だが、〈芽生える〉に比べ、木の枝に芽が出始め、膨らむ、の意に使うことが多いと言える。また〈芽生える〉のような比喩的用法はあまり見られない。 **芽吹く**は、樹木の枝に(一面に)芽が出始める意で、草には使わない。一斉に勢いよく、といった感じがある。 **萌える**は芽吹く意の雅語的な言葉で、詩歌に用いることが多い。 **発芽する**は植物の種などが芽を出す意で、木の枝から芽が出る意 <503> には使わない。生物学や農業の用語として使われることが多い。 # 面会[めんかい](会う) ## 面会/対面[たいめん]/面接[めんせつ]/会見[かいけん]/接見[せっけん]/引見[いんけん] ### 使い分け例 **面会**・・・「面会謝絶。」「面会を求める。」「社長に面会する。」 **対面**・・・「生き別れの親子の対面。」「父の遺品と対面する。」「対面交通。」 **面接**・・・「面接試験。」「受験生に面接する。」 **会見**・・・「記者会見。」「会見を申し込む。」「首相と会見する。」 **接見**・・・「接見の儀。」「大統領が大使に接見する。」「弁護士の接見。」 **引見**・・・「使者を引見する。」 ### どう使い分けるか **面会**は訪ねて行って、または訪ねて来た人に会うこと。一方が限られた時間しか会えない場合に使うことが多い。 **対面**は、顔を向き合わせて会うことで、初めてまたは久しぶりの場合が多く、比喩的に動物や品物にも使う。「―交通」のように互いに向き合うことの意もある。 **面接**は、直接その人に会うことで、普通、人柄や能力を調べる入学・入社試験の一形式を言う。 **会見**は、前もって時間・場所を決めて人に会うことで、代表・使節などとの公的な場合の面会に多く使われる。 | | 所定の場所で―する | 申し込み | 獄中の友と―する | ―試験 | 記者― | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **面会** | ○ | ○ | ○ | | | | **対面** | | | | | | | **面接** | | ○ | | ○ | | | **会見** | | ○ | | | ○ | **接見**は、身分の高い人が公式に客に会うことを言うが、法律では拘束された被疑者や被告が弁護士などに会うことを指す。 **引見**は、身分・地位の高い人が下の者を呼び寄せて会うこと。〈接見〉〈引見〉はかたい文章語。 # 免職[めんしょく] ## 免職/解雇[かいこ]/解任[かいにん]/罷免[ひめん]/解職[かいしょく]/首切り[くびきり] <504> ### 使い分け例 **免職**…「不正があったので免職する。」「懲戒免職。」 **解雇**…「解雇の通告が出される。」「従業員を解雇する。」 **解任**…「取締役が解任される。」 **罷免**…「外務大臣が罷免される。」 **解職**…「市長がリコールにより解職される。」「解職請求。」 **首切り**…「合理化という名の首切りが行われる。」「首切り反対。」 **首**…「会社をくびになる。」「社員をくびにする。」 ### どう使い分けるか **免職**は、公務員の官職をやめさせること。法令違反を犯したときなどに行われるが、本人の意思でやめる場合も含まれている。 **解雇**は、本人の意思を無視して雇用者をやめさせる場合を言う。 **解任**は、ある任務・職務をやめさせることで、高い地位にある人をやめさせるときに用いる。各国の 大使・公使、会社の取締役などの重役、法人の役員などを、選任した者がやめさせる場合に言う。 **罷免**は、任免権をもつ者が、一方的にある人の任務・職務などをやめさせることだが、一般職の公務員については言わない。 **解職**は、使用範囲が狭く、主としてリコールによる場合に使う。「―請求」とはリコールのこと(議会解散のリコールは「解散請求」)。 **首切り**は、〈解雇〉の意の俗語で、くびはそれを略した言葉だが、「―にする」「―になる」は〈くび〉、「―を行う」は〈首切り〉を使う。 # も ## もう / 既(已)に[すでに] / 早[はや] / 最早[もはや] ### 使い分け例 **もう**…「もう帰る時間になってしまった。」「今となってはもうだめだ。」「も <505> う春になるだろう。」「もう少しください。」 **既に**…「その品は既に売り切れた。」「既に桜は咲いている。」 **はや**…「教えの庭にも、はやいくとせ。」「眠れぬうちにはや明け方。」 **もはや**…「もはやこれまで。覚悟はよいか。」「もはや我慢ならぬ。」「もはや望めないだろう。」 ### どう使い分けるか **もう**は、①時や季節、事柄などが早くも来ているさま、また過ぎ去ったさま、②時節や事柄に近づいているさま、③その上に、更に、などの意味がある。 **既に**は、事柄が終わったさま、来ているさま、今までに、もう少しで、などの意で、やや文章語的な言葉。 **はや**は、①すでに、②はやくも、の意の、雅語でやや古い感じがする言葉。 **もはや**は、①今となっては、②すでに、の意。やや雅語的である。 | | 一日暮れた | その話は聞いた | 我慢ならぬ | もはや死ぬるより所だった | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **もう** | ○ | ○ | | | | **既に** | ○ | ○ | | | | **もはや** | | | ○ | ○ | # 目的[もくてき] ## 目的[もくてき] / 目標[もくひょう] / 目当て[めあて] ### 使い分け例 **目的**…「使用の目的をはっきりさせよ。」「戦争の目的。」「目的語。」 **目標**…「記録の更新を目標としてトレーニングする。」「今学期の努力目標。」「あの石が目標だ。」 **目当て**…「賞金目当てにクイズ番組に出る。」「看板を目当てに歩く。」 ### どう使い分けるか **目的**は、成し遂げようと、目指している最終的なところ。ねらい。 **目標**は、〈目的〉が抽象的であるのに対し、より具体的にしたもので、目指す最終のものと限らず、中間的なものでもよい。また、具体的な物体を〈目標〉とすることもできる。 **目当て**は、〈目的〉〈目標〉両方の意味を持つ日常語。前の二語はやや文章語的な漢語である。 <506> # 持つ[もつ] ## 持つ[もつ] / 携える[たずさえる] / 所持する[しょじする] / 携帯する[けいたいする] / 有する[ゆうする] / 所有する[しょゆうする] / 所蔵する[しょぞうする] ### 使い分け例 **持つ**…「荷物を持つ。」「学生証はいつも持っている。」「家を持つ。」「絵の才能を持つ。」「疑いを持つ。」「任務を持つ。」「責任を持つ。」「勘定を半分持つ。」「体が持たない。」 **携える**…「弁当を携えて行く。」「パスポートを常に携えること。」「相携えて出奔する。」 **所持する**…「身分証明書を所持する。」「銃の不法所持。」 **携帯する**…「山には地図を必ず携帯することだ。」「携帯ラジオ。」 **有する**…「才能を有する。」「広大な土地を有する人。」「疑念を有する。」「責任を有する。」 **所有する**…「所有する財産。」「権利を所有する。」「知識を所有する。」 **所蔵する**…「あの美術館には国宝級の仏像が所蔵されている。」「彼の所蔵する広重の浮世絵の中には珍しいものも多い。」 ### どう使い分けるか **持つ**は、意味が多く、①物を自分の手中にしてそのまま保ち続ける、②身につけている、③自分のものとする、④才能などを身に備える、⑤考えや感情などが頭や心の中にある、⑥担当する、⑦負担する、⑧その状態が長い間変わらないで続く、などがある。 **携える**は、〈持つ〉の①・②の意味と、共に行動する、の意とがある。〈持つ〉に比べ、やや雅語的である。 **所持する**は身につけている意で、あまり大きな物を対象としない。 **携帯する**は、手に持ったり、身につけたりして運ぶ、の意。 **有する**は、〈持つ〉の意の漢語的 文章語でかなりかたい。〈持つ〉のすべての意で使われるわけではなく、抽象的な対象や手で持てない対象(財産)などについて言う。 **所有する**は、〈有する〉に近いが、思想・任務・責任などを対象語と <507> しては使わない。 **所蔵する**は、自分のものとしてしまっておく、の意。〈所有する〉と似ているが〈所蔵する〉の方は特に大事にしまっているという意味合いを持つ。 # 本[もと] (▽基礎) ## 本[もと] / 元[もと] / 基[もとい] / 下[もと] / 許[もと] / 因[もと] / 素[もと] ### 使い分け例 **本**…「本と末。」「本を正す。」「農は国の本。」「本に返って考える。」「ひと本の梅の木。」 **元**…「元はと言えば。」「火の元。」「元が掛かる。」「元のさやに納まる。」「電気の元を切る。」「元も子もなくなる。」「元の住所。」「元首相。」 **基**…「資料を基にして論文を書く。」「基肥。」「外国の技術を基にした製法。」 **下**…「灯台下暗し。」「教授の指導の下に研究する。」「法の下の平等。」「この条件の下に考える。」「一撃の下に倒す。」 **許**…「親のもとから離れる。」 **因**…「風邪がもとで寝込む。」「健康のもと。」 **素**…「スープの素。」 ### どう使い分けるか この項はいずれも〈もと〉だが、漢字表記の異なるものである。 **本**は、草・木の根もと、転じて物事の根本の意。また、草や木を数える助数詞としても使う。 **元**は、物事の初めの意で、転じて元金・原価などの意。また、時間的には今より前の時、以前の意で、「彼は―軍人だった」のように副詞的にも使われる。ただしこの場合アクセントが変わる。 **基**は、基礎となるもの、転じて助けとして用いる物事、の意。 **下**は、あるものの下やその周辺、転じて支配や影響の及ぶ範囲の意となる。 **許**は、そのもののある場所に近いところ、**因**は、物事の起こる原因、**素**は物を作る原料の意。 〔注意〕「許」「因」「素」の三字は、常用漢字表でモトの読みが認められていないので、〈許〉を「下」や「元」、〈因〉や〈素〉を「元」で表す場合もある。 <508> # 求める[もとめる] ## 求める[もとめる] / 要求する[ようきゅうする] / 要望する[ようぼうする] / 要請する[ようせいする] / せびる / せがむ ### 使い分け例 **求める**…「職を求める。」「平和を求める。」「客の参加を求める。」「どこでこの品を求められたのですか。」「きびしく反省を求める。」「退陣を求める。」 **要求する**…「給料アップを要求する。」「侵入した外国軍に撤退を要求する。」「生理的要求。」 **要望する**…「善処方を要望する。」「要望書。」 **要請する**…「救急車の出動を要請する。」 **せびる**…「小遣いをせびる。」「政治結社を名のる暴力団が寄付をせびる。」 **せがむ**…「幼児がおもちゃを買ってとせがむ。」 ### どう使い分けるか **求める**は次のような意味がある。①手に入れたいと思う。得ようとしてさがす。②他の人に、そうしてほしいと頼んだり望んだりして、実現を働きかける。③金を出して手に入れる。 **要求する**は、前の②の意味の漢語的な文章語で、〈求める〉より強い調子がある。 **要望する**も〈要求する〉と同義だが、求める気持ちがややが弱い感じがある。また、態度がより丁寧である。 **要請する**は、どうしても必要な事柄を願い出て実現を求めること。求める度合いが強い。また、一層丁寧である。 | | 退陣を― | 家の明け渡しを― | 民間の援助を― | 体力配分を― | 平和を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **求める** | ○ | ○ | | | ○ | | **要求する** | ○ | ○ | | ○ | | | **要望する** | | ○ | ○ | ○ | | | **要請する** | ○ | ○ | ○ | | | **せびる**は、ぜひとも手に入れたいと強く願い、しつこく相手に要求する意の、やや俗語的な言葉で、金品を欲しがる場合に使う。悪い意味合いで使う。 **せがむ**は、目上や年上・親などに無理に何回も要求すること。〈せびる〉より甘える感じが強い。 <509> # やがて (▽すぐ) ## 軈て[やがて] / 間もなく[まもなく] / 其の内[そのうち] / 何れ[いずれ] / 遅かれ早かれ[おそかれはやかれ] ### 使い分け例 **やがて**…「やがて戻ってくる。」「やがて芽が出てきた。」「花が咲きやがて実を結ぶ。」 **まもなく**…「まもなく雨はやんだ。」 **そのうち**…「そのうちに見つかるさ。」「そのうち忘れてしまった。」 **いずれ**…「いずれお邪魔します。」 **遅かれ早かれ**…「遅かれ早かれ辞職するだろう。」「あの時彼が言わなくても、遅かれ早かれ誰かが言っただろう。」 ### どう使い分けるか **やがて**は、そのことが行われたり起こったりするまでに、それほどの時間がたっていない、また必要としない場合に用いる。別に、結局は、の意もある。 **まもなく**は、〈やがて〉より時間の経過が短い場合に言い、この五語の中ではいちばん(すぐ)に近い。 **そのうち**は、〈やがて〉に比べて一層経過する時間の長さが漠然としており、すぐにではないがいつか、という意。 **いずれ**は、〈そのうち〉よりやや改まった言葉。同じように、すぐではないある時に、の意。ただ〈そのうち〉には、過去のことを言う場合もあるが、〈いずれ〉にこの使い方はなく、将来のことに限られる。 **遅かれ早かれ**は、遅い早いの違いはあっても結局は、という意で、過去の推量の表現の中で使うこともある。 # 約束[やくそく] ## 約束[やくそく] / 誓い[ちかい] / 申し合わ <510> ## せ[ちかい] / 取り決め[とりきめ] / 契約[けいやく] / 誓約[せいやく] / 盟約[めいやく] ### 使い分け例 **約束**…「約束を守る。」「再会を約束する。」「約束事。」 **誓い**…「神前での結婚の誓い。」「指切りをして誓いを立てる。」「禁酒の誓い。」 **申し合わせ**…「先方と申し合わせをしている。」「申し合わせ事項。」 **取り決め**…「金の分配の取り決めをする。」「取り決めを守る。」 **契約**…「雇用の契約。」「車の購入を契約する。」「契約違反。」 **誓約**…「校則を守るという誓約。」「年内の解決を誓約する。」「誓約書。」 **盟約**…「両国が盟約を結ぶ。」「全員血判を押して盟約した。」 ### どう使い分けるか **約束**は、互いの間で守るべきことを取り決めることで、私的な場合にも公的な場合にも使う。 **誓い**は、神仏や人に対してある事を絶対に守ると固く約束することで、不退転の決意で事を行う場合に用いる。〈約束〉は相手があるが〈誓い〉は自分の心に固く決める場合にも使う。 **申し合わせ**は、話し合って取り決めること。〈約束〉に比べ、公的な場で使うことがやや多い。 **取り決め**は、複数の者の間で物事を決定したり、約束したりすること。〈申し合わせ〉のように必ず話し合って決めるわけではない。 **契約**は、ある条件のもとで一定の約束をすること、とくに法律上の効力をもった約束事に使う。 | | ―を守る | ―を果たす | 労働条件の― | ―書の一形式 | ―の― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **約束** | ○ | ○ | | ○ | | | **誓い** | ○ | | | ○ | | | **申し合わせ** | ○ | | ○ | ○ | | | **取り決め** | ○ | | ○ | ○ | | | **契約** | | | ○ | | ○ | | **誓約** | ○ | | | | ○ | | **盟約** | ○ | | | | ○ | **誓約**は、固く誓い約束することで、〈契約〉のように法的効力はなくてもそれを破った場合何らかの道徳的・経済的制裁を伴うこともあり、書面で行う場合が多い。 **盟約**は、仲間となることを互いに固く誓って約束すること。 # やけ ## 自棄[やけ] / 自棄糞[やけくそ] / 自暴 <511> ## 自棄[じき] / 捨て鉢[すてばち] / 破れかぶれ[やぶれかぶれ] ### 使い分け例 **やけ**…「ついにやけを起こす。」 **やけくそ**…「失敗ばかりでやけくそになる。」同やけっぱち。 **自暴自棄**…「苦労が報われず自暴自棄になる。」 **捨て鉢**…「捨て鉢の態度で相手に詰め寄る。」 **破れかぶれ**…「こうなったらもう破れかぶれだ。」 ### どう使い分けるか **やけ**は、物事がうまくゆかずもうどうなってもよいという気持ちになること。**やけくそ**は、それを更に強めた俗語。**自暴自棄**は、ほぼ同義の漢語でかたい文章語。 **捨て鉢・破れかぶれ**はいずれも〈自暴自棄〉よりはくだけているが〈やけくそ〉ほど俗っぽくなく、〈やけ〉と同程度の位相にある。ただ〈やけ〉の場合の、「―を起こす」の言い方は〈捨て鉢〉〈破れかぶれ〉にはない。また、〈やけ〉〈破れかぶれ〉は、「おれはもうーだ」のように居直ったような言い方をすることがあるが、〈捨て鉢〉にはこの使い方はない。 # 易しい[やさしい] ## 易しい[やさしい] / たやすい / 易い[やすい] / 生易しい[なまやさしい] / 容易[ようい] / 平易[へいい] / 簡単[かんたん] ### 使い分け例 **易しい**…「この問題は易しい。」「易しい解説。」「易しい本」「取扱いが易しい。」▽難しい。 **たやすい**…「たやすい仕事だ。」「たやすい問題。」 **やすい**…「おやすい御用だ。」「この本は読みやすい。」 **生易しい**…「君が考えるほど生易しいことではない。」 **容易**…「容易なことでは解決しない。」「容易に理解できる。」▽困難。 **平易**…「平易な文章。」「平易に説明する。」 **簡単**…「簡単な仕事。」「構造の簡単な機械。」▽複雑。「食事を簡単にする。」 <512> ### どう使い分けるか **易しい**は、解決や理解が簡単である場合、取り扱いや操作がめんどうでない場合に用いる。 **たやすい**は、〈やすい〉に強意の接頭語「た」を付けた言葉。〈易しい〉と異なり「たやすい解説」「たやすい本」とは言わない。 **やすい**は、簡単に物事が行えるさまを表す。「お―」の形や動詞連用形についた「・・・やすい」の形で用いることが多い。 **生易しい**は、下に打消しの語を伴って用いることが多い。 **容易**は、〈たやすい〉と同義の漢語で、ややかたい文章語。 **平易**は、理解や解釈などがしやすい、わかりやすい、の意で、この意味で用いる〈易しい〉の意味と重なるややかたい漢語の文章語。 **簡単**は、〈容易〉とほぼ同義に用いることが多いが、筋道とか仕組みとかが単純であるという意、また時間や手間をかけない意に用いる場合があり、これらは〈容易〉と異なる。 # 休む[やすむ] ## 休む/憩う[いこう]/休息[きゅうそく]する/休憩[きゅうけい]する ### 使い分け例 **休む**・・・「仕事を休む。」「学校を休む。」「寝室で休む。」 **憩う**・・・「ベンチで憩う老人。」 **休息する**・・・「木陰で休息する。」 **休憩する**・・・「五分間休憩する。」 ### どう使い分けるか **休む**は、一時仕事や活動をやめて心身を休息させる場合だけでなく、欠席や欠勤をするの意にも就寝するの意にも用い、他の語より意味が広い。 **憩う**は、単に心身を生理的に休ませるというだけでなく、ゆったりとくつろいだ気持ちでその時間を楽しむという余裕を感じさせる。〈休む〉よりやや雅語的。 **休息する**は、心身を休めるために個人が自発的に求める意味合いが強い。漢語的文章語。 **休憩する**は、〈休息する〉とほぼ同義に用いることもできるが、個 <513> 人が自発的にそれを求めるというよりも、学校・会社・行事催物などの公的時間の中で定められた休みの時間の意に用いることが多い。「幕間の五分間の休憩時間」に〈休息〉は使いにくい。〈休息する〉より日常語的である。 # やたら(に) ## やたら(に)/厭に[いやに]/無性[むしょう]に/やけに/馬鹿[ばか]に/べらぼうに ### 使い分け例 **やたら(に)**・・・「やたらに酒を飲みたがる。」「やたら忙しい。」「やたらに暑い。」「やたらに騒ぐな。」⇔むやみに。 **いやに**・・・「いやに静かな夜だ。」 **無性に**・・・「無性に腹が立つ。」「無性に恋しい。」 **やけに**・・・「やけに機嫌が悪い。」 **ばかに**・・・「この服はばかに安いね。」 **べらぼうに**・・・「背がべらぼうに高い男。」 ### どう使い分けるか **やたら(に)**は、分別を失い理由もなく必要以上に物事をするさま。また、度を越すさま。 **いやに**は、状態や程度の度合いが普通とはかなり異なり、不審・疑い・不安などを感じるようなときに用いる。 **無性には**、主体の感覚や気持ちがわけもわからず激しく、度を越すさま。 | | ―のどが渇く | ―静かだ | ―腹が立つ | ―欲張るやつ | ―に高い | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **やたらに** | ○ | | | ○ | | | **いやに** | ○ | ○ | | | | | **無性に** | ○ | | ○ | ○ | | **やけに**は、〈いやに〉とほぼ同義だが、俗語的。 **ばかには**、〈やたらに〉とほぼ同義の俗語的な言い方。 **べらぼうには**、〈ばかに〉よりも更に程度が甚だしく、非難めいた気持ちや、あきれたという感じが伴うことが多い。俗語。 # やっと ## 漸と[やっと]/漸く[ようやく]/辛うじて[かろうじて] <514> ## て[て] / どうにか / 何とか[なんとか] ### 使い分け例 **やっと**…「やっと終わった。」「やっと手の届く値段。」 **ようやく**…「ようやく着いた。」「ようやく間に合った。」「ようやく秋の色も深まってきた。」同ようよう。 **辛うじて**…「終電にかろうじて間に合う。」 **どうにか**…「今月もどうにかやっていける。」「どうにかしなくては。」「どうにかこうにか。」 **何とか**…「何とか合格したい。」「何とか言え。」「何とかこうとか。」 ### どう使い分けるか **やっと**は、望んでいたことが曲折を繰り返しながらもついに実現したり成立したりする場合に用いる。「―手の届く値段」のように、十分ではないがぎりぎりのところの意にも用いる。 **ようやく**は、〈やっと〉と同義のやや文章語的な言葉でもあるが、物事が次第にある状態になっていくさまの意味もある。 **辛うじて**は、〈やっと〉に比べてその実現するぎりぎりの度合いが更に強い感じ。 **どうにか**は、〈やっと〉〈辛うじて〉に比べてそのぎりぎりの度合いが幾分緩く、余裕を感じさせる。十分ではないがなんとかという程度。「―しなくては」は実現へ向けて働きかける意欲を表す場合に言い、前の三語にはない使い方。 **何とか**は、〈どうにか〉とほぼ同義。ただし、「―こうとか」「―言え」などは〈どうにか〉で言い換えられない。 | | ―完成した | ―暮らしている | 春らしくなった | ―言え | ―して行け | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **やっと** | ○ | | | | | | **ようやく**| ○ | | ○ | | | | **どうにか**| ○ | ○ | | ○ | ○ | | **何とか** | ○ | ○ | | ○ | ○ | # やはり ## やはり / 果たして[はたして] / 案の定[あんのじょう] / 思った通り[おもったとおり] / 成る程[なるほど] ### 使い分け例 **やはり**…「やはりそうすべきだ。」 <515> **果たして**…「はたして翌日は雨になった。」「はたして来るだろうか。」 **案の定**…「案の定彼は来なかった。」 **思った通り**…「この映画は思った通りおもしろかった。」 **成る程**…「なるほど彼は頭の切れる男だ。」「なるほど、君の言う通りだ。」 ### どう使い分けるか **やはり**は、他の方法や事柄も一応考えてみたものの、結局ははじめに思っていた通り、という意に用いる。 **果たして**は、結果が予想した通りであることを強調する意では〈やはり〉〈案の定〉とほぼ同義。しかし、〈果たして〉には、下に疑問の表現や仮定の表現を伴って疑いの気持ちを強調する使い方が多い。やや文章語的。 **案の定**は、予想したことがその通りになった場合に用いるが、予想の的中を強調する度合いが最も高い。 **思った通り**も、〈案の定〉とほぼ同義のくだけた話し言葉。 **なるほど**は、前に聞いていた通りだと、改めて確認・納得する気持ちの強い言葉。感嘆詞として、相手の言葉や意見に同意する気持ちを表す場合にもよく使う。 # やめる ## 止める[やめる] / 辞める[やめる] / 止す[よす] / 打ち切る[うちきる] / 取り止める[とりやめる] / 中止する[ちゅうしする] / 終える[おえる] / 終わる[おわる] ### 使い分け例 **やめる**…「たばこをやめる。」「つきあいをやめる。」「出張をやめる。」 **辞める**…「会社を辞める。」「委員長を辞める。」 **よす**…「ばかなまねはよせ。」 **打ち切る**…「交渉を一日で打ち切る。」 **取り止める**…「旅行を取り止める。」 **中止する**…「雨のため試合が五回で中止される。」「予定の番組を直前に中止する。」 **終える**…「作業を終える。」「一日の勤務を終える。」 **終わる**…「会議が終わる。」「会議を終わる。」 <516> ### どう使い分けるか **やめる**は、①続けてきたことを終わりにする、②予定していたことをしないことにする、③就いていた職や地位を退く、の意で、③の場合は辞めると書く。「会社を辞める」は会社経営ではなく、会社勤めをやめるのであって、「商売をやめる」の場合は「辞」は使わない。 **よす**は、〈やめる〉の①~③と同義の話し言葉で、主に関東で使われる。 **打ち切る**は、〈やめる〉の①、**取り止める**は、〈やめる〉の②の意を強く、明瞭に表す言葉である。 **中止する**は、〈打ち切る〉と〈取り止める〉の両義に使われる。したがって、「旅行をやめる」「試合を中止する」などは、文脈によってどちらの意味かわかるように使うことが必要である。 | | 作業を― | 交際を― | 出張予定を― | 酒を― | 出席を― | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **やめる** | ○ | ○ | ○ | ○ | | | **打ち切る** | ○ | ○ | | | | | **取り止める** | | | ○ | | ○ | | **中止する** | ○ | △ | ○ | | ○ | **終える**は、物事を最後までして、または時期がきて終わりにする、の意である。 **終わる**は、本来自動詞で、他動詞に用いるのは正用法ではないが、「これで本日の放送を終わります」のような言い方が広まって、一般にも通用している。しかし、文章を書く場合にはふさわしくない。 # やる (▽贈る) ## 遣る[やる] / 与える[あたえる] / 呉れる[くれる] / 授ける[さずける] / 上げる[あげる] / 施す[ほどこす] ### 使い分け例 **やる**…「この本、君にやるよ。」「植木に水をやる。」「仕返ししてやる。」 **与える**…「食物を与える。」「部下に褒美を与える。」 **くれる**…「おまえにお目玉をくれてやる。」「彼が来てくれる。」 **授ける**…「賞を授ける。」「知識を授ける。」 **上げる**…「プレゼントを上げる。」「読 <517> んであげる」「お年玉を上げよう。」 **施す**…「恵みを施す。」 ### どう使い分けるか **やる**は〈与える〉とほぼ同義の話し言葉。主に同程度か目下の者に対して用いる。また、動植物に物を与える意にも用いる。また、「・・・てやる」のように補助動詞としても用いる。 **与える**は、やや文章語的な言葉。目上の者が、目下の者に恩恵的な意味で何かをやったり、割り当てたりする場合に使うことが多い。 **くれる**は、自分が相手に物を与えたり何かの動作を加えたりする意に用いるが、相手をさげすんだ言い方で、「くれてやる」の形で使うことが多い。また、補助動詞としては、ある人が自分のためにその動作をする意に用いる。〈やる〉と対照的である。 **授ける**は、特別に何か名誉となるものやかけがえのないものを目上の人から目下の人に与える意で、公的な場所とか改まった席や方法で与える場合に用いる。また、師から弟子に知識や技を教える意もある。 **上げる**は、〈与える〉〈やる〉のへりくだった言い方。(ただし現在では謙譲の意が薄れ、単に丁寧な言い方として使うことも多い。)「・・・て(で)あげる」の形で補助動詞としてもよく使う。 **施す**は、主に恵まれない状態や困った状態にある者に金品を与えて助けるような場合に用いる。 # ゆ ## 夕方[ゆうがた] / 夕べ[ゆうべ] / 宵[よい] / 夕暮れ[ゆうぐれ] / 日暮れ[ひぐれ] / 夕刻[ゆうこく] / 晩[ばん] / 黄昏[たそがれ] ### 使い分け例 **夕方**…「夕方には到着する。」▽朝方。 **夕べ**…「夕べの祈り。」「名曲の夕べ。」 <518> **宵**…「なまめかしい春の宵。」「宵の口。」 **夕暮れ**…「夕暮れ時。」「秋の夕暮れ。」同夕まぐれ。 **日暮れ**…「日暮れの景色。」「日暮れの街角。」▽夜明け。 **夕刻**…「本日夕刻決行する。」 **晩**…「晩の食事。」同晩方。▽朝。 **たそがれ**…「ほの暗い春のたそがれ。」「人生のたそがれ。」 ### どう使い分けるか **夕方**は、日が西に沈みはじめて辺りが暗くなるころで、日常最もよく使われる語。 **夕べ**は、「昨晩」「昨夜」の意で使うのが普通だが、〈夕方〉の意の雅語としても使う。「名曲の―」のように、何か特別の催物が行われる場合によく用いられる。 **宵**も雅語的で、時間帯としては〈夕方〉に近いが、〈夕方〉より始まり終わりとも遅い感じがある。 **夕暮れ・日暮れ**は、共に「―時」の形で使える。日が沈み、辺りが暗くなるころで、〈夕方〉より更に短い時間に限定して用いる傾向がある。〈夕暮れ〉の方がやや雅語的な響きがある。 **夕刻**は、〈夕方〉と同義のやや文章語的な言葉。漢語ではない。 **晩**は、あたりが暗くなり始めてから夜の初めの部分(人が起きているくらいの間)を含む時間で、〈夕方〉とともに日常最もよく使われる。同義の〈晩方〉は東京ではあまり使わない。 **たそがれ**は、〈夕暮れ〉の意の雅語。比喩的に、没落・衰えに向かう時期を表す。 # 友好[ゆうこう] ## 友好[ゆうこう] / 親善[しんぜん] / 親睦[しんぼく] / 友誼[ゆうぎ] / 交誼[こうぎ] / 厚誼[こうぎ] ### 使い分け例 **友好**…「隣国との友好を深める。」「日中友好。」 **親善**…「両国の親善を願う。」「親善使節。」「日米親善野球。」 **親睦**…「会員相互の親睦をはかる。」「親睦会。」 **友誼**…「友誼にあつい人。」「親密な友誼を結ぶ。」 **交誼**…「交誼を願う。」 **厚誼**…「ご厚誼を謝す。」 <519> ### どう使い分けるか **友好**は、友人としての親しい付き合いのことだが、個人間で用いることはあまりなく、主に国家間のことに用いる。 **親善**は、互いに理解を深め相手と仲良くすることだが、この語も国家・団体間に使うことが多い。 **親睦**は、国家・団体間の関係には使われず、個人どうしがサークル・会合などを通して互いに親しみ仲良くする場合に使う。以上三語とも文章語。 **友誼・交誼・厚誼**はかたい文章語で、〈友誼〉は友人に対する親しい情愛、〈交誼〉は友人より広い範囲の人間間の親しい付き合い、〈厚誼〉は心からの厚い交誼の意。 # 有名[ゆうめい] ## 有名[ゆうめい] / 著名[ちょめい] / 高名[こうめい] / 名高い[なだかい] ### 使い分け例 **有名**…「彼は詩人として有名だ。」「有名人。」▽無名。 **著名**…「世界的に著名な学者。」 **高名**…「高名な物理学者。」「ご高名は以前から承っておりました。」 **名高い**…「曽我は梅林で名高い。」「名高い画家。」 ### どう使い分けるか **有名**は、世間にその名が広く知られていることで、人だけでなく芸術作品・建物・場所など幅広く用いられる。 **著名**は、主に人物に対して用い、評価の度合いが〈有名〉よりも高い。文章語。 **高名**は、主に人に対して用い、評価の度合いが〈著名〉より更に高い。「ごー」は有名な名前の意の尊敬語。文章語。 **名高い**は、〈有名〉とほぼ同義であるが、やや古風な感じがある。人に対してより名所・旧跡などに用いることが多い。 | | ―な政治家 | 桜で―な吉野 | ―な暴れ者 | ご―は存じています | ―校に入る | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **有名(な)** | ○ | ○ | ○ | | | | **著名(な)** | ○ | △ | | | | | **高名(な)** | ○ | | △ | ○ | | | **名高い** | ○ | ○ | ○ | | ○ | <520> # 愉快[ゆかい] (▽嬉しい・喜び) ## 愉快[ゆかい] / 快い[こころよい] / 快適[かいてき] / 爽快[そうかい] / 痛快[つうかい] / 心地よい[ここちよい] ### 使い分け例 **愉快**…「一日愉快だった。」「愉快な人。」▽不愉快。 **快い**…「快い響き。」「快い風。」「快く承諾する。」 **快適**…「この車は速くて快適だ。」「快適な生活。」 **爽快**…「頂上に立って爽快な気分だ。」「スポーツの後の爽快感。」 **痛快**…「痛快な冒険の話。」 **心地よい**…「心地よい春風。」「心地よいビオラの弦の響き。」 ### どう使い分けるか **愉快**は、心が楽しく明るい気分になることで、また人を明るく楽しませるような人柄についても用いる。 **快い**は、これといった抵抗感もなく気持ちよく感じることで、感覚の面での気持ちよさに使われることが多い。また「快く承諾する」のように、相手の要求などに素直に従う場合にも使う。人柄などには言わない。 **快適**は、状況が心身にうまくマッチして楽しい気分になることで、日常の生活での諸活動に伴う使い方が多い。 **爽快**は、さわやかで、すがすがしく、さっぱりして気持ちがいいさま。スポーツの後とか自然の中とかで味わう一種の開放感を伴う場合に多く用いる。 **痛快**は、〈愉快〉よりその楽しさの度合いが強い表現。心のわだかまりや胸のつかえがすっきりとれて非常に愉快になることで、見たり聞いたり読んだりして思わず手を打つような気分の場合に使う。 **心地よい**は、外からの刺激とか、自分の置かれた環境に対して持つ気分のよさに用いる。〈快い〉とほぼ同義であるが、「快く承知する」に〈心地よく〉は使えない。また〈快適〉とも意味が重なるが、「心地よい弦の響き」に〈快適な〉は使いにくい。 <521> # ゆがむ (曲がる) ## 歪[ゆが]む/歪[ひず]む/捩[ねじ]れる/歪曲[わいきょく]する ### 使い分け例 **ゆがむ**・・・「箱の形がゆがむ。」「社会がゆがんでいる。」「心がゆがむ。」 **ひずむ**・・・「柱がひずむ。」「日米関係のひずみ。」「性格のひずみ。」 **ねじれる**・・・「針金がねじれる。」「根性がねじれる。」 **歪曲[わいきょく]する**・・・「事実を歪曲する。」 ### どう使い分けるか **ゆがむ**は、ねじれたり曲がったりして元の形が変わる意で、物の形だけでなく物事や心の状態が正常でなくなる場合にも用いる。 **ひずむ**は、何かの外的力や作用が加えられて形や状態が変わったり不釣り合いになる意。名詞の〈ひずみ〉は経済構造とか社会関係とか、また、性格など精神的なものにも使うが、動詞はほとんど物理的現象について言う。 **ねじれる**は、何か長いものの両端を逆方向にひねって曲げられた状態を言い、やはり物だけでなく、心や性質などが素直でない意にも用いる。 **歪曲[わいきょく]する**は、曲げたり歪めたりする意の漢語的な言葉だが、物体にはあまり使わず、事柄・事実などをわざと実際とは違えてしまったりゆがめてしまったりする場合に用いることが多い。他の三語は自動詞だが、この語は自他両用で他動詞で使う方が多い。 # 行き来[ゆきき] ## 行き来[ゆきき]/行き帰[いきかえ]り/往復[おうふく]/往来[おうらい] ### 使い分け例 **行き来**・・・「親類と行き来する。」「車の行き来が激しい。」 **行き帰り**・・・「学校への行き帰り。」 **往復**・・・「往復の所要時間。」「毎日この道を往復する。」「この数カ月彼女との間になんの往復もない。」 **往来**・・・「往来で人が口論している。」「人の往来が激しい。」 <522> ### どう使い分けるか **行き来**は、人や車などが行ったり来たりする〈往来〉の意のくだけた口語。また、互いに家を訪問し合って付き合ったりする意にも用いるが、この場合〈往来〉はやや使いにくい。 **行き帰り**と、**往復**は、同義の和語・漢語でもあるが、〈往復〉にはまた、手紙などのやりとり、音信・連絡・交際の意もある。 **往来**は、〈行き来〉のやや改まった文章語的言い方。また人や車が行き来する道路や通りの意にも使う。この場合〈行き来〉は使えない。また「人の―」のように、人の付き合い・交際の意にも使う。 # 行方[ゆくえ] ## 行方[ゆくえ]/行[ゆ]く先[さき]/行[ゆ]く手[て]/目的地[もくてきち] ### 使い分け例 **行方**・・・「旅に出たきり行方がわからない。」「変革の行方を見守る。」 **行く先**・・・「行く先を告げずに出る。」「この会社の行く先を案ずる。」 **行く手**・・・「行く手を遮る。」「行く手には多くの困難があろう。」 **目的地**・・・「目的地に到達する。」 ### どう使い分けるか **行方**は、その人の居場所・所在といった意味合いの強い語で、**行く先**は、行こうとする目的地、また向かって行く先、行った先というようにその人の意図に重点を置いた表現。〈行方〉〈行く先〉はいずれも、今後の成り行き・将来といった意にも用いるが、〈行方〉は、漠然とした将来・運命というニュアンスが強いのに比べ、〈行く先〉には抱負・希望・不安といった気持ちの伴う場合が多い。 **行く手**は、向かってゆく方向や進んでゆこうとする前方の意で、そこに何か前進を中断させるものの有無を前提とすることが多い。 **目的地**は、あらかじめ到達しようとして意図していた場所の意。他の三語のように「将来」などの意味で使うことはあまりない。 <523> # 揺する[ゆする] (揺れる) ## 揺[ゆ]する/揺[ゆ]さぶる/揺[ゆ]すぶる/揺[ゆ]るがす ### 使い分け例 **揺する**・・・「足を揺する。」「やくざが金をゆする。」 **揺さぶる**・・・「大木を揺さぶる。」「独裁体制を揺さぶる民衆の力。」 **揺すぶる**・・・「机を揺すぶる。」 **揺るがす**・・・「地を揺るがす大雷鳴。」「政局を揺るがす大疑獄。」 ### どう使い分けるか **揺する**は、小刻みに震えるように何かを動かす意。ほかに、おどして金品を取る意もある。 **揺さぶる**は、〈揺する〉より動きが大きく、そのもの全体が大きく揺れるように動かすこと。また、比喩的に何かの刺激・作用によって組織・体制や心などを動揺させる場合にも用いる。 **揺すぶる**も、全体を大きく揺れ動かす意に用いるが、〈揺さぶる〉のように抽象的な物事や心などを動揺させる意にはあまり使わない。 **揺るがす**は〈揺さぶる〉より更に振動・動揺の規模が大きい。「心を―」などはあまり言わない。 | | 揺する | 揺さぶる | 揺るがす | | :--- | :---: | :---: | :---: | | 木を― | ○ | ○ | ○ | | 政局を― | ― | ○ | ○ | | ひざを― | ○ | ― | ― | | 心を― | ― | ○ | ○ | | 大地を― | ― | ― | ○ | | ―事件 | ○ | ― | ○ | | 小刻みに― | ○ | ― | ― | | おどし― | ○ | ― | ― | | ―で震動 | ○ | ○ | ○ | # 豊か[ゆたか] ## 豊[ゆた]か/豊富[ほうふ]/豊潤[ほうじゅん]/豊饒[ほうじょう]/豊穣[ほうじょう]/潤沢[じゅんたく] ### 使い分け例 **豊か**・・・「産物が豊かだ。」「豊かな才能。」「暮らしが豊かだ。」 **豊富**・・・「資金が豊富だ。」「豊富な経験を生かす。」「豊富な知識。」 **豊潤**・・・「豊潤な土地。」 **豊饒**・・・「豊饒な大地。」 **豊穣**・・・「豊穣の秋。」「五穀豊穣。」 **潤沢**・・・「水は潤沢にある。」「潤沢な資金。」 <524> ### どう使い分けるか **豊か**は、物や物事が豊富にあることだけでなく、経済的・精神的に満ち足りている場合にも使う。 **豊富**は、〈豊か〉と同義のやや文章語的な漢語だが「―な才能」「―な暮らし」などとは言わない。 **豊潤**は、豊かで潤いのあること。以下四語はかたい文章語。 **豊饒**は、土地が肥沃で実り豊かなこと。また限りなく豊かであること。 **豊穣**は、穀物の実りが豊かなこと。 **潤沢**は、潤いがあってつやのある意。また使ってもまだ余裕があるほどの豊かさを言い、とくに物質・金銭面に用いることが多い。 # 夢[ゆめ] ## 夢[ゆめ]/夢路[ゆめじ]/夢見[ゆめみ]/夢幻[むげん]/夢幻[ゆめまぼろし]/幻[まぼろし]/幻影[げんえい]/幻想[げんそう] ### 使い分け例 **夢**・・・「夢を見る。」「歌手になるのが私の夢。」「人の一生は夢。」「夢うつつ。」「夢心地。」 **夢路**・・・「夢路をたどる。」 **夢見**・・・「ゆうべの夢見が悪かった。」「夢見心地のハネムーン。」 **夢幻[ゆめまぼろし]**・・・「望みは夢まぼろしと消え去る。」「夢まぼろしの浮き世。」 **夢幻[むげん]**・・・「夢幻の人生。」「夢幻的な光景。」 **幻**・・・「恋人の幻を見る。」「幻の世界。」「幻の名酒。」 **幻影**・・・「幻影を追い求める。」「幻影におびえる。」幻像。 **幻想**・・・「幻想を抱く。」「幻想的な物語。」空想。 ### どう使い分けるか **夢**は、眠っている間に見る夢以外に比喩的な転義として、いつかは実現したいと心に思い願っていることや、現実離れした希望、はかないもの、の意にも用いる。 **夢路**は、夢を見ることを道を行くのにたとえた雅語。「―をたどる」の形で用いるのが普通。 **夢見**は、夢を見ること、また、その夢。 <525> **夢幻[ゆめまぼろし]**は、夢や幻の意から、そのような非現実的な(多くは甘美な)もの、はかないもの、の意。 **夢幻[むげん]**は同義の漢語で、「夢幻的・・・」の用法がある。 **幻**は、睡眠中でないのに見える、現実にはないもの。転義は〈夢〉と同様で、転義で使う方が多い。 **幻影**は、ほぼ同義の漢語だが、「―の名酒」などは〈幻〉を使う。 **幻想**は、夢幻的なとりとめのないものを想像すること、また、その内容。 # 由来[ゆらい] ## 由来[ゆらい]/いわれ/由緒[ゆいしょ]/縁起[えんぎ]/沿革[えんかく]/来歴[らいれき] ### 使い分け例 **由来**・・・「ワインの由来を調べる。」 **いわれ**・・・「この古寺のいわれ。」「いわれのない疑いをかけられる。」 **由緒**・・・「由緒ある家系。」 **縁起**・・・「湯島天神の縁起を語る。」「縁起のいい話。」 **沿革**・・・「会社の沿革。」 **来歴**・・・「故事来歴。」「人の来歴をたずねる。」 ### どう使い分けるか **由来**は、古い物事が今までたどってきた過程や、そのものの起こりの意に用いる。また副詞として「―、嵐山は桜の名所」のようにもともとの意にも用いる。 **いわれ**は、〈由来〉とほぼ同義のややくだけた和語。また、そう思われるわけとか理由の意にも用いる。 **由緒**も、〈由来〉〈いわれ〉とほぼ同義であるが、その出所の確かさに重点が置かれ、家系・家柄・血統などに用いることが多い。 **縁起**は、特に社寺の由来とか霊験などについての言い伝えの意に用いる。また、「―をかつぐ」のように、めでたいことや不吉なことの起こりそうな前触れの意に使うことも多い。 | | 由来 | いわれ | 由緒 | 縁起 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | 神社の― | ○ | ○ | ○ | ○ | | ―のある町名 | ○ | ○ | ○ | ― | | 碁の― | ○ | ○ | ― | ― | | ―をかつぐ表現 | ― | ― | ― | ○ | | ―のない非難 | ― | ○ | ― | ― | | ―ある家柄 | ○ | ○ | ○ | ― | | ―を語る | ○ | ○ | ○ | ○ | **沿革**は、主に会社や学校といった組織・団体などの歴史や変遷について用いる。 <526> **来歴**は、〈由来〉とほぼ同義の、更にかたい文章語。経歴の意もある。 # 緩む[ゆるむ] ## 緩[ゆる]む/弛[たる]む/だれる/弛緩[しかん]する ### 使い分け例 **緩む**・・・「ベルトが緩む。」「寒さが緩む。」「心が緩む。」「頬が緩む。」 **たるむ**・・・「ひもがたるむ。」「貴様らたるんどるぞ。」 **だれる**・・・「気持ちがだれる。」「試合がだれる。」 **弛緩する**・・・「筋肉が弛緩する。」「精神が弛緩する。」 ### どう使い分けるか **緩む**は、今まで締まっていたものとかぴんと張っていたものが、その力が抜けて弱まることで、単に物だけでなく、自然現象・規律・精神状態などにも広く使う。 **たるむ**は、今までぴんと張っていたものが緩んで垂れ下がることで、物に関しては目に見えるほどの状態について言い、否定的な調子の場合が多い。「頬がたるむ」は即物的に肉体の変化を言い、「頬が緩む」は心が和みうれしがるの意である。〈たるむ〉もまた、人間の精神状態にも用いるが、悪い意味で、全体的な態度・状態が緩んでいるのに使う。 **だれる**は、活気やしまりがなくなったり、緊張感が薄れた状態になる、の意で、人間の心や活動について用いることが多い。 **弛緩する**は、〈緩む〉〈たるむ〉とほぼ同義の漢語的文章語。〈ちかんする〉は慣用読みによる。 # 揺れる[ゆれる] (揺する) ## 揺[ゆ]れる/揺[ゆ]らぐ/ぐらつく/動揺[どうよう]する/揺[ゆ]らめく ### 使い分け例 **揺れる**・・・「大地が揺れる。」「愛情が揺れる。」 **揺らぐ**・・・「建物の土台が揺らぐ。」「決心が揺らぐ。」 <527> **ぐらつく**・・・「足元がぐらつく。」「計画がぐらつく。」「方針がぐらつく。」 **動揺する**・・・「船が動揺する。」「心が動揺する。」 **揺らめく**・・・「ローソクの炎が揺らめく。」「水中に水草が揺らめく。」 ### どう使い分けるか **揺れる**は、物が前後左右に不安定な状態になって揺れ動くことだが、単に具体的な物だけでなく、抽象的な事柄にも使う。 **揺らぐ**は、単に物事が不安定な状態で揺れ動くというだけでなく、今まで不動と思われていたものが根底から動くという意味合いが強い。やや雅語的。 **ぐらつく**は、〈揺らぐ〉のくだけた言い方でほぼ同義だが、「ろうそくの火」などは〈揺れる〉〈揺らぐ〉で〈ぐらつく〉とは言えない。 **動揺する**は、〈揺れる〉とほぼ同義の漢語的な言葉。〈揺れる〉は小さな動きにも大きな動きにも用いるが、〈動揺する〉は比較的大きな動きに用いる。また不安な気持ちや状態になって落ち着きを失う場合にも用いる。 | | 揺れる | 揺らぐ | ぐらつく | 動揺する | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | 心が― | ○ | ○ | ○ | ○ | | ろうそくの火が― | ○ | ○ | ― | ― | | 船が― | ○ | ― | ○ | ○ | | 自信が― | ― | ○ | ○ | ○ | | 歯が― | ― | ― | ○ | ― | | 人心が― | ― | ○ | ― | ○ | **揺らめく**は、雅語的な言葉で、風や波などでゆらゆらして見えるものに用いる。視覚的にとらえられるものに使う。 # 良(善・好・佳)[よ]い ## 良(善・好・佳)[よ]い/いい/宜[よろ]しい ### 使い分け例 **良(善・好・佳)い**・・・「良い声。」「彼は善い人だ。」「善い行い。」「それでよい。」「感じがよい。」「今日は日が佳い。」悪い。 **いい**・・・「今日はいい天気だ。」「いいざまだ。」「いい気味だ。」 <528> **よろしい**・・・「外出してもよろしい。」「まあよろしいんじゃない。」「よろしい、来たまえ。」 ### どう使い分けるか **良(善・好・佳)い**は、優れている、美しい、正しい、めでたいなど、物事を高く評価する場合、またそのことが適当である、好ましい、と同意・許可を表す場合など広く用いる。「良」は品質・性能・技術などの場合、「善」は道徳上の場合、「好」は美しさ・感じなどの場合、「佳」は美しさ・めでたさなどの場合にそれぞれ使われるが、「好」「佳」には常用漢字表で「よい」の読みを認めておらず、普通かな書きにする。 **いい**は、話し言葉で〈よい〉の言い換えとしてほとんどの場合に用いることができ、むしろ話し言葉では〈いい〉のほうが一般的である。ただし終止形と連体形だけつまり「いい」の形だけが使われ、他は〈よい〉の各活用形が使われる。また〈いい〉には、「―ざまだ」「―玉だ」のように反語的な用法、「―気味だ」のように、人の不幸・災難を喜ぶような用法があるが、そういうような場合に〈よい〉は使わない。 **よろしい**は、〈よい〉〈いい〉の改まった言い方であるが、高く評価するというより、まあ悪くないという意で使うことが多い。一語だけで相手の申し出に承諾を表す使い方もある。 # 用意[ようい] ## 用意[ようい]/準備[じゅんび]/支度(仕度)[したく]/手配[てはい]/手筈[てはず] ### 使い分け例 **用意**・・・「食事の用意。」「用意のいい人。」「用意周到。」「用意、ドン。」 **準備**・・・「講義の準備。」「心の準備。」 **支度(仕度)**・・・「旅の支度をする。」 **手配**・・・「式の手配がすむ。」「前もって手配する。」「犯人を手配する。」 **手はず**・・・「仕事の手はずを整える。」 ### どう使い分けるか **用意**は、何かをしようとするときに、それに備えて必要な物や態勢などを整えること。また何かに備える気構えの意にも使う。 <529> **準備**は、〈用意〉とほぼ同義であるが、気構えの意に用いる場合は「心の―」になる。また〈用意〉に比べて〈準備〉は、その期間の長短に幅があり、「受験の―」に〈用意〉を使うと、受験直前の、用品を整えたり試験場を調べたりといった具体的なことの意味合いが強いが、〈準備〉ではもっと長期的な様々なことを意味する。また、「―運動」のように身体の調子を整える意にも用いるが、その場合〈用意〉は使わない。 **支度**は、〈用意〉〈準備〉と同じく、前もって必要な物を整えることを言う。気構えや心構えの意に用いることはなく、主に食事とか服装・持ち物などに関して用いる。日常的なくだけた語。 **手配**は、準備の意だが、個人でなく複数の人間でやる事の場合に使うことが多い。警察では犯人逮捕のため方々に指令したり人を配置したりすることに使う。仕事のため人手を集めることにも使う。 **手はず**も準備の意だが、特に事の順序・段取りを決める意味合いが強い。 〔注意〕〈手はず〉を除く四語は「―する」の形になる。 # 要綱[ようこう] (概要・趣旨) ## 要綱[ようこう]/要項[ようこう]/要領[ようりょう]/要点[ようてん]/骨子[こっし] ### 使い分け例 **要綱**・・・「事業計画の要綱。」 **要項**・・・「入試の要項を取り寄せる。」 **要領**・・・「要領を得た説明。」「要領を覚えると簡単だ。」「要領のいいやつ。」 **要点**・・・「段落の要点をつかむ。」「要点をかいつまんで説明する。」 **骨子**・・・「法案の骨子を説明する。」 ### どう使い-分けるか **要綱**は、何かの物事の根本となる最も重要な事柄、また、それをまとめた文書、の意に用いる。 **要項**は、何かをしようとするときに必要となる大事な事項・項目、また、それをまとめた文書、の意で、それに参加する側の利便を念頭に置く。〈要綱〉より具体的である。 <530> **要領**は、物事の大切な点の意で、〈要点〉とほぼ同義。また、物事を手際よく処理するための重要な点・こつの意、さらに物事の処理の仕方の意にも用いるが、この場合〈要点〉は使えない。最後の意味では「ずるい」の意味合いが含まれることもある。 **要点**は、話や意見などの大事な箇所の意。 **骨子**は、物事の中心となる内容、骨組みの意のかたい文章語。 # 様子[ようす] ## 様子[ようす]/有[あ]り様[さま]/状態[じょうたい]/状況(情況)[じょうきょう]/様相[ようそう]/模様[もよう] ### 使い分け例 **様子**・・・「その場の様子を説明する。」「様子をうかがう。」「雨の来そうな様子。」「彼の様子がおかしい。」「今にも泣き出しそうな様子。」 **有り様**・・・「事故現場のありさま。」「さんたんたるありさま。」 **状態**・・・「健康の状態を調べる。」「大気の状態。」「精神状態。」 **状況(情況)**・・・「正午現在の開票状況。」「紛争の状況を報告する。」 **様相**・・・「政局は混乱の様相を深める。」「複雑な様相を帯びてきた。」 **模様**・・・「事件の模様を語る。」「二人は会った模様だ。」「明日は雨の模様。」「模様ながめ。」 ### どう使い分けるか **様子**は、物事のありさま、状態、事情、気配や兆し、人の身なりやふりなどの意に用いる。やわらかい感じの日常語。 **有り様**は、物事の実際の(多くは視覚的にとらえた)姿・様子の意に用いる、やや文章語的な言葉。あまりよくない状態や様子に使うことが多い。人の様子や表情・態度にはあまり使わない。 **状態**は、物事の様子を、静止的なものとしてとらえた場合に用いるのに対し、**状況(情況)**は変化する物事の、その時その時の様子を、動きと関連させてとらえるときに用いる。それゆえ、両者を単純に置き換えることはできない。〈状態〉はやや文章語的で〈状況(情況)〉は文章語。 <531> **様子**、**状態**、**状況**、**様相**、**模様** はやや文章語的で〈状況(情況)〉は文章語。 **様相**は、今までは内部に変化があっても直接外部には何も現れなかったものが、次第に外部にも現れ見えるようになってきたその様子。外から簡単に見えにくく、かつ複雑な物事について言う。かたい文章語。 **模様**は、〈様子〉〈状態〉などとほぼ同義であるが、今目の前にある様子や状態だけでなく、推測される状態をも言う。ほかに装飾としての絵や形の意。 | | 波乱含みのー | 事件の一 | 顔のーが変だ | 町のーが一変する | 中だるみのーを呈する | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | :---: | | **様子** | O | O | O | O | - | | **状態** | O | O | - | - | O | | **状況** | O | O | - | - | O | | **様相** | O | O | - | O | O | | **模様** | Δ | O | - | O | O | # 欲[よく] ## 欲[よく]/欲望[よくぼう]/欲求[よっきゅう]/欲心[よくしん] ### 使い分け例 **欲**・・・「欲の深い人間。」「勉強に欲が出てきた。」「出世欲。」「欲をかく。」 **欲望**・・・「欲望に目がくらむ。」「物質的欲望。」 **欲求**・・・「水を飲みたいという欲求。」「平和への欲求。」「知的欲求。」 **欲心**・・・「むらむらと欲心を起こす。」 ### どう使い分けるか **欲**は、欲しいものを自分のものにしたいとか、自分の思いどおりにしたいと強く思う利己的な心で、物質的、肉体的なものだけでなく、知識名誉なども対象とし持続的である。日常的に起こる、何かを求める一時的な軽い気持ちは特に〈欲〉とは言わない。 **欲望**・**欲求**は、前者の方が生ぐさい感じがやや強く、後者は、美醜・強弱にかかわらず、広く何かを求める心に使う。ただし、〈欲求〉は〈欲望〉よりかたい文章語であまり会話では使わない。また、〈欲求〉は〈欲望〉より、その求める対象が具体的かつ明確、「・・・に対する欲求」「・・・への欲求」のように、用いることが多い。 **欲心**は、何かを欲深く欲しがる心の意で、古風な文章語。 <532> # 欲張り[よくばり] (欲) ## 欲張[よくば]り/貪欲[どんよく]/強欲[ごうよく] ### 使い分け例 **欲張り**・・・「欲張りの男がよく金を出したな。」同欲深。 **貪欲**・・・「貪欲な商売人。」「貪欲に知識を求める。」同貪婪。 **強欲**・・・「強欲に金を取り立てる。」 ### どう使い分けるか **欲張り**は、むやみに欲を出すこと、また、その人。同義の〈欲深〉とともに日常語で、〈欲張り〉の方がよく使われる。 **貪欲**は、自分のものにしようとする欲心が非常に強いこと。〈欲張り〉はそのような人の意の名詞としても使えるが、〈貪欲〉にその使い方はない。また物に対してだけでなく、知識などをむさぼるのにも使える。文章語。 **強欲**は、〈貪欲〉とほぼ同義の、やや古い感じのする文章語で、知識欲などの場合には使えない。悪いイメージがある。 # 汚す[よごす] ## 汚[よご]す/汚[けが]す/汚染[おせん]する ### 使い分け例 **汚す[よごす]**・・・「服を泥で汚す。」「互いに心を汚す。」「自分だけ手を汚そうとしない。」「お口を汚す。」 **汚す[けがす]**・・・「品性を汚す行為。」「家名を汚す。」「末席を汚す。」 **汚染する**・・・「空気を汚染する。」「政界が金で汚染される。」 ### どう使い分けるか **汚す[よごす]**は、きれいなものを汚くすることで、物について使うのが普通であるが、比喩的な使い方や慣用句もある。 **汚す[けがす]**は、やや文章語的な言い方で、具体的な物については用いず、精神的・倫理的な意味合いを持つ。 **汚染する**は、〈汚す〉と同義の漢語的な言い方で、おもに大気・水・土壌などの自然環境が有害物質で汚される場合に使う。しかし、比喩的用法もある。 <533> # 装う[よそおう] ## 装[よそお]う/粧[よそお]う/着飾[きかざ]る/めかす/御洒落[おしゃれ]する ### 使い分け例 **装う**・・・「礼服に身を装う。」「店の外観を新しく装う。」「平静を装う。」 **よそう**・・・「新調したスーツでよそい、出掛ける。」「ご飯をよそう。」 **着飾る**・・・「晴着で着飾る。」 **めかす**・・・「そんなにめかしてどこへ行くの。」「秘密めかす。」 **おしゃれする**・・・「おしゃれして出掛ける。」 ### どう使い分けるか **装う**は、身なりや外観を飾ったり整えたりする場合に用いるが、また本当はそうでないのにそれらしく見せかける意にも用いる。やや文章語的である。 **よそう**は、〈よそおう〉の意のほかに飯や汁などを食器に盛る意もある。くだけた日常語。 **着飾る**は、もっぱら服装に関して用いる。人目をひくような美しい衣服で身を飾る意。 **めかす**は、衣服だけでなく化粧などもして身を飾ることで、軽くひやかしたりする場合に使うことが多い。接尾語として、それらしく見せかける、の意もある。 **おしゃれする**も〈めかす〉とほぼ同義であるが、〈めかす〉の方がやや古い感じがあり、「めかす」人の年齢もやや高い感じを受ける。〈おしゃれする〉は比較的若い人たちが使い、ひやかしのニュアンスなどないようである。〈おしゃれする〉と動詞に用いるのが、まだ新しいからだろう。 # よそよそしい ## 余所余所[よそよそ]しい/素[そ]っ気[け]ない/素気[すげ]ない/水臭[みずくさ]い/無骨[ぶっきらぼう] ### 使い分け例 **よそよそしい**・・・「昨日とうってかわったよそよそしい態度だ。」「夫婦なのによそよそしくしている。」 <534> **素っ気ない**・・・「素っ気ない言い方。」 **すげない**・・・「すげなく断られる。」 **水臭い**・・・「友達だというのに水臭いぞ。」 **ぶっきらぼう**・・・「ぶっきらぼうに返事する。」 ### どう使い分けるか **よそよそしい**は、もともと親しい関係にある人に対して他人行儀に振る舞う場合に用いる。 **素っ気ない**は、相手が親しい間柄にある人かどうかは関係なく、その人の気持ちを無視して冷たい態度をとる場合に言う。 **すげない**も〈素っ気ない〉とほぼ同義で、対応の仕方が冷たくとりつくしまもないことであるが、〈素っ気ない〉よりやや文章語的な感じがある。 **水臭い**は、〈よそよそしい〉と同じく、親しい間柄であるのに他人行儀でよそよそしくなる場合に言うが、〈よそよそしい〉は、その人との親しい関係が迷惑でもあるかのように冷たい素振りを見せるのに対して、〈水臭い〉は逆に相手に遠慮して自ら身を隔てるような態度に用いる傾向がある。 **ぶっきらぼう**は、言動が丁寧でなく、愛想が悪いこと。親しみがいないというより、表現の仕方を知らないか、照れて親密に振る舞えない場合も多く、必ずしも悪い意味ではない。 # 世の中[よのなか] ## 世の中[よのなか]/社会[しゃかい]/世間[せけん]/世[よ] ### 使い分け例 **世の中**・・・「世の中が変わる。」「平和な世の中。」「世の中は意外と狭い。」「世の中のしきたり。」 **社会**・・・「社会に貢献する。」「弁護士の社会。」「蜜蜂の社会。」「地域社会。」「国際社会。」 **世間**・・・「世間を騒がす。」「世間がうるさい。」「あの人は世間が広いね。」「世間知らず。」「世間様。」 **世**・・・「世の常。」「世のならい。」「世をしのぶ。」「世をはかなむ。」 <535> ### どう使い分けるか **世の中**は、人が寄り集まって生活する広い場のことで、人間以外の生物には使わない。昔からよく用いられるくだけた言葉。 **社会**は、人間だけでなく生物一般にも使われる。〈世の中〉は人の住む世界、とくに人間関係を中心にした言い方であるのに対して、〈社会〉はそうした人の生活に付随する仕組み・組織なども広く含めた世の中全体という感じが強い。また、同業同類の人々が集まって形成する世界の意にも用いる。 **世間**は、〈世の中〉とほぼ同義であるが、「―の目を気にする」に〈世の中〉が使えないように、〈世間〉には自分に対する世の中の人々というニュアンスがある。また、自分の交際や活動の範囲の意にも用いる。 | | 世の中 | 社会 | 世間 | | :--- | :---: | :---: | :---: | | ―の大多数の人 | ○ | ○ | ○ | | ―を甘く見る | ○ | ― | ○ | | 人間― | ― | ○ | ― | | ―知らず | ― | ― | ○ | | 相撲― | ― | ○ | ○ | **世**は、〈世の中〉〈世間〉の意もあるが、古風で、やや雅語的。慣用的言い回しの中でよく使う。 # 夜更かし[よふかし] ## 夜更[よふか]かし/夜明[よあ]かし/徹夜[てつや]/徹宵[てっしょう] ### 使い分け例 **夜更かし**・・・「夜更かしは健康によくない。」「子供は夜更かしするな。」 **夜明かし**・・・「ディスコで夜明かしする。」 **徹夜**・・・「徹夜で勉強する。」「徹夜マージャン。」「二夜続けて徹夜する。」 **徹宵**・・・「徹宵語り合う。」「非番の者も徹宵し間に合わす。」 ### どう使い分けるか **夜更かし**は、徹夜とまではいかないが、かなり夜遅くまで起きていること。 **夜明かし**は、一晩じゅう寝ないで朝を迎えてしまうこと。 **徹夜**も〈夜明かし〉とほぼ同義の漢語だが、何かを精力的に、あるいは熱中してする場合に用いることが多い。 **徹宵**は、夜どおし、終夜の意で使うことが多いが、〈徹夜〉の意でも使う。文章語。 <536> # 夜[よる] (夕方) ## 夜[よる]/夜中[よなか]/夜更[よふ]け/夜間[やかん]/夜分[やぶん]/夜半[やはん]/深夜[しんや] ### 使い分け例 **夜**・・・「夜、外出する。」昼。 **夜中**・・・「夜中に目が覚める。」 **夜更け**・・・「人がみな寝静まった夜更け。」真夜中。 **夜間**・・・「夜間も営業する。」昼間。 **夜分**・・・「夜分お電話して申し訳ありません。」 **夜半**・・・「夜半から風雨が強まる。」 **深夜**・・・「深夜まで働く。」「深夜業。」 ### どう使い-分けるか **夜**は、日が暮れてから朝に明るくなるまでの暗い間で、宵と、夜明けに近い頃も含み時間的区分としてはこの語群中最も長く、用い方も広く一般的である。 **夜中**は、夜の中ほどで宵や夜明けに近い頃は含まないが、〈夜更け〉よりは幅のある感じがある。 **夜更け**は、夜になってかなり長い時間の過ぎた頃で、〈夜中〉よりも更に夜のまん中の感じである。 **夜間**は、やや文章語的な漢語で、「―中学」のように、夜の間じゅうではなく、夜の一部の時間にも使う。 **夜分**は、夜の時分の意で、本来は昼にあるべき、またすべきことが夜になったというような場合に使う。丁寧な会話表現として副詞的に用いることが多い。 **夜半**は、〈夜中〉の意の漢語で文章語。同じ漢字を当てる「よわ」は雅語である。「―に仕事をする」とはあまり言わないように、人間活動と結びつけて用いることは少なく、気象関係で用いる傾向が強い。 **深夜**は、〈夜更け〉の意の漢語で文章語。ちなみに「―業」は、労働基準法では、午後十時過ぎの就業を言い、テレビの「―放送」は午後十二時過ぎのを言う。 <537> # 因(由・依・縁)る[よる] ## 因[よ]る/基[もと]づく/因[ちな]む/則[のっと]る/依拠[いきょ]する ### 使い分け例 **因(由・依・縁)る**・・・「不注意に因る事故。」「軽犯罪法による罰則。」「成功は妻の力による。」「むちによる教育。」 **基づく**・・・「経験に基づいた判断。」 **因む**・・・「入学の日にちなんで植えた木。」「先祖にちなんだ命名。」 **則る**・・・「規約にのっとり勧告をする。」「正しい方式にのっとる。」 **依拠する**・・・「首相の方針に依拠するところが多い。」 ### どう使い分けるか **よる**は、そのことを原因・理由・根拠・基準・方法・手段などとする、の意で、漢字は、「因(縁)」は原因、「由」は理由、「依」は根拠・基準・道具・方法・手段などになる場合と、おおよその使い分けをするが、「因」以外は常用漢字表にヨルの読みがなく、かな書きするのが普通。 **基づく**は、その物事を根拠・基礎とする意で、〈よる〉の一部と同じになり、意味が狭い。やや文章語的である。 **因む**は、ある客観的な事柄に関係があったり縁があったりする、という場合に使う。 **則る**は、基準・模範としてそれに従う意。したがって自分の主観的な判断・経験などには使わない。 **依拠する**は、その事柄を根拠・基準にする意の漢語的文章語。「刃物に―殺人」などと言えないように〈依る〉より意味が狭い。 # 喜(悦・慶)び[よろこび] (うれしい・愉快) ## 喜[よろこ]び/歓喜[かんき]/喜悦[きえつ]/愉悦[ゆえつ]/狂喜[きょうき] ### 使い分け例 **喜(悦・慶)び**・・・「喜びにあふれる。」「お慶びを申し上げます。」悲しみ。 <538> **歓喜**・・・「歓喜の歌声。」 **喜悦**・・・「喜悦の涙。」 **愉悦**・・・「愉悦にひたる。」 **狂喜**・・・「逆転勝利に狂喜する。」 ### どう使い分けるか **喜び・悦び**は、うれしく満足に思うこと。**慶び**は、めでたく思うこと、まためでたいこと。 **歓喜**は、〈喜び〉よりいっそうその度合いが大きく、興奮して大喜びする意の漢語で文章語。 **喜悦・愉悦**は、いずれもかたい文章語。前者はその喜びがストレートに外面に表れ、後者は内面にひたひたとしみわたる感じを表す傾向がある。 **狂喜**は、〈歓喜〉よりも更に度合いが大きく狂わんばかりの喜び。 # 弱い[よわい] ## 弱[よわ]い/脆[もろ]い/か弱[よわ]い/ひ弱[よわ]/脆弱[ぜいじゃく]/虚弱[きょじゃく]/弱弱[よわよわ]しい ### 使い分け例 **弱い**・・・「体力が弱い。」「意志が弱い。」「弱いモーター。」「弱い電圧。」強い。 **脆い**・・・「もろい壁。」「精神的にもろい。」「情にもろい。」「涙もろい。」 **か弱い**・・・「か弱い体でよく働く。」「か弱い女の細腕。」 **ひ弱**・・・「ひ弱な感じの子。」 **脆弱**・・・「脆弱な構造の橋。」「脆弱な体。」 **虚弱**・・・「虚弱な体質。」「虚弱児。」 **弱弱しい**・・・「弱々しい声。」「弱々しい夕暮れの光。」 ### どう使い分けるか **弱い**は、何かをする力・能力・勢いなどが乏しい意で、物理的力・体力・物事の勢い・精神力など多方面に用いる。 **脆い**は、外から加えられる力に対して砕けたりこわれたりしやすい、また持ちこたえる力が弱い意。また何かの働きかけに対して心が動かされやすく、感じやすい意にも用いる。 **か弱い**は、〈弱い〉に「か」という意味を強調する接頭語が付いた言葉で、見るからに弱々しい感じの意。 <539> 女や子供に対して用いることが多い。 **ひ弱**は、いまにも病気になりそうなほど生きる力に乏しく弱々しい意で、〈か弱い〉は見た感じとして言うが〈ひ弱〉は特にそういう意味合いではない。 **脆弱**は、〈脆い〉とほぼ同義の漢語で文章語。しかし「情に―」に〈脆弱〉は使えない。 **虚弱**は、〈ひ弱〉とほぼ同義の漢語で文章語。人間の体に関して用いることが多い。 **弱弱しい**は、いかにも弱そうに感じられる、の意。〈か弱い〉の意味に近いが、それが主に人間の体について言うのに対し、〈弱弱しい〉は様々な事物について言える。 # 来年[らいねん] ## 来年[らいねん]/翌年[よくねん]/明[あ]くる年[とし]/明年[みょうねん]/後年[こうねん] ### 使い分け例 **来年**・・・「来年の計画。」「来年のことを言うと鬼が笑う。」去年。 **翌年**・・・「彼の生まれた翌年に弟が生まれた。」前年。 **明くる年**・・・「頼朝挙兵のあくる年に平清盛は死んだ。」 **明年**・・・「明年五月の完成を期している。」昨年。 **後年**・・・「事件の真相が後年になってわかった。」先年。 ### どう使い分けるか **来年**は、今年に対して次の年を言う。 **翌年**は、次の年で、〈来年〉が現在を基準にして次の年を言うだけなのに対し、〈翌年〉は過去や未来のある年を基準に言うこともできる。〈よくねん〉と言うとやや文章語的で、〈よくとし〉は一般的な話し言葉である。 **明くる年**は〈翌年〉と同義の連語だが、〈翌年〉に比べやや古風な感じがある。 <540> **明年**は、〈来年〉と同義のかたい文章語である。 **後年**は、そのことがあった何年か後の年を言い、次の年だけを言うのではない。 # 乱暴[らんぼう] ## 乱暴[らんぼう]/暴行[ぼうこう]/凶行[きょうこう]/蛮行[ばんこう]/狼藉[ろうぜき] ### 使い分け例 **乱暴**・・・「乱暴な振る舞いをする。」「乱暴者。」 **暴行**・・・「暴行の疑いで逮捕される。」「暴行を働く。」「婦女暴行。」 **凶行**・・・「逆上して凶行に及ぶ。」 **蛮行**・・・「ならず者の蛮行に憤る。」 **狼藉**・・・「狼藉を働く。」「落花狼藉。」 ### どう使い分けるか **乱暴**は、正当な理由なく力ずくで相手を傷付けたり迷惑をかけたりする行為を言う。 **暴行**は、暴力をふるって相手の心身を傷付けるという意味で〈乱暴〉と同じだが、特に女性に対する性的暴力を言う場合がある。 **凶行**は、殺人など特に残忍な行為について言う。 **蛮行**は、理性や知性の全く見られない乱暴で粗野な行為を言い、文章語として使われる。 **狼藉**は、取り散らかっていて全く秩序の見られない状態を言う語だが、転じて〈乱暴〉と同義に用いられる。 # 理[り] (論理) ## 理[り]/ことわり/道理[どうり]/真理[しんり]/原理[げんり]/原則[げんそく] ### 使い分け例 **理**・・・「理の当然。」「盗人にも三分の理。」「陰陽の理を説く。」 **ことわり**・・・「物事のことわりをわきまえる。」「ことわり無しとしない。」 **道理**・・・「道理にかなう。」「無理が通れば道理が引っ込む。」 <541> 「そうするのが道理というものだ。」 **真理**・・・「真理を探求する。」「彼の言うことには一面の真理がある。」 **原理**・・・「磁石の原理を応用する。」「アルキメデスの原理。」「多数決の原理。」 **原則**・・・「原則を設けて話し合う。」「全員参加を原則とする。」「原則として女だけ入れる。」例外。 ### どう使い分けるか **理・ことわり**は、物事の筋道として冷静に客観的に判断すればだれにでも明白に納得できる当然のこと。理由、わけの意もある。どちらも文章語で、前者は漢文脈の、後者は和文脈の文体に用いられる。慣用としてどちらか一方が使われることが多い。 **道理**は、〈理〉〈ことわり〉とほぼ同義で用いられるが、これらよりややくだけた、一般的に使われる言葉である。 **真理**は、その物事についてはいついかなる場合にも当てはまり、それ以外には考えられない判断や認識を言う。〈理〉よりも厳密な内容を持つ。また、〈理〉の同意語としても使われることがある。 **原理**は、多くの物事がそれによって説明できる根本的な自然界の秩序や社会的な決まりを言う。「・・・の原理」の形で使うことが多い。 **原則**は、大部分に当てはまりいろいろな場合に適用される基本的な決まりを言う。〈原理〉が物事を成り立たせている根拠そのものであるのに対し、〈原則〉は人為的なものである。 # 利益[りえき] ## 利益[りえき]/収益[しゅうえき]/純益[じゅんえき]/利潤[りじゅン]/利[り]ざや/儲[もう]け/得分[とくぶん]/実益[じつえき] ### 使い分け例 **利益**・・・「国に利益をもたらす事業。」「売買で利益を上げる。」 **収益**・・・「収益を配分する。」 **純益**・・・「バザーの純益は寄付する。」 **利潤**・・・「企業は利潤を追求する。」 **利ざや**・・・「転売で利ざやを稼ぐ。」 **もうけ**・・・「もうけの多い仕事を捜す。」 <542> **得分**・・・「残りを得分としてもらう。」 **実益**・・・「趣味と実益をかねる。」 ### どう使い分けるか **利益**は、都合がよかったり役に立ったりする事物、特に事業や運用によって増加し自己の所有に帰した金銭について言う。 **収益**は、事業などによってあげた利益金のことで、〈利益〉の場合と違い金銭的なものについてのみ言う。 **純益**は、すべての収入金から必要経費を控除して残った利益金を言う。〈利益〉〈収益〉に対して必要経費についての処理がいっそう厳密である。 **利潤**は、総収入から一切の必要経費を差し引いた残りを言い、経済用語として企業の場合の〈純益〉について使用する。 **利ざや**は、取引売買の差額として手に入れる金銭を言う。売買による〈収益〉である。 **もうけ**は、〈利益〉のくだけた言い方で、金銭にも物品にも用いる。 | | 利益 | 収益 | 利潤 | もうけ | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | ―の多い仕事 | ○ | ○ | ○ | ○ | | ―を上げる | ○ | ○ | ○ | ○ | | 公共の―を図る | ○ | ― | ― | ― | | ―になる話 | ○ | Δ | ○ | ○ | | ぼろい―を聞く | ― | ― | ― | ○ | **得分**は、〈利益〉の古風な言い方である。 **実益**は、見かけだけではない実際の〈利益〉のことで、〈純益〉と違って金銭以外にも用いる。 # 利口[りこう] ## 利口[りこう]/賢[かしこ]い/賢[さか]しい/小賢[こざか]しい/賢明[けんめい]/聡明[そうめい]/利発[りはつ]/聡[さと]い/怜悧[れいり] ### 使い分け例 **利口**・・・「利口な子供。」「利口に立ち回る。」 **賢い**・・・「この猫は賢い。」「賢い消費者。」 **賢しい**・・・「賢しい口を利く。」 **小賢しい**・・・「小賢しい若僧だ。」 **賢明**・・・「賢明な人。」「賢明な処置をする。」「そうするのが賢明だ。」 <543> **聡明**・・・「聡明な君主。」明敏。 **利発**・・・「利発な少年。」発明。 **さとい**・・・「さとく育つ。」「利にさとい。」 **怜悧**・・・「怜悧な頭脳の持ち主。」 ### どう使い分けるか **利口**は、ことに当たって頭の回転が速く、物わかりのよいことの意で、要領がよく抜け目がないという悪い意味に用いることもある。 **賢い**は、頭が鋭く働き才知が優れている様子を言う。多く畏敬の念を込めて評する言葉だが、まれに反語的に抜け目がない意で用いることもある。 **賢しい**は、しっかりした判断力を持っているという意で〈賢い〉の古風なまたは方言的な言葉であるが、利口ぶって生意気だという感じで使われることがあり、**小賢しい**となるとその意味や悪賢いの意味でしか使われない。 **賢明**は、頭がよく道理に明るいことを言うが人の性質よりも処置や方法について言うことが多い。 **聡明**は、〈賢い〉と同義の漢語だが、人格的に優れているという気持ちを表すことが多い。〈賢明〉〈聡明〉は〈利口〉よりも物事の本質や理非をよくわきまえている場合に使い、共に文章語。 **利発**も、〈賢い〉と同義の漢語で、文章語的だが、以前は日常的にもよく使われた。年少者に言うことが多い。 **さとい**は、〈賢い〉のやや古風な言い方である。 **怜悧**は、〈利口〉の意のかたい文章語だが、人の性質についてだけ言い、処置や方法などには用いない。 # 立派[りっぱ] ## 立派[りっぱ]/見事[みごと]/素晴[すば]らしい/素敵(素的)[すてき] ### 使い分け例 **立派**・・・「立派な青年になる。」「立派な成績を収める。」 **見事**・・・「花が見事に咲いている。」「見事にやってのける。」 **素晴らしい**・・・「すばらしい出来映えだ。」「すばらしい天気だ。」 **すてき**・・・「すてきな洋服を着ている。」「なんとすてきな家だこと。」 <544> ### どう使い分けるか **立派**は、特に劣っている点が認められず充実した様子がみられることである。 **見事**は、出来映えや結果がきれいに整っていて一見の価値がある様子を言う。〈立派〉が内容にまで入った評価なのに対し、〈見事〉は外見からの評価である。 **素晴らしい**は、〈立派〉よりも称賛の度合いが強く、感嘆の気持ちがある。 **すてき**は、〈素晴らしい〉の「素」に「的」をつけた語といわれ、同じ意味で用いられるが、軽く、ちょっとしゃれた感じがある。多く女性が用いる。 # 了解[りょうかい] ## 了解[りょうかい]/了承[りょうしょう]/納得[なっとく]/合点[がてん]/得心[とくしん] ### 使い分け例 **了解**・・・「相手の了解をとる。」「意味を了解する。」 **了承**・・・「申し出に了承を与える。」「相手の希望を了承する。」 **納得**・・・「納得のいく説明を受ける。」「納得した上で契約する。」 **合点**・・・「それを聞いて合点した。」「どうしても合点がいかない。」「よし! 合点だ。」 **得心**・・・「得心のいくまで話し合う。」「双方得心して手を打つ。」 ### どう使い分けるか **了解**は、事情などがはっきりわかって聞き入れたり許したりすることを言う。単に言葉や信号の意味がわかることにも使う。 **了承**は、〈了解〉とほぼ同義だが、わかっただけでなく相手の意志をよしとし引き受けてやるという意味合いである。 **納得**は、物事の意味やわけ、他の人の考えなどをよく理解し頭に入れることだが、〈了解〉〈了承〉の場合と違い、積極的に相手の意志をよしとする意味合いはなく、意味・考えはよくわかるということに重点がある。 **合点**は、〈了解〉の意のやや古風な言い方である。 <545> **得心**は、十分に納得・承知することで、やや古風な言葉である。 | | 了解 | 了承 | 納得 | 合点 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | 事情を―する | ○ | ○ | ○ | ○ | | 申し出に―を与える | ― | ○ | ― | ― | | ―できる | ○ | ○ | ○ | ○ | | 意味は― | ○ | ― | ○ | ○ | | ―がいかない | ― | ― | ○ | ○ | # 領土[りょうど] ## 領土[りょうど]/国土[こくど]/領地[りょうち]/領分[りょうぶん]/領域[りょういき]/地盤[じばん]/縄張[なわば]り ### 使い分け例 **領土**・・・「領土の保全を図る。」「日本の領土。」 **国土**・・・「国土を開発する。」 **領地**・・・「他国の領地に入る。」「徳川家の領地。」所領。 **領分**・・・「自国の領分を守る。」「他人の領分を侵す。」 **領域**・・・「自国の領域を定める。」「芸術の領域。」テリトリー。 **地盤**・・・「父の地盤を譲られた二世議員。」 **縄張り**・・・「駅前を縄張りとする。」 ### どう使い分けるか **領土**は国家の主権の及ぶ範囲内の土地を言う。**国土**も〈領土〉と同様の土地を指すが、〈領土〉は対外的な視点からの言葉であり、〈国土〉は国内的な視点で言う。 **領地**は、広義には〈領土〉と同じだが、狭義には武家社会で大名や寺社が領有した土地を言う。 **領分**は、〈領地〉と同義に用いられたが、今ではそのものの勢力の及ぶ範囲や専門分野などの意で使う。**領域**は、領有する区域の意で、国際法上は国家の主権の及ぶ〈領土〉・領海・領空のすべてを言う。一般的には〈領分〉同様、その専門が担当する範囲の意味で使うことが多い。〈領域〉の方がやや硬い感じがある。 **地盤**は、建造物の土台となる土地の構造の意味から転じて、ある土地や場所に密接に関係した勢力範囲を表す。 **縄張り**は、他から介入を受けないようにしてある一定の土地やある者の勢力範囲を言う。法的に、あるいは公式に決められたものでなく、関係者の間に暗黙の了解として存在するようなものである。 <546> # 両立[りょうりつ] ## 両立[りょうりつ]/並立[へいりつ]/連立[れんりつ]/並存(併存)[へいそん]/共存[きょうそん] ### 使い分け例 **両立**・・・「仕事と家庭が両立する。」「勉学と運動との両立。」 **並立**・・・「並立の関係。」「二つの会社が並立している業界。」 **連立**・・・「三党が連立して作る政権。」「連立方程式。」 **並存**・・・「東西両文化の並存。」「新旧の物が並存している。」 **共存**・・・「両者の共存はあり得ない。」「仏教と神道が共存する。」 ### どう使い分けるか **両立**は、相対する二つのものが共に無理なく存在すること。 **並立**は二つ以上のものが同時に存在することだが、〈両立〉に比べて並ぶものの関連は薄く単なる存在のみを示す用法である。 **連立**は、〈並立〉と同様三つ以上にも使うことができるが、それぞれが関連しているものの場合である。また、内容や立場が違っていても、取りあえずまとまった一つの組織をつくるという意もある。 **並存**は、二つ以上のものが同じところに同時に存在することを言う。〈両立〉〈並立〉が行為など具体的なものについて言うのに対し、〈並存〉は思想など抽象的なものにも使用できる。 **共存**は、本来異質な二つのものが密接な関連を持ちながら同時に存在する場合に用いる。 # 旅館[りょかん] ## 旅館[りょかん]/宿屋[やどや]/宿[やど]/ホテル/宿舎[しゅくしゃ]/民宿[みんしゅく]/ペンション ### 使い分け例 **旅館**・・・「駅前の旅館。」「割烹旅館。」 **宿屋**・・・「宿屋の女将。」「昔の宿屋。」 **宿**・・・「行った先で宿を取る。」 <547> **ホテル**・・・「ホテルのロビーで会う。」 **宿舎**・・・「選手団は宿舎に入った。」 **民宿**・・・「夏は民宿が繁盛する。」 **ペンション**・・・「サラリーマンを辞めてペンションを経営する。」 ### どう使い分けるか **旅館**は、旅行客を宿泊させる営業の施設で和風のものを言う。 **宿屋**は、〈旅館〉のやや古風で俗な言い方である。 **宿**は、〈宿屋〉と同じ意味で用いられるほか、和風・洋風・営業・非営業を問わず旅先で宿泊する所を広く言う語でもある。 **ホテル**は、西洋風の宿泊設備(具体的にはベッド・バス・トイレが各室についていることなど)のある〈旅館〉を言う。 **宿舎**は、〈宿〉と同意の漢語の文章語だが、公共機関・企業・学校などが、職員・従業員・生徒などのために用意する宿泊施設を言うことが多い。ただし、「国民―」は、主に地方自治体が大衆向けに低料金で営業する旅館である。 **民宿**は、普通の民家が副業として経営する小規模で簡単な宿泊施設を言う。 **ペンション**は、〈民宿〉の、西洋風の設備を持ったものを言う。 # 履歴[りれき] ## 履歴[りれき]/経歴[けいれき]/前歴[ぜんれき]/素性(素生・素姓)[すじょう]/キャリア ### 使い分け例 **履歴**・・・「履歴を偽って就職する。」「履歴書。」 **経歴**・・・「珍しい経歴の持ち主。」「著者の経歴。」 **前歴**・・・「彼には暗い前歴がある。」 **素性(素生・素姓)**・・・「素性の知れない人物。」「氏素姓。」 **キャリア**・・・「運転のキャリアが少ない。」「大蔵省のキャリア組。」「キャリアウーマン。」 ### どう使い分けるか **履歴**は、その人が今までに経験してきた学業・職業・賞罰など、公式に発表できる事項を言う。 <548> **経歴**は、〈履歴〉よりも私的なものを含む経験を言う。 **前歴**は〈経歴〉と同義だが、他人には知られたくない嫌な経験を特に含む場合がある。 **素性**は、その人の生まれた家柄や血筋なども含めた経歴を言う。 **キャリア**は、英語careerから来た、〈経歴〉と同義の話し言葉。また、国家公務員で最上級の試験に受かり、エリートコースにある者を言う。なお「―ウーマン」は経験も才能もある職業女性の意。 # 臨終[りんじゅう] ## 臨終[りんじゅう]/今際[いまわ]/末期[まつご]/最期[さいご]/死期[しご] ### 使い分け例 **臨終**・・・「友の臨終に間に合う。」 **いまわ**・・・「いまわの際に言い残す。」 **末期**・・・「末期の水を飲ませる。」 **最期**・・・「華々しい最期を遂げた。」 **死期**・・・「死期が迫っている。」 ### どう使い分けるか **臨終**は、人が死ぬ間際の時。 **いまわ**は、「今は限り」から出た〈臨終〉と同義の雅語。**末期**も同義の漢語の文章語である。 **最期**は、人の死の間際を言うが、〈臨終〉が自然死について使うのに対し、〈最期〉は戦死や事故などによる不慮の死にも用いる。 **死期**は、死を迎える頃で〈臨終〉よりは長い期間を指す。 # 留守[るす] ## 留守[るす]/不在[ふざい]/外出[がいしゅつ]/他行[たぎょう] ### 使い分け例 **留守**・・・「留守を守る。」「留守番。」 **不在**・・・「社長はただいま不在です。」「その現場には不在であった。」 **外出**・・・「外出の際は留守番をおく。」「母は外出しております。」 <549> **他行**・・・「父は他行している。」他出。 ### どう使い分けるか **留守**は、外出をして自宅にいないことを言う。また、勤務先など普段いる所にいない場合にも用いる。 **不在**は、その場にいないことを言い、必ずしも自宅や平常の居場所にこだわらない。 **外出**は、前の二語とはやや異質で、類語とは言えないかもしれないが、〈外出〉すれば当然〈留守〉〈不在〉になり、いわば表裏の関係にある語である。自宅や勤務先などから外に出掛けること。 **他行**は、〈外出〉と同義のかなり古風な言葉で、文章語としてもめったに使われない。 # 礼儀[れいぎ] ## 礼儀[れいぎ]/作法[さほう]/行儀[ぎょうぎ]/礼法[れいほう]/エチケット/マナー ### 使い分け例 **礼儀**・・・「礼儀正しく行動する。」「礼儀作法。」 **作法**・・・「食事の作法を習う。」「小説作法。」「無作法。」 **行儀**・・・「この子は行儀がよい。」「行儀の悪い話をする。」「行儀見習い。」「他人行儀。」 **礼法**・・・「動作が礼法にかなっている。」礼式。 **エチケット**・・・「室内では男は帽子を取るのがエチケットである。」 **マナー**・・・「車内のマナーを心得る。」「喫煙者のマナーが悪い。」 ### どう使い分けるか **礼儀**は、相手に敬意を表すための言動の仕方。 **作法**は、対人関係を良好に保つための言葉や態度などの決まったやり方、また、一般に物事のやり方を言う。〈礼儀〉がその根底に相手に対する精神的なものがあるのに対し、〈作法〉は形式的な言動を主とする。 <550> **行儀**は、立ち居振る舞いの態度を言う。〈礼儀〉という観点から見て評価をするときに用いる。 | | 礼儀 | 作法 | 行儀 | | :--- | :---: | :---: | :---: | | ―をわきまえる | ○ | ○ | ― | | ―を知らない子供 | ○ | ○ | ○ | | 食事の―が悪い | ― | ○ | ○ | | ―を尽くす | ○ | ― | ― | **礼法**は、〈礼儀〉と〈作法〉を合わせた表現で、一般的な対人関係の敬意の表現を言うが、〈作法〉と同じ意味で使われることもある。 **エチケット**は、〈礼法〉と同義の話し言葉である。フランス語 etiquette から。 **マナー**は、〈行儀〉と同義の話し言葉。英語 manner から。 # 練習[れんしゅう] ## 練習[れんしゅう]/稽古[けいこ]/訓練[くんれん]/修練(修鍊)[しゅうれん]/鍛練(鍛鍊)[たんれん] ### 使い分け例 **練習**・・・「字を練習する。」「練習が不足している。」習練。 **稽古**・・・「相撲の稽古をする。」「稽古して上達する。」「お稽古事。」 **訓練**・・・「職業訓練所。」「犬を訓練する。」 **修練**・・・「修練を積む。」「武芸百般の修練に励む。」「ヨガによって精神を修練する。」 **鍛練**・・・「鍛練を重ねて身体を作る。」「精神を鍛練する。」 ### どう使い分けるか **練習**は、技術や芸事などが上達するように、何度も繰り返して習い身に付けることを言う。 **稽古**は、〈練習〉のやや古風な言い方だが、特に武術や芸能を習う場合に用いる。 **訓練**は、習熟するように教えて身に付けさせることを言う。〈練習〉〈稽古〉が自らの行為に使うのに対し、〈訓練〉は他からの働きかけによる場合に用いる。 **修練**は、人格・精神・学問・技術などを磨き、鍛えることで、技術であっても精神的・人格的なものが伴うような場合に使う。 <551> **鍛練**は、金属を打って鍛えるように、厳しい〈練習〉や〈訓練〉によって心身を強く立派にすることを言う。〈練習〉のように技能を伸ばす意には用いない。 # 牢[ろう] ## 牢[ろう]/牢屋[ろうや]/牢獄[ろうごく]/監獄[かんごく]/刑務所[けいむしょ]/拘置所[こうちしょ] ### 使い分け例 **牢**・・・「牢につながれる。」「牢破り。」「牢名主。」「座敷牢。」 **牢屋**・・・「牢屋に入れる。」同獄舎。 **牢獄**・・・「牢獄に投じる。」 **監獄**・・・「監獄にぶち込まれる。」「監獄法。」 **刑務所**・・・「刑務所で罪を償う。」 **拘置所**・・・「保釈金を積み、拘置所を出される。」 ### どう使い分けるか **牢**は、罪人を捕らえて閉じ込めておくところを言う古い言葉。 **牢屋**は〈牢〉のある建物のことで、〈牢〉と同義にも用いられる。かつての日常語。 **牢獄**は、〈牢〉と同義の古風な文章語である。 **監獄**は、刑事被告人や刑の決まった者を収容する施設のことで、刑務所と拘置所などを含む。現在、具体的な施設の名称としては〈刑務所〉〈拘置所〉などが使われるので〈監獄〉はあまり使われない。 **刑務所**は、監獄の一つで懲役・禁鋼などの刑の者を収容する施設、**拘置所**は刑事被告人や死刑の判決を受けた人を収容する施設を言う。 # 浪費[ろうひ] ## 浪費[ろうひ]/濫費(乱費)[らんぴ]/無駄遣[むだづか]い/空費[くうひ]/散財[さんざい] <552> ### 使い分け例 **浪費**・・・「金銭を浪費する。」「時間の浪費。」徒費。 **濫費(乱費)**・・・「国費を濫費する。」 **無駄遣い**・・・「無駄遣いをしないで貯金する。」「税金の無駄遣い。」 **空費**・・・「金と時間を空費しただけであった。」「才能の空費。」 **散財**・・・「料亭で散財する。」 ### どう使い分けるか **浪費**は、金銭や物品、労力などを不必要な物事に使ってしまうことを言うやや文章語的な言葉。 **濫費**は、〈浪費〉と同義のかたい文章語。 **無駄遣い**は、〈浪費〉と同義の日常語。 **空費**も、〈浪費〉と同じ意味だが、〈浪費〉〈濫費〉が何回にもわたって出費した場合に用いるのに対して、〈空費〉は一回限りの場合にも用いることができる。 **散財**は、金銭をむやみに費やすことで、〈濫費〉がいろいろな場面に用いられるのに対し、遊興について使う言葉である。 〔注意〕〈濫費〉の「濫」は新聞では「乱」と書いている。 # 論理[ろんり] (理) ## 論理[ろんり]/理路[りろ]/理屈[りくつ]/条理[じょうり]/辻褄[つじつま] ### 使い分け例 **論理**・・・「論理が飛躍する。」「論理的に物事を考える。」「ぬすっとの論理。」「社会発展の論理。」 **理路**・・・「彼の発言は理路が通っている。」「理路整然。」 **理屈**・・・「その話は理屈に合わない。」「理屈っぽい男。」「へ理屈をこねる。」 **条理**・・・「条理にかなった説明をする。」「不条理。」 **つじつま**・・・「話のつじつまを合わせる。」 ### どう使い分けるか **論理**は、正しい結論を導き出すための、考え方の筋道や法則的なつながりを言う。また、実際に行われている推理の仕方、客観的事物間の法則的なつながりをも言う。 <553> **理路**は、話や文章などの構成の仕方で、〈論理〉の上から見た筋道を言う。〈論理〉〈理路〉は文章語である。 **理屈**は、筋の通った、もっともな考え方を言い、〈論理〉と同義に使われる日常語。また、自己の言動を正当化するための、一応筋が通っているかのような理由づけを言うこともある。 **条理**は、言動の上で通っているべき一貫した筋道を言う。かたい文章語である。 **つじつま**は、本来一貫しているはずの話の筋道のことを言う。日常語。「―が合う」「―を合わせる」の形で使うのが普通。 # わがまま ## 我が儘[わがまま]/気儘[きまま]/勝手[かって]/自分勝手[じぶんかって]/奔放[ほんぽう] ### 使い分け例 **わがまま**・・・「わがままな性格。」「わがままに振る舞う。」 **気まま**・・・「気ままな生活をする。」 **勝手**・・・「勝手な行動は許さない。」「勝手に他人のものを使う。」 **自分勝手**・・・「自分勝手な行動が目立つ。」 **奔放**・・・「奔放な性格。」「自由奔放に振る舞う。」 ### どう使い分けるか **わがまま**は、他人の都合や気持ちなどは考えずに、自分の好きなように考えたり行動したりする様子を言う。 **気まま**は、何の束縛も受けずに思い通りに行動する様子を言う。〈わがまま〉が常によくない評価を伴うのに対し、〈気まま〉は大らかに振る舞う良いイメージで使うことができる。 **勝手**は、しかるべき手続きを取らず、自分一人の判断で行動する様子を言う。〈わがまま〉〈気まま〉が性格や抽象的なことにも言うのに対し、〈勝手〉は具体的な行動について用いる。 <554> **自分勝手**は、〈勝手〉と同義だが、特に他人の迷惑を顧みないという悪い評価を強調した言い方。 **奔放**は〈気まま〉の意の漢語で文章語。 | | わがまま | 気まま | 勝手 | 奔放 | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | ―に振る舞う | ○ | ○ | ○ | ○ | | ―な性格 | ○ | ○ | ○ | ○ | | ―が悪い | ○ | Δ | ○ | Δ | | ―で困る | ○ | ― | ○ | ― | | ―に金を使う | ― | ― | ○ | ○ | # 別れ[わかれ] ## 別[わか]れ/分[わか]れ/別離[べつり]/離別[りべつ]/決別[けつべつ] ### 使い分け例 **別れ**・・・「友との別れを惜しむ。」「しばしの別れ。」 **分かれ**・・・「枝の分かれ。」「道の分かれに立つ。」 **別離**・・・「妻子との別離を嘆く。」 **離別**・・・「夫婦離別の危機がくる。」 **決別**・・・「同志に決別を告げる。」 ### どう使い分けるか **別れ**は、それまで一緒にいた者が違った場所に離れていくことを言う。 **分かれ**は、何かの途中から枝のように複数の違った方向に伸びていること、また二股になった部分を言う。人が別れることに用いることはあまりない。 **別離**は、〈別れ〉の意の漢語の文章語だが、親しい人とやむを得ず別れるという感じがある。 **離別**は〈別離〉と同じ意味だが、特に夫婦間の離縁や別居を言う用法がある。 **決別**は〈別れ〉の意で〈別離〉より更にかたい文章語であるが、〈別れ〉が再び会う場合も含むのに対し、〈決別〉はきっぱりと永遠に別れてしまうという意味がある。 〔注意〕〈決別〉は〈訣別〉の書き換え。〈離別〉〈決別〉は「―する」と言える。 # 枠[わく] ## 枠[わく]/縁[ふち]/縁[へり]/外郭[がいかく]/輪郭[りんかく]/アウトライン <555> ### 使い分け例 **枠**・・・「コンクリートを流す枠。」「予算の枠。」 **縁[ふち]**・・・「眼鏡の縁。」「目の縁を赤くする。」 **へり**・・・「畳のへり。」「川のへりをぶらつく。」 **外郭**・・・「建物の外郭は石の壁だった。」「環境庁の外郭団体。」 **輪郭**・・・「顔の輪郭を描く。」「事件の輪郭をつかむ。」 **アウトライン**・・・「花のアウトラインを描く。」「計画のアウトラインを発表する。」「文章のアウトライン。」 ### どう使い分けるか **枠**は、ある物の回りを取り囲んでその周囲の部分と区切るものを言う。 **縁[ふち]**は、ある物や場所が回りの部分と接する部分を言う。〈枠〉がその物とは別の異質なもので囲むのに対し、〈縁〉はそのものと同質かその一部として意識されるものの外周を言う。 **へり**は広がりをもった場所などの一番外側の部分を言う。 **外郭**は、外の囲いとなる構造物を言う。〈枠〉と違いかなり大きな建物を言うことができる。また、外部の組織を言うこともある。 **輪郭**は、①ある物を形作っている周囲の線、②顔だち、③物事のあらまし・概要、を言う。 **アウトライン**は、〈輪郭〉の①と③の意で使う。英語 out line からきた語。 # 訳[わけ] ## 訳[わけ]/理由[りゆう]/根拠[こんきょ]/原因[げんいん]/故[ゆえ] ### 使い分け例 **訳**・・・「そうなった訳を話す。」「何だか訳が分からない。」 **理由**・・・「やめる理由。」「遅刻の理由を述べる。」「提案理由。」「理由書。」同事由。 **根拠**・・・「法律を根拠に行動する。」「根拠のないうわさ話。」 **原因**・・・「事故の原因は不明である。」「成功の原因。」結果。 **故**・・・「故なきしうちを受ける。」「素人であるが故の失敗。」同由。 <556> ### どう使い分けるか **訳**はそのようになった事情や、なぜそうなったのかという事情を言う。また、意味内容も言う。 **理由**は、〈訳〉の意の漢語だが、その人の行為や出来事がなぜそうなったかを、正当化したりつじつまを合わせたりする、言い訳の意にも使う。〈訳〉よりもややかたい文章語である。 **根拠**は、行動や主張のもとになる事柄を言う。〈理由〉が主観的なのに対し、〈根拠〉は客観的なものに基づく言い方である。 **原因**は、ある状態や物を引き起こすもとになった事柄を言う。〈理由〉は当事者が意識しているものを言うが、〈原因〉は当事者が意識していないか関知していないものを含めて言う。 **故**は、そのようになった特別の事情という意味の、かたい文章語である。 # 分ける[わける] (分解) ## 分[わ]ける/仕切[しき]る/区切[くぎ]る/分[わ]かつ/離[はな]す/裂(割)[さ]く ### 使い分け例 **分ける**・・・「グループに分ける。」「財産を分ける。」「草を分けて進む。」「少しの米をみんなで分ける。」 **仕切る**・・・「机を積み上げて教室を二つに仕切る。」 **区切る**・・・「ここで話をひとまず区切る。」「土地をくいで区切る。」 **分かつ**・・・「食料を分かち合う。」「たもとを分かつ。」「利益を分かつ。」 **離す**・・・「道から離して木を植える。」「二人を引き離す。」 **裂(割)く**・・・「布を裂く。」「魚をさく。」「仲をさく。」「土地を割いて与える。」「時間を割く。」 ### どう使い分けるか **分ける**は、ひとまとまりになっている全体をいくつかの部分に離す、の意。分けて配るの意もある。 **仕切る**は、何かで隔てていくつかの部分にする意で、結果的に〈分ける〉ことになる。 **区切る**は、境目を明瞭にしながらいくつかの部分にまとめていく意で、〈仕切る〉のように別のものを置いて隔てとする必要は必ずしもない。 <557> いくつかの部分にまとめていく意で、〈仕切る〉のように別のものを置いて隔てとする必要は必ずしもない。 **分かつ**は、〈分ける〉の文章語的な言い方である。 **離す**は、二つ以上のものを互いに付かないように別々のところに置く意である。 **裂(割)く**は、本来一つのものを二つ以上の部分にする意で、無理にというニュアンスが含まれることが多い。 # わざと ## 態と[わざと]/故意に[こいに]/殊更に[ことさらに]/態々[わざわざ] ### 使い分け例 **わざと**・・・「わざと困らせる。」「わざと転んでみせる。」 **故意に**・・・「故意にぶつかる。」⇔偶然。 **殊更**・・・「人前でことさら泣いてみせる。」「ことさら強調する。」 **わざわざ**・・・「事故をわざわざ見に行く。」「わざわざお越しいただく。」 ### どう使い分けるか **わざと**は、物事を意図的ではないふりをして意図的に行うさまで、多くはあまり好ましくないという意味合いを込めて使う。 **故意に**は、〈わざと〉と同義の漢語的文章語。よくないことを承知の上で何かする場合に使うことが多い。 **殊更**は、〈わざと〉と同義のやや雅語的な言い方だが、特別改まって何かする場合にも用いる。 **わざわざ**は、そのことのために特別に何かするさまを言う。〈わざと〉と違い、好意的な行為にも用いる。 | | ―遠回りする | ―ぶつかる | 遠路―来てくれる | ―言うことはない | 今年の夏は―暑い | | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | :--- | | **わざと** | ○ | ○ | | | | | **故意に** | | ○ | | | | | **ことさら**| | | | ○ | ○ | | **わざわざ**| ○ | | ○ | | | # 僅か[わずか] ## 僅か/僅少[きんしょう]/些少[さしょう] <558> ### 使い分け例 **僅か**・・・「金があとわずかだ。」「わずかなことで争う。」 **僅少**・・・「残部は僅少である。」「僅少差で勝つ。」 **些少**・・・「些少な謝金で申し訳ありません。」 **ちょっぴり**・・・「入れた塩はほんのちょっぴりだった。」「ちょっぴり怖い。」 **ささやか**・・・「ささやかな贈り物をささげる。」「ささやかに暮らす。」 ### どう使い分けるか **僅か**は、数や量あるいは程度が非常に少ないさまを言う。 **僅少**は、〈僅か〉と同義の文章語。**些少**も〈僅少〉とほぼ同じ意味の文章語だが、自分側のことに使ってへりくだる気持ちがある。 **ちょっぴり**は、〈僅か〉にの意味のくだけた日常語である。 **ささやか**は、規模や程度が小さくてあまり目立たない様子を言う。〈僅か〉は客観的な分量について言うが、〈ささやか〉は心に感じた印象を述べる場合に用いる。 # 煩わしい[わずらわしい] ## 煩[わずら]わしい/ややこしい/厄介[やっかい]/面倒[めんどう]/面倒臭[めんどうくさ]い/億劫[おっくう]/大儀[たいぎ]/繁雑[はんざつ]/煩雑[はんざつ]/煩瑣[はんさ] ### 使い分け例 **煩わしい**・・・「煩わしい問題。」「手続きが煩わしい。」 **ややこしい**・・・「ややこしい話。」「二人の間がややこしくなる。」 **厄介**・・・「厄介な仕事。」「厄介な話を持ち込む。」 **面倒**・・・「面倒な手続き。」「面倒な事を頼まれる。」「面倒な事件。」 **面倒臭い**・・・「面倒臭い後仕末。」 **おっくう**・・・「口を利くのもおっくうだ。」 **大儀**・・・「だるくて仕事をするのが大儀になった。」 **繁雑**・・・「繁雑な規定が多い。」「繁雑な事務をてきぱき処理する。」 **煩雑**・・・「煩雑な手順を踏む。」 **煩瑣**・・・「煩瑣な注意事項。」「煩瑣哲学。」 <559> ### どう使い分けるか **煩わしい**は、心を悩ませてうるさい、また入り組んでいて複雑だ、の意のやや改まった言い方。 **ややこしい**は、込み入っていてわかりにくい・解決しにくい、の意のややくだけた言い方。 **厄介**と**面倒**は、扱いにくく手数がかかるさまで、ほとんど同義であるが、強いて言えば、前者は迷惑でできれば避けたいという気分、後者は手間どる事柄だという気持ちに力点がある。 **面倒臭い**は大変面倒だの意で、口頭語では〈めんどくさい〉とも言う。 **おっくう**は、物事をするのに気が進まず、面倒臭い気持ちであること。 **大儀**は、何もする気が起きない状態を言う。〈おっくう〉が気分的なものなのに対し、〈大儀〉は身体的な原因による場合が多い。 **繁雑**は物事が多くてごたごたしているさま、**煩雑**は面倒なまでに込み入っているさまを言う。前者は事が多い意、後者は煩わしい意が強いが、一般には厳密に区別しないで混用されることも多い。 **煩瑣**はこまごまとして煩わしいさまを言うかたい文章語。 # 忘れる[わすれる] ## 忘[わす]れる/忘却[ぼうきゃく]する/失念[しつねん]する/度忘[どわす]れする/物忘[ものわす]れする ### 使い分け例 **忘れる**・・・「約束を忘れる。」「戸締まりを忘れる。」「荷物を忘れる。」 **忘却する**・・・「酔って前後を忘却する。」 **失念する**・・・「名前を失念する。」 **度忘れする**・・・「度忘れして漢字が思い出せない。」胴忘れ。 **物忘れする**・・・「年のせいかよく物忘れするようになった。」 ### どう使い分けるか **忘れる**は、記憶が自然に無くなったり、無くなるようにする意。また、他のことに没頭したりして一時的にその事が念頭から消え、するべきことをしないままにしてしまう場合にも用いる。 <560> **忘却する**は、前項〈忘れる〉の前半の意の漢語的文章語だが、特に完全に記憶から無くなってしまう場合に使うことが多い。 **失念する**は、覚えているはずなのに一時的に記憶から消えている場合に言う。文章語である。 **度忘れする**は、当然知っているはずなのに何かの拍子に一時的に記憶から消え、思い出そうとしても思い出せない場合に言う。〈失念する〉と同義のくだけた日常語。 **物忘れする**は、物事を〈忘れる〉の意。具体的な記憶について「・・・を物忘れする」とは言わない。名詞「物忘れ」に「する」をつけた動詞。 # わたし (自分) ## 私[わたくし]/私[わたし]/私[あたし]/私[わし]/(儂)[わし]/僕[ぼく]/俺[おれ]/小生[しょうせい]/手前[てまえ]/我[わ]が輩[はい]/自分[じぶん]/我[われ] ### 使い分け例 **わたし**・・・「わたしの家だ。」あなた。 **私[わたくし]**・・・「それは私がいたします。」 **あたし**・・・「それはあたしの本だわ。」 **わし**・・・「何でもわしに聞きなさい。」 **僕**・・・「君と僕の間柄。」君。 **俺**・・・「俺に任せておけ。」おまえ。 **小生**・・・「小生も無事に過ごしております。」 **手前**・・・「どうぞ手前どもでお買上げ下さい。」 **我が輩**・・・「我が輩は猫である。」 **自分**・・・「ガラスを割ったのは自分であります。」 **我**・・・「我は海の子。」「我勝てり。」 ### どう使い分けるか **わたし**は、自分を指す一番一般的な語で、男女ともに用いる。以下、この項はすべて自称、第一人称を表す語である。 **私[わたくし]**は、改まった場合に使う。また、「公」に対する語(代名詞でない名詞)としての使用法もある。 **あたし**は、主に女性が用い、ややくだけた話し言葉である。 **わし**は、男性が用いる古風な言葉。 <561> で、やや尊大な感じを伴う。 **僕**は、男性が、同等かそれ以下の者に対して用いる。**俺**も同じ用法だが、ぞんざいな言い方で、相手が親友でない場合には尊大な感じになる。 **小生**は、へりくだっていう語で、手紙などで用いる文章語。**手前**もへりくだっていう語で、古風な話し言葉である。それに対し、**我が輩**は、古風な、やや尊大な感じのする言葉である。 **自分**は、代名詞としては主として目上に用いる改まった男性語だが、最近はあまり使わない。 **我**は、文語体の中のほかは、文章語としてもめったに(代名詞としては)使われない。 # 笑い[わらい](大笑い) ## 笑い/笑み[えみ]/微笑(頬笑)[びしょう・ほほえみ]/一笑[いっしょう]/苦笑[くしょう]/嘲笑[ちょうしょう]/冷笑[れいしょう]/失笑[しっしょう] ### 使い分け例 **笑い**・・・「嬉しくて笑いが止まらない。」「人の笑いを買う。」 **笑み**・・・「満面に笑みをたたえる。」 **ほほえみ**・・・「互いにほほえみを交わす。」「常にやさしいほほえみを浮かべている。」同音で**微笑**。スマイル。 **一笑**・・・「破顔一笑。」「一笑を買う。」「一笑に付する。」 **苦笑**・・・「痛いところを突かれて苦笑する。」同音で**苦笑い**。 **嘲笑**・・・「失言し嘲笑を受ける。」 **冷笑**・・・「鼻の先で冷笑する。」 **失笑**・・・「彼の失敗には失笑を禁じ得ない。」「あちこちで失笑が起こる。」 ### どう使い分けるか **笑い**は、喜びや嬉しいあるいはおかしいといった感情が表情や態度に現れたものを言う。顔の表情がゆるみ、声を立てる場合も多い。 **笑み**は、にこにこと顔をほころばすことで、声は立てない。 **微笑み**は、〈笑み〉の更にかすかな表情で、口元をほころばす程度を言う。 **一笑**は、ちょっとひと笑いするこ <562> と。また、一つの笑いぐさとして笑うこと。 **苦笑**は、内心では否定しながら容認せざるを得ないという心の苦しさを隠すための〈笑い〉を言う。 **嘲笑**は、相手をばかにしたり見下したりしてこちらの優越性を誇ろうとする〈笑い〉を言う。 **冷笑**は、〈嘲笑〉とほぼ同義だが、対象を取るに足らぬものと軽視する感じがより強い。 **失笑**は、思わず吹き出してしま うことで、多く、笑ってはいけない場面で笑ってしまうことを言う。 # 割に[わりに] ## 割に[わりに] ## 割合[わりあい] ## 割り方[わりかた] ## 比較的[ひかくてき] ### 使い分け例 **割に**…「この品は割に安い。」「割に平気な顔をしている。」同割と。 **割合**…「今日は割合暖かい。」「割合よくできた作品だ。」 **割り方**…「行きの電車は割り方込ん でいた。」同割りかし。 **比較的**…「この辺では比較的静かな場所だ。」「彼は日本人としては比較的高が高い。」 ### どう使い分けるか **割に**は、思っていたよりも程度が上回っているという気持ちを表す語である。よい状態にも悪い状態にも用いられる。 **割合**は、〈割に〉と同じ用法だが、程度のよい場合に使われる傾向がある。 **割り方**は〈割に〉のくだけた日常語である。 **比較的**は、〈割に〉と同じ意味の文章語的な語だが、ある基準と比べてそれよりも程度がどうなのかという気持ちで用いられる言葉である。 〔注意〕「一的」という言葉は形容動詞語幹である場合が多いが、〈比較的〉は副詞である。 # 悪者[わるもの] ## 悪者[わるもの] ## 悪人[あくにん] ## 悪党[あくとう] ## 悪漢[あっかん] ## 毒婦[どくふ] ## 不良[ふりょう] <563> ## 与太者[よたもの] ## ごろつき[ごろつき] ## ちんぴら[ちんぴら] ### 使い分け例 **悪者**…「悪者を退治する。」「わたしが悪者になっておこう。」◎悪玉。⇔善玉。 **悪人**…「やつは根っからの悪人だ。」「悪人正機。」⇔善人。 **悪党**…「なかなかの悪党だ。」「小悪党。」 **悪漢**…「悪漢に襲われる。」「悪漢小説。」⇔凶漢。 **毒婦**…「毒婦にだまされる。」 **不良**…「町の不良にたかられる。」「不良少年。」 **与太者**…「盛り場に与太者が出没する。」⇔ならず者。荒くれ者。 **ごろつき**…「ごろつきとなって家に寄る。」 **ちんぴら**…「ちんぴらの手に掛かってけがなどするな。」 ### どう使い分けるか **悪者**は、性質や行動がよくなくて、人や社会に害を与える人物を言う。 **悪人**は、〈悪者〉とほぼ同義のやや文章語的な漢語であるが、〈悪者〉が行為に重点をおくのに対し、〈悪人〉は備わっている性質を念頭においた用い方をする。 **悪党**は、本来は悪者の集団を言ったが、今は普通一人を指して言う。 **悪漢**は、男の〈悪人〉を言い、外見や行為も強そうな印象を与える。 **毒婦**は、女の〈悪人〉を言う。 **不良**は、性行が悪く反社会的な行為をすること、また、その者を言う。少年少女のような比較的若い年齢層について多く用いる。 **与太者**は、町を徘徊して悪事を働く〈悪者〉のことを言う俗語で、 **ごろつき**は、住所や職業を定めず悪事を働きながらうろつき回る〈悪者〉のことを言う俗語である。 **ちんぴら**は、その世界ではまだ一人前ではない年少の〈悪者〉を言う俗語。 | | 〜に襲われる | あいつはなかなかの〜だ | 〜扱いを受ける | 私が〜になっておこう | | :--- | :---: | :---: | :---: | :---: | | **悪者** | ○ | ○ | ○ | ○ | | **悪人** | - | ○ | ○ | - | | **悪党** | ○ | ○ | △ | - | | **悪漢** | ○ | - | - | - |