<1> アート「芸術」の意で会話や軽い文章に使われる新しい感じ の外来語。〈モダン〉〈ポップ〉〈ディレクター〉 「芸術」に比べて軽く斬新な語感で用いられ、ペートペン・ ミケランジェロ・北斎などのクラシック作品とはイメージが 合わない。文学は含まず、「現代」の中に音楽も含まれな い傾向が強い。彫芸術 あい【愛】相手をいとしく思い大切に慈しむ気持ちをさし、 会話にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈母性—〉 〈ーを打ち明ける〉〈ーの結晶〉〈親のーに飢える〉の井上靖 の『猟銃』に「というものは、太陽のように明るく、輝か しく、神にも人にも、永遠に祝福されるべきもの」とある。 「恋」や「恋愛」が男女間に限られるのに対し、この語は色 恋に限らず、親子の間の愛、兄弟愛、隣人愛、人類愛から、 万物への博愛、郷土愛、愛国心、神の愛まで、さまざまな形 の愛情を表すのに用いられている。恥じらいを知る日本人 はこのようなあからさまな語を人前で発することを伝統的 に照れてきた。Q恋・恋愛 あいかた【相方】二人で組んでやるときの相手をさし、会話 にも文章にも使われる、いくぶん古風な和語。〈漫才のーを つとめる〉客の相手をする遊女をさす用法では古めかし い感じになる。弔相手・Q相棒・パートナー あいかわらず【相変わらず】いつもと同じようにの意で、会 あいくち 話やさほど硬くない文章に使われる和語表現。〈一独身だ〉 〈一元気に飛びまわっている〉〈一安月給でこき使われてい る〉〈一みことな腕前だ〉いい意味でも悪い意味でも使う が、自然・当然な状態について「あなたはーお元気ですか」 などと尋ねるのは日本語として不自然。仏依然 あいかん【哀感】もの悲しい気分をさし、主に文章中に用い られる漢語。〈ーが漂う〉〈ーを催す〉〈ーをそそる〉松本 清張は『或る「小倉日記」伝』で、かぼそく消える鈴の音が 「子供心に甘いーを誘った」と書いている。Q哀愁・悲哀・物 悲しい・憂愁 あいぎ【合い着(間着)】寒い冬と暑い夏との間の季節、春や 秋に着る衣服の意で、会話にも文章にも使われる和語。温 暖な日が続き、春物のーに替える)和服も洋服も含まれ る。まれに、上着と下着の間に着る衣類をさす場合もある。 合い服 あいきょう【愛嬌(敬)】顔つきやしぐさなどに自然な親しみ やかわいらしさの感じられる場合に、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ー者〉へーがある〉へーがこぼれる〉へーをふ りまく〉②意識的な「愛想」に比べ、その人間に具わったも のをさし、徳永直の『太陽のない街』に「道化師のようにー のある医師」とあるが、多く女性の態度について用いる傾 向が強い。ただし、「男は度胸、女はー」という区別は感覚 の古さを印象づける。みあいそ・愛想 あいくち【匕首】つばのない短刀をさし、会話でも文章でも 使う、やや古い連想のある和語。〈隠し持ったーで切りつけ る〉梶井基次郎の『冬の日』に「突然ーのような悲しみが <2> 心に触れた」という比喻表現が出る。刀身の長さから俗に 「九寸五分」ともいう。「短刀」などに比べ、どこか犯罪 の雰囲気がにおう。僕剣・こがたな・小刀・短剣・Q短刀・どす・ ふところがたな・脇差 あいくるしい【愛くるしい】容姿やしぐさがあどけなくかわ いい意で、やや改まった会話やさほど硬くない文章などで 用いられる、やや古風なことば。〈ーしぐさ〉〈見るからに ー顔立ち〉の水上勉の『越前竹人形』に「丸顔のぽっちゃり とした顔だ」とある。類義の「愛らしい」よりも幼児性を 強く感じさせ、赤ん坊か幼い子供について、特に性別を意 識せずに使う傾向がある。Q愛らしい・可愛い あいこう【愛好】物事を好き好む意で、改まった会話や文章 に用いられる硬い感じの漢語。〈印象派の絵画を—する〉 〈クラシック音楽を—する〉の「好き」や「好む」と違って、 対象はもっぱら物事であり、通常、人や品物などには用いな いから、いくら「愛し」ていて「好き」であっても、うっか り恋人にこの語を使ったら険悪な空気になりかねない。 Q好む・好き あいさつ【挨拶】出会いや別れの際に互いに交わす社会的儀 礼としての慣習的な動作や短いことばの意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。 〈一状〉〈時候の—〉〈転勤の—〉〈丁寧に—を交わす〉〈軽 く手を上げて—する〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「義理 一遍の—」とある。「季節の—を欠かさない」「お礼の—に 伺う」のように、敬意や感謝の意を表す行為の意にも、「来 賓の—」「結婚披露宴で—に立つ」のように、公的な場での 儀礼上のスピーチの意にも用いる。小沼丹は『黒と白の猫』 で「無しに死ぬから困ります」と、妻の急死に慟哭ぞする 心を呆れるほどのんびりと描いてみせた。Q会釈・お辞儀・ 敬礼・最敬礼・目礼・黙礼・礼② あいじゃく【愛着(著)】「あいちゃく」の古めかしい表現。 〈深いーを覚える〉②もと仏教語で、世間の欲にとらわれて 思いを断ち切れない意。「執着」と同様、「じゃく」と読む と相当の高齢者と思われやすい。Qあいちゃく・しゅうじゃ く あいしゅう【哀愁】わけもなく心にしみてくるうら寂しい感 じをさし、改まった会話や文章に用いられる、いくぶん趣の ある漢語。〈一抹のー〉〈ーを帯びたメロディー〉〈ーを帯 びた節まわし〉〈ーを誘う情景〉四川端康成の『名人』に 「生きて眠るように閉じた瞼の線に、深いーがこもった」と ある。Q哀感・うら悲しい・憂い・愁い・寂しい・寂寞・寂寥 物悲しい・憂愁 あいしう【愛称】親しみをこめた呼び名をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。へーで親しまれている》「新商品 のーを募る」のように、人間以外にも用いる。軽蔑のニュ アンスがあれば使わない。みあざな・あだな・Qニックネーム あいじょう【愛情】特に親子や恋人・夫婦の間で相手をいとお しみ大切にしようと思う気持ちをさして、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈深い〉へーを抱く〉へーを 注ぐ〉へーを寄せる〉へーにほだされる〉へーのもつれ〉室 生犀星の『杏っ子』に「女の人の心にはいつもピアノのよう な音色がある。(略)だってピアノが鳴るようなもの」と <3> ある。「愛」ほど気障な響きは感じない。情愛 あいじん【愛人】世間をはばかる恋愛関係の異性をさす形式 的な婉曲表現。社会の良識に反するとして非難の対象 になる「情夫」「情婦」「情人」「いろ」といった露骨な表現 を避け、上位概念に置き換えて関係をほかすことで抽象化 し、下品な感じを薄めた漢語。〈関係にある〉〈にする〉 〈を持つ〉の井伏鱒二が「鯉」で「君の」の家では泉水が 広いようだが、鯉をあずかってくれないかね?「青木の」 に手紙を送った「青木の霊魂が彼の」を誤解してはいけな い」というふうに「愛人」という語を単なる「恋人」という 意味で用いているように、この語はもともと、恋愛関係に ある異性一般をさしたが、現在では、陰湿でなくむしろ明 るく健康的な語感を持つ「恋人」という語とは区別して使 われる。太宰治の『斜陽』にある「私は将来、そのお方の」 として暮すつもりだ」という箇所はそのような例である。 現在は、正式の夫や妻以外にひそかに関係を持っている相 手として、人前に出しにくい存在を連想させるが、そうい う認識を示すだけで、それに対する軽蔑の気持ちまでは表 明していない。いい人・Qいろ・恋人・情人・情夫・情婦 あいず【合図】あらかじめ約束した方法で一定の情報を知ら せる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常語。へーを送る〉〈目でーする〉〈笛をーに始める〉 イン②・Qシグナル・信号 あいする【愛する】大切に思う相手に愛情を注ぐ意で、会話 より文章に使われる表現。ぺ心からー〉〈死ぬほどー〉ヘー わが子の寝顔〉の高橋和巳の『悲の器』に「無限の感情を以 あいだ てわが娘をー・していた」とある。小説やドラマなどに「あ たしのこと、今でもー・してる?」「ああ、ー・してるよ」と いったやりとりが出てくるが、この語をくだけた会話で使 うと気障で浮ついた感じに響く。また、「犬」「わが 町」「音楽を」のように人間以外の対象にも用いるが、そ の用法では気障な感じが目立たない。Q恋する・幕う・好 く・惚れる あいせき【愛惜】大切に思い手放したくない気持ちをさし、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーの品〉〈ーの念〉 ②永井荷風の『日和下駄』に「ーの情はおのずから人をして この堀に帰遇花の馥郁とした昔を思わしめる」とある。 未練 あいそ【愛想】「あいそう」の意で会話や軽い文章に使われる 漢語。〈ー笑い〉へーがない)日常会話では「あいそう」よ りもよく使う。「ーを尽かす」「ーもこそも尽き果てる」の 形で、呆れて見限る意を表す場合は特にこの形が一般的。 主に「おーを言う」の形で「おせじ」を意味する用法もあ る。夢嬌・Qあいそう あいそう【愛想】相手に好感を与える表情・態度・応対などを さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー笑い〉への悪 い店員〉へを言う。太宰治の『人間失格』に「皆にーが いいかわりに、「友情」というものを、いちども実感した事 が無く」とある。自然に具わった感じの「愛嬌」に比べ、相 手をいい気分にさせたり相手に取り入ったりするために意 図的にとることが多い。「無愛想」と対立。Q愛嬌・あいそ あいだ【間】二つの物体や時刻に挟まれている部分や、連続 <4> あいだがら する対象に含まれる部分などをさし、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈男女の 」〈留守の」〈物と物との」〈木の」から海が見える〉 〈仕事をしている」〈に立つ〉〈を離す〉〈をつな ぐ〉〈休みの」②上林暁の『月魄』に「私の家の便所と 西隣の家のに残っている雪」とある。漢字表記は「ま」と 紛らわしい場合もある。Q合間・間① あいだがら【間柄】人と人との関係をさし、会話にも文章に も使われるいくらか古風な感じのする和語。〈親子の—〉 〈師弟の—〉〈親密な—〉夏目漱石の『草枕』に「余と銀杏 返しの—」とある。巣関係①・関連・続柄・Q続き柄 あいちゃく【愛着(著)】心を惹かれて思い切れない意で、会 話にも文章にも使われる漢語。この鞄にはーがある〉(こ の万年筆には人一倍ーが強い〉「執着」ほど強いこだわり は感じさせない。りあいじゃく・Q執着 あいて【相手】物事を一緒にする仲間や、行為の対象となり 時には対抗する人間やその団体をさし、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ー役〉 〈一次第〉〈相談ー〉〈結婚ー〉〈対戦ー〉〈ーをする〉〈ーに なる〉〈ーにしない〉〈それはーが悪い〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「中学の先生なんて、どこへ行っても、こんな ものをーにするなら気の毒なものだ」とある。「手ごわいー に当たる」「ーをやっつける」のように張り合う相手の意で は「対手」と書く例もある。刂相方・相棒・Q先方・対象・パート ナー・向こう② アイディア 頭に浮かんだ考えの意で、会話にも文章にも使 われる外来語。へ倒れ〉へが浮かぶ〈ちょっとしただ〉の「着想」「発想」ほどではないが、単なる「思いつき」よりも思考過程を連想させる。スケールの大きな深い考えをさす場合は日本語では軽く扱った感じになりやすい。「アイデア」と書くと少し古い感じが出る。Q思い付き・着想・発想 アイテム項目、特に品目あるいは単品をさし、主に会話に 使われる新しい感じの外来語。〈必須ーをそろえる〉近 年、小物のような具体物をさして不必要によく使われる。 単項目・事項 あいにく【生憎】都合の悪い場合や期待に反する時などに、 会話にも文章にも広く使われる日常の和語。〈一の雨〉へ一 時間がない〈一品切れだ〉〈一旅行中で出席できない〉② 小沼丹の『エジプトの涙壺』に「リルケに「涙壺」って云う 詩があるのを知らないかね?「おーさまだな」「おーは淋 しいね」というやりとりが出てくる。弁折悪しく あいのこ【合いの子(間の子)】混血児の意で主に会話に使わ れる古風で俗っぽい和語。〈日本人とフランス人との—〉 「ラパはロバと馬とのーだ」などと人間以外にも使うが、人 間の場合は「混血児」に近いマイナスイメージが付着し、差 別意識が問題になるにつれて、この語も次第に使用を控え るようになってきている。ひ混血児・ハーフ あいのり【相乗り】一つの乗り物に連れでない複数の人間が 一緒に乗る意で、会話にも文章にも使われる和語。〈タクシ ーにーする〉夏目漱石の『三四郎』に「女とは京都からの ー」とある。通常は一人で乗る乗り物の場合に言うことが <5> 多い。Q同乗・乗り合わせる あいびき【逢引/媾曳】愛し合う男女がひそかに約束して人 目を忍んで逢う意で、会話にも文章にも使われる古めかし い和語。〈ーを重ねる〉〈ーが人に知れる〉島崎藤村の 『新生』に「ーする男女の客」とある。「逢瀬」が密会して いる時間に焦点が当たっているのに対し、逢う行動を中心 に言及している感じがある。遅瀬・忍び合い・デート・Q密会 ランデブー あいふく【合い服(間服)】寒い冬と暑い夏の間の季節、春や 秋に着る洋服の意で、会話にも文章にも使われる日常語。 〈秋になってーを取り出す〉②和服も含む「合い着」より狭 義。合い着 あいぼ【愛慕】主に異性を愛し慕う意で、主として文章中に 用いられる古風な漢語。「の情やみがたく」(の情が募 る)北杜夫の『幽霊』に「父は心の底でひそかなーをよせ ていたらしいこの世に別れを告げた」とある。夢懸想・思 慕・Q恋慕 あいぼう【相棒】一緒に仕事などをする相手をさし、会話や 軽い文章に使われるくだけた感じの表現。〈息の合うー〉回 大岡昇平の『俘虜記』に「比島脱出のー」とある。二人で駕 籠を担ぐ相手の意から。Q相方・相手・パートナー あいま【合間】物事の間をさし、会話にも文章にも使われる 和語。〈ーを見て〉〈ーを縫って〉〈仕事のーに連絡する〉② 夏目漱石の『坊っちゃん』に「おれと山嵐は校長と教頭に時 間のーを見計って、嘘のない所を一応説明した」とある。 Q間●間ま① あいらしい あいまい【暖味】明瞭でなく的確な理解を妨げる意で、会話にも文章にもよく使われる漢語。「模糊」「な態度をとる」〈返事がーでよくわからない」「という語自体もーである」と言え、いくつかの意味合いに分かれる。暖味さの諸相は、A不明確。「説明がーだ」「結果をーなままにしておく」のように、茫漠としていたり抽象的だったりして具体的な理解に到達しない場合。B多義的。「二人の母」という言い方はーだ」のように、a二人の子供の母親、bある人の実母と養母・義母、cそれぞれ子供のいる二人の女性といった複数の意味に対応する場合。C中間的。「金茶とも黄金色とも決めがたいな色」のように、両者の中間に位置する場合。「情熱に燃える」という表現はすでに慣用化しており、比喻表現であるかはーだ」のように比喻性の程度という連続的な関係の中に位置する場合も同様。Q多義的・中間的・不明確・不明瞭 あいよく【愛欲】異性に対する欲望をさし、主として文章に 用いられる漢語。〈|の日々〉〈|にとらわれる〉②芥川龍 之介の『偷盗』に「女の眼は、侮蔑とーとに燃えて」とある。 意味の共通部分をもつ「情欲」「色欲」「性欲」「淫欲」「肉 欲」「獣欲」に比べると、語の意味というより、「欲」と組み 合わさるもう一つの漢字のイメージの差で、この語は脈ぐら しさが比較的少ない。刂淫欲・色欲・獣欲・Q情欲・性欲・肉欲 あいらしい【愛らしい】かわいらしく好感がもてるようすを さし、やや改まった会話や文章で用いられる、いくらか古風 な感じのすることば。〈少女〉〈目元〉類義の「愛く るしい」に比べ、より年上の主として女の子に使う傾向が <6> 見られる。 JQ愛くるしい・可愛い アイロニー伝達したい内容をその逆の意味になるようなこ とばを用いて遠まわしに述べる表現法をさして、会話にも 文章にも使われる専門的な外来語。へーは皮肉な響きがあ る)卑劣な行為を「偉い」とか「立派」とかと評し、文脈 や場面との違和感をとおして相手に感づかせる類。反語 アイロン熱と蒸気で衣類の皺を伸ばす道具をさし、会話に も文章にも使われる外来語。洗ったシャツにーをかける) ひこて あう【会う】ある場所で誰かといっしょになる、何かに出会 うといった意味合いで、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常生活の最も基本的な和語。〈三時に人に ー〉〈今度の日曜にみんなでー〉へーは別れの始め〉夏目 漱石の『坊っちゃん』に「少々憎らしかったから、昨夕ふぐは 二返ー・いましたねと云ったら」とある。「忍びあう」とい う意味合いの場合に「愛人とひそかに逢う」「ぶつかる」 という意味合いの場合に「交通事故に遭う」「偶然あう」 という意味合いの場合に「街角でばったり遇う」「巡りあ う」という意味合いの場合に「思いがけない土地で、別れた 妻に遅(返)う」のように、ニュアンスを漢字で表現し分ける こともある。ひ出会う あう【合う】物や事が一つになったり矛盾なく一致したり調 和したりする意味で、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の基本的な和語。〈寸法がー〉〈計算がー〉 〈目がー〉〈ピントがー〉〈答えがー〉〈話がー〉〈ネクタイ がジャケットにー〉〈酒のさかなにー〉〈希望にー〉〈谷崎 潤一郎の『細雪』に「もともと雪子ちゃんという人が、東京 の水にー・わん人やーとある。ひ一致・合致・Qなじむ アウト駄目になる意で、主としてくだけた会話で使う俗っ ぽい外来語。ヘせっかくの計画がーになる〉(期限切れで完 全にー)球技、特に野球の用語の拡大用法として、「権利 や資格を失う」「駄目になる」といった意味合いで広く使わ れる。比喻性は薄い。「セーフ」と対立。駄目・ぼつ あえて【敢えて】困難を承知で、無理にでもの意で、改まっ た会話や文章に用いられる硬い感じの和語。〈一断行する〉 〈一忠告しておく〉〈一難関に挑む〉〈一買い換えることは ない〉の井伏鱒二の『荻窪風土記』に「不況と左翼運動とで 犇き合う混乱の世界に一突入する」とある。事故意・Q強い て・わざと・わざわざ あえなくなる【敢え無くなる】「死ぬ」意の和語による間接表 現。死を忌む気持ちから、それを露骨に表現することを 控え、「敢え無い」すなわち、あっけなく気力を喪失した状 態への変化ととらえ直すことで衝撃をやわらげる婉曲 表現。上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引 き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・お めでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・ 逝去・斃られる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる・儚 くなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷 る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 あおい【青い】三原色の一つで、海や晴れた秋空のような色 をしている意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常生活の基本的な和語。〈秋晴れの空〉〈眼下に <7> 広がる海宮本輝の『道頓堀川』に座敷には表通りか らのネオンの灯と、石油ストーブの炎のーゆらめきだけが、 ぼっと薄く靄のようにけぶっているだけだった」とある。 青白い色の場合に「顔色が蒼い」、緑がかっている場合に 「目の碧い人」のように、ニュアンスを漢字で表現し分ける こともある。伝統的に、日本語の「青」は晴れた空のような ブルーの意にも、若葉のようなグリーンの意にも、青信号や 海のような緑がかった青の意にも使われ、また、青と緑との 総称ともなるが、現代人特に若い世代は「緑」だけをさす用 法を避ける傾向が強い。 あおじゃしん【青写真】未来に関するおおよその案の意で、 会話や硬くない文章に使われる比喻的な表現。〈将来のー を描く〉〈再開発のーができあがる〉〈まだーの段階だ〉 本来、青地に図面や文字が白く浮き出すように仕上げる写 真の一種をさし、それが設計図などに用いられたところか ら、計画の意に転じた。企画・計画・構想・Qプラン あおすじ【青筋】皮膚の表面に青く透けて見える静脈をさし、 会話にも文章にも使われる和語。〈ーを立てる〉図嘉村議多 の『秋立つまで』に「蟑谷がみにむくむくと幾条ものーを這わ して」とある。静脈 あおぞら【青(蒼)空】よく晴れた青い空をさし、会話にも文 章にも使われる日常の和語。〈雲ひとつないーが広がる〉 〈澄み切った抜けるようなー〉〈雲の切れ間からーがのぞ く〉永井龍男の『風ふたたび』に「ひさしぶりのーが見え る。夜中の豪雨が、重苦しい梅雨空を、どうやら切り放し たらしい」とある。ひ青天井・Q碧空 あか あおてんじょう【青天井】「青空」の意で文章に用いられる古 風な表現。〈—が広がる〉の上方に広がる大空を天井に見立 てた詩的な表現。Q青空・碧空 あおば【青葉】初夏に青々と生い茂ったみずみずしい木の葉 をきし、やや改まった会話や文章に用いられる和語。へーの ころ〉へーが茂る〉へーが目にしみる〉の「若葉」に続き盛ん に茂り始める季節で、「目には山郭公初松魚」という山口素堂の句が有名。新緑・Q若葉 あおもの【青物】緑色の野菜または野菜一般を意味するやや 古風な和語。〈市場〉〈を商う〉野菜 あおる【呷る】一気に飲む意で会話や文章に用いられる、い くぶん古風な和語。〈酒をコップに注いでー〉〈立て続けに ー〉徳田秋声の『縮図』に「本来そう好きでもない酒を ー・って」とある。飲みきる意の「飲み干す」に対し、仰向 いて勢いよく飲むところに重点がある。飲み干す あおる【煽る】おだてその気にさせる意で、会話やさほど 硬くない文章に使われる和語。〈購買心を—〉〈人気を—〉 〈競争心を—〉の「ドアが風に—・られて音を立てる」「風に ー・られて燃え広がる」のように、風が物や火などを揺り動 かす意からの比喻的な拡大用法。「そそのかす」のような犯 罪行為の連想はなく、「けしかける」「たきつける」と違っ て必ずしも悪事とは限らない。ひけしかける・指嚇ち・扇動・そ そのかす・Qたきつける あか【赤】三原色の一つである血や火のような色をさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な日常 語。〈と黄色〉〈白地にーで丸を描く〉高樹の子の <8> あかい 『遠すぎる友』に「ひとを憎んだり妬む気持が、血のーを少 しずつ濁らせている」とある。広義には赤系統として茶色 まで含む。漢字に「紅」をあてると「べに」か「くれない」 と読まれやすく、「朱」をあてると「しゅ」と読まれやすい。 「一旗」「一の広場」などから共産主義の連想も起こりやす い。 あかい【赤い】燃える火や熟した柿のような色をしている意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈花〉〈帽子〉〈顔がー・くなる〉 円地文子の『女坂』に「血はいくつもいくつも小さい」花の ように畳廊下に滴っていた」とある。純粋の赤であること を特にはっきりさせたい場合に「紅い唇」濃い鮮やかな赤 の場合に「緋い毛氈」やや黄色みを帯びた赤の場合に 「朱い柿」茶色がかった赤の場合に「赭い顔」などと、漢字 でニュアンスを書き分けることもある。 あかぎれ【戦(輝)】ひとい「ひび」の意で、会話や文章に使 われる和語。〈ーだらけの手〉の内部が赤く見えるほどに深 く切れた割れ目という意味のことば。ひびび あがく【足掻く】危機を脱しようと手脚をばたばたさせて抵 抗する意で、会話や改まらない文章に使われる和語。何と か逃れようとー)〈最後まで無駄にー)椎名麟三の『美し い女』に「思いをつくし、力をつくして、蟻のようにーい てやるつもり」とある。「最後のあがき」「無駄なあがき」 というように、ほとんど逃れられない状況でしばしば使わ れる。「どうーいてみても、もうおしまいだ」のような形 で、比喻的に、肉体的以外の抵抗についても用いる。もじた ぼたする・・Qもがく あかご【赤子(児)生まれて間もない子供の意で、会話にも 文章にも使われる古風な和語。〈一の泣き声〉へ一の世話に 明け暮れる志賀直哉の暗夜行路」に「一は指でも触れ たら一緒に皮がむけて来そうな唇を一種の鋭敏さをもっ て動かして居た」とある。赤ちゃん・Q赤ん坊・嬰児・みどり ご あかし【証】確かな拠りどころの意で、改まった会話や文章 に用いられる古風でいくぶん詩的な和語。〈身のーを立て る〉〈愛のーとなる〉〈この世に生きたー〉Q証拠・証左 あかちゃん【赤ちゃん】生まれて間もない子供の意で、会話 や改まらない文章によく使われる日常の和語。「が生ま れる〉へ「を抱く〉へ「をおんぶする〉「ができる」「お なかの」のように、胎児など生まれる前の状態をさす用 法もあり、「赤ん坊」より例が多い。かわいいと思う気持ち が「赤ん坊」より前面に出ている。赤子・Q赤ん坊・嬰児 あかつき【暁】「夜明け前」の意。雅語に近い古風な和風文章 語。〈|闇〉〈|近くに〉②太宰治の『富嶽百景』に「、小 用に立って、アパートの使所の金網張られた四角い窓から、 富士が見えた」とある。「成功の|には」のように、何かが 実現した時をさす比喩的用法もある。明け方・曙・朝ぼらけ・ Q朝まだき・しののめ・払暁・未明・夜明け・黎明 あかてん【赤点】「落第点」の古い俗称。「だけは取らないように」目立つように赤い色で記したところから。若い世代には通じにくくなりつつある。落第点 <9> あかけた【垢抜けた】容姿や行いが都会的に洗練されてい る意で、会話にも文章にも使われる和語表現。〈服装〉 〈一身のこなし〉〈気品があってー文章〉〈一都会的なセン ス〉処洗練 あかぬけない【垢抜けない】都会的に洗練されておらず粋と いう感じからほど遠い場合に用い、会話でも文章でも使わ れる表現。〈一身なり〉〈化粧がどことなく—〉の「野暮」と は違って、男女間のことについて感覚が鈍いといった意味 合いでは使わない。刂田舎じみるださい・泥臭い・野暮・Q野暮 ったい あかはだか【赤裸】「全裸」の意の古めかしい和語。〈身ぐる み剝がされーにされる〉の「赤」は肌の色でなく強調の役 目。凡素っ裸・素裸・全裸・裸・真っ裸・真裸・Q丸裸 あがめる【崇める】尊いものとして敬う意で、会話にも文章 にも使われるやや古風な和語。〈神仏を—〉〈先祖を—〉回 佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「未開の人たちが神とー・めた その燃える火」とある。「敬う」より尊敬の度合いが大き い。単Q敬う・崇敬・崇拝・尊敬・たっとぶ・とうとぶ あかり【灯燈】/明かり】照明用の光をさして、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈街のー〉〈ーがともる〉〈家のーが点っく〉〈ーがもれる〉 の「灯」の表記は「ひ」との区別が困難。永井龍男の『風ふ たたび』に仕掛け花火の白煙の描写があり、「対岸のビルの 灯も、川を渡る総武線の灯も、その中に見えがくれした」と いう一節が出てくる。前者を「ひ」、後者を「あかり」と読 みたくなるが、いろいろな読みが可能だろう。ひ照明・灯火 あがる ともし火・Q灯・ライト あがり【上がり】鮨屋などで食事の後に出されるお茶をさ し、主に会話に使う和語。〈店員にーを頼む〉もと遊郭や 料亭などで入れたての煎茶をさした「上がり花」の略。 お茶・玉露・煎茶・茶・日本茶・番茶・碾き茶・焙じ茶・抹茶・緑茶 のがる①【上がる/揚がる】低い所から高い所に移るという基本的な意味をもちくだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な日常生活の和語。〈幕が上がる〉〈座敷に上がる〉〈屋根に上がる〉〈地位が上がる〉〈給料が上がる〉〈成績が上がる〉〈風呂から上がる〉〈予供が学校に上がる〉〈雨が上がる〉〈候補に名が挙がる〉〈風が揚がる〉〈夏目漱石の『坊っちゃん』に「やな女が声を揃えて御ー・りなさいと云うので、そのがいやになった」とある。「のぼる」が「日がのぼる」「木にのぼる」「梯子をのぼる」のように少しずつ高くなって行くその経過が意識されるのに対して、「あがる」の場合は一気に上に行くか、今は前より上にあるというふうに結果の状態に重点があるとされる。したがって、「山にのぼる」の場合は登山の過程に表現の重点があり、「山に」の場合は、ローブウェーでもヘリコブターでも手段は問わず、山頂にいるという状態を中心に表現している、といった違いが感じられる。②【上がる】魚などが「死ぬ」意の和風間接表現。死を忌む気持ちから、直接それと明言せず、その結果として体が水面に浮くという形態に着目してイメージを置換することで衝撃をやわらげる婉曲表現。勇敢え無くなる・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永 <10> あかるい 眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消 える・天に召される・亡くなる・儚くなる・不帰の客となる・不幸が ある・崩御・没する・仏になる・身罷る・脈が上がる・空しくなる・藻 屑となる・逝く・臨死・臨終 あかるい【明るい】光の量が十分で物がよく見える状態をさ し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈一部屋〉〈月が—〉〈外はまだ—〉〈ー光が 差し込む〉井上靖の『小磐梯』に「戸外は真昼のように— 月夜で、庭先きの南天の木の葉の裏表まで一枚一枚はっき り見える程でした」とある。「性格」「・くふるまう」 「見通しが—」「経済に—」のように比喻的にも広い意味で 使う。「暗い」と対立。まばゆい・Qまぶしい あかん「ためだ」の意の関西方言。〈こりゃ、わ〉のい かんほどきつくなく、むしろ軽い感じで使う。いかん あかんぼう【赤ん坊】生まれて間もない子供の意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常語。〈ーをあ やす〉へーを寝かしつける〉へーに泣かれて、昨夜はろくに 眠っていない)「赤ちゃん」ほどは感情がこもらず少し客 観的なとらえ方。「あかんぼ」とも言い、山本有三の『波』 にも「赤んぼは(略)火にあぶったスルメのように、ふんぞり 返って」とある。ひ赤子・Q赤ちゃん・嬰児は・みどりこ あき【秋】夏と冬の間にあり、穀物や果実が実り落葉樹が紅 葉・黄葉する涼しい季節をさし、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一日和〉〈実り のー〉〈行楽のー〉〈読書のー〉〈芸術のー〉〈を思わせる 涼しい風〈天高く馬肥ゆる〉(一の暮れ)一が深まる 収穫の秋で気温の点でもよい季節ながら、厳しい冬に向 かうためもあり、淋しい感じが伴う。永井荷風の『雨瀟瀟』 に「立つ一の俄に肌寒く覚える夕」とある。ひオ一タム あきあきする【飽(厭)き飽(厭)きする】すっかり飽きてしま い厭になる意で、会話や硬くない文章に使われる和語。 《毎日芋を食わされてー》だらだら長いだけでー)丹羽 文雄の『厭がらせの年齢』に「生きてたって、何の役にも立 たず、当人为う生きることにー・しているんですけどね」 とある。ひQ飽きる・倦うむ・うんざり・倦怠 あきらか【明らか】はっきりしていて疑う余地のない意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈な間違い〉〈火を見る よりーだ〉〈ーに損だ〉〈真相をーにする〉②大岡昇平の 『俘虜記』に「自分が他人を殺すと想像して感じる嫌悪と、 他人が他人を殺すと想像して感じる嫌悪が、ひとしいのを 見てもーである」とある。石川淳の『紫苑物語』に「月ーな 夜、空には光がみち、谷は闇にとざされるころ」とあるよう に、本来の「明るい」意に用いる用法は古風な感じになる。 ひはっきり・明快・明確・Q明白・明瞭 あきらめ【諦め】仕方がないと思いを断ち切る意で、会話や さほど硬くない文章に使われる日常の和語。「がつく 「が早い」〈入間ーが肝腎だ〉Q断念・諦念 あきらめる【諦める】実現を期待した事柄について望みを捨 てる意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。〈潔く—〉〈家庭の事情で進学を—〉〈夢 がー・めきれない〉四「これも運命と—」「済んだことは元 <11> に戻せないとー」のように、不本意な事態を仕方なく受け 入れる意にも使う。処断念・諦念 あきる【飽(厭)きる】もう十分だとうんざりする意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈毎日同じ料理が続いていいかげん—〉〈読書に—〉 〈熱中してもすぐ—〉大岡昇平の『野火』に「私は既に昨 日から二度往復してその道に—・きていた」とある。刂飽き 飽きする・Q飽く・倦む・うんざり・倦怠 あく【開く】閉じた状態から開いた状態に変わる意で、くだ けた会話でも文章でも幅広く使われる、日常生活の基本的 な和語。〈扉がー〉〈蓋がー〉〈眠くてなかなか目がー・か ない〉の水上瀧太郎の「大阪の宿」に「今にも涎のたれそう な口をー・いて、げらげら笑った」とある。漢字表記は「ひ らく」と区別がつきにくい。空間を閉じている物が移動し て外部または内部と通じるようになる現象をさし、「ひら く」と違って、移動の方向は特に問題にならない。「幕がー」 だと幕が上に上がってもよいが、「幕がひらく」の場合は幕 の中央から左右に分かれて移動するイメージが強い。ひひ らく あく【飽く】「飽きる」意で会話にも文章にも使われる古めか しい和語。へーことを知らない)「あくまで」の「飽く」 で、今でも関西や九州の方面でよく聞かれる語形という。 その場合は特に古い響きはないと思われる。り飽きる・倦む あくい【悪意】他人に対して抱く意地悪な気持ちの意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈人にーを持つ〉へーに満ち た仕打ち)の「相手の言をーにとる」のように、悪い意味と あくじょ いう意味でも使われる。法的な専門語としては、道徳的な 善悪とは関係なく「一の占有」のように、その事実を当人 が認識している意に用いるという。「善意」と対立。専悪気 あくえいきょう【悪影響】結果として生じる悪い影響をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈周囲にーを及ぼす〉〈健 康にーをもたらす〉専鹹寄せ・そばづえ・とばっちり・巻き添え あくぎょう【悪行】悪い行いを意味して、会話にも文章にも 使われる古めかしい漢語。〈一の数々〉〈一の報い〉〈一の 限りを尽くす〉専Q悪事・凶行 あくじ【悪事】法律や人の道に外れた悪い行為の意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈一の数々〉〈一を働く〉 〈一に荷担する〉〈一が露見する〉の「悪さ」より悪意が強 く、「凶行」などまでを含む広い概念。Q悪行・凶行 あくしっ【悪質】たちの悪い意で、いくなん改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈一ないたずら〉〈一な犯罪行為〉 ひQ悪辣・悪い あくしゅう【悪臭】不快な臭いをさし、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ーを放つ〉へが鼻をつく〉 が立ちこめる〉の「臭気」に比べ不快感を表に出した感じが 強い。宮本輝の『道頓堀川』に「客たちが食べ残して捨てて いった汁のかすが、ーをはなつ大きなぬかるみ」とある。 ごみの臭いや食品の腐敗臭など、物質の変化に伴って生ず るにおいを連想させやすい。Q異臭・臭気 あくじよ【悪女】主として器量の悪い女をさし、文章中に用 いる古風で硬い感じの漢語。〈一の深情け〉不器量な女の 意のほか、他の類語と違い、性格の悪い女にも用いる。 <12> あくせく かちめんこ・しこめ・醜女・Q醜婦・すべた・ぶす・不美人 あくせく【齷齪】心に余裕がなくせかせか行動する意で、改 まった会話や文章に用いられる古風な漢語。へー働いて金を 貯める〉へ人生そんなにーすることはない)田山花袋の 『田舎教師』に「名誉を逐って一生を一暮す」とある。Q 営々・波々・こつこつと・せっせと クセサリー服装につける装飾品の意で、会話にも文章に も使われる外来語。〈ーに凝る〉〈気の利いたー〉会話で は漢語の「装身具」よりよく使う。巻装身具 あくた【芥】ごみとして捨ててある切れ端や壊れた物などを さし、もっと細かい「塵」と一緒に古風な文章などに用い られる和語。〈塵」単独ではあまり使わない。冊・Q ごみ・塵・埃 あくだま【悪玉】いつもきまって悪いことをする側の中心人 物をさし、主にくだけた会話で使われる俗っぽい和語。「 に仕立てる〉へーをやっつける痛快な場面」江戸時代の勧 善懲悪を説く草双紙の挿絵で、丸く輪郭を示した人の顔に 「悪」と書いて悪事を働く役柄を象徴的に表したところから 出た語。それと対立するのが「善玉」。悪党・Q悪人・悪漢 悪・悪者 あくとう【悪党】悪事を働く人間の意で、主に改まらない会 話などに使われる少し古風な漢語。〈名代の一〉「ぶり を遺憾なく発揮する〉へーがはびこる〉井伏鱒二の『山椒 魚』に「誤ってすべり落ちれば、そこには山椒魚のーが待っ ている」とある。「党」とあるように、本来は支配者が禁圧 の対象とした武装集団の意で、その後も悪事を働く集団を さしてきたが、現代では個人をさすのが普通。児悪玉・Q悪 人・悪漢・悪悪者 あくにん【悪人】さまざまな局面で背徳的な行為や悪事を働 く人の意で、会話にも文章にも広く使われる漢語。〈天下を 騒がす大ー〉へーがのさばる〉へーを退治する〉へーを懲ら しめる〉の「善人」と対立する語。「生まれついてのーは居 ない」という見方もあるが、この語には、その時その時の立 場や局面に限らず一人の人間として総合評価される感じが 伴う。児悪玉・悪党・悪漢・悪・Q悪者 あくぶん【悪文】用字・用語・語順・文構成・文章構造などが不 適切で、文意が通らなかったり誤解を招いたり情報が曖昧 になったりする下手な文章をさし、会話にも文章にも使わ れる漢語。「家として知られる」〈何回読んでも意味の通 じない」文章に限らず、一つ一つの文の評価に使うこ ともある。なお、表現技術の低劣なためでなく、作家の個 性や表現対象の性格などにより必然的に生じた、リズム感 とスマートさの欠如した晦渋やな文章をさすこともある。 瀧井孝作などはあくの強い独特の文章として知られ、その 場合は粗削りの表現が独特の文学効果を果たすため、むし ろ特殊な名文として位置づけられる。その点で「駄文」と 決定的に違う。駄文 あくま【悪魔】人間に災いを与え、あるいは悪の道に誘う魔 物をさし、会話にも文章にも使われる漢語。「のしわざ の文字だけがーのように息づいて、今にも跳びかからんば かりに、こちらを怖ろしい顔をして窺っている」とある。 <13> 魔·Q魔物 あくやく【悪役】映画や演劇での悪人の役柄をさし、会話に も文章にも使われる漢語。へーを引き受ける〉へー専門の俳 優 一作品に何人も出ることがある。鳥敵役 あくらつ【悪辣】たちが悪くあくどい意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈ーなやり口〉〈ーな違反〉 「悪質」以上にひどい感じがある。Q悪質・邪悪・悪い あくるひ【明くる日】「翌日」の意で、会話にも文章にも使わ れる、いくぶん古風でやわらかい感じの和語。〈休みのー〉 「の朝早く」芥川龍之介の『鼻」に「一晩寝てー早く眼 がさめると」とある。日常語としては「次の日」のほうが一 般的な表現。一夜明けた次の日の意から。あした・あす・み ようにち・Q翌日 あけがた【明け方】夜が明けかかる時刻をさし、会話でも文 章でも使う最もふつうの語。ゆうべは近くまで起きて いた》志賀直哉の『焚火』に「寝込んで了うと、は随分 寒いでしょう」とある。嘆・曙・Q朝ぼらけ・朝まだき・しの のめ・払暁・未明・夜明け・黎明 あけしめ【開け閉め】「開閉」の意で、会話にも文章にも使わ れる比較的新しい感じの和語。〈ドアの—〉〈筆筍だんの—〉 〈ふたの—〉の戸や襖子・障子などの建具については「開け たて」のほうが伝統的。Q開けたて・開閉 あけすけ【明け透け】包み隠さず遠慮なく露骨な意で、主に 会話に使われる和語。〈—に物を言う〉有り体・ありのまま・ あるがまま・Qざっくばらん・率直 あけたて【開け閉て】「開閉」の意で、会話にも文章にも使わ あげる れる和語。〈障子の—〉〈雨戸を—する音〉箱の蓋や簟 筍だの引き出しなどについては使いにくい。建具について は伝統的にこの語を用いてきたが、今は「開け閉め」のほう が一般的になりつつあるせいで、古風な響きを感じさせる こともある。ひQ開け閉め・開閉 あけはなす【開(明)け放す】いっぱいに開ける、しばらく開 けたままにしておく意で、いくぶん改まった会話や文章に 用いられる和語。〈戸を—〉〈窓を一斉に—〉開け放つ・開放 あけはなつ【開(明)け放つ】「開け放す」意で、改まった会話 や文章に用いられる古風な和語。〈しばらく窓を—・って部 屋の空気を入れ換える〉夏目漱石の『硝子戸の中』に「硝 子戸をー・って、静かな春の光に包まれながら、恍惚とと比 稿を書き終る」とある。開け放す・開放 あけぼの【曙】「暁」の終わりごろで、「朝ぼらけ」の前にあ たる時間帯をさす古風な和風文章語。〈—の空〉〈—の光〉 詩的な感じもある。「明け仄」の意から。ひQ暁・明け方・朝 ぼらけ・朝まだき・しのめ・払暁・未明・夜明け・黎明 あける【開ける】閉じた状態を開いた状態に変える意で、会 話やさほど硬くない文章に広く使われる、日常生活の基本 的な和語。同じ日常語の「開く」より、くだけた会話でよく 使われる。〈戸をー〉〈箱をー〉〈朝早く店をー〉〈口をー〉 回閉じた状態を開放状態に移行させることに注目した表現 で、手段や方向はあまり意識されない。安岡章太郎の『ガ ラスの靴』に「毁れた人形みたいに両眼をポッカリー・け て」とある。ひひらく あげる【上げる】下から上へ移動させる意で、くだけた会話 <14> あご から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈顔を—〉〈友達に—〉〈給料を—〉〈棚に—〉②伊藤整の「鳴海仙吉」に「うるんだ、放心したような眼を—・げて私を見た」とある。「君にいい物を—・げよう」のように「与える」意に使う場合は、「遣る②」に比べて謙遜の気持ちが含まれる。「やる」より丁寧な表現。近年、「やる」のぞんざいな感じを嫌って「子供にお年玉を—」「犬にえさを—」「花に水を—」のような用法が広がり問題になっている。そのほか「声を—」「安く—」「効果を—」「スピードを—」など多様な意味合いで使う。「手を—」「例を—」「式を—」「犯人を—」などでは「挙げる」「凧を—」「花火を—」「てんぷらを—」などでは「揚げる」と書くことが多い。基本的な用法では「下げる」「下ろす」と対立。与える・呉れる・差し上げる・授ける・Q引き上げる・施す・やる② あご【顎(頤・頷)】口を囲む上下の硬い部分をさし、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〜を なでる〜〜〜出す〜〜〜〜〜 あこがれ【憧(憬)れ】ぜひ自分もと心惹かれる意で、会話に も文章にも使われる和語。〈一のエ一ヶ海の旅〉(一の的) 〈一の先輩〉(一を抱く)望みがかなうあてがないときに よく使うプラスイメージの語。少憧憬 あさ【朝】日の出から正午までの時間、特にその前半をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈ーの爽やかな空気〉(すがすがしいーを迎え る〉(ー早く目を覚ます)〈ー早くから騒がしい)岡本か の子の『やがて五月に』に「晩春の花の萼をまだつけている 新果のような五月のあるーであった」とある。「昼」「晩」 と対立する場合と、「夕」または「晩」と対立する場合とが ある。Q朝方・朝っぱら・朝のうち あさい【浅い】周囲・表面・入り口から奥や底までの距離が短 い意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる基本的 な和語。〈川〉底が」〈鍋〉〈帽子を」・くかぶる〉 団夏目漱石の『坊っちゃん』に「川の流れは」けれども早い から」とある。「傷が」「歴史が」「眠りが」「経験が 」「考えが」のように、程度が軽い意にも使う。「一緑」 のように「薄い」意に使う用法は古風。「日が」「春もま だ」のような時間的な用法はいくぶん文学的。「深い」と 対立。ひ淡い・Q薄い あさがた【朝方】朝の早いうちをさし、会話やさほど硬くな い文章に使われる、いくぶん古風な和語。へーに雨がばらつ く)具体的には日の出から二、三時間程度を連想しやす い。「夕方」と対立。ヨQ朝・朝っぽら・朝のうち あさからぬ【浅からぬ】「深い」に近い意味合いでいくふん 優雅な感じの慣用的な文語的表現。〈ー縁〉は深い あざける【嘲る】相手をせせら笑うように小ばかにする意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈人の失敗を—〉②態度や 口調の形容に使う例も多い。ひQあざわらう・せせら笑う・嘲 笑・嘲弄・冷笑 あさごはん【朝御飯】朝の食事の意で、会話や軽い文章に使 <15> われる、少し丁寧な日常語。〈ーを簡単に済ませる〉御 飯」とあるが、パン食にも使う。専朝はん・朝めし・Q朝食 あさって【明後日】明日の次の日の意で、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。「まで待つ」「までには着くだろう」「の方を向く」のように、まるで見当違いの方角をさす古くて俗な用法もある。「おととい」と対立。漢字表記は「みょうごにち」と読まれやすい。明後日あさっぱら【朝っぱら】朝早くの意で、主として会話に使われる、やや俗っぽい和語。「こんなから仕事が舞い込む」「から電話が鳴りっぽなしだ」「こんな早朝にはふさわしくないという意外感が伴う。「朝腹」の転。朝・Q朝方・朝のうち あざな【字】昔、文人や学者などが実名以外につけた別名を さし、会話にも文章にも使われる古めかしい和語。〈孔子は 名を丘 た習慣をまねたものという。夢称・Qあだな・ニックネーム あさのうち【朝の内】午前中の比較的早いほうをさし、会話 やさほど硬くない文章に用いられる和語。へ雲が多いが 次第に晴れてくる)具体的には日の出から三時間程度を 連想しやすい。Q朝・朝方・朝っぽら あさはか【浅はか】思慮の足りない意で、会話やさほど硬く ない文章に使われる和語。〈一な考え〉「一にもうまく話に 乗せられる」福原麟太郎の『四十歳の歌』に「一な人生観 を赤いネクタイに結びつけて」とある。軽はずみ・軽率・Q 軽薄・浮薄 あさはん【朝飯】朝の食事の意で、くだけた会話に使われる 比較的新しい俗っぽい表現。〈ーもまだだ〉四パン食をも含む。Q朝御飯・朝めし・朝食 あさめし あさぼらけ【朝ぼらけ】夜明けの雲が薄赤くなりかける時刻 をさす、古めかしくやや詩的な和風表現。〈一の雲〉み暁・Q 明け方・曙・朝まだき・しののめ・払暁・未明・夜明け・黎明 あさましい【浅ましい】品性が下劣でみじめで情けない意で、 会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な和語。〈一姿〉 〈一態度〉〈一考え〉〈一遺産相続争い〉②呆れ果てたような 響きを伴いやすい。意地汚い・卑しい・Qさもしい あさまだき【朝まだき】夜が明けきらずまだ薄暗い時刻をさ す、古語的な和風表現。国木田独歩の『武蔵野』に「霧 の晴れぬ間に家を出で野を歩み林を訪う」とある。単暁・Q 明け方・曙・朝ぼらけ・しののめ・払暁・未明・夜明け・黎明 あざむく【欺く】相手の期待や信頼を裏切ってだます意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い感じの和語。人を 行為〉《敵を手段》夏目漱石の『こころ』に「自分がー かれた返報に、残酷な復讐をするようになる」とある。「昼 をー」「雪をー」のように、思い違いさせるほど似ている意 にも使う。いつわる・かたる・担ぐ・こまかす・たぶらかす・だま くらかす・Qだます・ちょろまかす あさめし【朝飯】朝の食事の意で、主にくだけた会話や軽い 文章に主として男性の使う、ぞんざいでくつろいだ感じの 日常の和語。へーに納豆を食う〉へー前に一仕事済ませる〉 古くは今よりぞんざいな感じが薄かった。高田保の『ホ テル』に「起き出してから喰うのがーだと信じている私は、 ーを喰うために起き出すという気持には仲々なれない」と <16> あざやか あり、いつもホテルで朝食を取りそこなう背景を語ってい る。刂朝御飯・朝はん・Q朝食 あざやか【鮮やか】形や色などがはっきりしている意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈—な色〉へ—に写ってい る)大仏次郎の『帰郷』に「(スコールの後の町は)洗い出 されたように目に—な色彩を一面に燃立たせていた」とあ る。「—な身のこなし」「手並みが—だ」「—にやってのけ る」のように、きわめてみごとの意でも使う。ひくっきり・Q 鮮明 あざわらう【嘲笑う/嘲う】あざけって笑う意で、やや改ま った会話や文章に用いられる和語。〈他人の失態を—〉 「わらう」に「嗤」の字をあてて、この意味を出すこともあ る。ひQせせら笑う・嘲笑・冷笑 あし【足】股から足の指まで、または、足首から下の部分を きし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 生活の基本的な和語。〈1の裏〉〈大きな1〉〈1が速い〉 〈1には自信がある〉〈1が弱る〉〈1の向くまま〉〈1を運 ぶ〉〈1が棒になる〉②永井龍男の『往来』に「靴下も足袋 も履かず、汚れた1をしていた」とある。尾崎一雄の『まぼ ろしの記』に「私の1は、ふくらはぎは勿論、太腿も、膝の 骨より細くなっていた」とあるように、足首から先の部分で なく、脚部全体をさすことを明確にするために「脚が太い」 「すらりと長い脚」「テーブルの脚」と書き、人間以外の哺乳 類の場合に特に「肢」と書く場合もある。ひあんよ あし【葦/芦】水辺に群生する、すすきに似たイネ科の多年 草をさし、会話でも文章でも幅広く使われる和語。〈水辺の ーが風にそよぐ)長塚節の『土』に「彼らは沼辺のーのよ うに集まれば互いにただざわざわと騒ぐ」という比喩表現 が出る。かつては、生え始めから生育段階に応じて順に 「葭」「蘆(芦)」「葦」という漢字を使い分けたという。「ア シ」の音が「悪し」に通じるため、逆の「よし」と言い換え る例もある。ひよし あじ【味】飲み物や食べ物が舌に与える味覚上の特徴の意で、 くだけた会話から硬い文章まで広く使える日常の基本的な 和語。〈ーが濃い〉〈ーをつける〉〈ーを見る〉〈なかなかー がある〉②中谷宇吉郎は『立春の卵』を「立春の卵の話は、 人類の盲点の存在を示す一例と考えると、なかなかーのあ る話である」として結ぶ。このように、比喻的に面白み・趣 の意を表す抽象的な用法もある。Q味わい・風味 アしきしゅうきゅう【ア式蹴球】「サッカー」の別称。主とし て文章中に用いられ、会話ではほとんど使わない。「ア」 はアソシエーションの略。Qサッカー・蹴球・フットボール あした【明日】「あす」の意。「あす」より口頭語的で、くだ けた日常会話でよく用いられる和語。硬い文章にはふさわ しくない。〈ーになればわかるさ〉〈ーが待ち遠しいな〉 〈一天気になあれ〉夏目漱石の「坊っちゃん」に「勝つ。 勝てなければ、あさって勝つ」とある。漢字表記は、多く 「みょうにち」と読まれ、さもなければ「あす」と読まれる ため、「あした」と読ませたい場合は振り仮名が必要で、仮 名書きが無難。古語では「朝」「翌朝」をさす。Qあす・み ようにち あしだ【足賦】高い歯を入れた下貼をさし、会話にも文章に <17> も使われる古風な感じの日常語。〈雨の中をーで急ぐ〉〈腰 手拭に—履きのパンカラ学生〉幸田文の『おとうと』に 「歯のへった歩きにくいーで、駈けるように砂利道を行く」 とある。込下駄 あじみ【味見】調理中に味加減を調べるためにごく少量口に 含むことをきして、会話にも文章にも使われる日常の和語。 〈料理のー〉Q試食・試し食い あじわい【味わい】プラスイメージの風味や趣に対して用い る、やや文章語寄りの日常的な和語。〈深い—〉〈何ともい えない—〉の林芙美子の『茶色の目』に「まるで煮出昆布の ように—があった」とある。芸術作品など食品の味以外の 趣をさす例が多い。Q味風味 あす【明日】「きょう」の次の日をさす。「みょうにち」ほどは改まらず、会話的な「あした」よりは少し改まった感じの語。〈一の空模様〉〈きょうーに迫る〉〈一までには必ず仕上げます〉のごく親しい間柄でのうちとけた会話で使うと、若干取り澄ました感じに響くこともある。夏目漱石の『坊っちゃん』に「今日見て、移って、あさってから学校へ行けば極りがいい」とある。「ーはわが身」「一の日本をしょって立つ」のように抽象的な意味合いで用いる場合もある。そのような例では「みょうにち」は不適切で、近年時折見られる「あした」も伝統的にぴったりしない。漢字表記は「みようにち」と読まれやすく、確実に「あす」と読ませたい場合は仮名書きが無難。Qあした・みょうにち あずける【預ける】他人に保管してもらう意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 あせる 〈荷物を—〉〈銀行に金を—〉〈託児所に子供を—〉の「壁に 上体を—」のように、もたせかける意にも、「委員長に判断 を—」のように、任せるの意にも使う。託する あすこ「あそこ」の意で、くだけた会話に使われる俗っぽい 語形。〈ーが怪しい〉〈ーは駄目だ〉もあそこ・かしこ あせだく【汗だく】汗でひとく濡れる意で、会話にも文章に も使われる和語。〈弁解に追われーになる〉の大量の汗で濡 れた人体に注目した表現。「汗だくだく」の略。ひ汗まみれ・ 汗みずく・汗みどろ あせまみれ汗塗れ多くの汗で汚れた状態をさしやや改 まった会話や文章に用いられる和語。〈一の顔〉への下着 身につけている衣類までも汗でひとく濡れる不快感に注 目していうこともある。ひ汗だく・Q汗みずく・汗みどろ あせみずく『汗水漬く』水に浸ったように汗びっしょりにな る意で、主に文章に用いられる、やや古風な和語。へーにな って奮闘する》み汗だく・Q汗まみれ・汗みどろ あせみどろ【汗みどろ】汗みずくと同義で、主に文章に用いられる古風な和語。〈真夏の重労働にーになる〉②通常、衣頬については用いない。ひ汗だく・Q汗まみれ・汗みずく あせり【焦り】心が先走って平静さを失う意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈試合の終盤でーが出る〉〈締切が近 づいてーの色が見える〉室生犀星の『舌を噛み切った女』 に「手綱を取っている手の平の汗までわかるようなー」とあ る。刂焦慮 あせる【焦る】思いどおりに事が運ばずに落ち着きを失い らつく意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ <18> あせる る日常の基本的な和語。〈気ばかり—〉〈勝ちを—〉〈功を —〉〈相手が意外に手ごわくて—〉〈いい手が見つからず —〉〈ー・って間違える〉石原慎太郎の『行為と死』に「自 分の行方のつかめぬまま、彼はただ自分に向ってーってい た」とある。「急く」に比べ、時間に追われる感じは薄く、 うまく行かないためにいらいらする感じが強い。急く あせる【褪せる】時間が経って色が薄くなる意で、会話でも 文章でも幅広く使われる和語。〈日向ふに干すと色が—〉 〈長く着ているので少し柄がー・せてきた〉完全に「褪め る」と言えるまでの途中の段階に着目した褪色がしの表現。 何らかの事情で急に「褪める」こともありそうだが、「褪せ る」にはかなりの時間の経過が必要な感じがある。小沼丹 の『マロニエの葉』に「日が経つにつれて緑色は次第に色 ー・せて」とある。ひ褪める あぜん【啞然】驚き果れてものも言えない意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈あまりのことに一同とす る〉へーとして顔を見合わす〉の「呆然」より瞬間的な感 じがある。Q呆然・茫然 あそこ【彼処(所)】自分や相手から遠い場所、または、話し 手も聞き手も知っている場所を漠然とさし、会話や硬くな い文章に使われる日常の基本的な和語。へにある〉へは まだ行ったことがない)「正直ーまでやれるとは思わな かった」のように評価できる段階・程度をさす抽象的な用法 もある。また、人前で口にしたくない刑務所・売春宿・陰部 などの婉曲表現ともなる。Qあすこ・かしこ あそびにん【遊び人】仕事も持たずにぶらぶら遊んでいる人 をさす古風な用語。〈一見風の男〉の「ブレーボーイ」に 比べ、定職を持たない点が強調される。ひブレーボーイ あそぶ【遊ぶ】自分のしたいことをして楽しむ意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈仲良くー〉〈子供とー〉〈金が欲しい〉図大人が 「ー・びに来いよ」と言うときは、単に仕事や用事を離れて のんびりする意味合いが強い。渋谷実監督の映画『好人好 日』で笠智衆の扮する文化勲章を受賞する数学者が、訪問客 として娘の恋人が「ー・びに来ました」と挨拶するのに「何 してー?」と応じる場面は、大学者の世間音痴ぶりで笑い を誘う。「卒業しても家でぶらぶらー・んでいる」「ー・んで 暮らす」のように、仕事も勉強もしないで無駄に時間を費 やす意にも使う。「紅灯の巷にー」のように、特に酒色に ふける意に使う用法は古風。「オックスフォードにー」のよ うに「留学する」意、「バリにー」のように「観光する」意 に用いる用法は主に文章に用い、古風で改まった感じでい くぶん雅語的に響く。「働く」と対立。ヌQ娯楽・趣味・たわむ れる・道楽① あたい【価】値段の意で、主に丁寧な会話に使われる古風な 和語。〈商品にーをつける〉〈適正なーで取引する〉〈ーは いかほどでしょう〉の「一読のーがある」のように価値の意 で使う場合や、数学で条件に当てはまる数値を意味する場 合は「値」と書く。価格・価額・値・Q値段 あたい【値】値打ちや数値の意味で、改まった会話や文章に 用いる和語。〈一読のーがある名著〉〈Xのーを求めよ〉 「春宵一刻ー千金」の場合は本来「直」と書く。Q価価 <19> 値・値打ち あたえる【与える】その所有権を相手に移す意で、いくぶん 改まった会話や文章に用いられる硬い感じの和語。ヘット にえさをー〉〈子供に小遣いをー〉〈必要な資金をー〉〈権 利をー〉②日常生活では、上位者から下位者に渡す感じが あるが、上下関係の配慮を含む「差し上げる」「上げる」 「やる」に対し、所有権の移転自体を客観的に表す場合にも 使うため、「仕事をー」「利益をー」「損害をー」「ショック をー」「機会をー」のように抽象的な対象に用いることもで きる。「授ける」より個人的な感じが薄く、中立的な総称と もなる。そのため、「市町村に損害をー」「業界に不安を ー」のように、結果としてある状態を招く意にも使う。上 げる・呉れる・差し上げる・Q授ける・施す・やる② あたかも【恰(宛)もまさにそくりの意で主として文章に 用いられる古めかしい和語。「夢の如し」町は死に絶 えたように森閑としている)三島由紀夫の『金閣寺』に 「叡山の頂きは突兀としていたが、その裾のひろがりは限 りなく、一つの主題の余韻が、いつまでも鳴りひびいて いたようであった」とある。「時春」のように、ちょうど その時という意味でも用い、その場合はさらに古い感じに 響く。明治期には「あだかも」とも。ひQさながら・丁度・まる で② あたくし上品な女性が「わたくし」をやわらかくちょっと 崩した感じに発音する和語の語形。〈何も存じません〉 へーでおよろしかったら)小津安二郎監督の映画『お早よ う』に、三宅邦子の演ずる林民子がこの語を使うのを、上品 あたたかい ぶっていると近所の主婦連中が批判する場面がある。丼伏 鱒二の『珍品堂主人』にも、茶の師匠で顧問格として料亭に 入った蘭々女というしたたかな女性が、上品ぶって「が悪 うございました」と心にもなく頭を下げる場面が出る。織 細な言語感覚の名文家として定評のある永井龍男は、都会 人の甘えと教養をやわらかくしたようなこの語が東京の女 性の会話から消えかかっているのを惜しんだ。そんな場合 に「わたくし」で代用するとやぼったくなり都会的な感じが 失われるのだという。みあたし・おいら・俺・僕・わし・Qわたく し・わたし あたしくだけた会話で、女の「わたし」の代わりに用いられる和語。一部の芸人などを除き、一般に男は用いない。 〈ねえ、ー、わかる?〉へーって、ばかね》弁伏鱒二の『貸 間あり』に「ーいろいろ考えたんですけれど」とある。 たくし・おいら・俺・僕・わし・わたくし・Qわたし あたたかい【温かい】冷たくも熱くもない心地よい物の温度 の感じをさし、会話でも文章でも広く使われる日常生活の 基本的な和語。〈ースープ〉〈一肌〉〈一言葉〉〈ーもてな し〉〈一心〉有吉佐和子の『水と宝石』に「ジャーの飯が ーのを確かめると、掌を叮嚀に洗って塩をつけた」とある。 くだけた会話では「あったかい」となることが多い。「冷た い」の反対の意味合いで主に食べ物や気持ちについて使わ れる。ひQ暖かい・温暖 あたたかい【暖かい】寒くも暑くもない快適な気温の感じを さし、会話でも文章でも広く使われる日常生活の基本的な 和語。〈一部屋〉〈ー気候〉〈日ぎしがぽかぽかとー〉〈ー <20> あたたかさ くして寝る〈色〉阿川佐和子の走ってころんで さあ大変』に「南風が肌にやさしく日射しはーく、街中で はTシャツ姿の人をたくさん見かけた」とある。くだけた 会話では「あったかい」となることが多い。「寒い」の反対 の意味合いで気温などによく使われる。Q温かい・温暖 あたたかさ【暖かさ】気温などが暖かく感じられることをさ して、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈連日の—に 蕾がふくらむ〉〈しばらく—が続く〉実際の温度につい ての感じを言う例が多い。Q温かみ・ぬくもり あたたかみ【温かみ】心地よい温かさ、人をほのぼのと幸せ な気分に誘う思いやりをさし、会話でも文章でも使う日常 の和語。〈冷め切らずほんのりとーを残している〉のどこ となくーの感じられる町」「ーのある人柄」「家庭のーが恋 しい」のように、心の和むような好ましさや懐かしさをさ す比喻的拡大用法の例も多い。「温かさ」以上にしっとりと した感じがある。ひQ暖かさ・ぬくもり アタック攻撃・挑戦の意で、主に会話に使われる外来語。 〈敵にーをかける〉〈再度のーで登頂に成功する〉〈あえて 難関にーを試みる〉「すごい美人にーする」など、目標に 猛烈に働きかける意の俗な用法もある。ひチャレンジ・Q挑戦 あだっぽい【仇(婀娜)っぽい】女の姿や物腰やしぐさなどが 色っぽくなまめかしい意で、会話にも文章にも使われる、古 めかしく少し俗っぽい和語。へー着物姿〉へー・くしなだれ かかる)の丼伏鱒二の『珍品堂主人』に「色けに欠けてい る。ことに後姿に仇っぽさが乏しくなる」とある。それ相 当の年齢が必要で、ごく若い女には使わない。马婀娜な・色っ ぼい・Q艶っぽい・なまめかしい・妖艶 あだな【婀娜な】「あだっぽい」の意で、会話にも文章にも使 われるいかにも古めかしい表現。〈ー姿〉〈一年増〉もあだっ ぽい・Q色っぽい・艶っぽい・なまめかしい・妖艶 あだな【渾(綽・仇)名】本名とは別に、その人の姓名を簡略化 したり特徴をとらえたりしてつけた名前。〈ーをつける〉 〈ーで呼ぶ〉親しみまたは軽蔑の感情が伴いやすい。夏目 漱石の『坊っちゃん』に「みんなにーをつけてやった。校長 は狸、教頭は赤シャツ、英語の教師はうらなり、数学は山 嵐、画学はのだいことあり、軽蔑の響きが目立つ。刂愛称 あざな・Qニックネトム あたふたあわてふためく意で、主として改まらない会話に 使われる和語。〈突然の来客にーする〉へーと馭けつける〉 ひせかせか・Qそそくさ・そわそわ あたま【頭】①人間や動物の頸より先の部分をさし、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。へーのてっぺん)へーが大きい)井伏鱒二の『さざな み軍記』に「ーの髪のあるべき部分がつるつるに禿げ、ねじ り鉢巻をしていたと見える跡だけ皮膚が正常に残って」と あり、檀一雄の『花筐』に「畸形のように巨きなー」とあ る。頸部②脳の活動をさし、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の基本的な和語。へーがいい)へー がよくまわる)ぼうっとしてーが働かない)寺田寅彦は 『科学者とあたま』で「科学者はーが悪くなければいけな い」と主張した。ひQ頭脳・脳・脳髄・脳味噌・脳裏 あたまかず【頭数】何かをするための人数の意で、会話や軽 <21> い文章に使われる和語。へーをそろえる〉へーが不足だ 野球ヤマージャンなど一定の人数が必要な場面でよく用い、 学生数や乗客数のような一般的な人数については使わない。 人数 あたまきん【頭金】高額にわたる売買契約の際に分割払いの 初回分として支払う代金の意で、会話にも文章にも使われ る表現。これをーとして新築の家を購入する〉、Q内金・手 金・手付け・手付金 あたまこなし【頭ごなし】相手の考えや気持ちへの配慮がな く上から一方的に押さえつけるような態度の意で、会話や 軽い文章に使われる和語。へーにどなりつけるへーに決め 付ける)弔横柄・Q高圧的・尊大・高飛車 あたらしい【新しい】できてから時間が経っていない、今ま でと違う、といった意味合いで、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の最も基本的な和語。〈一服〉〈一 品物〉〈一家〉〈・く始める〉〈考え方が一〉〈一感覚〉〈記 憶に一〉の小津安二郎監督は映画『宗方姉妹』で田中絹 代の扮する節子の口を借りて「ほんとにーことは、いつま でたっても古くならないこと」という持論を展開した。「新 た」に比べ、具体物にも抽象概念にも広く使える。「古い」 と対立。専新た斬新 あたり【辺り】その付近やそこにいる人々をさし、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈あの ー〉〈ーを見まわす〉〈ーが寝静まる〉〈ーに気兼ねをする〉 〈ーの様子をうかがう〉高樹のぷ子の『その細き道』に 「ーの音をすべて持ち去られたように静かになった」とあ あちら る。JQ周囲・周辺 あたりまえ【当たり前】道理的に当然そうすべきだの意で、 会話や軽い文章に使われる和語。〈迷惑をかけたら謝罪す るのがーだ〉へーのことをしたまでだ〉〈冬は寒いのがー だ〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「東京はよい所で御座い ましょうと云ったからーだと答えてやった」とある。「ーの 服装」のようにごくありふれたの意にも、「ーの結果にな る」のように当然予想されたとおりの意にも使われる。「当 然」を誤って「当前」と書いたのを訓読みしてできた俗っぽ い語形という。み当然 あたる【当たる】対象と一瞬接触する、「対する」意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の生活和語。 〈ポールが背中に〉〈ーを幸いなぎ倒す〉〈雨に〉〈焚き 火に〉〈つらく〉②他の物体との接触に伴う衝撃の強い 「ぶつかる」に比べ、この語は衝撃の大小より接触の有無に 重点を置いた表現。志賀直哉の『城の崎にて』の中に、蝶 螈がを驚かして水に入れようと思い、またく狙わずに小 石を投げる場面があり、「自分はそれがー事などは全く考 えなかった」とある。それが偶然に当たって蝾螈は死んで しまうのだが、ここにるし「ぷつかる」という語を用いた ら、自分と関係なくどこかから飛んで来た石による偶然の 事故のような感じに変わるだろう。ぶつかる あちこち【彼方此方】「あちらこちら」の意で、主にくだけた 会話に使われる和語。〈ーうろつく〉〈ー探し回る〉及Qあち らこちら・ここかしこ・そこかしこ あちら【彼方】①話し手・聞き手から離れた場所をさし、会話 <22> や硬くない文章に使われる和語。「の席〉へからお出で になる〉へに見えますのは〉「の生活に慣れている」 の形でそれとなく外国をにおわせる用法もある。「こちら」 と対立。あっち・Q向こう①②相手方の意で、会話や硬く ない文章に使われる和語。「のお気持ちもあるからすぐ には決められない)の「向こう」より少し丁寧な感じがあ る。「こちら」と対立。あっち・Q先方・向こう② あちらこちら【彼方此方】いろいろな場所の意で、会話にも 文章にも使われる和語。へー歩き回る〉へー問い合わせる〉 の類語の中で最も標準的。ひQあちこち・ここかしこ・そこかし こ 物などがきわめて高温である意で、主 に会訓に使われる和語。「のうどんをかき込む」熟い あつい【厚い】厚みがある、心がこもっているといった意味 合いで、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な和語。「本〉「雲に覆われる」〈層が」 〈パンを!く切る〉〈信仰心が」〈人情が」〈!く御礼 申し上げます〉島木健作の『生活の探求』に「はだけた胸 はおどろくほどー・くがっしりしてはいる」とある。心情な どが深く細やかである意で用いる場合、その点を特に強め る意図で「篤い」と書くこともある。篤い あつい【篤い】心のこもったの意で、主として改まった文章 に用いる和語。〈ーもてなし〉〈志〉「厚い」とも書く が、この表記のほうが心のこもった感じが強い。「病の 床に臥す」のように病気が重いという意味の場合はもっ ぼらこの漢字を用いる。厚い あつい【熱い】物の温度が通常より著しく高い意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈|湯に入る〉〈|番茶をすする〉〈額が|〉〈目頭が ー・くなる〉阿部昭の『海の子』に「砂に首まで埋まっ ていると、しまいにはなんだかうつらうつらしてくる」と ある。一般に「暑い」より高温。「冷たい」と対立。Q 熱々・暑い あつい【暑い】不快なほど気温が高い意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「 くて眠れない」〈焼け付くように—真夏の日ざし〉庄野潤 三の『秋風と二人の男』に「家を出る時には、空に太陽が照 っていた。そうして、確かにー・かった」とある。「寒い」と 対立。熱い・暑さ・蒸し暑い あつかう【扱う】物事を担当・操作・処理・対応する意で、会話 にも文章にも広く使われる和語。〈危険物を—〉〈るっぱら 衣料品を—〉〈年金関係の書類を—〉〈丁寧に—〉「取り 扱う」とほぼ同義であるが、「一人前の大人として—」のよ うに待遇する意では「取り扱う」は使いにくい。取り扱う あつかましい【厚かましい】恥じらいを忘れ相手の迷惑も顧 みず遠慮のない意で、くだけた会話から文章まで広く使わ れる日常の和語。〈態度が—〉〈ーお願いですが〉〈ーくそ のまま居座る〉四川端康成の『雪国』に「男の厚かましさを さらけ出しているだけなのに」とある。Q厚顔無恥・図々し い・鉄面皮・恥曝し・恥知らず・破廉恥 あっかん【悪漢】悪事を働く乱暴な男の意で、主として文章 中に使われる古風な漢語。へと格闘するへに立ち向か <23> う)梶井基次郎の『檸檬』に「黄金色に輝く恐ろしい爆弾 を仕掛て来た奇怪なー」とある。「悪人」や「悪者」がその ような人間一般をさすのとは対照的に、この語は特定の個 人を問題にする。ピカレスクロマンが「小説」と訳され るように、この語は結婚詐欺や不倫を繰り返すタイプの悪 い男のイメージからは遠く、札付きのならず者などを連想 させやすい。悪玉・Q悪党・悪人・悪・悪者 あっき【悪鬼】人間に害悪を及ぼす鬼の意で、主として文章 に用いられる漢語。「のしわざ」石川淳の『紫苑物語』 に「はぬっと首を突き出して、四方のけしきを見わたして いた」とある。刂鬼 あっけない【呆気無い】予想や期待より意外に短かったり手 応えがなかったり簡単だったりして、張り合いのない様子 をきし、会話や硬くない文章に使われる和語。へー結果に終 わる〉へー幕切れ〉へー・くけりがつく)庄野潤三の『秋風 と二人の男』に「(こわれた入れ歯が)どこかへ消えて無く なってしまうのかと思ったら、何だかー・くて」とある。「は かない」に比べ、現象よりものごとによく使う傾向がある。 ひはかない・物足りない あっけらかん開け広げでものにこだわらない意でもっ ぼらくだけた会話に使われる俗語。〈もともとーとした性 格だ〉〈当人はーとしている〉回「ただーと眺めているだ け」のように、口を開けてぼんやりしている意にも使う。 けろり あっこう【悪口】「わるくち」の意で改まった会話や文章に用 いられる古風で硬い漢語。〈聞き捨てならない—雑言〉 あっせん を吐く (ーを浴びせる) 陰口・Qわるくち あつさ【厚さ】物体の一つの面から反対の面までの直線距離 をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の和語。〈壁のーを測る〉〈十センチに近いーの辞典〉 〈大根をー三センチ程度に切る〉「厚み」に比べ、数字で 計測できる客観的な存在としてとらえた感じがあり、「人 間としてのー」といった比喩的用法には適さない。 あつさ【暑さ】気温の高い不快な感じをさし、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈真 夏の焼けるようなー〉の壺井栄の母のない子と子のない 母とに「じりじり照りつける八月のーは、前夜の大雨にも かかわらず、焼けた炎のあつさもくわわって、からだじゅ う、汗がしたたりました」とある。「寒さ」と対立。暑い 蒸し暑い あっさり淡泊な意で、会話や軽い文章に使われる和語。「した態度」〈ー諦める〉〈ー断られる〉ごてごてした、濃厚な状態の反対。「ーした料理」は鮑の刺身や白身の焼き魚など、「ーした化粧」は口紅や白粉を厚く塗りたくっていない軽い化粧、「ーした性格の人」は熱中するほど対象に深く入り込まず、物に対するこだわりの少ない人物を連想させる。ひさっぱり① あっせん【斡旋】両者の間に立って紹介したりよい関係をつ くったりするために尽力する意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈仕事を—する〉〈就職先の—を依頼する〉物 や人の紹介の際に使うことが多いが、労働争議の解決に際 して調停のような意味合いで使うこともある。専周旋 <24> あっち あっち「あちら」のぞんざいな形で、くだけた会話に使われ る。〈ーからやって来る〉〈ーにちっちゃく見える〉〈ーがど う思おうとかまやしない〉Qあちら・先方・向こう あっというま【あっと言う間】「アッ」と叫ぶのに要するほど のごく短い時間をさし、会話や軽い文章に使われる日常の 表現。「一の出来事〉へーに終わる②所要時間の短さを強 調するための慣用的な誇張表現で、「一に短編を書き上げ る」のように、実際にはある程度長い時間に相当する例も ある。一瞬・瞬間・瞬時・Q瞬く間 あつぼったい【厚ぼったい】「厚い」に近い意の和語。「厚い」 より重さと不快感が強く、会話的。「唇」厚い あつまる【集まる】生きものや物体や抽象体がある場所に集 中する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な和語。〈客が大勢—〉〈資金が—〉〈寄付 が—〉〈情報が—〉〈世間の注目が—〉「散らばる」「散ず る」と対立。単集合・たかる・Qつどう・群がる・群れる あつみ【厚み】厚さを感じさせる意で、くだけた会話から文 章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〆かなりーの ある本〜のあるしっかりした板〜板のー」にしろ 「胸のー」にしろ、客観的な感じの「厚さ」に比べ、計測さ れた数値だけでなく、その厚いものが与える頑丈さ・頼もし さ・信頼感といった感触や雰囲気を含めてとらえた主観性の 強い語。「人間としてのーを増す」のように、味わいのある 重厚さを意味する用法が生まれるのもそのためである。 厚さ あつらえむき【読え向き】びったり合っている意で、会話や 軽い文章に使われる和語。〈一の仕事が舞い込む〉〈一の相 手が見つかる〉〈出発には一の風だ〉まるで注文して作ら せたように偶然希望どおりになっている意から。しばしば 「お」の形で使う。ひうってつけ あつらえる【誂える】注文して作らせる意で、会話にも文章 にも使われる、やや古風な和語。〈春の訪問着を—〉〈特別 料理を—〉②永井荷風の『ひかげの花』に「天どんをー・え て昼飯をすます」とある。「注文」や「オーダー」に比べ、 特別なものというニュアンスが強い。刂注文 あつれき【軋轢】互いの仲が悪くなる意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈嫁と姑の—〉〈両者の間に— が生ずる〉原義は、車輪のきしる意。刂仲違い・Q反目・不 仲・不和 あてこすり【当て擦り】悪口や非難を露骨に表現せず、他の 何かにかこつけてそれとなく感じ取らせる意で、会話や軽 い文章に使われる和語。〈ーを言う〉へーとしか聞こえな い〉「あてつけ」よりさらに婉曲で皮肉っぽい感じが ある。きあてつけ・Q皮肉 あてこむ【当て込む】好ましい結果を期待し、それを当てに する意で、会話やさほど改まらない文章に使われる和語。 〈多額の収入を—〉〈劇場の帰り客を—・んでタクシーが並 ぶ」の「見込む」よりも楽観的。見込む あてつけ【当て付け】はきりと相手を非難したり不満を つけたりする代わりに、他のことにかこつけて間接的にそ ういう気持ちを示す意で、会話や軽い文章に使われる和語。 へーがましい)〈痛烈な—〉〈上司への—〉「あてこすり」 <25> と違い、言語表現だけでなく態度や行為で示す場合も含ま れる。ことばの場合は「あてこすり」ほど遠まわしではな い感じがある。ひQあてこすり・皮肉 あてはまる【当て嵌まる】物事がある条件に適合する意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる和語。へちょ うどこれにー〉へまさにその形容がー〉〈批評がびったり ー〉へまさにこのケースにー〉弔該当・はまる あてる【当てる】ねらったものにぶつける、予想などを的中 させるの意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常生活の基本的な和語。〈日にー〉〈手をー〉〈クイ ズで答えをー〉〈生徒にー〉〈事業を興して一発ー〉②夏目 漱石の『草枕』に「股引の膝頭に継布をー」とある。弓で 矢を的に命中させるという意味では特に「中てる」と書く こともある。「宛てる」「充てる」の代わりを含め、広い意 味で使われる。Q充てる・宛てる あてる【宛てる】「あてはめる」に近い意味で、主として改ま った会話や文章に用いる和語。ヘコーヒーに珈琲という漢字 をー〉〈帰省先にー・てて手紙を出す〉のこの漢字が改定前 の常用漢字表になかったため、「当てる」で代用していた が、今後は書き分ける例が増えるはずである。Q当てる 充てる あてる【充てる】「割り当てる」に近い意味で、会話でも文章 でも使われる和語。〈余暇を趣味の時間に〉〈銀行から融 資を受けて運転資金に」〈余剩人員を警備要員に」 「当てる」と書くと意味が広いため、「充てる」のほうが的 確に伝わりやすい。Q当てる・宛てる あと あと【後】「後ろ」「のち」に近い意味で、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常生活の最も基本的な和語。 〈ーでやる〉〈ーで面倒なことになる〉〈ーを引き受ける〉 〈故郷をーにする〉〈ここまで来たらー〈は引けない〉小 沼丹の『喧嘩』に「女の子は素早く親分のパンドを拾い上げ て、親分のーを追って行った」とある。「ーを追う」の場合、 単にある人を追いかけるという意味であればこの「後」を 用い、そこを通った証拠などを探しながら経路をたどるよ らな意味合いでは「跡」を用いる。「うしろ」や「のち」と 紛らわしい場合は仮名書きが無難。「戦いのー」のように 「跡」と紛らわしい場合は漢字表記のほうが明確。Q跡・痕 あと【痕】物事の「痕跡」の意で、会話でも文章でも使われ る和語。〈弾のー〉〈血のー〉〈墨のー〉広範囲にわたり、 る利語(弾の—)血の また輪郭が必ずしも明確でない「跡」に対し、具体的な痕跡 の場合に用いられる。「弾痕」「血痕」「墨痕」という漢語が 背景となって、いかにも適切な用字という印象を与えやす い。及後・Q跡・痕跡 あと【跡(迹)】過去に何かがあったことを示すヒントとなる しるしをさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈城の本丸の—〉〈焼けた—が残る〉 〈タイヤの—が残る〉〈努力の—が見られる〉〈ーをくらま す〉〈ーをつける〉具体的には、足跡のほか土台石や焦げ たり掘ったりした痕跡なと。入水した太宰治を偲ぶ丼伏 鱒二の『点滴』に、「その死場所を見ると、彼の下駄で土を 深くえぐりとった—が二条のこっていて、いよいよのとき 彼が死ぬまいと抵抗したのを偲ぶことが出来る」とある。 <26> あとがき 「ーを継ぐ」の場合、家督を継ぐ、跡目相続の意ではこの 「跡」を用いるが、単なる後継者の意では「後」でよい。「城 の」のように昔、建物などが存在した場所をさす場合は 特に「址」と書いて「城址」という語を背景にして雰囲気を 出すこともある。後・痕・Q形跡・痕跡 あとがき【後書き】書物や学術論文などで本文の後に付ける、 執筆事情や謝辞などを記す挨拶の文章をさし、会話にも文 章にも使われる和語。へに謝辞を述べる現代では最も 普通に使われる用語。Q後記・跋・跋文 あとがま【後釜】「後任」の意で、会話や軽い文章に使われる、 やや俗っぽい和語。〈現社長のーをめぐる話題〉〈息子をー に据える〉及後任 あどけないいかにも幼い感じでかわいい様子をさし、会話 でも文章でも使われる和語。〈ー寝顔〉〈ー笑顔〉〈ーしぐ さ〉〈どことなくあどけなさが残る〉大人の目にかわいく 見えるようす。Qいじらしい・いたいけ・いとけない あとで【後で】その時より後の時刻や遠くない日にの意で、 会話や軽い文章に使われる和語。〈またー会おう〉へーまた 連絡する〉へー片づける〉の「後ほど」の意の会話的な表現 で、同じ日とは限らないが、近くまた接触する機会が予定 されている場合に使う。後刻・Qのちほど アトラクション主要な催しのほかに、客寄せをねらって添 える出し物をさし、会話にも文章にも使われる外来語。(会 食後の座興」や「余興」が素人の隠し芸を連想させ るのに対し、この語は俳優の挨拶や寸芸などプロに近い人 が行う場合が多い。座興・Q余興 あな【穴(孔)】深くえぐれたくぼみや、物を突き抜けている 空間をさして、くだけた会話から硬い文章に至るまで幅広 く使われる日常の基本的な和語。〈地面にーがあく〉へーを 埋める〉〈ズボンのーを繕う〉へーに入り込む〉の「帳簿の ー」「舞台にーがあく」のような比喩的な「空き」の意でも 用い、また、「この論文はーだらけだ」のように、足りない ところや欠点の意で使うこともある。専穴ほこ アナ「アナウンサー」の短縮形として、改まらない会話や字 数制限の厳しい文章などで使われる略式の語形。〈志村— の名調子〉ペテランの—でも時にはトチることもある〉 〈女子—がタレント化する〉るとの「アナウンサー」の場 合より軽い感じで、時に同音の「穴」を連想しやすく滑稽に 響くこともある。アナウンサー あなたうま【穴馬】「ダークホース」の訳語。競馬用語で、「ダ トクホース」のような比喻的拡大用法はない。ヨダークホー ス アナウンサーテレビやラジオなどで口頭での報道を担当し 番組の司会なども務める職務の人をさし、会話でも文章で も普通に使われる外来語。「がニースを読む」(スポー ツ担当の「略語「アナ」との対照から、略されず満足な 姿で残っている正式のことばという表現価値が生ずる。 アナ あながち【強ち】「必ずしも」の意で、改まった会話や文章に 用いられる、いくらか古風で硬い和語。へー悪いとばかりは 言いきれない)夏目漱石の『吾輩は猫である』に「主人 が好きという訳ではないが」とある。Q一概に、必ずしも <27> まんさら 「貴方(貴男/貴女)」同等以下の相手を呼ぶ丁寧な感じの二人称で、会話にも文章にも使われる和語。「任せ」「とわたし」「からどうぞ」「にだけ知らせる」「そ偉いわ」「男性が男性に対して使うとより丁寧な感じが伴う。夏目漱石の「坊ちゃん」で校長の狸が主人公に「が希望通り出来ないのはよく知っているから心配しなくていい」と言う。二人称としては最も丁重な形でも、明らかな目上に対して用いると面と向かって相手を指差す感じがあるため、さらに「様」をつけて丁重にしても、やはり完全な目上の個人には使いにくく、「先生」「社長」「お客様」といった役職や立場をさす名詞に置き換えたり、「そちら」(この語も語源的には同様)のように方向を指示して間接的に相手をさしたりするケースが多い。ただし、「の一票が国を変えます」「さあ、そんなとき、ならどうなさいますか」というふうに、不特定多数のうちの一人ひとりに呼びかける場合には、その中に上位者が含まれていても違和感なく用いられる。学生が学長や教授に向かって、あるいは組合員が社長に対して、あえて「あなたは」と言う例もあるが、対等な立場で交渉のテーブルに着くために意識的にこの語を用いるのだと考えられる。「坊ちゃん」で坊ちゃんが教頭の赤シャツに向かって「の云う事は本当かも知れないですがーとにかく増給は御免蒙ります」と反発するのも類例。表現者も相手も男女を問わず用いるが、男性の話し手の場合は「君」「お前」などとの使い分けがあってかなり丁寧な響きがあり、女性のほうが気軽に広く用い、 あにき 使用頻度も高い。「ねえ、」お風呂になさる?それとも 御飯?」というふうに妻が夫に呼びかける際に使う例は、 今では古めかしく響く。なお、相手の性別に応じて「貴君」 「貴男」「貴女」などと書き分けるのは古風な表記。「わた し」と対立。もと、「あちら」という方角の意。ひあなた様・ Qあんた・おまえ・貴様・君・てめえ あなたさま【貴方(貴男/貴女)様】「あなた」の丁寧な表現と して、会話にも文章にも使われる和語。「のお越しを心よ りお待ち申し上げております》商店やサービス業などで、 「お客様」より個人的に話しかける感じを出すために用い る。Qあなた・あんた・お前・貴様・君・てめえ あなどる【侮る】相手の力を低いと考えてあまくみる意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈対戦相手を弱いと見て ー〉へー・りがたい相手だ)刂軽蔑・さげすむ・なめる②・見下す・ Qみくびる・見下げる あなぼこ【穴ぼこ】地面などの穴の意で、くだけた会話に使 われる幼稚な感じの俗語。〈ーだらけ〉〈道にーができる〉 〈ーに落ちる〉②「穴」と違い、空間的なへとみについての み用いる。専穴 あに【兄】同じ親から自分より先に生まれた男をさし、やや 改まった会話や文章にも使われる和語。〈夫婦〉一番上 のー〉〈医者をしているー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「なまじい保護を受ければこそ、こんなーに頭を下げなけれ ばならない」とある。配偶者の兄や姉の夫を含むこともあ る。「姉」または「弟」と対立。Q兄貴・実兄 あにき【兄貴】兄を親しみをこめて呼ぶ語で、会話や軽い文 <28> あにはからんや 章に使われるくだけた表現。〈ーに教わる〉へーの世話にな る)通常は実兄をさす。やくざ仲間などの年長者・上位者 をさす拡大用法もある。Q兄・実兄 あにはからんや【豊図らんや】「実に意外なことに」という意 味の文語的な言いまわし。「、それがとんでもない事態へ と発展する〉へ、当人が自分で言いふらしていたとは) 意外・思いの外・存外 アニメ「アニメーション」の略で、会話や軽い文章によく使 われる。ひアニメーション・Q劇画・動画 アニメーション動きの少しずつ異なる絵を連続撮影して画 面上に動きを感じさせる技法やその作品をさし、会話にも 文章にも使われる専門的な外来語。〈一映画〉〈立体ー〉 一般には「アニメ」という省略形が使われる。リアニメ・Q劇 画・動画 あね【姉】同じ親から自分より先に生まれた女をさし、やや 改まった会話や文章に用いられる和語。〈1の嫁ぎ先〉(1 に面倒を見てもらう)幸田文の『おとうと』に「なまじっ かーになど優しくしてもらいたくないのだ」とある。配偶 者の姉や兄の妻を含むこともある。「妹」または「兄」と対 立。専実姉 あの【彼の】話し手からも聞き手からも遠い場所にある、ま た両者が共通して知っているものをさし、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。へ 山の向こうに海がある〉へ人、どっかで見たことある〉 へ歌、知ってる〉へ話題でもちきりだ〉仮名書きが普 通。ひかの あのよにいく【あの世に行く】「死ぬ」意の古めかしい日常の 和風間接表現。死を忌む気持ちから、それをストレート に表現せず、この世からあの世へ、現世から来世への移行 という点に中心をずらした婉曲表現。勇敢え無くなる・上 がる②・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・ 永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人とな る・くたばる・死去・死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と 消える・Q天に召される・亡くなる・儚なくなる・不帰の客となる・不 幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷する・脈が上がる・空しくな る・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 アパート内部がいくつかの独立した居住部分に分かれた賃 貸用の建物をさし、会話でも文章でも使われる外来語の略 形。〈一暮らし〉(一を経営する)「アパートメントハウ ス」の略。丹羽文雄の『顔』に「一群の配置は、製図のよう に美しい」とある。当初はハイカラな語感があったはずだ が、現代では古くて安っぽい感じの木造モルタルの二階建 てを連想しやすい。タマンション アバウト「大体のところ」「おおざっぽ」「いいかげん」とい った意味合いで、近年くだけた会話に使われるようになっ た俗語。〈やり方がーだ〉〈ーな考え方〉〈もっとーでいい〉 ②英語の前置詞・副詞を日本語の形容動詞のように使った和 製語。Qおおざっぽ・おおまか あばく【暴(曝)く】悪事や秘密、それまで知られていなかったことなどを探り出して明るみに出す意で、会話にも文章にも使われる和語。〈不正を」〈秘密を」〈陰謀を」〈論理の矛盾を」〈夏目漱石の『坊っちゃん』に「山嵐の <29> 卑劣をー・いて」とある。「墓をー」のように、土を掘って中 のものを外に出す意でも使い、その用法では「発く」と書く こともある。ひすっぱ抜く・暴露・Qばらす① アフターサービス 商品の購入後に店や製造元が責任を持って行うサービスをさす和製英語。「がしっかりしている」「が万全だから安心して買える」近年は、治癒した患者の社会復帰へ向けての世話の意でも使われる「アフターケア」という外来語をこの意味でも用いるケースが増えている。一般に和製英語を乱発すると、和製英語だと気がつかない人には気障に聞こえ、和製英語とわかる人には教養が疑われやすい。ただし、「コンセント」「シュークリーム」「ハンドル」「フライパン」といった長い伝統のある語で、それに相当する適切な日本語の見当たらない場合は、そのような特別の語感は働きにくい。 あぶない【危ない】心配ではらはらする感じをさし、会話で も文章でも広く使われる日常の和語。〈命が—〉〈経営状態 が—〉〈ーところを助けられる〉〈ー橋を渡る〉牧野信一 の『ゼーロン』に「懸命にゼーロン(馬)を操りながら綱渡り でもしているような心地で」とある。「危うい」より具体 的な危険について用いる例が多い。Q危うい危険 あぶなっかしい【危なっかしい】見るからに危ない感じだと いう意味で、会話や軽い文章に使われる俗っぽい和語。へー 歩き方〉(これれかかったー椅子〉(ー運営)覚束ない あぶら【油】石油や植物油など液体の脂肪をさし、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な 和語。〈菜種からを搾り取る〉〈機械にーを差す〉(ーで あべこべ 揚げる〈水とー〉永井荷風の『瀅東綺譚』に「の匂で 結ったばかりと知られる大きな潰島田」とある。本来は 常温で液体のものをさすが、「脂」や「膏」の意を含む一般 的な表記として用いられることもある。Q脂・膏 あぶら【脂】動物などの固体の脂肪をさし、会話でも文章で も使われる和語。〈一身〉〈豚の」〈一の乗った魚〉常温 で固体のものをさす。幸田文は『流れる』で「つめたいコロ ッケは—臭く葱臭くざっかけない味がする」とこの字を用 いている。ひ油・膏 あぶら【膏】肉の脂肪をさし、会話でも文章でも使われる和 語。〈葉〉〈蝦蟇〉の—〉回もともと肉のあぶらをさす が用法は狭く、この漢字が常用漢字表にないこともあって 用例は少ない。「油」や「脂」で代用することもある。ひQ 油脂 あぶる【炙(焙)る】火に当てて乾かしたり温めたり軽く焼い たりする意で、会話にも文章にも使われる和語。海苔を ー〉(するめをさっとー〉〈火鉢で手をー〉梶井基次郎の 『冬の日』に「肉をー香ばしい匂」とある。火にかざして湿 り気を除く意では「焙る」薄く色が着く程度にこんがりと 焦がす意では「炙る」と書き分けることもある。焚く・Q 焼く あぶれる仕事にありつけない意味で改まらない会話で使わ れる俗っぽい口頭語。〈仕事にー〉 あべこべくだけた会話で「逆」「反対」の意に使われる、い くらか古い感じになりかけている口頭語。〈それじゃあ、順 番がーだ〉(やっつけるつもりが、ーにやられた)夏目漱 <30> アベック 石の「坊ちゃん」に「生意気におれを遣り込めた。(略) に遣り込めてやったら」とある。込逆・逆さ・Q逆様・反対 アベック「カップル」を意味する戦後一時期の呼称。(公園を散歩中のー)木山捷平の『遅刻結婚』に「(口)を吸ったり吸われたりしているうちに、やっと一人前のーになれたような気がした」とある。現代では廃語に近い。「…とともに」の意のフランス語の前置詞から。Qカップル二人連れあほ関西地方の会話で「愚か」の意で使われる俗っぽいことば。〈ほんまに、ーやなあ〉へー!どついたろか」「あほう」の短縮形。「あほう」より多用される。「ばか」より軽い感じという。Qあほう・たわけ・とんま・ばか・まぬけ アポ「アポイントメント」の略として、くだけた会話などに 使われる俗っぽい感じの新しい語。〈ー無しで会う〉へーを 入れる〉ひアポイントメント・予約 アポイントメント面会や会合などの約束をさし、会話や軽い文章に使われる新しい外来語。〈ーを取る〉ひアポ・予約あほう【阿呆】主として関西地方の会話に「愚か」の意で使われる俗っぽいことば。〈ーを言う〉へーづらして、ぼうっと立っている〉〈踊るーに、見るー〉の「ばか」ほどきつく響かないとされるが、接辞をつけて「どー」と語頭を濁音にすると、意味が強調されるだけでなく響きもきつくなる。ちなみに、芥川龍之介の『侏儒の言葉』に「はいつも彼以外の人々を悉くーと考えている」とある。ひあほ・たわけ・Qばか・まぬけ あま【阿魔】女性を卑しめて言う古い俗語。特に若い女性に 対して用いることが多い。〈このー、何しやがる〉〈あのー、 とんだ食わせ者だ》の芥川龍之介の『アグニの神』に「この ーめ」とある。男性版の「野郎」と違って、親しみをこめて 用いる例はほとんど見られない。海にもぐる「海女」では なく、仏に仕える「尼」の系統の語というが、読経をするよ うな殊勝な女とは無縁なので、「阿魔」という漢字をあてて 区別する例が多かった。もはや婦人に対しておおっぱらに 言える時世ではないので、近年はめったに使われない。男女 アマ「アマチュア」の簡略形で、主に改まらない会話に使わ れる。〈ーとは思えない腕前〉のアマチュア」より会話的。 呂Qアマチュア・素人・とうしろう・ノンプロ あまい【甘い】砂糖や蜜のような味や匂いをさし、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈一味〉 〈一蜂蜜〉〈柿がー・く熟す〉〈花の一匂い〉の小川国夫の 『役者たち』に「口の中に、キャラメルの一汁が味わわれず に滞っているのに気づき、それを味わった」とある。「一塩 鮭」のように塩気が足りない意にも使う。「ーことばに乗 る」「ねじがー」「評価がー」「考えがー」のように、きつく ない・厳しくない意の比喻的・派生的な用法も多い。「から い」と対立。ヲ甘ったるい あまいもの【甘い物】甘い菓子などを漠然ときし、改まらな い会話や軽い文章で使う日常の言いまわし。〈好物のー〉 〈何かーがほしい〉専スイーツ あまえる【甘える】相手の好意を期待して必要以上に頼った り任せたりする意で、会話にも文章にも幅広く使われる日 常の基本的な和語。〈親に—〉〈先輩に—〉〈ー・えた声を出 す〉の「甘ったれる」と違い、「お言葉に—」「ご好意に—」 <31> のように、相手の好意を遠慮なく受ける意にも使われる。 ひ甘ったれる あまがさ【雨傘】雨の日に使う傘をさし、改まった会話や文 章に用いられる和語。〈一の用意がある〉〈一を携えて家を 出る〉永井龍男の『傘のありか』に「としては少し値が 張るかな」とある。ふだんは単に「傘」と言い、日傘と区別 する意識のときに使う。「日傘」と対立。単 アマチュア芸術やスポーツなどを職業としてでなく趣味と してやっている意で、会話にも文章にも使われる外来語。 「無線」〈スポーツ〉〈精神〉〈の資格を失う〉漢 然とした「素人」より明確に規定されている感じがある。 技術や知識のレベルとしては「素人」より詳しく、「ノンプ ロ」より若干低い雰囲気を連想させる。略して「アマ」とも 言い、その場合は会話的な響きがある。アマ・Q素人・とう しろう・ノンプロ あまったるい【甘ったるい】やたらに甘く味にしまりがない 意で、会話や軽い文章に使われるくだけた感じの和語。「 お菓子〉へだけで味に深みがない」小川国夫の『スパル タ』に「油っこく、ー、ギリシャの菓子だった」とある。客 観的な感じの「甘い」に比べ、不快感を伴う。丼伏鱒二の 『珍品堂主人』に「声に艶がある上に一猫撫声だから一種独 特です」とあるように比喩的用法も多い。ひ甘い あまったれる【甘ったれる】ひとく甘える意で、主に会話に 使われる口頭語的な和語。〈母親にーれてばかりいる〉 〈そういつまでも親にーわけにもいかない〉(・れた考え) の堀田善衛の『広場の孤独』に「猫が片手をあげてふざける あみ 時のような甘たれた表情」とあるように、「甘たれる」とも いう。客観的な「甘える」と比べ、甘え方が度を越している という若干の非難が含まれる傾向がある。ひ甘える あまのがわ【天の川(河)】夜空に白い川のように帯状に光 て見える銀河系の無数の恒星の集合をさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈晴れた夜空にーがかかる〉図川端康成 の『雪国』は「踏みこたえて目を上げた途端、さあと音を立 ててーが島村のなかへ流れ落ちるようであった」として結 ばれる。銀河 あまり【余り】①「それほど」の意で、会話でも文章でも幅広く使われる日常の和語。〈大したことはない〉〈成績はよくない〉〈自慢できた出来ではない〉もQあんまり・さほど②必要な分を使ったり取ったりした後に残った余分をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈字ー〉〈が出る〉〈をもらう〉残り」と違い、不要な部分という感じが強い。剰余・残り・Q余計・余剰・余地・余分 あまる【余る】必要な量を超えて余分が出る、妥当な程度を 超えて過分だの意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の和語。〈材料が—〉〈御飯が—〉〈時間が —〉〈予算が—〉〈手に—仕事〉〈身に—光栄〉谷崎潤一郎 の『夢喰う虫』に「十年に—歳月」とある。有り余る・残存 Q残る あみ【網】鳥・魚・虫などを捕まえたりするために糸や針金な どを編んで作ったものをさし、会話にも文章にも使われる 和語。(底引きー)へーで掬けうへーを打つの庄野潤三の <32> あむ 『静物』に「(ーを)ぼしっと投げて川に落ちる時に、弓のよ うにすぼまっていないといけない」とある。専ネット あむ【編む】毛糸・竹・草・針金・髪などの細い素材を組み合わ せて製品を作る意で、会話にも文章にも使われる和語。ヘセ ーターを」〈毛糸で手袋を」〈竹で籠を」〈髪をお下げ に」「辞書を」のように編集する意に使う用法は古 風。具織る あめ【雨】空気中の水蒸気が凝結し水滴となって地上に落ち てくるものをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる日常の基本的な和語。「が降る」「がやむ」 「が上がる」「になる」雨の降る天気をさすこともあ る。吉行淳之介の『驟雨』に「色めき立った女たちの呼び声 が、地面をはげしく叩くの音を圧倒し、白いの幕を突 破った」とある。日本語には雨をさす語が多く「お湿り」 「小雨」「霧雨」「小練雨」「豪雨」「雷雨」「にわか雨」「通 り雨」「村雨」「夕立」「天気雨」「春雨」「さみだれ」「長 雨」「秋雨」「しぐれ」「氷雨」など数十種を数える。ひQ雨 天・お湿り あめ【飴】でんぷんを糖分に変化させた粘りけのある甘い菓 子をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈水—〉〈千歳 ー〉〈金太郎—〉〈一細工〉〈一をなめる〉石川淳の『普 賢』に「白栲の腕は一のようにとろけて頸筋にねばり つく」とあるように、軟らかく粘りつく連想がある。キャン デーやドロップを含めた飴菓子類の総称ともなる。鳥飴玉 アメション外国に足を踏み入れたことを自慢する人を軽蔑 して用いる、軽い揶揄の含まれたユーモラスな古めかしい 俗語。〜洋行といっても、やっこさんの場合はーてやつで ね〜文明の発達したアメリカに渡っても、ただ小便をして 帰って来ただけ、という意味。留学して本場の芸術や学問 を吸収するわけでもなく、単に海外の土を踏んだというだ けで「洋行帰り」として尊敬のまなざしを向けた時代の風 潮をからかう気持ちが含まれていたにちがいない。自分の 場合を謙遜してそう言った場合もあっただろう。ヒ洋行 あめだま【飴玉】球状の飴をさし、会話やさほど硬くない文 章に使われる和語。〈ーをしゃぶる〉本山捷平の『大陸の 細道』に「刀剣をとり出すと、子供にーでも与えるように逸 見の手にわたした」とあるように、手軽な子供菓子という 雰囲気がある。飴 あめふり【雨降り】雨が降ることをさし、会話や硬くない文 章に使われる日常の和語。へー続きの毎日〉へーの日は退屈 だ) ヨ雨天 アメリカンフットボール「アメフト」の正式名称。攻撃と守 備に分かれ、防具をつけて行う、サッカーやラグピーに類似 した球技をさす外来語。アメフト あやうい【危うい】存立や安全がおびやかされそうな感じを さす、「危ない」より文章語寄りの和語。「うっかり」の意 では会話でも使う。へところを教われる〉へーく命を落 とすところだった〉へーく通り過ぎそうになる〉中村真 一郎の『遠隔感応』に「ある夕方、薄い硝子のようにーく 光る、消える直前の日射し」とある。新聞などでは近年、 <33> 「危ない」の露骨さを薄める目的で多用される傾向があると いう。Q危ない・危険 あやしい【怪しい】正体不明で不気味だ、悪事を働く雰囲気 があるといった意味合いで、くだけた会話から文章まで広 く使われる日常の和語。〈人物音〉〈一人影を見かける〉 〈どうも彼あたりが—〉小沼丹の『山のある風景』に「話 が少しーと思う」とあるように、信用できない意にも使う。 「どうやらあの二人の仲は—」のように、恋愛関係にあるら しいの意を表す用法や、「酔って足元が—」「実現できるか どうか、甚だ—」のように、心もとないの意を表す用法もあ る。ひ疑わしい・おかしい② あやしむ【怪しむ】怪しいと不審に思う意で、やや改まった 会話や文章に用いられる和語。〈驚き—表情〉〈挙動を—〉 〈通行人に—・まれる〉〈なんら—に足りない〉ひいぶかる・疑 う・Q疑る あやつる【操る】小規模な仕掛けを上手に扱って動かす意で、 会話や硬くない文章に使われる、いくぶん古風な和語。人 形をー〉〈意のままにー〉〈道具を巧みにー〉〈棹をー・って 小舟を進める〉〈言葉を巧みにー〉の「操作」より身近にあ る簡単な仕掛けのものに使うことが多く、大仕掛けな機械 にはなじまない。また、あやつり人形の連想から、「社長を 陰で人物」のように、自分は表に出ないで陰で糸を引く 意のマイナスイメージの例も多いが、不正とか違法行為と かといった連想は薄い。刂操作・操縦 あやふやはっきりせず当てにならない意で、会話や軽い文 章に使われる和語。〈な態度〉〈な答え〉〈記憶がだ ゕ曖昧・うやむや・Qおぼろげ あやまる あやまち【過ち】失敗、特に、知らずにやってしまった道徳 面などの間違ったことをさして、やや改まった会話や文章 に使われる和語。〈若気の—〉〈—を犯す〉〈—を悔い改め る〉「誤り」「間違い」より深刻に感じられ、単なる不注 意によるしくじりでは済まされないような、強い後悔の念 も伝わってくる。「若き日の—」のような形で特に男女関係 の過失を婉曲にさす用法もあり、その場合は古風な感じ がある。専誤り・過失・誤謬・Q間違い あやまり【誤り】間違い、失敗の意で、やや改まった会話や 文章に用いられる和語。〈ーを見つける〉〈ーを指摘する〉 〈ーを訂正する〉〈人選のー〉正しくないというだけで、 「過ち」ほどの深刻さは感じられない。過ち・過失・Q誤謬 ・間違い あやまる【誤る】「間違う」に近い意で、改まった会話や文章 に用いられる、硬い感じの和語表現。「ーって穴に落ちる 〈判断をー〉〈手段をー〉〈見通しをー〉の島崎藤村の『桜の 実の熟する時』に「ーって自分は洗礼なぞを受けた」とあ る。ひQ間違う・間違える あやまる【謝る】自分の過失などについて相手の赦しを請う 意で、会話にも文章にも使われる和語。〈待ち合わせに遅れ て友達に」〈平謝りに」〈口先で」・て済む問題では ない)の「誤る」意から、相手の前で自らそれを認めて容赦 を願う意に転じたとされる。「詫びろ」より「謝れ」のほう が要求として自然であり、「心の中で詫びる」のような場合 に「謝る」に置き換えにくいように、この語はお辞儀など相 <34> あゆみ 手に謝罪とわかる態度や行為を伴う際に使う傾向がある。 そのため、「詫びる」に比べ時に表面的な印象を与えること もある。夏目漱石の『坊っちゃん』に主人公が職員会議で 「宿直中に温泉へ行きました。是は全くわるい。ーりま す」と率直に謝る場面がある。坊っちゃんの率直な性格か ら、この例では形式的な印象を受けない。専御免・失礼・謝罪 済まない・陳謝・申し訳ない・Q詫びる あゆみ【歩み】「歩行」「移行」の意で、主として文章に使わ れる古風で優雅な和語。へーがのろい〉〈近代日本のー〉 動詞の場合と同様、意味が抽象化すると「歩き」とは表現し にくく、この語が用いられる。歩む・Q歩き・歩く・徒歩 あゆむ「歩む」「歩く」の意で、主として文章に用いる古風で優雅な和語。〈湖畔を静かに—〉〈友と語らいつつ—〉有島武郎の『或る女』に「影が—ように音もなく静かに—・みながら」とある。日常語の「歩く」ならどんな歩行でも違和感がないが、「あゆむ」の場合は、三好達治の詩『甃のうぐ』に「をみなこしめやかに語らひー・み」とあるように、桜散る甃の上をしとやかな女性がしめやかに語らいながら静かに歩を運ぶイメージがあり、せかせかと急ぎ足になったり、がにまたで歩いたりすると雰囲気がこわれる感じになるのはこのことばの優雅な語感が働くからである。「芸道を」「苦難の道を」のように意味が抽象化すると、この「あゆむ」がびったりし、逆に「歩く」だと不自然に響く。ただし、「双方が歩み寄る」のような場合は「歩き寄る」とは言えないだけに、優雅な語感は薄れる。歩く あらあらしい【荒荒しい】「荒っぽい」をさらに強調した表現 で、会話にも文章にも使われる和語。〈ー振る舞い〉へーく 戸を叩く〉児い・Q荒っぽい・がさつ・粗暴・粗野・野蛮・乱暴① あらい【荒い】度を越して激しい意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈息遣いが—〉〈金遣いが—〉〈気性が—〉〈波 が—〉林芙美子の『茶色の目』に「夜風が波のように! く吹き込み」とある。Q荒々しい・荒っぽい・がさつ・粗暴・粗 野・野蛮・乱暴① あらう【洗う】①水や湯で汚れを落とす意で、くだけた会話 から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈顔を 」〈せっけんで手をよく—〉の「岸をー波」のような比喻 的用法もある。ひ濯ぐ・ゆすぐ②「捜して調べる」意をさ す。警察関係を連想させる俗語のにおいがあるため、改ま った場面での会話や硬い文章では使用を控える。〈身元を 」〈過去をー・い出す〉尾崎士郎の『人生劇場』に「素性 をー・えば」とある。ひ調べる あらかじめ【予め】事の起こる前にそれに備えての意で、や や改まった会話や文章に用いられる和語。〜準備してお く〜知らせておいたほうがいい)事前に・Q前もって あらかた【粗方】会話や改まらない文章に「大体のところ」 といった意味合いで使われる古風な和語。〈引っ越しの準備 はー済んだ〉〈仕事はー片づいた〉〈ー出来上がっている〉 ②全体の七、八割ほどの感じ。小津安二郎監督の映画「一人 息子」で良助(日守新一)が「借りた金もー使っちゃったし」 と言う。Q大方・大よそ・大概・大体・大抵・大部分ほとんど あらし【嵐】暴風や暴風雨をさし、会話にも文章にも使われ る和語。〈ーが吹き荒れる〉へーが静まる〉へーが通り過ぎ <35> る「砂」「花」のように雨を件わない風をさす例も 少なくない。「ーを呼ぶ」「激情の」「不況の」が吹く」の ような比喻的な表現も多い。ひおおかぜ・強風・颶風・時化・ 疾風・陣風・大風・台風・突風・はやて・Q暴風・暴風雨・烈風 あらそう【争う】何かを得るために相手に負けまいと頑張る 意で、会話にも文章にも広く使われる日常の和語。先を ー〉〈縄張りをー〉〈優勝をー〉〈賞金をー〉〈親の遺産を ー〉団狙っているものを手に入れようとすることに重点が ある。専競う あらた【新た】「新しい」の意で、改まった会話や文章に用いられる、やや古風な硬い漢語。〈一な出発〉〈一な問題〉〈一に判明する〉〈一な気持ちで出直す〉〈認識を一にする〉の「新しい」と違い、品物のような具体物でなく抽象的・精神的な対象に用いる。「新しい」は程度が連続的なので「きわめて」「比較的」「いくらか」といった限定が可能だが、この語はまったく新しいか改めて始めるかの際に用いるので、そのような程度の限定がつかない。「一なる旅立ち」のような文語的な響きがあり、「思いを一にする」「装いも一に」のように美化した用法も目立つ。ひ新しい・新新 あらためる【改める】それまでの問題点を解決して新しいも のにする意で、会話にも文章にも使われる和語。「制度を 」〈規則を」〈行いを」〈心を」〈表現を」〈日を 」・めて会う」「新たにする」意から。弁改正・改訂・改定・変 える・Q直す・変更 あらっぽい荒ぽい荒いの強調表現で、会話や改まらない文章に使われる和語。〈物の扱いがー〉〈やり方がー〉 あらわれる くことば遣いがー〉〈性格〉川端康成の「雪国」に「若葉 の匂いの強い裏山を見上げると(略)ーく登って行った」と ある。ひ荒々しい・Q荒い・がさつ・粗暴・粗野・野菑・乱暴① あらなみ【荒波(浪)】激しく荒れて騒ぐ波をさし、会話にも 文章にも使われる和語。〈船が沖でーにもまれる〉(ーが押 し寄せる〉(ーを越えて)田宮虎彦の『足摺岬』に「遠い 磯を噛んでいるーの音」とある。「激浪」や「怒濤」に至 るまでさまざまな程度の荒れ方を含む。「世間のー」のよう に比喻的に厳しさを表す。Q激浪・怒溝・波・波溝・Q波浪 アラビアすうじ【アラビア数字】0から9までの数字をさし、 会話にも文章にも使われることば。〈横書きでは漢数字で なくーを使う〉因起源はインドだが、アラビアを経てョー ロッパに伝えられたところから。現代の算用数字。刂算用数 字 あられ【霰】欠き餅を細かく砕いた形のものをさし、会話に も文章にも使われる和語。〈茶請けにーをつまむ〉の降る霰 に似ているところから。ひおかき・Qかきもち・せんべい あらわす【表す】抽象的な内容を感覚でとらえられるように 表情・態度・行動・言語で表現する意で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈喜びを素 直にー〉〈怒りを態度にー〉〈記号でー〉永井龍男の『朝 霧』に「いつまで経っても承諾の意をー・さない」とある。 ひえがく・表現・Q表出 あらわれる【表れる】感情や考えなどが外に出る意で、会話 でも文章でも使われる日常の基本的な和語。〈顔に感情が ー・れやすい〉〈効果がー〉〈不満が態度にー〉〈書き手の熱 <36> い思いが文章にはっきりとー)島崎藤村の『破戒』に 「時々深い憂愁の色が其顔にー・れたりした」とある。思考 や感情などが表面に出る意で使われる用字。ひQ現れる・顕 れる・露れる あらわれる【現れる】姿や形が目に見えるようになる意で、 会話でも文章でも使われる日常の基本的な和語。〈雲の間か ら月がー〉〈約束の場所に遅れてー〉〈天才がー〉〈兆しが ー〉小沼丹の『型録漫録』に「研究室で二人の先生と雑談 していた。そこへ某書店の編輯長なる人がー・れた」とあ る。それまで存在しなかったり隠れていたりしたものが見 えるようになる意で使われる用字。Q表れる・顕れる・露れ る あらわれる【顕れる】目立たなかったものが「明らかになる」 意で、主として改まった感じの文章に使われる古風な和語。 〈善行が世にー〉〈次第にその名がー〉ですぐれた行為など が世の中に知られるようになるといった意味合いで特に用 いられることのある用字。ひQ表れる・現れる・露れる あらわれる【露れる】隠していたことが知られる意で、会話 でも文章でも使われる古風な和語。〈悪事がー〉〈陰謀が ー〉悪いことがばれる意で特に使われることのある用字。 Q表れる・現れる・顕れる あり【有り】「存在する」意の文語的な表現。〈異議〉〈落石 ー、注意〉〈何でもー、の世の中だ。別に驚くことはない〉 の「なし」と対立。 ありあまる【有り余る】使い道に困るほどたくさんある意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈ーほどの金 〈時間がー〉有島武郎の「宣言」に「気力と自負心」と ある。刂余る ありえない【あり得ない】近年になって、「信じられない」意 で使われるようになった新しい俗語表現。〈あの子、結婚し て子供がいるんだって、ー!〉論理的に不可能であるとい う従来の意味を、あるはずがないという程度まで緩めて拡 大した用法で、意味上の連続性が認められるので、驚きの 気持ちを強調する意図による誇張表現と考えることもでき る。 ありか【在り処】人や物の存在する場所の意で、主として文 章中に用いられる古風なやわらかい感じの和語。〈写本の ー〉〈いまだーが知れない〉〈ーを突き止める〉夏目漱石 の『こころ』に「魂のーが判然する」とある。「問題のー」 のように抽象的な対象に使うこともある。巻所在 ありがたい【有り難い】好意や幸運に恵まれ感謝しないでい られない気持ちの意で、くだけた会話から文章まで幅広く 使われる日常の基本的な和語。〈ーお言葉〉へおっと、こい つはー〉へーく頂戴する〉②小林秀雄の『私の人生観』に 「どこでも拙い話を熱心に聞いてもらって、ーことだと思っ ている」とある。有ることが難い、めったにないの意から。 ひQ痛み入る・恐れ入る・忝い・恐縮 ありきたり【在り来り】とこにでもある特徴のないの意で、 会話やさほど改まらない文章に使われる和語。「の服」 「の発想」「の人生」「ありふれた」に比べ、評価の低 さが含まれている感じが強い。Qありふれた・陳腐・月並み・ 平凡・凡庸 <37> ありさま【有り様】ものごとのようすの意で、ごく硬い学術 論文などを除き、会話から文章まで使えるが、会話でよく 使う和風の語。〈飯を食う金もないという—〉〈何という— だ〉〈ちょっと目を離すと、もうこのだ〉室生犀星の 『杏っ子』に「が、縮んだ動かない写真のように見えて来 た」とあるように、単に状態をさす例もあるが、一般に、 「情けない」「思わず目を覆いたくなるような」のよう に、よくない状態に対して用いる傾向がある。そのため、 「世の中の」というふうに無評価の場合は問題ないが、 「目の覚めるような」「輝かしい」のように明らかなプラス 評価の形容のあとには使わない。ひざま様相 ありしひ【在りし日】故人がこの世に生きていた頃の意の詩 的な文語的慣用表現。「の姿」の思い出「の面影」 のこの表現では必ずこのとおりの表記を用いる。中原中也 に「在りし日の歌」と題する詩集がある。卫生前 ありてい【有り体】言い方が率直な意で、会話にも文章にも 使われる古風な表現。へに申し上げれば)Qあけすけ・あ りのまま・あるがまま・ざっくばらん・率直 ありのまま【有りの儘】実際にあるとおりで飾らない意とし て、会話にも文章にも使われるやや古風な和語表現。へーを 包み隠さずに話す〉へーの姿を描く)谷崎潤一郎の『痴人 の愛』に「ざっくばらんに、ーの事実を書いて見よう」とあ る。ひあけすけ・有り体・Qあるがままざっくばらん・率直 ありふれた【有り触れた】どこにでもよくあるの意で、会話 やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈ー話〉へー 結末〉〈ごくー事件〉訳価よりも、珍しくない点に中心が ある ある。 おりきたり・陳腐・Q月並み・平凡・凡庸 「有る/在る」「存在する」自分との関係で思考・感覚の対象となっているという意味合いで、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の最も基本的な和語。〈用事がー〉〈会議がー〉〈電話がー〉〈連絡がー〉〈価値がー〉〈縁がー〉〈机の上に本がー〉〈自宅は鎌倉にー〉〈不幸な境遇にー〉〈ものには順序というものがー〉仮名書きが一般的だが、「ーこと無いこと」のように、物や事それ自体よりもその有無に意識の重点がある場合は漢字で書くことが多い。夏目漱石の『坊っちゃん』に「この男が一番生徒に人望がーのだそうだ」とある。小津安二郎監督の映画『秋刀魚の味』で平山(笠智衆)と次男(三上真一郎)との間で緑り広げられる、「姉さんね、誰か好きな人でもーのかな」「だろう」「ーかい」「おれだってーもの」「お前、ーのかーよ」という親子の対話が出てくる。連発される「ある」の部分は現代なら「いる」のほうが一般的だろう。当時でも特定の個人を意識する場合は「いる」と言うこともあるが、そのような存在というふうに多少とも抽象化される場合は今と違って「兄がー」「妻がー」「恋人がー」という表現が普通だったと思われる。『彼岸花』で久子(桑野みゆき)が言うように、娘のポーイフレンドは親として「ー・っても心配、なくても心配」なのである。このように「ある」という語も用法によって随分と古い感じに響くことになる。「無い」と対立。ひいる ある【或る】時・所・人などを「その」と限定せずに漠然とさ し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の <38> あるいは 基本的な和語。〈日のこと〉〈昔むかし所に〉〈ギリシャのー哲学者〉〈ーわけがあって名前を伏せておく〉芥川龍之介の『蜘蛛の糸』は「一日の事でございます」と始まる。空間限定の「とある」と違い、人にも時にも広く使う。仮名書きが普通。ふ然るとある あるいは「或いは」①複数の候補や可能性の中からどれか一つを選択する場合に、改まった会話や文章に用いられる和語。〈温泉ー冷泉〉〈卓球またはテニス、ーバドミントン〉 ②日常的な「または」よりも硬い感じの表現。他と併用する場合は、「鯛か平目、または、鯉か鮪、ー、烏賊が蛸」のように、「か」「または」「あるいは」の順に次第に大きなまとまりで用いる。その場合、「または」に比べ、後で追加した感じになりやすく、「伝統のある能または歌舞伎、相撲」のように、それだけ異質なものに視点を変えた感じも出やすい。ひまたは・ないし・Qもしくは②事によるとの意で、改まった会話や文章に用いられる、やや硬い感じの和語。〈奈良あたり〈足を伸ばすかもしれない〉〈そんなこともーあるかもしれない〉③「ひよっとしたら」はもちろん「もしかすると」よりも文体的に改まりが大きく、想定する事態の可能性も高い。ひよっとしたら・ひよっとすると・Qもしかしたら・もしかすると あるがまま【在(有)るが儘】事実そのままで手を加えない意 として、主に文章中に用いる古風な和語表現。へーの姿を伝 える)ひあけすけ・有り体・Qありのまま・ざっくばらん・率直 あるき【歩き】「歩行」の意で、くだけた会話に使われる和語 の俗っぽい用法。〈今日は車をやめて駅までだ〉へだと たっぷり二十分はかかる)Q歩み・徒歩 あるく【歩く】脚を交互に動かして前に進む意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈遊びー〉〈駅までー〉〈山道をとぼとぼー〉の山本有三の 『波』に「女王のようにゆったりと丘のほうにー・いて行く」 とある。ひ歩む あるじ【主】一家の主人や持ち主をさし、会話にも文章にも 使われるいくぶん古風な和語。〈女ー〉〈この家のー〉〈店 のー〉〈主人①・亭主・ぬし アルバイター本業ではなく臨時に仕事をする人をさし、一 部の役所などで使われる外来語。〈長期の—〉〈学生—を雇 う〉の「アルバイト」という語が仕事や雇用形態をさすこと が多いのに対し、それに従事する人間をさすことが明確に なる語形。Qアルバイトパイト アルバイト 本業ではない臨時の仕事をさし、最も普通に広く使われている外来語。〈ー学生〉〈ーの口を見つける〉〈ーで学資を稼ぐ〉〈ーから契約社員に身分を変更する〉ひアルバイター・Qバイト あれる【荒れる】天候・自然現象・建物・催し・生活・心などが平 穏でない好ましからぬ状態に変わる意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「海が ー〉〈庭がー〉〈冬は肌がー〉〈生活がー〉〈気持ちがー〉 小沼丹の『大先輩』に「妙な事情があって会がー・れて、青 野さんは憤然として席を立った」とあるように雰囲気にも 使うなど、「すさむ」や「荒廃」より幅広い対象に違和感な く用いられるが、具体物の場合はまったくの日常語で、抽象 <39> 的な対象になるにつれて少しずつ文章語に近づく。読鹿・ 荒涼・Qすさむ あわ【泡(沫)】液体の表面に浮かぶ気体の玉をさし、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。へー だらけ〈石鹸だのー〉へーが立つ林芙美子の『めし』に 「あられのようにハジキかえるサイダーのー」とある。 たかた・Q水泡・泡沫・みなわ あわい【淡い】色や味が薄くほんのり感じられる意で、主 して文章に用いられる、やや美的な感じの和語。〈紅色〉 〈甘き〉〈光が残る〉川上弘美の『満しる』に「雪が 降っていて、積もったばかりの雪には、何の跡もついていな かった」とある。「恋心を抱く」のように、ほんやりとし たの意にも、「望みをつなぐ」のように、可能性の少ない 意にも使う。苦み・臭気のようなマイナスイメージの感覚に は使いにくく、コーヒー・味噌汁のような生活上の具体物に もなじまない。「記憶」「反抗心」のような抽象体に用いる と、「薄い」より美化や気取りが感じられる。川端康成の 『雪国』に「山それぞれの遠近や高低につれて、さまざまの 襲の陰を深めて行き、峰にだけー日向を残す頃」とある。 浅い薄い あわただしい【慌ただしい】大事な用や急ぎの仕事などがた てこんで急いだりあわてたりする様子をさし、会話にも文 章にも使われる和語。〈1每日〉へーく駆けて行く足音 へーく過ぎていく)島崎藤村の『新生』に「画家とーい 別れの言葉を交した」とある。専忙しい・気ぜわしい・Qせわし い・せわしない あんか あわてもの【慌て者】よく慌てて失敗する落ち着きのない人 の意で、会話や改まらない文章に使われる和語。たいへん なー)他の類義語と違い、単にせっかちな人をさす場合も ある。Qおっちょこちょい・軽はずみ・軽率・粗忽・そそっかしい あわてる【慌(周章/狼狽)てる】驚いて落ち着きを失う意で、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈不意の来客にー〉へー・てて飛び出す〉ー・てて取 り違える)ふうろたえる・ろうばい あわれ【哀れ】悲しみの感情をさして改まった会話や文章に 用いられる和語。へーを催す)〈そこはかとなくーを感じ る)庄野潤三の『ブールサイド小景』に「暑気とさまざま な憂苦とで萎えてしまっているーな勤め人たち」とある。 物悲しい感じを表す場合の用字。「もののー」のように、し みじみとした情趣を意味する場合はしばしば仮名書きする。 ひ憐れ あわれ【憐れ】不憫な感情をさして会話でも文章でも使わ れる和語。〈な姿〉〈を誘う〉〈をかける〉夏目漱石 の「坊ちゃん」に「外に何にも芸がないから、天麩羅事件 を日露戦争の様に触れちらかすんだろう。な奴等だ」と ある。悲しみの感情のうち、みじめでかわいそう、同情心 の意を明確にするための表記。良れ あんうつ【暗鬱】気持ちが暗くなって沈む意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い漢語。〈な気分〉〈な雲に覆 われる〉横光利一の『日輪』に「影のようにーな顔の色」 とある。Q陰鬱沈鬱・棗鬱 あんか【安価】値段や価値の低い意で、改まった会話や文章 <40> あんがい に用いられる硬い漢語。〈な商品〉「な同情」のよう に安っぽい意にも用い、谷崎潤一郎の『細雪』にも「な感 傷に陶酔したがる」とある。「高価」と対立。最低価格・安い・ Q廉価 あんがい【案外】予想とは違っての意で、くだけた会話によく使われる日常的な漢語。〈ー早くできた〉へーてこずった〈ーな結果〉小沼丹の『黒と白の猫』に「あの猫はーたいへんな婆さん猫だったので、それで図図しかったのだろう」とある。Q意外・思いの外・存外 あんかん【安閑】のんびり安らかにの意で、会話にも文章に も使われる古風な漢語。へーとして日を暮らす〉へーとばか りはしていられない)宇野浩二の『蔵の中』に「如何に無 神経であるとしても、ーとおちついていられる筈がない」 とある。みのんき・Qのんびり・安らか あんこく【暗(闇)黒】真暗な状態や暗闇そのものをさして、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。ぁたりは一面 のー)森鷗外の『阿部一族』に「一な前途を照らす光明の ように照らした」とある。「街」のように、道徳が通用せ ず治安の失われた状態をさしたり、「一の時代」のように、 文化は衰退し民衆が希望を失った状態をさしたりする比喩 的用法も多い。ひ暗濾が暗い暗がり・真っ暗 あんじ【暗示】それとなく知らせる意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈自己—〉〈—にかかる〉〈—を与える〉〈将 来を—する〉巻示喫・Qヒント あんしん【安心】気がかりな事がなくて心が安らかな意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な漢語。〈ここまで来ればだ〉(これでやっとーでき る〉(まだーできない)〈もう当人はーしきっている〉尾 崎一雄の『暢気眼鏡』に「そんならーだわ。あたしーした わ」芳枝は実際にーしたような顔をした」とある。安堵 あんぜん【安全】害を受ける危険がなく安心できる意で、会 話にも文章にも使われる日常の漢語。〈交通ー〉(ー地帯) 〈ーな場所に避難する〉(ー保障条約〉(身のーを図る) 危険」と対立。Q安泰・安寧 あんた「あなた」のくだけた言い方で、親しい間での会話に 使われる和語。〈ーに任せる〉〈ーは暢気のんでいいね〉〈ー なんかに出来っこないよ〉〈そりゃ、ー、びっくりしたのな んのって〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「卑怯でもー、月 給を上げておくれたら、大人しく頂いて置く方が得ぞなも し」とある。なお、「ねえ、ーったら」のように妻が夫にぞ んざいに呼びかけるときにも使う。Qあなた・あなた様・お まえ・貴様・君・てめえ ブンダーライン横書きの文章で文字の下に引く線をきし 会話にも文章にも使われる日常の外来語。〈大事なことば にーを引く〉へーの箇所を訳せ〉、Q下線・傍線 あんたい【安泰】危ないところがなく無事である意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。《首位の座はーだ》《国 家のーを祈願する》安全・Q安寧 あんたん【暗澹】暗くて見通しが利かない意で、改まった会 話や文章に用いられるやや古風な漢語。〈ーたる気分〉(ー たる時代)国木田独歩の『武蔵野』に「連山の頂は白銀の 鎖の様な雪が次第に遠く北に走て、終はーたる雲のうちに <41> 没してしまう」と具体的な視覚を描いた例もあるが、現代 では未来に希望が持てないような心理面で使うのが一般的。 呂暗黒・暗い・暗闇 あんてい【安定】激しい変化がなく物事が落ち着いた状態に ある意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈政権〉〈机 のーが悪い〉〈物価がーする〉〈生活がーする〉〈ーした収 入が得られる〉〈成績がーしている〉中谷宇吉郎の『立春 の卵』に「一たん立った卵は、一度くらい傾くまではーであ って、それ以上傾くと倒れるはずである」とある。ひ落ち着 く アンティーク 古美術品をさし、会話にも文章にも使われる、 やや斬新な感じのフランス語からの外来語。「専門のしゃ れた店」②本来はギリシャ・ローマ時代の古典美術をさす。 近年は西洋風でしゃれた雰囲気のものをイメージさせる。 ひQ骨董古道具 あんど【安堵】心配していた状態から抜け出してほっとする 意で、主に文章に用いられるやや古風な漢語。〈ほっとーの 溜ぐめ息をもらす〉へーの胸をなでおろす〉(ようやくーの 表情を浮かべる)菊池寛の『ある恋の話』に「ホッとーの 胸を撫でずにはいられませんでした」とある。「安心」は初 めからそういう心理状態のこともあり、また、長く続くこ ともあるが、この語は心配事が消えたばかりの時に用いる。 乃安心 あんない【案内】説明しながら人を導く意で、会話にも文章 にも使われる日常の漢語。〈道—〉〈観光—〉〈書〉〈名所 を—する〉〈先に立って—する〉〈ーを乞う〉ひガイド あんのじょう あんに暗に】真意を目立たないように含ませる意味合いで、 会話にも文章にも使われる表現。〈ー示す〉〈ー批判する〉 〈ー辞意をほのめかす〉マイナスイメージが漂い、賞讃す べき行為にはなじまない。母それとなく アンニュイ明確な原因のない倦怠感をさし、会話にも文章 にも使われる今では古風な感じのフランス語からの外来語。 気分はーそのもので何をする気にもならない》柳田国男 の『雪国の春』に「近代人のーのように、余裕の乏しい苦 悶」とある。Q倦怠感・ふさぐ・めいる・物憂い あんねい【安寧】平和で穏やかな意で、主に文章中に用いられる硬い漢語。〈ー秩序〉〈社会のーを保つ〉世の中や社会といった大きなスケールで問題にする。安全・Q安泰 あんのじょう【案の定】思ったとおりにの意で、会話やさほ ど硬くない文章に使われる、やや古風な感じのことば。へー 天気は崩れてきた《あれはーにせものだった》回「その 企画は大成功を収めた」などとも言えないわけではないが、 他の頬語に比べ、現代では予想が悪いほうに外れた場合に 用いる例が多いようである。そのため、「あの会社は」と くると、次が「繁栄を極めた」「すぐに持ち直した」といっ た展開より、「業績が悪化した」「経営難に陥った」「倒産し た」といった方向の展開を予測しやすいように思われる。 競馬で「あの馬が一着だった」というと、大金を手にした という喜びの声よりも、その馬の馬券を買おうと思ったが、 途中で変更したので儲けそこなったと残念がる響きが感じ られる。意味ではなく語感から来る傾向なのであろう。 Q果たして・やっぱ・やっぱし・やっぱり・やはり <42> あんばい あんばい【按(安)配(排)/塩梅】不都合が生じないように全体の割合や順序などに気を配って処理する意で、改まらない会話や軽い文章に使われる古風な漢語。いいに)ほどよくーする)味見をしてーを見る」「今度の勤めはどんなーですか」「どうも体のーが芳しくない」「いいーに晴れてきた」のように、料理・調子・天候・健康などの具合をさす用法もある。「案配」で代用することもある。具合・コンディション・調子 あんまり「あまり」の転で、くだけた会話で使う強調ぎみの 語形。〈そりゃ、だ〉へーぽっとしないな〉へーきつく言う と逆効果になるよ〉へー自慢にはなんないけどね〉乃Qあま り①・さほど あんゆ暗喩「隠喩」の古風な用語として会話にも文章にも 使われる漢語。「文は人なり畢竟緣」これ命なり人生なり」 という高山樗牛の名言はに属する「明喩」と対立。 Q隠喩 あんよ「足」の意の幼児語。〈赤ちゃんのー〉〈ーが汚れてい る〉の「ーは上手」のように歩く意にも使う。足 あんらくし【安楽死】助かる見込みの皆無な病人や怪我人な どをその激しい苦しみから解放するために比較的苦痛の少 ない方法で死なせることをさし、会話にも文章にも使われ る漢語。へ一瞬ーという考えがひらめいてはっとする)手 段としては薬物投与などの連想がある。「尊厳死」と違って 人間だけでなく動物についても使われる。尊厳死 い【胃】食道と十二指腸との間にある袋状の消化管をさし、 会話にも文章にも広く使われる漢語。「下垂」への検 査〉へが丈夫だ〉へがきりきり痛む》吉行理恵の『赤 い花を吐いた猫』に「三時間もーがしくしく痛み続ける」と ある。専装 いいーよ(良)い いいあい言い合い互いに意見をぶつけ合って譲らない意 で、会話や軽い文章に使われる日常の和語。へ見たいテレビ 番組のことでーをする〉(激しいーになる)Q言い争い・言 う・口喧嘩・口論・話し合い いいあらそい言い争い自分の要求を通そうと互いに正当 性を主張して言い合う意で、会話や軽い文章に使われる日 常の和語。つまらないことでーになる)Q言い合い・口喧 嘩・口論 いいかえる【言い換(替)える】同じ内容を別のことばで表現 する意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。〝差し障 りがないよう別の言葉にー〟〝子供にもわかるよう平易に ー〟〝言い直す〟と違い、例を差し替えたり順序を逆にし たり情報を増減するなど、内容の一部に変更のある場合も 含まれる感じがある。語句レベルの「換言」と違い、もっと 長い単位の変更もありうる。Q言い直す・換言 いいがかり【言い掛かり】相手を困らせるために勝手な口実 <43> を設けたり根も葉もないことを言い出したりする意で、会 話や改まらない文章に使われる和語。「ーをつける」へとん だーだ」「ー上あとへは引けない」のように、一度口に出 した自分の立場といった意味合いでも使う。Qいちゃもん・ 因縁②・難癖 いかげん【好い加減】きちんとしていない、大雑把で不正 確、無責任なといった意味合いで、主に会話や軽い文章に使 われる表現。〈ーに答える〉〈ーなやり方〉〈ーな人〉②芥川 龍之介の『ひょっとこ』に「踊りはもちろんでたらめであ る。ただ、ーに(略)身ぶりだとか、手つきだとかを、くり返 しているにすぎない」とある。「ふざけるのもーにしろ」の ように「ほどほど」の意や、「ーくたびれた」のように「か なりの程度」の意で使うこともある。り疎か・いけぞんざい・ ぞんざい・Qちゃらんぼらん・ないがしろ・なおざり・なげやり・忽 せ いいかた【言い方】口頭での表現の意で、会話にも文章にも 使われる和語。〈ーが悪い〉〈ーに気をつける〉〈ものはー 次第だの「言いぐさ」と違い評価を伴わない。言い種 いいきる【言い切る】「断言する」意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈自信たっぷりにそうー〉〈確信ありげにはっ きりとー〉の「まだー・らないうちに時間になる」のように、 言い終わる意でも使う。Q断言・明言 いぐさ【言い種】広く使われる一般語である「言い方」に 比べ、会話などでよく使われる和語。〈何というだ〉〈相 手のーに腹を立てる〉〈第一、そのーが気に入らない〉②夏 目漱石の『坊っちゃん』に「生徒のーも一寸聞いた」とある。 いいつける 評価の含まれていない「言い方」に対し、好ましくないという響きを感じさせる。また、「言い方」が純粹に発言の仕方だけを問題にしているのに比べ、話の内容を含めて評価しているというニュアンスが感じられるケースもある。言い方 いいすぎ【言い過ぎ】量的・質的に必要以上に言う意で、会話 にも文章にも使われる和語。へいくら何でもそこまで言った らーだ)〈政治の貧困と言ってもーではない)実際以上に おおげさに言う「過言」の意のほか、調子に乗ったり興奮し たりして、言わなくてもいいことまで口走る意にも使う。 み過言 イーゼル「画架」の意で会話にも文章にも使われる外来語。 へーを抱えて湖畔を歩く) ヨ画架 いいそこなう【言い損なう】言いたいことを言い出す機会を 逃す意で、主に会話に使われる和語。〈気が引けてついー〉 〈タイミングを失してー〉の「せりふをー」のように、言い 間違える意にも、また、「夢中でついー」のように、失言な どの不適切な表現をうっかりしてしまう意にも用いる。 Q言いそびれる・言いはぐれる いいぞびれる【言いそびれる】言おうと思いながら言う機会 を逃す意で、会話にも文章にも使われる和語。〈肝心なこと をついー〉み言い損なう・Q言いはぐれる いつける【言い付ける】他人に何かをするように言う意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈用を ー〉〈仕事をー〉の子供に勉強するように言うとか、学生に 出席するように言うとか、その人間の本分となっているこ <44> いいったえ とには用いないが、義務であっても「部下に新しい任務を 」のように新たに負わせる場合には使える。「命ずる」と 比べ、私的な用事にも使える雰囲気がある。また、「先生に 」「部長に」のように、告げ口をする意にも使う。 命じる・命ずる・命令 いったえ【言い伝え】昔から代々語り継がれてきた俗信な どをさし、会話やさほど硬くない文章に用いられる、やや 古風な和語。《昔からのー〉へーに従う〈この地方のー〉 〈不思議なーがある〉の野上弥生子の『海神丸』に「昔から のーを守って」とある。「伝説」ほどまとまった話でなく断 片的なことでも言う。Q伝説・民話・昔話② いいなおす【言い直す】改めてもう一度言う意で、会話にも 文章にも使われる日常の和語。〈わかりやすく〉〈途中で つかえたので最初から」②「換言」より長い単位の変更も ありうる。「言い換える」と違い、不適切な表現などを改め て言う場合のほか、相手に通じない部分があって再度同じ ことを言う場合もある。ひQ言い換える・換言 いなずけ【許婚】夫婦になると言い交わした相手の意で、 会話にも文章にも使われる古風な和語。へーがいるへーの ある身〉相手が女性である場合は「許嫁」とも書く。武者 小路実篤の『お目出たき人』の「女に餓えていた自分は一日 も早く鶴とせめてになりたかった」の例でもそういう表 記になっている。Q婚約者フィアンセ いいね【言い値】売り手の要求する値段の意で、会話にも文 章にも使われる専門的な和語。〈ーで買うのは素人だ〉のこ の値段なら売ってもいいという、売る側の一方的な主張と いう響きがあり、交渉の余地があるという前提に立つ。 Q売値・売価 いいはぐれる【言いはぐれる】「言いそびれる」の意で、会話にも文章にも使われる、やや古風な和語。ぐついお礼をー」 ひ言い損なう・Q言いそびれる いはる【言い張る】周囲に対抗して自分の考えを強く主張 する意で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈自分のも のだとー〉〈あくまで自分は無実だとー〉乃強調・Q主張・提 言・力説 いひと【好い人】特定の恋人を遠まわしに言うときに、会 話や硬くない文章に使われる和語表現。〈ーができる〉へわ たしのー〉の太宰治は愛人の太田静子宛ての書簡を「一ば んーとして、ひつそり命がけで生きてるて下さい」と結ん で改行し、もう一言「コヒシイ」と添えた。愛人・Q恋人 まるようにする意で、会話や硬くない文章に使われる日常 の和語。〈有りもしない噂を—〉〈他人の失敗をみんなに ー〉の当人にとって好ましくない話の場合が多い。井伏鱒 二の『岬の風景』に抱擁の現場を見られた男が、目撃した娘 に、耳掃除をしていたのだとごまかし、「耳の中は衛生上清 潔にすべきだ」と自説を主張した直後に「他人のことを一 のはよくない」と小声で言う場面がある。呉吹聴・Q触れ回る いいわけ【言い訳】事情を述べて自分が悪くないことを説明 する意で、会話や軽い文章に使われる日常の和語。「は聞 きたくない〉「は見苦しい〉〈そんなーは通らない〉久 保田万太郎の『市井人』に「そこに女房子の待ってる家があ <45> るといったって、そんなーなんぞ疾渡る風だ」とある。 駅明・弁解・弁明・Q申し開き いいん【委員】特定の事項の審議や調査・処理などを任された 人をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈運営ー〉〈編 集ーを務める〉正式な感じがあるため、小沼丹の『銀色の 鈴』に出る「大寺さんが気に入った女性を見附けて再婚した いと思った場合は、このー会で審査して、そこを通過したら 結婚してもいい」という例は大仰な感じで読者の笑いを誘 う。刂係・幹事・Q役員 いいん【医院】医者が個人経営している診療所をさし、改ま った会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈今井—〉 〈一の看板を出す〉〈一に通う〉②井伏鱒二の『本日休診』に 「三雲産婦人科ーを開業して早々に、最初の第一番に来た患 者である」とある。Qクリニック・診療所・病院 「言う」ことばを発する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の最も基本的な和語。〈口に出してー〉〈ひとのーことをよく聞く〉〈改めてーまでもない〉〈ああ言えばこうー〉〈だけ野暮〉〈ーわぬが花〉〈夏目漱石の『坊っちゃん』に「仰っちる通りにゃ、出来ません、この辞令は返しますとー・ったら」とある。小説などでは「云う」という表記がよく使用される。「話す」と違って、「ひとりごとをー」とも言えるように相手を意識しない場合にも使えるし、「洒落をー」のように情報の伝達を意図しない場合でも使え、「せりふを台本どおりにー」のように口頭で表出する行為自体に焦点を当てた表現となる。相手に対する配慮もなく一方的に発言し合うのが「言い合い」で、友 いえぬし 好的な「話し合い」とは別の口喧嘩に近くなる。Qしゃべる・話す いえ【家】人間が生活するための建物の意で、くだけた会話 から文章まで幅広く使われる日常の最も基本的な和語。〈建 築中の—〉〈郊外に—を構える〉〈瀟洒しな—〉〈—に帰 る〉②上林暁の『聖ヨハネ病院にて』に「ーそのものが一つ の押入れのようで、戸を開けて入って来たとたん、微臭い匂 いがむっと立ちこめている」とある。「制度」「を継ぐ」 「医者の—に生まれる」のように、家系・血筋・家名などをさ す用法もある。ひQうち・家屋・居宅・豪邸・住居・住宅・人家・住ま い・邸宅・民家・屋敷 いえじ【家路】家に帰る道の意で、主として文章に用いられ る古風で詩的な和語。へーに就く〉へーをたどる〉へーを急 ぐ人々の群れ)帰り・帰り道・帰途・Q帰路・復路 いえで【家出】家族が家庭からひそかに抜け出す意で、くだ けた会話から文章まで使われる日常の和語。〈一人〉親に 叱られてーをする〉〈一同然に飛び出す〉②「出奔」とは違 う個人的な動機、例えば家族関係などに嫌気がさし、二度 と戻らないつもりで、行く先も告げずに一人だけ突然姿を 消すイメージが強い。ひ失跡・失踪・Q出奔・蒸発・逐電・行方不 明・夜逃げ いえなみ【家並み】家が立ち並ぶ様子をさして、改まった会 話や文章に用いられる、やや古風で趣のある和語。へーがま ばらになる〉〈趣のあるーが続く〉阿刀田高の『Y字路の 街』に「毒茸のようにけばけばしいー」とある。ひやなみ いえぬし【家主】家屋の所有者の意で、会話にも文章にも使 <46> いえのもの われる古い感じの和語。「の承諾が必要」所有する貸家 について使うと「大家」「家主」と同義。大家・Qやぬし いえのもの【家の者】家族に同居人や使用人を含む意味合い で個人を特定しない謙称。「を大勢引き連れて」「を差 し向ける」②稀にそれとなく妻をさす場合もある。Qうちの 者・お上さん・奥方・奥様・奥さん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・ 妻・女房・伴侶・ペターハーフ・令閨・令室・令夫人・ワイフ いえる【癒える】病気や傷などが治る意で、改まった会話や 文章に用いられる古風な和語。〈傷が—〉〈病が—〉の心 が—」「悲しみが—」「悩みが—」のように精神的な痛みが 消える場合に使う拡大用法もある。刂回復・治癒・Q治る・平癒 いがい【意外】予想とは異なる意で、会話でも文章でも広く 使われる日常語。〈—に難しい〉〈—に手間取る〉〈—にあ っさり承諾した〉小沼丹の『黒と白の猫』に「なほどそ の話を面白がった。多分、奥さんが面白がる分も一緒にし て、二人分面白がっているのかもしれぬ」とある。刂あには からんや・Q案外・思いの外・存外 いがい【遺骸】人間の「死体」をさす漢語。「遺体」よりやや 改まった文章語寄りの表現。〈ーを引き取る〉へーを茶毘に 付す〉の島崎藤村の『新生』に「ーの始末まで病院の方の世 話に成る」とある。その死者に対して敬意や親愛の情をこ めた言い方。「遺体」に比べ、死後若干の時間が経過した雰 囲気が伴う。Q遺体・かばね・死骸・しかばね・死屍・死者・死体・ しにん・しびと・亡骸・むくろ いかく【威嚇】自分の意に従わせる目的で相手に恐怖感を与 える意で、いくらか改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈一射擊〉〈大量の武器で敵を—する〉戦闘場面や、人間 どうしの喧嘩、猫が背中を丸くしたり猛獣が吠えたりする 場合などを連想しやすく、不倫現場の写真をたねに相手を 追い詰めるような陰湿な行為にはなじまない。おどす恐 喝・Q脅迫 いかさま【如何様】どう見ても本物に見える偽物で相手を騙 す意で、会話や軽い文章に使われる古風で俗っぽい和語。 へー師〉へー博打ぐへーを見破る》夏目漱石の『坊ちゃ ん』に「世の中はー師許ぼりで、御互に乗せっこをして居る のかも知れない」とある。「いかにも、なるほど」の意の 「いかなるさま」から。片仮名表記で目立たせる例も。ひQ いんちき・詐欺・べてん いかす「粋で気が利いている」意の、ひところ流行し今では 古い感じになった俗語。〈格好で現れる〉〈スタイルがな かなか〉の行かす」からというが例はほとんどが仮名書 きで、「イカす」という表記例も見られる。ひナウい いかずち【雷】「雷かみなり」の意で、まれに詩などに用いられる古 語に近い古めかしい和語。へーが轟くく)弐稲妻・稲光・雷 いかなる【如何なる】内容・状態・程度などがわからない意を 示すときに、改まった会話や文章に用いられる古風で硬い 和語。へー困難があろうともへー根拠があってかくの如き 結論に達するのか)どういう・Qどのような・どんな いかに【如何に】状態や程度の疑問や仮定を表し、改まった 会話や文章に用いられる古風で硬い和語。〈我々は一なすべ きか〉へ多忙とはいえ文語的な響きがあり、類語より 強調した雰囲気が出やすい。ひどう・どのように・Qどんなに <47> いかばかり【如何許り】「どれほど」の意の丁寧な感じの古語 的表現。〈悲しみはーかとお察し申し上げます〉(そのお喜 びたるやーでございましょう)の程度についてよく使う。 いかほど いかほど【如何程】「どのぐらい」の意の古風な丁寧表現。 〈ー差し上げましょうか〉〈お値段のほうはーでしょう〉の 数量・値段に使う。ひいかばかり いカメラ【胃カメラ】胃の内壁を直接撮影して病変を調べる ために口から挿入する超小型のカメラをさし、会話や軽い 文章に使われる、いくぶん古風でやや俗っぽい表現。「を のむ》開発された当初はこの名称でよく使われたが、近 年は胃に限らない「内視鏡」が一般的。内視鏡 いかものぐい【如何物食い】普通の人が見向きもしない物を 好んで食う意で、主に会話に使われる俗っぽい和語。「の 言うことだから味のほうは当てにならない」「如何物」は 皆がどうかと怪しむような偽物や珍奇な物の意。ひげてもの 食い いかり【怒り】不満から腹を立て気が荒くなる意で、やや改 まった会話や文章に用いられる和語。〈ーを覚える〉〈ーを あらわにする〉〈ーをぶちまける〉〈ー心頭に発する〉〈ー を買う〉②遠藤周作の『海と毒薬』に「白々とした空虚感が、 時には黒いーに変る」とある。ひQ腹立ち・立腹 いかる【怒る】「おこる」意の和語の文語的表現。「ー・り狂 う〈烈火のごとくに—〉有島武郎の『或る女』に「火と 涙とを眼から迸らせて、打ちもすえかねぬまでに狂いー・っ た」とある。名詞形の「怒り」は「怒りを覚える」「怒りが いき こみあげる」「怒りに震える」「怒り心頭に発する」などと 現代でもふつうに使われる、やや文章語的な表現。漢字表 記は「おこる」との区別に文体上の判断が必要で、紛らわし い場合もある。ひQおこる・叱る いかん「いけない」意の古い感じの口頭語形。ぐそりゃ、断 じてー!⑨関西で軽い感じの「あかん」と使い分ける場合 はきつい響きがあるという。ひあかん いかん【遺憾】好ましからぬ事態に際し心残りに思う意で、 かなり改まった会話や文章に用いられる、やや形式的な漢 語。〈まことにーに思う〉〈ーの意を表する〉〈ーの極みで ある〉の井伏鱒二の『追剝の話』に「無断で名前を変えられ たのは、ーなことじゃ」とある。公の謝罪会見などの場で、 心から詫びているのかどうか明確でない形で、体面を保つ 際にしばしば利用されることば。Q残念・無念 いき【息】呼吸、特に呼気の意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「が苦しい 「が切れる」(が弾む)へを殺す久保田万太郎の 『うしろがげ』に「ゆかた一枚になって、細く長いを糸の ように吐く」とある。「が合う」「が長い」などさまざ まな比喻的慣用句がある。呼吸① いき【粹】容姿・態度・行為や街・建物などが洗練されている中 にも品のいい色気がある意、人情に通じていてしかもすっ きりとしている意で、会話にも文章にも使われる、ちょっと 垢抜けたことば。〈な姿〉〈な小部屋〉〈な計らい〉 〈な年増ぶ〉繊田作之助の『夫婦善哉』に「白い料理着 に高下駄というな恰好」とある。漢語「意気」から出たと <48> いぎ されるが、「枠」と書けば和語として意識され、江戸時代後 期の美意識を表す。「一筋」もその延長で花柳界をさす。 私語として意識され、江戸時代後 期の美意説「筋」もその延長で花柳界をさす。 「野暮」の対極にある。小粹・小じゃれた・洒落た・Qすい・風流 いぎ【意義】ことばの中心的意味をさして、学術的な会話や 文章に用いられる専門的な硬い漢語。〈語本来のーを明ら かにする〉の意味」と同様、「大きなーを認める」「何のー もない雑事」のように物事の価値をさす用法もある。意味 いぎ【異議】示された意見に同意しないことの意思表示、ま たは、その反対意見をさし、改まった会話や文章に用いられ る硬い漢語。「異論」に比べ、考えの内容より反対する意思 表示に重点がある。〈御ーはありませんか?〉へーなし! 〈ーを唱える〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「釣をするに は、あまり岸じゃいけないですと赤シャツがーを申し立て た」とある。会議や裁判などの連想があり、「申し立て」 は専門語。ひQ異論・抗議 いきうつし【生き写し】姿形などがきわめてよく似ている意 で、会話にも文章にも使われる、やや古風な和語。顔は亡 くなった母親にーだ)の通常、血縁関係の近い場合に用い る。ひQ瓜二つ・そっくり いきおい【勢い】他を圧倒する激しい力をさし、会話にも文 章にも使われる日常の和語。〈ーがある〉〈ーを増す〉〈一 時のーが衰える〉〈ーを盛り返す〉〈破竹のー〉〈火のーが 弱まる〉和田伝の『沃土』に「急に起きあがった。ものの 弾みのようなきついーであった」とある。専勢力 いきかえる【生き返る】息を吹き返す意で、会話にも文章に も使われる和語。〈死人がー〉久しぶりの雨で草木がー〉 〈冷たいピールをあおって・った思いをする〉蔴生・Q蘇る いきがきれる【息が切れる】「死ぬ」意の和風の間接表現。 死を忌む気持ちから、それを全面的に取り上げず、それま で続いていた息がそこで切れて呼吸が止まるという側面だ けを言語化した換喩かん的な婉曲表現。「息切れ」の意で も用いる。勇敢え無くなる・上がる②・あの世に行く・息が絶える・ 息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる ②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・ 昇天・逝去・覚れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くな る・僇なくなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏にな る・身罷かる・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 いきがたえる【息が絶える】「死ぬ」意の和風の間接表現。 死を忌む気持ちから、死という現象を正面からとらえず、 息が無くなる呼吸停止の側面だけを取り上げた換喩の 婉曲表現。勇敢え無くなる上がる②・あの世に行く・息が切れ る・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落 ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死 亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡く なる・儚くなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏にな る・身罷る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 いきごみ【意気込み】積極的にやろうとする気持ちの意で、 会話にも文章にも使われる表現。〈仕事に対するが違う〉 〈が伝わってくる〉〈大変なだ〉〈だけは立派だ〉Q 意欲・意力・気概・気骨・気迫・気力・根性・精神力・ど根性・やる気 いきさつ【経緯】物事の経過や背後の事情をさし、会話やさ ほど硬くない文章に使われる和語。〈事のーを述べる〉 <49> れまでのーをかいつまんで話す》「経緯」より日常的な 話題について使う傾向がある。漢字表記は「けいい」との 区別が困難。刂経緯 いきさま【生き様】「生き方」やそのありさまをさし、近年、 マスコミなどで強烈な印象を与えるために使われる、俗っ ぼい表現。〈壮絶なー〉の「死にざま」からの類推で生まれ た比較的新しい表現であるが、「ざま」にマイナスイメージ が付着しているため、「死にざま」はぴったりするが、明ら かなプラス評価とともに感動的に用いる「生きざま」とい う用法には違和感を覚える人が多い。 いきだおれ【行き倒れ】→ゆきだおれ いぎたない【居穢(汚)い】恰好がだらしない様子をさし、主 として会話に使われる古風な和語。〈座り方〉東京方言 という。本来は「寝穢い」と書き、眠りをむさぼりなかなか 目を覚まさない意。ふだらしない いきづくり【生き造り】「生け造り」の別称。ひ生け造り いきどおり【慣り】怒りに興奮する意で、やや改まった会話 や文章に用いられる和語。〈ーを覚える〉〈ーを鎮める〉② 小島信夫の『小銃』に「血管を逆流してくるーのために、そ の場で私は昏倒してしまった」とある。専激怒・Q憤慨・憤激・ 憤怒 いきなり前ぶれなしにの意で、会話やさほど改まらない文 章に使われる日常の和語。〈ードアを開ける〉〈どなりつ ける〉〈ものも言わずにー殴りかかる〉〈入社してわずか三 ヶ月でー主任に抜擢だ。される〉〈ろくに稽古もせずに一本 番に入る〉の小沼丹の『猿』に「引っぱたこうとでもするら いきまく しく進み出たとき、洟垂れ君が相手のバンドを引ったく って地面に叩き附けた」とある。「準備運動もせずにーブー ルに飛び込む」というように、通常の過程を経ないで、とい う省略に対する驚きが感じられる。急にだしぬけに・Q突 然・不意に いきぬき【息抜き】仕事や緊張から解放されてしばらく休む 意で、会話にも文章にもよく使われる日常の和語。〈仕事の 途中でーをする〉へたまにはーが必要だ〉へに散歩をす る〉精神的な開放のニュアンスが強い。専休め 「生き残す」「生き残る」の他動詞形で創作的な複合動詞。円地文子の『花散里』の末尾に「まだ何かー・している」という表現が出る。上野の通称くらやみ坂の円地邸を訪問した折、「生き残る」という既成の自動詞だと生かされている感じが強いのに対して、こういうふうに「生き残す」という他動詞にすると、生きることに対する意思みたいな積極的な気持ちをうまく伝える表現に変わる、という私見を述べると、この作家は「それは私がこしらえてるかもしれませんね。私としては実感なんですよ。文法的には違っているかもしれないけど、使えばわかってくれると思うんです」と、意識的な逸脱の試みであったことを明かした。ちなみに、この小説は、この作家が愛情を持って現代語訳に挑んだ『源氏物語』の巻名を採用したタイトルになっている。 いきまく【息巻く】息遣いも荒く強い口調で言う意で、会話 にも文章にも使われる和語。へただでは済まさぬとー〉⑩怒 っている場合のほか、「今に見ている絶対優勝してみせる <50> いきもの と盛んに」のように意気盛んな場合にも使われる。井伏 鱒二の『集金旅行』に「アパートの窮状を見すてるか見すて ないかの人道上の問題であるとー・いた」とある。ひいきり 立つ激昂激情激する興奮高揚高ぶるむきになる いきもの【生き物】生命のある存在をさし、会話にも文章にも使われる日常の基本的な和語。〈一の命〉(一を飼う) 〈一を大切にする〉広義には人間を含めた動植物全体をさ すが、特に人間以外の動物をさすことが多い。「生物」と違 い、まるで生きて動くように絶えず変化する意に使う「こ とばはーだ」「経済はーだ」のような比喻的用法もある。大 原富枝の『婉という女』に「気味悪いうごめくーのようであ ったあの乳房」という比喻表現の例もある。なお、井伏鱒 二の『山椒魚』に「蝦くらい濁った水のなかでよく笑う生物 はいない」という例があるが、このように送り仮名がない と「せいぶつ」との区別が困難である。ひ生物 いきょう【異郷】故郷を離れた場所をさし、硬い文章に用い られる、やや古い感じの漢語。〈旅に出て車窓からひとり、 ーの景色を眺める〉へにありて故郷を思う)生まれ故郷 を遠く離れた国内のどこかという感じが強く、「異境」ほど 海外を連想させにくい。Q異境・異国・異土 いきよう【異境】母国を離れた場所をさし、硬い文章に用い られる古風な漢語。への空を見て母国を偲ぶへに骨を 埋めるの異郷より、外国を連想させる傾向が強い。 Q異郷異国異土 いきりたつ【熱り立つ】怒りに興奮する意で、改まった会話 や文章に使われる和語。ぼかにされてーぐーって抗弁 する)二葉亭四迷の『平凡』に「今夜こそはとーってい た気が忽ち萎えて」とある。息巻く激昂激情激する興 奮高揚高ぶるむきになる いきる【生きる】生命を保ち生活する意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈健康 にー〉〈正直にー〉〈百歳までー〉〈か死ぬかの瀬戸際〉 大岡昇平の『花影』に「死んだようになってー・きている」 とある。「生存」と違い、「芸術にー」「経験がー」「この法 律はまだー・きている」のような比喩的・派生的用法が広い。 「死ぬ」と対立。刂生存 いきをひきとる【息を引き取る】「死ぬ」意の和風の間接表 現。死を忌む気持ちから、それを正面からとらえず、息 をしなくなるという面だけ取り上げた換喩ゆんふふふふふふ いく【往く】主としてだけた会話で用いる、「死ぬ」意の俗 っぽい和語表現。ぼっくりー〉あいつもとうとうー・ち ゃったか死を忌む発想は「逝く」と同様でこの世を通 り過ぎてどこかへ立ち去るという意味にとらえ直した婉曲 表現。古風な「逝く」が「ゆく」と発音するのに対し、俗 っぽいこの語は通常「いく」と発音する。勇敢え無くなる・上 がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・いけ <51> なくなる永眠,往生お隠れになる落ちる②おめでたくなる帰ら ぬ人となるくたばる死去・Q死ぬ死亡昇天逝去斃れる他界 長逝露と消える天に召される亡くなる僂くなる不帰の客と なる不幸がある崩御没する仏になる身罷る脈が上がる空 しくなる藻屑となる逝く臨死臨終 いく【行く】「ゆく」の日常語的な表現。〈早くー・こうよ〉 〈遊びにー・ったっきりまだ戻らない)綱野菊の『パーマネ ント』に「あんまり暑かったので銭湯へー・って汗を流した いと思った」とある。改まった会話や古風な文章にはなじ みにくい。込赴く・出向く・Qゆく いくさ【戦/軍】「戦い」の意で、会話でも文章でも使われる 古風な和語。〈負けー〉〈ーが始まる〉〈ーに勝つ〉現代で は通常「戦」と書くが、伝統的に「軍」と書いてきたため、 「ー物語」の場合は現在でも「軍」を用い、「ーの神様」など でもそのほうが正式な感じがある。ひ戦役・戦争・戦闘・戦い いくじ【幾時】「何時」の意の古風で少し丁寧な表現。〈ーご ろまででしたらお伺いしてもよろしいかしら〉回小津安二 郎監督の映画『淑女は何を忘れたか』でドクトル夫人の時 子(栗島すみ子)が「遅いわね、節ちゃん。いったいー頃に出 かけたの?」と言う。今ではほとんどが「何時」となるの で、古めかしい感じに響く。 いくじ【育児】子供を育てる意で、会話にも文章にも使われ る漢語。(休暇)(に専念する)(に追われる)ひ子育 て いくじなし【意気地無し】勇気がなくて物事をやりとおせない意で、会話や硬くない文章に使われるくだけた表現。 いけ こで撤退するとーと思われる)Q臙病・腰拔け・怖がり・小心 腑拔け・女々しい・弱虫 いくたり【幾人】改まった会話で用いられる、「何人」の意の 古めかしく丁寧な和風の表現。〈強敵がー現れようと断じ て後へは退かない)現代ではめったに耳にしないだけ に、「幾人」よりもさらに古風で奥ゆかしい優雅な感じに 響く。小津安二郎監督の映画『麦秋』で紀子(原節子)は「お 子さんおー?って聞いたら、三人でございます、って済ま してるの」と友人との対話を兄嫁に伝えている。 いくぶん【幾分】程度が少しばかりという意味合いで、会話 にも文章にも使われる表現。昨日に比べればーしのぎや すい〉へー改善された〉へーなめらかになった〉のいくら か」と違って、少数・少量のように計測可能な対象には用い ない。「熱がー下がった感じがする」と言うことも可能だ が、それは体温計の目盛りを基準にした表現でなく、当人 の感じをもとにした表現の場合である。Q幾らか・若干・ 少々・少し・多少・やや いくらか【幾らか】数量や程度が少しばかりといった意味合 いで、会話にも文章にも使われる和語。まだ一残っている はずだ〉〈前よりー進歩した〉〈生活もー楽になった〉Q幾 分・若干・少々・少し・多少・やや いけ【池】地面からくぼんで水を湛えている場所をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈溜めー〉〈ーに鯉を放す〉谷崎潤一郎の『細雪』に「花時になるとき」と此のーのほとりへ来、此の桜の樹の下に立って水の面をみつめる」とある。雨水などがたまって自然 <52> いけい にできたもののほか、観賞用に庭の土を掘って造ることも 多い。前者のうち比較的大きなものは「沼」とも言う。 沼湖 いけい【畏敬】相手の偉大さに畏れ多くて思わずかしこまる までに敬服する意で、改まった会話や文章に用いられる硬 い感じの漢語。へーの念を抱くへーしてやまない」「尊 敬」が同等の人物の優れた点をとりあげる場合にも使える のに対し、この語は対象とする人物自体をはるか上の存在 と見ている感じが強い。単崇敬・尊敬 いけがき【生垣】樹木を列状に並べた垣根をさし、会話にも 文章にも使われる和語。〝かなめもちのーが続く〟Q垣・垣 根・囲い・柵・フェンス・塀 いけずうずうしい【いけ図図しい】しゃくにさわるほど厚か ましく見える意で、やや古い感じの俗っぽい口頭語。「野 郎だ〉(よくもー・くあんなポストにおさまりやがったもん だ」「いけしゃあしゃあ」などと同様、接辞の「いけ」に 相手をののしる感じがあり、ここでも単に「ずうずうしい」 という評価を客観的に伝えるのではなく、我慢ができない ような気持ちがこもっている。 いけすかない【いけ好かない】感じが悪くて嫌いだの意で、 改まらない会話で使われる、いくぶん古い感じになりかけ ている和語。〈どうもー奴だ〉へものの言いようからして、 何ともー復目漱石の『坊っちゃん』に「連中だ。パッ タだろうが雪踏だろうが、非はおれにある事じゃない」と ある。接辞の「いけ」に対象をののしる感じがあり、単に 「好きでない」という好悪の情を客観的に伝える「好かな い」と比べ、理由が明確でなくてもどうしても生理的に好 きになれないといった感情的なニュアンスが加わる。 いけぞんざいいかにも投げやりで扱いが乱暴な意で、古め かしい感じの俗っぽい口頭語。「な対応が気に食わない 「な口を利く」「接辞の「いけ」に相手をののしる意味合 いがあり、この語も単なる「ぞんざい」という評価だけでな く、癒くに障るといった不快感をこめた主観的な感じの表 現となっている。東京方言という。いいかげん・Qぞんざ いなげやり いけづくり【生け造り】生きている魚の肉で刺身につくり元 の姿に整えた料理をさす和語。〈鯛の—〉②「生き造り」と も言うが、このほうが正統的で広く使われている。乃生き造 り いけてる近年、若年層の間で、「一定の水準を超えている」「期待以上に達している」といった意味合いで褒めことばと して使われている俗語。〈この店なかなか—〉の「このギョ ーザはなかなか行ける」「行ける口」の「行ける」がそうい う状態をさす形で転用されたものだとすると、意味の上で はさほどはみだしていない。しばしば「イケてる」と書く 例も見かける。及行ける いけなくなる「死ぬ」意の和語による間接表現。死を忌む 気持ちから、直接それと表現せず、だめな状態への変化と 広くとらえることで衝撃をやわらげる婉曲表現。勇敢え 無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引 き取る・往く・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・ 帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・ <53> 他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる・僕なくなる・不帰の 客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷る・脈が上が る・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 いけにえ【生贅】「犠牲」の意で会話にも文章にも使われる古 風な和語。〈自分の身をーにして社会の発展に尽くす〉② 「神にーを捧げる」のように、昔、宗教的行事として獣など を生きたまま神への供え物として差し出したことから。 犠牲 いけめん男性の整った顔立ちの意で、近年くだけた会話で 使うようになった俗語。〈ー選手〉〈ーの新入社員〉のい け」は俗語「行けてる」からという。「めん」は「面相」の 意か。男のものの意の英語「メンズ」からという説も。「イ ケメン」と片仮名書きする例が多い。男前・好男子・ハンサ ム・美男子 いける【行ける】進行できる、かなりの程度だといった意味 合いで、主として会話に使われる和語。へこの調子なら、こ のままー〉へあの料理はちょっとー〉〈酒のほうはなかなか ー口だ〉みいけてる いけん【意見】一定の事柄に関する個別の考えの意で、会話 にも文章にも使われる日常的な漢語。〈—交換の場〉〈少数 ーを尊重する〉〈—が対立する〉〈—が出尽くす〉〈さまざ まなーを集約する〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「野だの 癖にーを述べるなんて生意気だ」とある。「生徒にーする」 のように、自分の考えを述べて戒ぶめる意の用法もある。 考え・Q見解・思考・思索・思想 いご【以後】過去・現在・未来のある時点より後のすべての期 うこう 間やその一部をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢 語。〈十分に気をつける〉〈あれ—随分変わった〉〈優勝 したら、それ—の行動が注目される〉何事かの起こった時 点を基準にする傾向が強い。Q以降以来・今後・先行き・将 来・未来・行く末 いご【囲(圉)碁】碁の意で、改まった会話や文章に用いられ る、正式な感じの漢語。いささかーをたしなむ)への名 人位に就く)四五目並之を含まない。庶民派の将棋や俳句 に対し、やや庶民離れした上品な和歌と似た感触を意識す る人もある。碁本碁 いこい【憩い】くつろいで過ごすことをさし、主として文章 に用いられる古風で優雅な感じの和語。「の場所〉(一の ひととき)意味よりも語感によって品物の命名がきまる ケースは多い。昔「いこい」という名のタバコがあり、ふだ んは「ピース」を吸う人も給料前にはこれに切り替えるほど 人気があった。よく売れたのは、四分休符の記号をあしら ったデザインのせいばかりでなく、優雅な語感をもつこの ことばの好感度が高かったせいもあったにちがいない。も し「一休み」とか「暫時休憩」とかといった名づけだったら、 あれほどの売り上げは期待できなかっただろう。ひQ休憩 休息 いこう【憩う】ゆっくりと休む意で、主として文章に用いられる古風で優雅な感じの和語。「休む」よりも積極的にのんびりくつろぐ感じが強い。〈緑陰にー〉へ間もあらばこそ〉み休む① いこう【以降】過去・現在・未来のある時点より後の期間をさ <54> いこう し、会話にも文章にも使われる漢語。〈明治—今日まで〉 〈あれ—真面目に働いている〉〈来年—の予定は立っていな い〉四「以後」より連続性が強調されている。以後・Q以 来・先行き・将来・未来・行く末 いこう【衣桁】着物を掛けるための鳥居型の家具をさし、会 話にも文章にも使われる古風な漢語。〈振袖をーに掛けて 眺める〉のついたて式と折りたたみ式とがある。ひQ衣紋 掛けハンガー いこう【移行】それまでと別の状態に移る意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈一措置〉〈新制度にーす る〉〈次の段階にーする〉ひ移動・移る いこう【意向(締)】ある件についてどうするかというその人 間の考えをさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈本人のーを確かめる〉〈先方のーを尊重する〉〈こちらの ーを伝える〉夏目漱石の『こころ』に「本人のーさえたし かめるに及ばない」とある。「意図」ほど能動的でなく「意 思」より希望・期待の面が強い。意図・魂胆・Q積もり いこく【異国】「外国」の意で、改まった会話や比較的硬い文 章に用いられる、やや古い感じの漢語。〈情緒〉への土 を踏む〉への厳しい自然に耐える〉の吉本ばななの『哀し い予感』に「寝ぼけたまま降り立った昼ちかくの上野駅は、 ーのようだった」とある。異郷・Q異境・異土 いこじ【意固地/依怙地】↓えこじ いさん【遺言】「ゆいごん」を意味する法律関係者の専門的な 読み方。〈ー執行者〉〈ー証書〉〈ー能力〉〈重大な不備があ りーとして認定しがたい〉ひゆいごん いさかい【諍い】言い争いの意で、会話にも文章にも使われ る、やや古風な和語。〈ーを起こす〉〈夫婦間にーが絶えな い〉ひいざこざこたこた・トラブル・Q揉ぬ事 いさぎよい【潔い】心が清く未練がましくなく思い切りのよ い意で、会話にも文章にも使われる和語。〈—態度〉〈—最 期を遂げる〉〈—・く自分の非を認める〉〈—・くあきらめ る〉〈—・く謝罪する〉の「清廉」や「廉潔」が多く人物評で あるのに対し、この語は個々の態度や行動の評価。「未練が ましい」と対立。幸田文の『蜜柑の花まで』に「雪が降るか らこそ湯気の鍋よりむしろー・く青い野菜などが膳へつけ たかった」とある。ひQ高潔・清廉・廉潔 いさご【砂(沙)子/砂】「砂」の意でまれに文章中に用いられ る古めかしい雅語的な和語。へーの上を歩む)Q砂・まさこ いざこざ小規模の争いの意で、会話や軽い文章に使われる 和語。へーを起こす)へーが絶えない)〈社内のーに巻き込 まれる)専諍い・Qした・トラブル・揉め事 いささか【些(聊)か】「わずかばかり」といった意味合いで、 やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な和 語。〈腕には自信がある〉(今日は機嫌が悪い)〈あれ には驚いた〉への悪意もない)②表面上の語義としては 「ごくわずか」でも、実際に使用する人の気持ちとしては、 むしろ「少なからず」程度の本音が隠されているケースが多 い。ひ一抹 いざなう【誘う】「誘う」意で、文章に用いる古風で文学的 な和語。〈友を観劇に—〉〈幻想の世界へと—〉〈悪の道へ ーこととなる〉現代では、具体的な行動としてよりも抽 <55> 象的な意味合いで月しる例が多い。勧誘・Qさそう いさみあし【勇み足】やりすぎてうっかり失敗することをさ す、相撲は用語の拡大用法。〈大臣の—〉本来は相撲で、 相手を土俵際に追い込みながら、勢いあまって自分が先に 俵を踏み越し、負けになること。そこから転じて、一般に 調子に乗ってやりすぎたり思わぬ失敗をしでかしたりする 意でも使う。語源となった相撲の意識が若干残っている。 ひ土俵を割る いさめる【諫める】その行為を改めるよう忠告する意で、会 話にも文章にも使われる、いくぶん古風な和語。へ上司を ー〉多く目上の人に向かって行う場合に用いる。したしな める いし石岩石のうち砂より大きく岩より小さいものをさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈墓ー〉へ造りの家〉へを投げる〉へを切り 出す〉〈河原でーを拾う〉室生犀星の『杏っ子』に「一の ように硬い頭」とあるように、硬いイメージの比喩に使われ る。石ころ・Q岩・岩石 いし医師「医者」の意で、改まった表現の中に用いる正式 な感じの硬い漢語。〈ー免許を取得する〉へーが不足してい る〉へーが同行する〉へーの診察を受ける〉へーの所見を仰 ぐ〉徳永直の『太陽のない街』に「道化師のように愛嬌の あるー」とある。正式の職業名としてはこの語を用いるの が通例。「息子が医者になる」「医者の家に生まれる」のよ うな例に用いるのは不自然。「医者に相談する」の場合は 「医師」も使えるが、大仰な感じから重篤な病状が想像され いじきたない る。 医者・女医 いし「意志/意思」あることを行おうとする積極的な気持ち をさし、やや改まった会話や文章に使われる漢語。「薄 弱〉へが強い〉〈当人のーを尊重する〉へーの疎通を図る〉 の大仏次郎の『宗方姉妹』に「姉に向けて、かすかに意地悪 いーが心に動いた」とある。一般には「意志」と書くが、 「国家のー」「公式の場でーを表明する」のように法令など の正式の場では「意思」と表記。「自由ー」などの場合、「意 思」と書くと正式な雰囲気が強くなり、改まって感じられる ため、語の文体的レベルも高くなる。意向・意図 いし【縊死】自ら首をくくって死ぬ意で、主として硬い文章 に用いられる漢語。〈ーを図る〉〈ーを遂げる〉②太宰治の 『狂言の神』に「その夜の私にとって、ーは、健康の処世術 に酷似していた」という一文がある。ひ首くくり・Q首吊り いじ【維持】物事をそのままの状態に保つ意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈—費〉〈—会員〉〈現状—〉〈財産を —する〉〈健康を—する〉〈治安を—する〉②具体物の保存 よりも抽象体・状態・性質を保つ意味合いで使う。Q保持 保存 いしき【意識】物事に対する明確な自覚をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈潜在—〉〈問題—〉〈—過剰〉〈—を 失う〉〈エリート—が抜けない〉〈相手を変に—する〉德 永直の『太陽のない街』に「—が朦朧としてきて」とある。 思考・Q認識 いじきたない【意地汚い】飲食や金銭に対する執着心が強く 卑しくむさぼる意で、会話や軽い文章に使われる日常語。 <56> いじくる 〈根性がー〉〈ーまねはよせ、みっともない〉乃浅ましい・Q卑しい・さもしい いじくる【弄くる】「いじる」意で主にくだけた会話に使われ る俗っぽい和語。〈茶道具を—〉の太宰治の『斜陽』に「弥 次馬たちに死骸をー・り廻される」とある。ひひじる・ひね くる・まさぐる・もてあそぶ いしころ【石塊】小さな石や石のかけらをさして、会話や硬 くない文章に使われる日常語。〈道端の—〉へが転がって いる》の「小石」に比べ、価値のないという意識が強い。林 芙美子の『放浪記』に「雑然と風呂敷包みが—のように四囲 に転がっていて」とある。ひ石・小石・砂利 いしずえ【礎】建造物を支える大元の意で、主として文章に 用いる古風な和語。〈ーを築く〉〈ーが崩れる〉比喩的に 単に「土台」の意でも使う。基礎・基本・根本・土台 いじっぱり【意地っ張り】強情であくまで自分の考えを変更 しない意で、硬い文章には適さない会話的なことば。へーな 男頬義の「頑固」などが年齢と無関係に抵抗なく使える のとは違って、「おやじはーなところがある」ぐらいが自然 な用法の限界で、「な祖父」となると微妙にしっくりしな い感じがある。「強情っ張り」に比べれば、いくらかマイナ スイメージが少ない。仏依怙地片意地頑な・頑固・強情・Q強 情っ張り いじめる【苛(虐)める】自分より弱い存在を不当に苦しめる 意で、会話やさほど硬くない文章に用いられる日常の和語。 〈小さい子を—〉〈弱い者を—〉〈猫を—〉陰湿な感じの 「いびる」に比べ、さほどの悪意なくふざける場合も含まれ る。また、人間専用の「いびる」と違い、人間のほか犬や猫 にも使い、「下請け企業を」のように生物以外の組織など にも用いることがある。きいびる いしや【医者】病気や怪我の診察・治療を職業とする人をさ し、会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。 「医師」ほど改まった感じがない。〈近所の—〉〈かかりつけ の—〉〈—にかかる〉〈—に通う〉〈息子を一人前の—にす る〉〈—の診察を受ける〉図川端康成の『千羽鶴』に「が 来ていないのかと菊治は驚いたが、はっと気がついた。/ 夫人は自殺なのだ」とある。伝統的に男性が圧倒的に多か った影響で今でも男性を連想させやすい。その証拠に「女 医」として区別することがあっても「男医」という区分けは 一般的でない。医者の息子が自分の父は弁護士だと言うと、 聞いていて奇妙な感じがする。「—の息子」という表現から 自然に、父親が医者だと思い込み、母親が医者であるケース が頭に浮かばないからである。Q医師・女医 いしゅう【異臭】日常生活で嗅ぎ慣れない変な臭いをさし、 改まった会話や文章に用いられるやや専門的な感じの漢語。 〈一騒ぎ〉〈一を放つ〉〈一が漂う〉長与善郎の『青銅の基 督』に「火葬場の煙の如きーが風に送られて来る」とある。 単なる悪臭というより、得体の知れない薬品のにおいなど、 通常その場にあるはずのないという驚きが伴う。叢尿の臭 いも便所まわりでない意外な場所で発すればこの語がびっ たりする。ひQ悪臭・臭気 いしよう衣裳装】普段とは違う衣服をさし、改まった会 話や文章に使われる漢語。〈花嫁—〉〈舞台—〉〈道楽〉 <57> 〈新しいに袖を通す〉〈派手なーを身にまとう〉石川淳 の『列子』に「ーを下着から上着まで、一枚一枚、月に雲が かかるように、おもわせぶりに着て見せて」とある。日常 生活での普段着よりも、特別の衣服や舞台などで役柄に合 わせて身にまとう衣服などのイメージが強い。Q衣服・衣 類・着物・服装・身なり・装い いじょう【異常】通常とは異なる状態をさし、会話でも文章 でも使われる漢語。〈ー気象〉〈ー事態〉〈ーな性格〉高見 順の「故旧忘れ得べき」に「頭がトに大きかったので略)異 様な大頭が駆け出すときの形について」とある。「正常」と 対立。異状 いじょう【異状】「異常な状態」をさし、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈なし〉〈をきたす〉体のーを訴 える〉異常 いじょう【委譲】他に委ね譲る意で、主として硬い文章で用 いられる漢語。〈権限を—する〉「移譲」と比べ、他に委 ねる意に重点がある。移譲 いじょう【移譲】他に移し譲る意で、主として硬い文章に用 いられる漢語。〈所有権を—する〉の「委譲」と比べ、権利 を移す意に重点がある。委譲 いじらしいけなげでかわいい意で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈見るからに—〉へー様子がたまらない〉の徳田 秋声の『縮図』に「母を捜して(略)抱きつきたがるー姿」と ある。きあどけない・Qいたいけ・いとけない いじる【弄る】指先で触って撫でたり軽く動かしたり部分 的・表面的に手を加えたりする意で、会話やさほど硬くない いす 文章に使われる日常の和語。〈子供が玩具を—〉〈髪を—〉 〈傷口を—〉堀辰雄の『風立ちぬ』に「ベッドの上で、い つもしているように髪の先きを手でー・りながら、いくぶん 悲しげな目つきで空を見つめていた」とある。「機械を—」 「楽器を—」「パソコンを—」「骨董を—」のように、「操 る」意のへりくだった表現としても使う。「庭を—」「制度 を—」「文章を—」のように、姿や表現を変える意にも使う が、いずれも大幅な変更には用いない。本格的にやるわけ ではないという意味合いで謙遜の気持ちで用いることもあ る。ひいじくる・ひねくる・まさぐる・Qもてあそぶ いじん【異人】外国人、特に欧米人をさして昔使った古めか しい漢語。〈一船〉〈一の館〉野口雨情作詞の童謡『赤い 靴』の歌詞に「赤い靴はいてた女の子ーさんにつれられて 行っちゃった」という箇所が出てくる。Q異邦人外国人・外 人 いじん【偉人】偉大な人物をさし、会話にも文章にも使われ る漢語。〈伝〉(の足跡)川端康成は『山の音』で、み ごとなひまわりの花を主人公に「の頭のようじゃないか」 と言わせる。華々しい活躍を連想させる「英雄」に対し、業 績だけでなく能力や人格を総合評価している感じがある。 近年は使用が減少しているように見受けられる。英雄 いす【椅子】腰を掛けるための家具の総称として、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる最も一般的な日常漢 語。〈安楽ー〉〈三人掛けのー〉〈待合室のーに掛ける〉〈一 に腰を下ろす〉〈一に座る〉②小沼丹の『猿』に「衣装を着 けて貰った猿は、女の傍の木の丸ーの上に坐って、何やら憂 <58> いずこ 鬱そうに空を仰いだりしていた」とある。比較的簡単な造りを連想させる「腰掛け」に対し、ベンチのような簡単な造りのものから、凝った造りの高価なソファまでどんな家具に用いても特に違和感のない広い意味のことば。ヲ腰掛けいずこ【何処】「どこ」の意で、改まった文章にまれに用いられる、古語に近い古めかしい和語。今ー〉「も同じ〉へ「参りましょうや」のどこへ?」と聞かれたら、ごみの集積場でもパチンコでも芋掘りでもいいが、「へ」と問われたあかつきには、松島とか紅葉狩りとかせめて散策とかと風流な答えをしたくなるのは、両語の意味の違いによるわけではなく、「いずこ」ということばの優雅な語感の働きによる。ひどこ」どちら② いずみ【泉】地中から水の湧き出ている場所をさし、会話にも文章にも使われる美的な和語。〈森と—の里〉〈清らかな ーのほとり〉福永武彦の『草の花』に「静寂はーのように 胸の中に溢れて来る」とあるのは、滾々と湧き出るイメー ジからの比喻的発想。「出づ水」の意から。専清水・Q湧き水 いずれ【何(孰)れ】①「どこ」「どちら」の意で、改まった会 話や文章に用いられる、古風で硬い感じの和語。〈ーの方 角〉〈ー劣らぬ腕利き〉〈ーの道を選ぶべきか〉「いずれ にしても」と同様、どちらにしても必ずの意でも用いる。 どこ・Qどちら① ②近いうちにの意で、会話にも文章にも使 われる、古風で改まった感じの和語。〈ー改めてご挨拶に伺 います〉〈ーそうなるだろう〉〈ーは滅びゆく運命にある〉 ひ追って・近々・Qそのうち・近ちか・程なく・間もなく・やがて いぜん【以前】今またはある基準の時より前、または、今か らかなり前の時をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈平安時代—〉へ—からの知り合い〉へ—からとかくの噂のあった人物〉へ一度行ったことがある過ぎ去って間もない時には使わないが、「昔」ほどは古くない時を連想させ、特に懐かしいという感じを伴わない。瀧井孝作の『慾呆け』に「このあたりは—に三菱で試掘権をとって広く網をかけた場所でまんざら出ない山でもない」とある。井伏鱒二の『川』には「よほどーには、この二軒の庭から庭に通ずる橋があった」とある。「以後」と対立。弁往時・Q過去・前・昔 いぜん【依然】以前の状態がまだ続いている場合に会話にも 文章にも使われる漢語。〈旧態—〉〈雨はー激しく降ってい る〉〈景気はーとして悪い〉の「相変わらず」に比べ、好ま しくない状態に使う例が多い。り相変わらず いそ【磯(礦)】岩だらけの海岸をさし、会話にも文章にも使 われる、いくらか古風な和語。〈—遊び〉〈—釣り〉〈—のか おり〉〈—伝いに行く〉りうみべ・沿岸・Q海岸・海浜・かいへん・ 岸・岸辺・なぎさ・波打ち際・浜・浜辺・みぎわ・水際・水辺 いそいそ期待や嬉しさに心が弾んで調子づく意で、主に会 話に使われる和語。へと支度をする〉へと出かける)回 鈴木三重吉の『桑の実』に「して、手拭いのきれいなのを 絞ってお盆に載せて来たりした」とある。気分だけを表す 「うきうき」や「わくわく」に比べ、この語はむしろそうい う気分の感じられる行動のほうに重点がある。刂浮き浮き・ Qわくわく いそがしい【忙しい】やらなければいけないことが多過ぎて <59> ゆっくりする時間がとれない意で、くだけた会話から文章 まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈仕事で—〉〈年 末は特に—〉〈会の準備で—〉〈目が回るほど—〉②「せわ しい」より客観的。「—性分」のように、落ち着きがない意 にも使い、「一人」という表現はその両方の意味に解釈でき る。動詞「急ぐ」が形容詞化した語。志賀直哉の『城の崎に て』に「ー・く立働いている蜂は如何にも生きている物とい う感じを与えた」とあるように、人間以外に使う例もある。 み慌ただしい・気ぜわしい・せわしい・せわしない・多事・多端・Q多 忙・多用 いそぐ【急ぐ】通常より短い時間で事を行う意で、会話にも 文章にも広く使われる日常の和語。〈道を—〉〈ー・いで帰 る〉〈小仕事〉〈完成を—〉〈解決を—問題〉幸田文の『お とうと』に「足達者な人たちを追い抜き追い抜き、げんは ー!いでいる」とある。専急く いそしむ【勤しむ】忠実に努める意で、主として文章中に用 いられる、やや古風な和語。〈勉学にー〉〈読書にー〉②「励 む」以上に、自分の本分ともいうべき勉強や仕事に精進す る意味合いが強く、遊びや悪事に使うと違和感が伴う。 頑張る・精進・努力・励む いそん【依存】存在や生活・活動などを他に頼る意で、主に文 章中に用いられる硬い感じの漢語。〈相互—の関係にある〉 〈生活費は親元に—する〉〈熱源を天然ガスに—する〉現 在では「いぞん」と読む例が多いため、この語形はいさきか 古風な印象を与えやすい。ひいぞん・頼る いぞん【依存】「いそん」の慣用読み。〈供給のほとんどを輸 いだい 入にーする本来は「いそん」この語形は古風な感じがない。Qいそん・頼る いた【板】木材を薄く平らに切った建材などをさし、会話に も文章にも使われる和語。〈棚ーを渡す〉〈ー張りの床〉 板状であれば金属やガラスでもこの語を使う。徳田秋声の 『風呂桶』に「大工が張って行った、湯殿のー敷を鍬で叩き こわしていた」とある。呂ボード いたい【痛い】体のある箇所に耐え難い刺激を受ける、痛み を感じる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の和語。〈頭が割れるように—〉〈腰が—〉〈ーと ころをさする〉井伏鱒三の『黒い雨』に「体に力を入れる と、足の指がきりきりー」とある。帰む・疼ぐ 「遺体」人間の「死体」をさす漢語。「死体」より丁重 な感じで、やや文章語的。〈ーを運ぶ〉〈ーを収容する〉 阿部昭の『訣別』に「小雨もよいのその朝、父のーは藤沢火 葬所の「い」号焼却炉というもので、九時半から約五十分間 かかって処理された」とある。「死体」より、死者に対する 敬意や親愛の情が感じられる表現。そのため、「被害者の 死体が発見された」のような一般的な死者の場合には「遺 体」は使いにくい。Q遺骸・かばね・死骸・しかばね・死屍・死者・ 死体・しにん・しびと・亡骸・むくろ だい【偉大】きわめて優れていて立派な意で、いくぶん改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈な人物〉(な業 績〉(な記録)〈な足跡を残す)人間そのものに使う 偉い」と違い、社会的地位とは無関係で、人間の行為や作 品についても用いる。夏目漱石の『吾輩は猫である』に「吾 <60> いたいけ 輩は此ーなる鼻に敬意を表する為め、以来此女を称して鼻 子鼻子と呼ぶ積りである」とあるのは誇張の皮肉。刂偉い ①立派 いたいけ【幼気】幼くて手を差し伸べたくなるほどかわいい 意で、改まった会話や文章に用いられる古風な和語。〈ー盛 り〉〈ーな幼子〉ひあどけない・Qいじらしい・いとけない いたいたしい【痛痛しい】いかにも痛そうな、かわいそうで 見ていられない感じをさし、会話にも文章にも使われる和 語。〈見るもー包帯姿〉〈ー傷跡〉〈ーくやつれる〉村上 春樹の『ノルウェイの森』に「生まれおちて間のない新しい 肉体のようにつややかでー・かった」とある。「痛ましい」 に比べ、外見から受ける場合に多く使う。Q痛ましい・気の 毒 「たく【委託】物事を他人に任せてやってもらう意で、改ま った会話や文章で用いられる漢語。〈ー販売〉〈業務をーす る〉の「依託学生」のように、他を頼る意を表に出して「依 託」と書くこともある。単委任 くだく【抱く】胸に抱える、心の中に持つ意で、主として文 章に用いられる硬い和語。赤子を胸に」〈野心を」 〈不満を」〈疑問を」〈夢を」有島武郎の『或る女』 に「膝の上に巣喰うように」・かれて」とある。抽象的な意 味合いでは改まった会話に用いるが、具体的な動作をさす 用法は文語的な響きがある。「だく」や「かかえる」と比べ、 やや詩的な表現となりやすい。専抱える・Qだく① いたずら【悪戯】特に目的もなくふざけて、他人にちょっと した迷惑の掛かることをわざとやって楽しむ意で、会話や 軽い文章に使われる和語。〈ーが過ぎる〉〈たちの悪い〉 〈ーが見つかって叱られる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「ーと罰はつきもんだ。罰があるからーも心持ちよく出来 る」とある。「火をーする」「機械をーする」のように、目 的もなくいじる意にも用いる。悪さ悪ふざけ 「頃」「頂上」の意で、やや改まった会話や文章で用 いられる、わずかに古風なやわらかい和語表現。〈山のーを めざす〉〈はるかにーを望む〉の三島由紀夫の『金閣寺』に 「叡山のーは突兀としていたが、その裾のひろがりは限り なく、あたかも一つの主題の余韻が、いつまでも鳴りひび いているようであった」とある。「頂上」より緊張度が下が り、「てっぺん」のような俗っぽさを感じさせない。使用頻 度が落ちて若干古風な感じが生じるにつれて、わずかに詩 的な趣を持ち始めた感がある。刂山頂・山巓・Q頂上・頂点・て っぺん いただきもの【頂き物】「もらい物」の謙譲表現。相手や与え 手の待遇とは無関係に、話し手自身の品格を保持するため につねにこの語を用いる人もある。〈上司からのー〉へーで すけれど、よろしかったら召し上がって)」到来物・Qもらい 物 ただく【頂く】「飲み食いする」意の謙譲語。単に「食べ る」より上品な言い方としても使われる。〈遠慮なく—〉 〈おいしく—〉食う・食する・Q食べる・召し上がる いただく【頂(戴)く】上に置く意では改まった会話や文章に 用い、頂戴するの意や飲む・食うの謙譲語としては日常の表 現。〈山頂に雪を—〉〈大臣を会長に—〉〈お土産を—〉 <61> 「冠を」の場合は「戴冠式」に、「共に天を」・かず」の場合は「不俱戴天」に合わせて、必ず「戴」の漢字を用いる。「見て」「お教え」のような補助動詞の用法の場合は、実質的な意味が稀薄になっているため仮名書きが一般的。 「たば」「板場」上方などで「板前」の意として、主に会話に使われる和語。「の修業」もと、俎板を置く場所の意から料理場をさし、さらにそこに立つ料理人の意にも広がった。広板前・コック・シェフ・調理師 いたまえ【板前】板場の頭、すなわち、日本料理の料理長を さし、会話にも文章にも使われる和語。〈割烹の腕のいい ー〉Q板場・コック・シェフ・調理師 いたましい【痛(傷)ましい】直接見たりその心情を推し量 たりして不幸な状態に胸が締めつけられ、わが身を切られ る思いになる気持ちをさし、改まった会話や文章に用いら れる和語。〈—姿〉〈—事件〉〈—知らせ〉〈末路が—〉回永 井荷風の『日和下駄』に「現在の東京を歩むほど無残に—思 いをさせるところはあるまい」とある。幸田文の『流れる』 には「コッペパンをたべる横顔には、もぐもぐとやるたびに 顕骨が形なりに浮きだして見えて、なんとも—く眼を刺 す」とある。Q痛々しい・気の毒 いち たみいる【痛み入る】過分の配慮を受けすかり恐縮する 意で、改まった会話や文章に用いられる丁重な和語。まこ とに丁重なる御挨拶ーります(このたびはあのような高 価なものを賜り、ーります)「恐縮」や「恐れ入る」以 上にかしこまった感じが強い。有り難い恐れ入る・忝い Q恐縮 いたむ【痛む】くだけた会話から硬い文章まで、苦痛を感じ る意に、幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈歯が 」〈胃が」〈古傷が」幸田文の『流れる』に「あくる 日もみりみりと骨が「・んでいる」とある。「心が」「胸が 」のように精神的な苦痛を意味する場合は「傷む」とも書 き、文体的なレベルが少し高まる。弔痛い・Q傷む・悼む・疼く いたむ【傷む】損なわれる意で、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の和語。〈家が」〈衣服が」 〈食人物が」弔Q痛む・悼む・腐る・腐食・腐敗・腐乱 いたむ【悼む】他人の死を嘆き悲しむ意で、主として文章に 用いられる和語。死を—〉弔痛む・Q傷む ためる【炒める】熱した鍋や鉄板で食材を少量の油を加え て加熱する調理法をさし、会話にも文章にも使われる日常 の和語。〈肉をフライパンで〉〈野菜を油で〉、Q煎る・ 煎じる・煎ずる・焙じる・焙ずる 「至る」「達する」意で一般に改まった会話や文章に用 いられる和語。〈現在に—〉〈大事に—〉〈子供に—まで〉 〈事ここに—・って〉〈所に〉記号的に「至鎌倉」のよう に送り仮名を省いて用いることもある。「目的地に—」のよ うに到達する意では「到る」とも書く。及ぶ・達する・届く いたわる【労る】慰労する意で、会話にも文章にも使われる、 やや古風な和語。〈永年の苦労を—〉図嘉村礙多の『業苦』 に「嬰児のように愛しー・ってくれた」とある。「病人を —」「年寄りを—」のように、弱者を思いやって手厚くもて なす意に使う例が多い。Q思いやる・ねぎらう いち【市】毎日または一定の期日に戸外や屋根つきの広場な <62> どに大勢の人々が集まって売買をする場所をさし、会話にも 文章にも使われる古風な和語。〈朝—〉〈羽子板—〉〈馬—〉 へーが立つ)久保田万太郎の『末枯』に「べったらーが来 た」「来月はもう酉のーかと思った」とある。ひいちば①マ ーケット② いち【位置】全体または他との関係から見た場所や地点をさ し、会話にも文章にも使われる基本的な漢語。〈一関係〉 〈一を占める〉〈一を変える〉〈指定の一につく〉〈台風の 一〉〈街の西北に一する〉庄野潤三の『静物』に「お腹の 横に両方の手を持って行って、大体の一を父親に示した」と ある。単場所 いちおう【一往(応)】十分ではないがひとわたり、ひとまず、 の意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈ー調べ る〉〈ー知らせておく〉〈ーもっともな説明になっている〉 〈ー話は通してある〉のもと、一度行ってみる意という。 一通り いちがいに【一概に】下に打消しの語を伴って、すべてにわ たって一般にそうであるとまでは言えないという意味を表 し、やや改まった会話や文章に用いられる少し硬めの表現。 へーどちらがいいと断定できない) ひQあながち・必ずしも・ま んざら いちぐう【一隅】場所や部屋などの一方の隅をさし、主に文 章中に用いられる硬い漢語。〈公園の—〉〈会場の—〉〈一 を照らす〉②梶井基次郎の『雪後』に「研究所の—に彼のた めの椅子を設けてくれた」とある。ひ一角・Q片隅 いちこじん【一個人】私人としての一人の人間をきし、改ま た会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーの意思〉への 考えを述べる)「個人」の強調。所属する組織とは離れて 自由に行動することの表明に用いることが多い。「いっこじ ん」とも言う。個人 いちじ【一時】短い時間や期間をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常語。〈ーしのぎ〉への勢い〈曇りー雨〉への気の迷い〉へはどうなることかと思った〉へー栄えたこともある〉永井荷風の『瀾東綺譚』に「ー姿を晦すんだな」とある。「先頃」が時刻的な発想であり、「ひところ」もそういう傾向があるのに対し、この語は長さが相対的に短いことを主張する時間的な発想に立つ。また、「ひところ」は数日以上の幅を問題にするのに対し、「一時」は現在との間に断絶があれば数分間でも数十年間でも使える点で違う。ひとことき・過日・この間・先頃・先日・Q一頃 いちず【一途】一つのことだけに集中し他を顧みない意 会話にも文章にも使われる漢語。〈仕事ーに生きてきた〉 〈ーに思い詰める〉〈ーにそう思い込む〉ひひたすら・ひたむ き・もっぱら いちど【一度】物事が起こって同じ事を繰り返さない意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な漢語。〈年に—〉へーも見たことがない〉へー行ってみ たい〉へーでいいから〉へーならず二度までも〉へーこわれ たら元に戻らない〉へー言い出したら絶対引っこめない〉② 夏目漱石の『倫敦塔』の冒頭段落に「ーで得た記憶を二返目 に打壊すのは惜い、三たび目に拭い去るのは尤も残念だ」 とある。同じ意味でも同じ単語を繰り返さず、「度」「返 <63> (遍)「たび」と換言している。なお、「打壊す」と「拭い去 る」「惜しい」と「残念だ」との間にも同語を回避する美意 識が感じられる。ひQ一回・一旦・一遍・ひとたび いちどう【一同】その場に居合わせたすべての人の意で、改 まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈御様〉〈社員 ー〉〈ー、起立〉〈ーを見回す〉②一つの枠におさまる人々 をまとめて「親戚」「卒業生」「有志」のように用い ることが多い。Q全員・皆・みんな いちどく【一読】一度読んでみる意で、会話にも文章にも使 われる、やや硬い感じの漢語。へーして損はない)へーを勧 める)へーの価値のある名作)の「通読」に比べ、ともかく 読んでみることを勧める感じが強い。通読 いちば【市場】①「市」の意で、会話にも文章にも使われる やや古風な和語。〈魚—〉〈青物—〉〈青空—〉〈市 ②「マーケット②」の意で、会話にも文章にも使われる古風 な和語。〈一の中の魚屋〉ひマーケット② いちばん【一番】「最も」の意で、会話や改まらない文章で使 われる日常漢語。〆そうなってくれればいいんだけど 〆なんてったって健康が大事だ〆今がー忙しい時期だよ 内田百閒の『特別阿房列車』に「いけないのは、必要な お金を借りようとする事である」とある。漢語でも和語の 「最も」より会話的。刂一等・Q最も いちぶ【一部】全体のうちのある部分の意で、会話にも文章 にも広く使われる日常の基本的な漢語。〈ほんの—〉へ—の 人が反対する〉へ—の例外を除き〉「全部」と対立。一般 的には半分に満たない小さな部分をさす。大部分の場合で いちゃもん もこの語を使うのは法律関係の専門的な用法。Q一部分・ 部分 いちぶぶん【一部分】全体の中の一つの部分をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈ーが欠けている〉〈ほんのーに 過ぎない〉の「部分」のうち、それほど大きくない範囲を連 想させる。「大部分」と対立。ひQ一部・部分 いちまつ【一抹】「わずか」の意で、改まった会話や文章に用 いられる古風な漢語。〈一の不安は隠せない〉(立ち去った 後にーの寂寥感が残る)恐れや悲しみや寂しさといっ たマイナス感情を表すことばに続く用例が多い。原義は筆 のひとはけの意。ひいささか いちみ【一味】悪事を働く仲間をさし、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ー徒党〉〈盗賊のー〉〈ーに加わる〉夏目漱 石の『坊っちゃん』に「即座にーに加盟した」とあるように、 古くは悪事に限らず「同志」という程度の意味で使ったが、 今はいい意味では使わない。単同志・同僚・友達・Q仲間 いちもつ【一物】間接的に「陰茎」をさすこともある俗語的 で古風な漢語表現。語義としては「一つのもの」という 漠然とした意味に過ぎず、はっきりと言いにくい内容だか らそういう抽象的な言い方をしたのだろうと相手がそれを 類推するように運ぶ思わせぶりな表現。「胸にーある」とい う慣用表現では「たくらみ」や「わだかまり」などの気持ち をさし、その他「金銭」を意味する用法もある。Q陰部・隠 し所・下半身②・下腹部・局所・局部・金玉・畳丸・性器・生殖器・恥部 いちやもん道理の通らないことを理由にして相手を非難す ることをさし、くだけた会話に使われる俗語。「をつけ <64> る 「いちゃいちゃする」「いちゃつく」の戯れの意の「い ちゃ」と「文句」の「モン」を結びつけた語形か。言い掛 かり・Q因縁②・難癖 いちり【一理】一つの理屈の意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈先方の言い分にもーある〉ぴー利 いちり【一利】一つの利益の意で主に文章に用いる漢語。〈百 害あってーなし〉巻一理 いちりつ【一律】同じ決まり・基準の意で、改まった会話や文 章に使われる漢語。〈千篇—〉〈すべて—に扱う〉の「二 万円のアップ」のように、同じ割合の意で用いる場合も、広 い意味でこの中に含まれる。単一率 いちりつ【一率】割合が同じである意で会話でも文章でも使 われる漢語。〈—減免〉〈—五パーセントの値引き〉「一 律」のうち、同じ割合の意に限定して明確にする場合に、特 にこう表記して区別する。単一律 いちりつ【市立】「市立」の特殊な読み。口頭語。〈私大では なく—大学を受ける〉の会話で「私立」と区別するための読 み。ふしりつ いちれい【一例】一つの例の意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈ーを挙げる〉〈ほんのーに過ぎない〉多くの例 の中から特に選ばないで一つの例を取り出した感じがある。 りケース②作例サンプル実例事例例え標本文例見本用例 類例Q例例文 いつ【何時】「どの時」の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈までも待つ〉〈ーご出発ですか〉〈ーにしようか〉〈なら都合がいい?〉 〈ーでもいいよ〉武者小路実篤の『お目出たき人』に「結 婚するのはーまで待ってもいいーとある。いいついつ いついつ【何時何時】「いつ」を狭く限定した言い方で、会話 や硬くない文章に使われる和語。へーまでとはっきり期限を 区切る〉「ーまでもお幸せに」のように「いつ」の強調と しても使う。いいつ いつか【何時か】過去や未来の不定な時をさし、会話でも文章でも広く用いる和語。〈ーきっと会える〉〈ー一度来たことがある〉〈ー雨はやんでいた〉夏目漱石の『草枕』に「桜はー見えなくなった」とある。「いつのまにか」に比べてやや詩的・抒情的。何時ぞや・何時の目か・Qいつの間にかいっかい【一回】「一度」の意で、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の漢語。〈前にー聞いた〉〈ーで済ませる〉〈ーにたくさん食べる〉〈ーやるとくせになる〉「一度」よりやわらかく「一遍」より硬い。Q一度・一旦・一遍・ひとたびいっかく【一角】一つの角または一部分の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈氷山のー〉〈町のー〉〈高級ブランドのーを占める〉〈有力候補のーを崩す〉ひ一隅・Q一画・一郭・片隅 いっかく【一画】漢字を構成する一筆で書く線、また、一つ の区画の意で、会話でも文章でも使われる漢語。〈一点ーを 丁寧に書く〉〈ーが三十坪単位の分譲地〉の「一角」があく まで全体の一部分であるのに対し、これはそこだけ独立し て考えることができる場合に用いる。Q一角一郭 いっかく【一郭/一廓】囲いの中、または、同じ性質のもの が集まっている区域の意で、会話でも文章でも使われる硬 <65> い感じの漢語。〈ーをなす〉〈古い民家が軒を連ねるー〉4 一角・Q一画 いっきに【一気に】途中休まずあという間にの意で、会話 にも文章にも使われる漢語的表現。ヘコップ酒を飲み干 すぐまくしたてるぐ書き上げるぐ追い抜くぐ 「一挙に」「一息に」よりもさまざまな場合に幅広く使う。 ヨQ一挙に・一息に いっきょに【一挙に】物事が一度に、または速やかに進行す る場合に、会話にも文章にも使われる漢語的表現。「片づ ける〉〈難問題がー解決する〉〈一部長に昇格する〉〈積も り積もった不満がー爆発する〉「一気に」「一息に」に比 べ、スピードだけでなくいくつもの段階を跳び越えたり数 多くのことがまとめて起こったりする感じが強い。ヲQ一気 に・一息に いっこうに【一向に】下に打消しの語を伴って、少しもの意 を表し、改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な 表現。〈ー覚えがない〉〈ー構わない〉〈ー埒が明かない〉 ②永井龍男の『道德教育』では、食用蛙に対して「彼らの反 省を求めていますが、—態度を改めません」と擬人化して ユーモラスに述べている。ひからきし・からっきし・さっぱり② 全然・Qちっとも・てんで・全く・まるっきり・まるで① いっこく【一刻】わずかな時間をさし、改まった会話や文章 に用いられる硬い漢語。〈ーを争う〉〈ーも早く〉〈ーの猶 予もならない〉〈刻ーと近づく〉の「一時」「ひととき」より 短く切羽詰った感じがあるが、「千金」「春宵」直千 金」のような慣用的な句では追い詰められた雰囲気はない。 いっしょ ふいちじ・Qいっとき・ひととき いっさくじつ【昨日】「おととい」の意で、改まった会話や 文章で用いられる漢語。〈一の早朝のことである〉〈期間は ーより明後日まで〉ひおとつい・Qおととい いつしか【何時しか】「いつの間にか」の意で、主に文章中に 用いられる古風で思い入れたっぷりな表現。〈日は—西に傾 いていた〉〈一年も暮れかかっていた〉きいつか・Qいつの間に か いっしゅう【一蹴】上位者が相手からの要求などを一切問題 にせず即座に撥ね付ける意で、会話にも文章にも使われる 漢語。〈抗議をーする〉〈申し出をーする〉「挑戦者をー」 のように、向かってくる相手を簡単に打ち負かす意にも使 う。ひ拒絶・拒否・断る・拒む・Qはねつける いっしゅん【一瞬】一回瞬きをするぐらいのほんの僅かな時 間の意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈緊張のー〉 へーの出来事〉へー気を抜く〉へーにして財を失う〉回永井龍 男の『風ふたたび』に「人の一生の中にも、あの花火のよう に、張りつめたーがあり得るのだろうか?」とある。語義 としては「瞬間」と差がないが、実際の使い方としては、 「ー見失う」「ー立ち止まる」のような副詞的な用例が多く、 短いながらある時間の幅を意識させることも少なくない。 ただし、「そのー」のような用法では「瞬間」と同様。 っという間・Q瞬間・瞬時・瞬く間 いっしょ【一緒】「ともに」といった意味合いで、会話でも文 章でも広く使われる生活的な日常語。〈ーに遊ぶ〉〈ーに暮 らす〉〈両方ーにまとめて扱う〉〈その辺までごーしましょ <66> いっしょう う〈何をするのもいつもだ〉二人は近く晴れてにな るらしい」②上方方言の影響か、近年しばしば「時間はーで も距離が違う」「あれもこれも値段はーだ」のように「等し い」「同じである」という意味合いで使われるが、その用法 はまだ俗語的。 いっしょう【一生】生まれてから死ぬまでの間の意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 漢語。〈幸せなーを送る〉〈ー遊んで暮せる〉〈ーの思い出〉 〈ーのお願い〉の「君のことはー忘れない」のように、今か ら死ぬまでの間をさすこともある。室生犀星は萩原朔太郎 にあてた手紙を「僕は酒にーを托する気にはならないが、 一晩や二晩は托する気持になる」と結んでいる。马Q生涯 人生・生 いっしうけんめい【一生懸命】「一所懸命」の意で、会話か ら文章まで幅広く使われている日常語。〈—勉強する〉〈— に努力した賜物は〉の芥川龍之介の『杜子春』に「このけし きを見た杜子春は、思わずあっと叫びそうにしましたが、 (略)ーにだまっていました」とある。「一所懸命」の転。「一 所」の意味が次第に忘れられ、多用される類音の「一生」と 混同されるに至った。本来の語形でないという知識のある 人には若干違和感がある。教養がないという印象を与える 場合だけでなく、語源にこだわらず世間の通用語を使用す る穏やかな性格をうかがわせる場合もあるかもしれない。 ひ一所懸命 いっしょけんめい【一所懸命】命がけで打ち込むさまをさす 漢語。「一生懸命」の本来の語形で、ふつう学術的な硬い文 章などで用いる。「勤め上げる」梶井基次郎の『路上』に「高みの舞台で一人滑稽な芸当をーやっているように見える」とある。語源的には、武士が賜った一箇所の領地を命にかけて守り、生活の頼りとしたことをさす。現在、日常会話で使うと衒学づば的に響く場合もあり、類音のため「一生懸命」と区別されないことも多い。あえて用いると、知識をひけらかしている印象を与える恐れがあり、慣用的な「一生懸命」で済ませると無知と思われる危険があって、なまじ知ってしまうと現実の使用によけいな神経を遣うこともある。ひ一生懸命・熱心 いっそう【一掃】すっかり除き去る意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈走者ーの二星打〉〈悪をーする〉〈不安を ーする〉ひ払拭 いっそう【一層】さらに一段との意で、会話にも文章にも使 われる、いくぶん古風な感じの漢語。〈なおー努力する〉 へーの御発展を〉〈普段よりー美しく見える〉いよいよ①・ひ ときわ・ひとしお・Qますます いつぞや【何時ぞや】不定の過去をさす「いつか」の丁重な 表現。〈ーは失礼しました〉〈ーお目にかかった方〉Q何時 か・何時の日か・いつの間にか いつだつ【逸脱】本筋や標準、あるいは、あるべき範囲から 外れる意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。 〈本分を—する〉〈職権を—する〉〈常軌を—した行動〉②そ のことを好ましくないとする評価が含まれている。脫線 いったん【一旦】「一度」の意で、会話にも文章にも使われる、 やや改まった感じの漢語。〈ー停止する〉〈このへんでー休 <67> 憩する 〈一こうと決めたら絶対やりぬく〉単なる回数で はなく、一時的に、始めたからには、といった気持ちが背景 となっている。「ー緩急あれば」の形で使えば古めかしい感 じに響く。ひQ一度・一回・一遍ひとたび いっち【一致】複数の物事の形・量・内容などに違いがなくき ちんと合う意で、会話にも文章にも使われる漢語。へー団 結〉〈言文ー〉〈満場ー〉〈長さがーする〉〈びたりとーす る〉〈意見のーを見る〉〈両者の利害がーする〉の「合致」と 違い、「靴のサイズがーする」「指紋がーする」のように具 体的な物にも用いる。合う・Q合致・整合・符合 いっちょくせん【一直線】「まっすぐ」の意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈に突き進む〉(ここからはだ) 「まっすぐ」以上に曲がらず休まずスピードを感じさせる。 弔真直ぐ いってん【一転】急にがらりと変わる意で、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈形勢がーする〉〈事情がーす る〉ヘーして親しげな態度をとる〉変化の急激さに重点が ある。ひ一変 いっとう【一等】「一番」の意で、主として会話で使う古めか しい漢語。〈家じゅうでー涼しい部屋〉〈これがー似合う〉 ひQ一番・最も いっとき【一時】短い時間やしばらくの間をさし、会話にも 文章にも使われる古風な表現。〈ほんのー〉へーの辛抱だ 〈ーの猶予もならぬ〉数分の場合も数ヶ月の場合もあり、 「ー流行した歌」「ーの勢いはもうない」のように、過去の 一時期をさす場合は年単位の長さにもなりうるが、短かっ いっべん たという気持ちは共通して感じられる。漢字表記は「いち じーと読まれやすい。Qいちじ・一刻・ひところ・ひととき いつのひか【何時の日か】未来の不定の時をさす「いつか」 の意の文語的な表現。〈再会の折もあろう〉「いつか」 より詩的で、やや感傷的な雰囲気を漂わせる。马Q何時か 何時ぞや・いつの間にか いつのまにか【何時の間にか】気がつかないうちにという意 味での「いつか」とほぼ同義だが、「いつか」ほどの情緒を 伴わない客観的な日常の和語表現。〈眠ってしまう〉《あ たりは薄暗くなっていた》小沼丹の『揺り椅子』に「そ の線路が次第に高くなる。ー、窓外に見えるのは屋根ばか りになった」とある。Q何時か・何時ぞや・何時の日か いっぱい【一杯】きわめて沢山の意で、主に会話に使われる 漢語。〈会場は観客でだ〉〈仕事が一残っている〉〈この リュックは物が一入る〉〈元気一〉〈腹一食べる〉の語 には、容量ぎりぎりまで満ちていてこれ以上になると溢れ 出しそうな感じがあるため、「友達が一いる」は自然だが、 「きょうだいが一いる」という言い方は、多くてもせいぜい 十人程度なので少し抵抗がある。りうんと多い・しこたま・Q 沢山・たっぷり・たんと・たんまり・どっさり いっぱんに【一般に】細かい点や例外は別として、といった 意味合いで、会話にも文章にも使われる表現。〈野菜はーピ タミンが豊富だ〉〈大通りはー車の通行量が多い〉Q概し て総じて いつべん【一変】すっかり変わってしまう意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈状況がーする〉〈態度がーする〉 <68> いっべん 変化の大きさに重点がある。一転 いっぺん【一遍】「一度」の意で、会話や軽い文章に使われる、 いくぶん古風な漢語。〈ー食ってみたい〉〈ー読んだだけじ ゃ頭に入らない〉〈ーに形勢が悪くなる〉回「一度」よりは もちろん「一回」よりもくだけた感じ。ひ一度・Q一回・一旦・ ひとたび いっぽう【一方】一つの方向、または、対をなすもののどちらか一つをさし、会話にも文章にも使われる、やや改まった漢語。へーの意見〉へーが欠ける〉へどちらかーでいい〉へーは山、もうーは海に囲まれた町〉〈非難するー、賞讃することもある〉へー、そうすることのデメリットもある〉②「増加するー」「経営は苦しくなるーだ」のように、一つの側に傾く意にも用いる。「両方」と対立。「他方」と対になる。 及片一方・Q片方・他方 いっぽんちょうし【一本調子】初めから終わりまで同じ調子 で通す意で、会話やさほど改まらない文章に使われる日常 の漢語。〈一の歌い方〉〈話の進め方がーで聞くほうが退屈 する〉の「単調」が一つの物事を対象としてそう感じること を話題にしているのに対し、この語は「いつでもこの調子 だ」という潜在的なニュアンスがある。単調 いつまでも【何時までも】「永久」や「恒久」より短い非限定 の時間をさす日常の和語。〈ーお元気で〉〈そうー甘えてい られない〉田宮虎彦の『千恵子の生き方』に「、おばさ まのお世話になっているわけにも行きません」とある。 り永 遠・Q永久・永劫・恒久・とこしえ・とこしなえ・とわ・悠遠・悠久 いつも【何時も】どのような時でもの意で、くだけた会話か ら文章まで幅広く使われる日常の和語。「帰りが遅い 〈日曜は一家にいる〉語義としては「いかなる時も必ず」 の意だが、実際の表現としては、「あの二人は一緒に歩い ている」のように、「原則として」「よく」という程度の緩 さで用いる例が多い。「果物はーこの店で買う」「この道 を通る」のように、あることをする場合には常に、という限 定付きで使うこともある。また、「のように」「と違 う」「の道」のように、「普段」の意にも用いる。ひ始終・ 終始・Q常時・しょっちゅう・絶えず・常に・日常茶飯事・のべつ・普段 いつわ【逸話】人や事柄に関する主要な情報ではなく、それ に付随する話をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈昔 の大臣にこんなーが残っている〉への多い人物〉表に出 ないため世間であまり知られていない話であることが多 い。ひ裏話・Qエピソード・こぼれ話・挿話・余話 いつわり【偽(詐・佯)り】自分に都合のよいように事実を改变 して伝える意で、改まった会話や文章に用いられる、やや古 風で硬い感じの和語。「の証言」〈嘘ーは申しません〉② 横光利一の『紋章』に「説明したところは正しく、一点の はなかった」とある。無邪気な場合を含み時に陽気な「ほ ら」と違い、自己弁護や中傷など悪意や陰険な感じを伴う傾 向がある。噛・嘘っぱち・Q虚偽・ほら いつわる【偽(詐・佯)る】事実でないことを言って人をだます 意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの和語。 〈成人とー〉《夫婦とー〉《年齢をー〉《本心をー〉《ー・らざ る事実》Q欺く・かたる・担ぐ・まかす・たぶらかす・だまくらか す・だます・ちょるまかす <69> イディオム熟語や慣用句をさして、会話にも文章にも使わ れる専門的な外来語。〈英語のーを暗記する〉乃格言・Q慣用 句・諺・成句 いてつく【凍て付く】「凍りつく」意で、会話にも文章にも使 われる古風な和語。〈一夜〉〈あまりの寒さに手足が」② 梶井基次郎の『冬の蠅』に「山のー・いた空気のなかを暗を わけて歩き出した」とある。凍り付く 「出で湯」主として文章中で「温泉」をさして用いる 古風で美的な和語表現。「が湧く」「めぐり」夏目漱 石の「草枕」に「啼くは鳥、落つるは花、湧くは」とある。 古めかしく雅語に近い雰囲気があるため、「温泉の成分」 「温泉使用料」「温泉が噴き出る」「温泉を引く」というよう に温泉を物質的にとらえる生活語彙として事務的に使う場 合に「いでゆ」を用いると、誤用とまではいえないにして も、ちぐはぐな感じがあってしっくりしない。この語は「 の旅」「のけむり」というふうに温泉のもっぱら美的での んびりした側面をとらえて用いてきたからである。そのた め、「温泉につかる」より「につかる」ほうがくつろげそ うな感じがある。「温泉饅頭」が庶民的で「蒸し羊羹」 「のほうが上品に響くのも、そういう用例の偏向から来る 語感の違いによる。乃温泉 いてる【凍てる】凍るように冷たく感じられる意で、会話に も文章にも使われる古めかしい和語。〈月の光〉小川国 夫の『ゲラサ人の岸』に「二月初旬の風のないー夜」とあ る。凍る いてん【移転】住居・事務所・店舗などを他の場所に移すこと いとう をさし、やや改まった会話から文章まで広く使われる漢語。 〈ー通知〉〈事務局ーのお知らせ〉〈支店のー先を問い合わ せる〉個人の住宅より役場や会社や事務所などの場合に よく使う。Q転居・転宅・引っ越し いと「非常に」という意味でふざけて使うことのある古語的 表現。〈そんなことをされては、ー困る〉〈君にそう言われ ると、ー悲しい〉②前後の表現との違和感が目立つと滑稽 な響きを感じさせ、目立たない場合は筆者がいい気分にひ たりながら表現を楽しんでいるように受けとられやすい。 ふたいへん・甚だ・非常に と【意図】行動を通じて実現すべく心の中で狙っている内 容の意で、会話にも文章にも使われる漢語。「制作」へ表 現ー〉へ「不明〉へ「を明確にする〉へ「的に省く」②漠然と 考えているのではなく意識的な狙いというところに重点が ある。意向・ターゲット・積もり・Q狙い・目当て・目的・目標 いど【異土】なじみのない土地、特に異国の土地をさし、硬 い文章に用いられる古めかしい漢語。くひっそりとに生き るくに果てるく外国をさすことが多い。室生犀星の 『小景異情』中「ふるさとは遠きにありて思ふもの」で始ま る有名な詩の中に「よしや/うらぶれてーの乞食がとなる とても」という一節が出てくる。「よしや」とあるからここ も外国の意にとれないこともないが、「ひとり都のゆふぐ れに/ふるさと思ひ涙ぐむ」心境だから、ここは国内の土 地と解するのが自然。ひQ異郷・異境・異国 いとう【厭う】煩わしく思って避ける意で、主として文章中 に用いられる古風な和語。〈世間を—〉〈雨を—〉〈苦労を <70> いどう ・わず谷崎潤一郎の『春琴抄』に「夫婦らしく見られ るのをーこと甚しく」とある。「お体をおー・い下さい」の ように健康に気をつける、大事にするの意を表す用法も ある。夢嫌がる・嫌う いどう【移動】位置が変わる意で、会話でも文章でも広く使 われる漢語。〈平行—〉〈—性高気圧〉〈車で—する〉〈部隊 が—する〉梅崎春生の『桜島』に「ゆるやかに—して行く 紫色の微光」とある。刂異動・移す・移る・移ろう いどう【異動】職場内での所属変更の意で、改まった会話や 文章で使われる正式な感じの漢語。〈人事—〉〈総務から経 理にーになる〉移動 いとおしい【愛おしい】弱く脆い存在に対して愛情を注ぎた くなる気持ちをさして、主に文章に用いられる古風でいく ぶん詩的な感じの和語。「一人っ子だけによけいに」谷 崎潤一郎の『細雪』に「郷土を追われて行くように感じてい る姉の胸のうちもー・く」とある。「親を亡くした子をー・く 思う」のように、不憫ふなの意を表す用法もある。「いとし い」と違って、「幼時を過ごした街がー」「過ぎ去った日々が ー」のように人間以外に対して用いる文学的な例もある。 ひいとしい いとけない【幼い/稚い】「あどけない」に近い意で、雅語に 近い古風な和語。〈まだー子〉、もあどけない・いじらしい・いた いけ いどころ【居所】住んでいる場所の意で、会話や軽い文章に 使われる和語。〈親にすぐーを知らせる〉へやっとーを突き 止める〉詳しい住居表示をさすとは限らない。Q居場 所·居住地·住所·所番地 いとい【愛しい】愛情を持って抱き締めたい気持ちをさし て、改まった会話や文章に用いられる、やや古風な和語。 〈ーわが子へ〉〈別れた恋人が今となってー・く思われる〉 島尾敏雄の『島の果て』に「つと胸がつきあげられ、トエが ー・くてたまらなくなりました」とある。ひいとおしい いとなみ【営み】物事をすることを漠然とさす中で特に「性 交」をほのめかすことのある、やや古風で上品な和風の表 現。〈愛の—〉〈男女の—〉〈夫婦の—〉生活上の行為全般 をさし示す漠然としたことばに広げて提示し、具体的な行 為をその中から選んで相手に想像してもらう婉曲表現。 「やる」が俗語的なのと対照的に、この語はむしろ雅語的な 雰囲気を感じさせる。刂エッチ・関係②・合歓・交合・交接・情交・ 情を通じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・契 る・同衾・共寝・寝る②・懇ろになる・ファック・深い仲になる・房事・ 枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 いどむ【挑む】相手に争いを仕掛ける意で、会話にも文章に も使われる和語。〈戦いを—〉②小林多喜二の『蟹工船』に 「海は(略)ガツ、ガツに飢えている獅子のように、!みかか ってきた」とある。「難問に—」のように、困難なことに立 ち向かう意に使う用法もある。ヨQ挑戦・チャレンジ いなか【田舎】都会から離れていてあまり発展していない土 地をさし、会話やさほど改まらない文章でよく使う日常の 和語。へ暮らしへから出て来るへお盆にへ帰るへ 谷崎潤一郎の細雪に「の割烹店で作るお定まりの会席 料理」とある。「野暮ったくーくさい服装」「者で礼儀を <71> 知らない」といった田舎を小ばかにする表現からこの語自 体に地方蔑視の差別意識がしみついているとされる。軽井 沢から山を下って東京方面に向かう列車を「上り」と呼ぶの も、東京都の地図が五十音順でも歴史の古い順でもなくて 必ず二十三区それも千代田区から始まるのも、ある意味で は格差の意識から出ている。郵便番号も同様だ。中央と地 方という考え方にもたしかに差別意識が感じられ、それが 「田舎」ということばの一つの語感をつくりだしているのは 事実である。そのようなマイナスイメージを消すために 「田園」と言い換えたり、「アーバン」(都市の)などという 外国語を借りて付加価値をつけようとする試みも見られる。 しかし一方、地方出身者には懐かしい感じも強い。そのた め、「料理」を「地方料理」と言い換えると家庭的な素朴 な感じが薄れ、味も落ちるような気がする。この語には、 ふるさとのぬくもりを感じさせ、人の心をなごませるプラ スの語感もあるため、「信州のに帰る」と言う場合に「地 方」や「地域」に換言したのでは、帰りたい気持ちが萎えて しまうのも事実である。ひ田舎じみる・Q片田舎・田園 いなかじみる【田舎じみる】田舎っぽく垢抜けしない意で、 会話でも文章でも使われる表現。立ち居振る舞いがどこ かー・みている〉(ー・みた暮らし)田舎そのものについて 言う場合もある。塩抜けない・田舎ださい・Q泥臭い・野暮・野 暮ったい いなずま【稲妻/電】空中放電で雷の鳴る前に出る光の筋を さし、会話にも文章にも使われる和語。〈ーが光る〉(ーが 走る)の川端康成の『古都』に「杉山の木末が、雨にざわめ いねむりする き、ーのたびに、そのほのおは、地上までひらめき、二人の 娘のまわりの杉の幹まで照らした」とある。古く、稲は雷 と結ばれて実ると考えたことからという。ふいかずち・Q稲 光・かみなり いななく【嘶く】馬が声高く鳴く意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈馬が—〉の一説に、「い」はヒヒーンという 鳴き声とも。ひさえずる・Q鳴く・吠える いなびかり【稲光】「稲妻」の意で、会話にも文章にも使われ る日常の和語。〈遠くでーがする〉へーに照らされる〉の芝 木好子の『禁断の人』に「雨は沛然ぶと降りつづいて、暗黒 の空にーがびりびり裂け、雷鳴が耳を聾した」とある。「稲 妻」と違い、「光る」「走る」という動詞と結びつきにくい。 りいかずち・Q稲妻・雷 いにしえ【古】「昔」「往時」の意の詩的な雰囲気をもつ古語 的表現。〈一の都〉〈はるかーより〉〈一を偲ふ〉の「往いに し方」の意で、遠く過ぎ去った昔をさした。ひ往時・Q昔 いによう【遺尿】寝小便の意で、学術的な会話や文章に用い られる硬い専門漢語。〈一症〉ひおねしょ・Q寝小便 いぬ【犬】刑事やスパイをさす隠語。〈サツのー〉他人の隠 し事を嗅ぎまわる職業なので、習性としてよく嗅ぎまわる 嗅覚の発達した犬にたとえたものと思われる。漢字で 書くことはめったになく、通常は片仮名表記をとる。Q刑 事・スパイ いねむりする【居眠りする】座ったまま浅く眠る意で、会話 でも文章でも使う生活上の日常表現。〈炬燵」でー〉〈教室 でー〉りうたた寝・Qうとうとする・仮睡・仮眠・仮寝・まどろむ <72> いのち いのち【命】生物が生きている源となる力をさし、くだけた 会話から文章まで幅広く使われる基本的な日常の和語。〈 にかかわる〉へ取りになりかねない〉へが危ない〉へ を粗末にするな〉〈尊いーを落とす〉への恩人〉へから がら逃げる〉へーを助ける〉へーあってのものだね〉へーを かけてやりぬく〉四川端康成の『雪国』に「駒子の生きよう としているーが裸の肌のように触れて来もする」とある。 「生命」よりやわらかい感じを与えるため、「生命保険」の ような正式名称には不適で、「ーの保険」という言い方は商 品名を連想させる。生命 いのちがけ【命懸け】生命の危険を賭して事に当たる意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈文字通りー の危険な作業〉へーで家族を守る〉へーで救助に当たる〉回 そのぐらいの覚悟をもってといった主観的な評価でもしば しば使われるが、「死に物狂い」や「必死」と違って、実際 に生命の危険が及ぶ用例もある。Q死に物狂い・必死 いのる【祈る】神仏などに向って心から切に願う意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる和語。〈成功を ー〉〈平和をー〉〈神にー〉〈ーような気持ち〉「願う」や 「念ずる」と比べ、実現の難しい事柄について使う傾向が強 い。川端康成は盟友横光利一の死に際し、「知友の愛の集ま りを柩とした君の霊に、雨過ぎて洗える如き山の姿をー・っ て、僕の弔辞とするほかはないであろうか」と述べた。広頼 む・Q願う・念じる・念ずる いばしょ【居場所】居る場所の意で、通常は居住地をさし、 会話や軽い文章に使われる日常表現。なかなかーを教え ない)「がわからず連絡ができない)居住地をさすほ か、「自分のーがない」のように、落ち着いていられる環境 をさすこともある。Q居所・居住地・住所・所番地 いばる【威張る】他人の前で偉そうにふるまう意で、会話や 硬くない文章に使われる和語。〈権力をかさにきてー〉〈成 績がいいのをー〉回野間宏の『真空地帯』に「顎を上へあげ て、子供のようにーりちらしそうにみえた」とある。「誇 る」と違って、自分に誇るべき点がなくても相手を見下げる 態度をとればこの語が使える。専思い上がる・自慢・見下す はん【違反】決まりや約束を破る意で、会話でも文章でも 使われる漢語。〈交通—〉〈契約—〉〈条約に—する〉〈ーを 取り締まる〉専違犯 はん【違犯】法に背き罪を犯す意で、主に法律関係の改ま った文章で用いられる硬い感じの漢語。〈ー者〉〈ー行為に 当たる〉違反 いびつ【歪】形がゆがんでいる意で、会話や硬くない文章に 使われる和語。へな形にできあがるへこんでーにな る)上林暁の月魄とに「満月にはまだ二三夜あるかと 思われるな月だった」とある。「飯櫃が」が楕円形であっ たところからという。ひずむ・ゆがむ いびる立場の弱い人間を陰険なやり方でいじめる意で、会 話や軽い文章に使われる和語。〈嫁を—〉〈転校生を—〉 〈先輩社員に—られる〉「いじめる」にはさほど悪意のな い軽い気持ちの場合も含まれるが、この語は陰湿な雰囲気 が強い。ひいじめる いぶかる【訝る】疑わしく思う意で、主に文章に用いられる <73> 古風で硬い和語。へーような目つき〉〈真意をー〉小林秀 雄の『ゴッホの手紙』に「僕等はー、ああ、これは長い事な のか、永遠にそうなのか、と。」とある。専怪しむ・Q疑う・疑 る ふく【衣服】身にまとうものをさし、改まった会話や文章 に幅広く使われる漢語。〈ーを改める〉〈ーを着用する〉 〈ーを収納する〉②永井荷風の『あめりか物語』に「薄い霞 のようなー」とある。Q衣装・衣料・衣類・着物・服装・身なり・ 装い ぶくろ【胃袋】「胃」をさし、会話や軽い文章に使われるい くぶん俗っぽい表現。へいくらかーの足しになるへーのあ たりが重い⑦男性のほうが多く使う傾向が感じられる。 井上光晴の『地の群れ』に「急にーのまうしろの神経痛が弓 でもひっぽるようにびーんびーんと痛くてたまらん」とあ る。専胃 いぶる【燻る】よく燃えずに煙ばかりたくさん出る意で、会 話でも文章でも幅広く使われる日常生活の和語。落ち葉が ー〉〈生木がー〉〈木が湿っているらしく、焚き火をしたら 盛んにー〉の火の状態に注目する「くすぶる」に対し、この 語は多量に出る煙に注目した表現。Qくすぶる・けぶる・け むる いほう【違法】法律にそむく意で、会話にも文章にも使われ る、やや専門的な漢語。〈行為〉〈建築〉〈駐車〉 「不法」に比べ、どの法律に違反しているかという具体性が 強い感じがある。また、「非合法」と違い、社会秩序に反す る場合まで含むような雰囲気がある。ひ非合法Q不法 いまいち いほうじん【異邦人】外国人の意でまれに文章に用いられる 漢語。「一の眼に映ったかつての日本昨今、実際の外国 人をさして使う例はあまり見かけないが、比喻的な用法や、 見知らぬ国の人といった漠然とした意味合いで用い、詩的 な雰囲気をかもしだすこともある。アルベール・カミこの小 説が『異邦人』と邦訳されて広く読まれた。異人・Q外自 人・外人 いま【今】「現在」の意で、くだけた会話から文章まで幅広く 使われる日常の基本的な和語。「まで見たことがない 〈ーでも間に合う〉〈ーはまだ早い〉〈ーにして思えば〉夏 目漱石の『坊っちゃん』に「校長にはたったー逢った」とあ る。「昔とー」「ーの学生」のように「現代」に近い広い幅を 意味したり、「一帰ったところだ」のように直近の過去を意 味したり、「一行く」のように直近の未来を意味したり、 「一に見ておれ」のようにある程度時間を隔てた未来を意味 したり、さまざまなニュアンスで用いられる。少Q現在・今 日だった。只今・目下 ま【居間】家族がふだん使う部屋をさし、会話でも文章で も広く使われる、現代では最も普通の日常の和語。へーでく つろぐ本来、和室でも洋室でも「居間」でよいが、洋間 の場合は近年「リビング」と呼ぶ例が増加中。居室・茶の 間・Qリビング いまいち近年、若年層から始まって広がった、「不十分」の 意の新しい俗語。〈ー感心しない〉〈成績はーだ〉の「今ひ とつ」から出た造語で、湯桶ゆゆ読みで落ち着かないが、勢い はいまだ衰えず、高年齢層にまで広がっている。漢字では <74> いまいましい 「今一」となるが、漢字表記の例はほとんど見ないし、しば しば「イマイチ」と片仮名書きすることからもわかるよう に依然として俗語意識が消えないので、改まった会話や文 章には用いないほうが無難。 いまいましい【忌忌しい】むかつくほど癩くにさわる意で、 会話や硬くない文章に使われる日常の和語。〈ー仕打ち〉 〈ちょっ、ー。うまく騙された〉新美南吉の『張紅倫』に 「こんな古井戸の中でのたれ死にをするのは、いかにもー」 とある。弜業腹 いまごろ【今頃】だいたい今ぐらいの時刻・時期をさし、会話 にも文章にも使われる和語。〈去年の—〉〈新婚の二人は— どうしているだろう〉の「言われても困る」「詫びて も仕方がない」のように、遅過ぎるというニュアンスで使う こともある。今時分 いまじぶん【今時分】今ぐらいの時刻・時期・季節をさし、会 話にも文章にも使われる古風な表現。「パリに着いた頃 かな〉(来年のーはもう社会人になっているはずだ)「 までどこをうろついていたんだ」のように、遅いことを非 難するニュアンスで使う例もあるが、かなり古い響きにな る。今頃 まだ【未だ】今に至るも依然として実現していないさま さし、改まった会話や硬い感じの文章に用いられる、文語的 な語感を保つ古めかしい和語表現。「ーかつてない斬新な 企画〉へー解決を見ない〉へーに連絡がない)②もともと打 消しと呼応する表現だから「ーにパソコンを使用しない」 という表現はすんなりと通るが、「ーにワープロを使用して いる」という表現には今なお違和感を覚える人が少なくな い。このように文脈によっては「今でも依然として」といっ た意味合いで受けとられ、「今できえも」という解釈から、 「今」にダニが寄生したかのように「今だに」と表記する例 も見られるが、「いまだに」は「未だ」に「に」が付いた語 形であると考えられている。国木田独歩の『武蔵野』に「日 は富士の背に落ちんとして全く落ちず」とあり、きちん と打消しと呼応して用いられている。まだ いみ【意味】広義には、記号・言語・表情・身振り・動作あるい は作品など、人間が感覚でとらえることのできる何らかの 形で表現されたものに含まれる内容や意図、狭義には、こ とばが指し示す概念をさして、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の最も基本的な漢語。〈ことばの ー〉へーがわからない〉〈深いーをこめる〉〈悪いーにとる〉 〈重大なーを持つ〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「おれは 野だの云うーは分らないけれども、何だか非常に腹が立っ たから」とある。「語感」と対立させるのが通例だが、通常 の「意味」を中心的・指示的・対象的・事柄的意味などと呼 び、何を指し示すかとは別に、そのことばとともに伝わる 情緒的な情報をも文体的意味・感情的意味などと呼んで周辺 的意味として一括する立場もある。また、「ーのある仕事」 「そんなことをしても何のーもない」のように、ある行為や その結果が持つ価値といった意味合いでも使い、その場合 は専門語という感じを伴わない。Q意義 いみあい【意味合い】語感や文脈を考慮に入れた意味内容を さし、会話にも文章にも使われる表現。〈微妙なーの差〉 <75> 「ふれる」と「さわる」とでは少しくーが異なる〉Q意味 意義・語感・ニュアンス いみじくも「巧みに」「まさしく」といった意味の古語的な 表現。〈風花かぎとはー言ったものだ〉〈ーその状況をぴたり と言い当てている〉ひQまさしく・まさに イミテーション模造または模造品の意で、会話やさほど改 まらない文章に使われる外来語。へーのダイヤ〉くよく見る とーとわかる)②ちょっと見には本物に見える宝石といった 印象が強く、名画の模写や贋札などの連想は働きにくい。 弔贋造・Q模造 イメージ 頭に思い描く具体的な像の意で、会話にも文章に も広く使われる日常の外来語。〈ーキャラクター〉へがわ く〉へが鮮明になる〉へーしにくい〉「ダウン」「プラ スー」「ーが悪い」「ーをがらりと変える」のように、人や 物の与える全体的な印象をさして使う拡大用法の例も多い。 受ける一方である「印象」と違って、この語は「ーを作り上 げる」ともいう。具印象・Q映像・感じ・心象・心像・表象 いもん【慰問】苦労をしている人などを見舞って慰めること をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈田〉〈施設に に行く〉福永武彦の『草の花』に「サナトリウムの患者 達をーするために、映画会が開かれた」とある。見舞い いや【嫌(厭)】気に入らない意で、会話やさほど硬くない文 章に広く使われる日常の和語。〈一な性格〉〈面倒な仕事は ーだ〉〈一な顔をする〉〈つくづくーになる〉団徳田秋声の 『あらくれ』に「下駄に手をふれられても身ぶるいがするほ どーであった」とある。厭悪・Q嫌い・嫌悪 いやしい いやあ感じ入ったり打ち消したりする時に発する、主とし て男性が会話で使う、やや古風な強調語。「、何でもない よ」へ、今日はくたびれた〉へ、まいったな、こりゃ へー、こいつは驚いた》小津安二郎監督の映画では、中年 後期から初老にかけての主役に近い男性たちが、「、いい さ」「、どんなもんですか」「、忘れてくれてええんじ ゃよ」「、ありがとう」「、全くだよ」「、今日はよか ったよ」「、どうも」「、ちょいとあわてたよ」などと、 いろいろな場面で頻発する。軽く打ち消したり、謙遜した り、控えめに感動を表現したり、何かにつけて小津好みの 恥じらいを知る平凡な人物たちの口をついて出てくること ばとして性格づくりの一端をなしている。 いやがる【嫌(厭)がる】嫌う気持ちを表情・態度・行動に表す 意で、会話や硬くない文章に使われる日常の和語。人前で のスピーチをー〉へーのを無理に連れ出す〉人のーことを 率先してやる〉の庄野潤三の『引潮』に「奥さん、ーでしょ う。そんな水臭い」とある。気持ちの問題である「嫌う」に 比べ、外面的にとらえやすく、「さっきからいろいろ説得し ても、ー・ってどうしても承諾しない」というふうに、継続 的な態度や繰り返しの行為として実現することもある。 いとう・Q嫌う いやくきん【違約金】契約に違反した者が相手の損害を償う ために支払うように予かじめ取り決めてある金銭をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。へーを払わされる)貫金・Q 反則金 いやしい【卑しい】下品の意で、会話でも文章でも使われる <76> いやしい 和語。〈目つきがー〉〈態度がー〉〈品性がー〉〈口がー〉 永井荷風の『あめりか物語』に「独りー空想に耽る」とあ る。賤しい いやしい【賤しい】身分が低く貧しい意で、主として文章に 用いられる古風な和語。〈—身なり〉〈人品骨柄—・からず〉 ②永井荷風の『瀅東綺譚』に「その身を—ものとなして」と ある。専しい いやらしい【厭(嫌)らしい】淫らで相手に不快感を与える意 で、主として会話に使われる和語表現。人前で言えない 言葉〉へ目つきで女をじろじろ見る》夏目漱石の『吾輩 は猫である』に「そんな御話しは廃しになさいよ、」と ある。上司に取り入るとか、怠けているふりをしてこっそ り勉強するとか、人が見ているとやけに親切になるとか、 性的な方面と無関係な場合にも使われるだけに、「淫猥だ などに比べて婉曲な表現となり、あたりはやわらかい。 児猥・卑猥・Q淫ら・猥褻 いよいよ【愈(愈々)】①前よりもなおの意で、会話にも文章 にも使われる、いくぶん古風な和語。〈危険が迫る〉へ 変だ〉へ間違いない)Qいっそう・ひときわ・ひとしお・ます ます②「とうとう」の意で、会話にも文章にも使われる和 語。〈明日出発だ〉へ始まる)「の時」「の場合」 として最悪の事態をさす用法もある。ついに・Qとうとう いよう【威容】威厳のある厳かな姿の意で、主として文章 に用いられる硬い感じの漢語。〈を保つ〉偉容 いよう【偉容】立派な姿の意で、主として文章に用いられる 硬い感じの漢語。〈を誇る〉威容 いよく【意欲】積極的にやろうとする気持ちの意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈労働—〉〈—を燃やす〉〈働く ーがわいてこない〉〈—が感じられない〉〈—を失う〉 意気込み・意力・気概・気骨・気迫・気力・根性・精神力・ど根性・やる気 いらい【以来】過去のある時点より現在までの連続した期間 をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈あの失敗—元気 がない〉〈卒業—まだ一度も会っていない〉「開校—初め ての」「開設—最大の」「開店—最悪の」というふうに、極 端な事例を強調する場合にしばしばこの語が使われる。 以後・Q以降 いらい【依頼】用件などを頼み込む意で、改まった会話や文 章に用いられる硬い感じの漢語。〈執筆—が届く〉〈仕事を ーする〉〈調査をーする〉日常のちょっとした用事を頼む ような場合に使うと大仰過ぎて違和感が出る。紹介や伝言 などの場合、相手や状況に応じて、この語と「頼む」とを使 い分ける。また、「心が強い」のように、他に頼る意でも 使う。刂頼む いらいら【苛苛】思いとおりに進まず落ち着きをなくする意 で、会話や硬くない文章に使われる擬態語。〈時間がなくな ってーする〉(ーが募る)の椎名麟三の『深夜の酒宴』に 「ーしながら邪険に云い出した」とある。ひやきもき イラスト本や雑誌や広告などで説明文を理解する補助とし て添える挿絵さや説明図などをさし、会話にも文章にも使 われる外来語の略形。〈説明にーを入れてわかりやすくす る〉「イラストレーション」の略。Qカット・挿絵・挿画 いらだつ【苛立つ】思うように行かず気持ちがいらいらする <77> 意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。神経が ー〉へー気持ちを鎮める長塚節の『土』に「ー・って戸を 叩いて溝に復すと其の儘飛び出した」とある。ひいらつく いらつく【苛つく】思いどおりに行かないのでいらいらして 気が立つ意で、主に会話に使われる少し俗っぽい和語。仕 事がなかなか進まずー・いている)ひいらだつ いりひ【入り日】沈みかけている夕日をさし、主として和風 の文章に使われる、古風で優美な感じのするやわらかな和 語。へーが湖に金色のさざ波をつくる)徳冨蘆花の『不如 帰ぎととに「赤城の峰々ーを浴びて花やかに夕栄ばすれば」 という例がある。刂斜陽・夕陽西日・Q夕日・落日・落陽 いりみだれる【入り乱れる】種類の異なる多くのものが雑然 と交じり合って整わない状態になる意で、改まった会話や 文章に用いられるやや硬い感じの和語。〈敵味方が—〉夏 目漱石の『坊っちゃん』に「(敵味方が)ト・れて組んず解込れ つ戦ってるから」とある。込乱れる いりよう【入り用】ある特定の活動や仕事に使うために必要 なの意で、会話やさほど硬くない文章に使われる、やや古 風な表現。〈一の品を調達する〉〈近く大金が一になる〉 いくらーですかの必要ほど重要ではないが大いに役 に立つ段階まで含む。Q入用・必須・必要 いりよう【衣料】衣類やその材料となる布地をさし、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈品〉〈費〉衣 服・着物・服・洋服 いりよく【意力】意志の力の意で、主として硬い文章に用いられる漢語。へぜひとも成し遂げようとのーに欠ける)意 いれい 気込み・Q意欲・気概・気骨・気迫・気力・根性・精神力・ど根性・やる気 いる【居る】人や動物、運転者の乗っている乗り物などが存 在する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る基本的な生活日常語。〈一日中家に〉〈誰か〉〈駅前 にタクシーが〉〈門の前に犬が〉夏目漱石の『坊っち ゃん』に「中にはおれより背が高くって強そうなのが」。あ んな奴を教えるのかと思ったら何だか気味が悪るくなった」 とある。以前は「親がある」「恋人がある」が一般的であっ たが、このようにその存在の有無を問題とする場合でも、 現在では「ある」「ない」より「いる」「いない」のほうが普 通になっている。ひある・Qおる いる【要る】ある目的のために必要な意で、会話やさほど改 まらない文章に使われる日常の基本的な漢語。〈金が」 〈人手が」〈根気が」〈筆記用具が」〈要する いる【煎(炒)る】食材を水も油も加えずに加熱し、かきまぜ ながら水分を飛ばす意で、会話にも文章にも使われる日常 の和語。〈豆腐を—〉〈卵を—〉「豆を—」「胡麻を—」 など、もともと水分の少ない食材の場合は、あぶって少し焦 がすことになる。Q炒める・煎んじる・煎ずる・焙じる・焙ずる いるい【衣類】下着を含む着る物の総称。改まった会話や文 章に用いる漢語。〈夏物の—式〉〈—の手入れ〉〈—を清 潔に保つ〉個別の物をさしにくい。Q衣装・Q衣服・着物・服 装・身なり・装い いれい【異例】従来の事実や慣用と異なる、前例のない珍し いことをさし、やや改まった会話にも文章にも使われる漢 語。〈一の措置〉〈一の抜擢〉〈一の昇進を果たす〉〈この <78> いれば 時期にしてはーの暑さだ大岡昇平の『俘虜記』に米軍 が俘虜をそういう風に使うのはーである」とある。前例が ないというところに重点があり、評価は含まない。Q特 例・破格・別・例外 いれば【入れ歯】抜けた歯の代わりをする人工の歯をさし、 会話にも文章にも使われる日常の和語。〈総—〉へにす る〉の椎名麟三の『自由の彼方で』に「不自然なほど白い歯 は、らしく、ものをいうたびに蝗の口のようなややこし い動き方をした」とある。ふ義歯 いれもの【入(容)れ物】物を入れるための器や箱、袋類など をさし、会話やさほど改まらない文章に使われる日常の和 語。〈きれいなーに入っている〉〈ーが大き過ぎる〉〈ーに 詰め込む〉比喩的に建物をさすこともある。器・ケース ①箱・Q容器 いれる【入(容)れる】外部からある範囲の内側に移す意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈中に—〉〈箱に—〉〈冷蔵庫に—〉〈窓を開けて 風を—〉〈傘に—〉〈仲間に—〉〈子供を大学に—〉〈計算に —〉〈予定に—〉〈考慮に—〉石川達三の『蒼呉』に「一つ の皿に油揚げと菜っ葉の煮つけたのがペタリと叩きつけた ように—・れてある」とある。Q挿入・装填・導入 いろ「愛人」の意の古い和風の俗語。現代は「愛人」という 語にも日陰者といった雰囲気があるが、それでも一往その 対象を客観的に指示することとどまるのに対して、この語に は多少とも軽蔑の気持ちがつきまとうため、いっそう刺激 的に響く。〈あの女は親分のーだ〉の瀧井孝作の『無限抱 擁」に「築地で生れた少女時分にもうーがあって」とある。 語源的には「色」から出ているが、意味がかなりかけ離れて いるため、「情人」と漢字をあてたり、性別によって「情夫」 「情婦」と書き分けたりする例が多い。が、いずれもそれを 音読みした「じょうじん」や「じょうふ」と区別しにくい。 りQ愛人・情人・情夫・情婦 いろ【色】光の波長の違いにより違って見える現象をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈ーとりどり〉〈ー違い〉〈赤い〉〈ーを着け る〉〈ーが濃い〉〈ーが褪ぉせる〉②梶井基次郎の『樽様』に 「あの樽様が好きだ。レモンエロウの絵具をチューブから搾 り出して固めたようなあの単純なー」とある。色合い・カ ラ!・Q色彩・色調 いろあい【色合い】色加減や色の調子をさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈すてきなーのドレス〉〈微妙なーを出 す〉の「黄色は黄色でもそれぞれにーが違う」というよう に、何色かという明確な差より中間色なり配合の具合など に言及するときに使う傾向がある。村上春樹の『遠い太鼓』 に「白っちゃけたーの惨めったらしい植物」とあるが、どち らかというと好感をもった例が多い。単色・カラ・色彩・色調 いろいろ【色色】種類などが多い意で、会話や軽い文章に多 く使われる日常の基本的な和語。〈ーな道具〉〈ーな考え〉 〈ー迷惑をかける〉〈ーと悩みが重なる〉の「様々」「種々」 より日常語的。単Q様々・種々じゃ いろう【遺漏】注意が行き届かずやることに手抜かりが生じ る意で、改まった会話や文章に用いられる丁寧な感じの硬 <79> い漢語。〈計画にーはない〉(万に一つのーもないようくれ ぐれも慎重に)夢落ち・Q欠落・脱落①・漏れ いろごのみ【色好み】色恋や特に情事を好む意で、会話や軽 い文章に使われる古めかしい和語。「の殿方」〈町内でも ーで知られる)の色恋の機微に通じている粋人をさすこと もある。Q好色・すけべえ いろぽい【色ぽい】表情や容姿やしぐさなどの性的な魅 力で異性の気を引く感じをさして、会話や軽い文章によく 使われる和語。〈一流し目〉〈浴衣姿〉〈・く笑いかけ る〉まれに男にも使うが、女について言う例が圧倒的に 多い。みあだっぽい・婀娜な・Q艶っぽい・なまめかしい・妖艶 いろどり【彩り】色の配合により趣を出す意で、会話にも文 章にも使われる、いくぶん美的な和語。〈ーがよい〉〈皿に 盛り合わせるとーも綺麗だ〉石川淳の『普賢』に「無味乾 燥なわが文章にーを添えるために」とあるように、変化を つけて趣を出す意の比喻的表現の例も多い。Q彩色着 色 いろめがね【色眼鏡】レンズに色のついた眼鏡をさし、会話 にも文章にも使われるやや古風な和語。へーを掛けて街に 出る)「ーで見る」の形で偏見をもって対象を観察する意 の比喻表現ともなる。Q黒眼鏡・サングラス いろり【囲(居)炉裏】部屋の床を四角に切り抜いて火を焚く 設備をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈端〉へ を囲む》夏目漱石の『草枕』に「を切って、鉄瓶が鳴る」 とある。「炉」と違い、壁を切る洋風の暖炉は含まない。漢 字表記はあて字。刂暖炉・炉 いわゆる いろん【異論】他と異なる意見や考えをさし、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈ーがある〉〈ーを唱える〉 〈ーを述べ立てる〉北杜夫の『夜と霧の隅で』に「病院側 の医者がいくらーを唱えても徒労にすぎなかった」とある。 「異議」に比べ、反対意見の内容に重点がある。単異議 いわ【岩(巌・磐)】表面のごつごつした大きな岩石をさし、会 話にも文章にも使われる和語。〈場〉〈登り〉〈一枚〉 〈に波が打ち寄せる〉坪田譲治の『風の中の子供』に 「家のような」とあり、堀田善衛の『鬼無鬼島』に「壁の ような」とあるように岩石以上に大きさを感じさせる。 石・いわお・Q岩石 いわう【祝う】めでたいことを喜ぶ意で、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈新年を—〉〈誕 生日を—〉の門出を—」のように幸いを祈る意にも使う。 専祝賀・Q祝福 いわお【巖】突き出た巨大な岩をさし、主に文章中に用いられる古めかしい雅語的な和語。《聳え立つー》島崎藤村 の『夜明け前』に「大きなーのような堅い扉」「槇杆でも動 かないーのような権幕」とあるように、不動のイメージの比 喩に使う。Q岩・岩石 いわゆる【所謂】世間で一般に言われているの意で、やや改 まった感じの和語。〈ー現在形〉〈ー形容動詞〉〈ー第六感 というやつ〉〈ー順法闘争〉②太宰治の『人間失格』に「ー お茶目に見られる事に成功しました」とある。ここでは他 人の言または世間一般の言い方を仮に用いる、という姿勢 の用語で、その語を用いる自分の責任を回避することが可 <80> いわれもなく 能。そのため、煮えきらず理屈っぽい印象を与えやすい。 いわれもなく【謂われも無く】「何となく」の意で会話にも文 章にも使われる古風な和語表現。〈不安に思う〉永井荷 風の『雨瀟瀟』に「秋の日のどんよりと曇って風もなく雨に もならず暮れて行くようにわたしの一生は終って行くので あろうというような事を感じたまでの事である」とある。 ひそぞろ・何だか・Q何となく いん【印】「印鑑」の意で、主として文章に用いられる漢語。 〈捨てー〉〈ーを捺むし忘れる〉〈書類の「ー」というしるし のある箇所にすべて捺なーする〉短すぎて耳で聞いただけ ではわかりにくい場合がある。しばしば書類などに、捺印 すべき箇所を示す記号のように使われる。Q印鑑・印形 印章・印判・判・はんこ いんうつ【陰鬱】暗く沈んで晴れ晴れしない様子をさし、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈な表情〉〈な気 分〉〈な空模様〉久保田万太郎の『末枯』に「東京の真 中に遠いこのあたりには、毎日、暗い、な空ばかりが続い た」とある。ひ暗鬱・鬱陶しい・Q重苦しい・沈鬱・憂鬱 いえい【陰影(翳)】光と対照をなす暗い部分をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ーをつける〉の光の当たった 物体の暗い部分(陰)とその物体に光がさえぎられて生じる 暗い部分(影)との総称という。梶井基次郎の『蒼穹』に「そ の雲はその地球に面した側に藤紫色をしたーを持っていた」 とある。「ーに富む」のように、色・音・感情・文章などの含 みから生まれる奥深い趣をさす比喩的用法も多く、『文章読 本』で「含蓄」を説く谷崎潤一郎は『陰翳礼讃』で日本文化 の陰翳に高い評価を与えている。 ↓影・Q陰 いんが【因果】原因結果の意の仏教語。古めかしく、人によ り、抹香くささを感じさせるが、「関係を調べる」といっ た用法では、そういう位相語を超えて一般語化しており、 宗教的な語感は消えている。〈応報〉へを含める〉正 宗白鳥の『毒』に「親子のーが子に報い」とある。図縁①・ Q関係①・原因・結果・因 いんかん【印鑑】承諾や証明の意思を確認できるように捺す 印をさし、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの 漢語。〈一登録〉〈一証明〉の「はんこ」や「判」なら気軽に 捺してしまいそうな感じがあるが、「印鑑」となると正式な 感じがして、三文判では気が引けるような雰囲気が漂う。 単印・印形・印章・印判・判・Qはんこ インキ「インク」の古い言い方。〈壺〉〈鶯ペンにーをつけ て書く》印刷関係では伝統的にこの語を用いる。ふインク いんぎょう【印形】「印鑑」の意の、今ではめったに使われな い古めかしい漢語。〈など他人に貸した覚えはござらぬ〉 の井伏鱒二の『夜ふけと梅の花』に「(質屋の店で)私はーを 出した」とあるが、現代社会で「印形」を要求するケースは 考えにくいから、廃語に近いかもしれない。ふ印・印鑑・Q印 章・印判・判・はんこ インク 筆記用・印刷用の着色液をさす外来語。〈一の色〉 〈一のしみ〉〈万年筆にーを詰める〉 马インキ いんさつき【印刷機】紙などに文字などを印刷するための機 械をさし、会話でも硬い文章でも使われる日常の漢語。〈旧 式の大型—〉〈ーをフル稼働させる〉〈高性能のーを導入す <81> るゆプリンター いんし【因子】ある結果を引き起こすとになる要素をさし、 学術的な会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈遺伝—〉 〈分析〉〈この現象をもたらす—〉②大岡昇平の『俘虜記』 に「このさい自分が手をくだすというーは、かならずしも 決定的ではない」とある。成分・要因・Q要素 いんしょう【印章】「印鑑」の意で、会話には使われず文章に まれに用いられる、古風で硬い感じの漢語。へーの類を扱 う)のハンコ屋の看板などにしばしば見られるが、業界の 専門語というより昔風の言い方が残っているだけか。特に 会話では通じにくい。ちなみに、某銀行からもらった景品 「ーケース」なるものが机上にあるから、現代でもまったく 使われないわけではない。使用範囲が狭く使用頻度も少な いため、一般的な「印鑑」に比べ、特殊なことばという語感 がしみついている。三笠宮崇仁に「円筒印章の話」と題す る著作があるが、本文中には「ハンコ」という語が使われ る。単印・Q印鑑・印形・印判・判・はんこ いんしょう【印象】見聞きした対象に関して心に残る感じの 意で、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。〈第一 ー〉〈ー深い〉〈強くーづける〉〈ーが薄い〉〈いいーを与え る〉〈ーに残る〉小沼丹の『懐中時計』に「たいへん愉快 なーを受けていたから、その人物が過去形で語られるのを 聞くと、何とも妙な気がして淋しかった」とある。「イメー ジ」と違い、受ける一方で発信することはない。ひイメージ・ 映像・Q感じ・心象・心像・表象 インスピレーション 瞬間的に脳裏をよぎる考えをさし、多 インタビュー く会話に使われる外来語。〈ーがわく〉〈ーが浮かぶ〉〈ー の働きによる〉り勘・直観・直感・Q関き・霊感 いんせい【院生】「大学院生」の略語で、大学院に所属する学 生を学部生と区別する際の通称。〈ー専用のロピー〉の大学 院でも「入学式」であり、「入院式」とは言わない。马Q学 生 いんせん【院線】「国電」の前身である「省線」のその前身に あたり、今や廃語。鉄道院の時代の呼び名。今ではほと んど通じない。今、「国電」という語に感じる廃語的な響き を、国電の時代には「省線」という語に感じたように、省線 の時代にはこの「院線」という語に同じような廃語的な古 くささを感じたものと思われる。卩国鉄・国電・Q省線 いんそっ【引率】一定の目的の下に多数の人間を引き連れて 行く意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー者〉夏目 漱石の『坊っちゃん』に「狸(校長のあだ名)は生徒をーして 参列しなくてはならない」とある。「統率」に比べ、連れて 行く点に重点がある。込統率・Q率いる いんたい【引退】地位・職を退く意で、会話でも文章でも広く 使われる漢語。〈ー会見〉〈ーを決意する〉〈現役をーする〉 ひ隠退 いんたい【隠退】社会の第一線を退いて静かな生活に入る意 で、主として文章に使われる硬い感じの漢語。「して山里 にひっそりと暮らす)ひ引退 インタビュー新聞・雑誌・放送の記者などが取材のために 面会する場合の役割上の名称で、会話にも文章にも使われ るやや専門的な外来語。発音は同じで「インタヴァー」 <82> いんちき とも書く。 弔き手 いんちき 他人を騙す不正なごまかしをさし、主にくだけた 会話に使われる俗っぽい和語。〈ー商売〉へーをやって儲け る〉へーを見破る〉へーがばれる〉の奴の言うことはみな ーだ」のように、単にでたらめだという意味でも使う。注 意を引くためにしばしば片仮名書きする。Qいかさま・許 欺・べてん いんとう【淫蕩】色事などの享楽にふけり生活が乱れる意で、 主として硬い文章に用いられる古めかしい漢語。へーの限 りを極め、一向に品行のおさまる気配も見せない)男性 専用。同じく酒色に溺れる意の「放蕩」や「遊蕩」に比べ使 用頻度は低いと思われ、語構成要素「淫」がみだらな色事を 連想させ、飲む、打つ、買うの三道楽のうち女色の印象が前 面に感じられる。類語の中で最も悪い語感がある。専道楽 ②放蕩・Q遊蕩 いんとく【隠匿】隠してはいけない物や人をひそかに隠す意 で、改まった会話や文章に用いられる専門的な硬い漢語。 〈人物資〉〈財産を—する〉〈犯人を—した罪〉隠蔽 と違い具体物が対象。隠蔽 インナー 近年「下着」の意味で使われたした、外国語の略 語。「にも気を遣う」②英語「インナーウェア」の短縮形。 「下着」より斬新でおしゃれな感じがある。伝統的なふんど しや和装の下着に使うと、語感の違いでイメージの衝突を 起こす。なお、「アンダーウェア」の語もあるが、略して 「アンダー」とは言わない。ひ下着・肌着・ランジェリー いんねん【因縁】①物事を成立させている直接・間接の原因 と作用の意で会話にも文章にも使われる古風な漢語。〈前世 からのー〉〈深いーがある〉〈これも何かのーだ〉もと仏 教語。「いんえん」の連声 り」の意で、会話や改まらない文章に使われるやや俗っぽい 漢語。〈ーをつける〉の「言い掛かり」「難癖」「いちゃも ん」が単に相手を困らせようとして探る行為という印象が 強いのに対し、この語はそれを種にして脅したり時には金 品をゆすったりするという連想が働く。言い掛かり・いちゃ もん・Q難癖 いんばん【印判】武家社会で用いられた、「印」の意の古めか しい漢語。〈ー状〉の「いんばん」とも読んだ。現代では廃 語。単印・印鑑・Q印形・印章・印判・判・はんこ いんぶ【陰部】男女の「外部性器」をさす代表的な漢語の間 接表現。文字どおりには「日の当たらない陰の部分」と いう意味で、ある程度婉曲な表現ではあるが、「局所」 「局部」「恥部」などよりも明晰な表現として広く用いら れてきた。単一物・陰門・隠し所・下半身②・下腹部・局所・局部・玉 門・金玉・睾丸・女陰・Q性器・生殖器・恥部 インフルエンザ流行性感冒の意で、会話にも文章にも一般 に使われる外来語。〈—にかかる〉〈—の予防注射〉〈この 冬—が猛威を奮う〉最近は「新型インフル」のように「イ ンフル」と略すこともある。Q流感・流行性感冒 いんぶん【韻文】頭韻・脚韻などの韻をふんだり、七五調など のリズムで展開したりする言語表現をさし、会話にも文章 にも使われる専門的な漢語。「芸術」「散文」と対立。 専詩歌 <83> いんべい【隠蔽】実際の姿を覆い隠す意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈工作〉〈証拠をーする〉 〈事実をーする〉の「隠匿」に比べ、隠す対象が抽象的・状 態的。ひ隠匿 いんぼう【陰(隠)謀】ひそかに企てる悪事のはかりことの意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へーを企て る)「が発覚する)谷崎潤一郎の『痴人の愛』に「に 加担している」とある。「陰謀」と書くと、陰でこそこそと、 という面が強まり、「隠謀」と書くと、人目を避けてといっ た面が表に出る。「策略」「計略」より悪意が感じられ、「謀 略」以上に内密な感じが強い。込計略・策略・Q謀略 いんもう【陰毛】陰部に生える毛の意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈豊かな—〉外村繁の『岩のある庭の風 景』に「ーは容赦なく伸びて、まっ白いのが房々と生え揃っ た」とある。身体・Q恥毛 いんもん【陰門】軽い通俗的な読み物などで、「女性の外部性 器」をさす古風な俗っぽい比喻的な漢語の間接表現。出 入り口に見立てた比喻的な発想がかえって露骨な感じをか きたてる。陰部・隠し所・下半身②・下腹部・局所・局部・玉門・Q 女陰・性器・生殖器・恥部 「んゆ【隠喩】喩元的概念と喩元られる概念とを「まるで」 「ような」といった比喩指標を介さずに直接結び付けて示す 比喩表現の一類をさし、やや学術的な話題の会話や文章に 用いられる専門的な漢語。「時は金なり」という格言や 「人間は考える葦である」というパスカルの至言は一の一 例だ》の「直喩」と対立。Q暗喩 いんわい いんようすい【飲用水】「飲み水」の意で、改まった会話や文 章に用いられる、やや専門的な漢語。〈洗い物にはいいがー としては適さない)の「飲料水」と違って水だけをさす。 Q飲料水・お冷や・飲み水・水 いんよく【淫欲】みだらな性的欲望をさし、主として硬い文 章に用いられる古い感じの漢語。へと言っていい淫らな性 欲意味の共通部分をもつ「愛欲」「情欲」「色欲」「性 欲」より厭らしい感じが強いが、「肉欲」や「獣欲」ほど強 烈なマイナスイメージは伴わない。それぞれの語の意味の 違いというより、「欲」と結びつくもう一つの漢字のイメー ジの差だろう。愛欲・Q色欲・獣欲・情欲・性欲・肉欲 いんりようすい【飲料水】「飲用水」に近い意味で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。へーを確保する)の「清 涼ー」のように、飲み水以外にサイダーなどを含む場合もあ る。马Q飲用水・お冷や・飲み水・水 いんわい【淫猥】淫らでいたずらに情欲をそそる意として、 主として文章に用いられる硬い漢語。〈な話〉へな行為 に及ぶ木山捷平の「処女」に「コウセツという言葉はう まく考え出したもので、少しもな感を与えない」とある。 「卑猥」よりもはっきりと性的な連想を誘う。「猥褻が」と 比べても、すっと意味のわからない「褻」の字に代わって、 性的な連想の強い「淫」の字を伴うだけに、よけい厭らしい 印象を与えやすい。ひいやらしい・Q卑猥・淫ら・猥褻 <84> ういういしい う ういういしい【初初しい】世間慣れしていない清新な感じの 意で、やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風 な感じの和語。〈初舞台〉〈花嫁姿〉〈今でも初々しさを 残している〉の「うぶ」よりも高評価の語で、時に詩的に響 く。みQうぶ・純情・純真・ナイーブ ウイッグ「かつら」の意で用いる新しい感じの外来語。〈服 装に合わせてーを選ぶ〉自分の髪でないことを明言する 「かつら」という語の露骨さをやわらげるために、意味が一 般の人にすぐわからない外国語に置き換えた表現。特に女 性用の洋髪というイメージが強い。ふかつら その時その場に即して気を利かせる才知を意味 て、会話にも文章にも使われる英語からの外来語。へに富 んだやりとり説い攻撃より皮肉をこめた巧妙な表現に よる反駁に本来の精神がある。時に笑いを誘うが、単純 におかしいコミカル系とも、しみじみとおかしいユーモア 系とも違い、気の利いた知的な刺激を伴った滑稽という点 に特徴がある。ロンドンが爆撃されてデパートの一部が破 壊された翌日、「このたび入り口を拡張いたしました」と書 いた立て看板が出たという。惨状を別の角度からとらえる ことで悲劇を喜劇に仕立て直し、こんなことぐらいで生活 が破壊されるものではないという自負をひそませたウイッ トの例である。Qエスプリ・機知・機転・頓智・ヒューマ! ーモア ういまご【初孫】「はつまご」の伝統的で古風な言い方。〈一 に恵まれる〉はつまご ワインター「冬」の意で一定の言いまわしに使われる外来語。〈ースポーツ〉複合語として用い、単独では用いない。 うえこむ【植え込む】草木を何本か植えてその場所をふきく 意で、会話にも文章にも使われる和語。〈庭の片隅につつじ をー〉球根などを土の中に埋めることをも言う。専植え付 ける・Q植える うえじに【飢(餓)え死に】空腹が度を越して体力を消耗し死 に至る意で、会話にも文章にも使われる和語。〈腹が減って ーしそうだ〉〈旱魃があぐーする者が出る〉鳥餓死 ウエスト 腸囲の意で会話にも文章にもよく使われる外来 語。〈1が細い〉類義語の中、日常会話では最も一般的。 腸囲・Q腸回り うえつける【植え付ける】草や木を移したり位置を決めたり して根づかせる意で、会話にも文章にも使われる、いくぶ ん専門的な感じの和語。〈苗を—〉も植え込む・Q植える うえる【飢(蛾)える】食うものがなく空腹に苦しむ意で、会 話にも文章にも使われる和語。〜ーえて死にそうだ〜 「親の愛情に」「学問に」のように、欲しいものが得ら れない意の比喻的用法もあり、武者小路実篤の『お目出たき 人』には「自分は女にー・えている」とある。Qかつえる 渇く うえる【植える】草や木の根を土に埋めて根づかせる意で、 <85> くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈庭に山桜を—〉〈花壇に草花を—〉小沼丹の 『むべ』に「一尺ばかりのむべの苗を井伏鱒二氏に頂いて、 玄関先にー・えて置いたら、二、三年で猛烈に伸びた」とあ る。ひ植え込む・Q植え付ける うかい【迂回】回り道の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一路〉〈道路工事のためー願います〉「遠回り」に比べ、途中に障害があってやむをえず予定外の道を行かざるを得ないという連想がある。夢遠回り うかつ【迂闊】事情にうとく注意が行き届かないさまを表し、 少し改まった会話や文章に使われる、やや古い感じの漢語。 「なことは言えない」〈に引き受けると、あとでとんで もないことになる〉「こんな間違いをしでかすとはいかに もーだった」小沼丹の『外来者』に「白髪の婆さんは、自 分がーだったと思ったのかどうか知らぬが、独り何遍も点 頭かいて」とある。ふうっかり うかぶ【浮かぶ】液体の表面や空中に位置する意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的 な和語。〈水面に—〉〈秋空にぽっかりと—・んだ雲〉の「浮 く」に比べ、浮いている物体が空中や水の表面にあり、その 輪郭を観察者が目で確認している感じが強いという。庄野 潤三の『秋風と二人の男』に「電車がヨットの—・んでいる 川を渡って」とあるのも、乗客の目がヨットの姿をとらえた 例である。なお、「姿が目に—」「いい考えが—・ばない」の ように、抽象的なものが意識の表面に出てくる場合にも使 われる。ヨ浮く うけおう つきうき【浮き浮き】楽しいことを前にして気持ちが浮き立 つ意で、主に会話に使われる和語。「した気分」〈デート を前にーする〉ひいそいそ・Qわくわく うきしずみ【浮き沈み】水に浮いたり沈んだりする意で、会 話にも文章にも使われる和語。《小船が波間にーする》② 「ーの激しい業界」「誰でも人生にはーがある」のように、 いい時と悪い時との意で比喩的に使うことが多い。刂消長・ Q浮沈 く浮く液体や気体の下方から中間または表面に上る意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。ふわりと空中に「一円玉は水に 」②伊藤整の『氾濫』に「身体は一枚の薄い布か、羽毛の ようになって宙に「・き」とある。「浮かぶ」と違って、「水 面に油が」のように物の輪郭がはっきりしない場合でも、 表面に姿を現さず水中にとどまっている場合でも、「この素 材は水に」のように一般に物体の性質を記述する場合で も使われる。また、「打ち込んだ釘が少し」・いてきた」 「歯が」ような見え透いたお世辞」のように、固定されてい たものが不安定な状態に変化する場合や、「会場になじま ず一人だけ」・いている」のように周囲の人間や雰囲気など にとけこまないで目立つ場合にも使われる。浮かぶ・ うけあう【請け合う】「保証する」の意で、会話や硬くない文 章に使われる日常的な和語。〈身許を〉〈人物はわたし がー〉「保証する」ほど正式な感じがないため、ちょっと したことにも違和感なく使うことができる。単保証 うけおう【請け負う】報酬や期日その他の条件を定めてある <86> うけつぐ 仕事一切を引き受ける意で、会話にも文章にも使われる、 やや専門的な和語。〈工事を二千万円で—〉、引き受ける うけつぐ【受け継ぐ】親や先代や前任者の性格・体質・仕事・遺 志などを引き継ぐ意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈親の体質を—〉〈仕事を—〉〈前からの方針を—〉の「継 承」より日常語的。ふ継承 つけつけ【受付】外部からの問い合わせや来訪者・参会者の取 次ぎなどをこなす場所や係をさし、会話にも文章にも広く 使われる和語。へーで尋ねる〉へーにまわされる〉ひQ受け付 ける・帳場・フロント・窓口 うけつけび【受付日】申し込みなどを受け付ける日をさす和 語。申し込む側でなく、申し込みを受け付ける側に立った 発想の表現。〈以前の予約は不可〉申し込み日 つけつける【受け付ける】申し込みや問い合わせなどを処理 する意で、会話にも文章にも使われる和語。今月末日まで ー〉〈願書をー〉受付 うけて【受け手】聞き手と読み手との総称。やや専門的な雰 囲気の和語。〈ーの反応〉〈情報のー〉「送り手」と対立。 卻聞き手・受信者・読み手 うけとり【受け取り】代金や品物を確かに受け取ったという 書き付けの意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈買い物 をしてーをもらう簡単な書き付けから正式の領収書ま で幅広く使う。専受領証・Q領収書・レシート つけもち【受け持ち】担当・担任の意で、会話や軽い文章に使 われる和語。〈この仕事の—〉〈自分の—になる〉今度 の—は厳しそうだ」のように担任教師をさすこともある。 從事·Q担当·担任·服務 うける【受ける】他からの働きかけなどを取り込むといった 広い意味で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常生活の最も基本的な和語。〈風を—〉〈試験を—〉 〈影響を—〉〈教育を—〉〈恩を—〉〈注文を—〉〈宣告を—〉 〈印象を—〉〈観客に—〉二葉亭四迷の『平凡』に「相談を ー・ければ」とある。Q承ける・享ける うける【承ける】「受ける」のうち、継承する意を明確にした い場合に文章で特に書き分ける表記。それだけ語の文体的 なレペルも高くなる。〈後を—〉〈体質を—〉、Q受ける・享 ける うける【享ける】「受ける」のうち、授かる意を明確にしたい 場合に文章で特に書き分ける表記。それだけ語の文体的な レベルも高くなる。〈この世に生を—〉〈天賦の才を—〉 Q受ける・承ける うごく【動く】移動・機能・活動・変化する意で、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈車 がー〉〈機械がー〉〈警察がー〉〈気持ちがー〉の井伏鱒二の 『黒い雨』に「電車が順調にー・きだした」とある。Q移動・ 変化・変動・揺れる うさばらし【憂さ晴らし】つらさ・苦しさやみじめな思いを忘 れるために気を紛らすことをさし、会話にも文章にも使わ れる和語。〈街に出てーをする〉へに酒を飲む〉の漠然と した「気晴らし」と違い、はっきりと不愉快なことがあった あとに普段と違う特別なことをする感じが強い。み気散じ Q気晴らし・慰み <87> うさんくさい【胡散臭い】何となく信用できない感じの意で、 会話や硬くない文章に使われる表現。〈ー話〉〈ー説明に終 始する〉専眉唾物 うし【齲歯】「虫歯」の意の専門漢語。〈ーゼロ〉☹「くし」の慣用読み。ひ虫歯 うしなう【失う】それまで持っていたものを無くす意で、改 まった会話や文章で用いられる和語。〈財産を—〉〈職を—〉 〈効力を—〉〈資格を—〉〈将来に希望を—〉堀辰雄の『風 立ちぬ』に「いまの一瞬の何物をも—まいとするかのよう に無理に引き留めて」とある。「肉親を—」など、死別の意 味では特に「喪う」と書いて区別することもある。「事故」 「火事」「戦争」「失敗」「無駄」などのように減少すること が望ましい対象については「無くす」を用い、この「失う」 は使えない。少無くす うしろ【後ろ】自分が向いている側や物の正面と反対の方向 をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な和語。〈ーを振り返る〉へーから追いかける〉 〈親のーに隠れる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「馳け足 の姿勢で、はやての様にーから、追い付いた」とある。後藤 明生の『吉野大夫』には「ふとーを振り返った。わたしは思 わず、あっと声をあげた。そこに見えたのは、いままで見 たこともない、途方もなく大きな浅間山だった」とある。 「前」と対立。Q後部・後方・背後 うしろぐらい【後ろ暗い】他人に知られては困ることを隠し ている気持ちをさし、会話にも文章にも使われる若干古い 感じになりかけている和語。(何やらーところがあるのか、 うずく 妙に視線を避ける)Q後ろめたい・やましい うしろめたい【後ろめたい】良心に恥じるところがあり相手 に対して気が咎める意で、会話にも文章にも使われる和 語。〈何となく—ものがある〉〈—ことは何もない〉〈冷た く扱い過ぎたかとー気持ちもないではない〉安岡章太郎 の『朝の散歩』に「いったい何がーのか、他人の不幸をのぞ き見することが気がとがめるのか」とある。Q後ろ暗い・や ましい うすい【薄い】厚み・色・味・密度・濃度・可能性などが少ない意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈一紙〉〈一氷〉〈ごくーピンク〉〈一コーヒ ー〉〈甘みが一〉〈人情が一〉〈望みが一〉〈縁が一〉の大岡 昇平の『花影』に「空の青が透いて見えるような一脆い花 弁」とある。「淡い」より幅広い意味に対応し、「淡い色」 「浅い春」のような特別の語感が働かない。渋い・淡い うずうずすぐにでもやりたいのになかなか始められず待ち きれない気分をさし、主に会話に使われる感覚的な和語表 現。〈早く行きたくて待っている間もーする〉もむずむず うすぎたない【薄汚い】とことなく汚い感じがする意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈一裏通り〉〈一恰好〉汚 れた箇所やその程度を具体的に意識せず、全体としての感 じの印象をさす。「ーやり口」のように、ずるい感じの意に も使う。汚い汚らしい・Q小汚い うずく【疼く】ずきずきと痛む意で、改まった会話や文章に 用いられる和語。〈傷がー〉〈歯がー〉〈胸の中がー〉ゆ小林 多喜二の『党生活者』に「ジッとしていると、頭の片方だけ <88> うすぐらい がズキン、ズキンと鈍くーいた」とある。太宰治の『女生 徒』には「五月のキウリの青味には、胸がカラッポになるよ うな、ような、くすぐったいような悲しさが在る」という 感情を感覚的にとらえた例が出る。弜痛い痛む うすぐらい【薄暗い】光の量が不足して物がはっきり見えな い状態をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。へ 部屋)〈日が落ちて外がーくなる〉三浦綾子の『続氷点』 に「林の中は、夕ぐれのようにー・かった」とある。弔暗い・ ほの暗い うすっぺら【薄っぺら】「薄い」に近い意味で口頭表現によく 使われるくだけた日常語。ぐーなちゃちな本ぐーな思想 〈人間がーだ〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「畳付きのー なのめりの駒下駄」とある。単に厚みが「薄い」だけでな く、深みや奥行きが浅いという軽蔑の気持ちを感じさせる マイナス評価が伴う。専薄い うすのろ【薄鈍(野呂)】頭の回転が遅く反応や動作が鈍い意 で、主に会話に使われる俗語。〈少々ーだが仕事は丁寧だ〉 ひぐず・Qのろま うずまる【埋まる】見えなくなるほど覆われる意で、会話に も文章にも使われる和語。〈庭が一面に咲き乱れる花に」 〈机が書類の山に」〈廊下が取材陣で」「うまる」とは っきり区別するには仮名書き。うまる うすめ【薄目】閉じた瞼を緩めてわずかに開いた目の意で、 会話にも文章にも使われる和語。へーを開けて外の様子を うかがう②瞼を閉じる方向で実現する「細目」に対して、 結果の状態は似ているものの、この語は開く方向でその隙 間を実現し、わずかに開けてひそかにうかがうといったマイナスイメージを伴いやすい。み細目 うずめる【埋める】物がよく見えなくなるほど表面を覆う状 態にする意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。砂 にー〉〈恋人の胸に顔をー〉〈祝賀会場を花でー〉会場が 満員になる場合、すべての空席を満たすと考えれば「うめ る」となり、どこを見ても観客に覆われていると考えれば 「うずめる」となるように、両方使えてもそれぞれ発想が違 う。漢字表記は「うめる」との区別がつきにくい。うめる うずもれる【埋もれる】物に覆われて外から見えなくなる意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈雪に—〉〈遺跡が砂 に—〉へ・れた作品に案外いいのがある)仮名書きでは 「うもれる」との区別が難しい。うもれる うすらぐ【薄らぐ】感覚や感情などの激しさが衰える意で、 会話にも文章にも使われる日常の和語。〈日の光がー〉〈寒 さがー〉〈痛みがー〉〈悲しみがー〉〈興味がー〉〈薄れる うすらさむい【薄ら寒い】ひんやりと少し寒く感じられる意 で、会話や軽い文章に使われる和語。〈晚秋の一日〉肌 にひんやり感じる点は「肌寒い」と同様だが、温度感覚とし てはこの語のほうが概念的。三浦哲郎の『ユタと不思議な 仲間たち』に「初夏とはいってもまだまだ北国の夕風が流 れはじめていた」とある。ひうそ寒い・肌寒い うすれる【薄れる】濃くはっきりしていたのが薄くぼんやり した感じに弱まる意で、会話にも文章にも使われる日常の 和語。〈霧が—〉〈色が—〉〈視力が—〉〈記憶が—〉〈意識 が—〉〈関心が—〉〈印象が—〉〈薄らぐ <89> うそ【嘘】事実と違う作り事の意で、くだけた会話から文章 まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ーをつく〉〈真 っ赤なー〉〈まことしやかなー〉〈見え透いたー〉図夏目漱 石の『坊っちゃん』に「よくーをつく男だ。是で中学の教頭 が勤まるなら、おれなんか大学総長が勤まる」とある。相 手を欺く意図的な偽りだけでなく、「ー字」のように単に正 しくないという意味でも使い、また、「そう来なくちゃー だ」のように不適当といった意味合いで用いることもある。 Q偽り・嘘っぱち・虚偽・ほら うそむい【うそ寒い】どことなく寒々とした感じのする意 で、主として文章中に用いられる古風な和語。〈晚秋の夕 暮れ〉みうすら寒い うそっぱち【嘘っぽち】全くの嘘と強調する意で、くだけた 会話に使われる俗っぽい和語。〈そんなのーにきまってら あ〉へーもいいとこだ〉乃偽り・Q嘘・虚偽・ほら 「大【歌(唄)】旋律をもつ言語作品をさし、民謡・俗曲・歌謡曲・童謡などの総称として、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ーと踊り〉〈ーを歌う〉〈ーを口ずさむ〉〈賑やかなー〉〈哀調を帯びたー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「ーはすこぶる悠長なもので、夏分の水飴のように、だらしがない」とある。「地ー」「長ー」「馬子さー」「わらべー」「数えー」などでは多く「唄」と書く。また、谷崎潤一郎の『細雪』に「古今集の昔から、何百首何千首となくある桜の花に関する」とあるように、和歌、特に短歌をさす用法もあり、その場合は「唄」とは書かない。また、詩歌全体を含む場合は「詩」と書く例が多い。 うたがい Q歌謠·歌謠曲·短歌·和歌 うたいて「歌い手」歌を歌う人をさし、会話にも文章にも使 われる、いくぶん古風な和語。へ一流のー〉(同じ曲でもー によって感じが違う)プロもアマも含まれるが、ある程度 の歌唱力がある場合を連想させる。乃歌手 うたう【歌う】メロディーを口ずさむ意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。 ら硬い文章まで幅広く使わる日常生活のまつり 〈童謡をー〉〈朗々とー〉〈鼻歌をー〉綱野菊の『風呂敷』 に「風呂から上ろうとしてからだをふいている時、ミツは、 ふと、自分が、外国の唱歌を小声でーっていることに気づ いた」とある。ひQ頃う・謡う・詠う・謡う うたう【唄う】「歌う」のうち、日本の伝統的な民謡や俗曲な どの場合に特に書き分ける古風な表記。〈端唄を—〉〈小唄 を—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「三味線を抱えたから、 おれはー・わない、貴様ー・って見ろと云ったら」とある。 Q歌う・謡う・詠う・謡う うたう【謡う】謡曲の場合に用いる慣用的な表記。〈高砂を ー〉ルQ歌う・唄う・詠う・謳う うたう【詠う】詩歌に詠み込む意で用いる、古風で雅やかな 雰囲気の和語表現。〈古くから詩歌にー・われてきた名勝〉 りQ歌う・唄う・謡う・謳う うたう【謳う】謳歌する意で、主に文章に用いられる和風 の美的表現。〈わが世の春を—〉〈不朽の名作とー・われる〉 〈憲法の条文に—〉ほめたたえるニュアンスが前面に出 る。Q歌う・唄う・謡う・詠う うたがい【疑い】不審に思うことをさし、くだけた会話から <90> うたがう 硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈放火の—〉〈—〉 がかかる〉〈—〉が晴れる〉〈—〉の余地はない〉伊藤整の 『火の鳥』に「—が、蛇のように私の胸の中で頭をもたげた」 とある。専疑義・疑念・Q疑問・疑惑 うたがう【疑う】疑問に思う、不審を抱く、信用できないの 意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。〈むやみに人を—ものではない〉〈あまり の変化にわが目を—〉〈信じてー・わない〉〈常識を—〉〈誠 意がー・われる〉小沼丹の『懐中時計』に、譲ると言いな がら友人が肝腎の時計を見せようとしないので、「その時 計の存在をー・ったとしても不思議はあるまい」とある。马 怪しむ・いぶかる・Q疑る 「草の花」に「幾つもの理由が思い浮かんではーのように消 えた」とある。はかなく消えやすいことを水に浮かぶ「泡」 にたとえた表現。刂泡・水泡・泡沫・みなわ うたがわしい【疑わしい】悪事を働く可能性がある意で、改 まった会話や文章に用いられる、やや硬い感じの和語。〈見 るからにー不自然な行為〉の「怪しい」同様、「成功するか どうかー」のように、疑問が残る意を表す用法もある。 「ー・きは罰せず」もその一例。き怪しい うたぐる【疑る】疑う意でくだけた会話に使われる俗っぽい 口頭語。〈人をーのもいい加減にしろ〉の「疑う」が心の中 での思考作用を問題にしているのに対し、この語はその疑 いの気持ちが具体的な行為や表情やことばの端々に表れて いる感じがある。乃怪しむ・いぶかる・Q疑う 「大げ【宴】宴会の意で、主に文学的な文章に用いられる優 雅な古語的表現。〈春のーを繰り広げる〉〈はなやかに婚礼 のーを催す〉、宴・Q宴会・酒盛り・酒宴 うたたね【うたた寝】寝床に入らずにうとうとと眠る意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈こたつでーする〉居眠 りする・仮睡・仮眠・仮寝 ?ち【内】①囲われた範囲より中心に近いすべてをさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基 本的な和語。〈この線よりに置く〉へから外に向かって 力が働く〉(においがーにこもる〉(あくまでーの話だ) 対象を客観的にとらえた感じの「中」に対し、この語は対 象の内側に視点を置いてとらえた感じが強い。ちなみに、 夏目漱石に胃潰瘍の発作の間を縫うように朝日新聞に連載 した「硝子戸の中」と題する随筆があり、この場合は「中」 を「うち」と読む。ひ中 ②関西で女性が「わたし」の意で 使う自称代名詞。〈一、よう言わんわ〉(一でよろしゅおま すか)谷崎潤一郎の『細雪』に、妙子が「一、どない云う てええか分らへん」と言う例があり、小津安二郎監督の映 画『彼岸花』にも幸子が「一の言うことなんにも聞いてくれ しまへんの」と言う場面がある。近年は関東の女児にも広 まっているという。ひわたくし・Qわたし うち【家】家をさして、会話や改まらない文章によく使われ る日常の和語。〈ーにこもる〉〈ーを空ける〉〈ーの中がひ っくり返っている〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「おれの <91> 来たのを見て起き直るが早いか、坊っちゃん何時ーを御持 ちなさいますと聞いた」とある。建築中の住宅や空き家な どのように人が住んでいない建物には通常用いない。 「家」以上に生活感があり、「の人」では朝はたいて いパンだ」のように、特に自分の家庭をさすこともあり、親 近感をもって使う傾向が見られる。Qいえ・家屋・居宅・豪邸 住居・住宅・住まい・邸宅・屋敷 うちあわせ打ち合わせおおよその内容が決まっている物 事についてその進行や手順などの細部を詰めるために関係 者が対等の関係で話し合うことをさし、会話やさほど硬く ない文章で使われる和語。〈仕事のー〉へとおりにやる〉 「相談」が持ちかける側と乗る側との間で行われること が多いのに対し、この語は当事者どうしが同等の資格で話 し合う場合をさす。ヲ会議・協議・相談・談合・Q話し合い・ミーテ イング うちあわせる【打ち合わせる】今後の予定や進め方などを前 もって話し合っておく意で、会話にも文章にも広く使われ る日常の和語。〈日程を—〉(あらかじめ詳細にわたって ー・せておく)の「申し合わせる」と違って、約束までこぎ つけるとは限らない。見示し合わせる・Q申し合わせる うちうち【内内】身内やごく親しい人の間に限る意で会話に る文章にも使われる和語。へーの祝い〉〈葬儀をーで済ませ る〉きこっそり・そっと・ないない・ひそか うちかつ【打ち克つ】困難な事柄・局面・境遇にめげず、努力 してそれを乗り越える意で、いくぶん改まった会話や文章 に用いられる和語。〈困難にー〉〈病にー〉〈誘惑にー〉の夏 うちのひと 目漱石の『草枕』に「不幸に」・とうとして居る顔だ」とあ る。ひ克服 うちき【内気】人前に出ると恥ずかしくて消極的になるよう すをさし、会話にも文章にも使われる日常語。〈な性格〉 「でおとなしい」の「内向的」とは違い、他人と交わりた いと思いながら引っ込み思案で踏み切れない場合を含む。 内弁慶・Q内向的引っ込み思案 うちきる【打ち切る】途中で止める意で、やや改まった感じ の会話や文章に用いる和語。〈製造を—〉〈交渉を途中で —〉〈連続ドラマを—〉の「切り上げる」に比べ、途中でと いうニュアンスが強く、それだけ決意が感じられる。Q切 り上げる・中止 うちきん【内金】売買や請負の契約に際し、代金や報酬の一 部をあらかじめ支払う意で、会話にも文章にも使われる表 現。〈ーを入れる〉へーとして渡す〉②「手付金」の意味で使 うケースもある。ひQ頭金・手金・手付け・手付金 うちけす【打ち消す】否定する意で、やや改まった会話や文 章に用いられる和語。〈噂を—〉〈疑惑を—〉の「波の音に ー・される」のように、何かの影響で音などが聞こえなくな る意味に用いる例もある。Q否定・否認 ちにわ内庭】屋敷内の建物内側にある庭をさし、会話 にも文章にも使われる、いくらか古風でいくぶん専門的な 感じの和語。へーの植え込み」専坪庭・Q中庭 つちのひと【内(家)の人】主に会話で、妻が他人に向かって 自分の夫をさして言う和語表現。へときたら、こんなこと を言うのよ〈ーともよく相談して〉「うち(家)の者」の <92> うちのもの ほうは、家族や使用人をもさし、夫が特に妻をさして用い る婉曲表現ともなるが、この語は慣用的でそこまでの恥 じらいを感じさせない。Q夫・主人②旦那・亭主・八ズ・宿六 うちのもの【家の者】同居人をも含む意味合いで暗に自分の 「妻」をさす間接的な謙称。へに持って来させる)年配者 が用い、ストレートに表現することを照れる雰囲気が感じ られる。小沼丹の『珈琲の木』に「は感心したが、感心し たのは思慮が足りないからで」とある。Qいえの者・お上さ ん・奥方・奥様・奥さん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・妻・女房・ 伴侶・ベターハーフ・令閨・令室・令夫人・ワイフ うちぶろ【内風呂】母屋の中に設けた、あるいは各家庭にあ る風呂場をさし、会話にも文章にも使われる、やや古風な 表現。「があってもたまに銭湯に行く」母屋の外に別棟 として建てた風呂場や、銭湯などに対して言う。「外風呂」 と対立。内湯 うちべんけい【内弁(辨)慶】家庭など親しい人たちの間では (弁慶のように)元気でいばっていても、知らない人の前に 出るとすっかりおとなしくなってしまう性格をさし、会話 や軽い文章に使われる表現。へあの子はーで外ではからっき し意気地がない)Q内気・内向的・引っ込み思案 うちみ打ち身】体を強打して生ずる皮膚組織の損傷の意で 会話や改まらない文章に使われる一般的な和語。「だけ で骨に異状は認められない」乃打撲傷 うちゆ【内湯】温泉旅館で屋内に湯を引いた浴場をさし、会 話にも文章にも使われる和語。〈雨の日はーに浸かる〉の 自分の家の浴室をさすこともあるが、それが普通になった 今ではあまり使わない。「外湯」と対立。内風呂 うちわもめ【内輪揉め】家族というかたまりや親しい仲間の 集まり、会社・政党・チームなどに亀裂が生じて内部で争う 事態をさし、会話や軽い文章に使われる日常の和語。ヘグル ーブ内のー〉へーで党が一つにまとまらない〉へーしている 場合ではない〉の「内紛」ほど大仰な感じがないため、意見 が合わない程度でも使える雰囲気がある。いつもは気が合 って一緒に行動しており本来は一つにまとまるはずなのに、 というニュアンスをひきずる。き内紛 うつ【打つ】物理的・心理的に刺激を与えるといった広い意味 合いで、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常生活の基本的な和語。〈釘を—〉〈頭を—〉〈ヒットを—〉 〈注射を—〉〈何とか手を—〉〈胸を—感動的な場面〉鶯沢 崩の『川ぐりの道』に「ぼあん、と頬を—音がした」とある。 討つ・Q撃つ うつ【討つ】相手をやつける意専用で、改まった感じの会 話や文章に使われる和語。〈敵ををー〉〈敵ををー〉〈仇を ー〉き打つ・撃つ うつ【撃つ/射つ】発射する意で、会話でも文章でも使われ る和語。〈銃を—〉〈鳥を—〉志賀直哉の『山鳩』に「 る私語「鈔を」 ったのは自分ではないが、食ったのは自分だという事も気 が咎めた」とある。「撃つ」と書くと弾が命中した感じが強 いが、「射つ」と書くと発射の連想が強く、射止めたかどう かに言及していないニュアンスが感じられる。き打つ・Q討 つ うっかり ぼうっとしていて不注意なさまを表し、会話や改 <93> まらない文章に使われる日常の和語。へ約束を忘れると ころだったへー誘いに乗るへー乗り越すへー口にでき ない小沼丹の登高に酒の席などでー歌を所望する と、例えば「鉄道唱歌」の如きを大声で歌い始めて、途中で 決して止めない」とある。「つい」に比べ、もっぱら不注意 によって生じる失態を思わせる。込迂闊思わず・Qつい つくしい【美しい】形や色や音などがうっとりするほど美 的に快く感じられるさまを表す基本的な和語。〈ー景色〉 〈ー女性〉〈ー行為〉〈ー話〉の武者小路実篤の『友情』に 「自然はどうしてこうーのだろう。空、海、日光、水、砂、 松、美しすぎる」とある。「麗しい」のような雅語的な雰囲 気の文章語ではないが、「綺麗い」よりは改まったいくらか 文章語寄りの表現。くだけた会話ではあまり使わない。そ のため、当人に面と向かって「おーですね」と言うと、「お 綺麗ですね」に比べ、気障で歯の浮いた感じを招きかねな い。「友情」のように抽象化した例では「綺麗な」と置換 不適。ひ麗しい・Q綺麗 うつし【写し】原本などから控えとして写し取った文書や書 画などの模写をさし、改まった会話や文章に用いられる和 語。〈運転免許証のーを取る〉〈保険証のーを同封する〉② 「複写」「転写」と違い、写す行為ではなく写した物をさす。 手で書き写す場合も機械でコピーする場合も含め、正式の 書類などで外来語を避けて使うこともある。役所などで 「コピー」という外来語の俗っぽさを嫌って用いるケースも 見られる。Qコピー・転写・複写 うつす【移す】空間的・時間的な位置を他に動かす意で、くだ うったえる けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈場所を—〉へ心を—〉〈計画を実行に—〉夏目漱石 の『坊っちゃん』に「自分の許嫁が他人に心を—・したのは 猶情ないだろう」とある。「時を—」は文体的なレベルの高 い美的な表現。「都を—」の場合は「遷都」に合わせて特に 「遷す」と書く例も多い。「病気を—」の場合は感染の意味 を明確にするために特に「感染す」とあてることもある。 これらの表記は古めかしい感じがある。乃移動 うつす【写す】撮影・転写などの意で、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈写真を—〉 〈ノートを借りて—〉〈そっくりそのまま—〉②大岡昇平の 『武蔵野夫人』に「やたらにそこらを鉄砲を打つように—・ してしまうと、フィルムを抜いた」とある。み映す うつす【映す】投影などの意味合いで、主として文章に使わ れるやや美的な和語。〈スライドを—〉〈鏡に姿を—〉〈川 面に影を—〉夏目漱石の『草枕』に「難有がたい世界をまの あたりに—のが詩である」とある。「世相・人生・感情を—」 など、「写す」より情緒的な用例が多く見られる。写す 理非曲直の判定を権威ある箇所、特に裁判所などに求める 意で、会話にも文章にも使われる和語。〈盗難事件を」 く債務不履行で・えられる)夏目漱石の『坊ちゃん』に 「警察へー・えたければ、勝手にー・えろ」とある。「空腹を 」「上司に不満を」のように、知らせて共感や同情を得 ようとする意にも使い、その場合は改まった響きが伴う。 Q告訴・訴訟・提訴 <94> うってつけ うってつけ打って付け】適性などから見てびたりとあって いる意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈几帳面な人に ーの仕事〉〈手の器用な人にはーの役だ〉誰え向き うっとうしい【鬱陶しい】何かが覆いかぶさったようで重苦 しく晴れ晴れしない意で、くだけた会話でも文章でも広く 使われる日常生活の和語。〈どんより曇ってー天気だ〉〈髪 が伸びてー〉〈梅雨空〉三島由紀夫の『橘づくし』の末 尾に、気の利かない山出しの女中の丸い肩をつつく場面が ある。「弾力のある重い肉に弾かれ、指先にはー触感が残っ て、満佐子はその指のもってゆき場がないような気がした」 と結ばれる一文は、「鬱陶しい」の微妙な働きにより感覚描 写が心理描写として機能する。陰鬱・Q重苦しい・不快・不愉 快 うっとり美しさや快さに心を奪われ酔ったようになって思 わず我を忘れる意で、会話や軽い文章に使われる和語。へー と見とれる〉へーと聴きほれる〉へーした表情〉と恍惚 うつぶせ「俯せ/うつ伏せ」顔を下に向けて横たわる意で、 会話にも文章にも使われる和語。へーになる〉へーに寝る〉 の「腹這い」と同じ体勢。「あお向け」と対立。腹ばい うつらうつら眠気などのために意識がぽんやりする意で、 会話や硬くない文章に使われる和語の擬態語。へ本を読みな がらーする〉の「うとうと」よりは少し意識がはっきりして おり、ぼんやりながら本を読んだり話を聞いたりできる段 階をさすことが多い。また、眠りかけているときにも、目 が覚めかかっているときにも使える。うとうと うつりが【移り香】近くの人や物から移って付いた句いをさ し、会話にも文章にも使われる和語。〈ーがする〉、残香・Q 残り香 うつりかわり【移り変わり】時の推移とともにものごとの様 子が変わってゆくことをさし、会話やさほど硬くない文章 に使われるいくぶん古風な和語。〈世の中の—〉〈町の—〉 の島崎藤村の『破戒』に「静かに一生の—を考えて」とあ る。「変遷」ほど大仰ではなく、「季節の—」のように比較 的小規模なスパンで使っても違和感がない。ひ推移・Q変遷 うつりぎ【移り気】一つの対象に長く集中できず気持ちが変 わりやすい意で、会話にも文章にも使われる古風な表現。 〈女泣かせの—な男〉へ—で習いものが次々変わる〉ひQ浮 気・不倫 うつる【移る】位置や状態が他のそれに変わる意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈席が 」〉〈本社に」〉〈においが」〉藤沢周平の『麦屋町昼下 がり』に「月はいまはためらうような光を地上に落として いるだけだった。季節がーったのである」とある。ひ移動・ 移ろう うつろ【空(虚)ろ】内部が詰まっていなくてがらんどうな意 から、内容や実質を伴わずむなしい感じ、意識がぼんやり した状態をもさし、やや故まった会話や文章に用いられる いくぶん古風な和語。〈中がーになっている大木〉〈誠意が 伝わらず声だけがーに響く〉〈な目〉岡本かの子の『河 明り』に「それを眺めていると、心がーになって、肉体が幻 の彩りのままに染め上げられて仕舞いそうな危険をほとほ と感ずる」とある。専虚無・Q空虚・むなしい <95> うつろう【移ろう】ゆるやかに移って行く意で、主として文 章に用いられる古風で優雅な和語。〈季節がー〉へーいや すい人の心〉き移動・移る うつわ【器】容器、特に高価な食器類をさし、会話にも文章 にも使われる古風な和語。〈大きな—に移す〉〈装飾を施し た—に盛る〉の「大臣の—」「人の上に立つ—ではない」の ように、人格や能力としての器量をさす比喩的な用法もあ る。入れ物・Q容器 うで【腕】①肩の端から手首までの部位をさし、くだけた会 話から文章まで幅広く使われる和語。〈一の力〉〈一を回 す〉②夏目漱石の『坊っちゃん』に「鉄拳制裁でなくっちゃ 利かないと、瘤だらけのーをまくって見せた」とある。古 くは前腕の意にも。马上腕・かいな・二の腕②仕事をこなす 力量や技術をさし、会話や硬くない文章に用いられる日常 の和語。〈一自慢〉〈一試し〉〈一がいい〉〈一を上げる〉 〈一をみがく〉③結果としての「腕前」より能力に重点があ る。永井荷風の『腕くらべ』に「見掛けによらずなかなかー がある」とある。马腕前・技巧・技術・技能・技法・技量・手腕・テク ニック・手並み・力量・技 うできき【腕利き】仕事の腕が優れている意で、会話にも文 章にも使われる和語。へーの職人〉へーの指物との師〉の職人 などによく使うが、刑事や弁護士にも言う。匕切れ者・Q敏 腕・遣り手 うでずく【腕尽く】事の解決に腕力を用いる意で、会話や硬くない文章に使われる、いくぶん古風な和語。へーで取り上げる〉へーでも奪い返す)多く「」の形で用い、「腕 うとうとする 力」と違って肉体的な腕の力そのものはささない。Q力ずく・腕力 うでっぷし【腕節】腕の関節の意から腕の力の意となり、 会話や軽い文章に使われる和語。「が強い」の力の強い女 性も増えた現代でも男性を連想しやすい。観力 うでまえ【腕前】修業して身につけた技量をさし、会話やさ ほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈ーを試す〉〈み ごとなー〉〈ーを見込んで任せる〉〈ーを発揮する〉「腕」 は下手から上手までいろいろあるが、「腕前」となるとある 程度以上の技量を連想させやすい。小沼丹の『懐中時計』 に「二人のーは大体互角だろう」とある。現状を問題にし ている感じの「腕」に比べ、それが発揮された到達度を話題 にしている感じがある。Q腕②・技巧・技術・技能・技法・技量・ 手腕・テクニック・手並み・力量・技 うでる【茹でる】「ゆでる」の音転で、主に会話に使われる、 やや俗っぽい和語。ふどんをー) 湯がく・Qゆでる・湯引く うてん【雨天】雨の降る天気をさし、主に文章中に用いられ る硬い漢語。〈ー決行〉へーのため中止になる) ふ雨降り うとうと眠くなって浅い眠りに入りかける意で、会話やさ ほど硬くない文章に使われる和語の擬態語。へーしていつ の間にか眠ってしまうのうつらうつら」よりさらに意識 が薄れている状態。目が覚めかかっているときでなく、多 くは眠りかけるときのようすを形容する。りうつらうつら うとうとする浅く眠りかける意で、会話や改まらない文章 などに使う語。本を読みながらー〉の「まどろむ」や「居 眠りする」が行為をさすのに対し、この語はそのような状 <96> うどんこ 態を表すのに重点がある。Q居眠りする・まどろむ うどんこ【艦飩粉】「小麦粉」の別称。くだけた会話でしばし ば使われるが、正式な感じでは「小麦粉」を用いるのがふつ う。〈ーをこねてのばす〉うどんの材料という連想が働 く。ひQ小麦粉・メリケン粉 うながす【促す】そうするように人に勧める意で、いくぶん 改まった会話や文章に用いられる和語。〈注意を—〉〈参加 を—〉〈再考を—〉②寺田寅彦の『団栗』に「早くしないか と大声で—」とある。「成長を—」のように「早める」意に も使う。刂催促・勧める・促進・Q督促 うなじ【項】頸部の後ろ側をさして、改まった会話や文章に 用いられる、やや古風で時に美的な感じを伴う和語。色が 白くてーがきれいだ)「を垂れる)高見順の「故旧忘れ 得べき」に「黄昏どきの薄明さのなかで白く浮いた妻のー」 とある。専襟足・Q襟首・首筋・首根っこ・頸部 うなる【唸る】低い声を長く引くように出す意で、会話にも 文章にも使われる和語。ふうんうんーふふまりの痛みに思 わずーふ火野葦平の『黄尿譚』に「謡曲の節のような声を 出してー・っている」とある。「義太夫をー」のように苦し そうに聞こえる節まわしも含まれる。「観客をーらせる名 演技」のように、感心のあまり声や息をもらす場合もある。 比喻的に「風で電線がー」などともいう。ひ呋ゆく うぬぼれ【自(己)惚れ】自分のよきを実際以上に信じ込んで 得意になる意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和 語。〈美貌を鼻にかけるーはみっともない〉〈秀才だなんて ーもいいところだ〉〈ーもいい加減にしろ〉の『誹風柳多 留」に「ーをやめれば外に惚手なし」という川柳があるよう に、「うぬ」は自分のことで、自分で自分に惚れるという意 味のことば。思い上がり・思い上がる うばう【奪う】他人の所有している物や権利などを無理に取 り上げる意で、いくぶん改まった会話や文章に使われる和 語。〈金品を—〉〈権利を—〉〈行動の自由を—〉のリード を—」「機会を—」「注意を—」の他と争って得る意にも使 う。弔取り上げる・Qひったくる・ふんだくる・まきあげる うばぐるま【乳母車】中に赤ん坊を乗せて移動するための古 くからある四輪の箱型の手押し車をさし、会話にも文章に も使われるいくぶん古風で懐かしい感じの和語。ぐ幌がつき のー》③三好達治に『乳母車』と題する詩があり、「時はた そがれ/母よ私のーを押せ/泣きぬれる夕陽にむかって/ 轢々と私のーを押せ」とある。ひべピーカー うぶ【初/生】精神的に子供の純粹さを残して成長し、まだ 世間にすれていない意として、主に会話に使われる和語。 「な娘」《まだ「で世間がわかっていない》「初々しい」 のようなプラスイメージは特にない。Q初々しい・純情・純 真・ナイーブ うまい【旨い】味がよい」意の普通の表現だったが、「おいしい」が多用されるにつれて、男性がくだけた会話などで使う少しぞんざいな響きを感じさせることばになってきている。〈一寿司を食わせる店〉(この酒はこくがあって実に 」内田百閒の『めそ』に「(小鰻に)箸をつけたらちっと もー・くない。細い癖に、しんが固くて、口ざわりが突っ張 って、味が無い」とある。Qおいしい・美味 <97> うまい【巧(上手)い】技術が優れている意で、主に改まらな い会話に使われる和語。泳ぎがー〉〈話が実にー〉〈小さ い子に教えるのがー〉谷崎潤一郎の『細雪』に「この文章 などもー・く書けていた」とある。井伏鱒二の『山椒魚』に 「一考えがある道理はなかった」とあるように、自分にとっ て都合がいい意にも使う。Q上手・巧み うまる【埋まる】空所が物で満たされる意で、くだけた会話 から文章まで幅広く使われる日常の和語。〈道が土砂にー〉 〈一階が雪にー〉〈空席がすべてー〉②覆われるところに重 点のある「うずまる」に対し、空いているところが満たされ るところに重点がある。仮名書きでは「うずまる」との区 別が困難。ひうずまる まれつき生まれつき性格・センス・才能などが生まれた ときにすでに備わっている意で、会話やさほど硬くない文 章に使われる日常の基本的な和語。〈ー器用にできている〉 〈強情なのはーだ〉ひQ生まれながら・生来 うまれながら【生まれながら】持って生まれて来たの意で、 やや改まった会話や文章に用いられる、やや古風な言いま わし。〈ーにして身につけている〉〈ーの不器用〉马Q生まれ つき・生来 うまれる【生まれる】新しい生命が誕生する意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈子供がー〉(五体満足にー)〈昭和十年に東京にー〉柳美 里の『水辺のゆりかご』に「私は夏至の早朝にー・れた」と ある。Q出生に生誕・誕生 み【海】地球の表面の広く塩水に覆われた場所をさし、くうむ だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈広いー〉〈ーの向こう〉〈ーを渡る〉〈ーで泳ぐ〉 〈ーの男〉の陸」と対立。井上靖の『猟銃』に「チュープ から搾ってなすり付けたようなプルシャン・プルーの、真冬 の、陽に輝いたー」とある。淡水の湖沼をさす場合は「湖」 と書いて「うみ」と読ませる。専Q海洋・大洋 うみづき【産み月】出産予定月の意で、会話や硬くない文章 に使われる、やや古風な和語。〈—に入る〉み臨月 うみべ【海辺】海に近い陸地をさし、会話にも文章にも使わ れる日常の和語。〈1のホテル〉〈朝のーを散歩する〉り機・ 治岸・海岸・海浜・Qかいへん・岸・岸辺・なぎさ・波打ち際・浜・浜辺・み ぎわ・水際・水辺 うむ【生む】新たな存在を生ずるという意味合いで用い、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈男の子を—〉〈大作家を—〉〈傑作を—〉〈利益を —〉の「産む」が分娩に主眼があるのに対して、「生む」は 誕生に主眼がある。「子供を—」場合はどちらの表記も可能 だが、それぞれニュアンスが異なる。志賀直哉の『暗夜行 路』に「拘泥する結果が二重の不幸を—」とあるように、抽 象的意味合いではこの表記。ひ産む うむ【産む】「分娩」「産卵」の意で、会話でも文章でも使わ れる和語。〈苦しみ〉〈猫が子を三匹〉〈鮭が卵を〉 深沢七郎の『檜山節考』に「ねずみのようにたくさん子供を 」とある。人間の場合はお産をイメージした場合の表記。 卫生む うむ【膿む】傷ついた皮膚が細菌などによって膿みを持つ意 <98> うむ で、会話やさほど改まらない文章によく使われる、専門性 の薄い日常の和語。〈傷口がー〉乃化臘 うむ【倦む】物事に「飽きる」意で、主に文章中にまれに用 いられる古風な和語。「ー・まずたゆまず努力する」正宗 白鳥は「何処へ」で「雨滴は同じ音を繰り返し、鼠もー・み もせずに騒いでいる」と外界を描写することで心境をほの めかした。ひ飽き飽きする・飽きる・Q飽く・うんざり・倦怠 うめく【呻く】あまりの苦痛に思わず声が出る意で、会話に も文章にも使われる和語。〈病人が—〉〈苦しそうに—声〉 ②石坂洋次郎の『草を刈る女』に「獣めいた声でー・いて」 とある。「唸る」と違って、感動のあまり声が漏れるよう な場合には使われず、もっぱら苦しみについての表現。ひ唸 る うめる【埋める】窪んだ場所や空いているところに何かを入 れてふさぐ意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われ る日常の和語。〈水道管を—〉〈池を—〉〈さつま芋を落ち 葉に」〈土を掘って死体を—〉〈大観衆が広場を—〉〈欠 員を—〉の「熱過ぎる湯を水で—」のように、注ぎ足して 温度や濃度を調整する意もある。「うずめる」と明確に区別 するには仮名書き。うずめるはめる うもれる【埋もれる】何かの中に入って外から見えなくなる 意で、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な和語。 〈園路が落ち葉に」〈田舎に」〈1・れた人材を発掘す る〉の「うずもれる」とはっきり区別したい場合は仮名書 き。りうずもれる うやまう【敬う】優れた存在として尊敬し丁重に接する意で、 会話にも文章にも使われる、いくらか古風な和語。神を ー〉〈師をー〉〈年長者をー〉の「崇める」より軽く、人間に 対しては現在「尊敬」のほうが一般的。「侮る」「蔑む」と対 立。夢崇める・崇敬・崇拝・尊敬・たっとぶ・とうとぶ うやむや【有耶無耶】あるのかないのか、どうなっているの かがはっきりしない意で、会話や軽い文章に使われる表現。 〈話をーにする〉〈責任の所在がーになる〉自然に生じる 感じの「あやふや」「おぼろげ」に比べ、わざとはっきりさ せないでごまかす感じが強い。「有や無や」の意から。Q 曖昧・あやふや・おぼろげ うら【裏】目立つ正面・表面に対して、後ろ側や内側など人の 目につきにくい部分をさし、くだけた会話から硬い文章ま で幅広く使われる日常の基本的な和語。〈通り〉〈星根 ー〉〈一の畑〉〈足の一〉〈着物の一〉〈一を返す〉「おも て」と対立。具体的な事物だけでなく、「事情」「にま わってあれこれ画策する」「業界の一を知り尽くす」「こと ばの一を読む」のように、隠れていて人の目にふれにくい 部分をさして広く使う。本来は外に面していない「内」と いう意味で、「浦」も入り江を意味し、人の内側にあって外 から見えない「心」を意味する「うらさびしい」「うら恥ず かしい」の「うら」と同語源だが、そういうつながりが忘れ られ、今では「街道」「長屋」「金」「取引」「口 入学」「一番組」「一切る」「目に出る」といった連想が働 いて、好ましくないイメージがつきまとっている。裏面 うらがえす【裏返す】表と裏の面を逆にする意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈座布団を一〉〈畳を一〉、複す・Q <99> 引っくり返す うらがなしい「心悲しい」「物悲しい」気分をさし、改まった 会話や文章に用いられる古風な和語。〈秋の暮れ〉へー気 分に襲われる〉の「うら」は心の中の意。岡本かの子の母 子叙情』に「沖の遠鳴りのような、ただー、なつかしい遣瀬 なさ」とある。専哀愁・悲しい・悲哀・ペーソス・Q物悲しい つらぎる【裏切る】信頼・期待・予想などに反する意で、くだ けた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。〈仲間を ー〉〈祖国をー行為〉〈予想をー〉〈期待をー〉〈信頼をー〉 ひQ背く・反する うらごえ【裏声】特別な発声法で作り出す平常より高い声を さし、会話にも文章にも使われる和語。〈ーを出す〉へーで 歌う》の幸田文の『流れる』に「ーに怨みっぽく云われると 主人の声はばかに冴えて聞える」とある。「地声」と対立。 うらどおり【裏通り】表通りの家並みの裏にある道をさし、 会話にも文章にも使われる和語。〈商店街のー〉へーに入る と静かだ》の久保田万太郎の『余白』に「門のある家ばかり 両側につづいたそのー」とある。「表通り」と対立。単なる 位置関係だけでなく、寂れたうらさびしい感じが伴う。 Q裏町・小路・小道・横町 うらない【占い/ト】人の運勢や物事の吉凶などを予言する ことをさし、会話にも文章にも使われる和語。〈星ー〉へ 師〈ーを信じる〉易もの一種。易 うらにほん【裏日本】かつて「日本海側」の意で用いられ、 差別意識があるとして使用を控えるようになった語。〈1一 帯が厚い雲におおわれる〉の東京を表玄関とすれば太平洋 うらばなし 側が表日本になり、ロシア側を向いている日本海側が裏日本ということになる。南に面する位置を正面とする考え方に立っても、太陽の位置との関係を基準にしても同じ結果になる。もともと「裏」という漢字は衣服の裏側すなわち内側の意という。表側より体に近く、それだけ人体の中心にも近い。肉体の内側に宿る精神という意味で、「内」としての「うら」は心をも意味し、「恨めしい」「うら寂しい」「うら恥ずかしい」「うらやましい」などの関連語を生み出した。「浦」も外海に対して内側にあたる入り江で内側をきす。その点を重く見れば、「裏日本」は日本の内側で日本の中心を意味するような解釈も可能であるが、現代日本語での「裏」の使用状況はその逆である。「裏門」は正門より格が下で、正式の客を迎える表玄関に比べ、御用聞きが声を掛ける「裏口」は一般に粗末な造りである。「裏通り」「裏道」「裏番組」には正式でないという印象があり、「裏町」はわびしく、うらぶれた感じがつきまとい、「裏街道」「裏取引」「裏金」などになると不正を働く意味合いが強く、犯罪のにおいも漂う。「裏切る」のはよくない行為であり、「裏目に出る」のも予想に反して悪い結果になった場合であり、逆に予想外の好結果が得られたときには使わない。そのような日本語の環境が影響して、「裏」という語にはマイナスイメージが色濃く、人びとに嫌われる。 うらばなし【裏話】一部の人だけが知っている内輪の話をき し、会話にも文章にも使われる和語。へーを披露する〈大 政奉還のー〉の公式の記録としては残らないという意味合 いが強い。処逸話・エピソード・こぼれ話・挿話・Q余話 <100> うらまち うらまち【裏町】裏通りに面した町の意で、会話にも文章に も使われる古風な和語。〈ーをさまよう〉〈ーにひっそりと 暮らす〉〈ギター片手にーを流す〉②沢村貞子の『味噌汁』 に「それ(自分の家の味噌汁)を二杯も三杯もおかわりして、 浅草のーの人たちの、一日がはじまった」とある。「ー人 生」のように、うらぶれたペーソスを漂わせる語。専裏通り 小路・小道・Q横町 うらむ【恨(怨)む】相手から受けた不快な仕打ちを根に持つ 意で、会話でも文章でも使われる和語。〈親を—〉〈冷たい 仕打ちを—〉坂口安吾の『桜の森の満開の下』に「もはや 怒りは消えていました。つれなさを一切なさのみが溢れて いました」とある。「怨む」と書くと、「恨む」以上に深い情 念がこもった感じがする。夢憾む うらむ【憾む】残念に思う意で、改まった会話や文章に用いられる。〈一瞬の遅れがー・まれる〉乃恨む うらやましい【羨ましい】恵まれている他人に対し、自分も そうならいいのにと思う気持ちをさし、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈合格者がー〉 〈時間のある人がー〉〈遊んで食っていけるとはー〉の瀧井 孝作の『無限抱擁』に「いま信一は、其男を蔑むよりも寧 々ー・かった」とある。憎しみの混じる「妬ましい」ほど強 くない。ひねたましい らやむ【羨む】自分より恵まれたように見える人に対し、 自分もそうありたいと羨ましく思う意で、会話でも文章で も広く使われる、やや古風な感じの和語。「羨ましい」ほど 会話的ではない。〈人も仲〉〈後輩の出世を〉回寺田寅 彦の『科学者とあたま』は「ーべき優れた頭のいい学者」と 「ーべく頭の悪い立派な科学者」とを対置させて一編を閉じ る。Q姫・姫み うららか【麗らか】日の光がのどかに照っているようすをさ し、主として文章に用いられる古風で美的な和語。「な日 和〉へに晴れた春の一日》③三好達治の詩『甃のうへ』に 「の登音空にながれ/をりふしに瞳をあげて/翳りな きみ寺の春をすぎゆくなり」とあるように、この語は春に 限定して用いる。「や猫にものいふ妻のこゑ」という日野 草城の句もある。「な気分」のように、季節に関係なく、 心配事のない明るい心境をさす用法もある。ひのどか うりかた【売り方】物件や品物を売る立場にある人をさし、 会話にも文章にも使われる、やや古風で専門的な感じの和 語。へーの腕次第だ)②「一次第で売れる」のような売る方 法の意味では専門性が感じられない。専売り手・Q売り主 うりこ【売り子】店や車内などで客に物を売る職業の人をさ し、会話や改まらない文章などに使われている和語。「デパ ートの」〈駅の売店の」〈車内販売の」「店員」に比 べ、若い人、特に女性を連想しやすく、老舗の個人商店やス ーパーマーケットのレジ係などをイメージする割合が低い ような感じがある。店員 うりだし【売り出し】大々的に宣伝して売る意で、会話にも 文章にも使われる日常の和語。〈開店大ー〉へー期間中〉② 値下げしたり景品を付けたりして買い手の得になる売り方 を連想しやすいが、「新型車のーの時期を迎える」のよう に、単に製品を発表して売り始めることをさす用法もある。 <101> ひQセール・叩き売り・ダンピング・特売・投げ売り・バーゲン・安売 り・廉売 うりで【売り手】物件や品物を売る側の人、特に、売る側に 立つ仲買人の意で、会話にも文章にも使われる和語。「市 場」への言い値で買う」児方・売り主 うりぬし【売り主】売る物件や品物の所有権を有する持ち主 をさし、改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な和 語。〈信用できる—〉〈ーがその物件を買い戻す〉ひ売り方 売り手 うりね【売値】品物を売るときの値段の意で、会話や軽い文 章に使われる和語。〈ーを決める〉〈ーをたたく〉り言い値・ Q売価だ うりふたつ【瓜二つ】顔などが似過ぎて区別ができない意で、 会話にも文章にも使われる古風な和語。〈あの双子は顔が ーでよく間違える〉の血縁がある場合にも他人の空似の場 合にも言う。一つの瓜を半分に割ったときにどちらも同じ に見えるところから。ひQ生き写し・そっくり うりもの【売り物】他人に売り渡そうとしている商品や物件 をきし、会話にも文章にも広く使われる日常の和語。「ーに つき持ち出し厳禁」〈汚れてーにならない〉〈飾ってあるだ けでーではありません〉回物品のほか不動産や企画などを 広く含む。また、「駿足とかがーの選手」「爽やかな笑顔が ーのタレント」「ユニークなデザインがーの機種」のよう に、持ち味やセールスポイントをさす比喩的拡大用法もあ る。商品 うる【売る】代金と引き換えに品物や権利などを相手に渡す うれい 意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。〈品物を—〉〈家屋敷を—〉〈安く—〉夏 目漱石の『坊っちゃん』に「道具屋を呼んで来て、先祖代々 の瓦落多を二束三文にー・った」とある。「買う」と対立。 売却 「頃い/五月蠅い」耳障りな声や音がいつまでも続いて、落ち着かない気分でいらいらする意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。「おしゃべりが多くて教室が ー〉〈夜中まで車の音がー〉の騒がしい」「騒々しい」より 不快な感じが強い。「額に垂れ下がった髪の毛がー」「目の 周りに藪蚊がしつこくまつわりついてー」のように、音 がしなくても、しつこくて神経に障る場合には使える。尾 崎一雄の『虫のいろいろ』に「蠅はー。(略)布団にあごまで 埋めた私の顔まで遊び場にする」とある。また、「世間の目 がー」のように、煩わしくて逃れたい意にも、「味にー」 「注文がー」のように、細かい点までこだわる意にも使う。 ひ騒がしい・騒々しい・にぎやか・Qやかましい うるわしい【麗しい】「美しい」に近い意の和語で、雅語的な 雰囲気を漂わせる若干古風な文章語。会話では浮いた感じ になりやすい。〈見目ー令娘〉〈友情〉〈ご機嫌ー〉②阿川 弘之の『雲の墓標』に「完璧な社会でも、社会でもない」 とある。ひQ美しい・綺麗 うれい【憂い】心配の意で、主として文章に用いられる、や や古風な和語。〈倒産のーがある〉〈備えあればーなし〉 〈後顧のーなく〉円地文子の『女坂』に「若い肉体を蔽っ ていたーは薄衣の滑り落ちるように消えた」とある。 <102> うれい 愁・愁い・寂寞・寂寥 うれい【愁い】情緒的な物悲しきの意で、主として文章に用 いられる、古風でいくらか詩的な感じのある和語。春の ー〉へーを含んだ目〉《深いーに沈む》③林房雄の『青年』に 「青々としたーが風のように吹きかえってくる」とある。 哀愁・憂い・寂寞・寂寥 うれしい【嬉しい】満足して晴れ晴れした気分をさす基本的 な和語で、くだけた会話から硬い文章まで広く使われる日 常語。〈やっと就職できてー〉〈子供がいい成績を取って、 親としてー〉。尾崎一雄の『まぼろしの記』に「・くて、 宙に浮いているような気持だった」とある。自分の行動や 体験でなく、好ましい情報を得るだけの場合でも使える。 Q楽しい・喜ばしい うれしがる【嬉しがる】嬉しい気持ちが表情や言動に出る意 で、うちとけた会話や硬くない文章に使われる日常の和語。 〈合格できてー〉〈結婚が決まってー〉〈試合に勝ってー〉 夏目漱石の『吾輩は猫である』に「友人の迷惑はまるで忘れ て、一人ーった」とある。専喜ぶ うれのこり【売れ残り】売れ残った商品の意から転じて、結 婚適幹期を過ぎた女性をさし、くだけた会話で使うことの あった俗語。入社早々の若い子が結婚すると、ー連中がど う言うだろうね)女性が婚期を逸して独身でいるのを売 れ残りの商品にたとえた表現。小津安二郎監督の映画『麦 秋』に、たみ(杉村春子)から息子の嫁にと懇願されたとき、 紀子(原節子)は「ねえ小母さん、あたしみたいなーでい い?」と応じる場面がある。現代では女性差別のニュアン スがあるとして使用を控えているため、それだけで古風な 会話に響く。独身・独り身・独り者・未婚 うれる【熟れる】果実が十分に実って食べごろになる意で、 会話にも文章にも使われる日常の和語。〈実がー〉くよく ー・れた桃〉回「ー・れた肉体」などと、大人の体に成長した ことをさす俗っぽい比喻的用法もある。鳥熟する うろうろどうする当てもなく、あるいは、どうしていいか わからずにうろつくようすをさし、会話や軽い文章に使わ れる擬態語の和語。〈盛り場を—する〉〈あてもなく—す る〉〈突然の申し出に—する〉②誰かがそのように歩きまわ っているようすを別の人が外から見て表現した感じの例が 多い。数分程度の様子をさす「まごまご」と違い、長い時間 にわたる場合もある。ひQうろちょろ・まごまご うろたえる【狼狽える】予期せぬ出来事にどうしたらいいか わからず処置に迷う意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈突然の指名にー〉〈策略がばれてー〉「ー・えた様子もな く」もあわてる・ろうばい うろちょろくだけた会話に使われる、「うろうろ」の俗語形。へさっきから家のまわりをーしてる変な奴がいる)りうろうろ・まこまこ うろつく目的もなく歩きまわる意の和語。会話的なレベル の語。〈盛り場を—〉〈変な男がこの界隈ぶぶをー・いている〉 のほっつきまわる」ほど俗語的ではない。小池滋の『行間 を読む』に「未練が残って自分の昔の本が置いてある古本屋 のあたりを、ー・いていた」とある。乃ほっつきまわる うわき【浮(上)気】心がうわついて落ち着かず変わりやすい <103> 意、特に夫婦や恋人が気まぐれに他の異性に心を移して情 事に及ぶ意で、会話にも文章にも使われる和語。「な性格 でいろいろ手を出す〉へのやまない亭主〉への虫を封じ る〉へがばれる〉うわついた気持ちをさすので、他の異 性を本気で真剣に愛した場合は、「不倫」に該当するもの の、この語を用いるのはふさわしくない。Q移り気・不倫 うわさ【噂】当人のいないところで話題にしてあれこれ言う こと、世間に流れている不確かな情報をさし、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈風のー〉への人〉へが立つ〉へが広がる〉へがを 呼ぶ〉へそのーでもちきりだ〉への出所を突き止める〉 牧野信一の『鬼涙村』に「障子の穴から覗くように他人のー を拾い集めて吹聴する」とある。特に、真偽の定かでない 事柄について興味本位に言いふらすものが多い。世評・Q 評判・風説・風評・風聞 うわずる【上擦る】興奮から気持ちや声が平常の状態を失う 意で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈声がー〉〈気 持ちがー〉内田百閒の『掻癢記』に「(頭にぐるぐる包帯 を巻かれ)首だけが、ひとりでに高く登って行く様な気持も して、ーった足取りで家に帰って来た」とある。ひ上気 うわぜい【上背】身長の意で、会話にも文章にも使われる、 いくぶん古風な和語。〈ーがある〉〈ーに恵まれる〉幸田 文の『流れる』に「電柱とあだなされるーの高さが胸を反ら せて威丈高だが」とある。「ーがないだけに条件は不利だ」 のように背の低いときにも使えるが、一般に長身の人につ いて用いる例のほうがはるかに多い。身長・背②・Q背丈・身 の丈 うわつら【上面】物の外に面している部分をさし、会話や硬くない文章に使われる和語。「はごつごつしているが中はやわらかい」の「人も物事もだけで判断してはいけない」というふうに、内容や精神と切り離した外面的なことを問題にする場合によく使う。重要な中核部分にふれないという非難が含まれる。くだけた会話では「うわつら」とも言う。Qうわべ・おもて・皮相・表層・表面 うわばみ【蟒】「だいじゃ」の俗称として、会話にも文章にも 使われる古風な和語。「が一飲みする」特に熱帯産のニ シキヘビなどを連想しやすい。物を多量に飲み込むという イメージから、俗に大酒飲みの意ともなる。具Qおろちだい じゃ うわべ【上辺】物の外面をさし、会話やさほど硬くない文章 に使われる和語。「は綺麗だが品質がよくない」「を飾 る」〈人をだけで評価する」具体的な部分を感じさせる 「うわら」に比べ、この語は「をつくろう」「は穏やか だが、気性は激しい」のように、ちょっと見た感じが実際と 異なる場合に良く使う傾向がある。Qうわつら・おもて・皮 相・表層・表面 うわやく【上役】職場で自分より上の地位にある人の意で、 会話やさほど改まらない文章に使われる和語。「に相談 する〉へにかわいがられる〉②「上司」に比べ、時代がさ かのぼっても用いやすく、そのぶん現代ではいくらか古風 な感じがある。马上司 うん肯定やあいづちの感動詞。へいいよへいそのと <104> うん おりだ夏目漱石の「坊ちゃん」に「、あの野郎の考 じゃ芸者買は精神的娯楽で、天麩羅や、団子は物質的娯楽な んだろう」とある。改まったほうから「はあ」「はい」「え え」「うん」の順になる。込ええ・はあ・はい うん【運】幸運と不運、幸福や不幸をもたらすと信じられて きた、人為を超越した作用の意で、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈ー試し〉へーがい い〉くよくよくーがない〉〈勝負は時のー〉へーを天に任せ る〉〈ーが尽きる〉②「ー不運」「ーがつく」「ーが向く」の ように、それだけで特に幸運を意味する用法もある。刂運 勢・Q運命・宿命・天運・天命・回り合わせ・命運・巡り合わせ うんえい【運営】組織や機構などを円滑に動かす意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈一委員会〉〈組織をーする〉 〈大会をーする〉刂経営 うんこ 粪の意で、主にくだけた会話に使われる日常生活の 和語。〈ーが出る〉「うん」は息む声からという。小津安 二郎監督の映画『麦秋』に、親子三代が集まってお別れのス キャキの宴が開かれ、みんな満腹したところで孫が不意に 立ち上がって「ウンコ」と言ってみんなが笑う場面がある。 こんなふうに自然のままがほほえましいのは、かわいい子 供の特権である。ひQうんち・くそ・人糞・大便・ふん・糞便・便 うんざり同じ物事が続き飽きてすっかり厭れになる意で、会 話や軽い文章に使われる和語。ヘこう同じ料理が続いては ーするヘ雨続きでーする論理的な「飽きる」に比べ、 体感的・生理的な感じが強い。島崎藤村の『夜明け前』に 「長い、長い、考えてもーするような信州の冬」とある。 飽き飽きする・Q飽きる・倦む・倦怠 うんせい【運勢】占いによって推測される幸運・不運の巡り合 わせの意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈判断〉 〈ーを占う〉〈今月はーがいい〉の一定期間あるいは将来に ついて占うことが多い。Q運・運命・宿命・天運・天命・回り合わ せ・命運・巡り合わせ うんそう【運送】人や貨物を乗り物で比較的遠く運ぶ意で、 会話にも文章にも使う漢語。〈ー貴〉〈ー業〉〈ー会社〉〈ト ラックでーする〉り運搬・運ぶ・搬送・Q輸送 うんち「うんこ」の意で、主に子供が会話で使う俗語。 が漏れそう)の「うん」は息む声からという。「うんこ」が 一般的すぎるために、大人が照れてこの語を使うこともあ る。ひQうんこくそ・人翼・大便・ふん・糞便・便 つんちく【蘊(薔)薈】長い間に薈えた学問や技芸などの深い 知識をさし、改まった会話や文章に用いられる、やや古風な 漢語。〈ーを傾ける〉Q学識・知識 うんてん【運転】乗り物や大型の機械を動かす意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈試 ー〉〈安全ー〉〈ー免許〉〈ー間隔〉〈機械をーする〉〈ーを 見合わせる〉「ー資金」のように、企業の日常的な経営を さすこともある。刂操縦 うんてんし運転士運転手や船舶の運航に携わる人をさし、 会話にも文章にも使われる正式な感じの専門的な漢語。〈船 長がーに指示を与える〉は運転者・運転手・Q操縦士 うんてんしゃ【運転者】乗り物などを運転する人をさし、専 門的な会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。へーの <105> マナー〉〈ーの過失〉「運転手」のような職業的な雰囲気 はない。刂運転士・Q運転手・操縦士 うんてんしゅ【運転手】乗り物の運転を職業とする人をさし、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の漢語。 〈お抱えー〉〈タクシーのー〉法律上は「運転者」とする が、日常生活にはなじまない。刂運転士・Q運転者・操縦士 うんと「たくさん」の意で、くだけた会話に使われる俗っぽ い和語。〈一勉強して偉くなるんだ〉〈今のうちにー食べて おく〉量だけでなく、「今朝はー早く起きた」「一頑張る」 のように、程度の甚だしい意でも使う。刂一杯・多い・しこた ま・沢山・たっぷり・たんと・たんまり・どっさり うんどう【運動】健康や娯楽のために体を動かす意で、会話 にも文章にも使われる日常の漢語。〈|靴〉〈|競技〉〈| 不足〉〈準備〉〈|は苦手だ〉〈激しい|をする〉のスポ ーツ」のような一定の競技だけでなく、「階段を歩いて登る のは|になる」のように幅広く使う。また、「反対|」「選 挙|」のように、目的達成のための働きかけをさす用法も ある。ただし、「政治|」「選挙|」「署名|」「就職|」な どは古風な感じになり、現在では「活動」のほうが一般的。 Q活動①・スポーツ うんどうぐつ【運動靴】学校などの運動用の靴の総称として、 会話でも文章でも広く使われる伝統的な用語。〈先日買った ばかりの新しいーをおろす〉学校の体育の時間を連想さ せる実用品で、「スニーカー」のようなお洒落な感じはな い。ひスニーカー・Qスポーツシューズ うんどうじょう【運動場】屋外の体育や遊戯などに使うため うんよう の広場をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーが狭 いへーを走りまわる〉へーで遊ぶ〉「競技場」よりも多目 的で、特に学校のイメージが強い。月球場・競技場・グラウン ド・Qグランド・コート・スタジアム・野球場 うんばん【運搬】重い荷物などを比較的近くに運ぶ意で、会 話にも文章にも使われる日常の漢語。〈車〉〈業務を請 け負う〉〈引っ越し荷物を近くのマンションまでーする〉 「運送」より小規模で、「大型トラックで材木をーする」の ように乗り物を用いるほか、「台車で機械をーする」「猫車 で砂をーする」のように運搬用の道具を用いる場合もある。 手で本を二、三冊運ぶような場合にこの語を使うのは大げさ だが、全集を十冊以上まとめて運ぶような場合は手で抱え てもこの語を使って違和感がない。ほとんどは物資を運ぶ 場合の例であるが、まれに「病人ー車」のように人間の移送 にも使うことがある。ひQ運送・運ぶ・搬送・輸送 うんめい【運命】人間の想像を超越した吉凶現象をさして、 やや改まった会話や文章に用いられる日常の漢語。〈ー論〉 へー的な出会い〉(そういうーにある〉へーのいたずら〉(何 事もーと諦める)岡本かの子の『落城後の女』に「人によ い籤を抽かれて自分は残りの籤を抽いてしまうー」とある。 専運・運勢・宿命・天運・Q天命・回り合わせ・命運・巡り合わせ うんよう【運用】規則や資金などをうまく使う意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈法のー〉〈ーの範囲〉 〈資金をーする〉Q活用・駆使・利用 <106> え え え【柄】手で持つために取り付ける棒状の部分をさし、会話 にも文章にも使われる和語。〈傘のー〉〈柄杓のー〉 が折れる〉ひ取っ手・Q握り・ノブ え【絵(繪)】対象の姿かたちやようすなどを線や色で平面上に視覚的に表現したものをさして、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈花のーをかく〉へーが大好きな子〉へーを飾る〉林芙美子の『茶色の目』に「生々しい絵具を投げつけたような、わけのわからない」とある。「絵画」と違い、どんなに簡単なものや下手な作品であっても、この語を用いるのに違和感がない。また、「が乱れる」のように、映画やテレビの画面の意味でも使われる。なお、「画」という漢字をあてることもあり、「かき」「ふで」「した」「うきよ」のように使われて和語の雰囲気があるが、「エ」は漢字「繪」の呉音。ひ画・Q絵画・図・図画 エアコン室内の空気の温度や湿度を調節するための電気器 具をさす和製英語。ふうかりーを消し忘れる〉へーの利き が悪い〉の「エアーコンディショナー」の構成要素のそれぞ れ語頭を組み合わせた語形。会話では「空調」以上によく 使われる日常生活のことば。ひ空調 エアホステス女性の客室乗務員をさす古い外来語の呼び 名。航空機で女性の客室乗務員を「スチュアデス」に代わ って一時盛んにこう呼んだが、パーやキャパレーのホステスを連想させるとして衰退した。専客室乗務員・キャビンクルー・Qスチュアデス・フライトアテンダント えいい【鋭意】一つのことに気持ちを集中させて熱心に取り 組む意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「 努力する〈ー検討中〉、Q精一杯・力一杯 えいえい【営営】ゆとりのない気持ちで励む意で、主に文章 に用いられる古風で硬い感じの漢語。へと職務に励む えいえん【永遠】果てしなく長い間、いつまでも限りなく続くようすをさし、日常会話より、改まったスピーチや文章中に使うことが多い漢語。〈ーに残る〉〈ーの真理〉〈ーの愛を誓う〉〈ーに栄えあれ〉時を超えたニュアンスを帯びるため、しばしば賞め讃えることばとして用いられる。竹西寛子は『モーツァルト交響曲四〇番ト短調に』と題する短章で「はかなさにいてーを夢みる心を刺激する」とその曲の印象を語った。野球の長嶋茂雄が選手引退のスピーチの際に、「わたしは今日引退をいたしますが、わが巨人軍は永久に不滅です」と発言したのが、いつのまにか「永遠に不滅」という形に姿を変えて多くの人びとの記憶に残ることとなった不思議な現象は、時を超越した栄光を讃えることばとしては、「永久」より「永遠」のほうがさらにふさわしく耳になじむとする日本人の語感を物語る事実である。何時までも・Q永久・永劫・恒久・とこしえ・とこしなえ・とわ・悠遠・悠久 えいが【映画】高速度で連続撮影したフィルムの映像をスク リーンに映して動きを感じさせる装置や映像作品をさし、 <107> くだけた会話から硬い文章まで幅広く使える、現代では最 も普通の日常漢語。〈—俳優〉〈無声—〉〈記録—〉〈—界の 全盛期〉〈—を上映する〉〈—を鑑賞する〉吉行淳之介の 『海沿いの土地で』に「都会に住んでいるときは、ほとんど ーを見ない」とある。専活動②・Q活動写真・キネマ・シネマ・ム ーピー えいかん【栄冠】勝利や成功の意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈初のーを手にする〉〈ーを勝ち取る〉② 栄誉のしるしとしての冠の意から。Q栄光・栄誉・栄え・誉 れ・名誉 えいきゅう【永久】「永遠」に近い意味で用い、「永遠」に比べ、日常会話から硬い文章まで幅広く使える漢語。「不変」へに解決できない藤枝静男は『難祭り』で「やがては土となり水となり空気と化してに虚空に姿を消してしまう」と人の死をとらえている。「永遠」という語で代替の利かない「歯」「磁石」「追放」「半」的」のような用法が可能であるという事実からも、どこまでも果てしなく無限に続くといった意味を共有しながら、この「永久」はあくまで時間軸に沿ってものを考えているという区別が見られる。り何時までも・Q永遠・永劫・恒久・とこしえ・とこしなえとわ・悠遠・悠久 えいきょう【影響】一つの物事が他に作用して変化を与える 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈台風の—〉〈—を 与える〉〈—を及ぼす〉〈—を受ける〉〈—が出る〉〈—が大 きい〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「品性にわるいーを及 ぼす様になる」とある。Q波及・波紋・余波 えいぞう 元いぎよう【営業】営利事業、特に商品の販売業務を行う意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーマン〉〈ー中〉〈ー 停止〉〈風俗ー〉二十四時間ー〉単商売 えいこう【栄光】輝かしい成功やその誉れの意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈ーの日々〉〈勝利のーに輝 く〉〈昔のーを忘れかねる〉巻冠・Q栄誉・栄え・誉れ・名誉 えいごう【永劫】「永久」に近い意味で用いる、仏教的・哲学 的な雰囲気をもつ硬い漢語の文章語。〈未来—〉国木田独 歩の『死』に「死者が未来に—の生命を有つという信仰」と ある。り何時までも・永遠・Q永久・恒久・とこしえ・とこしなえ・と わ・悠遠・悠久 えいじ【嬰児】生まれてから二、三年以内の幼い子供の意で、 文章に用いられる硬い感じの漢語。「を背負って家事に追 われる母の姿》永井龍男の『一個』に、抱き直される瞬間 「両手を挙げたまま、が宙に浮かぶように見えた」という 場面がある。赤子・赤ちゃん・Q赤ん坊・みどり」 えいせい【衛生】体や物や部屋などを清潔に保ち健康を守る 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈公衆—〉〈管理〉 〈一面に気を配る〉谷崎潤一郎の『蓼喰う虫』に「非」的 な歯を治療しようともしないところに無智な女の哀れさが あった」とある。「不衛生」と対立。清潔 えいぞう【映像】光によって映し出される像、特にテレビな どの画像や、頭の中に描き出されるイメージなどをさして、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈美しいーを届 ける〉〈ーが乱れる〉〈若き日の母のーが浮かぶ〉②村上龍 の『イルカ』に「頭の中にあったーがひとつひとつ広い部屋 <108> えいねん の電球を消すように暗い何もない無になっていく」とある。 Qイメージ・印象・感じ・心象・心像・表象 えいねん【永年】長い年月の意で、主に文章に用いられる硬 い漢語。〈—勤続で表彰される〉「永年勤続」以外の用例 は少ない。損年・多年・Qながねん えいびん【鋭(穎)敏】感覚・神経が小さな刺激にも早く強く反 応する様子をさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈感受性がだ〉へに反応する)島尾敏雄の『われ深き ふちより』に「あの視覚ばかりになって発達してしまった 皮膚のうすい熱っぽい、自らを制御できなくなった困惑に 満ちたまぶたに一種の幼なさをただよわせた眼」とある。 「遅鈍」と対立。鋭利・シャープ・鋭い・Q敏感 えいみん【永眠】「死ぬ」ことを意味する慣用的な漢語の間接 表現。主として改まった文章に用いる語。〈祖父の—の地〉 ②島崎藤村の『破戒』に「父の—の地」とある。死を忌む気 持ちから、その現象を希望的発想から睡眠ととらえ直し、 「永い眠り」「永久の眠り」と解釈して見せた比喻的表現。 ぴ敢え無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・ 息を引き取る・往く・いけなくなる・往生・お隠れになる・落ちる②・お めでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・ 逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる・儚 くなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷 る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 えいゆう【英雄】才知や武勇に秀で大きなことをなしとげた 人の意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈豪傑〉(国 民的—〉(われらが—〉〈視される〉(に祭り上げられ る)森鷗外の『雁』に「歴史家の好く云う、—の半面と云 ったような趣」とある。「色を好む」ともいうように、通 常は男性をさす。「雄」とあることもあり、女性を連想しに くい。専偉人 えいよ【栄誉】栄え・誉れの意で、やや改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈国民ー賞〉〈ーを担う〉〈ーに浴する〉 〈ーを讃える〉ひ栄冠・Q栄光・栄え・誉れ・名誉 えいよう【栄(営)養】生命の維持や体の成長に必要な成分を さして、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の漢語。〈素〉〈失調〉〈を取る〉〈になる〉〈 のバランス〉夏目漱石の『坊ちゃん』に「生卵でも をとらなくっちあ一週二十一時間の授業が出来るものか」 とある。滋養 えいり【鋭利】切れ味や頭の働きなどが鋭い意で、主に文章 に用いられる硬い漢語。〈—な洞察力〉井上ひさしの『犯 罪調書』に「冷たく光る—な刃物を握りしめ」とある。 敏・Qシャープ・鋭い ええ肯定の意を伝えたり、あいづちとして用いたりする感 動詞。「うん」より丁寧で「はい」ほどの改まりはない。 へいいわへいそうですとも夏目漱石の『坊っちゃ ん』に「あなたは大分御丈夫の様ですな」と言われて「、 瘠せても病気はしません」と応じる例がある。 りうんはあはい えがお【笑顔】友好的にほほえんでいる顔をさして、会話に も文章にも使われる和語。〈にこやかなーで迎える〉へーが かわいい〉へいつもーを絶やさない〉尾崎一雄の『芳兵 <109> 衛』に「おだやかな、相手の心を開かずには置かぬあのー とある。おかしくて笑い転げているときの顔については、 この語の使用がなじまない。夢い顔 えかき【絵(繪)描き】職業的な画家をさして、会話や軽い文 章に使われる日常の平易な表現。〈ーをめざす〉〈本物のー はやはり違う)日常会話では「画家」よりやわらかい感じ でよく使われる。絵師・Q画家・画工・画伯 えがく【描(画)く】絵や図に表現する意で、改まった会話や 文章に用いられる和語。〈静物を—〉〈街の風景を—〉〈念 入りに—〉田村俊子の『木乃伊の口紅』に「ペンで—い たような裸の梢」とある。川端康成の『雪国』に「人物は透 明のはかなさで、風景は夕闇のおぼろな流れで、その二つ が融け合いながらこの世ならぬ象徴の世界をー・いていた」 とあるように、単に「表す」意でも使う。単表す・Q書く・描 写・描出 えがら【絵(繪)柄】絵を用いた柄の意で、会話にも文章にも 使われる、やや専門的な和語。〈ーがすてきだ〉〈落ち着い たーの湯呑み〉専図案・Q図柄 元き【駅】電車などの発着する建物をさす日常の基本的な漢 語。〈通過〉〈一に近い商店街〉〈次の一で降りる〉丸谷 才一の初旅』に「遠い彼方に、西洋ふうのとがった屋根の ーが影絵のような風情でひっそりと控え」とある。「停車 場」のような古風な感じもなく、「ステーション」のように 人によって斬新に響いたり、逆に昔なつかしい雰囲気を漂 わせたりすることもなく、最もふつうに用いられる。ひQス テーション・停車場 エコー えき【易】陰陽を基本とする易経の原理にもとづいて自然や 人事の吉凶を予測する占いの一種をさし、会話にも文章に も使われる漢語。へーを立てる)占い えき【液】水状の物質をさして、会話にも文章にも使われる 漢語。水溶」〈果物を搾った」(が漏れる)〈醬油 と味醂を入れたにひたす〉抽象的な「液体」に比べ、 日常生活の具体的なものについて使う。身体 えきか【腋窩】「腋の下」の意で、主に文章中に用いる硬い 漢語。へーをさらす)三島由紀夫の『仮面の告白』に「 のくびれからはみだした黒い叢が、日差をうけて金いろに 縮れて光った」とある。ひ腋の下 えきたい【液体】体積は一定ながら流動性があって一定の形状をもたない物質の一つの状態をさし、やや改まった会話や文章に用いられるいくらか専門的な漢語。「燃料〉へが沸騰して気体に変化する」②温度が沸騰点に達すると気体に変わり、凝固点まで下がると固体に変わる。状態をさすため「液」より少し抽象的だが、のどがかわいて飲み物がほしいときには「液」でなくこの語を使う傾向がある。大江健三郎の『芽むしり仔撃ち』に「白澱したそのーはたとえようもなく酸っぱくて」とある。「液」に比べ、概念的なとらえ方の例が多い。 えきびよう【疫病】悪性の伝染病の意で、会話にも文章にも 使われる古風な漢語。〈ーにかかる〉〈ーに倒れる〉ひ感染 症・Q伝染病・流行り病・流行病 エコー「こだま」の意で、会話にも文章にもまれに使われる 外来語。〈ーが聞こえる〉死後に声だけが残ったというギ <110> えこじ リシャ神話の森の妖精の名から。「歌声に—がかかる」など として、放送などでの反響効果をさすことも多い。また、 近年、反射信号を利用して超音波診断を行う医療検査機械 「エコグラフィー」の略称ともなる。Qこだま・残響・反響・山 彦 えこじ【依怙地】意地を張って妥協を拒む意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈一になる〉〈一な人〉〈一な態度〉 「依怙」は「えこ最屓」の「えこ」で偏る意。「意固地」で 代用することもある。「いこじ」ともいう。意地っ張り片 意地・頑な・頑固・強情・強情っ張り えこひいき【依怙最員】自分の好きな人だけ不公平に大事に 扱う意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈先生の—〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「おやじは頑固だけれども、そ んなーはせぬ男だ」とある。応援する対象という連想の強 い単なる「ひいき」に比べ、この語は不公平感が前面に出 る。ひQ最員・偏愛・身観員・分け隔て えし【絵(繪)師】昔の絵描きをさして、会話にも文章にも使 われる古めかしい漢語。〈お抱えー〉へに襖絵をあつら える)の芥川龍之介の『地獄変』に「あの地獄変の屏風を描 きました、良秀と申すー」とある。古い時代でも洋画家に は用いにくい雰囲気がある。ひQ絵描き・画家・画工・画伯 えしゃく【会釈】挨拶のために軽く頭を下げる意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈軽くーをする〉〈ーを交わす〉 〈ーを返す〉森鷗外の『雁』に「窓の女にーをするように なってから」とある。巻捗・Qお辞儀・敬礼・最敬礼・目礼・黙礼・ 礼② エスピー【SP】要人警護のための私服の警察官をさし、主 として会話に使うABC略語。〈要人にーを配備する〉 「セキュリティ・ボリス」の頭文字SとPをとった略称。 働・Qボディーガード エスプリ 英語のウイットにあたるフランス語で、会話にも文章にも使われる。〈ーが利いている〉〈ーの利いた受け答え〉皮肉っぽく一件穏やかなイギリス風のウィットとはいささか趣が違い、フランス風のエスプリは、周囲を気にする遠慮やもったいぶった気取りなしに話される、辛辣で毒をもつが奥深く気の利いた短い話で爽快な笑いを誘う傾向がある。河盛好蔵『エスプリとユーモア』に出てくる「ポアンカレはなんでも知っているが、なにひとつわからない…プリアンはなんにも知らないが、なんでもわかる」というクレマンソーのことばや、「言葉というものは、自分の考えをかくすために、人間に与えられたものである」という政治家タレーランのことばなどはその好例。一般に体格がよくてゆっくり話すユモリストに対し、エスプリに満ちた人は痩せていて敏捷よくで早口だという大胆な区別は妙に説得力がある。ひウイット・機知・機転・頓智・ヒューマー・ユーモア えせ【似非】一見似ているが本物でない意で、主にくだけた会話に使われる俗語。〈ー学者〉〈ー文化人〉の似て非なりの意で「似而非」とも書く。ひにせ・Qまやかし エチケット現代の礼儀作法をさして、会話にも文章にも使 われる日常のフランス語からの外来語。〈西洋料理のー〉 〈ーに反する〉〈ドアを開けて先に通すのが女性に対するー だ〉小笠原流その他の日本の伝統的な礼法より、主とし <111> て戦後に移入された西欧風の社交上のマナーをさす傾向が ある。高田保は『ブラリひょうたん』の中で、エチケットは チケットと違うから必ずなければいけないというものでは ないと書き、小津安二郎監督の映画『麦秋』には、笠智衆が 「終戦後、女がーを悪用して、益々図々しくなってきつつあ」 り、「ーって、まるで男が女に親切にする法律か何かみたい に思っているけど」他人に迷惑をかけないのが「エティケ ット」の精神なのだと妻や妹をたしなめる場面が出てくる。 たしかにこの語には、「マナー」にはない、そんな雰囲気が 残っている。ひ行儀・作法・Qマナー・礼儀作法・礼法 エックスせん【エックス(X)線】波長が短く透過力が強いた め、物質構造の調査や体内疾患の検査に用いられる電磁波 をさし、会話にも文章にも使われる語。〈一写真〉〈一二重 造影法〉の「未知の光線」の意から。放射線・Qレントゲン エッセイ書き手の知性や感性の反映した随想をさして、会 話にも文章にも使われる外来語。〈文学的—〉〈雑誌に短い ーを掲載する〉形式にとらわれない評論や軽い論文など を含める場合もある。随筆をさす場合は垢抜けた感じがあ る。刂随感・随想・Q随筆 エッチ「性交」の意味でも使われることのある、特に気品に 欠けた俗語。〈—する〉の「変態」のローマ字表記の頭文字 を日本語風の発音で読んだ語形から。「—な話」のように、 一般には性に関するみだらな事柄を広くさすが、その行為 に限定した用法も見られる。啓み・関係②・合飲・交合・交接・ 情交・情を通じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く ②・契る・同衾・共寝・寝る②・懇ろになる・ファック・深い仲になる エラー 房事・枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 えて【得手】得意とする意で、主に会話に使われる古風な和 語。〈ー不得手がある〉〈あんまりーじゃない〉②「不」 「ーじゃない」のように否定的に使う例が多い。三島由紀夫 の『仮面の告白』に「この遊戯のーであった」とあるように 人をさす用法もあるが古風。刂得意② えにし【縁】「縁」の意で古めかしい文学的な文章にまれに用 いられる、古語に近い雅やかな和語。〈不思議なー〉〈遠い ーの人〉〈ーの糸〉新感覚派の盟友の横光利一死去の際の 弔辞に川端康成は「後の人々も君の文学につれて僕を伝え てくれることは最早疑いなく、僕は君と生きたーを幸ぶとす る」と述べている。専運命・縁①・回り合わせ・巡り合わせ・ゆか り エピソード話題になっている人や事柄に関するちょっと興 味深い話をさし、会話にも文章にも使われる外来語。へいか にも彼らしいーがある)の「逸話」より軽く短い話を連想さ せやすい。また、講演や小説などの「挿話」の意味でも使 う。ひQ逸話・裏話・こぼれ話・挿話・余話 エプロン西洋風の前掛けをさし、会話にも文章にも使われ る外来語。〈花模様のーをかけた若奥さん〉へー姿もかいが いしく》Q前掛け・前垂れ もんかけ衣紋掛け肩の幅程度の短い棒の中央に紐を取 り付け、着物を吊ぶす道具をさし、会話にも文章にも使われ る古風な表現。〈晴れ着をに掛ける〉「衣桁」をさす こともある。ひQ衣桁ハンガー エラー失策の意で、会話や軽い文章に使われる外来語。〈大 <112> えらい きなーが出る〉〈痛恨のーで延長戦を落とす〉機械の操作 などでこの語の表示が出ることもあるが、スポーツの世界 でよく用いられる。ひしくじる・Q失策・失態・失敗・とちる・抜か る・ぼか・ミス・ミスる・やり損なう えらい「つらい」意の古い感じの俗語。〈体が—〉〈坂道を登るのが—〉の方言的な響きも感じられる。ふつらい えらい【偉い】①人物や行動などが優れていて立派だったり、 その人の社会的地位が高かったりする意で、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「 人の集まり」〈出世してーくなる〉〈その分野で並ぶもの のないー学者だ〉〈あの子はーものだ〉夏目漱石の『坊っ ちゃん』に「そんな一人が月給四十円で遥々こんな田舎へく るもんか」とある。Q偉大・感心・立派②程度が甚だしい 意で、口頭語。〈これはーことだ〉〈ーめにあった〉〈ー渋滞 に巻き込まれる〉もどえらい えらぶ【選ぶ】いくつかのうちから条件に合うものを取り出 す意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常生活の基本的な和語。〈代表を—〉〈贈り物にするハンド バッグを—〉〈目的のためには手段を—・ばない〉の井伏鱒 二の『荻窪風土記』に「不況と左翼運動とで犇き合う混乱の 世界に敢えて突入するものと、美しい星空の下、空気の美 味い東京郊外に家を建て静かに詩作に耽るものと、この二 者一を「決心をつける」とある。物の選択の意で特に好ん で「択ぶ」と書くこともあり、用字へのこだわりを示す。马 撰 えらぶ【撰ぶ】「選ぶ」のうち、詩歌などの秀作をよりすぐっ て本などにまとめる意で伝統的に用いてきた、今では古風 な表記。〈歌集を—〉り選ぶ エリア一定の目的をもって設けられた区域をさし、会話に も文章にも使われる比較的新しい外来語。〈サービスー〉 〈パーキングー〉はゾーン えりあし【襟(衿・領)足(脚)】襟首の髪の生え際をさして、会 話にも文章にも使われる和語。〈白い〉への美しい和服 の女〉井上靖の『猟銃』に「の手入れが行き届いてレモ ンの切口のようにすかあっとして居り」という印象的な例 がある。Qうなじ・襟首・首筋・首根っこ・頸部 えりくび【襟(衿)首】首筋の意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈相手のーをつかむ〉〈白く塗りたくったー〉永 井荷風の『腕くらべ』に「湯にも這入らぬらしいー薄黒く油 じみたのも」とある。衣服を着たときに外からちらりと見 える部分を連想させる。うなじ・襟足・Q首筋・首根っこ・顕部 元りまき【襟巻】防寒用に首の周りに巻きつけるものをさし、 会話でも文章でも使われる、やや古くなりつつある日常の 和語。〈臙脂まんのーできめる〉丹羽文雄の『哭壁』に「洋 服から和服、帯やらーやら、一切合財がほうり出されてい た」とある。Q首巻・マフラー えん円』平面上で一つの定点から等距離にある点の軌跡を さし、やや改まった会話や文章に用いられる少し専門的な 感じの漢語。〈ーを描く〉への面積〉句点や半濁点のよ うに極端に小さな「まる」はもちろん、テストなどで正解の 意味で使う記号も「まる」であって「円」とは言わないか ら、コンパスで描くようなある程度以上の大きさであまり <113> いびつでない円形を想定していると思われる。また、球 をもさす「丸」と違って、まるみを帯びていても球体は含ま れずあくまで平面にとどまる。多くの皿やお盆の形は「円」 であり、月は見方によって「円」とも「丸」とも言えるが、 地球は「丸」であって「円」ではない。「日本」の「円」 もおそらく硬貨の形と関係し、「関東一」なども地図のよ うに平面としてとらえた認識を映しているのだろう。丸・ 円い・丸い えん【宴】宴会の意で、改まった会話や文章に用いられる、 少し美化した感じの古風な漢語。〈花見のー〉〈ーを張る〉 〈ーもたけなわ〉りうたげ・Q宴会・酒盛り・酒宴 えん【縁】①血筋や交友などによる深いつながりをさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈ー続き〉〈ーを切る〉〈ー もゆかりもない〉〈不思議なー〉〈ーが薄い〉〈ーを結ぶ〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「物理学校の前を通り掛ったら 生徒募集の広告が出て居たから、何もーだと思って規則書 をもらってすぐ入学の手続をして仕舞った」とある。客観 的な感じの「関係」「つながり」に比べると情的な感じが強 いが、「えにし」「ゆかり」のような古風な趣はない。 ②「縁側」の意で、主として文章に用いられる古風な漢語。〈障子を開 けてーに出る〉の大仏次郎の『風船』に「もとのーに戻っ て」とある。ひQ縁側・ぬれ縁・廊下 えん【艶】あでやかで上品な色気をさし、主としてしっとり とした文章に用いられる、なまめかしい感じの漢語表現。 〈ーを競う〉の川端康成は『千羽鶴』の中で、志野の水指に えんかく ついて一白い釉もののなかにほのかな赤が浮き出て、冷たく て温いようにーな肌」と描写している。Q艶っぽい・なまめ かしい・妖艶 えんえん【延延】時間的・空間的に長々と続く意で、改まった 会話や文章に用いられるやや硬い漢語。「五時間に及ぶ 会議〉〈見渡す限りーと広がる麦畑〉児蛍 えんえん【蜿蜒】列がうねりながら長々と続く意で、改まっ た会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈長蛇の列〉 蛇がうねりながら進む意から。専延々 えんお【厭悪】厭だと思って憎く感じる意で、主に文章中に 用いられる硬い漢語。への情が募る)幸田露伴の連環 記』に「いよいよその妻に対しての情を増し虐待の状を 増す」とある。ひいや嫌い・嫌悪・Q憎悪・憎しみ 元んか【演歌】日本風のメロディーで人生の哀感や恋心など を歌う歌謡曲の主流をさし、会話にも文章にも使われる漢 語。〈カラオケでーを歌う〉の明治・大正の時代に街頭でバ イオリンを弾きながら歌った壮士演歌から出たが、現在で はしばしば「艶歌」とあてる。艶歌謡曲・流行歌 えんかい【宴会】人が集まってにぎやかに酒食を楽しむ催し の意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈場〉 〈の余興〉〈が始まる〉川端康成の『山の音』に「会社 のーで待合を出る時」とある。うたげ・宴・Q酒盛り・酒宴 えんかく【沿革】物事の現在に至るまでの移り変わりの意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈学園のー〉 〈制度のー〉永井荷風の『澀東綺譚』に「通めかして此盛 場のーを述べようか」とある。ひ由緒・Q由来 <114> えんかし 元んかし【演歌師/艶歌師】流しの歌手などをさす古めかし い呼び名。〈夜の街に—の歌声が流れる〉小津安二郎監督 の映画『東京物語』(一九五三年)のシナリオに、「マージャ ンや艶歌の騒音が聞えて」「勢いこんで歌いまくる」の一 団」などという説明がある。いかにも時代を感じさせる例 である。専歌い手・Q歌手 えんかつ【円滑】障害もなく物事がすらすら進む様子をさし、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一な動き〉 〈一に運営する〉〈一に事を運ぶ〉〈議事が一に進行する〉② 小沼丹の『懐中時計』に「この辺迄は洵に一に運んだが、そ の后はなかなか進展しなかった」とある。丹滑らか 元んがわ【縁側】部屋の外側で雨戸の内側にあたる板敷きの 空間をさし、くだけた会話から文章まで広く使われる日常 語。〈ーで日向ぼっこをする〉②宮本百合子の『伸子』に 「小箱の口のように、たった一方に開いたー」とある。ひ縁 ②・Qぬれ縁・廊下 えんがん【沿岸】海・湖・川などに沿った陸地、または、それ らの陸に近い水域をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈一漁業〉〈日本海一の都市〉、磯・うみべ・Q海岸・海浜・かいへ ん・岸・岸辺・なぎさ・波打ち際・浜・浜辺・みぎわ・水際・水辺 元九【延期】予定の物事を別の時期に延ばす意で、会話に も文章にも広く使われる日常の漢語。〈無期—〉〈予定を する〉〈雨で—になる〉午前の予定を午後にするなど同日 の時間変更の場合にはなじまない。乃延長・繰り下げ・Q緑り 延べ・日延べ えんきより【遠距離】空間的に遠く隔たっている意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ー通信〉〈ー通学〉〈ー恋愛〉 の「近距離」と対立する語で比較の問題になるが、相対的な 「長距離」に比べ、ある程度以上の距離に達しないと使いに くい絶対的な面もある。日常生活では通勤圈程度ではこう いう感じがせず、陸上競技の最長レースであるマラソンの 距離でも「遠距離」というイメージにはならない。長距離 えんげい【園芸】野菜や草花や果樹などを育てることをさし、 少し改まった会話や文章で用いられる漢語。〈ー用品〉〈ー 植物〉〈家庭〉〈ーを趣味とする〉の「ガーデニング」ほど 趣味という面が表に出ていない正式な感じのことば。「造 園」と違って、ふつう石組みなどは連想されず、あくまで趣 味の感じが強い。口頭表現では「演芸」と紛らわしい場合 がある。Qガーデニング・造園・庭いじり・庭造り 元んげい【演芸(藝)】落語・漫才・漫談・講談・浪曲・音曲・手品・ 曲芸・踊りやコント・軽演劇などの娯楽的な芸をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。(|会)(|ホール)「番組 ②通常、歌舞伎や能狂言や民謡や詩吟などは含まれない雰 囲気があり、総称としても「芸能」より少し狭い印象があ る。込芸・Q芸能 元んげき【演劇】俳優が脚本にもとづいて動作と台詞によっ て演ずる舞台芸術をさし、やや改まった会話や文章に用い られる正式な感じの漢語。〈ー活動〉〈ー界の話題をさら う〉の「劇」よりも本格的な感じがする。「芝居」や「ドラ マ」より抽象的なイメージが強く、個々の作品よりジャンル を連想させやすい。ひ劇・Q芝居・ドラマ えんこ途中で自動車が動かなくなる意のくだけた会話で時 <115> に使われる俗語。〈自動車が交差点でーする〉の座る」意 の幼児語の比喻的転用。ひエンスト えんこ【縁故】親戚を中心に親しい知人など、血縁や交友に よる人と人とのつながりをさして、会話にも文章にも使わ れる、いくなん古風な感じの漢語。〈ー者〉〈ー関係〉〈ー採 用〉〈ーを頼る〉②就職などで自分が有利になるために利用 するイメージがあるが、「ーをたどる」のように、「ゆかり」 の意で単に物事のつながりをさす用法も生きている。 コネ・って・手づる えんご【援護】困っている人を助ける意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈罹災い者をーする〉への手を差 し伸べる〈活動を側面からーする〉ひ掩護 えんご【掩護】敵の攻撃に曝される味方をかばう意で、硬い 文章などに用いられる漢語。〈—射撃〉の「掩」が表外字の ため「援護」で代用されることもあり、その場合は語の文体 的なレベルが低くなる。弜援護 えんじ【園児】幼稚園や保育園に通う児童を、主として園側 から見た、やや改まった感じの漢語。〈—募集〉へ—の送り 迎え)Q児童 エンジニア電気・機械・土木建築などの技術者をさして、会 話にも文章にも使われる外来語。〈システム—〉〈自動車工 場の—〉の「技術者」より範囲が狭く、「技師」より新しい 分野にも使われやすい。Q技師・技術者 えんじゃ【縁者】親戚関係の人々をさして会話にも文章にも 使われる古風な漢語。〈親類—〉へーを頼って上京する ふつう家族以外に使い、古くは血族以外の姻族だけをさし えんぜん たという。 親戚・親族・親類・Q身寄り 元じよ【援助】困っている人・組織・国家などを具体的に応 援する意で、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢 語。〈経済的—〉〈貧民を—する〉〈資金の—を受ける〉〈一 を惜しまない〉②宮本百合子の『二つの庭』に「事務的な調 子で、裏書について、伸子が父に求めている—の内容を聞 いた」とある。他の類義語に比べ資金面で使う傾向が強く、 技術提供などを含めても最も具体的な感じがある。Q救 援・救済・救助・救い・救う・助ける えんすい【塩水】塩分を含む水をさし、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈ーを汲む〉の「淡水」と対立。鳥鹹水 エンスト・途中でエンジンが停止してしまう意の和製英語。 〈ドライブ中にーを起こす〉「エンジン」と「ストップ」 を組み合わせた造語の短縮形。 马元んこ えんぜつ【演説】大勢の人の前で自分の意見や主張を述べる ことをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈街頭—〉 〈施政方針—〉〈一席—をぶつ〉夏目漱石の『吾輩は猫で ある』に「結論のない演舌は、デザートのない西洋料理の様 なものだ」とあるように古くは「演舌」とも書いた。「弁論」 に比べ、相手を説得して自分側に引き入れる意図が強い。 もと「スピーチ」の訳語だが、現代では「スピーチ」より大 仰な感じがある。ひQスピーチ・弁舌・弁論 えんぜん【婉然】主として文章に、女性の淑せやかで美しいよ うすの形容として用いられる古風で漢文調の硬い漢語表現。 〈ーたる姿〉〈ーと舞う〉Q媽然・艶然 <116> えんぜん えんぜん【嫣然】主として文章に、あでやかの意で主に美人 が笑う形容に用いられる古風な漢文調の硬い漢語表現。「 とほほえむ〉(たる笑顔)ひQ婉然・艶然 えんぜん【艶然】主として文章に、色っぽい意に用いられる 古風で硬い漢語。〈装いもーと〉〈ーとした立ち姿〉専媽然 ・婉然 えんそうかい【演奏会】楽器を使って音楽を奏で、それを聴 いて楽しむ集まりをさし、会話にも文章にも使われる漢語。 の「音楽会」に比べ、器楽に限られるだけでなく、ずぶの素 人を連想させにくい。Q音楽会・コンサート・ライブ・リサイタ ル エンタメ娯楽の意の「エンターテーメント」の短縮形。近 年の俗語。〈小説〉 元人ちょう【延長】時間的・空間的な長さを延ばす意で、会話 にも文章にもよく使われる日常の漢語。〈一コード〉〈一戦 に入る〉〈期間をーする〉及Q延期・繰り下げ・繰り延べ・日延べ えんちょく【鉛直】錘を吊した糸の垂れる地球の重力の方 向をさし、学術的な会話や文章に用いられる専門的な硬い 漢語。〈一の方向に真っ直ぐ立てる〉四「水平」と対立。日 常語では「垂直」で間に合わせることが多い。及Q垂直・縦 えんのした【縁の下】家屋の縁側の下の空間をさし、会話に も文章にも使われるやや古風な日常語。〈一にもぐり込む〉 〈一で猫が子を産む〉四三木卓の『隣家』に「竹竿をーに押 し込んでその奥に住んでいる猫を脅していた」とある。縁 側の下に限らず床下体をさすこともある。「一の力持 ち」のように、目立たないところという意味に抽象化され ることもある。 専床下 えんぼう【遠方】遠い場所の意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈一に引っ越す〉〈一からわざわざ足を 運ぶ〉〈一まで出向く〉②二葉亭四迷の『平凡』に「一から 眺めて憧憬されていると」とある。「はるかーにうっすらと 山が見える」のように知覚できる対象にもまれに使うこと があるが、感覚でとらええない距離にある場所をさす例が 多い。ひ彼方・Q遠く えんもく【演目】芝居や演芸などで上演する作品の題目をさ し、改まった会話や文章に用いられる少し専門的な漢語。 (人気の高い)出し物・番組 えんりよ【遠慮】他人に対する気兼ねから言動を控えめにす る意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。ヘどうぞ御 ーなくヘーは要らないヘーのない間柄ヘ招待されても ーするヘ林芙美子の『魚の序文』に「まるで隣人同士のよ うにーしてしまって」とある。もっぱら気持ちの段階を問 題にする「気兼ね」と比べ、態度や行動に出るところをとら えた感じが強い。気兼ね <117> お お【尾】動物の尻の上から後方に細長く伸びた部分をさす文 章語。〈一が長い〉〈一を振る〉藤沢周平の『三の丸広場 昼下がり』に「手をのばして波のようにうねる(馬の)ーを つかんだ」とある。文中では漢字で意味が伝わるが、口頭 表現では一拍の「オ」だけだと意味の伝達に不安があるた め、「しっぽ」の形で通じさせる。児尾っぽ・Q尻尾 おあし【御足(銭)】古く「銭」の意で使われた俗語。「ーを握 る)「ーをもらう」世の中を歩き回るからとも、足が生え たようにすぐに姿を消すからともいう。しかね・貨幣・金子・ 金銭・Q銭 おい【老い】肉体的・精神的に年を取る意で、会話にも文章に も使われる、いくらか古風な感じの和語。〈ーを感じる〉 〈ーを忘れる〉の幸田文の『黒い裾』に「鏡に映らない部分 からーは忍び込む」とある。近年は「経年変化」のようにシ ョックをやわらげる表現の試みも見られる。み老化 おいおい【追い追い】時間が経つにつれて少しずつの意で、 主に会話に使われる、やや古風な感じの和語。「慣れてく るよ」「わかってくると思う」「うまくなるだろう」② 好ましい方向への変化を予想して用いる例が多い。次第 に・Q徐々に・漸次・段々 おいかける【追いかける】求める対象に近づこうと急ぐ意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。泥棒 おいたち をー〉〈アイドルをー・けまわす〉〈子供の頃からの夢をー〉 志賀直哉の『網走まで』に「近くの森から蜩の声がーよう に聞える」とある。「追う」に比べ、追う対象の姿が見えて いたり、少なくともそのありかが知れていたり、具体性が 強い感じがある。退う おいこす【追い越す】後ろから追いついてその前に出る意で 会話にも文章にも使われる和語。歩いている人を自転車 でー〉〈前の車をー〉〈地位で親をー〉同じコースを走っ て後ろから追い抜くイメージが強い。退い抜く おいこむ【老い込む】「老いる」の強調表現で、会話にも文章 にも使われるやや古風な和語。父もこのごろすっかりー んで足腰が不自由だ単なる「老いる」より肉体的な衰え が外面にあらわれている感じが強い。老いる・Q老け込む・ 老ける おいしい【美味しい】味がよい」意の上品な表現だったが、 今では男性でも多用するようになり、普通のことばに近づ きつつある。〈料理〉ご飯をー・くいただく)のもと、 「味がよい」意の女房詞「いしい」に「お」をつけて丁寧に した表現という。庄野潤三の『佐渡』に「梅干と大根下しと 醤油の味がひとつに融け合って、何ともいえず香ばしくて ー・く、気持が静まります」とある。ひQうまい美味 おいたち【生い立ち】一人の人間が生まれてから大人になる までの成長過程の意で、会話にも文章にも使われる、やや 古風でプラスイメージの和語。〈一の記〉〈恵まれないーに もめげず頼もしい青年に成長する〉②振り返る感じの「育 ち」に対し、この語は生まれたときから順を追って思い出し <118> おいたてる ている感じがある。 ひ育ち おいたてる【追い立てる】追ってその場所から遠く離す意 で会話にも文章にも使われる和語。〈同居人を—〉〈仕事に ー・てられる〉尾崎一雄の『虫のいろいろ』に「彼(蠅)が 頬にとまると、私は頬の肉を動かすか、首を一寸振るかし てー」とある。「追い払う」がその場所から遠ざけることに 重点があるのに対し、この話はさらに執拗に追う感じが強 い。込追い払う・追っぱらう おいてきぼり【置いてきぼり】「置き去り」の意で、主にくだ けた会話に使われる俗っぽい和語表現。〈ーにされる〉〈ー をくう〉おいてけぼりーともいう。ひ置き去り おいぬく【追い抜く】先行する対象に横から追いつき、それ より前になる意で、会話にも文章にも使われる和語。〈特急 が鈍行をー〉ヨールの寸前でー〉②真後ろでなく、別のコ ースを走って前に出るイメージが強い。刂追い越す おいはらう【追い払う】その場所から追い出して遠くにやる 意で、会話でも文章でも広く使われる和語表現。蠅をー 〈邪魔者をー〉永井荷風の『澀東綺譚』に「怪し気な勧誘 者をー」という例が出る。追い立てる・追っ払う・撃退 おいら「俺」の子供ぼく、古めかしい和風の言い方。へー の友達》あたくし・あたし・Q俺・僕・わし・わたくし・わたし おいる【老いる】年を取って老人になる意で、主に文章中に 用いられる古風な和語。「ー・いた姿を世間にさらす〉「! いては子に従え」「ー・いてますます盛ん」とも言うよう に、「老い込む」「老ける」に比べ、衰えが直接意識されに くい。専老い込む・老け込む・Q老ける おう【負う】「背負う」「引き受ける」の意で、昔風の文章に まれに用いられる古めかしい和語。〈背中に」〉「・うた 子に教えられて浅瀬を渡る〉(・われて見たのはいつの日 か〉の成果は彼にーところ大である」「重傷を」「責任を」のように意味の抽象化した用法の場合は、多少 改まった響きはあるが、特に古めかしい感じはしない。 ぶう・おんぶ・しょう・Q背負う おう【追う】前にあるものや頭に浮かぶものをとらえようと 進む意で、会話にも文章にも使われる和語。〈子供が母親の あとを—〉〈逃げる敵を—〉〈ー・いつー・われつ〉〈流行を —〉〈理想を—〉堀田善衛の『鬼無鬼島』に「早子は若く 速い飾のようにー・って来た」とある。退いかける おう【王】国や領地を治める最高権力者をさし、主として文 章に用いる漢語。「の座に就く」(一国のーとして君臨す る)の「百獣の」「三冠」のように、最も優れたものを さす比喩的用法もある。乃王様・君主・皇帝・Q国王・大王・帝王・ 天子・天皇・帝 おういん【押印】自分側の印鑑を押す意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈書類にーする〉の日常生活で は「捺印」ほど使わない。乃捺印 おうえん【応援】元気づけたり援助を与えたりする意で、会 話にも文章にも使われる日常の漢語。〈団〉〈歌〉〈 演説〉〈に駆けつける〉〈地元のチームをーする〉②「声 援」と違い、表に立たない資金援助などの形も含まれる。 加勢・支援・Q声援 おうかん【往還】人馬の往来(する街道)をさし、主として文 <119> 章に用いられる古風な硬い漢語。〈車の—の激しい道路〉 〈町の中央を白い—が走る〉の行き帰り」の意でも「往来」 より古く、「鎌倉—」などとして使われる「街道」の意でも それより古い感じがする。田宮虎彦の作品で「白い道」「白 い—」ということばがしばしば反復使用され、インタビュー での質問に応じ、作者自身が「象徴の一歩手前」という内省 を示した。Q往来・街道・街路・通路・道路・通り・道 おうぎ【扇】手に持ってあおぎ涼しい風を送るための折りた たみ式の道具をさし、改まった会話や文章に使われる和語。 (ーを開いてあおぐ)儀式や舞踊にも使う。貝扇子 おうこく【王国】王が権力をもって支配する国をさす漢語。 〈立憲—〉のわがままな王様が連想される場合であっても、 「帝国」に比べ、単なる王と皇帝との違いを超えて、この語 には平和なイメージが濃い。専帝国 おうさま【王様】「王」の意で会話や軽い文章に使われる日常 の丁寧な表現。〈ーに仕える〉〈ーに献上する〉の果物の ー」のように、その分野での最高のものをさす比喩的用法 もある。武者小路実篤は調布の自宅に訪問した折、「徽宗 皇帝は絵かきとしてはいちばん偉い絵かきの一人になって るが、王さんとしちゃいちばんばかな王さんで」と発言。 昔は「王様」のほかに「王さん」とも言ったようである。 王・君主・皇帝・Q国王・大王・帝王・天子・天皇・帝 おうじ【往時】過ぎ去った昔の一時代をさし、主として文章 に用いられる漢語。〈ーを振り返る〉〈ーの繁栄ぶりがうか がわれる〉〈もはやーの勢いは影を潜めた〉の「当時」より 懐かしい感じに美化された雰囲気がある。き以前いにしえ おうずる Q往年·昔日·昔 おうしゅう【押収】裁判所などが没収すべき物などを占有し 確保する意で、改まった会話や文章に用いられる法的な専 門漢語。〈証拠物件をーする〉Q接収・没収・召し上げる おうじょう【往生】「死ぬ」ことを意味する、古風で仏教的な 雰囲気を感じさせる漢語の間接表現。〈際が悪い〉〈大 を遂げる〉〈その場でーした〉濾井孝作の『積雪』に「病 臥して介抱などそうあてにせず、覚悟のよい大ーのようで あった」とある。死を忌む気持ちから、死というものを、こ の世からあの世に出かけて行って向こうすなわち極楽浄土 に生まれ、そこに生きること、ととらえ直した表現。「いい 加減でーしろ」のように「諦める」意にも、「渋滞にまきこ まれてーした」のように「困り果てる」意にも使う。勇敢え 無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引 き取る・往く・いけなくなる・永眠・お隠れになる・落ちる②・おめでた くなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・ 斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる・儚ぬくな る・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷る・ 脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 おうじる【応じる】「応ずる」の意で、さほど改まらない会話 や文章に使われる語。〈ご要望にー・じます〉〈注文にー〉 〈必要にー・じて〉の「応ずる」より日常語的。ひQ応ずる・対 応 おうずる【応ずる】他からの働きかけに沿って行動する意で、 改まった会話や文章に用いられる表現。〈交渉にー〉へ求め にー〉の「応じる」よりやや硬く古風。「年齢にー・じて」 <120> おうせ 「能力にー・じた仕事」のように、それに合う意でも使う。 马応じる・Q対応 おうせ【逢瀬】愛し合う男女がひそかに会う意で、会話にも 文章にも使われる古めかしい和語。〈ひと夜のーを楽しむ〉 三島由紀夫の『仮面の告白』に「私たちが関ぶした何かの ー」とある。古く文学作品などにしばしば用いられ、きわ めて和風で詩的な雰囲気を漂わせる。も逢引き・忍び会い・デ ート・密会・ランデブー おうせい【旺盛】体力が充実し、気力が漲みたっている意で、 会話にも文章にも用いられる漢語。〈気力ー〉〈食欲がー だ〉〈繁殖力がーだ〉〈盛ん おうせつしつ【応接室】会社などで来客の応接に用いる一室 をさし、会話でも文章でも幅広く使われる日常漢語。「で 商談する〉〈ーで部長が応対する〉「応接間」が個人の住 宅を連想させるのに対し、この語は会社などの一室を連想 させる。Q応接間・客室・客間・座敷 おうせつま【応接間】来客と面会し接待するための部屋をさ し、会話でも文章でも幅広く使われる日常語。来客をに 通すの応接室」が会社などの一室を連想させるのに対 し、この語は個人の家を連想させる。「客間」とは違って基 本的に洋室の雰囲気が濃い。Q応接室・客室・客間・座敷 おうたい【応対】人と接した際の受け答えや相手に対する扱 い方をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈店員のーが 悪い〉〈丁重にーする〉〈そっけないー〉〈ーがぶしつけた〉 き接待 おうちゃく【横着】わがままで怠けたり手抜きをしたりする 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー者〉へーを決め 込む〉へーきわまる態度〉ひぐうたら・ずぼら・怠惰・Q怠慢・無 精・ものぐさ おうてん【横転】横になって倒れる意と、左右に回転する意 とで、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈土俵上 にーする〉〈パスがーする〉〈胃のレントゲン検査で体をー させる〉飛行機の曲技などにも。刂横倒し おうと【嘔吐】吐き戻す意で、主に文章に用いられる硬い漢 語。〈ーを催す〉の「へど」と違って汚物自体をさす用法は ない。反吐が出そうなほどひとい不快感を比喻的に表現 することもある。ちなみに、フランスの哲学者サルトルの 小説が『嘔吐』と訳されている。ひげろ・Qへど おうとう【応答】呼びかけ・問いかけに対する受け答えの意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈質疑—〉 〈一せよ〉へーなし〉へーが途絶える〉単回答・解答・答え・返事・ Q返答 おうねん【往年】「往時」に近い意味で、主として文章に用い られる漢語。へーの名選手へーの面影はないへーの覇気 が感じられないぐ「往時」以上に、そのものの全盛期を連 想させる傾向が強い。いにしえ・Q往時・昔日・昔 おうのう【懊悩】悩み苦しむ意で、主として文章中に用いられる硬い漢語。〈青春のー〉谷崎潤一郎『少将滋幹の母』に「恋しい人の面影を追うて日夜ーしている」とある。弔苦痛・Q苦悩・苦悶・苦しみ・悩み・煩悶・憂悶 おうふく【往復】同じ人がある場所へ行ってそこから元の場 所に戻ることをまとめてさし、会話にも文章にも使われる <121> 漢語。〈ー乗車券〉〈新宿から日帰りで甲府までーする〉 遠藤周作の『海と毒薬』に「兵士が両手をうしろに組んで檻 の中の動物のようにーしていた」とある。「片道」と対立。 行き帰り おうへい【横(押)柄】謙虚さに欠け威張って相手を見下すよ うな態度やふるまいをするさまを評して、会話にも文章に も使われる漢語。「な態度〉へな口を利く〉へにふる まう木山捷平の『大陸の細道』に「乞食にでも物を言う 時のようなな態度」とある。勇頭」なし・高圧的・Q尊大・高 飛車 おうよう【応用】技術・原理・知識などをもとに工夫して別の ものに役立てる意で、会話にも文章にも使われる漢語。「 問題」〈原理を—する〉のまま使う感じの「利用」や 「活用」に比べ、さまざまな工夫をこらす感じが強い。 活用・利用 おうよう【鷹揚】小さなことにこだわらずゆったりと構えて いる意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へー な態度〉へーに振る舞う)井伏鱒二の『珍品堂主人』に 「まだ買いもしないくせに、なこと云っているよ」とあ る。鷹が大空を悠々と飛んでいる意からという。大様 大らか・おっとり おうらい【往来】人や車の行き来(する大通り)をさし、「行き 来」の意では会話でも文章でも使われ、「大通り」の意では 古めかしい感じの漢語。〈人のーが頻繁にある〉〈車のーが 途絶える〉〈ーに飛び出す〉〈ーは人通りが多い〉芥川龍 之介の『あの頃の自分の事』に「星月夜のーへ出てから」と おおい ある。Q往還・街道・街路・通路・道路・通り・道 おうりよう【横領】不法に横取りする意で、改まった会話や 文章に用いられる、正式な感じの漢語。〈業務上—の罪に問 われる〉〈公金を—する〉の「猫ばば」や「横取り」はもち ろん「着服」よりも犯罪のにおいが強い。りくすねる・失敬・ Q着服・猫ばば・横取り おうろ【往路】目的地や折り返し点までの経路をきして、改 まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「は海沿いの道 を進む」〈駅伝でーを首位で折り返す〉「復路」と対立。 り行き おえつ【嗚咽】むせぴ泣く意で、主として文章中に用いられ る古風な漢語。〈ーがもれる〉〈ーの声を押し殺す〉の大岡 昇平の『事件』に「ハンカチーフでおおった顔の中で、ーが 洩れた」とある。匕忍び泣き・しゃくりあげ・すすり泣き・泣き咽 ぶ・Qむせび泣き・むせぶ おえる【終える】完了したり時間がなくなったりしてやめる 意で、会話でも文章でも広く使われる日常の和語。〈無事に 勤務をー〉〈宿題をー〉〈仕事をーといつもまっすぐ帰宅す る〉〈高校をー・えてすぐ就職する〉図島崎藤村の『春』に 「高等学校をー・えずに退いた」とあるように、「卒業する」 意では「卒える」とも書く。「終わる」の他動詞用法に比べ、 主体の意志を感じさせる。刂終わる おおあめ【大雨】一定時間に大量に降る雨の意で、会話やさ ほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈ー洪水注意報〉 〈ーに見舞われる〉の「小雨」と対立。専豪雨 おおい【多い】数や量の程度が大きい意で、くだけた会話か <122> おおいそぎ ら硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈数が ー〉〈入口がー〉〈雨がー〉〈緑がー〉〈仕事がー〉〈欠点が ー〉②福原麟太郎の『交友について』に「無駄話を楽しめる とかいう友人なら、私は人に誇りうるほどー」とある。 おおいそぎ【大急ぎ】非常に急ぐ意で、会話やさほど硬くな い文章に使われる日常の和語。〈ーで仕上げる〉〈ーで準備 する〉〈ーで取り掛かる〉乃至急・Q大至急 おおいに【大いに】程度の甚だしい意で、会話にも文章にも 使われる和語。〈ー気をよくする〉〈ー喜ぶ〉〈ー困る〉〈ー 面目をほどこす〉〈ー役立つ〉〈ー参考になる〉〈ーきわめ て」と違い、「多い」「高い」「暑い」のような数字で表せる ものには使われない。Qきわめてこくすこぶる・大層・たい へんとても②・甚だ・非常に おおう【覆(被・蔽・蓋)う】全体に掛けて物の表面が隠れるよ うにする意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。 〈両手で顔を—〉〈布を掛けてテーブルを—〉〈一面に雪で ー・われる〉ひ被せる おおかぜ【大風】激しく吹きつける強い風をさし、会話にも 文章にも使われる古風な和語。ヘーで木が倒れる)風・強 風・颶風・時化・疾風・陣風・Q大風・台風・突風・はやて・暴風・暴 風雨・烈風 おおかた【大方】全体の七、八割ほどの感じで、会話やきほど 改まらない文章に使われる、古風な和語。〈住事はー済ん だ〉〈ーは女性だ〉②「ーそういうことだろうと見当がつい ていた」のように「多分」の意でも使い、「ーの意見」のよ うに世間一般の人をさす用法もある。Qあらかた・おおよそ・大概・大体・大抵・大部分・ほとんど おおがた【大型】同類のものに比べて大きいタイプの意で 会話でも文章でも使われる和語。〈—車〉〈—冷蔵庫〉〈— 量販店〉〈—の機械を導入する〉大形 おおがた【大形】形が大きい意で、会話でも文章でも使われ る和語。〈一の模様〉〈朝顔が一の花を咲かせる〉大型 おおがねもち【大金持ち】金持ち以上の大きな財産を所有し ている意で、会話やさほと改まらない文章に使われる日常 の和語。〈株で一儲けしてーになる〉へという噂が流れ る)「金持ち」を強調した表現。金持ち・Q金満家・財産家・ 素封家・長者・富豪・物持ち おおかみ【狼】イヌ科の食肉動物で犬より体为口为大きい種 類をさして会話にも文章にも使われる和語。〈一の習性〉 夏目漱石の『こころ』に「残酷な答えを与えたのです。一が 隙を見て羊の咽喉笛へ食いつくように」とある。グリム童 話の『赤ずきん』などの物語で残忍な存在に描かれてきた 影響で、それが固定観念になり、この語の語感にまで波及 している。 おおきい【大きい】長さ・面積・体積・程度・数量・音量などが大 である意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な和語。〈国〉〈音が」〈家が」〈規模 が」〈被害が」〈夢が」〈夏目漱石の『坊っちゃん』に 「眼が」から役者になると屹度似合います」とある。「人物 が」のように優れた度量・包容力をさし、「この成功は」 のように貴重な意を表す用法もある。Qでかい・でっかい <123> おおぎよう【大仰(形)】大げきの意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈ーな話し方〉〈ーに驚いてみせる〉 Q大袈裟・オーバー オークション「競り売り」を意味する比較的新しい感じの外 来語。〈仏像をーにかける〉〈ーで競り落とす〉海外で美 術品や骨董品を扱う大規模なものを連想させやすい。た だし、最近のネットオークションではごく小規模な物品が多 いという。ひきょうばい・けいばい・Q競り売り おおげさ【大袈裟】実際よりも誇張して表現する意で、会話 にも文章にも使われる日常表現。〈な身振り〉〈に言 う〉〈話がーだ〉ひQ大仰・オーバー おおごしよ【大御所】その分野で絶大な権威と実力を備えた 人物の意で、会話にも文章にも使われるやや古風な表現。 〈文壇の—〉へいよいよ—のお出ました》江戸時代には徳 川家康をさした。込オーツリティー・Q権威②・第一人者・長老 おおざっぱ【大雑把】ほぼ「大まか」の意で、会話や軽い文 章に使われる、やや俗っぽい表現。〈な説明〉〈な計算〉 〈何事もな性格〉〈仕事がだ〉大まかより雑な感じ が強く、マイナスイメージが伴う。込アパウト・大まか おおしい【雄雄しい】男らしく勇ましい意で、主として文章 に用いられる古風な和語。〈ーふるまい〉へー・くも立ち上 がる〉高山樗牛の『滝口入道』に「言葉さえー・く」とあ る。男性たるにふさわしいという評価で、女性には用いな い。「女々しい」と対立。たくましい・強気・向こう意気 おおぜい【大勢】多くの人々の意で、会話にも文章にも広く 使われる日常語。へーの見物客へーで押しかける〈希望 オーバーベース 者がーいる長塚節の『土』に「がただ泥のようになう て動いているのでどれがどうとも識別がつかないで困っ た」とある。多数 オーソリティーその分野における権威者をさして、会話や 文章に使われる外来語。〈その道のー〉〈ーになびく〉ひ大 御所・Q権威②・第一人者・長老 オータム「秋」の意で時に広告などに使われる外来語。「フェア」の井伏鱒二の『朽助のいる谷間』に「箱の表には必ず「吉日」と記してある慣わしである」とあるが、一般には複合語として用い、単独では用いない。単秋 おおっびら【大っびら】通常なら隠すことをあからさまにす る意で、主にくだけた会話に使われる、やや俗な感じの和 語。〈私生活をーにする〉へーに交際する〉は公然 おおどおり【大通り】道幅の広い街路をさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈駅前の—を横切る〉表通り・大道 オトバイエンジン付きの自動二輪車をさし、古くから使 ってきて今でも日常使われる和製英語。「オト」に「バ イク」または「バイシクル」を組み合わせた造語という。二 輪の自動車全体を漠然とさす伝統的な日常語。原付・原動 機付き自転車・自動二輪・自動二輪車・スクーター・単車・Qバイク・モ ーターバイク オーバー 大仰・誇張の意で、主に会話に使われる、やや俗っ ぼい外来語の日本的表現。〈な表情〉〈話がーだ〉〈ーに 伝える〉马大仰・大袈裟 オーパーペース適切なペースを乱す「飛ばし過ぎ」を意味 する和製英語。〈ーがたたって途中でダウンする〉 <124> おおまか【大まか】細かい点にこだわらない大づかみな意で 会話や硬くない文章に使われる和語。〈な見通し〉〈な 見積もり〉〈に割り振る〉ひアパウト・大雑把 おおみず【大水】大雨による洪水をさして、会話や軽い文章 に使われるやや古風な日常の和語。〈ーが出る〉Q洪水・出 水・水害・氾濫 おおもと【大本】物事の一番もとになる部分をさし、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる和語。〈—の意味〉 〈—から崩れる〉〈—に立ち返る〉〈—から正す〉ひ基礎・Q根 源・根本・土台 おおもの【大物】ある分野で際立って優れた実力を有する存 在をさし、会話や硬くない文章に使われる和語。〈政治 家〉〈|俳優〉〈財界の|〉の「|ぶりを発揮する」のよう に、物に動じない態度・行為を示す場合にも使う。また、単 に同類のうちの際立って大きなものをさし、「鯛の|が針に かかる」など人間以外に用いる例もある。大御所・巨匠・権 威②・第一人者・Q大家・泰斗 おおや【大家】貸家や貸間の持ち主の意で、会話や硬くない 文章に使われる、いくらか古風な和語。へーさんに家賃を払 うへーといえば親も同然、店子たといえば子も同然》 「店子」に対する語。漢字表記は「たいか」「たいけ」と紛ら わしい場合もある。ひいえぬし・Qやぬし おおやけ【公】公式・公的の意で、会話にも文章にも使われる 和語。〈ーの行事〉〈ーに認められる〉専公式・公的 おおよう【大様】こせこせせず落ち着いている意で、会話に も文章にも使われる表現。〈に構える〉〈な人〉図徳富 蘆花の『思出の記』に「ーでこせこせしない」とある。音・ 意味ともに類似している別語「鷹揚」としばしば混同き れる。鷹揚・大らか・おっとり おおよそ【大凡/凡】全体の七割ほどの感じで、会話にも文 章にも使われる、やや古風な和語。〈ーの見当はつく〉へー の準備はしてある〉へーの質問には答えられる〉の時 間」のように大雑把の意にも使う。「およそ」とも言い、そ の場合は古風な感じがしない。易あらかた・Q大方・大概・大体・ 大抵・大部分・ほとんど おおらか【大らか】心が広くてものにこだわらず、人柄や熊 度などがゆったりとしている意で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈—な心〉〈—な性格〉〈—に育つ〉鳥鷹揚・Q大 様・おっとり おか【丘(岡)】小高くなった土地をさし、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「一の 向こうに〈一を越える〉②佐藤春夫の『田園の憂鬱』に 「そのーはどこか女の脇腹に似ていた」とある。単丘陵 おかあさま【お母様】「お母さん」のさらに丁寧な表現とし て、会話にも文章にも使われる和語。へーのよろしいよう に〈どうぞーをお大事に〉②小津安二郎監督の映画『東京 物語』に、実の娘が「お父さんお母さん、明日はお出かけ ね」という待遇なのに対し、息子の嫁が「ー、致しましょ う」と姑しゅうのほどいた帯を畳もうとする場面がある。「お 父様」と対立。Qお母さん・お母ちゃん・おふくろ・女親・母さ ん・母ちゃん・母・母上・母親・ママ おかあさん【お母さん】「母」の意で、尊敬と親しみの気持ち <125> をこめて呼ぶときに会話でも文章でも用いられる日常の標準的な表現。〈一の料理〉〈一の手伝いをする〉〈一によろしくお伝えください〉②明治末期の国定教科書に採用されて全国に広まった語形とされる。子供のある家庭では夫が妻を呼ぶ際にもよく使う。「お父さん」と対立。母Qお母様・お母ちゃん・おふくろ・女親・母さん・母ちゃん・母・母上・母親・ママおかあちゃん【お母ちゃん】「母親」の意で、子供などが、または子供に向かって大人が、親しみをこめて呼ぶ、やや古風な和語。〈一、連れてってよ、ねえ〉〈坊や、いるかな?〉現代では西日本の方言的なニュアンスを感じさせることもある。「お父ちゃん」と対立。母母様・お母さん・おふくろ・女親・母さん・母ちゃん・母・母上・母親・ママ おかき【お欠き】「かき餅」の丁寧な表現として主に会話に 使われる和語。へーを割って口に入れる〉のもと女性語。関 西では多く「あられ」をさすという。あられ・Qかきもち・せ んべい おかくれになる【お隠れになる】改まった文章の中で、高貴 な身分の人を尊敬して「死ぬ」意に用いる古めかしい和語 の間接表現。〈天子が—〉回死を忌む気持ちから、それを、 あたかも当人の意思で自発的に姿を隠すような意味にとら え直した表現。これも落語の世界などでは「どのへんに隠 れた?」と的外れの応答をし、手分けをして捜しかねない ほど間接効果が大きいが、現代ではほとんど使われなくな った。勇敢え無くなる上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が 絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・落ちる②・お めでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・ おかす 逝去・聴れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる・儚 くなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷 る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 おかげ【御蔭(陰)】よいことがあった場合にそういう結果を もたらしたものに感謝の気持ちを述べることばとして、会 話や硬くない文章に用いられる和語。〈ーで命拾いした〉 〈ーさまでうまく行きました〉〈みんなのーだ〉「賜物」と 違い、「天気予報を真に受けたーで雨に降られた」「あいつ のーでひどいめにあった」のように、悪い結果に際して用い ることもある。賜物 おかしい①【可笑しい】滑稽で笑いを誘う感じをさし、くだ けた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 へー話を集める)「小・くて笑い転げる)人間には考えられ ない、信じられない現象を前に、そんなはずはないと不思 議に思うところから思わず笑ってしまう点で②の意味とつ ながる。傑作②・Q滑稽・コミカル・剽軽・ユーモラス ②普通と違っていて奇妙な感じがする意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈味が—〉〈理屈が—〉②「挙動が—」の ように「疑わしい」「怪しい」というニュアンスになること もある。ヲQ変・怪しい おかす【犯す】法などに違反する行為をする意で、改まった 会話や文章に使われる和語。〈過ちを—〉〈罪を—〉〈女性 を—〉〈ー・しがたい気品〉②前田河広一郎の『三等船室』に 「扁平ったい顔と派手な格子縞のスカートとに向ってーよう なみだらな視線を注いだ」とある。僕す・冒す おかす【侵す】入り込んで権限を損なう意で、改まった会話 <126> おかす や文章で使われる和語。〈国境を—〉〈権利を—〉〈表現の 自由を—〉〈—〉からざる権限〉ひQ犯す・冒す おかす【冒す】敢えて行う、害するといった意味合いで、改 まった会話や文章に使われる和語。〈危険を—〉〈風雨を— して強行する〉〈病に—・される〉児す・Q侵す おかず【御数(菜)】御飯とともに食する副食物の意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈御飯の—〉へ—が足りない 数々取り合わせる意味から。夢惣菜 おかちめんこ「不美人」の意の古めかしい俗語。ののしると きなどに用いた。悪女・しこめ・醜女・醜婦・すべた・Qぶす・不 美人 おかみ【お上】庶民が政府や役所・役人を自分たちより位の上 の者と見て漠然とさす古風で俗っぽい言い方で、主に会話 で使う。〈一の御用をあずかる〉へからお達しがある〉 へにたてつく〉へのやることには逆らえない)昔は逆 らえない権威という感じが強かったと思われるが、現代で はむしろいくぶん揶揄的なニュアンスを伴いやすい。古く は天皇をさすこともあった。Q官公庁・官庁・役所 おかみさん【お上さん】他人の妻の丁寧な和風の言い方。も と商家の女主人をさした。現在では下町風の会話でまれに 耳にする程度の古めかしいことば。〈店の—〉へにしてお くれよ)②沢村貞子の『味噌汁』に「下町のたちのこしら える味噌汁はおいしかった」とある。いえの者・うちの者・奥 方・奥様・Q奥さん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・妻・女房・伴 侶・ベターハーフ・令閨・令室・令夫人・ワイフ おがむ【拝む】神仏などに向かって頭を下げ手を合わせて礼 をする意で、会話にも文章にも使われる和語。〈墓前で—〉 〈本尊を—〉夢詣・Q参拝・詣でる おかん【悪寒】熱が出るときなどに起こる背中がぞくぞくす るような寒さの感覚をさし、やや改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈ーがする〉〈ーに震える〉の宇野千代の 『色ざんげ』に「ぞっと水を浴びるようなーが僕の背中を走 る」とある。専寒け・鳥肌が立つ おきざり【置き去り】その場に残して立ち去る意で、会話に も文章にも使われる和語。〈仲間をーにする〉の「幼い夢を ーにして」のように抽象化する比喻的用法では美化した感 じになりやすい。おおいてきぼり おきて【掟】必ず守らなければならないとして定められた決 まりをさし、会話にも文章にも使われる古めかしい和語。 〈村のーに従う〉へトを破る〉の国のー」は法律になるが、 それぞれの社会や組織・団体など国家より小さな単位でも使 い、時には「ーが法に優先する」場合もある。Q法・法律・ 法令 おきな【翁】年を取った男をさし、優雅な文章などでまれに 用いられる古語に近い和風の表現。〈にこやかなる—の面〉 の林芙美子の『市立女学校』に「の面のような笑顔」とあ る。近所を徘徊している薄汚れた老人を「翁」と呼ぶと 違和感があるのは、過去の用例の累積からこの語に上品で 優雅な語感がしみついているからである。少年寄り・Q老人 おぎなう【補う】足りないものを足して調節する意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈不足を—〉〈欠点を—〉〈カ ルシウムを—〉〈使った分を—〉〈ーって余りある〉〈補充・ <127> Q補足·補填 おきやん【お俠】若い女の子が活発で軽はずみなようすをさ したが、今ではほとんど使われなくなった古いことば。へー な娘》回「おてんば」同様、すぐに女性を連想させる。月Q お転婆・やんちゃ・腕白 おきる【起きる】目が覚めて寝床から出る意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な和語。〈朝早く ー〉起こしてもなかなかーきない〉まだー・きて来な い)小沼丹の『銀色の鈴』に「仕方が無いから、大寺さん は不承不承ー・きない訳には行かない」とある。単に「目を 覚ます」意と、「目を覚まして起き上がる」意とがある。 目覚める おく【置く】物をしかるべき位置に据える意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈机の上に—〉〈部屋の隅に—〉〈肩にそっと手を—〉ゆ坪田 譲治の『風の中の子供』に「玄関の帽子掛けにチャンと三平 の帽子があり、その下に背負いカパンもー・いてある」とあ る。「津に支社を—」のように「設ける」意でも、「しばらく 間を—」のように時間・空間を空ける意でも使う。り据える おく【奥】入り口や表面や視点から遠く離れたところの意で、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈座敷〉〈一の部屋〉〈山の—〉〈押入れの—〉〈一 が深い〉〈一の手〉〈胸の—にしまっておく〉ヨ井伏鱒二の 『珍品堂主人』に「土間も—の二つの部屋も見違えるほど立 派に改造されていました」とある。とらえ方が「底」と縦と 横の関係になり、「腹の底」も「腹の—」も表現可能だが、 おくさん 「底」は最深部で「奥」はそこまでの奥行の幅を意識させる。 専底・内奥 おくがい【屋外】家屋・校舎・体育館・社屋など建物一般の外を さし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「のス ケトトリンク〉へ「で過ごす」島崎藤村の「千曲川のスケ ッチ」に「障子を開けた。しばらくを眺めて」とある。 戸外・野外 おくがた【奥方】他人の妻をさす古風な和風の敬称。「はお 元気ですか〉(ーにしばらくお目にかからない)森鴨外の 「じいさんばあさん」に「四代のーに仕え」とある。ひいえ の者・うちの者・お上さん・Q奥様・奥さん・お内儀・家内・かみさん・愚 妻・細君・妻・女房・伴侶・ぐターハーフ・令闐・令室・令夫人・ワイフ おくさま【奥様】他人の妻をさす丁重な敬称として広く使わ れる和語。〈失礼ですが、ーでいらっしゃいますか〉へーは ご在宅でしょうか〉へーによしなにお伝え下さいませ〉回会 話より一般に丁寧になりやすい手紙などでは「奥さん」以 上によく使われる。幸田文の『流れる』に「おちついたー というつくり、あがって来る裾のあたりが水気を含んでい るんじゃないかと疑われるくらい」とある。いえの者・うち の者・お上さん・奥方・Q奥さん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・ 妻・女房・伴侶・ベターハーフ・令闥・令室・令夫人・ワイフ おくさん【奥さん】他人の妻をさす最一般的な和語。「奥様」より敬意が軽いため、日常会話で盛んに用いられ、丁寧な手紙では「奥様」や「奥方」に切り換わるケースが多い。「、お元気?〉へによろしく〉(どうぞーもご一緒に)②夏目漱石の『こころ』に「先生とーとは、仲の好い夫婦の一 <128> おくそく 対であった」とある。马いえの者・うちの者・お上さん・奥方・Q奥 様・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・妻・女房・伴侶・ベターハーフ・ 令聞・令室・令夫人・ワイフ おくそく【臆(憶)測】根拠もなくいいかげんな想像で判断す る意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「に 過ぎない」の域を出ない)「でものを言うのは危険 「揣摩」」の形で使うとかなり古い感じに響く。具推察 Q推測・推断・推定・推理・推量・推論・忖度・類推 おくち【奥地】海岸から遠い内陸にあり都市文化からも遠く 離れた地域をさし、やや改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈ーを探検する〉〈森林地帯のーに分け入る〉②人間 が住んでいない場合が多い。ひ僻地・辺境 おくびよう【臆病】気が小さく必要以上に心配する態度や性 質をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。へ者呼 ばわりされる〉へーで夜道が苦手だ〉へいざとなるとついー になる〉〈根がーだから冒険ができない〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「な男でもないが、惜しい事に胆力が欠けて 居る」とある。「豪胆」と対立。「新しい事業を興すときは どうしてもになってしまう」のように、冒険を嫌って安全 第一に考える場合にも使う。Q意気地無し・腰抜け・怖がり・ 小心・腑抜け・弱虫 おくりて【送り手】話し手と書き手との総称。やや専門的な 感じの和語。〈ーと受け手との関係〉の「受け手」と対立。 ひ書き手・話し手・発信者 おくる【送る】別れを惜しんである場所まで、去る人と同行 する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の和語。〈子供を学校まで〉〈帰る客をー・って門ま で出る〉〈恋人を駅まで車でー〉の「見送る」と違い、途中 まで同行するところに重点がある。そのため、対象が人間 の場合は「送る」も「見送る」も自然に使えるが、その人物 の乗った乗り物の場合は「見送る」のほうが自然。手紙を 「」「使者をー」「卒業生をー」「死者をー」「生活をー」な ど、そのほか幅広い意味用法がある。見送る① おくればせ【遅(後)れ馳せ】通常や一般より遅くなってから 行動を起こす意で、会話や硬くない文章に使われる和語。 〈お祝いの会にーながら参上する〉へーながら御挨拶申し上 げます)本来は、遅れて駆けつける意。ひおそまき おくれる【遅れる】遅くなる意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈所定の日 時にー〉〈締め切りにー〉〈解決がー〉〈完成が一年ー〉図川 端康成の『千羽鶴』は「鎌倉円覚寺の境内をはいってから も、菊治は茶会へ行こうか行くまいかと迷っていた。時間 にはー・れていた」と始まる。後れる おくれる【後れる】標準より後になる意で、会話でも文章で も使われる和語。〈時代の動きに—〉〈技術の進歩に—〉 〈流行に—〉〈時計が—〉〈相手より—〉谷崎潤一郎の細 雪に「古典的」な感じの人を求めていたために今日まで 結婚がー・れた」とある。马遅れる おけ【桶】細長い木の板を縦に並べてたがで締め、底をつけ た容器をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。風 呂ー〉〈手ーで水を汲む〉へーで白菜を漬ける〉密閉容器 ではなく、蓋はあってもすぐ外れる。樽 <129> おこうこ【お香香】「香の物」の丁寧な言い方。おしんこ・Q 香の物・漬物 おこさま【お子様】和語「子」の尊敬語。一般の「子供」の 丁寧な表現としても使われる。〈ーランチ〉〈お宅のーは素 直でいらっしゃる〉へ一方に人気のおもちゃ〉は餓鬼・子・Q子 供 おこしになる【お越しになる】「来る」意の尊敬表現。頻用さ れる「いらっしゃる」よりやや古風で、さらに丁重な感じ。 〈お客様は間もなく—かと存じます〉(ただいまー・りまし た)もお出まし おごそか【厳か】態度や雰囲気などに威厳があって近寄りが たい意で、会話にも文章にも使われる和語。「な口調 「な式典」儀式がに執り行われる」Q厳粛・森厳・崇高・ 荘厳・荘重 おこたる【怠る】本来為すべき事を怠けて行わない意で、改 まった会話や文章に用いられる、やや古風な感じの和語。 〈練習をー〉〈義務をー〉〈日ごろから注意をー〉ひサボる・ず るける・Qなまける おこない【行い】行動の意で、会話にも文章にも使われる古 風な和語。〈日ごろの—が大事だ〉〈—を慎む〉具体的で 幅の広い「行為」や「行動」に比べ、道徳的な見地からの用 法が目立ち、「—が悪い」といえば品行をさす場合が多い。 活動①・Q行為・行動・動作・ふるまい おこなう【行う】ある順序や方式に則って物事を実行する意 で、改まった会話や文章に用いられる和語。〈会議を—〉 〈練習を—〉〈取調ぺを—〉〈式を—〉〈内密にこれを—〉 おこる 「する」より改まった感じだが「挙行」や「執り行う」ほど ではない。「オコノー」と発音すれば古めかしい感じに響 く。単行・Qする・執り行う・やる① おこる【怒る】不満から感情が激する意で、文語的な「いか る」に対し、日常ふつうに用いられる基本的な和語。〈顔を 真っ赤にしてー〉へかんかんにー〉〈おやじにー・られる〉 〈上司をー・らせてしまう〉②丸谷才一の『笹まくら』に「陽 子がー・っていることは、返事をしないことでも判る」とあ る。近年、主として会話で、「親が子をー」「上司が部下を きつくー」のように、「叱る」の代用に近い用法が広がって おり、そのような比較的新しい用法の場合は会話的で、時 に俗語的な語感を伴う。「火が熾る」「波が起こる」の「お こる」と同じ語源で、内部からわきあがるエネルギーによ り、それまで静かであったものに激しい動きが生じ、その変 化が外部にあらわれる、という本来の意味が底に生きてお り、「叱る」に類した俗っぽい用法の際も、あくまで自分の 感情から相手にきつくあたるという意味合いが強い。夏目 漱石は学習院での講演『私の個人主義』で英国留学時代を振 り返り、「冠詞が落ちていると云って叱られたり、発音が間 違っているとー・られたりしました」と、すでに「叱る」と 「怒る」とを同義で使っている。いかる・Q叱る おこる【起こる】自然現象・生理現象・社会現象・心理現象など が目立つ形で生ずる意で、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の基本的な和語。〈火事が—〉〈災害が ー〉〈事件が—〉〈拍手が—〉〈めまいが—〉〈問題が—〉 〈パニックが—〉〈好奇心が—〉「起きる」をこの意味で使 <130> うのは俗用。Q起きる・生じる・生ずる・発生 おさえる【抑える】抑制する意で、やや改まった会話や文章 に用いられる和語。〈欲望を—〉〈感情を—〉〈出費を—〉 〈値段を—〉〈ー・えた色調〉林房雄の『青年』に「さっき からー・えつけていた怒りを吐き出すかのように叫んだ」と ある。単押さえる おさえる【押さえる】対象の動きを封じ、また、確保する意 で、会話でも文章でも広く使われる和語。〈腕を—〉〈犯人 を—〉〈物件を—〉〈証拠を—〉〈力で—〉庄野潤三の静 物』に「飛ばさないように片方の手で(帽子を)ー・えて走ら ねばならなかった」とある。呂抑える おさながお【幼顔】幼いころの顔つきの意で、主に文章に用 いられる古風な和語。まだーが残る)〈遠い国に住む息子 のーが目にちらつく福原麟太郎の『顔について』に「 の上にかぶさった皺が問題なのだ。その皺に責任を持てと いわれる」とある。単童顔 おさなご【幼子】幼い子供をさし、主として文章に用いられ る古風で美化した感じの和語。〈一の寝顔〉ヘーを抱えて働 く》森鷗外の『即興詩人』に「耶蘇のー」とある。小 児・ちのみ・Q乳児・幼児 おさなごころ【幼心】幼かった頃の心の意で、会話にも文章 にも使われる、郷愁を呼ぶいくらか詩的な和語。へに覚え ている)へに思ったことだ)川端康成の『純粋の声』に 「西洋人の幼児の母呼ぶ声などを聞くと、こちらも母の乳房 のようなーに還る」とある。「亡くなった母の面影はーには っきりと焼きついている」のように、まだはっきりと分別の つかない、いたいけな気持ちにさえもという意味合いにも 「ーにバイロットを夢見る」のように、そういう幼時のこと だから無邪気にという意味合いにも使われる。Q子供心 童心 おざなり【御座形】その場しのぎで熱意の感じられない意で、 会話や軽い文章に使われる、いくぶん古風な和語。へーの答 弁〉へーのやっつけ仕事〉へーの計画〉の「御座」は「その 場」の意で、きまりきった対応になりやすい、後々のことま でろくに考えないニュアンスが強い。音の似た「なおざり」 と混同されることもある。専通り一通 おさめる【収める】取り込む意で、やや改まった会話や文章 に用いられる和語。〈利益を—〉〈成功を—〉〈風景を力メ ラに—〉〈名作を一冊の本に—〉巻Q納める・治める・修める おさめる【納める】納入する意で、会話でも文章でも使われ る和語。〈役所に—〉〈税金を—〉〈取引先に品物を—〉〈神 社に絵馬を—〉巻Q収める・治める・修める おさめる【治める】安定させる意で、ややあらたまった会話 や文章に用いられる和語。〈国を—〉〈水を—〉〈丸く—〉 Q収める・納める・修める おさめる【修める】身につける、整える意で、改まった会話 や文章に用いられるやや古風な和語。〈学問をー〉〈身を ー〉収める・納める・Q治める おさらい【お浚い】「復習」に近い意味で、古めかしい和語。 へお琴のー〉〈踊りをーする〉②サトウハチローに『おさら い横町』と題する作品があり、「ああ、幸福なー横町の夕 方」「この横町で、ーをするのじゃ」とある。このように、 <131> 以前は学校の勉強の復習の意でも使ったが、現在は芸事な とに限って使われるため、繰り返し練習するというニュア ンスが強い。み復習 おさん【御産】出産の意で、主に日常会話で最も普通に使わ れる美化語。〈一のために実家に帰る〉〈一が軽く済む〉 Q出産・分娩 おし【啞】音声を用いて話すことのできない人を伝統的にさ してきた和語。差別意識が指摘されて、今では使用を控え ている。「啞」という漢字を音読みした「ア」という音で 間接的にさす場合もある。音読みすることで語感を薄め、 意味との直接のつながりをぼかして、一種の記号のような 働きに変換する試み。 おしい【惜しい】貴重で無駄にしたくない意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈金がー〉〈時間がー〉〈まだ捨てるのはー〉〈一人を亡くし た〉志賀直哉の『暗夜行路』に「このまま電車に乗ってし まうのがー気がした」とある。「ーところで乗り遅れる」 「ー・くも優勝を逃す」のように、もう少しのところで目的 が果たせず残念だという意味を表わす用法もある。み遺憾・ 残念・無念・Oもったいない おしえご【教え子】教師として教えた相手をさし、会話にも 文章にも使われる和語。〈中学のー〉〈昔のーが訪ねて来 る〉②「弟子」「門弟」「門人」が師の認めた限られた数の人 であるのに対し、この語はその先生の授業を受けたことの あるすべての人にあてはまる。ひQ弟子・門人・門弟 おしえる【教える】知識を授けたり技能を指導したり情報を おしむらくは 伝えたりする意味で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈ピアノを—〉〈中学で数学を—〉〈駅までの道を—〉〈秘訣がいをこっそり—〉〈みんなに内緒で連絡先を—・えてやる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「そんな生意気な奴はー・えないと云ってすたすた帰って来てやった」とある。客観的・中立的な「知らせる」と違って、伝達する側が上位の、あるいは優位な立場にあり、相手のために行動を起こすという感じが強い。そのため、単なる情報伝達というよりそのことをとおして指導する雰囲気が漂い、相手は恩義に感じる。教育・教示・教導・コーチ・指導・指南・知らせる・導く おじぎ【御辞儀】頭を下げて敬意を表す意で、くだけた会話 から文章まで幅広く使われる日常語。「丁寧に」をする 「びょこんとーをする」〈帽子を取ってーをする〉「黙礼・会 釈・最敬礼など、頭を下げる挨拶の総称。坪田謙治の『風の 中の子供』に「ーをして側に坐る」とある。巻挨拶・Q会釈・ 敬礼・最敬礼・目礼・黙礼・礼② おしたビ【御下地】「醤油」をさし、主に女性が会話に使う、 やや俗っぽい和語。へねえ、ちょっと、そこのーを取って頂 戴な味付けの基礎になるところから。男性は単に「し たじ」と言うこともある。東京方言という。Q醤油・紫 おしっこ小便の意で、主に会話によく使われる日常的な和 語。「が出る〉〈ーを我慢する〉頬義語中で最も一般的 に頬用されるが、もと幼児語だけに学術的な会話や硬い文 章などにはなじまない。ひ小水・Qしょうべん・しょんべん・尿 おしむらくは【惜しむらくは】「惜しいことには」という意味 <132> おしめ の文語的な慣用表現。「、末尾がやや迫力に欠ける」「、 遠い山々が霞んで稜線がくっきりと見えない」小沼丹 の『喧嘩』では五、六歳の子供を「洟を垂していて、何や らぼかんとした顔で相手を見返した所は、どう見ても親分 の貫禄に乏しい」と描写している。とても小きな子供のこ ととは思えないような、不釣り合いに大仰な言いまわしが ユーモラスな味わいをかもしだした例である。 おしめ【御湿/襁褓】「おむつ」の意で、会話にも文章にも使 われる、いくらか古風な感じの和語。〈ーを当てる〉へが 濡れる〉へーを替える〉②もと「湿る」意の間接表現からか。 ひおむつ おしめり【お湿り】雨を待ち望んでいるときに降る適量の雨 をさし、会話や硬くない文章に使われる和語。〈いいーだ〉 多く女性が使う。雨 おしゃべり【お喋り】日ごろから口数の多い意で、主に会話 に使われる和語。へーの女が言いふらすへーが過ぎる) 通常はマイナス評価だが、小津安二郎監督の映画『麦秋』で 母親役の杉村春子が息子の再婚相手にひそかに考えていた 原節子からいい返事をもらって「やっぱりよかったよ、あた しーで」と言う場面がある。ひQ饒舌多弁 おしゃれ【御洒落】化粧をしたり服装を整え身なりを飾った りする意で、会話や軽い文章に使われる日常の和語。「な 人」「をする」「に気を遣う」の人間に限らず、「な贈 り物」「な靴」のように、見た人がそう感じるような品物 にも使う。おめかし おしょう【和尚】僧の意で会話にも文章にも使われる日常の 漢語。〈山寺のーさん〉〈ーと小坊主〉ると、弟子が自分 の師に当たる僧を呼ぶ語。天台宗では「かしょう」真言宗 では「わじょう」と読む。住持・Q住職・僧・僧侶・坊主 おしんこ【お新香】浅漬けの香の物をさす丁寧な言い方。 単に「香の物」の意に用いることもある。ひおこうこ・香の 物・Q漬物 おすいもの【お吸い物】「吸い物」の丁寧な表現。〈鯛のー〉 主に澄まし汁を言う。おつけ・おみおつけ・汁物・Q吸い物 おずおず【怖ず怖ず】怖くてためらう場合に、会話にも文章 にも使われるやや古風な和語。〈病名を尋ねる〉〈問いか けにー答える〉加能作次郎の『世の中へ』に「鼠が物を引 くように、ーと膝の前に散っている銀貨を拾った」とある。 専恐る恐る・Qおっかなびっくり・おどおど・こわこわ・びくびく お世じ【お世辞】交友関係などが円滑になるように相手を褒めたり立てたりするうわべだけの言葉の意で、会話や軽い文章に使われる日常表現。〈ーを言う〉(ーがうまい)〈ーにも上手とはいえない〉小沼丹の「黒と白の猫」に「半分は大寺さんの飼猫と思い込んでのーもあったに相違ない」とある。ひお追従・おべっか・おべんちゃら・外交辞令・Q社交辞令おセンチ「センチメンタル」の意で、主に女性がくだけた会話に使った古めかしいことば。〈昔わが家の建っていた跡地に立って、少しになる〉「センチメンタル」の短縮形の「センチ」に「お」をつけて丁寧にした語形。「センチ」よりさらに古い若干ちゃかした感じになっている。小川洋子の『沈黙博物館』に「思い出などという」な感情」という例が出る。ひ感傷的・Qセンチ・センチメンタル <133> おそい【遅い】動作や進行に時間がかかる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈テンポがー〉〈仕事がー〉〈反応がー〉〈時間の経つのがー〉単に事実をそう判断しているだけであって、「のろい」のような直接のマイナスイメージは伴わない。小沼丹の『珈琲の木』に「ー朝食の後、ひととき、珈琲を喫みながらほんやりしていると、いろいろのことを思い出す」という一文があり、事実、「この気分は悪くない」と続く。なお、「帰宅がー」のように、通常の時刻を過ぎる意を表す場合や、「夜ーく出発する」のように、夜が更けてからを意味する場合は、特に「晩い」と書くこともある。そのろいおそかれはやかれ【遅かれ早かれ】時期的に早い遅いの差はあっても必ずの意で、会話にも文章にも用いられる、やや古風な和語表現。〈ーそうなる運命にある〉〈ー子供は親元から独立する〉単晩 おそなえ【お供え】神仏にお供えする物の意で、会話や軽い 文章に使われる和語。〈一の鏡餅〉〈仏壇の前にーする〉② これだけで鏡餅をさすことも多い。単供物 おそまき【遅(晚)蒔き】適当な時期を過ぎてから事を起こす 意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。人なが ら準備を始める人ながら改革に着手する人種を蒔く時 期が遅い意から。遅れ馳せ おそらく【恐らく】「多分」の意で、やや改まった会話や文章 で用いられる、少し硬い感じの和語。へは当人の耳に届い ているであろうへ成功を収めるものと思われるへ単 独での挑戦は困難ではあるまいか辻邦生の『旅の終り』 おそれいる に「私たちは明日午後の列車で町をたつだろう」とある。 「恐るらくは」の略。「老いらく」の前身「老ゆらく」や「い わく」「おもわく」などと同様、いわゆるク語法によって動 詞から成立した名詞の語形であるせいで堂々たる雰囲気を 残すためか、和語なのに文体的レベルとして漢語の「多分」 よりも硬い感じに受けとられている。多分 おそるおそる【恐る恐る】こわがったり恐縮したりしてため らいながらの意で、会話にも文章にも使われる和語。〈社長 にー伺う〉へー警察に出頭する〉〈吊り橋からー下をのぞ く〉へー火口に近づく〉有島武郎の『カインの末裔』に 「ー頭を下げた」とある。おずおず・おっかなびっくり・おどお ど・Qこわこわ・びくびく おそれ【恐(怖)れ】心配で怖がりそれを避けようとする気持 ちをさし、会話にも文章にも使われる基本的な和語。へーを 抱く〉へーをなす〉徳田秋声の『あらくれ』に「取殺され てもするようなーにわななきながら」とある。北杜夫の 『天井裏の子供たち』には「まだ果たしていないおきてへの 責めとーが、ちくちくと胸を刺した」という比喻表現の例 がある。「恐怖」に比べ、具体性や直接性が弱く、ぶきみな 感じや警戒を抱かせる感じに近い。「台風が上陸するーが ある」「物別れに終わるー無しとしない」のように心配・懸 念の意でも使い、その場合は「虞」とも書く。気がかり・危 惧・Q恐怖・懸念・心配・不安 おそれいる【恐れ入る】恐縮する意で、改まった会話や文章 に用いられる丁重な和語。「丁重な御挨拶まことにーりま す」(・りますが、よろしくお願い申し上げます)有り難 <134> おそれおおい い・痛み入る・忝い・Q恐縮 おそれおおい【恐(畏)れ多い】はるか目上の人の心遣いに恐 縮する気持ちをさし、改まった会話や文章に用いられる、現 代ではやや古風で大仰な感じの和語。〈ー・くも畏かしくも〉 〈社長にそこまで御配慮たまわるのはーこと〉も勿体ない おそれる【恐れる】恐怖を感じる意で、会話でも文章でも広 く使われる和語。〈熊を—〉〈敵を—〉〈死を—〉夏目漱石 の『明暗』に「愚鈍という非難を、彼女は火のように—・れ ていた」とある。好んで特に「怖れる」と書くこともある。 「失敗を—」「倒産を—」「けがを—」のように、心配する・ 懸念するの意では、特に「惧れる」「懼れる」と当てる場合 もある。通例から離れる表記は趣味的な感じを伴い、文体 的なレベルを高める方向で働きやすい。刂畏れる おそれる【畏れる】恐れ多い意で、改まった会話や文章に用 いられる和語。〈神を!・れぬ振る舞い〉「恐れる」と書い ても誤りではないが、畏怖の場合は恐怖とかなり違った感 情なのでこの用字で書き分けようという心理が働きやすい。 恐れる おそろしい【恐ろしい】恐怖を感じさせる意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈ー話〉〈ー相手〉〈ーことが起こる〉〈聞いただけでもー〉志賀直哉の『城の崎にて』に「死に到達するまでのああいう動騒はーと思った」とある。主観的な「怖い」と比べ、この語は自分の気持ちだけでなく、「形相でにらまれる」のように恐怖感を抱かせる特定の対象に関する描写にも使われるだけに客観性が高く、類似の例では「怖い」より恐怖感や打撃が大きい感じが ある。また、「結果の発表を見るのが」のように不安でひ どく心配になる意にも、「思い込みというのはもので」の ように軽視できない意にも、「スピード」「寒さ」のよ うに程度が驚くほどだの意にも使う。恐怖・怖い おそわる【教わる】知識や技術などを教えてもらう意で、会 話や軽い文章に使われる和語。学校で先生に」〈車の運 転を」〈」・ったとおりにやる〉学術的な内容以外にも、 「お巡りさんに道を」「先輩の名を」のように単なる情 報を得る場合にも使う。Q習う・学ぶ おち【落ち】うっかり書き忘れたりして、あるべきなのに抜け落ちた部分をさし、会話や軽い文章に使われる日常の和語。〈帳簿にーがある〉〈目録にーがある〉くれぐれもーがないよう気をつけて「漏れ」に比べ、人の手落ちという面が意識され、いくぶん古風な感じもある。遺漏・Q欠落・脱落①・漏れ おちいる【陥る】よくない状態にはまり込む意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈深みに—〉〈敵の術中に—〉寺 田寅彦の『科学者とあたま』に「立派な科学者でも、時とし てー一つの錯覚がある」とある。ひはまる おちこぼれ【落ち零れ】仲間より程度が低く授業などについ て行けない意で、主としてだけた会話に使われる俗っぽ い和語。〈秀才ぞろいのクラスでーになりそう〉ふ脱落②・落 伍・劣等生 おちこむ【落ち込む】気が減入って元気がなくなる意で、会 話でも文章でも幅広く使われる日常的な和語。〈失敗して 精神的にー〉〈気の毒なほどのー・みよう〉ひくじける・Qへこ <135> む② おちつかない【落ち着かない】気持ちに平静さを欠く意で、 会話にも文章にも使われる和語表現。へどうも気分がー〉 〈結婚式が近づいて何かとー〉②芝木好子の『青果の市』に 「ひどく大それた事をしでかしたような不安に胸がー」とあ る。ひQ片付かない・そぞろ・そわそわ おちつく【落ち着く】いつもの安定した状態に戻る意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈世の中が—〉〈株価が—〉〈騒ぎが—〉〈気分が ー〉〈ー・いて対応する〉浜田広介の『泣いた赤おに』に 「心のなかまでゆったりと、ーことができました」とある。 永井龍男の『一個』には「疲れてはいたが、気分はー・いて いた」とある。Q安定・沈着・平静・冷静 おちぶれる【零落落魄)れる】地位や身分も財産も名声も失 って惨めな状態に落ち込む意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈名士がー〉〈老舗もー・れたものだ〉〈一流企業が ー〉〈まだそこまでー・れていない〉小沼丹の『揺り椅子』 に、子爵が「いまは悉皆がー・れて貧乏している」という例 がある。刂凋落落・没落落魄・Q零落 おちゃ【御茶】飲み物としての「茶」をさし、会話やさほど 硬くない文章に使われる日常の表現。〈ーがほしい〉〈夜濃 いーを飲むと眠れない〉本来は「茶」の丁寧語だが、現在 は通常この形で用い、単に「茶」とすると古めかしく響く。 「ーでもいかが?」などと喫茶店に誘う場合は、現実に緑茶 よりコーヒーや紅茶をさし、「ーにする」の形で何か飲みな がら休憩する意を表す用法もある。马上がり・玉露・煎茶・Q おついしょう 茶·日本茶·番茶·碾茶·焙茶·抹茶·緑茶 おちよくる「からかう」意の関西方言。東京でもくだけた会 話で時折使われる俗語。〈人をーのもいい加減にせんか〉 からかう・ひやかす・やゆ ちる【落ちる】①落下する・漏れる意で、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。穴 にー〉〈汚れがー〉〈スピードがー〉〈試験にー〉〈成績が ー〉〈名簿から名前がー〉〈眠りにー〉夏目漱石の『坊っ ちゃん』に「神楽坂を半分に狭くした位な道幅で町並はあれ よりー」とあるように、相対的に価値が低い意にも用いる。 飛行機などが落ちる場合は「墜落」の連想で「墜ちる」と書 き、「道徳が地にー」「ところまでー・ちた」のような意味 合いでは「堕落」の連想で「堕ちる」と書く例もある。知識 を土台にして特定の漢字を選ぶ表記は一般に文体的なしべ ルを高める傾向がある。少降下・墜落・転落・はまる・漏れる・落下 ②鳥が「死ぬ」意の間接表現。〈メジロが突然ことっとー〉 死を忌む気持ちから、直接それと明言せず、その結果の 形態に着目してイメージを置換することで衝撃をやわらげ る婉曲表現。勇敢え無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切 れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お 隠れになる・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死 ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・ 亡くなる・儚なくなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏 になる・身罷がまる・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・ 臨終 おついしよう【お追従】相手にこびへつらう言葉の意で、主 <136> おっかない として会話に使われる古風な表現。〈笑い〉〈課長にーを 言う〉女性が多く使ったか。「追従」を「ついじゅう」と 読めば、付き従う意の別語。お世辞・おべっか・Qおべんちゃ ら・外交辞令・社交辞令 おっかない「怖い」意で、くだけた会話に使われる俗っぽい 和語。〈ー・くて逃げ出す〉〈ー顔で怒鳴る〉稲垣足穂の 『弥勒』に「虫類は嫌いであり(略)高圧線のように・かっ た」とある。東京方言という。恐ろしい・Q怖い おっかなびっくり怖くてびくびくしながらの意で、くだけ た会話に使われる俗っぽい和語。〈ーハンドルを握る〉へー 前へ出る〉の「こわい」意の「おっかない」と「びくびく」 からか。もおずおず・恐る恐る・おどおど・Qこわこわ・びくびく おっくう【億劫】面倒に思って気乗りがしない意で、会話に も文章にも使われる古風な漢語。〈口を利くのもだ〉〈雨 の日は外出するのがだ〉泉鏡花の『高野聖』に「瞳を動 かすさえ、らしい、気の抜けた身の持ち方」とある。「何 となく」でめったに旅行しない」のように、特に煩わしい手 続きが必要でなくてもそうなるから、多分に気持ちの問題。 刂大儀・面倒・Q面倒くさい・煩わしい おつくり【お造り】「刺身」の丁寧な和風表現。〈平日のー〉 〈お客様にーをお出しする〉谷崎潤一郎の『細雪』に「鯛 は(略)赤身のーなどが食べられる」とある。西日本に多く 東京でも店などでよく使う。刂刺身 おつけ【御付け】味噌汁をさす古風な和語でローカルな感じ もある。〈一の実〉本膳で御飯の右に並べて「付ける」と ころからという。お吸い物・Qおみおつけ・汁物・吸い物 おったまげる【おっ魂消る】「たまげる」の強調形。さらに古 風でさらに俗語的でいくぶん方言的な感じの語形。突然 ばかでかい音がして破裂したからー・げた》驚く・仰天・Qた まげる・びっくり・ぶったまげる おっちょこちょい落ち着きがなく軽はずみな意で、くだけ た会話に使われる俗語。〈根がーだから失敗ばかりやらか す〉見慌て者・軽はずみ・軽率・Q粗忽そそっかしい おって【追って】通信などのある行為の後、あまり時間をお かずに次の行為を予告する場合に、改まった会話や手紙な どの文章に用いられる和語。〈ー通知する〉へ転居先につい てはーお知らせします〉②「書き」として、手紙文を一往 結んだ後で、書き忘れたことなどを書き足す意にも使い、 その場合は「追而」とも書く。いずれ②・近々・Qそのうち 近ぢか・やがて おっと【夫/良人】結婚している女から見たその配偶者をさ して、会話にも文章にも使われる和語。〈ーを信頼する〉 〈若くしてーを亡くす〉〈ーをかぱう〉〈ーの言い分〉夏目 漱石の『明暗』に「ーというものは、ただ妻の情愛を吸い込 むためにのみ生存する海綿に過ぎない」とある。近年、妻 が他人に向かって自分の配偶者をさす際に「主人」という語 を避けてこの語を用いる例が増えているが、相手は「夫さ ん」と言うわけにいかず、とまどうケースもある。昜うちの 人・Q主人②・旦那・亭主・ハズ・宿六 おっとり 人柄や態度がこせこせせずのんびりしている意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈ーした性格〉へと した人〉へと構える〉谷崎潤一郎の『細雪』に「きょう <137> の夫人はいつものーしたところがまるでなく」とある。「 した顔」「とした小太りの紳士」のように、外見がそうい う印象を与える場合に使われる例もある。「大らか」と違 い、心が広いところまでは規定していない。広揚大様 Q大らか おっぱい「乳房」を意味する幼児語。赤ん坊がーにかぶ りつく②くだけた会話では大人の男もいくらか照れ気味 に、あるいは照れ隠しにふざけて俗語として用いることも ある。刂乳・Q乳房・にゅうぼう・胸② おっぱらう【追っ払う】「追い払う」意の口頭語。〈野良猫を ー〉〈こそ泥をー〉「追い払う」と語構成要素は同じであ るが、この語の場合は促音とそれに続く「パ」という破裂音 の影響もあり、「追い払う」より強く激しい語感がある。 追い立てる・追い払う・撃退 おっぽ【尾っぽ】「尾」をさす古い感じの俗語。〈ーが生える〉 〈犬がーを振りながら走って来る〉の「尾」と「しっぽ」の 混交で生じた語形で、いくぶん方言的なにおいも感じられ るか。児尾・Qしっぽ おっぽりだす【おっぽり出す】捨てるように放り出す意の俗 語。〈試合を簡単に—〉〈家事をー・して遊び歩く〉乃投げ捨 てる・投げ出す・Q放り出す・ほっぽり出す おでき【御出来】「出来物」の丁寧な言い方で、会話や改まらない文章に使われる和語。〈顔にーができる〉女性が多く用いる、少し子供っぽい雰囲気の表現。腫物・Q出来物・腫 用いる、少し子供っぽい雰囲気の表現。腫物・Q出来物・腫 れ物 おでこ「ひたい」の意でくだけた会話で使う口頭語。「が おてもと 大きい〈ーをぶつける〉尾崎一雄の『虫のいろいろ』に 「どうだ、エライだろう、ーで蠅をつかまえるなんて、誰に だって出来やしない」とある。小さな子供に向かって言う 場合は「額」よりもこの語を用いる傾向が見られる。ひひた い・眉間 おてつだいさん【お手伝いさん】差別意識が感じられるとし て「女中」という語の使用を控えた場合の言い換え。会話 的なレベルの和語。〈ーに来てもらう〉名称変更に伴って 勤務条件や立場にも違いが生じたように見える。住み込み というイメージのあった「女中」に比べ、むしろ通いという 形態が一般的で、勤務時間も明確になり、残業手当もきちん と支払われることが多い。仕事の内容が「女中」ほど固定 されておらず、経験や実績もさほど要求されず、時間の空 いているときに手伝いに来る素人でもかまわないといった 雰囲気を感じる人もある。専家政婦・下女・Q女中・派出婦・メー ド・召し使い おてて【お手手】「手」の意の幼児語。ふかわいいーをしてい る)井伏鱒二は『珍品堂主人』で『珍品堂のそろそろ伸ば したーを、ぼっと跳ねのけると見せて太い乳房のところへ 持って行きました」とこの語を用いることで濡れ場に水を さしている。ひ手 おでまし【お出まし】「出る」「出向く」「来る」といった意味 のやや古風で丁重な尊敬表現。〈社長のーでございます〉 〈旦那様がーになりました〉島崎藤村の『桜の実の熟する 時』に「浜の方へーで御座います」とある。お越しになる おてもと【御手元(許)】料理屋などで客に出す箸をさす間接 <138> おてん 表現。〈ーを人数分そろえる〉 〉筆 おてん【お点】女性や子供が成績の「点数」の意で使った古 風な美化語。〈久しぶりでいいーもらっちゃった〉の小津安 二郎監督の映画『戸田家の兄妹』(一九四一年)で長女の男 の子が「少しは先生ーくれるかしら?」と祖父に尋ねる場 面がある。今ではほとんど耳にすることのない言い方。 おてんとうさま【お天道様】「太陽」の意で会話や軽い文章に 使われる古めかしい表現。〈ーに申し訳ない〉へーのぼちが 当たる〉林芙美子の『放浪記』に「大根の切り口みたいな 大阪のー」とある。尊敬と親密の意を添えて擬人化した表 現。「おてんとさま」ともいう。Qお日様・太陽・日輪・日 おてんば【御転婆】若い女の子が慎みなく活発に動きまわる ようすをさして使ったが、今ではあまり使われなくなった 古いことば。〈ーが過ぎますよ〉(ちょっと手に負えない だ〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「かの不貞無節なるー」 とある。「馴らして手なずけるのが困難」といった意味のオ ランダ語に類音の漢字を当てた語という。したがって、 「婆」という漢字の意味とは無関係であるが、伝統的に若い 女に対して用いてきた関係で、この語はすぐに女性を連想 させる。ひQおきゃん・やんちゃ・腕白 おと【音】物体の振動により生じた空気の振動が耳に届いて 起こす感覚をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる日常の基本的な和語。〈雨の—〉〈—がする〉〈風 の—が聞こえる〉〈—が出る〉〈—を立てる〉幸田文の 『流れる』に「お飾りはささ竹ばかりがすとんと背高く、さ わさわと寒いーをたてている」とある。Q音響・ね・響き おトイレ女性や子供を中心にあるいは対子供という場面などの会話で、「便所」の意に用いることのある俗語。ママは今、「お便所」や「お手洗い」に倣って「トイレ」を丁寧に表現する意図で、ひところ盛んに用いられた。が、二拍をひとかたまりにとらえることの多い日本語の発音上の傾向が働いて語構成の意識が崩れ、「お十トイレ」が「音+入れ」と聞こえ、本来存在しない「音入れ」という語を連想する不思議な創造的聴き手が現れたらしく、近年、この語形の使用がめっきり減ったようである。谷崎潤一郎は「陰翳礼讃」の中で、「木製の朝顔に青々とした杉の葉を敷き詰めた」便器を理想とすると語った。せっかく意味をぼかして上品にし、さらに丁寧な語形に仕立て上げたほずの苦心のことばが、そういう思いもかけない連想によって露骨に響き、かえって生々しい感じになる危険を秘めているからであろう。専厠・閑所・化粧室・御不浄・雪隠・洗面所・WC・手水場・手洗い・トイレ・トイレット・はばかり・Q便所・レストルームおとうさま【お父様】「お父さん」のさらに丁寧な表現として、会話にも文章にも使われる和語。へに伺うへのお帰り小津安二郎監督の映画『東京物語』で原節子の演ずる紀子が「お母さま、ちっともお変わりになりませんわ」と義母に話しかけるように、昭和中期までは家庭内でも尊敬表現が行われていた。「お母様」と対立。Qお父さん・お父ちゃん・男親・親父・父・父上・父親・父さん・父ちゃん・パッパ・パぷおとうさん【お父さん】「父」の意で尊敬と親しみをこめて呼ぶときに会話でも文章でも用いられる日常の標準的な語形。へとそっくりだ〉へのおみやげ〉家の中の役割がきま <139> っている多くの日本家庭では、その家族における最年少の 者から見た関係を呼び名とする習慣があり、その子の父親 のことは家族全員が例えば「お父さん」と言う。当人から 見れば妻や親にあたる人も同様に呼び、子供に向かっては 自分自身のこともそう言うことが多い。なお、「父さん」に 「お」を付けたこの語形は明治末期に国定教科書に採用され て全国に広まったとされる。「お母さん」と対立。Qお父 様・お父ちゃん・男親・親父・父・父上・父親・父さん・父ちゃん・パッパ・ パパ おとうちゃん【お父ちゃん】「父親」の意で、子供などが、ま たは子供に向かって大人が、親しみをこめて呼ぶやや古風 な和語。〈一、遅いね〉(ねえ、ボク、ーいる?)現代では 西日本の方言的なニュアンスを感じさせることもある。「お 母ちゃん」と対立。ひお父様・Qお父さん・男親・親父・父・父上・父 親・父さん・父ちゃん・パッパ・パパ おどおど恐怖や緊張から落ち着かない状態が外面に現れる 場合に、会話や軽い文章に使われる和語。〈ーした様子〉 〈ーした目つき〉の野上弥生子の『真知子』に「悪だくみで もしているような、ーした風で打ち明けた」とある。ひQお ずおず・恐る恐る・おっかなびっくり・こわこわ・びくびく おとがい【頤(頷・願)】下あごの意で、会話にも文章にも使わ れる古風な和語。〈ーを解く〉あご おどかす【脅(嚇)かす】自分に都合のいい行動をさせるため に相手に威圧感を与える意で、会話や硬くない文章に使わ れる和語。〈警察に通報するとー〉〈ナイフをちらつかせて ー〉の「おどす」ほど悪辣ではない。専威嚇・Q脅す おとこのかた おとぎばなし【御伽噺(話)】子供に語って聞かせる昔話をさ し、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈一の世界〉 〈一にでも出て来そうな家〉②梶井基次郎の『冬の日』に 「自分が疲を吐くのに困った。まるでものを云う度口から蛙 が跳出すグリムーの娘のように」とある。「童話」はもちろ ん「昔話」よりも非現実的な話を連想させる。もとは、貴人 などの退屈を慰めるためにそばで語って聞かせる話をさし た。児童文学・童話・Qメルヘン おとこ【男】人間の性別のうち女でないほうをさし、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈ーに生まれる〉〈ーの領分〉〈ーとーの約束〉〈ーのプ ライド〉〈切れるー〉の「女」と対立。「いいー」のように容 姿だけをさし、「ーができる」のように情人をさし、「ーと 見込んで頼む」のように情のわかる一人前の人間をさし、 「ーがすたる」「ーの中のー」のように男性としての面目を さすなど、さまざまな面に焦点をあてて多様な意味合いで 使う。川端康成の『眠れる美女』には「もうーでなくなった 老人」という、正常な性行為を営む能力を暗示する用法も ある。男の方・男の子・男の人・男子・Q男性・殿方 おとこおや【男親】「父親」の意で会話にも文章にも使われる 和語。「がきひしい」の「父親」に比べ、男である点を意 識した表現。「女親」と対立。お父様・お父さん・お父ちゃん・ 親父・父・父上・Q父親・父さん・父ちゃん・パッパ・パパ おとこのかた【男の方】「男の人」の丁寧な表現として、会話 や硬くない文章に使われる和語。〈ーはどうぞこちら〉 へーがお出でです〉の「女の方」と対立。男・男の子・Q男の <140> おとこのこ 人,男子,男性,殿方 おとこのこ【男の子】若い男をさし、会話や軽い文章に使わ れる、いくぶん俗っぽい和語。へとつきあう〉〈会社の の間で人気がある〉多く若い女性が用いる。「結婚して を二人もうける」「まだ小学生のーがいる」のように、男で ある子供の意に使う例も多い。「女の子」と対立。男・男の 方・Q男の人・男子・男性・殿方 おとこのひと【男の人】「男」のやわらかい言い方として、会 話や硬くない文章に使われる和語。〈湯上がりに裸で涼む なんてーはいいわね〉〈ーに声を掛けられる〉多く女性が 用いる。「女の人」と対立。男・Q男の方・男の子・男子・男性・ 殿方 おとこまえ【男前】男としての器量、特に顔のいい男をさし、 会話や軽い文章に使われる古風な和語。〈なかなかのーだ〉 ひいけめん・好男子・ハンサム・美男子 おとしあな【落とし穴】人間や動物が踏むと中に落ち込むよ うに仕掛けた穴、転じて他人を陥れる謀略をさし、会話や 改まらない文章に使われる日常の和語。〈ーにはまる〉へー に落ちる〉の有島武郎の『生れ出ずる悩み』に「ーにかかっ た獣のような焦躁だしさを感じて」とある。ひ陥穽・Q罠 おとしまえ【落とし前】後始末の意の俗語。もとヤクザなど の用いたことばだったが、今では俗語に近づいている。〈ー をつける〉ひ始末 おとしをめす【お年を召す】「年を取る」意の和風尊敬表現 〈!・した方にお似合いです〉高齢者・年寄り・老人 おどす【脅(嚇)す】相手にとって不利なことを取引材料にす るなど、恐怖感を与えて不当に金品を奪ったり、自分の利益 になる行動を強要したりする意で、会話やさほど硬くない 文章に使われる和語。〈通行人を刃物で!・して金を奪う〉 〈使い込みを上司に告げ口するとー・して口止め料をせしめ る〉の「おどかす」より悪辣で犯罪行為を連想させやすい。 専威嚇・恐喝・Q脅迫・ゆすり おとずれる【訪れる】「訪ねる」「やって来る」の意で、主として文章に用いられる、やや詩的な感じの和語。〈新居を ー〉〈観光地をー〉〈先年ロンドンをー・れた折〉〈ようやく 春がー〉〈転機がー〉〈この地にもいずれ平和がーだろう〉 〈待ちに待った吉報がー〉〈思いがけず絶好のチャンスがー〉 埴千代の『全機還りなば』に「春風に吹き送られたように フラリとお半さんがー・れて来た」とある。「訪ねる」と違 い、人間以外が主語になる例も多い。Q訪ねる・訪問・やって 来る おとつい【一昨日】「おととい」の意で、会話で使われること のある、いささか古い感じの和語。〈ー食ったばかしだ〉 現代では方言じみた響きが感じられる。 ととい おととい【一昨日】「きのう」のすぐ前の日をさし、くだけた 会話や改まらない文章で使われる日常的な和語。〈ーの晩〉 〈ー来た客〉の「おとつい」という語形もある。ひQいっさく じつ・おとつい おとな【大人】成人し一人前に成長した分別のある人間をさ し、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈大のーが〉へになってから〈それがーのす <141> ることか牧野信一の『淡雪』に酒を飲んでいるなん て皆な馬鹿なんだ」とある。「になりきれない」のよう に、年齢相応のしっかりした考え方や行いをさすこともあ る。刂成人 おとなしい【大人しい】性質や態度が穏和で従順な意として くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。ぃかにも感じの子〉ヘー・く素直な性格〉ヘー・く 言うことを聞く》夏目漱石の『坊っちゃん』に「人質に取 られた人形のようにー・くしている」とある。近年は消極的 というマイナスイメージで使う傾向が目につく。人間以外 にも、「色」「柄」などとして目立つのを抑えた感じを 表し、「やり方」として、リスクを避けた、激しくない意 を表す用法もある。Q穏健・穏和・温和・柔順・柔和 おとめ【乙女】未婚の若い女をさし、文学的な文章などに時 折使われる古めかしい和語。〈心〉〈若者とー〉申田孫 一の『秋の組曲』に「五人のーたちが、とりとりの色の毛糸 で編んだものを脱いた時、彼女たちは、少し焦げたような、 懐かしい埃の匂いがするように思った」とある。「洗いざら しのジーンズ姿の少女」も、「わがままで意地の悪い娘」も 特に違和感がないが、「たちの悪いー」「薄汚いー」といっ たつながりは異様に映る。昔からのこの語の優雅な用例の 偏向が累積して今では雅語に近づき、気立てがよく清らか な感じでないと「乙女」らしくない雰囲気になっているた め、それらのマイナス評価の形容がこの語の上品で美的な 語感とイメージの反発を起こすのであろう。Q少女・娘 おどり【踊り】音楽の調子に合わせて体や手脚をリズミカル おどろき に動かす意で、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風 な和語。〈盆—〉〈都—〉〈—を踊る〉夏目漱石の『坊っち ゃん』に「感心のあまり此ーを余念なく見物して居ると」と ある。旋回運動中心の「舞」に対して、跳躍運動を基本とす るという。ヨダンス・舞踏・Q舞踊・舞 おとる【劣る】他に比べて良くない意で、会話にも文章にも 使われる日常の和語。〈知能が—〉〈品質が—〉〈成績が—〉 ②「優る」と対立。落ちる おどる【踊る】音楽に合わせて手足や体を動かす意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈ダンスを—〉〈ワルツを—〉 の木山捷平の『大陸の細道』に「蝶々のように—女の子」と ある。蹟る おどる【躍(跳)る】勢いよく跳ねる意で、改まった会話や文 章に用いられる和語。〈魚が—〉〈字が—〉〈胸が—〉〈血沸 き肉—〉ひ踊る おとろえる【衰える】かつては盛んであったものがその勢い を失う意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る和語。〆体力がー〜〜気力がー〜〜記憶力がー〜〜火がー〜 〆人気がー〜〜〜〜〜〜〜 おどろき【驚き】思いがけないことに出合い落ち着きを失う 意で、会話にも文章にも使われる和語。こいつはだ へーの声へーを隠せない黒井千次の『帰宅』に開いた 両手を一瞬胸の前にあげた彼女は目を見張ったの表情 <142> おどろく をたちまち収めてゆるやかに頭を下げる」とある。専愕然 驚異・Q驚愕驚嘆 おどろく【驚く】予期していないことが起こって一瞬心の平 静を失う意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の基本的な和語。突然の訃報に」〈大きな地震 に」〈あまりの進歩に」〈ーべき事実が判明する〉武 者小路実篤の『友情』に「うまいのに!・いた。しかしその 容赦のないのになおー・いた」とある。「仰天」「たまげる」 と違い、「犬が花火の音にー・いて吠え立てる」のように人 間以外について用いることもある。おったまげる・仰天・たま げる・Qびっくり・ぶったまげる おないぎ【お内儀】他人の妻をさす時代がかった敬称。今や ドラマで使われる程度。ヘー様にお目にかかりとう存じま す)いえの者・うちの者・Qお上さん・奥方・奥様・奥さん・家内・か みさん・愚妻・細君・妻・女房・伴侶・ベターハーフ・令閨・令室・令夫人・ ワイフ おなか「腹」の丁寧な言い方で会話的な和語。特に女性がよ く使う。〈ーをこわす〉〈ーがすいた〉宇野浩二の『蔵の 中』に「妊娠五六ヶ月ぐらいのーをかかえている、ちょっと 小綺麗なおかみ」とある。「中」という婉曲表現に「御」 を冠したもと女房詞。腹・腹部 おなご【女子】「女」の古めかしい和風の言い方。方言という ほどでもないが、いくらか田舎じみた感じがある。〈一衆〉 〈一の仕事〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「今時のーは、 昔と違うて油断が出来んけれ」とある。漢字表記は音読み されやすく、仮名書きが無難。Q女・じょし・女性・婦女・婦人 おなじ【同じ】ある物事が他とどこも違わないことをさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の 基本的な和語。〈面積がほぼ—〉〈一方角〉〈一学年〉〈どち らでも結果は—になる〉〈右に—〉〈一買うなら品物のいい ほうがいい〉〈一穴の絡ぜ〉〈一釜の飯を食う〉②庄野潤三 の『秋風と二人の男』に「さっきから—ことばかり後悔して いるのであった」とある。古語の形容詞が名詞に続く場合、 「仰ぐはー・じき理想の光」のように「同じき」となるはずで あるが、単に「同じ」になる例が多く、口語形の「同じい」 もめったに使われない。ただし、「兄とー・じく弟も優秀 だ」のように連用形の「同じく」は現在でもしばしば使われ ている。近年、この意味で「いっしょ」という語を使う俗用 が東京でもはびこっている。おんなし・Qおんなじ・同一・同 様・等しい おなら 尻の意で、会話や軽い文章に使われる日常の和語。 へーが出る〉へーをする〉②「鳴らす」の名詞形の末尾の音を 略し、「お」を冠した語形という。「尻」より丁寧で、男性も 普通に用いるが、いくらか女性的な響きが感じられる。 ガス・Q屁・放屁 おなり【御成り】「来訪」「到着」を意味する古風できわめて 高い尊敬語。ごく高貴な人について、きわめて改まった表 現として、まれに用いる。〈殿下がーになる〉 おに【鬼】人間に似た姿をし、角が生え血も涙もない恐ろし いことをする想像上の怪物をさし、会話にも文章にも使わ れる和語。〈—退治〉へ—が出る梅崎春生の『桜島』に 「彼自身にも理解出来ない—のようなものが、彼の胸を荒れ <143> 狂っている」とある。「心をーにする」のように、何事にも 感情を動かさない存在をさすこともある。児 おにぎり【お握り】「握り飯」の丁寧な言い方。主として会話 に用いる最も日常的な和語。〈梅干の—〉、JGおむすび・握り 飯・むすび おねしよ寝小便の意で、主に会話に使われる子供っぽい用 語。〜をして布団を汚す〜幼児語で、対象も子供の連想 が強い。「寝小便」の前半部に「お」を冠して丁寧にした語 形。遺尿・Q寝小便 おの【斧】刃のついた楔形の厚く頑丈な鉄片に短い木製の 柄を取り付けた道具をさして、会話にも文章にも使われる 和語。〈ーで木を切り倒す〉木を切ったり割ったりする際 に用いる。みなた・まさかり おのおの【各(各々)人それぞれでの意で、やや改まった会 話や文章に用いられる、やや古風な和語。〈考えてみる〉 へーで責任を持つ〉の「どの作文もーよく書けている」のよ うに物について使う例もあるが、「それぞれ」に比べ、書い た人を意識した言い方に感じられる。「おの」が「己」の意 である影響か、会社・学校・チームなどでも構成員を頭に浮 かべて「おのおの」と言うことはあっても、「去年も一昨年 も」「どの雷も」のように人間の手の加わらない対象に用い ると擬人化した感じを伴う傾向がある。なお、「各々」は比 較的新しい表記で、いくらか俗っぽく感じる人もある。単各 自・それぞれ・Qめいめい おのずから【自ずから】「ひとりでに」の意で、改まった会話 や文章で用いられる、やや硬い感じの和語。へーそうなる おのれ 〈事実は—明白だ〉Q自ずと・自然・自然と・自然に・ひとりでに おのずと【自ずと】「おのずから」と同じ意味で、改まった会 話や文章に用いられる、やや硬い感じの少し古風な和語。 〈ーわかる〉〈ー知れる〉Q自ずから・自然・自然と・自然に・ひ とりでに おののく【戦く】あまりの恐ろしさに震える意で、主に文章 に用いられる古風な和語。〈震えー〉〈恐怖にー〉高橋和 巳の『悲の器』に「男女が合唱して黒人霊歌を歌うとき、わ たしは耳をふさいで!いた」とある。弔戦慄ぜ・震え上がる Qわななく オノマトペー音声音響を言語音で模写したり、人の心情や動 作のようすや事物・事象の状態などを言語音で感覚的・象徴 的に表現したりすることばをさして、学術的な会話や文章 に用いられる専門的なフランス語からの外来語。〈日本語 ではーがよく使われる〉通常、擬声語と擬態語との総称 であるが、特に擬声語を意味する用法もある。物事を感覚 的にとらえるオノマトペの豊富なことが日本語の語彙の特 徴の一つ。幸田文の『流れる』に現れる「ささ竹ばかりがす とんと背高く」「ざわざわきんきん、調子を張ったいろんな 声が筒抜けてくる」「どすどすという喧嘩」「みりと骨が痛 んでいる」といった例など、創作的なオノマトペも多い。 Q擬音語・擬状語・擬情語・擬声語・擬態語・擬容語 おのれ【己】自分自身の意で、会話にも文章にも使われる古 風な和語。へーを信じて思い切りやる〉へーに忠実に生き る〉へーをむなしゅうして事に当たる〉高田保『ブラリひ ようたん』の「若芽の雨」に「ーを知っているからひらりと <144> おは 体をかわして外の話へうつる」とある。ひ自己・自身・Q自分・みずから おは【尾羽】鳥の尾と羽の意で、会話にも文章にも使われた 古めかしい和語。へー打ち枯らす)現在は、傷ついた鷹の みすぼらしい姿から出たという「打ち枯らす」の形でま れに比喻的に用いる程度。おばね おはぎ【御萩】もち米にうるち米を混ぜて炊き、軽くついて 丸め、餡や黄な粉で包んだ菓子をさす和語。へーを供える 春の牡丹と秋の萩という季節の花にちなんで、同じ菓 子を呼び分けるときの、秋の呼称。このような語源を意識 する人には「春のおはぎ」、「秋のぽた餅」という表現は季 節的な違和感があるが、一般には季節の別なく使われる。 その場合、会話的な「ぽた餅」に比べ、日常語としてより広 く用いる傾向が見られる。牡丹餅 おばけ【お化け】「化け物」の意で、主にくだけた会話に使わ れる和語。〈星敷〉へが出る〉への正体を突き止める〉 人の幽霊をも言うが、唐傘のお化けや一つ目小僧などコ ミカルな絵が多く、「幽霊」や「亡霊」のような恐ろしさを 感じさせない。後藤明生の『吉野大夫』に「実物の浅間では ない、何か架空の山に見えた。浅間のだ、とわたしは思 った」とある。ひQ化け物・亡霊・幽霊・妖怪 おばね【尾羽】鳥の尾の羽の意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈ーに傷を負う〉飛行の際に舵やプレーキの役 をする。おは おびえる【怯(脅)える】不安が強まって恐怖感が起こる意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈怪しい人影に」〈脅迫 されてー〉〈仕返しを心配して毎日ー・えて暮らす〉吉田 智子『豊原』に「異様に据わった母の眼にー・えて声も出せ ずに」とある。恐れる・Q怖がる おひさま【お日様】「太陽」の意で、会話や軽い文章に使われ る和語。へにこにこ)へがきらきら輝く)(雲の陰から ーが顔を出す)子供などが尊敬より強く親しみをこめて 呼ぶ擬人化表現。Qお天道様・太陽・日輪・日 おびただしい【夥しい】数量や程度が甚だしい意で、やや改 まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な和語。「 人の群れ〉〈一日中—車が行き交う〉〈情けないこと—〉 〈わからないこと—〉多く好ましくないことに用いる。 甚だしい おひや【お冷や】「飲み水」の意で、主に会話に使う、やや丁 寧な感じの和語。へを一杯ください)のもと女性語。今で は飲食店などでしばしば使う。お茶やお湯でなく普通の水 という意味だから必ずしも冷やしていなくてもよいが、生 ぬるいとイメージが合わない。飲用水・飲料水・飲み水・Q水 おひる【お昼】「昼飯」の意で会話などに用いてみずからの品 格を保つ丁寧な形の日常的な和語。〈一は簡単に済ませる〉 〈一にする〉〈一をいただく〉森鷗外の『半日』に「だ と、茶の間であの声がする」とある。女性が好んで使う傾 向がある。「昼食」にはごく粗末なものから山海の珍味が並 ぶ豪華なものまでいろいろあるが、この語は松茸のお吸い 物に伊勢海老や松阪牛のステーキなどの並ぶ豪華な食事と いうイメージは薄く、どちらかといえば店屋物やありあわ せのもので手軽に間に合わせる雰囲気を感じさせる。少年 <145> 餐・ちゅうじき・Qちゅうしょく・昼餉・昼御飯・昼飯・ランチ オフ短い休暇をさして会話で使われる新しい感じの外来 語。〈ーを取る〉〈今日はーで会社に来ない〉職場から離 れるという雰囲気が強く、スポーツ選手などを除き長期の 場合には使いにくい。休暇・休業・休憩・休日・休息・休み オフィス役所や会社などの事務所をさし、主に会話で使わ れる斬新な感じの外来語。〈街〉〈ーを出る〉〈終日ーに こもる〉四近代的で明るい連想が強く、裸電球などとイメー ジの衝突を起こす。職場や教員室などをさすこともある。 専事務所 おぶう【負ぶう】乳幼児などを背負う意で、主に会話で使わ れるやや古風な口頭語。〈赤ん坊を—〉「負う」からの転。 負う・Qおんぶ・しょう・背負う おふくろ【お袋】自分の母親をさして、くだけた会話や軽い 文章に使われる俗っぽい和語。「に可愛がられた」〈田舎 の—から便りがあった」「「の味」のように、懐かしい感 じを伴い、日常会話で男性がよく使う。「おやじ」と対立。 りお母様・お母さん・お母ちゃん・女親・母さん・母ちゃん・母・母上・Q 母親・ママ おフランス「フランス」をさし、自慢やからかいのニュアンスで使われた、今では古めかしい感じの俗語。〈ちょっと、 ーのほうへまいります〉〈おや、ーの香水ですか〉あこが れの先進国である欧米に渡ることの珍しかった時代に、所 持品がフランス製だというだけで、あるいは、ただフラン スに行って来たというだけで自慢げに話したり、そういう 鼻持ちならない人を小ばかにしてからかい気味に言ったり おほっかない した際の、おどけたことば。渡航が珍しくなくなり、外国 製品が氾濫なし、欧米に対する劣等感が影を潜めるにつれ て、このことばも耳にしなくなってきている。ヲフランス 「手術」の意で、病院内などでの会話に使われる古風な 外来語の一部。〈本日午後静脉瘤のの予定あり〉 「オペレーション」の略。かつて医者などが「手術」をさし てよく隠語のように用いた、患者に露骨に伝わりにくい関 係者の間でのやりとり。手術 おべっか上位者の機嫌をとる言葉の意で、主にくだけた会 話に使われる、いくぶん古風な俗っぽい語。〈ーを使う〉 お世辞・お追従・Qおべんちゃら・外交辞令・社交辞令 で 外交辞令・社交辞令 おぼえる【覚える】記憶 託から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈漢字 をー〉〈道をー〉〈手順をー〉〈要領をー〉②永井荷風の『雨 瀟瀟』に「彼岸前に羽織を着るなぞとはいかに多病な身に もついぞー・えたことがない」とある。「空腹をー」「懐かし さをー」のように、体や心に感じる意では、主に文章に用い るやや古風な改まった表現。Q感じる・感ずる おぼつかない【覚束ない】確かでなく安心感が持てない意で、 やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な感 じの和語。〈足取り〉〈成功は—〉岩本素白の『街の灯』 に「女達が何か睦じげに物語りながら、宵闇に白い浴衣を 浮かせて通り過ぎたが、そのあとには—白粉の匂いが、重 <146> おぼれじに い夜気の中に仄かに漂って居た」とある。児危なっかしい・Q 疑わしい おぼれじに【溺れ死に】水に溺れて死ぬ意で、主に会話に使 われる和語。〈波に飲み込まれてーする〉、水死・Q溺死 おぼろ【臘】夜の霧を意味する雅語。春の季語。〈月夜〉 〈月は—〉〈—に煙る〉林房雄の『青年』に「どれ(スタン ザ)も霧の中の花のように—で」とあるように、はっきりし ない意にも使う。Q霞・霧・霧 おぼろげ【朧げ】ぼんやりとかすんではっきりしない意で、 会話にも文章にも使われる和語。ふうっすらと雲がかかって 山の輪郭がーに見える〉へーな記憶〉の景色や記憶などに使 う例が多い。Q曖昧・あやふや・うやむや おまいり【御参り】神仙を拝む意で、会話や硬くない文章に 使われる日常の和語。〈ーを欠かさない〉〈神社にーする〉 〈先祖代々の墓にーする〉葬式などでは「焼香」をさすこ ともある。ひQ参詣・参拝・詣ている おまえ【御前】主に男性が目下かごく親しい相手に使うぞん ざいな二人称で、主にくだけた会話に使われる和語。「と 俺の仲〉(みんなーにやる)何てったってのおかげだ 「なんかの出る幕じゃない」おい、忘れ物だ田宮 虎彦の『落城』に「もうーにさせる仕事もなくなったぞ、 は今夜、斬り込みにゆけ」とある。「貴様」と違ってののし る感じは薄い。「俺」と対立。もと、神仏や貴人の前の意の 尊敬語で、間接的に相手をさした。みあなた・あなた様・あん た・貴様・Q君・てめえ おまけ【御負け】商品の値段を安くしたり、その商品以外の 品をサービスで添えたりすることをさし、くだけた会話や 軽い文章に使われる日常の和語。〈ー付き〉〈一の品〉〈一 割ーする〉及Q景品・付録 おまけに『お負けに』「そのうえ」の意で、くだけた会話に使 われる俗っぽい和語。〈けちで—ひねくれていると来てるか ら、扱いにくい〉〈雨が落ちてきた。—雷まで鳴り出した〉 りQその上それに おまわり【お巡り】「巡査」をさし、くだけた会話で使われる 日常の俗っぽい和語。〈ーに見つかる〉〈ーに注意される〉 のややさげすむ調子の感じられる言い方。小田原下曾我の 尾崎一雄宅を訪問した折、「読む人が読めば随分工ロチック なことを書いてるのに、ーにはわからない、そういう書き 方」として丼伏鱒二や永井龍男の鍛えられた文章力を説い た。ひお巡りさん・警官・警察官・Q巡査・駐在 おまわりさん【お巡りさん】「巡査」の意の敬意表現。主とし て会話や子供向けの文章などに使う、やさしい日常の和語。 へーに道を聞く〉〈交番の—〉街の人に親しまれているよ うな、ぬくもりを感じさせることば。気軽に道を聞けて、 親切に教えてくれそうな雰囲気がある。りお巡り・警官・警察 官・Q巡査・駐在 おみおつけ【大御御付け】「おつけ」の丁寧な言い方で「おつ け」よりよく使われるが、「味噌汁」に比べ、やや古く家庭 的な響きもある。〈豆腐と若布の入ったー〉ひお吸い物・Qお つけ・汁物・吸い物 おむすび【お結び】「にぎり飯」の意で、会話でも文章でも使 われる和語。〈鱈子のー〉会話的な「おにぎり」よりや <147> や古風でいくらか上品な感じがある。「むすび」の丁寧な言 い方。ひQおにぎり・握り飯・むすび おむつ【御襁褓】赤ん坊あるいは介護の必要な病人や高齢者 などの尻に当てて大小便を受ける布や紙をさして、会話に も文章にも使われる日常の和語。紙ー〉へーカバー〉へー を取り替える〉へやっとーが取れる〉古くは「むつき」。 その省略形に「お」を添えて丁寧にした語形。会話では「お しめ」よりよく使われる。女優の中村メイコが「ーをして いたころから舞台に立っていた」と自慢したら、娘に「頑張 って!もうすぐそうなるから」と言われたという。人生の 最初と最後に世話になるものだとわかる。おしめ おめい【汚名】不名誉な悪い評判をさし、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈ーをすすぐ(そそぐ)〉 おめいばんかい【汚名挽回】意味の似ている「汚名返上」と 「名誉挽回」とが交じり合ってできあがった誤った表現。 不名誉を取り戻すという奇妙な意味になりそうな好ましく ない語形。汚名返上 おめいへんじょう【汚名返上】不本意にもこうむった不名誉 な評判をなくして名誉を取り戻す意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈次の大会でのーを誓う〉ひ汚名挽回 おめかし【御粧し】外出したり人に会ったりする際に着飾る 意で、主に会話に使われる和語。〈念入りにーする〉〈ーし て出かける〉の装身具や化粧を含む場合もある。動詞「め かす」から出た名詞の丁寧な表現。ひおしゃれ おめしになる【お召しになる】「着る」の尊敬語。〈晴れ着を ー〉見召す おもい おめでたくなる「死ぬ」意の和風の忌みことば。古風な俗 語。〈奴もとうとうー・ったそうだ〉縁起を担いで、死を 直接表現せず、その不吉なものを反対に「めでたい」ととら えた逆説的な婉曲表現。勇敢え無くなるとがる②・あの世 に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・ 永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・帰らぬ人となる・くたばる・死 去・死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召さ れる・亡くなる・儚なくなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没す る・Q仏になる・身罷る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝 く・臨死・臨終 おもい【重い】物などを支えたり動かしたりするのに大きな 力を要する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の基本的な和語。〈荷物〉(ずしりと)〈! くて持ち上がらない)幸田文の『流れる』に「絆は一見 セルロイドでなく本甲で、とろっと油のようにー黄色が鬢 をひきたてている」とある。「体がー」「足取り」のよう に「動きが鈍い」意にも、「責任がー」「一罪」「病気」の ように「重大な」の意にも使うなど、「重たい」より意味範 囲が広い。「軽い」と対立。ひ重たい おもい【思い】心の中に抱く感情・願望・考え・想像・感懐など をまとめてさし、会話にも文章にも使われる基本的な和語。 〈身を切られる—〉〈—がかなう〉〈みんなの—を乗せて〉 〈—を新たにする〉〈—を馳せる〉〈—にふける〉〈そうい う—もある〉の「考え」より主観的で思い入れを感じさせる が、「気持ち」よりは客観的。国木田独歩の『牛肉と馬鈴 薯』に「怖いとも哀しいとも言いようのない—が胸に塞え <148> おもいあがり て」とある。考え・Q気持ち おもいあがり【思い上がり】自分の力を過大評価していい気 になる意で、会話にも文章にも使われる和語。へとんだー だ〉へーも甚だしい)りうぬぼれ おもいあがる【思い上がる】実力や業績以上に自分を偉いと 思う意で、会話にも文章にも使われる和語。「・った態度 へのもいい加減にしろ」寺田寅彦は『科学者とあたま』 の中で、ソクラテスや芭蕉や広重の世界を何一つ解明でき ないという事実を無視して「科学ばかりが学のように思い 誤りーのは」認識の人であるための障害となると警告して いる。態度やふるまい自体に焦点を当てる「いばる」に対 し、この語はそういう態度から推測される内面を問題にす る。尻威張る・Qうぬぼれ・自慢 おもいかえす【思い返す】過去を振り返って考える意で、改 まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な和語。今 ーしてみると、あの頃はのんびりしていた)遠く過ぎ去 った日のことを懐かしく夜もある)自然に起こる感じ の「思い出す」と違い、以前の出来事や体験などを意図的に 順を追って記憶に再現しようとする場合にぴったりした表 現。思い出す おもいくつする【思い屈する】あれこれ考えてもいい考えが 浮かばず気が滅入る意で、主として文章に用いられる古風 な和語表現。へわが半生を顧みれば、ーことのみ多く)永 井龍男の『そばやまで』は「住いのことでは、一時わー・し た」という絶妙の一文で始まる。思い悩む・思い煩う・しおれ る②・しょげ返る・しょげる・ふさぐ・滅入る おもいこみ【思い込み】その対象について予め思い込んで いる考えの意で、会話にも文章にも使われる和語。「一方的 な」〈偏った」〈ーが激しい〉多く偏った見方につい ていい、「先入主」はもちろん「先入観」よりも軽い話題に 使う傾向がある。Q先入観先入主 おもいだす【思(想・憶)い出す】記憶によみがえる意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈用事を—〉〈すっかり忘れていたことをちょっとし たきっかけで—〉〈幼かった日々を—〉〈昔のことが懐かし くー・される〉意図的な「思い返す」と違って、この語は 自然に脳裏に浮かんでくるときに使われる傾向がある。 思い返す おもいちがい【思い違い】事実とは違って思い込む意で、会 話にも文章にも使われる和語。へとんでもないーをしてい た《自分のーにはっと気づく》②道理にそむく感じもある 「考え違い」とは違い、単純な誤解に用いる傾向がある。 考え違い・Q勘違い・誤解・錯覚 おもいつき【思い付き】ふとひらめいた考えの意で、会話や さほど硬くない文章に使われる漢語。へいいだへーを実 行に移すへちょっとしたーに過ぎない」「発想」や「着 想」はもちろん「アイディア」と比べても、論理的な思考を 積み重ねた感じがなく、瞬間的に頭に浮かんだ感じが強い。 Qアイディア・着想・発想 おもいつく【思い付く】ある考えがふと心に浮かぶ意で、会 話にも文章にも使われる日常の和語。〈いいことを—〉〈面 白いいたずらを—〉〈うまい言いわけを—〉の「考えつく」 <149> ほどではないが、「ひらめく」より具体的な内容を連想させ る。ひQ考えつく・ひらめく③ おもいで【思い出】今でも印象に残っている過去の出来事を さし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる和語。 〈悲しいー〉〈旅行のー〉(いいーになる〉(ーに残る)へー を語り合う林芙美子の『晩菊』に「まるで数え歌のよう に、男のーに心が煙たくむせてくる」とある。深い思いを こめて「想い出」と書いたり、懐かしさを前面に出して「憶 い出」と書いたりすることもある。このように美化した表 記は文体的なレベルを高め、同時に古風な印象を与える傾 向がある。僕旧・回想・追憶・追懐・追想 おもいなやむ【思い悩む】心配になってあれこれ考える意で、 改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な和語。 〈先のことを今からーことはない〉(あれこれーことが多 い)「悩む」に比べ、対象が広く漠然としている傾向があ る。志賀直哉の『真鶴』に「恋という言葉を知らなかった が、今、その恋にーんでいるのであった」とある。専思い 屈する・Q思い煩う・悩む・煩悶・悶える・憂悶 おもいのほか【思いの外】思っていたのとは違っての意で、 改まった会話や文章で用いられる、文体的レベルの高い古 風な和語表現。〈一楽しめた〉〈一時間を要し、なかなか進 まない〉円地文子の『妖』に「坂と母屋との中段になる部 屋もそこにひとり寝るようになってから、ー、千賀子にさま ざまなことを教えた」という一文が出てくる。「ひとりで寝 る」でなく「ひとり寝る」「いろいろな」でなく「さまざま な」という表現を採用するこの作家の文体感覚は、ここで おもくるしい も「案外」や「意外(に)」でなく、また、硬い感じの「存外」 でもなく、「思いの外」という俗を離れた表現を選び取って レベルをそろえている。みあにはからんや・案外・Q意外・存外 おもいやる【思い遣る】相手に同情して優しく扱う意で、や や改まった会話や文章に用いられる和語。〈子供や年寄りを ー〉〈相手をー心に欠ける〉みいたわる おもいわずらう【思い煩う】困ったことをいろいろ考えて苦 しい思いをする意で、改まった会話や文章に用いられる、や や古風な和語。〈家族のことを—〉(行く末を—〉回小林秀 雄の『私の人生観』に「そういうことをくよくよー・ってい ると、貴様は政治的関心がないと叱られる」とある。思い 屈する・Q思い悩む・悩む・煩悶・悶える・憂悶 おもう思う心に浮かべる意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常生活の最も基本的な和語。〈はっ とー〉〈まことに残念に〉〈まさにその通りだとー〉〈そ んなことは絶対ないとー〉〈人を人ともー・わない態度〉 〈ーように運ばない〉夏目漱石『坊っちゃん』に「物理学 校の前を通り掛ったら生徒募集の広告が出ていたから、何 も縁だとー・って」とある。「心でー」と「頭で考える」「一 瞬ー」と「じっくり考える」といった例に象徴されるよう に、頭で時間をかけて思考し判断を下す感じの理知的な 「考える」に対し、この語は心の中に瞬間的に浮かぶ情緒的 な判断をさす。「思い人」は「考える人」とは違う。考え る おもくるしい【重苦しい】全体的に圧迫される不快な気分を さし、会話にも文章にも使われる和語。〈ー気分〉〈ー座 <150> おもさ の雰囲気》椎名鱗三の『深夜の酒宴』に「ふいに僕はまる で桜の満開を見ているときのような媲な気分になった」 とある。「鬱陶しい」と違い、「冬布団が厚ぼったくてー」 というふうに、実際に重くて苦しいという肉体的な苦痛に ついても使う。Q陰鬱・鬱陶しい・不快・不愉快 おもさ【重さ】重い程度の意で、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の和語。〈ーを量る〉〈ーを比べ る〉〈屋根が雪のーに耐える〉の「重み」に比べ、数値で計 測可能な客観的な感じが強い。ひQ重み・重量・自方 おもざし【面差し】「顔立ち」の意で改まった会話や文章に用 いられる古風な和語。〈ーが母親によく似ている〉顔・Q顔 立ち・顔つき・人相・目鼻立ち・容貌 おもしろい【面白い】心が引かれ楽しい気分になる意で、く だけた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。〈話が ー〉〈ー遊び〉〈ー・くも何ともない〉〈ーように売れる〉 〈人前でけなされては、彼としても内心ー・くないにちがい ない〉内田百閒の『特別阿房列車』に「ただ一ついけない のは、借りた金は返さなければならぬと云う事である。そ れを思うとー・くない」とある。马興味深い おもたい【重たい】「重い」に近い意味で、会話や軽い文章に 使われる日常の和語。〈石〉(ー・くて持ち上がらない) 〈一物を持ち歩く〉〈動きが一〉三浦哲郎の『ユタと不思 議な仲間たち』に「村の月は(略)てのひらにずっしりと一夏 ミカンのようだ」とある。持ち上げたり運んだり直接に人 間の力が関係する場合に使うことが多く、車輛や艦船など の重量を問題にする場合にはなじみにくい。また、派生的 な用法でも、「体がー」「足がー」のような感覚的な場合にはなじむが、「頭が重い」「口が重い」「重い病気」「責任が重い」のように抽象化するにつれて使いにくくなる。重いおもたせ【お持たせ】その客が持参した手土産の意で、主に会話に使われる和語。「で恐縮ですが、よろしかったらお一つどうぞ」客自身は使わない。Q手土産・到来物・土産おもちゃ【玩具】主に子供の遊び道具をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常的な和語。〈屋〉〈箱〉〈子供の〉〈ブリキの〉で遊ぶの黒井千次の「オモチャの部屋」に「祖父はどうして」の部屋などにはいろうとしたのだったろう」とある。「玩具」に比べ、遊び道具という生活臭が濃く、大人にとっては懐かしい感じの温かみのあることは。玩具 おもて【表】物の面のうち正面に出して代表させる側をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈一側〉へーを上にする〉〈用紙の一裏を確かめ る〉〈一の戸締り〉〈感情を一に出す〉「一が騒がしい」 「一に飛び出す」「やい、一に出る!」のように戸外をさす 用法もある。「裏」と対立。りうわつら・うわべ・Q表面 おもてどおり【表通り】市街地にある主要な通りをさし、会 話にも文章にも使われる和語。へに面した家〉へーをパス が通る》回「大通り」と違い、必ずしも道幅が広いとは限ら ない。「裏通り」と対立。にぎやかで晴れやかな感じがあ る。大通り・大道 おもな【主な】それらの中心となるの意で、だけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる和語。〈一人〉〈出来事〉 <151> 〈理由〉〈収入〉Q主たる・主要 おもに【主に】全体の中で特に大きな割合を占める意で、会 話にも文章にも使われる日常の和語。〈昼は—外食だ〉〈時 間が空けば—読書をして過ごす〉〈客は—若い女性だ〉②島 崎藤村の『桜の実の熟する時』に「面倒を見て呉れたのも— 斯のお婆さんであった」とある。ひ主として おもねる【阿る】機嫌をとって気に入られようとする意で、 改まった会話や文章に用いられる古風な和語。(上司にー) 〈世間にー〉Q迎合・媚びる・取り入る・へつらう おもはゆい【面映い】くすぐったく感じられるほど照れくさ い意で、主に文章に用いられる古風な和語。過分の評価に いささかーものがある)辻邦生の『洪水の終り』に「好評 にはいささかー気持を感じはしたが」とある。相手の顔が まぶしく感じられる意から。鳥気恥ずかしい・決まり悪い・Q照 れ臭い・恥ずかしい・ばつが悪い・間が悪い おもみ【重み】重い感じをさして、会話にも文章にも使われ る和語。〈どっしりとしたー〉(本のーがかかる)の重量だ けを客観的にさす「重さ」に比べ、その重量を受けての重い 感じを問題にする雰囲気があり、そこから比喻的に、「人間 としてのーに欠ける」「この発言にはどことなくーを感じ る」のように、貫禄や重要度・影響力といった意味の用法に 拡大する。ひQ重さ・重量・目方 おもむき【趣】しっとりとした味わいの意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈自然の—のある庭〉〈どことなく—を 感じる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「野だの顔はどう考 えても劣等だ。喧嘩はしても山嵐の方が遥かに—がある」 おもらし とある。「時代のーが感じられる」のように、単に「ありさま・様子」の意を表す例もあるが、それでもこの語を用いることで、表現主体がそれを好ましく思っている感じが伝わる。ただし、「お話のー、確かに承りました」のように、内容や事情をさす用法の場合はそのようなプラスイメージはなく、古風で丁重な感じになる。専情趣・情緒・Q風情 おもむく【赴く】目的の場所に向かう意で、改まった会話や 文章に用いられる古風な感じの和語。〈戦場に—〉〈任地に ー〉の高田保の『我輩も猫である』に「万事をこの近所の人 に託し、安心して死地に—筈だった」とある。「病状が快方 に—」「人情の—ところ」のように抽象化した用法もある。 ひいく・Q出向く・ゆく おもむろに【徐に】行動に移すまでの間やその動作がゆっくりしている意の和語。古風でやや改まった感じのことば。 〈立ち上がる〉〈口を開く〉②芥川龍之介の『偷盗』に 「太刀を、右手にとって、血をぬぐった」とある。近年、 若年層に、逆に「急に」「素早く」のような意味合いに理解 する例が見られる。そういう意味に使えば俗語的。 りやおら おももち【面持ち】表情の意で、主として文章に用いられる 古めかしい和語。へ得心の行かぬーへ何やら不審のーへ 石坂洋次郎の『若い人』に「畑の土のように無表情な柔かい ー」とある。Q顔色・顔つき・表情 おもらし【お漏らし】失禁の意で、会話や軽い文章に使われ る日常の和語。〈トイレが間に合わずーする〉幼児語なが ら会話では大人も使う。「失禁」に比べ、病気よりも不注意 <152> おもわしい の結果を思わせ、微量な連想がある。失禁・Q粗相 おもわしい【思わしい】状態や結果などが期待どおりである 意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。病状が ー・くない)(なかなかー結果が得られない)打消しの語 を伴って全体として否定的なニュアンスに用いられる例が 多い。好ましい・望ましい・欲しい おもわず【思わず】つい無意識にの意で、会話にも文章にも 使われる和語。〈ー声を上げる〉〈ー身を乗り出す〉囲辰 雄の『美しい村』に「まるっきり放心状態になっている自分 自身に気がついて、ーどきっとする」とある。りうっかり・Q つい おや【親】父と母の総称として、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈産みの—〉〈 と子の関係〉〈—の言いつけに背く〉②山本有三の『波』に 「—が子を生むように思っているが、—なんてものは、ほん の仮の宿だよ」とある。「父母」や「両親」と違い、動物の 場合にも使い、また、「代々の土地」のように祖先をさす 用法もある。父母・Q両親 おやかた【親方】職人や相撲けの世界で弟子を取って技術を 指導したり親代わりに監督したり面倒を見たりする人をさ し、会話にも文章にも使われる古風な感じの和語。〈大工の ー〉へーのところに弟子入りする〉夏目漱石の『坊っちゃ ん』に「発句は芭蕉か髪結床のーのやるもんだ」とある。 親玉・Q親分 おやじ【親父】自分の父親を親しみをこめて呼ぶときに、会 話や軽い文章に使われる和語。ふちのは晩酌を欠かさ ない〈頑固なところはーそっくりだ〉夏目漱石の『坊っ ちゃん』に「は頑固だけれども依怙最負はせぬ男だ」 とある。多く大人の男性が日常会話のくつろいだ場面でよ く使う。「おふくろ」と対立。お父様・お父さん・お父ちゃん・ 男親・親爺・Q父・父上・父親・父さん・父ちゃん・パッパ・パパ おやじ【親爺(仁)】店などの主人や一般に年輩の男をさし、 くだけた会話や軽い文章に使われる和語。〈隣のー〉〈店の ー〉〈若者ばかりでーの姿は見当たらない〉専親父 おやすみになる【お休みになる】「寝る」意の婉曲な風 尊敬表現。〈奥様はもうー・りました〉〈ー前に入浴なさい ます〉専寝る①・伏せる・Q休む② おやだま【親玉】ある集団を統率する中心人物の意で、くだ けた会話で冗談めかして使われる俗っぽい和語。〈連中の ー〉〈五人組のーがつかまる〉巻親方・Q親分 おやぶね【親船】漁場などで小船を従えた大きな船をさし、 会話や軽い文章に使われる和語。「から物資補給する 「に乗ったよう」の形で、心丈夫な意を表す比喻表現も ある。専船・Q本船 おやぶん【親分】集団の頭で仲間の親代わりに面倒を見る人 をさし、会話や改まらない文章に使われる古風な表現。「 肌の人〉やくざのーが子分を叱る〉小沼丹の『タロオ』 に「格の犬なぞは、垣根の外を通るときタロオを横眼に 睨んで、片足上げて垣根に小便を引掛けて行く」とある。 現代では、やくざ以外について使うと俗語の響きがある。 Q親方・親玉 おやゆずり【親譲り】親から受け継いだの意で、会話にも文 <153> 章にも使われる和語。〈一の体格〉〈一の財産〉〈気の短い のはーだ〉の小山清の『わが師への書』に「一の顕著なる特 質があります。それは母に似てひどく汗っかきなことです」 とある。卫生まれつき・生まれながら・生得・生来・Q持ち前 およぐ【泳ぐ】人間や動物が水面や水中を進むことをさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈海でー〉〈向こう岸までー〉〈すいすいー〉 「水泳」と違い、犬や蛙や魚にも使う。また、「体がー」「靴 が大き過ぎて足がー」「世間をうまくー・いで渡る」のよう な比喩的な用法もある。ひQ水泳・水浴び および【及び】名詞などを並列させる場合のつなぎとして、 少し改まった会話や文章に用いられる和語。〈桜—紅葉〉 〈犬と猫—狐と狸〉〈東京—横浜、並びに、大阪—神戸〉動 詞「及ぶ」の連用形から転じた接続詞。他と併用する場合 は通常「と」より大きく「並びに」より小さな結びつきに 使う。改まらない日常会話では「と」「それに」などを使う ことが多い。込並びに およびこし【及び腰】腰を曲げてこわごわ手を伸ばすような 不安定な姿勢をさして、会話でも文章でも使われる和語。 「になって物を取る」〈強そうな相手を前に思わずーにな る〉の比喻的に、「の外交」「の交渉」のように、相手を 恐れて消極的になる意でも使う。昇尻っ放り腰 およぶ【及ぶ】ある範囲や限度に届く意で、やや改まった会 話や文章に用いられる和語。〈建立してすでに二百年にも ー〉〈数千万円にもー大きな利益〉〈全国にー被害〉〈意外 なところにまで影響がー〉〈わずかにー・ばない〉の「つい おりる には犯行に」「わざわざ足を運ぶにはー・ぼない」のよう に、そのような行為にまで踏み込む意でも使う。Q達す る・届く おりあしく【折悪しく】ちょうどタイミングが悪くの意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや古風な表現。〈訪ね てみたがー留守だった〉〈掘り出し物を見つけたがー金の持 ち合わせがない〉ひあいにく おりおり【折折】それぞれの時、または「時々」の意で、主 に文章に用いられる古風な和語。〈四季—の花〉へ訪れ る)森鷗外の『阿部一族』に「風鈴が思い出したように かすかに鳴る」とある。ひQ時折・時々 おりから【折柄】まさにちょうどその時の意で、改まった会 話や文章に用いられる古風な和語。〈ー祭りの太鼓が聞こ えてくる〉へーにわか雨が降り出す〉へーの風にあおられ る〉き折しも おりしも【折しも】まさにちょうどその時の意で、主として 文章に用いられる、古風で構えた感じの和風表現。〈打ち明 けようとしたー〉〈出発しようとしたー突風が吹いて〉回 「折から」よりも、まさにその時という強調の程度が強い。 ひ折から おりる【下りる/降りる】高い所から低い所に移るという基 本的意味をもち、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる基本的な日常生活の和語。二階から下りる〈庭に 下りる〈電車から降りる〉〈社長を降りる〉〈霜が降りる〉 ②夏目漱石の『坊っちゃん』に「浴衣のなりで湯壺へーり て見たら、又うらなり君に逢った」とある。「山を」は山 <154> おる の高い場所にいたのが今は麓にいるといった移動で、途中 の経路が意識されていない。込くだる おる【折る】曲げて分離したり重ねたりする意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈枝を—〉〈骨を—〉〈指を—・って 数える〉〈折り紙で鶴を—〉木山捷平の『大陸の細道』に 「七重の膝を八重に—ようにして謝罪すると」とある。 し折る おる【居る】「いる」に近い意で、主として会話に使う和語。 〈自宅にーります〉〈誰かー・らんか?〉「おります」は 「います」より丁寧な言い方。「ます」を伴わない単独の「居 る」は古い感じで方言的な響きもある。多少とも動きの感 じられる「いる」に比べ、この語は単に存在しているという 状態に重点があるとされる。りある・Qいる おる【織る】縦糸に横糸を組み合わせて布を作る意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈機を—〉〈布を—〉鈴木三 重吉の『千鳥』に「白木綿を—のが轡虫が鳴くように聞え る」とある。単編む おれ【俺】くだけた会話で男が親しみをこめて使う和語で、 「僕」より乱暴な言い方。へとお前の仲〉〈貴様とーとは同 期だ〉〈あとはーに任せろ〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「是で中学の教頭が勤まるなら、なんか大学総長がつとま る」とある。近年、会社などで上司に向かって用いる例も散 見するなど、使用範囲が拡大しているように見受けられる。 みあたくし・あたし・おいら・Q僕・わし・わたくし・わたし おれくち【折れ口】知人の死に出会う意で、主として会話に 使われた古めかしい和語。〈急にーがあってそっちへまわ るの「弔い」の忌み言葉としても使われた。東京方言という。現代ではめったに使わないが、入船亭扇橋によると落語好きのフランク永井が使ったらしい。ひ葬儀・葬式・弔い おれたち【俺達】「俺」の複数として、男性がくだけた会話に 使うぞんざいな表現。へーゃ気ままなもんよ)へーにゃ関係 ねえ)立野信之の『軍隊病』に「はモーターのように無 感覚で、疲労することを知らない道具である」とある。ひQ 僕たち・僕ら・わたくしたち・わたしたち・我ら・我々 おろし【風】山から吹き降ろす風をさし、会話でも文章でも 主に複合語として使う。〈比叡—〉〈六甲—〉〈筑波—〉風 おろす【下ろす】高いところから低いところに移す意で、 だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈旗を—〉〈幕を—〉〈大地に根を—〉「上げる」 と対立。「荷物を—」のように「載せる」「積む」と対立する 用法もある。「貯金を—」のように預け入れたものを引き出 す意味でも使う。「乗客を—」などでは「降ろす」、「胎児を 」では「堕ろす」、「大根を—」では「卸す」と書くことが 多い。「問屋が小売店に商品を—」の意では「卸す」と書く。 Q下げる・引き下げる おろそか【疎か】なすべきことをきちんとしないで、いい加 減にほったらかす意で、会話にも文章にも広く使われる、い くぶん古風な和語。〈勉強をーにして遊び歩く〉〈仕事をー にしてきた付けが回る〉ひいい加減・ちゃらんぼらん・ないがし ろ・Qなおざり・忽ゆるせ おろち【大蛇】巨大な蛇の意で会話にも文章にも使われた古 めかしい和語。へーを退治する)「やまたのー」などが <155> 知られ、伝説上の存在というイメージがあるため、「だいじゃ」以上に巨大な姿を連想しやすい。うわばみ・Qだいじゃ おわい【汚穢】大小便の意で、会話にも文章にも使われる古 めかしい漢語。〈屋〉へを運ぶ)回もと汚れ物の意の間 接表現。意味をぼかすために通常仮名書きにする。ひQし 尿・薬尿・便 おわり【終わり】続いてきた物事が切れてその先続かない意 あるいは、その最後の部分をさして、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。一日の ー〉(これでーにする)〈ーを告げる〉〈ーまで息を抜かな い〉小沼丹の『片片草』に「ー良ければすべて良し」と 云う。しかし、僕の場合は始め悪ければすべて悪しであっ て」とある。最後・しまい・終焉・終末・末 おわる【終わる】終了するやめるの意でくだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。 〈間もなく会が—〉〈仕事はもうとっくに—・っている〉〈授業の—のが待ち遠しい〉〈定刻になりましたのでこのへんで会を—・ります〉〈はなはだ簡単ではありますが、これをもちまして会長としてのご挨拶を—・ります〉③三浦哲郎の『ふなうた』に「突然、ビアノの音がやんだ。曲がー・ったのではなく、安楽椅子の方からきこえてくる呻き声に弾き手が怯えたからである」とある。他動詞用法の場合も「終える」に比べると主体の意志が前面に立たず穏やかな印象を与えやすい。ひ終える ん【恩】他から受ける厚意や情けやありがたみをさし、く おんぎ だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。 〈親のー〉(一になる)〈ーを受ける〉(ーを売る)〈ーを忘 れる〉(ーをあだで返す)夏目漱石の「坊ちゃん」に「心 のうちで難有とに着るのは銭金で買える返礼じゃな い」とある。Q恩義・恩恵・恩顧 おんいん【音韻】さまざまな音として実現する現実の音声と は別に、意味の違いに関係してその言語を運用する基礎に なる抽象的な音のイメージをさし、学術的な会話や文章に 用いられる専門的な漢語。〈ー論〉〈ー表記〉の文法」「語 彙」「文字」などと並べて用いる場合はアクセント・イント ネーションや、ある部分を際立たせて発音するプロミネン ス(卓立)などを含む広い概念。音声・Q音素 おんがく【音楽】音による時間芸術をさし、くだけた会話から硬い文章まで広く用いられる一般的な日常の基本的な漢語。〈西洋ー〉〈ーを流す〉〈ーに親しむ〉小林秀雄の『モオツァルト』に「当代一流の」、特にペエトオヴェンのーに対するゲエテの無理解或は無関心」とある。ミュージックおんがくかい【音楽会】声楽や器楽の歌唱・演奏を聴いて楽しむ集まりをさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈野外ー〉〈ーの切符〉〈そろってーに出かける〉「演奏会」その他に比べ、学校での催しや技術的にも幅広い範囲のものを含めて一般によく使う。込演奏会・Qコンサート・ライブ・リサイタル おんぎ【恩義】他から受けた恩に報いねばならぬ義理をさし、 改まった会話や文章に用いられる古風で硬い漢語。へーをほ どこす)へーに感じる)へーに報いる)恩・恩恵・恩顧 <156> おんきょう おんきょう【音響】物体の発する音や響きをさし、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈ー効果〉〈ー学〉〈大 ーが轟く自然の音よりも機械などの立てる比較的大 きな音や楽音の響きなどをさす傾向が強い。井上靖は『小 磐梯』で地震の瞬間を「轟然たる大ーが大地をつんざきま した」ととらえている。単音・Q響き おんけい【恩恵】自分の利益になり幸福をもたらす恵みをさ し、改まった会話や文章に用いられる漢語。「大きなーを受 ける〉へーをこうむる〉へーに浴する〉「自然のー」のよう に、人間以外から受ける例も多い。Q恩・恩義・恩顧 おんけん【穏健】物の考え方などが穏やかで健全である意と して、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。 「な考え方」〈思想ーにして〉、大人しい・温厚・温和・柔和 おんこ【恩顧】情けをかけて引き立てる意で、主に文章に用 いられる古風で硬い漢語。〈ーにあずかる〉〈ーを忘れる〉 匕恩・恩義・Q恩惠 おんこう【温厚】性格などが穏やかで優しい意として、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。「な人柄」二葉 亭四迷の『浮雲』に「文三は篤実な男」とある。ひ大人し い・穏健・Q穏和・柔和 おんしゃ【御社】相手側の会社をさし、会話にも文章にも使 われる尊敬表現。へーのご要望に添うべく②「貴社」に同 音異義語が多いこともあり、口頭でこの語がよく使われる。 貴社 おんしょく【音色】「ねいろ」の意で改まった会話や文章に用 いられる専門的な漢語。へーの違いを聴き分ける)へーが微 妙に異なる)美的価値にふれる「ねいろ」と違い、この語 は物理的な差異を問題にしている感じがあり、田中康夫の 『パリホテル・ル・プリストル』に「バイオリンのーが人々 のざわめきとミックスしてフランス映画を観ているようだ った」とある例を「ねいろ」と読むか「おんしょく」と読む かによって印象が微妙に違ってくる。ふねいろ おんせい【音声】人間が言語表現を行うときに発する音をさ し、改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。 へーを発する〉へーが途絶える〉へー器官〉へー言語〉国際 ー字母》松村栄子の『至高聖所』に「口を開くやいなや意 味不明のーを発する」とある。テレビ中継や携帯電話など で「ーが乱れる」「ーが途切れる」などという場合は漠然と 音響をさし、特に専門語という感じはない。ひ音韻・音素・Q 言語音・声 おんせん【温泉】地熱によって二五度以上の湯の湧き出る場 所をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常語の漢語。〈旅館〉へめぐり〉へが出る〉へを引 く〉へに入る〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「何を見て も東京の足元にも及ばないがだけは立派なものだ」とあ る。お湯そのものは実質的に「いでゆ」と同じだが、この語 はその対象を客観的にさし示すだけで、「いでゆ」のような 特別の雰囲気を発散しない一般的なことば。ひいでゆ おんそ【音素】狭義の「音韻」と同義、またはその最小単位 をさし、学術的な会話や文章に用いられる専門的な漢語。 〈文字〉〈特殊〉〈として認める〉Q音韻・音声 おんだん【温暖】気候が暖かく快適である意で、やや改まっ <157> た会話や文章に用いられる漢語。「な土地」「温和」に 比べ、気温だけに焦点を当てた感じがある。温かい・暖か い・温和 おんちょう【音調】音の高低の調子を広くさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「を合わせる」「を整える」宮本輝の『蛍川』に「盲目の女の奏でる暗い力強いの中にひき込まれていった」とある。音楽や詩歌の調子やリズムなどをさす一般的な用法以外に、アクセントやイントネーションをさす語学の専門語に近い用法もある。単音律・調べ・旋律・ふし・節まわし・メロディー おんど【温度】熱さ・冷たさの度合いを数値で表したものをさ し、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈一計〉〈絶対 ー〉〈一差〉〈一を測る〉宇野千代の『色ざんげ』に「その 生温かいが僕の洋袴を通して、何かそのままべたべたと 地べたへ這いつくばってていたいような、そんな気力のな さを感じさせる」とある。一般に物の温度をさす例が多い が、木山捷平の『大陸の細道』で初めての満州の寒さに驚い た主人公が「これで、ーは、何度くらいなのでしょう」と尋 ねるように、特に気温をさすこともある。気温 おんとう【穏当】無理なく穏やかな意で、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈な処置〉(そのへんがーなと ころだ〈やり方がーを欠く〉積極的に「妥当」と言える ほどではないが、無難でそれに近い評価はできるという感 じがある。小沼丹の『黒と白の猫』に「この際、図図しい、 はーを欠くと大寺さんは思った。しかし、多少それに似た 感想を覚えないでもなかった」とある。刂順当・Q妥当 おんなおや おんどく【音読】声に出して読む意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈英詩はーしないと押韻がよくわからない〉 〈漢詩をーする〉の「黙読」と対立する。漢字の「音読み」 の意もある。この意味では「訓読」と対立する。り朗読 おんどけい【温度計】物体の温度を計測するための器具をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈液体ー〉の近年は 「寒暖計」よりよく使う。ひ寒暖計 おんな【女】性別の一つで、男でないほうをさす。「女性」とともに最も幅広くふつうに用いられた日常の基本的な和語。〈若い〉〈の自立〉〈としてのたしなみ〉かつての男中心の社会では家庭を守る人と位置づけられ、「子供」と一括されるように、子供とともに庇護される対象として、男より一段低く見られてきた歴史の影響もあり、特に男性からそう呼ばれることに抵抗を覚える女性が少なくないため、この語の使用を控える傾向も見られる。そのような語感が働くため、「だてらに」「のくせに」といった好ましくない表現の場合、「女」以外の類義語で代替できない。容疑者などマイナス評価の場合は「四十代の」などと言い、「女性」は使われない。ただし、「女」単独でなく、「物」「の人」「の方」のような形で用いる場合にはそういう抵抗感は生じないようである。井伏鱒二の『珍品堂主人』に「まぎれもなく女性だが、決してと思ってはいけないよ」という例がある。おなこ・じょし・Q女性・婦女・婦人おんなおや【女親】「母親」の意で会話にも文章にも使われる和語。〈一人で苦労して育てる〉「母親」に比べ、女である点を意識した表現。「男親」と対立。お母様・お母さん <158> おんなし お母ちゃん・おふくろ・母さん・母ちゃん・母・母上・Q母親・ママ おんなし【同し】「おなじ」の口頭語形「おんなじ」の転で、 古風かつ俗語的な響きがある。へどっちへころんでも結果は だ調布の自宅を訪問した折、武者小路実篤は「ものを 言うときと書くときと、ほとんど同 たしだね」と語った。 同じ白樺派の里見弾も、鎌倉の自宅でのインタビューに際 し、書きことばと話しことばとの関係についての質問に答 えながら、「文章は目を通して頭へ入って来る、言語 は耳から入って来るが、そのもの自身の内容は同 んだな」と発音した。同じ・Qおんなじ・同一・等しい おんなじ【同じ】「おなじ」の撥音化で、くだけた会話でしば しば使われる。「おんなし」ほど俗語的ではなく、古風な感 じもない。〈どれでも味はまったくーだ〉〈さっきからーこ とばかり繰り返してる〉時に強調的なニュアンスを伴う こともある。Q同じ・おんなし・同一・等しい おんぶ「背負う」または「背負われる」ことをさす幼児語。 〈赤ちゃんをーする〉〈母親にーする〉「ーにだっこ」のよ うに他人に頼る意でも使う。Q負う・おぶう・しょう・背負う おんぶ【音譜】「楽譜」の意で主に文章に用いられる、いくぶ ん古風な漢語。〈ーを暗記する〉会話では「音符」と混同 しやすい。Q楽譜・譜・譜面 おんぼう【隠亡】古く火葬や墓場の番人を業とした人をさし た漢語。職業差別の意識が甚だしい語として現在は用いな い。 おんりつ【音律】音楽、特に楽器などの音の調子をさし、主 に文章に用いられる、やや古風な漢語。〈なつかしいー〉の 田宮虎彦の『菊坂』は「単調な曲をかなでているオルガン のものういーがきこえていた」として終わる。専門語とし ては、音楽に用いる音の高低の相対的な関係を音響学的に 厳密に規定したものをさす。単調べ・Q旋律・節・節回し・メロデ イー おんわ【温和】暖かく穏やかなの意で、いくぶん改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈な気候〉〈な風土〉 「温暖」に比べ、強風も比較的少なく晴れる日が多いなど、 気温以外も含めて相対的にのどかな感じがある。おとなし くやさしい意で人の性質にも使う。乃温暖・穏和 おんわ【穏(温)和】性質や態度が穏やかな意で、やや改まっ た会話や文章に用いる漢語。〈—な性格〉(見るからに—そ うな人物)森鷗外の「魚玄機」に「詞は極て—である」と ある。専大人しい・穏健・温厚・温和・柔和 <159> か【香】「かおり」を意味する古語に近い和語。「移り香」は 多様な匂いだが、一般に芳香をさす雅語に近い文章語。〈梅 がー〉〈木のー〉〈磯のー〉〈湯のー〉現代では慣用表現以 外では自由に使えない。Q香り・薫り・匂い・臭い が逆接的な流れを示唆して、それほど硬くない文章などで 用いるやや古風な和語。「そこまでは確かだ。」その先が 問題なのだ」「しかし」や「だが」ほど明確な強い逆接で はなく、軽く逆説風につなぐ感じの言い方。芥川龍之介の 『侏儒の言葉』に「子供に対する母親の愛は最も利己心のな い愛である。」、利己心のない愛は必ずしも子供の養育に 最も適したものではない」という流れがある。ちなみに、 この作品には、「OOO。のみならずOOO。」、OOO」 という論理展開のパターンが目立つ。しかし・Qだが・でも が【画(畫)】「絵」の意で、会話にも文章にも使われる古めか しい漢語。〈書—骨董だ〉〈書も—も大した腕だ〉〈は無 声の詩〉の「画」と書いて「エ」と読ませる例もあり、区別 が困難。夏目漱石の『草枕』に出てくる「どこへ越しても住 みにくいと悟った時、詩が生れて、が出来る」「景色を一 幅の「として観」「の前へ立って」など、いずれも元は振 り仮名がなくどちらにも読める。Q絵・絵画・図・図画 かあさん【母さん】「かかさん」の転。母親をさし、親しみと 軽い尊敬の気持ちをこめて、くだけた会話で使われるやや カード 古風で親しい感じの呼び名。〈坊や、いるかい?〉〈に 似たのかねえ〉〈ーもずいぶん苦労したんだね〉小津安二 郎監督の映画『戸田家の兄妹』(一九四一年)に、眼鏡 ないか?」と言われて、相手の目の前にある眼鏡を渡すシ ーンがある。「ーお肩をたたきましょ」「ーは夜なべをして 手袋編んでくれた」などと唱歌にも使われ、やや土俗的な この語には、ぬくもりとなつかしい味がある。「父さん」と 対立。お母様・Qお母さん・お母ちゃん・おふくろ・女親・母ちゃ ん・母・母上・母親・ママ かあちゃん【母ちゃん】「母さん」の意で、子供などが、また は子供に向かって父親が、親しみをこめて呼ぶ、やや古風な 和語。へ、御飯おかわり)②くだけた会話でまれに妻をさ すこともあり、その場合は俗っぽい感じが増す。「父ちゃ ん」と対立。ひお母様・お母さん・Qお母ちゃん・おふくろ・女親・母 さん・母・母上・母親・ママ カーディガン毛糸などで編んだ上着で、本来は襟がなく前 開きでボタンでとめるタイプのものをさし、会話にも文章 にも使われる外来語。〈カシミアのーをはおる〉もセーター ガーデニング「園芸」の意の斬新な感じの外来語。〈英国風 のーの技術〉近年盛んに使われるようになったことばで、 単に草木を育てるだけでなく、その場所の自然の景観を生 かして楽しみながら総合的にそれぞれの庭を造り上げると いう趣味的な雰囲気がある。Q園芸・造園・庭いじり・庭造り カード情報などを記録した四角の厚い小型の紙やプラスチ ックをさし、会話にも文章にも使われる外来語。〈ーに記載 する〉〈トランプのーを配る〉〈ーで支払う〉の丼伏鱗二の <160> かい 『珍品堂主人』に料亭で「お客の舌の好みの調査をやり」 「それをーに書きつけて、その客が次に来たらーをめくって 見る」とある。「クリスマスー」のように、はがき大の挨拶 状をさしたり、「注目の好ー」のように、試合の組み合わせ をさしたりする用法もある。ひふだ かい【会】一定の目的の下での人々の集まりをさし、会話で も文章でも使う日常の基本的な漢語。〈ーを開く〉へーを催 す〉へーがある〉へーに出る〉小沼丹の『お墓の字』に「拙 宅に谷崎、井伏両先生をお迎えして「お墓の字を書くー」を やることになった」とある。ヲ会合・つどい かい回同じことが繰り返される場合の単位をさし、会話 や軽い文章に使われる漢語。〈ーを重ねる〉〈三—見た〉 「遍」ほど会話的ではなく、「度」よりは会話的。度・Q 度・遍 がい【害】物事の状態を悪化させるものをさし、会話にも文 章にも使われる日常の漢語。へーがある〉へーになる〉へー を及ぼす〉益ーと対立。Q害悪・害毒 がいあく【害悪】悪い影響の意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈社会にーを流す〉の「害毒」に比べる と漠然とした感じがある。専害・Q害毒 かいいれる【買い入れる】買って手に入れる意で、やや改ま った会話や文章に用いられる和語。〈日用品を—〉〈当座の 食料を—〉の「買う」と違い、売買契約を交わしただけでな く品物が届いた感じが強い。ひQ買う・購入 かいいん【海員】船舶の船長以外の乗組員をさし、改まった 会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈一組合〉クル! 水夫・セーラ!・Q船員・乗組員・船乗り・マドロス かいが【絵(繪)画(畫)】「絵」の意で、改まった会話や文章に 用いられる正式な感じの硬い漢語。〈レンブラントの—〉 〈一の制作にとりかかる〉〈一を鑑賞する〉重々しい語感 から、本格的な作品を連想させるため、子供の絵や、大人で も素人がちょっと描いたようなものや簡単なカットなどは、 この語とイメージが合わない。Q絵・画・図・図画 かいがい【海外】海を隔てた外国の意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈旅行〉〈に渡る〉〈に進出する〉島 国である日本にとっては結果として「外国」と同じ。谷崎潤 一郎の『細雪』に「にまでその美を謳われていると云う名 木の桜」とある。異国・Q外国・外地・国外 かいがいしい甲斐甲斐しい労を惜しまずせっせと働く姿 を見て好もしく思う気持ちをさして、会話にも文章にも使 われる古風な和語。〈新妻のーエプロン姿〉へー・く立ち働 く)Q健気・殊勝 かいかく【改革】制度や組織を改める意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈政治—〉〈構造—〉〈行政—を進める〉 〈制度の抜本的な—に踏み込む〉②「改变」と「変革」との 間の規模で、「変革」より具体的。♬改变・Q変革 かいかた【買い方】物件や品物を買う立場にある人をさし、 会話にも文章にも使われる、やや古風で専門的な感じの和 語。〈ーに回る〉の「チケットの」のような買う方法の意 味では専門性が感じられない。買い手・買い主・パイヤー かいがん【海岸】海と陸が接する地帯をさし、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈一線〉へ <161> 治い〈リアス式ー〉〈ーに打ち寄せる高波〉〈ーが一望で きる〉の川上弘美の『溺レる』に「寒い日にーなんか、歩き はじめてしまった」とある。ひ磯・うみべ・Q沿岸・海浜・かいへ ん・岸・岸辺・なぎさ・波打ち際・浜・浜辺・みぎわ・水際・水辺 がいかん【外観】外から見た感じをさし、会話にも文章にも 使われる漢語。〈建物のーはりっぽだ〉〈ーは人目を引くが 中身は貧弱だ〉Q外見・見かけ・見た目 かいき【開基】寺院を創建する意、また、その人物をさして、 主に文章中に用いられる古風な漢語。〈唐招提寺の—〉の基 礎を開く意から。ひ開山・Q開祖・元祖・始祖・鼻祖 かいき【怪奇】姿が異様で怪しく見える意で、主に文章に用 いられる、やや古風な漢語。〈複雑—〉〈—現象〉〈—小説〉 〈—な面相〉ひ奇異・O奇怪・奇っ怪・奇妙・奇妙奇天然・不可思議・ 不思議・変・摩訶不思議・妙 かいぎ【会議】数人以上の関係者が一室に集まって議題について意見交換し結論を出すための集まりをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈中〉〈職員〉〈国際〉〈編集〉〈を開く〉〈にかける〉〈に諮る〉〈で決める〉 の会議室を用い、議長や書記を置くなど、形式的に整ってい る傾向が強い。夏目漱石の『坊っちゃん』に「誰が見たっ て、不都合としか思われない事件にーをするのは暇潰した」 とある。り打ち合わせ・Q協議・相談・談合・話し合い・ミーティング かいきゅう【懐旧】昔を懐かしむ意で、文章中に用いられる 古風な漢語。〈一の情にひたる〉〈一の念がきざす〉〈懐 古」ほど一般的でなく、それだけに趣味的な型にはまらず、 しみじみとした情感が漂う。思い出・Q回想・追憶・追懐・追想 かいけん かいきよ【快挙】胸の透くような素晴らしい行為の意で、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈近来稀に見る—〉 〈前人未到の—〉〈ーを成し遂げる〉ひ義挙・Q壮挙・美挙 かいぎょう【開業】〒「駅前に食堂を—する」「新しい路線が —する」のように、新たに営業を開始する意、「医」 「中」のように、営業をしている意で、会話にも文章にも 使われる漢語。「開店」と違い、店を開いて品物を扱う場 合に限らず、特に医者などによく使う語。Q開店・創業・店 開き かいけい【会計】金銭・物品などの財産の出入りを計算し管理 することをさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。 〈係〉(年度〉(を任される)福原麟太郎のチャー ルズ・ラム伝』に「東印度会社は重役会を開いて、係チャ ールズ・ラム君の健康不良を認め、辞表を受理し」とある。 「おー」「ーを済ませる」のように、代金の支払いの意でも 使う。処理 がいけい【外形】外から見た形の意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈にこだわる〉〈から判断す る〉〈に感わされる〉彫形・恰好・形式・形象・Q形状・形態・姿 かいけっ【解決】事件・争い・問題などが関係者の納得する形 で処理がなされ終わりになる意で、会話にも文章にも広く 使われる日常の漢語。〈手段〉〈を図る〉〈に乗り出 す〉〈問題が無事にーする〉Q決着・落着 かいけん【会見】日時と場所を設定の上公式に人と会う意で、 改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈記者 ー〉へーを開く〉へーに臨む〉ひQ面会・面接・面談 <162> かいけん かいけん【懐剣】ふところにしのばせるための短い刀をさし、 主として文章で使われる古風な漢語。へーを胸元に忍ばせ る)いざという時のために懐に入れておく護身用の短刀。 女性を連想させる。ふヒ首ふヒがたな・小刀・短剣・Q短刀・ど すふところがたな・脇差 がいけん【外見】外から見たときのようすの意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈ーはすばらしい〉〈ー はおとなしい感じだ〉〈ーに惑わされる〉〈ーを気にする〉 の「ーは立派だ」など、実際とは違うというニュアンスで使 う例が多い。Q見かけ・見た目・見場 かいこ【回願】過去の出来事を振り返る意で、主として文章 に用いる硬い感じの漢語。〈一録〉〈一展〉〈往時を—する〉 き懐古 かいこ【懐古】昔を懐かしく思い返す意で、改まった会話や 文章に用いられる、やや古風な漢語。〈一趣味〉〈一の情〉 過去を振り返るところまでは「回顧」と同じだが、この語 には昔を懐かしむ情緒的な雰囲気があふれている。刂回顧 かいこ【解雇】使用者が雇用契約を一方的に破棄する意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一通告〉〈人員整 理による大量一に踏み切る〉〈社員の一だけは回避したい〉 〈不当一に断固反対する〉刂解職・解任・首切り・Q罷免・免職 かいご【介護】老人や病人などを介抱し看護する意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈保険〉〈疲れ〉〈寝たき り老人の—〉の「看病」や「看護」より体の不自由な老人を 連想させやすい。Q介抱・看護・看病・ケア かいご【改悟】悪かったと悟って改める意で、主として改ま った文章に用いられる硬い漢語。〈非行を—する〉(一の情 が見て取れる)過去の過ちを悟って反省している点で「悔 悟」と差はないが、「悔悟」に比べ、過ちを改めるところに 重点がある。専悔悟 かいご【悔悟】過去を悪かったと悟って悔いる意で、主とし て改まった文章に用いられる硬い漢語。〈の情しきり〉 〈の念がわく〉〈の涙に暮れる〉過去の過ちを悟って 反省している点で「改悟」と差はないが、「改悟」に比べ、 過ちを悔いるところに重点がある。改悟・悔恨・悔い・痛恨 かいごう【会合】人々が集まって行う催しをさし、やや改ま った会話や文章に使う漢語。へに出席する〉へを重ね る)小沼丹の『大先輩』に「年に二、三度あるーで同席す る」とある。「会」よりも出席が義務づけられている感じ で、堅苦しい雰囲気を感じさせる。ひ会・つどい がいこうじれい【外交辞令】社交辞令の意で改まった会話や 文章に用いられる、いくらか古風な漢語表現。へーだからそ のまま受け取るわけにいかない)お世辞・お追従・おべっ か・おべんちゃら・Q社交辞令 がいこく【外国】よその国の意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の漢語。〈資本〉へ暮らし への文化壺丼栄の『二十四の瞳』に「ことばの通じな いーへでもきたような心細さ」とある。「自国」と対立。 異国・Q海外・外地・国外 がいこくじん【外国人】よその国の人の意で、会話にも文章 にもよく使われる基本的な漢語。〈留学生〉〈旅行者〉 〈に日本語を教える〉〈の在留資格〉やや会話的な <163> 「外人」より正式な感じの語。「外人」に比べて特に欧米人 を連想するという傾向は弱く、中国人や韓国人などの東洋 人をも自然に意識する。ひ異人・異邦人・Q外人 かいこだん【回顧談】昔あったことを懐かしみながら語る話 をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈往時 のーに終始する)単話① かいこん【悔恨】自分の過ちや失敗を後悔し残念に思う意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈1の日々〉への 念がきざす)②上林暁の『野』に「自分の半生を空しく荒廃 させてしまったと思うーで胸を焼かれる思いがした」とあ る。ひQ悔悟・悔い・痛恨 かいこん【開墾】山林や原野に鉱を入れて耕作できる土地に 変える意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈地〉荒 れ地をーする〉森鴨外の『妄想』に「学術の田地をーし て」という比喻的用例が見られるが、「開拓」と違って農地 のイメージがつきまとう。開拓 かいさん【開山】物事の、なかでも特に仏教の宗派の創始者 の意で、主に文章に用いられる古風な漢語。〈高野山真言宗 の—〉山を開いて寺を建立するところから。毎Q開基・開 祖・元祖・始祖・鼻祖 かいさん【解散】議会や会合や団体行動が終了し、集まった 人々が分かれ散る意で、会話にも文章にも使われる漢語。 〈現地ー〉〈駅前でーする〉〈委員会をーする〉〈衆議院をー して総選挙に打って出る〉の「集合」と対立。啓会 かいし【海市】「蜃気楼」の意で、まれに文学的な文章などに 用いられる古めかしい漢語。〈現象〉②こういう現象は海 かいしゃいん 岸に起こりやすく、海に都市の姿が見えたところから。現 実にありえないことを想像する意の比喻的用法もある。福 永武彦に『海市』と題する長編恋愛小説がある。単空中楼閣 Q蜃気楼 かいし【開始】ものごとが始まったり、ものことを始めたり することをさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈一時刻〉〈試合一の合図〉〈一のベルが鳴る〉〈一早々〉 太宰治の『斜陽』に「戦闘、」。とある。ひスタート・Q始 まる・始め・発足 がいして【概して】細かい点は別にして大まかに見れば、と いった意味合いで、会話にも文章にも使われる表現。今度 の応募作品は程度が低い)一般に・Q総じて かいしゃ【会社】法律に基づいて設立される営利事業を目的 とする社团法人をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常の漢語。〈株式—〉〈—更生法〉〈—に勤 務する〉〈—を経営する〉福原麟太郎の『チャールズ・ラム 伝』に「その限りにおいて彼は「わたしゃロンドン、花の都 の—員」と歌っていてよかった」とある。児企業 がいしゃ 被害者を意味する隠語的な俗語。刑事や事件記者 などがしばしば使う。へーの身元を洗う》の漢字で書けば 「害者」となるが、ほとんど漢字では書かず、「ガイシャ」と 片仮名書きする例が多い。ひ被害者 かいしゃいん【会社員】会社に雇用されて業務に従事する人 をさし、会話にも文章にも使われる漢語。「」で年収は安定 している〉〈父はーで連日残業がある〉〈職業欄に「」と 記入する〉公務員や教員よりはるかに多くを占めるため、 <164> 「サラリーマン」の代名詞のように意識されている。森田た まの『もめん随筆』に「は(略)従順な犬のようにその事 (転勤)に馴らされていた」とある。「公務員」などと同様、 職業名としても使われ、ある企業に属する場合はむしろ 「社員」を使う。込勤労者・サラリーマン・Q社員・従業員・職員・勤 め人・ビジネスマン・労働者 かいじゅう【懐柔】対立する相手を巧みに手懐だけて操る意 で、改まった会話や文章に用いられる、やや古風で硬い漢 語。へー策をとる〉〈反対勢力をーする〉〈不平分子をーす る〉相手を騙ますという感じは比較的弱く、自分に逆らわ ない関係をある程度継続する印象が強い。ひ抱き込む・Q手懐 ける・丸め込む・籠絡 かいしゅん【買春】男が金銭で女の性を自分の意のままに扱 うことをさす新しい用語。通常の音読みでは「売春」と 同音になるため、口頭表現で区別する必要から湯桶読みに したもの。俗語から次第に一般語化しつつあり、児童等に 対する行為をさして法律でも用いられるに至った。児売春 かいしゅん【改悛】心を入れ替える意で、主として硬い文章 に用いられる漢語。〈一の情〉過去の過ちを反省している 点で「悔悛」と差はないが、この語は「改める」ことに重点 がある。児悔悛 かいしゅん【悔悛】過去のことを悔い改める意で、主として 硬い文章に用いられる漢語。〈—の情〉過去の過ちを反省 している点で「改悛」と差はないが、この語は「悔いる」こ とに重点がある。刂改悛 かいしょう【甲斐性】生活力という面で頼りになるといった 意味合いで、会話などに用いられる古めかしいことば。へー のない亭主⑩夫が稼いで妻が家事をきりもりしてきた伝 統的な生活形態では、髪結いの亭主などの一部の例外を除 き、妻が夫に対して言う場合が多かったため、現在でも男性 についての評価という傾向が残っている。 かいじょう【会場】集会やイペントなどを催す場所をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈ー係〉〈展示ー〉へーを おさえる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「時間が来たから、 山嵐と一所にーへ行く」とある。専式場 かいしょく【解職】「免職」の意で主に文章に用いられる専門 的な硬い漢語。〈ー請求〉〈ー処分とする〉専解雇・解任・首切 り・罷免・Q免職 がいじん【外人】よその国の人の意で、主に改まらない会話に多く使われる日常の漢語。〈一部隊〉〈墓地〉〈タレント〉〈に英語で道を聞かれる〉〈の多い町〉「邦人」と対立する語ながら、「外国人」のような正式な感じがなく、現在では会話的。「外国人」と違って、伝統的にすぐ欧米人を連想させる。一時期、この語には対象を軽く見ているというマイナスイメージが伴うとして問題になり「外国人」と言い換えるようにした影響から、今では特に若年層であまり使われなくなった。むしろ欧米人自身が「日本語人・異邦人・Q外国人 かいせい【改正】法律などの条文を現状に合わせて適切に改 める意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈憲法—論議〉 〈条約の—〉〈規約を—する〉〈主な—点〉↓改定・改訂・Q是 <165> 正·訂正·批正·補正 かいせつ【解説】わかりにくい事柄や物事などをその背景や 周辺などを含めて詳しく述べる意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ー者〉(ニュース)〈事件の背景をーする〉 〈ーを加える〉(わかりやすくーする)単なる事実の「説 明」より踏み込んで述べるため、それだけ担当者の立場が 影響したり意見が入り込んだりして主観的になりやすい。 込説明 かいせつ【開設】施設や組織などを開く意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈ー記念〉〈保育所をーする〉〈相談窓 口をーする〉②「新設」に比べ、そのような業務を開始する という機能面に重点がある。ひQ新設・設立・創設・創立 かいぜん【改善】状況・事態・条件・関係など主に抽象的な対象 について、現在よりよくなるように改める意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈待遇—〉〈関係の—を図る〉〈な お—の余地がある〉の「体質—」などは比較的具体的な対象 だが、それでも人間や物体そのものでなくその性質をさす。 及改良 かいそ【開祖】宗教・学問・芸術の一派の創始者の意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈真言宗の—空海〉開 基・Q開山・元祖・始祖・鼻祖 かいそう【回想】過去の出来事などを思い返す意で、改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈一録〉〈一場面〉〈一に 耽る〉〈少年時代を—する〉回ナン・ドイルに『シャーロ ック・ホウムズの回想』と訳された作品がある。Q思い出 懐旧・追懐・追懐・追想 かいたい かいそう【改装】店舗などの客を扱う場所で装飾や設備など を使いやすく感じのよい状態に変更する意で、会話にも文 章にも使われる漢語。くーにつき三日間休業〉〈店内をーす る〉囲紙の張り替えやショーウインドーの改造などは施さ れても、「改築」と違って大がかりな大工事は含まず、多 くはインテリアの範囲にとどまる。「模様替え」と違い、住 宅や事務所などには使わない。弁改築・Q新装・模様替え かいそう【海草】正式には海中の被子植物の総称。会話でも 文章でも使われる日常の漢語。〈一が打ち上げられる〉横 光利一の『春は馬車に乗って』に「前夜満潮に打ち上げられ たーは冷たく彼の足にからまりついた」とある。俗に「海 藻」をさす。海藻 かいそう【海藻】海中に生える緑藻類・褐藻類・紅藻類の総称。 主として文章に用いられるやヤ専門的な漢語。〈ーを食す〉 のこんぶ・わかめ・ひじき・てんぐさなど。俗に「海草」とす るが、近年「ーサラダ」のような形で生活語の中に入りかけ ている。小川洋子の『妊娠カレンダー』に「病気は常に、海 に浮かんだーのように波打っている」という比喻表現が出 る。専海草 かいたい【懐胎】身籠もる意で、主に文章に用いられる古め かしい漢語。〈ーが待たれる〉き懐妊・受胎・Q妊娠・孕む・身籠 もる かいたい【解体】建築物のような大きな構造物や動物の体な どをほどいて部分ごとにばらばらに分ける意で、会話にも 文章にも使われる、いくぶん専門的な漢語。〈作業〉家 をして新しく建て直す)分解 <166> かいたく かいたく【開拓】荒野を切り開いて人間が利用しやすい状態 に変える意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈団〉 〈村〉〈山林をーする〉永井荷風の『澧東綺譚』に「大正 期の盛時」とある。「開墾」と違って農地とは限らない。 また、三島由紀夫の『金閣寺』に「新らしい友をーしようと した」とあるように比喩的にも用い、「新しい店をーする」 「新分野をーする」など派生的な用例も多い。開墾 がいため【外為】「外国為替手形」という長い専門語形を短縮 して頻用の便を図ったもの。幅広く使用され、一般化した 略語。「法」広く使われて一般化しているため、臨時の 略語にありがちな軽薄な雰囲気をさほど感じさせない。た だし、ちぐはぐな重箱読みの違和感に、類似音の「外タレ」 (外人タレント)の連想が重なって滑稽に響く場合もあるか もしれない。 かいだん【会談】国や組織などの代表者による話し合いをさ し、会話にも文章にも使われる正式な雰囲気の漢語。〈首脳 」〈巨頭」〉〈ーを申し込む〉〈一の場を設ける〉〈両国の ーが決裂する〉②「対談」より公式の感じが強い。Q対談・ 対話 がいたん【慨嘆(歎)】世の中の風潮や人の態度・行動を憂い嘆 くことをさし、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。 〈世の乱れを—する〉〈軽佻ぶち浮薄の風潮は—に堪えない〉 〈学力低下は—に堪えない〉〈礼儀正しさの欠如に—する〉 ②夏目漱石の『三四郎』に「自分たちの科の不振のことをし きりに—するから、三四郎もいっしょに—しなくってはい けないんだそうだ」とある。個人的な「悲嘆」に比べ、社会 や時代のような広い見地からの嘆きをさす傾向が強く、小 沼丹の『更紗の絵』には「すべては戦争のせいだと頻りに した」とある。「嘆く」に比べ、スケールの大きな対象に向 かう傾向があり、そうでない場合は大仰な感じが伴う。 嘆ずる・嘆き・Q嘆く・悲嘆 がいち【外地】外国の土地を意味し、会話にも文章にも使わ れる古風な漢語。〈ーで生まれる〉へーから引き揚げて来 る朝鮮半島や台湾などの日本の旧支配地の連想が強い。 「内地」と対立。異国・海外・Q外国・国外 かいちく【改築】建物の一部または全部を建て替える意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈駅構内の—〉へして使 い勝手をよくする〉新しく建てるという意識の強い「新 築」に比べ、前の家を意識した表現。ただし、そっくり新し くする場合には「建て替え」とするほうが明確。弁改装・新 築・増築・Q建て替え かいちょう【快調】調子がきわめてよい意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈最初からーに飛ばす〉へーな滑り出し を見せる〉〈経営はーに推移する〉の「好調」の幅のうちで も特に上のほうをさす感じがある。Q好調・順調・絶好調 かいて【買い手】物件や品物を買う人、買う側の人をさして 改まった会話や文章で使われる和語。〈市場〉〈ーがつく 買い方・Q買い主・バイヤー かいてい【改定】規則や数字などの変更に限定して使われ、 改まった会話や文章に用いられるやや専門的な漢語。条文 のー〉〈時刻表のー〉〈料金をーする〉弐改正・改訂・是正・訂 正・批正・補正 <167> かいてい【改訂】誤りの訂正や内容の変更をさす、会話でも 文章でも広く使われる漢語。〈一版〉〈辞書の一作業〉〈一 を重ねる〉巻改正・改定・是正・訂正・批正・補正 かいてん【開店】ア「新規」「披露」「大売出し」「し たばかりの店」のように、新たに店を開いて商売を始める 意、①「新装」のように、しばらく閉店したあとに再び開 店する意、②「午前十時」「連日」して二時間で売り切れ る」のように、その日の営業を開始する意、③「中」「 休業の状態」のように、店の開いている間の意で、会話にも 文章にも使われる漢語。開業・Q店開き かいてん【回(廻)転】ある点を中心に回ったりなめらかに動 いたりする意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一椅 子〉〈ドア〉〈一軸〉〈車輪が一する〉〈腰を一させる〉 客の一のいい店」「頭の一が早い」のように、抽象的な意 味の比喻的用法も多い。田山花袋の『蒲団』に「妬みと惜し みと悔恨との念が一緒になって旋風のように頭脳あた 中を一した」とある。転がる・転回・Q回る・巡る ガイド登山や観光旅行などの案内をする意で、会話や硬くない文章に使われる外来語。〈ーブック〉〈観光ー〉〈山のーを雇う〉案内 かいとう【解答】試験などの問いに対する答えをさし、やや 改まった会話や文章に用いられる、やや正式な感じの漢語。 へー欄〉へー用紙〉〈模範ー〉の「設問」「問題」と対立。専応 答・Q回答・答え・返事・返答 かいとう【回答】質問や要求などに対する返答をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈正式—〉〈アンケートの—を かいにん 集計する〉〈取引先からのーを待つ〉応答・Q解答・答え・返 事・返答 かいどう【街道】主要都市を結ぶ幹線道路をさし、「往還」ほ ど硬くも古くもないが、「通り」「大通り」や「往来」より歴 史がありそうで古風な感じがする。「筋にあたる〉〈一沿 いの町〉〈名だたるーが走っている〉「奥州ー」「木曾ー」 など、主要な道の名称として使われる。小沼丹の『地蔵さ ん』に「五日市ーの道傍に、石の道標が立っていて」とあ る。Q往還・往来・街路・通路・道路・通り・道 がいとう『該当』「あてはまる」意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈ー者〉〈ーする項目に印をつける〉 頬義の「当該」は連体用法のみ。ひあてはまる がいどく【害毒】非常に悪い影響をさし、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈世の中にーを流す〉〈青少年に ーを与える番組〉の「害悪」より具体的できつい感じがあ る。刂害・Q害悪 かいな相撲の世界などで「腕」をさして用いることのあ る古めかしい和語。〈力〉〈ーを返す〉の古くは二の腕(上 腕だけの意にも。単腕①・二の腕 かいにゅう【介入】他の争いや事件などに割り込んで積極的 にかかわる意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢 語。〈武力—〉〈政治に—する〉「干涉」以上に直接接触す るため相手側に大きな影響を及ぼす。単干渉 かいにん【懐妊】身籠もる意で、主に文章に用いられる古風 な漢語。〈御—の噂が流れる〉僕胎・受胎・Q妊娠・孕む・身籠 もる <168> かいにん かいにん【解任】任務を解いてその役から降ろす意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈大使を—する〉〈委員長を— する〉②役を辞めるだけで通常はその組織から解雇される わけではない。刂解雇・解職・首切り・Q罷免・免職 かいぬし【買い主】物件や品物を買い取る側の人の意で、改 まった会話や文章に用いられる、やや専門的な和語。〈費用 はーの責任とする〉(ようやくーが見つかる)小沼丹の 『懐中時計』に、懐中時計を安く譲ると言いながら現物を見 せたがらない相手に、その時計の存在を疑って「は品物を 見てから買うものだろう」と詰め寄る例がある。買い方 Q買い手・バイヤー かいね【買値】品物を買うときの値段の意で、会話や軽い文 章に使われる和語。〈品質のわりに—が安い〉仕入れ値の 場合もある。付け値・Q買価 がいねん【概念】語の意味内容を、それによって指示される 事物の集合(外延)、および、それらの個々の事物から抽象さ れる共通の性質(内包)で規定した表象をさし、学術的な会 話や文章に用いられる専門的で硬い漢語。〈上位〉へ一般 ー〉〈抽象ー〉〈ーを規定する〉処理念 かいばっ【海拔】海水面から測った高さの意で、「標高」より も古ぐから一般に使用している漢語。〈ーゼロメートル〉 標高 かいはつとじょうこく【開発途上国】産業の近代化が遅れ、 発展の途上にある国をさし、会話にも文章にも使われる漢 語。へーに対する援助〉Q後進国・発展途上国 かいひん【海浜】「海辺」の意で主に文章中に用いられる、や や専門的でいくぶん古風な漢語。〈公園〉〈植物〉、醜 うみべ・沿岸・海岸・Qかいへん・岸・岸辺・なぎさ・波打ち際・浜・浜辺・ みぎわ・水際・水辺 がいぶ【外部】組織などに無関係なところをさし、改まった 会話や文章に使われる漢語。〈ーに漏れる〉〈ーの人〉 「内部」と対立。ひ外 かいふく【回(恢)復】一度失ったものを取り戻す、病気や怪 我が治るというふうに、本来のよい状態に戻る意で、会話 にも文章にも使われる日常の基本的な漢語。〈健康をーす る〉〈天気がーする〉〈人気がーに向かう〉〈景気がーの兆 しを見せる〉〈ーの途上にある〉〈失地をーする〉〈信用を ーする〉綱野菊の『風呂敷』に、別れた夫の再婚という打 撃から立ち直り、「そのーには肉体のーにおけるごとく、一 種のさわやかさと悦びがあることを、ミツは感じた」とあ る。「病気がーする」のように言うこともあり、このような 病気に関しては「快復」と書く慣用も見られる。ちょっとし た擦り傷にも使える「治る」に比べ、この語は治るまでに時 間のかかるある程度重い病気や怪我について使う傾向が強 い。専戀える・Q治癒・治る・平斎 がいぶん【外聞】世間での評判や世間体をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈近所に知れるとーが悪い〉へーを気 にする〉〈恥もーもない〉の「人聞き」と違い、「屋台で一杯 やろうと思ったが、部下に見られるとーが悪いので小料理 屋に入る」のように直接見られた場合にも言いそうだ。「ー をはばかる」のように、内部事情が外に漏れる場合に使わ れることもある。Q世間体・体面・体裁・人聞き <169> かいへい【開閉】開けたり閉めたりする意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ー装置〉〈門のーがスムーズに 行かない〉〈ドアのー時にきしむような音を立てる〉〈遮断 機のー〉乃Q開け閉め・開けたて かいへん【改变】改め変える意で、主に文章に用いられる硬 い漢語。〈規則の—〉入試制度の—に着手する〉内容の ーを試みる〉「改革」より小規模で具体的で、「変更」に 近い意味合いで使う例もある。弁改革・Q変革 かいへん【海辺】主に文章中に用いられるやや古風で硬い 感じの漢語。へーの道を行く安岡章太郎に『海辺の光 景』と題する小説がある。」・Q・みべ・沿岸・海岸・海浜・岸・ 岸辺・なぎさ・波打ち際・浜・浜辺・みぎわ・水際・水辺 かいほう【介抱】病人や負傷者などに付き添って世話をする 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈親身になってーす る〉〈怪我人をーする〉濾井孝作の『積雪』に「病臥して ーなどそうあてにせず、覚悟のよい大往生」とある。「看 護」「看病」よりも一時的な雰囲気があり、「酔っ払いのー に手を焼く」のように酔いつぶれた人などに対しても使う。 Q介護・看護・看病・ケア かいほう【開放】広く一般に使用させる意で、会話でも文章 でも使われる漢語。〈門戸—〉へー的な雰囲気〉〈庭園を市 民にーする〉ひ解放 かいほう【解放】拘束されている者を自由な身にすること、 東縛を無くすることをさし、会話にも文章にも使われる漢 語。〈感〉〈奴隷〉〈仕事から〉それぞくようやく役職 からーされる)小林多喜二の『党生活者』に「全プロレタ かいやく リアートの—の仕事」とある。「拘束」と対立。開放・解き 放す・Q解き放つ かいまい【外米】外国産の米をさし、会話でも文章でも使われる漢語。〈米不足でーに頼る〉日本が米不足に陥った年の学会で、韓国人から思いもかけない韓国産の米を頂戴した。今年の日本は外米ばかりで困っていると聞いて韓国の米を手土産に持参したのだという。内地米式に命名すればカラニシキとかコマヒカリとかとなる最高級の銘柄米なのだろう。日本で生まれ育ち、その後長く母国の韓国の大学の教壇に立っているこの教授にとって、「外米」ということばは戦後間もなくの「ガイマイ」(インディカ米)というマイナスイメージの響きをひきずったままで、韓国米はその中に含まれないらしい。「外米」でない外国産の米を前にしばし複雑な思いにひたった。人によって、あるいは世代によって、この語はそういうマイナスの語感を発散する。 かいめつ【潰(壊)滅】都市・部隊・組織などが完全に破壊され て滅びる意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。 〈一に瀕ふする〉〈組織がーする〉〈巨大地震で街はほとんど ー状態になる〉ひ絶滅・Q全滅・撲滅 かいもの【買い物】商品を買う意で、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の和語。〈ー上手〉へーに出か ける〉へーが済む〉へいいーをした〉小沼丹の『珈琲の木』 は「家の者が近所の町にーに行くが用は無いかと訊くから」 と始まる。「ーを店に置き忘れる」のように、買った物をさ す用法もある。ひショッピング かいやく【解約】契約を解除する意でやや改まった会話や <170> がいゆう 文章に用いられる正式な雰囲気の漢語。定期預金をーす る〈急な転勤で賃貸マンションをーする〉Qキャンセル・ 取り消し がいゆう【外遊】視察や留学などの目的で短期間外国で過ご す意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ただいま—中〉 〈一の途に上ろ〉ひ洋行 かいよう【潰瘍】皮膚や粘膜の組織がただれて崩れる病変を さして、会話や文章に使われる医学の専門漢語。〈胃—〉 〈十二指腸にーが認められる〉Q腫瘍・肉腫・ポリーブ かいよう【海洋】「海」の意で、主に文章中に用いられる硬い 漢語。〈国〉〈気象台〉〈性気候〉復合語の構成要素 となる例が多く、単独ではあまり使わない。単海・Q大洋 かいりょう【改良】物の悪い点を改めてもっとよくする意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈品種〉〈を加える〉 〈にーを重ねる〉「改善」に比べ、具体的な対象に使う 傾向がある。単改善 単独では使用頻度が低く、文体的なレベルの高い語。 がいろじゅ【街路樹】市街の美観を増し日差しをやわらげ環 境を保全するために道路沿いに植え連ねる木をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。へーの銀杏が色づくへ〈排気 ガスでーが枯れかかる〉島崎藤村『飯倉だより』に「と してのマロニエ」とある。ヌ木立・a並木 かいわ【会話】複数の人が通常向かい合って話す言葉のやり とりをさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈日常 ー〉〈英ー〉〈ーを交わす〉〈ーがはずむ〉〈家庭内のー〉 〈小説の中のーの部分〉〈ーが通じない〉〈ーが途絶える〉 大江健三郎の『われらの時代』に「おれたちのーは噛みあい かたの良い歯車のようにじっくり進展してゆく」とある。 人間が音声を通じて情報や意志・感情などを伝え合う言語行 為で、日常生活での話し合いを連想しやすいが、広義には 講演や挨拶などの一方的な伝達やある議題のもとでの討論 などをも含む。石坂洋次郎の『若い人』に「笛を吹くような 美しいーとある。Q対話・談話・発言・発話 かいわい【界隈】その場所を含むその附近一帯をさし、会話 にも文章にも使われる古風な漢語。へこのーには適当な場 所がない〉〈銀座ーをぶらぶら歩く〉近所・Q近辺・近隣・付近 かう【飼う】動物にえさを与えて育てる意で、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。へペットを ー〉〈犬をー〉鳥崎藤村の『千曲川のスケッチ』に「犬は 番人にー・われて、種々な役に立つ」とある。「カナリヤを ー」「金魚をー」など、「飼育」に比べ、純粋に楽しむ場合に も使われる。飼育 かう【買う】金銭を払って品物などを自分の所有にする意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈野菜を—〉〈駅前の店で—〉〈安く—〉ぐ小津安 二郎の映画『足に触った幸運』に、「買い物も相当あったか らね」と言う夫に向かって妻が「何をおー・いになったの? <171> 芸者?」と問い詰めるせりふが出る。「芸者を」という言 い方はするが、「買い物」の中に「芸者」は入らないので笑 いを誘う。「売る」と対立。ヲQ買い入れる・購入 かえす【返す】元に戻したり相手から受けたのと同じ行為で 応じたりする意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる日常の基本的な和語。〈金を—〉〈借りを—〉〈前 の状態に—〉〈ー言葉がない〉〈お言葉を—ようですが〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「あした行って一銭五厘ー・し て仕舞えば借も貸もない。そうして置いて喧嘩してやろ う」とある。返還・Q返却・返済・返上 かえだま【替え玉】当人になりすまして相手を欺き代理を務 める偽者の意で、会話や軽い文章に使われる、やや俗っぽい 和語。〈受験〉〈を使う〉若年層はラーメンの追加の めんの方になじんでいる。専代理・Q身代わり・名代 かえって【却(反)って】「むしろ」の意で、会話や軽い文章に 使われる和語。〈あんまり誘われるとー嫌になる〉〈大人よ りー子供のほうが度胸がある〉の島崎藤村の『嵐』に「子供 なぞはどうでもいいと考えた。ー手足纏いたぐらいに考え た」とある。見むしろ かえらぬひととなる【帰らぬ人となる】「死ぬ」意の和語による文学的で慣用的な間接表現。死を忌む気持ちから、それをストレートに表現せず、立ち去ってもう戻って来ない意にとらえ直して衝撃をやわらげる婉曲表現。勇敢え無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長 かえる 逝・露と消える・天に召される・亡くなる・儚なくなる・不帰の客とな る・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷る・脈が上がる・空し くなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 かえり【帰り】帰ること、また、その時の意で、会話にも文 章にも使われる日常の和語。〈仕事の—〉へーは下りにな る〉へーが遅い〉へーに寄り道する〉の「行き」と対立。夢家 路・帰り道・Q帰途・帰路・復路 かえりざき【返り咲き】体の故障や衰えなどによってタイト ルや地位や立場を失った人が再び元に戻って活躍する意で、 改まらない文章などに用いられる、やや美化した感じの和 語。〈第一線にみごとなーを見せる〉〈チャンピオンとして ーを果たす〉図春咲きの花が秋になってまた咲き出す意か ら。刂Qカムバック・再起・復帰 かえりみち【帰り道(路・途)】帰って来る間の道の意で、会話 にも文章にもよく使われる日常の和語。〈ーに寄る〉〈学校 のー〉専家路・帰り・帰途・帰路・復路 かえりみる【省みる】反省の意で、改まった会話や文章に用 いられる和語。〈わが身を—〉〈自らの不適切な言動を—〉 ひ顧みる・反省 かえりみる【顧みる】振り返る意で、主として文章に用いら れる和語。〈背後を—〉〈往時を—〉〈家庭を—・みない〉 〈危険を—・みず〉の川端康成の『横光利一』に「君の名に傍 えて僕の名の呼ばれる習わしも、ー・ればすでに二十五年を 越えた」とある。巻省みる・振り返る かえる【返る】元の状態に戻る意で会話にも文章にも広く使 われる日常の和語。〈我に—〉〈初心に—〉〈忘れ物が—〉 <172> かえる 〈貸した金が」②芥川龍之介の『秋』に「翌日彼等は又元 の通り、仲の好い夫婦にー・っていた」とある。帰る・戻る かえる【帰る】本来の場所に戻る意で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。「家に ー〉〈故郷にー〉〈在米邦人の子供が初めて日本にー〉〈客 がー〉〈ー・らぬ人となる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「行く事は行くがじきー。来年の夏休にはきっとー」とあ る。直前の場所や状態を基準に考える「戻る」とは違って、 本来の場所を基準にし、そこへ戻ることを表す。夕食後い つまでもお茶の間のテレビにかじりついている子供に「早 く自分の部屋に戻って宿題をやりなさい」と注意する場合、 「帰って」とすると、自宅なのにそれ以外の部屋は本来の場 所ではないと判断したことになり、子供にとって冷たい言 い方になる。戻る・返る かえる【変える】それまでの物や状態と違うようにする意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈色を—〉〈髪型を—〉〈位置を—〉〈予定を—〉 〈見方を—〉〈話題を—〉獅子文六の『胡椒息子』に「襟元 から水を掛けられたように、サッと顔色をー・えた」とあ る。呂改める・変化・Q変更 かお【顔】顔立ちの意にも表情の意にも用い、抽象的な意味 合いでも使う、最も基本的で一般的な日常的な和語。「が いい」くうれしそうな」〈ーを出す〉「が利く」岡本か の子の『鶴は病みき』に「端正なーが星明りのなかでデスマ スクのように寂然と見える」とある。ひ面差し・顔立ち・顔ば せ・かんばせ・顔面・Qつら・目鼻立ち・容貌 かおいろ【顔色】表情の意で、会話にも文章にも使われる日 常の和語。へとたんにーが変わる〉(すぐーに出る)へ相手 のーをうかがう内田百閒の『サラサーテの盤』に「中途 半端な気持でいる様子で、片づかぬーであった」とある。 「表情」や「面持ち」と違い、「朝からーが悪い」「いかにも 元気そうなー」のように、感情と無関係に健康状態が顔の 表面にあらわれる場合にもよく使われる。ヌ面持ち・顔つき・ Q表情 かおく【家屋】家の意で改まった会話や文章に用いられる硬 い感じの漢語。へーを売り払う〉〈地震でーが倒壊する〉② 吉本ばななの『哀しい予感』に「まるで夢の中で見る日本ー のようにひっそりしている」とある。建物自体をさす感じ が強く、家庭生活の連想は薄い。Qいえ・うち・居宅・住居・住 宅・人家・住まい・邸宅・屋敷 かおだち【顔立ち】目鼻立ちなど顔のつくりをさし、会話に も文章にも使われる和語。〈整ったー〉〈きりりとしたー〉 〈上品なーをしている〉の表情をもさす「顔つき」と違い、 もっぱら生まれつきの状態をさす。坂口安吾の『白痴』に 「瓜実顔の古風の人形か能面のような美しいー」とあり、永 井龍男の『青電車』に「鎮まり返った面長なーには、通信員 の胸を打つものがあった」とある。「ーは悪くない」のよう に、多く褒める場合に使う。ひ面差し・顔・顔つき・人相・Q目鼻 立ち・容貌 かおつき【顔付き】顔立ちや表情の意で、会話でも文章でも 使われる日常の和語。〈不満そうなー〉〈とたんにーが変わ った〉〈こわばったーになる〉の表情」のような意味合い <173> で使われることが多い。「利口そうなーをした子供」のように「顔立ち」に近い意味で使われる場合も、単なる目鼻立ちだけではなく、目つきなど感情や神経の働きを含めて言う感じが強い。島尾敏雄は『出発は遂に訪れず』で、死に対する心の準備をしたままいつまでも最後の目的を果たす命令の来ない特攻隊長の満たされぬ気持ちを、「発進と即時待機のあいだには無限の距離が横たわり、二つのーは少しも似ていない」というふうに擬人的に描いた。単面差し・Q面持ち・顔色・顔立ち・人相・表情・目鼻立ち・容貌 かおなじみ【顔馴染み】何回も会って互いに相手の顔をよく 見知っている間柄をさし、会話にも文章にも使われる和語。 〈近所の—〉への客〉〈毎週通ってすっかり—になる〉単 なる「顔見知り」以上によく知り合っており、挨拶はもちろ ん世間話などもしそうな雰囲気を感じさせる。顔見知り かおばせ【顔ばせ】「顔」を意味する古語に近い雅語。白き ー〉の転じて「かんばせ」ともいう。Q顔・かんばせ・顔面・ つら かおみしり【顔見知り】何度か出会って相手の顔を覚えてい る関係をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈買い物を してーになる〉〈思いがけない場所でーを見かける〉へーの 犯行〉の「顔馴染み」というほどではなく、名前もよく知 らずことばを交わすのも挨拶程度という場合も含まれると いう印象がある。貝顔馴染み かおり【香り】やや改まった感じの日常の和語。よい匂いを さす美称で、会話では「匂い」のほうがよく使われる。〈花 のーが漂う〉へいーがする〉〈紅茶はーが命だ〉〈馥郁 かかあ たるー〉開高健の『パニック』に「ウォッカを氷片に浸し たグラスにはしぶくようなレモンの新鮮なーが動いてい た」とある。香水、山椒、お茶、コーヒー、檜の風呂など嗅 覚的要素が大事な対象について、その好ましい匂い特に芳 香に対して用いられる語。梅も花は「香り」でぴったりする が、梅干になると「酸っぱい匂い」と言うのがふつうで、 「香り」はなじまない。ひ香・蕭り・Q匂い・臭い かおり【薫り】「香り」に近い意の雅やかな和語の文章語。 〈爽やかな初夏のー〉〈浜風のー〉〈高い作品〉滝れたお 茶を飲むときの匂いは「香り」、煎茶や焙じ茶などの製造過 程などで風に乗って漂ってくる匂いは「薫り」と書き分ける こともある。香・Q香り・匂い・臭い がか【画架】画板やカンバスを立てかける台をさし、会話に も文章にも使われる、やや古風な漢語。〈街角でーを構え る〉③堀辰雄の『風立ちぬ』に「描きかけの絵をーに立てか けたまま、その白樺の木蔭に寝そべって果物を齧じってい た」とある。ひイーゼル がか【画書家】絵画の制作を職業とする人をさし、会話に も文章にも広く使われる最も一般的な日常の漢語。「志 望」へ「のたまご」〈印象派の」「日曜」の場合は「日 曜大工」と同じく素人をさす。Q絵描き・絵師・画工・画伯 かかあ【婦」くだけた会話で「妻」をさして親しみや軽蔑や 謙遜などの気持ちをこめて使うことのある乱暴な俗語。 「天下」へ「のやつ、いつまでぐずぐずしてんだ」の小津 安二郎監督の映画『東京物語』に沼田(東野英治郎)が息子 のことを話題にし、「の機嫌ばっかりとって、このわしを <174> がかい 邪魔にする」とぼやく場面がある。乃家内・かみさん・細君・Q 女房・ワイフ がかい【瓦解】組織などの一部に破綻を来したことを契機に 次々に崩れて全体が壊れてしまう意で、主として文章に用 いられる古風な漢語。〈幕府の—〉〈体制が—する〉夏目 漱石の『坊っちゃん』に「もと由緒のあるものだったそうだ が、—のときに零落して」とある。屋根瓦の一枚が欠ける と次々に崩れてしまうことから。ひ崩壊 かかえこむ【抱え込む】負担になるものを引き受ける意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈仕事をたく さんー〉〈厄介な問題をー〉みしょいこむ かかえる【抱える】腕で囲うように支える意で、主に会話や 改まらない文章に使われる和語。〈本を小脇に〉〈両腕で 」「妻子を一身」「心配事を・えて眠れない」のように 抽象化された比喻的用法もあり、その場合はやや古風な感 じになる事もある。Qいだくだく① かかく【価格】物の価値を金額で表したものの意で、改まっ た会話や文章に用いられる、正式な感じの硬い漢語。〈原油 ー〉〈一の変動〉〈一を据え置く〉価・Q価額・値・値段 かがく【化学】物質の性質・構造や反応などを研究する科学を さす漢語。〈一変化〉〈一調味料〉〈一の実験〉の木山捷平の 『貸間さがし』に「爆風は、どのような作用を起して、腰 巻だけ肉体から分離し、屋根をつきぬけて、木の枝にひっか けたのか」とある。日常会話で、文脈上、同音の「科学」と 紛らわしい場合に、俗に「バケガク」と発音して区別を明確 にすることもある。化け学 かがく【科学】論理的・客観的・体系的に研究する学問の意の 漢語で、特に自然科学をさして幅広く用いられる。〈自然 の進歩〉へ」的な根拠〉〈万能の時代〉中谷宇吉郎の 『立春の卵』に「数千年のあいだ、中国の古書に秘められて いた偉大な真理が、今日突如脚光を浴びて、世界に躍 り出た」とある。日常会話で、同音の「化学」と紛らわしい 文脈では、「化学」のほうを「バケガク」と読んで区別する。 かがく【価額】物の価値を示す金額の意で、主に文章に用い られる硬い漢語。〈証券類の発行〉価・Q価格・値・値段 かかと【踵】足の裏の後ろの部分をさして、会話や文章に使 われる日常の和語。〈ーを上げる〉幸田露伴の『風流仏』 に「に亀裂きらせしさき程の下女」とある。足になぞら えて「の高い靴」などともいう。Qきびす かがやかしい【輝かしい】光り輝いて見えるほどにすばらし い様子をさし、改まった会話や文章に用いられるブラス評 価の和語。〈一経歴〉〈一業績〉大岡昇平の『野火』に「一 燈火」とあるように実際の明かりにも用いるが、尾崎士郎 の『人生劇場』に「未来への空想」とあるような讃美の気 持ちをこめた抽象的な用法が多い。巻々しい かがやく【輝く】まぶしいほど明るく光る意で、少し改まった会話や文章に用いられる和語。〈空に朝日がー〉〈真夏の海がー〉〈日を浴びて湖面がー〉〈シャンデリアがー〉〈目がー〉〈ダイヤモンドがー〉〈燦然焼とー〉〈栄光にー〉三浦哲郎の『驢馬』に「髪は、ガラスの粉を浴びてちかちかとー・いていた」とある。光の強弱に関係なく使える「光る」に対し、この語は強い光が持続するイメージがある。な <175> お、近年、単に目立って生き生きとして見える存在といった 意味合いで、「今日はー・いて見えるよ」「あのころクラス で一番ー・いていたあなた」などと軽い気持ちで誉め讃える 用法がしばしば見られる。きらめく・Q照る・光る・ひらめく ② かかり【係】割り当てられた仕事の担当者をさし、会話にも 文章にも使われる日常の和語。〈会計—〉への者を呼ぶ へーを仰せつかる〉委員・Q幹事・役員 かかりあい【掛かり合い】好ましくないものと関係を持つ意 で、会話や硬くない文章に使われる和語。へできればーにな りたくない)Q関わり・係わり合い・関係①・関連・繋がり・連関 かかる【斯かる】「このような」の意で、主として文章に用い られる古めかしく硬い感じの和語。〈一事態に直面し〉へー 不始末をしでかすとは何たることだ)Qかような・こういう このような・こんな かかわり【関係拘わり】関係・関連の意で、会話やさほど 硬くない文章に使われる日常の和語。〈自分には—のない こと〉〈深い—がある〉〈密接な—を持つ〉谷崎潤一郎の 『細雪』に「それが雪子の運命にも或るーを持つに至った」 とある。刂掛かり合い・係わり合い・Q関係①・関連・繋がり・連関 かかわりあい【係(関)わり合い】影響し合うような繋がりの 意で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈被害者と—の ある人〉刂掛かり合い・関わり・関係①・Q関連・繋がり・連関 かかわる【関(係・拘)わる】深いつながりを持つ、大きく影響 するの意で、やや改まった会話や文章に用いられる表現。 〈命にー〉〈生死にー〉〈今後にー大問題〉〈威信にー〉 かきいれる 関する関与 かき【垣】家の周囲や庭などに設ける簡単な仕切りをさし、 会話にも文章にも用いられるやや古風な和語。〈四方にー をめぐらす〉〈間のーを取っ払う〉②口頭では「垣根」と言 うことが多い。ひ生垣・Q垣根・囲い・柵・フェンス・塀 かき【夏季】夏の季節の意で、改まった会話や文章に用いら れる正式な感じの漢語。「到来」〈施設〉〈花火大会 が近づく〉夏休みについては「夏季休暇」とも「夏期休 暇」とも書く。夏期 かき【夏期】夏の時期の意で、会話でも文章でも使われる漢 語。〈ー講習〉〈ー学校〉夏季 かぎ【鍵】錠の穴に差し入れて開閉する鉤状の金具の意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。 〈合いーを作る〉〈ーを掛けて出かける〉〈ーが掛かってい て開かない〉〈金庫のーを大事にしまいこむ〉②池谷信三郎 の『橋』に「まるで彼女は、ーのかかった抽斗のように黙 りこんでいる」という比喻表現の例がある。「玄関のーを取 り替える」のように、差し込む物のほうを意識しながら錠 をも含めた広い意味で使うこともある。また、「そこに謎 を解くーがある」「解決のーを握る」のように、手掛かりの 意を表す比喻的用法もある。ひキー・Q錠・錠前 がき【蛾鬼】「子供」の意の俗語。ののしる場合によく使う。 へてめえがまだーの時分にへうるさいーだ)めったに漢 字では書かず、単語の切れめが目立つように片仮名表記す る例が多い。ひお子様・子・Q子供 かきいれる【書き入れる】枠の中などの指定された位置に書 <176> いたり、すでに書いてあるページの空き間などに書き加え たりする意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。 〈現住所を—〉へ記号で簡略に—〉書き込む・書き付ける・書き 留める・Q記入・控える② かきおこす【書き起こす】一つの文章を書き始める意で、や や改まった会話や文章に用いられる和語。〈状況説明から 」」書き出す かきかえ【書き換え】「更新」の意で、会話や軽い文章に使わ れる日常の和語。〈運転免許証のーを済ませる〉の「知恵」 は「智慧」のー」のように、文字を取り替える意にも使う。 単更改・Q更新 かきことば【書き言葉】文章表現を行うときに用いる文字言 語をさし、会話にも文章にも使われる専門的な和語。「特 有の語彙〉研究発表に一の調子が交じり、耳で聞いてわか りにくいの「話し言葉」と対立する。ひ文語・Q文章語 かきこむ【書き込む】所定の位置に書き入れたり、行間や欄 外・余白などの狭い場所に書き加えたりする意で、会話にも 文章にも使われる日常の和語。〈余白に感想を—〉〈行間に 訳を—〉の「当時の様子を詳しく—・んである」のように、 細部まで詳細に書く意もある。また、近年、コンピューター で情報を記憶装置に入れる意にも用いる。Q書き入れる・書 き付ける・書き留める・記入・控える② かきだす【書き出す】書き始める意で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる和語。〈時候の挨拶から〉〈遅 れた原稿をようやく」②「いつも締め切り間近に」のよ うに、執筆作業に着手する意と、「小説はーまでが大変だ」 のように、作品の冒頭部分を書く意とがある。また、「要点 を」のように、抜き出して書く意にも、「店頭にでかでか と」のように、書いて示す意にも用いる。書き起こす とー」のように かきつけ【書付】書類に近い意味で、会話やさほど硬くない 文章に使われる古風な和語。〈保険のーをしまい込む〉〈大 事なーを失くす〉「ちょっとしたー」のように、メモ程度 の簡単に書き付けた紙をさすこともある。単類 かきつける【書き付ける】記録として残すために書いておく 意で、会話にも文章にも使われる和語。〈用件をー・けた紙 を紛失する〉②「と書きやすくなる」のように、書き慣れ る意にも用いる。単書き入れる・書き込む・Q書き留める・記入・控 える② かきて【書き手】文章・文字・絵などを書く側の人をさし、や や専門的な感じの和語。〈論文の—〉〈感想文の—〉〈書の —〉〈—の責任〉〈—〉の意図を汲む〉〈文章には—〉の性格が 出る〉「作者」や「著者」や「筆者」のような正式な感じ はなく、書類やメモの場合でも幅広く使う。「読み手」と対 立。り送り手・作者・著者・発信者・筆者 かきとめる【書き留める】忘れないように書いておく意で、 会話にも文章にも使われる日常の和語。入要点をノートに ー〉〈電話番号を手帳にー〉、書き入れる・書き込む・Q書き付け る・記入・控える② かきね【垣根】土地の境を示す仕切りや囲いをさし、会話に も文章にも使われる和語。〈ー越し〉へーの曲がり角〉竹 を編んだり植木を利用したりする和風のものをさす。卫生 垣・Q垣・囲い・柵・フェンス・塀 <177> かきもち【欠き餅】餅を薄く切って焼き、醤油などで味をつけた米菓をさし、会話にも文章にも使われる和語。焼きた てのー)なまこ形にした餅を薄く切って陰干ししたものをさすこともある。もと鏡開きの後に陰干しした鏡餅を適 当な大きさに欠いて食したところから。ひあられ・Qおかきせんべい かぎよう【家業】家の職業の意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。「一の造り酒屋を継ぐ」啓業 かぎょう【稼業】生計を立てる職業の意で、会話にも文章に も使われる古風な漢語。〈浮き草—〉〈しがない—〉〈ーに 精を出す〉ひ家業 かぎる【限る】時間・空間・数量・程度などを区切る意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈人数を—〉〈時間を—〉〈この手に—〉〈うちの子に ー・って〉〈必ずしも有効とはー・らない〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「議論のいい人が善人とはきまらない。遣り込 められる方が悪人とはー・らない」とある。限定 かく【書く】文字・文章や図・絵などを記す意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和 語。〈漢字で—〉〈名前を丁寧に—〉〈手紙を—〉〈小説を —〉小林秀雄の『川端康成』に「冷たい理智とか美しい抒 情とかいう様な事を世人は好んで口にするが、「化かされ た阿呆」である。川端康成は、小説なぞ一つもー・いていな い」とある。「書く」はすぐに文字を連想させるため、絵や 図の場合は特に「描く」や「画く」と書き分けて区別するこ とも多い。ひえがく がくえん かく【角】平面の場合は一点で接する二本の線分の開き、立 体の場合は一辺で接する二つの平面の開きをさし、会話に も文章にも使われる専門的な漢語。〈隣り合う二つの—〉 〈互いに向かい合う—〉〈三つの—の総和〉〈—ABCの大 きさ〉角度 がく【学】教養としての学問的知識をさし、会話にも文章に も使われる古風な漢語。〈ーにいそしむ〉〈ーを修める〉 小沼丹の『エジプトの涙壺』に「ーのあるササ氏がーの無い 僕に告げた所に依ると、それは「エジプトの涙壺」と云うの であった」とある。学芸・学術・Q学問 がくいん【学院】「学校」の意で、主に文章中に用いられる漢 語。〈長〉〈高等〉②私立学校、特にミッションスクール や各種学校などの名称に使われる例が多い。「学園」に比 べ、授業に重点を置いたような少し硬い感じがある。小沼 丹の『黒いハンカチ』に「A女ーの正門から玄関までは、樹 立をあしらった芝生の庭になっていた」とある。Q学園・学 窓・学校・学びの庭・学び舎 かくえきていしゃ【各駅停車】各駅に停車する列車をさし、 会話でも文章でも使われる漢語表現。へ急行は停まらない から次のーを待つの「各駅に停車する」の意だが、そうい う電車をもさす。ひ緩行は・Q鈍行・普通列車 がくえん【学園】「学校」の意で、主に文章中に用いられる漢 語。〈ー祭〉〈ー生活〉〈ー紛争〉②「学院」に比べ、生活的 な雰囲気があり感じがやわらかい。小学校・中学・高校と一 貫教育を行う私立学校の名称に使われる例が多いがまれに 公立校にもある。Q学院・学窓・学校・学びの庭・学び舎 <178> がくげい がくげい【学芸】学問と芸術を中心とする文化をさし、主と して文章中に用いられる硬い漢語。〈新聞の—欄〉〈博物館 の—員〉の「会」の形では日常語。学・Q学術・学問 かくげん【格言】人間の知恵、人生の真理や機微などを簡潔 に言い表した短い表現をさし、やや改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈ーにいわく〉(スピーチにーを引く) 諺わざのほか、「時は金なり」「芸術は長く人生は短い」のよ うな古人の名言をも含む。りイディオム・慣用句・Q諺・成句 かくご【覚悟】あらかじめ困難な事態を想定し、それでも実 行すると決心を固めることをさし、会話にも文章にも使わ れる漢語。へいいーをしている〉へーはできている〉へそれ はーの上だ〉へーを決める》朧井孝作の『積雪』に「病臥 して介抱などそうあてにせず、ーのよい大往生のようであ った」とある。永井龍男の『朝霧』に「無駄足をーで早朝に 行けば」とあるように大仰でない用法もある。決意・決心・ 決断 かくじ【各自】一人ひとりの意で、やや改まった会話や文章 に用いられる硬い漢語。〈ー弁当を持参する〉〈ーの意見に 耳を傾ける〉ひQおのおの・それぞれ・めいめい がくしき【学識】学問上の広く深い知識をさし、改まった会 話や文章に用いられる、やや硬い漢語。〈ー経験者〉〈豊か なー〉回福原麟太郎の『女流学者の五つの型』に「ーをその 瀟洒たる洋装の下にかくした女史」とある。体系化された 感じが強く、断片的・雑学的な知識を含まない。ひ蘊蓄・Q 知識・博学・博識・物知り・有識 かくしつ【確執】互いに自分の主張をぶつけ合って譲らない ために起こるこじれの意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈親と子の—〉〈嫁と姑の—〉〈夫婦間に—が絶えない〉〈対立 かくじつ【確実】絶対間違いのない意で、いくぶん改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈当選—〉〈一な手段〉〈一 に届ける〉〈期限までに—に仕上がる〉〈確か かくしどころ【隠し所】それとなく男女の「外部性器」をさ す古風な和風の婉曲表現。②人前で隠すべき身体部位と いう意味合いから、それに最も該当する箇所として体外生 殖器官を相手に推測させる方式の間接表現。女性でも乳房 や尻やへそを最有力候補とするケースはほとんど考えられ ないし、また、単なる「隠し」であれば洋服の内ポケットを さすが、「所」のついたこの語は他と紛れることはない。 一物・Q陰部・陰門・下半身②・下腹部・局所・局部・玉門・金玉・睾丸が 女陰・性器・生殖器・恥部 がくしゃ【学者】学問を身につけ研究に従事している人の意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一流のー〉〈一の卵〉 〈専門の一の意見〉島崎藤村の『千曲川のスケッチ』に 「山国では一を尊重する気風がある」とある。「研究者」に 比べ、大学教授の連想が強い。学徒・学究・Q研究者 かくしゃく【矍鑠】年齢のわりに元気に活動しているといった意味合いで比較的改まった会話から文章まで広く用いられる、やや古風な漢語。へーとした老人〉へ老いてなおーとしている》井上靖の『闘牛』に「古武士のようなーたる七十をこした老人」とある。肉体的に衰えて満足な活動がおぼつかなくなるはずの老人に対して、いくぶんの驚きや感 <179> 動をもって用いるのが一般的。したがって、まだ十分に活 動のできるはずの中年程度の人に対して使うと、語感の点 で違和感がある。「ーたる花嫁」「ーとした若人」といった 極端な違反が笑いを誘うのはそのためである。 がくしゅう【学習】学校などで基礎的な知識や技術を系統的 に習う意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一参考書〉 〈一態度〉〈一に励む〉〈一に身が入らない〉回「勉強」に比 べ、高等学校以下の学校で教師から習うものが中心になる ため、教えられるという印象が強い。ひ勉強 がくじゅつ【学術】専門的な学問とその知識をさし、改まっ た会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈ー論文〉 〈ー用語〉〈ー振興〉専学・学芸・Q学問 かくしん【核心】物事の最も重要な箇所をさし、いくぶん改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈問題の—〉〈—に迫 る〉〈—に触れる〉〈—を突く〉〈—をとらえる〉②「中核」 に比べ、位置より重要度に焦点があり、物的というより現 象的な存在を連想させやすい。ひ基底・Q中核・中心・本質 かくしん【確信】確かだと固く信じる意で、いくぶん改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈成功を—する〉〈自信が ーに変わる〉〈ーを抱く〉〈ますますーを強める〉〈期待か らーに変わる〉②大岡昇平の『野火』に「自ら殺すには当ら ない、とーして眠りに落ちた」とある。自信・信じる・信ず る・信用・Q信頼 かくす【隠す】他人に見つからないようひそかに処置する意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈顔を—〉〈身を—〉〈名を—〉〈動揺の色は がくそう !・せない)夏目漱石の『坊っちゃん』に「何もそんなに ー・さないでもよかろう、現に逢ってるんだ」とある。専秘 める がくせい【学生】大学・大学院や短期大学、高専、専門学校、 各種学校などに通学する人をさす一般的な日常の漢語。〈一 証明書〉〈一時代〉〈一の本分〉いつまでも気分が抜け ない) ②川端康成の『伊豆の踊子』に「高等学校のーさん よ」とあるように、旧制高校は現在の大学レベルなので「学 生」に含まれる。職業欄に「学生」と記載することもあり、 「生徒」とは違って「社会人」に対する概念。専院生・生徒 かくせいざい【觉醒剤】中枢神経を興奮させて一時的に眠気 や疲労感を抑える薬剤をさし、会話にも文章にも使われる 漢語。〈ーに手を出す〉〈ーによる幻覚症状〉常用するこ とで精神に異状を来すため規制が厳しい。Qしゃぶ・大麻・ ドラッグ・麻薬・マリファナ・やく がくぜん【愕然】意外な事実や結果に非常に驚く意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈あまりのことにーとする〉 〈すっかり変わり果てていてーとする〉多く好ましくない 場合に使う。小林秀雄の『様々なる意匠』に「眼前の海の色 を見た時、それが青くもない赤くもない事を感じて、ーと してその青色の色鉛筆を投げ出したとしたら彼は天才だ」 とある。専驚き・驚異・Q驚愕・驚嘆 がくそう【学窓】「学校」の意で、主として文章に用いられる、 やや古風で美化された感じの漢語。〈ーを巣立つ〉〈ーを同 じくする〉学校の窓の意から。建物より学校生活に重点 を置いた表現。「学びの庭」や「学び舎」のような雅やかな <180> かくだい 感じはないが、「学校」や「学園」より改まった詩的な雰囲気がある。学院・学園・Q学校・学びの庭・学び舎 かくだい【拡(廓)大】形や規模を広げて大きくする意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈ー委員会〉〈ー解釈〉〈規 模をーする〉〈写真をーする〉〈紛争がーする〉図「拡張」 に比べ、広がり方が相似形で非連続でデジタルな印象があ る。刂拡張 かくだいきょう【拡大鏡】凸レンズを用いて物体を拡大して 見る装置の総称で、やや改まった会話や文章に用いられる 漢語。へーを用いて細部の構造を調べる〉〈辞典の縮刷版に 付録としてーが付いている〉総称ではあるが、別に「虫眼 鏡」などがあるため、比較的大きな器具や装置を連想させ やすい。弁天眼鏡・Q虫眼鏡・ルーベ かくちょう【拡(廓)張】規模や範囲を広げる意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈店を—する〉〈事業を—する〉 〈販路を—する〉の「拡大」と違って形には用いず、また、 広がり方が連続的でアナログの印象がある。拡大 かくてい【確定】間違いないこととして定まることをさし、 改まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。へ申告 〈受賞がーする〉〈計画がようやくーする〉〈競馬で着順が ーする〉「決定」が公式の感じがするのに対して、この語 は事実上そうなるという前段階を含む。「決定」以上に確か で、このさき変更がない感じが強い。決定・内定・Q本決まり かくど【角度】角の大きさをさし、会話にも文章にも使われ る漢語。へを測る〉へいーでフライが上がる〉〈難しい ーからのシュート〉「いろいろなーから考察する」のよう に、観点の意で使う比喻的用法もある。 がくと【学徒】学問の研究に従事している人の意で、時に学 生をさし、改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。 「動員」「出陣」のように戦時中には学生をさす用法 もあった。学者・Q学究・研究者 かくとく【獲得】努力や競争の結果手に入れる意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈権利を—する〉〈高 い評価を—する〉〈栄冠を—する〉〈有力選手を—する〉 取得 かくにん【確認】確かにその通りであると認める意で、いく らか改まった会話や文章に用いられる漢語。未の情報 〈事実ーを求める〉〈身許のーを急ぐ〉〈被害状況のーを怠 る〉〈当人の意思をーする〉〈ーが取れる〉〈足確かめる がくふ【楽譜】曲を一定の約束に従って記号で視覚的に表現 したものをさし、会話にも文章にも最も一般的に使われる 漢語。「が読める」音譜・Q譜・譜面 かくべつ【格別】普通でない急で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈一の寒さ〉〈一の配慮〉〈一の御贔屓〉の 「一のお情け」など、望ましい方向にずれている場合が目立 つ。事実、志賀直哉は改造社版「現代日本文学全集」の『志 賀直哉集』の序文に「夢殿の救世観音を見ていると、その作 者というような事は全く浮んで来ない。それは作者という ものからそれが完全に遊離した存在になっているからで、 これは又ーな事である」と述べている。特別 がくもん【学問】専門に関する体系的な知識をさし、会話に も文章にも使われる日常の漢語。〈耳—〉へ「的価値〉へ <181> に励む〉へーを身につける〉へーをひけらかす〉へーで身を 立てる〉高田保の『ブラリひょうたん』に「大雅堂のやつ はーをしなかったから晩年の画は駄目になった、と鉄斎が 批評したそうだ」とある。刂学・学芸・Q学術 がくようひん【学用品】学校に行って勉強するのに必要な道 具の総称として、会話にも文章にも使われる漢語。入学準 備にーを買いそろえる)②小学校が真っ先に連想され、文房 具のほかランドセルなどで、通常、教科書は含まない。具文 具・Q文房具 がくらん【学らん】詰襟の学生服を意味する俗語。〈応援部の 学生がーを着用する〉「らん」は洋服の意の江戸時代の隠 語。刂制服 かくりつ【確立】理論・制度・地位・基盤などが揺るぎないもの となる意で、会話にも文章にも使われる、やや硬い感じの 漢語。〈制度の—〉〈方針を—する〉〈基礎が—する〉の「樹 立」と違って必ずしも新規で際立つものでなくてもよい。 ひ樹立 かくりつ【確率】ある現象の起こる可能性の程度を意味し、 会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈雨の降る ー〉〈ーを計算する〉〈成功するーが高い〉〈競争が激しく 合格のーは低い〉数字で示せる例が多く、主に「高い」 「低い」で表す。公算 かくれる【隠れる】物の内部や背後にあって外から見えない 状態になっていたり意図的にそうしたりする意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈押入れに—〉〈山の頂が雲に—〉〈帽子で顔が—〉〈物 がけ 陰にー〉へー・れて悪いことをする)石川達三の『蒼眠』に 「この女房はいつも夫の大きな背中の後にー・れているよう に、つつましくしおらしくて」とある。川端康成の『千羽 鶴』には「明けの明星は雲にー・れた」とある。「ー・れた逸 材を発掘する」のように、世間に知られていない意にも使 う。ひくらます・ひそむ かぐわしい【芳(香・馨)しい】上品で香り高い穏やかなにおい をさし、主として文章に用いられる、古風で美的な和語。 〈花の香り〉宮本輝の『道頓堀川』に「着物姿の女は、 いま一匂いを放ちながら」とある。かんばしい かげ【陰(陰)】物にさえきられて光が当たらなかったり見え なかったりする所をさし、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の基本的な和語。〈山の—になった所〉 〈家の—になって外から見えない〉〈木の—で休む〉〈柱の ーに隠れる〉志賀直哉の「暗夜行路」に「麓の村は未だ山 のーで、遠い所より却って暗く、沈んでいた」とある。陰 騒ぐ・Q影 かげ【影】人や物が光をさえぎることでその後ろにできるそのものの黒い形や、光の反射で水面やガラスの面などに映る形をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈人—〉「ができる〉「を落とす〉〈水に映える富士の—〉三浦哲郎の『忍ぶ川』に「その顔は落ち窪んだ眼窩が黒々としたーをつくって、どくるに似ていた」とある。「光」と対立。陰騎・Q陰 がけ【崖】山や岸などが険しく切り立っている場所をさし、 会話にも文章にも使われる和語。へーっぷちへー崩れ <182> かけい へーを背にして立つ)絶壁・Q断崖 かけい【家計】一つの家庭の収入と支出に関する状態をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一簿〉〈一が苦しい〉 〈一に響く〉〈一を圧迫する〉〈一を預かる〉巻暮らし向き・Q 生計 かげぐち【陰口】当人のいない場所で悪口を言う意で、会話 にも文章にも使われる和語。へーを利くへーをたたく へーは聞いて快いものではない夏目漱石の『坊ちゃん』 に「ーをきくのでさえ、公然と名前が云えない位な男」とあ る。ひあっこう・Qわるくち かけくらべ【駆けくらべ】「かけっこ」の意のいかにも古めか しい感じの和語。ふうさぎと亀のー〉ひQ駆けっこ・徒競走 かけだし【駆(駆)け出し】その仕事に就いたばかりで慣れて いない意として、会話にも文章にも使われる和語。へーの新 聞記者ぐまだーのころぐると、修行を終えて山から降り たばかりの山伏を「駆け出で」と称したところからという。 2 2 2 かけっこ【駆けっこ】「競走」の意で、主にくだけた会話で使 われる日常の和語。〈子犬とーする〉〈次の角までーしょ う〉の少し子供じみた雰囲気があり、「徒競走」と違って、 遊びの気分が強い。Q駆けくらべ・徒競走 かけはし【懸(掛・架)け橋】「橋渡し」するものの意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈友好のー〉伝統文化と西欧 文化とのー〉〈文体論は文学と言語学とのー〉行為に重点 のある「橋渡し」に対して、その橋渡しとなっているもの自 体のほうに意味の重点がある。流れや崖などの上に渡す仮 の橋の意からの比喻的拡大用法。特に「架け橋」という表 記で詩的な感じの表現に使われる。専仲介・仲立ち・Q橋渡し かけら【欠片】物の一部が取れたりこわれたりしてできた小 さな断片をさし、会話や硬くない文章に使われる和語。〈氷 のー〉へーを拾い集める)庄野潤三の『静物』に「ビスケ ットやクッキーのーをつまんでやる」とある。「破片」と違 い、「良心のーもない」のように少量の意で抽象体に使う用 法もある。専破片 かける駆(駆)ける足で走る意をさし、会話でも文章でも 使われる、やや古風な感じの和語。〈子供たちがー・けて行 く〉〈馬に乗って猛スピードでー・けて行く〉〈犬が尻尾を振 りながら帰宅した主人めがけてー・けて来る〉今東光の 『夜の客』に「田圃路を弾丸のようにー・けて行く後姿」とあ る。主体や速度に規制のない「走る」と違ってそれだけで勢 いを感じさせ、主体は人間や脚部の激しい動きが目立つ程 度の大きさのある動物に限られ、鼠がや蟻や乗り物につい ては用いない。猫も脚の動きがしなやかで着地もなめらか で音を立てないから、この語を使うとイメージに合わない という指摘もある。き走る かこ【過去】過ぎ去った時をさし、会話にも文章にも使われ る日常の漢語。〈ーを振り返る〉〈ーの出来事〉〈忌まわし いーを持つ〉〈ーにさかのぼる〉〈ーの記憶を取り戻す〉② 「昔」はもちろん「以前」に比べても、過ぎたばかりの時ま でを広く含む。大岡昇平の『俘虜記』に「われわれはーのこ とごとくを記憶するものではなく、脱落は多く偶然による ものであるが、この瞬間の空白を偶然と見なすには、場合 <183> はあまりにも重大であり、私はあまりにもそれを忘れる理 由を持ちすぎている」とある。「現在」「未来」と対立。 前 かこい【囲い】区切るために土地の周囲にめぐらす簡単な柵 をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈簡単なーをす る〉へーを取り払う)「塀」のような永続性はない。卫生 垣・垣・垣根・Q柵・フェンス・塀 かこう【囲う】守ったり隠したりする目的で周囲にめぐらす 意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈家を塀で ー〉〈マッチの火を手でー〉〈事件現場をテントでー〉 「女をー」の場合は世間の目を避ける意だが、今や古めかし い表現。ひQ囲む・取り巻く かごう【化合】二つ以上の物質が化学反応を起こして異質な 物質に変化する意で、学術的な会話や文章に用いられる専 門的な漢語。〈物〉〈酸素と水素が—する〉、結合・合成・混 合・結びつき・Q融合 がこう【画(畫工】画家、特に絵描き職人をさして、今では まれに文章中に用いられる古めかしい漢語。〈一の腕〉夏 目漱石の『草枕』で語り手を兼ねる主人公は「動か静か。是 がわれ等—の運命を支配する大問題である」と述べた。 絵描き・絵師・画家・画伯 がごう【雅号】文学や日本画・書道・陶芸などで作品を発表す る際に署名として用いる本名以外の雅やかな号の意で、 会話にも文章にも使われる、やや古風な漢語。〈ーに凝る〉 〈ーで署名する〉ひ芸名・Q号・筆名・ペンネーム かこちょう【過去帳】死者の俗名・法名・死亡年月日などを記 かさ 載しておく帳簿をさし、会話にも文章にも使われるやや古 風な漢語。へに記入する〉へをめくっては見も知らぬ先 祖たちに思いを馳せる)向田邦子の『ねずみ花火』に 「何かのはずみに、ふっと記憶のーをめくって、ああ、あの 時あんなこともあった(略)と、亡くなった人たちを思い出 す」とある。児籍・Q点鬼簿 かこつける【託ける】動機・理由・原因などについて他のこと を口実にする意で、会話やさほど硬くない文章に使われる 和語。〈仕事にー・けて欠席する〉〈忙しさにー・けて断る〉 ひ事寄せる かこむ【困む】もののまわりにぐるりと連なる意の和語で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる。〈恩師を ーつどい〉〈食卓を—〉〈丸で—〉〈三方を海に—・まれた土 地〉の単なる位置関係を示すだけで、「囲う」と違って、外 部の力が届かないようにする意図はない。和田伝の『沃土』 に「屏風のように寝床をー・んでいる人々をいちいちたしか めた」とある。「取り巻く」に比べて隙間が少なく、中の対 象に向かって特に圧力がかかっていない感じがある。刂取り 巻く かごん【過言】実際以上におおげさに言う意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーを慎む〉〈失政と言っ てもーではない〉〈棋界随一と言ってもーではあるまい〉 多く「…と言ってもーではない」の形で使う。ひ言い過ぎ かさ【傘】雨・雪や強い日差しを避けるために手に持って頭上 にかざす柄のついた用具をさし、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の和語。〈ーをさす〉〈ーを広げ <184> かさい る〈ーを置き忘れる〉「雨傘」と「日傘」との総称だが、多く雨傘を連想させる。永井龍男の『傘のありか』に「ーのことに思いが及んだのは、ぼんやり風呂につかっていた時だった」とある。呂Q雨傘・パラソル・日傘 「火災」火事やその災害をさして、改まった会話や文 章で用いる正式な感じの客観的漢語表現。「報知機」「 が発生する」「による被害総額」「保険」を「火事保 険」としたときの違和感は、「火災」という本格的な漢語の 正式性による。窓から遠くの空が赤く見えて「あっ、火事 だ!」と叫ぶような場面で「だ!」と言っても意味は通じ るが、実際にそう叫ぶ日本人はいない。しかし、火事場見 物の不心得な親子が翌朝の新聞に発見するのは、たいてい 「火災」という見出しであり、「火事」という語で報じられ るケースはめったにない。社会的な事件として報道する際 には正式な感じの用語が適切だからである。その代わり、 「昨夜は遠方でーがございましたね」といった挨拶はどこか 気障ぼく感じられる。いずれも両語の語感の違いによ る。火事 がさいれ【がき入れ】「家宅捜索」の意の隠語。「がき」は 「捜す」の語根を逆転させた語形。単家宅捜索 がさつ言葉遣いや動作が荒っぽい意で、主として会話に使 われる、いくぶん古風な感じの和語。〈な物言い〉立ち 居振る舞いがだ〉の荒い」系統の類義語が多く感情によ って起こる状態をさすのに対し、この語は性格や育ちによ って身に付いた粗雑な状態を連想させやすい。込荒々しい 荒い荒っぽい粗暴粗野野蛮乱暴① かさねる【重ねる】一つの上にもう一つを載せる、同じ事を 繰り返し行うの意で、会話でも文章でも幅広く使われる日 常生活の和語。〈皿を—〉〈新聞を十枚—〉〈国語辞典を二 冊—・ねて机の上に置く〉〈手に手を—〉〈用心に用心を—〉 〈地道に努力を—〉〈話し合いを—〉②永井荷風の『雨瀟瀟』 に「浴衣一枚ではいられぬ肌寒さにわたしはうろたえて襦 袢を—・ねたのみか」とある。「積む」に比べ、厚みが少なく 形状が一定である場合に用いる傾向がある。ひ積む かざはな【風花】風上から風に乗って運ばれる雪片や、晴天に降る細かな雪をさし、文学的な文章などでまれに使われ、詩的なイメージを誘う古風な和語。「が舞う」「かざはな」ともいうが、「かざはな」のほうが美しい響きを感じさせる。福永武彦にまさに『風花』と題する小説があり、主人公はこのことばに「詩的な昂奮」を感じる。「晴れた空から忘れられた夢のように白い雪片が舞い下りて来るのを見るたびに、彼は言いようのない陶醉を感じた」という。少雪かざむき【風向き】風の吹いて来る方向をさし、くだけた会話から文章まで広く使われる日常的な和語。「が変わる」「を見て舟を出す」「漢語の「風向き」と違って、「妙なになってきた」「こちらのが悪くなる」といった比喻的な用法もある。少風向 かざり【飾り】見かけをよくするための工夫やそのためのも のをさし、会話や硬くない文章に使われる日常の和語。〈 窓〉〈髪ー〉〈ーをつける〉〈ーの多い文章〉川端康成の 『山の音』に「(ひまわりの)花弁は輪冠か縁ーのようで」と いう比喻表現の例がある。本体に付け加えた部分といった <185> 雰囲気が「装飾」以上に強く、それが中心的な部分以外にあ たるため、「会長は単なるーに過ぎない」のように、実質的 な機能を持たない存在をさす比喩的な用法もある。児装飾 かざりまど【飾り窓】店の商品を飾って道行く人がガラス越 しに眺められるようにした窓状の陳列ケースをさし、会話 にも文章にも使われる古風な和語。〈百貨店のーを見るだ けで楽しい気分になる〉児ショーウインドー かざる【飾る】美しく見えるようにしつらえる意で、会話に も文章にも使われる日常の和語。〈部屋に花を—〉〈雛な人 形を—〉〈うわべを—〉作家訪問で推敲すがについて問うと 井伏鱒二は「直すほうでしょう。文章をー・ろうという気持 ちが非常にあるからな。しかも、それをー・ってないように 見せようという気がある。丁度、女がお化粧をするような もんだ」と内省を率直に語った。巻装飾 かじ【火事】建造物などが焼けてしまう意で、くだけた会話からさほど硬くない文章まで幅広く使われる、生活場面を思わせるやわらかい感じの日常的な和製漢語。〈一見舞い〉へが起こる〉〈一が消える〉〈一で焼け出される〉太宰治の『思い出』に「横顔だけをそっちにむけてじっとーを眺めた。焰の赤い光を浴びた私の横顔は、きっときらきら美しく見えるだろう」とある。和語の「火」と「事」とを結び付けて音読みし、漢語の雰囲気を出した語形。「火災」ほど正式な感じの語ではないため、例えば「火災保険」を「火事」に置き換えるとちぐはぐな感じになり、商品名のような印象に変わる。ちなみに、川端康成の『雪国』の戦後書き足された火災場面で、ヒロインの駒子が「ー、よ!」と叫び、 かしこい 主人公の島村が「だ」と応じている。火災 かじ【家事】家庭生活に必要な炊事・洗濯・掃除・育児などの総 称として、会話にも文章にも使われる日常の漢語。「労 働」(ーをきりもりする)「一切を取り仕切る」(ーに追 われる)二葉亭四迷の『平凡』に「少し」も手伝うて貰わ んと困る」とある。専家政 がし【餓死】食物がなく飢えて死ぬ意で、やや改まった会話 や文章に使われる漢語。〈山中でーする〉ひ飢え死に かじかむ【悴(瘁)む】寒さで手足が冷えて自由に動かなくな る意で、会話にも文章にも使われる和語。「ー・んだ手に息 を吹きかける)指先など、「こごえる」より狭い範囲に使 う傾向がある。小林多喜二の『蟹工船』に「蟹の鋏のように ー・んだ手を時々はすかいに懐の中につッこんだり」とあ る。ひここえる かしぐ【炊ぐ】米などの穀物を炊く意で、主に文章に用いられる古めかしい和語。〈米を—〉、Q炊たく煮る かしげる【傾げる】傾ける意の古風な表現。〈首を—〉傾 ぐ」は「家が—」「船が大きく—」など、現代でもいくらか 広がりを持つが、この語はもっぱら「首を—」の形で限定的 に用いられる。働ける かしこ【彼処(所)】「あそこ」の意で、主として文章中に用いられる古めかしい和語。〈ここー〉〈どこもーも〉慣用的な言いまわし以外は古風で雅やかな感じになる。あすこ・ Qあそこ かしこい【賢い】頭がよく働く意で、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ー子供〉 <186> かししょくにん 〈ーやり方〉〈ー・く立ち回る〉自分の利益だけ考えて頭を 働かせる場合は「悪ー」「ずる」となり、マイナスイメー ジを帯びる。Q賢明・聰明・利口・利発 かしょくにん【菓子職人】和菓子・洋菓子を製造する専門の 人をさし、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な漢 語。〈一の修業〉伝統的な和菓子を連想させやすい。 ティシエ かしだす【貸し出す】期限を切って物品を持ち出すことを認 める意で、会話にも文章にも使われる和語。〈図書を—〉 〈用具を—〉銀行などの金融機関の立場では金銭について も用いるが、個人的な貸し借りの場合には使わない。 す貸与 かしつ【過失】怠慢や不注意による失敗の意で、会話にも文 章にも使われるやや硬い感じの漢語。〈業務上ー致死〉へー を認める〉〈重大なーがある〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「学校の職員や生徒にーのあるのは、みんな自分の寡徳 の致すところ」とある。故意でないというところに重点が ある。Q過ち・誤り・誤謬・間違い かじつ【過日】何日か前にの意で、主として改まった手紙な どに用いられる漢語。「はご丁寧なお手紙を頂戴し、かえ って恐縮しました〉へ「のお約束に従い」の「先日」より丁 寧で、「先般」ほどの硬さや改まりは感じさせないレベルに ある。ひいちじこの間・先頃・Q先日・せんだって・先般・一頃 かじつ【果実】種子植物の実、特に果物をさし、主として文 章に用いられる硬い漢語。〈酒〉〈の収穫〉有吉佐和 子の『水と宝石』に「紀州でとれる内紫という大きなネーブ ルのようなー」とある。Q果物・フルーツ・実・水菓子 ヒや【緞冶屋】金属を高熱で緞えたり加工したりする職業 をさす語。〈古くからある村の—〉②昔懐かしい語感があ る。ちなみに、庄野潤三の『緞冶屋の馬』で、草深い田舎の 面影が今なお残っている鉄工所をあえて「さん」と呼んで いる。訪問時の作者自身の弁によれば、「牧歌的なものに 対する興味、それから現代文明に対する抵抗の気持ち」か た表現であったという。 かしゅ【歌手】歌うことを職業とする人をさし、会話にも文 章にも使われる日常の漢語。〈流行—〉〈オペラ—〉〈演歌 —〉の芥川龍之介の『侏儒の言葉』に「俳優や—の幸福は彼 等の作品ののこらぬことである」とある。「歌い手」より狭 義。ひ歌い手 かしよ【箇所】取り上げる必要のある特定の部分・場所をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈問題の—〉〈間違え た—〉〈故障の—〉、場所・Q部分 がじょう【賀状】祝賀の気持ちを伝える書状の意で、改まっ た会話や文章に用いられる、やや古風で硬い漢語。へーをし たためる)〈毛筆の—が舞い込む)多くは年賀状をさし、 その場合ははがき形式の場合を含む。Q年賀状・年始状 かしょくのてん【華燭の典】改まった文章で用いられる「婚礼」の古風な美称。〈ーを催す〉芥川龍之介の『疑惑』に 「とうとう所謂ーを挙げる日も、目前に迫ったではございま せんか」とある。豪華なイメージがあり、簡素な式には使い にくい雰囲気がある。Q結婚式・婚礼・祝言 かしら「…かしらん」の省略形として成立した表現で、そう <187> であるかどうかわからない意の和風表現。あら、そうー へあたしでいいー)ほんとに嫌いなのー)川端康成の 『千羽鶴』に「今日は雷が鳴らないーって、空を見てること がありましたわ」とある。以前は男性もしばしば使ったが、 現在では女性的なニュアンスを感じさせる。ただし、若い 女性はあまり使わない。しかしらん かしらん「…か知らぬ」の転で、そうであるかはっきりしな い意の和風表現。〈はたしてよかったー〉〈あのあと、どう なったー〉男女共有で、特に女性的なニュアンスはない が、かなり古風な感じがする。小沼丹の『地蔵さん』に「道 に背を向けて何をしているのー、と見ると、爺さんの前に ちっぽけな祠があって」とある。易かしら かしわで【柏手】神社に参拝する折に両方の手の平を強く打 ち鳴らす意で、会話にも文章にも使われる古風な和語。 「拍手」の「拍」を誤って「柏」と書いたところからともい う。ひ拍手 かしん【過信】自分の能力などを実際以上に信じる心をさし、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈自分の体力を ーする〉へと言われても仕方がない〉及Q自信・自負 かじん【佳人】「美人」の意で主に文章に用いられる古風な漢 語。〈才子—〉〈—薄命〉ひ美女・Q美人・麗人 かす【貸す】後に返すことを条件に一定期間他人の使用を認める意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈金を—〉〈家を—〉〈力を—〉〈名前を—〉内田百閒の『特別阿房列車』に「借りられなければ困るし、ー・さなければ腹が立つ」とある。「借りる」 かすみ と対立。Q貸し出す・貸与 かす【粕(糟)】もろみから酒を搾ったあとに残るものをさし 会話にも文章にも使われる和語。〈ー汁〉〈鮭のー漬け〉 「滓」と同源ながら用字で区別。ひ酒かす かず【数】個数・回数・順番などを抽象化して数えるときの語 で、くだけた会話から硬い漢語まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈ーを数える〉〈大きなー〉〈集まった人の ー〉へーが足りない〉〈ーに限りがある〉〈ーに入れる〉②上 林暁の『野』に「的板に当るのがなかなかのことで、芝生に 音もなく落ちる矢のーが多かった」とある。「ーある品の中 から選ぶ」「ーをこなす」のように、それだけで数の多いこ とを表す用法もある。ひすう ガスまれに屁の意で会話などに使われる外来語。囲が 気体の一種であるところから意味を拡大して間接化を図っ た表現であるが、もってまわった感じがいやらしく、時にス トレートな「屁」より品位を欠く印象もある。おなら・Q 屁・放屁 かすい【仮睡】「仮眠」の意で主に文章中に用いられる古風な 硬い漢語。〈車の中でーする〉居眠りする・うたた寝・Q仮眠・ 仮寝 かすか【微(幽)か】形や音や句いや動きなどがほんのわずか に感じられる意で、会話にも文章にも使われる和語。「な 香り〉へに聞こえる》「な望み」のように感覚ではな い抽象化した用法もある。Qほのか・ほんのり かすみ【霞】春の比較的薄い霧を意味する、やや文学的でや わらかい感じの日常の和語。〈春—〉〈がかかる〉〈が <188> かすみがせき たなびく 会話などでは特に季節限定の意識なく用いら れているが、歳時記では春の季語。村上春樹の「回転木馬 のデッド・ヒート」に「(飢えの感覚は)まるで青いーのよう だ。存在していることはわかるが—つかめない」とある。 弾・Q霧・霧 かすみがせき【霞々関】東京都千代田区の地名。へーの言いな りになる〉外務省などの中央官庁が集中しているため、 官僚組織の象徴というニュアンスを帯びる。児町・Q永田町 かすめる【掠める】触れるか触れないかというきりぎりのと ころを通り過ぎる意で、会話にも文章にも使われる和語。 「ボールが顔を」へ燕が軒を」へ監視の目を」へ疑惑 が頭を」へ「掠る」はわずかに接触するが、この語は実際 には接触しないときに使う。小沼丹は『障子に映る影』を 「障子に映る樹立の影を見ていると、古い記憶が思い掛けな く顔を出すことがある。それは障子に映って消える小鳥の 影のように、心の窓を」・めて消えて行く」としっとりと結 ぶ。専掠る かする【科する】罰として負担させる意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い感じの語。〈罰金を—〉〈ペナルティ ーを—〉処理する かする【課する】義務として割り当てる意で、主として改ま った文章に用いられる正式な感じの語。〈税金を—〉〈宿題 を—〉〈任務を—〉ヲ科する かする【掠(擦)る】物の表面にわずかに触れて通り過ぎる意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈矢が的を—〉〈ポー ルがパットを—〉〈銃弾が腕を—〉回「擦る」の表記は「す る「こする」と区別しにくい。「かすめる」と違い、わずか ながら接触する場合に使う。テストやクイズなどで正解で はないが部分的にそれに近い意にも使うが、その場合は俗 語的。ひかすめる かすれる【掠(擦)れる】滑らかに行かずに所々途切れる意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈字がー・れて読みにく い〉〈応援し過ぎて声がー〉②木山捷平の『河骨』に「その 声は鼻風邪を引いたようにー・れていた」とある。緊張のあ まりそうなることもあり、一般に「しわがれる」より短い一 時的な現象に使う傾向が見られる。ひQしゃがれる・しわがれ る かぜ【風】気圧の高いほうから低いほうへの空気の流れをさ し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈ーが吹く〉〈ーがおさまる〉〈ーがやむ〉 〈ーが強い〉〈ーにあたる〉〈ーを起こす〉田村俊子の『本 乃伊の口紅』に「無数の死を築く墓地の方からは、人間の毛 髪の一本一本を根元から吹きほじって行くような冷めたい ーが吹いて来た」とある。ひおろし かぜ【風邪】ウイルスなどによる鼻やのとの炎症をさして、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の 和語。〈鼻—〉へをひく〉へをこじらせる〉木山捷平の 『河骨』に「ーをひいたような声で答えた」とある。夢感冒 かせい【加勢】力を貸して助ける意で、会話にも文章にも使 われる古風な漢語。〈ーを求める〉へに駆けつける〉〈負 けている側にーする〉夢Q応援・支援・声援・味方 かせい【家政】家事をこなし家庭を維持する技術をさし、改 <189> まった会話や文章に用いられるやや正式な感じの漢語。 婦〉〈ーを担う〉〈ーを預かる〉「家政婦」は日常語。 事 かせいふ【家政婦】「お手伝いさん」よりも、家事に関する処 理能力をそなえた正式な職業名という感じが強い。「を 雇う」住み込みを連想しやすい「女中」と違い、通いとい う形態がふつう。ひお手伝いさん・下女・女中・派出婦・メード・召 し使い かせぎ【稼ぎ】働いて得た収入の意で、主にくだけた会話に 使われる、やや古風で俗っぽい和語。〈亭主の—が少ない〉 〈いい—になる〉〈ろくな—にならない〉企業や法人でな く個人の場合に限って使う。ひQ収入・所得 かせぐ【稼ぐ】働いて収入を得る意で、会話やさほど硬くな い文章に使われる和語。〈生活費を—〉〈地道に—〉〈—に 追いつく貧乏なし〉利益だけを問題にする「儲ける」と 違い、働くことが前提となる。働ける かせん【下線】「アンダーライン」の意で、主に文章に用いられる漢語。〈要点にーを引く〉〈ーをほどこす〉Qアンダーライン・傍線 かぞえる【数える】数量や順番などを調べる意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈人数を—〉〈金額を—〉〈ほどしかない〉の大岡昇平の 『花影』に「赤味がかった髪を—ように、ブラシですき上げ て」とある。専勘定・Q計算・算出 かぞく【家族】夫婦とその子を中心として同じ家に住む一族 をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる基本的 かたい な漢語。〈制度〉〈愛〉〈連れ〉〈に相談する〉〈同様のつきあい〉〈を養う〉〈と暮らす〉〈の一員〉僕万智の『サラダ記念日』に「ぎんなんの実を炒りながら」というやさしい宇宙思うておりぬ」という短歌がある。「家庭」が家人の全体というかたまりをさすのに対し、この語は個人をさすこともある。家庭・身内 ガソリンスタンド自動車などの給油所を意味する和製英 語。〈近くのーで給油する〉略して単に「スタンド」と言 うことも多い。「ガスステーション」という英語はまだ外来 語の域に達しておらず、使うと気障な感じを与える。 かた【型】一定の様式・パターンの意で、会話でも文章でも使 われる日常の和語。〈ーどおり〉〈古いーを守る〉〈ーには まる〉〈ーが崩れる〉〈ーを破る〉〈基本のーをマスターす る〉〈新しいーの通信手段〉堀田善衛の『広場の孤独』に 「物思いはーで鋳いたように、定ってどこかで屈折して伸び なくなる」という比喻表現が出る。彫形・形象 かた【形】物のかたちの意で、会話でも文章でも使われる和 語。〈山—の印〉〈卵—の顔〉〈染め物の—〉型・形・形象 がた【方】複数の人を敬意を持って表し、会話にも文章にも 使われる和風の接辞。〈お偉—〉〈あなた—〉〈先生—〉 ち・どもら かたい【固い】緩みがない、柔軟性に欠ける、攻撃にも崩き れないといった意味合いで、くだけた会話から硬い文章ま で幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈蕾が—〉〈団 結〉〈ー・く門を閉ざす〉〈ー・く練る〉〈ー・く信じる〉〈頭 が—〉〈ー話題〉井上靖の『あすなろ物語』に「冷たくて <190> かたい ーく緊った筋肉の感触」とある。広い意味で使い、「堅い」 「硬い」の大抵の用法をまかなえる。「柔らかい」と対立。 ヨQ堅い・硬い かたい【硬い】材質などがしっかりしていて力を加えても形 が変わりにくい意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の基本的な和語。〈石〉〈金属〉〈表情 がー〉〈感じの表現〉井上靖の『楼蘭』に「粘土はまる で煉瓦のようにー・く、粘板岩になりかけていた」とある。 「表情がー」「表現がー」のように、やわらかな感じに乏し い意の比喻的用法もある。「軟らかい」と対立。団い・Q堅 い かたい【堅い】中身が詰まっていて崩れにくい、働きかけに 対して動じない、手堅い、緊張のあまり行動のなめらかさ を失うといった意味合いで、くだけた会話から硬い文章ま で幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ー炭〉〈ー守り〉 〈志がー〉〈ー商売〉〈合格はー〉〈ー約束〉〈人前でー・くな る〉阿刀田高の『ミッドナイト物語』に「乳房はとても綺 麗だ。(略)掌に少しあまるくらいの大きさ。シコシコとー・ く張りつめている」とある。「柔らかい」と対立。図い・Q 硬い かだい【課題】課せられた問題の意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈曲〉〈夏休みのーを与える〉 〈今後のー〉〈難しいーに直面する〉〈長年のーを解決する〉 専宿題・Q問題 かたいじ【片意地】頑固に意地を張り通す意で、会話にも文 章にも使われる、やや古風な感じの語。〈ーを張る〉へーを 通す)意地張り、Q依怙地・頑な・頑固・強情・強情張り かたいっぽう【片一方】「片方」を少し強めた語で、会話や軽 い文章に使われる表現。〈靴下がーだけ見つかる〉への脚 をひきずりながら歩く〉への耳がよく聞こえない〉への 親「かたっぽ」とも言う。一方・Q片方・他方 かたいなか【片田舎】都会から速く離れた辺鄙な土地をさ し、会話やさほど硬くない文章に使われる、いくぶん古風 な和語。〈一に住む〉島崎藤村の『夜明け前』に「馬籠の ような狭いーでは」とある。「田舎」のうちでも特に交通の 不便な場所を思わせる。自分の住む土地を謙遜して言うこ ともある。Q田舎近郷近在・在・在郷・在所 かたきやく【敵役】映画や演劇で正義の味方である主役と対 立する憎まれ役をさし、会話にも文章にも使われるやや古 風な表現。〈人気絶頂の俳優と対決するーを演ずる〉へいか にも憎々しげなー〉単なる悪人というより主役のライバ ル的な一つの役柄をさすことが多い。悪役 かたくそうさく【家宅捜索】警察官や検事などが職権によっ て被疑者などの家屋内に入り証拠物件などを捜す行為をさ す漢語で、警察関係を連想させる語。「の令状」がさ入れ かたぐち【肩口】肩の腕に近い部分をさして、会話にも文章 にも使われる和語。「をつかむ〉「に布を当てる」川 崎長太郎の『鳳仙花』に「骨っぽい、怒り気味の」とある。 単肩先 かたくな【頑な】意地を張って自分のやり方を通し、他の言 うことに従わない意で、改まった会話や文章に用いられる 硬い感じの和語。〈な態度〉〈に口を閉ざす〉〈に拒 <191> む心の柔軟性を失った状態。三木卓の『隣家』に、意地 悪をされて腹を立てていた老女が、それが相手の親が亡く なる直前だったのを知り、「あまりーになって不幸な人に対 するのは止めよう」と考える場面が出てくる。込意地っ張り 依怙地片意地・Q頑固・強情・強情張り かたきき【肩先】肩口をさして、会話にも文章にも使われる 和語。〈ーが触れる〉横光利一の『上海』に「尖角」とったー で女達を跳ねのけ跳ねのけ進んで」とある。「肩口」より狭 い先の部分を意識させやすい。単肩口 かたしき【型式】自動車などのモデルをさす俗語。くるまは ーが古いと安い)のふつう「けいしき」と読むが、会話で 「形式」と区別するために業者のよく用いる読み。形式 かたじけない【忝い】身に余る好意や恩恵に浴し感謝に堪え ない意で、改まった会話や文章に用いられる古風な和語。 へお志のほどまことにーく存じます)のこれはー」のよう にくだけた会話で言うこともあるが、かなり古い感じがす る。Q有り難い・痛み入る・恐れ入る・恐縮 かたすかし【肩透かし】相手の勢いをそらして攻撃の威力を そぐ意で、相撲け用語の拡大用法。〈話をまともに聞いてい たらーを食わされた〉〈気負って交渉に入ったが、ーを食っ た格好だ〉の相撲で、前に出て来る相手の力をまともに受 けず、とっさに体を開いて相手の肩先を押さえ、その力の方 向をそらす技。そこから転じて一般に、勢い込んでくる相 手にまともに応戦せず、その圧力を巧みにそらして気勢を そぐ意に用いる。比喻性が残存し、相撲のイメージが一瞬 頭をかすめる。空振り・Qかわす・そらす かたづける かたすみ【片隅】「一隅」に近い意味で会話にも文章にも使わ れる和語。〈部屋のーにうずくまる〉〈街のーに小さな店を 出す〉の「都会のーでひっそりと暮らす」のように、単に端 のほうに位置するというだけでなく、目立たない場所でひ そやかにという雰囲気が感じられる。「心のーに刻まれる」 のような抽象化した用法もあり、小沼丹の『汽船』には「記 憶のーに細ぼそと名残を留めているに過ぎない」という例 がある。具Q一隅・一角 かたち【形】線・面・立体として視覚や触覚でとらえられる物 の姿をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な和語。〈髪の—〉〈—は悪いが味はいい〉 〈すっきりとした—にまとまる〉〈—を整える〉〈—にこだ わる〉内田百閒の『かしわ鍋』に「黄いろい色の細長い、 手の指の様な—のお菓子」とある。芥川龍之介の『鼻』に は「禅智内供の鼻(略)—は元も先も同じように太い」とあ る。「—ばかりの挨拶」「いちおう仲直りした—にしてお く」のように、表面的で実質の伴わない意味合いでも使う。 ひ外形・Qかっこう・形式・形象・形状・形態・Q姿・スタイル・様式 かたづかない【片付(附)かない】気持ちがすっきりと整理で きない状態をさし、会話や軽い文章に使われる、いくぶん 古風で若干俗っぽい和語表現。〈ー表情〉へなぜこんなにう まくいったかわからず、とこかー気分だ》小沼丹の『藁屋 根』に「気持は何となくちぐはぐになってー」とある。Q 落ち着かない・そぞろ・そわそわ かたづける【片付(附)ける】散らかっているものを他の場所 に移して場所を空ける、途中になっているものを終わらせ <192> かたておち る意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常生活の基本的な和語。〈部屋を—〉〈食卓の上を—〉〈散 らかった道具類を—〉〈仕事を—〉〈問題を—〉安岡章太 郎の『海辺の光景』に「チガイ棚の上にきちんと屯営の整理 棚を見るような奇妙な丹念さでー・けている」とある。「し まう」と違って場所に焦点があり、その場を次に使いやすく するために、今そこをふさいでいる物を別の場所に移すの が目的であって、洗ったり収納したりする段階は特に表現 せず常識にゆだねる表現。ひ仕舞う かたておち【片手落ち】処置や配慮に関し「不公平」「不平 等」の意で、会話や改まらない文章などに使う日常の和語。 「の裁定」「ほかに手がない」の「手」と同様、この「手」 もすでに抽象化した用法であり、「えこひいき」といった意 味しかないにもかかわらず、「片手」が「落ちた」状態を連 想して不快な気分になり、差別の響きを感じるケースもあ るとされる。ひ手落ち かたな【刀】諸刃の剣に対して片刃の太刀をさし、会話に も文章にも広く使われる和語。〈腰にーを差す〉〈返すーで 斬る〉〈相手をーにかける〉「な」は「刃」の古語で、片 方の刃という意味の語形といわれるが、刀剣類の代表とし て使うこともある。日本刀の連想が強く、「剣」に比べ、西 洋風の刀剣を連想しにくい。刀Q剣・つるぎ・刀剣 かたぶつ【堅物】まじめ一方で融通の利かない人物をさし、 会話にも文章にも使われるやや古風な表現。〈無類の—〉 〈世間でもーで通る〉③三島由紀夫の『金閣寺』に「花婿が ーだったから、どうやら旨く行ったらしい」とある。中年以 上の男性を連想させやすい。真面目 かたほう【片方】二つで組になったもののどちらかをさし、 会話にも文章にも使われる日常語。〈一の足〉〈手袋のーを なくす〉〈一の言い分だけ聞くのは不公平だ〉〈一の目の視 力が落ちる〉小沼丹の『小さな手袋』に「小さな赤い毛糸 の手袋のー」とある。「かたっぽう」「かたっぽ」となると順 に俗っぽさが増す。「痛烈に批判する一方、優しい声を掛け ることもある」のように、正反対のことが両立する場合の 「一方」はこの語に換言できない。ひ一方・Q片一方・他方 かたまり【塊】固まった状態にある一つの全体をさし、会話 でも文章でも使われる日常の和語。〈肉の—〉〈土の—〉 梶井基次郎の『檸檬』は「えたいの知れない不吉な—が私の 心を始終圧えつけていた」と始まる。「固まる」という動詞 の連想が弱いだけに、「固まり」に比べ、全体で一つの存在 という印象がある。「欲の—」「嘘の—」「闘志の—」のよう な抽象的な用法にもなじむ。刂固まり かたまり【固まり】集まって一つのまとまりをなすものをさ し、会話でも文章でも使われる日常の和語。〈塩の—〉〈脂 肪の—〉〈よく溶けずに—になる〉〈観光客の—〉〈民家の —〉「固まる」という動詞から転成した名詞だけに、「塊」 に比べ、構成要素が本来独立している印象が強い。塊 かたむき【傾き】①物体の傾く程度の意で、会話やさほど硬 くない文章に使われる和語。〈ーを調整する〉〈地崩れで建 物のーがひどい〉の「片向き」の意から。Q傾斜勾配 ②「傾向」の意で、会話や硬くない文章に使われる軟らかい 感じの和語。〈そのようなーが認められる〉〈えてして遅れ <193> るーがある》永井荷風の『瀾東綺譚』に「今日までの経験 で、事実を云うと、いよいよ怪しまれるーがあるので」とあ る。刂傾向 たむける【傾ける】真っ直ぐなものを斜めにする意で、会 話にも文章にも使われる日常の和語。〈耳を—〉〈杯を—〉 の「全力を—」「薔薔を—」など、傾注するという抽象的 な意味に拡大した用法もある。なお、「身代を—」のように 衰えさせる意に用いる場合は古い感じに響く。帰げる かたよる【偏る】不均衡・不公平の意で、会話でも文章でも広 く使われる日常の和語。〈栄養が—〉〈教育が—〉〈ー・った 見方〉〈購買層が—〉広片寄る かたよる【片寄る】物理的なアンパランスの意に限り、会話 でも文章でも使われる和語。へ一方にー〉へ中身が右にー〉 回語源的にはこの表記が忠実だが、抽象化した意味合いで は「偏る」のほうが一般的。ひ偏る かたりぐさ【語り草(種)】のちのちまで人々の話のたねにな る物事をさし、改まった会話や文章に使われる古風な和語 表現。〈今もーになっている〉珍しい話としていつまでも 話題になる意。ふつうは美しさや強さなどの印象的な話が 多いが、失敗談についても使う。映画監督の小津安二郎が 作家の里見焼とてんぶらを揚げる催しを試みたが、その味 はのちのちの「語りぐさ」になるほどのまずさだったとい う。「語りぐさ」という大仰な表現とその対象の「まずさ」 との意表をつくアンバランスが滑稽に響く。 かたりくち【語り口】話して聞かせるときの調子をさし、や や改まった会話や文章に用いられる和語。〈神妙なー〉〈お っとりとしたー話の流れの中の一部分にも使う「口調」 に比べ、長く話す全体の調子を問題にする場合が多い。「聴 衆を引き込む巧みなー」のように、落語・講談や浄瑠璃を演 じる際の調子を言うこともある。また、「可笑しくって、可 笑しくって、思えば思えば可笑しくって、どうにもならなく 可笑しかった」といった里見弾の短編『椿』の末尾にある地 の文などを「絶妙のー」と呼ぶように、文章であっても小説 の語り手がつむぎだす表現の調子を含める。Q口調・語気・ 語調・話しぶり・弁 かたりて【語り手】話を語る人、特に、筋の進行を解説する 役の人をさし、やや改まった会話や文章で使われる和語。 〈ドラマでーの役をこなす〉〈小説の中でーを務める作中人 物〉物語の筋や場面の状況などの説明を担当するナレー ターの意で使う場合は一般語。夏目漱石『吾輩は猫である』 の「猫」のように、小説などで読者に直接語りかける存在の 意で用いる場合はいくらか専門的な感じに響く。ひQナレー ター・話し手・話者 かたる【語る】経験・考え・気持ちなどを言葉で伝える意で、 改まった会話や文章に用いられる和語。〈体験を〉〈夢を ー〉〈思い出をしみじみと〉図太宰治の『斜陽』に「戦争 の追憶はーのも、聞くのも、いやだ」とある。基本的には口 頭表現。意見・論評のような主張にはなじまない。「述べ る」より情的な雰囲気がある。「話す」と違って双方向的で はなく、また、あいづちを期待しない話し方になる傾向が ある。子供に昔話を「ー・って聞かせる」といった用法では 日常語。言う・しゃべる・Q述べる・話す <194> かたる かたる【騙る】他人の知名度や地位などを利用して相手をだ まし、金品を巻き上げたりする意で、会話にも文章にも使 われる、いくぶん古風な感じの和語。〈身分を—〉〈芸能人 の名前を—〉〈職業を—〉Q欺く・いつわる・担ぐ・こまかす・た ぶらかす・だまくらかす・だます・ちょろまかす かたわ【片端】身体部位の形態や機能に障害を負うこと、ま た、そういう人をきして、伝統的に用いてきたが、漢語の 「不具」同様、差別意識が感じられるとして使用を控えるよ うになった和語。「片輪」は当て字。身障者・身体障害者・ Q不具 かたわら【傍ら】基準となる人や物の横のすぐ近くの場所を さし、改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な和 語。〈ーに置く〉(小さな子が親のーで遊ぶ〉へーで口を出 す)「近く」と違い、近くても正面や真後ろを含まない感 じがあり、場所を離れた抽象的な用法でも「大学に通うー アルバイトをする」のように主たるものとの区別がある。 「仕事のー好きな本を楽しむ」のように、その一方での意に 使うこともある。及近所・近辺・近隣・Qそば・近く・隣・脇 かだん【花壇】観賞用に草花を植えて囲いをめぐらした一郭 をさし、会話にも文章にも使われる漢語。「にチューリッ プの球根を植える〉への周囲に煉瓦がんを積んで縁取りを する》横光利一の『花園の思想』に、笑いながら現れた二 人の看護婦が「満面に朝日を受けて輝いている」の中へ降 りて」いくと間もなく「転げるような赤い笑顔が花の中か ら起って来た」という印象的な場面がある。「花園」に比べ、 必ずしも今花が咲いていなくても抵抗なくそう呼べるよう な感じがある。马花園 かち【価値】物事の役立つ度合いの意で、会話にも文章にも 使われる日常の漢語。〈判断〉〈利用〉〈が高い〉〈 が下がる〉〈を認める〉の「ある英断」「の高い調査 分析」のように、思想や発言や行動などの抽象的な対象に も使う。価値・値打ち かちき【勝ち気】対抗心が強く争いごとで負けまいと必死に なる性格をさして、会話にも文章にも使われる表現。持っ て生まれたな性格)中勘助の『銀の匙』に「な人なれ た子で」とある。「な女性」のように、大人しいことを期 待した伝統的な価値観から、女性について使われやすい傾 向があった。きかん気・気丈・負けず嫌い・Q負けん気 かちめ【勝ち目】勝つ可能性の意で、会話や軽い文章に使わ れる和語。〈相手が強過ぎて、とうていーがない〉否定的 ニュアンスで使う例が多い。勝算 かつ【勝つ】戦いや競技などで争って相手を退ける意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈相手と争ってー〉〈軽くー〉〈辛くもー〉②小沼丹 の『更紗の絵』に「野球は母校のX大学がー・って、吉野君 としては洵に申分ない気持であった」とある。「負ける」と 対立。専勝利 かつあい【割愛】惜しいと思いながらも事情があって省略せ ざるをえない意で、主にスピーチや文章に用いる漢語。〈時 間の都合で経過説明をーし、ただちに本論に入る〉〈紙幅の 関係で資料の一部をーする〉及Q省略・省く・略す かつあげ 恐喝を意味する隠語。☑「かつ」は恐喝の「喝」 <195> から。専恐喝 かつえる【飢(餓)える】「飢える」意で、主に文章中に用いられる古風な和語。〈食い物に—〉の「知識に—」のように、 欠乏しひとく欲しがる意の比喻的用法もある。ひQ飢える・ 渇く がっか【学科】学校で学ぶ教科や科目をさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈得意な—〉の経済—」のように、大 学の学部を構成する下位組織をさすこともある。ヲQ科目・ 教科 がっかり期待が外れて元気がなくなる意で、主に会話に使 われる日常の和語。〈結果を聞いてーする〉(あてが外れて ーする)の壺井栄の『二十四の瞳』に「しょい投げをくわさ れたように、みんなーしている」とある。気落ち・失意・失 望・Q落胆 かっき【活気】生き生きと活動的で勢いのある意で、会話に も文章にも使われる日常の漢語。〈町に—がある〉へにあ ふれる〉へーを呈する〉へーがよみがえる〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「少年血気のものであるからーがあふれて 善悪の考はなく、半ば無意識にこんな悪戯をやる事はない とも限らん」とある。卫生気 かつきてき【画期的】それまでは考えられもしなかったほど まったく斬新なの意で、会話でも文章でも使われるやや硬 い感じの漢語。〈な発明〉〈な判決〉〈な出来事〉〈 な治療法〉ちなみに、井伏鱒二は『本日休診』の中で、婦 女暴行事件を「彼女に対して全くな行為を敢てした」と 思いがけない方向にずらして婉曲に表現した。訪問時に作 かっこう 者に直接この意図を問うと、「普通にしてると退屈するん ですよ」とはぐらかされたが、「放尿」といった露骨な表現 と同居する事実から、はにかみから来るおとぼけと推測さ れ、こういう大仰なテレが笑いと結びつく。 がっきゅう【学究】学問に専念している人をさし、主として 文章に用いられる古風で硬い漢語。〈ー肌〉〈ー生活〉 「ーの徒」のように、学問に打ち込むことをさす用法もあ る。ひQ学者・学徒・研究者 かっきょう【活況】景気がよくて活気に満ちている状況をさ し、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈証券取引所が ーを呈する〉の「好況」や「好景気」に比べ、具体的なある 場所のようすをきす例が多い。Q好況・好景気 ヘつきり数量に端数がない丁度の意で、主に会話に使われ る和語。二時に出発する〉ヘー一万円支払う)きっかり かつぐ【担ぐ】嘘を信じさせて相手をからかう意で、会話や 軽い文章に使われる和語。〈相手にまんまとー・がれる〉 「だます」ほどの悪意はなく、冗談のことも多い。「荷物を ー」といった基本的な意味のほか、「会長にー」のように、 祭り上げる意にも、「縁起をー」「御幣をー」のように、気 にする意にも用いる。単欺く・いつわる・かたる・ごまかす・たぶ らかす・だまくらかす・Qだます・ちょろまかす かっこう【恰(格)好】姿・形の意で、会話や軽い文章に用いられる日常の漢語。〈背ーが似ている〉〈派手なー〉〈変なー〉〈粋なー〉〈ーを気にする〉〈何とかーがつく〉深沢七郎の『楢山節考』に「大きい腹を前かがみにしているので蛙みたいなー」とある。林芙美子の『ボルネオダイヤ』には「風に <196> がっこう さからいながら、子供の走るーが、海老のように見える」と ある。くだけた会話では俗に「かっこ」とも言う。「ーをつ ける」「手ぶらで訪問するのはーが悪い」のように、相手に 与える印象を気にする体面・体裁の意に抽象化して使うこと も多い。別に、「ーな値段」「ーの場所」のように、手頃で ちょうど目的に合う意でも用い、その用法ではやや古風な 感じがある。具外形・形・形式・形象・形状・形態・Q姿・スタイル・様 式 がっこう【学校】教師が児童・生徒・学生に教育を行う組織や 施設をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な漢語。〈法人〉〈教育〉〈専門〉〈 に上がる〉〈に通う〉〈を出る〉壺井栄の『二十四の 瞳』に「仕立屋に毛のはえたような」とある。専学院・学 園・Q学窓・学びの庭・学び舎 かっさらう【掻っ攫う】「掻きさらう」の転。横合いからいき なり奪い去る意で、やや俗っぽい感じの日頭語。〈店先の品 物をー・って逃げる〉単なる「攫う」より動的なイメージ が強い。語頭の破裂音に続く促音という音構造もこの語の 激しい印象を強めているかもしれない。刂攫う がっしゅく【合宿】練習・研修のために数人以上の所属メンバ ーが同じ宿に泊り込む意で、会話にも文章にも使われる漢 語。〈強化ー〉〈サークルのー〉〈ゼミーに参加する〉ひキャ ンプ かたるい「だるい」感じをさし、主にくだけた会話に使わ れる口頭語。〈働き過ぎて朝から両腕がー〉〈何となくー気 分で出かけるのが億劫だ》精神的な面の強い「けだる い」に対し、肉体的な感じの面が強い。$@けだるい・倦怠だるい がっち【合致】二つの物事がびったり合う意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈趣旨に—する〉〈両者の思惑 が—する〉〈双方の主張が—する〉②抽象的な対象に用い る。島崎藤村の『新生』に「愛しようとするものと愛されよ うとするものの—」とある。「一致」に比べ、個々のものが 異質でも全体としてうまくまとまる場合も含まれる感じが ある。合う・Q一致・整合・符合 ガッツポーズ勝った喜びを肉体的に表現する腕などの動き をさす和製英語。強敵を破り小さくーをする)相撲の ような伝統的な日本文化にはなじまず、剣道などでは反則 扱いになる。 かつて【嘗て】「以前」の意でやや改まった会話や文章で用い られる、やや古風な和語。へいまだーない〉へーの上司〉へー の面影はない》の二葉亭四迷の『浮雲』に「一侍奉公までし た事が有る」とある。「かって」と促音化して使われること も少なくないが、これが本来の語形。教養を示すとともに、 ことばにうるさい人という印象を与えることもある。 か って かって「嘗て」会話にしばしば現れる、「かって」の崩れた語 形。〈この店にはーずいぶん通ったものだ〉の時には知識や 教養を疑われることもある。きかつて かって【勝手】①他人の迷惑も願みず自分本位に行動する意 で、会話や軽い文章に使われる日常の和語。〈な言い分〉 〈ー気まま〉〈ーなふるまい〉〈ーな行動を慎む〉〈よその家 <197> にーに上がり込む〉〈ーなまねはさせない〉〈ーに持ち出す〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「だまって聞いてるとーな熱を吹く」とある。性格的な「わがまま」と違い、一つ一つの行動に対する評価であり、他人の気持ちを意に介さない部分に重点がある。Q気まま・わがまま②「台所」の意で使われる古めかしい和語。〈ー仕事〉〈おーで洗い物をする〉幸田文の『流れる』に「このうちに相違ないが、どこからはいっていいか、一口がなかった」とある。「おー」という形で盛んに使われた時期は「台所」より新しい感じの日常語だったが、今では息の長い基本語といった感じの「台所」よりもむしろ古い感じになっているという。ちなみに、祖母は「おー」と言い、母は「お台所」と言い、自分は「キッチン」と言う、との女子学生の証言もある。ひキッチン・庫裏・くりや・炊事場・Q台所・厨房・調理場 かっと急に怒って興奮し血が上る意で、会話や硬くない文 章に使われる擬態語。〈思わずーなってどなりつける〉室 生犀星の『幼年時代』に「私はーした。腸がしぼられたよう に縮み上った。真赤になった」とある。強い日差しや目を 見開く際にも使う。むっと カット本の空いたスペースなどに入れる小さな絵や図案を さし、会話にも文章にも使われる外来語。本の余白にを 入れる》挿絵類と違って、必ずしも文章の内容に密着し なくてもよく、図案や写真を飾って雰囲気を出す場合もあ る。また、「給料の—」「ヘア」「映画の—」など多様な意 味で使われる語。Qイラスト・挿絵・挿画 かつどう【活動】①活発な動きをさして、会話にも文章にも かっぱじく 使われる日常の漢語。〈クラブ〉〈積極的にーする〉〈一範囲が広い〉「就職運動」という語は古めかしくなり、現在はこの語を用いて「就職」といい、略して俗に「就活」ともいう。「婚活」も同様の略語。「行為」「行動」に比べ、個々の動きよりもある目的を持って行う全体の働きを意味する傾向がある。また、「火山」のように、意志に基づく人間の動き以外にも使われる。込運動・行い・行為・Q行動・動作②「活動写真」の短縮形で、「映画」の旧称。〈休みの日に」を見に行く〉永井荷風の『瀅東綺譚』にすでに「今日では、という語は既にすたれて」とあるが、「写真」よりも後まで使われたようで、映画監督などの映画製作に関係した人たちは自分を「屋」と呼ぶこともあった。そのため、「大写真」や「写真」よりは古めかしさがいくらか少ない。ひQ映画・活動写真・キネマ・シネマ・ムービー かつどうしゃしん【活動写真】主に無声映画の時代に使われた、「映画」の旧称。〈今度、面白いーがかかるそうだ〉のちなみに、永井荷風の『湮東綺譚』に「私は殆どーを見に行ったことがない」とある。「動く写真」という意味の名付け。略して単に「活動」とも言った。語感が古めかしく、銀幕に写る写真自体も当時のものを連想させるために、画面に雨が降り、阪妻つれやチャップリンでも登場しそうな雰囲気を感じさせる。大げさに「活動大写真」と称することもあり、そうなるといっそう古いイメージが喚起されやすい。Q映画・活動②・キネマ・シネマ・ムービー かっぱじく【掻っ弾く】「掻き弾く」の転勢いよく「弾く」 意で、俗っぽい口頭語。〈相手力士の腕をー・いて懐に飛び <198> かっぱっ 込む語頭の破裂音に続く促音と直後の破裂音が動的で 激しい語感を形成する面もある。はじく かっぱつ【活発(潑)】活気や勢いがある状態をさし、会話に も文章にも使われる日常の漢語。〈な子供〉〈な議論〉 〈動きがーになる〉⑬井伏鱒二の『言葉について』に「真面 目に且つーに「はい」と答えた」とある。森鷗外の『青年』 に「細かい塵がーに跳っている」とあるように、「潑刺 と違い、目に見えない動きや抽象的なものに使う例もある。 児元気・Q潑剤 かっぱらう【掻っ払う】「掻き払う」の転。横になぎ払う、他 人の物を奪い取る意の、俗っぽい口頭語。〈相手の脚をー って倒す〉〈財布をー〉③促音とそれに続く「パ」という破 裂音が働いて、この語を激しい感じに印象づける面もある かもしれない。ちなみに、大岡昇平の『野火』に「今夜、ー って来てやらあ」という台詞が出てくる。払う① かっぷく【恰幅】肉付きや押し出しという面から見た体つき を意味するやや古風な漢語。「のいい紳士」〈堂々たるー の社長〉綱野菊の『妻たち』に「のよい、背の高い、そ して豊かな感じのする顔立ちの男」とある。人中に出たと きの姿が問題になるため、伝統的には社会に出て働く男性 に対して用いられる傾向があり、女性の社会的進出のめざ ましい今でも、中年以上の男性を連想させやすい語感が残 っている。Q体つき・体格・豊満 カップル二人連れ、特に男女の組をさす外来語。古くさい 「アペック」に代わる語。〈お似合いのー〉ひQアペック・二人 連れ がつペい【合併】いくつかの事物や組織が一つにまとまる意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈吸収—〉〈銀行が— する〉〈症を起こす〉の「併合」に比べ、主従の関係が意 識に上りにくい。弁合 かっぽう【割烹】日本料理と酒を提供する店をさし、会話に も文章にも使われる、やや古風な感じの漢語。〈料理〉 〈大衆—〉②「小料理屋」より規模が大きく、「料理屋」より 大衆的な雰囲気がある。「割」は肉を「裂く」「切る」意、 「烹」は肉を「煮る」意という。「着」は調理する際の前掛 け。ひ小料理屋・料亭・Q料理屋 かつよう【活用】既存の物の価値を生かして何かに役立てる 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈資源の—〉〈最新 の機械類を—する〉〈余暇を—する〉〈縁故を—して就職す る〉の「動詞の—」のように語尾変化をさす場合はやや専門 的。応用・運用・駆使・Q利用 かつら【鬘】頭髪に似せて作った髪型をさし、会話でも文章 でも普通に使う和語。〈ちょんまげのーをかぶる〉(日本髪 のーをかぶって写真を撮る)俳優の役づくりのためのも のも、一般人の装飾用のものも、ともに普通この語でさす。 また、特に女性が髪を豊かな感じに見せるために髪の中に 添える毛髪の束を言うこともある。井伏鱒二の『黒い雨』 に「頭も顔も埃だらけぞ。灰のーを被っておるようだ」と いう比喻表現の例がある。ひウイッグ かてい【仮定】仮に正しいものとして考えてみること、その 内容や前提をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へそれ が事実だとーして話を進める〉へーの上の質問には答えな <199> い〈自体に問題がある〉の大岡昇平の『俘虜記』に「人 類愛のごとき観念的愛情をーする必要を感じない」とある。 ありうる範囲内を問題にする「想定」に対し、この語は、明 らかに事実と違うことや論理的にありえないことまでを広 く対象とする感じがある。刂前提・Q想定 かてい【過程】物事の進行する道筋や状態の変化をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈製作—〉〈ーを経る〉〈事 件のーをたどる〉〈結論に至るーが問題だ〉ひプロセス かてい【家庭】夫婦や親子や兄弟姉妹など、家族の生活する 場をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈ー菜 園〉〈ー教師〉〈ー訪問〉〈母子ー〉〈ーの事情〉〈ーを持つ〉 〈ーを守る〉〈裕福なーに育つ〉〈ーのぬくもり〉中山義秀 の『醜の花』に「明るい筈のー内が陰気にしめりかえり、ぬ るぬるとした蛇穴のようなむれ気が家内の隅々にたちこも っていて」とある。井上靖の『猟銃』に「睫が凍った時のあ の感触の、ひいやりしたー」とあるように、個人をもさす 「家族」と違い、家族全員のかたまりをさす。ひ家族 かていをもつ【家庭を持つ】結婚すること自体よりも、結婚 によって親元から独立するという生活形態の変化に重点を 置いて使われる表現。親と離れて二人だけの生活を始める 形が一般化するにつれて、こういう言いまわしを使う機会 が減ってきて、次第に古風な表現に移行しつつある。最近 結婚してー・ったという噂です)乃結婚・結婚する・こし入れ・婚 姻・Q所帯を持つ・嫁ぐ・嫁入りする・嫁に行く カテドラル「大聖堂」の意で、会話にも文章にもまれに使わ れる、やや斬新な感じのあるフランス語からの外来語。〈東 かなう 京ー)ゑ教会・教会堂・聖堂・Q大聖堂・チャペル・天主堂・礼拝堂 かど【角】物の隅や、通路などが大きく折れ曲がっている場 所をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く用いられ る日常の基本的な和語。〈机のーにぶつける〉〈次の曲がり ーで左折する〉〈郵便局のーを右に曲がる〉ヲコーナー かど【過度】程度をひどく超えている意で、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ーの運動〉へーの期待〉② 「適度」と対立。大岡昇平の『俘虜記』に「ーに素早い動作 で賭金を取り込む」とある。単極度 かどで門出/首途出発の意から比喻的に、新たな生活の スタートの意で、主に文章の中で使われる、美化した感じの 古風な和語。へーを祝う〉へ新しい人生のー〉のもと、出陣 や長旅などでわが家を出る意。出発・Q旅立ち かどわかす【拐かす】子供や女性などを無理やりに、または うまく騙だして連れ去る意で、主として文章に用いられる古 風な和語。〈幼児をー〉ひ誘拐・誘惑 かない【家内】へりくだって自分の「妻」をさすやや古い漢 語の謙称。へうちのー〉へーのやつへーの実家呂島崎藤村 の『破戒』に「ーはまたーで心配して」とある。家庭内に閉 じこもる感じの字面で女性に敬遠される傾向がある。ひい えの者・うちの者・お上さん・奥方・奥様・奥さん・お内儀・かみさん・愚 妻・細君・Q妻・女房・伴侶・ベターハーフ・令聞・令室・令夫人・ワイフ かなう【けう思いとおりこなる意で、やや女はった会話や かなう【叶う】思いどおりになる意で、やや改まった会話や 文章に使われる、いくらか古風な感じの和語。〈願いがー〉 〈望みがー〉へー・わぬ恋〉⑩井上靖の『闘牛』に「所詮ー・わ ぬ大それた望み」とある。Q適う・敵う <200> かなう かなう【適う】適合する意で、改まった会話や文章に用いる、 少し硬い感じの和語。〈道理にー〉〈目的にー〉〈趣旨にー〉 の森鴨外の『阿部一族』に「すなおに考えたのが、自然故実 にー・っていた」とある。ひQ叶う・敵う かなう【敵う】対抗できる意で、会話や軽い文章に使われる 和語。〈あの強豪に—相手は見当たらない〉〈あいつにかか ってはーわない〉〈毎日こう暑くてはーわない〉小島信 夫の『小銃』に「軍隊でおぼえたこの人の剣にはーわなか った」とある。ひ適う・Q叶う かなきりこえ【金切り声】鋭く甲高い声をさし、会話や軽い 文章に使われる古風な和語。〈ーで叫ぶ〉〈思わずーを上げ る〉女の叫びなどを、金属を切断するときに出る音に喻 えた語。椎名麟三の『自由の彼方で』で「女給は、ーをあげ て笑いながら逃げ出す」と、「女給」と共起する古風な語で あるが、吉行理恵の『雲とトンガ』に「そのたびに私はーを あげ」とあるように今でも使われる。刂叫び声・絶叫・Q悲鳴 かなしい【悲(哀)しい】不幸やつらいことに直面して泣きた くなるような気持ちをさし、くだけた会話から硬い文章ま で幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ー出来事〉〈ー気 持ちになる〉〈別れがー〉大岡昇平の『野火』に「弾丸が 彼女の胸の致命的な部分に当ったのも、偶然であった。私 は殆どねらわなかった。これは事故であった。しかし事故 なら何故私はこんなにーのか」とある。「愛なし」から。「嬉 しい」と対立。刂うら悲しい・悲哀・Q物悲しい かなしさ【悲しさ】「悲しみ」に近い意味で、会話にも文章に も使われる日常の和語。〈堪えがたいー〉へーで心が張り裂 けるようだ林芙美子の『女性神髄』に出る「みぞおちの なかに酢のたまるような」といった生理的な堪えがたさ の例もあれば、小林秀雄の『モオツアルト』に出る「その は、透明な冷い水の様に、僕の乾いた喉をうるおし、僕を鼓 舞する」といった心理的にむしろプラスイメージの例もあ る。また、「悲しみ」がもっぱら、悲しいというその気持ち の状態をさすのに対し、この語はそのほかに、どのぐらい 悲しいかという程度を表すこともある。马Q悲しみ・傷心・悲 哀・悲痛 かなしみ【悲(哀)しみ】つらくて心が痛み涙がこみ上げてく るような気持ちをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常の基本的な和語。〈親を亡くしたー〉ぼ いーに沈む〉へーをかきたてる〉へーをこらえる〉へーを乗 り越える〉団大岡昇平の『野火』に「が私の心を領してい た」とある。Q悲しさ・傷心・悲哀・悲痛 かなた【彼方】向こうの遠いところを意味し、主に文章中に 用いられる、いくぶん美化した感じの古風な和語。〈はるか ーより幸せを祈る〉〈海のーに島影を望む〉森敦の『月 山』に「この渓谷がすでに月山であるのに、月山がなおーに 月のように見える」とある。専遠方・Q遠く かなもの【金物】金属製の器具をさし、会話や硬くない文章 に使われる、やや古風な和語。〈星〉〈を商う〉及金属 かならず【必ず】まちがいなく、例外なしに実現することを 確約する意味合いで、会話でも文章でも日常生活で幅広く 使われる基本的な和語。くだけた会話でも使うが、「きっ と」ほど会話的な響きはない。〈行くから待ってて〉へ <201> 期限を守る〈やりとげてみせる〉(着いたらー連絡す る)夏目漱石の『坊っちゃん』に「(温泉に)行くときはー 西洋手拭の大きな奴をぶら下げて行く」とある。「きっと」 より客観的な感じのする表現。きっと・絶対に ならずしも【必ずしも】下に打消しの語を伴って、必ずそうだというわけではなく、そうでない場合もありうるという意味で、会話にも文章にも使われる日常の和語。へーそうとは言えない〉〈高い品がーいいとは限らない〉ごくわずかな例外が認められるという場合だけでなく、他の条件が働いて別の結果になるケースや、そういう認定自体に不備があって多くはむしろそうならないというケースなど、さまざまな場合を含んでいる。ひあながち・Q一概に・まんざらかなり【可也(成)】数量や程度などが、非常にというほどではないが、普通という段階を大幅に超えている意で、会話にも文章にも使われる日常の表現。〈この時計はー正確だ〉〈病気がーよくなってきた〉へーの金額に上る〉許可の意の「可なり」から出た語形という。単相当 がなる大きな声でわめく意で、くだけた会話で使われる俗 語。へがあがあ大声でー〉へやかましくーりたてる)語頭 の「ガ」という濁音のせいもあって、耳にきつく響く。怒っ て大きな声になるか、遠くに聞こえるように大きな声を出 すか、原因や意図がはっきりした感じのある「どなる」に比 べ、この語は他人の大きな声を不快に感じる立場からの表 現で、自分自身の発声については用いにくい。富岡多恵子 の『立切れ』に、「・りたてているような、若手の漫才師が 喋っている」という例がある。ここも芸が未熟で声だけが かねがね やたらに大きいといったマイナス評価の感情が伴い、斬家 あがりの主人公には、老人たちの笑い声が「子供のころに 聴いた死体がもえる時の音」のように聞こえるのである。 専怒鳴る かね【金】物の売り買いや労働などの代価として受け渡しされる貨幣をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ーを儲ける〉〈ーが要る〉〈ーを借りる〉〈ーがかかる〉〈ーの持ち合わせがない〉〈ーに糸目をつけない〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「卒業さえすればーが自然とポケットの中に湧いて来ると思って居る」とある。会話ではしばしば「お金」の形で使う。「ーでできている」のように、金属の意味でも用いる。おあし・貨幣・金子・金銭・銭 かね【鐘】時刻や非常を知らせる時などに打ち鳴らす銅製の 釣り鐘をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈除夜の ー〉〈寺でーを撞っく〉石川達三の『日蔭の村』に「昔々を 呼び醒ますようなーの響き」とある。「教会のー」は構造が 違う。単鉦 かね【鉅】たたいて鳴らす小型の金属製の楽器をさし、会話 にも文章にも使われる和語。〈ーをたたく〉へーや太鼓で捜 す)②中勘助の『銀の匙』に「ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃんひ っきりなしにーをたたくので頭がみじゃけそうに苦しい」 とある。刂鐘 かねがね【予予】「前々から」の意で、改まった会話や文章に 使われる、やや古風で丁重な感じの和語。〈こ高名はー承っ ております〉へーお聞き及びのとおり〉へーそう思っており <202> かねて ました 「かねて」よりさらに丁重な感じがある。しかねて かねて【予て】「以前(からずっと)」といった意味合いで、改 まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風で丁寧な感 じの和語。〈ーお耳に入れてあった件〉〈ーより存じ上げて いる〉〈ーからの望みがかなう〉ひかねがね かねもち【金持ち】多くの財産を所有する意で、くだけた会 話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。へー の家〉〈村一番の—〉乃大金持ち・金満家・財産家・素封家・長者・ 富豪・Q物持ち かねる【兼ねる】一人の人間や一つの物事が二つ以上の役目 や働きを併せて行う意で、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の基本的な和語。〈会社に勤務しながら 非常勤講師を—〉〈趣味と実益を—〉〈休養を—・ねて温泉 地に言語調査に出かける〉②太宰治の『斜陽』に「家庭教師 をー・ねて、御奉公にあがっても」とある。込兼職・兼担・兼 任・Q兼務・兼用 かの『彼の』「あの」の意で、文章中に用いられる古風で雅語 的な和語。〈山〉〈人を思い出す〉「有名な」の形で は日常会話でも使われ、その場合はいくらかおどけた調子 に響くこともあるが、一般に特別の語感は働かない。ひあの かのう【化膿】膿む意で、やや改まった会話や文章に用いら れる医学上の専門的な雰囲気の漢語。〈止めを塗る〉〈切 り傷がーする〉医学用語ながら一般に普及し、日常会話 でも使われる。ひ膿む かのう【可能】実現・実行する見込みがある意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈時間的にはーだ〉〈今か ら変更することもーだ〉み出来る のじよ【彼女】話し手と聞き手以外の女性をさし、会話に も文章にも使われる表現。〈ーも喜んでいる〉〈ーに頼んで みよう〉②徳田秋声の『風呂桶』に「がいつも頭脳 がるのは、自分の拳のためだと意識しながら、打たずには いられなかった」とある。完全な目上に使うと少し失礼な 感じになる。「彼」という語が男女を問わずに使われていた 頃、この場合の「かれ」という語は女をさすという注記に近 い形で「彼女」という字面が現れたのは古いが、明治期には それで「かれ」と読ませ、のちに「あのおんな」「かのおん な」というルピを付すようになり、口頭で「かのじょ」と言 うようになったのは大正の半ば以降とされる。複数の場合 は通常「彼ら」と言い、特に女であることをはっきりさせた い場合に「彼女たち」「彼女ら」と言う。また、「息子に ができる」のように恋人である特定の女性をさす用法もあ る。現在では「彼」と対立。Q彼・恋人 がはく画(畫)伯世に秀でた画家をさし、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈世に名高い—の作品〉「梅原 —」「東山—」のように敬称としても使う。巻絵描き・絵師・Q 画家・画工 かばね【屍】「死体」の文語的表現。〈野にーを曝す〉へーを乗 り越えて》獅子文六の『沙羅乙女』に「嬰児のーを抱えた 母」とある。遺骸・遺体・死骸・Qしかばね・死屍・死者・死体・し にん・しびと・亡骸・むくろ かばん【鞄】書類や本や小物などを入れて持ち歩くために革 <203> や布で作った携帯用具をさし、会話でも文章でも広く使わ れる日常語。〈折り—〉〈旅行—〉〈持ち〉〈部下に—を持 たせる〉〈ーを抱える〉②永井龍男の『朝霧』に「黒い折り ーは、仔豚ほどにいつもふくれ上っている」とある。手提 げ鞄をさすことが多く、通常、リュックサックやウエストポ ーチなどはささないが、ランドセルのことを古く「背負い ー」と称した。一方、手で提げてもハンドバッグなどをさす 例は少ない。専バッグ かはんしん【下半身】①人間や動物の腰から下の部分をさし 会話にも文章にも使われる漢語。「がとっしりしている 「を鍛える」②「しもはんしん」とも読む。②提喩的に 意味を拡大してほかし、男女の「外部性器」の意をほめか す俗っぽい漢語の婉曲と表現。「の話題」③「下がかっ た話」が足首やふくらはぎの話でないのと同様に、「の話 題」といった用法になるとやはり膝や脚などではなく、人 前ではっきり言いにくい部分、主として生殖器官に関する 話題をそれとなくさすことが多い。たしかにその器官を合 むから嘘ではないが、より広範囲の対象を指示しての確な 内容を相手の推測にゆだねる表現。露骨な表現ほど下品で はないが、そういう話題を取り上げること自体が上品な行 為とは言えないので、こんなふうにほかす手つきがかえっ ていやらしく感じられる場合もある。専一物・陰部・陰門・隠し 所・Q下腹部・局所・局部・玉門・金玉・筆丸・女陰・性器・生殖器・恥部 かび【徽】食品・衣類・器具などに寄生する微生物の俗称とし て、会話にも文章にも使われる日常の和語。「くさい 「が生える」②武田泰淳の『風媒花』に「皿に盛られた飯 カフェテリア は、何日経ったのか、岩を蔽ぅ海苔のような、緑と蜜柑 色のーを生やしていた」とある。ふ微生物 かふ【寡婦】「未亡人」を意味する硬い感じの改まった漢語。 〈一年金〉ふ後家・Q未亡人・やもめ かぶ【株】「株式」「株券」の通称として会話や軽い文章に使 われる日常の和語。〈1の売買〉〈1でもうける〉〈1に手 を出す〉〈1で身上しをなくす〉林芙美子の『松葉牡丹』 に「競馬のレースのように、価の走り出すのを眺めてい た」とある。専株券・Q株式 カフェ近年盛んに使われるようになった「喫茶店」をさす 斬新な感じのフランス語からの外来語。〈パリのーに憩う〉 日常会話で使うとまだ少し気取った感じになる。ヲカフェ ー・カフェテラス・喫茶室・Q喫茶店 カフエー「キャバレー」の前身にあたる店で、昔懐かしい感 じの外来語。〈「に入り浸る〉四大岡昇平の『武蔵野夫人』 に「五反田附近の安」の女給」とある。大正時代を中心に 栄えた洋風飲食店で、女給が接待して洋酒を飲ませた。「カ フエー」とも言った。サトウハチローの『センチメンタル・ キッス』にる「電車がなくなる、カフエーがふえる」とある。 ひカフエ・キャバレー カフェテラス 喫茶店の戸外に開放した客席の部分をさすた めの造語。近年よく使われる斬新な感じのことば。〈通り に面したーに席をとる〉の「カフェ」も「テラス」もフラン ス語だが、その組み合わせは和製語であるという。ヵカフ ェ・喫茶室・喫茶店 カフェテリア 客が好みの料理を自分で選んでテーブルに運 <204> かふくぶ ぶ形式の食堂。近年使われるようになってきた斬新な感じ の外来語。〈大学の構内にーがオープンした〉名称が洋風 なので洋食のイメージが強い。ただし、学生食堂が現代的 な雰囲気を出すために名乗る場合も考えられ、「レストラ ン」に比べれば、ギョーザや焼き鯖定食なども含まれる可 能性があるかもしれない。Q食堂・西洋料理店・洋食屋・レス トラン かふくぶ【下腹部】提喩的に意味を拡大してそれとなく男女 の「外部性器」をさすことのある、俗っぽい漢語の婉曲 表現。②下腹部全体を指示してその一部をほのめかす表現 で、「下半身」と同じ発想に立つ間接化。ただし、「下半身」 に比べて拡大規模が中途半端なため、露骨な感じを払拭で きていない。ひ一物・陰部・陰門・隠し所・O下半身②・局所・局部 玉門・金玉・鼻丸・女陰・性器・生殖器・恥部 かぶけん【株券】株式会社が株主に対して発行する有価証券 をさし、やや改まった会話や文章に用いられる専門的な表 現。〈記名—〉Q株・株式 かぶしき【株式】株式会社の資本の単位、株主としての持ち 分をさし、改まった会話や文章に用いられる専門的な表現。 〈ー会社〉〈ー市況〉②斎藤緑雨の『かくれんぼ』に「父が預 るーに通い」とある。「ーを発行する」「ーを売買する」の ように、具体的な株券そのものをさす用法もある。Q株 株券 かぶせる【被せる】上から掛けて物の全体を覆う意で、会話 やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈頭からすっ ぼりー〉〈埃ゆによけに風呂敷をー〉〈穴に埋めて土をー〉 中島敦の『李陵』に「よそよそしい言葉におっーようにして (略)言った」とある。「罪をー」のような比喩的用法もある。 ひ覆う かぶとちょう【兜町】東京都中央区の地名。ヘーの相場に跳ね 返る)すぐに東京証券取引所が連想され、株式の世界や 景気など経済界の象徴というニュアンスを帯びる。ひ霞 関・Q永田町 かぶる【被る】頭や顔を覆うように身に着ける意で、会話に も文章にも使われる日常の和語。〈帽子を—〉〈面を—〉 永井龍男の『黒い御飯』に「傍の者から見た私の姿は、袴に はかれ、帽子にー・られ、カバンに下げられていたに違いな い」とある。着る・着用 かべ【壁】家の周囲や内部を区切る仕切りをさし、会話にも 文章にも使われる和語。〈ーを塗る〉〈土蔵の白ー〉の大岡 昇平の『武蔵野夫人』に「見馴れたーや天井、死んだ父の趣 味を示す調度など」とある。板の壁もあるが、主に土を塗 ったものを連想させる。「ーにぶつかる」「ーに突き当た る」の形で障害・困難をさす比喩的用法もある。川端康成の 『雪国』にも「駒子が虚しいーに突きあたる木霊に似た音 を、島村は自分の胸の底に雪が降りつむように聞いた」と ある。ひ壁面 かへい【貨幣】政府発行の紙幣と硬貨の総称として、主とし て文章に用いられる専門的な硬い漢語。〈ー経済〉〈一価値 が下がる〉、おあし・Qかね・金子・金銭・銭 かへん【花片】一枚ずつの花びらをさし、主に文章に用いられる古風な漢語。〈ひとひらのー〉へーがこぼれる〉佐藤 <205> 春夫の『田園の憂鬱』に「この頃の長い長い雨に、ーはこと ごとく紙片のようによれよれになって、濡れに濡れて砕け て居た」とある。単花弁・花びら かべん【花卉」舞】「花びら」の意で、改まった会話や文章に 用いられる専門的な硬い漢語。〈桜は五枚のーをもつ花〉 花片・Q花びら かぼそい【か細い】細くて弱々しい意で、改まった会話や文 章に用いられるやや古風な和語。〈手も脚もー〉へ声を出 す〉へ一腕で一家を支える〉三島由紀夫の『仮面の告白』 に「自分の二の腕にある、みじめな種症の跡をこすった」 とある。客観的な「細い」とは違って、この語には、単なる 寸法の点での細さよりも、繊細で頼りないといった思いや る気持ちが含まれる感じもある。「か弱い」などと同様、接 辞「か」のもたらす語感であろう。単細い かま【釜】御飯を炊く道具をきし、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の和語。〈圧力—〉〈同じ—の飯 を食った仲〉②曾野綾子の『遠来の客たち』に「部屋自体が、 それこそうどんの茹でーではないかと思われるほど暑い地 下室の従業員食堂」とある。ひQ窯・罐 かま【窯】陶磁器などを高温で焼く装置をさし、会話にも文 章にも使われる専門的な和語。〈元〉へで茶碗を焼く 井伏鱒二の『珍品堂主人』に「当時は陶工が個人でーを焚 いていた」とある。鎌・Q釜 かま【罐】ポイラーをさし、会話にも文章にも使われるやや 古風な感じの和語。〈ー焚きき〉〈ーに石炭を放り込む〉 窯・Q釜 かみ かまえる【構える】物事に備えて体勢を整える、きちんとし た形にする意で、会話にも文章にも使われる和語。〈銃を ー〉〈店をー〉へのんびりー〉〈斜にー〉〈事をー〉②人間以 外についても用い、その場合は文体的なレベルが少し高く なる。身構える がまぐち【蝦蟇口】口金のついた財布をさし、会話や軽い文 章に使われる古風な和語。へーを開けて小銭を取り出す) 開けた形が蝦蟇の口に似ているところから。ひ紙入れ・Q財 布・札入いぱれ がまん【我慢】じっとこらえて耐え忍ぶ意で、くだけた会話 から文章まで広く使われる日常の漢語。〈やせ—〉〈痛みを ーする〉〈じっとーする〉〈ここがーのしどころ〉〈もうー の限界だ〉夏目漱石の『こころ』に「風邪ぐらいならーし ますが、それ以上の病気はまっぴらです」とある。ヨQ辛抱・ 忍耐 かみ【神】崇拝や信仰の対象としての超越体をさし、会話に も文章にも使われる日常の基本的な和語。〈縁結びの—〉 〈八百万の—〉〈—に祈る〉〈—を祀る〉〈—も仏もない〉 尾崎一雄の『美しい墓地からの眺め』に「人間が死ねば、み んな—になるんだからね。キリスト教の—とは大違いさ」 とある。専神様 かみ【髪】頭髪の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の基本的な和語。へ乱れー〉〈長いー〉へ を結う〉へーを伸ばす〉へーが薄くなる〉中勘助の『銀の 匙』に「長いーがさわりとほどけて、肩から豊に波うって後 ろへすべっている」とある。川端康成は『雪国』で「もう日 <206> かみいれ が昇るのか、鏡の雪は冷たく燃えるような輝きを増して来 た」とまず自然を描き、次いでそれを背景に、「それにつれ て雪に浮ぶ女のーもあざやかな紫光りの黒を強めた」と駒 子という人物を描いた。ひQ髪の毛・頭髪・毛髪 かみいれ【紙入れ】「札入」の意で、会話にも文章にも使 われる古風な和語。〈店で懐からーを取り出す〉②樋口一 葉の『十三夜』に「より紙幣いくらか取り出して」とあ る。紙幣を広く「紙」とほかした表現で、懐紙や薬などを 入れる携帯用の小物入れをさす用法もあるため、さらに間 接性が高い。ひがま口・財布・Q札入れ かみさま【神様】「神」を敬って、また、超越体を人格化して 言うときに、会話や軽い文章に使われる和語。「、仏様 〈一のご利益〉②太宰治の『東京八景』に「二人で一緒に死 のう。だって、ゆるしてくれる」とある。単神 かみさん自分の「妻」をさす俗称。親しみと若干の照れを 持って、くだけた会話で使う。ちょいと、の実家へう ちのと来た日には」「によろしく」などと他人の妻を 言う場合もある。もと商人や職人の妻をさした。永井荷風 の「ふらんす物語」に「巴里で宿屋のが呉れた」とある。 いえの者・うちの者・お上さん・奥方・奥様・奥さん・お内儀・家内・愚 妻・Q細君・妻・女房・伴侶・ベターハーフ・令闥・令室・令夫人・ワイフ かみなり【雷】大気中の放電現象をさし、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。「雲が発生す る」〈遠い」〈が落ちる〉稲光と雷鳴との総称。村上 春樹の「遠い太鼓」に「ただが鳴っているというだけでは ない。それは確実に我々のまわりの大地に突きさり、山 を揺がし、巨木を裂き、天空に切り結んでいる」とある。 「神鳴り」の意から。いかずち・Q稲妻・稲光・雷鳴 かみのけ【髪の毛】頭髪の意で、会話や改まらない文章に使 われる日常的な和語。〈ーが抜け落ちる〉〈ーをとかす〉 〈ーを切りそろえる〉②「ーを拾う」「ーの先」のように一本 ずつを意識した用法に特徴がある。円地文子の『妖』の中 に、「黒すぎるーが布のように額にぺったり張りついている 老女の顔」を「奇異に眺める」場面がある。また、同じ作家 の『耳瓔珞』に「鳥の上わ毛のようにとりまいているカット した短いーの動物的な生々しさ」とある。ひQ髪・頭髪・毛髪 かみん【仮眠】寝床に入らずに短い時間軽く眠る意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー所〉〈ーをと る〉③阿部昭の『父と子の夜』に「病人のほうを盗み見なが らーをむさぼったり」とある。ひ居眠りする・うたた寝・Q仮 睡・仮寝 かむ【咬む】文章中で、動物がかみつく意を書き分けて示す 場合の表記。〈犬にー・まれる〉小沼丹の『タロオ』に「逃 げようとしたらズボンの尻のところにー・み附かれた」とあ る。弔噛む かむ【噛む】歯で食之物などを挟んで砕く意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和 語。〈奥歯で—〉〈ガムを—〉〈うっかり舌を—〉〈歯車が —〉の庄野潤三の『秋風と二人の男』に「自分で自分の歯を ー・み割るんだから、誰に文句の云いようもない」とある。 「よくー・んで食える」のように、細かく噛み砕く意を明確 にする意図で特に「嚼む」と書くこともある。呂咬む <207> カムバック元の地位や立場に戻る意で、会話やさほど硬く ない文章に使われる外来語。〈舞台にーする〉〈選手として ーを果たす〉スポーツ界でしばらく低迷していた人や、芸 能界を一度引退した人などによく使う。Q返り咲き・再起・ 復帰 かめ【瓶(壅)】水や酒などの液体やその他のものを入れる主 に陶磁器製の容器をさし、会話にも文章にも使われる和語。 〈水ー〉へに入れて保存する〉の「壺」に比べ、口が広く、 深さがあり、大きな物が多い。壺① カメラ「写真機」をさす外来語。現代ではくだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる最も一般的な日常語。(デジタ ルー〉〈ワーク〉〈ーを向ける〉〈高級ーを操る〉③椎名誠 の『犬の系譜』に「一眼レフと較べると相当に不格好な、そ の巨大な弁当箱のようなー」とある。乃写真機 カメラワーク「撮影技術」を意味する和製英語。〈巧みなー を見せる〉〈高度のーを駆使する〉 かも【鴨】ガンカモ科の小さな水鳥の総称として、会話でも 文章でも広く使われる和語。〈池に遊ぶ—〉への浮き寝 のちなみに、井伏鱒二は『兼行寺の池』の中で、鴨が水を打 つ時の重い羽音を「ぎっし、ぎっし、ぎっし」と写生してい る。水鳥の話題でこの語を用いても、「くみしやすい相手」 という意味で使われる「いいーにされる」「がねぎをしょ って来る」といった慣用表現が意識に浮かぶと一瞬おかし くなる。このように、その語の持っているほかの意味が語 感として働く場合もある。 かもく【科目】教科を特定の領域ごとに種類分けしたそれぞ かよう れをさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。必修 ー〉〈専門ー〉〈受験ー〉〈苦手ーを克服する〉弁伏鱒二の 『貸間あり』に「試験ーは、この前のものと同じである」と ある。Q学科・課目・教科 かもく【課目】なすべきものとして課せられた項目、特に、 学校で義務づけられた科目をさし、改まった会話や文章に 用いられる専門的な感じの漢語。〈外の授業〉ヲ科目 「多弁」と対立する語。ある場面での状態をも表す「無口」 に比べ、その人間の性格をさすことが多い。大岡昇平の 『俘虜記』に、「甚だーで人に向うと話題がないのを恥じて いる」とある。無口 かもつ【貨物】業者が運送・輸送する荷物をさし、会話にも文 章にも使われるやや専門的な漢語。〈列車〉〈船〉〈 を輸送する〉「荷物」のうち比較的大きなものを連想させ る。専荷物 かゆい【痒い】皮膚がむずむずして掻きたくなる感覚をさし て、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。 〈背中がー〉へところを掻く〉〈蚊にくわれた跡がー〉内 田百閒の『掻痒記』に「ところは無暗にー・くて、引っ掻 いても、叩いてもまだ気がすまない」とある。むずがゆい かよう【通う】一定の場所との間を定期的に繰り返し行き来 する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈病院にー〉〈暇があれば図書館に <208> かよう 定期船が Q往来·通学·通勤 かよう【歌謡】節をつけて歌う韻文形式の口承文学をさし、 改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈記紀—〉 の「大衆—」「国民—」のように「歌謡曲」の意でも用い、 その場合は専門的な感じは稀薄。歌・歌謡曲 かようきよく【歌謡曲】庶民に広く行き渡るように作られた 大衆歌謡をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈戦後は やったー〉主として大正末期から昭和三十年代の流行歌 を連想させる。弔演歌流行歌 かような【斯様な】「このような」の意で、主として文章に用 いられる古風な表現。〈ー文言では誠意が伝わらない〉〈ー 仕儀に相成る〉ひQかかる・こういう・このような・こんな 「弱々しい」よりやや改まった感じで、「ひよわ」より少しく だけた感じのレベルにある語。〈ー女の腕〉へー幼子を引き 連れて〉森鴨外の『山椒大夫』に「代には身が軽い。も う大分の道を行ったじゃろ」とある。「ひよわ」が虚弱体質 や病弱な状態を連想させる客観的な形容であるのに対して、 病気しやすいようすとは無関係で、力が弱くて頼りない存 在であり、保護してやりたいという感情が起こる点で主観 性が交じる。事実としては男性にもありうるが、伝統的に 女性に対して用いてきた影響で、「弱々しい」などとは異な り、この語はすぐ女性を連想させる。軟弱②・ひ弱・弱い から時間や空間の起点であることを示し、会話や改まらない文章で日常使われている格助詞。づッ展は十月一日ー始まるぐきようの午後六時ー軽音楽の夕べがあるらしい 僅し物の案内で以前は「六月三日より」「夕刻五時半よ り」というふうに、多く「より」という助詞を用いて改まっ た表現にする習慣があったが、親しみやすい感じを出すた めか、近年は日常会話レベルの「から」を使って「六月三日 」「夕方五時半」と表現する例が増えた。「より」とあ ると、スーツ姿で出かけないと雰囲気に合わないような感 じでつい億劫になる人でも、「から」とあれば、着流しで ぶらりと出かけようという気楽な気分になるのかもしれな い。少なくとも助詞ひとつで堅苦しい感じがほぐれるのは 事実だろう。よより から【空】中身がない意で、くだけた会話から文章まで幅広 く使われる日常の基本的な和語。〈一元気〉〈一威張り〉 〈一の財布〉〈家が一になる〉〈コップを一にする〉彫空っぽ がら【柄】織物や衣服などの模様をさし、会話にも文章にも 使われる和語。〈花一〉〈派手な一〉〈着物の一〉の一が悪 い」「そんな一ではない」のように、品格や性質の意でも使 う。彫Q模様・文様 カラー色の意で会話にも文章にも使われる外来語。ヘツート ンーヘパステルーヘーフィルム②ワインー」のように 複合語として使い、単独ではあまり使わない。Q色・色合 い・色彩・色調 カラーえいが【カラー映画】色彩画面の映画をさす、古めか しい語。のモノクロームの白黒の映画が普通だった時代に、 色のついた映画が登場し、従来のものと区別するためにこ う呼んだ。初期の不自然な着色から「天然色」「総天然色」 などと誇らしく宣伝する時期を経て次第にこの形におさま <209> ったと思われるが、カラーが普通になった今日、ことさらそ う呼ぶと当時が思い返され、かえって古い感じを伴う。白 黒の古い映画を色つきで再現する場合は単に「カラー」と言 うことが多い。ヲカラーテレビ・総天然色映画・Q天然色映画 カラテレビ色彩画面のテレビをさし、会話でも文章でも 広く使われる語。〈白黒テレビからーの時代に移行した時 期ほとんどがカラテレビになった現代では、この語自 体を使う機会がめったになく、白黒テレビに対して誇らし げに使っていた古い時代を連想させる。ひカラー映画 からい【辛い】舌を刺激するような味覚をさし、会話でも文 章でも使われる日常生活の和語。ぐぴりりとー〉〈味噌汁が 辛すぎる〉水上勉の『土を喰う日々』に「(大根は)ぴりっ とー・くて、威勢がいい」とある。わさぴやカレーの辛さに ついてだけこの語を使い、塩味の強い場合は「塩辛い」と使 い分ける例も多い。Q塩辛い・しょっぱい からかう冗談やいたずらで相手を刺激して楽しむ意で、会 話やさほど硬くない文章で使われる日常生活の和語。〈子供 をー〉〈ボーイフレンドのことで女の子をー〉夏目漱石の 『草枕』に「ーったり何かすると、大変な目に逢いますよ」 とある。悪意はなく、「ひやかす」に比べて親しみのこもっ た場合に使われる例が多い。おちょくる・愚弄・Qひやかす やゆ からかみ唐紙「襖」の一部をさす古風な言い方。へを 閉めるもともと紙に胡粉雲母の粉で文様を刷 り出した中国伝来の紙をさしそれを張った唐紙障子」を 単に「唐紙」とも言うようになったちなみに、中野翠は からだ 『小津ごのみ』の中で、「今は襖と呼ぶのが一般的だけれど、 小津映画についての文章なので、私的な郷愁をこめて、以 下、と書くことにする」と述べている。襖 からきし「まるっきり」の意で、くだけた会話に使われる古 風な和語。〈ー意気地がない〉〈酒はーだめだ〉「からっ きし」の形でも使い、その場合は古風さがなく、俗っぽさが 出る。り一向に・からっきし・さっぱり②・全然・ちっとも・てんで・ 全く・Qまるっきり・まるで① からくり【絡繰り】工夫をこらした仕組みをさし、会話や軽 い文章に使われる古風な和語。〈一人形〉〈ーを見破る〉② 谷崎潤一郎の『細雪』に「何処でどう云う風なーをしていな いものでもない」とある。「仕掛け」に比べ、たくらみが感 じられる例が多い。Q仕掛け からす【鳥/鴉】黒く艶のある羽をもつ鳥の一種をさし、会 話にも文章にも使われる和語。「が集まる」「が生ゴミ をあさる」の芥川龍之介の『羅生門』に「が何羽となく輪 を描いて、高い鴟尾のまわりを啼きながら、飛びまわって いる」とある。「枯枝にのとまりけり秋の暮」という芭蕉 の俳句には一幅の水墨画を思わせる趣があり、「なぜな くの」で始まる童謡には鳥の子煩悩な姿が描かれており、 親しみをこめて「勘左衛門」と人間並みに扱うなど、鳥に はプラスのイメージもあるが、羽の黒い色や不気味な鳴き 声が忌み嫌われ、また、肉食で死体に群がる習性でもある のか、日本では昔から不吉な鳥とされてきた。その影響が ことばにも及び、この語にも不吉な語感が付着している。 からだ【体/身体】動物の頭から足までの全体をさし、くだ <210> からだっき けた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈大きなー〉〈ーが丈夫だ〉〈ーが弱い〉〈ーによい〉〈ーを こわす〉〈ーが続かない〉〈ーを張って事に当たる〉〈やっと ーが空いた〉中山義秀の『碑』に「ーが突然後へ反って、 仰向けにどうと倒れたなり動かなくなった」とある。「身 体」の表記は「しんたい」と紛らわしい。「躰」と書くこと もある。吉行淳之介の小説の女性には「麗」の字がびったり していると当人の弁にある。身体 からだつき【体つき】体の外見の印象をさして、会話でも文 章でも使われる日常の和語。ぐがっしりしたーぐ見るから にきゃしゃなーぐ回尾崎一雄の『まぼろしの記』に「小柄だ が均整のとれたーで、中年ぶとりの様子もなく」とある。 図体詩・背恰好・Q体格・体軀なり・身なり からっきし「まるっきり」の意。「からきし」の転。くだけ た会話で用いられる古い感じの俗っぽい口頭語。「意気地 がない」〈運動のほうは—駄目だ〉の小津安二郎監督の映画 『一人息子』(一九三六年)で、先生(笠智衆)に息子がよく出 来ると褒められた母親(飯田蝶子)が「いや、へい、もう、 」と謙遜する場面がある。一向に・からきし・さっぱり②・全 然・ちっとも・てんで・全く・Qまるっきり・まるで① からっぽ【空っぽ】中に何も入っていない意で、主としてく だけた会話に使われる日常の和語。〈家の中がーだ〉〈胃を ーにする〉〈頭の中がーだ〉石坂洋次郎の『若い人』に 「(生徒達は)摩天楼の中に吸いこまれていき、忽ち掃いたよ うにその辺がーになってしまった」とある。みから からぶり【空振り】試みたもののまったく効果がなく失敗に 終わる意で会話や軽い文章で使われる、野球用語の拡大用 法。〈せっかくの提案も、上層部が聞く耳を持たないため に、完全なーに終わった〈激しく追及したが、巧みに話を そらされ、結局はーに終わる〉回野球で打者がパットを振っ たときにボールにかすりもしないこと。転じて、「意図した ことが実現できずに終わる」という意味合いに使われるこ ともあるが、まだ比喻的な感じが強い。専肩透かし からまる【絡まる】まつわりついてもつれる意で、会話やさ ほど硬くない文章で多く使われる日常生活の和語。「絡む」 よりもいくらか会話的。〈糸がー〉〈車輪に紐がー〉へいろ いろな問題が複雑にー〉郷子文六の『沙羅乙女』に「視線 が、縄のように、捻れてー・った」という比喻表現が出る。 「絡む」以上にもつれ方がひどく簡単にほどけない感じがあ り、「蔓がー」というと何本も絡み合ったようなイメージ が起こりやすい。 からむ【絡む】引っかかって離れにくい状態になる意で、会 話でも文章でも広く使われる日常の和語。「絡まる」より文 体的レベルが若干高い。〈咽喉に痰が—〉〈スクリューに海 の藻が—〉〈情実が—・んで客観的な判断が難しい〉北杜 夫の『谿間にて』に「蔓が蛇のように・み」とある。「絡ま る」と比べ、複雑にもつれた感じが薄く、「優勝争いに—」 「外壁に蔦が—・んで趣がある」のようなプラスイメージの 例も可能である。ひ絡まる かり【雁】「がん」の意で主に文章中に用いられる古風な和 語。〈初〉〈が音〉〈が空を渡る〉鳴く声を模した擬 声語から出た語という。雁の声の意にも雁そのものの意に <211> もなるが、伝統的に詩歌に用いられたため、今でも雅ぶや かな響きがある。ひがん カリー一部で使われている高級「カレー」の別称。どこに でもある平凡なものではなくその店特製の、という自負を 感じさせる外来語。〈印度ー〉JQカレー・カレーライス・ライス カレー カリスマ大衆をひきつけて心酔させる不思議な力を意味す るギリシャ語からの外来語で、会話やさほど改まらない文 章に使われる。〈ー性がある〉〈ー美容師〉②本来、超人的 な資質を有する預言者や英雄について用いられるが、人を ひきつける不思議な魅力といった軽い意味で近年よく使わ れ、一時期流行した。使い方によっては俗語的に響く。 かりて【借り手】借りる人、借りている人の両方をさして、 会話にも文章にも使われる日常の和語。〈ーがない〉〈ーを 探す〉〈ーがつく〉みQ借り主・テナント かりに【仮に】事実がどうであるかとは無関係に、そうであ るものと仮定してみる際に、会話にも文章にも使われる和 語。「そういうことにしておく」「綴じる」「予約 を入れる」のように、本式でない意にも使う。またとえよし んば かりぬし【借り主】借りている人をさして、改まった会話や 文章に用いられる、やや専門的で正式な感じの和語。へ側 の言い分)「借り手」と違い、これから借りる人よりもす でに借りている人をさすことが多い。ただし、賃貸契約書 を交わす手続きの場合など、借りることが明確な時点では この語を用いても違和感がない。Q借り手・テナント かるい かりね仮寝仮眠意で会話にも文章にも使われる和 語。途中で眠くなってするの「の宿」のように野宿 のような旅寝をさす用法もあり、その場合は古めかしい感 じになる。居眠りする・うたた寝・仮睡・Q仮眠 かりよう【加療】治療をほどこす意で、学術的な会話や文章 に用いられる医学的な雰囲気の強い漢語。〈三週間のーを 要する〉〈ーを施す〉診療・Q施療・治療・手当て・療治 かりよう【科料】軽い罪を犯した者に科す刑罰の一つをさし、 専門的な会話や文章に用いられる漢語。〈ーを言い渡す〉 「罰金」より軽く前科にならない。「過料」と区別するため に「とが料」と言うこともある。Q過料・罰金 かりよう【過料】法例などに違反した者に支払わせる行政上 の処分をさし、専門的な会話や文章に用いられる漢語。「科 料」と紛らわしいため「あやまち料」と言うこともある。 〈制裁としてーを払わせる〉Q科料・罰金 かりる【借りる】他人の所有物をあとで返す条件で自分が一 定期間利用する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の基本的な和語。〈傘を—〉〈家を—〉〈銀 行から資金を—〉〈一・りた金を返す〉内田百閒の『特別 阿房列車』に「一番いけないのは、必要なお金を—・りよう とする事である」とある。「貸す」と対立。僕借用 かるい【軽い】目方が少ない、軽快、重大でない、手軽とい った意味合いで、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の基本的な和語。〈体重が—〉〈身が—〉〈足取 りが—〉〈怪我が—〉〈罪が—〉〈食事〉〈ー・く考える〉 ②太宰治の『人間失格』に「充実感は少しもなく、それこそ <212> カルチャー 鳥のようではなく、羽毛のようにー・く、ただ白紙一枚」と ある。「重い」と対立。ひ軽量 ルチャー会話でも文章でも使われる「文化・教養」の意の外来語。〈シックを受ける〉の「文化教室」「教養講座」に代わって「センター」があちこちに開かれ、意味とは無関係にその新鮮な語感が人の気を引いた。「文化」「教養」といった重々しいことばと違い、意味がよくわからないながらも何か気楽でとっつきやすい雰囲気があって、電化製品の普及とともに余暇の増えた主婦を中心にひところ人気を集めた。肩の凝らない感じがするのは、新しい外来語であったこと以外に、「カルチャー」の音が漢字の「軽」を連想させる面もあったかもしれない。自宅で子供から「父さん」と呼ばれるたびにドキッとしたという、一度倒産した良心的な出版社の編集者からじかに聞いた身近な実話もある。早慶戦になると早稲田の安部寮ではピフテキにトンカツを食わせて選手を送り出したという話も伝わっている。むろんステーキと豚カツで栄養をつけるだけではなく、「テキにカツ」が「敵に勝つ」に通じるためである。音の連想で駄洒落を連発する日本語の文化的な背景がもたらす語感である。「四」という漢字を見ては「死」の連想を避けて本来の「シ」を「ヨン」と読み替え、「梨」を「ありの実」、「硯箱」を「あたり箱」と逆に呼び、「A図」から「エイズ」を連想し、ホロピッツの晩年のピアノ演奏から「亡びの美学」を感じ取り、「もう、そうするより仕方がない」に「妄想する」を重ね合わせるなど、そういう例は枚挙に暇がない。教養・文化 かるはずみ【軽弾み】状況などを深く考えずにうっかりやっ てしまう意で、会話にも文章にも使われる和語。へな行 為へへな言動が目立つの「軽率」「軽薄」などと違い、 「くれぐれもーを慎むよう」のように、状態だけでなく行動 をさす用法もある。ぴ浅はか・慌て者・おっちょこちょい・Q軽率・ 軽薄・粗忽だ・そそっかしい・浮薄 かれ【彼】話し手と聞き手以外の男性をさし、会話にも文章 にも広く使われる日常の基本的な和語。「はなかなかの 努力家だ〉へにしてはよく出来たほうだ》佐藤春夫の 『田園の憂鬱』に「は夜の雨戸をくりながらその白い雨の 後姿を見入った」とある。完全な目上に使うと少し失礼な 感じになる。「彼ら」が男でも女でも両方交じっていても使 えるように、この語も古くは性別に関係なく使われ、井伏 鱒二も『山椒魚』で産卵する小蝦のことを「いかなる料簡で あるかーは岩壁から跳びのき」と書いている。なお、「あの 子に最近ーができたらしい」のように、恋人である特定の 男性をさす古風な用法もあり、「彼氏」ほどふざけた感じを 伴わない。Q彼女・彼氏・恋人 かれい【華麗】華やかで美しい意として、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈一な衣装を身にまとう〉〈一な舞 台〉の太宰治の『斜陽』に「どうせほろびるものなら、思い 切ってーにほろびたい」とある。「一な演技」「一なる転身」 のように抽象的な対象にも用いられる。ひQきらびやか・絢 爛緒・はなやか カレー「カレーライス」に代わって現在では日常会話で最も よく使われる外来語形。〈チキン〉〈ドライ〉〈昼は食 <213> 堂のーで済ませる》ライスを含めた料理全体をさすこと が多いが、ライス以外をそう呼ぶ例もある。ヵカリー・Qカレ ーライス・ライスカレー カレージ自動車用の車庫をさし、会話にも文章にも使われ る外来語。「つきの建売住宅〉「のシャッターを閉める」 村上春樹の『ノルウェイの森』に「彼はその夜、自宅の の中で死んだ」とある。なお、鮨屋などで蝦蛄をさす俗 語としても使われ、小津安二郎の映画『麦秋』にも、てんぷ らの盛り合わせを見ながら三宅邦子の扮する史子が「なん だろう、これ」と言うと、笠智衆の扮する康一が「ギャレッ ジ」と答え、原節子の扮する紀子が「ああ、蝦蛄」と解説す る場面が出る。むろん同音の「車庫」に通わせた駄酒落で ある。ひ車庫 カレーライス肉や野菜を煮込んでカレー粉などで味つけし たものを御飯にかけて食する料理をさす外来語(カレーアン ドライスまたはカレードライス)の略。ヘレストランでーを 注文する)少し前までの最も標準的な語形。今でも多用 され、やや会話的な「カレー」に対して、特に文章中に正式 の名称として記す場合はこの語を用いるのが一般的。 リー・カレー・Qライスカレー かれし【彼氏】恋人である男性の意で、会話や軽い文章に使 われる、やや古風で俗っぽい表現。〈娘にーができる〉へー によろしく)永井荷風の『瀅東綺譚』に「ーが来ていなけ れば」とある。「彼」や「彼女」と違い、ふざけた感じに響 く。近年、頭高のアクセントであるこの語を平板型で発音 して特別な関係にある特定個人をさす用法も観察される。 かわ 「彼女」の場合と同様、現代の俗語。「あすこに立っている 」のように一般の男性をさす用法もあるが、さらに古い 感じになる。「彼女」と対立。Q彼・恋人 かれる【枯れる】生気がとぼしくなる意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常生活の和語。〈木が」 小沼丹の『庭先』に「毎年実を附けたポポも」・れたし、 知人に貰った栴檀も・れた」とある。「芸が」「人間とし てー・れてくる」のように比喩的に枯淡の意で用いる場合 は、プラスのイメージで文体的なレベルも高まる。Q涸 れる・嗄かれる かれる【涸れる】水分が枯渇する意で使われる日常語の表記。 〈井戸が—〉〈涙の—ほど泣く〉も枯れる・Q嗄ふれる かれる【嗄れる】のどを酷使した結果、声がかすれて出なく なる場合に用いる日常語の表記。〈声が—〉、込枯れる・Q涸がれ る かろやか【軽やか】動きなどの軽い感じが快く思われる意で、 いくぶん改まった会話や文章に用いられる和語。へにステ ップを踏む〉へな身のこなし〉「かるやか」とも。軽 快 かわ【川/河】山に発し合流して海に注ぐ安定した水の流れ をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常生活の最も基本的な和語。〈の流れ〉へを渡る〉へ に沿って歩く幸田文の『おとうと』に「太いがながれ ている。に沿って葉桜の土手が長く道をのべている」と ある。すべて「川」で間に合うが、大河の場合は特に「河」 と書き分けることもある。「親子三人が一の字になって寝 <214> かわ るのはもちろん川。 かわ【皮】動植物の表皮の意で、会話にも文章にも広く使わ れる日常の和語。〈りんごのーをむく〉〈木のーをはぐ〉 〈餃子げのー〉の川端康成の『十六歳の日記』に「大きな皺 が一杯で、ーをつまみ上げると、そのまま元に戻らない」と ある。「化けのー」「欲のー」のような比喩的な用法ではも っぱらこの表記を用いる。単 かわ【革】なめした皮の意で製品に加工したものをさす表記。 〈一製品〉〈一装の豪華本〉〈一の財布〉〈一のジャンパー〉 の動物の毛のついた製品は生々しい感じのため「皮」と書く 傾向が強い。皮 わいい【可愛い】ほほえましくなるほど愛らしく感じられる意の和語。会話や改まらない文章によく使われる日常語。〈顔〉〈坊や〉田山花袋の『田舎教師』に「其息子は丸顔の坊ちゃん坊ちゃんした顔をして居た」とある。「愛くるしい」が幼児、「愛らしい」は女の子といった制限が感じられるのに対し、この語も主として子供に使われるものの、性別の語感はなく、年齢的にも制限は弱く、女子学生や若奥様から青年あたりまで対象になる。なお、近年の傾向として、学生が先生に対して、あるいは若者が老人に対して、「センセイ、」とか「あのお爺さん、」などと使うことがあって違和感を覚えるが、実際の年齢とは無関係に、相手を庇護すべき対象と見なしての表現だと考えれば、用法として大きく逸脱していることにはならない。夢くるしい・Q愛らしい かわいそう同情を誘うようすをさす和語で、会話でよく使 う日常語。〈一な子供〉〈一に住む家もない〉(それは一な ことをした)志賀直哉の『城の崎にて』に「一にと思うと 同時に、生き物の淋しさを一緒に感じた」とある。目下ま たは下位の者をあわれむ気持ちで用いる語。「可哀相」「可 哀想」は当て字。気の毒 かわおび【革帯】「ペルト」の意の「バンド」よりさらに古め かしい呼び方で今ではほとんど廃語に近い。〈ーを締める〉 の小津安二郎監督の映画『戸田家の兄妹』(一九四一年)で は昌二(佐分利信)が「一ついただくかな。ーをゆるめて」 と言っている。ちなみに、その二十一年後の『秋刀魚の味』 では「バンド」という語が使われている。バンド かわかす【乾かす】日光や風に当てて水分を除去する意で、 会話でも文章でも幅広く使われる日常生活の和語。濡れた 傘をー〉〈洗濯物をー〉〈天日でー〉夏目漱石の『坊っち ゃん』に「(後架に落とした札を洗って)清は火鉢でー・して、 これでいいでしょうと出した」とある。「干す」が対象物全 体の乾燥を目的とするのに対して、この語は対象物の濡れ た表面から湿気を除くところに意識の中心がある、という 指摘もある。たしかに、雨に濡れた上着や靴は急いで「乾 かす」必要があるし、切り干し大根は表面を「乾かす」だけ では使い物にならず、干し柿も長い時間をかけてゆっくり 「干す」から甘くなるのであって、「乾かす」だけだと渋く て食えない。また、「干す」と違って、扇風機でも乾燥機で る「乾かす」手段は問わない。乃干す かわく【渇く】水分が欠乏して不快に感じる意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。へのどが <215> 〈唇がー〉の心がー」「愛情にー」のように、欠けているものが欲しくなる意の比喩的用法もある。Q飢える・かつえる かわく【乾く】水分や湿気がなくなる意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。へから からにー〉〈洗濯物がー〉〈濡れるとなかなかー・かない〉回 庄野潤三の『夕ペの雲』に「山のいちばん高いところにある ので、土がー・きやすかった。すぐにからからになる」とあ る。豊乾燥 かわす【躱す】身を翻してよける意で、会話にも文章にも使 われる和語。へひらりと体を—〉へ相手の攻撃を—〉危険 を回避するための行為であるが、「避ける」のように別の場 所に移動することなく角度の変化で難を逃れる感じが強い。 「うまく誘いを—」「巧みに質問を—」のように抽象的な意 味合いでも使う。ひそらす かわむこう【川向こう】川を隔てた向こう側をさし、会話に も文章にも使われる和語。〜の町〜〜の家〜の川幅の広 い大きな川について言う。東京では特に大川(隅田川)を隔 てた深川・本所・向島あたりをイメージすることが多い。 Q対岸・向こう河岸・向こう岸 かわも【川面】川の水の正面をさし、主に硬くない文章に用 いられるやや詩的な和語。〈ーを渡る風〉〈ーに町の灯が映 る〉の幸田文の『おとうと』に「こまかい雨がーにも桜の葉 にも土手の砂利にも音なくふりかかっている」とある。刂川 かわや【厠】「便所」の意のかなり古めかしい和風の呼称。 〈ーで用を足す〉谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に「掃除の行 かわりもの き届いた「一案内される毎に、つくづく日本建築の有難み を感じる」とある。この漢字を用いると意味が直結するが、 もともとは「川屋」の意。花火見物の枝敷を連想させる風 流な字面であるが、実際には川の上に掛けた大小便用のい わば天然水洗施設をさしたという。おトイレ・閑所・化粧室・ 御不浄・雪隠・洗面所・WC・手水場・手洗い・トイレ・トイレット・はば かり・Q便所・レストルーム かわらけ 釉薬をほどこさない素焼きの器、特に杯をさし て、会話にも文章にも使われる古めかしいことば。へに盛 るの瓦筒」の意という。磁器・瀬戸物・陶器・陶磁器・土器・ Q焼き物 かわり【代わり】特定の人や物の役をする他の人や物をさし、 くだけ大会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈親ー〉〈ーの品〉〈ーの人を差し向ける〉〈ーを 探す〉〈ーを務める〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「誰か ーが来るんですか」とある。単代替・代用・Q代理 かわりばんこ『代わり番こ』「代わる代わる」の意で、主にく だけた会話に使われる表現。〈仲良くーに乗る〉〈全員がー に歌う〉の少し子供っぽい感じがある。JQ代わる代わる・交 互 かわりもの【変わり者】性格や言動が通常の人間とかけ離れ ている人物の意で、会話や軽い文章に使われる和語。町内 でもーとして知られている)三角の部屋の丸いペッドに 寝るとか、ゴキブリを飼うとか、普通の人間には理解でき ない趣味などを連想させるが、「変人」ほど一定の考え方に 凝り固まっている感じはしない。専奇人・気難しい・旋毛曲が <216> かわる り・腈曲がり・偏屈・Q変人 かわる【代わる】交代・代用・代行の意で、くだけ大会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。へ代が ー〉〈出演者がー〉〈担当が別の人にー〉〈当人にー〉夏目 漱石の『坊っちゃん』に「あんな奸物をあの儘にして置く と、日本の為にならないから、僕が天にー・って誅戮を加え るんだ」とある。夢わる・換わる・Q替わる・交代・交替 かわる【変わる】変化・変更など、これまでと違った状態にな る意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な和語。〈風向きがー〉〈顔色がー〉〈考えがー〉 宇野千代の『おはん』に「くるたんびに、猫の目みたよに 機嫌がー」とある。ひ換わる・Q替わる・代わる・変化 かわる【換わる】交換・転換の意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈部署がー〉〈配置がー〉〈順序がー〉ひ変わる・Q替 わる・代わる・交換 かわる【替わる】入れ替わる意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈順序が—〉〈担当が—〉〈選手が—〉交替の意味 では「代わる」とも書く。ひ変わる・Q換わる・代わる・交替 かわるがわる【代わる代わる】何人かが同じことを互いに代 わり合って行う意で、会話にも文章にも使われる和語表現。 〈使って験す〉〈十人が味見する〉Q代わりぼんこ・交互 かん【勘】知識や論理からではなく直感的にとらえる能力を さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈がいい〉〈が 鋭い〉〈が冴える〉〈でわかる〉〈を働かせる〉〈に 頼る〉ひインスピレーション・直観・直感・閃き・霊感 かん【棺】死体を納めて葬るための箱の意で、会話や軽い文 章に使われる漢語。〈ーに納める〉漁井孝作は『積雪』で 「畳もかえたざしきに、ーをすえた。障子に中庭の積雪の明 りがうつった」と抑えた筆致で描き、父の死に対面した悲し みを文章の底に沈めた。日常会話では多く「おー」の形で 使う。呂柩 かん【痼】発作的に全身が痙攣する意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈ーにさわる〉へが強い)激しやすい 性格や体質をさし、会話にも文章にも使われる漢語。川端 康成の『山の音』に「ーにさわって言いかけたが、中途でや めた」とある。刂癇癇かふし、気に障る・癇 がん目を意味する隠語。〈ーをつける〉の眼という漢字 を音読みしたものだが、ふつう片仮名書きする。目 がん【雁(鴈)】ガンカモ科で白鳥より小さく鴨より大きい水 鳥をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーの群れ) 日本の代表的な渡り鳥。漢字表記は「かり」との区別が難 しく、仮名表記は「癌」と紛らわしい。ひかり かんか【看過】気がつきながらほうっておくことをさし、主 として改まった文章に用いられる硬い感じの漢語。〈重要求 ストにある者として、このたびの行為は断じてーするわけ には行かない)阿部次郎の『三太郎の日記』に「(作意誇 張が)はびこって行くことはーすべからざる事実」とある。 もっぱら「見逃す」の第三の意味に使われる。見落とす・見 過こす・見逃す かんかい【感懐】心に抱く思いの意で主に文章に用いられる 硬質の抒情を漂わせる漢語。〈ーを述べる〉〈ーを禁じ えない〉感概・Q感想・所感 <217> かんがい【感慨】深く身にしみる思いの意で、改まった会話 や特に文章によく用いられる漢語。〈一無量〉へ一もまたひ としお〉へ一を覚える〉へ一に浸る〉横光利一の『睡蓮』に 「よくも永年この忍耐をしつづけて来たものだと、我が身を ふり返って今さらーにふけるのだった」とある。Q感懐・感 想・所感 かんがえ【考え】思考内容をさして、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「が浅い 〈ーを練る〉〈偏ったー〉〈自分のーを率直に述べる〉ぐ字野 浩二の『子を貸し屋』に「ーが、霧のように、蒸発してしま ったーとある。Q意見・見解・思考・思索・思想 かんがえちがい【考え違い】事実と違って考える意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈すっかりーをしていた〉図単 純な「思い違い」や「勘違い」と違って、「ーも甚だしい」 のように、しばしば道理や道徳に反する意味合いで使われ る。刂思い違い・Q勘違い・誤解 かんがえつく【考え付く】考えていて一つの方法などに思い 至る意で、会話にも文章にも使われる和語。ふまい宣伝を ー〉〈効果的な対策をー〉の思いつく」よりも時間をかけ て考えた具体的な内容の感じが強い。Q思い付く・ひらめく ③ かんがえる【考える】筋道立てて思いめぐらす意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の最も基 本的な和語。〈慎重に—〉〈物理の問題を—〉〈よくよく—・ えてみると〉〈自分の将来のことをとっくりとー・えてみる〉 ②「自分のことばかりー・えて、周りの迷惑など思ってもみ かんかんがくが ない」という表現からも、心に瞬間的に浮かぶ情緒を表す 「思う」に対し、この語が頭である程度の時間をかけて行う 理知的な思考をさすことがわかる。井伏鱒二の『鯉』の初 めのほうに、今は亡き友人からもらった鯉を「不安に思った が、暫くー・えた後で」下宿の瓢箪池に放す場面が出てく る。「不安に」とくれば「考える」という動詞は続かず、「暫 く」の後に「思う」という動詞はぴったりしないから、ここ でも両語の置き換えは日本語として不自然になる。ちなみ に、その後引っ越し先に池がなく置き場に窮したその男は、 思い余って早稲田大学のブールに放し、毎日面会に訪れる。 とぼけた鎮魂歌だ。思う かんかく【感覚】視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚によって外界の 刺激を感じとらえる意識をさし、会話にも文章にも幅広く 使われる日常の基本的な漢語。〈ー器官〉〈ーが鋭い〉〈寒 さで指のーがなくなる〉〈ーを取り戻す〉〈ーに訴える〉 芝木好子の『隅田川暮色』に「ーだけが生きもののように心 身にたゆたっている」とある。「国際ー」「現代的なー」「 が古い」のように、感受性や美醜などの価値判断能力をさ す比喩的な拡大用法も多い。専感性・センス・Q知覚 かんかく【間隔】空間的・時間的な隔たりをさし、会話にも文 章にも使われる漢語。へーが狭い〉へーを大きく開ける〉 〈五分ーで運転する〉心理的な距離については用いない。 ひ距離・Q隔たり かんかんがくがく【侃侃謂諤】互いに遠慮なく論じ合うさま を表す漢語表現。古風で硬い感じの語。〈ーの議論〉へと やり合う〉の「喧々囲々」と混乱を起こし、「喧々諤々」 <218> かんき と誤る例も見られる。噌々誘々・喧々畳々 かんき【歓喜】心が沸き立つような大きな喜びをさし、主に 文章中に用いられる漢語。〈ーの表情を浮かべる〉への声 がこだまする〉福永武彦の『草の花』に「夢中になって叫 び出したいような、あの魂のー」とある。ひQ喜悦・欣喜雀 躍さんは・随喜・法悦・愉悦・喜び かんきゃく【観客】演劇・演芸・スポーツその他の催し物など を見物する人をさして、会話にも文章にも使われる漢語。 〈席〉への入りが気になる〉の「見物人」に比べ、屋内や 外でも仕切られた一定の場所での有料の催しを連想させる。 「観衆」が人の集まりをマスとしてとらえているのに対し、 この語はその中の一人ひとりを意識させるため、「観衆が 騒ぎ出す」と大騒ぎになるのに、「が騒ぎ出す」場合は一 人の客かもしれず大した騒ぎにならないような雰囲気があ る。総数も「観衆」より少ない印象があり、野球の試合は 「観衆」でもよいが、卓球やテニスの試合や歌舞伎、サーカ スなどにはこの語が適切に感じられる。Q観衆・見物客・見 物人・聴衆 かんきゃくせき【観客席】演劇・スポーツ・見せ物などを見て 楽しむための席をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 へーがいっぱいになる〉へーに陣取る〉へーが騒ぐ〉ひQ観覧 席・客席・スタンド かんきゅう【緩急】速いことと緩いことの意で、改まった会 話や文章に使われる漢語。〈ー自在〉へーよろしきを得る〉 〈ーをつける〉石川淳の『紫苑物語』に「ーのしらべおの ずからととのって、そこに歌を発した」とある。 がんきゅう【眼球】脊椎動物の球形の視覚器官をさし、会話 にも文章にも使われる、いくぶん専門的な漢語。〈一運動〉 へ一の汚れ〉へ一の動き〉目玉」と違い、比喻的には使わ ない。小川洋子の『沈黙博物館』に「目蓋の下でーが徴かに 動き、唇が震え、老婆は最後の息を吐き出した」とある。 目目玉 かんきょう【環境】人間や動植物、あるいは住宅などをとり まく周囲の状況をさして、会話にも文章にも広く使われる 基本的な漢語。〈自然—〉〈—保護〉〈—の変化〉〈このあた りは—がすばらしい〉の「恵まれた家庭—に育つ」のような 例では意味合いが「境遇」「境涯」に接近するが、この語は 具体的な物的存在をもさす点で他と異なる。境涯・Q境遇 身空・身の上 がんきょう【頑強】相手に屈しない強さと粘りがある意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーに言い張る〉 〈ーに踏みとどまる〉の「な体」のように単に「頑健」の 意でも使う。専強力・Q強い かんきん【監禁】人を閉じ込めて外に出られないよう身柄を 拘束する意で、会話にも文章にも使われるやや専門的な漢 語。〈不法〉〈人質をーする〉小林秀雄の「ゴッホの手 紙」に「何がこのーから人を解放するか知っているか。そ れは深い真面目な愛なのだ」とある。単なる「閉じ込める」 より犯罪の雰囲気が漂う。単なる「閉じ込める・软禁・Q幽閉 がんきん【元金】①預金や融資で利子を生ずる元となる金 銭をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーを据え置 くの「もと金」より正式な感じの語。単元本・Qもと金② <219> ②事業を始める際の資本金の意で、改まった会話や文章に 用いられる古風な漢語。〈商売をしようにもーが足りない〉 専資本・もと金①・Q元手で がんぐ【玩具】「おもちゃ」の意で、改まった会話や硬い文章 中に用いられる漢語。〈幼児用の—〉〈一製造業を営む〉 生活的なイメージのある「おもちゃ」に対して、製品・商品 と見る視点が感じられ、特に童心や懐かしさを誘わない無 味無臭の語。おもちゃ かんぐる【勘繰る】あれこれ気を回して他人の気持ちや行為 を悪く推測する意で、会話やさほど硬くない文章に使われ る日常語。〈変に」・られるのもいい気はしない〉へのも いい加減にしろ)の「邪推」と違い、それが当たる場合もあ る。幸田文の『おとうと』に「母のほうもこちらと似たよう な頑さなのではないかとー・った」とある。単邪推 んけい【関係】①人・物・事が互いに関わり合ったり繋がり を持ったりしている意で、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の最も基本的な漢語。〈ー者〉へ諸 国〉〈相関ー〉〈因果ー〉〈三角ー〉〈恋愛ーに発展する〉 〈大いにーがある〉〈ーを断つ〉〈もはや何のーもない〉必 ずしも明確な二者間の関連に限らず、「時間のーで詳しい 説明は省略する」のように、理由・原因・動機などを漠然と さす場合もあり、類義語の中で最も広い意味用法が見られ る。刂間柄・因果・縁①・掛かり合い・関わり・係わり合い・Q関連・続 柄・続き柄・繋がり・ゆかり・連関 ②間接的に「性交」を意味す ることのある抽象的な漢語表現。〈人妻とーする〉へーを持 つ〉さまざまな「関係」のごく一部として、男女間の性的 かんけっ な交渉というものがあり、その核心部分として、そのもの ずばりの行為が内包されている、という構造のため、曖昧 なケースも少なくない。ちなみに、玉川一郎の『私の冗談事 典』に、軍隊の一兵士に面会を求めた若い娘に係の者が「あ なたとのーは?」と質問したところ、相手は耳まで赤くな り、小声で「ハイ、二回です」とささやいた、という笑い話 が載っている。啓み・エッチ・合歓・交合・交接・情交・情を通じ る・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・契る・同衾 共寝・寝る②・懇ろになる・ファック・深い仲になる・房事・枕を交わ す・交わる・やる③・夜伽 かんげき【間隙】時間的なわずかな空きや気の緩みの意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや硬い漢語。へちょっ としたーを突く〉へーに乗じる〉へーを縫って行う〉み空隙・ 隙・Q隙間・盲点 かんげき【感激】激しく心を動かされる意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈一の再会〉〈一のひとしお〉四太宰治 の『女生徒』に「小さい時に読んで受けたーとちっとも変ら ぬーを受けて」とある。受け身な「感動」に比べ、心が奮い 立つ積極性が感じられる。弔感嘆・Q感動・感銘 かんけつ【完結】予定した一連のものがすべてそろって全体 がまとまる意で、やや改まった会話や文章に用いられる、い くぶん専門的な漢語。〈連載小説がーする〉〈シリーズ物が ーする〉〈大河ドラマがーする〉完成・Q完了・終了 かんけつ【簡潔】無駄がなく要領を得ている意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ーな説明〉〈ーにまとめる〉〈ー を旨とする〉「簡略」よりプラス評価の語。少簡単・簡便・ <220> かんげん Q簡明·簡略 かんげん【換言】他の語句に変更する意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ーすれば〉〈漢語を和語にーす る〉の「言い換える」「言い直す」と違い、通常、文よりも 小さい部分の表現変更をさす。Q言い換える言い直す がんけん【碩健】肉体が丈夫で強い意で、主に文章に用いら れる硬い漢語。〈体はーそのもの〉、Q強健・強壮・たくましい かんご【看護】病人や負傷者の手当てをし世話をする意で、 やや改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。 〈完全—〉〈病人の—に当たる〉〈手厚い—を受ける〉の古井 由吉の『息災』に「夜勤の—婦に見つかりあきれられたの が、自分で立って歩いた最後となった」とある。「看病」に 比べ、病院の連想が強い。介護・介抱・Q看病・ケア がんこ【頑固】考えを貫き妥協しないようすをさし、会話か ら文章まで幅広く使われる漢語。「一徹」人生まれつきー なたち〉へ「おやじ〉へに言い張る〉上林暁の『薔薇盗 人』に「一種岩石のようにーそうな顔つき」とある。「意地 っ張り」がはるかな目上に使いにくいのとは違い、性別・年 齢を問わずに用いる。意地っ張り・依怙地・片意地・頑な・強 情・強情っ張り かんこう【刊行】「出版」の意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈一年〉〈ー予定〉〈定期—物〉〈ー直後から評 判になる〉「第二版をーする」「第五刷をーする」のよう に、改版・重版・增刷などの場合にも用いる。Q公刊・出版 上梓・発刊・発行 かんこう【完工】工事が完成する意で、改まった会話や文章 に用いられる専門的な漢語。〈ーの予定が大幅に遅れる〉 〈ーまでに二年を要する〉、Q竣工・落成 かんこう【敢行】困難な問題や多少の犠牲があっても敢えて 行う意で、主に文章に用いられる硬い漢語。〈冬山登山をー する〉〈反対を押し切ってーする〉強行・決行・Q断行 かんこう【緩行】「普通列車」を意味する専門的な漢語。へ 列車に乗り換える」の緩急」の関係で「急行」と対立する 専門語。「急行」と違って普及せず、一般社会では俗称の 「鈍行」を用いる。各駅停車・Q鈍行・普通列車 かんこうち【観光地】景勝地や名所・旧跡・温泉、有名な祭り などがあって観光客が集まる土地をさし、会話にも文章に も使われる漢語。〈日本有数の—〉〈ーを訪ねる〉行楽地 かんこうちよう【官公庁】国および地方公共団体の執務機関 の総称として、改まった会話や文章に用いられる、正式な感 じの硬い漢語。〈ーに勤務する者〉〈ーより通達がある〉 お上・官庁・Q役所 かんこく【勧告】ある行為を行うように説いて勧める意で、 改まった会話や文章に使われる公式な感じの漢語。〈人事院 ー〉〈退任をーする〉へーを受け入れる〉個人的な問題に は用いず、行政機関などの組織が発するケースが多い。「忠 告」より強い態度で接する感じで、従わざるを得ない雰囲 気がある。専警告・Q忠告 かんごく【監獄】「刑務所」や「拘置所」などの総称として用 いられた硬い感じの漢語。正式には刑事施設という。「 に拘禁する〉〈—に入れられる〉平林たい子の『施療室に て』に「行く手には—が壁のように立ち塞がっている」とあ <221> る。「牢獄」ほどではないが、「刑務所」という語より古風 な響きがあり、恐ろしい感じも強い。Q刑務所・牢・牢獄・牢 屋 かんさい【完済】借りた金銭をすべて返す意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ローンを—する〉「弁済」 ほど専門的な感じはない。長期のローンを定期的に返済し 終わるような場合に使われることが多い。返金・返済・Q弁 済 かんさつ【観察】事物や事柄を注意深く見てその様相の変化 を調べることをさし、いくぶん改まった会話や文章に用い られる漢語。〈朝顔の—記録〉〈症状の経過—〉〈人の行動 を—する〉〈動物の習性を事細かに—する〉林芙美子の 『晩菊』に「猛獣が遠くから匂を嗅ぎあっているような—の しかた」とある。ひ凝視・Q眺める・見詰める かんざまし【燗冷まし】一度燗かをした酒がすっかり冷えてし まったものをさし、会話でも文章でも使われる表現。酒を 切らし、気の抜けたーで我慢する)Q冷や酒・冷酒 かんし【監視】警戒して見守る意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈一体制に問題がある〉〈一の目を光 らせる〉〈一を怠る〉の「見張り」に比べ、「国境の」「景 気の動向を—する」のように、大規模な対象や抽象的な事 柄にも使う。見張り かんじ【感じ】感触の意のほか、対象の雰囲気やそれから受 ける印象などをさして、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常の基本語。へいいーを与える〉へーが悪 い〈よさそうなーの人〉へしみじみとしたーがある〉〈早 かんじゃ 春のーがよく出ている乡村上春樹の風の歌を聴けに 「他人の家で目覚めると、いつも別の体に別の魂をむりやり 詰めこまれてしまったようなーがする」とある。刂イメー ジ・印象・映像・心象・心像・表象 かんじ【監事】公益法人などの財産や業務執行を監査する役 や団体の庶務を担当する役をさして、改まった会話や文章 に用いられる専門的な雰囲気の漢語。〈会社のーを務める〉 〈協会のーとして職務に励む〉専幹事 かんじ【幹事】具体的な業務を中心になって遂行する役をさ して、会話にも文章にも使われる漢語。〈政党の長を務め る〉〈同窓会の長に就任する〉〈忘年会の長をこなす〉 「監事」とは違い、組織内の重い任務をさすほか、宴会その 他の催し物などの世話をする係といった意味合いで日常生 活でも手軽に使う。監事・世話係・Q世話人・世話役 かんしき【鑑識】物事の真偽や価値を見分けること、特に、 犯罪捜査での科学的鑑定をさし、会話でも文章でも使われ る専門的な漢語。〈ーに回す〉Q鑑定・鑑別・区別・識別・判別・ 弁別・見分け がんじつ【元日】その年が始まる一月一日をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈一の初詣〉〈一の年始客〉芥川 龍之介に「ーや手を洗ひをる夕ごころ」の句がある。元旦 かんじゃ【患者】病人をさして、病院や医師の側から呼ぶ漢 語で、会話でも文章でも使われる。〈外来ー〉〈入院ーを抱 える〉〈一を預かる〉〈待合室にーがあふれる〉大江健三 郎の『死者の奢り』に「附属病院の入院ーが寝着のままで 厚いスリッパをはき」とある。医院や病院に診察を受けに <222> かんしゃく 行くまでの間は、病人であっても患者とは呼ばれない。 人 かんしゃく【癇癪】感情を抑えきれずに興奮して怒る意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈持ち〉ヘ玉が破裂す る〉ヘを起こす〉単なる「癪」よりも激しい感じがある。 永井龍男の『そばやまで』に「の起るのを耐えていると、 顔から体へ、汗の噴き出すことが屢々あった」とある。 癇・気に障る・Q癪 かんじゃく【閑寂】物静かで趣のある意で、主に文章中に用 いる、やや古風な感じの硬い漢語。〈—なただずまい〉〈— な庭〉〈—にひたる〉石川達三の『日蔭の村』に「普門寺 は日だまりに転び寝したようなーさの中に古りさびてい た」とある。ひQ閑静・静か・静やか・静寂・静粛 かんしゅう【観衆】大きな会場で行われるスポーツや催しなどを見物するために集まった多くの人々をさし、やや改また会話や文章に用いられる漢語。「がとよめく」「大」でふくれあがる」「の期待に応える」「広場を埋め尽くす」「のように必ずしも有料とは限らない。一人ひとりを意識させる「観客」に比べ、全体としてとらえた感じが強く、人数もさらに多い場合が多い。Q観客・見物客・見物人・聴衆かんしゅう【慣習】それぞれの民族や地方や社会などで伝統的に決まっているやり方をさし、改また会話や文章に用いられる漢語。「その土地の」「に従う」「を破る」「習慣」より社会的な傾向が強く、個人的な癖には通常用いない。り慣例・癖・しきたり・Q習慣・習わし・風習 がんしゅう【含羞】はにかみや恥じらいの意で、主として文 章に用いられる漢語。「のまなざし」〈顔に」の色を浮か べる)太宰治の『斜陽』に「ヴィナスが、その全裸を男に 見られて、あなやの驚き、旋風」とある。日本文化の中で は好ましいものとして受け取られる。乃照れ・恥・恥じらい・Q はにかみ かんじゅせい【感受性】外界の刺激に心を動かされる意で、 やや改まった会話や文章に使われる漢語。「が鋭い〉へー の豊かな人竹西寛子の『長城の風』に「巨大な空間の多 様な刺激に、の扉が次々に開かれてゆくような快さ」とあ る。個人単位に総合的にとらえた「感性」に比べ、この語は 一人の人間でも各方面によって異なる場合をも含み、受け 身の感覚を問題にしている印象がある。専感性 かんじょ【閑所】「便所」をさすきわめて古い感じの漢語。 「便所」という露骨なことばを避けて、それが単独使用の場 であることに着目して、人けのない閑静な場所というふう に隣接的な関係でとらえ直した換喩かん的な婉曲表現。 ちなみに、韓国の某寺には「解憂所」という表示があるという う。おトイレ・圃化粧室・御不浄・雪隠・洗面所・WC・手水場 手洗い・トイレ・トイレット・はばかり・Q便所・レストルーム かんしょう【干渉】自分に権限のない他の事柄に目的を持っ て関係する意で、会話にも文章にも使われる漢語。内政 ー〉〈親がーする〉〈第三者にーされるのを好まない〉 「介入」ほど積極的に直接行動に出ない感じが強い。 り介入 かんしょう【鑑賞】芸術作品などをじっくり味わう意で、や や改まった会話や文章に用いられる漢語。〈名曲ー〉〈絵画 をーする〉〈じっくりとーする〉「観賞」と違い、楽しむ <223> 以上の何かが必要。観賞 かんしよう【観賞】見て楽しむ意で会話にも文章にも使われ る漢語。〈用の植物〉〈名月を—する〉大岡昇平の『武 蔵野夫人』に「珍しい—用の樹木」とある。鑑賞 かんしょう【感傷】喪失感などで(安易に)心を痛める意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一にひたる〉 に流される〉〈一に溺れる〉藤枝静男は『雛祭り』の最後 に、「誰しも死んだ瞬間に離れて」しまい、「やがては土と なり水となり空気と化して永久に虚空に姿を消してしまう」 とし、「在るのはここ半年か一年のあいだの私の一また一、 ふわふわだけだ」と書いた。医者でもあるこの作家はこん なふうに「感傷」を感覚的にとらえて文学的具体性を確保 した。擬態語「ふわふわ」は概念を示さず、読者の神経を直 接刺激するからである。悲しさ・感慨・Q傷心・悲哀 かんじょう【感情】快・不快や喜怒哀楽などの気持ちをさし、 会話にも文章にも使われる基本的な漢語。〈移入〉〈恋愛 〉〈複雑な〉〈が激する〉〈を害する〉〈を抑え る〉〈の起伏が激しい〉森田たまの『続もめん随筆』に 「はずみのあるーは、たるんでいた皮膚をひきのばしてくれ るように爽やかである」とある。一般語としての「心情」と 違い、専門語として使われる場合もある。気分・機嫌・気持 ち・心地・心持ち・心情・心理・精神 かんじょう【勘定】「計算」の意で、主に会話に使われる古風 な漢語。へーが合わない〉へーに入れる〉へはじめからーし 直す〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「席順はいつでも下か らーする方が便利であった」とある。「書き」「を支払 かんしん う」のように、代金の意でも使う。Q計算・算出 がんじょう【禎丈/岩乗】体や物の造りなどがしっかりして いる意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーな体〉へー な造り〉へーにできている〉乃堅牢・Q丈夫 かんしようてき【感傷的】心を痛め悲しみの感情におぼれる 意で、会話から文章まで幅広く使われる漢語表現。〈思春期 にはとかくーになりやすい〉(亡き母を思い出すと、ついー になってしまう)夏目漱石の『明暗』に「の気分を笑い にまぎらした」とある。ひおセンチ・センチ・センチメンタル かんしょく【感触】手や肌などに触れたときの感じをさして、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈触ったときの—〉 〈—がやわらかい〉〈冷たい—が伝わる〉⑳井上靖の『あす なろ物語』に「冷たくて固く緊った筋肉の—」とある。「手 触り」「肌触り」を含む総称。⑳Q触感・手触り肌触り かんじる【感じる】外部からの刺激を感覚器官を通して知覚 する、心に思うの意で、くだけた会話から文章まで幅広く 使われる日常語。〈痛みを—〉〈危険を—〉〈責任を—〉綱 野菊の『風呂敷』に「(精神的な打撃からの)回復には(略)さ わやかさと悦びがあることを、ミツはー・じた」とある。 覚える・Q感ずる かんしん【感心】上位者の立場から同等以下の相手を褒める 感じの日常の漢語。(なかなかーな子だ)〈ーによく働く〉 見えらい①・感服 かんしん【関心】面白そうに感じて気になる意で、会話にも 文章にも広く使われる日常の漢語。〈大いにーがある〉〈政 治にーを抱く〉〈ーを寄せる〉〈ーを払う〉〈ーを示す〉〈世 <224> かんすい 間のーが高い)の「興味」に比べ、全体的で客観的な感じが 強い。専興味 かんすい【冠水】洪水などで田畑や道などが水をかぶる意で 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈田畑がーする〉 Q浸水水浸し かんすい【鹹水】海などの塩分を含む水をさし、学術的な話 題の会話や文章に用いられる専門的な硬い漢語。〈魚〉の 「淡水」と対立。塩水・しおみず かんする【関する】それについての、それに関係したの意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い感じの表現。〈その件 にー情報〉〈人権にー問題〉〈昇任人事にー取り決め〉 「関わる」「関与」と比べ、単に何らかのつながりがあると いう程度でも使う。Q関わる・関与 かんずる【感ずる】「感じる」意で、改まった会話や文章に用 いられる古風で硬い表現。〈ひとしお寒さを—〉〈年齢とと もに衰えを—〉児元る・感じる かんせい【完成】完全に出来上がる意で、会話にも文章にも広く使われる日常の基本的な漢語。〈品〉〈建物がーする〉〈ーに近づく〉〈ようやくーを見る〉ひ完結・Q完了・終了かんせい【感性】感覚的な刺激を直観的にとらえてそれに反応する能力の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈そこはーの問題だ〉〈ーが違う〉〈ーをみがく〉同じ人間でもその方面によって感受性の鋭さが違う場合があるが、この語は「知性」と対立するものとして個人単位に感覚を総合的にとらえた印象があり、受動的な感覚だけでなく能動的な働きをも含む。ひ感覚・Q感受性・センス かんせい【閑静】町や通りや家屋敷などのたたずまいが静か な意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「な 住宅街〉へ「な住まい〉〈都会の喧騒を離れた—な一角に 居を構える〉ひQ閑寂・静か・静やか・静寂・静粛 かんせい【陷穽】他人を陥れるための謀略をさし、主として 文章に用いられる硬い漢語。〈ーに落ちる〉〈ーにはまる〉 ②本来は「落とし穴」の意だが、ほとんどがその抽象化した 用例。小林秀雄の『Xへの手紙』に「この世の真実をーを構 えて捕えようとする習慣が身についてこの方」とある。 落とし穴・Q罠 かんせい【慣性】他の力の加わらない限り物体が現在の運動 状態を保とうとすることをさし、学術的な会話や文章で用 いられる専門的な漢語。〈—質量〉〈—の法則〉専情性 かんせい【管制】国家が必要に応じて行動を管理し制限する 意で、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。灯 火ー〉〈報道ーをしく〉「塔」は航空機の離着陸を管理 し誘導する空港施設。規制・Q統制 がんせき【岩(巌)石】大きな石の塊をさし、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈ーが転がり落ちる〉〈ーがご ろごろあるごつごつした山肌〉室生犀星の『杏っ子』に 「ーの一群のような頼もしさ」とあり、上林暁の『薔薇盗人』 に「ーのように頑固そうな顔つき」とあるように、頑丈で頼 もしい感じの比喩に使われる。「ーの組成を調べる」のよう に、地殻を構成する物質である火成岩・堆積岩・变成岩の総 称として用いる場合には専門的な感じがある。専石・Q岩・い わお <225> かんせつ【関節】骨と骨とを滑らかに連結する部分をさして 会話にも文章にも使われる一般的な漢語。〈炎〉〈膝の を痛める〉専節々 かんせん【感染】病原体が体内に入る意で、会話にも文章に も広く使われる漢語。〈ー経路〉〈ウイルスにーする〉 「伝染」と違い、人間の側を中心に考えた語。「悪にーする」 のように感化・影響の意に用いる比喻的用法もある。伝染 かんせん【艦船】軍艦および船舶の総称として、改まった会 話や文章に用いられる専門的な漢語。〈一の航行〉専舟艇・Q 船舶 かんぜん【完全】欠点や不足がなくすべての条件がそろって いる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な漢語。〈一燃焼〉〈一犯罪〉〈一試合〉〈一に 仕上がる〉の「完璧」と違い、まれに「一に間違えていた」 「一な失敗に終わる」のように望ましくない場合にも用い る。ひ完璧 がんぜん【眼前】目の前の意で、改まった会話や文章に用い られる硬い漢語。〈一に広がる雄大な景色〉〈一の光景に目 を奪われる〉通常は空間的な意味合いで使い、「一の謎」 「一の利益」のように抽象化した例では時間的な意味合いを 帯びるものの、「直前」「寸前」のように直近の未来を想定 するのではなく、あくまで現在に重点がある。小林秀雄の 「ゴッホの手紙」に「理想を抱くとは、一に突入すべきゴー ルを見る事ではない」とある。乃寸前・直前・間近・目先・Q目前 かんせんしょう【感染症】伝染病に代わる用語として学術的 な会話や文章に用いられる漢語。〈一予防法〉〈入院命令の かんだい 出る一類—図「伝染病」より広義で破傷風や敗血症などを 含む。疫病・Q伝染病・流行り病・流行病 がんそ【元祖】ものごとを最初に始めた人の意で、会話にも 文章にも使われる日常的な漢語。〈流派の—〉〈名物の—〉 の一家の初代という意味の「先祖」と同義で使われること もあるが、現在では技や商品などの創始者の意で気軽に使 われている。開基・開山・開祖・Q始祖・皐祖 かんそう【感想】一定の事柄に関して心に感じた内容の意で、 会話にも文章にも幅広く使われる日常の漢語。〈読書ー文〉 〈率直にーを述べる〉(この件についてーを求める)永井 荷風の『あめりか物語』に「ーが、夏の日の雲のように重な り」とある。感懐・感慨・Q所感 かんそう【乾燥】十分に乾く意で、会話にも文章にも使われ る日常の漢語。〈|機〉〈|剤〉〈|地帯〉〈空気が|する〉 〈|を防ぐ〉井上靖の『小磐梯』に「した風が肌に冷た く」とある。比較的プラスのイメージで使われる「乾く」と 比べ、乾き過ぎてマイナス効果が生ずる場合にも使われる。 「道が乾く」のは快適だが「乾燥する」となるとひび割れそ うな感じになる。ひ乾く がんぞう【贋造】他人を騙すために本物そっくりに似せて造 る意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。 品〈一紙幣〉一見本物に見えればよい「模造」と違い、 他人を欺くことのできるまでに精巧に造られる傾向がある。 リイミテーション・Q模造 かんだい【寛大】心が広く思いやりのある意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈な心〉〈な処置〉〈に <226> かんたん 取り計らう夏目漱石の『坊っちゃん』に「その辺を御斟酌しやになって、なるべくーな御取計を願いたい」とあ る。専寛容 かんたん【簡単】単純でわかりやすい意で、くだけた会話か ら文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈|明瞭〉 〈|な問題〉〈|な仕事〉〈構造は|だ〉〈|にできる〉〈| に解ける〉〈言うだけなら|だ〉「複雑」と対立。「な説 明」「な食事」のように、手間をかけないという意味でも 使う。ひたやすい・平易・易しい・Q容易・楽・楽ちん かんたん【感嘆(歎)】感心して褒める意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈名人芸にーする〉へーの声が上がる) 井伏鱒二の『川』に「ひとくちのむ度ごとにーの吐息をもら す」とある。「感心」より深く心が動かされる感じがある。 専感激・Q感動・感銘 かんだん【閑談】暇つぶしに無駄話を楽しむ意で、主に文章 に用いられる、いくらか古風な漢語。へーして時を過ごす の「懇談」などに比べ、小人数の感じが強い。ひQ歓談・懇 談・談笑 かんだん【間断】続けざまに起こるものの時間的な切れ目を さし、改まった会話や文章に用いられる漢語。「なく起こ る」②火野葦平の『麦と兵隊』に「銃声はーなく聞え」とあ る。「絶え間」に比べ、間隔がやや大きい感じがあり、「雨 がーなく降る」といった用法はなじまない。ふ絶え間 かんだん【歓談】うちとけて楽しく話し合う意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈久しぶりに友人とーする〉 〈時を忘れてーする〉回パーティー会場などで会話を楽しむ という連想がある。Q閑談・懇談・談笑 がんたん【元旦】元日の朝の意で、会話にも文章にも使われ る、いくぶん古風な感じの漢語。〈一年の計はーにあり〉 〈一に机に向かう〉本来は朝だけをさすが、「旦」の意味 がわかりにくくなり、今は「元日」同様の意味に使われる例 も多い。専元日 かんだんけい【寒暖計】気温を測定するための温度計をさし、 会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な感じのある日 常の漢語。へーの目盛り)温度計 かんち【完治】全治の意で、会話にも文章にも使われるや也 専門的な漢語。〈傷がーする〉「かんじ」ともいう。「全 治」が治癒までの予定期間をさしてしばしば医者の診断書 などに用いられるのに対し、完治したか否かを問題にする 場合に使われる傾向が見られる。全快・Q全治・本復 かんち【感知】人や機械などが物事の変化などを感じ取る意 で、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。〈熱を ーする〉〈故障をーする〉〈異常事態をーしてすぐ対応す る〉ひQ察知・推察・洞察・見抜く かんちがい【勘違い】事実をうっかり誤解する意で、会話や 硬くない文章に使われる表現。へとんだー)へうっかりーす る)へてっきり自分のことだとーする)木山捷平の『十三 年の謎』に「抱擁の真似をすると、何をーしたのか、彼女は 本当に彼女の唇を佐々良氏の唇にくっつけてしまった」とあ る。落ち着いて考えれば正しく理解できるのに不注意から うっかり誤解してしまうという意味合いが他の類義語より 強い。Q思い違い・考え違い・誤解・錯覚 <227> がんちく【含蓄】表現の奥に秘めた深い意味合いや趣をさし、 改まった会話や文章に用いられる漢語。へのある言い方 への多い話へに富む文章谷崎潤一郎はその著『文 章読本』の中で饒舌を戒め、始めから終りまで、殆ど の一事を説いていると最重要視している。含み かんちょう【官庁】国の司法や行政などの事務を執る機関を きし、やや改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「 街〈中央ー〉お上・官公庁・Q役所 かんちょう【艦長】軍艦の乗組員を監督し指示を下す長をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈巡洋艦の—〉Q船 長・船頭 かんづく【感づく】表面的にはわかりにくいこと、特に意図 的に隠していることなどを直感的に知る意で、会話にも文 章にも使われる日常語。〈相手にー・かれる〉〈最初から怪 しいとー・いていた〉〈途中で贋物だとー〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「此頃漸くー・いたのに」とある。鳥気が付 く・気付く・察する・察知 かんてい【鑑定】古い美術品や証拠物件など、物の真偽や価 値などを詳細に調べて判定し結論を出す意で、会話にも文 章にも使われる専門的な漢語。〈書〉〈に出す〉〈絵画 のーを依頼する〉〈本人の筆跡か否かをーする〉鑑識・Q鑑 別・区別・識別・判別・弁別・見分け かんてい【官邸】国が大臣・長官や高級官僚に貸与する邸宅を さし、会話にも文章にも使われる漢語。へに入る〉へ報道 陣がーに押しかける)の「首相ー」を単にこう呼ぶこともあ る。公邸 かんとく かんてつ【貫徹】達成するまで同じ物事を貫く意で、改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈初志—〉方針をーす る〉谷崎潤一郎の『金と銀』に「目的は此れで完全にーす る」とある。貫く・徹する・Q徹底 かんてん【観点】物事を考えるときに採用する一定の立場を さし、会話にも文章にも使われる、やや硬い感じの漢語。 〈女性のーに立つ発言〉〈ーが異なる〉〈物事を別のーから とらえる〉本来は観察地点の意であるが、実際に目で見 る場合の立ち位置の意ではあまり使わず、考察の立脚点と いった抽象的な意味の用法が一般的。見地・視座・Q視点・立 場 かんどう【感動】光景や行為や作品などに強く心を動かされ て深い充足感を抱く意で、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の漢語。へー的な光景〉(深くーする) へーを覚える〉へーを新たにする〉網野菊の『医療費』に 「私は青年の親切にーし、涙が出て困った」とある。Q感 激・感嘆・感銘 かんどう【間道】主要な街道から外れた脇道をさし、会話に も文章にも使われる古風な漢語。〈ーを抜ける〉み近道・抜け 道・Q脇道 かんとく【監督】部下の行動を指導・指揮すること、また、そ の人をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈試験〉 〈現場〉〈映画〉〈野球のーを務める〉〈ーの采配が冴え る〉小林多喜二の『蟹工船』に「ーは鶏冠をピンと立てた 喧嘩鶏のように、工場を廻って歩いていた」とある。なお、 松竹の城戸社長が小津作品は文学的だが映画的でないと暗 <228> かんどころ に観客が少ないことを嘆くと、小津安二郎は「じゃ、やめ て守衛でもやりましょう、ちょうど髭ものびてきたから」と 応じたという。「官庁」「不行き届き」のように、立場 上指導・指揮する行為をさすこともある。職務としての正 式名称。ひ指揮官 かんどころ【勘所】ものごとの肝心かなめのところをさし、 会話にも文章にも使われるやや古風な表現。へーをつかむ へーを押さえる)②島木健作の『生活の探求』に「生活とい うもののーを握っている」とある。呼吸②・こつ・Q壺②・秘 訣・要領 カンニング試験などで他人の答案や持ち込みが禁じられて いる本ノートなどをひそかに見る不正行為をさし、会話や 軽い文章に使われる英語の日本的用法。〈ペーパー〉〈 が見つかる〉の「ずるい」という意味の英語を「試験での不 正行為」の意に転用。 かんぬし【神主】神道で、神社で神をまつり神に奉仕するこ とを職務とする人をさし、会話にも文章にも使われる日常 の和語。へーにお祓いをしてもらう)啓司・Q神官・神職 かんねん【観念】ある物事に対して抱く固定的な意識内容を さし、学術的な会話や文章に用いられる専門的で硬い漢語。 〈固定〉へーを認識する〉〈善悪のー〉〈時間のーがない〉 「潔くーしろ」のように、諦めて覚悟をするという意味で も使われ、その場合はいささか古風な日常語。専概念・理念 かんばしい【芳しい】芳香がする意で、主に文章に用いられ る、やや古風な和語。〈梅の香りが漂う〉成績がー・く ない」「世間の評判がー・くない」のように、好ましいの意 で多くそれを否定の形で使う用法もある。JQかぐわしい・こうばしい かんばせ「顔」を意味する雅語。〈花の—〉「かおばせ」 の転。「かおばせ」よりはまだ使われる。顔・Q顔ばせ・顔 面・つら かんばつ【旱(干)魅】「旱の意でやや改また会話や文 章に用いられる正式な感じの漢語。〈ーに見舞われる〉〈ー による被害が深刻な状態だ〉乃日照り・Q旱 がんばる【頑張る】苦労をいとわず苦痛にも耐えて一所懸命 に努力する意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われ る基本的な日常語。〈最後まで〉〈優勝をめざして〉 〈期待に応えられるよう〉、ひいそしむ・精進・Q努力・励む かんばん【看板】商店の名称や劇場などの広告・宣伝を記して 人目につきやすい所に掲げる板をさし、会話にも文章にも 使われる日常の漢語。〈表—〉〈—倒れ〉〈店の—〉〈正月映 画の—〉〈大きな—を出す〉③林芙美子の『下町』に「アメ リカ風な絵—が、みんな唸って迫ってくるような大きい建 物の谷間」とある。「立て札」より長期にわたって掲げ固定 的。ヨ立て札 かんびょう【看病】病人の世話をする意で、くだけた会話か ら文章まで広く使われる、いくらか古風になりかけている 日常の漢語。〈疲れ〉〈母親の—に明け暮れる〉〈付きっ 切りで—する〉病院の雰囲気の強い「看護」と比べ、自宅 を連想させやすい。介護・介抱・Q看護・ケア かんぶ【幹部】組織内で指導的立場にある高い地位をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一職員〉〈一候補生〉 <229> 組合のー 上層部より少し幅が広い。上層部 かんぷく【感服】下位者の立場から上位者を高く評価する感 じの、やや改まった漢語。まことにーの至り《ほとほと ー仕まりました内田百閒の『掻痒記』に「経験者でなけ れば云われない至言だと、心中大いにーした」とある。感 心・傾倒・Q敬服・心醉・心服 がんぶつ【贋物】「偽物」の意で、改まった会話や文章に用 いられるやや専門的な硬い漢語。へーと知らずに買わされ る〉〈横山大観の絵のーが出回る〉井伏鱒二の『珍品堂主 人』に「そのころのーと云ったら無茶でした。つまり需要 者の方で見さかいがつかないのです」とある。偽物・Qに せ物・にせ者・まがい物 かんぺき【完璧】非の打ち所のない完全無欠の意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈な作品〉〈な演技〉〈を 期する〉〈一には程遠い〉②まったく瑕だのない玉の意から。 近年、「一に間違えた」のように好ましくない事柄に対する 強調表現として使う異例の用法が目立つ。完全 かんべつ【鑑別】特徴などを調べて真偽や年代や作者などを 見分ける意で、会話にも文章にも使われるやや専門的な雰 囲気の漢語。〈書画や刀剣の—〉〈宝石を—する〉②「鑑定」 の結果を出すまでの過程に相当する。「鑑定」や「鑑識」と 違い、警察関係にはあまり使われない。鑑識・Q鑑定・区別・ 識別・判別・弁別・見分け かんべん【勘弁】他人の過ちなどを許す意で、会話や硬くな い文章に用いられる、いくらか古風な漢語。〈ーできない〉 〈どうぞ御ーください〉の「容赦」よりも軽い意味合いで使 かんめい うことが多い。「そればかりは御ーを」のように、やめてく れと頼む場合にも使う。貴赦す かんべん【簡便】簡単で便利の意で、いくぶん改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈一な方法〉〈一な手続きで済 む〉簡潔・簡単・簡明・Q簡略 かんぼう【感冒】風邪の意で文章にまれに用いられる専門的 な雰囲気のやや古風な漢語。〈流行性—〉風邪 がんぼう【願望】実現したいと望み願う意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈変身ー〉〈自殺ー〉〈ーを抱く〉 〈長年のーがかなう〉〈ーを遂げる〉専期待・Q希望・願い・願い 事・ねぎこと・念願・望み・夢② かんぼく【灌木】「低木」の旧称にあたる漢語。〈一の茂み〉 ひ低木 がんほん【元本】預金などで利子を生ずる基礎となる金銭を さし、会話にも文章にも使われる専門的な漢語。〈割れ〉 〈ーを保証する〉広義には、預金のほか債権や賃貸不動産 や貸地などを含め、利益を生ずる基礎となる財産すべてを さす。Qがん金①・もと金② かんめい【感(肝)銘】深く感動して記憶に刻まれる意で、や や改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーを与える〉 〈ーを受ける〉③三島由紀夫の『金閣寺』に「悲しいーに見 舞われ」とある。強く印象に残るという雰囲気が強い。 感激・感嘆・Q感動 かんめい【簡明】簡単でわかりやすい意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ーに答える〉〈要点のみーに述べ る〉「簡単明瞭」の略。単簡潔・簡単・Q簡便・簡略 <230> がんめん がんめん【顔面】身体部位としての顔の表面を意味して改ま った会話や文章に用いられる、やや硬い感じの漢語。〈神 経痛〉〈一蒼白〉〈一を強打する〉Q顔・顔ばせ・かんばせ・つ ら かんゆう【勧誘】場所や物事へ「誘う」ことをさし、会話で も文章でも使われる漢語。〈ー員〉〈保険のー〉〈入会をー する〉の「いざなう」や「誘う」に比べ、具体的な行動に使 う例が多い。ひいざなう・Qさそう かんよ【関与】「関わる」に近い意で、主として硬い文章に用 いられる漢語。〈政治に—する〉〈事件に—する〉〈—が認 められる〉「関する」はもちろん「関わる」に比べても、 関係の深い感じがある。Q関わる・関する かんよう【寛容】広い心で受け入れる意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈一の精神〉〈一な態度〉〈一に事 を運ぶ〉の「寛大」よりも、他人の過ちを許すような場合に よく使われ、咎め立てをしないといった雰囲気を感じさせ る。福原麟太郎は『交友について』で、友情には「一が大切 である」が、ただ、「そのーを強いないでほしい」と述べて いる。児寛大 かんようく【慣用句】二語以上の結合や語順が固定され、全体の意味が構成要素である個々の語の意味の総和から論理的に導けない語結合をさし、会話にも文章にも使われるやや専門的な漢語。「腹」を用いた」〈ーを駆使する〉「水に流す」「足を出す」「顔に泥を塗る」など。「悦に入る」「顰蹙なり」を買う「にっちもさっちも行かない」のような単なる固定的な連語を含む場合もある。また、「梯子酒紙」 「左団扇」のような比喻的派生的な意味を持つ複合語 や、「負けず嫌い」「無理からぬ」のように論理的あるいは 文法的に説明できない慣用的な言い回し、ご馳走様で した」「どういたしまして」のような世間で慣用的に頻用さ れる一定の表現、さらには、「尤もも過ぎれば嘘になる」 は小林秀雄の」というふうに個人の独特な常套句をさ す用法もある。Qイディオム・格言・諺わ・成句 がんらい【元来】最初から変わらずにある意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ー丈夫なたちだ〉〈一短気な性分 で〉〈一の怠け者〉夏目漱石の『虞美人草』は「随分遠い ね。ー何処から登るのだ」という会話で始まる。ここは 「もともと」の意で、「本来」と比べ、あるべき姿といった感 じは薄く、特に評価は含まれない。乃本来・もともと・もとより かんらくがい【歓楽街】飲食店や劇場・ゲームセンターなどの 娯楽施設が集まっている地域をさし、会話にも文章にも使 われる漢語。〈一に繰り出す〉「繁華街」の一部。乃Q盛 り場・繁華街 かんらんせき【観覧席】スポーツやショーなどを見物するた めの席をさし、会話にも文章にも使われるいくぶん古風な 漢語。へーから見下ろす〉へーが空いている〉きQ観客席・客 席・スタンド かんり【官吏】国家公務員の旧称。〈高級—〉公務員・Q公吏 役人 かんりゃく【簡略】繁雑な部分を省き手軽に済ませる意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー化を図る〉 〈ーな地図〉〈ーに記す〉部分のに省いただけで「簡潔」ほ <231> ど締まった感じがしない。 Q簡潔簡単簡便簡明 かんりょう【完了】予定したことをすべて完全にやり終える 意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈準備 ー〉〈作業がーする〉単なる「終了」ではなく、計画した ことを完遂する意だが、「完成」と違い、必ずしもまとまっ た形が得られるとは限らない。Q完結・完成・終了 かんれい【慣例】ある社会などで長い間繰り返され、今では 当たり前になっている形式や方法をさし、やや改まった会 話や文章に用いられる硬い漢語。へに従う〉(それがーと なっている)の「慣習」に比べ、こういう時にはこうしてき たといった過去のやり方が今後に影響力を及ぼすというニ ュアンスが強い。僕習・癖・Qしきたり・習慣・習わし・風習 かんれん【関連(聯)】関わりや繋がりのある意で、いくぶん 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー性がある〉へー 企業〉へーの事業〉へーが薄い〉〈何らかのーを有する〉〈事 件にーのある目撃情報〉の人間や人間を中心とした国家な どの関係より、事物や事象の間の抽象的な関係をさす例が 多い。「ー事項」や国会での「ー質問」など、「関係」に換言 しにくい用法もある。刂間柄・縁①・掛かり合い・関わり・係わり 合い・Q関係①・続柄・続き柄・繋がり・連関 は き【木】幹が木質化して硬くなった植物、高木や低木の総称。 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な日 常の和語。「樹木」も「材木」も「木製品」もすべて含む。 へーを植える〉へーに登る〉小沼丹の『枯葉』に「狭い庭に 雑然と植わっているーは茂り放題に茂って、長いこと床屋 に行かない頭のようになった」とある。刂樹木 ぎあん【議案】審議して議決するために提出する原案の意で、 改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈第三号— の審議に入る〉へーを上程する〉は議題 さい【奇異】不自然に風変わりで珍しい意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。へーな感じがする)へいささかー に響く)へーの念を抱く)専怪奇奇怪・奇怪・奇怪・Q奇妙・奇妙奇天 烈れ・不可思議・不思議・変・摩訶不思議・妙 キー鍵の意で会話や軽い文章に使われる外来語。ヘマスタ ーーヘスペアーヘーホルダーヘ車のーを回してエンジ ンを掛ける家や金庫や机など一般的にはあまり用いず、 自動車などの場合に限ってよく使う。単独で用いるといさ さか気障ぎっぽい。「ピアノのーを叩く」として鍵盤をさし、 「パソコンのーを押す」として個々の文字盤をさし、「ノ ート」「が高い」として主音をさすほか、「ポイント」 として手掛かり、「ワード」「マン」として主要なの意 でもふつうに使われる。Qかぎ・錠・錠前 <232> きいたふう きいたふう【利いた風】さも知っているような小生意気な様 子をさして、主に会話に使われる古めかしい表現。へなこ とをぬかしやがる夏目漱石の『坊っちゃん』に「な事 をぬかす野郎だ。そんなら、なぜ置いた」とあるが、現代で は大学生にもほとんど通じなくなったように観察される。 Q小賢しい生意気 キーホルダー鍵の紛失を防ぐ目的でまとめて保管するため の小物をきす和製英語。〈銀製の高価なー〉 きえうせる【消え失せる】消えて無くなる意で、会話やさほ ど硬くない文章に使われる和語。〈現金が跡形も無く—〉 へとっととこの場からー・せろ〉和田伝の『沃土』に「どれ もこれも、みんなもう少しというところで砂のように崩れ 煙のようにー・せてしまった」とある。Q消える・消失・消滅 きえつ【喜悦】嬉しくてたまらないような強い喜びをさし、 文章に用いられる古風な漢語。〈一の念〉〈顔に一の色が浮 かぶ〉林芙美子の『羽柴秀吉』に「舌につばきのたまるよ うなーの境にはいっていた」とある。Q歓喜・欣喜雀躍 きえる【消える】人・物・現象などが無くなる意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈火がー〉〈雪がー〉〈明かりがー〉〈姿がー〉〈においがー〉 〈疑いがー〉〈闇にー〉四川端康成の『千羽鶴』に「・え終 るような声は母に似た」とある。Q消え失せる・消失・消滅 きおく【記憶】経験したことや感覚などを頭に覚えている意 で、会話にも文章にも使われる漢語。「力〉「喪失〉「は っきりーしている〉「が薄れる〉「がある〉「にない 〈一に残る〉永井荷風の『雨瀟瀟』に「その年の日記を繰り開いて見るまでもなく斯く明にーしているのは、其夜の雨から時候が打って変ってとても浴衣一枚ではいられぬ肌寒さにわたしはうろたえて襦袢を重ねたのみか」とある。覚える きおち【気落ち】がっかりして元気がなくなる意で、会話に も文章にも使われる古風な和語。〈両親を相次いで失いすっ かりーする〉もがっかり・Q失意・失望・落胆 きおん【気温】大気の温度の意で、会話にも文章にも使われ る日常の漢語。〈最高—〉〈日中の—〉〈—が上昇する〉〈— の変化が激しい〉本間千枝子の『没落士族』に「三鷹のあ たりは都心より—が四、五度は低く」とある。乃温度 ぎおんご【擬音語】音を言語音で写生したことばの総称として、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。ヘニャーオやドシンはの一例である》「擬態語」と対立する。最広義には「オノマトペ」全体をさすこともある。狭義には、広義の「擬声語」のうち、人や動物の声などを別にし、「キーッ」「ガチャン」「ゴロゴロ」「ザーッ」など、もっぱら自然の音響を言語音で模写したものに限定して用い、その場合には狭義の「擬声語」と対立関係にある。ひオノマトペ・擬状語・擬情語・Q擬声語・擬態語・擬容語 ぎが【戯画】諷刺を利かせた滑稽な絵をさし、主として文章 中に用いられるやや硬い漢語。〈鳥獣—〉〈—化する〉鳥 崎藤村の『飯倉だより』に「新時代の—」とある。「漫画」 に比べ一枚の絵を連想させやすい。単コミック・Q漫画 きかい【奇怪】常識の通らない不思議なという意で、会話に <233> も文章にも使われる漢語。「な論理をふりまわす」「な 姿」「な行動をとる」驚き以外に好ましくないと思う気 持ちが加わっている。強調する場合は「奇っ怪」と発音す る。Q怪奇・奇異・奇っ怪・奇妙・奇妙奇天烈・不可思議・不思議・ 変・摩訶不思議・妙 きかい【機会】その事ができる時、あるいは、それにふさわしいタイミングをさし、会話にも文章にも使われる漢語。 ぐじっとーを待つ〈ーを改めて〉(このーに)へーに恵まれる〈二度とないいいーだ〉〈絶好のーを逃す〉②中勘助の 『銀の匙』に「知らせるーがないのを心から残念に思った」とある。「好機」や「チャンス」ほど明確ではないが、いい 機会を意味する例が多い。ただし、「均等」のように、単なる参加の可能性にとどまる用法もある。好機・Qチャンス きかい【機械/器械】人間の意図した働きをするように設計し製作した道具をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常漢語。〈ー文明〉〈精密〉〈ーをいじる〉 ③椎名麟三の『永遠なる序章』に「地震のようにーの震動が 廊下の鉄壁に伝わって来て」とある。ほとんど「機械」で間 に合うが、「光学」のような小規模のものや、「体操」 のような単純な道具の場合には「器械」と書き分ける傾向 がある。児器具・機具 きがい【気概】ものに屈しない強い気持ちの意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈ーがある〉〈ーを持つ〉 〈ーを示す〉意気込み・意欲・意力・気骨・Q気迫・気力・根性・精神 力・と根性・やる気 きかえる【着替える】着ているものを脱いで別のものに取り きがつく 替える意の和語。今では古風な語形。ヘ洋服に・えて外出 する)現在多用される「着がえる」の本来の語形。相手に その知識があれば、素養のある雰囲気や古風な感じが伝わ る。名詞形の「着かえ」はさらに古めかしい響きがある。 三島由紀夫の『橋づくし』に「いそいで浴衣に・えた」と ある。ヒ着がえる きがえる【着替える】本来は「着かえる」だが、現在は日常 会話でこの語形のほうが一般的で圧倒的に多く使われる。 〈セーターに〉正統的でないという響きを感じる人もあ るが、名詞形の「着がえ」はかなり長い伝統があり、崩れた 感じはさらに薄い。ふ着かえる きがかり【気掛(懸)かり】気持ちに引っかかるものがあって 安心できない意で、会話や軽い文章に使われる表現。〈一な ことがあってよく眠れない〉(子供の先行きがーだ)林芙 美子の『放浪記』に「何だかーな気持ちで神戸駅に降りてし まった」とある。恐れ・危惧・懸念・心配・不安 きかく【企画】催しや事業などの計画の意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈会議〉〈立案〉〈を進め る〉〈格安の旅行をーする〉②「計画」よりも使用範囲が限 られ、方法や手順などがより具体的にきまっている傾向が 強い。青写真・Q計画・構想・ブラン きがつく気が付く「気付く」意の少しだけた表現で、会 話やさほど改まらない文章に使われる。何かとよくー 〈時計が遅れているのにー〉へと外は暗くなっていた 井伏鱒二の『点滴』に「水道栓をいつも同じぐらいの締めか たにして、したり顔で座に引返していることにーいた」と <234> きがね ある。「気を失った人がようやく」のように、意識を取り 戻す意でも使われる。夢感づく・Q気付く きがね【気兼ね】他人に気を遣って行動を控えめにする意で 会話にも文章にも使われる日常語。〈上司にーする〉〈隣近 所にーして音量をしぼる〉〈ーがあって肩が凝る〉〈誰にー することもなく〉〈ーがあって自由にものが言えない〉②態 度や行為を含めた「遠慮」に対し、そのもとにある気持ちに 重点がある。正宗白鳥の『生まざりしならぼ』に「今夜のよ うに家中に閉籠って、傍にーしないで遊んでいる方が却っ てましなのかも知れない」とある。違慮 きがる【気軽】緊張することのない軽い気分の意で、会話に も文章にも使われる日常語。〈ーに引き受ける〉〈ーに話し かける〉〈ーに相談できる相手〉専気楽 きかん【機関】ある目的のためにそれぞれが一定の役割を果 たすように組み立てられた組織をさし、やや改まった会話 や文章に用いられる硬い漢語。〈内燃—〉〈金融—〉〈議決 ー〉〈交通—〉ひQ機構・組み立て・構成・構造・仕組み・組織 きかん【期間】いつからいつまでと定めたその間をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈中〉〈有効〉〈限定 の商品〉〈申し込みのーが過ぎる〉〈ーを延長する〉②分や 時間のような短い間ではなく、日・月・年単位のある程度長 い場合に使う。き時期 きかんき【利(聞)かん気】他人の言いなりにはならないという反抗心などの意で、主にくだけた会話に使われる、やや古風な表現。〈な坊や〉〈が強い〉勝ち気・気丈・Q負けず嫌い・負けん気 きき【危機】危ない状態やその時期をさし、主に文章中に用 いられる硬い漢語。〈一髪〉〈金融〉〈ーを救う〉〈ーを 脱する〉〈ーが訪れる〉〈最大のーを迎える〉の芥川龍之介 の『或阿呆の一生』に「わずかにこのーを脱出した」とあ る。ヒンチ ぎぎ【疑義】疑わしい内容、意味が明確でなく疑問に思うこと とをさし、主に文章に用いられる硬い漢語。「がある 「をさしはさむ」「を質がす」他人の説明・論文・法案な どの内容に関して用いる例が多い。疑い・疑念・疑問・Q疑惑 ききあやまる【聞き誤る】聞いた内容を誤解する意で、改ま った会話や文章に用いられる和語。「道順を」「聞き落と す・Q聞き損なう聞き逃す・聞き漏らす・聞き忘れる きおとす【聞き落とす】聞いていて一部の情報を得そこな う意で、会話にも文章にも使われる和語。〈肝心の箇所を ー〉②事実だけを伝える感じの「聞き漏らす」に比べ、迂 闊にもというニュアンスが伴う。り聞き誤る・聞き損なう・Q 聞き逃す・聞き漏らす・聞き忘れる ききそこなう【聞き損なう】聞いた内容を誤解する、うっか り聞き逃すの意で、会話や硬くない文章に使われる和語。 〈趣旨を—〉〈遅くなって最初の部分を—〉ひ聞き誤る・聞き落 とす・聞き逃す・Q聞き漏らす・聞き忘れる ききて【聞き手/聴き手】話を聞く側の人間をさし、会話で も文章でも使われる日常の和語。へに正確に伝わる〉へ の反応を見ながら話す〉への笑いを誘う〉もっぽらに まわる〉く作家訪問でーを務める〉インタビューを意味 する場合はやや古風な感じがある。ほとんど「聞き手」で <235> 間に合うが、「の反応」などの例で聴衆という意味である ことを明確にする意図で特に「聴き手」と書き分けること がある。その表記はやや専門的でいくらか新しい感じを与 える。ひインタビュアー・受け手・受信者 ききのがす【聞き逃す】聞こうと思いながら聞く機会を逸す る、聞いていて一部を聞き漏らす意で、会話にも文章にも 使われる和語。〈楽しみにしていた音楽を—〉〈天気予報で 肝心の明日の部分を—〉図き誤る・Q聞き落とす・聞き損なう・ 聞き漏らす・聞き忘れる さきめ【効(利)き目】働きかける作用の期待どおりの結果を さし、会話や軽い文章に使われる日常の和語。〈薬のー〉 (ーがない)〈ーがすぐ現れる〉効果・Q効能・効用 さきもらす【聞き漏らす】聞き落とす意で、会話にも文章に も使われる和語。〈ニュースの中で内閣支持率の数字を—〉 刂聞き誤る・Q聞き落とす・聞き損なう・聞き逃す・聞き忘れる ぎきよ【義挙】損得抜きで正義のために事を起こす意で、主 に文章に用いられる古めかしく硬い漢語。〈元禄のーと讃 えられる〉)快挙・壮挙・Q美挙 ききょう【帰郷】故郷に帰る意で、主に文章に用いられる、 いくらか詩的な雰囲気の漢語。今年のお盆にはーできる かもしれない)久しぶりのーが待ち遠しい)帰省」よ り回数の少ない感じがあり、それだけ懐かしい感情も強い。 休みのたびに帰るような場合に使うと大仰過ぎて違和感が ある。帰京・帰省 ききよう【帰京】都に帰る意で、やや改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈十日にーの予定〉現代では東京の場合 さく に限って使い、「上京」ほどではないが、長く都のあった京 都の人などには心理的に抵抗があるかもしれない。帰郷 きぎよう【企業】生産や販売などの経済活動を営む営利目的 の組織体をさし、いくぶん改まった会話や文章に用いられ る正式な感じの漢語。〈零細〉〈民間〉〈秘密〉〈が 倒産する〉ひ会社 ぎきよく【戲曲】演劇として上演する目的で書く脚本をさし、 やや改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。 〈小説の化〉「仕立ての小説」②本自体よりもジャンル という意識が強く、あえてそういう形式で書いた、読むた めの文学作品もある。単脚本・コンテ・Qシナリオ・台本 きわけ【聞き分け】親などの忠告を理解し納得する意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈ーがいい〉へーのない 子〉の「物分かり」と違って、ほとんど子供について使われ る。単物分かり ききわすれる【聞き忘れる】聞く予定だったものをうっかり 忘れて機会を逃す意で、会話でも文章でも使われる和語。 〈天気予報を—〉ひ聞き誤る・聞き落とす・聞き損なう・Q聞き逃す・聞き漏らす きく【利く】機能する意で、会話でも文章でも広く用いられ る日常の和語。〈気がー〉〈右手がー〉〈修理がー〉〈対等に 口をー〉〈わさびがー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「気 ー・かぬ田舎もの」とある。効く さく【効く】効果があるという意味で、会話でも文章でも幅 広く使われる日常の和語。〈薬が—〉〈宣伝が—〉久保田 万太郎の『末枯』に「莫迦がに今日は酒の—ような気がする <236> きく よーとある。ゆ利く きく【聴く】「聞く」のうち、注意深く耳を傾ける意を特に書 き分ける場合の表記。〈名曲を—〉〈講義を—〉〈せせらぎ の音を—〉〈耳を澄まして—〉の「聞く」より美的に響く場 合もあり、文体的なレベルも高い。ただし、理解力より聴 力が意識される面もある。鳥聞く きく【聞く】音や声を耳で感じ取る意で、くだけた会話から 文章まで幅広く使われる最も基本的な和語。〈物音を—〉 〈鳥のさえずりを—〉の丼伏鱒二の『黒い雨』に「僕を呼ん でいる金切声を—・いた」とある。「道を—」のように「尋ね る」意では「訊く」と書いて区別することもある。小沼丹の 『小さな手袋』にも「痩せた女はこの男を面白い人だと思っ たのかもしれない、いろんなことを訊く」とある。専聴く 尋ねる・問う きく【危懼】↓きぐ危惧 ぐ器具道具としての比較的小規模な機械をさし、会話 でも文章でも使われる日常の漢語。〈電気—〉〈医療—〉 〈一の点検〉「機具」に比べ、小規模で比較的単純な生活 用品を連想しやすい。刂機具 さぐ【機具】単純で中規模の機械をさし、会話でも文章でも 使われる漢語。〈農—〉〈土木—〉〈ーを搬入する〉器 具一より少し大がかりな道具を連想しやすい。単器具 ぐ【危惧】近い将来に好ましくないことが起こりそうで心 配な意で、改まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。 へいささかーもある)へーの念を抱く)⑨漠然とした不安よ り、「度重なる挑発行為に周囲はーの念を強めている」のよ うに何らかの事実を根拠として心配する場合が多い。「懸 念」に比べると、悪い結果を恐れる気持ちが強い。夏目漱 石の『明暗』に「実意の作用に至ると、勢いーの念が伴わざ るを得なかった」とある。専恐れ・気がかり・Q懸念・心配・不安 きくっと突然の出来事に驚き恐れるときに、会話や軽い文 章に使われる擬態語。〈突然のことにーする〉高橋和巳の 『悲の器』に「鏡にうつる自分の顔に、私はーした。見知ら ぬ者の狂気の相がそこにあった」とある。Qぎくりと・きよ っと・どきっと・どきりと・どきんと・はっと きくばり【気配り】周囲の人間の気持ちを考えて手落ちがな いように気をつける意で、会話にも文章にも使われる日常 語。へーが行き届く)〈周りへのーを欠かさない)温かい 心から出る具体的で質的な「心配り」「心遣い」に対して、 この語はいろいろな点に広く神経を働かせる場合に用いる 傾向がある。気遣い・Q心配り・心遣い・配慮 さぐらい【気位】品位を高く保とうとする気持ちをさし、会 話にも文章にも使われる日常語。〈ーが高い〉〈ーを持つ〉 の林芙美子の『浮雲』に「持参金つきの嫁のような、妙なー をみせて」とある。ひ矜持・自尊心・自負・Qブライド・誇り ぎくりと「ぎくっと」の意で、会話や硬くない文章に使われ る擬態語。〈思いがけない質問にーする〉の幸田文の『おと うと』に「そこまで聴くと、どういう事態なのかが呑みこめ てーした」とある。ひぎくっと・ぎょっと・どきっと・Qどきりと・ どきんと・はっと ぐろう気苦労心配事が多くあれこれ気を遣う意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈何かにつけーが多い〉〈あ <237> れこれーが重なる が絶えない 心痛・Q心労 きけつ【帰結】紆余曲折のあった議論などで最後にまとまっ て落ち着くところをさし、改まった会話や文章に用いられ る硬い漢語。〈論理的—〉〈当然の—〉の大岡昇平の『武蔵 野夫人』に「今度の敗戦は明治の足軽政府の猪突主義の当然 のーであり」とある。Q結果・結論 ざけつ【議決】会議などの場において合議の上で決定する意 で、改まった会話や文章に用いられる専門的な硬い漢語。 〈機関〉〈権を有する〉〈衆議院でーする〉決議 きけん【危険】「危ない」意で、「危ない」よりやや改まり、 「あやうい」ほどは改まらないレベルの漢語的日常語。〈身 にーが迫る〉〈ーを冒して〉〈ーな仕事〉〈ーな思想〉〈ー極 まりない〉〈ーな賭けに出る〉川端康成の『雪国』に「虚 偽の麻痺には、破廉恥なーが句っていて」とある。Q危な い・危うい ざげん【期限】受付などの開始から締め切りまでの期間、特 に最終日をさして、会話にも文章にも使われる漢語。〈有効 〉〈ーを設ける〉〈ーが近づく〉〈ーが切れる〉〈ーを延ば す〉刂期日・Q締め切り きげん【機嫌】表情・態度・行動などに表れる快・不快の気分を さし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈上—〉〈朝 から—がいい〉〈不—〉〈急に—が悪くなる〉〈—が直る〉 上林暁の『極楽寺門前』に「まだ—が直っていないんだな と思った」とある。具感情・気分・気持ち・心地・心持ち・心情・心 理・精神 きこう【起工】大規模な工事を開始する意で、改まった会話 きこうし や文章に使われる専門的な漢語。〈一式〉〈十月に—する〉 の「着工」より大がかりな工事を連想させ、より専門語的。 ひ着工 さこう【機構】機械や団体や組織などの内部の組み立てをさ し、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈動力伝達 ー〉〈流通ー〉Q機関・組み立て・構成・構造・仕組み・組織 きこう【気候】ある土地での気温・晴雨・湿度・気圧などの長期 にわたる気象状況をさし、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈海洋性の—〉へ—が 穏やかだ〉へ—に恵まれる〉へ—が温暖だ〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「(田舎は)—だって東京より不順に極って いる」という独断的偏見が出る。専気象時候 きごう【記号】約束により一定の意味・内容を表す文字・音声・ 信号・形などの印をさし、会話にも文章にも広く使われる漢 語。〈元素—〉〈発音—〉〈—論〉〈—を付ける〉〈—で表示 する〉②狭義には、?+*#☆%など、文字以外の符号を さし、「符号」よりよく使う。符号 ぎこう【技巧】物事を表現・製作する際に用いる特別の技術を さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー派〉〈ーを極め る〉〈ーを凝らす〉〈ーに走る〉細かいテクニックをさし て若干軽蔑的に使う例もある。小林秀雄は鎌倉の自宅で質 問に答え、「そういう形式は僕の任意なーじゃない。決して 単なるレトリックじゃない」と声を大きくした。②腕 前・技術・技能・技法・技量・Qテクニック・技 きこうし【貴公子】身分の高い家の若い男、また、そのよう に上品な雰囲気の青年をさし、会話にも文章にも使われる <238> おこつ 古風な漢語。へいかにもー然とした風貌)ひシエントルマン・ Q紳士 ざこつ【気骨】強い信念をもち困難にも屈しない精神力の意 で、やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な 漢語。へーのある頼もしい人物)意気込み・意欲・意力・気概・ 気迫・気力・Q根性・精神力・と根性・やる気 きさい【記載】文書に書いて載せる意で、改まった会話や文 章に用いられる正式な感じの漢語。〈一事項〉〈漏れ〉 〈書類に氏名を—する〉の島崎藤村の『破戒』に「この当時 の光景は「懺悔録」の中に精しくーしてあった」とある。 Q記入・記録 さざい【機材】機具と材料、または、機具の材料を意味し、 会話でも文章でも使われるやや専門的な漢語。〈建設用の ーを搬送する〉Q器材・器財 さざい【器材】「機材」に近い意で、会話でも文章でも使われ るやや専門的な漢語。〈観測用の—〉〈教育用の—〉の「機 材」より小規模なものを連想しやすい。「撮影用の—」の場 合は物によって適切な表記が異なる。Q機材・器財 さざい【器財】器や道具類の意で、主に文章に用いる硬い漢 語。〈一式をとりそろえる〉乃機材・Q器材 ささし【兆(萌)し】何かが起こり始めることを感じさせる微 かな変化をさし、会話にも文章にも使われる和語。春の ー〉〈衰退のーが現れる〉〈回復のーが見られる〉以前兆・兆 候・前触れ・予兆 きさま【貴様】同等以下の相手を見下したり対抗意識をむき 出したりして言うときに使うぞんざいな表現。へーの せいだ〉へなんかに負けないぞ〉おい、こんなこと をしやがって、どうする気だ》夏目漱石の「坊ちゃん」 で山嵐が教頭の赤シャツに向かって「宵に」のなじみの芸 者が角屋へ這入ったのを見て云う事だ。胡魔化せるものか」 とこの語を使っているが、それは「天に代って誅戮を加え る」場面である。小林秀雄の『作家の顔』に「ドストエフス キイ、が癲癇で泡を噴いているざまはなんだ」とある。 古くは目上に使う敬称。今はこのようにののしるときか、 せいぜい「ってやつはほんとにいいやつだなあ」などと、 ごく近しい目下に特に親しみをこめて使う程度だが、戦時 中は「と俺」のバンカラな感じが好まれ、上品な「君と 僕」に代わって軍隊などの男の間でかなり使われたようで ある。「お前」に比べ、親しみをこめて言うケースは現代で は少ない。みあなた・あなた様・あんた・Qお前・君・てめえ さんじ【気散じ】「気晴らし」の意の古めかしい表現。 に山歩きをする》堀辰雄の『菜穂子』に「一生のうちでそ う何度も経験出来ないような、美しいな日々」とある。 憂さ晴らし・Q気晴らし・慰み きし【岸】海・湖・川・池などに接するあたりの陸地をさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈向こう—〉〈一の柳〉〈一に泳ぎ着く〉夏目漱石 の「坊っちゃん」に「釣をするには、あまりーじゃいけない」 とある。み磯・うみべ・沿岸・海岸・海浜・かいへん・Q岸辺・なぎさ・ 波打ち際・浜・浜辺・みぎわ・水際・水辺 きじ【生地】衣服を作る材料として見た布をさし、会話にも 文章にも使われる日常語。〈丈夫なー〉へーがいいへーを <239> 裁断する)絹麻木綿といった布の種類や丈夫だとか伸 縮性に富むとかといった性質などを問題にする際によく使 う。刂切れ・Q布・布地 ぎし【技師】高度な専門技術を修得しそれを職業とする人を さし、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な漢語。 〈建築ー〉〈X線ー〉儀統的に使われてきた用語だけに 「技術者」よりも範囲が固定された雰囲気があり、近年のI T関係の分野ではあまり使われないように思われる。 エンジニア・技術者 ぎし【義歯】「入れ歯」の意で、学術的な会話や文章に用いられる専門的な硬い漢語。〈ーを作る〉森田草平の『煤煙』に「目だためほど上反った歯は一枚置きにーを入れて、物を言うたびに煌々と人の眼を射る」とある。入れ歯 ぎしき【儀式】一定の形式に則って行われる改まった行事で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈ー張る〉へーを執り行 う〉具体的な作法そのものをさすこともある。円地文子 の『遊魂』に「大勢の人間が動き出すのには、ーが要る、秩 序が要る、つまり祭りだな」とある。ひQ式・式典 きしつ【気質】性質のタイプをさして、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈職人—〉〈生来の—〉〈親譲りの芸術 家的な—〉「多血質」「粘液質」など遺伝的な感情傾向を 連想させやすい。夏目漱石の『行人』に「兄の—が女に似て 陰晴常なき天候の如く変る」とある。気象・気性・気立て・性 分・人格・人品・人物・性格・性向・Q性質・たち・人柄・人となり きじつ【期日】ある行為の実行について予め定めた約束の 日をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 きしゃ を定める〈ーを通知する〉〈ーに間に合わせる〉〈返済の ーが迫る〉Q期限・締め切り きしべ【岸辺】湖や川などの岸のほとりをさし、やや改まっ た会話や文章に用いられる、いくぶん趣のある和語。へを 洗う波〉へにたたずむ》梅崎春生の『桜島』に「船の中 で看護婦の白い帽子がゆれた。患者たちはーに駈け出し た」とある。ひ磯・うみべ・沿岸・海岸・海浜・かいへん・Q岸・なぎ さ・波打ち際・浜・浜辺・みぎわ・水際・水辺 きしむ【軋む】なめらかに滑らず摩擦を起こしてキシキシ音 を立てる意で、会話にも文章にも使われる和語。〈雨戸が ー〉〈廊下の床がー〉〈ベッドがー〉図室生犀星の『杏っ子』 に「自転車のタイヤが雪をくわえて鼠の鳴くように、ー・ん だ」とある。ひきしる きしゃ【汽車】「列車」の古めかしい言い方。〈一の旅〉夜ー に揺られる〉〈一の窓辺に寄り添って見送る〉夏目漱石の 「坊っちゃん」に「乗り込んで見るとマッチ箱のようなだ」 とある。本来、蒸気機関車で牽引ばする列車をさす。現在 ではほとんどの鉄道網が電化され、一部の地域で観光用な どの目的で走らせる程度になっている。その場合は「SL」 と呼ぶことが多く、日常生活でこの語を耳にするのは、年 輩者が単に「列車」の意味で用いるケースが大部分である。 単電車・Q列車 きしゃ【貴社】相手側の会社を丁寧に言うときに主に文章中 に用いられる漢語。へ幸いにしてーに就職が叶いますなら ば」の「ーの記者が汽車で帰社した」という言語遊戯がある ほど同音異義語が多く、口頭での使用は少ない。単御社 <240> きしゅう きしゅう【奇襲】敵の虚に乗じた襲撃の意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈|攻撃〉〈|戦法〉の「不意打ち」より 軍隊などの大がかりな攻撃を連想させる。単にタイミング が予想外であるだけでなく、相撲で立会いに擦れ違うよ うに蹴たぐりを仕掛けるとか、敵の想定しない攻め方をす る感じが伴う。ひ不意打ち きじゅうき【起重機】重量のある物を吊り上げて移動させる 機械をさし、会話にも文章にも使われる、やや古風な漢語。 「で建材を吊り上げる」石坂洋次郎の『山のかなたに』 に「二つの拳をーのように上下させながら」と比喻表現に 用いた例がある。きクレーン 活〉〈女学校の—〉〈—に入る〉尾崎士郎の『人生劇場』に 「夜更けの—の中は朽廃したお寺のような感じだった」とあ り、サトウハチローの『おさらい横町』に「あんまりしょう がないから、お父さんと相談して、—へ入れようと思ってい るのよ」とある。純情な女学生、親思いのやさしい娘、良妻 賢母型の女といった現代日本が失いつつある女性像をなつ かしむ風潮が出てきても、懐古調をつくりだすのは親の世 代以前だから、社員寮や学生寮に「寄宿舎」という名称を復 活させても希望者が殺到することは期待できない。このこ とばの古風な語感が、パスやトイレといった横文字の似合 わない、かつての薄暗い共同の風呂場や汲み取り式の便所 や、テレビひとつなく設備の整っていない古くさい建物を 連想させ、舎監が目を光らせてでもいるような雰囲気を漂 わせるため、むしろ申し込みが激減しそうである。 きじゅつ【記述】文章として書き記す意で、改まった会話や 文章に用いられるやや専門的な漢語。〈言語学〉〈式の 試験問題〉〈調査結果を—する〉の「叙述」に比べ、感情を 抑えるのはもちろん、推測や解釈のような主観を交えず、 冷静な態度で事実だけをありのままに客観的に記録すると いうニュアンスが強い。多叙述 きじゅつ【奇術】見る者を不思議に思わせるプロの技、特に 手品をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈師〉 「手品」より高度な感じで、指先の器用さよりも巧みな仕掛 けのある芸を連想しやすい。手品・手づま・Qマジック・魔術 ぎじゅつ【技術】物事を処理する手段や手順などの技を広く さし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈者〉生 産ー〉〈運転ー〉〈ーを身につける〉〈持てるーを駆使する〉 ②小林秀雄の『モオツァルト』に「音楽の実際の素材とーと を欠いた音楽家」とある。「ー的な問題」「科学ー」「ーの革 新」「新しいーを導入する」のように、個人の能力以外、科 学的知識などに基づく方法・手段そのものをさす用法もあ る。②腕前・技巧・Q技能・技法・テクニック・技 ぎじゅつしゃ【技術者】特定の専門技術を修得しそれを職業 とする人をさし、会話にも文章にも使われる漢語。電気関 係のーを呼ぶ〈専門のーに修理を依頼する〉「技師」や 「エンジニア」よりも広範囲に使い、必ずしもきわめて高度 な専門性に限らず幅広く用いる傾向が見られる。専エンジニ ア・Q技師 きじゅん【基準】比較・判定の基礎となる論拠の意で、会話で も文章でも幅広く使われる日常的な漢語。〈値〉〈設置 <241> 〈判断〉〈ーを設ける〉〈ーに達する〉「規準」に比 べ、数値などの具体的な材料が示される傾向が強い。規 準・標準 きじゅん【規準】行為や判断の根底をなす規則の意で、改ま った文章に用いられる硬い感じの高級な漢語。〈道德の—〉 〈拠って立つ—〉②数値以外にも広く「基準」が使われるよ うになり、この語の使用が抽象的なものにかなり狭く制限 されている。基準 きしょう気象大気の状態、大気中の現象をさして、学術 的な会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈衛星〉へ 通報〉へを観測する〉島崎藤村の『破戒』に「なかなか 毅然ゆとしたの女」とあるように、同音語の「気性」の意 味でも使われる。気候・時候・Q天気・天候/気質・Q気性・気立 て・性分・人格・人品・人物・性格・性向・性質・たち・人柄・人となり きしょう【気性】生まれつきの性質をさして、会話やさほど 硬くない文章に使われる、やや古風な漢語。〈ーが荒い〉 〈さっぱりしたー〉〈進取のーに富む〉繊田作之助の『夫 婦善哉』に「持前の勝気なーが蛇のように頭をあげて来た」 とある。「優しい」「控えめ」という方向より「激しい」 「荒々しい」「鬼のようなー」のような方向の用例が目立 つ。ひ気質・Q気象・気立て・性分・人格・人品・人物・性格・性向・性 質・たち・人柄・人となり きじよう【気丈】不幸や苦痛に屈せず心をしっかり持って力 強く立ち向かう様子をさし、会話にも文章にも使われる古 風な漢語。〈トな人〉へにふるまう〉の二葉亭四迷の『浮 雲』に「男勝りのー者」とあるように、多く弱者と見られて きじん きた女性や子供に用いている。今でも伝統的に女性に用い る例が目立つ。「気弱」と対立。勝気・きかん気・太っ腹 ぎじょうざ【擬状語】擬態語を細分したものの一つで、動作 や心情でなく、もっぱら物の状態を言語音で感覚的・象徴的 に表現することばをさし、学術的な会話や文章に用いられ る、専門性の高い漢語。「さらさら」はーの一つだ》「び かり」「きらきら」「がちがち」などがそれに当たる。 /マトペ・擬音語・擬情語・擬声語・Q擬態語・擬容語 ぎじょうご【擬情語】擬態語を細分したもののうち、動作や 状態ではなく、もっぱら人の心情を言語音で感覚的・象徴的 に表現することばをさし、学術的な会話や文章に用いられ る、専門性の高い漢語。「やきもき」は—の一例だ》「い らいら」「くよくよ」「じりじり」「わくわく」などがそれに 当たる。ひオノマトペ・擬音語・擬状語・擬声語・Q擬態語・擬容語 きしる【軋(轢)る】硬い物どうしが擦れ合って不快な音を出 す意で、会話にも文章にも使われる和語。〈車輪の—音〉の 梶井基次郎の『冬の蠅』に「もやい綱が船の寝息のように ー・り」とある。「きしむ」と共通する部分が多いが、電車が カーブの際などにレールと強くこすれる場合や、自動車が 急ブレーキをかけた場合などの耳障りな音にはこの語がび ったりする。きしむ さしん【寄進】社寺に金品を寄付する意で、改まった会話や 文章に用いられる古風な漢語。〈神社にーする〉②物品の場 合は「献納」や「奉納」も使われるが、金銭の場合はもっぱ らこの語が使われる。ひ献納・奉納 きじん【奇(崎)人】性格や言動が通常の人間と著しく異なっ <242> キス ている人をさし、会話にも文章にも使われる古風な漢語。 〈ー変人〉〈ー列伝〉〈ーの部類に属する〉「変人」がそれ なりの信念を感じさせるのに対し、奇癖を有し奇妙な行動 に出るなど、常識で考えにくい存在というイメージがある。 ひ変わり者・気難しい・旋毛曲がり・膚曲がり・偏屈Q変人 キス男と女が唇を合わせたり、子供などの額や頬や首筋などに唇をふれたりする行為をさす外来語。〈甘いーの味〉 〈投げー〉〈初めてのー〉〈祝福のー〉現代では類義語中で 最もよく使われる軽い感じの日常語。島田雅彦の『ドンナ・ アンナ』に「腕を掴んで、引き戻し、検印を押すようにーを した」とある。「キッス」の語形は古風だが、「投げキッス」 は今でも使う。サトウハチローに『センチメンタル・キッ ス』という題の小説がある。親愛の情を示すために頬や額 に唇を触れる行為の場合にも他の類義語より抵抗なく使え る。リキッス・口吸い・Qロゴけ・こうし・接吻 きず【傷】身体や物体の損傷をさし、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常生活の和語。〈ーを負う〉〈顔 にーがある〉〈ーがうずく〉〈ーの手当て〉徳田秋声の 仮装人物』に「鮮血のにじむ隙もない深いー」とある。「心 のー」「経歴にーが付く」のような抽象化した用法にも用い る。刃物による切り傷の場合に特に「創」と書いて区別す ることもある。「柱のー」「車体のー」「ーのあるりんご」の ような物品の傷は特に「疵」と書くこともある。欠点を意 味する「玉にー」の場合は伝統的に「瑕」と書く習慣があ る。 きせい【奇声】頓狂な感じの奇妙な声をさし、会話にも文章 にも使われる漢語。へーをあげる)内田百間は『居睡』に、 教師が授業中に居眠りをしていて自分のいびき声が「咽喉 にひっかかり、がばっ、と云うーを発した途端に、はっと思 って目がさめるのではないかと云う懸念」をぞっとするよ うな迫真の筆致で述べている。胴間声・蛮声・O悲鳴 きせい【帰省】郷里に帰る意で、会話にも文章にも使われる 漢語。〈ー先の住所〉〈一列車〉〈一客でごった返す〉〈夏休 みでーする〉の「帰郷」に比べ、一時的に親元に帰るという 連想が働き、大仰な感じがなく、定期的な場合に使っても違 和感がない。帰郷 させい【既製】個別の注文作りでなく一般向けに同じ規格で 多く製造した完成品をさし、会話にも文章にも使われる漢 語。〈一服〉〈一の品〉専帛・・Q出来合い・レディーメード させい【規制】規則によって制限する意で、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈交通—〉〈—緩和〉〈—を強 化する〉〈通行を法的に—する〉↓管制・Q統制 きせい【寄生】生物が他の生物に付着または侵入しその養分 に依存して生活する意で、会話にも文章にも使われる専門 的な漢語。〈虫〉〈植物〉相手に害を与える点で「共 生」と区別される。また、「結婚後も親にーする」「収入の ある女にーしてぶらぶら遊んでいる男」のように、他人の 生計に依存して生活する意の比喻的な用法もあるが俗っぽ い感じになる。専共生 ぎせい【犠牲】ある目的のために一身を捧げたり、大切なものを引き換えにしたりする意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー的精神〉〈尊いーを払う〉〈事業発展のーとな <243> る)川端康成の「雪国」の末尾に「葉子を胸に抱えて戻ろ うとした。その必死に踏ん張った顔の下に、葉子の昇天し そうにうつろな顔が垂れていた。駒子は自分の—か刑罰か を抱いているように見えた」とある。「一者」のように、自 然災害や戦争などのために大きな被害にあう意にも使う。 ひいけにえ せいご【擬声語】広義には、「オノマトペ」のうち、音を言 語音で写生したことばの部分の総称として、会話にも文章 にも使われる、やや専門的な漢語。「トントン」も「ドンド ン」も戸を叩く音を表すだ》の「ヒヒーン」「メーメー」 「バタン」「ピーポー」などがそれで、「擬態語」と対立す る。また、自然の音を別にし、もっぱら「キャーッ」といっ た人間の発する声、「ワンワン」といった動物の吠える声、 「ピーチクパーチク」といった鳥の鳴き声、「チンチロリン」 といった虫の音などを言語音で模写したものに限定する狭 義の用法もあり、その場合は狭義の「擬音語」と対立関係に ある。ひオノマトペ・Q擬音語・擬状語・擬情語・擬態語・擬容語 【鬼籍】「過去帳」の意で主に文章に用いられる古風な 漢語。②主に「に入る」の形で死去した意を表し、実際 の帳簿をさす場合は多く「過去帳」を使う。過去帳・点鬼簿 せつ【季節】一年を四季や二十四節気などに分けたそれぞ れの時期やその気候をさして、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈感〉へはず れ〉(桜の)への贈り物〉への変わり目〉円地文子の 「妖」に「この」の白い光線を滲ませて降る雨が好きなので ある」とある。阿川弘之の「雲の墓標」に「のうつる気配 きって は、自分にはしのびよる死のあし音のようにもかんぜられ る」とあるように、象徴的に用いられる例もある。ひシーズ ン・Q四季・時季・時候・時節 ぜつ【気絶】一時的に気を失う意で、会話にも文章にも使 われる、いくぶん古くなりかけている漢語。〈あまりのショ ックにー寸前になる〉へみぞおちを殴られてーしかかる〉 〈ーした人に活を入れる〉北杜夫の『船乗りクブブの冒 険』に「ただひとり、笑わなかったのはキタ・モリオ氏であ る。彼はまだーしたままだったからだ」とある。「失神」に 比べ、瞬間的な衝撃が原因で起こる場合に使われる傾向が ある。ひQ失神・人事不省 させつろうどうしゃ【季節労働者】「出稼ぎ」という語が貧窮 を連想させやすいため、別の観点からとらえ直してマイナ スイメージを払拭した言い換えの漢語。ひ出稼ぎ きぜわしい【気忙しい】急ぐことがいろいろあって心が落ち つかない意で、会話にも文章にも使われるやや古風な語。 ぐこの時期は何かとー)志賀直哉の『山鳩』に「山鳩の飛 び方は妙に感じがする」とあり、そのような気分に誘う 対象に用いる例もある。帰だしい・忙しい・Qせわしい・せわ しない ぜん【毅然】意志が強く、物事に動じない意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。「たる態度を 示す」へとした口調で言い放つ「として応じる」 りっとした・きりりとした・Q廃とした きそ【基礎】建造物が安定し倒れにくいよう下から支える部 分、物事を築き上げる土台となる最大元の部分をさし、 <244> きそう くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈ー知識〉〈一体力〉〈発展のーを築く〉〈数学のーを固める〉〈ーを置く〉「ーを打つ」のように、家を載せるための土台を造るという具体物をさすこともあり、抽象的な意味になっても、その上に築き上げるというイメージがある。「ー工事」も同様だが、それが最初の工程にあたるため、「ーから学ぶ」のように、最初のステップである初歩段階をさす場合もあり、中心というイメージの「基本」と若干ニュアンスが違う。Qいしずえ・基盤・基本・根本・土台 きそう【競う】どちらが優れているか競争する意で、改まった会話や文章に用いられる和語。〈技をー〉〈力をー〉〈優劣をー〉〈ー・って練習に励む〉何かを獲得することより優劣を決するところに重点がある。専争う きぞう【寄贈】贈る意で、主に文章に用いられる漢語。へ図 書〈先のリスト〉〈記念樹を—する〉記念の意をこめ て著書や高価な物などを贈る場合によく使われる。「きそ う」とも言う。謹呈・献上・献呈・進上・進呈・Q贈呈 ぎそう【偽装】本物を装う意で、会話でも文章でも使われる 漢語。〈倒産〉〈殺人〉〈パッケージをする〉塊装 ぎそう【擬装】カモフラージこの意で、主に文章に使われる 専門的な漢語。〈戦車に工作を施す〉偽装 きそうてんがい【奇想天外】常識では考えつかないほどひどく変わっている意で、会話にも文章にも使われる古風な漢語。〈1な発想〉〈1な話〉②「天外」は天空の外の意で、とんでもなく遠い所から舞い込んで来たと驚いた気分の表現。奇抜・Q突飛・風変わり さそく【規則】人間の行動や事務処理などの基準として設け られる取り決めをさし、会話にも文章にも使われる基本的 な漢語。〈交通ー〉〈就業ー〉〈一違反〉〈一通り〉〈一を守 る〉〈一に従う〉規定・規程・Q決まり・規約・ルール きそごい【基礎語彙】言語生活の基礎を支える必須の単語で ある基礎語の集合をさし、学術的な話題の会話や文章に用 いられる専門的な漢語。「を制定する」「基本語彙」と 比べ、個人の判断により演繹的に定める人為的・体系的な語 彙で、日常生活に欠かせない最低限の少ない語数を目標と し、時代の変化を受けにくい。Q基本語彙 きたい【期待】将来実現するように心待ちにする意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ーはずれ〉〈活躍がーでき る〉へーに応える〉〈ーを裏切る〉〈大きなーを担う〉〈ーに 胸を弾ませる〉②黒井千次の『群棲』に「恐怖とともに奇妙 なーが雅代の奥を悪感のように走り抜けた」とある。「夢」 や「希望」より実現の可能性が高い場合に使う傾向がある。 願望・期待・Q希望・待望・願い・願い事・ねぎこと・念願・望み・夢② ぎだい【議題】審議し議決するために会議にかける題目をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーにのぼる〉〈ーに 載せる〉〈ーを提出する〉〈ーを審議する〉児議案 ぎたいご【擬態語】「オノマトペ」のうち、音でなく動作・状 態・心情などを言語音で感覚的・象徴的に表現することばの 総称として、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢 語。「どろどろ」や「にっこり」は—に入る〉②「よろよろ」 「すらすら」「つるつる」「ひりひり」「うきうき」「はらは ら」などがそれで、広義の「擬声語」や比較的広義の「擬音 <245> 語」と対立する。ひオノマトペ・擬音語・Q擬状語・擬情語・擬声 語・擬容語 きだて【気立て】「性質」を意味する、やや古風なやわらかい 和風の言い方。会話やさほど改まらない文章によく用い、 学術論文などの硬い文章には適さない。〈1のよい娘〉へ1 の優しい子供〉の「激しい」「荒い」などの強い性格になじ まないような雰囲気が感じられる。谷崎潤一郎の『蘆刈』 に「あの姉さんは1も器量もとりわけ人にかわいがられる 生れつきで」とある。「1のよい」という形容は子供や若い 女性に対して用いられることが多く、男女とも中年以上の 人間に対して用いるケースは少ないようである。「1のよい 好々爺とうことという表現には少し違和感があり、高齢・老齢の 人の場合は「人のいい」「好人物」などとするほうが無難。 2気質・気象・Q気性・性分・人格・人品・人物・性格・性向・性質・たち・ 人柄・人となり きたない【汚(穢)い】汚れていて不潔な意で、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈 水〉〈一作業着〉〈部屋が一〉〈手が一〉②有島武郎の『或る 女』に「花壇の土を掘り起したように一畳」とある。「一言 葉」のように、気品に欠ける意にも、「字が一」のように、 丁寧さに欠ける意にも、「やり方が一」「根性が一」「お金 に一」のように、心が卑しい意にも使う。薄汚い・Q汚らし い・小汚い きたならしい【汚らしい】いかにも汚い感じがする意で、会 話やさほど改まらない文章に使われる和語。〈ハンカチ〉 〈見るからに服装〉実際に汚れているか否かに関係な きつい く、不潔な印象を受けるその不快感に重点がある。専薄汚い・Q汚い・小汚い ち【機知(智)】時と場合に応じてとっさに働いて気の利い た対応のとれる才知の意で、やや改また会話や文章に用 いられる漢語。〈ー縦横〉へに富む河盛好蔵訳編ふ らんす小咄大全』に、パリの小さな靴屋の両隣に新しく大 きな靴屋が開店して、一軒は「ョロッパ一の靴屋」もう 一軒は「世界一の靴屋」と派手な宣伝を始めたために、間に 挟まれてすっかり影が薄くなった話が載っている。そこで 小さな靴屋が出した「入口はここ」というさやかな看板 は、まさに機知に富んだ好例。ひウイット・エスプリ・Q機転・頓 智とヒューマー・ユーモア きち【既知】すでに知っている意で、主として文章に用いられる専門的でやや硬い漢語。〈数〉竹西寛子の「蟻と松風」に「の顔、未知の顔が現れては消え、私の軀が次第に軽くなって行く」とある。「未知」と対立。ひ知る きちょう【貴重】きわめて得にくく価値のある状態をさし、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈一品〉へ一な成 果〉へ一な意見〉へ一な経験〉夏目漱石の『こころ』に「位 置を求めるための一な時間というものがなかった」とある。 乃重要・大事・Q大切 きついゆとりがなく圧迫感を覚える、緩いところがなく厳しいの意で、会話でも文章でも幅広く使われる和語。〈帽子がー〉〈日差しがー〉〈ことばがー〉〈性格がー〉〈ーおとがめ〉の川端康成の『浅草紅団』に「その筋のーお叱り」とあ る。ひどきつい <246> きっかい きっかい【奇っ怪】「奇怪」の強調形で、会話や軽い文章に用 いられる、やや古風で俗っぽい漢語。〈千万〉まことに な話》専怪奇・奇異・Q奇怪・奇妙・奇妙奇天烈不可思議・不思 議・変・摩詞不思議妙 きづかい【気遣い】他人に対して何かと気を遣う意で、会話 にも文章にも使われる日常語。〈ーを示す〉〈あちらこちら へのーで疲れる〉〈どうぞおーなく〉四「あの相手なら負け るーはない」のように、心配・恐れの意をさすやや古風な用 法もある。Q気配り・心配り・心遣い・配慮 ざっかけ【切っ掛け】物事を始める手掛かりになる機会の意 で、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈事 件のー〉〈交際を始めたー〉〈入って行くーを失う〉〈よう やく話を切り出すーをつかむ〉単契機 きっかり「かっきり」に近い意味で、主に会話に使われる和 語。〈五時ーに到着する〉〈一百人集まる〉②「かっきり」よ りいくぶん強調された感じがある。ひかっきり ざづく【気付く】今まで知らなかったことを意識する意で、 やや改まった会話や文章に用いられる日常語。〈失敗にー〉 〈間違いにー〉〈自分の癖はー・きにくい〉の「気が付く」よ り少し改まった表現。ひ感づく・Q気が付く きっこう【拮抗】似たような力を持つ者どうしが張り合う意 で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈勢力がー している〉夏目漱石の『吾輩は猫である』に「悲しいか な、わが日本にあっては、まだこの点(公徳を重んずる)に おいて外国とーすることができん」とある。♬互角・Q伯仲 きっさしつ【喫茶室】「喫茶店」の役を果たす場所をさし、会 話でも文章でも使われる漢語。〈会社のーで休憩する〉 「喫茶店」が独立した店を連想させるのに対し、典型的に は、企業などの一室を社員の休憩用に利用して飲み物など を販売して喫茶店の機能を持たせ、その組織が経営するよ うな形を連想させる。ただし、「○○喫茶室」という名の喫 茶店もあるから、現実にはもう少し複雑である。ヲカフェ カフェテラス・Q喫茶店 きってん【喫茶店】コーヒーや紅茶を用意して休憩やちょ っとした話し合いの場を提供する店をさし、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる基本的な日常漢語。〈街角 のー〉〈駅前のーで待ち合わせる〉小沼丹の『庄野のこ と』に「古本屋を見て歩いて、高田馬場駅近くのーで休憩し て帰る」とある。Qカフェ・カフェテラス・喫茶室 ぎっしりほとんど隙間なく詰まっている様子をさし、会話 や硬くない文章に使われる擬態語。〈箱にー詰める〉〈予定 がー入っている〉ひぎっちり・ぎゅうぎゅう・Qびっしり キツス「キス」の古めかしい語形。〈頬にーをする〉へーを迫 る〉サトウハチローに『センチメンタル・キッス』と題す る作品があり、「恋人との、一の時間をさいで、このセンチ メンタルキッスを書いたのである」という口上から始まる。 Qキス・口吸い・口づけこうし・接吻 きっすい【生粋】混じりけがなく純一なの意で、会話にも文 章にも使われる表現。〈一の江戸っ子〉〈一の京都弁〉事 実関係を客観的に述べる感じの「純粋」に比べ、いかにもそ のような雰囲気を漂わせるという好感をもって用いる傾向 がある。また、「純粋」と違って物体・物質には使わない。 <247> 純粋・Q生え抜き・無垢 ぎっちりまったく隙間なく詰まっている様子をさし、会話 や軽い文章に使われる擬態語。〈鞄にー詰め込む〉〈予定が ー詰まっていて時間が空かない〉の「ぎっしり」以上に詰ま っている感じがある。ひQぎっしり・ぎゅうぎゅう・びっしり チチン「台所」を意味する新しい感じの外来語。ダイニングー〉(ちょっとしたーが付いている)②近年、炊事場が食堂を兼ねるような間取りの家が増えてから、そのDKの炊事場の部分をさしてこの語が単独で使われるようになり、完全に独立して存在する台所を「キッチン」と呼ぶケースもあるが、その場合はあまり広い部屋を連想させず、まだ若干気取りが感じられる。一方、「台所」よりも明るく清潔な感じがあり、その斬新な語感を利用して、「中村」などと街の食堂の店名に組み込む例も少なくない。たしかに、「お勝手中村」や「台所中村」よりも客の入りそうな雰囲気が感じられる。勝手②・庫裏・くりや・炊事場・Q台所・厨房 きっと【屹(急)度】必ず実現するものと予測する気持ちを表 し、主として会話に用いられることば。「必ず」よりくだけ た日常会話でよく使われる。「またどこかで会えるさ」 へーうまく行くよ〉へー知らせてね〉〈約束だよ、ーだぞ〉 客観的な感じの「必ず」に比べ、判断の根拠に自分の推測が 入った感じの主観的な表現。ちなみに、夏目漱石の『草枕』 に「どこ迄も登って行く、いつ迄も登って行く。雲雀は雲 の中で死ぬに相違ない」という例が出る。必ず・絶対に きつね【狐】耳が立ち毛が薄い茶色で尻尾の太いイヌ科の動 きづまり 物の一種をさし、会話にも文章にも使われる和語。「の襟 巻き〉へにだまされる〉開高健の『パニッグ』に「が 猫のような媚びたしぐさで首を金網にすりつける」とある。 日本では古くから人をだますとされ、「と狸の化かし合 い」といわれるが、狸のほうは漫画で丸顔に描かれ、どこか 愛嬌があって憎めない感じなのに対し、とがった顔に描か れる狐はいかにもずるそうな雰囲気があって、そういう思 い込みがこのことばの語感となって反映している。 きっぷ【切符】乗車券・入場券・食券など料金の支払い済みを 証明する紙片をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の漢語。〈駅の—売り場〉〈電車の—〉〈映 画館で—を買う〉乗車券以外は「チケット」と言う例が増 え、食堂・映画館・美術館などでこの語を使うと今では少し 古風に響く。Q券・チケット きっぷ【気っ風】思い切りのよさや度量などから感じられる 気性をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる語。へー のよさ〉へーのいいお兄いさん)の一般に男を連想しやす いが、武田泰淳の『森と湖のまつり』に「あたしのーを知っ てもらうために言うのよ」という女性の例もある。 きっぽう【吉報】縁起のいいめでたい知らせの意で、改まっ た会話や文章に用いられる漢語。へーを待っている〉へ待ち かねたーが届く)結婚・誕生のほか、災害時などの生存確 認、事業の成功、入試の合格などの場合によく使われる。 「朗報」に比べ、結果を心配していたり思いがけなかったり する背景が感じられる。込朗報 きづまり【気詰まり】打ち解けられずに緊張が続く意で、会 <248> きてい 話にも文章にも使われる日常語。へお偉方の間に座るのは ーだへ会の雰囲気がーで早々に退席する水上勉の越 前竹人形』に「暗い家の中で、二人きりでいることにーをお ぼえた」とある。鶏屈 さい【規定】決まりの意味で、改まった会話や文章に使わ れる硬い感じの漢語。〈罰則ーを設ける〉〈大会のーに従 う〉〈概念をーする〉処則・規程・決まり・規約・ルール きてい【規程】官公庁などの一連の規則の意で、改まった文 章に用いられる専門的で硬い感じの漢語。〈服務—〉〈旅費 —〉の一定の目的のために定められた関連条項の総体。 規則・規定・決まり・規約・ルール さい【基底】思想やものごとの基礎をなす根幹部分をさし、 学術的な文章に用いられる専門的で硬い漢語。〈判断のー にある〉〈行動のーに横たわる〉〈ーが揺らぎかねない〉 Q核心・本質 きてん【機(気)転】時と場合に即応した頭の働きの意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈ーが利く〉へとっさのーで 切り抜ける〉の「機知」や「頓智」が能力として身につい た才知を意味するのに対し、この語はその場その場に発揮 される具体的な対策などの工夫をさす傾向がある。益田喜 頓の『キートンの笑智大学』に、修理に入った先の浴室の ドアを開けたらあいにくその家の奥様が入浴中だったとき、 職人が「これは失礼、旦那様」と叫ぶ話がある。とっさに出 たこの一言は心理的に女性を救い、まさに機転の利いた発 言の好例。ひウイット・エスブリ・Q機知・頓智・ヒューマー・ユー モア さと【帰途】帰る途中の意で、主に文章に用いられる硬い感 じの漢語。〈ーに就く〉〈出張のー、知人を訪ねる〉帰 路より若干イメージが抽象的。専家路・帰り・帰り道・Q帰路・ 復路 さどう【起動】機関・モーター・機械が運動を開始する意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈発 電機がーする〉ヘコンビューターがーする〉ひ始動 きとく【危篤】病気や怪我が重く命が危ない状態をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈一に陥る〉〈一状態を脱す る〉四阿部昭の『父と子の夜』に「わたくしどもは一状態の まま一と晩徹夜させられた」とある。「重体」より危険な容 態をさし、死の予感を誘いやすい。重体 きどる【気取る】実際以上に見えるように体裁を飾る意で、 会話にも文章にも使われる日常語。「・った歩き方〉「・ ってボーズをとる〉へおつに」宮沢賢治の『どんぐりと 山猫』に「いかにもー・って、繻子のきもののえりを開いて、 黄いろの陣羽織をちょっと出して」とある。「芸術家をー」 「紳士をー」のように、まるでその者になったようにふるま う意にも使う。ひQ取り澄ます・もったいぶる きにいる【気に入る】好みに合う意で、会話にも文章にも使 われる表現。「」・た店〉(これならきっとーよ)〈お気に 入りの相手〉ひ好ましい・Q好む・好き 会話にも文章にも使われる表現。へあの言い方がー〉徳田 秋声の『あらくれ』に「養父から不足を言われたのが、ー ったと云って」とある。Q彌辯中・蕭 <249> きになる【気になる】気持ちがひっかかって離れない意で、 会話でも文章でも幅広く使われる日常表現。〈相手側の動き がー〉〈髪が薄くなったのがー〉回近年、気持ちにひっかか って離れないというマイナス評価の意味合いだけでなく、 「店」「近ごろ」料理」のように、関心がある、魅力を感じ るといった、むしろプラス評価として使う用法が目立って きた。Q気がかり・懸念 さにゆう【記入】書類や用紙の所定欄に文字などを書き入れ る意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈所定の欄 に氏名と年齢を—する〉へ申込書に必要事項を—する〉ひQ 書き入れる・書き込む・書き付ける・書き留める・控える② キネマ「映画」や「映画館」を意味する古風な外来語。〈 女優〉英語「キネマトグラフ」の略。フランス語系統の 「シネマ」よりも広く使われた。ちなみに、井上ひさしに 『キネマの天地』と題する戯曲があり、「松竹—蒲田撮影所」 の助監督や四大スター女優などが登場する。Q映画・活動 ②・活動写真・シネマ・ムービー きねん【記念】過去の記憶を新たにし、また、後日の思い出 のために残しておく意で、会話にも文章にも使われる日常 の漢語。〈一切手〉〈結婚一日〉〈一写真〉〈一式典〉〈一に 持ち帰る〉〈いいーになる〉刂思い出 ぎねん【疑念】そのことの真偽を強く疑う気持ちをさし、改 まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「が湧く」 を抱く〈がつきまとう〉〈を晴らす〉小林秀雄の 『私小説論』に「取り扱う題材そのものに関してはーの起り 様がない」とある。疑い・Q疑義・疑問・疑惑 きのみ きのう【昨日】今日のすぐ前の日をさし、くだけた会話や改 まらない文章に使われる日常的で基本的な和語。「の出 来事〉への約束〉へ「会ったばかりだ〉へきょうに始まっ たことではない)林芙美子の『茶色の目』に「別れたよ うな、親近な表情だった」とある。ひさくじつ きのう【機能】機械や組織などの働き・作用・能力をさし、い くぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一障害〉 〈心肺—〉〈一が低下する〉〈本来の—を果たす〉〈委員会が 正常に—する〉〈新設の組織がうまく—しない〉②大岡昇平 の『俘虜記』に「医務室等所内の一般的建物の—」とある。 ひ作用・能力・働き ぎのう【技能】物事を行う技術と能力をさし、やや改まった 会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈ーを身につける〉 〈ーを伸ばす〉〈話す・聞く・書く・読むの四—〉特別な技法 よりも、修錬して身につける運用能力をさす傾向がある。 専腕②・腕前・技巧・Q技術・技法・テクニック・技 きのどく【気の毒】他人の不幸に心を痛める意で、会話でも 文章でも使える日常語。〈一な人〉〈一な境遇〉〈ひとり批 判を浴びて、おーに〉〈おーさま〉同等または上位の者に 対する同情心から出る語。濾井孝作の『山女魚』に「今何 十年も経ち、母親に悲しみを新たにさせるのがーで、ぼく は涙満えたりした」とある。弾痛々しい・痛ましい・かわいそう きのみ【木の実】「このみ」の意で会話に使われる語形。「 を好む》音と意味が結びつきやすいため、現在は伝統的 で古風な「このみ」よりむしろよく使い、特に「草の実」に 対して樹木の実を取り上げる際に例が多い。このみ <250> きのり きのり【気乗り】そのことに興味を感じて気持ちが動く意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる表現。「薄」へどう もーがしない多く否定的に使い、何となく気が進まな い感じがある。専乗り気 きはく【気迫(魄】強く激しい気力の意で、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ーがみなぎる〉〈相手のーに 圧倒される〉〈ーに欠ける〉高村光太郎の詩『道程』に 「父のーを僕に充たせよ」とある。意気込み・意欲・意力・Q気 概・気骨・気力・根性・精神力・ど根性・やる気 きはずかしい【気恥(羞)ずかしい】少々照れくさく何となく 恥ずかしい感じがする意で、やや改まった会話や文章に用 いられる表現。〈思いをする〉(気恥ずかしさを覚える) 織田作之助の『アド・パルーン』に「どうにもーくて歩け なかった」とある。具体的に決定的な原因が特定しがたい 場合によく使う。図面映いはい・決まり悪い・Q照れ臭い・恥ずかし い・ばつが悪い・間が悪い きはだ『木肌』樹木の外皮をさし、会話にも文章にも広く使 われる、やわらかい感じの和語。〈滑らかなー〉へーがごつ ごつしている〉回「樹皮じ」に比べ、生えているさるすべり だとか、床柱だとか、まるごとの木を連想させ、外皮だけを 問題にする場合には使いにくい。乃樹皮 きばっ【奇抜】人の意表をつくほど風変わりな意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈な思いつき〉〈な構想〉 〈なデザイン〉ひ奇想天外・Q突飛・風変わり きばらし【気晴らし】物憂い気分を変えるためにそれまでと 別のことをする意で、会話にも文章にも使われる日常表現。 〈一に犬を連れて散歩に出る〉(いいーになる)「憂き晴 らし」と違って、厭なことがなくても、根を詰めて仕事をし たために疲れたとかといった程度の場合に使い、手段も日 常的なもので済む感じがする。憂さ晴らし・気散じ・Q慰み きはん【規(軌)範】皆が手本として従うべき在り方をさし、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーを示す〉 〈ーに基づく〉「標準」は「基準」よりー意識が強い〉 「手本」や「模範」に比べ、巧みなというより、正しいとい うイメージが強い。手本・Q模範 きばん【基盤】物事の大元の部分をさし、会話にも文章にも 使われる硬い漢語。〈一の整備を急ぐ〉〈経営ーが揺らぐ〉 〈生活ーが安定している〉〈一を固める〉〈一を脅かす〉〈一 が固まる〉図イメージは「基礎」「土台」に近い。Q基礎・ 基本・根本・土台 きびきび態度や動きに活気があって敏速な意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈動作がーしている〉(ーと行動す る)みQてきばき・はきはき きびしい【厳しい】人間の態度やさまざまな条件、社会情勢 や自然環境などが余裕を与えないほど緊迫している意で、 や自然環境などが余裕を与えないほど緊迫している意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。「・く注意する〉〈一態度で臨む〉〈採点が一〉 〈残暑が一〉〈一現実にさらされる〉②太宰治の『東京八景』 に「私は保守的な家に育った。借銭は最悪の罪であった」 とある。厳格・厳重・Q手厳しい きびす【踵】かかとの意の古めかしい表現。〈ーを返す〉〈ー を接する〉の「くびす」ともいう。谷崎潤一郎は初期の『刺 <251> 青」で「珠のようなーのまる味」と、女の足を美化して描い た。しかかと きひん【気品】気高い感じの品位をさし、会話にも文章にも 使われる漢語。〈ーが漂う〉〈ーにあふれる〉〈犯しがたい ー〉の川端康成の『千羽鶴』に「癖がなく素直な点前であ る。姿勢の正しい胸から膝にーが見える」とある。品・Q 品位・品格 きびん【機敏】状況を把握して行動に移すのが素早い意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈迅速ー〉へーな処置〉 武者小路実篤の『友情』に「頭も手もーに動いて、ぬけ目な く、相手のすきをうかがおうとした」とある。迅速・敏捷 ・敏速 さふ【寄附(付)】公共の施設や団体、共同の事業、神社・仏閣・ 教会などに無償で金品を提供する意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈金〉〈行為〉〈母校にーする〉〈記念事 業のためにーを集める〉専寄進・Q寄贈・献金 きふじん【貴婦人】身分の高い上流社会の婦人をさし、会話 にも文章にも使われる、やや古風な感じの漢語。へーの気品 が漂う)「ひらりと一さじ、スウプを小さなお唇のあいだ に滑り込ませた」と描かれる太宰治の『斜陽』の「お母さ ま」は日本の最後の貴婦人像を刻んだと評される。Q淑 女・レディー ざぶつ【偽物】「にせ物」の意で、改まった会話や文章に用い られるやや専門的な硬い漢語。〈ーを持ち込む〉〈一目でー を見分ける〉Q贋物・にせ物・にせ者・まがい物 きぶん【気分】しばらく継続する快・不快に関する気持ちの状 態をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の漢語。〈ー転換〉〈一の問題〉〈その時の一次第〉〈の んびりと湯に浸っかっていいだ〉〈ーを害する〉〈ーが乗 らない〉〈ーを引き締める〉⑨井伏鱒二の『駅前旅館』に 「慇懃無礼の手で断られた。私は顔を逆に撫でられたよう な不快なーでした」とある。「ーが悪い」「ーがすぐれない」 のように健康状態に関連した生理的な情緒をさす例が目立 つ。「お祭りー」「宴会ーを楽しむ」のように、環境によって 生み出される雰囲気をもさす。感情・機嫌・Q気持ち・心地・ 心・心持ち・心情・心理・精神 ぎほう ぎぼ【義母】義理の母の意で、改まった会話や文章に用いられる形式ばった漢語。〈ーと同居する〉具体的には養母・継母や配偶者の母など。網野菊の『遠山の雪』に、睡眠剤を多量に飲んで二、三日眠り続けたあと、「階下から、新しい母の上機嫌な笑い声が聞え、彼女はまだ見ぬーにすまない気がした」とある。継母・Qまま母・養母 きぼう【希望】実現に向けて未来に望みをかける意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 漢語。〈進学者〉へ「的観測〉へ「の星〉へ「を抱く〉へ「 に応じる〉へ「に燃える〉へ「がわく〉へ「が持てる〉へ「が かなう〉②和田伝の『沃土』に「せっかく涌いた」も泡のよ うにたわいもなくはじけてしまった」とある。「期待」や 「願望」以上にプラスイメージの語。実現の可能性が「期待」 より小さく「夢」より大きい感じがある。Q願望・期待・待 望・願い・願い事・ねぎ」と・念願・望み・夢② ぎほう【技法】芸術やスポーツなどの特定の技術・手法をさ <252> きほん し、会話にも文章にも使われるやや専門的な漢語。表現 ー〉〈油絵のー〉〈新しいーを取り入れる〉「技術」「技 能」に比べ、型や手順が固定的。②・腕前・技巧・技術・技能・ テクニック・Q技 きほん【基本】物事の成り立つための拠りどころとなる大本 の部分をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の基本的な漢語。〈ー的人権〉〈ー方針〉〈ー給〉 〈ー線が固まる〉〈学問のー〉〈ーを身につける〉〈ーが出来 ていない〉〈ーに忠実だ〉〈ーに立ち返る〉家を建てる際 の「基礎」が土台石なら、これは中央で支える大黒柱のイメ ージで、意味が抽象化しても、最初の段階というよりは、す べての段階を貫く最も中心となる事柄を連想させる。ひい しずえ・Q基礎・基盤・根本・土台 きほんごい【基本語彙】それぞれの語彙体系の中心的な単語である基本語の集合をさし、学術的な話題の会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈語彙調査の結果をもとにをまとめる〉の「基礎語彙」に比べ、語彙調査を実施し、その結果をもとに帰納的・客観的に決定されるが、調査資料の性質により結果が異なり、時代の変化を受けやすく、また、必ずしも体系的な構造をもたない。それぞれの目的により、小学校用学習基本語彙、日本語教育用基本語彙などの種類に分かれ、語数は基礎語彙より多く、目的や種類によって異なる。Q基礎語彙 さまじめ【生真面目】融通がきかないまでに純粋で真面目な 意として、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。へー に答える)の川端康成の「雪国」に「上気したな顔に焰の 呼吸がゆらめいていた」とあり、谷崎潤一郎の『細雪』には 「なサラリーマンで、遊びの味など知っていそうな様子は 微塵もなかった」とある。専真剣・真摯しん・真率しん・真面目 きまま【気儘】自分の気の向くまま自由にふるまう意で、会 話やさほど硬くない文章に使われる日常の表現。〈勝手—〉 「な一人旅〉「に暮らす」「勝手」や「わがまま」と違 って、他人に迷惑がかかるというイメージはない。Q勝手 ①わがまま きまり【決(極)まり】規則のやわらかい表現で、くだけた会 話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。学校 のー〉へーを守る〉へーに従う〉へーにそむく〉の「規則」と いうほど改まった正式の堅苦しいものだけでなく、仲間内 の申し合わせや遊びの約束事のような軽いものまで含む雰 囲気がある。規則規定・規程・規約・Qルール きまりわるい【決(極)まり悪い】体裁が悪く恰好がつかずに 何となく具合がしっくり来ない意で、主として会話に使わ れる和語。「ので口笛を吹いてごまかす」伊藤左千夫の 『野菊の墓』に「極りわるそうに、まぶしいような風で急い で通り過ぎてしまう」とある。その場にふさわしくないと いう意識が強い。「決まりが悪い」の形でも使い、その場合 はさほど硬くなければ文章に用いても違和感はない。ひ面 映い、気恥ずかしい・照れ臭い・恥ずかしい・Qばつが悪い・間が悪 い きみ【君】同等以下の相手を親しみをこめて呼ぶ二人称として、会話や硬くない文章に使われる和語。〈ーと僕の間柄〉〈頼むよ、ー〉〈ーだけだ、わかってくれるのは〉〈ほんと、 <253> 「の言うとおりだ」古くは目上の人に敬称として添えた 語。上代では多く女性が男性を呼ぶときに用いたとされる が、現在では逆に主として男性が、親しい同輩や目下の男 性に対して使うことが多く、恋人や妻以外の女性に使うと 不評を買うことがある。ただし、女性教師が男子生徒に対 し、あるいは女性の上司が男性の部下に対して使う例も見 られる。夏目漱石の「坊ちゃん」では、教頭の赤シャツが 「一俳句をやりますか」と主人公に問いかける。主任の山嵐 も「は一体どこの産だ」と尋ね、坊ちゃんも即座に「一 はどこだ」と聞く。男性が男性の相手に言う例が多いが、 かなり目下であれば女性に対しても使い、また、女性が男 の子やまれには部下か後輩の若い男に言うこともある。 「僕」と対立。Qあなた・あなた様・あんた・おまえ・貴様・てめえ きみじか【気短】短気の意で、主として会話に使われる古風 な表現。「ですぐかっとなる〉へな性分で、じっと待つ のが苦手だ》怒りやすい連想のある「短気」と比べ、待っ ていていらいらしているような場面が浮かびやすい。男性 急・Qせっかち・短気 きみつ【機密】政治上・軍事上・企業上のきわめて重要な秘密 をさし、専門的な会話や文章に用いられる硬い漢語。へー 費へー書類へーを探るへーを嗅ぎつけるへー国家のーが 漏洩するの「枢機の秘密」の短縮形という。ひ秘密 きめい きみよう【奇妙】常識や理屈で説明しにくい意で、会話にも 文章にも使われる漢語。へに勘が当たる〉へな一致〉 へな風習〉へな事件〉井上ひさし『吉里吉里人』は「こ の、なしかし考えようによっては」と始まり、長々しい 連体修飾で「事件」を導く長大な一文で幕を開ける。専怪 奇・Q奇異・奇怪・奇怪・怪・奇妙奇天烈・不可思議・不思議・変・摩訶 不思議・妙 きみようきてれつ【奇妙奇天烈】まことに珍妙でいかにも風 変わりなの意で、会話にも文章にも使われる、古めかしく 俗っぽい漢語。〈一な恰好〉〈何ともーな趣向〉「奇天烈」 の部分は強調のために添えた音で漢字に意味はない。専怪 奇・奇異・奇怪・奇怪・怪・Q奇妙・不可思議・不思議・変・摩詞不思議・妙 きみわるい【気味悪い】「無気味」の意で、会話や軽い文章に 使われる表現。〈一恰好でうろつく〉中野重治の「むらぎ も」に「何の理由からか知らぬが全く口をきかぬというこ とがー・かった」とある。専不気味 ぎむ【義務】道德・法律・契約などによって強制される行為を さし、会話にも文章にも広く使われる漢語。〈ー教育〉〈国 民のー〉〈納税のーを負う〉〈支払いのーを有する〉〈ーを 課す〉〈ーを免れる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「何だ か憐ればくって堪らない。こんな時に一口でも先方の心を 慰めてやるのは、江戸っ子のーだと思っている」とある。 貴務・Q務め・任務 きむずかしい【気難しい】自我が強く他人と容易に同調しな い性癖の意で、会話にも文章にも使われる表現。「老人」 「ー・く扱いにくい人」②変わり者・奇人・旋毛③曲がり・臍曲が り・Q偏屈・変人 きめい【記名】自分の氏名を書き記す意で、改まった会話や 文章に用いられる専門的な感じの硬い漢語。〈一投票〉へ 捺印法律では「署名」と区別し、自署以外でも認めら <254> ぎめい れ、他人が代理で書いたり、ゴム印を押したり、印刷したり する場合もある。ひサイン①・自署・Q署名 ぎめい【偽名】本名を隠す目的で使う偽の名前をさし、会話 にも文章にも使われる少し硬い感じの漢語。〈ーを使う〉 〈ーで通す〉〈ーがばれる〉の「変名」よりも悪事の連想が強 い。「実名」と対立。彡変名 きめる【決める】いくつかの可能性のうちから明確に一つに しぼる意で、くだけた会話や改まらない文章で使われる日 常的な和語。〈態度を—〉〈覚悟を—〉〈代表を—〉〈優勝を —〉〈心に—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「毎日住田の 温泉へ行く事にー・めて居る」とある。専決定Q定める 「気持ち」対象によって変化する心の状態をさして、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる最も基本的な日 常語。〈ーがいい〉〈ーがなごむ〉〈ーが沈む〉〈ーはよくわ かる〉〈相手のーを大事にする〉の井伏鱒二の『駅前旅館』 に「気を持たせるようなことを言われると、満更でもない ーでした」とある。湯上がりやマッサージなどで「ああ、い いーだ」と言う場合は「心持ち」に換言できるが、相手がど ういう考えでいるのかという意味合いで「ーが量りかねる」 と言う場合は「心持ち」ではぴったりしないように、この語 は思考内容を含む広い意味合いで使う。会話では「こっち のほうがー小さい」のように、ほんの少しの意に用いるこ ともあるが、この用法は「心持ち」より俗っぽい感じがあ る。専感情・機嫌・気分・胸中・心地・心・Q心持ち・心情・心中・心理・ 精神 きもちいい気持ちいい感覚的に快いさまをさしくだけ た会話で使われることのある俗っぽい言いまわし。ああ、 ー〉〈汗を流すとー〉の気持ちがいい」という言いまわし から「が」を省いて、「快い」並みの一語の形容詞のように 短縮した表現。Q心地よい・快い さもったま【肝玉】物に動じない精神力の意で、主に会話 に使われる、やや古風な和語。〈ーが太い〉へーの据わった 人物〉へーの小さい男〉の「きもだま」の強調形。Q胆力・ 度胸 きもの【着物】衣服、特に和服をさし、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈—姿〉(春先の— に着かえる〉(あわてて—を着る)和服をさすほか、洋服 を含めた衣服全体をさす用法もある。後者の場合は会話的 な感じが伴う。幸田文の『黒い裾』に「ばっと蝙蝠が飛んだ ように—が両袖を浮かせて畳へ這った」とある。衣装・衣 服・衣料・衣類・服装・身なり・装い きもん【疑問】真実か否か、それは何か、なぜかと疑うこと をさし、会話にも文章にも広く使われる日常の基本的な漢 語。〈一箇所〉〈一が浮かぶ〉〈なおーが残る〉〈一を投げか ける〉〈一の余地がない〉〈一に思う〉〈一に答える〉〈真実 かどうかは甚だーだ〉②宮本百合子の『伸子』に「微小な棒 ふらのようなーが閃き過ぎるのを感じた」とある。Q疑 い・疑義・疑念・疑惑 きやく【規約】関係者の間で相談して約束した内容をまとめ た規則をさし、改まった会話や文章に用いられる専門的な 雰囲気の硬い漢語。〈ー改正〉〈ーにのっとる〉〈ーに縛ら れる〉〈ーを作る〉規則・Q規定・規程・決まり・ルール <255> きやく【客】自宅などに訪ねて来る人をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。へーの手土産〉へーを招く〉へーを出迎える〉へーをもてなす〉の訪問 ー」のほか、「ー扱い」「買い物」「ーが集まる」「ーの入りが悪い」「ーを呼び込む」のように、代金を支払って商品を買ったり見物したり乗車したり種々のサービスを受ける人をさす用法の例も多い。井伏鱒二の『珍品堂主人』に「誰それというおーは、何と何を食べ残し、何と何をすっかり食べ、何をお代りしたか女中に報告させ、それをカードに書きつけて」とある。ひ来客 きゃく【逆】考えたり進んだりする方向や順序などが他のも のや通常の場合と反対である意を表し、会話にも文章にも 広く使われる漢語。へーの方向へへーの考え方へ順序がー になるへそのーもあるへーもまた真なりへーに、こう も考えられる②「ーから数える」の場合は「反対」より 「逆」の方が自然であり、「反対」と比べ、両者が入れ替わっ た関係になる場合を連想しやすい。「順」と対立。近年「正 反対」の意で「真逆や」という俗語を見聞きするようになっ た。ひあべこべ・逆さ・逆様・倒錯・Q反対 きゃくしつ【客室】客を通したり泊めたりする部屋をさし、 会話でも文章でも使われる事務的な感じの漢語。ヘー乗務 員ヘーが満員の盛況通常個人の家より旅館や乗り物 の中の客用の部屋をさす。応接室・応接間・Q客間・座敷 さやくしつじょうむいん【客室乗務員】航空機で「スチュア デス」や「エアホステス」に代わる新しい呼称として男女の 別なく使われだした漢語表現だが、日常会話では女性の場 きゃくま 合はまだ「スチュアデス」という語を使う例が多い。ひエア ホステス・キャビンクルー・Qスチュアデス・フライトアテンダント ぎゃくしゅう【逆襲】それまで劣勢だった側が逆に相手に襲 いかかる意で、会話にも文章にも使われる漢語。「が始ま る」〈相手のーにあう〉「反撃」に比べ、攻め立てられて 防戦に追われたり被害を受けたりしていたことを連想させ やすい。ひ反撃 ぎやくじょう【逆上】昂奮のあまり理性を失い分別をなく す意で、会話にも文章にも使われるやや古風な漢語。〈すっ かりーして声を荒らげる〉のもともと頭に血が逆流する意 で、岩野泡鳴『耽溺』には「急に僕の血はーして、あたまが 燃え出すように熱して来た」という例もある。ヌ血迷う きやくせき【客席】映画館や劇場や寄席などの観客のための 席をさし、会話にも文章にも使われる漢語。「に空席が目 立つ〉へから声がかかる)見物だけでなく、「二階のー に通される」のように料亭などの席をさすこともある。 Q観客席・観覧席・スタンド きやくほん【脚本】主に演劇や映画の土台となる筋書きとし ての出演者の台詞や動作を中心に、舞台装置や演出上の注 意事項などを添えたものをさし、会話にも文章にも使われ る漢語。〈一家〉へに忠実な演出へあの芝居は何といっ てもーがいいの「台本」より本格的な感じがある。鳥戯曲・ コンテ・シナリオ・Q台本 さやくま【客間】来客をもてなすための部屋をさし、会話で も文章でも広く使われる、やや古風な日常語。〈庭に面した 八畳のー〉〈玄関脇の部屋をーにあてる〉図「応接間」がす <256> きやすい ぐ洋間を連想させるのに対し、この語は洋間だけでなく和 室をさす例も多い。応接室・Q応接間・客室・座敷 きやすい【気安い】当人が気楽で肩が凝らない意として、会 話にも文章にも使われる表現。「・く相談できる相手〉 〈!・く話しかける〉阿部昭の『大いなる日』に「(医者が) お得意をふやすためにラーメン屋みたいにー・く往診を引き うける」とある。心安い きやつきよう【逆境】思うようにならず早く抜け出たいと思 う恵まれない境遇をさし、やや改まった会話や文章に用い られる漢語。〈ーで育つ〉〈ーにめげず〉〈ーと闘う〉〈ーに 強い〉の「苦境」より長期にわたって継続する感じが強い。 「順境」と対立。苦境 キャッシュ「現金」より新しい感じの外来語として特に日常 会話でしばしば用いられる。〈ーで支払う〉〈ーカード〉 Q現金・現生 キャッチャー「捕手」の意の外来語。字数が多くなるためも あり、書きことばとしてはふつう「捕手」を用いる。へーの サインどおりに投げる〉は捕手 キャパレーダンスをしたりショーを見たりできる酒場をさ し、会話にも文章にも使われるやや古風なフランス語から の外来語。〈ー通い〉谷崎潤一郎の『友田と松永の話』に 「散々カフェやーを荒した」とある。ひカフェー キャビンクルー「フライトアテンダント」を合め、その航空 機の乗員全体をさす外来語の呼称。ひエアホステス・客室乗務 員・スチュアデス・Qフライトアテンダント キャメラテレビなどの業界で「カメラ」の意に用いる語。 〈一が入る〉②一般人が使うとやや気取った感じに響く。それを扱う人は映画では「ーマン」と言い、テレビでは敬称として「カメラさん」というのを耳にする。Qカメラ写真機キヤンセル約束などを一方的に取り消す意で、会話や改まらない文章に使われる日常の外来語。〈予約をーする〉〈注文がーになる〉②「解約」ほど厳密でなく、日常のちょっとした場面で気軽に使われる。Q解約・取り消し キャンプ軍事演習やスポーツの練習などのための合宿をさ し、会話にも文章にも使われる外来語。〈場〉〈ファイ アー〉〈米軍〉〈入り〉〈登山のペース〉〈を張る〉 の大岡昇平の『俘虜記』に「にでも来たような気持で谷川 の水で飯をたき」とある。合宿 ゆうえん【救援】災害などで一時的に苦境に喘いている人 が自力で立ち直れるように援助する意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈人物資〉(に向かう)を求 める)と援助・救済・Q救助・救い・救う・助ける きゅうか【休暇】通常の休日以外に学校・会社・役所などで認められた休みをさし、改まった会話や文章に用いられる少し正式な感じのする漢語。〈年次—〉〈有給—〉〈ーを取る〉〈夏季—に入る〉梶井基次郎の『冬の日』に「になったから郷里へ帰ろうと思ってやって来た」とある。豊才フ・休業・休憩・休日・休息・休み さゆうかん【急患】急病または急病人をさして、主に会話に 使われる漢語。へーで運ばれる〉へーを受け付ける〉②医師 や病院なと受け入れる側から見た用語。ひ急病 きゅうきゅう【汲汲】人間本来の使命ではないことに夢中で <257> 他を顧みる余裕のない様子をさし、改まった会話や文章に 用いられる、いくぶん古風な感じの漢語。〈金儲けにーと する〉〈出世ばかり考えてーと暮らす〉りあくせく きゅうぎゅう余裕のない場所にさらに詰め込む様子をさ し、会話や軽い文章に使われる擬態語。〈ー詰めの電車〉 ヘポストンバッグにーに押し込む)隙間がない感じの「き っしり」「びっしり」に比べ、それ以上に無理をして押し込 む感じが強く、圧迫されて中のものが変形しそうな雰囲気 がある。乃Qきっしり・ぎっちり・びっしり きゅうぎょう【休業】営業や授業などを休む意で、改まった 会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈臨時—〉開 店—の状態だ」ひオフ・休暇・休憩・休日・休息・休み きゅうくつ【窮屈】心身が抑えつけられて自由を束縛される 雰囲気をさし、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。 ヘ肥って服がーになる)〈部屋が狭すぎてーだ〉〈規則がが んじがらめで生活がーだ)永井荷風の『つゆのあときき』 に「冗談一ツ言うにも気をつけねばならぬような心持がし てーでならなくなった」とある。専気詰まり きゅうけい【休憩】仕事の途中でとる休みをさし、会話にも 文章にも使われる漢語。へーをとる〉〈会議の途中でーす る〉学校や会社などで継続する作業を中断して一定の時 間休む場合に使うことが多く、「一時間」「一室」が設けら れているのもそのため。太宰治の『東京八景』に「五分間ー して、すぐにまた出発」とある。みオフ・休暇・休業・休日・休 息・休み きゅうげき【急激】変化や変動が急で激しい意で、会話にも きゅうじっ 文章にも使われる漢語。「な変化に対応できない」へな 上昇が見られる〉へに低下する)変化の速さに重点のあ る「急速」に比べ、この語は急に生じた変化の大きさに重点 がある。急速 きゅうこん【求婚】結婚を申し込む意で、多く文章中に用い られるやや古風な漢語。交際を始めてすぐにーされる 「を承諾する」武者小路実篤の「お目出たき人」に一鶴 の家に行って戴いて、して戴いた」とある。乃プロポーズ きゅうさい【救済】被災者や不幸に苦しむ人を全面的に救い 上げる意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。「事 業〉〈難民を—する〉〈—に乗り出す〉「援助」はもちろん 「救援」に比べても、手助けの域を超えて苦境を脱するとこ ろまで引き上げる感じが強い。また、小林秀雄が『作家の 顔』で「人生に対する抽象的煩悶に堪えず、を求めるため の旅に上ったという表面的事実」と、トルストイに関する正 宗白鳥の言を引用したように、この語は精神面についても 広く用いられる。乃援助・救援・Q救助・救い・救う・助ける きゅうし【急死】急に死ぬ意で、会話にも文章にも使われる 漢語。〈交通事故による〉〈心臓発作でーする〉即死 はもちろん「頓死」と比べても、そこまで急激な死という 感じはない。急逝・Q即死・頓死 きゅうじつ【休日】勤めや学校の授業などが休みになる日を さし、やや改まった会話や文章に用いられる少し正式な感 じのする漢語。〈ー運転〉〈ー出勤〉〈ー診療〉〈ー返上で働 く〉〈ーは家でごろごろしている〉ひオフ・休暇・休業・休憩・休 息・休み <258> きゅうしゅう きゅうしゅう【吸収】吸い上げて取り込む意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈消化ーがよい〉〈水分をーする〉 〈熱をーする〉の「知識をーする」「西欧文化をーする」のよ うな抽象的な意味での比喩的用法もあり、「大企業による ー合併」のように買収に近い意味の婉曲表現として使う こともある。Q吸入・吸い込む・吸う きゅうじゅつ【弓術】弓で矢を射る技術をさし、会話にも文 章にも使われる古風な漢語。〈指南〉の「弓道」に比べ、 技の面に重点のある感じが強い。弓Q弓道・弓 きゅうしょ【急所】身体の中の打ち所が悪いと命にかかわる 大事な箇所、転じて、ものごとの中核の意で、会話にも文章 にも使われる、いくぶん古風な漢語。へーを打つ〉へーを外 れる〉へーを握る〉〈問題のーを突く〉獅子文六の「胡椒 息子』に「(心の傷痕は)熊の月の輪のようなーであるから、 骨身に応える痛さだ」とある。Q要所・要衝・要地・要諦・要点 きゅうじょ【救助】生命の危険に曝されている人間や動物を 救うことをさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢 語。〈一隊〉〈一活動〉〈人命一〉〈遭難者の一に当たる〉 精神的に救う場合には用いない。大岡昇平の『俘虜記』に 「比島東方海上で撃墜され、失神して海上を漂ううちにーさ れた」とある。と援助・救援・Q救済・救い・救う・助ける きゅうじょう【球場】「野球場」の略称として会話にも文章に も使われる漢語。〈大勢のファンがーに押しかける〉運動 場・競技場・グラウンド・グランド・コート・スタジアム・Q野球場 きゅうす【急須】取手と注ぎ口の付いた茶を淹れる陶磁器 製の器をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〜で茶を 淹れる〉へに茶葉を入れ、少し冷ましたお湯を注ぐ土 瓶より小さく、上に弦の付いたものや金属製のものもある。 土瓶と違って白湯を飲むときには用いない。永井龍男の 『石版東京図絵』に「の茶を湯呑みにしぼった」とある。 児土瓶 ざゅうすい【給水】飲用水などを供給する意で、改まった会 話や文章に用いられる、いくぶん専門的な漢語。〈ー車〉 〈ー塔〉〈ー制限が解除される〉ひ配水 きゅうせい【急逝】人が急に亡くなる意で、主として文章に 用いられる漢語。〈恩師—の報に接し驚きを禁じえない〉回 端的な「急死」に比べ、「逝く」と婉曲に表現しており、 丁寧に感じられる。Q急死・即死・頓死 ゆうせん【休戦】双方の合意により期間を限って戦闘行為 を中止する意で、会話にも文章にも使われる、やや専門的 な漢語。(一条約)〈クリスマス—〉の「停戦」と違い戦争状 態は継続している。専停戦 きゅうそく【休息】体力の回復を待つ休みをさす漢語。ふつ うの日常語である「休憩」に比べ、文章語に近い改まった表 現。〈疲れたところでしばらくーする〉〈楽しいーのひとと き〉②疲労回復のために個人の意志で休むというニュアン スが強い。辻邦生の『旅の終り』に「果してここに止まるこ とは、安らかさのなかへのーなのであろうか」とある。ひオ フ・休暇・休業・休憩・休日・休み ゆうそく【急速】変化や変動のスピードが速い意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ーに増大する〉〈ーに上達す る〉〈ーな円高で対策に苦慮する〉変化の幅に重点のある <259> 「急激」に比べ、変化の速さに重点がある。急激 きゅうだい【及第】進級・卒業できる水準にあると認められて その資格を与えられる意を示し、会話にも文章にも使われ るいくぷん古風な漢語。へー点はおぼつかないへ〈無事ーす る〉の太宰治の『思い出』に「一週間もつづけて勉強する と、すぐーの確信がついて来るのだ」とある。「落第」と対 立。巻合格 きゅうだいてん【及第点】規定の水準に達している点数をさ す漢語。〈ーを与える〉最近の学校ではあまり落第しない ので、そういう現実を反映して「及第」という語自体も使用 頻度が減少し、やや古風な印象がある。「落第点」と対立。 きゅうちょう【級長】学級の代表者である生徒をさし、会話 でも文章でも使われた古めかしい漢語。〈学級を代表して ーが挨拶する〉選挙で選ばれる学級委員に比べ、優秀な 生徒が任命された昔の級長は権威があった。小津安二郎監 督の映画『秋刀魚の味』に、佐久間先生(東野英治郎)が昔の 教え子に「堀江さんは、たしか副ーをしておられましたな」 と話しかけると、河合(中村伸郎)が横から口を出して「こ いつは今でも副ーですよ。女房がーでね」と仲間をからか う場面がある。「級長」という単語だけで時代を感じさせる 例である。 きゅうどう【弓道】弓の弦に矢をつがえて放つ日本武道をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈三段の腕前〉へ に精進する〉洋弓・アーチェリーを含まない。「弓術」に比 べ、精神面に重点のある感じが強い。弓術・弓 きゅうに【急に】それらしい様子もなかったのに、短時間の きゅうはく うちの変化でといった意味合いで、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常語。〈立ち止まる〉〈一降 て来る〉〈前触れもなく動き出す〉〈不機嫌になる〉 〈一言われても時間が取れない〉太宰治の『富嶽百景』に 「一濃い霧が吹き流れて来て(略)眺望がきかない」とある。 それらしい兆候のないままきわめて短時間に変化するとこ ろに重点を置いた表現。ひQいきなり・だしぬけに・突然・不意に きゅうにゅう【吸入】吸い入れる意で、会話にも文章にも使 われる、やや専門的な漢語。〈器〉〈酸素〉〈スポイトで ーする〉治療のためなどに酸素や霧状にした薬品などを 口から取り入れる場合はこの語を用いる。吸収・Q吸い込 む・吸う きゅうにゅう【牛乳】牛の乳をきし、会話にも文章にも使わ れる日常の漢語。〈成分未調整〉〈ーを搾る〉〈ーからチ ーズを作る〉の小川国夫の『平地の匂い』に「白い大きな牛 が一頭ゆらりと出て来た。さっきの無垢なーの色だった」 とある。毎朝各家庭に配る習慣が衰退した今は「配達」 という言いまわしも古く感じられる。粉ミルクや練乳には この語を使わない。瓶や紙パックに入っている状態ではこ の語を使うことが多く、それをコップに入れると「ミルク」 という語もよく使われる。ひミルク ゆねん【旧年】新しく始まった年から振り返って、過ぎ 去ったばかりの年をさし、改まった会話や文章に用いられ る漢語。〈中はいろいろお世話になりました〉年の初め に正月気分で使う。去年・Q昨年・前年 きゅうはく【急迫】差し迫った状態に追い込まれる意で、改 <260> きゅうはく まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈事情が する〉〈戦局がーする〉の「切迫」以上に急激に余裕がなく なった感じがある。勇窮迫・Q緊迫・切迫 ゆうはく【窮迫】金銭的に追い詰められ、困窮の度が甚だ しくなる意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。 〈生活が—する〉〈財政的に—する〉急迫・Q困窮 ゆうびょう【急病】急に起こる病気の意で、会話にも文章 にも広く使われる日常の漢語。〈人〉へで救急車を呼 ぶ人をさす「急患」と違い、もっぱら病気をさす。専急 患 ゆうゆう【級友】「同級生」の意で、主に改まった文章に使 われる古風な漢語。〈久しぶりにーを訪ねる〉〈街でばった りーに出逢う〉、ヲクラスメート・Q同級生 ゆうよ【給与】「給料」の意味で、改まった会話や文章に用 いられる正式な感じの漢語。〈明細〉〈所得〉〈を支 払う〉の「給料」に比べ、支払う側の連想が強い。 月給・サラリー・賃金・俸給 きゅうりょう【給料】継続する労働に対する報酬として定期 的に支払われる金銭の意で、会話にも文章にも使われる日 常の漢語。〈一日〉〈一が安い〉〈一が上がる〉〈一を前借り する〉の大岡昇平の『わが復員』に「上等兵と一等兵の」の 差額」とある。Q給与・月給・サラリー・賃金・俸給 見えた」とある。 ゆうりよう 丘陵 傾斜の緩やかな低い山やその地形をさ して、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一地帯〉 〈一が続く〉火野葦平の『麦と兵隊』に「夜の中に幽かに 水平線のみが見え、時折り過ぎたーは波のうねりのように さよ【寄与】そのための役に立つ意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈脳科学の発展にーする〉〈児童文学の 普及にーするところすこぶる大である〉「貢献」以上にそ の結果に言及した表現。ひQ貢献・尽力 きよい【清(浄・潔)い】「清らか」「清浄」の意で、主に文章中 に用いられる古風な和語。〈水の流れ〉〈ー・く澄んだ瞳〉 〈ー心〉〈ー交際〉〈ー政治〉平林たい子の『秘密』に「真 白にさらしたサテンのようなー波」とある。「ーく正しく 美しく」という表現は時代を感じさせ、今は具体的な物に はなおさら用いにくくなって、特に会話では気障な感じに 響きやすい。清らか・Q清純・清浄 きょう【今日】今経過中のその一日をさし、くだけた会話か ら便い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「 のうちに仕上げる〉へーは冷える〉へーこそは頑張ろう〉 へーできる十日経つ〉へ去年のー〉へーこの頃〉夏目漱石の 「坊っちゃん」に「ー見て、あす移って、あさってから学校 へ行けば極りがいい」とある。ひQこんにち・本日 ぎょう【行】文字記載の進行方向への一続きをさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈ーを改める〉〈ーをそろえる〉 〈次のーに出てくる〉五十音図の「アイウエオ」や「カキ クケコ」などのまとまりをさして「ア行」「カ行」などと呼 ぶ用法もある。ひ列 きようあい【狭隘】面積や度量などが狭い意で、主として文 章中に用いられる硬い漢語。〈な土地〉〈な心の持ち 主〉三島由紀夫の『金閣寺』に「運河のようなな海」と <261> ある。 ノ手狭・ノ狭い きようい【胸囲】胸部の周囲の長さをさし、会話や文章に用 いられるやや正式な感じの漢語。〈ーを測定する〉、パスト・ Q胸回り きようい【驚異】信じられないことに遭遇し非常に驚く意で 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈的なスピード〉 〈の目を見張る〉〈大自然のーに打たれる〉庄野潤三の 『ブールサイド小景』に「何の不安も抱かなかった自分たち の生活が、こんなにも他愛なく崩れてしまったという事実 に、彼女はーに近い気持を感じた」とある。驚き愕然 驚愕・Q驚嘆 ちょういく【教育】知識・技能・道德などが身につくよう心身 両面で教え育てる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常の基本的な漢語。〈実習〉〈制度〉 〈学校〉〈義務〉〈通信〉〈社員〉〈英才〉〈を行 う〉〈高等〉を受ける〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「 の精神について長い御談義を聞かした」とある。同じ作品 に「のない婆さんだから仕方がない」とあるように、「 がある」「がない」の形で、指導を受けて身についた教養 や高い学歴を意味する場合もある。教える・Q教導・指導 きよういん【教員】学校で教育の職務に従事する人をさして 改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈ー免 許〉〈ー採用試験〉〈ーの資格を取得する〉〈中学校のー〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「もうーも控所へ揃いましたろ うと云うから、校長に尾いてー控所へ這入った」とある。 小学校・中学校・高等学校の教諭や大学の教授などの総称。 きょうか 職業名として記入する際に用いる。「教師」に比べ、正式の 資格として公認されている感じが強く、芸事などにはなじ まない。Q教師・先公・先生 きようえい【競泳】種目別に一定の距離でスピードを競う水 泳競技をさし、改まった会話や文章に用いられる専門的な 漢語。〈一種目〉への二百メートル平泳ぎにエントリーす る〉正式のスポーツという雰囲気が強く、遊び半分で速さ を争うような場合にはなじまない。水泳・Q水上競技 きょうえん【共演】同じ作品に共に出演する意で、会話でも 文章でも使われる漢語。〈有名女優と—する〉〈豪華キャス ト夢の—〉いっしょに出演することに重点がある。見競演 きょうえん【競演】演技を競う意で、会話でも文章でも使わ れる漢語。〈三大スターの—が見もの〉競い合うところに 重点がある。共演 さようおう【饗(供)応】客に酒や茶菓などをふるまう意で、 主として文章に用いられる古風で硬い感じの漢語。「を 受ける」〈茶菓のーにあずかる〉「接待」より丁重で豪華 な感じがある。ふ接待・Qもてなし きょうか【供花】死者や仏前に花を供える意で、主に文章に 用いられる漢語。〈ー料〉仏教では「くげ」ともいい、そ の場合は古風に響く。貝献花 きようか【強化】人・物や力・作用などを加えて強くする意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈ーガラス〉〈一合宿〉 〈戦力をーする〉〈取り締まりをーする〉②もともとある程 度の強さのある対象に行う「増強」対象の明らかに不十分 な点に行う「補強」と違い、特にそういう条件無しに広く用 <262> きょうか いる。 ノQ増強・補強 きょうか【教科】発達段階や教育の目標・方法によって仕分け た組織的な授業内容をさし、会話にも文章にも使われる専 門的な漢語。〈五—七科目〉〈—教育法〉現代文・古文・国 語表現は国語科、日本史・世界地理は社会科、物理・化学・生 物は理科で、全部で三教科八科目と数えるなど「科目」より 大きな単位をさす。単学科・Q科目 ぎょうが【仰臥】「横臥」「伏臥」に対して、あおむけに寝る 意。主として改まった漢文調の文章に用いられる硬い感じ の漢語。の瀧井孝作の『無限抱擁』に「風邪気の熱で床に していた」とあり、古井由吉は『息災』で入院中の父親のよ うすを「右腕に点滴の針を立てられ、すこしの身動きもす るまいというふうにひっそりーしていた」と描いている。 ひ寝る・病臥・Q伏せる・休む きょうかい【教会】「教会堂」の略で、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈学校〉〈村の—〉 へーに通う〉〈ーで結婚式を挙げる〉通常はキリスト教に ついて用いる。本来は「一の一員」「一の仕事」のように、 宗教の教義を教え広める信者の共同体をさすが、現在は教 会の建物をさすことが多く、小沼丹の『ロンドンの記憶』に 「趣のある古い家が古い通にしっくり納って(略)簇葉越しに ーの塔が覗いたりして、如何にもロンドンにいると云う実 感がある」とある。ヲカテドラル・Q教会堂・聖堂・大聖堂・チャペ ル・天主堂・礼拝堂 きょうがい【境涯】その人間が生きていく上での状況の意で、 主として文章に用いられる硬い漢語。〈不幸なー〉〈今のー を悲観してはいない永井荷風の雨瀟瀟」に「成りゆき の儘送って来た孤独のーが、つまる処わたしの一生の結末 であろう」とある。専環境・Q境遇・身空・身の上 きょうかいどう【教会堂】キリスト教で礼拝や説教や教会員 の会合を行うための建物をさし、改まった会話や文章に用 いられる正式な感じの硬い漢語。「で礼拝を行う」ふカテ ドラル・Q教会・聖堂・大聖堂・チャペル・天主堂・礼拝堂 きょうがく【驚愕】全然予想もしなかったことに出合ってひ どく驚くことをさし、主として文章中に用いる硬い漢語。 へ突然の出来事にーする〉へーの表情を浮かべる〉内田百 閉の『東京日記』に「友人はーの余り足許をがくがくさせて いる様子であったが」とある。ひQ驚き・愕然が・驚異・驚嘆 きょうかしょ【教科書】教科ごとに学校の教材として編集さ れた図書をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈検定 ー〉〈初級のー〉〈国語のー〉「教材」と違い、必ず本の形 になっている。小学校・中学校・高等学校の検定教科書の場 合は「テキスト」と呼びにくい。芥川龍之介の『あの頃の自 分の事』に「一つに代る代る二人で仮名をつけて、試験前 には一しょにそのーを読んで間に合せていた」とある。「テ キスト」より学校とのつながりが強く、それだけ子供じみ た雰囲気があるため、社会人教育では「テキスト」のほうが よくなどむ。教材・Qテキスト さようかつ【恐(脅)喝】相手の弱みや秘密などを材料に脅し て大金を出させる意で、会話にも文章にも使われる漢語。 〈不良品をたねに会社を—する〉への容疑で逮捕する〉 「ゆすり」より大がかりで奪い取る金額も大きい感じがあ <263> る。 ♩威嚇い・脅す・ゆすり きょうかん【共感】他人の意見や心情に対してその通りだと 思うことをさし、会話にも文章にも使われる漢語。へを覚 える)「をよお)へをそそる)へするところが多い)回 永井龍男の『朝霧』に「この述懐は、不思議なーといおう か、思いやりに似たしみじみとした感情を、私の胸に涌き 起させた」とある。Q共鳴・賛成・賛同・同意・同感 きょうき【驚喜】思いがけない結果にびっくりして喜ぶ意で、 主として硬い文章に用いられる漢語。〈夢にも思わなかった 再会にーする〉の有島武郎の『或る女』に「に近い表情を 顔一面に漲らして」とある。思いがけないことに大変喜ぶ 点で「狂喜」とよく似ているが、この語は「驚く」ことに重 点がある。弁喜 きようき【狂喜】気が狂うほど激しく喜ぶ意で、主として硬 い文章に用いられる漢語。〈一乱舞〉〈優勝の知らせにーす る〉の宇野浩二の『蔵の中』に「お祭の日の子供のようにー しました」とある。思いがけないことに大変喜ぶ点で「驚 喜」とよく似ているが、この語はその喜びが「狂った」かと 思われるほどの尋常でないようすとなって外見に現れるこ とに重点がある。ひ驚喜 きょうぎ【協議】ある問題の対応や処理について何人かの人 間が話し合うことをさし、改まった会話や文章に用いられ る正式な感じの漢語。〈連絡—会〉〈離婚〉〈解決策をめ ぐる—に入る〉〈ーが長びく〉〈ーの上決定する〉「会議」 に比べ、形式的に自由で非公式の場合も含まれる雰囲気が ある。ひ打ち合わせ・会議・相談・談合・Q話し合い・ミーティング ぎょうご きようぎ【行儀】立ち居振る舞いの作法をさし、会話にも文 章にも使われる日常の漢語。〈一見習い〉(みっちりー作法 を仕込む〉(足を投げ出すなんて、まあ、おーが悪い)小 沼丹の『黒と白の猫』に「その猫はーが良かった」と人間以 外に用いた例がある。食卓の上の食べ物に見向きもせず 「横眼も使わない」よその猫に対する評価である。ひエチケ ット・作法・マナー・Q礼儀作法・礼法 きようぎじょう【競技場】運動競技の試合をしたりそれを観 戦したりするための場所や施設をさし、会話にも文章にも 使われる漢語。〈陸上—〉〈屋内—〉〈一のメインスタンド〉 〈一で入場行進をする〉②「運動場」よりも競技の種類が限 定され、屋内の場合もあり、観覧席を設けているイメージも 強く、より専門的。Q運動場・球場・グラウンド・グランド・コー ト・スタジアム・野球場 さようぐう【境遇】人間関係・家庭環境・経済状態・社会的な地 位などの総合的な状況をさして、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈恵まれたーに育つ〉へ現在のーに甘ん じる〉ひ環境・Q境涯・身空身の上 きようけん【強健】身体が健やかで強い意で、主に文章に用 いられる硬い感じの漢語。〈一な肉体を有する〉〈一を誇 る〉、Q頑健・強壮・たくましい ぎようご【擬容語】擬態語を細分したもののうち、物の状態 や人の心情ではなく、もっぱら人や動物の動作を言語音で 感覚的・象徴的に形容することばをさし、学術的な会話や文 章に用いられる、専門性の高い漢語。「もじもじ」はーと 認定できる〉の「きょろきょろ」「にやにや」「のろのろ」 <264> 「すいすい」「びょんびょん」などがそれに当たる。ひオノマ トペ・擬音語・擬状語・擬情語・擬声語・Q擬態語 さようこう【凶行】殺人などの凶悪な犯罪行為をさし、主と して文章に用いられる漢語。〈—現場〉〈—に及ぶ〉〈白昼 堂々ーを働く〉悪行・Q悪事 きようこう【強行】無理を承知で強引に行う意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈一突破〉〈一採決〉〈再開発を する〉〈反対を押し切ってーする〉勇敢行・強硬・強攻・Q決行 断行 さようこう【強硬】あくまで譲らないようすの意で、会話で も文章でも使われる漢語。〈ーな意見〉〈ーに主張する〉 〈ーな態度を崩さない〉Q強行・強攻 きょうこう【強攻】強気で攻める意で、会話でも文章でも使 われる漢語。〈ー策を採る〉〈ー策に出る〉Q強行・強硬 きょうごう【競合】「競り合い」の意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈利権を巡ってーする〉〈ライパル 商品を発売して他社とーする〉「脱線」のように、多く の要素が複雑に絡み合う意の用法もある。競争・競り合い ぎょうこう【僥倖】思いがけず訪れた幸運の意で、文章中に 用いられる古風で硬い漢語。〈ーを頼みにする〉〈ーに恵ま れる〉Q幸運・つき・ラッキー きょうざい【教材】授業や学習のための材料をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈貴〉〈視聴覚〉〈研究〉 〈入門用のーをそろえる〉の「教科書」や「テキスト」と違 い、必ずしも綴じた本の形をしていなくてもよく、ばらば らの紙でも、また、紙以外の物でもよい。具Q教科書・テキス きょうし【教師】学校などで児童・生徒・学生に学問や技術を 指導する立場の人をさして、やや改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈日本語—〉〈一の指導〉〈数学の—〉夏目 漱石の『坊っちゃん』に「おれは様子が分らないから、博物 の一と漢学の一の間へ這入り込んだ」とある。「教員」と違 い、「家庭—」「ビアノ—」のように学校以外にも使う。 Q教員・先公・先生 きようじ【教示】上の立場の人が下の人に知識や方法などを 教え示す意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。御 ーを乞う《御ーを仰ぐ)もっぱら相手の行為をそのよう にとらえる謙虚な表現であり、子供相手であっても自分の 行為には使わない。教える・Q指導・指南・導く きようじ【矜持(恃)】自分の能力を信じてそれを誇りに思う 意で、主として文章中に用いる硬い漢語。〈ーを高く持つ〉 〈学者としてのーを捨てる〉藤沢周平の『三ノ丸広場下城 どき』に「ひさしく埃をかぶっていたむかしのー」とある。 ひ気位・自尊心・Q自負・プライド・誇り ぎようし【凝視】視線を固定させたまま対象を見据える意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。へ一点をーした まま動かない)火野葦平の『麦と兵隊』に「私は目を据え て城門の方角をーして居た」とある。Q観察・眺める・見詰 める ぎようじ【行事】一定の時期に一定の形で恒例として行う催 し事をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈年中—〉 〈予定〉〈恒例の—〉〈伝統—〉〈学校の—〉〈が立て込 <265> んでいる)向田邦子の『父の詫び状』に「お彼岸やお盆の ーにはとんと無縁であった」とある。谷崎潤一郎の『細雪』 に「悦子と二人の妹たちだけ先に帰って、貞之助と幸子はも う一と晩泊ることもあったが、ーはその日でおしまいにな る」とある。「催し」より定期的で格式ばった感じがある。 「学校行事」には期末試験なども含まれ、「催し」ほと楽し い雰囲気ばかりではない。僕催し きょうしつ【教室】授業を行う部屋をさし、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈階段 ー〉〈料理ー〉〈一の最前列〉山田詠美の『風葬の教室』に 「一には、いつもある種の宗教がはびこる」とある。「教場」 以上に、理科の実験室や音楽室や体育館などを除く通常の 授業を行う部屋を連想しやすい。専教場 ざようしゅ【業種】事業・企業・営業の種類をさし、やや改ま った会話や文章に用いられるいくぶん専門的な漢語。「別 電話帳〉へーごとのリスト〉み職種 きょうしゅう【郷愁】ふるさとや過ぎ去ったものを懐かしむ 心の意で、改まった会話や文章に用いられる、やや詩的な雰 囲気の漢語。〈古きよき時代へのー〉〈ーを感じる〉〈ーを かきたてられる〉〈ーにひたる〉の小沼丹は『昔の仲間』で、 戦死した友人からの最後の手紙に言及し、「文学に対する ーのようなものを長ながと書き緩っているが、それを書き 写す気にはなれない」と悲痛な思いを述べる。僕かしい・ 懐かしさ・ノスタルジア・ノスタルジー きようしゅく【恐縮】過分な配慮などを受けて恐れ入る意で、 改まった会話や文章に用いられる丁重な漢語。まことに きょうせい 千万〈1の至り〉(すっかりーする)〈お手数をかけてー ですが②傾倒する志賀直哉にビールを注いでもらうとき の小津安二郎監督の恐縮ぶりをぜひ見せたかったと里見弾 は語ったという。有り難い・Q痛み入る・恐れ入る・忝い しもつ【供述】被疑者・被告あるいは証人などが裁判官 や警察官の取り調べや聴取に対して答える意で、改まった 会話や文章に用いられる、専門性の強い漢語。「書」法 廷でーする〉へーが得られる証人の発言も含まれる点 で、「自白」や「自供」と決定的に違う。Q自供・自白・白状 きょうじょう【教場】授業を行う場所をさし、改まった会話 や文章に用いられる、やや正式な感じの漢語。「試験〉 へーに参考書を持ち込む》⑩井伏鱒二の『休憩時間』に「足 駄をはいてーへはいるものは、わざと大きな足音をたてて はいって行け」とある。通常の授業を行う「教室」を連想し やすいが、そのほか音楽室や理科の実験室や体育館なども 含まれる感じがある。専教室 ぎようじょう【行状】日々の行いの意で、主に文章に用いられる古風な漢語。〈日ごろのー〉〈ーを改める〉〈ーがよくない〉Q操行・素行・品行・身持ち きようじる【興じる】面白がる意で、主に文章に用いられる、 やや古風な語。〈笑いー〉〈隠し芸にー〉巻しむ きょうしん【強震】震度5の旧称。軽震・弱震・中震・微震 きょうせい【強制】相手の意思を無視して押し付ける意で 会話でも文章でも使われる漢語。〈ー送還〉〈ー執行〉〈立 ち退きをーする〉乃強請 きようせい【強請】無理に要求する意で、会話でも文章でも <266> きょうせい 使われる硬い感じの漢語。〈賄賂を—する〉〈寄付を—す る〉強制 きょうせい【矯正】直す意で、改まった会話や文章に使われ る漢語。〈視力〉〈齒列〉〈性格を—する〉圧正 さようせい【匡正】正す意で、改まった文章に用いられる古 風で硬い感じの漢語。〈道德の—〉るぽら精神的な意味 で用い、具体的な対象には「矯正」を用いる。弜矯正 きょうせい【共生(棲)】同じ場所で人間も異種類の動物や植 物も争わずに共に生きてゆく意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈自然とのーをめざす〉生物学の専門用 語としては、別の種類の生物が共同生活を営む意で、一方 が害をこうむる「寄生」と区別される。寄生・Q共存・並存・ 並立・両立 ぎようせき【業績】事業の成績や学問研究上の優れた実績を さし、やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん専門 的な漢語。〈研究—〉〈ー審査〉〈ー不振に陥る〉〈ーが伸び る〉〈ーを積み上げる〉専功績・功労・収穫・殊勲・Q成果・手柄 きようそう【強壮】力強く精力の満ちる意で、主に文章に用 いられる、やや古風な感じの漢語。〈ー剤〉〈身体—〉専頑 健・Q強健 きょうそう【競争】同じものを目指して争う意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。 〈ー率〉〈生存〉〈ーに加わる〉〈熾烈なーを繰り広げ る〉夏目漱石の『吾輩は猫である』に「一の念、勝とう勝 とうの心」とある。観合・競り合い きょうそうあいて【競争相手】何かを争う相手を広くさし、 会話にも文章にも使われる日常の表現。「が不在だ」 を蹴落とす(いいだ)「ライパル」と違い、特に恋敵 をさす用法はない。「ライパル」同様、団体や組織にも使 う。好敵手・Qライパル きょうそん【共存】複数のものが互いを排斥したり併合した りせずに同時に存在する意で、改まった会話や文章に用い られる硬い漢語。〈共栄〉〈平和—〉〈ライバル関係の両 社が—できる環境〉特に、本来異質なものに対して用い る傾向がある。「きょうぞん」ともいう。単共生・Q並存・並 立両立 きようたん【驚嘆(歎)】素晴らしさや珍しさにびっくりして 感心する意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。へみ ごとな出来栄えにーするへあの努力はまさにーに値する 木山捷平の『長春五馬路』に「寝台の上に広いゴムの葉 が垂れさがっているのに正介はーした」とある。驚き・愕 然・Q驚異・驚愕 きようち【境地】苦しい努力などを経てたどり着いた心の状 態をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へー に到達する)〈無我の—に入る〉〈新しい—を開く〉②島木 健作の『癩』に「泥沼のような—におちこみ、そこからの出 口を求めて、のた打ちまわっている」とある。心境 きようちゅう【胸中】外部にあらわれない心の中の意で、や や改まった会話や文章に用いられる、やや硬い感じの漢語。 〈ーは複雑〉〈ーを打ち明ける〉〈ーを包まず話す〉〈そのー は察するに余りある〉〈ー深く期するものがある〉の重い 口を開いてーを語る」のように、あえて他人には語らない <267> できた秘密めいた内容を連想させることもある。気持ち・ Q心中・内心・本心・本音・胸の内 きょうちょう【強調】ある部分が際立つように強い調子で表 現する意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈有効性を する〉〈力強さを—する〉〈赤を—して描く〉〈勇気をもっ て挑戦したという事実を—する〉志賀直哉の『暗夜行路』 に「悪辣な女だという所を幾らか—した話し振り」とある。 「主張」がその内容に重点があるのに対し、相手に訴える仕 方に重点がある。「傍点を打って—箇所を示す」のように文 章中でも行われる。「誇張」と違って事実や情報そのものは 拡大せず、相手に強い印象を与える表現を採用。言い張 る・誇張・主張・提言・Q力説 きょうつう【共通】複数のものに同じように当てはまる意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な漢語。〈一点〉〈一の話題〉〈一の友人〉〈一の悩み〉 〈両者にーする特徴〉の芥川龍之介の『侏儒の言葉』に「万 人にーする悲劇は排泄作用を行うことである」とある。 共有 きようつうご【共通語】全国どこでも通用する言語体系をさ し、学術的な会話や文章に使われる専門的な漢語。知らな い人にはーで話す)規範として理想的にとらえられる 「標準語」と違い、どこでもだれにでも通じるという点に意 識の中心がある。専標準語 さようてい【協定】ある件に関して当事者同士が協議をして 合意に達した取り決めの意で、改まった会話や文章に用い られる正式な感じの漢語。「校」〈紳士」〈通商」を結 きょうど ぶ日米地位ーを締結する」のように、国家間の約束と して用いる場合は、条約ほど重要でない細かい事柄につい ての、厳密な形式をとらない実質的な条約にあたる。Q協 約・条約 さようてん【経典】仏教の経文、キリスト教の聖書、イスラ ム教のコーランなどの総称として、会話でも文章でも使わ れる神聖な感じの漢語。へーの教えを忠実に守る》専教典 きようてん【教典】教育や宗教に関する教えを説いた書物の 意で、会話でも文章でも使われる漢語。へに記されてい る) 処經典 ぎようてん【仰天】非常に驚く意で、会話にも文章にも使わ れる古風な漢語。ぐびっくりーぐあまりに突然のことでー した》永井荷風の『おかめ笹』に「今朝になってその話を きいて喫驚ぶーしちゃったんです」とある。度肝を抜かれ 思わず天を仰ぐ意から。おったまげる・驚く・Qたまげる・びっ くり・ぶったまげる さようと【教徒】信徒の意で主に文章に用いられる漢語。仏 ー〉〈キリストー〉〈弾圧にーが騒ぎ出す〉宗教名ととも に用いることが多く、単独では「信徒」のほうをよく使う。 単信者・Q信徒 きょうど【郷土】「出身地」に近い意味で会話でも文章でも幅 広く用いられる日常的な漢語。〈ー愛〉〈ー料理〉〈ー芸能〉 〈ーの誇り〉藤沢周平の『ふるさと讃歌』に「色ゆたか な山菜料理」とある。「郷里」「故郷」「ふるさと」などが個 人の視点でとらえているのに対し、一般的な視点に立って、 そこに住む人びとにとっての土地を考えた感じの語で、個 <268> きょうどう 人の思いのこもらない客観的で比較的スケールの大きな雰囲気がある。ひQ郷里・故郷・出身地・ふるさと さようどう共同いっしょに行う意で、会話にも文章にも よく使われる日常の漢語。〈生活〉〈研究〉〈宣言〉 〈経営〉〈で使用する〉も協同・協力 さようどう【協同】力を合わせて行う意で、会話でも文章で も用いられるやや専門的な漢語。〈一組合〉〈一出資〉〈産 学一〉専共同・協力 きょうどう【教導】人間としての道を教え、あるべき方向へ 導く意で、改まった会話や文章に用いられる、やや古風で専 門的な感じの漢語。〈生徒の—に携わる〉〈信者の—に当た る〉の学問や技術をも授ける「教育」と違い、もっぽら精神 的・道徳的な内容を連想させる。「指導」より幅が狭い。乃 教える・教育・コーチ・Q指導 きょうねん【享年】生を享けて死ぬまでこの世にあった年数 の意で、主に文章中に用いられる、やや古風で改まった感じ の漢語。〆本年十月に死去、—八十二〜天から授けられた 年数と受け止めて言う語。この語のあとは数字のみで、 「年」を付けない。行年は年② ぎようねん【行年】「享年」の意で、主に文章中に用いられる 古風な漢語。〈恩師は昨年の暮れに逝去、—九十五〉の行 は「経る」意。「こうねん」と読めば死ぬまでとは限らない 感じになる。享年・没年② きようばい【競売】「競売」の意で、日常生活でふつうに用 いられる漢語。〈家屋をーにかける〉ひオークション・Qけいぼ い・競り売り きようはく【脅迫】他人を脅す意で、会話でも文章でも広く 使われる日常漢語。〈状〉〈電話〉〈刃物をちらつかせ てーする〉〈過去をばらすぞとーする〉②「脅迫」は「脅 す」、「強迫」は「無理強いする」意だが、類似場面で起こる ことが多く、区別が難しい場合は、一般社会では「強迫観 念」以外は多くこの「脅迫」を使っている。ただし、刑法で は暴行と同列にこの語を用い、民法では詐欺と同列に「強 迫」を用いているという。ひ脅す・強迫 きようはく【強迫】心理的にそうしないでいられない状態に 陥れる意で、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢 語。〈契約書にサインするよう—される〉一般社会では、 「一観念」以外ほとんど「脅迫」を使うが、民法では詐欺と 同列にこの語が使われているという。「強迫」という字面を 見ても「キョーハク」という音から日ごろよく使われる「脅 迫」という語を連想しやすく、それに伴ってその困った感じ が増幅されることもありそうだ。脅迫・強迫観念 きようはくかんねん【強迫観念】強く心にまとわりついて否 定しがたくなった考えをさし、改まった会話や文章に用い られる専門的な漢語。〈ーに襲われる〉②古井由吉の『息 災』に「閉めきった雨戸の内で(炎が)ゆらめいているよう な、そんなーとなってなやましはじめ」とある。み強迫 きようふ【恐怖】身に危険が及ぶかと極度に不安になる意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈高所—症〉 〈ー心が募る〉〈ーに駆られる〉〈ーにおののく〉〈ーの一夜 を過ごす〉〈ーにさらされる〉木山捷平の『河骨』に「身 内の血が一時に逆流する」とある。「恐れ」以上に切迫し <269> た感じで、自分に直接危害が及ぶことに対する感情という 色彩が強く、丸谷オーの『笹まくら』に「ゆけばかならず憲 兵につかまるというーにおののいていた」とある。Q恐ろ しい・恐れ・怖い・戦慄 きょうぶ【胸部】「胸」の意で、改まった会話や文章で用いられる、専門的な硬い漢語。〈ーレントゲン検査〉〈ー疾患〉 「が発達している」などと言うこともあるが、健康や病 気の話題で使われる例が「胸」よりも多い。専胸① きようふう【強風】強く吹きつける風をさし、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈波浪注意報〉〈に傘が あおられる〉〈ーをついて前進する〉風力階級7の旧称で 「はやて」より上。鳥嵐・おおかぜ・颶風・時化・疾風・陣風・大 風・台風・Q突風・はやて・暴風・暴風雨・烈風 きようほう【凶報】不吉な知らせの意で、主に文章に用いられる古風で硬い漢語。「が飛び込む」縁起の悪い知らせだから死亡通知である可能性が高いが、それに限定されないだけ「訃報」より間接的な表現に響く。Q悲報・訃音訓報 きようぼう【凶(兇)暴】凶悪で乱暴な意で、会話でも文章で も使われる漢語。〈性を帯びる〉〈性を発揮する〉〈 な犯人〉嘉村礦多の『業苦』に「コリラが女を引っ浚ぇ るような惨虐な、ずいぶんーなものであった」とある。刂狂 暴 きようぼう【狂暴】狂ったように暴れるようすをさすやや 硬い漢語表現。〈なふるまい〉〈深酒するとーになる〉 有島武郎の『或る女』に「倉地は嵐のようなな威力を示し たーとある。ゆ凶暴 きょうめい きようぼく【喬木】「高木」の旧称。〈ーを植え連ねる〉の「灌木」と対立する。高木 きようまん【騎(橋)慢】騙りたかぶって人を小ばかにする意 で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「な振る 舞い〉へ「な顔つき〉り傲岸・Q高慢・傲慢・高慢ちき・尊大・不遜 きようみ【興味】面白そうで心を惹かれることをさし、会話 にも文章にも広く使われる日常の漢語。「津々しん」「本 意に取り上げる〉へ「を持つ〉へ「をそがれる〉へ「が尽き ない〉②堀辰雄の『大和路』に「いつかが動きだしてギリ シャの美術史だとかペルシャの詩だとか読み出している」 とある。「関心」に比べ個人的で主観的な感じが強く、対象 の特定箇所だけに目が注がれる場合もある。少関心 きようみぶかい【興味深い】関心を引かれる意で、改まった 会話や硬い文章で用いられる表現。〈なかなか—話だ〉〈一 記事を見つける〉〈先方の出方が—〉回「面白い」という積 極的な評価を表に出さず、個人的な印象を客観化して述べ る慎重な表現。ひ面白い きようめい【共鳴】他人の考え方に心から賛同することをさ し、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーする者 が多い〉〈その考えにすっかりーする〉の「共感」より強く 影響される感じがある。本来は、「ー装置」のように、外部 の振動の作用でそれと同じ振動数で振動し始める物理現象 で、小林秀雄の『モオツァルト』に「声帯や金属の振動を内 容とする或る美しい形式が鳴り響くと、モオツァルトの異 常な耳は、そのあらゆるーを聞き分ける」とある。Q共 <270> きょうやく 感·贊成·贊同·同意·同感 きようやく【協約】個人と団体、または団体と団体との間で 取り交わされる約束の意で、改まった会話や文章に用いら れる正式な感じの硬い漢語。〈漁業—〉〈労働—を取り交わ す〉、Q協定・条約 きようゆう【共有】複数の人や団体が共同で所有する意で、 改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈—財産〉 〈—認識〉〈—の土地〉〈万国—の願い〉〈情報を—する〉 大原富枝の『婉という女』に「一つの世界を—することを自 分に許したのだ」とある。単共通 きようよう【強要】相手が嫌がることを無理にやらせようと する意で、会話にも文章にも使われる硬い感じの漢語。寄 付をーする〉〈参加をーする〉〈自白をーする〉Q強制・強 いる きようよう【教養】世の中に必要な学問・知識・作法・習慣など を身につけることによって培われる心の豊かさをさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈人〉〈書〉〈ーがある〉 〈ーが足りない〉〈ーを高める〉〈幅広いーを身につける〉 Q素養・たしなみ きょうり【郷里】「出身地」に近い意味で会話でも文章でも使 われる、わずかに古風な感じの漂う日常的な漢語。へを出 る)〈久しぶりに—に帰る〉藤沢周平の『孟宗汁と鰊』に 「思い出すのは、五月ごろに—でたべた孟宗汁と鰊である」 とある。「出身地」より田舎の雰囲気と直接つながり、親し みを感じさせる語。「に残っている同級生」とか「休暇ご とに—に帰る」とかと使え、昔住んでいた土地を懐かしむ という雰囲気は「故郷」や「ふるさと」ほど強くないため、 「故郷へ帰る」「ふるさとへ帰る」という感情のこもった言 い方に比べ、「「へ帰る」という言い方は生活のにおいの消 えない日常的な表現にとどまる。専Q郷土・故郷・出身地・ふる さと きようりよう【橋梁】硬い文章に用いられる「橋」の意の専 門的な漢語。〈ー工事に着手する〉の河川または道路・線路 の上に架け渡す構造物をさす正式名称。専橋 きょうりょく【強力】力や作用が強い意で、いくぶん改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈ー接着剤〉〈ーな武器〉 〈ーな味方〉〈ーな効き目〉〈ーに推進する〉林房雄は『青 年』で写楽や北斎を「対象の追求と把握に闘牛士のように不 屈でーで同時に自己放棄的」と述べている。乃頑強・Q強い きょうりよく【協力】一方が他方に力を貸したり両方が力を 合わせて事に当たったりする意で、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈—態勢〉へ—を呼び かける〉へ一致〉〈事業に—する〉〈緊密に—し合う〉野 間宏の『暗い絵』に「それに従いーしてはいるが、学生運動 の中心はむしろ自分にあると考えている」とある。この例 や「ーを惜しまない」「ーが得られる」のように、一方が他 方に力を貸す意にも使う。専共同・Q協同・助力 きようれつ【強烈】対象に対する働きかけがきわめて強く激 しい意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈真 夏のーな光を浴びる〉〈ーなパンチを浴びせる〉〈ーな個性 を遺憾なく発揮する〉〈ーに印象づける〉試合や競争や戦 争のように双方向から働きかける場合にはなじまない。 <271> 激烈・Q痛烈・激しい・猛烈 ぎょうれつ【行列】人や物が一続きに長く並んだものをさし、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈提灯—〉仮装 ー〉へーができる〉へーに割り込む〉広津和郎の『再会』に 「陰気な思考のーが脳のヒダを行進し始めると云ったような 感じ」とある。数字や文字が四角に並ぶマトリックス(横が 「行」縦が「列」を意味する用法は数学の専門語。刂列 きよえいしん【虚栄心】自分を実際以上によく見せようとう わべを飾る心の意で、会話にも文章にも使われる漢語。へー が強い)〈ーを満たす〉〈ーのかたまり〉福原麟太郎の 『虚栄について』に「ーを発揮して、そのもとのラテン語を 書くと」とある。見え さよか【許可】申請などに対して許しを与える意で、やや改 まった会話や文章に使われる漢語。〈ー証〉〈営業ー〉〈ー が要る〉〈ーが下りる〉〈ーを与える〉〈渡航をーする〉 ヒ許 容・承認・Q認可・容認 きよぎ【虚偽】真実を偽る意で、主として文章に用いられる 正式な感じの硬い漢語。〈ー記載〉〈ーの申告〉〈ーの申し 立て〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「ーの記事を掲げた田 舎新聞」とある。ここは赤シャツの陰謀という前提だから、 単なる過失による誤りというよりも、相手を貶しめるなど、 何らかの悪意をもつ偽りということになる。Q偽り・嘘・嘘 っぱち・ほら ぎよぎよう【漁業】魚介類や海藻類の捕獲や養殖に携わる職 業をさし、やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん 専門的な漢語。〈権〉〈遠洋〉〈沿岸〉、水産業 きょくたん きよく【曲】音楽の作品をさし、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の漢語。〈行進—〉〈好きな—〉 〈明るい感じの—〉〈ーを作る〉林芙美子の『茶色の眼』に 「山の流れが爽々と岩の間を流れてくるような、爽快なーだ った」とある。単音楽 きよくげん【極言】あえて細かいニュアンスを切り捨て、極 端な言い方を選んで刺激を強めることをさし、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ーすれば無いに等しい〉(い ささかーに過ぎよう)②小林秀雄の『モオツァルト』に出る 「モオツァルトの音楽に夢中になっていたあの頃、僕には既 に何も彼も解ってはいなかったのか。若しそうでなければ、 今でもまだ何一つ知らずにいるという事になる。どちらか である」という言い方はその好例。誇張 きよくしょ【局所】それとなく男女の「外部性器」をさすこ とのある漢語の婉曲表現。文字どおりには、身体の 「ある限定された場所」というだけの意味で、それがどこを さすかは相手の判断にゆだねる表現。性とは無関係な「 疲労」のような一般的な使用例も多く、「局部」と同様、意 味が抽象化されているだけに発信者・受信者ともに感情の交 じらない客観的な表現として機能する傾向が見られる。 一物・Q陰部・陰門・隠し所・下半身②・下腹部・局部・玉門・金玉・筆丸 ・女陰・性器・生殖器・恥部 さよくたん【極端】甚だしく大げさで偏っている意で、会話 にも文章にも使われる日常の漢語。〈両—〉〈一な例を出 す〉へーな言い方をする〉〈一に走る〉の「極度」以上で、わ かりやすくしたり強調したりする目的で現実性を無視した <272> きょくど 感じが強い。 専極度 きよくど【極度】常識的にこれ以上はないと思われるほど程 度が甚だしい意で、改まった会話や文章に用いられる、やや 硬い感じの漢語。〈一の緊張〉〈一のストレス〉〈一に達す る〉の極端」のように度を超えたところまでは至らない感 じがある。過度・極端・極まる 「局部」それとなく男女の「外部性器」をさすこと のある漢語の婉曲表現。文字どおりには、身体の「あ る限定された部分」というだけの意味で、それがどこをさ すかは相手の解釈にゆだねる表現。「麻酔」のような一般 的な用法も多く、「局所」と同様、抽象化されている分、露 骨さが回避できる。恥じらいを示すような感情的なニュア ンスはなく、比較的乾いた感じの表現。単一物・Q陰部・陰門・ 隠し所・下半身②・下腹部・局所・玉門・金玉・睾丸・女陰・性器・生殖 器・恥部 きよくめん【局面】物事の展開するその時々の状況をさして、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈新しいーを迎 える〉〈難しいーに立たされる〉〈困難なーを打開する〉 囲碁や将棋の勝負の情勢の意でも使う。対局する盤面の意。 専事態 きよくもん【玉門】軽い通俗的な読み物などで、女性の外部 性器」をさす漢語による古風な俗っぽい比喻的な間接表現。 ②出入り口に見立てた比喻的な発想が逆に露骨な感じをか きたてる面もあるが、玉で飾りたてた実際の立派な門をさ す用法もあるため、「陰門」より間接性が強く、いくらか美 化した感じになる傾向が見られそうである。陰部・Q陰門 隱L所·下半身②·下腹部·局所·局部·女陰·性器·生殖器·恥部 ぎよくろ【玉露】香り高く甘みのある最高級の煎茶をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈ーを味わう〉本来は玉 に見立てた露の美称で、それに喩えた命名。上がり・お茶・ Q煎茶・茶・日本茶・番茶・碾き茶・焙じ茶・抹茶・緑茶 きょう【举行】式典や改まった行事などを執り行う意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈教会にて結婚 式をーする〉〈体育祭をーするにあたり〉②「執り行う」に 比べ大仰な感じが強い。Q行う・する・執り行う・やる さよしつ【居室】ふだん居る部屋をさし、主として改まった 文章で用いられる硬い感じの漢語。〈終日狭いーで過ごす〉 の「居間」より事務的で冷たい感じに響く。Q居間・茶の 間・リビング きよしゅう【去就】その任務や職場などを辞めるか、そこに とどまるか、という身の処し方をさして、主に文章に用い られる硬い漢語。「が注目される」「に迷う」「を決 する」「進退」に比べ、辞めたあとの動向まで視野に入れ てとらえている雰囲気が感じられる。進退 きよじゅう【居住】一定の土地家屋に住む意で、主に文章に 使われる正式な感じの硬い漢語。〈ー者〉〈ー権〉〈ー地〉② その場所に住まいがあるということに重点があり、「住む」 という語にともなう生活性があまり意識されない。ひ住む きよじゅうち【居住地】その人が居住している場所をさし、 主として文章に用いられる硬い漢語。「の役場に届け出 る常識的に番地までを含む「住所」と違い、県名や市町 村名程度でもかまわない感じがある。居所・居場所・Q住 <273> 所·所番地 きよしよう【巨匠】芸術その他の専門分野で特に優れた業績 を有する人物をさし、改まった会話や文章に用いられる漢 語。〈映画界の—〉〈文壇の—と目される〉彷藤忠男『小 津安二郎の芸術』に「功なり名とげた長者の風格をもつ—」 とある。専大御所・大物・権威・第一人者・大家・泰斗 きよぜつ【拒絶】強く拒否する意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い漢語。〈面会を—する〉〈請願を—する〉 〈きっぱりと—する〉横光利一の『紋章』に「恐れのため に彼の発明を—しようとも、何はともあれ、一応の相談は しておく」とある。交渉や話し合いにも応じない雰囲気が ある。巻一蹴やす・Q拒否・断る・拒む・はねつける きよたく【居宅】ふだん住んでいる家の意で、改まった文章 に用いられる古風で硬い漢語。〈閑静な屋敷町にーを構え る〉ひQいえ・うち・家屋・住居・Q住宅・住まい・邸宅・屋敷 きよだつ【虚脱】大きな衝撃を受けたあとなど、がっかりし て体中の力が抜け何も手につかずにぼんやりしている意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ー感〉へー状 態〉の吉行淳之介の『砂の上の植物群』に「感と異様な充 実とが同時に彼の心に在った」とあるように、「充実」の対 極にある。状態は似て見えるが、大きな驚きの結果である 「放心」と違い、これは強い失望感によって生じる。ひ放心 ぎよっと衝撃的なことに出合ってひとく驚くときに、会話 や軽い文章に使われる擬態語。〈思わずーなる〉の悪いこと を連想する例が多い。網野菊の『招かれざる客』に「訪ねて 来た女が自分の生母でなくてよかった、と、ヒョッコリ思っ ぎょふ た。そして、その自分の考えから、ーした」とある。ひきくっと・Qきくりと・どきっと・どきりと・どきんと・はっと きよどう【挙動】動作の様子をさし、改まった会話や文章に 用いられる硬い感じの漢語。〈不審〉(が怪しい)本 来はその人の身についた立ち居振る舞いのことであるが、 何かの目的に応じた動きをさす例も多い。佐多稲子の「く れない」に「針金のような鋭い」とある。処所作・動作・Q ふるまい きよねん【去年】今年のすぐ前の年をさし、くだけた会話か らそれほど改まらない文章まで幅広く使われる日常の漢語。 へーとは違うへーのちょうど今ごろだへーから今年にか けてへー植えた木がもうこんなに大きくなった谷崎潤 一郎の『細雪』に「此の一瞬の喜びこそ、一の春が暮れて以 来一年に互って待ちつづけたものなのである」とある。年 度単位の場合は通常「昨年度」と言い、「一度」という言い 方は語感の点で少し違和感がある。単昨年 きよひ【拒否】相手からの要求や勧誘などを受け入れずには っきり断る意で、やや改まった会話や文章に用いられる硬 い漢語。「権を発動する」〈申し入れを—する〉〈あくま でーを貫く〉議案や決議などに反対する意でも用いる。 ひ一蹴・Q拒絶・断る・拒む・はねつける ぎよふ【漁夫】「漁師」を意味する古風な語。〈ーの利〉小 林多喜二の『蟹工船』に「彼らは青鬼、赤鬼の中に取り巻か れた亡者のように、ーの中に一かたまりに固まっていた」と ある。「夫」という漢字を用いたこの語は職業差別の意識を 感じさせるとして、慣用的な「漁夫(父)の利」以外では現在 <274> きょぼく はほとんど使われない。漁民・Q漁師 きよぼく【巨木】とてつもなく大きな樹木をさし、改まった 会話や文章に用いられる漢語。へーがそびえる〉回「大木」 以上に驚きが感じられる。ひ大樹・Q大木 ぎよみん【漁民】漁業に従事する人をさす、改まった感じの 漢語で、くだけた会話では「漁師」のほうが一般的。個人よ りも職業という意識で用いる傾向がある。〈一同〉ひ漁夫・ Q漁師 きよむ【虚無】本質的なものが何も存在せずむなしい意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈「感〉〈「的〉 の島尾敏雄の『出発は遂に訪れず』に「近い日にその海の底 に必ずのみこまれ、おそろしい—の中にまきこまれでしま う」とある。きうつろ・空虚・むなしい きよよう【許容】原則に合わなくても大目に見て咎めない意 で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈量〉 〈一範囲〉〈一事項〉〈一されている手段〉の「容認」に比べ、 許すことのできる範囲や基準がはっきりしている場合が多 い。ひ許す・容認 きよらか【清らか】よごれやけがれのない意で、主に文章中 に用いられる古風な和語。〈—な月〉〈—な流れ〉〈—な心〉 〈—な乙女〉現代では抽象的な意味合いで使う例が多く美 化した感じがある。Q清い・清潔・清純・清浄 きより【距離】二点間の直線的な隔たりをさし、会話にも文 章にも広く使われる日常の基本的な漢語。〈長ー〉〈遠ー〉 〈最短ー〉〈ーが開く〉〈ーを伸ばす〉の城山三郎の『毎日が 日曜日』に「京都は(略)「くしゃみの届きそうな」ーである」 とある。道のりなど通常、空間的な隔たりをさす。比喻的 に、親しいか否かの「心理的」などとも用いるが、ふつう 時間的な隔たりには用いない。図間隔・隔たり・Q道のり きよりゆう【居留】滞在の意で主に文章に用いられる古風で 専門的な漢語。〈地〉〈民〉条約によって外国人が住 む場所として認められた一定の区域を連想させる。専滞在・ Q滞留・逗留 きらい【嫌い】とうしても厭で避けたい気持ちをさし、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈な食べ物〉〈勉強がだ〉〈人前でしゃべるのは だ〉〈すっかりーになる〉内田百聞の『特別阿房列車』 に「どっちつかずの曖昧な二等には乗りたくない。二等に 乗る人の顔附きはーである」とある。「好き」と対立。 いや・厭悪なん・嫌悪 ざらう【嫌う】人や物事を好まずむしろ不快に思う意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈勉強を—〉〈相手を—〉〈友達に—・われる〉〈に んじんを—〉〈遠出を—〉〈人前に出るのを—〉夏目漱石 の『こころ』に「先生から・われていると仰ゃるんですか」 とある。「湿気を—」「高温を—」のように、主体が人間以 外の場合にも使う。その場合に「いやがる」とすると擬人 化した雰囲気が強くなる。ひいとう・Q嫌がる 考えたり悩んだりしない意で、くだけた会話から文章まで 広く使われる日常の漢語。〈な仕事〉へに暮らす〉へ な性格〉へに考える〉森田たまの『菜園随筆』に「私は <275> ほっと、わが家へ帰ったようなーさを感じた」とある。JQ 気軽・暢気・のんびり きらびやか【煌びやか】輝くばかりに美しい意で、改まった 会話や文章に用いられる和語。〈ーに着飾る〉〈ーな舞台〉 回「はなやか」よりさらに派手で目立つ感じがある。Q華 麗・絢爛・はなやか きらめく【煌(燦)く】きらきらと美しく光り輝く意で、主に 文章に用いられる優雅な雰囲気の和語。〈夜空に星が—〉 〈白い指にダイヤが—〉〈シャンデリアが—〉豪華な会場〉 開高健の『パニック』に「枯れた茎のあいだで宝石のように ーヘビの姿」とある。比喻的に、「リズム」「才能が—」 のように、華やかに目立つ意でも使われる。輝く・光る・Q ひらめく② きり【霧】大気中の水蒸気が細かな水粒となって煙るように 見える自然現象をさし、「臘」「霞」「霧」より広い意味 で用いる一般的な和語。〈川〉〈夜〉〈が出る〉〈が 立ち込める〉〈が晴れる〉〈が深い〉視程が一キロ未 満の濃い霧の場合に限り、それ以上見える場合を「霧」とし て区別する立場もある。歳時記では、春の霧を「霞」夜の 霧を「臘」とする。秋の季語。尾崎士郎の「人生劇場」に 「の中に村の全景が墨絵のようにひろがっている」とあ る。臘・Q霞・霧 きり【切(限り】「区切り」「限度」の意で、会話やさほど硬 くない文章に使われる日常の和語。へーのよいところまで 読む〉〈仕事の途中でーが悪い〉〈上を見たらーがない〉 小津安二郎監督の映画の主人公たちの人生観を示すキーワ きりつ ードの一つ。多かれ少なかれ親の期待は子供たちに裏切ら れるものだが、自分たちはまだましなほうだと考える重要 なせりふによく用いられる。「欲を言やあーがない」「欲 云や切りやにやが、まあええ方じゃよ」「贅沢云ってりゃ ーがないよ」など。刂限界・Q限度 ぎり【義理】人間として嫌でもやらなくてはならない道義的 関係、社会における人間関係を維持するために欠かせない ことをさし、会話にも文章にも使われる、やや古風な漢語。 へーで出かける〉〈ーを果たす〉〈ー人情浪花節〉〈ーが立 つ〉〈ーと人情の板ばさみ〉〈あの人にはーがある〉室生 犀星の『杏っ子』に「これは相当に面倒なことだが礼儀とし て返さなければ、ならないーのある金であった」とある。 「ーの弟」のように血のつながらない意にも使い、その場合 は特に古風な感じはない。ひ道徳・人情・モラル・倫理 きりあげる【切り上げる】終わらせる意で、会話にも文章に も使われる和語。〈仕事を—〉へおしゃべりをー・げて職場 に戻る〉の「打ち切る」と違い、途中でというニュアンスが 弱い。Q打ち切る・中止 きりさめ【霧雨】音もなく降る霧のような細かい雨をさし、 会話にも文章にも使われる和語。〈ーに濡れる〉へーがけむ る)四「きりあめ」ともいう。太宰治の『斜陽』に「目に見 えないようなーが降っている」とある。小雨・Qこぬか雨・ 時雨・ぬか雨 ざりつ【起立】座った状態から立ち上がる意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。へー、礼!〉〈全員がーして迎 える〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「前に居た野だが突然 <276> きりっとした ーしたには驚いた」とある。よく号令として使い、「着席」と対立。ゆたたずむ・Q立つ・突っ立つ きりとした「きりりとした」に似た意味で使う和風の擬態 語表現。「きりりとした」とは違い、くだけた会話から文章 まで幅広く使われる。〈目元〉の徳田秋声の『仮装人物』 に「五分も隙のないシックな気取り方で、顔も」、あれが苦 味走ったとでもいうんでしょうよ」とある。敎然・Qきりり とした・凜々しい・凜とした きりつめる【切り詰める】支出などの無駄を減らす意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈経費を—〉〈予算を—〉 「生活費を—」とも「生活を—」とも言う。前者は支出を抑 えることをきし、後者は衣食住全般にわたって質素な生活 に耐えることをさす。直接的にはさす範囲が違うが、いず れも経費削減につながる点で一致する。Q倹約・節約 きりもり【切り盛り】物事、特に収入と支出の調整を巧みに こなす意で、会話やさほど硬くない文章に使われる、やや 古風な和語。〈店をーする〉〈家計をーする〉専遣り繰り きりょう【器量】特に女性について顔を中心とした容姿の美 しさをさし、会話にも文章にも使われる古風な漢語。〈町内 きってのーよし〉何といってもーがいい本来は「人」 のように、男女を問わず人間としての器の大きさ、特に物 事を成し遂げる能力をさすが、昔は女性にとってみめかた ちの美しさが特に重要視されたための矮小化か。具容色・Q 容貌 ぎりよう【技(量)俪】ものごとをうまくこなす手並みのほど をさし、改まった会話や文章に用いられるいくぶん古風な 硬い漢語。〈一を発揮する〉〈一を高く買う〉三島由紀夫 の「潮騒」に「泳ぎの」とあるように「力量」に比べ、技 能面に重点のある感じが強い。②腕前・手腕・手並み・Q力 量 きりよく【気力】物事を成し遂げようとする意欲やその活動 に堪え得る精神力の意で、会話にも文章にも使われる漢語。 〈一充実〉(一がみなぎる)〈一に欠ける〉(体力の限界で、 もう一だけで頑張り続ける)及意気込み・意欲・意力・気概・気骨・ 気迫・根性・Q精神力・ど根性・やる気 きりりとした緩みなく引き締まった感じをさし、改まった 会話や文章の中で使われる和語。〈目鼻立ち〉〈口元〉 久米正雄の『受験生の手記』に「顔の小柄な教授だっ た」とある。「凛々しい」「凛とした」のような特に男性を 思わせる感じは弱い。「きりっとした」の形としては、くだ けた会話でも使う。り毅然・Qきりっとした・凛々しい・凛とした きる【着る】上半身などに衣服などを身につける意で、くだ けた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈スーツを〉〈和服を〉〈浴衣を〉〈岡本かの子の 『生々流転』に「新型の洋服をきていながら猫背で腰を跼め ていたり」とある。りかぶる・着用 きる【切る】刃物などを使って物を分離させる意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈鋏焼で丁寧に」〈紙を」〈髪を」〈爪を」 理的な切断の意味のほか、「ハンドルを」「風を」「伝 票を」「スタートを」「電話を」「縁を」「原価を 」「残り十日を」のように、抽象的・比喻的にも広い意 <277> 味合いで使う一般的な表記。「刀で人を」のように刃物で 殺傷する意では「斬る」「森の樹木を」のように伐採す る意では「伐る」「松の枝を」・て整える」のように剪 定する意では「剪る」「布を」のように物を断ち切る 意では「截る」「従業員の首を」のように解雇する意で は「馘る」と書き分けることもあるが、いずれも「切る」と 書いたら誤りというわけではない。大岡昇平の『野火』に 「誰が」・ったのだろう。どうしてこの明るい河原に、片足 だけ一本、魚のように投げ出されているのだろう」とある。 弔切断・絶つ・断つ・Qちょん切る きれ【切れ/布/裂】布、または、その切れ端をさして、会 話にも文章にも使う和語。〈共ー〉〈ーをあてがう〉多く は、あまり大きくないものについて言う。単生地・Q布・布地 きれい【綺(奇)麗】「美しい」意、「清潔」の意を表す漢語。 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる語。漢語の わりに硬い感じがまったくない日常生活のことば。〈高く澄 んだーな声〉〈山がーに見える〉〈空気のーな場所〉〈ーに 洗う〉林芙美子の『山中歌合』に「背戸には遅咲きのおい らん草が、顔を洗ったようにーだった」とある。美的以外に 清潔の意もあるため「美しい」より使用範囲が広いが、「美 しい行為」のように抽象化した例では「な」と置き換えら れず、また、「美しい愛の物語」を「な愛の物語」と表現 すると、プラトニック・ラブめいた雰囲気に変わり、感動と は縁遠くなる。Q美しい・麗しい・清潔 きれいどころ【綺麗所】綺麗に着飾った和服姿の女性、多く は花柳界の特に芸者をきして、会話や軽い文章に使われ きろく る間接表現。「がずらりと並ぶ」個人よりも何人かが集 まったり並んだりしている場で使う例が多い。Q芸妓・芸 子・芸者・舞子 されっぽし【切れっ端】「切れ端」の口頭語に近い表現。人生 地のーをちょっぴり使う)図促音とそれに続く「パ」という 破裂音が強い響きと俗っぽい感じを出すのに働いているか もしれない。切れ端 きれはし【切れ端】切り離された小さな部分をさし、会話で も文章でも使われる和語。〈布のーを利用する〉〈木のーで 間に合う〉ひきれっぱし きれもの【切れ者】頭の回転が速く仕事をてきばきとみごと にこなす人をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈社内 きってのー〉〈政界でもーとして通る〉「腕利き」や「敏 腕」と比べ、冷徹で温情を解さないイメージが伴いやすい。 ひ腕利き・敏腕・Q遣り手 きろ【帰路】帰り道の意で、主に文章に用いられる正式な感 じの漢語。〈ーに就く〉〈ーを急ぐ〉〈ーは普通列車でのん びり旅を楽しむ〉の「帰途」より道筋の意識が強い。り家路・ 帰り・帰り道・Q帰途・復路 きろ【岐路】複数の行動や手段が考えられて選択に迷う局面 やその事態をさし、主として文章に用いられる古風で硬い 漢語。人生のーに立つ)本来は分かれ道、特に二股に分 かれる地点をさすが、具体的な道路について今はあまり使 わない。分かれ道 きろく【記録】後に残すために文書や映像として情報をとど めることをさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。 <278> ぎろん 〈一映画〉〈生活〉〈一をとる〉〈一に残す〉武田泰淳の 「司馬遷」に「一は実におそろしいと思う」とある。「世界 」「破り」「低調な」のように競技などの成績をさす 用法もある。Q記載・記入 ぎろん【議論】互いに自分の意見を主張して論じ合う意で、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈一百出〉友達と になる〉〈活発なーを繰り広げる〉〈盛んにーを闘わす〉 〈激しいーの応酬となる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「 のいい人が善人とはきまらない。遣り込められる方が悪人 とは限らない」とある。「論議」や「討論」「討議」ほど形式 ばらず、茶の間で二人が言い争う場合も含まれる。ひQディ スカッション・討議・討論・論議 ぎわく【疑惑】他人の挙動や行為を怪しいと思う意で、改ま った会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーを招く〉へーの まなざし〉へーが生ずる〉へーを深める〉へーを晴らす〉②梶 井基次郎の『愛撫』に「このーは思いの外に執念深いもので ある」とある。時に犯罪のにおいも感じられる。円地文子 の『女坂』に「ーが鳥影のように須賀の頭を掠めた」とあ る。ひ疑い・Q疑義・疑念・疑問 きわだつ【際立つ】周囲の同類の中で特に他と違って見える 意で、改まった会話や文章に用いられる和語。〈差がー〉 へーって美しい〉へーった成績を残す谷崎潤一郎の 『細雪』に「ふっと四人とも無言になる時があると、石炭の ごうごう燃える音だけがー・って聞えた」とある。「目立つ」 に比べ、優れた方向での用例が多く、また、他との差も大き い感じがある。目立つ きわまる【極まる】ものごとや程度が限界まで達する意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈平凡ーやり方〉〈感ー〉 〈退屈ー話〉②竹西寛子は『モーツァルト交響曲四○番卜短 調に』でその曲を「上質のうすぎぬをまとっているような明 るさ」と評し、「悲しみのー時に、人は涙などおぼえはしな い。よろこびのー時にも、人は、歌などうたいはしない」と 真実を言い当てた。棟度 きわめて【極めて】程度が最大に近い意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い感じの和語。〈重大だ〉〈珍し い〉〈わずかな量〉〈高いレベルにある〉〈順調な滑 り出し〉大いにごく・すこぶる・大層・たいへん・とても②・甚だ・ Q非常に さん【菌】細菌・微菌の略として、改まった会話や文章に用 いられる、やや専門的な漢語。〈結核—〉〈納豆—〉〈一が繁 殖する〉〈一を培養する〉Q細菌・微菌・バクテリア きんいろ【金色】金の色をさし、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常語。〈ーのボタン〉〈光を浴びて銀 杳の葉がーに光る〉の類語の中で最も一般的な生活語。 串田孫一の『秋の組曲』に「終日その太陽は湖にーの小波を 作り」とある。ひQきんしょく・黄金色にこんじき ぎんが【銀河】「天の川」の意で主に文章中に用いられるやや 詩的な感じの漢語。〈ー系宇宙〉へーの流れを眺める〉宮 沢賢治の『銀河鉄道の夜』に「ーを大きないい望遠鏡で見ま すと、もうたくさんの小さな星に見えるのです」とある。 広義には、宇宙を構成する無数の星やガスの集合である小 宇宙をさし、天の川はその一つ。乃天の川 <279> きんがん【近眼】「近視」の意で、会話や改まらない文章で用 いる日常の漢語。硬い文章には「近視」を用いるほうが無 難。〈—になる〉〈—用の眼鏡〉幸田文の『流れる』に「 の細い眼を刺すようにきらりとさせて」とある。客観的で やや専門語的な「近視」に比べ、肉体的な欠陥を露骨に指摘 する感じがあって、近年その使用をためらう傾向がある。 「どー」という語には、単に強度の近視という意味だけでな く、軽蔑的なニュアンスも伴う。近視 きんきじゃくやく【欣喜雀躍】思わず跳び上がって大喜びす る意で、改まった会話や文章に用いられる古風で大仰な漢 語。〈受賞の知らせに一同して喜び合う〉の太宰治の『駈 込み訴え』に「神の国の福音とかいうものを、あの人から伝 え聞いては、浅間しくも、ーしている」とある。Q歓喜・喜 悦・随喜・法悦・愉悦・喜び きんきゅう【緊急】事が重大で大至急対処しなければならな い状態をさし、いくぶん改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈ー避難〉〈ー出動〉〈ー事態が発生する〉〈ーの場合 に備える〉北杜夫の『夜と霧の隅で』に「何時ももっとー な用にまぎれて忘れてしまっていた」とある。旦早急 さんきょう【近況】個人の日常生活の最近の様子をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈ー報告〉へーを知らせる〉 の事務的な「現況」と違い、個人的な手紙などでよく使われ る。現況 きんきん【近近】近い将来をさして、会話にも文章にも使わ れる硬い漢語。へいずれー連絡する〉へ一度ーのうちに伺 う) みいずれ②・追って・そのうち・Q近ぢか・やがて きんし きんこう【均衡】両方の物事の力や重さや強さなどの釣り合 いが取れている意で、やや改まった会話や文章に用いられ る漢語。〈ーを保つ〉〈ーを破る〉Q釣り合い・バランス・平衡 きんこう【近郊】中心都市や市街地に近い周辺地域をさし、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈パリーの町〉〈ー からの通勤客〉国木田独歩の『武蔵野』に「足にまかせて ーをめぐる」とある。「郊外」のうち、都会に近い住宅地を 連想させやすい。単郊外 きんごう【近郷】都市の近くにある村里をさし、会話にも文 章にも使われる古風な漢語。〈ー近在〉〈ーの農家〉〈ーか ら集まって来る〉②芥川龍之介の『路上』に「ーでは屈指の 分限者に相違ない」とある。込田舎・片田舎・Q近在・在・在郷・在 所 きんざい『近在』「近郷」の意で、会話にも文章にも使われ る古風な漢語。〈町中からーに移り住む〉永井荷風の『澤 東綺譚』に「顔立と全身の皮膚の綺麗なことは、東京もしく は東京ーの女でない事を証明している」とある。「近郷」よ り田舎の雰囲気が薄い。村人が隣村やその周辺をさして使 うこともある。ひ田舎・片田舎・Q近郷・在・在郷・在所 きんし【近視】遠方の像がぼやける視力の異常をさす漢語。 まったくの日常語である「近眼」に比べ、やや専門語的。 〈軽度のー〉〈仮性ー〉高見順の『故旧忘れ得べき』に「 の眼を鉄ぶちの眼鏡のうしろでショボショボさせていた」 とある。露骨な感じの「近眼」と比較して、その状態を客観 的にさすだけで軽蔑などの感情を伴わない傾向がある。 近眼 <280> きんし きんし【禁止】ある行為を禁じてやらせない意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈人事項〉〈駐車〉〈部外者の立 ち入りをーする〉山本有三の『路傍の石』に「ウソのよう な話であるが、この時代には(略)科学の書物が発売ーにな ったのだ」とある。厳禁・制止・Q抑止 きんじ【近似】よく似ている意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。〈ーした数値を示す〉〈構造がーしてい る〉〈ーした現象〉醤似・相似・似通う・似る・Q類似 ぎんしゃり【銀シャリ】白米の飯を意味する隠語。〈ーにありつく〉ひシャリ きんじょ【近所】自分の家を取り巻く一帯の地域をさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。 〈隣ー〉〈ー付き合い〉〈ー迷惑〉〈ーの人〉〈ーの評判〉〈ー に顔向けができない〉回多くはそこに建っている家やそこ に住んでいる人間を含めて考えているため、林や田圃の 中の一軒家の場合にはこの語がなじまない。帰ら・近辺・Q 近隣・そば・近く さんしょく【金色】金に似た色をさし、会話にも文章にも使 われる漢語。へーのトロフィー〉へーに仕上げる〉製品な どの色の種類を問題にする際に使う傾向がある。ひQきんい ろ・黄金色におね・こんじき きんしん【近親】血縁の近い親族の意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈ー者〉〈ー相姦か〉肉親より正 式な感じがある。「結婚」の場合は民法上の明確な規定の もとに禁止されており、そこでは直系血族、三親等内の傍 系血族のほか直系姻族も含まれる。肉親・Q身内 さんす【金子】「金銭」の意で、会話にも文章にも使われたが 今ではすっかり古めかしい感じになって時代劇などで用い る程度になった廃語的な漢語。〈路用の—〉へなにがしかの ーを用立てる〉もおあし・かね・貨幣・Q金銭・銭 さんせい【謹製】謹んで心をこめて作る意で、主に文章に用 いられる、やや古風な漢語。〈当店—〉製造者側の用いる 丁重な表現。調製 さんせつ【近接】近くに位置する、近い状態にある意で、主 として文章に用いられる硬い漢語。〈地域〉〈職住〉 〈工場が住宅地にーしている〉動作的な「接近」と違い、 近いという状態に重点がある。接近 きんせん【金銭】貨幣の意で、会話にも文章にも使われる漢 語。〈ー感覚がずれている〉〈ーの問題〉〈ーにだらしがな い〉の獅子文六の『沙羅乙女』に「恋愛の雰囲気のなかに、 なにが不調和だといって、およそーの話に超すものはある まい」とある。「かね」より抽象的な感じがあり、「ーの持 ち合わせ」「ーのやりとり」「ーの受け渡し」のように貨幣 にかかわる行為をさすことが多く、「道でーを落とす」「財 布からーを取り出す」のように具体的な物としては使いに くい。おおあし・Qかね・貨幣・金子だ・銭 きんぞく【金属】金・銀・銅・鉄・アルミニウムなどの金属元素 とその合金の総称として、会話にも文章にも使われる漢語。 〈貴ー〉〈一製の容器〉〈一で出来ている〉有島武郎の『或 る女』に「一の床に触れる音が雷のように響いた」とある。 ひ金物 きんたま【金玉】くだけた日常会話でしばしば用いられる「挙 <281> 丸意味する俗語。一物·陰部·隠L所·下半身②·下腹部 局所·局部·Q睾丸·性器·生殖器·恥部 さんちょう【緊張】神経が張り詰める意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈人前でーする〉へーを緩和する〉へーを 招く〉へーが緩む〉古井由吉の『衣』に「いまにもこなご なに鱉割れしそうなー」とある。乃引き締まる さんてい【謹呈】謹んで差し上げる意で、主に文章に用いら れる漢語。〈著者—〉ひ寄贈・献上・Q献呈・進上・進呈・贈呈 きんねん【近年】数年前から現在までの間をさし、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。「になってからの現 象〉へ「では珍しい〉へ「まれに見る快挙〉の「最近」より改 まった表現で、「昨今」ほどは硬くない。このところ・Q最 近・昨今・近頃 きんぱく【緊迫】事態や情勢がいよいよ切迫し、少しの油断 もできない段階になる意で、やや改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈感が漂う〉〈財政が—する〉〈にわかに 情勢が—する〉〈刻一刻と—の度を加える〉霧迫・Q急迫・切 迫 きんぱつ【金髪】金色に近い色の髪をさし、会話でも文章で も用いられる日常の漢語。「の乙女」「を風になびかせ て佇なむ》北杜夫の『河口にて』に「明るいーがその表情 をいやが上にも暗くしている」とある。実際に金色に見え る場合もあるが、比較的客観的な「ブロンド」と比べ、その 系統の色の髪を美化して用いることがある。男性よりも女 性に対して用いるケースが多い。ひ銀髪 ぎんばつ【銀髪】改まった会話や文章中に用いられる「白髪」 きんまんか の美称。「が映える」へみごとなーの初老の紳士へ「を なびかせる」遠藤周作の『海と毒薬』に「落した肩や曲げ た背や夕闇に光るーは、ひどく老いこみ」とあるが、一般に は日差しを浴びて美しく輝く白を銀に見立てた呼称。ねず み色や灰色とは違う銀色の輝きが美的なイメージを誘う。 金髪・Q白髪・Q白髪 ぎんばん【銀盤】主として文章中に用いられる「スケートリ ンク」の美称。〈ーに舞う〉〈ーの女王〉②きずになった部 分がせいぜい白く見えるだけで全体として透明な氷を銀製 の皿に見立てた呼称。氷の表面が照明を浴びて輝くときに ぴったりする呼称だけに、スピードスケートよりもフィギュ アスケートの会場を連想させる。 きんぺん【近辺】自分の家など、ある建物を基準としてそこ から近い地域をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈家 のーで見かける〉(このーにそういう家はない〉(このーに は閑静な住宅地が続く)「近所」に比べ、空間的意味合い が強く生活臭は薄い。専傍ら・近所・近隣・周辺・そば・近く ぎんまく【銀幕】主として文学的な文章に用いる、「映画」や 「映画界」のやや古風な美称。〈ーの女王〉〈ーを飾る〉 「スクリーン」の意から。ヵ映画 きんまんか【金満家】多くの財産を持つ意で、会話にも文章 にも使われる古めかしい漢語。ヘこの町有数のー〉の「素封 家ほー」のような伝統はなく、「富豪」ほどの富もない。夏目 漱石の『坊っちゃん』に「家屋敷はある人の周旋でさるーに 譲った」とある。大金持ち・Q金持ち・財産家・素封家・長者・富 豪・物持ち <282> ぎんみ ぎんみ【吟味】内容や性質などをよく調べる意で、会話にも 文章にも使われる古風な漢語。くよくした材料を用いる 品質を慎重にーする)谷崎潤一郎の『細雪』に「特別に した深海牡蠣ではなくてそこらの市場で買って来たも の」とある。もと、詩歌を吟じて味わう意。検討 きんむさき【勤務先】勤務している役所・会社・学校などをさ し、改まった会話や文章に用いられる少し硬い感じの表現。 「の住所を記入する」②「仕事場」はもちろん「職場」よ りも広く、雇用関係にある組織などをさす。「勤め先」より 正式な感じがある。仕事場・職場・Q勤め先 さんゆう【金融】資金の需要と供給の関係をさし、改まった 会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈政策〉〈一恐 慌〉〈一の緩和〉〈一の引締めを図る〉一般語としては 「一機関」のように金銭の融通の意で使う。経済 きんり【金利】貸し金や預金の利子やその比率をさし、会話 にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈法定—〉ヘㄝ ローの時代〉〈低ー政策〉(ーがかさむ〉(ーを据え置く) 〈ーを引き上げる〉②主に金融機関で用いる。利子・利息・Q 利率 きんりん【近隣】隣り合っているかその近くの場所を漠然と さし、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「諸 国」の地〉の家の「近辺」と違い、「に迷惑が掛 かる」のようにそこに住む人間を意識する例もあるが、「近 所」ほどの生活臭はない。専傍ら・Q近所・近辺・そば・近く ぎんりん【銀輪】主として文学的な文章に用いる、「自転車」 のやや古風な美称。ヘーを輝かせて郊外に向かうヘーを連 ねて颯爽と通り過ぎる⑦車輪、特にスポークが日に輝く ところから。自転車・ちゃりんこ ぎんりん【銀鱗】主として文学的な文章に用いられる「魚」 の美称。詩的な表現。〈渓流にーが躍る〉日を受けて輝く 魚の鱗自体をさすこともある。 さんろう【勤労】給料や報酬を受けて一定の仕事で働く意を さし、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー者〉へー 所得〉へー奉仕〉へー感謝の日〉特に肉体労働をさすこと が多く、「労働」より古風な感じがある。専労働 きんろうしゃ【勤労者】勤労に対する報酬によって生計を立 てている人の総称として、会話にも文章にも使われる漢語。 〈一の皆さん〉〈一の祭典〉の「労働者」に比べてあまり使わ れず、差別意識も感じられない。会社員・サラリーマン・勤め 人・ビジネスマン・Q労働者 <283> ぐあい【具(工)合】人や物の動き方の状態や調子をさし、会 話や硬くない文章に使われる日常語。〈仕事の進み—〉〈朝 から体のーが思わしくない〉〈新しい機械のーを調べる〉 佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「ランプはいいーに本ものであ った」とある。「ーの悪い思いをする」のように、体面をさ す用法もある。ヲ按配・コンディション・調子 くい【悔い】犯してしまった過ちや失敗を後悔する意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈ーの涙〉(ーが残る〉(ー がない)芝木好子の『青果の市』に「本当に金回りのよか った瞬間を逃したことに痛い程のーを感じることもあった」 とある。ひ悔悟・Q悔恨・痛恨 くいき【区區域】一定の仕切りを設けた範囲をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈通学—〉〈遊泳禁止—〉〈担 当の—〉の「地域」や「地区」より小さく、一般にはごく狭 い範囲をさし、行政上の区画であることも多い。Q区画・ 地域・地区 くいちがい【食い違い】合致しない意で、会話や軽い文章に 使われる和語。〈意見のーが見られる〉〈説明にーが起こ る〉の二人の目撃証言にーがある」のように、本来合うは ずなのに合わないというニュアンスがあり、矛盾した感じ が生じやすい。ひずれ・Q齟齬・行き違い くいどうらく【食い道楽】「食道楽」の意の会話的な表現 くう 〈相当のーだ〉 ヲグルメ・食通・Q食道楽・美食家 くいとめる【食い止める】好ましくないことの広がるのを途 中で防ぎ止める意で、会話にも文章にも使われる和語。〈被 害を—〉〈延焼を—〉〈敵の攻撃を—〉〈病気の進行を—〉 Q阻む・阻止 くいもの【食い物】「食べ物」の意でくだけた会話や軽い文章 に使われる今ではぞんざいな和語。へーもろくにない)夏 目漱石の『坊っちゃん』に「上品だが、惜しい事にーがまず い」とある。具食材・食品・食物・食べ物 くいる【悔いる】以前の考えや行為を悪かったと認めて改め ようとする意で、会話にも文章にも使われる古風な和語。 〈前非を—〉今さらー・いても始まらない志賀直哉暗 夜行路」に「自身があまりに言い過ぎた事を多少ー・いても いる」とある。単に悔しいと思う意の「悔やむ」に対して、 この語は道徳面をも含み反省しているニュアンスを伴う。 Q悔やむ・後悔 くう【食う】食べ物を歯でかんで飲み込む意の基本的な和語。 〈飯を—〉〈たらふく—〉〈や食わずの貧しい暮らし〉安 部公房の『時の崖』に「・いたいほうだいー・ってやるさ」 とある。今でも「食い放題」が一般的であるように、もとは ぞんざいな感じのない普通のことばだったが、現代では「食 べる」のぞんざいな言い方。ただし、「食する」という意味 が消え、「虫が—」「時間を—」「いたずらに年を—」「ガソ リンを—」「人を—・ったやり方」のように抽象化した用法 では「食べる」が使えないため、ぞんざいであるという語感 は働かない。頂く・食する・Q食べる・召し上がる <284> くうかん くうかん【空間】目に見える物が何もない空白の広がりをさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈宇宙—〉〈時間と—〉 〈むだな—〉〈ーが狭い〉の「真空」と違い、空気などの気体 の存在は問題になっていない。大岡昇平は『野火』で、風が 「私の占めていない広いーを渡って行くらしかった」と外界 を描き、川上弘美は『センセイの鞄』で「鞄の中には、から っぽの、何もないーが、広がっている。ただ儚々野としたー ばかりが、広がっているのである」と、センセイの形見に喪 失感を吹き込んで長編を締め括った。Q虚空・真空 くうき【空気】①地球の表面を包んでいる、窒素と酸素を主 成分とする無色無臭の気体をさし、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈—抵抗〉 〈新鮮な—を吸う〉〈—が薄い〉〈—が汚れる〉〈—が抜け る〉②「大気」と違い、人間の生活圏という連想が強い。小 林多喜二の『蟹工船』に「—が硝子のように冷たくて、塵一 本なく澄んでいた」とある。大気②周囲の人々の気分に よって生じたり変化したりする、その場の感じをさし、会話 にも文章にも使われる日常の漢語。〈会場の—に酔う〉〈そ の場の—が読めない〉〈気まずい—が流れる〉③高見順の 『如何なる星の下に』に「お通夜のような重苦しい—」とあ る。马Q雰囲気・ムード くうきよ【空虚】内容・実質・価値がからっぽで充実感のない 意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「な生 活」〈な夢のような話〉②有島武郎の『或る女』に「神体 のないな宮殿のような空いかめしい興なさを感じさせ る」とある。金井美恵子の『奇妙な花嫁』に「悲しいってこ とじゃないむしろ、空虚ー、胸いっぱいの吐き気のよう に胃のあたりからこみ上げつき上げて来る重く鈍い痛み」 とある。「うつろ」「はかない」「むなしい」のような和風の やわらかい雰囲気はない。見うつろ・虚無・むなしい くうげき【空隙】空間的・時間的なわずかな切れ目をさし、主 として硬い文章に用いられる漢語。〈ーを埋める〉〈ーを突 く〉〈ーを縫う〉尾崎一雄の『虫のいろいろ』に、偶然便 所の窓の二枚の戸の間に入って出られなくなった蜘蛛いを 「幽閉された」と人間並みに遇し、「重なった戸のワクは彼 の脱出を許すべきーを持たない」と漢語調の堂々たる表現 で描き出した。些細な事柄とアンバランスなこの格調高 い語り口は、訪問時の作者自身の弁によると「鶏を裂くに 牛刀を用いる」ような大仰な表現で滑稽な感じを出そうと したのだという。り間隙・すき・すきま・盲点 「空港」航空輸送のために飛行機が定期的に発着す る公共の施設。〈国際—〉〈一の整備〉「飛行場」より大規 模なものを連想させやすい。飛行場 ぐうじ【宮司】神社の最高位の神官をさし、会話にも文章に も使われる正式な感じの漢語。〈伊勢神宮のー〉きQ神主がい 神官・神職 くうしゅう【空襲】航空機による爆弾投下や機銃掃討など空 からの攻撃の総称で、会話にも文章にも使われる漢語。〈 警報〉〈東京大〉〈に遭う〉〈による被害〉「空爆」 より意味が広い。戦後の日本人には、仕掛けるイメージよ り被るイメージが喚起されやすい。児空爆・爆撃 くうぜん【空前】今までに一度もなかったようなの意で、や <285> や改また会話や文章に用いられる漢語。「の出来事 の大惨事の人気空前絶後・前代未聞・Q未曾有 ぐうぜん【偶然】因果関係がなくたまたまの意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常漢語。「の出 来事〉への一致〉(に出会う)志賀直哉の『城の崎に て』に、山手線の電車にはねられて怪我をしたその後養生 に温泉にやって来た作者が、まったく狙わずに投げた石に 当たって蠟蝌が死ぬのを目撃し、「自分はに死ななかっ た。蠟蝌はに死んだ」と深い感慨に沈む場面がある。 Qたまたま・たまに・ひょっこり くうぜんぜつご【空前絶後】これまでに一度もなく、これか らも起こるとはとうてい考えられないほど、という意味で、 やや改まった会話や文章に用いられる大仰な漢語。「の大 発見〉への規模で催される)尾崎一雄の『虫のいろい ろ』に、ふと目を上げたとたんに「額に出来たしわが、蠅の 足をしっかりとはさんでしまった」場面がある。そこで父 親は「どうだ、エライだろう、おでこで蠅をつかまえるなん て、誰にだって出来やしない、の事件かも知れないぞ」と 家族に自慢する。Q空前・前代未聞・未曾有 くうそう【空想】現実からかけ離れたことを頭の中で思いめ ぐらす意で、会話にも文章にも広く使われる漢語。への産 物〉〈百年後の世界を—する〉へに恥る〉〈科学小説〉 〈ーを描く〉〈平等な世界など—に過ぎない〉正宗白鳥の 『何処へ』に「火花のごとく消えては浮ぶー」とある。「幻 想」や「妄想」よりは実現性がありそうな語。丸谷才一の 『横しぐれ』に「その—がちょうど漁船から漏れた油のよう くうふく に長く尾を引いて薄れてゆくという比喻表現の例がある。 り幻想・想像・Q夢想・妄想・理想 ぐうたら怠けて働きたがらない意で、主にくだけた会話に 使われる、いくぶん古風な和語。〈ーな亭主〉へーな生活を 続ける〉ひ横着・ずぼら・怠惰・怠慢・無精・Qものぐさ くうちゅうろうかく【空中楼樓閣】「蜃気楼」の意でまれに 文章などに用いられる古風な漢語。〈ーが現れる〉②あるは ずのない空中に高い建物が見えたところから。実際の現象 をさす例は今は少なく、現実味のないことを思い描く意の 比喻表現としての用法のほうがまだいくらか使われる。 海市・Q蜃気楼 くうちょう【空調】漢語「空気調節」の略語。屋内の空気の 温度や湿度を調節する機械。特に俗語という響きもなく、 一般にこの形で幅広く用いられる。「ー設備を各部屋に備 え付ける」ひエアコン くうばく【空爆】航空機による爆撃をさし、会話にも文章に も使われる漢語。〈大規模なーを仕掛ける〉へーが激しさを 増す)の「空中爆撃」の略。「爆撃」に比べ、空からのとい う点が強調される。児空襲・爆撃 くうひ【空費】金銭や時間を無駄に使う意で、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈政策が悪いと国民の税金を ーすることになる〉〈時間をーする〉の「浪費」以上に無駄 な感じが強い。特に、貴重な時間を奪われる場合によく使 う。貴重な時間を奪われる場合によく使 う。貴重な時間を奪われる場合によく使 くうふく【空腹】腹がすく意で、改まった会話や文章に用い られるやや硬い感じの漢語。〈ーを覚える〉〈ーを訴える〉 <286> クーラー 〈ーを満たす〉Q空き腹・腹べこ・ひだるい・ひもじい クーラー 冷却するための装置をさし、会話にも文章にも使 われる、いくぶん古風な外来語。へーをかける〉へーが利き 過ぎる〉部屋を冷やす冷房のほか、携帯用の保冷庫など をさすこともある。ひエアコン・冷房 くかく【区區画劃】ある目的のために区切った土地の意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈—整理〉〈行政—〉 〈分譲地の—〉ひQ区域・地域・地区 くきよう【苦境(況)】抜け出すことの困難な苦しい立場や状 況をさし、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「 に立つ」(一に陥る)「を脱する」(一を救う)「一時的に は「逆境」より困難が大きいが、苦しさは部分的で短期間の 感じが強い。逆境 くくる【括る】ばらばらのものを一つにまとめる意で、会話 でも文章でも使われる日常の和語。〈荷物をー〉〈古い雑誌 類を紐ぐでー〉〈切った枝を縄でー〉室生犀星の『性に眼 覚める頃』に「指はみな肥りきって、関節ごとに糸でー・っ たような美しさ」という比喻表現がある。「結ぶ」とは違っ て、いくつかの物を一つにまとめることに重点があり、そ の時に用いる道具も、結果として生ずる全体の形もさほど 意識されない。ひ結ぶ・Qゆわえる・ゆわく くぐる【潜る】かがむなどして物の下を通り抜ける意で、会 話や硬くない文章に使われる和語。〈格子戸を—〉へのれん を—〉室生犀星の『杏っ子』に「頭の中にあなを開けそこ から胸にー・りぬけようとする眼付き」とある。「列車がト ンネルを—」のように人間以外にも使い、「法の網を—」の ような比喻的用法もある。「もぐる」はその場所にとどまる こともできるが、「くぐる」はそこを通って先のほうに出 る。「水にもぐる」と「水をくぐる」の助詞の違いはそれに 対応する。もぐる くけい【矩形】「長方形」の旧称。四角四角形四边形·Q長方 形長四角 くさ【草】木部があまり発達しない茎をもつ植物をさしく だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。 「ーが生える〉へーを刈る〉へーの上に寝転ぶ〉の長塚節の 『土』に「にわかに水に浸されて銀のように光っている岸の ーーとある。専草本 くさい【臭い】対象の発する臭いを不快に感じる意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。へガスー〉〈糠味噌みがー〉の「臭う」より直接感覚 器官を刺激される感じがある。石坂洋次郎の『青い山脈』 に「口からは、ーにおいを含んだ熱い呼吸が、せわしく不規 則に吐き出されている」とある。ひ臭う ぐさい【愚妻】自分の「妻」の古めかしい謙称。へーともども よろしく御交際たまわりたく)「愚かな妻」という字面か ら女性に嫌われる古風な用語だが、高田保は新聞のかつて の人気コラム『ブラリひょうたん』の中で、「愚」というの は人生経験が十分でなく、まだ至らないところがある、と いう程度の意味であり、自分は「いとしの」という気持ちを こめて使っていると述べ、「大日本」などとせず謙虚に「小 日本」とか「愚日本」とかと称していれば戦争などは起こら なかったと論を発展させた。ひいえの者・うちの者・お上さん <287> 奥方・奥様・奥さん・お内儀・家内・かみさん・細君・妻・Q女房・伴侶・ベ ターハーフ・令聞・令室・令夫人・ワイフ くさき【草木】代表的な植物である草と木の総称として、会 話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈庭のーに水を やる〉へーを育てる〉へーも眠る丑満つ時〉安部公房の 『他人の顔』に「繁りに茂った枝と葉とを持った雑多なー」 とある。刂植物 くさとり【草取り】雑草を取り去る意で、会話にも文章にも 使われる日常の和語。〈庭のーをする〉「草むしり」や 「除草」より一般的。ひQ草むしり・除草 くさはら【草原】草の生えている野原をさし、会話にも文章 にも使われる和語。へーに寝転ぶ〉へーで遊びまわる〉 「くさわら」とも言い、自分がその場にいる雰囲気がある。 後藤明生の『吉野大夫』に「龍の髭が一面に生えているーか ら見る浅間だった」とある。「そうげん」と読めば大きなス ケールに感じられる。ひそうげん くさむしり【草筆り】草取りの意で、会話や軽い文章に使わ れる和語。〈朝からーに精を出す〉生えている草を一本一 本根っこごと抜くより、地面に出ている部分だけむしり取 る連想が起こりやすい。「草取り」より口頭語的。Q草取 り・除草 くさる【腐る】食物などが細菌の作用で変質し不快な臭いを 発したり、木や金属などが朽ちたり錆ぴたりする意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈魚がー〉〈木材がー〉〈ー・たにおい〉安岡章 太郎の『海辺の光景』に「心臓の働きが弱って寝床に圧され くじびき 大部分に血がかよわなくなると、その部分から果物のよう にーりはじめる」とある。「失敗してー」のように、思いど おりに運ばず元気を喪失する意の比喻的用法もある。僑 む・腐食・Q腐敗・腐乱 くし【駆使】自由自在に使いこなす意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。資料をして論文にまとめる〉〈最 新技術をーする〉福原麟太郎の『限りなき浪漫』に「想像 力をーした文学作品が、なかなか見当らない」とある。 用・Q活用・利用 くじ【鎌】多数の紙片などに記号や番号を記し、その一つを 抜き取らせて当たり外れを決めたり吉凶を占ったりするや り方やその個々の札をさし、会話にも文章にも使われる日 常の和語。〈当たり—〉へーを引く〉〈ーに当たる〉曾野綾 子の『遠来の客たち』に「夏というのに白々と雪をおいたか と思われるほど、結えられる限りの場所に残された古いお みくじの残骸」とある、その「おみくじ」も「くじ」の一つ。 Qくじ引き・抽籤 くじく【挫く】手足の関節を強く捻ぐ曲げて傷める意で、会 話にも文章にも使われる日常の和語。〈転んで足を—〉も脱 白・Q捻挫 くじける【挫ける】やろうと勢い込む力が弱まる意で、会話 でも文章でも広く使われる和語。〈途中でー〉〈気持ちが ー〉Q落ち込む・へこむ② くじびき【籤引き】籤を引くことをさし、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈商店会のー〉〈係をーで決める〉、ひくじ・抽籤せん <288> くじゅう くじゅう【苦渋】苦しみ悩む意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈一の選択〉〈一の決断〉〈一に満ちた顔〉 〈一の色を浮かべる〉⑤梶井基次郎の『闇の絵巻』に「それ は一や不安や恐怖の感情で一ばいになった一歩だ」とある。 単苦汁 くじゅう【苦汁】比喻的につらい経験をさし、主として文章 に用いられる古めかしい漢語。〈ーをなめる〉ひ苦渋 くしよう【苦笑】苦笑の意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈ーをもらす〉〈ーを浮かべる〉〈・苦笑い くじよう【苦情】商品や処理の仕方などに関する不平不満の 意で、会話やさほど改まらない文章に使われる漢語。「が 来る〉へーを持ち込む〉へーを処理する〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「寝るときに頓と尻持をつくのは小供の時から の癖だ。(略)二階下に居た法律学校の書生がーを持ち込ん だ事がある」とある。ヲクレーム・Q文句 ぐしよう【具象】「具体」の意で、主に学術的な文章に用いられる、専門的で硬い漢語。〈人物〉〈体〉〈化する〉〈的でわかりやすい〉の抽象と対立し、単独ではあまり用いない。具体 くしん【苦心】事を成し遂げるためにいろいろと工夫し心を 遣う意で、会話にも文章にもよく使われる日常の漢語。へー 惨憺《一の末にたどり着く)(一の作)一の跡が見ら れる夏目漱石の『明暗』に「その一は水の泡を製造する 努力とほぼ似たもの」とある。苦慮・Q腐心 くず【屑】物の切れ端やかけらのような不用物をさし、くだ けた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。〈紙 〈糸ー〉〈鉄ー〉〈一箱〉〈野菜のー〉Q芥・二み・塵・埃 ぐず【愚図】はきはきせず動作が遅い意で、主に会話や軽い 文章に使われる俗っぽい表現。〈一な男〉〈何をやるにもー で見ていていらいらする〉のろま」や「うすのろ」に比 べ、決断が遅い場合も含むため、重点は外面でとらえられ る行動などの遅さにあり、必ずしも知能の低さに直接言及 していない感じがある。うすのろ・Qのろま くすぐったい【操ったい】操られたときのむずむずした感覚 をさして、砕けた会話から文章まで幅広く使われる日常の 和語。〈足の裏が—〉回太宰治の『女生徒』に「五月のキウ リの青味には、胸がカラッポになるような、うずくような、 ーような悲しさがある」とある。「人前で褒められてー気分 になる」のように、比喻的に照れくさい意味でも使われる。 きこそばゆい くすねる他人の物をごまかしてこっそり自分のものにする 意で、主として会話に使われる古風な和語。店の品物を 」〈釣銭を」「横領」ほど罪意識がなく、「着服」より も些細なものを連想させる。横領失敬・Q着服・猫ばば・横 取り くすぶる【燻る】よく燃えずに煙ばかり出る意で、会話でも 文章でも幅広く使われる日常生活の和語。焼け跡がまだ ー・っている〉へー・っていて火が勢いよく上がって来ない 「いぶる」と違って、出ている煙の量よりも、内部で燃え ていて火が表面化しない状態に重点がある。「壁や天井が ー」のように、煤で黒くなる意にも使い、「不満がー」「田 舎でー」のような比喩的用法もある。「一日中家の中でー <289> っている」のも、「解決したように見えて問題がまだー・っ ている」のも、「いぶる」とは違う「くすぶる」の特徴をよ く示す。いぶる・けぶる・けむる くずや【屑屋】昔、ぼろきれや紙くずなどを回収する職業を さすのに用いたが、職業差別の意識を伴うとして使用を控 えるようになった語。くずーい、おはらい小沼丹 の『倫敦の屑屋』と題する随筆に、「正確には判らなくて も、だと云うことは直ぐ判る。(略)だから、お払い、と 怒鳴っているのだと思うことにした」とある。差別意識を 消すためにしばらく「廃品回収業」と呼んでいたが、その 後、「廃品」の範囲が狭くなるなどの変化もあって、一時は 観点をずらし「ちり紙交換」などと呼んだこともある。 くすり【薬】病気や怪我の回復を促進するために用いるもの をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常的 な和語。〈粉—〉〈風邪—〉〈ーを服用する〉〈ーの効能〉 〈ーが効く〉〈患部にーをよくすり込む〉森鷗外の『雁』に 「己が内にいる時の方が不機嫌だとすると、丁度ーを飲ませ て病気を悪くするようなものである」とある。「薬品」「薬 剤」「薬物」のような専門語の雰囲気はない。薬剤・Q薬品・ 薬物 くすりや【薬屋】薬を調合したり販売したりする店をさし、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。 〈近所のーで風邪薬を買う〉の日常会話で一般的に使われる 語だが、店の名称にはほとんど用いない。ひドラッグストア・ Q薬局 ぐずる【愚図る】不機嫌にぐずぐず言ったり赤ん坊が泣いた くだ りする意で、主にくだけた会話に使われる和語。子供が眠 くてー」「むずかる」と違い、大人についても、「やるの を嫌がってー」のように、なかなか納得せずに不平を言う場 合などに使う。むずかる くずれる【崩れる】整った形でまとまっていたものが乱れた り壊れたりする意で、会話にも文章にも使われる日常の和 語。〈崖が—〉〈形が—〉〈態勢が—〉〈パランスが—〉 「計画が—」「自信が—」「決心が—」のように抽象化した比 喻的用法もあり、和田伝の『沃土』に出る「思い通りのぞみ 通りに事が成ったためしがいつあったのだ?どれもこれ も、みんなもう少しというところで砂のように・れ」の例 もその一つ。弔壊 くせ【癖】習慣になったしぐさや行動様式の意で、くだけた 会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈悪 いー〉へーがつく〉へーになる〉福原麟太郎の『交友につ いて』に「いやなーのある変ちきりんの路傍の人」とある。 素直でなく偏った性質をさす例が多い。「髪のー」のように 元に戻りにくくなった状態をさして人間以外にも使う。 慣習・慣例・習慣・性癖 くそ【糞(屎)】大便の意で、主に男性がくだけた会話や軽い 文章に使うぞんざいな和語。〈馬の—〉〈ーをする〉〈ーを 垂れる〉阿川弘之の『黒い煎餅』に「犬が尻をかがめてー をしている時の顔つきは、便器にまたがった子供の真面目 くさった表情とよく似ている」とある。うんこ・うんち・人 糞・大便・Qふん・糞便・便 くだ【管】端から端まで中が空洞になっている金属・ゴム・ビ <290> ぐたい ニールなどの細長い円筒をさし、会話にも文章にも使われ る和語。〈ゴムの—〉〈細いーを通す〉「筒」より細長く、 ガスストープや点滴注射の場合のそれのように曲がりくね っている場合もあり、液体や気体を運ぶ際に用いることが 多い。「ホース」と換言できる用法では、やや古風な感じに なる。少筒・パイプ・Qホース ぐたい【具体】形態と内容を具え、はっきりと感覚で認識で きる意で、会話にも文章にも広く使われる漢語。へー的に説 明する)〈対策をー化する〉へー案が必要だ)〈ー策を練る〉 へー性に欠ける)回「抽象」と対立し、単独ではほとんど用 いない。具象 くだく【碎く】物体に力を加えてばらばらにする意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈氷を—〉〈岩を—〉の「割る」 よりも破片が細かく多数生ずる感じが強い。「夢を—」「野 望を—」のように比喻的にも使う。刂割る 「死ぬ」の意で相手を軽蔑して言うやや古風な感じの和語の俗語。〈まぐ手放きない〉へあいつ、とうとうー・りやがった〉②相手を敵視する気持ちが充満したことはだが、冷たくなった当人にはそういう奥の悪意は伝わらないから、反応のない対象にぶつかって自分にはねかえり、むなしく響くだろう。誇張して、ひどく疲れる意にも使う。勇敢え無くなると上がる②あの世に行く息が切れる息が絶える息を引き取る往くいけなくなる永眠往生お隠れになる落ちる②おめでたくなる帰らぬ人となる死去Q死ぬ死亡昇天逝去斃れる他界長逝露と消える天に召される亡くなる儚はくなる不帰の客となる不幸がある崩御没する仏になる身罷 脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 「草臥」「疲れ」に近い意の和語。広く使え る「疲れる」に比べ会話的で、硬い文章には不向き。「歩き 過ぎて」「一日中立ちっぽなしで」「疲れる」は疲労 の度合いが大きくても小さくても使えるが、「くたびれる」 は疲労度の大きいときに使う傾向がある。そのため、「疲 れた顔」は一晩寝ると回復する期待もあるが、「・れた顔」 となるとそう簡単には元の状態に戻らない感じが強い。ま た、小沼丹の『或る友人に』という作品に「当時はみんなた いへん・れた恰好をしていた」という例がある。この場合 は体力的な疲労ではなく、しょぼくれた身なりをさしてい ると思われるが、衣服や皮革製品、手帳などについて使う このような用法は「疲れる」ではまかなえない。なお、小津 安二郎監督の映画『早春』の杉山昌子(淡島千景)は「くたぶ れるだけよ」と言い、同じく『秋日和』の三輪秋子(原節子 も「くたぶれちゃった今日」と言っている。この「くたぶれ る」の語形は俗語っぽい響きで使われたが、今ではほとんど 聞かれない。ひしんどい・疲れる くたぶれる【草臥れる】「くたびれる」の転。くだけた会話に 使われた古めかしい俗語。〈ああ、ー・れた〉小津安二郎 監督の映画『早春』の昌子(淡島千景)が「ーだけよ」と言 い、『秋日和』の秋子(原節子)も「ー・れちゃった今日」と言 う。Qくたびれる疲れる 〈だもの【果物】食用となる草や木の実をさし、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈屋〉〈食後の—〉の岡本かの子の『金魚撩乱』に「果もの <291> 屋の溝板の上には抛り出した砲丸のように残り水瓜が青黒 く積まれ」とある。専果実・Qフルーツ・実・水菓子 くだらない【下らない】価値のきわめて低い意で、会話や軽い文章に使われる日常の和語。〈ー話〉〈ー物を買いあさる〉〈そんなー問題にかかわるのは時間がもったいない〉武者小路実篤の『友情』に「脚本をかく奴」とある。「つまらない」よりさらに露骨に低い評価として使う。「一人間」は最低の評価となるが、「つまらない人間」は交際する上で面白みがないというだけで、必ずしもその人間の価値が低いとまでは言及していない。Qつまらない・ばかくさい・ばかばかしい・ばからしい くだる【下る/降る】上から下へ順に移動するという基本的 意味をもち、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る基本的な日常生活の和語。〈川を下る〉〈坂を下る〉〈時 代が下る〉〈臣下に降る〉〈敵の軍門に降る〉幸田露伴の 『連環記』に「滾るように馬から・り」とある。「山を」 は途中のかなり長い経路が意識された表現で、麓まで下り きったかは明確でない。おりる くち【口】顔の下部にあって飲食物を取り入れたり話したり する器官をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の基本的な和語。〈おちょぼー〉へを大きく開 ける〉へをとがらせる〉〈堅くーを閉ざす〉へーのまわり を拭う〉川端康成の『名人』に「下唇は陰になり、上唇は 光りを受け、そのあいだにーのなかの濃い陰があって、上の 歯が一本だけ光っていた」とある。「ーが軽い」「ーが回ら ない」「ーを滑らず」「ーを切る」「ーを慎む」のように口を くちすい 使って「話す」意や、「がおごる」「が肥える」のように 「食べて味わう」意など、幅広く使われる。口元・Q口腔 ぐち【愚痴(癡)】今さら言っても仕方がないことをくどくど 嘆く意で、会話や硬くない文章に使われる漢語。「をこぼ す〉(が多い)ついが出る)芥川龍之介の『一塊の 土』に「くどくどとまじりの歎願を繰り返した」とある。 他人の行為についての不満を別の身近な人に訴える例が多 い。もと仏教語で、事実に関する無知の意という。こぼ す・Qぼやく くちおしい【口惜しい】残念だの意で、主として文章に用い られる古風な和語。〈中心人物が抜けてまことに〉〈優勝 を逃し限りだ〉現代の用法としては、振り返ったり思い 出したりして抱く感情の場合が連想されやすく、「悔しい」 ほど生の感情の吐露という雰囲気を感じさせない。二葉亭 四迷の『浮雲』に「悔しくも又ー」と両方続ける例がある。 Q悔しい・残念・無念 くちげんか【口喧嘩】手は出さずに互いに激しい言葉で応酬 する意で、会話や軽い文章に使われる表現。〈妹とーにな る〉〈あの夫婦はーが絶えない〉「口論」に比べ、罵り 合いの印象が強い。言い合い・言い争い・Q口論 くちすい【口吸い】唇どうしを接する「口づけ」の意のきわ めて古めかしい死語に近い和風の古語的表現。へーの真似 ごと〉の「口吸う」という動詞でも用いられた。「唇を盗む」 などという婉曲表現もあるなか、現代では「口づけ」に 比べてかなり露骨な表現に感じられ、同時に滑稽な印象を 与える面もある。ひキス・キッス・Q口づけ・こうし・接吻 <292> くちだし くちだし【口出し】当事者でもないのに割り込んで口を利く 意で、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。 〈横からーする〉くよけいなーをするな〉もちょっかい・手出 し・Q容喙 くちづけ【口づけ】男と女が唇を合わせることをさし、会話 よりも文章中に使われる和語。〈初めての—〉〈甘い—〉 〈ーを許す〉〈ーを交わす〉男女間の「キス」を意味する類 義語のうち、最もやわらかく気品のある和風の表現で、若 い人のロマンチックな場面を連想させやすく、時に詩的な 雰囲気を伴う。ひキス・キッス・口吸い・こうし・Q接吻 くちびる【唇】口の上と下にある薄い皮に覆われたやわらかい部分をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な生活和語。〈厚い〉〈ーが荒れる〉〈ーを尖めらす〉〈そっとーをつける〉〈ーを盗む〉志賀直哉は「暗夜行路」の中で赤ん坊の頼りないほどに薄い唇の皮膚に着目し、「赤児は指でも触れたら、一緒に皮がむけて来そうなーを」と、指をふれると皮がむけて指にくっついてくるようなと触覚的に表現している。その志賀に師事した尾崎一雄も『霖雨』の中で、ガラス越しにキスのまねをする女の唇を、「ルージュの色を失って硝子の向うで妙な形に崩れた」と視覚的にとらえ、日ごろ見ることのない女の唇の異様な姿に内心とまどいを感じる男の心理をも描き出している。川端康成の『雪国』のヒロイン駒子の動物的な唇については「蛭」の項を参照。 くちべに【日紅】唇を美しく見せるために赤く塗る化粧品を さす和語。広く使われる標準的な日常語。〈ーを塗る〉〈襟 にーがつく吉行淳之介の『原色の街』に「わざと橙色 の「を選んで濃く塗りつける」とある。いくらか雅語的な 「口紅をさす」という用法もある。ひルージュ くちもと【口元(許)口のあたり、口の形や様子をさし、会 話にも文章にも使われる日常の和語。〈ーがかわいい〉へー がひきしまる〉へーに笑みをたたえる〉回徳田秋声の『仮装 人物』に「頬からーへかけての曲線の悩ましい媚」とある。 口・口腔 くちょう【口調】話すときの調子をさし、会話にも文章にも 広く使う日常の漢語。〈命令—〉〈演説—〉〈先生—〉〈独特 の—〉〈穏やかな—で言う〉②壺井栄の『二十四の瞳』に 「歯のない口にきゅうに奥歯がはえたような気がするほど若 がえった—」とある。ひQ語り口・語気・語調・話じぶり・弁 ぐちよく【愚直】ばかじゃないかと思われるほど正直一途な 意で、主に文章に用いられるいくぶん古風な漢語。へーな 男〉へーに勤めあげる〉宮本百合子の『貧しき人々の群』 に「正直そうなどちらかといえばーだといえるほどの顔」 とある。融通のきかない点を含め好意的な評価となる。 Qばか正直・真正直・真っ正直 ぐちる【愚痴(癡)る】愚痴を言う意の俗語。〈酒を飲むとしょ っちゅう給料の安いことを—〉のもと、物事の判断がつかな い愚かの意の名詞「愚痴」の動詞化。同じことをいつまで もくどくど言う感じがある。ひこぼす・Qぼやく くつ【靴】革・布・ゴムなどで足を覆うように作った主に西洋 風の履き物をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる日常の和語。〈ーを脱ぐ〉〈ーを磨く〉〈ーをそろ <293> える)②木山捷平の『大陸の細道』に「氷のように冷たくな った」とある。雪道用に藁で編んだ深いくつは「雪沓」と 書き、「絹沓があでやかに花卉のように見えた」という小田 嶽夫の『城外』の例もあるように和風の場合は「沓」とも書 くが、洋風の場合はほとんど「靴」と書く。ひQシューズ・短 靴 くつう【苦痛】耐えがたい肉体的痛みや精神的な苦しさをさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーの表情〉〈ーに感 じる〉〈精神的ーを与える〉〈ーをこらえる〉〈ーに耐える〉 〈ーをやわらげる〉夏目漱石の『道草』に「不自然な冷や やかさに対して腹立たしいほどのーを感じていた」とある。 僕悩苦悩苦悩苦 くつがえす【覆す】物を裏返したり、それまでの考え方・価値・ 権威などを否定する意で、改まった会話や文章に用いられ る和語。〈大波が小舟を—〉〈政権を—〉〈決定を—〉〈一審 の判決を—〉〈定説を—〉〈常識を—〉回具体物に用いると 古風だが、一般に具体的な物よりも抽象的なものによく使 う。裏返す・Q引っくり返す クッキー基本的に「ビスケット」と同じものをさし、会話 にも文章にも使われる外来語。〈高級ーの豪華な詰め合わ せ〉習慣上、伝統的でシンプルなものを「ビスケット」 脂肪分が多く形や飾りつけに工夫の見られる高級感のある ものにこの語を用いる傾向がある。ひクラッカー・サブレ・Qビ スケット・ボーロ くっきよく【屈曲】まっすぐなものが途中で折れ曲がる意で、 主に文章中に用いられる硬い漢語。〈した枝〉〈道路が途 くてん 中で鋭角に—する)弔曲がる・Q湾曲 くっきり際立ってはっきりと目に見える意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈月も—〉〈遠くの山が—と見える〉 技術や印象などに広く使う「鮮やか」「鮮明」と違い、視 覚的な具体物にのみ使う。石坂洋次郎の『若い人』に「白い 骨格がネオンサインのように形を現し初めた」とある。 り鮮やか・Q鮮明 くっさく【掘削(繋)】土砂や岩石などを削り取ったり掘って 穴をあけたりする意で、改まった会話や文章に用いられる 専門的な硬い漢語。徳永直の『太陽のない街』に「河川を ーし、道路を築いて」とある。ひ掘る くつつく隙間なく接して離れない意で、会話や軽い文章に 使われる和語。ぼったに御飯粒がーぴったりー くーいて離れない有島武郎の『或る女』に「白い花弁が どこからか飛んで来て粘着いたようにちらほら見え出して いた」とある。「男とー」のように、男女が正式でなく親密 な関係になる意の用法は俗語的。乃接着・張り付く・Q引付 く・付着 くっぷく【屈服】相手の勢いに押されて服従する意で、主に 文章中に用いられるやや古風な硬い漢語。〈敵に—する〉 〈権力に—する〉②大江健三郎の『飼育』に「村の大人たち は弱よわしくそれに—する」とある。「参る」のような比喻 的拡大用法はない。Q降参・降伏・参る② くてん【句点】日本語の文の終わりに付ける「。」の記号をさ して、会話にも文章にも使われる専門的な漢語。〈文の終わ りにーを打つ〉の日常会話では「まる」という。「読点」と <294> くどい 並立。 ト句読点・まる くどい同じようなことを何度も繰り返されるときの不快感 をさして、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和 語。〈説明がー〉へほど念を押す〉「味」「色合いが 」のように、濃すぎてすっきりしない意を表す用法もあ る。三島由紀夫の『金閣寺』に「(保津川は)ほどの群青い ろをしていた」とある。Qしつこい執拗 くとうてん【句読点】句点()。と読点()との総称として、会 話にも文章にも使われる漢語。〈|のル|ル〉最近の若者 はーを多用する)宇野浩二の『うつりかわり』は「そうし て、それも、五日ほど、いたきりで、こんどは、電報も、な にも、こないのに、なにか、そわそわして、立って行った。 というふうに読点を多用し、谷崎潤一郎の『春琴抄』では逆 に、「佐助の泣く声が」から「教せてやってるねんで」の次 に読点が現れるまで実に一九二字も句読点なしに進行する など、作家の個性の際立つ例もある。Q句点・点・読点・まる くどく【功徳】善い行いをさす仏教語。古めかしく抹香くさ さを感じさせる漢語。〈|を施す〉〈|になる〉川端康成 の『浅草紅団』に「一度の参詣で四万六千日参詣したのと同 じーがある」とある。 くなん【苦難】苦しみと難しさの意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈一の連続〉(一の人生を歩む)行く 手に一が横たわる〉(一に耐える)小林多喜二の『蟹工 船』に「其処から起る一が(略)描かれていた」とある。「一 の道」など、「困難」より感情的・主観的な感じが強い。刂困 難・Q難儀 くに【国(邦)】住民を有し統治権を持つ領土の意で、くだけ た会話から文章まで幅広く使われる基本的な和語。〈島ー〉 〈ーを守る〉〈ーを治める〉〈大きなー〉〈多くのーが参加す る〉の「ーのやり方」「ーの敗訴」のように国家や政府を意 味する用法もある。「ーの両親」「ーのなまり」のように故 郷をさすこともあり、「ーへ帰る」「おーはどちら?」のよ うに両方の意味に解釈できる表現もある。単国家 くにざかい【国境】国と国との境目をさし、会話にも文章に も使われる、やや古風な和語。〈一の山々〉(このあたりが ーとなっていた〉の武蔵・越後・信濃・駿河といった旧国名の 境界にはこの語を用いることが多い。川端康成の『雪国』 の冒頭の一文「一の長いトンネルを抜けると雪国であった」 も「こっきょう」と読み慣わしているが、意味の上では「く にざかい」と読むほうがしっくり来るかもしれない。「こっ きょう」より線的なイメージは弱く、境界線の内側まで含む 面としてとらえて「一に住む」という言い方も可能。「市ざ かい」「県ざかい」も同様である。りこっきょう くのう【苦悩】解消できずに困っている深い精神的苦痛をさ し、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。へー の日々〉へーが絶えない〉〈顔にーの色が浮かぶ〉の井伏鱒 二の『丹下氏邸』に「彼の顔全部を覆う太くて深い敏は、心 の激しいーを示して硬直した」とある。Q懊悩苦痛・苦 悶・苦しみ・悩み・煩悶・憂悶 くばる【配る】分けて各人に渡す意で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈郵便を ー〉〈問題用紙を—〉〈全員に公平に—〉の小沼丹の『西條 <295> さんの講義』に「西條さんは持ってきたプリントを学生に ー・った」とある。「目を—」「心を—」のような抽象的な用 法も多い。ひ配付・Q配布 くび【首】頭部全体、または頭と胴とをつなぐ部分をもさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の 基本的な和語。〈赤ん坊のーがすわる〉へーをかしげる〉 「が回らない」「敵将のーを取る」のように、本来は頭 部を含めてこの語を用いた。現在では頸部がだけをさすこ とが多いが、その点を明確にするために「頸」と書くことも ある。また、「ーを切る」「即刻ーだ」のように解雇を意味 する場合は「馘首」または単に「馘」と書くこともあり、注 意を促すために片仮名で書く例も多い。片仮名書きは俗っ ぼい感じを与える。頸首根っこ頸部 くび【首(頸)】頭と胴をつなぐ部分をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。へまわりへほっそりとしたー〉く肩からにかけてへに掛ける川端康成の『千羽鶴』に「色白の長めなーまで染まって来た。長めなーの美しさを引き立てるためか、洋服の襟に白い飾りがあった」とある。「首」は本来「敵将のを取る」のように頭部を合めての意。「をかしげる」も同様。そのため、頭部を除く頸部のみをさすことを明確にするために、「頸飾り」のように特に「頸」と書くこともある。織田作之助の『雪の夜』に「ずんぐりしたー」の例があり、田宮虎彦の『銀心中』には「胸から肩にかけての筋肉が牡牛のようにもりあがっていて、短かいーはその肩の中にうずもれていた」という描写が迫力を添えている。首 くびねっこ 玉・首根っこ・Q頸部 ぴ【具備】あるべき物や事柄をきちんと備えている意で、 主に文章中に用いられる硬い漢語。〈必要条件をすべて する〉は具有・Q具える ぴきり【首切り】解雇・免職の意で、主に会話に使われる俗 っぽい和語。〈ー反対〉〈責任者のーを断行する〉Q解雇・ 解職・解任・罷免・免職 くびくり【首縊り】自ら首をくくって死ぬ意で、会話や軽 い文章に使われるやや古風な和語。「の死体」の「首吊 り」に比べ、頸部圧迫のイメージが前面に出る。夏目漱石の 『吾輩は猫である』に水島寒月が「の力学と云う脱俗超凡 な演題」で演説をする話が出てくる。ひ縊死Q首吊り くびすじ【首筋】頭部の後部をきして、会話にも文章にも使 われる日常の和語。〈ーが凝る〉〈寝違えてーが痛い〉円 地文子の『老桜』に「さわやかに生え際の薄れた髪を頭の上 に小さく捻じて巻いているー」とある。込うなじ・襟足・Q襟 首・首根っこ・頸部 くびったま【首玉】頸部をさして、くだけた会話で使わ れる俗語。〈ーを押さえつける〉へーにかじりついて甘え る〉Q顕・頸部 くびつり【首吊り】自ら首を吊って死ぬ意で、会話やさほど 硬くない文章に使われる日常の和語。〈—自殺〉へ—のあっ た家〉の「首くくり」に比べ、ぶら下がったイメージが前面 に出やすい。ひ縊死・Q首くくり くびねっこ【首根っこ】首筋の意で、くだけた会話に使われ る俗っぽい和語。へーを押さえる〉うなじ・襟足・襟首・首・Q <296> くびまき 首筋·頸部 くびまき【首(頸)巻】「えり巻き」の意で、会話でも文章でも 使われる古い感じの日常の和語。〈毛糸でーを編む〉小川 国夫の『貝の声』に「浩の視野には彼が、膝の辺から臙脂 の頸巻まで、入っていた」とある。Q襟巻マフラー くふう【工夫】いろいろ考えて効果的な手段を見つける試み をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈創意—〉へーを 凝らす〈ーを重ねる〉〈ーの跡が見える〉②中村真一郎の 『遠隔感応』に「いろいろとスリルに富んだーを行って、そ の出合いに薬味を添えるようにした」とある。刂考案 ふう【颶風】激しく吹き荒れる強い風の意で、主に文章に 用いられる古めかしい漢語。〈ーに備え警戒を強める〉風 力階級12の旧称で「暴風」の上で最大。風・おおかぜ・強風・ 時化・疾風・陣風・大風・台風・突風・はやて・Q暴風・暴風雨・烈風 くぶん【区分】何らかの基準で区切って分ける意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈時代ー〉〈五つにーされてい る〉〈宅地と農地と山林にーする〉ヲ区別・Q区分け くべつ【区別】種類や特徴などの差異によって別々に分ける 意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な漢語。〈色でーする〉〈男女のー〉〈似過ぎてー がつかない) ②川端康成の『千羽鶴』に「奥さんには、父と 僕とのーがついているんですか」とある。鑑識・鑑定・鑑別・ 区分・区分け・識別・Q判別・弁別・見分け ぼむ【窪む】ある部分の表面が長い間に他の部分より低く なる意で、会話でも文章でも使われる和語。〈目がー〉〈道 がー〉〈ー・んだ土地〉長与善郎の『竹沢先生と云う人』に 「洞のように深くー・んだ底にらんらんと異様にかがやく 両の眼」とある。衝撃を受けて瞬間的に起こることもある 「へこむ」に対し、目の周囲以外はたいていある程度以上の 広さがあり、自然の作用などで長い時間をかけて徐々に変 化するイメージがある。ひへこむ① くま【熊】クマ科の哺乳類の総称として会話にも文章にも使 う和語。〈一が出る〉〈一の足跡〉武田泰淳の『異形の者』 に「たくましい身体には、穴から出たーが力だめじでもし ているような、殺気とともに滑稽感がみとめられた」とあ る。芳賀まきおの漫画『こぐまのコロスケ』やミルンの童 話『クマのブーさん』などに、ちゃめで心やさしい愛すべき 動物として描かれ、金太郎の相撲の相手をするなど、日 本人にとっては友好的な存在という印象があるため、現実 に恐怖を感じた経験のある一部の人を除き、この語に凶暴 な語感は意識されない。 くみあいがわ【組合側】体制側・学校側・会社側・経営陣側など の立場から、組合を自らと対立するものとして見たときの 用語。〈一の要求をのむ〉の「体制側」と対立。 くみたて【組み立て】部分の組み合わさり方をさして、会話 やさほど硬くない文章に使われる和語。〈機械の—〉〈会議 体の—〉〈ばらして—を調べる〉の「構成」より「構造」に 近いが、「構造」ほど複雑な感じはしない。刂機関・機構・構 成・Q構造・仕組み・組織 くめん【工面】努力しいろいろ工夫して必要な金銭や品物を 取り揃える意で、会話にも文章にも使われる古風な漢語。 〈費用を—する〉〈人数分の用具の—がつかない〉木山捷 <297> 平の『大陸の細道』に「その時にはどんな旅費をーしてで も、迎えに行きますよ」とある。Q算段・都合 くもつ【供物】神仙や社寺へ供える物の意で、改まった会話 や文章に用いられる古風な漢語。「おーを上げる」お供え くもん【苦悶】苦しみ悶える意で、主に文章に用いられる漢 語。「の表情を浮かべる」「煩悶」と違い肉体的な苦痛 を含む。顔の表情に出る例が多い。永井荷風の『すみだ川』 に「現実のーをしばらく忘れた」とある。中河与一の『天の 夕顔』には「もう一人を愛せないということの窮屈な不幸 にーしていたのです」とある。僕悩苦痛・苦悩・苦しみ・悩 み・Q煩悶は・裏悶 くやしい【悔しい】残念で仕方がない意で、会話にも文章に も使われる和語。〈負けてー〉へ一瞬の油断がー〉弁伏鱒 二の『珍品堂主人』に「歯ぎしりするほどー・かったことで しょう」とある。Q口惜しい・残念・無念 くやむ【悔やむ】過去の失敗を後悔する意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈あの時の対応を—〉(今となって! んでみても仕方がない)島尾敏雄の『島の果て』に「いた わりの言葉で包んでやらなかったことを唇を噛むほどー・み ました」とある。恥ずかしい一面を含みやすい「悔いる」と 比べ、この語は自分の思いどおりに事が運ばなかったこと を残念に思う気持ちが強い。「知人の死を」のように、悲 しみ弔う意でも用いる。ひQ悔いる・後悔 ぐゆう【具有】才能・性格・資格などを持っている意で、主に 文章中に用いられる硬い漢語。〈強靭じんな精神力をーする 逸材〉Q具備・具える くらい くら【倉】会話でも文章でも使われる古風な和語。へに入れ る)へーから出す)本来は穀物を貯蔵する建物をさし、財 物や武器などをしまっておく「庫」と区別した。現在でも必 要に応じて「庫」の字を当てることもある。蔵 くら【蔵】会話でも文章でも使われる古風な雰囲気の和語。 〈屋敷〉〈酒〉〈に大事にしまいこむ〉〈が建つ〉 〈の街〉本来は財物を保管する土蔵をさした。倉 くらい【暗い】光の量が不足し物が見えにくい状態をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈部屋が—〉〈空が—・くなる〉〈ー・くてよく見 えない〉遠藤周作の『海と毒薬』に「雨戸をしめきった部 屋はひどくー・く、その—影のなかでこの男は妙に蒼黒くむ くんで見える」とある。井上靖の『幽鬼』には「そこには 闇があるばかりで、あたりを車軸の雨が叩いている」とあ る。曾野綾子の『バァバちゃんの土地』には「夜になると、 家中が幽霊屋敷のように—・く感じられる」とある。「明る い」と対立。光量に関係なく「気持ちが—・くなる」「過 去を持つ」「見通しが—」「このへんの地理に—」「法律に —」のように比喻的・派生的な用法もある。賠黒・Q暗濾・ 薄暗い・暗闇・ほの暗い くらい【位】①社会や組織においてその人間の占めている位置をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。へーが高い〉へ今のーに甘んじる〉へーを譲る〉へ上のーをめざす〉②漠然とした使い方もある「地位」に比べ、具体的で公認された感じがある。Q地位・身の程・身分②おおよその大きさ・分量・程度であることを示し、会話や <298> グラウンド 硬くない文章に使われる和語。〈千円ーで買える〉(だいた いそのーの広さ〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「今のーで 充分です」とある。「ぐらい」となる例も多い。「りんごを 五つほど包んでください」「五万円ばかり貸してもらえる と助かるんだけど」というふうに数字をほかして丁重な感 じにする日本的な表現にこの語はなじまない。も程度・Qば かり・ほど② グラウンド運動場や屋外の競技場の漠然とした総称で、や や改まった会話や文章に用いられる外来語。(ホーム) 〈練習用のー〉へを三周する〉施設よりも地面そのもの をイメージする傾向が強い。日常会話では「グランド」とい うことが多い。込運動場・球場・競技場・Qグランド・コート・スタ ジアム・野球場 くらがり【暗がり】暗くて人目につかない場所をさし、会話 にも文章にも使われる和語。「に潜む」へーを利用して近 寄る」「暗闇」よりはいくらか光があってぼんやりと見え る感じがある。弔暗闇・闇 くらし【暮らし】生きて日常の活動をする意で、くだけた会 話からさほど硬くない文章まで広く使われる日常の基本的 な和語。〈その日—〉〈一人—〉〈贅沢ぐな—〉〈庶民の—〉 の里見弾の『美事な醜聞』に「ひとの疝気を頭痛に病むよう な、そんな優長な—」とある。「生活」ほど改まった感じが なく、気楽でやわらかい感触があるが、若い世代での使用 が減ってきている。「—の足しにする」のように「生活費」 の意で使われることもある。「—が楽になる」もその意味合 いが強い。ひ生活 くらしむき【暮らし向き】経済面から見た生活の状態をさし、 会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。「一の ことは妻任せにしている)「が楽じゃなさそうだ)」家計・ Q生計 くらす【暮らす】生活しながら月日を過ごす意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈遊んでー〉〈田舎でのんびりー〉〈夫婦水入らずでー〉へ一 人でー〉夏目漱石の『草枕』に「畳から根の生えた植物の ようにじっとして二週間ばかりー・して見たい」とある。時 間の経過が意識の中心にある「過ごす」よりも、生活してい る意識が強い。「安い給料でやっとー」のように、生計を維 持する意にも使う。過ごす 大きさや品質優劣などの程度を示す段階の意で、会 話にも文章にも使う日常の外来語。〈成績はトップー〉へ一 つ上のーに上がる〉〈同じーの車で最も燃費がいい〉「 で一番よく出来る」のように学級の意にも、「英会話のー 「ーを休む」のように授業の意にも用いる。ヲグレード・Q等 級・ランキング・ランク クラスメート主に会話や軽い文章に使われる外来語。へ の集まり〉かつてのだ」も級友・Q同級生 ラッカー小麦粉の淡泊な薄い焼き菓子をさし、会話にも 文章にも使われる外来語。ヘミルクとーで朝食を済ませる 甘くてお菓子系統のピスケット類に対し、塩味で主食代 わりにもなる。ヨクッキー・サブレ・Qピスケット・ボーロ ぐらつくぐらりと揺れ動いて不安定になる意で、会話やさ ほど硬くない文章に使われる和語。〈家の土台が—〉〈足許 <299> がー〉〈自信がー〉〈気持ちがー〉Q動揺・乱れる・揺らぐ・揺 れる クラブ共通の趣味や目的をもった人々の集まる団体組織を さし、会話でも文章でも使われる外来語。〈ー活動〉ペン ー音と意味を兼ねて「倶楽部」と漢字をあてると、漢字 のイメージのせいでとたんに高級そうに見え、いかにも楽 しそうだが金もかかりそうな雰囲気に変わる。「ナイトー」 「銀座の高級」など社交や娯楽のための会員制の店をさす こともある。チーム くらべる【比(較)べる】複数のものについて形・広さ・長さ・重さ・優劣などの異同や差を調べる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈大きさを 〈値段を〉〈実力を〉〈去年の結果と〉〈源氏物語 の原文と現代語訳とを〉〈強さはーものがない〉正式な 感じの「比較する」に比べ、日常生活の話題で特に会話によ く使う。太宰治の『富嶽百景』に「吉田の水は、三島の水に ーと、水量も不足だし、きたない」とある。Q比較・比する くらます【晦(暗)ます】他人から見つからないように事を行 う意で、会話にも文章にも使われる和語。〈行方を〉〈姿 をー〉〈人目をー〉永井荷風の『瀾東綺譚』に「家にかえ らず、跡をー・してしまった」とある。主に姿を消す場合に 用い、「隠れる」以上に悪いニュアンスが強い。隠れる くらやみ【暗闇】暗くて何も見えない意で、会話にも文章に も使われる和語。〈ーを手探りで歩く〉〈ーに紛れる〉強 調する場合は「真っ暗闇」と言い、井伏鱒二の『黒い雨』に 「真暗闇になって何も見えなくなった」とある。「事件を くりかえす に葬る」のように、人目につかない意の比喻的用法もある。 ひ暗澹だが暗い暗がり・闇 クランケ かつて医者などが「患者」をさしてよく用いたド イツ語からの古風な外来語。の患者を刺激しないように当 時はよくドイツ語を隠語のように用いた。Q患者・病人 グランド「グラウンド」の意で主に日常の会話に使われる語 形。〈ーが硬い〉〈ーに集まる〉乃運動場・球場・競技場・Qグラ ウンド・コート・スタジアム・野球場 くり【庫裏】寺の台所をさす伝統的な専門用語。名刹の広 いー)住職やその家族の居住部分全体をさす場合もある。 島崎藤村の『破戒』は「蓮華寺では下宿を兼ねた」という唐 突な一文で始まり、主人公の「瀬川丑松が急に転宿を思 い立って、借りることにした部屋というのは、其ー(蔵裏) つづきにある二階の角のところ」と続く。専勝手②・キッチ ン・くりや・炊事場・Q台所・厨房 調理場 クリーニング「洗濯」の意で会話やさほど硬くない文章に使 われる外来語。〈ドライー〉〈スーツをーに出す〉専門の 業者の特にドライクリーニングをさすことが多く、家庭で 洗う場合に使う例は少ない。「洗濯」が終わった段階では洗 濯物が濡れているイメージがあるが、「クリーニング」の仕 上がりは乾いてアイロンまでかかっているイメージが強い。 ちなみに、小津安二郎監督の戦前の映画『落第はしたけれ どーに「西洋洗濯」と書いた法被。を着た男が登場し、箱に は「クリーニング」とある。西洋洗濯・洗濯 くりかえす【繰り返す】同じことを複数回行ったり、同類の ことが何度も起こったりする意で、くだけた会話から硬い <300> クリニック 文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈噴火を」 〈相手のことばを口の中で」〈同じ練習を毎日」〈歴史 は」の意図的な「反復」と違い、「同じ過ちを何度でも」 のように結果として起こる場合にも使う。また、二度だけ のケースが「反復」より多い感じがある。正宗白鳥の『何処 へ』に「雨滴は同じ音を」・し、鼠も倦みもせずに騒いで いる」とある。反復 クリニック「診療所」の意で会話にも文章にも使われる新し い感じの外来語。〈駅前にーを開く〉〈消化器専門のー〉 斬新な感じの語感から最新の医療設備を連想しやすく、近 年「医院」に代わる名称として愛用される。ヒ医院・Q診療 所病院 くりのべ【繰り延べ】日時や期限の延期をさして、会話や軽 い文章に使われる、やや古風な和語。〈支払いの—〉〈出発 日がーになる〉Q延期・延長・繰り下げ・日延べ くりや【厨】「台所」の意で用いられたきわめて古い感じの和 語。〈一びと〉(一に立ち入る)煙ですけるので「黒屋」 と呼んだところからの音転という。洋式の場合はイメージ が反発し、中華料理でもびったり来ない。勝手②・キッチン・ 庫裏Q炊事場・台所・厨房調理場 くりよ【苦慮】苦しみながら考える意で、主として硬い文章 に用いられる漢語。〈対応にーする〉〈財源の確保にーす る〉苦心・腐心 くる【来る】空間的・時間的・心理的に接近する意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈客が—〉〈台風が—〉〈電話が—〉〈春が—〉〈一雨—〉 「出番がー〉〈限界にー〉〈胸にじいんとー〉田宮虎彦の 『沖縄の手記から』に「私たちはその日を待った。そして、 その日は待つ間もなくきた」とある。「不注意からー失敗」 のように「起因する」意でも、「そこへきてこの始末だ」 「向こうはそうきたか」のような抽象的な意味合いでも広く 使われる。夢る①・やって来る クルー 船や飛行機の乗組員をさし、主に会話に使われる、 やや専門的な外来語。〈キャピン〉〈カット〉〈一同〉 の「長期滞在」など。宇宙飛行士にも使う。専海員・水夫 セーラー・船員・Q乗組員・船乗り・マドロス グループ一定の集団をさし、会話から文章まで幅広く使われる外来語。〈ー活動〉〈ーごとに行動する〉〈ーを解散する〉〈分類すると三つのーに分かれる〉の太宰治の『人間失格』に「れいの地下運動のー」とある。「班」が指示に従って結成される場合が多いのに対し、自発的に自然にできあがったような雰囲気を感じさせる。そのため、「班」が強制されて規律正しく自由が利かない感じなのにひきかえ、自由な雰囲気のもとに楽しく活動するケースを連想させる傾向がある。「班」と違って、人間以外にも用いられる。児班くるしい【苦しい】肉体的な苦痛や精神的な悩みで我慢するのが困難な状態をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈息がー〉〈生活がー〉〈一答弁〉の太宰治は『桜桃』で「心がどんなにつらくても、からだがどんなにー・くても、ほとんど必死で、楽しい雰囲気を創る事に努力する」と、「つらい」と「苦しい」を併用してみせた。「胸がー」は肉体的、「一胸の内」は精神的。 <301> 全体的・精神的な「つらい」に対し、具体的な感覚と密着し た感じが強い。ふつらい くるしみ【苦しみ】肉体的・精神的に苦しい感覚・感情をさし、 会話にも文章にも広く使われる日常の和語。〈地獄のーを 味わう〉へーを訴える〉へーをやわらげる〉へーを乗り越え る〉中村真一郎の『遠隔感応』に「恋のーのような気持 は、恋そのものにも劣らず強烈に私に迫って来たのだ」とあ る。僕悩・Q苦痛・苦悩・苦悶・悩み・煩悶・憂悶 くるま【車】車輪を回転させて人や物を運ぶ乗り物をさし、 会話や硬くない文章に使われる日常の和語。〜で通勤す る〜〜を飛ばす〜〜で送り届ける〜〜庄野潤三の『イタ リア風』に「ーが重なり合うように走っていた」とある。明 治・大正の時代は人力車をさしたが、現在は自動車、特に乗 用車をさす。「ーを拾う」の形で特にタクシーをさすことも ある。しばしば「くるま」「クルマ」と仮名表記される。马 自動車 くるまひき【車引き】人力車を引いて走る職業の人をさした 和語。廃語的。〈観光地にーがたむろしている〉の人力車の 衰退とともに姿を消し、この語もめったに聞かれなくなっ ている。乃車屋・Q車夫 くるまや【車屋】「車引き」の意のやや俗っぽい和語。廃語 的。「アラ、ヨッという」の威勢のよい掛け声)人力車の 衰退に伴ってこの職業も廃れ、自然この語も使われなくな った。今は、自動車業界で自分たちを冗談めかして言う場 合に用いる俗語として耳にする。Q車引き・車夫 くるまよせ【車寄せ】自動車を乗りつけるために玄関先に屋 クレーム 根を張り出した場所をさし、会話にも文章にも使われるや や古風な和語。〈雨の日はーで乗り降りする〉もポーチ くるむ【包む】やわらかく巻くように覆う意で、会話やさほ ど硬くない文章で使われる、やや古風な感じのする和語。 〈風呂敷に」〈毛布で」〈餅を海苔で」〈共布で」・ん だボタン」「コトにすっぽりと身を包む」のように「包 む」でも顔が出ることもあるが、「赤ん坊をパスタオルで 」のように、「くるむ」の場合は全体を覆い尽くしても尽 くさなくても、中のものを大事に扱う感じを伴う。ひつつむ グルメ 舌が肥えていて料理の味にうるさい意で、会話にも 文章にも近年よく使われる外来語。「として知られる〉 へに出しても恥ずかしくない料理」「美食家」や「食道 楽」より料理に関する知識がありそうな感じがするが、「食 通」のように調理法などに関する知識が豊富だという雰囲 気は特に感じさせない。ひ食い道楽・Q食通・食道楽・美食家 くれ【暮れ】一年の終わりの時期をさし、会話にも文章にも 使われる、やや古風な和語。〈盆—の付け届け〉への大掃 除〉への三十日〉「日」「夕」のように日没のあたり をもさすが、「日の」という言い方はすでに古めかしく、 単独ではほとんどの場合「年の」である年末の意味で使 う。ひQ歳末・歳暮・年の暮れ・年の瀬・年末 グレード品質などを基準とする段階の意で、会話にも文章 にも使われる外来語。〈ーアップ〉〈ーが上がる〉〈ーが高 い〉、ヲラス・Q等級・ランキング・ランク クレーム製品や扱いなどに関する「苦情」の意で、会話や 軽い文章に使われる外来語。〈ーがつく〉〈ーをつける〉 <302> クレーン 本来は、商品取引における契約違反の賠償請求をさす専門 語だが、近年日常生活で幅広く使うようになっている。Q 苦情・文句 クレーン起重機の意で会話にも文章にも使われる外来語。 〈車〉現在は「起重機」より普通に使う。木山捷平の 『大陸の細道』に「死んで一片の白骨となって、小包紐でし ばられ、未知の郵便配達夫の手で汽車に積まれたり、降ろ されたり、空高くーで船に投げ込まれたり海風に吹かれた り」とある。起重機 くれがた【暮れ方】日が暮れる頃をさし、会話でも文章でも 使われる、やや古い感じの和語。へーから雨になる)〓芥川 龍之介の『羅生門』は「或日の—の事である」という一文で 始まる。ひたそがれ・薄暮・晩方・日暮れ・灯ともし頃・タ・Qタ方・ タ暮れ・夕刻・タべ・夕間暮れ・宵・宵の口 クレパス 顔料を油脂で固めた棒状の絵の具をさし、会話に も文章にも使われる商標名。〈ーで描く〉の「クレヨン」と 「パステル」との両方の特色をもつところから。ひQクレヨ ン・パステル クレヨン蠟や油脂に顔料を混ぜて固めた棒状の児童用の 絵の具をさし、会話にも文章にも日常使われる、フランス 語からの外来語。〈幼稚園児がーで親の顔を描く〉石坂洋 次郎の『山のかなたに』に「出来事を、例の子供の画のよ うに、単純な、線の強い描き方で報告をした」とある。Q クレパス・パステル くれる【呉れる】相手が好意で物をこちらに与える意で、会 話や改まらない文章で使われる日常生活の和語。金をー れ〉〈頼めばただでーよ〉〈誰がー・れた〉の「欲しかったらー・れてもいいぞ」のように、自分が相手に物を与える場合に使うと古い感じになり、古い言い方が地方に残っている関係で方言的なニュアンスも加わる。「特別ー・れてやる」「こんなもの、いくらでもー・れてやるよ」というふうに「くれてやる」の形になると、その方言色は薄まるが、いくらか古い感じは残る。この場合、「くれる」の部分が所有権の移転を表し、「やる」の部分が自から他へという方向性を示している、と考えるとわかりやすい。後者に「差し上げる」でも「あげる」でもなく「やる」を用いるこの言い方は、「ー・れてつかわす」ほどではないにしろ、多少とも尊大な感じが伴う。井伏鱒二の短編『文章其他』に、主人公が義妹に「三十一枚の私の短篇小説をー・れてやろうか、それとも半襟の方がいいか」と尋ねて半襟を選択される場面がある。み上げる・与える・差し上げる・授ける・施す・Qやる② くろ【黒】①墨や炭のような暗い色をさし、くだけた会話か ら文章まで幅広く使われる基本的な和語。〈一のスーツ〉 へーで統一をとる〉幸田文の『流れる』に「炭をつぐ色ー の指にダイヤが光っていた」とある。②犯罪行為を起こし た当人である意の隠語。〈取調べによりシロかーかをはっき りさせる〉片仮名書きの例が多い。①②とも「白」と対 立。犯罪者犯罪人犯人 くろう【苦労】あれこれ骨を折って苦しい思いをする意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的漢語。〈御ーさま〉〈親にーをかける〉へいつまでもーが 絶えない〉へーの甲斐がある〉へーして仕上げる〉②野間宏 <303> の崩壊感覚』に「何の—もいらない結構な御身分」とあ る。「労苦」と違い、精神的な負担の意にも使う。刂難儀・労 苦 ぐろう【愚弄】相手を小ばかにして見下した態度をとる意で、 改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な漢語。 〈相手をーする〉へーするのもいい加減にしろ〉夏目漱石 の『坊っちゃん』に「新来の先生をーする様な軽薄な生徒」 とある。「嘲弄」に比べ、激しく嘲る感じは少ない。ひから かう・嘲弄 くろうと【玄人】技芸などの一事に熟達し、それを職業や専 門としている人の意で、会話や軽い文章に使われる日常の 和語。〈ーはだしの芸〉への域に達している〉(これぞー の技〉の「女」として芸妓や遊女などの商売女をさす用法 もある。鎌倉の自宅を訪問した際、小林秀雄は広い応接間 で、今は「眼高手低の時代」で、文章においても「そういう 時代認識に一番鋭敏なものがだ」と語った。ひスペシャリ スト・専門家・Qプロ クロースアップ 慣用的な「クローズアップ」より原語の発 音に近いとして稀に用いられる外国語。世間の慣用を破 って原語音に近づけた忠実さと、ことさら英語めかした語 形を採用した気取りが感じられる。クローズアップ クローズアップ「大写し」の意の英語からの外来語の伝統的 な発音。〈介護の問題がーされる〉クロースアップ くろめ【黒目】眼球中央の黒い部分をさして、主に日常会話 で普通に使われる和語。〈勝ちの美少女〉四川端康成の 『千羽鶴』に「母親より勝ちの令嬢の目は悲しげだった」 くわだてる とある。♩瞳孔・Q瞳 くろめがね【黒眼鏡】レンズに黒い色のついた眼鏡をさし、 会話にも文章にも使われる古風な和語。〈—の人物〉まぶ しさを防ぐというより変装して顔をわかりにくくする連想 が強い。色眼鏡・Qサングラス くろんぼう【黒ん坊】「黒人」の意で、主にくだけた会話に使 われる俗語。「の少年」「くろんぼ」とも言う。親しみ の気持ちをこめて使う場合もあるが、軽蔑の響きが強いと して使用を控える傾向にある。黒色人種・Q黒人・ニグロ くわえる【加える】すでにある部分に何かを付け足して数量 を増やす意で、会話にも文章にも使われる和語。本俸に手 当てをー〉ヘスープに酒と味醂をー〉ヘ甘みをー〉の足 す」と違い、追加するのは同じ種類の物でも違う種類の物 でもよい。「攻撃をー」「解釈をー」「手心をー」など、何か を行って対象にある作用を及ぼす意でも使う。足す くわけ【区分け】「区分」の意で、主に会話に使われる和語。 〈郵便物の—作業〉へがはっきりしない)Q区分・区別 くわしい【詳(精・委)しい】細かい点まで念入りに行き渡る意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈ー・く説明する〉〈ー地図〉〈事情は不 明〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「よく色々な事を知って ますね。どうして、そんなー事が分るんですか」とある。 「詳細」に比べ、相手の理解を助ける意図も感じられる。 「法律にー」「この辺の地理にー」のように、細部まで知っ ている意にも使う。Q詳細・精通・通暁 くわだてる【企てる】計画を立てて実行しようとする意で、 <304> くわわる やや改まった会話や文章に用いられる和語。海外進出を ー〉〈逃亡をー〉の「もくろむ」ほどではないが悪い意味に 使われる例が多く、「もくろむ」に比べ、対象も方法も具体 的で実行段階に入りかけている感じがある。もくろむ くわわる【加わる】程度がさらに増す、活動に参加するの意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈寒さがー〉〈速度が ー〉〈仲間にー〉〈活動にー〉〈人の輪にー〉小沼丹の『型 録漫録』に「お前さんも一口ー・らぬか?と生命保険の勧 誘みたいなことを云い出した〉とある。ひQ参加・参入 ぐんぐん勢いよく伸びたり速くなったりする様子をさし、 会話や硬くない文章に使われる擬態語。〈背がー伸びる〉 〈成績がーよくなる〉〈仕事がーはかどる〉〈ースピードを 上げる〉ひじゃんじゃん・ずんずん・どしどし・Qどんどん くんじ【訓示】教え論す行為やその内容の意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈新任大臣の—〉〈部下を集め てーを垂れる〉ひ訓辞 くんじ【訓辞】教え論すことばの意で、改まった会話や文章 で用いられる漢語。〈ーを述べる〉〈校長のーを静かに聴 く〉ひ訓示 くんしゅ【君主】世襲によって国や領地を統治する王をさし、 改まった会話や文章に用いられる、やや古風な漢語。〈 制〉〈専制〉、ひ王・王様・Q皇帝・国王・大王・帝王・天子・天皇・帝 ぐんしゅう【群集】人間や動物が群がり集まる意、また、そ のものをさし、主として文章に用いられる専門的な漢語。 〈初詣に押しかけた〉〈猿のー〉〈ススキのー〉室生犀星 の『杏っ子』に「大ーを前にして立った」とある。「群衆」 とは違って、人間に限らず動植物についても使われる。「 心理」は社会学・心理学の学術用語で、集団になったときに 無責任に同調しやすくなる、個人個人の場合とは違う特殊 な心理状態をさす。巻群衆 ぐんしゅう【群衆】集まった人間の群れをさし、会話でも文 章でも使われる漢語。〈広場を埋めた数万のー〉へにもみ くちゃにされる〉の「群集」と違って人間についてのみ用い る。呂群集 ぐんじりよく軍事力軍隊や兵器の総合的な戦闘能力をさ し、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。 へーを誇示する)〈強大なーにものを言わせる)国家単位 のような大きな規模の対象に用いる。転力・武力・Q兵力 ぐんじん【軍人】戦争に従事することを職務とし、陸海空軍 の軍籍を有する将兵の総称。〈職業—〉〈退役—〉〈—勅諭〉 の藤枝静男の『犬の血』に「—の狡さ(略)排他的な、陰微で 卑しい徹みたいな、ネチネチとした嫌なものがある」とあ る。専軍属・兵・Q兵士・兵卒・兵隊 ぐんぞく【軍属】軍人以外で軍隊に勤務する人の総称。〈軍 人・一致団結して戦う〉Q軍人・兵・兵士・兵卒・兵隊 ぐんばいがある【軍配が上がる】勝利が決定する意で、相 撲用語の拡大用法。〈永年にわたる抗争にようやく決着がつ き、原告側にー・った)②相撲行司が勝ち力士に軍配を 上げる意から、広く一般に「勝利を認められる」意にも用い られるが、今でも相撲の連想が残る。勝利 ぐんばっ【群発】一定の地域に一定の期間何度も繰り返し発 生する意で、主に文章の中で用いられる硬い漢語。〈地 <305> けいい 震〉(この地域に誘拐事件が—する)繞発・多発・Q頻発・連発 くんれん【訓練】指導的に練習させられる意で、やや改まっ た会話や文章に用いる、若干古い感じを伴う漢語。〈避難 ー〉〈ーを積む〉〈日ごろのーがものをいう〉②永井荷風の 『瀾東綺譚』に「何事をなすにもーが必要である」とある。 「練習」と比べ、上からの指示に従うイメージがあり、それ だけ厳しい雰囲気を感じさせる。稽古・Q練習 ぐんをぬく【群を抜く】ある点が大勢の中で飛び抜けている 意で、やや改まった会話や文章に用いられる表現。今や実 力はー〉〈ー速さを誇る〉「抜群」と同様、好ましい方向 に突出する場合に使う。図抜ける・ずぼ抜ける・飛び抜ける・抜 きん出る・Q抜群 け ケア病人や老人の世話や介護をさし、会話や硬くない文章 に用いられる新しい感じの外来語。〈ープラン〉〈ーマネー ジャー〉〈ールーム〉のスキンー」のように体などの手入 れをさすこともある。介護・介抱・看護・看病 けい【刑】国が法律に基づいて犯罪者に科する肉体的・経済的 な制裁をさし、改まった会話や文章に用いられる、やや専門 的な漢語。〈ーを科す〉〈ーに処する〉〈ーを軽くする〉〈ー を執行する〉〈ーに処す〉〈ーに服する〉ひQ刑罰・罰 げい【芸(藝)】修錬によって身につけた演劇や遊芸などの技 能をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。「一の 虫〉へが達者だ〉(なかなかのだ〉へをみがく)②ま れに、「ーを披露する」のように、見せ物・出し物として演 じた全体をさすこともあるが、中心はあくまで一つ一つの 演技の達成度にある。「芸能」や「演芸」と違って、役者や 芸人だけでなく、「犬にーを仕込む」のように動物にも用 い、また、「ーがない」「ーが細かい」のように比喻的にも 使う。ひ演芸・芸能・Q技 けいい【経緯】「いきさつ」の意で、いくぶん改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈事件のーを簡潔に説明する〉(そ の間のーはわかっていない)物事がそのような意外な結 果になった、知られていない事情を明かす場合などによく 使う。いきさつ <306> けいえい けいえい【経営】組織体を管理・運営し、事業を順調に展開す る意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー者〉〈ーコン サルタント〉〈ーを立て直す〉回「ー不振」「ーが苦しい」 「ーが破綻する」のように、「運営」と違ってすぐに経済的 な面が意識される。運営 けいか【経過】時間や過程・段階を経ることをさし、やや改ま った会話や文章に使われる漢語。〈途中〉〈措置〉〈術 後のーは良好だ〉〈五年ーする〉〈ーを見て決める〉過ぎ る・経たつ・経る けいが【慶賀】めでたいことを祝う気持ちをさし、主に改ま った文章に用いられる漢語。〈ーすべき快挙〉小沼丹の 『風光る丘』に「これは大いにーに堪えないね。あの娘も多 少は人情を解すると見えるぜ」とある。ひめでたい けいかい【警戒】損失や被害を受けないように十分な対策を とる、危険のありそうな対象にあらかじめ心を配って被害 を防ごうとする意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈非 常〉〈警報〉〈厳重なーを要する〉〈徹夜でーにあたる〉 〈一の色を強める〉②日常的な「用心」に比べ、怖れている 事態の起こる確率が高くそれだけ緊迫した雰囲気が感じら れる。志賀直哉の小品『山鳩』に「猟犬はーしていなければ 危いが、鳥は安心していてもいい腕前だそうだ」とある。 注意・Q用心 けいかい【軽快】身も心も軽く滑らかに動く様子をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈な動き〉へな調べに乗 って〉へに走る)太宰治の『富嶽百景』に「井伏氏はち ゃんと登山服を着て居られて、の姿であったが」とある。 ひ軽やか けいかく【計画】物事を行う方法や手順などを予め考える 意で、会話にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈都市 ー〉へ倒れに終わる〉〈綿密なーを立てる〉へーを実行に 移す〉②「企画」よりも幅広い場合に使う。込青写真・Q企画・ 構想・心積もり・プラン・方針・予定 けいかん【警官】「警察官」の略で、やや改まった会話や文章 中に用いる、最も一般的な漢語表現。〈婦人—〉「のバト ロール〉「が先導する〉「の不審訊問」「お巡りさん」 ほど気軽に話しかけて道を聞けない感じがある。お巡り・ お巡りさん・Q警察官・巡査・駐在 けいがん【慧眼】本質を見抜く鋭い洞察力の意で、主として 改まった文章に用いられる硬い感じの漢語。〈ーの士〉へー で見破る)刂炯眼燃 けいがん【炯眼】鋭く光る眼の意からすぐれた眼力の意味に も使い、改まった文章に用いられる硬い漢語。「人を射 る」図慧眼 けいき【契機】「きっかけ」の意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈経済が立ち直るーとなろう〉〈仕事で訪問 したのをーに親しく交際するようになる〉きっかけ けいき【景気】売買や商取引の状況など社会全体の経済活動 の状態を意味し、会話にも文章にも使われる日常の漢語。 〈軍需—〉〈—変動〉〈—が上向く〉〈—が悪い〉〈—を刺激する〉〈—を立て直す〉石川淳の『普賢』に「大しただな」とあるように、それだけで景気がよい意にも使う。Q好況・好景気 <307> げいぎ【芸妓】「芸者」の意で、改まった会話や文章中に用い られる漢語。へ置き屋の一般的な「芸者」に比べ、少し 正式の職業名という雰囲気が漂う。刂綺麗どころ・芸子・Q芸 者・舞子 けいけん【経験】実際に見たり聞いたり行ったりして知識や 技能を獲得する意で、会話にも文章にも広く使われる日常 の漢語。〈ー者〉へが浅い〉〈家庭教師のーがある〉へいい ーになる〉〈貴重なーをする〉〈豊富なーを生かす〉〈長年 のーがものをいう〉岡本かの子の『落城後の女』に「男と 末遂げない触れ合いをしたー」とある。乃後天的・体験 けいげん【軽減】減税など義務を減らして負担などを軽くす る意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈負担が十 される〉Q削減・節減・低減・逓減 けいこ【稽古】技芸などの練習をさし、会話でも文章でも使 われる古風でやわらかい感じの漢語。〈一事〉〈寒〉〈舞 台〉〈ーをつける〉〈相撲部屋の朝〉〈昔とはー量が 違う〉〈ピアノのおー〉平林たい子の『秘密』に「人生は、 やり直しのきくーのようにたやすく思っているらしく」と ある。相撲のほか芸事や習い事に使われ、その他の場合は 古めかしい感じに響く。訓練・習練・Q練習 けいご【警護】警戒して護衛する意で、やや改まった会話や 文章に用いられる硬い感じの漢語。「に当たる」〈身辺を ーする〉の「警固」の新しい表記として現れた語というが、 人間を護る感じが強い。Q警固・護衛 けいご【警固】非常事態を警戒して周囲を固める意で、改ま った会話や文章に用いられる硬い漢語。〈要人の—〉〈テロ けいこく に備えて会場を—する》「警護」に比べ、場所のイメージが強い。Q警護・護衛 げいこ【芸子】上方で「芸者」の意に使われる表現。へ上が りの女〉〈舞子からーになる〉綺麗どころ・芸妓・Q芸者・舞子 けいこう【携行】携えて持参する意で、主に文章に用いられ る硬い漢語。〈—食糧〉〈雨具を—する〉「携帯」ほど、身 に接近せずトランクなどに入れて持参してもこれに含まれ る感じがある。Q携帯・持参 けいこう【傾向】ある方向に傾く意で、会話にも文章にも使 われる日常の漢語。〈出題ーを探る〉〈上昇のーが見られ る〉〈先細りのーにある〉〈増えるーが強い〉⑩井伏鱒二の 『山椒魚』に「諸君は、発狂した山椒魚を見たことはないで あろうが、この山椒魚に幾らかそのーがなかったとは誰が いえよう」とある。「文学」のように、特に左翼思想に傾 く意の用法もあり、その場合は古風な感じが漂う。刂傾き ②的・ぽい げいごう【迎合】本来あるべき姿や自分の考えと違っても相 手の好みや世の風潮などに調子を合わせる意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈視聴者にーした番組〉《大 衆にーする記事〉〈学生にーした科目編成〉Qおもねる・媚 びる・取り入る・へつらう けいこく【警告】悪い事態を招いたり大きな問題に発展した りする前に注意を促す意で、やや改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈ーを発する〉〈ーを受ける〉〈再三のーを 無視する〉の「忠告」に比べ、従わないと攻撃されたり訴え られたり何らかの不利益をこうむるような雰囲気があり、 <308> けいさい 強制力が強い。勧告・Q忠告 けいさい【掲載】新聞・雑誌などに文章・写真・絵などを載せて 公表する意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー記事〉 〈広告をーする〉〈新聞にーされる〉〈ー許可を求める〉掲 載号は新聞では「掲載紙」、雑誌では「掲載誌」と書く。 登載・載せる けいざい【経済】生活に必要な物資を生産・分配・消費する社 会活動をさし、会話にも文章にも使われる基本的な漢語。 〈自由ー〉〈ー成長〉〈ー界〉〈ーの動向〉〈ーが安定する〉 〈ーを立て直す〉②「まとめて買ったほうがー的だ」のよう に安上がりの意にも用い、志賀直哉の『和解』に「多少はエ ネルギーのーになるだろう」とある。また、「ー的に恵まれ る」のように財産や収入の程度の意にも使う。「不ー」「 的」「一観念」のように費用や時間などのやりくりの意にも 使われる。国を治め民を救う意の「経国(世)済民」から出 た語。ひ金融・理財 けいさつ【警察】「警察署」や「警察官」の略称で、会話や軽 い文章に用いられる日常の漢語。〈ーに通報する〉へに訴 える〉へーを呼ぶ〉へーの捜査〉へーに捕まる〉の志賀直哉の 『児を盗む話』は「私はーへ曳かれた」と終わる。本来は、 公共の安全・秩序を維持するために犯罪などを取り締まる任 務をさし、その場合は専門的な感じが強い。日常用語とし ては、その任務を遂行する場所や人をさす。Q警察署・警察 庁・警視庁 けいさつかん【警察官】警察の職務を遂行して社会公共の安 全を維持する公務員をさし、主として改まった会話や硬い 文章に用いられる、正式な感じの漢語。〈ーを志願する〉 〈ーの任務〉の「お巡りさん」はもちろん「巡査」よりも緊 張した雰囲気があって、気軽に呼びかけて話しにくい感じ がある。お巡り・お巡りさん・Q警官・巡査・駐在 けいさつしよ【警察署】一定の地域を管轄する警察機関をさ し、改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。 へーに連行する〉へーの管轄〉ひ警察 けいさつちょう【警察庁】全国の都道府県の警察を指揮監督 する官庁をさし、会話にも文章にも使われる専門的な漢語。 へーからの通達〉巻警視庁 けいさん【計算】一定の法則に従って数量を処理し結果を出 す意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な漢語。〈問題〉〈税金をーする〉〈きちんと ーが合う〉〈食費をーに入れる〉「ーどおりに事が運ぶ」 のように、数量とは無関係な細かい予測・計画をさす用法も ある。Q勘定・算出 けいじ【掲示】みんなに知らせるために目立つ場所に文書な どを掲げる意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈電光ー 板〉〈会の内容をーする〉専表示・展示 けいじ【刑事】犯罪捜査に当たる警察官をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈私服—〉へが張り込む〉の刑事 巡査」の略。私服の連想が強い。志賀直哉の『暗夜行路』に 「遠巻に何人かのーが取り捲いている」とある。「事件」 「ー訴訟」「一裁判」「責任」のように、刑法に関係する事 柄をもさす。その用法では専門的な語感が働き、「民事」と 対立。ひでか <309> いしき【形式】内容や実質を別にし外部から観察可能な形ややり方をさし、会話にも文章にも使われる日常の基本的な漢語。〈主義〉〈どおりに行う〉〈にとらわれる〉〈を重んじる〉〈発表の〉〈を踏む〉〈的な挨拶〉〈を整える〉〈にとらわれる〉〈伝統的な一を踏襲する〉〈実質より見かけに重点を置いた表現。小林秀雄は『モオツアルト』で「一の完備整頓、表現の清らかさという点では無類である」と評した。「的」のように、心のこもらないニュアンスで使うこともあり、「だけの会長」のように、実質が伴わないという含みをもつ用法もある。「手紙文のに則って書く」「論文の一をなさない」のように、伝統的・慣習的・常識的にきまっている一定の型をさす例も多い。「内容」と対立。外形・型式・形・恰好・形象・形状・Q形態・姿・スタイル・様式 けいしちょう【警視庁】東京都の警察の本部をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈捜査一課〉警察庁 けいしゃ【傾斜】傾いて斜めになる意で、いくぶん改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈一面〉〈一の度合い〉〈一 がきつい〉〈緩い一の認められる地面〉島崎藤村の千曲 川のスケッチ』に「海のような浅間一帯の大」とある。志 賀直哉の『城の崎にて』に「頭を下にーから流れへ臨んで、 凝然としていた」とあるように、傾斜した場所をさす例も ある。「心がーする」のように、ある方向に考えや気持ちが 傾く意の比喻的な用法もある。乃傾き①・Q勾配 げいしゃ【芸者】料亭などでの宴席において歌舞音曲などで 座を盛り上げる職業の女性をさし、会話にも文章にも使わ けいしょう れる漢語。〈ーを呼ぶ〉へーを揚げる〉②宮尾登美子の『櫂』 に「ーは、まるで今刷上った絵草紙の、まだ絵具がぽたぽた と滴っているような鮮かさ」とある。「芸妓」や「芸子」 より一般的に広く使う。綺麗どころ・Q芸妓・芸子・舞子 げいじゅつ【芸術】音楽・絵画・彫刻あるいは文学など、美の 実現をめざす人間の創造活動をさし、会話から硬い文章ま で幅広く用いられる最も一般的な日常の基本的な漢語。〈前 衛〉〈一の域に達する〉〈一のかおり〉〈一の都〉小林秀 雄の『モオツアルト』に「優れた作品が表現する一種言い 難い或るものは、その作品固有の様式と離す事が出来ない」 とある。「アート」に比べ、空間美術のみならず音楽のよう な時間芸術をも含み、広くは文学まで包含する。アート けいしう【形象】外に現れている物の形をさし、主に文章 中に用いられる、いくぶん古風で硬い専門的な漢語。〈文学 ー〉〈観念の化〉思想や感情など抽象的な観念を形に表 す場合などに使う。ひ外形・形・恰好・形式・Q形状・形態・姿 けいしょう【軽症】軽い症状の意で、会話でも文章でも使わ れる漢語。〈病気は—なので心配ない〉への部類に属す る)病気でも怪我でも使えるが、外傷の場合は「軽傷」と 書いて区別する傾向がある。軽傷 けいしう 【軽傷】軽い負傷をさし、会話でも文章でも使わ れる漢語。〈事故でーを負う〉(さいわいーで済む)軽症 けいしう【継承】先代や前任者の地位・財産・権利・使命・義 務などを受け継ぐ意で、改まった会話や文章に用いられる 硬い漢語。〈親の選挙地盤をーする〉(莫大な資産をそのま まーする)専受け継ぐ <310> けいじょう けいじょう【形状】物や人の形や状態をさし、改まった会話 や文章に用いられる専門的な硬い漢語。〈ー記憶〉〈ーを観 察する〉〈異様なーを呈する〉〈元のーに復する〉の「形態」 と違い、外から見える部分だけを問題にする。外形・形・恰 好・形式・形象・形態・姿 けいしん【軽震】震度2の旧称。弾震・弱震・中震・微震 けいせい【形勢】変化する事態の現段階における状況、勝敗・優劣の情勢をさし、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー不明〉〈ー利あらず〉〈ーが逆転する〉〈天下のーをうかがう〉対立する勢力の優劣を判断する例が多く、「情勢」より主観的になりやすい。乃状況・Q情勢・旗色けいせき【形跡(迹)】事件や行動などがあったことを示す具体的な証拠をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈犯行のー〉〈侵入したーがある〉〈訪れたーがない〉 けいそう【係(繋)争】継続する争い、特に当事者とうしが訴 訟で争うことをさし、改まった会話や文章に用いられる専 門的な硬い漢語。〈人物件〉〈中の事件〉Q抗争・戦争・紛 争 けいぞく【継続】以後も従来と同様に行う意で、やや改ま た会話や文章に用いられる漢語。〈審議〉〈調査をーす る〉〈ーする不況の影響で事業の維持・ーが危ぶまれる〉 〈今後もーして支援を行う〉②途中で判断を迫られる「統 行」に比べ、時間的または段階的に一区切りついた時点で 次を判断する場合が多い。また、何らかの共通点のある物 事が相次いで起こる感じの「連続」と違い、まったく同じか 同種・同質の物事が続く場合に使う。ヌ続行・断続・Q連続 けいそつ【軽率】思慮が不十分で慎重さに欠ける意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。へな行動を慎む への誘りを免れない)谷崎潤一郎の『細雪』に「十分調 べてもみませんで、なことをいたしまして」とある。み浅 はか・慌て者・おっちょこちょい・Q軽はずみ・軽薄・粗忽そそっか しい・浮薄 けいたい【形態】物事や組織などの形や組み立てをさし、改 まった会話や文章に用いられる、やや専門的な硬い漢語。 へーをとる)へーが定まる)へーを調べる)の形状」と違い、 内部の機構まで含む。ひ外形・形・恰好・形式・形象・形状・姿 けいたい【携帯】身に帯びて持っている意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈—燃料〉〈—に便利〉〈—用のラジオ〉 近年はこの語だけで「電話」を意味する例が多い。専携 行 けいたいでんわ【携帯電話】携帯用の小型電話機をさし、改 まった文章などに用いられる、正式な感じの古めかしい漢 語表現。「のマナー」(でこまめに連絡を取り合う)の この語の短縮形「ケータイ」より古風でいささか大仰な雰囲 気になる。川上弘美の『センセイの鞄』に、元の教え子にあ たる比較的若い恋人に、心配だからケータイを持つように と繰り返し奨められた昔のセンセイはようやく承諾する が、その代わり以後「携帯電話」と呼ぶことを条件に持ち出 して、高校時代の生徒に国語の指導をする場面がある。 ケータイ けいとう【系統】一定の順序で続いている統一のある繋がり <311> の意で、会話にも文章にも使われる漢語。バス路線の 図〉へ和歌のーを引く〉へまたくーが違う〉へー立った研 究〉の「源氏のーの家柄」「母方のーは代々医者をやってき た」のように血筋をさす用法もあり、「同じーを汲む」な どとも言うように、「系列」と違って、時間的な流れという 通時的な縦の関係でとらえている。「電気ーの故障」のよう な共時的な用法もあるが、その場合も中心からの枝分かれ といった流れが意識される。児系列 けいとう【傾倒】何かにすべてをなげうって夢中になる意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈アルペール・ カミュにーする〉〈マルクス理論にーする〉〈青年期は太宰 治にーする傾向がある〉〈その頃は実存主義にーする者が 多かった〉児感服・敬服・Q心酔・心服 げいのう【芸(藝)能】映画演劇歌謡舞踊能狂言落語漫 才講談浪曲などの伝統的な大衆演芸の総称。〈人〉 界〈プロダクション〉〈郷土〉〈民俗〉〈古典〉 個々の芸をさす「演芸」と違って演芸全体の呼称。Q演芸 芸 けいばい【競売】差し押さえた品物などを法律に基づいて売 ることをさす漢語。「きょうばい」が日常語なのに対し、法 律関係の専門語というニュアンスが濃い。「に付された物 件」ひオークション・Qきょうばい・競り売り けいはく【軽薄】物事を軽く考えすぎて慎重さを欠く意で、 やや改まった会話や文章に使われる漢語。〈一短小〉へな 行動〉へーきわまる発言〉太宰治は『桜桃』の中で、「悲し い時に、かえって軽い楽しい物語の創造に努力する」のに けいふく 「太宰という作家も、このごろはーである、面白さだけで読 者を釣る、すこぶる安易、と私を蔑む」と嘆いている。 はか・軽はずみ・軽率・Q浮薄 けいばつ【刑罰】犯罪者に科せられる法による制裁をさし、 会話にも文章にも使われるやや硬い漢語。〈重い〉〈ーを 科する〉〈ーを受ける〉川端康成の『雪国』のラストシー ンに「葉子を胸に抱えて戻ろうとした。(略)駒子は自分の 犠牲かーかを抱いているように見えた」とある。刂刑・罰 けいひ【経費】維持・運営・生産・製造・催しなどに要する費用 の意で、会話にも文章にも使われる、やや正式な感じの漢 語。〈必要—〉〈会社の—〉〈—がかさむ〉〈—の削減に努め る〉の「費用」に比べ、一定の箇所の一定の期間の分をまと めて計算することが多い。費用 けいひん【景品】商品に添えて客にサービスで贈る品物をさ し、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈目当て〉 〈豪華なーが付く〉「パチンコのー」のように、福引や射 的などに当たった客に与える品をさすこともある。Qおま け・付録 けいぶ【頸部】頭と胴とのつなぎめの部分をさして、主に硬 い文章中に用いられる専門的な漢語。へに傷を負うへー に違和感を覚える)うなじ・襟足・襟首・首・Q頸・首筋・首っ 玉・首根っこ けいふく【敬服】人柄や行為・業績などを立派だと思ってその 人に頭の下がる思いを抱く意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈努力にーする〉心よりーしてやまな いの心服に比べ、評価をもとにした客観的な感じが強 <312> けいべっ い。 感服・傾倒・心酔・Q心服 けいべつ【軽蔑】「さげすむ」に近い意味で、会話でも文章で も広く使われる日常的な漢語。「の目で見る」〈相手に される〉小林秀雄の『ゴッホの手紙』に「翻訳文化という 的な言葉が屢々人の口に上る」とある。乜価る・Q蔑む・な める②・見下す・みくびる・見下げる けいぼ【継母】実母ではない、父の配偶者をさし、主に硬い 文章に用いられる漢語。母の死後、父は再婚しーが家に入 って来る)「まま母」より客観的で正式な感じがあり、親 しみや憎しみの感情を喚起させにくい。単義母・Qまま母・養 母 けいほう【警報】重大な災害に対して警戒を促す知らせをさ し会話にも文章にも使われる漢語。〈空襲ー発令〉〈警戒 ー〉へーが出る〉木山捷平の『大陸の細道』に「その夜も 防空ーが頻発したので、電燈は消され」とある。「注意報」 より危険が差し迫った状態で発令されるため、用語自体に もそれだけ緊張感が漂う。注意報 けいむしょ【刑務所】囚人の身を拘束しておく施設をさし、 会話でも文章でも使われる現代における普通の日常漢語。 刑事施設の一種。〈—に入る〉〈—の高い塀〉〈—帰りの男〉 の安部公房の『他人の顔』に「窓枠と、隣の軒とで切り取ら れた、白っぽい長方形の空が、まるで—の延長のように見え た」とある。くさい飯を食わされたことになっている昔の 「牢獄」などと違って、人権に対する配慮があるはずの現代 の「刑務所」では、貧窮のどん底にあえぐ人間よりはいくら かましな栄養のバランスのとれた食事が与えられ、ブライ パシーや生活の自由もある程度は保証されている雰囲気が ある。Q監獄・牢・牢獄・牢屋 げいめい【芸名】芸能人が仕事上で使うためにつける本名以外の名前をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈すてきなーをもらってデビューする〉、Q雅号・号・筆名・ペンネーム けいやく【契約】当事者間で約束する売買・譲渡・委任・貸借な どの法律行為をさし、会話にも文章にも使われる正式な感 じの漢語。〈貸貸ー〉へ書〉へ違反〉へを結ぶ〉へを 交わす〉へを更新する〉横光利一の『紋章』に「成功特 別御礼として五百円を支払うーをしてから申請して」とあ る。専約束 けいらん【鶏卵】鶏の卵の意で改まった会話や文章に用いられる漢語。〈店でーを五個求める〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「町でーを八つ買った。是は下宿の婆さんの芋責に応ずる策である」とある。 けいり【経理】会社や団体での会計業務およびその処理をさ し、いくぶん改まった会話や文章に用いられる、やや専門的 な感じの漢語。〈ーに明るい〉〈会社のーを担当する〉山 口瞳の『和平』に「一課に二十年勤めているのであるうと思 われるような痩せこけた裸」とある。ふ会計 けいりやく【計略】相手を騙すための計画の意で、会話や軽 い文章に使われる日常的な漢語。〈ーをめぐらす〉〈相手の ーにひっかかる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「おれと山 嵐がしきりに赤シナツ退治のーを相談していると」とある。 個々の手段を連想させやすい「策略」に比べ、欺くための全 体的な計画を連想させやすく、「謀略」や「陰謀」ほどの悪 <313> 意を感じさせない。 陰謀・Q策略・謀略 けいりゅう【渓(鉛)流】谷川やその流れの意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ーくだり〉ひせせらぎ・Q谷川 けいりょう【軽量】重量の少ない意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈一鉄骨〉〈相手力士のーを突く〉 「重量」と対立。ひ軽い けいれい【敬礼】深く敬意を表す礼の仕方をさし、会話にも 文章にも使われる、やや古風な感じの漢語。へーをして出迎 える)②「上官にーする」のように、特に、軍人の行う挙手 の礼をさすことが多い。乃挨拶・会釈・お辞儀・Q最敬礼・目礼・黙 礼礼② けいれき【経歴】それまでに経験した学業・職業・身分・地位な とに関する事柄の総体をさし、やや改まった会話や文章に 使われる漢語。〈ー詐称〉〈簡単にーを記す〉〈ーを調べる〉 〈変わったーの持ち主〉〈立派なーに傷がつく〉専履歴 けいれつ【系列】一つのまとまりとして系統立った一連のも のやその排列を意味し、改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈会社〉〈同じーの学校〉〈人道主義のーに属する〉 時間的な「系統」に対して、ある時点での横のつながりと いう共時的な関係としてとらえている。単系統 けいろ【経路】ものごとが次々にたどって移動してきた道筋 をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈進入 」〈伝染ー〉〈流通ー〉〈資料の入手ーを突き止める〉德 田秋声の『縮図』に「事情やーが、古い滓が水面へ浮んで 来たように思い出されて来た」とある。刂通り道 けう【稀有】きわめて珍しくめったにない意で、主に文章に ケータイ 用いられる硬い漢語。〈な例〉〈な存在〉〈今どきーな 出来事〉団単に稀少であるだけでなく価値のある際に使 う傾向がある。専まれ・珍しい ケーキ西洋風の生菓子をさし、会話にも文章にも使われる 外来語。ヘパースデーー〉〈デコレーションー〉のショートケ ーキ・シュークリーム・プリンなど。卫生菓子・南蛮菓子・洋菓 子・Q洋生 ケース ①入れる品物に合わせて作った箱をさし、会話にも文章にも使われる外来語。〈アタッシェ〉〈万年筆の〉〈「に納める〉ひ入れ物・Q箱・容器 ②場合・事例の意で、会話にも文章にも使われる外来語。〈「スタディー〉〈特殊な」〉〈さまざまな」に対応できる〉ひ一例・実例・事例・場合・例ゲーセン「ゲームセンター」の短縮形。近年の俗語。〈連日に通う〉ひ「ペルサイエのばら」を「ペルばら」と略す感覚に近い。「芸セン」と解釈し、芸者の「置き屋」を「センター」と呼ぶ時代になったかと嘆く勘違いも出かねない。ケータイ「携帯電話」の短縮形で、改まらない会話や軽い文章などで使われる俗語。〈多機能型の〉ひ「携帯電話」の短縮形だが、長音部を棒引きで示す片仮名表記が一般的。携帯用の器具がさまざまあるなかで、短縮形がこの器具専用になった背景に、メールを送ったり写真を撮ったりできるように複雑化し、もはや電話とは言えなくなった多機能型の機種が普及した現実が考えられる。「あけましておめでとう(ございます)。今年もよろしく(お願いいたします)。」という年賀状の文句が、ケータイでは「アケオメ、コトヨロ」で済ませる例が少なくないという。 <314> ケータリング いしいひさいちの漫画『ののちゃん』にも、生徒が「お早う ございます」を「オハゴザ」と略し、先生に注意されると今 度は「ドモスミ」と応じる場面が出てくる。むろん、「どう もすみません」の短縮形である。携帯電話 ケータリング 注文を受けて料理を会場などに運び込むこと をさし、会話にも文章にも使う新しい外来語。〈ーを取る〉 〈ーで間に合わせる〉宅配ピザなどから宴会やパーティー 用の料理まで幅広い形に対応する。Q仕出し・出前 「試合」の意の比較的新しい外来語。〈一セット〉ナイトー〉〈白熱した好ーを展開する〉〈一の主導権を握る〉 ②放送ではこの語を用いるが、くだけた会話で使うと「試合」に比べ、いくらか気取った感じが残る。ただし、子供の遊びとしての「ゲーム」には長い伝統があるため、こなれた日本語になっている。そのため、「野球」といえば本物の試合ではなく野球盤かカード式の遊びを連想する。訳合が【怪我】誤って体の一部を損傷する意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈軽いーで済む〉〈一人が出る〉〈交通事故でーをする〉傷を負うだけでなく骨折や捻挫などを含む。志賀直哉の『城の崎にて』は「山の手線の電車に跳飛ばされてーをした、其後養生に、一人で但馬の城崎温泉へ出掛けた」と始まる。負傷 けがれる【穢(汚)れる】清く純粋なものが不浄になる意で、 改まった会話や文章に用いられる和語。〈触っただけで手が ー〉〈心がー〉〈名がー〉②「よごれる」と逆に、具体物の具 体的な汚れについては用いない。川端康成の『伊豆の踊子』 に出る「踊子の今夜がーのであろうかと悩ましかった」とい う婉曲表現の例は「よこれる」とも読めないではない が、やはり「けがれる」と読むのが慣用的で自然であろう。 ひよこれる げき【激】程度が激しいという意を添えて、やや改まった会 話や文章に使われる漢語的な造語要素。〈痛〉〈減〉 〈一変〉近年、「一安」「一辛」などと和語の形容詞の語幹 に冠し激しい強調に幅広く多用されるようになった。 げき【劇】舞台の上で脚本に基づいて演技する催しをさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈人形—〉〈学会会で—に 出る〉〈—で主役をやる〉定義上は幅広くさすが、現実に は素人が演じるものをさす例が多い。Q演劇・芝居・ドラマ げきが【劇画】絵で構成する物語をさし、会話にも文章にも 使われる比較的新しいやや専門的な漢語。〈作家〉〈— 調〉「漫画」に比べ、滑稽さよりも人の動きや筋の展開に 重点がある。紙芝居もその一種。Qアニメ・アニメーション・ 動画 げきこう【激昂(高)】感情が激しく昂りいきり立つ意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや硬い感じの漢語。 〈相手の卑劣な態度にーする〉ヘーして掴みかかる〉多く 怒りの感情に用いる。井伏鱒二の『オコマさん』に「電話口 では、社長のーしている声が鳴り響いた」とある。「げっこ う」とも言う。児息まく・いきりたつ・激情・Q激する・興奮・高揚 たかぶる・むきになる げきじょう【激情】たぎるほど激しくこみ上げる感情をさし、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一の嵐〉「が走 る〉(一に駆られる〉(一にとらわれる〉(一に溺れる)有 <315> 島武郎の『或る女』に「脳も心臓も振り廻して、ゆすぶって、 蔽きつけて、一気に猛火であぶり立てるようなー」とあり、 田宮虎彦の『荒海』に「ーが槙子をとらえ、槙子は三枝の膝 に身体を投げかけ、涙に濡れた頬を押しつけて、慟哭した とある。専息巻く・いきり立つ・激昂渉する・Q興奮・高揚・たか ぶる・むきになる げきする【激する】激しく昂奮する意で、改まった会話や 文章に用いられる表現。〈感情がー〉へー・しやすい性格〉 怒っていきり立つ場合によく使う。田山花袋の『蒲団』に 「義理知らず、情知らず、勝手にするが好いとまでー・した」 とある。刂息巻く・Qいきり立つ・激昂・激情・興奮・高揚・たかぶ る・むきになる げきたい【撃退】相手をやっつけて退ける意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈押し売りを—する〉〈痴 漢—法〉田宮虎彦の『沖縄の手記から』に「壕によって直 ちに水際に敵を—することになっていた」とある。実際の 戦闘以外に用いると大仰でいささか滑稽に響くこともある。 り追い払う・追っ払う げきど【激怒】激しく怒る意で、やや改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈あまりの仕打ちに—する〉三島由紀夫 の『潮騒』に「ーして酋長に喰ってかかった」とある。刂憤 り・憤慨・憤激・Q憤怒 げきは【撃破】攻撃して打ち破る意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈ライバルを—する〉〈難敵を—する〉 の「粉碎」に比べ、強敵など難しい相手に勝つというところ に重点がある。乃粉碎 けしき げきやく【劇薬】毒薬に次ぐ毒性を有し、量を誤ると生命の 危険をもたらす激しい医薬品をさし、会話でも文章でも使 われる、やや専門的な漢語。〈ーを用いる〉毒薬 げきれい【激励】強く励ます意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈選手を—する〉へーを受けて発奮する〉Q鼓舞 鞭撞 げきれつ【激烈】勢いや程度が非常に激しい意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。「な競争を勝ち抜く」〈戦 いはーを極める〉〈一な口調で言い放つ〉頬語のうち文体 的レベルが最も高く、日常生活での使用頻度は低い。 強 烈・Q痛烈・激しい・猛烈 げきろう【激浪】激しく逆巻く荒波をさし、主に文章中に用 いられる硬い漢語。〈ーにもまれる〉へが岸を洗う) 「怒濤」に比べ、一局面としてとらえた感じがある。 荖 波・Q怒濤・波濤 けしかける【嗾ける】声をかけるなどして自分に都合のいい ように行動させようとする意で、会話や軽い文章に使われ る和語。〈犬を—〉〈喧嘩を—〉②小林多喜二の『防雪林』に 「貴様、皆を—・けたろッ!」とある。専痛る・指嗾・扇動・Q そそのかす・たきつける けしき【景色】自然の眺めをさし、くだけた会話からさほど 硬くない文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。 〈雪ー〉へーがいい〈山のーがすぼらしい〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「赤シャツは、しきりに眺望していいーだ と云ってる」とある。「冬ー」「夕ー」などを含め、「ーを楽 しむ」といえばほとんどが自然の美を味わうことをさす。 <316> けしき ♡光景・眺め・Q風景 けしき【気色】外面に現れた表情・様子・態度や事が起こりそ うな雰囲気をさし、会話にも文章にも使われる古風な漢語。 〈臆するーもない〉〈景気は回復のーも見えない〉ひ気配・雰 囲気 げじょ【下女】雑用をする下働きの女をさす古めかしい漢語。 差別意識が感じられるとして使用を控えている。夏目漱 石の『坊っちゃん』に「清と云うーが、泣きながらおやじに 詫まって」とある。お手伝いさん・家政婦・女中・派出婦・Q召 し使い けしょう【化粧】口紅や白粉などで顔を美しく見えるように 整える意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常漢語。〈厚〉〈道具〉〈が濃い〉〈を落とす〉 高見順の『如何なる星の下に』に「舞台を施すと、お面 をかぶったような感じで」とある。メーキャップ・Qメーク けしょうしつ【化粧室】時に「便所」の間接表現ともなる改 まった漢語。〈デパートの〉洗面所はたいてい鏡がつい ているから、顔や手を洗うだけではなく日紅やコンパクト や香水などを用意して化粧をすることもできる。そのた め、そこに隣接している便所を中心とする部屋全体を間接 的にこの語でさしたとしても嘘にはならない。しかし、 「便所」という直接的な表現を避けて、それに隣接する化粧 のための場を表す名称を借りてまで間接化する表現行為に、 聞き手は、便所という対象を忌避して意識の上でことさら 遠ざけようとしている話し手の美化行為を感じ取ることに なる。ちなみに、作家の幸田文は「山」や「高野山」という 語で間接的に便所をさす例に言及している。前者は「草木」 (臭き)のある所、後者は「髪(紙)を落とす」所だという。自 動で流し、洗って乾かす機械文明の時代になると、この独り 部屋のイメージがすっかり変わり、ぴんと来ないかもしれ ないが、なんとも粋な洒落で消臭効果も期待できる。ひおト イレ・廁や・閑所・御不浄・雪隠・洗面所・WC・手水場・手洗い・トイレ トイレット・はばかり・Q便所・レストルーム けしん【化身】神仏などが形を変えてこの世に出現したもの をさし、会話にも文章にも使われた古めかしい漢語。〈悪の ー〉〈美のー〉堀辰雄の『菜穂子』に「brilliantという字 のーのようなそのお方」とある。ひ権化 けす【消す】不要なものとして無くしたり機能を停止させた りする意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な和語。〈火を—〉〈明かりを—〉〈テレビ を—〉〈消しゴムで—〉〈悪臭を—〉⑨川端康成の『雪国』に 「この鏡の映像は窓の外のともし火を—強さはなかった。と もし火も映像を—・しはしなかった」とある。ひ消去・Q消却 抹消 けそう【懸想】異性に想いを懸ける意で、会話にも文章にも 使われた古めかしい漢語。〈ー文が〉〈人妻にーする〉夢慕・ 思慕・Q恋慕 げた【下駄】木片の裏側に二枚の歯をつけ表側から鼻緒を通 した履き物をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる日常の漢語。〈一履き〉〈深夜の通りに—の音が響 く〉藤沢周平の『おぼろ月』に「片方の—の鼻緒が、いま にも切れそうにのびている」とある。足駄 <317> けだかい【気高い】高貴な感じで近寄りがたい雰囲気を有す る意で、主として文章中に用いられる古風な表現。秀峰富 士の姿〉〈精神〉松谷みよ子の『ポブラのかげで』に 「女王さまのようにーかあさん」とある。「上品」より高い 気品が感じられる。通常は人間について使うが、比喻的に 富士の姿などに用いる例もある。匕高尚・上品・崇高・典雅 けだし【蓋し】「思うに」「確かに」といった意味の古語的な 表現。〈名言と言うべきであろう〉〈その通りである〉 けたちがい【桁違い】物事の程度や価値などが同類のものに 比べて著しく違う意で、会話やさほど改まらない文章に使 われる和語。〈に大きい〉〈腕前がーでとうてい勝負にな らない〉〈給料がーに安い〉「桁」は数の位で、一桁違う ことから。標準をはるかに超えるところに重点のある「桁 外れ」と違い、比べる相手との差がきわめて大きいところ に意味の重点があり、「に背が低い」のように小さい方向 でも大差があれば使うことができる。専析外れ・Q段違い けたはずれ【桁外れ】標準をはるかに超えている意で、会話やさほど改まらない文章に使われる和語。〈一の体重〉へ一の強さで優勝は確実だ〉〈一の値段で庶民には手が出ない〉の「桁違い」と違って普通の状態を大幅に超えている場合に使うのが通例であるが、「武者小路実篤の文章は奔放自在、一の文体である」というふうに、大小・高低・軽重などと関係なく、並外れの意で用いる例もある。Q桁違い・段違いけだもの【獣】「けもの」の意で、会話にも文章にも使われる和語。〈山に棲む〉〈野生の一〉安岡章太郎の『海辺の光景』に「収檻された動物(一であると人間であるとを問わ けちんぼう ずに特有の臭気」とある。「だ」は「の」の意で「毛のもの」 という意味。「けもの」よりマイナスイメージが強く、「人 間の皮をかぶった」のように、人間の情を持たない残忍な の意の比喻的な用法もある。けもの けだるい【気怠い】何となくだるい感じをさし、主に文章に 用いられる和語。〈朝から妙にー〉へー気分で仕事をする気 にならない〉②岡本かの子の『河明り』に「娘の憂愁が私に も移ったように、物憂く、ー」とある。全身的な疲労感をさ すことはあるが、手脚などの部分的な感覚をさすことはめ ったにない。純粋に肉体的な感覚というより気分の面が強 く、「春の日の午後の日ざし」などといった漠然とした用 法もある。ひQかったるい・倦怠だるい 自分の物や金銭を使うことを極度に嫌う意で、改まった硬い文章以外は広く一般に使われる。会話ではもっとも代表的な日常の和語。人生まれつきの」へだから壊れるまで買い換えない夏目漱石の「坊ちゃん」に「田舎者はーだから、たった二銭の出入でも、頗る苦になる」とある。「な造りの家」のように「見すぼらしい」意にも、「な根性」「な考え」のように「偏狭」といった意味合いにも、「ーをつける」として「言いがかり」「欠点」の意にも使う。ひけちん坊・倹約家・渋い・渋ちん・締まり屋・Qしみったれ・しみったれる・しわい・せこい・節倹家・みみっちい・吝嗇家 けちくさい心が狭くて考えることやすることが小さい意 で、会話や軽い文章に使われるやや俗っぽい日常の和語。 〈考え〉Qけち・しみったれ・しみったれる・せこい・みみっちいけちんぼう【けちん坊】「けち」の意のくだけた口頭語。へお <318> けっ まえも案外だな夏目漱石の坊ちゃんに下宿の 婆さんもの欲張り屋に相違ないとある。Qけち・僕約 家渋い・渋ちん・締まり屋・しみったれ・しわい・節儉家・みみっちい 吝嗇家 けつ【穴】尻の意で、主に男性がくだけた会話で使うことの ある下品な俗語。〈ーがでかい〉へーの穴が小さい〉へーを まくる)②外村繁の『岩のある庭の風景』に「でっかいーを 振って、恥しがっていやがらあ」とある。意味をあてて 「尻」と書くこともあるが、通常は仮名書き。片仮名で書く 例もある。ひQ尻・臀部 けつい【決意】考えや意志を明確にする意で、やや改まった 会話や文章に用いられる少し硬い感じの漢語。〈一表明〉 へーを胸に秘める〉へーを新たにする〉林房雄の『青年』に 「希望とーは梅雨の晴れ間の虹のように消えて」とある。日 常的な「決心」に比べ、断固とした意志が感じられる。刂覚 悟・Q決心・決断 けつえき【血液】「血」の意で、やや改まった会話や文章に用 いられる正式な感じの漢語。「型」〈一検査〉「一の循環 がよい〉「一が凝固する」有島武郎の「或る女」に「一が ちくちくと軽く針をさすように皮膚に近く突き進んで来る」 とある。马血 けつえん【血縁】血のつながりのある関係をさし、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈関係にある〉人を さす「血族」とは違い、また、優劣や断続などを意識して用 いる「血筋」や「血統」とも微妙に違って、あくまで関係そ のものを問題にして用いる。Q血族・血統・血筋 けっか【結果】ある行為や物事の済んだ後に得られる状態や それによる変化・影響をさし、くだけた会話から硬い文章ま で幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈調査—〉〈試験の ー〉〈ーを恐れず思い切ってやる〉〈検査のーは異状なし〉 〈いいーをもたらす〉〈努力のー成功を収める〉〈すばらし いーを残す〉の井伏鱒二の『珍品堂主人』に「いずれにして もーは同じことになるのが知れている」とあり、小沼丹の 『片片草』には「(シェイクスピアとセルワンテスの)両者に ついて調査を試みた。そのー、両者共一六一六年四月二十 三日に死んでいるのを発見した」とある。「原因」と対立。 弔因果・帰結・結論・Q効果・成果 けっかん【欠陥】不備なところの意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈—車〉〈—商品〉〈—だらけの機械〉〈—を直 す〉の難点」に比べ、悪い所が明確で是正しやすい。Q 欠点弱点・短所・難点 けつぎ【決議】会議や大会などで全体の意見として決定する 意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈一案〉 〈附带—〉〈法案を—する〉〈総会の—に従う〉ひ議決 げっきゅう【月給】月単位に支払われる給料をさし、会話や 軽い文章に使われる、やや古風な漢語。〈取り〉〈泥棒〉 〈前で生活が苦しい〉②日給や週給より一般的なため、単 にサラリーの意に用いることもある。単給与・給料・Qサラリ ー・賃金・俸給 けっきょく【結局】さまざまな経緯があった後の結末として の意で、会話にも文章にも広く使われる日常の基本的な漢 語。「は資金の問題に帰着する」へのところ自分でやる <319> ことになった〉(あれこれ試みたがーだめだった)〈あの計 画はー見送られることになった〉途中経過に紆余曲折が あったことを思わせる。もと囲碁の終局の意という。小林 秀雄の『菊池寛論』に「才能の一番大事な部分をスタイル以 外のものに費やした人だ、そして両方ともー純文学の世界 では仕事をしなくなって了った人だ」とある。「つまり」 「要するに」と比べ、そこに至るまでの経過が強く意識され る。ひQつまり・要するに けっきん【欠「歓」勤】本来なら出勤すべき日に勤めを休む意 で、やや改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢 語。〈無断—〉〈一届〉〈会社を—する〉夏目漱石の『坊っ ちゃん』に「だと思ったら遅刻したんだ」とある。「出勤」 と対立。専欠場・欠席・休み けっけい【月経】成熟期の女性の排卵後しぼらくして見られる定期的な出血現象をきす、類語中で最も客観的な漢語。 〈痛〉〈不順〉〈閉止期〉日常会話などでは、対象が対象なので露骨な表現を避け、通常「生理」といった間接表現を採用する。その影響で、この語は医者や薬剤師などの会話や学術的な記述などに限って用いられることになり、結果として今日ではやや専門語のような雰囲気を有している。Q生理・メンス けっこう【決行】悪条件で困難が生じてもためらわずに予定 どおりに実施する意で、改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈雨天—〉〈スト—中〉〈クーデターを—する〉勇敢行・ Q強行・断行 けつごう【結合】複数のものが合わさって一つになる意で、 けっさく やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一組織〉分 子のー〉〈両者がーする〉匕化合・合成・混合・Q結びつき・融合 げっこう【激昂(高)】→げきこう けっこん【結婚】男女が夫婦となる意の漢語で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な日常語。「 指輪〉〈—適齢期〉〈—記念日〉〈国際—〉〈—を申し込む〉 〈—に踏み切る〉②山本有三の『波』に「世間の人は、—を、 ゆるぎのない大きな石のように思っているが」とある。几家 庭を持つ・結婚する・こし入れ・Q婚姻・所帯を持つ・嫁ぐ・嫁入りす る・嫁に行く けっこんしき【結婚式】男性と女性が夫婦となることを第三 者の前で誓い合う儀式をさす漢語。類義語中で最も一般的 な呼称。くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる。 友達のー〉へーの披露宴で祝辞を述べる〉〈教会でーを挙 げる〉の芥川龍之介の『疑惑』に「近々ーを挙げようと云う 間際になって、突然破談にしたいと申すのでございますか ら」とある。洋風でも和風でも、豪華でも簡素でも、最もよ く使われるごくふつうの言い方。専華燭かふの典・Q婚礼・祝言 けっこんする【結婚する】男性と女性とが夫婦になる意。類 義語中で最も一般的なことば。ヘこのたびーこととなりま したヘとっくにー・して子供もいるそうだ》武者小路実 篤の『お目出たき人』に「ーのは何時まで待ってもいい」と ある。Q家庭を持つ・結婚・こし入れ・婚姻・所帯を持つ・嫁ぐ・嫁 入りする・嫁に行く けっさく【傑作】①出来栄えがきわめて優れた作品をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一大〉〈代表的な <320> けっして 〈後世に残る—〉太宰治の『猿面冠者』に「まだ書かぬ彼 のの妄想にさいなまれる」とある。「名作」に比べて主に 大作が連想され、出来栄えや影響力が意識されている感じ が強い。また、「名品」に相当する語がないため、芸術作品 に限らず実用的な工芸品・陶磁器などにも使う。名作・名品 ②変わっていて滑稽な意で、会話にも文章にも使われる、 いくぶん古風な漢語。〈な話がある〉(そいつはだ) 可笑しい①滑稽・コミカル・剽軽・ユーモラス けして【決して】下に打消しや禁止の語を伴って、絶対に の意を表し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る表現。〈一逃げない〉〈一嘘は言わない〉〈それからでも ー遅くはない〉〈一悪いようにはしない〉〈一教えるな〉 Q絶対に・断じて けつじょう【欠(飲場】本来なら出るべき公の場や試合など に出ない意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈決勝戦にーする〉へーを余儀なくされる〉②「出場」と対 立。ヌQ欠勤・欠席・休み けっしん【決心】考えや意志を決めてその覚悟をする意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な漢語。〈結婚に踏み切るーがつかない〉(ようやくーを 固める)〈ーは固い〉(ーがぐらつく)新美南吉の『牛を つないだ椿の木』に「胸の中には拳骨のように固いーがあ った」とある。出前に何を頼むか、どのネクタイを選ぶか が「なかなかーがつかない」など、「決意」ほどの緊張感を 伴わず比較的軽い感じで日常生活に多用される。覚悟・Q 決意・決断 けつせき【欠(飲)席】学校の授業や出るべき会合などを休む 意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈ー者〉〈ー が多い〉〈会議をーする〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「 して昼寐でもして居る方がましだ」とある。「出席」と対 立。火勤・火場・休み けつぞく【血族】血のつながった関係にある人々をさして、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈三親等〉 〈傍系—〉〈結婚〉法律上は養子縁組の場合も含む。関 係を表す「血縁」「血統」「血筋」と違い、あくまで人そのも のをさす。Q血縁・血統・血筋 けつだん【決断】みずからの意思をきっぱりと決定する意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。へーの 時〉〈勇気あるー〉へーを迫られる〉へーが早い〉へきっぱり とーを下す〉幸田露伴の『連環記』に「いよいよ解きがた くなったので、ええ面倒大切ってしまえ、と剪刀を取り出 す気になるような、腹の中でーがついてしまった」とある。 「決心」はもちろん「決意」よりもさらに大きな問題に関し 重要な局面に使う傾向がある。豊悟・Q決意・決心 けっちゃく【決(結)着】物事の決まりがつく意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈ーをつける〉〈勝負の ーがつく〉いろいろ紆余曲折のあったあとで、という二 ュアンスがある。単解決・Q落着 ゲッツー「併殺」の意で使う古風な感じの和製英語。〈ーで ピンチを切り抜ける〉はダブルブレー・併殺 けってい【決定】あることに決める意で、改まった会話や硬 い感じの文章に用いられる漢語。〈開催の日時が正式に <321> する〉〈成否が—する〉〈活動方針を—する〉②永井荷風の 『瀾東綺譚』に「行先の定らない散歩の方向は、却てこれが ために—せられた」とある。「決める」より大げさな感じが あるため、「会社がひけたら縄のれんをくぐってちょいと一 杯やる」、「会社をサボってパチンコ屋で時間をつぶす」と いった日常生活の些事について使うには違和感があり、そ れを利用してユーモラスな表現に仕立てることもできる。 ひ確定・決める・Q定める・内定・本決まり けってん【欠点】欠汁落ちているか他に比べて不十分なため に評価が低くなりそうなところをさし、会話にも文章にも 使われる日常の漢語。〈ーだらけ〉へーが見つかる〉へーが 多い〉林芙美子の『茶色の眼』に「片意地のーが、家庭生 活の中に、電気のコードを引きずっているようなめざわり さで考えられてくる」とある。欠陥・Q弱点・短所・難点 けっとう【血統】「血筋」の意で会話にも文章にも使われる漢 語。「公家のーを引く」〈ーを絶やす〉の「血筋」と同様、流 れている血の優劣を意識させるが、さらに、その血のつな がりが継続するか断絶するかを問題にして使う例も目立つ。 血縁・血族・Q血筋 げっぷ【月賦】毎月の「分割払い」の古めかしい漢語の言い 方。〈冷蔵庫を—で買う〉の室生犀星の『杏っ子』に「借金 はすべて—償還」とある。ひ分割払い けつぼう【欠(闕)乏】必要な分量が欠けて乏しい状態になる 意で、主として文章に用いられる硬い漢語。〈食糧が一す る〉〈困苦ーに耐える〉②若干足りない場合も含まれる「不 足」に対し、絶対量が乏しく、ほとんど無いか著しく足りな げどく い場合に限られる。また、最初はそうでなかったのにそういう状態に陥ったというニュアンスを感じさせることもある。且不足 けつまずく【蹴躓く】「つまずく」の強調表現として、会話や 軽い文章に使われる、やや俗っぽい和語。〈道端の石に—〉 の「つまずく」と違ってもっぽら具体物に突き当たるときに 用い、「事業で—」「人生に—」のような抽象化した比喻的 用法にはなじまない。つまずく・つんのめる・のめる げつまつ【月末】会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈一 で多忙を極める〉〈一の支払いに追われる〉ひつきずえ けつらく【欠落】欠け落ちている意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈資料にーが見つかる〉へ部分を 補う〉〈注意力がーしている〉み遺漏・落ち・Q脱落①・漏れ けつろん【結論】論を展開した結果最後にたどり着く判断を さし、会話にも文章にも使われる漢語。「ーが出る〉へと して賛成だ〉へーから先に言う〉夏目漱石の『吾輩は猫で ある』に「ーのない演舌は、デザートのない西洋料理の様な ものだ」とある。「ーを導く」のように、推論から導き出さ れる帰結としての命題をさすこともあり、その場合は専門 的。Q帰結・結果 げてものぐい【下手物食い】一般の人が顧みない風変わりな 物を好んで食う意で、主に会話に使われる俗っぽい表現。 ヘこんな物を食うとはーの部類だ》「下手物」は人が相手 にしない粗末な物をさす。ひいかもの食い げどく【解毒】体内の毒物の働きを無にする意で、会話でも 文章でも使われるやや専門的な漢語。〈一剤〉へ一作用があ <322> けとばす る ♡殺菌・Q消毒・毒消し けとばす【蹴飛ばす】強く蹴って物を飛ばす意で、会話や軽 い文章に使われる和語。〈空き缶を—〉〈思い切り—〉本 庄陸男の『白い壁』に「枕をー・されたような駿きに周囲を 忙しく見まわす」とある。「他社からの誘いを—」のよう に、問題にせずにはっきり拒絶する意に使う場合は会話的。 蹴る けなげ【健気】年少者や弱者が困難に立ち向かう姿を見て感 心する気持ちをさして、改まった会話や文章に用いられる、 やや古風な和語。「なふるまいに心を打たれる」〈親を亡 くした幼い姉妹がに働く)②太宰治の『富嶽百景』に「富 士の山と、立派に相対峙し(略)にすっくと立っていたあの 月見草」とある。単甲斐甲斐しい・Q殊勝 げなん【下男】雑用をする下働きの男をさす古めかしい漢語 差別意識が感じられるとして使用を控えている。召し 使い げに「なるほど」「本当に」「まことに」の意の古語的な表 現。〈ああ、ー、〉〈ー、さもあらん〉あえて会話で使っ たりするとエーモラスに響くこともある。乃本当に・Qまこと に けねん【懸念】好ましくない方向に進むのが心配で今後のこ とが気にかかる気持ちをさし、いくぶん改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈材料〉〈関係が悪化するーがあ る〉〈耐久性に関しては若干ーがある〉〈景気の低迷がーさ れる〉〈実現にーを抱く〉〈深刻な影響がーされる〉長塚 節の「士」に「お品が病気に罹ったのだというのを聞いて万 というーえー胸にこたえた」とある「危懼」 い此べ、漠然としたこと、さほど重大ではないことに用い る傾向がいくらか強い。乃恐れ・気がかり・Q危惧・心配・不安 けはい【気配】微かな音などから何かが感じられる意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈人のーがない〉〈誰かに尾 行されているーを感じる〉〈ただならぬーを察する〉②古く は「けはひ」と書き「けわい」と読んだ。それに「気配」と 漢字をあてたのを「けはい」と読んでしまって成立した語 形。本来は聴覚だが、現代ではさまざまな微妙な感覚を含 め何となくそんな気がする場合に拡大して使う。庄野潤三 の『秋風と二人の男』に「線路の横の道を歩いている買物籠 をさげた女の人にも日暮のーが感じられるようになり」と ある。乃感じ・気色・雰囲気 けばけばしい【暃暃しい】派手で品がなく感覚を刺激しやた らに目立つ意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和 語。〈一看板〉〈服装〉阿刀田高の『Y字路の街』に「毒 茸のような一家並」とある。専々しい・どぎつい げはん【下阪】東京から大阪に行くことをさして稀に用いる 漢語。「上京」の反対で、「大阪に下る」という意識が感 じられ、大阪人には心理的に抵抗があると考えられる。 上京 げひん【下品】品格や品性に気品のないために物言いや行動 が粗野になる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる日常の漢語。〈なことば〉立ち居振る舞いが粗 野でだ夏目漱石の『吾輩は猫である』に「弁じますが なら何と云ったらいいでしょう」とある。「上品」と対立。 <323> Q下劣·俗惡·低俗·卑俗·野卑 けぶかい【毛深い】体の毛が濃い意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈手脚の—男〉林芙美子の『清貧の書』に 「山国の産のせいであろう、まるで森林のように—脚」とあ る。「毛むくじゃら」に比べ、客観的に記述した感じの表現。 も毛むくじゃら けぶる【煙(烟)る】ぼうっと霞んで見える意で、時に文章に 用いられる古めかしい和語。遠く雨に山並みを眺める のけむる」の古い形であるため、実際に煙が立つ日常の意 味ではめったに用いず、「霞む」意に古風な趣を添えるため に使う。ひいぶる・くすぶる・Qけむる けむい【煙(烟)い】煙が目や鼻や喉を刺激する苦痛をさし、 会話にも文章にも使われる和語。〈焚き火で—〉き煙たい けむくじゃら【毛むくじゃら】濃い毛が密生している意で、 主にくだけた会話に使われる俗っぽい和語。〈一の脚〉〈胸 が一だ)遠藤周作の『海と毒薬』に「急いでそれを捕虜の 一な胸に当てた」とある。単に毛が濃いことを意味する 「毛深い」と比べ、毛がやたらに多く、生え方も乱雑だとい った不快感を伴う。巻毛深い げろ けむたい【煙(烟)たい】煙い意で主に会話に使われる和語。 〈薪が湿っていて燻るのでー〉林芙美子の『晚菊』に 「心がーくむせてくる」とあるように、涙を誘う気分をさ す例もある。「けむい」以上に不快感が大。「社員には課長 が一存在だ」のように、気話まりな意でも使われる。り煙い けむる【煙(烟)る】煙が立ち上る意で、会話にも文章にも使 われる日常の和語。〈煙草の吸殻がー〉〈濡れた炭がー〉 〈秋刀魚がー〉「雨にー古い街並み」のように、ぼうっと賣んで見える意にも使う。いぶる・くすぶる・Qけぶる けもの【獣/毛物】人間以外の哺乳類をさして、会話にも文 章にも使われるいくぶん古風な和語。〈道〉へーを捕らえ る)全身にもが生えているところから。马けだもの けらい【家来】上位者に付き従う人をさし、会話や軽い文章 に使われる俗っぽい漢語。〈ーに言いつける〉へーを引き連 れて飲みに行く)②「殿様のーになる」「ーを召し抱える」 のように、本来は封建社会で主君に仕える武士をさし、そ の意味で用いれば俗っぽい感じはない。子分・下っ端・手先 ②・手下・手の者・配下・Q部下 げり【下痢】胃腸障害によって液状に近い粪便を排泄する病 的現象をさし、会話にも文章にも広く使われる漢語。「止 め」〈ひどいーに悩まされる〉②井伏鱒二の『珍品堂主人』 は「このところ、ーのために少し衰弱しているのです」と終 わる。ひQ腹下し・腹下り ける【蹴る】足先で勢いよく物を突く意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる和語。〈ボールを—〉〈ドア を—〉〈相手の脚を—〉尾崎士郎の『人生劇場』に「後脚 で砂を—ような真似をしたんじゃ」とある。ひ蹴飛ばす げれつ【下劣】嫌悪惑を抱かせるほど品性が劣る意で、主に 文章に用いられる漢語。〈品性—〉(—な根性〉(実に—極 まりない)夏目漱石の『坊っちゃん』に「いたずらだけで 罰は御免蒙るなんて—な根性がどこの国に流行ると思って るんだ」とある。下品・俗悪・通俗・低俗・Q低劣・卑俗・野卑 げろ嘔吐物をさして、くだけた会話に使われる俗語。 <324> けろり を吐く壺井栄の『補篇』に「ひどいつわりの最中にたつ はまるでその苦しみのあまり吐き出すーのように(略)告白 した」とある。吐き戻すときの音に関連か。嗚吐・Qへど けろり何事もなかったように平然としている意で、主に会 話に使われるやや俗っぽい和語。へ叱られてもーとしてい る」「ーと忘れる」「病気がーと治る」のように、跡形も なくといった意味合いでも使われる。くだけた会話ではし ばしぼ「けろっ(と)」の形になり、その場合は俗っぽさが増 す。ひあっけらかん けん【剣】片刃の太刀に対して、諸刃の大刀をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈一の遣い手〉へ一をよくす る〉へ一の道を極める)刀剣類の総称として用いられるこ ともある。日本刀を連想させやすい「刀」に比べ、サーベル のような西洋風の刀剣をも含む感じが強い。Q刀つるぎ 刀剣 けん【券】料金を支払った証拠となるなど権利・資格を保障す る紙片をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈招 待ー〉〈整理ー〉〈ーと引き換えに渡す〉〈ーを手に入れる〉 〈入り口でーを見せる〉易切符・Qチケット げんあん【原案】討議にかける最初の案をさし、やや改まっ た会話や文章に用いられる、いくぶん専門的な感じの漢語。 へーどおり可決する)〈ーを修正する)文章の形で紙に書 いたものとは限らない。「修正案」と対立。原稿下書き・Q 草案・草稿 けんい【権威】①他を強制し服従させる精神的な圧力をさし て、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーある筋〉へーをふ りかざす〈一が地に墜ちる〉(一が失墜する)福原麟太 郎の「この世に生きること」に「歳をとるということに、絶 対のーを認めている」とある。権力と威力の意。乃権力 ②専門の知識や技能においてその分野で最高と認められて いる人物の意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢 語。〈最高ー〉〈学界のー〉〈一に従う〉〈一におもねる〉 大御所・Qオーソリティー・大物・第一人者・長老 けんいん【原因】ある物事や状態が生じるもとになったもの をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な漢語。〈不明〉〈事故のーを究明する〉〈火 災のーを調べる〉夏目漱石は『坊っちゃん』で「何等のー もないのに新来の先生を愚弄する様な軽薄な生徒」と書き、 そこに「源因」という漢字をあてている。大岡昇平の『野 火』に「これも私に引金を引かす動機ではあっても、そのー ではなかった」とある。「結果」と対立。刂因果・せい・因・Q 要因 けんお【嫌悪】強く嫌い憎む意で、改まった会話や文章に用 いられるやや硬い漢語。〈自己ーに隔る〉〈ー感がきざす〉 武田泰淳の『ひかりごけ』に「もし、人肉喰いとなれば、 たとえどんな条件の下で発生しようと、身ぶるいがするほ どーの念をもよおす」とあり、大岡昇平の『俘虜記』には 「他人を殺したくない」というわれわれのーは、おそらく 「自分が殺されたくない」という願望の倒錯したものにほか ならない」とある。ひいや・Q厭悪が嫌い・憎悪・憎しみ けんか【献花】神前や霊前に花を捧げる意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈霊前に—する〉〈慰霊碑に—す <325> る)キリスト教または無宗教の葬儀で、仏式での焼香に あたる行為として行われる。供花 げんか【原価】商品を仕入れたときの値段の意で、やや改ま った会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈ーを切る〉 〈ーを割る〉の会話的な「元値」より正式な感じがある。「製 造ー」「ー計算」のように、製品が出来上がるまでの費用を さす用法もある。リコスト・仕入れ値・Q元値 けんかい【見解】一定の事柄に関する考え方や価値評価の意 で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「の相 違《公式ーを打ち出す》〈自らのーを発表する〉の「意見」 のうち、十分に検討を加えて練り上げたまとまった形の考 えをさす。Q意見・考え・思考・思索・思想 げんかい【限界】これ以上は超えられないというぎりぎりの 境界線をさし、会話にも文章にも使われる日常的な漢語。 〈状況〉(体力の—〉〈に挑戦する〉〈我慢にも—があ る〉〈に達する〉限度 けんかく【懸隔】二つの物事が大きくかけ離れている意で、 主に文章に用いられる、やや古風で硬い漢語。〈両者の主張 にはかなりのーが感じられる〉②「開き」や「隔たり」と違 い、数字で表示できない大きな差のある場合に使う。刂開 き・Q隔たり けんがく【見学】実際の様子を見て学習し実践的な知識を増 やす意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一者〉(都内 〈工場〉〈一の生徒で込み合う〉(体調が悪く体育の 授業は一にまわる)②楽しむための「見物」に比べ、この語 には勉強する意味合いがつきまとうが、現実の用法として けんきゅう は好奇心を満たす程度でも使われ、区別の難しい例も多い。 あまり費用がかからない印象が濃い。「見物」が外から眺め るイメージの強いのに対し、この語には内部に入って仔細に に観察するイメージがある。見物 けんかく【厳格】一定の方針に従って厳しく事を行い決して 妥協しない態度をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 くしつけがーだ〉〈ーな家庭に育つ〉〈規則をーに守る〉細 かい点を見逃すか否かより、原則を貫くところに重点があ る。Q厳しい・厳重・手厳しい げんかん【厳寒】厳しい寒さの意で、主に改まった手紙文に 用いられる古風で硬い漢語。〈一の候〉「酷寒」「極寒」 に比べればいくらかましな感じがある。艹酷寒・極寒 けんき【元気】体調よく活力に満ちている様子をさし、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 漢語。〈いっぱい〉へがみなぎる〉へをなくす〉へに 暮らす〉石坂洋次郎の『嘱託医と孤児』に「土塗れな馬 鈴薯のようにのいい子供」とある。「健康」より会話的。 健康状態そのものより心に活気のある点に中心がある。 Q健康・健勝・健全・丈夫・健やか・壮健・息災・達者 けんきゅう【研究】調査・実験・考察によって物事の実態や仕 組みを学問的に調べ、科学的に分析し、論理的に考察する行 為をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈共同〉〈 者〉〈所〉〈貴〉〈業績〉〈熱心〉〈に没頭する〉 〈を推進する〉〈成果を発表する〉②川端康成の『雪国』 に「日本踊の新人とも知り合い、や批評めいた文章まで 書くようになった」とある。刂研鑽研修・考察・考察・Q調査 <326> けんきゅうしゃ けんきゅうしゃ【研究者】研究を専門とする人をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈一流の—〉へとして身を立 てる〉へとして業績を積み上げる〉の「学者」に比べ、大 学教授だけでなく国立の機関や企業の研究所などの研究員 を連想することも多い。単学者・学徒・Q学究 けんきゅうじよ【研究所】研究活動を専門とする組織や施設 をさす漢語。〈国立国語—〉への活動〉②安部公房の『他 人の顔』に「人気のない—の建物などというものは(略)亡 霊の館のようなものだ」とある。「研究センター」に比べ て、あくまで研究活動が中心となる静的な存在という印象 が強い。専研究センター けんきゅうセンター【研究センター】「研究所」に近い意味合 いで近年よく使われる用語。〈日本語〉への事業報告〉 「研究所」より新しい感じの組織を連想すると同時に、研 究だけでなくその成果を普及させたり講習会や研修を行う など、なんらかの社会的な活動を行う動的な印象が強い。 収研究所 けんきよ【検挙】犯罪の事実を取り調べるため警察権によっ て被疑者を警察署に引致する意で、専門的な話題の会話や 文章に用いられる正式な感じの専門漢語。「率が上がる 〈一斉に踏み切る〉迅速捕 げんきょう【現況】個人や場所や建物などに関する現在の状 況をさし、改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な 硬い漢語。〈届〉〈ーを調査する〉〈ーを視察する〉〈ーを 包まず報告する〉個人の日常を話題にする「近況」と違 い、状況の変化に関する調査や役所などへの報告といった 堅苦しい雰囲気を感じさせる。「現状」より動的なイメージ がある。最近況・現状 けんきょうふかい【牽強附(付)会】「こじつけ」の意で、主と して文章に用いられるやや古風な漢語。〈ーの気味がある〉 〈いささかーに過ぎる〉はこじつけ けんきん【献金】目的をもって金銭を寄附することをさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈政治—〉〈企業—〉〈教 会で—する〉専寄進・寄贈・Q寄附 けんきん【現金】小切手や手形類でない貨幣そのものをさす 漢語。「キャッシュ」より標準的な語として会話でも文章で も幅広く用いられる。〈自動支払機〉へを持ち歩く への持ち合わせがない)Qキャッシュ・現生 げんきん【厳禁】厳しく禁ずる意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈火気—〉〈土足—〉単なる「禁止」 よりも強く、絶対に駄目という雰囲気がある。巻禁止 けんげん【権限】その立場にある人が正当に行うことのでき る物事の範囲をさし、改まった会話や文章に用いられる専 門的で硬い漢語。〈委員会の—〉〈職務上の—〉〈ーを有す る〉〈ーを与える〉〈ーを剝奪する〉特にその行為が法律 的な効力を生ずる場合によく使う。専権利 けんけんがくがく【喧喧謌謌】「喧々囲々」と「侃々謌々」との交じり合った誤り。刂侃々謌々・喧々囲々 けんけんごうごう【喧喧囂囂】多数の人間がやかましく騒ぐ さまを表す漢語表現古風で硬い感じの語。「たる非難 石坂洋次郎の『若い人』に「たる歓声裡に頭を抱えて自 席に逃げ帰った」とある。「侃々謂々ふかんかん」と混乱を起こし <327> 「喧々誤々」と誤る例も見られる。仏伝々誤々、喧々誤々 げんこ【拳固】拳はの意で、主に会話で使われる、俗っぽく 時に子供っぽい感じの口頭語。へーでおでこをごつんとや る)志賀直哉の『暗夜行路』に「指の長い白い手をーにし て重ね」とある。「鉄拳」はもちろん「拳骨」に比べても、 破壊力の弱い感じがある。Q拳骨・拳・鉄拳・握り拳 げんご【言語】人間が音声・文字を媒介として気持ちや情報を 伝え合うのに用いる記号の体系をさし、改まった会話や文 章に用いられる、やや専門的な硬い漢語。〈一体系〉〈活 動〉〈表現〉〈少数〉〈留学先のーを習得する〉小林秀 雄の『ランボオ』に「一表現はあたかも搾木」にかけられた 憐れな生物のように吐血し無味平板な符牒と化する」とあ る。「一明瞭わい、意味不明」のように表現の形式面をさす こともあるが、一般には日本語・英語・中国語などの別を言 う。彫語・語彙・Q言葉・単語・用語 けんこう【健康】心身ともに元気な意で、会話にも文章にも 広く使われる日常の基本的な漢語。〈な体〉〈増進〉 〈診断〉〈を損ねる〉〈に注意する〉網野菊の風呂 敷に「追い追い快方に向って、四、五力月後にはまったく ーを回復した」とある。Q元気・健勝・健全・丈夫・健やか・壮 健・息災・達者 げんこう【言行】言うことと行うことの意で、改まった会話 や文章に用いられる硬い漢語。〈ー一致〉〈ーに齟齬が見 られる〉同一人の日ごろの発言とその行動とが全体とし て合致しているか矛盾しているかを問題にする場合によく 使われる。言動 げんざい げんこう【原稿】正式に発表する前に文章を書き記した紙を さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈用紙〉〈料〉 〈一の締め切り日〉〈一を執筆する〉通常は印刷用に原稿 用紙に書いた文章をさすが、口頭発表の準備として内容を 記した紙をさす場合もある。単原案・下書き・草案・Q草稿 けんこうしんだん【健康診断】健康状態を調べる医学上の検 査をさし、改まった会話や文章で用いる、正式な感じの漢 語。〈定期的にーを受ける〉へーで血糖値の項目が気にな る)のだけた会話では略語の「健診」を使うことも多い が、正式の書類などにはこの語が用いられる。Q健診検 診メディカルチェック けんこうてき【健康的】病気などがなく元気である意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈な生活〉〈見るからにー な肢体〉ひヘルシー げんごおん【言語音】人間がことばを発する際に音声器官を 使って意図的に分離できる単位で発する音をさし、学術的 な会話や文章に使われる専門的な漢語。〈ーを発する〉②く しゃみをしたり犬が吠えたりする際の実際の音は一つのか たまりだが、それを「クシャン」「ワンワン」のようにいく つかの拍に分けて発音すれば言語音になる。ひ音声 げんこつ【拳骨】拳の意で、会話にも文章にも広く使われ る一般的な日常漢語。へーで殴りつける〉へーを一発くらわ す多く殴るときに用いられる。新美南吉の『牛をつな いだ椿の木』に「胸の中にはーのように固い決心があった」 という比喻表現が出る。巻固・Q拳・鉄拳・握り拳 げんざい【現在】過去と未来との間をさして、会話にも文章 <328> けんさん にも使われる基本的な漢語。〈地〉〈一進行中〉〈一に至 るまで〉〈一のところ〉〈九月九日一〉〈一使われていない〉 〈課長に昇格して一に至る〉黒井千次の『オモチャの部屋』 に「(古い家の)オモチャの部屋は、やはり一の玄関となる」 とある。Q今・今日・只今・目下 けんさん【研鑽】学問をみがき深める意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈たゆまずーを積む〉(永年の が実を結ぶ)それまでに知られていなかった事実や規 則性などの新しい発見を連想させる「研究」に比べ、個人が 自分の知識を深める形での向上を連想させる。Q研究・考 究・考察 けんしき【見識】ものの本質やことの成りゆきなどを見通す 知識をさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。「を 有する〉へーを問われる〉へーを示す〉円地文子の『老桜』 に「美術については一家のーを持っている」とある。讃見 けんじつ【堅実】やり方や考え方が手堅く確実な意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。「な手段〉へーな 家庭を築く少しずつ連続的に成果を上げる連想が強い 「着実」に対して、この語は冒険せずに確実な方法を選択す るというニュアンスがある。単地道・Q着実・手堅い げんじつ【現実】今現に事実として存在している事柄をさし、 いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。〈計画が一 的でない〉へーを直視する〉へーから目をそらす〉〈夢がー のものとなる〉夢実・実際・実態 けんしゅう研修職務上必要な知識や技能を身につけるための勉強や実習をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈生〉〈新入社員の—〉〈みっちり—を積む〉 けんじゅう【拳銃】片手で持って発射可能な短い筒の小型銃 をさす、やや改まった感じの語で、正式の文書などに使われ る。〈二丁〉〈腰にーを帯びる〉〈ーを構える〉〈ーの威嚇 射撃を試みる〉三浦哲郎の『拳銃』に「その陰気で物騒な 持物というのは、一梃の古いーのことだ」とある。警察官 の場合はこの語が使われやすい。日常会話では「ピストル のほうがふつう。「ピストル」ほど一般的ではないが、「短 いーよりよく使う。ひ小銃・短銃・はじき・Qピストル げんじゅう【厳重】厳しい態度で些細な点にも気を配る様 子をさし、会話にも文章にも使われる漢語。「な検査 〈な警戒を要する〉〈ーに取り締まる〉〈ーに注意する〉細かい点も見逃さないところに重点があり、相手にきつく当たる意図はない。Q厳しい・厳格・手厳しい げんじゅうみん【原住民】もともとその土地に居住している 人たちを、移住者や征服した人間の側から見た感じの漢語。 すでにその地域の主導権を握っていないというニュアンスを伴うことがある。ひ土人・土着民・士民 けんしゅく【厳粛】厳然たる意べ、他を寄せつけないほど真 剣なの意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 「に受け止める」〈な事実〉〈な気持ちで臨む〉③堀辰 雄の『大和路』に「金堂や塔などが立ち並んでおのずから な感じのするあたり」とある。马厳か・森厳・Q崇高・荘厳・荘重 げんしゅつ【現出】珍しい光景・状況・現象などが現れ出る意 で、主として文章に用いられる硬い漢語。〈不思議な光景が ーする〉(さながらこの世の楽園をーすることになる)②中 <329> 谷宇吉郎の『立春の卵』に「現代科学に挑戦する一新奇現象 が、突如として原子力時代の人類の眼の前にーしてきた」 とあるように大仰な感じがある。見出現 けんしよう【健勝】健康の意で、主に手紙文の挨拶に用いら れる漢語。〈ますます御ーのことと存じます〉)元気・Q健 康・健全・丈夫・健やか・壮健・息災・達者 けんしょう【検証諡】実際の調査資料をもとに仮説を実証 する意で、専門的な話題の会話や文章に用いられる硬い漢 語。〈自説をーしてみせる〉〈過去の事実をーする〉法律 の専門語としては、「実地ー」「現場ー」のように、裁判所 や捜査機関が実際の場所で証拠資料を調査する意に用いる。 専実証・Q証明・立証・論証 けんじょう【献上】捧げて恭しく差し上げる意で、改まった 会話や文章に用いられる古風な漢語。へーの品〉〈陛下にー する〉他の類語よりも高貴な身分の相手に対して使われ る。専贈・謹呈・Q献呈・進上・進呈・贈呈 げんしょう【現象】人間が知覚でとらえうる形で起こる自然 界や人間社会の出来事をさし、会話にも文章にも使われる、 やや硬い感じの漢語。〈自然—〉〈社会—〉〈逆の—が見ら れる〉〈不思議な—が起こる〉〈—に目を奪われ、本質を見 失う〉中谷宇吉郎は『立春の卵』で「世界中の人間が、何 百年という長い間、すぐ眼の前にある—を見逃していた」 として卵が立つことを立証した。専事象 げんしょう【減少】数量や程度などが減る意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈利益がーする〉〈負担がーする〉〈人口のーを招く〉〈事故のーをめざす〉減ずる けんしん Q減る げんじょう【現状】現在の状態をさし、会話にも文章にも使 われる一般的な漢語。〈—維持〉〈—に甘んじる〉〈—をつ ぶさに調べる〉〈—を打破する〉「現況」に比べ静的なイ メージがある。現況 げんじょう【現場】「げんば」の意の専門的な漢語表現。 に直行する)〈ーを検分する〉〈一確保のため立入禁止〉 げんば けんしょく【兼職】本職以外に他の職を兼ねる意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈公務員の—禁止〉 兼ねる・兼担・兼任・Q兼務・兼用 けんしん【健診】「健康診断」の短縮形。会話や改まらない文 章で使われる略語。〈乳児—〉〈春の定期—〉の一般的に体 の健康状態を診断するときに用いられるが、胸部や胃や大 腸などの病気の有無を調べる同音類義語の「検診」と用法が 紛らわしい。健康診断・Q検診・メディカルチェック けんしん【検診】病気の有無を検査・診察する意で、会話でも 文章でも広く使われる漢語。〈集団—〉〈胃の—〉〈—でひ っかかる〉病気の有無を調べる目的で特定部位を検査・診 察する意味で用いるが、同音類義語の「健診」との区別が紛 らわしい。また、検査に計器を用いることもあり、時に「検 針」と紛らわしい場合もある。刂健康診断・Q健診・検針・メデ イカルチェック けんしん【検針】電気や水道などの使用量をメーターで調べ る意で、会話でも文章でも使われる、やや専門的な漢語。 〈電気の—〉〈ガスの—に回る〉まれに「検診」と紛らわし <330> げんずる い場合もある。 検診 げんずる【減ずる】「減る」「減らす」意で、主に硬い文章に 用いられる厳めしい雰囲気の硬い語。〈体重が—〉〈人員 を—〉〈罪一等を—〉〈Q減少・減る げんせき【原籍】本籍を移した場合の以前の籍をさし、会話 にも文章にも使われる専門的な硬い漢語。へーを調べる) 単に「本籍」の意に使うこともある。単本籍 けんせつ【建設】建物・施設や組織などを新たにつくる意で、 やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん専門的な 漢語。〈ー会社〉〈ー資金〉〈ダムをーする〉〈文化国家の ー〉の「ー的な意見」のように、積極的によくする方向をさ す用法もあり、「破壊」と対立。夏目漱石の『私の個人主 義』に「文芸に対する自己の立脚地を堅めるため、堅めると いうより新らしくーする為に」とあるように、「建築」や 「建造」より抽象的な用法にも広がりを見せる。Q建造・建 築・建てる けんぜん【健全】心身の健やかな意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈一な発育〉(一なる精神は一なる身体に宿 る)四吉本ばななの『哀しい予感』に「彼のーさを異星人の ように嫌悪した」とある。「一な娯楽」「一な考え方」「一財 政」など、抽象的な意味の拡大用法も多い。専元気・Q健康・ 健勝・丈夫・健やか・壮健・息災・達者 げんせん【源泉】水や温泉などの流れ出ると、広くはもの ごとの起源をさし、やや改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈掛け流し〉へーをつきとめる〉へー徴収〉〈活力の ー〉島崎藤村の『飯倉だより』に「清いーの流れて来て とある。小林秀雄は雑誌の企画で鎌倉の自宅を訪問した折、 日本語観に関する問いかけに「僕らは国語という大河に流 されながら、そのーを感じたいと努力しているんですよ」 と語った。ひ水源・Q源 げんせん【厳選】厳しい基準のもとによく調べて選び出す意 で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈主義〉へ された材料〉(いい品だけをーする)〈人材をーする〉② 「精選」と違って人間に対しても用いる。刂精選 けんそう【喧噪(騒)】物音や人声のやかましさをさし、主に 文章中に用いられる硬い漢語。〈都会のーを避ける〉「の 中に埋れる》の島木健作の『生活の探求』に「蜂の巣をつつ いたような一時に起ったーのなかに消えてしまった」とあ る。ひ騒音 けんぞう【建造】ビル・橋・船舶などの大型のものを造る意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈巨 大な—物〉へ—中の船舶〉②「建築」はもちろん「建設」よ りも大規模な感じがあり、鉄筋・鉄骨のコンクリート造りの 連想が強い。川端康成の『浅草紅団』に「復興局—の言問 橋」とある。Q建設・建築・建てる げんそう【幻想】何の根拠もなくとりとめのない空想を脳裏 に浮かべることをさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈ーを抱く〉〈ーに耽ける〉〈理想の世界などーにすぎない〉 谷崎潤一郎の『雪後庵夜話』に「茫漠としたーのかたまり のようなものが雲の如く脳裡に湧き、何かしらものを書が ずにはいられなくなる」とある。有島武郎の『或る女』には 「は暗い記憶の洞穴の中を左右によろめきながら奥深くた <331> どって行く」とある。病的な感じの「妄想」と違い、夢のよ うなことがおのずと思い浮かぶ感じがあり、「的な風景」 のように美しいイメージと結びつきやすい。実現の可能性 のきわめて低い構想や計画などを「に過ぎない」と一蹴 する用法もある。類語中で最も美的な雰囲気が感じられる。 専空想・想像・Q夢想・妄想 けんぞうぶつ【建造物】建物のほか塔・橋・船舶など建造され たものの総称として、主に文章中に用いられる専門的な漢 語。〈歴史的なーとして保存の対象となる〉の「建築物」よ り大掛かりなものを連想しやすい。Q建築物・建物・ビル・ビ ルディング げんそく【原則】広く適用される根本的なきまりをさし、や や改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーを定める〉 〈ーに従う〉〈ーを貫く〉〈ーに反する〉〈ーとして認めな い〉②島木健作の『生活の探求』に「外へ向った青年の心が 拠り所とするーというものは」とある。〈ー禁止〉〈ー自由〉 というように副詞的に使う例もある。基本・Q原理 けんそん【謙遜】相手への配慮やたしなみを示すために自分 側を実際よりも低めて扱う意で、会話にも文章にもよく使 われる日常の漢語。「した言い方」「して拙著という 「ごーでしょう」とQ卑下・(りくだる けんたい【倦怠】飽き飽きしてけだるく動くのも厭になる意 で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈耐え難いー 感〉〈夫婦に期が訪れる〉呂尾敏雄は出発は遂に訪れ ず」で、特攻隊長として無限延期となったときの精神状態を 「目的を失って放り出されると、鬱血したが広がり、やり けんちく ぼのない不満が、からだの中をかけめぐる」と記す。ひ飽き 飽きする・飽きる・倦・む・Qうんざり・かったるい・Qけだるい・だる い げんたい【滅退】食欲・体力・精神状態などが衰える意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈精力—〉〈食欲が—する〉 〈気力がすっかり—する〉②「増進」と対立。専衰える・後退・ 衰弱・Q衰退・衰微 けんたいかん【倦怠感】心身がだるく何をするのも大儀な感 じをさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 に包まれる)②水上勉の『越前竹人形』に「突如として襲っ てくるーのようなものになやまされていた」とある。 アンニュイ・大儀・物憂い けんたん【兼担】複数の箇所を担当する意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈他学部の—教員〉編集部と営 業部とを—する〉大学教員などが使う。兼ねる・兼職・Q 兼任・兼務・兼用 けんち【見地】物事の観察や判断、あるいは議論をする際に、 その人間が拠りどころとする立場をさし、会話にも文章に も使われる漢語。〈教育的—〉〈相手の—に立ってものを考 える〉〈広い—から見る〉実際に目で見る場面ではあまり 使わない。観点・視座・視点・Q立場 けんちく【建築】家屋などの建物を造る意で、会話にも文章 にも使われる一般的な漢語。〈—費〉〈—様式〉〈高層—〉 〈—許可が下りる〉〈—基準を満たす〉「建設」「建造」に 比べ小規模な雰囲気がある。三島由紀夫の『金閣寺』に「不 均整な繊細な—は、濁水を清水に変えてゆく濾過器のよう <332> けんちくぶっ な作用をしていた」とある。Q建設・建造・建てる けんちくぶつ【建築物】建築した建物をさし、主に文章中に 用いる硬い漢語。〈巨大ーが出現する〉Q建造物・建物・ビ ル・ビルディング げんつき【原付】「原動機付き自転車」の短縮形。主として日 常会話に使う語。ひオートバイ・Q原動機付き自転車・自動二輪・ 自動二輪車・スクーター・単車・バイク・モーターバイク けんてい【献呈】恭しく差し上げる意で、主に文章に用いられる漢語。「本〉への辞〉〈恩師にーする〉「贈呈」「謹呈」以上に相手を敬っている雰囲気がある。専寄贈・謹呈・Q献上・進上・進呈・贈呈 けんてい【限定】時間・空間・数量・程度などを区切る意で、や や改まった会話や文章に用いられる漢語。〈対象を—する〉 〈範囲を—する〉〈期日を—する〉〈地域—の対策〉〈季節— の品〉小林秀雄の『私の人生観』に「現実の一切のカテゴ リカルなーを否定して、現実そのものと共鳴共感する」と ある。刂限る げんど【限度】ここまでなら可能だと認められている範囲を さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈最低—額〉へい っぱいまで〉〈常識の—を超える〉〈ものには—というもの がある〉のそのものの能力というより規則や社会常識で決 められている場合が多く、「限界」に比べ、そこに達して も能力的にはまだいくらか余力がありそうな感じがする。 限界 けんとう【検討】さまざまな面から詳しく調べて考える意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈比較—する〉〈目下 中〈対策を—する〉〈—に入る〉〈—を要する〉き吟味 「んとう【見当】おおざっぱな予想の意で、会話や硬くない 文章に使われる日常の漢語。まるでーがつかないへおお よそのーをつけるへ大体のーはついているへーが大きく 狂うぐ「予想」や「予測」と違い、そういう行為自体より 予想の結果として頭に描く先に重点がある。専展望・見込み・ Q見通し・予感・予期・予想・予測 げんどう【言動】発言や行動の意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈ーを慎む〉〈日ごろのーに注意す る〉〈不穏なーが目立つ〉②全体としてとらえられている感 じの「言行」と比べ、個々の発言や行動をさす例が目立つ。 少言行 げんどうきつきじてんしゃ【原動機付き自転車】排気量一二 五CC以下のオートパイをさし、法律用語または改まった表 現として用いる正式な感じの語。道路交通法では、普通 自動車免許で運転できる排気量五○CC以下のものをさす。 通称「原付」。ひオートパイ・Q原付・自動二輪・自動二輪車・スクー ター・単車・パイク・モーターパイク げんなま【現生】「現金」の意の俗語。〈ーを手渡す〉もキャッ シュ・Q現金 けんにん【兼任】本務のほかに他の任務を兼ねる意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈他大学の—講師〉 〈部長が委員長を—する〉兼ねる・兼職・Q兼担・兼務・兼用 けんのう【献納】社寺に物品を寄付する意で、主として文章 中に用いられる古風な漢語。〈鳥居を—する〉専寄進・Q奉納 げんば【現場】現に今何かをしている、または、物事の起こ <333> たその場所をさし、会話にも文章にも使われる日常の表 現。〈工事〉〈監督〉〈検証〉〈事件のあった〉②夏 目漱石の「坊ちゃん」に「悪い所を見届て」で撲らなくっ ちゃ、こっちの落度になる」とある。ひげんじょう・やま げんびん【現品】現に手元にあるその品物の意で、会話にも 文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈限り〉〈先渡 し〉へと引き換えに〉商店などでよく使う。Q現物・実 物・本物 けんぶつ【見物】名所旧跡や催し物などを眺めて楽しむ意で、 会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な漢語。〈東京 」〈相撲ー〉〈ー人〉〈ー客でにぎわう〉〈芝居をーする〉 〈ーに出かける〉内部に立ち入って観察する感じの「見学」 に比べ、外側から眺めて楽しむ感じが強い。見学 げんぶつ【原物】写真や模造品などに対するオリジナルの意 で、主に改まった会話や文章に使われるやや専門的な漢語。 「と見比べる」(まだーを見たことはない)現物 げんぶつ【現物】実際の物品の意で、会話にも文章にも使わ れる専門的な漢語。〈一支給〉〈取引〉〈ーを手にする〉 金銭に対して実際の物の意にも、先物も(将来受け渡す条件 で売買契約する商品)に対する現品の意にも使う。「見本」 と対立。現品・原物・実物・本物 けんぶつきやく【見物客】名所旧跡や催し物や見せ物などを 見て楽しむ人をさし、会話やさほど硬くない文章に使われ る漢語。へーでごった返す)無料の場合もあるが、「見物 人」に比べれば有料のケースが少なくない。見観客・観衆・Q 見物人・聴衆 けんやく けんぶつにん【見物人】名所や催し物や見せ物などを見るた めに集まった人をさし、会話やさほど硬くない文章に使わ れる漢語。〈大道芸の—〉〈事件現場に物見高い—が大勢集 まる〉の「見物客」よりも無料の場合が多い感じがあり、道 端の喧嘩や交通事故の現場や火事の焼け跡など、催し物以 外にも広く使われる傾向がある。観客・観衆・Q見物客・聴衆 げんみつ【厳密】厳重に取り扱い、細部までゆるがせにしな い意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一な調査〉〈一 に検査する〉〈一に言うと〉総密・精巧・精緻・精密・Q緻密・綿 密 けんむ【兼務】本務のほかに別の職務を兼ねる意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。広報課長と経理課長 とをーする〉へーを解く〉兼ねる・Q兼職・兼担・兼任・兼用 けんめい【賢明】道理に明るく賢い意で、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈な判断〉〈な対応〉(ここ はあえて無視するのが一な方法だ持って生まれた知的 能力に重点のある「聡明」に比べ、一つ一つの判断や行為に 対する評価となる例が多い。Q賢い・聡明・利口・利発 げんや【原野】自然のままの広大な野原をさし、主に文章中 に用いられる硬い漢語。〈果てしない〉〈荒涼たる〉 「原」や「野原」よりもスケールの大きなイメージがあり、 日本ではせいぜい北海道ぐらいでむしろ外国を連想させる 雰囲気がある。野・Q野原・野良・原・原っぱ けんやく【倹約】無駄な出費を切り詰める意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈一家〉〈小遣いをーしてこつこつ貯 金する〉へーして何とかやりくりする〉夏目漱石の『坊っ <334> けんやくか ちゃん』に「頼りになるのは御金ばかりだから、なるべくー して、万一の時に差支えない様にしなくっちゃいけない」と ある。金銭面について非常時や将来に備える場合に言うこ とが多い。ひ切り詰める・Q節約 けんやくか【倹約家】物や金銭の無駄を切り詰める人をさし、 会話でも文章でも幅広く使われる日常の漢語。「で無駄 な出費は一切しない」頬義語のうち非難めいたニュアン スが比較的少ない。けち・けちん坊・渋い・渋ちん・締まり屋・し みったれ・しみったれる・しわい・Q節倹家・みみっちい・吝嗇家 けんよう【兼用】一つのものを複数の用途に役立てる意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈男女—〉〈晴雨—のコー ト〉「専用」と対立。兼ねる・兼職・兼担・兼任・兼務 けんらん【絢爛】眩しいばかりにきらびやかなの意で、主に 文章に用いられる華やかな感じの漢語。〈ーたる絵巻〉〈飾 り立てたーたる文章〉谷崎潤一郎は『陰翳礼讃』で「豪華 ーな模様の大半を闇に隠してしまっている」からこそ「言い 知れぬ余情を催す」と述べた。華麗・きらびやか・はなやか けんり【権利】利益を受け、または、自由に行動する資格を さし、会話にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈ー 証〉〈ーがある〉〈ーを行使する〉〈ーを守る〉〈ーを放棄す る〉福永武彦の『風花』に「誰にでもそのーはあるだろ う。しかし多くの人は、どんなに望んでも、自分のーを用 いられないでいるのだ」とある。正式な感じの「権限」に比 べ、日常生活でよく使われる。権限 げんり【原理】物事や現象の成立を支える根本的な法則や理 論をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈相 対性ー〉〈てこのー〉〈ー原則〉〈多数決のー〉〈ーを解明す る〉夏目漱石の『草枕』に「に背いても、背かなくって も」とある。ひ原則 げんりょう【原料】製造・加工される前の材料をさし、会話に も文章にも使われる日常の漢語。〈ーが豊富だ〉〈ピニール のー〉〈ーを輸入に頼る〉「材料」と違って、抽象的な意 味合いまで広がらない。乃材料 けんりよく【権力】他人を支配し服従させる強制力をさし、 いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。「闘争 への濫用〉へを握る〉へを振りかざす〉へにおもね る〉へに立ち向かう〉への座に就く)島木健作の『癩 に「磐石のような重さをもってのしかかっている国家」と ある。権威① けんろう【堅牢】物が堅くしっかりしていて壊れにくい意で やや改まった会話や文章に用いられる便い漢語。「無比 「な箱」「な造り」Q頑丈丈夫 <335> 1 【子】親から生まれた者、年少者の意で使う古風な和語。 「はかすがい」〈を持って知る親の恩〉〈を生む〉〈 の世話に追われる〉②中勘助の『銀の匙』に「髪を油で塗り わけた人形のような」とある。修飾語を伴わずに単独で 名詞として使われる用法は特に古めかしい語感がある。 「がある」「を連れて」「を育てる」と「子供がいる」 「子供を連れて」「子供を育てる」とをそれぞれ比較すると、 いずれる「子」の例のほうが古風な表現に感じられる。た だし、「あの」「若い」「窓際の」「ランドセルを背負 った背の低い」というふうに連体修飾を伴って用いられ る場合は特に古い感じはしない。「の立場」「親との関 係」というように、「子」は基本的に「親」と対立する概念 であり、現代では「子供の立場」「親と子供の関係」とも言 えるが、「子供」は基本的には「大人」と対立する概念。 お子様・餓鬼・Q子供 【粉】穀物を挽いた時などに出来るきわめて微細な粒をさ し、会話にも文章にも使われる、単独用法ではやや古風な 和語。〈小麦—〉〈片栗—〉〈吹き芋〉〈をふく〉「パ ン—」「そば—」「さらし—」「白玉—」などの語構成要素と してよく使い、単独ではあまり用いない。「身を—にして働 く」という慣用句では必ずこの語を使う。Qこな粉末 【語】主に「単語」の意で、学術的な会話や文章に用いら れる、やや専門的な漢語。へーの意味・用法》「ーを次ぐ」 「ーを荒げる」のように、表現やことば遣いの意味で用いる こともあり、その場合はやや古風な感じが伴う。単言語・語 彙・言葉・Q単語・用語 【碁】白石と黒石に分かれて交互に碁石を並べて盤面を囲 い合い、互いの陣地の広さを競う古来の遊戯をさし、会話 や軽い文章に使われる日常の漢語。〈詰めー〉〈ーを打つ〉 「本碁」のほか「五目並べ」を含むこともある。Q囲碁 本碁 こい【濃い】物の濃度・密度が高く程度が強い、色が深い、味 が強いといった意味合いで、くだけた会話から硬い文章ま で幅広く使われる日常の基本的な和語。〈色が—〉〈一コー ヒー〉〈一液〉〈霧が—〉〈髭が—〉〈一眉〉〈味が—〉〈化粧 が—〉〈血が—〉井上靖の『小磐梯』に「紫色の着物で、 これが月光の中の女の顔を一層白く浮きたたせていました」 とある。内田百閒の『紅茶』には「紅茶の—のは妙な甘味が して咽喉の奥がさっぱりしない」とある。「薄い」「淡い」 と対立。Q濃厚・濃密・深い こい【恋】異性を慕い求める心の意で、会話にも文章にもよ く使われる日常の和語。〈初めての—〉〈燃えるような—を する〉〈老いらくの—〉〈叶ぶわぬ—〉〈ーにおちる〉〈ーに 破れる〉吉行淳之介の『驟雨』に「明るい光を怖れるよう なー」とある。夢・Q恋愛 こい【故意】そうする意思を持っての意で、改まった会話や 文章に用いられる、専門的な雰囲気の硬い漢語。「未必の ー〉へに触れる〉へに誤る〉も敢えて・強いて・Qわざと・わ <336> い ざわざ ごい【語彙】単語を何らかの観点で分類した場合に、あるク ルーブに属する語の集合という意味で、少し学術的な会話 や文章に用いられる専門的な漢語。〈調査〉〈新聞の—〉 「が豊富だ」「新出」などとして一つ一つの単語をさ すのは俗な用法。言語・語・言葉・単語・用語 いき【小粹】どことなく垢抜けしている意で、会話にも文 章にも使われるいくぶん古風な和語。〈—な身なり〉へに 振る舞う〈あだでーで〉のちょいと粋な」という意味の 語形だが、粋である程度が小さいというより、どういう点 が「粋」に相当するのか特定しにくい場合に使われる傾向 がある。みQいき・小じゃれた・洒落た・すい こいし【小石】小さな石の意で、会話にも文章にも使われる 和語。〈ーを拾って投げる〉の石ころ」のように小ばかに した感じはなく、梶井基次郎の『冬の蠅』に「さっと流れて 来る光のなかへ道の上のーが歯のような影を立てた」とあ る。ひO石ころ・砂利 こいしい【恋しい】離れている人や場所に心引かれ、その対 象を身近に欲しくなって強く思いを寄せる意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈昔がー〉ふるさとがー〉へ人ー 秋の宵〉〈火のー季節〉へー人に再会する〉②太宰治の『斜 陽』に「或るひとがー・くて、ー・くて(略)両足の裏に熱いお 灸を据え、じっとこらえているような、特殊な気持ちになっ て行った」とある。欲しがる意の「請う」と語源的につなが る。夢わしい・好き・懐かしい こいする【恋する】恋をする意で、主に文章に用いる古風な 和語。〈—乙女〉(ひそかに—)瀧井孝作の『結婚まで』は、「信一は、笹島さんを彼女をー・している」と始まる。「恋う」が「乞う」や「請う」と同源で「欲しがる」という意味合いがあるため、「愛する」と違ってもっぱら恋人時代までに用い、結婚してすでに自分の手に入れた妻や夫に対して用いると違和感がある。なお、「恋をする」の形は会話にも使い、古風な感じもない。Q愛する・慕う・好く・惚れる の相手をさし、会話にも文章にも使われるいくぶん古風な 和語。へーどうし〉へーができる〉へーに逢う〉へーと別れ る)武者小路実篤の『お目出たき人』に「地球が太陽のま わりを廻っているようにーのまわりを廻っているより仕方 がないね」とある。未婚の男女の場合に用い、一方または 両方が既婚者である場合、現在は「愛人」が普通。結婚後に 他の異性に心を移す場合は「愛人」となるが、その人が独身 であればその愛人側から相手をこの語で呼ぶこともある。 丸谷オーの『笹まくら』に「昔のーで、しかも命の恩人であ る女の死を告げる、黒い枠の葉書」とある。俗っぽい「彼 氏」「彼女」より品がある。Q愛人・好い人・彼女・彼・彼氏 いぶみ【恋文】相手を恋しく思う気持ちを訴える異性宛の 手紙をさし、会話にも文章にも使われる古めかしい和語。 〈ひそかにーを渡す〉高田保の『河童ひょうろん』中の 「恋文」という一編に「恋人は捨てきれるが、はちょっと 捨てきれぬものだ」とある。ゆラブレター コイン「硬貨」の意で、会話やさほど硬くない文章に使われ る外来語。〈投入ロ〉〈ロッカー〉〈穴のあいた〉 <337> 硬貨·銭 コインランドリー硬貨を入れると作動する洗濯機・乾燥機 を備えた店をさす和製英語。近所にーができる) 「号】文筆家や芸術家などが当人をさして本名以外に用 いる名前の意で、会話にも文章にも使われる、やや古風な 漢語。〈ーを付ける〉〈ーで呼ぶ〉の俳句の世界では特に 「俳号」という。商人の用いる「屋号」もこの類。Q雅号・ 芸名・筆名・ペンネーム うあつてき【高圧的】相手を上から威圧するような態度の 意で、会話にも文章にも使われる硬い感じの漢語。へな言 い方)へな態度に出る)Q頭こなし横柄尊大高飛車 「うあん【考案】新しい方法や道具・品物などを考え出す意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一者〉 〈新規—〉〈斬新な製品を—する〉马工夫 うい【好意】親愛感・親切心の意で、会話でも文章でも使わ れる日常の漢語。〈ーを抱く〉〈ーを寄せる〉へーから出た 行動夏目漱石の『坊っちゃん』に「教頭は全く君にーを 持ってるんですよ」とある。厚意 こうい【厚意】思いやりの意で、改まった会話や文章に用い られる丁重な感じの漢語。〈相手の—に甘える〉〈—に報い る〉(ご—に感謝する〉(せっかくの—を無にする)同じ ように親切心をさす場合、「好意」以上に深い気持ちが感じ られる。少好意 うい【行為】意思を持って行うことをさし、改まった会話 や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈不法〉〈背信 ー〉〈寄付ー〉〈自発的なー〉〈憎むべきー〉三島由紀夫の こういん 「金閣寺」に「空白をめがけて滲み入る水のように、の勇 気が新鮮に湧き立った」とある。ちょっとした動作からある 態度を示すような抽象的なふるまいに至るまで幅広い対象 を含む。行い・活動①・Q行動・動作・ふるまい 「うい【合意】複数の人や組織の意見が一致する意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー文書〉〈ー事項〉 〈ーが得られる〉〈双方歩み寄ってーに達する〉〈ーに基づ く〉「賛成」「同意」が「一方が他方に○○する」という 形で使うのに対し、この語は両者を主語にして「双方が一 する」「AとBとがーする」という形で両者を対等に扱う。 ヲコンセンサス・賛成・Q同意 「ういう『斯ういう』「このような」の意で、会話にも文章に も使われる和語。〈事情だ〉へ方針で臨む〉へ場合に は〉の「このような」と「こんな」の間の丁寧さ。しかかる・ かような・Qこのような・こんな こういん【工員】工場で労働する従業員をさし、会話にも文 章にも使われる、少し差別意識の感じられる古風な漢語。 〈多数のーを抱え、工場のやりくりが大変だ〉職工 ういん【鉱員】職業差別の意識が感じられるとして使用を 控えるようになった「坑夫」「鉱夫」に代わって用いられる ようになった比較的新しい漢語。刂坑夫・Q鉱夫 こういん【勾(拘)引】召喚に応じない被告人・被疑者・証人な どを訊問続のため警察や裁判所まで強制的に連れて行く意 で、専門的な会話や文章に用いられる法律上の用語。証人 を法廷にーする)ひしょっ引く・Q連行 こういん【強引】普通なら困難なことを結果や相手の気持ち <338> こうう を無視して断行する様子をさし、会話にも文章にも使われ る漢語。〈1な手段〉〈1な勧誘〉〈1に取り立てる〉〈1に 押し通す〉無理やり うう【豪雨】長く降り続く激しい大雨をさし、主として文 章に用いる漢語。〈集中—〉〈ーによる被害〉永井龍男の 『風ふたたび』に「夜中のーが、重苦しい梅雨空を、どうや ら切り放したらしい」とある。単なる「大雨」より災害の危 険を感じさせる連想が強い。大雨 こううん【幸(好)運】運に恵まれることをさし、会話にも文 章にも広く使われる漢語。〈一児〉〈一に恵まれる〉〈一に 見放される〉〈一の女神がほほえむ〉〈一をつかむ〉〈一に も一命をとりとめる〉②永井荷風の『ふらんす物語』に「傘 を所持して居たーに思当る」とある。「不運」「悲運」と対 立。刂僥倖・つき・Qラッキー こうえい【後裔】「末裔」の意で主に文章中に用いられる漢 語。〈上杉家の—と称する〉〈真田家の—につらなる〉夏 目漱石の『坊っちゃん』に「是でも元は旗本だ。旗本の元は 清和源氏で、多田の満仲のだ」とある。ひ子孫・ま」・Q 末裔 こうえき【交易】主として物品を交換する商いをさし、主と して文章に用いられる硬い漢語。福沢論吉の『学問のす すめ』に「外国ーの事始り」とある。中村正直訳の『西国立 志編』に「学問をーして、知識を開き」とあるように、商品 に限らず「貿易」よりも幅広い対象に用いた。貿易 うえん【口演】人前で話芸を演ずる意で、やや改まった会 話や文章に使われる少し古風な漢語。落語や講談の 講演,Q公演 うえん【公演】公開の席で音楽や演劇を演ずる意で、改ま た会話や文章に用いられる漢語。〈劇場—〉〈地方—〉 ミュージカルの—〉の「上演」に比べ、劇場や出演者に重 点を置いた発想の表現。講演・口演・Q上演 こうえん【公園】市民の憩いの場として設けられる公共の庭 園をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。へのぶ らんこ〉へを散歩する》林芙美子の『放浪記』に「玩具 箱をひっくり返したような—の中」とある。「国立」のよ うに、自然保護や観光・保養などの目的で指定された広大な 地域をもさし、その場合はやや専門的。ひ遊園地 こうえん【講演】会場に集まった主に不特定多数の人々に一 定の話題で話をすることをさし、会話でも文章でも幅広く 使われる漢語。〈連続—〉〈本日の記念—会〉〈熱のこもっ た—〉〈財界から講師を招いて景気回復について—しても らう〉②「講義」に比べ、単発でもよく、履修単位にはなら ず、内容も学術的なものに限らない。马口演・公演・Q講義 こうおん【轟音】鳴り響く重く大きな音をさし、やや改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈ーを立てる〉へーが響き 渡る)柴田翔の『われら戦友たち』に「交差点をめぐる町 のーは、聴覚をひきさくような激しさで耳に響き」とある。 み爆音 うか【効果】その作用による好ましい方向の結果をさし、 会話にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈相乗—〉 〈大きな—がある〉〈—が上がる〉〈目に見える—は期待薄 だ〉の「音」「舞台」のように、視聴覚に訴える装置や <339> 演出などをさす場合は専門的。Q効き目結果効能効用 こうか【降下】飛行機が高度を下げたり、人間が地上に降り 立つために飛行機からパラシュートで飛び降りたりする意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈急—〉 〈一部隊〉〈落下傘で—する〉落ちる①・墜落・転落・Q落下 こうか【高価】値段が高い意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈な品〉〈な万年筆〉②「安価」「廉価」と 対立。高い② こうか【硬貨】金属で造った貨幣をさし、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈百円—〉〈ーを鋳造する〉金 貨・銀貨・銅貨などの総称。「紙幣」と対立。Qコイン・銭 こうか【豪華】はなやかでぜいたくな感じを意味し、会話で も文章でも広く用いられる漢語。〈絢爛れー〉〈ー客船〉 〈ーな衣装〉〈ーな披露宴〉太宰治の『斜陽』に「めずらし いもの、ーなもの、そんなものは望むべくもなかった」とあ る。ヨゴージャス こうかい【後悔】すでに終わったことをやらなければよかったと悔しく思う意で、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。〈ー先に立たず〉〈日ごろの怠慢をーする〉〈大枚をはたいて健康器具を買ったことをーする〉〈あれは若気の 至りで今ではーしている〉安部公房の『他人の顔』に「は げしいーにさいなまれる」とある。帰いる・Q悔やむ・反省 こうかい【更改】制度や契約などの約束事の内容を変更する 意で、改まった会話や文章に用いられる、専門性の高い漢 語。〈契約をーする〉〈規約をーする〉専書き換え・Q更新 こうがい【口外】内密にしておくべきことなどを他人にしゃ こうかん べる意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 無用〉へーをはばかる〉(口止めされていたのにうっかりー する)ほとんどが意図的であるが、「他言」よりも、口 が滑る場合を含む感じがある。ひ他言 こうがい【郊外】都心や市街地の周辺に位置する地域をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈東京—〉へに引っ越す〉 小沼丹の『寓居あちこち』に「私の居る深見権左衛門の家 から電車の駅まで歩いて十五分程である」とある。「近 郊」に比べ、田畑や林などが残っている雰囲気がある。刂近 郊 ごうかく【合格】試験や各種の選考に受かる意で、会話にも 文章にも広く使われる日常の漢語。〈一点〉〈一ライン〉 〈一通知〉〈一祝い〉〈入学試験に一する〉②太宰治の思い 出『一いい成績ではなかったが、私はその春、中学校へ受 験してーした」とある。「不合格」と対立。及第・通る こうかつ【狡猾】ずるい意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈な手口〉〈に策略をめぐらす〉佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「義理も何も心得ぬー漢だ」とある。「ずるい」「こすい」よりも悪質なイメージが強い。すこすい・すっ辛い・ずるい・ずる賢い・Q悪賢い こうかん【交換】互いに取り替える意で、会話にも文章にも 使われる日常の漢語。〈物々—〉〈—条件〉〈部品の—〉〈道 具を—する〉〈役目を—する〉②「エールの—」「名刺を— する」「意見を—する」のように、互いにやりとりする意で も使う。夢わる・取り替える こうかん【公刊】書籍などを出版して世間に広める意で、改 <340> こうがん まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈学術書をーす る〉の「出版」や「刊行」に比べ、世の中に知らせる意味合 いが強い。ひQ刊行・出版・上梓・発刊・発行 うがん【筆丸】精子をつくる男性の生殖腺の意のやヤ専門 的な漢語。学術的な文章などで「金玉」をさして用いられ る正式な感じの語。卩一物・陰部・隠し所・下半身②・下腹部・局 所・局部・Q金玉・性器・生殖器・恥部 「うがん【紅顔】血色がよく若々しい顔をさし、主として文 章中に用いる、やや古風な漢語。「の美少年」「を輝か す」「辻邦生の『安土往還記』に「を輝かしていた若者」 とある。性別や年齢に関する使用制限は明確でないが、少 なくともこの語を中年以上の人物の形容に用いる習慣はな かった。「紅」は若い人の血色のよさを暗示するため、まず は若々しい女性の美しい容貌をさし、男性であっても初々し い少年のいかにも健康そうな顔を形容するのに用いてきた。 「可憐な」とくれば「美少年」か「美少女」と続くのが普 通であり、顔立ちがいくら整っていても老人には使いにく く、赤みを帯びた頑固おやじの顔は「赤ら顔」として区別さ れる。 うかん【強姦】暴力や脅迫により、または相手の意識のな い状態で、一方的に女性と性交渉を行う意の露骨な漢語表 現。〈未遂事件〉への罪に問われる〉Q暴行・乱暴②・レ イブ うかん【合歓】間接的に「性交」をほのめかす古めかしい 漢語表現。広くは、二人の人間が喜びを共にする意。そ の一部として、男女が一緒に寝る意が含まれ、自然に肉体 の結合が暗示される。専営み・エッチ・関係②・交合・交接・情交・ 情を通じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・契 る・同衾・共寝・寝る②・懇ろになる・ファック・深い仲になる・房事・ 枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 こうがん【傲岸】驕りたかぶって謙虚さに欠ける意で、主と して文章に用いられる古風で硬い漢語。〈見るからにーな 表情〉人を人とも思わぬーな態度〉Q驕慢・高慢・傲慢・ 高慢ちき・尊大・不遜 こうがんむち【厚顔無恥】恥知らずで相手にいくら迷惑をか けても気にかけない意で、改まった会話や文章に用いられ る、やや古風で硬い感じの漢語表現。まさにーとはこのこ とだ)Q厚かましい・図々しい鉄面皮・恥曝し・恥知らず・破廉恥 こうき【後記】書物や雑誌などの「あとがき」をさし、主に 文章に用いられる漢語。編集」)Q後書き・跋・跋文 「ラき【好機】物事を行うのに適している、自分側に有利な 機会の意で、主として文章に用いられる、いくらか古風な 漢語。〈願ってもない〉へーが到来する〉へーを迎える〉 へーを逸する〉と機会・Qチャンス 「うぎ【交誼】親しい交際の意で、主として改まった文章中 に用いられる硬い漢語。〈ーを結ぶ〉〈ーを受ける〉〈よろ しくごーのほどお願い致します〉乃好誼 うぎ【好誼】好意による交際の意で、改まった手紙や文章 中に用いられる硬い感じの漢語。〈日ごろのーに感謝する〉 〈永年のごーに報いる〉み交誼・Q厚誼 こうぎ【厚誼】心のこもった深い交際の意で、改まった手紙 や文章に用いられる丁重な感じの漢語。「年来のごーに応 <341> えるく〈格別のごーにあずかり深謝申し上げます〉及交 誼・Q好誼 こうぎ【抗議】相手側の不当な処置や言動に対し強く反対の 意思を表明する意で、会話にも文章にも使われる漢語。へー 集会)〈当局に—する〉〈厳重に—を申し込む〉へーに押し かける)②川端康成の『千羽鶴』に「実に簡単なーだが、実 に真実であった」とある。「苦情」より激しい行動を思わせ る。刂異議 こうぎ【講義】大学などで学術的な内容を説明することをさ し、会話でも文章でも広く使われる漢語。〈科目〉〈大学 のー〉〈哲学のーをする〉〈ーを聴く〉尾崎士郎の『人生 劇場』に「力のない雨だれの音のような退屈なー」とある。 大学などで履修している多くの学生を相手に学問的な内容 を伝授するという雰囲気が強い。弔講演・Qレクチャー 「うきゅう【恒久】「永久」に近い意味で用いる、硬い漢語的 文章語。〈間に合わせでない」的な設備〉〈1の平和〉何 時までも・永遠・Q永久・永劫・とこしえ・とこしなえ・とわ・悠遠・悠久 こうきゅう【考究】物事の道理や真理を明らかにするために 深く考える意で、主として文章中に用いられる硬い漢語。 〈文体分析の方法についてーする〉〈永年の—の成果を公に する〉の「研究」のうちの主に「考察」部分に相当する。 研究・研鑽・Q考察 ごうきゅう【号泣】大声を上げて泣く意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈遺体に取りすがってーする〉〈師 の突然の悲報に接しーする〉の中河与一の『天の夕顔』に 「身もだえし、声の限りでーしているあの人」という例があ こうけい る。号哭・慟哭 うきょう【好況】景気がよく経済活動が活発な意で、改ま った会話や文章に用いられる硬い漢語。〈業種〉へを呈 する〉へに転ずる〉への波に乗る〉の不況」と対立する 語。「活況」より抽象的。活況・景気・Q好景気 こうくう【高空】空の高い部分をさし、主として文章に用い られる漢語。〈ーを飛び続ける〉「低空」と対立。马上空 こうぐう【厚遇】手厚いもてなしの意で、改まった会話や文 章に用いられる硬い感じの漢語。〈ーを受ける〉具体的・ 物質的な感じの強い「優遇」に比べ、精神的な面に重点があ る。「冷遇」と対立。優遇 こうくうき【航空機】人を乗せたり貨物を載せたりして空中 を移動する乗り物の総称として、改まった会話や文章に用 いられる、比較的新しい、やや専門的な漢語。「の運行 への操縦は特に離陸と着陸に神経を遣う」飛行機のほか 飛行船・気球・グライダーなどを含むが、通常は旅客機をさ し、その場合は大型機を連想させる。飛行機 こうけい【光景】一場面として外から見た人間や場所の一瞬 のありさまをさし、改まった会話や文章に用いられる、やや 硬い感じの漢語。〈街角の—〉〈見慣れた—〉武田泰淳の 「風媒花」に「大活躍の—が、なつかしくも幻燈画のように、 彼の脳裡を去来する」とある。「会場でタンカーの炎上する ーを目撃した」「従業員が一列に並んで叱られているーを 目にした」のように物事の起こっているようすをさす例も 多い。ひ景色・眺め・Q風景 こうけい【合計】いくつかの数量を加える意、また、その結 <342> こうけいき 果の数量をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の漢語。〈金額〉(ーでちょうど一万円になる) 〈収入をーする〉全体をいくつかに分けて、ある範囲だけ 合計する場合は特に「小計」といって区別することもあり、 その場合これは小計の和に当たる。ひ総計 こうけいき【好景気】景気がよい意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ーに沸く〉(ようやくーに向かう)谷崎潤 一郎の『鮫人』に「戦争のお蔭で東京にはーが来た」とあ る。「不景気」と対立。「活況」より抽象的で、「好況」より 日常的な語。刂活況・景気・Q好況 こうげき【攻撃】戦争や試合で相手側を攻めることをさし、 会話にも文章にも使われる日常の基本的な漢語。〈先制—〉 〈一斉—〉〈一を開始する〉〈激しい—を加える〉〈一の手を 緩める〉〈敵の—にさらされる〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「弁じ立てて置いて、自分の方を表向き丈立派にして夫 からこっちの非を—する」とある。「守備」と対立。乃攻め る うけつ【高潔】人格や行動などが気高くけがれを知らぬ意 で、主として文章に用いられる古風で硬い漢語。「の士 「な人物」武田麟太郎の『銀座八丁』に「人格は」と伝 えられ」とある。潔い・Q清廉・廉潔 こうけん【貢献】社会や組織のために力を尽くし、それだけ の結果を残す意で、会話にも文章にも使われる漢語。「度 が高い」〈社会にーする〉〈チームの勝利にーする〉②「寄 与」と同様、あくまで結果に言及しているが、「寄与」に比 べ、そのために力を尽くす過程が意識に上りやすい。ひQ寄 与・尽力 うげん【公言】人前でおおっびらに言う意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ーを慎む〉へしてはばから ない)Q広言・高言 うげん【広言】大げさなことを言う意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ーを吐く〉〈斯界の権威とーして はばからない〉専公言・Q高言 うげん【高言】偉そうなことを口走る意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ー癖がある〉〈日ごろのーに似 ず〉公言・Q広言 こうげん【高原】高地にある平原をさし、会話にも文章にも 使われる漢語。〈野菜〉〈空気のきれいなーの保養地〉 住宅地を思わせる「高台」に対し、別荘地の連想が強く、い くぶん詩的な雰囲気がある。室生犀星の『杏っ子』に「月さ えも出た北信濃のーは、純白な紙の中を歩くようで」とあ る。ひQ高地・台地・高台 「口語」現代語の文法のきまりに則して表現する言語 体系を意味し、会話にも文章にも使われる漢語。「文 文法」文語」と対立する。まれに「話しことば」の 意味で使うこともある。Q口頭語・話し言葉 こうご【交互】二人が互いに交代しながら繰り返し行う意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。二人がーに発言す る〈ーに担当する〉の「代わる代わる」に比べ、一回代わ るだけでなく何回かずつ行う感じが強い。乃代わりぼんこ・Q 代わる代わる こうこう【口腔】口から咽喉までの間の空間をさし、学術的 <343> な会話や文章に用いられる専門的な漢語。「衛生」医学 用語としては「こうくう」。谷崎潤一郎の『細雪』に「分厚 い唇の肉を一層分厚くさせつつ口をOの字に開けて、飯の かたまりを少しずつーへ送り込みながら」とある。Q口・ 口元 「うごう【交合】文章で間接的に「性交」を意味する漢語。 へーを重ねる②「交接」に近い語感をもつが、他の意味で は用いないので、婉曲を感じの程度はそれより劣る。 「媾合」とも書く。冴営み・エッチ・関係②・合歓・交接・情交・情を 通じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・契る・同 衾・共寝・寝る②・懇ろになる・ファック・深い仲になる・房事・枕を 交わす・交わる・やる③・夜伽 こうこく【抗告】裁判所の決定や命令に対する不服を上級裁 判所に申し立てることをさし、改まった会話や文章に用い られる専門的な硬い漢語。〈即時—〉〈—訴訟〉ひ控訴・Q上 告・上訴 こうこく【広告】世間に広く知らせること、特に商業的な宣 伝をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の漢語。〈ーコピー〉〈誇大〉〈ーを出す〉〈新聞に謝 罪ーを載せる〉「宣伝」は行為に重点があり、この語はも ののイメージが強い。林芙美子の『放浪記』に「ロ入屋の高 いー塔が、難破船の信号みたように風にゆれていた」とあ る。広宣伝 こうこく【号哭】声を上げて激しく泣く意で、主に文章に用 いられる硬い漢語。「一人になってーする」中島敦の『李 陵』に「南に向ってーした」とある。号泣・Q慟哭 こうさく こうこつ【恍惚】心を奪われてぼうっとする意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーのまなざし〉〈名演 奏にーとなる〉老齢のためにぼけて正常な判断ができな い状態の意でも使われ、有吉佐和子に『恍惚の人』と題する 小説がある。うっとり うさ【考查】学校などで実施する学力を調べる試験の意で、 主として文章中に用いる、古風で正式な感じの硬い漢語。 〈期末—〉の「人物—」のように、考え調べる意でも使う。 ヌQ試験・テスト こうさ【交差(叉)】複数の直線上のものが一点で交わり、十 文字または筋交いになることをさし、会話にも文章にも使 われる漢語。〈一点〉(立体—〉〈道路が—する〉永井荷風 の『瀾東綺譚』に「一筋は白髭橋の方へ走り、それとーして 浅草公園裏の大通が言問橋を渡る」とある。交錯 うざ【講座】体系的に編成された講習会や放送番組などを さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈公開—〉〈文章—〉 〈ーを開く〉「ーもの」として、一定の目的で編集される 出版物のシリーズをさすこともある。ひ講義 こうさい【交際】人と人とが互いに行き来したり親しく話し 合ったり一緒に行動したりする意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ー費〉へー範囲が広い〉〈男女間のー〉へーを 始める〉〈親しいーを続ける〉夏目漱石の『こころ』に 「先生のーの範囲の極めて狭い事を知っていた」とある。 付き合い こうさく【交錯】複数のものが不規則に入り交じる意で、い くぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。〈光のー <344> こうよっ 〈音がーする〉〈期待と不安がーする〉森田たまの『もめ ん随筆』に「彼女の心にはいま聞いてきた教師の言葉と、そ れを反ばくする自分の言葉とが、おさのようにーした」と ある。ひ交差 こうさつ【考察】物事の本質を明らかにするために学問的に 考えを進める意で、やや改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈敬語に関する一〉〈原因を—する〉〈鋭い—を加 える〉〈—を重ねる〉〈—を深める〉〈両者の複雑な関係に ついて—する〉り研究・研鑽・Q考究・考慮 こうさん【降参】戦いに敗れて敵に従う意で、会話や軽い文 章に使われる古風な漢語。〈白旗を掲げてーする〉〈敵にあ っさりーする〉現代では、「へとへとになって途中でーす る」「孫にねだられてとうとうーする」のように、日常生活 で、音を上げる、相手の要求を聞き入れる、といった意味 合いの俗っぽい比喻的用法が多い。児屈服・Q降伏・投降・参る ② こうさん【公算】ある事態の実現する確実さの程度を意味し、 改まった会話や文章に用いられる専門的で硬い漢語。〈勝利 を収めるーが大である〉〈今国会で成立するーが大きい〉 「確率」に比べ、数字で示しにくいものについて用いること が多く、単なる見込みとして「大きい」「小さい」「ない」な どとおおざっぽに表す。醤確率 「うじ【公示】公の機関が一般の人に広く知らせる意で、会 話にも文章にも使われる正式な感じの漢語。〈日〉〈土地 の価格〉②衆議院議員の総選挙や参議院議員の通常選挙 の場合は「告示」でなく特にこの語を用いる。Q公表公 布·告示 こうじ【小路】幅の狭い道をさし、会話にも文章にも使われ る、やや古風な感じの和語。〈袋ー〉へーを入ってしばらく 行った右側〉の「こみち」の転。「大路」と対立。両側に 家が並んでいる印象が強い。上野の「広」やユトリロの 絵で名高いパリはモンマルトルの「コタン」など固有名 詞となる例も多い。裏通り・裏町・Q小道・横町 こうじ【工事】土木や建築の作業をさし、会話にも文章にも 使われる日常の漢語。《道路—〉〈—現場〉〈—中〉〈—を請 け負う〉「工務」より具体的。夏目漱石の『吾輩は猫であ る』に「前髪が堤防—の様に高く聳えて」という比喩表現の 例が出る。ひエ務 「うし【合嘴】「接吻」の意の古めかしい漢語。高田保の 「接吻考」に「、という言葉もあるそうだが」とあり「ぎ こちのないセップンはこの尖った感じで、セキセイインコ に似ている」という。きキス・キッス・口吸い・口づけ・接吻 こうしき【公式】所定の手続きを経て公に認められたの意で、 会話にも文章にも使われる、改まった感じの漢語。「行 事」〈ー発表〉〈ー記録〉〈政府のー見解〉〈ーの場〉〈ーの 訪問〉の常識的な「正式」に比べ、明確に規定された感じが 強い。「非公式」と対立する語。Q正式・本格的・本式 こうしゅうよくじょう【公衆浴場】一般大衆用の入浴施設を さし、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。 〈市営のー〉〈一の施設がある〉公の施設も含み、安い料 金で利用できそうな雰囲気がある。横町の風呂屋といった 趣は稀薄。Q銭湯・風呂屋・湯屋 <345> うしよう【高尚】学問や技芸において知的で品がある意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈な趣味〉へな 学問〉夏目漱石の「坊ちゃん」に「な精神的娯楽を求 めなくてはいけない」とある。専気高い上品・典雅 こうしょう【交渉】要求が通ることをめざして相手と掛け合 う意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈先方と直 接ーする〉〈ーに入る〉〈ーが長引く〉〈ーが決裂する〉〈ー がまとまる〉②野間宏の『暗い絵』に「最近父親が軍部とー があるようになってから、彼はほとんど父親のアパートに は寄りつかない」とあるように、交際の意に用いることも ある。な折衝 こうじょう【工場】機械を用いて製品を作る施設をさし、会 話から文章まで幅広く使える日常的な漢語。〈排水〉〈一 見学〉〈整備〉〈一で製造する〉德永直の『太陽のない 街』に「疲労した巨大な河馬のように横たわった大ー」とあ る。古風な「こうば」よりも現代生活に密着した語で、イメ ージとしては、「こうば」より規模が大きく近代的な設備が 整っている感じがある。ふこうば こうじょう【交情】交友の親しみの意で、改まった文章など に用いる漢語。〈ーを新たにする〉〈ーを深める〉専厚情 こうじょう【厚情】深い思いやりの気持ちの意で、改まった 手紙や文章に用いられる丁重な感じの漢語。〈ーにすがる〉 〈ーをたまわる〉〈ごーに感謝する〉専交情 うじょう【向上】現状よりも技術・性能・程度などが望まし い方向に進む意で、会話にも文章にも使われる漢語。へー 心〉の跡が見られる〉〈品質がーする〉〈生産性のーを こうじん めざす)「低下」と対立。上達・Q進歩・発達 ごうじょう【強(剛)情】頑なに自分の考えを貫く意で、会 話にも文章にもよく使われる日常の漢語。〈な男〉へを 張る)夏目漱石は『吾輩は猫である』で「さえ張り通せ ば勝った気で居るうちに、当人の人物としての相場は遥か に下落して仕舞う」と喝破している。意地っ張り・依怙地に 片意地・頑な・Q頑固・強情っ張り こうじょうっぱり【強情っ張り】強情な性格の意で、くだけ た会話に使われる俗っぽい表現。〜で梃子でも動かない 回「意地っ張り」以上に扱いに困る感じがある。「ごうじょ っぱり」ともいう。意地っ張り・依怙地・片意地・頑な・頑固・ Q強情 こうしょく【好色】人並み以上に異性に対する欲望にとらわ れる意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一家〉へな 男〉福原麟太郎は『好色の戒め』と題する随筆の中で、サ マセット・モームの『芝居』について、「文学をつくるな ら、野暮な真似はよせ、といって、御手本に一つ書いて見せ たのではないか」と推測している。及色好みすけべえ こうしん【更新】新しいものに改める意で、やや改まった会 話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈記録をーす る〉〈運転免許証のー手続きに入る〉の「更改」と違って交 渉などは連想させず、日付その他の数字が変更されるイメ ージがある。少Q書き換え・更改 うじん【巷塵】「俗塵」の意で、文章中に用いられる古風で 硬い漢語。〈ーを避ける〉中山義秀の『厚物咲』に「に 埋れつくした瀬谷の身にとっては」とある。ちまたの汚れ <346> こうじん の意から。 黄塵・紅塵・Q俗塵 うじん【黄塵】「俗塵」の意で、文章中に用いられる古風で 硬い漢語。〈一のただなかに暮らす〉空が黄色に見えるほ どの激しい土ぼこりの意から。巻塵転・紅塵・Q俗塵 「うじん【紅塵】「俗塵」の意で、文章中に用いられる古風で やや硬い漢語。〈ーに遊ぶ〉室生犀星の『杏っ子』は「こ の憐れな親子はくるまに乗り、くるまを降りて、街に出て 街に入り、半分微笑いかけてまた笑わず、一の中を大手を 振って歩いていた」として閉じられる。道路に舞い上がっ た土ぼこりが日を浴びて赤く見えるところから。単巷塵 黄塵・Q俗塵 こうしんこく【後進国】進歩の遅れている国の意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈ーに対する援助〉の開発途上 国」や「発展途上国」に比べ、いかにも遅れているという感 じがあるため、マイナスイメージが嫌われ使用を控える傾 向にある。開発途上国・発展途上国 こうずい【洪水】川の水が溢れ出す意で、会話にも文章にも 使われる日常の漢語。〈警報〉〈に見舞われる〉気象 学の専門語としては、河川の水量が増えて警戒水位を超え る意という。「人の—」「情報の—」など単に「あふれる」意 の比喻的用法もある。ひ大水出水水害氾濫 こうせい【公正】公平で正しい意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い感じの漢語。〈取引委員会〉(な裁判) 〈処分にーを期する〉〈判断にーさを欠く〉②「公平」「平 等」に比べ、それが正当であると主張する感じが強い。Q 公平・平等 「うせい【構成】各部分が集まって一つの統一体をつくって いるものの意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈メン バー〉〈要素〉〈委員会の〉〈紙面の〉〈社会をーす る〉復雑に組み合わさっている家屋の「構造」と違い、家 庭を築いている家族は個人個人が独立しているので「家族 」という。文章の場合は「構造」とも「構成」ともいえる が、がっちりと組み立てられた感じの「文章構造」に比べ、 「文章」は、全体をどのように分けてどの部分を先に述 べ、どういう例を用いてどう展開するかといった、比較的ゆ るやかで平面的な問題を連想させやすい。刂機関・機構・組み 立て・Q構造・仕組み・組織 こうせい【合成】二つの元素から化合物を作り出すなど、複 数の物を一つにする意で、会話にも文章にも使われる、い くぶん専門的な漢語。〈樹脂〉〈皮革〉〈繊維〉〈写 真〉刂化合・結合・混合・結びつき・Q融合 こうせき【功績】秀でたことを成し遂げた手柄をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈最大の—〉〈大きな—を残 す〉〈優れた—を讃ぇる〉〈大きな—をあげる〉回ある国 家・組織・団体などにとって利益となる成果という視点を感 じさせる傾向がある。巻績・功労・殊勲・Q手柄 こうせつ【交接】改まった文章などで時に間接的に「性交」 を意味する、客観的な感じの漢語。(一)に及ぶ)広く「交 際」を意味し、男女間の交際に限定し、さらに肉体関係の交 わりをさすのは、この語の一用法に過ぎないから、べたべ たした感じのない婉曲な表現。ちなみに、木山捷平の 「処女」に「県庁差し廻しのベテラン講師ともなれば、言葉 <347> の使い方が上品で、という言葉はうまく考え出したもので、少しも淫猥な感を与えないのであった」とある。夢営 み・エッチ・関係②・合歓・交合・情交・情を通じる・Q性交・性行為・性 交渉・性的行為・セックス・抱く②・契る・同衾・共寝・寝る②・懇ろに なる・ファック・深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・やる③・夜 伽 うせん【光線】光の筋をさし、会話にも文章にも使われる 漢語。〈太陽ー〉〈可視ー〉〈まぶしいー〉〈ーが射し込む〉 円地文子の『妖』に「すり硝子のような半透明な梅雨時の ー」とある。ヨ光 「うぜん【公然】広く知れ渡っている、包み隠さない意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一の事実〉〈一の 秘密〉〈一と言いふらす〉き大っびら 「うそ【控訴】第一審の判決を不服として、上級裁判所にそ の取り消しや変更を申し立てることをさし、改まった会話 や文章に用いられる専門的な硬い漢語。「審」〈一棄却〉 ひ抗告・上告・Q上訴 「うそう【抗争】対立したり逆らったりして激しく争う意で、 改まった会話や文章に用いられるやや専門的な漢語。〈派閥 間のー〉〈武力ーに発展する〉〈暴力団どうしのー〉児係争・ 戦争・Q紛争 こうそう【構想】全体の計画を実行の手順などを含め具体的に考える意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈雄大なー〉〈論文のーを練る〉〈新しい事業のーを温める〉 小林秀雄の『モオツァルト』に「ーは、宛も奔流の様に、 実に鮮やかに心のなかに姿を現します」とある。 刂青写真 こうたい 企画・Q計画・プラン・方針 「うぞう【構造】物事の内部がどのように組み立てられてい るかといった部分部分の相互関係をさし、会話にも文章に も使われる漢語。〈船の—〉〈社会の—〉〈上の欠陥〉〈分 解して機械の—を調べる〉小林秀雄の『私小説論』に「こ の秘密の—は少なくとも原理的には甚だ簡明なのである」 とある。文章については「構成」も「構造」も両方使える が、「文章—」のほうが複雑に組み合わさっている雰囲気が あり、組み立て直すのが大変そうな雰囲気が強い。「家屋の 「体の—」のように、各部が複雑に組み合わさって全体 ができあがっている対象には「構造」を用い、「構成」にす ると各部がばらばらで統一的な機能を果たさないような感 じになってしまう。「構造」の場合は各部が相互に入り組ん でいるため、解きほぐして組み立て直すのが難しい感じで、 「「改革」も容易ではない。「機関・機構・組み立て・Q構成・仕組 み・組織 こうそく【拘束】権力や約束によって行動の自由を奪う意で、 会話にも文章にも使われる漢語・〈力〉〈時間が長い〉 〈身柄をーする〉〈資金にーされる〉回福永武彦の『草の花』 に「せめて僕の内部だけは、戦争にーされずに自由である 他にしようがないじゃないか」とある。「束縛」以上に締め 付けがきつい感じがある。監禁・束縛・閉じ込める・软禁・幽閉 こうたい【後退】後ろに下がる意、勢力が衰える意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈二歩ーする〉〈前線からーす る〉〈学力がーする〉〈景気がーする〉〈改革がむしろーし た印象を受ける〉「前進」と対立。専衰える・減退・衰退 <348> こうたい うたい【交替】仕事や居場所などが入れ替わる意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈三—制の勤務〉へ—で見張り をする〉母音—は専門語。専替わる・交代 こうたい【交代】別の人に引き継ぐ意で、会話にも文章にも 広く使われる日常の漢語。〈世代—〉〈選手—を告げる〉 〈係が—する〉〈途中で—する〉〈次の人と—する〉③三島由 紀夫の『潮騒』に「若者たちは蛸壺の縄を滑車にかけて—に 引く」とある。専代わる・Q交替 「うたく【光沢】「つや」に近い意で、やや改まった感じの会話から硬い文章まで幅広く用いられる漢語。〈ーが出る〉 〈ーがある〉〈磨いてーを出す〉松本侑子の『植物性恋愛』 に「ぬめぬめと重いーが揺れる絹の紅い下着」とある。光 沢のあるものとしてよく連想されるのは金属類・宝石・陶磁 器・ガラス製の器・布地などで、木の机については「艶」も 「光沢」も両方とも違和感なく使える。人の肌については通 常「艶」を用い、無理に「光沢」を使うと、オイルを塗りた くって海岸で甲羅を干している裸体や、みごとに禿げ上が って金属的な感じに輝いている頭を連想しやすい。「光沢」 という語は「艶」よりも、物体の表面の反射光を直接イメー ジさせるため、「艶」のような比喻的に広がる例は少ない。 また、陶器や漆器など「艶」も「光沢」も使える対象につい て比較すると、「光沢」のほうが改まった感じが少し強いよ うに思われる。Q艶・照り うたん【降誕】誕生を神格化して、改まった会話や文章に 用いられる古風で硬い漢語。〈会〉(釈迦の誕生を祝う法 会〈祭〉(キリストの誕生を祝うクリスマス)神仏や神 聖視される特別の人物に限定的に用いられる。ひ出生・Q生 誕・誕生 うだんし【好男子】顔立ちのよい男の意で、会話にも文章 にも使われる古風な漢語。〈人目をひく—〉好感の持てる 男の意にも使う。いけめん・男前・ハンサム・美男子 うち耕地耕作して農作物を収穫する農地をさし、会話 にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈一面積〉〈一 整理〉きたはた・でんばた・農場・Q農地 うち【巧緻】精巧で緻密な意で、主として文章に用いられる硬い感じの漢語。〈ーな模型〉〈その手法はーを極める〉「稚拙」と対立。巧い・Q巧妙・上手・巧み うち【高地】標高の高い土地をさし、会話にも文章にも使 われる漢語。〈民族〉〈トレーニング〉〈ーに点在する 村落〉高台「台地」と違って平坦な土地でなくても言 う。「低地」と対立。Q高原・台地・高台 こうちょう【好調】調子のよい意で、会話にも文章にも使わ れる日常の漢語。〈体調はーそのもの〉〈出足はーだ〉〈一 の波に乗る〉②よさの程度は「順調」以上で、上のほうは 「快調」に達する感じがある。「不調」と対立。Q快調・順 調・絶好調 こうつう【交通】道路や航路を人間や乗り物などが行き来す ることをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の基本的な漢語。〈ー費〉〈ー違反〉〈ー渋滞〉〈ー 事故〉〈ーが発達している〉〈ー機関に影響が出る〉回木山 捷平の『大陸の細道』に「このー地獄の世の中で、お前はわ ざわざ満州までやって来る必要はないぞ」とある。乃通行 <349> こうつうひ交通費人間が乗り物で移動する際に要する費 用をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。へーがば かにならないへーを支給するへーがかさむへーを節約 するの「旅費」と違い、宿泊費を含まない。近距離でも発 生するが、自家用車のガソリン代などは通常含まれない感 じがある。専旅費 こうてい【皇帝】帝政の国の君主をさして、会話にも文章に も使われる厳めしい感じの漢語。〈歴代ー〉〈ーの治世〉 〈ーに上り詰める〉四秦の始皇帝が、一般の王を超える特別 の王という意味合いで、最初にこう称したという。母王・王 様・君主・国王・大王・Q帝王・天子・天皇・帝 こうてい【肯定】正しいとして認める意で、会話にも文章に も使われる、やや硬い漢語。へー的な意見〉〈現状をーする〉 ふわさを当人がーする〉清岡卓行の『アカシャの大連』 に「孤独な密室における思考のエゴイズムのしばしの、し かし思いきったーであったのだろう」とある。「否定」と対 立。ひ是認認める うてい【行程】目的地までの距離や旅行などの目程をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一日の—〉〈少々きつい ーだ〉刂道程・Q道のり うてい【公邸】特定の高級官僚の公務用の邸宅をさし、会 話にも文章にも使われるやや専門的な漢語。〈知事のー〉 官邸 うてい【拘泥】さほど価値のない細かいことにこだわるこ とを意味し、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの 漢語。〈名称にーする〉〈些事にーする〉小沼丹の『銀色 こうど の鈴』に「何か云った気がして大寺さんは吃驚したが、それ は声にはならなかった。何と云うつもりだったのだろう? 大寺さんはそれにした」とある。自然の意思というもの を信頼し、自然に起こる好悪の情をみずからの倫理の基礎 とした志賀直哉の『城の崎にて』に「巣の出入り忙しくその 傍を這いまわるが全くーする様子はなかった」とある。そ れだけに、志賀文学のキーワードとなるこの語は、ほかの人 間の使う場合とは異なった表現価値を伴う。個人的な語感 の一例である。きこだわる うてい【豪邸】豪華な造りの大邸宅の意で、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈プールつきのーに住む〉 敷地の広さよりも建物の大きさや豪華さが意識されやすい。 専Q邸宅 うてき【公的】社会的に正式な意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈機関〉〈資金〉〈に認可される〉 私的」と対立。公公式 こうてきしゅ【好敵手】争いごとなどで技量が伯仲している 競争相手をさし、やや改まった会話や文章に使われるやや 古風な漢語。〆年来のー〆優勝を分け合ってきたー〆ー を迎え撃つ〆スポーツや囲碁・将棋など直接に勝ち負けを 争う個人やチームに対して使う例が多い。観争相手・Qライ バル うてんてき【後天的】生まれたあとで身につける意で、会 話にも文章にも使われる専門的な漢語。〈|な体質〉〈|な 欠陷〉の「先天的」と対立。経験 こうど【高度】物理的な高さの意で、やや改まった会話や文 <350> こうどう 章に用いられる漢語。〈二千メーター〉〈ーを下げる〉〈一 定のーを保つ〉「ーな技」「ーな問題」のように、程度の 高い意味にも使う。ひ高さ 「行動」実際に体を動かして意図的に行う行為の意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「半徑 〈単独ー〉〈自由ー〉〈ーを起こす〉〈ーを控える〉〈ーに移 す〉〈ーが制限される〉④太宰治の『斜陽』に「ひとりで考 えて、ひとりでーするより他はない」とある。指を曲げた り目を開けて物を見たりするような些細な動きの場合は、 「行為」のほうが一般的で、「行動」といっても誤りではない がなじみにくい。号行い・活動①・Q行為・動作ふるまい こうどう【合同】複数の独立した組織や集団が臨時にまとま る意で、会話にも文章にも使われる漢語。「庁舎」「演 習」「調査」「で実施する」「三角形の「の条件」のよ うに、数学の専門語としての用法もある。Q共同・協同 うとうご【口頭語】話しことばのうち、特に日常の会話に 用い、硬い文章に用いると違和感のある語をさし、学術的 な会話や文章に用いられる専門の漢語。「でわかりやす く話す」《論文にーが交じる》「てめえ」「ひんまげる」の ような俗語よりは上で、「あたし」「おちょこ」「あぶれる」 「あぶらっこい」「おんなじ」などのレベルのことば。「文章 語」と対立する。単口語・Q話し言葉 うにゅう【購入】買い入れる」意で、改また会話や文章 に用いられる漢語。〈一括—〉〈図書—費〉〈乗車券を—す る〉〈家具を—する〉②「買う」に比べて正式な感じがある ため、飴玉や納豆などより土地家屋や大型機械などのほう がしっくり結びつく。 Q買い入れる・買う うにん【後任】現在までの担当に代わって同じ任務に当た る意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーを探す〉〈ー の役員が決定する〉〈ーがまだ決まらない〉後益 うにん【公認】公共の機関や団体などが正式に認定する意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈会計士〉〈党の 候補〉〈正式の記録としてーする〉Q公式・正式 こうねん【高年】年齢の高い意で、主に文章中に用いられる 漢語。〈一層〉文字を見ないと「後年」や「更年(期)」と 紛らわしいが、「中」の形では会話でもよく使う。「初 産婦」のように、その点に関しては一般の年齢より高いと いう意味で三十歳代でも該当することがあり、年寄りをさ す場合にも「老年」「老齢」はもちろん、「高齢」よりも若い 年齢まで含みそうな印象がある。马Q高齢・老年・老齢 このう【効能】薬や化粧品などを使用した場合の作用やそ の結果をさし、会話にも文章にも使われる古風な漢語。〈薬 のー書き〉〈さまざまなーを並べる〉り効き目・効果・Q効用 こうのもの【香の物】懐石料理などで「漬物」を意味するや や優雅な感じのことば。Qおこうこ・おしんこ漬物 こうば工場「こうじょう」の意で主として会話で使われる 古風な和語。〈町ー〉〈裏のーで働く〉林芙美子の「放浪 記に「ペタペタ三原色を塗りたくって、地虫のように太陽 から隔離された歪んだー」とある。現代における生活語彙 としては「こうじょう」のほうが一般的。そのため、漢字表 記は「こうじょう」と読まれやすい。街中のごみごみした場 所にある小規模な仕事場を連想させやすく、機械などの設 <351> 備も旧式な感じがある。ちなみに、山田洋次監督の映画 『男はつらいよ』シリーズに出てくる「とらや」の裏のタコ 社長の印刷工場は「こうば」であり、そういう雰囲気を感じ させる。ひこうじょう こうはい【荒廃】国土・建造物・精神などが荒れ果てる意で、 主として文章に用いられるやや硬い漢語。〈人心—〉〈農地 が—する〉〈保存状態が悪く—が甚だしい〉鳥崎藤村の 『千曲川のスケッチ』に「した土塀」とある。多く具体物 に用い、抽象的な対象に用いるほど比喩的な感じが増す。 込荒れる・荒涼・Qすさむ こうばい【勾配】水平面に対する傾斜の程度をさし、会話に も文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈急—の坂〉〈屋 根の—が急だ〉②太宰治の『富嶽百景』に「その裾野の—か ら判断して、たぶん、あそこあたりが、いただきであろうと 雲の一点にしるしをつけて、そのうちに、雲が切れて、見る と、ちがった」とある。傾き①・Q傾斜 こうばしい【香ばしい】食べ物が焼けるときなどに発するお いしそうな香りをさして、会話にも文章にも広く使われる 和語。〈焼き立ての煎餅のーにおい〉〈ほうじ茶のー香り〉 ②梶井基次郎の『冬の日』に「肉を炙るー匂いが夕凍みの匂 に混って」とある。かんばしい うはら【業腹】悔しく腹が立つ意で、会話にも文章にも使 われる古風な表現。へむざむざ取られるのはーだ〉何とも ーな話だ久保田万太郎の『末枯』に「師匠に詫をいれる のもーだ」とある。ひいまいましい こうばん【交番】派出所・駐在所の総称である「交番所」を短 こうら 縮した通称。会話でも文章でも幅広く使う日常漢語。〈駅 前のー〉へーで道を尋ねる〉へーに届ける〉ひ駐在所・Q派出所 こうひょう【公表】広く世間に発表する意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈内容をーする〉〈成績のーに踏み切 る〉へーをはばかる〉へーを差し控える〉②内部ですでに得 ていた情報を時機を見て外部に知らせるというニーアンス を感じさせることもある。公示・公布・告示・Q発表 うびょう【業病】生涯つきまといそうな厄介な病気の意で 会話にも文章にも使われる古めかしい漢語。へーにとりつ かれる前世の悪業の報いと考えたところから。難病 うふ【工夫】工事に従事する労働者を意味する古風な漢語。 「夫」という漢字のついたこの語は職業差別の意識を感じさ せるとして現在はほとんど使われない。現在は専門職と して「○○工事人」などと言う。ひ土方 こうふ【坑夫】炭坑などで採掘作業に従事する労働者をさし た古風な漢語。「夫」のつく語は肉体労働者をさすことが多 く、職業差別の意識が感じられるとして現在はほとんど使 われない。現在は「鉱夫」とともに「鉱員」と呼ばれる。 収鉱夫・Q鉱員 うふ【鉱夫】古く鉱石を掘り出す役をする肉体労働者をさ した漢語。「鉱員」の旧称。「夫」という漢字のつくこの語 は職業差別の意識が感じられるとして使用を控え、現在は 「鉱員」と言い換える。刂坑夫・Q鉱員 うふ【公布】法令などを官報などによって一般国民に知らせることをさし、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈新しい憲法をーする〉〈成立後ただちにーす <352> こうぶ る)Q公示・公表・告示 うぶ【後部】ある対象自体の後ろの部分をさし、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈座席〉〈車輛のーに 設置する〉の「前部」と対立。Q後ろ・後方・背後 こうふく【幸福】生きている喜びをかみしめるほど心の満た される精神状態をさして、会話にも文章にも使われる日常 の基本的な漢語。〈ー論〉〈ーな家庭〉〈ーな生涯〉小津安 二郎監督の映画『麦秋』で、淡島千景の演ずるアヤが、「(結 婚の)ーなんて何さ!単なる楽しい予想じゃないの!」と 言い、「競馬にいく前の晩みたいなもんよ」と続ける。马し あわせ こうふく【降伏(服)】戦争に敗れて相手側に服従する意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈無条件—〉〈力尽きて— する〉大岡昇平の『俘虜記』に、米兵から「君は—したの か、つかまったのか」と問われ、「—についてべつに偏見を 持っていないが、しかし敵に屈するのは、私の個人的プライ ドが許さない」と言い放つ場面がある。専屈服・Q降参・投降 参る② うぶつ【鉱物】金属や岩石を構成する天然の無機物をさし、 会話にも文章にも使われるやや専門的な感じの漢語。「 資源」へーを探掘する)川端康成の『雪国』に「黒いーの 重ったいような光」とある。Q岩石・金属 うふん興(昂・亢)奮精神・感情が昂て冷静さを失う 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一状態〉へして 眠れない〈一を鎮める〉〈一冷めやらぬ〉へのるつぼと 化す読川龍之介の『枯野抄』に「水を含んだ白い先も 芭蕉の唇を撫でながら、しきりにふるえていたくらい、異 常なーに襲われた」とあり、大仏次郎の『帰郷』には「ーに とらえられ戦いているのを抑えようとしていた」とある。 専息巻く・いきり立つ・激昂・激情・Q激する・高揚・Qたかふる・む きになる こうへい【公平】判断や対処などが中正でどちらにも偏らない意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈一無私〉 〈一な扱い〉〈一を期する〉〈一に分ける〉〈一に評価する〉 の成績評価に際して全員に同じ点数を与えるのが「平等」 なのに対し、「公平」は試験の採点でえこひいきしないこと であり、差別を設けないことではない。「不公平」と対立。 Q公正・平等 うほう【広報】団体・組織から一般に広く知らせる文書をさ し、会話でも文章でも使われる漢語。〈ー活動〉〈一部〉〈ー を担当する)公報 うほう【公報】官公庁から国民に知らせる文書をさし、改 また会話や文章で使われる正式な感じの漢語。〈選挙ー〉 〈ーに載せる〉〈役場のーで知る〉広報 うほう【後方】自分や基準点の後ろの方向をさし、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー注意〉〈ーに気を 配る〉〈はるかーから追いかける〉〈ーで支援する〉◎進行 方向の逆にあたる。「前方」と対立。Q後ろ・後部・背後 うほう【合法】やり方が法律で許される範囲内にある意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。へー 的な進め方〉へー的手段〉の「非合法」と対立する語。 法 <353> うぼく【高木】直立して数メートル以上に達する丈の高い 樹木をさし、会話にも文章にも使われる専門的な漢語。〈道 に沿ってーが並ぶ)②杉・欅・桜のなど。「低木」と対立す る。ひ喬木 うまん【高慢】能力・地位・財力・容貌などが他より優れてい ると思い上がって周囲の人間を見下す意で、会話にも文章 にも使われる漢語。いかにもな態度》驕慢・傲岸・Q 傲慢・高慢ちき・尊大・不遜 ままにふるまう意で、会話にも文章にも使われる漢語。 な態度〉へな応対〉谷崎潤一郎の『女人神聖』に「女は 今迄の一な態度を取り落して、恥しそうにうつむきながら、 ほっと深い溜息をついた」とある。驕慢・Q傲岸・高慢・高 慢ちき・尊大・不遜 こうまんちき【高慢ちき】いかにも高慢で小憎らしい態度を 非難して、主にくだけた会話に使われる俗語。〈あのーの鼻 を折ってやる)夏目漱石の『坊っちゃん』に「な釣道楽 で自分の釣る所をおれに見せびらかす積」とある。騒慢 ・傲岸・Q高慢・傲慢・尊大・不遜 こうみよう【巧妙】やり方がきわめて巧みな意で、会話にも 文章にも使われる漢語。へな戦術へ実ににできてい る夏目漱石の『坊ちゃん』に「な弁舌を揮えば」と ある。「な手口」「に仕組まれた罠」のように、悪いニ ュアンスで使う例が目立つ。「拙劣」と対立。巧い・巧緻が 上手・Q巧み こうむ【工務】土木・建築に関する仕事をさし、改まった会話 こうもり や文章に用いられる専門的な漢語。〈店〉に携わる の「工事」より抽象的。ひ工事 こうむいん【公務員】国や地方公共団体の公務に従事する職 員をさし、会話にも文章にも使われる正式な感じの漢語。 〈国家—〉〈地方—〉〈宿舍〉〈試験〉官吏・公吏・Q役人 こうめい【高名】ある分野においてきわめて評判の高い意で、 改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風で硬い漢 語。〈一な画家〉〈御ーはかねがね承っております〉の概し てマイナス評価の場合に使うと違和感があり、「すこぶる ーな大泥棒」のように用いると一目置いている感じが出る。 ひ著名・名高い・Q有名・雷名 「頃目」全体の内容を一定の基準に基づいて分類した個々の区分をさし、会話にも文章にも使われる、いくらか専門的な漢語。〈別分類〉〈を立てる〉〈に分ける〉〈八ーを列挙する〉〈九万四千ーを収録した辞典〉辞書に収録されている見出しの数を「数」と呼ぶように、「事項」よりも小さく明確な感じが強い。アイテム・事柄・Q事項」うもり【蝙蝠】コウモリ科の夜行性で翼で飛行する哺乳類をさして会話にも文章にも使われる和語。〈は夜行性だ〉芥川龍之介の『偷盗』に「煤のようなものが、ひらひらと月にひるがえって、薨の下から、窓の外をうす青い空へ上がった。言うまでもなくーである」とある。哺乳類でありながら鳥のように飛ぶところから、態度がはっきりしない人間を連想させ、さらに夜行性であることも関係して、油断のならないという印象ができあがり、それがこの語の語感にも反映している。 <354> こうやく うやく【膏薬】外傷やできものなどに塗るための油で練った外用薬をさし、会話にも文章にも使われる、やや古風な日常漢語。〈背中にーを張る〉専軟膏 うゆう【交友】友として付き合う意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈一録〉〈一関係〉〈政治家と個人的 なーがある〉彫交際・交遊・付き合い うゆう【交遊】交際し遊ぶ意で、やや改まった会話や文章 に使われる漢語。〈異性との—〉へーが派手〉〈家族がらみ のー〉交際・交友・付き合い うよう【効用】薬その他の物品や行動などのもたらすプラ スの作用をさし、会話にも文章にも使われる、いくぶん古 風な漢語。〈食後の散歩の主な—〉〈適度の飲酒のーを説 く〉効き目・効果・Q効能 こうよう【紅葉】落葉植物の葉が秋に赤く色づく意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一の季節〉《楓 のーをめでる》四黄色くなる場合は通常「黄葉」と書き分け るが、それを含めてこの語を用いる場合もある。乃黄葉行 Qもみじ うよう【黄葉】落葉植物の葉が黄色く色づく意で、主に文 章に用いられる、やや専門的な感じの漢語。〈銀杏並木の がみごとだ〉〈白樺がーを始める〉、紅葉・Qもみじ こうよう【高(昂)揚】精神や気分を高める意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈士気のーを図る〉金井美恵 子の「夢の時間」に「少し震える指さきを意識しながら、注 意深く両手でカップを支え、珈琲をすすり、口笛を吹きなら したいほどーしていた」とある。単息巻く・いきり立つ・激昂 激情激する興奮・Qたかぶるむきになる こうようご【公用語】国内で複数の言語が使われている場合 に、公式の場で使う言語として国家が正式の資格を与えて いる言語の意で、学術的な話題の会話や文章に使われる専 門的な漢語。ヘインドでは多くのーを認めているのかナダ では英語とフランス語、スイスではフランス語・ドイツ語・ イタリア語、というふうに複数の言語を認めている国もあ る。専Q国語・日本語・母語・母国語 うよく【強欲(慾)】あくどいまでに欲が深いようすをさし、 いくぶん改まった会話や文章に用いられるやや古風な漢語。 〈一非道〉へな地上げ屋〉へ一の本性をあらわす〉马胴欲・欲 張り・欲深 うらく【行楽】郊外の山野や観光地などに出かけて行って 楽しむ意で、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。 〈一日和のよ〉〈シーズン〉〈地がにぎわう〉乃遊山 うらくち【行楽地】海辺や山野などで遊び楽しむ施設の充 実している土地をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈連休でーはどこも人で込み合っている〉観光地 こうり【公吏】地方公務員の旧称。〈永年にわたりーとして勤 める〉)Q官吏・公務員・役人 こうり【公理】理論の出発点として証明なしに真であると仮 定し、他の命題を証明する前提とする根本命題をさし、学 術的な話題の会話や文章に用いられるきわめて専門性の高 い漢語。三木清の『人生論ノート』に「自然に従えという のが健康法のーである」とある。専定理 こうりつ【効率】一定の仕事に費やす時間・労力・費用などと、 <355> それによって達成できた量や質との割合をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈熱—〉〈無駄が多く—が悪い〉 〈極力ロスを減らしてーを上げる〉ひ能率 うりゅう【拘留】労役を伴わず拘留場に留め置く刑罰の意 で、主として文章に用いられる法律関係の専門的な漢語。 「期間」〈中の身柄〉〈窃盗罪で—される〉専勾留 うりゅう【勾留】逃亡や証拠隠滅を防ぎ、取調べを行うた めに身柄を拘束すること。刑罰ではない。主として文章に 用いられる法律関係の専門的な漢語。〈未決〉〈被疑者を ーする〉ひ拘留 「交流」地域や組織などの違う系統に属する人々 が互いに行き交う意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈国際—〉〈文化—〉〈の場〉〈を図る〉〈を深める〉〈Q交際・付き合い こうりよ【考慮】特定の事柄についてその要素や条件などを 積極的に考える意で、やや改まった会話や文章に使われる 漢語。〈気候の違いを—に入れる〉体調を—する〉〈相手 の立場を—する〉谷崎潤一郎の『細雪』に「ありのままの 理由を述べ、オリエンタルだけを—し直して貰うように申 し入れた」とある。日頃からの一般的な考えを示す「思慮」 に比べ、具体的な問題を深く考える感じが強い。考察・思 考・思索・Q思慮 うりょう荒涼(寥)荒れ果ててものさびしい感じをさし、 主に文章に用いられる硬い感じの漢語。〈ーとした風景〉 小沼丹の『断片』に「満目ーたる焼跡を貫く道を歩いていた ら、路傍に、ぼつねん、と黒い石の地蔵さんが立っていた こうろびょうし とある。「たる思い」のように精神のすさんだ意にも使わ れる。貴荒れる・Q荒廃・すさむ 「うりよく【効力】効果を発揮する働きをさし、やや改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈薬の—〉「が及ぶ〉 〈ーを発揮する〉〈法律がーを失う〉森鷗外の『半日』に「遺 言状のーを失う場合」とある。効果・Q効能・効用 うれい【高齢】かなりの年寄りの年齢の意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ー者医療〉〈ー化社会〉〈御ーの 方々〉の「老年」や「老齢」に比えていくらか丁寧な響きが ある。単高年・老年・老齢 こうれいしゃ【高齢者】「老人」をさす正式な感じの漢語。 への人口が増加する》役所の雰囲気があり、事務的で冷 たい感じのする硬いことば。「年寄り」や「老人」と違って、 具体的な個人をささず、年齢層を問題にする感じが強い。 少年寄り老人 こうろう【功労】努力し苦労してあげてきた功績をさし、改 まった会話や文章に用いられる、正式な感じのいくぶん古 風な漢語。〈賞〉〈永年のーを讃たえる〉〈ーに報いる〉 〈特筆すべきーがある〉〈ーをねぎらう〉巻績・Q功績・殊勲・ 手柄 こうろびようしゃ【行路病者】旅の途中で寒さ・疲れ・飢え・病 などにより道端に倒れて動けなくなったまま引き取り手の ない人をさし、会話にも文章にも使われる、古めかしく硬 い漢語。へのような傷ましい姿に思わず目をそむける) すでに死亡しているのを発見されるケースも多い。野垂れ 死に行き倒れ <356> こうろん こうろん【口論】喧嘩状態の感情的な議論をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈上司とーする〉〈些細いなことか ら激しいーになる〉〈一の末に殴り合いを始める〉の「口喧 嘩」に比べ、単なる罵り合いより勝手な理屈を言い合う という連想が強い。言い合い・言い争い・Q口喧嘩 うわ【講(媾)和】交戦中の国どうしが戦争を終結させて平 和な状態に入る意で、改まった会話や文章に用いられる専 門的な漢語。〈全面—〉〈—条約を結ぶ〉和睦 うわん港湾船の出入りや停泊、船客の乗り降りや貨物 の積み下ろしなどの施設のある水域をさし、改まった会話 や文章に使われる専門的な硬い漢語。〈ー労働者〉の「港」 より広い範囲をさす。専港 「え【声】人間や動物が発声器官を使って出す音声をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈大きな—〉〈しゃがれた—〉〈ーが高い〉〈ーを 出す〉〈ーをひそめる〉〈ーを掛ける〉〈鳥の—〉〈中勘助の 『銀の匙』に「まるくあいたくちびるのおくからびやびやし たーがまろびでる」とある。「蟬の—」のように虫が羽を こすりつけたりして出す音や、「祇園精舎の鐘の—」に限 らず、円地文子の『妖』に「坂から崖を伝って流れ落ちる水 の—」とあるように、自然の音を擬人化して親近感を出す 美的な例もある。言語音のうち声帯の振動を伴う有声音だ けをさす用法もあり、その場合は専門的な雰囲気が強くな る。ひQ音声・声音・ね・響き 二元【肥】肥料となる奨尿をさし、会話にも文章にも使わ れる古めかしい和語。〈一桶〉〈一溜だ〉〈一を汲む〉 やし・Q下肥・肥料 こえい【護衛】付き添って守る意、また、その任務に当たる 人をさして、会話にも文章にも使われる漢語。〈—警察官〉 〈VIPに—を付ける〉〈首相を—する〉「警固」「警護」 が行為専用なのに対し、この語はそれにあたる人間をさす 例も多い。刂エスピー・警固・Q警護・ボディーガード 「元る【肥える】肉がついて体重が増加する意で、会話にも 文章にも使われる、やや古風な感じの和語。くよく・えた 赤ん坊〉〈病が癒えてようやく・え始める〉円地文子の 『なまみこ物語』に「肌つきのつぶつぶ濃やかに・えてい るのが娘らしいなまめきを湛えている」とある。「よく・ えた土地」など、この語には健康的で生産性に富むといった 豊かさのプラスイメージがあり、「目が」「舌が」「ふ ところが」などの比喻的な用法へと展開する。「太り過 ぎ」に対して「肥え過ぎ」という言い方がなじみにくいの も、そういうイメージと衝突するせいかもしれない。ちた みに、肥料の「肥」にも育てる効能がある。「太り」などと 名づければ不健康に響きかねない。ひ太る 「元る【越える/超える】基準点などを通り過ぎて向こう側 まで達する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常生活の基本的な和語。〈峠を越える〉〈海を越え る〉〈国境を越える〉〈柵を越える〉〈パス通りを越える〉 〈三万を超える大観衆〉〈予定の時間を大幅に超える〉 端康成の『横光利一』に「君の名に傍えて僕の名の呼ばれる 習わしも、かえりみればすでに二十五年をー・えた」とあ る。「越える」が一般的な表記で、抽象的な意味合いになる <357> と「超える」と書く傾向が強い。「越す」がある地点を通過 することだけを意識しているのに対し、「越える」は通過し た後にさらに進むことを頭に置いている、として区別する 説もある。少越す ゴージャス「豪華」の意の斬新な感じの外来語。〈ーな旅行〉 〈ーな衣装を身にまとう〉近年になって使われだした外来 語だけに「豪華な横綱土俵入り」「豪華な大名行列」といっ た伝統を誇る和風の行事などには使いにくい。また、金を かけたというイメージもあって、「豪華メンバーをそろえ る」のような表現の場合も、「ーな顔ぶれ」とすると何とな く違和感がある。ひ豪華 コチスポーツなどの技術を実地に指導する意で、会話に も文章にも使われる外来語。野球でバッティングをーす る〈長距離走のーを受ける〉「名ーにつく」「一の指示 に従う」のように「指導者」をさすこともある。教える・教 導・Q指導 コーデュロイ 古めかしい「コール天」に代わって斬新な感じを出すために使われるようになった外来語の呼称。「のジャケット」はコール天 ニートテニスやバレーボールなどの競技場をさし、会話に も文章にも使われる外来語。ヘスパイクが相手に突き刺 さる〉ヘー狭しと動き回る〉乃運動場・球場・Q競技場・グラウン ド・グランド・スタジアム・野球場 こーナー部屋の一隅、ペースやコートの隅、道の曲がっている場所をさし、会話にも文章にも使われる外来語。〈ワーク〉〈特売ー〉〈第四ーを曲がる〉〈インーを鋭く突く〉 こおる 陸上競技のトラックの曲線部のように直角に折れ曲がって いない場合も含む。角 「ヒーコーヒーの木の種を焙煎して粉状に挽いたもので 淹れた飲み物をさし、会話でも文章でも日常普通に使われ ている外来語。「をブラックで飲む」小沼丹の『珈琲の 木』に「を喫みながらぼんやりしていると、の木が眼に 入る」とあり、漢字で書いてある。このように「珈琲」と漢 字をあてると印象が違ってくる。最近は多用されて特別の 語感はだいぶ薄まってきたが、何となく本格的な感じにな る。通常の片仮名表記の場合は店によって味がピンからキ リまであるが、「珈琲」とあるとそうまずい店はなさそう で、少なくともインスタント・コーヒーは出て来ない雰囲気 に変わる。古い煉瓦造りの洋館の薄暗い一室で、猫脚の テーブルの上にウエッジウッドかヘレンドかロイヤルコペ ンハーゲンなどの器に入って出て来ると、「コーヒー」より 「珈琲」のほうがイメージが合う気がする。これも表記の違 いから生じる語感である。 おりつく【凍(氷)り付く】硬く凍ってくっく意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈道路に雪がー〉曾野綾子の 『永遠の前の一瞬』に「町はどこもー・いて」とある。ひいて つく おる【凍(水)る】液体の温度が下がって固体になる意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈水が—〉〈水道が—・って水が出ない〉〈冷凍庫 でー・らせる〉有島武郎の『生れ出ずる悩み』に「くつの 皮は夕方の寒さにー・って鉄板のように堅く冷たかった」と <358> ある。 かいてる コールイン陸上競技で決勝点に到着すること。会話や改ま らない文章で使われる和製英語。〈大差をつけてーする〉 転じて、一般に、「目的地に到達する」特に、「周囲の反対 を押し切って二人はようやくにこぎつけた」のように「結 婚する」意に用いることが多い。古くから使われ、スポーツ 用語の拡大用法という意識は薄れた。り結婚 コールてん【コール天】うね織りのピロードを意味する「コ ーデュロイ」の古風な言い方。へーの作業ズボン〉の「天」 は「天鶩絨」の略。ひコーデュロイ ゴールデンアワーテレビなどで視聴率が高いと予想される 夜の七時から九時ごろまでの時間帯をさす和製英語。へー に放送する) ヲゴールデンタイム ゴールデンタイム「ゴールデンアワー」の意の和製英語。 〈一の番組〉ヒゴールデンアワー こがい【戸外】家の外をさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーで遊ぶ〉〈ーの空気にふれる〉、屋外・野外 かい【誤解】誤て理解する意で、会話にも文章にも広く 使われる日常の漢語。へを招くへ表現が曖昧でーされる 危険があるへ先方の意図をーするへ相手のーを解く 彼の人柄をこれまでーしていた夏目漱石の『こころ』 に「無口になりました。それを二三の友達がーして、冥想 に耽ってでもいるかのように、他の友達に伝えました」とあ る。他の類義語が、聞き手や読み手の側にも不注意なり何 らかの要因がある感じを伴うのに対し、この語は事実と違 う意味に受け取ることを客観的に表すにとどまり、その要 因についてはまったく言及していない。思い違い・考え違い・Q勘違い かく【互角】両者の力量に優劣の差がない意で、会話にも 文章にも使われる漢語。へーの勝負〉へーに渡り合う)牛 の角が二本とも同じ長さ・太さ・強さである意から出たとい う。揚抗・Q伯仲 がた【小型】「小形」と違い、同類の中での小さいタイプを さし、くだけた会話から硬い文章まで広く使われる和語。 〈車〉への台風〉み小形 がた【小形】「小型」と違い、同類の中の比較ではなく、単 に小ぶりの意で、くだけた会話から硬い文章まで広く使わ れる和語。〈1の水玉模様〉〈1の花を咲かせる〉〈1のハ ンドバッグ〉ひ小型 こがたな【小刀】細工用などの小さな刃物をさし、会話でも 文章でも使われる和語。「」で器用に削る」〈昔は鉛筆を で削ったものだ」の武器でなく細工用の刃物というイメー ジが強い。ヒ首・懐剣・Q小刀・短剣・短刀・どす・ふところ がたな・脇差 こがねいろ【黄金色】金のように光る黄色をさし、やや改ま った会話や文章に用いられるやや古風な和語。〈一に実った 田〉山田風太郎の『あと千回の晩飯』に、山小屋の二階で 夜に溲瓶を使い、翌朝「満杯になったものを眺めると、 のきらめきといい、泡のたちかたといい、ビールそっくり だ」とある。毎Qきんいろ・きんしょくこんじき こがら【小柄】大きさが標準より小さい意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈な男〉団徳田秋声の『縮図』に「主 <359> 人はーの精悍な体つきで」とある。「ーな模様」のように人 間以外についても使われる。Q小作り・小粒・小兵 二かん【股間】股座の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈打球が野手のーを抜ける〉「ーを蹴り上げる」のように、品位を落とさずに陰部をほのめかす間接表現も見られる。股・Q股座 かん【五官】目・耳・鼻・舌・皮膚の五つの感覚器官をさし、 やや改まった会話や文章に使われる漢語。「の機能」「 が健全だ〉へーを通して伝わる〉、少五感 ざかん【五感】視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五つの感覚をさ し、会話でも文章でも使われる漢語。「が正常に働く 「をフルに活用する」五官 かん【語感】ことばが指し示す概念としての中心的意味以外の、そのことばにしみついた何らかの感じや連想などの情緒的情報の総称として、会話にも文章にも使われるやや専門的な漢語。へこのことばはが悪い《あした」と「あす」と「みようにち」は同じ意味だが、それぞれが違うのあしたは日常会話レベルのくだけたことば、あすは少し改まった感じのことば、「みようにち」は格式ばったことば、といった文体的なニュアンス、「ちび」「のっぽ」「でぶ」のようなことばは語感が悪い、といった感情的なニュアンス、「ヒロシマ」という表記は「広島」より原爆を連想させやすい、といった連想の違いなど。また、「が鋭い」「をみがく」のように、ことばの意味やニュアンスの微妙な違いを感じ取る言語感覚という意味でも使う。ひ意味 こぎょう 「語気」ものを言うときの声やことばの調子をさし、改 また会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーが鋭い〉〈ー を荒らげる〉ひ語り口・Q口調・語調・話しぶり・弁 こぎたない【小汚い】何となくちょっと汚れた感じのする意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈店〉へ身なり〉 〈一布団に寝かされる〉服装や毛布など身につけるものに 使う例が多い。東京方言ともいう。男性は「こぎたねえ」 とも。Q薄汚い・汚い・汚らしい きゅう【呼吸】①鼻や口から空気を吸ったり吐いたりする 意で、やや改まった会話や文章に用いられる正式な感じの 漢語。〈器〉〈深〉〈を整える〉〈困難に陥る〉安 岡章太郎の『海辺の光景』に「干上ったポンプのような音が して、はそれまでの十倍ほども早くなった」とある。息 ②ものごとを巧みにこなす微妙な要領の意で、会話にも文 章にも使われる日常の漢語。〈をのみこむ〉〈を会得す る〉〈がわからない〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「田 舎者は此が分からない」とある。勘所・Qこつ・壺②・秘訣・ 要領 きょう【故郷】「出身地」に近い意味で会話でも文章でも幅広く使われる日常的な漢語。〈生まれ〉へに錦を飾る〉 〈の友〉へを後にする〉〈を捨てる〉小島信夫の『小銃』に「さがしあてた自分の小銃の這う地面が、なつかしく、のように思われるのだった」という比喻表現がある。客観的・事務的で行政単位に呼応する傾向のある「出身地」に比べ、「ふるさと」と同様、自分を育んでくれたという精神的なつながりの意識が強く、幼い日の思い出とともに想 <360> 二 起される語。したがって、思い出を残す生活圏として、「出 身地」より狭い範囲を連想する傾向が強い。望郷の念が募 るとき脳裏に浮かぶのはこの「故郷」の空であって、「出身 地」の空ではない。「花いばらーの道に似たるかな」という 与謝蕪村の句の底流にあるのも、そういう懐かしい感情で あろう。特に自分のことに言及する場合は、そのうっとり とした感じがいくらか美化した雰囲気を誘いやすく、さら りと表現する場合は「郷里」を用いるほうが抵抗がない。 郷土・郷里・出身地・Qふるさと ぐ【扱ぐ】根ごと引き抜く意で、会話や軽い文章に使われ る古風な和語。〈畑から大根を—〉ぶ抜く く【極】「きわめて」に近い意味で、会話にも文章にも使わ れる日常の漢語。〈—真面目な人間〉〈—まれにある〉〈— 暑い日〉〈—上等の品〉〈—普通の服装〉②「短い」「近い」 「軽い」「少ない」「安い」「貧しい」のような程度や数量の 小さなものによくなじみ、その逆のものにはつきにくいな ど、使用範囲に偏りがあり、「きわめて」ほどの広がりがな い。大いに・Qきわめて・すこぶる・大層・たいへん・とても②・甚 だ・非常に こくう【虚空】何もない空間をさし、主に文章中に用いられ る漢語。〈ーをつかむ〉〈ーを切る〉〈ーの彼方に消える〉② 坂口安吾の『桜の森の満開の下』は「あとに花びらと、冷た いーがはりつめているばかりでした」として結ばれ、医者 でもあった藤枝静男は『雛祭り』で、妻の死について「やが ては土となり水となり空気と化して永久にーに姿を消して しまう」と書いた。慣用的表現以外、具体的な空間をさす 用例はきわめて少ない。Q空間・真空・空 くおう【国王】一国を治める王をさし、やや改まった会話 や文章に用いられる正式な感じの漢語。へーの位に就く へーじきじきの仰せ〉及王・王様・君主・皇帝・大王・Q帝王・天子・ 天皇・帝 くがい【国外】国の領土の外を意味し、会話にも文章にも 使われる漢語。〈—追放〉〈—に逃亡する〉〈—向けのメッ セージ〉の「国内」と対立。特定の国を連想させない。異 国・Q海外・外国・外地 こくかん【酷寒】→こっかんごくかん【極寒】→ごっかん くご【国語】ある国土に住む国民のことばをその国の言語と見て、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な漢語。「の授業」への力が低下する当然、日本では日本語、中国では中国語、イギリスでは英語であるが、カナダでは英語とフランス語の両方が用いられ、ともにその国の「公用語」として正式の資格を与えられている。逆に、英語・スペイン語・フランス語のように、一つの言語がいくつもの国で国語や公用語となっている場合もある。「日本語」と比べ、背景に国家意識が強く、国民の言語として国内に向けて発した表現という感じが強い。そのため、同胞意識をかきたて、国民がひとしく身につけるべき規範としてのことばという意味合いが強まりやすく、民族意識の急激に衰えた戦後の日本でさえ、この語を使う限り規範意識は残り、日本語の変化を「」の乱れ」として喚く傾向が見られる。公用語・Q日本語・母語・母国語 <361> こくごがく【国語学】日本語を研究対象とし、音声・音韻、文 字・語彙・文法などの体系を明らかにしようとする学問をき し、学術的な話題の会話や文章に用いられる古風で専門的 な漢語。〈史〉への研究に打ち込む)最近は「日本語 学」という名称のほうが一般的になりつつある。意味とし ては「日本語学」と同義であるが、語感の点で伝統的な雰囲 気があり、古代日本語から各時代の日本語をひとしく研究 対象とする感じが強く、「日本語学」と違って特に現代語研 究を連想させることはない。Q日本語学 くごきょういく【国語教育】学校という場で国民に施され る広い意味での母国語教育をさし、会話にも文章にも使わ れる漢語。への現場〉への実習〉の外国人向けの日本語 教育は含まない。「国語」は授与し、「日本語」は習得する 対象だとする立場に立てば、教え学ぶ内容にも差が出、「国 語」では表現内容をも重視し、教える価値のある優れた文 章が教材の候補になる。単に日本語の運用能力を高めるだ けではなく、日本国民としての教養を培い情操を育てると いう人格教育の役割をも分担するため、言語教材より文学 教材が中心となり、現代文学にとどまらず近代文学はもち ろん古典文学や漢文も対象となる。乃日本語教育 くじ【酷似】甚だしく似ている意で、改まった会話や文章 に用いられるやや硬い感じの漢語。〈ーした品が出まわる〉 〈筆跡がーしている〉、Q近似・相似・似通う・似る・類似 くじ【告示】公の機関が官報などに掲載して一般の人に広く知らせる意で、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの硬い漢語。〈内閣〉〈新条例をーする〉都道府県 こくち や市町村の議会選挙については「公示」でなくこの語を用 いる。Q公示・公表・公布 ごくじょう【極上】きわめて上等の意で、会話にも文章にも 使われる漢語。へーのプランデー〉へーの毛皮〉へーの品が 手に入る〉「特上」以上に入手困難な感じがある。ひ特上 こくしょくじんしゅ【黒色人種】皮膚の色が黒褐色の人種を さし、改まった会話や文章に用いられるやや専門的な漢語。 へーには髪が縮れ唇が厚いなどの特色が見られる〉学問的 雰囲気を有し、そのぶん「黒人」より差別意識は弱い。ひ黒 ん坊・Q黒人・ニグロ こくじん【黒人】黒色人種に属する人をさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈|兵〉〈|選手〉〈|霊歌〉肌の色に 言及すること自体が差別意識を感じさせることがあり、使 用を控える傾向がある。「白人」と対立。黒ん坊・Q黒色人 種・二グロ くせい【国政】立法・司法を含む国の政治全体、特に行政を さし、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。へー を預かる)へーに参加する)内政 こくそ【告訴】犯罪行為による被害者やその法定代理人が犯 罪の事実を捜査機関に申告して、加害者の処罰を求めるこ とをさし、改まった会話や文章に用いられる専門的な硬い 漢語。〈ー状〉〈検察庁にーする〉〈一に踏み切る〉訴える・ 告発・Q訴訟・提訴 くち【告知】重大な事柄を告げ知らせる意で、改まった会 話や文章に用いられる正式な感じの硬い漢語。〈受胎—〉 〈当人への—に踏み切る〉〈—を受ける〉「告白」より冷静 <362> こくてっ な雰囲気を感じさせる。医者が患者にそれまで伏せていた 重大な病名などを伝えるような連想が強い。北杜夫の『夜 と霧の隅で』に「日ましに戦死ーがふえてゆく」とある。 Q告白・知らせる・通達・通知・告げる こくてつ【国鉄】JRの前身「日本国有鉄道」の略。廃語的。 〈一の民营化〉(旧一の職員)今でも習慣が抜け切れずに この語が口をついて出てしまう人を見かける。郷愁断ちが たく、意図的に使う人もあるかもしれない。いずれにして も、JRの意味でうっかりこの語を口にすると、年寄りか 古い人間と思われやすい。卩院線・Q国電・省線 くでん【国電】旧国鉄の大都市の周辺を走る近距離電車を さした通称。廃語的。〈区間〉(から私鉄に乗り換え る)国鉄の民営化に伴ってこの語も消えた。JR東日本 の場合、「E電」という用語に差し替える動きもあったが、 一部に不評で一般に広まらないうちに消えた。かつてこの 語を日常生活の中で頻発していた世代には懐かしいことば で、うっかり口走って年齢が知れることもある。J院線・Q国 鉄・省線 こくど【国土】一国の統治権の及ぶ範囲の土地をさし、改ま った会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈計画〉 〈一の面積〉〈一が戦場と化す〉〈広大な一が広がる〉頷土 こくはく【告白】それまで秘密にしていた事実や言いにくい ことなどを思い切って他人に打ち明ける意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈愛の一〉〈暗い過去を一する〉小 林秀雄の『ゴッホの手紙』に「これはゴッホの個性的着想と いう様なものではない。その様なものは、彼の一には絶え て現れて来ない」とある。内容が悪事であれば「白状」と言 い、それが取り締まりの場であれば「自白」また、医者が 病名などを患者に告げる場合は「告知」と、それぞれ使い分 けることが多い。「告知」より個人的・情緒的。告知・自白・ 知らせる・告げる・Q白状 くはつ【告発】加害者・被害者以外の第三者が捜査機関に犯 罪の事実を申告し、犯人の処罰を求めることをさし、改まっ た会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈役所の不正経理 をーする〉②法的専門語としてでなく、「企業の内部ー」の ように、不正や悪事を広く社会に知らせる意に用いる例も 多い。専告訴 くふく【克服】困難を乗り越えて自分の思うようにする意 で、いくぶん改まった会話や文章に使われる漢語。〈難病を ーする〉〈弱点をーする〉〈幾多の困難をーする〉宮本百 合子の『伸子』に「自分の感情をーした」とある。「誘惑」 のようにまだ自分の中に入り込んでいない場合はこの語で なく「打ち克つ」のほうが自然。打ち克つ くぶん【国文】日本語で書き記された文章をさして、学術 的な会話や文章に用いられる、やや古風な感じの漢語。へー で記述された文献》の「漢文」と対立する語。「」の研究」 のように「国文学」の略として使ったり、「」の出身」のよ うに「国文学科」などの略として使ったりする例もある。 国文体・Q和文 くぶんがく国文学日本の文学やその研究を意味し、会 話にも文章にも使われる、やや古風な漢語。〈演習〉へー を専攻している最近は「日本文学」という呼称のほうが <363> 優勢になってきている。「日本文学」に比べて伝統的な雰囲気が強く、意味の点では現代の流行作家なども対象となるが、語感の面でなじみにくい。ひQ日本文学 こくぶんたい【国文体】日本語、特に和語を用い仮名で表記 する平安時代の文章様式をさし、学術的な会話や文章で使 われる専門的な漢語。〈ーで書かれた作品〉②「漢文体」と 対立する語。変体漢文体を独立させて三分する場合は「和 文体」と言うことが多い。専和文・Q和文体 くべつしき【告別式】死者に別れを告げる儀式をさし、改 まった会話や文章に使われる、正式の感じの漢語。へーで弔 辞を読む特に改まらない会話では全体として「葬式」と 言うことが多い。葬儀に限らず、長く遠方に去り行く人の 送別の場合に用いることもあったが、飛行機の普及や通信 手段の発達により世界中がつながった今日ではその意味で はあまり用いない。弔葬儀・葬式・葬礼・弔い くみん【国民】その国の国籍を有する国家の構成員である 人間を意味し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる基本的な漢語。〈一宿舍〉〈一的人気〉〈一の権利〉〈一 の祝日〉〈一の声を政治に反映させる〉の「人民」や「民」 とは違って論理的には政治家を含むが、この語を用いる政 治家の発言には、無意識のうちに自分たちを除外した選挙 民を頭に置いているけはいの漂う例が少なくない。単市民 Q人民・民 くもつ【穀物】人間の主食とする米・麦やとうもろこし・大豆などの総称として、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へーの生産量〉へーを輸入に頼る〉ひ穀類 ここえろ ごくらく【極楽】仏教で、この世から西へ十万億土の彼方に あるという、常に阿弥陀仏が説法していて苦しみのない安 楽の世界をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へ往 生〉へー浄土〉⑨芥川龍之介の『蜘蛛の糸』は「何とも云え ない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れて居ります。ーもも う午近くなったのでございましょう」として終わる。「あ あ、いい気持ち、ー、ー」「この世のー」のように、単に安 楽な場所や環境をさす比喻的な用法もある。Q天国・パラ ダイス・楽園 くるい【穀類】「穀物」をさして、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈一の生産高〉〈黍や豆も一に含まれ る〉食する物自体をすぐにイメージさせる「穀物」と比 べ、直接にはその類別を問題にする感じがある。単穀物 こけ【後家】「未亡人」を意味する古めかしい漢語。〈若ー〉 へーになる〉へーを通す》回小沼丹の『後家横丁』と題する随 筆に「井伏さんは、横丁へ行こう、と云ってよくこの露地 に来られた」とある。専寡婦・未亡人・やもめ こける「転倒する」意の古めかしく方言的なニュアンスの和 語。ぐつまずいてーぐー・けつまろびつぐ親亀ー・けたら 皆こけた〜谷崎潤一郎の『細雪』に「ー・けないように右 手で床柱に掴まり」とある。ひころぶ・転倒 ごえじに【凍え死に】極度の寒さに凍えて死ぬ意で、会話 や軽い文章に使われる和語。〈ーしそうに寒い〉乃凍死 こえる【凍える】寒さで肉体的な感覚を失い自由が利かなくなる意で、会話にも文章にも使われる和語。〈手がー〉②「かじかむ」より感覚を失う範囲が広い感じがある。丼伏鱒 <364> ここかしこ 二の詩『歳末閑居』に、窓に梯子を載せて子供とシーソーを しながら「ように寒かったかときけば/ように寒かったという」と鸚鵡返しの対話をする場面がある。ひかじかむ ここかしこ【此处彼処】「そこかしこ」と同じ古風な和語。 〈に梅の花がにおう〉②やはり文学的な雰囲気が漂い、お のずと話題を選ぶ。ひあちこち・あちらこちら・②そこかしこ ここく【故国】生まれ育った国の意で、主に文章に用いられ る、やや古風な漢語。〈の土を踏む〉《海を隔ててを思 う》②外国に在住しているときに遠く離れたわが国という 意識で使うことが多い。「に母を残して上京する」のよう に、故郷の意でも使う。海外にあって故国を思う場合でも 生まれ育った懐かしい場所という意識が伴う。ひ自国・祖国・ Q母国・本国・本土 「こく【後刻】それより後の時刻の意で、改まった会話や文 章に用いられる硬い漢語。へーお渡しいたします)別に 「後日」という語があるだけに、その日のうちか遠からず というニュアンスを伴う。ひあとで・Qのちほど ここち【心地】一時的な心の状態をさし、会話にも文章にも 使われる、やや古風な和語。〈夢見ー〉〈ーよく眠る〉〈天に も昇るー〉〈申し分のないーだ〉〈生きたーがしない〉図太 宰治の『斜陽』に「全身の力が、手の指の先からふっと抜け てしまうーがして」とある。「気分」と似ているが、健康状 態に直結した気持ちをさす例は少ない。専感情・機嫌・Q気分 気持ち・心・心持ち・心情・心理・精神 こちよい【心地好い】いい気分だの意で、若干改まった感 じの会話や文章で用いる、いくらか詩的な雰囲気のことば。 〈一風〉〈一肌ざわり〉〈一く眠る〉気持ちいい・Q快い ころ【心】人間の理性・意志・感情などの活動をつかさどる と考えられているものをさして、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の最も基本的な和語。「が広 い〉「が曲がっている〉「に響く〉「にしみる〉「に 訴える〉「を奪われる〉「から感謝する〉「が動く〉 「ここにあらず〉「のうちを明かす〉夏目漱石の「坊 っちゃん」に「言葉や様子こそ余り上品じゃないが、はこ いつらよりも遥かに上品な積りだ」とある。感情・気分・気 持ち・心地・心持ち・心情・心理・Q精神 こころあて【心当て】「当て推量」「心頼み」の意の古語的な 表現。〈ーに生家の跡地を眺むれば〉〈ーが外れる〉 こころえ【心得】教養として身につけておくべき技芸などを ひととおり心得ている意で、会話にも文章にも使われる和 語。〈お茶のーがある〉〈その道に関してはいささかーがあ る〉の「素養」に比べ、知識より運用能力を問題にする傾向 が強く、「英会話のー」などともいう。「修学旅行のー」の ように、その件に関してあらかじめ知っておくべき作法や 心構えをさす用法もある。ヨQ素養・嗜み ころがけ【心掛(懸)け】あらかじめ気を配ってふだんから 何かに備えておく意で、会話にも文章にも使われる和語。 へいいーだ〉〈日頃のーが大事だ〉へーがなっていない) 「心構え」ほど限定的でない。马心構え ころがまえ【心構え】物事に対する事前の心の準備をさし、 会話にも文章にも使われる和語。へいざという時のーはで きている〉〈子の親となるー〉〈成功する人はーが違う〉 <365> 一般的な「心がけ」に比べ、重要な目的や困難な事態などを 想定してそれに備えている感じがある。心がけ ころがわり【心変わり】気持ちが変わる意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈急にーする〉〈恋人のーに驚く〉 特に、愛情が他の相手に移る場合に用いる。ひ変心 こころくばり【心配り】いろいろなところに気を配る意で、 改まった会話や文章に用いられるやわらかい感じの和語。 〈細やかなーを見せる〉〈温かなーがうれしい〉回相手の示 したある具体的な配慮に対して用いる例が多く落ち度が ないかと自分であれこれ注意するような意味合いでは使わ ない。Q気配り・気遣い・心遣い・配慮 ころづかい【心遣い】気を遣う意で、改まった会話や文章 に用いられる和語。〈格別のおーを賜り恐縮に存じます〉 〈おーに感謝する〉の相手の金銭面の配慮に対してそれとな く礼を言う場合の婉曲は表現ともなる。相手の示したあ る面での配慮に対して用いることが多く、失敗しないよう 自分であれこれ気をつけるような意味合いでは使わない。 り気配り・Q気遣い・心配り・配慮 こころづけ【心付け】サービス業の従業員などにその労をね ぎらう気持ちを表すために手渡す少額の金銭をさし、会話 にも文章にも使われる古風な和語。宿の女中にーをはず む》玉川一郎の『恋のトルコ風呂』に「従業員に高額にわ たるおーをお渡しにならないようお願いいたします」とあ る掲示を見て、少しは渡すようにという隠れたメッセージ を読み取る場面がある。チップ こころづもり【心積もり】心の中で考えて予定することをさ こころみる し、改まった会話や文章に用いられるやや古風な和語。ぞ ういうーでいる〜が外れる堀田善衛の『広場の孤 独』に「人はいまからーをしておかねばならぬ」とある。 計画・Q予定 こころのこり【心残り】立ち去る時などに心配・残念といった 気持ちが残る意で、会話にも文章にも使われる和語。ぐそれ だけがだぐこの子さえ幸福になればもうーはない)谷 崎潤一郎の『細雪』に「こいさんにお会いできないのがーで ある」とある。「未練」と違い、感情そのものに限る。母残 念・Q未練・無念 ころぼそい【心細い】頼りになるものがなく不安に思う意 で、会話やさほど硬くない文章に用いられる和語。〈外国の 一人旅はー〉〈彼に任せるのはー〉辻邦生の『夜の鐘』に 「私が感じていた心細さは、ただのー感じではなかった。そ れは、どこか不安で、恐怖に似た気持も含んでいた」とあ る。「心強い」と対立。気掛かり・Q心もとない・心配不安 ころみ【試み】結果を知るために仮にやってみる意で、や や改まった会話や文章に使われる和語。〈新しい〉〈画期 的なー〉〈ーに新機種を採用する〉Q試行・試し ころみる【試みる】リスクを承知で実際にやってみる意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い感じの和語。〈節水を ー〉〈サンプリング調査をー〉〈耐久性のテストをー〉 川上弘美の『センセイの鞄』に「体のふれあい」お手伝いしま すから。ー・みてみましょう」とある。実際にどうかを調べ る意味合いの強い「験す」に比べ、計画的に実行する場合に も使う。野球で「パントをー」は試合中に実際に行うので <366> あり、走り幅跳びで二回目の跳躍を」のも本番としての 試技である。いずれの場合も「験す」では練習を連想させ る。訳す こころもち【心持ち】感じ考える心の働きをさし、くだけた 会話から文章まで幅広く使われるいくぶん古風な日常の和 語。〈すっきりとした—〉〈悪いーはしない〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「浴衣一枚になって(十五畳の)座敷の真中 へ大の字に寝て見た。いいーである」とある。「気持ち」に 比べ、その時々の気分をさすことが多く、複雑な思考内容を さす例は少ない。会話などでは「一短め」「右に寄る」の ように、ほんの少しの意に用いることもある。感情・機嫌・ 気分・Q気持ち・心地・心・心情・心理・精神 こころもとない【心許無い】頼りなくて安心できず気掛かり だの意で、会話にも文章にも使われる、いくらか古風な和 語。〈甚だー手つき〉(この調子では期限までに仕上がるか ー〉安部公房の『他人の顔』に「その辺のことになると、 いささかー気がしないでもない」とある。気掛かり・Q心細 い・心配・不安 ころやすい【心安い】互いに気心がわかっていて遠慮が要 らない意で、さほどくだけない会話や文章に用いられる和 語。〈ーく付き合う〉〈ー仲間〉み気安い こころよい【快い】気分や気持ちのよい意で、主として文章 に用いる、こころもち美的な感じの和語。〈一睡眠〉へ感 触〉〈一適度の疲れ〉へー・く引き受ける〉夏目漱石の『こ ころ』に「自活の方が友達の保護の下に立つより遥かに! く思われたのでしょう」とある。気持ちいい・Q心地よい ござ【莫蔵】蘭草の茎で細かく編んだ薄い敷物をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈地面にーを敷いて座る〉 むしろ 二さえる「こしらえる」の崩れた形で、どこか方言的な響き を感じさせる俗語。〈見よう見まねでー〉作家訪問の際、 『珍品堂主人』のときは骨董屋で録音まで取って調べたこと を話題に出したら、井伏鱒二は「筋書きはー・えたんです よ」と付言した。きこしらえる 「ござかしい【小賢しい】ろくに力もないのに無理して一人前 の言動をする様子や、利口ぶって小生意気なさまをさすや や古風な和語。〈手口〉へーくいっぱしの口を利く国 木田独歩の『初恋』に「今までの生意気なーふうが次第に失 せてしまった」とある。自分の実際の能力以上に利口ぶる ために生意気な印象を与える、というマイナスイメージを 伴って用いられる。「ー・く立ち回る」のように、悪知恵を 働かせる抜け目のない意にも使う。専利いた風・Qずる賢い Q生意気・悪賢い 「小雨」細かい少量の雨をさし、会話にも文章にも使 われる和語。〈決行〉へがばらつく〈がそぼ降る〉 阿部昭の『訣別』に「もよいのその朝、父の遺体は藤沢火 葬所の「い」号焼却炉というもので、九時半から約五十分間 かかって処理された」とある。Q霧雨・ぬか雨・ぬか雨 さん【古参】その社会や職場などに古くからいる人の意で、 会話にも文章にも使われる古風な漢語。〈最ー〉〈兵〉 〈力士〉ひ古顔・Q古株・古手・ペテラン さん【午餐】「昼飯」の意で改まった会話や文章に用いられ <367> る硬い感じの漢語。「会」「に客を招く」正式の雰囲気、丁重で時に形式ばった感じのする表現。お昼・ちゅうじき・Qちゅうしょく・昼餉・昼御飯・昼飯・ランチ こし【腰】胴体の下部で脚の付け根までの部分をさし、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈及びー〉へっぴりー〉へーのくびれ〉ーが曲が る〉へーを抜かす〉円地文子の『耳瓔珞』に「病気の前よ り一皮むきすべらしたようにすっきり細くくびれた滝子の ーの線」という描写例がある。ヲ腰部 しいれ【輿入れ】「結婚」や「婚礼」をさすきわめて古めか しい和風の言い方。〈一の当日〉普、嫁の乗った輿を婿の 家に担ぎ入れたところから。家庭を持つ・結婚・結婚する・婚 姻・所帯を持つ・Q嫁ぐ・嫁入りする・嫁に行く こしかけ【腰掛け】腰を掛けるための台をさし、くだけた会 話やさほど硬くない文章に使われる、やや古風な和語。へー に座る)へーの端にちょこんと腰を下ろす)二葉亭四迷の 浮雲』に「ペンキ塗りのー」とあるように、「椅子」と違 い、深々と沈むソファなどの豪華な家具に用いるのにはふ さわしくない用語。揺り椅子や座椅子に用いても違和感が ある。一時的に身を置く意もあり、「仕事」などの語もあ る。马椅子 しかける【腰掛ける】腰掛けに腰を下ろす意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈椅子に浅くー〉〈ベンチにー〉 川端康成の『雪国』に「窓に体を投げつけるようにー・けた」 とある。椅子やベンチなどの腰掛けを明示する場合は、 「どうぞソファにお掛けください」のように、単に「掛ける」 こしゃく と言うことが多い。腰掛けがなく地へたや芝生の上などに 直接腰を下ろす場合は「座る」といい、この語は用いない。 ひ座る こしくだけ【腰碎け】途中で急に勢いを失い崩れる意で、会 話や改まらない文章で使われる和語。意気込みはすさま じかったが、計画は途中でーに終わった)相撲で、腰の 構えが崩れて自分で倒れること。転じて一般に、そのよう に物事が途中で駄目になり後が続かなくなる意でも使う。 相撲との関連はふだんはあまり意識されない。塩挫 「後日」その日より後のしかるべき日の意で、改ま た会話や文章に用いられる硬い漢語。〈結果はー連絡する〉 「ー改めて御礼に参上いたします〉「ーに問題を残す」の ように、漠然とした将来をさす場合もある。なお、「ー談 話」「ー物語」のように、ある事件などの解決した後をさす 用法もある。ひ他日 じつけ【故事付け】無理に関係づける意で、会話や軽い文 章に使われる表現。〈ーにすぎない〉〈ーにも程がある〉 むりやり「故事」と結びつけることからか。刂牽強付会 しぬけ【腰抜け】結果が心配で物事をやってみる勇気がない意で、会話や軽い文章に使われる古風な和語。ぐといつもこいつもーばかりだ〜最近の政治家はーがそろっている) 意気地無し・臆病・Q怖がり・腑抜け・弱虫 しゃく【小賴】小生意気で少々癒にさわる意で、会話や軽い文章に使われる、やや古風な表現。〈何をな〉なまねをする②永井龍男の『酒徒交伝』に「普段はとかくに触った男とも、嘘ばかりついていた奴とも、しんみり話し明 <368> こじゃれた した末」とある。ふ利いた風・小賢しい・小生意気・Q小憎らし い・生意気 じゃれた【小洒落た】ちょっとしゃれた感じのという意味 で、くだけた会話に聞かれる俗語。このへんではちょいと 喫茶店古くは「ふざけた」という意味に用いたようで あるが、洋風の装身具・衣装やブティックやカフェなどの店、 それらが建ち並ぶ通りや街角のようなものをさす近年の用 法は、伝統的なその語ともいわゆる粋筋とも無縁で、 「粋」に対する「小粋」などに倣って「洒落た」から新しく 生まれた俗語か。ひいき・Q小粋・洒落た・すい しゅ【語種】出自に着目した語の種類をさし、学術的な会 話や文章に用いられる専門漢語。〈同義でも」の違いで語 感が違う〉の「つき」「うみ」「はな」「あき」「みぎ」「ゆ く」「みる」「よい」「ながい」など日本固有の《和語》「生 活」「国家」「関係」など古く中国から伝来した《漢語》「パ ン」「ラジオ」「デッサン」など古代中国以外の外国語が日 本語化した《外来語》に分かれ、「ば所」「毎あさ」「いたガ ラス」「おれ線グラフ」のようにそれらが組み合わさった 《混種語》を含める。専語族 じゅうと【小姑/小舅】配偶者の兄弟・姉妹をさし、会話で も文章でも使われるやや古い感じの和語。「が多くて嫁 が苦労する)現代では結婚とともに独立して親と別居す るケースが多く、舅とや姑とや小姑の問題が昔ほど話題に ならない。そのため、小津安二郎監督の映画『早春』で千代 (岸恵子)が「の腐ったみたいに、何さ!」と啖呵かを切る 場面など、こういう言い方に今では時代を感じる。 「よ【古書】時代を経た書籍、または「古本」をさし、改 まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈展〉〈目録〉 〈貴重なーを入手する〉〈ーをひもとく〉単古本 「しょう【故障】機械類や体の一部に異常が生じて機能を損ねる意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈車の 「〈設備がーを起こす〉〈一箇所を修理する〉〈体のーを 訴える〉〈ー者リスト入り〉福永武彦の『草の花』に「診 断の度ごとに自分からーを申し立てて」とある。少不具合 こしらえる【捿える】「作る」の意で、会話や改まらない文章 中に用いる、少し古い感じのする和語。〈まとまった金を 「〈若いうちに家をー〉〈うまく話をー〉〈女をー〉 夏目 漱石の『坊っちゃん』に「勝手な規則をー・えて、それが当 り前だと云う様な顔をしている」とある。標準的な「作る に比べ、古風で少し俗っぽい感じが伴う。Qこざえる・作る じん【個人】社会の構成メンバーである一人の人間をさし、 会話にも文章にも使われる基本的な漢語。〈情報の保護 〈ーの自由〉〈ーの考えを述べる〉〈準備はーーで行う〉 大岡昇平の『俘虜記』に「人類愛から射たなかったことを私 は信じない。しかし私がこの若い兵士を見て、私のー的理 由によって彼を愛着したために、射ちたくないと感じたこ とはこれを信じる」とある。「ーの料金」のように「団体」 と対立する用法もある。少一個人 す「越す/超す」ある箇所の手前から向こう側まで達する 意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 生活の基本的な和語。〈冬を越す〉〈年を越す〉〈山を二つ 越したその先にある〉〈出費は二万円をはるかに超す〉〈身 <369> 長一九○センチを超す大男》夏目漱石の『草枕』に「馬へ 乗せて、峠をー・したのかい」とある。「越す」が一般的な表 記で、上回る、超過するといった抽象的な意味合いでは「超 す」と書き分ける傾向が強い。「山をー」「川をー」といっ た用法は「山を越える」「川を越える」より古風な感じがあ るが、現代語として不自然と感じられるほどではない。た だし、「峠をー」と言うと、仕事について難しいところを通 過して仕上げられるめどが立ったとか、病気で危険な段階 を通り過ぎたとかといった、古くからある比喻的な慣用句 を連想しやすく、「峠を越える」と言うと、徒歩や乗り物で 峠を通過したという具体的な行動を連想しやすいという傾 向は認められる。越える こすい【狡い】自分の得になるよううまく立ち回る意で、主 として会話に使われる、やや俗っぽい和語。へやり方で自 分だけ得をする)志賀直哉の暗夜行路」に「狡そうな眼 つきをして笑った」とある。『東京弁辞典』に長谷川時雨 『旧聞日本橋』中の例が出るが、『全国方言小辞典』では大 阪や奈良にも出てくる。いずれにしろ方言色が感じられ る。「ずるい」がさまざまなスケールで使われるのに対し、 この語は細かい個々の行為についての批評に使われる傾向 が強い。狡猾・こすっ辛い・Qずるい・ずる賢い・悪賢い 「すい【湖水】「湖」の意で主に文章に用いられる漢語。へ 周遊〉へを望む高台安岡章太郎の『海辺の光景』に 「波もないーよりもなだらかな海面ーとある。」湖 ごすい【午睡】昼寝の意で、主として改まった文章に用いる 硬い感じの漢語。〈午後一時間のーをとるのが日課となって ござへ いる)昼寝 こすっからい【狡っ辛い】「こすい」の強調表現として、くだ けた会話に使われる和語。〈ーやり口で金儲けする〉尾崎 士郎の『人生劇場』に「スリのようにー眼をして」とある。 「こすい」以上に俗っぽく、ずるさも上。母狡猾が・こすい・ず るい・Qずる賢い・悪賢い コスト製品が仕上がるまでに掛かる費用の意で、会話にも 文章にも使われる外来語。〈ダウン〉〈を抑える〉〈 が高くつく〉〈がかかる〉Q原価・仕入れ値・元値 「する【擦る】強く押し付けながら繰り返し擦する意で、会話 でも文章でも広く使われる日常の生活和語。〈目を—〉〈指 先でガラスを—〉〈汚れを雑巾でごしごし—〉〈垢かを—〉 有島武郎の『或る女』に「甲板を単調にごしごしごしごしと 音」とある。「さする」と違って、道具や目的はさまざま で、摩擦の強さにも規制がない。ひさする せい【個性】その人間に具わっている特有の性質をさし、 会話にも文章にも広く使われる漢語。〈強烈な—〉へそれぞ れのーを生かす〉へーを尊重する〉へーを伸ばす〉小林秀 雄の『ゴッホの手紙』に「ある普遍的なものが、彼を脅迫し ているのであって、告白すべきあるー的なものが問題だっ た事はない」とある。特質・特色・Q特性・特徴 ざうろっぷ【五臓六腑】内臓の意の古めかしい表現。久し ぶりの酒でーにしみわたる》弔臓器・臓腑・臓物・Q内臓・はらわ た・もつ ごぞく【語族】同じ言語から派生したと考えられる諸言語の 総称として、学術的な会話や文章に用いられる専門漢語。 <370> こそこそ くこのに属する言語比較言語学の成果として英語・ロ シア語・ギリシャ語など多くの言語が属することが明らかに なったインド・ヨーロッパ語族が有名。み語種 こそこそ 他人に知られないように内密に事を行う様子をさ し、会話や軽い文章に使われる和語。〈一逃げ出す〉へ打 ち合わせる〉の徳田秋声の『縮図』に「戸惑いした猫のよう に、一帰ってしまった」とある。「堂々」と対立するが、文 体的レベルが大きく違う。きこっそり・そっと・ひそか こそだて【子育て】育児の意で、会話や軽い文章に使われる、 やわらかいタッチの和語表現。へと仕事を立派に両立させ る)〈やっとーから解放される〉回具体的な行為を連想させ やすい「育児」に対して、総体的・抽象的に包括した感じも ある。少育児 こそばゆいくすぐったい意で、主に会話や軽い文章に使わ れる古風な和語。〈尻のあたりが妙に—〉②太宰治の『狂言 の神』に「物静かな生活に接しては(略)一ひらの桜の花びら を、掌に載せているようなこそばゆさ」とある。「くすぐっ たい」同様、「丁重に扱われ過ぎて思いだ」のように、比 喻的に照れくさい意でも使われることがある。ひくすぐった い 二九え【答え】問いかけに対して応じることやその言葉・内容 をきし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な和語。へ合わせへを求めるへを出す へを教えるへが間違っているへに詰まる②返事・ 返答・応答・回答・解答などの総称。「問い」と対立。応答・ 回答・Q解答・返事・返答 だかい【小高い】高さが周囲の土地より少し高い意で、い くぶん改まった会話や文章に用いられる和語。〈一丘〉へ 山)高い① ぐたぐた揉ぐめ事に近い意味で、主に会話に使われる、やや 俗ぼい和語。〈遺産相続の件で家の中にーが起こる〉〈事 件後のーがようやく片づく〉争い自体よりも、そのせい で生じる具体的・精神的な諸問題に重点のある感じがある。 諍い・Qいざこざ・トラブル・揉め事 だち【木立】並んだり群がったりして立っている何本かの 木をさし、やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん 古風で趣のある和語。〈冬—〉〈青々と生い茂った夏の—〉 の「林」ほどのスケールはない。芥川龍之介の『東洋の秋』 に「蕭条とした—の向うに静まり返ってしまったらしい」と ある。刂街路樹・Q並木 「木霊(魂・精)/谺」音声や音響の波が物に当たって跳 ね返って来る現象をさし、会話にも文章にも広く使われる 和語。〈山にーする〉へーが返って来る〉石川淳の『紫苑 物語』に「はじめはかすかな声であったが、ーがそれに応 え、あちこちに呼びかわすにつれて、声は大きく、はてしな くひろがって行き」とある。もと、「木三」「霊」の意で、古 くは清音。木に宿る精霊の仕業と考えたところから。「山 彦」より一般的に用いられ、自然の山野の中でなく街中 の現象に使っても「山彦」ほどの違和感がない。いかにも物 理現象という感じの「反響」より古風で詩的な雰囲気を感 じさせる。ひエコー・残響・反響・Q山彦 こだわる【拘る】価値のとぼしい細かなことや、さほど重要 <371> でない点に心をとらわれる意で、会話でも文章でも幅広く 使われる日常の和語。〈金銭に—〉〈流行に—〉〈過去の失 敗にいつまでも—〉〈細かい点に—・りすぎる〉夏目漱石 の『坊っちゃん』に「妙な所へー・って、ねちねち押し寄せ てくる」とある。「こだわる」ことに徹底してこだわった志 賀直哉は『暗夜行路』で「自分の武骨な手にー・って居た」 と書いている。従来、マイナス評価であったこの語が、近 年、「味に—」「徹底して使いやすさにー・った商品」という ようにプラス評価としても使われるようになり、「こだわ りの一品」などと高い評価として用いられる例もあるが、 今でもまだいくらか俗っぽい感じが残る。少拘泥 こっか ちょう【誇張】事実に対する認識や感情や感覚を実際より 大げさに述べることをさし、会話にも文章にも使われる日 常の漢語。へ表現《事実をーして話す《痛さをーして 訴える》井上ひさしが『自家製文章読本』で漱石の『坊っ ちゃん』の末尾の一文「だから清の墓は小日向の養源寺にあ る」をとりあげ、「だから」の三文字について「百万巻の御 経に充分拮抗し得ている」と述べたあたりはその好例。小 林秀雄の『モオツアルト』に「彼は殆ど憎悪を以て、その不 自然さとーとの終末する時を希った」とある。力説するの が「強調」で、針小棒大に言うのが「誇張」だから、この語 にはマイナスイメージが伴う。弁強調・極言 ちょう【語調】ことばの調子の意で、改まった会話や文章 に用いられる硬い感じの漢語。〈ーを整える〉〈強いーで言 う〉〈ーをやわらげる〉主に話すときの調子、時にはイン トネーションをさすが、文章のことばづかいについても使 う。 語り口・Q口調・語気・話しぶり・弁 つ物事の要領や勘どころをさし、会話や軽い文章に使わ れる日常の和語。〈商売の—〉〈操作の—〉〈—をつかむ〉 〈—を飲み込む〉〈—を身につける〉②特別の方法を連想さ せやすい「秘訣」に比べ、長い間の経験から自分で会得し た効果的なやり方や留意点などをさす。ちょっとした力の 入れ具合や微妙な温度調節といったもので、「秘訣」とい うほどびっくりするものではないという印象がある。片仮 名書きする例も多い。ひ勘所・呼吸②・壺②・秘訣・要領 「こつ【骨】火葬して埋葬する場合の死者の骨をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈一壺〉へ「拾い〉へおーを納める〉②富岡多恵子の『立切れ』に「お琴のーをはさんで、そのーをどうするかについて喋っていた妹の老婆も菊蔵も、遠からずーになる人間だった」とある。「うし」を「ぎゅう」といい、やきとりで「タン」「ハツ」と間接化するように、「ほね」という語の生々しい感じを減ずるために音読みにしてイメージをほかした語か。白骨死体が発見されてもその状態では「ほね」と言い、それを供養して埋葬する段階になってはじめて「こつ」と言う。漢字表記では「ほね」との区別が困難。感触をやわらげるためもあり、しばしば仮名書きされる。ほね こっか【国家】領土と国民を有し統治権を持つ社会集団を意 味し、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの硬い 漢語。〈近代—〉〈法治—〉〈—試験〉〈—の繁栄〉〈—の安 寧を祈る)頷土をイメージさせる「国」に比べ、組織を中 心とする抽象的な概念をさす。国 <372> こっかいぎいん こっかいぎいん【国会議員】国民から代表として公選される 議員の意で、会話にも文章にも使われる漢語。へーに立候補 する〉へーとして初当選する〉の衆議院議員と参議院議員と の総称。ひ代議士 こっかく【骨格(骼)】体の骨の構造の意で、やや改まった会 話や文章に用いられる、少し硬い感じの漢語。「のしっか りした頑丈な体」②徳田秋声の『縮図』に「のがっちりし た厳いつい紳士であった」とある。森鷗外は『空車』に、大 きな空の荷車を引いて「大道狭しと行く」馬について、「 が逞しく、栄養が好い」と述べている。専骨組み こっかん【酷寒】ひとい寒さの意で、改まった手紙や文章に 用いられる古風で硬い漢語。〈一に耐える〉水上勉の『土 を喰う日々』に「外は零下のーだ」とある。「厳寒」と「極 寒」との間のつらさを思わせる。「酷暑」と対立。Q厳 寒極寒 ぐっかん【極寒】きわめて厳しい寒さの意で、改まった会話 や文章に用いられる古風で硬い漢語。〈一の候〉〈一の地〉 ②「厳寒」「酷寒」以上に耐え難い感じがある。厳寒・Q 酷寒 つきょう国境国と国との境界線をさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈一線〉へ一の警備に当たる〉へ一を越 える津村信夫の詩『小扇』に「指呼すれば、はひとす じの白い流れ。高原を走る夏期電車の窓で、貴方は小さな 扇をひらいた。とあり、和語・漢語の配列やリズムの点で 「こっきょう」と読むほうがしまる。が、現在では外国との 境をさすのが一般的。「くにざかい」より厳密な感じがあり 線的なイメージでとらえやすいため、「トに住む」では違和 感があり、「近くに住む」としたほうが落ち着きがよい。 みくにざかい 西洋料理や中華料理の店の料理人をさして比較的古 くから会話でも文章でも使われているオランダ語から入っ た外来語。〈長〉〈食堂の—〉〈一の腕が問われる〉専板 場・Q板前・シェフ・調理師 こづく【小突く】他人の体を拳骨や指先などで突く意で、会 話やさほど硬くない文章に用いられる和語。〈肩を—〉〈胸 を—〉〈肘で—〉尾崎一雄の『虫のいろいろ』に「宇宙は 有限か、無限か、といきなりきかれて、私はうとうとしてい たのをちょっとー・かれた感じだった」とある。専突く・Qつ つく・つっつく 「小作り小さく出来ている意で、会話にも文章に も使われる古風な和語。体がーにできている《顔も体も ーの女》「小柄」が大きさだけを問題にしているのに対 し、この語にはどこか力感に欠ける感じもある。夏目漱石 の『坊っちゃん』の主人公は「おれは江戸っ子で華奢にーに 出来て居るから、どうも高い所へ上がっても押しが利かな い」と初めて教壇に登った感想を述べている。Q小柄・小 粒・小兵 こっけい【滑稽】おとけてばかばかしく面白おかしい意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈な話〉〈恰好がーだ〉 見可笑しい①・傑作②・コミカル・剽軽・Qユーモラス こつこつと目標に向かって地道な努力を続ける様子をさし、 会話やさほど硬くない文章に使われる表現。「努力を続 <373> ける〈一勉強する〉〈一稼いで金を貯める〉少しずつで も着実に続けるところに重点がある。乃齷齪・営々・せっせ と・Q着々と こっそり 他人に気づかれないようにひそかに行うさまをさ して、会話やさほど硬くない文章に用いられる和語。へー抜 け出すへー忍び込むへー教えるへー覗ぞくふうちうち・ こそこそ・Qそっと・内緒・内々・内密・ひそか ごったがえす【ごった返す】人が大勢集まって秩序なく入り 乱れひどく混雑する意で、会話や軽い文章に使われる和語。 〈神社は初詣の客でー〉〈会場がファンでー〉「込み合う」 より範囲が広く程度もさらにひどい感じがある。阿川弘之 の『雲の墓標』に「大阪駅頭をたって来た」とある。ひ込 み合う・込む・Q混雑・混乱・立て込む こっつあん「ありがとう」の意の相撲は社会の用語。へーで す》ると広い意味であった「ご馳走さま」から転じた語 形。 こっとう【骨董】時代を経てなお価値の出る古い道具や美術 品をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈書画—〉へ 趣味〉へ—品の鑑定〉へ—に手を出す》「古道具」より高価 な雰囲気がある。井伏鱒二の『珍品堂主人』に「は女と同 じだ」とあり、「惚れるから相場があり」、「しつこく掛合っ ていると」「いつかは相手が、うんと云う」という解説が続 く。小林秀雄をモデルにした「来宮の持論」である。ひアン ティーク・Q古道具 っぱずかしい【小っ恥ずかしい】「こはずかしい」の転で、 くだけた会話で使われる、やや古い感じの俗っぽい口頭語。 ごてる 〈人前で褒められるとーもんだ〉今ころ赤ちゃんができる なんて何だかー)四大ペテランの実力者が久しぶりに優勝 したような場合に、照れてわざとこういう俗っぽいことば を使うこともある。匕面映ゆい・決まり悪い・小恥ずかしい・照れ 臭い・恥ずかしい こっぱみじん【木っ端微塵】固体が割れて細かな破片に砕け 散る意で、会話や軽い文章に使われる表現。〈爆破されて に吹っ飛ぶ〉回「相手をにやっつけてやる」のように、め ちゃくちゃに粉碎すると意気込む場合の誇張としても使う。 専粉々・Q粉みじん こっぴどい「ひどい」の強調的な口頭語。「ーく叱られる」 〈ー仕打ち〉〈ー目に合わせる〉②促音とそれに続く「ピ」と いう破裂音も影響して、語感に激しさを添えているかもし れない。ひひどい こつぶ【小粒】小柄の意で、会話にも文章にも使われる和語。 へーで機敏な動きを見せる》「の芋」「雨がーになる」な ど、人間以外についても広く使う。「大物が抜けて全体とし てーになった」として、政界・文壇・チームなどについて用い ることもある。Q小柄・小作り・小兵 て【鏢】漆喰を壁に塗る道具や、それに似た形でアイロ ンの役をする用具をさし、会話にも文章にも使うやや古風 な感じの和語。〈焼きーを当てる〉及アイロン 二テージ 山小屋風の建物をさし、会話にも文章にも使われ る外来語。「風の建物」山荘・山房・バンガロー・ヒュッテ・Q 山小屋・ロッジ さてるくどくどと不平不満を並べる意のやや古い感じの <374> ヒ 和語の俗語。「ー・て得」〈何かというとあいつはー・ててば かりいる〉の「こねる」とこの「ごてる」との混交により、 この意味で「ごねる」と言うこともある。ふごねる と【事】人間の意識や思考の対象となる事柄や現象や関係 や概念などをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる日常の最も基本的な和語。へーが起こるへーが だけにへーを構えるへーここに至るへ②具体的にも抽象 的にも使われる「もの」と違い、抽象的で感覚による把握の できない対象をさす。専事柄・事物・Q物事 どう【鼓動】心臓の響きをさして、改まった会話や文章に 使われる漢語。〈胸の—〉〈—が聞こえる〉〈—が高まる〉 尾崎士郎の『人生劇場』に「胸にはセコンドを刻むような小 さいーがだんだん高まってくる」とある。「春の—」などと 比喩的にも使い、その場合は詩的なイメージとなる。 Q動 悸脈・脈搏 ことがら【事柄】物事の内容・状態をさし、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈特殊な ー〉〈重要なー〉〈複雑なーを処理する〉へーの本質をわき まえる〉へーの性質上〉へーがーだけに〉夏目漱石の『倫 敦塔』に「戯曲的に面白そうなー」とある。物体そのものは 含まない。項目・事・事項・事象・事物・Q物事 どく【孤独】頼る人も仲間もいない状態をさして、会話に も文章にも使われる漢語。〈天涯—〉〈な生涯〉〈な晩 年〉〈に耐える〉ひとりぼっち ことごとく【悉(尽)く】一つ残らずすべての意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い感じの和語。〈失敗する〉 〈頼まれるとー引き受ける〉《親の意見をー無視する〉 「全体」はもちろん「全部」や「すべて」と比べても、一つ にまとめる意識が弱く、結果として全体を問題にするとし ても、あくまで個々のそれぞれを判断した結果であり、総体 的な平均点ではない。Qすべて・全体・全部・みな・みんな 「とし【今年】今のこの一年をさし、会話でも文章でも広く 使われる日常の基本的な和語。〈ーで満三十歳になる〉へ の十大ニュース〉〈ーもよろしく〉谷崎潤一郎の『細雪』 に「これでー为此の花の満開に行き合わせたと思って、何が なしにほっとする」とある。文体的なレベルは漢語の「去 年」や「来年」とほぼ同じ。年度単位の場合はこの語を用い ず、漢語の「今年度」「本年度」を用いる。こんねん・Q本 年 とづけ【言付け/託け】「ことづて」の意で会話にも文章に も使われる古風な和語。〈ーを頼まれる〉、Qことづて・伝言・ メッセージ とづて【言伝】他人に頼んで先方に伝えてもらう意で、会 話にも文章にも使われる、いくぶん古風な和語。へーを頼 む) みことづけ・Q伝言・メッセージ ことなる【異なる】みな同じではなくそれぞれ別だの意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い和語。文化が」 〈気候が」〈条件が」〈担当者が」国木田独歩の『武 蔵野』に「露西亜の景で而も林は樺の木で、武蔵野の林は楢 の木、植物帯からいうと甚だーって居るが、落葉樹の趣は 同じ事である」とある。「同じ」「等しい」と対立。違う ことに【殊に】他と比べて特に著しい意で会話にも文章にも <375> 使われる和語。〈あの客は丁重にもてなす〉〈今度のは 豪華なパーティーだった〉のこと」は「異なる」意から。 马特に・Qとりわけ・なかんずく 「とば【言葉/詞】人間が気持ちや情報を伝え合うために用 いる音声や文字をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常の最も基本的な和語。〈一の意味〉「が 通じない〉〈一が丁寧だ〉〈一で言い尽くせない〉尾崎一 雄の『暢気眼鏡』に「心機一転」「豁然大悟」そんな一も呑 みなれた薬のように何の反応もなくなった」とあり、竹西寛 子の『少年の島』に「数珠玉のようにつながって老婆の口か らほとばしり出る意味のわからない」とある。「日本の 」で「言語」「難しい」で「語」や「句」「ありがたい お」「文」「表現」「文章」を意味するなど、各レベルで 広く使われる。言語・Q語・語彙・単語・用語 ことほぐ【寿ぐ】「祝福する」意の詩的な雰囲気をもつ古語的 表現。〈新春を—〉〈長寿を—〉Q祝賀・祝福 「子供」「子」に似た意味で幅広く使われる基本的な和 語。修飾語を伴わずに単独の名詞として用いても「子」と 違って古い感じはない。「に手がかかる」「のころを思 い出す」「用の机」林芙美子の『風琴と魚の町』に「 たちは豆のように弾けて笑った」とある。一般に、「子」よ り年齢幅が小さく、ふつう未成年をさす。「若い子」「綺麗 な子」として二十歳を過ぎた人をさすこともあるのに対し、 「子供」にはそのような表現が成立しにくい。子お子様・餓鬼・ 子 こどもごころ【子供心】子供の純な心の意で、会話にも文章 こないだ にも使われる和語。「に不思議でならなかった」(ーにも 悲しかった思い出だ》「幼心」より客観的な感じがあ る。Q幼心・童心 「とよせる『事寄せる』「かこつける」意で、改まった会話や 文章に用いられる、やや古風な和語。〈病気にー・せて温泉 を楽しむ〉〈仕事にー・せて見物して回る〉ひ託ける ことわざ【諺】昔から言い伝えられてきた教訓や諷刺を含 む簡潔な表現をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の和語。〈ーとおり〉〈ーを引用する〉 「急がぼ回れ」「猿も木から落ちる」「溺れる者は藁かをもつ かむ」など。長い間の生活の知恵が凝縮されており、それ ぞれの社会の文化的背景を映し出す。りイディオム・Q格言 慣用句・成句 ことわる【断る】相手の求めを受け入れない旨の意志を伝え る意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈誘いを—〉〈協力を—〉(にべもなく—〉 〈それとなく—〉の「あらかじめーっておく」のように、前 もって知らせて了承を得る意にも使う。ひ一蹴や・拒絶・拒 否・Q拒む・はねつける な【粉】非常に細かい粒一般をさして、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈ー薬〉へミル ク〉(米のー)〈小麦を挽いてーにする〉日常会話では一 般に「こ」よりもこの語をよく用いる。ひQ粉・粉末 こないだ「この間」の崩れた形で、もっぱら仲間内のくだけた会話で使う。〈ついーのことじゃないか〉へーは、あれからどうした?)過日・Qこの間・先頃・先日・せんだって・先般 <376> こなくすり こなぐすり【粉薬】粉状の飲み薬をさし、会話にも文章にも 使われる日常の和語。〈ーを調合する〉も散薬 なごな【粉粉】固体が割れて非常に細かな破片に分かれる さまをさし、会話にも文章にも使われる和語。〈一になる〉 〈一に砕ける〉の「木っ端微塵」より細かく「粉微塵」ほ どではないというイメージか。丹木っ端微塵・Q粉みじん こなまいき【小生意気】少々生意気で気に障る意で会話や軽 い文章に使われる古風な表現。「なことを抜かす」「な 振る舞い」も利いた風・小賢しい・小癩・Q小憎らしい・生意気 こなみじん【粉微塵】固体が割れて粉のようにきわめて細か い破片に砕ける意で、会話にも文章にも使われる表現。「フ ロントガラスが割れてーになる》「粉々」以上に細かな 感じがある。木三端微塵・Q粉々 こにくらしい【小憎らしい】少々憎いと思うほど小賢しい 意で、会話や軽い文章に使われる、やや古風な和語。〈若造 のくせに—〉〈見るからに—態度〉本気で怒るほどではな いが、何となく気に入らないという感じがある。刂利いた 風・Q小賢しい・小癪・小生意気・生意気 「小粉糠」「ぬか」の意で使う古風な和語。「のよ らな細かい雨」古くは東日本で広く使われたというが、 現在では比喩的な「雨」の形で使うだけで、全国的に「ぬ か」が優勢。ぬぬか 二ぬかあめ【小粉)糠雨】小糠のような細かい雨をさし、会 話にも文章にも使われる古風な和語。〈そぼ降る—〉宮本 百合子の『伸子』に「昨夜は星が綺麗に見えていたのに、 が降っていた」とある。単に「ぬか雨」ともいう。専Q霧雨 小雨·時雨·奴办雨 コネ縁故関係など何らかのつながりの意で、主に会話に使われる、やや俗っぽい表現。「ーがある」〈ーをつける〉〈ーを利用する〉「コネクション」の略。Q縁故って手づる こねる【捏ねる】土や粉などに水分を加えて練る意で、会話 でも文章でも広く使われる日常生活の和語。〈粘土をー〉 〈うどん粉をー〉「練る」が一定方向の反复動作をイメー ジさせやすいのに対して、この語は複数の方向から力を加 えるという動作の過程を表現している感じが強い。り練る こねる「死ぬ」の意で相手を軽蔑して言う、いかにも古めか しい和語の俗語。〈あのワルもついにー・ねたか〉の「御涅 槃」の前半を動詞化したものという。なお、「さんざん ー・ねたすえに」などと、くどくど文句を並べる意で使うの は、「こねる」と「ごてる」との混交で生じた別語。「ごね 得」はそこから出た表現。ひこてる・死ぬ このあいだ【此の間】数日から数ヶ月前あたりをさして、主 として会話に使う日常的な和語。〈の件〉へついのこと だよ〉〈は失礼しました〉〈の話、あれからどうなっ た?〉〈はどうも〉〈からちょっと気になってるんだけ ど〉②二葉亭四迷の『浮雲』に「来た時」とある。くだけ た会話では「こないだ」となりやすい。「あいだ」を「間」 と漢字で書くと、「このかん」という表現と紛らわしい場合 がある。ひいちじ・過日・先頃・先日・Qせんだって・先般・一頃 このごろ【此の頃】少し以前から今までの間をさし、会話や さほど硬くない文章に使われる和語表現。《今日ー〉へーの 若い人〈ーちょっと元気がない〉の「このところ」より時 <377> 間の幅が広く、年単位のこともある。最近年・このところ・Q最 近・昨今・一頃 このたび【此の度】「今回」の意で、改まった挨拶や手紙など に用いられる丁重な表現。〈一の件につきまして〉(一は貴 重なご意見をお寄せいただき〉〈私儀—結婚致す事と相成 りました〉の「今般だ」ほど形式ばった堅苦しさはない。 この程・今回・Q今度・今般 このところ【此の所】最近しばらくの間の意で、会話や硬くない文章に用いられる和語表現。〈一暑い日が続く〉〈一やたらに忙しい〉〈一元気がない〉〈一進歩がめざましい〉〈近頃」以上に話しことばの調子を感じさせる。「ーしばらく優勝から遠ざかっている」のように年単位で使う例もまれにあるが、何日か何ヶ月かの例が多く、一般に「このごろ」より短い期間をさす傾向がある。最近年・Qこのごろ・最近・昨今・近頃 このほど【此の程】「今回」つい最近の意で、改まった挨拶や手紙などに用いられる丁重な表現。「左記に転居いたしました」「課長を仰せつかりました」副詞的な用法が多く、「の不祥事」「の寛大な扱い」のような例では「このたび」のほうが自然に響く。Qこの度・今回・今度・今般このましい【好ましい】好感が持てる意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。「結果」「傾向」「行為」「好もしい」とも言い、その場合は少し古い感じになる。「望ましい」に比べて個人的な感じが強い。思わしい・気に入る・好む・好き・望ましい このみ【木の実】樹木に生る実をさし、会話にも文章にも使 こばなし われるいくぶん古風な和語。〈禁断のー〉へーを取って食べ る〉の柿や蜜柑のような果実よりも栗や胡桃のような 皮の硬い実を連想させやすい。きのみ このむ【好む】好きだという意味で改まった会話や文章に用 いられる和語。〈甘い物を—〉〈英雄色を—〉〈赤系統の色 を—〉〈人前に出るのは—・まない〉〈—と—・まざるとにか かわらず〉回「好く」ほざ古風ではなく、日常会話的な「好 き」よりは改まったレベルにある。恋愛関係で使うと相手 を物扱いした感じになりやすい。愛好・気に入る・好ましい Q好き このもしい【好もしい】河野多恵子の『夜を往く』に「人 柄に好もしさを覚えずにはいられなかった」とある。 ましい このような【此の様な】このとおり、これと同じか似たよう なの意で、比較的改まった会話や文章に用いられる表現。 〈ー成績で申し訳ない〉〈ー経済状況においては〉〈ー丁重 なおもてなし恐縮に存じます〉しかかる・かような・Qこうい う・こんな はずかしい【小恥ずかしい】少し恥ずかしいという意味で、 会話でも文章でも使われる、やや古い感じの和語。今更表 彰などとはいさきかー感じがないでもない)马面映ゆい・決ま り悪い・こっぽずかしい・照れ臭い・恥ずかしい ばなし【小咄(噺・話)】気の利いた洒落などで笑わせる短い 話をさし、会話にも文章にも使われる、やや古風な和語。 〈江戸—〉〈退屈しないよう、ここらで—を一席〉通常は、 小僧が星を打ち落とそうと長い棹を振り回しているのを見 <378> こばむ た和尚 としが「そんなもので届くか。星根へ上がれ」と言っ た、というような短いひとこまの話が多く、落語のまくら などに使う伝統的な作品をさす。ひ笑話・Q笑い話 ばむ【拒む】相手の求めに一切応じようとしない意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈支払いをー〉〈要求をー〉 〈頑ふなにー〉の「断る」より強い調子を思わせる。ひ一蹴 れ・拒絶・Q拒否・断る・はねつける ごはん【御飯】米の飯や食事をさし、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く用いられる日常の基本的な漢語。現代では 特に丁寧な感じもしないごく普通のことば。〈一粒〉〈松茸 〉〈一に味噌汁〉〈一を炊く〉〈一をいただく〉庄野潤三 の『佐渡』に「蓋を取りますと、鰹節と海苔と醬油のしみた ーの匂いが飛び込みます」とある。「どんぶり」に入ってい ると「飯」というイメージになり、この語は「茶碗」によそ った姿がびったりと合う。Q飯・ライス コピー 文書や図表などをそっくり写し取る意で、会話や軽い文章に使われる外来語。〈|機〉〈ハード〉〈カラー〉〈|をとる〉〈原文を|して貼り付ける〉文書に限らず「名画の|が出回る」のように複製の意もあり、また原本でない点に重きを置く「複写」に比べ、そっくり同じものを作製することに重点がある。「転写」はもちろん「複写」に比べても、機械の場合を連想しやすい。「|が出回る」のように模写・模造・複製したものの意にも、また、「|ライター」のように広告の文案の意にも使う。写し・転写・複写 ぶゅう【誤謬】誤りの意で文章中に用いられる硬い漢語。 〈訂正の設問〉〈信じがたいーを発見する〉〈重大なーを 犯す)過ち・Q誤り・過失・間違い こひょう【小兵】体の小さな意で、会話にも文章にも使われ る古めかしい表現。〈力士〉(ながら侮れない相手) 「精兵」の反対で、もとは弓を引く力などの弱い意に用いた というが、現在では主にスポーツ関係で使われる。小柄・ 小作り・Q小粒 こびりつく【こびり付く】固くくついて離れにくくなる意 で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈汚れがー〉〈耳 にー〉〈頭にー・いて離れない〉の黒井千次の『オモチャの 部屋』に「祖母の言葉が未だに頭にー・いている」とある。 ひQしみつく・焼き付く こびる【媚びる】相手に気に入られるように振る舞う意で 会話にも文章にも使われる和語。〈上役に—〉〈権威に—〉 〈大衆に—〉開高健の『パニック』に「キツネが猫のよう にー・びたしぐさで首を金網にすりつける」とある。「男に ー」として、女が男の気を引くようになまめかしく振る舞 う意にも用いる。ひQおもねる・迎合・取り入る・ぺつらう ぶ【鼓舞】気持ちを奮い立たせる意で、会話にも文章にも 使われる、やや古風な漢語。〈士気を—する〉夏目漱石の 『草枕』に「余が欲する詩はそんな世間的の人情を—する様 なものではない」とある。Q激励・鞭撻 こふう【古風】様式などが昔風だという意味の漢語。やや改 まった感じの日常語。「な造りの庭〉「な趣の残る街並 み〉「な考え方」②宮本百合子の『伸子』に「生活全体が その仏壇のように「な伝統にみちていた」とある。実際に 時代を経ていなくても、様式などが古く感じられれば使う。 <379> 単に古いだけでなく、そのことが昔なつかしい感じや落ち 着いた雰囲気など、ある種の魅力をそなえているときに、 他の類義語よりぴったりとあてはまる。ひ古くさい・Q古び た・古めかしい ぐふざぶ【五分五分】優劣の差がない、または、確率が同じ ぐらいである意で、会話や軽い文章に使われる日常の漢語。 「の勝負」〈当選か落選かーというところだ〉のそのため に結果の予測が困難である場合によく使う。拮抗・Q互 角・どっこいどっこい・とんとん・伯仲・比肩・匹敵 こぶし【拳】指を折り曲げた手の意で、会話にも文章にも使 われる古風な和語。へを突き上げて抗議する〉へで机を 叩かいて怒る)野上弥生子の『秀吉と利休』に「握りしめ た」はむかしながらに濃い粗ら毛で、強固に節くれだって いた」とある。巻固・Q拳骨・鉄拳・握り拳 ぶし【辛夷】モクレン科の落葉高木。早春にの白い花が 開く漉井孝作の『無限抱擁』に「の梢は、ぬれ紙のあ んばいの花が漂う」とある。蕾の開く直前の形が子供の 拳を思わせるところからの名づけ。 ごふじょう【御不浄】「便所」の意の古めかしい漢語の呼称。 へーをお借りする)排泄物は汚れたものという発想で、 昔は大小便自体を「不浄」と呼んだらしい。そのための施 設もあまり清浄とは言えず、それに「御」を冠した命名という。 みおトイレ・圓や・閑所・化粧室・雪隠・洗面所・WC・手水場・手 洗い・トイレ・トイレット・はばかり・Q便所・レストルーム このぶん【子(乾)分】親分の配下にある人間をさし、会話にも 文章にも使われる古風な表現。〈ーになる〉〈親分ーの間 こまかい 柄(面倒を見る)犯罪集団に限らず、政界や会社な どでも強固な結びつきの上司と部下の関係などに比喩的に 使う場合があり、そういう用法は俗っぽい感じが伴う。「親 分」と対立。ひ家来・下っ端・手先②・手下・手の者・配下・Q部下 ぼう【語法】文法、特に口語文法をさし、改まった会話や 文章に用いられるやや古風で専門的な漢語。〈ー解説〉 「巧みなーで説得する」のように、単にことばの使い方をさ す俗な用法もある。単文法 ぼく【古木】長い年月を経た非常に古い樹木の意で、会話 にも文章にも使われる古風な漢語。〈神社の境内にある—〉 の「老木」以上に珍しく貴重な感じが漂う。ひ老樹・Q老木 ぼす【零す】結果として愚痴を言う意で、会話や軽い文章 に使われる和語。〈姑が嫁のことを息子にト〉自分にとっ て迷惑な他人の行為を他の人に嘆く感じの例が多い。「ぐち る」ほど意図的でなく、腹にたまった不平不満がぽろっと口 から出てしまう場合も含まれる。ひぐち・ぐちる・Qぼやく ばればなし【零れ話】事件などの本筋には関係のないち よっと興味を引く話をさし、会話やさほど硬くない文章に 使われる和語。文壇のーを集めた本)逸話・裏話・エピソード・挿話・Q余話 まい【細い】小さい・細かいの意で、くだけた会話に使うこ とのある俗っぽい和語。〈計算がー〉関西方言から。Q 細かい・こまこま まかい【細かい】形がきわめて小さい意、些細い・綿密など の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な和語。〈粒がー〉〈金〉〈仕事〉〈心配 <380> ごまかす りくーく調べる)芥川龍之介の『南京の基督』に「心も ちあいた唇の隙にも、糯米のように—歯が、かすかに 白々と覗いていた」とある。「神経が—」「芸が—」のよう に、隅々にまで注意が届く意でも使う。「こまごま」に比べ、 小さくても価値のあることを含む例も少なくない。 い・こまごま まかす【誤魔化す】相手の目を欺いてこっそり不正を行う 意で、会話やさほど硬くない文章に使われる日常語。〈釣銭 をー〉〈分量をー〉の「その場をー」「泣き顔をー」のよう に、相手にわからないように取り繕ってうやむやにする意 にも使う。専欺く・いつわる・かたる・担ぐ・たぶらかす・だまくら かす・Qだます・ちょろまかす まま【細細】さして重要でない細かく些細なの意で、 会話や硬くない文章に使われる和語。〈ーした仕事〉へと 書き記す〉へと気を配る〉の「細かい」と違って一つの対 象には使わず、いくつかの対象をまとめて取り上げる場合 に使い、さほど価値のある物を含まない印象が強い。 い・細かい またのきれあがった【小股の切れ上がった】すらりと脚の 長い意の古めかしい和風の表現。「いい女」意味として は、特に下半身のすらりとした体型をさしているだけであ るが、この古風な表現は伝統的に着物姿の小粋な婦人の形 容に用いてきたため、「長身の美男力士」などと男性の形 容に用いるわけにいかない雰囲気がある。また、レビュー ガールや女子バレーの選手について用いると、和服姿でな いという点でやはり違和感が残る。ことばの意味というよ りも、何に対して用いてきたかという表現対象の在り方に 関する履歴上の違和感に近い。ことばの伝統的な使用がい わば照り返しとなって規制が働く一例である。 まる【困る】どうしたらよいかわからずに悩む意で、くだ けた会話から文章まで幅広く使う一般的な日常の和語。返 事に」〈生活に」〈扱いに」〈!った問題が起こる〉 長塚節の『土』に「夫婦は只ー・って其の日を過して居た」 とある。Q困惑・当惑 ごみ不用と判断して捨てた物をさし、くだけた会話から文 章まで幅広く使われる日常の和語。〈一箱〉〈綿一〉〈生一〉 〈粗大一〉〈一の自動車〉〈一を拾う〉〈一として捨てる〉 「塵」や「芥」の漢字を当てることもあるが読み方が紛らわ しく、しばしば片仮名書きされる。込芥・Q冊・塵・埃 「みあう【込(混)み合う】多くの人や物が集まって混雑する 意で、会話にも文章にも使われる和語。〈朝は車内が一〉 〈帰省ラッシュで高速道路が一〉〈日曜で遊園地が一〉〈セー ルで店内が一〉夏目漱石の『草枕』に「・わなければ、 少し逗留しようかと思う」とある。「込む」が状態を比較的 客観的に表すのに比べ、この語はそのために混雑している と判断している感じがあり、それだけ主観性が強い。阿部 知二の『冬の宿』に「小住宅の一・った一郭」とあるように 物どうしの間隔の狭い場合にも使う。ひごった返す・込む・混 雑・Q立て込む こミカル可笑しくて笑いを誘う感じをさし、会話にも文章 にも使われる外来語。〈な表情〉〈な演技〉「ユーモ ラス」に比べ、単純明快に可笑しいことが多い。可笑しい <381> ①・傑作②・滑稽・剽軽・Qユーモラス こみち【小道(路・径)】道幅の狭い道路の意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈裏の—〉〈林の中の—〉橫道・脇道の 連想もある。小沼丹の『紅い花』に「春先になると赤い木瓜 の花に点缀される雑木林への—」とある。裏通り・裏町・Q 小路・横町 ミック漫画や漫画本、劇画をさし、会話や軽い文章に使 われる外来語。川端康成の『浅草紅団』に「ソング」と あるように、「コミカル」と同様、滑稽なの意でも使われ る。乵戯画・Q漫画 む【込(混む】道路・乗り物・店・会場などに多くの人や物が集まって余裕がない意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。買い物客で通りが ー〉くこの時間帯は待合室がー〉〈電車がー・んでいて座れない〉嘉村磯多の『業苦』に「鈴なりにー・んだ電車」とある。「混雑」「込み合う」と違い、満席であれば会場が静まり返っていても使える。夏目漱石の『草枕』に「割合に枝のー・まない所は、依然としてうららかな春の日を受けて」とあるように、人と関係のない物どうしの間隔についても使う。「空く」と対立。ひごった返す・Q込み合う・混雑・立て込む 「小麦粉」小麦の種子をひいて粉にしたものをさし、 類義語中で最も幅広く使われる一般的な和語。〈ーに水を加 えてこねる〉ひうどん粉・Qメリケン粉 ゴムバンド「輪ゴム」の意で会話にも文章にも使われた古め かしい和製英語。〈古いはがき類を重ねてーでとめる〉 こやし △輪・Q輪コム むら【勝】「ふくらはぎ」の意の古めかしい和語。「返り」の形ではさほど古い感じはない。それ以外はほとんど使われなくなった。ふふくらはぎ ゴムわ【ゴム輪】「輪ゴム」の意で会話にも文章にも使われる 古風な表現。〈ーを二重にはめる〉車輪の外側に取り付け る弾性ゴムの輪をさすこともあり、通常は直径数センチの 輪ゴムが多いが、もっとずっと大きく幅広くなると、やはり この語を使いやすくなる。リゴムバンド・Q輪ゴム こめびつ【米櫃】相撲部屋で特に収入の多い力士をさす相 撲関係の隠語。 めん【御免】日常の謝罪表現の一つとして、会話やさほど 硬くない文章に使われる漢語。バスが遅れてこんな時間 になっちゃった、ー、ー〉へー、つい手が滑って《汚してし まってーなさい》他の類義語に比べ、子供や親しい人に向 かって言う傾向が強い。「なさい」は「失礼しました」よ りは謝罪の程度が大きいが、もともと「勘弁してください」 といった意味合いの表現だから、狭い道路で相手の車と擦 れ違うときに軽くこすった程度の場合には使えても、停車 中の車に激しく追突するなど、相手に及ぶ被害や迷惑の度 合いが大きくなるにつれて使いにくくなる。また、第一原 因が自分以外にあるような逃げ腰の謝罪という印象を受け る人もあるという。その場合、全面的に自分側の過失であ るときに使うのは適切でないという印象を与えることにな る。専謝る・失礼・謝罪・Q済まない・陳謝・申し訳ない・詫びる こやし【肥やし】「肥料」またはその効果をさし、会話や硬く <382> こゆう ない文章に使われる、やや古風な和語。〈植木にーをやる〉 〈ーを入れる〉〈ーになる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「此小魚(ゴルキ)は(略)ーには出来るそうだ。赤シャツと野 だは一生懸命にーを釣って居るんだ」とある。「肥料」との 対比から、化学肥料より堆肥のや下肥を連想する傾向が ある。「若いときの経験は将来のーになる」のように比喩的 な意味でも使う。児肥・下肥・Q肥料 「ゆう【固有】そのものが本来有しているという意味で、や や改まった会話や文章に用いられる、やや硬い感じの漢語。 〈日本—の領土〉〈わが国—の伝統文化〉〈一の財産を守る〉 〈この品種—の性質〉「もともと持っている」は「それに 具わった」という意味にもなるため、そこから「他と違う」 というニュアンスが生じるが、個性的な特徴という意味合 いは「独特」や「特有」ほど強くない。乃独自・独特・Q特有 よう【小用】小便をする意の婉曲な言い方として会話に も文章にも使われる古風な表現。〈一を足す〉の芥川龍之介 の『老年』に「そこで一緒にーを足して、廊下づたいに母屋 の方へまわって来ると」とある。「しょうよう」とも読む。 排尿の行為を暗示する表現であり、尿そのものはささない。 ひおしっこ・Q小便 よう【雇用(備)】労務に従事させて賃金を支払う約束で人 を雇い入れる意で、主として文章中に用いられる専門的な 硬い漢語。〈再—〉〈—条件〉〈—契約〉採用・雇い入れる・Q 雇う こようしゃ【雇用(備)者】①雇う相手、すなわち被雇用者を さし、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。 所得)使用人・被雇用者・Q雇い人 ②雇い主をさし、改まっ た会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈ー責任〉使用 者・Q雇い主 らえる【堪(悩)える】肉体的・精神的な苦痛をじっと我慢す る意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の和語。〈寒さを—〉〈痛みを—〉〈人前で侮辱されても ぐっと—〉志賀直哉の『暗夜行路』に「・えー・えていた 涙」とある。Q我慢・辛抱・たえる ぐ【娯楽】余暇の楽しみをさし、会話にも文章にも広く 使われる日常の漢語。〈一番組〉〈庶民の—〉〈健全な—〉 〈たまには—も必要だ〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「古 池へ蛙が飛び込んだりするのが精神的なら、天麩羅を食 って団子を呑み込むのも精神的だ」とある。遊ぶ趣味・ Q道楽① こらしめる【懲らしめる】以後同じような悪事をもう働かな いように制裁を加える意で、会話やさほど改まらない文章 に使われる和語。〈悪人を—〉へこの際うんとー・めてやろ う)のもう懲りて二度としないよう、懲りさせる意から。 とっちめる・Qやり込める ぶらんになる【御覧になる】「見る」の尊敬表現。〈映画を」 〈手に取って」の川端康成の『千羽鶴』に「いや、いや、 ー・らないで」とある。専拝見する りようりや【小料理屋ちょっとした手軽な日本料理を出 す和風の酒処をさし、会話にも文章にも使われる表現。同 僚とに立ち寄って一杯やる》「料理屋」ほど本格的な感 じがなく庶民的。刂割烹・Q料理屋 <383> ころあい【頃合い】時機などがちょうど合っている意で、会 話や硬くない文章に用いられるいくぶん古風な和語。へー を見計らう〈ちょうどよいだ〉の「の大きさ」「の 値段」のように、手ごろの意にも使う。ひ潮時・時宜 ろがる【転がる】回転しながら進んだり、倒れたり横にな ったりする意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。 〈箸がー〉〈ボールがー・って来る〉〈投げられて地面にー〉 〈疲れて畳にー〉ひQ回転・回る・巡る 「万す【殺す】人間や動物の命を奪う意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈逆恨みから相手を」〈戦場で敵を」〈虫も」・さぬ顔〉他の類義語と違い、意図的な場合だけでなく「交通事故で歩行者を」・してしまう」「手遅れで患者を」・してしまう」のように「他人を」・したくない」というわれわれの嫌悪は、おそらく「自分が」・されたくない」という願望の倒錯したものにほかならない」とある。また、「息を」「感情を」のように外に洩れないように抑える意でも、「味を」「才能を」のように生かせずにかえって駄目にしてしまう意など、派生的に広い意味合いの用法を持つ。 Q殺害・殺人・殺戮・殺生・ばらす②・人殺し ころつき住所不定・無職で町をうろつき脅しなどを働く一 種のならず者の意で、主にくだけ大会話に使われる俗っぽ い和語。〈一がすごむ〉へに因縁をつけられる〉ひちんび ら・Qならず者・無類漢・暴力団・無法者・やくざ・与太者 ころぶ【転ぶ】歩いたり走ったりしている人や動物が滑った こわがる りつまずいたり押されたりして倒れる意で、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。滑ってー く石に躓いていてー藤沢周平の『おぼろ月』に「派手にー んだもんじゃねえか。しっかりしなって。何なら手を貸し てやろうか」とある。比喻的に「ーんでもただは起きぬ」 のように失敗する意をも表す。「信者がー」のように転向す る意をさしたり、「芸者がー」のように売春する意をさした りする婉曲表現もあるが、今では古めかしい用法。呂転 倒 「わい【怖(恐)い】身に危険を感じるほど不安が強い意で、 会話や軽い文章に使われる日常の和語。〈一もの知らず〉 〈怪我が一〉〈一映画〉〈一人〉〈株に手を出すとあとが一〉 ②庄野潤三の『丘の明り』に「ー・くて仕方なかったんだけ ど、確かめずにいられなかった、ー・かったから」とある。 「暗闇はー」「高い吊り橋から下をのぞくとー」のように、 特定の対象がなくても危険な場面・状況・環境において使う ことができ、それだけ主観的である。恐ろしい恐怖 わがり【怖がり】普通の人が恐れない些細なことも怖く 思う性質をさし、会話や軽い文章に使われる和語。ひとい ーで、自分の影に驚く)意気地無し・臆病・腰抜け・小心・腑抜 け・Q弱虫 こわがる【怖(恐)がる】こわいと思う意で、主に会話に使わ れる和語。〈火を—〉〈失敗するのを—・っては進歩がない〉 〈むやみにー・って近寄らない〉「恐れる」が主として心の 中を問題にしているのに対して、この語は怖い気持ちが顔 や態度に出る場合に使われる。Q恐れる・怯える <384> こわごわ こわごわ【怖怖(恐恐)】怖くてびくびくしながらの意で、主 として会話に使われる和語。〈事故現場を—のぞき込む〉 〈傷口を—のぞく〉〈—扉を開ける〉〈屋上から—下をのぞ く〉〈手術の跡を—見る〉谷崎潤一郎の『吉野葛』に「 見上げる」とある。「恐る恐る」と違い、恐縮の場合には用 いない。おずおず・恐る恐る・Qおっかなびっくり・おどおど・び くびく 二わす【壊(毁)す】力を加えて物の形や機能を損なわせる意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 和語。〈おもちゃを—〉〈時計を—〉〈家を—〉小林多喜二 の『蟹工船』に「ドアーをー・して、漁夫や、水、火夫が雪 崩れ込んできた」とある。「話を—」「腹を—」「気分を—」 のように、こわれてしまった結果に重点をおく抽象的な用 法もある。马破壊 わね【声音】声の響きや調子をさし、会話にも文章にも使 われる古風な和語。〈役者のーをまねる〉〈人をののしるー がもれる〉回長野まゆみの『少年アリス』に「先程よりーは 柔らかい」とある。Q音声・声・響き 二わもて【強面】相手に威圧感を与える顔つきや態度をさし、 会話や硬くない文章に使われるやや古風な和語。へで臨 む〉への談判》志賀直哉の『暗夜行路』に「に意見を する」とある。「こわおもて」の転。多く男性を連想させ る。 んい【懇意】仲が良く親しくしている意で、会話にも文章 にも使われる、やや古風な漢語。へにしている人)藤沢 周平の『おぼろ月』に「河岸にある一軒の水茶屋だった。そ こはーにしている店らしく」とある。見親しい・呢懇・Q親密・近しい こんいん【婚姻】「結婚」の意の法律用語。専門語の色彩が濃 厚で、通常の会話では用いない。「届を提出する〉へーを 継続しがたい事由》高村光太郎の『道程』に「のよろこ びをうたえよ」とある。専家庭を持つ・Q結婚・結婚する・こし入 れ・所帯を持つ・嫁ぐ・嫁入りする・嫁に行く こんかい【今回】何度か行われる物事のうち直近の一回を さし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈一限り〉 へーの演目〉へーは成功間違いない前回と次回の間にあ たる。ひこの度・この程・Q今度・今般 んがらかる「もつれる」意で、主にくだけた会話に使われ る俗っぽい和語。〈毛糸がー〉の「こんがらがる」「こんぐ らかる」の形でも使うが、さらに俗っぽい。もつれる こんき【根気】一つの物事をつらくても長く続けられるだけ の気力をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる日常 の漢語。へーの要る仕事〉へーが続かない)「忍耐力」より 積極的な活力。尾崎一雄の『虫のいろいろ』に「今度の(蜘蛛)は、丸々と肥えた、一層大きな奴だ、こいつとのー比べ は長いぞ、と思った」とある。忍耐力 こんきまけ【根気負け】相手と根気比べをして負けることを さし、会話でも文章でも使われる日常語。〈執拗にせがま れ、とうとうーして引き受けてしまう〉省略形の「根負 け」ほど俗っぽい感じはない。尾崎一雄の『虫のいろいろ』 に、便所の密枠の中に入り込んで逃げられなくなった蜘蛛 が一度もあがくことなく悠然としているようすを描いた箇 <385> 所がある。主人公が「」の気味で「こら」と指先で硝子を弾 くと、彼は、仕方ない、と云った調子で、僅かに身じろぎを する」だけだったという。刂根負け 「んきゅう 【困鶉】貧しくて生活に困る意で、改まった会話 や文章に用いられるやや硬い漢語。〈生活にーする〉〈ます ますーの度を加える〉〈ーに耐える〉鶉迫 「人きよ 根拠」考えなどの拠よりどころの意で、会話にも文 章にも広く使われる漢語。へーにとぼしい〉へーのない噂〉 ヘそう断定するーを求める〉の「地」のように、具体的な 拠りどころをさすこともある。専典拠・Q論拠 コンクール 音楽や絵画など芸術部門の競演会をさし、会話 にも文章にも使われるフランス語からの外来語。〈合唱—〉 〈—に出場する〉〈—で入賞する〉「コンテスト」より専門 的な感じが強い。コンテスト こんげ【権化】仏や菩薩が人々を救済するために仮の姿で この世に現れたものをさし、会話にも文章にも使われた古 めかしい漢語。へとなって衆生を救う》「エゴの」 「金銭欲の」のように抽象概念が形をとったものをさす比 喻的用法もあり、井伏鱒二の『本日休診』には、婦人科の診 察を受けに来た女教授が「こんなに人体の骨組を露出さし たような手術台は、いわば女性を辱める想念の形骸であり、 医学における独善的总慢のーである」と、照れ隠しに医学 を誹謗する場面がある。化身 こんけつじ【混血児】異なる人種の両親から生まれた子供の 意で、会話にも文章にも使われる古風な漢語。へーを産む》 純粋でないという差別意識によるマイナスイメージが伴 こんざっ うが、日本社会でも現実にこのようなケースが増えてさほ と特別な感じがしなくなるにつれて、この語の使用も自然 に減少してきた。「ハーフ」という語も使われるが、四分の 一の場合も含むこの語と少しずれる。Q合いの子・ハーフ こんげん【根源(元)】物事を成り立たせている大もとをさし、 改まった会話や文章に用いられる、やや硬い感じの漢語。 〈諸悪の—〉〈物事の—を究める〉三島由紀夫の『金閣寺』 に「俺の痛みの—になりえたのか?」とある。場所・位置に 重点のある「根底」に対し、そのもの自体をさす感じが強 い。おおもと・基礎・Q根底・根本・土台 こんご【今後】これから後の継続する時間の意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈一の予定〉〈一の課題〉〈一は一 切こういうことのないように万全を期す〉〈一の見通しを 占うのに絶好の機会〉ひQ以後・先行き・将来・未来・行く末 こんごう【混合】異質な物質が混ざり合う意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる、いくぶん専門的な漢語。へーの 割合》〈三種の原料をーする〉「ダブルス」のように、 男女の組み合わせの意にも使う。ひQ化合・結合・合成・結びつ き・融合 コンサート音楽会特に演奏会をさして、会話にも文章に も使われる外来語。「ホール」「マスター」「野外」 「を催す」「音楽会」や「演奏会」に比べ、高い技術水 準に限られる雰囲気がある。Q演奏会・音楽会・ライブ・リサ イタル こんざつ【混雑】多くの人や物が一つの場所に秩序なく集ま って入り乱れ込み合う様子をさし、会話にも文章にも使わ <386> こんじき れる漢語。〈車内が—する〉〈セールで店内が—する〉〈大勢の見物客が押しかけて—をきわめる〉〈—がいくらか緩和される〉密度に中心のある「込む」に対し、場内が騒がしく乱れている感じが強い。永井荷風の『腕くらべ』に「廊下はどこもかしこも押合うような—」とある。ひろった返す・込み合う・込む・混乱・立て込む こんじき【金色】「きんいろ」の意で、改まった会話や文章に 用いられる古風で美化した感じの漢語。「燦然ぜん」への 塔頭ゆくへに輝く夏目漱石の『倫敦塔』に「肩にあま るーの髪を時々雲の様に揺らす」とある。Qきんいろ・きん しょく・黄金色 こんじょう【根性】持って生まれた性質、物事をなしとげよ うとする気力をさし、会話やさほど硬くない文章に用いられる漢語。〈野次馬—〉〈島国—〉〈ーが据わる〉〈ーを鍛え る〉〈ーが曲がっている〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「い たずら丈で罰は御免蒙るなんて下劣なーがどこの国に流 行ると思ってるんだ」とある。スポーツの世界で多用され る。り意気込み・意欲・意力・気概・気骨・気迫・気力・執念・Q精神力・ ど根性・やる気 んしん【渾身】全身から力などを一箇所に集める意味合い で、改まった会話や文章に用いられる、やや古風で硬い感じ の漢語。「の力を込める」「の勇を奮う」身・総身・Q 満身 こんしん【懇親】ねんごろに親しむ意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈会〉ひ親善・Q親睦・友好 こんせき【痕跡(迹)】「形跡」に近い意味で、会話にも文章に も使われる漢語。〈ーを残す〉〈ーをととめる〉〈今ではそ のーも見られない〉「形跡」以上に具体的で、傷跡や焼け た跡やへこんだ跡などの目に見える形で存在するものを連 想させる。跡・痕・Q形跡 「んせつ【懇切】細かいところまで配慮の行き届く様子をき し、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「丁寧 「な指導を受ける」ひ親切・Q丁寧① コンセンサス 集団内における意思や意見の一致の意で、会 話にも文章にも使われる外来語。へその点については国民 のーが得られる)広い範囲に使われる「合意」と違い、世 論や社内・委員会などの組織を単位とした意見について用 い、個人的な見解の一致について使うには大仰過ぎて違和 感がある。合意 「んだく【混(溷)濁】混じって濁り乱れる意で、学術的な会 話や文章に用いられる専門的な漢語。〈意識のーが見られ る〉松本清張の『或る「小倉日記」伝』に「死期に臨んだ 人間のーした脳」とある。濁る・混じる こんだて【献立】料理の種類や取り合わせをさし、会話でも 文章でも広く使われる日常語。〈ー表〉へ今晩のーを考え る)大岡昇平の『武蔵野夫人』に「豪奢なーを提供する」 とある。最近、レストランなどの場合には「メニュー」とい う外来語を使うことが多くなって、いくぶん古風な感じに なりつつある。メニュー こんたん【魂胆】心の中に隠し持っている企みをさし、会 話や硬くない文章に使われる古風な漢語。〈会社を乗っ取ろ うというだ〉〈何かーがあるにちがいない〉〈ーを見破 <387> る悪いことをひそかに計画している雰囲気がある。も と、魂と肝玉の意という。乃意向・意図・Q積もり 「んだん【懇談】何人かが集まって親しく話し合う意で、や や改まった会話や文章に用いられる漢語。〈父母ー会〉〈関 係者を招いてーする〉なごやかに話し合うことで親しく なるためとか、ある話題で気軽に相談するとか、何らかの 目的で行うことが多く、会の名称ともなる。刂閑談・Q歓談・ 談笑 コンテ映画の撮影用に作る台本をさし、会話や硬くない文 章に使われる専門的な外来語の略形。「コンティ ニュイティー」の略。脚本をカットごとに分けて構図や人物 の動きなどを指示。鳥戯曲・脚本・シナリオ・Q台本 こんてい【根底(柢)】物事を成り立たせている最も深い部分 をさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。へにひそ む〉へにある考え方〉へからくつがえる〉谷崎潤一郎 の『神童』に「あやふやな人生観を—から破壊して」とあ る。「根源」を空間的なイメージでとらえた表現。おおも と・基礎・根本・Q土台 コンディション 状態・調子などの意で、会話にも文章にも使 われる外来語。〈ペスト—〉〈ーを整える〉乃按配・具合・調 子 コンテクスト言語作品の理解に重要な役割をはたすコミュ ニケーションの枠組みの一つとしての、文章や談話の前後 関係をさし、学術的な話題での会話や文章に用いられる専 門的な外来語。〈同じ表現でも一次第で意味合いが違う〉 Q文脈・脈絡 こんな コンテスト作品・技術・容姿などの優劣を競う催しをさし、 会話にも文章にも使われる外来語。〈スピーチ〉〈美人ー〉 〈ーで表彰される〉「コンクール」に比べ素人の雰囲気が 強い。リコンクール こんど【今度】直近の過去・未来をさし、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。へーの担当 者〉へー新しく入った社員〉へー結婚することになった〉へー の電車〉へーは大丈夫だ〉ひこの度・この程・Q今回・今般 んとう【昏倒】急に目がくらんで倒れる意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈悶絶 てーする〉の「昏」は「暗い」意。単卒倒 こんどう【金堂】「本堂」の意で、会話にも文章にも使われる 古風な漢語。〈法隆寺の—〉②堂内を金色に彩ったところか らといい、一般的な「本堂」に比べ、伝統・権威・豪華なイメ ージを感じさせる美称の雰囲気が漂う。単本堂 こんどう【混同】本来別々のものをうっかり同じだと思い誤 る意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈公私—〉〈趣旨 を—する〉〈意味を—する〉②二葉亭四迷の『浮雲』に「外 部の美、それを内部のとーして」とある。Q誤解・混乱 コントロール自分の意図どおりに管理し操作する意で、会 話にも文章にも使われる外来語。〈セルフ〉〈タワー〉 〈ーが利く〉〈時間をーする〉〈うまくーできない〉〈ーのい い投手〉野球の場合は「制球」と訳す。刂制球・Q制御 「んな『斯んな』「このような」の意で、主に会話に使われる 和語。〈一帽子が欲しい〉〈一状態では先が思い遣られる〉 〈一物珍しくも何とも無い〉〈一いい加減な仕事〉の「こう <388> こんなん いう」よりさらにくだけた調子に響く。「一本要らない」 「学校やめちゃえ」「成績で恥ずかしい」のように、否 定的な意味合いで使われる例も多い。しかかる・かような・Q こういう・このような こんなん【困難】物事の実行や解決の難しい意で、いくぶん 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈呼吸—〉〈生活—〉 「な課題〉〈ーを伴う〉〈あらゆるーを排する〉〈解決はー を極める〉〈ーに打ち克つ〉②太宰治の『津軽』に「てんと りむしと言われずに首席になることはーであった」とある。 「難しい」のうちの程度の高い部分を連想させる。純粋に質 的で主観的な感じの「苦難」に比べ、「かなりのーが予想さ れる」「幾多のーを乗り越えて」のように量的にとらえる姿 勢も感じられ、それだけ客観的な雰囲気がある。児苦難・難 儀・Q難しい 「こんにち【今日】現在を含むある範囲の時間の意で、改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。「はお日柄もよく」「只今」大勢を前にした堅苦しい演説などで使うほか、現代ではあまり例は多くない。小沼丹の『懐中時計』で、上田友男は酒場で主人公の「僕」に向かい、「懐中時計は流行からは見放されているが、その骨董的価値は莫大である」と演説口調で一席ぶつ。むしろ、「の世界情勢」昔と違いーでははやらない」のように、今時、この時代といった幅で使う例が多い。小沼の例も同様である。きょう一日だけをさす用法は特に古風。今・きょう・現在・只今・本日・且下 こんねん【今年】「ことし」の意で、改まった会話や文章で用 いられる漢語。「の秋に催される」「限りで閉店の運び となりました」「度」の形でよく用いられ、単独使用の 頻度はあまり高くない。2ことし・Q本年 こんねんと【今年度】今が属するこの年度をさし、改まった 会話や文章で用いられる漢語。〈一の予算をあてる〉和語 の「ことし」という語を年度単位に使わない関係で、ある程 度改まった感じの漢語「今年」を用いたこの語形をさほど 改まらない場合にも広く使う。「本年度」より本格的な感じ は薄い。「今年」は十二月で終わりだが、この語は四月から 翌年三月までをさすこともある。次の年度は「明年度」よ り「来年度」としたほうが文体的なレベルは近い。本年度 こんばん【今般】「今回」の意で、主として改まった書状など の形式を重んじる文章に用いられる丁重な漢語。「の事 故に際し〉への不祥事につきましては〉の「このたび」 「このほど」に比べ、個人的な場合より役所や企業などの組 織としての挨拶によく使われる堅苦しい感じの表現。Q この度・この程・今回・今度 エンピュータ日常語である「コンピューター」に比べ、専 門的な雰囲気の表記。〈ダラフィックス〉〈」の回路〉 実際の発音と違うケースが多く、いわば言文一致に逆行す る。Qコンピューター・電算機・電子計算機 コンピューター 特に会話で多用される、「電子計算機」をさ す日常の外来語。〈ーをいじる〉へーを使いこなす〉文章 の場合は正式な感じの「電子計算機」を用いたり、字数の少 ない「電算機」で済ませたりするケースが目立つ。Qコン ピュータ・電算機・電子計算機 <389> コンプレックス劣等感の意で、会話にも文章にも使われ日 常語的に俗化した外来語。〈元のライバルにーを感じる〉 〈まるでーのかたまりだ〉〈極端に背が低いという点がーに なっている〉「インフェリオリティー・コンプレックス」 の略。刂引け目・Q劣等感 「んぼん【根本】物事が成り立つための中心をさす最も重要な部分の意で、会話にも文章にも使われるやや硬い感じの漢語。〈的な問題〉へ「的な解決にならない〉〈教育の」〈を取り違える〉へ「から考え直す〉の「基礎」より「基本」に近く、基本の中でも特に中心となる部分、いわば基本中の基本というイメージがある。ひいしずえ・基礎・基盤・Q基本・土台 こんぼんてき【根本的】物事の根幹に及ぶ意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈—な解決〉〈—に間違えている〉 「表面的」「末梢」的」と対立する概念。徹底的・抜本的 こんまけ【根負け】「根気負け」の省略形。主に会話に使われ る俗っぽい日常語。〈相手の粘りに—する〉専根気負け んやくしゃ【婚約者】結婚を約束した相手の意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈友人にーを紹介する〉古くも なく気取りや照れも感じられない一般的な用語。Q許婚 け・フィアンセ こんらん【混乱】秩序が乱れ筋道がたどれない状態や、正常 な機能が失われたようすをさし、会話にも文章にも使われ る漢語。〈ダイヤがーする〉〈ーが生ずる〉〈ーを招く〉〈交 通のーを引き起こす〉〈党内のーを招いた責任を負って辞任 する〉〈頭がーする〉小林秀雄の『ドストエフスキイの生 こんわく 活」に「何という—か、而もこれは現代の—状態に完全に照 応しているのだ」とある。中勘助の『銀の匙』に「たとえよ うのないーした気もち」とある。きこった返す・Q混雑・混同・ 騒ぎ・騒動・騒乱・乱れる 「んれい【婚礼】「結婚式」よりやや古風で少し改まった感じ の語。「一の日取り」「一の儀を執り行う」「一に呼ばれる」 島崎藤村の『破戒』に「つい二三日前、この家に一が有っ たという話」とある。「結婚式」より伝統的な形式、和服姿 の花嫁花婿を連想しやすく、ウェディングマーチに乗って靴 音高く登場する場合には多少違和感がある。専華燭の典 Q結婚式・祝言 こんわく【困惑】対処の仕方に迷う意で、改まった会話や硬 い文章に用いられる漢語。〈ーした表情〉〈ほとほとーの 体〈無理難題を突きつけられ、いたくーしている〉小 川国夫の『海峡と火山』に「少年の息遣いが、言葉を重ねる につれて荒々しくなって来るのが判って、浩はーした」とあ る。日常会話で「子供におもちゃをねだられて」などのあと に使うと、大仰でおどけた感じになる。母困る・当惑・迷惑 <390> 【差】複数のものを比べた際の、違いの程度をさし、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 漢語。〈貧富のーが大きい〉体感温度のー〉へーを計測す る〉〈大してーがない〉〈相手とのーを広げる〉夏目漱石 の『坊っちゃん』に「先生と呼ぶのと、呼ばれるのは雲泥の ーだ」とあるが、「相違」「差異」に比べ、数字で表せる場合 によく使う。少Q差異・相違・違い さい【差異】複数のものを比較した際の一致しない部分をさ し、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈男女の ー〉〈わずかなーを見分ける〉〈さほどのーはない〉夏目 漱石の『こころ』に「いくら比べてみても、どこから価格の ーが出るのか見当のつかないものもあった」とある。马差・ Q相違・違い ざい【在】都市から少し離れた田舎の意で、会話にも文章に も使われる古風な漢語。〈—の人〉〈秋田の—で生まれ育 つ)谷崎潤一郎の『黑白』に「記者を罷めてから埼玉県の 大宮—に引っ込んで」とある。「在郷」の略。田舎片田舎・ 近郷・Q近在・在郷・在所 さいえん【才媛】教養豊かな女性をさし、改まった表現とし て用いられる、やや古風な漢語。への噂が高い)芥川龍 之介の『秋』は「信子は女子大学にいた時から、の名声を 担っていた」とある。頭脳明晰せぐ教養のある知的な女性 を連想させ、「才女」と違って、文才や実用的な技術の面は 問題になっていない。乃才女 ざいか【罪科】宗教や道徳の掟き、特に法律に背く意で、主 として文章に用いられる古風で硬い漢語。「を問う」 「重い」のように刑罰をさすこともある。Q罪過罪・と が犯罪 さいか【罪過】罪や過ちの意で、主として文章に用いられる 古風で硬い漢語。〈激しくーを責め立てる〉Q罪科・罪と が犯罪 さいかい【最下位】競争や成績が一番下の順位であることを さし、会話にも文章にも使われる漢語。へーに転落する〉 へーに甘んじる〉乃最後尾・しんがり・どんじり・Qびり・びりっけ つ さいがい【災害】台風や地震などによる大規模な被害をさし、 会話にも文章にも使われる正式な感じの漢語。〈自然ー〉 〈防止対策〉(ーを最小限に食い止める〉(ーに備える) 「災難」に比べ自然災害が多く、「大火」なども人為的な火 事が強風などで燃え広がった場合にこの語がなじむ。 災難・災厄・災い さいき【再起】肉体的・精神的・社会的・経済的に悪い状態から 立ち直る意で、会話にも文章にも使われる漢語。「不能」 〈ーを図る〉〈ーを賭けた戦い〉返り咲き・カムバック・Q復帰 さいきん【最近】数日前、数ヶ月前、数年前から現在までの 間をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常漢語。「起こった事件〉「ついー聞いた話〉「の流 行〉乃近年・このところ・昨今・Q近頃 <391> さいきん【細菌】はっきりした核を持たない微細な単細胞生物をさし、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。「が繁殖する〉へを培養する〉、薬菌・Q徽菌・バクテリアさいくん【細君】自分の「妻」をさす古風な漢語風の呼び名。「と連れ立って〉へに頭が上がらない〉への愚痴につきあっている暇はない」②相手が同等以下の場合は、「早くーをもらえよ」「ー寂しがってるんじゃない?」などと、他人の妻についても使う。夏目漱石の『吾輩は猫である』にも、語り手の猫が苦沙弥先生の妻について「現在連れ添うーですら、あまり珍重して居らん」という言い方をする例がある。「妻君」と書くのは当て字。いえの者・うちの者・お上さん・奥方・奥様・奥さん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・Q妻・女房・伴侶・ペターハーフ・令閨・令室・令夫人・ワイフ さいけいれい【最敬礼】最も丁重な敬礼をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。へーして舞台上の挨拶を始める〉〈相 手にーされてとまどう〉乗拶・会釈・お辞儀・Q敬礼・目礼・黙 礼礼② さいげつ【歳月】「年月」の意で、主に文章中に用いられる古 風な漢語。〈ーが流れる〉〈十年のーを費やして書き上げ る〉の堀辰雄の『大和路』に「長いーの間にほとんど廃亡に 帰して」とある。「としつき」に近く、表現者の思いがこも った感じがある。ひとしつき・Qねんげつ ざいげん【再現】失われた物や状況をもう一度現れさせる意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈黄金時代のー〉〈古 代の船をーする〉〈当時の街並をそっくりーする〉の井上靖 の『氷壁』に「事件の発生した状態は、厳密にはーできませ さいこうび ん」とある。 再生 さいご【最期】臨終の意で主に文章に用いられる古めかしい 漢語。〈壮絶なー〉〈畳の上で穏やかなーを迎える〉〈非業 のーを遂げる〉志賀直哉の『城の崎にて』に「自分は鼠の ーを見る気がしなかった」とある。最後・臨終 さいご【最後(后)】最も後ろ・あとの意で会話にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈通告〉〈が肝心〉〈の手段〉〈を飾る〉〈を締める〉〈まで手を抜かない〉〈のーで逆転する〉小沼丹の竹の会に「お会いするのもこれがだろうという気がして」とあり、古井由吉の『息災』に「壁をたどり這うようにして来るところを、夜勤の看護婦に見つかりあきれられたのが、自分で立って歩いたとなった」とあるように、死を暗示する用法もある。刂終わり・最期・しまい・末 さいこう【再興】衰えたり滅びたりしたものを再び盛んにす る意で、改まった会話や文章に用いられるやや古風な漢語。 〈家を—する〉〈会社の—を図る〉空襲や地震などによって 被害を受けた街並みや家屋のような具体物よりも、代々 受け継がれてきた抽象的な存在に使う傾向がある。複興 ざいこう【在郷】都会から離れた田舎、また、そこに住むこ とをさし、会話にも文章にも使われる古風な漢語。「の人 が集まる〉田山花袋の『田舎教師』に「此の近所に森とい うーがありますか」とある。田舎片田舎近郷近在・在・Q 在所 さいこうび【最後尾】順番や長い列などの一番後ろをさし、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈駅伝でーから <392> さいさん 先頭を追いかける〉〈列のーにつく〉最低下位・Aしんがり・ど んじり・びり・びりっけつ さいさん【財産】個人や法人などが所有する現金・預金・有価 証券・土地・家屋・家具・宝石など金銭価値のある総体をさ し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われている日 常漢語。〈分与〉〈私有〉〈を使い果たす〉〈を処分 する〉〈莫大なーを残す〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「兄 は家を売ってーを片付けて任地へ出立すると云い出した」 とある。「資産」が個人でも企業でもよく使われるのに対 し、この語は個人か家を連想させる傾向が相対的に強く、 「会社のー」「国のー」といった言い方は、わかりやすく比 喩的に表現したような印象を与えるケースもある。Q資 産・身上・身代 ざいさんか【財産家】財産が豊富にある意で、会話でも文章 でも使われる漢語。〈一の息子〉(ちょっとしたーとして有 名だ》大金持ち・金持ち・Q金満家・素封家・長者・富豪・物持ち さいし【祭祀】神や祖先を祭ることをさし、主として文章で 用いる専門的な漢語。〈一料〉専祭典・Q祭礼・祭り さいしき【彩色】色を着ける意で、主に文章に用いられる古 風な漢語。〈極く〉〈画〉〈花瓶にーをほどこす〉客観 的な「着色」に比べ、はなやかにして人目を楽しませる連想 がある。樋口一葉の『たけくらべ』に「あやしき形に紙を 切りなして、胡粉ぬりくりーのある田楽みるよう、裏には りたる串のさまもをかし」とある。「さいしょく」と読むこ ともある。ひQ彩り・着色 さいしょ【最初】一番初めの意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈その日が だ〉へーの赴任先〉へーが肝腎だ〉へーにして最後)志賀直 哉の『城の崎にて』に「石が当ったとは思わなかった」と ある。「最後」「最終」と対立。彫当初 さいじょ【才女】利口で優れた才分をもつ女性をさし、やや 改まった表現として用いられる、古めかしい漢語。へーとし て知られる)回「才媛」が知識や教養の豊かさに重点のある のに対し、実用的な技術面まで含めていわゆる「出来る女 をさす傾向が見られる。ひ才媛 さいしょ【在所】「田舎」の意で、会話にも文章にも使われる 古風な漢語。「ことば」〈「の人」中山義秀の厚物咲 に「六里ばかり隔てた山間のーにあった」とある。単に「住 所」の意味にも使う。李白の静夜思』の通常は「頭を 低れて故郷を思う」と訳す「低頭思故郷」の箇所を井伏鱒 二が「ノコトガ気ニカカル」と訳しているように、特に 「ふるさと」をさす用法もある。単田舎・片田舎・Q近郷・近在 在・在郷 さいしょう【宰相】首相の意で、主に文章に用いられる古風 な漢語。「一国の」(一の器)福原麟太郎の一片の赤 誠ということ」に「一九世紀の半ばまでは、正直と勤勉とが ありさえすれば、人は大臣になれた」とある。昔の中国 で、天子を補佐して政治を総理する官をそう呼んだところ から。具Q首相・総理・総理大臣・内閣総理大臣 さいしょうげん【最小限】最も小さい、または少ない意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一の労力で最大限の効 果をあげる〉〈一必要な人数〉〈一の成果にとどまる〉 <393> 最低限・少なくとも・少なくも・せめて さいせい【再生】失われたものを元通りにする、新しく出直 すの意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一紙〉へを 誓う〉への道を歩む〉へテーブから音と映像をーする〉 「再現」と違い、物・人・組織などについて使う。刂再現 さいせいほうそう【再生放送】「再放送」の意で以前よく使った用語。〈録画技術の進歩で—が容易になった〉も再放送 さいぜんせん【最前線】戦場の最前列の意、転じて、最も対 外的に激しい接触・交渉の場をさし、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈ーで指揮を執る〉〈医療のーに立つ〉の第一 線」に比べ、相手と直接やりあう部署などを連想させやす い。単第一線 さいそく【催促】早くするように促す意で、会話にも文章に も使われる日常の漢語。〈矢のー〉ふうるさくーされる〉 ヘーを受ける〉ふくある時払いのー無し〉ひ督促 さいたる【最たる】「最大の」を意味する、硬い感じの古語的 表現。〈功績は〉(その—ものは税金の無駄遣いである) さいちゅう【最中】あることが盛んに行われている、まさに そういう時をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈喧嘩 の—〉〈試験勉強の—〉〈仕事に追われて必死に働いている —〉ひさなか さいていげん【最低限】これ以下は考えられない最も低い限 度をさし、会話にも文章にも使われる漢語。「」の暮らし へーこのぐらいの予算は見ておきたい)Q最小限・少なくと も・少なくも・せめて いてん【祭典】祭りとして行う儀式や記念の大きな催しを さいはっ さし、改まった会話や文章に使われる漢語。へはなやかな ー〉の一般に宗教色が薄く、「歌のー」「若人のー」「民族の ー」といった比揄的な用法が多い。巻祭祀・祭礼・Q祭り さいど【再度】「もう一度」の意で、改まった会話や硬い感じ の文章に用いられる漢語。〈挑戦する〉〈一の警告を無視 する〉〈一念入りに調査した上で結論を出す〉、再び・又 さいなん【災難】思いがけず襲ってくる不幸な出来事をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈ー続き〉〈とんだーに遭 う〉〈ーが降りかかる〉〈降って湧いたようなー〉葛西善 蔵の『湖畔手記』に「どんな大きなーでも、不幸でも過ぎて 見れば、煙のようなもの」とある。「災害」に比べ小規模で、 人為的・個人的なものが多い。児災害・災厄・Q災い さいのう【才能】その人間に生まれつき具わっている知能的・ 肉体的な優れた能力をさし、会話にも文章にも使われる日 常の漢語。〈語学のーがある〉へーが満ち溢ふれる〉〈豊かな ーが花開く〉へーが枯渇する〉小林秀雄の『川端康成』に 「正銘の芸術家にとっては、物が解るという様な、安易なー は、ーの数には這入らない」とある。「資質」や「素質」に 比べ、外部にあらわれている感じがあり、わかりにくい場 合は「隠れた才能」という。貧質・Q素質・能力 ざいはつ【再発】一度おさまっていた好ましくないものが再 び起こる意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈病気が する〉へが懸念される〉へ防止に努める〉〈同種の事件 のーを防ぐ〉②外村繁の『落日の光景』に「の危険のある ことは十分に知っている」とある。治り切らないうちに勢 いが戻る感じの「ぶり返す」と違い、一度すっかりおさまっ <394> さいばん てから同じことが起こる場合に使う。 ぶり返す さいばん【裁判】裁判所や裁判官が訴訟を解決するために法 的な判断を下すことをさし、会話にも文章にも使われる漢 語。〈軍事〉〈沙汰になる〉〈を起こす〉〈に持ち込 む〉伊藤整の『氾濫』に「信仰の真偽を追求する宗教ー官 のように、全神経を集中して」とある。ふ裁く司法・Q審判 さいばんかん【裁判官】裁判所で裁判を行うことを職務とす る国家公務員をさし、会話でも文章でも広く使われる漢語。 〈が判決を下す〉最高裁判所の長官・判事、高等裁判所 の長官・判事・判事補、簡易裁判所判事の六種の総称。ふ判事 さいばんしょ【裁判所】民事・刑事の裁判を行う権限を有する 国家機関をさし、会話にも文章にも使われる一般的な漢語。 〈最高〉〈下級〉〈に訴える〉建物より組織・機関に 重点がある。ふ法廷 さいふ【財布】金銭やカード類を入れて持ち歩くための布製・ 革製の袋状の入れ物。〈ーを落とす〉〈ーを盗まれる〉〈ー の底をはたく〉繊田作之助の『夫婦善哉』に「鞄のような ーを首から吊るして」とある。ひQがま口・紙入れ・札入れ ざいほう【財宝】財産や高価な宝物の総称として、改まった 会話や文章に使われる硬い感じの漢語。〈金銀〉〈莫大な ーを残す〉②「宝」や「宝もの」に比べ抽象的。主観的に大 切なものをさす比喩的な用法としては使いにくい。ひ宝・Q 宝もの・宝もつ さいほうそう【再放送】前に一度放映した番組をまた放映す る意で、会話でも文章でも使われている現在の普通の言い 方。〈人気ドラマがーされる〉〈テレビのーで見る〉再生放 送 さいまつ【歳末】年末の意で、主に文章に用いられる漢語。 (風景)へーで街はごった返している)日常会話で一年 の最終期という単なる時を意味するときには通常「年末」 と言い、この語は「大売出し」「助け合い運動」などの ように催しを示す語の構成要素として用いる傾向がある。 井伏鱒二に『歳末閑居』と題する詩があり、暮れの三十日に 酒屋の掛取りを避けるために屋根に上って棟瓦にまたが り、「こりゃ甚だ眺めがよい」とうそぶく男の哀れを描いて いる。Q暮れ・歳暮・年の暮れ・年の瀬・年末 さいみつ【細密】きわめて細かいところまで詳しい意で、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈画〉(な計画) 厳密・精巧・精緻・Q精密・緻密・綿密 さいみんざい【催眠剤】神経の興奮を鎮めて眠りを催させる 薬品をさし、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な 漢語。〈ーを投与する〉みQ睡眠剤・睡眠薬・眠り薬 ざいもく【材木】建築物などの材料として置いてある木をさ し、会話でも文章でも使われる漢語。〈屋〉〈置き場〉 〈ーを切り出す〉林芙美子の『風琴と魚の町』に「私はー の上を縄渡りのようにタッタッと走ると」とある。丸太や 太い柱の連想が強い。ひ木材 さいやく【災厄】「災難」の意で、主に文章に用いられる古風 で硬い漢語。〈トに見舞われる〉〈思わぬーを招く〉の大岡 昇平の『俘虜記』に「ーは意外な方からやって来た」とあ る。呂災害・災難・災い さいよう【採用】会社などが人を雇い入れる意で、会話にも <395> 文章にも使われる、いくらか事務的な漢語。〈新規—〉へ 試験〈正社員として—する〉のその案を—する」のよう に、いくつかの候補のうちから採択する意にも広く使う。 りQ雇用・雇う ざいりょう【材料】加工して物を作る時のもとになるものを 広くさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な漢語。〈原—〉〈—費〉〈料理の—〉〈豊富な —〉〈—集めの段階〉の「非難—に事欠かない」のように判 断のもとをさす抽象的な意味の用法もあり、「小説の—が ころがっている」のように「素材」「題材」に近い意味で使 う場合はそれらより日常会話的な文体レベルとなる。Q 原料・資料・資料・素材・題材 さいれい【祭礼】神社の儀式をさし、改まった会話や文章で 用いられる、やや専門的な漢語。〈神社の—〉の寺田寅彦の 『田園雑感』に「この神社の—の儀式が珍しいものであった」 とある。Q祭祀・祭典・祭り サイン ①「署名」の意で、会話や軽い文章に使われる外来 語。〈はんこでもーでもよい〉〈同意書にーする〉②「俳優 にーをねだる」「選手のーをもらう」「著者のー入りの本」 のように、有名人がファンの要望で書く場合を連想させる 傾向がある。ひ記名・Q自署・署名②「合図」の意で、会話に も文章にも使われる外来語。づーが出る〉へーとおりに やる〉へーを盗む〉ひQ合図・シグナル・信号 さえかえる【汚え返る】「汚える」の強調として主に文章に用 いられる和語。〈|冬の星空〉の小川国夫の『平地の匂い』 に「空気のせいか、アルトの声はーって、少々きつかった」 さえわたる とある。「汚え」(澄み切った寒気)が「返る」で、寒さが戻る 意にもなる。汚え・Q汚え渡る さえき【差益】差額によって生じた利益の意で、改まった会 話や文章に用いられる、正式な感じの専門的な漢語。〈為替 ー〉〈円高によるー〉児買収支のほか、価格変更や為替し ートの推移などによっても生じる。「差損」と対立。マー ジン・利鞘 さえずる【囀る】小さな鳥がしきりに鳴く意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈小鳥がー〉〈春になって鶯がー〉 ②「女の子たちがー・っている」のように、絶え間なくやち ゃくちゃしゃべる意の比喩的な用法は俗っぽい響きがある。 ひいななく・Q鳴く・吠える 「汚える」光・色・音などが冷たく感じられるまでに澄 んで透明感を与える意で、会話にも文章にも使われる和語。 「・えた赤〉〈月がー・えた光を投げかける〉梶井基次郎 の『冬の日』に「洗面のとき吐く痰は、黄緑色からにぶい血 の色を出すようになり、時にそれは驚く程鮮かな紅にー・え た」と色彩に用いた例があり、三浦哲郎の「愛しい女」には 「枕元の明りを消すと、急にその風鈴の音色がー・えてきこ えた」と音響に用いた例がある。また、「目がー・えて眠れ ない」「頭がー」「弁舌がー」「・えない顔」のような比喻 的な用例も多い。ひQ汙え返る・汙え渡る ざえわたる【呀え渡る】一面に澄んでいる意で、改まった会 話や文章に用いられる和語。〈秋の空〉〈夜空に月が明る くー〉尾崎一雄の『虫のいろいろ』に「真夜中、月光の 下に、鈍く音なく白く光る富士」とある。Q呀え返る・呀え <396> さお る ざお【竿】竹製の棒状の道具をさし、会話でも文章でも使わ れる日常の和語。〈竹—〉〈釣り—〉〈物干し—〉夏目漱石 の『坊っちゃん』に「沖釣にはーは用いません」とある。 棹 ざお【棹】舟を進めるための棒や、三味線の弦を張る棒状の 部分をさし、会話でも文章でも使われるやや古風な和語。 〈渡し舟の—〉〈流れに—指す〉〈津軽三味線の太い—〉 筈 さか坂傾斜した地面や道をさし、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈険しい—〉 「」を上り詰める〈」にさしかかる〉円地文子の『妖』に 「その静かなーは裾の方で振袖の丸みのように鷹揚なカーヴ をみせ」とある。呂坂道・Q斜面・スロープ かえ【栄え】「繁栄」の意で文章中に用いられる古めかしい 和語。〈国の—〉大岡昇平は『野火』という小説を「私一 人のために、この比島の山野まで遣わされたのであるなら ぼ」という条件付きで「神に—あれ」として閉じた。成城の 自宅を訪問した際、「あれは異端の書であって、外国のキリ スト者は、一つの小説を「神に—あれ」というような句で終 わることはできません」と語った。単栄冠・Q栄光・栄誉・誉れ・ 名誉 ざかえる【栄える】勢いが盛んになり賑わう意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈国がー〉〈港町としてー〉の三島由紀夫の『潮騒』に「海が 平穏で、漁獲はゆたかに、村はますますー・えてゆきますよ うに」とある。♩発展・Q繁栄・繁盛 さかさ【逆さ】主としてくだけた会話に「逆」の意で使われ る和語。〈一に吊おす〉国木田独歩の『武蔵野』に「稲が刈 り取られて林の影が一に田面に映る」とある。「さかさま」 の略。「一富士」「一睫毛」などの慣用表現以外ではあま り使われなくなり、「さかさま」よりも古風な感じになって いる。ひあべこべ・逆・Q逆様・倒錯・反対 ざかさま【逆様】主としてくだけた会話に「逆」の意で使わ れる和語。〈向きがーだ〉ふうっかりーに貼る〉夏目漱石 の『草枕』に「何でもーだから叶わねえ」とある。ふあべこ べ・逆・Q逆さ・倒錯・反対 さがしあてる【探し当てる】考えていたような物をあちらこ ちら探し回った末にようやく見つける意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈初版本を—〉〈安い店を—〉乃捜し当て る・Q探し出す・捜し出す・探り当てる・突き止める さがしあてる【捜し当てる】特定の対象を方々捜し回った末 にようやく見つける意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈居所を—〉〈紛失物を—〉Q探し当てる・探し出す・捜し出す・ 探り当てる・突き止める さがしだす【探し出す】考えていたような物を探して見つけ 出す意で、会話にも文章にも使われる和語。〈便利な品を ー〉〈貴重な文献をー〉乃探し当てる・捜し当てる・Q捜し出す・ 探り当てる・突き止める さがしだす【捜し出す】特定の対象を捜して見つけ出す意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈家出人を—〉〈草の根を 分けても—〉刂探し当てる・捜し当てる・Q探し出す・探り当てる・ <397> 突き止める さがす【探す】欲しいものを求める意で、会話でも文章でも 使われる基本的な和語。〈宿を—〉〈就職先を—〉〈手ごろ なパッグを—〉小島信夫の『小銃』に「小銃の影の林の中 で、ふとその影を—ということを私はいくどもした」とあ る。刂捜す さがす【捜す】失った物や特定の人などを求める意で、会話 でも文章でも使われる基本的な和語。落とし物をー〉書 類をー〉〈目撃者をー〉刂探す さかだち【逆立ち】両手を地面につけ、足先を上に上げて立 つ意で、会話や改まらない文章に使われる日常の和語。「 で歩く」「をしても敵なわない」本格的な「倒立」に比 べ、遊びの範囲を出ないニアンスが強い。鳥鱸立ち・Q 倒立 さかな【肴】酒を飲むときの「つまみ」をさし、会話や軽い 文章で使われる和語。〈酒の—〉〈人の噂話を—に一杯や る〉のもと「酒菜」と書き、おつまみをさした。魚 さかな【魚】魚類をさし、会話やさほど硬くない文章で使わ れる日常生活の和語。〈川〉〈焼き〉〈料理〉〈を釣 る〉③堀田善衛の『鬼無鬼島』に「月光に青白く光る刀のよ うな長い」とある。酒を飲むときによく魚類を食したと ころから、つまみの意の「さかな」が「うお」をも意味する ようになった。刂着 さかなで【逆撫で】わざと相手の気に障ることをする意で 会話や硬くない文章に使われる和語。〈神経をーする〉〈国 民感情をーする〉動物を毛の生えている向きと反対の方 さかん 向に撫でると嫌がることから。刂刺激 さかみち【坂道】傾斜のある道路をさし、会話にも文章にも 使われる日常の和語。(急なーを喘ぎぎあえぎ登る)へーを 転げ落ちる)Q坂・斜面・スローブ さかもり【酒盛り】集まって酒を飲むことを楽しむ意で、会 話にも文章にも使われる、やや古風な和語。〈—が始まる〉 〈車座になって—の真っ最中〉志賀直哉の『赤西蠣太』に 「用が済むと二人は座敷へ帰って来て、皆と共にーを始め た」とある。「酒宴」より小人数でもよい感じがあり、それ 以上にあくまで酒を楽しむという雰囲気がある。りうたげ 宴・宴会・Q酒宴 さからう【逆らう】反対の方向に進む意で、会話にも文章に も使われる日常の和語。〈風に—〉〈川の流れに—〉〈時流 に—〉〈上司の指示に—〉野間宏の『暗い絵』に「ひとに ー・ってまで彼の考えを押しつける」とある。命令などに従 わないところに重点があり、「歯向かう」に比べ攻撃性は弱 い。马歯向かう さかりば【盛り場】町中の人通りの多い賑やかな地域をさし、 会話や軽い文章に使われる和語。〈ーをうろつく〉特に歓 楽街をさすこともある。安部公房の『他人の顔』に「らし い騒音が、漬物樽の中のように、あたりの空間を過飽和に ちかい濃度で埋めつくしている」とある。Q歓楽街・繁華街 さかん【盛(旺・壮)ん】活気に満ちている意で、くだけた会話 から文章まで幅広く使われる日常の和語。〈ーに燃えてい る〉(サッカーの—な国〉〈ーにけしかける〉〈大会を前に意 気ーだ〉〈血気ーな若者〉田山花袋の『東京の三十年』に <398> わわ 「そういう噂が若い人たちの噂の中にーに繰返された」とあ る。「盛り一の転。児盛 さき【先】空間的には物の先端や前方、時間的には早いほう をさし、改まった会話や文章に用いられる和語。〈指の—〉 〈この—行き止まり〉〈—に立って歩く〉〈どうぞお—に〉 〈話の—を続ける〉〈—のことはわからない〉②大岡昇平の 『俘虜記』に「それはこの谷を少し登ってから別の尾根へ取 りつき、—で今彼らが引き返して来た道と合する道である」 ふ前方・前 【詐欺】他人を欺いて高額なものを不当に奪う意で、会 話にも文章にも使われる正式な感じの漢語。〈結婚—〉〈稀 代の師〉〈行為に当たる〉〈を働く〉〈に引っか かる〉法律の専門語としては、事実を偽って相手を錯誤に 陥れる違法行為をさす。「いかさま」や「べてん」より本格 的で大規模な感じがある。いかさま・いんちき・Qべてん さきこぼれる【咲き零れる】あふれんばかりに花がいっぱい 咲く意で、主に文章に用いられる、いくなん詩的な和語。 〈植え込みのつつじの花がー〉、Q咲き誇る・咲き乱れる さきごろ【先頃】「このあいだ」に近い意味で、やや改まった 会話や文章で用いられる和語。〈事を始めたのはついーの ことである〉へーお手紙でお知らせした件〉五木寛之の 『蒼ざめた馬を見よ』に「亡くなりました」とある。日数 単位の「この間」「先日」「せんだって」より以前のことで も使え、数ヶ月から一年ぐらい経過していても特に違和感 がない。若干改まり、いくらか古い感じがある。いちじ・ 過日・この間・先日・せんだって・Q先般・一頃 できほこる【咲き誇る】誇らしげに見えるほど美しく咲く意 で、主に文章に用いられる、いくぶん詩的な和語。〈大輪の 薔薇が今を盛りとー〉Q咲きこぼれる・咲き乱れる さきほど【先程】「さっき」の意で、改まった会話や丁重な手 紙などでよく用いられる和語。「の件ですが」「は失礼 いたしました)「御紹介に与りました中村でございま す)りさっき・Q先刻 さきみだれる【咲き乱れる】多くの花が入り乱れるように重 なり合って咲く意で、主に文章に用いられる、いくふん詩的 な和語。〈色とりどりの花が春の庭〉田山花袋の蒲 団』に「旅館の中庭に、萩が絵のように!れていた」とあ る。多くの同じ種類の花が乱雑に感じられるほど重なり合 って咲く場合も、いろいろの種類の花が色とりどりに交じ り合って咲く場合もある。Q咲きこぼれる・咲き誇る さきゆき【先行き】将来の動向などをさして、会話にも文章 にも使われる和語。〈ー不透明〉〈ーの見通しが明るい〉 〈景気のーが懸念される〉〈ーが思い遣られる〉②経済問題 に使う場合は専門語の響きが出やすい。以後・今後・Q将来 未来・行く末 ざぎよう【作業】物を作ったり機械などを操作したり一定の 手順で仕事をすることをさし、会話にも文章にも使われる 漢語。〈1員〉〈1服〉〈1場〉〈単純〉〈流れ〉〈1を中 断する〉葉山嘉樹の『海に生くる人々』に「土蜂のような ー」とある。分析・考察過程のような知的に展開する多様な 仕事より、一定の手順に則ってやる機械的な労働を連想さ せる。ひ仕事 <399> さきよう【座興】その集まりに興を添えるための芸・遊びやそ の場限りの冗談・戯れをさし、会話にも文章にも使われるい くぶん古風な漢語。〈に歌を歌う〉〈ほんのーで〉二葉 亭四迷の『浮雲』に「に言った言葉」とある。「余興」に 比べ、急に思い立った感じが強い。アトラクション・Q余興 さく【柵】木材や鉄材などを並べて立てた囲いをさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈境界にーを設ける〉へーをめ ぐらす〉②「塀」に比べ臨時的な感じがある。生垣・垣・垣 根・Q囲い・フェンス・塀 ふくい【作為】意図的に手を加える意で、改まった会話や文 章に用いられる硬い感じの漢語。「が目立つ」「の跡が 見える〈無抽出〉作意 ふくい【作意】制作意図の意で、主として文章中に用いられ る、やや専門的な雰囲気の漢語。〈作者のーを正しく汲み取 る〉へーが露骨に表れすぎて素直に読めない〉乃作為 ぐげん【削減】数量や金額などを削って減らす意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈人員—〉〈経費を—す る〉刂軽減・Q節減・低減・逓減 さくじつ【昨日】「きのう」の意で、改まった会話や文章で用 いられる漢語。〈一の会合において〉〈一来の雨〉〈一举行 された儀式〉ひきのう さくしゃ【作者】文学や美術・音楽などを創作した人をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。 〈未詳〉への意図〉へ自身に聞く小林秀雄の『私小 説論』に「夢殿の救世観音を見ていると、その」という様な ものは全く浮んで来ない。それはというものからそれが さくねんど 完全に遊離した存在となっているからで、これは又格別な 事である」という志賀直哉のことばを引用している。書き 手・Q著者・筆者 ざくせい【作成】文書などをまとめる意で、改まった会話や 文章で用いられる漢語。〈書類を—する〉〈報告書を—す る〉〈予算案を—する〉Q作製・制作 ぞくせい【作製】品物や図面を作る意で、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈地図を—する〉〈自動車の部品 を—する〉②物品以外は広く「作成」と書く傾向が見られ る。刂作成・Q製作 さくせん【作戦】戦闘や競争に勝つための方略の意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる漢語。〈陽動—〉 〈ーを練る〉〈ーを立てる〉〈ーどおりに運ぶ〉〈ーが功を奏 する〉田宮虎彦の『沖縄の手記から』に「私たちの前面に 上陸ーを企図したアメリカの機動艦隊が沖縄近海に迫って 来ている」とある。「ータイム」など、競技などでは「策戦」 と書くこともあるが、この表記は「作戦」に比べて細かい方 策を連想させる。乃戦術・戦略 ぐねん【昨年】「去年」の意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。「より本年にかけて」「お目にかかりまし た折」「去年」より改まった感じで、正式の文書などに使 う。去年 さくねんど【昨年度】今年度のすぐ前の年度をさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。へーの事業報告を行う「去年度」という形があまり使われない関係で、文体的レベルで「来年度」と「明年度」の双方に対応する結果になる。 <400> さくぶん くぶん【作文】与えられた課題や条件に合わせて文章を書 くこと、また、その作品をさし、会話にも文章にも使われる 漢語。〈課題—〉〈—コンクール〉〈宿題の—を提出する〉 〈生徒—の添削指導〉鎌倉の自宅を訪問した折、永井龍男 は「そのほうが高級に聞こえるのか、や綴り方なんか大 嫌いだったと言う小説家が多いですね。ホントかいと言い たくなる。私の場合はとっても好きだった」と率直に語 た。夢綴り方 ふくもつ【作物】「農作物」の意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈畑のー〉〈今年はーの出来がいい〉、Q農作物・農産 物 ぐら【桜】バラ科の代表的な花木(古くは山桜、現代では染 井吉野が中心)をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使える和語。〈前線〉への名所〉へが満開になる)② 谷崎潤一郎の『雪後庵夜話』に「姉妹たちの袂にも千本 の花の雨が降り注いでいたように思う」とある。梅や桃と は違って、単に花やその木をさすだけでなく、はなやかさや 潔さを感じさせ、入学式・卒業式の連想から新しい旅立ち上 いうめでたい気分を誘う。 さぐりあてる【探り当てる】手の感触を用いたりいろいろな 場所を探ったりしてようやく目指するのを見つける意で、 やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈秘密をー〉 〈暗闇でスイッチをー〉Q探し当てる・捜し当てる・探し出す・捜 し出す・突き止める さくりゃく【策略】自分側に利があるように相手側を操るた めのはかりごとの意で、やや改まった会話や文章に使われ る少し硬い感じの漢語。〈ーを弄する〉〈ーにはまる〉茶 川龍之介の『鼻』に「弟子の僧にも、内供のこのーがわから ないはずはない」とある。「計略」より具体的で、「謀略」や 「陰謀」ほどの悪意を感じさせない。陰謀・Q計略・謀略 さくれい【作例】頭の中で作り出した用例をさし、会話にも 文章にも使われる専門的な漢語。〈実例が見つからずーで 間に合わせる〉の「実例」と対立。国語辞典などの項目を執 筆する際に文学作品などからの実例を引かず自分で作った 例を掲げる場合などに言う。「詩の」のように、作り方の 見本の意にも用い、その場合は専門的な感じが薄い。ひー 例・文例・用例・類例・例・例文 ざくれつ【炸裂】破裂して破片が飛び散る意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い漢語。〈一弾〉〈爆弾がーする〉 比喩的に「強烈なスパイクが相手コートにーする」のよう にも使う。爆発・Q破裂 さけ酒】アルコール飲料、特に日本酒をさし、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈一のきかな〉〈一が五臓六腑ふぐにしみわたる〉〈一をちびりちびりやる〉〈大杯でーをあおる〉〈一に酔って正体をなくす〉「ピールで軽く喉を潤してからーに移る」のように通常は日本酒をさすが、「一の中ではワインが一番口当たりがよい」などとアルコール類の総称ともなる。「一が強い」もふつうは総称だが、「一となると目がない」のように判断のつかない例も多い。ちなみに、幸田文は『蜜柑の花まで』で、「積った雪」「降りつつ積りつつの雪」「一トひら、一トひらの雪」などはどれもみな酒と相性がよく、「ど <401> うしてもここにおーがなくては納まらない観もの」とその 感性を披露した。ここは感覚的に清酒である。きささ・清酒・ Q日本酒 さけかす酒粕(糟)「粕」の意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈鰈さわを—に漬ける〉耳から聞いたときに「滓」 でなく「粕」であることを明確にする意図もあるが、「滓」 を連想するマイナスイメージを避けるのが中心か。 ざげすむ【蔑む】あなどって軽んずる意で、主として文章に 用いる高級な和語。人をー・んだような目つき》⑩芥川龍 之介の『芋粥』に「上眼を使って、ーように」とある。乃侮 る・Q軽蔑・なめる②・見下す・みくびる・見下げる さけのみ酒飲(香)み酒が好きで多量に飲む人をさし、会 話やさほど改まらない文章に使われる和語。へーは意地が 汚い)根からのーで甘い物には手を出さない)Q酒豪・ 香み助・呑んだくれ・呑ん兵衛・左利き さけび【叫び】叫ぶこと、および、その声をさし、会話にも 文章にも使われる和語。《遠いー〉〈絹を裂くような女の ー〉〈助けを求めるー〉倉橋由美子の『姫たち』に「恐怖 のあまりなにかが裂けていくようなー」とある。「心のー」 のような比喩的用法もある。Q叫び声・絶叫・悲鳴 さけびこえ【叫び声】興奮のあまり発する大きな声や、危険 が迫って思わずあげる恐怖の声をさし、会話やさほど硬く ない文章に使われる和語。へーを立てる〉へーを上げる〉 〈夜中にーが聞こえる〉太宰治の『斜陽』は「朝、食堂で スウブを一さじ、すっと吸ってお母様が、「あ。」と幽かなー をお挙げになった」と始まり、北杜夫の『夜と霧の隅で』に さげる は、幼い子供たちの「はねかえるような」が凍った大気の中 を透ってきて」とある。金切り声・叫び・絶叫・Q悲鳴 さけぶ【叫ぶ】大声を出す意で、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の和語。〈大声で—〉〈救いを求め て—〉林房雄の『青年』に「抑えつけていた怒りを吐き だすかのように—・んだ」とある。「わめく」と違い、「キャ ー」「ギャッ」のような意味のない声も含まれる。「反対を —」「無実を—」のように主張を世間に訴える意でも比喻的 に使われる。少Q怒鳴る・喚く さけよい酒酔い酒を飲んで酔う意また酔った人をさ し、会話にも文章にも使われる和語。〈ー運転〉へーは始末 が悪い酔っ払いほどは乱れていない感じがある。 Q酔客泥酔者・酔払い さける【避ける】好ましくない対象から離れる意で、やや改 まった感じの会話や文章に使われる日常の和語。〈人込みを ー〉〈危険をー〉〈明言をー〉〈そちらの話題はー・けたい〉 〈人目をー〉の「よける」が具体物の回避に使われるのに対 して、この語は森鷗外の『普請中』に「水溜まりをー・けて」 という具体物の例もあるものの、対比的に事柄や状況とい った曲の文字正の回避に使ったら頃向かる。 た抽象的な存在の回避に使われる傾向が ざげる【下げる】上から下へ移動させる意で、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。頭 をー〉〈目尻をー〉〈腰に手拭をー〉〈飛行機が高度をー〉 〈男をー〉〈値段をー〉〈品質をー〉〈評価をー〉②「上げる」 と対立。「ハンドバッグを手にー」のように、ぶらさげる意 では「提げる」と書くことが多い。「お膳をー」のように出 <402> おお したものを引っ込める意味でも使う。ひQ下ろす・引き下げる ささ酒を意味する昔の隠語。〈その方、ーは食すか〉酒の サを重ねた語形。ひ酒 ざさい【些(瑣細】細かくて価値がなく、取るに足らない意 で、会話にも文章にも使われる漢語。ぼんのーなこと へーなことにこだわる)へーなことから喧嘩になる)取り 上げるに値しない点は「瑣末」と同じだが、この語は、細 か過ぎるところに重点を置き、その点で「瑣末」とニュアン スが違う。刂瑣末 ささえる【支える】物・人・組織などが倒れたり崩れたりしな いように維持・保持の力になる意で、くだけた会話から文章 まで幅広く使われる基本的な和語。〈支柱を立てて老木を ー〉〈屋根をー〉〈怪我人を両脇からー〉〈一家の生活をー〉 〈副総理が首相をー〉〈事業をー資金〉〈選手が応援の人に ー・えられる〉③三島由紀夫の『潮騒』に「肌着をその両手 がー・えているので、上半身はすっかり露わである」とあ り、夏目漱石の『草枕』には「閣僚の肩は数百万人の足を ー・えて居る」とある。弁支援 るつ【查察】実地に調査して現状を知る意で、改まった会 話や文章に用いられる公的で専門的な硬い漢語。〈官を 派遣する〉〈現地の状況を—する〉〈ーを受ける〉乃視察 さし【差し】二人だけで向かい合う意で、くだけた会話に使 われる古風で俗っぽい和語。〈ーで話し合う〉〈ーで飲む〉 の「差し向かい」と違い、必ずしも親密な間柄とは限らな い。Q差し向かい・対面・向かい合う・向き合う ざじ【匙】液体や粉末、細かいものを掬い取るための道具の 意で、会話にも文章にも使われる日常語。〈茶—〉〈大—二 杯〉〈一で掬う〉「茶匙」の字音「サシ」から。昔、医者 が薬の調合に用い、「加減」「を投げる」のような比喻 的拡大用法もある。ひスブーン さしあげる【差し上げる】上位者に「与える」意で、会話に も文章にも用いられる丁寧な感じの和語。〈先生にー〉へお 客様にお茶をー〉き上げる・Q与える・呉れる・授ける・施す・やる ② さしあたり【差し当たり】今のところの意で、会話にも文章 にも使われる日常の和語。〈ー必要がない〉へーの用は足り る〉へこれだけあればー困らない〉ひQさしずめ①・当座・当面・ とりあえず・ひとまず さしえ【挿絵】新聞・雑誌・本などの本文の間に挿入する、文 章の内容と関連した絵をさして、会話にも文章にも使われ る日常の和語。〈一画家〉〈一入り〉ひイラスト・カット・挿画 さしかかる【差し掛かる】その地点を通る意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる和語。〈列車が鉄橋に一〉〈峠に 一〉の「通り合わせる」と違って特別の場所という感じはな く、「通りかかる」ほどの偶然性も感じさせず、むしろ順 調・当然という連想が強い。「通り合わせる」や「通りかか る」の対象が狭い範囲なのに対し、この語はもう少し幅が 広く、「人生の坂に一」のような比喻的な用法もある。広通 り合わせる・Q通りかかる ざしき【座敷】畳を敷きつめた客間をさし、会話でも文章で も広く使われる日常語。〈南に面した広々とした〉へーで 珍客をもてなす谷崎潤一郎の『刺青』に「日はうららか <403> に川面を射て、八畳のーは燃えるように照った」とある。 「応接間」が洋室、「客間」が和室と洋室の両方を思わせる のに対し、この語は畳を敷いた和室に限られる。また、「応 接間」は四畳半程度の広さの洋室の場合もあるが、「座敷」 という語は八畳間程度はあって床の間のついた立派な和室 を思わせる。なお、「おー」となると、酒宴の席をさす場合 もある。広接室・応接間・客室・Q客間 さしさわり【差し障り】それをすると具合の悪いことが起こ りかねないような事情をさして、会話やさほど改まらない 文章に用いられる和語。〈ーのある話は避ける〉〈その発言 はーがある〉「差し支え」に比べ、精神的・心理的な影響 を連想させやすく、「ーが生じる」のように、具体的な意味 合いで使う場合は「差し支え」より古風な感じがある。ひQ 差し支え・不都合 さしず【指図】下位者に命じてやらせる意で、会話にも文章 にも使われる日常の表現。〈人をーする〉〈部下に仕事をー する〉へーどおりに行う〉〈ひとのーは受けない〉命じる 行為の内容を中心とする「指示」に比べ、この語は自分の命 令で部下などを動かすところに重点があり、それだけ指図 する中身がおおまかな事柄になる。単指示・命令 さしずめ【差し詰め】①「さしあたり」の意で、やや改まった 会話や文章に用いられる、やや古風な和語。「これで何と かなる〉へー食うには困らない)Qさしあたりとりあえず ひとまず②いろいろあっても結局といった意味合いで、や や改まった会話や文章に用いられる、やや古風な和語。〈よ く鼻を鳴らすあたり、あの女は一豚といったところだ〉 さしみ さながら・まるで② さしつかえ【差し支(閩)え】そのことが何かの妨げ・障害にな りかねないような事情をさして、会話やさほど硬くない文 章に使われる和語。〈業務にはーがない〉へーがあるような ら後日に延ばす〉へもしーなければ御住所を伺いたい〉夏 目漱石の『坊っちゃん』に「教頭の云う事は信じないと云う 様に聞こえるが、そう云う意味に解釈してーないでしょう か」とある。具体的な問題としては「差し障り」よりよく使 う。Q差し障り・不都合 「それほど」の意で、会話にも文章にも使わ れる、やや古風な和語。〈ー欲しくもない〉〈ー違わない〉 〈ー困らない〉の「大して」に比べて意外性が意識されない。 そのため、「ー急がない」という表現では、「大して急がな い」の場合ほど、ある程度急いでいるという含みが強く感 じられない。ああまり・あんまり・Qさほど・大して さしひかえる【差し控える】状況を考えて見合わせる意で、 改まった会話や文章に使われる和語。〈風邪気味のため外出 をー〉〈しばらくの間ー〉〈プライベートな問題なのでコメ ントをー・えさせていただく〉の「控える」より丁寧な感じ がある。ひ慎む・Q控える① さしひく【差し引く】全体から必要に応じて取り去る意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや丁寧な感じの和語。 〈給料からー〉〈税金をー〉単なる「引く」より改まった感 じがある。Q差っびく・引く② さしみ【刺身】生の魚肉を薄く切ってわさび醤油をつけて食 べる料理をさす標準的な和語。〈鮪の中トロをーにして食 <404> う夏目漱石の『坊ちゃん』に「も並んでるが厚く って鮪の切り身を生で食うと同じ事だ」とある。お造り さしむかい【差し向かい】二人の人間が近い距離でまともに 向かい合う意で、会話にも文章にも使われる和語。〈夫婦 」〈に座って一献心傾ける〉〈でひそひそ話し合う〉 の「向かい合う」と違って、何人かの中のある二人ではな く、二人だけの場合に使う。人間、それもきわめて親しい 間柄に限り、特に恋人同士を連想しやすい。差し対面・Q 向かい合う・向き合う さしゅう【查収】調べて受け取る意で、主に丁寧な感じの文 章に用いられる硬い漢語。〈納品を—する〉へどうぞ御—下 さい)Q受領・領収 さしわたし【差し渡し】「直径」の意で、主に会話に使われる 古めかしい和語。〈一尺ほどのまるを描く〉の「直径」に 比べ、球体の連想が働きにくい。単直径 さす【刺す】鋭くとがったものの先を対象物の中に入り込ま せる意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる基本 的な和語。〈注射針を—〉魚を串に—〉川端康成の『雪 国』に「ように美しい目」とあり、伊藤整の『氾濫』に「 ような自責の念」とあるように、鋭い感じの比喻になる例 も多い。突き刺す さずける【授ける】上位者が下位者に恩恵をもって与える意 で、改まった会話や文章に用いられる和語。〈学位を—〉 〈賞を—〉〈秘伝を—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「教育 の精神は単に学問をー許りではない」とある。客観的な 「与える」に比べ、上から下へという意識が強く、格式ばっ た感じが強い。ひ上げる・Q与える・呉れる・差し上げる・施す・やる② さすらい【流離】あてもなくあちこち歩き回る意で、主に文 章の中で用いられる美化した感じの古めかしい和語。「 の旅路」さまよう・漂泊・Q彷徨・放浪・流浪 さする【摩る】手のひらで軽くこする意で、会話でも文章で も広く使われる日常の和語。〈やさしく背中を—〉〈手の平 で軽く—〉〈ぶつけた膝を—〉四川崎長太郎の『船頭小路』 に「洗濯板みたいあばら骨がでこぼこしている背中を、大 分馴れた手つきでー・り出していた」とある。道具や目的や 強さに制限のない「こする」と違って、この語は肉体的・精 神的な痛みを和らげる目的で背中や患部を手の平で何度も 軽く摩擦する場合に限られる。「撫でる」のように子供や犬 の頭に手を置いて「いい子、いい子」をする場合には不適 切。りこする・Q撫でる ぷせき座席腰掛ける物や場所をさして、会話にも文章に も使われる漢語。〈指定〉へを確保する〉へがふさが っている〉〈座り心地の悪い〉回席に比べ、具体的な 椅子などを連想させやすく、畳や座布団にはなじまない。 専席 さぞ【嘸】きっとどんなにかの意で、改まった会話や文章に 用いられる、やや古風な和語。〈—寒かったことだろう〉の 経験のないことや他人の心情など、確かには知り得ないこ とを、あたかも自分がその場にいるような気持ちで同情・共 感などの実感をこめて想像する場合に使う。Qさそかし さぞや・さだめし <405> さそう【誘う】自分と一緒に行動するように他人に働きかけ る意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の 和語。〈映画に」〈友達を」・って出かける〉〈仲間に」・ われる〉②「悪の道に」・われる」「眠りに」・われる」「同 情を」のように、感情や状態を引き起こすといった抽象的 な意味の用法も多い。「街の灯に」・われる」のように文学 的な表現となる例もある。JQいざなう・勧誘・誘導 さぞかし【嘸かし】「さぞ」の強調表現として、主に文章に用 いられる丁重で古風な和語。ぐご両親もーお喜びのことで しょう〉へーお嘆きのことでございましょう〉の「かし」は 文語の強調の終助詞。ヌQさぞ・さぞや・さだめし ぞや【嘸や】「さぞ」を感情をこめて強めた表現で、主に文 章に使われる丁重で古風な和語。〈ー苦労したことだろう〉 〈ーご無念のことと拝察いたします〉の「や」は詠嘆の間投 助詞。ひさぞ・Qさぞかし・さだめし さだめ【定め】掟の意で、改まった文章に用いられる硬い 感じの和語。〈国の—〉〈—に従う〉「悲しい—」「これも ーと諦める」のような例では、「運命」と書いてその意味合 いを説明することも少なくないが、「うんめい」と読まれや すく、通じたとしても古めかしい印象を与える。马捜・法律・ 法令 さだめし【定めし】「さぞかし」の意で、主に文章に用いられる古風な和語。〈ーお疲れのことでしょう〉へーお怒りのことと存じます〉の「し」は強め。ひさぞ・Qさぞかし・さぞやさだめる【定める】「決める」の意で、非常に改まった会話や硬い文章中に用いる正式な感じの和語。〈方針をー〉〈規則 さつえい を」〈正式名称を」〈隣地との境界を」夏目漱石の 『草枕』に「今度はと心を」・めて居るうちに」とある。普段 の家庭生活にふさわしいレベルではないから、日常会話の 中で「主婦が献立を」「きょうのお昼はラーメンに」などの あとに「定める」を使ったりすると、この語の改まった感じ があまりに場面と乖離し、いったいどんな家庭かと疑わ れるような雰囲気になりかねない。Q決める・決定 ざだん【座談】数人が対座してある話題について形式ばらず に話し合うことをさし、会話にも文章にも使われる漢語。 へー会の司会へーの名手)巻対談 ざつ警察を意味する隠語。〈ーの手が回る〉〈ーに捕まる〉 「警察」の頭部省略だから漢字で書けば「察」となるが、 ほとんど使われず、片仮名表記がふつう。啓察 ふつ【札】紙幣の意で、くだけた会話から文章まで幅広く使 われる日常の漢語。〈ー束〉〈ー入れ〉〈千円〉〈手の切れ るようなー〉ひ紙幣 ざつ【雑】やり方が粗く大雑把で細かいところまで神経が行 き届かない意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈造りが ーだ〉〈一な仕上げ〉〈一に扱う〉〈雑駁・杜撰・Q粗雑 ざついれ【札入れ】紙幣を入れる財布をさし、会話にも文章 にも使われる日常語。〈と小銭入れ〉の「紙入れ」より露 骨な現代的表現。ひがま口・Q紙入れ財布 ざつえい【撮影】カメラで写真を撮ることをさし、会話にも 文章にも使われる正式な感じの漢語。〈夜間—〉〈記念—〉 〈所〉〈技師〉〈現場〉〈映画を—する〉「写す」や 「撮る」より本格的な感じがあって映画製作の際によくこの <406> ざっおん 語が使われ、丼伏鱒二の『場面の効果』にも「映画のーで主 役として活躍するから、私に—見物に来いといって来た」と ある。Q写す・撮る ざつおん【雑音】不快な音や不要な音をさし、会話にも文章 にも使われる日常の漢語。〈ーが入る〉〈ーに気をとられ る〉の有島武郎の『生れ出ずる悩み』に「そこいらから起 こる人声や荷ぞりのーなどがびんびんと君の頭を針のよう に刺激する」とある。単に雑多な音響というより、聞こう とする音の聞こえを妨げるニュアンスがある。ひQ騒音・噪 音 さっか【作家】芸術作品、特に小説などの作者をさす類義語 中で最も一般的な日常の漢語。会話でも文章でもよく使わ れる。〈流行—〉〈直木賞—〉〈—志望〉〈—の道を歩み始め る〉小林秀雄の『私小説論』に「客観小説に抗する最も聰 明な才能あるーとして登場」とある。随筆家や劇作家を含 み、「小説家」より広義。Q小説家・著作家・著作者・著述業・文 学者・文士・文人・文筆家・物書き サッカー 十一人ずつのチームに分かれ、足か頭で相手方の ゴールに入れる回数を競う球技をさす外来語。最も一般的 な呼称。〈一の試合でサポーターが騒ぐ〉〈一でゴールキー バーを務める〉及ア式蹴球・Q蹴球・フットボール さつがい【殺害】人を殺す意で、改まった会話や文章に用い られるやや硬い漢語。〈恨みからに及ぶ〉〈現場を目撃 する〉②「殺す」「殺人」などに比べ、意図的・個人的な感じ が強く、事故などで誤って死なせてしまった場合にはなじ まず、空爆で一時に大勢の敵を死なせる場面などにもあま り使わない。古くは「ぜつがい」と読んだ。ヲ殺す・殺人・Q 殺戮きっぽらす②・人殺し 「錯覚」外界の事象を実際と違って知覚する意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈目の—〉へ—を起こす へ—に陥る〉本来は視覚や聴覚について言う専門語だが、 「とんだ—で事実は逆だった」のように「勘違い」の意の派 生的用法も例が多い。芥川龍之介の『歯車』に「僕の見たも のはーではなかった。しかしーでないとすれば」とある。 寺田寅彦の『科学者とあたま』には「立派な科学者でも、時 として陥る一つのーがある。それは、科学が人間の智慧の すべてであるもののように考えることである」とある。 思い違い・Q勘違い ざっかけないがさつ、粗野といった意味合いで、主に会話 に使われた俗っぽい古風な和語。へー連中の集まり東京 方言という。幸田文の『流れる』に「つめたいコロッケは脂 臭く葱臭く味がする」とある。ひがさつ・Q粗野 さっかしう【擦過傷】擦り傷の意で、学術的な会話や文章 に用いられる医学の専門漢語。〈軽いーで済む〉り擦り傷 さっき同じ日の少し前の時をさし、主としてくだけた会話 で使われる日常語。〈一の話だけどさ〉へーから気がついて るよ〉へーの人まだいるね〉へついーまでマージャンやって た〉刂先程・Q先刻 さっきゅう【早急】きわめて急な意を表す漢語。へーに対策を 講ずる〉へーの処置を検討する〉回「そうきゅう」の本来の 読み方で、まだ一般に広く使われている。三島由紀夫の 「潮騒」に「いずれーの解決を迫るだろう」とある。ひそう <407> きゅう さっきん【殺菌】薬剤や熱などの作用で有害な微生物を殺す ことをさし、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢 語。〈剤〉〈効果〉〈低温〉〈熱湯でーする〉〈力が 高い〉多くは有害な細菌をやっつける場合で「消毒」に近 いが、もっと大仰な感じがある。また、手当てを連想させや すい「消毒」に比べ、その結果として起こる現象に重点があ る。児解毒・Q消毒・毒消し ざっくばらん率直で心の奥を隠さない意をさして、くだけ た会話に使われる俗っぽい和語。「な態度〉へに打ち明 ける」あけすけ・有り体・Qありのまま・あるがまま・率直 ざっこん【昨今】数ヶ月前または数年前から現在までの間を さし、かなり改まった会話や硬い文章中に用いられる、いく らか古風な感じもする漢語。へーの風潮〉へー隆盛をきわめ ている)弁近年・このところ・最近・Q近頃 ざつじん【殺人】人を殺す意で、会話にも文章にも広く使わ れる漢語。〈事件〉〈犯〉〈未遂〉〈嘱託〉〈の疑 いで逮捕する〉〈容疑で連行する〉〈罪で起訴する〉 志賀直哉の『范の犯罪』に「此処に」という事実はある。然 しそれが故殺或いは謀殺だという証拠は全くない」とある。 大岡昇平の『野火』には「戦場では」は日常茶飯事にすぎな い」とある。日常語ながら法律関係の用語に多く取り入れ られており、この語を要素とした複合名詞は専門語に近い 感じがある。殺す・殺害・殺戮・ばらす②・Q人殺し さっすう【冊数】書物・雑誌・ノートなどの数をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈蔵書のーを数える〉単部数 さつする【察する】その場の状況から隠れた事態を推測した り今後の変化や展開を見通したりする意で、会話にも文章 にも使われる語。〈気配を—〉〈心中おー・しします〉〈一に あまりある〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「君の云う所は 一々御尤だが、わたしの云う方も少しはー・して下さい」と ある。「察知」に比べ、情報に基づくというより経験や細や かな心配りなどを通して自然にわかる感じが強い。夢感づ く・Q察知 ざつぜん【雑然】いろいろなものが不規則に集まっているだ けで配置にまとまりがない意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈書棚に本がーと並んでいる〉へとした感じの部 屋安部公房の『他人の顔』に「頭の中は(略)博物館の倉 庫のようにーとしてしまう」とある。鳥乱雑 さっち【察知】推察して知る意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈危険を—する〉〈相手の動きを—す る〉〈敵の攻撃を—する〉②経験や心情を中心とする「察す る」に比べ、情報や状況分析を通じてある程度論理的に推測 する感じがある。感知・感づく・Q察する・推察・洞察・見抜く ざっとう【雑踏(沓)】多くの人が行き交って混雑する意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈歳末の—〉〈繁華街の— を避ける〉〈街の—の中に消える〉四道路の混雑などがすぐ に連想され、「人込み」ほどの密度はないがさらに広範囲に わたる感じが強い。ひ人込み ざっぱく【雑駁】雑然としていて体系立っていない意で、改 まった感じの会話や文章に用いられる硬い漢語。「な知 識」(考え方がーに過ぎる)雑・Q杜撰・粗雑 <408> ぐっぱり①しつこさがなく、すっきり爽やかな状態をさし て、会話や改まらない文章に使われる和語。〈した味〉 〈気持ちがーする〉〈髪を洗ってーする〉〈きれいー忘れる〉 ②「した料理」はサラダや酢の物や梅干などが連想され、 「した化粧」は口紅や白粉の濃淡よりも髪型や衣装も含め た清潔感が中心で、「した性格の人」は物事に熱中しても 長く持続せず、いつまでもくよくよ悩んだり根に持ったり しないタイプの人物を思わせる。あっさり②「まるっき り」の意で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈ーわか らない〉〈仕事がー捗ぶらない〉〈趣旨がー飲み込めない〉 ③「成績のほうはーだ」といった形でも使う。一向に・から きし・からっきし・全然・Qちっとも・てんで・全く・まるっきり・まる で① ふっぴく【差っ引く】「差し引く」の俗語形で、くだけた会話 に使われる和語。〈収入から諸費用を—〉②その業務に慣れ ているようなこなれた感じがある。Q差し引く・引く② さつりく【殺戮】多くの人間を残酷に殺す意で、主として文 章中に用いられる硬い漢語。〈むごたらしい—現場〉〈無益 なーを繰り返す〉②火野葦平の『麦と兵隊』に「眼前に仇敵 としてーし合って居る敵の兵隊」とある。殺す・Q殺害・殺 人・ばらす②・人殺し さと【里(郷)】妻・養子や住み込みの奉公人などの生家をさし て、会話や軽い文章に使われる古風な和語。〈ーに帰る〉 〈ーからの便り〉〈ーから仕送りがある〉〈おーが知れる〉 太宰治の『斜陽』に「ーのお母さまのところに帰って」とあ る。夏目漱石の『草枕』に「詩のような春のー」とあるよう に、人家の集まっている人里をさす用法もある。Q実家 生家 「茶道」「ちゃどう」の意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈一の作法〉〈一の心得〉〈一に励む〉現代ではこ の読み方が一般的。ちゃどう・Q茶の湯 ざとことば【里言葉】田舎の言葉をさし、会話にも文章にも 使われる古風なやわらかい和語。〈話の中にーが交じる〉回 「方言」のように体系を問題にせず個々の単語をさす。ま た、遊郭で使う特殊な廓ことばをさす場合もある。方 言・Q俚言 さとる【悟る】洞察・覚悟といった意味合いで、改まった会話や文章に用いる古風な和語。これも運命とー〉〈死期を ー〉〈ー・り切れぬ苛立ち〉の「事の重大さをー」「こちらの 意図を先方にー・られる」「相手にー・られないようにひそ かに近づく」のように、単に「察知する」といった程度の軽 い意味の場合は、「覚る」と書き分けることもある。夏目漱 石の『草枕』に「どこへ越しても住みにくいとー・った時、 詩が生れて、画が出来る」とある。豊憶・感知・察知・洞察 さなか【最中】「最中」の意で、改まった会話や文章に用 いられる古風な和語。〈戦いのー〉〈多忙を極めているー〉 〈この暑いー〉の漢字表記は「さいちゅう」と区別しにくい。 ふさいちゅう さながら【宛ら】まるであるものそのままというほど似ているの意で、主に文章中に用いられる古風な和語。へー真昼の 如き明るさへどうだんつつじは満天の星のように見える る堀辰雄の『風立ちぬ』に「暗に四方から包まれている <409> のを、あたかも自分の心の裡ーのような気がしながら」と 「あたかも」と共存する例がある。古語で「さ」は「そのよ うに」、「ながら」は「そのまま」の意。ひあたかも・さしずめ・ 丁度・Qまるで② さばく【裁く】人間の行為について善悪の判断を示す意で、 改まった会話や文章に用いられる和語。〈罪を—〉人を— 権利〉〈法廷で—〉のごとを適切に処理する意の「捌 く」のうち善悪の判断の部分が独立した用法。「喧嘩 」といった例では両者のつながりがわかりやすい。Q裁 判・審判 ざび【寂】古びて華やかさが薄れたために生じる枯れた渋み の味わいをさし、会話にも文章にも使われる古風な和語。 〈侘びーの世界〉谷崎潤一郎の『友田と松永の話』に「余 情を含んだーのある唄声」とある。马Q侘び さびしい【寂(淋)しい】満ち足りない、心細い意で、くだけ た会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈あたりがー〉〈ー裏通り〉〈ー一人暮らし〉〈晚秋のー風 景〉志賀直哉の『城の崎にて』に「冷たい瓦の上に一つ残 った死骸を見る事はー・しかった」とある。「淋」の字は気持 ちに限って用い、「にぎやか」の反対の意などでは「寂」の 字を使うのが一般的。「さみしい」より一般的。裒愁さみ しい・寂寞・寂寥・わびしい ざびしさ【寂(淋)しさ】満たされず心細く思う気持ちをさし、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる基本的な和語。 へどっと来るー〉〈家族が離れ離れになるー〉芥川龍之介 の『或日の大石内蔵助』に「このかすかな梅の匂につれて、 さべっ 汚返る心の底へしみ透って来るーは、この云いようのない ーは、一体どこから来るのであろう」とある。 さびつく【錆(銹)び付く】錆がひとくくつく感じになる意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈鉄の扉が—〉〈刀が —〉の「腕が—」「頭が—」のように、鈍くなる意の比喻的 な表現もある。錆びる さびる【錆(銹)びる】金属が水分に長く触れて酸化する意で、 くだけ大会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。 〈鉄がー〉〈潮風で車がー・びやすい〉「・びた声」のよう に、枯れて渋くなりかえって趣が出る意に用いる比喻的用 法もある。錆び付く ざぴれる【寂れる】かつては賑わっていた場所が、その後勢 いが衰えて人が集まらなくなり寂しい感じになる意で、会 話にも文章にも使われる和語。「・れた町〉(不況で商店 が」回芥川龍之介の『羅生門』に「洛中のー・れ方はひと 通りではない」とある。専衰える・Q廃れる サブレ 口当たりのさくさくしたもろいクッキーをさし、会 話にも文章にも使われるフランス語からの外来語。「アーモ ンドー」のイギリスの「ビスケット」もアメリカの「クッキ ー」もこのフランスの「サブレ」も基本的に同じだが、日本 では若干大きめのイメージがある。JQクッキー・クラッカー ビスケット・ボーロ ざぐつ【差別】分け隔てをする意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈人種〉へ「語〉へ「意識〉へ不当なーを受け る〈性ーに当たる〉二葉亭四迷の『平凡』に「互の熱情 熱愛に、人畜のーを撥無して、渾然として一如となる」とあ <410> さほう る。 ひQえこひいき・区別 さほう【作法】ある物事を行う上で伝統的に決まっているやり方をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へいささかの心得がある〉〈茶の湯のーを習う〉〈ひととおりーを身につける〉〈ーどおりに演ずる〉〈伝統的なーにのっとって式を執り行う〉従来「さくほう」「さっぽう」などと読み慣わしてきた「文章」「小説」なども現在では「さほう」と読むのが一般的。ひエチケット・行儀・Qマナー・礼儀作法・礼法サポート支え助ける意で、会話や軽い文章に使われる外来語。〈一体制〉〈側面からーする〉〈その案をーする〉〈支持さほど【然程】「それほど」「思ったほど」の意で、やや改まった会話や文章で使う、少し古い感じの和語。〈一の腕ではない〉〈難しくない〉〈記録はー芳しくない〉〈Qあまり①・あんまり サボるやるべきことを怠ける意で、くだけた会話に使われ る俗語。〈仕事をー〉〈仕事の途中でー〉〈授業をー〉の怠業 の意のフランス語「サポタージュ」を略して動詞化したこと ば。おこたる・Qするける・なまける ざま【様】軽蔑に価する状態をさし、くだけた会話で使う、 ぞんざいな感じの和語。〈あのーは何だ〉へを見ろ〉へー はない〉へうっかり油断すると、このーだ〉回夏目漱石の 『坊っちゃん』に「送別会なら、送別会らしくするがいいで す。あのーを御覧なさい」とあるように、見下げはてたと いう感じが強く、プラス評価の語とは結びつかない。 さま サマー「夏」の意で一定の言いまわしに使われる外来語。 〈ーキャンプ〉〈ータイム〉〈ーセーター〉②複合語として用い、単独では用いない。夏 まま様様いろいろの意でやや改また会話や文 章に用いられる和語。〈な考え方がある〉な国を訪れ る〈な手続きが必要だ〉色々・種々 さまたげる【妨げる】物事の進行を邪魔する意で、やや改ま った会話や文章に用いられる和語。〈仕事を—〉〈進行を ー〉〈日照を—〉夏目漱石は『こころ』で墓を「二人の間 に立って、自由の往来を—魔物のようであった」と書いてい る。専邪魔・Q妨害 さまつ【瑣(些末】本筋から離れたちょっとしたことをさし、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へーなことにか かずらう結果としては「些細」と同じく、どうでもい いことになるが、「些細」が細か過ぎるところに重点がある のに対し、この語は本筋に無関係であるところに重点があ る。単些細 さまよう【彷徨う/さ迷う】一定の場所に落ち着かず、行 たり来たり歩き回ったりする意で、主として文章中に用い られる、やや美化した感じの古風な和語。〈あてるなく—〉 〈林の中を—〉〈生死の境を—〉、さすらい・漂泊・Q彷徨・放 浪・流浪 ざみしい【淋(寂)しい】「さびしい」の意で主に会話に使われ るいくぶん古風な和語。〈—毎日〉友達がいなくてー) 人通りの少ない場合より孤独感について使われる傾向があ る。きびしい・わびしい さむい【寒い】気温の低さがつらいほど不快に感じられる場 <411> 合に、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。《冬の—朝》(北の—地方)⑨井伏鱗二の 『黒い雨』に「真夏だというのに、ぞくぞくするほどー・かっ た」とある。「冷たい」に比べ、全身で感じる場合が多い。 「暑い」と対立。Q涼しい・冷たい・冷ややか ざむけ【寒気】病気による発熱や恐怖などのために感じる不 快な寒さをさし、会話やさほど硬くない文章に使われる和 語。〈立つ〉ぞくぞくっとーがする)武者小路実篤の 『友情』に「不意にーがし、頭痛がした」とある。悪寒 鳥肌が立つ さむらい【侍(士)】武芸を身につけ主に戦に備えて主君に仕 える者をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈田舎—〉 〈—の家に生まれる〉〈—として仕官する〉四「お—」とも言 われたように、「武士」ほど格式ばった感じがしない。武家 時代以前は、朝廷や貴族などに仕えて警護にあたる者をさ した。「なかなかのーだ」のように、並外れた人を半ばから かって言う派生的な用法もある。乃武家・Q武士 さめる【冷める】熱が失われる意で、会話でも文章でも日常 よく使われる生活和語。〈スープのー・めない距離〉〈興奮が ー〉〈ほとぼりがー〉児醒める・覚める・Q縄める・冷える さめる【覚める】目覚めるなど意識などがはっきりする意で、 会話でも文章でもよく使われる日常生活の和語。〈目が一〉 〈眠気が一〉〈夢から一〉横光利一の『悲しみの代価』に 「張り詰めていた彼の昂奮も急に吸われるように」・めて来 た」とある。「酔いがいっぺんに」「麻酔が」「忠告され て迷いが」のように、酔いや心の迷いの場合に「醒める」 と書いて区別することもあるが、そういう表記は若干古風 な感じを伴う。Q醒める・冷める・褪める ざめる【褪める】色が薄くなり鋭さや鮮やかさや艶が失われ る意で、会話でも文章でも幅広く使われる日常生活の和語。 へあれほと鮮やかだった色も年数を経てきすがにすっかり ー・めてしまったぐ少しー・めてペンキの色が落ち着いて きた野上弥生子の『若い息子』に「色のー・めた制服の 腕を顔の両側に枠のように突っ張って歩いた」とある。 「褪ぜる」が褪色の途中経過に注目している感じなのに 対して、色が鮮やかであるかないかに注目し、後者への変 化を問題にする傾向が見られる。退褪せる・覚める・冷める・醒 める ざめる【醒める】酒の酔いや心の迷いなどが消える意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈夜風に吹かれて酒の酔い がー〉〈麻酔がー〉〈恩師の一言で目がー〉ひ覚める・冷める・ 褪〜める さもしい欲が深く心の卑しい意で、会話にも文章にも使わ れる、やや古風な和語。〈「考え〉〈「根性〉」浅ましい・意地 汚い・Q卑しい ゆ白素湯沸かしただけで何も混ぜない、飲むための 湯をさし、やや改まった会話や文章に用いられる和語。食 後にーをいただくお茶などと区別するときに言うこと が多い。「お湯」より少し上品に響く。湯 ざよう【作用】他に力や影響を与えることをさし、改まった 会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈相乗ー〉〈薬の副 」〈一を及ぼす〉木山捷平は『貸間さがし』で空襲の悲 <412> さらう 惨さを「時節柄もんペをはいていたであろうに、爆風は、 どのような化学ーを起して、腰巻だけ肉体から分離し、屋 根をつきぬけて、木の枝にひっかけたのか」と不思議な角度 から描く。ひ機能・Q働き ふらう【攫う】他人の物を奪い去る、持って行くの意で、会 話や改まらない文章でよく使われ、やや古い感じになりか けている和語。〈他人の物を—〉〈人気を—〉ひ掻っ攫う 「復習う」「復習する」に近い意味で、古めかしい感じ の和語。へそろばんをー〉〈三味線をー〉②サトウハチロー に『おさらい横町』と題する少年小説があり、「朝と夕方に は近所の子供が、ずらりと塀のところにならんで、明日の おさらいをする横町になった」と、この名詞形「おさらい」 を単に勉強の意に使っている。このように学校の勉強など について使うと相当古い感じがするが、芸事などに用いる 場合は今でもやや古風な感じがする程度。乃復習 aらに【更に】今まで以上にの意で、やや改まった会話や文 章に用いられる和語。〈ー念を押す〉〈ー発展する〉〈ー努 力を重ねる〉〈ー言えば〉なお・Qもっと サラミ 乾燥させて固くした香辛料入りの保存用ソーセージ をさし、会話でも文章でも普通に使われるイタリア語から の外来語。ヘミラノー〉へーを薄く切ってピールのつまみに する〉普及するまでは「ーソーセージ」と説明的に呼んで いた。サラミソーセージ サラミソーセージ「サラミ」の古めかしい言い方。「サラ ミ」が珍しかった時期に、それが「ソーセージ」の一種であ ることを知らせた説明的な言い方。普及して知られるよう になるにつれて単に「サラミ」と言うようになった。イタリア語に英語を組み合わせたこの語形は落ち着きが悪い。 ひサラミ サラリー「給料」の意で、主に会話に使われる外来語。今 月のーがまだ出ない〈ーだけではやって行けない〉も給与・ Q給料・月給・貢金・俸給 サラリーマン役所や企業に勤務し給料をもらって生活して いる人をさし、会話や硬くない文章に使われる日常の外来 語。〈生活〉〈平凡なー〉②「会社員」や「ピジネスマン」 より広義。会社員・勤労者・社員・従業員・Q勤め人・ピジネスマ ン・労働者 ざりげない【然り気無い】意図的な感じを相手に与えないご く自然な調子での意で、会話にも文章にも使われる和語。 へー様子で〈一風を装う〉へー・くたしなめる〉へー・く勇気 づける) ひ何気ない さる【然る】「或る」の意で改まった会話や文章に用いられる 古めかしい和語。〈一人の紹介で〉〈麹町のーお屋敷〉 「敵もー者」のように「相当な」「なかなかの」の意にも使 う。仮名書きが普通。ひ或る・とある ざわ【沢】浅く水がたまり草の生えた低湿地をさし、会話に も文章にも使われる和語。〈步き〉古井由吉の『水』に 「一の音がまるで大勢の男たちの上ずった斉唱みたいに鳴り 響いた」とある。「ーを渡る」のように、山あいの小さな流 れをさすこともある。Q渓流・湿地・せせらぎ、谷川 さわがしい【騒がしい】人々が騒いでいるらしく、うるさく 感じられる物音が聞こえてくる意で、改まった会話や文章 <413> に用いられる和語。〈人だかりがして何やら〉〈隣の部屋 がさっきから」「風が出たらしく林が」のように、 木々の枝が擦れる不規則な音にも使うが、音が大きくても チャイムやジュット機のように規則的な音には使いにくい。 「うるさい」「やかましい」ほど不快感が前面に出ておらず、 客観的な感じがある。「このところ事件が多く世間が」の ように、具体的な音響と無関係に、落ち着きを失っている意 にも使う。ひうるさい・Q騒々しい・やかましい 「騒ぎ」大きな声を出して動き回る行為や、日常の平 穏な生活を乱すような出来事や事件をさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈どんちゃんー〉へが持ち上がる 〈とんだーを引き起こす〉〈大変なーになる〉図尾崎一雄の 『虫のいろいろ』に「眉をぐっとつり上げた。すると、急に 私の額で、ーが起った。私のその動作によって額に出来た しわが、蠅の足をしっかりとはさんでしまったのだ」とある など、人間以外に使う例もある。「出産」「受賞」のよ うに、めでたい場合にも使う。尾崎士郎の「人生劇場」に 「大へんな人気をあおって初日は小屋の割れるようなーにな った」とある。ひ混乱・Q騒動・騒乱 わぐ【騒ぐ】大声を出したりうるさい物音を立てたりする 意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の和 語。子供たちがーので考え事ができない〉宴会で夜遅く までー)井伏鱒二の『黒い雨』に「荷物を捨てる決心もつ かない風で家族数人ががやがやーいでいた」とある。「審 判の判定に観客がー」のように、大勢で不服の言動を取る 意や、「マスコミがー」「世間をー・がせる」のように、うる さく話題にしたりして平安を乱す意にも拡大して使う。 はしゃぐ ざわめき【騒めき】どの場所と特定できないがあちこちで騒 ぐ音が起こる意で、改まった会話や文章に用いられる和語。 〈観衆のーが聞こえる〉〈会場のーが一瞬消える〉円地文 子の『女坂』に「花嫁を待ちうけている玄関には鳥の一斉に 飛立つようなーが起った」とある。意外なことが起こって 多くの人間が驚いたり不満に思ったりして少し騒ぎ出すと きに立てる音響で、「どよめき」より小さい音ながら長く続 く傾向がある。「木々のー」のように、人間以外に用いる比 喩的用法も見られる。ひどよめき さわやか【爽やか】さっぱりとして爽快な気分の意で、会話 にも文章にも使われる好感度の高い和語。〈な秋晴れ〉 〈な季節〉〈高原のな空気〉〈風がに吹き渡る〉の宮本 百合子の『伸子』に「に暢々した気分」とある。「な 感じの好青年」のように人間の印象に使う例もあり、また、 「弁舌」のように、明快でよどみない意に使う用法もあ る。Qすがすがしい爽快 ふわり【障り】病気の意で、挨拶や手紙などに用いられる古 風な和語。〈おーもなく〉乗患・疾病・病気・病魔・病・Q患い さわる【触る】「接触する」意の和語で、「ふれる」より会話 的。慣用表現以外は改まった硬い文章になじまない。〈相手 の体にー〉〈売り物に直接ー〉〈やたらにー・りまくる〉 〈ー・らぬ神に崇りなし〉〈当たらずー・らず〉〈寄るとーと〉 の島崎藤村の『嵐』に「ちょっとー・ったばかりじゃないか」 とある。「ふれる」に比べ具体的。接触部位は手のひら、特 <414> さんか に指の腹。多くは意志をもって一定時間以上接し、なでるような摩擦運動を伴う傾向がある。展示品に接触しないようにという意図の注意書きで、「ふれる」の場合は「手をふれないで下さい」というように「手を」と限定するのがふつうだが、「さわる」の場合は、動詞自体に接触部位が示唆されているため、単に「な」とするだけで「手で」という情報も含みとして伝わる。したがって、必要のない「手」という接触部位をわざわざ言語化して、「ふれる」に準じて「手を」・らないで下さい」として掲示すると、展示している彫像の手の部分という意味になりやすく、手以外なら接触を禁じていないようなニュアンスが出る危険もある。風呂敷包みを外から「・って」中の品物を当てればたいてい驚くが、「ふれた」だけで中身を当てれば相手はもっと驚く。これも語感の違いが関係している。また、「電車にふれた」となると大怪我の恐れもあるが、「・った」の場合はたいした怪我にならないような感じがするのも両語にそういう語感の違いがあるせいである。ふ接触・Q触れる さんか【参加】催しに出たり活動するグループに入ったりす る意で、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。へー 者〉へー賞〉〈組織にーする〉〈デモにーする〉〈小を呼びか ける〉へーを表明する〉り加わる・Q参入 さんかい【散会】会合が終わって人々が帰る意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈六時にーの予定〉〈このへ んでーとまいりましょう〉弔解散 さんがく【山岳獄】山になっている地形をさし、改まった 会話や文章に用いられるやや専門的な漢語。〈地帯〉 部〈信仰島崎藤村の『夜明け前』に「は屏風を立 て廻したように、その高い街道の位置から東の方に望まれ る」とある。個々の山より、そのような形状の地帯をさす例 が多い。山 ざんぎゃく【残虐】思いやりの心が皆無でむごたらしい意と して、やや改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢 語。〈非道〉(ーきわまりない行為)〈一の限りを尽くす) 小林多喜二の『蟹工船』に「当時のーに充ちた兵隊の生 活」とある。Q残酷・残忍・むごい・むごたらしい さんぎょう【産業】人間の生活に必要な物資を生産する営み をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈革命〉〈自動 車〉〈が盛んだ〉〈を奨励する〉商業・金融・通信・サ ービスなどまで含めた経済活動全体をさす場合もあり、そ の広義の用法では専門的な色彩が濃い。Q実業・生産業 の広義の用法では専門的な色 さんきょう【残響】音を発した音源の振動が終わった後、室 内の壁や天井に跳ね返って聞こえる音響をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈効果〉比喩的に使うと詩的に 響く例もある。刂エコー・こだま・Q反響・山彦 サングラスまぶしさを避け、強い日差しから眼を保護する ためのレンズに濃い色のついた眼鏡をさし、会話にも文章 にも使われる外来語。「姿」を掛けて海岸を歩く 「黒眼鏡」に比べ、ファッションの雰囲気が強い。色眼鏡 Q黒眼鏡 さんげ【散華】比喻的に華々しい戦死を意味する美称。井 伏鱒二の『兼行寺の池』に「八紘一字という国是のるとにー された英霊である。お上の召集で、はっきり云えば殺され <415> たのである」とある。戦時中を連想させる語。死ぬ さんけい【参詣】神社や寺院に詣ている意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈神社にーする〉〈境内はー人で賑 わう〉②拝む行為に重点のある「参拝」に比べ、そのために 鳥居や門をくぐるところからの全体の流れを連想させるた め、わざわざ訪れる感じが強い。ひお参り・Q参拝・詣でる 【参考】自分の考えをまとめたり確かめたりするた めに他の研究・資料・意見・方法などの助けを借りることを さし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の漢語。〈書〉〈文献〉《大変ーになる〉《御ーまでに》 の小島信夫の『アメリカン・スクール』に「このような設備 の中で教える教育というものが、僕たちに何のーになるも のですか」とある。単参照 ざんこう【残光】日が沈んだ直後に残る弱い光をさし、主に 文章に用いられる漢語。〈海面に映るわずかな—〉②太宰治 の『走れメロス』に「陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに 最後の一片のーも、消えようとした時」とある。Q残照・夕 映え・夕焼け ざんこう【残香】残っている匂いをさし、主に文章に用いる 漢語。〈酒宴の後のー〉開高健の『巨人と玩具』に「酒の 重いーのなかで目だけするとい光を浮かべていた」とある。 ひ移り香・Q残り香 ざんこく【残酷】容赦のないむごたらしい意で、会話でも文 章でも幅広く使われる漢語。〈な仕打ち〉へきわまりな い手口〉梶井基次郎は『愛撫』で「猫の耳というと、一度 「切符切り」でバチンとやって見度くて堪らなかった。これ ざんしょ はーな空想だろうか?」と、猫の耳の感触に関する感覚的 な発見を述べた。読者は衝撃を受けながら感覚的に納得す る。残虐・Q残忍・むこい・むこたらしい さんざい【散財】金銭を無駄に使う意で、会話にも文章にも 使われる古風な漢語。〈たいヘんなーだ〉(とんだーをおか けして申し訳ありません)のある程度大きな金額を不必要 なことに、という気持ちが強い。弔空費・無駄遣い・濫費・Q浪 費 さんさく【散策】「散歩」の意で主に文章の中に使われる少し 詩的な漢語。〈林の中を—する〉の「名文—」のように、肩 の凝らないエッセイ風の書き物などをさす抽象化した比喻 的用法もある。Q散歩・逍遥・そそろ歩き さんさくろ【散策路】「散歩道」の意で改まった文章に用いる 硬い感じの漢語表現。〈愛用の—〉〈森陰の—をたどる〉 Q散歩道・プロムナード・遊歩道 ふんじ【暫時】短い時間の意で、改まった会話や文章に用い られる古風で硬い漢語。〈ー待たれよ〉〈ーの猶予を願う〉 〈ー休息を取る〉ひQしばし・しばらく さんしゅつ【算出】計算して答えを出す意で、改まった会話 や文章に用いられる硬い漢語。〈支出総額を—する〉〈有効 面積を—する〉ひ勘定・Q計算 さんしゅつ【産出】物がとれたり物をつくりだしたりする意 で、改まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。金の ー高〈石油をーする〉生産 さんしょ【残暑】立秋を過ぎても残っている暑さをさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈ー見舞〉へーがきびしい <416> さんしょう 永井荷風の「雨瀟瀟」に「いつに変らぬーの西日に蜩の声 のみあわただしく夜になった」とある。暑中 さんしょう【参照】参考にするために照らし合わせる意で、 やや改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。 〈ー文献〉〈註をーせよ〉〈次ページの図をーのこと〉専参考 さんしょう【残照】日が沈んでから雲や山頂などに照り映え る形でわずかに残る夕日の光をさし、主に文章に用いられ る詩的な漢語。〈ーに染まる雲の峰〉〈ーの山をカメラに収 める〉の銀座はーの街である」のような比喩的な用法もあ る。専Q残光・夕映え・夕焼け ざんしん【斬新】趣向などが目立って新しい感じである意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「な企画」 「なデザイン」〈アイディアがーだ〉四小林秀雄の『私小 説論』に「天上を眺めず地上を監視するーな技法」とある。 ひ新しい・新た・Qハイカラ さんせい【賛成】他の意見や行動に同意する意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。 〈一多数〉への意を表する〉〈諸手を挙げてーする〉へ しかねる〉の「反対」と対立。夏目漱石の『坊っちゃん』に 「実に肯綮に中あった剴切な御考えで私は徹頭徹尾ー致 します」とある。合意・賛同・同意 さんせき【山積】未処理のものが山のように沢山たまる意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈机上に未決の書類 がーする〉〈仕事がーし、どれから手を付けたらいいか迷 う〉〈難問がーする〉②具体物より抽象的なものによく使わ れる。山積み さんそう山荘山に建てられた宿や別荘をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈軽井沢にーを構える〉の山小 屋より大きく高級なイメージがある。リコテージ・山房・パン ガロー・ヒュッテ・Q山小屋・ロッジ ざんそん【残存】残っている意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。〈—勢力〉〈エネルギーが—する〉刂余 る・Q残る サンダル足全体をおおわずに甲やかかとをひもやベルトな どでとめる形の履物をさし、会話にも文章にも使われる日 常の外来語。〈一履き〉〈一をつっかける〉の「つっかけ」と 違い、庭履きだけでなく女性の夏用の靴なども含む。きつっ かけ さんだん【算段】金銭などをやりくりして都合をつける意で、 会話にも文章にも使われる、やや古風な漢語。〈やりくり ー〉〈何とかーをつける〉Q工面・都合 さんちょう【山頂】山の頂の意で改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈一に立つ〉(一からの眺め)有島武郎の 『生れ出ずる悩み』に「硫黄ヶ嶽の(略)が、雲の産んだ鬼 子のように、空中に現われ出る」とある。頂・頂上・山嶺 さんてん【山嶺】「山頂」の意で主に文章に用いられる硬い漢 語。堀辰雄の『風立ちぬ』に「真っ白い鶏冠のような 」とある。頂山頂・頂上 さんどう【賛同】他人の意見に賛意を表する意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈ーを求める〉〈大方のーを 得る〉〈大いにーする〉Q賛成・同意 さんにゅう【参入】ある領域に新たに加わる意で、改まった <417> 会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈新規にーす る〉〈市場にーする〉加わる・Q参加 ざんにん【残忍】残酷なことを平気でする意で、やや改まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。〈な性格〉〈な犯行に及ぶ〉の大原富枝の『婉という女』に「このは(略)魂の底にひっそりと棲みつづけていた」とある。「残酷」や「残虐」が結果としての行為のむごさに重点があるのに対し、この語はそのようなむごい仕打ちをする人間の無慈悲な心に重点がある。残虐・Q残酷・むごい・むごたらしいざんねん【残念】期待に反し心残りな意で、会話でも文章でも広く普通に使われる日常漢語。〈一無念〉〈一至極〉〈一な結果〉〈返す返すもー〉小沼丹の『更紗の絵』に「折角軌道に乗りかけたところで追放の眼に遭った校長は、余程だったのだろう」とある。Q遺憾・心残り・未練・無念 さんば【産婆】妊婦の出産に立ち合って指導や手助けをする 女性をさし、昔の会話で普通に用いられていた漢語。「助産 婦」の旧称。〈ーを呼びにやる〉国家試験の必要な「助産 婦」(現在は助産師)に比べて職業名という意識は薄く、知識 より経験が重要視される感じがある。医者より職業として 低く見られていたほか、「産婆」の「婆」という漢字のイメ ージも悪く、この語は特に嫌われる。助産婦 さんぱい【参拝】神社や寺院でお参りする意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈寺院にーする〉〈初詣のー客でごっ た返す〉②竹西寛子の『兵隊宿』に、将校が「出発前に、ひ さし君を連れて、神社ーをしてきたいと思います」と、ひさ しの母親に申し出る場面があるが、「詣ぐでる」「参詣」に比 べそのうちの拝む行為を取り立てた語で、たまたま通り かかった神社や寺の前で手を合わせるような場合も含まれ る感じがある。お参り・Q参詣・詣でる・らいはい・れいはい さんぼう 「く」「散髪」(主に男性の)髪を切りそろえる意で、会話に も文章にも使われる日常の漢語。〈屋〉〈に行く〉 してさっぱりする〉の整えることより伸び過ぎた髪を切る ことに重点のあるこの語は、例えば、縁側あたりで親が子 供の頭をパリカンで刈っている昔の風景などにも使えそう だが、専門的な「理髪」という語はなどまない。東京では 「屋」より「床屋」のほうが一般的。なお、この語は以前、 髪のもとどりを結わずに散らしたばらばらの髪をさした。 ひ整髪・調髪・Q理髪 サンプル標本・見本・一例の意で会話やさほど硬くない文章 に使われる外来語。〈一調査〉へーを供する〉へーを集める〉 へーとして示す〉へーを進呈する〉へーを取り寄せる〉へ一つ のーにすぎない〉山口瞳の『江分利満氏の優雅な生活』に 「いわば「老醜」のーみたいな人間」とある。ヲ一例・標本・Q 見本・例 さんぽ【散歩】特定の用事もなく気晴らしや健康などのため にあてもなく歩く意で、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常の漢語。ぶらりとに出る〉〈食後の腹 ごなしにーする〉へーがてら古本屋を回る〉頬義語中で最 も一般的でよく使う。国木田独歩の『武蔵野』に「かの友と 相携えて近郊をーした」とある。Q散策・逍遥・そぞろ歩き さんぼう【山房】山にある住宅や別荘をさし、主として文章 中に用いられる古風な漢語。〈ーを訪ねる〉「漱石ー」の <418> さんぼみち ように文人の書斎をさすこともあり、芥川龍之介の『玄鶴 山房』にも「玄鶴」の額や塀越しに見える庭木などはど の家よりも数寄を凝らしていた」とある。コテージ・山荘・ バンガロー・ヒュッテ・Q山小屋・ロッジ さんぼみち【散歩道】楽しみながらぶらぶら歩く道の意で、 くだけた会話でも文章でも幅広く使われる日常語。〈川沿い のー〉〈ーにもってこいだ〉の「散歩路」とも書く。小沼丹 の「散歩路の犬』に「昔の森や雑木林がその儘残されている 所も多いから、ーとしては悪くない」とある。Q散策路・ブ ロムナード・遊歩道 さんまん【散漫】表現などがまとまらず要点のとらえにくい さまをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈文章がな 印象を与える〉四「冗長」と違い、まとまらない点が中心 で、必ずしも長くなるとは限らない。話や文章だけでなく、 「意識がーになって集中できない」のように、気が散る意に 使う例も多い。児長・Q冗漫・長たらしい・長ったらしい さんやく【散薬】「粉薬」をさし、主に文章中に用いる古風な 感じの専門的な漢語。へーをパラフィン紙で包む)粉薬 さんやくそろいぶみ【三役揃い踏み】組織で有力な立場にあ る三者が一堂に会することをさし、会話でも文章でも用い られる比喻的表現。〈名誉会長・会長・現社長が並び、さなが らーといったところだ》大相撲の千秋楽にその日最後 の三番で対戦する横綱や大関などの上位各三力士が東西に 分かれてそろって四股にを踏む恒例の行事。相撲に限らず、 お偉方がそろって顔を見せるような場合にも用いるが、ま だ比喻的な感じが抜け切れない。 さんようすうじ【算用数字】計算に用いる数字の意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈縦書きには通常ーでなく漢 数字を使う〉の筆算にアラビア数字を用いたところから、 現代ではアラビア数字の別称となっている。リアラビア数字 さんらん【散乱】不規則に細かく分かれて広がる意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ガラスの破片が一 する〉〈空気中の微粒子が光を—させる〉の吉本ばななの 『哀しい予感』に「机の上もまるでパッグの中身をぶちまけ たかのように小物がーしていた」とある。「分散」や「散ら ばる」以上に乱雑な状態を連想させやすい。Q散らばる・散 り乱れる・分散 さんろく【山麓】山の麓との意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。〈富士〉〈ーに点在する村〉の「山頂」 と対立。専据・裾野・Qふもと・山すそ <419> じ【字】ことばや音を記す記号の意で、くだけた会話から軽 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。「がき れいだ《難しいーを書く》「文字」以上に日常会話でよ く使う。柳家金語楼の落語『愉快な組長さん』に「ー」ても のは、この黒いところを読むんですか、それとも、黒いとこ ろの間を読むんですか」と尋ねる無筆の男が登場する。 Qもじ・もんじ しあい【試(仕合】武術やスポーツなどで強さを鏡って勝ち 負けを争う試みをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる漢語。〈練習—〉〈—開始〉〈—が長引く〉〈— 勘が鈍る〉小沼丹の『マロニエの葉』に「この正ちゃん帽 の爺さんは—が始まっても何も喋らない」とある。ヲゲーム しあがり【仕上がり】出来上がる意やその出来具合をさし、 会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。「が 早い〈綺麗な」〈—が楽しみだ〉ヲ仕上げ しあげ【仕上げ】仕事の最終段階、また、完成したものの出 来栄えをさし、会話やさほど硬くない文章に使われる日常 の和語。へに入る〉へーを急ぐ〉丁寧なー〉へーが雑だ 綱野菊の『返事のいらぬ手紙』に「こんなみじめな死に方 をされて私の「母」に対する思い出の不幸さは正に申し分 ないーをされた」とある。ひ仕上がり しあわせ【幸せ/仕合わせ】「幸福」とほぼ同義で、会話やさ しいく しあん【試案】試みに作ってみた仮の案の意で、やや改まった会話や文章に使われる漢語。〈ーを用意する〉へまだーの段階〈ーの域を出ない〉ひ私案 ほど硬くない文章に使われる日常の基本的な和語。〈ー者〉 〈ーを祈る〉、〈ーが舞い込む〉、〈ーな暮らし〉、〈ーをかみしめ る〉、〈どうぞおーに〉、太宰治の『斜陽』に「お母さまと過 ごしたーの日の、あの事この事が、絵のように浮んで来て」 とある。「ーの薄い生涯」のように、特に幸運の意で使うこ ともあり、状態自体をさす「幸福」と比べ、この語は運のよ さを感謝する気持ちが底流にある。専幸福 しあん【私案】自分の個人的な案の意で、改まった会話や文 章で用いられる、へりくだった感じの漢語。「を述べる」 刂試案 しい【恣意】その時々の思いつきの意で、主に硬い文章に用 いられる漢語。〈的な解釈〉〈判断に—が入り込む〉②自 由な感じの「任意」「随意」に比べ、自分の勝手といったマ イナスのイメージが感じられる。马随意・Q任意 しいか【詩歌】近代詩・短歌・俳句の総称として会話にも文章 にも使われるいくぶん専門的な漢語。〈近代ー〉へーをよく する》散文詩は「詩歌」に含まれるが「韻文」には入らな い。夏目漱石の『草枕』に「東洋のーはそこ(世間)を解脱し たのがある」とある。「ー管弦」のように漢詩と和歌を意味 する用法は古めかしい。観文 しいく【飼育】飼って育てる意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈ー係〉学校などで観察目的に行うほ かは、「豚をーする」「牛をーする」「鶏をーする」のよう <420> シーズン に、食肉用として売る、乳を搾る、卵を生産するなど、収入 を得るという目的ののもとに職業的に行う場合を連想させや すい。飼う シーズンその物事の盛んな季節をさし、会話にも文章にも 使われる外来語。スポーツなどに多用される。〈旅行ー〉 〈スキー〉〈ーはずれ〉〈ーを迎える〉〈ーが過ぎる〉 季節・四季・時季・時候・時節 シーツ「敷布」の意で会話にも文章にも使われる日常の外来 語。〈ーを洗う〉〈ーを敷く〉〈ーがしわになる〉現在は 「敷布」よりこの語が一般的に使われる。堀辰雄の『聖家 族』に「寝台の上で、ーのように青ざめた顔をしながら」と いう比喻表現の例がある。敷布 しいて【強いて】無理にの意で、会話にも文章にも使われる 和語。〈ー言うなら豆腐に似ている〉今やることはな い勇敢えて・故意・わざと・Qわざわざ しいる【強いる】相手が望まないことをするように強く迫る 意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈酒を—〉 〈寄付を—〉〈妥協を—〉福原麟太郎の『交友について』に 「宽容をー・いないでほしい。私の望む個人主義の友情も要 諦はそこにある」とある。Q強要 しいれね【仕入れ値】商品を仕入れたときの値段の意で、会 話やさほど改まらない文章に使われる和語。〈ーで譲る〉 へーが安いのでこの値段で売れる〉と原価・コスト・Q元値 じいん【寺院】「寺」に近い意味で改まった文章にふさわしい 漢語。〈に詣でる〉〈回教の大—〉小沼丹の『椋鳥日記』 に「議事堂やウエストミンスターの塔に半旗が上っている のを見た」とある。「寺」と「院」との総称だから、大きく 立派な感じで、「粗末な」「貧しい」という表現はぴっ たり来ない。また、「ノートルダム」など仏教以外でも違 和感なく使われる。専寺 シエーパー「電気かみそり」をさす斬新な感じの外来語。 〈各種のーを取りそろえる〉電気かみそり・Qひげそり シエスチャー「身振り」の意で、主として会話に使われる外 来語。へーだけで伝える》近年は「ゼスチュア」より一般 的。伊藤整の『破綻』に「その長い腕が不器用にあるーで空 に振りまわされると、講義は終わった」とあり、「ジェスチ ュア」の表記で出る。ひしぐさ・ゼスチュア・手真似・Q身振り シフ西洋料理店の料理長をさし、比較的新しく会話や文 章で使われるようになった、フランス語からの外来語。〈高 級レストランのーを務める〉呂板場・板前・Qコック・調理師 しえん【支援】援助を与える意で、改まった会話や文章に用 いられる、公式な感じの漢語。〈ー団体〉〈復興ー〉〈ーの手 を差し伸べる〉の「子育てー」などと近年、盛んに使う。 Q応援・加勢・支える・声援 ジェントルマン「紳士」の意で、会話にも文章にもまれに使 われる外来語。〈一風の人物〉(あの男はああ見えてなかな かのーだ)②「レディー」と対立。現代では態度をさす例が 多く、「洋行帰りの」というふうに人の姿をさす用法は時 代がかっていささか気障に響く。貴公子・Q紳士 しおからい【塩辛い】塩味が強いと感じる味覚をさし、会話 でも文章でもよく使われる和語。〈漬物〉(日本酒の肴は 物がよく合う内田百閒の「かしわ鍋」に「中身のバタ <421> は真っ黄色で、そうしてひどくー」とある。「辛い」のうち、 塩味の場合を区別して言うときに用いる語。ふ辛い・Qしょっ ばい しおどき【潮時】物事をするのにちょうどよい時の意で、会 話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈ーを待つ〉今 がーだ〉小沼丹の『椋鳥日記』に、乗り換えのためにプラ ットフォームに出たら寒く、そこの軽食堂で何となく「蕎麦 を食おう」と思った後そこはイギリスだと気づき、「そろそ ろ引揚げるーを考えないと不可ない」と思い始める場面が 出てくる。刂頃合い・Q時宜 しおみず【塩水】塩分を含む水や食塩を溶かした水をさし、 会話にも文章にも使われる日常の和語。〈ーに戻す〉②「真 水」と対立。塩水・鹹水 しおれる【萎れる】①草花などが水分が乏しく生気を失って ぐったりする意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。 〈花がー〉「しなびる」ほど干からびた感じはなく、水を やれば少しは元に戻るような感じを残す。ひしなびる・しぼ む②気落ちして元気を失う意で、主として文章中に用い られる古風な和語。〈失恋してー〉〈悄然せいとうちー・れた 姿〉正宗白鳥の『何処へ』に「心細くなってー・れて、遂 にぶっ倒れて、睡る気ではなくても自然に眠ってしまう」と あり、谷崎潤一郎の『細雪』には「叱られると俄然気の毒な くらいー・れてしまう」とある。児い屈する・悄然・しょげ返 る・Qしょげる・しょんぼり・滅入る しかそれだけに限られるの意味合いで、会話でも文章でも 幅広く使われ、限定の働きをする副助詞。〈移動手段はバス しがい 「ない」(この店には安物「ない)〈食料はもうこれ」な い〈米ー食べない〉(京都にーない珍しい菓子)「向こ うがああ大勢では、逃げるーない」「こうなったら、もう、 やるーない」のように動詞に後接させる用法が口頭表現を 中心に広まっているが、今でも違和感を覚える人があり、そ の場合は俗語的なニュアンスが生じる。そういう語感を避 けるために、「ない」を「ほかはない」という言いまわし に置き換えると、今度は気取ってことさら古めかしい表現 を使っているという印象を与えやすく、「以外に手はない」 などとまわりくどい表現に切り替える試みも見られる。 ほかはない しかい【視界】見通しの利く範囲の意で、改まった会話や文 章に使われる、やや専門的な漢語。〈良好〉(霧でーが利 かない〉(ーが開ける〉(ーをさえぎる〉(霧が出てーが悪 い)夏目漱石の『草枕』に「わがーに横わる、一定の景 物」とある。観野 しかい【歯科医】「歯医者」の意で、改まった会話や文章に用 いられる専門的な漢語。〈ーを営む〉への免許を取得す る正式には歯科医師。働医者 しがい【死骸】「死体」をさし、くだけた会話から硬い文章ま で広く使える漢語。〈動物の—〉へ—を片付ける〉林芙美 子の『浮雲』に「棺へおさめた時の、煎餅のように薄べった くなっていた邦子の—」とある。動物にも使う。「死体」に 比べ、死後ある程度時間が経過した感じで、「死人」や「死 者」のような人間としての存在から遠ざかり、物的存在に 移行した雰囲気がある。込遺骸・遺体・かばね・しかばね・死屍・死 <422> じがい 者・Q死体・じにん・しびと・亡骸・むくろ じがい【自害】刀剣などによって自ら命を絶つ意で、会話に も文章にも使われる古めかしい漢語。〈覚悟の上の—〉へ— して果てる〉昔の女が自分で喉を切るような連想がある。 自決・自殺・自尽・Q自刃 しかえし【仕返し】やられた相手に逆にやり返すことをさし、 くだけた会話から改まらない文章まで使われる日常の和語。 へーが怖い〉へきっとーしてやる〉②他の類語よりも軽い感 じで、いたずら程度でも使えそうな雰囲気がある。ひ復讐 は・Q返報・報復 しかく【四角】「四角形」「四边形」の会話的な漢語表現。 な顔》児矩形・四四角形・四边形・長方形・長四角 しかく【視覚】目で対象を知覚するときに働く感覚系統をさ し、やや改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢 語。〈ー障害〉〈ーに訴える〉②徳永直の『太陽のない街』に 「崖から突き落とされた怪我人のように、彼女はまだーが定 まらないで眩暈を感じていた」とある。ひ視力 しかけ【仕掛け】巧みにこしらえた装置や仕組みをさし、会 話や硬くない文章に使われる日常の和語。〈花火〉ぜん まいーで動く〉(ちょっとしたーがしてある)〈たねもーも ない〉の小沼丹の『外来者』に「どう云うーになっているの か知らないが、三、四人の外国人に学生が何人か附添った組 が幾つも出来て、テエブルに坐ってお喋りする」とあるよう に、抽象的な意味合いでも使う。ひからくり・Q装置 しかし「然し/併し」「前に述べたこととは逆に(違って)」と いう関係を表し、やや改まった会話や硬い文章に用いられ る和語。「アイデアは素晴らしい。」問題は、それをいか なる手段で実現するかである〉〈業務内容はほぼ等しい。 ー、待遇に若干の開きが見られる〉の小林秀雄の『ゴッホの 手紙』に「僕等は、必ずしも言う事が出来ない、だ、にも 係らずだ」とある。評論や学術論文などにふさわしい文体 的レベルの、力の入った感じの言い方。が・Qだが・でも じがた【地形】土地の形の意で、会話にも文章にも使われる 表現。〈ーがよく住宅に最適だ〉Qじぎょう・ちけい しがたい【為難い】心理的な抵抗などがあり着手に踏み切れ ない意で、改まった会話や文章に用いられる古風で硬い表 現。〈如何ともー〉ヘこの情況ではー〉ヲしづらい・Qしにくい しかたがない【仕方がない】ほかに方法がないの意で会話や それほど改まらない文章中に用いられる表現。ヘこんな出 来では、笑われてもー〉ヘーから、諦めようヲしようがない Q仕様がない・止むを得ない しかつ【自活】他の保護や援助を受けずに自分の力で生活す る意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈親から離れーの 道を選ぶ〉Q自立・独立・独り立ち しかっけい【四角形】会話的な「四角」の正式名称。菱形 の一つ)角が四つある点に注目した命名。矩形四 角・Q四边形・長方形・長四角 じかに【直に】「直接」の意で、主として会話に使われる日常 の表現。〈先方にー交渉する〉〈本人にー頼み込む〉〈湯呑 みをテーブルにー置く〉②人や物という具体的な関係で多 く用い、「直接関係する」「直接関与する」「直接の原因」の ように関連が抽象化すると使いにくくなる傾向が見られる。 <423> 直接 しかばね【屍】「死体」をさす和語の文語的表現。へーに鞭打 つ〈生けるー〉の大岡昇平の『花影』に「葉子を抱くと、 ーのような感じがした」とある。Q遺骸・遺体・かばね・死骸・ 死屍・死者・死体・しにん・しびと・亡骸・むくろ しがみつく【しがみ付く】抱きついて離れないようにする、 そのものごとから離れまいと取り付く意で、会話や改まら ない文章で多く使われる日常生活の和語。「すがり付く」よ り少し会話的。〈子供が母親にー・いて離れない〉〈振り落 とされないようにしっかりと背中にー〉〈社長の椅子にー〉 〈過去の栄光にー〉②伊藤整の『馬喰の果て』に「腰のあた りへ蟹のような宙ぶらりんな恰好でー・いた」とある。頼り になる存在に対する「すがりつく」と違って、離れたくない 存在に対して用いられる。Qすがり付く・抱きつく しかめつら【顰め面】不快感や苦痛で顔をしかめる意で、会 話や改まらない文章に使われる和語。へいかにも痛そうに ーをする》「しかめづら」ともいう。阿部知二の『冬の 宿』に「しかめっ面をつくって首を垂れている」とあるよう に「しかめっつら」とすると強調され、よりくだけた感じに なる。広渋面 しかる【叱る】きつい調子で注意する意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使える日常の基本的な和語。〈親が子 供をー〉〈先生が生徒をー〉〈上司にこっびどくー・られる〉 〒幸田文の『流れる』に「奥の四畳半で米子が不二子をー尖 り声がした」とある。近年、特にくだけた会話などで、代わ りに「怒る」を使うケースが増えているが、「怒る」が自分 じかん の感情をぶつけることに主眼があるのに対して、この「叱 る」には、相手のためを思って教育的配慮からきつく注意す る、というニュアンスがある。このような語感の差が働い て、両者の用法にさまざまな違いが生じる。「怒りっぽい 人」「怒って部屋を飛び出す」「かんかんになって怒る」「顔 を真っ赤にして怒る」「上司を怒らせてしまう」といった表 現で「叱る」を用いることはできず、「ちょっとしたことで すぐ怒る」という場合も、「すぐ」とすれば不自然にな る。逆に、「・り飛ばす」「こっびどく」といった表現で は「怒る」を用いることはできず、「・りつける」「きつく 」のような表現でも「怒る」を使うと不自然に響く。ま た、「周囲から褒められすぎてかえって怒り出す」というこ とは考えられるが、この場合も「叱り出す」ことはありえな い。いかる・Qおこる しがん【志願】自分の意志で志すことをさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈ー者〉〈政治家をーする〉〈自らーす る者など一人もない〉「志望」に比べ、手続きをしてうま く行けばすぐに実現しそうな雰囲気があり、また、短い期 間だけの場合も含まれる感じがある。森鷗外の『青年』に 「詩人になりたい、小説が書いてみたいと云うー」とあるよ うに、心の中の希望をさすのは古風な感じがある。専志望 じかん【時間】時の流れの中の一部分をさす漢語で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な日常語。 ただし、時刻を意味する用法の場合は会話的。〈ー給〉〈空 きー〉〈所要ー〉〈理科のー〉〈ーの観念〉〈ーが足りない〉 〈もはやーの問題だ〉〈吉行淳之介の『闇のなかの祝祭』に <424> じかんひょう 「ーが滑べるように過ぎて行った」とある。専門的な用法としては、時のある一点から他の一点までの幅の長さを意味するが、古くは、時の一点をさす用法もあり、「汽車の「出発」などとしても使われた。現在では正式の掲示などで「列車の時刻表」「出発時刻」と改められているが、日常会話では「発車の「になる」「もうそろそろ始まる」だ」「がとっくに過ぎている」のような表現がむしろふつうで、そこに「時刻」を用いると少し取り澄ました感じになり、対話が他人行儀に感じられる。日常会話で「になったら知らせて」と言うときに厳密に「時刻」と言う人はめったにいないし、朝に「時刻ですよ」と言って子供を起こす母親もいまだ見かけない。Q時刻・時 じかんひよう【時間表】「時刻表」の古い言い方。〈古いを眺めると、若いころを思い出す〉の小津安二郎の映画『東京物語』(一九五三年)のシナリオでは、冒頭シーンに「とみはいそいそとして荷物を詰め、周吉は汽車のーを調べている」という説明がある。蒸気機関車の衰退に伴って「汽車のー」は「列車のー」になり、この語は「時刻表」へと移行した。しき【式】一定の形式で行われる改まった行事をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈卒業ー〉〈結婚ー〉〈一次第〉〈ーを挙げる〉規模は大小さまざまで、特に結婚式をさす例も多い。夏目漱石の『坊っちゃん』に「祝勝のーは頗る簡単なものであった」とある。儀式・Q式典 しき【四季】春夏秋冬の四つの季節の総称として、やや改ま った会話や文章に用いられる、いくぶん美的な漢語。「咲 き〉へ折々の花〉への移り変わり〉〈日本のー〉へを通 じて)Q季節・シーズン・時季・時候・時節 しき【死期】死ぬ時期をさし、主として文章に用いる漢語。 へーを早める〉へーをさとる〉へーが迫る〉へーを迎える〉 川端康成は『山の音』の冒頭近くで「ふと信吾に山の音が聞 えた」と書き、「音がやんだ後で、信吾ははじめて恐怖にお そわれた。ーを告知されたのでないかと寒けがした」と展 開する。Q天命・臨終 じき【時期】事を行う時の意で、会話でも文章でも一般によく使われる漢語。〈一尚早〉〈一が悪い〉〈一が過ぎる〉〈入試で忙しいーを迎える〉時機・時季 じき【時季】季節・シーズンの意で主に文章中に用いられる硬い感じの漢語。〈外れ〉〈桜の」を迎える〉Q時期・時機じき【時機】タイミングの意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈到来〉〈を見定める〉〈を失する〉〈をとらえ大好企画〉夏目漱石の『こころ』に「適当のーが来なくっちゃ話さないんだから」とある。時期・Q時季じき【磁器】陶土や石粉などを配合して形を作り釉薬をかけて高温で焼いた器をさし、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈の大皿〉〈製の置物〉白色半透明で硬く吸水性がない。有田焼や九谷焼など。電気絶縁物としても使用。かわらけ・瀬戸物・Q陶器・陶磁器・土器・焼き物 しぎ【時宜】物事を始めるきっかけとして適当だの意で、改 まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。「に合 う」(「にかなう」)「を得る」)頃合い・Q潮時 しきかん【指揮官】集団を統率し指図を与える立場の人をさ <425> し、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へーの命令 に服従する)へーの指示に従う)回職務の名称である「監 督」について、その性格を説明した感じの語。豊監督・指導 者・リーダー しきけん【識見】ものごとに正しい判断を下す学識と見解を さし、主として硬い文章に用いられる漢語。〈高いーをそな える〉の芥川龍之介の『侏儒の言葉』に「ーを論ずれば必ず しも政治家に劣るものではない」とある。見識 しきさい【色彩】色そのものや配色による色合いをさし、い くぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー感覚〉 〈ー豊か〉〈鮮やかなー〉〈ーを帯びる〉梶井基次郎の『樽 様』に「樽様のーは(略)ガチャガチャした色の諧調をひっそ りと紡錘形の身体の中へ吸収してしまって、カーンと冴え かえっていた」とある。Q色・色合い・カラー・色調 しきじょう【式場】儀式を行う場所の意で、いくぶん改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈結婚—〉へーを予約す る「会場」の一部。ゝ会場 しきたり仕(為)来り】以前からの習わしが形式的に固定し たものをさして、会話や硬くない文章に使われる、いくぶ ん古風な感じの和語。〈わが家の—〉〈長い間の—が今に残 る〉〈従来の—に従う〉Q慣習・慣例・習慣・習わし・風習 しきちょう【色調】色の濃淡や強弱などの調子をさし、やや 改まった会話や文章に用いられる、いくらか専門的な感じ の漢語。〈やわらかい—〉落ち着いた—〉の氷室冴子の 『冴子の東京物語』に「すべてが沈んだ—の中で、真っ白な 服装の私は人目を惹いたらしかった」とある。色・Q色合 しきょ い・カラー・色彩 しきてん【式典】団体などが行う大がかりで豪華な儀式をさ し、改まった会話や文章に用いられる正式な雰囲気の漢語。 〈厳かな記念—〉〈ーを举行する〉〈ーに臨む〉専儀式・Q式 じきに【直に】あまり時間を経ないうちにの意で、主として 会話に使われる日常の表現。〈治る〉へーよくなる〉へー 終わる〉の「じき」という判断は主観的・相対的だからその 時間にはかなりの幅があり、夏目漱石の「坊っちゃん」では 「行く事は行くがじき帰る」のあとに「来年の夏休には屹度 帰る」と続く。ひそのうち・程なく・Q間も無く・やがて じきひつ【直筆】地位の高い人や著名人などが自分で直接記 す意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈社長—の手紙〉 〈文豪—の原稿〉の「自筆」より貴重な感じが強く、一般の 人に使うと大仰に響く。自筆 しきふ【敷布】敷き布団の汚れ防止のためそれを覆うように 敷く布をさし、会話にむ文章にも使われる古風な表現。〈布 団にーを掛ける〉へーを丁寧に畳む》ヲシーツ しきべつ【識別】直感的区別の意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い漢語。〈善悪の—〉〈雌雄を—する〉〈暗過 ぎて—が難しい〉、鑑識・鑑定・鑑別・区別・Q判別・弁別・見分け しきゅう【至急】きわめて急ぐ意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈一届ける〉〈一連絡を取る〉〈一の 手紙〉語義としては「大急ぎ」に近いが、別に「大至急 という語があるだけに、緊急性は若干弱く感じられる。 Q大急ぎ・大至急 しきよ【死去】「死亡」の意で改まった文章に用いる漢語。 <426> しきょう 〈恩師—の報に接する〉〈会長の—に伴う後任の件〉小沼 丹の『木山捷平』に「四十三年五月東京女子医大付属消化器 センターに入院、八月—した」とある。現代ではかなり客 観的で直接的な表現であるが、「亡くなる」を「去る」とと らえた点で「死亡」よりはいくらか感情の入った表現という 印象を与える。勇敢え無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切 れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お 隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・ Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召さ れる・亡くなる・儚なくなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没す る・仏になる・身罷がふる・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・ 臨死・臨終 しきよう【司教】カトリックで大司教の下位で司祭の上位に 位置する聖職をさし、会話にも文章にも使われる専門的な 漢語。へーという大任を仰せつかる)②司教区全体の管理に 当たる。ひQ司祭・神父・牧師 じきよう【自供】犯人・被疑者・被告などが取り調べに際して 犯罪行為を自分から打ち明ける意で、会話にも文章にも使 われる専門漢語。〈犯行を—する〉へに基づいて検証に入 る〉は供述・Q自白・白状 じぎょう【地形】「じがた」の意で、会話にも文章にも使われ る古風で専門的な漢語。〈ーに難がある〉地固めや基礎工 事の意でも使う。ひじがた・Qちけい じぎょう【事業】社会的で大規模な仕事、営利目的で計画的 に行う経済活動をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈公共ー〉〈慈善ー〉〈ーを興す〉〈ーに手を出す〉〈ーに失 敗する ②芥川龍之介の『歯車』に「なぜ僕の父のーは失敗 したか?」とある。ひQ仕事・実業 しきよく【色欲】「情欲」に近い意味で、主として文章に用いられる古めかしい漢語。〈食欲とーの両方だ〉の意味の共通部分をもつ「愛欲」「情欲」より少し性的なイメージが濃く、「性欲」「淫欲」「肉欲」「獣欲」に比べると厭らしさが比較的少ない。「欲」と結びつくもう一つの漢字のイメージの差によるものと思われる。夢欲・淫欲・獣欲・Q情欲・性欲・肉欲 しきりに【頻りに】「頻繁に」に近い意味で、会話やさほど硬 くない文章に使われる和語。「犬が吠える」「汗を拭 く」「催促する」「首をひねる」「だけた会話では 「しきりと」という俗っぽい語形も現れ、文章中には「悔や おことしきり」といった古風な表現も見られるが、いずれも 意味は変わらない。また、「行きたがる」「母親を恋し がる」のように、程度が甚だしい意でも使う。ひひっきりな しに・Q頻繁 しきん【資金】事業や経済活動のもとになる金をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈運転—〉〈集め〉〈繰り が苦しい〉〈ーを用意する〉〈ーを提供する〉〈ーが底をつ く〉〈公的ーを投入する〉永井荷風の『澀東綺譚』に「本 堂建立のー寄附者の氏名」とある。単資本・Qもとで・予算 しぐさ【仕草(種)】体の動きや姿勢の意で、会話にも文章に も使われる、いくぶん古風な感じのやわらかい和語表現。 〈なにげない〉〈かわいらしい〉〈奇妙な〉〈舞台上の ー〉の有吉佐和子の『華岡青洲の妻』に「舞のようにーが美 しいのだ」とある。「ちょっとしたーを真似なる」など、小さ <427> な動きながらどこか特徴のある様子に用いられる傾向が見られる。ひジェスチャー・所作・ゼスチュア・身振り しくじる失敗する意で、くだけた会話に使われる俗っぽい 和語。〈細工を—〉〈勤め先を—〉武者小路実篤の『友情』 に「仲田が—と皆嬉しそうに笑った」とある。ひエラー・失 策・失態・Q失敗・とちる・抜かる・ぽか・ミス・ミスる・やり損なう シグナル信号や信号機をさし、会話にも文章にも使われる 外来語。〈ーを送る〉〈ーが出る〉永井龍男の『絵本』に 「ーの色は次第に濃くなる」とある。ひQ合図・サイン②・信号 しくむ【仕組む】よからぬ計画に合わせて手筈を整える意 で、会話にも文章にも使われる和語。二人がいがみ合うよ うにー〉〈巧みにー・まれた罠〉小林多喜二の『蟹工船』 に「仕事の上で競争させるようにー・んだ」とある。ひ企て る・Qたくらむ・謀る・もくろむ しぐれ【時雨】晩秋から初冬にかけて断続的に降る細かい雨 をさし、主に文章に用いられるやや詩的な和語。〈北山—〉 へーに濡れる〉丸谷才一の『横しぐれ』に「横なぐりの雨 と言うか、横なぐりのーと言うか。そのーを見てわたしが 横ーだとつぶやいたら、坊主がえらく感心して」とある。 暗い冬へと向かう心細い季節のせいもあり、このしっとり とした文学的な語には、静かでどこか物淋しい雰囲気があ る。ひ霧雨・小雨・こぬか雨・Q通り雨・ぬか雨 しけ【時化】風雨が激しく海が荒れる意で、会話にも文章に も使われる、いくぶん古風な感じの和語。〈大ーにあう〉 〈ーで魚が高い〉Q風・おおかぜ・強風・颶風・・疾風・陣風・大風 台風・突風・はやて・暴風・暴風雨・烈風 しけん じけい【字形】書いたり印刷したりして誌上に実現する文字 の幾何学的な図形をさし、学術的な会話や文章に用いられ る専門的な漢語。〈活字の「比」は実際に書く場合とーが違 う例えば、漢字の「天」を書く場合、人によって右肩上 がりになったり下の開きが違ったり二本の横棒の上が長か ったり短かったりする。「夫」に見えない範囲での字形の非 本質的な細かい違いを捨象し、それぞれの書き手が頭に描 く漢字を同じ字種と認定する。Q字体・書体 しげき【刺激】感覚器官や精神に働きかけて反応・変化・興奮 などを引き出す意で、会話にも文章にも使われる漢語。へー 臭〉(ーが強い)〈皮膚をーする〉(ーを与える)〈いいーに なる〉(ー的な発言)志賀直哉の『暗夜行路』に「なるべ く感情をーせんように」とある。「反応」と対立。込影響・Q 逆撫で じけつ【自決】組織や個人が主義主張を掲げ強い決意のもと に自分の命を絶つ意で、改まった会話や文章に用いられる 硬い漢語。〈集団—〉〈責任を痛感し—する〉Q自害・自殺・ 自尽・自刃 しける【湿気る】「湿る」意で会話や軽い文章に使われる、や や俗っぽい和語。〈海苔がー〉〈畳がー〉の「湿気」を活用さ せた語という。ひしっける・Q湿る しけん【試験】人の知識や能力や適性などを調べるために問 題を課して答えさせる試みをさして、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈入学—〉〈筆記 ー〉〈場〉〈日〉〈に臨む〉〈に受かる〉〈面接ーに 落ちる〉の「考查」と違って実技なども入る。「考查」ほど <428> しげん 格式ばっていないが、「テスト」より正式で本格的な感じが ある。「飛行」「採用」「的に」のように、実際に験 してみる意にも使う。ひ考查・Qテスト しげん【至言】真理や真実などを的確に言い表したことばを さし、主に文章中に用いられる硬い漢語。〈けだしーと言う べきであろう〉のサトウハチローの『浅草悲歌』に「恋を している者同志にとって、沈黙の時ほど擽ったくも楽しい ものはない」とあるのはその一例か。乃名言・名文句 しげん【資源】生産活動のもとになる水産物・森林・鉱物など の自然物をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈地下 ー〉へーに恵まれる〉〈天然ーが豊富だ〉②人手が加わると 「物資」に変わる。貝物資 じけん【事件】非日常的な重大な出来事、特に犯罪や訴訟に かかわるものをさし、会話にも文章にも広く使われる漢語。 〈放火ー〉〈刑事ー〉〈一の鍵を握る〉〈一が明るみに出る〉 〈一が無事に解決する〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「今 回のパッター及び吶喊ーは吾々心ある職員をして、ひそか に吾校将来の前途に危惧の念を抱かしむるに足る珍事」と ある。「ーをもみ消す」のように表沙汰にならない場合もあ るが、日常のありふれた出来事に用いると大仰過ぎて違和 感がある。井上ひさしの長編『吉里吉里人』は「この、奇妙 な(略)ストレスノイローゼの原因になったこのー」という三 百字を超える長大な一文で始まる。ひ出来事・やま しご【死後】その人間が死亡した後の意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈硬直〉〈数日経過する〉〈に高い 評価を得る〉の「没後」より露骨で感情が入らず客観的。 「一の世界」のような想像上の事柄にも使う。「生前」と対 立。没後 じこ【自己】自分自身の意で、やや改まった会話や文章に用 いられる、やや硬い感じの漢語。〈ー満足〉〈ー責任〉〈ー中 心〉〈ー管理〉〈ー顕示欲〉〈ー暗示にかかる〉〈ー主張が強 い〉〈ーを犠牲にする〉四「自分」と違い、肉体をささず抽 象的な存在を問題にする場合に使う。「自分」に比べ、考え る対象として内面を強く意識した表現。おのれ・自身・Q自 分・みずから じこ【事故】思いがけずに起こった悪い出来事をさし、会話 にも文章にも使われる日常の漢語。〈交通—〉〈—現場〉 ヘーを起こす》大岡昇平の『野火』に「弾丸が彼女の胸の 致命的な部分に当ったのも、偶然であった。私は殆んどね らわなかった。これはーであった。しかしなら何故私は こんなに悲しいのか」とある。Q事件・出来事 じご【事後】事の起こった後の意で、改まった会話や文章に 用いられる公式の雰囲気のある漢語。〈ー承諾〉〈ー処理〉 〈ー報告〉ひ爾後 じご【爾後】その後の意で、改まった文章に用いられる硬い 漢語。への消息は杳として知れない〉へ一切の関係を 絶つ)事後 しこう【思考】考える行為や考えた内容をさして、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈十分なーを重ねる〉〈力 を試される〉〈ーを簡潔に表現する〉の清岡卓行の朝の悲 しみ』に「遠い昔に捨てたーの木乃伊のようなもの」とあ る。夢意見・考え・見解・考慮・Q思索・思想・思慮・認識 <429> しこう【施行】政策などを実行したり法令や規則を発足させ たりする意で、公的な会話や文章に用いられる専門的な漢 語。〈細則〉〈政策をーする〉〈法律がーされる〉の「執 行」との区別を明確にするために口頭では「せこう」と言う こともある。ひ施工・執行・実行・Q実施・施行・施工・履行 しこう【施工】工事を行う意で、改まった会話や文章に用い られる正式な感じの硬い漢語。〈建築の設計及びー〉の「施 行」と紛らわしいため、日常会話では「せこう」と言うこと が多い。ひ施行・執行・実行・実施・施行・施工・履行 しこう【歯垢】歯の表面に付着するやわらかい汚れをさして 学術的な会話や文章に用いられる歯学の専門的な漢語。「 がたまる〉へーを除去する〉日常会話では「歯糞」とい い、「歯石」のもとになる。専歯石・歯糞 しこう【試行】計画どおりになるかどうか実際に行って試す 意で、主に文章に用いられる硬い漢語。〈期間〉〈錯誤 を繰り返す〉Q試み・試し じこう【時候】四季それぞれの季節ごとの気象状況をさし、 会話にも文章にも使われるやや古風な漢語。〈一の挨拶〉 〈今は一がいい〉森鷗外の『雁』に「もう一がだいぶ秋ら しくなって、人が涼みにも出ぬ頃」とある。永井荷風の『雨 瀟瀟』には「其夜の雨から一が打って変ってとても浴衣一枚 ではいられぬ肌寒さ」とある。気候・気象・天候 じこう【事項】全体を構成している個々の事柄をさし、やや 改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈懸案 ー〉〈注意〉〈検討〉〈ー索引〉〈首相の専権〉〈重要 なーを網羅する〉の「項目」よりも規模が少し大きく、その じこく 内容に重点のある感じがある。アイテム・Q項目・事柄 「こえ【地声】作り声に対して、自然な発声法で出すその人 の生まれつきの声をさし、会話にも文章にも使われる日常 語。〈ーで歌う〉〈大きいのはーだ〉幸田文の『流れる』に 「同じその声が糖衣を脱いだーになっていた」とある。「裏 声「作り声」と対立。り肉声 じこく【時刻】時の流れの中の一点をさす漢語で、「時間」に 比べやや専門的で改まった感じの語。〈到着〉へただ今の は〈予定のーを過ぎる〉〈約束したーをきちんと守る〉 の大岡昇平の『俘虜記』に「は残留者が誰も時計を持って いなかったのではっきりしたことはわからない」とある。 くだけた会話では、「時間になる」のように「時間」という 語を用いることが多い。ひQ時間・時 じこく【自国】他の国に対する自分の国をさし、会話にも文 章にも使われる少し硬い感じの漢語。への利益を最優先 するへの歴史に誇りを持つへの文化を海外に紹介す る特に思い入れもない客観的な表現。Q故国・祖国・母 国・本国・本土 じごく【地獄】悪い人間が死後に罰を受けるところの意で、 会話にも文章にも使われる漢語。へに堕ちる〉への沙 汰も金次第武田泰淳の異形の者に「私はへなど 往きません」と私は、旅行の相談でもしているように気楽 に答えた」とある。仏教では「極楽」と対立し、現世に悪事 を働いた人間が死後にその報いで苦しみを受ける場所を、 キリスト教では「天国」と対立し、この世で罪を犯しながら 悔い改めない罪人が死後に永遠の苦しみを受けるとされる <430> しこたま 場所をさす。比喩的に、「受験」「の猛稽古」「の苦 しみを味わう」「を見る」のように、単にひどい苦しみの 意でも使う。専煉獄 しこたま数量の甚だ多い意で、くだけた会話に使われる俗 っぽい和語。〈ー储ける〉〈ー溜ため込む〉〈ー買い込む〉の やや非難めいたニュアンスが伴いやすい。ひ一杯・うんと・多 い・しこたま・沢山・たっぷり・たんと・Qたんまり・どっさり しごと【仕(為)事】職業・業務・作業・労働など広い意味を漠然 ときし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の 最も基本的な和語。〈神経を遣う〉〈ーを探す〉〈ーが来 ない〉〈ーにありつく〉〈周囲の騒音でーにならない〉〈一 日のー量〉〈ーがはかどる〉〈ーがきつい〉〈ーに追われる〉 〈ーに差し支える〉〈ーに精を出す〉〈ーを休む〉森鴨外の 『花子』に「同時に幾つかのーをはじめて、かわるがわる気 の向いたのに手を着ける」とある。「いいーをしている」 「いいーを残す」のように、作業の結果や業績などをきす用 法もある。ひQ商売・職・職業・なりわい しごとば【仕事場】実際に仕事をする場所をさし、会話やさ ほど硬くない文章に使われる。「が編集部から営業部に 移る〉〈自宅の近くにーを借りる〉「職場」より小規模で 具体的な場所、会社の場合は組織全体というより自分の所 属している部署程度をさして使う傾向があり、作家が小説 を書くときに使用する部屋なども含まれる。乃勤務先・Q職 場・勤め先 しこめ【醜女】「不美人」の意のほとんど古語に近い和語。 悪女・おかちめんこ・醜女・醜婦・すべた・Qぶす・不美人 しさ【示唆】それとなく教える意で、改まった会話や文章に 用いられるやや硬い漢語。〈ーに富む〉〈ーを与える〉〈ー するところ大である〉②「暗示」や「ヒント」に比べ、価値 のある情報を連想させやすい。Q暗示・ヒント しざ【視座】ものを見たり考えたり論じたりする際の基本と なる立場をさし、主として文章に用いられる専門的な漢語。 〈一に立つ〉〈一を変更する〉四一部の学問分野に比較的新 しく現れて一時期盛んに使われた語で、若干翻訳的な雰囲 気を漂わせる。観点・Q見地・視点・立場 しさい【司祭】カトリック教会で司教に次ぐ聖職をさし、会 話にも文章にも使われる専門的な漢語。へーに任じられる 日常生活では多く「神父さん」と呼ばれる。専司教・Q神 父・牧師 しざい【資材】木材など、物を作る際の材料となる物質をさ し、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。へ置 き場〉〈建築用のー〉ひ材料・Q素材 しさく【思索】筋道をたどって深く考える意で、主に文章に 用いられる硬い漢語。〈哲学的—〉〈—に耽ぱる〉〈—をめぐ らす〉②福原麟太郎の『顔について』に「マスクの底に、そ の人の叡知、苦労、—のあと、善玉悪玉を見透せないようで は、年を取った甲斐がない」とある。スケールに関係なく広 く使われる「思考」に対し、この語はまとまった内容を秩序 立てて考える場合にのみ用いる。専意見・考え・見解・考慮・Q思 考・思想・思慮 しく【施策】社会情勢の変化に応じて政府などが施す対策 の意で、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。 <431> 〈ーを講じる〉〈ーに鈴する〉〈ヒ善後策・Q対策 しさつ【視察】その場所に行って直接見て実状を知る意で、 やや改まった会話や文章に用いられる公的な雰囲気の漢語。 「のため海外に出張中」〈現地を—する〉〈被害状況の— に出かける〉単查察 じざつ【自殺】自ら命を絶つ意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の漢語。「未遂」〈投身」 「を企てる」〈を決行する〉頬義語中最一般的な語 でよく使われる。Q自害・自決・自尽・自刃 しさん【資産】資本となりうる財産をさし、改まった会話や 文章で用いられる、やや専門的な硬い感じの漢語。〈固定 ー〉へーを運用する〉へーを凍結する〉へーを公開する〉ひQ 財産・身上・身代 じさん【持参】持って行く意で、やや改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈雨具を—する〉〈弁当—のこと〉〈当日 は筆記具を—されたし〉Q所持・携える・持つ しし【死屍】「死体」の古めかしい硬い漢語的文章語。「に 鞭打つ」有島武郎の「或る女」に「花のかたまりの中に むずと熱した手を突っ込んだ。—から来るような冷たさが 葉子の手に伝わった」とある。込遺骸・遺体・かばね・死骸・しか ばね・死者・Q死体・しにん・しびと・亡骸・むくろ し【獅子】東アジアの伝説中の想像上の動物「唐獅子」、 または「ライオン」をさし、会話にも文章にも使われる古め かしい漢語。〈—奮迅の働き〉の小林多喜二の『蟹工船』に 「(海は)ガツ、ガツに飢えている—のように、いどみかかっ てきた」とある。ライオン じじい しじ【支持】意見や方針などをよいと認め、その後押しをす る意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー者〉〈ー母体〉 〈その意見をーする〉〈ーを取り付ける〉〈圧倒的なーを得 る〉ひサポート しじ【私事】個人的、特に私生活に関する事柄の意で、多く 文章の中で用いられる丁重な感じの漢語。〈ーにわたる〉 〈ーにふれる〉②「ーを暴く」のように、内緒事というニュ アンスで使うこともある。「他事」と対立する語。ひプライ バシー・Qわたくしごと しじ【指示】やるべきことを指し示す意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈ーを出す〉〈業務をーする〉〈医者のー に従う〉〈上司のーを仰ぐ〉の「指図」より具体的で細か い感じがある。例えば、この部屋の家具を別の部屋に移す という内容の「指図」であれば、どの棚をどの位置に配置す るかといった内容が「指示」に相当する、といった関係にな る傾向がある。単指図・指令・命令 しじ【師事】先生として仕えて教えを受ける意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈巨匠に—する〉〈志賀 直哉に—する〉師匠と弟子という関係を互いに意識して いるが、通常は「入門」のようなはっきりとした意思表明や 手続きなどはない。「事」は「仕える」意。Q私淑・入門 じい【爺】男性の老人をさすぞんざいな和語の口頭語。〈狸 ー〉〈癇癇かんしー〉夏目漱石の『吾輩は猫である』に「椎茸 で前歯がかけるなんざ、何だか臭いね」とある。「、黙 ってろ」「あの」、ふざけやがって」などとののしる感じで 用いることが多いが、「あのーも、いいところあるなあ」な <432> ししっ どと親しみをこめて用いる例もある。無神経な差別意識の しみついた「土方」や「産婆」などとは違って、「お爺はさ ん」の欠陥を露骨に非難するわけではないが、そう呼ばれ た側の人間にきつく響くのは、その言い方の奥に相手を軽 蔑する話し手の意図を読み取るからである。ひ高齢者・Q老 人 ししつ【資質】生まれつき持っている性質や才能をさし、改 まった会話や文章に用いられるやや硬い感じの漢語。へーを 具える〉(芸術家としてのーが具わる)〈政治家としてのー を問われる〉〈教員としてのーに欠ける〉②「才能」「素質」 より適用範囲が狭い。優れた能力というより性格的にその 方面に向いていることに重点があり、中村光夫の『風俗小 説論』に二葉亭のーはあくまで小説家であったに反し、藤 村のそれは詩人的」とある。ひ才能・Q素質・能力 じじつ【事実】現実に存在し、あるいは、実際に起こったこ とをさし、会話にも文章にも広く使われる日常の基本的な 漢語。〈一関係〉〈既成一〉〈一無根〉〈一を客観的に記す〉 〈一に忠実に描く〉〈紛れもない一だ〉〈見落としたという ーはぬぐえない〉②芥川龍之介の『鼻』に「内供は意外なー を発見した」とある。「一そのとおりだから隠しても仕方が ない」のように「実際に」の意の用法もある。谷崎潤一郎の 『細雪』にある「不思議な話であるけれども、姉はー東京へ 行ったことがない」の例はそれである。現実・実際・実状・実 態・真実・真相 しじま【無言/沈黙】「静寂」を意味する詩的な雰囲気をもつ 古語的表現。〈夜の—〉(深い—)静寂 ししや【死者】「死人」をさす、やや改まった正式な感じの漢 語で、くだけた会話にはなじまない。〈多数のーを出す惨 事〉へーの冥福を祈る〉へーの霊を弔う》大江健三郎の 『死者の奢り』に「半白の頭髪を短く刈ったーの小さな顔を 見た。それはある種の両棲動物に似ていた」とある。「生 者」に対する語で、「死人のような顔」というふうに具体的 な状態を表現する場合には用いにくい。遺骸・遺体・かばね・ 死骸・しかばね・死屍・死体・Qしにん・しびと・亡骸・むくろ ししや【使者】上位者の命令を受けて使いに出る人をさし、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーを送る〉 〈ーを遣わす〉〈ーを立てる〉「使い」より正式で大仰な感 じがあるが、「使節」ほど本格的・正式な感じはなく、外国 に限らず広く使う。ひ使節・Q使い しや【自社】自分の会社の意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈—ビル〉〈—の宣伝〉の「他社」と対立。Q当社・ 弊社 しじゅう【始終】「いつも」の意で、会話やさほど改まらない 文章に使われる日常の漢語。〈ー怒ってばかりいる〉〈ー遊 んでいる〉〈あの家はー留守だ〉福原麟太郎の『人生の幸 福』に「ー何かを試み、努め、追求しており」とある。「終 始」が連続する一つの線的な対象を思い描いているのに対 し、この語は個々の時点で同じ現象や状態であることに気 づき、そこから推定している感じがある。ど何時も・終始・常 時・しょっちゅう・絶えず・常に・のべつ じしゅう【自習】学校で教師が休んだりして生徒がそれぞれ 自分で勉強する意で、会話にも文章にも使われる漢語。 <433> 時間〈四時間目は各自—する〉独習 しじゅうはって【四十八手】あらゆる手段の意で、会話や改 まらない文章に使われる表現。〈会社経営の—〉〈訪問販売 の—〉の相撲ずの決まり手が四十八種類あったところから。 今では一般に「いろいろの手段」やその総称という意味に も使われる。現在の大相撲では七十種以上に増えているこ ともあり、必ずしも相撲を連想しなくなっている。 しゅく【私淑】尊敬する人をひそかに先生と仰いでそれを 模範に励む意で、主として文章に用いられる硬い漢語。 「私」は一人でひそかにの意、「淑」は良いと思って慕う意。 そのため、師匠の側では通常気がつかない。Q師事・入門 しゅつ【支出】物を購入したり料金を支払ったりして費え る金銭などをさし、会話にも文章にも使われる漢語。「が 増える〉〈ーを切り詰める〉〈ーを抑える〉のそのつどの 「出費」に比べ、一定期間の合計をさす傾向がある。出費 じしよ【字書】主として文章中に用いられる、「字典」の意の さらに古い感じの漢語。〈専門のーにあたって調べる〉専辞 書・事典・Q字典・辞典・字引 じしょ【辞書】「辞典」の意で、くだけた会話から硬い感じの 文章まで広く使われる、やや古風な日常漢語。〈ーを引く〉 〈ーで調べる〉〈ーにあたる〉の会話では「辞典」よりも普通 に使われてきたが、書名のほとんどが「辞典」と名づけられ ることも影響して、若い世代では特に、会話でも「辞典」と いう語が一般に使われるようになり、この「辞書」という語 が現在ではいくらか古い感じになりつつある。なお、辞典 のほか字典や事典を含めた総称として用いられることもあ じしょう る。 ひ字書・事典・字典・Q辞典・字引 じしょ【自書】自筆の意で、硬い文章に用いられる漢語。〈貴 重なーの原稿が発見される〉乃自署 じしょ【自署】自分自身が署名する意で、法律関係の文章な どに用いられる専門的な漢語。〈書類の末尾にーする〉〈 のない契約書は無効〉ひ記名・サイン①・Q署名 じしょ【地所】主に住宅などを建てるための土地をさし、会 話やさほど改まらない文章に使われる、やや古風な漢語。 〈ーを手放す〉〈ーが値上がりする〉〈ーが広い〉Q土地・用 地 しよう【支障】「差し障り」の意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈業務にーを来す〉〈何らのーもなく 済む〉の「差し障り」と違い、他人に迷惑をかけることは含 まない。ひ差し障り・Q差し支え・不都合 しじょう【紙上】新聞の紙面の意で、主として文章中に用い られる漢語。〈ー討論会〉〈ーをにぎわす〉〈ーを飾る〉〈ー で謝罪する〉児誌上 しじょう【誌上】雑誌の誌面の意で、主として文章中に用い られる漢語。〈座談会〉〈を埋める〉〈を借りてお詫 びする〉と紙上 しじょう【市場】売り手と買い手が集まって商取引を行う特 定の場所や経済的な空間をさし、改まった会話や文章に用 いられる専門的な漢語。〈株式—〉〈金融—〉〈価格〉〈 占有率〉〈ーを拡大する〉〈ー封鎖に踏み切る〉〈マーケット ① じしょう【事象】物事の現象の意で、主に改まった文章に用 <434> じじょう いられる硬い漢語。〈社会的」〈現実に起こる多様な」 日常も使う「現象」と違い、学術的な文章にのみ用いる抽 象的な表現。現象・事柄・事物・物事 じじょう【事情】物事の様子や事の次第をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈—聴取〉〈家庭の—〉〈こみいった —〉〈—があって引き受けられない〉夏目漱石の『坊っち ゃん』に「色々の—た、どんな—です」とある。「実情」に 比べ、何かの原因・理由・背景となっている事柄を客観的に さす感じが強い。実状・実情 しょく【試食】食べ物のできばえを実感するために食べて みる意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一会〉〈新製 品をーする〉の味見」の場合と違って、少量の場合も一食 分の場合もある。Q味見・試し食い じしょく【辞職】任期の途中に自らの意思で今までの職を自 ら退く意で、いくぶん改まった会話や文章に使われる少し 正式な感じの漢語。〈内閣総—〉〈—願い〉〈突然の—〉夏 目漱石の『坊っちゃん』に「主任は山嵐だから、やっこさん 中々—する気遣はない」とある。勤務先を辞める場合とそ の役職だけを降りる場合とがある。Q辞任・退職・退任 ししん【指針】進行の方向や運営の基本的な考え方をさし、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーを与える〉〈ー を得る〉太宰治の『人間失格』に「正義は人生のーたりと や?」とある。進む方向を示す磁石盤の針の意から。方針 じしん【自身】当人・本人としてのその人をさし、改まった会 話や文章に用いられる、やや硬い感じの漢語。〈自分—〉 〈作者—〉〈ーで選ぶ〉〈ーの手で作り上げる〉〈問題は—で 解決する学校の不名誉になる」「そもそもそういう 考え方が問題だ」のように「自体」の意味でも使う。佐藤 春夫の『田園の憂鬱』に「それらの言葉の集合はそれで一 つの世界」とある。ひおのれ・自己・Q自体・自分・みずから じしん【自信】自分の才能・実力・価値などに確かな信頼を置 く意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の漢語。〈一作〉〈一満々〉〈一過剩〉〈一が湧く〉〈一が ぐらつく〉〈一を喪失する〉〈一に満ち溢ふれた態度〉〈一た っぷりに言う〉の太宰治の『斜陽』に「もともとお料理には ーが無い」とある。大岡昇平の『俘虜記』に「射撃は学生の とき実弾射撃で良い成績をとって以来、妙にーを持ってい た」とある。少確信・過信・Q自負・自慢 じじん【自尽】自ら命を絶つ意で、主に文章に用いられる古 めかしい漢語。〈ーに追い遣る〉〈山中にて—〉刂自害・Q自 決・自殺・自刃 じじん【自刃】刃物で自ら命を絶つ意で、主に文章中に用い られる古めかしい漢語。〈ーして果てる〉専自害・自決・自殺・ Q自尽 しずか【静(閑)か】人声や物音に妨げられず心が落ち着く意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈な秋の夜〉へな環境に身をおく〉へ な曲〉宮本輝の『蛍川』に、雪の降るけはいを感じる箇所 があり、「であればあるほど、しんしんと迫ってくる音を 聞く」とある。なお、音だけでなく動きのない状態をさす 用法もあり、村上春樹の『遠い太鼓』にある「な入江が広 がっている」の箇所は、そのあとに「うつらうつらと眠りこ <435> んでしまったような入江」と続くからそういう例と見られ るが、吉本ばななの『血と水』にある「春の池はーで、たく さんのボートがひっそりと行きかっていた」の例は微妙であ る。刂閑寂・閑静・静やか・Q静寂・静粛 しずかさ【静(閑)かさ】人声物音もほとんど聞こえない意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈物音ひとつしない ー〉の「静けさ」に比べ、物の動きが感じられない雰囲気が ある。円地文子の『妖』に「その日も坂に出て、人気の絶え た往来のーに浸っていた」とある。ひ閑寂・Q静けさ・静寂 しずく【雫/滴】水など液体のしたたりをさし、会話にも文 章にも使われる日常の和語。〈雨の—〉〈ひと—の涙〉〈一 が垂れる〉のガラスに付着するイメージもある「水滴」に比 べ、この語はこぼれ落ちるイメージが強い。永井荷風の『歓 楽』に「樹木の湿れた木の葉の面は一枚一枚滴る」ととも に黄金のように輝いている」とある。ひしたたり・Q水滴・点滴 しずけさ【静(閑)けさ】「静かさ」に近い意味で、改まった会 話や文章に用いられる、やや古風な感じの和語。〈森の—〉 〈ーを破る悲鳴〉の客観的な感じの「静かさ」より美化した 感じが強く、せせらぎの音や虫の声のような耳に心地よい 自然の音響は聞こえていてもよいような雰囲気がある。永 井龍男の『蚊帳』に「やがて、吐月峰をたたく音がして— が戻ってくる」とある。ひ静かさ しずむ【沈む】水面から底のほうに移動して見えなくなる意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈硬貨が底まで—〉〈船が難破して海に—〉 池澤夏樹の『骨は珊瑚、眼は真珠』に「骨が海流に乗らず しせい すぐにー・んでこの珊瑚の間にまぎれこむのなら、それでも いい」とある。「日本海に夕日がー」のように空中の移行で も使われ、「気がー」のように活気を失う意の比喻的用法も ある。「ー・んだ空気」「気持ちがー」のように広く比喻的に も使い、壺井栄の『二十四の瞳』にも「心細さが、みんなの 胸の中にだんだん、重石のようにー・んでゆく」とある。 「浮く」「浮かぶ」と対立。込没① しずめる【鎮める】勢いを抑えて落ち着かせる意で、会話で も文章でも使われる和語。〈痛みを—〉〈騒ぎを—〉〈気を ー〉静める しずめる【静める】静かにさせる意でやや改また会話や 文章に使われる和語〈場内を—〉〈鳴りを—〉鎖める しずやか【静やか】穏やかで落ち着いている意で、まれに文 章に用いられる古めかしい和語。(なる歩み)現代では 雅語的な響きがある。福永武彦は『風花』で風花を「かす かな粉のようなものが、次第に広がりつつあるその裂け目 から、に下界に降って来た」と描いた。刂閑寂・閑静・Q静 か・静寂・静庸 しせい【姿勢】体の構えや物事に当たるときの心の持ち方を さし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈低—〉 〈強い—で臨む〉〈前向きの—で取り組む〉〈強い—で交渉 に臨む〉椎名麟三の『永遠なる序章』に「一を崩さずに、 まるで化石になったように突っ立っている」とある。目に見 える感じの「態度」に比べ、その奥にある気持ちに重点があ る。「不動の—」「が悪い」のように体の構え方をさす基 本的用法から派生した比喩的用法。三島由紀夫の『金閣寺』 <436> じせい にある「そのーは、矜りも威信も失くして、卑しさがほとん ど獣の寝姿を思わせた」という例は比喩化してゆく中間段 階にあるように思われる。懸度 じせい【時世】時代・世の中の意で、会話でも文章でも使われ る古めかしい漢語。〈結構なごーでありがたい〉〈とんだご ーになったものだ〉時勢・時代 じせい【時勢】それぞれの時代の勢いや成り行きをさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈一に順応する〉〈一に敏感 に反応する〉〈一に遅れる〉〈一に逆らう〉②徳田秋声の 『縮図』に「こんなーを彼は何んな風に考えているであろう か」とある。時世・Q時流・趣勢が・成り行き・風潮 しせい【自省】自分の言動や態度を自分で振り返ってその適 否などを考える意で、主に文章中に用いられる硬い漢語。 〈静かにーする〉へーの念がきざす〉へーの念に欠ける〉ひ内 省・反省 しせき【歯石】歯垢の石灰化した沈着物をさし、学術的な 会話や文章に用いられる歯学の専門的な漢語。〈歯医者で を取ってもらう)の「歯垢」より専門性が薄く、一般人が日 常会話で話題にする割合が高い。Q歯垢・歯蓑 しせつ【施設】一定の目的のための建物やその中の設備をさ して、会話にも文章にも使われる漢語。〈娯楽ー〉〈公共の ー〉へーが整っている〉へーを拡充する〉図単に「ーに預け る」「ーに入る」として特に養護施設・老人福祉施設などを さす用法もある。建物など、「設備」より大規模な対象をさ す例が多い。単設備 しせつ【使節】国家の命を受けて代表として外国に派遣され る人をさし、改まった会話や文章に用いられる正式な感じ の漢語。〈団〉〈親善〉〈ーを派遣する〉Q使者・使い じせつ【時節】「季節」の意でやや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な漢語。〈花の—〉〈さわやかな—を迎える〉②大岡信の『言葉の力』に「樹全体のエッセンスが、春という—に桜の花びらという一つの現象になる」とある。木山捷平の『貸間さがし』に「柄、腰巻の上にはもんべをはいていたであろうに」とあるのは、単なる季節というより戦時中という情勢も加わっているかもしれない。また、「ーを待つ」「ー到来」のように、事を起こすのに絶好の機会という意味でも使われる。Q季節・シーズン・四季・時季・時候 しせん【視線】目を向けて見ている方向の意で、会話にも文 章にもよく使われる漢語。〈ーの先にある〉〈ーを落とす〉 〈ーをそらす〉小沼丹の『猿』に、「猿はちょいとーを外し て、尻を掻いた」という擬人的描写が出てくる。「熱いーを 集める」のように、関心といった抽象的な意味合いでも使わ れる。刂目線 しぜん【自然】人間が手を加えずに存在する海・山・草原・動植物などの場所や物、台風・地震などの現象の総称として、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の最も基本的な漢語。〈科学〉〈現象〉〈災害〉〈界の驚異〉〈豊かな〉〈を保護する〉武者小路実篤の『友情』に「はどうしてこう美しいのだろう。空、海、日光、水、砂、松、美しすぎる」とある。「な感情」「な態度」のように、作為的でない意にも使い、「そうなる」のように、ひ <437> とりでにの意に使うこともある。「自然に」と論理的な展開 を示すより、格関係をほかしたこの形のほうが抵抗なく流 れるように感じられる。自ずから・自ずと・自然と・Q自然に・ 天然・ひとりでに じせん【自薦】自分自身を推薦する意で、選挙や会議などで 使われるやや専門的な漢語。〈他薦いずれも可〉自選 じせん【自選】自分で選ぶ意で、主に文章中に用いられる漢 語。〈全集〉〈自作の句からーで五句抜き出す〉自薦 しぜんと【自然と】「自然に」と同じ意味で、くだけた会話な とにしばしば現れる語形。〈遊んでいるうちにー仲良しに なる〉③「自然に」よりいくらか崩れた感じがある。自ず から・自ずと・自然・Q自然に・ひとりでに しぜんに【自然に】人手を加えなくてもの意で、会話でも文章でもよく使われる日常的表現。ぼうっておいても治る〈眠くなるのを待つ〉の「火が消える」という例では、人間が水をかけて消さなくても、風で炎が吹き消されたり、あるいは、その場に燃えるものがなくなったりした結果など、何か原因があって消えるべくして消える場合を連想させる。ここを「火がひとりでに消える」と換言すると、人知の及ばぬ不可思議な現象に出合う感じが強まる。なお、この語形は「自然と」より整った感じがある。自ずから・自ずと・自然・Q自然と・ひとりでに しそん じぜんに【事前に】事が起こらないうちにの意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い感じのことば。〜承諾を取っ ておく〜よく根回しをして円滑に運ぶ》Q予め前も って しそ【始祖】学問や芸術の流派の創始者の意で、主に文章中 に用いられる古風な漢語。〈哲学の」〈裏千家の」は千宗 室といわれる〉図一家の初代の意でも使われたが、「禅宗の ーは達磨大師」というふうに、現在は創始者の意味合いで 使う例が多い。ちなみに、「鳥」は最古の化石鳥類。弓開 基・開山・Q開祖・元祖・鼻祖 しそう【思想】思考作用によって得た体系的な考えをさして、 会話にも文章にも広く用いられる漢語。〈一家〉《ギリシャ 〈穏健なーの持ち主〉〈ーを弾圧する〉四椎名鱗三の 『永遠なる序章』に「なんか鼻紙に等しい」とある。専意 見・考え・見解・Q思考・思索 しそう【指(使)嗾】指図して自分の思うように他人が行動す るように仕向ける意で、主に文章に用いられる古めかしく 硬い漢語。人生徒をして騒ぎを起こす夏目漱石の『坊 ちゃん』に「中学の教師堀田某と、近頃東京から赴任した 生意気なる某とが、順良なる生徒をして此の騒動を喚起 せるのみならず」という新聞記事が出てくる。帰る・けし かける・Q扇動・そそのかす・たきつける しそく【子息】他人の息子を少し改まって言うときに会話に も文章にも用いられる漢語。〈社長の—〉〈御—はもう大学 生ですか〉の丁寧な感じがあり、自分側には用いない。 がれ・Q息子 しそん【子孫】子や孫以降の同じ血筋や家系を引く人々の総 称として、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーを残す〉 〈ーに伝える〉への繁栄を願う〉〈豊かな自然をーに残そ う〉同時代に一緒に生きている子や孫だけをさす場合に <438> じそんしん この語はなじまない。まだ生まれていない後の世代をすべ て含めるか、何代も前の人間を中心に考えるかすれば、こ の語を使っても違和感がない。り後裔・まご・Q末裔 しそんしん【自尊心】自分の品格や名誉を保とうとする気持 ちをさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。へが強 い〜を傷つける)気位・矜持・自負・Qブライド・誇り した【舌】口の中にある肉質の味覚器官をさし、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 へーでなめてみる)夏目漱石の『吾輩は猫である』に「大 きな赤いーをべろりと出した」とある。ヌべろ じだ【耳朶】「耳たぶ」の意で、学術的な会話や文章に用いられる専門的な硬い漢語。〈ーにふれる〉〈ーを紅潮させる〉 の「みみたぶ」との区別が困難だが、井伏鱒二の『黒い雨』 の「ーを覆ったガーゼを取って」の例や、谷崎潤一郎の『鍵』 の「真珠ノ玉トートガ互ニ効果ヲ助ケ合ッテイル」の例など は「じだ」と読んでも違和感がない。呂耳たぶ したい【死(屍)体】死んだ人間や動物の体をさし、くだけた 会話から硬い文章まで広く使われる客観的な漢語表現。「 遺棄〉へ「で発見される〉へ「を運ぶ〉へ「を解剖する〉②梶 井基次郎の『桜の樹の下には』は「桜の樹の下には」が埋っ ている」と始まる。「死骸」ほどではないが、動物にも使う。 死後すぐから違和感なく使える。遺骸・Q遺体・かばね・死骸 しかばね・死屍・死者・しにん・しびと・亡骸・むくろ したい【姿態】姿かたちの意で、主に文章中に使われるやや 古風な漢語。〈なまめかしい〉回檀一雄の『花筐』に「ブ ロンズのように美事な(素裸の男の)」とある。販体 したい【肢体】手足などの体つきという意味で、主に文章中 に使われる漢語。ぐしなやかなー〉(すらりと伸びたー)② 徳永直の『太陽のない街』に「蛇のようにうねらせるーのう ごき」とある。専姿態 じたい【字体】さまざまの具体的な字形の違いに対して、そ の基礎となる抽象的な文字概念の様式をさし、会話にも文 章にも使われるやや専門的な漢語。〈旧—と新—〉回新字体 と旧字体、正字体と俗字体と略字体の別。「礼」と「禮」 「亀」と「龜」などは字体の違いであるが、「体」は本来「體」 と別の漢字だったのを今は略字として扱っている。また、 「書体」の意味で使うこともある。単字形・Q書体 じたい【自体】そのこと、そのものの意で、会話にも文章に も使われる漢語。方法ーは問題ない)(それーが障害にな る)(月ーは光を発しない)(問題ーはさほど難しくない) 人間よりも物事に用いる例が多い。それそのものを他か ら切り離して考察対象とする。自身 じたい【事態】物事の様子や成り行きをさし、やや改まった 会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈緊急—〉〈非常 —宣言〉〈不測の—が生ずる〉〈—が好転する〉〈最悪の— に達する〉〈—を重く見る〉「状況」などと違い、人間そ のものの様子には用いない。仏局面・Q状況 じたい【辞退】遠慮して断る意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈出場—〉〈入学—〉〈役員に推薦され たがーする〉回横光利一の『紋章』に「御厚意は有難いがそ れだけは自分としては出来難いと云ってーした」とある。 乃遠慮 <439> じだい【時代】時の流れをある基準で区切った一区分をさし、 くだけ大会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な漢語。〈一区分〉〈一劇〉〈一設定〉〈平安一〉〈一の流 れ〉〈古き良き一〉②区切る基準によって「江戸」「大正 」「原子力」「情報化」「青春」「駅前の家に間借り していた」など、その期間はきわめて長いものから個人 的なかなり短いものまでありうる。島崎藤村の『夜明け前』 に「新旧」の入れ混ったところは、さながら虹のごとき色さ まざまな光景」とある。専時世・世代・Q年代 だいに【次第に】順を追って少しずつ同じ方向に変化して ゆく場合に、会話にも文章にも使われる表現。〈ー暖かくな る〉へ盛り上がる〉〈ー晴れてくる〉、おいおい・徐々に・漸 次・Q段々 したう【慕う】ついて行って一緒にいたい気持ちの意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈幼児が母親のあとを—〉 〈生徒が先生を—〉〈初恋の相手を—〉夏目漱石の『草枕』 に「あとを—・って飛んで行きたい気がする」とある。「お ー・い申し上げます」のように男女間に用いるといさか古 風な感じに響く。また、この語は「故国を—」のように人間 以外に対しても用い、「学風を—」「芸風を—」のような抽 象化した用法もある。Q愛する・恋する・好く・惚れれる したえ【下絵繪】下書きの絵をさして、会話にも文章にも 使われる和語。〈版画のーが見つかる〉特に、彫刻や刺 繍の下地として描くものをさすことも多い。写生・Qス ケッチ・素描・デッサン したがう【従う】逆らわずそのとおりにする意で、くだけた したく 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈親の意見に—〉〈係の指示に—〉〈規則に—〉〈権威に—〉 ②夏目漱石の『坊っちゃん』に「山嵐の忠告に—」とある。 守る意では「遵う」とも書く。遵守・服従・Q服する・守る① したがき【下書き】文章や絵などを本格的に書く前にだいた い書いてみる意で、会話にも文章にも使われる和語。〈論文 の—〉〈ーをもとに清書する〉〈まだ—の段階だ〉原案・原 稿・草案・Q草稿 したがって【従って】「その結果」「それが原因で」という関係を表し、改まった会話や硬い文章で用いられる和語。 「一、結果は良好である」「一、成功を収めたとまでは言いがたい」「二葉亭四迷の『浮雲』に「我から繙くようになり、一学業も進歩する」とある。「だから」などに比べ、上の立場から理論的に説き聞かせるような雰囲気が感じられる。それで・Qだから したぎ【下着】上着の内側、特に肌に直接ふれる衣服をさし、 会話でも文章でも幅広く使われる日常的な和語。「の替 えを用意する〉(を取り替える)シャツやズボン下やス リップなど。パンツの類をさす場合は、「類」という上位 概念に広げて意味をほかし、露骨さを薄める婉曲表現に 近い効果がある。なお、「下穿き」とするともう少し限定 が狭まり、間接化の働きは弱まる。また、和服で重ね着す るときに内側に着るものをさす用法もある。易インナー・Q 肌着・ランジェリー したく【支(仕)度】次に起こることのために物事や身なりな どを整えることをさし、会話でも文章でも使われるが、「準 <440> したじ 備」よりも会話的で古風な感じの漢語。〈金〉(身)〈帰り〉(旅)におおわらわ〉〈食事の」で忙しい時刻〉森鷗外の『半日』に「午の食事の」をする」とある。「が済んだら出かけよう」のように、次の行動に必要なものを扱いやすいように整えることに重点がある。Q準備・用意したじ【下地】本格的に事を行うための基礎となる知識・技術・心得などをさして、会話にも文章にも使われる語。「ができている〉〈学問の」がある〉「があるから上達が早い」「素地」に比べ、ある時期に獲得したというニュアンスが強い。ひ素地 しだし【仕出し】注文に応じて料理を作って配達する意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈屋〉へ弁当〉へを 取る〉店のメニューにある料理を届ける「出前」と違い、 注文に応じて調理し、さまざまな組み合わせにして折に詰 め合わせるなど、本格的で高級な感じがあり、通常は何人 分かをまとめて注文する。ヶ一タリング・出前 したしい【親しい】互いに気が合って仲がよい意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈ー友達〉へー・く交際する〉〈両人はー関係にある〉 福原麟太郎の『この世に生きること』に「ばたばた、一年寄 りが世を去られた」とある。家族や夫婦のように親しいこ とが当然とされる関係の場合には用いないが、「ー縁者」の ように、血筋の遠近を問題にして使うこともある。刂親密 Q近しい したしむ【親しむ】仲良くする、いつも接していて慣れてい る意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈自然 にー〉〈友とー〉〈みんなにー・まれる〉〈灯火ーの候〉島崎藤村の『嵐』に「子供の世界にー」「土にーようになって」とある。ひ馴染む・慣れる したしらべ【下調べ】授業や研究発表その他に備えてあらか じめ内容を調べておく意で、会話や硬くない文章に使われ る、いくぶん古風な和語。〈明日の発表の—に追われる〉 〈数学の授業の—〉の芥川龍之介の『保吉の手帳から』に 「ふと気がついて見ると、彼の下検べをして来たところはも うたった四五行しかなかった」とある。一応「おさらい」と 対立するが、学校の勉強だけでなく、発表や裁判などの準 備も含まれる。予習 したり【滴り】液体が一粒ずつこぼれ落ちる意、また、そ の水滴をさし、主として文章中に用いられる、やや詩的な 感じの和語。〈軒の—〉〈血の—〉の井伏鱒二の『点滴』で は、水の滴り落ちる音に美を感じる男が宿屋でパッキンの 緩んだ水道の蛇口から垂れる水音の好みについて、太宰治 を思わせる「私の友人」と互いに無言のまま対立する場面 を描いた。太宰が自分の「好み通り「ちゃぼ、ちゃぼ、ちゃ ぼ」の悪い音」にすると、井伏は「の基本の音だと心にき めた「ちょっぽん、ちょっぽん」の(分速十五滴の正しい)音 に改めた」といった些事を追想する形のとぼけた鎖魂歌で ある。岡本かの子の『母子叙情』に「初夏の晴れた空に夢の ーのように、あちこちに咲き迸るマロニエの花」とあるよ うに比喻的な用法もある。Qしずく・水滴・点滴 したたる【滴る】液体がしずくとなってぼたぼたこぼれる意 で、改まった会話や文章に用いる、古風でやや詩的な感じを <441> 伴う和語。〈岩から水がー〉〈血のーようなステーキ〉 「垂れる」より文体的なレベルが高い。液体が線状でなく 雫状に落ちるイメージが強く、こぼれる水の量も「垂れ る」より少ない。実際にそのようすを見たり音を聞いたり しているときの感覚的な判断をあらわすとも言われる。 垂れる したっぱ【下端】身分や地位の低いこと、また、その人を さし、会話や軽い文章に使われる和語。へを引き連れる り家来・子分・手先②・手下・手の者・配下・部下 じたばたする「あがく」の意で、主にくだけた会話に使われ る俗っぽい表現。〈この期に及んでーな〉回「今ごろになっ てー・しても始まらない」のように、単にあせって事を行う 意味でも使う。ひQあがく・もがく したわしい【慕わしい】その人に心ひかれ、そば近くに寄り 添いたい気持ちをさし、主に文章中に用いられる古風な和 語。へー・く思う)の「恋しい」「なつかしい」と違い、対象 は人間のみ。福永武彦の『廃市』に「離れの二階でこうして 二人きり倚り添っている安子さんのことを、不意にー・く感 じ始めていた」とある。少Q恋しい・好き・懐かしい しちゅう【支柱】物体や建造物を支える柱状のものをさし、 改まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。「を立て る」阿部知二の『冬の宿』に「精神も肉体もを失って」 とあるように、単に頼りになる支えをさす抽象的な用法も あるが、「柱」に比べ具体物をさす例が多い。も柱 しつ【室】「部屋」の意で、会話にも文章にも使われる漢語の 構成要素。〈応接〉〈教〉〈在〉〈内〉〈単独では使 しつぎ わない。「問」に比べ洋風の感じが強い。単部屋・Q間② しつい【失意】望みがかなわず意欲を失う意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。へーのどん底にある)夢破れ てーのうちに床に就く)がっかり・気落ち・Q失望・落胆 じっか【実家】妻や養子の立場からもとの家をさして会話に も文章にも使われる漢語。へーに戻る〉へーから援助を受け る)夏目漱石の『こころ』に「から受取った書翰」とあ る。近年、別居している子が親の家をさしてこの語を用い る例が増えている。込里・生家 しっかり安定感があって危なげないようすをさし、主とし て会話に使われる和語。〈ー支える〉〈ー食べておく〉〈ー せよと抱き起こす〉〈ーした足取り〉②小津安二郎の映画 『麦秋』で史子(三宅邦子)は夫の康一(笠智衆)とその妹の紀 子(原節子)との口論の際、女性の立場から「ー」と紀子 の応援にまわる。「頑張って」といった意味合いでのこうい う用法は、現在では古めかしい響きを感じさせる。鳥確実・ Q堅実・確か しっかん【疾患】病気の意で、主に文章に用いられる専門的 な漢語。〈胸部—〉の患部を限定してさす場合に使われる傾 向がある。ひ障り・Q疾病・病気・病魔・病・患い しっき【湿気】空気中や木・布などに含まれている水分の量を さし、会話にも文章にも使われる漢語。「の多い地方 へーを除去する〉へーを吸い込む》の「しっけ」に比べ、計測 可能な物的雰囲気が若干強い。Qしっけ・湿度・湿り気 しつぎ【質疑】会議などにおける質問をきし、改まった会話 や文章に用いられる専門的な漢語。〈一応答〉〈続いてーに <442> しつぎょう 入る〈活発なーを繰り広げる〉↓Q質問・尋問 しつぎょう【失業】就職できないでいるか、勤めていた職を 失ったかして現在職に就いていない状態をさし、会話にも 文章にも使われる日常の漢語。〈—率〉〈—保険〉〈目下— 中〉の就職したい意志がある場合に限られる。徳永直の 『太陽のない街』に「一者は、驟雨を喰った河水のように都 市に農村に氾濫した」とある。ひ失職 じつぎょう【実業】農業・工業・商業・水産業など経済や生産活 動に関する事業の総称で、会話にも文章にも使われる漢語。 〈一家〉〈学校〉乃産業・Q事業・生産業 しっきん【失禁】抑制作用がうまく機能せずに大小便をもら す意で、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。 「が心配で外出できない」「お漏らし」や「粗相」に比 べ、病気や老齢による衰えを連想させやすい。Qお漏ら し粗相 しっけ【湿気】「湿気」の意で、会話や硬くない文章に使わ れる日常の漢語。〈ーを含んだ風〉へーの多い梅雨の季節〉 へーを取り除く)「しっき」に比べ、感覚的・生活的な雰囲 気が強い。Qしっき・湿度・湿り気 しっけい【失敬】失礼の意で、会話にも文章にも使われる日 常の古風な漢語。〈挨拶もしないとは千万〉へなやつ だ〉へなふるまいに及ぶ〉(ここでーする)小津安二郎 監督の映画『彼岸花』で佐分利信が「ちょいとー」と言って 席を立ち、笠智衆も「どうもーした」と言って帰って行く が、今日では古めかしい響きがある。なお、「酔った勢いで 酒場の灰皿をーしてきた」のように、黙って貰って来る意 味でも使うが、高価な品を盗む場合には使わず、いたずら するような軽い気持ちのときにこの語がぴったりする。し かしその用法も少し古くなりかけている。小沼丹の『地蔵 さん』に「石の地蔵さんをこっそりして来ようかと考えた ことがある」とあるように、無断でもらってくる意にも使 う。ひくすねる・Q失礼・着服・猫ばば・無礼 じっけい【実兄】血のつながった兄をさし、主として文章に 用いられる正式な感じの漢語。〈ーを頼って上京する〉Q 兄・兄貴 しつける【湿気る】「しける」の意のさらに俗っぽい表現。 〈煎餅がー〉ひしける・Q湿る しつげん【湿原】湿地にある草原をさし、会話にも文章にも 使われるやや専門的な漢語。〈ーに群生する〉きQ湿地沼地 しつげん【失言】うっかり不適切な発言をしてしまう意で、 会話にも文章にも使われる漢語。つい口が滑ってーする くーを認めて謝罪する)くーを取り消す)ひ放言 じけん【実験】理論や仮説が正しいことを証明するために 実際に験すことをさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈台〉〈器具〉〈室〉〈化学の〉〈に取り掛かる〉 中谷宇吉郎の『立春の卵』に「をしないでもっともらし いことを言う学者の説は、大抵間違っているものと思って いい」とある。真偽を知るための「試験」に比べ、正しいこ とを確認するイメージが強い。訳験 じつげん【実現】希望や計画を現実に達成する意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈困難〉〈夢がーする〉〈計画 をーさせる〉〈ーに向けて努力する〉〈ー性にとぼしい〉 <443> 小林秀雄の『志賀直哉』に「しょうとする作品のあらゆる 効果は、限なく点検さる可きものである」とある。完成・ Q達成 しつこいつきまとわれてうるさく感じられる意として、会 話にも文章にも使われる日常の和語。〈ー勧誘〉へーく攻 め続ける〉へーくつきまとう〉人間の行為以外にも、「一 味」のように、色や味付けなどの濃い意を表し、「一汚れ」 のように、しぶとく付着している意を表すこともある。後 者は「頑固な汚れ」ともいう。ひくどい・Q執拗 しっこう【執行】行政や司法上の決定事項などを実際に執り 行う意で、改まった会話や文章に用いられる、正式な感じの 硬い漢語。〈一部〉〈一猶予〉〈刑を一する〉〈予算を一す る〉日常生活で用いると大仰な感じになる。専施行・施 工・Q実行・実施・施行・施工・履行 じっこう【実行】事を実際に行う意で、会話にも文章にも広 く使われる漢語。〈不言—〉へ力がある〉〈計画を—に移 す〉の太宰治の『人間失格』に「長兄は自分に対する約束を 正確にーしてくれました」とある。乃施行・施工・執行・Q 実施・遂行・施行・施工・履行 しっこく【漆黒】漆を塗ったように深みのある黒で艶のある 意で、主に文章に用いられる硬い漢語。〈一の髪〉一の闇 に包まれる堀辰雄のルウベンスの偽画は「それは一 の自動車であった」という一文段落で唐突に幕を開ける。 真っ黒 じっこん【呢懇/入魂】きわめて親しく心安い意で、やや改 まった会話や文章に用いられる古風な漢語。への間柄 じっし 〈御ーに願います〉三島由紀夫の『仮面の告白』に「な 知人の家ーとある。懸意・親しい・Q親密・近しい じっさい【実際】空想や理論上でなく現実にの意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。へー 問題〉へーにやってみる〉へーに起こった出来事〉へーには違 う〉小林秀雄の『私の人生観』に「ーには、様々な種類の 科学があり、見る対象に従い、見る人の気質に従い、異った 様々な見方があるだけです」とある。現実・Q事実・実状・実 情・実態・真実・真相・ほんと・本当 じつざい【実在】架空でなく実際に客観的に存在する意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈一の人物〉 〈かってーした証拠〉〈一を確認する〉実存・Q存在 しっさく【失策】エラーの意で主に文章に用いられる漢語。 「身」エラーの意で主に文章に用いられる漢語 「を繰り返す」〈取り返しのつかない」〈相手のーで命 拾いをする〉の井伏鱒二の『山椒魚』に、体が発育して隙間 から出られなくなって岩屋に閉じ込められた山椒魚が「何 たるーであることか!」と呟く場面がある。当時の自然 主義一辺倒の文壇に文章で反発しようとことさら翻訳調を 採用したと東京荻窪の自宅で井伏自身が語ったように、こ こは意図的に違和感を持ち込んだ表現であり、自然な日常 会話にこの語はなじまない。Qエラー・しくじる・失態・失敗・ とちる・抜かる・ぽか・ミス・ミスる・やり損なう じっし【実施】予定したことや対策、法律や決定事項などを 実際に施行する意で、やや改まった会話や文章に用いられ る、やや公的な感じの漢語。〈計画どおりにーする〉〈間も なく—の運びとなる〉〈—に踏み切る〉〈反対にあって—を <444> じっし 見送る)施行・施工・執行・Q実行・遂行・施行・施工・履行 じっし【実姉】血のつながった姉をさし、主に文章に用いら れる正式な感じの漢語。〈一一名、ともに未婚〉姉 じっしつ【実質】物事の実際の内容や性質をさし、やや改ま った会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〜が伴わな い〜〜〜〜〜〜〜 じっしょう【実証(證)】確かな証拠を示し、経験的事実など を活用して証明する意で、学術的な会話や文章に用いられ る専門的で硬い漢語。「この研究は—性に欠ける」〈理論を ーしてみせる〉乃検証・Q証明・立証・論証 じつじょう【実状】実際の状況の意で、会話でも文章でも使 われる漢語。〈ーを調べる〉へーをつかんで対策を講じる〉 の「ーに合わない」の場合、事情より状況に重点があればこ の語を用いる。専事実・実際・実情 じつじょう【実情】真情・事情の意で、会話でも文章でも使わ れる漢語。へーを述べつくす〉へーを訴える〉へーを汲む〉 「ーに合う」の場合、事情という意味合いであればこの語を 使う。客観的な「事情」に比べ、外部からはわかりにくい状 況を打ち明ける感じがある。事情・実際・実状 しっしょく【失職】それまで勤めていた職を失う意で、主に 文章中に用いられる漢語。〈会社の倒産でーする〉、ひ失業 しっしん【失神】一時的に気を失う意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈ー状態に陥る〉〈憧れの人に会えてーしそ うになる〉精神が高揚しすぎ極度の興奮に意識が遠のく ような場合によく使われる。Q気絶・人事不省 しっせき【失跡】行方をくらます意で、主に文章中に使われ る硬い漢語。〈ー者の届出〉、ひ家出・Q失踪・出奔・蒸発・逐電・行 方不明・夜逃げ じっせん【実践】実際に行う意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈理論を—する〉〈計画を自ら—してみせ る〉へーを伴わない〉み実戦 じっせん【実戦】実際の戦闘や試合の意で、会話でも文章で も使われる漢語。〈ーきながらの練習〉〈すぐーに役立つ〉 〈一向きの選手〉専実践 しっそ【質素】贅沢 をせず地味に抑える意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈一倹約を旨とする〉〈一な暮らし〉 〈一な身なり〉の「つましい」と違い、「一な服装」「一な食 事」「一な借家」のように衣食住の個々のものに関する使用 例もある。まつましい しっそう【失踪】行方をくらます意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈宣告〉〈多額の借金を抱えて する〉〈妻子を残して突然ーする〉回「失踪」より一般的。 家出・Q失跡・出奔・蒸発・逐電・行方不明・夜逃げ じつぞん【実存】今ここに確かに存在する意で、主に文章に 用いられる専門的な硬い漢語。〈ー主義〉へとは何か 哲学用語としては、自己の存在を自覚し主体的に関わる人 間の在り方を問題にする。Q実在・存在 しったい【失態】体面を失うようなみっともない行動の意で 会話にも文章にも使われる漢語。〈ーを演ずる〉〈人前でと んだーをやらかす〉〈ぶざまなーをしでかす〉〈エラ!・しく <445> じる・失策・Q失敗・とちる・抜かる・ぽか・ミス・ミスる・やり損なう じったい【実体】事物・事象の実際の姿や中身をさし、改まっ た会話や文章に用いられる硬い漢語。〈組織のーを調べる〉 へーをとらえる〉へーを見極める〉へーの無い会社〉回「正 体」と違って隠されているというニュアンスはなく、「本 体」に比べ具体的なレベルを含む感じがある。存在の変化 を担う持続的性質をさす場合は哲学の専門語。Q正体・本 体 じったい【実態】実際の状態の意で、いくぶん改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ー調査〉〈ーを調べる〉〈ーが つかめない〉見かけと違うニュアンスがある。現実・事 実・実際・実情・Q実状・真相 しったかぶり【知ったかぶり】実際には知らないのに知って いるような振りをする意で、主に会話に使われる俗っぽい 和語。〈ーをする〉へーをして何にでも口を出す〉、半可通 しっち【湿地】湿気の多いじめじめした土地をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈ー帯〉へーで生育する〉、Q湿 原沼地 しっと【嫉妬】自分より優れていたり恵まれていたりする他 人をうらやましく思う気持ち、特に、好きな異性の心が他 に向かうことをねたましく思う気持ちをさし、やや改まっ た会話から硬い文章まで幅広く用いられる漢語。〈心〉 〈一に駆られる〉〈一に狂う〉〈秀才にーする〉の吉行淳之介 の『砂の上の植物群』に「近い将来、彼女を独占する筈の男 に、彼は烈しいを覚えた」とある。男女間の感情につい て使うことが多いが、それ以外の妬みをさす例も少なくな しっぱい い。 妬み・Qやきもち・妬く しつど【湿度】大気中の水蒸気の量の割合をさし、会話にも 文章にも使われるやや専門的な漢語。〈ー計〉〈ーを測定す る〉〈ーが高く蒸し暑い〉の「しっけ」や「湿り気」に比べ、 その度合いを機械で計測した数値を連想しやすい。Qしっ き・しっけ・湿り気 じつに【実に】「本当に」に近い意味で、会話やさほど硬くな い文章に使われる表現。〈ーすばらしい〉へーよく頑張っ た〉へーよく描いてある〉の「本当に」に比べ、真実という 意味が薄れてほとんど程度の甚だしさを表す感じになって いる。感動した場合に用いる例が目立ち「まずい」下手 だ」「申し訳ない」などにはなじみにくいが、「ーけしから ん」とも言うようにプラス評価に限るわけではない。ほん とうに・ほんとに・Qまことに しつねん【失念】うっかり忘れてしまう意で、改まった会話 や文章に用いられる、やや古風で硬い感じの漢語。ふうっか りーする〉〈用件を一つーする〉の「忘却」よりちょっとし たことについて使う。応却・Q忘れる ジッパー「ファスナー」の商標名で、会話や軽い文章に使わ れる外来語。〈ーを上げる〉へーが滑らかに動かない〉現 在は、古風な「チャック」よりよく使われ、特にジーパンな どの連想が強い。ひチャック・Qファスナー しっぱい【失敗】やり損なう意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈作〉作戦 がみごとにーする〉〈事業にーする〉〈試験にーする〉永 井荷風の『澀東綺譚』に「これさえ多くはーに終った」とあ <446> る。ひエラー・しくじる・Q失策・失態・とちる・抜かる・ぼか・ミス・ミスる・やり損なう しっぷう【疾風】急に吹き出す激しい風の意で、主として文 章に用いられる、やや古風な漢語。〈ー怒濤〉〈ト迅雷〉 風力階級5の旧称。風・おおかぜ・Q強風・颶風・時化・陣 風・大風・台風・突風・はやて・暴風・暴風雨・烈風 じつぶつ【実物】見本や模型でない実際のそのものをさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一見本〉へ一大の模型〉 後藤明生の『吉野大夫』に「一の浅間ではない、何か架空 の山に見えた。浅間のお化けだ」とある。「写真より一のほ うがずっとハンサムだ」とも言うように、「現品」「現物」 と違って人間に対しても使い、夏目漱石の『草枕』にも「 の馬子が店先に留って」とある。現品・Q現物・本物 しっぺい【疾病】病気の意で、主に文章に用いられる古風で 正式な感じの漢語。〈長期の—に悩む〉②太宰治の『浦島さ ん』に「バンドラの箱の中には—、恐怖、怨恨、哀愁、疑惑、 嫉妬(略)などのあらゆる不吉の妖魔がはいっていて」とあ る。単障り・Q疾患・病気・病魔・病・患い しっぽ【尻尾】「尾」の意で主としてくだけた会話に用いる和 語。〈ーが長い〉〈犬が喜んでーを振る〉〈ーを巻いて逃げ る〉牧野信一の『ゼーロン』に「驢馬のーは水車のしぶき のように私の顔に降りかかった」とある。川端康成の『春景 色』には「象は調馬師の革鞭のようなーを、きりきり振り廻 していた」とある。「しりお」の転。身尾・おっぽ じつぼ【実母】血のつながった母親の意で、主に文章中に用 いられる漢語。〈幼時に—が他界し、ほとんど記憶に残って いない)②ほかに義母・養母・継母が存在する場合に限り、 それらに対して実の母であることを強調して表現すること ば。網野菊の『遠山の雪』に「は年下の青年との姦通を父 から訴えられて離婚の上、懲役に行った」とある。それでも 「が不幸であるようにと願ったことは全然ない」のに「木 にぶらさがっての死」をとげる。卫生母 しつぼう【失望】期待が外れて気持ちが沈む意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈現実にーする〉〈見込んで採用し た社員にーする〉菊池寛の『ある恋の話』に「身も世もな いようにーしてしまいました」とある。「がっかり」「気落 ち」「失意」「落胆」が落ち込んだ自分の気持ちを中心にと りあげているのに対し、この語はその要因となった対象を 含めて言及している。がっかり・気落ち・失意・O落胆 じつめい【実名】偽名でない戸籍上の実際の名前の意でや や改まった会話や文章に用いられる。「入りで暴露記事を 書く)「を明かす)「を隠し偽名で通す)自分の名前 を隠さずに示す気持ちがこめられることが多い。本名 しつもん【質問】疑問に思うことや不明な点などについて問 いただす意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の漢語。〈公開ー状〉〈突っ込んだー〉へーに丁寧 に答える)井伏鱒二の『休憩時間』に「学生時代の正宗白 鳥が英文学講師高山樗牛をー責めにして、樗牛先生を教壇 に立往生させた」という噂が出る。Q質疑・尋問 しつよう【執拗】相手がうるさく感じるほど諦めずに何度も しつこく繰り返す意で、改まった会話や文章に用いられる 漢語。へに追及する〉へに食い下がる〉へな攻撃 <447> 原慎太郎の『行為と死』に「彼らは今なお、蠅のようにに 闘いつづけていた」とある。込くどい・Qしつこい しづらい【為辛い】心理的にためられる、または、やって はみたもののうまく進まない意で、主に会話に使われる表 現。〈目上にはー〉〈道具がそろわなくてー〉ひしがたい・q しにくい しつらえる【設える】室内を飾りつけたり装置などを設置したりして整える意で、改まった会話や文章に用いられる古風な和語。〈会場を—〉〈池に噴水を—〉僕備える・Q設けるじつりよく【実力】実際に持っている力量をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈試験〉〈者〉〈を試す〉〈を出し切る〉〈の差〉そなわっている感じの「能力」に対し、努力して獲得する感じが強い。多く人間について用い、機械類について使うといくふん擬人化した感じを伴う。井上靖の『帽子』に「到底自分の」では競争者を排し得るとは思われなかった」とある。ひQ地力・底力・能力 しつれい【失礼】日常の謝罪表現の一つで、会話にも文章にも使われる。〈これはー〉(どうも小しました)〈先日はーいたしました〉へーにも程がある〉自分の不注意で、その場にふさわしくない態度をとってしまったり、相手に対して礼を失する行為をしてしまったりした場合などに使われる。例えば、部屋を間違えてうっかりドアを開けただけなら「ーしました」で済むが、室内に入って会食の料理に手をつけてから気づいた場合の陳謝のことばとしては軽過ぎる。まして、自転車でぶつかって傷を負わせる程度になると、この表現は不当に軽過ぎてかえって相手を刺激する。小沼丹 じてん の『犬の話』に「こら、犬っころなんて呼んでは飼主に」で すよ。別にーとは思わなかったが」とある。「途中でーす る」のように、退席する、別れるの意でも使う。ひ謝る・Q御 免・失敬・謝罪・済まない・陳謝・無礼・申し訳ない・詫びる じつれい【実例】実際にある例の意で、会話にも文章にも使 われる、やや専門的な漢語。〈ーを示す〉〈ーを引く〉〈ーに 乏しい〉〈文学作品からーを集める〉頭で考えた例ではな く、証拠として示せる現実に存在する例をさす。「作例」と 対立。ひ一例・ケース②・事例・用例・Q例 してい【指定】自分から特定のものをこれと指示して定める ことをさしいくぶん改まった会話や文章に用いられる漢 語。〈席〉への口座〉への場所〉〈期日をする〉〈天 然記念物にーされる〉処める・定める・制定・設定・Q特定 してん【視点】対象を見る目の位置、表現主体の対象に対する位置取りをさし、会話にも文章にも広く使われる漢語。「がずれる」〈ーを動かす〉〈科学者のーから論ずる〉小説などの文芸作品の場合は、すべての登場人物の外見はもちろん行動・心理・性格を熟知し、その人物の過去・現在から未来までも心得ている、いわば神に近い「全知ー」および、主人公、または、それと行動を共にする作中の一人物といった小説の内部の視点、あるいは、その作品世界を傍らで観察している立場の作品外の人物など、ともかく一個人の知りうる範囲に限定して述べる「制限ー」とに大きく二分される。また、この語はまれに、「ーの定まらない目」のように、視線の先をさす用法例もある。Q観点・見地・視座・立場してん【字典】漢字を一定の順序に並べ、その意味などを解 <448> じてん 説した本をさし、主として文章に漢和辞典の意で用いられ るやや古い感じの少し専門的な漢語。〈漢字専門の—〉② 「字書」とも言う。同音の「辞典」や「事典」と区別するた めに口頭表現では俗に「もじてん」と言うこともある。 字書・辞書・事典・辞典・字引 じてん【事典】事柄や物の解説を中心とした辞典をさし、主 として文章中に用いられる、比較的新しいことば。(百科— の項目)同音の「辞典」や「字典」と区別するために、口 頭表現では俗に「ことてん」と言うこともある。卩字書・辞 書・字典・Q辞典・字引 じてん【辞典】ことばを一定の順序に並べ、その意味などを 解説した本をさし、会話でも文章でも幅広く使われる基本 的な日常漢語。〈国語—〉〈英和—〉へーを編纂ふんする〉へー を引いて確かめる〉の「辞書」よりも新しい感じのことば。 会話では多く「辞書」を使ってきたが、現在では会話でもこ の語を盛んに使うようになってきた。同音の「字典」「事 典」と区別するために口頭表現では俗に「ことばてん」と言 うこともある。ひ字書・Q辞書・事典・字典・字引 じてんしゃ【自転車】ペダルを踏んで車輪を回転させて走行 する二輪の乗り物をさし、くだけた会話から文章まで幅広 く使われる日常の漢語。〈屋〉〈をこぐ〉〈で風を切 って進む〉の壺井栄の『二十四の瞳』に「はすうと鳥の ように近づいてきた」とある。Q銀輪ちゃりんこ しと【使途】物品や金銭などを何に使ったかという使用先の 意で、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。 (ーを明記する)〈ー不明の金〉ひO使い道・用途 しどう【始動】機械類が動き始める意、また、動かし始める 意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈エンジ ンがーする〉〈新鋭機をーする〉起動 「指導」ある目的に向かって指示や助言を与え教え導く意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈ー者〉〈ー要領〉〈進路〉〈初心者をーする〉〈後進のーに当たる〉〈ーよろしきを得て〉梅崎春生の『桜島』に「兵隊を直接ーして行く立場にあるのは、下士官である」とある。技能的な「コーチ」や精神的な「教導」に比べ、学問やスポーツなど幅が広い。「教育」に比べ、技術面が中心になる雰囲気がある。教える・教育・教え・教導・コーチ・Q指南・導く どう【児童】学校と関係なく漠然と子供をさす一般的な使 い方の場合、やや改まった感じの漢語。小学校に通学する 子供に限定して用いる場合は専門語。〈文学〉〈遊園〉 〈ーと保護者〉専園児・生徒 じどうかいさつ【自動改札】駅員に代わって機械が改札を行 う装置をさし、遠からず古い感じになりそうな語。へーを通 る)の駅員が確認する作業を機械がこなすこの装置は主要 な駅から徐々に広がったため、最初は物珍しく斬新な雰囲気 が強かったが、次第に普及するにつれて珍しさが薄まって きた。ほとんどの駅がその形になると「自動」は当然にな り、単に「改札」と言えば済む。そうなれば、この語形の斬 新な響きは逆に古めかしい感じに変わるだろう。 しどうしゃ【指導者】組織や集団の中で助言を与え進むべ き方向に導く人をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 <449> 〈に恵まれる〉(の腕が問われる)〈社会運動の」 ②「リーダー」に比べ、理論的支柱という面が意識に上る。 指揮官・Qリーダー じどうしゃ【自動車】エンジンの力で車輪を回転させ、道路 上を走行する乗り物の総称として、少し改まった会話や文 章に用いられる正式な感じの漢語。〈消防—〉〈高速—道〉 〈一産業〉〈一の後部座席〉〈一を運転する〉〈交差点を通行 する—の数〉火野葦平の『麦と兵隊』に「道路はひどい埃 で、前を行く—は黄色い土煙の中に隠れてしまって見えな い」とある。バスやトラックからオートバイのような二輪 車まで含まれるが、特に乗用車を連想させやすい。単 じどうにりん【自動二輪】「自動二輪車」の短縮形。主として 日常会話に使う漢語。ひオートバイ・原付・原動機付き自転車・Q 自動二輪車・スクーター・単車・バイク・モーターバイク じどうにりんしゃ【自動二輪車】「オートバイ」の意の正式な 感じの用語。道路交通法では、排気量五○○○を超えるも のをさし、五○○以下の原動機付き自転車と区別する。通 称「自動二輪」。Qオートバイ・原付・原動機付き自転車・自動二 輪・スクータ!・単車・バイク・モータバイク じどうぶんがく【児童文学】児童を読者対象とする文学作品、 童話・童謡の総称として、改まった会話や文章に用いられる 専門的な漢語。へこの図書館はーが充実している》おとぎ 話・Q童話・メルヘン しとやか【淑やか】言動が落ち着いてて気品を感じさせる 意で、よほどくだけた会話以外、幅広く使える和風の日常 語。〈な物腰〉〈なしぐさ〉〈な立ち居振る舞い〉鈴 しなう 木三重吉の『千鳥』に「きちんとした嫌さんである。」に挨拶をする」とある。一般に辞書には明確な性別の制限が明記されていないが、この語を受ける名詞が人間の場合「女性」「令嬢」「婦人」「奥様」のような女の人の例ばかりで、「なお坊ちゃま」といった男の例はほとんど見られない。「な」の次に「長男坊」とか「陸軍軍曹」とかが続くと滑稽な感じになるのは彼らに落ち着きや気品がないからではなく、この語のそのような女性的な語感と反発するからである。一方、年齢的にもある程度の制限を感じさせる。「な老婦人」にはまったく違和感がないが、「な女の子」という表現には少し抵抗を感じる。いくら家柄がよくて動作が落ち着いていても「な幼稚園児」とは言わない。おそらく女子高生あたりが境界線上にあり、この語の適用範囲は成人女性にほぼしぼられる。以上のように、この語には性別と年齢との両方の語感が働いていると考えられる。 しな【品】ある用途に当てる物、特に商品をさして、会話に も文章にも使われるいくぶん専門的な和語。〈一薄〉〈記念 のー〉へいーを選ぶの「安いとどうしてもーが落ちる」 のように、品質の意でも使う。Q品物・物品 しなう【撓う】弾力があってしなやかに反る意で、やや改ま った感じの会話や文章で用いられる和語。〈木の枝が一〉 〈生まれつき体が柔らかく、よく—〉〈鉄棒が一〉〈このビル は地震の際にーことで衝撃をやわらげる構造になっている〉 ②武田泰淳の『風媒花』に「手入れの行き届いた白い両掌の 指が組み合わされ、便利なゴム製器具のようにー・ってい る」とある。もっぱら形状の変化に注目する「反る」に比 <450> しなそば ペ、弾力のあるしなやかさに注目した語。肉体の場合、後 方に限られる「反る」と違い、思う方向になめらかに曲がる イメージが強い。なお、「る」で終わる動詞が多いところか らか、俗に「しなる」の形で使われることもある。马しなる Q反る・撓む しなそば【支那蕎麦】「ラーメン」の意で使われた古めかしい 用語。〈屋〉〈一の屋台〉「支那」の差別的な語感が嫌わ れ、現代ではほとんど使われない。Q中華そば・ラーメン しなちく【支那竹】かつて「メンマ」の意で会話でも文章で も普通に使った漢語。〈中華そばのー〉日本人の使う「支 那」という響きが中国人にとって悪いイメージがあるとし て一般に使用を控えているためか、今では古風な響きがあ る。 しなびる【萎びる】野菜などが水分をすっかり失って新鮮な 感じがなくなる意で、会話や改まらない文章に使われる目 常の和語。ぐきゅうりがー〉②「しおれる」以上に水分がな くなった感じがある。比喻的に「年老いて肌がー」などとも 使う。佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「彼の心は、決して打砕 かれているのではなかった。ただー・ぴているだけである」 とあるのも気力のなえている意である。ひしおれる① しなもの【品物】主に商品などの取引対象となる物などをさ して、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の最も基本的な和語。〈高価なーを扱う〉へがはける) へが不足する)「が確かだ」「安物とはがまるで違 う」のように「品」と同様、品質の意でも使う。一般社会 では「品」よりよく使う。Q品・物品 しなやか弾力性があって抵抗なく曲がるさまをさし、会話 でも文章でも使われる優雅な雰囲気の和語。〈な髪〉 な肢体〉〈な身のこなし〉川端康成は『千羽鶴』の中で ヒロイン文子のしなやがさを印象的に描き出した。「文子 はにかわした」「文子の意外なさに、あっと声を立てそ うだった」「それはあり得ぐからざるさであった」と繰り 返して場面は迫り上がり、「女の本能の秘術」のように「文 子は温い匂いのように近づいただけであった」というクラ イマックスを迎える。このように「しなやか」という語は 柔軟さと強靭だ。さを兼ね備えた好感度の高い表現であった が、最近は粘り強さの面が意識されない傾向が見受けられ る。雑誌『言語生活』の「語感とイメージ」と題する座談会 で詩人の谷川俊太郎が、校歌の作詞を頼まれてその中に 「しなやか」ということばを使ったら、弱々しいという文句 が出て必死に弁明してやっと通した、という身近な例を出 して近年の語感の衰弱を嘆くのを司会者として目撃した。 Qしなう・しなる・たわむ シナリオ映画やテレビの台本をさして、会話にも文章にも 使われる外来語。「ライター」〈映画の」②伝統的な芝 居には語感がなじまない。「すべてー通りに事が運ぶ」のよ うに筋書き・計画を意味する比喻的用法もある。鳥戯曲・脚 本・コンテ・Q台本 しなりようり【支那料理】「中華料理」の昔の言い方。小津 安二郎監督の映画『戸田家の兄妹』(一九四一年)で戸田進太 郎(藤野秀夫)が妻がおいしかったという「白い、あんかけ の様な」ものをさして「あれはじゃ一番うまいよ」と言 <451> う。「支那」の語は日本人が使うと差別意識が感じられると して「支那そば」「支那竹」などとともに今では使用を控え ている。ひ中華料理 しなる【撓る】「撓う」の俗語形。〈あんまりー・らないで折 れやすい〉も撓う しなん【指南】芸能や武術などを教え導く意で、会話にも文 章にも使われる古めかしい漢語。〈ー役〉〈剣道のーをす る〉〈ひと手ーにあずかりたく〉〈ーを受ける〉回『あくび 指南』と題する落語があり、立川談志は『新釈落語咄』でこ の究極の無意味を「これを爛熟といわずして、他の何処に この言葉の使い場所があるだろうか」と評した。刂教え る・教示・Q指導・導く シニア「年配者」「年寄り」の意をやわらかく伝える婉曲 表現。〈一コース〉〈一の部に出場する〉語感の働きにく い外国語を利用したほかしの表現。高齢者・年寄り しにくい【為難い】「やりにくい」意で、会話にも文章にも使 われる表現。〈人が見ている前では—〉〈足場が悪くて—〉 ひしがたい・Gしづらい しにものぐるい【死に物狂い】死を覚悟しているほどなりふ りかまわず猛烈に取り組んだり暴れたりする意で、主に会 話に使われる和語表現。へーで猛勉強する〉へーで頑張る〉 帰広く使われる「必死」はもちろん、「命懸け」よりもさ らに追い詰められた状況で使う傾向があり、取り乱した感 じが最も強い。Q命懸け・必死 しによう【屎尿】大小便の意で、主に文章に用いられる、正 式な感じの漢語。〈一処理〉〈一汚水〉の大小便と違って しぬ 排泄作用は意識されず、「糞尿」同様もっぱら汚物をさ す。Q汚わい・糞尿・糞便・便 しにん【死人】死亡した人間をさす。「死者」に比べ、やや古 い感じの口頭語的な日常の漢語表現。〈ーが出る〉〈ーに口 なし〉岩野泡鳴の『耽溺』に「半ばーのように固く冷たい ような気がした」とある。「ーのように蒼ざめる」など、死 んだ人間一般の特徴をさす用法の場合は「死者」ではなじ まない。ひ遺骸・遺体・かばね・死骸・しかばね・死屍・Q死者・死体 しびと・亡骸・むくろ じにん【自認】自分で認める意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い感じの漢語。〈過失を—する〉〈日ごろの努力 不足を—する〉自任 じにん【自任】自負する意で、やや改まった会話や文章に使 われる漢語。〈斯界の第一人者と—する〉〈映画界の巨匠を もって—する〉自認 じにん【辞任】任期の途中で自らの意思でその任務を降りる 意で、やや改まった会話や文章に用いられる正式な感じの 漢語。〈委員長のーを要求する〉〈ー表明〉〈ーの決意を固 める〉〈役員をーする〉大臣を辞任しても国会議員という 資格は失われず、役所や企業でも役を降りるだけで勤務先 を退職しないのが通例で、「辞職」とは若干ニュアンスが異 なる。「就任」と対立。ヲ辞職・退職・Q退任 しぬ【死ぬ】生命を失う意で、くだけた会話から改まった硬 い文章まで幅広く使われる最も一般的な日常語。へー覚悟で 事に当たる)へー間際に言い残す)へーか生きるかの瀬戸 際)志賀直哉の『城の崎にて』に「自分は偶然にー・なな <452> シネマ かった。蠟螈は偶然に「んだ」とある。もと「過ぎ去る」「しおれる」といった意味からの間接表現というが、今では最も明確な直接表現。その露骨な感じを避けて、「なくなる」「永眠する」以下さまざまな間接表現が試みられてきた。どの言い方も最初はそれとなくほのめかすだけの婉曲は表現として有効であるが、縁り返し使っているうちに意味と直結するようになって間接表現として機能しなくなり、次から次へと新しい間接表現を生み出してきた跡が数多く残っている。さらには、「死」と同音の「四」まで、縁起をかついでシの代わりにヨンと発音し、病室や駐車場などの番号でも3から5にとぶ例が多い。このような表現態度にことさら死を忌むその人間のこだわりが映ってい る。勇敢え無くなると上がる②あの世に行く息が切れる息が絶える息を引き取る往くいけなくなる永眠往生お隠れになる落ちる②おめでたくなる帰らぬ人となるくたばる死去死亡昇天逝去斃れる他界長逝露と消える天に召される亡くなる僕くなる不帰の客となる不幸がある崩御没する仏になる身罷る脈が上がる空しくなる藻屑となる逝く臨死臨終 「映画」を意味する古い感じの外来語。〈オルガン〉 (サイレント映画の伴奏用)ヲランス語「シネマトグラ フ」の略。英語系統の「キネマ」ほどの広がりは持たなかっ たようで、それだけ昔懐かしい感じも薄い。Q映画活動 ②活動写真・キネマ・ムービー じねんじょ【自然薯】野生種の山芋をさし、会話にも文章に も使われる、やや専門的な漢語。〈ーをとろろにする〉裁 培種の長芋に対する名づけ。とろろ芋・長芋・Q山芋 しのぐ【凌ぐ】程度や困難を乗り越える意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈前作を—出来〉〈前回を—人気〉〈プ ロを—腕前〉〈飢えを—〉〈雨露を—〉〈ー・ぎやすい気候〉 ひ凌駕 しののめ【東雲】東の空の明るくなりかける時刻、また、そ の雲を意味する、古風な雅語に近い和風表現。〈1の光〉 泉鏡花の『高野聖』に「今朝もーに袂を振り切って別れよう とすると」とある。児暁・明け方・曙・Q朝ぼらけ・朝まだき・払暁・ 未明・夜明け・黎明 しのびあい【忍び会(逢い】愛し合う男女が人目を忍んで会 う意で、会話にも文章にも使われる古風な和語。へーを続け る仲との噂)古く文学作品などにしばしば用いられ、今 でもひとつの雰囲気を漂わせる。Q逢引・逢瀬・デート・密 会・ランデブー しのびなき【忍び泣き】声を立てないように泣く意で、主に 文章中に用いられる、古風で趣のある和語。へーの声がもれ る)北原白秋の詩『城ヶ島の雨』に「雨は真珠か、夜明の 霧か、それともわたしのー」とある。鳥噂咽をしゃくりあげ・ Qすすり泣き・泣き咽ぶ・むせび泣き・むせぶ しのぶ【忍ぶ】避ける・我慢する意で、改まった会話や文章に 使われる少し古い感じの和語。《人目を—》《恥を—》《世 を—仮の姿》②ちなみに、森鷗外の『空車』に、何も積 んでいない大きな荷車の威厳に圧倒され、「電車の車掌と 雖ぶも、車を駐めて、ーんでその過ぐるを待たざること を得ない」と書いてある。専偲ぶ しのぶ【偲ぶ】懐かしく思い出す意で、しっとりとした文章 <453> などに用いられる古風で抒情的な感じの和語。〈はるかに 故郷を—〉〈往時を—〉〈しみじみ故人を—〉〈奥ゆかしい 人柄がーばれる〉匕忍ぶ しば【芝】芝生にされるイネ科の多年草をさし、会話にも文 章にも使われる、いくぶん専門的な和語。〈庭にーを張る〉 〈ーが根づく〉〈ーを刈る〉ひ芝生 しはい【支配】人や組織などを思いどおりに動かしたり束縛 したりする意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢 語。〈階級〉〈国民を—する〉〈—下に置く〉内田百間の 『百鬼園先生言行録』に「どうにでも思いどおりになる自分 の口が欠伸の間だけは自由にならない。つまり自分自身よ り別なものに、自分の口を—せられてしまう」とある。「運 命を—する」「感情を—する」のように影響する意の抽象的 な用法もある。ひ治める しばい【芝居】大衆的な演劇、特に伝統的な歌舞伎や新派劇などの総称として、会話やさほど改まらない文章に使われる和語。〈一見物〉〈一小屋〉〈一を打つ〉のと、民衆が芝の上に座って観劇したことから。「へたなーはやめろ」のように、人を欺く行為をさす用法もある。Q演劇・劇・ドラマしはいにん【支配人】会社や商店などで経営者から代理として営業に関する権利を任されている人をさして、会話にも文章にも使われる漢語。〈劇場のー〉〈ホテルのー〉の丼伏鱒二の『珍品堂主人』で「解雇通知には一の捺印さえあれば結構です」と弁護士が述べている。マネージャー じはく【自白】犯罪行為など、他人に知られると不利になる 情報を、それが事実であると自ら認める意で、会話にも文 しばふ 章にも使われる、やや専門的な硬い漢語。〈取調えでーに追い込む〉夏目漱石の『こころ』に「先生がなんのためにこんなーを私にして聞かせたのか」とある。り供述・告白・Q自供・白状 しばし【暫し】「少しの時間」を意味する、少し詩的な雰囲気 のある古語的な表現。〈ーの別れ〉〈ー待たれよ〉〈ー佇 む〉林芙美子の『放浪記』に「悩ましい胸の哀れなひびき の中に、私はうっとりしていた」とある。少々・少し しばしば【屢(屢々)】あまり間隔を空けずに何度も繰り返す 場合に、改まった会話や文章に用いられる和語。へー訪れ る〈ヘー遅刻する〉仮名書きの例が多い。Q度々・ちょい ちょい・ちょくちょく・よく じはだ【地肌】人や物の表面の意で、会話にも文章にも使わ れる表現。「がすべすべしている」(が荒れる)へに 着る)「伐採のやりすぎで」がむき出しになる」のよう に、本来は見えないはずのものが露出したというニュアン スを伴うこともある。人間の場合は「髪が減って頭のーが 見える」のように使われ、瀧井孝作は『無限抱擁』で、病妻 の「生地のすいた」頭に「汗の玉が見える」と冷静に描きと った。ひ素肌 しばたく【瞬く】しきりにまばたきする意で、主に文章に 用いられる古めかしい和語。〈目を—〉の「しばだたく」と も「しばたく」ともいう。谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に「夢 のような明るさをいぶかりながら眼を—」という用例があ る。専またたく・Qまばたく しばふ【芝生】芝を敷き詰めた地面をさし、会話にも文章に <454> じばら も使われる日常の和語。〈ーが広がる〉〈ーに寝ころぶ〉 小沼丹の『エジプトの涙壺』に「教職員、校友などがーの綺 麗な、菊の美しい庭園に多数集まっていた」とある。 ヒばら【自腹】自分の金で支払う意で、会話や軽い文章に使 われる表現。〈ーを切らされる〉本来なら自分が払う必要 がないという意識が感じられる。林芙美子の『放浪記』に 「ーだから、スッテンテンになってしまったわ」とある。 私費・自費・Q自前 しはらう【支払う】代金や料金などをその場で相手に渡す意 で、改まった会話や文章に用いられる、やや事務的でいくぶ ん形式ばった和語。〈代金を—〉〈費用を—〉〈現金で—〉② 小切手やカードの場合は現金の受け渡しはないが、相手側 と直接のやりとりがある。马出費・払う② しばらく【暫く】少しの間の意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈もうーお待ちください〉〈ー休養する〉「やあ、 ー」「会っていない」のように、「暫時」や「しばし」と違 って、かなり長い間という気持ちで使うこともある。専暫 時・Qしばし しばれる「凍る」「きびしく冷え込む」の意の北海道から北東北にかけての方言。〈今夜はー〉児寒い しひ【私費】個人が負担する費用をさし、改まった会話や文 章に用いられる、やや専門的な漢語。〈留学〉へでまか なう〈を投ずる〉島崎藤村の『新生』に「で洋行を 思立った留学生」とある。「官費」「国費」「公費」と対立。 り自腹・Q自費・自前 じひ【慈悲】慈しみ憐れむ意の仏教語。古風で、抹香くさい 感じを意識する人もある。〈ーの心〉〈ーをかける〉森鷗 外の『阿部一族』に「殉死を許して遣ったのはーであったか も知れないーとある。専憐れ・気の毒・同情・Q情け じひ【自費】自分で負担する費用の意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈出版〉へーで払う)会社持ちでないと いう意味合いでよく使う。福永武彦の『草の花』に「一で賄 える患者なんか数える程しかいなかった」とある。自腹・ Q私費・自前 じびき【字引】漠然と「辞典」類をさし、主として会話によ く使った古風な日常語。〈手元のーで調べる〉の「字典」の ほか「辞典」をさすことも多いが「事典」は含まない。漢字 を調べるためによく引いたところから。単字書・Q辞書・事典・ 字典・辞典 じひつ【自筆】代理人でなくその本人が書く意で、会話にも 文章にも使われる漢語。「の原稿」「の書類」氏名欄 はーのこと」当人の筆跡であるか否かが問題になるとき に使われる。直筆 しびと【死人】「死人」の古めかしい和風表現。「を担ぎ込む」②芥川龍之介の『偷盗』に「が夫に食われるのさえ、見ていられない程、やさしい」とある。漢字表記は「しにん」と読まれるので、そう読ませたければ「死びと」と書くのが無難。遺骸・遺体・かばね・死骸・しかばね・死屍・Q死者・死体・しにん・亡骸・むくろ しびれる【痺れる】感覚がなくなって自由に動かなくなる意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 和語。〈長く正座して脚がー〉〈後遺症で右半身がー〉林 <455> 芙美子の『浮雲』に「酔いが激しくなるにつれ(略)じいんと ー・れてきた」とある。「あまりの美声に」など、陶醉状態 になる意の比喻的な拡大用法もあり、その場合はやや俗っ ぼい響きを感じさせる。刂麻痺 じふ【自負】自分の能力・行為・実績などに自信を持ち、その ことを誇る気持ちをさし、改まった会話や文章に用いられ るやや硬い漢語。〈ー心〉〈技術者としてのー〉〈いささか ーするところがある〉図大岡昇平の『野火』に「甘やかさ れ、怠けた左手は、長くしなやかで、美しい。左手は私の肉 体の中で、私の最もーしている部分である」とある。意識 的な「自慢」と違い、態度や雰囲気としておのずと現れ出る 感じが強く、対人関係の常識に違反するマイナス面は特に ない。過信・気位・矜持・自信・自尊心・自慢・ブライド・Q誇り しぶい【渋い】「けち」に近い意の和語。硬い文章以外に広く 使われる日常語。へいざ支払う段になると、思いのほかー 図多義語のため、非難のニュアンスが強く伝わりにくい。 けち・けちん坊・倹約家・Q渋ちん・締まり屋・しみったれ・しわい・ 節倹家・みみっちい・吝嗇りんし家 しぶき【飛沫】勢いよく飛び散る水滴をさし、会話にも文章 にも使われる和語。へーがかかる〉へーを上げて泳ぐ〉回激 しく吹きつける雨をさすこともある。Q飛沫水煙 しぶちん【渋ちん】「けち」の意の俗語。へにしては上出来 だ」「渋い」を人の名めかした感じの語形で、おとけた雰 囲気がある。ひけち・けちん坊・倹約家・Q渋い・締まり屋・しみっ たれ・しわい・節倹家・みみっちい・吝嗇と家 しぶつ【事物】事と物をまとめてさし、改まった会話や文章 しへい に用いられる硬い漢語。〈事象〉〈一の名称〉〈身辺の一〉 物事」と逆に「物」のほうに重点がある。事・事柄・事 象・物・Q物事 じぶん【時分】会話でも文章でも使われる「頃」の意の古風 な漢語。〈子供の—〉〈あの—は仲間とよく遊んだものだ〉 ②小津安二郎監督の映画『東京暮色』(一九五七年)で明子 (有馬稲子)が家を出て行った実母のことを「むかあしね、う ちが東五軒町にいた」、近所にいた人だって」と家族に話 す。こんなふうに昔を思い出すようなときによく用いたこ の語は今でも使わないわけではないが、たいてい「そのこ ろ」「あのころ」で済まし、特に若い人はほとんど用いな い。ひ往時・時期・Q当時 ぶん【自分】考えたり行動したりする主体としての当人を さし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。〈ー勝手にふるまう〉〈一本位に考える〉 〈ーから言い出す〉〈ーのことはーでやる〉〈自己」や「自 身」が思考の対象としての内面の自分自身をさす意識があ るのに対し、この語は思考の主体としての自分自身を思わ せる傾向がある。武者小路実篤の『お目出たき人』に「は 今年二十六歳である。は女に餓えている」とあるように、 以前は単に一人称代名詞「わたくし」の意でも使った。志賀 直哉の小品『山鳩』にも「撃ったのはーではないが、食った のはーだという事も気が咎めた」という例が出る。ここは 当人が自身を対象化した感じが強い。おのれ・Q自己・自身・ みずから しへい【紙幣】紙製の貨幣をさして、改まった会話や文章に <456> しへんけい 用いられる硬い漢語。〈ーを四つ折にする〉〈新しいーが発 行される〉马札 しんけい【四边形】辺が四つある点に注目した命名。〈台形 も一の一種児矩形・四角・四角形・長方形・長四角 しぼ【思慕】相手をひそかに思い慕う気持ちをさし、主とし て文章に用いられる漢語。へーの念が芽生える〉へーの情が 高まる)の小山いと子の『壁の中の風景』に「日傘をくるく る廻し、ーの情に駆られながら、野の道を歩いてゆく」とあ る。「愛慕」「恋慕」に比べ、やや隔たりのある相手に対す る控えめな態度が感じられる。Q愛慕・懸想・恋慕 しほう【司法】国家が法律を実際の事実に適用する行為をさ し、学術的な会話や文章に用いられる専門的な漢語。「制 度」(「権」(「書士」(「解剖」(「の力を借りる」)「立 法」「行政」と対立。具体的には民事上・刑事上の裁判をさ す。ひ裁判 しぼう【死亡】「死ぬ」意で、主として改まった文章に用いる 漢語。〈ー者〉〈ー通知〉〈事故でーする〉〈ーが確認され た〉井上靖の『あすなろ物語』に「春さんのーの記事」と ある。「死」を最も客観的にとらえた直接表現。転敢え無く なる・上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取 る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめで たくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・昇天・逝去・斃れ る・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる・儚なくなる・不 帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷する・脈が上 がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 しぼう【志望】将来こうなりたいと望むことをさし、会話に も文章にも使われる漢語。「校《第一」《医学部」 芸術家を「する」「志願」より遠い将来を考えている感 じが強い。志願 じぼうじき【自暴自棄】「やけ」の意で主として文章に用いられる漢語。〈何をやってもうまく行かずーになる〉回類語中で最も硬い表現。き捨て鉢・Qやけ・やけくそ・やけっぱち・やけのやんハ・破れかぶれ しぼむ【涸(萎)む】ふくらんだり開いたりしていたものが生 気や張りを失う意で、会話にも文章にも使われる和語。風 船がー〉〈花がー〉②谷崎潤一郎の『細雪』に「また庭へ降 りて行って、今度は平戸の花のー・んだのを摘みはじめた」 とある。「夢がー」のように、比喻的に衰えて縮む意にも使 う。ひしおれる①・すぼまる・すぼむ・つぼまる・つぼむ しぼる【絞る】狭める意で、くだけた会話から硬い文章まで 広く使われる日常生活の和語。《雑巾を—》《焦点を—》 〈音量を—〉〈問題を—〉〈候補を—〉児搾る しぼる【搾る】締め付けて取り出す意で、主として会話や軽 い文章で使われる、やや俗っぽい和語。〈牛乳を—〉〈油を ー〉〈知恵を—〉〈税を—〉の「上司にさんざんー・られる」 のような比喩的慣用句では、意味が抽象化するため仮名書 きが多く、文体的にも俗っぽさが増す。ひ絞る しほん【資本】事業を行うのに必要な基金の意で、改まった 会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈会社を設立す る金〉ヘこの事業には莫大なーが必要だ〉夏目漱石の 「坊ちゃん」に「兄が下宿へ来て金を六百円出してこれを ーにして商売をするなり」とある。俗に、「体がーだ」のよ <457> うに、活動の基礎となる大事なものの意に拡大して用いる 比喩的用法もある。見がん金②・もと金①・Q元手 しま【縞】二色以上の色糸で織り出す縦か横の筋模様をさし て、会話にも文章にも使われる和語。〈ー模様〉〈格子ー〉 回衣料品では主に縦縞を「ストライプ」、横縞を「ボーダー」 という。ひストライプ しまい【仕舞/終い】「終わり」の意で主に会話に使われる古 風な和語。〈話を—まで聞け〉へーには怒るぞ〉(これで今 日はおーにしよう)の「おー」の形で使うことが多い。「こ うなったらもうすべておーだ」のように、しばしば絶望的 なニュアンスで用いる。小津安二郎監督の映画『東京物語』 には、老妻の容態を医者をしている長男に明け方までもて ばいいと言われた周吉(笠智衆)が、「そうか…おーかのう」 と嘆く場面があり、そこでは死ぬことを間接的にさしてい る。り終わり・最後・末 しまう【仕舞う】あるべき場所に移して保管する意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本 的な和語。〈食器を戸棚に」〈残りを冷蔵庫に」〈奥に 大事に」〈日曜大工が終わって、道具類をそれぞれの場所 に」〈節句が過ぎて五月人形を」〈島崎藤村の『桜の実 の熟する時』に「夏服の類を元の暗いところへ」・いなが ら」とある。「片づける」と違って物に焦点があり、場所を 空けるためではなく、使わなくなった物を保存するために 本来の場所に収納することに中心がある。片づける じまえ【自前】費用を他から支給されずに自分で負担する意 で、会話や硬くない文章に用いられる表現。(一の衣装) じまん 〈交通費はだ〉堀田善衛の『広場の孤独』に「の船な んか一隻もないらしい」とある。Q自腹・私費・自費 しまつ【始末】適切に処理して決まりをつける意で、会話に も文章にも使われるやや古風な日常の漢語。〈後—〉〈火を ーする〉〈ーをつける〉〈田舎の家をーする〉正宗白鳥の 『入江のほとり』に「自分のーは自分でやらせることにした ら、些とは普通になるだろう」とある。「処分」より会話的 で、大仰な雰囲気に欠ける。「書」の場合はやや専門的な 感じがある。処分 しまりがない【締まりが無い】節度なくきりっとしていない 意で、会話や硬くない文章に使われる和語表現。〈口元に ー〉へにやけた顔〉〈金銭にー〉、Qだらしない①・ルーズ しまりや【締まり屋】「倹約家」より古風で会話的な和語。 〈町内きってのー〉、けち・けちん坊・Q倹約家・渋い・渋ちん・しみ ったれ・しわい・節倹家・みみっちい・吝嗇んと家 しまる【絞まる】締め付けられる意で、会話でも文章でも使 われる和語。〈首がー〉専締まる しまる【締まる】緩みのない状態になる意で、会話でも文章 でも使われる和語。〈筋肉が—〉〈気持ちが—〉〈相場が—〉 中山義秀の『碑』に「筋肉の層でつみあがった彼の五体は 藤蔓のようにー・ていて」とある。圧迫されて「首が—」 の場合は「絞まる」と書く。「会場のー・った雰囲気」「さ あ、ー・っていこう」のような緊張の意味合いでは「緊まる」 と書くこともある。と絞まる・引き締まる じまん【自慢】自分側や自分に関係のある物事を他人に誇る 意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 <458> しみ の漢語。〈ー話〉〈腕ー〉〈ーの息子〉〈ーげに語る〉〈出来 栄えをーする〉の「自負」と違い、ことばや行為や態度など として積極的に他人に働きかける雰囲気があって、世間で 常識的に嫌われる。専威張る・思い上がる・自負 しみ【染み】顔面にできる黄色や褐色の斑点をさし、会話に も文章にも使われる和語。〈顔の—〉〈—が増える〉谷崎 潤一郎の『細雪』に「唇の周りへ、ちょうど子供が餡で口の 端をよごしたような風に、黝い—が出た」とある。この意 味では「肝斑」とも書く。「になる」「を抜く」のよう に、液が染み込んで汚れたものをさす用法の例が多い。 そばかす しみじみ【沁み沁み】心の底から深くの意で、会話や硬くな い文章に使われる和語。〈ー感じる〉へと語る〉へとし たおかしみ)庄野潤三の『舞蹈』に「貧乏ほど悲しいこと はない。それを、おれはー感じた」とある。福原麟太郎の 『泣き笑いの哲学』には「おかしく面白くまたーと悲しい」 とある。ひしんみり・Qつくづく しみず【清水】地面や岩の間などから湧く冷たく澄んだ水を さし、改まった会話や文章に用いられる、やや古風で美的な 和語。〜が湧き出る〜〜を手に掬ぐう〜②永井荷風の『〜〜 らんす物語』に「後の山手から湧いて来るらしいーが青苔 の上にささやかな音を立てて流れている」とある。専泉・Q 湧き水 じみち【地道】地味ながら堅実な意で、会話にも文章にも使 われる、いくぶん古風な感じの表現。〈に働く〉〈な努 力が実を結ぶ〉〈に活動を続ける〉ひ堅実・着実・Q手堅い しみつく【染み付(着)く】内部まで入り込んで抜けにくくな る意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。句い がー〉〈癖がー〉安岡章太郎の『海辺の光景』に「泣き声 はまるで壁の中にーいてしまったように、そここに残っ て」とある。Qこびりつく焼き付く しみったれ非常識なまでに物借しみをするようすをさし、 くだけた会話や軽い文章に使われる俗っぽい和語。この ー、ただで済ませようとしやがる〉(あのーがよく寄付する 気になったな)夏目漱石の『坊っちゃん』に「田舎者はー だから五円もやれば驚ろいて眼を廻すに極っている」とあ る。具Qけち・けちん坊・倹約家・渋い・渋ちん・締まり屋・しわい・節 倹家・みみっちい・吝嗇家 しみったれる「けちけちする」意で、主としてくだけた会話に使う和語。「・れた使い方」「・れた了見」②ちなみに、小林秀雄は『Xへの手紙』で、「この世の真実を陥穽を構えて捕えようとする習慣が身についてこの方、この世はいずれー・れた歌しか歌わなかった筈だったが」というふうに、「陥穽」といった硬い語と「しみったれた」という俗っぽい話しことばとを一つの文の中に同居させている。そういう話題を向けると、言語が社会的秩序を失って文章の乱れた時代に文士として出発したせいもあって、用語が乱雑で形式が整っていない自分の複雑な文章が生まれたのだと、鎌倉の自宅でみずから解説してみせた。Qけち・けちくさいしみったれ・せこい・みみっちい しみる【染みる/浸みる】物の内部に入り込んで広がる意で、 会話でも文章でも広く使われる日常生活の和語。〈煙が目に <459> 〈包み紙にたくあんのにおいがー〉〈雨が壁にー〉壺 井栄の『母のない子と子のない母と』に「顔をしかめている のは、みかんの木のとげでひっかかれた手に、つゆがーの でしょう」とある。「にじむ」が内側から外表面に向かうの に対して、この「しみる」は外側から内部に向かう移行。 「寒さが身にー」のも、感動して「心にー」のもその延長線 上にある発想。ひにじむ しみん【市民】その市に居住し市の構成員である人間、また、 国家に対する義務と権利を有する一般の人をさし、会話で も文章でも広く使われる漢語。〈ー運動〉〈善良なー〉へ一 般ーを巻き込む〉へーの信頼を裏切る行為〉の「公人」に対 して、政治家や軍人などを除く一般大衆をさして使われる。 ただし、選挙や社会運動として実際にこの語が使われる場 合は「国民」よりかなり左傾した活動の色が濃く感じられ る。Q国民・人民・民 じむ【事務】官公庁・会社・商店などで主に文書の作成や会計などをこなす机上の仕事をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる漢語。〈所〉〈一処理〉〈一を執る〉〈一が滞る〉吉行淳之介の『鳥獣虫魚』に「私の席のちかくに、ひとりの女ー員が坐っている」とある。Q庶務・総務じむしよ【事務所】事業経営などに必要な庶務を執る場所をさし、会話にも文章にも使われる一般的な漢語。〈法律ー〉〈一の経費〉〈一に届ける〉学校の事務室なども含まれる。オフィス しめい【氏名】名字と名前の総称で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈住所—〉〈ーを名乗る〉〈書類にーを記 しめりけ す 姓名名名字名前一体感強。Q 姓名名名前 しめきり【締め切り/メ切】期限が来て受付などを打ち切る 意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈原稿の 日〉〈申し込みのーが迫る〉〈出願期間のー間際〉〈ーが過 ぎる〉〈ーを守る〉Q期限・期日 しめくくる【締め括る】だらだら終わらないように物事の結 末をつける意で、会話にも文章にも使われる和語。話をう まくー)〈最後をー〉の「まとめる」と違って、全体の筋道 を通すことより、最後の部分で引き締める点に中心がある。 まとめる しめしあわせる【示し合わせる】目配せなどの合図をしたり、 あらかじめ話し合って決めておいたりする意で、会話や軽 い文章に使われる和語。〈友達とー・せて授業を抜け出す〉 「二人でー・せて人目につかない場所でひそかに逢う〉人 目を避けてこっそり行う行為のため、悪いことを連想させ る傾向が強い。ひQ打ち合わせる・申し合わせる しめす【示す】相手の感覚・認識の対象として表す意で、改ま った会話や文章に用いられる和語。〈身分を証明するものを ー〉〈図でー〉〈記号でー〉〈条件をー〉〈誠意をー〉〈関心 をー〉〈反応をー〉〈傾向をー〉図大岡昇平の『俘虜記』に 「この嫌悪は平和時の感覚であり、私がこのときすでに兵士 でなかったことをー」とある。Q表す・表現・見せる しめりけ【湿り気】「湿気」や「潤い」の意で、会話や軽い文 章に使われる日常語。〈乾して布団のーをとる〉「しっ け」以上に感覚的なとらえ方の表現。ふしっき・Qしっけ・湿度 <460> しめる しめる【湿る】水分を吸って湿気を帯びる意で、会話にも文 章にも使われる日常の和語。〈ー・った空気〉〈火薬がー〉 川端康成の『雨傘』に「濡れはしないが、なんとはなしに肌 のー、霧のような春雨」とある。ひしける・ひしっける・しんめ り しめる【閉める】開いた状態から閉じた状態に変える意で、 くだけた会話からさほど硬くない文章まで広く使われる日 常生活の基本的な和語。「閉じる」より会話的なレベルの 語。〈窓を—〉〈蓋を—〉〈コルクの栓を—〉〈今年限りで店 を—〉の小沼丹の『黒と白の猫』に「雨戸を—・めてしまう と、とんとん、と(猫が)雨戸を敵くようになった」とある。 臨時に開けたものを元に戻すというイメージのある「閉じ る」に対して、この語は開放状態から閉鎖状態に移行させ る途中の過程を意識させやすい。「少し」とか「半分」とか となると「閉める」が自然で、「閉じる」とするといくらか 違和感があるのはそのせいであるう。閉さす・Q閉じる しもごえ【下肥】「コエ」が奨尿ふんにをさすことを明確にする ために主として会話に使われる古風な和語。へーをやる) Q肥・肥やし・肥料 しや【視野】目を動かさずに見える視力の及ぶ範囲をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈奥行—〉〈—に入る〉 〈—が狭い〉〈—を広げる〉②小川国夫の『貝の声』に「浩の ーには彼が、膝の辺から臙脂の頸巻まで、入っていた」とあ る。専視界 しゃ【社】自分の勤務する会社をさし、会話や軽い文章に使 われる漢語。〈わがー〉〈一度ーに戻る〉の「会社」の略。 会社 シャー口の広い魔法瓶をさし、会話にも文章にも使われる 外来語。「に水を足して沸かす」「魔法瓶」より新しい 感じで、湯を沸かす機能がついている例が多い。電気炊飯 器の意にも使う。おポット・Q魔法瓶 じゃあく【邪悪】心がねじれていて考えや言動が人の道に外 れている様子をさし、主として文章に用いられる硬い漢語。 「な行い」〈「な心」②精神的な「まこしま」に比べ、行為 として実現した後の評価をさす例も多い。悪辣・Qよこし ま・悪い シャープ 切れ味や頭脳や感覚などが鋭い意で、会話にも文 章にも使われる外来語。〈動きがーで無駄がない〉〈頭の働 きがーだ〉錫敏・鋭利・Q鋭い シャープペンシル軸に入れた芯を徐々に押し出して書く鉛 筆代わりの筆記具をきす和製英語。〈胸のポケットから時代 物のーをおもむろに取り出す〉のだけた会話では短縮形 「シャーペン」がよく使われる。ひシャーペン シャーペンくだけた会話で使われる和製英語「シャープペ ンシル」の省略形。〈一の芯補充する〉ひシャープペンシル しゃいん【社員】ある会社に勤務する従業員をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈正ーとして採用する〉〈平 の身分〉〈ー教育が徹底している〉〈ー食堂〉吉行淳之介 の『娼婦の部屋』に「大学をやめて正式のーになるか、アル バイトをやめて大学を卒業するか」とある。通常は会社員 一般でなく、特定の会社を頭に置いて使う。ひQ会社員・サラ リーマン・従業員・職員・勤め人 <461> しゃかい【社会】共同生活を営む人間の集団やその場をさし て、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的 な漢語。「実」の経験を積む〉へに出て働く〉へ復帰を 果たす〉へに貢献する〉島崎藤村の『桜の実の熟する 時』に「これから」の方へ出て行こうとする青年等のため に、前途の祝福を祈って呉れた」とある。「芸人の」「大 相撲の」「学者の」「限られた」でだけ通用する」の ように、共通の職業などを持つ仲間の交際範囲のような狭 い部分を、他と異なる特殊な集まりという意識で独立させ る場合もある。2・Q世間・世の中 じゃがいも【じゃが芋】会話にも文章にも広く使われる最も 普通の日常語。〈ーをゆでる〉「ジャガタラいも」の略。 ひジャガタラ芋・Q馬鈴薯 ジャガタラいも【ジャガタラ芋】「じゃがいも」の意で使われ た古めかしい呼び名。〈一の伝来〉江戸時代の初期にジャ ガタラ(ジャカルタ)から伝わったところから。ひQじゃが 芋・馬鈴薯 しゃがれる【嗄れる】「しわがれる」の意で、主にくだけた会 話に使われる俗っぽい和語。〈特徴のあるー・れた声〉 「しわがれる」の崩れた語形。芥川龍之介の『玄鶴山房』に 「妙に切迫した、詰問に近い嗄がれ声」とある。 ひかすれる。 Qしわがれる しゃきん【謝金】謝礼として渡す金銭をさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈ーが出る〉〈ーを支払う〉〈ーを受け 取る〉②役所などで用いた関係もあり、「お礼」や「謝礼」 に比べ事務的な感じの用語で、形式的には報酬として扱わ じゃくてん ないが、奥に労働の対価という意味合いが感じられる。 Q謝礼礼③ しゃく【癪】気に入らず腹が立つ意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈考えるだけでもだ〉〈ーにさわる〉〈ーの 種〉の灑井孝作の『俳人仲間』に「商すにいつもシティラレ て妬ましがり、ーにさわった」とある。弾癪・癇癪・気に障る しゃくざい【借財】多額の借金をさし、改まった会話や文章 に用いられる古風な漢語。〈思わぬーを背負い込む〉〈莫大 なーを抱える〉の島崎藤村の『破戒』に「ーにーを重ね、高 利貸しには責められる」とある。弾借銭・Q借金 じゃくしょう【弱小】存在が小さくて弱い意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈国家〉企 業〉〈ーチーム〉の「一の頃より」のように、年齢が若い意 でも使われる。乃弱体・軟弱②・Q弱い じゃくしん【弱震】震度3の旧称。弁強震・軽震・中震・微震 しゃくせん【借銭】借金の意で、会話にも文章にも使わ しゃくせん【借銭】借金の意で、会話にも文章にも使われる 古めかしい漢語。へーがかさむ》壺井栄の『二十四の瞳』 に「ーが山のようにあって旅行どころじゃない」とある。 僕財・Q借金 じゃくたい【弱体】組織や体制などが弱く頼りない意で、改 まった会話や文章に用いられる硬めの漢語。〈戦力がだ〉 〈団体のー化を招く〉Q弱小・軟弱②・弱い じゃくてん【弱点】相手から攻撃されると不利になりそうな 弱い部分をさし、会話にも文章にも使われる漢語。人を露 呈する人(人をつかまれる人相手のにつけこむ人欠陷 Q欠点・短所・難点 <462> じゃくねん しゃくねん【若(弱)年】年齢の若い意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈ーのみぎり〉〈ー層に人気がある〉 「壮年」「老年」と対立。ひQ若い・若々しい しゃくめい【秋明】誤解や非難を受けた際によく説明して了 解を求める意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢 語。〈事情を—する〉〈ーを求める〉〈ーに追われる〉②辻邦 生の『天草の雅歌』に「自身からはなんのーもなく」とあ る。児言い訳・弁解・Q弁明・申し開き しゃくよう【借用】他人から物品や金銭を借りて使う意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。「証書」〈金銭を ーする〉へーつかまつる〉の「借用語」のように返さない場 合も含まれる。巻借りる しゃくりあげ【噛り上げ】息を急に何度も吸い込むようにし て泣く意で、会話にも文章にも使われる和語。へーの声がも れる)の川端康成の『美しさと哀しみと』に「はじめてーの 声をもらした」とある。弔嗚咽・忍び泣き・Qすすり泣き・泣き 咽ぶ・むせび泣き・むせぶ しゃくりょう【酌量】事情を汲くんで手加減をする意で、改ま った会話や文章に用いられる硬い漢語。〈情状—の余地があ る〉回手加減を加えるほうに意味の重点がある。専斟酌 ジャケット洋服の上着をさし、会話でも文章でも使われる 外来語。〈カジュアルなーを着こなす〉〈春らしいーをはお る〉一般に背広の上着をさすが、ズボンと共布でなく、 「スーツ」ほど改まらない、くつろいだ感じの上着をさして 使うことが多い。日常的な「背広」よりいくらか専門的な 感じがする。専スーツ・Q背広 じゃけん【邪慳(険)】相手に対する扱い方が冷たく粗末な意 で、会話でも文章でも使われる古風な漢語。〈ーにする〉 〈ーに扱う〉小津安二郎監督の映画『東京物語』(一九五三 年)に、沼田(東野英治郎)がおでん屋の女主人(桜むつ子)が 亡妻に似ているという話題で「ーなとこもよう似ている」 と言う場面がある。専瓜弾き しやこ【車庫】自動車などの車輛を収納するための建物をさ し、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。〈自宅の 〈電車の—〉くるまの—入れ〉、Qガレージ・駐車場 しやこうじれい【社交辞令】相手との友好関係を維持するために用いる褒め言葉などの儀礼的な応対表現を意味して、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈単なるーに過ぎない〉へーを真に受ける〉お世辞・お追従と・おべっか・おべんち やら・Q外交辞令 しゃざい【謝罪】自分の過ちや罪を認めて深く詫ぴる意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈広告〉へ の手紙〉〈過失を認めて相手側にーする〉〈名誉を傷つける 発言でーを要求する〉の「陳謝」が失言程度を連想させるの に対して、この語は相手に多くの損害を負わせたり大きな 迷惑をかけたりしたケースを連想させる。夏目漱石は「坊 っちゃん」で、宿直の教員の寝床に数十匹のいなごを入れる いたずらをした寄宿生が「おれの前へ出てーをした。ーを しなければ其時辞職して帰る所だった」と書き、主人公の気 の短さを描き出した。謝る・御免・失礼・済まない・Q陳謝・申し 訳ない・詫ぴる しゃし【斜視】左右の視線の方向がずれることをさすやや <463> 改まった漢語。日常語である「やぶにらみ」に比べ、専門語 的な感じがあるだけ差別感は低い。やぶにらみ しゃしゃりでる【しゃしゃり出る】厚かましく出しゃぼる意 で、主にくだけた会話に使われる俗っぽい和語。〈恥ずかし げもなくー〉〈子供の喧嘩に親がー〉Q出しゃぼる・出過ぎる しゃしん【写真】カメラでフィルムに写した像を現像処理し 印画したものをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の漢語。〈記念ー〉〈風景ー〉〈撮影〉〈一 を撮る〉〈一写りがいい〉谷崎潤一郎の『細雪』に「芸術 ーを標榜した小さなスタディオを経営している飴の主人 であった」とある。ひスチール・Qスナップ・プロマイド・ポート レート しゃしんき【写真機】写真を撮るための機械をさす漢語。「カ メラ」が年齢を問わず広く使われるのに対し、比較的高齢 の人が用いる古風な語。〈古めかしい箱型のーを構える〉の 写真館の撮影室で黒い布をかぶって操作するような大掛か りな機械を連想する人もある。ヲカメラ じゃすい【邪推】ひがみなどから他人の行為を悪い意味に推 測する意で、やや改まった会話や文章に使われる漢語。へわ ざと転んだとはーも甚だしい)の「勘繰る」に比べ、この語 には事実と違う推測であるという判断が含まれている。川 端康成の『千羽鶴』に「ちか子の胸にべったり醜いあざのよ うな、だろう」とある。ひ勘繰る しゃせい【写生】風物を見たとおりありのままに写し取る意 で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈一帖〉風景 をーする〉〈野山へーに出かける〉多くは絵をさすが、詩 シャッポ 歌や文章の場合にも言う。込下絵・Qスケッチ・素描・デッサン しやだつ【洒脱】飾りや気取りがなく俗気を離れた感じをさ し、やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な 漢語。〈軽妙—〉〈—な人柄〉福原麟太郎の『好色の戒め』 に「いきであるとか、さびであるとか」、枯淡など言ってい るものも、みな同じ(仄かな艶)ようなもの」とある。人や 文章などによく使う。込瀬洒 しゃちほこだち【鯨立ち】逆立ちの意の古めかしい表現。〈得意のーをしてみせる〉ぐだけた会話では「しゃっちょこだち」ともいう。Q逆立ち・倒立 じゃっかん【若干】「少し」より少ない程度をさし、少し改ま った会話や文章に用いられる、硬い感じの漢語。〈予算を— 超過する〉〈まだ—の余裕がある〉「少し」の範囲より狭 く、「ほんの少し」「こころもち」といった程度をさすこと が多い。女性よりも男性が多く使う傾向がある。少幾分・幾 らか・Q少々・少し・やや しゃっきん【借金】金を借りる意で、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈ーを申し込む〉〈ー で首がまわらない〉〈ーの返済にあてる〉〈ーを取り立て る〉図徳田秋声の『縮図』に「ーのあるうちは手足を縛られ ているようで」とある。Q借財・借銭 シャッポフランス語から入ってきて「帽子」の意で用いられ、今では古めかしい感じになった外来語。〈玄関でーを取る〉〈ツイードのーをかぶる〉尾崎士郎の『人生劇場』に「頭から耳まですっぽりとかくれてしまう兜のようなーをかぶって」とある。原語を「シャポー」と読めばむしろ斬新な <464> しゃてん 感じで、麦藁帽を意味する「シャポー・ド・バイユ」などと いう小洒落た名の洋菓子屋か何かが現れるのはそういう語 感のせいである。ちなみに、井上ひさしの『プンとフン』 に、「アインシュタインもーを脱いでその白髪頭をさげる」 という表現がある。「ーを脱ぐ」は「降参する」という意味 の比喻的な慣用句であるが、「白髪頭をさげる」を加えるこ とで原義を活性化させ、両方の意味が融合したような効果 をねらった例である。児帽子 しゃでん【社殿】ご神体を祭ってある建物をさし、改まった 会話や文章に用いられる専門的で硬い漢語。へーの前にぬ かずくゆふつう境内は含まない。後藤明生の『首塚の上 のアドバルーン』に「ーも小さなもので、屋根は女の背丈よ り幾らか高いぐらいです」とある。Q神社・ほこら・やしろ しゃふ【車夫】「車引き」の意で用いられた漢語。廃語的。 〈人力車のーの姿を見かける〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「車に乗って宿屋へ連れて行けとーに云い付けた」とあ る。もはや実用性が失われ、観光用などを除いて人力車の 姿を見かけなくなったという時代の変化に伴って、この語 も廃れ、特に職業差別の感じもない。「車引き」「車屋」な どと違って音読みであるため耳で聞いて意味がわかりにく く、今ではほとんど通じなくなっている。古い時代設定の 小説などでたまに目にふれるのみである。Q車引き・車屋 しゃぶ「覚醒剤」の意の隠語。へーに手を出す〉へーで捕ま る)俗に、骨までしゃぶられるからという。しばしば片 仮名書きされる。Q覚醒剤・大麻・ドラッグ・麻薬・マリファナ・ やく しゃぶる口の中に入れてなめながらいじくる意で、主にく だけた会話に使われる和語。〈飴玉あめを—〉〈指を—〉 「なめる」が一度だけの動作でも使えるのに対し、この語は 「赤ん坊が母親のオッパイを—」のように繰り返し行う点に 特徴がある。なめる① しゃべる【喋る】べらべら口に出す意で、主として会話に使 われる日常生活の和語。〈早口でー〉へぐらべらよくー〉 へのべつ幕なしにー・っている》「話す」と違って、内容は 問題になっていない。そのため、「お話」という名詞は発言 行為より中身の情報をさし、「おしゃべり」は情報とは無関 係で、単に口を動かしてことばを発する行為を問題にして いる。「英語を話す」に比べ、「英語をー」のほうは挨拶や せいぜい雑談ができる程度の英語力を連想させやすい。夏 目漱石の「坊っちゃん」に「妙な事ばかりー」とある。単言 う・Q話す シャベル土砂や雪などを掴ったり地面に穴を掘ったりする のに使う道具をさし、会話にも文章にも使われる外来語。 「一で庭に穴を掘る」へ「で雪をどける」の柴田翔の「立ち 尽す明日」に「雑草の根の切れて行く感触が、ーを握りしめ る孝策の掌に、ぶつぶつと伝わってきた」とある。ひスコッ ブ シャボン「石鹸の意で、ポルトガル語から入った古めか しい外来語。「の泡」へ「をつけてよく洗う」「玉」と なれば別で、現在でも普通に使われ、遊びそのものは懐か しい感じがあるものの、ことばとして特に古風な感じはし ない。ひ石鹸 <465> じゃま【邪魔】物事の進行に妨げになる意で、くだけた会話 から文章まで幅広く使われる漢語。〈勉強の—〉〈そこ— だ、どけ〉〈通行の—になる〉〈もう少しのところで—が入 る〉〈お—します〉②「妨害」に比べて対象が具体的ながら、 妨げの理由や程度は主観的で、意図的でない場合も含まれ る。夏目漱石の『坊っちゃん』に「もう大丈夫ですね。—も のは追っ払ったから」とある。もと、仏道修行で悟りに入る のを妨げる悪魔の意。専妨害 しゃめん【斜面】傾斜している地面をさし、会話にも文章に も使われる漢語。〈山の—〉〈急な—をよじ登る〉竹西寛 子の『兵隊宿』に「一列に並んだ騎馬の兵士が、手綱を操り ながら土手の—を静かに下って川の中に馬を進め」とある。 収坂・坂道・Qスローブ しゃよう【斜陽】西に傾いた太陽をさし、硬い文章で用いられる古風で美的な漢語。「に木の影が長くのびる」かつての勢いがすっかり衰えたといった意味合いで「産業」などと比喩的に用いる例が多い。なお、没落貴族を描いた太宰治の『斜陽』から、一時期「一族」ということばが流行した。ひ入り日・Q夕陽と西日・夕日・落日・落陽 しやり【舎利】米粒や米の飯を意味する俗語。〜を少なめに 握る》古代インドのサンスクリットからの借用語で、この 意味で使うときは片仮名書きがふつう。寿司屋などでも使 われ、その場合、「銀シャリ」は白米の飯の美称。鋳シャリ じゃり【砂利】岩石が砕けて細かく割れ角の取れた小石をさ し、会話にも文章にも使われる日常語。〈玉—〉〜トラッ ク〉〈通路に〜を敷く〉徳永直の『太陽のない街』に「道 ジャンプ 路の小—が塩を撒いたように霜柱に凍てついていた」とあ る。「小石」と違い、一個ずつでなく小石の集合をさす例が 多く、砂が交じる場合もある。石・石ころ・Q小石・バラス しゃれい【謝礼】感謝の気持ちをこめて送る言葉や金品をき して、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へーを包 む〉へーを差し出す〉へーをもらう〉り謝金・Q礼③ しゃれた【洒落た】垢抜けて気の利いたの意で、会話や軽い 文章に使われる和語。〈ーネクタイ〉〈ー造りの家〉〈ーこ とを言う〉ひQいき・小粋・小じゃれた・すい シャンかつて「美人」の意で用いられた古めかしく俗っぽ い外来語。町でも珍しいだって)ドイツ語から入り、 戦前に学生の間ではやった。小津安二郎監督の映画『大学 よいとこ』(一九三六年)にも「向うに迎もーが行くぞ」と いう例が出る。僕佳人・美女・Q美人・別嬌・麗人 シャングル熱帯の雨の多い地方にある密林をさし、会話に も文章にも使われる外来語。〈ーを探検する〉〈ーに迷い込 む〉単密林 じゃんじゃん統けざまに勢いよく事を行う様子をさし、く だけた会話に使われる俗っぽい擬態語。〈ーやれ〉〈一飲 む〉〈手当たり次第に—買う〉動作を活写した感じが強 く、「どんどん」や「ずんずん」と違って、単に物事の進行 するスピードには使わない。なお、「半鐘を—と鳴らす」の ように擬声語としても使う。ふぐんぐん・ずんずん・どしどし Qどんどん シャンプ 跳び上がる意で、会話にも文章にもよく使われる 日常の外来語。〈力〉〈ー〉競技〈思い切りーする〉Q跳 <466> じゅう 躍・跳ぶ・跳ねる じゆう事由理由意味で法律関係の社会で用いられ、 専門語の響きがある漢語。〈その」の如何を問わず〉〈婚姻 を継続しがたいーとは認められない〉専理由 しゅう【銃】一人で持ち運びできる小型の鉄砲の意で、主に 文章に使われる漢語。〈ーを構える〉〈ーを発射する〉具 体的には機関銃・小銃・拳銃など。銃器・Q鉄砲 しゅうい【周囲】物の周りの意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈大木の—〉〈湖の—〉〈家の—を生垣で囲む〉 「—を見渡す」「—の目を気にする」「—の情勢に気を配る」 のように風景や人々の様子をさす場合もある。大岡昇平の 『俘虜記』に「翌朝眼がさめて小屋の—が何事もなく明るく なっているのを」とある。ひ周辺 じゅういつ【充溢】気分などが満ち溢される意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い漢語。〈勉学への意欲がーする〉 〈試合を控え気力がーする〉み充満 しゅうう【驟雨】「にわか雨」の意で、主として文章に用いられる、いくぶん趣のある漢語。〈ーに見舞われる〉特に夕立をさすことが多い。吉行淳之介に『驟雨』と題する小説がある。乃時雨・通り雨・Qにわか雨・村雨・夕立 しゅうえき【収益】事業などの利益をさして、主に文章に用 いられる専門的な漢語。〈資産〉〈ーを上げる〉得・儲 け・Q利益・利潤 しゅうえん【終焉】命の終わりの意で主に文章に用いられる 硬い漢語。〈ーを迎える〉の「ーの地」として隠居して晩年 を送る意にも使う。堀辰雄の『大和路』に「その森が自分の ーの場所であるのを予感し」とある。夢終わり・終末 しゅうかく【収穫】農作物の穫り入れをさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈—高〉〈野菜の—〉〈米の—期を迎え る〉の共同研究による大きな—」「業務提携しても見るべ きーは得られなかった」のように、利益や好ましい結果をさ す比喻的用法も多い。単業績・Q成果 しゅうかん【習慣】個人や家庭あるいは社会として、いつも そうすることになっている行為をきし、くだけた会話から 文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈この地方独特の—〉 〈早起きの—〉〈悪い—が抜けない〉〈ーをつける〉〈ーにな る〉福原麟太郎の『伝統について』に「保守的であるから 古いーや思想を大切にしている」とある。「慣習」に比べ小 規模でも用い、「散歩の—」のような個人的な癖まで含まれ る。り慣習・慣例・癖・しきたり・Q習わし・風習 じゅうかん【重患】重病または重病人をさして、主に会話に 使われる漢語。〈緊急の手術を要する—〉病院側から見た 用語。ひQ重症・重病・大患・大病 しゅうき【秋季】秋の季節の意で、改まった会話や文章に使 われる漢語。〈一大運動会〉人ーキャンプを張る〉秋期 しゅうき【秋期】秋の時期の意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈一講習会〉秋季 しゅうき【臭気】臭い臭いをきし、いくぶん改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈止め〉〈抜き〉〈が鼻を つく〈独得のーを放つ〉「悪臭」ほど露骨でなく、人に よっては必ずしも不快とは言えない納豆や糠みそやくさや などのにおいも含まれる。小林多喜二の『蟹工船』に「空気 <467> がムンとして、何か果物でも腐ったすぼいーがしていた」 とある。北杜夫の『幽霊』には「ある匂いが、むしろーとよ んでいいある匂いが鼻をついた」とある。「悪臭」に比べ、 体臭や便などそのものにそなわっているにおいを連想しや すい。Q悪臭異臭 じゅうき【銃器】機関銃・小銃・拳銃などの総称として、主に 文章に用いられる硬い漢語。〈一類の使用を禁止する〉へ の製造を中止する)②個々の武器については通常「銃」と言 い、総合的に取り上げるときにこの語を用いる傾向がある。 ひQ銃・鉄砲 しゅうきゅう【蹴球】「フットボール」の古風な呼称。サッ カーやラグピーやアメリカンフットボールなど、足でボール を蹴る球技の総称だが、特にサッカーをさす。リア式蹴球・Q サッカー・フットボール じゅうきよ【住居】住んでいる所の意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈表示〉〈郊外にーを移す〉建造 物そのものより人間の生活の場に重点があり、「竪穴式 ー」「古代人の—跡」のような場合にも使われる。ひいえ・う ち・家屋・居宅・住宅・住まい・邸宅・屋敷 しゅうきょう【宗教】神仏の崇拝・信仰によって幸福や心の安 らぎを得ようとする営みやその教えをさし、会話にも文章 にも使われる日常の漢語。〈心〉〈改革〉〈無〉〈新興 大岡昇平の『俘虜記』に「集団の利益の衝突する戦場 では、今日あらゆるーも殺すことを許している」とある。 専宗旨・宗派・Q信教 じゅうぎよういん【従業員】雇われて一定の業務を行う人を しゅうこう さし、いくぶん改まった会話や文章に用いられる、いくらか 専門的な漢語。「一同」〈業績不振のため」の数を減ら す曾野綾子の『遠来の客たち』に「暑い地下室の食 堂」とある。会社員・サラリーマン・社員・Q使用人・職員・勤め 人・奉公人・雇い人 しゅうきよく【終局】最終局面の意で、主として文章に用い る漢語。〈交渉がーを迎える〉〈囲碁の名人戦がーにさしか かる〉乃終極 しゅうきよく【終極】究極の意で、改まった文章に用いられ る硬い漢語。〈一の目的〉き終局 シュークリーム キャベツ形に焼いた小麦粉の薄い皮の中に クリームを詰めた洋菓子。フランス語の日本的な発音によ って生じた語形。〈地卵の特製—〉原語「シューアラクレ ーム」(クリーム入りのキャベツの意)からの音転。 しゅうけい【集計】データを集めてその数値を種類ごとに合 計する意で、やや改まった会話や文章に用いられる、やや専 門的な漢語。〈目下—中〉(売り上げの—〉〈調査結果を— する〉〈一結果が出る〉合計・総計・Q統計 しゅうげん【祝言】「婚礼」よりも古風な時代がかった漢語。 かなりの高齢者でも実際にはほとんど使わず、時代劇など でよく耳にする。〈めでたくーを挙げる〉回「高砂や」や 「三々九度の盃」を連想させる雰囲気がある。夏目漱石の 『こころ』に「今のうちにーの盃丈は済ませて置きたい」と ある。専華燭はの典・結婚式・Q婚礼 しゅうごう【集合】人・物・概念などが集まること、また、集 まった全体をさし、会話にも文章にも使われる硬い漢語。 <468> しゅうさい 〈一写真〉〈現地〉〈八時に学校にーする〉「論」「自然数のーは整数のーに含まれる」のような用法は数学の専門用語。Q集まる・たかる・つどう・群がる・群れる しゅうさい【秀才】秀でた才能の持ち主をさす漢語。あまり くだけない普通の会話から文章まで幅広く使える日常語。 へーの誉れ高い〉〈学校きってのーとして鳴らす〉回福原鱗 太郎の『秀才論』に「何々賞をもらったとかいうようなの は、むしろ平凡きわまるーであるに過ぎない」とある。男 女の進学率に大きな差があった社会事情の影響のほか、女 性用に「才媛」という用語が別に用意されていることもあっ て、この語から男性を連想する傾向が見られる。「天才」に 比べ、才能が学問などの知的な分野に限られ、それも天才 ほどのすごさには至らないことが多い。また、潜在能力よ りも達成の度合いを問題にしているため、努力の成果も含 まれる感じが強い。Q天才・俊才 しゅうし【終始】連続する物事の始めから終わりまでずっと の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一貫〉 〈一なごやかな雰囲気に包まれる〉〈一態度を変えない〉 〈一沈黙を守る〉いつも、事あることにの意で非連続な 「始終」に対し、この語はある一回の出来事の最初から最後 まで連続するところに重点がある。何時も・Q始終・常時・し よっちゅう・絶えず・常に・のべつ しゅうし【宗旨】同じ宗教の中の特定の宗派やその中心的な 教義をさし、会話にも文章にも使われる、やや古風な漢語。 へーを替える〉へーが違う〉へーを説く〉単宗教・Q宗派 しゅうじ【修辞】広義には「レトリック」のすべて、すなわ ち、伝達効果を高める言語表現技術の総称として、会話にも 文章にも使われる古風で専門的な漢語。〈ーを弄する〉②狭 義には、「発想」「配置」「記憶」「発表」と並ぶ「レトリッ ク」の一部門で、表現に装飾を加える文彩をさす。弁論中 心の西洋レトリックに対し、詩文の技巧などを説く東洋の 伝統的な文章作法をさす場合もある。彡修辞学・修辞法・美辞 学・Qレトリック しゅうじ【習字】筆などで文字を形よく書く練習をさして、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈ペン〉〈おーを 習う〉〈学校の—の時間〉の「書」や「書道」ほど本格的で はない。専書・Q書道・手習い じゅうし【重視】重要だと考える意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈学歴より実力を—する〉〈結果だ けでなくそれに至る過程も—する〉②「軽視」と対立。 重要視・尊重 じゅうじ【従事】その仕事に携わる意で、やや改まった会話 や文章に用いられる、いくぷん正式な感じの漢語。〈研究に ーする〉〈辞典編集にーする〉〈弁護士としてーする〉 け持ち・Q担当・担任・服務 しゅうじ【住持】一つの寺の長である僧の意で、改まった会 話や文章に用いられる、やや古風な漢語。〈檀家寺のー〉 「住持職一の略。ひ和尚・Q住職・僧・僧侶・坊主 しゅうじがく修辞学修辞の体系を扱う学問の意で、会話 にも文章にも使われる古風で専門的な漢語。〈|概論〉弁 論術を中心とする西洋古代の説得の技術、文彩の方法と効 果を研究する表現論、効果的な文章作法を説く規範的な修 <469> 辞学などが含まれる。 ひ修辞・修辞法・美辞学・Qレトリック しゅうじほう【修辞法】効果的な言語表現をめざす技法の総 称として、会話にも文章にも使われる古風で専門的な漢語。 〈実践的なーを学ぶ〉技術指導という性格が強く、学問体 系としては「修辞学」を用いることが多い。修辞・修辞学・ 美辞学・Qレトリック しゅうじゃく【執着】漢語「しゅうちゃく」の古めかしい読み方。今では高年齢層の一部に残っている程度。へいまだにーしている》夏目漱石の『倫敦塔』に「壁の上に残る横縦の疵は生を欲するーの魂魄である」とある。あいじゃく。しゅうちゃく しゅうしゅう【収拾】乱れを収める意で、会話にも文章にも 広く使われる漢語。〈事態のーに乗り出す〉〈混乱してーが 付かない〉収集・収束 しゅうしゅう【収(蒐集】寄せ集める意で、会話でも文章で も使われる漢語。〈資料のーに日を費やす〉〈珍しい切手を ーする〉〈蝶のー家〉趣味や研究などの目的で主に同類の ものを集めるような場合は今でも「蒐集」という本来の表 記を用いることがあり、そういう例は文体的なレベルが高 く感じられる。「情報ー」「ごみのー」のような新しいもの の場合はもっぱら「収集」と書く。そこに「蒐集」を使うと 趣味のようなニュアンスが生まれ、その違和感が滑稽に響 く。収拾 じゅうじゅん【従順】逆らわない意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈上司にーな部下〉〈ーな僕〉〈ーな犬〉林 房雄の『青年』に「(使節の首席家老が)教師の講義をきく学 シューズ 生のようなーさを示した」とある。弔柔順・素直 じゅうじゅん【柔順】おとなしい意で、会話でも文章にも使 われる漢語。〈な性格〉・〈な態度〉有島武郎の「或る 女」に「黒られても、打ち据えられさえしても、屠所の羊の ようにに黙ったまま」とある。马大人しい・従順 しゅうじょ【醜女】「不美人」の意で、主として文章に用いる 古風な漢語表現。の「醜婦」に比べ、若い場合にも該当す る。専悪女・おかちめんこ・しこめ・Q醜婦・すべた・ぶす・不美人 じゅうしょ【住所】その人が住んで生活している場所、特に その住居表示をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の基本的な漢語。〈ー録〉〈ー変更〉〈ー不 定無職〉ひ居所・居場所・Q居住地・所番地 じゅうしょう【重症】重い症状の意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ーで病院に担ぎ込まれる〉病気のほか怪我 の場合も含まれる。「これがわからないようじゃ相当のー だ」のように、病気と関係なく単に程度の重いことを比喩 的に表現する用法もある。尊重患・Q重病・大患・大病 しゅうしょく【就職】新しく職に就く意で、会話にも文章に も広く使われる日常の漢語。〈雄〉〈活動〉〈先がま だ決まらない〈大手の企業にーする〉②「退職」と対立。 入社 じゅうしょく【住職】一つの寺の長である僧の意で、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈寺のーを勤める〉の「住持職」の略。り和尚・Q住持・僧・僧侶・坊主シューズ靴、特に短靴をさし、会話にも文章にも使われる外来語。〈レイン〉〈ジョギング〉〈かかとの高いーを <470> しゅうせい 履く多く複合語として使い、単独での使用例は少ない。 Q靴短靴 しゅうせい【修正】不備を正す意で、会話でも文章でも広く 使われる漢語。〈一案〉〈軌道—〉〈字句を—する〉〈—を加 える〉②木山捷平の『パーの十蔵』に「人前はばからずコン パクトをひろげて少なくとも八回か九回か、ひなびた皺だ らけの顔をー・した」とあり、この語の意外ではあるが誤り ではない使用が笑いを誘う。彡修整 しゅうせい【修整】手を加えて形を整えるという限定的な意味で、会話にも文章にも使われる漢語。〈写真を—する〉柳美里の『水辺のゆりかご』に「記憶はいつだってーできるから」とある。彡修正 しゅうせん【終戦】戦争終結の意で、特に太平洋戦争の場合 をさす漢語。勝敗にこだわれば的確ではないが、こだわら なければ噛にはならない用語。〈ーを迎える〉〈ー後の目覚 ましい復興〉の三浦哲郎の『ふなうた』に「翌日は、八月十 五日であった。の日だが、そんなことは誰も知らなかっ た」とある。「記念日」なら何とか記念になるが、「敗戦 記念日」などというものはどこの国でも国民的な行事にな りそうもないから、この命名は歴史的な現実から目をそら すことでマイナスイメージを拭い去り、戦争の時代から平 和の時代への期待を感じさせる巧みなずらし方であった。 収戦 しゅうせん【周旋】物の売買や人の雇用などで仲介する意で 会話にも文章にも使われる古風な漢語。〈業〉〈人〉 〈屋〉鈴旋 しゅうぜん【修繕】破損した箇所を繕って直す意で、会話に も文章にも使われる、若干古い感じの日常の漢語。〈星根を ーして雨漏りを止める〉〈古靴をーして履く〉〈いたんだ所 をーして直す〉〈ここまで破れてはもうーが利かない〉身 に着ける物や器物、自動車、建物などの部分的な破損箇所を 直す比較的単純な作業を連想させる。刂修理・Q繕う しゅうそく【収束】乱れを収める意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈混乱がようやくーする〉〈事態のーを 図る〉刂収拾・終息 しゅうそく【終息(熄)】終わる意で、改まった文章に用いられる硬い漢語。〈紛争がーに向かう〉への時期を迎える〉 収束 じゅうたい【重体(態)】病気や負傷の重い状態をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ー患者〉〈ーに陥る〉の危 篤」ほど生命の危険にさらされておらず、治る期待を持ち やすい。ひ危篤 じゅうだい【重大】軽く扱えない、根幹にかかわるの意で、 改まった会話や文章で用いられる硬い漢語。〈ー発表〉へー な局面を迎える〉〈事のーさに気づく〉〈ーな影響を及ぼ す〉へーな危機に直面する〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「君にもっとーな責任を持って貰うかも知れない」とある。 あくまで評価を示す「重要」に比べ、「ーな失政」「ーな失 言」など、好ましくない状態に対して当事者の責任を問う 感じの用法が目立つ。Q重要・大事・大切 じゅうたく【住宅】人間が生活するための建物の意で、会話 にも文章にも使われる日常の漢語。〈地〉〈事情〉〈集 <471> 団ー〉〈高級ー〉〈二世帯ー〉谷崎潤一郎の『細雪』に「玉 置女史のーのある方へ行った」とある。空き家など、人が 住んでいない家についてはこの語を使いにくいが、近く入 居することをあてにして建てる建売では「建売ー」という。 ひいえ・うち・家屋・居宅・Q住居・住まい・郵宅・星散 じゅうだん【洗濯や文章を浴びせる〉 しゅうち【周知】あまねく知れわたる意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈—の事実〉〈—のとおり〉〈—徹 底させる〉巻衆知 しゅうち【羞恥】恥ずかしく思う気持ちをさし、主として文 章に用いられる漢語。へー心〉へーに襲われる〉河野多恵 子の『蟹』に「顔まであかくなるほどーを覚えた」とある。 児含羞がし・Q恥じらい しゅうち【衆知(智)】多数の人の知恵の意で、主に硬い文章 に用いられる古めかしい漢語。〈ーを集める〉〈ーを結集し て万全を期す〉周知 しゅうちゃく【執着】物事に心をとらわれ離れられなくなる 意。ヘまったくーするところがない)この漢語の一般的な 読み方で、古くは「しゅうじゃく」とも読んだ。佐多稲子の 『くれない』に「そのために一層明子のーは煽られる」とあ る。ひしゅうじゃく しゅうてい【舟艇】小型船の総称として、主に文章に用いる 専門的な硬い漢語。〈湾内の—に警告する〉主として港湾 内で使うポート・ヨット・はしけなどをさす。鑑船・Q船舶 じゅうにん じゅうてん【重点】中心にする箇所をさし、会話にも文章に も使われる漢語。〈方法にーを置いた説明〉〈経済面にーが ある〉〈背景をー的に調べる〉乃要所・要点 しゅうとく【収得】自分のものにする意で、改まった文章に 用いられる硬い専門的な漢語。〈ー罪に問われる〉〈不動産 をーする〉ひ拾得 しゅうとく【拾得】物を拾う意で、改まった文章に用いられ る正式な感じのやや専門的な漢語。〈人物〉〈路上で証券類 をーする)収得・拾う しゅうとく【習得】習い覚える意で、やや改まった会話や文 章に使われる漢語。〈運転技術を—する〉〈イタリア語を— する〉彫修得 しゅうとく【修得】正式に学んで身につける意で、主に硬い 文章に用いられる正式な感じの漢語。〈所定の単位をーす る〉〈必要単位のーを条件とする〉単習得 しゅうなん【柔軟】やわらかく適応性に富み融通の利く意で 会話にも文章にも使われる漢語。〈一体操〉体がだ 〈な態度〉〈に対応する〉しなやか柔らかい軟らかい しゅうにゅう【収入】金銭や物品を手に入れて自分の所有と する意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。「印 紙」〈現金—〉〈固定—〉〈—が少ない〉〈原稿を書いて—を 得る〉単稼ぎ・Q所得 しゅうにん【就任】新しく任務に就く意で、やや改まった会 話や文章に使われる少し正式な感じの漢語。〈社長にーす る〉への挨拶〉回「退任」「辞任」と対立。Q着任・赴任 じゅうにん【住人】その家や土地に住んでいる人をさし、会 <472> しゅうねん 話にも文章にも使われる漢語。〈アパートの〉(この町の ーが黙っていない)②社会的なつながりを意識させる「住 民」に比べ、場所とのつながりを強く意識させる。ひ住民 しゅうねん【執念】物事にとらわれていつまでも離れられな い心をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーを燃や す〉へーで勝ち取る〉ると仏教語。夏目漱石の『こころ』 に「私はこれでたいへんー深い男なんだから。人から受け た屈辱や損害は、十年たっても二十年たっても忘れやしな いんだから」とある。専根性 しゅうは【宗派】一つの宗教の中の特定の教派をさし、会話 に為文章にも使われる漢語。〈別のに属する〉へーを越え て)専宗教・Q宗旨 じゅうびょう【重病】生命を脅かすほどの重い病気の意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈人〉〈ーで絶対安静の 状態〉〈ーで命が危ぶまれる〉、重患・Q重症・大患・大病 しゅうふ【醜婦】「不美人」の意で、主として文章に用いる古 めかしい漢語表現。「醜女」と比べ、ごく若い場合には不 適切。悪女・おかちめんこ・しこめ・Q醜女・すべた・ぶす・不美人 しゅうへん【周辺】場所や地域の中心から離れた一帯やその 外側の近い範囲をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈駅の—〉〈都市の—を開発する〉〈この—の地理に明るい〉 の「周り」や「周囲」より広い範囲をさす。「景気対策とそ の—」「比喻表現およびその—の問題」のようにそれに関連 する範囲をさす抽象的な意味でも用いられる。近辺・周囲・ 近く しゅうまつ【終末】ものごとの終わる果ての意で、主に文章 に用いられる硬い漢語。〈論〉〈事件がーを迎える〉辻 邦生の『旅の終り』に「なぜかこの二人の死んだことが、私 には、安らかな、ある悲劇のーのような気がした」とある。 き終わり・終焉 じゅうまん【充満】建物の中など閉じられた空間に気体など が一杯に満ちる意で、会話にも文章にも使われるやや硬い 漢語。〈室内にガスがーする〉今度の人事をめぐって社 内には不満がーしている」のように、気分などの抽象的な ものに転用する比喩的な用法も見られる。見充溢 じゅうみん【住民】その土地に住んでいる人をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈|票〉〈|運動〉〈町の|〉〈| の反対にあう〉の「住人」と違って家単位には使わない。ま た、個人個人を意識させる「住人」に比べ、集団として社会 にかかわっているという雰囲気がある。刂住人 じゅうめん【渋面】嫌そうに顔をしかめる意で、主として文 章に用いられる古風な漢語。ぃかにも不快げに露骨にー をつくる) 鳥蟄め面 しゅうや【終夜】「夜通し」の意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈雪がー降り続く〉「運転」「営業」の ような慣用的な表現では特に改まった感じはない。ひ一晩 中・夜っびて・Q夜通し・夜もすがら じゅうよう【重要】なくてはならない大事なの意で、改まった会話や文章で用いられる硬い感じの漢語。〈事項〉〈書類〉〈な問題〉〈その点が最もーである〉梅崎春生の「桜島」に「あまりーでない電報ばかりである」とある。日常生活場面での個人的な判断による「大切」と違って、この <473> 語には客観的な判断によるという色彩が濃い。Q重大・大 事・大切 じゅうよう【重用】↓ちょうよう じゅうようし【重要視】重要だと考える意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈成績よりあくまで人物をーす る〉〈民間事業は何よりも採算が取れることをーする〉② 「軽視」と対立。JQ重視・尊重 じゅうよく【獣欲】理性の働かない獣的な性欲をさし、主と して硬い文章に用いられる古い感じの漢語。への嵐が襲 う意味の共通部分をもつ「愛欲」「情欲」「色欲」「性 欲」「淫欲」「肉欲」に比べ、暴力的で抑制の利かない感じ が強く、人間として最も理性を失った雰囲気があって、マイ ナスイメージも最大となる。それは必ずしもそれぞれの語 の意味の違いだけではなく、おそらく「欲」と結びつくもう 一つの漢字のイメージの差がからみあって生ずる語感であ ろう。愛欲・淫欲・色欲・情欲・性欲・Q肉欲 しゅうり【修理】破損箇所や故障箇所を直す意で、会話にも 文章にも広く使われる日常の漢語。〈自動車—工〉「工 場〉〈時計を—に出す〉〈機械の故障箇所を—する〉機械 類や器具あるいは家屋の一部などを対象に、不良箇所を修 復し、部品交換や機能調節を行うなど、「修繕」よりも複雑 な処置に対して用いる傾向がある。現代では「修繕」より 幅広く高頻度で使われる。Q修繕・繕う しゅうりょう【終了】終わる意で、改まった会話や文章に用いられるやや硬い感じの漢語。〈試合—〉〈会議が—する〉〈予定通り—する〉修了 しゅうろく しゅうりょう【修了】学業などの課程を修める意で、主に文 章に用いられる正式な感じの漢語。〈式〉〈ー証書の授 与〉〈大学院修士課程をーする〉も終了 じゅうりょう【重量】物の重さを数値で表したものをさし、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「挙げ」 制限を設ける〈ーを計測する〉物理学の専門語として は、物体に働く重力の大きさをさす。「級の試合」「なに しろーがあるから簡単に動かない」のように、目方が重い ことを意味する日常的な用法もある。重さ・重み・Q目方 しゅうれん【修練(錬)】修養・鍛錬の意で、改まった会話や文 章に用いられる、やや古風な漢語。「を積む」〈厳しい に耐える〉専習練 しゅうれん【習練】「練習」に近い意味で、改まった会話や文 章に用いられる古風な漢語。〈連日—に励む〉〈地道な—の 成果が出る〉〈日ごろの—を怠る〉福原麟太郎の『タイミ ングについて』に「お葬式のときなどは、最もそういう—を 要する」とある。広範囲に使われる「練習」と違い、近代的 なスポーツより武道などの連想が強い。ピアノなどについ てはあまり使われず、「稽古」に比べ、苦しみの印象があ る。広稽古・修練・練習 しゅうろく【収録】収載・録画の意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈時間〉〈テレビ番組の〉〈全集の補巻に初 期の習作をーする〉集録 しゅうろく【集録】集めて記録する意で、主に文章に使われ る硬い感じの漢語。〈文献を—する〉〈各地の民話を—す る〉刂収録 <474> しゅえん しゅえん【酒宴】人が集まって酒を飲んで楽しむ会をさし、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーを張る〉回「宴 会」や「うたげ」に比べ、歌や踊りより酒を飲むことが中心 になる。ひうたげ・宴・宴会・Q酒盛り じゅかい【樹海】広範囲に樹木が繁茂している大きな森林を さし、主に文章中に用いられる、少し美化した感じの漢語。 〈眼下にーが広がる〉高い場所から見下ろすと海のように 見えるところから。専森林・森 しゅぎ【主義】一貫して変わらない思想や学問などの考え方 や立場をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈民主ー〉 〈菜食ー〉へーを唱える〉へーを通す〉高田保の『ブラリひ ょうたん』に、ナポレオンに詩を献呈することを拒んだゲー テが「後悔したくない、というのが私のーですから」と答え た話が載っている。具主張 しゅぎょう【修行】仏道や武道のための苦行という意味で、 会話にも文章にも使われる古風な漢語。〈厳しいーを積む〉 〈山にこもってーに励む〉へーが足りない)仏教に密着し ていなくても、「武者ー」あたりまでは人格陶冶の側面を 重く見てこの語を用いるが、技術の習得が中心になるにつ れて「修業」と書く傾向が強くなる。夢修業 しゅぎょう【修業】技芸を身につけるための訓練の意で、会 話でも文章でも使われる漢語。〈文章—〉〈花嫁—〉〈板場 の—〉〈弟子入りして本格的に—する〉「しゅうぎょう」 と読むと、学業を修める意になる。彡修行 じゅく【塾】勉強や習い事を教える所をさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈子供をーにやる〉の予備校に比べ、 中学や高校の受験や学校の勉強の補習を連想させやすく、 比較的小さな教室で教師と直接接触するフレンドリーな雰 囲気を感じさせやすい。ひ予備校 しゅくが【祝賀】めでたい出来事をみんなで喜び祝う意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈優勝—会〉への 宴を張る〈受賞記念—パーティー〉も祝う・Q祝福 しゅくしゅくと【粛粛と】謹んで気を引きしめるようすをさ し、緊張した場面でのスピーチやかなり改まった文章の中 で使われる丁重な表現。〈—進めてまいります〉〈葬列が— 進む〉夏目漱石の『坊ちゃん』に「高く鋭どい号令が聞 えたと思ったら師範学校の方はーして進行を始めた」とあ る。政治家の答弁や記者会見などでしばしば耳にする。 Q厳か・厳密 しゅくじょ【淑女】品格と知性を兼ね備えた女性をさし、多 く文章の中で用いられる古風な漢語。〈紳士—の集まり〉 へーの身だしなみ〉へーに対して失礼だ》福原麟太郎の 『金銭について』に「そんなつまらないもの(金銭の支払い) に、手間をかけるのは、紳士—のすべきことではない」とあ る。「紳士」と対立。貴婦人・レディー しゅくしょう【縮小】面積や規模などを小さく縮める意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。図面を一す る〈規模を一する〉〈組織を一する〉「拡大」と対立。 短縮・Q縮める じゅくする【熟する】よく熟られる意で、会話にも文章にも使 われる表現。〈柿が—〉の「機が—」の形で、事を起こすの にちょうどよい時期になる意でも使い、この表現はまだ日 <475> 本語としてー・さない」のように、よくなじむ、こなれるの 意にも用いる。尻熟れる しゅくせい【肅清】追放の意で、主に文章中に用いられる硬 い漢語。〈派内の不穏分子を—する〉〈血の—を断行する〉 含みとして処刑の意まで表し、強引な行為を正当化する 感じの字面に置き換えた婉曲表現。専肅正 しゅくせい【粛正】規律を正す意で、改まった文章に用いられる硬い漢語。〈綱紀のーが求められる〉、醤清 しゅくだい【宿題】自宅でやるように教師が生徒に義務づけ る課題をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈夏 休みのー〉へーを出す〉へーを抱える〉へーを忘れる〉比喩 的に、決定や解決が持ち越されている問題をさすこともあ る。刂課題 じゅくたつ【熟達】仕事や芸・スポーツなどに十分に慣れて上 達する意で、やや改まった会話や文章に用いられる硬い漢 語。〈度〉〈仕事にーする〉Q熟練・練達 じゅくどく【熟読】内容がよく理解できるまで考えながら十 分に読みこなす意で、会話にも文章にも使われる漢語。へー 玩味ふふふふふふふ じゅくねん【熟年】人間として円熟する五、六十代の年齢をさ し、主に硬くない文章に使われる新しい漢語。〈夫婦〉 〈に入り貫禄が出てきた〉の「中年」という語のマイナス イメージをプラスに転化させようと作り出した表現。近年、 「離婚」が話題になるが、一般に日常生活での使用はま れ。り初老・中高年・Q中年・中老 しゅごう しゅくはく【宿泊】旅館などに泊まる意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈施設〉〈代〉〈高級ホテルに ーする〉Q泊まる・宿る しゅくふく【祝福】他人の幸福を祝う意で、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈一の拍手〉〈結婚を—する〉 〈仲間の—を受ける〉②宮本百合子の『伸子』に「さながら 汚れなき小羊のように、彼女に—を与える」とある。ひQ祝 う・祝賀 しゅくめい【宿命】避けたり変えたりできない逃れられない 運命をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈一のライバル〉へー的な出会い〉〈一の対決〉〈これもーと 覚悟を決める〉太宰治の『癒取り』に「御自身の高級なー に、糞尿を浴びせられたような気がするらしい」とある。 本来は、前世から決まっているという考えが基礎にある。 り運・運勢・運命・天運・天命・回り合わせ・命運・巡り合わせ じゅくれん【熟練】仕事によく慣れて巧みにこなす意で、会 話にも文章にも使われる日常の漢語。〈工〉へーを要する 作業〉、Q熟達・練達 しゅくん【殊懸】抜群の手柄の意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈ー者〉〈ー甲〜〉〈ーを頭彰する〉〈このたびの 働きはまさに—賞ものだ〉刂業績・功績・功労・Q手柄 じゅけい【受刑】判決による刑罰を受ける意で、改まった会 話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈ー者〉ひ服役 しゅごう【酒豪】酒が強く多量に飲んでも平気な人をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一番付〉〈社内きっての ーという専らの評判〉Q酒飲み・呑み助・呑んだくれ・呑ん兵衛・ <476> しゅさい 左利き しゅさい【主催】中心になって行事などを催す意で、会話に も文章にも広く使われる漢語。〈ー者側〉〈会をーする〉 〈新聞社のーで催される〉専主宰 しゅさい【主宰】中心になて運営する意で、改まった会話 や文章に用いられる、やや専門的な雰囲気のある漢語。俳 句結社のー者を務める〈劇団をーする〉ひ主催 しゅし①【趣旨】事を行う根本的な目的の意で、会話でも文 章でもよく使われる漢語。へーをよく説明する〉へーに賛同 する〉へ会のーに沿う〉〈設立のーに反する〉②【趣 (主旨】言語作品の基本的な内容の意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈話のーを正しく理解する〉〈論文の ーを誤解する〉の一般的には「趣旨」と書くことが多いが、 「次の文章のーを簡潔にまとめよ」のように、特に中心的な 内容にしぼりこんだ意味合いでは「主旨」と書く例も少な くない。単旨・要旨・論旨 しゅし【種子】植物の「たね」の意で、主に学術的な文章に 用いられる正式な感じの硬い漢語。〈植物〉も種 しゅじゅ【種種】「いろいろ」の意で、主に文章中に用いられ る硬い漢語。〈一雑多〉〈一の理由により〉〈一の手続きを 要する〉の「いろいろ」や「さまざま」が種類のほか長さ・ 形・色・音・性質など多様なものを含むのに対し、多く種類を さす感じもある。ひQ色々・様々 しゅじゅつ【手術】外科的な器具を用いて患部を切り開いた り切除したりする医療処置をさし、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる漢語。〈台〉〈室〉〈整形〉 〈開腹—〉〈盲腸の—〉木山捷平の『酔いざめ日記』に「神 原主任医より明後日ーすると言い渡された」とある。 ヘ・Q切開 しゅしよう【主唱】中心になって唱える意で、主に文章に用 いられる硬い漢語。〈革命を—する〉《環境保護対策を—す る》単首唱 しゅしょう【首唱】最初に唱える意で、主に文章に用いられ る硬い漢語。〈新説を—する〉〈核廃絶を—する〉呂主唱 しゅしょう【殊勝】心情・態度・行為などが人を感心させる場 合の褒めことばとして、やや改まった会話や文章に用いら れる、少し古風な感じの漢語。〈な心掛け〉な気を起 こす)川端康成の『雪国』に「素人ならとにかく芸者が、 遠い山のなかで、な稽古をしてるんだから、音譜屋さん も喜ぶだろう」とある。呂甲斐甲斐しい・Q健気 しゅしよう【首相】内閣総理大臣の通称として、会話にも文 章にも広く使われる漢語。〈|官邸〉〈|に指名される〉 宰相総理・Q総理大臣内閣総理大臣 しゅじん【主人】①その家または奉公先などの主の意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈店の—〉へ—の留守を預 かる〉へ一家の—がしっかりしている)夏目漱石の『吾輩 は猫である』に「—は眼がさめて居るのだか、寝ているのだ か、向こうむきになったぎり返事もしない」とある。「細 君」から見た夫ではなく、語り手の猫が一家の主をさして 「主人」と呼んだ例。Qあるじ・ぬし②妻が夫をさして他 人に言うときに会話でも文章でも使われるやや古風な漢語。 従来は慣用として抵抗なく用いてきたが、上位者という <477> ニュアンスが気になり、近年この語の使用を控える女性が 増えている。「夫」と換言する例も多いが、相手はその語を 使えないためとまどうことになる。うちの人・Q夫・旦那・亭 主・ハズ・宿六 じゅしんしゃ【受信者】聞く側や読む側の人間をさし、硬い 感じの会話や文章に使われる専門的な漢語。へにメッセー ジが正確に伝わる》の言語によるコミュニケーションの場合 は、聞き手と読み手との総称である「受け手」に相当する。 「発信者」と対立。ひ受け手・聞き手・読み手 しゅせき【主席】代表者の意で、会話でも文章でも使われる 正式な感じの漢語。〈国家—〉〈党の—を務める〉〈首席 しゅせき【首席】最上位の意で、会話でも文章でも使われる 漢語。〈大学を—で卒業する〉〈—奏者を務める〉〈主席 しゅぞく【種族】同一の人種に属し、生活様式や文化の伝統 を共有する人間の集団をさし、会話にも文章にも使われる 漢語。〈保存の本能〉森鴨外の妄想』に「日本人を、 そう絶望しなくてはならない程、無能なだとも思わない」 とある。ひ人種・Q民族 しゅだい【主題】芸術作品において作者の表現しようとする 中心的な思想をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈 歌〉〈小説の〉〈ーを展開させる〉創作動機としてのモ チーフが発展して、作者自身に明確な形で意識されるよう になった段階。小林秀雄は『私小説論』で「この作のーは近 代青年男女の入り組んだ恋愛葛藤の戯画である」という横 光利一の『花花』に関する河上徹太郎の評を引用している。 国語教育の文章の読解でよく問われる。単テーマ しゅちょう じゅたい【受胎】身籠もる意で、主に文章に用いられる古風 な漢語。〈一調節〉〈告知〉医学的な用法のほかは、キ リスト教の雰囲気が感じられる。僕胎・懐妊・Q妊娠・孕む・ 身籠もる じゅだく【受諾】要求や依頼などを受け入れる意で、主とし て文章に用いられる正式な感じの硬い漢語。「ボツダム宜 言ー〉〈申し入れをーする〉「承諾」に比べ、気の進まな いイメージが強い。単承知・Q承諾・承認・認可・容認・了承 しゅたる【主たる】「主な」の意で、改まった会話や文章に用 いられる、文語的な響きの表現。〈目的〉〈原因〉〈財 源〉Q主な・主要 しゅだん【手段】目的を実現するための手だてをさす漢語。 会話的な日常語である「やり方」と比べ、硬い文章でも使わ れるやや改まった語。〈常套—〉〈不正な—〉〈姑息な— をとる〉〈非常—に訴える〉〈目的のためには—を選ばな い〉小林秀雄の『志賀直哉』に「或る印象を一層多彩なも のとする為の—」とある。「方法」のうち、具体的で比較的 小規模な部分について使われる傾向がある。そのため、 「卑劣な」「あくどい」といった明らかにマイナスのイメー ジになると、漠然として無色透明な「方法」より、この「手 段」のほうがびったりする。り手口・Q方法・やり方・やり口 しゅちょう【主張】自分の説や意見を述べて強く同意を求め る意で、会話にも文章にも広く使われる漢語。〈自己ーが強 い〉〈権利をーする〉〈相手のーを認める〉〈互いのーが食 い違う〉〈両者のーが平行線をたどる〉小沼丹の『懐中時 計』に「そんな古時計は二千円でいい、それ以上一文も払っ <478> しゅつがん てはならん、とーした」とある。ひ言い張る・強調・主義・Q提 言・力説 しゅつがん【出願】願書を提出する意で、改まった会話や文 章に用いられる、正式な感じの硬い漢語。〈ー者〉〈期間〉 〈特許ー中〉〈ーの手続きを済ませる〉刂申請 しゅつげん【出現】これまでに存在しなかったものが現れ出 る意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈天才の ー〉〈新たな巨大組織がーする〉〈画期的な通信機器がーす る〉の現出より幅広くさまざまなものについてよく使 う。現出 しゅつこう【出港】船が港を出て行く意て 文章に用いられる、やや硬い感じの漢語。〈豪華客船が米国 へ向けて横浜を—する〉Q出航・出船・出帆・出ふね・船出 しゅつこう【出航】船が航海に出る意、飛行機が出発する意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へ前の点 検〉〈一時刻が迫る〉〈定期便が定刻に—する〉Q出港・出 船出帆・出ふね・船出 しゅっさん【出産】子を産む意で、改まった会話や文章に用 いられる日常の漢語。〈ー祝い〉〈無事に男児をーする〉 Qお産・分娩 しゅっし【出資】事業の開発や経営などに資本を出す意で、 改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈一額〉 〈共同〉〈一者を募集する〉〈新しい事業にーする〉〈投資 しゅっしよ【出所】出どころの意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈一不明金〉〈情報のーを明らかにする〉 の「研究所にーする時刻」「刑期を終えてーする」のような 用法では普通の会話でも使う。出処 しゅっしょ【出処】身の振り方の意で、改まった会話や文章 に使われる硬い漢語。〈一進退を明らかにする〉ひ出所 しゅっしょう【出生】誕生の意で、正式な感じの会話や文章 に用いられる、やや古風な漢語。〈一届〉〈一率〉〈一の地〉 〈一の秘密〉感情をこめずに客観的に述べる感じがあり、 時に事務的に扱う感じを伴うことがある。現代では「しゅ っせい」と読む例が増えている。その場合は改まった感じ だけで、古風な感じは特にない。弔降誕・生誕・O誕生 しゅっしんこう【出身校】「母校」に近い意味で会話でも文章 でも広く使われる、やや改まった感じの日常の漢語。「一の 正式名称〉〈別に集計する〉卒業した学校を客観的にさ し示す正式な感じの表現。「母校」のような懐かしい響きは ない。母校 しゅっしんち【出身地】生まれ育った土地をさし、やや改ま った会話や文章で、客観的に「生まれた土地」をさすときに 用いる日常的な漢語。「の役場に問い合わせる〉(の欄 に長崎県と記載する)ばしば県単位または市町村単位 で区切る事務的な感じの言い方で、「ふるさと」や「故郷」 のような懐かしさは特になく「郷里」ほどの親しみも感じ させない。したがって、涙をこらえて捨てるのは「故郷」や 「ふるさと」であって、この「出身地」は語感の点でふさわ しくない。「心のふるさと」のような美化した比喻的表現に も、この語は適さない。郷土・Q郷里・故郷ふるさと しゅっすい【出水】川の水が溢れ出す意で、主に文章中に用 いられる漢語。〈集中豪雨による—の恐れ〉き大水・Q洪水・水 <479> 害·氾濫 しゅっせい【出生】→しゅっしょう しゅっせん【出船】船が出発する意で、主に文章に用いられ る専門的な雰囲気の硬い漢語。「の準備が完了する」出 港・出航・出帆・出ふね・Q船出 しゅったい【出来】思いがけず事件や事故や大きな問題など が出現する意で、改まった会話や文章に用いられる古風な 漢語。〈思いがけない事件がーする〉〈当初考えもしなかっ た難問がーする〉の「近日」「注文の品が本日ーする」の ように、古くは完成する意でも用いた。「しゅつらい」の音 転。「でき」と読めば別語。専突発・Q勃発 しゅつば【出馬】立候補の意の俗称として会話や軽い文章に 使われる漢語。〈一要請〉へ一の意志を固める〉(直前にな って一を見合わせる)選挙に関係なく、「会長に御一願 う」のように、直接出向いたり重い役に就いたりする場合 にも使う。立候補 しゅっぱつ【出発】目的地に向けて出かける意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。 〈一時刻〉〈一間際に駆け込む〉〈一が遅れる〉〈旅行にーす る〉の「社会人となってーする」のように、広く物事を始め る意にも拡大して用いられる。専門出・スタート・旅立ち しゅっぱん【出帆】船が出発する意で、主に文章に用いられ る古風で硬い漢語。〈1の合図の鐘〉の帆船に限らず慣習的 に用いる。出港・出航・出船しっ・出ふね・Q船出 しゅっぱん【出版】文書や絵画・写真などを印刷・製本して書 物の形にし、販売ルートに乗せることをさし、会話にも文章 しゅとく にも使われる日常的な漢語。〈一権〉〈事情が厳しい〉 〈一の業務に携わる〉Q刊行・公刊・上梓・発刊・発行 しゅっぱんしゃ【出版社】文書や絵画・写真などを印刷・刊行・ 販売する会社をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈大 きなーの編集部に勤務する〉〈権威あるーから著書を出す〉 書肆書店・書房・Q版元・本屋 しゅっび【出費】必要に応じて費用を支払う意で、会話にも 文章にも使われる漢語。ヘこのところーがかさむヘこの収 入では一万円のーでもこたえる)年単位、月単位などで まとめて考えやすい「支出」に比べ、個々の支払いをさす傾 向が強い。単支出・支払う しゅっぽん【出奔】逃亡し姿を隠す意で、主として改まった 文章に用いられる、やや古風な硬い漢語。〈巨額の負債を抱 えて会社は倒産し、同時に社長がーする)いろいろなケ ースの考えられる「失跡」「失踪」と違い、この語は社会的 な責任を果たせないといった動機による当人の意図的な行 動を思わせる。専家出・Q失跡・失踪・蒸発・逐電・行方不明・夜逃げ しゅと【首都】その国の中央政府のある都市をさし、会話に も文章にも使われる一般的な漢語。〈圏〉〈東京をーと定 める)永井荷風の『湮東綺譚』に「銀座丸ノ内のようなー 枢要の市街」とある。Q首府・都 しゅどう【主導】中心になって導く意で、会話でも文章でも 使われる漢語。〈政府ーの行政改革〉〈一権を握る〉身主動 しゅどう【主動】中心になって行動する意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。へー的役割を演ずる〉身主導 しゅとく【取得】資格や所有権などを手に入れる意で、改ま <480> しゅとして た会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈不動産ー 税〉〈運転免許をーする〉乃獲得 しゅとして【主として】「主に」の意で、やや改まった会話 や文章に用いられる少し硬い表現。〈朝はパン食である〉 〈男性の通勤用の鞄を扱う〉〈随筆もあるが小説を発表 している〉及主に じゅひ【樹皮】樹木の幹や枝の外皮をさして、改まった会話 や文章に用いられる、やや専門的な漢語。へーを剥ぐ〉へー を傷つける〉の「木肌だ」より、「白樺のーを貼る」「桜のー からこの色を出す」のように、細工物や染色に使うなど外 皮の部分だけを処理する連想が働きやすい。大岡信は『言 葉の力』に、花の咲きだす直前の桜の皮からえもいわれぬ 美しいピンクを取り出すという染色家志村ふくみの話に感 動し、「花びらのピンクは、幹のピンクであり、ーのピンク であり、樹液のピンクであった」と記す。専木肌 しゅふ【主婦】家事を行うことで一家を支える立場の妻をさ す漢語。やや古風になりかけている表現。〈専業—〉家庭 の—〉〈一の立場から〉石坂洋次郎の『若い人』に「どこ の—もそうであるように、千手観音のように捌きがもの慣 れてあざやかだった」とある。近年、家庭の仕事に明け暮れ る妻という伝統的なニュアンスが時に封建的なにおいを感 じさせ、社会で活動中の女性などから嫌われる傾向が見ら れるが「業も手を抜かない」など、兼業の立場から言う場 合もある。専主夫 しゅふ【主夫】同音の「主婦」の男性版として新しく誕生し た造語。へとして妻の代議士の活動を支える字面から は夫が「あるじ」か「ぬし」として手厚く扱われているよう に見えるが、家庭の仕事をする男性を「主婦」の立場にあて はめる発想の表現。女性の社会的進出が目覚ましく、自然 に食事の支度や掃除・洗濯から育児などの家事の一部が男性 側にまわってくる社会現象の実態を映し出したことば。妻 が社会で多忙を極める家庭では家事の主たる担い手が夫に 代わり、時には夫がもっぱら家事をきりもりするケースも 出現する。台所でエプロン姿にたすき掛けでかいがいしく 立ち働くイメージをいくぶんからかい気味に、あるいは憐 れみのまじった若干の感慨をこめて表現したように感じら れる。当の夫自身がそういう自分の姿を少し自嘲気味にこ う呼ぶ場合もあるかもしれない。ひ主婦 ゆふ【首府】「首都」の意で会話にも文章にも使われた古め かしい漢語。〈ブラジルの—〉国木田独歩の『武蔵野』に 「中央に包まれて居る—東京をふり顧った」とある。現在 ではほとんどの場合「首都」を用いる。Q首都・都 しゅほう【手法】ものごとを行ったり芸術作品を創造したり する際に採用する手段や方法の総称としてやや改まった会 話や文章に用いられる専門的な漢語。〈独特の—〉への違 い〈他人の—をまねる〉②太宰治の『人間失格』に「図画 の時間にも、あの「お化け式—」は秘めて」とある。「方式 に比べ、個性的な色彩が強い。ヌ方式・Qやり方 しゅみ【趣味】仕事でなく楽しみとして愛好しているものを さし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈少女ー〉 〈骨董だのーがある〉〈ーは音楽鑑賞〉〈ーが広い〉〈ーと実 益を兼ねる〉「道楽」に比べ、幅が広く好感度が高い。 <481> 「のいいネクタイ」のように、美的価値や味わいを感じ取 るセンスをさすこともある。り遊ぶ・道楽① じゅもく【樹木】「木」より改まった感じの文章語に近い漢語 表現で、くだけた会話に使うには硬い。〈庭園の—〉への 手入れ〉復数の立ち木、高い木立を連想させる。芥川龍 之介の『歯車』に「道に沿うた公園のーは皆枝や葉を黒ませ ていた」とある。ひ木 しゅもつ【腫物】腫れ物の意で主に文章に用いられる専門的 な硬い漢語。〈ーを切除する〉おでき・腫瘍・肉腫・Q腫れ物 しゅよう【主要】中心をなす重要なの意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い感じの漢語。〈ー科目〉〈ーな産物〉 〈ーな人物〉〈本日のーな議題〉主な・Q主たる しゅよう【腫瘍】体細胞の一部に見られる異常増殖の病変を さして、学術的な会話や文章に用いられる医学上の専門漢 語。〈脳—〉〈組織に—が見られる〉Q腫物・肉腫・腫れ物・ ポリーブ じゅよう【需用】電気やガスの消費という限定的な意味で、 主として文章に用いられる専門的な感じの漢語。〈電力〉 〈ガスのーが増える〉ひ需要 じゅよう【需要】必要として求める意で、会話でも文章でも 広く使われる漢語。〈ーの伸び〉〈ーが高まる〉〈ーの増加 に追いつかない〉〈ーを満たす〉乃需用 じゅりつ【樹立】新しい物事をしっかりと打ち立てる意で、 主に文章中に用いる硬い漢語。〈世界記録を—する〉〈新政 権を—する〉〈国交の—に尽力する〉の「確立」に比べ、鮮 やかで際立つ雰囲気の感じられるプラスイメージの表現。 じゅん ↓確立 しゅりゅう【主流】川の中心的な流れをさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈川のーをなす大きな流れ〉の「傍流」 に対する語で、「派と非派」「今はこのタイプが」と なっている」「この方法論が現代言語学のーである」のよう な比喩的用法においても、単にそれが普通で多くの人がそ うしているという意味にとどまり、「本流」ほど本来の正統 的なあり方というところまで踏み込んでいない感じがあ る。単本流 じゅりょう【受領】金品を受け取る意で、主に文章に用いられる硬い感じの漢語。〈ー証〉〈ー印〉〈小包をーする〉〈確かにー仕まったりました〉Q查収・領収 じゅりようしよう【受領証】金品を確かに受け取ったことを 証明する書類をさし、会話にも文章にも使われる重々しい 感じの漢語。〈ーを手渡す〉Q受け取り・領収書・レシート しゅわん【手腕】組織などを統率し運営してゆく能力をさし、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈経営のーを買われ る〉へーが問われる〉〈並々ならぬーを発揮する〉夏目漱 石の『坊っちゃん』に「あなたのーでゴルキなんですから、 私なんぞがゴルキなのは仕方がありません」とある。もの をつくりだす個々の技術より、全体をまとめてうまく機能 させる知的能力をさす傾向が強い。马腕②・Q腕前・技量・手並 み・力量 じゅん【順】物事の前後関係や排列などの基準をさし、会話 やさほど硬くない文章に使われる日常の漢語。へーを追って 話す〉へーを乱す〉へーに配る〉へーに並ぶ〉の「到着ー」 <482> 「五十音」のように序列といえない場合にも使う。また、 「に」の場合、「順序」や「順番」に比べ、間をおかず次か ら次へと続くイメージがある。ひ順位・Q順序・順番 じゅんい【順位】優劣など何らかの基準による位置づけを意 味し、会話にも文章にも使われる漢語。〈優先—〉へーをつ ける〉〈成績のーを発表する〉専順・順序・Q順番 じゅんかい【巡回】一定の順番に見て回る意で、改まった会 話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈管内をーす る〉のパトロールの意味のほか、「指導」「図書館」の ように警備に関係なくあちこち回る場合にも使う。パト ロール・Q見回り しゅんかん【瞬間】瞬きをするぐらいのごく短い時間をさし て、会話にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈風 速〉〈決定的〉〈そのーに思わず声が出る〉竹西寛子の 『兵隊宿』に「人馬(騎馬の兵士)の動きの止ったー、それが みごとな埴輪の列に見える」とある。「点火したー」「戸を 開けたー」のように、ある行為をするのと同時にという、ま さにその時といったニュアンスでよく使う。马あっという間 Q一瞬・瞬時・瞬く間 しゅんき【春季】春の季節の意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈大会の開催〉春期 しゅんき【春期】春の時期の意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈ー講習会〉春季 じゅんけつ【純血】純粋な血統の意で、会話でも文章でも使 われる漢語。〈一種〉〈一主義〉〈一を保つ〉純潔 じゅんけつ【純潔】けがれのない意で、会話にも文章にも使 われるやや古風な雰囲気の漢語。「な心」(ーを守る) 〈ー教育〉川端康成の『純粋の声』に「自らの歌を天国の 少女の合唱のように聞き惚れながら、胸清まる幸いにわれ を忘れたことであろう。まことにーのひとときである」と ある。性的関係を「けがれ」と考えての用法は古い時代を 感じさせる。ひ純血 しゅんこう【竣工】工事が完了して建造物が出来上がる意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な硬い漢語。 「式」体育館が一の日を迎える古くは「竣工」と書い た。Q完工・落成 じゅんさ【巡查】警備や捜査などの現場で任務を担当する最 下級の警察官をさし、会話でも文章でも使う日常漢語。へー 部長〉へーが交通整理にあたる〉「警察官」の階級の一つ。 井伏鱒二の『多甚古村』は「左の文章はそのーの駐在日記で ある」として本文が始まる。ひお巡り・Qお巡りさん・警官・警察 官・駐在 しゅんさい【俊才】優れた才能の持ち主をさす漢語。主とし て文章に用いる硬い感じの表現。〈幾多のーを輩出した名 門〉〈囲碁界でーとして注目される逸材〉「秀才」が主と して学校の勉強についてきわめて成績のよい人材を連想さ せるのに対して、この語は学校と無関係な分野についても しばしば用いる。ただし、あくまで優れた点を取り上げて おり、「天才」と違って、悪い意味については用いない。 Q秀才・天才 しゅんじ【瞬時】瞬きをするぐらいのごく短い時間をさし、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。へにやっての <483> ける〈|たりとも目を離せない〉夏目漱石の『草枕』に 「あの鳥(雲雀)の鳴く音には|の余裕もない」とある。所要 時間の短さを強調する場合が多く、実際の用法としては 「瞬間」より長い幅をさす。あっという間・一瞬・瞬間・瞬く間 じゅんしゅ【遵守】法律・道德・教えなどをきちんと守る意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。法律をーす る「順守」は代用漢字。り従う・服する・Q守る① しゅんじゅん【逡巡】決断がつかずにぐずぐずする意で、主 として文章に用いられる硬い感じの漢語。〈決定を前に— する〉へあれこれーしてなかなか進まない〉の「躊躇 りも長くためらっている感じがある。まためらう・Q躊躇 じゅんじよ【順序】「順」に近い意味で、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。〈配り方の—〉〈動作の—〉〈一よく並べる〉〈一立てて話す〉②「ものには—というものがあ る」「手続きの—を間違える」のように、「順」や「順番」に 比べ、常識・伝統・規則など何らかの秩序を背景として序列 が決まっている雰囲気がある。刂順・順位・Q順番 じゅんじょう【純情】純粋な心を持つ意で、会話にも文章に も使われる古風な漢語。〈ー可憐な乙女〉〈今時珍しいー な好青年〉、初々しい・うぶ・Q純真・ナイーブ じゅんしん【純真】心が清らかで人を疑うことを知らない意 として、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な感じ の漢語。〈一無垢〉〈一な子供〉〈世間にもまれ次第にーさ を失う〉、り初々しい・うぷ・Q純情・ナイーブ じゅんすい【純粹】雑多なものが混じっていない意で、会話 にも文章にも使われる基本的な漢語。〈一培養〉〈一の日本 じゅんとう 人〈のコーギー種〉(のアルコール)夏目漱石の坊 ちゃん』に「たまに正直なな人を見ると、坊ちゃんだ の小僧だのと難癖をつけて軽蔑する」とある。「な気持 ち」「な知的好奇心」のように、私欲や邪念の混じってい ない意にも使う。生粋・生え抜き・Q無垢 しゅんそく【駿(俊)足】足の速い意で、会話でも文章でも使 われる漢語。〈ーを駆る〉〈ーを誇る〉〈チームきってのー〉 の「駿足」は本来、馬の足の速いことを意味し、人間につい てもこの表記を用いるが、人間の場合は「俊足」で代用する 例も多い。 じゅんたく【潤沢】たくさんあって潤っている意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈な毛髪〉な予 算《資金がーだ《物資がーにある〉な暮らし)「ー を帯びた肌」のように、艶や潤いのある意に使う用法は古 風。豊富・Q豊か じゅんちょう【順調】物事が予定どおりに滞りなく進行する 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈調整はーに進んで いる〉〈予定通りーに売り上げを伸ばす〉〈術後の経過はき わめてーだ〉調子のよさは「好調」「快調」「絶好調」と次 第に増す感じがあるが、この語は特に幅が広く「快調」や 「絶好調」の段階をも含む。り快調・Q好調・絶好調 じゅんとう【順当】道理にかなっていて当然考えられる方向 にある意で、会話にも文章にも使われる漢語。「な結果 へに勝ち上がる〉へな成績を収める》「穏当」や「妥 当」が物事のやり方に対する評価であるのに対し、これは 結果の評価が中心。刂穏当・Q妥当 <484> じゅんのう じゅんのう順応環境や境遇などの変化に適応する意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈性に富む〉 〈新しい環境に—する〉変化に応じられるか否かに重点が ある。専適応 じゅんばん【順番】前や右などの基準点から何番目かの意で、 会話や硬くない文章に使われる日常の漢語。〈ーとおり〉 〈ーが狂う〉〈ーを待つ〉〈出るーを間違える〉の「順序」ほ ど秩序や必然性を感じさせない。乃順・順位・Q順序・番 じゅんび【準備】近い将来に備えて必要な物事をあらがじめ 整えておくことをさし、会話から文章まで幅広く使われる 漢語。〈ー運動〉へー不足がたたる〉〈一万端整う〉〈会のー を始める〉〈海外出張のーに追われる〉谷崎潤一郎の『細 雪』に「引き揚げの一万端のために眼の廻るような思いを し」とある。単に品物や身なりを整えたりするだけでなく、 「受験ー」「立候補のーに入る」のように、目的を達成しや すい条件を高める行為をも含む。Q支度・用意 じゅんぼく【純(淳・醇)朴(樸)】人の性質や土地の気風などが 素直で飾り気がなく人情に厚い意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈な人柄〉〈な気風〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「風俗の頗るな所で、職員生徒悉く上代 樸直の気風を帯びて居る」とある。素朴 じゅんりょう【純良】不純物が混じらず質のよい意で、主に 文章に用いられる漢語。〈一なパター〉〈一な食品〉願良・ Q淳良 じゅんりょう【順良】素直で善良な意で、主に文章中に用い られる漢語。〈な市民〉〈な性格〉は純良・Q淳良 じゅんりよう【淳良】素朴で善良な意で、主に文章中に用いられる古風な漢語。小さな村のな人びと)純良順良 しよ【書】「書道」の意で、会話にも文章にも使われる漢語。 〈—の道〉〈—の大家〉〈—をよくする〉の床の間に—を 飾る」「良寛のーを鑑賞する」のように、作品をさす用法も ある。また、「ーをひもとく」として書物を、「ーを送る」 として手紙をさす用法もあって、意味が広い。習字・Q書 道・手習い じよ 書物でその本に関する意図などを説明して本文の 前に置く文章をさして、会話にも文章にも使われる少し改 まった感じの漢語。〈著書に自分でーを執筆する〉挨拶の 感じが強い「前書き」や「はしがき」に比べ、本の内容との 関連が強い。少し構えた感じの用語。「跋」と対立。ひ縫言・ Q序文はしがき・前書き じよい【女医】女性医師を意味する漢語。会話でも文章でも 使えるが、くだけた日常会話では「医者」ほど使われない。 〈産婦人科の—さん〉の「医者」という語が男性を連想させ やすいため、職業名というより女の医者という説明として 使う。刂医師・Q医者 しよいこむ【背負い込む】困ったことや迷惑なものを不本意 に引き受けてしまう意で、主にくだけた会話に使われる、 やや俗っぽい和語。〈面倒な仕事を—〉〈多額の借金を—〉 ②やむを得ない場合も考えられる「抱え込む」に比べ、はっ きり拒否しなかったせいでそうなってしまった感じもあり、 負担も大きい雰囲気が漂う。児抱え込む じょいん【女陰】軽い通俗的な読み物などで、「女性の外部性 <485> 器」をさす漢語の古風な俗っぽい間接表現。「女性の陰 部」という意味の略語。陰部・陰門・隠し所・下半身②・下腹 部・局所・局部・玉門・性器・生殖器・恥部 しよう【使用】物や人を使う意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈量〉〈料〉〈禁止〉〈武器をーす る〉〈無断でーする〉〈ーに差し支える〉②小林秀雄の『言 葉』に「歌は凡そ言葉というものの、最も純粋な、本質的な ー法を保存している」とある。り使う・Q用いる しよう【背負う】「せおう」の転で、主にくだけた会話で使わ れる俗っぽい口頭語。「一遍ではー・いきれない〉(よっこら しょっと大きな荷物をー・って出かける)「せおう」から の転。志賀直哉の『暗夜行路』に「(荷物は)俺はがー・って行 きます」とある。巻負う・おぶう・おんぶ・Q背負う じよう【滋養】栄養の意で会話にも文章にも使われる古風な 漢語。〈強壯〉〈に富む食物〉現在ではあまり聞かれ なくなり、老人の響きが感じられる。巻養 じょう【錠】差し込む錠の形や角度によって戸や引き出しな どを他人が自由に開けられないようにするための金具をさ して、会話にも文章にも使われる、やや古風な漢語。〈南京 ー〉〈ーを下ろす〉〈鍵でーを開ける〉「ーを掛け忘れる」 のように、鍵を含めた全体をさすこともある。「裏口のーを 取り替える」も同様だが、差し込む物のほうを意識すれば、 同じことを「鍵を取り替える」ともいえる。この語は現代 では「鍵」ほど使われない。ふかぎ・キー・錠前 じょう【情】人として当然持っているべき他者を思いやる心 をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈親子のー〉へ しょうか が通う〈」が移る〉〈」にもろい〉〈」にほだされる〉辻 邦生の『ある告別』に「その瞬間私が感じた感情を憐愍の と名づけることにいくらか私は躊躇する。にもかかわらず それはきわめて憐愍に似かよった感情だった」とある。な お、「」を通じる」「」が深い」のように特に恋愛感情をさ す用法もあり、田山花袋の『蒲団』にも「初めて恋するよう な熱烈なーは無論なかった」とある。刂同情・なさけ・Q人情 じょうあい【情愛】親子や恋人・夫婦の間の相手を思いやり慈 しむ心の意で、主として文章に用いられる硬い漢語。〈肉親 のー〉〈こまやかな夫婦のー〉込芥川龍之介の『地獄変』に 「画のために親子のーも忘れてしまう」とある。自分の気持 ちというより、外から眺めてそれに言及しているような客 観的な雰囲気がある。刂愛情 じょうえん【上演】演劇を実際に舞台上で観客を前に演ずる 意で、やや改まった会話や文章に使われる漢語。ただいま ー中〉《新作をーする》〈小説を芝居向きに書き直した台本 でーする〉の「公演」と比べ、俳優より作品や脚本に重点を 置いた表現。また、「公演」が日数単位の「期間」を連想さ せるのに対し、この語は「一時間」というふうに一回分を連 想させる傾向がある。公演 しょうか【商家】商店を経営する家柄をさし、主として文章 に用いられる古風で硬い漢語。〈一の出〉〈一に生まれる〉 「商店」に比べ、店自体より職業に重点がある。商店・ 店屋 しょうか【唱歌】旧制小学校などの教材として作られた歌曲 をさし、会話にも文章にも使われる古風な漢語。〈小学ー〉 <486> しょうかい 学校でーを歌う島崎藤村の『桜の実の熟する時』に 「ーを聞いた時には、殆んど何もかも忘れて居た」とある。 単語・Qわらべ歌 しようかい【紹介】他人に相手の知らない人を引き合わせた り、物の存在を知らせたりする意で、会話にも文章にも広 く使われる日常の漢語。〈自己〉〈状〉〈友人のーで初 めて会う〉〈名医をーされる〉〈ーの労をとる〉小津安二 郎監督の映画『秋日和』に、司葉子の扮するアヤ子が「今日 初めてお目にかかったんです。あの、もう一人の方のーで」 と弁明すると、佐分利信の扮する間宮が「は僕もしたじゃ ないか。僕の方が先きだよ」と突っかかる場面がある。「引 き合わせる」と違い、「貴重な資料をーする」「小説のあら すじをーする」のように人間以外のことでも使う。引き合 わせる しょうがい【生涯】生きている間の意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈一学習〉〈一の友〉《研究にーを捧 げる〉〈不遇のうちに短いーを閉じた〉「一生」と同様、 「この御恩はー忘れない」のように、この語も今から死ぬま での期間をさすが、少し硬い感じになる。Q一生・人生・生 しょうがい【傷害】傷つける意で、改まった会話や文章に用 いられる、やや専門的な感じの漢語。〈事件を起こす〉 〈一致死〉専障害 しょうがい【障害(碍)】妨げ・故障の意で、会話にも文章にも 広く使われる漢語。〈物にぶつかる〉〈胃腸を起こす〉 〈ーを乗り越える〉〈関税がーとなる〉本来の「障碍」とい う表記は「碍」が表外字であり、正統的な雰囲気を漂わせる 一方、古風な印象も与えやすい。また、「しょうげ」とも読み、「障礙」と書けばさらに古めかしい。専傷害 しょうかく【昇格】格式・資格・階級などが上がる意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈人事〉〈教授にーする〉 〈課長にーさせる〉②「防衛庁から防衛省にーする」など、 人間以外にも使う。Q昇進・昇任 しょうがく【小額】小さな単位の金額の意で、改まった会話 や文章に用いられる専門的な感じの漢語。〈—紙幣〉少額 しょうがく【少額】少ない金額の意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈—の寄付〉〈はなはだ—で失礼です が〉〈—の場合は非課税〉小額 じょうかく【城郭(廓)】城の周囲に設ける土石の囲いをさし、 主として文章に用いる専門的な漢語。〈ーをめぐらす〉〈ー を構える〉城と廓の全体をさすこともある。岡本かの子 の『やがて五月に』に「満楼の灯の入った涼しいーのよう に、水に映る投影が、すぐ眼の前に迫り出して来た」という 比喻表現の例がある。専城 しょうがつ【正月】一年の最初の月である一月をさし、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる漢語。〈ー気分〉 〈一の行事〉〈一を祝う〉〈盆と一〉単なる「一月」よりめ でたい気分が漂うため、一月のうちでも、元日、三が日、七 日まで、昔の藪入りまでと正月の雰囲気が薄れるにつれ て次第にこの語が使いにくくなる。月Q新春・新年・はつはる しようがない【仕様がない】「仕方がない」の意で主として改 まった会話に用いられる表現。〈ほかに一〉〈一から、代理 で間に合わせる〉のだけた会話では「しょうがない」とな <487> りやすい。匕仕方がない・Qしょうがない・止むを得ない しようがない「仕方がない」の意でくだけた会話で用いる表 現。〈駄目ならー〉〈ーから、それでいいよ〉「しょうがな い」の崩れた形。男性はさらに「しょうがねえ」となること もある。ひ仕方がない・Q仕様がない・止むを得ない しょうかん【召喚】裁判所が被告人や証人に対して発する出 頭命令を意味し、法律関係の硬い文章に用いられる専門的 な漢語。〈状〉〈証人をーする〉専償還・Q召還 しょうかん【召還】外交使節などを呼び戻す意で、主に硬い 文章で用いられる正式で専門的な感じの漢語。〈大使を本国 にーする〉償還・Q召喚 しようかん【償還】金銭等を返却する意で、硬い文章に用い られる専門的な漢語。〈一期限〉〈負債を—する〉召喚・Q 召還 じようかん【情感】喜怒哀楽の情や心に訴える感じの意で、 主として軽くない文章に用いられる漢語。〈ーをこめる〉 〈ーがあふれる〉〈ーたっぷり〉②安部公房の『他人の顔』に 「成熟しきった女のーを、噴泉のように惜しげもなくあふれ させていた」とある。Q感情・心情 しょうぎ【将(將棋】将棋盤の上で駒を動かし相手の王将を 奪い合う古来の遊戲をさし、会話にも文章にも使われる日 常の漢語。〈一の駒〉〈一を指す〉〈一名人戦〉四チェスと同 じくインドを起源とするという。囲碁が武家階級のたしな みとされたのに対し、「縁台」などもあり、将棋は町人階 級に親しまれたため、今でも庶民的な感触を意識する人 ある。本将棋 じょうきょう じようき【上気】頭に血がのぼる意で、会話でも文章でも使 われる漢語。〈ーした顔〉②大岡信の『言葉の力』に「桜の 花が咲く直前のころ、山の桜の皮をもらってきて染めると、 こんな、ーしたような、えもいわれぬ色が取り出せる」とい う染色家の志村ふくみの話を紹介してある。马上擦る じようき【蒸気】液体の蒸発や固体の昇華によって生ずる気 体をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈一圧〉〈一夕 ービン〉〈一機関車〉〈ポンポンー〉〈一が上がる〉〈一を逃 がす〉回水以外についてもいう。氷水蒸気・湯気・湯煙 しようきゃく【消(銷)却】消してすっかり無くする意で、主 に文章に用いられる専門的で硬い漢語。〈負債を—する〉 借金の返済などの場合によく用いる。Q消去・抹消 しようきよ【消去】消し去る意で、会話にも文章にも使われ る、やや専門的な漢語。〈ー法で答えを導く〉〈条件に当て はまらない物件をーする〉Q消却・抹消 じようきよう【上京】地方から都(現代では東京)に出て来る 意の漢語。〈両親がーして来る〉長い間都があり、当時は 「京に上る」と言い慣わしていた関係もあり、古くから京都 に住んでいる家の人には現代でもこの語に心理的な抵抗を 覚えるケースが少なくないという。東京の人が差し出した 名刺を見て「東京都」を「ひがし京都」と読み、「郊外にお 住みですか」と尋ねたという笑い話も、そのような京都人 の意識を映し出したものと思われる。「東京入り」と称する 京都人もいる。具下阪 じょうきょう【状(情)況】人や組織や物事の様子を、それが 置かれた周囲の環境の、時期や場所によって異なるそれぞ <488> じょうく れの動きや様子を含めてとらえた語で、会話にも文章にも 使われる。〈判断〉へーをつかむ〉へーが刻々と変わる〉 へーの変化を見極める〉へーの推移を見守る〉「状態」より も動きを感じさせ、また、周囲との関係でとらえた意味合 いが強い。専ありさま・情勢・Q状態・様子・様相 じようく【冗句】ふざけた表現や笑い話などをさし、主に文 章に用いる漢語。〈面白いーを交ぜて、聞く人を退屈させな い〉の「冗談」の意味では英語の「ジョーク」の当て字だが、 「文章からーを削ってすっきりと仕上げる」のように、無駄 な句という意味でも使う。ひジョーク・Q冗談 じようくう【上空】特定の場所の上方に広がる空をさし、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈東京のーを通過す る〉〈太平洋のーを飛行中〉の「はるかーの雲」のように、 単に高い空を意味する場合もある。乇高空 しょうけい【憧憬】あこがれの意で主に文章中に用いられる 漢語。「の的」遠い異国の空にーを抱く俗に「どう けい」とも読むが、新常用漢字表によれば、「しょうけい」 りあこがれ・どうけい しょうげき【衝撃】急激に加えられる物理的な打撃や瞬間的 に起こる心の激しい動揺をさして、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈波〉〈が走る〉〈大きなーを受 ける〉〈ーをやわらげる〉辻邦生の『洪水の終り』に「疑 惑が頭をかすめ、私は何か鋭いもので貫かれるようなーを 感じた」とある。安部公房の『他人の顔』には「かんしゃく 玉を噛みくだいたようなー」という比喻表現の例がある。 ヲショック じょうけん【条件】物事の実現・成立・決定などの前提となる 事柄をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈つき〉(いいーで勤める〉(ただし、ーがある)「に合 わない〉(ーにぴったりだ)「を満たす)小林秀雄は 『ゴッホの手紙』で「そういう事を企てるのには、僕にはや はり悪ーが出揃っているという始末であった」と書き、次節 を「悪ーとは何か」という一文段落で始める。乃要件 しょうこ【証誼】拠】事柄の真実を証明する根拠となる物事 の意で、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。書 類〉〈情況〉〈湮滅がの恐れがある〉〈ーを残す〉〈物的 ーをつかむ〉〈逃れられないーを押さえる〉谷崎潤一郎の 『痴人の愛』に「何か怪しい所があるの?あるならーを見 せて頂戴」とある。証左 じょうこう【情交】「性交」を意味することのある古風な漢語 の間接表現。〈ーを結ぶ〉広くは、心を許し合った間柄の 親しい付き合いの意。そこから、特に男女間の親密な交際 に限定し、その交わりの一部としての肉体的な結合を位置 づけているため、あくまで親密な者どうしの場合に限られ る。また、構造自体が婉曲な関係であるため、露骨さは かなりやわらげられている。専営み・エッチ・関係②・合歓・交 合・交接・情を通じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱 く②・契る・同衾・共寝・寝る②・懇ろになる・ファック・深い仲にな る・房事・枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 じようこく【上告】控訴審の判決を不服として、終審の裁判 所に改めて審理を申し立てることをさし、改まった会話や 文章に用いられる専門的な硬い漢語。「審」「上訴」の <489> 一つ。Q抗告・控訴・上訴 しようこん【商魂】商売に徹し利益を最優先とする気概や才 知の意で、やや改まった会話や文章に使われる漢語。「た くましい商人」と商売気 しようさ【証誼左】「証拠」の意で主に学術的な文章に用い られるやや古風で硬い漢語。〈それ自体が何よりのーとな ろう〉〈動かぬーを示す〉証拠 しようさい【詳細】細部にわたる意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈な説明〉へにわたって検討す る)小林多喜二の『蟹工船』に「この辺の海、北樺太、千 島の附近までに測量したり」とある。「は後日発表す る」のように、詳しい内容をさす名詞の用法もある。詳し い しようさん【勝算】勝つ見込みの意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ーわれにあり〉へこの試合はどう見てもーが 乏しい〉の「勝ち目」は判断を示すだけだが、この語はそこ に至る思考過程が意識される。勝ち目 しようさん【賞(称)讃(賛)】褒め讃える意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。く惜しみないーの拍手く永年の 地道な努力をーするくに値するくを博するく讃え る・褒めそやす・Q褒めたたえる・褒めちぎる・褒める じょうし【上司】同じ職場で自分より上位にある人をさして、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈直属の—の指 示に従う〉へ—に取り入る〉へ—の覚えがめでたい〉現代 では一般に「上役」よりよく使う。ひ上役 じょうし【上梓】書物を出版する意で、主に文章中に用いら しょうしっ れる古風な漢語。〈雑誌論文をまとめて単行本としてーす る》の昔、梓の木を版木に用いたことから。出版社側よ り著者が使うことが多い。刂刊行・公刊・Q出版・発刊・発行 じょうし【情死】愛し合った男女が一緒に自殺する意で、主 として文章中に用いられる古風な漢語。〈ーを遂げる〉へー 事件として報道される〉ひ心中 じょうじ【常時】何も事が起こらない時でもいつでもの意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。へ待機 している〉へ見張っている〉きQ何時も・始終・終始・しょっち ゅう・絶えず・常に・のべつ しょうじき【正直】言動に嘘や偽りのないようすをさし、会 話でも文章でも幅広く使える日常の漢語。「な人」へに 答える)佐藤春夫の『お絹とその兄弟』に「あの人ならば 親切でーないい人だから」とある。「素直」とは違って年齢 や上下関係の語感は働かないから、「な祖父」などという 表現にも特に違和感は生じない。専素直 じょうしき【常識】一般の大人が共通してそなえているはず の知識や道徳的判断力をさし、会話にも文章にも使われる 日常の漢語。〈外れ〉〈破り〉〈世間の〉〈いささかー に欠ける〉〈が通じない〉〈でわかりそうなものだ〉 道徳面に重点のある「良識」に比べ、単なる知識を含め幅が 広い。小林秀雄の『菊池寛論』に「菊池氏は偉大なるー家と 言われている」とある。学識・知識・Q良識 しようしつ【消失】存在が跡形もなく消え失せる意で、改ま った会話や文章に用いられる硬い漢語。〈効力が—する〉 〈権利が—する〉の「消滅」に比べ、短い間で気がつかない <490> しようしゃ うちにというニェアンスがいくらか強い。 しようしゃ【使用者】「雇い主」の意で、改まった会話や文章 に用いられる硬い漢語。〈ーが責任を負う〉の「使用人」と 対立。専雇用者②・Q雇い主 しようしゃ【瀬酒】小ざっぽりして洗練されている意で、や や改まった会話や文章に用いられる漢語。「な身なり (こぢんまりとしたな洋館)服装や建物などによく使 う。ひ酒脱 じょうしゅ【情趣】しみじみとした味わいの意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈古都のーを存分に味わう〉 へーの漂う町〉ひQ趣・情緒・風情 じようじゅ【成就】願いどおりに成し遂げる意で、主に文章 に用いられる古風な漢語。〈大願—〉〈念願が—する〉 「達成」に比べ、困難なことを長期間の努力によって叶えた という感じが強い。刂達成 しょうしゅう【召集】国家や天皇が召し集める意で、改ま た会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈ー令状〉 〈非常ー〉〈ーを受ける〉〈国会をーする〉乃招集 しょうしゅう【招集】組織の構成員などを招き集める意で、 やや改まった会話や文章に使われる漢語。〈株主〉〈メン バーにーをかける〉〈会議をーする〉召集 しょうじゅう【小銃】携帯用の小型の銃砲の意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈自動—〉〈ーを保持する〉日常 会話では通常「鉄砲」と言う。小島信夫にまさに『小銃』と 題する小説があり、「日なた、軍靴の土煙をすかしてうつる ーの影の林の中で」「私はーをになった自分の影をたのしん だ」とある。卐拳銃・Q短銃・鉄砲・はじき・ピストル じょうじゅん【上旬】その月の最初の十日間をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈九月もーはまだ残暑が敵しい〉 の「初旬」のように情緒的な用例はなく、きちんと「中旬」 「下旬」に対立する。ふ初旬 しょうじょ【少女】高校生ぐらいまでの若い女の子をさし、 やや改まった会話から硬い文章まで幅広く用いられる日常 の漢語。〈趣味〉〈漫画〉〈文学〉〈お下げ髪のかわい い」森田たまの『もめん随筆』に「瞼にうかぶ札幌のー は夏林檎のようにほのぼのと肌白く」とある。くだけた会 話では右のような慣用表現の形以外の使用が減り、今では 全体的に若干古風な響きを感じさせる。ひ乙女・Q娘 じようしょ【情緒】しみじみとした味わい、また、感情の動 きをさす漢語。これが本来の読みであるが、「じょうちょ」 という慣用的な読みのほうが一般的に使われるため、いく ぶん取り澄ました感じもある。〈一纏綿ぐ〉へを感じさせ る) じょうちょ しょうしょう【少少】「少し」の意で改まった会話や丁重な手 紙などに用いられる語。〈ーものを伺いますが〉〈ーお待ち ください〉〈持ち合わせがー足りない〉〈ーのことでは驚か ない〉回夏目漱石の『坊っちゃん』に「星明りで障子だけは ーあかるい」「ー用事がありまして、遅刻致しました」と ある。「少し」より丁寧。凡若干・少し・ちょいと・ちょこっと・ち ょっと・ちょっびり・僅か しようじょう【症状】それぞれの病気に伴って生ずる現象の 意で、会話にも文章にもよく使われる漢語。〈自覚ー〉〈禁 <491> 断ー〉〈ーを呈する〉〈ーの改善が見られる〉〈ーが消える〉 病状より部分的・具体的。ヌ病状 しようじる【生じる】「生ずる」の意で、やや改まった会話や 文章に用いられる和語。〈混乱がー〉(不都合がー〉(摩擦 をー〉の「生ずる」より口語的で新しく特に威厳を感じさせ ない。り起きる・起こる・Q生ずる・発生 しょうしん【小心】気が小さくて思い切った行動がとれない 性質をさし、改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古 風な感じの漢語。〈ー者〉〈ー翼々〉②持って生まれた性格 について言う。芥川龍之介の『枯野抄』に「満足と悔恨とは (略)絶えずーな彼の気分を掻乱していた」とある。意気地 なし臆病・怖がり・弱虫 しょうしん【昇(陞)進】官位・地位などが上がる意で、改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈異例のーを果たす〉〈大 関にーする〉ひQ昇格・昇任 しょうしん【傷心】悲しみに心を傷める意で、主に文章中に 用いられる漢語。〈一の面持ち〉〈一を抱く〉〈一を癒べす〉 の激しい「悲痛」に比べ、打ちひしがれて気力を失った感じ が強い。ひ悲しさ・悲しみ・沈痛・悲哀・悲痛 しょうじん【精進】その道に一心に励む意で、会話にも文章 にも使われる古風な漢語。〈—潔斎〉〈—料理〉〈芸一筋に ーする〉〈—の賜物の〉のもと、身を清め行いを慎んで一心 に仏道の修行に励む意であるため、芸事や相撲・柔道など の伝統的な世界での稽古をさして使う傾向が強い。きいそし む・頑張る・努力・Q励む じょうじん【情人】情事の相手を意味する、古風で硬い漢語。 〈その女のーになる〉「愛人」より語感が悪い。Q愛人・ いろ・情夫・情婦 じょうせき じょうず【上手】高い技術を身につけて好結果を出す意で、 比較的改まった会話によく使われる日常の丁寧な漢語。 〈に歌う〉〈絵がーだ〉〈部下をーに使う〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「ダーク一座の操人形より余程ーだ」と ある。巧い・Q巧み しょうすい【小水】小便の意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。「が近い」おーを採って調べる」間接的 な表現のため上品に響くが、しぼしぼさらに「お」を付けて 丁寧にした「お小水」の形で用いられる。女性だけでなく 医者の診察の際などにもよく使われる。おしっこ・しょうべ ん・しょんべん・Q尿 しょうずる【生ずる】それまで無かったものが存在し始める 「起こる」に近い意で、主に文章に用いられる硬い和語。 〈ひずみがー〉〈疑問がー〉〈問題がー〉〈思わぬ亀裂をー〉 ②「生じる」に比べ文語的な響きがあり重々しい感じもあ る。ひ起きる・起こる・Q生じる・発生 じょうせい【情(状)勢】社会や物事の進行し変化する成り行 きをさし、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。 (ーを見定める)(ーが悪化する)今後のーを占う)(緊迫 した政治ー)(経済ーがきびしい)は楽観できない) (ーが好転する)(ーをよく見極める)「形勢」に比べ客観 的な感じのとらえ方。Q形勢・状況・旗色・様相 じょうせき【定石(跡)】それぞれの局面で最も有効とされる 決まったやり方をさして、会話でも文章でも使われる漢語。 <492> しょうせっ 〈ーどおりに事を進める〉〈ー破りの手段〉囲碁を打つ場 合は「定石」将棋を指す場合は「定跡」と書く。「経営の ー」「捜査のー」のように比喩的に用いる場合は両方使われ る。 しょうせつ【小説】登場人物の行動や事件の推移を描くこと をとおして社会の問題や人間の生き方を追求する散文の虚 構作品をさし、会話にも文章にも広く使われる漢語。へー 家〉〈推理ー〉〈ユーモアー〉森田たまの『もめん随筆』に 「宇野さんの一の人物が、ついお隣にでも住んでいるように ひどく身近な心地がして、ふしぎな愛情を感じさせられる」 とある。古典を連想させる「物語」と違って、近代以降の文 学作品をさす。物語 じょうぜつ【饒舌】常に口数の多い意で、改まった会話や文 章に用いられる硬い漢語。〈一家〉〈な語り口〉〈に過 ぎる〉〈ーをふるう〉のつまらないことをべらべらしゃべる 場合であり、内容のあることを早口で話す場合は含まない。 ひQおしゃべり・多井 しようせつか【小説家】小説の創作を職業とする人をさす漢 語で、会話でも文章でも使われる日常語。〈一の卵〉〈一を 目指す〉〈一の仲間入り〉の作家」の中心をなすが、より 狭義。小林秀雄の『川端康成』に「一の好奇の対象となるも のに、この作家が、どんなに無関心であるか」とある。Q 作家・著作家・著作者・著述業・文学者・文士・文人・文筆家・物書き しようせん【省線】国鉄時代の「国電」の前身。廃語的。〈一 電車〉〈一が通っている〉鉄道省が経営していた時代の呼 び名。今では通じないことも多く、通じたとしても「国電」 以上に古い感じに響く。うっかりしたふりをしてこの語を 口に出し、にやりと笑う国語学者も身近にいる。林芙美子 の『放浪記』に「ガードを—が滝のような音をたてて走っ た」とある。刂院線・Q国鉄・国電 しようぜん【悄然】元気をなくしてしおれきっている意で、 主に文章中に用いられる漢語。〈ーとうなだれた姿〉〈夢破 れーと立ち去る〉長与善郎の『青銅の基督』に「滅入り込 んで行く胸の暗さを抱いてーとしな垂れた」とある。ひしお れる②・しょげ返る・しょげる・しょんぼり・すごすご じようそ【上訴】下された判決を不服として、上級裁判所に 再審査を求めることをさし、改まった会話や文章に用いら れる専門的な硬い漢語。「に踏み切る」込告・Q控訴・上告 しようそう【焦燥(躁)】苛立だって焦る意で、主に文章に用 いられる漢語。「に駆られる」「の色は隠せない」小 川国夫の『エリコヘ下る道』に「顔や頸の辺は灰色になって 行くので、肉が腐って行くように見えた。彼は下腹に泥水 が湧き上って来るような、感を覚えていた」とある。込焦 じようぞうしゅ【醸造酒】米・麦・ぶどうなどを発酵させて搾 る種類の酒類をさして、会話にも文章にも使われる専門的 な漢語。〈日本酒やピール、ワインなどは—に入る〉も蒸留 酒 じようそうぶ【上層部】組織内で高い地位にある役職をさし、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈企業の」 「の方針」の「幹部」に比べ、大きな組織に限られる感じ がある。単幹部 <493> しょうたい【招待】客を招いてもてなす意で、会話にも文章 にも広く使われる漢語。〈ー券〉〈ー状〉〈ー客〉〈祝賀会に ーされる〉ひ招聘し しようたい【正体】隠されている本当の姿をさし、会話にも 文章にも使われるいくらか古風な漢語。〈ー不明〉〈ーを現 す〉〈ーを暴く〉〈ーを見破る〉〈ーをつかむ〉夏目漱石の 『こころ』に「私の頭の上にーの知れない恐ろしいものをお おいかぶせた」とある。「怪物のー」「悪徳商人のーを暴く」 のように、「本体」に比べマイナスイメージで使う例が多 い。Q実体・本体 じょうたい【状態】時とともに変化する人や物事のある時点 における在り方や様子をさし、会話にも文章にも使われる 漢語。〈心理—〉〈健康—〉〈危険な—を脱する〉〈元の—に 戻る〉〈こんな—では先が思いやられる〉「状況」が対象 の置かれた周囲の様子を含めて問題にするのに対し、この 語はそのもの自体の様子を問題にしている。心理や感情の ようすなど、内面的なとらえ方の場合に、特に「情態」と書 くこともある。ひありさま・Q状況・様子・様相 しょうだく【承諾】要求を受け入れる意で、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈書〉〈事後〉〈なかなか ーしない〉〈ようやく先方のーを得る〉谷崎潤一郎の『女 人神聖』に「厭なものを無理にーして下さいとは云いませ ん」とある。「承知」より正式の感じがある。受諾・承知・承 認・認可・容認 じょうたつ【上達】学問や技芸の腕前が上がる意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈ーが早い〉〈腕がめきめきーす しょうちょう る〈英会話が驚くほどのーを見せる〉Q向上・進歩 ん【冗談】ふざけて言う話をさし、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈ーを言う〉 〈ーで言う〉〈ーにも程がある〉〈ーを真に受ける〉〈ーはさ ておき〉福原麟太郎の『この世に生きること』に「私は、 いま、人生をーだとは思ってはいない」とある。「ーでした こと」「ーでは済まない」「ーじゃない」のように、ことば だけでなく行為をさすこともある。ひQ冗句・ジョーク しょうち【承知】知っている、要求などを聞き入れる意で、 会話でも文章でも広く使われる日常の漢語。〈危険は百も ーの上だ〉〈何度も頼んでやっとーしてもらった〉へふざけ るとーしないぞ〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「誰がーす るものか」とある。「承諾」とは違って、認めるところまで 言及せず単に知っている段階までをさす用法もある。その ため、同じ意味で使っても、「承諾」より軽い感じになりや すい。単受諾・承諾・承認・認可・容認・了解・了承 じょうちょ 【情緒】本来の読みは「じょうしょ」であるとき れるが、現代ではこのほうが一般的で幅広く用いられる。 れるが、現代ではこの 〈異国ー〉〈不安定〉〈昔のーを残す街並み〉田村俊子の 『木乃伊の口紅』に「自分のーを臙脂のように彩らせようと している女の心持」とある。伝統的にこの読みでよく使わ れてきた関係で、用語そのものに情緒がしみついており、 「じょうしょ」というと素っ気ない感じを受けることもあ る。じょうしょ しようちょう【消長】盛んになったり勢いが衰えたりする意 で、主として文章中に用いられる、やや古風な漢語。〈時代 <494> しょうちょう のー〉〈社運のー〉単発的な危機などにも使う「浮沈」に 比べ、栄枯盛衰を流れとしてとらえる感じが強い。浮き沈 み・Q浮沈 しようちょう【象徴】抽象的な観念内容を具体的事物で感覚 的に表すことをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈 詩〉〈一天皇制〉〈蛍は忍ぶ想いのだ〉〈時代をーする事 件〉〈組織の体質を露呈した的な出来事〉の「十字架」が 「キリスト教」を想起させるような一つの言語文化社会で特 定の指示対象と結びつく記号を意味する場合や、「春」が 「生命の誕生」と、「炎」が「恋」とつながるような同一文化 の中で通用する文学的な類縁性を意味する場合がある。無 形の事象・思想・情調などを感性的な形象や心像などを通じ て伝える芸術上の技法を意味する場合は専門語。ひQシンボ ル・典型・表徴 じょうちょう【冗長】無駄が多くだらだらと不必要に長い意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「な話 〈不満な点は多々あるがーになるのでこれ以上述くない〉回 無駄に長い点が中心。散漫・冗漫・Q長たらしい・長ったらしい しようてん【昇天】「死亡」を意味する、キリスト教的な雰囲 気の漢語による比喻的な間接表現。やや改まった文章に用 いる。和風の文章より洋風の文章によく映る一種の美化表 現。〈安らかにーする〉里見弾の『多情仏心』に「帰する ところーをよろこびとし、涅槃を称えずにいられようか」 とある。もとイエス・キリストが復活後四十日に天に昇った ことをさし、「日」「祭」などの語を生んだ。その後、 信者の死の意で用いられ、次第に一般化した。死を忌む気 持ちから、それを、魂が天に昇ることととらえ直した表現。 ひ敢え無くなるとがる②あの世に行く息が切れる息が絶える 息を引き取る往くいけなくなる永眠往生お隠れになる落ちる ②おめでたくなる帰らぬ人となるくたばる死去Q死ぬ死亡 逝去覧れる他界長逝露と消える天に召される亡くなる僕 くなる不帰の客となる不幸がある崩御没する仏になる身罷 る脈が上がる空しくなる藻屑となる逝く臨死臨終 しようてん【商店】商品を売る店をさし、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈駅前の街〉へが軒を連ねる 賑やかな通り〉の「店屋」とほぼ同義だが、品物を並べて 売買をする店に限る傾向がある。床屋・美容院・指圧治療 院・酒場・ガソリンスタンド・自動車修理など、サービスを主 とする店には若干なじまない。比較的規模が小さく個人経 営の店を連想しやすい。林芙美子の『泣虫小僧』に「路地を 抜けると、食物の匂いのする」が肩を擦り合うようにして 並んでいる」とある。ひ商家・店舗・店・店屋 じようと【譲渡】価値のある財産や権利などを先方に譲り渡 すことをさし、改まった会話や文章に用いられる正式な感 じの専門的な漢語。〈株式を—する〉〈経営権を—する〉 Q譲与・贈与・譲る しょうとう【小刀】武士が腰に二本差すうちの短いほうの刀 の意で、会話でも文章でも使われる漢語。へーをたばさむ) の武士の二本差しの場合における「大刀」との組み合わせ。 刀身二尺(約六○・六センチ)足らず。ヒ首・懐剣・こがた な・短剣・Q短刀・どす・ふところがたな・脇差 しょうどく【消毒】薬品や熱湯などを使って病原菌の働きを <495> 阻止することをさし、会話にも文章にも使われる日常の漢 語。「液」〈日光」〈傷口をよく」する)「殺菌」に比 べ、家庭でもできそうな手軽な感じがある。また、この語 は手当ての段階を連想させ、「殺菌」はその結果の連想が強 い。太宰治の「人間失格」に「その電話機、すぐーしたほう がいいぜ」とあり、宮本輝の「蛍川」に「病院特有の強い 液の匂い」とある。専解毒・Q殺菌・毒消し しょうに【小児】小さな子供をさし、主に文章に用いられる 古風な漢語。〈ーのいたずら〉〈ーにも等しい〉荼川龍之 介の『侏儒の言葉』に「軍人の誇りとするものは必ずーの玩 具に似ている」とある。「科」の形だけは日常生活で頻用 されるが、それ以外はかなり古めかしい感じがする。ひおさ なこちのみご・乳児・Q幼児 しようにん【使用人】雇われて使われている人をさし、会話 やさほど硬くない文章に使われる、いくぶん古風な漢語。 へーを大勢抱える〉へーの分際で〉の「使用者」と対立。ひ雇 用者①・Q従業員・奉公人・雇い人 しようにん【昇(陣)任】現在より上級の官職・役職に上がる意 で、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。 〈人事〉〈部長にーする〉Q昇格・昇進 しょうにん【承認】正当であると認める意で、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈正式にーする〉へーを得 る〉〈親のーが必要〉②「受諾」や「認可」ほどではないが 公的な感じがあり、日常的な「承知」と感触の違いが明確。 乃許可・許容・受諾・承知・Q承諾・認可・容認・了承 じょうねつ【情熱】燃え上がるような激しい熱意の意で、会 じょうはっ 話にも文章にもよく使われる漢語。へーを注ぐへーを傾け るへーを燃やす梶井基次郎の『闇の絵巻』に「心に激 しいーの高まってゆくのを感じる」とある。「の島」「 のタンゴ」のように人間以外にも使う。鳥熱情 しようはい【勝敗】争った結果の勝ち負けをさし、いくぶん 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーは時の運〉〈一 の鍵を握る〉〈ーを分ける〉〈ーを決する〉〈ーにこだわる〉 争いそのものに重点のある「勝負」に比べ、その結果に重 点を置く言い方。勝負 しょうばい【商売】主に商品を売買する業務やサービス業な どをさして、会話にも文章にも使われる日常の漢語。客 ー〉〈ー道具〉〈ーそっちのけで〉〈ーあがったり〉〈ー繁盛 で何よりだ〉〈それをもとでにーを始める〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「六百円の金でーらしいーがやれる訳でも なかろう」とある。「人に教えるのがーだ」「字を書くのが ーだ」のように一般に職業や仕事の意味で使う俗っぽい用 法もある。ひ仕事・職・Q職業・なりわい しょうばいぎ【商売気】商売熱心で金儲かけに敏感な意識・態 度をさし、会話や軽い文章に使われるやや古風な表現。「 を出す〉くついーが出る〉くまるでーがない〉「しょうば いげ」「しょうばいっけ」とも言う。ヲ商魂 しょうばいげ【商売気】→しょうばいぎ しょうばいつけ【商売っ気】→しょうばいぎ じようはつ【蒸発】液体の表面が気体になる現象をさして、 会話にも文章にも使われる専門的な漢語。〈血〉〈水分が ーする〉の借金の返済に困ってーする」のように、突然姿 <496> しょうひ を消す意を表す比喻的な用法もあり、その場合は俗語的で 滑稽な響きがある。凡家出・失跡・失踪・出奔・逐電・行方不明・Q 夜逃げ しょうひ【消費】「費やす」意で、会話にも文章にも使われる 日常の漢語。〈ー者〉〈ー量〉へいたずらに時間をーする〉 「ーの伸び」「ーの低迷」のように経済全体の動きを表現す る用法はやや専門的。「生産」と対立。専費やす しょうひょう【商標】生産者や販売者が他と区別するために 自分の商品に付ける文字や記号や図柄などの特定の印をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈登録—〉〈一権〉 トレードマーク・ブランド・銘柄 しょうひん【商品】売買を目的とする品物の総称。〈一券〉 〈価値〉〈目玉〉〈お買い得〉〈を安く仕入れる〉 不動産のほか、旅行の企画や銀行の一定条件付の預金など をさす業界側の用法もあるが、一般には動産というイメー ジが強い。児り物 じょうひん【上品】気品がある意で、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈な人〉 〈な家庭〉〈な言葉遣い〉〈なふるまう〉②獅子文六の 「胡椒息子」に「この姉妹は、干菓子のように振っていて」 とある。Q気高い・高尚・典雅 しょうぶ【勝負】勝ち負けを争うことをさし、会話にも文章 にも使われる日常の漢語。〈ー事〉〈ー師〉〈真剣〉〈ーを 挑む〉〈ーに出る〉〈ーがつく〉争った結果の成績を連想 させる「勝敗」に対し、この語は「ー(を)する」とも言える ように、勝敗を争う行為に重点がある。夢放 じょうふ【情夫】情事の相手である男性を意味する、古風で 硬い漢語。〈ーに貢ぐ〉の「愛人」より気品に欠ける語。 愛人・Qいろ・情人・情婦 しょうふ【情婦】情事の相手である女性を意味する、古風で 硬い漢語。へーに稼がせる〉の「愛人」より気品に欠ける語。 り愛人・いろ・Q情人・情夫 じょうぶ【丈夫】健康でしっかりしている意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈|な体〉へ「で長生きする〉(赤ん 坊がーに育つ)夏目漱石の『草枕』に「御婆さん、ーそう だね」とある。「ーな造り」「ーな靴」「ーな生地」のように 物の頑丈さにも使われる。人体をさす場合は「健康」や「元 気」に比べていくらか古風な感じもある。Q元気・健康・健 勝・健全・健やか・壮健・息災・たくましい・達者 しょうぶん【性分】気性の意で、会話や軽い文章に使われる 古風な漢語。へやると決まったら直ぐやりたいーゝ〈相手の 気持ちも考えずにずばずば言ってしまうーゝ〈困ったーで、 我慢ができないゝ〈悪を見逃せないーゝ②長与善郎の『竹沢 先生と云う人』に「内気なーらしく神経質にちらりと自分 の方に一瞥をなげる」とある。ある具体的な行為について、 そうしないでいられないという形で姿を現す性格傾向をさ す用法が目立つ。み気質・気象・Q気性・気立て・人格・人品・人物・ 性格・性向・性質・たち・人柄・人となり しょうへい【招聘】各分野の学者・研究者といった専門家など を礼を尽くして丁重に招く意で、改まった会話や文章に用 いられる丁寧な感じの硬い漢語。〈海外から専門の技術者を ーする〉②「招待」に比べ、講演や共同研究や技術指導など <497> 何らかの貢献が期待されている感じが強い。 と招待 しようべん【小便】膀胱から尿道を通って体外に排出される液体の意で、主に男性が改まらない会話や軽い文章など で使う、露骨でぞんざいな感じの日常的な漢語。〈立ちー〉 〈ーをする〉〈ーをもらす〉のもっとくだけると「しょんべ ん」と発音されることもある。織田作之助の『アド・パルー ン』に「余りのうれしさに、ーが出そうになって来た」とい う例がある。Qおしっこ・小水・しょんべん・尿 じようほ【譲歩】自分の意見や主張を一方的に押し進めずに 相手の考えや気持ちを汲んで条件を緩める意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈大幅に—する〉〈最大 限の—を見せる〉、妥協 じようほう【情報】物事の内容や事情などに関する知識やデ ータの総称として、会話にも文章にも近年特によく使われ る漢語。〈源〉〈化社会〉〈を集める〉〈新しい」が入 る〈極秘ーを入手する〉Q資料・データ しようぼうし【消防士】火事を消し止め燃え広がるのを防ぐ 任務を負う人をさし、会話でも文章でも幅広く使われる漢 語。「一の数を確保する」と消防夫 しょうぼうふ【消防夫】「消防士」の意の古風な漢語。「夫」 という漢字を伴うこの語は職業差別の意識を感じさせると して現在はほとんど使われない。刂消防士 じょうまえ【錠前】錠の意で会話にも文章にも使われる古め かしい用語。〈破り〉〈頑丈なーを取り付ける〉〈ーをこ じ開ける〉時代物の小説や時代劇などによく使う。 ぎ・キー・Q錠 しょうめっ じようまん【冗漫】表現がくどくて引き締まらないせいでい たずらに長くなる意で、改まった会話や文章に用いられる 漢語。「な文章」締まりがない点が中心。Q散漫・冗 長・長たらしい・長ったらしい じようみやく【静脈】体の各部から心臓に戻る血液を運ぶ血 管をさし、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。 〈一牆の〉〈一注射〉〈一が浮き出る〉②檀一雄の『花筐』に 「巨きな額の上に、みるみる紫のーがふくれ上り、不思議 なくらいすさまじい情熱がみなぎった」とある。「動脈」と 対立。専舫 しようめい【証明】その事柄が真実か否かを、根拠を示 して明らかにする意で、会話にも文章にも使われる硬い漢 語。〈印鑑—〉〈身分—書〉〈実力の—になる〉の定理を— する」のように数学・論理学の専門語として使用する場合 は、ある命題に関し仮説から論理的に結論を導き出す意。 専検証・実証・Q立証・論証 しょうめい【照明】光で照らして明るくする意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈器具〉〈間接〉〈部屋の 〈ーを当てる〉〈舞台にーが入る〉〈ーが強すぎる〉落合恵 子の『シングルガール』に「プールサイドからのーの反射と 水中ーの光を含み、水面はシルバーブルーに眩しく輝いて いる」とある。Q明かり・照らす・電灯・灯火・ともし灯・灯・ラ イト しようめつ【消滅】衰えてついには姿を消してしまう意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈自然ー〉〈企 業がーする〉〈権限がーする〉の野間宏の『暗い絵』に「自 <498> しょうめん 己のーを承認することは出来ない」とある。「消失」に比 べ、時間がかかり完全に消えるまでの過程が意識される傾 向がある。ひ消失 しようめん【正面】建物などの表側の前面をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈—玄関〉〈—衝突〉〈—から入る〉 ②「裏面」と対立。「—を向く」のように、自分の真直ぐ前 をさすこともある。「一切って」「から交渉を始める」の ように抽象化した比喩的用法もある。弁前面・前・真正面・Q真 向かい じようやく【条約】国家または国家機関の間で結ばれる国際 的な合意に基づく約束をさし、改まった会話や文章に用い られる正式な感じの硬い漢語。〈通商—〉〈安全保障—〉 〈ーを締結する〉〈ーを破棄する〉〈ーを批准する〉の協 定」よりも大きく重要な事柄について締結されるが、国家 間に交わされる協定・協約・取り決めなどを含めて言う場合 もある。専協定・Q協約 しょうゆ【醤油】大豆・小麦・麹を発酵させて作る液体調味 料をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の漢語。〈味〉へをかける〉へで味付けする〉庄 野潤三『佐渡』に「蓋を取りますと、鰹節と海苔とーのしみ た御飯の匂いが飛び込みます」とある。Qおしたじ・むらさ き しようよ【賞与】通常の定期的な俸給以外で期末などに勤務 者に支払われる特別一時金をきし、主に文章に用いられる 古めかしい漢語。「年二回」へーを当てにして大きな買い 物をするの「賞め与える」という字面から、使用者側が働 きを認めて特別に与えるものという連想が起こりやすく、 当然の権利と考える現代の風潮に合わないためもあり、今 では労働者の間であまり使われない。马ボーナス じようよ【譲与】物や権利などを相手に譲り与える意で、改 まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈土地をーす る〉②個人的な「贈与」と違い、多く公的な場合に使う。 Q譲渡・贈与・譲る じようよ【剩余】計算の結果などに生じた余りをさし、硬い 文章に用いられる古風で専門的な漢語。〈金〉〈価値〉 ②「余剰」以上に専門性が高い。夏目漱石の『坊っちゃん』 に「其代りが古賀君よりも多少低給で来てくれる。其ーを 君に廻わす」とある。専余り②・余計・Q余剰・余分 しょうよう【小用】「こよう」の意で改まった会話や文章に用 いられる古風で硬い漢語。「に立つ」表向き「ちょっと した用事」という意味にぽかした表現で、音読みして威厳 を漂わせる分「こよう」以上に婉曲な感じに響く。お しっこ・こよう・Q小便 しょうよう【逍遥(遙)】あてもなく気の向くままにぶらぶら 歩く意で、文章中に用いられる古風な漢語。〈山林をーす る〉〈着流しでぶらりとーする〉②比喻的な用法もあり、文 学者坪内雄蔵のペンネームが「逍遙」であることはよく知ら れている。柳田国男の『雪国の春』に「花の林をーして花を 待つ心持ち」とある。Q散策・散歩・そぞろ歩き じょうよく【情欲】「性欲」に近い意味で、主として文章に用いられる漢語。〈ーに溺れる〉回意味の共通部分をもつ「愛欲」より少し性的なイメージが濃く、「色欲」「性欲」「淫 <499> 欲「肉欲」「獣欲」に比べると、この語は厭らしさが比較 的少ない。それは語の意味というより、「欲」と組み合わさ るもう一つの漢字のイメージの差が働くからだろう。永井 龍男の『冬の日』の末尾は、「激しいが迫り、煮えたぎる 太陽の中へ、遮三無二躍り込んで行く体を感じた」と、この 作家としては珍しい激しい筆致で盛り上げた後、「古い二 階家だった。/床の間に供えられた鏡餅には、もう罅が入 っているようであった」という渋い二行でみごとに鎮めて 結ばれる。愛欲・淫欲・色欲・獣欲・Q性欲・肉欲 しょうらい【将来】人間・組織・国家などの先行きをきして、 会話にも文章にも使われる日常の基本的な漢語。〈像〉 〈近い〉〈有望な人材〉〈ーを誓う〉〈ーは医者になりた い〉〈ーのあるべき姿〉〈日本のーを背負って立つ〉子供 の場合であれば社会人になるころ、中年であれば老後、会 社であれば十年か二十年後というように、現在と直接つな がる範囲の未来を考えている場合が多い。り以後・今後・先行 き・Q未来・行く末 しょうり【勝利】戦いや競技などの争いに勝つことを意味し、 改まった会話や文章に用いられる、やや硬い漢語。〈みごと ーをおさめる〉〈ーの女神が微笑む〉〈ーの美酒に酔う〉回 大岡昇平の『俘虜記』に「私はすでに日本のーを信じていな かった」とある。「敗北」「敗戦」と対立。ゆ勝つ じょうり【条理】物事の中に一本きちんと通っている筋の意 で、文章に用いられる硬い漢語。へきちんとーに適ぶうへー に反する)「不条理」の形でよく使う。Q筋道・理路 しようりやく【省略】一部を省いて短くする意で、会話にも じょうをつうじ 文章に为使われる基本的な漢語。〈敬称—〉〈以下—〉〈挨拶を—する〉〈主語を—する〉刂割愛・Q省く・略す どようりゆうしゅ【蒸留(溜)酒】醸造した原料酒を蒸留して アルコール濃度を高めた酒の総称として、会話にも文章に も使われる専門的な漢語。〈ウイスキーやブランデー、焼酎 などはーに分類される)醸造酒 じょうりよくじゅ【常緑樹】一年中緑色の葉をつけている樹 木をさし、会話にも文章にも使われるやや専門的な漢語。 〈桜の背後にーを配する〉②松・杉・椿など。「落葉樹」と対 立する。ひときわ木 じようれい【条例】地方自治体の議会で制定される法規を意 味し、会話でも文章でも使われる法律関係の専門的な硬い 漢語。〈公安ー〉〈県のー〉〈ーに定める〉〈ーで禁止する〉 単条令 じょうれい【条令】簡条書きの法規の意で主に法律関係の文 章で使われる専門的で正式な感じの漢語。〈集会—〉条例 しようわ【笑話】「笑い話」の意で、主に文章中に用いられる 硬い漢語。〈戦前の—を集める〉、小咄語・Q笑い話 じょうわん【上腕】腕の肩から肘までの部分をきし、改まっ た会話や文章中に用いる、専門語に近い硬い漢語。〈骨〉 〈一二頭筋〉日常語としては通常「二の腕」を用いる。 腕①・かいな・二の腕 じようをつうじる【情を通じる】まれに「性交」を意味する ことのある古風な間接表現。〈ー・じた仲〉基本的には 「男女が親しい関係になる」意。そこに含みとして肉体関係 が入ってくる場合があるというきわめて婉曲な表現。 <500> 営み・エッチ・関係②・合歓・交合・交接・情交・Q性交・性行為・性交渉・ 性的行為・セックス・抱く②・契る・同衾・共寝・寝る②・懇ろになる・ ファック・深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 ショーウインドー飾り窓の意で会話にも文章にも使われる 外来語。〈散歩しながらーをのぞく)現代では「飾り窓」 より一般的に使う。「ウインドーショッピング」のように、 単に「ウインドー」でこの語を意味することもある。単飾り 窓 ジョーク人を楽しませるための冗談や笑い話をさし、会話 や軽い文章に使われる外来語。〈ーを飛ばす〉〈ーを連発す る〉の即座に飛び出す軽妙な会話である「冗談」以外に、 「西洋のーを紹介する」「英語のー集」のように、「あたしが 結婚すると十人の男が不幸になるわ」「十回も結婚する気 か」といった既成の笑い話をさすこともある。Q冗句・冗談 ショーツ売り場などで「パンティー」とほぼ同義で使われ る新しい感じの外来語。ヌロースパンツ・Qパンティー ショート「遊撃手」をさす外来語「ショートストップ」の略。 多く口頭で使う。書きことばではふつう「遊撃手」を用い る。〈ーゴロでダブルブレーに仕留める〉ヌ遊撃手 シヨール女性用の肩掛けをさす古風な外来語。ヘーを羽織 った女小津安二郎監督の映画『箱入娘』(一九三五年)中 にも出てくるピンクのショールをはおったあでやかな姿 でリンクに登場するフィギュアスケートの女子選手はいる が、日常生活用の肩掛けとしての使用頻度は大幅に減った ようである。刂襟巻き・首巻・Qマフラー しょか【書架】本棚の意で、改まった会話や文章に使われる 硬い漢語。研究室のスチール製の—〉〜から詩集を一冊 抜き取る》書棚以上に本格的で専門的な感じがあり、陳 列というより収納という雰囲気を感じさせる。蔵書の多い 学者の書庫や図書館の電動式の棚などの連想があり、木製 に限らない感じも強い。Q書棚・本棚・本箱 じよがい【除外】一定の範囲や規定などから外す意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一例〉〈対象から ーする〉〈病人や高齢者はーする〉廃除去・どける・取り除く・の ける・除く・排除・外す・省く じよがくせい【女学生】現代では女子高生をさす古風な漢語。 〈セーラー服のー〉〈ーに付け文する〉の井上靖の『猟銃』に 「花のような修学旅行のーの一団」とある。かつての旧制女 学校の生徒をなつかしく思い出す世代もある。女子学生・ 女子大生 しよかん【所感】感じたことの意で、改まった会話や文章に 用いられるやや硬い感じの漢語。〈年頭の—〉〈ーを記す〉 〈一言ーを述べる〉感懐・感慨・Q感想 しよかん【書簡/書翰】「手紙」の意で主に文章で用いる、や や古風で改まった感じの漢語。〈ーをしたためる〉〈ーをも って問い合わせる〉辻邦生の『安土往還記』に「自筆と思 われるかなり長文の断片である」とある。「便り」より 重々しく、「手紙」よりも正式な感じのする言い方。毛筆で したためるか、少なくとも万年筆で書く必要のありそうな 雰囲気を感じさせる。「書簡」で代用せず正式に「書翰」と 表記した場合には特にそういう感じが強い。便り・Q手紙 じょきよ【除去】不要物や邪魔なものを取り除く意で、改ま <501> た会話や文章に用いられる漢語。〈障害物をーする〉〈不 穏分子をーする〉「排除」より具体的な対象に使う傾向が 強い。「汚れをーする」のように、人間でも物体でもない対 象に用いる場合もあるが、感覚で確認できる範囲。単除外・ 撤去・取り除く・除く・Q排除・外す しよぎょう【所行(業)】しわざの意で、主に文章に用いられる古風な漢語。〈悪人のー〉〈怪ゅしからぬーに及ぶ〉好ましくない行為に対して用いる。ひ仕業 しよく【職】職業の意で会話にも文章にも使われる日常の漢 語。〈ーを探す〉〈ーが見つかる〉〈ーに就く〉〈ーを失う〉 の「管理」「委員長のーに任ずる」「そのーを解く」のよ うに、命じられた職務をきす例も多い。「手にーをつける」 として仕事に役立つ技術をきす用法もある。単仕事・商売・Q 職業・なりわい しょくあたり【食中り】食中毒の意で、会話や軽い文章に使 われる日常語。〈梅雨時は特にーに注意が必要だ〉込食中毒 じょくいん【職員】官庁・団体・学校などに勤務して職務を担 当する人をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈室〉 〈一録〉〈事務一〉〈一を配置する〉夏目漱石の「坊ちゃ ん」に「校長は今にーに紹介してやるから、一々其人に此辞 令を見せるんだと言って聞かした」とある。込会社員・社員・ Q従業員 しよぐう【処遇】職場などで各人の経歴や能力に応じて相当 の条件で扱う意で、改まった会話や文章に用いられる事務 的な感じの漢語。「冷たい」〈手厚くーする〉〈どうにも ーに困る〉へーをめぐって一悶着 ある〉お待遇 しょくじだい しよくぎょう【職業】生計維持のために恒常的に従事する仕 事の種類をさし、やや改まった会話や文章に用いられる、い くらか正式な感じのある漢語。〈病〉〈軍人〉〈あこが れのー〉〈ちゃんとしたーに就く〉〈ーを選ぶ〉〈家のーを 継ぐ〉②「仕事」が力仕事とか、根気の要る仕事とか、神経 を遣う仕事とかといった性格や条件、あるいは営業とか経 理とかといった内容などの共通する、ある広がりをイメー ジする傾向があるのに対し、この語は教員とか警察官とか 美容師とかといった具体的な区分を連想させやすい。専仕 事・商売・Q職・なりわい しよくぎょうふじん【職業婦人】会社勤めなど社会で働いて いる女性をかつて珍しがって呼んだ今では廃語に近い古 い感じの漢語。へーとして世間で活動する小津安二郎監 督の映画『戸田家の兄妹』(一九四一年)のシナリオに「時子 はーである」という説明がある多くの女性が社会進出を 果たしている今日ではわざわざ「職業婦人」などと呼ばな いからいかにも時代を感じさせる表現である。 しよくぎようやきゅう【職業野球】「プロ野球」の旧称で、廃 語に近い古めかしい漢語。〈一の草分け〉〈戦前の一の花形 選手〉サトウハチローの『野球さまざま譚』に「世の中に は、一というと、妙にもぎらいする人が、まだまだ沢山あ る」とある。ヲプロ野球 よくざい【食材】料理の材料となる食品をさし、会話にも 文章にも使われる比較的新しい漢語。〈ーを吟味する〉へー を生かす) ひ食い物・食品・食物・食べ物 しょくじだい【食事代】一回の食事に要する費用の意で、会 <502> しょくしゅ 話にも文章にも使われる漢語。〈ーを倹約する〉〈毎日の がばかにならない〉〈ー以外に会場費もとられる〉外食の 場合に使う例が多い。食費 しよくしゅ【職種】職業や職務の種類をさし、改まった会話 や文章に用いられる専門的な漢語。「体力を要する」〈こ のーは求人が多い〉単業種 しよくしょう【職掌】担当している役目の意で、主に文章中 に用いられる専門的で硬い感じの漢語。〈遺漏なくーを尽 くす〉〈柄ネクタイを外せない〉Q職分・職務 しょくする【食する】「食う」意で、硬い文章に用いる語。 〈米を文化〉〈豪華な料理を」大仰に表現したり、感 情をこめずに客観的な調子で記述したりする場合などに用 いる。ひ頂く・Q食う・食べる・召し上がる しよくたく【食卓】食事用のテーブルをさす漢語で、やや改 まった感じの語。〈ーに上る〉〈ーを囲む〉食事用であれ ば、円形でも方形でも、脚が短くても長くても、和風でも洋 風でも、違和感なく使える一般的な言い方。夏目漱石の 『吾輩は猫である』に「翌日ーに就いたのは九時頃」とある。 ひちゃぶ台・Qテーブル・飯台 しよくちゅうどく【食中毒】飲食物中の細菌などで引き起こ される急性の消化器疾患の意で、会話や文章に広く用いられる漢語。〈集団ー〉(ーを起こす)ひ食中 よくつう【食通】舌が肥えていて料理を味わい分ける能力 が高く、また、調理法や料理の美味な店などに関する知識 も豊富な意で、会話にも文章にも使われる基本的な日常漢 語。「の推奨する店」〈池波正太郎は」として有名な作 家 食い道楽・Qグルメ・食道楽・美食家 しよくどう【食堂】食事をするための部屋をさし、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常漢語。〈大衆—〉 〈学生—〉〈車〉〈—に集まる〉曾野綾子の『遠来の客た ち』に「部屋全体が、それこそうどんの茹釜ではないかと 思われるほど暑い地下室の従業員—」とある。店をさす場 合は少し古い感じになりかけており、また、「レストラン」 ほど高級感がなく、食券を買うようなケースも連想され、和 食・洋食・中華のどれでも違和感がない。旅館などの食事室 をさすこともあり、その場合は今でも古い感じはない。 カフェテリア・西洋料理店・洋食屋・Qレストラン しよくどうらく【食道楽】金に糸目をつけずにうまい物を食 するのを何よりの楽しみとしている意で、会話や軽い文章 に使われる、いくぶん古い感じの日常の漢語。へたいへんな ーで金がいくらあっても足りない回「美食家」に比べ、そ れだけを趣味としている感じが伴う。「食通」に比べると、 物の味にうるさく、その方面の知識が豊かという感じは薄 い。马Q食い道楽・グルメ・食通・美食家 しよくば【職場】仕事をする場所としての会社や工場などを さし、会話にも文章にも使われる日常語。〈同じーで働く〉 〈一の雰囲気が明るい〉〈一に復帰する〉「一の花」という 表現は古めかしく、「一結婚」も少し古風な感じ。「仕事場」 よりスケールが大きく、通常は部署より本社なり支店なり 分工場なりをさすことが多く、個人的な仕事場には用いな い。ひ勤務先・仕事場・Q勤め先 しょくひ【食費】食事にかかる費用の意で、会話にも文章に <503> も使われる日常の漢語。〈ーがかきむ〉〈ーを切り詰める〉 「来客が多かったので今月はーが増えた」というふうに、 一定の期間の合計という形で話題になることが多い。 専代 しよくひん【食品】日常の飲食物の総称として、やや改まっ た会話や文章に用いる、専門的で正式の感じがする漢語。 「添加物」〈冷凍」〈衛生上問題がある〉〈栄養価値の 高い」②食物を味よりも成分や衛生・健康などの管理の対 象として扱う雰囲気があるため、おいしさを求める買い物 や家庭の食事での対象としては用いにくい。食い物・食材・ Q食物・食べ物 しよくぶつ植物動物」とともに「生物」を構成する区分、 草木のほか藻類・菌類などの総称として、会話にも文章にも 使われる漢語。〈観葉〉〈図鑑〉〈油〉丹羽文雄の 『顔』に「隠花」の妖しい美しさ」とある。自然界では「動 物」「鉱物」と対立。刂草木 しよくぶん【職分】職務上なすべき任務の意で、主に文章中 に用いられる専門的で硬い漢語。〈ーを全うする〉〈ーを果 たす〉〈よくーをわきまえる〉専職掌・Q職務 しよくむ【職務】担当している任務の意で、やや改まった会 話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈一質問〉〈一 に励む〉〈一に忠実だ〉〈一を遂行する〉〈一を放り出す〉 職掌・Q職分 しよくもつ【食物】「食べ物」の意で、やや改まった会話や文 章に使う漢語。〈ー繊維〉へーを与える〉葉山嘉樹の『海 に生くる人々』に「胃の腑へ届くーは、そのまま直ちに消化 しょげる されて」とある。個々の食品の味などを念頭に置かず、飲み 物を含めて人や動物の口に入るもの全体を問題にしている 感じがある。食い物・食材・食品・Q食べ物 しょくりょう【食料】食べ物一般をさして、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な漢語。 〈品〉〈ーを買い込む〉〈日常のーなら何でも手に入る〉 太宰治の『津軽』に「地方へ行って、ひどく出鱈目に帝都の ー不足を訴える」とある。ひ食糧 しょくりょう【食糧】米や麦などの主食物をさし、改まった 会話や文章で用いられる硬い感じの漢語。〈事情〉へ危 機〉へ不足が深刻〉へが底をつく大岡昇平の『俘虜 記』に「俘虜に自国の兵士と同じ被服とを与えた」とあ る。主食にする米や麦などの穀類をさし、その他を合わせ て総称する場合には「食料」を用いる。ひ食料 しよけい【処刑】刑、特に死刑を執行する意で、会話にも文 章にも使われる、やや専門的な漢語。〈罪人を—する〉へ 台の露と消える〉、Q処罰・処分 しょげかえる【悄気返る】「しょげる」の強調表現で、主に会 話に使われる。〈失恋してすっかりー〉専思い屈する・Qしおれ る②・悄然しよう・しょげる・しょんぼり・減入る しょげる【悄気る】思わぬ結果になって元気をなくしてしょ んぼりする意で、会話や硬くない文章に使われる和語。失 恋してーゝみんなの前で大失態を演じてーゝ②太宰治の 『富嶽百景』に「こんな富士では俗でだめだ、と教えていた ので、娘さんは、内心ー・げていたのかも知れない」とある。 思い屈する・しおれる②・悄然だ。しょげ返る・しょんぼり・滅入る <504> しょげん しょげん【緒言】「はしがき」の意で、主として文章に用いる 古風で本格的な感じの硬い漢語。〈辞典に編者のーを掲げ る〉の「ちょげん」は慣用読み。単序・序文・Qはしがき・前書き じょげん【助言】その人のために役立つことや参考意見など を脇の人が当人に言うことをさしいくぶん改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ーを求める〉〈ーを与える〉 二葉亭四迷の『平凡』に「折角のーを聴かぬのも何だから」 とある。単忠告 しょこく【諸国】いろいろな国をさし、会話にも文章にも使 われる漢語。〈アジアー〉〈一歴訪の旅〉乃列国 しよさ【所作】身のこなしの意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈娘らしいー〉〈なにげないーに注目する〉 〈ちょっとしたーで、受ける感じが違ってくる〉木山捷平 の『大陸の細道』に「両手で鳥が立つ時のようなーをして、 乳母車を前方に発車させた」とある。「しぐさ」ほど細かい 動きでない場合にも使われる傾向がある。単挙動・しぐさ・動 作・振る舞い しよざい【所在】存在する所の意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈県庁—地〉へーがつかめない〉へーを明 らかにする〉の「責任のー」のように抽象的な対象に使うこ ともある。ひありか しよざいない【所在無い】何もすることがなくて気持ちが満 たされない意で、主に文章に用いられる、いくぶん古風な 表現。〈日々を送る〉〈所在無げな様子〉〈所在無さそうに 立っている〉退屈 じょさんぷ【助産婦】女性の「助産師」をさす旧称。古めか しい「産婆」と違い、職業の正式名称として改まった文章に も用いた。へーとして勤務するお産の手助けをする「産 婆」とは違って、単に生まれてくる赤ん坊を取り上げるだけ でなく、妊産婦や新生児の保健指導も要求され、国家試験に 合格したという資格が必要。ゆ産婆 よし【書肆】本屋・出版社の意でまれに文章中に用いられる 古めかしく硬い漢語。〈ーを営む〉へーに原稿を渡す 「書」は本、「肆」は店の意。時に書店の名称の一部となる。 巻出版社・書店・書房・版元・Q本屋 しょじ【所持】その時にその場に持っている意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈品〉〈金〉〈不法 ー〉の一般語としては、その人に所有権があるとは限らな い。法的には、その人の支配下にあれば携帯していないも のも含む。ひQ携行・携帯・所蔵・所有・持つ しよし【女子】主に女児や若い女をさし、学校生活やスポーツの世界などの集団で一般に用いられている日常の漢語。 〈ー校〉〈ーマラソン〉〈ーだけのクラス〉〈サトウハチロー の『僕の東京地図』に「何故—大学の中を通行するのがそん なに嬉しかったか、いまでもわからない」とある。概して 年齢の若い層が多いことが語感にも反映する。「走り幅 跳び」などの競技名の場合は「女性」で代替できず、「校」 の場合も「女性」とすると社会人教育を連想させるように なり、「大学」も「女性大学」と呼ぶととたんにキャバレ ーか何かの店名じみた雰囲気に変わる。かつての「女性事 務員」などは最近「女子」と呼ぶ例が多くなった。「女性従 業員」より「従業員」のほうが若い人を連想させやすいの <505> も、両語の語感の差である。「女性」と呼んでまったく違和 感のない老女を「女子」と呼ぼうとすると抵抗を感じるの も同様である。「若い女性」という言い方にはまったく情報 の無駄を感じないのに、「若い」と言い換えると若干情報 の重複感が出るのも、すぐに若い女を連想させる「女子」と いうことばの語感が影響しているものと思われる。ひおな ご・女・Q女性・婦女・婦人 じよしがくせい【女子学生】大学生を中心に広く女子である 学生をさす最も一般的な漢語で、会話でも硬い文章でも幅 広く使われる。〈理科系の学部には—が少ない〉へ—に人気 のスポット〉の大江健三郎の『死者の奢り』に「は、非常 に老けた、疲れきった表情をしてい、それは病気の鳥のよう な感じだった」とある。男女学生・Q女子大生 しじきん【所持金】その場に持ち合わせている金銭の意で、 やや改まった会話や文章に用いられる、やや硬い漢語。 が足りず残念ながら購入を見合わせる〉(みんなのーを集 めてようやく支払いを済ませる〉、持ち合わせ じょしせいと【女子生徒】女子である生徒をさし、会話にも 文章にも使われる日常の漢語。へーの意見〉へーの傾向〉 共学の学校で生徒を男子と女子に分ける場合に使う傾向が 強い。男女生徒 じょしだいせい【女子大生】女子大学の学生や女の大学生を さす漢語で、会話から硬い文章まで幅広く使われる語。 の人気の的》女子大学の学生という意味と、女子である 大学生という意味とがあるが、最近は後者が優勢になりつ つあるようである。女学生・Q女子学生 じょしょう しょじひん【所持品】その場に持ち合わせている物の意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈飛行機 に搭乗する前に厳格なー検査を受ける〉〈刑事が被害者の ーを調べる〉その時にたまたま自分が持っていれば他人 の所有物も含まれる。り所有物・Q持ち物 じょじゅつ【叙述】自分の考えやものことの状態や事情など を順序だてて書き記す意で、改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈難解なー〉〈事細かにーする〉 ②最も客観的な述べ方である「記述」に対し、対象に多少の 考察を加えて述べる表現態度の段階。以下、「説明」「議 論」「喚起」の順に主観性が増すとして表現態度に五段階を 認める説もある。刂記述 しょしゅん【初春】春の初めをさし、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈福寿草がーに黄色い花を開く〉「早 春」と同様に「晩春」と対立。陰暦の一月の異称だが、音読 みしたこの語は、通常は実際の春の初めを意味する。Q早 春はつはる しょじゅん【初旬】「上旬」の意で、いくぶん改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈四月—の陽気〉語義としては 「上旬」と同じだが、「上旬」が明確に最初の十日間をさす のに対し、いくぶん文学的な雰囲気があり、その前半に重 点を置いて漠然と使うこともある。马上旬 しょじょう【書状】「書簡」のさらに改まった古風な表現とし て挨拶の文章などに用いられる漢語。〈ーをしたためる〉 〈ーを差し出す〉Q書簡・手紙 じょしょう 【序章】本格的な書物や長い論文・小説などの最初 <506> じょじょに の章をきし、主に文章中に用いる漢語。「に研究の目的を 述べる》「第一章」より他の部分からの独立性が高く、 「序説」や「序論」ほど学術的な雰囲気はなく、表現として 趣があり、それだけにやや気取った感じがする場合もある。 ちなみに、椎名麟三に『永遠なる序章』と題する小説があ る。Q序説・序論 じょじょに【徐徐に】少しずつ変化する意で、やや改まった 会話や文章に用いられる、いくぶん硬い感じの表現。へー進 歩する〉へ暗くなる〉へ増える〉太宰治の『走れメロ ス』に「磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンテ イウスは、釣り上げられてゆく」とある。「次第に」や 「段々」が変化に重点があるのに対し、「急激に」と対立す るこの語は、その変化が少しずつである点に重心がかかっ ている。おいおい・次第に・漸次・Q段々 ししん【所信】信じている内容や事柄をさし、主として文 章中に用いる改まった漢語。〈ーを明らかにする〉(ーを表 明する)の「首相のー表明演説」など、個人の気持ちよりも 立場上の考えを述べる際に用い、正式・公式の感じの強い用 語。刂信念 よしんしゃ【初心者】学問や技芸やスポーツなどを習い始 めたばかりの人の意で、会話にも文章にも使われる一般的 な漢語。〈ー歓迎〉へー向けのコース〉へーにもわかる丁寧 な説明〉などギナー じよせい【女性】主に大人の女をさす、最も正式な感じの強 い、やや改まった日常の漢語。〈すてきなー〉へー向けの週 刊誌〉〈第一線で活躍中のー〉の大人の雰囲気が漂うため、 高校生以下、年齢の低いほどこの語を用いた場合の違和感 が大きくなる。高田保の『ブラリひょうたん』中の一編に 「女は女であるとき最もーである」という同義循環に近い使 用例がある。男のように何もかもさらけ出すのではなく、 自分を隠すすべを心得ていると、女性らしいその神秘的な 部分に男は魅了されるのだ、という意味合いのことを主張 するくだりである。最後の箇所だけ「女性」という語を用 いたのは、その語が一人前のちゃんとした女という評価を 伴う対象をさすからだと考えられる。おな」・女・Qじょし・ 婦女・婦人 じよせいと【女生徒】「女子生徒」の古風な呼び名。の「女子 生徒」に比べ、ある女の生徒という意味合いで用いる例が 多い。太宰治は独白体の小説の題として使った。大江健三 郎の『セヴンティーン』では「たちは不恰好なブルーマー スを家鴨のように穿いて」と「たち」を添えて集団をさ す。の女子生徒 しょせき【書籍】「本」の意で、主として文章中に用いられる 専門語に近い形式ばった漢語。〈ーを購入する〉〈ー売り場〉 へーの出版にこぎつける〉夏目漱石の『草枕』に「二三冊 のーもほどく気にならん」とある。内容の話題より業者が 物品として扱う雰囲気を感じさせ、「ーを読む」といった表 現には違和感がある。ひQ書物・図書・本 じょせつ【序説】学術的な著書で、本論に入る前の導入部と して置かれる論説をさして、主に文章中に使われる専門的 な漢語。「で全体の流れを説明する」「序論」より表現 としてあたりがやわらかい。土居光知『文学序説』時枝誠 <507> 記『文章研究序説』のように書名として用い、その著書全体 の性格や位置づけを示す例もある。単序章・Q序論 じよせつ【除雪】屋根や路面などに積もった雪を取り除く意 で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一車〉へ一作 業に手間取る〉の「雪下ろし」も「雪掻き」もその一部だが、 本格的な感じのこの語は、ブルドーザーやラッセル車などの 機械を用いて大量の雪を除去するイメージが強い。込雪下ろ し・Q雪掻き しせん【緒戦】序盤戦の意で、主に文章中に用いられるや や古風な漢語。「の劣勢を盛り返す」(は有利に展開す る)「を飾る」「を落とす」のように最初の試合と いう意味でも用いられるが、その場合は意味のわかりやす い「初戦」という表記を使う例が多い。初戦 しょせん【初戦】最初の試合の意で、会話でも文章でも使わ れる漢語。〈ー突破〉〈まさかのー敗退〉同義の「緒戦」よ り平易で、古風な感じもない。緒戦 しよぞう【所蔵】所有権を持って大事にしまってある意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へ名画をーす る)〈某氏—の品々〉主として美術品や高価な書籍などの 場合に用い、日用品などにはなじまない。所持・Q所有 じょう【除草】雑草を取り除く意で、改まった会話や文章 に用いられる硬い漢語。〈ー剤〉〈田畑のー〉②「草取り」や 「草むしり」に比べ、規模が大きく薬品を用いそうな感じが 強く、庭や花壇の草を手で取り除くような日常のものには 用いにくい。ひQ草取り・草むしり しょぞく【所属】企業・学校・チームその他さまざまな団体な しょだな どの組織に属している意で、改まった会話や文章に用いら れる漢語。〈無—〉〈—团体〉〈—变更を届け出る〉〈プロダ クションに—する〉〈学会に—する〉②主に人間の場合であ るが、建物などについても使う。具籍・配属・付属 しよたい【書体】線の太さや長さ、曲げる角度などによって 体系的に特徴づけられる文字デザインの類型的なスタイル をさし、会話にも文章にも使われる専門的な漢語。〈宋朝体 は縦横とも線が細く右肩上がりの古風なーだ〉②個々の文 字ではなく文字体系全体の特徴。筆写体と印刷体に分かれ、 前者に楷書体・行書体・草書体、後者に明朝体 ック体・教科書体などがある。この意味で「字体」を用いる こともあり、この語をまれに「書風」の意にも使う。Q字 体・書風 しよたい【所帯】会話でも文章でも使われる古風な日常漢語。 〈主〉〈道具〉〈やつれ〉〈じみる〉〈のやりくり〉 〈を構える〉芥川龍之介の『玄鶴山房』に「安ものの指 環に何かじみた寂しさを感じた」とある。「世帯」とあて ることもあるが、「せたい」と紛らわしく、俗っぽい印象も ある。専世帯 しよたいをもつ【所帯を持つ】「家庭を持つ」の古い表現。最 近は時代がかったドラマなどで使われる以外、めったに聞 かなくなった。〈問屋の若旦那とーそうだ〉Q家庭を持つ・ 結婚・結婚する・こし入れ・婚姻・嫁ぐ・嫁入りする・嫁に行く しよだな【書棚】本棚の意で、やや改まった会話や文章に用 いられる、少し硬い感じのことば。〈書斎の作り付けの—〉 〈応接間の—に文学全集がずらりと並ぶ〉本棚より本格的 <508> しょち な感じがあるが、図書館のような施設よりも個人住宅の連 想が強い。専書架・Q本棚・本箱 しよち【処置】判断して始末する意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈応急—〉〈適切な—を講じる〉〈寛大な—を 願い出る〉の「処理」とは違い、「ー済みの歯」のように傷 口などの手当の意でも使われる。処理・対応・対処 ちゅう【暑中】土用を中心とする夏の暑い期間をさし、主に文章中に用いられる漢語。「価い」「休暇」②庄野潤三の「インド綿の服」に「お祝い申し上げます」という長女の挨拶が紹介されている。「お見舞い」の間違いではなく、「我ら亜熱帯族の言葉」と当人が注記してあるとおり、夏に強い庄野家の人々の間での意図的な使用である。残暑よちゅう【女中】一般家庭に住み込んだりして家事をこなす女性をさす古風な漢語。その場合は差別意識が感じられるとしてこの語の使用を控え、「お手伝いさん」と言い換えることが多い。「部屋」「奉公」「を雇い入れる」昔はその家から嫁に出すこともあるなど、単なる雇用関係を超えた家族的な扱いもあったようだが、一般に女中制度は主人と奉公人という伝統的に明確な上下関係があり、また、勤務条件のひどさが社会的な身分の低さと重なって、この語は職業差別という意識と結びついたために特に嫌われる。その意味では「下男」「下女」「召し使い」なども同様である。現代では一般家庭にそのような女性を雇い入れるほどの経済的な余裕がなくなり、また、女中志願の人材も得られないため、せいぜい通いの家政婦や派出婦を臨時に雇う程度であり、乳幼児のいる場合にはペピーシッターを利用す るケースも増えて、現実にはそういう実態の変化とともに、 この呼称の問題もほぼ解消した感がある。ちなみに、旅館 の女中などの場合は家庭の女中の場合より差別的な感じは 薄く、江戸時代に大名家などの奥向きに仕えた「御殿」 「奥」などの場合はそのような語感が働かない。Qお手 伝いさん・家政婦・下女・派出婦・メード・召し使い しよっかん【食感】食べ物を口に入れたときの歯ごたえや舌 ざわりをさし、会話にも文章にも使われる比較的新しい漢 語。ヘこりこりしてーがいい しよっかん【触感】物にさわったときの手ざわりや肌ざわり をさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。ぎらざら したー〉ぐなめらかなー〉川端康成の『雪国』に「この指 だけは女のーで今も濡れていて、自分を遠くの女へ引き寄 せるかのようだ」とあり、三島由紀夫の『橋づくし』には 「その爪は弾力のある重い肉に弾かれ、指先には鬱陶しい が残って、満佐子はその指のもってゆき場がないような気 がした」とある。Q感触・手ざわり・肌ざわり しよっきだな【食器棚】食器類を収納するための戸棚をさし、 会話にも文章にも使われる日常の表現。へから皿を取り 出す)の「食器戸棚」の略。戸棚 シヨック物理的・心理的な打撃の意で、会話やさほど硬くな い文章に使われる外来語。〈」を受ける〉〈失恋の—から立 ち直る〉夏目漱石の『明暗』に「相当の速力で走っている 自動車を突然停められた時のような衝撃を受けた」とあ る。網野菊の『さくらの花』には「いきなり、ガクンと頭を なくられたようなーだった」とある。「ーを吸収する装置 <509> のように物理的な打撃をさす場合や、「死」「療法」の ような医学的な意味合いで使う場合には、会話から硬い文 章まで抵抗なく使われる。乃衝撃 しよっこう【職工】職人や工場労働者をさした古めかしい漢 語。〈ーあがり〉の差別意識が伴うとして現在は使用を控え ることが多い。ひ工員 しよっちゅう「いつも」に近いほど頻度の高い意で、くだけ た会話に使われる俗っぽい表現。「忘れ物をする」「出 歩いている」「うまい物を食っている」Q何時も・始終・終 始・常時・絶えず・常に・のべつ しょっぱい「塩辛い」意で、主としてくだけた会話で使う俗 っぽい口頭語。〈ーシャケをほぐしてお茶漬けにする〉藤 沢周平の『塩ジャケの話』に「辛塩というからには相当に のかと思うと、これがとんだ看板倒れ」とある。主に東日 本で用い、西日本では「からい」と言うことが多い。刂辛い。 塩辛い しよっびく【しょっ引く】無理やり連れて行く意で、くだけ た会話に使われる俗語。〈傷害の現行犯でー〉〈サツにー・ かれる〉の警察署に連行する場合によく使う。匕勾引・Q連 行 ショッピング「買い物」の意の斬新な感じの外来語。〈一セ ンター〉〈一パッグ〉建売を買ってもネックレスを買って もこんにゃくを買っても「買い物」と言ってまったく違和感 がないが、ももひきや納豆やゴミ袋を買ったり古道具屋で 狸の置き物を買ったりするのに「ショッピング」という語を 使うとふざけた感じに聞こえるのは、このことばの斬新で しょふう おしゃれな語感とイメージの衝突を起こすからである。日 常会話で使うと気障な感じを与えやすい。買い物 しよてん【書店】主に書籍や雑誌の販売店をさし、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈一の店頭に並ぶ〉(最 寄りの一に注文する)②出版社をさすこともあり、「岩波 」のように社名の一部に使う例も多い。単出版社・書肆に Q書房・版元・本屋 しょどう【書道】毛筆で文字を書く造形美術をさし、会話に も文章にも使われる硬い漢語。〈一の展覧会〉〈一の達人〉 の「一教室」のような「習字」に近い意の用法もあるが、一 般には芸術としてその美を競う本格的な技術を連想させる。 Q習字・書・手習い しとく【所得】勤労・事業・資産などから得られる収入をさ し、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈一税〉低 者層〉へを申告する〉へが少ない)経済用語としては、 一定期間の収益から必要経費を差し引いた金額をきす。 稼ぎ・Q収入 しょば場所を意味する隠語。〈代を請求する〉「場所」 の「ば」と「しょ」を逆転させた語形。場所 しよばつ【処罰】刑罰に処する意で、改まった会話や文章に 用いられる専門的な硬い漢語。「の対象となる」(法によ りーされる)きQ処刑・処分 しふう【書風】主に毛筆の文字における時代・流派・個人な どの類型的・個性的な特色あるスタイルをさし、会話にも文 章にも使われるやや専門的な漢語。「に時代が映る」②こ の意味で「書体」を用いることもある。書体 <510> しょぶん しよぶん【処分】規則違反者などを罰する意のほか、売却す る意の婉曲表現としても、会話にも文章にも使われる正 式な感じの漢語。〈行政—〉〈退学—を受ける〉〈厳重な— を発表する〉〈家財道具を—する〉②夏目漱石の『坊っちゃ ん』に「そんな頓珍漢な、—は大嫌です」とある。「始末」 より改まった感じで、厳格な雰囲気がある。凡始末 じよぶん【序文】「序」として書物の最初に掲げる「はじめに」 といった性格の文章をさし、会話にも文章にも使われる漢 語。〈ーに明記する〉〈初めての著書に恩師からーをもら う〉の挨拶程度の「前書き」や「はしがき」に比べ、もう少 し本格的にその本の意図や内容を説明する感じがある。ま た、著者が比較的無名の存在である場合などに、名の知ら れた恩師や著名な作家などが著者紹介や本の推薦などを兼 ねて文章を寄せるケースもある。そのため、著者自身の書 く通常のものを特に「自序」と呼ぶこともある。「跋文」と 対立。Q序・緒言・はしがき・前書き しよう【処方】病気に応じて医師が薬の配合を決める意で、 専門的な話題で使われる漢語。〈一箋〉へとおりに調合す る)日常はほとんど「処方箋」の形で使う。調合・調剤・ Q調薬 しぼう【書房】本の販売店または出版社の名称の一部とし て会話にも文章にも使われる漢語。東京—から著書を出 す)単独ではあまり使わない。「書」は本、「房」は部屋の 意で、書斎の意にも使われた。単出版社・書肆・Q書店・販元・ 本屋 しよみん【庶民】世間の一般の人々をさして、会話にも文章 にも使われる漢語。「の暮らし」「の憩いの場」「の 声が届かない」「われわれーには手の届かない値段」のよ うに収入の少ない比較的貧しい階級を意識させる傾向があ り、「大衆」や「民衆」より範囲が狭いように思われる。ま た、全体をマスとしてとらえる感じの強い「大衆」「民衆」 に比べ、一人ひとりを意識させやすいニュアンスが感じら れる。Q大衆・民衆 しょむ【庶務】特別の名称を持たない一般の事務をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈ー課〉②さまざまな事務の 意。Q事務・総務 しよめい【署名】自分の意思であることを明確にするため書 類などに自分の字で氏名を記す意で、会話にも文章にも使 われる、やや改まった漢語。〈ー運動〉〈ーを集める〉〈報告 書にーする〉Q記名・サイン①・自署 しよめん【書面】文書・書簡の意で主として文章中に用いられ る、改まった漢語。〈—審理〉〈—で申し入れる〉〈—をもっ て回答する〉「—から察するに」のように「文面」の意味 合いで用いることもあるが、多くは「失礼ながら」にて御 挨拶申し上げます」のように、直接お目にかかる行為を省 略したことを詫びる場合などに用いる。马文面 しよもつ【書物】「本」の意で、会話でも文章でも広く用いられるやわらかめの漢語で、「本」より若干古風な感じがある。〈ーを買い求める〉〈ーに目を通す〉〈ーの置き場に困る〉団石坂洋次郎の『若い人』に「厚さ一センチのーを読めば一センチだけ背が高くなったような気分」とある。弔書籍・図書・Q本 <511> しゅう【所有】自分のものだという権利のもとに持ってい る意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。 〈一権〉〈一者〉〈個人のーする土地〉Q所持・所蔵・持つ じよゆう【女優】女性の俳優をさし、会話から文章まで幅広く使われる日常の漢語。「一人前の」へ歌手からに転向するの有島武郎の『或る女』に「自信ある」が喜劇の舞台にでも現われるように、軽い微笑を右の頬だけに浮かべ」とある。女性であることを特に意識した場合に用い、ふつう子役を含まない。駆け出しの女優から映画会社の看板となる大女優までを含む。職業について「俳優」と答えても「女優」と答えてもまたく違和感がない点、「男優」の場合とは違う。男優・Q俳優 しゅうしゃ【所有者】物品などの所有権を有する人をさし、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〜が判明す る〜〜に返却する〜〜持ち主」に比べ、思想や性格など 抽象的な対象にはなじみにくい。み持ち主 しゅうぶつ【所有物】自分に所有権のある物の意で、改ま った会話や文章に使われる、やや専門的な硬い漢語。〈他人 のーを無断で持ち出す〉〈子供は親のーではない〉〈所持品 Q持ち物 しよう【所用】「用事」の意で、改まった会話や文章に用い られる硬い漢語。〈ーで外出する〉②二葉亭四迷の『浮雲』 に「夕暮よりーあって出た」とある。巻用・用件・Q用事 しょり【処理】物事を適切に捌ぽいて片づける意で、会話にも 文章にも使われる基本的な漢語。〈熱—〉〈事務的に—す る〉〈事故の—に手間取る〉〈手際よく—する〉処置・対応・ しょんべん 尅処 じよりよく【助力】仕事がうまく運ぶように他人に手助けす る意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「を 頼む〉へを惜しまない)②太宰治の『斜陽』に「僕になん のーも与えず」とある。仕事が補助的である点は「手伝う」 「手助け」と同じだが、この語は能力的に当人以上である場 合もありそうな雰囲気がある。協力・Q手助け・手伝う しよるい【書類】事務上の文書をさし、会話にも文章にも広く使われる漢語。〈重要〉〈審査〉〈を作成する〉〈を提出する〉〈に目を通す〉〈不備のため失格になる〉森鷗外の『追儺』に「卓の上に出してある取扱中の」とある。メモ書きをも含む「書付」に比べ、書式に則って作成した正式な感じのものを連想させる。「送検」として使えば専門語。書付 しよう【初老】老人の仲間入りをしかかっている年齢をさ し、やや改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。「 の紳士〉へのごま塩頭》幸田文の『流れる』に「秋の尾 根を見るような高い鼻をもったの女である」とある。も とは四十歳の異称とされるが、現代では六十代前半ぐらい の連想が強い。専熟年・Q中高年・中年・中老 じよろん【序論】研究書や長編の学術論文などで、本論に入 る前に導入部として述べる本論の前提となる基本的な説明 や議論をさし、会話にも文章にも使われる専門的で硬い漢 語。〈学術書の体裁どおりーを設ける〉専序章・Q序説 しよんべん【小便】小便しようの意で、男性がごくだけた会話 で使うことのある俗語。へーをひっかける》回「しょうべん」 <512> しょんぼり の音転。「連れション」「アメション」なども同類。ひおしっ こ・小水・Qしょうべん・尿 しょんぼり力を落として元気のない様子をさし、会話や軽 い文章に使われる和語。〈雨の中にー立っている〉二葉亭 四迷の『浮雲』に「と頭をうな垂れて」とある。ひしお れる②・しょげ返る・しょげる・悄然・すこすご しらが【白髪(毛)】白くなった髪の毛の意で、会話にも文章にもよく使われる日常生活の和語。〈一頭〉〈一染め〉〈若 ー〉〈一が目立つ〉谷崎潤一郎細雪に「髪の毛が、禿 げてはいないが、半分以上ーで、一面に薄く」とある。「 が出てきた」「を抜く」のように、一本ずつを意識した用 法が多い。漢字表記は音読みされやすい。銀髪・Q白髪 しらじらしい【白白しい】見え透いた、知らない振りをする 様子をさして、会話にも文章にも使われる和語。〈一噛〉 〈一態度〉〈一顔でとぼける〉遠藤周作の『海上毒薬』に 「石のような一顔」とある。「一気持ち」「雰囲気」のよう に、白けた、興ざめの意に使われることもある。空々しい しらせ【知らせ】上位者・下位者の感じを伴わない通知の、や わらかい雰囲気の和風表現。〈嬉しいー〉〈何のーもない〉 〈同窓会のーが届く〉「市役所からのおー」「会のおー」と いうそうに、「お知らせ」という丁寧な形で親しみを感じさ せる使い方も多い。通達・Q通知・報告 しらせる【知らせる】相手に情報を伝える意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和 語。「わかったらすぐー」〈家族にー〉〈面接の結果を親に ー〉〈月ごとの業績を本社にー〉〈出発時刻をファックスで 〈状況がわかり次第すぐに〉夏目漱石の「坊ちゃん」に「手紙で」・せる」とある。同じく「こころ」には「手紙にはその後Kがどうしているか」・せてくれと書いてありました」とある。「教える」と違って指導的なニアンスはなく、相手が知らないはずの情報を単に伝えるというにとどまり、文書や第三者を介しての伝言など、相手としかに接触しない形での間接的な伝達も含まれる。Q教える・告知・告白・告げる・伝える・伝達 しらっぱくれる ↓しらぼくれる しらとり【白鳥】白鳥をはじめとする羽毛の白い鳥をさし、 主に文章中に用いられる雅語的な和語。へーの姿をカメラ におさめる)の若山牧水の「ーはかなしからずや空の青海 のあをにも染まずただよふ」の一首が知られる。ひはくちょ う しらばくれる知らないはずはないのに知らない振りをして 隠す意で、主に会話に使われる和語。「・れても無駄だ、 ネタはあがってるんだ〉〈最後までー・れて表情ひとつ崩さ ない〉「とぼける」系の頬語が、受賞したニュースや恋人 がいるという噂など、晴れがましいことや照れくさいこと などについても使うのに対し、この語はそのようなプラス 評価の情報については使いにくい。「しらばっくれる」とも 言い、その場合はさらに強調され、さらに口頭語的に響く。 やや古い感じの「しらっぱくれる」も同様。ひしらを切る・知 らんぶり・Qそらとぼける・とぼける・頬かぶり しらばっくれる ↓しらばくれる しらべ【調べ】音楽の響きや調子、また、楽曲そのものをさ <513> して、主に文章中に用いられる古風で詩的な和語。〓の ー〉〈妙なるー〉〈心地よいーが耳に残る〉小林秀雄の 『実朝』に「悲しい心には、歌は悲しいを伝えるだろうか」 とあるように音楽以外に文学、特に韻文に用いる例も多い。 「ーが済む」のように、調査や聴取などをさす用法もある。 ひ音律・Q旋律・節・節回し・メロディー しらべる【調べる】不明な点をはっきりさせるために情報を 得る意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈荷物を—〉〈履歴を—〉〈住所を—〉 ②永井荷風の『湮東綺譚』に「巡査は矢張だまったままわた くしの紙入をー・べ出した」とある。込洗う②調査 しらをきる【白を切る】自分は知らないと言い張る意で、く だけた会話に使われる俗語。へあくまでー・りとおすへー 気か、証拠があるんだぞ》夏目漱石の『坊っちゃん』に 「証拠さえ挙がらなければ、一積りで図太く構えていやが る」とある。「しらぼくれる」以上に悪事を連想させ、取り 調べの場面などを思い浮かべやすい。しらぼくれる・知らん ぶり・そらとぼける・とぼける・頬かぶり しらんぷり【知らん振り】知らない振りをする意で、くだけ た会話に使われる俗っぽい和語。〈呼ばれてもーをする〉 〈最後までーで通す〉、しらぼくれる・しらを切る・そらとぼける・ とぼける・頬かぶり しり【尻】腰の下の後ろ側で左右に肉が盛り上がっている簡 所をさし、会話でも文章でもよく使われる日常の和語。子 供のーを叩く)〈ーが重い〉〈ーに敷く〉ぐぞんざいな感じ があるため多く「お尻」の形で用いる。尾崎一雄の『痩せた しりっ 雄鶏』に、風呂上がりの父親の裸を見た八歳の次女が「お父 ちゃんのおー、無いよ。もとは有ったんだねえ」と驚きの声 をあげる場面がある。痩せて肉が落ち、出っ張りが目立た ないと、小きな子には尻として認識できないのだろう。な お、この語はもともと広く後ろを意味した。「女のーを追い かける」の場合も臀部に限らない。Qけつ・臀部 じりき【自力】自分自身の力の意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。へーで這い上がる〉へーで脱出する〉 の「独力」に比べ、体力や腕力などの具体的な力や働きを意 味する例が比較的多い。ひ独力 じりき【地力】その人物が身につけた現在の実力をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈ーがある〉〈ーが増す〉 〈ーをつける〉〈後半になってーを出す〉〈ーの違いを見せ つける〉の「底力」に比べ、鍛えて獲得した感じが強い。 実力・Q底力・能力 しりごみ【尻(後)込み】気後れするなどためらって後ろに下 がる意で、会話や硬くない文章に用いられる日常の和語。 〈大勢の前でーする〉迅速げ腰 しりぞく【退く】後ろに下がる、引退する意で、改まった会 話や文章に用いられる和語。〈負けてー〉〈第一線からー〉 〈現役をー〉ひどく・のく・引き下がる・Q引っ込む しりつ【市立】市が設立し管理・経営する意の漢語。〈地元の 大学に進む〉の会話で「私立」と区別するために「いちり つ」と発音することもある。いちりつ しりつ【私立】「公立」に対して、私人が設立し管理・経営す る意の漢語。〈名門の—大学を志望する〉永井荷風の「澀 <514> じりっ 東綺譚に「中学校の英語の教師」とある。会話で「市 立」と区別するために「わたくしりつ」と発音することもあ る。ヲわたくしりつ じりつ【自立】他の支配や援助を受けずに経済的にも精神的 にも独立する意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈娘が 親元を離れて—する〉〈精神的な—〉〈まだ—できていな い〉り自活・自律・Q独立・独り立ち じりつ【自律】自らを律する意で、主として文章に使われる 硬い漢語。〈自主—の精神〉の「神経失調症」のような用 法では専門語の雰囲気を感じさせる。自立 しりめつれつ【支離滅裂】言うこと為すことに筋道がなく全 体として辻褄が合わない意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。言うことがもうだ》もむちゃくちゃ・ Qめちゃくちゃ・めちゃめちゃ じりゅう【時流】その時々における一般的な考えや好みをさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーに乗る〉〈ーに合 わせる〉〈ーに流される〉〈ーに逆らう〉④太宰治の『十五 年間』に「いまではもう、社会主義さえ、サロン思想に堕落 している。私はこのーにもまたついて行けない」とある。 り時勢・趣勢・成り行き・Q風潮 しりよ【思慮】物事に関する深い考えをさし、改まった会話 や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈ー分別がある〉〈ー が深い〉〈ーが足りない〉対象を定めて考え始める「考 慮」に比べ、日頃からの蓄積を問題にする感じが強い。小 沼丹の『珈琲の木』に「感心したのはーが足りないからで (略)大きな横文字で「珈琲の木」と印刷してあるから、一目 見れば直ぐ判る」とあるように、日常の些事に使うと大仰 すぎて骨膽な感じが出る。Q考慮・思考・思索 しりよう【資料】研究や調査を行うための基礎的な材料をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈研究〉〈調査〉 〈を収集する〉〈豊富なを駆使して論を展開する〉 「データ」そのものでなく、データを得るもとになる材料と いう物的存在をさす。具材料・Q史料・データ しりよう【史料】歴史研究のための文献や遺物などの資料を さし、主として文章中に用いられる専門的な漢語。へーを編 纂ふふする〉へ直接ーに当たる〉口頭表現では「資料」との 区別が困難。ふ資料 しりよく【視力】物の形や色を見分ける能力をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈一検査〉〈一が衰える〉谷崎 潤一郎の『陰翳礼讃』に「何か眼の前にもやもやとかげろう ものがあって、ーを鈍らせているように感ずる」とある。 視覚 しる【知る】それに関する情報・知識を有する意の基本的な和 語。〈ー権利〉〈道理をー〉〈恥をー〉〈ー人ぞー〉〈ー由も ない〉〈どうなろうとー・ったことではない〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「東京と断わる以上はもう少し奇麗にしそ うなものだが、東京をー・らないのか、金がないのか、滅法 きたない」とある。巻既知・存じ上げる・Q存ずる しるし【印】約束事として何かの意味を表示する一定の形を さし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。〈マルやバツのーを書く〉〈県庁所在地の ー〉へ一時停止のー〉②太宰治の『富嶽百景』に「たぶん、 <515> あそこあたりが、いただきであろうと雲の二点にーをつけ て、そのうちに、雲が切れて、見ると、ちがった」とある。 ひQ記号・符号・マーク しるす【記す】書きとめる意で、主に文章に用いられる和語。 〈手帳に—〉〈氏名及び生年月日を—〉〈考えるところを簡 潔にー・せ〉夏目漱石の『草枕』に「写生帖にー・して行 く」とある。記録するという意味合いで「誌す」心に刻む の意で「銘す」とあてることもある。そのような特殊な表 記の場合は文体的なレベルが高く感じられる。専印す しるす【印す】印をつける、跡を残すの意で、主として文章 中に用いる和語。〈記号を—〉〈足跡を—〉〈第一步を—〉 記す しるもの【汁物】澄まし汁・味噌汁などの総称としての和語。 個々の料理というより種別をきして用いられることが多い。 〈和食コースの本日の—〉、Qお吸い物・おつけ・おみおつけ・吸 い物 しれい【指令】指示・命令の意で、主に文章中に用いられる硬 い漢語。〈ーを出す〉〈ーを発する〉〈ーを受けて直ちに行 動に移る〉専指示・司令・命令 しれい【司令】統率・指揮の意で、主に文章中に用いられる漢 語。〈官〉〈塔〉戦争や軍隊の連想が強い。単指令 じれい【事例】ある事柄に関する実例、前例となる事実をさ し、改まった会話や文章に用いられる専門的な硬い漢語。 〈ー研究〉〈過去のーを集める〉〈さまざまなーを比較検討 する〉刂一例・ケース②・Q実例・例 しれつ【歯列】歯の並び方の意で、診察時などの会話や文章 に用いられる歯科の専門的な漢語。〈一矯正〉単並び しろうと じれったい【焦れったい】自分の思うように事が運ばないの で早く早くと気があせる意で、主にくだけた会話に使われ る和語。〈思うように進めないのでー〉〈やり方があんまり 遅いので見ていてー・くなる〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「同じ事を何返もやるので少々ー・くなった」とある。 もどかしい しろ【白】犯罪行為に無関係である意の隠語。警察に連行し て取り調べてみるとーだった》②片仮名書きする例が多い。 「くろ②」と対立。 しろ【城】敵の襲撃に備えて築く軍事的建造物をさし、会話 にも文章にも使われる和語。〈難攻不落の—〉〈—を築く〉 〈—を攻め落とす〉〈—を明け渡す〉田宮虎彦の『落城』に 「西国勢に黒菅の—をかこまれるとしても、陸奥はまだ一脈 の明るみを心の底に残していた」とある。石垣や堀を含め てさすこともある。呂城郭 しろうと【素人】その方面を職業とも専門ともしていない人 間の意で、会話や軽い文章に使われる日常の和語。「芸 くずぶのー〉へーの域を出ない〉へー離れした技〉の「アマチ ュア」と比べ、資格などによる規定のない緩やかな分け方。 野球に例をとれば、プロ野球以外の「ノンプロ」や「アマチ ュア」の選手も専門家に近い技術を有するために純粋に野 球の「素人」とはいえず、「ー野球」となると、それとは比 べ物にならない低いレベルの遊びを連想させる。「ーの娘 に手を出す」のように、芸妓のや遊女などの商売女に対し て、堅気の人間をさす用法もある。「玄人」と対立する語。 <516> しわい アマ・Qアマチュア・とうしろう・ノンブロ しわい【吝い】「けち」の意の関西方言。「奴」ここまで お人とは》Qけちけちん坊・倹約家・渋い・渋ちん・締まり屋・し みったれ・節倹家・みみっちい・吝嗇家 しわがれる【唆れる】声がかすれて滑らかに出ない状態をさ し、改まった会話や文章に用いられる、やや古風な和語。 へ!れた声の老人〉〈大声を出し過ぎて声がー〉回くだけた 会話では「しゃがれる」となりやすい。堀辰雄の『風立ち ぬ』に「私の背後で、病人のすこし!れた声がした」とあ る。马かすれる・しゃがれる しわざ【仕業】「したこと」の意で、会話にも文章にも使われ る、やや古風な和語。〈神の—〉(これは一体、誰の—だ)回 「所業」と違って、好ましい場合に使われることもあるが、 一般にはやはり好ましくない場合の例が多い。この語の場 合は、いずれにせよ、奥に驚きの気持ちが感じられる。刂所 業 しわぶき【咳】咳の意で主に文章に用いられる古めかしい和 語。〈老人の—の音〉〈静まり返って—つ聞こえない〉 漢字表記は「せき」と読まれやすい。呉咳 しわよせ【皺寄せ】悪い結果の影響が他に及ぶ意で、会話や 硬くない文章に使われる和語。くこっちにそのーが来る〉 く下請けにーが行く〈財政赤字のーで福祉関係の予算が窮 屈になる〉乃Q悪影響・そばづえ・とばっちり・巻き添え しんい【真意】本当の気持ちの意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い感じの漢語。〈ーをはかりかねる〉〈ーを確 かめる〉単本意・Q本心・本音・胸の内 しんいり【新入り】ある組織に新たに入る意で、会話や軽い 文章に使われる表現。〈今度の—の仲間〉への社員の研修 に力を入れる〉の「新人」「新顔」に比べ、若干軽んじる雰 囲気もある。Q新顔・新参・新人・ニューフエース・ルーキー じんいん【人員】ある団体に属している人数をさし、やや改 まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。「一整 理〉〈募集〉「を確保する〉「人数」がもっぱら数を問 題にしているのに対し、この語は数よりもそこの構成員で あることに重点があるように感じられる。り人数 しんか【進化】生物が長い時間を経て段階的に複雑多様で優 れた形態に変化する意で、会話にも文章にも使われる専門 的な漢語。〈一論〉〈一の過程〉〈一を遂げる〉「退化」と 対立。「社会の一に伴い」のように生物以外に使う派生的な 用法もある。顔が悪くて愛人のできない人が猿を飼って人 間に進化するのを待っているという笑い話は、「進化」とい う語が気の遠くなるほどの長い年月の変化に対応するから、 その極端な誇張が笑いにつながる。ところが、近年は「機 械は年々ーする」「彼もこのところーが著しい」のように単 なる「進歩」の意で使う例がはびこり、その場合は俗っぽい 響きがある。Q進歩・発達 じんか【人家】人の住んでいる家をさし、会話にも文章にも 使われる漢語。〈一の灯がちらほら見える〉〈一がまばらな 地域〉〈一が密集する街中〉②さす対象は「家」「家屋」と同 じであるが、「ようやく一の灯が見えた」のように、賑やか さや物寂しさを意識してこの語を使う傾向が見られる。庄 野潤三の『秋風と二人の男』に「電車がヨットの浮んでいる <517> 川を渡って(略)の少ないところを走って」とある。「家」 や「家屋」に比べ、人が住んでいるという生活感が強く感じ られる。専家・家屋・民家 しんがい【心外】相手の態度や行動などが予期に反して好ま しくない場合の感情をさし、やや改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈一な返答〉〈甚だーでならない〉〈裏切ら れるとはーだ〉②意外な結果に憤慨する気持ちがこもる。 小沼丹の『更紗の絵』に「気に入らぬところに嫁入りするこ とはあるまいと云っただけなのに、そのあとの責任まで持 たされるのはーである」とある。马不本意 しんがお【新顔】ある組織・団体・グループなどに新しく加わ った人の意で、会話にも文章にも使われる表現。「一の店 員」(今度のーは仕事が速い)新戦力として期待をこめた 感じの「新人」に比べ、見慣れない顔、今までいなかった人 という点に中心があり、大いに期待できるとか、役に立た ないとかといった評価とは結びつきにくい。新入り・新参 Q新人・ニューフエース・ルーキー じんかく【人格】人間としての品格の意で、やや改まった会 話や文章に用いられる、少し大仰な漢語。「二重」〈大し たー者だ〉〈立派なー〉〈ーを疑われる〉德富蘆花の思 出の記』に「沈穀のーをもって僕に基督教の光を齋 とある。個人の性格というより人間としての資質を問題に する場合に多く使われる。「ーを疑う」のは、どのような人 格かという疑問ではなく、人間性というまともな人間とし ての資格に疑問を抱くほどのひどさを思わせる。そのた め、「いやな」「曲がった」などというマイナス評価の語と しんきろう は結びつかない。「好人物」とはいうが「好人格」という語 がないのも、個人的な感じが薄いからであろう。気質・気 象・気性・気立て・性分・人品・Q人物・性格・性向・性質・たち・人柄・人 となり しんがた【新型】同類の中での新しい型の意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ウイルス〉〈秋にーの乗用車が発 表される〉き新形 しんがた【新形】新しい形式の意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈—のデザイン〉タイプに重点のある「新型」 に対し、フォームに重点を置いて用いる。単新型 しんがり【殿】「最下位」「最後尾」の意で、会話にも文章に も使われる古めかしい和語。〈ーを務める〉「後駆り」 の転。もと、軍勢が退却する際に敵の追撃に備える最後列 をさした。ひ最下位・Q最後尾・どんじり・びり・びりっけつ しんかん【神官】神主の意で、改まった会話や文章に用い られる正式な感じの漢語。〈代々ーを勤める家柄〉Q神主・ 宮司・神職 しんきょう【信教】宗教を信じることをさし、主に文章に用 いられる漢語。〈ーの自由〉単宗教 しんきょう【心境】ある時の心の状態をさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈一の変化〉(今のーを語る)石坂洋 次郎の『若い人』に「大きな、厄介な仕事をなし遂げたあと のような不満のないだ」とある。塩地 しんきろう【蜃気楼樓】空気中の温度差が原因で光の異常 屈折が生じ、その場所に存在しない遠い風景が見える現象 をさし、会話にも文章にも使われる、いくらん専門的な漢 <518> 語。「が立つ」「蜃」は蛤の意。蛤の吐く気によって 生じると考えたところから。马海市・Q空中楼閣 しく真(深)紅濃い紅色をさし、主に文章中に用いられ る漢語。〈の優勝旗〉〈のドレスに身を包む〉串田孫 一の「秋の組曲」に「の落日へ向って駈けて行った」とあ るように、やや美化した感じに響くこともある。真っ赤 しんくう【真空】固体・液体・気体の一切存在しない空間をさ し、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈放 電〉〈管〉〈ポンプ〉〈バック〉〈中がーになってい る〉佐藤春夫が『田園の憂鬱』で、ある農村を「譬えば三 つの劇しい旋風の境目に出来たーのように、世紀からは置 きっ放しにされ、世界からは忘れられ」と直喩で表現したよ うに、「地帯」など、他の作用のまったく及ばない状態を さす比喻的用法もある。空間・Q虚空 シングルマザー未婚の母に近い意味で、近年になって使わ れだした俗っぽい外来語。彼女も最近多いわゆるの一 人だ語感の働きにくい外国語に換言して、「未婚の母」 のマイナスイメージをぼかした表現。「未婚の母」よりも 堂々と暮しているような雰囲気が漂っている。「未婚の母」 と違い、離婚の結果そうなった場合も含まれる。未婚の母 しんけい【神経】身体の中枢の興奮を各部に伝え、各部の刺 激を中枢に伝える経路となる糸状の器官をさし、会話にも 文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈運動〉〈一過敏〉 〈一麻痺〉〈歯の一を抜く〉〈客に一を遣う〉〈一をすり減 らす〉〈一の休まる時がない〉図太い一が鈍いの ように、単に物の感じ方や考え方をさす用法もあり、その 用法は専門的どころかむしろいくらか俗っぽい響きがある。 井伏鱒二の『休憩時間』に「僕は末梢ーはきらいです。僕は 一刻たりともこの教室に居たくない。諸君よ、さらば! 時々おたより下さいという例が出る。専感受性 しんけん【真剣】真面目で本気という意味で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈ーに考える〉〈ーに取り組む〉②川端 康成の『花のワルツ』に「になるなら、自分ひとりでなり たいわ」とある。生真面目・真摯・Q真率は熱心・真面目 しんげん【森厳】身が引き締まるほど厳粛な意で、主に文章 に用いられる硬い漢語。〈境内の—な空気〉へ—のうちに〉 の軍人政治家宇垣一成の日記に「—なる責任感」とあると いう。ひ厳か・厳粛・Q崇高・荘厳・荘重 しんこう【進攻】「攻め進む」意の漢語で改まった表現。 を開始する)〈破竹の勢いで—する)必ずしも敵地に攻め 入らなくても使える。Q侵攻・侵略 しんこう【侵攻】攻撃して他国に侵入する意のやや改まった 漢語表現。〈敵地深くーする〉領土や財物の略奪行為が前 提になっていない感じがある。Q進攻・侵略 しんこう【信仰】神や仏を信じて崇拝し、その教えに従う意 で、いくぶん改まった会話や文章に使われる漢語。〈告 白〉〈生活〉〈心が厚い〉〈日頃の—の賜物たまの〉の「信 心」に比べ、キリスト教など神道や仏教以外の宗教を連想 することも少なくない。専信心 しんこう【深更】夜が更けわたり真夜中に至る頃をさし、主 として文章に用いられるやや古風で硬い漢語。〈友と語ら いーに及ぶ〉②「夜更け」より遅く「深夜」より範囲が狭い <519> 感じがある。「深夜」に比べ、睡眠中に目を覚ました時よ り、起きている状態での時間経過として意識する例が多い ように思われる。Q深夜・真夜中・夜間・夜半・夜分・夜…夜中・ 夜更け・夜…よわ しんこう【進行】前の方向や次の段階に移行する意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈議事—〉〈列車が ーする〉〈ーが速い〉〈列車の—〉〈ーを妨げる〉〈ー係が会 のーをつかさどる〉〈工事のーが遅れる〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「箒を振り振りーして来て」とある。「前進」 に比べ、ものごとが順調に行われるところに重点がある。 大岡昇平の『野火』に「私が隊から追われる原因であった肺 浸潤もーして」とあるように、「進む」と同様、病気が重く 深刻になる場合にも使う。り進む・Q前進 しんごう【信号】色・形・光・動きなどの符号を使って送る合図 をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈手旗—〉〈赤—〉 〈機〉〈が変わる〉合図・サイン②・Qシグナル じんこう【人工】人間が工夫して作り出す意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈池〉〈芝〉〈衛星〉自然 「天然」と対立。「人造」と違い、物だけでなく、「受精」 「呼吸」のように行為を表す例もある。ひ人造 しんこく【申告】自発的に申し出て知らせる意で、改まった 会話や文章に用いられる、公的な感じの漢語。〈自己—〉 〈確定—〉〈—漏れ〉〈税関に—する〉〈所持品を—する〉 国民が法令に基づいて義務として公的機関に届けるという 連想がある。単申し出 んこんりよこう【新婚旅行】結婚の記念に行う夫婦の旅行 しんし をさす漢語で、会話でも文章でも用いるごくふつうの語。 〈に出かける〉谷崎潤一郎の「細雪」に「昔、貞之助と に行った時」とある。ひQハネムーン・蜜月旅行 しんさつ【診察】医者が病気や怪我の状態を知るために患者 の体を調べることをさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈室〉〈医者のーを受ける〉井伏鱒二の『本日休診』に 「いざーしようとすると、尻込みするばかりでなく、医学を 誹謗する女もいる」とある。小沼丹の『タロオ』には「二人 の医者は大寺さんをーして(略)ドイツ語を交えて何やら話 していた」とある。「診断」に比べ、調べる過程に重点があ る。診断・診療 しんざん【新参】ある組織に新たに加わる意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈—者〉〈—のメンパ—〉〈—のくせ に大きな顔をしている〉「新入り」以上に軽んじる雰囲気 が強いが、不慣れですぐには役に立たないと当人が謙遜 して使う例も多い。Q新入り・新顔・新人・ニュフェース・ルー キー しんし【真摯】真面目でひたむきな意として、改まった会話 や文章に用いられる硬い漢語。「な態度」「に研究に励 む)「に受け止める」生真面目・Q真剣・真率・真面目 しんし【紳士】品格と知性を兼ね備えた男性をさし、多く文 章の中で用いられる、やや古風な漢語。〈一録〉〈一服〉〈初 老の一〉〈田舎一〉〈一のたしなみ〉〈一としてあるまじき 行為〉の「淑女」と対立。「一諸君」のような口頭での呼び かけに使うと時代がかった雰囲気になる。小沼丹の『長距 離電話』に「こんなことになったのも、すべては顔の長い <520> しんしっ のせいだと思うが、肝腎のーは平然として盃を傾けている」 とあるように、現在ではいくらか小馬鹿にした感じが伴う こともある。「協定」「ト的な態度」のように、相手を信 頼し私欲を去って公正に行動する意で用いる際には古風な 響きはない。貴公子・Qシェントルマン しんしつ【寝室】寝るために用意してある部屋をさし、会話 でも文章でも幅広く使われる日常漢語。二階のー〉〈奥の 座敷をーとして使う〉へーの窓を開けて朝のすがすがしい 空気を入れる〉の和室でも洋室でも、また、臨時にしばらく の間寝る部屋として利用する場合でも言う。寝所・寝間・寝 屋・Qベッドルーム しんじつ【真実】嘘偽りでない本当のことをさし、会話にも 文章にも使われるやや硬い感じの漢語。〈調査資料を分析し てーを突き止める〉へーを明らかにする〉つらいだろう が、これがーだ》の獅子文六の『胡椒息子』に「隠されたー を覗いた」とあるように、疑わしい事実である場合によく 使う。り事実・実際・真相・真理・ほんと・本当 じんじふせい【人事不省】気を失う意で、会話にも文章にも 使われるやや古風な漢語。〈高所から転落しーに陥る〉Q 気絶・失神 しんじゃ【信者】ある宗教を信仰する人をさし、会話にも文 章にも使われる日常の漢語。〈ーの集まり〉〈ーが増える〉 み教徒・Q信徒 じんじゃ【神社】神道の神を祭ってある建物をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈仏閣〉〈にお参りする〉 境内を含めて考えることもある。竹西寛子の『兵隊宿』に 「出発前に、ひさし君を連れて、参拝をしてきたいと思い ます」という将校のことばがある。ひ社殿・ほこら・Qやしろ んしゃく【斟酌】気持ちや事情などを考え合わせる意で、 ます」という しんしゃく【斟酌】多事情などを考え合わせる意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや古風で硬い漢語。 く年少者であることをーする《事情をーして寛大な処分と する》夏目漱石の『坊っちゃん』に「どうかその辺を御ー になって、なるべく寛大な御取計を願いたいと思います」と ある。ひ酌量 じんしゅ【人種】皮膚や髪の色や骨格などの肉体の遺伝的特 徴によって分類した人間の種別をさし、会話にも文章にも 使われる漢語。〈差別〉〈が違う〉林芙美子の浮雲 に「狭い往来には、混血見的が、河水のように犇き流れて いる」とある。ひ種族・Q民族 しんじゅう【心中】複数の人間が一緒に自殺する意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈一家—〉〈無理—〉〈事件 を起こす〉〈ーを図る〉愛し合った男女の場合は「情死」 にあたる。専情死 しんしゅん【新春】新年、特に正月をさし、年賀状やこの時 期の挨拶として手紙に用いる美化した感じの漢語。「を 寿ぐ〉〈穏やかなーを迎える〉の会話ではほとんど使わな い。単正月・Q新年・はつはる しんじよ【寝所】「寝室」の意の古めかしい漢語。〜から祖 父の寝息が聞こえる)いかにも古風な語感から和風建築 の家の日本間といったイメージがある。Q寝室・寝間・寝屋・ ベッドルーム しんしょう【身上】「財産」の意の古めかしい言い方。へーを <521> 築く)「をこしらえる)「をなくす)「をつぶす」 という言いまわしは、朝寝と朝酒と朝湯が大好きで身を持 ち崩した会津磐梯山の小原は荘助を連想させ、現代の出 来事とは思いにくいような昔のにおいがする。「しんじょ う」と読むと別語。財産・資産・Q身代 しんしょう【心象】「心像」と同義の専門漢語。「風景」 を浮かべる)比喻表現は作者の心象風景の点描であり、 意識下の世界観であると見ることもできる。Qイメージ・ 印象・映像・感じ・心像表象 しんじょう【真情】本当の気持ちの意で、主として文章中に 用いる硬い漢語。〈ーを吐露する〉永井荷風の『瀾東綺 譚』に「其のーを弄んだ事になるであろう」とある。心情 しんじょう【心情】ある事態や状況に接したときに起こる心 の動きの意で、改まった会話や文章に用いられる情緒的な 漢語。〈ーを吐露する〉〈ーを思いやる〉〈理解できないで はないが、ー的に納得できない〉〈そのーは察するに余りあ る〉の三島由紀夫の『潮騒』に「私の変りやすいーというも のは、この土地で養われたものではないか」とある。「感 情」と違って専門語としては用いられないが、文体的に少し 改まりが感じられる。感情・機嫌・真情 しんじょう【進上】差し上げる意で会話や文章に使われた古 風な漢語。〈好物をーしょう〉の昔子供が「ここまでおい で、甘酒ー」とはやしたてたが、現在ではめったに使われな い。専寄贈・謹呈・献上・献呈・Q進呈・贈呈 しんしょうしゃ【身障者】体の一部が不自由な人をさす現代 では最も一般的な語。〈用の施設〉差別意識の感じられ しんじる る「かたわ」や「不具」という語を避けて用いるようになった「身体障害者」を略した語形。耳で聞いただけだとその音が意味と直結しないため、それだけやわらかい感じに受けとられる傾向がある。ただし、書きことばではほとんどが漢字表記となるため、「身」に「障り」があることがすぐ理解でき、ほかしの効果が大幅に減る。そこで「体の不自由な方の優先席」などと意味を拡大してあたりをやわらげる試みもなされた。が、それだと、肩や腰に痛みを覚える人や、厚着をしすぎて腕の上げ下ろしが窮屈な人でも該当しそうな感じになる。また、「体の不自由な」とあまりはっきり書かれると、公衆の面前で自分の欠点を認めることになって、ほんとうに必要な人が心理的に利用しにくくなる感じもある。ひQ片端・身体障害者・不具 しんしょく【侵食(蝕)】他の領域を侵す意で、改まった会話 や文章に用いられる硬い漢語。〈頷土を—する〉り浸食 しんしょく【浸食(蝕)】水が浸み込んで損なう意で、改ま た会話や文章に用いられる専門的な感じの漢語。〈作用〉 〈河川による—が進む〉専僕食 しんしょく【神職】神主の意で、改まった会話や文章に用 いられる古風な漢語。〈代々にあった家〉尾崎一雄の 『美しい墓地からの眺め』に「の家は、仏教に帰依するに は及ばなかった」とある。専神主・宮司・Q神官 しんじる【信じる】疑わずに真実だと思いこむ意で、会話や さほど硬くない文章に使われる日常語。〈神の存在を—〉 へー・じられない出来事〉〈相手のいうことをうっかりー・じ て詐欺に引っかかる〉夏目漱石の『こころ』に「私は他 <522> しんしん をー・じないと心に誓いながら、絶対に御娘さんをー・じて いたのですから」とある。児確信・Q信ずる・信用・信頼 しんしん【心身】心と体の意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈ーを鍛える〉〈ー共に健康〉中山義秀の 『碑』に「ーを鋼鉄のように鍛えあげた人間」とある。円地 文子の『女坂』に「ものことがすらすら流れないで滞る自分 の身心がつかえた溝のように汚らしかった」とあるように、 「身も心も」という順序どおり「身心」とも書いたが、この 表記は今では古めかしい感じがする。丹心神 しんしん【心神】精神の意で、主として硬い文章に用いられ る専門的な漢語。〈ー耗弱心〉〈ー喪失〉心身 しんじん【新人】ある組織に新たに仲間入りした人や、ある 分野に新しく現れた人などをさして、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈大型—〉〈注目の 」〈ーを抜擢ばする〉の「ーの研修」「まだーだったころ」 のように単に新入りの意で使うこともあるが、「新顔」と比 べ、期待や驚きの気持ちをこめて使う例も目立つ。ひ新入 り・Q新顔・新参・ニューフェース・ルーキー しんじん【信心】神仏を信仰する意で、会話やさほど硬くな い文章に使われるいくぶん古風な漢語。〈神ふー〉(一深い 人)〈一を欠かさない)②「信仰」よりも日常会話的。素朴 で、伝統的な神道や仏教の連想が強い。ひ信仰 じんしん【人身】人間の身柄の意で、改まった会話や文章に 用いられる、やや正式な感じの漢語。〈事故〉へ売買〉 〈保護〉〈攻撃〉個人の身分や境涯など、肉体以外を 含めた感じが強い。ひ人体 しんじんるい【新人類】今までの常識では考えられない新奇 な人間をさし、ひところはやった、今では古い感じになりか けている俗語。〈一の誕生〉それまでには考えられなかった 感性や価値観をもった新しい人間の出現に、驚きをもっ て別の人種と誇張した表現。最近では「異星人」がそれに 近い。 しんすい【浸水】水が入り込む意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈ー家屋〉《床下までーする》「かぶる」という イメージは弱い。Q冠水・水浸し しんすい【心酔】人物や芸術などに深く心惹かれて尊敬した り夢中になったりする意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈パロック音楽にーする〉〈西行にーして漂泊の 旅に出る〉②惹きつけられるあまり自分もそれに近づこう とするケースも多い。刂感服・傾倒・敬服・Q心服 しんずる【信ずる】「信じる」意で、改まった会話や文章に用 いられる古風な語形。〈ーに足る証拠〉〈調査資料をーなら ば〉小林秀雄の『私の人生観』に「から疑うことが出来 るのである」とある。乃確信・Q信じる・信用・信頼 しんせい【申請】公的機関に許可・認可や交付などを求める意 で、改まった会話や文章に用いられる公式な雰囲気の硬い 漢語。〈書〉《特許をー中〉〈免許をーする〉〈補助金のー に必要な書類)の「出願」に比べ、提出先を明らかな上位者 と見る姿勢が弱い。出願・Q請願・請求・要求・要請・要望 しんせい【真正】真実で正しい意で、改まった文章に用いられる古風で硬い漢語。〈ーの意味に於いて〉〈ーの哲学者〉 夏目漱石の『吾輩は猫である』に「往往坐臥、行屎送尿 <523> 悉くーの日記であるから」とある。単真性 しんせい【真性】疑う余地のないまさにその症状の意で、硬 い文章に用いられる専門漢語。〈1コレラ〉の「仮性」と対 立する概念。生まれつき具わっている性質という意味でも 用いられ、その場合は専門性はなく、硬くて古風な用語と いう印象を与える。専真正 しんせい【新生】新しく生まれる、生まれ変わるの意で、改 まった会話や文章に使われる漢語。〈一児〉〈一日本〉〈一 を誓う〉新星 しんせい【新星】新発見の星やスターの意で、主として文章 に用いられる漢語。〈ーを発見する〉〈音楽界にーが現れ る〉星をさす場合は専門語的、スターを意味する場合はや や古風。刂新生 じんせい【人生】この世に生まれ生きてゆく人の一生をさし、 会話にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈一観〉〈充 実した〉〈第二の〉〈一論〉〈一の門出〉〈一の岐路に立 つ〉〈一の意義を問う〉〈恵まれたーを送る〉のまったく ー何があるかわからない「山あり谷あり」と言い、「一 相談」というものがあるように、「一生」や「生涯」以上に、 その人間の生き方という具体像が背景にある。福原麟太郎 の『交友について』に「私は、私に与えられた小さな盃で、 私の一の酒を飲んでゆく」とある。「生」と違って人間に限 り、「一生」や「生涯」に比べ、事実よりもそれについて思 考するときによく使われる。ひ一生・生涯・Q生 しんせき【親戚】「親類」の意で会話にも文章にもよく使われ る漢語。〈付き合い〉へー筋に当たる)横光利一の『紋 しんぜん 章」に「他の見知らぬーたち数人が円座に腰を降して勢揃 いをした」とある。若干古風な「親類」以上によく使われる 印象がある。ひ縁者・親族・Q親類・身寄り しんせつ【親切】人情に厚く配慮の行き届く様子をさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の最 も基本的な漢語。〈ー心〉〈人にーにする〉〈ーに教える〉 〈ーがあだになる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「ーはー、 声は声だから、声が気に入らないって、ーを無にしちゃ筋が 違う」とある。「深切」とも書いたが、現代では古めかしい 表記。Q懇切・親身・情け深い・優しい しんせつ【新設】施設・機関・組織などを新たに設ける意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈|工事〉〈|の学部〉 〈文学部に心理学科を|する〉「開設」や「設立」に比べ、 今までなかったものが新たにできるという出現面に重点が ある。Q開設・設立・創設・創立 しんせん【新鮮】新しくて汚れたり品質が落ちたりしておら ず生き生きした感じである意で、会話にも文章にも使われ る日常の漢語。〈一な野菜〉〈一なうちに調理する〉〈山の ーな空気〉の「企画に一みが感じられない」「従来には見ら れなかったーな感覚が印象的だ」のように、新しくて好感を 与える意の比喩的用法も多い。永井龍男の『風ふたたび』 に「けずりたての鉛筆のように、どの顔もーであった」とあ る。卫生鮮・みずみずしい しんぜん【親善】仲良く親しみ合う意で、会話にも文章にも 使われる、やや正式な感じのある漢語。〈ー試合〉〈ー使節 を送る〉〈ーのため訪米する〉夢懇親・Q親睦・友好 <524> しんそう しんそう【真相】事件などの実際の事情の意でいくぶん改ま った会話や文章に使われる漢語。〈ー究明〉〈ーに迫る〉 〈ーを探る〉〈ーを暴く〉〈ーが明らかになる〉〈事件のーを 解明する〉小林秀雄の『作家の顔』に「ああ、実に人生の ー、鏡に掛けて見るが如くであるか」とある。専事実・実際 実情・実態・真実 しんそう【深窓】大きな家の奥深くにある部屋を意味し、改 まった文章などに用いられる古めかしい漢語。〈—に育つ〉 へ—の佳人〉谷崎潤一郎の『春琴抄』に「以前のような— の佳人式の箱入娘はいなくなってしまった」とある。そこ で大事に育てられたために世間の汚れを知らないという含 みを有する語で、主として身分の高い家に生まれた女性を さして用いられたため、「—のガキ大将」はもちろん、「 の令息」でもかすかな違和感を覚える。 しんそう【新装】客など多数の人の出入りする建物について 飾り付けを変えたり外観を新しくしたりする意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈開店〉校舎をして新入生 を迎える〉(成ったばかりの館内)訪れる人に魅力的で よい印象を与える狙いがあり、一定の人の出入りする個人 の住宅などにはふつう用いない。Q改装・模様替え しんぞう【心像】感覚的刺激なしに過去の記憶が直観的に意 識に現れる像を意味し、学術的な文章に用いられる硬い専 門漢語。〈ーを呼び起こす〉〈ーが現れる〉、イメージ・印象・ 映像・感じ・Q心象・表象 じんぞう【人造】人間が自然のものに似せて造り出す意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一人間〉〈一繊維〉 真珠〉〈一パター〉「人工」と違い、ほとんどが物をさす 傾向がある。人工 しんぞく【親族】「親類」の意で改まった会話や文章に用いられる漢語。〈—会議〉〈—を代表して挨拶する〉「親戚」や「親類」より正式な感じの表現。法律では六親等以内の血族および配偶者と三親等以内の姻族と規定されている。身寄り じんそく【迅速】事の進行や行動などがきわめて速やかな意 で、改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な漢 語。〈無常—〉〈—に処理する〉〈—にやってのける〉夏目 漱石の『坊っちゃん』に「頗る—な御手際」とある。「速や か」に比べ、行動そのもののスピードに重点があり、取り掛 かるまでの時間の短さは常識として含まれる感じが強い。 刂機敏・速やか・早い・速い・敏捷は「Q敏速 しんそつ【真率】正直で飾らない意として、主に文章中に用 いられる硬い漢語。〈一なる人柄〉(一なる態度)②井伏鱒 二は中学時代に朽木三助という名を使って森鷗外に出した 手紙を、鷗外に「筆跡は老人なるが如く、文章に一なる所が ある」と評されたという。生真面目・Q真剣・真摯は・真面目 しんたい【身体】人間の体をさし、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。〈一検査〉(一の機能)(一すこぶる強 健)野間宏の『暗い絵』に「痩せているが強韌なー」とあ る。ひからだ・人体 しんたい【進退】そのまま任務に就いているべきか、それと も職を辞すべきか、という身の処し方をさして、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈何い〉〈出処ー〉〈ーを共 <525> にする〈会長の—問題に発展する〉(一を賭けて取り組む) しんだい【身代】「財産」の意の古い言い方。〈祖父一代でー を築きあげた〉〈ーを棒に振る〉〈ーを持ち崩す〉有島武 郎の『生れ出ずる悩み』に「ーが朽木のようにがっくりと折 れ倒れる」とある。「ーを築く」という表現からすぐに連想 されるのは紀伊国屋文左衛門あたりでそこまできかの ぼらないまでも、びったりするのは渋沢栄一あたりまでと いった昔のにおいもするが、「身上」に比べれば今でも まだ耳にする機会がいくらか多い。財産・資産・身上 しんだい【寝台】寝るために使う台をさし、会話にも文章に も使った古めかしい漢語。〈ー車〉〈療養所のー〉の横光利 一の『春は馬車に乗って』に「妻は檻のようなーの格子の中 から、微笑しながら」とあるが、今では「ベッド」という語 が一般的になり、寝台特急の姿も珍しくなって、使用する機 会がめったになくなった。寝床・Qベッド じんたい【人体】人間の体の意で、やや改まった会話や文章 に用いられる客観的な漢語。〈|実験〉(|に及ぼす影響) の井伏鱒二の『本日休診』に「|の骨組か何かを露出さした ような手術台」とある。精神面を別にし、生理的に見た感 じが強い。身・身体 しんたいしょうがいしゃ【身体障害者】差別意識の感じられ る「かたわ」「不具」という語を避けて、その代わりに用い るようになった漢語。〈ーを受け入れる〉「身体」「障害」 という構成要素が意味を明確に伝えて露骨な印象があるた め、「身障者」と略して用いるほうがむしろ優勢になってい しんちゅう る。「シンショー」と耳で聞いただけでは「心象」「心証」 「辛勝」「身上」など同音語が多く、また、「身障」という略 語では使わないこともあって、一瞬その音が意味と直結せ ず、きつい印象を免れるという面もある。ひQ片端・身障者・ 不具 しんだん【診断】医者が診察や検査の結果から病気の有無や、 病状などを判断する意で、会話にも文章にも使われる漢語。 〈定期健康〉へが出る〉〈専門医のが下る〉へを誤 る〉の井伏鱒二の『本日休診』に「訴えがあったら、警察で も、書をつくっておく必要があるんです」とある。木山 捷平の『酔いざめ日記』には「中山博士は一分間ほどで終 る」とある。「診察」と違い、病名などを判断する部分に重 点がある。診察・診療 しんちく【新築】新しい家を建てる意で、会話にも文章にも 使われる漢語。ぐーの家に入居する《郊外に土地を買って 家をーする《古い家を壊して欧風の瀟洒はな家をーす る》前からの土地に建てる場合、その場所にあった前の家 との関係を意識すれば「建て替え」となり、「改築」という こともある。また、増築の場合でも、「この部屋から西はー だ」のように、新たに増えた部分を言う場合もある。 巣・新装・増築・Q建て替え しんちゅう【進駐】軍隊が他国に進出してそこにとどまる意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈軍〉駐屯・Q駐留 しんちゅう【心中】「胸中」に近い意味で、改まった会話や文 章に用いられる、いくらか硬い感じの漢語。へーお察しす る〉〈一穏やかでない〉「ひそかに期待する」のように <526> しんちょう プラスの心情にも言えるが、つらさ・苦しさのようなマイナ ス感情に用いる例が多い。「内心」に比べ、外見と違うという 含みは弱い。「しんじゅう」と読めば別語。見気持ち・Q胸 中・内心・本心・本音・胸の内 しんちょう【身長】頭の上から足のかかとの下までの長さを さし、やや改まった会話や文章に用いる正式な感じの漢語。 へーを測定する〉へーの高い人②ちなみに、高見順の『故旧 忘れ得べき』に「より肩幅の方が大きいではないかとさ え思われるいかつい身体」という誇張表現が出てくる。 上背・背②・Q背丈・身の丈 しんちょう【慎重】失敗のないよう細心の注意を払う意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈ーを期する〉〈ーな対応 が求められる〉〈ーな審査の結果〉〈ーに事を運ぶ〉②大岡 昇平の『野火』に「地に伏して銃を構え、ーに覗って撃っ た」とある。専用心深い しんちょく【進捗】物事がはかばかしく進む意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈交渉に思うようなー が見られない)〈状況を上司に報告する〉個人的な細か い事柄には用いない。Q進展・捗る しんつう【心痛】深刻な心配で精神的に大きな痛手を受けて いる意で、主として文章に用いられる漢語。へーのあまり床 に就くへさぞや御ーのことでございましょう)②「気苦 労」はもちろん「心労」よりも具体的に重大な心配事を抱え ている場合に使われる。気苦労・Q心労 しんてい【進呈】自ら進んで差し上げる意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈粗品を—する〉小沼丹の『懐中時 計に「何かの弾みで僕に時計を「」と云い出さぬと も限らない。それが心配だと云う」とある。「贈呈」同様、 物品を手渡す場合などに使われ、比較的気楽な相手である ことが多い。専寄贈・謹呈・献上・献呈・進上・Q贈呈 しんてん【進展】物事が進行し新たな展開が見られる意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈工事が大幅にーす る〉〈事態が急速にーする〉〈両者の関係にその後際立った ーは見られない〉り進捗・Q発展 しんと【信徒】信者の意で、改まった会話や文章に用いられ る専門的な漢語。〈ーの尊敬を集める〉《多くのーを獲得す る》専教徒・Q信者 しんどい東京でも時折くだけた会話に使われるようになっ た、「つらい」「疲れる」といった意味の関西方言。〈ああ、 ー〉〈ー仕事やなあ〉の「心労」か「辛労」のなまったもの かとされる。马くたびれる疲れる・つらい しんどう【振動】揺れ動く意で、会話でも文章でも使われる、 時にやや専門的な漢語。〈数〉〈振り子の—〉〈車体の—〉 〈大地が—する〉霧動・揺れる しんどう【震動】主に地震による揺れを意味し、会話でも文 章でも使われる漢語。〈地震のー〉〈ーで棚から物が落ち る〉〈地面が激しくーする〉乃振動・揺れる しんにゅう【侵入】不法に入り込む意で、やや改まった会話 や文章に使われる漢語。〈家宅ー罪〉(不法ー〉(窓からー する〉(敵のーを防ぐ)②阿川弘之の『雲の墓標』に「(敵機 が)夜半に北九州、西九州にーし」とある。刂浸入 しんにゅう【浸入】水が入り込む意で、会話でも文章でも使 <527> われる漢語。〈床下まで水がーする〉刂侵入 われる漢語〈床下まで水がーする〉り侵入 しんねん【信念】正しいと信じきっている考えをさし、会話 から文章まで幅広く使われる漢語。「の人〉を抱く 「を貫く〉「を曲げる」「所信」ほど大仰な感じはな く、あくまで個人約な気持ちをさすことが多い。り所信 しんねん【新年】新しい年、特にその年の始めにあたる正月 をきし、会話にも文章にも使われる漢語。「会」〈謹賀—〉 へーを迎える〉へーの挨拶〉回「はつはる」や「新春」より一 般的で、特に会話にはよくこの語を用いる。「旧年」と対 立。専Q正月・新春はつはる しんぱい【心配】不安に思って悩む意で、会話にも文章にも 広く使われる日常の基本的な漢語。〈ー要らない〉〈ーでじ っとしていられない〉〈子供の将来がーだ〉〈親にーをかけ る〉〈どうぞ御ーなく〉山本有三の『波』に「ああいう間 違いがあっただけに、ーでーでたまりませんわ」とある。 「不安」よりも具体的な悩みに多く用いる傾向が強い。「就 職のーをする」のように配慮の意でも使われる。弐恐れ・Q 気掛かり・危惧・懸念・不安 しんばん【審判】物事の正邪善悪を判定する意で、改まった 会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈最後の—〉へ—の 公開〉へ—が下る〉法律に基づく裁判に限らず、権威ある 者の判断をも含む。「—の判定を不服として抗議する」のよ うにスポーツの世界でも用い、その場合は一般語。刂裁判 裁く しんび【神秘】世間の常識を超え、人間の力では理解不能な 様子をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈生命の じんぶっ へー的な現象へーのペールに包まれる林房雄の『青年』 に「彼ら(姫島の住民たち)は、たちまち仏像のようにーに、 仏像のように頑固に、口をつぐんでしまう」とある。Q怪 奇・謎・ミステリー じんぴん【人品】人間としての品格の意で、改まった会話や 文章に用いられる古風な漢語。〈骨柄〉ヘー卑しからぬ 人物〉ヘーが劣る風采を含めて外見から推測される品位 をきす感じがある。気質・気象・気性・気立て・性分・Q人格・人 物・性格・性向・性質・たち・人柄・人となり しんぷ【神父】カトリックで、司祭の敬称として、会話にも 文章にも使われる日常の漢語。へーの司式で結婚式を挙げ る)任務はプロテスタントの牧師に相当する。司教・Q 司祭・牧師 じんぷう【陣風】ひとしきり強く吹く一陣の風をさし、主と して文章に用いられる古風な漢語。〈ーが起こる〉ひ風・おお かぜ・強風・颶風・時化・疾風・大風・台風・Q突風・はやて・暴風・暴 風雨・烈風 しんぷく【心服】その人間を尊敬し心から従う意で、改まっ た会話や文章に用いられる、いくぶん古風な漢語。〈恩師に ーする〉の「敬服」に比べ、特に具体的な評価を前提としな いぶん主観的な印象がある。僕感服・傾倒・Q敬服・心醉 じんぶっ【人物】人間や人柄の意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈危険—〉〈登場—〉〈架空の—〉〈 ができている〉〈—は保証する〉③三島由紀夫の『鹿鳴館』 に「あの男は立派な高潔な—かね」とある。「—ぞろい」 「なかなかの—だ」のように、それだけで優れている面だけ <528> しんぶん を問題にする用法もある。 鳥気質・気象・気性・気立て・性分・人 格・人品・性格・性向・性質・たち・Q人柄・人となり しんぶん【新聞】社会的な出来事などを速やかに報道する刊 行物をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の漢語。「社」(「記者」「報道」「に載る」) 夏目漱石の「坊ちゃん」に「なんて無暗な嘘を吐くもん だ」とある。ひプレス じんぶん【人糞】人間の大便の意で、主に文章中に用いられ る漢語。〈奥地にーが見つかる〉井上ひさしの長編『吉里 吉里人』に、「黄褐色の可塑性固体」に遭遇して「くそ。絵 具なんか絞り出して行ったのかと思ったら、何のことはな いーではないか」と憤慨する場面がある。あえて「人糞」と いう高級な漢語を用いたのは、その前の「くそ」という感動 詞の潜在的な意味を活性化するためである。ふうんこうん ちくそ・大便・Qふん・糞便・便 しんぶんきしゃ【新聞記者】新聞記事のために取材・執筆・編 集を行う社員をさし、会話にも文章にも使われる漢語。「 が押し掛ける〉へに情報がもれる〉ひぶんや しんぺん【身辺】自分自身に近い場所や関係の深い事柄をさ し、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。「警 護」〈ーを整理する〉〈ー雑記〉〈ーに取材した小説〉〈ーを 描いた自伝的小説〉〈ーがあわただしい〉〈ーに危険が及 ぶ〉身手近・手元・身近・Q身の周り しんぼ【進歩】物事が望ましい方向に進む意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。 への跡が見られる〈格段のーを見せる〉〈技術のーはめ ざましいものがある)の「的な考え」のように、社会を変 革する方向の立場をさす用法もある。福原麟太郎の中流 の生活」に「的文化人は敬違する(略)目の前にある生活に 叡智と秩序があることが第一」とある。「退歩」と対立。 向上・上達・Q発達・発展 しんぼう【信望】人に信頼され尊敬される意で、主として硬 い文章に用いられる漢語。〈ーを得る〉〈皆のーを集める〉 の程度は「人望」より重く「徳望」より軽い感じがする。 Q人望・徳望 しんぼう【辛抱】つらいことをひたすら耐え忍ぶ意で、会話 にも文章にも使われる、やや古風な漢語。〈ー強く待つ〉 〈もう少しのーだ〉(よくーした)の瀧井孝作の『積雪』に 「八十二歳の老父は茲このものすごい固雪に向って、ーして いたのだ」とある。Q我慢・忍耐 じんぼう【人望】多くの人々の信用や尊敬をあつめる意で、 会話でも文章でも法く使われる漢語。「がある」(なかな かーが厚い)「人気」と違って人間に限り、流行に左右さ れない点でも異なる。類義の「信望」や「徳望」に比べれば 軽い感じで、それらよりもよく使われる。夏目漱石の「坊 っちゃん」に「一番」のある教師」とある。Q信望・声望 徳望・人気 しんぼく【親睦】親しく睦まじい関係をさし、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈一会〉〈社内のーを図る〉 Q懇親・親善・友好 シンボル「象徴」の意で会話にも文章にも使われる外来語。 〈鳩は平和のーだ〉〈町のーともいえる建物〉小林秀雄の <529> 『様々なる意匠』に「美学者等の使用する象徴という言葉程 曖昧朦朧とした言葉も少ない」とあり、「象徴」に「シンボ ル」でなくフランス語の「サンボル」と仮名を振っている。 「マーク」のように、一定の意味を伝える記号をさす用法 もある。「新時代の到来を象徴する事件」のように、代表 的・典型的を意味する用法にはなじまない。Q象徴・典型 表徴 しんまい【新米】①その年にとれた新しい米の意で、会話に も文章にも使われる漢語。「が出始める時期」「古米」 と対立する語。②始めたばかりで慣れていない人の意で、 会話や軽い文章に使う漢語。「のセールスマン」「まだ で要領がよくわからない」「駆け出し」以上に不慣れな点 を強調した感じがあり、自分のことを謙遜して言う例も少 なくない。語形は、まだ一人前ではない「新前ま」の転とい う。ひ駆け出し しんみ【親身】肉親に対するような気持ちのこもった心遣い をする様子をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーに なって世話をする〉〈ーに指導する〉り親切 しんみつ【親密】非常に親しい関係をさして、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈な間柄〉、〈家族ぐるみの な付き合い〉の親しい「近ふしい」と違い、相手そのも のより相手との関係に重点がある。Q親しい近しい しんみり心が沈んでしゅんとなる意で、会話や軽い文章に 使われる和語。ぺつらい思い出をーと語り合う〈聴いでい るうちに一同ーとした気分になる〉永井龍男の『酒徒交 伝』に「話し明した末のことで、足元の多少フラつく位 しんや は、青鬼や赤鬼も大目にみてくれるであるう」とある。ひQ しみじみ・つくづく じんみん【人民】社会の構成員である一般の人をさし、主として硬い文章に用いられる漢語。〈|服〉〈|軍〉〈|主権〉 支配者に対する一般の人々をさす雰囲気が強く、上から 下を見た感じが強い。ちなみに、「のによる」のため の政治」というリンカーンの有名なモットーが、もし「の 国民による民衆のための政治」とでも訳されていたら、こ れほどの説得力を勝ち得たかどうかは疑問だ。反復効果が 一語の語感をはるかに超えて人気を集める結果となったよ うに思われる。Q国民・市民・民 しんめり底冷えのする湿った感じをさす創作的な擬態語。 の円地文子の『妖』に「梅雨時のー冷やかな午後であった」 という一文が出てくる。動詞の「湿る」を連想させ、次の冷 たい感じと融合して、梅雨の季節特有の湿っぽい複合的な 不快感を巧みに表現している。湿る じんもん【尋(訊)問】詳しく問いただす意で、専門的な会話 や文章に用いられる正式な感じの硬い漢語。〈不審—〉〈誘 導—〉〈ーを受ける〉法律関係の専門語としては、裁判官 や警察官が被告人や証人などに陳述を求めることをさす。 一般語としても「質疑」以上に厳しく問い詰める雰囲気が 一般語としても「質疑」以上に厳しく問い詰める雰囲気が 感じられる。質疑・Q質問 しんや【深夜】夜更けから夜中までの広い範囲を漠然とさし、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「零時〉へー 放送〉へー料金〉へーまで働く〉へーに救急車の音が響く〉 規則正しい生活をしている一般の人が活動を停止している <530> しんよう 時間帯を連想させやすい。太宰治の『走れメロス』に「」 王城に召された」とある。夢深更・Q真夜中・夜間・夜半・夜分・ 夜…夜中・夜更け・夜・よわ しんよう【信用】確かだと思って疑わない意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈相手を ーする〉へーを得る〉へーを失う〉へーを落とす〉へーを取り 戻す)の「信頼」に比べ、正しくて当てになるという精神面 に中心がある。ひ確信・信じる・信ずる・信頼 じんよう【陣容】人員の配置をさし、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈このーで臨む〉〈ーを立て直す〉 〈ーを一新する〉〈ーを整える〉の「スタッフ」と違い、個々 の人間でなく全体の顔ぶれを意味する。タタッフ しんらい【信頼】信じてそれに頼る意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈ーを置く〉〈ーを裏切る〉〈ーに応える〉 〈ーできる筋からの情報〉の「信用」に比べ、能力などを含 め頼りになる点に中心がある。ひ確信、信じる、信ずる・信用 しんらつ【辛辣】表現や態度などがきわめて厳しい意で、や や改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーな言い 方〉〈ーな皮肉〉〈ーに酷評する〉中山義秀の『醜の花』に 「言葉もその調子も(略)神経へ錐をもみこむようにーになっ てきた」とある。味がびりりと辛い意から。「痛烈」や「手 厳しい」に比べ、斜めから見た皮肉がこめられている感じ が強い。ひ痛烈・Q手厳しい しんり【真理】絶対に正しい不変の道理をさし、改まった会 話や文章に用いられる硬い漢語。〈一片のー〉〈それもまた 一面のーだ〉〈ーを追究する〉〈あくまでーは一つ〉図夏目 漱石は『吾輩は猫である』で、「往来を通る婦人の七割弱に は恋着するという事が諷刺的に書いてあったのを見て、こ れはだと感心した位な男である」と書き、あえて厳粛な この語をこういう文脈で用いることでユーモラスな感じを 増幅している。専真実・本当 しんり【心理】外界の刺激によって刻々に変化する精神状態 をさし、やや改まった会話や文章に用いられる専門的な漢 語。〈群集—〉〈一描写〉〈微妙な—〉〈相手の—を読む〉 〈犯罪者の—〉石坂洋次郎の『山のかなたに』に「(男対女 の場合の)男の—は、高等数学みたいに複雑で、算術的でな くなる」とある。「心」や「精神」に比べ、持続するものと いうより動きとしてとらえる感じが強い。感情・気分・気持 ち・機嫌・心地・心・心持ち・Q心情・精神 しんりゃく【侵略】武力行為により相手国の中に侵攻し、領 土や財物を略奪する意で、「進攻」や「侵攻」に比べ、会話 から文章まで幅広く使われる漢語。〈—戦争〉(明らかな— 行為として厳重に抗議する)「進攻」はもちろん「侵攻」 よりもその不当性を強く非難する感じが強い。刂進攻・Q侵 攻 しんりょう【診療】診察及び治療の意で、改まった会話や文 章に使われる、いくぶん専門的な漢語。「所」「時間」 りQ加療・診察・診断・施療・治療・手当て・療治 しんりょうじょ【診療所】病院より小規模な医療施設をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈に運び込む〉〈ーを開 設する〉患者を収容する施設を持たない場合も含まれる が、個人医院より大きな印象がある。ヲ医院・クリニック・Q病 <531> 院 しんりょく【新緑】初夏の若々しい木の葉の新鮮な感じの緑 の意で、主として文章に用いられる、さわやかな感じのプ ラスイメージの漢語。〈ーの季節〉〈ーが目にしみる〉〈ー が美しく映える〉②間接的に若葉そのものをさすこともあ るが、中心はあくまでその色彩にある。網野菊の『遠山の 雪』に「一のみずみずしい美しさを見ると、彼女の心は生き ている喜びでふるえた」とある。み青葉・Q若葉 じんりよく【尽力】目的をもって事の成就に力を尽くす意で、 改まった会話や文章に用いられるいくぶん古風な漢語。〈町 の発展にーする〉〈格別の御ーをたまわり心より感謝の意 を表する〉結果に重点のある「寄与」や「貢献」と違い、 この語はそのための努力に重点を置く言及。程度にも幅が ある。専寄与・Q貢献・奉仕 しんりん【森林】一面に高木が生い茂る森や林の総称として の漢語。「森」や「林」がまったくの日常語であるのに対し て、やや文章語寄りの正式な感じの表現。〈—鉄道〉〈—浴〉 〈—を伐採する〉②北杜夫の『谿間にて』に「全体が吠え るような悲鳴をあげ、降りそそぐ水しぶきにけむってしま った」とある。イメージとして「森」や「林」より大規模で、 高木の生い茂った雰囲気が強い。马樹海・林・Q森 しんるい【親類】血縁及び婚姻関係によって近いつながりの ある人々の総称として、会話にも文章にもよく使われる日 常の漢語。〈一同〉〈遠いーに当たる〉②ふつう家族以外 に使う。改まった感じの「親族」より一般によく使われ、 「親戚」よりほんのわずか古風な感じがある。縁者・Q親戚 しんろう 親族・身寄り しんろう【心労】気を遣いすきての精神的疲労の意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。「が重なって倒れる 御如何ばかりかとお察し申し上げます日常的な 「気苦労」に比べ、何かがあっての特別の心配を連想させる。 気苦労・Q心痛 <532> す【図(圖)】物の形状やものごとの関係などを点や線で表し たものの意で、会話にも文章にも使われる漢語。「を参 照〉へに示す〉へを使ってわかりやすく説明する〉 画・絵画・Q図画 すあし【素足】何もはいていない足の意で、会話にも文章に も使われる和語。〈一になる〉〈冬でもーで過ごす〉〈一に 下駄を突っかける〉川端康成の『雪国』に「足袋はなく 赤らんだーの裏に戦が見えた」とある。はだし ずあん【図案】形や色を巧みに配し美的に構成したデザイン としての図をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 家〉〈桜の花を—化する〉〈ぼっと目を引く—〉、彡絵柄・Q図 柄 すい【酸い】「すっぱい」意で会話にも文章にも使われた古め かしい和語。〈木の実〉現在では多く「も甘いも噛 み分ける」の形で、世事や人情に通じている意の慣用的な 比喻表現として使い、芥川龍之介の『老年』にも「幾年とな く此世にすみふるして、ーもあまいも、かみ分けた心の底 にも」とある。すっぱい すい【粋】人情の機微、特に遊里の事情に通じていて、垢ゆ抜けて物分かりのいい意で、主に関西で使われるやや古風な語。〈なお方〉〈を利かす〉江戸の「いき」に対応する上方の美意識で、「不粋」の対極をなす。Qいき小粋小じ 也 れた·洒落た すいい【推移】時間や事態が自然に移り変わる意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈事件の—〉〈ーを静 かに見守る〉の宮本百合子の『伸子』に「感情がーすること を期待している」とある。「変遷」より時間的に短い感じが ある。Q移り変わり・変遷 すいい【水位】海・川・湖・沼・貯水池などの一定の基準面から 測った現在の水面の高さをさし、会話にも文章にも使われ るやや専門的な漢語。〈ー計〉へーが高い〉〈大雨でーが上 がる〉具水深 すいい【随意】当人の希望や意志に従て自由にの意で、改 まった会話や文章に用いられる、やや硬い漢語。〈科目〉 〈契約〉〈入院〉〈どうぞ御に〉ひ姿意・Q任意 スイーツ近年、洋風の甘い菓子頬をさして使われだした斬 新な感じの外来語。〈デパートの—コーナー〉②もっぱらケ ーキやクッキーやチョコレートなどの洋風の菓子に用い、果 物や和菓子には使いにくい語感がある。甘酒や焼き芋や甘 納豆などに使うと違和感が大きい。日常会話で使うとやや 気取った感じに響く。ひ甘い物 すいえい【水泳】人間がスポーツとして泳ぐ意で、会話にも 文章にも使われる日常の漢語。〈寒中〉〈「大会〉〉が 得意だ〉〈「の選手〉のプールでクロールや平泳ぎ・背泳ぎ・ バタフライなどで本格的に泳ぐ雰囲気が強いため、夫掻き で泳いだりする場合にはなじまず、川で子供が手足をぱた ぼたさせて戯れているような光景にはイメージが合わない。 したがって、犬や蛙や魚は「泳ぐ」けれども「水泳」はしな <533> い。 Q泳ぐ・観泳・水浴び すいがい【水害】豪雨や多量の雪解け水などによる災害の総 称として、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈一地〉 〈一を受ける〉の洪水のほか浸水・地滑り・崖崩れなどが原因 で起こる被害も含む。ひ大水・洪水・出水・Q氾濫 すいかく【酔客】酒に酔った人の意で、主に文章に用いられ る漢語。ヘンチに横たわるー〉へーの相手をさせられる の太宰治の『人間失格』に「たくさんのーまたは女給、ボー イたちにもまれ」とある。「すいきゃく」ともいう。ひ酒酔 い・泥酔者・Q酔っ払い ずいかん【随感】日々の感想などを書き記した随筆の意で、 文学愛好者の間などで主に文章に使われる専門的な漢語。 〈文芸ー〉の「随筆」と違って講演の題にも用い、尾崎一雄 は随想集『ペンの散歩』に中村明との対談を「わが文学ー」 と題して収録している。専工ッセイ・Q随想・随筆 ずいき【随喜】心からありがたく思って喜ぶ意で、文章に用 いられる古めかしく硬い漢語。〈一の涙〉ると仏教語で、 喜んで仏門に帰依する意。芥川龍之介の『地獄変』に「身の うちも震えるばかり、異様なーの心に充ち満ちて」とある。 飲喜・喜悦・欣喜雀躍・Q法悦・愉悦・喜び すいきゃく【酔客】↓すいかく すいきよ【推挙】ある人をある職や地位に就くように推す意 で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈横綱に する〉〈理事長にーする〉人間専用。処推奨・Q推薦・推輓 ・薦める すいきょう【酔(粋)狂】風変わりなことを好む意でやや改 すいこむ まった会話や文章に用いられる少し古風な漢語。〈よほど な人と見える〉〈なまねをする〉〈にも程がある〉小 沼丹の『地蔵さん』に、タクシーの窓から、地蔵とにらめっ こをしている爺さんの姿を見かけて気になる場面があり、 「わざわざ車を停める程ーではない」と結ばれる。専物好き すいげん【水源】河川や地下水などの水が流れ出るもとをさ し、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈地〉 〈ーを求めて川をきかのぼる〉水道用水について言うこと もある。専源泉・Q源 すいこう【推敲】文章を仕上げる際に表現を練る意で、改ま った会話や文章に用いる漢語。〈文章を—する〉〈原稿に— の跡が見られる〉へに—を重ねる〉唐の詩人賈島かが作 詩の途中で、僧が月下の門を「推す」にすべきか「敲く」 にすべきか迷って決し兼ね、韓愈に相談して「敲く」とし た、という故事に基づく表現。「推考」という別語で代用し たりすれば、仮に意味が正しく伝わったとしても故事の連 想は起こらない。知識のある人がこの語に刺激されてその 故事を連想するのも、意味とは無関係な語感の一つ。 すいこう【遂行】仕事やなすべきことを計画とおりやり通す ことをさし、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。 〈職務を—する〉かねてよりの計画を—する)島尾敏雄 の『出発は遂に訪れず』に「心の奥では、その—の日が、割 けた海の壁のように目の前に黒々と立ちふさがり」とある。 Q実行・実施・履行 すいこむ【吸い込む】口や鼻から吸って体内に取り入れる意 で、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈新鮮な空気を <534> すいさっ 〈花の香りを—〉の「煙を—・んでむせる」のように意図 的でない場合もあり、「この生地はよく汗を—」のように動 物以外にも使う。また、「大勢の観客が会場の入口から— まれるのような比喩的用法も すいさつ【推察】物事の事情や人間の心理などを想像してみ る意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「す るに」《御のとおり》〈御にまかせる〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「あれ程」の出来る謎をかけて置きながら、 今更その謎を解いちゃ迷惑だとは教頭とも思えぬ無責任だ」 とある。「推測」「推量」が予想を展開する感じがあるのに 対し、この語は先方の気持ちなどを理解することに重点が あり、「さぞやお喜びのことと申し上げます」のような例 にもなじむ。専臆測・察知・Q推測・推断・推定・推理・推量・推論・忖 度・洞察・類推 すいさんぎょう【水産業】漁業のほか水産物の加工や製造を 含む職業をさし、会話にも文章にも使われる正式な感じの 漢語。「に従事する」②かまぽこや鯛の干物や鮭の缶詰 を造るのは「水産業」で「漁業」には入らない。漁業 すいし【水死】水に溺れて死ぬ意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈ー者〉〈ーを遂げる〉②「溺れ死に」「溺死」よ り抽象的な表現で、水上での事故や心臓の発作によるもの など、水上における死を総合した雰囲気がある。湯溺れ死 に・Q溺死 すいじ【炊事】御飯を炊いたり惣菜を作ったりする食事の 支度をさし、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な 感じになりかけている漢語。〈共同の—場〉〈—洗濯〉 当番)三度の食事、それも米の飯を中心とする和食の連 想が強く、ケーキ作りはもちろん、トースターでパンを焼い たりピーフストロガノフを煮込んだりするのもイメージと して若干違和感がある。調理・Q煮炊き・料理 すいじ【随時】適当な時期や必要に応じてすぐに対応する意 で、改まった会話や文章に用いられるやや硬い感じの漢語。 入学ー〉〈ー対処する〉〈ー説明を求める〉いつでも求め に応じられると便利さを強調して宣伝に使われたり、積極 性を訴える弁明に用いられたりする例が目立つ。Q不定 期・臨時 すいじば【炊事場】「台所」の意で会話にもそれほど硬くない 文章などにも用いられる、いくぶん古風な感じの日常語 「が込み合う」現在は個人の家庭ではこの語をあまり使 わないが、使う場合には一室というよりその機能に注目し ている感じが伴う。「調理場」に比べ、煮炊きに重点のある 感じの呼称。臨時に設けた施設やバーベキューなどのため の野外施設も含まれる雰囲気があり、適用範囲が広い。 勝手②・キッチン・庫裏くりや・台所・厨房・Q調理場 すいじゃく【衰弱】体力や物の機能や勢いが衰える意で、や や改まった会話や文章に用いられる漢語。〈死〉〈神経〉 〈体がーする〉執筆のために滞在していた帝国ホテルを訪 ねた折、吉行淳之介は作品の結びについて「短編で一番い けないのは、ストンと落ちることね。あれはやっぱり(作者 の)ーでしょうね」と語った。専衰える・減退・Q衰退・衰微 すいじゅん【永準】機能や価値を評価する標準をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈生活ー〉へに達する〉 <535> が高い〈一定のーをクリアーする〉马レベル すいしょう【推奨】ある物や事柄をぜひにと他人に奨励する 意で、改まった会話や文章に用いられる、やや硬い漢語。 〈一品〉へ一株〉広くしたい健康法まれに人間に用い る場合は、その人自身というより、その人の持っている能力 や技術や適性などを頭に置いた表現に感じられる。単推挙・ 推賞・Q推薦・推輓・勧める すいしよう【推賞(称)】ほめる意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈ーに値する〉〈新聞紙上でーされる〉 推奨 すいじょうき【水蒸気】水が蒸発して生じた気体をさし、会 話にも文章にも使われる日常の漢語。へとなる〉へが上 がる〉へが冷えて水滴ができる〉水に限られる。永井荷 風の「ふらんす物語」に「高台の人家までが、明い夏の夜の 空の下に、薄い銀色のーを着て夢のように立っている」とあ る。ひ蒸気・湯気・湯煙 すいじょうきょうぎ【水上競技】プールなどの水上で行われ る競技の総称として、改まった会話や文章に用いられる専 門的な感じの漢語。「の総得点でリードする」水泳のほ か飛び込みやシンクロナイズドスイミングや水球などが加 わる。「陸上競技」と対立。Q競泳・水泳 すいしん【水深】海・川・湖などの水面から底までの深さをさ し、学術的な会話や文章に用いられる専門性の高い漢語。 「ハメートルの湖」(十を計測する)水位 すいせい【彗星】太陽に近づくとガス状の明るい尾を引く太 陽系内の小天体をさし、やや改まった会話や文章に用いら すいだん れる、いくらか専門的な漢語。〈ハレー〉も流れ星・Qほう き星・流星 すいせん【推薦】自分が適当だと判断した人や物や事柄を他 人に薦める意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈状〉 〈入学〉へのことば〉〈参考書としてーする〉の委員長 としてーする」のように、ある人をある地位に選出すると いう意味合いが強い場合は「推選」と書くこともある。乃推 挙・Q推奨・推輓・薦める ずいそう【随想】思索を中心とする内容の随筆をさし、やや 専門的な会話や文章に用いられる、いくぶん高級な感じの 漢語。〈集〉〈録〉〈ーを寄せる〉見聞した事柄を書き 記した訪問記・旅行記の類はふつう含めない。専工ッセイ・随 感・Q随筆 すいそく【推測】既知の情報を手がかりに人間や物事の実状 や未来の変化などを推し量る意で、会話にも文章にも使わ れる日常の漢語。へがつくへに過ぎないへの域を 出ない単なる当て推量でなく何らかの情報をもとにあ る程度論理的に筋道をたどる感じがある。臆測・Q推察・推 断・推定・推理・推量・推論・忖度・類推 すいたい【衰退(頽)】衰えて勢いが弱くなる意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈国力のーを来す〉へーの一 途をたどる〉〈伝統文化のーを招く〉多く、精神や文化の ような抽象的な存在に用いる。専衰える・減退・後退・衰弱・Q衰 微 すいだん【推断】推測にるとづいて断定する意で、主として 文章に用いる硬い漢語。〈ーをくだす〉〈思い切ってーす <536> すいちょく る 臆測·推察·推測·推定·推理·推量·Q推論·忖度·類推 すいちよく【垂直】線と線や面、面と面とが直角に交わる関 係をさし、やや学術的な会話や文章に用いられる専門的な 漢語。〈な線分〉〈に交わる〉日常語としては「鉛直」 の関係を意味する用法が多く、その場合は専門的な響きが 消える。Q鉛直・縦 すいてい【推定】ある材料をもとに推測のうえ決定する意で、 改まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。〈一年齢〉 〈年俸は一億円に達する〉〈地震による被害は広範囲に及 ぶとーされる〉の「相続人」のような法律関係の専門用語 としては、反証が成立するまでの間、正当なものと認める ことをさす。児臆測・推察・推測・Q推断・推理・推量・推論・付度な 類推 すいてき【水滴】一滴ずつの水をさし、会話にも文章にも使 われる、いくぶん専門的な漢語。〈窓ガラスにーがつく〉 へーが落ちる)のこぼれ落ちるイメージの「しずく」に比べ、 ガラスなどに付着する場合を含む。山田詠美の『風葬の教 室』に「濡れた下着からはーがしたたりおちて私の膝を湿 らせます」とある。ひQしずくしたたり点滴 すいばん【推輓(挽)】「推挙」の意で主に文章に用いられる古 風で硬い漢語。〈恩師の—で採用される〉「推」は後ろか ら押す意、「輓」「挽」は前から引く意。Q推挙・推奨・推薦 ずいはん【随伴】一つの物事に伴って他の事柄が起こる意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈現象〉本 件に—する諸問題〉Q付随・付帯 すいはんき【炊飯器】電気やガスの力で飯を炊く器具をさし、 やや改まった会話や文章で用いられる漢語。〈ガスー〉へー に予約機能がついている) 火飯ジャー・Q電気釜 すいはんジャー【炊飯ジャー】炊飯と保温を兼ねる電気器具 をさし、やや古い感じになりかけていることば。「ジャ ー」は保温器の意で、米を炊いたあと、その飯が冷めないよ うに保つ機能がついていることを強調した、当時は新しい 感じのことばだったが、ほとんどの炊飯器にそういう保温 機能がつくようになった現在では、逆に古い感じになりか けている。Q炊飯器・電気釜 すいび【衰微】以前は盛んだった国や町、あるいは芸術など の勢いが衰える意で、改まった会話や文章に用いられる硬 い漢語。〈国勢がーする〉への兆候が現れる)荅川龍之 介の『羅生門』に「京都の町は一通りならずーしていた」と ある。人や物でなく国力や文化などの抽象的な存在に使う ことが多い。専衰える・減退・衰弱・Q衰退 ずいひつ【随筆】見聞した事柄や自分の経験や感想などを気 の向くままに自由に書き記した散文をさし、会話にも文章 にも広く使われる漢語。「家」〈科学」〈文芸雑誌に を載せる〉とエッセイ・随感・Q随想 すいふ【水夫】船員、特に雑役に従事する下級船員をさして、 会話にも文章にも使われる古風な漢語。〈長〉へとして 雇われる〉、海員・クル・セーラ・船員・乗組員・Q船乗り・マド ロス すいぶん【水分】含有する水の量をさし、会話にも文章にも 使われる漢語。〈ーを摂取する〉〈ーを補給する〉〈ーの多 い果物〉の富岡多恵子の『富士山の見える家』に「部屋は、 <537> ストーブをたくようになって壁から汗のようにーがにじみとある。「水気」より正式な感じがある。水気 すいへい【水平】鉛直方向に対して直角である意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈ー線〉へーに置く〉へーを保つ 「面」など、静止した水面のように平らである意にも使 う。「鉛直」と対立。ひQ平行・横 すいほう【水泡】水の泡の意で、硬い文章に用いることのあ る漢語。〈ーが生ずる〉夏目漱石の『明暗』に「その苦心 は水の泡を製造する努力とほぼ似たものであった」とある ように、この語は多く、文章中などに「に帰する」の形 で、せっかくの努力が無駄になる意に使う。Q泡・うたか た・泡沫まみなわ すいぼくが【水墨画】彩色せず墨の色の濃淡だけで描く絵を さし、やや改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な 漢語。「の世界」ひ墨絵 すいみん【睡眠】眠ることの意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈葉〉〈不足〉〈時間〉へを取 る〉梶井基次郎の『のんきな患者』に「は時雨空の薄日 のように、その上を時どきやって来ては消えてゆく」とあ る。健康との関係で問題にすることの多い客観的な表現。 ひQ眠り・ねんね すいみんざい【睡眠剤】「睡眠薬」の意で、会話にも文章にも 使われる漢語。「が少々利き過ぎて長く眠る」綱野菊の 「遠山の雪」に「その苦しみを忘れるためにを飲んだ。さ めてもよし、さめなくてもよし、というあいまいな気持だ った」とある。僅眠剤・Q睡眠薬・眠り薬 すいろん すいみんやく【睡眠薬】人が眠れるように誘導する効果のあ る薬品をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈不眠症が ひどくてーを常用する〉・類語の中で現在最も一般的に使 う。入眠効果だけを問題にしている感じの「睡眠剤」に比 べ、睡眠をとることで健康を回復するという連想が働きや すいが、一方で「多量のーを飲んで自殺する」といった連想 もあり、最近は「入眠剤」という穏やかな名称に切り替える 傾向が見られる。働催眠剤・睡眠剤・Q眠り薬 すいもの【吸い物】すすって吸う日本料理をさす古風な和語 「お吸い物」の形で使うことが多い。〈刺身にもーにも合う〉 夏目漱石の『草枕』に「ーでも、口取でも、刺身でも物奇 麗に出来る」とある。ひQお吸い物・おつけ・おみおつけ・汁物 で推測する意で、会話にも文章にも使われる漢語。小 説《事件を—する》へ—を働かせる》〈明晰 を追い詰める》鵑測・Q推察・推測・推断・推定・推量・推論・忖度 類推 すいりょう【推量】「推測」に近い意味で、改まった会話や文 章に用いられる、やや硬い感じの漢語。〈当てー〉への助 動詞〉へ先方の意図をーしかねる〉鳴臆測・推察・Q推測・推断・ 推定・推理・推論・忖度・類推 すいれん【睡蓮】スイレン科の多年生水草の総称として、会 話にも文章にも使われる漢語。〈池にーを浮かべる〉の蓮 に似ており、また、花が夜に眠るように閉じることからの 命名という。蓮 すいろん【推論】推理にもとづいて結論を導く意で、主に硬 <538> すぅ い文章に用いられるやや専門的な漢語。〈大胆なー〉く までーに過ぎない)臆測・推察・推測・Q推断・推定・推理・推量・ 付度類推 すう【吸う】口や鼻から気体や液体を体内に取り入れる意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。 〈新鮮な空気を—〉(たばこを—)〈おつゆを—〉有吉佐和 子の『水と宝石』に「運ばれて来た果汁を、ストローで一口 ーと、舌の先から執拗な甘味が感じられた」「ゆっくり両掌 でグラスを温めては、ブランディの強い匂いを口からもー い上げた」とある。汁物などを急いで飲み込む場合は「吸 う」とも「啜ける」ともいえるが、「啜る」とするほうが具が 多い感じが出るかもしれない。啜る すう【数】量に対して物の多少を表す概念をさし、改まった 会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈ーに明るい〉 「かず」が主に自然数を連想させるのに対し、プラスとマイ ナスの整数のほか分数・小数や無理数から虚数などを含めた 概念。かず すうけい【崇敬】神仏や偉大な人物を崇め敬う意で、主とし て文章に用いられる硬い漢語。「の念を禁じえない」 「畏敬」以上に大仰な感じがある。専喪敬・尊敬 すうこう【崇高】畏敬の念を抱かせるほど気高く貴い意で 主に文章に用いられる硬い漢語。「の念」「な理想」 軍人政治家宇垣一成の日記に「なる真面目」とあると いう。厳か・気高い・厳肅・森厳・Q荘厳・荘重 ずうずうしい【図図しい】自分の立場も相手の気持ちや都合 も意に介さず身勝手に行動し、他人に迷惑をかけても平気 で図太く構えている意で、会話や軽い文章に使われる日常 の和語。〈要求〉〈ー・く上がり込む〉〈ーにも程がある〉 夏目漱石の『坊ちゃん』に「よくまああんなにー・く出 来るものだ」とある。厚かましい・厚顔無恥・鉄面皮・恥曝し・ 恥知らず・破廉恥 すうせい【趨勢】物事が移り進む勢いや社会全体の傾向をさ し、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈時代のー に従う〉〈時代のーに鑑みて〉〈文壇のーをつかむ〉ひQ時 勢・時流・成り行き・風潮 ずうたい【図体】体の大きさの意で、主にくだけた会話で使 われる俗っぽい表現。〜ぼかりでかくて役に立たない ヘのわりに気が小さい裏西善蔵の悪魔にビル 看板のように太りこけた」とある。大きな体を軽蔑して 使うのが通例で、小さな体に対してはふつう用いない。「胴 体」の音転といわれる。Q体つき・背恰好・体格・体転・なり 身なり スーツ同じ生地で作った上下そろいの洋服をさす。会話で も文章でも使われる外来語。〈ーを新調する〉〈ーに身を固 める〉②永井龍男の『風ふたたび』に「白い画用紙を切り抜 いたような麻のー」とある。日常的な「背広」よりはいくら か専門的な感じがする。ひジャケット・Q背広 スーツケース旅行用の衣装箱をさし、会話にも文章にも使 われる外来語。〈一つの気軽な旅〉トランクより小さめ というイメージがある。Qトランク・ボストンバック・旅行鞄 すうはい【崇拝】心から崇め敬う意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈偶像—〉〈自然を—する〉◎尊敬の度 <539> 合いは「崇める」より大。専崇める・敬う・崇敬・尊敬・たっとぶ・ とうとぶ すえ【末】物の端や期間の終わりの部分をさし、会話にも文 章にも使われる日常の和語。〈—の子〉〈明治の—〉〈毎月 —に支払う〉の「もと」「初め」と対立。「行く」「が恐 ろしい」「は博士か大臣か」のように将来をさす用法もあ り、その場合はやや古風。り終わり・最後・しまい すえたのもしい【末頼もしい】将来が期待される意で、会話 や改まらない文章に使われる和語表現。〈ー若者〉多く先 の長い子供や若者について使う。有為・Q有望 すえる【据える】動かないようにしっかりと置く意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈工場に大型機械を—〉〈風呂 場に檜の風呂桶を—〉〈後継者として会長のポストに—〉 の室生犀星の『愛猫抄』に「男の部屋はすぐ玄関の明るい三 畳のつぎの六畳の、北窗に机を—・え」とある。「じっくり と腰を—・えて仕事に取り掛かる」のように抽象的な意味合 いでも使う。置く ずが【図(圖)画(畫)】図と絵の意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈工作〉〈の時間〉学校の授業の連想があ り、本格的な絵画を意味するにはなじまない。絵だけをさ す場合もある。刂絵・Q画・絵画・図 スカーフ 防寒や装飾用に首に巻いたり後頭部をおおったり する薄い布をさし、会話にも文章にも使われる外来語。〈白 いブラウスに赤いーでアクセントをつける〉、ヒネッカチーフ すがすがしい【清清しい】さっぱりして心地よい感じをさし、 会話にも文章にも使われる和語。〈朝の—空気〉〈一気分〉 すがりつく 石坂洋次郎の『山のかなたに』に「タ立がザアーとやって 来て、霧れあがったあとのような、気分」とある。「笑 顔」「後味の行為」のように、そのような気分に誘う対象 の形容に用いる例もある。Q爽やか・爽快 すがた【姿】人や物の形の意で、会話にも文章にも広く使わ れる基本的な和語。〈後ろ—〉〈和服—〉〈鯛の刺身の—盛 り〉〈山の—〉〈一世一代の晴れ—〉〈—を見せる〉〈—を隠 す〉四川端康成の『雪国』に二人は果しなく遠く行くも のの—のように思われた」とあるように、「形」に比べ、美 的な見地からのやや主観的な例が多い。乃外形・形・Q恰好・形 式・形象・形状・形態 すがたかたち【姿形】顔立ちや身なりをさし、会話や硬くな い文章に使われる、いくぶん古風な和語。へーの美しい女 性〜で人を判断する)風采・風体・Q容姿 すかっと胸のつかえがおりてすっきりと快い意で、主にく だけた会話に使われる和語。〈ーした気分〉〈連敗のあとだ けにファンは、今日の逆転満墨サヨナラホームランでさぞ やーしたことだろう〉きっぱり・Qすっきり・清々・晴れ晴れ すがら【図柄】布や紙の模様となる図案の柄をさし、会話に も文章にも使われる、やや専門的な表現。〈斬新なー〉へポ スターのーがいい)児絵柄・Q図案 すがりつく【縋り付く】支えたり助けたりしてもらおうと、 頼ってそれを放さない意で、会話でも文章でも広く使われ る日常の和語。「しがみ付く」より文体的なレベルが若干高 い。〈幼児が出かけようとする母親の裾に—〉〈綱に必死で ー〉〈相手の厚意に—〉の「やさしいことばに—」「人の情 <540> すき けに」のように、抽象的な対象にも使う。武田泰淳の『風 媒花』に「泣きそうな視線を、ように三田村へ向けた」と いう比喻表現が出る。「しがみつく」より接触面が狭い感じ があり、腕や杖や紐になどの場合はこの語が使われる。ま た、政権やポストのような手放したくない対象に「しがみ 付く」のとは違って、自分を助けてくれる対象という意識が あるため、神仏や権威や善意などの抽象的なものが対象に なることもある。ひしがみ付く抱きつく すき【鋤】人間が土を掘り起こすための、木の柄のついた櫂 状の農具をさし、会話にも文章にも使われる和語。ヘーで畑 を掘り起こす)専挙 すき【犂】牛馬などの家畜やトラクターに引かせて土を掘り 起こすのに用いる農具をさし、会話にも文章にも使われる 漢語。〈牛にーを引かせる〉乃鋤 すき【隙】物と物との間にできるごく狭い空間をさし、会話 にも文章にも使われる日常の和語。〈本棚の—に雑誌を突っ 込む〉〈戸の—から冷たい風が入り込む〉②具体的な空間を さす場合は「すきま」のほうが一般的。この語はむしろ、 「手の—」「仕事の—」のような時間的な切れ目や、「まった く—がない」「わずかな—をねらう」「相手の—に乗じる」 のような気の緩みについてよく使う。Q間隙・空隙・隙間 すき【好き】好ましく思い心惹かれる、好みに合う意で、 だけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈一な曲〉〈一なことをして暮らす〉〈甘い物が一だ〉 〈死ぬほど一〉〈一なだけやる〉〈一こそ物の上手なれ〉②木 下順二の『夕鶴』に「あたしもあんたがほんとに」とあ り、新美南吉の『屁』に「藤井先生をひと目見て、春吉君は いきづまるほどーになってしまった」とある。恋愛感情に 用いる「愛する」より深刻な感じは薄く、気障な響きも ない。と愛好・気に入る・恋しい・好ましい・Q好む すきとおる【透き通(徹)る】物体の中や向こう側が見える状 態をさし、会話にも文章にも使われる和語。水底がー・っ て見える〉〈ーように白い肌〉「透明」と同様、比喩的に 「声」などとも言う。谷崎潤一郎は『鍵』で、女の耳を「冴 え冴えと美しい」と書いたあと、「アタリノ空気マデガ清冽 ニー・ッテイルヨウニ見エル」と展開する。透明 すきはら【空き腹】腹がすく意で、会話にも文章にも使われ る古風な和語。〈ーを抱える〉〈酒がーにしみわたる〉② 「すきばら」ともいうが、いずれも近年あまり使われない。 ひQ空腹・腹べこ・ひだるい・ひもじい すきま【隙(透き)間】主に空間的な狭い空きをさし、会話や さほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈風〉〈一家 具〉〈戸の—から中をのぞく〉〈歯の—に物が挟まる〉〈 を埋める〉森田たまの『菜園随筆』に「糸すじほどの— とある。刂間隙・空隙・Q隙・盲点 すぎる【過ぎる】時が経過したり場所を通過したり一定の基 準や程度を超えたりする意で、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈夏がー〉へいつ の間にかー・ぎてしまう〉〈列車はもう名古屋をー・ぎた〉② 時に関する表現で、「経過」「経る」「経つ」がいずれも時間 にしか使えないのに対し、この語は「八時をー・ぎた」のよ うに時刻についても使える。森鷗外の『阿部一族』に「一 <541> 時立つ。二時立つ。もう午を過ぎた」とあり、時間の 経過に「たつ」ある時刻を通過する意に「すぎる」を用い ている。ひ経過・Q経つ・経る すく【好く】好ましく思うの意で、会話や軽い文章に使われ る和語。〈みんなにー・かれる〉〈女にー・かれたためしがな い志賀直哉の『冬の往来』に「恋とは知らず只心の中 でこの人をー・いていた」とある。「ー・いた仲」「ー・いた同 士が一緒になる」のように恋愛関係に用いると古い感じが 出る。愛する・恋する・慕う・Q惚れれる すぐ【直ぐ】基準の時点から間をおかずにの意で、くだけた 会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。へ行くか ら、ちょっと待ってぐヘもうー着くよぐーそこだヘ夏目漱 石の『坊っちゃん』に「湯に入れと云うから、ざぶりと飛び 込んで、ー上がった」とある。専即刻・直ちに すくい【救い】危険な状態や苦しい状況にあるものを助ける ことをさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。へーを 求める〉へーの手を差し伸べる〉②「命に別状がなかったの がせめてものーだ」のように、好ましくない事態における わずかな慰めを意味する用法もある。刂援助・救援・Q救済・救 助・救う・助ける すくう【救う】危険・生活難・苦悩などに喘ぐ人がそこから逃 れられるように力を貸す意で、いくぶん改まった会話や文 章に用いられる和語。〈命を—〉〈ピンチを—〉〈倒産寸前 の企業を—〉〈危ういところを—・われる〉〈どうにも—・い ようがない〉太宰治の『走れメロス』に「市を暴君の手か らーのだ」「身代わりの友をーために走るのだ」とある。 すくなくも 「助ける」に比べ、きわめて危ない段階から完全に脱出させ る感じがある。揚助・救援・救済・救助・救い・Q助ける スクーターまたがらずに腰掛けて乗るタイプの小型オート パイ。会話でも文章でも広く使われる日常の外来語。地 面を蹴って滑走する遊び道具をさす場合もある。ひOオート バイ・原付・原動機付き自転車・自動二輪・自動二輪車・単車・バイク・ モーターバイク すくない【少(勘)ない】数量や割合、可能性などがわずかだ、 少しだの意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の基本的な和語。〈残りがー〉〈希望者がー〉〈年 齢の割に白髪がー〉〈金の持ち合わせがー〉〈費用がー・く て済む〉小林秀雄の『女流作家』に「男を全く味気なくさ せるような作品もー・くない」とある。「多い」と対立。 少し・わずか すくなくとも【少(妙)なくとも】内輪に見積もっても最小限 の意で、会話にも文章にも使われる日常的な和語。「ここ まではやる〉〈|一年はかかる〉〈五人は必要だ〉〈|お 礼の一言ぐらいあってしかるべきだ〉の「せめて」に比べ、 表現者の生の感情が前面に出ないため、べたつかず客観的 な感じがある。「|五千円は下らない」のように、「せめて」 とは違って、特に願望をこめないで使う例も多い。少最小 限・最低限・Q少なくも・せめて すくなくも【少(勘)なくも】「少なくとも」の意で会話にも文 章にも使われる古風な和語。〈一年はかかる〉へ入賞は 間違いないへ「歩ける距離ではない」の「少なくとも」に 比べ文語的な響きがある。最小限・最低限・Q少なくとも・せ <542> すぐれる めて すぐれる【優(勝・傑)れる】能力・価値・成績などが他よりまさ っている意で、会話にも文章にも使われる和語。体力に ー・れている〉(・れた技術を身につける)気分がー・ れない」「このところ天候がー・れない」のように、気分や 天候について否定的に言及する際にも使う。少秀でる すけ婦女子特に若い女を意味する古めかしい隠語。もと 盗人などの社会で用いた隠語「なごすけ」の略。番 (一に目をつける)漢字で書けば「助」となるが、ほとん ど用いず、「スケ」と片仮名で書く例が目立つ。男女なおん スケッチ風物などを見て絵などに写し取る意で、会話にも 文章にも使われる外来語。〈ブッタ〉〈山のー〉〈街角を 「する〉の「念入りに」する」とも言えるが、通常はあまり 長い時間をかけずに簡略に描き取るケースが多い。淡彩画 も多いが、「デッサン」よりも作品としての完成度が高い感 じがある。また、風景や印象などを文章で簡略に記す場合 にも使われる。島崎藤村に「千曲川のスケッチ」と題する作 品があり、このような比喩的な用法では美的な趣をたたえ ることもある。以下絵・Q写生・素描・デッサン すげない【素気無い】態度などが冷淡で思いやりに欠ける意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈返事〉ぐびしゃり とーく断る)愛想がないという程度の別語形「そっけな い」よりさらに温かみに欠ける感じがする。ひそっけない・Q つれない・無愛想・ぶっきらぼう すけべえ【助兵衛】人並みはずれて好色な意で、くだけた会 話に使われる俗語。〈根性丸出し〉(たらしい男) な真似はよせ》「好き」を人名めかした語形。「助平」と も書き、その場合は「すけべい」となるが、いずれも「すけ べ」と言うことも多い。お色好み・Q好色 すこし【少し】数量や程度が「多くはないがある程度」といったニュアンスで、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使える最も一般的な日常の和語。〈ほんのだけ〉もう一長めに〈ーばかりですが〉へ「待ってもらって〉へ「ぐらいなら持ち合わせがある〉の井伏鱒二の『珍品堂主人』に「首切り役を私に仰せつけようなんて、あんた、一人が悪くないですか」とある。小沼丹の『小さな手袋』には「よろよろしながら出て行った」とある。口頭語的なレベルの「ちょっと」ほどはくだけないレベルのことば。及若干・少々・ちょいと・ちょこっと・Qちょっと・ちょっぴり・僅か すごす【過ごす】そのように時を送る意で、会話にも文章にも使われる和語。休暇を故郷でー〉〈一日中寝てー〉〈楽しいひとときをー〉②福原麟太郎の『失敗について』に「死んでしまえば万事終りで、人はその一生を、何とかしてー」して来たというだけのことなのだ」とある。生活感のある「暮らす」に比べ、この語は時の経過に意識の重点がある。 ひ暮らす すこすこすっかり元気をなくしてその場を離れる様子をさ し、会話や軽い文章に使われる和語。失敗して引き下が る)《断られて引き返す》「悄然だ」「しょんぼり」と 違って立ち去る動作が必要で、ただ立っている場合には用 いない。専悄然・Qしょんぼり スコップ庭いじりなどに用いる小型のシャベルをきし、会 <543> 話にも文章にも使われる外来語。〈花壇に植えた草花の根元 にーで軽く土をかける〉回日常生活ではシャベルをさして この語を使う例も少なくないため、現実には紛らわしい。 ジャベル すこぶる【頗る】「きわめて」というほどではないが、それに 近い程度を表し、会話にも文章にも使われる古風な和語。 「面白い」〈一疑わしい〉〈一具合が悪い〉〈一上機嫌だ〉 「一付きの美人」のような用法はさらに古めかしい。 大いに・Qきわめてごく・大層・たいへん・とても②・甚だ・非常に すこやか【健やか】心身ともに健康な意で、主に文章に用い られる、やわらかく、いくぶん詩的な感じの和語。〈ーに育 つ〉〈ーな成長〉〈どうぞ末永くおーに〉〈ーなる精神〉② 「ーな笑顔」「ーな発達を遂げる」のような拡大用法も見ら れる。元気・健康・健勝・Q健全・丈夫・壮健・息災・達者 すさむ【荒む】ゆとりを失ってとげとげしくなる意で、多く 文章中に用いられるやや古風な和語。「・んだ世の中〉 「・んだ生活〉(心が」菊池寛の『恩豐の彼方に』に 「分別のあった心は、闘牛者の槍を受けた牡牛のように」・ んでしまった」とある。「荒れる」のうち、抽象的な対象、 特に人の心やその面から見た生活や社会に用い、目に見え る具体物には使いにくい。Q荒れる・荒廃・荒涼 ずさん【杜撰】やり方がいい加減で手落ちの多い意で、やや 改まった会話や文章に用いる漢語。〈管理がーだ〉へーな論 文〉〈ーな工事〉の昔、中国の宋の杜黙の作った詩が韻律 の規則に合わない部分が多かったことから。刂雑・雑駁・Q 粗雑 すじょう すじ【筋】物事の道理、必然的な話の流れをさし、会話にも 文章にも広く使われる日常の基本的な和語。〈話の—〉〈ド ラマの—〉〈一本—が通っている〉〈物事の—から言えば〉 谷崎潤一郎の『細雪』に「幸子や雪子を恨むーはない」と ある。「首の—」のように筋肉の意でも、「—がいい」のよ うに血筋・素質の意でも使う。Q筋道・ストーリー・脈絡 すじかい【筋交い】「はすかい」の意で、主に会話に使われる 古めかしい和語。「の店ですぐ間に合う」江戸時代の 『蜀山百首』に「生酔の礼者をみれば大道をよこーに春は来 にけり」という狂歌があり、酒に酔った年始の客が道を斜め に歩いているのを新春の到来に見立てている。なお、「 を入れる」というふうに、建造物の補強のために対角線状 に取り付ける木材をさす場合は、建築の専門語で特に古風 な感じはない。ひななめはす・Qはすかい すじがき【筋書き】小説や映画・演劇などの話の流れ、また、 それを書き記した本をさし、会話にも文章にも使われる和 語。〈映画のーを読む〉の「万事ーどおりに運ぶ」のように 物事の計画の意に使う比喩的用法もある。卩脚本・筋・ストー リー・Q台本 すじみち【筋道】物事の順序や物の道理や話の構造をさし、 会話にも文章にも使われる和語。へきちんとーを通す)〈話 のーがたどりにくい)へーを立てて話す)条理・筋・Q脈絡・ 理路 すじょう【素性(姓)】その人間の家柄・血筋・生まれ・育ちなど に関する情報の意で、会話にも文章にも使われる古風な漢 語。〈氏の〉〈のはっきりしない人間〉〈を明かす〉 <544> ま 「一の確かな茶器」のように品物の由緒・伝来の意でも使う。 身元 すず【鈴】主に球状の金属などの空洞に小さな玉を入れ、振 って鳴らす器具をさし、会話にも文章にも使われる和語。 《猫の首にーをつける》〈ーを鳴らす〉の小沼丹に『銀色の鈴』と題する小説があり、「貰ったーを面白半分に鳴らしていたら細君が、何か用ですか?と訊きに来た」という一節が出てくる。ひチャイム・ブザーベル・Q呼び鈴 すすぐ【雪ぐ】不名誉を取り去る意で、改まった会話や文章 に用いられるやや古風な和語。〈恥をー〉〈污名をー〉現 代では「そそぐーとなる例が多い。濯ぐ漱けぐ すすぐ【濯(滌)ぐ】洗い流す意で、会話でも文章でも使われ る日常の和語。〈洗濯物を—〉〈汚れ物を—〉〈足を—〉林 芙美子の『泣虫小僧』に「晴々しい黄昏で、点きはじめた町 の灯が水でー・いだように鮮かであった」という比喻表現が 出る。現代では会話的な「ゆすぐ」に比べ、いくらか古い感 じがある。ひ洗う①・漱ぐ・雪ぐ・Qゆすぐ すすぐ【漱ぐ】うがいをする意で、会話にも文章にも使われ る日常の和語。〈口を—〉現代では会話的な「ゆすぐ」と 比べ、やや古風な感じがある。濯ぐ雪ぐ・Qゆすぐ すずしい【涼しい】暑い時期の相対的に低い気温が全身に快 く感じられる場合に、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の和語。〈一風〉(めっきりー・くなる)へこ のところー・くて過ごしやすい)永井荷風の『雨瀟瀟』に 「その年の二百十日はたしか月夜であった」とある。「暖 かい」と対立。Q寒い冷たい・冷ややか すすむ【進む】同じ方向でさらに前方へ動く意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈先へ〉〈船が南へ〉〈工事が順調に〉〈仕事が〉 〈予定どおり〉〈交渉が〉〈猛烈な勢いで〉〈話がとん とん拍子に」②井伏鱒二の『さざなみ軍記』に「味方の陣 頭にー・み出て」とある。「この時計は少しー・んでいる」の ように、通常より早い意にも使うほか、「食がー」のように 程度が著しくなる意でも用い、横光利一の『春は馬車に乗っ て』にも「妻の病勢がーにつれて、彼女の寝台の傍からます ます離れることが出来なくなった」とある。「退く」と対 立。り進行・Q前進 すすめる【勧(奨)める】推奨・奨励の意で、会話でも文章でも 広く使われる日常生活の基本的な和語。〈入会を—〉〈結婚 を—〉〈ー・められて保険に入る〉夏目漱石の『坊っちゃ ん』に「来給えとしきりに—」とある。「産業を—」のよう に奨励の意で用いる用法はやや古風な響きがある。「お茶 を—」「座布団を—」のような用法では「奨める」とは書か ない。専推奨・膚める すすめる【薦める】推薦・推挙の意で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈候補者として—〉〈必読の書として—〉〈推挙・ 推薦・勧める すすりなき【啜り泣き】鼻汁をすするようにして泣く意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈一の声が広がる〉安部 公房の『他人の顔』に「が、積乱雲のように湧き上って」 とある。鳥鳴咽・忍び泣き・しゃくりあげ・泣き咽ぶ・Qむせび泣 き・むせぶ <545> すする【啜る】口や鼻から液体を音を立てて吸い込む意で、 会話にも文章にも使われる日常の和語。〈鼻水を—〉〈味噌 汁を—〉小沼丹の『外来者』に「婆さんは珈琲を一口— って云った」とある。気体は吸い込むときに音が出ないの で通常この語を用いない。汁物などは「吸う」ともいえる が、この語を用いるほうが喉を通る際の抵抗感が連想され て具が意識される。「熱い番茶を—」の例は、熱くてぐいぐ い飲めないために、吹き冷ましながら少しずつ飲むからで ある。「蕎麦を—」は「食う」に比べ、あまり噛まないで飲 み込む感じがあって蕎麦らしさが出る。刂吸う すそ【裾】「山すそ」をさし、会話にも文章にも使われる和語。 〈山のーのほうまで色づく〉の太宰治は『富嶽百景』で、富 士は「のろくさと拡がり」と書き、「ーのひろがっている割 に、低い。あれくらいのーを持っている山ならば、少くと も、もう一・五倍、高くなければいけない」と感想を述べた。 「訪問着の「模様」「ズボンのーをひきずる」「本のーが傷 む」とも言うように、この語は本来、物の端をさし、川下の ことを「川」ともいう。ひ山麓・裾野・Qふもと・山すそ すその【裾野】山すそが広々とした野原になっている場所を さし、会話にも文章にも使われる、いくぶん優美な感じの 和語。〈ーが広がる〉広大なーを持つ〉山麓・裾・ふもと・Q 山すそ 久夕一人気のある俳優・歌手・スポーツ選手などをさし、会 話でも文章でも広く使われる外来語。〈ープレーヤー〉〈映 画ー〉〈ー軍団〉巻花形 スタート出発や開始の意で会話やさほど硬くない文章に使 すたれる われる外来語。〈ーラインに立つ〉〈ー地点〉〈ーしてゴー ルをめざす〉〈ーを切る〉〈ーでつまずく〉〈新生活のー〉 「新しい事業をーさせる」などの用法もあるが、「始まる」 や「開始」に比べスポーツの連想が強く、(直)線的なイメー ジがある。「ゴール」と対立。Q開始・出発・始まる・発足を スタイル類型的あるいは個性的な文章の様式をさして、学 術的な会話や文章に用いられる専門的な外来語。〈この作家 独自のーを貫く〉〈学術論文のーを無視する〉書かれた文 章だけでなく、「小津映画のー」のようにシナリオなどの話 しことばにも使い、さらに作風といった意味合いで言語表 現以外の分野にも使うなど、「文体」の概念より広い。「姿」 「型」の意もある。彫形・恰好・形式・文体・様式 スタジアム 観客席を設けた大型の競技場をさし、改まった 会話や文章に用いられるやや専門的な感じの外来語。〈新装 成ったーで記念試合を催す〉「野球場」をさす例が多い。 込運動場・球場・Q競技場・グラウンド・グランド・コート・野球場 すだち【巣立ち】巣離れの意で、会話にも文章にも使われる 和語。ふな鳥のーの時は近いふあの学生たちもいよい よーの時を迎える」のように、学業を終え親元を離れて社 会に出る意で比喩的に用いられる場合は、慣用的ながらい くぶん詩的な雰囲気を漂わせる。巣離れ スタッフある仕事の各部門の担当者をさし、会話や硬くな い文章に使われる新しい感じの外来語。〈一同〉いいー がそろう〉へが足りない映画や演劇やコンサートの場 合は出演する俳優・歌手などを除く制作陣をさす。乃陣容 すたれる【廃(頹)れる】盛んであったものの勢いがなくなっ <546> スタンド たり、それまで広く行われていたことが衰えてしまったり する意で、会話にも文章にも使われる和語。〈町がー〉(公 徳心がー〉(一時の流行がー〉(伝統行事がー)流行り 廃り」というとおり、「流行」が過ぎ去った場合によく使わ れる。専衰える・Q寂れる スタンド 競技場などの階段式の観覧席をさし、会話にも文 章にも使われる外来語。〈満員の—〉へを埋める大観衆〉 街角や駅などに立つ売店やカウンター式の軽食堂をさす 場合もある。観客席・Q観覧席・客席 映画などの見せ場を宣伝用に撮影した写真をさ し、会話にも文章にも使われる外来語。〈濡れ場のー写真〉 ピデオなどの静止画像をさすこともある。写真・Qスナ ップ・プロマイド・ポートレート スチュアデス女性の客室乗務員をさす少し古い感じの呼び 名。「スチュワーデス」ともいう。古くから使われ、一時 「エアホステス」に座を奪われて廃れたが、「エアホステス」 の衰退した今もまだある程度使われている。Qエアホステ ス・客室乗務員・キャビンクル・フライトアテンダント すっきり意識や気分をさえきるものが消えて明るく爽やか になる意で、会話や軽い文章に使われる和語。へーとした気 分ぐやすり眠れて頭がーするぐ言うだけ言って気持ち がーするぐもうひとつーとしない解決ぐーした服装 「ーとした表現」のように、無駄な飾りのない意にも使われ る。ひさっぱり・Qすかっと・清々・晴れ晴れ すっぱい【酸っぱい】酢のような酸味がある意で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈一蜜柑ふふ〉《梅干がー》 端康成の『雪国』に「熱い優頭を吹きながら、島村が噛んで みると、固い皮は古びた匂いで少し!かった」とある。や や口頭語的な響きがあるため、硬い文章では「ほどよい酸 味がある」「酸味が強い」のように「酸味」を用いる傾向が ある。すい すっぱだか【素っ裸】「全裸」の意の和語。「素裸」の会話的 な強調表現。〈下着も付けない—〉赤裸・素裸・全裸・裸・Q真 っ裸・真裸・丸裸 すっぱねく【素っ破抜く】秘密などを不意に明るみに出す意 で、会話や改まらない軽い文章に使われる、口頭語に近い 表現。〈内部の実情を—〉〈閉鎖的な体質をマスコミが—〉 〈会社の内情を—〉〈新聞が政界と業界との癒着を—〉頬 語に比べ、突然というニュアンスが強い。促音とそれに続 く「バ」という破裂音が働いて強い響きを印象づけている。 Q暴く・暴露・ばらす① ステーキ牛などの厚切りの肉を焼いた料理をさし、会話で も文章でも現代では最も普通の外来語。〈フィレー〉へを 焼く古くは「ピーフ」を短縮した「ピフテキ」という 語を用い、一部の高齢者は今でもそう言う。ひピフテキ ステージ舞台や演壇をさして会話にも文章にも使われる外 来語。〈一ショー〉(一に立つ)田村俊子の『木乃伊の口 紅』に「マネージャーならきっとやれるわ」とある。「舞 台」より新しい感じがあり、洋風の催し物などではこの語 がなどむ。「舞台」と違い、「次のーに進む」のように段階 の意の用法もある。リステップ・段階・舞台 ステーション「駅」の意の外来語。〈ービル〉〈ターミナル <547> ー)一般には斬新な響きを感じさせるが、尾崎紅葉の「金 色夜叉』に「新橋」の大時計」とあるように、「新橋」と いった古い記憶を残す世代にとっては逆に昔なつかしい雰 囲気を感じさせる面もある。Q駅・停車場 すてき【素敵(的・適)】きわめて魅力的なの意で、会話や軽い 文章に使われる漢語。〈なプレゼント〉〈な洋服〉〈 なカップル〉〈なデザイン〉〈な家庭〉武田泰淳の 『森と湖のまつり』に「彼がわたしの恋人なのよ(略)「 じゃない、そんなら」とある。「見事」や「すばらしい」と 違って、高度な技術や全体の価値とは関係なく、垢か抜けて いていい印象を与えれば使える。Qすばらしい・見事 ステッキ西洋風の杖をきして、会話にも文章にも使われる 外来語。〈一片手に散歩する〉小沼丹にまさに『ステッキ』 と題する随筆があり、昔は文人が愛用したとし、「小林秀雄 氏は志賀直哉氏から貰った、矢張り上等のーを持っていた」 と述えている。刂杖 ステップ乗り物などの踏み段、転じて、ものごとを進める 際の段階をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる外 来語。〈ーを踏む〉〈最初のー〉〈核廃絶へのー〉〈ーバイ ー〉「段階」と違い、具体的な物や動きにも用いる。「ス テージ」より小規模で細かい刻みをイメージさせる。リステ ージ・Q段階 すててこ ズボンの内側にはく膝下までの長さの男性用下着 をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈クレープのーを はく〉「ズボン下」の一種。明治初期に宴席などではやっ た「すててこ踊り」にはいたところからこの名がある。 スト ズボン下・股引き すでに【既(巳)に】事が前に終わったそれなりの経過を経 て前に事が実現し今ある段階に達しているといった意味 合いでやや改まった会話や文章に用いられる和語。「終 わっている〉へー過ぎ去った〉「失われている」とうに とっく・Qもう・もはや すてばち【捨て鉢】自信も希望も失って、どうにでもなれと いう気持ちをさして、会話や軽い文章に使われる和語。「 になって向かってゆく〈な気持ち〉五木寛之の『白夜 のオルフェ』に「もうどうなってもかまわないというな執 念」とある。自暴自棄・やけ・やけくそ・Qやけっぱち・やけのや ん八・破れかぶれ すてる【捨(棄)てる】不要なものとして投げ出す意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。ぐごみをー〉〈吸殻を道端にー〉〈一人は拾わない。 ー・てない人が拾っている〉②芥川龍之介の『羅生門』に 「この門の上へ持って来て、犬のようにー・てられてしまう ばかりである」とある。「身をー」「命をー」のような抽象 化した用法もあり、「夢をー」「試合をー」のように「諦め る」意でも、「ー・てて顧みない」のように「ほうっておく」 意でも使う。「故郷をー」「女をー」のような「縁を切る」意 り用法は古風な感じが強い。Q投棄・投げ出す・放棄 スト「ストライキ」の略で、会話や軽い文章に使われる語形。 〈時限—〉〈—権を行使する〉〈—を決行する〉〈—を打つ〉 の口頭では「ストライキ」以上によく使われる。Qストラ イキ・同盟罷業 <548> ストーリー ストーリー「筋書き」の意で、会話や硬くない文章に使われ る外来語。〈ーテラー〉へは単純だが、見終わった後味が いい)Q筋・筋書き トップ動いていたものが止まる意で、会話や硬くない文 章に使われる外来語。〈ドクター〉〈ーをかける〉〈作業 がーする〉乃静止・Q停止・止まる ストライキ 使用者などに対する要求を通すために労働者ら が一定の期間、一斉に作業を放棄する争議行動をさし、会話 にも文章にも使われる外来語。〈ハンガー〉〈労働組合が に入る〉〈に突入する〉ひスト・Q同盟罷業 ストライブ縦縞の意で、会話にも文章にも使われる外来 語。〈臆脂地白の入ネタタ横縞を合 めて言う場合もある。 すな【砂】浜辺などにたまる岩石や鉱物のごく細かい粒をさ し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 和語。〈場〉〈遊び〉〈の嵐〉〈を撒く〉〈浜に横 たわる)山本有三の『波』に「おお粒のーがパラパラと、 彼のえり頸に落ちてきた」とある。Qいさごまさご すなお【素直】ありのままで逆らわない感じをさし、会話で も文章でも幅広く使える日常の和語。〈な性格〉へに従 う)太宰治の「人間失格」に「すぐに自分は水のように にあきらめ」とある。「な息子」は自然であるが「な祖 父」という例になると、「正直な祖父」にはないような違和 感が少し出る。しかし、母親が息子の忠告を受け入れて喫 煙の習慣を断ち切るような場合には「にタバコをやめた」 と言える。つまり、性格を云々する場合には子供や年下や 後輩あるいは部下といった下位者に対する評価という語感 が働き、行為を判断する際にはそのような語感が働かない ようである。僕従順・正直 スナップ一瞬の動きを素早くとらえた早撮り写真をさし、 会話にも文章にも使われる外来語。づール寸前をとらえた ー」の「スナップショット」の略。具写真・Qスチール・プロマ イド・ポートレート すなわち【即(則・乃ち】「言い換えれば」の意で、やや改ま った会話や文章に用いられる、硬い感じの和語。〈賭博ーば くち〉〈百日紅—さるすべり〉「つまり」より格式ばった 感じが強い。「これがー武士道である」のように「ほかなら ぬ」と強調する用法はやや古風で、「戦えば勝つ」のよう に「そうすれば当然こうなる」という意味合いの用法はさ らに古めかしい。ふQつまり・要するに 入ニーカーゴム底のズック靴などをさして、会話でも文章 でも使う比較的新しい外来語。〈ー姿で街を散歩する〉頬 語の中で最もおしゃれな感じがある。込運動靴・Qスポーツシ ューズ ずぬける【図抜ける】「飛び抜ける」に近い意で、会話や軽い 文章に使われる和語。「ー・けた体力に物を言わせる」② 「ー・けて大きな声を出す」のように、特に優れていなくて も、単に並外れであるだけでも使う。马群を抜く・Qずぼ抜け る・飛び抜ける・抜きん出る・抜群 すね【臑(脛)】膝から足首までをさして、会話や文章に使わ れる日常の和語。〈浴衣が短くてーが出る〉立野信之の 『軍隊病』に「痩せて皮膚の弛んだ毛だらけのーを撫でて <549> いた」とある。すね全体のうち、前側の肉の薄い部分をき すことが多い。「に傷を持つ身」「親のーをかじる」とい った比喻的慣用表現もある。ひはぎ・Qむこうずね すねる【拗ねる】不平不満を率直に表現せず、わざと逆らっ た態度で示す意で、会話やさほど硬くない文章に使われる 和語。〈叱られてー〉へー・ねて言うことを聞かない〈世を ー〉②性格的な「ひねくれる」と違い、その時その時に示す 態度を連想させる。ひねじける・僻む・Qひねくれる ずのう【頭脳】識別や判断などの思考活動を行う脳の機能を さし、改まった会話や文章に用いられる漢語。「明晰 〈すばらしい」の持ち主徳永直の『太陽のない街』に 「氷のように」を冷たくしながら」とある。「一集団」「日本 のーが流出する」のように、知力の優れた人間をさす比喻 的用法もあり、物としての「脳」に比べ、抽象的・文化的な イメージが強い。②・Q脳・脳髄・脳味噌 すばしこいすぐに反応して速く動く意で、会話や改まらない文章に使われる和語。〈ー・く動きまわる〉へーくで捕まらない田村泰次郎の『肉体の門』に「人間の少女というよりも(略)山猫か、豹のような小柄でー猛獣である」とある。単に敏捷なだけでなく、ずるく立ちまわるような感じを含む場合がある。ひ素早い すはだ【素肌】衣服におおわれず、化粧もしていない人間の 肌をさして、会話にも文章にも使われる和語。へーの手入れ を欠かさない)へーを見せない)②川崎長太郎の『漂流』に 「澱んだ牛乳色のー」とある。地肌 すはだか【素裸】「全裸」の意の古めかしい和風の文章語。 スピーチ 〈風呂から出てーで扇風機に当たる〉北杜夫の『狂詩』に 「すっかり葉の落ちた枝々(略)は、ーになって繊細な神経を さらけだしているかのようだ」という木に用いた比喻的な 例がある。ひ赤裸・素っ裸・全裸・裸・真っ裸・Q真裸・丸裸 すばなれ【菓離れ】ひな鳥が成長して菓から飛び立つ意で 会話や文章に使われる和語。〈小鳥がーする〉の「菓立ち」 と違い比喩的用法への発展は見られない。菓立ち ずばぬける【ずば抜ける】「図抜ける」の意で、会話や軽い文 章に使われる和語。「・けてよく出来る」②「・けて休み が多い」のように、特に優れたことでなくても、並外れてい るというだけで用いることもある。り群を抜く・Q図抜ける 飛び抜ける・抜きん出る・抜群 すばやい【素早い】動作が速い意で、会話でも文章でも広く 使われる日常の和語。「ーく捕って投げる〉へーく処理す る〉〈動作がー〉〈ー対応〉図佐藤春夫の『お絹とその兄弟』 に「人間の足音を聞いた鼠のように、ーくそらぞらしくし んと静まりかえって」とある。動きのスピードの印象を客 観的に伝えるにとどまり、「すばしこい」のようなマイナス イメージを伴わない。すばしこい すばらしい【素晴らしい】優れていて見事な意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈ー景色〉〈ー料理〉〈ー相手〉〈ー 演技を披露する〉〈ー活躍を見せる〉見て技術をほめる感 じの「見事」に比べ、この語は全体的な評価を思わせる。 すてき・Q見事 スピーチ会合など人前で行う短い話や挨拶をさし、会話や さほど硬くない文章に使われる外来語。〈テーブルー〉 <550> スピード の原稿》「演説」に比べ、主張を述べて説得する雰囲気は 弱く、挨拶やエピソードを含む談話といった軽い感じがあ る。Q演説・弁舌・弁論 スピード「速さ」の意で、会話にも文章にも使われる外来語。 〈ーアップ〉〈ーがある〉〈ーを出す〉〈ーを緩める〉〈ーが 鈍る〉Q速度・速力・速さ スブーン金属製の洋食用の匙をさして、会話にも文章にも 使われる日常の外来語。〈ーでかきまぜる〉〈ーでカレーラ イスを食べる〉具匙 スプリング 針金状の鋼鉄を螺旋の形に巻いたばねをさ し、会話にも文章にも使われる外来語。へーのよく利いたべ ッド) ひぜんまい・Qばね スプリング「春」の意で時に広告などに使われる外来語。 〈ーセール〉〈一コート〉②複合語として用い、単独では用い ない。ひ春 スペア予備や、そのための物をさし、会話や軽い文章に使 われる外来語。〈一タイヤ〉〈一キー〉〈一を準備する〉 「係員のーを用意する」のように人に使う例もある。 スペシャリストある面で特殊技能や特別の感覚・知識を持 つ専門家の意で、主に会話に使われる外来語。〈万年筆修理 のー〉〈送りパントのー〉の「プロ」や「専門家」より狭い 範囲のことについてさらに秀でているという感じがある。 専玄人・Q専門家・プロ すべた 不器量で価値のない女を意味する古い俗語。釧 を意味するスペイン語の転という。カルタのつまらない札 をさしたところからとも。女性を卑しめて言うときに用い る。児悪女・おかちめんこ・しこめ・醜女・醜婦・Qぶす・不美人 すべて【全(総)て】問題になるものの総本をさし、やや 総て問題になるものの総体をさし、やや改ま った会話や文章に用いられる和語。「完了した」(一の責 任は自分にある)〈成績だけがーではない)多くのものを 一つにまとめる意の動詞「統ぺる」から。「全部」以上に、 集められた一つ一つを意識させる傾向がある。Qこと」と く・全体・全部・みな・みんな すべりだし【滑り出し】「出だし」の意で、会話やさほど硬く ない文章に使われる和語。〈上々のーを見せる〉へーは快調 そのものだ)スキーやスケートで実際に滑り出す場合の 文字とおりの意味でも使う。Q出だし・のっけ スポーツ 競技・球技などの総称として、会話にも文章にも広く使われる日常の外来語。〈ーウェア〉〈ウィンター〉〈一の祭典〉〈得意なー〉②「運動」より専門的な感じが強く、軽い散歩やラジオ体操などには使いにくい。自分で楽しんだり観客を楽しませたりする場合が多く、心身の鍛錬を目的とするものにはなじまない。専運動 スポーツシューズスポーツをするのに適するように作った 靴をさし、会話でも文章でも使われる外来語。へーを履いて 本格的に始める)ジョギングなどを連想させる。Q運動 靴・スニーカー すぼまる【窄まる】「すぼむ」の意で、会話や軽い文章に使わ れる和語。〈ズボンの裾が少しー・っている〉もしぼむ・Qすぼ む・つぼむ・つぼまる すぼむ【窄む】ふくらんだり広がったりしていた物が小さく なったり狭くなったり、長い物の先のほうが細くなったりす <551> る意で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈風船がー〉 〈先のほうがー・んだズボン〉 ひQしゅむ・すぼまる・つぼまる・ つぼむ すぼめる【窄める】広がっている物を小さく狭く細くする意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈口を—〉〈傘を—〉 の「つぼめる」に比べ、ぴったりと閉じる感じは弱く、途中 までしぼる場合にも使う。みつぼめる ずぼら態度や行動に締まりがなくだらしのない意で、主に 会話に使われる和語。〈な男〉〈な性格〉見横着・ぐうた ら・Q怠惰・怠慢・無精・ものぐさ ズボン二本の筒形の上に股のついた下半身用の衣服をさ すフランス語からの外来語。類義語中で最も伝統的な呼称 だが、売場では女性用にはあまり使わない。替えー〉両 手を一のポケットに突っ込む福永武彦の『草の花』に 「長い腨を包んだーが黒い蝙蝠のように踊った」とある。 Qスラックスパンツ ズボンした『ズボン下』ズボンと下穿きとの間にはく男性 用の下着の総称として、会話にも文章にも使われる日常語。 へーのゴムが伸びる》「すててこ」や下着の「股引き」 はこの一種。Qすててこ・股引き すまい【住まい】今住んでいる家の意で、改まった会話や文 章に用いられる、やや古風でいくぶん詩的な和語。仮の ー〉〈結構なおーで〉〈公園を見下ろす高台にーを定める〉 ②永井龍男の『そばやまで』は「ーのことでは、一時思い屈 した」という一文で始まる。「一人」「借家」の身」のよ うに、住んで生活する意に用いることもあり、「住宅」や すみか 「居宅」に比べ、環境を合めた居住空間を連想させる傾向が ある。ひいえ・うち・家屋・居宅・豪邸・住居・住宅・邸宅・屋敷 すまない【済まない】日常の謝罪表現の一つで、会話にも文 章にも使われる。ヘこいつは、うっかりした》「適当な のがなくて、どうも済みません」のようにデスマス体で使 う「済みません」の形は「御免なさい」より改まった感じが あり、ごく親しい間柄ではあまり使わない。「失礼しまし た」より謝罪の意味合いが強いが、それでも比較的軽い過 ちの場合に限られ、相手に莫大な被害を与えた場合にはふ さわしくないため、「申し訳ありません」を使う。専謝る・御 免・失礼・謝罪・陳謝・Q申し訳ない・詫びる すみ【隅(角)】物や場所の中央から遠い端の部分、特に角の 内側をさして、会話にも文章にも使われる和語。〈町の—に ある〉〈部屋の—に置く〉有島武郎の『或る女』に「心の —から—までを」とあるように空間でない抽象的な意味合 いでも使う。隅っこ すみえ【墨絵】墨の色の濃淡で描く絵(水墨画)、および、墨 の線だけで描く絵(白描画)をさし、会話にも文章にも使わ れる日常の和語。〈一の手法〉尾崎士郎の『人生劇場』に 「霧の中に村の全景が一のようにひろがっている」とある。 水墨画 すみか【住み処(家)/栖】住んでいる場所の意で、主に文章 で使われる古風な和語。〈終の」〈ーをつきとめる〉志 賀直哉の『邦子』に「これでも人間のーかと思われる程乱雑 なものだった」とある。「棲み処」と書くと、「盗賊のー」 「狐狸のー」のように好ましくない人間や動物を思わせ、 <552> すみきる 「栖」の表記は鳥の巣などの連想が働く。家屋・居宅・住居 住まい すみきる【澄み切る】一点の濁りもなく完全に澄んでいる意 で、いくぶん改まった会話や文章に用いられる和語。「・ った山の空気〉(!・った秋の水)尾崎士郎の『人生劇場』 に「紺碧に晴れた空は湖水のようにー・って」とある。 み通る・Q澄み渡る・澄む すみっこ【隅っこ】「隅」の意で、くだけた会話に使われる、 子供じみた俗な和語。〈ーで小さくなっている〉尾崎一雄 に『すみっこ』と題した小説がある。鳥隅 すみとおる【澄み通(透)る】きれいに澄んで透き通る意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈どこまでもー・った山の 空気〉梶井基次郎の「覚の話」に「・った水音にしばら く耳を傾けていると」とある。澄み切る・Q澄み渡る・澄む すみやか【速やか】時間を置かずにすぐにの意で、改まった 会話や文章に用いられる、いくぶん古風な和語。「な対 応〉へに決断する〉へに行動に移す〉へ可及的に着手 する〉「迅速」に比べ、行動を起こすまでの時間の短さに 重点があり、行動そのもののスピードは常識として含まれ る感じが強い。Q迅速・早い・速い すみわたる【澄み渡る】一面に隈なく澄んでいる意で、やや 改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な和語。 〈秋の空〉〈・った山の湖〉の芥川龍之介の『或旧友に送 る手記』に「氷のようにー・った、病的な神経の世界」とあ る。ひ澄み切る・Q澄み通る・澄む すむ【住む】居を構えて暮らす意で、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈都会に」 〈いつかー・んでみたい町〉〈大きな家に一人で」 夏目漱石の『坊っちゃん』に「開けた所とは思えない。猿と人とが 半々にー・んでる様な気がする」とある。「居住する」より 生活臭が感じられる。まれに「栖む」とも書いた。動物が 菓食う意では一般に「棲む」という字を当てる。単居住 すむ【澄む】濁りがなく透き通っている意で、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈水 がきれいにー・んでいる〉〈ー・んだ月の光〉図川端康成が 『雪国』で葉子の声を「その笑い声も悲しいほど高くー・ん でいる」と描き、梶井基次郎が『桜の樹の下には』で「よく 廻った独楽が完全な静止にーように」と喩えたように、 「ー・んだ音色」「心が洗われたようにー・んでくる」など、 曇りのない意に使う比喩的用法の例も多い。「曇る」「濁 る」と対立。刂澄み切る・Q澄み通る・澄み渡る すもうとり【相撲取り】相撲を取ることを職業とする男をさ し、会話にも文章にも使われる日常の和語。へーとして部屋 に入門する)巻野泡鳴の『耽溺』に「のように腹のつき 出た婆ァや」とある。巻関取・Q力士 スラックス「ズボン」のやや古い語感を嫌って使われ出した 外来語。〈細身の—〉〈白い—姿〉替えズボンをさすこと が多い。「すらっとした」という音感を意識する人もある。 売り場などでは最近「パンツ」という語に移りつつある。 Qズボン・パンツ すりきず【擦り傷】物にこすれ擦り剥けてできる皮膚表面の 傷をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。転んで <553> ーをつくる♡ ♡擦過傷 する【為る】行為を行う、その他の意で、くだけた会話から 硬い文章までどこにでも使われる日常的な基本的和語。〈仕 事を—〉〈勉強を—〉〈卓球を—〉〈ゲームを—〉夏目漱石 の『坊っちゃん』に「自分のしたことが云えない位なら、て んでしないがいい」とある。きわめて広い意味をもつ語で、 「一万円も」「味が」「立とうと」「旅を」「考え事 を—」「うれしそうな顔を」「食事に」「あと三日もす れば完成」など、「やる」に置き換えられない用法が数多 くある。両方使える場合でも、どちらを使うかによって微 妙なニュアンスの違いが見られる。りやる① ずるい【狡(猾)い】自分の利益になるように目立たない形で 巧みに不正を働く意で、会話や軽い文章に使われる日常の 和語。〈やり方がー〉へー・く立ち回る〉夏目漱石の『坊っ ちゃん』に「元来女の様な性分で、から、仲がよくなかっ た」とある。狡猾・Qこすい・こすっ辛い・ずる賢い・悪賢い ずるがしこい【狡賢い】自分の得になるようにずるく立ち回 る意で、主に会話に使われる和語。〈ー手口でぼろ儲けす る〉「ずるい」よりも巧妙に立ち回る感じで、「悪賢い」 ほど悪辣な感じはしない。Q狡猾・小賢しい・こすい・こす っ辛い・ずるい・悪賢い するける【狡ける】横着に構えて、やるべきことをやらない 意で、主にくだけた会話に使われる、いくぶん古風な感じ の俗語。〈学校を—〉〈係の仕事を—〉、おこたる・サボる・Q なまける するどい【鋭い】対象に厳しく突き刺さる感じや、頭脳や感 スロープ 覚が小さな刺激にも早く強く反応する様子をさし、会話に も文章にも使われる基本的な和語。〈一刃先〉〈観察眼が 〈目つきが〉〈勘が〉〈痛み〉〈指摘〉〈批判〉 ②有島武郎の『或る女』に「頭が針のように光って尖って いた」とある。田宮虎彦の『足摺岬』には「眼だけは老いた 鷹のようにー・く」とある。「鈍い」と対立。刃先などがと がってよく切れる意から。Q鋭敏・鋭利・シャーブ・敏感 すれ空間的・時間的・思想的にぴったり合わない意で、会話 やさほど硬くない文章に使われる和語。〈時間のーが生ず る〉へーを調整する〉〈世代による考え方のー〉後藤明生 の『首塚の上のアドバルーン』に「あるいは省略され、ある いは逆に拡大され、あるいは意訳されながら、「過去」に微 妙なーが生じています」とある。標準や基準や他と一致し ないだけで、「食い違い」に比べて矛盾という感じは薄い。 Q食い違い・齟齬・行き違い すれからし【擦れ枯らし】世間でもまれて変に悪賢くなった 様子をさし、主に会話に使われる古風な和語。へーで手に負 えない)若い女性について用いる例が多く、「世間ずれ」 以上にマイナスイメージが大きい。くだけた会話では多く 「すれっからし」となり、その場合は少し強調され、古風な 感じが消えて俗っぽい口頭語になる。Q世間ずれ・世慣れ る・老獪 すれっからし【擦れっ枯らし】↓すれからし ズロース女性用の長めな下穿れきをさして使われる、やや 古めかしい外来語。ひショーツ・パンツ・Qパンティー スロープ傾斜地をさし、会話やさほど硬くない文章に使わ <554> すわる れる外来語。「ーを滑り降りる」(門からなだらかなーを登 ると校舎がある)スキー場の連想もあり、なだらかな雰囲 気がある。呂坂・坂道・Q斜面 すわる【据わる】安定する意で、会話でも文章でも使われる 和語。(赤ん坊の首がー〉〈酔って目がー〉〈度胸がー〉〈腹 がー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「度胸のー・った男」 とある。単座る すわる座(坐)る】膝を完全に折り曲げ、向こうずねを床や 畳に接して尻をかかとにつけて着座する意、広義には椅子 に腰掛ける意を含めて、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常生活の基本的な和語。〈上座に〉〈座布 団に〉〈ソファに〉〈地へたに〉林芙美子の『めし』 に「商家の小僧のように、とめ子のそばに、きちんとー・ た」とある。本来、「座」はすわる場所を意味し、すわる動 作には「坐」を用いてきたが、表外字のため今は「座る」で 代用する例が多く、あえて「坐る」と書くと古風な印象を与 えやすい。室生犀星の『性に眼覚める頃』に「父は一つの置 物のように端然とー・った」とある。大岡昇平の『花影』に は「身を投げるように、その場に」とある。椅子に掛ける 場合にも使われるが、畳に正座するイメージが濃い。乃腰掛 ける・据わる すんすん植物の生長の順調さを表す創作的な擬態語。室 生犀星の詩『桜と雲雀』の中に「うららかに声は桜にむすび つき/桜ー伸びゆけり」という箇所が出る。ひねもす、う つらうつらと啼く雲雀の声に促され、うららかな春の日を 浴びて、桜が静かに何の抵抗も力みもなく、周囲との調和 を保ちつつ、素直に枝を伸ばしている。そういう目の前の 桜の満ち足りた生命力を、詩人は「すんすん」と感じ取った のだろう。それは「すくすく」という年単位の悠長な伸び 方でもなく、他を押しのけてでも積極的に力強く伸張する 「ずんずん」でもない。そういった既成のオノマトペで表現 しきれない感覚の発見的な認識の表現であったように思わ れる。ふずんずん すんずん物事の進行する速度が増したり程度が甚だしくな ったりする様子をさし、主に会話に使われる擬態語。へー進 む〉〈差がー開く〉〈秋の夕陽がー沈む〉马Qぐんぐん・じゃん じゃん・どしどし・どんどん すんぜん【寸前】空間的・時間的に極度に接近している意で、 やや改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈爆発—〉 〈発車—に飛び乗る〉〈倒産—まで追い込まれる〉の「ゴー ルーで追い抜く」は空間的、「ゴールインーで抜かれる」は 時間的な用法。一般に時間的な用法が多い。「直前」以上に 接近している感じが強い。また、「ゴールーに抜かれる」は 時間的だが、「に」を「で」に差し替えると、ゴールのすぐ 手前という空間的な感じになる。乃眼前・Q直前・間近・目前 <555> せ【背】①胴体の後ろの部分をさして、主に文章に用いられる古風な和語。〈相手にーを向ける〉〈床の間をーにして座る〉谷崎潤一郎『細雪』の主人公幸子は「肩からーの、濡れた肌の表面〈秋晴れの明りがさしている色つやは、三十を過ぎた人のようでもなく張りきって見える」と描かれている。Q背中・背部②身長の意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。〈ーが低い〉〈ーの高さ〉寺田寅彦の『花物語』に「見ても病身らしい、ーのひょる長い」とある。「ー比べ」の場合は「せい」と発音する。その他の場合でも会話では「せい」ということが多い。「が高い」のように身長を意味する用法ではまったく古い感じはなく、「ーに腹はかえられない」のような慣用句の場合もさほど古い感じはしない。马上背・身長・Q背丈・身の丈 せい【生】人生・生活・生命の意で、主に文章に用いられる漢 語。〈ーと死〉〈ーを全うする〉(この世にーを享づける) 〈ーを楽しむ〉林房雄の『青年』に「枯木のごとく、死灰 のごとく、犬のごとく、てんとう虫のごとく暮したなら、ー は無駄であろう」とある。「人生」と違い、人間以外にも用 いる。卫生生涯人生 せい【姓】一族の家の名をさし、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈ーは車、名は寅次郎〉〈ーも名もありふれて いるから同ー同名もいる〉马苗字 せいいく せい【所為】物事の起こる原因や理由を漠然とさし、主に会 話に使われるくだけた漢語。〈気のだ〉〈自分の失敗を他 人のーにする〉②芥川龍之介の『東洋の秋』に「空には薄雲 が重なり合って(略)そのーか秋の木の間の路は、まだ夕暮の 来ない内に、砂も、石も、枯草も、しっとりと濡れている とある。Q原因・要因 ぜい【税】国や地方公共団体などが運営資金として国民や住 民から法律に基づいて強制的に徴収する金銭をきし、主に 文章に用いられる改まった感じの硬い漢語。〈ーを課する〉 〈ーを取り立てる〉の「所得」「消費」のように語の構成 要素として用いられる例も多く、その場合は特に硬い感じ はない。日常生活でこの語を単独で用いる例は少なく、納 税する側より課税する側の雰囲気が漂う。Q税金・租税 せいあつ【制圧】力で押さえつけて暴動や勝手な振る舞いな とを封じ込める意で、改まった会話や文章に用いられる漢 語。〈反対派を—する〉〈不穏な動きを—する〉彫征服・Q鎖 圧·平定·抑圧·抑制 せいい【誠意】私利私欲のない真面目な気持ちの意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈誠心—〉〈ーを示す〉 〈ーを疑う〉〈ーをもって事に当たる〉専誠・Q莫心 せいいく【生育】生まれ育つ意で、改まった会話や文章に使 われる、やや専門的な感じのある漢語。「期」《稲のー〉 〈作物のーを促す〉成育・生長・成長 せいいく【成育】大きく育っていく意で、やや改まった会話 や文章に使われる、やや専門的な雰囲気の漢語。「不良 〈子のーを見守る〉〈稚魚のー〉多く植物に使われる「生 <556> せいいっぱい 育」に対し、この語は原則として人間や動物に使われる。 したがって、「一に適した土壌」のような例では「生育」を 用いるのが自然。卫生生長・成長 せいいっぱい【精一杯】自分の能力で可能な最大限度を意味 し、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の漢語。「 の努力〉(一頑張る)(このぐらいがーだ)肉体的な力よ り精神的な集中力に重点のある感じが強く、「力一杯」以上 に全力を傾ける雰囲気が感じられる。鋭意・Q力一杯 せいえん【声援】声をかけて応援する意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈沿道からマラソン選手にーを送る〉〈大 きなーに応える〉Q応援・加勢・支援 せいか【正価】掛け値なしの本当の値段の意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈現金—〉〈—で買う〉足価 せいか【生家】その人の生まれた家をさし、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈藤沢周平の—跡に碑が立つ〉 里・実家 せいか【成果】獲得した価値ある結果をさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈勉強のーが上がる〉へ一定のーを収め る〉へーに乏しい〉〈研究ーを発表する〉単績・結果・Q収穫 せいかく【正確】正しく確実なという意味で、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる基本的な漢語。「無比 〈ーな判断〉へーに伝える〉へーを期す〉三浦哲郎の『川べ り』に「メトロノームのようなーな間を刻んだ歩き方」とあ る。誤りや誤差を含まないところに重点がある。精確・正 当・正しい せいかく【精確】「精」は「詳しい」意で、細部まで正確なよ うすをさし、主として文章に用いられる硬い感じの漢語。 へーに調査する〉へさらにーなデータを入手する〉細かい ところまで確かであることを強調する用字。丹羽文雄の 『顔』に「精密機械のようにくわしくーに記憶していて」と あり、「正確」と書いてあるが、もし「精確」と記せば「く わしく」は不要になる。正確 せいかく【性格】個人の特徴的な行動様式や心理的特性をさ して、会話にも文章にも広く使われる基本的な漢語。へ俳 優〉〈ー破綻者〉〈何といってもーがすばらしい〉〈明るい ー〉〈ーがひねくれている〉〈ーの不一致〉円地文子の 『老桜』に「渋滞のない明るいーを持っていた」とある。「お となしいーの犬」などと動物にも使うが、植物の場合は通 常「性質」という。比喻的に「事件のー」「問題のー上」な どと抽象的な意味合いで用いることもある。気質・気象・気 性・気立て・性分・人格・人品・人物・性向・Q性質・たち・人柄・人となり せいかつ【生活】暮らしの意で、会話にも文章にも使われる 日常の最も基本的な漢語。〈家庭ー〉〈ー水準〉〈ー必需品〉 〈ーを送る〉〈ーを共にする〉〈ーが苦しい〉宮本百合子の 『伸子』に「全体がその仏壇のように古風な伝統にみちて いた」とある。「暮らし」より正式な感じで、使用頻度が高 い。ひ暮らし せいかん【静観】自分から積極的に働きかけたり行動を起こ したりせずに、その動向をじっと見守る意で、改まった会話 や文章に用いられる硬い漢語。〈事態をしばらくーする〉② 抽象的な意味での観察であり、「傍観」と違って実際に目で 見ている場合には使わない。僕観 <557> せいかん【精悍】顔つき・態度・行動などが鋭くたくましい感じである意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 へなまなざし》岡本かの子の『落城後の女』に「若い豹の毛皮にでも包まれているような、で優婉な肌触りの空気」とある。男性の連想が強い。頑健・強健・Qたくましいせいがん【請願】国民が憲法に保障されている権利により法律に定められた手続きを踏んで公的機関に願い出る意で、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの硬い漢語。 へ権)へ書を提出する)国にする)申請・請求・陳情・要求・要請・要望 せいき【生気】生き生きとした気力をさし、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。〈のない顔〉へが抜ける〈を取り戻す〉へに満ちた若者の街武田泰淳の『蝮のすえ』に「油ぎったーがなく、ひどく緊張した、ほとんど発狂したような顔」とある。活気 せいき【正規】正式に定められている意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈雇用〉〈の学生〉〈に 登録する〉〈の手続きをふむ〉Q公式・正式 せいき【性器】感情をこめずに生殖器全体を明晰 す、乾いた代表的な一般的漢語。室生犀星の『杏っ子』に 「というものは見えない。それは平ったい鳥の子餅のよう なもの」とある。単一物・陰部・陰門・隠し所・下半身②・下腹部・局 所・局部・玉門・金玉・睾丸・女陰・Q生殖器・恥部 せいぎかん【正義感】人間として守り行うべき正しい道義を 重んずる感情をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へー にあふれる〉へーに燃える〉へーから出た行動〉へーに訴え せいぎょ る心の奥にある「良心」に比べ、積極的に表面化した感じがある。専道徳・Q良心・倫理 せいきゅう【性急】焦って急ぎ過ぎる意で、主として文章に 用いられる硬い感じの漢語。人生来の一な人間〉〈一に事を 運ぶ〉〈一に結論を出す〉〈一の誘りを免れない〉②宮本百 合子の『伸子』に「自分たちの運命に対して一になってき た」とある。頃気短・Qせっかち・短気 せいきゅう【制球】野球で投手が狙いどおりにボールを投げ る意で、主に文章中に用いる専門的な漢語。〈力〉〈が 定まらない〉〈突如としてーを乱す〉会話では「コントロ ール」ということが多い。Qコントロール・制御 せいきゅう【請求】当然受け取る権利のある物を要求する意 で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈書〉〈金 額〉〈代金を—する〉〈資料を—する〉代金など多く金銭 的な要求に使う傾向が強い。単申請・請願・要求・Q要請・要望 せいきよ【逝去】「死亡」「死去」の尊敬語。改まった文章に 用いる漢語。〈謹んで御ーを悼む〉の太宰治の『斜陽』に 「お父上のーを悲しんで」とある。「死ぬ」ことを忌む気持 ちから、それをこの世から「行き去る」ととらえ直した間接 表現。勇敢え無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が 絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れにな る・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死 ぬ・死亡・昇天・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡く なる・儚なくなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏にな る・身罷かまる・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 せいぎよ【制御(禦・馭)】一定の目的に沿って思いどおりに操 <558> ぜいきん 作調節する意で、改まった会話や文章に用いられる専門的 で硬い漢語。〈自動装置が働く〉〈活動を—する〉〈感情 の—が難しい〉野球の「コントロール」にはこの語を用い ず、「制球」という。Qコントロール・制球 ぜいきん【税金】「税」の意で、くだけた会話から硬い文章ま で幅広く使われる日常の漢語。〈ー対策〉〈ー泥棒〉〈ーが かかる〉〈ーを取られる〉〈ーを払う〉〈ーを滞納する〉②類 義語の中で最も普通に使われる。ひ税・Q租税 せいく【成句】広く知られた古人の詩文などの一句をさし、 やや改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。へを引 いて文章を結ぶ》の『史記』中の「四面楚歌」や李白の詩に ある「白髪三千丈」など、「格言」に比べ典換の明確なもの が多い。諺がや慣用句を含めて言う場合もある。ひイディオ ム・格言・Q慣用句・諺 せいけい【生計】暮らしていくための収入を得る手段や、そ の収入と支出との関係から見た状態をきして、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ーを立てる〉〈何とかーを保つ〉 〈ーの道を求める〉、Q家計・暮らし向き せいけい【成形】満足な形を作る意で、会話でも文章でも使 われる専門的な漢語。〈切除した乳房の手術〉の形成外 科」のように「形成」ということも多い。Q整形・成型 せいけい【成型】素材を型にはめて一定の形に作り上げる意 で、多く文章に用いる専門的な漢語。〈加工〉〈プレス〉 ひ整形・Q成形 せいけい【整形】形を整える意で、会話でも文章でも使われ る、やや専門的な漢語。〈外科〉〈美容〉〈顔のー手術〉 Q成形·成型 せいけつ【清潔】きれいで衛生的な意で、会話にも文章にも 使われる日常の漢語。〈一に保つ〉〈一な肌着〉〈一な部屋〉 の井上靖の『猟銃』に「腰の線が羚羊のようにーでしかも逞 しい」とある。太宰治の『満願』には「すぐ眼のまえの小道 を、簡単服を着たーな姿が、さっさっと飛ぶようにして歩い ていった。白いバラソルをくるくるっとまわした」という 印象的なラストシーンがある。「一な人柄」のように抽象化 した比喻的用法もある。「不潔」と対立。専衛生・清らか・Q綺 麗・清浄 せいげん【制限】物事の許容範囲や限度を設けてそれに従わ せる意で、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。入 場ー〉(字数ー〉〈食事ー〉〈給水ー〉〈ー速度〉〈年齢ー〉 〈一時間内に仕上げる〉〈予算枠をーする〉処制約 せいこう【成功】目的を達成する意で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈者〉 〈作戦がまんまとーする〉〈実験にーする〉〈ーを祈る〉〈一 度でーしたためしがない〉の「その道のー者」「実業家とし てーする」のように、社会的な地位や名誉を手に入れたり 大きな財を成したりする意味にも使う。夏目漱石の「坊っ ちゃん」に「わるくならなければ社会にーはしないものと 信じて居るらしい」とある。「失敗」と対立。Q成就・達成 せいこう【性交】男女の性器の結合を意味する代表的漢語。 〈ーに至る〉感情的なニュアンスを伴わないストレートな 客観的表現。「性行為」より専門語の感じは薄い。専営み・エ ッチ・関係②・合飲・交合・交接・情交・情を通じる・Q性行為・性交渉 <559> 性的行為・セックス・抱く②・契る・同衾・共寝・寝る②・懸ろになる・ファック・深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 せいこう【性向】性格傾向の意で、主として硬い文章に用い られる学術的な雰囲気の漢語。〈穏和な—の持ち主〉「の 一端を示す〉〈青年期に特有な—が顕著に認められる〉ひ気 質・気象・気性・気立て・性分・人格・人品・人物・Q性格・性質・たち・人 柄・人となり せいこう【精巧】細かいところまで巧みに出来ている意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈な細工〉 〈な造り〉厳密・細密・精緻・Q精密・緻密・綿密 せいごう【整合】矛盾や混乱がなく全体として筋が通る意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈事実ときちん とーする〉〈両者がうまくーする〉〈一性に欠ける〉及一致・ 合致・Q符合 せいこうい【性行為】硬い文章などで「性交」など性欲を満 たす行為の総称として用いられる、やや専門的で正式な感 じの漢語。「性的行為」ともいう。「を行う」へと見な す)対象行為を客観的にさし示す直接表現で、感情的な二 ュアンスを排除した学術的な雰囲気の語。夢み・エッチ・関 係②・合歓・交合・交接・情交・情を通じる・Q性交・性交渉・性的行為・ セックス・抱く②・契る・同衾・共寝・寝る②・懸ろになる・ファック・ 深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 せいこうしょう【性交渉】「性交」をストレートにさし示す硬 い感じの漢語表現。〈ーをもつ〉露骨な表現であり、感情 的なニュアンスに欠ける。営み・エッチ・関係②・合歓・交合・交 接・情交・情を通じる・Q性交・性行為・性的行為・セックス・抱く②・契 せいさん る・同衾共寝・寝る②・懸るになる・ファック・深い仲になる・房事 枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 せいこん【精魂】物事に打ち込む魂の意で、やや改まった会 話や文章に用いられる、いくらか古風で硬い感じの漢語。 〈ーを傾ける〉〈ーをこめる〉弔精根 せいこん【精根】精力と根気の意で、会話でも文章でも使わ れる、やや古風な漢語。〜尽き果てる)須精魂 せいざ【正座(坐)】脚をきちんと折り重ね、姿勢を正して座 る意で、会話にも文章にも一般的に使われる漢語。床の間 を背にーする〈長時間ーして脚がしびれる〉ひ端座 せいさく【制作】芸術作品や映画・テレビ番組などを作る意 で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈卒業—〉〈油 絵の—〉〈番組を—する〉芸術作品を作るという意識の場 合に用いる。作成・製作 せいさく【製作】道具や機械を使って物品を作る意で、会話 でも文章でも使われる漢語。〈所〉〈家具を—する〉〈電 化製品の—過程〉〈新型機械の—に取りかかる〉②「作製」 と違い、地図や図面については用いない。道具や機械を用 いて物を作る場合に用いる漢語。「映画の—」の場合、監督 の意識では「制作」、経営者の感覚では「製作」ということ になろう。したがって、「費」にはこの語を用いるほうが 自然。Q作製・制作・製造 せいさん【清算】帳消しにして決まりをつける意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈借金を—する〉〈愛人関係を— する〉〈過去を—する〉志賀直哉の『或る男、其姉の死』 に「鉄道が官有になるので、その引き渡しや—で非常に忙 <560> せいさん しい」とある。♩精算 せいさん【精算】細かく計算する意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈所〉〈一窓口〉〈運賃をーする〉清算 せいさん【生産】人間生活に直結した必要物を作り出す意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる漢語。「 者〉へ「高〉へ「価格〉〈大量」〉へ「を始める〉へ「が間に 合わない」み産出 せいさんぎょう【生産業】自然物に手を加えて価値を高める 産業をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーの振興を 図るへーに従事する)Q産業・実業 せいし【正視】正面からまともに見る意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈あまりの惨状でーに堪えな い〉〈あまりに憐れでーするに忍びない〉の打消しの形で 使われる例が多い。直視・見る せいし【制止】行動しかかるのを制してやめさせる意で、や や改まった会話や文章に用いられる漢語。実力行使をーす る〉への声を振り切って進入する〉廃禁止・Q抑止 せいし【静止】動きが止まる意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈一画像〉〈一状態〉〈一したまま微動 だにしない〉②中谷宇吉郎の『立春の卵』に「すねていた最 後の一つもお時間の零時五十一分になるとピタリーした」 とある。「運動」と対立。リストップ・Q停止・止まる せいじ【政治】主権者が立法・司法・行政などの機関を通じて 国を治めることをさし、会話にも文章にも使われる基本的 な漢語。〈一家〉〈活動〉〈資金〉〈議会制〉〈に携 わる〉伊藤整の『火の鳥』に「軍人のだって、降伏して しまえばその実体は泡のようなものだった」とある。ひまつりごと せいしき【正式】規定どおりで社会的に認められる形での、 の意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー決定〉〈ー採 用〉〈ーの手続き〉〈ーの挨拶〉〈ーの通知が届く〉〈ーに結 婚する〉の「ーの服装」のように簡略化されていない意で、 「略式」と対立する。したがってその範囲内にいくつかの種 類がありそうだが、「公式の服装」となるとほかに選択肢が ないような感じが強い。Q公式・本格的・本式 せいしつ【性質】あらかじめ具わっている性格の意で、会話にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈朗らかなー〉〈ーが温厚だ〉〈ーを見極める〉〈かっとなりやすいー〉谷崎潤一郎の『卍』に「が学者肌に出来てまして」とある。「日陰に育つ」「水に溶けやすい」「素材のーを生かす」のように、人間や動物以外に植物や物体についても使われ、「参議院というもののー上」のような比喻的な用法もある。「それぞれのーに応じてきめ細かく対応する」のように、「性格」よりも具体的で細かい点をとりあげる傾向が見られる。児質・気象・気性・気立て・性分・人格・人品・人物・Q性格・性向・たち・人柄・人となり せいじゃく【静寂】ひっそりと静まり返っている意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈森のー〉へーを保つ 〈突如ーを破る警笛〉阿川弘之の『夜の波音』の冒頭は、 列車が「遠去かるにつれて、波の音は又夜のーさの底から 湧いて来た」場面で始まる。Q閑寂・閑静・静か・静やか・静肅 ぜいじゃく【脆弱】脆くて弱い様子をさし、改まった会話や <561> 文章に用いられる硬い漢語。〈な地盤〉〈な体〉〈な意思〉②小林秀雄の『ゴッホの手紙』に「翻訳文化などというな言葉は、凡庸な文明批評家のな精神のなかに、うまく納っていればそれでよい」とある。ヌQ脆い・弱い せいしゅ【清酒】漉して透明にした日本酒をさし、改まった 会話や文章に用いられるやや専門的な漢語。〜を一本ぶ らさげてお祝いに行く〜通常「日本酒」と呼ぶが、濁酒で ないことを意識する場合は特にこの語を使う。ひ酒・Q日本 酒 せいしゅく【静粛】声を出さずに大人しくしている意で、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈御ーに願います〉 閑寂・閑静・Q静か・静やか・静寂 せいしゅん【青春】人生の春に当たる若い時代をさし、会話 にも文章にも使われる日常の漢語。「の日々」多感な 」「時代の夢」「を謳歌する」その時期を人生の 春に喩えた表現。林芙美子の『耳輪のついた馬』に「を、 長い間文箱のように大切にしていた」とある。藤沢周平の 『老年』には「帰らない」といった感傷の中には、まだ現在 とーをつなぐみずみずしい道が通じているだろう」とある。 客観的な「青年期」に比べ美化された感じがある。Q青年 期・若き日 せいじゅん【清純】性格が清らかで世間の汚れに染まらない という語義で、くだけた会話以外、幅広く使える漢語の日 常語。「派女優」「な乙女」「な感じの少女」徳田秋 声の『縮図』に「出たての蒼のようなーさ」とある。その ような人間は男性にもいるし、老人にもいないわけではな せいしん いが、この語は主として若い女性について使われてきたた め、「な中年男」「なお婆さん」といった使い方は滑稽 に響き、「な幼児」という例もぴったり来ない。き清い清 らか・純情・Q純真 せいしょ【聖書】キリスト教の正典をさし、会話にも文章に も使われる漢語。〈新約ー〉〈一の教え〉〈一の一節を引用 する〉きバイブル せいじょう【清浄】汚れがなく清らかな意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈—無垢〉〈—野菜〉〈—な空気〉 〈—な湧き水〉③三島由紀夫の『美德のよろめき』に「その 晩の節子は実際火のように—で、彼女自身、ほとんど肉感 的な印象をとどめていなかった」とある。「清潔」ほど一般 的でないため、清らかさをより強調した感じがある。「不 浄」と対立。清い・Q清らか・綺麗・清潔 せいじょう【正常】意識・考え方・行動・運行などに異常な点が なく普通の状態である意で、会話にも文章にも使われる漢 語。〈意識はーだ〉〈ーな判断ができない〉〈ダイヤがーに 復する〉⑨井上靖の『氷壁』に「いつかーの美那子ではなく なって行った」とある。「異常」と対立。単平常・Qまとも せいしょくき【生殖器】生殖を営む器官の総称として、学術 的な記述などで用いる、客観的で正式な感じの専門的な漢 語。単一物・陰部・陰門・臨し所・下半身②・下腹部・局所・局部・玉門・ 金玉・畳丸・女陰・Q性器・恥部 せいしん【精神】知・情・意にわたる心の働きの総称として やや改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「力 「衛生」「分析」「的にまいる」「を鍛え直す」「 <562> せいじん がたるんでいる〉〈ーに異常を来す〉〈不撓に不屈のー〉 〈サービスーに富む〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「あの 野郎の考じゃ芸者買いはー的娯楽で、天麩羅や、団子は物質 的娯楽なんだろう」とあるように、「物質」と対立する。 「建学のー」「法律のー」のように、根本理念をさす用法も ある。感情・気分・Q気持ち・機嫌・心地・心・心持ち・心情・心理 せいじん【成人】成年に達する意やその人をさして、改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈ー式〉〈ーの仲間入り〉 〈立派にーした姿を一目見せたかった〉「大人」よりも範 囲が明確。ひ大人 せいしんりょく【精神力】やろうとする気力の意で、会話に も文章にも使われる漢語。へーを鍛える〉、ここまで来れば あとはもう一の問題だ》技術や体力に対立するものとし て言及することが多い。意気込み・意欲・意力・気概・気骨・気 迫・気力・Q根性・と根性・やる気 せいせい【清清】圧迫感が払拭はされて爽快な気分になる意 で、主として会話に使われる和語。〈鬱陶おしい雨空が切れ て気分がーする〉〈邪魔者が去ってーした〉〈長年のローン が終わってーした〉永井龍男の『しりとりあそび』に「あ なたに話をしてしまったら、少しーしたわ」とある。きっ ばり・すかっとすっきり・晴れ晴れ せいぜい【精精】どんなに多く見積もってもの意で、会話に も文章にも使われる日常語。ふまく運んでーそんなもの だぐざんなに出世しても一部長止まりだぐこの程度の値 引きがーですぐこの収入では飯を食っていくのがーだぐ 「一頑張ることだな」のように、精一杯の意でも使い、その 用法では古風な感じがある。 したかが・Qたかだか せいせき【成績】試験・仕事・試合などにおける評価をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈表〉〈営業〉〈学校 のー〉〈いーを取る〉〈優れたーを残す〉③大岡昇平の 『俘虜記』に「射撃は学生のとき実弾射撃で良いーをとって 以来、妙に自信を持っていた」とある。刂評価・評定 せいせん【精選】良質のものだけを念入りに選び抜く意、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「米」「問 題集〉〈材料を—する〉作品をーして収録する〉人間の 選定には用いない。厳選 せいせん【生鮮】肉・魚・野菜などが新鮮であることをさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈食品〉団単独ではあま り使わない。ふ新鮮・みずみずしい いぜん【生前】死者についてその人が生きていた時という 意味で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「の 元気な姿〉(の善行)〈」を偲ぶ〉永井荷風の『灑東綺 譚』に「翁がー使用したる器物調度」とある。藤枝静男の 『雛祭り』には「線香のかわりに妻がー愛していた香水をふ り撒いて通夜をした」とある。「死後」と対立。在りし日 せいそ【清楚】清らかで飾りけがないようすをさし、改まっ た会話や文章の中で用いられるやや古風な漢語。「な身 なり〉(見るからにーな感じの薄化粧の女)④吉本ばななの 『TUGUMI』に「閉じた長いまつ毛も、枕に広がる髪も、 まるで本物の眠り姫のようにーで美しく」とある。語義の 上では男女に共通する状態をさすが、伝統的に女性に対し て用いることの多かった関係で、「貞淑」ほど女性専用とい <563> うわけではないが、すぐに女性を連想させる。「いかにもー な感じのする紳士」といった表現も誤りとはいえないが、語 感の点で違和感が残り、その人物に女性的な雰囲気が漂う。 「ーなおやじ」といった言い方が滑稽な感じがするのは、意 味というより、そういう語感のせいである。Q楚々・貞淑 せいそう【正装】正式の改まった服装の意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈ーで式に臨む〉乃盛装 せいそう盛装華やかに着飾る意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〜ーしてパーティーに出かける)島崎藤村の 『桜の実の熟する時』に「した下町風の娘達」とある。 正装 せいそう【清掃】きれいに掃除する意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈具〉〈係〉〈校内〉〈車内のー が済む〉②「掃除」より正式な感じの語で、家庭ではあまり 使わない。掃除 せいぞう【製造】工場などで原料を加工して物を大量に生産 するような意味合いで、会話でも文章でも使われる日常的 な漢語。「業〉へ年月日〉《食品をーする》夏目漱石の 『坊っちゃん』に「自分の力でおれをーして誇ってる様に見 える」と人間を物扱いにした例がある。製作 せいぞん【生存】生命を維持する意で、改まった会話や文章 に用いられる、やや硬い感じの漢語。〈ー競争〉〈事故現場 からー者が見つかる〉〈ーを確かめる〉〈ーを脅かす〉単 に生死を問題にするだけで生活実感に乏しいため、網野菊 の『遠山の雪』にある「新緑のみずみずしい美しさを見る と、彼女の心は生きている喜びでふるえた」のような例で せいつう この語に換言すると違和感が伴う。卫生きる せいたん【生誕】誕生の意で、主として文章に用いられる改 まった感じの漢語。〈一の地〉〈一百年の記念事業〉歴史 的に著名な人物に使われる例が多い。刂降誕・出生・Q誕生 せいち【精緻】細かいところまで神経が行き届いている意で 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「な分析 〈な描写〉〈な地区〉厳密・細密・精巧・精密・Q緻密・綿密 せいちょう【生長】草木が育つ意で、主に文章の中に使われ る漢語。〈苗の」の成長」のうち植物の場合を特に区別 するときの表記。学術用語としては用いない。生育・成育・ 成長 せいちょう【成長】人間や動植物、組織などが育って大きく なる意で、会話にも文章にも広く使われる日常漢語。へー 期〉〈高度経済—〉〈一株〉〈著しいーに目を細める〉呂崎 藤村の『嵐』に「春先の筍のような勢でずんずんーして来た 次郎」とある。卫生育・成育・生長 せいちょう【清聴】自分の話を相手が聞いてくれる意の尊敬 語。通常は口頭で用いるが、必要に応じ文章中にも用いる 漢語。ごありがとうございました》静聴 せいちょう【静聴】静かに聴く意で、通常は口頭で用いるが、 必要に応じ文章中にも用いる漢語。ぐごー願います《講演 をーする》清聴 せいつう【精通】詳しく知っている意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈税法に—する〉〈その間の消息に— する〉〈裏事情に—する〉「通暁」と違い、価値のある知 識だけでなくさまざまな情報についても使う。川端康成の <564> せいてい 「雪国」に「歌舞伎の話などしかけると、女は彼よりも俳優 の芸風や消息にーしていた」とある。詳しい・Q通暁 せいてい【制定】法律や規則などを一定の手続きを経て定め る意で、主に文章中に用いる、正式な感じの漢語。〈法律を ーする〉〈国旗をーする〉は決める・Q定める・指定・設定 せいてきこうい【性的行為】「性交」など性欲に関係した行為 の総称として対象をストレートに指示する、学術的な雰囲 気の専門的な漢語。〈ーを強要する〉②「性行為」よりも正 式な感じで、それ以上に幅広い含みを感じさせる。専営み・ エッチ・関係②・合歓・交合・交接・情交・情を通じる・Q性交・性行為・ 性交渉・セックス・抱く②・契る・同衾・共寝・寝る②・懇ろになる・フ アック・深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 せいてん【晴天】晴れの天気の意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈ーが続く〉〈本日はーなり〉〈ーに恵ま れる〉ひ青天 せいてん【青天】本来は青空の意だが、主に慣用句の中で比 喩的に用いられる硬い感じの漢語。〈ーの霹靂ぐき〉〈ー白日 の身となる〉き晴天 せいと【生徒】小学校・中学校・高等学校、時には幼稚園を含 めて、そこに通う子供を漠然とさす世間一般の使い方の場 合は、会話や軽い文章向きの日常の漢語。厳密に中学校と 高等学校に限定してそこに通学する少年少女をさす場合は 専門語。〈一会〉〈女子〉〈ーを引率する〉〈先生と〉 木山捷平の『初恋』に「五百のーが一様に、秋風になびく尾 花のように腰をかがめて頭を垂れた」とある。「学生」が 「社会人」に対立する概念で用いられるのに対して、「生徒」 は「先生」に対する概念。児童・学生 せいど【制度】社会生活の維持や組織の運営などのきまりを さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈選挙ー〉へーを改 める〉平林たい子の『施療室にて』に「古い家族ーは去年 の雑草のように枯れている」とある。専規則・Q決まり せいとう【正当】正しく道理にかなっている意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈防衛〉〈な理由〉〈自 らの行動をー化する〉〈な行為と認める〉夏目漱石の 『草枕』に「の事情のもとに」とあるが、現在は「な」 の形が一般的。「不当」と対立。正確・正統・正しい・Q妥当・ まっとう せいとう【正統】正しい系統の意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い感じの漢語。〈派〉(を継ぐ)正しい 血統の意から抽象的な系統の意味に広がったが、その時代 や社会で権威をもつ標準的な存在という感じは残っている。 単正当 せいどう【聖堂】①聖人、特に孔子をまつった堂をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈湯島の—〉、ヲカテドラル・教 会・教会堂・Q大聖堂・チャペル・天主堂・礼拝堂 ②キリスト教の 教会堂をさし、主に文章に用いられる古風な漢語。〈—に信 徒が集う〉、ヲカテドラル・教会・Q教会堂・大聖堂・チャペル・天主 堂・礼拝堂 せいとく【生得】「持ち前」の意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。へーの権利〉へーのねばり強さ〉へーの ロ下手〉の「しょうとく」とも読む。有吉佐和子の「紀ノ 川」に「嫌味をいうのはーの性向」とある。卫生まれつき・生 <565> まれながら・Q親譲り・生来・持ち前 せいどく【精読】一字一句に注意しながら細かいところまで 詳しく読む意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈西洋の 古典を—する〉細部まで注意深く調べながら読む点に中 心がある。単Q熟読・味読 せいとん【整頓】散らかっているものを片付け、乱れている ものを整える意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。 〈日ごろから整理ーを心掛ける〉〈身のまわりをーする〉 「整理」と違い、もっぱら具体物に用いる。整理 せいねん【青年】青春期にある人をさし、会話でも文章でも 使われる、少し硬めの漢語。〈一期〉〈好〉〈一特有の心 理〉へいいに育つ〉〈あのーはもう帰った〉川端康成の 東京の人』に「目の涼しい、小川の流れのような感じのー」 とある。男も女も含まれるが、男の連想が強い。Q若者 若人 せいねんき【青年期】心身の成熟する時期をさし、やや改ま った会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈ーを迎える〉 〈ー特有の感傷〉Q青春・若き日 せいのう【性能】機械や道具などの特性や能力をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈小型車のわりにーがよい〉 〈高ーを誇る〉〈一の点で問題が多い〉②その類全体の基本 的な働きを連想させる「機能」に対し、それ自体が他と比べ て持っている固有の能力を連想させる。井上靖の『氷壁』に 「登山家なら知っているナイロン・ザイルのー」とある。 Q機能・能力・働き せいはつ【整髪】伸びたり乱れたりした(主に男性の)髪の毛 せいぶっ を整える意で、やや改まった会話や文章に用いられるやや 専門的な漢語。「料」「剤」も散髪・Q調髪・理髪 せいひん【製品】製造した品物をさし、会話にも文章にも使 われる漢語。〈紙—〉〈—の抜き打ち検査〉〈—を出荷する〉 林芙美子の『耳輪のついた馬』に「粗—が(略)洪水の如 く、市場へ流れて行くのだ」とある。品物・Q物品 せいふ【政府】国の統治機関をさし、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる漢語。〈一筋〉〈一当局〉〈一の方 針〉〈小さな一〉国木田独歩の『牛肉と馬鈴薯』に「鋼鉄 のようなー」とある。日本の場合は内閣およびその下にあ る行政機関全体。最広義には、行政のほか立法や司法の諸 機関をも含む総称ともなるが、一般的な認識としては国会 や裁判所を含まない。内閣 せいふく【制服】その組織や集団に所属している人が着用を 義務づけられている衣服をさし、会話にも文章にも使われ る漢語。〈制帽〉へ姿も凜々く〈社でを貸与す る〉詰襟の学生服やセーラー服、軍服や警察官の制服など の連想が強く、スポーツのユニフォームにはなじまない。 「私服」と対立。ひユニフォーム せいふく【征服】征伐して服従させる意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈隣接する小国を—する〉②「鎮圧」「平 定」と違い、別の統治権を有する他国に遠征して打ち破り 新たに自らの支配下に加える場合に使う。「山を—する」の ように、困難なことを成し遂げる意に用いることもある。 乃制圧・鎮圧・Q平定・抑圧・抑制 せいぶつ【生物】生命をもち成長し繁殖するものとしての動 <566> せいぶん 植物の総称で、いくぶん改まった会話や文章に用いられる 専門的な感じの漢語。〈学〉〈単細胞〉〈兵器〉〈水中 権名鱗三の『永遠なる序章』に「人間でない醜悪な の顔のように見えた」とある。井伏鱗二の『山椒魚』には 「初夏の水や温度は、岩屋の囚人達をして鉱物からに蘇ら せた」とある。これは山椒魚と蛙であるが、一般には、「生 きもの」と逆に、主として植物を連想しやすい。卫生き物 せいぶん【成分】物を構成する一つ一つの物質をさし、学術 的な会話や文章に用いられるやや専門的な漢語。〈主な」 〈温泉の」〈が検出される〉夏目漱石の『草枕』に 「色々な」を含んで居る」とある。刂因子・Q要素 せいへき【性癖】性質の偏りの意で、主に文章に用いる硬い 漢語。〈奇妙なーがある〉〈大言壮語のーが抜けない〉弾 せいぼ【生母】血のつながった母親の意で、主に文章中に用 いられる漢語。〈一の面影を残す〉「一の顔は覚えていな い」ほかに義母・養母・継母が存在する場合に限り、それ らに対して自分を生んでくれた産みの親であることを強調 して表現することば。専実母 せいぼ【歳暮】年末の意で文章に用いられる古めかしい漢語。 〈1の一日〉〈1の小遣いをもらう〉現代ではめったに用 いなくなり、「中元」と同様、主に「お」の形で、「1の挨 拶」としての贈り物をさすのが通例。この用法には特に古 い語感が伴わない。弔暮れ・Q歳末・年の暮れ・年の頻・年末 せいぼう【声望】その人の名声と人望の意で、主に文章中に 用いられる漢語。〈ーが高い〉高田保の『河童ひょうろ ん』に「大臣の権威が画伯のーに及ばなくなったのは愉快で ある」とある。♩人望 せいほうけい【正方形】辺の長さがすべて等しく四つの角が すべて直角である四辺形をさす漢語。会話的な「真四角」 の正式名称。〈一辺が五センチの—〉ひ真四角 せいみつ【精密】細部まで注意が行き渡り正確にできている 様子をさし、会話にも文章にも使われる漢語。「機械 〈一検查〉〈一に測定する〉厳密・細密・Q精巧・精緻・緻密・綿密せいめい【生命】「いのち」の意で、改まった会話や文章に用いる、正式な感じの客観的な漢語表現。〈一を救う〉〈一の危険に曝ぜされる〉〈一が危うい〉〈一を賭ふして事に当たる〉古井由吉の『影』に「人間のーは結局のところ、半浸透膜で外と隔てられた細胞のようなものである」とある。日常生活で「人の命を助ける」勇気ある行動も、それを報じる新聞では「ーを救助する」といった用語に変身する。保険の種類が「ー保険」であるのも、この語の正式な感じが、会社が責任を持って支払うような安心感を与える雰囲気をかもしだす。ちなみに、「命」ということばを使う」「生命」という語を用いる」のように、他の部分と文体的なレベルをそろえると表現としてしっくりはまって落ち着く。いのち せいめい【姓名】名字と名前の意で、主として文章に用いられる漢語。〈判断〉へを記載する〉の「氏名」に比べ、 「姓」と「名」との独立した感じが強い。Q氏名・名・名前 せいめい【声明】ある事柄に関する自らの立場や見解を社会 に対して公式に表明する意で、改まった会話や文章に用い られる正式で専門的な硬い漢語。〈文〉〈共同〉〈議長 <567> 「」〈抗議—〉〈ーを発表する〉特に政治や外交の場で行 われ、多く文書の形で発表される。Q宣言・宣告・宣誓 せいやく【制約】物事を制限したり条件を設けたりして自由 な活動を縛る意で、会話にも文章にも使われる漢語。いろ いろーがある〉へーを設ける〉へーを破る〉〈時間のーを受 ける〉ひ制限 せいよう【静養】心身を休養させ健康の回復を図る意で、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈中〉温泉でーす る)児保養・Q養生・療養 せいようせんたく【西洋洗濯】「クリーニング」の古めかしい 説明的な訳語。小津安二郎監督の映画『落第はしたけれ ど』(一九三○年)に「西洋洗濯」と書いたはっぴを着た男が 登場するが、箱には「クリーニング」と書いてあるから、こ の語形が当時でも口頭で実際に発音されたかどうかは明確 でない。クリーニング・洗濯 せいようりょうりてん【西洋料理店】「レストラン」の古風な 漢語の呼称。〈一の老舗〉「レストラン」より伝統のある 古風な店構えを想像させ、昔の味を守る腕のいいコックが いて、メニューも典型的な料理に限られているといった雰囲 気を感じさせる。ファミリーレストランなどは含まれない ような語感がある。ひカフェテリア・食堂・洋食屋・Qレストラン せいよく【性欲】異性に対する性的な欲望をさし、会話でも 文章でも幅広く使われる漢語。「がさかんだ〉へ「のとり こになる〉森鷗外の『キタ・セクスアリス』に「の獣は 眠っている」とある。意味の共通部分をもつ「愛欲」「情 欲」「色欲」より少し露骨だが、この語は客観的・学術的な せいり 雰囲気を有し、「淫欲」「肉欲」「獣欲」に比べると厭らし さは少ない。「欲」と結びつくもう一つの漢字のイメージの 差による面もあるだろう。夢欲・淫欲・Q色欲・獣欲・情欲・肉 欲 せいらい【生来】生まれつきの意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い感じの漢語。〈ーの怠け者〉へーの柔軟な 体〉へーの鋭い音感〉②徳田秋声の『縮図』に「ーぷ」切ら 棒な銀子は、別に返辞もしなかったが」とある。「ー正直一 途の生活をしてきた」のように、生まれてからこの方とい う意味にも使われる。Q生まれつき・生まれながら せいり【生理】「月経」の意の最も一般的な漢語の間接表現。〈日〉〈痛〉〈が始まる〉人前で口にしにくいこの現象については昔からさまざまな婉曲表現が試みられてきたがこの語はそれによって伝えたい実際の対象よりもはるかに広い意味を指示することばに置き換えてそこから推測させる手段による間接化。半世紀前からこのような用法が行われていたが、当時は今日ほど普及しておらず、すんなり理解されないケースもあったようである。「生理」という語は本来、生物が生きてゆく上でのもろもの現象や機能を広くさすことができるため、まるで点をさすのに面を示したような表現であり、もしも将来この語が使い古されて意味と直結し、ぼかしの効果を果たさなくなれば、同じく意味範囲を拡大して婉曲にするには「現象」ぐらいに広げざるを得ず、正確な伝達が困難になるかもしれない。 Q月経・メンス せいり【整理】乱れているものを秩序正しく並べ直して整然 <568> せいりっ とする意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な漢語。〈区画—〉〈残務—〉〈資料を—す る〉〈机の上を—する〉②「頭を—する」「問題を—する」 のように抽象的な対象にも用いる。「人員—」のように、余 分で不必要なものを処分する意でも使う。啓増 せいりつ【成立】交渉の結果、条件などが合意に達し物事が まとまって実現したり、論理が通ったり、約束などが正式に 効力を発したりする意で、改まった会話や文章に用いられ る漢語。〈委員会がーする〉〈予算案がーする〉〈商談がー する〉〈和解がーする〉〈条約のーに向けて動き出す〉②大 岡昇平の『俘虜記』に「明らかに「殺されるよりは」という 前提は私が確実に死ぬならばーしない」とある。成り立つ せいりよく【勢力】他と対抗したり他に影響を与える力をさ し、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一範 囲〉〈反対ー〉〈一大ーを誇る〉〈一を伸ばす〉②有島武郎の 『或る女』に「野火のような勢いで全国に拡がり始めた赤十 字社のー」とある。勢い せいれん【清廉】私利私欲がなく心が清い意で、主として文 章中に用いられる古風で硬い漢語。〈|潔白〉里見槻の 『多情仏心』に「剛直の操行にかけては」とある。ふ潔い Q高潔・廉潔 せいれん【精練】天然繊維から不純な混じり物を取り除く意 で、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。人生糸 をーする)「よくーされた部隊」のように「鍛え上げる」 意で比喩的に使う場合は「精錬」とも書く。Q精錬・製錬 せいれん【精錬】鉱石に含まれている金属を分離・抽出する意 で、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈所〉〈粗銅を—する〉、精練・Q製錬 せいれん【製錬】鉱石から金属を精錬し、さらに精製して地 金にする工程をさし、改まった会話や文章に用いられる専 門的な漢語。〈所〉精練・Q精錬 セーター毛糸などで編んだ上着の総称として、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の外来語。へとっく り襟のー〉へーを編む〉へー姿で散歩に出る〉回カーディガ ンを含む場合もあるが、通常は頭からかぶる形のものをさ す。ひカーディガン セーフ危機を脱する、無事に切り抜ける意で、主としてく だけた会話で使われる俗っぽい外来語。〈遅刻寸前でなんと かーになる〉〈終電にぎりぎりーだった〉球技、特に野球 の用語の拡大用法として、「危うく助かる」「予定の時刻に 間に合う」といった意味合いでも使われる。必ずしも試合 の場面を連想しないまでに比喩性が薄れている。「アウト」 と対立。 セーラー船員、特に水兵の意で、主に会話に使われた古風 な外来語。「姿にあこがれる」「服」などに名残をと どめているだけで、今はめったに使わない。海員・クル! 水夫・Q船員・乗組員・船乗り・マドロス セール「パーゲン」の意で、会話にも文章にも使われる外来 語。〈一の品〉〈一に出す〉〈冬物の一〉四パーゲンセー ル」の形で使うこともあるが、現在は日常一般にこの省略 形をよく使う。Q売り出し・叩き売り・ダンピング・特売・投げ 売り・バーゲン・安売り・廉売 <569> セールスポイント宣伝として売り込むのに有効な特長をき す和製英語。〈商品のーを繰り返し説明する〉英語の「セ リングポイント」は外来語になりきれていない。 セールひん【セール品】売り出しの日に特別価格で提供する 品物をさす語。「だが、ものはいい」「値下げ品」の一 種であるが、保存が利かないというよりも、季節はずれや 流行おくれなどの理由で値引きした衣料品などの連想が強 い。仏値下げ品 せおう【背負う】背中に載せて持つ意で、やや改まった会話 や文章に用いられる和語。〈荷物を—〉〈重そうなリック を—〉の壺井栄の『二十四の瞳』に「古い家に生まれた富士 子は、いかにもその家柄をーったように落ちつきはらっ て」とあり、「一家を—」「重い責任を—」のように抽象的 な意味の場合は通常この語を用いるが、「将来の日本をしょ って立つ若者」のような「しょって立つ」の形では逆に「世 おって」となるケースはまれである。専負う・おぶう・おんぶ・ Qしょう せおよぎ【背泳き】あお向けになって腕を交互に回転させ、 ばた足で進む泳法をさし、会話でも文章でも広く使われる、 類語中最もわかりやすく平たい感じの和語。「はちょっと 自信がある」とQ背泳バック② せかい【世界】①地球に住む人類全体の社会をさして、会話 にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈一の平和〉〈一 の国々〉〈一の動き〉〈一を旅する〉③三島由紀夫の『金閣 寺』に「一は墓石のように動かない」とある。②職 業などの共通する特殊な人間の集まりをさして、会話にも せがれ 文章にも使われる漢語。〈狭いーで活動する〉(スポーツの ー〉〈自分のーに閉じこもる〉②「社会」と共通する意味合 いが多いが、「自分のーに閉じこもる」のように、世間との 交流のない場合や、「学問のー」「勝負のー」のように厳し い意味合いで使う場合は、いずれも友好的な「社会」と換言 できない。ひQ社会・世間・世の中 せかせか気が急いて行動が落ち着かない意で、あまり改ま らない会話に使われる和語。〈—歩く〉〈—話す〉みあたふ た・Qそそくさ・そわそわ せかっこう【背恰(格)好】身長や肥満の度合いの大体の印象 をさして、会話にも文章にも使われる古風な表現。くすらり としたの紳士〉へーがよく似ている)健康状態などは特 に意識されない。身体つき・図体・Q体格・体軀・なり・身なり ぜがひでも【是が非でも】「是非」の強調として、やや改まっ た会話や文章に用いられる、やや古風な表現。勝ちた い)「全うすべく日々努力を怠らない)是非・Q是非とも せがむ親しい目上の人に物や行為を無理に頼む意で、主に 会話に使われる和語。く子供にー・まれる)「おやつをー) 「ねだる」より無理強いしている感じが強いが、「せびる」 のような悪のイメージはない。Qせびる・ねだる せがれ【価(悴)】親から見た男の子供をさし、会話や軽い文 章に使われる古風な和語。〈一に跡を継がせる〉〈一に嫁を もらう〉〈隣の家の一〉の「息子」より古く、へりくだった 感じもあり、他人の子について使うと軽く見ている感じに 響く。夏目漱石の『坊っちゃん』に「此質屋に勘太郎とい う十三四の一が居た」とある。専子息・息子 <570> せき せき【咳】咽喉競や器官が刺激されて肺の空気が急激に吐き 出される生理現象をさし、会話にも文章にも使われる日常 の和語。〈空ー〉〈ーをする〉〈ーが出る〉喚頭結核を病む 尾崎放哉は「ーをしても一人」という自由律俳句で、咳の直 後に襲う激しい孤独感を訴えた。ひしわぶき せき【席】座ったり腰掛けたりするための場所をきし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ーを予約する〉〈ーが空く〉 〈ーを譲る〉〈ーに着く〉〈ーを立つ〉〈ーを外す〉夏目漱 石の『坊っちゃん』に「校長の隣りに赤シャツが構える。あ とは勝手次第にーに着く」とある。椅子などの具体的な物 を連想させる「座席」に比べ、腰を落ち着けるべき場所に重 点があり、和室でも違和感がない。座席 せき【隻】大きな船を数えるときの単位として、会話にも文 章にも使われる漢語。〈数—のタンカー〉乃艘 せき【籍】戸籍や学籍など、一定の集団や組織の一員である という正式の資格をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈ーを入れる〉〈ーを置く〉〈ーを抜く〉②富岡多恵子の『立 切れ』に「所帯はもったが、世間並みにーをひとつにするよ うなことはしていない」とある。夢所属 せきこむ【咳き込む】続けざまに咳をする意で、会話にも文 章にも使われる日常の和語。〈喘息でー〉〈激しくー〉噂 せる・咽 せきさい【積載】貨物などを運送するために車輛や船舶に積 み込む意で、主として文章に用いられる専門的な硬い漢語。 〈最大量〉〈トラックにーして輸送する〉個人の日常生 活での積み込み作業については大仰過ぎてなじまない。 積み込む・積む・Q搭載・載せる せきじつ【昔日】遠く過ぎ去った日々をさし、主に文章中に 用いられる漢語。「一面影は薄れた〉への繁栄の跡が偲 ばれる)谷崎潤一郎の『細雪』に「さすがに」の威勢はな くとる、旧い家柄を誇る一家が故郷の土地を引き払うだけ のものはあった」とある。「往年」のような最盛期だけでな く漠然としたひろがりをさし、その頃を懐かしく思い出し て美化した感じがある。ひいにしえ・往時・往年・Q昔 せきずい【脊簡】脊柱の中を縦に走る中枢神経をさし、会話 にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈移植〉へ に達する〉菅柱・Q菅椎・背骨 せきちゅう【脊柱】「背骨」の意で、学術的な会話や文章に用 いられる専門的な漢語。「湾曲」脅髓・Q脊椎・背骨 せきつい【脊椎】脊柱を形成している個々の骨をさし、会話 にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈カリエス〉 〈分離症〉、脅脇・Q脊柱・背骨 せきとり【関取】十両以上の大相撲 力士をさす敬称とし て、会話にも文章にも使われる、やや専門的な和語。へーの 座を射止める)専相撲取り・Q力士 せきにん【責任】引き受けなければならない任務や、結果に 関して負うべき義務をさし、会話にも文章にも使われる漢 語。〈連帯—〉〈—逃れ〉〈—ある立場〉〈—重大だ〉〈重い ーを負う〉〈ーを果たす〉〈親に—がかかる〉〈ーをなすり つける〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「真相を極めるとー は却って学校にあるかも知れない」とある。「義務」と対立。 専責務 <571> せきねん【積年】積もり積もった長い年月の意で、主に文章 中に用いられる、やや古風な硬い漢語。へーの夢がついにか なう〉へーの恨みを晴らす》②「永年」のように全体として とらえるのではなく、一年ずつ積み重ねてきたという重み を感じさせる。ひQえいねん・多年・ながねん せきばく【寂寞】音もなく物淋しい感じをさし、文章中に用 いられる硬い漢語。〈冬の日の|たる風景〉〈鐘の音があた りの|を破る〉佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「年をとっ て、ひどく人生の|を感じ出した」とある。「じゃくまく」 とも読む。専哀愁・憂い・愁い・寂しい・Q寂寥・物悲しい・憂愁 せきむ【責務】自らの責任で果たさなければいけない務めを さし、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「を果 たす〉〈|を履行する〉〈自分の|を遂行する〉有吉佐和 子の『紀ノ川』に「その|を立派に果たしている」とある。 専義務・責任・務め・Q任務 せきよう【夕陽】「夕日」の意で、硬い文章で用いられる古風 で美的な漢文調の漢語。〈湖面に照り映える—の美〉島崎 藤村の『桜の実の熟する時』に「—の美は生れて初めて彼の 眼に映じた」とある。入り日・Q斜陽・西日・夕日・落日・落陽 せきりよう【寂寥】ひっそりと物淋しくどこか満たされない 感じをさし、文章中に用いられる硬い漢語。〈はてしない— 感〉〈—たる原野〉中山義秀の『テニヤンの末日』に「骨 にくいこむような—にじっとしていられなかった」とある。 呂哀愁・憂い・愁い・寂しい・寂寞物悲しい・Q憂愁 せく【急く】時間に追われて早くしなければという気持ちが 強く、追い立てられたように平静さを失う意で、会話やさ せこい ほど硬くない文章に使われるやや古風な和語。予定時刻を 過ぎて気がー)「ーいては事を仕損じる)夏目漱石の 「坊っちゃん」に「気はーが、足丈は云う事を利かない」と ある。「あせる」と比べ、時間に追われる感じが強い。 る・急ぐ せけん【世間】その人間の活動範囲や自分の生活に関係の深 い人々の総体を漠然ときして、会話やさほど硬くない文章 に使われる、いくらか古風な漢語。〈ー話〉〈ー知らず〉〈ー の噂〉〈ーの風が冷たい〉〈渡るーに鬼は無い〉〈ーは広い ようで狭い〉安部公房の『他人の顔』に「ーは、淡い顔料 で画いたガラス絵のように隙間だらけになる」とある。「世 の中」よりも範囲が狭い。また、「ーに顔向けができない」 「ーの目がうるさい」などと言うように、「世の中」以上に 社会組織というよりそこに住む人間を意識した表現。ひQ 社会・世界②・世の中 せけんずれ【世間擦れ】実社会での生活体験が豊富で初々し い感じを失っている意で、会話にも文章にも使われる表現。 まだーしていない純真な青年〉〈年齢のわりに妙にーした ところがある〉多く若者について使われ、「世慣れる」よ りは悪いニュアンスを伴うが、「擦れ枯らし」ほどのマイナ スイメージはない。Q擦れ枯らし、世慣れる・老猶 せけんてい【世間体】世間に対する面目・体裁の意で、会話に も文章にも使われる古風な漢語。〈ーをつくろう〉へーが悪 い〉み外聞・体面・Q体裁・人聞き せこい比較的最近になって「けちくさい」意で使われだし た新しい俗語。〈やり方がー〉へ「考え」回「下手だ」という <572> せこう 意味では明治時代の芸人の俗語にあり、「芸が」のように 用いたという。「みみっちい」という意味合いで使うのは近 年の新しい俗語。ひQけち・けちくさい・しみったれ・しみったれ る・みみっちい せこう【施行】↓しこう せこう【施工】「しこう」の慣用読み。〈主〉単施行・Q施 工・執行・実行・実施・施行・履行 七コハン「中古」の意で、くだけた会話で使われる、俗語に 近い古い感じのことば。〈ーで安く手に入れる〉②外来語 「セカンドハンド」の短縮形。「中古」が新品でないという 点に意識の中心があるのに対し、この語は一度だれかが使 った品物である点に中心がある。なお、発売されてある期 間経過したが未使用同然の車という意味合いで「新古車」と いう表示を目にすることもある。Qちゅうこ・ちゅうぶる せしめる相手の油断に付け込んだり、うまく立ち回ったり して、他人の金品を自分のものにする意で、くだけた会話 に使われる俗っぽい和語。〈まんまとー〉〈相手をうまく騙 して金をー〉②「巻き上げる」が奪うイメージが強いのに対 して、この語は手に入れる段階に焦点があるように感じら れる。ひひったくる・ふんだくる・分捕る・Q巻き上げる せん世人世間の一般の人をさし、主として文章に用いられる漢語。〈ーが注目する〉〈ーに好評を博する〉一般には世間の人びとをさすに過ぎないが、「川端康成の小説の冷い理智とか美しい抒情とか言う様な事をーは好んで口にするが、「化かされた阿呆」である」というふうに、ひとたび批評家の小林秀雄の文章に使われると、それはとたん にこれから挑みかかる対象としての凡俗の常識人という 雰囲気に一変する。これも個人的な語感の一例である。 ゼスチュア「ジェスチャー」の古い形。「ーで何とか通じる 「ーを交えて話す」Qジェスチャー・しぐさ・手真似・身振り せい【是正】問題のある箇所を正しく改める意で、主とし て文章に用いられる硬い漢語。〈法の不備をーする〉〈不公 正な部分をーする〉Q改正・改定・改訂・訂正・批正・補正 せせこましい狭くてゆとりのない意の和語で、やや会話的 〈一町〉〈一部屋〉芥川龍之介の『秋』に「隣近所には、い ずれる借家らしい新築が、ーく軒を並べていた」とある。 単に「狭い」だけでなく、そのために窮屈な思いをするとい った不快感を伴う。狭隘・狭い・Q手狭 せせらぎ【細流】さらさら音を立てる浅い流れをさし、会話 にも文章にも使われる、いくぶん趣のある和語。へーをまた ぐ〉へーの音が聞こえる)②「渓流」や「谷川」より細い流 れを連想させる。川の浅瀬で音を立てる部分をさすことも あり、「小川のーが耳を楽しませる」のように音自体をさす こともある。大岡昇平の『武蔵野夫人』にも「地下水が這い 出るように湧き、すぐーを立てる流れとなって落ちて行く」 とある。渓流・谷川 せせらわらう【せせら笑う】相手を小ばかにして笑う意で、 会話や改まらない文章に使われる和語。〈お前なんかには 無理だとー〉②「あざ笑う」が攻撃的な笑いなのに対し、こ の語は相手の能力の低さなどをばかにする感じが強い。 Qあざ笑う・嘲笑・冷笑 せたい【世帯】主として改まった文章に用いられる正式な感 <573> じの漢語。「数」(一—あたり)「主」「構成」②日常 生活で使われる「所帯」に比べ、戸籍など公の場で用いられ る。刂所帯 せだい【世代】年齢の近い人々の集合をさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈ー交代〉〈次のー〉〈若いー〉〈間の 断絶〉〈戦争を知らないー〉「二ー住宅」のように、親・ 子・孫と続くそれぞれの代をさす用法もある。専時代・Q年代 せたけ【背丈】身長の意で、会話や硬くない文章に使われる、 やや古風な和語。〈ーを測る〉〈ーが伸びる〉林芙美子の 『放浪記』に「ーが十五六の子供のようにひくくて」とある。 専上背・身長・Q背②・身の丈 せつ【説】ある件に関する意見・考え・主張をさし、いくぶん 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈新しいーを発表す る〉〈学者の間でもーが分かれる〉〈経済学者のーによる と〉小沼丹の『片片草』に「シェイクスピアは実在しなか ったと云うーのあることも知って頗る満足した」とある。 少Q意見・主張 ぜつえん【絶縁】縁を切って互いの関係を消滅させる意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや古風な感じの漢語。 〈親戚とー状態にある〉へー状をたたきつける)志賀直哉 の『雨蛙』に「腹を立て、家とーし、A市で女と水菓子屋を 開き、それで自活する事にした」とある。多く知人・友人と の関係について使う「絶交」と違い、この語は夫婦や家族・ 親戚などとの関係に用いる傾向がある。なお、「一体」のよ うに、電気の伝導を断ち切る意にも使う。Q絶交・断交 せっかい【切開】治療の目的で患部の皮膚・組織・器官を切り せっきん 開くことをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈手術〉〈帝王〉〈患部をーする〉手術の一部であるが、「して膿を出す」のように「手術」という語に比べ深刻な感じが薄い。手術 せっかち気が短くて先を急ぎ落ち着かない性格をさして、 会話や軽い文章に使われる和語。人生まれつきな性分 「だから今すぐやりたがる」夏目漱石の『坊っちゃん』 に「おれと同様に」で肝癩持らしい」とある。Q気短・性 急・短気 せっき【節季】盆と暮れ、特に年末の意で、主に文章に用い られる古めかしい漢語。〈—払い〉〈—大売出し〉の「季」は 末の意で昔の大きな決算期に当たる。飾気 せっき【節気】一年を立春・春分・立夏・夏至・立秋・秋分・冬至・ 大寒などの二十四に区分して季節の変わり目の目安にした もの。会話でも文章でも使われる古風で専門的な漢語。 二十四ー〉〈大暑は夏の最後のーに当たる〉四二十四気 ともいう。四節季 せっきょう【絶叫】恐怖や驚きに興奮して思わず声を限りに 叫ぶ意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。「調の スポーツ放送〉へあらん限りの声でーする)④太宰治の「富 嶽百景』に「かん高い声で或る朝、茶店の外で、娘さんがー したので、私は、しぶしぶ起きて」とある。宮本百合子の 『伸子』には「上気ぬせあがり、舌のひりついたツプラノで刺 すようにーした」とある。金切り声・叫び・叫び声・Q悲鳴 せっきん【接近】近づいて距離や差のない状態になる意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈異常—〉〈台風が—す <574> セックス る〈船舶が—する〉〈両者の実力が—している〉回状態的 な「近接」と違い、動きに重点を置く例が多い。近接 セックス感情的なニュアンスを排除するために外国語を借 りて「性交」を意味することのある俗っぽい表現。「シー ン」へ「の経験」②村上春樹の「回転木馬のデッド・ヒート」 に「ある種の好意と好意(略)が出会えば(略)自然発火のごと くにーが生じる」とある。卑猥いな語感を消すために多義 的な外国語を利用したもの。原語には「性欲」の意味はあ るが、行為そのものをさす用法があるかは疑問。軽い感じ で便利なために「の回数」「レスの夫婦」などと多用さ れすぎて、今ではむしろ間接性が薄れている。専営み・エッ チ・関係②・合飲・交合・交接・情交・情を通じる・Q性交・性行為・性交 渉・性的行為・抱く②・契る・同衾・共寝・寝る②・懇ろになる・ファッ ク・深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 せっけい【設計】製作や工事に取り掛かる前に材料や費用な どを見積もり、その全体像や構造を図面に示すことをさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一図〉〈一ミス〉〈建築 ー事務所〉〈タワーの一〉の「人生ー」「生活ー」のように、 大体の計画をさす比喩的用法もある。込計画・Qデザイン せっけん【石幠】水に溶けやすく泡の出る固形石幠をさし、 会話でも文章でも幅広く使われる日常漢語。〈洗顔用の一〉 〈一をつけてごしごしこする〉のシャボン せつげん【節減】金銭や物品の使用量を節約して減らす意で、 主に文章に用いられる硬い漢語。〈労力を—する〉〈交際費 を—する〉刂軽減・Q削減・低減・遞減 せっけんか【節倹家】「倹約家」の意のやや古風で高級な文章 語。〈ーとして知られる〉頬義語の中で非難めいたニュア ンスが最も少ない。けちけちん坊・Q倹約家・渋い・渋ちん・締 まり屋・しみったれ・しわい・みみっちい・吝嗇家 ぜっこう【絶交】喧嘩状態になって互いに交際を絶つ意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈友達とーする〉〈ー状態 に入る〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「山嵐とおれがーの 姿となったに引き易えて、赤シャツとおれは依然として在 来の関係を保って」とある。知人や友人との関係に用い、夫 婦や家族・親類との間には「絶縁」を用いる傾向がある。 Q絶縁・断交 ぜっこうちょう【絶好調】期待できる最高の調子をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈商売は目下ー〉〈練習では だ〉の好調」の幅のうち最高の段階をさすが、長続きし ない感じもつきまとう。快調・好調・Q順調 せっしゅう【接收】公的権力によって個人の財産を強制的に 取り上げる意で、改まった会話や文章に用いられる法的な 専門漢語。〈建物がーを免れる〉〈国にーされる〉Q押収・ 没収・召し上げる せっしょう【殺生】生き物を殺す意の仏教語。古めかしく抹 香くささを感じさせる漢語。〈—禁断〉夏目漱石の『坊っ ちゃん』に「不人情でなくって、ーをして喜ぶ訳がない」と ある。ひ殺す せっしょう【折衝】利害の対立する相手側との交渉にあたり 具体的にさまざまな駆け引きをする意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈外交—〉〈政治—〉〈ーを重 ねる〉の各レベルで起こる「交渉」に比べ、個人的な関係よ <575> り団体・役所・会社・国家などの間で行われる雰囲気がある。 ひ交渉 せっしょく【接触】人や物がじかに触れ合う意の漢語で、「触 れる」より少し改まった感じの日常的な漢語表現。「不 良《車の事故》「しない程度に近づける》〈外部との を図る》永井龍男の「胡桃割り」に「病人とのーを制 限」とあり、堀辰雄の『菜穂子』に「未知の世界との最初の 」とあるように抽象的な用法もある。込触る・Q触れる せっせい【節制】控えめにする意で、やや改まった会話や文 章に使われる漢語。〈飲酒を—する〉乃摂生 せっせい【摂生】健康を考えて生活を慎む意で、やや改まっ た会話や文章に使われる漢語。〈一に努める〉(日ごろの不 ーがたたる)時に含みとして飲食や性欲を節制するニ アンスがある。単節制 せっせと休まず精を出して励む様子をさし、会話や硬くな い文章に使われる表現。〈卜働く〉〈稼ぐ〉の「こつこつ と」より忙しく立ち働いている感じが強く、夏目漱石は『草 枕』で雲雀の鳴き方を「ー忙しく、絶間なく鳴いて居る」 と書いた。弔齟齬・営々・Qこつこつと・着々と せっそう【節操】主義・主張や信念などを安易に変えず、それ を一貫して守る意で、やや改まった会話や文章に用いられ る漢語。「のないふるまい」(ーを重んじる)「を貫く 「を曲げる」②道德的な「操」に比べ、この語は各自の職 業や地位によってこうあるべきだと社会的に期待されてい る姿を基準にする感じがある。呂貞操・Q操 せつぞく【接続】①ものがつながる意で、会話にも文章にも せっだん 使われる漢語。電源とする〈途中で特急にする〉 列車の—がうまく行かない》「連絡」より直接的なつな がりを感じさせ、乗り換えの場合では待ち時間が短いとい うイメージが強い。連絡②接続助詞で主節と従属節と を結びつけたり、接続詞で文と文とを関連づけたりするこ とをさし、会話にも文章にも使われる専門的な感じの漢語。 〈動詞の未然形に—する〉〈先行文と後続文とを—する〉 連接 せったい【接待】客をもてなす意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈ー費〉〈ー係〉〈ーゴルフ〉〈得意先をーする〉 〈取引先の会社のーを受ける〉応対より響応 1ジが濃い。専応対 ぜったいに【絶対に】必ず、間違いなく確実に、の意で、会 話にも文章にも使われる表現。「勝つ〉へー遅刻するな へー諦めない〉へー他人に言ってはいけない〉の井伏鱒二の 『山椒魚』に「徹は何と愚かな習性を持っていたことである う。常に消えたり生えたりして、—繁殖して行こうとする 意志はないかのようであった」とある。発言者の強い意志 の感じられる語。「絶対」以上に強い。必ず・きっと・決して・ Q断じて せつだん【切(截)断】物を断ち切る意で、いくぶん改まった 会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈一面〉〈針金を ーする〉〈片脚をーする大怪我〉②「切る」より大仰な感じ が強く、小枝の先や大根などを切るときにはなじまない。 谷崎潤一郎の『細雪』に「自分の脚がーされることに関して 議が凝らされている」とある。Q切る・絶つ・断つ・ちょん切る <576> せっち せっち【設置】ある目的のもとに組織や施設などを設ける意 で、やや改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢 語。〈一規準〉〈新しい窓口を—する〉〈対策本部を—する〉 の「開設」「設立」と違って公衆電話や自動販売機などの機 械類にも使うが、灰皿や屑籠のような小さな物品にはな じまない。ひ開設・Q設立 せっちゃく【接着】物と物とを離れないようにくっつける意 で、会話にも文章にも使われる漢語。二枚の板をー剤で張 り合わせる)「接着剤」以外の用法はやや専門的。くっ つく・張り付く・引っ付く・Q付着 ぜっちょう【絶頂】物事の最高の状態をさし、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈得意の—〉今や人気の—にあ る〉へーを極める〉客観的な感じの「頂点」に比べ、主観 的で強調された感じが強い。永井荷風の『瀅東綺譚』に「小 道も呉服屋のあるあたりを明いーにして、それから先は」 とある。ひQ頂点・頂上 せっちん【雪隠】「便所」の意の古い呼称。会話・文章ともに 現代ではめったに使われない。〈大工〉〈詰め〉便所 掃除を担当した中国の禅師の名の一字「雪」と、その寺の名 の一字「隠」とを組み合わせた「セツイン」からの音転という 判じ物めいて周囲の人間には何のことかわからながっ ただろうから、最初のうちは隠語のような働きをしたと考 えられる。おトイレ・剛・閑所・化粧室・御不浄・洗面所・WC・ 手水場・手洗い・トイレ・トイレット・はばかり・Q便所・レストルーム せってい【設定】一定の目的に合わせて物事をあらかじめ定 めておく意で、いくぶん改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈状況—〉〈初期—〉〈温度〉〈抵当権を—する〉 〈トップ会談を—する〉 〈決める・Q定める・指定・制定 せっとう【窃盗】他人の物を盗む意で、改まった会話や文章 で用いられる、専門的で硬い漢語。〈犯〉への容疑で逮 捕する〉谷崎潤一郎の愛すればこそに「罪の方も成 り立つ」とある。行為だけをさし、人をささない。賊盗 賊・泥棒・ぬすっと・ぬすびと・Q物盗り せっとく【説得】自分の目指す方向に向かって効果的に説明 して相手を納得させる意で、会話にも文章にも使われる漢 語。〜力がある〜〜に応じる〜〜両親をーして婚約にこ ぎつける〜ひ説き伏せる せつない【切ない】悲しみ・寂しさ・恋しさなどによる胸が締 め付けられるように苦しくやりきれない思いをさし、会話 にも文章にも使われる表現。へ胸のうちへ思いが募 る堀辰雄の『美しい村』に病院の裏側の野薔薇の生 墻のことを何かーような気持になって思い出していた」 とある。ひやりきれない・Qやるせない せっぱく【切迫】時間的・財政的などの面で余裕がなくなって いる意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈期 日がーする〉〈財政状態がーする〉急迫・Q緊迫 せつび【設備】一定の目的や用途に応じるために必要だとし て設ける器具や機械類、時にはそれ専用の建物などをさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一投資〉〈冷暖房の一〉 〈防音の一がしっかりしている〉〈各種の一がそろっている〉 図官公庁や企業などが主たる建造物とは別に、何かのため に特別設けて、本体であるその機関に付属させる場合は、 <577> 独立した一つの建物をさすこともあるが、「施設」と違い、 一般には屋内に備え付けるものをさす。施設 ぜっぷん【接吻】親愛の表現として相手の手の甲や頬などに 唇を接触させる行為、特に相手の唇を吸う愛情表現をさす 「キス」の古めかしい漢語表現。〈濃厚な—〉の以前はふつ うに用いられたが、現在では「キス」や「ロゴけ」より重い 感じがある。高田保の「接吻考」に「セップンという語呂だ が、これは何としても生硬で滑らかな感じが出ない」とあ る。ひキス・キッス・ロロい・ロゴけ・こうし ぜっぺき【絶壁】「断崖」の意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈断崖—〉へーをよじ登る〉②見下ろす感じの 「断崖」に比べ、見上げるような連想が働きやすい。単崖・Q 断崖 ぜつぼう【絶望】望みが完全に絶たれることをさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈再建はほとんどー的だ〉〈将来 にーする〉へーの淵に沈む〉梅崎春生の『桜島』に「いわ ば、頭をかきむしるようなーの気持」とある。単失望 せつめい【説明】どのようなものか、どう扱うべきか、なぜ そうするのかといった事柄についてわかりやすく述べる意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な漢語。〈取り扱いー書〉〈丁寧にーする〉へーを求 める〉へーになっていない〉〈ーに窮する〉葉山嘉樹の 『海に生くる人々』に「彼のーは按摩のように人を柔らかに し」とある。「事実のーに徹する」のように、「解説」ほど踏 み込まず客観的な印象がある。単解説 ぜつめつ【絶滅】次第に減ってついにこの世界に存在しなく せともの なる意で、会話にも文章にも使われる漢語。「寸前の品 種〉(この言語は話し手が激減し、今やーの危機に瀕んで いる)動植物などの品種について使う例が多いが、病気 や凶悪犯罪や詐欺事件などについても「をめざす」のよ うに用いる例もある。壊滅・全滅・Q撲滅 せつやく【節約】無駄を切り詰める意で、会話にも文章にも 広く使われる漢語。〈水を—する〉〈時間の—になる〉〈費 用を—する〉〈こまめに灯を消して電気代の—に努める〉 〈エネルギーの—に役立つ〉②主に金銭面に使う「倹約」と 比べ、それ以外にも幅広い無駄に対して使う。広切り詰める Q倹約 せつりっ【設立】施設や機関を設ける意で、改まった会話や 文章に用いられるやや硬い漢語。〈資金〉への趣意書〉 〈協会のーに力を尽くす〉〈会社をーする〉の開設より規 模の大きなものを連想しやすい。刂開設・新設・Q創設・創立 せつれつ【拙劣】技術的に未熟で劣っている意で、主に文章 中に用いられる硬い漢語。〈表現がーで読むに堪えない〉 〈技術はーをきわめる〉の「巧妙」と対立。雅拙・Qったな い・た・まずい・未熟 せともの【瀬戸物】陶磁器の意で、日常の会話や軽い文章に 使われる日常の和語。〈—の茶碗〉〈—のかけら〉愛知県 瀬戸市やその周辺で産する焼き物すなわち「瀬戸焼」が一 般化したもの。川端康成の『山の音』は「を洗う音で聞え ないようだった」という一文で結ばれる。夏目漱石の『坊っ ちゃん』には、「あのーはどこで出来るんだと博物の教師に 聞いたら、あれはーじゃありません、伊万里です」と言わ <578> せなか れ、「伊万里だってーじゃないか」と主張する場面がある。 乃かわらけ・磁器・陶器・Q陶磁器・土器・焼き物 せなか【背中】背の部分をさし、くだけた会話から文章まで 広く使われる日常の和語。〈ーをこする〉〈ーが丸くなる〉 円地文子の『老桜』に「黒い影絵のようなーがこんもり丸 い」とある。福原麟太郎の『泣き笑いの哲学』には「涙とー 合せになっている笑い」という比喻的な表現がある。ひQ背 ①・背部 ぜに【銭】小額の貨幣をさし、主として会話に使われる古風 な日常語。〈一勘定〉(小一を用意する)〈安物買いのー失 い)小津安二郎監督の映画『彼岸花』で、パーのスタンド に腰掛けた近藤(高橋貞二)は「安くても自分のーで飲む方 がうめえや」と言う。今はほとんどの人が「自分の金で飲 む」と言うので、この用語は相当古い感じに聞こえる。百 円以下のコインのイメージが強い。字音「セン」の音転とい う。おあし・Q金・貨幣・金子・金銭 ぜにん【是認】ある事柄を、そのとおりだ、または、いいこ とだとして認める意で、主に硬い文章に用いられる漢語。 〈相手の言い分を—する〉〈申し立てを—する〉専肯定・認め る ぜひ【是非】「必ず」に近い意で強い願いや決意を表し、くだ けた会話から文章まで幅広く使われる漢語。「御覧くだ さいへー一度行ってみたい」回「見るといい」のような 用法は古風に響く。ひ是が非でも・Q是非とも ぜひとも【是非とも】「是非」の強調表現として、会話にも文 章にも使われる。「一度お出かけください」「本日中 に〈皆さんのお力でー国政に送り出していただきたく) 是が非でも・是非 せひよう【世評】世間での評判の意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈—が高い〉〈—を気にかける〉 福原麟太郎の『志を立てること』に「ちか頃の学生は、散文 的だというのがーである」とある。「評判」以上に評価の面 が中心。専噂・Q評判 せびる関係者に金銭などを無理に要求する意で、主に会話 に使われる和語。〈金を—〉の「せがむ」や「ねだる」より も悪いイメージが強い。Qせがむ・ねだる せびろ【背広】男性用の平常の洋服をさし、会話でも文章でも幅広く使われる日常語。〈ー上下一式〉〈ー姿〉〈チャコールグレイのーを着込む〉柴田翔の『われら戦友たち』に「まるで鳥のように黒っぽいーばかり着たサラリーマンたち」とある。背幅が広いところからとも、市民服の意の「シヴィルクローズ」からとも、ロンドンの洋服商の多い街「サヴィルロウ」からとも諸説あり、語源も語種も未詳。本来は上着とズボン、または、それにチョッキを加えた三つ揃いをさすが、上着だけを言う場合もある。「スーツ」や「ジャケット」に比べるといくらか古い感じになりかけているように思われる。Qジャケット・スーツ せぼね【背骨】胴体の背中側の中央を縦に貫いている脊椎の 総称として、会話にも文章にも広く使われている日常の和 語。「が曲がっている」の島崎藤村の『新生』に「体縮み の跼った老婆」とある。ひ脊髄・脊柱・Q脊椎 せまい【狭い】幅・面積、視界、見識などの範囲が不十分でゆ <579> とりがない意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の基本的な和語。〈幅が—〉〈一道〉〈台所〉 〈視野が—〉〈料簡が—〉林芙美子の『めし』に「うなぎの 寝床のようにー家で」とある。「広い」と対立。Q狭隘 手狭 せまる【迫(逼)る】対象が近づいてそれとの時間や距離など の間隔が狭くなる意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈出発時刻が—〉〈締め切りが—〉〈敵が—・って来る〉〈必 要にー・られる〉田宮虎彦の『沖縄の手記から』に「上陸 作戦を企図したアメリカの機動艦隊が沖縄近海にー・って来 ていることは、もはや疑うことが出来なくなっていた」とあ る。急迫・Q切迫 せめて最小限の希望を述べるときに、会話にも文章にも使 われる和語。〈一もの慰め〉〈一もの罪滅ぼしに〉〈一この 程度は欲しい〉〈一あと十日あれば〉〈一日曜ぐらいはゆっ くりしたい〉〈一三部屋はほしい〉〈一この半分あれば〉 〈一見るだけでも〉客観的な感じの「少なくとも」に比べ、 気持ちが直接前面に出ている感じがあって主観的。それだ けにその希望が強く伝わりやすい。少最小限・最低限・Q少な くとも・少なくも せめる【攻める】攻撃する意で、ぐだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の和語。〈果敢に—〉〈弱点を—〉 ヘ一方的に—〉有島武郎の『生れ出ずる悩み』に「角立っ た波を挙げて、岸を目がけて終日ー・めよせている」という 比喻表現が出る。貴める せめる【責める】相手のおちどなどを非難する意で、会話で せりょう も文章でも使われる和語。〈非を—〉〈失敗を—〉林芙美 子の『浮雲』に「此の女は、何時まで昔の思い出を、金貸し のようにー・めたてるのだろう」とある。「攻める」に比べ、 主として言語による行動で精神的な攻撃の感じが強い。 攻める せりあい【競り合い】互いに負けまいとする激しい争いをさ し、会話にも文章にも使われる和語。〈終盤までーが続く〉 〈激しいーを演じる〉の「競争」のうちの激しいものを連想 させ、「ちょっとした競争になる」のような文脈にはこの語 はなじまない。また、五位争いよりも首位争いにぴったり の感じがある。永井龍男の『風ふたたび』の花火の場面に 「橋をはさんでの、最後のーが、再び始まっていたのだ」と ある。専競合・競争 せりあげる【迫り上げる】徐々に押し上げる、だんだん大きくする意で、会話でも文章でも使われる和語。〈舞台上に大道具を—〉〈次第に声を—〉ひ競り上げる せりあげる【競り上げる】競って値段を吊り上げる意で、会 話でも文章でも使われる、いくらか専門的な感じも漂う和 語。〈相場を—〉〈オークションで値段を—〉み迫り上げる せりうり【鏡り売り】多くの買い手に買い値を鏡わせ最高額 で売る売り方をさす和語。会話を中心に一般によく使われ ている日常的な表現。〈家具をーに出す〉Qオークション・ きょうばい・けいばい せりょう【施療】貧しい人を無料で治療する意で、会話や文 章にまれに使われる古めかしい漢語。〈ー患者〉〈ー院〉 平林たい子に『施療室にて』と題する短篇小説がある。 ひQ <580> ゼロ 加療·診療·治療·手当て·療治 七口「零」の意で会話や軽い文章に使われるフランス語からの外来語。〈ー歳児〉〈ーメートル地帯〉〈一対ーの息詰まる投手戦〉小沼丹の『懐中時計』に「が一つ、足りないんじゃないのかい?」「が一つ多過ぎるな」というやりとりが見られる。なお、「零」という漢字を当てることもあり、福永武彦の『草の花』に出る「僕の孤独と汐見さんの孤独と重ね合わせたところで(略)にを足すようなものじゃありませんか?」という比喻の例でも漢字表記になっている。耳で聞いて紛らわしくないので口頭表現ではむしろ「零」より多用される。また、「零」と違い、「絵の才能はだ」「運動神経はだ」のように、全然ない意の比喻的用法もある。 せろん【世論】「輿論」の言い換えとして主に文章に使われ る漢語。〈ーに耳を傾ける〉〈ーの動向に気を配る〉俗に 「輿論」の代用漢字としても使われる。込輿論 せわ【世話】あれこれ面倒を見る意で、会話にも文章にも使 われる日常の漢語。〈人〉〈好き〉〈犬のーをする〉〈ー をやく〉〈子供のーが大変だ〉〈親戚のーになる〉②夏目漱 石の『坊っちゃん』に「出立の日には朝から来て、色々ーを やいた」とある。太宰治の『富嶽百景』には「ただ富士山だ けを、レンズ一ぼいにキャッチして、富士山、さようなら、 おーになりました。パチリ」とある。「がやける」のよう に手数がかかる意でも、「大きなおーだ」のように余計な口 出しの意でも使う。Q面倒・厄介② せわがかり【世話係】ちょっとした集まりなどでこまごまと 面倒を見て進行を助ける役目をさして、会話や軽い文章に 使われる表現。〈茶話会の—〉〈—が会費を集める〉世 話人」「世話役」より軽い感じに使う。「兎の—」のように、 学校などで飼っている動物の世話をする係をさす用法もあ る。専幹事・世話人・Q世話役 せわしい【忙しい】忙がくて気が落ち着かない意で、会話 や軽い文章に使われる古風な和語。〈一年の暮れ〉〈毎日が ー〉の有島武郎の『或る女』に「呼吸は霰のようにーく」 とあるが、一般には「いそがしい」より精神的で主観的。 帳だだしい・いそがしい・気ぜわしい・せわしない・多事・多端・多忙・ 多用 せわしない【忙しない】「せわしい」の意で、会話や硬くない 文章に使われる古風な和語。〈来客が多く朝から一日だっ た〉永井荷風の『ふらんす物語』に「趣味に乏しい生 活」とある。覚だしい・忙しい・気ぜわしい・Qせわしい せわにん【世話人】団体あるいは会合や行事などで中心にな って実務を担当し運営する役をさし、会話にも文章にも使 われる表現。研究会のーが集まって運営の仕方を話し合 う〈祝賀会のーに名を連ねる〉同じ団体について使う場 合は、「幹事」より非公式で臨時的で緊張も少ない感じがあ るが、「世話係」よりは固定的。また、商取引や縁談などの 仲介人をさして用いる場合もある。刂幹事・世話係・Q世話役 せわやく【世話役】会合や行事などが円滑に運営されるよう にいろいろ世話をやく役目をさして、会話にも文章にも使 われる、やや古風な表現。〈社員旅行のーを仰せつかる〉 〈町内会のーに相談する〉「世話人」より古い感じで、「世 <581> 話係」より固定的な感じがある。刂幹事・世話係・Q世話人 せん【線】点と点とを結ぶ細い筋をさし、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈細い ーを引く〉へ「の上を歩く〉〈輪郭をーで描く〉四川端康成 の『抒情歌』に「今、ーを書き直したようにはっきりいたし ました西の雑木林」とある。「脚のーが綺麗いだ」のように 物の輪郭をさすほか、「そのーで話を進める」「ーの細い 人」のような抽象化した意味合いの用法もある。刂ライン ぜんい【善意】相手のためを思う心の意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈一の人〉「から出た行為〉「一に解 釈する」のように、相手や事柄に対して抱く良い意味の意 にも使う。法的な専門語としては、道徳的な善悪とは無関 係で、「一の買い主」の例で言うと、例えばそれが盗品であ ることを知らずに購入した場合のように、ある事実を認識 していない意に用いるという。「悪意」と対立。刂好意 せんいん【船員】船舶の乗組員の意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈一手帳〉船長を含む。Q海員・クル!水 夫・セーラ!乗組員・船乗り・マドロス ぜんいん【全員】ある組織や集団に属するすべてのメンバー、 または、その場にいるすべての人間の意で、会話にも文章 にも使われる日常の漢語。〈合格〉〈無事〉〈が参加 する〉〈集まる〉〈の同意を得る〉同・Q皆・みんな せんえき【戦役】「戦争」の意でまれに文章に用いられる古め かしい漢語。〈日清、日露の—〉Qいくさ・戦争・戦闘・戦い せんか【戦火】戦争やそれによる火災をさし、主に文章に用 いられる漢語。〈の中〉〈が広がる〉〈に見舞われる〉 (を交える)Q戦禍・戦渦・戦果 せんきん せんか【戦禍】戦争の被害の意で、主に文章に用いられる硬 い漢語。〈ーに遭う〉〈ーをこうむる〉〈ーを免れる〉Q戦 火・戦渦・戦果 せんか【戦渦】戦争の混乱の意で、主に文章に用いられる硬 い漢語。〈—に巻き込まれる〉、戦火・Q戦禍・戦果 せんか【戦果】戦争の成果の意で、主に文章に用いられる漢 語。〈ーをあげる〉〈大きなーを得る〉も戦火・戦禍・Q戦渦 ぜんかい【全快】病気や怪我が完全に治る意で、会話にも文 章にもよく使われる日常の漢語。〈ー祝い〉〈病気がーす る)怪我の連想もある「全治」に比べ、重い病気を連想さ せることが多い。児完治・Q全治・本復 ぜんがく【全額】すべての金額の意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈一括払い〉〈一耳をそろえて支払う〉② 個々の金額の総計を意味する「総額」に比べ、それに関する 金額をまるごと問題にしている感じが強い。単総額 せんきょう【宣教】宗教を宣伝する意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈一師〉〈一に従事する〉「一師」という語 は、キリスト教で特に欧米の教会からアジアやアフリカに 派遣されて伝道に携わる人を連想させる。仏道・Q布教 せんきん【千金】多額の金銭、大きな価値の意で、主に文章 に用いられる古風な漢語。〈春宵一刻値あー〉へーを投じて 手に入れる〉の千両の金の意から。千鈞 せんきん【千鈞】きわめて重い意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。へーの重みを持つ鈞」は重さの単位。 ひ千金 <582> ぜんけい ぜんけい【全景】ある場所全体を大きくとらえた風景をさし、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈町の—〉〈邸宅の ー〉へーを一望の下にとらえる〉②「一景」と対立。ひ全体・ Q全貌・全面・全容 せんげん【宣言】個人や団体が意見などを広く社会に明確に 表明する意で、改まった会話や文章に用いられる正式な感 じの漢語。〈共産党—〉〈独立—〉〈開会を—する〉〈書を 採択する〉Q声明・宣告 せんこう【先公】生徒が先生を小ばかにして呼ぶときの昔の 俗語。〈ーに見つかるぞ〉へーのやつ、間違いやがった》き教 員・教師・先生 せんこう【潜行】水にもぐったまま進む、姿を見せずひそか に行う意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈水中 深くーする〉〈地下にーする〉専潜航 せんこう【潜航】水中航行、内密の航海の意で、主に文章に 用いられる、やや専門的な漢語。〈一艇〉〈闊に乗じてーす る〉「潜行」のうち実際の船による場合を特に区別する用 字。刂潜行 せんこう【選考/銓衡】応募した人や作品などから学力・能 力・人格や出来栄え・独創性などをもとに適格者や該当作品 を選び出す意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢 語。〈書類—〉〈基準〉〈最終—に残る〉回「銓」は「はか る」「衡」は「はかり」の意。「選考」は代用漢字による表 記。選出・Q選定・選抜 せんこく【先刻】「さっき」の意で、かなり改まった硬い表現 の中で用いる漢語。へー御連絡申し上げた件につき〉へーよ り伺っております〉(そんなことはー承知だ)和語の「先 程」よりも硬い感じであり、時間単位でなく日数単位で使 う同じ漢語の「先般」ほどの改まりは感じさせないレベル にある。ひQ先程・さっき せんこく【宣告】特定の相手に公式に告げ知らせる意で、改 まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈死刑を ーする〉へ刑のーを受ける〉②大岡昇平の『野火』に「致命 的なーを受けるのは私であるのに、なぜ彼がこれほど激昂 しなければならないか」とある。専門語としては、裁判長 が公判で判決を言い渡すこと。医者が重大な病名を告知す る場合などにも使われる。声明・Q宣言 ぜんこく【全国】国の全体をさして、会話にも文章にも広く 使われる漢語。〈「大会〉〈「一斉に実施する〉〉的な規 模に上る〉〈日本—から集まる〉及全土 ぜんごさく【善後策】事が起こった後にその後始末を効果的 に行う方策の意で、会話にも文章にも使われる漢語。ぐ速や かにーを講ずる)刂施策・Q対策 せんさい【繊細】細やかで優美な意として、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈な指の動き〉〈な感受 性〉〈な神経〉小川洋子の夕暮れの給食室と雨のプー ルに「桜の花びらのようにもろくな表情」とある。 リカシ!・Qデリケート・微妙 ぜんじ【漸次】少しずつ一定方向へ向かって変化する意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。へー快方に向か うへー改革を進める)おいおい・次第に・Q徐々に・段々 せんじつ【先日】そう遠くない過去のある日をさす。「過日」 <583> や「先頃」ほどではないが、やや改まった漢語表現。へやあ、 ーはどうも〉へーご案内申し上げた件ですが〉へー来取り込 んでおりまして)井伏鱒二の『珍品堂主人』に「、丸久 さんからの手紙を見て」とある。小林秀雄の『井伏君の「貸 間あり」に「、街を散歩していたら、映画館で、井伏鱒 二君の「貸間あり」を上映していた」とある。「この間」ほ ど会話的でなく、「先般」や「過日」ほど改まらず、「先頃」 のような古風さも感じられない。ひいちじ・Q過日・この間・先 頃・せんだって・先般・一頃 せんじゃ【選者】多数の中から秀作を選ぶ専門家の意で、会 話にも文章にも用いられる漢語。〈投稿された俳句のー〉 〈ーの評〉も撰者 せんじゃ【撰者】秀作を選んで歌集などを編纂する歌人等を さし、改まった会話や文章中に用いられる古典的な雰囲気 の漢語。〈古今和歌集のー〉へー自身の作品〉乃選者 せんしゅつ【選出】ある役目にふさわしい人を選び出す意で、 改まった会話や文章に用いられるやや専門的な漢語。「方 法を見直す」〈委員を—する〉〈地元—の議員〉②外部の第 三者が選ぶ場合のほか、候補者を含むメンパーの間で互い に選ぶ場合もある。選考・Q選定・選抜 せんじゅつ【戦術】個々の戦闘や争いで勝つための方策の意 で、会話でも文章でも使われる漢語。〈人海—〉〈巧みな— で切り抜ける〉〈奇抜な—が功を奏する〉の「戦略」より細 かい部分について用いる傾向がある。戦略 せんじょう【洗浄】「洗滌せん」の代用語。やや改まった感じの 言い方。〈力に優れている〉〈胃をーする〉の洗滌の慣 ぜんしん 用読み「せんじょう」に同音で意味も関連する「浄」の字を 当てた語。洗滌 せんじょう【戦場】今実際に戦闘の行われている場所の意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈若者がーへと駆り立て られる〉〈勇んでーに向かう〉〈ーに散る〉〈ーと化す〉 「戦地」の一部でより具体的な地域。「古ー」のように昔戦 いのあった場所をさすこともある。転線・Q戦地 せんしよう【全焼】火災のために家屋や家財道具一式がすべ て焼けてしまう意で、改まった会話や文章に用いられる正 式な感じの漢語。〈家屋がーを免れる〉家屋や山林のよう な大きなものに用い、個々の道具について使うと大仰な感 じになる。込丸焼け せんしょく【染色】糸や布などを染料で着色することをさし、 改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈ー技術〉 多く職人や専門業者の作業について言う。専染める せんじる【煎じる】茶や薬草などを煮詰めて成分を取り出す 意で、会話にも文章にも使われる表現。〈薬をー・じて飲む〉 り炒める・煎いる・Q煎ずる・焙じる・焙ずる せんしん【専心】もっぽら一つのことに心を集中させる意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一意〉〈勉学に ーする〉②横光利一の『紋章』に「彼を自身の圏内から離さ ぬ工夫にーせねばやまぬ権威のあったところから」とある。 ひQ専念・没頭 ぜんしん【全身】体全体の意で会話にも文章にも使われる漢 語。〈一麻酔〉〈一打撲〉〈一の運動〉〈一全霊を傾ける〉 坂口安吾の『白痴』に「夜明けの寒気が彼のーを感覚のない <584> ぜんしん 石のようにかたまらせていた」とある。凪渾身・総身・満身 ぜんしん【前進】前方へ進む意で、会話にも文章にも使われ る漢語。「一歩」〈ただーあるのみ〉〈一定のーが見られ る〉「進行」に比べ、具体物の移動に使った例が多い。 「後退」と対立。Q進行・進む せんす【扇子】「扇」の意で会話にも文章にも使われる漢語。 〈ーで膝を打つ〉〈手拭を紙に、ーを筆に見立てる〉専扇 センス 微妙な美的要素などを鋭敏に感じ取って味わう能力 の意で、会話にも文章にも使われる新鮮な感じの外来語。 〈洋服のーがいい〉〈デザインのーが古い〉〈音楽にかけて はなかなかーがある〉〈いささかーを疑う〉専感覚・感性 せんずる【煎ずる】「煎じる」意の少し古風な表現。〈茶をー〉 専妙める・煎る・Q煎じる・焙じる・焙する せんせい【先生】学校などで人を指導する立場の人をさして、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な 漢語。〈担任のー〉〈ーと生徒〉〈ーに叱られる〉〈ー稼業〉 夏目漱石は『坊っちゃん』で、「ーと呼ぶのと、呼ばれる のは雲泥の差だ」と、初めて教員として教場に乗り込んだ ときの「足の裏がむずむずする」気持ちを吐露した。「お花 のー」のように、芸事の師匠をさすこともある。「教員」や 「教師」と違い、職業の名称としては用いない。上位者に対 する呼び名にもなり、医者や弁護士、作家や議員などの敬 称としても使う。Q教員・教師 せんせい【宣誓】大勢の前で誓いを述べる意で、改まった会 話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈書〉〈選手 〈法廷で証人がーする〉専声明・Q宣言 せんせん【戦線】戦場の第一線に当たる交戦地域をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈—に加わる〉〈—を離脱す る〉〈—が拡大する〉②「共同—」「統—」のような比喻的 用法もある。戦場・Q戦地 ぜんぜん【全然】「まったく」の意で、会話でも文章でも広く 使われる日常的漢語。「なっていない」〈駄目だ〉へー わからない〉〈問題ない〉あとに打消しの形や否定的な 意味の表現を伴って用いるのが本来の姿であったが、単に 「たいへん」「非常に」という意味で「大丈夫だ」「い い」「こっちの方がーすぐれている」のように使う俗な用法 が目立ってきた。しかし、現段階では、例えば「いい」と いう表現に抵抗感を覚える割合は、「とてもいい」という表 現に違和感を覚える場合よりはるかに大きいため、今でも まだ誤用というニュアンスを伴う。ひ一向に・からきし・からっ きし・さっぱり②・ちっとも・てんで・全く・まるっきり・まるで① せんぞ【先祖】家系や血統の初代、または、初代から亡くな った先代までの代々の人々をさして、くだけた会話から文章 まで広く使われる日常の漢語。〈代々の墓〉へ伝来の宝〉 への供養を欠かさない)先代でも生存中は含まない。 「御様」「に対して申し訳が立たない」「に偉い人が 何人もいる」のように、遠い存在を連想させやすい「祖先」 に比べ、個人を意識させる具体的な存在として扱う例が目 立つ。「人類の祖先」という言い方は通常の用法に感じられ るが、「人類のーは猿だ」という「先祖」の用法は比喻的な 感じが強く、冗談めいた雰囲気になる。祖先 せんそう【戦争】主権国家の間で互いに軍事力を行使する全 <585> 面的な争いをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる基本的な漢語。〈ー責任〉へーが勃発する〉へーを 回避する〉へーが終結する〉②阿川弘之の『雲の墓標』に 「軍人と資本家と政治屋とがはじめたこのばくちのような ー」とある。各地でいくつかの武力衝突があっても、この語 は開戦から終結までを一つと見て用いる点で、「戦闘」と違 う。「交通ー」「受験ー」のように、単に過酷な争いを意味 する比喩的な用法もある。ひいくさ・Q戦役・戦闘・戦い ぜんそくりよく【全速力】能力いっぱいの速さの意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーで逃げる〉へー で飛ばす〉人間や動物にも乗り物にも使われる。専フルス ピード ぜんたい【全体】すべての部分を含む一つのまとまりをさし、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈像〉〈クラスー をまとめる〉へとして高く評価できる〉のすべてを一つの 集合体としてまとめたとらえ方で、個々の構成要素が意識 に上りにくい感じがあり、へとして出来が今一つだ〉とい う表現でも、上出来と不出来を数え上げた評価ではなく、 すべてを一括したものの総合評価という感じが強い。 とことくすべて・Q全部・みな・みんな ぜんだいみもん【前代未聞】今までに一度も聞いたことのな いほど珍しいの意で、やや改まった会話や文章に用いられ る、いくらか古風な感じの大仰な漢語。へーの巧妙な犯罪 へーの珍しい事故」空前・空前絶後・Q未曾有 せんたく【洗濯】汚れた衣服などを洗って綺麗にする意で、 会話にも文章にも使われる日常の一般的な漢語。「屋に センチメンタル 出す〈物が乾く〉〈下着をーする〉〈物を取り入れる〉 〈掃除とー〉小沼丹は『銀色の鈴』で「娘がー板でごしご しやっていたら、大寺さんもちょっと困るのである」と書 き、「細君がー板でごしごしやっても、大寺さんは困るとは 云わないだろう」と続け、娘と妻に対する微妙な気持ちの ニュアンスを描き出した。クリーニング・西洋洗濯 せんだって【先達て】「このあいだ」に近い意味で、主に会話 に使う、やや古風な日常語。へーの話、どうなりました? へーやっと連絡が取れた》過日・この間・先頃・Q先日・先般 せんち【戦地】戦争の行われている地域の意で、会話にも文 章にも使われる漢語。へに赴くへからの便りへ戦 場」を含んで軍隊が出征している地域全体をさし、今現に 戦闘が行われているとは限らない。Q戦場・戦線 センチ「センチメンタル」の意で、主としてくだけた会話に 使う古風なことば。〈思い出すといさきかーになってね〉 「センチメンタル」の短縮形。それだけ崩れた感じで口頭語 に近い。もとの「センチメンタル」より古い感じがする。 ひおセンチ・感傷的・Qセンチメンタル ぜんち【全治】病気や怪我が完全に治る意で、会話にも文章 にも使われる専門的な漢語。へー週間の軽い怪我で済む 病気の連想が強い「全快」や「本復」に対し、比較的怪我 の連想が多く、軽い場合にも使う。単完治・Q全快・本復 センチメンタル「感傷的」の意で、会話やさほど改まらない 文章に使う、やや古風な外来語。くすっかりな気持ちにな る)サトウハチローに『センチメンタル・キッス』という 書があり、その「センチメンタル・ベースボール」の章に「科 <586> せんちゃ 学的野球には、人情がない。ーが、ないように思う」とあ る。ひおセンチ・Q感傷的・センチ せんちゃ【煎茶】上質の玉露から品質の劣る番茶まで湯で前 じ出す緑茶の総称として、会話にも文章にも使われる漢語。 〈玉露は最高級のだ〉多くは中級の緑茶をさす。马上が り・お茶・玉露・茶・日本茶・番茶・碾き茶・焙じ茶・抹茶・Q緑茶 せんちょう【船長】船舶の乗組員を監督する長をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈室〉〈客船のーを務める〉 ひQ艦長・船頭 ぜんちょう【前兆】「兆し」に近い意味で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈地震の—〉の事柄の起こるより前であるこ とを強調した感じの語。谷崎潤一郎の『肉塊』に「或る恐ろ しい出来事の—のような予感」とある。兆し・Q兆候・前触 れ・予兆 せんてい【選定】ある目的に適切な人や物などを選んで決め る意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。 〈ー委員会〉〈教科書をーする〉〈曲目をーする〉〈慎重に品 物をーする〉〈立地条件のよい土地をー〉〈選考・Q選出・選抜 ぜんてい【前提】正しいと仮定して推論の出発点に置く命題 をさし、改まった会話や文章に用いられる専門的な硬い漢 語。〈ー条件〉〈ーが崩れる〉図川上弘美の『センセイの鞄』 に「ワタクシと、恋愛をーとしたおつきあいをして、いただ けますでしょうか」とあるように、「結婚をーとする交際」 といった日常の用法には特に専門的な感じはない。 ひQ仮定・想定 せんでき【洗滌】洗って清潔にする意の漢語で、古めかしく 専門的な感じの硬い表現。〈患部を薬品でーする〉現在は 「洗浄」で代用される。马洗浄 せんでん【宣伝】主張に共鳴させたり商品を売り込んだりす るためにその内容や価値を人々に知らせ広める意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈 文句〉〈ー効果〉〈大々的にーする〉〈ーにこれ努める〉〈い いーになる〉②サトウハチローの『チンドン長屋の花ムコ』 に「わたしの元の家が、エデンというカフェーになってその ーをした時が、一番悲しかったですよ」とある。広告 せんてんてき【先天的】生まれつきそなわっている意で、会 話にも文章にも使われる専門的な漢語。〈—な性質〉〈—な 能力〉後天的一と対立。乃生得・本質・本能 ぜんど【全土】国土全体の意で、やや改まった会話や文章に 用いられる少し硬い感じの漢語。〈日本—に広がる〉(日本 ーにわたって影響を及ぼす)②「全国」に比べ、特に空間的 な広がりを意識した表現。ひ全国 せんとう【戦闘】兵器を用いる軍隊同士の直接の武力衝突を 意味し、会話にも文章にも使われる漢語。〈—員〉〈—機〉 〈—を交える〉〈—に巻き込まれる〉〈激しい—を繰り広げ る〉の「戦争」の間に、ある時ある場所で行われる激しい武 力衝突を、それぞれ一つの「戦闘」と考える。比喻的に、 「—再開」のように、スポーツの世界などでも使う。 さ・戦役・戦争・Q戦い せんとう【銭湯】客から料金を取って入浴させる大衆用の浴 場をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。町の に通う〈一の帰りに立ち寄る〉②事務的な感じの「公衆浴 <587> 場」に比べ、庶民の生活になじんでいる雰囲気がある。「洗 湯一とも書いた。ひ公衆浴場・Q風呂屋・湯屋 せんどう【船頭】和船を操る船乗りの長をさし、会話にも文 章にも使われる古風な漢語。「が歌いながら槽を漕ぐ 鑑長・Q船長 せんどう【扇(煽)動】ある行動を起こすように仕向ける意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈大衆を—〉〈暴動 を—する〉〈—に乗る〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「又 例の堀田がとかーしてとか云う文句が気にかかる」とある。 帰る・けしかける・Q指嚴そそのかす・たきつける せんにゅうかん【先入観】対象について予め抱いている固 定観念の意で、少し硬めの会話や文章に使われる漢語。へー が入る〉へーにとらわれる〉へーを排する〉回誤りを含んで いたり偏っていたりするものとして問題にする。Q思い込 み先入主 せんにゅうしゅ【先入主】「先入観」の意で硬い文章に用いられる、やや専門的で古風な漢語。へーを捨て心を虚しくして対象に没入する)思い込み・Q先入観 せんにん【先任】以前その任にあったの意で、やや改まった 会話や文章に用いられる硬めの漢語。〈ー者〉〈ーの大臣〉 ひ前任 ぜんにん【前任】直前の先任をきし、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈—の校長〉〈—の部長から引き継ぐ〉夏目漱 石の『坊っちゃん』に「現に君のー者がやられたんだから、 気を付けないといけない」とある。乃先任 せんねん【専念】もっぱら一つのことに意識を集中させる意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈研究に—する〉〈子 育てと家事に—する〉〈療養に—する〉Q専心・没頭 ぜんぶ ぜんねん【前年】ある年の前の年をさし、やや改まった会話 や文章に用いられる若干硬い感じの漢語。へー比六パーセン トの伸びへーから引き続き取り組む》「翌年」と対立。 単旧年・去年・Q昨年 せんぱく【船舶】大型の船の総称として、改まった会話や文 章に用いられる専門的な漢語。〈安全〉〈沖合いの—〉 〈保有する—〉法律や取引などの特殊な場合を除き、具体 的な一艘の船をさすことはまれで、通常は大型船全体をさ す。Q艦船・舟艇 せんばつ【選抜】上位の立場にある外部の人や組織が、一定 の基準を満たした多数の候補を比較し、その中で相対的に ふさわしい人や団体などを選んで抜き出す意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ー試験〉〈ーチーム〉〈ー高校野 球大会〉〈多数の候補者の中からーする〉選考・Q選出・選定 せんばん【先般】「このあいだ」の意で、主として改まった文 章に用いられる硬い感じの漢語。〈ーの不祥事につきまし ては〉〈ー御通知致しました一件でございますが〉数日で も数ヶ月でも一年ぐらい経過していてもこの語でまかなえ る。日数単位でなく時間単位で使う「先刻」よりさらに改 まった感じが強い。過日・この間・Q先頃・先日・せんだって ぜんぶ【全部】あらゆる部分を残さず含めた総体をさし、く 常の基本的 ぜんぶ【全部】あらゆる部分を残さず含めた総体をさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な漢語。〈まとめて買う〉〈使い切る〉〈そろってい る〉「すべて」ほどではないが、「全体」に比べて個々の <588> ぜんぶ 構成要素の独立性が高く、「どこもかしこもー気に入らな い」「ーがー悪いわけではない」という表現でも、一つ一つ を頭に置いて判断した感じがある。「一部」と対立。ひこと ごとくすべて・Q全体・みな・みんな ぜんぶ【前部】一つの物体のうちの前に位置する部分をさし、 主として文章に用いられる硬い漢語。へーの窓を開け放つ 夏目漱石の『倫敦塔』に「台のー」とある。口頭では「全 部」と誤解されやすい。単前 せんべい【煎餅】小麦粉またはうるち米粉を主たる材料とし たたねを型抜きして焼いた菓子をさし、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈揚げー〉へーを ばりっとかじる)小麦粉・卵・砂糖を用いる「瓦ふふふ煎餅」の 関西系統と、うるち米の粉をたねに焼いて醤油味に仕上げ る「塩煎餅」の関東系統とに分かれる。「布団」のように 薄いものの代表として比喻的に使うこともある。みあられ おかき・Qかきもち せんぼう【羨望】羨ましく思う意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈みんなのーの的〉へーの眼差なしを注 ぐ〉永井荷風の『すみだ川』に「富貴のー、生存の快楽」 とある。Q羨む・嫉妬・そねむ・ねたむ せんぼう【先方】相手方の意で、やや改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈一の意向を確かめる〉(一の都合に合わ せる)武者小路実篤の『お目出たき人』に「兄が結婚する まではそういう話を聞くのさえいやだという一の答えだっ たと聞いた」とある。「あちら」「あっち」はもちろん、「向 こう」よりも改まった感じがある。「当方」と対立。Q相 手・あちら②・あっち・前方・向こう② ぜんぼう【全貌】物事の全体の姿をさし、改まった会話や文 章に用いられる、やや硬い感じの漢語。〈ーをとらえる〉 〈事のーが明らかになる〉野間宏の『真空地帯』に「事件 のーを示す報告書類」とある。「一部」と対立。全景・全体・ 全面・Q全容 ぜんぼう【前方】自分の前の方向をさし、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈ー不注意による事故〉〈はるかーに 富士を望む〉②大岡昇平の『俘虜記』に「私がはじめて米兵 を認めたとき、彼はすでにーの叢林から出て開いた草原に 歩み入っていた」とある。「後方」と対立。先・先方・Q前 ぜんまい【発(撥)条】薄い帯状または線状の鋼鉄を渦巻の形 に巻いた弾力のある装置をさし、会話にも文章にも使われ る和語。〈ー秤か〉〈ー仕掛けで走る玩具の自動車〉〈時計 のーを巻く〉形がぜンマイの若葉に似ているところから。 ひQスプリング・ぽね せんめい【鮮明】鮮やかではっきりしている意で、やや改ま った会話や文章に使われる漢語。〈印刷がだ〉〈な映 像〉〈な記憶〉〈印象がーに残っている〉ひ鮮やか・Qくっき り ぜんめつ【全滅】全部駄目になる意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈敵を—させる〉〈台風で農作物が—する〉② 難関大学をめざした受験生が入試でことごとく失敗したよ うな場合にも比喩的に「同級生が—という惨憺だたる結果 になる」などと使う。塲滅・Q絶滅・撲滅 ぜんめん【全面】物事のすべての面をさし、会話にも文章に <589> も使われる漢語。〈一戦争〉〈禁止〉〈否定〉的に賛 成する〉面と対立。全景・Q全体・全貌・全容 ぜんめん【前面】一つの物体の前方に面した側をさし、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈ーに押し出す〉〈建造 物のーに位置する〉田宮虎彦の『沖縄の手記から』に「私 たちのーに上陸作戦を企図したアメリカの機動艦隊」とあ るように、対象の向いている側の空間を意味する用法もあ る。Q正面・前 せんめんじょ【洗面所】間接的に「便所」を意味することもある、やや改まった感じの日常の漢語。へに案内する)用便のための施設に付随する手洗い用の流しは、一定の大きさがあれば顔を洗うこともできるため、そちらに焦点を移して間接化した表現。この名づけは便所の機能と間接的なつながりしか持たず、また、実際に顔を洗うための独立した施設であるまさに洗面所をさすこともあるため、間接性がさらに強い。おトイレ・廁・閑所・化粧室・御不浄・雪隠・WC・手水場・手洗い・トイレ・トイレット・はばかり・Q便所・レストルーム せんもんか【専門家】特定の分野を専門に研究・担当している 人の意で、会話にも文章にも使われる漢語。「の意見を求 める〉「に相談する〉〈さすがーは違う〉「プロ」と違 い、必ずしもその収入で生計を立てていなくてもよい。 玄人・Qスペシャリスト・プロ せんゆう【占有】自らの所有とする意で、改まった会話や文 章に用いられる、やや専門的な感じの漢語。〈—率〉〈市場 を—する〉〈権限を—する〉専有 せんリゃく せんゆう【専有】独占の意で、少し改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈一面積〉〈施設〉〈マンションの一部分〉 「共有」と対立する。占有 ぜんよう【全容】物や事柄の全体の姿をさし、改まった会話 や文章に用いられる、やや硬い感じの漢語。〈雲が切れて富 士がそのーを現す〉〈事件のーを解明する〉③三島由紀夫の 『金閣寺』に「金閣は、大そうあっけなく、私の前にそのー をあらわした」とある。全景・全体・Q全貌・全面 ぜんら【全裸】下着も身につけていないまったくの裸の意の 漢語。「素裸」や「真裸」より客観的で即物的な感じの表現。 会話的な「素裸」や「真裸」に比べ、やや文章語的。入 浴中の火事にーで飛び出す〉へーで発見される〉椎名麟三 の「自由の彼方で」に「風呂から上ったーの彼女を見る」と ある。夢赤裸・素裸・裸・真裸・真裸・Q丸裸 せんりつ【旋律】音の高低・長短の変化が一定のリズムで展開 する快い調べをさし、主として文章中に用いられる漢語。 く美しいーが流れる〉〈物悲しい短調のー〉小沼丹の『銀 色の鈴』は、ウイスキーを飲みながらトタン屋根の激しい雨 の音を聴く場面で「遠い声どーに耳を傾けていた」として 結ばれる。この語は「メロディー」よりも抒情ぼ的な趣を 感じさせる。ひ音律・調べ・節・節回し・Qメロディー せんりつ【戦慄】恐ろしくて体が震える意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ーが走る〉〈ーを覚える〉梶 井基次郎の『或る崖上の感情』に「薄い刃物で背を撫でられ るような」とある。Qおののく・恐怖・震え上がる・わななく せんりやく【戦略】戦争や競争に勝つための総合的で大局的 <590> せんりょく な策略をさして、改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈一家〉〈ーを練る〉〈ーを立てる〉回「戦術」より高い次元 の作戦について使い分ける傾向がある。込戦術 せんりよく【戦力】戦争遂行能力の意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈大きなーになる〉へーを蓄える〉へ一大ー を誇る〉の井上靖の『異域の人』に「こちらのーを知った上 で、四方から刀を揮って駈け寄って来る」とある。「即ーと なるスーパールーキーの加入で、チームは優勝争いに絡むー を確保した」のように、戦争に関係なく単に物事の遂行能 力を意味する拡大用法もある。単軍事力・Q武力・兵力 ぜんりよく【全力】個々の人間が出世る限りのすべての力の 意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる漢語。 〈一疾走〉〈一投球〉〈一で走る〉〈一を出し切る〉〈一を尽 くす〉〈一で事に当たる〉〈職務に一を尽くす〉〈一でぶつ かる〉志賀直哉の『城の崎にて』に「死ぬに極った運命を 担いながら、一を尽して逃げ廻っている様子」とある。一個 人や一つの組織を単位に考えたすべての力。会社やチーム などの組織や団体についても使うが、その構成員がそれぞ れの能力を発揮するという意味合いが強く、「総力」とは二 ュアンスに差がある。ひ総力 せんりよくとうきゅう【全力投球】全力を傾注する意で、会 話や軽い文章で使われる野球用語の拡大用法。ヘどんな仕事 でもーで頑張る)野球の投手が力を抜かずに全力で投げ る意から、一般に「全力を尽くす」意で広く使われる。まだ 比喻的な感じが強い。 せんれい【先例】以前にあった似たような例をさし、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーがある〉〈ーを引く〉「ーになる」の形で、以後の同様のケースでの基準となることを意味する例も多い。刂前例 ぜんれい【前例】「先例」の意で、会話にも文章にも使われる 日常の漢語。入このようなことはーがない〉今回認めれ ば、それがーとなる〉「これに関してはーを参照のこと」 のように、前に挙げた例をさす用法もある。先例 せんれん【洗練(煉)】動作や趣味などを磨き上げて高尚で優雅な感じにする意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈—された衣装〉〈—された話術〉〈—された芸〉の垢抜けた」は生まれつき持っているセンスの場合もあるが、この語は磨き上げて身につけた感じが強い。り垢抜けたせんろ【線路】列車などの通る鋼鉄製のレールを中心とする細長い道をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈鉄道ー〉〈—工事〉〈—沿いの道〉〈—伝いに歩く〉②レールだけではなく列車の通り道全体をさす。そのため、二本のレールの間の枕木や砂利の部分は厳密には「レール」と言えないが「線路」の一部である。ヲレール <591> そ そう【沿う】対象から離れないように移行する意で、会話で も文章でも広く使われる和語。〈川に!った道〉〈列車が 海岸線にー・って走る〉〈企業の方針にー・って行動する〉 堀辰雄の『大和路・信濃路』に「秋篠川にーて歩きながら、 これを往けるところまで往って見ようかと思ったりした」 とある。線状の対象物をイメージさせやすい。り添う そう【添う】対象から外れない意で、やや改まった感じの会 話や文章に使われる和語。〈期待にー活躍〉〈要望にー・っ た対応〉〈身に威厳がー〉「影の形にーように」「二人を ー・わせる」のような用法は古めかしい感じがある。刂治う そう【僧】仏門に帰依した人をさし、主に文章に用いられる 古風な漢語。〈寺のー〉〈旅のー〉夏目漱石の『草枕』に 「このーは六十近い、丸顔の、達磨を草書に崩したような容 貌」とある。刂和尚ば・住持・住職・Q僧侶・坊主 そう【艘】小さな舟を数えるときの単位として、会話にも文 章にも使われる漢語。〈三—のポート〉乃隻 そうあん【草案】公的な性格の法律や報告などの文章で正式 に決定される前の段階の原案をさし、やや改まった会話や 文章に用いられる、やや専門的な感じの漢語。〈憲法の—〉 〈ーを練る〉原案・原稿・下書き・Q草稿 そうあん【僧庵】僧の住む粗末な庵をさし、主に文章中に用いられる古風な漢語。へーでの暮らし〉刂僧堂・Q僧坊 そうが ぞうえん【造園】本格的な庭造りをさし、改まった会話や文 章に使われる、やや専門的な漢語。〈業〉(の技術) 趣味的な感じを伴う「庭造り」よりも本格的な感じで専門 家による大がかりな工事を連想させやすい。圓芸・ガーデ ニング・庭いじり・Q庭造り そうい【相違】似ているものを比較したときにその間に差の ある意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈性 格の」〈両者には意見のーがある〉「…にーない」の形 で、「…に違いない」の意のやや古風でやや丁寧な感じの表 現となる。俗に「相異」とも書く。巻差・Q差異・違い ぞうお【憎悪】相手を憎み嫌う気持ちをさし、改まった会話 や文章に用いられる硬い漢語。〈一に燃えた目〉〈一をかき たてる〉〈激しくーする〉〈一の念を抱く〉「憎しみ」より 強い。徳田秋声の『あらくれ』に「殺しても飽足りないよう な、暴悪な一の念」とあり、井伏鱒二の『遥拝隊長』に「む らむらと湧きあがる一の気持」とある。厭悪・Q嫌悪・敵意 敵愾心・Q憎しみ・反感 そうおん【騒音】やかましくて不快な音をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ー公害〉〈機械のー〉石坂洋次郎 の『山のかなたに』に「教室の中は、蜂の巢をつついたよう なーに満たされていた」とある。ひ喧噪・雑音・Q噪音 そうおん【噪音】振動周期の不規則な音をさし、学術的な会 話や文章に用いられる専門的な漢語。〈ーを発する〉②これ も耳に不快な音であるため「騒音」に含めることもある。 雑音・Q騒音 そうが【挿画】挿絵きの意味で、主に文章に用いられる、や <592> ぞうか や専門的な硬い漢語。「ーで小説を盛り上げる」りイラスト・カット・Q挿絵 そうか【増加】数量が増える意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈面積が—する〉〈予算が—する〉〈定員の—に踏 み切る〉の「喜び」や「苦しみ」のような抽象的なものより 数値で表せる対象に使う。「困難が増加する」は具体的な物 事を連想させ、精神面を連想させやすい「困難が増大する」 と微妙に区別される。「減少」と対立。増大 そうかい【爽快】爽やかな意で、会話にも文章にも使われる 漢語。〈な湖畔の朝〉へな気分〉心をにする林芙 美子の『茶色の目』に山の流れが爽々と岩の間を流れてく るような、な曲だった」とある。単牡快 そうかい【壮快】元気あふれる意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈ーな波乗り〉〈ーな調べ〉も爽快 そうがく【総額】すべてを合計した金額の意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈予算—〉〈被害—数億円 に達する〉〈花嫁道具一式で一百万円は下らない〉回一括し た感じのある「全額」に比べ、個々の金額を加えたイメージ が濃い。ひ全額 そうかつ【総括】すべてをまとめる意で、改まった会話や文 章に用いられる正式な感じの漢語。〈—質問〉〈意見を—す る〉〈本年度の活動を—する〉全体の評価や反省も含む。 ひ総轄 そうかつ【総轄】まとめて全体を取り締まる意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈責任者〉〈事務を する〉も総括 そうぎ【葬儀】「葬式」の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー社〉〈ー場〉〈ーを執り行う〉「葬式」より 改まった感じの語だが、「葬礼」ほど格式ばった感じはない。巻別式・Q葬式・葬礼・弔い そうき【臓器】内臓の意で、学術的な会話や硬い文章に用い られる医学の専門漢語。〈移植〉へーパンタ〉内臓の総 称というより、一つ一つの器官を意識する傾向が見られる。 五臓六腑臓腑・臓物・Q内臓・はらわた・もつ そうきゅう【早急】「さっきゅう」の新しい読み方で、若い世 代を中心に広がっている。へーに引き上げる)きっきゅう そうきゅう【送球】「ハンドボール」の古風な呼称。口頭表現 では通じにくいが、文章の中では今でも時折用いられる。 ハンドボール そうきよ 【壮挙】意気盛んな壮大な企ての意で、主に文章に 用いられる硬い感じの漢語。ヨッ卜で世界一周のーを成し 遂げる)Q快挙・義挙・美挙 そうぎょう【創業】新たに事業を起こす意で、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈一五十周年〉〈明治期—の 老舗小林多喜二の『蟹工船』に「一当時は、幾ら船が 沈没したりしたか分らなかった」とある。大規模でかなり 長い歴史を持つ企業について用い、小店に使うと大仰な感 じになる。ひ開業 そうきょう【増強】予算・設備・人員・作用などを補って強さを 増す意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈筋肉ー剤〉 〈体力のーをめざす〉〈兵力のーを図る〉「強化」「補強」 と違い、手を加える前からある程度の強さをすでに有して <593> いる感じが強い。Q強化・補強 そうく【瘦軀】瘦せた体の意で、主に文章に用いられる漢文 調の硬い古風な漢語。〈長身—〉へーを駆って積極的に動く 里見辤の『極楽とんぽ』に「鶴の如きーと共に、誠に好も しい人品」とある。Q瘦身・細身 そうけい【総計】すべての分野をまとめた合計をさし、改ま った会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈支出 ー〉〈全分野のーを算出する〉②「合計」と同じ意味に用い ることも、「合計の合計」を意味することもある。合計 そうけん【送検】容疑者や捜査書類などを検察庁に送る意の 法律用語。〈書類ー〉 そうけん【壮健】丈夫で元気な意で、主として手紙その他の 文章に用いられる、改まった感じの硬い和語。身体ー〉 御ーの由何よりと存じます)単元気・健康・Q健勝・健全・丈夫・ 健やか・息災・達者 そうげん【草原】一面に草で覆われている広々とした原をさ し、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈見渡す限 りの大〉〈阿蘇山麓に広がる〉「くさはら」より広大 なイメージが強い。そこで何かをしているというよりそれ を眺めている連想があり、深田久弥の『四季の山登り』に 「連山がその裾に緑の褥れ」のような気持のよさそうなーを 敷いていて」とあるのもそういう例である。りくさはら そうこ【倉庫】品物を保管・貯蔵する場所をさし、会話にも文 章にも使われる日常の漢語。〈一番〉〈ーに保管する〉〈ー から出して来る〉武田泰淳の『風媒花』に「のようにコ ンクリート壁をむき出した焼酎ホール」という比喻の例が そうさ 出る。倉・Q蔵 そうご【相互】「互い」の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈理解〉〈作用〉〈の関係〉〈会員〉の親睦を図る正宗白鳥の『入江のほとり』に「外の者も知らず知らず」の顔や頭に目を留め出した」とある。互い そうこう【操行】常日ごろの行いの意で、改まった会話や文 章に用いられる古風な漢語。〈ーが悪い〉②道德的な観点か ら取り上げられることが多い。専行状・Q素行・品行・身持ち そうこう【草稿】下書きの段階の原稿をさし、改まった会話 や文章に用いられる、やや専門的な漢語。へーに手を入れ る)原案・Q原稿・下書き・草案 そうごん【荘厳】場所や建物などの雰囲気に威厳があって重々 しい意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。へー な雰囲気〉へーな神社〉へーな儀式〉厳か・厳粛・Q森厳・崇高・ 荘重 そうさ【捜査】警察が犯人を捜し出し、犯罪に関係する証拠 物件を調べる意で、会話にも文章にも使われる専門的な漢 語。〈ー令状〉〈ー本部〉〈公開ー〉〈ー線上に浮かぶ不審人 物〉〈ーの手が伸びる〉捜索 そうさ【操作】ボタン・スイッチやレバー・ハンドルなどを動かして機械や器具を働かせることをさし、会話にも文章にも使われる、いくらか専門的な漢語。〈ミス〉〈遠隔〉〈レバーをーする〉〈ーが難しい〉〈パソコンのーに慣れる〉の小島信夫の『小銃』に「前床をふくというーは、どんなに私の気持をあたためたかしれない」とある。「操る」対象より複雑な機械類について言うことが多い。「帳簿をーする」 <594> そうさい 株価を—する」のように、自分に都合のよいように時には不正に動かす意にも使う。弔操る操縦 そうさい【相殺】貸借・損得・功罪などが互いに消し合いゼロ になる意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの 漢語。〈貸し借りをーする〉〈今度の手柄で前の失敗がーさ れる〉、Q帳消し・棒引き そうざい【惣菜】「おかず」の意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈晩のお—〉みおかず そうさく【捜索】犯罪に関連して警察が強制的に捜し調べる 意で、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。 願い)〈家宅—〉くまなく—する)住民が「—隊」を結成 して遭難者を捜し回ったり、行方不明者を捜して山狩りを 行ったり、警察以外による場合もある。捜査 そうじ【掃除】ごみや埃を取り除き、汚れをふき取って清 潔にする意で、くだけた会話から文章まで広く使われる日 常の漢語。〈|機〉〈|当番〉〈便所〉〈暮れの大〉 「清掃」ほど正式な感じはなく、日常生活でよく使われる。 清掃 そうじ【相似】形や姿が互いに似ている意で、主として文章 に用いられる専門的な漢語。〈形をなす〉(大きさは異な るが構造的に両者は—の関係にある)近似・酷似・似通う・似 る・Q類似 そうしき【葬式】死者を葬るための儀式の意で、くだけた会 話から文章まで幅広く使われる日常の漢語。「の日取り 「を出す」類義語のうち日常生活で最もよく使うが、式 場の正式の掲示などにはあまり見られない。告別式・Q葬 儀・葬式・弔い そうしつ【喪失】それまで保有していた抽象的な存在を失う 意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。 〈記憶—〉〈自信を卜する〉〈信頼を—する〉梅崎春生の 『桜島』に「考える力を—した、言わば動物園の檻のけもの のようであった」とある。「紛失」と違い、気がつかないう ちにというニュアンスは特になく、失われたという結果だ けを問題にしている。刂紛失 して「然うして」「そして」に近い意味合いで使う。そして」より会話的ながら、さほど硬くない文章にも用いられる接続詞。「さんざん人を困らせ、挨拶一つなく立ち去る」(この乳飲み子も小学校、中学校、やがては高等学校へと進む)「そして」より思いをこめた感じが強く、一語一語ことばを選びながら話すときや、抒情じゃのな文章の中でしばしば出てくる表現。多用すると感傷的に響くが、次の例のようにこのことば特有の語感を生かした絶妙の使い方もある。佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「こうして幾日かはすぎた。薔薇のことは忘れられた。また幾日かはすぎた。」といった散文詩を思わせる一節がある。同じ作品のしっとりと降り注ぐ初秋の白い雨の後ろ姿に見入る場面でも、「家のなかの空気をしめやかに、ランプの光をこまやかなものにした」という主体化された情景描写から、「端座した彼に、或る微かな心持、旅愁のような心持を抱かせた」という心理描写へと流れる移行の節にまず「そうして」が現れ、そこから、そういう気持ちを誘った秋の雨そのものに、逆に旅人の姿を思い描く次の屈折した文展開の冒頭に <595> も、やはり「そうして」という万感をひきずった接続詞が立 つ。「そして」ではどうしても表現しきれないこまやかな心 情である。みそして そうじて【総じて】例外はあるにしても全体として、といった意味合いで、改まった会話や文章に用いられる、やや硬い表現。〈最近の子供はー早熟だ〉ひ一般に・Q概して そうしゃ【走者】陸上競技の走り手や野球で出墨した人をさ し、主として書きことばで使う漢語。口頭ではふつう「ラ ンナー」と言う。へーを進墨させる〉へー一掃の長打が出る 〈第一ー〉ヲランナー そうじゅう【操縦】飛行機などの機械を思いとおりに操作す る意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈桿〉〈飛行機 をーする〉の「夫のー術」「部下を巧みにーする」のよう に、人を動かす意の比喻的用法もある。刂操る・運転・操作 そうじゅうし【操縦士】飛行機などを操縦する人をさし、会 話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈副—〉〈直 行便の—〉刂Q運転士・運転者・運転手 そうしゅん【早春】春まだ浅い季節をさし、主として文章中 に用いられる漢語。(こぶしの花がーを告げる)「晩春」 と対立。ちなみに、小津安二郎監督に『早春』と題する映画 も『晩春』と題する映画もある。ひ初春 そうしく【装飾】美的効果をねらって物の表面を装い飾る 意で、やや改まった会話や文章に使われる漢語。〈一品〉 〈室内ー〉〈一をほどこす〉の小林秀雄の『私小説論』に「不安な実生活を新しい技巧によって修正しよう、斬新な感覚 によってーしようという希いがあった」とある。「飾り」以 そうぜん 上に華やかな連想が強い。帰り・飾る そうしん【瘦身】瘦せている体の意で、文章に用いられる漢 文調の硬い古めかしい漢語。〈一鶴の如き老紳士〉石川淳 の『普賢』に「波のまにまただようごとくーをベッドの上 に浮かせている」とある。美容のために瘦せる意の「術」 は美容の専門語で、むしろ新しい語感が働く。Q瘦軀 細身 そうしんぐ【装身具】装飾のために身につける小さな工芸品 の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈高価なー を身にまとう〉〈ーに金をかける〉具体的にはネックレ ス・ブローチ・指輪・かんざしなど。ヲアクセサリー そうせい【早世】一般よりかなり早く世を去る意で、文章中 に用いられる漢語。〈娘の—に親の悲しみは深い〉の「天 折」や「天逝」と異なり、必ずしも若いときに死去したと は限らない。「世」と間接的に表現しており、端的な「早死 に」より丁寧な感じがある。Q早死に・夭逝・夭折・若死に そうせいじ【双生児】「ふたご」の意のやや専門的な漢語で正 式な感じの文章語。〈一卵性—〉〈一が誕生する〉ふふたご そうせつ【創設】それまでなかった施設や組織を初めて設け る意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈当時 は珍しかった女子専門の養成所を—した〉開設・新設・設立・ Q創立 そうぜん【窓前】窓から見えるすぐ近くをさし、主として改 まった文章に用いられる硬い感じの漢語。「に咲き誇る 花々を眺めつつ高田保の『ブラリひょうたん』に「すわ り直して眉をしかめ、さてしずかにに目をやると五月の <596> そうぞう 雨が降っている」という一文が出てくる。「今日こそは堂々 たる、内容たっぷりな、いかにも瞑想的で憂鬱な文章を書こ うとおもい立った」場面だから、「窓のほう」などという日 常生活の表現を避けて「窓前」といった堂々たる漢語を使用 してみたのだが、「馬鹿は死ななきゃ治らない」といったい つもの調子に戻ってしまう。その落差がユーモラスに響く のである。専窓口 そうぞう【想像】今現実に存在しないものを頭に思い描く意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的 な漢語。「龍はー上の動物だ〉〈力を働かせる〉〈を絶 する〉〈ーを逞くしくする〉〈ーだにしなかった〉小川国 夫の『貝の声』に「顔つきをーした。浜に打上げられた古靴 のようだろう、と思った。水に晒されて冷い感じをーした」 とあり、古井由吉の『弟』に「不安なーを水母の傘みたい にふくらませている」とある。「空想」や「夢想」が非現実 的なイメージを描く感じが強いのに対して、この語には「 したとおりだった」「御ーに任せる」のように現実的なイメ ージの例も目立つ。Q空想・幻想・夢想・妄想・連想 そうぞうしい【騒騒しい】ほぼ「騒がしい」の意で、やや改 まった会話や文章に用いられる表現。表の通りがばかに ー〉へやたらにー音楽〉客観的な感じの「騒がしい」より マイナス評価が含まれ、静かにするように注意する際など にはこの語を使う例が多い。夏目漱石の「坊っちゃん」に 「八釜しくてーくって堪らない」と「やかましい」と併用し た例が出る。なお、複数の音が不規則に聞こえる場合によ く使い、音が大きくても太鼓の音のようにリズミカルな場 合は不快感が伴わず、この語を使いにくい。ふうるさい・Q騒 がしい・やかましい そうそん【曾孫】「ひまご」の意で改まった文章に用いられる 硬い漢語。〈のちにそのーに伝えられた〉ひひこ・Qひまご そうたい【早退】学校や勤務先などを定刻より早く退出す 意で、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語 〈会社をーする〉〈頭痛のためーする〉り早引け そうだい【増大】数量や程度が増す意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈使用料が年々—する〉〈危険が—する〉 〈不安が—する〉心理面などの抽象的なものについてよく 使い、「喜びが—する」などとも言うが、概して好ましくな いものに使う例が目立つ。増加 そうだん【相談】とうしたらいいかについて意見を求めたり 困ったことなどについて意見を仰いだりする意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。身の 上ー〉〈相手〉〈上司にーする〉〈ーを持ちかける〉〈ーに 乗る〉〈ーもなしに勝手にやる〉德田秋声の『縮図』に 「打ち明けてーしたら(略)腫物を切開して膿を出したよう で、さっぽりするかも知れない」とある。「会の運営につい てみんなでーする」のような例もあるが、一般に「打ち合わ せ」と比べ、問題を抱えた当事者と指導する立場の第三者と の間で行われる例が多い。夏目漱石の『坊っちゃん』では 「此ーを受けた時、行きましょうと即席に返事をした」と、 校長から就職の話があったときにこの語を用いている。 打ち合わせ・協議・Q話し合い そうち【装置】一定の目的を果たすために設置された機械や <597> 道具をさし、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢 語。〈爆破—〉〈舞台—〉〈記憶—〉〈簡単な—を取り付け る〉②大岡昇平の『俘虜記』に「私は銃をとりその安全—を はずした」とある。JQ仕掛け・設備 そうちく【増築】既存の建物に新たに部屋などを建てて広く する意で、会話にも文章にも使われる漢語。「して店を広 げる〉〈子供部屋をーする〉Q改築・新築 そうちょう【荘重】音楽・口調・雰囲気などが厳かで重々し いの意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢 語。「な調べ〉へな雰囲気をかもしだす」厳か・厳粛・森 厳・Q崇高・荘厳 そうちょう【増長】好ましくない現象がさらに甚だしくなる 意で、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。〈あ おられて不安がーする〉(甘やかすとわがままがーする〉 〈人気が出てますますーする〉「つけあがる」と違い、他 人の言動と無関係に、自分のやることが成功したりして思 い上がる場合も含まれる。ひつけあがる そうてい【想定】ある条件や場面、ありうる事態や状況を推 測し、仮にそうである場合を考えることをさし、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈外の出来事〉(万一の場合 をーする〉(その程度は—の範囲内だ〉(万一の場合をーし て避難訓練を行う〉(地震の発生をーした訓練)中谷宇吉 郎の『立春の卵』に「静かに何遍も調整を繰り返す必要があ る。そういうことは、卵は立たないものというーの下では ほとんど不可能であり、事実やってみた人もなかったので あろう」と述べ、人類の盲点を指摘した。「仮定」に比べ、 そうどう 可能性のありそうな雰囲気が強い。Q仮定・前提 そうてい【贈呈】お贈りする意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈ー式〉〈花束をーする〉直接相手に手渡 す場合などにしばしば使われ、「進呈」より改まった正式の 感じになりやすい。専寄贈・謹呈・献上・献呈・進上・Q進呈 そうてん【装填】中に詰めて使用に備える意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い専門的な漢語。ヘピストルに弾 丸を—する〉〈カメラにつけルムを—する〉入れる・Q挿入・ 導入 そうてんねんしょくえいが【総天然色映画】「カラー映画」の 意で、廃語に近い古めかしい語。「天然色映画」をさらに 強調したことば。そのぶん、さらに古さが際立つ。ひQカラ ー映画・天然色映画 そうと【壮図】壮大な計画の意で、主に硬い文章に用いられ る、やや古風な漢語。〈ーを抱く〉〈ーむなしく引き返す〉 ひ壮途 そうと【壮途】希望に満ちた勇ましい門出の意で、主に硬い 文章に用いられる古風な漢語。「ーに就く」「ーを祝す」 そうとう【相当】程度が甚だしい意で、会話にも文章にも使 われる漢語。「の覚悟が必要だ」〈問題が難しかったよ うだ》「かなり」の程度を超えている感じがある。「時価 百万円の品」のように、あてはまる意にも、また、「それ ーの謝礼」のように、釣り合う意にも使われる。しかなり そうどう【僧堂】禅宗の寺で僧が座禅をしたり日常の生活を 営んだりする建物をさし、会話にも文章にも使われるやや <598> そうどう 専門的な漢語。〈1の修行〉巻徳庵・Q僧坊 そうどう【騒動】大勢の人間が騒ぎ立てて社会の秩序が乱れ ることをさし、会話にも文章にも使われる漢語。米ー 〈お家ーが持ち上がる〉〈ーを鎖める〉〈ー持ち上がる〉 〈ーを巻き起こす〉〈ーに発展する〉酔っ払いがわめいて 騒いでもそれだけでは「騒動」にならず、何らかの対立があ り「騒ぎ」より大きな規模を思わせる。夏目漱石の「坊っち ゃん」に「堀田がおれを煽動してーを大きくしたと云う意 味なのか」とある。退乱・Q騒ぎ・騒乱 そうなん【遭難】海・空・山などで災難に遭って生命の危険に 曝される意で、会話にも文章にも使われる漢語。着陸に失 敗して—する)現代では、「山で—する」「者の救助に 向かう」など、ほとんどが登山中の事故を連想させる。刂被 害・Q罹災 そうにゅう【挿入】間に挾み込んで入れる意で、いくぶん改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈一句〉〈解説の文章 に図表を—する〉入れる・Q装填・導入 そうばん【早晚】「遅かれ早かれ」の意で、改まった会話や文 章に用いられる、少し古風な漢語。「家を継ぐことにな る」〈ー引退は避けられない〉の井上靖の『氷壁』に「君は ー辞表を書かなければならんだろう」とある。遅かれ早か れ ぞうひん【臓品】盗品や詐欺・横領・賄賂などの犯罪行為によ って入手した品物の意で、主に法律関係の専門的な会話や 文章に用いられる硬い漢語。「一の売買に手を貸す」へーを 横流しする」総称という感じの強い「臓物」と比べ、 個々の物品が意識される。Q臓物・盗品 そうふ【臓腑】「五臓六腑」の総称で、西洋医学が導入され る以前の古い漢語といわれる。森鴨外の『山椒大夫』に 「ーが煮え返るようになって」とある。五臓六腑・臓器・臓物・ Q内臓・はらわた・もつ そうぶつ【贓物】贓品の総称として、法律関係の主に専門 的な会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ー故買の罪〉〈ー を売り渡す〉の個々の盗品などを意識させやすい「贓品」に 比べ、法律に規定されたそのような枠組みを連想させ、そ れだけ抽象的に感じられる。「ぞうもつ」とも読む。马Q贓 品・盗品 そうほう【双方】対立または相対している二者をさし、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈—が歩み寄る〉〈—の 意見をよく聞いてまとめる〉〈—の思惑が一致する〉の両 方より正式な感じの硬い表現で、主に人や組織について 使う。「一方」「片方」と対立。両者両人・Q両方・両名 そうぼう【僧坊(房)】僧やその家族の居住する家屋をさし、 改まった会話や文章に用いられるやや古風な漢語。へーの建 ち並ぶ大寺院)僕庵僕堂 そうほん【草本】「草」またはその総称として学術的な会話や 文章に用いられる植物学の専門的な漢語。〈川辺に自生する ーの一つ〉刂草 そうみ【総身】体の隅々まで全部の意で、会話にも文章にも 使われる古めかしい言い方。(大男ーに知恵が回りかね) 「そうしん」とも読む。渾身・Q全身・満身 そうむ【総務】その組織全体の運営事務を扱う仕事をさし <599> 会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈一部〉 山崎豊子の『華麗なる一族』に「一部長が芥川常務に何事か 耳元で報告し」とある。専事務・Q庶務 そうめい【聡明】賢く理解力に秀でている意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。人生まれつきな人(な対 処小林秀雄の『実朝』に確かに非常にな人物であっ たがそのは教養や理性から来ているというよりむし ろ深い無邪気さから来ている」とある。個々の判断・行為に 重点のある「賢明」に比べ、生来の知的能力に対する高い評 価という面が中心。頭のよさだけを問題にしている「賢い」 よりも人間としての総合的な評価が高い感じが伴う。賢 い賢明・Q利口・利発 そうもつ【臓物】動物のはらわたの意て、会話にも文章にも 使われる漢語。〈鶏の—〉〈一の串焼き〉横光利一の『春 は馬車に乗って』に「運好く瑪瑙のようなーを氷の中から出 される」とある。獣・鳥・魚について特に食品の場合に用い ることが多い。五臓六腑・臓器・臓腑・内臓・はらわた・Qもつ そうよ【贈与】金品を贈り与える意で、改まった会話や文章 に用いられる専門的な漢語。〈一税〉〈資産のーを受ける〉 の「譲与」に比べ、個人的な感じが強い。Q譲渡・譲与・譲る そうらん【争乱】争いが起こって世が乱れる意で、主に文章 に用いられる古い感じの漢語。〈戦国ーの世〉個々のケー スをとりあげる「騒乱」に対し、全体としての大きなスケー ルで使う。騒乱・乱れる そうらん【騒乱】騒ぎで世の秩序が乱れる意で、主に文章に 用いられる硬い漢語。〈卜罪〉へーを起こす〉へーを鎮める ゆ混乱・騒ぎ・騒動・争乱・乱れる そうりょく そうらん【総(綜)覧】すべてを見る意で、硬い感じの文章に 用いられる公的な雰囲気の漢語。〈法令—〉も総攬 そうらん【総攪】一手に掌握する意で、主に文章に用いられる、古い感じの硬い漢語。〈国政を—する〉〈権力を—する〉 ひ総覧 そうり【総理】総理大臣の略称として、主に会話やさほど改 まらない文章に使われる漢語。「の椅子に座る」「のイ ンタビュー」「の座を射止める」専宰相・Q首相・総理大臣・内 閣総理大臣 そうりだいじん【総理大臣】内閣総理大臣の略で、会話にも 文章にも使われる漢語。「の座に就く」も宰相・首相・総理・ Q内閣総理大臣 そうりつ【創立】学校や会社などを新たに立てる意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈出版社の—記念日〉〈大学の 前身である専門学校を—した〉の「創設」「開設」「新設」よ り大規模の感じがある。開設・新設・設立・Q創設 そうりよ【僧侶】出家して仏門に入った人をさし、主に文章 に用いられる改まった感じの漢語。〈一の位〉〈修行を積ん でーになる〉凡和尚転住持・住職・Q僧・坊主 そうりよく【総力】各部の力の総体、組織や団体が全体とし て持っているすべての力をさし、改まった会話や文章に用 いられる、やや硬い感じの漢語。へーを結集する〉へー戦の 様相を呈する〉〈社のーをあげて取り組む〉個人単位の 「全力」に比べ、個々の力の総和としてとらえた感じが強い。 会社を一つの単位と考えれば「全力」となるが、社内の各部 <600> そうれい 署の力を集めると考えれば「総力」となる。ひ全力 そうれい【葬礼】「葬式」の意で、主に文章に用いられる、や や古風で改まった漢語。〈ーに参列する〉の「葬儀」以上に 重々しい感じの表現。呂告別式・葬儀・葬式・弔い そうわ【挿話】文章や談話の中に挾み込まれる、話の本筋と 関連が薄く物語のプロットに直接関与しない短い話をさし、 主に文章中に用いられる専門的な和語。への盛り込まれ た伝記》井伏鱒二の『休憩時間』に「こういう類のーを誰 から教えられたかは忘れてしまったが、そういう物語だけ はことごとく記憶してそれは事実であると信じた」とある。 なお、丘の上の庄野潤三邸で『静物』における挿話の配列順 について問うと、「作者の中にある美的世界を築くために は、その順序とか間の空白が必然的なものでなきゃならな い」と作者自身が語った。単なる「逸話」や「エピソード」 との違いである。Q逸話・エピソード ツーン一定の基準のもとに明確に区切られた範囲をさし、 会話にも文章にも使われる外来語。〈スクール〉へミステ リー〉〈ストライク〉〈セーフティー〉〈エリア そがい【阻害(碍)】妨げる意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈発展を—する〉〈工事の進行を—する〉 马疎外 そがい【疎外】のけものにする意で、会話でも文章でも使わ れる漢語。〈感を味わう〉(よそ者としてーされる)谷 崎潤一郎の『金と銀』に「世間からーされ」とある。ひ阻害 ぞく【賊】悪者、特に「泥棒」の意で、古めかしい漢語。〈一 が侵入する〉(ーを捕らえる)森鷗外の『半日』に「何処 かの家へーがはいって」とある。人をさし、行為だけはさ さない。弔盗・Q盗賊・泥棒・ぬすっと・ぬすびと・物盗り ぞくあく【俗悪】低級で良識に欠ける意として、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈一番組〉〈な雑誌〉〈な 趣味〉下品・下劣・通俗・Q低俗・低劣・卑俗・野卑 ぞくがら【続柄】「続き柄」の意で時に会話に使われる俗っぽ い語形。〈書類にーを記入する〉の日常語でないため専門的 で正式な感じに響くこともあるが、「つづきがら」の意の 「続柄」という表記を、送り仮名がないために誤読したもの か。刂間柄・関係①・関連・Q続き柄 ぞくご【俗語】標準的な日語に対し、公式の場では通常用い ない俗っぽいことばをさし、会話にも文章にも使われる漢 語。〈硬質の漢語の中にーが交じる〉風雅な趣のある「雅 語」に対し、日常生活に普通に使う話しことばをさす用法 は古めかしく響く。ひ卑語 そくさい【息災】健康で無事な意で、会話にも文章にもまれ に使われる古めかしい漢語。〈無病—〉へ一病—〉古井由 吉に『息災』と題する小説がある。児元気・健康・健勝・健全・丈 夫・健やか・壮健・Q達者 そくし即死事故などによりすぐその場で死ぬ意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈交通事故でーする〉ほとん どーの状態〉「頓死し」以上に急激な死をさす。Q急死・ 急逝・頓死 そくしん【促進】物事が早く進むようにする意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈開発をーする〉〈販売 をーする〉専促す <601> ぞくじん【俗人】高尚な生き方と縁遠く、名声や出世や物欲 を追い求める普通の人間をさし、やや改まった会話や文章 に用いられる、やや古風な漢語。「臭」の理解を超え た澄み切った境地風流を解さない人の意にも用いる。 古くは、僧でない一般の人の意にも用いた。 ぞくじん【俗塵】俗世間の汚れや俗事の煩わしさをさし、主 に文章中に用いられる、いくぶん古風な漢語。〈ーを払う〉 〈ーにまみれる〉〈ーを離れた一角〉石川淳の『普賢』に 「ーに巻きこまれるのが常」とある。Q巷塵詩・黄塵・紅塵 そくせい【促成】人工的に生長を早める意で、会話でも文章 でも使われる、やや専門的な漢語。〈野菜のー栽培〉迅速成 そくせい【速成】短期間で仕上げる意で、会話でも文章でも 使われる漢語。〈数学のー講座〉〈技術者をーする〉促成 そくだん【即断】すぐその場で決める意で、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ー即決〉〈ーを下す〉〈ーを しぶる〉迅速断 そくだん【速断】すばやく判断する意で、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ーを要する〉〈ーに過ぎる〉 即断 そくど【速度】「速さ」の意で、やや改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈ー計〉〈制限ー〉〈ーを上げる〉〈ーを速め る〉〈ーを落とす〉〈ーを殺す〉物理学の専門語としては、 物体の位置が時間とともに変化する割合をさす。木山捷平 の『大陸の細道』に「まるで富士山から岩石でもころがすよ うな急ーで、病気が二つも同時に発作をおこした」とある。 ひスピード・Q速力・速さ そくりょく ぞくとう【統投】途中で交代せず同じ人が引き続き担当する 意で、野球用語の拡大用法。内閣不信任案を否決して首相 がーする〉〈経営不振に陥り、社長のーが難しくなる〉野 球で投手を交代させず同じ投手がそれ以後も投げ続ける意。 転じて、野球に限らず、一般に「重要なポストにある人物が 以後も引き続きその任にあたる」という意味にも用いるが、 まだ野球のイメージがつきまとう。 そくばく【東縛】行動する自由を制限する意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈自由を—する〉〈行動を—される〉 へーを受ける〉福永武彦の『草の花』に「ーされた日常を 課せられている人間」とある。「拘束」に比べ、制限を受け ない自由な部分が少し残っている感じがある。豊監禁拘束・ 软禁幽閉 ぞくはつ【統発】続け様に発生する意で、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈同種の事件が—する〉「連 発」に比べれば間隔が少し長く、回数もいくらか少ない感 じがある。巻群発・多発・頻発・Q連発 そくめん【側面】物体の横の面をさし、学術的な会話や文章 の中で用いられる専門的な漢語。〈図〉へに光を当て る)「ーからの援助」のように目立たない形をさしたり、 「教育というーでは」のように考察対象となる部分をさした りする抽象化した用法ではやや硬い感じになるが専門的な 雰囲気は消える。Q面 そくりよく【速力】「速さ」の意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。〈全ーで走る〉〈飛行機のー〉〈ーを増 す〉〈ーが落ちる〉木山捷平の『河骨』に「その足並みは <602> そこ 「歩一步等差級数のように」を増して行く」とある。「速 さ」「速度」「スピード」が物体の移動速度そのものをさす のに対し、「機械が古くなってめっきり」が落ちた」の例 が、遅くなった現象の奥に能力の衰えで機能が鈍ったこと を連想させるように、この語は単なるスピードだけではな く、背後にある能力を含意している感じがある。スピー ド・Q速度・速さ 「底」周囲や表面から離れた深さのある場所や物の最も深い部分をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。《海のー〉《鍋のー〉〈ーが浅い〉〈ーまで届く〉〈ーが抜ける〉の横の関係である「奥」に対し、この語は縦の関係をイメージさせ、芥川龍之介の『羅生門』の末尾に「急な梯子を夜のーへかけ下りた」とあり、川端康成の『雪国』の冒頭にも「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜のーが白くなった」とあり、同じ「夜の底」という表現が見られる。永井龍男の『蚊帳』に「みんな寝静まった真夜中に、闇のーがほんのり明るんで、また暗くなる」とある。三浦哲郎の『愛しい女』には「その薄暗がりのーには、雪野が白い海のようにひろがっていた」となっている。なお、器などの場合は内側も外側もいう。「景気がーをつく」「腹のーから声を出す」「心のーで嘲笑う」のように抽象的な用法もあり、夏目漱石の『坊っちゃん』も「うらなり君はどこ迄人が好いんだか、殆んどーが知れない」とある。Q奥・底面・内奥 そこ【鮨】事柄や考えなどが合わずうまく行かない意で、 主に硬い文章に用いられる漢語。〈性格のー〉〈感情のー〉 〈計画にーを来す〉〈言動にーが見られる〉②歯の噛みあわ せが悪い意から、本来ならうまく合うはずのものがずれて 噛み合わない意に拡張。一人の話や説明や言行などに生じ た場合は矛盾感が出る。Q食い違い・ずれ・行き違い そこいら【其処いら】「その辺」の意で、くだけた会話に使わ れる俗語。「でやめとこう」の「そこら」や「そこらへん」 以上に俗っぽい感じがある。Qそこら・そこらへん・そのへん そこう【素行】常日ごろの行いの意で、やや改まった会話や 文章に用いられる、やや古風な漢語。「調査〉「不良〉 〈日ごろのーが悪い〉②道德的な観点から取り上げられ、ど ちらかというと問題のありそうなケースによく使われる。 行状・Q操行・品行・身持ち そこかしこ【其処彼処】「あちらこちら」の意で、改まった会 話や文章中に用いられる古風な和語。へに春の気配を感 じる)文学的な雰囲気があり、趣のある叙述内容になじ む。あちこち・あちらこちら・Qここかしこ そこく【祖国】先祖代々暮してきた国をさして、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ーを離れる〉(さらばーよ) ②自国を離れたときに使い、「母国」以上に思い入れが強 い。移民の場合、二世以上の人にとっては、自分自身でなく 先祖の住んでいた国にあたる。母故国・自国・Q母国・本国・本土 そこぢから【底力】普段は見えないがいざというときに出て くるその人の秘めた強い力をさし、会話やさほど硬くない 文章に用いられる和語。〈ーを示す〉(終盤になってーを見 せる〉(ーを発揮する)の「地力」に比べ、そなわっている という印象が強い。実力・Q地力・能力 <603> そこつ【粗忽】不注意による過ち、また、そういうことの多 い性格をさし、主として文章に用いられる古めかしい漢語。 〈ー者〉へーな振る舞い〉へーを詫びる〉り慌て者・おっちょこち よい・軽はずみ・軽率・Qそそっかしい そこなう【損(害)なう】望ましい状態を失う意で、やや改ま った会話や文章に用いられる和語。〈健康を—〉〈機嫌を ー〉〈美観を—〉安岡章太郎の『海辺の光景』に「せっか くの上機嫌をー・いたくはなかったが」とある。「器物を—」 のように具体物に用いると少し古風で硬い感じに響く。 損ねる そこねる【損ねる】「損なう」より少しくだけた感じで、会話 や軽い文章に使われる和語。〈健康を—〉〈機嫌を—〉〈景 観を—〉専損なう そこら【其処ら】「その辺」の意で会話に使われるくだけた日 常語。〈一の店で買う〉、そこいら・Qそこらへん・そのへん そこらへん【其処ら辺】「その辺」の意で、くだけた会話に使 われる俗っぽい表現。〈ーがいいとこだろう〉「そこら」 より俗っぽいが「そこいら」ほどではない。そこいら・そこ ら・Qそのへん そざい【素材】物を作る時にもとにする材料をさし、やや改 まった会話や文章に用いられる、いくぶん硬い感じの漢語。 〈一は羊毛百パーセント〉へ一の味を生かした調理法〉〈彫刻 の一となる大理石〉の「小説の一を吟味する」のように、 「題材」の意味でも使い、その場合はより専門的な響きがあ る。Q材料・資料・題材 そざつ【粗雑】注意が行き届かず粗っぽいさまをさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈仕上げがーだ〉〈計画がーで このままでは実行に移せない〉梶井基次郎の『冬の蠅』に 「明るい南の海の色や句いはなにか私には荒々しくーであっ た」とある。ひQ雑・雑駁・杜撰 そしっ そし【阻(沮)止】阻んで止める意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い漢語。〈違法活動を—〉〈実力で—する〉 〈ライバルの進出を—する〉、食い止める・Q阻む そじ【素地】発展や大成のもとになる素質や素養の意で、や や改まった会話や文章に使われる、いくぶん古風な漢語。 〈芸事のーができている〉〈大物になるーがある〉〈将来の 繁栄のーをつくる〉夏目漱石の『明暗』に「そういうーを 作っておいた自覚が十分にあった」とある。「下地」に比べ、 経験や努力で身につけた基礎力以外に、生得の適性や能力 を含む感じが強い。下地 そしき【組織】人や物などを何らかの目標に向かって個々の 力が機能するように体系だって組み合わせる意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈図〉〈細胞〉〈会社の〉 〈の力〉〈を動かす〉機関・機構・組み立て・Q構成・構造・仕 組み そしつ【素質】持って生まれた性質や才能のうち将来あることで活躍するのに資する部分、学問・芸術・スポーツなどに適した能力や性質をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 へーを遺憾なく発揮する〉〈芸術家のーがある〉〈アスリートとしてのーに恵まれている〉〈すぐれたーを見抜く〉〈を伸ばす〉の芥川龍之介の『あの頃の自分の事』に「論理を待って確められたもののみが、真理である事を認めるには、 <604> そして 余りに我々は人間的なーを多量に持ちすぎている」とある。 ひ才能・Q資質・能力 そして【然して】前を承け、それに続いてという意味合いで 次につなげる機能をもち、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常生活の基本的な接続詞。〈英国に留学 し、一、五年後には博士の学位を取得して帰国した〉〈真っ 青な空に流れる雲、一見渡す限りの白樺林〉の感情のこもっ た「そうして」に比べ、簡潔で客観的な感じがする。武者小 路実篤の『友情』に「自然はどうしてこう美しいのだろう。 空、海、日光、水、砂、松、美しすぎる。かもめの飛び方 のいかにも楽しそうなことよ。一人間にはどうしてこんな に深いよろこびが与えられているのだろう。まぶしいよう な。」と流れる一節がある。どちらの「そして」も「そうし て」より率直な感じに響く。りそうして そしよう【訴訟】訴えに応じてその争いことを裁判所が法律 に基づいて解決する手続きをさし、改まった会話や文章に 用いられる、やや専門的な感じの漢語。〈事件〉〈刑事〉 〈手続き〉〈を起こす〉〈を取り下げる〉専訴える・Q告 訴・提訴 そしる【謗(誹・譏)る】他人の言動を悪く言う意で、会話にも 文章にも使われる、やや古風な感じの和語。〈怠慢を」 〈態度を」②「なじる」と比べ、激しく問い詰める感じは 弱い。Qなじる・ののしる そせい【蘇生】生き返る意で、改まった会話や文章に用いられるやや硬い感じの漢語。〈「術〉〈人工呼吸でーする〉 〈倒産寸前の企業が公的資金の導入でーする〉ひ生き返る・Q 蘇る そぜい【租税】「税金」の意で、まれに文章に用いられる正式 な感じの硬い漢語。〈ー収入〉〈ー負担率〉〈ー効果〉の「 関連の法律」のように、制度などに言及する際に公的な場 で用いられ、日常生活ではほとんど使わない。単税・Q税金 そせん【祖先】「先祖」とほぼ同義で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈ー崇拝〉〈ーを敬う〉〈ーの御霊を祭る〉 ②具体的なイメージの「先祖」に比べ、総合的・抽象的なと らえ方で、「人類のー」とも言うように、家系の代々の故人 をさす場合でも遠い代のほうを意識させやすい傾向がある。 単先祖 そそ【楚楚】清らかで美しいようすをさし、改まった会話や 文章の中で用いられるやや古風な漢語。へーとした優雅な 女性〉谷崎潤一郎の『細雪』に「弱々しいが、ーとした美 しさを持った顔」とある。語義の上では男女に共通する状 態をさすが、伝統的に若い女に対して用いることが多かっ た関係で、「貞淑」ほど女性専用というわけではないが、 「ーとした感じの青年」といった表現には語義上の問題はな いのに、語感の点で多少の違和感を覚える。「ーとした野 郎」「ーとした陸軍将校」といった表現の滑稽感はそこから 生じる。Q清楚・貞淑 そそう【粗相】失禁の意で、主に改まった会話や文章に用い られる漢語。〈子供がーする〉軽率な失敗という広い意味 のため、間接性が大きく露骨な感じを免れるだけに丁寧な 感じがする。「お漏らし」同様、不注意という面が強くな る。ひQお漏らし・失禁 <605> そそぐ【注ぐ】液体を流し入れる意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈お湯を—〉〈花瓶に水を—〉〈火に油を—〉 佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「竈」の底の灰の上へ思いきっ てあるだけの石油をー・いで」とある。「注意を—」「愛情を 」「視線を—」のような抽象的な用法もあり、「最上川が 日本海に—」のような自動詞用法もある。 そそぐ【會ふ】→すすぐ そそくさある状況になって落ち着かなくなる意で、主に会 話に使われる和語。〈形勢が悪くなってーと引き上げる〉の はっきりした理由があって心理的にその場に居にくくなる ような場合によく使う。ひQあたふた・せかせか・そわそわ そそっかしい態度に落ち着きがなく不注意な間違いの多い 意で、主に会話に使われる和語。人生まれつき性格〉へ 人間で軽はずみな行動が多い》横光利一の『紋章』に「気 をつければつけるほど普段のーところが不意に現われて」 とある。帰帰て者・おっちょこちょい・軽はずみ・軽率・Q粗忽 そそのかす【唆(嗾)す】おだてたり騙したりして悪いことを するように仕向ける意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈犯行をー〉〈カンニングをー〉安岡章太郎の『海辺の光 景』に「はじめから損になるのを承知で自分をウマくー・し て買わせたのだ」とある。帰る・けしかける・指帳・扇動・Q たきつける そそりたつ【そそり立つ】険しい岩山などが見上げるように 高く荒々しい感じで突き立つ意で、改まった会話や文章に用 いられる和語。〈一岩壁〉〈ひときわ高く〉「そばだつ」 以上に高く峻険しみんな感じがある。Qそばだつ・そびえる そち そぞろ【漫ろ】「何となく」の意で、主として文章中に用いられる古風な和語。〈步き〉〈身にしむ〉〈昔を思い出す〉谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に「ともし火の穂のゆらめきを映し、静かな部屋にもおりおり風のおとずれのあることを教えて、に人を瞑想に誘い込む」とある。なお、「心もー気もー」のように、何となく落ち着かない気持ちをさす用法もある。Qいわれもなく落ち着かない片付かない・そわそわ・何だか・何となく そぞろあるき【漫ろ歩き】あてもなくのんびりと歩く意で、 主に文章に用いられる古風で優雅な感じの和語。春の夕暮 れのーに最適のコース)頬義語の中で最ものんびりした 感じがあり、健康のための歩行などとはなじまない。専散 策・散歩・Q逍遥 そだち【育ち】環境の影響による成長の具合の意で、会話や 軽い文章に使われるいくぶん古風な和語。〈田舎—〉〈氏 より—〉〈—がいい〉〈—がわかる〉②大人になってから子 供のころの家庭環境を判断している感じがある。卫生い立ち そだてる【育てる】世話をして成長を助ける意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈子を—〉〈草花を—〉〈部下を—〉〈才能を—〉③中勘助の 『銀の匙』に「伯母さんは私を—のがこの世に生きている唯 一の楽しみであった」とある。はぐくむ をち【措置】起こった事態を適切に収めるために必要なこと を行う意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの 漢語。〈緊急—〉〈予算—を取る〉〈ーを講じる〉「処置」 より抽象的で正式な感じがある。阿川弘之の『雲の墓標』 <606> そっぎょう に「思いやりのあるーというものがまったく見られない」とある。単処置 そつぎょう【卒業】学校などの所定の課程をすべて終える意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる漢語。 〈一式〉〈一証書〉〈一論文〉〈一生〉〈大学を一する〉夏 目漱石の『坊っちゃん』に「苦情を云う訳もないから大人し くーして置いた一とある。「入学」と対立。ひ修了 そっくり似ていて区別がつかない意で、会話やさほど硬く ない文章に使われる日常の和語。まるで本物だ《顔が 父親だ《字を真似る》堀辰雄の『大和路』に「僕の 考えていたものとーそのままなのだ」とある。「借りた金を 返す」「鞄ごとー盗まれる」のように、全部の意にも使 う。生き写し・Q瓜二つ そっくりかえる反っくり返る】上半身を後ろに反らす意で、 主に会話に使われる和語。〈社長の椅子に」板が乾燥し て反るようすにも使われるが、その場合は「反り返る」とい うことが多く、この語は椅子に掛けて後ろに反り威張った 態度をするイメージが強い。込踏ん反り返る そっけない【素っ気無い】無愛想で相手に対する行為や思い やりが感じられない意で、会話やさほど硬くない文章に使 われる和語。〈一態度〉〈卜・く答える〉「素気無い」の別 語形とも。ひQすげない・つれない・無愛想・ぶっきらぼう 「即効」その場ですぐに効果が出てくる意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈葉〉〈景気回復に の期待される政策〉迅速効 そっこう【速効】効き目が速い意で、改まった会話や文章に 用いられる、やや専門的な漢語。〈性の肥料〉ひ即効 ぞっこう【続行】途中まで行ってきたことを中断せずにその まま引き続き行う意で、改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈雨が降り出しても試合を—する〉へ一定の結論に達 するまで会議を—する)それまでのことが一段落した時 点で次の判断をする感じのある「継続」に対し、この語は一 つのことが継続中に途中で予期せぬ障害などが生じた際に 下す判断。ひQ継続・断続・連続 そっこく【即刻】「すぐ」に近い意味で、改まった会話や文章 に用いられる硬い漢語表現。〈ー中止〉〈ー退去せよ〉〈ー クピだ!〉②辻邦生の『天草の雅歌』に「ー、切腹仰せつけ になるだろう」とある。「すぐ」や「ただちに」よりも時間 的余裕を許さない強い響きがある。単直ぐ・Q直ちに ぞっこん心の底からの意の古めかしい俗語。〈—惚れ込む〉 〈あの女に—参っている〉 そっちよく【率直】飾らずに正直な意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈な態度〉〈に意見を言う〉〈自分の非 をに認める〉他の類義語が実際の状態や話し方をさす のに対し、この語は物事に対する姿勢が中心。あけすけ 有り体・ありのまま・Qあるがまま・ざっくばらん そっと音を立てないで、そのまま、きわめて軽くの意で、 会話や硬くない文章に使われる和語。〈ー耳打ちする〉へー しておく〉〈ーさわる〉りうちうち・こそこそ・Qこっそり・内緒・ 内々・内密・ひそか そっとう【卒倒】脑出血や強いシックで意識を失う意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈血を見ただけでーする〉 <607> 〈殴られてーする〉 尻気絶・Q昏倒・失神・人事不省 そっば反「出」の意で、会話や硬くない文章に用 いられる、いくらか古風な感じのある和語。へいくぶんーの 気味がある)三島由紀夫は「仮面の告白」で「彼女の前歯 はこころもちだった」とし、「そのこころもち反っている さまは、いおうようない愛嬌を笑いに添えた」と展開する。 「反り歯」の転。ひ出っ歯 そのした【袖の下】「賄賂」の意で、主に会話に使われる古 風で俗っぽい和語。〈ーを使う〉の昔、人目をはばかって袖 の下からそっと差し出したところから。今でもそれに合わ せてしばしば「ーをつかませる」「ーを握らせる」という言 い方をする。ひ鼻薬はなりべート・Q賄賂 そと【外】囲われていない場所や無関係なところをさしく だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の最も基 本的な和語。〈一の空気〉〈一に出る〉〈一で遊ぶ〉〈一の人 間〉森鷗外の『普請中』に「窓を開けて、一を眺めた」と ある。「うち」と対立。ひ外部 そなえる【備(具)える】必要な設備などを据えつける意で、 いくぶん改まった会話や文章に用いられる和語。〈調度品を ー〉〈冷暖房の設備をー〉の太宰治の『富嫌百景』に「茶店 では、ストオヴをー・えた」とある。「設ける」より小規模な 場合が多い。「災害にー」「試験にー」のように、用意を整 える意にも、「性質をー」「条件をー」のように、有してい る意にも使う。ひしつらえる・設ける そなわる【具備)わる】そこにもともとある意で、会話にも 文章にも使われる和語。人生まれつきー・っている)〈気品 そのへん がー〉〈素質がー〉〈条件がー〉具備・Q具有 それむ【嫉む】主として文章に「ねたむ」意で用いられる古 風な和語。〈隣家の贅沢ぶな暮らしぶりを—〉〈後輩が抜 擢ぶされたのを—〉小津安二郎監督の映画『麦秋』で会社 の専務(佐野周二)が「ー・めー・め!売れ残りがふたり集ま って」と笑いながら部下の女性をけしかける。単に文章語 を会話に持ち込んだというだけでなく、この命令形の使い 方などは冗談かと思うほど今では相当に古めかしい印象を 与える。りねたましい・Qねたみ・嫉妬 そのうえ【其の上】前に述べた内容にさらに同じ方向の内容 が積み重なるときに、やや改まった会話や文章に用いられ る和語。ヘこの春は一流企業に就職でき、一婚約もととのっ て二重にめでたい)〈夏に地震で被害を受け、秋には台 風に襲われるダブルパンチ)日常語の範囲に入るが「そ れにより少し改まった感じになる。おまけに・Qそれに そのうち【其の内】そう遠くない日にの意で、会話や軽い文 章に使われる和語。へー何とかなるだろう〉へーまた会お う〉ほっといてもー治る》志賀直哉の『暗夜行路』に 「ー女の人は、ふと彼から見られていることを感じたらし く」とある。ひいずれ②・追って・近々だ・じきに・程なく・間も無 く・Qやがて そのへん【其の辺】その近く、その程度、その方面を漠然と さして、会話にも文章にも使われる日常語。へどこかーにあ るはずだ〉へーが妥当なところだ〉へーの事情がよくわから ない》団坪田譲治の『風の中の子供』に「立って、ーを歩い て見る」とあり、弟の居そうな場所を探す場面で、近くを漠 <608> そば 然とさすのに用いている。そこいら・Qそこら・そこらへん そば【側(傍)】基準となる人や物からすぐ近くの意で、会話 やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈すぐに ある〉(川のに建つ家〉(で心配そうに見つめる)囲坪 田譲治の『風の中の子供』に「お辞儀をしてに坐る」とあ る。「近く」より距離が近く、「隣」や「脇」ほどぴったり寄 らなくてもよい感じがある。また、「隣」や「かたわら」と 違って必ずしも横でなく前後に位置してもよく、特に方向 の制限は意識されない。Qかたわら近所近辺近隣近く 隣・脇 そばかす【雀斑】顔面などに細かい点として生ずる褐色の色 素の小斑点をさし、会話にも文章にも使われる和語。「が 出る〉(だらけの顔)森田草平の『煤煙』に「窶れたせ いか、以前は左程でもなかったーが目に立って、顔が汚く見 える」とある。見しみ そばだつ【峙(驚)つ】険しい山や岩などが周囲から抜きん出 て高く目立つ意で、主として文章中に用いられる古風な和 語。〈連山の奥に—霊峰〉の「そびえる」に比べ、険しく荒 っぽいイメージがある。Qそそり立つ・そびえる そばづえ【側(傍)杖】自分に直接の関係がないことから思わ ぬ損害をこうむる意で、会話や軽い文章に使われる、やや 古風な和語。〈そのーを食らってえらい迷惑を受ける〉回喧 嘩で振り回した杖が偶然脇にいた無関係な人に当たること から。Qとばっちり・巻き添え そびえる【聳える】山・大木や城・ビルなどの高層の建物など がひときわ高く目に立つ意で、会話にも文章にも使われる 和語。〈高山が—〉〈けやきの大木が—〉〈城山に—天守閣〉 〈高層ビル群の—大都会〉単に形状をさす「そそりたつ」 「そばだつ」に比べ、高く評価している感じが漂う。Qそ そり立つ・そばだつ そびょう【素描】鉛筆や木炭などで簡単に描いた下書き用の 絵をさし、主に文章に用いられる古風な漢語。木炭で人物 をーする) ひ下絵・写生・スケッチ・Qデッサン そぼう【粗暴】他人に危害を加える恐れのあるほど性格や行 動が荒々しい意で、主に文章に用いられる硬い漢語。へーな 性格〉へーな振る舞い〉へーで手がつけられない)込々し い・荒い・荒っぽい・がさつ・粗野・野蛮・Q乱暴① そほうか【素封家】代々続いた金持ちの意で、主として文章 に用いられる古風な漢語。へーの家に生まれる《町でも屈 指のー〉官職や領地はないが巨大な富を有する意。大金 持ち・金持ち・金満家・Q財産家・長者・冨豪・物持ち そぼく【素朴(樸)】人や物が自然のままで飾り気のない意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈な人柄〉〈な味わ い〉〈な感情〉〈な造り〉大岡昇平の『野火』に「圧制 者に気に入られようとする、人民の「な衝動」とある。「 な疑問」「な考え」のように、深く検討しないの意もあ り、単純で時に幼稚なニュアンスを伴う例もある。み純朴 そまつ【粗末】金をかけず品質が悪い意で、会話にも文章に も使われる日常の漢語。〈な身なり〉〈な食事〉失 敗の連続というおー」のように、出来がみともない場合に も使う。また、「親をーにする」「命をーにする」のように、 大事に扱わない意でも用い、太宰治の『斜陽』にも「お火を <609> ーにすれば火事が起る」とある。ひおろそか・Q質素 そむく背(叛)く指示・約束・規則・期待などに反する意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈命令にー〉〈教えにー〉 〈親にー〉〈期待にー〉乃裏切る・Q反する そめる【染める】布や紙などに色や色の模様などをつける意 で、会話にも文章にも広く使われる日常の和語。〈布を紺色 にー〉〈髪をー〉四大岡信の『言葉の力』に「桜の花が咲く 直前のころ、山の桜の皮をもらってきてーと、こんな、上気 したような、えもいわれぬ色が取り出せるのだ」とある。 鉛筆画にクレヨンで色をつけたり塀にペンキを着色したり するように物の表面に重ねる場合は、この語も使えないこ ともないが「塗る」のほうがなじむ。「染める」の場合は 「染め物」のように液体が内部に浸透する連想が働く。悪に どっぷりと浸かって次第に「悪に染まる」のも同じイメージ だろう。専染色 そや【粗野】態度や言動が野性的で洗練されておらず無神経 な意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。「な振る 舞い〉へ「な男」も荒々しい・荒い・荒っぽい・Qがさつ・粗暴・野蛮・ 乱暴① そよう【素養】日ごろから修養によって身につけた教養や技 術をさして、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの 漢語。〈漢文のー〉へ絵のーがある〉の「心得」や「嗜なしみ」 に比べ、学問の比重が大きく、実用性よりも知識の面に重 点を置く傾向がある。そのため、「英語の心得」というと英 語が話せるという連想があるが、「英語のー」とすると難し い英文が読めるなり英語に関する学識が豊富な印象がある そらぞらしい が、必ずしも英会話が達者だという連想は起こらない。た だし、文化や学問の比重の高い「教養」に比べれば、より身 近で具体的な技術を連想させやすい。単心得・Q嗜み そら【空】地上から上方に広がる何もない全空間をさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈一模様〉〈一を見上げる〉〈一が明るくなる〉森 田たまの『菜園随筆』に「おぼろ月夜の、はうす絹でつつ んだように、ぼうっと光って果てしなく、月の姿はどこにあ るともわからなかった」とある。高いところだけをイメー ジさせる「天」に対し、低空から上空までいろいろな高さの 空間を含む。「一のかなた」を「天」に換えると違和感があ るし、ほかにも「旅の」「うわの」など「天」に置換で きない例も多い。広空・Q天・天空 そらいろ【空色】晴れた空のような薄めの青をさし、会話に も文章にも使われる和語。「のドレスを身にまとう」日 常生活では「水色」とほとんど区別なしに使っているが、専 門的には、青の明るく薄い調子の範囲を総称する語という。 あまんきみこの『車のいろは空のいろ』は「のびかびかの タクシーが、一台、とまっていましたーと泊まる。水色 そのす【逸(外)らす】自然な向きやそれまでの方向から意図 的に別の方向に変える意で、くだけた会話から硬い文章ま で幅広く使われる日常の和語。〈目を—〉〈勢いを—〉〈ボ ールを後ろへ—〉森鴨外の『雁』に「話を余所にーして しまった」とある。ひ緊す そらぞらしい【空空しい】わざとらしくて本心でないとすぐ わかる意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。 <610> そらっとぼける 〈お世辞〉〈言葉を繰り返す〉白々しい そらっとぼける【空っ惚ける】↓そらとぼける そらとぼける【空惚ける】まったく知らないという振りをす る意で、主に会話に使われる和語。〈ひとごとみたいに—〉 〈何を聞かれてもー・けた応答で相手の追及をかわす〉単 なる「とぼける」より強調され、自分には関係ないという調 子を連想させる。「そらっとぼける」とも言い、その場合は さらに強調され、さらに口頭語的に響く。ヌQしらぼくれる しらを切る・知らんぶり・とぼける・頬かぶり そらもよう【空模様】天気の具合を示す雲の様子をさし、会 話やさほど硬くない文章に使われる表現。〈ーを眺める〉 〈今にも降り出しそうな〉〈ーがあやしくなってきた〉 〈あすのーを見て決める〉夏目漱石の『三四郎』に「安心 して夢を見ているような」とあるが、多くは天気が悪く なりそうな場合に多く使う傾向がある。Q天気・天候 そる【反る】平たい物が弓なりに曲がる意で、会話でも文章 でも幅広く使われる日常生活の和語。〈指が細くてよく—〉 〈日に当たっていつの間にか板が—〉〈体が後ろに—〉〈背 中がびんと—〉②尾崎士郎の『人生劇場』に「パネ人形のよ うにぐっとー・りかえった」とある。しなやかな「しなう」 と違って、肉体の場合は後方のみ、物体の場合は自然に起こ り簡単に元に戻らない感じがある。ひQ撓う・撓む それぞれ【其其(夫夫)】人間一人ひとり、物事一つひとつの 意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。ヘどれもーよく出来ている〉〈一意見を述 べる〉ひひおのおの・各自・めいめい それで「そのような事情から」として以下にかかり、比較的 くだけた会話からさほど硬くない文章に使う和語。「ー、そ のあと二人はどうなったの〉へー、こんな結果になった 「ー、どうしろとおっしゃるのですか」夏目漱石の『坊っ ちゃん』に「ーうちへ帰ると相変らず骨董責である」とあ る。「したがって」はもちろん「だから」よりも因果関係が 弱く、それだけ自然のなりゆきという面が濃く感じられる。 ヌQしたがってだから それとなく【其れと無く】はっきり表現せず遠まわしにの意 で、会話やさほど硬くない文章に使われる言いまわし。へー 伝える〉へー打診する〉へーたしなめる〉ひ暗に それに【其れに】前に述べた内容にさらに付け加えるときに 会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈雨が 降っている。ー、風も強い〉〈なかなか優秀だ。ー、性格も いい〉の「てんぷらにするとうまい。ー、塩焼きにしてもな かなかのものだ」「東京や横浜、ー、大阪や神戸」のように も使え、「その上」や「おまけに」より用法が広い。ひおま けに・Qその上 それる【逸れる】進路や目標などと違った方向に進む意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる和語。「ボールが横に 」〈台風が」〈話が脇道に」志賀直哉の『暗夜行路』 に「気持はいつも」・れて行った」とある。「外れる」と違 い、具体的な動きをさす場合は上下より左右にずれるイメ ージが強い。ひ外れる そろえる【揃える】必要なものをひとそろい集める意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。 <611> 〈全集を—〉〈道具を—〉②「形や色を—」のように、複数の 物の状態などを同じにする意や、「順番を—」のように、順 に並べる意や、「靴を—」のように、きちんと整える意でも 使い、「取り揃える」より用法が広い。取り揃える そわそわ期待するものがあって落ち着かない意で、主に会 話に使われる和語。〈ーにやにや〉〈妙にーした気分〉〈時 計を見てーする〉〈さっきからーして立ったり座ったりして いる〉志賀直哉の「城の崎にて」に「物静かさが却って何 となく自分をーとさせた」とある。出発や待ち合わせの時 間などが気になるような場合によく使う。あたふた・落ち 着かない・片付かない・Qせかせか・そそくさ・そぞろ そん【損】利益を失う意で、くだけた会話から文章まで幅広 く使われる漢語。〈株でーをする〉「ーを承知で売りに出 す〉「ーを埋め合わせる〉「ーな性分」「ーな役目」など、 金銭面に限らず何らかの意味で不利な場合に広く用い、夏 目漱石の「坊っちゃん」は「親譲りの無鉄砲で小供の時から ーばかりして居る」という一文で始まる。「得」と対立する 語。刂損害・Q損失 そんかい【損壊】大きな器物や家屋などが全面的に、または 中心の重要部分が完全にこわれる意で、主として文章に用 いられる、やや専門的で硬い漢語。〈家屋の—〉〈地震で道 路が—する〉乃破損 そんがい【損害】金銭面・物質面での不利益をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈一賠償〉〈台風によって大きな を受ける〉〈数百万円相当のーが見込まれる〉「損失」に 比べ、具体的な損の場合に使う傾向がある。損・Q損失 ぞんざい そんがい【存外】予期以上にの意で、改まった会話や文章で 使われる、いささか古い感じの、いくぶん気取った響きを感 じさせる漢語。〈ー優秀な成績を収めた〉〈試験はー平易な 問題のみであった〉もあにはからんや・Q案外・意外・思いの外 そんけい【尊敬】ある人やその行為などを偉いと思ってそれ を敬う意で、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。 〈ーする人物〉〈師をーする〉〈ーの念がきざす〉団人間に対 する思いであり、神や仏のような信仰の対象については用 いない。ひQ畏敬・崇敬 そんげんし【尊厳死】助かる見込みのない瀕死の人間に対 し、当人や家族の承認のもとに延命処置を停止させて死に 至らせることをさし、改まった会話や文章に用いられる専 門的な漢語。〈苦悩の末にーを選ぶ〉人間としての尊厳を 尊重して選択される死。手段としては生命維持装置を取り 外すような連想が強い。安楽死 そんざい【存在】人間や事物がほんとうにあることをきし、 やや改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈一論〉 〈理由〉〈神の一〉〈一を疑う〉〈一を確かめる〉小沼丹 の『懐中時計』に「決して見せようとしなかった。だから、 僕がその時計の一を疑ったとしても不思議はあるまい」と ある。きQ実在・実存 ぞんざい口の利き方や物事のやり方が荒っぽくいい加減な ようすをさし、会話やさほど硬くない文章に使われる、い くらか古風な感じの表現。へなしゃぐり方〉〈扱いがー だ〉森鷗外の『青年』に「この坂はSの字をーに書いたよ うに屈曲して」とある。ひいいかげん・いけぞんざい・Qなげや <612> ぞんじあげる り ぞんじあげる【存じ上げる】「思う」「知る」という意味の謙 譲語。特に「知る」意で用いることが多い。「存ずる」以上 に丁寧な感じの表現。〈御健勝にてお過ごしのこととー・げ ます〉〈御高名はかねがねー・げております〉〈お妹さんの こともー・げております〉知る対象が一般的なものよりも 相手側に関係したものである場合に用いられる傾向がある。 また、「存ずる」が自分の状態を伝える静的なことばである のに対して、相手やその対象に働きかける気持ちを伴う感 じがある。知る・Q存ずる そんしつ【損失】利益や財産を失う意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。「額は二億円に上る」〈莫大なーを こうむる〉「損害」と比べて、「社会的ーが大きい」「度重 なる人材の流出によるーは計り知れない」のように、金銭 面以外でも、惜しい人や物を失った場合など、抽象的な意味 合いで用いる例が少なくない。損・Q損害 ぞんずる【存ずる】「思う」「知る」という意味の謙譲語。〈光 栄にー・じます〉〈お元気のこととー・じます〉〈その件はす でにー・じております〉〈まったくー・じませんでした〉志 賀直哉の『暗夜行路』に「私、文学の事は何にもー・じませ んのよ」とある。Q知る・存じ上げる そんだい【尊大】高慢な態度で威張るようすをさして、改ま った会話や文章に用いられる漢語。「な口調でものを言 う」(に構える)徳永直の『太陽のない街』に「大資本 は無人島に、君臨したドンキホーテのようなーと威厳とを もって」とある。「俺様」「見てつかわす」のような言い方 を「」と称する。頭こなし・Q横柄・驕慢高圧的・Q傲 岸・高慢・傲慢・高慢ちき・高飛車・不遜 そんたく【忖度】他人の心のうちを推し量る意で、改まった 会話や文章に用いられる古風な漢語。〈相手の気持ちを— する〉(先方の意向もーして)②上位者の気持ちを特に論拠 もなくあれこれ想像する感じが強い。Q臆測・推察・推測・推 断・推定・推理・推量・推論・類推 そんちょう【尊重】大切に思う意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈人命—〉〈伝統を—する〉〈相手の意思を—す る〉高村光太郎の詩『道程』に「人間は人間の為した事を ーしろ」とある。単重視・重要視・Q尊敬 <613> た田耕して稲を植えて生育させる農地の意で、会話にも 文章にも使われる和語。へーを耕すへーの草取りへーに 水を引く主に水田をさす。ひ田んぼ た【他】それとは違う人や物や事の意で、改まった会話や文 章に用いられる硬い漢語。〈ーと比べる〉〈ーの人を呼ぶ〉 〈ーの方法を試みる〉〈ーを顧みない振る舞い〉〈ーの追随 を許さない〉〈ーを寄せつけない強さ〉り別・Qほか ダークホース本来は、実力が未知数ながら力量がありそう でひょっとしたら優勝するかもしれない馬の意で、「穴馬」 と訳す外来語。〈夏の甲子園の—〉〈優勝候補の一番手とは いえないがー的存在ではある〉〈首相候補のーとして注目 されている〉の一般に、思いがけない活躍をするかもしれ ない存在、意外に有力かもしれない競争相手といった意味 合いで競馬用語の拡大用法としても使われる。単穴馬 ターゲット標的、特に、売り込む対象の意で、会話やさほ ど硬くない文章に使われる外来語。〈若い層にーをしぼる〉 〈女性をーとして売り出す商品〉、意図・Q狙い・目当て・目的・ 目標 ダートルネック「とっくり襟」の比較的新しい外来語。「 のセーター」の「海亀の首」の意。略して単に「タートル」 とも言う。ひとっくり襟 タイ「ネクタイ」の略で、会話にも文章にも使われるやや専 だいいちげんご 門的な外来語。〈ループー〉〈新柄のーできる〉「ネクタイ」より新しい感じがある。リネクタイ だい【題】書物・作品・文章などの最初に付す内容の手がかり となる名称をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる日常の漢語。〈面白そうなだ〉へが長過ぎる ②二葉亭四迷の『平凡』に「平凡な者が平凡な筆で平凡な半 生を叙するに、平凡というーは動かぬ所だ」とある。ひタイ トル・題名・Q題目・表題・標題 たいい【大意】文章や話の意味内容の大筋をきして、主に文 章に用いられる硬い感じの漢語。〈ーを取る〉〈ーをつか む〉国語教育では、論説文や思索的な随想などの文章に関 し、主に段落ごとの内容を全体の流れや文脈に沿ってまと めたものをさす。要旨・要約・Q論旨 たいいく【体育】健康の増進や身体の発育を促進するために 体を動かすことをさし、いくらか改まった会話や文章に使 われる漢語。〈国民—大会〉〈学校の—の時間〉〈子供のこ ろから—が苦手だった〉学校の教科のイメージが濃い。 心身の鍛錬という面の強い剣道・柔道・弓道なども含まれる が、それらを「スポーツ」と位置づける場合は勝ち負けや点 数を競うゲーム的な要素が加わる。刂体操 だいいちげんご【第一言語】生まれて最初に覚えた言語をさ し、言語研究の分野で用いられる専門漢語。ヘ一般の日本人 にとって、日本語は母国語であり母語でありーである)のい くつかの言語をマスターした場合、最初に習得した言語を さす。最も流暢りゆるに使える言語をさす場合もある。Q母 語母国語 <614> だいいちにんし だいいちにんしゃ【第一人者】その分野で最も秀でた人の意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈マラソンの—〉〈遺 伝子研究の—〉へーとしての地步を築く〉ひQ大御所・オーソ リティー・権威②・大家・長老 だいいせん【第一線】戦場で敵と最も接近する前の位置、 転じてその分野ではなばなしく活躍する位置の意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ーで活動する〉(ーを退く) 〈ーに送り込む〉の「最前線」が相手とじかに接して交渉す る激しい任務を連想させるのに対し、この語は活発に活動 する最要な立場を連想させやすい。最初線 たいおう【対応】物事や事態を相手や情況に応じて処理する ことをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈策〉速 やかにーする〉〈ーが遅れる〉〈ーを迫られる〉〈ーを誤る〉 青野季吉の『散文精神の問題』に「時代感覚の自然的の変 化にーしたもの」とある。「語と意味とが一対一でーすると は限らない」「英語の前置詞は日本語の格助詞にーする」の ように、互いに類似の関係で存在している意にも使う。 応じる・応ずる・処置・処理・Q対処 だいおう【大王】偉大な王という意味合いで「王」の敬称と なり、会話にも文章にも使われる、大仰な感じの古風な漢 語。ヘアレキサンダー」」乃王・王様・君主・Q皇帝・国王・帝王・天 子・天皇・帝 たいおん【体温】人間や動物の体の温度をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ー計〉〈ーを計測する〉〈風がーを 奪う〉②川端康成の『千羽鶴』に「姿全体にふと本能的な羞 恥が現われた。(略)令嬢のーのように感じた」という比喻 的表現がある。 熱 たいか【大家】その分野で特に優れた中心的な人物をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈日本画の—〉への風格 がにじみだす)寺田寅彦の『科学者とあたま』に「百の間 違いのうちに一つ二つの真実を見付け出して学界に何がし かの貢献をし、誤ってーの名を博する事さえある」とある。 み大御所・大物・巨匠・権威②・第一人者・Q泰斗 たいか【対価】財産や労力を与えた見返りとして受け取る金 額をさし、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。 「として妥当な金額」Q代価・代金 だいか【代価】品物の値段をさし、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。〈ーを支払う〉の「貴重なーを支払って 手に入れる」のように、あるものを手に入れるためにやむ をえず犠牲にするものの意にも使う。Q対価・代金 たいがい【大概】全体の七割以上の感じで、会話にも文章に も使われる漢語。〈日曜はー家にいる〉〈一の学生はアルバ イトをしている〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「一の見当 は」とある。あらかた・大方・おおよそ・Q大体・大抵・大部分・ほ とんど たいかく【体格】骨格や筋肉という点から見た身体の外観の 意、会話にも文章にもよく使われる漢語。〈ーがよい〉〈貧 弱なー〉〈立派なーをしている〉外村繁の『澪標』に 「ーが群を抜いて大きく、太ってもいる」とある。「体つき」 より客観的に判断した感じがある。马Q体つき・図体背恰 好・体軀・なり・身なり たいかん【大患】大きく重い病気の意で、主に文章に用いら <615> れる古風な漢語。〈修善寺の—〉(夏目漱石が胃潰瘍の発作 を起こして重態に陥った一件)「国家の—」など、重大な 心配事の意で用いることもある。重患・重症・重病・Q大病 たいかん【退官】官職を退く意で、やや改まった会話や文章 に用いられる正式な感じの漢語。〈林教授—記念論文集〉 国家公務員の退職時に限って用い、教授であっても私立大学 の場合は用いない。「任官」と対立。Q退職・退任 たいがん【対岸】川や湖や湾や海峡などの水を隔てた向こう 岸をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「 が霞んで見える〉への街の灯〉岸辺だけをさす感じの 「向こう岸」に比べ、「の火事」のようにその岸に続くあ る程度の土地を含めてさす用法が目立つ。「の火事」の形 で、燃え移る心配のないところから、自分には直接関係の ないことの意を表す慣用的な比喻表現ともなっている。 Q川向こう・向こう河岸・向こう岸 たいき【大気】惑星や衛星、特に地球を取り巻く気体の層を さし、学術的な会話や文章に用いられるやや専門的な漢語。 〈一圈〉〈ー汚染〉〈ーの状態が不安定〉この下層部が空 気。天候などの話題で日常生活に関係する。空気① たいぎ【大儀】「億劫」の意で、会話や硬くない文章に使わ れる古風な漢語。〈わざわざ遠くまで買い物に出かけるの はーだ〈寺田寅彦の『団栗』に「一間ばかりあとを雪駄を 引きずりながら、そうについて来た妻は、エエと気のな い返事をして無理に笑顔をこしらえる」とある。「昨日の疲 れで体がーだ」のように、だるくて動かすのに抵抗を感じ る意にも使う。「ーであった」として下位の者の労をねぎら たいぐう う用法はいかにも古めかしい感じに響く。Q億劫面倒面 倒臭い だいぎし【代議士】国民を代表して国政に参加する人をさし、 会話にも文章にも使われる、やや古風な感じのする漢語。 〈祖父の代から三代続いてーを出した名門〉への秘書を務 める〉国民に代わって議論する人の意から出たことば。 通常は衆議院議員をさす俗称。国会議員 たいきよく【大局】物の全体像、流動するものの主要な流れ をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「 観〉へに大きく影響する〉へを見誤る〉ひ大勢 だいきん【代金】商品などの売り手が買い手から受け取る金 銭をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーを受け取 る〉へーと引き換えに渡す〉り対価・Q代価 たいく【体軀】身体の大きさの外見をさして、主に文章に用 いられる硬い漢語。〈堂々たる—〉回阿部知二の『冬の宿』 に「堂々たる—はたちまちみなを威圧してしまった」とあ る。主として大きく頑丈な体つきに用い、「貧弱な—」とい う表現はなじまない。北杜夫は『夜と霧の隅で』で、「その ずんぐりした—はまったくビール樽そっくり」と見立て、 「歩いてゆくというより転がってゆくという方が当ってい た」と比喻的な誇張で展開している。身体つき・図体背恰 好・Q体格・なり・身なり たいぐう【待遇】職場などでの地位・給料・勤務条件などの面 での従業員の扱いをさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈部長—〉〈—改善〉〈—がよい〉「処遇」と違い、「客の ーが悪い」のように、店などでの一時的な客扱いをさすこ <616> たいくっ ともある。処遇 たいくつ【退屈】何もすることがなくて暇をもてあまし、気 持ちが満たされずに少しいらいらしている意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。へーし のぎ〉ぺ暇で朝からーしきっている)尾崎士郎の『人生劇 場』に「声の調子さえもおとるえて力のない雨だれの音の ようなーな講義」とあるように、そういう気持ちにする対 象にも使う。ひ所在無い たいけい【大系】系統的編集の意で、全集などの書名に用いられる専門的な漢語。〈古典文学—〉ひ体系 けい【体系】組織立ったシステムの意で、改まった会話 や学術的な文章に用いられる専門的な雰囲気の漢語。「化 する〉へ「的な研究〉〈賃金」〉〈日本語の文法」〉大系 たいけい【体形】体の形の意で、会話にも文章にも使われる 比較的新しい漢語。「がすっかり変わる〉「が崩れる〉 〈若いときの」を維持する〉乃体型 たいけい【体型】体の型、体つきの意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈標準—〉〈肥満—〉体形 だいけい【台形】相対する辺が一組だけ平行な四边形をさす、 やや専門的な漢語。〈—の面積〉物を載せる台を連想して の命名。Q梯形・方形 たいけつ【対決】決着をつけようと張り合う意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈宿命の—〉〈両雄が—する〉〈法 廷で—する〉〈—姿勢を鮮明にする〉②単なる「対抗」に比 べ、行動に出る激しさが感じられる。Q対抗・対峙・対立・ 張り合う たいけん【体験】自分で実際に身をもって経験する意で、や や改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一談〉〈一学習〉 〈初一〉〈一を積む〉〈戦争を一する〉〈実際に自分で一して はじめて身につく〉広い意味の「経験」よりも、具体的な 行動をとおして印象に残っている感じが強い。処 たいげん【体言】概念を表し活用しない名詞・代名詞・数詞の 総称として、学術的な会話や文章に用いられる専門的な漢 語。〈止め〉〈を修飾する〉名詞 たいご【隊伍】隊を組んで整然と並んだ列の意で、改まった 会話や文章に用いられる古風な漢語。〈ーを組む〉「伍」 は兵士五人の組の意で、森鷗外の『空車』に「ーをなした士 卒も避とける」とある。啓列 たいこう【対抗】相対してたがいに競り合う意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈クラスーの試合〉〈ー意識をむき 出しにする〉〈相手にーして戦力を強化する〉②具体的な行 動を連想させる「対決」と違い、精神的に張り合う場合も含 まれる。Q対決・対峙・対立・張り合う だいこん【大根】根や葉を食用とする野菜の一種をさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活のこ とば。〈練馬ー〉へーおろし〈鰤」へーの千切り水 上勉の『土を喰う日々』に「一見してはなはだ出来のわるい 姿とみたーが、しっかりと、辛さだけを、独自に固守してい たことに感動した」とある。和名「すずしろ」「大根」を 音読みにして漢語めかした語。「脚」「役者」の連想が 働くと一瞬マイナスイメージが発生することもある。 だいこんあし【大根足(脚)】大根のように太い脚をさし、会 <617> 話や軽い文章に使われるいくぶん古風な表現。「を投げ 出す回スカートの下から出ている白いふくらはぎから大 根を連想した比喻か、男性には使わない。「大根」は和語 「おおね」の漢字表記を音読みした和製漢語。 だいこんやくしゃ【大根役者】演技の下手な役者を軽蔑して 会話や軽い文章に使われる古風な表現。「がそろってい る)小津安二郎監督は撮影中にスタジオが暑過ぎて、こ れじゃ映画じゃなくて納豆を作る所だとぽやいたあと、名 優たちに向かって「君たちいいよな大根で。芋ならとうに ふけている」とからかったという。このように単に「だい こん」と言うこともある。 たいざい【滞在】一定の土地にある期間とどまっている意で、 やや改まった感じの日常的な漢語。〈一期間を延長する〉 〈当地にしばらくーする予定〉の太宰治の『斜陽』に「京都 のお家に氷くーして」とある。居留・Q滞留・逗留 だいざい【題材】芸術作品などで主題を具体化する材料をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。この絵はーが面白 い〈主題に合わせてーを選ぶ〉の「材料」「素材」と違い、 具体的な物質をさす用法は見られない。具材料・Q素材 たいさく【対策】それぞれの状況に応じ問題の解決に向けて 採用する手段をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈受 験ー〉〈ーを練る〉〈ーを立てる〉Q施策善後策 たいじ【対峙】相対して睨み合う意で、主に文章中に用いられる硬い漢語。〈互いにーして譲らない〉〈強敵にーして遜色がない〉〈両軍が川を挟んでーする〉の太宰治の『富嶽百景』に「三七七八米の富士の山と、立派に相ーし、みじんも だいじゃ ゆるがず、なんと言うのか、金剛力草とでも言いたいくらい、けなげにすっくと立っていたあの月見草は、よかった」とある。刂対決・対抗・Q対立・張り合う だいじ【大事】かけがえのない、重要なの意で、会話やさほ と改まらない文章に使われる日常語。〈な人〉〈な用事 がある〉〈仕事と家庭とどっちがだ〉〈を取って休む〉 〈どうぞおからだをおーに〉②太宰治の『桜桃』に「子供よ り親がー、と思いたい」とある。和語の「おおごと」を漢字 で書き、それを音読みした和製漢語。ただし、形容動詞で なく「国家のーに至る」のような名詞の用法の場合は硬い 感じの文章語。ひ重大・重要・Q大切 だいしきゅう【大至急】「至急」の強調表現として、会話にも 文章にも使われる漢語。へ返事がほしいへ書類をそろ えて締め切りに問に合わせる「至急」に比べ、くだけた 会話でも使う。ひQ大急ぎ・至急 たいして【大して】取り立てて言うほどのといった意で、会 話にも文章にも使われる表現。〈一面白くない〉〈強くな い〉〈差がない〉予想と違ってというニュアンスが伴 う。ひあまり・あんまり・Qさして・さほど たいしゃ【退社】①会社を辞める意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈すでに三年前にーしている〉② 「入社」と対立。退職②一日の仕事を終えて会社から帰 る意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一時 刻〉の「出社」と対立。 だいじゃ【大蛇】大きな蛇の意で会話にも文章にも使われる 漢語。〈山奥に棲むー〉うわばみ・Qおろち <618> たいじゅ たいじゅ【大樹】大きくがっしりした樹木をさし、主として 文章中に用いられる古風な漢語。〈道を覆うばかりのー〉 「寄らばーの陰」と言うように、「大木」や「巨木」に比べ、 立派で頼もしいというブラスの価値が伴う感じがある。 巨木・Q大木 たいしゅう【大衆】一般社会を構成している不特定多数の 人々の意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈路線〉 〈一般〉〈一の味方〉青野季吉の『現代文学の十大欠陥』 に「に訴え、俗衆を捉える文学は、に媚び、俗衆に阿ね る文学ではない」とある。「食堂」の場合は庶民、「小 説」の場合は文学の素人というニュアンスがある。国民の うち特権階級・上流社会・富豪・専門家などを除き、特に一般 の勤労者階級を連想させる傾向が強い。専庶民・Q民衆 たいしゅうぶんがく【大衆文学】一般大衆を読者対象とする 通俗的な内容の文学をさし、会話にも文章にも使われる漢 語。へとして多くの読者を持つ人気作家)純文学に対し て、娯楽本位の家庭小説・時代小説・推理小説・ユーモア小説 など。ひ通俗文学 たいしよ【対処】物事や事態に応じて適切な処置を取る意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈要求にーす る〉〈状況にーする〉〈ーを誤る〉②大岡昇平の『野火』に 「個人的必要を持ち、またそれにーする心を持っている」と ある。処置・処理・Q対応 たいしょう【対照】照らし合わせる、コントラストといった 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー言語学〉へー的 な体つきをした二人〈好ーをなす〉〈比較ーする〉り対称 たいしう【対称】二つの部分がそれぞれ対応して視覚的に 調和してつりあう意で、会話でも文章でも使われる数学の 専門的な漢語。〈線ーをなす〉〈左右ー〉〈一の位置にある〉 刂対照 たいしょう【対象】目標としている相手や、認識・意志という 精神活動の向いている先にあるものをさし、改まった会話 や文章に用いられる硬い漢語。〈人物〉〈読者〉〈研究の ー〉〈ーを的確にとらえる〉〈ーから外す〉森鷗外の『青 年』に「鋭い観察のーにせられたように感じた」とある。 相手 だいじょうぶ【大丈夫】危なげなく心配不要の意だが、近年 ごく軽い意味でも使う俗な用法の広まった漢語。従来は かなり大きな不安や特別の心配について否定する場合に用 いてきたが、最近の若年層に「格別の不具合がない」「別に 構わない」「それには及ばない」といった程度の軽い意味で 使う例が広がっている。以前大学で、この椅子をちょっと借 りてもいいかと学生に尋ねると、「です」という受け答え なので、この椅子は丈夫にできているから座ったときに壊 れて怪我をするような心配はないという意味かと一瞬錯覚 したが、「結構です、どうぞ」という顔なので安心した経験 がある。 たいしょく【退職】勤務していた役所や企業などを辞める意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一届〉〈一金〉〈定年 〉〈一身上の都合でーする〉当人の意思による「辞職」 と違い、単に辞めるという事実を表すだけで、任期の途中 での意図的な「辞職」のほか、期間を全うした定年の場合も <619> あり、当人の意思に反する「免職」の場合も含まれる。「就職」と対立。Q辞職・辞任・退官・Q退社①・退任 たいせい【大勢】大体の形勢の意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い感じの漢語。〈ーが決する〉へーが判明す る〉へーを占める〉へーに影響はない〉ひ大局・体制・体勢・Q態 勢 たいせい【体制】政治的・社会的な構造の意で、改まった会話 や文章に用いられる硬い漢語。〈社会主義—〉〈反—〉〈 をしく〉身体勢・態勢・大勢 たいせい【体勢】体の構えの意で会話でも文章でも使われる 漢語。〈が崩れる〉〈ーを立て直す〉も体制・Q態勢・大勢 たいせい【態勢】状況への対処の意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈臨戦ー〉〈受け入れーが整う〉 〈警戒ーに入る〉〈万全のー〉も体制・Q体勢・大勢 たいせいがわ【体制側】組合側などから、会社の経営陣など 組織の中枢を自らと対立するものとして見たときの用語。 〈一に立つ〉〈一に与べする人間〉の「組合側」などと対立。 だいせいどう【大聖堂】カトリック教会で司教の座を設けて いる聖堂をさし、会話にも文章にも使われる漢語。パリの ノートルダムー〉Qカテドラル・教会・教会堂・聖堂・チャペル 天主堂・礼拝堂 たいせつ【大切】「大事な」の意で、会話でも文章でも広く使 われる日常的な漢語。〈一な用件〉〈一な金〉〈一に使う〉 〈一に保管する〉林芙美子の『耳輪のついた馬』に「青春 を、長い間文箱のようににしていた」とある。「大事な 人」も「一な人」もともに愛する人をさす場合が多いが、恩 人や恩師などは「大事な」のほうがより適切で、「大事な人 を忘れている」といった例などの場合は、「肝腎の」「当の」 といった意味合いでも使われる。马重大・重要・Q大事 だいたい たいぜん【泰然】物事に動じないで落ち着いている意として 主に文章中に用いられる硬い感じの漢語。〈自若〉へと して事に当たる〉も沈着・平気・平気の平左・平静・平然・Q悠然・ 悠々・冷静 たいそう【大層】「大変」程度の甚だしさをきして、改まった 会話や文章に用いられる古風な漢語。〈長い間〉「お気 に召して〉「お怒りとのこと〉②使用頻度がかなり減った ように見受けられる。大いに・きわめてこく・すこぶる・Qた いへん・とても②・甚だ・非常に たいそう【体操】「体育」のうち主として徒手体操や器械体操 をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー競技〉〈器械 」〈ラジオー〉同じ意味で使う場合には「体育」より日 常的な語。学校の教科をさす場合は旧称なので古風な感じ が強い。身体 たいだ【怠惰】締まりがなく怠ける意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。「な生活」《生まれつきーな人間》 賛着・ぐうたら・Qずぼら・怠慢・無精・ものぐさ だいだ【代打】野球で次の打者に代わって起用される打者を さす漢語で、書きことばで用いる例が多いが、日頭でも使 う。〈ーを告げる〉〈ーを送る〉ひピンチヒッター だいたい【大体】全体の六、七割ほどの感じで、会話やきほど 硬くない文章に使われる漢語。へーできあがったへーのこ とは説明できる》夏目漱石の『坊っちゃん』に「追々ゆる <620> だいたい りと話す積だが、ーの事を呑み込んで置いて貰おう」とあ る。まあらかた・大方・おおよそ・Q大概・大抵・大部分・ほとんど だいたい【代替】別のものでその代わりをする意で、改まっ た会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈一品〉 〈一地〉〈一輸送〉②「だいがえ」ともいう。専代わり・Q代 用・代理 だいたいぶ【大腿部】腿の意で、医学的な話題の会話や文章 に用いられる専門的な漢語。〈ー骨折〉〈ーに傷を負う〉 Q太腿・腿 たいだん【対談】あるテーマや話題をめぐって二人が相対し て語り合うことをさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈名人同士の—〉〈文豪の—が実現する〉〈—に応じる〉〈— の相手〉の永井荷風の『瀾東綺譚』に「—の必要が全くな い」とある。「対話」に比べ、あらかじめテーマや話題が設 定されており、著名人や然るべき地位にある人物どうしの 場合が多く、雑誌などに掲載される連想も働く。Q会談・ 座談・対話 だいたん【大胆】度胸が据わっていて、結果を怖れたり周囲 に遠慮したりせず思い切ったことをやる様子をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ー不敵な面構え〉〈ーなデザ イン〉〈ーな改革〉〈ーな発想〉〈ーな手を打つ〉〈ーな行動 に出る〉②寺田寅彦の『科学者とあたま』に「頭が悪いおか げでーな実験をし、ーな理論を公にし」とある。太っ腹 だいち【台地】周囲より一段と高くなって台状に拡がる平坦 な地形をさし、会話にも文章にも使われる、やや専門的な 感じの漢語。〈このあたりはーになっている〉乃高原・高地・Q 高台 たいてい【大抵】全体の七割以上の感じで、会話にも文章に も使われる漢語。へーの日用品はそろっている〉へーの人が パソコンを使う》夏目漱石の『坊っちゃん』に「もうー御 意見もない様でありますから」とある。凡あらかた・大方・お およそ・大概・Q大体・大部分・ほとんど たいと【泰斗】人々の尊敬を集める学問や芸術方面の権威を さし、主として文章中に用いられる古風な漢語。〈その道の ー〉〈英文学のー〉の「泰山北斗」のように仰ぎ見る存在と いうことから。刂大御所・Q大物・巨匠・権威②・第一人者・大家 たいど【態度】その人の感情や意志や熱意などの反映した表情や動作の在り方、その時々の状況に応じた心の動きの反映する表情や言動をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈生活—〉〈授業中の—が悪い〉〈堂々たる—を示す〉〈ーがでかい〉〈柔軟な—をとる〉〈反抗的な—をとる〉〈性格が—に現れる〉「姿勢」よりも具体的な姿でとらえられる。伊藤整の『氾濫』に「彼は彼女の腕をとって、騎士のような—で駅まで送って行った」とある。安部公房の『他人の顔』には「意識の隅々にまでモルタルを流し込んだような、毅然とした—」とある。専姿勢 たいとう【対等】両者に上下や優劣などの差がない意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈ーの関係〉〈ーに話し合 う〉〈ーの立場で交渉する〉単同等 たいとう台(擡頭)新しい人・団体・国などが勢力を伸ばす 意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈若手の ーがめざましい〉〈新勢力がーする〉原義は、頭をもたげ <621> る意。台頭は代用漢字。勅興 だいどう【大道】多くの人が往来する広い道路をさし、主と して文章に用いられる古風な漢語。〈一芸〉〈一演説〉森 鷗外の『空車』に「この大きい車が一狭しと行く」とある。 马大通り・表通り たいとうあせんそう【大東亜戦争】「太平洋戦争」の戦時中の 呼称。戦時中はほかの呼び名がなかったため、特別の語感 は働かなかったはずであるが、今日になって「太平洋戦争」 という呼称と比較すれば、戦争終結以来数十年を経過して なお当時の意識を保持している印象を与える。〈—に突入〉 の帝国主義者や植民地主義の信奉者とまで見られるかどう かは場合により人にもよるが、当時の用語を無自覚に使い 続ける時代遅れの人物、あるいは、懐古趣味の人間といっ た、何らかの色をもって相手に伝わることは避けがたい。 乃太平洋戦争 たいどころ【台所】家庭で調理するための施設や部屋をさし、 会話でも文章でも使われるやや古風な日常語。〈ー仕事〉 〈ーに立つ〉〈小さなーが付いたアパート〉②沢村貞子の 『味噌汁』に「せまい横丁の、あけっ放しのーから、おこう こをきざむ音」とある。「勝手」という語の全盛期は、それ よりも古い感じに受けとられたが、この部屋が独立してい る家では、今はむしろスタンダードとして安定して使われ ている。ちなみに、街の食堂に「キッチン」とつく店名が多 い時期に、あえてこの語を用いた都心の食堂もあった。地 方から出て来大学生向けに、おふくろの味といった懐かし い雰囲気を出すねらいもあったかもしれない。ただし、「シ たいひ ステムキッチン」のほうは「台所」に差し替えるととたんに 売り上げが激減しそうだ。Q勝手②・キッチン・庫裏がくりや・ 炊事場・厨房・調理場 タイトル作品などの題名をさし、会話にも文章にも使われ る外来語。〈人目を引く—〉の「マッチ」のように「称号」 の意でも使う。題・題名・題目・表題・標題 たいない【体内】体の内部の意で、会話でも文章でも使われ る漢語。〈ー時計〉へーに取り入れる〉へーをめぐる〉②太宰 治の「人間失格」に「(ガラスの破片が)ーを駈けめぐり」と ある。「体外」と対立。貽内 たいない【胎内】母親の腹の中の意で、改まった会話や文章 に使われる、やや古風な感じの漢語。〈ーに宿る〉森敦の 『かての花』に「(石の裏側は)まるでーから生みだされて来 たように、人肌じみたぬくもりを持つ液体がぬらりとして」 という比喻表現が出る。身体内 たいにん【退任】それまでの任務から退く意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈大臣を—に追い込む〉 〈責任を取って—を申し出る〉へーは避けられない情勢〉の 「就任」と対立。込辞職・Q辞任・退官・退職 たいひ【対比】同類の二者を比べ合わせてそれぞれの性質や 異同を明らかにする意で、ややあらたまった会話や文章に 用いられる漢語。〈東西文明の—〉〈両者の特徴を—する〉 〈文体を—的にとらえる〉②日常語的な「比較」に比べ、や や専門的な雰囲気がある。刂対照・Q比較 たいひ【退避】危険な場所から離れる意で、改まった会話や 文章に用いられる正式な感じの漢語。〈訓練〉〈勧告が <622> たいひ 出される))待避 たいひ【待避】危険回避のために一定の場所で待機する意で、 会話でも文章でも使われる、やや専門的な漢語。〈列車の— 線〉(パスの—所)退避 たいびょう【大病】治るにしても長い療養生活を送る必要が ある大きな病気という意味で、会話にも文章にも使われる 漢語。「に打ち克つ」(「というほどの病気をしたことが ない)「重病」よりやや古風な感じがある。尊重患・重症・ Q重病・大患 だいひょう【代表】一部で全体を表す意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈作〉〈理事〉〈日本〉〈を選ぶ〉 〈春をーする花〉谷崎潤一郎『細雪』に「まことに此処の 花を措いて京洛の春をーするものはない」とある。乃典型 たいふう【大風】「おおかぜ」の意で、主に文章中に使われる 古風な漢語。〈一過の秋晴れ〉乃風・おおかぜ・強風・颶風 時化・疾風・陣風・台風・突風・はやて・暴風・暴風雨・烈風 たいふう【台(颱)風】北太平洋の西部および南シナ海で発生 する熱帯性低気圧のうち最大風速一七・二メトル以上のも のをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常語。「の進路を予想する《大型」が接近する)「 が上陸する)「の通り道にあたる)多く「一過」の形 で使う。「大風」「タイフーン」との関連を含め語源未詳。 専風・おおかぜ・強風・颶風・時化・疾風・陣風・Q大風・突風・はや て・暴風・暴風雨・烈風 だいぶぶん【大部分】全体の八割がたの感じで、会話にも文 章にも使われる漢語。〈商品はーが日本製だ〉〈書棚のーが 文学作品だ あらかた・大方・おおよそ・大概・大体・Q大抵・ほと んど だいぶん【大分】「だいぶ」の古風な言い方。〈停車場から 遠い〉〈時間がかかる〉②小津安二郎監督の映画『東京物 語』(一九五三年)で、とみ(東山千栄子)が「自動車で遠い かったですけの」と尾道の方言交じりで言う。「だいぶ」に 比べてこの語形は今では年寄りっぽく感じられる。ひかな り・Q相当 たいへい【太(泰)平】世の中が平和で穏やかな意で、会話に も文章にも使われる古風な漢語。〈天下—〉〈一の世〉弔講 和・Q平和・和平 たいへいようせんそう【太平洋戦争】第二次世界大戦のうち アジア・太平洋地域での戦いをさす漢語。現在における特 別の色のない一般的な呼称。〈—が勃発〉〈—のさなか〉 大東亜戦争 たいへん【大変】「きわめて」に近い程度の甚だしさをさし、 会話にも文章にもよく使われる漢語。〈ーよろしい〉〈一結 構な店だ〉〈ー羨ましい話だ〉〈ー長らくお待たせいたしま した〉の「とても」より改まり、「非常に」ほど硬くないレ べル。「ーな事が持ち上がる」「紛失したらーだ」のように、 重要な、一大事といった意味で使う例が多い。大いに・きわ めてこく・すこぶる・大層・とても②・甚だ・Q非常に だいべん【大便】糞の意味で、会話より文章によく使われる 正式な感じのいくらか専門的な漢語。〈ーを催す〉への検 査〉の「小便」と明確に区別する言い方。「便」より医学的 な雰囲気は弱い。うんこうんち・Qくそ・人糞・ふん・糞便・便 <623> たいほ【逮捕】逮捕状によって警察官が被疑者を拘束し、引 致・押留する意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー状〉 〈別件ー〉〈ーに踏み切る〉ひ検挙 たいぼう【待望】待ち望む意で、やや改まった会話から文章 まで幅広く使われる漢語。「の夏休みに入る」「のポー ナスが出る」谷崎潤一郎の『文章読本』に、「期待」と「希 望」とを合わせた「待望」という略語は、文章の品位に欠け るので使用を慎むようにと注意を促す箇所がある。一九三 四年当時のこの作家の感覚を示すものであるが、現代人に はすでに略語であるという意識も薄く、今では特に軽薄な 感じを与えないように思われる。Q期待・希望 たいぼく【大木】大きく育った高木をさし、会話にも文章に も使われる日常の漢語。〈欅のーが遠くから目立つ〉 「高木」に比べ、幹も太く枝を広げた感じがある。Q巨木・ 大樹 だいほん【台本】演劇・映画・放送ドラマの脚本をさし、会話 にも文章にも広く使われる漢語。「の読み合わせ」(と おりに進める)日常の話題では「脚本」より一般的によく 使われ、その世界では単に「本」と言うことも多い。鳥戯曲 Q脚本・コンテ・シナリオ たいま【大麻】麻から採る麻薬の総称として、会話にも文章 にも使われる漢語。〈ーを栽培する〉豊醒剤・しゃぶ・ドラッ グ・Q麻薬・マリファナ・やく たいまん【怠慢】やるべきことを怠ける意で、会話にも文章 にもよく使われる漢語。〈職務にーな人〉(日ごろのーがた たる〉(ーにも程がある)僕着・ぐうたら・ずぼら・Q怠惰・無 たいよ 精・ものぐさ だいめい【題名】作品・書物・演劇などの標題をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈ーは同じだが別の作品だ〉 題タイトル・題目・表題・標題 たいめん【体面】世間に対する面目の意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈ーを保つ〉〈ーをけがす〉〈ーを傷つけ る〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「生徒のーにかかわる」 とある。単なる「面目」の意味にも使う。り外聞・Q世間体・ 体裁 たいめん【対面】じかに顔と顔を合わせる意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ー交通〉(初)〈五十年ぷりのー が実現する〉〈大臣に直接ーする〉の「向かい合う」「向き 合う」と違い、直接顔を合わせていれば、真向かいの席でな く斜めでも横でもこの語が使える。昜差し差し向かい・Q向 かい合う・向き合う・面会 たいもう【体毛】体の毛、特に「陰毛」をさして主に文章に 用いられる漢語。〈下穿きに—が付着している〉体の毛 全体をさす用法もあり、それだけ間接的な表現になる。 Q陰毛・恥毛 だいもく【題目】文章や書物などの標題をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。へーがまだ決まらない)②「おー」の 形で日蓮宗の「南無妙法蓮華経」をさすこともある。単題・ タイトル・題名・表題・標題 たいよ【貸与】貸し与える意で、主に硬い文章に用いられる 正式な感じのやや専門的な漢語。〈奨学金をーする〉〈職場 で制服をーする〉専貸し出す・Q貸す・貸貸し <624> たいよう たいよう【太陽】太陽系の中心をなす恒星をさし、会話にも 文章にも広く使われる基本的な漢語。〈ー光線〉〈ーが降り 注ぐ〉〈海からーが昇る〉りお天道様・お日様・日輪・Q日 たいよう【大洋】大きな海の総称として主として文章中に用 いられる漢語。〈ーの彼方にある〉〈ーを航海する〉「大 陸」と対立。大岡昇平の『野火』に「ーの奇観を語る場面を 空想したろう」とある。単海・Q海洋 だいよう【代用】一時的に別のもので間に合わせる意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈品〉〈食〉〈手近なも のでーする〉仕方なしに臨時に代えるもので、本来のも のより質や価値が落ちる。専代わり・Q代替・代理 たいら【平ら】地面や物体の表面に凹出や高低の差がない 状態をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日 常の基本的な和語。〈表面がーだ〉〈ーな土地〉〈ーに均 す〉の「どうぞおーに」のように、膝を崩した楽な座り方を さす用法もある。ひQ平たい・平べったい だいり【代理】本人の代わりに事に当たる意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈人〉〈担当大臣のを務める〉 〈課長のとして出席する〉②「替え玉」や「身代わり」に 比べ、当人でないことを先方にきちんと知らせる場合が多 い。「部長」といった役職もある。「店」のように人間 以外にも使い、夏目漱石の『坊っちゃん』にも「会議室は校 長室の隣りにある細長い部屋で、平常は食堂のを勤める」 とある。専替え玉・ピンチヒッター・身代わり・Q名代 たいりつ【対立】反対の立場にある者が互いに譲らず張り合 う意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈候補〉〈開 係にある 〈ーが深まる〉 〈意見が真っ向からーする〉 専確 たいりゅう【滞留】滞在の意で主に文章に用いられる硬い漢 語。「一ヶ月ほど現地に—する」「郵便物の—」など、順 調にさばけずに物が滞る場合にも使われる。居留・Q滞在 逗留 たいりょう【大量】数や量がきわめて多い意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈一生産〉〈に出回る〉〈に購入 する〉〈の注文を受ける〉の「多量」と違い、数の多い場 合にも使い、まとまた感じがある。「清濁併せ呑む」の 人」のように、度量の大きい意でも用い、その場合は古風な 感じがある。多量 たいれつ【隊列】隊をなすように組んだ列の意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈ーを整える〉〈ーを乱す〉 単隊伍 たいろ【退路】逃げるための道の意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。へーを開く)戦場などの連想が強い が、「ーを断つ」の形で必死の覚悟で事に当たる意味を表す 比喻的な用法もある。Q逃げ道・抜け道 だいろっかん【第六感】「勘」の意で会話や軽い文章に使われ るユーモラスな造語。〈ーを働かせる〉視覚・聴覚・嗅覚・ 味覚・触覚をつかさどる五官以外の感覚器官という発想か ら。Q勘・直感・直観・予感 たいわ【対話】二人が向かい合って話をする意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈集会〉〈不足〉 〈親子の〉〈国民との〉の三島由紀夫の『潮騒』に「海だ <625> けが彼の無言のーに答えてくれる」とある。簡単な挨拶程 度でも「会話」と言えなくもないが、この語はもっと内容の ある話し合いを連想させる。広義には討論・面接・商談など をも含む。会話・Q対談 だえき【唾液】唾の意で、改まった会話や文章に用いられる 正式な感じの漢語。〈一腺〉〈一を分泌する〉及Qつば・つばき たえず【絶えず】休むことなくずっとの意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈一しゃぐりまくっている〉〈一体を動 かしている〉及何時も・始終・終始・常時・しょっちゅう・常に・のべ つ た元ま【絶え間】続いているもののとだえている間をさし、 会話にも文章にも使われる和語。「なく降り続く雨〉へ一 入でーなくしゃべっている)回もともと連続・継続するのが 当然であるものについては使わないため、「列車がーなく 走り続ける」といった用法は不自然。永井龍男の『風ふたた び』に「(花火で)五彩の花々は、ーなく空を染め、ーなく空 に吸い込まれた」とある。ひ間断 た元る【堪える】そうするだけの価値がある意で、改まった 会話や文章に用いられる、やや古風な和語。〈任に—〉〈鑑 賞に—〉〈読むに—・えない〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「自分はよくこれで校長が勤まるとひそかに慚愧の念に— えんが」とある。専耐える たえる【耐える】しのぐ、持ちこたえる意で、やや改まった 会話や文章に用いられる和語。〈痛みに—〉〈高熱に—〉 〈重圧に—〉〈激務に—〉森鷗外の『半日』に「脳髄が負担 にー・えなくなって」とある。「風雪に—」のような用法で だが は古風な感じに響く。単える たえる【絶える】続いていたものが無くなる意で、やや改ま った会話や文章に用いられる、いくぶん古風で時にいくら か詩的な和語。〈息が—〉〈交際が—〉〈子孫が—〉〈笑い声 がー・えない〉Q途絶える・途切れる 木綿の布面に小さな輪状の糸をたくさん出して水分 を吸収しやすくしたタオル地の西洋風手拭いをさし、会話 にも文章にも使う日常の外来語。〈パスー〉へーで汗を拭 く) ひ手ぬぐい・ハンカチ・ハンケチ たおれる【斃れる】改まった文章で「死ぬ」意に用いる和語 の古風な間接表現。〈旅先でー〉〈凶弾にー〉死を忌む気 持ちから、死というものを、それまで立っていた人間が倒れ て横になるという現象ととらえ直した婉曲表現。「倒れ る」と書くと意味が特定しにくいため、この漢字を使用す ることが多く、ほかに「仆れる」「殪れる」と書くこともあ る。勇敢え無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶 える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・ 落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・ 死亡・昇天・逝去・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる 儚なくなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身 罷する・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 たか【鷹】タカ科のうち中形・小形の鳥の総称として会話にも 文章にも使われる和語。〈一匠じょ〉〈ーを放つ〉の「狩り」 の連想が強い。専驚 だが「しかし」のやや軽い意味として、会話やあまり硬くな い文章で用いられる和語。〈思いつきは悪くない。—、問題 <626> たかい はいつだれがやるかだ〉〈仕事は速い。ー、仕上がりは不ぞ ろいだ〉多く男性が使う。ひが・しかし・でも たかい【高い】①長く突き出ている、上方に位置する、程度が大きいの意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一建物〉〈一山〉〈一雲〉〈鼻が一〉〈位が一〉〈理想が一〉〈一水準を保つ〉〈評価が一〉〈声が一〉太宰治の『富嶽百景』に「雲が切れて、見ると、ちがった。私が、あらかじめ印をつけて置いたところより、その倍もーところに、青い頂きが、すっと見えた」とある。「低い」と対立。小高い②売買に際し大きな金額を要する意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈値段が一〉〈目の玉が飛び出るほど一〉〈一・く売れる〉〈結局一・くつく〉小島信夫の『アメリカン・スクール』に「それは物価が一ためで」とある。「安い」と対立。高価 たかい【他界】「死亡」の意で、改まった文章に用いる、仏教 的な雰囲気の漢語による間接表現。〈祖母がーして早二十 年〉死者の住む別の世界、すなわち、あの世を意味し、死 を忌む気持ちから、その別世界に移行して住む世界を異に することととらえ直した表現。勇敢え無くなる・上がる②・あの 世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくな る・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人と なる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・長逝・露と消 える・天に召される・亡くなる・儚はなくなる・不帰の客となる・不幸が ある・崩御・没する・仏になる・身罷がる・脈が上がる・空しくなる・藻 屑となる・逝く・臨死・臨終 たがい【互い】関係する二者のそれぞれをさし、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈おー様〉 へーに愛し合う〉へーの利益になる〉へーの協力が不可欠〉 井伏鱒二の『山椒魚』に「彼等(目高)は茎の林のなかに群を つくって、ーに流れに押し流されまいと努力した」とある。 会話では「おーに気をつけよう」のように「お」を付ける例 が多く、その形は硬い文章になじまない。刂相互 たかが【高が】程度や数量が大したことないの意で、会話や 硬くない文章に使われる和語。「これしきのことでへこ たれたりしない〉へーがスポーツ、されどスポーツ〉の「せ いぜい」「たかだか」に比べ、想定している程度の幅が狭 く、また、それを軽視して小ばかにしたようなニュアンスを 伴いやすい。みせいぜい・Qたかだか たかさ【高さ】高い程度の意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈制限〉〈山の—〉〈都会に出て物価の—に驚く〉「技術水準の—」「教養の—」のように抽象的な意味合いでも使うなど、「高度」より用法の幅が広い。り高度たかだい【高台】周囲の土地より高くて平らな土地をさし、会話にも文章にも使われる日常語。〈一に住む〉〈一から見下ろす〉国木田独歩の『武蔵野』に「畑は重ににある、は林と畑とで様々な区画をなして居る」とあるが、現代では「高地」に比べ、住宅地の連想が強い。り高原・高地・Q台地たかだか【高高】多く見積もったところでせいぜいの意で、改まった会話や文章に用いられる、やや古風な和語。〈十万円程度のものだ〉〈一三日ぐらいの遅れで〉「鼻—」「一と旗を掲げる」「と吊り上げる」のように、ひときわ高くの意でも使う。りせいぜい・Qたかが <627> たかとび【高飛び】遠方に逃亡する意で、主に会話で使われ る俗ぼい和語表現。〈犯人が海外へーする〉高跳び たかとび【高跳び】高く跳躍する意で、会話でも文章でも使 われるスポーツ用語。〈走りー〉〈棒ー〉高飛び たかなる【高鳴る】素晴らしい未来への期待で心が弾む意で、 主に文章中に用いられるやや詩的な和語。〈期待に胸が一〉 ②本来は鼓動が激しくなる意で、中井英夫の『空き瓶ブルー ス』には「不安と信頼とに—かれらの心臓の音がはっきり私 の耳に届きました」という例もある。ときめき・わくわく たかびしゃ【高飛車】相手を上から押さえつけるような態度 の意で、会話やさほど硬くない文章に使われる慣用的な表 現。〈一な態度〉〈一な物言い〉〈一に出る〉②将棋で、飛車 を自陣より高い位置において相手の駒を威嚇する意から。 ②頭」なし・横柄・Q高圧的・尊大 たかぶる【昂る/高ぶる】興奮状態になる意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈妙に感情が—〉〈神経が—・って眠 れない〉高橋和巳の『悲の器』に「冷静になろうとする努 力とは裏腹に、せきたてられるように私の感情はー・った」 とある。専息巻く・いきり立つ・激昂・激情・激する・興奮・高揚・む きになる たから【宝】高価あるいは稀少価値のある貴重なものをさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。 「探し」への持ち腐れ〉家のとして大切に保管する おー」として、金銭や高値のつく骨董品などをさす場 合もある。前者をさす用法は古めかしく、後者をさす用法 は俗っぽい感じとなる。「国の」「いっぱい思い出の詰ま たきぎ 「た」「若い頃の苦労が今ではーとなっている」のよう に、かけがえのない大切なものをさす比喩的な用法もある。 財宝・Q宝もの・宝もつ だから「前に述べたことが次に述べることの理由や原因にな っている」という関係を表し、比較的くだけた会話や、さほ ど硬くない文章に使われる和語。「駄目なんだ」へ言っ たじゃないかへ、どうしたというんだ」の「したがって」 よりもやわらかい感じで、上の立場から教えるような雰囲 気や、理屈っぽさが少ない。ひしたがってそれで たからもの【宝物】「宝」とほぼ同義で、会話やさほど硬くな い文章に使われる和語。〈先祖伝来のー〉へーを手に入れ る)「子供はーだ」「動かなくなった古い桂時計は今やー だ」のように、値段に関係なく単に大切なものという主観 的な価値基準で使う例も多い。財宝・Q宝・宝もつ たかる【集る】人や動物が「集まる」意で、会話や軽い文章 に使われる和語。〈寄ってーって〉〈食べ物に蠅がー〉 〈砂糖に蟻がー〉〈路上の芸に人がー〉②石川淳の『焼跡の イエス』に「うすよごれのした人間が蠅のようにー・てい る屋台」とある。何らかの目的のもとに集合する場合は含 まれない。「ちんびらにー・られる」のように、金品を巻き 上げる目的で人を脅す意にも使う。マイナスイメージがあ る。弁集まる・集合・つどう・Q群がる・群れる たきぎ【新】木や枝を拾い集めて適当な長さに切った燃料を さし、会話にも文章にも使われる和語。〈能〉へをくべ る〉へを燃やす〉「焚きき木」の意から。「まき」より細 く太さもまちまち。まき <628> だきこむ だきこむ【抱き込む】悪い目的で味方に引き入れる意で、会 話や軽い文章に使われる和語。〈会計係を—〉〈社長秘書を —〉の「丸め込む」や「懐柔」と比べ、相手を騙すという ニュアンスは稀薄。「手懐なける」や「懐柔」と違い、ある 事柄に限ってそういう関係に持ち込むニュアンスがある。 僕柔・手懐ける・Q丸め込む・籠絡 だきつく【抱き付く】抱くような形で相手にしがみつく意で、 会話や硬くない文章に使われる日常の和語。〈幼児が母親に ー〉〈再会した恋人にー〉へー・いて離さない〉四川端康成の 『弱き器』に「長く豊かに垂れていた白い腕を、突然にゅう っと伸ばすと、私の首にー・いた」とある。Qしがみつく すがりつく たきつける【焚き付ける】巧みな言い方で他人の気持ちに訴 え、自分の思うような行動に駆り立てる意で、会話や軽い 文章に使われる和語。〈学生をー・けて抗議運動をやらせ る〉も煽る・けしかける・指嚴・扇動・Qそそのかす たぎてき【多義的】複数の意味に解釈できる意で、主に文章 に用いられる専門的な漢語。〈一な表現〉の「低い」の反対 でも「安い」の反対でもある「高い」や、「ないものはない」 という表現など。嗤昧・中間的・不明確・不明瞭 だきよう【妥協】対立する両者が互いに譲歩し合って穏やか に話をまとめる意で、いくぶん改まった会話や文章に用い られる漢語。〈一案〉〈一点を見つける〉〈を許さない〉 〈一の産物〉譲歩 たぎる【滾る】やや改まった会話や文章に用いられるいく ぶん古風な感じの和語。〈鉄瓶の湯がー〉の血がー」のよ うに、興奮して熱い感じになる意の比喻的誇張表現として も使う。帰騰・沸き上がる・沸き返る・沸き立つ・Q沸く たく【焚く】熱を利用する目的で火を燃やす意で、会話にも 文章にも使われる日常の和語。〈火を—〉〈落ち葉を—〉 〈手紙を—・き捨てる〉〈風呂を—〉〈ストーブを—〉 お 水に浸した米や麦などに火を加えて食べられる ようにやわらかくする意で、会話にも文章にも使われる日 常の和語。〈釜で飯を—〉〈お祝いに赤飯を—〉〈・きたて の御飯〉西日本には、「お豆を—」「大根を—」などと米 以外にも「煮る」意に使う用法が残っており、東京でも使う 「水炊き」などの形にその名残がある。Qかしぐ煮る だく【抱く】①腕で抱えて胸の前で支える意で、くだけた会 話から文章まで広く使われる和語。赤ん坊をーいてあや す〈腕にーかれる〉近年、抽象的な意味合いの「いだ く」の代わりに使われる例が目立つ。ひいだく・Q抱える ②男性側から漠然と「性交」をさす俗っぽい和風の婉曲 表現。〈その夜、初めて—〉〈男に—・かれる〉③事前の行為 を言語化することによって次の行為を暗示する側写法。表 現の焦点を巧みにずらし、あたりをやわらかくする伝達効 果がある。専営み・エッチ・関係②・合飲・交合・交接・情交・情を通 じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・契る・同衾・共 寝・寝る②・懸ろになる・ファック・深い仲になる・房事・枕を交わす・ 交わる・やる③・夜伽 たくさん【沢山】数量が多い意で、会話や軽い文章に使われ る表現。〈人がーいる〉〈お土産をーもらう〉〈本がーある〉 <629> 〈用意する〉〈召し上がれ〉〈まだ残っている〉多 い」よりくだけた感じで、「いっぱい」ほどではない。「も うーだ」のように、十分足りていてこれ以上は不要だの意 でも使われる。漢字の意味が語義と直接結びつかないので 仮名書きすることが多い。単一杯・うんと・多い・しこたま・たっ ぶり・たんと・たんまり・どっさり たくする【託(托)する】物事を他人に頼んで任せる意で、改 まった会話や文章に用いられる硬い感じの動詞。伝言を ー〉〈後輩に希望をー〉回手紙をー」は他の人を通じて相 手に届ける意だが、「手紙を預ける」は間に立つ人に手渡す ところに重点があり、先方に届けてもらうところまで明確 に示されていないから、預けておくだけの場合もありうる。 ひ預ける たくましい【逞しい】体が力強い、勢いが盛んだの意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈一体〉〈商魂〉〈想像を ー・くする〉高山樗牛の『滝口入道』に「身の丈六尺に近 く、筋骨飽くまでー・く」とある。体軀ななどに使う場合は 男性を連想させやすいが、「生活力」など女性に用いても 違和感のない例も多い。り雄々しい・頑健・強健・丈夫・精悍 たくみ【巧み】物事を手際よくこなす意で、改まった会話や 文章に用いられる和語。〈な演技で観客を魅了する〉〈技 がーだ〉〈一切り抜ける〉正宗白鳥の『入江のほとり』 に「文章は次第にーになっている」とある。技術的な巧妙さ が強調され、「に言い逃れる」「ことばーに誘う」のよう に、好ましくない意味合いでも使う。Q巧い・上手 たくらむ【企む】ひそかに悪いことを計画する意で、会話に たける も文章にも使われる和語。〈悪事をー〉〈陰謀をー〉〈乗っ 取りをー〉き企てる・Q仕組む・謀る・もくろむ たくわえる【蓄(貯)える】金銭・物品・知識などを集めて後々 使うために取っておく意で、やや改まった会話や文章に用 いられる和語。〈財産を—〉〈経験を—〉夏目漱石の『野 分』に「人格の修養に附随してーえられた、芸を教えた」 とある。ひためる だけつ【妥結】意見の対立していた両者が歩み寄って話がま とまることをさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈交渉がーする〉(ようやくーを見る)単解決 たけのこ【竹の子/筍】春に地下茎から出る若竹をさし、会 話でも文章でも広く使われる和語。孟宗汁と呼ばれる ーの味噌汁)回戦後間もなくのころ、竹の子の皮をはぐよ うに衣類などを一枚ずつ売って食いつなぐ暮らしを「一生 活」と称した。また、腕が未熟でまじないなどで病気を治 そうとする「野巫」が同音の「藪」に置き換えられた藪医 者よりも、さらに腕の落ちる医者を「医者」と称すること もあった。そのような知識のある年輩者には、そういう連 想が働いてマイナスイメージとなるケースも考えられる。 たける『猛る』興奮したように暴れる意で、文章に用いられる古めかしい和語。〈野牛がー〉〈荒波がー〉〈ー心〉尋る たける【哮る】荒々しく吠える意で、文章に用いられる古め かしい和語。〈虎がー〉〈荒海がー〉も猛る たける【長ける】優れている、長じている意で、会話でも文 章でも使われる、少し古い感じの和語。〈世故に〉〈悪知 <630> たける 恵にー〉〈文才にー〉 ノノノノノノノ たける【闌ける】盛りになる意で、主に文章に用いられる古 風な和語。〈日が—〉〈夏もー・けた頃〉Q長ける たごん【他言】内容にしておくべきことなどを他人に漏らす 意で、主に文章に用いられる硬い感じの漢語。〈無用〉 意て主に文章に用 「すべきでない」②「口外」以上に意図的な感じがある。 「一無用」以外は、「一切ーはまかりならぬぞ」といった古 めかしい響きに聞こえやすい。ひ口外 ださい「やぼったい」意の比較的新しい俗語。〈服装〉や ることがいちいち—〉単に格好が悪いというだけでなく、 洗練されておらず野暮で垢抜けしないという点に重点があ る。刂Q垢抜けない・田舎じみる・泥臭い・野暮・野暮ったい たじ【他事】「ひとごと」の意で、多く文章の中で用いられる 丁重な感じの漢語。へーながら御安心ください)きたにんこ と・ひとごと・Qよそごと たじ【多事】多忙の意で、主に文章中に用いられる硬い漢語。 〈多端〉〈身边〉の一定の言いまわしの中で用い、単独 ではあまり使わない。「内外の折」「多難」のように、 事件が多くて危険だという意味にも使われる。ひいそがし い・せわしい・多端・Q多忙・多用 たしか【確(徳)か】間違いがなく信用ができる意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈な証拠〉〈な情報〉〈な筋〉〈身許のな人〉 大岡昇平の『俘虜記』に「最初彼の姿を見た時、私は射つ気 が起らなかった。これはーである」とある。確率の高さに 重点のある「確実」に比べ、信頼性に重点のある感じが強 く、「品物はだ」「腕は」のように優秀さを保証する場合にも使い、「気は」の形で「正気」の意を表すこともある。また、「去年の今頃だったと思う」「最近結婚したはずだ」のように、確実性の高い推測を表す副詞の用法もある。専確実 たしかめる【確かめる】調べたり念を押したりして事柄をは っきりさせることをさし、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の基本的な和語。〈戸締りを—〉〈先方 の住所を—〉〈相手の気持ちを—〉〈事実関係を—〉〈確認 たじつ【他日】将来の別の日の意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い漢語。〈詳細な報告は—に譲る〉〈残った問 題の解明については—を期す〉②「後日」より漠然とした未 来をさす。後日 たしなみ【嗜み】身につけておくべき芸事などの心得をさし て、やや改まった会話や文章に用いられる、いくらか古い感 じのする和語。〈女の—〉〈お花の—がある〉「素養」より も技術的な側面が強い。「文学から絵や音楽それに演劇・舞 踊に至るまで幅広い日ごろの—が知れる」のように「趣味」 という意味合いでも用い、「—のよい女性」のように「普段 の身だしなみや心がけ」の意でも用い、「—のない行為」の ように「慎み」の意でも用いる。専心得・Q素養 たしなむ【嗜む】好んで親しむ意で、改まった会話や文章に 用いる和語。〈お茶を—〉〈酒は—程度〉の「やる」より上品 で、「愛好する」のような硬さのない、むしろやわらかい感 じの和風の表現。趣味と教養が交じり合ったプラスのイメ ージで用いられる傾向がある。愛好・Qやる① <631> たしなめる【窘める】注意して当人の反省を促す意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈考え違いを—〉〈無作法を ー〉〈大人気ないとー〉②太宰治は『猿ケ島』で「学者」を 「死んだ天才にめいわくな註釈をつけ、生れる天才をー・め ながらめしを食っているおかしな奴」と定義した。ひいきめ る だしぬけに【出し抜けに】相手の意表をついて事を行うよう すをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常語。会話やさほど改まらない文章に使われる日常の和 語。〈一大きな声を出す〉〈別れ話を切り出す〉里見弾 の『椿』に「叔母が、もうとても耐らない、という風に、 ぶっと噴飯すと」とある。相手が驚くことを予測して行う 人間行為の場合もある。ヲQいきなり・急に・突然・不意に だしもの【出し物】芝居や演芸などの興行で上演する作品を さし、会話やさほど硬くない文章に使われる、やや古風な 和語。〈今月の—〉意味に重点を置いて「演し物」と書く こともある。Q演目・番組 たしゃ【他者】自分以外の人をさし、主に文章中に用いられる、専門的で硬い漢語。〈ーの領域〉〈ーへの働きかけ〉〈ーの意見を仰ぐ〉Q他人・別人 だしゃ【打者】野球で投手の投げるボールをパットで打つ役 の選手をさして、主として書きことばで使う漢語。口頭で はふつう「パッター」と言う。〈強ー〉〈首位ー〉〈一一巡の 猛攻〉パッター たしよう【多少】主に程度が少しばかりという意味合いで、 会話にも文章にも使われる漢語。へーの欠点は目をつぶる たすう 〈ーよくなった感じがする〉〈弓道に関してはー腕に覚えが ある〉〈だれでもーそういう傾向はある〉の「量のーは問わ ない」「ーにかかわらず注文を受ける」のように、数量が多 いか少ないかという意味でも使う。弁幾分・幾らか・若干・ 少々・Q少し たじろぐ 圧倒されてしり込みする意で、改まった会話や文 章に用いられる和語。〈気勢に押されて—〉〈幾多の困難に もーことなく突き進む〉有島武郎の『或る女』に「強敵に 襲いかかられた孤軍のように、ー・ぎながら」とある。主と して心の状態を表す「ひるむ」と違い、そのために実際によ ろめく場合も含まれる。ふ怯む たす【足す】足し算をする意で、会話やさほど硬くない文章 に使われる和語。〈本体の価格に消費税をー・した金額〉 〈支出をすべてー〉の「やかんに水をー」のように同じ種類 のものを追加する意にも使う。また、「用をー」の形で、用 事を済ませる意に用いることもある。と加える だす【出す】内側にあるものを外側に移動させる意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈舌を—〉〈広告を—〉〈金を—〉〈店を—〉〈庭に—〉 〈口に—〉〈喜びを顔に—〉③堀辰雄の『菜穂子』に「気休め のようなことは口に—・さなかった」とある。「入れる」と 対立。ひ引き出す たすう【多数】人や物の数が多い意で、いくらか改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ー決〉〈不良品がー出回る〉 〈大ーの人が賛成に回る〉〈ーの犠牲者を出す〉〈最大ーの 最大幸福〉単多量 <632> たすける たすける【助ける】力を添えて困っている状況から救い出す 意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。〈困っている人を〉〈溺れている子供を ー〉②壺井栄の『二十四の瞳』に「足もとのもどかしさを口 にー・けてもらうかのように、ゆく手のわが家へむかって叫 んだ」とある。「家事を」のように補佐する意や、「家計 をー」のように経済的に楽にする意でも、「消化をー」のよ うに促進する役目を果たす意でも使う。ふ援助・救援・救済・救 助・救い・Q救う・手伝う たずさえる【携える】手に提げて持つ意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い和語。〈本を—〉〈土産を—・えて訪 問する〉②堀辰雄の『大和路』に「秋の大和路の、何処かあ かるい空の下で、読んでみたくてー・えてきた本」とある。 Q持参・持つ たずねる【尋ねる】未知の情報を得る目的で相手の言を聞き 出す意で、やや改まった会話や文章で使われる和語。人に ものを—〉〈交番で道を—〉〈そのわけを—〉〈行方を—〉② 小沼丹の『ウイスキイ工場』に「警官は、その男にその包は 何かとー・ねたが男は黙っている」とある。「聞く」より改 まった言い方。単聞く・Q問う たずねる【訪ねる】ある場所を目ざしてそこまで足を運ぶ意 で、やや改まった会話や文章で用いられる和語。知人を ー〉へついでにー〉思い出の地をー〉何となくー・ねてみ る〉思いがけない人がー・ねて来た〉井伏鱒二に『丸山 警視総監と久米正雄氏を訪ねる』と題した随筆がある。 Q訪れる・訪問・やって来る だせい【惰性】今まで続いてきた癖・習慣・勢いの意で、会話 にも文章にも使われる漢語。へーで進む〉へーで生きてい る)丸谷才一の『笹まくら』に「すぐこんなことを思案し たのは心のーのようなもの」とある。「慣性」の意の用法で は古風。刂慣性 たそがれ【黄昏】あたりが暗くなりかけた頃をさし、主とし て文章に用いる、古風で優雅な和語。〈時〉へのひとと き〉へが迫る)薄暗くて人の見分けがつきにくいため 「誰をそ彼」(あれは誰だ)と言うような時刻という意味から。 芥川龍之介の『東洋の秋』に「この公園にも、次第に」が近 づいて来た」という例が見える。谷崎潤一郎の『細雪』には 「最も名残の借しまれる」の一時を選んで」京洛の春を代表 する平安神宮の神苑の桜花の下をさまよう場面がある。 暮れ方・薄暮・晩方・日暮れ・灯ともし頃・夕・Q夕方・夕暮れ・夕刻・夕 べ・夕間暮れ・宵・宵の口 だ【只】代金が不要な意で、会話や軽い文章に使われる日 常の和語。〈ーでもらう〉〈ーで遊べる〉商品などについ ては「無料」よりこの語を多く使う。漢字の「只」を分解し て「ロハ」と称する古風な俗語もある。ひ無償・Q無料 ただいま【只今】「ちょうど今」と強める意味合いで、改まっ た会話や文章に用いられる丁重な感じの和語。〈一使用中〉 〈一の時刻〉〈一帰りました〉〈一御紹介にあずかりました〉 埤田譲治の『風の中の子供』に「それでも真面目くきっ て、/「」/と、上にあがって行く」と帰宅の挨拶の使用 がある。Q今・現在・今日目下 たたえる【讃(称)える】貢献・功績・努力・誠意などをすぼらし <633> いものだと高く評価する気持ちを表現する意で、主に文章 に用いられる和語。〈栄誉を—〉〈互いの健闘を—〉満ち 溢られる意から、多くの賞讃のことばを口にする意に転じて 「神を—」「徳を—」などと用いるようになり、「母校の名を —」もその延長上の例。Q賞讃・褒めそやす・褒めたたえる・褒 めちぎる・褒める たたかい【戦(闘)い】「戦闘」の意で会話や軽い文章に使われ る古風な和語。〈関ヶ原の—〉〈—の火蓋」を切る〉の叩き 続ける意からという。現代では「—の日々」「—済んで日が 暮れて」のようにいくらか美化した詩的な雰囲気で使われ ることもある。「女の—」「一丸となっての—」のように単 なる争いの意で使われる比喻的拡大用法の場合は特に古風 な感じを伴わない。ひいくさ・戦役・戦争・Q戦闘 たたかう【戦う】武力を用い、あるいはルールに則って、勝 敗・優劣を競う意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる和語。〈勇敢に—〉〈正々堂々と—ことを誓う〉〈強 敵と—〉〈選挙で—〉菊池寛の『忠直卿行状記』に「軍兵 悉く奮い立って火水になれとー・った」とある。語源的に 「叩く」とつながる。ひ闘う たたかう【闘う】立ち向かう意で、会話でも文章でも使われ る和語。〈裁判で—〉〈労使が—〉〈病魔と—〉〈くじけそう になる自分と—〉広い意味で使う「戦う」のうち、部分的 で小規模な争闘や、困難に際して逃げずに立ち向かうよう な抽象的な争いなどの場合にしばしば用いられる表記。夏 目漱石の『倫敦塔』に「此の苦痛とー・った末」とある。 戦う ただす たたきうり【叩き売り】常識を破る安売りの意で、主に会話 に使われる古風で俗っぽい和語。〈売れ残りのー〉の「バナ ナのー」のように、大道商人が品物を載せた台を叩きなが ら値段をどんどん下げて売ったところから。児り出し・セー ル・Qダンビング・特売・投げ売り・バーゲン・安売り・廉売 たたく【叩く】相手の体や物体を手や棒などで打つ意で、会話やさほど硬くない文章に使われる日常生活の和語。深夜、戸をー者がある〉(机をー・いて怒る)〈思わず膝をー・いて納得する〉〈老母の肩をー〉〈後ろからぽんと友達の肩をー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「煤掃の時に産を丸めて畳をー様に、そこら近辺を無暗にー・いた」とあり、川端康成の『花のワルツ』には「腹立たしげに、握拳で二三度自分の腰をー・いたが」とある。相手に危害を加える意図の感じ取れる「殴る」に対し、この語は親しみの感情や善意にもとづく場合にも使え、悪意があったとしても「殴る」ほどの衝撃を感じさせない。また、「ひっぽたく」ほど感情のな高ぶりを感じさせない。り殴る・はたく・はる・ひっぽたく・Qぶつ ただしい【正しい】法や道理にかなっていてちゃんとしてい る意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な和語。〈一行い〉〈答え〉〈姿勢を崩す〉 〈そうするのがー〉〈方向に向かう〉〈正確・Q正当・妥当・ま っとう ただす【正す】正しく直す、はっきりさせる意で、やや改ま った会話や文章に使われる和語。〈間違いを—〉〈姿勢を ー〉〈襟をー〉〈为とをー・せば〉Q糾す・質す <634> ただす ただす【糾(糺)す】取り調べて追及する意で、改まった会話 や文章に用いられる硬い感じの和語。〈罪を—〉〈疑惑を 」〈身元を—〉処正す・Q質なす ただす【質す】質問して明らかにする意で、改まった会話や 文章に用いられる、やや古風な硬い和語。〈真意を—〉〈疑 問点を—〉〈証人に—〉処正す・Q糾す たたずむ【佇む】じっと立つ意で、主に文章に用いられる、 やや古風で詩的な和語。〈水辺に—〉〈夕刻の街角に—〉 の 芥川龍之介の『杜子春』に「三日月の光を眺めながら、ぽん やりー・んでいた」とある。主体が周囲の雰囲気を味わって いるような情緒的意味合いが感じられる。処起立・立ちすく む・Q立ち尽くす・立つ・突っ立つ ただちに【直ちに】「すぐ」の意で、改まった会話や丁重な手 紙などで用いられる和語。〈ー連絡せよ〉〈ー伺います〉 〈ーご返事いたします〉②田宮虎彦の『沖縄の手記から』に 「壕によってー水際に敵を撃退することになっていた」とあ る。「すぐ」よりも改まった感じの語。Q直ぐ・即刻 だだっびろい【だだっ広い】むやみに広い意で主に会話で使 う和語。〈一部屋をあてがわれる〉へーばかりで、何の趣も ない)大仏次郎の『風船』に「ーく、荒れた感じの寺」 とある。単にきわめて広いというだけでなく、不適当だと か、殺風景だとかというマイナスイメージが伴う。広い ただひとつ【唯一つ】それだけしかない意で会話にも文章に も使われる和語表現。〈一の取り柄〉へ一の污点〉「唯一」 よりやわらかく「たった一つ」ほどくだけていない。広い たひとつ唯一 ただよう【漂う】水上や空中に浮かんで揺れる意で、改まっ た会話や文章に用いられる和語。〈海に—〉へにおいが—〉 〈雰囲気が—〉ぐちなみに、中沢けいの『海を感じる時』は 「広い広い海のさざ波のくり返しの上へと、私はー・ってい る。私はー・っていく。ー・っていった」として作品が閉じ られる。ひたゆたう たたん【多端】仕事が多く忙しい意で、主に文章中に用いられる硬い漢語。〈多事—〉〈政務—〉〈御—の折〉の一定の言いまわしの中で用い、単独ではあまり使わない。ひいそがしい・せわしい・多事・Q多忙・多用 たち【達】人間の複数を表し、会話にも文章にも使われる。 会話にも文章にも使われる。 〈子供ー〉〈わたしー〉〈君ー〉②古くは神や「公達」のように貴人に用いて尊敬を表した。現代の「友達」はその複数の意味合いが薄れて単数の場合にも使うようになった名残の形。現在でも「ら」より丁寧な感じがあり、「君ー」は「君ら」よりあたりがやわらかく、「お前ー」は「お前ら」より親しみの感じが濃い。「わたしー」も「わたしら」よりへりくだった感じが薄い。なお、人間以外でも「犬ー」「小鳥ー」「虫ー」のような例もあるが、動物を擬人化した感じが伴う。「花ー」のように植物に付く例になると、ますます強い感情移入が感じられる。「ゴキブリー」「悪魔ー」のようなマイナスイメージと結びつく例こそ見ないが、近年は「ことばー」「名曲ー」「思い出ー」から「悲しみー」「過去ー」といった例まで見られ、自分をさえ褒めてやりたがる現代人の心優しさ、甘ったれ、なれなれしさを思わせる現象となっている。ひがた・ども・Qら <635> 「質(性質)」生来の気質をさし、主に会話に使われる古風な和語。〈なかなか決断できない〉〈昔からせっかちなだった〉〈飽きっぽい〉②徳冨蘆花の『思出の記』に「大様な、こせこせしない」でね」とある。「性分」以上に、いつまでも変わらない雰囲気がある。「汗をかきやすい」「風邪を引きやすい」のように体質をさすこともある。さらに、「の悪いいたずら」「の悪い病気」のように事柄についても用いられる。全体として悪いニュアンスで用いられる例が圧倒的に多く、「明るい」「すばらしい」といった完全なプラス評価の語とは結びつきにくい。「ずるい仕打ちを黙って見過ごせない」のように正義感の強い場合、「人の言うことをすぐ信じ込む」のように素直な場合などでも、そのために争いが絶えないとか、よく騙だされるとかといった問題を抱えているような連想が働きやすい。乃気質・Q気象・気性・気立て・性分・人格・人品・人物・性格・性向・性質・人柄・人となり だち「友達」の意の隠語。「公」友」を略した語形で 漢字で書けば「達」となるが、しばしば片仮名書きする。 友達 たちぎき【立ち聞き】立ち止まって他人の話をこっそり聞く 意で、会話にも文章にも使われる和語。〈人の話を—する〉 〈廊下で—する〉〈—は行儀が悪い〉夏目漱石の『倫敦塔』 に「二人の話しを—した時」とある。「盗聴」と違って道具 を使わない。「盗み聞き」ほど計画的・積極的でなく、偶然 通り合わせたところに人声が聞こえて思わず立ち止まった ようなケースも含まれる。収盗聴・Q盗み聞き たちづめ たちぐい【立ち食い】立ったまま食うことの意で、会話や改 まらない文章に使われる和語。へー蕎麦ぶへーは行儀が悪 い) 具立食 たちくらみ【立ち眩み】立ち上がった瞬間にめまいが起こる ことをさし、会話にも文章にも使われる和語。〈ーがする〉 ②島木健作の『生活の探求』に「風呂からあがった時などに よく経験するような、ーを感じた」とある。ひめまい たちすくむ【立ち竦む】あまりの驚きや恐怖感に体がすくん で立ったまま動けなくなる意で、会話にも文章にも使われ る和語。突然の爆発音に思わずー〉〈崖っぷちに出てー〉 〈熊に出くわしてー〉②有島武郎の『或る女』に「裸体を見 られた女のように固くなってー・んだ」とある。ひ付だむ・Q 立ち尽くす・突っ立つ たちつくす【立ち尽くす】何かに心を奪われて立っている意 で、改まった会話や文章に用いられる、やや古風な和語。 〈呆然とー〉〈雨の中にー〉〈感動のあまりしばらくー〉回 我を忘れてというニュアンスがあり、いくぶん文学的な雰 囲気を感じさせる。柴田翔に『立ち尽す明日』と題する小 説がある。ひ竹だむ・立ちすくむ・Q突っ立つ たちっぱなし【立ちっ放し】長時間立ち続ける意で、くだけ た会話から軽い文章まで使われる日常の和語。〈電車が満員 で終点までだった〉〈朝からーでくたびれた〉「立ち通 し」や「立ち詰め」に比べ会話的で、自分の意志でなく状況 の結果そうならざるを得なかったニュアンスが含まれる。 ゕ立ち詰め・Q立ち通し たちづめ【立ち詰め】長時間立ち続ける意でやや改まった <636> たちどおし 会話や文章に用いられる和語。〈一日中—で仕事をこなす〉 〈今日は店が込んでほとんどだった〉座って休む時間が なく結果としてほとんど立っていたという感じの「立ち通 し」に対し、この語はあまり出歩いたりせずに一定の範囲 に立っている結果になったという連想がある。会話的な 「立ちっ放し」より改まった表現で、「立ち通し」よりやや古 風な感じもある。立ちっ放し・Q立ち通し たちどおし【立ち通し】長時間続けて立っている意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈一の仕事〉〈一で働く〉〈忙 しくて朝からだ〉仕事などに追われて主体的に立ち続 ける感じがある。立ちっ放し・Q立ち詰め たちば【立場】その人間の置かれた状況や、ものの考え方の 拠りどころをさして、会話にも文章にも広く使われる基本 的な和語。〈親の—〉〈教師としての—上〉〈—が違う〉〈苦 しい—に立たされる〉〈自分の置かれた—をわきまえる〉② 川端康成の『千羽鶴』に「満座のなかで自分がどんな—か も、夫人は忘れたとしか見えない」とある。観点・Q見地 視座・視点 たつ【立つ】直立した姿勢をとる意で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。{山頂に }}}}}}}}} たつ【断つ】切り離してつながりを無くする意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈望みを—〉〈退路を—〉〈酒を—〉 〈国交を—〉森鷗外の『妄想』に「世間と一切の交通を— っている」とある。切る・Q切断・絶つ・ちょん切る たつ【絶つ】続いていたもの たつ【絶つ】続いていたものを終わらせる意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる和語。〈消息を—〉〈交際を—〉 〈命を—〉〈犯罪に巻き込まれるケースがあとを—・たない〉 の芥川龍之介の『煙管』に「それ以来、坊主が斉広の煙管を ねだることは、ぱったり跡をー・ってしまった」とある。 切る・切断・Q断つ・ちょん切る たつ【経(立)つ】時間が経過する意で、会話やさほど硬くな い文章に使われる日常の和語。〈通い始めて二年—〉〈知ら ないうちに時間が—〉くだいぶー・ってから知らせる〉 「経つ」と書くのが通例だが、森鷗外の『阿部一族』に「一 時立つ」とあるように「立つ」と書いてもよい。弁経過・ 過ぎる・経る だつい【脱衣】着ている物を脱ぐ意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈所〉〈室〉の着衣」と対立。脱ぐ だつきやく【脱却】好ましくない状態から抜け出す意で、改 まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈危機をーする〉 〈貧困からのー〉〈ようやく不振からーできた〉場所のイ メージの強い「脱出」に比べ、抽象的な意味合いで使われる 傾向がある。脱出・抜け出す・抜け出る たっきゅう【卓球】台の中央のネットを挟んでセルロイド製 のボールをラケットで打ち合う室内球技の一種をさす漢語。 〈全日本ー選手権大会が開催〉への公式試合に出場》字 音語であるが、「排球」「籠球」「庭球」のような古くさい感 じはなく、日常語としても正式名称としても広く用いられ る一般的な語。ヒテーブルテニス・Qピンポン <637> だっきゅう【脱白】骨の関節がはずれることをさし、会話に も文章にも使われる専門的な漢語。〈関節を—する〉き挫 く・Q捻挫 たっしゃ【達者】体が丈夫な意で、会話や文章に使われる古 風な漢語。へーで暮らす)へいつまでもおーで)足がー だ」「英会話がーだ」など、健康とは無関係に、優れている 意に使う用法もある。その場合は古風な感じがいくぶん薄 れる。夏目漱石の『坊っちゃん』に「読み書きがーでない」 とある。専元気・健康・健勝・健全・Q丈夫・健やか・壮健・息災 だっしゅつ【脱出】危険な場所や好ましくない状況から困難 を排して逃れ出る意で、やや改まった会話や文章に用いら れる漢語。〈国外ーを企てる〉〈ーを図る〉〈ーに成功する〉 〈包囲網をーする〉〈どん底生活からのーに成功する〉〈倒 産の危機的状況をようやくーする〉「脱却」より一般的 で、具体的なイメージが強い。「抜け出す」「抜け出る」に 比べ、難しいところを何とか切り抜ける感じが強い。刂脱 却・Q抜け出す・抜け出る たつじん【達人】武芸や技芸などで格別に優れた腕前を発揮 する人物をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈剣道の 〉〈人物画の〉〈文章にかけてはーの域に達している〉 「名人」よりも使われる分野が狭い。到達している技の 高さは「名手」より上で、「名人」よりは若干低い感じがあ る。また、「名人」がその道でよく知られた存在を連想させ るのに対し、この語はあくまで技術面に焦点をあて、知名 度を問題にしていない雰囲気がある。名手・Q名人 たつする【達する】ある範囲・段階・程度・数値に至る意で、改 たっとぶ まった会話や文章に用いられる表現。〈目的地に—〉〈骨ま で—傷〉〈開始から間もなく五時間にも—長い試合〉〈被害 総額は数十億円に—〉〈合意に—〉②「これでようやく目的 を—」のように、念願が実現するという意味合いでも使う。 及ぶ・Q届く たっせい【達成】目指したことを成し遂げる意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈目標をーする〉〈記録 をーする〉の「成就」ほど大仰でない。成就 だっせん【脱線】車輪がレールから外れる意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈事故〉〈列車がーして転覆する〉 の話がーする」のように、話や行動が本来の筋からそれる 意に使う比喩的用法もある。そういう現象をさすだけで、 そのことに対する評価は特に含まれていない。み逸脱 たったひとつ「たった一つ」「ただ一つ」の意で、くだけた会 話や軽い文章に使われる和語表現。「の不満」「の宝 物」永井龍男の『酒徒交伝』に「もし神さまが、の願い ごとを許してくれるとすれば、あの晩棺の中から出て、こ の世とあの世の境目の酒の味を、親しい友人達と酌み交わ し」とある。Q唯一つ・唯一 たっとい【尊い/貴い】「とうとい」の古風な表現。年寄り じみた響きがある。夏目漱石の『坊っちゃん』に「教育もな い身分もない婆さんだが、人間としては頗るー」とある。 Q尊い・貴い たっとぶ【尊(貴・尚)ぶ】立派だと思って重んじる意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈祖先を—〉〈先方の意思を 」の「とうとぶ」の古風な表現。「景観を—」のように、 <638> たっぷり 重んずるの意で、神仏や人間以外に対しても使う。帰め る・敬う・崇敬・崇拝・尊敬・Qとうとぶ たっぷり「たくさん」「十分に」の意で使われる、やや会話 的な和語。〈自信—〉〈残りは—ある〉〈予算は—ある〉〈— 汗をかく〉〈—水を吸う〉〈時間を—かける〉③数的より量 的に多く満ち溢れている感じが強い。そのため、「鉛筆が ーある」といった例より「砂糖を—入れる」といった例のほ うがびったりする。絶対的な分量よりも、通常よりはるか に多いという程度に重点がある。ひ一杯・うんと・多い・しこた ま・たくさん・たんと・たんまり・どっさり たつぶん【達文】内容や表現意図が相手に正しくはっきりと 伝わる文章をさし、主に文章中に用いられるやや専門的な 漢語。〈文意明快な—〉の「達意の文章」の意。「名文」の一 種。乃美文・Q名文 だつもう【脱毛】毛が抜け落ちることをさし、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈円形—症〉へーを防ぐ 「禿げる」と違って頭髪とは限らず、また、「一剤」のよう に、美容などのために意図的に体毛を除去する場合も含む。 も禿げる だつらく【脱落】①脱け落ちる意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。「二字」「してる」は「している」の「い」が ーした形だ》遺漏・落ち・Q欠落・漏れ②仲間や団体などか ら抜け落ちる意で、いくぶん改まった会話や文章に用いら れる漢語。〈受験戦争からーする〉〈優勝戦線からーする〉 ③「落伍」と違い、「政治運動からーする」のように、必 ずしも能力不足とは限らず、思想や手段などに関する考え 方に開きが出て一緒に行動するのを取り止める場合も含ま れる。落ちこぼれ・Q落伍 たて【縦」「のものを横にもしない」のように上下の方向を さしたり、「長方形の土地の—の長さ」「一列に並ぶ」の ように左右に対する前後の方向をさしたりして、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈煉瓦を—に積み上げる〉〈首を—に振る〉語源的に 「立てる」と関連があるとされ、比喻的な「社会」も上下 関係のイメージ。前後の方向をさす派生的な用法では「竪」 と書くこともあり、夏目漱石の「坊っちゃん」にも「山嵐の 机の上は白墨が一本—に寝て居る丈で閑静なものだ」とあ ってその漢字になっている。「横」と対立。Q鉛直・垂直 たてかえ【建て替え】それまでの建造物を廃棄して新たに建 築する意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。 〈古い家を壊してーをする〉へーの資金がなく、増築してし のぐ〉弁改築・新築 たてこむ【立て込む】多くの人や物が集まっていたり、家な どがぎっしり建ち並んでいたりする意で、会話にも文章に も使われる和語。〈店がー〉〈仕事がー〉仕事や行事が集 中する場合にも使う。島崎藤村の『新生』に「こちゃごちゃ 家のー・んだ細い横町」とあるように狭い場所に多くの家が 建っている意味では「建て込む」とも書く。ひごった返す・Q 込み合う・込む・混雑 たてつづけ【立て続け】同類の出来事が間をおかずに繰り返 される意で、会話にも文章にも使われる和語。へーに物騒な 事件が起こる〉へーに飲んですぐ酔っ払う〉有島武郎の <639> 「或る女」に「にピールを何杯飲みましたろう」とある。 「続けざま」より間隔がさらに短い感じがある。ひ続けざま たてふだ【立て札】通知内容や注意事項、主張・抗議などを書 いて道端などに立てる札をさし、会話にも文章にも使われ る日常の和語。〈遊泳禁止の」が出る〈キャンパス内の」 を禁止する)②「看板」より臨時の場合が多い。ひ看板 たてもの【建物】人の住む家屋や物を収納する倉庫などの総 称として、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈土地と—〉〈古い木造の—〉〈洋風 の三階建ての—〉小沼丹の『ロンドンの記憶』に「ロンド ンは古い美しいーを壊して新式のーを造っているが(略)い まにアメリカ人は誰もロンドンに来なくなる」とある。林 芙美子の『馬の文章』には「まるで軍艦みたいなーがふえて いる」とある。「ビル」より広義で、「建築物」「建造物」の ような専門語の感じを伴わない。専建造物・Q建築物・ビル・ビ ルディング たてる【建てる】建物や碑などを造る意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。人家を ー〉〈倉をー〉〈離れをー〉〈銅像をー〉②地上に立つ状態に 造る場合であり、地下室やダムなどを造る際にはなじまな い。井伏鱒二の『荻窪風土記』に「東京郊外に家をー・て静 かに詩作に耽る」とある。単建設・建造・Q建築 たとい【仮令】→たとえ(仮令) だとう【妥当】判断や物事の処理などが道理にも実情にも合 って適切な意で、会話にも文章にも使われる漢語。「な金 額〉へ「な扱い〉へそのあたりが「な線だろう」「「穏当」よ り積極的に評価している感じがある。Q穏当・順当・正当・正しい・真っ当 たにがわ たとえ【例え】一例の意で、会話でも文章でも使われる和語。 〈具体的なーを示す〉へーを挙げて説明する〉は一例・Q喩え・ 仮令例 たとえ【喻(警)え】あることを他のイメージに置き換えて間 接的に伝える比喻の意で、会話でも文章でも広く使われる 和語。〈もののー〉〈ーを引く〉〈ーが悪い〉の幸田露伴の 『五重塔』に「宝の持ち腐れのーの通り」とある。Q例え 仮令・比喻 たとえ【仮令】「仮に」の意で、改まった会話や特に文章に用 いられる、硬い感じの和語。「いかなる困難があろうと」 の志賀直哉の『或る男、其姉の死』に「それがどんな一寸 した雑談にしろ」とある。本来は「たとい」。仮に・Q喻え・ 例え・よしんば たとえる【喩(譬)える】ものごとの内容や性質を形容する際 に他のイメージを借りて表現する意で、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈女を花に」 「ー・えようもない美しさ〉安岡章太郎の『海辺の光景』に 「バラソルを杖のように地面に立てたまま、真直ぐなスカー トを着けた軀が棒みたいだった」という例があり、「バラソ ル」を「杖」に、「軀」を「棒」に喩えている。ひなぞらえる たなごろ【掌】「手のひら」の意で、古風でやや文学的な和 語的表現。〈ーを指すよう〉〈ーを返す〉ひ手の平 たにがわ【谷川】谷間を流れる川をさし、会話にも文章にも 使われる和語。〈ーの音が響く〉、Q渓流・せせらぎ <640> たにん たにん【他人】親戚でない人や無関係な人をさし、会話にも 文章にも使われる基本的な漢語。〈行儀〉〈任せ〉赤 のー〉〈一の空似〉〈一の出る幕はない〉の二の痛みはー にはわからない」のように、当人以外をさす用法もある。 Q他者別人 たにんぎょうぎ【他人行儀】親しい間柄なのにまるで他人に 対するように打ち解けない態度をとる意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈一に丁重なお辞儀をする〉へーにふる まう〉りすげない・そっけない・ぶっきらぼう・Q水くさい・よそよそ しい たにんごと【他人事】「ひとごと」の意で、会話にも文章にも 使われる慣用的な俗語。〈ーで済ませる〉〈ーに余計な口を 挟む〉の「ひとごと」の当て字「他人事」の「他人」を誤っ て音読みした形が広まって一般化した語。ひ他事・ひひとご と・よそこと たね【種】植物の発芽のもとになるものをさし、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈西瓜がいのー〉〈ーをまく〉「馬」で「精子」、「一粒」 (胤)で血筋の繋がるもとを表すほか、「話のー」「苦労の ー」のように材料や原因をさす比喻的用法もある。毎種子 たねん【多年】多くの年にまたがる長い間の意で、主として 文章に用いられる硬い漢語。〈ーの功績〉〈ーにわたる活 動〉全体を一つの長いまとまりとしてとらえた感じの 「永年」に比べ、一年ずつの連続ととらえた感じの表現。 えいねん・Q積年・ながねん たのしい【楽しい】愉快で心地よい気分をきす和語でくだ けた会話から硬い文章まで広く使われる日常語。気心の知 れた連中と一杯やるのはー)自分の行動や思考を通して 体験している場合に限って使う。小林秀雄の『私の人生観』 に「辛かったことも、思い出となればー・く思われる」とあ る。専しい・喜ばしい たのしむ【楽しむ】楽しい気分で過ごす意で、くだけた会話 から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈余暇を ー〉〈スキーを〉〈気の合った仲間とのおしゃべりを〉 興じる たのむ【頼む】自分がやることを他の人にやってもらうよう 要求する意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈友達に—〉〈買い物を—〉〈子供に お使いを—〉〈頭を下げて—〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「そこの所はよろしく山嵐に—事にした」とある。「タク シーを—」「出前を—」のように、注文するような意味合い でも使う。ひQ依頼・頼る たはた【田畑(島)】米を作る田と野菜を作る畑の総称として、 会話にも文章にも使われる、いくらか古風な和語。へを耕 す)土地に重点のある「でんばた」に比べ、農作物の収穫 という機能をイメージさせる傾向がある。込耕地・田園・でん ばた・農場・農地 たはつ【多発】類似の事柄が数多く発生する意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈交通事故ー地帯〉〈放火事 件がーする〉ひ群発・続発・Q頻発・連発 たび【度】回数の意で主に文章に用いられる古めかしい和語。 今ひとーの逢瀬がかなうならば〜〜〜〜〜〜 <641> る〈同じ過ちをみー繰り返す〉夏目漱石は『倫敦塔』で 「留学中只一度倫敦塔を見物した事がある」と書き、再び訪 れなかった理由を「一度で得た記憶を二返目に打壊すのは 惜い、三目に拭い去るのは尤も残念だ」と述べている。 「一度」「二返目」「三たび目」というふうに「度」「返(遍)」 「たび」を使い分けたのは同語回避のレトリック。「惜い」 と「残念だ」「打壊わす」と「拭い去る」という言い換えに も、同じことばを繰り返さない美意識が感じられる。卩回・ Q度・遍 たび【旅】一定の期間、自宅から離れた場所に出かける意で、 主に文章に用いられる、古風でいくぶん優雅な感じの和語。 〈ー先からの便り〉〈ーに出る〉〈豪華客船のー〉〈ーは道連 れ、世は情け〉小沼丹の『駅二、三』に「乾盃していると 窓外の秋色は一段と鮮かで、これが本当のーだと云う気が して来た」とある。鍛えるために「可愛い子にはーをさせ よ」と言われたように、昔は苦労の多いものという認識が 強かった。現代では、「長ー」などは出張の場合にも使う が、一般には楽しむためのものを連想させる。马旅行 だだち【旅立ち】旅に出る意から比喩的に、新しい生活の 始まりの意で、主に文章の中で使われる、美化した感じの 古風な和語。へーの日を迎える〉〈結婚という新たな人生の ー〉みQ門出・出発 たびたび【度度】「しばしば」に近い意味で、会話にも文章に も使われる日常の和語。へー出かける〉へー見かける〉 しばしば・ちょいちょい・ちょくちょく・よく たぶらかす【誑かす】うまいことを言ったり適当にごまかし たぶん たりして相手をだます意で、主として会話に使われる俗っ ぼい和語。〈素人の目を—〉〈年寄りをー・して金品をまき あげる〉〈狐にー・される〉り欺く・いつわる・かたる・担ぐ・Qこ まかす・だまくらかす・だます・ちょろまかす タフリュシー【WC】英語の略語を借りて「便所」を意味 する古めかしい俗語。各家庭の便所についてはあまり用い られず、公の場所や会社などの場合に多く用いられた。 かって便所(特に公衆便所など)を間接的にさす語としてよ く使われたが、有名になりすぎて婉曲は表現の効果が薄 れ、現在では使用頻度が大幅に減少した感がある。ちなみ に、某美術大学で「便所」を示す表示を廃して、男子用に 「ジェントルメン」の「G」女子用に「レディズ」の「L」 というアルファベットで暗示することを試みたが、「G」を 「ガール」の頭文字と勘違いするケースが生じ、短期間に廃 止されたという。おトイレ・剛か・閑所・化粧室・御不浄・雪陽・ 洗面所・手水場だろう・手洗い・トイレ・トイレット・はばかり・Q便所・レ ストルーム ダブルプレー「併殺」の意の外来語。多く口頭で使う。字数 が多くなるためのあり、書きことばではふつう「併殺」を用 いる。〈ーでチャンスを逃す〉はゲッツー・併殺 たぶん【多分】そのように推測される気持ちを添え、会話や さほど改まらない文章で使われる日常の漢語。へ来ると 思うよ)〈一大丈夫だろう)小沼丹の『頬白』に「威勢良 く跳ね廻っているから大丈夫なのだろう」とある。和語 の「おそらく」より逆に日常多用される会話的な響きが強 い。おそらく <642> だぶん だぶん【駄文】表現が下手で内容的にも見るべきものがなく、 全体として価値の低い文章をさし、会話にも文章にも使わ れる漢語。へ読むに堪えないー〉の「名文」の対極にある。 児悪文 たべもの【食べ物】普通の人間が日常生活で口にする物の総 称として、くだけた会話からそれほど硬くない文章まで用 いられる日常の基本的な和語。「が安い」「を持参す る〉へーを受け付けない」村上春樹の『嘔吐1979』に 「胃が何の感興もなくーを上に押しあげているだけ」とあ る。「食物」と違って飲み物を含まず、「食品」にくらべ、生 活のぬくもりが感じられる。込食い物・食材・食品・Q食物 たべる「食べる」もとは「飲み食いする」意の丁寧な表現だったが、現代では敬語という意識はほとんど感じられず、ぞんざいな「食う」よりはいくらか丁寧な、ごく普通の日常の和語となっている。〈生で—〉〈急いで—〉〈たくさん—〉林芙美子の『泣虫小僧』に「まるで馬のように音をたててー・べた」とある。「飲み食い」のことを「飲み食べ」と言わないのは、「食べる」のもとになった「賜ふぶ」に「飲む」意が含まれているからでもあるが、「食い扶持」「大食い」「共食い」などと同様、「食う」として熟した表現まで「食べる」で置き換えるのは抵抗があるのだろう。今では店によって「食べ放題」などという掲示も出ているが、正統的な「食い放題」に比べてまだ違和感がある。単頂く・Q食う・食する・召し上がる たべん【多弁(辩)】口数が多い意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈酒が入るととたんにーになる〉団単に、 おしゃべりである場合のほか、詳しく説明するためにこと ばが多くなる場合もある。ひおしゃべり・Q饒舌 たほう【他方】もう一つの方向や面をさし、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ーの意見にも耳を傾ける〉へ一方 は満員、ーはがらがら〉〈仕事は速いが、ー出来不出来があ る〉へー、これには欠点もある〉の「一方」とセットで使う 例が多い。ひQ一方片一方片方 たぼう【多忙】非常に忙しい意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈一の身〉〈一の日々を送る〉〈身辺ー を極める〉〈一のうちに取り紛れる〉芥川龍之介の『侏儒 の言葉』に「我我を恋愛から救うものは理性よりも寧ろー である」とある。Qいそがしい・せわしい・多事・多端・多用 だぼくしょう【打撲傷】打ち身の意で、改まった会話や文章 に用いられる、やや専門的な医学上の漢語。〳〵で全治二週 間と診断される) ひ打ち身 たま玉丸い物の意で、くだけた会話から硬い文章まで広 く使われる日常生活の基本的な和語。〈目の—〉〈パチンコ の—〉〈うどんの—〉〈—のような汗〉泉鏡花の『高野聖』 に「川幅は一間ばかり(略)美しさは—を解いて流したよう」 とあるように美的な喩えによく使われる。「掌中の—」「 磨かざれば光なし」など、宝石の意味でも「玉」でよいが、 その美を強調するために「珠」と書くこともあり、その場合 は詩的な感じが出る。Q球・弾 たま【球】球技などの「ボール」の意の用法より古い感じの する和語。〈大きなーを転がす〉へーがめったに飛んで来な い〉のサトウハチローの『野球思い出帖』は「ーがとぶ/思 <643> い出がよみがえる/グローブにーがはいる/ボクも思い出 をキャッチする」という詩で始まる。ボールそのものをき して「球」と言う人間は最近ほとんど見かけなくなった。た いていの子供は「ボールを取らせて下さい」と言って庭に入 って来るが、もしも、たまに「ーを取らせて下さい」と言わ れたら、うれしくなって泥のひとつも拭いて返そうと思う かもしれない。「いいーをほうる」「速いーを投げる」「い いーを見逃す」のような用法は古い感じがない。Q玉・弾・ ボール たま【弾】弾丸の意で、会話でも文章でも使われる日常の和 語。〈鉄砲の—〉〈—に当たる〉〈—を詰める〉弾丸」と 漢字で書くと、「だんがん」と読まれやすい。Q球玉 だまくらかす【騙くらかす】「だます」のやや古風な俗語形。 〈子供に甘い母親をいいように—〉〈うまいことを言って—〉 森鷗外の『雁』に「湯にでも行って、気の利いた支度をし て、かかあに好い加減な事を言って、ーして出掛けるのだ な」とある。単欺く・いつわる・かたる・担ぐ・こまかす・たぶらか す・Qだます・ちょろまかす たまげる【魂消る】非常に驚く意で、くだけた会話に使われ ることのある、古風で俗っぽい和語。くこりゃあ、ー・げた 回魂が消えるほどという強調。木下順二の『彦一ばなし』 に「こぎゃんー・げたこた無かったぞ」とある。Qおったま げる・驚く・仰天・びっくり・ぶったまげる たまご【卵】鳥・虫・魚などの雌が産み、かえると子になるものをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる生活上の基本的な和語。〈生ー〉〈鶏ぶぞのー〉〈ーが孵ふる〉 たまたま 「医者の」のような比喩的な用法もある。単に「卵」と いえば鶏の卵をさすことが多い。「焼き」「料理」のよ うに調理済みのものは「玉子」と書くこともあり、その表記 はいくらか俗っぽい感じがする一方、家庭的な雰囲気で温 かい感じも漂う。ちなみに、夏目漱石の『坊っちゃん』に 「野だの面へ擲き付けた。がぐちゃりと割れて鼻の先か ら黄味がだらだら流れだした」とあり、「玉子」と表記して あるが、「町で鶏卵を八つ買った」とあるので、ここは生卵 である。鶏卵 たましい【魂】心の働きをつかさどると考えられているもの をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈死者のーを鎮め る〉〈ーが宿る〉〈ーがこの世にとどまる〉の庄野英二の 『星の牧場』に「音楽ってばかにいいもんだな。モミイチは ーがぬけていくようであった」とある。「仕事にーを込め る」「ーを入れ替えてまじめに働く」のように、単に気持ち をさす用法が多い。Q霊・霊魂 だます【騙(瞞・欺)す】事実と違うことを他人に信じさせて、 自分の有利なように運ぶ意で、会話にも文章にも広く使わ れる日常の和語。〈人を—〉〈言葉巧みに—〉〈ー・されたと 思ってやってごらん〉〈狸にー・される〉谷崎潤一郎の細 雪』に「こちらを—考えがあったのでないことは明らかで」 とある。Q欺く・いつわる・かたる・担ぐこまかす・たぶらかす だまくらかす・ちょろまかす たまたま【偶偶/偶】「偶然に」の意で、主に会話に使われる 和語。〈一当たる〉〈一見つける〉〈一居合わせただけ〉Q 偶然・ひょっこり <644> たまつき たまつき【玉突き】「ビリヤード」の意の和語。〈に興じる〉 の「ピリヤード」や「撞球」に比べ、遊技的性格を感じ させる日常語。弾撞球・Qピリヤード たまに【偶に】長い間隔を置いて不定期に繰り返す場合に、 会話や軽い文章に使われる和語。〈|会う程度〉〈|は遊び に来いよ〉〈|旅行する〉〈|はいいことを言う〉児稀に たまのような【玉の様な】瑕もなく美しいようすを形容する 比喩的表現。美化するための古風な形容。〈|男の子〉古 く斎藤茂吉が永井ふさ子を「玉の如き乙女」と形容した例が あるように、昔は性別に関係なく用いたが、その後長い間、 主として男の子について用いてきた関係で、現代でも男の 子を思い浮かべることが多い。 たまもの【賜物/賜】結果として授かったものの意で、改ま った会話や文章に用いられる、やや古風な和語。〈自然の ー〉(これもひとえにファンの応援のー〉(このたびの成功 は永年の努力のーだ〉神から賜ったものの意から。「おか げ」よりも恩恵に浴した感じが強く、丁重に響く。おかげ たみ【民】統治されているすべての人々をさし、主として文 章で使われる古い感じの和語。〈一百姓〉への声に耳を傾 ける〉〈無辜のー〉の一般には、国を統治する側からその 支配下にある人々をさして使われるが、「流浪のー」「遊牧 のー」など、国家支配とは無関係に使われることもあり、そ の場合には古風で詩的な雰囲気が漂う。Q国民・市民・人民 ダム発電や水利などの目的で川の途中で流れをせき止める ために造った大規模建造物をさし、会話にも文章にも使わ れる外来語。〈ー工事〉へを建設する〉貯水池 だめ【駄目】効果がない、不可能だの意で、会話や改まらない文章に用いられる基本語。〈まるでーだ〉へになる〉 〈ーでもともと〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「あの面じゃーだ」とある。もとは囲碁用語で、どちらの地にもならない無駄な所をさす。それが「役に立たない」「してはいけない」のような意味合いで使われ、現在ではほとんど比喻的な感じを意識させない。無駄な空所を念のため詰めておくという意味の「ーを押す」という表現も、確実なところをさらに確実にする「念を押す」意に拡大して用いられ、このほうはまだいくらか比喩的な感じを残している。ひアウト・Qばつ ためいき【溜め息】思わず吐き出す長い息の意で、会話にも 文章にも使われる日常の和語。へーをつくへーが出るほど 素晴らしい林芙美子の『下町』に「少しずつちぎって捨 てるような苦しいーをついた」とある。兎嘆息・Q吐息 ためし【試(験)し】実際にどうかを知るためにやってみる意 で、主に会話に使われる和語。へーに乗ってみる〉〈ものは ーだ〉Q試み・試行 ためしぐい【試験】し食い】「試食」の意で主にくだけた会話 に使われる、ぞんざいな感じの和語。〈客に出す前にーす る〉)味見・Q試食 ためす【試(験)す】真偽・能力・性質などを調べて確かめる意 で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。 「力を」〈度胸を」〈薬の効き目を」安岡章太郎の 『海辺の光景』に「棚の端から両足をブラ下げて、膝頭を手 刀で打って、足が飛び上るか、どうかをー・した」とある。 <645> 実際にやってみるという感じの「試みる」に比べ、効果や技 術を確認する意味合いが強い。貝試みる ためらう【躊躇う】すぐに決心がつかず実行に移せないでい る意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。返答を ー〈言おうとして一瞬ー〉へーいがちに声を掛ける〉何 らー様子もなく認める〉し遂巡躊躇 ためる【溜める】集積し蓄える意で、くだけた会話から硬い 文章まで広く使われる日常の和語。〈水を—〉〈目に涙を —〉〈仕事を—〉〈ストレスを—〉庄野潤三の『静物』に 「どんな犠牲を払っても目標の金額を!・めよう」とある。 福原麟太郎の『金銭について』に「金櫃かをあけて、中に ー・めてある無数の金貨の堆積を見るや、まず、にこりとす る」とあるように、「金を—」など財貨を蓄える意の場合は 特に「貯める」と書くこともあり、そういう表記は書き手の 分析的な意図を感じさせる。ひ蓄える たやすい【容易い】わけなくできるほど易しい意で、会話や 軽い文章に使われる日常的な和語。〈ー御用だ〉へいとも ーく片づける〉特に手数や時間のかからないところに重 点がある。簡単・平易・Q易しい・容易 たゆたう水に浮くなどして定めなく揺れ動く意で、主に文 章に用いられる古風で詩的な和語。〈波間に—小舟〉へ— 心〉池澤夏樹の『骨は珊瑚、眼は真珠』に「水の中を—粉 はまだ見える」とある。単に揺れ動く意味で「気持ちが—」 などとも言う。この用法は「漂う」に置き換えられない。 「揺蕩う」とも書く。単漂う・揺らぐ・揺れる たよう【多用】するべき用事がたくさんある意で、改まった だらしない 会話や文章に用いられる漢語。〈御—中恐れ入ります〉多 く「御—中」の形で使う。「やたらに外来語を—する」のよ うに、同じものを多く用いる意にも使う。ひいそがしい・せわ しい・多事・多端・Q多忙 たより【便り】緊急性のない情報伝達、特に手紙などをさし、 主として文章中に用いるやや古風なやわらかい感じの和語。 〈旅先からのー〉〈花のーが届く〉へのないのはいいー〉 〈おーありがとう〉〈時々おーください〉〈風のー〉夏目漱 石の『坊っちゃん』に「取り上げて見ると清からのーだ」と ある。「手紙」や「書簡」と違って、緊急の問い合わせや重 大な用件の通達の場合には不適切で、近況報告などが予想 されるため、もらってうれしく読んで楽しいと期待させる 好ましい語感がある。書簡・Q手紙 たよる【頼る】あてにし頼みにする意で、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。へ親を ー〉へコネをー〉〈金の力にー〉〈永年の勘にー〉〈輸入に ー〉Q依存 だらける緊張感を欠いて締まりがない意で、会話や軽い文 章に使われる和語。〈気分がー〉〈ー・けきった生活態度〉 たるむだれる だらしない ①きちんとしていない、締まりがないの意で、 会話や軽い文章に使われる日常の和語。〈ー恰好〉〈ー寝乱 れ姿〉〈生活がー〉〈金銭にー〉〈時間にー〉〈女にー〉 目漱石の『坊っちゃん』に「帯をー・く巻きつけて」とある。 ありさまや始末を意味する「しだら」が無い意の「しだら (が)ない」からの転。「だらしがない」とも。身締まりがな <646> たりょう い・Qふしだら・不貞・不品行・不身持ち・ルーズ ②ふがいない、 期待はずれで情けない意で、会話や軽い文章に用いられる 日常の和語。〈—負け方〉〈もう諦めるとは—〉〈こんなこ とで音を上げるとは—〉嘆かわしい・情けない・ふがいない たりよう【多量】物の分量が多い意で、改まった会話や文章 に用いられる硬い感じの漢語。〈出血—〉〈海に—の油が浮 く〉〈—の薬物が検出される〉〈—の薬を服用する〉別に 「多数」という語がある関係で、「大量」と違い、量の多い場 合に限って使う傾向があり、数については用いない。「少 量」と対立。ひ大量・多数 たる【樽】味噌・醬油・酒などを入れる木製で円筒形の容器を さし、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈酒ー〉へー に詰める〉へーを抜く〉へーを開ける〉保存用なので桶よ りがっしりして蓋がついている。弜桶 だるい【怠(懈)い】体に力が入らず動くのも億劫な感覚を さして、くだけた会話からさほど硬くない文章まで使われ る日常の和語。〈疲労で手脚がー〉〈熱があって体がー〉 有島武郎の『或る女』に「脚部は抜けるようにー・く冷え」 とある。みかったるい・Qけだるい・倦怠 だるま【達磨】禅宗の始祖である達磨大師、および、その張 子の人形をさし、会話でも文章でも使われることば。〜 大師〜《市》禅宗の始祖とされる達磨大師の座禅姿には 見る人を打つ厳しさがあるが、それを模した張り子の人形 や、「落とし」「ストーブ」「雪」などのイメージが積 み重なって、このことばには滑稽な語感も伴う。岡本かの 子の『やがて五月に』に「前裾を高く前へ突き出して立ち上 った。可愛ゆいに蛙の脚が生えたような形になる」という比喻表現が出る。「あいまい宿」を意味する「屋」を知っている人にとっては語感がさらに複雑に働く。下等な商売女はコロピやすいという比喻的な連想らしく、発想は奇抜ながら語感を悪くし、著しく気品をそこねる。このように語感はそのことばの受け取り手によって違ってくる。 たるむ【弛む】びーんと張っていたものが緩んで垂れ下がる 意で、会話にも文章にも使われる和語。ぐびんと張ってあっ た紐がー〜〜〜〜〜〜 たれる『垂れる』液体がだらだら落ちる意で、会話でも文章 でも幅広く使われる和語。〈容器の口をきちんと閉めない と縁から」〈額から汗が」〈おしっこを」「したた る」がぽったん、ぽったんと落ちるイメージなのに対し、こ の語は線状に落ちる場合でも使え、それだけ零れ落ちる水 量が多い感じがある。「だらだら」という状態なら「垂れ る」がふさわしく、「したたる」は不適切。森鷗外の『阿部 一族』に「円形の石の井筒の上に笠のように」・れかかって いる葉桜」とあるように、上が固定されて下へ下がっている 意で、液体以外にも使われる。満る だれる緊張感がなくなる意で、会話や軽い文章に使われる いくぶん俗っぽい感じの和語。気分がー〉(雰囲気がー) <647> 〈試合がー〉〈会が長びいて次第にー・れてくる〉「たる む」以上にマイナスイメージが大きい。Qたるむ・だらけ る・緩む タワー「塔」の意で会話にも文章にも使われる外来語。ヘコ ントロールー)記念タワーと名のるビルもあるが、「塔」 に比べ鉄骨をむき出しにした姿を連想しやすい。パリのが 「エッフェル塔」なのに日本のが「東京」と命名された事 実は注目される。単塔 たわけ「ぼかげたこと」「馬鹿者」の意で、くだけた会話に 使われ、方言的な響きを感じさせる俗っぽいことば。「! よく見ろ〉(このー者めが)の「たわけたことを抜かすな」 のように「たわける」という動詞の形でも使う。Qあほ・あ ほう・とんま・ばか・まぬけ たわむ【撓む】重みなどで折れずに曲がる意で、会話でも文 章でも使われる和語。〈弓が—〉〈実の重さで枝が—〉〈本 の重みで棚板が—〉田宮虎彦の『足摺岬』に「ぎしぎしと ー急な梯子段」とある。「しなう」が弾力のあるしなやかさ を表現しているのに対し、この語は他の重力の影響で曲が っている形状を表現しており、その重力が取り除かれたと きに以前の状態にすぐ戻るかどうかは条件によって異なる。 Q撓せう・反る たわむれる【戯れる】遊び興ずる意で、改まった会話や文章 に用いられる古風な和語。〈愛犬と」〈女と」〈酒の席 で小島信夫の『小銃』に「その女には妹はないか」 などとー・れることもあった」とある。り遊ぶふざける たんか【短歌】五七五七七音の形式を標準とした和歌をさし、 たんき いくぶん改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な 感じの漢語。〈現代—〉〈五首〉〈ーを詠ずる〉〈いささか ーをたしなむ〉ひ歌・Q和歌 だんかい【段階】能力・変化・進行などの程度を一定の基準で 区切って順序をつけたものをさし、会話にも文章にも使わ れる基本的な漢語。〈第一〉〈準備〉〈五〜評価〉〈的 に解消する〉〈まだそういうーではない〉〈新しいーに入 る〉〈ーを追って進める〉〈最終ーに入る〉開高健の『パ ニック』に「すべてが手おくれのーに来ている」とある。 「程度」が連続的なのに対し、この語は非連続にとらえてい る。「ステップ」と違い、具体物はささない。ステージ・Q ステップ・程度 だんがい【断崖】特に険しく切り立った崖をさし、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈切り立ったー〉へーが そそり立つ〉②福原麟太郎の『志を立てること』に「深山の 奥のデルフォイのーには春ながら雪がつもっていた」とあ る。単崖・Q絶壁 だんがん【弾丸】鉄砲に詰めて発射するための弾をさして、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へーが命中す る)へーが炸裂する)②古く自動車専用の高速道路を「一 道路」と呼ぶ比喻的な用法もあり、さらに古く「一列車」 の語もあった。Q銃弾・鉄砲玉・砲丸・砲弾 たんき【短気】気が短い意で、会話にも文章にも使われる日 常の漢語。〈ーを起こす〉へーを慎む〉〈親譲りのーな性格 が災いする〉の庄野潤三の『プールサイド小景』に「お願い だからー起こさないで」とある。「せっかち」や「性急」に <648> たんきゅう 比べ、怒りやすくすぐに癇癪ふんしを起こすような連想が働く。Q気短・性急・せっかち たんきゅう【探求】探し求める意で、主に文章で用いられる 漢語。〈秘宝を—する〉〈平和への道を—する〉ぴ探究 たんきゅう【探究】道理を探って明らかにする意で、主に硬 い文章に用いられる学問的な雰囲気の漢語。〈真理をーす る〉〈人生の意義をーする〉梅崎春生の『桜島』に「三十 年のーも、この瞬間に明白になるであろう」とある。ふ探求 たんぐつ【短靴】くるぶしの下程度までの浅い靴をさし、会 話にも文章にも使われる表現。へーに履き替える〉特に区 別する場合に使い、通常は単に「靴」ということが多い。ズ ック靴より革靴の連想が強い。「たんか」とも言う。「長靴」 と対立。ふQ靴・シューズ たんけん【短剣】短い剣をさし、会話でも文章でも使われる 漢語。「をぶら下げる」の「小刀」や「短刀」に比べ、洋 風の剣の印象が強い。匕首・懐剣・こがたな・小刀・Q短刀・ど す・ふところがたな・脇差 たんけん【探検(険)】未知の土地を実地に調査する意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈一家〉〈洞窟を—する〉 「南極—隊」のように、調査することに重点を置いて「探検」 と書いたり、「ジャングルを—する」のように、危険を冒す ことに重点を置いて「探険」と書いたりする。単冒険 だんげん【断言】はっきりと言い切る意で、会話にも文章に も使われる漢語。へしてはばからないへーするのはため らわれる夏目漱石の『こころ』に「世の中を見る先生の 目が厭世的だからその結果として自分もきらわれている のだとーした」とある。Q言い切る・断定・明言 たんご【単語】一つのまとまった意味機能を持って文を構成 する最小の要素をさし、会話にも文章にも使われる日常の 漢語。〈英語の—〉〈初めて見る—〉言語・Q語・語彙・言葉・用 語 だんこう【断行】反対や問題があっても思い切って実行する 意で、改まった会話や文章に用いられる強い感じの漢語。 〈熟慮—〉〈改革を—する〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「おれは例の計画を—する積りだ」という山嵐のことばが出 てくる。Q敢行・強行・決行 だんこう【断交】一切の交際を絶つ意で、改まった会話や文 章に用いられる硬い漢語。〈交渉が決裂し、相手国とー状態 に突入する〉個人の関係でなく、主に国家間の国交断絶 をさすことが多い。Q絶縁・絶交 だんごう【談合】相談のための話し合いをさし、会話にも文 章にも使われる漢語。へーを開く〉へーを持つ〉へーで決め る〉単なる話し合いの意では古めかしい用語だが、「業者 のーが発覚する」のように特に、入札の前に請負価格をあ らかじめ話し合う社会現象が問題になり、現在では「ゼネ コン」とともにマイナスイメージが付着している。刂打ち合 わせ・会議・Q協議・相談・話し合い・ミーティング たんざ【端座(坐)】正座の意で、主に文章に用いられる古風 な漢語。〈ーし謹んでお話を伺う〉伝藤春夫の『田園の憂 鬱』に「ーした彼に、或る微かな心持、旅愁のような心持を 抱かせた」とある。正座 だんし【男子】「男」の意で、会話にも文章にも使われる漢語。 <649> 〈一生徒〉〈用トイレ〉〈走り幅跳び〉〈成年〉通常 は子供から若年層までをさし、老人について使うと違和感 がある。学校や会社などの集団生活やスポーツの世界で多 く用いる。サトウハチローの『僕の東京地図』に「僕に二十 返位、頭を下げさせて、—禁制の校内を通行させてくれた」 とあり、「厨房に入らず」と同様、年齢に関係なく男性全 体を含む用法で、今では若干古い感じがある。「女子」と対 立。男・男の方・男の子・男の人・Q男性・殿方 だんじて【断じて】「決して」の強調表現として、改まった会 話や文章に用いられる硬いことば。〈まかりならん〉へー 許さない〉回発言者の強い意気込みが感じられる。決し て・Q絶対に たんしゃ【単車】「オートバイ」をさして一時期盛んに使わ れ、今ではやや古い感じになりかけている漢語。ひOオート バイ・原付・原動機付き自転車・自動二輪・自動二輪車・スクータ・バ イク・モータバイク たんじゅう【短銃】「拳銃」の意で、主に文章に用いられる硬 い漢語。〈胸にーを忍ばせる〉〈一の安全装置を外す〉 「ピストル」や「拳銃」ほど一般的でない。 ヒストル たんしゅく【短縮】時間などを短く縮める意で、やや改まっ た会話や文章に使われる漢語。〈操業—〉〈ー授業〉〈期間 をーする〉〈記録をーする〉時間に関係する場合は、「コ ースをーする」「通学距離をーできる」のように空間的な長 さに対しても使うことがある。「延長」と対立。ひ縮小・Q縮 める たんす たんしよ【短所】人間の性格や能力などで他に比べて劣って いる部分をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーを指 摘する)へーを数え上げる)へーを補う)専欠陷・欠点・Q弱点・ 難点 たんしう【短小】事物の長さや幅が短くて小さい意で、主 に文章中に用いられる硬い漢語。〈軽薄—〉客観的な「短 い」に比べ、軽蔑のニュアンスが伴う例が多い。「長大」と 対立。専短い たんじょう【誕生】子供が生まれる意で、改まった会話や文 章に広く使われる漢語。〈待望の男の子が—する〉〈長子の ーを記念して〉の「生誕」ほど大仰な感じはなく、「日 「パーティー」のような既成のことばを除き、「生まれる」 よりは改まった感じがある。小沼丹の『登高』に「僕のー日 は九月九日である」とある。「新内閣の—」「最年少の名人 がーする」のような比喻的拡大用法もある。単降誕・出生・Q 生誕 だんしょう【談笑】くつろいで笑いながら談話を楽しむ意で、 主として文章に用いられる漢語。〈なごやかにーする〉へー のひとときを過ごす〉目的ではなく行為を結果として言 う傾向がある。巣閑談・Q歓談・懇談 たんす【箪笥】衣類などを収納する引き出し付きの家具をさ し、会話から硬い文章まで広く使われる日常漢語。〈総桐の ー〉へーの奥にしまいこむ〉の三島由紀夫の『仮面の告白』 に「この古いーのようにきしむ家」という比喻表現の例が ある。単に「箪笥」と言えば和風の箪笥が目に浮かぶ。そ のため、洋服用の場合は「洋服ダンス」「洋ダンス」などと <650> ダンス しばしば片仮名書きしてイメージを調節する試みも見られる。 马チェスト・ワードローブ ダンス西洋風の踊りをさし、会話にも文章にも使われる 外来語。〈フオーク〉〈ラストー〉〈ホール〉〈パーテ ィー〉〈のステップ〉特に社交ダンスをさすことが多 い。跡り・Q舞踏・舞踊・舞 たんすい【淡水】「真水」の意で、改まった会話や文章に用い られる専門的な漢語。〈ー魚〉〈ー湖〉「塩水まん」「鹹水 と対立。真水 たんずる【嘆(歎)ずる】「嘆く」意で、主として文章に用いられる硬い表現。〈不遇をー〉〈天を仰いでー〉石川淳の『普賢』に「運のわるさをー・じているところだ」とある。厳嘆・Q嘆く たんせい【丹精】心をこめて事を行う意で、会話でも文章で も使われる、やや古風な漢語。〈ーして木を育てる〉小沼 丹の『珈琲の木』に「ーこめて育てると、と云う前提がある が、木を枯らしてやろうと思って育てる人間もいないだろ う」とある。丹誠 たんせい【丹誠】真心自体をさし、改まった会話や文章に用 いられる古風な漢語。〈ーを込める〉〈ーを凝らす〉丹精 だんせい【男性】「男」の改まった言い方として、会話にも文 章にも広く使われる漢語。〈ー用の化粧品〉《若い向き〉 〈ーに限る〉〈理想のー〉石坂洋次郎の『颱風とざくろ』に 「聖人君子という概念に洋服を着せたようなー」とある。成 入に対して用いる。「女性」と対立。男・男の方・男の子・男の 人・Q男子・殿方 たんそく【嘆(歎)息】溜め息の意で、主に文章に用いられる 硬い漢語。〈長—〉〈思わず—する〉石坂洋次郎の『若い 人』に「禅洗のようにバカ長いーを洩らさざるを得なかっ た」とある。乃溜め息・吐息 だんぞく【断続】何度も途切れながら一つのことが続く意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈雨が—的に降り続 く〉へ(的に交渉を続ける〉〈会話がぽつりぽつりとーしな がら長時間に及ぶ〉ひ継続・続行・Q連続 たんたん【淡淡】あっさりしている意。やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈心境をーと語る〉へとした味わ い永井龍男の『青電車』に「勝恵の答えは、いつも水の 流れのようにーと鈴木の耳にひびいた」とある。単坦々 たんたん【坦坦】平らで変化がない意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。へーとした道〉へーとした展開〉何 事もなく毎日がーと過ぎていく)単淡々 だんだん【段段】「次第に」の意で、会話や硬くない文章に使 われる日常の漢語。〈ーよくなる〉〈問題がー難しくなって ゆく〉もおいおい・Q次第に・徐々に・漸次 だんちがい【段違い】技術・能力・程度・出来映えに大きな差が ある意で、会話やさほど硬くない文章に使われる語。成績 がーだ〉(に強い)体操競技の「平行棒」のように具 体物の高さが違う(大差とは限らない)意にも使う。り桁違 い・桁外れ たんちょう【単調】変化や起伏にとぼしい状態をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ーな仕事〉〈ーな暮らし〉 〈ーな曲〉の「一本調子」がいつも同じというニュアンスが <651> あるのに対し、この語はあくまで今問題にしている一つの 対象についての言及にとどまる。Q一本調子・平板 だんてい【断定】推量ではなく、間違いなくそうであるという明確な判断を下す意で、会話にも文章にも使われる漢語。「的な言い方」へきっぱりとーする〉〈他殺とーする〉へそうとーできるだけの論拠がとぼしい〉夏目漱石の『明暗』に「人間を見そくなったのは、自分でなくて、かえってお延なのだという」とある。発言を問題にする「断言」に比べ、この語はあくまで判断の問題。単断言 たんと「たくさん」の意で、くだけた会話に使われる古風で 俗っぽい和語。〈ー召し上がれ〉へーは要らない〉ぐ小津安 二郎監督の映画『浮草物語』でおたか(八雲理恵子)が「ー悔 しがるがいいよ」と言う。動詞に「…がいい」の付く言いま わしとともに、現代では古めかしい印象を与える。ひ一杯・ うんと・多い・しこたま・Q沢山・たっぷり・たんまり・どっさり たんとう【短刀】腰に差す短い刀の意で、会話でも文章でも 使われる漢語。〈相手の胸にーを突きつける〉井上靖の 『猟銃』に「ーでも突き刺すような言葉の感じ」という比喻 表現が出る。「短剣」に比べて日本刀のイメージが強い。刀 身一尺(約三O・三センチ)以下。ヒ首・懐剣・こがたな・小 刀・Q短剣・どす・ふところがたな・脇差 たんとう【担当】自分の仕事として責任を持って引き受ける 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー者〉〈ー役員〉 〈会社で経理をーする〉〈ーしている業務に専念する〉専受け 持ち・従事・Q担任・服務 だんどり【段取り】物事を行う方法や順番の意で、会話にも 文章にも使われる表現。〈ーをつける〉〈式のーを決める〉 〈こういうーになっている〉ひ手順・Q手はず だんな【旦那】一家の主の意で、妻から見た夫をもさし、会 話にも文章にも使われる古風な漢語。ふうちのーは今日も 帰りが遅い)もと「施主」「檀家」を意味する梵語の音 訳。「大ーと若ー」「呉服屋のー」のように商家などの主人 をさすのが一般的で、商人が男性客に呼びかけるような際 にも用いる。うちの人・夫・主人②・Q亭主・ハズ・宿六 たんび たんにん【担任】学校などで任務を受け持つ意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈クラスー〉〈ーの先生〉〈理科の ー〉の「新しいー」「ーの口から伝える」のように、単に「担 任」だけで学級担任を表し、また、その先生自身をさすこと もある。ひ受け持ち・従事・Q担当・服務 たんねん【丹念】細部にわたって念入りに行うようすをさし、 会話でも文章でも使われる、やや古風な漢語表現。「な仕 事ぶり〉へに調べる〉⑳芥川龍之介の『玄鶴山房』に「 に白足袋などを繕っている」とある。注意力を持続させて 数多くの類似の行為を繰り返す場面を連想させる。単丁寧 ①・Q入念・念入り だんねん【断念】希望や継続中の事柄などを思い切る意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈医学志望をーす る〉〈資金繰りがつかず工場経営をーする〉諦め・諦める・諦 念 たんび【耽美】美の世界にどっぷりと浸る意で、主に文章中 に用いられる古風で専門的な漢語。〈—派〉〈—主義の作 風〉噂美 <652> たんび たんび【嘆(歎)美】感動して讃える意で、主に文章中に用い られる古風な漢語。へーの声が上がる〉へーの息が漏れる〉 貶美 タンピング 市場の開拓などを目的として原価を切るような 不当に低い価格で売り出すことをさし、やや改まった会話 や文章に用いられる外来語。〈価格〉へに打って出る 外国市場で国内価格より低い値段で売る意の専門的な用 法もある。専売り出し・セール・叩き売り・特売・投げ売り・バーゲ ン・安売り・Q廉売 たんぼ【田圃】「田」の意で主として会話に使われる日常語。 〈一道〉〈一のあぜ道〉〈一で稲刈りが始まる〉「圃」は 「花圃」などに使う「畑」を意味する漢字であるが、この語 は「田畑」の意というより通常は単に「田」を意味する。 田 たんぽ【担保】債務の不履行に備え、債務者が債権者に差し出して弁済を保証するものの意で、会話にも文章にも使われる専門的な漢語。〈ーに取る〉〈土地をーに金を借りる〉「抵当」のほかに保証人のような人的担保を合わ。児抵当たんぽうきじ【探訪記事】「ルボルタージュ」に近い意味で、やや改まった文章などに用いる古風な漢語。〈雑誌のー〉〈ーを書いて社に届ける〉児ルボ・Qルボルタージュ・レポートたんまつ【端末】「端末機」「端末装置」の略で、コンピューターの中央と接続する末端の入出力装置の総称として、主に会話に使われる新しい感じの漢語。〈ーにつなぐ〉本来は「末端」と同義だが、現在はほとんどコンピューター関係で使われる。児末端 たんまり「たくさん」の意で、くだけた会話に使われる俗っ ぽい和語。〈ーもうける〉〈ー御祝儀をもらう〉〈ーお礼を はずむ〉の「しこたま」ほどではないが、いくぶん悪いニュ アンスを帯びる例もある。単一杯・うんと・多い・Qしこたま・沢 山・たっぷり・たんと・どっさり だんまり【黙り】何を聞かれても一切答えない無言の状態を さし、くだけた会話に使われる俗語。〈ーをきめこむ〉へー を押し通す)のだまり」の転。込黙・Q黙秘 だんゆう【男優】男性の俳優の意でやや改まった場面や文章 に用いる傾向の漢語。〈助演—賞〉〈女優陣に比べ—の配役 が見劣りする〉「俳優」のうち男女の区別が必要な場合に 使われ、「女優」ほど使用頻度が高くない。職業についての 質問にほとんどが「俳優」と答え、わざわざ「男優」と答え るケースは考えにくい。その点でも「女優」の場合とは違 う。男女優・Q俳優 たんらん【貪婪】「どんらん」の意で、主として文章に用いる 漢語。〈な好奇心〉梶井基次郎の『桜の樹の下には』に 「桜の根はな蛸のようにそれを抱きかかえいそぎんち ゃくの食糸のような毛根を聚めてその液体を吸っている」 とある。一般には慣用音で「どんらん」と読むことが多い。 貪欲・Qどんらん たんりよく【胆力】何事にも驚かない精神力をさし、改まった会話や文章に用いられるいくぶん古風な漢語。「ーが据わっている〉〈ーを鍛える〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「おれは卑怯な人間ではない、臆病な男でもないが、惜しい事にーが欠けて居る」という主人公の自己分析が出てく <653> る。Q肝っ玉・度胸 ちいさい だんろ【暖(煖)炉】室内で火を焚たいて暖を取る設備。「」で 暖まる〉への前に集まる〉囲炉裏や時にはストーブをさ すこともあるが、一般には、洋室の壁の一部に煉瓦れを積 んで造ったものをさす。いろり・Q炉 たんわ【談話】ある件について見解などを述べることをさし、 会話でも文章でも使う漢語。〈室〉〈がはずむ〉〈大臣 のー〉〈を発表する〉夏目漱石の『明暗』に「のやり とりが(略)頭の中を仕懸け花火のようにくるくると廻転し た」とあるように、一般語としては、何人かの人間の改まら ない話のやりとり、または、ある話題について一定の立場 の個人が意見を述べたものをさすが、言語研究の分野では、 人間の伝達行為としての一定の内容や意味的なまとまりを もつ文集合を意味し、特に、文字言語による「文章」に対し て、音声言語によるものをさす。そのような用法の場合は 専門語という語感が発生する。会話・Q発言・発話 ち【血】血管内の体液の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「が通う」「が出る」「を流す」「のつながり」「の巡りがよい」「丼伏鱒二の『黒い雨』に二人とも目が血走って、を噴いたように真赤になっている」という描写が出てくる。马血液ちい【地位】社会集団の中で占めている位置をさし、会話にも文章にも使われる漢語。「が上がる」「重要な」「に就く」「にしがみつく」「が人をつくる」伊藤整の『氾濫』に「余震のように続いて起る可能性のある自分の「の変化」とある。「社会的」「相対的に」が高い」のように「位」に比べ抽象的な意味合いでも使う。また、「国際社会における日本の」「のように、人間以外についても言う。Q位①・身の程身分 ちいき【地域】自然条件や行政上の目的などにより限定され た土地の範囲をさし、会話にも文章にも使われる漢語。住 宅ー〉〈社会〉〈ー研究〉〈保護ー〉〈ーの住民〉〈雨の多 いー〉刂区域・区画・Q地区 ちいさい【小さい】長さ・大きさ・量・程度・規模などがわずか な意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く用いられる 日常の基本的な和語。〈子供がまだ—〉〈声が—〉〈スケー ルが—〉〈ー・く畳む〉永井龍男の『青梅雨』に「鏡台は、 おもちゃのようにー・く、古めかしいものであった」とある。 <654> チーム ふちっこい・Qちっちゃい・ちっぽけ チーム仕事やスポーツなどでの一つの集団をさし、会話で も文章でも用いる伝統的な外来語。〈野球の—〉〈—に貢献 する〉〈—にとけこむ〉〈—を組む〉②小沼丹の『リトル・リ イグ』に「散歩の途中に見る小学校の—だから驚いた」とあ る。近年、NHKのアナウンサーなどを中心に、英語の原音 に少しでも近づけようと「ティーム」という語形を用いる例 も見られる。ヨディーム チエスト整理算筍意で会話でも文章でも使われる外来 語。「筆筍」という語が和風のイメージが強いこともあっ て、比較的近年、洋風の整理算筍をさして使われるように なった。大型のふたつき収納箱をさすこともある。Q筆 筍・ワードローブ ちか【地下】地面の下の場所をさし、会話にも文章にも使わ れる日常の漢語。〈資源〉〈十メートル〉〈を掘る〉 〈に眠る〉②「地上」と対立。「地中」と違い、「室」「 道」「鉄」のように、地面より下に位置すれば必ずしも土 中でなくても言える。また、「組織」「活動」「にも ぐる」のように、表に出ない形でひそかに行うことをさす 比喻的な用法も多い。ひ地中 ちかい【誓い】将来そのことばどおりに行うことを約束する 意で、改まった会話や文章に用いられる和語。へーのこと ば〈平和のー〉へーを立てる〉へーを破る〉個人や組織に 対して行う約束以外に、神仏に向かって明言することで自 分の決心を強固にする場合にも使う。「禁煙のー」のような 例は少なく、「約束」ほど具体的・詳細でなく漠然とした内 容になる傾向が強い。 り約束 ちがい【違い】複数のものを比べたときに一致しない部分や その程度をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われ る日常の基本的な和語。〈ーが出る〉〈少しーがある〉〈ー を見分ける〉〈微妙な味のーがわかる〉「そうにーない」 の形で、確実にそうだの意を表す用法もある。差・差異・Q 相違 ちがう【違う】同じでない、一致しないの意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の最も基本的な和 語。〈意見が十〉〈値段がまるで—〉夏目漱石の『坊っちゃ ん』に「なもしと菜飯とはーぞな、もし」とある。「答えが ー」「順番がー」のように、間違えているという意味にも、 「話がー」「これでは約束がー」のように、合意事項に違反 するという意味にも使う。ひ異なる ちかく【近く】ある地点を中心にそこから近い範囲をさし、 会話や硬くない文章に使われる日常の和語。〈すぐーにあ る〉〈駅のーの店〉〈ーの交番に届ける〉〈ーを通りかかる〉 〈このーに住んでいる〉〈ーの医者にかかる〉〈「そば」や 「わき」より距離がありそうな感じがある。「かたわら」や 「わき」と違い、左右でも前後でもよい。また、「実施さ れる予定だ」のように、遠くない未来をさす時間的な意味 でも使う。「遠く」と対立。りかたわら・近所・近辺・近隣・周辺・ Qそば・隣・脇 ちかく【地殻】地球の表層部をきして、会話や文章に用いら れる専門的な硬い漢語。〈ー変動〉」」」」」」」 ちかく【地核】地球の中心部をさして、主に文章中に用いら <655> れる専門的な硬い漢語。〈ーは液状で高温・高压〉地殻 ちかく【知覚】感覚器官の働きによって外界をとらえる意で、 改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈ー神経〉 〈形や色をーする〉野間宏の『崩壊感覚』に「液体のよう な内部ー」とある。専感覚 ちかごろ【近頃】「最近」に近い意味で、会話からさほど硬く ない文章まで幅広く使われる日常的な和語。〈一の若者〉 「一めったに顔を見せない〉の小林秀雄の『読者』に「一、 週刊誌の流行について、いろいろな事が言われている」と ある。最近年・このところ・Q最近・昨今 ちかしい近しい親しいの意で、会話にも文章にも時に 使われる古風な和語。ぐこくー間柄ヘ一人が身近に誰もい ない現代ではいくらか方言的な響きもあるか。ひQ親し い親密 ちかぢか【近近】近い将来をきして、会話にも文章にも使わ れる日常の和語。〈ー寄せてもらう〉〈一結婚するらしい〉 ひいずれ②・追って・Q近々様・そのうち・やがて ちかづく【近づく】時間的・空間的な距離が短くなる意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の生活和 語。〈異様な風体の男が」・いて来た〉〈山頂に」〈船が港 に」〈正月が」〈試験が」人間や動物の具体的な行 動に限られる「近寄る」に対して、この語は抽象的な存在に ついても用いることができる。また、「近寄る」が何らかの 意図を持った行為を予想させる主観的な動詞なのに対し、 客観的に位置関係の接近を問題にしている感じが強い。芥 川龍之介の『東洋の秋』に「この公園にも、次第に黄昏が ー・いて来た」という一文があるが、このような場合に「近 寄る」に置き換えられないのはそういう事情による。最近寄 る ちかみち【近道】ある目的地に行くのに通常の道順より距離 の短い行き方をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使 われる日常の和語。〈駅へのー〉へーをしてやっと間に合 うの「英会話をマスターするには英語で生活するのが何よ りーだ」のように、手っ取り早い方法の意でも使う。「迂 回」「遠回り」と対立。図間道・抜け道・Q早道 ちかよる【近寄る】対象の近くに寄る意で、くだけた会話や さほど改まらない文章に使われる日常の生活和語。〈危な いからな〉「死はやおら物憂げな腰を上げて、そろそろと その人にー・ってくる」という擬人法の例が出る。客観的な 「近づく」に対して、この語には心理的側面が重要な働きを する。「近づきにくい」場合にはそのような具体的な条件が 存在する感じがするのに対して、「・りがたい」場合には、 人を寄せつけない威厳や態度といった目に見えない雰囲気 が関係している。また、「危険な場所に」のあと、「近づい てはいけない」となれば、その危険な対象から一定の距離 以上に接近するという具体的な行動を規制している。それ に対して、「・ってはいけない」となると、そんな場所に 接近しようなどという気を起こさないように注意している のだという指摘もあるが、つねにそうだというより、そう いう場合もありうると考えるほうが現実的。ふ近づく ちから【力】動物が対象を動かす筋力の強さ、人間では特に <656> ちからいっぱい 腕力をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な和語。〈持ち〉〈仕事〉〈が強い〉 〈まかせに引く〉〈を入れる〉夏目漱石の『坊ちゃ ん』に「弱虫だがーは強い」とある。「が拮抗する」「 不足で不合格になる」のように実力や学力をさしたり、「葉 の」のように効力をさしたり、「のこもった作品」のよ うに熱意・精神力をさしたり、比喻的にも広く使う。馬力 パワー ちからいっぱい【力一杯】自分の能力をすべて注ぎ込む意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる表現。〈ー押す〉へー 投げる〉〈代表としてーやる所存だ〉肉体的な力を使う際 には「精一杯」より普通に使う。鋭意・Q精一杯 ちからずく【力尽く】腕力や権力によって強引に目的を果たすやり方をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる、いくらか古風な感じもする和語。へーで押さえ付けるへーでも承知させる)暴力という手段よりも、上位・優位にある側の事の進め方の強引さに重点がある。Q腕ずく・腕力ちからぶそく【力不足】腕力・能力・実力が与えられた任務を満足にこなすだけそなわっていない意で、会話にも文章にも使われる日常語。へーで期待を裏切る)近年、この意味と誤解し、謙遜したつもりで「役不足」と言う例が目立つ。役不足 ちかん【痴漢】愚かな男、特に女性にみだらな行為をする男 をさす漢語。〈行為に及ぶ〉〈が出る〉「漢」が男を意 味することが忘れ去られて時に女の場合にも使われるが、 「悪漢」「巨漢」「醉漢」「暴漢」「門外漢」などと同様、もと もと男性に限られる。 ちきゅう【地球】太陽系の第三惑星で人類の住む星をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈物理学〉への温暖 化〉へは丸い清岡卓行のアカシヤの大連に「罌粟 粒程の小さな」とある。「世界」が人間の全活動範囲とい う完結した対象として意識されるのに対し、この語は宇宙 に向かって外に開かれた対象としてとらえられている。ま た、近年、世界旅行のような意味で「を歩く」「をめぐ る豪華な旅」のような表現が見られるが、結果として同じ 範囲をさすとしても、「世界」という語が地球の表面を描く 地図のような平面を連想させやすいのに比べ、この語はそ れを地表の内部までを意識に入れて立体的にとらえている 感じがある。世界① ちぎる【契る】間接的に夫婦間などの「性交」を意味することのある和風の古めかしい表現。「一夜を」基本的には「約束する」意。そこから特に「夫婦約束を交わす」意となり、さらに、その象徴として「肉体関係を結ぶ」意味まで含む場合もある。そのため、どの段階までをさすかが不明確な場合が多く、それだけ婉曲表現として機能しやすい。専営み・エッチ・関係②・合飲・交合・交接・情交・情を通じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・同衾・共寝・寝る②・懇ろになる・ファック・深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 ちぎる【千切る】手でむしって細かくする意で、会話でも文 章でも広く使われている日常生活の和語。紙を細かくー くパンをー・って口に入れる〉〈焼き麩ぇをー・って澄まし汁 <657> の具にする》定の形をなす部分を本体から切り離す感 じの強い「もぐ」に比べ、本体の適当な部分を細かくむしり 取る感じが強い。庄野潤三の『秋風と二人の男』の中に、親 しい作家の小沼丹をモデルにした芝原という人物がウイス キーを飲みながらフランスパンを「食いー・ろう」として入 れ歯を噛み割る話が出て来る。「子供には、パンは小さく ー・ってから食べるもんだと云っておきながら」「自分で自 分の歯をかみ割るんだから、誰に文句の云いようもないよ」 とぼやく場面だ。ここは「小さく」とあるから「もぐ」はあ てはまらない。ひぶっちぎる・Qもぐ ちく【地区區】特定の目的で人為的に区切られた一区画の 土地をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈予選〉 〈文教〉〈風致〉〈環境保護〉区域・区画・Q地域 ちくおんき【薔音機レコードに録音された音を再生させる 電気装置をさす、廃語に近い古めかしい語。〈古いーのある 部屋音を蓄えるという当時の人の驚きを伝える夢のあ る発想が感じられる。小林秀雄の『モオツアルト』に「正確 な音を出したがらぬ古びた安物のー」とある。専電蓄 ちくさん【畜産】家畜を飼育し、肉や乳・卵などを生産し加工 する産業をさし、会話にも文章にも使われるやや専門的な 漢語。〈業〉も牧畜・酪農 ちくでん【逐電】逃げて行方をくらます意で会話にも文章に も使った古めかしい漢語。〈借財を抱えてーする〉稲妻を 追うように急ぐ意から。「ちくてん」とも。马家出・失跡・失 跡・出奔・蒸発・行方不明・夜逃げ ちぐはぐ食い違って不均衡・不調和な意で、会話や軽い文章 ちじょう に使われる和語。〈服装が上下だ〉へな感じに仕上が る〉へやることがだ〉②小林一茶は「一の下駄から春は立 ちにけり」の句で奇妙なところに春を感じとった。小沼丹 の『藁屋根』に「気持は何となくーになって片附かない」と あるように、すっきりと腑に落ちずどことなく落ち着かな い気分をさす例もある。ひばらばら・Q不ぞろい・まちまち ちくる告げ口する意の隠語めいた俗語。仲間のいたずら を先生に」「チクる」とする表記も多い。呂告げ口・密告 ちけい【地形】土地の形態や高低・傾斜などの様子をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈図〉(を調べる)〈一 に恵まれる〉匕がた・じぎょう・Q地勢 チケット入場券や食券など代金の支払い済みを証明する紙 片をさし、会話にも文章にも使われる外来語。〈窓口でーを 求める〉〈音楽会のーが手に入る〉〈食堂のー〉匕切符・Q券 ちしき【知識】ある事柄に関する認識内容をさし、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な漢語。〈一 人〉〈予備ー〉〈ーがある〉〈豊富なー〉〈ーをひけらかす〉 夏目漱石の『こころ』に「このーは私にとって新しいもの であった。私は不思議に思った」とある。まとまった学識 のほか株式・ホッケー・食材・流行・倫理学・マージャン・薬品・ 室町幕府・フィョルド・楽譜などに関する断片的な知識も含 む。仏教的な意味合いでは「智識」と書く例が多い。単薬 蓄教・Q学識 ちじょう【地上】地面上またはそれより上をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈一権〉〈二十階のビル〉〈地下 道から階段でーに出る〉〈飛行機からーに降り立つ〉陸の <658> ちすじ 上を連想しやすいが、「に生息する生物」「隕石がに 落下する」のように海面を含める場合もあり、上陸する場 合のようにはっきり海と区別する場合には使いにくい。「 の楽園」のように、この世を意味する用法もある。「地下」 と対立。Q地表・陸上 ちすじ【血筋】祖先からの血のつながりをさし、会話にも文 章にも使われる和語。へーがいい〉〈名家のーを引く〉流 れている血の優劣を意識して用いる傾向が強い。ヲ血縁・血 族・Q血統 ちせい【地勢】地表の起伏・深浅や川・湖・谷の配置などを含め た土地の様子をさし、会話にも文章にも使われる専門的な 漢語。〈ーを調査する〉〈険しいー〉ひ地形 ちせつ【稚拙】素朴で技術的に幼い意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。「な文章〉「な作品ながら人の心 に訴えるものがある」②技術的には劣るが素朴な味わいの ある場合に使う傾向がある。「巧緻」と対立。毎拙劣・Qつ たない・た・まずい・未熟 ちたい【地帯】一つの特徴によって区切られた地域をさし、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈森林—〉〈工 業—〉〈榖倉—〉長谷川四郎の『鶴』に「細長いリボンの ような空虚な—」とある。路面電車の「安全—」のようにご く狭い範囲をさすのは例外。単区域・Q地域・地区 ちだらけ【血だらけ】血にまみれる意で、主に会話や軽い文 章に使われる日常的な和語表現。〈一になる〉〈一の衣服〉 の人や物の状態に対して用い、状況などの比喩としては使 わない。马血塗され、血みどろ ちち【乳】乳房と乳首とを特に区別せずに漠然とさす日常の 和語。〈赤ん坊にーをふくませる〉(赤ちゃんが母親のーを まさぐる〉の会話では「おー」の形でよく使う。「お」がつ かない場合はやや改まった感じがある。ちなみに、平林た い子は『鬼子母神』の中で「七月の葡萄の粒のような小さい 二つのーは、これでもこの中に豊穣な稔りを約束する腺や 神経が絹糸ほどの細さで眠っているのだと思えば、蕾の時 から実の形をつけている胡瓜や南瓜のなり花のように、こ ましゃくれて見えた」と、小さな女の子の胸にある小さな乳 首を、その子の将来を想像しながらイメージゆたかに語っ ている。Qおっぱい・乳房・にゅうぼう・胸② ちち【父】両親のうちの男のほうをさし、改まった会話や文 章に用いられる最も基本的な和語。〈ーと子〉〈ーの職業〉 へーの跡を継ぐ〉「ーもよろしくと申しております」のよ うに、自分の父親をへりくだって他人に言うときにも用い る。「母」と対立。お父様・お父さん・お父ちゃん・男親・親父・父 上・Q父親・父さん・父ちゃん・パッパ・パパ ちちうえ【父上】「父」の古風な尊敬表現として、特別丁寧な 会話や文章に用いられる。〈ーにはお健やかにお暮らしの ことと思います〉〈おーはお元気ですか〉現代では手紙の 中で時折使う程度で、会話では冗談めいた響きを感じさせ ることもある。「母上」と対立。Qお父様・お父さん・お父ち ゃん・男親・親父・父・父親・父さん・父ちゃん・パッパ・パパ ちちおや【父親】「父」の意で、会話にも文章にも使われる和 語。〈一似〉〈一の仕事を手伝う〉〈一を説得して留学する〉 の「父」に比べ、親である点を意識した表現。「母親」と対 <659> 立。お父様・お父さん・お父ちゃん・Q男親・親父・父・父上・父さ ん・父ちゃん・パッパ・パパ ちちはは【父母】父と母の意で、主に文章中に用いられる古 めかしい和語。へーのふところに抱かれる)今では日常会 話ではほとんど使われないが、訓読みで容易に理解できる。 小学唱歌の歌詞に出てくる「いかにいます」という一節 で細々と記憶にとどまって、ふるさとの懐かしさをよびお こす。ひ二親・Q父母・両親 ちぢめる【縮める】長さ・幅・時間などを小きくする意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈差を—〉〈長さを—〉〈身を—〉〈労働時間を—〉 〈命を—〉の「伸ばす」と対立。縮小・Q短縮 ちちゅう【地中】地面の下の土の中をさし、改まった会話や 文章に用いられる、いくぶん専門的な雰囲気の漢語。「温 度計〉(一に埋める)「で冬眠する」「地表」と対立。位 置に重点のある「地下」に比べ、直接に土と接している連想 が強い。ひ地下 ちっこい「小さい」意の俗語。〈ー手でにぎる〉小さい・Qち っちゃい・ちっぽけ ちっちゃい「小さい」から音変化した俗っほい口頭語。赤 ん坊のー靴下〉へー時からピアノを始めた〉小さい・Qちっ こい・ちっぽけ ちっと「ちょっと」の意で会話に使われる、少し古い感じの 俗っぽい表現。へーばかし腑に落ちないとこがあってへこ れは一面倒なことになってきたへどうだ、は元気になっ たかへの「ちと」の音転。「やそっと押してもびくともし ちひょう ない」の用法ではあまり古い感じがしない。Qちと・ちょ い・ちょいと・ちょっと・ちょっびり ちっとも下に打消しの語を伴って、少しもの意で、主に会 話に使われる和語。へー釣れないへー面白くない)→一向 に・からきし・からっきし・さっぱり②・全然・Qてんで・全く・まるっ きり・まるで① チップ「心付け」の意で、会話にも文章にも使われる外来語。 〈ボーイにーを渡す〉元来は西洋の習慣で相手のサービス に対する少額の礼金の意で、心理的に「心付け」より若干義 務的な感じになる。現在では伝統的な「心付け」に代わって よく用いられる。心付け ちっぽけ小さく貧弱なという意味の俗語。「な庭」「な 会社大きさだけを問題にする「ちっちゃい」に比べ、評 価が入る。謙遜しての用法も多い。小沼丹の『地蔵さん』 に「爺さんの前にーな祠があって、そこに高さ二尺ばかり の、赤い涎掛を掛けた石の地蔵さんが立っていた」とある。 小さい・ちっこい・Qちっちゃい ちと「ちょっと」の意で会話に使われる、古めかしく俗っぽい表現。〈ーものを尋ねる〉〈それはーおおげさだ〉及Qちっと・ちょい・ちょいと・ちょっと・ちょっびり ちのみご【乳飲(香)み子(児)】「乳児」の意で改まった会話や 特に文章に用いられる古風な和語。へーを抱えて露頭に迷 う前田河広一郎の『三等船客』に「未熟な果物のような 」とある。ひおさなご・小児詩・Q乳児・幼児 ちひよう【地表】地球の表面、特に土の面をさし、改まった 会話や文章に用いられる専門的な漢語。「の温度」倉橋 <660> ちぶ 由美子の『ヴァージニア』に「合成皮革のように清潔で退屈 なアメリカの」とある。「地上」と違って表面だけをさ し、その上の空間を含まない。ひ地上 ちぶ【恥部】男女の「外部性器」を漠然と指示することのあ る漢語の換喩的な婉曲表現。人に知られたくない「恥 ずかしい部分」という情報だけを与えて、相手に体外生殖 器官を推測させる間接表現。「をさらけ出す」のような形 で、他人に知られると恥ずかしい状態や事柄など、肉体と 無関係なことをさす例も多く、露骨さが回避できるととも に、いやらしくほのめかす感じも薄い、比較的乾いた感じ の表現。刂一物・Q陰部・陰門・隠し所・下半身②・下腹部・局所・局 部・玉門・金玉・畢丸女陰・性器・生殖器 ちぶさ【乳房】女性の胸にある乳汁を出すための隆起した器 官をさす一般的な和語。情感に訴えず客観的・分析的にはっ きりその器官をさして、会話から硬い文章まで幅広く使わ れる和語。〈ーにすがる〉〈豊かなー〉の上品にぽかす場合 には「胸」という。川端康成の『雪国』の視点人物である島 村は、恋人駒子の乳房を「掌のありがたいふくらみはだん だん熱くなって来た」と心情的かつ感覚的にとらえている。 男から見た好きな女のそれは、たしかに「ありがたいふく らみ」とも言える。おっぱい・乳・Qにゅうぼう・胸② ちほう【地方】地理的な位置関係など、ある観点で区切られ た一定の地域をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈 自治体〉〈公務員〉〈東北〉〈地帯〉と違い、共通の特 徴のあることを条件としない。「出身者」「分権」のよ うに「中央」や「大都会」と対立する用法もある。差別意識 を避けて「田舎」の言い換えに使うこともある。ひ田舎・Q地 域・地帯 ちまみれ【血塗れ】人や物が血に染まった状態の意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈全身ーになる〉へーになって 倒れる〉の会話的な「血だらけ」より改まった感じがある。 母Q血だらけ・血みどろ ちまよう【血迷う】ひどく昂奮して正常な判断ができなく なる意で、会話や硬くない文章に使われる古風な和語。何 をー・ったか〉へー・ったとしか思えない行動〉高橋和巳の 『悲の器』に「何をーか、失礼な」とある。込逆上 ちみつ【緻密】細部まで肌理細かな注意が行き渡っている様 子をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 な研究〉へに計画を練る)寺田寅彦は『科学者とあた ま』で、科学者は「正確でかつーな頭脳を要する」が、同時 に「あたまが悪くなくてはいけない」という命題も正しい と主張する。厳密・細密・精巧・精緻・精密・Q綿密 ちみどろ【血みどろ】人体が血だらけになる意で、主に文章 に用いられる、やや古風な和語。へーの戦いを繰り広げる の「一の争いを演じる」など、血が出るような激しさの意を 表す比喻的用法もある。ひ血だらけ・Q血塗れ ちもう【恥毛】恥部に生える毛の意で主に文章に用いられる、 いくぶん古風な漢語。「が生える」他の毛を含まないの で意義上のぼかしにはならないが、「恥部」が婉曲 め、よく使われる「陰毛」ほど露骨な響きがない。Q陰毛 体毛 ちゃ【茶】主として緑茶、広くは紅茶・ウーロン茶などを含め <661> た総称として、会話にも文章にも使われる漢語。へーの香 り〈ーを淹いれる〉へーを点てる〉の「お茶」の形で使うこ とが多く、単に「ーを喫する」「ーを持て」のように使うと 現在では古めかしく響く。「ーを摘む」のように、飲み物に なる前の茶の木の若葉をさすこともある。ひ上がり・お茶・玉 露・煎茶・Q日本茶・番茶・碾き茶・焙雑じ茶・抹茶・緑茶 チャーシュー「焼き豚」の意で近年よく用いられるようにな った語。〈一麺〉の中国語の音なので意味と直結せず、「焼 き豚」という語より露骨な感じが少ない。ゆ焼き豚 チャーハン【炒飯】「焼き飯」の意で会話にも文章にも使われ る中国語からの外来語。〈中華料理屋からの出前を取る〉 ②家庭で御飯の残りを利用して作る感じの強い「焼き飯」 に比べ、以前は料理人の手になる本格的な料理という高級 感があったが、今は家庭でも「焼き飯」より普通になり、特 に店ではほとんどこの語を使う。ひどラフ・Q焼き飯 チヤミング見る人の気持ちをそそる意で、会話や硬くな い文章に使われる外来語。「な女性〉「な髪型」幅広 い「魅力的」に比べ、見かけに重点を置く例が多い。马魅力 チャームポイント「相手を魅了する箇所」を意味する和製英 語。彼女のーは目にある)舶来の雰囲気を演出するには 効果的だが、素養のある人には、ハイカラめかして気取って いる腹の底が見え見えで逆効果になりやすい。马魅力 チヤイム一定の旋律を奏でるよう調律した一組の鐘や、そ れに似せて作った呼び鈴をさし、会話にも文章にも使われ る外来語。〈授業開始の—が鳴る〉、鈴・ブザ・Qベル・呼び鈴 ちやかい【茶会】茶の湯の会の意で、会話にも文章にも使わ ちゃくにん れる漢語。〈寺でおーがある〉〈ーに使う菓子〉川端康成 の『千羽鶴』は「鎌倉円覚寺の境内にはいってからも、菊治 は「へ行こうか行くまいか迷っていた」と始まる。茶の湯 ちゃくがん【着眼】目の付け方の意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈一点がユニークでいい〉「の鋭 さに感心する〉の「着目」以上に、ふだん人の気が付きにく い点に注目する場合に使われる傾向が強い。着目 ちゃくじつ【着実】少しずつでも確実にといった意味合いで やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へーに進歩す る)へーに成果を上げる)Q堅実・地道・手堅い ちゃくしょく【着色】色を着ける意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈人工—料〉〈真っ赤に—した紅生 姜絵画などより彫像や実用品の製作過程を連想させ やすい。色彩色 ちゃくそう【着想】事を行う際にその計画や方法として頭に 浮かぶ考えをさし、改まった会話や文章に用いられるやや 硬い漢語。〈奇抜なー〉へーが素晴らしい〉「発想」よりも 具体的な工夫の組み合わせなど具体性のある形を連想させ やすい。ひアイディア・思い付き・Q発想 ちゃくちゃくと【着着と】仕事などが確実に成果を挙げながら順調にはかどる様子をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語的表現。〈準備が—進む〉〈工事が—進行する〉〈計画が—実施に移される〉ひQこつこつと・せっせと ちゃくにん【着任】新しい任地や任務に就く意で、改まった 会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈一式〉への 挨拶〉〈名古屋支社に部長としてーする〉の「離任」と対立。 <662> ちゃくふく ひ赴任 ちゃくふく【着服】金品などをこっそり自分のものにする意 で、会話にも文章にも使われる漢語。ふんなの会費を黙っ てーする〉の「くすねる」よりスケールの大きい不正行為で あるが、「横領」ほどの明確な違法性は感じられない。ひQ 横領・くすねる・失敬・猫ばば・横取り ちゃくもく【着目】ある点に目をつけて注意深く見る意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へいいところに ーした)〈結果の類似にーして両者の関連を調べる)②「着 眼」ほどではないが、ふだん人の気が付きにくい点に目を つける場合に使う傾向がある。)着眼 ちゃくよう【着用】衣服などを身につける意で、改まった会 話や硬い文章に用いられる漢語。〈礼服を—する〉〈シート ペルトを—のこと〉みかぶる・着る チャック「ファスナー」の意の商標名で、会話にも文章にも 使われる古風な外来語。〈ーを閉める〉②古くはよく使われ たが、現在では「お口にー」のような比喻的な用法を除き、 使用頻度が大幅に減少している。ジッパー・Qファスナー ちやつこう【着工】工事に取りかかる意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈建設工事に—する〉〈早期—をめざす〉 の「起工」ほどの大工事でなく、例えば一部屋を増築する程 度の工事であっても使う。また大仰な感じがないため日常 会話に使っても特に違和感がない。ひ起工 ちゃどう【茶道】茶の湯によって精神を修養し礼法を究める 道をさし、会話にも文章にも使われる古風な漢語。へーの大 成現在は「さどう」が一般的。Qさどう・茶の湯 ちゃのま【茶の間】家族が集まったりお茶を飲んでくつろい だりする和室をさし、会話でも文章でも盛んに使われた、 今では古風な日常語。への話題〉へでちゃぶ台を囲む〉 へで一家団欒だのひととき〉の黒井千次の『オモチャの部 屋』に「の東南側に少し庭に突き出した形でついていた オモチャの部屋」とある。食事用でもある点が「居間」と違 い、いわばリビングとダイニングの機能を兼ねた畳部屋に 相当する。類語の中で最も生活のぬくもりを感じさせる懐 かしい響きがある。Q居間・居室・リビング ちゃのゆ【茶の湯】「茶道」の意で会話にも文章にも使われる日常語。〈ーをふるまう〉〈ーでもてなす〉「ーがある」のように「茶会」をさす例もある。「お茶を習う」のように単に「お茶」とも言い、その場合は会話や硬くない文章に使う。川端康成の『千羽鶴』に「菊治たちが長く茶室にいるので、ーがいると思ったのだろう」とあるように、茶を点てるためのお湯をさすこともある。りさどう・茶会・Qちゃどうちゃぶだい【卓袱台】低い食卓をさし、日常会話でよく使った昔なつかしいことば。〈ーを片づける〉〈怒ってーをひっくり返す〉の円形で脚が短くて折り畳める形のものという連想が強い。「ちゃぶ」の部分は「食事」の意の中国語の音から。椎名麟三の『永遠なる序章』に「ーが、意地の悪い鬼婆のような気がしてならなかった」とある。り食卓・テーブル・Q飯台 チャペル キリスト教の礼拝所をさし、会話や硬くない文章 に使われる、やや斬新な感じの外来語。へーの鐘が街に流れ る学校などに付設されたものをさす例が多い。ゆカテド <663> ラル·教会·教会堂·聖堂·大聖堂·天主堂·Q礼拝堂 ちゃらんぼらん言動がその時その時で違う意で、くだけた 会話に使われる俗語。言うことがだ人間であて にならない大岡昇平の『俘虜記』に「彼はあらゆる俘虜 の仕事をーでやっていた」とある。Qいい加減・疎がない がしろ・なおざり・忽せ ちゃりんこ「自転車」の意で、くだけた会話に使われる俗語。 「ーを乗り捨てる」片仮名書きの例も多い。「チャリ」と縮 めると親しみが出るという。小型のオートバイを含める場 合もある。銀輪・Q自転車 チャレンジ実力以上と思われる高いレベルに挑む意で、ス ポーツなどでよく使われる外来語。〈ー精神が旺盛だ〉〈難 問にーする〉及アタック・Q挑戦 チャンス「好機」の意で、会話やさほど硬くない文章に使わ れる日常の外来語。〈絶好のーだ〉〈ーを生かす〉〈ーをも のにする〉〈みすみすーを逃す〉り機会・Q好機 ちゅ【治癒】病気や怪我が治る意で、主として文章に用いられる正式な感じのやや専門的な漢語。〈肺炎が完全にーする〉梅崎春生の『日の果て』に「傷がまだーせず歩行が困難である」とある。ひ癒える・回復・治る・Q平癒 ちゅうい【注意】被害のないよう十分に神経を集中させて気 をつける意で、くだけた会話から硬い文章まで輻広く使わ れる日常の基本的な漢語。〈—事項〉〈要—〉、〈落石—〉〈 を怠る〉〈細心の—を払う〉〈通行人の—を引く〉②網野菊 の『風呂敷』に「こういう時にこそ健康に—せねばならぬと 思ったりした」とある。「風邪を引かないように—する」の ように、「留意」よりも具体的な事項について用いられる傾 向がある。「違反者にーする」「を受ける」のように忠告 の意で用いることもある。警戒・Q用心・留意 ちゅういほう【注意報】災害などに注意を促す知らせをさす 漢語。〈大雨洪水—〉〈強風波浪—〉〈—から警報に変わる〉 の「警報」より危険度が小さいため、この語に伴う緊張の度 合いも小さい。警報 ちゅうおう【中央】物や地域などの真ん中に近い一帯をさし、 改まった会話や硬い文章に使われる正式な感じの漢語。〈一 政府〉〈広場〉〈地方からに進出する〉〈本州のに位 する〉〈県のほぼに位置する〉「中心」や「真ん中」よ りも広い範囲をさす。Q中心・と真ん中・真ん中 ちゅうかい【仲介】面識がないなど直接の話し合いが難しい 両者の間に立って仲を取り持ち、話をまとめたりする意で、 会話にも文章にも使われる正式な感じの漢語。「者」(不 動産売買の手数料〉への労をとる》「仲立ち」より具 体的で、商取引などでよく使う。少懸け橋・Q仲立ち・橋渡し ちゅうがえり【宙返り】空中で縦に回転する意で、会話にも 文章にも使われる表現。〈飛行機がーする〉とんぼ返り ちゅうかく【中核】物や事の中心の部分をさし、改まった会 話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈ーをなす〉(組織 のー〉へーの部分)「核心」に比べ、中央という位置に重 点があり静的な存在を連想させやすい。Q核心・中心 ちゅうかそば【中華蕎麦】「ラーメン」の意の古風な用語 〈ーを注文する〉ひQしなそば・ラーメン ちゅうかりょうり【中華料理】中国式の料理をさし、会話に <664> も文章にも使われる漢語。〈店を営む〉伝統的な料理の 連想が強く、「中国」と換言するとイメージがずれる。 しなりょうり ちゅうかん【中間】時間的・空間的に一定の広がりを持つ対象 の中央の位置をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へー 地点〉〈ーテスト〉〈ちょうどーに位置する〉の一般に「中 ほど」よりさらに狭い範囲をさし、厳密にちょうど真ん中を 意味する場合もあるが、「発表」のように単に途中の意で 使う例もある。ひ中盤・中頃・半ば・Q中程 ちゅうかんてき【中間的】性質の異なる両者のちょうど真ん 中あたりの存在をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈保守と革新のーな思想〉、曖昧・多義的・不明確・不明瞭 ちゅうき【中気】「中風」の意で会話や軽い文章に使われる古 風な漢語。〈—病み〉小沼丹の『白孔雀のいるホテル』は、 去年まで「—の婆さんが臥ていた」長屋を買い取ってホテル にし、白い孔雀を歩かせてみたいという夢を抱くロマン チストの物語。ひ中風 ちゅうくう【中空】空の中ほどの意で、改まった会話や文章 に用いられる硬い感じの漢語。〈ーに舞い上がる〉き中天・な かぞら ちゅうこ【中古】一度使ってから売りに出た品物をさし、会 話でも文章でも使われる、いくらか古くなりかけた感じの 漢語。「ちゅうぷる」や「セコハン」ほどの古めかしさは感 じられない。〈車〉へながら新品同様新品ではない という意味だけであり、「古物」のように機能上の不安を感 じさせたり、「骨董」のように歴史を感じさせたりしな い。 ヒコハン・Qちゅうぶる ちゅうこうねん【中高年】中年から完全に老年に入る手前ぐ らいまでの四十代後半から六十代前半の年齢を広くさす比 較的新しい漢語。〈一の労働力〉〈一向けの運動〉の「中年」 や「初老」と違い、全体をまとめてとらえた感じが強く、個 人には使いにくい。Q熟年・初老・中年・中老 ちゅうこく【忠告】欠点や問題点を指摘してそれを直すよう いさめる意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈先輩の を守る〉へに従う〉へに耳を貸さない〉福原麟太郎の 「失敗について」に「私のーは、今の時世のやり方ではない」 とある。「勧告」より個人的で、「警告」ほどの強制力がな い感じがする。Q勧告・警告 ちゅうさい【仲裁】争っている両者の中に入って和解させる 意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へ役を 買って出る〉へに入る〉への労をとる〉Q調停・仲直り・ 和解 ちゅうざい【駐在】「交番」の旧称。主に会話に使われる、や や古風な漢語。〈村の—さん〉②通常は駐在所に勤務すると いう勤務形態をさす語であるが、井伏鱒二の『多甚古村』に 登場する甲田巡査は「—さん、—さん」と呼びかけられる。 この例のように、そこに駐在している巡査自身をさす用法 もあり、その場合はローカルな雰囲気で、親しみを感じさせ る。ちなみに、この作品には、「隣村の—に連行し、カイゼ ル髭の隣村が主任になって取調べた」というふうに、「隣 村」という語さえも巡査という人間をさす換喩の例も現れ る。お巡り・お巡りさん・警官・警察官・Q巡査 <665> ちゅうさいしよ【駐在所】巡査が受け持ちの区域に常駐して 勤務する場所をさし、会話でも文章でも用いられる日常漢 語。〈村のー〉へーのお巡りさん)の井伏鱒二の『多甚古村』 に「ーが寒帯で、お隣りの役場が温帯だ」とある。Q交番・ 派出所 ちゅうし【中止】予定されていたことを取り止める意、およ び、始めたことを途中で打ち切る意で、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる基本的な漢語。〈雨天のため ー〉〈資金難で計画をーする〉②大岡昇平の『俘虜記』に 「私は前進をーした」とある。「試合が雨でーになる」とい う表現は、雨が降ったために試合を行わない場合と、試合開 始後に降雨のため続行不能になって途中で打ち切られる場 合との両方の事実に対応する。Q打ち切る・切り上げる・中断 ちゅうし【注視】注意して見つめる意で、改まった会話や文 章に用いられる硬い漢語。〈成り行きをーする〉〈通行人の 注視を浴びる〉Q見入る・見る ちゅうじき【昼食/中食】「昼飯」の古めかしい表現。へーを したためる)お昼・午餐・Qちゅうしょく・昼飼・昼 飯・ランチ ちゅうしゃ【駐車】運転者が離れている状態で自動車が継続 的に停止する意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈有料 場〉〈禁止〉〈違反〉〈店の前に—される〉児停車 ちゅうしゃじょう【駐車場】自動車を駐車させるために設け た場所をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈有料—〉 〈地下—〉〈家を建て替えて二台分の—を設ける〉きガレ— ジ・車庫・駐車スペース・Qパーキング ちゅうじん ちゅうしゃスペース【駐車スペース】自動車を駐車させることのできる空間をさし、会話にも文章にも使われる表現。 〈なんとかーを確保する〉「駐車場」ほど駐車専門という 感じが強くない。ひQ駐車場パーキング ちゅうしゅう【中秋】陰暦八月十五日をさして主に文章に用 いられる専門的な感じの漢語。〈一の名月〉陰暦八月全体 をさす場合は「仲秋」と書く。専仲秋 ちゅうしゅう【仲秋】秋の半ばにあたる陰暦八月をさし、主 に文章に用いられる古風で専門的な感じの漢語。「の候 井伏鱒二の詩『逸題』は「今宵は—明月/初恋を偲ぶ夜/ われら万障くりあわせ/よしの屋で独り酒をのむ」と始ま り同じ聯で終わる。特に陰暦八月十五日を意味する場合は 「中秋」と書く。専中秋 ちゅうしょく【昼食】「昼飯」の意で改まった会話や文章で用 いられる漢語。「会を開く」「の時間」公園のペンチ でーを取る今では古風な「ちゅうじき」より普通の読み 方として広く使われる。お昼・午餐・Qちゅうじき・昼餉は 昼御飯・昼飯・ランチ ちゅうしん【中心】平面や立体のちょうど真ん中の位置をさ し、やや改まった会話から文章まで幅広く使われる漢語。 〈円のー〉〈台のーに据える〉〈都会のーにあたる〉〈人物〉「中央」より狭く、「真ん中」よりいくらか余裕を感じさせるが、数学などで用いる場合には一点に限定される。芥川龍之介の『芋粥』に「幸に談話のーは、程なく、この二人を離れてしまった」とあるように、抽象的な意味合いでも使う。「周辺」と対立。単中央・ど真ん中・Q真ん中 <666> ちゅうしん ちゅうしん【中震】震度4の旧称。強震・軽震・弱震・微震 セん【抽籤(選)】「くじ引き」そのもの、または、くじ 引きで決めることを意味し、いくぶん改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈組み合わせを決める—会〉〈厳正な— の結果〉〈応募者の中から—で選ぶ〉ひくじ・Qくじ引き ちゅうだん【中断】続いていた物事が途中で切れる意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈会議を一時—する〉〈仕事 を—中〉試合が途中で「中止」の場合は同日に再開される ことはないが、「中断」の場合は再開される可能性がある。 Q中止途絶える途切れる ちゅうちよ【躊躇】決心できずに迷う意で、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ーなく引き受ける〉へして いる間に機会を失う》乃逡巡ためらう ちゅうてん【中天】「中空」の意で、やや改まった会話や文章 に用いられる、やや古風な漢語。〈月がーにかかる〉〈日が ーに昇る〉の円地文子の『老桜』に「ーに雲の縁を紅色に彩 った満月が照っていた」とある。ひちゅうくう・Qなかぞら ちゅうと【中途】進行中の物事のある時点、または目的地に 向かう間のある地点をさし、会話にも文章にも使われる古 風な漢語。〈仕事をーでやめる〉へーであきらめる〉へーで 引き返す〉②「途中」が空間的にも使うのに対し、この語は 時間的な要素が強い。「退学」「解約」「採用」のよう に語構成要素として使う場合はやや改まった感じで、特に 古い響きも感じない。「半端」の場合は逆に会話的な雰囲 気になる。Q途中・途次 ちゅうとん【駐屯】軍隊がある目的のためにある土地にとど まる意で、会話にも文章にも使われる専門的な漢語。部 隊〈地〉進駐・Q駐留 ちゅうねん【中年】若くもなく年寄りでもない四十代から五 十代前半の年齢をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 十代前半の年齢をさし、会話にも文章にも使 「女」へ「肥り」へ「の男性」のマイナスイメージを伴うこ ともある。川端康成の『千羽鶴』に「の女の過去がもやつ く前で、清潔に茶を立てる令嬢を、菊治は美しく感じた」と ある。熟年・初老・Q中高年・中老 ちゅうねんおとこ【中年男】中年の男性という意味にすぎず、 学術論文などの硬い文章以外、広く使われる混種語。時に マイナスイメージをもつ。へーに騙ざされる〉へーにつけら れる) ②中年の男性自体がみなマイナス評価を浴びるわけ ではないが、おそらくは過去の使用例の偏りの影響で、こ の語には「中年の男性」とは違い、「いやらしい」といった 語感がしみついている。井上ひさしは『犯罪調書』で「思い つめた目をしたーが冷たく光る鋭利な刃物を握りしめ、娘 の下腹部へ」と、帝王切開の手術をする医師を思わせぶり に描く際にもこの語のそういう語感が効果的。 ちゅうばん【中盤】物事の中ほどの局面やその前後を含む広 がりをさし、会話にも文章にも使われるやや専門的な漢語。 〈一戦〉へーは押し気味に試合を運ぶ〉〈選挙戦もーに差し 掛かる〉囲碁・将棋のほか、スポーツの試合や選挙戦など によく使い、前の「序盤」、後の「終盤」と対立する。中 間・中頃・Q半ば・中程 ちゅうぶう【中風】脳出血の後などに麻痺が残って半身が不 随になる症状をさし、会話にも文章にも使われる古風な漢 <667> 語。〈ーを恵う〉回脑卒中の後遺症。「ちゅうふう」とも「ち ゅうぶ」ともいう。ひ中気 ちゅうぶる【中古】主として会話で使った「ちゅうこ」の意 の古めかしいことば。〈|の背広〉〈車を|で安く買う〉 小津安二郎監督の映画『お茶漬の味』(一九五二年)で茂吉 (佐分利信)に「いい背広買ったじゃないか」と褒められた岡 田(鶴田浩二)が「放出ですよ、」と応じている。「ちゅう こ」と発音すれば今でもさほど古い感じはないが、当時の 会話では「ちゅうぶる」が普通だったのだろう。その語感を 利用して中古文学の研究者がたわむれに「ちゅうぶる文 学」と自嘲的な響きを楽しむこともある。ひセコハン・Q中古 ちゅうぼう【厨房】改まった文章などで「調理場」の意で用 いられる硬い感じの漢語。〈|用品〉〈|に入る〉〈中華料 理店のーを預かる〉②昔は「男子ーに入らず」などとこの語 を家庭でも使ったが、今では設備の整った専門的なイメージ があって、主にレストランなどの店で用いられ、各家庭で使 うと大げさな感じになる。ひ勝手②・キッチン・庫裏・くりや・炊 事場・台所・Q調理場 ちゅうもん【注文】買う約束で品物を要求したり、品質やす 法などを指定して製作や送付を依頼したりする意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。料 理をーする)〈ーを受ける〉〈ーが殺到する〉ひ誂える ちゅうりゅう【駐留】軍隊が他の国や地域に一時とどまる意 で、会話にも文章にも使われる専門的な漢語。〈軍〉〈軍 隊がーする〉乃進駐・Q駐屯 ちゅうろう【中老】初老の次の段階の年齢をさし、主に文章 ちょうい に用いられる古めかしい漢語。「といった年恰好の人物 永井龍男の『手袋のかたっぽ』に「の人の孤独さが身の 周りに滲んで来るように思われ」とある。現代では六十代 半ばから七十代前半あたりのイメージだが、あまり使われ なくなった。専熟年・Q初老・中高年・中年 ちよい「ちょっと」の意でくだけた会話に使われる俗語。へも うーこっちへもうー大きなやつがいいや)多く「もう 」の形で使う。ちっと・ちと・Qちょいと・ちょっと・ちょっび り ちょいちょい「ちょくちょく」の崩れた形でさらに俗っぽい 表現。〈ーお邪魔する〉〈ー休む〉ひしばしば・度々・Qちょくち よく・よく ちょいと「ちょっと」のくだけた形で、より会話的な和語。 男でも女でも、いくぶん頹廃的で都会的なセンスの感じら れる街に暮らす、ちょっと垢抜けた人びとが親しみをこめ ていくらか甘え気味に使う。〈目のあたりが—似てるかし ら〉(まあ、ーおいでよ)〈一林ひっかける〉小津安二 郎監督の映画では大都会を舞台にした作品で大人なら男で も女でも若くても中年でも初老でも盛んにこの語形を用い る。畏敬する志賀直哉の口癖であったらしく、ほとんどが 小津好みの登場人物である。いささか崩れた感じのことば で、ちょっとばかり小粋な響きをもって盛んに使われたが、 最近は使用する幅が狭くなったように見受けられる。 少々・少し・ちょこっと・Qちょっと・ちょっぴり・僅か ちょうい【弔意】哀悼の意という意味で、主に文章に用いられる改まった漢語。へーを表す》弔慰 <668> ちょうい ちょうい【弔慰】死者を弔い遺族を慰める意で、主に文章に 用いられる硬い漢語。〈金〉弔意 ちょうかん【鳥瞰】高所から見下ろして広い範囲を眺める意 で、主に文章に用いられる硬い漢語。〈図〉〈丘の上から 市街を—する〉空を飛ぶ鳥の視点を想像した発想の語。 「日本近代史を—する」のように、概観する意を表す比喻的 な用法もある。専俯瞰 ちょうきより【長距離】移動距離の長い意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈列車〉〈輸送〉〈走〉②二点間の 隔たりというイメージの「遠距離」に対し、この語は移動す る長さという線的なイメージでとらえている感じがある。 「短距離」との関係は相対的であり、陸上競技では「短距離」 に対して三〇〇メートル以上を長距離とするらしいが、 一般社会では一万メートルの輸送でも通常は「長距離」とい う感覚にはならない。ひ遠距離 ちようく【長軀】「長身」の意で文章に用いられる硬い漢語。 へーをもてあます》の「短軀たん」と対立。横光利一の『日輪』 に「は(略)だんだんと痩せていった」とある。Q長身・の っぽ ちょうけし【帳消し】貸借関係が消えて帳面の記載を無効と する意で、会話や改まらない文章に使われる、やや古風な 表現。これまでの借金をーにするの「先日の活躍もこの 失態でーだ」のように、意味を拡大して使う比喩的な用法 もある。刂相殺・Q棒引き ちょうこう【兆(徴)候】「兆し」に近い意味で、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈危険なーを示す〉〈発作の ーが見られる》「兆し」よりその変化が具体的にとらえや すい感じがある。「兆候」と書く例が多いが、医学の方面の 話題では「徴候」を用いる傾向があり、医大出身の作家山田 風太郎の『あと千回の晩飯』でも「いろいろなーから、晩飯 を食うのもあと千回くらいなものだろうと思う」という例 で「徴候」と記している。単兆し・前兆・Q前触れ・予兆 ちょうごう【調合】薬などを決まった分量ずつ混ぜ合わせる 意で、会話にも文章にも使われるやや専門的な漢語。〈薬を ーする〉処方・Q調剤・調薬 ちようさ【調査】事実を明らかにするために本格的に調べる 意で、会話にも文章にも広く使われる漢語。〈国勢ー〉〈実 態ー〉〈サンプリングー〉〈面接ー〉〈方言ー〉〈予備ー〉 〈事故の原因をーする〉「調べる」より大がかりな感じが あり、電話番号を調べたり、辞書を引いてことばの意味を 調べたりする日常の個々のケースには不適。研究・調べる ちようざい【調剤】薬剤を調合する意で、会話にも文章にも 使われる専門的な漢語。〈室〉〈薬局〉処方・調合・Q調 薬 ちょうし【銚子】清酒の燗をする際に用いる瓶の形の主に陶 磁器製の容器。へ晩飯におーを一本つける〉徳利に比べ、 一合入り程度の小ぶりな物が多い。とくり・Qとっくり ちょうし【調子】物事の進み具合、体や機械の動きなどをさ して、会話にも文章にも広く使われる日常の基本的な漢語。 〈一本〉〈激しいーで主張する〉〈胃のーがおかしい〉〈エ ンジンのーが悪い〉〈ーを整える〉〈どうもーが出ない〉 〈ーの波に乗る〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「うまい具 <669> 合にこっちのーに乗ってくれない」とある。ひな配は・Q具 合・コンディション ちょうじゃ【長者】大金持ちの意で、会話にも文章にも使わ れる古めかしい漢語。〈億万—〉〈村でも指折りの—〉 「一番付」として現代でも時折目にする。その年の年収に焦 点があたる用法もある。大金持ち・金持ち・金満家・財産家・素 封家・Q富豪・物持ち ちょうしゅ【聴取】聞き取りを意味するやや専門的な漢語。 〈事情—〉〈状況を—する〉「ラジオの—率」などのように 日常生活でも使われるが、警察関係の連想が働きやすい。 収取調べ ちょうじゅ【長寿】人間の寿命が長く高齢になるまで生きる 意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈不老 ー〉〈一の祝い〉〈一を保つ〉回「寿」は「ことぶき」で、 「長命」や「長生き」よりめでたい雰囲気がある。Q長命・ 長生き ちょうしゅう【徵収】規約に基づいて取り立てる意で、会話 でも文章でも用いられる改まった感じの漢語。〈会費をーす る〉〈料金をーする〉徴集 ちょうしゅう【徴集】国家などが強制的に集める意で、改ま った会話や文章に用いられる硬い漢語。〈臨時—〉〈兵を— する〉徴収 ちょうしゅう【聴衆】講演会や音楽会あるいは街頭演説など を聴きに集まった多くの人々をさして、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。へーを話に引き込む〉へーが総立ち になって惜しみない拍手を送る》「観客」に対応する「聴 ちょうじょう 客」という語がないぶん「観衆」ほどの大きな規模でない場 合にも使う傾向がある。観客・Q観衆・見物客・見物人 ちょうしょ【長所】人間の才能や性格、物事の優れた点をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーを生かす〉へーを 伸ばす〉〈最大のーは視野の広いことだ〉武者小路実篤の 『愛と死』に「自信の強いことはいいことだが、他人のーを 認めないことで自信を無理につくろうとするのは醜い」と ある。「短所」と対立。Q取り柄・美点・利点 ちょうしょ【調書】取り調べた内容を記載した文書をさし、 裁判所や警察などで用いる法律用語。〈供述—〉〈ーを取 る ちょうしよう【嘲笑】嘲笑う意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。「の的になる」《衆人のーを買う》大 江健三郎の『セヴンティーン』に「森の嵐のようにどよめく 全世界の他人どものー」とある。Qあざ笑う・せせら笑う・冷 笑 ちょうじょう【長上】年齢や地位が自分より上で敬意をもっ て接すべき相手をさし、主として文章に用いられる古風で 硬い漢語。〈ーに伺いを立てる〉〈ーに対する態度〉目 上以上に、厳格な上下関係を感じさせる。目上 ちょうじょう【頂上】山などの一番上の部分をさし、会話か ら文章まで幅広く使われる日常的な漢語。〈山のーを極め る〉へに登りつめる)②大岡昇平の『花影』に「富士が急 に頭を出した。ーだけ、切り取って見ると、瘤のようにふ くれ上った、意外に厳かしい形」とある。「頂だ」のような 古風なやわらかさ、「てっぺん」のような会話的な俗っぽさ <670> ちょうしょく もない、最も普通のことば。Q頂・山頂・山嶺・絶頂・頂点・て つべん ちょうしょく【朝食】朝の食事の意で、改まった会話や文章 に用いられる、やや硬い感じの漢語。〈ーをしたためる〉 〈早めにーをとる〉②小沼丹の『珈琲の木』に「遅いーの後、 ひととき、珈琲を喫みながらぼんやりしていると、いろい ろのことを想い出す」とある。Q朝御飯・朝はん・朝めし ちょうしん【長身】背の高い意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈—瘦軀〈〉〈—の力士〉〈—を二つに 折る〉〈—から投げ下ろす速球〉高見順の「故旧忘れ得ぺ き」に「足のすらりと延びた颯爽たる」とある。阿部昭は 『大いなる日』で、父親の死に際し「夏蒲団がみじかいので、 ーだったおやじの足首が、突き出ているのが見えた」と書 き、「左右の足の甲が思い思いのちぐはぐな角度にねじれ て、まったく力なく傾いていた」と統一的な意志の欠如を冷 静に描きとった。ひQ長軀・のっぽ ちょうずば【手水場】「便所」をさす、古くてどこか田舎じみ た雰囲気の和風のことば。「から出て来る」「ちょう ず」は「てみず」の音転で、もともと手を洗う水を意味し、 手を洗う行為をもさした。寺社で参拝の前に手を洗い清め るのもそれである。のちに婉曲に用便や大小便をさす ようになった。排尿・排便のあとに手を洗うために近くに手 水鉢を用意するので、便所とその周辺は手を洗う場所でも ある。芥川龍之介の「元日や手を洗ひをる夕ごころ」の句 は、座敷に続く手洗いを出て縁側の手水鉢を使いながら暮 色に沈みかける庭木にけだるさを感じる一景だろうか。そ の点を利用して、主たる排尿・排便の過程を捨象し、そのあ と手を洗うという従たる行為に焦点を移して、便所そのも のを「手水場」とほかした間接表現。おトイレ・厠・閑所・ 化粧室・御不浄・雪隠・洗面所・WC・手洗い・トイレ・トイレット・はば かり・Q便所・レストルーム ちょうせい【長逝】間接的に「死」を意味して、改まった文 章に用いる漢語。〈一なさいました由〉死を忌む気持ちか ら、「逝去」と同様の発想から、それを「長らく行って帰ら ない」という意味にとらえ直した間接表現。勇敢え無くなる・ 上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往 く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくな る・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れ る・他界・露と消える・天に召される・亡くなる・僇なくなる・不帰の客 となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷が上がる・ 空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 ちょうせい【調製】相手の好みや注文に応じて作る意で、改 まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈仕出 し弁当をーする〉〈洋服をーする〉専謹製 ちょうせい【調整】調子を整えたり過不足を均したりして適 切な状態に近づける意で、会話にも文章にも使われる漢語。 〈微—〉〈中〉〈音量を—する〉〈機械を—する〉〈人数を —する〉〈意見の—を図る〉〈スケジュールを—する〉機 能や量のバランスを最適にすることに重点がある。調節 ちょうせつ【調節】大きさ・分量・重さ・強弱・温度・スピード・ 味などをバランスのよい状態に近づける意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈受胎—〉〈室温を—する〉〈速度を <671> に保つことに重点がある。調整 ちょうせん【挑戦】戦いを挑んだり手ごわい相手や困難なものに勇気を持って立ち向かったりする意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー者〉〈ー状〉〈大物にーする〉〈記録へのー〉〈限界にーする〉ヲアタック・Qチャレンジ ちようてい【調停】争っている両者の間に入り仲直りさせる 意で、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。へー 裁判〉〈家庭裁判所のー委員〉〈喧嘩のーに入る〉Q仲裁・ 仲直り ちょうてん【頂点】最も高いところの意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈に立つ〉へに上り詰める〉〈興奮が ーに達する〉谷崎潤一郎の『細雪』に「此の一瞬こそ、二 日間の行事のーであり」とある。「三角形のー」という本来 の用法はいくらか専門語的。Q頂・絶頂・頂上 ちょうど【丁(恰)度】「まるで②」の意で、会話や硬くない文 章に使われる漢語。泥だらけの脚が揮りたての大根の ようだ志賀直哉の『暗夜行路』に「老人は黙って立った。 背が高く風雨にさらされた山の枯木のような感じがし た」とある。「十二時だ」「その場所にある」「前と同 じだ」のように、時刻・位置・形態・数量・長短などが基準や 予測などにびったり合う意にも使う。马あたかも・Qさなが ら・まるで② ちょうば【帳場】和風の旅館や料亭、昔ながらの大型商店な との勘定場をさし、会話にも文章にも使われる古風な表現。 〈一格子〉へーを預かる〉受付・Qフロント・窓口 ちょうやく ちょうはつ【調髪】(主に男性の)髪を切りそろえたり形を整 えたり頭の手入れをすることの総称で、やや改まった会話 や文章に用いられる専門的な漢語。〈料〉へーしてもら う〉分散髪・整髪・Q理髪 ちょうほう【重宝/調法】役立って便利だの意で、会話や軽 い文章に使われるやや古風な漢語。〈な道具〉いつもー している〉〈電子レンジはだ〉谷崎潤一郎の『細雪』に 「雪子ちゃんがいればーだものだから、それで此方へ帰らし てくれないのだ」とある。人にも物にも事柄にも使うが、 場所などには用いにくく、幅が狭い。「便利」「利便」と違 い、便利だということ自体よりも、そのために助かっている という意味合いが強く、それだけ主観的。Q便利・利便 ちょうぼう【眺望】広く景色を眺める意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ーが利く〉〈ー絶佳〉〈雄大なー を楽しむ〉②太宰治の『富嶽百景』に「頂上のパノラマ台と いう、断崖の縁に立ってみてもいっこうにーがきかない」 という例がある。広く景色を眺める意で、改まった会話や を楽しむ〉②太宰治の『富嶽百景』に「頂上のパノラマ台と いう、断崖の縁に立ってみてもいっこうにーがきかない」 という例がある。広く景色を眺める意で、改まった会話や を楽しむ〉②太宰治の『富嶽百景』に「頂上のパノラマ台と いう、断崖の縁に立ってみてもいっこうにーがきかない」 ちょうほうけい【長方形】四つの角がすべて直角である四辺 形をさす漢語。会話的な「長四角」の正式名称。へ面 積)Q矩形四角四角形四边形長四角 ちょうめい【長命】高齢になるまで生きながらえる意で、改 まった会話や文章に用いられる古風な漢語。御の相があ る《代々ーの家系》Q長寿・長生き ちょうめん【帳面】「ノート」の古めかしい言い方。「一に付ける」はノート ちょうやく【調薬】調剤の意で、専門的な会話や文章に使わ <672> ちょうやく れる漢語。〈処方箋に従ってーする〉一般には「調剤」より使用頻度が少ない。処方・調合・Q調剤 ちようやく【跳躍】飛び跳ねる意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈ー種目〉「ジャンプ」より本格的な感 じが強く、ちょっと跳ねるぐらいでは使わない。ひQジャン ブ・跳ぶ・跳ねる ちようよう【重用】重要な職務に取り立てる意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈部下を—する〉の「じ ゅうよう」と読むこともある。専取り立てる・Q抜擢だ・引き立 てる ちようらく【凋落】「おちぶれる」意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈一の秋〉へ一の兆しが見える〉へ一の 運命をたどる)花や葉がしぼんで落ちる意から。ひおちぶ れる・転落・没落・落魄・Q雲落 ちょうり【調理】料理の意で改まった会話や文章に用いられ る専門的な感じの漢語。〈台〉〈場〉〈師〉〈法〉 〈ー済み〉手軽な場合にも広く使われる「料理」に比べ、 それを職業とする人が店の客などのために行うというニュ アンスがある。社員食堂や学校などの「室」といった連想 も働く。刂料理 ちょうりし【調理師】料理人やその資格をさし、会話にも文 章にも使われる正式名称。〈一の資格を持つ〉都道府県の 知事が免許を与える。呂板場・Q板前・コック・シェフ ちょうりば【調理場】調理をするための場所をさし、会話で も文章でも使われる日常語。〈旅館のーを仕切る〉「厨 房」と同様、設備の整った専門的なイメージがあって、 一般家庭では使いにくく、旅館のほか割烹・料理屋など日 本料理の店にぴったりと合う雰囲気がある。「炊事場」のよ うに煮炊きを中心とした感じは特になく、材料を捌き味付 けする手の込んだ料理が連想されやすい。勝手②・キッチ ン・庫裏くりや・炊事場・台所・厨房 ちょうろう【長老】学識や経験が豊富でその分野や集団で指 導的立場にある年長者をさし、会話にも文章にも使われる 古風な漢語。〈村の—〉〈政界の—〉〈文壇の—〉〈—の考え に従う〉②島崎藤村の『桜の実の熟する時』に「教会の—の 家庭」とあるように、キリスト教の教会の信徒代表をさす こともある。この語は多く男性を連想させる。何人か存在 する場合もあり、他の類義語と比較し、威圧する感じは弱 い。ひQ大御所・オーソリティー・権威②・第一人者 ちょうろう【嘲弄】嘲りからかう意で、改まった会話や文章 に用いられる、いくぶん古風な漢語。〈公衆の面前で激しい ーを受ける〉の芥川龍之介の『芋粥』に「同僚の侍たちにな ると、進んで、彼をーしょうとした」とある。態度だけでも 可能な「愚弄」と違い、嘲るという行為を伴う。「愚弄」よ りもさらに相手を見くびって激しい言葉を発する連想が強 い。み嘲る・愚弄・やゆ ちよきん【貯金】金銭を蓄える意の漢語で、くだけた会話で も違和感のない日常語。〈一箱〉〈ボーナスをーする〉へー を使い果たす)永井荷風の『瀾東綺譚』に「あんたの方に ーがあれば、後が安心」とある。「預金」が銀行を連想させ るのに対し、この語は正式な「郵便ー」のほか、「たんすー」 のような比喩的な用法も可能。乃預金 <673> ちよくし【直視】目を背けないでしっかり見つめる意で、改 まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈現実を する〉〈置かれた状況をーする〉具体的に視線を注ぐ場合 より、客観的に冷静に認識する意味合いで用いられる例が 目立つ。児正視・見る ちょくせつ【直接】間に物を介さず、時間的・空間的に間をお かずに物事をする場合に、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる基本的な漢語。〈手渡す〉〈当人から聞 く〉〈日が当たる〉〈出先からその場に向かう〉〈関 係がない〉夏目漱石の『こころ』に「ありのままを告げら れては、と間接の区別があるだけで、面目のないのに変 わりはありません」とある。「間接」と対立。ひじかに ちよくぜん【直前】空間的・時間的にきわめて接近している意 で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈車のーを横切 る〉ヨールーで失速する〉〈入試のー対策〉〈出発のーに なってあわてる〉〈試合のーになって作戦を変更する〉 「目前」より緊迫しているが「寸前」よりは余裕のありそう な雰囲気がある。「車のーを横切る」のように、空間的な接 近をさす例もあるが、時間的用法が多い。単眼前・Q寸前・間 近・目前 ちょくちょく「しばしば」に近い意味で、くだけた会話に使 われる俗っぽい表現。〈ー誘われる〉〈ー現れる〉ひQしばし ば・度々・ちょいちょい・よく ちょくゆ【直喩】喩える概念と喩えられる概念とを区別して 掲げ、「まるで」「ような」といった比喩指標で両者を関係 づける比喩表現の一類をさし、やや学術的な話題の会話や ちょじゅつぎょ 文章に用いられる専門的な漢語。詩って小説にない小説 の息みたいなものなのね」という室生犀星の小説『杏っ子』 の表現は巧みなーの例と言えよう》「隠喩」と対立。ひQ 明喩 ちょっと「少し」の意の俗語。〈ー残る〉〈頭をー下げて挨 拶する〉〈ーやってみただけで、すぐやめる〉少々・少し・ち よいと・ちょっと・ちょっぴり・僅か ちよさくか【著作家】著述業を営む人をさす漢語で、やや硬 い感じの文章語。著作者や著作権を話題にする折に使用す ることが多い。へとして身を立てる)刂作家・小説家・著作 者・著述業・文学者・文士・文人・文筆家・Q物書き ちよさくしゃ【著作者】法的に著作を行った者をさす漢語。 やや専門語寄りで改まった感じの文章語。へーの権利へー の許可を取る)作家・小説家・Q著作家・著述業・文学者・文士・文 人・文筆家・物書き ちよしや【著者】その書物を書き著した人の意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ー紹介〉(この本のー〉へーのサ イン入りの本〉の「読者」と対立。書き手・作者・Q筆者 ちょじゅつぎよう【著述業】文章を書いて生計を立てる人を さす漢語で、「作家」や「小説家」より改まった形式的な感 じの語。〈ーを営む〉〈職業欄にーと記入する〉文章を書 くことを生業としていれば文学関係に限らず使われる。永 井龍男の『そばやまで』によれば、まだ「作家」とか「小説 家」とかと名乗れるほど一人前の物書きになっていないと いう意識から控えめに言う際に用いることもあるという。 り作家・小説家・著作家・著作者・文学者・文士・文人・文筆家・Q物書き <674> ちよすいち【貯水池】水道・水力発電・灌溉などのために用 水を貯えておく人工の池をさし、会話にも文章にも使われ る漢語。〈一の水位が下がる〉、毎ダム ちよっかい直接関係のない人間が手出しをする意で、くだ けた会話に使われる俗語。〈横からーを出すと承知しない ぞ〉ゆがんだ腕や指の曲がった手をののしっていう語と いう。口出し・Q手出し・容喙 ちょっかん【直感】深く考えずに瞬間的に感じ取る意で、会 話でも文章でも使われる日常的な漢語。〈ーが働く〉へーで 見抜く〉〈裏があるとーする〉今日出海の『天皇の帽子』 に「この人こそ一生の伴侶とその時ーした」とある。乇直観 ちょっかん【直観】分析的推理を経ずに対象を直接とらえる 意で、硬い文章に用いられる古風で哲学的雰囲気を感じさ せる漢語。〈ー教育〉へー的認識〉へーで把握する〉③三木清 の『人生論ノート』に「論理の根柢にーがある」とある。 直感 チョッキワイシャツなどの上に着る、袖がなく丈の短い胴 着をさすポルトガル語からの外来語。「ペスト」の古風な呼 び名。日常会話ではまだよく用いられる。〈ーを着込む〉の 里見殫の『多情仏心』に「ーの脇の下の刳に両手の親指を 突っ込み」とある。専ペスト ちよつきゅう【直球】正々堂々とした手段をさし、会話や軽 い文章などで使われる野球用語の拡大用法。〈交渉に際して も、あくまで—で勝負する〉〈何をやるにも勝負に徹す る〉野球で投手が変化球に頼らずに速球で打者に対する ことから、一般に「正攻法」という意味合いで使われるが、 まだ比喻性が強い。「変化球」と対立。 ちよけい【直径】円や球の中心を通り、両端が円周または 球面に達する直線をさし、会話にも文章にも使われる、や や専門的な漢語。〈地球の—〉へ一五センチの円の面積〉 ひ差し渡し ちよっと【一寸】「ちょいと」ほどではないが、「少し」より くだけた会話的な和語。〈1の間〉〈1待って〉〈もうー何 とかなりそうなものだ》⑩井伏鱒二の『本日休診』に「待 って。すぐ支度して来るからね」とある。少々・少し・ちょ いと・ちょこっと・ちょっぴり・僅か ちょっぴりほんの少しの意で、くだけた会話に使われる俗 っぽい口頭語。〈ほんのー〉〈ー余る〉〈ーさびしい〉の「ち よっと」より少なく「ほんの少し」という意味合いで使う。 少々・少し・ちっと・ちと・ちょい・ちょいと・ちょこっと・Qちょっ と・僅か ちよめい【著名】「有名」に近い意味で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈な作家〉〈な学者〉〈な存 在〉②「有名」ほどは世間一般に広く名が知られていない場 合にも使う。また、「有名」に比べ、マイナス評価の例は少 ない。马高名・名高い・Q有名・雷名 ちよめいじん【著名人】世間に広くその名を知られている人 物の意で、やや改まった感じの会話や文章に使われる漢語。 へーの素顔〉へーをずらりとそろえる〉へこのたびの受賞で 晴れてーの仲間入りをする〉②「名士」より分野を越えてよ く知られ、政界や論壇・文壇、芸術などの分野を連想するこ とが多く、「有名人」よりその存在が重んじられている傾向 <675> がある。 卩名士・Q有名人 ちよろまかす人目をかすめてちょっとした物を盗んだり、 自分の有利なように見せかけたりする意で、くだけた会話 に使われる俗語。〈店の品物を—〉〈会社の金を—〉の大き な金額を連想しにくい。勲欺く・いつわる・かたる・担ぐ・Qこま かす・たぶらかす・だまくらかす・だます ちよんぎる【ちょん切る】無造作に切り落とす意で、主にく だけた会話に使われる俗っぽい和語。〈小枝の先を—〉〈原 稿が長過ぎるので初めの挨拶を—〉〈社員の首を—〉き切る・ 切断・断つ・絶つ ちらし【散らし】宣伝・広告用に印刷した紙をさし、会話にも 文章にも使われる和語。〈一広告〉〈大売り出しの一〉〈店 の前でーを渡す〉②手で配るか新聞に折込むかする。専ら 商業用の目的であり、政治的な主張や選挙運動などのびら は含まない。「チラシ」と片仮名書きする例もある。ひびら ちらつかせるそのことが相手にわかるようなヒントをばら 撒く意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈儲け話を一〉 〈自慢話を一〉〈大臣のポストを一〉②「刃物を一」「札束を 一」のように、実際にちらちら見えるようにして脅かした り気を引いたりする場合もあり、「ほのめかす」や「におわ す」よりも相手に伝える意図が明確。ひにおわす・におわせる・ Qほのめかす ちらばる【散らばる】一箇所に固まらず互いに間を置いてい ろいろな所に存在する意で、会話にも文章にも広く使われ る日常の和語。〈あちらこちらに〉〈机の上に書類がー〉 〈支店や営業所が全国にー・っている〉敵乱・Q分散・分布 ちりみだれる ちり【塵】空気中に散らばっている細かいごみや飛んで来た 土砂などの埃をさし、会話にも文章にも使われる和語。 〈ーを払ってペンチに腰掛ける〉〈ーひとつ落ちていないほ ど丁寧に掃除をする〉②永井荷風の『歓楽』に「ーッなく 清められた上に軽く打水してある入口の敷石」とある。近 年、宇宙空間に打ち上げられたまま機能しなくなった人工 衛星やそのかけらなどを「宇宙の」と称することもある。 ひ芥あ・屑・Qみ・埃 ちりがみ【塵紙】鼻紙や落とし紙として使う粗末な紙をさし て、会話にも文章にも使われる日常の和語。へーで洟をか む》「鼻紙」より範囲が広く用途も曖昧なだけ間接的で、 露骨な感じの「鼻紙」よりよく使う。ひちりし・ティッシュ・Q 鼻紙 ちりがみこうかん【塵紙交換】↓くずや ちりし【塵紙】「ちりがみ」の意で会話で使うことのある語。 へーでさっと拭う)「はながみ」ほど露骨でない「ちりが み」の「紙」の部分をも音読みにすることで間接性を高めて 汚い感じを薄めようとした語形か。ひQちりがみ・ティッシュ・ 鼻紙 ちりばめる【鏤める】刻んではめこむ意で会話にも文章にも 使われる和語。〈宝石を—〉谷崎潤一郎の『刺青』に「瑠 璃珊瑚をー・めた金冠」とある。「学術論文に難解な漢語を ー・めて威厳を保つ」のような比喩的用法もある。 ちりみだれる【散り乱れる】多数の花が乱れた感じに散り敷 く意で、主に文章中に用いられる、やや古風で趣のある和 語。〈庭一面に花がー〉、分散乱・分散 <676> ちりょう ちりょう【治療】病気や怪我を治すための処置の意で、会話 にも文章にも使われる日常の漢語。〈ー費〉〈患部をーす る〉〈ーを施す〉〈ーを受ける〉井伏鱒二の『本日休診』に 「ー器具を消毒した。幸い、ーに適当とする見込の分量だけ 洗浄液が(略)残っていた」とある。Q加療・診療・施療・手当 て・療治・療養 ちんあげ【賃上げ】賃金を引き上げる意で、会話や軽い文章 に使われる俗っぽい表現。〈一闘争〉〈要求〉の「賃金引 き上げ」の略。ひところ口頭でよく使ったが、放送などでは その俗っぽさを避けてか、「ペースアップ」か「賃金の引き 上げ」という表現を用いることが多い。ひべースアップ ちんあつ【鎮圧】反乱内乱・暴動などを武力で抑え込める意 で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈暴動を—す る〉〈反乱を—する〉②「平定」「征服」に比べ比較的小規模 で一時的な反抗に対して用いる傾向がある。Q制圧・征服・ 平定・抑圧・抑制 ちんうつ【沈鬱】気分が沈んでふさきこむ意で、主に文章中 に用いられる硬い漢語。「な表情を浮かべる)石川淳の 『普賢』に「錘がぶらさがっているかのごとく、たましいが 血管を流れ下り、足の裏を突き抜けて地にめりこんで行く ようなー」とある。賭鬱・陰鬱・Q憂鬱 ちんがし【貨貸し】使用料をとって貸し出す意で、会話や改 まらない文章に使われる、やや古風な日常語。へーの駐車 場)Q貨貸・リース・レンタル ちんぎん【賃金(銀)】提供した労働の対価として使用者から 労働者に支払われる金銭の意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈名目—〉〈—カット〉〈—の格差〉〈安い—でこき 使われる〉「給料」「給与」に比べ、それほど長期にわた らず、また、いくらか不定期であっても用いられる傾向があ り、労働契約に基づいて働く人の視点を連想させやすい。 なお、「賃金」の表記は本来「ちんきん」であり、賃貸契約 で借り手が貸し手に支払う金銭の意でも使われる。「ちん ぎん」の場合は「賃銀」の表記が正統的とされるが、現代で は「賃金」が一般的。及給与・給料・Q月給・サラリー・俸給 ちんしや【陳謝】事情を説明して謝る意で、主に文章中に用 いられる改まった感じの漢語。〈相手の発言に行き過ぎがあ り、ーを求める〉へーの意を表明する〉〈失礼の段深くー致 します〉の「陳」は「述べる」意で、「謝罪」ほど大げさで はない。専謝る・御免・失礼・Q謝罪・済まない・申し訳ない・詫び る ちんじょう【陳情】公的機関などに実情を訴えて善処するよ う要請する意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢 語。〈団〉〈大臣に—する〉〈役場に—する〉③権利の行使 である「請願」とは違い、上位者に泣きつく雰囲気が感じら れる。請願 ちんせい【沈静】静かになる、活気がないの意で、主に文章 に用いられる、やや古風な漢語。〈薄暮のーした空気〉〈景 気がーする〉②三島由紀夫の『金閣寺』に「水の面はますま すーに、何の兆もうかえていなかった」とある。鎖静 ちんせい【鎮静】鎮めて落ち着かせる意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ー剤〉〈ー作用がある〉〈昂ぶっ た神経をーさせる〉〈暴動がー化する〉ひ沈静 <677> ちんたい【賃貸】一定の料金を受け取って貸す意で、改まっ た会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーマンション〉へー 契約を結ぶ)Q賃貸し・リース・レンタル ちんちゃく【沈着】何事にも動じない意で、主として文章に 用いられるやや古風な硬い漢語。〈一冷静〉(一な態度を保 つ)安岡章太郎の『悪い仲間』に「すげえなア、君は」 と僕のーぶりをほめた」とある。落ち着く・泰然・平気・平気 の平左・平静・平然・悠然・悠々・Q冷静 ちんつう【沈痛】深い悲しみなどに心が沈む意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈な表情〉〈な思い〉回 すでに起こってしまった事実に対する衝撃を示す「悲痛」に 比べこの語はその衝撃的な事実をもとに将来に対する強 い不安を含む感じがある。また、「悲痛」より悲しみが内に こもっている感じが強く、小沼丹の「風光る丘」に「な面 持をして云った」とあるように、表情から察せられる程度 で、激しい行動となっては現れにくい。なお、これは悲しみ だけでなく心配事などによっても引き起こされる感情であ る。専傷心・悲痛 ちんびら小物の悪党をきして、主にくだけた会話に使われ る俗っぽい和語。へにからまれる)へに金を脅し取られ る)実際には、大人ぶる生意気な子供から不良ややくざ の手下のような者までいろいろ入る。ふごろつき・ならず者・ 無頼漢・暴力団・無法者・やくざ・Q与太者 ちんぷ【陳腐】ありふれていて新鮮さに欠ける意でやや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈な服装〉〈な芸〉 〈な意見〉代わり映えのしない古くさい感じに重点があ ちんもく る。中島敦の『狼疾記』に「徴の生えそうな程」な欧羅巴出 来の享楽主義」とある。りありきたり・ありふれた・月並み・平 凡・Q凡庸 ちんぼつ【沈没】①物体が水中を下へ移動する意、船の中に 水が入って海底に沈む意で、会話にも文章にも使われる漢 語。(暴風のために船が沖でーする)へ船を引き揚げる) 小沼丹の『風光る丘』に「君たちのボロ車は健在かね?」 「あれはーしました」というやりとりがあるが、現代では船 について使う例がほとんど。「沈む」が下への移動に重点が あるのに対し、この語は姿が見えなくなる点が中心。ひ沈む ②比喻的に、酔いつぶれてまったく正体をなくしてしまう 意で会話や軽い文章に使う古風で俗っぽい漢語。へー寸前 く背広にネクタイ姿でーする)ひQ泥酔・酩酊・酔い痴れる・酔 い潰れる・酔う・酔っ払う ちんもく【沈黙】黙りこんで口を開かない意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ーを続ける〉〈ーを守る〉〈長い間 のーを破る〉石坂洋次郎の『若い人』に「艶消のような柔 かいー」とある。Qだんまり・黙秘 <678> ついほかに気を取られていて無意識に行う意を表し、会話 や改まらない文章に使われる日常語。〜ほかに気を取られ てー見逃す〜《話に引き込まれ、ー時を過ごす〜《興奮して ー大声を出す〜《ー口をすべらす〜《好物なのでー食べ過ぎ る〜《ー貰い泣きをする〜《ーだまされてしまう》四夏目漱 石の『坊っちゃん』に「ー遅くなって済まない」とある。「う っかり」とは違って、単純な不注意のせいばかりでなく、何 かに気を取られたり夢中になったりして無意識のうちに起 こった失態を後悔する感じが伴う。りうっかり・Q思わず ついおく【追憶】昔を懐かしく思い偲ぶ意で、主として文章 中に用いられる、いくぶん古風で詩的な漢語。〈幼時をーす る〉へにひたる〉の芥川龍之介の『河童』に「こんなーに 耽いっていた僕」とある。思い出・懐旧・Q回想・追懐・追想 ついか【追加】あとから付け加える意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈ー注文〉〈材料をーする〉の「付け足し」の ような軽視した感じを伴わない。Q付け足し・添加 ついかい【追懐】昔のことを懐かしく思い出す意で、文章中 に用いられる古風で抒情ぼ的ながらいくらか硬い感じの 漢語。「の情こぼれんばかり」(の念やまず)思い出・ 懐旧・回想・Q追憶・追想 ついき【追記】本文に追加じて記載する意で、主として文章 に用いられる硬い漢語。今後の会議日程を—する)「付 記一に比べ、事柄の重要性に幅がある感じ。付記 ついきゅう【追及】相手の非を突いて追い詰める意で、やや 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈不正をーす る〉〈責任をーする〉〈野党のーをかわす〉志賀直哉の 『暗夜行路』に「不正を」すれば、するだけ不愉快になり そう」とある。Q追求・追究 ついきゅう【追求】追い求める意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈美を—した作品〉〈理想を—する〉 〈利潤を—する〉〈快楽を—する〉Q追及・追究 ついきゅう【追究】探って本質を明らかにする意で、硬い文 章に用いられる学問的な雰囲気のやや古風な漢語。〈真実を ーする〉〈本質をーする〉〈美とは何かをーする〉単追及・Q 追求 ついせき【追跡】追い詰める目的で後から追いかける意で、 会話にも文章にも使われる漢語。バトカーが不審な車を— するの「調査」のように、比喻的に、物事の経過をたど る意でも用いられる。Q追尾・尾行 ついそう【追想】過去の出来事や故人などを思い出して懐か しむ意で、主に文章中に用いられる古風でやや詩的な漢語。 〈往時を—する〉へに耽ぶり時を忘れる〉小沼丹に中学時 代の米人教師の思い出を綴った『汽船』と題する小説があ り、「ミス・ダニエルズの—」という副題が付されている。 思い出・懐旧・回想・Q追憶・追懐 ついに【遂(終)に】最後にやっとの意で、会話にも文章にも 使われる、いくぶん硬い感じの表現。〈ーその日が来た〉 〈ー完成した〉の「ー会えなかった」のように、とうとう最 <679> 後までの意でも使う。 いよいよ②・とうとう ついび【追尾】びたりと後ろについて跡をつける意で、改ま った会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈容疑者のーを 続行する〉み追跡・Q尾行 ついやす【費やす】時間・労力・財貨などを使ってしまう意で、 改まった会話や文章に用いられる和語。〈大金を—〉〈多大 の労力を—〉〈長い歳月を—・してようやく完成する〉②夏 目漱石の『明暗』に「残りの秋の日を土の上に—べく、ふた たび庭へ下り立った」とある。ふ消費 ついらく【墜落】飛行機や人間などが高い場所から空中を飛 んで下まで落ちる意で、会話にも文章にも使われる漢語。 〈飛行機の事故〉〈崖から足を滑らして海に—する〉 「落下」よりもはるかに高い場所から落ちるイメージがあ る。落ちる①・降下・転落・Q落下 つうがく【通学】児童・生徒・学生がそれぞれの学校に通う意 で、会話にも文章にも使われる漢語。「路」へ自転車でー する》幸田文の『おとうと』に「朝はまだ早く、の学生 と勤め人が村から町へむけて出かけて行く」とある。学生 が他大学に通ったり教員が学校に通ったりする場合には使 わない。通う・Q通勤 つうぎょう【通暁】ある分野の事柄を隅々まで非常に詳しい 知識を持っている意で、改まった会話や文章に用いられる、 やや古風な感じの漢語。〈政界にーする〉〈古典文学にーす る〉永井荷風の『瀾東綺譚』に「遊里の消息にーした老 人」とある。「精通」に比べ、その時々の情報よりまとまっ た知識について使う。詳しい・Q精通 つうじょう つうきん【通勤】勤め先に通う意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈時間帯〉〈長距離〉、〈客で込み合う〉清 岡卓行の『朝の悲しみ』に「住家は、その南部のはずれにあ り、勤め先の大学は、その中央にある。時間は一時間二 十分」とある。通う・Q通学 つうこう【通行】人間や自動車などが道路を通ることをさし、 会話にも文章にも使われるいくぶん硬い漢語。〈一人〉へ 止め〉〈右側〉への邪魔になる〉②サトウハチローの 「僕の東京地図」に「男子禁制の校内をさせてくれた。何 故女子大学の中をーするのがそんなに嬉しかったか、いま でもわからない」とある。ひ交通・通る つうこん【痛恨】取り返しがつかずひどく残念に思う意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一のエラー〉〈一 の極み〉〈一に堪えない〉の三島由紀夫の『橋づくし』に 「自分の願い事の破れたのを知って、橋のむこうを一の目つ きで見やると」とある。単悔悟・Q悔恨・悔い うし【通史】古代から現代まで通して広範囲を総合的に述べた歴史の意で、学術的な話題の会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈日本—〉〈ーを試みる〉専門的な漢語。 つうじょう【通常】日常一般の意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈国会〉〈の手続き〉〈のとお り実施する〉〈そのように説明する〉の普通、朝はパン 食だ」は「平均的な日本の家庭では」というニュアンスが強 く、「朝はパン食だ」は「特別な日は別として」という ニュアンスが強い。専常々・常日頃・日常・日常茶飯事・普段・普通 平常・平生・平素 <680> つぅせっ つうせつ【通説】世間一般に広く認められている考え方をさ し、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈学界の ー〉へに基づく〉これまでのーが書き換えられる〉②学 問的な「定説」に比べ、学術的な世界に限らず広く使う。 定説 つうぞく【通俗】大衆的で興味本位な意として、会話にも文 章にも使われる漢語。〈小説〉へー的な映画〉へいささか ーに流れ過ぎたきらいがある〉福原麟太郎の『人生の幸 福』に「反俗精神に生きることが上手になってくることをー というのかも知れない」とある。下劣・俗悪・Q低俗・低劣・卑 俗・野卑 つうぞくぶんがく【通俗文学】一般大衆の娯楽としての価値 に重点を置く文学をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 へーの中でも特に知られた長編)芸術性・文学性に重点を 置いて書かれる純文学に対して、興味本位の作品をさす。 「大衆文学」に比べ、実質的にはほぼ同じ性格の作品が含ま れるものの、「通俗に流れる」といった用法を持つ「通俗」 の部分が「低俗」を連想させ、純文学より価値が低いとする 若干軽蔑的な響きを感じさせる。大衆文学 つうたつ【通達】上位者から下位者に知らせるという感じの 強い、改まった漢語表現。本庁からのー〉〈ーを受ける〉 〈役所からーがある〉呂告知・知らせ・Q通知・伝える・伝達・報告 つうち【通知】公の機関から知らせる感じの、改まった漢語。 〈合格ー〉〈納税ー書〉〈結果をーする〉〈文書でーする〉 上位者から下位者へという感じがいくらかあるが、「通達」 ほどではない。呂告知・知らせ・Q通達・伝える・伝達・報告 うどく【通読】最初から最後まで通して読む意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈長編小説を—する〉福原麟太 郎の『虚栄について』に「長い長い章で、ちょっと—するわ けにゆかない」とある。「一読」に比べ、読み通すことに重 点がある。ひ一読 うれつ【痛烈】表現などの働きかけがきわめて激しく刺激 が大きい意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 「に非難する〉〈な批判を浴びる〉の「に殴打する」 「なライナー」のように物理的な激しさについても用い る。強烈・激烈・辛辣・Q手厳しい・激しい・猛烈 うろ【通路】通り道の意で、会話にも文章にも使われる日 常の漢語。〈ーが狭い〉〈ーをふさぐ〉〈公園内のー〉の敷地 内でも家の中の廊下なども含まれ、歩行者の通行を連想し やすい。漠然とした一般の道に比べ、ある場所からどこか までの間をイメージすることが多い。弁往還・往来・街道・街 路・道路・Q通り・道 え【杖】歩行を助ける細長い棒一般をさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈金剛—〉〈仕込み—〉〈松葉—〉〈ーを 引く〉〈ーにすがって歩く〉②和風・洋風いずれにも言い、 「転ばぬ先の—」「ーとも柱とも頼む」のような比喩的用法 もある。具ステッキ つかい【使い】用を言い付かって出かける人を広くさし、会 話にも文章にも使われる和語。〈ーを出す〉〈父のー〉〈神 のー〉〈ーの者〉②「おーに行く」の場合は行為そのものを さす。「剣術ー」「魔法ー」のように、ある技術に熟達して いる人をさす用法もある。Q使者・使節 <681> つかいかた【使い方】人間や道具やことば・概念などをどう効 果的に用いるかという意味で、会話やさほど硬くない文章 に使われる和語表現。〈秘書の—〉〈包丁の—〉〈敬語の—〉 専用法 つかいみち【使い道(途)】物品や人間などを使う方法・方面の 意で、会話にも文章にも使われる和語。〈金の—〉へに困 る〉へーがない〉とQ使途・用途 かいもの【使いもの】役に立つものの意で、会話や軽い文 章に使われる和語。これでは到底ーにならない)遺い物 つかいもの【遣い物】贈り物の意で、会話でも文章でも使わ れる日常の丁寧な感じの和語。おーにする)使いもの つかう【使う】目的をもって人や物の働きを利用する意。く だけた会話から文章まで幅広く使われる基本的な日常の和 語。〈英語を—〉〈頭を—〉〈人をあごで—〉〈時間をたっぷ り—〉〈あらゆる手を—〉司馬遼太郎の『国盗り物語』に 「信長はこの人物を手あかで磨くほどー・っている」とある。 「用いる」のような堅苦しい感じがないので、日常の生活で よく使われる。専用いる つかのま【束の間】ごく短い時間の意で、会話にも文章にも 使われる、いくぶん古風な和語。「の命」「の恋」〈喜び もー〉〈一为忘れたことがない〉向田邦子の『ねずみ花 火』に「顔も名前も忘れてしまった昔の死者たちにーの対面 をする」とある。「つか」はもと、手を握ったときの四本の 指の幅をさし、古く長さの単位としたことから。単瞬く間 つかまえる【捕まえる】動いているものを押さえる意で、主 として日常会話に使われる和語。〈犯人をー〉〈タクシーを ー〉〈上司をー・えて何という言い方だ〉堀辰雄の『美し い村』に「夢中で彼女の腕をー・えたのは、そんなこんがら がった気持の中でだったーとある。ひとらえる つかむ【掴む】対象を手でしっかり持つ意で、会話でも文章 でも幅広く使われる日常生活の和語。〈溺れる者は藁ぶをも ー〉〈鍋の取っ手をー〉〈相手の腕をー〉〈ネクタイをー〉 〈襟をー・んで放さない〉和田伝の『沃土』に「彼女の袂を 拡るようにーと」とある。「握る」が手の平まで使うのに 対して、「つかむ」は指先だけで持ち、そのとき親指の腹と 他の指との間が接触しないといわれる。ひ握る つかる【浸(漬)かる】水などの液体の中に入る意で、会話に も文章にも使われる日常の和語。〈露天風呂に肩までどっぷ りとー〉〈川があふれて家が水にー〉湯に「ひたる」より 「つかる」ほうが深く体を沈める感じがあり、「ぬるま湯に ー」快適さも、「ひたる」にすると風邪を引きそうな雰囲気 に変わる。ひひたる つかれる【疲れる】肉体や精神を使いすぎてその機能が一時 的に衰える意の基本的な和語。会話的な「くたびれる」と は違って、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常語。〈手がー〉〈神経がー〉②林芙美子の『放浪記』に 「働く家をみつけに出掛けては、魚の腸がのように!・れて 帰って来て」とある。疲労度の大小に関係なく使えるので、 「適度な疲れ」「心地よい疲れ」という用法も可能だが、こ れらは「くたびれ」に置き換えることはできない。ひくたび れる・しんどい・疲労 つき【付き】幸運の意の俗っぽい口頭語。へーがない〉へーに <682> つきあい 見放される 儀倖・Q幸運・ラッキー つきあい【付き合い】「交際」の意で、会話やさほど改まらな い文章に使われる日常の和語。〈親戚—〉〈—が広い〉〈— が長続きしない〉〈結婚を前提にした—〉武者小路実篤の 『友情』に「友だち—の多い方だった」とある。「—で参加す る」「—だから仕方がない」のように、気が進まず義理でい やいやする場合も含まれる。広交際 つきさす【突き刺す】先のとがったものを対象に勢いよく入 り込ませる意で、会話にも文章にも使われる和語。ヘ棒を ー〉〈刀でー〉安部公房の『他人の顔』に「疲れが、棒杭 のように眉間の芯にー・さっていた」という比喻表現の例が ある。専刺す つきずえ【月末】その月の終わりごろの意で、会話やさほど 硬くない文章に使われる日常の和語。〈ーに支払う〉へは 何かと忙しいの「月初め」に対立。ひげつまつ つきとめる【突き止める】いろいろ調べた結果ようやく明らかにする意で、やや改まった感じの会話や文章に使われる和語。〈行方を—〉〈正体を—〉〈原因を—〉ひ探し当てる・捜し当てる・探し出す・捜し出す・Q探り当てる つきなみ【月並み】どこにでもあるようで新味のないさまを さし、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な和語。 「な表現」〈なデザイン〉見るべきところがないという低い評価は「凡庸」ほど明確でなく、ちっとも珍しくない という点が意味の中心。「の会」のように、文字どおり 「月ごと」の意もある。ひありきたり・Qありふれた・陳腐・平凡・ 凡庸 つきまとう【付き纏う】傍を離れないでついて歩く意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈小さな子が母親に—〉〈悪 い奴がうるさく—〉②徳田秋声の『縮図』に「放浪時代から ー・っていた茨城生れの情婦」とある。比喻的に、「不安が ー」「悪い評価が一生ー」のように、抽象的な意味合いでも 使う。ままつわり付く・まつわる・Q纏い付く つきる【尽きる】使ってしまって残りがなくなる意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈食 糧がー〉〈資金がー〉〈採るべき手段がー〉〈力がー〉図島崎 藤村の『破戒』に「根気も、精分も、わが輩のからだの内に あるものはすっかりもうー・きてしまった」とある。数量の ある具体物のほか、「運がー」「興味はー・きない」「名残が ー・きない」のように抽象的なものにも使う。「道がー」の 例では、「道が果てる」と同じく、たどってきた一本の道が 途中でなくなるという意味にもなり、いろいろ験してみて ほかに手段が考えられないという意味にもなりうる。果 てる つく【突く】細い先で対象を強く押す意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる和語。〈鞠を—〉〈地面に 手を—〉〈杖を—〉〈相手の胸を—〉〈書類に印鑑を—〉 「弱点を—」「痛いところを—・かれる」のように、弱いとこ ろを鋭く攻撃する意に使う比喻的用法もある。こづく・Q つく・突っつく く【着く】物が移動して予定の場所に至る意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈手紙が—〉〈列車が終点に—〉〈予定より早く—〉夏目漱 <683> 石の「坊ちゃん」に「東京へ!いて下宿へも行かず、革 鞄を提げた儘、清や帰ったよと飛び込んだら」とある。 「到着」と違い、「足の先が地面に」「指の先が天井に」 のように、「届く」という意味合いでも使う。Q到着、届く つぐ【次ぐ】想定するその対象の次に位置する意で、改まっ た会話や文章に用いられる和語。〈社長にーポスト〉〈昨年 にー・いで史上一番目に多い〉伊藤左千夫の『野菊の墓』 に「野菊の様な人だと云った詞にー・いで、其野菊を僕はだ い好きだと云った」とある。Q継ぐ・接ぐ つぐ【注ぐ】容器に飲み物を流し入れる意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈急須から湯呑みにお茶を—〉〈グラス にワインを—〉の「炭を—」のように補充する意の用法もあ り、「客にピールを—」の場合にも空になっているのに気が ついて失礼にならないように補給するような連想が働くこ ともある。ひそそぐ ぐ【接ぐ】つなぎ合わせる意で、会話でも文章でも使われ る和語。〈骨を—〉〈台木に—〉〈木に竹を—〉の「骨接ぎ」 「接ぎ木」などに限定的に使用される表記。文章中では「は ぐ」と紛らわしいので注意。ヨQ継ぐ・次ぐ つぐ【継ぐ】切れ目なくつなぐ意で、会話でも文章でも使わ れる和語。〈息を—〉〈家業を—〉〈志を—〉〈夜を日に—・ いで働く〉遠藤周作の『海と毒薬』に「橋本教授が医学部 長を—のは至極当然」とある。「跡を—」「家を—」のよう な跡目相続の意味では「嗣ぐ」とも書き、その表記の場合は 古風な感じが生じて文体的なレベルも高くなる。次ぐ、Q 接ぐ つくろう つくえ【机】物を書いたり本を読んだりするための台をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常的な和 語。〈勉強ー〉へーに向かう〉へーの上を片づける〉夏目漱 石の『坊っちゃん』に「つまらない冗談をするなと銭をおれ のーの上に掃き返した」とある。乃デスク つくづく【熟熟ノ熟】じっくり、心底の意で、会話やさほど 硬くない文章に使われる和語。へ(考えてみると)今度ば かりは愛想が尽きた福原麟太郎の顔についてに 「自分の顔を鏡に見てよくも今日まで苦労してくれた顔 だといたわる心持にもなる」とある。Qしみじみしんみ り つくりだす【作り出す】それまでなかったものを新たに作る 意の和語。くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常語。〈新製品を—〉〈画期的な辞典を—〉中山義秀の 『厚物咲』に「自分のー・した新種の菊」とある。「捏造陰」 や「でっち上げる」のような負のイメージはなく、むしろ斬 新な期待を乗せて使う。「創り出す」と表記すればその画期 的な感じがさらに鮮明になる。ひQでっち上げる・捏造 くる【作る/造る】材料を用いて完成品に仕立てる意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的で日 常的な和語。〈米を—〉〈料理を—〉〈書類を—〉〈庭を—〉 〈酒を—〉〈船を—〉吉本ばななの『哀しい予感』に「きち んと整った色の薄い唇が、やさしい形に笑いを—」とあるよ うに抽象的な意味合いでも使う。「こしらえる」より一般 的・標準的な語。ひこさえる・Qこしらえる つくろう【繕う】破損箇所を、特に布などの破れた所を縫い <684> つけあがる 合わせるなどして直す意で、会話にも文章にも使われる、 いくぶん古風な感じの和語。〈靴下の穴を—〉〈ズボンの鉤 裂できの箇所に継ぎを当てて—〉〈上着のほころびを—〉 〈屋根の雨漏りの箇所を—〉〈Q修繕・修理 つけあがる【付(附)け上がる】相手の厚意につけこんで思い 上がった態度をとる意で、会話や軽い文章に使われる日常 の和語。〈優しくすると相手は—〉へ一度褒めるとすぐ—〉 当人だけの問題である「増長」と違い、他人のお世辞や思 いやりなどを契機としていい気になる場合に使う。増長 つげぐち【告げ口】他人の悪事や失敗や秘密などを他の人に こっそり知らせる意で、会話やさほど改まらない文章に使 われる和語。〈先生に—する〉〈上司に—する〉知らせる 相手は上位にあって権力を持つ個人であることが多い。犯 罪のにおいのする「密告」に比べ、内容は深刻な感じが薄 い。単Q告発・密告 つけたし【付(附)け足し】補って付け加える意で、会話や軽 い文章に使われる和語。〈ほんのーにすぎない〉(本筋と無 関係なーの部分)「追加」に比べ、その部分の重要性が低 い感じがあり、マイナス評価のニュアンスを伴う。Q追 加添加 つけね【付け値】買い手の要求する値段の意で、会話にも文 章にも使われる専門的な和語。へ上得意だから先方のーで 手放す)のこの値段なら買ってもいいという、買う側の一方 的な主張という響きがある。Q買値買価 つけもの【漬物】野菜などを味噌・塩・醤油・糠などに漬けこん だ食品をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる和語。〈ーを漬ける〉〈白菜のー〉長塚節の『土』に 「塩を噛むようなー」とある。一般に、メインディッシュと なる魚の粕漬けや肉の味噌漬けなどでなく、箸休めとなる 野菜の漬物をさすことが多い。おこうこ・Qおしんこ・香の物 げる【告げる】ことばで相手に知らせる意の和語で、改ま った感じの文章語。日常会話にはなじまない。〈当人にその 旨ー〉〈開会をー〉〈時をー〉〈別れをー〉永井龍男の『風 ふたたび』に「数番の仕掛花火が終りをー・げたばかりらし く」とあるように、単にそのことがわかる意にも使う。こ っそり告げる意で「告える」と言う若者の俗語表現もある。 呂告知・告白・知らせる・伝達 つざう【都合】必要な金品や時間・予定などをいろいろやりく りして捻出し整える意で、会話にも文章にも使われる日常 の漢語。〈資金を—する〉(どうにも—がつかない)武者 小路実篤の『その妹』に「近いうちに二人だけでお話しした いと思いますが、御—のいい時をお知らせください」とあ る。「工面」や「算段」より一般的。「仕事の—」「が悪い」 など幅広い用法がある。「ーをつける」「がいい」「自分 のーで」のように、他の事との関係による状況をさす用法 のほうがよく使われる。ひ工面・Q算段 つたう【伝う】それに沿って移り動く意で、会話にも文章に も使われる和語。〈鎖をー・って水が落ちる〉〈軒をー・って 流れる〉円地文子の『妖』に「雨の降りしきる時は坂から 崖をー・って流れ落ちる水の声が際だって耳に入った」とあ る。「伝わる」と比べ、途中経過に重点がある。ひQ伝わる つたえる【伝える】相手に情報を届ける意で、会話にも文章 <685> にも広く使われる基本的な和語。〈名を—〉〈来意を—〉 〈メッセージを—〉〈電話で気持ちを—〉〈よろしくおー・え 下さい〉夏目漱石の『こころ』に「Kから聞かされた打ち 明け話を、奥さんにー気のなかった私は」とある。言語表 現以外にも「熱を—」「振動を—」「伝統文化を後世に—」 などと使う。Q知らせる・通達・通知・告げる・伝達 「たない【拙い】「下手」の意で主に文章に用いられる古風な 和語。〈ー出来〉〈ーながら少々絵の心得がある〉自分の 技術や作品を謙遜する際によく使う。漢字表記は「まずい」 と区別ができない。Qへた・へたくそ・へたっぴい・まずい つたわる【伝わる】ものごとやその作用などが時間的・空間的 に離れたところに届く意で、くだけた会話から文章まで幅 広く使われる基本的な和語。ふうわさがー〉〈音がー〉〈熱 がー〉〈古くからー民話〉大仏次郎の『帰郷』に「下男の 階級の間に飛び火のようにーだろう」とある。「伝う」と違 い、伝わり先が意識に上る。ひQ伝う つち【土】陸地の表面を覆う土砂などの総称として、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。「いじり」〈肥えた」〈ーを耕す〉〈異国のーを踏 む〉の「記念に甲子園のーを持ち帰る」など、「土壌」に比 べ、手に持ったり肌に触れたりする物質としての面を連想 しやすい。ひQ土壌・泥 つつ【筒】円筒形で内部が空洞になっている棒をさし、会話 にも文章にも使われる和語。へ免状をーに入れて保管する の「捧げー」のように銃身をさすこともあった。「管」より も相対的に太くて真直ぐ。「茶ー」などのように底のある保 ったっ 存容器をさす場合もある。Q管・パイプ・ホース つつかけ【突っ掛け】足先をひっかけるだけの簡易な履物を さし、会話にも文章にも使われる日常の和語。へーで庭を歩 く〉の「ーぞうり」もあり、樋口一葉の『たけくらべ』には 「下駄」とある。ひサンダル つづきがら【続き柄】親子・夫婦・兄弟などという親族の間の 関係をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈世帯主との ー〉、Q間柄・関係①・関連・続柄 つく【突く】細い先で軽く突く意で、会話やさほど硬くな い文章に使われる和語。〈鳥が実を—〉〈箸で鍋を—〉〈背 中をー・いて促す〉「突く」に比べ、その動作を繰り返す イメージが強い。ひこづく・Q突く・突っつく つづけざま【続け様】同じようなことがすぐに繰り返される 意で、会話にも文章にも使われる和語。〈事故がーに起こ る〉へーに賞を取る〉の「立て続け」よりいくらか間隔が長 い感じがある。立て続け つつしむ【慎む】差し障りがないように言動に気をつけたり、 自分の意志でまったく行わなかったり量や程度を控えめに したりする意で、改まった会話や文章に用いられる和語。 〈行いを—〉〈身を—〉〈少し言葉を—・め〉〈飲酒を—〉 「控える」や「差し控える」に比べ、個別の行為だけでなく 漠然とした意味合いでも使われる。Q差し控える・控える① つったつ【突っ立つ】何もしないで立っている意で、主に会 話や軽い文章に使われる和語。ぼうっとー・ていないで 手伝ったらどうだ》⑳井伏鱒二の『珍品堂主人』に「棒を呑 んだみたいにー・って」とある。無駄に立っている、気が利 <686> っっっく かない、といったニュアンスで用いる例が目立つ。き起立・ Q佇む・立ちすくむ・立ち尽くす・立つ つつく【突付(突)く】「つつく」意で、会話や軽い文章に 使われる和語。〈鶏がえさを—〉〈指でほっぺたを—〉 「つつく」より会話的。ひこづく・突く・つつく つっぱしる【突っ走る】勢いよく走る意で、主として会話や 改まらない文章に使われる日頭語に近い和語表現。〜往来を ー〉〈首位をー〉単なる「走る」より勢いを感じさせるの は、造語要素「突く」の添える意味のほか、促音とそれに続 く「パ」という破裂音の働きもあるかもしれない。込走る つつみ【堤】川が氾濫がした際に水が溢れて住宅地などに流 れ込まないように川に沿って長く石や土を高く盛り上げた ものをさし、会話にも文章にも使われる、やや古風な和語。 〈桜のーが続く〉〈川が増水してーが切れる〉「堤防」はも ちろん「土手」よりも風情を漂わせる。込堤防・Q土手 つつむ【包む】対象の外側を全体的に覆う意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的生活和語。 〈本を風呂敷に—〉〈贈り物を包装紙で—〉〈中身が見えないように新聞紙で—〉の川端康成の『千羽鶴』に「花を出して、水を捨てて、拭いて、箱に入れて、ー・んだ、その文子の早業に、菊治はひどく驚いた」とある。主として具体物を覆う「くるむ」に対し、この語は「炎にー・まれる」「闇にー・まれる」「両親の愛情にー・まれて育つ」「会場は異様な雰囲気にー・まれる」のような現象や抽象体について用いる例も多い。ひくるむ つづりかた【綴り方】国語教育での「作文」の旧称で、会話 にも文章にも使われる古めかしい和語。〈ー教室〉への時 間〉への天才少女〉井伏鱒二の『悪戯』に「私はーに耽 っているかのように見せかけながら、森政保の教えてくれ た材料によって、鴨外に反駁文を書いた」とある。り作文 って【伝】人と人とのつながりの意で、会話や軽い文章に使 われる和語。へいいーがある〉へーを頼る〉へーを求める〉の 親戚などを連想させる「縁故」に比べ、もう少しつながりが 薄い感じがある。「手づる」ほど目的意識が露わでない。 り縁故・コネ・Q手づる つどい【集い】「集まり」の意で、主として文章に用いられる 優雅な感じの和語。〈若者の—〉〈名曲鑑賞の—〉〈励ます —〉の「会」や「集まり」なら、どんな目的で開かれ、どう いう服装で参加しても自由な感じだが、この「つどい」の場 合は何か楽しいことがありそうで、気軽に人が集まりそう な雰囲気があり、堅苦しい服装は似合わない。会合 つどう【集う】人間が目的を持って集まる意で、主に文章中 に用いる古風で優雅な感じの和語。〈若者のー祭典〉〈激励 のためにー〉谷崎潤一郎の『細雪』に「佳き人のよき衣つ けて寄りー都の嵯峨の花ざかりかな」という短歌が出る。 名詞形の「つどい」は「集まり」を優雅にした感じで好感度 が高い。Q集まる・集合・たかる・群がる・群れる つとめ【務め】社会的道德上あるいは立場上当然なすべきこ とをさして、会話にも文章にも使われる和語。〈最低限の親 のーだ〉〈学生のーを疎をかにする〉Q義務・責務・任務 つとめさき【勤め先】「勤務先」の意で、会話やさほど硬くな い文章に使われる和語。〈ーに電話を掛ける〉〈今度のーは <687> 自宅から通える 「勤務先」より日常会話で気楽に使う。 Q勤務先・仕事場・職場 つとめにん【勤め人】役所や企業に勤務している人の意で、 会話や硬くない文章に使われるやや古風な表現。へ風の 男〉〈朝はーで電車が込み合う〉幸田文の『おとうと』に 「朝はまだ早く、通学の学生とーが村から町へむけて出かけ て行く」とある。Q会社員・勤労者・サラリーマン・社員・従業 員・ビジネスマン・労働者 つとめる【努める】そのために努力する意で、やや改まった 会話や文章に用いられる和語。ヘサーピスにーヘ事故防止 にーヘ泣くまいとーヘ谷崎潤一郎の『細雪』に「雪子ち ゃんが献身的に看護にー・めたか」とある。「励む」という 意味合いでは「勉める」と書くこともあるが、少し古い感じ になる。Q勤める・務める とめる【務める】役目をこなす意で、やや改まった会話や 文章に使われる和語。〈委員を—〉〈主役を—〉②永井荷風 の『腕くらべ』に「宴会だの園遊会だのある折にはいつも接 待係を—」とある。Q勤める・努める つとめる【勤める】勤務する意で、くだけた会話から硬い文 章まで広く使われる基本的な和語。〈会社に—〉〈同じ学校 に定年まで—〉の小沼丹の『ギリシャの皿』に「学校を出る と中山は或る会社に—・めて」とある。仏道の修行をする意 にも使われる。専努める・務める な【綱】植物性繊維や針金などを長く縒より合わせたものを さし、会話にも文章にも使われる和語。〈ー引き〉へーを打 つの「縄」より強く、「紐」より太い。「ロープ」に比べ つぼ 植物性織維のものを連想させやすく「を張る」「を目 指す」のように、相撲で「横綱」の婉曲表現ともなる。 ひ縄・紐・Qロープ つながり【繋がり】二者が互いに結びついて関わり合う意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。両者 の間には深いーが見られる)〈何のーもない話〉(血のーは 争えない)彡縁①掛かり合い・Q関わり・係わり合い・関係①・関 連・連関 つねづね【常常】日常の日々においていつもの意で、いくぶ ん改まった会話や文章に用いられる、いくらか古風な感じ の和語。へ思っている〉へー心掛けていること〉長い間 継続してというニュアンスがある。いつも・通常・Q常日頃・ 日常・日常茶飯事・日頃・普段・平常・平生・平素 ねに常に「いつも」の意で、改まった会話や文章に用い られる、やや硬い感じの和語。〈一定の温度を保つ〉へー 努力を続ける〉〈ー笑顔を絶やさない〉Qいつも・始終・終 始・常時・しょっちゅう・絶えず・のべつ ねひごろ【常日頃】いつも変わらぬ日常の意で、会話にも 文章にも使われる、いくぶん古風な和語。へー気をつけてい るへーの身だしなみへひいつも・通常・常々・Q日常・日常茶飯 事・日頃・普段・平常・平生・平素 のる【募る】広く呼びかけて集める意で、主に文章中に用 いられる和語。〈会員を—〉〈希望者を—〉〈寄付金を—〉 「雨風が—」「恋しさが—」「不信感が—」のように、ますま す激しくなる意に使う場合も文章語的。専募集 つば【唾】口中に分泌される消化液の意で、日常の会話でも <688> 文章でもよく使われる和語。〈ーを飲み込む〉〈ーを吐く〉 〈手にーをつける〉長塚節の『土』に「薄い水のようなー」 とある。「唾液」ほど正式な感じではないが、「つばき」よ り標準的。ひ唾液・Qつばき つばき【唾】口にたまる唾液をさし、会話でも文章でも使わ れるやや古風な日常の和語。〈ーを飛ばす〉〈道端にーを吐 き散らす〉〈思わずーを飲み込む〉「つば」を意味する 「つ」と「吐く」との結合した動詞の連用形から転成し名詞 化したものという。小津安二郎監督の映画『晩春』(一九四 九年)のアヤ(月丘夢路)のせりふに「ーだらけ。それが紅茶 に這入るのよ、だから、まわりの人だあれも飲まないの」と いう箇所がある。日常会話で「つば」が普通になり、使用頻 度の減った今日から見ると、この語形は古い感じを受ける。 ひ唾液・Qつば つばさ【翼】鳥類の飛ぶための器官をさし、改まった会話や 文章に使われる和語。〈ーを広げる〉〈ーを休める〉前脚 の変化したもの。「飛行機の」という拡大用法には特に改 まった感じはなく、「ヨク」と音読みすれば専門的な響きに なる。専羽 つぶやく【咳く】相手に伝える気がないのに小声でことばを 口に出す意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。へ不 平をー〉〈小さな声でー〉〈何やらぶつぶつー〉の太宰治の 『富嶽百景』に「男は、しかし、身なりなんか気にしないほ うがいい、と小声でー・いて私をいたわってくれたのを、私 は忘れない」とあるように、独り言のような調子であれば 脇に相手のいる場面でも使う。乃独白・Q独り言 つぶる【瞑る】瞼を閉じる意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈目をー・って十数える〉〈目をー・って心を落ち着 ける〉の「つむる」より一般的。ひつむる つぼ【壺】①口が狭くつぼまって胴の部分の膨らんだ陶磁器 製またはガラス製の容器をさし、会話にも文章にも使われ る和語。〈茶ー〉〈骨ー〉〈ーに花を生ける〉一般に「か め」より小さな物が多い。「滝ー」のように、狭く深くくぼ んだ場所をさすこともある。②ものごとの中で特 に大事な部分をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈思 うー〉〈ーを心得る〉〈ーを押さえた処置〉幸田文の『お とうと』に「ちゃんとーをはずしていないから憎い」とあ る。専勘所・呼吸②・Qこつ・秘訣・要領 ぼにわ【坪庭】建物や垣根に囲まれた小規模な内庭をさし、 会話にも文章にも使われる古風な和語。〈ーの手入れ〉古 く宮廷の中庭を「壺」と呼んだところから。和風庭園を連 想させる。Q内庭・中庭 ぼまる【窄まる】「つぼむ」の意で、会話や硬くない文章に 使われる和語。〈日のー・った容器〉ひしぼむ・すぼまる・すぼ む・Qつぼむ つぼむ【窄む】全体または部分が狭く細くなる意で、会話や 硬くない文章に使われる和語。〈口のー・んだ花瓶〉②「す ぼむ」と違い、長い物の先のほうが細くなっているという意 味では使わない。なお、「蕾む」「蒼む」と書けぼ、つぼみ になる意。ひしぼむ・すぼまる・すぼむ・つぼまる つぼめる【窄める】開いていた物を狭くしたり閉じたりする 意で、会話にも文章にも使われる和語。〈口を—〉〈傘を—〉 <689> 川端康成の『伊豆の踊子』に「踊子はきゅっと肩をー・め ながら」とあり、「きゅっと」とあるように、「すぼめる」よ りもさらに狭くしぼる感じがある。马すぼめる ま【妻】夫から配偶者をさす和語で、現代では最も一般的な語。率直な呼び名で相手への配慮やはにかみなどの感情 的な色彩が感じられない。〈ーに迎える〉へが車で迎えに 来る〉へーの田舎の雑煮〉の木山捷平の『大陸の細道』に 「長い間の貧乏にやつれたーが、女のひとり旅、夫の遺骨を 首にぶら下げて汽車にのっている図なんか思っただけでも みじめで」とある。古くは男女を問わず用い、男をさす場 合は「夫」と書いた。ひいえの者・うちの者・お上さん・奥方・奥 様・奥さん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・Q女房・伴侶・ペター ハーフ・嫁・令闥・令室・令夫人・ワイフ ましい【倹(約)しい】生活に無駄な金をかけない意で、や や改まった会話や文章に使われる、やや古風な感じの和語。 〈生活〉(ー・く暮らす)衣食住の個々の物品についてで はなく生活ぶり全体をさす例が多い。賢素 つまずく【躓く】足先が障害物に突き当たって前のめりにな る意で、会話にも文章にも使われる和語。〈夜道でー〉 「人生にー」「大会の緒戦でー」「入試でー」などと、失敗や 挫折の意味合いで比喩的に使われることも多い。蹴躓 く・つんのめる・のめる まはじき【爪弾き】嫌って遠ざける意で、会話や軽い文章 に使われる少し俗っぽい感じの和語。ふんなでいじめて するふ(に遭う)親指を支えにして人差し指や中指で跳 ね飛ばす意からの比喻表現。単邪慳仲間外れ・Q除け者 まらない【詰まらない】関心や面白みがない意で、会話や 軽い文章に使われる和語。〈一映画〉〈話がー・くて、聞いて いるうちに眠くなる〉〈遊び相手がいなくてー〉「ーこと で喧嘩になる」のように、どうでもいい些細なの意でも 使う。「ーものですが、どうぞお納めください」のように、 謙遜して価値の低い意にも使うが、「一人間」「講義」な ど、興味が持てない点が中心で、必ずしも価値がないとい う評価とは直結せず、「下らない」と違う。ひくだらない・ば かくさい・ばかばかしい・ばからしい まり【詰まり】「言い換えれば」「結局のところは」という意味合いで、結果として行き着くところをさし、会話にも文章にも使われる和語。〈ーこういうことだ〉〈母の父ー私の祖父〉〈ー性格の不一致ってやつだ〉②芥川龍之介の『侏儒の言葉』に「まだ死よりも強いものは沢山あるのに相違ない。あらゆる情熱は死よりも強いものなのであろう」とある。「結局」と比べ、結末の部分に重点が集中。「すなわち」ほど格式ばらず日常会話でも使う。単なる換言ではなく、もっと簡単にわかりやすく言うという感じの言い換えに多く使う。り結局・すなわち・Q要するに み【罪】法律・道德・社会通念・宗教などのきまりに違反する 意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。〈一つくり〉へがない〉へが深い〉へー を犯す〉〈ーを償う〉〈ーを認める〉〈ーをかぶる〉〈一等 を減ずる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「手前のわるい事 は悪るかったと言って仕舞わないうちはーは消えないもん だ」とある。Q罪科・罪過・とが・犯罪 <690> つみこむ つみこむ【積み込む】貨物を運搬するために船やトラックな どに積み入れる意で、会話にも文章にも使われる日常の和 語。〈車のトランクに荷物を—〉、Q積載・積む・搭載 つむ【積む】次々に重ねて載せる、前の事を土台としてその 上に同じ行為を重ねる意で、会話でも文章でも幅広く使わ れる日常生活の和語。〈荷台に荷物を—〉〈煉瓦がんを—〉 〈新聞紙を高く—〉〈読み終えた本を何冊も—・んでおく〉 〈練習を—〉〈経験を—〉林房雄の『青年』に「家財道具を 山のように—・みのせた馬車と荷車の行列」とある。「重ね る」のように一定の形状でなくても使える。重ねる・積載・ 積み込む・搭載 つむじまがり【旋毛曲がり】性格が素直でなく、しばしば周囲と逆の言動をとるような意味合いで、主に会話や軽い文章に使われる和語。〈何しろーだから人の言うことに反対ばかりしている〉里見導の『極楽とんぼ』に「こう言うと、いかにもーのように聞えようけれど」とある。「臍曲がり」はおのずと周囲と違う変わった言動となり、「旋毛曲がり」はわざと相手の逆の言動をとるような連想が働く。 ひ変わり者・奇人・気難しい・Q臍曲がり・偏屈・変人 つむる【瞑る】「つぶる」意で会話にも文章にも使われる、い くぶん古風な和語。〈目をー・ってじっと考える〉きつぶる つめたい【冷たい】大気や物の温度が低く、それに触れたと きに冷ややかに感じられる場合に、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の和語。〈一飲み物〉水が ー〉〈手がー〉幸田文の『流れる』に「空気が胸の奥は こんなに深い道がついていると知らせて、ちりりとする」 とある。全身で感じる「寒い」に比べ、体の接触した部分に 受ける感覚で、不快に感じるだけでなくむしろ心地よく感 じる場合もある。寒い・涼しい・Q冷ややか つもり【積もり/心算】こうしようと心の中で思うことをさ し、会話にも文章にも使われる和語。〈参加するだ〉へい ったいどういうだ〉へそんなーではなかった〉夏目漱石 の『坊っちゃん』に「君はいつ迄こんな宿屋に居るーでもあ るまい」とある。「海外旅行をしたーで貯金に回す」のよう に、実際には起こらないことを頭の中だけで考えてその気 になる意にも使う。「ーが外れる」のような用法以外、多く は連体修飾語を受けて使う。Q意向・意図・魂胆 つや【艶】なめらかな表面に浮かび出るやわらかな反射光を さし、会話でも文章でも幅広く使われる日常的な和語。〈色 がいい〉〈肌にーがある〉〈髪のー〉大江健三郎の『芽 むしり仔撃ち』に「粗土の壁は柔い金色のーのある光を照 りかえしていた」とある。艶のあるものとしてよく連想さ れるのは肌・果実・顔色・髪の毛・木製家具・廊下など。「ーっ ぽい女」「声にーのある粋な男」「年齢を重ねるにつれて芸 にーの出る役者」「人間として円熟し、人柄にーを加える人 物」というふうに比喻的な用法も多い。Q光沢・照り つやっぽい【艶っぽい】主に女の表情やしぐさに色気が感じ られる意で、会話や軽い文章に使われる古風な和語。へー 話〉へからかった客を目でにらむ》夏目漱石のここ ろ』に「そういう問題になると、正直に自分を開放するだ けの勇気がない」とある。ひあだっぽい・婀娜な・Q色っぽい・ なまめかしい・妖艶 <691> ゆ【梅雨】陰暦五月ごろの雨の多い季節や、その頃の雨を さし、会話にも文章にも使われる和語。〈入り〉〈が明 ける〉〈の季節〉円地文子の『妖』に「時のしんめり 冷やかな午後」という創作的擬態語が出る。入梅・Q梅雨 ゆときえる【露と消える】「死ぬ」意の古風で和風の美的間 接表現。〈断頭台の—〉死を忌む気持ちから、それと明言 せずにほのめかす婉曲表現。「露」は「はかなさ」の象 徴。勇敢え無くなるとがる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶 える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・ 落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・死ぬ・死 亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・天に召される・亡くなる・儚く なる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷 る・脈が上がる・空しくなる・Q藻屑となる・逝く・臨死・臨終 つよい【強い】物理的・精神的・感覚的に圧力・腕力・能力・実 力・程度・衝撃などが大である意で、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「力が」 「気が」〈意志が」〈風が」〈日ざしが」〈寒さに」 「度の眼鏡」〈においが」〈酒が」〈酒〉〈口調〉 「!く引く」夏目漱石の「坊っちゃん」に「おれより脊が 高くて強そうなのが居る。あんな奴を教えるのかと思った ら何だか気味が悪るくなった」とある。「弱い」と対立。 頑強・Q強力 つよき【強気】気が強く積極的に立ち向かう意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈な性格〉への発言〉へで臨 む〉へに転じる〉と雄々しい・鼻っぱし・Q向こう意気 つら【面】「顔」の意でくだけた会話などに使うぞんざいな和 つらねく 語。相手をののしるときなどによく使う。〈しかめっー〉 〈相手のーを見返す〉〈大きなーをしやがって〉〈どのー下 げて〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「ーでも洗って議論に 来いと云ってやったが、誰もーを洗いに行かない」とある。 ひQ顔・顔ばせ・かんばせ・顔面 つらい【辛い】肉体的・精神的にきつく、我慢するのが難しい 状態をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の 和語。〈立っているのがー〉〈仕事がきつくて体がー〉〈朝 がー〉〈別れがー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「下宿に 居て芋許り食って黄色くなって居ろなんて、教育者はーも のだ」とある。体全体に関する苦痛で、「胃がー」というふ うに身体部位を限定しては用いない。また、肉体的な苦痛 が原因であっても、直接にはそれに伴って生ずる精神的な 苦しみを表現した感じが強く、「間に立ってー立場にある」 「そう言われるとー」「見ているだけでもー」のようにもっ ぱら精神的な苦痛の場合にもよく使う。ひ苦しい・しんどい つらなる【連(列)なる】重なって続く、加わる意で、改まっ た会話や文章に用いられる和語。〈山々がー〉〈会合にー 面々〉並ぶ・列する つらぬく【貫く】最初の考えなどを最後まで持ち続ける意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈主張を—〉〈最後まで信 念を—〉〈一定の方針を—〉平林たい子の『施療室にて』 に「要求は、昔から貧乏人の伝統の中を針金のように—い て来た」とある。「貫く」「貫徹」は最初から最後までとい う時間的な連続性に重点があり、「徹する」「徹底」はその ことだけという不変性に重点がある。貫徹・Q徹する・徹底 <692> つらねる つらねる【連(列)ねる】一列に長く並べる意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈家々が軒を—〉〈車をーねて出発する〉〈名簿に名を—〉ひQ並べる排列 つりあい【釣り合い】両方がよく調和し、大きさ・重さ・色合い・力などの割合がうまく行っている意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。くよくーがとれている〈上下のーがとれない服装〉り均衡・Qバランス・平衡つる【吊る】一方を固定して上から下げる意で、会話でも文章でも広く使われる和語。〈天井からシャンデリアを—〉〈相手力士を高々と—〉〈棚を—〉〈首を—〉〈橋を—〉の「吊る」が対象物を一定の位置に保つ点に中心があるのに対して、この語は対象を上に引っ張る物理的作用に重点をおいた表現。したがって、対象物の下端が空中にあるかれ上または床面に接触しているかは重要でない。り釣る・吊すつる【釣る】ひっかけて引き寄せる意で、会話でも文章でも広く使われる日常の和語。〈魚を—〉〈とんぽを—〉〈餌でー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「鮪の二匹や三匹ー・ったって、ぴくともするもんか」とある。「広告で客を—」のように、誘い込む意に使う比喻的な用法の場合は、いくらか俗っぽい響きがある。ひ吊る つる【弦】弓に張り渡す糸などをさし、会話でも文章でも使 われる和語。〈弓にーをかける〉〈矢がーを離れる〉の「パ イオリンのー」の場合には「絃」と書くこともあり、古風な 趣を感じさせる。土瓶や鍋の取っ手を意味する場合には 「鉢」とも書き、これも古めかしく見える。み蔓 つる【蔓】植物の茎やそれに似た形状のものをさし、会話で も文章でも使われる。〈朝顔の—〉〈眼鏡の—〉〈金—〉図 本かの子の『母子叙情』に「こんな腐った髪の毛のような— からも、やっぱり春になると、ちゃんと芽を出すのね」とあ る。植物以外の場合は仮名書きされる傾向がある。鳥弦 「るぎ【剣】片刃の太刀に対して諸刃の大刀をさし、主 に文章に用いられる古めかしい和語。〈ーを帯びる〉〈ーを 抜く〉〈ーを植える〉ひQ刀・剣・刀剣 るし【吊し】「既製服」の意で、くだけた会話に使われる古 風で俗っぽい和語。へーの背広上下〉ですでに出来上がって 店に吊すところから。ひ既製・Q出来合い・レディーメード つるす【吊す】吊ってぷら下げる意で、会話でも文章でも広く使われる日常生活の和語。〈垂れ幕を—〉〈照る照る坊主を—〉〈軒下に干し柿を—〉〈首からプローチを—〉〈天井からシャンデリアを—〉長塚節の『土』に「太い縄でぐっとー・されたかと思うように後へ反りかえって」とある。上から支える「吊る」と違って、吊られた対象物が適切な位置に保たれるところに重点があり、その下端は床やテーブルなどに載らず原則として空中にある。小沼丹の『炉を塞ぐ』に「小さな書斎を建て増したとき、一隅にささやかな炉を切って自在鍵をー・した」とある。利用する自在鍵の位置に意識の重点があるのだろう。 つれあい【連れ合い】夫婦関係にある男女の一方から見た相 手をさし、会話にも文章にも使われる古風な和語。へに先 立たれる〉〈お互いにーが達者で何よりだ〉②古い感じにな って次第にあまり使われなくなってきていたが、「主人」 「亭主」などという上位者を意識する語の使用を敬遠する傾 <693> 向が高まり、近年それに代わるものとしてこの語がまた使 われだした感がある。乃配偶者 てあう つれない【情無い】接し方が思いやりに欠けて冷淡な意で、 会話にも文章にも使われる、やや古風な和語。〈ー仕打ち〉 〈ー・くされる〉〈ーそぷりを見せる〉の「そっけない」「す げない」よりさらに冷淡な感じが強い。Qすげない・そっけ ない・無愛想・ぶっきらぼう つんのめる前にのめる意を強め、主にくだけた会話で使わ れる和語。〈後ろから押されてー〉現代は単なる「のめ る」の使用が減り、「のめる」の会話的な表現として一般に 使われるが、この語のほうがのめり方に勢いが感じられる。 込蹴躓けっく・躓く・Qのめる 「んぼ【聾】耳の聞こえない人を伝統的にさしてきた語。差 別意識が指摘されて、今では使用を控えている。「聾」と いう漢字を音読みした「ロウ」という音で間接的にさす場 合もある。音読みすることで語感を薄め、意味との直接の つながりをぼかして、一種の記号のような働きに変換する 試み。「耳の不自由な人」とやわらげた表現も見られる。な お、舞台から遠すぎて役者の台詞がよく聞こえない客席を 意味する「一桟敷」という語も「聾」を連想させるため語義 とは無関係に使用を控えている。 て【手】人体の肩から先の部分、または、手首から先の部分 をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基 本的な和語。へーを振って歩く)へーにーを取る)埤田譲 治の『正太の馬』に「ーは肘まで赤くなって風の中に出てい た」とある。お手手 てあい【手合い】ある種の人々の意で、くだけた会話や軽い 文章に使われる古風な和語。へあのーときたら遠慮も何も ないからなへあのーを相手にするのは苦手だ⑨何人かの 集団を連想させる「連中」に比べ、同種の人間の中のある一 人を意識する例が多い。囲碁や将棋の対局を意味する用法 もあり、その場合は専門語的。りやから・Qれんじゅう・れんち ゅう であう【出合う】両者が一緒になる、対象に接するの意味で、 会話でも文章でも使われる和語。二つの川がこの先でー へ珍しい光景にー〉〈雄大な景色にー〉夏目漱石の『坊っち ゃん』に「大事件にもー・わないのに」とある。「奇妙な出来 事にー」の場合、偶然性を強調して「出遇う」と書いたり、 好ましくない対象であることを表すために「出遭う」と書 いたりするケースもある。また、「曲者だ、ー・え、ー・え」 のような、出て立ち向かう意の用法はきわめて古く、時代 物めく。出会う であう【出会う】人と人とが偶然会う意で、やや改まった会 <694> てあて 話や文章に用いられる和語。〈街でばったり知人に—〉夏目漱石の『草枕』に「旅中に一人間」とある。「思いがけない所で初恋の人に—」のような場合に、特別の思いを込めて「出逢う」と書くこともあり、いくぶん美化された感じになる。相手が人間でなくても、「思い出の品に—」「すばらしい本に—」のように心を動かされる対象を擬人化してこの表記をあえて用いるケースもある。合う・出合う てあて【手当て】病気などの適切な処置の意で、くだけた会 話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。ぺ応急 ー〉〈怪我のー〉〈すぐにーを受ける〉♡井伏鱒二の『本日 休診』に「自分でーをしたらいいでしょう」とある。「人員 のー」「金銭のー」のように必要な用意の意や、「残業ー」 「家族ー」のように本給以外の賃金の意をさすなど、きわめ て広い意味で使われる。ぴ加療・診療・施療・治療・療治 てあらい「手洗い」「便所」の意で今でも用いる間接表現の日 常の和語。「お手洗い」という形で使う例が多い。「に立 つ」近代的な便所では、手水鉢とは違って、手を洗うため の流しも同じ部屋の一角に位置することが多く、主たる目 的の行為を言語化せず、それに付随する行為である「手洗 い」ということばで便所全体をさりげなくさすのに好都合 であった。おトイレ・圓や・閑所・化粧室・御不浄・雪隠・洗面所・ WC・手水場・トイレ・トイレット・はばかり・Q便所・レストルーム ティーム「チーム」の意の新しい感じの外来語。「の一員 「パッティングに徹する」②NHKのアナウンサーなどを 中心に近年見られるようになった語形。英語の原音に近い が、「ゴロ」を「グラウンダー」とは言わず、日常会話で用 いるとまだ気取った感じを与えやすい。チーム いえん【庭園】大規模で立派な庭をさし、やや改まった会 話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈屋上〉へ 灯〉〈小高い築山 たものに限られ、「庭」と違って単なる空き地は含まれな い。それも、「回遊式」というようにある程度スケールの 大きな庭に限定され、「日本」とわざわざ断るように、 「庭」に比べ西洋式の庭を連想させやすい。小沼丹の『外来 者』に「広い芝生の庭」「庭を一周してテエブルに着く」な ど「庭」と記された場所も正式名称は「大隈」となるよう に、漢語の格式からこの語は「庭」よりも正式な雰囲気を濃 わせる。広庭 ていおう【帝王】「皇帝」の意で、やや改まった会話や文章に 用いられる、やや硬い感じの漢語。〈—学を修める〉〈無冠 の—〉「暗黒街の—」「闇の—」のように、その分野での 絶対権力者を意味する俗っぽい用法もある。ひ王・王様・君主・ Q皇帝・国王・大王・天子・天皇・帝 ていか【定価】商品についている売値の意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈1一万円の品〉〈1をつける〉〈1を 崩す〉正価 ていかかく【低価格】価格、すなわち、物の価値を金額で表 示した数値が低い意で、経済などの専門的な話題の会話や 文章に用いられる正式な感じの漢語。へーで購入する〉へー の取引に終始する〉の「高価格」と対立。Q安価・安い・廉価 ていきゅう【低級】程度が低く俗悪な意で、会話にも文章に も使われる軽い漢語。〈趣味がーだ〉へーで見るに堪えな <695> い永井龍男の『朝霧』に「な茶番を演ずる必要はな い」とある。「低劣」に比べると、評価が低いだけで、軽蔑・ 非難の感じは薄い。最低俗・Q低劣・低い ていきゅう【庭球】「テニス」の古風な呼称。「排球」や「籠球」に比べればまだいくらか使われる。〈軟式」ではパックハンドでもラケットの同じ面を使う〉②「ご趣味は?」と問われてこの語を用いて答えると「趣味が低級」という響きがあり、颯爽としたテニスウェア姿にマッチしないかもしれない。リテニス テイクアウトレストランなどで食べ残したものを持ち帰る 場合のほか、近年、ファストフードの店などの外食店で売る ようになった持ち帰り用の料理をさしてよく使われるよう になった外来語。へーを買って夕飯を済ませる)〈懇親会で ーをとる)今のところまだ、おにぎりや塩辛などに使う とイメージが合わない感じが残る。「テークアウト」とも書 く。専持ち帰り ていけい【梯形】「台形」の旧称。梯子を連想しての命 名。Q台形・方形 ていげん【低減】数量・程度・価格などが減少する意で、主に 文章中に用いられる硬い漢語。取り扱い件数の—〉〈料金 が—する〉〈負担を—する〉〈労働量の—を図る〉軽減・削 減・節減・Q逓減 ていげん【提言】意見を発表しその実行を求める意で、改ま った会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーを行う〉政府 に対するー〉へーを受け入れる〉へーを採択する〉会議の 席上などで大きな問題に対して建設的な意見を述べるイメ ていさい ージが強く、日常生活上の話題で用いると大仰に響く。 い張る・強調・Q主張・力説 ていげん【逓減】時を追うごとに次第に減る意で、主に文章 中に用いられる硬い漢語。〈人口のーをくいとめる〉〈収穫 がこのところーの傾向にある〉軽減・削減・節減・Q低減 ていこう【抵抗】自然な流れや外部からの圧力に従わず、逆 に押し返そうとする動きをさし、会話にも文章にも使われ る漢語。〈空気ー〉〈ー運動〉〈ーの姿勢を崩さない〉〈無駄 なーはよせ〉安部公房の『砂の女』に「ーは空しいと知り ながらも、彼は砂をかき続けた」とある。「反発」はもちろ ん「反抗」に比べても攻撃性は弱く、「急激に起こったアク セントの平板化にはーがある」「そういう極端な意見は気 持ちのーがあって簡単には賛成できない」のように、不自然 で受け入れがたいという意味合いでも使う。鳥敵対・反抗・Q 反発 ていこく【定刻】予定の時刻をさし、改まった会話や文章に 用いられる硬い感じの漢語。へーどおり出発する〉へーを十 五分も過ぎてようやく開会する〉及定時 ていこく【帝国】皇帝が統治する国をさす漢語。〈ー議会〉 「ー主義」という語があり、それが侵略に加担してきたという歴史が連想されるため、平和な感じの「王国」とは違い、 侵略戦争のイメージがつきまとっている。乃王国 ていさい【体裁】他人から見られたときのようすの意で、会 話にも文章にも使われる漢語。へーがいいへーを整える へーよく断る)谷崎潤一郎の『細雪』に「そうでなくて済 めばその方がーがよく、それに越したことはない」とある。 <696> ていし 「よく並べる」のように、物の見た目にも使う。ひ外聞・Q 世間体・体面 ていし【停止】途中で止まる意でやや改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈一時〉へー線〉へただちにーする〉〈運 転をーする〉のもっぱら現象をさす「ストップ」に比べ、 「発行」「販売」のように強制的に差し止める場合にも 使う。Qストップ・静止・止まる ていじ【呈示】具体物を差し出して見せる意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈身分証明書を—する〉〈運転 免許証のーを求める〉刂提示 ていじ【提示】問題となる物事を取り上げて示す意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈資料を—する〉 〈証拠を—する〉〈新しい見解を—〉呈示 ていじ【定時】一定の時刻や時期の意で、改まった会話や文 章に用いられる、やや専門的な感じの硬い漢語。〜に発車 する〜〜に退社する〜〜〜〜〜〜〜〜 ていしゃ【停車】電車や自動車などが走行を一時的に停止し、 短時間その場にとどまる意で、会話にも文章にも使われる 漢語。〈臨時〉〈急行列車の—駅〉〈—中の車〉〈門の前に —する〉の「駐車」と違い、自動車に限らず使う。駐車 ていしゃば【停車場】「駅」の昔の呼び方。「の真向かいに 百貨店が店開きした》夏目漱石の「坊ちゃん」に「車を 並べて—へ着いて」とある。Q駅・ステーション ていしゅ【亭主】一家の主の意で、妻から見た夫をもさし、 会話にも文章にも使われる古めかしい漢語。〈「関白〉 を尻に敷く〈髪結いの—〉室生犀星の『杏っ子』に「 という兵営」とある。「主人」同様、上位者のニュアンスが あり、また、いかにも古い感じもして、今ではめったに使わ れない。「茶店の—」「宿屋の—」のように店主を意味する 用法もある。ひあるじ・うちの人・夫・主人②・Q旦那・ハズ・宿六 ていしゅく【貞淑】操が堅くしとやかなさまをさす古風な漢 語。〈一な妻〉②芥川龍之介の『侏儒の言葉』に「白蓮女 史ほど美人ではない。しかし白蓮女史よりーである」とあ る。操を立てることを女性に要求してきたかつての社会通 念の関係で、時代の変わった現在でも女性専用の語である が、あまり使用されなくなった。Q清楚・楚々 でいすい【泥醉】深醉いしてぐでんぐでんになる意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈前後の見境るつか ないほどーする〉も沈没②・Q酩酊・酔い痴れる・酔い潰れる・酔 う・酔っ払う でいすいしゃ【泥酔者】酒に酔って正体をなくした人をさし、 主に文章に用いられる漢語。へーを介抱する〉の「酔っ払い」 よりさらに酔った感じがある。井伏鱒二は『場面の効果』 で、本物のビールを飲んだエキストラの男は「立ち上がって セットを出たが、すでにに変化してしまっていた」と書い ている。ひ酒酔い・酔客・Q酔っ払い ディスカッション「討論」の意で、会話やさほど硬くない文 章に使われる外来語。へに参加する〉へ一方的に決めるの ではなく大いにしてほしい」「クラスでーする」のよう に、「討議」より軽い感じで使われることも少なくない。 議論・Q討議・討論・論議 <697> ていせい【訂正】談話や文章の表現や文字などを正しく改め る意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な漢語。「版が出る」〈記述の誤りを—する〉 〈発言中の不適切な箇所を—する〉Q改正・改定・改訂・是正・ 批正・補正 ていせっ【定説】正しいとして一般に認められている考え方 をさし、やや改まった会話や文章に用いられている漢語。 「となっている〉〈ーに従う〉〈ーを覆す〉「通説」より 学術的な雰囲気が濃く、それだけに書き換えられることも 起こりやすい。刂通説 ていせん【停戦】双方の合意により戦闘を一時的に中断する 意で、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。へー 区域〉へー協定に調印する〉②区域を限定して実施すること も多く、その間に降伏・撤退などの交渉を行う。専休戦 ていそ【提訴】裁判所などに訴訟を提起する意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い専門的な漢語。〈裁判所に する〉〈に踏み切る〉堀田善衛の『広場の孤独』に「中 労委へーすることに定めて」とある。訴える・Q告訴・訴訟 ていそう【貞操】性的な純潔を守る意で、会話にも文章にも 使われる古風な漢語。〈が堅い〉〈を守る〉〈を売る〉 徳永直の『太陽のない街』に「重大なーを(略)まるで、使 い古したハンカチでも棄てるように無雑作に扱う」とある。 「一観念が薄い」などと、伝統的に女性について多く用いら れた。単節操・Q操 ていぞく【低俗】好みや趣味などが低級でやぼったい意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈なテレビ番組 ティッシュ 〈道楽が—きわまる〉〈—なメロドラマ〉〈—な趣味〉下 品·下劣·俗悪·Q通俗·低級·低劣·卑俗·野卑 ていたい【停滞】物事が滞ってはかばかしく先に進まない意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈前線が する〉〈景気のーが長びく〉〈作業がーする〉の「停顿」に比 べ、超スローペースであれ断続的であれ少しは進む感じが 強く、事情が好転すればまたスムーズに進行しそうな雰囲 気もある。ひ停顿 ていたく【邸宅】立派な門構えの大きな家屋敷の意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈大ーを構える〉伊藤 整の『氾濫』に「大きな鳥が羽根をひろげて伏したようなイ ギリス風のー」とある。ひいえ・うち・家屋・居宅・住居・住宅・住 まい・屋敷 ていたらく【体たらく】とても褒められたものではないひどい状態をさし、主としてくだけた会話に使われる、いくぶん古風な俗っぽい表現。〈さんざんなー〉〈大きな口を叩たいておきながら、何たるーだ〉非難・軽蔑のこもった感情的な言い方。「為体」と書くこともある。りありさま・Qさま ていちょう丁(鄭)重】礼儀正しく心がこもっている意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。「な御挨拶痛み入 ります〉へな扱いを受けて恐縮する〉へなもてなし〉 へに葬る)礼儀に適かっていてそのない感じの「丁寧」 に比べ、仮に若干行き届かない点があったとしても、それを 補って余りある心遣いが感じられる場合に用いる傾向があ る。丁寧② テイッシュ 薄くてやわらかい上質の洋風の塵紙をさし、 <698> ていど 会話にも文章にも使われる外来語。へーで口をぬぐう 「ティッシュ」の原義は薄絹などの織物。本の口絵写真など の表面を保護するために挟んだり、美術品の包装に用いた りする「ティッシュペーパー」の略。近年は「塵紙」という 語の代わりによく使うが、箱入りの連想が強い。最近は 「ティシュー」という語形も耳にする。Qちりがみ・ちりし 鼻紙 ていど【程度】ものの大小・長短・軽重・優劣・美醜・価値などの 割合をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な漢語。〈一の問題〉〈一が軽い〉〈一を心 得る〉〈強いといってもこの一だ〉夏目漱石の「坊っちゃ ん」に「丁度歯どめがなくっちゃ自転車へ乗れないのと同 ですからね」とある。単位②・段階・Q度合い・ばかり・程② ていとう【抵当】金銭を借り入れる際に、借り手が万一返済 できない場合には、貸し手が損害を埋めるためにそれを自 由に処分してよいという約束の下に差し出す借り手の財 産や権利をさし、会話にも文章にも使われる、やや専門的 な漢語。〈一流れの物件〉〈権の抹消〉〈家を—に入れる〉 刂担保 ていとん【停頓】物事が行き詰まって進展しない意で、改ま った会話や文章に用いられる、やや古風で硬い漢語。〈交渉 がーする〉〈事業がーする〉「停滯」に比べ、全く進まな くなる感じが強く、その先どうなるかについては言及して いないため、見通しが立たない雰囲気もある。専停滞・頓挫 ディナー晩餐の意で、近年、ふつうに使われるようにな った外来語。〈ーにおよばれする〉近年、レストランなど でよく使う。♡晩御飯・Q晩餐・晩飯・夕御飯・夕食・夕はん・タめし ていねい【丁寧(叮嚀)】①粗雑なところがないように細かい ところまで神経を遣う意で、くだけた会話から硬い文章ま で幅広く使われる漢語。〈な造り〉〈に説明する〉〈一 に扱う〉〈一字一字に書く〉志賀直哉の『好人物の夫 婦』に「菓子折からに卵を一つ一つ菓函へ移して居た」と ある。見落としや不具合の生じないようにと気を配り、遺 漏のないように行う点に表現の中心がある。②の丁重さを 意味する表現もその延長線上にあり、失礼な点のないよう に細部まで気を配ることである。丹念・Q入念・念入り ②扱いが手厚く礼儀正しい意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。「な言葉遣 い〈な応対〉〈に挨拶する〉の「丁重」と比べればいく らか形式的な感じもある。丁重 でいねい【泥濘】「ぬかるみ」の意で、主として硬い文章に用 いられる、やや古風な語。へーと化す)福永武彦の『風花』 に「ーの道に薄氷が張った」とある。ゆぬかるみ ていねん【定年】企業や官公庁などで勤務できる年齢を制限 して退職・退官を義務づけてある一定の年齢をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈退職〉〈間近の社員〉〈間 もなくになる〉〈後しばらく嘱託の身分で勤める〉古 くは「停年」と書いたが、戦後は強制的に停止させるという 連想を回避するため、決まりだから仕方がないと思わせる 「定年」という穏やかな用語を採用している。退職 ていねん【諦念】物事の道理を悟って諦める心をさし、主と して文章に用いられる硬い漢語。へーを抱くへーの境地に <699> 達する安岡章太郎の『朝の散歩』に「なつかしいという 情緒の底には、一ないしは断念がある」とあり、山田風太郎 の『あと千回の晩飯』に「死はーをもって受け入れても」と ある。Qあきらめ・あきらめる・断念 ディパックちょっとした外出や通学などに使う小ぶりのリ ュックサックをさし、会話にも文章にも使われる比較的新し い外来語。〈ーを背にした軽快な姿〉Qナップザック・背裏 のランドセル・リュックサック ていぼう【堤防】「堤」の意で、会話にも文章にも使われる硬 い漢語。〈ーを築く〉〈ーが決壊する〉の「堤」や「土手」に 比べて露骨で実用的な感じが強い。単堤・Q土手 ていぼく【低木】通常、人間の背丈より低い樹木の総称とし て「灌木」にあたる現在の呼称である漢語。〈落葉—〉 「高木」と対立。ひ灌木 ていめん【底面】立体の底の面をさし、学術的な会話や文章 に用いられる専門的な漢語。〈円錐えの—〉への面積を求 めよ単底 ていり【定理】公理から論理的に導かれ、真であることが証明されている一般的命題をさし、学術的な話題の会話や文章に用いられる専門的漢語。〈ピタゴラスの—〉専公理・法則でいり【出入り】出たり入ったりする意で、会話にも文章にも使われる和語。〈人の—が激しい〉〈—の業者〉〈—差し止め〉「ではいり」より正式な感じで、抽象的な意味にも使われ、やや古風な感じがある。林芙美子の『めし』に「潮の満干のように、時々待合室の—が、激しくなる」とあるが、「出いり」とも「出はいり」とも解せる例。ひではいり テーブル ているい【涕涙】「涙」の意で硬い文章に用いられる古めかし い漢語。〈一頬を下る〉夏目漱石の『倫敦塔』に「号泣、 其他凡て自然の許す限りの排悶的手段を尽した後」とあ る。刂涙 ていれつ【低劣】品性が劣り程度が低い意で、主に文章中に 用いられる硬い漢語。〈趣味がだ〉〈内容・表現ともに— で読むに堪えない〉小林秀雄の『モオツァルト』に「ネオ ンサインとジャズとで充満し、な流行小歌は、電波の様に 夜空を走り」とある。少下劣・俗悪・通俗・低級・Q低俗・低い・卑 俗・野卑 デーゲーム昼間に行うプロ野球などの試合をさす、比較的 新しい外来語。〈休日にーを組む〉「ナイトゲーム」と対 立。 データ判断や推論の根拠となる事実や情報をさし、会話に も文章にも使われる、やや専門的な外来語。〈ーペース〉 〈ー収集〉〈ーを改竄がする〉〈豊富なーを使って説明する〉 〈貴重なーが得られる〉「資料」という物的な存在よりも、 そこから得られる情報という手で触れることのできない抽 象的な存在をさす傾向が強い。貴料 デート別々に住んでいる男女が日時や場所を打ち合わせて 会い、しばらく一緒に時を過ごす意で、会話や軽い文章に 使われる外来語。〈あしたは—の約束がある〉へーを申し込 む〉へーを重ねる〉の「あいびき」「忍び会い」よりも人目を 忍ぶ感じが薄い。り逢引・逢瀬・忍び会い・密会・ランデブー テーブル「食卓」をさす外来語。現代では最もよく使われる 一般的な語。〈ーマナー〉へークロス〉へーにつく〉へーの上 <700> テーブルスピー を拭く大岡昇平の『武蔵野夫人』に「暗いロビイには 大衆食堂のような安っぽいと椅子が並んでいるだけであ った」とある。脚の長い洋風の食卓を連想しやすく、応接 間でソファなどの前に置く比較的低いものもさすが、純和 風の食卓とはイメージが合わない。Q食卓・ちゃぶ台・飯台 テーブルスピーチパーティーなどの際に自分の席で行う短 い挨拶のことばをさす和製英語。〈ーで会場を沸かせる〉 最近は演説の意を含まない「テーブルトーク」という英語が 使われることもあるが、まだ日本語としてなじんでいない。 ひ演説・Qスピーチ・弁論 テーブルテニス「卓球」の意の外来語。ヘスボーツはを 少々いまだ外来語として普及していないため、こなれな い英語を交ぜたような気障な感じがぬぐえない。弔卓球・Q ピンポン テーマ文章・講演芸術作品などの中心思想をさし、会話に も文章にも使われるドイツ語からの外来語。〜ソング 〈研究〜〉〜を明らかにする)②小林秀雄の『モオツァル ト』に「大阪の道頓堀をうろついていた時、突然、このト短 調シンフォニイの有名なーが頭の中で鳴ったのである」と ある。専主題 テーマソング「主題歌」を意味する和製洋語。〈番組のー〉 のドイツ語の「テーマ」と英語の「ソング」を組み合わせた 奇妙な語形。 ておち『手落ち』「手ぬかり」の意で会話からさほど改まらない文章まで使われる日常語。〈当方のー〉くれぐれものないように〉の「片手落ち」より無難か。ひ片手落ち でか刑事巡査をさし、くだけた会話に使われる俗語。へやば い、ーが張り込んでいる)幸田文の『おとうと』に「なん でもないや、あんなやつ。あれーさ」とある。明治時代に 刑事が着ていた「角袖」を逆にした「そでかく」の略とい う。しばしば片仮名書きする。刂刑事 でかい「大きい」の意で、くだけた会話に使われる俗っぽい 和語。〈図体がー〉〈ー望み〉〈態度がー〉Q大きい・でっか い しかず【手数】一つの事を成し遂げるまでに費やす行為・動作 の数の意で、会話にも文章にも使われるやや古風な和語。 〈途中でーを省く〉へーが少なくて済む〉このたびはおー をおかけしました最近年は「てすう」と言う例が多い。 Qてすう・手間 でかせぎ【出稼ぎ】よその土地に働きに出かける人をさし、 会話や改まらない文章で用いる、やや古い感じの和語。謙 遜して言う場合もある。〈|労働者〉〈農閑期に—に行く〉 専季節労働者 てがたい【手堅い】確かで危なげのない意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈ー商売〉〈ー作戦〉〈ーくパントで送 る)図冒険をしない点に中心がある。刂堅実・Q地道・着実 てがみ【手紙】用件を書いて相手に送る文書をさし、くだけ た会話から改まった文章まで幅広く使われる、最も一般的 な日常語。〈ーを書く〉へーを出す〉へーを投函する〉へお ーありがとう)井伏鱒二の『珍品堂主人』に「先日、丸九 さんからのーを見て、一年後には伊万里なるものが実質的 な相場になると予想して、前祝に飲みすぎて腹を毀したの <701> です」とある。書簡・Q便り てがら【手柄】勝ち取っためざましい成果をさし、会話や硬 くない文章に使われる、いくぶん古風な日常の和語。へー 話〉へそいつはおーだ〉へ戦でーを立てる〉へーを見せびら かす〉へーを独占する〉へーを横取りする〉客観的な感じ の「功績」「功労」に比べ、評価や賞讃が表に出た感じがあ る。巻績・功績・Q功労・殊勲 てき【的】そのような性質・状態・傾向があるの意を添えるの に、会話でも文章でも幅広く使われる造語要素。〈経済—に 苦しい〉〈自動—に処理する〉〈病—なこだわりよう〉從 来は「美—」「知—」「精神—」「科学—」のように、もっぱ らそのような状態・性質・傾向などがあることを表してきた が、近年、「おれ—に」「わたし—には」「学校—にも」のよ うに単なる名詞や代名詞に後接させる俗な用法が増えてき ている。単傾向・ぽい でき【出来】できあがった状態の良し悪しをさし、会話やさ ほど硬くない文章に使われる日常の和語。へのいい弟子 への悪い作品〉〈作物のーが心配〉永井荷風の『腕くら べ』に「演芸会は結構なーでしたな」とある。ひできばえ できあい【出来合い】「既製」の意で、会話やさほど改まらな い文章に使われる、いくらか古風な和語。への背広〉へ で間に合わせる〉ひ既製・吊レ・レディーメード てきい【敵意】相手を敵としてそれに刃向かう気持ちをさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈心に—がきざす〉〈露骨 にーを示す〉〈嫉妬がいつしかーに変わる〉野間宏の「暗 い絵」に「あらわなーをまるで心が滝に打たれたかのよう てきかく に感じていた」とある。「敵愾がい心」ほど激しく外に向かって行かない段階を連想させる。増悪・Q敵愾心・憎しみ・反感てきおう【適応】その場面・環境・条件などに適合する意で、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。「不全〈性を欠く〉〈事態の変化にすぐーする〉変化についていけるか否かというより、それに合うか合わないかを問題にする意味合いが強い。噂応 てきがいしん【敵愾心】相手を自分の敵と見なし、戦ってそ れを倒したいと思う気持ちをさし、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈ーを抱く〉〈ーを燃やす〉有島武 郎の『或る女』に「激しいーが急に燃えあがっていた」とあ る。「憎悪」などと異なり、相手が圧倒的な上位者ではなく 自分と対抗する存在と見なすときに生じる感情。卩憎悪・Q 敵意・憎しみ・反感 てきかく【的確】核心をとらえ状況などにぴったり合ってい て確かな意で、会話でも文章でも使われる漢語。へーな判 断〉へーに処理する〉Q適確・適格 てきかく【適確】適切で確実な意で用いられることのある俗 っぽい漢語。〈な処置〉〈に対応する〉小林秀雄の 志賀直哉論』に「正確な観察の為に、作家が自分のうちに 住んでいる詩人を犠牲にした事が、その表現をどれだけ なものにしたろうか」とある。「的確」のうち適切な点を明 瞭に示す意図で特に用いられるようになった比較的新しい 表記。どちらの表記でも「てっかく」と読めば俗な感じにな る。Q的確・適格 てきかく【適格】資格に適がう意で、改まった会話や文章に用 <702> てきにと いられる硬い感じの漢語。〈ー者〉〈不ー〉資格を問う立 場からの視点を感じさせる。ひ的確・適確 「出来事」世の中に起こる大小の事柄をさし、くた けた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈歴史上の—〉(ちょっとした—〉(よくある—〉(その日の ーを記録する)橫光利一の『機械』に「誰もが予想しなか った新しい」とある。「一瞬の」のように、「事件」とは 違って、事の大小より事が起こることに重点を置いて使う 傾向がある。殺人は「出来事」でも「事件」でもあるが、病 死となるといくら非日常的で重大な「出来事」であっても 「事件」には含めない。また、「不思議なーもあればあるも のだ」のように事件というより現象をさすこともある。 事件 できし【溺死】水に溺れて死ぬ意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈深みにはまってーする〉へーによる水の 犠牲者〉、弱れ死に・Q水死 てきしゅつ【摘出】つまんで取り出す、暴き出すの意で、主 に硬い感じの文章に用いられる漢語。〈臓器の病変部を— する〉〈要点を—する〉〈不正を—する〉ひ別出 てきしゅつ【別出】抉り出す意で、硬い文章に用いられる専 門的な感じの漢語。〈弾丸のー手術〉〈問題点をーする〉 摘出 テキスト学校などの授業に使用する教材用の本をさし、会 話にも文章にも使われる外来語。〈英語の—〉へに沿って 説明する、「教科書」と違って必ずしも授業用に編集した ものでなくてもよく、一般の単行本でも講義や授業で採用 すればその間だけ「テキスト」となる。Q教科書・教材 てきせつ【適切】まさにそれにふさわしい意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈な答え〉〈な例を挙げる〉〈な処置を取る〉〈に対応する〉「適当」以上にびったり 合う感じがある。違当 てきたい【敵対】相手を敵と見なしてそれに対抗する態度を とる意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈 行為〉〈関係にある〉②「抵抗」や「反抗」と違い、相手 が自分より上位者や強力な存在であるとは限らない。 抵抗・Q反抗・反発 てきちゅう【的中】狙いどおり目標物に当たる意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈みごとに真ん中に する〉〈狙った獲物に—する〉回的」は「まと」「中」は 「あたる」で、本来は、弓で射た矢が的に当たること。現在 では、「予想が—する」「予感が不思議なほど—する」のよ うに抽象化した意味合いで使うほうが多く、その場合は 「適中」とも書く。専命中 てきとう【適当】ちょうど合っている意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈な判断〉〈な人物〉〈な場所〉〈数 がーだ〉の「に答えておく」「にごまかす」のように、 いい加減の意でも使う。り適切 できばえ【出来栄(映)え】物事の出来具合をきし、やや改ま った会話や文章に用いられる、いくぶん古風な感じの和語。 〈みごとなー〉(なかなかのだ)客観的な「出来」に比 べ、評価の高い場合によく使う傾向がある。き出来 てきばき手際よく機敏にの意で、会話にも文章にも使われ <703> る和語。〈ー仕事をこなす〉〈ー片づける〉「指示を出 す」のように、言動に無駄がなくスピーディーな意にも使わ れる。ひQきびきび・はきはき てきびしい【手厳しい】相手の立場や気持ちに配慮せず手心を加えず率直に欠点に言及するなど遠慮なく行動する態度をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈一批評〉へーく罰する〉〈やり方がー〉〈一批判にさらされる〉〈問題点をー・く指摘する〉〈当然の権利であるとー要求を突きつける〉②堀辰雄の『大和路』に「小さな仕事さえ、こんな僕をー・くはねつけるのだ」とある。時に「痛烈」という意味合いに響く。もっぽら人の態度について用い、「厳しい」より具体的で限定的。ある事柄に対する態度・行動に用い、「厳しくしつける」のような長期にわたる行いにはなじまない。 ひQ厳しい・厳格・厳重・辛辣・Q痛烈 てきほう【適法】きちんと法律や法規にかなっている意で、 改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈行為〉 の「違法」と対立する語。乃合法 できもの【出来物】小さな腫れ物をさし、会話や改まらない 文章に使われる日常のやや古風な和語。〈—が膿ふむ〉里 見弾の「桐畑」に「(気持)それが膿み腫れた—のように、気 味悪く膨れ上って」とある。Qおでき・腫物・腫れ物・吹き出 物 できる【出来る】することが可能だの意味を添えて、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈早期に実現—〉〈気安く相談が—〉〈ーだけ安く仕上 げる〉〈ー・きない相談だ〉の「子供が—」のように「生まれ てぐち る」意でも、「まとまった金が」のように「手に入る」意 でも、「食事の用意が」のように「仕上がる」意でも広く 使う。ひ可能 できるかぎり【出来る限り】「できるだけ」に同じ。〈一期日は守る〉、Qできるだけ・なるたけ・なるべく できるだけ【出来るだけ】「なるべく」の意で、会話や硬くない文章に使われる日常的な和語。〈早く出かけよう〉〈安い物で間に合わせる〉Qできるかぎり・なるだけ・なるべくてぎわ【手際】物事をてきばき処理する腕前や要領の意で、会話にも文章にも使われる和語。〈よくこなす〉〈が悪く時間がかかる〉〈みごとなーを見せる〉〈も鮮やかに〉マイナスイメージの「手口」「やり口」と違い、ほめる際によく使われる。夏目漱石の「坊ちゃん」では「なに教頭の御じゃ(魚が)かかりますよ」とあり、この語自体に高い評価をこめて使っている。马手段・手口・Q方法・やり口 てきん【手金】手付けのために渡す金銭の意で、会話にも文 章にも使われる表現。へとして五十万円払うの手付 金」の略。契約履行の意思表示なので一般には頭金より少 額。刂頭金・内金・手付け・Q手付金 てぐち【手口】口頭語的な「やり口」に比べ、日常語として 軽い文章の中でも使われるが、「手段」のような改まった感 じを伴わない。〈あくどい—〉〈同じ—の犯行を重ねる〉 〈巧妙な—で金を騙だし取る〉井上友一郎の『受胎』に「同 じ—で、別の学校へ転じた」とある。「やり口」以上に悪い ニュアンスが濃く、犯罪行為を連想させるため、「あっと驚 く—で人を助ける」とか「鮮やかな—の救済を続ける」とか <704> テクニック といった用法には違和感がある。「答えを教えるやり方」な ら教師の指導法でもよいが、「答えを教える」となると試 験のときのカンニングという不正行為を連想してしまうの も語感の差である。また、「寄付を募る方法」なら創立一二 五周年の大学の記念事業のために卒業生やその父母の好意 にすがるようなまともな連想が働くのに対し、「寄付の」 とするととたんに、企業が政治献金という形を装って内密 に賄賂のを渡すような雰囲気に変わるのも、この語の不正 なニュアンスの影響である。なお、一般には法的あるいは 道徳的な基準の評価であるが、囲碁や将棋などで相手の作 戦を評する際などに、こときら敵意をこめて「小賢」しい 」とか「欺瞞に満ちた」を弄わする」とかと主観的な評 価で用いる場合もある。刂手段・方法・やり方・Qやり口 テクニック物事を巧みにこなすための特殊な技をさし、会 話にも文章にも使われる外来語。〈運転のー〉へーを駆使す る〉〈プロのーを盗む〉高度のーを駆使する」のように 高い評価でも使うが、小手先の技術を連想させやすい。 腕②・腕前・Q技巧・技術・技能・技法・技 デコレーションケーキ祝い事などのため美しく飾り立てた 大形のケーキをさす和製英語。〈誕生日のーを注文する〉 デザイン服飾・建築・車輛などの製品の機能や美的効果を考 えて設計すること、また、その意匠をさし、会話にも文章に も使われる外来語。〈商業ー〉〈斬新なー〉〈大胆なーで人 目を引く〉〈ーに凝る〉の「設計」の意味では専門的な用語。 及設計 てきき【手先】①指先やその働きをさし、会話にも文章にも 使われる和語。〈ーが器用だ〉指先②命令を受けて働く 末端組織の一員をさし、会話や軽い文章に使われる、やや 俗っぽい和語。〈泥棒のー〉〈悪のーとなる〉好ましくな い集団を連想させる。凡家来・子分・下端・手下・Q手の者・配 下・部下 てさげ【手提げ】手に提げて持つ袋や鞄の総称として、会話 にも文章にも使われる、いくぶん古風な和語。〈一鞄〉へー 袋〉〈買った物をーに入れる〉Qハンドバッグ・バッグ てざわり【手触り】手で触れた感じの意で、会話にも文章に も使われる和語。〈ーがやわらかい〉〈ーがふわふわで何と もいえない〉Q感触・触感・肌触り でし【弟子】師匠について技芸や学問を教わる人をさし、会 話にも文章にも使われるやや古風な漢語。〈入り〉内 〈兄〉〈を取る〉〈を置く〉相撲部屋で使えば 特に古風さはないが、大学などでの教え子をさす俗っぽい 用法は古風。教え子・Q門人・門弟 デジカメ画像をデジタル信号に変換し磁気ディスクなどに 記録するシステムのカメラをさす、新しい和製英語。「の 小型化」「デジタルカメラ」の構成要素のそれぞれ語頭を 組み合わせた語形。 てした【手下】人に命令されて使われる立場の人をさし、会 話や軽い文章に使われる古風で俗っぽい和語。へやくざの ー〉〈盗賊のー〉犯罪組織など好ましくない集団を連想さ せる。ひ家来・Q子分・下っ端・手先②・手の者・配下・部下 てじな【手品】気づきにくい仕掛けや巧妙な手さばきで人目 を欺いて楽しませる芸をさし、会話にも文章にも使われる <705> 和語。〈一師〉〈一の種を明かす〉〈隠し芸にーをやる〉 「ー使い」となると古風な感じがある。Q奇術・手づま・マジ ック でしゃばる【出しゃばる】ひとを押しのけて目立った言動を する意で、主にくだけた会話に使われる俗っぽい和語。 へーったまねをするな〈何かというとすぐーのが悪い癖 だ〉ひQしゃしゃり出る・出過ぎる てじゅん【手順】物事をする順番の意で、会話にも文章にも 使われる日常語。〈ーを踏む〉〈ーが狂う〉〈ーをととのえ る〉〈ーを間違える〉囲碁・将棋で〈ー前後でそれが敗着 となる〉のように打ったり指したりする手の順番の意でも 使う。Q段取り・手はず てすう【手数】一つのことを成し遂げるまでに要する手間の 意で、会話にも文章にも使われる日常語。〈料〉へがか かる〉〈おーですが、よろしく〉近年「てかず」よりも一 般によく使われる。「てかず」が完成までの手段の数という 意味合いが強いのに比べ、この語はもう少し漠然と完成ま での時間や労力をさすような感じがある。Qてかず・手間 ですぎる【出過ぎる】自分の能力や立場を顧みずよけいなこ とに出しゃばる意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈ー・ぎた真似をするな〉ひしゃしゃり出る・Q出しゃばる デスク会社などの机をさす外来語〈ワーク〉〈会社の事 務所にーを用意する〉「机」がどこでも使われるのに対し て、企業の事務用の机をさし、家庭や学校の場合は用いな い。刂机 テスト人の知識や能力、機械などの性能や状態を調べる目 てだすけ 的で実施する試みをさして、会話やさほど改まらない文章 に使われる日常の外来語。ペーパー」〈学力」〉一夜漬 けでーを受ける〉へ一斉ーを実施する〉の「考查」「試験」に 比べ、日常生活で気軽に使う。「ーケース」「パイロット」 のように、広く試行の意で使い、演劇や放送などでは本番 前のリハーサルの意で使う。ひ考查・Q試験 てすり【手摺り】階段・窓・橋などに転落防止のために設ける 横木や柵をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。 〈階段のーにつかまる〉へーによりかかる〉の「欄千」に比べ てもっぽら実用に重点を置く感じが強く、擬宝珠の付い た橋の欄干にはこの語はなじまない。刂欄干 てせい【手製】素人が自分の手でつくる意で、会話にも文章 にも使われる、いくぶん古風な表現。〈おーのケーキ〉へー の買い物袋〉の機械に頼らずにつくる意もあるが、その意 味では「手作り」のほうが一般的。手作り てぜま【手狭】人数や用途の割に場所が狭い意で、会話やさ ほど硬くない文章に使われる和語。〈な部屋〉家がーに なって引っ越す)狭隘・Q狭い てだし【手出し】第三者が脇から余計な世話を焼く意で、会 話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。くよけい なーは無用〉口出し・Qちょっかい・容喙かい でだし【出出し】連続する物事の開始時または開始直後の部 分をさし、会話や軽い文章に使われる日常の和語。「は順 調だ〉へーから苦戦する〉へーにつまずく」「出だし」と重 複感を薄める表記も多い。のっけ滑り出し てだけけ【手助け】手伝いの意で、会話や硬くない文章に使 <706> てたらめ われる和語。〈—になる〉〈配達の—をする〉「助力」と違 い、慣れない人や子供などの連想もある。永井荷風の『あ めりか物語』に「材料を蒐集するーをする」とある。ひ助力・ Q手伝う でたらめ【出鱈目】思いつくままにいい加減なことを言った り書いたり行ったりする意で、会話や軽い文章に使われる 和語。〈ーを言う〉〈ーに並べる〉〈やり方はーもいいとこ ろだ〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「全く君の事もーに違 いない」とある。「出任せ」と違い、ことばだけでなく行動 や生活まで含む。ひ出任せ てぢか【手近】手の届くような自分の体から近い場所をさし、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。 「な行楽地」へ「なところで間に合わせる」へ「にあるも のから順に片づける」②「手元」より少し範囲が広く、「手 元の辞書」は机上にある感じだが、「な辞書」は隣の部屋 か二階にあっても言えそうな感じがある。「身近」より範囲 が狭い。また、「な例を引く」のように、身近なために誰 でも知っていてわかりやすいという意味にも使う。马身边 Q手元・身近・身の周り てちょう【手帳(帖)】小型の帳面の意で、会話でも文章でも 使われる日常語。〈警察—〉〈ーに書きとめる〉〈古いーに 控えてある〉小沼丹の『のんびりした話』に「酒を飲んで いて、忘れると不可ない語があった場合、ーに書留めて置 く」とある。今では通常「手帳」と書くが、伝統的な「手帖」 を用いると、古風で懐かしい雰囲気が漂う。帳面 でっかい「でかい」の強調形で、さらに俗っぽい。〈一家に 住む〉〈声を出す〉の態度がー」のような慣用的な表現 にはなじまない場合もある。ひ大きい・Qでかい てっかく ↓てきかく(的確・適確・適格) てづかみ手掴み物を素手で直接つかむ意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈飯をーで食う〉〈魚をーで捕る〉 通常は直接手で触れないものに対して言うから粗野ではあ るが、「驚掴み」ほど荒々しい感じはない。ひ驚掴み てっきよ【撤去】施設などを取り除く意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈不法建造物を—する〉〈パリケー ドを—する〉〈廃線になった区間のレールを—する〉②「除 去」「排除」と違い、大きな具体物について使う。Q除去・ 排除 てっきん【鉄筋】張力に弱いコンクリートを強化するために 中に埋め込む細長い鉄材をさし、会話にも文章にも使われ る漢語。〈ーコンクリート〉〈ーを入れる〉鉄骨 てづくり【手作(造)り】自分の手でつくる意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈一の自慢料理〉(一の味を楽しむ) 店で買わずに素人が家庭でつくる意のほか、「当店の品 はすべてー」のように、専門家が機械に頼らないでつくる 意もある。手製 てつけ【手付け】売買や賃貸や請負の契約に際し、買い手・借 り手・注文主が契約の履行を保障する目的で相手に一定の金 額を渡す意で、会話にも文章にも使われる、やや専門的な 和語。〈ーを打つ〉〈ーを渡す〉の語でそういう行為で なく手付金を意味する場合は、取引に慣れている感じが漂 う。刂頭金・内金・手金・Q手付金 <707> てつけきん【手付金】手付けのために渡す金銭をさし、会話に も文章にも使われる表現。へーを置いて来る〉の「手金」 「手付け」に比べ、いくらか改まった感じがある。頭金・内 金・Q手金・手付け てつけん【鉄拳】硬く握り締めた拳の意で、主として文章 に用いられる硬い漢語。〈ー制裁〉へーを見舞う〉②殴打す る場合に用い、類義語の中で最もきつい感じがある。卐拳 固・Q拳骨・拳・握り拳 てっこつ【鉄骨】建造物の骨組みを作る頑丈な鉄材をさし、 会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。へーを組 む)鉄筋 デッサン絵画や彫刻の制作に先立って、対象の基本的な形 をあらかじめ描いておく意で、会話にも文章にも使われる フランス語からの外来語。〈人物の—が残っている〉〈ーを もとに本格的な制作に取りかかる〉回単色の線描が多い。 ひ下絵・写生・Qスケッチ・素描 てつする【徹する】考え方や態度・行動などをつのことで通 す意で、やや改まった会話や文章に用いられる表現。〈裏方 にー〉〈清貧にー〉森鷗外の『妄想』に「夜をー・してしま うこともある」とある。貫徹・貫く・Q徹底 てつだう【手伝う】他人の仕事などに手を貸す意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈家事を—〉〈引っ越しを—〉〈親の仕事を—〉志賀直 哉の『焚火』に「自分もー・った。妻も時々手を出した」と ある。専助力・助ける・Q手助け でっちあげる【でっち上げる】「捏造の意の和風の俗語。 でっぱ 〈事件を—〉〈スキャンダルを—〉②芥川龍之介の『戯作三 味』に「小手先の器用や生噛りの学問で、ー・げたものじゃ げえせん」とある。本来存在しないものを勝手に作り出し て事実のように見せかける場合によく用いられる。「一晩 でー」「レポートを二時間でー」のような用法も、無から有 を生じさせることの延長上にある。だが、形だけそれらし く雑に仕上げる意のこういう用法は「捏造」ではまかなえ ない。いずれも単に「作り出す」とした場合に比べ、マイナ スイメージが強い。ひ作り出す・Q捏造 てつづき【手続き】物事を行う際の方法手順やその事務処理 をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈面倒なー をとる〉〈入会のーを済ます〉〈正規のーを踏む〉夏目漱 石の『坊っちゃん』に「何も縁だと思って規則書をもらって すぐ入学のーをして仕舞った」とある。手順 てってい【徹底】中途半端でなく隅々まで、あるいは最後ま で通す意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈周知—〉 〈通知が—する〉〈—した合理主義〉②志賀直哉の「暗夜行 路』に「的に父を納得させる」とある。貫徹・貫く・Q徹す る てっていてき【徹底的】一つの物事を最終段階まで徹底して 行う意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の漢語。〈ーに鍛える〉〈ーな調査を実施する〉②中途 半端と対立する概念で、ある程度のところで妥協しないと ころに重点がある。根本的・Q抜本的 でっぱ【出図】上の前歯が通常より前方に突き出ている意 で、会話や硬くない文章に使われる和語。へーを気にする <708> てっびん いくらか控えめな「反歯」に比べて欠点を露骨に示す 印象があり、木山捷平は『河骨』で「大きな口をぐわッと 開けて、黄色いーがふうふうと喘いでいた」と不快感を描 き出した。古くは「でば」とも。及反歯 てつびん【鉄瓶】鋳鉄製の湯沸かしをさし、会話にも文章に も使われる漢語。〈南部—〉〈長火鉢に—を掛ける〉〈—の 湯がたぎる〉ひやかん・Q湯沸かし てっぺん【天辺】物の一番上の部分をさし、もっぱら会話で 使うやや古い感じの日常語。〈山の—〉〈頭の—から声を出 す〉〈頭の—から足の爪先まで〉小沼丹の『珈琲の木』は 「珈琲の木の—の所を軽く抓んでやることもある。子供の 頭を撫でて、いい子、いい子をしてやる気分に似ているか もしれない」と結ばれる。「頂」や「頂上」より俗っぽく、 古風で親しみの感じられることば。頂上・Q頂 てっぽう【鉄砲】火薬の力で金属などの筒から弾丸を発射さ せて目標物を損壊する武器をさし、会話にも文章にも使わ れる少し古い感じの日常の漢語。〈ーを撃つ〉〈猟師がーで 獲物を仕留める〉大砲と小銃との総称とされるが、通常 は小銃をさす。Q銃・銃器・小銃 てっぽうだま【鉄砲玉】鉄砲に詰める弾の意で、主にくだけ た会話や軽い文章に使われる古風でやや俗っぽい表現。へー が飛んで来る)行ったきりなかなか戻って来ない人をさ す比喩表現としても使う。Q銃弾・弾丸・砲丸・砲弾 てづま『手妻』「手品」の古めかしい言い方。〈ーを使う〉 「つま」は「端」の意で、本来は手先の仕事をさし、仕掛け は二の次だったと思われる。専奇術・Q手品・マジック てつめんび【鉄面皮】ひどく厚かましく図々しい意で、会話 にも文章にも使われる古めかしい漢語。へーにも程がある 顔の皮が鉄でできているほど厚く丈夫だと強調した表現。 Q厚かましい・厚顔無恥・図々しい・恥曝し・恥知らず・破廉恥 てつや【徹夜】一晩中寝ないで過ごす意で、会話にも文章に も使われる日常の漢語。〈ー麻雀〉へーで語り合う〉〈試験 の前の晩にーする〉夜に寝床に入れば眠れなくても、こ の語はなじまない。月夜明かし てづる『手蔓』依頼したり交渉したりする際の手掛かりとい う意味で、会話にも文章にも使われる、やや古風な和語。 へーを求める〉へーを探して宣伝してもらう》ひ縁故・コネ・Q って でてくる【出て来る】それまでの場所から移動して主体側に 近づく意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。 〈田舎から東京に」〈応接間で主人がーのを待つ〉後か ら次々に」夏目漱石の『坊っちゃん』に「山嵐を待ち受 けた。所が中々・来ない。うらなりがー。漢学の先生が ー。野だがー。仕舞には赤シャツ迄ー・来たが」とある。 出る てなずける【手懐ける】相手がなついて自分の意のままに動 くように仕向ける意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈犬を—〉部下を—〉他の類語と違い、目下か動物に限 って使う。「丸め込む」「籠絡ち」と違い、相手を騙すという感じは薄く、自分との友好関係が長続きしそうな雰囲気がある。僕柔・抱き込む・丸め込む・籠絡 てなみ【手並み】物事をやってのける巧みさの程度をさし、 <709> 会話や硬くない文章に使われる、やや古風な和語。「おー拝 見」〈あざやかなーを見せる〉②他の技術を評価する際によ く使う語。②腕前・技量・Q手腕・力量 てならい「手習い」「習字」の古めかしい和風表現。「一の師 匠」の六十の」のように、習字に限らず芸事から学問ま で含めてその稽古をさすこともある。Q習字・書・書道 ナナント貸しビルなどの一区画を賃借りする人の意で、会 話にも文章にも使われる外来語。〈—募集中〉へ—が見つか る賃貸物件が大規模なため、個人よりも企業のイメージ が強い。巻借り手・Q借り主 ナニス地面のコートの中央のネットを挟んでラケットでボ ールを打ち合う球技をさす外来語。古風な「庭球」に代わ る現代の標準的な呼称。〈ウィンブルドンのー大会に出場す る〉へーの世界ランキングでトップテンに入る〉専庭球 てぬかり【手抜かり】なすべきことを不注意でもらす意で、 会話やさほど硬くない和語。へーのないよう万全を期する 精神的な「油断」に比べ、具体的な行為を問題にする傾向 がある。遺漏・Q手落ち・不注意・油断 てぬぐい【手拭い】現在の「ハンカチ」や「タオル」の役目 に用いた木綿の布をさすため、やや古風な感じのする語。 へーで顔を拭ふく)夏目漱石の『坊っちゃん』に「此ーを行 きも帰りも、汽車に乗ってもあるいても、常にぶら下げて居 る」とある。タオルと区別するため特に「日本ー」と言うこ ともある。ひQタオル・ハンカチ・ハンケチ てのひら【手の平】手の内側をさし、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の和語。へーに載せる〉へーを 返したよう◇里見弾の『椿』に「石のような冷たさが、右 のーへ滲みた」とある。ヲたなこころ てびき てのもの【手の者】「手下」に近い意で、会話や軽い文章に使 われる古めかしく俗っぽい和語。〈親分の—〉犯罪組織と は限らないが、社会的に好ましくない存在を連想させる。 及家来・子分・下っ端・手先②・Q手下・配下・部下 デパート多種多様な商品を集め、部門別に陳列・販売する大 型店をさし、会話でも文章でも「百貨店」の意で用いる最も 標準的な外来語。〈ターミナル〉へ「でショッピングを楽 しむ〉の小沼丹の『登高』に「登高が気になって、の最上 階のピヤホオルに行った」とある。かつては「百貨店」をさ す斬新な響きを感じさせたが、今はごく普通の語となり、 特に新味は感じさせない。百貨店 ではいり【出入り】「出入り」の意で、主に会話に使われる 和語。〈自由〉〈一の邪魔になる〉「でいり」より具体的 な動きの用法が多く、より口頭語的。ひでいり てはず【手筈】前もってしておく具体的な準備の意で、会話 にも文章にも使われる和語。へーをととのえる〉へーがとと のう)単段取り・Q手順 てびき【手引き】経験の皆無な人に物事の方向づけをする意 で、会話にもさほど硬くない文章にも使われる和語。〈初心 者のーをする〉回もともと手を引いて案内する意で、「泥棒 のーをする」「出世街道のーをする」のように便宜を図って いざなう意の用法もある。また、「海外旅行のー」のように 案内書・入門書をさす場合は「手引」と書くことが多い。初 歩的な「手ほどき」以前の入門程度をさす感じがある。 <710> てびょうし ほどき てびょうし【手拍子】手の平を打ち合わせて調子をとる意で、 会話にも文章にも使われる語。へーを取る〉ひ拍手 でぶ太り過ぎの意で、主にくだけた会話で軽蔑の気持ちを 込めて使われる俗語。「のわりに軽快な身のこなし」 「百貫」はいかにも古い感じの表現。「でぶっちょ」は「で ぶ」を強めた俗語。状態だけをさす「肥満」と違い、そうい う状態の人をさす用法もある。Q肥満・太っちょ ふね【出船】船が出発する意で、会話にも文章にも使われ る古風で懐かしい感じの和語。へーを告げる銅鑼の音 「入船」のように、港を出て行く船をもさす。出港・出航・ 出船しゅっ・出帆・Q船出 てほどき【手ほどき】学問・技芸・スポーツなどの初心者にそ の分野の基礎を与える意で、会話や硬くない文章に使われ る和語。〈ゴルフのーを受ける〉〈初心者にわかりやすくー をする〉②入門的な「手引き」を含み、もう少し具体的で初 歩段階まで広がる感じがある。具手引き てほん【手本】模倣するための当面の目標となるものをさし、 会話や硬くない文章に使われる日常の表現。〈習字のおー〉 〈みんなのーとなる〉〈ーを示す〉「模範」以上に真似るも のという雰囲気が強い。規範・見本・Q模範 てま『手間』あることを完成させるまでに要する時間や労力 の意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。へー 賃〉二度ーになる〉へー暇かけて〉へーのかかる仕事〉へー をとらせる〉してかず・Qてすう デマ根拠のないでたらめな情報をさし、会話やさほど硬く ない文章に使われる外来語。「が飛ぶ」「が流れる」 ドイツ語「デマゴギー」の略形。本来は、政治的な宣伝やパ ニック防止などの目的で、民衆を一定方向に導くために意 図的に事実を歪めて流す場合をさすが、現在では広く虚偽 情報をさすことが多い。流言 まえ【出前】注文を受けてそば・すし・どんぷり物などの店 屋物をその家に配達することをさし、会話にも文章にも広 く使われる和語。へーをあつらえる〉へーを取る〉〈昼はー で間に合わせる〉阿部昭の『父と子の夜』に「父が息をひ きとるのと、ソバ屋のー持ちが病室のカーテンごしに威勢 よく声をかけるのとがほぼ同時だった」とある。「仕出し」 と違って、通常は特別のメニューではなく、また、一人前の 場合も少なくない。ヌケータリング・Q仕出し でまかせ【出任せ】よく考えもせずに口から出るままに無責 任なことを言う意で、会話や軽い文章に使われる和語。へ口 からー〉〈苦し紛れにーを言う〉永井荷風の『ひかげの 花』に「冗談半分口からーな事を言っていた」とある。「で たらめ」より狭く言語表現に限られる。ひでたらめ まね『手真似』ことばの代わりに手の動作で表すことをさ し、会話や軽い文章に使われる和語。へーでそっと知らせ る」ひジェスチャー・ゼスチュア・Q身振り てみやげ【手土産】「土産」のうち、訪問先に持参する贈り物 をさして、会話にも文章にも使われる和語。へーをぶらさげ て恩師を訪ねる)②さほど高価ではない挨拶代わりのちょ っとした品を連想させる。Qお持たせ・到来物・土産 でむかえる【出迎える】こちらから出て行って相手を迎える <711> 意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈駅まで ー〉〈犬が玄関までー〉②森鷗外の『雁』に「女は自分の家 よりは二三軒先へー・えていた」とある。ひ迎える でむく【出向く】目的の場所まで出かけて行く意で、いくぶ ん改まった会話や文章に用いられる和語。〈こちらからー〉 〈社長自ら挨拶にー〉ひいく・Q赴く・ゆく てめえ【手前】主に男性が相手を見下して言う二人称として、 ごくくだけた会話でののしるときに使う。へーなんかにわ かってたまるかへやい、よくもやってくれたな)谷 崎潤一郎の『お艶殺し』に「ーは一体何者だ」とある。「 でーのことを褒めてりゃ世話はない」のように自分自身の 意に使うこともあり、「てまえ」と読めば確実に自分をさ す。ひあなた・あなた様・あんた・おまえ・Q貴様・君 でも「だが」より軽い意味として、主としてさほど改まらない会話に使われる、やわらかい感じの和語。へいい品物がたくさん並んでいるね。ー、これはちょっといただけないな ぜひ一度訪ねてみたい。ー、今は金がない)が・しかしだが てもと【手元(許)】手を伸ばせば届く程度のごく近いあたり をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の和語。へいつもに置くへにある辞典を引いて確か める〉への金で何とかやりくりする〉の手近」のうちで もさらに自分に近い部分に相当。「ーが狂う」のように手の 使い方をさす用法もある。身辺・Q手近・身近・身の周り でもどり【出戻り】女性が一度結婚して家を出たあと夫との 死別や離婚のために親の家に戻る意で、会話や硬くない文 てらす 章に使われる古風な和語。〈一の娘〉綱野菊の『金の棺』 に「一となって実家に肩身狭く暮している」とある。家制度 下での「嫁に行く」という女性差別の意識が感じられると して今では使用を控えている。川端康成の『山の音』に、嫁 ぎ先から子供を連れて大晦日に実家に戻り、まだ正式に離 婚していない状態の房子を母親は「まあ半一というんです かね」と夫に言う場面が出てくる。 てら【寺】僧などが仏道の修行をし、仏事を営む場所や建物 をさし、会話でも文章でも幅広く使う日常の基本的な漢語。 〈荒れー〉へおー参り〉へーの境内〉小沼丹の『障子に映る 影』に「伯母の一周忌か何かでーの広い本堂に坐っていた」 とある。「寺院」とは違って、規模の大きさや格式の高さに 関係なく使え、門構えがみすぼらしくてもいかめしくても、 また、どんなに荒れ果てていても「寺」と呼んで違和感がな いが、真言宗か浄土真宗か曹洞宗かはともかく、仏教の 寺を連想させる。寺院 てらう【街う】自分の学識や才能などを誇らしげに見せびら かす意で、改まった会話や文章に用いられる和語。〈奇を ー〉〈学問をー〉〈ー・った態度〉谷崎潤一郎の『細雪』に 「大家の坊々として鷹揚さをー様子が見えて不愉快なので ある」とある。ひひけらかす・見せびらかす てらす【照らす】光を当ててその部分を明るくする意で、会 話にも文章にも幅広く使われる和語。〈日にー・される〉 〈夕日が海面を—〉の上林暁の『月魄』に「月の光は、或 る夜は、枕の上から見上げる南隣の家の屋根をー・してい る」とある。と照明 <712> テラス テラス洋風の建物で一階の主にリビングから屋外に張り出 した屋根のない台の意で、会話にも文章にも使われる外来 語。〈ーに出る〉〈ーでお茶を飲む〉、乃バルコニー・Qペランダ・ 露台 てり【照り】「つや」に近い意で、会話でも文章でも使われる 和語。〈ーが続く〉〈葉にーが出る〉〈ーをつけた料理〉②連 想されるのは日照りや照り焼きのほか木の葉などで、 「艶や「光沢」ほどの広がりはない。ちなみに、幸田文は 『蜜柑の花まで』で、短い旅行をした三月末の山形につい て、「あちらはまだ梅のつぼみがようやくふくれ」と書いた あと、「桜の幹もいくぶんーを持ちはじめたかなという気 候」と振り返っている。桜のつぼみがふくらみを持つ前に、 それに先立って幹が照りを持ち始めるのを見てとる繊細な 感覚に驚く。ひQ光沢・艶 てりかえし【照り返し】光や熱の反射をさし、会話にも文章 にも使われる和語。(舗装した路面の—がきつい)高樹の ぶ子の『追い風』に「車の屋根が、灰色の光を照り返しなが らゆっくりと流れてゆく」という動詞の例がある。及反映 Q反射 デリカシー感情や配慮の繊細さを意味し、会話にも文章に も使われる、比較的新しい外来語。〈一のない人〉〈一に欠 ける言動〉、Q繊細・デリケート・微妙 デリケート繊細で微妙な意として、会話にも文章にも使わ れる外来語。〈ーな神経の持ち主〉〈ーな感情〉〈ーな味〉 〈ーな問題〉岡本かの子の『やがて五月に』に「蓮の浮葉 のようなーで艶冶な花嫁姿」とある。Q繊細・デリカシ !微妙 てる【照る】一面に光を放つ意で、会話でも文章でも使われる和語。くようやく日がー・ってきた)〈日が燦々と〉 〈今日は一日、朝からー・ったり曇ったりしている〉〈月が煌々とー・っている〉〈夜の闇に包まれた町でその家の窓だけがあかあかとー・っていた〉庄野潤三の『秋風と二人の男』に「家を出る時には、空に太陽がー・っていた」とあ る。「光る」「輝く」と違って、ほとんどの例が日光と月光に集中し、比喻的な用法も見当たらない。「輝く星座」といった誇張表現はあるが、一般に星の光は「照る」と表現するには明るさが足りない。照明器具の場合、「照らす」とはよく言うが、「照る」とする例はあまり多くない。Q輝く・光る でる【出る】内から外に移動する、表面に現れるといった意 味合いで、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈大学を—〉〈家を—〉〈社会に—〉 〈試合に—〉〈宿題が—〉〈結論が—〉〈日が—〉〈涙が—〉 〈怒りが顔に—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「教場へ— と今度の組は前より大きな奴ばかりである」とある。ひ出て 来る てれ【照れ】人の注目を浴びて恥ずかしく思う意で、会話に も文章にも使われる和語。〈ー笑い〉〈ー隠し〉〈内心のー〉 〈ーが先に立つ〉み含羞がんと・恥・恥じらい・Qはにかみ てれくさい【照れ臭い】気恥ずかしくためらわれる気持ちを さし、主に会話や軽い文章に使われる和語。へ人前で褒めら れてーへ〈夫婦仲の良いところを見られてー〉へ口に出すの <713> はー・く、手紙を出すの小沼丹の『村のエトランジ』に 「大人が泣いているのを見るのは、ひとくー・かった」とあ る。ひ面映い・Q気恥ずかしい・決まり悪い・恥ずかしい・ばつが 悪い・間が悪い てわたす【手渡す】自分の手で相手の手にじかに渡す意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈大事な書類を—〉〈原稿 を編集者に直接—〉も渡す 「空」の最果てに広がる漠然とした世界のようなイメージで とらえられる傾向がある。「高く」はよく晴れて天がいつ も以上に高く感じられるようすであり、「空高く」では単な る上空にすぎず、秋になっても馬が肥えそうにない雰囲気 になってしまう。飛行機も空を飛ぶ間は安心感があるが、 「天」になると吸い込まれて地上の空港に戻れないようなけ はいが漂う。川端康成の『雪国』に「薄く雪をつけた杉林 は、その杉の一つ一つがくっきりと目立って、鋭くを指し ながら地の雪に立った」という大きなスケールの鮮やかな 一文が出る。意味だけならここを「空」にすることも可能 だが、語感の点で雄大な印象を失う。「天と地」という表現 も、「空」に置き換えたのでは「空き地」に見えてくるし、 「にまします」を「空」に換言しては「われらの神」も有 難みが薄れる。Q空・天空 てん【点】「読点」の意で、主に会話に使われる日常の漢語。 〈列挙する語句の間にそれぞれーを打つ〉のまる」と並立。 てんいん 「ーをかせぐ」「ーがからい」のように得点の意や、「そうい うーが問題だ」「そのーで物足りない」のように箇所の意で 使う例も多い。句読点・Q読点 てんい【転位】位置などが移る意で文章中に用いられる古め かしく硬い専門的な漢語。〈星がーする〉心理学の「感情 のー」、物理学の「結晶のー」など、学術用語の中でも用い られ、全体として専門語の雰囲気の濃い表現。専転移 てんい【転移】別の場所に移る意で、会話でも文章でも使わ れる専門的な漢語。〈癒のーを防ぐ〉のもともとは単に移 る意として「美意識のー」などと使われたようであるが、そ ういう用法は現代では古めかしい響きがある。化学の「 温度」、生物学の「一酵素」、心理学の「正の」「負の」 など各分野の学術用語の中でも用いられているが、日常生 活ではもっぱら「癌のー」という医学用語が話題になる。 転位 てんいむほう【天衣無縫】性格や行為などが自然のままで作 意の感じられない意で、改まった会話や文章に用いられる、 いくぶん古風な感じの漢語。〈1の生き方〉へ1の大らかな ふるまい)天人の衣に人工的な縫い目のない意から。も のにとらわれない武者小路実篤の作品のように、詩歌や文 章に技巧的な跡の見えない場合にも使う。純情・純真・Q天 真爛漫れ・無邪気 てんいん店員店頭で客に商品を販売する役の人をさし、 会話でも文章でも幅広く使われている日常漢語。「募集 〈教育〉への態度の売り子」と違って、社内や館内を 移動する販売員を含まず、店長などの責任者を含む感じが <714> てんうん ある。専売り子 てんうん【天運】天によって定められている運命の意でや や改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。「が尽き る」天体の運行の意にも使う。遅・運勢・運命・宿命・天命・ 回り合わせ・命運・巡り合わせ でんえん【田園】田畑や緑が多く広々としてのどかな感じの する田舎をさし、主として文章に用いられる好感度の高い 漢語。〈風景〉〈地帯〉〈一面に広がる〉の「田畑」 「農村」に比べ、垢抜けした感じがある。佐藤春夫に『田園 の憂鬱』と題する小説がある。ひ田舎・たはた・でんばた てんか【天下】世界・世の中・世間といった意味合いで、会話 にも文章にも使われる、やや古風な漢語。〈太平〉〈一 品〉〈一を治める〉〈一を統一する〉〈一国家を論じる〉〈一 の一大事〉〈一晴れて〉〈一広しといえども〉福原麟太郎 の『天才について』に「シェークスビアは)全然伝記がない のだから—太平である」とある。庶民感覚の「世の中」と比 べ、覇気や野心を感じさせる。単社会・世間・Q世の中 てんか【添加】他の種類のものを付け足す意で、主に文章に 用いられる漢語。〈食品—物〉〈調味料を—して味を調え る〉②具体物に用い、「付け足し」より必要性が感じられ る。②追加・Q付け足し てんが【典雅】気品があり奥ゆかしく雅やかな意で、主に文 章中に用いる漢語。〈雅楽の—な調べ〉伊藤整の『変容』 に「二重の入母屋作りの破風を見せて、な形でこの町の 上にそびえている」とある。気高い・Q高尚・上品 てんかい【展開】繰り広げる意で、会話でも文章でもよく使 われる漢語。〈図〉〈試合〉〈車窓にーする風景〉〈論を ーする〉〈予断を許さぬー〉の芥川龍之介の『トロッコ』に 「つき当りの風景は、忽ち両側へ分かれるように、ずんずん 目の前へーして来る」とある。ひ転回 てんかい【転回】くるりと回って方向を変える意で、やや改 まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。ヘコペルニ クス的—〉方針を一八○度—する〉石川達三の『結婚の 生態』に「全面的な生活の—」とある。刂回転・展開・回る てんかん【転換】やり方・性質・傾向などがはっきりと切り換わる意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈方向ー〉〈気分ー〉〈期を迎える〉〈方針をーする〉Q転向・転身 てんかんかい【展観会】物品を広げて見せる催しの意で、会 話にも文章にも使われる古めかしい漢語。〜が開かれる 夏目漱石の『吾輩は猫である』に「鞍馬山でーがあっても 恐らく一等賞だろうと思われる位な鼻」とある。具展示会 Q展覧会・博覧会・発表会 てんがんきょう【天眼鏡】易者などの占い師が人相や手相な どを見るときに使う大型の拡大鏡の意で、会話にも文章に も使われる古風な漢語。へ八卦見がーで覗く高垣眸 の『怪傑黒頭巾』に大道易者の天命堂が「をかまえて、丁 ちょう発止、受けつ流しつ大奮戦」する場面が出る。当人が 「天眼通でもって、そのにせ者のばけの皮をはがしてやる」 と言うとおり、「天眼」はあらゆるものを見通す神通力のあ る千里眼をさす。拡大鏡・Q虫眼鏡・ルーペ てんき【天気】晴雨の観点で見た空模様をさし、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。 <715> 〈いいー〉〈ーは下り坂〉〈ーが崩れる〉〈ーが持ち直す〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「空の底が突き抜けたようなー だ」とある。「天候」のうち晴雨を中心に見た語。そのた め、「天候」にはない用法、「今日はーはいいが風が強い」 という言い方が可能である。ひ空模様・天候 でんき【電気】「電灯」の意で主として会話に使われる日常漢 語。〈ーをつける〉〈ーを消す〉〈ーを暗くする〉小林多喜 二の『蟹工船』に「浜なすのようなーがついた」とある。 電灯 でんき【電器】「電気器具」の略で、会話でも文章でも使われ る新しい感じの生活用漢語。〈店〉〈家庭用〉〈電機 でんき【電機】電力で動く機械の意で、主に文章の中で使わ れるやや専門的な漢語。〈重〉〈産業〉電器 でんきがま【電気釜】電気炊飯器をさし、くだけた会話から 改まらない文章まで使われる、やや古風な日常語。「のス イッチを押す」「炊飯器」は電気式のほかガス式のもある が、これはそのうちの「電気炊飯器」にあたる。普通の釜を かまどやガスコンロにかけて温度調節に気を配っていた生 活から一変して、自動で飯が炊ける便利な器械が出現した という驚きを感じさせたことば。そのため、今でも昔なつ かしく感じる人もある。「炊飯器」より庶民の生活と密着し た感じが強く、より会話的。Q炊飯器・炊飯ジャー でんきかみそり【電気剃刀】電気の力で刃を回転させるひげ 剃り器具。〈一の替え刃〉Qシェーバ!ひげそり でんきせんたっき【電気洗濯機】電気の力で洗濯する機械を さし、やや古い感じになってきた語。へーでそのまま洗え てんきょ る人力によらない画期的なという気持ちも働いて、新 しい感じの「電気」を冠したのかもしれない。ガス洗濯機 などは考えにくく、特に「電気」とことわる必要はないた め、今では単に「洗濯機」と言うほうが普通になった。「せ んたくき」と発音する人もいる。 でんきそうじき【電気掃除機】電気の力で掃除をする機械を さし、やや古い感じになってきた漢語。〈ーをかける〉②人 力によらない画期的なという気持ちから、新しい感じの 「電気」を冠したものと思われるが、ガスなどの動力は考え にくく、特に「電気」とことわる必要がないため、今では単 に「掃除機」と言うほうが普通になった。 でんきブラン【電気ブラン】ブランデー風の雑酒。廃語的。 明治から大正にかけて、永井荷風も入りびたったという 浅草の神谷パーで売り出し評判になった。当時は電気がま だ珍しかったため、それを冠して斬新な魅力を宣伝した命 名。 てんきぼ【点鬼簿】主として文章の中で「過去帳」の意で用 いられる漢語。〈ーに加える〉の芥川龍之介に亡くなった両 親と姉について語ったまさに『点鬼簿』と題する作品があ り、「ー」に加えた三人は皆この谷中の墓地の隅に、 しかも同じ石塔の下に彼等の骨を埋めている」という一文 がある。Q過去帳・鬼籍 てんきよ【転居】住む場所を他に移す意で、改まった会話や 文章で用いられる事務的な感じの漢語。〈ー通知〉〈ー届〉 〈ー先不明〉移転・Q転宅・引っ越し てんきよ【典拠】正しい拠りどころとなる信頼できる出典を <716> でんきれいぞう さし、改まった会話や文章に用いられる専門的で硬い漢語。 〈ーを引く〉〈きちんとーを示す〉、Q根拠・論拠 でんきれいぞうこ【電気冷蔵庫】電気の力で食品を冷やして おく機械をさし、廃語に近く感じられる古めかしい漢語。 〈当時はまだ—というものが珍しかった〉の昔、大きな氷を 入れて冷やした氷式の冷蔵庫さえ各家庭にそろっていなか ったころに、電気式の冷蔵庫が出現したため、得意げに「電 気」を冠して斬新な感じを誇ったものと思われる。電力か ら原子力に切り替えるはずはなく、また、ガス式なら「ガ ス」とことわるだろうから、現在では単に「冷蔵庫」と言っ て普通の電気式の冷蔵庫をさすのが一般的である。電気式 が普通になってからわざわざ「電気」とことわるこの語は、 氷式と区別するための誇らしい名称がまかりとおっていた 時代を連想させるため、「電気洗濯機」や「電気掃除機」以 上に古くさい響きがある。 てんくう【天空】果てしなく広がる大空をさし、主として硬 い文章に用いられる古風で美的な漢語。〈ーを翔ける〉へー 海闊〉の宮本輝の『営川』のラストシーンに、「営の大群は、 滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれ ない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、ーへーへと光彩を ぼかしながら冷たい火の粉状になって舞いあがっていた」 という夢幻の光景が描かれている。「空」でも「天」でもな い「天空」という語の品格が大きなスケールを印象づける働 きをしているように思われる。弁空・Q天 てんけい【典型】同類のうちでその本質や特徴を最もよく表 している代表例をさし、やや改まった会話や文章に用いら れる漢語。〈明治の日本人の—〉〈メロドラマの—〉〈—的な娯楽番組〉〈—的な例〉〈溪谷美の—〉野間宏の暗い絵』に「奴は、一歩前進二歩退却のだよ」とある。象徴・シンボル・Q代表・標本・見本・モデル てんこう【天候】一定期間の天気の状態をさし、少し改まっ た会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈不順〉 〈ーに恵まれる〉〈ーが定まらない〉〈悪ーに見舞われる〉 永井荷風の『瀾東綺譚』に「季節とーとに注意し」とある。 もっぱら晴雨を問題にする「天気」に対して、この語は天気 のほか気温・湿度・風などを含めた総合的な状態をさす。 時候・空模様・天気 てんこう【転向】思想・態度・立場・職業・嗜好なとがすか り別方向に転ずる意で、やや改まった会話や文章に用いら れる、いくぶん専門的な感じの漢語。〈文学〉〈共産主義 からーする〉〈スポーツ選手から俳優にーする〉転換・Q転 身 てんごく【天国】キリスト教で、空のはるか上の天にある神 の支配する国をさして、会話にも文章にも使われる漢語。 〈ーに召される〉〈ーで結ばれる〉〈ーの母が見守る〉の「地 獄」と対立し、善人が死後に行くとされる悲しみも苦しみ もない永遠の命の楽園。「この世の」「野鳥の」のよう に、比喻的に、苦難のない理想的な環境をさすこともあり、 「歩行者」のように気楽に使う。Q極楽・バラダイス・楽園 でんごん【伝言】「ことがて」の意で会話にも文章にも使われ る漢語。〈ー板〉〈ーを残す〉〈ーを届ける〉谷崎潤一郎の 『細雪』に「品物だけ置いて、ーをして帰って来た」とある。 <717> ひことづけ・ことづて・メッセージ す漢語。くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常語。〈音楽の—〉〈ゴルフの—〉の小林秀雄の『モオツァ ルト』に「どんな音楽の—も、この様な驚くべき経験を語っ たものはない」とある。主として学問的な分野に限られる 「秀才」と比較すると、はるかに範囲が広く、遊びでも運転 でも予測などにも使え、「言い訳の—」「サポることにかけ てはーだ」などと悪いことにも使える。同じ学問的な分野 で比べると、秀才よりもさらにずば抜けた存在として位置 づけられる。「秀才」が達成度を問題にしているのに対し て、「天才」は持って生まれた才能に重点がある。ひ秀才・俊 才 でんさんき【電算機】漢語「電子計算機」の略称で、会話で も時折用いられるが、字数が少なくて済む関係で文章中に しばしば用いられる。〈ーを稼動させる〉、ひコンピュータ・コ ンピューター・Q電子計算機 てんし【天子】天の子という発想で特に天皇をさし、会話に も文章にも使われる古風な漢語。〈ー様〉〈ーに即位する〉 匕王・王様・君主・皇帝・国王・大王・帝王・Q天皇・帝 てんじ【展示】芸術作品や研究の成果などを並べて一般の 人々に見せる意で、会話にも文章にも使われる漢語。へー即 売会)掲示・Q展覧会・博覧・表示 てんじかい【展示会】学校や企業あるいは趣味の集まりなど の組織が作品などを外部に知らせる目的で開く催しをさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈新型車の—〉〈生徒作品 てんしゅどう のーを計画する)「展覧会」より素人作品に近い雰囲気が 濃い。「展示即売会」のように宣伝販売するものや、仲間同 士のごく小規模なものも含めて広く使われる。展観会・展 覧会・博覧会・Q発表会 てんしき【転失気】「屁」を意味する昔の医者の隠語。〈時に ーはありますかな〉落語の題にある。おなら・屁 でんしけいさんき【電子計算機】電子回路を用いて複雑な計 算や記憶・判断・制御などを高速で行う機械をさす漢語で、 正式な感じのする最もオーソドックスな呼称。〈大型のーを 導入する〉の日常会話では「コンピューター」が多用され、 改まった文章でこの語が用いられる傾向にある。コンピュ ータ・Qコンピューター・電算機 てんしゃ【転写】文書などをほかの紙にそっくり書き写す意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。文献をー する〉の「コピー」や「複写」と違い、手作業を連想しやす い。Q写し・コピー・複写 でんしゃ【電車】電気の力で軌道上を走る車両をさし、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常漢語。〈路面 ー〉〈通勤ー〉〈満員ー〉〈一の運転間隔〉佐多稲子の『く れない』に「小さな箱のようなー」とある。蒸気機関車で牽 引ばする「汽車」に対して電気の力で走る列車のすべてを さすが、日常会話では、そのうち長距離列車は「列車」と呼 び、通勤電車のような短距離のものだけをさす場合もある。 弔汽車・Q列車 てんしゅどう【天主堂】カトリック教会の建物をさし、会話 にも文章に为使われる古風な漢語。〈大浦—〉ヒカテドラル・ <718> てんしん 教会·教会堂·聖堂·大聖堂·チペル·Q礼拝堂 てんしん【転身】身分・職業・生活などが大きく変わる意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈野球選手からゴルファー にーする〉〈思い切ったーを図る〉弔転換・Q転向 ぐんしんばしら【電信柱】「電柱」をさし、会話にも文章にも 使われる古風な表現。へーの影が長く伸びる》井伏鱒二の 『夜ふけと梅の花』に「全く突然、暗がりのーのかげから一 人の男がよろめき出た」とある。専電柱 てんしらんまん【天真爛漫】性格や行為などに偽りも飾り 気も気兼ねもなく自然のままである意で、会話にも文章に も使われる漢語。「に育った子供」(にふるまう)は純 情・純真・天衣無縫・Q無邪気 てんせい【天性】生まれつきの意で、会話でも文章でも使わ れる漢語。〈一の美質〉体の柔軟さは一のものがある) 福永武彦の『草の花』に一の器用さが手術台に向った場合 のメスのきばきにも如実に現れて」とある。毎天成 てんせい【天成】自然にできあがっているの意で、主に文章 に用いる古風な漢語。〈一の美〉〈一の要塞〉〈一の良港〉 芥川龍之介の『侏儒の言葉』に「一のデマゴオグを持たない 限り、発し得ない名言」とある。ひ天性 でんせつ【伝説】確証はないが昔から人々の間で言い伝えら れてきた話をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈浦島 ー〉〈上の人物〉〈松の大木にまつわる〉②「言い伝え」 と違いある程度まとまった話だけをさし、「民話」「昔話」 より特定の土地や時代や人物にまつわる話が目立つ。また、 現代の著名人に関する珍しい逸話を、信じがたい気持ちで こう呼ぶこともあり、「的な大喧嘩」「的な名演技」 「驚異的な記録で新たなーを作る」などとする派生的な用法 も目に入る。井伏鱒二は『休憩時間』で「大木というもの は、その附近いったいに起ったーや挿話を真実らしく思い こませがちなのである」と書き、噂の信憑れな性をうやむや にする。Q言い伝え・民話・昔話② でんせん【伝染】病原菌が他に移って同じ症状を呈する意で、 会話にも文章にも広く使われる漢語。〈空気—〉〈病気が— する〉の「感染」と違い、病気を中心に考えた表現。「あく びが—する」「悪習が—する」のように、単に同様の現象が 生ずる際にも比喻的に用いられる。単に同様の現象が でんせんびよう【伝染病】感染症の旧称で、今でも会話や文 章に使われる漢語。〈法定—〉〈一の一つに数えられる〉 疫病・Q感染症・流行り病・流行病 てんたい【天体】太陽・月・星・地球など宇宙空間に存在する物 体の総称として、学術的な会話や文章に用いられる専門的 な漢語。〈望遠鏡〉〈一の運行〉〈一を観測する〉日常会 話では「星」という。 てんたく【転宅】「転居」の意で、主として文章で用いられる やや古風な漢語。ヘこのたび空気のいい郊外にーいたしま した》移転・転居・引っ越し でんたつ【伝達】意志や指示内容・連絡事項などを伝える意 で、改まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。〈一事 項〉〈手段〉〈情報を—する〉〈ーを受ける〉〈ーが遅れ る〉〈本部からの指示を—する〉乃知らせる・通達・通知・告げ る・Q伝える <719> でんちく【電蓄】「電気蓄音機」の短縮形。廃語に近い古めか しい語。〈昔のーを飾り物に据える〉ひ蓄音機 でんちゅう【電柱】電線や電話線を架け渡すための柱をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈道端の—〉へ—の陰にな る)坪田譲治の『風の中の子供』に「—のような木の幹」 という比喻表現の例がある。専電信柱 てんで「まるっきり」の意で、くだけた会話に使われる俗っ ぼい和語。へー問題にならない〉〈相手のことなんかー考え ない〉へー相手にされない〉い一向に・からきし・からっきし・さ っぽり②・全然・Qちっとも・全く・まるっきり・まるで① てんてき【点滴】「しずく」特に雨垂れなどの水の滴りをさ し、文章中に用いられる古風で硬い漢語。「石を穿つ ⑫井伏鱒二にまさに『点滴』と題する太宰治を悼む鎭魂歌 があるが、本文では「しずく」「したたり」を用い、この語 は出てこない。古井由吉の『息災』に「右腕にーの針を立て られ」とあるように、現在はむしろ「「注射」の略として使 うために病院を連想させ、その場合は古風さも硬い感じも ない。ひしずく・Qしたたり・水滴 てんとう【転(顚)倒】ひっくり返る意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈事故〉(人込みで押されてーす る)本来、物事の方向や順序などが逆になる意であるた め、「転ぶ」より激しく倒れる感じがあり、手や膝を突く程 度でなく横倒しや仰向けに倒れる連想があるほか、主客 てんとう店頭店の内部の外に面した場所をさし、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈販売〉《新商品が ーに並ぶ〉〈一の飾りつけ〉店先 てんにめされる 「本末」のような抽象化した用法もある。転 でんとう【伝統】同じ民族や社会において昔から受け継がれ てきたしきたり・風俗・文化などをさし、会話にも文章にも 使われる漢語。〈ー芸能〉〈ー校〉〈長いーを誇る〉〈歌舞伎 のーを守る〉〈日本のーを重んじる〉佐藤春夫の『田園の 憂鬱』に「貴金属の鉱脈のような一脈のー」とある。乃歴史 でんとう【電灯【燈】電気照明器具をさし、改まった会話や 文章で用いられる漢語。〈ーの明かり〉〈ーの光で照らされ る〉の梶井基次郎の『檸檬』に「店頭に点けられた幾つもの ーが驟雨のように浴せかける絢爛」とある。日常会話で使 うと取り澄ました感じになって少々ぎこちないので、通常 「電気」と言う。乃電気 でんどう【伝道】キリスト教で救世主イエス・キリストの福音 を広く知らせることをさし、会話にも文章にも使われる漢 語。〈一師〉〈キリスト教のーに生涯を捧げる〉ひQ宣教・布 教 てんにめされる【天に召される】「死ぬ」意を表すキリスト教 的な雰囲気の美的な間接表現。死を忌気持ちから、天 上の神に召されて魂が昇天するという美的な解釈を前面に 押し出した婉曲表現。勇敢え無くなるとがる②あの世に行 く息が切れる息が絶える息を引き取る往くいけなくなる永 眠往生お隠れになる落ちる②おめでたくなる帰ぬ人となる くたばる死去死ぬ死亡昇天逝去斃れる他界長逝露と消え る亡くなる儚くなる不帰の客となる不幸がある崩御没す る・Q仏になる身罷る脈が上がる空しくなる藻屑となる逝 く臨死臨終 <720> てんねん てんねん【天然】「自然」とほぼ同義で、会話にも文章にも使 われる、やや古風な漢語。〈ガス〉〈記念物〉〈の美〉 回天から与えられたままに存在するという発想の語。「 パーマ」「ぼけ」のように、俗に「生まれつき」の意でも 使う。ひ自然 てんねんしょくえいが【天然色映画】「カラー映画」の意で、 廃語に近い古めかしい語。ごく初期の不自然な着色に対 して本格的な色彩映画であることを宣伝するねらいがあっ たと思われる。Qカラー映画・総天然色映画 てんねんすい【天然水】自然の環境で採取した水をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈富士山麓の—〉〈—で茶を 淹れる〉ひミネラルウォーター てんのう【天皇】天に代わって一国を統治する王という意味 合いで、特に日本の場合をさし、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる漢語。〈ー制〉〈ー家〉〈ー陛下〉〈ー 誕生日〉〈ーに即位する〉現代日本では国民統合の象徴と される。専王・王様・君主・皇帝・国王・大王・帝王・天子・Q帝 でんばた【田畑(島)田と畑の総称として、会話にも文章に も使われる古めかしい表現。〈田地—〉〈先祖伝来のーを手 放す〉収穫という機能に意識の重点のある「たはた」に比 べ、同じものを土地という点に意識を置いて言うときに用 いる傾向がある。耒耕地・Qたはた・田圃・農場・農地 でんぶ【臀部】尻の意で、改まった文章に用いられる正式な 感じの硬い漢語。〈ーに衝撃がある〉ひけつ・Q尻 てんぼ【店舗】店として品物を並べるための建物をさし、改 まった会話や文章に用いられる専門的な感じの硬い漢語。 〈貸し〉〈大通りに独立したーを構える〉井伏鱒二の 『珍品堂主人』に「ーを持たないで骨董商を営んでいる女」 とある。「店」は大小さまざまだが、この語はある程度以上 の規模を連想させ、「ちっぽけなー」「ちゃちなー」のよう な表現には違和感が伴う。ひ商店・Q店 てんぼう【展望】遠くまで見渡す意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈車〉〈台〉〈が開ける〉庄野潤三の 『ブールサイド小景』に「校舎を出外れて不意にひらけたー」 とある。「長期的ー」「学界ー」などと抽象的な意味での見 渡しをさす比喻的用法もある。ひ眺望・見晴らし てんめい【天命】人の力では如何ふともしがたい運・不運の現 象をさして、改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。 〈人事を尽くしてーを待つ〉の「天の命令」という発想から。 「ーを知る」「ーが尽きる」のように、天から授けられた命 をさす用法もある。込運・運勢・運命・宿命・天運・回り合わせ・Q 命運・巡り合わせ てんもんがくてき【天文学的】会話でも文章でも使われる、 巨犬な数字の象徴的な表現。〈一な数値に達する〉〈一な頦 に上る〉の尾崎一雄の『虫のいろいろ』に父と娘が宇宙の広 さについて話し合う場面がある。父親は地球から最も遠い 星雲までの距離を二億五千万光年という仮説を持ち出し、 まず娘に一光年をキロに換算させる。それだけで「うわ、 ゼロが紙からハミ出しちゃった」と驚く娘に「そいつを二儀 五千万倍してくれ」と追加注文すると、娘は「そんなー教 字、困る」とつぶやき、「何だか、ぽおッとして、悲しくな っちゃう」と鉛筆を放り出す。「天文学的」ということばは、 <721> とある 「人間の頭で実感がわかないほど巨大な」といった意味合い で使われるが、同時に、天文学を想定して成立したという 語源的な雰囲気を漂わせている。だからこそ父親は「だっ て、これ、天文学だぜ」と応じる。論理よりも語感の面から 用法を限定する一例といえるだろう。 てんらく【転(顕)落】転げ落ちる意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈事故〉〈屋根からーする〉②「首位からー する」のように、高い地位から滑り落ちる意にも、「大会社 の社長からその日の食事も儘まならない境遇へとーする」の ように、身分や財産を失う意にも、「の一途をたどる」の ように、身を持ち崩して堕落する意にも用いる比喻的な用 法も多い。おちぶれる・落ちる①・Q凋落は・没落・落魄も、雲落 てんらんかい【展覧会】美術品や工芸品などを陳列して見せ る催しの意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の漢語。〈絵のー〉へに出品する〉へが開かれ る)展観会・Q展示会・博覧会・発表会 と と【戸】家や部屋の出入り口や窓に取り付けて開閉する板状 の建具の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の基本的な和語。〈雨—〉〈格子—〉〈—が開く〉 〈—を閉める〉〈—の滑りが悪い〉引き戸や開き戸などが ある。ヒドア・Q扉 ど【度】同じことを繰り返す回数をさして、会話にも文章に も広く使われる漢語。「一」で覚える〉〈もう一行きた い〉〈同じことばを二ーずつ発音する〉「遍」はもちろん 「回」よりも若干改まった感じで、類義語中で最も標準的な 語。Q回・度・遍 ドア洋風の開き戸をさして、くだけた会話から硬い文章ま で幅広く使われる日常の外来語。〈ー越しに呼ぶ〉〈ーをノ ックする〉〈ーがきしむ〉戸板をあおるだけでなく、回転 式のものもある。「自動」の場合は引き戸式もある。 戸・扉 どあい【度合い】物事の程度の意で、会話にも文章にも使わ れる、やや古風な表現。〈ーを計る〉〈発達のー〉〈緊張のー が違う〉はQ程度・程① とある たまたま通り合わせた場所や建物をさし、主に文章 中に用いられる古風で趣のある和語。〈街角〉〈日本橋の 店〉〈古い城下町の横町で〉偶然の出合いというちょ っとした感動をこめて使う表現であり、予定していた場所 <722> とい や人の移動に関係のない建物などには用いない。Q或る・ 然 という【問い】質問の意で、改まった会話や文章に用いられる 硬い感じの和語。〈ーを発する〉〈ーに正しく答える〉〈永 遠のー〉の「次の文章を読んであとのーに答えよ」のよう に、試験の問題すなわち設問の意でよく使う。福原麟太郎 の『交友について』に「人は、本当に親しい友人というもの を持っているものであろうか。そういうーを、私は時に、 自分にかけてみることがある。何だか私には一人もないよ うな気がする」とある。ひ質問 という列挙した名詞をまとめる際に用いる連語で、会話に も文章にも広く使われる。〈富士山や浅間山や鳥海山—山 はよく知られている)「といった」に比べ、それ以外に類 例があるという含みが弱く、時にはそれですべてという場 合もある。ひといった といき【吐息】溜め息の意で、改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。〈青息—〉へーをもらす弁伏鱈二の 『多甚古村』に「酒のみの焦げつくようなーを好かない」と ある。「ため息」と違い、感嘆の場合は使わない。弁伏鱈二の 嘆息 といった列挙した名詞をまとめる際に用いる連語で、会話 にも文章にも広く使われる。〈仙台、静岡、熊本、高松—県 庁所在地〉の「という」に比べ、それ以外に類例があるとい う含みが大きく、表現されたのが代表か典型か一例かは明 確でないが、ともかく全体の一部であるという感じになる。 ひという 「便所」の意味で現在最も普通に幅広く使われている 日常語。〈一に入る〉〈一に立つ〉「化粧室」を意味する英 語「トイレット・ルーム」を単に「トイレット」として「便 所」の意味で借用したものをさらに短縮してできた語形。 「便所」とのつながりがますますたどりにくくなり、婉曲 いな表現として普及していった。なお、「ーを済ませる」の ように、部屋や施設ではなく、排泄が行為そのものの間接 表現としても用いられる。「手洗い」という語も同様である が、それ以上の婉曲表現である「洗面所」や「化粧室」には そのような行為をさす用法は見られない。ひおトイレ・圓 閑所・化粧室・御不浄・雪隠・洗面所・WC・手水場・手洗い・トイレッ ト・はばかり・Q便所・レストルーム トイレット一時期、間接的に「便所」をさして使うように なった英語からの外来語。外国語の場合は母国語の場合 ほど語感が働かないので不潔な印象がやわらげられる。そ のうえ、この場合は原語では「化粧」という意味なので二重 に間接的な表現となった。「化粧室」を意味する「トイレッ ト・ルーム」が間接的に「便所」をもさすようになったよう である。日本語として発音するには長すぎるために、肝腎 の「ルーム」の部分を省略し、単に「トイレット」として借 用したために、よけい婉曲を表現になった。それでも長 すぎると感じた日本人はさらに「トイレ」と短縮し、以後そ の形で普及することになる。おトイレ・廁や・閑所・化粧室・御 不浄・雪隠・洗面所・WC・手水場・手洗い・トイレ・はばかり・Q便所・ レストルーム とう【問う】「尋ねる」の意で、主として硬い文章で用いられ <723> る、改まった感じのやや古風な和語。〈地名の由来を—〉 〈存在の意義を—〉〈社長の責任を—〉⑩永井荷風の『澀東 綺譚』に「恐らくは—に及ばぬことであろう」とある。 く・Q尋ねる とう【塔】細くて高く聳え立つ建造物をさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈鉄—〉〈管制—〉〈五重—〉 先端が見える)近松秋江の『黒髪』に「東山は白い霧に包 まれて清水の—が音羽山の中腹に夢のように浮んで見え る」とある。タワー とう【疾う】会話などで「ずっと以前」の意で使われる古風 な和語。「ーからわかっていた〉(ーの昔に亡くなっている) の「早い」の意の「疾し」の音便形。小津安二郎の映画『戸 田家の兄妹』の中で和子(三宅邦子)が、子供が一人で寝る ようになったかと聞かれ、「ええ、もうーから」と答えてい る。この「ーから」や別項「とうに」の形はまだ使われるこ とがあるが、現代なら「とっくに」となるのが自然で、今で は古めかしい響きがある。ひとっく どう「如何に」の意で、会話や硬くない文章に使われる和語。 〈僕等はーしたらいいんだ?〉〈ー頑張っても無理だ〉いか に・Qどのように・どんなに どう【胴】人間や動物の体のうち頭と手足を除いた部分の総 称として、会話にも文章にも使われる日常の漢語。へーまわ りを測る〉へーの長い犬》幸田文の『流れる』に「ーはわ りあいにずぼらんと太い」とある。「ー上げ」の場合は手脚 もついでに上がるが、持ち上げる箇所の重点は胴の部分に ある。胴体 とうか どうい【同意】他人の意見や行為に賛成し承諾する意で、会 話にも文章にも使われる日常の和語。〈すでにーを得てい る〉〈保護者のーが必要〉〈ーを取り付ける〉ひQ賛成・賛同 どうい【胴囲】胴の周囲の意で、多く服飾関係で使われる、 やや専門的な漢語。〈ーの寸法を採る〉ひウエスト・Q胴回り どういう「いかなる」の意で、会話やさほど硬くない文章に 使われる日常の表現。〈いったいーつもりだ〉〈ーわけでそ う急ぐのだ〉の「どのような」より会話的で、「どんな」ほ どくだけないレベルのことば。ひいかなる・どのような・Qどん な どういご【同意語】「同義語」に同じ。Q同義語・類意語・類義 語 とういつ【統一】いくつかに分かれている具体的または抽象 的なものを一つの組織や系統のもとにまとめる意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈一見解〉〈意思ーがとれてい ない〉〈国をーする〉〈組織をーする〉②「統合」に比べ、一 つのまとまりとして機能するところに重点がある。乃統合 どういつ【同一】「同じ」の意で、改まった会話や文章に用い られる硬い感じの漢語。〈人物〉〈一の条件を備える〉 〈本社とまったくーの待遇を与える〉及Q同じ・おんなし・おん なじ・同様・等しい とうか【灯燈火】電灯、古くは蠟燭の明かりをさし、主 に文章中に用いられる古風で硬い漢語。〈一管制〉〈無一運 転〉〈一を点ずる〉〈窓から一がもれる〉梶井基次郎の 『器楽的幻覚』に「一を赤く反映している夜空」とある。手 紙では、夜長で読書に適した秋の意。「一親しむべき候」と <724> どうか いう慣用的な時候の挨拶がある。Qあかり・照明・ともし火 灯・ライト どうか「どうぞ」に近い意味合いで使う和語。「どうぞ」よ りいくらか口頭語的なレベルで、懇願する意味合いが強い。 へーお助けください〉〈ー命が助かりますように〉宮沢賢 治の『注文の多い料理店』に「帽子と外套をおとり下さ い」とある。映画監督の小津安二郎は尊敬する作家の志賀 直哉からもらった手紙の最後に「遊びに来てくれ給え」と 書いてあったのを見て、「どうぞ」でなく「どうか」という ことばを選んだところに、ぜひいらっしゃいという志賀さ んの気持ちがこもっていると喜んだという。ちなみに、不 祥事を起こして社長が交代した折、老舗割烹の新社長 は「よろしくお願いします」と「どうか」という語を選ん で挨拶した。「どうぞ」にすると新規開店の挨拶に近くな り、平身低頭という感じが出ないのかもしれない。どうぞ どうが【動画】「アニメーション」の訳語として会話にも文章 にも使われるやや専門的な漢語。〈ーの製作に携わる〉単 に動きのある映像をさし、「静止画(像)」と対立する用法も ある。ひアニメ・アニメーション・劇画 とうかん【等閑】「なおざり」の意で、主に文章に用いられる やや古風な漢語。〈ー視する〉〈ーに付す〉ひおろそか・Qなお ざり・ゆるがせ どうかん【同感】その人と同じように思う意で、会話にも文 章にも使われる漢語。まったくだ《その意見にーす る》国木田独歩の『武蔵野』に「多分の人も少なからぬ ことと思う」とある。感じることと考えることの総体。 共感·共鳴·Q賛成·賛同·同意 どうがん【童顔】子供っぽいあどけない顔の意で、会話にも 文章にも使われる漢語。へーのせいで若く見える〉へーをほ ころばせる〉のその人間の子供時分の顔というより、一般 に子供のような顔立ちの大人の顔についてよく使う。谷崎 潤一郎の『蘆刈』に「という方の円いかおだち」で「ぼう っと煙っているような」女性が登場する。り幼顔 とうき【冬季】冬の季節の意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈オリンピック競技〉専冬期 とうき【冬期】冬の時期の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈休業〉〈限定の品〉単冬季 とうき【投棄】投げ棄ててそのままにする意で、主に文章中 に用いる専門的な硬い漢語。〈不法—〉、Q捨てる・投げ出す・ 放棄 とうき【陶器】陶土などで形を作って素焼きにし、釉薬がふぐを かけて焼いた器をさし、改まった会話や文章に用いられる、 やや専門的な漢語。「の酒器」へ「でできた飾り物」磁 器より焼く温度が低く、不透明で比較的軟らかく若干の吸 水性がある。薩摩焼や萩焼など。夏目漱石の『坊っちゃん』 に、「おれは江戸っ子だから、の事を瀬戸物というのかと 思って居た」とあるように、磁器との区別が意識されず、こ の語で陶磁器全体をさすこともある。かわらけ・Q磁器・瀬 戸物・陶磁器・土器・焼き物 とうき【登記】私法上の権利に関する事項を公示するために 登記簿に記載することをさし、会話にも文章にも使われる やや専門的な漢語。〈所〉〈不動産〉〈購入した土地の <725> ーを済ませる)登載・Q登録 とうぎ【討議】あるテーマに基づき、何人かが意見をぶつけ 合って何らかの結論に達することをめざす意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈資料〉〈慎重にーを 重ねる〉の「議論」や「討論」に比べ、「活発なーを経て決 定する」といった用例に見られるように、論じ合うだけでな く結論や方向づけを得たい場合によく使う。ひ議論・ディスカ ッション・Q討論・論議 どうき【動悸】平常より激しい鼓動をさして、会話にも文章 にも使われる漢語。〈ーがする〉へーが激しい〉へーを抑え る〉の伊藤整の『氾濫』に「左の肋骨に軽くつき当るような ーを打っていた」とある。異常さを不快に感じて発するこ とば。Q鼓動・脈・脈搏 どうぎご【同義語】何を指し示すかという点でまったく差の ない二つ以上の語の関係をさし、学術的な話題の会話や文 章に用いられる専門的な漢語。「あした」と「あす」と「み ようにち」は「だ〉「だが語感が違う」の「教師」と「教 員」、「めし」と「ごはん」と「ライス」のような同義語の間 でも、文体的なレベルや丁寧さや斬新さや連想など、語感 に何らかの差がある。Q同意語・類意語・類義語 とうきゆう【等級】優劣の程度を示す段階の意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ーをつける〉〈ーが下がる〉 ラス・Qグレード・ランキング・ランク とうきゅう【撞球】「ビリヤード」の旧称。〈街の—場〉玉突 き・Qビリヤード どうきゅうせい【同級生】学校で同じ学級に属する人をさし とうけい くだけた会話から文章まで幅広く使われる漢語。〈中学時代 のー〉へーのよしみで貸してやる〉は級友・Qクラスメート どうきん【同衾】文章で間接的に「性交」を意味する古めか しい漢語。〈初めてーする〉②基本的には、一つの布団に二 人で寝る意。そこから、男女が一緒に寝る意に特定され、 そこに含みとして体の交わりという意味が呼び起こされる、 という構造の婉曲表現。「共寝」と同じ発想だが、もう 少し硬い感じの語。冴営み・エッチ・関係②・合歓・交合・交接・情 交・情を通じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・ 契る・共寝・寝る②・懇ろになる・ファック・深い仲になる・房事・枕を 交わす・交わる・やる③・夜伽 どうぐ【道具】何かをしたり物を作ったりするために使う物 の総称として、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の基本的な漢語。〈茶—〉〈嫁入り—〉〈ーを買い そろえる〉〈ーだけは立派だ〉②主に手で扱う簡単な構造の 物を連想させる。林房雄の『青年』に「家財ーを山のように 積みのせた馬車と荷車の列」とある。「用具」と違い、「こ とばは伝達のーだ」のように「手段」の意にも使う。Q器 具・機具・用具・用品 ぐうくつ【洞窟】崖や大きな岩にできた空洞をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈ーにひそむ〉へーの中に住む〉 の「ほらあな」のうち特に大きなものを連想させやすい。 ほら・Q洞穴はな とうけい【統計】母集団の現象を数量的に表示することをき し、会話にも文章にも使われるいくぶん専門的な漢語。へー 学〉へー処理〉へーをとる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に <726> どうけい 「今日は何人客があって、泊りが何人、女が何人と色々な」 を示すのには驚いた」とある。LJ集計 どうけい【憧憬】あこがれの意で主に文章中に用いられる漢 語。〈一の的〉〈一を抱く〉本来は「しょうけい」と読む。 新しい常用漢字表には「憧」「憬」とも入り、「憧」の音は 「ショウ」で採用された。りあこがれ・Qしょうけい とうけん【刀剣】片刃の刀と諸刃の剣の総称として、改ま った会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。「類を所有 する」(ーを鑑定する)木山捷平の『大陸の細道』に「 をとり出すと、子供に飴玉でも与えるように逸見の手にわ たした」とある。ひQ刀・剣・つるぎ とうこう【投降】敵軍に対して自ら降伏の意思を示す意で、 主に文章中に用いられる硬い漢語。〈兵〉《抵抗を放棄し て敵にーする》単降参・Q降伏 とうごう【統合】二つ以上の組織や建物などを一つにまとめ る意で、改まった会話や文章に用いられるやや硬い感じの 漢語。〈町や村を一つの市に—する〉〈会社を—する〉 「統一」に比べ、複数のものを合わせるところに重点があ る。なお、天皇は日本国憲法で「日本国および日本国民— の象徴」とされる。ふ統一 ぞうこう【瞳孔】眼球中央の虹彩に囲まれた穴の意で、学 術的な会話や文章に用いられる医学の専門的な漢語。へー反 射〈ーが開く〉黒目・Q瞳 どうこく【慟哭】悲しみに耐え切れずに身を震わせ激しく号 泣する意で、主として文章に用いられる硬い漢語。母の訃 報にーする〈遺体にすがってーする〉堀田善衛の『鬼無 鬼島」に「涙を拭っては、く、く、く、とーした」とある。 大声を出すイメージの「号泣」と比べ、身もだえするような 連想が働く。号泣・Q号哭 とうこん【闘魂】あくまで闘おうとする激しい気持ちの意で、 主として文章に用いられる硬い漢語。〈不屈の—〉〈一がた ぎる〉〈激しいーを燃え立たせる〉Q闘志・闘争心・ファイト とうざ【当座】事が起こってしばらくの間の意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ーはどうなることかと思った〉 〈一の生活費〉〈一しのぎにはなる〉〈上京したーは右も左 もわからず〉二葉亭四迷の『平凡』に「ポチの殺されたー は、私は食が細って痩せた程だった」とある。巻し当たり・ Q当面・ひとまず どうさ【動作】行動における体の動きの意で、会話にも文章 にも使われる日常の漢語。〈機敏な—〉〈無駄な—〉〈—が 緩慢だ〉曾野綾子の『たまゆら』に「鼻たれ子供が鼻をふ くようなーで手の甲で両方の眼をこすった」とある。一定 の目的を達成するための「行為」「行動」に比べ、そのうち の個々の動きをさすイメージがあり、無意識の動きの場合 をも含む。行い・活動①・行為・Q行動・ふるまい とうさい【搭載】車輛や船舶、特に航空機に資材などを積み 込む意で、改まった会話や文章に用いられる専門的な硬い 漢語。ヘミサイルー機〉(船に貨物を—する)Q積載・積み 込む・積む とうさい【登載】必要事項を帳簿・台帳に、文章を新聞・雑誌 に載せる意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。 〈紳士録にーされる〉Q揭載・登記・登録・載せる <727> とうさく【倒錯】ひっくり返って通常と逆になる意で、主に 文章中に用いられる専門的な漢語。〈精神—〉〈性の—〉 大岡昇平の『俘虜記』に「他人を殺したくない」というわ れわれの嫌悪は、おそらく「自分が殺されたくない」という 願望のーしたものにほかならない」とある。異常で病的な 雰囲気を感じさせる。刂逆・逆さ・逆さま・反対 どうさつ【洞察】物事の本質や動向を見抜く意で、改まった 会話や文章に用いられる、やや硬い感じの漢語。深い 力)「が鋭い」今後の社会構造を「する」論理的な思 考の積み重ねが基本にあり、「感知」「察知」のような瞬間 的なイメージはない。本来は「とうさつ」という。夢感知 察知・推察・Q見抜く とうさん【倒産】資産を使い果たして企業がつぶれる意とし て、会話にも文章にも使われる漢語。〈計画—〉〈会社が— に追い込まれる〉〈不景気で中小企業の—が相次ぐ〉「破 産」と違って個人には用いない。某出版社の倒産直後、家庭 で子供から同音語「父さん」と呼ばれるたびにどきりとし たという編集者の実話がある。も破産 とうさん【父さん】「お父さん」のよりくだけた親密な表現と して、主に会話に使われる古風な和語。「の肩たたきをす る」「ととさん」の転。「母さん」と対立。お父様・Qお 父さん・お父ちゃん・男親・親父・父・父上・父親・父ちゃん・パッパ・パ パ とうし【凍死】凍えて死ぬ意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈雪の中で道に迷いーする〉専凍え死に とうし【投資】事業や株券・債券の取得などに資金を投入する とうじっ ことをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈一家〉〈信託〉〈公共〉〈設備〉〈IT産業に〉する〉出資 とうし【闘志】闘おうとする強い意気込みの意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ー満々〉〈ーを燃やす〉〈ーをか き立てる〉の富田常雄の『姿三四郎』に「殺気とーに包まれ て、触るれば火を発しそう」とある。Q闘魂・闘争心・ファイ ト とうじ【当時】過去のある時期をさし、会話にも文章にも使 われる日常の漢語。〈創立—の建物〉〈—の面影を残す〉 〈—としては斬新な服装〉〈—の世相を回顧する〉〈あの— はまだ木造の校舎だった〉福原麟太郎の『この世に生きる こと』に「(夏目漱石の亡くなった)—の新聞の切りぬきなど 今も持っている」とある。「往時」より日常的で懐旧の情に 浸る感じも薄い。刂往時 どうし【同志】自分と同じ主義や志を持つ人をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈ーを募る〉〈ーを糾合する〉 〈ーを裏切る〉の島崎藤村の『破戒』に「ーの者ばかり集ま って、一致して教育事業をやるんででもなけりゃあ」とあ る。単一味・友達・Q仲間 とうじき【陶磁器】陶器と磁器の総称として、やや改まった 感じの会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。「の 食器〉〈一製の置物〉特に会話での日常語としては「せと もの」と言うほうが一般的。かわらけ・磁器・Q瀬戸物・陶器・ 土器・焼き物 とうじつ【当日】あることの行われる丁度その日をさし、会 話にも文章にも使われる漢語。〈一券〉〈結婚式のー〉〈一 <728> どうじっ 持参されたし〉へになって変更する)単同日 どうじつ【同日】今述べたのと同じその日の意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈付で退職する〉〈 の委員会に諮る〉〈引き続き懇親会を開催する〉当日 どうして「なぜ」の意で主に会話や硬くない文章に使われる 和語。〈うまく行かないんだろう〉〈きょうは休んだ の?〉の「なぜ」より会話的で、「なんで」よりは改まった 感じに響く。武者小路実篤の『友情』に「自然はこう美し いのだろう。空、海、日光、水、砂、松、美しすぎる」とい う箇所がある。また、「ところが」「大したものだ」 のように、「それどころか逆に」といったニュアンスで使う こともある。Qなぜ・なにゆえ・なんで とうしゃ【当社】自分側の「この会社」の意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。「の経営方針〉「宛て直接 ご連絡ください神社の場合も使う。自社・Q弊社 とうしゅ【投手】野球でボールを投げて打者と勝負する役の 選手をさす漢語。主として書きことばで使う。口頭ではふ つう「ピッチャー」と言う。〈先発—陣〉〈一戦〉ひピッチャー とうしょ【当初】継続する物事の最初の部分をさし、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈新婚—〉〈一の計画 では〉〈一は慣れない仕事でとまどった〉最初 どうじょう【同乗】複数の人間が同じ乗り物に同時に乗って いる意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へー 者の中に医者がいる〈社長の車にーさせてもらう〉の意図 的な場合も偶然の場合も含まれる。り相乗り・Q乗り合わせる どうじょう【同情】他人をかわいそうに感じて親身になって 思いやる意で、会話にも文章にも使われる漢語。心から する〉〈境遇にーする〉〈ーを寄せる〉〈世間のーを買う〉 〈ーを禁じえない〉〈ーの余地はない〉永井龍男の『眼』に 「二三度振り返りながら、角を曲がって行く男を、私はーの 念をもって見送った」とある。思いやる・情・情け・人情 とうしろう【藤四郎】素人の意の俗語。〈ーは引っ込んでろ〉 〈ーの出る幕じゃねえ〉「しろうと」を逆にして人名めか した語形。もとは香具師いの隠語という。アマ・アマチュア・ Q素人・ノンプロ どうしん【童心】子供の純真な心の意で、会話にも文章にも 使われる漢語。へーを傷つけるへーを利用して一儲 る」「ーに返って遊ぶ」のように、子供のような気持ちの 意で大人について使う例が多い。Q幼心・子供心 とうせい【統制】一定の意図に沿って全体を指導し制限する 意で、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。へー 経済〉〈言論—〉〈活動を—する〉〈ーを撒廃する〉↓管制・Q 規制 どうせい【同棲】正式に結婚していない男女が一緒に暮らす ことをさし、会話でも文章でも普通に使う漢語。目下 中〉〈相手と正式に結婚する〉男女二人の間柄よりも、 その生活形態に重点を置く言い方。今日では珍しくなくな ったためにさほど話題にならず、この語は大仰な感じに響 き、いくぶん古風な感じが出始めている。内縁関係 どうせき【同席】同じ会合などに居合わせる意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈思いがけず恩師とーす <729> る〈上司もーの上で交渉に入る〉马路席 とうせん【当選】選挙や各種の軽い選抜試験などで選ばれる 意で、会話にも文章にもよく使われる漢語。〈確実〉〈一 御礼〉〈上位ーを果たす〉〈衆議院議員の選挙でーする〉 〈クイズのー者〉の「当籤」の代用としても使われる。 当籤入選 とうせん【当籤】籤に当たる意で、会話でも文章でも使われ る漢語。〈一番号〉〈一発表〉〈宝くじで二等にーする〉 「当選」で代用されることもある。当選 とうぜん【当然】道理に適っていて疑う余地のない意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈理の—〉〈—の結果〉〈— の義務〉〈勝って—、負けたら恥になる〉〈相手が怒るのは ーだ〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「何で此両人が—の義 務を免かれるのか」とある。当たり前 どうぞ相手に丁寧に頼んだり勧めたりするときに使う和 語。手紙や会話でふつうに用いる日常語で、口頭語的な 「どうか」に比べればいくらか改まった感じがある。「よ ろしく〉へーお気軽に〉へーご遠慮なく〉四川端康成の『伊 豆の踊子』に「さあー御遠慮なしにお通り下さい」とある。 人に何かを奨めるときのほか、頼む際にも用いるが、その 場合は「どうか」ほど懇願するという姿勢は強くない。ひど うか とうそうしん【闘争心】闘って相手をやっつけようと激しく 争う心の意で、会話にも文章にも使われる漢語。へーに火が つくへーをむき出しにする〉り闘魂・闘志・Qファイト とうぞく【盗賊】「泥棒」に近い意で、改まった会話や文章で 用いられる、やや大仰で古風な感じの漢語。〈団〉〈が 押し入る〉人をさし、行為だけはささない。刂窃盗・Q賊 泥棒・ぬすっとぬすびと・物盗り とうちゃく とうそつ【統率】集団をまとめて指示とおり行動させる意で、 改まった会話や文章に用いられるやや硬い感じの漢語。「 力」〈部隊を—する〉〈劇団の—者〉の「引率」に比べ、全体 が機能するようにまとめる点に中心がある。引率・Q率い る どうたい【胴体】体の真ん中の部分をさして、会話や文章に 使われる漢語。「太った」へが重い高見順の『故旧 忘れ得べき』に「は牛乳瓶のように丸く、腰のくびれが全 くといっていいほど無かった」という「ずんぺら棒の身体」 が出てくる。宇野千代の『色ざんげ』には「細いーの柔らか さは赤ん坊を抱いた時のように頼りなく哀れ」とある。人 間や動物以外に、「着陸」のように飛行機や船舶の中心部 をさすこともある。脳 とうたつ【到達】めざす場所や目標などに至り着く意で、改 まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈目標〉〈山頂 にーする〉〈ようやく結論にーする〉大岡昇平の『野火』 に「私のーしたものは、社会に対しては合理的、自己につい ては快楽的な原理であった」とある。Q達する・到着・届く とうちゃく【到着】目的地に着く意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈予定時刻〉〈空港に定時にーす る〉〈来賓のーが遅れる〉日常的な「着く」と違い、登校・ 出社・帰宅といった日常の行為について使うと大仰な感じに なり、何か事件でも発生したかのような雰囲気になりやす <730> どうちゃく い。着く どうちゃく【撞着】つじつまの合わない意で、主として硬い 感じの文章に用いられる古めかしい漢語。〈自家ー〉へー語 法〉〈論理的にいささかのーも認められない〉ひ矛盾 とうちゃん【父ちゃん】「父さん」の意で、子供などが、また は子供に向かって母親が、親しみをこめて呼ぶ、やや古風な 和語。へねえ、ー、あれ買ってよ)の子供に向かって父親自 身が自分のことをさして言うこともある。「母ちゃん」と対 立。お父様・お父さん・Qお父ちゃん・男親・親父・父・父上・父親・ 父さん・パッパ・パパ とうちょう【盗聴】他人の話を内密の手段を講じてひそかに 耳に入れ、情報を仕入れる意で、やや改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈ー器を仕掛ける〉〈電話の回線を操作し てーする〉「立ち聞き」や「盗み聞き」に比べ、組織など の公的な情報を内密に収集するために機械などを用いて不 当に探り取る感じが強く、犯罪の雰囲気が漂う。立ち聞 き・Q盗み聞き とうてい【到底】(否定的表現を伴って)「とても」の強意で会 話にも文章にも使われる漢語。「かなわない」〈ー容認で きない〉夏目漱石の「坊ちゃん」に「野だの様なのは、 馬車に乗ろうが、船に乗ろうが、凌雲閣へのろうが、ー寄り 付けたものじゃない」とある。ひとても① どうてい【道程】「道のり」の意で、主に文章に用いられる硬 い漢語。〈長く険しい—〉の事業が軌道に乗るまでの— のように抽象的な過程をさす比喩的用法もある。高村光太 郎に『道程』と題する詩集がある。行程・Q道のり とうてつ【透徹】透き通って冴えた感じの意で文章中に用い られる硬い漢語。〈ーした水の流れ〉〈ーした秋の空気〉 現代では、「玲瓏ちー」「ーした理論」のように、明晰 きちんと筋道が通っている意に使う比喩的用法のほうが多 い。Q透き通る・透明 とうてん【読点】日本語の文の途中の節の終わりなどに付け て読みやすくするための記号「」をさして、会話にも文章 にも使われる専門的な漢語。〈接統詞のあとにーを打つ〉の 日常会話では単に「てん」という。「句点」と並立。句読 点点 とうとい【尊い】尊敬すべき、大切なの意で、会話でも文章 でも使われる和語。〈|仏の教え〉〈|心がけ〉〈|犠牲と なる〉〈|命が失われる〉太宰治の『斜陽』に「学問なん かより、ひとりの処女の微笑がー」とある。Qたっとい 貴い とうとい【貴い】高貴・貴重の意で、会話でも文章でも使われ る和語。〈身分の方〉〈贈り物〉〈経験を積む〉もたっ とい・Q尊とい とうとう【到頭】「ついに」の意で、会話や軽い文章に使われ る日常の表現。〈ーやりとげた〉〈ーここまでたどり着い た〉〈ー諦めた〉四川端康成の『伊豆の踊子』に「男はー夕 方まで坐り込んでいた」とある。「ー最後まで口を割らなか った」のように、否定の状態が最後まで続く場合にも使う。 きいよいよ②・ついに どうとう【同等】程度や等級などが同じレベルにある意で やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん硬い感じ <731> の漢語。〈一の地位〉〈一の価値がある〉〈一の資格を有す る〉〈一の学力と見なす〉刂対等 どうどう【堂堂】誰はばかることなく力強くふるまう様子を さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈威風—〉〈正々—〉 〈—たる体格〉〈—とした態度〉〈—たる成績〉阿部昭の 『大いなる日』に「おやじを連れてきた時は—と表から入っ たのだが、帰る時は裏口から」とある。「白昼—と盗む」の ような例では「こそこそ」と対立。単立派 どうとく【道德】健全な社会生活を送るための人間の行動規 準をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈公衆—〉へー 教育〉へーを守る〉弁川龍之介の『侏儒の言葉』に「ーは 便宜の異名である」とある。』義理・正義感・モラル・良心・倫理 とうとぶ【尊(貴・尚)ぶ】尊敬・尊重すべき存在として大事に 思う意で、会話にも文章にも使われる和語。並々ならぬ努 力をー〉〈相手の気持ちをー〉「たっとぶ」の現代的な表 現。単める・Q敬う・崇敬・崇拝・尊敬・たっとぶ とうに【疾うに】ずっと前に、とっくの昔にの意で、会話や 硬くない文章に使われる古風な和語。〈一終わっている〉 〈一出発している〉小沼丹の『古い編上靴』に「その連中 の多くは死んだろう。濃艶な微笑を送る美女もいまは皺 だらけの婆さんだろう」とある。単に、長い時間が経過し ているだけでなく、思い込みと著しく異なるという驚きが 感じられる。すすでに・とっく どうにゅう【導入】その組織・分野・世界・作品などに導いたり 取り入れたりする意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一部〉〈外資〉〈新しいシステムをーする〉 とうひ 〈大型装置をーする〉入れる うにん【当人】話題になったり物事を行ったりする当事者 の意で、会話にも文章にも使われる漢語。へーの努力次第 へーの希望に合わせる)へーは案外平気だ)へーが言うのだ からこれほど確かなことはない)乃本人 とうはつ【頭髪】頭部の毛をさして、主に文章に用いられる 硬い感じの漢語。ふふふさしたーふーを整える)井伏 鱒二の『多甚古村』に「女のパーマネントをかけたーが縄屑 のようにもつれ」とある。髪・髪の毛・Q毛髪 とうはん【登坂】坂を登る意で、主として文章中に使われる 漢語。〈ー車線〉交通関係の用語などで時折目にふれる。 登攀 とうはん【登攀】よじ登る意で、主として文章中に使われる 硬い漢語。〈ー訓練〉〈アイガー氷壁のーに成功する〉 「とはん」とも。登坂 どうばん【銅版】銅を用いた印刷版の意で、会話でも文章で も使われる、やや専門的な漢語。小沼丹の『胡桃』に「胡 桃の新芽はなかなかいい。かっちりした精巧な画を見る ような気分がする」とある。錫板 どうばん【銅板】銅の板の意で、会話でも文章でも使われる 漢語。〈ーを張る〉錫版 とうひ【逃避】自分にとって都合の悪いものを避けて逃げる 意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へ恋の 行〈現実からーする〉北杜夫の『夜と霧の隅で』に「な んの関係もない自分の研究にーするだけではなかったか」 とある。Q逃亡・逃げる <732> どうひょう どうひよう【道標】道路の方向やその先にある町までの距離 などを示すために道端に立てる木や石の標識をさし、主に 文章に用いられる漢語。へに従って進む)単道路標識・Q道 しるべ とうひん【盗品】窃盗などにより不法に手に入れた品物の意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へーと知ら ずに買い取る〉へーを売りさばく〉及Q臓品臓物 とうぶ【頭部】頭の部分の意で、改まった会話や文章に用い られる専門的な感じの漢語。〈ーがつかえる〉②大岡昇平の 『野火』に「は蜂にされたように膨れ上っていた」とあ り、大江健三郎の『芽むしり仔撃ち』に「体操選手のように 簡潔で逞しいー」とある。① どうぶつ【動物】「植物」とともに「生物」を構成する区分、 人間・獣・鳥・虫・魚などの総称として、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈一園〉 〈脊椎〉〈草食〉〈愛護の精神〉〈一を飼う〉〈想像上 の一〉自然界では「植物」「鉱物」と対立。「一じみた人 間」のように、狭義には人間を含まない。志賀直哉の「暗夜 行路」にも「大きな一の背のような感じのするこの山の姿」 とある。ひQけだもの・けもの とうぶん【当分】これから先のある程度長い期間をさし、会 話にも文章にも使われる日常の漢語。〈これでー安心だ〉 へーの間これでしのげる〉〈ー続きそうだ〉正宗白鳥の 『入江のほとり』に「ー会えんかも知れんな」とある。 しあたり・しばらく・Q当座・当面 とうぼう【逃亡】逃げて身を隠す意で、改まった会話や文章 に使われる漢語。〈敵前—〉〈被疑者が—を企てる〉「逃げる」より大仰な表現。ひ逃げる どうまごえ【胴間声】太くてげびた調子外れの濁った声をさ し、会話にも文章にも使われる古めかしい和語。へーをふり しぼって唄う》夏目漱石の『吾輩は猫である』に「泥 棒!」と主人はーを張り上げて寝室から飛び出して来る」 とある。ひ奇声・Q蛮声・悲鳴 どうまわり【胴回り】胴囲の意で、会話や軽い文章に使われ る和語。「が太い」「胴囲」よりやわらかい感じで、い くぶん日常語的な色彩が強い。ひウエスト・Q胴囲 とうめい【透明】物体が光をそのまま通し、雲りや汚れもない状態をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈度〉〈無色〉〈なガラス〉四川端康成の『雪国』に夕闇の迫る列車の中で半ば鏡と化した窓に映る女性客を眺める場面があり、「人物は一のはかなさで、風景は夕闇のおぼろな流れで」と描いている。比喻的に「な声」など、澄んだ感じをさすやや文学的な表現もある。小林秀雄の『モオツァルト』には「無思想無性格と見えるほどーな人間」とある。 ひ透き通る どうめいひぎよう【同盟罷業】「ストライキ」の意の古めかし い言い方。へーという手段に訴える〉みスト・Qストライキ とうめん【当面】今および今後しばらくの意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる漢語。へー心配はない)の 課題は何とかクリアーできた」のように、現在直面している )裏でも使う。みQ差し当たり・当座・ひとまず どうもう【獰猛】性質が荒く乱暴な意の漢語。〈な動物〉 <733> 木山捷平の『大陸の細道』に「動物のようなーな顔をした医 者」とある。「ねいもう」と読むのは誤読。ふねいもう とうやく【投薬】患者に薬を出す意で、病院や薬局の側が用 いる専門的な漢語。〈一の処方箋〉〈患者にーを続ける〉 投与 とうよ【投与】患者に特定の薬剤を与える意で、病院や薬局 側が用いる専門的な漢語。〈抗生物質の—〉の「投薬」より 具体的・限定的な感じがある。投薬 どうよう【同様】形や種類や方法などがほとんど同じである 意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へーのや り方〉〈家族ーの間柄〉〈社員とーに扱う〉↓同じ・同一・等し い どうよう【動揺】外力を受けて起こる物体の本来でない動き や、ショックなどで心が安定を失うことをさし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈車体のーを防ぐ〉〈人心のーを招 く〉〈ーの色は隠せない〉三島由紀夫の『美德のよろめ き』に「今私は、全速力で走っていた自動車が急プレーキを かけて止まった時におきるーのようなものを感じています」 とある。ひQぐらつく・震える・ゆらぐ・ゆれる どうよう【童謡】子供が歌うのにふさわしく作った歌をさし、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈ー歌手〉へーを口 ずさむ〉広義には「わらべ歌」を含む。吉行淳之介にまさ に『童謡』と題する作品があり、「そんなもんだよ。こう いうーがあるよ」と、友人は言って、ーの一節を口に出し た」とある。呂唱歌・Qわらべ歌 どうよく【胴欲(慾)】ひどく欲が深くて不人情な意で、主と どうり して文章に用いられる硬い漢語。〈あのーさには呆れる〉 「貪欲」(とんよく)の音転に漢字をあてた語形という。 強欲・貪欲・欲深・欲張り とうらいもの【到来物】よそから贈られた物の意で、改まっ た会話などに用いられる表現。「のカステラ」「で失礼 ですが、どうぞお持ちください」「頂き物」に比べ、与え 手に対する待遇の意識は稀薄で、それだけ客観的な感じの 表現。Q頂き物・お持たせ・手土産・土産・もらい物 「道楽】①「趣味」に近い意味で、会話にも文章にも 使われるやや古風な漢語。〈食い〉〈」で骨董話に手を出 す〉〈」で身を持ち崩す〉広く骨董いじりや三味線・義太 夫なども連想され、「趣味」に比べ、和風で古風なものによ くなじむ。マイナス評価のものも含まれる感じが強い。 遊ぶ・Q趣味②酒・女・ばくちなどにはまりこんで生活を顧 みない意で、会話にも文章にも使われるやや古風な日常の 漢語。〈息子〉〈」者〉〈」の限りを尽くす〉〈」で身をほ ろぼす〉③永井荷風の『瀅東綺譚』に「中年後に覚えた は、むかしから七ッ下りの雨に譬えられている」とあり、内 田百閒の『特別阿房列車』には「」の挙げ句だとか、好きな 女に入れ揚げた穴埋めなどと云うのは性質のいい方で」と ある。「放蕩」「遊蕩」「淫蕩」よりマイナスイメージは軽 い。児淫蕩・放蕩・遊蕩 どうり【道理】物事の正しい考え方の意で、やや改まった会 話や文章に用いられる、いくぶん古風な感じの漢語。へそれ がもののだへに合わないへに外れるへをわき まえるへ論理に比べ純粋に科学的な思考・推論によ <734> とうりっ る客観的な真理だけでなく、経験的事実や人の道といった 倫理的な観点も含まれる感じが強い。Q理屈・理論・論理 とうりつ【倒立】逆立ちの意で、改まった会話や文章に用い られる、正式な感じのやや専門的な漢語。〈一運動〉〈片手 ー〉の本格的な体操競技を連想させ、子供の遊びには使い にくい感じがある。Q逆立ち・鯨立ち とうりゅう【逗留】滞在の意で、会話にも文章にも使われた いかにも古めかしい漢語。〈ー先〉〈長がーになる〉〈名所見 物のため宿屋にしばらくーする〉島崎藤村の『夜明け前』 に「旅人は最寄り最寄りの宿場にーして」とある。居留・ Q滞在・滞留 とうりよう【等量】等しい分量の意で、改まった会話や文章 に用いられる、やや専門的な感じの漢語。〈醤油に—の酒を 入れる〉の薬品の調合などでも使いそうな雰囲気があり、 「同量」より厳密な感じに響くこともある。専同量 どうりよう【同量】同じ分量の意で、やや改まった会話や文 章に用いられる硬い感じの漢語。へーの塩と砂糖を加える の「等量」に比べ、日常生活でも使い、目分量で大体同じな らよさそうな雰囲気がある。等量 どうりょう【同僚】同じ職場で働いている似たような地位の 人をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーのよしみ で〉〈会社の—と一杯やる〉吉行淳之介の『鳥獣虫魚』に 「見覚えのある人間たち、私の—の、色彩をもった人間たち」 とある。平社員から社長や専務のようなはるかに上位の人 をさすケースは考えにくいが、逆はありうる。地位や役目 の同じ人に限る使い方もある。「友達」や「仲間」と違い、 必ずしも親しい必要はない。 ひ一味・友達・Q仲間 どうろ【道路】人間や自動車などの通行のために造った道を さし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈高速—〉 〈—工事〉〈道幅の広い—〉〈—が渋滞する〉〈—際で立ち話 をする〉小沼丹の『エジプトの涙壺』に「広場に面した— に沿って、何軒かの土産物店が並んでいる」とある。人が通 ることで長い間に自然にできた道は「道路」と呼びにくい。 「道」に比べ、ある程度の規模に整備された感じが強く、門 から玄関までの間や田畑や庭などの中を通る道にはこの語 はなじまない。往還・往来・街道・街路・通路・通り・Q道 とうろく【登録】帳簿などに正式に記載する意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ー済み〉〈住民ー〉〈選手として ーする〉〈履修科目のー手続きを済ませる〉ひQ登記・登載 どうろひようしき【道路標識】交通の規制などを図案化して 一目でわかるようにした標識をさして、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈進入禁止」のー〉の「一方通行」「一時停止」「駐車禁止」などがある。JQ道標・道しるべ とうろん【討論】一定の問題をめぐり会場で何人かの人が論 じ合う意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一会〉〈政 治ー〉〈激しいーを繰り広げる〉巻議論・ディスカッション・Q討 議・論議 どうわ【童話】子供のために書いた物語をさし、会話にも文 章にも広く使われる日常の漢語。〈作家〉〈劇〉〈一の 世界〉安岡章太郎の『海辺の光景』に「黒ぐろと樹木をコ ンモリ茂らせたその島は、まるでーの絵本でも見るような、 ある典型的な眺め」とある。おとぎ話・Q児童文学・メルヘン <735> とうわく【当惑】とっさにどうしてよいかわからずにとまど う意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一顔〉 への表情を浮かべる〉〈断るに断りきれずほとほとーす る〉の原因を強く意識した感じの「迷惑」に比べ、もっぱら 困っている当人の気持ちに言及。「困惑」より急に起こり時 間も短い感じがある。谷崎潤一郎の『春琴抄』に「ちょいち ょい杯をさされるので大いにした」とある。図る・困惑・ 迷惑 とうをえた【当を得た】肝要な点をしっかり押さえたという 意味の表現。〈ー処置をくだす〉の「的を得た」は誤用。 的を射た・的を得た どえらい【ど偉い】驚くほど程度が大きい意で、俗っぽい口 頭語。〈ー話が持ち上がる〉〈ーことをしでかす〉の「えら い」が「想定外の規模」といった判断をある程度客観的に伝 えるのに対して、この語はその点を強調しながら同時に、 驚き・困惑の気持ちをこめた主観的な表現。みえらい② とおく【遠く】空間的に遠い場所をさし、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。「から通ってい る〉「で太鼓の音が聞こえる〉「に花火が見える〉「 に人家が見える〉「に出かける〉「に引っ越す〉「か ら通勤する〉「にかすむ〉川端康成の『雪国』に「二人 は果しなく「行くものの姿のように思われた」とある。 目や耳で感覚的にとらえうる範囲の対象については、「遠 方」よりこの語を多く使う傾向がある。「平安の昔」のよ うに形容詞の連用形が副詞的に時間的な大きな隔たりをさ す用法は古風な感じになりやすい。Q遠方・彼方 とおり とおざかる【遠ざかる】遠く離れてゆく意で、会話にも文章 にも使われる和語。ふるさとから」〈船が次第に」 〈雷が」〈危険が」②阿川弘之の『夜の波音』に「下り列 車の長い車輛の響きが海の音を掻き消して、山の鼻と山の 鼻との間を過ぎて行くが、それがーにつれて、波の音は又 夜の静寂さの底から湧いて来た」とある。「遠のく」に比 べ、距離が離れる点に中心がある。遠のく とおのく【遠のく】遠く去って行く意で、会話にも文章にも 使われる和語。〈足音がー〉〈雷鳴がー〉〈可能性がー〉福 原麟太郎の『金銭について』に「おやじの墓へ詣ってくれた りしたが、いつしかー・いてしまった」とある。「客足がー」 のように、接触の機会が間遠になって関係が薄れる意にも 使う。「遠ざかる」に比べ、その場所に存在しなくなる点に 中心がある。ひ遠ざかる とおまわり【遠回り】目的地まで近道をせずに逆に通常より 長い距離を行く意で、会話にも文章にも使われる日常の和 語。〈ーでも明るい道を帰る〉の「迂回」のように障害を 避ける場合だけでなく、時間が早いので景色のよい場所を 通るなど、意図的に回り道する場合も含まれ、結果として 長い距離になるところに重点がある。「ーでも確実な方法」 のように、手数のかかる意の比喻的用法もある。川端康成 の『雪国』に「はじめからただこの女がほしいだけだ、それ を例によってーしているのだ」とあるのも類例である。 迂回 とおり【通り】バスなども通るその地域での大きな道路をき し、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈バスー裏〉 <736> とおりあめ 〈目抜き〉〈に面している〉〈路地を抜けてに出る〉 〈賑やかなーにさしかかる〉四川端康成の『千羽鶴』に「そ のーは省線とほぼ直角に、東西に通っていて、ちょうど西日 を照り返していた」とある。高速道路などは含まれない雰 囲気がある。「銀座」「パリのシャンゼリゼ」など、道 路の通称の一部に使う例も多い。り往還・往来・街道・Q街路・通 路・道路・道 とおりあめ【通り雨】ひとしきり降ってすぐに上がる雨の意 で、会話にも文章にも使われる和語。へに遭う)小さな 雨雲が通りかかって通過するまでの短い間だけ局地的に雨 を降らせるもの。時雨・驟雨・Qにわか雨・村雨・夕立 とおりあわせる【通り合わせる】たまたまそこを通る意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈交通事故の現場に—〉 〈偶然—・せたお巡りさんに道を尋ねる〉の「差し掛かる」 「通りかかる」に比べ、何かが起こった場所に偶然出合わせ る感じが強い。ひさしかかる・Q通りかかる とおりいっぺん【通り一遍】形式的で誠意の感じられない意 で、会話にも文章にも使われる表現。への挨拶へのも てなし通りかかったついでに立ち寄っただけで日ごろ 付き合っている馴染 なじ でない意から。単御座なり とおりがかり【通りがかり】どこかへ行く途中にその場所を 通りかかる意で、会話にも文章にも使われる和語。へーに立 ち寄る)自分の側から言う例が多い。Q通りがけ・通りす がり・行きずり とおりかかる【通りかかる】ちょうどその場所を通る意で、 会話にも文章にも使われる日常の和語。〈店の前をーった ときに声を掛けられる〉〈祭りの山車だが宿の前を—〉小 沼丹の『猿』に「吉祥寺駅近くの空地にちっぽけな芝居小屋 が掛った。その前をー・ったので立停って眺めた」とある。 「通り合わせる」に比べ、特別な場所という感じは薄い。 Qさしかかる・通り合わせる とおりがけ【通りがけ】目的地に行くためにそこを通るつい での意で、会話にも文章にも使われる和語。へーに本屋を 覗のく自分の行為に言う例が多い。Q通りがかり・通り すがり・行きずり とおりすがり【通りすがり】たまたまそこを通っている途中 の意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。への人に 道を聞く〉へに店に立ち寄る〉道で擦れ違うような連想 が働く。阿部知二の『冬の宿』に「のタクシに乗った」と ある。通りがかり・通りがけ・行きずり とおりみち【通り道】人間や乗り物や移動性の自然現象など の通り過ぎる道筋をさし、くだけた会話から文章まで幅広 く使われる日常の和語。〈駅への—〉へにある店〉へを ふさぐ〉〈台風の—にあたる〉Q経路・路線 とおる【通る】通行・通過・合格などの意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な漢語。 〈バスがー〉〈繁華街をー〉〈火がー〉〈審査をー〉〈試験に ー〉〈理屈がー〉佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「秋の雨自 らも、遠くへ行く淋しい旅人のように、この村の上をー・り 過ぎて行く」とある。「カーテンをー・って明かりが漏れて くる」のように、透過する意で使われたり、「よくー声」の ように、遠くに届く意で使われたりする場合には、特に「透 <737> る」と書き分けることもあり、やや古風でいくらか美的な 印象を与えやすい。合格・通行 とが【咎】人から咎められる行為をさし、会話にも文章にも 使われる古風な和語。〈何のーもない人〉〈強請ゆゆのーで罰 せられる〉の罪ー」の形で使われることが多く、現在では 単独での使用は少ない。Q罪科・罪過・罪・犯罪 とかい【都会】文化交流や物資の流通の盛んな大きな都市を さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈—の喧騒込〉へ— に出る〉へ—の生活に慣れる〉へ—暮らしは性に合わない〉 水上勉の『越前竹人形』に「紅い襦袢の衿をのぞかせた女 には—の匂いがあった」とある。「田舎」と対立。「都市」よ り大きく華やかな雰囲気がある。単都市 とかす【溶かす】固まった状態のものを液状に変化させる意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 和語。〈砂糖を水に—〉〈お湯で粉を—〉「溶く」に比べ、 液体の作用で溶けた状態になるよう人間がお膳立てをする 感じが強い。ひ溶く とかた【土方】土木工事などに従事する人をさして伝統的に 用いられてきた語。職業差別の意識が感じられるとして現 在は使用を控えている。〈—仕事〉②そのような意識のしみ ついたこの語を避けて「肉体労働者」と拡大した呼称も用 いられたが、事務員も教員も労働者に含まれる現代では、 それをことさら「知的」あるいは「頭脳的」と「肉体的」と に二分するような考え方自体にやはり差別意識が映ってい る。また、「肉体労働」という呼称には頭脳を使わないという 含みが感じられて、むしろ感じが悪い。体を使って働く ときたま ことを軽視する社会の風潮に問題がある。土工 とがる【尖る】物の先の部分が細く鋭くなっている状態をさ し、会話にも文章にも使われる和語。〈先をーらせる〉 野間宏の『真空地帯』に「鼻が途中で欠けているかのように さきがー・っている」とある。ひとんがる 「時」過去・現在・未来と移る現象をさす和語。「時間」や 「時刻」に比べ、やや古風な感じの文章語。ただし、「困っ たーはお互いさま」のような形式名詞の用法の場合は、会 話でも文章でも使う一般語。〈一の経過〉〈一の首相〉〈一 はまさに春〉〈一が解決する〉〈一を刻む〉〈一を稼ぐ〉〈一 を移さず〉〈一を告げる〉安部公房の『他人の顔』に「意 味もなく、愚かしげで、通過するーがことごとく、ほこりま みれの飴細工のように思われた」とある。時間・時刻 どき【土器】素焼きの焼き物、特に、原始時代の土製の器を さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈縄文式—〉Qか わらけ・磁器・瀬戸物・陶器・陶磁器・焼き物 ときおり【時折】「時々」の意で、いくぶん改まった会話や文 章に用いられる和語。〈ーやって来る〉へ甲高い声が聞こ える〉〈雲の切れ目からー日が差す〉堀辰雄の『菜穂子』 に「林の中では、ー風がざわき過ぎて」とある。日常会話と しては「時々」のほうが一般的で、この語はいくらか文学的 な響きを感じさせる。ひ時たま・Q時々・時に・間々 ときたま【時偶】「時々」に近い意味で、主にくだけた会話に 使われる、いくらか俗っぽい和語。〈一映画を見る〉へ一顔 を見せる〉へ一人声が聞こえる程度だ〉起こる頻度が 「間々ま」よりも少ない感じがある。時折・時々・Q時に・間々 <738> どぎつい とぎつい音・色、性質や程度などが人に不快感を抱かせるほど度を越して強烈な印象を与える意で、会話や改まらない文章で使われる和語。〈色〉〈化粧〉〈表現〉〈言葉を投げる〉感じを客観的に表す「きつい」に比べ、この語は語頭の濁音の印象もあり、その点を強めるとともに不快感を添えた感じの主観性の勝った表現。太宰治の『斜陽』に「真昼の光を浴びて海が、ガラスの破片のように!・く光って」とある。「きつい」に強めの接頭辞「ど」のついた語。 ひきつい・けばけばしい・Q毒々しい どきっと 不意のことに心臓が止まりそうに驚く意で、会話 や軽い文章に使われる擬態語。〈一瞬—する〉回堀辰雄の 『美しい村』に「人影がこちらを向いて歩いてくるのを認め た。私はーして立ち止まった」とある。ひぎくっと・ぎくりと・ ぎょっと・どきりと・Qどきんと・はっと ときどき【時時】頻繁にとはいえないが、それほど長い間隔 を空けずに不定期に繰り返す場合に、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈晴れ 曇り〉〈一遊びに来る〉〈一手紙を出す〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「眼をぐるぐる廻しちゃ、おれの方を見る」 とある。頻繁さの間隔が広い。「そのーで違った趣が出る」 「一の花」「一の流行」のように、「その時その時」の意でも 使い、その場合は若干古風な感じが漂う。Q時折・時たま・ 時に・間々 ときに【時に】「時々」に近い意味で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈ーは失敗もある〉〈ー夜更かしをすることもあ る〉「時々」より頻度が少ない感じがある。「時には」の 形は日常的だが、「時に」の形はいくらか古風で文学的な雰 囲気に感じる例もある。夏目漱石の『草枕』に「は自分の 魂の居所さえ忘れて正体なくなる」とある。Q時折・時た ま・時々・間々 ときはなす【解き放す】束縛を解いて自由に行動させる意で いくぶん改まった会話や文章に使われる和語。〈綱を外して 飼い犬をー〉ひQ解放・解き放つ ときはなつ【解き放つ】「解き放す」の意で、改まった会話や 文章に用いられる和語。〈人質を—〉〈囚人を—〉の「解き 放す」に比べ、やや古風で大げさな感じがある。ひ解放・Q解 き放す ときふせる【説き伏せる】説得して従わせる意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈親をー・せて留学する〉〈社長を ー・せて事業を拡張する〉②「説得」以上に相手の抵抗を連 想させ、それだけ強引な感じもある。込説得 ときめき喜びや期待で心地よい興奮状態に入る意で、主に 文章中に用いられる詩的な和語。〈胸のーを覚える〉へあの ーはどこへ消えたのか)回心臓がドキドキする意から。宝 くじに当たったことを知った瞬間の喜びより、それによる 素晴らしい未来を想像して昂奮するほうに中心がある。 井伏鱒二の『駅前旅館』に「私の胸が意外にも動悸をうちだ したのには驚きました。私としては、色恋でなくって、遊戯 か冗談みたいなつもりですが、なるほど、こんな胸のーは、 火遊びの面白さの一つなんだな」とある。高鳴る・わくわく どきよう【度胸】恐れたりうろたえたりせず物事に動じない 精神の意で、会話にも文章にも使われる漢語。「がある <739> 〈ーがすわっている〉へいいーをしている〉(そこまでの はない)有島武郎の『生れ出ずる悩み』に「筋骨とーとを 鉄のように鍛え上げた」とある。昔はやった「男はー、女は 愛嬌」は脚韻をふんでいる。貯玉・Q胆力 ときようそう【徒競走】順位や記録を争って走る競技をさし、 改まった会話や文章中に用いられる、専門的で硬い感じの 漢語。〈運動会の—に出る〉へ—なら自信がある〉運動会 などにおける競技の正式名称として、短距離走や長距離走 の総称とされることがあるが、それ以外の生活場面ではあ まり使われない。専駆けくらべ・Q駆けっこ どきりと「どきっと」の意で、会話や硬くない文章に使われ る擬態語。〈暗い道で声をかけられて一瞬—する〉横光利 一の『機械』に「胸を刺された思いになりかけた」とあ る。ひぎくっとぎくりとぎょっと・Qどきっと・どきんと・はっと とぎれる【途切れる】連続するはずのものが一時的に切れた り断続的になったりする意で、会話にも文章にも使われる 日常的な表現。〈電話の声が—〉〈会話が—〉〈援助が—〉 森鷗外の『山椒大夫』に「話は水が砂に沁みこむように」 れてしまう」とある。ひ絶える・中断・Q途絶える ときわぎ【常磐木】常緑樹の意で、改まった会話や文章に用 いられる古風な和語。〈雨のあとの—の緑がひときわ美し い〉「ときわ」が「とこいわ」の転で、永久に変わらない という意味であるため、植物の分類という感じの「常緑樹」 に比べ、めでたいという雰囲気が感じられ、美称ともなる。 単常緑樹 どきんと「どきっと」の意で主に会話に使われる擬態語。 とく 〈突然の指名を受けてーする〉「どきっと」や「どきりと」 以上に心臓の高鳴りを意識させやすい。三浦哲郎の『団欒』 に「怖いと思う先に、わけもなく、くるものがきたという感 じがして、ーしました」とある。ひぎくっと・ぎくりと・ぎよっ と・Qどきっと・どきりと・はっと とく【解く】結び合わさっているものをほぐしてそれぞれを 離す意で、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な和 語。〈帯を—〉〈包みを—〉〈旅装を—〉森鷗外の『山椒大 夫』に「わななく手に紐をー・いて、袋から出した仏像」と ある。きつい束縛を緩めたりまったく無くしたりするとい う中心的意味は共通ながら、「寝乱れた髪を—」のほか「囲 みを—」「警戒を—」「任務を—」「緊張を—」「誤解を—」 「謎を—」「問題を—」のように、抽象的な対象を含めさま ざまな意味合いで使い、そういう用法では古風な感じのな い日常語となる。ほぐす・Qほどく とく【溶く】固まった状態のものをばらばらにほぐしたり、 液状に混じり合うようにしたりする意で、会話でも文章で も幅広く使われる日常の和語。〈絵の具を—〉〈粉ミルクを —〉の「溶かす」に比べ、早くよく溶けるように掻きまわす など、人間が具体的に手を加えるイメージがある。ひ溶かす とく【得】儲けや利益になる意で、主に会話に使われる日常 の漢語。〈うんとーをする〉〈一文のーにもならない〉〈買 い叩いてーをする〉〈まとめて買うほうがーだ〉の「利益」 「もうけ」その他が数量という物的な存在なのに対し、この 語は状態的な意味合いなので、そのまま「追求する」「上げ る」「他に回す」などの対象にはなりにくい。「早起きは三 <740> とぐ 文の—」「な立場」「な性分」のように、必ずしも金銭 に限らず何らかの意味で有利な場合に広く用いる。「損」と 対立する語。利益の意味の場合は「徳」とも書く。弔収益・ Q儲け・利益・利潤 とぐ【研ぐ】こすって磨きあげる意で、会話でも文章でも使 われる和語。〈米を—〉〈包丁を—〉〈爪を—〉②こする動作 には共通点があるが、猫が爪を「研ぐ」のと女性が爪を「磨 く」のとを比べれば明らかなように、綺麗に光らせるため の「磨く」とは違って、この語は不純物を削り取ったり切れ 味を増したりする目的で試みる場合に用いる。専磨く どく【退く】体を移動させてその場所を空ける意で、会話や 軽い文章に使われる和語。〈邪魔だからちょっとそこー・い て〉へさあ、!いた、!いた〉の「のく」より具体的で体 を動かすイメージが強い。ひしりぞく・Qのく・引き下がる・引っ 込む とくい【得意】①自分の望みとおりになって満足している気 持ちをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈一の絶頂〉 ヘになって話す幸田文の『おとうと』に「になって 勝ち誇った心はみしっと音をたてた」とある。満悦満足 ②熟達していて自信のある意で、くだけた会話から文章ま で幅広く使われる日常の漢語。〈科目〉〈一の技〉〈料理 がーだ〉得手③人や店などをひいきにしてくれる客を さし、会話や硬くない文章に使われる日常の漢語。〈客のお ーさん〉ひひいき どくがく【独学】学問を学校に通わず先生にもつかずに独力 で学ぶ意で、会話にも文章にも使われる漢語。〜でロシア 語を修める)独習 どくけし【毒消し】毒の働きを消す意で、会話でも文章でも 使われる古風な日常的和語。〈一の効能がある〉毒を消す 薬をさす場合は「どっけし」ともいう。Q解毒・殺菌・消毒 どくじ【独自】他と違うそのものに特徴的なの意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈一性を発揮する〉〈一の方法を 開発する〉〈一の見解を発表する〉「独特」や「特有」ほ ど個性的な面が強調された感じはなく、他から独立してい る点に中心がある。「一に調査を開始する」のように、他と 別に単独で行う場合にも使う。単固有・Q独特・特有 とくしっ【特質】そのものの有する他とは違う特別の性質を さし、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。 〈素材のーを活用する〉〈ルネサンス芸術のー〉〈よくーを とらえた的確な批評〉〈新感覚派の文体的ーを探る〉「特 性」に比べ、数字で示しにくい性質をさすことが多い。太 宰治の『人間失格』に「人間のーを見たというような気さえ して、そうして、力無く笑っていました」とある。個性・ 特色・Q特性・特徴 どくしゃ【読者】書物や新聞・雑誌などの文章を読む人をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈一層〉〈一対象〉〈一 の反応〉〈一からの手紙〉小林秀雄の『ドストエフスキイ の生活』に「一も亦作者が一を置いて遠ざかるのを如何と も為し難いのである」とあるように、「作者」「著者」と対 立。読み手 とくしゅ【特殊】普通と比べてはっきり違っている例外的な 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一部隊〉へな例 <741> 〈きわめてーな環境に育つ〉へーな感情を抱く〉(そこにー 性がある)夏目漱石の『明暗』に「結果はかえって前より わるくなるかもしれないというーな心理を、叔父はまるで 承知していないらしかった」とある。「普通」と対立。時に 優遇された感じを伴う「特別」に比べ、あくまで普通でない ところに重点がある。特別 どくしゅう【独習】先生の指導を受けず自分一人で習う意で、 会話にも文章にも使われる漢語。へーで英会話をマスターす る)〈ーでギターをものにする〉の「独学」と違い、勉強に 限らずスポーツや芸能をも含む。JQ独学・自習 とくじょう【特上】上等よりさらに質がよい意で、会話や硬 くない文章に使われる漢語。〈一の牛肉〉〈一の品物〉 「特別上等」の略。ランクとしては最上位であるが一定の幅 があり、その中でも上質なのが「極上」という関係を思わせ る。専極上 とくしょく【特色】ほかと比べて特に異なるところの意で、 会話にも文章にも使われる基本的な漢語。「ーがある〉「 を生かす〉〈何のーもない〉三島由紀夫の『潮騒』に「こ の島の人たちのーをなす形のよい鼻と、ひびわれた唇を持 っている」とある。「この辞典のー」のように、マイナスの 面を除外し、よい特徴だけをさす場合もある。図個性・特質 特性・Q特徴・特長 とくしん【得心】十分に納得する意で、改まった会話や文章 に用いられる古風な漢語。へその説明でようやくーが行く 「納得」よりも深く腑に落ちる感じがある。り納得 どくしん【独身】現在結婚していない意で、会話にも文章に とくそく も使われる漢語。まだだ)一生で過ごす)を貫 く)「未婚」と違い、一度結婚して配偶者と死別したり離 婚したりした場合にも使う。児残り・Q独り身・独り者・未 婚 とくせい【特性】場所・物・人が持っている特別の性質をさし、 改まった会話や文章に用いられるいくぶん硬い感じの漢語。 〈地域のーを生かす〉〈各自のーを発揮する〉〈ゴムのーを 利用する〉永井荷風の『瀾東綺譚』に「紅茶珈琲の本来の ーは暖かきにある」とある。物の性質それ自体をさす「特 質」に対し、この語は数字で示せる特徴をさす例も多く、そ の点を何に役立てるかというその特質を活用・応用する観点 から取り上げる傾向がある。個性・Q特質・特色・特徴・特長 どくせん【独占】単独で占有する意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈—資本〉〈—禁止法〉〈—欲が強い〉〈利益を ーする〉の「ひとりじめ」より硬い感じなため、より大きな 規模の対象に使う傾向が見られる。り独り占め どくせんじょう【独擅場】「独り舞台」と同じく、自由自在に ふるまえる意に用いる漢語。ヘこの噺とくれば師匠のだ 田中英光の『オリンポスの果実』に「今夜は正に自分の だなと得意な気がして」とある。字形の似た漢字の混同か ら生じた「独壇だ場」という本来は誤った形が現実に広く用 いられるため、特に親しい間での日常会話に用いると、少 し街学ば的に響き、気取った感じを与える可能性もある。 ふどくだんじょう とくそく【督促】早くするようにと急きたてる意で、改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈ー状が舞い込む〉〈納税 <742> どくだん を—される)日常的でいろいろな場合に使われる「催促 に比べ、支払い返済や納税など金銭関係によく用い、より 正式で厳しい感じがある。僕促 どくだん【独断】自分だけの考えで勝手にきめる判断をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈ー専行〉へと偏見〉 〈ーで行う〉②永井荷風の『ひかげの花』に「己だ。のーには 疑を挟まない」とある。きわめて主観的だというだけで、 「偏見」とは違い、誤っているとは限らない。ひ偏見 どくだんじょう【独壇場】「どくせんじょう」のつもりでしば しば使う誤った慣用的な表現。ぐこうなれば彼のだ》の 「独擅せん場」の「擅」(ほしいままにする意)を字形の似た 「壇」と混同して生じた。学術的な文章中に使用すると、著 者の素養が疑われかねない。ひどくせんじょう とくちょう【特長】すぐれた特徴の意で、文章に使われる漢 語。〈新製品の—〉〈本校の教育の—〉〈一人一人の—を生 かす〉のプラス・マイナスいろいろある「特徴」のうち、秀 でた点だけをさすための書き分けで、「本辞典の—」などと しばしば宣伝用に使われる。自分側について用いると自慢 に響き、「特徴」に比べていくぶん俗っぽい感じを伴う。 特徴 とくちょう【特徴】同類と比べ他と目だって違う点の意で、 会話でも文章でも広く使われる日常的な漢語。〈犯人の—〉 〈目に—のある顔〉(—を見分ける)④太宰治の「人間失格」 に「印象さえ無い。—が無いのだ」とある。り個性・特質・特 色・特性・特長 とくてい【特定】特別に指定する意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈一銘柄〉〈一郵便局〉〈一の人だけを優遇す る品種を一する「犯人を一する」のように、他でな くまさにそれだと限定する意にも用い、その場合はやや専 門的な響きがある。指定 どくとく【独特(得)】それだけが特別に持っているという意 味合いで、会話にも文章にも使われる漢語。〈一の解釈〉 〈一の味を出す〉〈一の趣を醸し出す〉〈松茸には一種一の 香りがある〉回「固有」「特有」に比べ、普通一般との違い が大きい感じがある。単固有・独自・Q特有 どくどくしい【毒毒しい】毒や悪意などを含んでいるように 思うほどきつい感じを与える様子をさし、会話やさほど硬 くない文章に使われる不快な感じの語。〈色彩〉〈言葉 を投げつける〉松本侑子の『植物性恋愛』に「松葉ぼたん のーほどに赫い花びら」とある。Qけばけばしいとぎつい とくに【特に】特別取り立てての意で会話にも文章にも使わ れる基本語。〈夕方はー忙しい〉へーその件は速やかに進め る〉へー言うことはない〉の大岡昇平の『俘虜記』に「我々 の現在地を米軍から秘匿しようとはしなかった」とある。 きことに・Qとりわけ・なかんずく とくばい【特売】通常の値段より特別に安く売る意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈一日〉〈場〉〈品〉特 別販売」の略で、入札をせずに特定の相手に売り渡す意味 もある。ひ売り出し・セール・叩き売り・ダンピング・投げ売り・バー ゲン・安売り・Q廉売 どくはく【独白】「独り言」の意で、主として文章に用いられる漢語。〈苦しい胸の内を—する〉の「体の小説」「の <743> 場面」のように小説や演劇で読者や観客にひとりで語りか ける形式をさすこともあり、その場合は専門的な感じに響 く。呟ぶく・Q独り言 とくべつ【特別】一般的でない意で、会話にも文章にも広く 使われる日常的な漢語。〈ー会計〉〈ー扱いにする〉〈ーの 事情〉〈ーにあつらえる〉〈ー安く売る〉〈ー一般〉と対立。 例外的な「特殊」と違い、「顧問」「待遇」などプラスの 方向にずれている場合も多い。「ーの日」「ーの人」のよう に「大切な」の意の婉曲表現ともなる。乃格別・Q特殊 とくぼう【徳望】人徳がそなわり信頼される意で、主として 文章に用いられる漢語。〈ー家〉〈あの人物にはーがある〉 の類義の「人望」や「信望」よりも重い感じがする。乃Q信 望・人望 どくやく【毒薬】微量でも生命の危険を招く激しい薬品をさ し、会話でも文章でも一般に使われる漢語。へーの扱いに注 意》辻邦生の『旅の終り』に「死んだのは若い男女で、何 かーで自殺したんです」とある。専劇薬 とくゆう【特有】そのものに特に具わっている意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈一の匂い〉〈一の性質を利用 する〉〈港町一の風情〉〈この病気に一の症状〉普通一般 とは違う個性的な程度は、「固有」や「独自」より強く「独 特」より弱い感じがある。刂固有・独自・Q独特 とくり【徳利】主に清酒を入れる口が狭く細長い陶磁器製の 容器をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈五合—〉 〈空になったーが横になって何本も並ぶ〉回「銚子」と違っ て大きな物もあり、陶磁器製のほか金属製やガラス製もあ どこ る。会話では「とっくり」の形で使うことが多い。鈍子・ どくりつ【独立】他に従属することなく支配や援助も受けず に自分の意志と力でやっていく意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ー独歩〉〈ー記念日〉〈子供が親からーする〉 〈編集者が会社を辞めてーし、自分で出版社を立ち上げる〉 ひ自活・自立・Q独り立ち ぐりよく【独力】一人だけの力という意味で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ーで挑む〉〈ーで道を切り開く〉 「自力」よりも幅広い能力について用いられる傾向がある。 自力 とくれい【特例】通例とは違う特別の例という意味で、例外 的な場合をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢 語。へーを設ける〉今回だけはーとして認める〉へーは一 切認めない〉異例・破格・別・Q例外 どける【退ける】邪魔な物などを他に移してその場所を空け る意で、主として会話に使われる日常の口頭語。ヘじゃま物 をー〉くくるまをー〉改まらない会話では「のける」より よく使われる。刂除外・取り除く・のける・外す とこ【床】寝るために敷いた蒲団やその場所をさし、会話に も文章にも使われる古風な和語。〈ーに就く〉〈ーを取る〉 〈ーを上げる〉尾崎一雄の『霖雨』に「ーを、何もかも一 緒に裾の方から折り返すと、隣りの四畳半へずるずると押 し込み」とある。「ーの間」「一柱」のように本来は一段高 くしつらえた台をさす。Q寝床・蒲団 どこ【何処】不明または不定の場所をさし、くだけた会話か <744> どこう ら文章まで幅広く使われる日常の和語。〈場所はーだ〉近ければーでもいい)夏目漱石の「坊ちゃん」に「おい君に宿まってるか」とある。Qいずこいずれ①どちら② どこう【土工】「土方」の別称。「土方」と同様に職業差別の 意識が感じられるとして使用を控えている。ひ土方 「永遠」を和風にした雅語的表現。「とわ」以上に 古風な雰囲気がある。〈一の繁栄を祈る〉国木田独歩の 『夫婦』に「結婚の楽しさに、恋そのものも夢を再演したと 誤認し、其の夢の一なれかしと念じた」とある。「永久」 「永遠」という当て字はそれぞれ音読みされやすく、「常し え」「長しえ」のように漢字を当てても読みにくいので、仮 名書きが無難。乃何時までも・永遠・Q永久・永劫・恒久・とこしな え・とわ・悠遠・悠久 とこしなえ「永遠」を和風にした雅語的表現。「とこしえ」 よりも古めかしく、気どった感じもあって、例が少ない。 〈愛よ、に〉徳冨蘆花の『自然と人生』に「古英雄の に眠る所」とある。仮名書き以外は無理がある。何時まで も・永遠・永久・永劫・恒久・Qとこしえ・とわ・悠遠・悠久 とこや【床屋】(男性の)頭髪を切りそろえ形を整える職業(の 人)をさすやや古風な和語。正式で改まった感じの「理髪 師」「理髪店」に対する日常語。へのおやじ内田百閒 の『弾琴図』に「留置場を出る時には、戸内にーがあるか ら、さっぱりして、帰って来られる」とあり、「もし留置場 のの事まで知っているとすると、その外に考えるのは脱 獄」とある。会話でふつうに使われるが、職業差別を感じ る人もある。散髪・理髪 ところ【所(処)】人や物が存在したり事が起こったりする空間をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈時とーをわきまえる〉〈高いーから見下ろす〉〈景色のいいーを選ぶ〉〈閑静なーに住む〉志賀直哉の『小僧の神様』に「おーとお名前をこれへ一つお願い致します」とあるように、単に「おー」としてその人の住所をさすこともあるが、一般には、夏目漱石の『坊っちゃん』に「おれは江戸っ子で華奢に小作りに出来て居るから、どうも高いーへ上がっても押しが利かない」とあり、中野重治の『歌のわかれ』に「浦井の家は、かたつむりの渦巻の中心のようなーにあって」とあるように、「至るーにある」「寒いーは苦手だ」など、連体修飾語を伴って使う例が多い。「場所」と違い、空間だけでなく「もうちょっとのーだった」「まずいーを見つかる」「あいつもなかなかいいーがある」「いいーで会った」「危ないーを助けられる」のように純粋な空間というより場面をさす抽象化した用法もある。「時は春、ーは吉野」のように連体修飾語を伴わない独立用法は古風な感じがある。ひ場・Q場所・場面 ところばんち【所番地】居住地の名称や番地を意味し、会話 や軽い文章で使われる日常語。〈新しい住まいのーを知ら せる〉実質的に「住所」を表すくだけた会話的表現。 所表・居場所・居住地・Q住所 どこんじょう【ど根性】「根性」の強調として、主として改ま らない会話で使われる俗っぽい表現。へーでやりのける へーで立ち向かう)接辞の「ど」には、並の人間では考え られないといった驚きの気持ちがこもっている。あまりの <745> 図太さに呆れて軽蔑的に言うことが多かったが、近年は何 事にも挫けない強い気持ちに驚嘆していう例が増えてき た。意気込み・意欲・意力・気概・気骨・気迫・気力・Q根性・精神力・ やる気 とざす【閉ざす】ふさいで出入りできないようにする意で、 主として文章に用いられる古風な感じの和語。〈門を—〉 〈堅く口を—〉〈冬は雪に—・される〉「閉める」はもちろ ん「閉じる」と比べても、通行や交流を一切遮断する雰囲気 があり、きつい語感が働く。倉橋由美子の『ヴァージニア』 に「二枚貝みたいに自分をー・してしまう」とある。刂閉め る・Q閉じる とし【年】一年の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常生活の基本的な和語。〈ーを越す〉〈ーの始 め〉〈新しいーを迎える〉〈平和なー〉永井荷風の『雨瀟 瀟』に「そのーの二百十日はたしか涼しい月夜であった」と ある。「ーの暮れ」などでは「歳末」という漢語を意識して 特に「歳」と書くこともある。 とし【年(齢)】生まれてから経過した年数の意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 へーを取る〉へいたずらにーを食う〉へいいーをしてみっと もない〉へーに不足はない〉②「年齢」とは違い、「もうー だ」「ーには勝てない」「ーのせいか物忘れがひとい」のよ うに、それだけで婉曲よく老齢を意味する用法も多い。年 齢の意である点を明確にするため特に「齢」と書く例も少 なくない。少年齢 とし【都市】それぞれの地方における政治・経済・文化の中心 とじこめる をなす場所をさし、やや改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈地方ー〉〈未来ー〉〈ー計画〉〈ー化が進む〉島木 健作の『頼』に「町全体がどこか眠ってでもいるかのよう な、瀬戸内海に面したある小ー」とある。ひ都会 とじ【途次】移動する間の途中の地点の意で、主に文章に用 いられる、やや古風で硬い漢語。〈出張のー京都に立ち寄 る〉空間的な意味合いが強い。ひ中途・Q途中 どじ間の抜けたしくじりをさし、くだけた会話に使われる 俗っぽい口頭語。〈ーをふむ〉〈ーな野郎だ〉頬義語の 「へま」や「間抜け」に比べてきつい感じがするのは、「ド」 という語頭の濁音も関係しているかもしれない。Qへま・ 間抜け としうえ【年上】自分や話題の人物と比べて、その人のほう が年齢が上である意で、会話にも文章にも使われる日常の 和語。〈一の妻〉(五歳もーだけに兄はさすがに落ち着いて いる)「年下」と対立する語で、「年かさ」や「年長」よ り、個々の比較というニュアンスが強い。Q年嵩年長 としかさ【年嵩】「年上」の意で、会話にも文章にも使われる、 やや古風な和語。二つ一の同僚《少し一の相手》「か なり一に見える先生」などと、それだけで高齢の意にも使 うように、他と比較してという意識が「年上」ほど強くな い。Q年上・年長 とじこめる【閉じ込める】人間や動物を中に入れて外に出ら れないようにする意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈檻りにー〉〈押入れにー〉村上知行の『殉情の人』に「旱 魷時の蝸のようにじっと己をー・めて」とある。「同居人を <746> としつき 二階の一室にー・めて客に会わせない」のように、必ずしも 当人に対する悪意によらない場合もある。また、「悪天候 のため一日中ホテルにー・められる」のように、人間による 意図的行為以外にも使える。Q監禁・拘束・软禁・幽閉 としつき【年月】何年何ヶ月という長い時間をさし、改まった会話や文章に用いられる少し古風でやわらかい和語。〈はや幾—〉〈長のーを経る〉〈ーを重ねる〉〈長いーのうちに〉夏目漱石の『吾輩は猫である』に「人間のーと猫の星霜と同じ割合に打算するのははなはだしき誤謬である」とある。通常は漢字表記のため、「ねんげつ」との区別は文体の差で判断するほかなく、紛らわしいことも多い。「ねんげつ」より、思いをこめて振り返るしっとりとした雰囲気がある。「子供の生まれたーを記入する」のように、年月という意味で使うこともある。月歳月・Qねんげつ どしどし遠慮なく次々に事を行う様子をさし、会話や軽い 文章に使われる擬態語。〈一質問する〉〈一仕事を言い付け る〉遠慮せずに積極的にという意味合いが強く、自然現 象や単なる進行には使わない。なお、「と歩く」のよう に、力強く地面を踏むときの擬声語としても使う。马ぐんぐ ん・Qじゃんじゃん・ずんずん・どんどん としのくれ【年(歳)の暮れ】年末の意で、会話にも文章にも 使われる、やや古風な和語。〈一の雑踏〉へーは何かと忙し い日の暮れ」という言い方があまり使われなくなるに つれて、この語の使用も減り、単に「暮れ」と言うことが多 くなった。夢暮れ・歳末・歳暮・年の瀬・Q年末 としのせ【年の瀬】年末の意で、主に文章に用いられる古風 な和語。〈ーが迫る〉語義は「年の暮れ」と同じでも、い よいよ押し詰まったという気分で使う傾向がある。「瀬」の 意味に合わせて「ーを渡る」「ーを越す」のような表現を採 用する例もある。巻れ・歳末・歳暮・Q年の暮れ・年末 としよ【図書】「本」の意で、改まった会話や文章で用いられ る正式な感じの漢語。〈一館〉〈学習用の一〉〈一の整理〉 〈学校の推薦一〉〈一を閲覧する〉〈一を販売する〉〈一を貸 し出す〉の「本を読みふける」のような例で「図書」に置き 換えると落ち着かないのは、この語が多く、個々の本の内容 よりも、その種類や取り扱いに重点があるからであろう。 刂書籍・書物・Q本 どじょう【土壤】陸地の表層を構成する土砂などの全体をさ し、改まった会話や文章に用いられる専門的な硬い漢語。 〈肥沃なー〉〈ーを改良する〉特に農作の観点からある場 所の土の性質を問題にするときによく用い、手で掬い取っ た少量の土には使いにくい。単土 としより【年寄り】年を取った人をさし、くだけた会話から さほど改まらない文章まで幅広く用いられる和語の日常語。 「姫を大事にする〉への冷や水」志賀直哉の『暗夜行路』 に「頬はすっかりこけ、頭だけがいやに大きく、恰ぼでーの 顔だった」とある。「老人」や「高齢者」と違って、中年以 下でも相対的な意味で使うことがある。刂高齢者・老人 とじる【閉じる】一時的に開いていたものを元の閉じた状態 に戻す意で、会話でも文章でも広く使われる和語。文体的 レベルは「閉める」より高く、「閉ざす」よりは低い。「本を ー〉〈扇子をー〉〈目をー・じて考える〉〈会をー〉〈客足が <747> 遠のいて店を—)川端康成の『名人』に「生きて眠るよう にー・じた瞼の線に、深い哀愁がこもった」とある。「手術 した切り口を—」などの例からも、必要に応じて開いたもの を一段落して元に戻すというイメージが伴う。Q閉め る・閉ざす・塞ぐ どじん【土人】その土地に生まれ育ち、そのまま住んでいる 人の意で、会話にも文章にも使われた古めかしい漢語。〈南 洋の—〉の土着の人の意で本来は各地に存在するが、特に 未開の地で原始的な生活をしている人種を連想させやすく、 現代は人種差別の響きが嫌われ、ほとんど使用しない。林 芙美子の『放浪記』に「夜になれば、白人国に買われた」の ような淋しさで、埒もない唄をうたっている」とあるように 黒人を連想させることもある。马原住民・土着民・Q土民 どすふところに隠し持つ匕首がなどの短い刀をさし、主と して会話に使われる俗っぽいことば。〈懐にーを呑。む〉 〈ーを利かす〉隠し持つという印象が強い。やくざなどを 連想する傾向もある。「おどす」から出た隠語を思わせる。 马Q匕首が・懐剣・こがたな・小刀・短剣・短刀・ふところがたな・脇差 どだい【土台】物事を築き上げる際の基盤をなす部分をさし、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈家の—〉へーを築 く〉へーがしっかりしている〉へーが揺らぐ〉具体的には 木造建築で基礎の上に柱を受けるために据える横木をさし、 「物事はーが大事だ」のように意味が抽象化してる、「基本」 より「基礎」に近いイメージで使われる。ひいしずえ・Q基礎・ 基盤・基本・根本 とだえる【途絶える】連続するはずのものが途中で無くなる とち 意で、やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風 で時に詩的な感じの表現。〈連絡が—〉〈仕送りが—〉〈人 通りが—〉〈風の音が—〉永井荷風の『澀東綺譚』に「人 通りも共にー・えてしまう」とある。Q絶える・途切れる・中 断 「土壇場(で)キャンセル(する)」の短縮形。くだ けた会話でよく使われる俗語。〈ホテルの予約を当日になっ てからーする〉〈記者会見をーする〉償れないと一瞬意味 のとりにくいユーモラスな響きがある。ベストセラーだっ た丸谷オーの『文章読本』を当時「マルサイのブンドク」と 略す例もあった。日本語ではこのように四拍に短縮する試 みが盛んに行われる。「エノケン」「アラカン」から「ハマ コー」「キムタク」に至る人名の略称も多くはこの原理に立 つ。「アルプス中学校」のように、略されると思いがけない 同音異義語が連想されて、名称が採用されなかったり、極端 になると笑いを招くケースが増えて滑稽な語感を形成する。 とだな【戸棚】前面に開閉用の戸が付き、内部に棚を渡した 箱型の収納用の家具をさし、会話にも文章にも使われる、 いくぶん古風な和語。〈造り付けのー〉へーにしまう〉特 に食器棚をさす例もある。食器棚 とち【土地】大地、特に宅地や耕地など人間が利用するため の所有地をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の基本漢語。〈肥沃な」〈が高騰する〉 〈ーを手に入れる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「がー だから一級俸上って行く事になりました」とある。「の 人」の形で特に自分の生まれ育った市町村をさすこともあ <748> どちゃくみん る。 ノノノ地所・用地 どちゃくみん【土着民】昔から長い間その土地で暮らしてき た人たちをかなり客観的に見た感じで会話にも文章にも使 われる漢語。「の間の風習」のよそものの視点から好奇の 目を注ぐ感じが強い。文明が未発達で文化程度が低いとい うニュアンスを伴うこともある。専原住民・Q士人・土民 とちゅう【途中】「中途」の意で、会話にも文章にも使われる 漢語。〈|下車〉〈|で休憩する〉〈|で飽きる〉〈本を|ま で読む〉〈映画を|から見る〉現代では「中途」より一般 によく使われ、特に「走っている|で」「書いている|で」 のように動詞に続く場合は、「中途」でなくほとんどこの語 になる。「中途」では道を意味する「途」、「途中」では間を 意味する「中」が、それぞれの意味の中核をなすということ が、あるいは関係するかもしれない。Q中途・途次 どちら【何方】①二つのうちの一つを不定のまま指し示す場合に、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈ーが近いか〉〈ーもばっとしない〉②くだけた感じの「どっち」より丁寧。ひいずれ①どっち②主として改まった会話や手紙で用いる、「どこ」の意の丁重な表現。〈ーにお住まいですか〉〈ーに参りましょうか〉〈ーへいらっしゃいますか〉〈ーなりと伺います〉ひいずこ・Qどこ とちる言い損なう、失敗する意で、くだけた会話に使われ ることのある俗語。〈せりふをー〉〈試験をー〉本来は舞 台上の台詞やしぐさの失敗をさした。ひエラー・Qしくじる・ 失策・失態・失敗・抜かる・ぽか・ミス・ミスる・やり損なう とっく【疾く】会話などで「ずっと以前」の意で使われる 和風のくだけた日常語。〈もうーに終わっている〉〈その話はーに知っている〉〈ーの昔に別れちゃった〉「疾し」の連用形の名詞化。ひすでに・疾う・とうに とつぐ【嫁ぐ】女性が「結婚する」意の和語で、改まった会 話や文章の中で使う古風でいくらか詩的な表現。「一日も 近いへたった一人の姉が」の網野菊の『遠山の雪』に 「四度目の母が」・いで来た日」とある。家庭を持つ・結婚・ 結婚する・こし入れ・婚姻・所帯を持つ・嫁入りする・Q嫁に行く とっくり【徳利】「とくり」の意で、特に日常会話によく使う 表現。〈ーが空になる〉の「ーのセーター」のように、これ に似た形をさす比喩的な用法もある。Q鈍子・とくり とつくりえり【徳利襟」とっくりの形に似た襟。「タートルネ ック」の古風な和語表現。〈ーに仕立てる〉単に「とっく り」とも言う。単タートルネック どっこいどっこい同程度ではっきりとした差がない意で、 主にくだけた会話に使われる俗っぽい和語。へどっちも一長 一短あってーっていうとこかな》弔拮抗・互角・Q五分五分・ とんとん・伯仲・比肩・匹敵 どっさり主として会話に使われる「たくさん」の意の古め かしい和語。〈ー食う〉〈ー注文が来る〉〈宿題がー出る〉 小津安二郎監督の映画『晩春』(一九四九年)に、アヤ(月丘 夢路)がジャムを「持って来て、少し」と言うと、紀子(原節 子)が「、実は」とちゃかす場面がある。単一杯・うんと・多 い・しこたま・Q沢山・たっぷり・たんと・たんまり とつぜん【突然】思いがけない事が急に起こるようすをさし、 会話でも文章でも幅広く使われる日常の漢語。へー泣き出 <749> す〈大きな揺れが来る〉〈話を打ち切る〉〈の出来 事〉〈の申し出ですぐには返事のしようがない〉金井美 恵子の『燃える指』に「ふり向いたアイに驚いたのか、男 は眼を白黒させている」とある。瞬間的にそれまでとはま るでかけ離れた事態が起こる感じが強い。いきなり・Q急 にだしぬけに・不意に どっち「どちら」のくだけた言い方として改まらない日常会 話に使う。〈ーがいいかな〉〈ーもーだ〉もどちら① とっちめるきびしく叱って懲らしめる意の俗語。悪いや つだ、ー・めてやれ)乱暴な行動を連想させる「懲らしめ る」に比べ、みんなで盛んに叱責するといった口だけの攻撃 も含まれる。懲らしめる・Qやり込める とって【取っ手/把手】手で持ちやすくするために家具や器 具に取り付ける部分をさし、会話にも文章にも使われる和 語。〈ドアの—〉〈冷蔵庫の—〉ひQ柄・握り・ノブ とっぱつ【突発】予期しない出来事が突然起こる意で使われ る漢語。へー的な事故ヘクーデターがーするの「ー的」 「ー事故」は日常会話にも使うが、「ーする」の形は時に文 章に使われる程度。ひしゅったい・Q勃発 とっび【突飛】常識を超えて変わっている意で、会話や軽い 文章に使われる、いくぶん古い感じの俗っぽい漢語。「な 提案〉へな行動に出る〉へなことを言い出す》頬語の 中でも、思いがけない感じが強い。専奇想天外・Q奇抜・風変わ り とっぴょうしもない【突拍子も無い】いきなり常軌を逸した 行動に出る場合に、主に会話に使われるやや俗っぽい表現。 とても 〈一ことを口にする〉〈一振る舞いに出る〉標準から外れ る大きさよりも、唐突で、普通の人には考えつかないほど 変わっている点に特徴がある。込途轍も無い・Q途方も無い とっぷう【突風】突然強く吹いてすぐにやむ風をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。「の吹く恐れがある〉へに 傘が裏返る特に寒冷前線の通過する際に起こりやすく 時に雷雨を伴う。風・おおかぜ・強風・颶風・時化・疾風・Q陣 風・大風・台風・はやて・暴風・暴風雨・烈風 どて【土手】「堤」の意で、会話やきほど硬くない文章に使わ れる日常語。〈河原の—〉〈一の桜並木〉〈一で涼む〉幸田 文の『おとうと』に「川に沿って葉桜のーが長く道をのべて いる」とある。優雅な「堤」や硬い「堤防」に比べ、普段の 暮らしになじみのある感じが強い。Q堤・堤防 とてつもない【途敵も無い】度を超えた非常識な意で、主に 会話に使われるやや俗っぽい表現。〈—夢を抱く〉〈—大事 業に手を出す〉〈—く大きな声〉、標準より大きいほうに 外れている場合に使うことが多い。刂突拍子も無い・Q途方も 無い とても【逆も】①「とうてい」の意の会話的な日常語。「わ かりそうもない〉〈今日中にはできない〉〈あの相手には ーかなわない〉②この副詞は本来、打消しの形と呼応して 「とても…ない」という形で用いられたが、「駄目だ」「 無理だ」など否定的な意味合いの肯定表現にも使われるよ うになり、次第に打消しの形も否定的な意味ももたない表 現にも広がって、「具合がいい」「快適だ」のように 「たいへん」「非常に」という意味合いで使われるようにな <750> ヒヒう って今日に至った。現在ではほとんど違和感なく使われて いるが、そのような事情に精通している一部の知識層では、 形も意味もまたく否定のニュアンスを伴わない例に若干 の抵抗感を意識する場合もありうる。ただし、その違和感 も、「全然いい」の「全然」に対して抱く抵抗感よりははる かに小さい。とうてい②「大変」と同じ程度の甚だしさ をさし、主に会話に使われる、いくぶん俗っぽい感じの和 語。〈すばらしい〉へいい感じだ〉〈丁寧だ〉〈気に なる〉大いに・きわめてこく・すこぶる・大層・Qたいへん・甚だ・ 非常に どとう【怒濤】激しく荒れ狂う大波をさし、主に文章中に用 いられる硬い漢語。〈疾風—〉〈—が押し寄せる〉〈—逆巻 く大海原〉③三島由紀夫の『潮騒』に「—がしぶきを立てて 打ちかかる高い岩」とある。「激浪」以上に荒々しく、また、 押し寄せる流れとして、さらに大きなスケールでとらえた 雰囲気がある。「—の如く」の形で、激しい勢いをさす比喩 的な用法もある。荖波・Q激浪・波濤 とどく【届く】意図した場所や範囲に到達する意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈荷物がー〉〈手がー〉〈声が遠くまでー〉〈相手の心に ーことば〉の思いがー」のように、願いがかなうといった ニュアンスで用いることもある。及ぶ・達する とどけ【届(届け)】公的機関や団体などに申し出る意や、そ の書類をさして、会話にも文章にも使われる、やや正式な 感じの和語。〈欠勤—〉〈婚姻—〉〈出生—〉〈役所に—を出 す〉②届ける行為自体をさす場合に「け」と送り、その書類 をさす場合に送り仮名を省く傾向がある。马届け出 とどけで【届(届け)出】公的機関などに状況を知らせるため に正式に申し出る意で、会話にも文章にも用いられる改ま った感じの和語。〈被害のーがある〉〈ーを済ませる〉のき まりに従った所定の手続きの場合の多い「届」に比べ、不慮 の事故や事件など臨時の状況変化を連想させる場合もある。 马届け ととの元る【整元る】乱れた部分などを直してきちんとする 意で、会話でも文章でも広く使われる和語。〈身だしなみを 」〈形式を」〈環境を」〉②小島信夫の『アメリカン・ス クール』に「服装はどんなことをしても」・えておくべきで す」とある。ひ調える との元る【調える】準備する、調和させるといった意味合 いで、やや改まった会話や文章に用いられる和語。材料を 」〈味を」〈体調を」・えて試合に臨む〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「支度を」・えて」とある。刂整える とどろく【轟く】大音響が響き渡る意で、主として文章中に 用いられる和語。(雷鳴がー)〈爆音がー〉石川淳の『紫 苑物語』に「声は大きく、はてしなくひろがって行き、谷に 鳴り、崖に鳴り、いただきにひびき、ごうごうと宙にー・き、 岩山を越えてかなたの里にまでー・きわたった」とあるよう に、「鳴る」「響く」「轟く」と音が次第に大きくなる感じが 強い。「雷名がー」のように、広く世間に知れ渡る意で使う 比喻的用法もある。鳴る・Q響く となえる【称える】名乗る意で、改まった会話や文章に用い られるやや古風な和語。〈家元を—〉〈旧姓を—〉弔唱える <751> となえる【唱える】繰り返し口にする、提唱する意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈念仏を—〉〈反対を—〉〈新 説を—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「知事が祝詞を読む。 参列者が万歳を」。それで御仕舞だ」とある。専称える となり【隣】家・場所・人などが横に並んで接していることを さし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。〈向こう三軒両—〉〈おーさん〉〈一軒置 いてに引っ越す〉〈一の席が空いている〉、込かたわら・そば・ 近く・Q脇 どなる【怒鳴る】怒ったり興奮したりして大声を出す意で、 くだけた会話や軽い文章に使われる日常語。〈遠くからー っている〉〈相手をー・りつける〉②遠藤周作の『海と毒薬 に「手術台から体を起し、突然怒りのこもった声でー・った とある。語頭の「ド」という濁音のせいもあって、「叫ぶ」 や「わめく」よりも若干きつく響く。Qがなる・どやす とにかく【兎に角】ほかのことはどうであっても、いずれに せよの意で、会話にも文章にも使われる和語。へーこれで終 わった〉へー健康には気をつけて〉へー行くだけ行ってみよ う)今話題にしていることにこれ以上言及せずに、ある いは、頭に浮かんでくることを振り払って、次に述べること に相手の注意を集中させる意図で使う。日常会話では類語 の中で最も一般的。ひとにもかくにも・ともあれ・Qともかく とにもかくにも【鬼にも角にも】「とにかく」の意で、会話に も文章にも使われる、いくらか古風な感じの和語。へ慣れ ることだへー練習は欠かせない)省略せずにここまで言 うと現代では重い感じになり、あまり使われない。ひとにか トビック く・ともあれ・Qともかく とのがた【殿方】女性が男性を敬って呼ぶ言い方として、改 まった会話や文章に用いられる古風な和語。〈用〉〈に 差し上げる〉〈一の気持ちは察しが付く〉商業や接客業の 方面で多く使われる。旅館の浴場やトイレなどによく見か け、「御婦人」と対立。男・Q男の方・男の子・男の人・男子・ 男性 どのような「いかなる」の意で、やや改まった会話や文章に 用いられる表現。〈ーことが起こっても取り乱しはしない〉 〈一規模の事業か皆目見当もつかない〉②「いかなる」ほど 格式ばらず、「どういう」より改まった感じ。いかなる・Q どういう・どんな どのように「いかに」の意で、改まった会話や文章に用いられる表現。へわたくしたちはーすべきでしょうかへー努力しても完成は覚束ないの「いかに」のような文語的な響きはなく、「どう」や「どんなに」より改まった標準的な表現。ひいかに・Qどう・どんなに とぼく【賭博】金品を賭けて勝負する意で、改まった会話や 文章に用いられるやや専門的な漢語。〈一師〉《花札ー〉 〈一で大金をする〉〈一の現行犯で逮捕する〉はくち とばっちり【辻り】偶然その近くにいたせいで思いがけず損害を受ける意で、くだけた会話に使われる俗っぽい和語。へーを受ける〈とんだーを食う〉飛び散る水しぶきの意の「とばしり」の転。Qそばづえ・巻き添え トピック「話題」の意で、会話にも文章にも使われる外来語。 今日のーへいくつかのーを拾って話す身近で軽い感 <752> とびねける じがあり、時事問題などが多い。 話題 とびぬける【飛び抜ける】他と格段の差のある意で、会話に も文章にも使われる和語。〈クラスでもー・けた存在〉通 常いい意味で目立つときに使う。巻群を抜く・図抜ける・Qずば 抜ける・抜きん出る・抜群 どひよう【土俵】対決・勝負の場の意味で、相撲する用語の拡大 用法。〈同じーに上がる〉〈自分のーに引きずり込む〉の土 を詰めた俵を並べて丸く囲んだ、相撲を取るための地面の 意から、一般に対決・交渉の場といった意味に広げて用い る。まだ相撲の連想が残っている。ひQ土俵際・土俵を割る どひようぎわ【土俵際】追い詰められた瀬戸際の意の相撲 用語の拡大用法。〈ーに追い詰められる〉〈ーでふんばる〉 のもう少しで外に出される場所の意から、一般に、物事の 決着する瀬戸際といった意味に広げて用いる。ひQ土俵・土 俵を割る どひようをわる【土俵を割る】争いに敗れて相手に譲る意で、 相撲は用語の拡大用法。〈驚異的なねばりを見せたが、つい にーった)相撲で相手力士に押されて土俵の外に出さ れる意から、一般に、対立する相手の主張に押し切られる、 交渉などで負ける、といった意味に広げて用いる。まだ比 喩性は残っており、相撲の連想を伴う。勇み足・Q土俵・土俵 際 とびら【屏】開閉式の戸をさして、改まった会話や文章に用 いられる、やや古風な和語。〈防火—〉〈門に—を取り付け る〉〈重そうな—があく〉島崎藤村の『夜明け前』に「大 きな巌のような堅い—に突き当る」とある。語源的には 「戸」に「片」のついた語構成という。「ドア」に比べて重 厚な感じがあり、現代の日常生活で口頭では、よほど藜華 なもの以外、出入り口の戸についてはあまり使わず、むし ろ物入れや収納庫などの開閉式のものなどに使う傾向が見 られる。「本の」といった拡大用法や「心の」のような 比喻的用法もある。戸・Qドア どびん【土瓶】湯茶を入れて湯呑みに注ぐための陶磁器製の 器をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈蒸し〉へ から番茶を注ぐ急須より大きく本体と別に弦の持ち手 が付いている。急須 「小鳥も光のかけらの様に」・び廻っている」とある。び跳ぶ 「走り幅跳び」「棒高跳び」のように運動競技ではこの語を 「正坊とクロ」に「ドアのむこうにお千代さんの顔を見つけ 方に勢いよく体を移動する意で、会話にも文章にも使われ 「跳ぶ」脚のばねを利かせて地面を蹴り、前方または上 「飛ぶ」空中を移動する意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の和語。〈鳥が」〈飛行機が 「くヒューズが」〈噂が」内田百閒の『東京日記』に 「小鳥も光のかけらの様に」・び廻っている」とある。び跳ぶ 「正坊とクロ」に「ドアのむこうにお千代さんの顔を見つけ 「走り幅跳び」「棒高跳び」のように運動競技ではこの語を 用い、「跳ねる」は用いない。び飛ぶ・跳ねる どぶ【溝】下水などの汚れた水の流れる細い水路をさし、会 話や改まらない文章でよく使われる生活臭の漂う和語。 〈川〉〈掃除〉〈を浚ぎう〉〈に捨てる〉「溝」より 汚いイメージがある。語頭の「ド」という濁音も不快な印象 を強めているかもしれない。富岡多恵子の「立切れ」の「ま <753> た、子供が落ちて死んでいないかな、とー川のふちを通る たびに菊蔵は思う」というラストシーンはすごみがある。 弔溝 とほ【徒歩】乗り物を使わずに歩くことをさす、やや改まっ た感じの漢語。〈ー通学〉〈ーで十五分の距離〉②「歩み」や 「歩き」が歩行という行為をさすのに対して、この語はもっ ぼら乗り物を用いない移動手段という意味合いで使う。 歩み・Q歩き とほうもない【途方も無い】程度が並外れている意で、会話 にも文章にも使われる表現。〈|広さ〉〈|迫力〉〈|要求〉 ②小田実は『何でも見てやろう』で、当時のアメリカの圧倒 的なエネルギーとバイタリティーに接した驚きを、「ー怒 り、悲しみ、笑い」を一例とする列挙法で描き取った。ひ突 拍子も無い・Q途轍でも無い とぼける【恍(惚)ける】故意に知らない振りをする意で、会 話にも文章にも使われる日常の和語。へいつも都合が悪く なるととたんにー〉へーけてごまかす」「ー・けた返事」 「ー・けた顔」のように、間の抜けて滑稽なの意でも使われ る。「餠はなぜかぴるか」という問いに先代の林家正蔵(彦 六)は「早く食わないから」と答えたという。このように質 問の意図を外し、問題をそらして矛先をかわすのも一種の おとぼけである。井伏鱒二は『本日休診』で婦女暴行事件 の核心部分を「彼女に対して全く画期的な行為を敢てした」 と記述した。こうして思いがけない角度からとらえ直して 煙に巻くのも別種のおとぼけで、ともに聴衆や読者の笑い を誘う手段となっている。みしらぱくれる・しらを切る・知らん とまる ぶり・Qそらとぼける・頬かぶり とまどう『戸(途)惑う』予期せぬことや慣れないことなどで どうすべきか迷う意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈急な申し出で対応に」〈勝手がわからずに」〈慣れな い仕事でーことが多い)安部公房の『他人の顔』に「誰も 僕の視線を感じてー・たりする気づかいなど、少しもなか ったはず」とある。さまざまな場合に使える「迷う」に比 べ、迷っている時間が短く、「一瞬」のような用例も多い。 泥棒が入ったり火事になったりといった重要な局面でなく、 日常一般のケースで使われる。また、ごくくだけた会話で はあまり使われず、「迷う」よりいくらか文体的レベルが高 い。りまこつく・Q惑う・迷う・面食らう とまる【止まる】移行・変化・活動などがストップする意で、 くだけた会話から硬い文章まで広く使われる日常の基本的 な和語。〈時計がー〉〈エンジンがー〉〈血がー〉〈交通機関 がー〉の山本有三の『波』に「行介の足は、ブレーキをかけ られたように、ぴたりとー・った」とある。「停電」「停車」 などの連想で、「電気がー」「急行がー」などの場合は「停 まる」と書き分けることもある。ひQ留まる泊まる とまる【留まる】とどまる、固定されるの意で、会話でも文 章でも使われる和語。〈枝に鳥が—〉〈竿の先にとんぼが ー〉〈目に—〉〈お高くー・っている〉ひQ止まる・泊まる とまる【泊まる】宿泊・停泊の意で、会話でも文章でも広く使 われる日常の和語。〈旅館に—〉〈一晩—〉〈船が港に—〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「小供の時から、友達のうちへ ー・った事は殆んどない位だ」とある。処止まる・留まる <754> どまんなか どまんなか【と真ん中】「真ん真ん中」を意味するやや俗っぽい感じの口頭語。「の直球を思いっきり引っぱたく」(東京のじゃないか)「真ん中」を強調したぶん、それだけ中心点にごく近い部分に限られる感じがする。この場合の接辞「ど」は「まさに真ん中」と強調するだけだが、これは例外的。同じく強調の「ど根性」もあるが、一般には、好ましくないものの前に付けてそれを強めるために悪いニュアンスが生じやすい。「どあほ」「ど近眼」「ど助平」「ど田舎」「ど素人」など、いずれもその点を強調することで軽蔑の気持ちをこめているように感じられる。単中央・中心・Q真ん中 どみん【土民】「土着民」の略として会話や硬くない文章に使 われる漢語。〈武蔵野の—〉の「土人」と違って黒人の連想 はない。「土着民」よりいくらか軽視する感じが強いように 思われる。原住民・土人・Q土着民 とむらい【弔い】「葬式」の意で、主に会話に使われる古めか しい和語。〈ー客〉〈ーを出す〉告別式・葬儀・葬式・葬礼 とむらう【弔う】死者を悼み遺族を慰める意で、会話にも文 章にも使われる古めかしい和語。〈先祖の霊を—〉〈手厚く ー〉永井荷風の『澀東綺譚』に「我青春の名残を—」とい う比喻的な用例がある。ひQ葬る・埋葬 とも友友達の意で主に文章に用いられる古風でやや詩 的な和語。〈竹馬の—〉〈終生の—〉〈わが—よ〉平林たい 子の「桜」に「語るに足る」は(略)見えない世の中とたたか っている人たち」とある。「風月を—とする」「旅の—」「お 茶の—」のように、いつも「共」にあるものという意味でも 使う。 Q友達・仲間・友人 ども【共】複数の人や動物などを、目下として軽んじたり軽 蔑したりする気持ちを持って表し、会話や軽い文章に使わ れる、いくぶん古風な表現。〈者—〉〈男—〉〈野郎—〉〈悪 人—〉〈虫けら—〉の「わたくし—」「手前—」のように一 人称の代名詞につくと、「ら」以上にへりくだった感じが強 くなる。なお、「犬たち」が仲間意識を感じさせるのに対し て、「犬—」は人間に隷属する、あるいは無関係な存在とし て扱う意識を感じさせる。ひがた・たち・Qら ともあれ【鬼もあれ】「とにかく」の意で、主に文章に用いられる古風な和語。「無事でよかった」「全力を尽くされたし」四日常会話で使うと若干気どった響きが出やすい。 ひとにかく・とにもかくにも・Qともかく ともかく【鬼も角】「とにかく」の意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈油断するな〉〈一度試してみよう〉〈一 終わってよかった〉国木田独歩の『武蔵野』に「天下の名 所はー、武蔵野の様な広い平原の林が隈なく染まって、日の 西に傾くと共に一面の火花を放つというも特異の美観では あるまいか」とある。「素質はー実績がない」「出来はー仕 事は速い」のように二つの点を対比する場合は「とにかく」 よりこの語をよく用い、「それはー」として話題の焦点を移 す用法でもこの語のほうが自然。みQとにかく・とにもかくに もともあれ ともかせき【共稼き】夫だけでなく妻も社会に出て働いて収 入を得る意で、会話にも文章にも使われる古風な和語。夫 婦ー〈ーで何とかやっている〉女性の社会進出が一般的 <755> でなかった時代、夫の少ない稼ぎを補うために仕方なく妻 も収入のある道に進むといった印象が強く、この語は差別 意識が伴うとして嫌われた。単共働き ともしび【灯(燈)火/灯(燈)】ともした灯の意で、主に文章 中に用いられる古風で優雅な和語。〈山小屋の—〉〈—がま たたく〉〒淡く小さな明かりをさす傾向がある。川端康成 の『雪国』に「この鏡の映像は窓の外の—を消す強さはなか った。—も映像を消しはしなかった。そうして—は彼女の 顔のなかを流れて通るのだった」という場面がある。存続 の危うい意で用いる「風前の—」の比喻的用法は会話でも 使い、特に優雅な感じはない。漢字表記は「とうか」との区 別が困難なため、通常「ともし火」「ともしび」と書く。 あかり・照明・灯火・Q灯・ライト ともすると「ともすれば」の意で、会話やさほど硬くない文 章に使われる和語表現。健康のありがたさを忘れがち になる〉ひQともすれば・ややもすると・ややもすれば ともすれば特別に意識せずにほうっておくとの意で、会話 にも文章にも使われる和語表現。〈ー怠けがちになる〉多 くは次に、好ましくない事柄が続く。ともすると・ややもす ると・Qややもすれば ともだち【友達】おしゃべりをしたり一緒に遊んだりして仲 良く付き合っている相手をさし、くだけた会話から文章ま で幅広く使われる日常の基本的な和語。〈飲みー〉へがで きる〉へになる〉へと遊ぶ〉の達」はもと複数を表す 「だち」の当て字。現在では一人でもこの語を使う。富田常 雄の『姿三四郎』に「おーは一人去り二人は結婚をするとい どもり う風に、櫛の歯が抜けて行くように私の側から消えて行くとある。単一味・同志・同僚・Q友・仲間・友人 ともね【共寝】間接的に「性交」を意味するかなり古くやわらかい感じの和風の言い方。ぃつしかーする仲となる)基本的な意味としては、二人で同じ寝床に寝ること。そこから男女が一緒に寝るという意味に特定され、含みとして体の交わりを連想させる表現。「同衾」と同じ発想だが、もっとやわらかい感触の語。営み・エッチ・関係②・合歓・交合・交接・情交・情を通じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・契る・同衾・寝る②・懇ろになる・ファック・深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 ともばたらき【共働き】「共稼ぎ」の意で、会話にも文章にも 使われる和語。への夫婦〉へのため昼間は子供を預け る〉の「共稼ぎ」の「稼ぐ」の部分に、収入を得るためとい う意味合いがあるため、その露骨な感じを薄める目的で 「働き」に置き換えた、差別意識回避の語形。ひところ盛ん に使われたがその後、女性の社会進出が一般化し、夫婦が そろって勤めに出るケースが珍しくなくなり、今ではあま り使われなくなって、いくらか古風な感じさえ漂わせるに 至った。公共稼ぎ 「吃音」またはそのような障害を持つ人を伝統的に さしてきた和語。差別意識が指摘されて、使用を控えてい る。人ではなく単にその現象をさす場合もあり、差別語 の問題は微妙である。このような身体的な欠点を表すこと ばをすべて控えるとなると、「出べそ」「扁平足」「猫背」 「短足」「音痴」などもひっかかってくる。問題はことばよ <756> どや り差別意識なのである。 どや宿屋特に簡易旅館を意味する隠語。〈街〉〈住ま いの「やど」を逆転させた語形。ひやど どやす「どなりつける」「殴る」意で、くだけた会話で使わ れる俗語。〈不良にー・される〉へいきなり後ろからー・され る》の語頭が「ド」という濁音であることも作用して、「叱 る」や「殴る」よりも若干きつい語感がある。ちなみに、夏 目漱石の「坊っちゃん」に「背中を棒でー・した奴がある」 という例が出てくる。马がなる・Q怒鳴る どよめき【響めき】多くの人間が一瞬驚いて立てる物音や声 をさして、改まった会話や文章に用いられる和語。〈大記録 の達成にスタンドからーが起こる〉〈思いもかけない判定 に一瞬観客のーが沸き起こる〉の「ざわめき」に比べ、驚き が大きく音響も大きいが短時間に消える感じがある。ひざ わめき とらい【渡来】外国から渡って来る意で、会話にも文章にも 使われる、やや古風な漢語。〈南蛮—の品〉「人」は主 に古代に中国や朝鮮半島から渡って来て日本に定住した人 たちをさす。ひ舶来 ドライバーねじまわしの意で会話にも文章にも使われる日 常の外来語。〈電動のー〉へーでピスを締める今は日常 会話で和語の「ねじまわし」と同じく一般的に使う。自動 車の運転者やゴルフの長距離用のクラブをさす用法もある。 ねじまわし とらえる【捉える】意識に収める、把握する意で、主に文章 に用いられる和語。〈カメラがその瞬間を—〉〈人の心を 〈要点を—〉〈実態を—〉〈機会を—〉〈核心を—〉〈機 会を—・えて言っておく〉「・えて放さない」りつかまえる・ 捕らえる とらえる【捕らえる】人や動物をつかまえる意で、改まった 会話や文章に用いられる、やや古い感じの和語。〈犯人を ー〉〈言葉じりをー〉〈腕をー・えてはなさない〉中村真一 郎の『遠隔感応』に「私にー・えられることを願いながら歩 きまわる」とある。児捉える ドラッグ医薬品をさし、まれに会話に使われる新しい外来 語。通常は「ーストア」の形で用い、単独使用は時に「麻 薬」の婉曲表現ともなるが、その場合は俗っぽい感じが 伴う。覚醒剤・しゃぶ・大麻・Q麻薬・マリファナ・やく ドラッグストア日用雑貨も扱う薬の販売店をさし、会話に も文章にも近年使われだしたアメリカからの外来語。駅 前のーに立ち寄る)漢方薬専門となるとイメージが合わ ない。Q薬屋・薬局 トラブル 揉事の意で、会話や硬くない文章に使われる外 来語。〈一メーカー〉〈一を解決する〉〈行く先々でーを巻き 起こす〉の「エンジン」「電気系統の」のように、故障 の意味でも使う。諍いいざざった・Q揉め事 ドラマ主にテレビやラジオでの放送劇をさし、会話にも文 章にも使われる外来語。〈メロ〉〈ホーム〉〈に出演 する〉回波瀾万丈の人生や劇的な幕切れの試合などを「筋 書きのない」「まさに一編のだ」のようにたとえる比喻 的な用法もある。ひ演劇・劇・Q芝居 とらまえる【捕らまえる】「つかまえる」意で、くだけた会話 <757> に使われることのある古めかしい俗語。〈やっとこさー・え たとこだ〉の「とらえる」と「つかまえる」との混交語。ち なみに、夏目漱石の「坊っちゃん」には「引っ捕らまえて やろう」という語形も出る。ひつかまえる・とらえる トランク大型の直方体の硬い旅行鞄をさし、会話にも文章 にも使われる、いくぶん古風な外来語。「にぎゅうぎゅう に詰め込む》小沼丹の『昔の仲間』に「あちらこちらに空 席が出来ていて、座席の主は帰って来ない。棚の上に残き れたのは、追憶というだけである」とあるように、旅の象 徴として郷愁を誘う比喩に使うこともある。スーツケース ボストンパック・Q旅行鞄 とりあえず【取り敢えず】何よりもまず第一にの意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈ー電話で知らせる〉〈ーピー ルを頼もう〉〈ーこのぐらいにしておく〉〈ー御礼まで〉 ほかにもいろいろあるが、それは後のことにして、という 含みがある。ひさしあたり・さしずめ①・Qひとまず とりあげる【取り上げる】相手から奪い取る、没収・徴収する 意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈武器を—〉〈授業 中に生徒からゲーム機を—〉〈税金として—・げられる〉 奪う・ひったくる・ふんだくる・まきあげる とりあつかう【取り扱う】「扱う」の意で、改まった会話や文 章に用いられる正式な感じの和語。〈現金を—〉〈薬品を 〈窓口で—〉〈ユーザーからの苦情を—係〉〈平等に—〉 〈くれぐれも慎重に—ように〉梅崎春生の『桜島』に「不 当にー・われているという反撥」とある。物事に対して用い る傾向があり、「家族同様に—」「正社員として—」のよう とりおこなう に人間について用いる場合は、「扱う」より事務的な感じが強くなる。扱う とりいる【取り入る】自分の利益になることをねらって上位 者が喜ぶようなことをする意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈先生にー・っていい成績をもらう〉ふうまく社長 にー・って出世街道を進む機会を利用してお世辞を言う だけでも使えそうな「ぺつらう」に比べ、もっと積極的に、 相手の喜びそうなことを探して自ら進んでやるような連想 がある。ひおもねる・迎合・媚びる・Qぐつらう とりうちぼう【鳥打帽】前びさしの付いた円く平たい軽便な 帽子をさし、会話にも文章にも使われる古風な表現。「を 深めにかぶった目の鋭い男)狩猟でよく用いたことから。 小沼丹のまさに『鳥打帽の男』と題する初期の短編に「這入 る前に少々深く被りすぎたーを被り直した」とある。马ハン チング とりえ【取り柄(得)】他に比べて優れているところをさし、 会話や硬くない文章に使われる、やや古風な感じの和語。 〈最後まで諦めないのがだ〉〈丈夫な点だけがだ〉〈何 のーもない〉四二葉亭四迷の『平凡』に「私に何のーがあ る?」とある。「長所」や「美点」と比べ、全体として大し た価値はないが、その中で比較的いい点を取り上げた感じ がある。Q長所・美点・利点 とりおこなう【執(取)り行う】式典や改まった行事などを実 施する意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの 和語。ヘこれより記念式典を—〉②「举行」以上に改まった 感じが強い。行う・Q举行・する・やる① <758> とりかえす とりかえす【取り返す】再び自分のものとする、元の状態に 戻す意で、会話にも文章にも使われる和語。〈貸した品物を やっとー〉〈取られた点をー〉〈勉強の遅れをー〉状態的 な「取り戻す」に比べ、具体的な行動のイメージが強い。 取り戻す とりかえる【取り替(換)える】それぞれを互いに換え合う意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈窓際の人と席を—〉〈コインを札と—〉② 「水を—」「シーツを—」「係を—」のように、それまでのも のを廃し別のものに替える意でも使う。弁交換 とりきめ【取り決め】関係者間で相談して決めた事柄をさし、 改まった会話や文章に用いられる、正式な感じの和語。「 を結ぶ〉〈ーに従う〉回「申し合わせ」よりも拘束力があり、 「国家間のー」のように、条約に近い意味でも使う。単申し 合わせ とりけし【取り消し】一度決めたことを無いことにする意で、 くだけた会話からさほど硬くない文章まで日常よく使われ る和語。〈予約の—〉〈免許の—〉〈発言の—を求める〉刂解 約・Qキャンセル とりさる【取り去る】邪魔になる物や不要になった物を他に 移してその場所から無くする意で、改まった会話や文章に 用いられる和語。〈路上の石を—〉〈庭の石灯籠いとをー・っ て花壇にする〉刂取り除く・Q取り払う とりしらべ【取調べ】詳しく調べる意の和語。一般的な使い 方もあるが、警察関係の連想が働きやすい。〈任意の—〉 〈警察の—を受ける〉〈容疑者の—〉〈聴取 とりすます【取り澄ます】実際の感情とは別にいかにも真面 目くさったようすを気取る意で、やや改まった会話や文章 に用いられる和語。「・した顔〉「・した声で答える〉 大仏次郎の『宗方姉妹』に「整い過ぎた顔立は、彫刻した人 形のようにー・した感じで」とある。Q気取るもったいぶる とりせつ「取り扱い説明書」の短縮形。くだけた会話で使わ れることのある近年の俗語。〈ーを読めば書いてある〉のし ばしば片仮名表記される。 とりそろえる【取り揃える】漏れなく集めて揃える意で、改 まった会話や文章に用いられる格式ばった和語。〈さまざま な品をー〉〈釣り道具一式をー〉弔揃える とりたてる【取り立てる】自分より下位にある一人物に特に 目をかけ重要な役に任用する意で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈弟子に—〉〈主役に—〉、重用・抜擢・Q引き立て る とりにがす【取り逃がす】捕まえそこなう意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる和語。〈獲物を—〉〈泥棒を追い 詰めながら、惜しいところで—〉、乃逃がす・Q逃す とりのぞく【取り除く】好ましくないものを無くする意で、 改まった会話や文章に用いられる和語。〈不純物を—〉〈障 害物を—〉〈痛みを—〉〈不安を—〉、除外・除去・どける・Q取 り去る・取り払う・除く・外す とりはずす【取り外す】取り付けてあるものを取り去る意で、 改まった会話や文章に用いられる和語。〈襖ふすをー〉〈電話 をー〉の庄野潤三の『ブールサイド小景』に「コースロープ を全部ー・した水面」とある。「外す」より大仰な感じがあ <759> り、受話器や腕時計やシャツのボタンのように簡単に外れ る対象には使いにくく、あえて用いるとかなり形式ばった 物言いに響く。ひ外す とりはだがたつ【鳥肌が立つ】急に寒さや恐怖に襲われて皮 膚が、毛をむしり取った鳥のようにぶつぶつに粟立つ意で、 会話でも文章でも用いられる慣用的な言いまわし。「ほ どの寒さだ」《あまりの恐ろしさにぞうっとして・った》 ②従来、寒さや恐ろしさといったマイナス評価の対象によ って生ずる場合に用いられてきたが、近年、「ような名演 技」「あまりにすばらしい演奏でーった」のように、ブラ ス評価の対象に使う例が目立ってきた。「ぞくぞくっとす る」感じでつながるのだろう。そのような用法の場合は、 従来の慣用を破っているという語感が伴う。児悪寒・寒け とりはらう【取り払う】遮っている物を無くして広く使える ようにする意で、会話にも文章にも使われる和語。〈塀を ー・って見通しをよくする〉の「学部間の垣根をー・って他学 部の科目を自由に履修できるようにする」のように抽象的 な意味合いで使う比喻的な用法もある。くだけた会話では しばしば「取っ払う」となる。呂取り去る・Q取り除く とりひき【取引】物品の売買など営利目的の経済行為をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる和語。〈一 先の会社〉〈商—に応じる〉〈その銀行と—がある〉〈高値 で—されている〉「政党間の—」のように互いの利益を考 えた交渉の意の比喻的用法もあり、その場合はマイナスの イメージが伴う。Q交渉・折衝 とりまく【取り巻く】「囲む」に近い意で、くだけた会話から どりょく 硬い文章まで幅広く使われる和語。〈スターをー連中〉〈わ が身をー困難と危険〉島尾敏雄の『出発は遂に訪れず』に 「私をーすべてのものの運行は、はたとその動きを止めてし まった」とある。「囲む」が静的な感じであるのに対して、 「取り巻く」は中の対象に向かって働きかける力が感じられ る。「みんなで鍋を囲んで一杯やる」という例で、「囲む」 を仮に「取り巻く」に置き換えてみると、鍋の中身がまたた く間になくなりそうなけはいになるし、「恩師を囲むつど い」も「取り巻く」にしたとたん、なごやかな雰囲気から殺 気立った空気に一変しそうな感じが漂うのは、両語のそう いった語感の違いの反映である。囲む とりもとす【取り戻す】一度失ったものを元の状態に戻す意 で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。貸した本 をー〉〈調子をー〉〈仕事の遅れをー〉〈落ち着きをー〉〈街 が活気をー〉②行動的な「取り返す」に比べ、状態が旧に復 する意味合いの用法が目立つ。取り返す とりやめ【取り止め】予定したことを中止する意で、会話や さほど硬くない文章に用いられる和語。〈あすの集会はー だ〉〈雨のため遠足がーになる〉回「廃止」に比べ一時的な 感じが伴う。単中止・Q廃止 どりよく【努力】ある目的を達成するために精を出して頑張 る意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な漢語。〈一家〉〈人一倍ーする〉〈一にーを重 ねる〉〈一を惜しむ〉〈日頃のーを怠る〉〈あのーには頭が 下がる〉〈地道なーが実る〉志賀直哉の『城の崎にて』に 「自分は矢張り鼠と同じようなーをしはしまいか」とある。 <760> とりわけ ひいそしむ・頑張る・Q精進・励む とりわけ【取り分け】同類のもののうち特にその性質が甚だ しいとして別に取り上げる意で、改まった会話や文章に用 いられるやや古風な和語。〈今年の夏は—暑い〉へいつもこ の時期は—多忙を極める)とに・Q特に・なかんずく 「飲み物」に近い意味で、主に会話で使うことのある新しい感じの外来語。〈ホット〉〈の自動販売機〉の栄養剤の入った清涼飲料をさすこともあり、容器に入れて売っている飲み物をさす場合が多い。スープや甘酒はもちろんワインやピールをさすことも、水をさすケースも少ない。レストランなどではアルコールの入っていない飲み物を「ソフト」と言う。「お飲み物」という意味で「のほうは何になさいますか」と客に尋ねることはありそうだが、客どうしが「おい、お前、どうする?どぶろくか、抹茶か」などと話し合うことは考えにくい。家庭でいれた緑茶やコーヒーや紅茶なども、通常、「ドリンク」とは言わない。また、販売機で買ってきたドリンク類でも、自宅で飲むときには「ドリンク」などと呼ばず、ジュースやコーヒーなど個々の名称を使う傾向がある。その点では業界用語に近い。飲み物 とる【取る】持つ、取り去る、その他の広い意味で、くだけ た会話から硬い文章まで使われる日常の最も基本的な和語。 〈手を—〉〈資格を—〉〈新聞を—〉〈休みを—〉〈意味を—〉 〈不覚を—〉〈汚れを—〉〈機嫌を—〉〈相撲を—〉 ⑩永井 龍男の『手袋のかたっぽ』に「その手で煙草を—と、いつも の慈顔であった」とある。意味があまりに広範囲にわたる ため、「畑でとうもろこしを」のように収穫する意の場合 に「穫る」、「山で獲物を」のように捕獲する意の場合に 「獲る」、「栄養を」のように摂取する意の場合は「摂る」 「他人の物を」のように盗む意の場合は「盗る」「政権を 」のように奪う意の場合は「奪る」「ビデオに」のよう に録音・録画の意の場合に「録る」などと書き分けることも ある。意味がしぼられてわかりやすい半面、表外訓を用い るこれらの表記は趣味的な雰囲気があり、「獲る」「獲る」 「奪る」「録る」などは俗っぽい感じも漂う。Q採る・撮る・ 執る とる【採る】採取・採用・採決・採寸の意で、会話でも文章でも 広く使われる日常の和語。〈山菜を—〉〈血を—〉〈社員を —〉〈案を—〉〈決を—〉〈寸法を—〉Q取る・撮る・執る とる【執る】執り行う意で、やや改まった感じの会話や文章 に使われる和語。〈筆を—〉〈事務を—〉〈手続きを—〉〈教 鞭を—〉〈指揮を—〉Q取る・採る・撮る とる【撮る】撮影の意に限定して会話や文章に使われる日常 の和語。〈写真を—〉〈時代劇を—〉阿川弘之の『雲の墓 標』に「カピネ判の写真を一枚ー・って帰途につく」とある。 Q取る・探る・執る トレードマーク「商標」の意で、会話や軽い文章に使われる 外来語。〈おなじみのー〉の「真赤なペレーが」「のち よびひげで登場する」のように、ある人物を特徴づける際立 ったしるしをさす比喩的用法も多い。Q商標・ブランド・銘 柄 どろ【泥】水分を吸収してやわらかくなった土をさし、会話 <761> にも文章にも使われる和語。〈ーよけ〉〈ーだらけ〉〈ーに まみれる〉〈ーをこねる〉、Q土・泥んこ とろう【徒労】役に立たない無駄な労力の意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。何の効果もないから疲れる だけでーだ〉ヘぜっかくの助力もーに終わる〉人永年の努力 もーに帰する〉無償の美を求める川端康成は『雪国』で、 読んだ小説のメモを書いた雑記帳が十冊にもなったと言う 駒子に、「全くーであると、島村はなぜかもう一度声を強め ようとした途端に、雪の鳴るような静けさが身にしみて、 それは女に惹きつけられたのであった」という場面を描い た。ひ無益・無駄・無駄骨 どろくさい【泥臭い】洗練されていない意で、会話でも文章 でも使われる表現。〈趣味〉(やることが—)田舎じ みた」という意味のほか、実際に泥の匂いがする場合にも 使われる。刂垢抜けない・Q田舎じみるださい・野暮・野暮ったい どろぼう【泥棒】他人の物を盗む人をさし、会話でも文章で も最も広く使われる普通の日常語。〈が入る〉〈を働 く〉福原麟太郎の『泣き笑いの哲学』に「盗んだ着物を大 きな風呂敷包にしたが、座敷のまん中の碁盤を囲んでい る主客の置石に見入り、つい助言をする」とある。行為と 人の両方をさす。刂窃盗・賊・盗賊・ぬすっと・Qぬすびと・物盗り とろろいも【薯菓芋】自然薯菓や長芋など、とろろにする芋 の総称として、会話にも文章にも使われる和語。〈にもい ろんな種類がある〉Q自然薯・長芋・山芋 どろんこ【泥んこ】「泥」または「泥まみれ」の意で、主にく だけた会話に使われる子供っぽい和語。〈ー遊び〉へーにな どんこう る ↓泥 とわ【永遠・永久】「永遠」を和風にした雅語的表現。「とこし え」「とこしなえ」より多く使われる。〈ーの別れ〉〈ーの眠 りに就く〉〈ーに幸あれかし〉伊藤左千夫の『野菊の墓』 に「新墓が民子がーの住家であった」とある。漢字表記は音 読みされやすく、文頭や読点の次なら仮名書きでよいが、 文字環境によって文中に埋もれて紛らわしいので、ルピつ きの漢字表記のほうがわかりやすい。何時までも・Q永遠・ 永久・永劫・恒久・とこしえ・とこしなえ・悠遠・悠久 とんがる【尖んがる】主としてくだけた会話で使う、「とが る」意のやや強調ぎみの口頭語。〈先のー・った帽子〉〈口を ー・らせる〉ひとがる どんかん【鈍感】感覚が鈍く物の感じ方・考え方が冴えない意 で、会話にも文章にも使われる漢語。へにおいにーな人 人一倍皮膚がーだ)〈四季の変化にーだ)小津安二郎監 督の映画『お茶漬の味』では佐分利信の演ずる都会的セン スにとぼしい男が「ーさん」と陰口を言われている。無神 経・Q無頓着 「普通列車」の意の俗語。へたまにはーでのんびり旅するの も悪くないの三浦哲郎の『一尾の鮎』に「短篇仕立ての章 をいくつも繋いだ列車のようなもの」という比喩表現が 出る。通勤電車よりも、ある程度以上の長距離列車を連想 しやすい。「鈍い」意の「鈍」という漢字のイメージと、語 頭の「ド」という濁音の響きが相乗効果をなしていかにも 鈍くさい軽蔑的なニュアンスを与え、それが滑稽な感じに <762> とんざ つながることもある。Q各駅停車・緩行・普通列車 とんざ【頓挫】物事が行き詰まりその進行が途中で急に停止 する意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「 を来す」〈計画がーする〉の太宰治の『富嶽百景』に「私の 結婚の話も、一のかたちであった」とある。「停頓」に比 べ、そのまま取り止めになる雰囲気が強い。専停頓 とんし【頓死】突然死ぬ意で、会話より文章に多く使われる、 やや古風な漢語。〈勤務中の—〉〈旅行中に—する〉②「即 死」ではないが、「急死」以上にあっけない感じ。Q急死・ 急逝・即死 どんじり【どん尻】順番の最後をさし、主にくだけた会話に 使われる古風でやや俗っぽい和語。〈ーに控える〉へーから 巻き返す〉最低下位・最後尾・Qしんがり・びり・びりっけつ とんずら逃げる意の隠語。〈ーをきめこむ〉の「とん」は遁 走の略、「ずら」は「ずらかる」の略。逃げる とんだ思いがけず迷惑な事態をさして、主にくだけた会話 に使われる俗っぽい和語。〈こいつはー災難だ〉〈一人に見 込まれたものだ〉〈一騒ぎになる〉〈これはー失礼を〉 「このたびはーことで」の形でお悔やみのことばとなる場合 もあり、その場合は「とんでもない」に換言しにくい。 とんでもない とんち【頓智(知)】その場に即応して働く奇抜な知恵の意で、 会話にも文章にも使われる、やや古風な漢語。〈比く〉 〈ーを働かせる〉少年講談『曾呂利新左衛門』に、豊臣秀 吉に望みの物を褒美につかわすと言われ、新左衛門は紙袋 に一杯の米を所望して欲のない人間だと思わせ、米蔵がす 「機転」以上に笑いと結びつきやすい傾向が感じられる。 「桜入る大きな紙袋を持参する話が出てくる。「機知」や ウイット・エスプリ・Q機知・機転・ヒューマー・ユーモア とんちき【頓痴気】愚かで気の利かない意で、主に人をの しるときに使う古めかしい俗語。〈このーめ、ちっとは手伝 ったらどうだ〉ひQぼんくら野暮天 どんちゃんさわぎ【どんちゃん騒ぎ】大勢で酒を飲み歌を歌 い楽器を鳴らすなどして大きな音を立てて騒ぐ意で、主と してくだけた会話に使われる俗っぽい和語。夜遅くまでー を繰り広げる〉も乱痴気騒ぎ どんちょう【緞帳】巻いて上げ下ろしする芝居などの厚地の 幕をさし、会話にも文章にも使われる古風な漢語。「芝 居〈一役者〉の三島由紀夫の『金閣寺』に「雨音は厚い のように戸外をとざしていた」という比喻表現の例がある。 専幕・Q幔幕 とんでもない 常識から悪い方向に大きく外れている意で、 主に会話に使われるくだけた表現。〈値段をつける〉へ ことを言い出す〉へーまねをやらかす〉へあいつはーやつ だ〉自分が成功したのを相手に褒められたときに、「ー、 まぐれです」と相手の言を打ち消す形で謙遜する場合にも 使う。「途でもない」から変化した一つの形容詞なので、 丁重に言う場合には「ーことでございます」か「とんでもの うございます」となるが、誤解から近年は「とんでもありま せん」「とんでもございません」という俗な形が横行してい る。ひとんだ とんとん同じ程度で優劣の差が認めにくい状態をさし、改 <763> まらない会話に使われるやや俗っぽい和語。〈儲けも損る なくだ〉へとちらも飛び抜けて優秀だというわけでなく 成績もだ)利害・収支・損得などの場面でよく使う。 拮抗・豆角・五分五分・Qどっこいどっこい・伯仲・比肩・匹敵 どんどん物事が次から次へと勢いよく進む様子をさし、会 話や硬くない文章によく使われる日常の擬態語。〈一召し 上がれ〉〈遠慮なくーやる〉〈仕事を片っ端から一片づけ る〉の「戸をーとたたく」のように擬声語としても使う。 Qぐんぐんじゃんじゃんずんずんどしどし どんな「いかなる」の意で、会話やごく軽い文章に使われる くだけた表現。〈一部屋でもいいよ〉〈ー仕事に向いてるか な〉「どういう」より会話的で、論文のような硬い文章に は不適。ひいかなる・Qどういう・どのような とんなに程度の疑問や仮定を表し、ややくだけた会話や軽い文章に使われる和語。〈子供はー喜ぶだろう〉へー忙しくっても〉いかに・どう・Qどのように とんぼがえり【蜻蛉返り】「宙返り」の意で、会話や軽い文章 に使われる和語。へーをしてみせる)回とんぼが素早く方向 転換することから。「博多まで—の出張だ」のように、比喻 的に、出かけた先から用を済ませてそのまま戻る意にも使 う。単宙返り とんま【頓馬】「間抜け」に近い意味で、くだけた会話で使わ れる、いさきか古めかしいことば。〈何やってんだ、ー!〉 の「間抜け」同様、とんだ失敗をやらかしたことに対する評 価という面が強い。専あほ・あほう・たわけ・ばか・Qまぬけ どんよく【貪欲】欲が深くどこまでもむさぼり求める意で、 どんらん【貪婪】むやみにむさぼる意で、主として文章に用 いられる硬い感じの漢語。〈な食欲〉〈な商法〉語頭 が「下」という濁音であることも作用して、「とんらん」 「たんらん」と読む場合よりきつい響きがある。Qたんら ん・貪欲 改まった会話や文章に用いられる漢語。「に金をためる 〈知識をーに吸収する〉「ド」という濁音で始まることも 作用して、きつく響く。みたんらん・胴欲・どんらん どんらん <764> な な【名】姓名、または、姓を除く個人名のみをさして、会話や軽い文章に使われる古風な日常の和語。〈変わった〉〈ーを名乗る〉〈ーが売れる〉〈他人のーを騙る〉〈大原富枝の『婉という女』に「低い声で呼ばれた自分のーが矢のようにわたくしの心に、体に刺さった」とある。「ーもない」「ーを成す」「ーをけがす」「功成りーを遂げる」のように特に名声の意で用いる場合もある。また、「虫のー」「花のー」「組織のー」のように、名称の意で人間以外にも広く使う。さらに、「顧問とはーばかりで」「改革というーのもとに」のように、実質を伴わない名目だけのといった意味合いで使う用法もある。専氏名・姓名・Q名前 な【菜】葉や茎を食用とする野菜の総称として、会話にも文 章にも使われる和語。〈小松—〉の花「一種」のよう に、特にアブラナをさすこともある。単独ではあまり使わ ない。長塚節の『土』に「春の野を飾って黄色な布を掩うよ うなーの花」とある。巻菜っ葉 ない無い「存在しない」という意味合いで、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の最も基本的な 和語。〈金が」〈身寄りが」〈何の関係も」〈遠慮の 間柄〉〈影も形も」〈血も涙も」〈油断も隙も」仮名 書きが一般的だが、「有ること」こと」のように、物や事よ りその有無に重点がある場合は漢字で書くことが多い。小 津安二郎監督の映画『宗方姉妹』に満里子(高峰秀子)が宏 (上原謙)に「奥さんは?お留守?」と尋ねるシーンがあ る。宏が「いないよ、奥さんなんか」と独身を主張するとこ ろまでは現代と同じだが、満里子はそれに「いないの」と応 じたあと、「そう、」の」と換言し、宏も「よ」と繰り返 す。特定の妻という個人を意識するか、妻という存在を意 識するかによって「いない」と「ない」を使い分けているよ うに思われ、ともに「いない」と言う現代から見れば、ここ の「ない」の用法は古い感じを与える。「有る」と対立。 ナイーブ世間でもまれた経験がなく思考や感情が純粋な意 で、会話にも文章にも使われる外来語。〈ーな感情〉〈ーな 青年〉〈ーで傷つきやすい〉②清新なプラスのイメージと 弱々しく脆いマイナスのイメージが共存している。刂初々 しい・Qうぶ・純情・純真 ないえんかんけい【内縁関係】婚姻届を提出せずに実質的な 夫婦の関係にあることをさし、改まった会話や硬い文章に 用いられる、客観的な感じの漢語。「の夫」二人はすで にーにある)生活形態よりも入籍を済ませていない点に 着目して用いる法的なにおいのする言い方。「同棲」より正 式な雰囲気があり、報道関係でよく使う傾向がある。马同棲 ないおう【内奥】奥深いところをさし、主として文章に用い られる硬い漢語。〈人の心の—にひそむ闇〉Q奥底 ないかく内閣国の行政を担当する最高機関をさし、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一総理大臣〉〈一 官房長官〉〈政党〉〈一改造に踏み切る〉〈初の入り〉 具体的には総理大臣と各国務大臣によって構成される統合 <765> 体。 政府 ないかくそうりだいじん【内閣総理大臣】内閣の長として国 の行政のすべてを統括する最高責任者をさし、ごく改まっ た会話や硬い文章に用いられる正式用語。へーに就任する へーとして初の会見に臨む》冫宰相・Q首相・総理・総理大臣 ないがしろ【蔑ろ】軽んじて無視する意として、改まった会 話や文章に用いられる、やや古風な和語。〈親をーにする〉 〈忠告をーにする〉森鷗外の『栗山大膳』に「二代続いて 忠勤を励んでいる此老爺をーにすると云うことがあるも のか」とある。りいい加減・疎か・ちゃらんほらん・Qなおざり・ 忽せ ないこうてき【内向的】他人に働きかける積極性に欠け非社 交的な意で、会話にも文章にも使われる、やや専門的な感 じの漢語。「で人前に出るのが苦手だ」内気」と違っ て、自分の内面に向かう思索的な感じがある。「外向的」と 対立。内気・内弁慶・Q引っ込み思案 ないし【乃至】上限と下限を設定してその範囲であることを 示し、改まった会話や文章に用いられる、やや硬い感じの漢 語。〈北—北東の風〉(二年—三年継続する)「中国—ロ シア」のように、そのどちらかであることを表す用法もあ り、「左翼—進歩的といわれる作家詩人たち」という堀田善 衛『広場の孤独』の例もそれにあたる。あるいは①・Qまた は ないしきよう【内視鏡】胃・腸・膀胱・気管支などの内部に挿 入して直接観察する検査・医療用の装置をさし、会話にも文 章にも使われる専門的な漢語。〈一検査〉へーで精密検査を ないせん する〉へーで覗く〉弔カメラ ないしよ【内緒(所・証)】他人に知られないようにひそかに行 う意。会話やさほど改まらない文章で使われる日常の漢 語。〈一話〉へ一の話〉へ一にしておく〉みんなには一だ よ三木卓の『隣家』に、一人で住んでいる老女が「この ごろは、一で煙草を吸っている」という一見奇妙な表現が出 てくる。「一といっても、だれがみているわけではないのだ が、それでも身内に叱られないように気をつけている気分 が楽しい」のだという。一人暮らしの微妙な心理がよく描 かれているように思う。ひこっそり・そっと・内分・内聞・Q内容・ ひそか ないしん【内心】心の中ではの意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈ーびくびくしていた〉〈一面白くない〉〈一穏 やかではない〉〈一は窺い知れない〉夏目漱石の倫敦 塔に「大いに驚ろく」とあり、尾崎一雄の『玄関風呂』 に「私はいくらかふくれた」とあるように、当人の発言や 外面に現れている表情や様子と違うことを前提としている ニュアンスが強い。胸中・心中・Q本心・本音・胸の内 ないせい【内省】自分の言動や考え方などを振り返って内面 的に観察する意で、改まった会話や文章に用いられる、やや 専門的な漢語。へーが利く〉〈日頃の言葉づかいを質問され てーによって答える〉ひQ自省・反省 ないせい【内政】外交に対し、国内の政治の意で、会話にも 文章にも使われるいくらか専門的な漢語。〈千渉〉〈に 力を入れる〉乃国政 ないせん【内戦】同じ国民同士が国内で敵味方に分かれてた <766> ないぞぅ たかう意で、会話にも文章にも使われる漢語。へに発展し かねない様相を呈する)内乱 ないぞう【内臓】体内諸器官の総称として、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈一疾患〉〈一の病気〉の大岡昇平 の『俘虜記』に「全ーがストライキに入ろうとしている」と ある。五臓六腑臓器・Q臓腑・臓物・はらわた・もつ ナイター「夜間試合」の意の、やや古い感じの和製英語。〈 中継〉〈ーで行われる〉サトウハチローのスタンドの古 狸』に「アメリカ球界でも、ーを好きな選手は、ほとんどい ない」とある。英語の「ナイト」を加工した日本人の造語。 「デーゲーム」に対しては「ナイトゲーム」という。ナイ トゲーム・Q夜間試合 ないてい【内定】未発表ながら内部では決定していることを さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈就職先がーする〉 〈ーを出す〉〈ーを取り消す〉足確定・決定・本決まり・Q予定 ナイトゲーム「夜間試合」の意の、比較的新しい外来語。〈今 日のセ・リーグはすべてーが組まれている〉放送では和製 英語を気にするせいか、伝統的な「ナイター」よりもこの語 を用いることが多い。「デーゲーム」と対立。Qナイター 夜間試合 ないない【内内】内輪の意や表立たない意で、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈ーで決める〉へーに知らせ る)横光利一の『紋章』に「ー調査いたしますと、ごく内 輪に見つもりましても、年額一万五千石の醤油」とある。 他に知られないようにする「内密」と違い、非公式にこっそ り知らせる感じが強い。「うちうち」とも読む。りうちうち こっそり・そっと・ひそか ないふん【内紛】組織内に対立が生じて互いに争う意で、改 まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈政党の—が報道 される〉(会社で営業方針をめぐって—が起こる)中島敦 の『李陵』に「偶々匈奴の—に関係したために、使節団全員 が囚えられることになって了った」とある。企業や政党や 国家など、「内輪揉め」よりも大規模な集団の場合に使う。 球団や小さな会社などはこの語でも「内輪揉め」でも違和 感がない。「内輪揉め」より対立が深刻な感じがある。内 輪揉め ないぶん【内分】内々で行い表ざたにしない意で、会話でも 文章でも使われる、やや古い感じの漢語。〈ーに済ませる〉 〈ーに処理する〉内緒・内聞・内密 ないぶん【内聞】正式のルートでなしに情報を耳にする意で、 会話でも文章でも使われる、やや古い感じの漢語。「この話 はごーに願います」②表ざたにしない意のほか、「ーに達す る」の形で、内々に聞く意にも用いられる。内緒・Q内分・ 内密 ないみつ【内密】関係者の間だけで行い、他にもれないよう にする意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの 漢語。へーに事を運ぶへーに調べる)辻邦生の『天草の 雅歌』に「ーに与力の原隼人に命じて、告訴状の連署人の身 もとを調査させた」とある。ひこっそり・そっと・Q内緒・内分・ 内聞・ひそか ないよう【内容】物事に含まれる具体的な事柄や意味をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈外見は立派だがーにと <767> ほしい)〈本の—が理解できない〉〈仕事の—を詳しく知り たい)太宰治の『女生徒』に「美しさに、—なんてあって たまるものか。純粋の美しさは、いつも無意味で、無道徳 だ」とある。「」物」として包みなどに入っている具体物を さすこともある。「形式」と対立。専実質・Q中身 ないらん【内乱】国内の騒乱をさして、会話にも文章にも使 われる漢語。〈—が起こる〉〈—罪を適用する〉〈—を鎮圧 する〉②大規模な暴動に相当し、通常は政府に反乱する武力 闘争をさす。国家間の争いでないため、そのままでは「戦 争」に含まれない。马内戦 今風で新鮮だの意で、ひところ盛んに使われた古め かしい造語。へきょうはちょっと格好をして出かける 「今」という意の英語を日本語の形容詞のような活用語の形 に変えた新造語。最初は「ナウだ」という形容動詞として 使われたようで、それが「ナウい」に変わって流行し、それ からかなり経過したのちに、すでに使われなくなっていた 形容動詞の形で一部の辞典に登場した。現在では「ナウい」 のほうもすっかり廃れ、中年以上の人々の耳にかすかな記 憶として残っている程度である。まだいくらか使われてい る「ださい」の対義語に相当する俗語。英語の「ナウ」をそ のまま日本語の中で使う試みも見られる。ひいかす・Qはや り・流行 なえ【苗】種から発芽して間もない草や木をさし、会話にも 文章にも使われる和語。〈草花の—〉へーを育てる〉、豊苗木 なえぎ【苗木】樹木の苗をさして、会話にも文章にも使われ る和語。へーを植える〉へーから育てる〉、豊苗木 なおす なお【尚(猶)】「もっと」の意で、会話にも文章にも使われる、 いくぶん古風な和語。〈それなら—ありがたい〉〈そちらは ー悪い〉〈しょうがを加えると味が—引き立つ〉りQさらに・ もっと なおさら【尚更】一般にそれほどと思われていない事実をあ げ、だから当然として以下を認めさせる場合に、会話にも 文章にも使われる和語。〈予選を通過するだけでも難しい のだから、優勝となれば「大変だ」の「まして」と違い、単 に「なおさらだ」で済ませることもできる。また、両者は機 能が異なるため、「子供にも容易だから、まして大人には 容易だ」のように、「まして」と併用する例もある。まし て なおざり【等閑】物事を心をこめてやらずにほうっておく意 で、改まった会話や文章に用いられるやや古風な和語。仕 事をーにする〉〈ーな返事〉漢字を当てると「とうかん」 と読まれやすい。音の似た「おざなり」と混同されること もある。ひいい加減・Q疎かちゃらんぼらん・ないがしろ・忽 せ なおす【直す】あるべき状態に改める意で、会話にも文章に も広く使われる日常の和語。〈化粧を—〉〈答案を—〉〈時 計を—〉〈機嫌を—〉〈癖を—〉②太宰治の『女生徒』に「お ふとんをー・してあげて、おふとんのすそのところを八タハ タたたいてあげる」とある。ひ治す なおす【治す】治療する意に限定して会話でも文章でもよく 使われる和語。〈病気を—〉〈虫歯を—〉遠藤周作の『海 と毒薬』に「肺結核を—新方法」とある。直す <768> なおる なおる【治る】病気や怪我が施えて元の状態に戻る意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈怪我が—〉〈病気が—〉森鷗外の『高瀬舟』に 「どうせー・りそうにもない病気だから、早く死んで少しで も兄きにらくがさせたい」とある。本格的な感じの「回復」 と違い、ちょっと擦り剰いた程度の傷の場合でもこの語を 使って違和感がない。Q癒える・回復・治癒・平癒 なおん女を意味する昔の隠語。「おんな」の「おん」と 「な」を逆転させた語形。女・すけ なか【中】仕切り線より奥のほうをさし、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈箱 のーを確かめる〉〈家のーにとじこもる〉〈森のーを散策す る〉〈雨のーを出かける〉〈心のーを忖度だする〉小沼丹 の『後家横丁』に「自然の成行として、ーに入ってカウンタ アに向って椅子に尻を載せることになる」とある。対象を 内部からとらえた感じの「内」に対し、この語は客観的に とらえた感じが強い。ひ内① ながい【永い】時間的な長さについて改まった挨拶や文章に 用いられる、やや古風で詩的な感じも漂う和語。〈日が—〉 〈別れ〉〈間のご愛顧〉庄野潤三の『静物』に「湯タン ボで火傷したのはー・くかかる」とある。「末ー・くお幸せ に」「眠りに就く」のように、「長い」のうち時間的な長 さを特に強調・美化して用いる表記。長い ながい長い長さ・距離・時間などの程度が大きい意で、 だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の最も基 本的な和語。〈髪が—〉〈脚が—〉〈橋〉〈手紙〉〈話が ー〉〈目で見る〉〈時間〉井上ひさしの『プンとフン』に「金魚のフンのようにただただだけの副題」とある。空間的にも時間的にも用いられる一般的な表記。み永い・長たらしい・長ったらしい ながいき【長生き】人間や動物が平均寿命よりかなり長く生 きる意で、くだけた会話から文章まで広くよく使われる日 常の和語。〈丈夫で—する〉へ—の秘訣がい〉へ—するといろ んなことがある)長寿・Q長命 ながいも【長芋】山芋の栽培種の一つをさし会話にも文章に も使われる和語。へーのさくさくとした食感》自然薯 なかごろ【中頃】時間的な中間あたりの部分をさして、会話 にも文章にも使われる和語。〈五月のーを予定する〉(シー ズンのーは込み合う)の「中程」より広い。少中間・中盤・半 ば・Q中程 ながしかく長四角長方形の会話的な表現。「の広さ 四いくぶん子供じみた感じもある。専矩形・Q長方形・四角 四角形・四边形 なかぞら【中空】「中天」の意で、主に文章中に用いられる古 風で趣のある和語。〈月がーに浮かぶ〉竹西寛子の「蟻と 松風」に「に無数の羅のの髪を寄せ続けているような松 風の音」とある。ひQちゅうくう・中天 なかたがい仲違い仲の良かった二人が何かのきっかけで 急に仲が悪くなる意で、会話やさほど改まらない文章に使 われる、いくぶん古風な和語。〈勝負事はーのもと〉友達 とーする田宮虎彦の『銀心中』に「嫂とーして、友達 <769> をたよって東京に出ていた」とある。主に人間同士の関係 で使う。「仲直り」と対立。反目・Q不仲・不和 なかだち【仲立ち】互いに知らなかったり対立していたりす る二者の間に立って良好な関係をつくるのに役立つ意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる、やや古風な和語。 〈縁談のー〉〈交渉のーを務める〉の「仲介」より漠然とした 感じがある。図題け橋・Q仲介・橋渡し ながたちよう【永田町】東京都千代田区の地名。「の論理 国会議事堂や首相官邸などがあるため、政界の象徴とい うニュアンスを帯びる。Q霞ケ関・兜町 ながたらしい【長たらしい】不快になるほど度を超えて長い 意の和語。「長い」より若干会話的な感じの語。〈スピー チ〉〈やたらに—作品〉〈—挨拶は抜きにして〉谷崎潤一 郎の『鮫人』に「余りー・く説明すると読者の迷惑」とある。 単に長いだけでなく、内容に興味が持てず途中で飽きて嫌 になるといった不快感を伴う。「名前」のように、話や文 章だけでなく一つの単語についても使える。井伏鱒二に 『槌ツァ」と「九郎治ツァン」は喧嘩して私は用語について 煩悶すること』と題する小説がある。豊散漫・冗長・冗漫・長い・ 長ったらしい ながったらしい長ったらしい長たらしいの強調形で、 主に会話に使われる。〈途中で飽きるほどやたらに—文章〉 の「冗長」「冗漫」が比較的客観的なマイナス評価であるの に対し、この語は不快感を前面に出した主観的な評価に感 じられる。専散漫・冗長・冗漫・長い・Q長たらしい ながっぽそい【長っ細い】「細長い」「長細い」の強調表現と ながほそい して、主に会話に使われる俗っぽい和語。〈池〉〈やけに ー棒〉ひQ長細い・ひよろ長い・細長い なかなおり【仲直り】不仲になった相手と、仲の良かった元 の関係に戻る意で、会話やさほど硬くない文章に使われる 和語。〈1のしるしに居酒屋で一杯やる〉〈喧嘩別れした友 達とーする〉「和解」に比べ、ちょっとした喧嘩であまり 長くない絶交期間のあとの個人的な関係について使う。 「仲違い」と対立。宮沢賢治の『どんぐりと山猫』に「裁判 ももうきょうで三日目だぞ。いいかげんにーをしたらどう だ」とある。少和解 なかにわ【中庭】星敷内の建物で囲まれた比較的小規模な庭 をさし、会話にも文章にも使われる和語。ヘに面した部 屋内庭より一般的。漉井孝作の『積雪』に「障子 にの積雪の明りがうつった」とある。具Q内庭・坪庭 ながねん【永長年】長い年月の意で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の表現。「の経験を生か す」(の努力が実を結ぶ)「住み慣れた家を手放す」 Qえいねん・積年・多年 なかば【半ば】時間的・空間的な中間部分をさして、会話にも 文章にも使われる和語。〈四月—に咲き出す〉〈道のーで引 き返す〉「出来上がる」「諦める」のように、全体の 半分ほどの意にも、「宴ーに退席する」「志ーにして病に倒 れる」のように、単に途中の意にも用いるが、やや古風な感 じになる。ひ中間・中盤・Q中頃・中程 ながほそい【長細い】「細長い」の意で会話にも文章にも使わ れる古風な感じの和語。〈一箱〉〈一四角〉「細長い」のほ <770> なかほど うが一般的・標準的。長っ細い・ひょろ長い・Q細長い なかほど【中程】時間的・空間的な真ん中あたりをさして、会 話にも文章にも使われる和語。〈車輛の—〉〈レースの—で リードを奪う〉の「中頃」より範囲が狭い。Q中間・中盤・ 中頃・半ば なかま【仲間】同じ団体の構成員や仕事を一緒にする相手や いつも一緒に遊ぶ友達などの親しい間柄をさし、くだけた 会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。〈教師—〉 〈—割れ〉〈—はずれ〉〈—に加わる〉〈—に相談する〉〈— が集まる〉〈—に入る〉〈—を裏切る〉〈—に好かれる〉森 鷗外の『舞姫』の冒頭に「夜毎にここに集ひ来る骨牌かー」 が出てくる。「友人」以上に強い絆が感じられて親しい雰 囲気があり、小沼丹の『昔の仲間』も格別親しかった友人と 一緒に旅した思い出である。ひ一味・Q同志・同僚・友・友達・味 方・友人・僚友 なかまはすれ【仲間外れ】仲間に入れない状態をさし、会話 や軽い文章に使われる和語。へーにされる〉へーにしていじ める)結果としてそうなる場合と意図的にそうする場合 とがある。刂爪弾き・Q除け者 なかみ【中身(味)】中に入っている実質的な内容をさし、く だけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈財布の—〉〈仕事の—〉〈頭の—〉〈話は面白いが—が ほとんどない〉の島崎藤村の『破戒』に「雑誌屋で一冊を買 って取って、それを抱いてーを想像しながら下宿〈帰った」 とある。「箱の—」のように、入れ物と分離できる例が多 く、「実質」や「内容」より具体的。実質・内容 ながめ【眺め】ある地点から見た風物のようすをさし、会話 でも文章でも使われる日常生活の和語。「のいい部屋 〈ーを楽しむ〉〈屋上からのーがすばらしい〉の三島由紀夫 の『潮騒』に「のもっとも美しいもう一つの場所は、島の 東山の頂きに近い燈台である」とある。「庭のー」など、 「景色」や「風景」を使うと大げさな感じになる、狭い範囲 の対象でも自然な感じで用いられる。また、「景色」と違っ て、高層ビルが建ち並び高速道路の走る都市の人工美の場 合にも使うことができる。「眺める」という動詞からの転成 名詞だけに、対象そのものというより、人間が見る場所や 方角が意識にのぼりやすく、「車窓からの」「丘の上から の」「南の方角の」といった限定を伴うこともある。Q景 色・光景・風景 ながめる【眺める】しばらく全体をほんやり見ている意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈庭を—〉〈遠くの山並みをト〉③三島由紀夫の 『美德のよろめき』に「旅立ちの折に旅行者が、自分のうし ろへ残してゆく風景に向って最後の一瞥を投げるように、 それをー・めている」とある。「変わり果てた姿をまじまじ とー」のように、じっと見つめる意の用法もある。JQ観察・ 凝視・見詰める ながらぞく【ながら族】互いに無関係な二つの行為を同時に する人をさし、かつて流行し、今では古い感じになったユー モラスな俗っぽい造語。へーだから、ラジオを聴きながらの ほうが能率が上がる)の二つのことを同時に行う新しいタ イプの人の出現に驚いて、あたかも異民族のように名づけ <771> たことば。かなりの誇張表現だが、「新人類」ほど大げさで はない。ちなみに、「僕はーじゃないから、二つのことを同 時にはしないよ」と言う相手に、「嘘つけ、この間、いびき かきながら寝てたじゃないか」と突っ込む笑い話もある。 ながればし【流れ星】「流星」の意で、会話やさほど硬くない 文章に使われる、いくぶん抒情に的な和語。「が飛ぶ へに願いをかける」彗星・ほうき星・Q流星 ながれる【流れる】液体自体の移動、それに伴って物体が低 い方向に運ばれる意で、くだけた会話から文章まで幅広く 使われる日常の基本的な和語。〈川が—〉〈汗が—〉〈川面 を木の葉が—〉の「雲が—」のように空間の移動にも使う。 川端康成の『雪国』に「踏みこたえて目を上げたとたん、さ あと音を立てて天の河が島村のなかへ!・れ落ちるようで あった」とある。「試合が—」「歳月が—」のような比喻的 用法もある。 なかんずく【就中】同類の多い中でも特にの意で、改まった 会話や文章に用いられる古風で硬い和語。〆年来の犬好きだ が、ーこの一匹には目がない〜名品の多いこの美術館でも これは貴重な逸品だ〜「中に就く」から。ことに・特 に・Qとりわけ なきがお【泣き顔】泣いている顔の意で、会話にも文章にも 使われる和語。〈叱られてーになる〉「を他人に見られ る」込きっ面・Q泣き面 なきがら【亡骸】「遺骸」の古風な和風表現。「に取りすが って泣き崩れる〉〈ーを手厚く葬る〉③堀辰雄の『大和路』 に「山に葬られた貴いお方のーが、塚のなかで、突然深いね むりから(略)呼びさまされる」とある。その死者に対して 敬意や親愛の情をこめて用いる。ひQ遺骸・遺体・かばね・死骸・ しかばね・死屍・死者・死体・しにん・しびと・むくろ なぎさ【渚(汀)】波が打ち寄せるあたりをさし、主に文章中 に用いられる、いくぶん古風な和語。〜に憩う〜〜をさ まよう〜②日常的な「波打ち際」に比べ、やや美化した感じ がある。ひ礙・うみべ・沿岸・海岸・海浜・かいへん・岸・岸辺・Q波打 ち際・浜・浜辺・みぎわ・水際・水辺 なきつら【泣き面】「泣き面」を強めた、きらにぞんざ いな表現。へーを人前にきらす)「一に蜂」という比喻的 慣用句にも用い、「泣き面」ほど古い感じがしない。込き 顔・Q泣き面 なきづら【泣き面】泣き顔の意で、くだけた会話などに使わ れる、古風でぞんざいな和語。〈ーをかく〉〈ーなんか見た くもない〉ひQ泣き顔・泣きっ面 なきむせぶ【泣き咽(噎)ぶ】むせび泣く意で、主に文章中に 用いられる和語。(夜ごとー)四川端康成の『美しさと哀し みと』に「せきを切ったようにー・んだ」とある。鳥鳴咽ゆ・ 忍び泣き・しゃくりあげ・すすり泣き・Qむせび泣き・むせぶ なく【泣く】感情が極度に達して涙を流す意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 く <772> なく ↓涙ぐむ・Q涙する・落涙 なく【鳴く】獣や鳥や虫が声を発する意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる和語。〈牛がモーと〉〈朝 から鳥がー〉〈秋になって虫がー〉鈴木三重吉の『桑の 実』に「まだ早い蟋蟀が一匹、ひそひそと青白い糸を引く ようにー・いている」とある。獣や鳥には「啼く」とも書く。 「啼」は本来、涙を流す「泣」に対し、声を出す場合に使い 分けた。ひいななく・Qさえずる・吠える なぐさみ【慰み】一時的に気を晴らすことをさし、会話にも 文章にも使われる和語。へーに花を植える〉へー半分)② 「慰め」が他人への働きかけなのに対し、これは基本的に自 分自身のための行為。ひ憂さ晴らし・Q気晴らし・慰め なぐさめ【慰め】不幸に打ちひしがれた人の挫折感・喪失感・ 悲哀・孤独感をやわらげ励ますために言葉をかけたり物を 贈ったりすることをさし、会話にも文章にも使われる和語。 へーの言葉をかける〉〈失意の友へのー〉〈何のーにもなら ない〉〈せめてものー〉尻み なぐさめる【慰める】悲しみ・淋しさ・苦しさなどを紛らわせ て相手の心をやわらげる意で、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の和語。〈不運な友人を〉〈遺族 をー〉②夏目漱石の『坊っちゃん』に「余り気の毒だから 「行く事は行くがじき帰る。来年の夏休には屹度帰る」と ー・めてやった」とある。ひQいたわる・なだめる・ねぎらう なくす【無くす】「失う」意で、会話やさほど硬くない文章に 使われる日常的な和語。〈財布をー〉〈自信をー〉〈元も子 もー〉〈交通事故をー〉〈先の望みをー〉小沼丹の『小さ な手袋』に「買っても直ぐー・しちゃうから、仕方が無いか らまた買うんだ」とある。「無くする」という形でも使わ れ、いくらか新しい感じがある。「親をー」など、死別の意 味では「亡くす」と書く。ひ失う なくなる「亡くなる」「死ぬ」という意味のやわらかい丁寧な 間接的な和語表現。〈祖母が昨夜ー・りました〉〈病気でー〉 〈父がー・って五年経つ〉三木卓の『隣家』に「六つでー・ った長女の和子の写真をアルバムから剥がそうとしている」 とある。死を忌む気持ちから、それを直接露骨に表すのを 控え、姿を消してこの世に存在しなくなるという意味にと らえ直した婉曲と表現。落語の世界なら「なに?ー・った って?よく探したのか?」などといったトンチンカンな受 け答えが出るほど、口頭表現では間接効果を発揮する。文 字に書く場合、平仮名だけで「なくなる」とすれば同様だ が、「無くなる」と書くと財布か何かが消え失せた感じにな るため、たいてい「亡くなる」と書く。すると「亡」という 漢字が明記されることで意味が死と直接結びつくため、そ れだけ間接性が減少する結果となる。勇敢え無くなる・上がる ②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけ なくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰ら ぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・ 長逝・露と消える・天に召される・儚なくなる・不帰の客となる・不幸 がある・崩御・没する・仏になる・身罷がる・脈が上がる・空しくなる・ 藻屑となる・逝く・臨死・臨終 なぐる【殴る】手や棒などで相手を強く打つ意で、会話でも 文章でも幅広く使われる日常生活の和語。〈拳ぶで思い切 <773> りー〉〈近くにあった棒でー〉〈ー蹴るの乱暴を働く〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「よっぽどー・りつけてやろうかと思った」とある。「叩く」と違って親しみや善意から出ることはなく、相手に危害を加える意図が感じられ、それだけ衝撃も強い。Q叩く・はたく・はる・ひっぽたくぶつ なげうり【投げ売り】利益を度外視しても急いで売る意で、 会話や軽い文章に使われる和語。赤字覚悟のに出る 同然の捨て値で家を処分する)児出しセル叩き売 り・Qダンピング・特売・バーゲン・安売り・廉売 なげかわしい【嘆かわしい】腹立たしく嘆かないでいられな い意で、改まった会話や文章に用いられる和語。最近の世 相は限りだ〉(ちょっとつまずくと仕事をすぐに投げ出す とはまことにー)「情けない」や「みじめ」と違って自分 以外の対象について用いるのが原則で、自分自身のことに 用いると他人めかした感じで自嘲的な響きが出る。ひだら しない②・Q情けない・ふがいない・みじめ なげき【嘆(歎)き】深い悲しみをもらす意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈親の—〉〈—の声〉〈—の種〉中河与 一の『天の夕顔』に「悲しみと怒りは、深い—に変った」と ある。「悲しみ」自体ではなく、それが他人に察知できる形 の言動に表す。Q慨嘆・悲嘆 なげく【嘆(歎)く】深く悲しお意で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈身の不運を—〉〈若者の態度を—〉〈世の乱れ を—〉谷崎潤一郎の『春琴抄』に「春琴女の不幸を—あま り知らず識らず他人を傷つけ呪うような傾きがあり」とあ る。僕嘆・Q嘆ずる なこうど なげすてる【投げ捨てる】物を投げて捨てる、捨て去るの意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈窓から—〉〈従来の 方針を—〉〈プライドを—〉、おっぽり出す・投げ出す・Q放り出 す・ほっぽり出す なげだす【投げ出す】前に突き出す、放り出す、辞めるの意 で会話にも文章にも使われる和語。〈脚を—〉〈職を—〉 〈仕事を途中で—〉永井荷風の『雪解』に「銅貨がばらば らにー・したままになっているのは大方隠居の払った湯銭で あろう」とある。「試合を—」のように「捨てる」の一用法 としても、「足を—」「大金を—」のように勢いよく出す意 にも使う。ひおっぽり出す・捨てる・投棄・投げ捨てる・放棄・Q放り 出す・ほっぽり出す なげやり【投げ遣り】物事に心をこめず無責任なようすをさ し、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。へな態 度《仕事がーだ》Qいい加減・いけぞんざい・ぞんざい なげる【投げる】手でつかんで遠くへ飛ばす意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な 和語。〈石を—〉〈カーブを—〉へのをめがけて—〉夏目漱 石の『坊っちゃん』に「どやされたり石を—・げられたり」 とある。比較的大ざっぽな「ほうる」に比べ、「投げる」の 場合は何らかの意図を持って目標とする地点に向かって力 を入れて放し、投げられたものも勢いよく飛んで行くよう なイメージがある。ほうる なこうど【仲人】結婚の仲介人の意で、会話やさほど改まら ない文章に広く使われる日常の和語。〈頼まれー〉へに立 てる〉〈教え子同士の結婚のーを務める〉専媒酌人 <774> なこり なごり【名残】影響・余韻・心残りなどの意で、改まった会話 や文章に用いられる、古風でしっとりとした感じの和語。 や文章に用いられ 〈一の雪〉〈一を惜しむ〉〈一は尽きない〉〈昔の一をとどめ る〉②永井荷風の『つゆのあとさき』に「あまりーを惜しむ ような様子を見せて、無理に引留められても困るし」とあ る。马余波 なごり【余波】風が静まった後も立っている波の意で、会話 でも文章でも使われる和語。〈台風の—〉「よは」と読ま れやすいので仮名書きが無難。名残 なさけ【情け】他人、特に弱者に同情し親切にしようとする 気持ちをさし、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風 な和語。〈人の—〉〈ーをかける〉〈ーにすがる〉〈ーが仇 となる〉②島崎藤村の『破戒』に「人々のーに見送られて蓮 華寺の門を出た」とある。なお、「ーを交わす」として男女 の肉体関係をさす婉曲表現もあるが、古めかしい感じが 漂う。専情・同情・Q人情 なさけない【情け無い】みじめでがっかりする意で、会話や さほど改まらない文章に使われる和語。へー気分になる) 〈子供の成績が悪く親としてもー〉体が言うことを聞かず 我ながらー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「食いたい団子 の食えないのはー」とある。きだらしない②・嘆かわしい・ふが いない・Qみじめ なさけぶかい【情け深い】他人に対して親切で思いやりの心 が深い様子をさし、会話にも文章にも使われる、やや古風 な感じの和語。〈一人〉〈一扱い〉行為自体に焦点のある 「親切」に比べ、行為の奥にある心に焦点があたっている。 処親切・O優しい なし【無し】「存在しない」という意味の文語的な表現。〈恐 いものー〉〈賞罰ー〉〈異議ー〉〈見るべき成果ー〉の「あ り」と対立。 なじむ【馴染む】慣れてしっくり来る、慣れ親しむ、そぐう といった意味合いで、会話にも文章にも幅広く使われる和 語。〈手に〉〈耳に〉〈都会の空気に〉〈職場に〉 〈オノマトペは条文にはー・まない〉②「馴れ染む」の転という う。人や動物に限る「なつく」と違い、土地や風景や店や飲 食物など幅広く使う。合う・親しむ・Q慣れる なじる【詰る】相手を問い詰める形で非難する意で、会話に も文章にも使われる和語。〈相手の非を—〉へーような物言 い)三浦哲郎の『忍ぶ川』に「志乃は、むしろーような目 で、私をにらんでつよくいった」とある。悪口を言うだけ の「そしる」に比べ、面と向かって責め立てる感じが強い。 Qそしる・ののしる なす【生す】子を生む意で、きまった言いまわしに限定的に 用いられる古語的な和語。〈子をー〉〈ー・さぬ仲〉も為す・Q 成す なす【成す】作り上げる、やりとげる意で、主に文章に用い られる、硬い感じの古めかしい和語。〈名を—〉〈財を—〉 〈群れを—〉〈意味を—・さない〉の大岡昇平の『野火』に 「確然たる一線をー・したお供餅のような雲」とある。Q 為す・生なす なす【為す】行為をする意で、主に文章に用いられる、硬い 感じの古語的な和語。〈ーすぺがない〉へところを知らな <775> い〈相手のーがまま〉(ー・せば成る)大岡昇平の野 火に「ところなくその日を送っていた」とある。Q成 す生す なす【茄子】夏野菜の紫紺の実をさし、会話でも文章でも幅 広く使われる一般的な日常語。〈焼き—〉〈—の浅漬け〉② 角田房子の『茄子』に「露を含んだ—紺の鮮やかな色、口中 にひろがるさわやかな香気、これらを愛でるのは、日本人 独特の感覚」とある。みなすび なすび【茄子】「なす」の古風な呼び名。〈初〉〈一歯〉〈親 の意見とーの花は千に一つも徒はない)村上龍の『紋 白』に「女の乳首にゴム輪が巻きつけられて乳首がーみた いになっていた」という比喻表現が出る。なす なぜ【何故】原因・理由が不明な場合にそれを問うのに、会話 でも文章でも使われる和語。〈—黙っている?〉〈—途中で やめるのだ〉〈—かは知らない〉小沼丹の『懐中時計』に 「じゃ、—見せないんだい?買主は品物を見てから買うも のだろう」とある。漢字表記は「なにゆえ」と読まれやす い。「なにゆえ」ほど古風な感じはなく、「なんで」はもち ろん「どうして」よりも改まった感じがある。Qどうして なにゆえ・なんで なぞ【謎】実体のつかめない不思議な現象や出来事をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる和語。〈宇 宙の—〉〈—の物体〉〈—をかける〉〈—を解く〉〈—に包ま れる〉〈—を秘める〉小林秀雄の『モオツアルト』に「— は解いてはならぬ。解けるものはーではない」とある。「何 ぞ」の転。刂怪奇・Q神秘・ミステリー なだめる なぞらえる【擬(準)える】あることを説明する際に、それと 何らかの共通点のある他のものに仮に置き換えてわかりや すく伝える意で、会話にも文章にも使われる、いくぶん古 風な和語。〈人生を旅に〉〈人の一生を山登りに〉 「たとえる」と違い、そのイメージを強調する意図はない。 ひたとえる なぞるそっくり書き写す、真似るの意で、会話にも文章に も使われる和語。〈点線を—〉〈前人の作風を—〉②丸谷才 一の『横しぐれ』に「そんなわたしの気持をーようにしてつ ぶやいた」とある。Qまねる・模倣 た【鉈】幅が広く短く厚い刃のついた鉄片に木製の柄のつ いた道具をきして、会話にも文章にも使われる和語。「」で 薪を割る」②片手に持って立ち木の枝を払ったり薪を割っ たりする際に用いる。「大ーをふるう」の形で、思い切った 処置を取る意を表す比喻的用法もある。おの・Qまさかり なだかい【名高い】世間にその名が知れ渡っている意で、会 話にも文章にも使われる、いくぶん古風な和語。〈山〉 名医として」「悪賢いので」「凶悪犯人」のように 明らかなマイナス評価に用いると違和感がある。高名・著 名・Q有名・雷名 なだめる【有める】怒ったり悔しがったりする人を慰めて感 情をやわらげる意で、会話にも文章にも使われる和語。負 けて悔しがっている相手をー〉へいきりたつ仲間をー〉②三 島由紀夫の『潮騒』に「神のお怒りをーにはどうしたらいい でしょうか」とある。もと、「なだらかにする」意という。 ひいたわる・Qなぐさめる・ねぎらう <776> ナチュラルチー ナチュラルチーズ 加熱処理をしないで作ったチーズをさす 最近の和製英語。〈空輸のー〉 なつ【夏】春と秋の間にあり、太陽が照りつけ草木が生い茂 る暑い季節をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる日常の基本的な和語。〈一向きの家〉〈一の避暑 地〉〈一の日盛り〉〈一の入道雲〉〈花火は一の風物詩〉〈今 年の一はしのぎやすい〉太宰治の『葉』に「これは一に着 る着物であろう。まで生きていようと思った」とある。 ひサマー なついん【擦印】「押印」と同じ意味で、改まった会話や文 章に用いられる硬い漢語。〈契約書に署名—する〉手で押 さえつける意の「擦」の字面から、時に丁寧に押すようなイ メージを伴う。刂押印 なつかしい【懐かしい】前に親しんだ時代・場所・人などにし きりに心を引かれる意で、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ーふるさと〉〈昔 駄菓子〉〈あの頃がー〉〈ー顔が見える〉小沼丹の『椋鳥 日記』に「往来に蹄の音を聞くと、失ったものが甦る気がし てー・かった」とある。「慕わしい」と違って対象が人間とは 限らず、「恋しい」より幅広い対象に使う。郷愁・恋しい・慕 わしい・なつかしさ・ノスタルジア・ノスタルジー なつかしさ【懐かしさ】過去になじんだ対象に心ひかれる思 いをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。ふるさとのー〉へーを禁じえない 中野重治の『むらぎも』に「不幸を共にしたことで逆にー が湧いてくる」とある。Q郷愁・なつかしい・ノスタルジア・ノ スタルジー なづける【名付ける】人・物・組織などに名前をつける意で、 やや改まった会話や文章に用いられる和語。両親から一字 ずつ取って娘を一枝とー〉〈丘の上の喫茶店、ー・けてモン マルトルという〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「どうです 教頭、是からあの島をターナー島とー・け様じゃありません か」とある。リネーミング・Q命名 なっとく【納得】他人の考えや行為を理解して認める意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈ーずくで〉へが行く 「どうもその点がーできない」②大岡昇平の『俘虜記』に 「遂に自分がここで死ななければならないことをーした」と ある。「了承」より内面的で私的な事柄に使う例が多く、積 極的な賛成まで達しないニュアンスでも使う。専得心了承 なっぱ【菜っ葉】葉を食べる野菜をさし、会話や硬くない文 章に使われる日常の和語。へーのお浸し〉〈畑からーをつま んで来る〉高村光太郎の詩『道程』に「青物市場にーの よーとある。専菜 ナップザック日帰りのハイキング程度に適するように小型 化したリュックサックをさし、会話にも文章にも使われるド イツ語からの外来語。へ姿で森を散策する商標名か ら。ヒディパック・背裏・ランドセル・Qリュックサック なつメロ「なつかしのメロディー」の短縮形。かなり普及し ている俗語。〈一番組〉思いがけない大胆な略し方に滑稽 な響きを感じさせることもある。「一般教育科目」の「パン キョー」「アジア太平洋研究科」の「アジ平」なども同様。 「キョブタ」とはどんな豚かと思ったら「清水の舞台から飛 <777> び降りる」の略だという。この調子だと、そのうちに「トラタヌ」や「アワコジ」などの例が笑いを誘うことにもなりかねない。 なでる【撫でる】対象に手のひらを軽く触れた状態でやさし く動かす意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の生活和語。〈子供の頭を—〉〈指を濡らして乱れ た髪をー・でて整える〉〈そよ風が頬を—〉高見順の『如 何なる星の下に』に「面の皮でも剥ぐような乱暴さで、ずる ずると顔をー・でおろした」とある。反復動作の「さする」 と違って、一回だけの場合でも使える。ひさする ななめ【斜め】ある基準となる線や面に対して垂直でも平行 でもなく傾いている意で、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の基本的な和語。へー前方〉〈道をーに 横切る〉〈夕日がーに差し込む〉幸田文の『おとうと』に 「雨と葉っぽは煽られてーになるが、すぐまたまっすぐにな る」とある。「世間をーに見る」のように、一般の人と違っ た角度から眺める意の比喻的用法もある。ひすじかい・Qは す・はすかい なにか【何か】正体も原因・理由もはっきりしないが何となく の意で、会話や硬くない文章に使われるやわらかいタッチ の和語。〈ー変だ〉〈ー元気がない〉②永井龍男の『蜜柑』に 「私が、一切なさのようなものを感じたのは、女が細い手袋 の指を、一本一本しごくように、念入りにはめている横顔 を見た時だった」とある。具何だか なにげない【何気無い】特に意図もなく無意識にの意で、会 話や硬くない文章に使われる日常の和語。〈ーそぶり〉 なまいき 一言が相手の心を傷つける〉〈ー・くのぞいてみる〉きりげない なにゆえ【何故】「なぜ」の意で、改まった文章に用いられる 古めかしく硬い感じの和語。人生はーかくもはかないの か〉へーこのような結果が生じたのであろうか〉ひどうして・ Qなぜ・なんで なびく【靡く】風に吹かれたりして横になって揺れる意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈旗が風にー〉竹西寛子 の『兵隊宿』に「鬛だだけでなく、尻尾の先まで風にー・か せた」とある。「時の権力者にー」「美人にー」のように、し っかりとした信念もなく心をひかれる意の比喻的用法もあ り、その場合は俗っぽい感じに響く。ひ揺らぐ・揺れる なま【生】食品を乾したり熱を加えたりしないそのままの状 態をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈一菓子〉〈一卵〉〈一野菜〉〈一で食 べる〉〈一のまま〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「刺身も 並んでるが、厚くって鮪の切り身をーで食うと同じ事だ」と ある。食品以外にも「原稿」「の声」のように用い、テ レビなどで録画や録音でないものを「放送」「出演」な どと呼ぶ比喩的用法もあり、派生的用法には俗っぽさが残 る。ひ新鮮・Q生鲜 なまいき【生意気】実力に似合わず偉そうにふるまう意で、 くだけた会話から文章まで広く使われる日常の表現。へー 盛り〉〈な奴だ〉〈な態度〉〈にもこんなまねをしや がった〉夏目漱石の「坊っちゃん」に「そんなーな奴は教 えないと云ってすたすた帰って来てやった」とある。り利い <778> なまえ た風・O小賢しい なまえ【名前】姓か姓名、または、姓を除く個人名のみをさ して、会話にも文章にも使われる日常の基本的な和語。〈 負け〉〈子供の—〉〈—を呼ぶ〉〈お—は?〉夏目漱石の 「明暗」に「二人の間に伏せ字のごとく潜在していたお延と いう—」とある。「委員会の—」「昆虫の—」「果物の—」 「店の—」「本の—」のように、人名以外にも幅広く使う。 専氏名・姓名・Q名 なまがし【生菓子】水分が多く日持ちのしない菓子をさし、 会話にも文章にも使われる表現。〈煉り切りは高級ーの典 型) 洋菓子ではクリーム類、和菓子では餡を主体とした ものが多いが、洋菓子では「ケーキ」という語が別にあるた め、主として大福・団子・饅頭・羊羹などの和菓子を連 想させやすい。ヶケーキ・南蛮菓子・洋菓子・Q洋生 なまける【怠(懶)ける】労を惜しんで仕事や勉強をきちんと こなさない意で、会話にも文章にも広く使われる日常の和 語。〈勉強を—〉〈仕事中に—〉梅崎春生の『桜島』に 「皆、あまり働かないで、ー・けたり、ずる寝をしたがる傾き があるが、戦争に勝てば、いくらでも休めるじゃないか」と ある。手をつけない場合、非能率にだらだらやる場合、や っている途中で一定時間中断する場合など、形は多様。ひQ おこたる・サボる・ずるける なまじ【懋】中途半端にあることを行ったためにかえって悪 い結果になるような場合に、会話にも文章にも使われるや や古風な和語。へー高等教育を受けたばかりにへー細工を したせいでへーまったく教えないほうがみなまじっか なまじっか「懲っか「なまじ」の意の俗っぽい日頭表現 へーなことは言えないへーちょいとばかし知識があったば かりに) みなまじ なまっちよろい生っちよろい手ぬるい意の俗語。くだ けた会話や、そういう調子で書く文章に現れる。ヘやり方が ー〉〈緞え方がまだまだー〉②「なま」は不十分で物足りな い気持ちを添える。ヨ生ぬるい なまぬるい【生温い】熱いものが冷めかかったり冷たいはず のものが冷たくなくなったりして不適当な温度である意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈一サイダー〉 〈冷めてー・くなったラーメン〉のその中途半端な温度を不 快に思う感じが単なる「ぬるい」以上に強い。「一処置」の ように「手ぬるい」意の比喻的用法もある。ぬぬるい なまめかしい【艶めかしい】女の容姿やしぐさなどがその性 的な魅力で男に悩ましい気持ちを起こさせる意で、会話や さほど硬くない文章に使われる和語。〈ー寝乱れ姿〉へ姿 態に思わずそそられる)②「色っぽい」に比べ、個々の表情 やしぐさよりも全体的な雰囲気について用いる傾向が見ら れる。ひあだっぽい、婀娜な・色っぽい・Q艶っぽい・妖艶 なみ【波(浪・濤)】風や震動などによって海・湖・川などに生ず る水の表面の起伏をきし、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ーが立つ〉〈ーが荒 い〉〈ーが打ち寄せる〉〈ーに乗る〉〈ーとたわむれる〉夏 目漱石の『坊っちゃん』に「ーは全くない。是で海だとは受 け取りにくい程平だ」とある。阿川弘之の『夜の波音』には 「心にかぶさるようなーの音」とある。「波浪」や「波濤」 <779> と違い、さざ波から大波までの総称。「好不調の」「成績 にーがある」のように、変化が激しく安定しない意の比喻 的用法もある。ひ荒波・波濤・Q波浪 なみ【並み】普通程度、中ぐらいの意で、会話や硬くない文 章に使われる日常の和語。〈ーの大きさ〉〈ーの成績〉〈鮨 のーを四人前注文する〉専普通 なみうちぎわ【波打ち際】波が打ち寄せるあたりの陸地をさ し、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈ーに立つ〉 〈ーで遊ぶ〉、り磯・うみべ・沿岸・海岸・海浜・かいへん・岸・岸辺・Qな ぎさ・浜・浜辺・みぎわ・水際・水辺 なみき【並木】道路や神社の参道などに沿って両側に植え連 ねた木をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈 道〉〈ポプラ〉〈東海道の松〉林芙美子の『浮雲』に 「淡い灰色の御所の建物が、雨に煙り、の黒い塊が、如何 にも外国の絵でも見るように、新鮮だった」とある。Q街 路樹・木立 なみだ【涙】悲しみや悔しさ、あるいは極度の喜びなど人間 の感情が昂ったときなどに涙腺から分泌される透明な液 体をさし、くだけ大会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈ーがにじむ〉〈ーをこらえる〉〈ー にむせぶ〉〈ーがこぼれる〉〈泣きのーで別れる〉梅崎春 生の『桜島』に「突然瞼を焼くような熱いーが、私の眼から 流れ出た。拭いても拭いても、それはとめどなくしたたり 落ちた。風景がーの中で、歪みながら分裂した」とある。 単涕涙 なみだぐむ【涙ぐむ】目に涙を浮かべる意で、会話にも文章 なめる にも使われる和語。〈話を聞きながら—〉②芝木好子の『湯葉』に「白い手拭に滲みでた血の色を見ていて、ー・んだ」とある。目が涙に濡れて光る程度で、こぼれる前の段階。 込く・Q涙する・落涙 なみだする【涙する】涙を流す意で、主に文章に用いられる、 古風でやや詩的な和語。〈当時を振り返って思わず—〉 泣く・涙ぐむ・落涙 なみはずれる【並外れる】普通の程度を大きく外れる意で会 話や硬くない文章に使われる和語。「・れて背が高い 「・れた腕力」卩群を抜く・Q図抜ける・ずば抜ける・飛び抜ける・ 抜きん出る・抜群 なめらか【滑らか】表面がすべすべして摩擦が少ない状態を さし、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈表面がー だ〉〈な肌〉②永井荷風の『腕くらべ』に「その肌のーさ いくら抱きめて見ても抱きぐるそばからすぐ滑りぬけて 行きそうな心持」とある。「指がーに動く」「に弁舌を揮 う」のように、摩擦や抵抗がなくて滞らず思うように動く 様子をさす比喩的な用法もある。ひ円滑・流ちょう なめる①【嘗(舐)める】舌の先で触れる意で、くだけた会話 から文章まで幅広く使われる日常生活の和語。舌でべろ りとー〉〈唇をー〉〈飴をー〉〈傷口をー〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「余計な事を言わずに絵筆でもー・めて居 ろ」とある。高樹のぶ子の『遠すぎる友』には「小指を口に 含んだ。針をー・めたような味」とある。「苦汁をー」「辛酸 をー」のように経験する意で用いる場合は古風で文章語的。 ひしゃぶる②【舐める】相手の力を過小評価して甘く見る <780> なやみ 意で、くだけた会話に使われる俗っぽい和語。〈相手をー・ めてかかる〉へー・めたまねをしやがって〉きあなどる・軽蔑・ さげすむ・見下す・Qみくびる・見下げる なやみ【悩み】克服できずに困っている精神的苦痛をさし、 会話にも文章にも使われる日常の和語。(恋の—)ぐそれが ーの種だぐーが尽きないぐーを打ち明けるぐ永年のー を解消するぐ思い悩む」に比べ、対象が具体的に絞られ ている感じが強い。川端康成の『古都』に「心をよそにうし なうような時があって、気がつくとやはりそれは、ーのため のようであった」とある。獅子文六の『沙羅乙女』には「泥 沼に墜ちたようなこの頃のー」とある。僕惱・苦痛・Q苦 悩・苦悶・苦しみ・煩悶・憂悶 なやむ【悩む】どうしていいかわからずに困って心を傷める 意で、会話にも文章にも広く使われる和語。〈恋に—〉〈進 路に—〉〈持病に—・まされる〉〈職場の人間関係に—〉谷 崎潤一郎の『春琴抄』に「春琴も亦同じ思いに—・んだであ ろう」とある。Q思い悩む・思い煩う・煩悶・悶える・憂悶 ならう【習う】知識や技術を身につけるために指導を受けた り繰り返し練習したりする意で、くだけた会話から文章ま で幅広く使われる日常の和語。〈先生に古文を—〉〈生け花 を—〉〈ピアノを—〉〈昔—・った先生〉②「前例に—」のよ うに「従う」「まねる」意では「倣う」と書く。Q教わる・ 学ぶ ならずものならず者悪事も平気でやる乱暴者の意で、会 話にも文章にも使われる古風な和語。《街のー〉〈手のつけ られないー〉どうにもならない者という意味から。「破落 戸」と漢字を当てることもある。ひひろつき・ちんびら・無頼 漢・暴力団・無法者・やくざ・与太者 ならびに【並びに】名詞などの並列におけるつなぎ役として 「及び」に類する働きをし、改まった会話や文章に用いられ る和語。〈現住所—電話番号〉〈大学の学生及び教授、—、 中学の生徒及び教諭〉単独使用では「及び」より改まった 感じが強い。他と併用する場合は、「と」「及び」「並びに」 の順に次第に大きな結びつきを担当して、「鯛と平目、及 び、鯉と鮪、—、烏賊と蛸、及び、浅蜊のと蜆」のよう に用いるのが通例。なお、「囲碁及び将棋、—マージャン」 の形の並列では、「及び」による連結のほうが同類で同等の 扱い、「並びに」以下はあとから追加した感じになり、それ だけ軽い扱いとして伝わりやすい。及び ならぶ【並ぶ】複数の人や物が列をなす形で近くに位置する 意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。〈人が一列に〉〈店が一〉〈看板が一〉 〈豪華な料理が一〉〈一・んで写真を撮る〉の「この技術に関 しては彼と一者がいない」のように同等・互角という意味で 使うこともある。Q連なる・列する ならべる【並べる】積み重ねないで平面に一つずつ置く意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈肩を—〉〈机を—・べて勉強する〉〈食卓に皿を —〉〈本を三列に—〉夏目漱石の『吾輩は猫である』に 「いやに高慢ちきな、きいたふうの事ばかりー・べていたの で、始終それを聞かされた主人は、全くこの点に立腹した ものと見える」とある。「連ねる」と違い、必ずしも一列で <781> なくてもよい。「排列」と同様、「五十音順に」のように 一定の基準で行うこともあるが、それは必須ではない。ま た、「理屈を」「証拠を」「欠点を」のように、同じ事 を次々に行う意でも用いる。易Q連ねる・排列 ならわし【習(慣)わし】個人や社会が前から繰り返し行って 固定化したやり方をさし、改まった会話や文章に用いられ る古風な和語表現。〈世の—〉〈初詣という昔からの—〉 〈お歳暮を贈る—〉四川端康成の『抒情歌』は「死人にもの いいかけるとは、なんという悲しい人間の—でありましょ う」と始まり、「悲しい人間の—にならって、こんな風に死 人にものいいかけることもありますまいに」として一編が 結ばれる。専慣習・慣例・Qしきたり・習慣・風習 なり体の外見の意で、主に会話に使われる古風な和語。「 は大きくてもまだ子供だ」宇野千代の『おはん』に「花 街で客稼業してる女の恰好かと思いますほども う、瞳の中から出てきたような」とある。「形」や「態」 の漢字をあてることもあるが、振り仮名がないと読みにく い。「派手なーで出かける」のように、装いを含めてさす用 法もある。Q体つき・図体背恰好・体格・体軀・身なり なり【也】「である」意の文語的な表現。「円」、二円」 〈本日は晴天」〈金五百万円」、確かに受け取りました なりきん【成金】急に金持ちになった人をさし、会話や改ま らない文章に使われることば。〈趣味〉〈土地」)のもと は将棋用語で、「歩兵」が敵地に入って「成り」とたんに 「金将」と同等の強さになった駒の意。それを拡大して「急 に金持ちになった人」の意味に用い、今ではほとんど比喻性 なる を感じさせない。 なりたつ【成り立つ】成立する意で、会話にも文章にも広く 使われる和語。〈推測がー〉(そういう考え方もー)〈経営 がー・たない〉(こんな安月給では生活がー・たない)夏目 漱石の『草枕』に「一種の関係がー・ったとするならば」と ある。巻成立 なりふり【形振り】身なりや態度・振る舞いをさし、会話や硬 くない文章に使われる、いくぶん古風な和語。〜なんかか まっていられないふふふふふふふふふ なりゆき【成り行き】物事が移り進んでゆく過程・経過・結果 などをさし、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。 (そうなるのが自然のー)へーに任せる)時勢・時流・Q趨勢 風潮 なりわい【生業】生活していくための仕事をさし、会話にも 文章にも使われる古風な和語。〈物書きをーとする〉〈庭造 りをーとする〉公務員や会社員などのサラリーマンにつ いては通常用いない。単仕事・商売・職・Q職業 なる【生る】植物に実ができる意で、会話や軽い文章に使わ れる和語。〈実がー〉(みかんがたくさんー)専実る なる【鳴る】音が出る意で、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の和語。〈ベルがー〉へおなかがー〉 川端康成の『雪国』に「雪のーような静けさが身にしみて、 それは女に惹きつけられたのであった」とある。 <782> なるたけ O書く なるだけ『成る丈』「なるべく」の意で、主として会話に使わ れる古風な和語。〈ー消化のいいものを食って〉へー怒らせ ないようにうまくやってくれ) まできるかぎり・できるだけ・Q なるべく なるべく【成る可く】可能な限りの意で、会話にも文章にも 使われる和語。〈早く仕上げてほしい〉へ早めに提出す るようにしている〉自分にできる範囲で最大の努力をす る場合に用いる。Qできるかぎり・できるだけ・なるたけ ナレータードラマなどで筋の進行などを説明する役の人を さし、会話でも文章でも使われる外来語。〈テレビドラマの ーを務める〉ひ語り手 なれる【慣れる】順応・熟練の意で、会話でも文章でも広く使われる日常の和語。〈仕事に—〉〈職場に—〉〈ー・れない手つき〉の庄野潤三の『静物』に「父親はもうずっとそんな具合にやって来たのだ。そうして、子供の方でもそれにー・れている」とある。「生徒が先生に—」「よく人にー・れた犬」のように、なじむ、なつくという意味合いでは「馴れる」「ー・れて礼を失する」「ー・れた口を利く」のように、なれなれしい意では「狎れる」「漬物が—」「魚が酢に—」のように、熟成したという意味合いや、「ー・れた洋服」のように、長く着用して体になじむといった意味合いでは「熟れる」とあえて書き分けることもあるが、表外字や表外訓を用いたこれらの表記はいずれも古い印象を与えやすい。母親しむ・馴染む なわ【縄縄】藥などを縫り合わせて作る細長い紐状のも のをさし、会話にも文章にも使われる和語。〈しめー〉へー を綱々う〉へーで縛る〉現在「ー跳び」に用いるピニール製 の紐は、材質としては「縄」と呼えないが、慣用としてそう 呼んでいる。ひ綱・Q紐・ローブ なわばり【縄(縄張り】勢力範囲をさし、会話にも文章にも 使われる、やや古風な和語。〈ー争い〉へーを荒らす)地 面に縄を張って境界線を定めたことから。建築上の専門語 のほか、やくざや動物についても使われてきた。「分野」 「領域」の意でも使われ、その場合は俗語的な響きが伴う。 ひ分野・領域・Q領分 なんぎ【難儀】難しくて面倒で苦労する様子をさし、会話に も文章にも使われる古風な漢語。〈な仕事〉〈収入が少なく暮らすだけでもーをしている〉「ーをかける」のように 相手に与える肉体的負担をさすこともある。小川洋子の 「夕暮れの給食室と雨のプール」に「冬の雨も、雨に濡れた 長靴も、玄関に寝そくる犬も、ーといえばー」とある。 苦難・苦労・困難・難しい なんきん【軟禁】外出や外部との交渉を禁止または著しく制 限する程度の軽い監禁をさし、会話にも文章にも使われる いくぶん専門的な漢語。〈ー状態にある〉及Q監禁・拘束・束 縛・閉じ込める・幽閉 なんきんまめ【南京豆】「ビーナツ」の伝統的な呼称である 「落花生」よりさらに古めかしいことばで、もはや死語にな りかけている感がある。〈突き出しのーを日に放り込む〉② 小津安二郎監督の映画『彼岸花』に、パーのスタンドに腰掛 けた高橋貞二の演ずる客が「安くても自分のセニで飲む方 <783> がうめえや。オ、来てねえぞ。」と突き出しを催促す る場面がある。「銭」とともに昭和中期にはまだ盛んに使わ れていた。三つのことばが共存していた過渡期には、殻付 きのままのを「南京豆」殻が取れて薄皮の付いた状態のも のを「落花生」薄皮も取れて特にパター風味のものを「ビ ーナツ」というふうに、状態によって呼び分けることもあっ たようである。ふピーナツ・Q落花生 なんくせ【難癖】無理やり他人のちょっとした欠点を取り上 げて強引に非難する際に、主に会話で使う俗っぽい表現。 へーをつける〉ひQ言い掛かり・いちゃもん・因縁② なんこう【軟膏】脂肪・ワセリン・グリセリンなどと練り合わ せて塗りやすくした外用薬をさし、会話にも文章にも使わ れる、やや専門的な漢語。〈傷口にーを塗る〉専膏薬 なんじゃく【軟弱】①軟らかくて弱い意で、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈地盤がーだ〉〈な学生〉 〈な態度〉「強固」と対立。軟らかい②意志が弱く態 度がしっかりしない意。非難めいた響きで、会話でも文章 でも広く使われる、やわらかい感じの漢語。〈な態度〉 〈な若者〉〈な外交姿勢〉意味としては女性にもあて はまるが、本来軟弱であるべきでないとされてきた男性を 批判するときに多く用いられた関係で、この語は「弱々し い」などとは異なり、何となく男を連想させる傾向がある。 ひかよわい・弱小・弱体・ひよわ・弱い なんだい【難題】解くのが困難な難しい問題や解決しがたい 課題をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈数学の試験での最大のだ〉〈ーが持ち上がる〉〈ーと取 なんとなく り組む》「無理」「ーをふっかける」のように、無理な 要求の意にも使い、「難問」に比べて困惑した感じに重点が ある。難問 なんだか【何だか】原因や理由が思い当たらないのになぜか といった意味合いで、会話や軽い文章に使われる和語。〈 妙な具合だ〉〈ー急に欲しくなる〉〈ー気がすまない〉 目漱石の『坊っちゃん』に「余っ程動き出してから、もう大 丈夫だろうと思って、窓から首を出して、振り向いたら、矢 っ張り立って居た。ー大変小さく見えた」とある。小沼丹 の『猿』には「お猿の真似をして空を仰いで見ると、星が疎 らに見えてー憂鬱になった」とある。ともに、理屈で説明 できない心理を不思議がっている感じを読者に伝える。 いわれもなく・そぞろ・なにか・Q何となく なんで【何で】「なぜ」の意で、くだけた会話に使われる俗っ ぼい口頭語。〈ーこうなっちゃったんだ〉〈ーって言われて も答えようがない〉の「どうして」よりも、きらにくだけた 表現。「一行ったの?」のように手段の意と紛らわしい場合 もある。ひQどうして・なぜ・なにゆえ なんてん【難点】非難に値するところをさして、会話にも文 章にも使われる漢語。〈計画にーがある〉(そこが最大のー だ)谷崎潤一郎の『細雪』に「五十歳以上の老人に見える と云うこと、これが幸子の考えでは最大のーで」とある。 悪い点が具体性に欠け、「欠陥」に比べて解消するのが難し い感じがある。専欠陥・欠点・Q弱点・短所 なんとなく【何と無く】これと特定できるほどはっきりとし た理由があるわけではないがといった意味合いで、会話や <784> なんばんがし 硬くない文章に使われる和語表現。〈ー変だ〉〈ー気になる〉〈ー好きになれない〉〈ーそんな気がする〉②島崎藤村の『破戒』に「それを聞かれたり、話したりすることは、心に恐ろしい」とある。ひいわれもなく・そぞろ・Q何だか なんばんがし【南蛮菓子】十六世紀からの南蛮貿易により特 にポルトガル人が長崎に渡来して伝えた西欧の菓子をさし、 会話にも文章にも使われる古めかしい漢語表現。〈カステ ラは代表的なーだ〉四カステラもその一つで、本来は西洋 起源であるが、水飴や蜂蜜を入れてしっとりとした食感 を出すなど次第に日本化し、今では和菓子に含める。 キ・生菓子・Q洋菓子・洋生 なんびょう【難病】治りにくい病気の意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈ーを克服する〉巻業病 なんもん【難問】解決困難な問題や課題をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。へーが出題されるへーを抱える へーが山積しているへーにぶつかる)試験問題の難度を 話題にする場合は「難題」よりこの語のほうが一般的。ま た、「難題」に比べ、それを解決する方法に頭を悩ましてい るという雰囲気が強い。難題 にあう【似合う】違和感なくぴったり調和する意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。赤い ペレーがよくー〉〈和服の—女性〉〈悪役の—顔〉太宰治 の『富嶽百景』に「富士には、月見草がよくー」とある。「似 つかわしい」より外面的で、自然に調和のとれた外面を問 題にする傾向が強い。Q似つかわしい・ふさわしい におい【句い】物質から漂い嗅覚を心地よく刺激するものを さす基本的な和語。くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる日常語。くちなしの」〈おいしそうなーが流れ てくる〉の嗅覚を伝える類義語のうち最も一般的な語。特 に芳香であることを明確に伝えるためには「香り」を用い るが、好ましい句いでも、パン・カレー・おでん・鰤だ大根な どは「香り」より「句い」のほうがよく使われる。逆に悪臭 であることを明確にするためには「臭い」と書き分ける。 ただし、「変なー」「異様なー」「何のーだろう」などの場 合、評価を示さなければ仮名書きが最適。ちなみに芥川龍 之介の『東洋の秋』では、「苔のーや落葉のーが、湿った土 のーとーしょに」「うす甘いーのするのは、人知れず木の 間に腐って行く花や果物の香り」「誰が摘んで捨てたのか、 青ざめた薔薇の花が一つ、土にもまみれずに句っていた」な どと、必ずしも芳香と断定できない対象の多くに「句い」と いう語を用いている。香・香り・薫り・Q臭い <785> におい【臭い】物質から漂い出て嗅覚を刺激して不快な気分 に誘う意の和語。会話でも文章でも使う日常語。ヘ汗くき いー〉へどろのー〉〈トイレのー〉好ましくない臭気で あることを伝える表記。遠藤周作の『海上毒薬』に「薪のき なくさいー」とある。薬品など種類によって「臭い」と書き たいものと「匂い」でよいものとがあるが、「薬品の」と一 括する場合は一般的な「匂い」を用いるのが無難。納豆や ブルーチーズなど嗅覚的な評価の分かれる場合は個人の好 みにしたがって書き分けている。区別がわずらわしければ、 和語だから「におい」と仮名書きしてもまったく問題がな い。香・香り・薫り・Q句い 「おう【句う】嗅覚を刺激する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な日常の和語。くちなしが 「湯の花の匂いがする。妻の肌が「のか、浴衣が「のか、わ からない」とある。円地文子の「なまみこ物語」に「下襲 「の紅の鮮やかに!・っている袖口」という箇所がある。現 代では通常は嗅覚的に用いる「句う」の主体がここでは 「紅」という色彩になっており、文脈からもこの例では「色 が照り映える」という視覚的な意味合いで使われている。 作者自身が古語的な意味も交えて使いたいときがあるとイ ンタビューで語ったように、その用法次第では現代文の中に 古典的な雰囲気を漂わせることもある。「が如き気品」な どと抽象化した用法も同様の語感を響かせる。ひ臭う におう【臭う】「臭い」においを発する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 にがて どくー〉〈靴下がー〉露骨に感覚的な「くさい」に比べれ ぼ、いくらか客観的。開高健の『パニック』に「課長は胃が わるいのでひどく口がー」とある。马匂う におわす【句(臭)わす】何となくそう思われる発言や態度を 示す意で、会話にも文章にも使われる和語。〈議題に取り上 げる意向を—〉〈犯行を—供述〉「におわせる」とも言う が、このほうが伝統的。ひちらつかせる・Qほのめかす におわせる【句(臭)わせる】↓におわす にがす【逃がす】捕らえていたものを自由に解き放つ意と、 捕らえようとして逃げられてしまう意とがあり、会話でも 文章でも使われる日常の和語。〈飼っていた小鳥を籠から ー・してやる〉もう一歩のところで犯人をー・してしまう 〈絶好のチャンスを—〉尾崎一雄の『虫のいろいろ』に、 便所の「窓の二枚の硝子戸の間に、一匹の蜘蛛が閉じ込めら れているのを発見」する場面がある。主人公は「・さない でくれ」と妻に言うが、それから二ヶ月近く経ったある日、 便所の方で「逃げた」という妻の声が聞こえた。その折の 主人公の反応は、「蜘蛛をー・したな、と思ったが、それな らそれでいいさ、という気持で黙っていた」と描かれる。妻 が掃除をしている間に逃げられたという意味にも、かわい そうになって逃がしてやったという意味にも解釈できる例 である。取り逃がす・Q逃す にがて【苦手】不得意でうまくこなせない意として、会話や さほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈科目〉へ を克服する〉スポーツがだ人前で堅苦しい挨拶をす るのがだ安部公房の「他人の顔」にガラスをこする <786> にかよう 音が、大の」とある。「な対戦相手」「今度の課長は皮 肉屋でどうもだ」「な食べ物」のように、接触したくな い好ましからぬ対象の意でも使う。そのため、仮に巧みに こなす能力があっても心理的な負担が大きく自ら行うこと を避けたい場合に使っても「不得手」や「不得意」より自然。 Q不得手・不得意 にかよう【似通う】互いによく似ている意で、会話やさほど 硬くない文章に使われる和語。〈感じのーった姉妹〉〈境 遇がー〉〈それとよくーった話がある〉〈ーった内容の 本〉②志賀直哉の『小僧の神様』に、他人に親切をしたあと で感じる「変に淋しい、いやな気持」を「人知れず悪い事を した後の気持にー・って居る」とある。「似る」とほとんど 同じような意味で用いるが、比較的客観的な感じの「似る」 に比べ、この語には、そう判断する人間の側にひきつけて 表現する、いくらか感情のこもった雰囲気があり、「日ごろ の彼に似ず」のような例では用いにくい。似る にがわらい【苦笑い】苦々しく思いながら無理に笑う意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈思わぬ失敗にーする〉 〈間違いを指摘されてーする〉ひ苦笑 にぎやか【賑やか】人が多く活気のある物音や人声が聞えて くる状態をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。 〈宴会でだ〉〈商店の建ち並ぶな町に出る〉夏目漱石 の『坊ちゃん』に「燗徳利が頻繁に往来し始めたら四方 が急にになった」とある。「な人」のように、陽気で周 囲にうるさいほどしゃべりまくる場合には、一人の場合で も使う。栄えている点を中心とする「繁華」と違い、音に重 点があり、「周囲がばかに」で話がよく聞こえない」のように、騒音が不快に感じられる際の間接表現にもなる。「繁華」と違い、その時の状態を示すので、すぐにおさまるような一時的な場合も含まれる。なお、「な曲」「な柄」「な人」のように、テンポが速く陽気な感じの意にも使う。徳永直の『太陽のない街』に「このトンネル長屋は(略)赤ん坊や女房たちが、追い込まれたばかりの豚小舎のようにに「騒々しくなる」とあるのは音が中心だが、横光利一の『春は馬車に乗って』に「海際の白い道が日増しに「になって来た」とある例は単に音響というより動きを含めた感じを全体として表現している。「さびしい」「静か」と対立。Qうるさい・繁華・やかましい にぎり【握り】道具などの手で握る部分をさし、会話にも文 章にも使われる和語。ヘドアのーに手を掛ける〉パットの ーの部分〉の「握り鮨」をさす用法もある。専柄・取っ手・ Qノブ にぎりこぶし【握り拳】拳の意で、会話や文章に使われる 古風な和語。へを振り上げる)高見順の『故旧忘れ得べ き』に「逞しく黒いーを卓の前にドンと置き」とある。「拳」 に比べ、ぎゅっと硬く握り締めた感じが強い。単拳固・拳骨・ Q拳・鉄拳 にぎりめし【握り飯】御飯を丸や三角に握って中に梅干や鮭 や鱈子などを入れた食品をさし、主として男性がくだけた 会話で使う、ややぞんざいな感じの和語。ぐでっかいー 「をほおばる」尾崎士郎の『人生劇場』に「後頭部のお そろしく出っぽった、ーをさかさまにしたような顔」という <787> 比喻表現の例が出る。おにぎり・おむすび・むすび にぎる【握る】対象を指で包む形に力を加える意で、会話で も文章でも幅広く使われる日常生活の和語。〈手を—〉〈相 手の手首を—〉〈釣竿を—〉〈筆を—〉〈鮪を—〉〈夏目漱 石の『坊っちゃん』に「汗をかいてる銭を返しちゃ、山嵐が 何とか云うだろうと思ったから、机の上へ置いてふうふう 吹いて又ー・った」とある。ステッキやパットは「つかむ」 だけでは力が入らないから、ふつうは「握る」し、「ハンド ルを—」のも「つかむ」では運転が危なっかしい感じがあ る。また、「つかむ」がつねに物の一部であるのに対し、 「百円玉を—」のように手の平の中にすっぽりと入って外か ら見えなくなる場合もある。ふつかむ にくい【憎い】しゃくにさわって懲らしめてやりたいほど疎 ましい意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日 常の基本的な和語。こんな目に遭わせた相手が」へあの 仕打ちが」へほど巧い永井龍男の『灯』に「(娘の結 婚は)淋しいなんてもんじゃない、よ。どうせ誰かに、持 って行かれるんだと覚悟はしていたが、こんなことだとは 知らなかった」とある。「ちょいと男」「なかなか」こと を言う」のように、癩に障るぐらい見事だという意味に 使うこともある。き憎たらしい・Q憎らしい にくしみ【憎しみ】相手を憎いと思う気持ちをさし、主とし て文章に用いられる和語。〈ーが募る〉へに満ちた表情〉 〈愛からーに変わる〉の「憎悪」ほど強くない。有島武郎の 『或る女』に「抱きしめても飽き足らないほどの愛着をその まま裏返したようなー」とあるように、「愛」と対立。 にくたらしい 悪 嫌悪,Q憎悪,敵意,敵愾心,憎尢,反感 にくしゅ【肉腫】体の表皮でなく中にできる悪性の腫れ物の 意で、学術的な会話や文章に用いられる医学の専門漢語。 (ーが見つかる) 腫物・腫瀉・Q腫れ物・ポリーブ にくしん【肉親】ごく近い血族をさして改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈一の情〉離れ離れになったを探 す)具体的には親子や兄弟、伯父・叔母、甥・姪などで、 血のつながっていない配偶者側は含まれない。Q近親・身 内 にくせい【肉声】マイクや電話などの機械を通さずに人間の 口から直接発せられる生きの声をさし、いくぶん改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ーが館内に響く〉〈ーで会場 の奥まで通る〉〈作家のーに接する〉平林たい子の『施療 室にて』に「厚みのあるーがビリビリと復音を伴って幅の広 い廊下をどこまでも流れる」とあり、石坂洋次郎の『草を刈 る女』に「腹の底から絞り上げる逞しいー」とある。ひ地声 にくたい【肉体】生身の体をさし、会話にも文章にも使われ る漢語。〈ー美〉〈ー労働〉〈強健なーを誇る〉〈ー的な衰 え〉②横光利一の『ナポレオンと田虫』に「その若々しいー は(略)割られた果実のように新鮮に感じられた」とある。ひ からだ・Q身体・体軀 にくたらしい「憎たらしい」態度や様子がいかにも憎い感じ だの意で、主に会話に使われる和語。「顔つき」へ見るか らに「態度」へ「口を利く」の「憎い」「憎らしい」と違い、 あくまで外見に重点を置いた判断。「憎い」より感情をこめ た雰囲気がある。単憎い・Q憎らしい <788> にくむ にくむ【憎む】自分にひどい仕打ちをした相手を恨んで仕返 ししたいと思う意で、会話にも文章にも使われる和語。〈敵 をー〉〈卑劣な手段をー〉の「恨む」より積極的・攻撃的な感 じが強い。三島由紀夫の『金閣寺』に「私は、背筋を硬ぼら せて、母をー・んでいた」とある。Q恨む・憎悪・憎しみ にくよく【肉欲】精神的な愛情とは無関係な肉体的欲望をさ し、主として硬い文章に用いられる古い感じの漢語。へむら むらとーが起こる⑨意味の共通部分をもつ「愛欲」「情 欲」「色欲」「性欲」「淫欲」より強烈な感じがあるが、「獣 欲」ほどのすごさはない。各語の意味の違いというより、 「欲」と結びつくもう一つの漢字のイメージの差だろう。 愛欲・淫欲・色欲・Q獣欲・情欲・性欲 にくらしい【憎らしい】憎くて癪しやに障るようすをさして、 主に会話に使われる和語。〈人〉へほど落ち着いてい る〉へ物の言い方〉へ仕打ち〉〈見るからに顔つき〉の 志賀直哉の『流行感冒』に「本統にーわ、あんなうまい事を 云って」とある。自分の心理状態をさす「憎い」に対し、見 る人が憎いと感じるような言動や態度を相手がとったりす る場合に使う。「まあ、」のように女性が仲の良い男性を 軽くにらむような場面も浮かぶ。ひ憎い・Q憎たらしい 二グロ「黒色人種」や「黒人」の意で会話にも使われる外来 語。特に中部アフリカ原住のそれをさすことが多い。堀 田善衛の『広場の孤独』に「スピリチュアルに似た哀調を 帯びた歌」とある。独特の文化などを語る折に使われるこ ともあり、特に差別意識を感じさせないようである。黒ん 坊・黒色人種・Q黒人 にげごし【逃げ腰】相手と争わずに逃げ出そうとする腰つき やそういう弱気な態度をさして、会話やさほど硬くない文 章に使われる和語。へちょっと強く出ると、すぐになる 専尻込み・Q弱腰 にげみち【逃げ道】逃げるための道の意で、会話でも文章で も使われる和語。〈ーを用意する〉〈敵のーをふさぐ〉 「そういうーがあったか」のように、逃ぬれる手段という意 味の抽象化した用法もある。退路・Q抜け道 にげる【逃げる】危険などを避けてその場から離れる意で、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈追われてー〉へ命からがらー〉へ一目散にー〉〈嫌な 仕事からー〉へ犬がー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「お れはー・げも隠れもせん」とある。「逃がれる」より具体的な 行動を連想させる。Q逃亡・逃れる にこみ【煮込み】食材に水をたっぷり入れ調味料を加えて長 時間煮た料理をさし、会話にも文章にも使われる和語。へも つのー) ひ煮転がし・煮しめ・煮つけ・煮っ転がし・Q煮物 にごる【濁る】不純なものが混じって不透明になったり汚れ たりはっきりしなくなったりして清らかさが失われる意で、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。 〈水がー〉〈色がー〉〈音がー〉〈心がー〉永井龍男の『風 ふたたび』に「みそ汁のように赤くー・った溝」とあり、石 坂洋次郎の『山のかなたに』には「霧は少しうすれて、どん より暗い空の一隅に、古い血のようにー・った赤い色が一と 筋滲んでいるのが見えた」とある。马混濁 にころがし【煮転がし】里芋やじゃが芋などを少なめの煮汁 <789> で煮きった料理をさし、会話にも文章にも使われる古風な 和語。〈芋のー〉〈新じゃがのー〉「にっころがし」というと 古風さが減りさらに会話的。「にころばし」ともいう。 込み・煮しめ・煮つけ・煮っ転がし・煮びたし・煮物 にしび【西日】西に沈もうとする太陽、また、西に傾いた午 後の日ざしを意味し、くだけた会話から文章まで使われる 日常の和語。〈ーが差し込む〉〈ーを受ける〉永井荷風の 『すみだ川』に「ーが燃える焰のように狭い家中へ差し込ん で来る」とある。夏の連想が強く、それを苦にするイメージ で使う傾向がある。夕日そのものより、「ーのまぶしい部 屋」のように西からの日ざしをさす例が多い。同じく永井 荷風の『雨瀟瀟』に出てくる「いつに変らぬ残暑のーに蜩 らの声のみあわただしく夜になった」という例も、「残暑の ー」とあるからには光をさすと解するのが素直だろう。 入り日・斜陽・夕陽・夕日・落日・落陽 にじむ【滲む】濡れて輪郭がぼやける、液体が内側から表面 に出て広がる意で、会話でも文章でも広く使われる和語。 〈インクがー〉〈涙で目の前がー〉〈うっすらと血がー〉富 岡多恵子の『富士山の見える家』に「部屋は、ストーブをた くようになって壁から汗のように水分がー・み」とある。 「しみいる」「にじみだす」というそれぞれの複合語から推 測されるように、同じく液体の浸透する現象を表現する動 詞でも、「しみる」は対象に入り込む方向、この「にじむ」 は対象の中から外表面に出て来る方向でとらえた表現。汗 はまず皮膚の表面に「にじむ」が、そこから下着の中に「し みる」。ひしみる にたき にしめ【煮染め煮)】芋類や乾し椎茸・こんにゃく・昆布な どを醤油で濃い味に煮上げた日持ちのよい料理をさし、会 話にも文章にも使われる和語。〈魚と野菜の—〉島崎藤村 の『桜の実の熟する時』に「屋」が出てくる。林芙美子の 『市立女学校』には「汚れた—のような革のふっとぼおる」 という比喩表現の例がある。き煮込み・煮ころがし・煮つけ・煮 っころがし・煮びたし・煮物 にせ【偽/贋】他人を騙すために本物と紛らわしくする意 で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる和語。「 札〈刑事〉への弁護士〉への図面似せ」の意か ら。ひQえせ・まやかし にせもの【偽(贋)物】他人を騙すために本物と紛らわしく造 った品物をさし、会話や軽い文章に使われる日常の和語。 〈ブランド品の—〉〈真っ赤な—〉〈ーを見分ける〉〈とんだ ーをつかまされる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「あの金 鎖はーである」とある。Q贋物・偽物・にせ者・まがい物 にせもの【偽(贋)者】他人を騙すために別の人物と紛らわし く装った人間をさし、会話や軽い文章に使われる和語。「 の医者」〈警官の—〉へとすぐ見破る〉児贋物・偽物・Qに せ物・まがい物 にたき【煮炊(焚)き】御飯を炊いたりおかずを煮たりすることをさし、会話や硬くない文章に使われる、いくぶん古風 な和語。〈部屋でーをする〉火を使って調理をすることが 中心で、焼いたり蒸したりすることも常識として含まれる。 の芥川龍之介の『鼻』に「の談話の中に、鼻という語が出 てくるのをなによりも恐れていた」とある。Q炊事・調理 <790> にちじょう 料理 にちじょう【日常】ごく一般的な毎日の意で会話にも文章に も広く使われる漢語。〈ー茶飯事〉〈ー生活〉〈ーの手入れ〉 の大江健三郎の『飼育』に「小さな集落にあらゆるーがすっ ぼりつまっていた」とある。ひいつも・通常・常々・Q常日頃・日 常茶飯事・日頃・日々・普段・平常・平生・平素 にちじょうさはんじ【日常茶飯事】日常生活のどこにでも見 られるごく平凡なことの意で、会話にも文章にも使われる 漢語。〈その程度の夫婦喧嘩はーだ〉の大岡昇平の『野火』 に「戦場では殺人はーにすぎない」とある。もとは、ふだん の食事の意。いつも・通常・常々・常日頃・日常・日頃・普段 にちぼっ【日没】太陽が西に沈む意で、やや改まった会話や 文章に用いられる正式な感じの漢語。〈ーを迎える〉〈ーの ため中止〉のその現象の生ずる時刻が中心で、「日の入り」 に比べ視覚的イメージが弱く概念的。乃日の入り にちりん【日輪】「太陽」の意で主に文章に用いられる古風な 漢語。〈ーに手を合わせる〉〈輝くーを仰ぎ見る〉美化し た感じも漂う。ちなみに、横光利一にずばり『日輪』と題し た小説がある。お天道様・お日様・太陽・Q日 につかわしい似つかわしい好みや性格などの点でよく合 っている意で、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な 感じのある和語。〈自分に仕事を探す〉(そのボストに 人物)③堀辰雄の『大和路』に「こんな立派な貌にー天平び とは誰だろうか」とある。比較的客観的な感じの「ふさわ しい」に比べ、この語はそう判断する主体を意識させやす い感じがある。ひふさわしい にっき【日記】毎日の出来事やそれに対する感想などを書き 綴ぶったものをさして、会話にも文章にも使われる日常の漢 語。〈帳〉(旅)〈文学〉へ一日も欠かさずにーをつけ る)「日誌」に比べ個人的な色彩が濃い。日誌 一ツクネーム「あだな」の意で、会話や硬くない文章に使わ れる外来語。〈ありがたくないー〉(互いにーで呼び合う 仲)四「あだな」に比べ、特徴を誇張した例を連想させやす い。弔愛称・あざな・Qあだな につけ【煮付け】煮汁の味がしみこむまでよく煮た料理をさ し、会話にも文章にも使われる和語。〈鰈かれのー〉俗に、 「煮物」全体の意にも使う。夏目漱石の『坊っちゃん』に「見 ると今夜も薩摩芋のーだ」とある。荳込み・煮ころがし・Q煮 染め・煮びたし・煮物 にっこう【日光】日の光の意で、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の漢語。〈消毒〉〈直射〉〈一 に当たる〉〈一を浴びる〉〈一が差し込む〉開高健の『流 亡記』に「肩に淡い秋のーを感じながらぼんやりとただず んだ」とある。ひ日ざし・Q陽光 にっころがし【煮っ転がし】「煮ころがし」の意で、くだけた 会話に使われる俗っぽい日常語。〈芋のー〉ひ煮込み・Q煮転 がし・煮しめ・煮つけ・煮物 にっし【日誌】その日の出来事や行動などを簡潔に記録した ものをさし、改まった会話や文章に使われる、やや正式な感 じの漢語。〈学級—〉〈航海—〉〈ーに書き込む〉個人的な 感じの「日記」に比べて公的な性格を帯び、感想や意見など を含まない客観的な記述が原則。月日記 <791> にっしゃびょう【日射病】強い直射日光を長時間浴びたため に起こる病気。〈ーで倒れる〉Q熱射病・熱中症 にっちゅう【日中】日の出から日の入りまでの間全体をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈ーは日差しが強い〉〈ー いっぱいは晴れる〉〈ーの最高気温〉特に、朝のうちと夕 方を除いた、日の高い間を意識して使うことが多い。马白 昼・日盛り・昼日中・Q昼間・真っ昼間・真昼 にっぽん【日本】「にほん」の国をさし、改まった表現に用いられる正式の国名。〈大ー帝国〉〈一の優勝〉〈一の期待を一身に担う〉の戦時中まではよく用いた。現在でもオリンピックやワールドカップなどで国家意識の高まったときに多く用いる。国対抗のスポーツを観戦中にも「ー、チャチャチャー」がんばれ、「!」と応援する。そのほうが力強く響き、「ニホン」では力がこもらない感じがする。「ニッポン」には促音があってそこで一度唇をきちっと閉じて息をとめる。次の「ポ」がPという閉鎖破裂音で始まり、唇の閉鎖を破って呼気が強く吐き出される。その促音と破裂音との相乗効果で力強い印象を与える。戦時中の肩を怒らせた国家の姿勢や、国際試合での闘争心むき出しの応援に、そういう力感あふれる響きがマッチするからである。 にのうで【二の腕】「上腕」の意で、主として日常会話や改ま らない文章中に使われる、やや古風な感じを伴う日常語。 〈相手のーをつかむ〉三島由紀夫の『仮面の告白』に「私 はうつろな目つきで、自分のかぼそいーにある、みじめな 種痘の痕をこすった」とある。「腕」という語が古く肘から 手首までをさすこともあったため二番目の腕と称したとこ にほんご ろからという。専門語としては「上腕」を用いる。ゆ腕①・ かいな・Q上腕 にぴたし【煮浸し】さっとあぶった鮎や鮒などを醤油・味醂 などの煮汁をたっぷりしみこませて煮た料理をさし、会話 にも文章にも使われるいくぶん古風な和語。〈鯑のー〉 夏目漱石の『三四郎』に「鮎のー」が出てくる。ひ煮ころが し煮染め煮つけ煮物 にぶい【鈍い】感度や切れ味が悪い意で、会話にも文章にも 使われる日常の和語。〈頭の働きが—〉〈反応が—〉〈体の 動きが—〉阿川弘之の『雲の墓標』に「高空では頭のはた らきが相当ー・くなるようで」とある。「鋭い」と対立。 い・のろい にほん【日本】日本国をさして平時の日常会話で通常用いられる国名。「の歴史」〈一の景気〉〈一に伝わる〉戦時中は「ニッポン」と発音する日本人が今とは比較にならないほど多かったが、現在ではほとんどの日本人がたいていの場合「ニホン」と発音する。「日本国憲法」や「日本銀行」の場合でさえ、正式名称は「ニッポン」でも普段は「ニホン」と発音している。 にほんご【日本語】日本人が用いる日本国の正式言語をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な漢 語。〈ーを教える〉へーの特色〉(こなれたーをあやつる) 「国語」と比べ、この語は諸外国の言語の存在を意識し、そ れらと並ぶ一言語として対比的な視点で客観的にとらえる 感じがあり、「国語」の見地からは「乱れ」として眉をひそ める現象も「ーの変化」として冷静に受け止める傾向があ <792> にほんごがく る。極論すれば、国家が国民に教育するのが「国語」、外国 人が学習するのが「日本語」という図式になる。公用語・Q 国語・母語・母国語 にほんごがく【日本語学】日本語を研究対象とする学問をさ し、学術的な会話や文章に用いられる比較的新しい漢語。 への講義科目〉へを専攻する〉への論文を投稿する〉四 かつての「國語學會」が「日本語学会」に名称変更したよう に、意味としては「国語学」と同義であるが、語感の点で新 しい雰囲気があるため、外国語を視野に入れ、言語学の方 法論などを参考にしながら、現代日本語の性格を論ずると ころに主たる関心があるようなイメージを連想しやすい。 Q国語学 いほんごきょういく【日本語教育】主に日本語を母語としな い外国人に外国語として日本語を教えることをさし、会話 にも文章にも使われる比較的新しい漢語。〈留学生に対する ー〉への教授法〉②日本語を母語とする日本人を対象とす る国語教育とは明確に区別される。ただし、現場では、帰 国子女に対する漢字その他の日本語力向上のためのクラス も実施され、厳密に日本語を母語としないとはいえない例 外もあるが、あくまで語学教育の一環としてである。近年 は日本で生活する必要から、母国語の次の第二言語として 学ぶケースも増え、単なる伝達手段として日本語を身につ けるだけでなく、社会生活の中に生きる日本文化を学び取 る場合もあるが、基本はあくまで、コミュニケーションを円 滑にするための言語技能の習得をめざすのが主眼である。 そのため、教材は現代日本語が圧倒的に多く、価値のある 内容や優れた表現よりも各分野の自然な日本語の文章が重 要視される。国語教育 にほんしゅ【日本酒】米と麹で醸造した日本特有の酒をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈鍋料理には—の熱 燗に限る)単に「酒」とも言う。洋酒と対立する。中心 は清酒でどぶろくを含む。通常これだけで清酒をさすが、 どぶろくでないことを特に明確にする際ははっきり「清酒」 と言う。Q酒・清酒 にほんちゃ【日本茶】日本製の茶をさし、会話にも文章にも 使われる漢語表現。〈和菓子には—が一番だ〉紅茶やウー ロン茶などの外国産の茶を意識し、それと区別するための 用語で、通常は緑茶、特に中級の煎茶をさすことが多い。 上がり・お茶・玉露・煎茶・茶・番茶・碾き茶・焙じ茶・抹茶・Q緑茶 にほんぶんがく【日本文学】日本の文学やその研究を意味し、 会話にも文章にも使われる漢語。へーを海外に紹介する) 「の研究に携わる」最近は「国文学」という呼称に取っ て代わりつつある。「国文学」と同義ながら、語感の点で伝 統的な雰囲気が薄いため、現代の流行作家やベストセラー 小説などを扱っても抵抗感が少ない。Q国文学 にほんま【日本間】日本式にしつらえた「和室」をさし、く だけた会話から文章まで広く使われる日常語。以前は日 常一般の用語だったが、近年使用頻度が減ったように思わ れる。谷崎潤一郎の『細雪』に「洋間に一段高くなった四畳 半の一の附いた部屋」とあるように、「洋間」と対立。な お、夏目漱石の『坊っちゃん』には「西洋間は一つで沢山で す」とあるので、当時の「日本間」は「西洋間」と対立して <793> いたらしい。私和室 にもつ【荷物】運搬・運送するためにまとめた品物をさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。 〈手〉〈旅行用の〉〈をまとめる〉〈を運搬する〉 林芙美子の『耳輪のついた馬』に「が山のように積み重ね てあった」とある。業者の運ぶ「貨物」だけではなく、鞄や 包みなど個人が手に提げるものをも含む。「おーになる」の ように負担をさす比喩的用法は硬い文章には用いない。 貨物 にもの【煮物】野菜・魚・肉などを煮た料理の総称として、会 話にも文章にも使われる和語。〈ーをする〉〈焼き魚とーが 食卓に並ぶ〉の日本料理では刺身・焼き物と並ぶ主要な調理 法。森鷗外の『雁』に「ーを見ていておくれ」とある。ひ煮 込み・煮転がし・煮しめ・Q煮つけ・煮っ転がし・煮びたし ユアンス意味や語感、色彩・音質・調子・感情などの微妙な 違いをさし、会話にも文章にも使われる、フランス語から の外来語。〈微妙な—の違い〉〈疲れる」と「くたびれる」 とは—が違う)り意味・Q意味合い・語感 にゅうじ【乳児】生後一年くらいまでのまだ乳(ミルク)で育 てられている子供をさし、改まった会話や文章に用いられ る専門的な漢語。〈ーを抱える〉回和風の「ちのみご」より 正式の感じがある。ひQおさなこ・小児詩・ちのみご・幼児 にゅうしゃ【入社】新たに採用されてその会社に社員として 勤める意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈順〉同 期にーする〉芥川龍之介の『或阿呆の一生』に「それは彼 が或新聞社にーすることになった為だった」とある。「退 ニューフェース 社と対立。 就職 ニュース 報道や知らせの意の外来語。伝統的な発音。ヘピ ッグーがある)〈テレピの—〉芥川龍之介の『河童』に 「ラディオのーで知った」とある。ユニューズ 二ューズ慣用的な「ニュース」より原語の発音に近いとし て稀に用いられる外国語。世間の慣用を退け、原語に近 づけた忠実さとともにことさら英語めかした語形を採用 した気取りが感じられる。ユニュース にゅうせん【入選】応募した作品が審査に合格する意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈一作〉ヘコンクールでーす る〈一に漏れる〉当選 にゅうねん【入念】細部にも気を配って気持ちを集中させる ようすをさし、改まった会話や文章に「念入り」の意で用い られる少し硬い感じの漢語表現。「な準備」「な仕上 げ」「に調査する」②獅子文六の「てんやわんや」に「普 請がーで」とある。「念入り」と同様、細部に至るまで集中 力を切らさないところに重点がある。丹念・丁寧①・Q念入 り にゅうばい【入梅】梅雨の季節に入る意で、改まった会話や 文章に用いられる、やや古風な感じの漢語。〈ーのころ〉の 俗に、梅雨時そのものをもさす。ひQつゆ・梅雨 ニューフュース芸能界などにデビューした俳優や歌手など をさして、主に会話で使われる外来語。〈映画界のー〉へ がいきなり人気を集める〉の「新顔」「新人」などより華や かな雰囲気を感じさせる。新入り・新顔・新参・Q新人・ルー キー <794> にゅうほう にゅうぼう【乳房】「ちぶさ」の意の医学用語。へーの一部を 剔出する)おっぱい・乳・Qちぶさ・胸② にゅうもん【入門】師匠の下に弟子入りする意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈相撲部屋に—する〉〈師匠の 下に—してまだ日が浅い〉師匠の家に住み込むいわゆる 内弟子の場合もある。また、「書」「編」「哲学」のよ うに、初步の意でもよく使う。Q師事・私淑 にゅうよう【入用】「入り用」の意で、改まった会話や文章 に用いられる丁重な漢語。〈御—の品は何なりとお申し出 ください〉〈御—の金子はいかほどでもご用意いたします〉の「不用」と対立。入り用・必須・必要 にゅうわ【柔和】表情・態度・性格などが穏やかで心の和む感 じを与える意として、やや改まった会話や文章に用いられ る漢語。「な表情〉〈争いを好まない—な性格〉室生犀 星の『あにいもうと』に「ゆったりと物わかりのよい—な女 だった」とある。大人しい・穏健・温厚・穏和 によう【尿】小便の意で、学術的な会話や医学的な内容の文 章などに用いられる客観的な感じの専門漢語。〈一の検査〉 へーに血が混じる)行為をも意味する「小便」「おしっこ」 とは違い、「小水」同様もっばら排出された液体をさす。 「水を流して下さい」という小便所の注意書きの「水」に手 を加えて「尿」に変形させた落書きがあった。手段と対象と いう差はあっても同じ結果になるからそれなりに有効で、 機転が利いている。おしっこ・Q小水・しょうべん・しょんべん にようかん【尿管】腎臓から膀胱に尿を送る左右一対の管 をさし、会話にも文章にも使われる専門的な漢語。〈一結 石)Q尿道·尿路 にようどう【尿道】膀胱に蓄えた尿を体外に排出する管状 の器官をさし、会話にも文章にも使われる、やや専門的な 漢語。「に炎症がある」Q尿管・尿路 【女房】「妻」をさす古めかしい漢語風の呼称。 〈恋ー〉〈ーをもらう〉〈ーの尻に敷かれる〉「にょうぼ」 と言う例も多い。小沼丹の『十年前』に「の替りに、今迄 出て来たことも無い亭主が現れたから面喰ったのだろう」 とある。「房」は部屋の意で、もと宮中に部屋を賜って住ん だ身分の高い女官をさし、貴族の侍女の意を経て広く婦人 の意に転じた。ひいえの者・うちの者・お上さん・奥方・奥様・奥さ ん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・Q妻・伴侶・ベターハーフ・令 闥・令室・令夫人・ワイフ にようろ【尿路】尿の体外排出に関係する器官、具体的には 腎臓・尿管・膀胱・尿道の総称として、会話にも文章にも使 われる専門的な漢語。〈感染症〉Q尿管・尿道 にらみつける【睨み付ける】怒りをこめて激しく睨む意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈対戦相手を怖い顔で—〉 の「睨む」以上に対象を定めて鋭い視線を送る感じが強い。 ひ睨む・Qねめつける・睥睨 にらむ【睨む】鋭い自つきで見据える意で、会話にも文章に も使われる和語。ぐからかわれて軽くーゝ〈相手をー・んで 震え上がらせる〉水上瀧太郎の『山の手の子』に「黒門 は、固くしまって扉に打った鉄鉱が魔物のようにー・んでい た」という擬人的な直喩表現が出る。「睨み付ける」に比 べ、明確に個別の対象に焦点を絞らずそちらの方向であっ <795> ても使える。「部長にーまれている」のように、要注意人 物として目をつける意にも拡大して使う。また、「嘘だと ー」「真犯人とー」のように、見当をつける意にも使う。 Q睨み付ける・ねめつける・睥睨 にる【似る】両者に際立った共通点があり互いに同じように 感じられる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の基本的な和語。〈子供が親に〉〈似た者夫 婦〉〈服装も鞄もよく似ている〉〈あの双子は顔も声もあま りに似ていて区別がつかない〉へいつもに似ず今日は元気 がない〉通常「似ている」「似ていた」の形で用いるが、 川端康成の『千羽鶴』には、「行方不明になってしまうの は、さびしいわ。」と、消え終るような声は母に似た」とい う例が出てきて、突然それに気づいた視点人物菊治の一瞬 の衝撃を映し出した。似通う にる【煮る】米以外の食品を水に入れ、多くは調味料を加え て加熱し、やわらかく食べやすくする意で、くだけた会話 から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈お粥 をー〉〈芋をー〉〈ことことー〉②水上勉の『土を喰う日々』 に「(わらびを)ひとゆでして、油揚げとー・たら舌が躍っ た」とある。西日本では「炊く」と言うことが多い。 ぐ・Q炊く にわ【庭】敷地内の家屋の周囲の空き地をさし、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 「が広い」〈芝生の」〈和風の」〈下駄を突っかけて— に降りる〉②佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「の樹立がざわ めいて、見ると、静かな雨が野面を、丘を、樹を仄白く煙ら にんい せて」とある。「造り」「に面した座敷」のように、通常 は草木を植え、時には花壇や池を造り石灯籠を配するな ど、観賞用に整えた庭園をさす。「泉水を配した洋風の」 ともいうが、「庭園」に比べ、和風の造園を連想しやすい。 一方、「庭園」と違って「の一部を畑にする」とも言える ように、造園していない単なる空き地をも含む。もともと、 何かを行う土間を意味したらしく、「裁きの」「学びの 」といった古風で優雅な感じの抽象化した用法はそこか ら出たものと思われる。庭園 にわいじり【庭いじり】趣味として庭の草木の手入れをする ことをさし、会話や改まらない文章に使われる和語。定年 後はーが道楽になる)「造園」ほど本格的ではなく、個人 の庭に植えてある草木の趣味的な手入れが中心で、枝の剪 定びなどのイメージが強く、盆栽の世話なども含まれる感 じがある。ひ園芸・Qガーデニング・造園・庭造り にわかあめ【俄雨】突然降り出してすぐにやむ雨の総称で、 会話にも文章にも広く使われる日常の和語。へーがある) 吉行淳之介の『驟雨』に「町をーが襲ったのだ」とある。い きなり降り出す特徴に着目した命名。時雨・驟雨・Q通り 雨・村雨・夕立 にわづくり【庭造(作)り】庭を作る意で、会話や文章に広く 使われる和語。〈一に精を出す〉(借景を生かした) 「造園」ほど必ずしも専門家の本格的な工事を連想せず、素 人の趣味的な「ガーデニング」なども含まれる感じがある。 専園芸・ガーデニング・Q造園・庭いじり にんい【任意】その人自身の意のままという意味合いで、主 <796> にんか に文章に用いられる、やや専門がかった硬い漢語。「同行 を求める」〈ーに選ぶ〉〈ーの箇所に印をつける〉専恣意・Q 随意 にんか【認可】申請内容を認めて許可を与える意で、改まっ た会話や文章に用いられる、やや専門的な漢語。〈国のーを 求める〉(ーが下りる)〈営業をーする〉)許可・受諾・承知・承 諾・承認・免許・容認・了承 にんき【人気】世間の評判や一般大衆の受けをさし、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈 者〉〈商品〉〈が出る〉〈女性にのある店〉〈若い層に 圧倒的なを誇る〉〈に溺れる〉〈にかげりが出る〉 菊池寛の『藤十郎の恋』に「洛中洛外のを唆って」とあ る。「実力がに追いつかない」というように、移り気の大 衆にもてはやされる一時的な現象という性格が強く、人間 的評価を基礎とする「人望」とは異質。店舗・商品・髪型・観 光スポットなど人間以外にも広く使う。評価に関する「評 判」と比べ、この語は話題性が中心で評価とは結びつかな い感じがある。人望・評判 にんげん【人間】動物の一種としての人やその類をさし、や や改まった会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活 の基本的な漢語。〈一関係〉〈一国宝〉〈一として恥ずかし い〉へーとしての務めをきちんと果たす〉〈真底悪いーでは ない〉〈もともと東北のーだから〉〈一らしい生活〉〈一の 目から見ると〉〈なかなかーができている〉夏目漱石の 『それから』に「ほかのーと話していると、一の皮と話すよ うで歯痒くってならなかった」とある。人類をさすのに 「人」よりも正式な感じがある。「人」に比べ、傍観者的な視 点が感じられるとする指摘もある。ひ人 にんしき【認識】物事を見分けてその本質を理解し判断する 意で、改まった会話や文章に用いられる、やや硬い漢語。 へー不足も甚だしい)へーが甘い)へーを深める)へーを改め る)〈時期尚早というーを示す)小林秀雄は『様々なる意 匠』でマルクスに関し「論中への、素朴な実在論の果敢 な、精密な導入による彼の唯物史観」と述べた。大岡昇平 の『俘虜記』には「あたりで行われることを正しくーしてい ると思っていた」とある。意識・思考・Q認知・認定 にんじょう【人情】まともな人間には自然に具わっているは ずの他人を思う優しい心をさし、会話にも文章にも使われ る日常の漢語。〈義理とー〉へーを解する〉へーに厚い〉へー のかけらもない)谷崎潤一郎の『お国と五平』に「紙の 如したあ、よく云ったもの」とあり、小沼丹の『風光る丘』 に「あの娘も多少はーを解すると見えるぜ」とある。「それ がーというものだ」「秘密と言われるとよけい知りたくな るのがーだ」のように、単に自然な感情という意味にも使 う。Q義理・情・同情・情け にんしん【妊娠】胎内に子を宿す意で、会話にも文章にも広 く使われる、やや専門的な漢語。〈想像—〉〈三ヶ月〉〈 の兆候がある〉の宇野浩二の『蔵の中』に「五六ヶ月ぐら いの御中ををかかえている、ちょっと小綺麗なおかみ」とあ る。刂懐胎・Q懐妊・受胎・孕む・身籠もる にんずう【人数】人の数をさし、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる漢語。へーが多い〉へーが減る〉へーが <797> 足りない)〈ーを数える〉にんずとも頭数 にんそう【人相】顔立ちの意で、会話にも文章にも使われる、 やや古風な漢語。〈書き〉〈福々しい〉〈の悪い男〉 永井荷風の『瀅東綺譚』に「人殺しでもしたことのありそう な、」とある。「を占う」のように、顔で占うその人の 性質や運命をさす用法もある。面差し・顔立ち・顔つき にんたい【忍耐】苦しいことや腹の立つことを堪え恐ぶ意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈力〉へを要す る仕事〉(こんなことで音を上げるようではーが足りな い)圧藤春夫の『田園の憂鬱』に「この小さなものが生れ るためにでも、此処にこれだけのーがある」とある。幅広 く使う「我慢」や「辛抱」と違って、暑さ・寒さ・空腹などに は用いにくく、主に精神的な重圧などについて用いる。马 我慢・Q辛抱 にんたいりよく【忍耐力】苦しさを我慢して耐え忍ぶ力をさ し、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈相当のーを要 する〉への必要な仕事)②「根気」に比べ受け身の感じ。 ひ根気 にんち【認知】対象の存在や状態、事実関係などをきちんと 知覚し認めることをさし、学術的な会話や文章に用いられ る専門的な漢語。〈心理学〉〈目標をーする〉四大岡昇平 の『野火』に「怯えた兵士として、初めそれをーしなかった ばかりではなく、ーした後も、眼はその細部を辿ることが 出来なかった」とある。なお、「自分の子であることをーす る」といった用法は法律用語。謬識・Q認定 にんてい【認定】公的機関などが資格や事柄に関して判断し にんむ 決定することをさし、会話にも文章にも使われる硬い漢語。 〈「試験〉〈資格を—する〉〈国の—を受ける〉夏目漱石の 「明暗』に「私のはーじゃありませんよ。事実ですよ」とあ る。Q認識・認知 にんぷ【人夫】土木工事や荷物の運搬などの力仕事に従事す る労働者をさし、会話にも文章にも使われる古風な漢語。 〈日雇いー〉の芥川龍之介の『東洋の秋』に「公園の掃除を するの類とは思われない」とある。職業差別の意識が 感じられるとして今では使用を控えている。女性を連想し にくい。Q労働者 にんぷふく【妊婦服】「マタニティードレス」をさす古めかし い感じの漢語。〈百貨店の—売り場〉女性は「妊婦」とい う露骨な名づけを嫌い、そこをカモフラージュして何とな くかっこうのいい外国語へと逃げてゆく傾向が強い。ひマ タニティーウエア・Qマタニティードレス にんむ【任務】組織や集団の中でメンバーが責任を持って行 うべき仕事の意で、改まった会話や文章に用いられる硬い 感じの漢語。〈重いーを負う〉〈ーを全うする〉〈着実にー を遂行する〉両義務・責務・Q務め <798> ぬ ぬか【糠】玄米を精米する際に出る外皮などの粉をさし、会 話にも文章にも使われる和語。〈ーに漬ける〉現代では 「こぬか」より一般的。「米ぬか」とも言う。ふこぬか かあめ【糠雨】米の糠のように細かい雨の意で、会話にも 文章にも使われる古風な和語。〈外はーが降っている〉谷 崎潤一郎の『肉塊』に「(噴泉は)ーよりも細かくなりなが ら」とある。ひQ霧雨・小雨・こぬか雨・時雨 ぬかす【吐かす】「言う」「しゃべる」の意で相手を軽蔑して 言う和語の俗語。〈何を—か〉〈勝手なことを—〉〈いいか げんなことを—な〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「利いた 風な事を—野郎だ」とある。ひほざく かす【抜かす】追い抜く、省くの意で、会話や軽い文章に 使われる日常の和語。ヨール直前に前の人をーゝふうっか り途中をーして読むヨ追い越す・Q追い抜く・抜く かる【抜かる】油断して失敗する意で、だけた会話に使 われる俗っぽい古風な和語。へいいか、なよ」ひエラーし くじる・失策・失態・失敗・とちる・ぽか・ミス・ミスる・やり損なう ぬかるみ【泥濘】舗装していない道が雨や雪解けなどの影響 でどろどろになって歩きにくい状態をさし、会話やさほど 硬くない文章に使われる日常の和語。〈雪解けの—の道〉 〈—に足を取られる〉久保田万太郎の『春泥』に「沼のよ うなー」とある漢字表記は「でいねい」との区別が困難。 泥濘 かきうち【抜き打ち】予告なしにだしぬけに事を行う意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈ー検査〉へー にテストを実施する)の刀を抜いた途端に斬りつける意か ら。马不意打ち ぬきずり【抜き刷り】書物や雑誌の一部を別に刷って独立さ せた冊子をさし、会話にも文章にも使われるやや専門的な 感じの和語。〈論文のーを配る〉自分の執筆した部分だけ を寄贈する場合などに利用する。「別刷り」より一般によく 使う。刂別刷り ぬきんでる【抜(抽)きん出る】「群を抜く」の意で、改まった 会話や文章に用いられる和語。〈才能はー・でている〉(1・ でた好成績を残す)②いい意味で用いる。Q群を抜く・図抜 ける・ずば抜ける・飛び抜ける・抜群 まく引っ張って取り去る、省くの意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈大根をー〉〈歯をー〉〈栓をー〉〈しみをー〉〈手をー〉 夏目漱石の『草枕』に「頭の毛を悉く!・いて」とある。目 の前をさえぎる厚みをもった対象に働きかけてその一部に 空白を作るのが基底的意味であり、その力が対象の背後に 達する場合と、逆に主体側に戻る場合とに分かれ、さまざ まな意味合いを実現する。乃追い越す・追い抜く・扱ぐ・Q抜か す ふぐ【脱ぐ】身に着けていた物を取り去る意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。シャツを 」〈靴を」〈仮面を」の大岡昇平の『俘虜記』に「上衣 <799> をー・いでしまって、それを夜着のように顎までかぶった り」とある。「着る」「穿く」「履く」「かぶる」と対立。 「花衣ーやみだるる恋に似て」という千原穀子の句は、脱ぎ 捨てた花見の衣装と恋のイメージとの比喻的な取り合わせ が悩ましい。弓Q脱衣・外す ぬぐう『拭う』汚れたり濡れたりした箇所を拭き取るために 布や紙をあてがって軽くこする意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈額の汗をー〉〈ハンカチでそっと涙をー〉 〈ナプキンで口をー〉〈手で洟をー〉回永井荷風の『かし間 の女』に「ちらりと目にした瞬間の嬌態に、もう汗をーのも 忘れて、突然十年のむかし或日の午後に起ったことをあり ありと思い浮べた」とある。こするように動かす際に「拭 く」より手に少し力が入る感じがある。「テーブルの上をさ っとー」のように、汚れを除去する点より布の動きに重点 があるため、それで卓上がきれいになったという情報まで は伝達しない。顔を洗った後に乾いたタオルを動かさずに 押し付けるだけで水気を吸収させるような場合は「拭く」 がふさわしく、「拭う」はイメージが合わない。戻拭き取 る・Q拭く ぬくもり【温もり】温かみがかすかに感じられることをさし て、会話にも文章にも使われるやや古風な和語。〈日中の— の残る部屋〉〈肌の—が忘れられない〉〈母の—を感じさせ る〉の三浦哲郎の『愛しい女』に「宿の浴衣を通して伝わっ てくる妻の軀の—で、清里の頬が熱くなってきた」とある。 肌に接して感じるやわらかいかすかな温かさを美化した感 じで、寝起きの布団のような物理的な温度や感覚だけでな 払けみち く精神的な意味合いに抽象化した用法もある。「木のーを感じさせる家」「家庭の」「世の中がまだぎすぎすしていなかった古き佳き時代の」のように抽象的にとらえた、しっとりとした味わい、懐かしさをさす比喻的な例も多く、「温かみ」以上のプラスイメージが感じられる。芥川龍之介の『或日の大石内蔵助』にある「胸底を吹いている春風は、再緩幾分のーを減却した」の例も心理的。暖かさ・Q温かみけだす【抜(脱)け出す】ある好ましくない場所や状況からひそかに逃れ出る意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈夜中にこっそりー〉〈会議中にー〉〈逆境からー〉橫光利 一の『機械』に「細君の睨みの留守に脱兎のごとくー・して」 とある。結果に重点を置いた感じの「抜け出る」に比べ、意 図にも言及した感じが伴い、「抜け出る」よりよく使われ る。込脱却・脱出・抜け出る ぬけでる【抜(脱)け出る】「抜け出す」とほぼ同義で、会話に も文章にも使われる和語。〈授業中に巧みに教室から—〉 結果を客観的にとらえただけで、「抜け出す」ほど積極的な 意図が表に出ていない感じがある。ゆ脱却・脱出・抜け出す はみち【抜け道(路)】本道以外に通り抜けられる細い近道 をさして、会話にも文章にも使われる和語。〈神社の脇の を通ると早い〉〈ひそかにーを教える〉「退路」より狭く、 「逃げ道」より一般に知られていない感じが強い。「国道が 込んでいるので途中からーをする」のように、そこを通る 手段に重点のある使い方もある。「法のー」「あらかじめー を作っておく」のように、逃れる手段といった抽象的な意味 合いでもよく使われ、「逃げ道」より一般人には気づきにく <800> ぬし い感じが強い。 刂間道・退路・近道・Q逃げ道・脇道 かし【主】所有者や行為をした当人、物事の中心となってい る人物をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる古風 な和語。〈持ちー〉〈落としー〉〈飼いー〉〈あの山のー〉 〈噂のー〉森鷗外の『青年』に「声のーは大村であった」 とあり、夏目漱石の『倫敦塔』にも「歌のー」とある。 るじ・主人① 如すっと【盗人】「泥棒」の意の古めかしい和語。「たけだ けしい」「ぬすびと」の転で、より会話的。人をさし、行 為だけはささない。落語の世界の「ぬすっと」ほ、手ぬぐい で頬かむりをして唐草模様の大きな風呂敷包みを背負い、 中には家を出るときから抜き足差し足で歩き出す間抜けな 手合いもいて、憎めない感じがある。弔窃盗・賊・盗賊・Q泥 棒・ぬすびと・物盗り ぬすびと【盗人】「泥棒」の意で、古めかしい和語。へに追い銭〉へにも三分の利〉芥川龍之介の『羅生門』に「になるよりほかにしかたがない」ということを、積極的に肯定するだけの、勇気が出ずにいた」とある。「ぬすっと」ほど会話的ではない。人をさし、行為だけはささない。古風な語感が、殺伐とした現代の世相に比べればまだ少しはのんびりしていた時代のイメージを誘うため、「泥棒」ほどの恐怖感をかきたてない。児窃盗・賊・盗賊・Q泥棒・ぬすっと・物盗り ひすみぎき【盗み聞き】他人の話を物陰に隠れるなどして当 人に気づかれないようにこっそり聞く意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈隣の部屋の壁に耳をつけてーする〉 〈密談を—する〉「立ち聞き」より意図的・積極的である が、「盗聴」と違って内密に機械を操作するという連想は稀 薄で、犯罪の雰囲気は弱い。Q立ち聞き・盗聴 の【布】織物の総称で、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常の和語。「ーでできている〉へーを当て る)の「きれ」と違い、大きさに関係なく使う。生地・切れ・ Q布地 のじ【布地】衣服を作る材料としての布をさして、会話に も文章にも使われる和語。〈ーを裁つ〉太宰治の『葉』は いきなり「死のうと思っていた」と始まり、「ことしの正 月、よそから着物を一反もらった」という一見何の関係もな い一文が続き、以下「着物のーは麻であった」など、着物の 話が展開する。ひQ生地・切れ・布 如ま【沼】周りを陸地に囲まれ水を湛えた場所をさし、会話 にも文章にも使われる和語。〆底なし」夏目漱石の『吾 輩は猫である』に「へでも落ちた人が足を抜こうと焦慮 る度にぷくぷく深く沈む様に、(餅を)噛めば噛む程口が重 くなる」という比喩表現が出る。通例、湖より小さく池よ り大きいイメージがある。水深五メートル以内で底が泥深 く藻の類が生える。込池・Q湖 如まち【沼地】泥が多く湿った土地をさし、会話にも文章に も使われる表現。「ーがひろがる〉(ーに足をとられる) Q湿原・湿地 あるい【温い】通常の熱さより温度が低い場合の感じをさし て、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈湯にゆったりと浸かる〉熱いお茶が冷 <801> ねいる めかかったり冷たいジュースが温まりかけたり、その温度を 好ましくないと思う例が多く、小沼丹の『外来者』も、周囲 に気をとられているうちに「ビイルはすっかりー・くなって いるのである」と結ばれる。卫生始るい 加れえん【濡れ縁】部屋に沿って雨戸より外側に設けた簡易 な板敷きをさし、会話にも文章にも使われる日常語。「に 腰を掛ける》三木卓の『隣家』に「竹竿を」の下に押し込 んでその奥に住んでいる猫を育していた」とある。刂縁② 私れば【濡れ場】男女の色事の現場をさし、会話やさほど硬 くない文章に使われる古風な和語。〈ーを目撃する〉へーを 演ずる》⑨井伏鱒二の『珍品堂主人』に「あら御免なさい」 と云ったのは、「そのー、見届けた」というのと同義語のよ うなもの」とある。本来は歌舞伎で濡れ事(情事)を演ずる 場面の意。ゅラブシーン ね ね【音】小さな音や声をさし、主に文章中に用いられる古風 な和語。〈虫の—〉〈笛の—が近づいてくる〉②虫・笛・琴・ 鐘・鈴など用法はかなり限定的で、心にしみいる感じを伴う 場合が多い。三浦哲郎の『忍ぶ川』に「静けさの果てから、 さえた鈴の—がきこえ」とある例は「ね」とも「おと」とも 読めるし、「鐘」は「おと」「こえ」「ね」のいずれも使え る。ひQおと・声 ね【根】木や草の土中にあって幹や茎を支える部分をさし、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる基本的な和語。 「ーを張る」〈ーを下ろす〉②上林暁の『野』に「樑のーが、 病菌に侵されたのであろう、大きな瘤のように膨れている」 とある。専根っこ ね【値】売買の代価の意で、会話や軽い文章に使われる、や や古風な和語。〈ーが張る〉〈ーを踏む〉「ーが出る」のよ うに価値の意でも使う。価格・価額・Q値段 ねいもう【獰猛】「どうもう」の誤読。「獰」の旁につら れた読み違い。「獰猛」が比較的よく使われる語だけに教養 が疑われかねない。ひどうもう ねいりばな【寝入り端】眠って直ぐの意で、会話にも文章に も使われる和語。〈ーを起こされる〉、寝際・Q寝しな ねいる【寝入る】深い眠りに入る意で、会話にも文章にも使 われる、いくぶん古風な感じもする和語。〈すやすやー・っ <802> ねいろ ている〈前後不覚に—〉四川端康成の『眠れる美女』に 「沈みこむようにーった」とある。Q寝込む・寝付く ねいろ【音色】同じ高さ・強さの音であっても楽器の種類など によって生ずる感じの違いをさし、会話にも文章にも使わ れる日常の和語。〈バイオリンの—〉〈呀えた—〉〈一の違 いを聴き分ける〉②小林秀雄の『モオツァルト』に「後から 後から色々な構想は、対位法や様々な楽器のーにしたがって 私に迫って来る」とあり、三浦哲郎の『愛しい女』に「枕元 の明りを消すと、急にその風鈴のーがげえてきこえた」と ある。物理的な感じの「おんしょく」と比べ、美的・芸術的 な価値を問題にする感じが強い。「音いろ」という表記であ れば意味もわかり「おんしょく」との区別もできる。ひおん しょく ねうち【値打ち】「価値」の意で、会話や軽い文章に使われる、 やや古風で日常的な和語。〈大変なーがある〉(ーが出る) ②抽象的なものにも使われる「価値」に比べ、具体物に使う ことが多い。価値 ねえさん【姉さん】姉の敬称や若い女性への呼びかけとして、 主に会話で使われる和語。へと妹〉への嫁ぎ先〉へちょ いとー、お酒〉旅館や料亭などの接客の女性をさす場合 は慣用的に「姐さん」と書く。姉・実姉 ネーミング新商品や新しい企画・組織や会などの命名をさ し、会話や軽い文章に使われる比較的新しい外来語。〈同じ 機種でも一次第で売れ行きが違う〉名付ける・命名 ねおき【寝起き】寝たり起きたりする意、また、目が覚めて 起き出す意で、会話にも文章にも使われる和語。〈家族が する部屋 ねがい【願い】こうありたいと望んだり頼んだりする意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈一生のおー〉 〈切なるー〉〈やっとーがかなう〉〈ーを聞き入れる〉国木 田独歩の『牛肉と馬鈴薯』に「死ちょう事実に驚きたいとい うーです」とある。「退職ー」「休学ー」のように願書の意 味にも使う。Q願望・期待・希望・願い事・ねぎこと・念願・望み・ 夢② ねがいこと【願い事】神仏などに願う事柄の意で、会話や軽 い文章に使われる、やや古風な和語。へーを聞くへーがか なう)永井龍男の『酒徒交伝』に「もしも神さまが、たっ た一つのーを許してくれるとすれば、あの晩棺の中から出 て、この世とあの世の境目の酒の味を、親しい友人達と酌 み交わし、それから心おきなく三途の川の方へ旅立ってみ たい」とある。専願望・期待・希望・願い・Qねぎこと・念願・望み・ 夢② ねがう【願う】自分の希望や期待が実現するように他人に頼 んだり神仏に祈ったりする意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。くよろしくお ー・いします〈心から—〉〈安全を—〉〈ー・ってもないチ ャンス〉〈ー・ったり叶ったり〉綱野菊は『遠山の雪』で 「幼い子供をみすてて年下の愛人なんかを持った」母親につ いて「実母が不幸であるようにとー・ったことは全然ない」 と書く。「祈る」より宗教色が弱く、実現可能性がいくらか 高い感じがある。Q祈る・頼む・念じる・念ずる・望む① ねぎごと【祈(願)ぎ事】神仏に祈願する事柄の意で、主に文 <803> 章中に使われる古めかしい和語。並んで拝んでもーはそ れぞれ違う②三島由紀夫の『橋づくし』に「今夜のーはお 互いに言ってはならない」とある。願望・期待・希望・願い・Q 願い事・念願・望み・夢② ねぎらう【労(犒)う】相手の骨折りに対してそれを多とする 態度や行為を示す意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈労を—〉(ねぎらいの言葉を掛ける)安岡章太郎の『海 辺の光景』に「その語調はよりは、強制的に追い立てよう とするひびきがあった」とある。上位者が下位者に対して とる行動を言い、逆には用いない。ひいたわる ねぎわ【寝際】寝ようとして横になっているときの意で、会 話にも文章にも使われる、やや古風な和語。へーに電話がか かってくる)専寝入り端・Q寝しな ネクタイワイシャツの襟の下に巻いて結び胸に垂らす布の 意で、会話にも文章にも使われる外来語。〈蝶—〉へーを締 める〉へー着用のこと〉川端康成の『山の音』に「ーをお 取りなさいよ、暑苦しいわ」とある。タイ ネグリジュワンピース形式の女性用の寝巻きをさし、会話 にも文章にも使われるフランス語からの外来語。へーのま ま鏡に向かう富岡多恵子の『幸福』に「羽衣のような、 透けた水色のー」とある。「パジャマ」より装飾的な雰囲気 が漂う。刂寝巻き・Qパジャマ ねこば【猫糞】拾得物などを届け出たり落とし主に返した りせずにそのまま自分の所有とする意で、くだけた会話に 使われる俗語。〈財布を拾ってーする〉(そのままーをきめ こむ)「横領」はもちろん「着服」よりも罪意識は軽い。 ねさげ 猫が自分の「ばば(糞)」に砂をかけて隠すところから。貝横 領・Qくすねる・失敬・着服・横取り ねこむ【寝込む】深く眠る意で、会話や文章に使われる和語。 〈酒に酔ってぐっすりー〉へー・んでいるところを襲われる〉 の「風邪でー」のように病気になって床に就く意でも用いら れる。専寝入る・Q寝付く ねころがる【寝転がる】ごろんと横になる意で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈畳にごろんと〉へー・ったま ま教科書を広げる〉の太宰治の『走れメロス』に「全身萎え て、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろ りとー・った」とある。横か下を向いてしばらく休むか、そ ういう楽な恰好で何かちょっとしたことをするような連想 があり、「寝転ぶ」に比べ、その姿勢に移る動作よりも、そ のような状態にあることに重点があるような感じもある。 くだけた会話では「寝っころがる」となることも多い。刂寝 転ぶ・Q寝そべる・横たわる ねころぶ【寝転ぶ】寝床以外の場所でごろりと横になる意で、 会話や硬くない文章に使われる和語。〈縁側に—〉ぐろり とー・んでテレビを見る〉梶井基次郎の『愛撫』に「私は ゴロッと仰向きにー・んで、猫を顔の上へあげて来る」とあ る。静かな感じの「横たわる」に比べ、粗野な動作が連想さ れ、状態的な「寝転がる」に比べ、そういう姿勢に移る動作 に重点があるような感じが強い。Q寝転がる・寝そべる・横た わる ねさげ【値下げ】物の値段や料金などをそれまでより引き下げる意で、会話やさほど改まらない文章に使われる日常の <804> ねさげひん 和語。〈—断行〉〈—品〉〈小幅な—にとどまる〉Q値引 き割引 ねさげひん【値下げ品】通常より値段を下げた品物をさす語。 へーのコーナー)③「セール品」と比べ、古くなって安くて も早く処分しようとしている感じが強く、前日に焼いて売 れ残ったパンや、採ってから数日経過した蕎の薹などが 連想される。ひセール品 ねざめ【寝覚め】眠りから覚める意で、会話にも文章にも使 われる古風な和語。へにせせらぎの音が心地よい回「 が悪い」という表現には、単に目が覚めたときの気分がよ くないという意味のほか、悪いことをしたという呵責だの 念に駆られる場合も含まれる。Q寝起き・目覚め ねじける【拗ける】曲がって素直でなくなる意として、主に 会話に使われる和語。〈性格のー・けた子供〉心がー・けて 何でも悪くとる〉りすねる・僻む・Qひねくれる ねしな【寝しな】寝かかっているときの意で、会話にも文章 にも比較的よく使われる和語。へーに地震があって飛び起き る)の「しな」は時の意の接尾語という。「寝ぎわ」より広 く、眠りかけているところまで含む。ひ寝入り端・Q寝際 ねじまげる【捻じ曲げる】故意にゆがめる意で、会話や軽い 文章に使われる和語。〈事実をー・げて伝える〉②「腕をー」 のように具体的な意味合いでも使う。弁歪曲 ねじまわし【螺子回し】ねじ釘やピスを回して締め込んだり 緩めて抜き取ったりするための道具をさして、会話にも文 章にも使われる日常の和語。〈ーできつく締める〉②外来語 の「ドライパー」と比べるといくぶん古風な感じがする。 ドライバー ねしようべん【寝小便】睡眠中に無意識に排尿する意で、会 話や改まらない文章に使われる日常語。へーの癖が直らな い) 専遺尿・Qおねしょ ねじる【振じる】指でつまんだ対象の両端に強い逆向きの力 を加えながら回す意で、会話やさほど硬くない文章に使わ れる日常生活の和語。容器の蓋を何度も強くーってやっ と開ける〈足首を変な具合にーってしまう〉〈相手の腕 をー〉「ひねる」よりも対象に強い力が加わる感じで、そ れを何度か繰り返すことも可能。ひひねる ねすぎる【寝過ぎる】必要以上に長い時間寝る意で、会話に も文章にも使われる和語。へー・ぎると、かえって体が重い ひ寝過こす ねすごす【寝過ごす】予定よりも遅く目を覚ます意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈朝うっかりー・して会社に遅 刻する〉ひ寝過ぎる ねそべる【寝そべる】両脚を伸ばしてだらしなく横になる意 で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈縁側にー・って 猫とたわむれる〉(ベッドにー・って雑誌を読む)堀辰雄 の『風立ちぬ』に「白樺の木蔭にー・って果物を齧じってい た」とある。腹這いになる場合が多く、横を向いてもこ の語を使うが、眠るために寝床に横になる場合には言わな い。類語の中で最もだらしのないイメージがある。寝転が る・Q寝転ぶ・横たわる ねたましい【姫ましい】羨ましくて妬みを感じる意の和語。 どのような会話でも文章でも使える「羨ましい」に比較し、 <805> ごくうちとけた関係での会話には使いにくい感じがある。 〈相手の若さがー〉ヘライバルだけに、最近の活躍ぶりがー〉 回岡本かの子の『河明り』に「ときどきにもせよ、そういう 一室に閉じ籠れるのは羨ましい。寧ろー」とある。淡白な 「羨ましい」と比べ、「妬む」気持ちが強く、嫉妬心が内攻し て容易に抜けない雰囲気が伝わってくる。込羨ましい ねたみ【妬み】うらやましくねたましく思う気持ちをさし、 会話でも文章でも使われる日常的な和語。〈一に思う〉人 のーを買う〉回男女間の感情以外に広く用いる。専嫉妬や きもち ねだるしつこく頼み込む意で、会話や硬くない文章に使わ れる和語。〈子供におもちゃをー・られる〉〈親にー・って車 を買ってもらう〉回大岡昇平の『俘虜記』に「発熱と共に下 剰をして彼にクレオソート丸をー・った時も「あれは痛み止 めだ、下剰止めじゃない」といってくれなかった」とある。 しつこい場合は「強請る」とも書く。Qせがむ・せびる ねだん【値段】売買に際して物品や乗り物その他のさまざまなサービスに対して決める価格をさし、会話にも文章にも使われる表現。〈ーをつける〉〈ーをつりあげる〉〈タクシーのー〉夏目漱石の『明暗』に「正札を見つけて、そのーどおりのものを彼が注文してこしらえた」とある。価格・価額・値 ねつ【熱】体の温度、特に平熱より高い体温をさし、会話に も文章にも広く使われる日常の漢語。〈ー冷まし〉〈ーを測 る〉〈ーが出る〉〈ーがある〉〈ーが下がる〉②梶井基次郎の 『樽様』に「ーを見せびらかすために手の握り合いなどをし ねっこ てみるのだが、私の掌が誰れのよりも熱かった」とある。 「ーを加える」「ーを奪う」のように物体についても使う。 「ーに浮かされる」は高熱のためにうわごとを言う意のほ か、物事に夢中になって我を忘れる意の比喻的表現として も使い、「ひところのーは冷めた」のように常に後者の意と なる用法もある。Q体温・熱意 ねつい【熱意】物事を実現しようとする熱心な気持ちをさし、 いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。「に打た れる〉へが感じられない〉へを買って起用する〉有島 武郎の『或る女』に「が身をこがすように燃え立った」と ある。ふ熱 不ッ力チーフ保温や装飾のために首に巻く四角く薄い布を さし、会話にも文章にも使われるいくぶん古風な外来語。 〈絹のー〉の「スカーフ」に比べ小さい印象がある。 ワ ねつく【寝付く】眠りに入る意で、会話にも文章にもよく使 われる和語。ぐずっていた赤ん坊がようやくー)病床に 就く意にも使う。寝入る・寝込む ねっこ【根っこ】「根」をさして改まらない会話で使う俗ぼ い和語の口頭語。「を掘り起こす〉(一と引き抜く) 小林多喜二の『蟹工船』に「木のーのように」正直な百姓」 とある。子供はふつう「根」よりもこの語形を使う。「根」 が一拍しかないので意味が通じるか不安な場合、大人も、 特に改まらない通常の会話ではこの語を選ぶ傾向がある。 ただし、文章中に用いる場合は漢字で表記すれば意味が紛 れないため、そのような配慮は働かない。乃根 <806> ねっしゃびょう ねっしゃびよう【熱射病】高温多湿の場所で体内の熱が発散 しにくくなり、体温調節がうまく行かなくなる病気。へーと 診断される)日射病・Q熱中症 ねつじょう【熱情】燃えるほど激しい熱い思いや熱心さの意 で、改まった会話や文章に用いられる漢語。「がたぎる 「がほとばしる〉「をこめて思いを語る」佐多稲子の 「くれない」に「は、その瞬間に灰をかぶったように暗澹 となり」とある。専情熱 ねっしん【熱心】物事に情熱を持って打ち込む様子をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。 〈練習—〉へ—な生徒〉へ—な信者〉〈教育—な母親〉へ—に 仕事に励む〉へ—に勧める〉尾崎一雄の『霖雨』に「入籍 のことが—な話題になったのは、昌造にとって意外だった が」とある。ひ一生懸命・Q一所懸命・真剣・熱烈まじめ ねつぞう【捏造】事実であるように見せかけて偽りのものをつくりあげる意の漢語で、やや専門語寄りの文章語。〈証拠をーする〉〈今度の報告書はーの疑いがある〉前田河広一郎の『三等船客』に「あることの限りをーして語りあっている」とある。「でっち上げる」以上に計画性や悪意が感じられる。「でっち上げる」の用法のうち、形だけつくようにいい加減にやっつけるといった意味合いでは代用できない。 作り出す・Qでっち上げる ねっちゅう【熱中】気持ちが一つのことに集中する意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈サッカーにーする〉〈音楽 にーする〉の井伏鱒二の『朽助のいる谷間』に「若し私が好 色家であるならば、彼女のまくれた上着のところに興味を 持ったであろうが、私は元来そういうものではなかったの で、杏を食べることにーしている様子を装った」とある。 専念・Q没頭・夢中 ねっちゅうしょう【熱中症】高温の場所で仕事や運動をしす ぎたことが原因で起こる病気の総称。〈ー対策〉へーを防ぐ ため激しいスポーツを控える)日射病・熱射病などの総称 だが、特に熱射病をさすこともある。日射病・Q熱射病 ネット網や網状の物をさして会話にも文章にも使われる外 来語。〈野球場の—裏〉〈テニスコートに—を張る〉〈ボール が—に引っかかる〉スポーツ用具の場合は「網」でなく一 般にこの語を使う。「インターネット」の略称の場合は平板 型のアクセントで俗っぽい響きがある。 ねつれつ【熱烈】情熱的で激しい意で、会話に文章にも使 われる漢語。〈な恋愛〉〈な支持者〉〈な歓迎を受け る〉田山花袋の『蒲団』に「初めて恋するようなな情は 無論なかった」とある。熱心・激しい ねどこ【寝所】「寝室」の意で会話にも文章にも使われる古め かしい和語。へーから出て来ない)Q寝室・しんじょ・寝床・寝 ま・寝や ねどこ【寝床】蒲団などを敷いて寝る用意をした場所をさし、 会話にも文章にも使われる、やや古風な和語。へーを作る へーで本を読む〉へーにもぐり込む〉の里見弾の『椿』に「五 寸ほど離して並べてとったーには、姪にあたる二十歳の娘 が」とある。加能作次郎の『世の中へ』には「青く明るく照 して、二つのーがその中に小舟の浮んでいるように見えた とある。和室に蒲団を敷いたイメージが強いが、ペッドの <807> 普及した現在では和洋を問わずに使うことも多い。専寝台・ とこ・Q寝所・蒲団・ペッド ねばつく【粘付(着)く】ねばって物によくくつく意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈手に—〉〈飴がとけて—〉 の三島由紀夫の『金閣寺』に「運動靴の粗悪なゴム裏は、石 のひとつひとつにー・いた」とある。接着剤などの粘液性の ものに言う傾向が強い。ねばっこい・ねばねばする・ねばる・Q べたつく・べとつく ねばっこい【粘っこい】ねばねばしている様子をさし、会話 や硬くない文章に使われる和語。〈ー触感〉大江健三郎の 『芽むしり仔撃ち』に「唇のうちがわで唾液がー・くかたま りはじめ、舌が痛みながらひきつった」とある。「性格」 のように、「しつこい」意の比喻的用法もある。みねばつく Qねばねばする・ねばる・べたつく ねばねばする【粘粘する】やわらかく物によくくつく意で、 会話や硬くない文章に使われる和語。(表面が—)井伏鱒 二の『黒い雨』に「固形石鹸にする前のー・した液体のまま 雛に入れたものである」とある。開高健の『蒸暑い夜』に 「粥のようにー・した暑熱」という比喻的な用例がある。 ねばつく・Qねばっこい・ねばる・べたつく ねばる【粘る】やわらかく伸縮性に富んでちぎれにくく、触 れた物にくっつきやすい意で、会話にも文章にも使われる 日常の和語。〈納豆が—〉〈餅が—〉石川淳の『普賢』に 「白栲」の腕は飴のようにとろけて頸筋にー・りつく」と ある。「最後まで—」「交渉が成立するまで—」のように、 諦めずに根気強く続ける意の比喻的用法もある。 Qねばつ ねむい く・ねばっこい・ねばねばする・べたつく・べとつく ねびき【値引き】商品の値段を正価より安くする意で、会話 やさほど改まらない文章に使われる日常の和語。〈一率〉 〈交渉してーさせる〉ひ値下げ・Q割引 ねま【寝間】「寝室」の意の古めかしい和語。〜に下がって ゆっくり休む》の「寝間」の字面から離れでなく母屋の一 角にある和室を連想させる。ちなみに、井伏鱒二は李白の 『静夜思』の「牀前看月光/疑是地上霜」の部分を現代日本 語に訳すにあたって、「牀前、月光を見る。疑ふらくは是、 地上の霜かと」といった漢文調の厳かな響きを排し、「ノ ウチカラフト気がツケパ/霜カトオモフィイ月アカリ」と、 庶民の土俗趣味に徹して七七調の俗謡風の調べに乗せてい る。「牀前」といった重々しい語を「ねま」という生活語に 移し変えた点が注目される。専寝室・寝所駐・Q寝屋・ペッドル ーム ねまき【寝巻き】夜に寝るときに着る衣服をさし、会話にも 文章にも使われる、やや古風な和語。〈姿で顔を出す〉 〈ーに着替える〉林芙美子の『放浪記』に「や帯が、海 草のように壁に乱れていた」とある。「寝間着」と書くこと もある。西洋風のパジャマの普及に伴い「パジャマ」という 語も一般化したため、今あえてこの語を使うと和服を連想 させやすい。ひネグリジエ・Qパジャマ ねむい眠い眠ってしまいそうな状態をさし、会話から文 章まで幅広く用いる日常的な和語。〈朝がー・くてつらい〉 〈目をこする〉内田百閒の『居睡』に「そろそろー・く なり、先生の手の動くのを夢と現つの間に迫っている内に、 <808> ねむたい もう何も解らなくなってしまう」とある。「眠たい」のほう は俗っぼく会話的。貝眠たい ねむたい【眠たい】「眠い」に近い意味で、主としてあまり改 まらない会話に用いる和語。〈だんだんー・くなってきた〉 へ!・くてしょうがない)帰のある「眠い」のうちかなり眠 い部分をさす傾向が強い。「眠い」よりくだけた感じの語。 ひ眠い ねむり眠り眠ることの意で、会話にも文章にも使われる 和語。〈一に就く〉〈一が浅い〉〈心地よいーから覚める〉② 古井由吉の『水』に「心地よく小波立ちながらどこまでも平 らかにひろがっていく」とある。健康というよりその快 適さに言及する例が目立つ。「永いーにつく」という形で 「死去」の婉曲表現としても用いられる。Q睡眠・ねんね ねむりぐすり眠り薬催眠剤や麻酔薬などを漠然とさし、 会話や硬くない文章に使われる、やや古風な日常の和語。 〈一で眠らされる〉単催眠剤・睡眠剤・Q睡眠薬 ねむる【眠る】緊張が緩んで心身の活動が休止し時的に無 意識の状態になる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常の基本的な和語。〈八時間〉ぐっすり 〈授業中に」の庄野潤三の『静物』に「まるで息をし ていないようにー・っていた」とある。「墓地に」「安らか に」のように「死ぬ」の婉曲表現「永眠」の意に用い る場合は古風でやや雅語的。「豊かな資源が地下に」のよ うに、活用されずにある意に使う比喻的用法もある。乃寝入 る・寝つく・Q寝る ねめつける【睨め付ける】「睨み付ける」意で、会話にも文 章にも使われる古風な和語。〈憎い相手をじろりと」 「睨み付ける」に比べ、攻撃的な視線の動きが連想され、よ り迫力を感じる傾向がある。JQ睨み付ける・睨む・睥睨 ねや【寝屋】「寝室」の意の古めかしい和語。〈ーに入る〉 字面から離れの和室を連想させることもある。また、「閨 の字を当てて、特に女性の寝室、夫婦の寝室をさす場合も ある。専寝室・寝所は・Q寝間・ベッドルーム ねらい【狙い】めざす目標の意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる和語。〈ーをつける〉〈ーを定める〉 〈ーどおりに運ぶ〉き意図・ターゲット・目当て・目的・Q目標 ねらう【狙う】命中させたり自分の手に入れたりするために 目標を定める意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる日常の和語。〡的の真ん中をー・って矢を放つ 〡ー・った獲物は逃さない〡〡相手の隙をー〡〡新人賞をー〡 〡大臣のポストをー〡〡相乗効果をー〡〡太宰治の『人間失 格』に「いつも、年の暮をー・って、こんな事(自殺騒ぎ)を やられたひには、こっちの命がたまらない」とある。ひQ目 掛ける・目指す ねる【寝る】①床に入る、眠るの意で、会話でも文章でも自 由に使える基本的な日常の和語。〈子は育つ〉ぺッドで 〉〈寝ながら本を読む〉③堀辰雄の『大和路』に「ねられ ぬまま、仕事のことを考えているうちに」とある。お休み になる・伏せる・休む②②漠然と「性交」を暗示することのあ る日常の和語の俗っぽい表現。〈女と」③「寝る」の一部 に「男女の共寝」があり、そこで自然に起こる行為をほのめ かす。夢営み・エッチ・関係②・合飲・交合・交接・情交・情を通じる <809> Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・契る・同衾共 寝・懇ろになる・ファック・深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・ やる③・夜伽 ねる【練る】水を加えたり火にかけたりしてこねて固める意 で、会話でも文章でも使われる和語。〈飴を—〉〈羊羹を ー〉の「こねる」が多方向から力を加える印象があるのに対 して、この語は一定方向の反复動作を連想させやすく、そ の過程よりも結果としてできあがる製品のほうに意識の重 点がある表現。きこねる ねんいり【念入り】「入念」の意で、会話やさほど硬くない文 章に使われる、いくぶん使用頻度が落ちた感じのする表現。 へーに仕上げる〉へーに化粧をする〉(一に点検する)夏目 漱石の『坊っちゃん』に「一に認めなくっちゃならない」 とある。「丹念」と違って、類似行為の繰り返しに限らず、 一連のことでも一つのことでも、ともかく細部に至るまで 気持ちを集中させて行うところに表現の中心がある。丹 念・丁寧①・Q入念 ねんがじょう【年賀状】新年を祝う手紙やはがきをさし、会 話にも文章にも使われる日常の漢語。へーを出す〈手書き のーが届く〉へーだけの付き合い)本来は書状をさした が、現在では多く年賀はがきを連想させる。Q質状・年始状 ねんがらねんじゅう【年がら年中】「年中」の強調表現で、主 にくだけた会話に使われるいくぶん古風で少し俗っぽい表 現。〈ー遊び歩いている〉へー風邪ばかり引いている)回 「年中」に比べ、マイナス評価の内容が続きやすく、批判め いた響きが感じられる。年中 ねんころになる ねんがん【念願】あることを目標としそれに向けて一心に願 い努める意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。 へかねてよりのーとおりへようやくーがかなうへーを果 たす)単なる「願い」や「願望」より熱心に求め努力して いる雰囲気がある。単願望期待・希望・願い・Q願い事・ねぎこ と・望み・夢② ねんき【年季】奉公の約束期間や修行の期間を意味して、会 話でも文章でも用いられる古風な漢語。〈—奉公〉〈—が要 る〉〈—が明ける〉〈—が入っている〉ひ年期・年忌 ねんき【年期】年単位の期間の意で、改まゆた会話や文章に 用いられる硬い漢語。今の決算)Q年季年忌 ねんき【年忌】年ごとの祥月命日の意で、改まった会話や文 章に用いる古風な漢語。〈一の法要を営む〉Q年季・年期 ねんげつ【年月】年と月を単位にして数える長い期間をさし、 やや改まった会話や文章に使われる漢語。〈長いーが経つ〉 〈幾多のーをかけてようやく完成にこぎつける〉夏目漱石 の『倫敦塔』に「かかる文を草する目的で遊覧した訳ではな いし、且ーが経過して居るから」とある。やわらかい雰囲 気のしっとりとした「としつき」に比べ、日常生活で一般に よく使う格別の情緒なく淡々とした感じの語。Q歳月と しつき ねんごろになる【懇るになる】まれに「性交」を意味することのある和風の古めかしい間接表現。〈気がついたらー・っ ていた〉の基本的には「男女が仲のよい親しい関係になる」 意。そこに含みとして肉体関係が入ってくる場合がある、 というきわめて婉曲読みな表現。専営み・エッチ関係②・合歓 <810> ねんざ 交合・交接・情交・情を通じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セッ クス・抱く②・契る・同衾共寝・寝る②・ファック・深い仲になる・房 事・枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 ねんざ【捻挫】手足の関節に無理な力が働いて観帯などが 損傷する現象をさし、会話にも文章にも使われる、やや専 門的な漢語。〈転倒して足首をーする〉は挫く・Q脱白 ねんじょう【年始状】「年賀状」の意で、改まった会話や文 章に用いられる古風な漢語。へーのやりとりがある》「年 賀状」に比べ書簡形式を連想させやすい。夏目漱石の『吾 輩は猫である』に「某画家からのーであるが、上部を赤、下 部を深緑で塗って、其の真中に一の動物が蹲踞って居る所を パステルで書いてある」とある。賀状・Q年賀状 ねんじゅう【年中】一年中いつでもの意で、会話にも文章に も使われる漢語。へー文句ばかり言っている〉へー暇を持て 余している)夏目漱石の『坊っちゃん』に「おやじもー持 て余している」とある。今年がら年中 ねんしょう【燃焼】物質が空気中の酸素と化合し、熱や光を 発する現象をさし、学術的な会話や文章に用いられる、や や専門的な漢語。〈不完全—〉〈完全に—し尽くす〉、Q燃え る・燃す・燃やす・焼く・焼ける ねんじる【念じる】「念ずる」の日常語的な語形。き祈る・頼む・願う・Q念ずる ねんずる【念ずる】こうありたいと心の中で強く願う意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや古風な表現。〈神仙 をー〉〈友の無事をー〉綱野菊は『遠山の雪』で子を捨て た実母について「せめて晩年は幸福であってくれとー・じて いた」と書く。 処折る・頼む・Q願う・念じる ねんだい【年代】時の流れをある程度の長さで区切った比較 的長い期間をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈明治 ー〉〈物〉〈順に並べる〉〈今とはーが違う〉〈あのーの 人〉〈ーを感じさせる〉同ー」のように年齢層をさす用 法もあり、その場合は「世代」よりも幅が狭い感じがある。 Q時代・世代 ねんちょう【年長】「年上」の意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。「だけあって一番しっかりしている 「年少」と対立する語で、「一組」「一人たち」のよう に、幼稚園児や社員・会員といった一つの組織や一定の集団 の中で最も年齢の高い構成員をさす用法もある。また、 「一者」「当時でもすでにかなり」の部類だった」のように、 それだけで「高齢」に近い意味に使う用法もあり、個々の比 較というより、上のほうの年齢層というとらえ方が認めら れる。Q年上・年嵩 ねんとう【年頭】年の始めの意で、改まった会話や文章に用 いられる、やや硬い感じの漢語。への所感〉へにあたっ て一言ご挨拶申し上げます)通常は元日、または三が日、 せいぜい七日ぐらいまでを連想させやすい。元日・元旦・Q 正月 ねんね「眠り」の意の幼児語。〈一の時間〉ヘーの部屋多 く「お」の形で使われる。世間慣れしていない大人、特に 若い女性を子供じみた存在と見てこう呼ぶ例もある。乃睡 眠・Q眠り ねんまつ【年末】一年の終わりの時期をさし、くだけた会話 <811> から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。「調整」 〈1特別警戒〉〈1は多忙を極める〉頬義語の中で最も普 通に用いる。夢暮れ・Q歳末・歳暮・年の暮れ・年の瀬 ねんれい【年齢】生まれてから経過した年数の意で、会話に も文章にも広く使われる漢語。〈精神—〉〈—層〉〈—順〉 〈—相応のしわ〉〈—のわりに若く見える〉〈—が足りない〉 〈—を感じさせない〉四川端康成の『千羽鶴』に「唇が片方 へゆがんで、つり上りそうだった。—の醜さが見えた」と ある。「年」よりも硬く正式な感じがある。少年 のうけっせん の の【野】自然のまま放置されている平らな土地をさし、会話 にも文章にも使われる古風な和語。〈一の花〉〈一を越え山 を越え〉〈林を抜けるとーに出る〉②「山」と対立する概念。 国木田独歩は『武蔵野』で「一は風が強く吹く」「突然又た ーに出る」と展開した後、「山は暮れーは黄昏の薄かな」と いう与謝蕪村の俳句を引用している。「一に出て働く」のよ うに、整地された田畑をさすこともある。込原野・Q野原・野 良・原・原っぱ のう【脳】頭蓋骨に保護されており意識・生命活動をつかさと る神経中枢部をさし、会話にも文章にも使われる、やや専 門的な漢語。〈血栓〉〈の働き〉〈を休ませる〉阿川 弘之の『雲の墓標』に「爆弾の破片でーを半分にそがれた」 とある。「が弱い」のようにその働きをさす例もあるが、 「頭脳」に比べて物的な存在という意識が強い。頭②・Q頭 脳・脳・脳味噌 のういっけつ【脳溢血】「脳出血」の旧称。〈一で倒れる〉Q 脳出血・脳内出血 のうえん【農園】野菜・果物・草花などの園芸作物を栽培する 農場の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。学校 ー〉へおとうー〉正式な感じがあってしばしば名称の一部 に使う。Q農場・農地 のうけっせん【脳血栓】脳の動脈硬化により脳内血管が詰ま <812> のうこう る血行障害の疾患をさし、会話にも文章にも使われる専門 的な漢語。「から脳梗塞のうこが起こりやすい」脳梗塞 のうこう【濃厚】色や味や印象などが濃くこってりとしつこ い感じである意で、やや改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈な味〉〈な化粧〉〈なラブシーン〉中勘助の 『銀の匙』に「あるへいの棒に肉桂の粉をまぶったもので、 な甘みのなかに興奮的な肉桂の匂がする」とあり、小川 国夫の『警備隊のいる町』には「昨夜のな臭いのエッセン スだけが屋内には漂っているようで、なぜかその方が神経 を堪えがたく刺激して、きわどく吐き気になりそうだった」 とある。「淡泊」と対立。「敗色」のように、気配がはっき りしてきた意の比喻的用法もあり、その場合は「稀薄」と対 立。ひ濃い・Q濃密 のうこうそく 脳梗塞】脳内の血行障害によりその部分の脳 細胞が壊死しする疾患をさし、会話にも文章にも使われる専 門的な漢語。〈加ら脳卒中を起こす〉Q脳血栓・脳卒中 のうさくぶつ【農作物】田畑で栽培する穀物・野菜・果物など の総称として、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈台風が上陸しーに被害が出る〉収穫された産物という意 識の強い「農産物」に対し、この語は栽培・生育という過程 を意識させ、少量の場合でも抵抗なく使える。り作物のQ 農産物 のうさんぶつ【農産物】農業による生産物の意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈余剰〉へを輸入す る〉育てて作るという意識の強い「農作物」に比べ、 収穫物という結果を意識した感じの表現で、大量の場合に 使う傾向がある。 弔作物・Q農作物 のうしゅっけつ【脳出血】脳の血管が破れて脳の中に血が出 る病気をさし、会話にも文章にも使われる専門的な漢語。 〈高血压による—〉Q脳溢血・脳内出血 のうじょう【農場】農業経営に必要な設備を備えた農地をさ し、改まった会話や文章に用いられる専門的な感じの漢語。 「ーで働く〉へーを経営する」「田畑」などより近代的な感 じに響く。ひたはた・でんばた・Q農園・農地 のうずい【脳髄】「脳」の意で学術的な会話や文章に用いられ る専門的な漢語。〈一の発達〉〈一の障害〉里見朘の『妻 を買う経験』に「この南京綿のようなーをもった男」とあ る。刂頭②・頭脳・Q脳・脳味噌 のうぜい【納税】税金を納めることをさし、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ー者〉〈ーの義務〉ひ納付 のうそっちゅう【脳卒中】脳の急激な循環障害に伴って起こ る神経麻痺などの症状をさし、会話にも文章にも使われる 古風な漢語。〈ーに見舞われる〉、脳血栓・Q脳梗塞 のうち【農地】耕作用の土地をさし、会話にも文章にも使わ れる、やや専門的な漢語。〈一改革〉へーを宅地に地目変更 する)したはた・でんばた・Q農場・耕地 のうないしゅっけつ【脳内出血】「脳出血」の意の専門語。 〈ーを引き起こす〉脳溢血・Q脳出血 のうなんかしょう【脳軟化症】脳内の血行障害のために一部 の脳組織が軟化する症状をさし、会話にも文章にも使われ のうにゆう【納入】支払うべき金銭や注文を受けた物品を納 <813> めることをさし、やや改まった会話や文章に用いられる硬 い漢語。〈一期日〉〈購入先の会社に商品を—する〉〈会費 を—する〉金銭の場合は「徴収」と対立。ひ納付 のうふ【農夫】農業に従事する男性をさし、改まった会話や 文章に用いられる古風な漢語。〈一は田植えで忙しい〉春 もまだ浅くの姿も見えない火野葦平の『麦と兵隊』に 「朴訥にして土のごとき」らに限りなき親しみを覚えた」と ある。「農民」に比べ、昔ののんびりした時代の空気を感じ させ、古い絵の画題などに用いられそうな懐かしい雰囲気 がある。そのため、「農民が立ち上がる」というような例で 「農夫」に置き換えると多少の違和感が生ずる。「人夫」「道 路工夫」「消防夫」「郵便配達夫」など「夫」のつく一連の単 語に伴う職業差別の感じがこの場合は弱いように思われる。 専農婦・Q農民・百姓 のうふ【農婦】農業に携わる女性をさし、主に文章に用いら れる古風な漢語。〈1の姿もちらほら〉Q農夫・農民・百姓 のうふ【納付】国や役所に物や金銭を納めることをさし、改 まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈1期限〉 〈1額〉Q納税・Q納入 のうみそ【脳味噌】「脳」「脳髄」の意で会話や軽い文章に使 われる俗っぽい漢語。「が足りない」「の働きが鈍い 小林秀雄の『モオツルト』に「に手術を受けた様に驚 き」とある。「をしぼる」のように知恵の意にも使う。 頭②頭脳・Q脳・脳髄 のうみつ【濃密】色や味が濃く細やかな意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈な色彩〉な味わい のうりょく 「な感情」「な関係」「に描写する」のように抽象的な 意味合いでも使う。ひ濃い・Q濃厚 のうみん【農民】農業で生計を立てている人の意で、やや改 まった会話や文章に用いられる、やや硬い漢語。〈村の—〉 〈—の暮らし〉謙遜して「—の出」などと言うケースもま だ見られるが、一方で「—文学」「—としての自覚」のよう な例もあり、悪い語感をひきずっている「百姓」に代わっ て、会話にも文章にも最も普通に用いられる。Q農夫・農 婦・百姓 のうり【脳裏(裡)頭の中の意で、主に文章の中で使われる 硬い漢語。(ーに浮かぶ)〈ーを横切る〉(ーをかすめる) 〈ーを去来する〉(夏目漱石の『倫敦塔』に「歴史を吾がー に描き出して」とある。いくぶん美化した感じが漂う。表 記は「脳裏」で代用されることが多いが、本来の「脳裡」の ほうがそういう雰囲気が濃い。頭② のうりつ【能率】仕事量と所要時間との割合をさし、会話に も文章にも使われる日常の漢語。〈ー給〉〈仕事のーが上が る〉〈勉強に集中してーを上げる〉効率 のうりよく【能力】人間・動物・機械などが物事を成し遂げる 力の程度をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈一給〉 〈潜在ーが高い〉〈優れたーを具える〉〈ーを秘める〉〈ーを 高める〉〈ーを遺憾なく発揮する〉〈ーの限界に挑戦する〉 ②「実力」に比べ、すでにそなわっているという印象が強 い。谷崎潤一郎の『異端者の悲しみ』に「思うがままに好き な錯覚を作り出すー」とあり、小林秀雄の『ドストエフスキ イの生活』に「人間を自然化しようとするーと自然を人間 <814> 化しようとするーは、僕等の裡で、成る程離し難く混合し ている」とある。Q機能・才能・資質・実力・地力・性能・底力・ 素質 外来語「ノートブック」の短縮形で、会話にも文章 にも使われる。〈大学—〉(まじめに—をとる)〈試験前に 友達の—を借りる〉の「ノートブック」の形ではめったに使 わない。弔帳面 のがす【逃す】逃げられる、失うの意で、会話にも文章にも 使われる和語。〈大きな魚を—〉〈この機会を—と当分手に 入らない〉〈優勝を—〉の「逃がす」に比べ抽象的な印象が 強い。Q取り逃がす・逃がす のがれる【逃れる】好ましくない場所や状態から遠ざかる意 で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈難を—〉 〈危うく火災現場から—〉〈海外に—〉〈責任を—〉 弁沢光 治良の『愛と死の書』に「東京を—・れて、軽井沢の小さい 貸別荘に」とある。場所の連想の強い「逃げる」に比べ、抽 象的な意味合いで使われる傾向がある。Q逃げる・免れる のく【退く】「どく」意で主に会話に使われる、やや古風な和 語。〈道路の拡張で店が立ち—〉〈古本屋の—・いた跡地に ブティックができる〉〈今年度限りで社長の地位を—〉 一 茶に「雀の子そこー・けそこー・けお馬が通る」の句がある ように、動いてその場所を空けるという意味でも使われる 「どく」より古めかしい感じがある。ひしりぞく・Qどく・引き 下がる・引っ込む のけもの【除け者】嫌って相手にしない意で、会話や軽い文 章に使われる和語。「一人だけーにされる」瓜弾き・Q仲 間外れ のける【除(退)ける】「どける」意で、会話やさほど改まらな い文章に使われる和語。〈やじうまをー〉〈不良品をー〉回 会話的な「どける」に比べ、やや古風な感じがする。ひ除外・ どける のこす【残す】余す、後にとどめる、しのぐの意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈料理 をー〉〈証拠をー〉〈痕跡をー〉〈面影をー〉〈土俵際でー〉 ②永井荷風の『瀾東綺譚』に「下町生粋の風俗を、そのまま 崩さずにー・している」とある。「幼い子をー・して世を去 る」「財産をー」「名をー」「名作をー」のように、死後に残 す、後世に伝えるという意味合いで用いる場合は特に「遺 す」と書くこともあり、その表記は書き手の感情がこもって いる印象を与えやすい。 のこり【残り】全体からすでに使ったり行ったりして済んだ 分を引いて残った部分をさし、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「の時間〉へ は次にまわす〉へ「はごくわずか〉へ「の仕事を片づける〉 ②「余り」と違い、単に今のところ残っている部分のこと で、不要であるとは限らない。ただし、なすべきことを完 了した段階では実質的に「余り」と同じになる。単余り② のこりが【残り香】人が立ち去った後にまで残るその人の匂 いをさし、主に文章に用いられる、古風で趣のある和語。 〈一を慕う〉多く好ましい場合に用い、不快な体臭などに はなじまない。宮本輝の『道頓堀川』に「まち子のーを舌で ぬぐいながら、夜の街を急ぎ足で歩いた」とある。鳥残香 <815> のこる【残る】存在し続ける、伝わる、余る、こなしきれず に一部が未解決のままとどまる意で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈仕事が ー〉〈遅くまで会社にー〉〈御飯がー〉〈翌日まで疲れがー〉 〈疑問がー〉〈思い出にー〉〈後世にー〉〈時間がー〉 岡本かの子の『落城後の女』に「男と末遂げない触れ合いをした 経験が、悪酔いのように、まだ体の何処かにー・っていて物 憂かった」とあり、三木卓の『隣家』に「かれらは、いっせ いに逃げだしていき、やがてだれもいなくなった庭だけが ー・った」とある。Q余る・残存 のさばる好ましくない人間が大きな顔をして横柄にふるま う意で、会話や軽い文章に使われる、やや俗っぽい感じの和 語。〈軍部が—〉〈悪人が世に—〉〈犯罪集団が—〉〈跋扈ぼ・ Qはびこる・蔓延 ノスタルジア 故郷や昔を懐かしく思う気持ちの意で、会話 にも文章にも用いられる外来語。〈ーを覚える〉へーに駆ら れる〉ひQ郷愁・懐かしい・懐かしさ・ノスタルジー ノスタルジー「ノスタルジア」に相当するフランス語。ひQ 郷愁・懐かしい・懐かしさ・ノスタルジア のせる【乗せる】乗り物に乗らせる意で、会話でも文章でも 広く使われる日常の和語。〈車に友達を—〉小沼丹の『倫 敦の屑屋』に「馬は不服そうな様子も見せずに、二人を! せてばかばか行く」とある。「事業を軌道に—」「うまい話 に—」「軽快なリズムに—」のような比喩的用法も多い。 載せる のせる【載せる】積載・掲載の意で、会話にも文章にも使われ のぞむ る日常の和語。〈棚に」〈トラックに荷物を」〈新聞に 広告を」〈名簿に電話番号を」〈小沼丹の『山鳩』に 「縁の上に麻の実を」・せて置いたら、このときは山鳩の奴 も沓脱石の上で暫く考えていた」とある。掲載・積載・乗せ る のぞく【除く】そこから取り去って別にする意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈雑草を—〉〈不良品を—〉〈邪魔 者を—〉〈不安を—〉〈例外を—〉多くは好ましくないも のに使う。乃除外・除去・Q取り除く・排除・外す のぞましい【望ましい】望むべき、期待されるの意で、改ま った会話や文章に用いられる和語。へ方向に話が進む〉 〈全員参加がー〉〈挙党一致がー〉個人的な感じの「好ま しい」に比べ、組織などの要望として用いることもあり、そ れだけ論理的・客観的な感じがある。また、採用や応募など の条件として、必ずしも強制的ではないというニュアンス でしばしば使われる。思わしい・好ましい・欲しい のぞみ【望み】そうありたいと願う意、実現の可能性の意で、 くだけた会話から文章まで広く使われる日常の基本的な和 語。〈ーが薄い〉〈まだーがある〉〈ーを託す〉〈ーをつな ぐ〉〈ーをかなえる〉〈ー無きにしも非ず〉武者小路実篤 の『お目出たき人』に「(求婚の結果について)自分にはーが あるようにもないようにも思える」とある。願望・期待・Q 希望・願い・願い事・ねぎこと・念願・夢② のぞむ【望む】①将来そうありたいと強く思う意で、いくぶ ん改まった会話や文章に用いられる基本的な和語。〈平和な 社会を—〉〈出世を—〉〈高給を—〉堀辰雄の『菜穂子』に <816> のぞむ 「美しい器量をーまれて」とある。専期待・願う②遠く眺 めるの意で、やや改まった会話や文章に使われる和語。へは るかに富士山をー夏目漱石の『草枕』に「菜の花を遠く ーんだときに」とある。専臨む のぞむ【臨む】直面・出席といった意味合いで、改まった会話 や文章に用いられる硬い感じの和語表現。〈海にー・んで建 つ豪邸〉〈会議にー〉〈試合にー〉〈難局にー〉阿部知二の 『冬の宿』に「清らかな流にー・んだ盆地」とある。望む② のたれじに【野垂れ死に】寒さ・疲れ・飢え・病などにより道端 などに倒れて死ぬ意で、会話や軽い文章に使われる、やや 軽蔑的なニュアンスのこもった古風な和語。〈荒野をさまよ いーする〉③小林秀雄『作家の顔』によれば、正宗白鳥は 「人生救済の本家のように世界の識者に信頼されていたトル ストイが、山の神を怖れ、世を怖れ、おどおどと家を抜け出 て、孤往独邁の旅に出て、ついにーした経路を日記で熟読 すると、悲壮でもあり、滑稽でもあり、人生の真相を鏡に掛 けて見る如くである」と書いたという。なお、「行き倒れ」 と違い、この語には、そうなった人間をさす用法はない。马 行路病者・Q行き倒れ のち【後】今または基準の時から見た未来をさし、改まった 会話や文章に用いられる基本的な和語。〈曇り—晴れ〉へ— に判明する〉へ—の首相〉〈退職した—に受け取る〉の井伏 鱒二の『喪章のついている心懐』に「先生は実際に怒って いたということだが、それから—、先生に会う機会はなか った」とある。毎Qあと・のちほど のちほど【後程】少し時間を経たあとでの意で、改まった会 のつかる【乗っかる】「乗る」の意で、くだけた会話に使われ る俗っぽい和語。へパスにー〉〈上にー〉の東京方言という。 ひ乗る 話や文章に用いられる丁寧な和語。〈ではまたー〉〈ーお届けいたします〉のあとで」の意の丁寧な表現で、多くはその日のうちで、そうでなくてもあまり長い時間を隔てないでまた会う予定のある場合に用いる。Qあとで・後刻 のつけ初めの意で、くだけた会話に使われる古風な和語。 へーからとちる〉へーからへまをやる〉②「真っ先」と違い、 連続するものの最初の部分をさす。以下に想定外の事柄が 述べられることが多い。滑り出し・Q出だし・真っ先 のつける【乗っける】「乗せる」意で、くだけた会話に使われ る俗っぽい和語。〈自転車の荷台に子供を—〉Q乗せる・載 っける のつける【載っける】「載せる」意で、くだけた会話に使われ る俗っぽい和語。〈雑誌にちっぽけな記事を—〉Q載せる・ 乗っける のっぽ背の高いことをからかったり悪く言ったりするとき に主に会話で使われる俗語。〈背高ー〉へとちび〉長軀 ・Q長身 のてんぶろ【野天風呂】屋外にある風呂の意で、会話にも文 章にも使われる、いくぶん古風な表現。へから遠くの山並 みを眺める)字面から平地にあるような連想が浮かびや すいのか、近年は案内に「露天風呂」と書く例が多い。ひ露 天風呂 のどか【長閑】天気がよく温暖で穏やかな意で、会話にも文 <817> 章にも使われる和語。〈な春の風景〉〈穏やかに晴れた春 のな昼下がり春の季語。夏目漱石の『草枕』に「な 春の日を鳴き尽くし、鳴きあかし」という雲雀の声が描か れ、「さや出支度すれば女客」という素丸の句もある。季 節に関係なく、「親予連れの平和でな光景」のように、静 かで穏やかな意にも、「な気分」のように、差し迫ったこ とのないのんびりした意にも使う。ふうららか・のんびり ののしる【罵る】大きな声で非難する意で、会話にも文章に も使われる和語。〈人前で激しく—〉〈口汚く—〉〈相手を 大声で—〉②芥川龍之介の『芋粥』に「京童にさえ「なんじ ゃ、この赤鼻めが」と、ーられている」とある。「そしる」 より激しく、「なじる」に比べ陰湿な感じは薄い。ひそしる Qなじる のはら【野原】人家も耕地もなく自然に草の生えた広い平地 をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。広々とー が広がる〈ーを駆けまわる〉、原野・野・野良・原・原っぽ のびる【伸びる】伸長・向上の意味合いで、会話や文章に使わ れる日常の基本的な和語。〈ゴムが—〉《背が—〉《皺むが ー〉〈成績が—〉〈売り上げが—〉②木山捷平の『初恋』に 「今年の春ごろから秋にかけて、背丈がスカンボのように ー・びていた」とある。見延びる のびる【延びる】延長・延期の意味合いで、会話や文章に使わ れる日常の基本的な和語。〈会期が—〉〈出発が—〉〈寿命 が—〉〈日が—〉夏目漱石の『吾輩は猫である』に「蕎麦 のー・びたのと、人間の間が抜けたのは」とある。「蕎麦が —」「殴られて—」のようにぐったりと生気を失う意では のほる 「伸びる」とも「延びる」とも書くが、仮名書きの例が多い。 ひ伸びる プ屏などに取り付ける丸い取っ手をさし、会話やさほど 硬くない文章に用いられる外来語。〈ドアー〉〈ーを握る〉 専柄・Q取っ手・握り のべつほとんど間も置かないで、気がつくといつもといった意味合いで、改まらない会話に使われる、いくぶん古風で俗っぽい表現。〈一日を動かしている〉〈一喧嘩ばかりしている〉「まくなし」は芝居で幕を引かずに進行させることから出たという。何時も・始終・終始・常時・Qしょっちゅう・絶えず・常に のべる【述(陳)べる】ある程度まとまった内容を伝達する意 で、改まった会話や文章に用いられる和語。〈意見を—〉 〈所信を—〉〈その件についてはいずれ改めて—〉回「語る」 より客観的。多数の人を相手とすることが多く、文章で不 特定多数の読者に伝えるケースも含まれる。言う・語る・し やべる・Q話す のぼる【上る/登る/昇る】下から上へ順に移動するという 基本的意味をもち、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる基本的な日常生活の和語。〈階段を上る〉〈川を上 る〉〈頭に血が上る〉〈山に登る〉〈日が昇る〉〈天にも昇る 心地〉志賀直哉の『焚火』に「今さら引き返す気もしない ので、蟻の這うようにー・って行く」とある。前と違って今 は上にあるという状態を中心に述べる「あがる」に対して、 この「のぼる」は上に達するまでの線的な途中経過を意識 した表現である。したがって、ヘリコブターで頂上に降り <818> のみすけ 立った場合は「山にー・った」とは言えず、ローブウエーの 場合も「山にー・った」より「あがった」のほうがびったり した感じがある。みあがる① のみすけ【吞(飲)み助】酒好きでしょっちゅう飲んでいる人 をさして、主にくだけた会話に使われる俗っぽい和語。〈近 所でも評判の」の「呑ん兵衛」と同様、「飲む」という動 詞を人名めかした表現。酒飲み酒豪・呑んだくれ・Q呑ん兵 衛・左利き のみほす【飲(吞)み干(乾)す】容器の中の液体を残さずに全 部飲む意で、会話にも文章にも使われる和語。ヘジョッキを ー〉ヘコップの水を一気にー〉有島武郎の『或る女』に 「一語一語を美酒のようにー・した」という比喻表現が出る。 「呷ある」に比べ、飲むスピードよりも一滴も残さないで飲み きるところに重点がある。呂呂 のみみず【飲み水】人が飲むための水をさし、会話やさほど 硬くない文章に使われる和語。〈ーには向かない〉へーが不 足する〉Q飲用水・飲料水・お冷や・水 のみもの【飲み物】飲用の液体の総称として、だけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常的な和語。「を用 意する」〈冷たいーがほしい〉〈おーはいかがなさいます か」ジュース・コーヒー・ビールなど水以外をさす傾向が強 い。马ドリンク のむ【飲む】液状のものなどを口から流し入れる意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本 的な和語。〈水を—〉〈薬を—〉〈息を—〉の丼伏鱒二の『珍 品堂主人』は「前祝に・みすぎて腹を毀したのです。この ところ、下痢のために少し衰弱しているのです」と結ばれ る。「がぶがぶ」「大酒を」「涙を」「雰囲気に」・ま れる」のように、勢いよく飲んだり丸呑みしたりする場合 や、比喩的に用いる場合には特に「呑む」と書くことがあ り、その表記はやや俗っぽい雰囲気がある。「たばこを」 の例では「喫煙」の連想で「喫む」と書くこともあるが、こ れは用法自体にかなり古い感じが漂う。 のめる前に倒れかかる意で、会話にも文章にも使われる、 やや古風な和語。ぐつまずいて前にーゝ〈裾を踏んでーゝ 山本有三の『嬰児殺し』に「力なく、イモ虫のようにゴロリ と前へー」とある。現代では口頭語的な「つんのめる」のほ うが一般的に使われる。蹴躓く・躓く・Qつんのめる のら【野良】田畑の意で、会話にも文章にも使われる古風な 和語。〈ー着〉〈ー仕事に精を出す〉〈ーに出て汗を流す〉 もとは「野原一の意。原野・野・Q野原・原・原っぱ のりあい【乗合】「乗合自動車」の略称。運転手のほかに車 掌が乗っていて、首にかけた鞄の口を開けたまま、車内で 切符を切っている姿を連想しやすい。自動車だけでなく馬 車や船の場合も「乗合」を用いた。乗合自動車・Qバス のりあいじどうしゃ【乗合自動車】「パス」の意味で用いた古 めかしい呼称。現代の直方体の車体よりも、前にボンネ ットの突き出た姿が連想されやすく、まれには木炭の煙や ら、坂道で乗客が降ろされてみんなで車体のお尻を押して いる場面やらをほほえましく思い浮かべるお年寄りもある かもしれない。ちなみに、丼伏鱒二は一九三五年発表の 『集金旅行』では「ーにストップを命じた」と書き、一九四 <819> ○年発表の『多甚古村補遺』では「ニッカボッカなどはいて バスに乗っていることがある」同年の『おコマさん』でも 「黄色に塗った古めかしい箱型のバスである」と書いてい る。ひ乗合・Qバス のりあわせる【乗り合わせる】複数の人間が偶然同じ乗り物 に乗る意で、会話にも文章にも使われる和語。彼女とたま たま同じバスに」)単相乗り・Q同乗 のりき【乗り気】ぜひやりたいという積極的な気持ちをさし、 会話にも文章にも使われる表現。〈提案にーになる〉(この 縁談に先方はーだ〉〈大衆路線にはあまりーでない〉の気 乗り」に比べ、理由も明確ではっきりした気持ちをさし、肯 定的に使う例も多い。見気乗り のりくみいん【乗組員】船や飛行機の乗務員をさし、会話に も文章にも使われる、いくぶん古い感じの表現。〈大型客船 のー〉〈ジャンボジェット機のー〉〈乗客・ーともに全員無事 が伝えられる〉野上弥生子の『哀しき少年』に「白い制服 のーが、甲板と艦橋に蚕のようにべったりたかっていた」と ある。海員・Qクルー・水夫・セーラー・船員・船乗り・マドロス のりこす【乗り越す】乗客が降りる予定の駅や停留所より先 まで乗る意で、会話にも文章にも使われる和語。〈居眠りし ていてうっかりー〉〈予定を変更して新宿までー・し、追加 料金を支払う〉予定よりも遠くまで乗ることをさし、そ の原因については特に言及していない。夢乗り過ごす のりすごす【乗り過ごす】乗客がうっかりしていて、降りる 予定だった電車の駅やバスの停留所に気づかずに降り損ね、 その先まで行ってしまう意で、会話にも文章にも使われる のんき 日常の和語。〈本を読んでいて気づかずに—〉気づかずに 失敗する場合に限って使う。乗り越す のる【乗る】乗り物の中や物の上に体を置く意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈馬に ー〉〈自転車にー〉〈屋根にー〉〈体重計にー〉の庄野潤三の 『秋風と二人の男』に「それにーと早く着き過ぎることは分 っているが、来たのにー・らない法もないので、ー・ってし まった」とある。「降りる」と対立。具体的には多く乗車・ 乗船など移動する場合に使うが、派生的に、「波にー」「電 波にー」「調子にー」のように勢いに従って動く意や、「お だてにー」「相談にー」のように相手になる意にも使う。马 乗っかる のろい【鈍い】通常より動きが鈍くて時間がかかる意で、主 として改まらない会話に使われるやや俗っぽい和語。〈動作 がー〉〈計算がー〉〈頭の回転がー〉小林多喜二の『蟹工 船』に「なめくじが地面を觸りほどののろさ」とある。事 実を客観的に伝える「遅い」と違い、この語にはそのことを 好ましくないと思うマイナス評価が含まれる。乃遅い のろま【鈍(野呂)間】頭の働きも動作ものろい意で、主に会 話に使われる古風な俗語。「だから何をするにも時間が かかる〉へーで用件を飲み込ませるのが大変だ)Qうすの ろぐず のんき【暢(香)気】性格が楽天的で気分がのんびりしている 意で、会話や軽い文章に使われる漢語。〈ー者〉〈生まれつ きーな性分だ〉〈ーに構える〉本来は「暖気」と書き、「ノ ン」は「暖」の唐音。尾崎一雄の「暢気眼鏡」と題する小説 <820> のんだくれ に「芳枝のかけた強度の「眼鏡」もいずれ壊れずには居な い」とあり、作者はその「追記」に「眼鏡」などと云う もの、かけていたのは芳枝でなくて、私自身だったかも知れ ない」と書いた。Q気楽・のんびり のんだくれ【呑んだくれ】酒をたくさん飲んで正体を失った 状態や、習慣的にそうなりやすい人の意で、主にくだけた 会話に使われる俗っぽい和語。へーの亭主に手を焼く) 飲み・酒豪・呑み助・Q呑ん兵衛・左利き のんびり焦ることなくゆったりとくつろいでいる意で、会 話や軽い文章に使われる和語。〈生来の屋〉〈田舎でー育 つ〉〈夏は軽井沢でー過ごす〉志賀直哉の『暗夜行路』に 「自由にーと、仕たい事をずんずんやって行けるようになら ねば駄目だ」とある。Q気楽・のどか・暢気 ノンプロそれを職業としていない意で、会話やさほど硬く ない文章に使われる表現。へーでプレーを続ける》野球の 例でいえば、プロ野球以外で、大学や実業団などの野球部 で正式に野球をやっている選手を連想させ、素人野球より 技術は数段上の印象が強い。アマ・Qアマチュア・素人・とう しろう のんべえ【呑(飲)ん兵衛】酒好きでたくさん飲む人をさして、 主にくだけた会話に使われる俗っぽい表現。へーの亭主を持 って女房が苦労する〉回「呑み助」と同様、「飲む」という 動詞を人名めかした表現。酒飲み・酒豪・Q呑み助・呑んだく れ・左利き <821> は は【葉】枝や茎から出る植物の基本的な器官をさし、くだけ た会話から改まった文章まで幅広く使われる基本的な和語。 へーが茂る〉〈楓ぞのーが色づく〉へーが落ちる〉堀辰雄の 『恢復期』に「暗緑色の細かいーをもった草が一かたまりに なって密生していた」とある。ひ葉っぱ ば【場】物事を行う場所や機会などをさして、会話にも文章 にも使われる和語。〈物の置き〉〈子供の遊び〉〈その ーを足早に立ち去る〉「場所」に比べ、単なる空間や位置 だけでなくそこにいる人間を合めた状況や条件を総合して とらえた感じが強い。空間をさす本来の意味より、現代で は「違い」「その「しのぎ」「共通の」を持つ」「を踏 む」のように状況・局面をさす抽象化した意味でよく使われ る。志賀直哉の『小僧の神様』に「若しゕしたら、あのに 居たんだ」とあるのも、「京橋の屋台鮨屋」という単なる店 をさすのではなく、小僧が「恥をかいた」あの雰囲気を共有 したことを意味する。単所・場所・Q場面 はあ改まった会話で「はい」の意に用いる応答や相づちの かしこまった感じの表現。「、さようでございます」「、 かしこまりました〉「ー?何とおっしゃいましたか」小 津安二郎監督の映画『彼岸花』で、パーに連れて行かれた男 (高橋貞二)が会社の上司に「ここだよ、ルナ」と店の前で促 されて「ー、イエ」「おなじみらしいじゃないか」と図星を バーセント さされて「」以下「」すみません「」頂きます」と 恐縮してこの語形を連発する場面がある。上下関係が緩ん だのか相対化したのか、近年は使用頻度が減ったらしく、あ まり耳にしないようである。ただし、相手が信じられない ような発言をした際に、呆れたようにいくらか非難めいた 調子で「ー?」と応じる用法がむしろ若年層に見受けられ る。りうん・ええ・はい ばあい【場合】その時(の事情や状態)の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈そのー〉へいろいろなーを想定する〉へがだけに〈時とーによる〉小沼丹の『のんびりした話』に「酒を飲んでいて、忘れると不可ない話があった」手帳に書留めて置く」とある。「ばやい」「ばわい」となると古風な俗語という感じが強い。ヌケース②・Qばやい・ばわい パキング「駐車」の意で、会話や硬くない文章に使われる 外来語。〈一メ一ダ一〉〈一エリア〉「駐車場」の意にも使 うが、主に有料駐車場や商業施設・集合住宅などに設けられ たものに使い、各家庭用の場合にはあまり用いない。Q駐 車場・駐車スペース パーゲン 見切り品などを値下げして大々的に売り出す意で、 会話や軽い文章に使われる、やや古い感じの外来語。 品〉「デパートの—会場が混雑を極める」「パーゲンセー ル」の略でよく使われたが、現在では「セール」のほうが一 般的。児り出し・Qセール・叩き売り・ダンピング・特売・投げ売 り・安売り・廉売 パーセント全体を百とした場合の個々の割合をさし、会話 <822> パーソナルコン にも文章にもよく使われる日常の外来語。〈二割五分は二五 ーにあたる〉記号は「%」を用いる。ひ百分比・Q百分率 パーソナルコンピューター個人用の小型コンピューターを 意味し、改まった会話や硬い文章などに正式な感じで用い る、玄人好みの専門的な雰囲気の外来語。〈高性能のーを導 入する〉理系の社会では「コンピューター」と語末をのばさ ずに表記する例が目立つ。ひQパソコン・PC パーツ機械や器具などの製品を構成している部分をさし、 会話や軽い文章に使われる外来語。へを取り替えるだけ で済む連結部のボルトやねじのようなものでなく、も う少し大きな部品を連想させやすい。単部品 ハートナー「相棒」に近い意で、会話にも文章にも使われる 外来語。〈人生のよきー〉共同事業の相手やテニスでダブ ルスを組む相手などをさすほか、近年、正式な結婚の手続 きを経ないで生活を共にする相手をさす用法が現れ、その 場合はまだ斬新な感じが残り、一つの考え方に基づいてそ のような形態を選択したという雰囲気があって、「同棲相 手」という語に比べてマイナスイメージが少ない。ひQ相 方・相手・相棒 ハードル陸上競技で障害物として走路に置く木の枠をさす スポーツ用の外来語。〈ーを越える〉〈ーが高い〉〈ーを下 げる〉陸上競技の用語を借りて比喩的に「障害となる条 件」という意味を表す例も多い。専障害 ハーフ 混血児の意で主に会話で使われる俗っぽい外来語。 〈アメリカ人と日本人との〉「ハーフブラッド」の略。 多義的なこともあって他の類義語より抵抗が少なく、比較 的軽い気持ちで使われる。さらに発想の転換で「ダブル」 と呼ぶ例もあるという。混合比が半分ずつとは限らず四分 の一(クオーター)の組み合わせになる場合もあるため「ミ ックス」と呼んだりするが、かえって露骨に響くかもしれな い。Q合いの子・混血児 ハーフエクトゲーム一つのミスもなく完全にやってのける 意で、会話や軽い文章で使われる外来語の野球用語の拡大 用法。〈野党の追及をすべて退け、ーを演じる〉野球で投 手が一人の走者も墨に出さずに試合を最後まで投げ抜くこ と。そこから比喻的に、「仕事などを完璧にやってのける」 という意味に広げて用いることもあるが、まだ比喻性が強 い。「完全試合」という訳語のほうはこのような派生的な意 味ではあまり使われない。 パーマ「パーマネントウェーブ」の略。日常語として使われ る外来語の短縮形。へーをかける〉藤枝静男の『壜の中の 水』に「毛端がーをかけたように巻き縮れている」とある。 パーマや【パーマ屋】ほぼ今の美容院に相当する店をさして、 ひところ使われた俗っぽい名称で、古めかしい感じの語。 〈パス通りにーが店開きする〉「パーマネントウェーブ」 を「パーマ」と短縮したのを利用した名づけ。「パーマ」の ほうは今でも「パーマをかける」などと使うため特に古い感 じがないが、この「パーマ屋」のほうはいかにも昔のことば という印象を与え、今こう呼ばれると設備も古い店を連想 する。ヨビューティーパーラ・Q美容院・美容室・ヘアサロン はい相手の呼びかけに対する応答、質問の形に合わせた肯 定的な返答、あいづちなどとしてやや改まった場面で用い <823> られる感動詞。「、そのとおりです」「、そうです ね」サトウハチローの『わが師わが友』で「ほんとか、サ トウ」と言われて「」と答えるのが典型的な用例。「まだ 返事が来ない?」「、まだ来ません」「君、行かないんだ って?」「、行きません」のように、否定の形の問いに否 定形で応じる場合にこの「はい」を使うのが伝統的だった が、近年、答えの否定形に合わせて「いいえ」を使う英語の ような応じ方が増えている。あいづちの「はい」を肯定と 誤解する外国人との間で文化的摩擦が生じるケースもある。 ふうん・ええ・はあ ぼいう【梅(徽)雨】梅雨時の雨をさし、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈ー前線〉ぐじめじめしたーの時期〉 Qつゆ・入梅 はいえい【背泳】「背泳ぎ」の意で改まった会話や文章に使わ れる、硬くて正式な感じのする漢語。へーの選手として国体 に出場した》サトウハチローの『パタフライその他』に 「ロスアンゼルスでーの一二三着をとって有名だ」とある。 単背泳ぎ・バック② はいか【配下】支配下にある意で、改まった会話や文章に用 いられる、やや専門的な硬い漢語。〈一の者〉〈経理部長の ーにある〉のそのような立場にある人間をさすこともある が、基本的にはその関係をさす。専家来・子分・下端・手先② 手下・手の者・Q部下 ばいか【売価】売値の意で主に文章に用いられる正式な感 じの漢語。〈ーを調整する〉言い値・Q売値 ばいか【買価】買値の意で主に文章に用いられる正式な感じ の漢語。〈がかきむ〉Q買值・付け値 はいきゅう はいかい【俳諧】発句ぐや連句の総称として、会話にも文章 にも使われる古めかしい漢語。〈ーの道〉滑稽・たわむれ の意から。Q俳句・発句 ハイカラ新しがて西洋風の流行を追いかける様子をさし、 会話や硬くない文章に使われる外国語の古めかしい日本的 用法。〈趣味〉〈な服を着る〉の明治後期に洋行帰りの 外交官が丈の高いカラーを着用したのをからかったことか らという。夏目漱石の『坊っちゃん』で「えらい奴が来た。 色の白い、頭の、脊の高い美人」と初めて見たマドンナを 形容している。単斬新 はいき【廃棄】使わないものとして棄て去る意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈一処分〉〈条約をーする〉 ひ破棄 はいきぶつ【廃棄物】不要物として捨て去ったものをさし、 やや改まった会話や文章に用いられる少し硬い漢語。〈産業 ー〉へーを不法に投棄する〉②役所や企業などの連想が強 く、日常会話の中で一般家庭のものに関しては通常用いな い。児廃品・廃物 ばいきゃく【売却】そっくり売り払う意で、改まった会話や 文章に用いられる、やや専門的な感じの硬い漢語。「済 み」〈土地を—する〉〈経営権を—する〉大仰な感じが強 く、納豆や塩辛のような細々とした日用品にはなじまない。 児る はいきゅう【排球】「バレーボール」の旧称。へーの選手で前 衛のセンターを務めた当時は九人制だったから現在の <824> ばいきん ような六人制のゲームには用いにくい。仮に用いても、一 人時間差、Cクイック、パックアタック、スパイクサーブな どなく、アンダーパスは組み手でなく指先を使いそうな時 代の雰囲気が漂う。ひバレーボール ばいきん【徽菌】有害な細菌の俗称として会話にも文章にも 使われる日常の漢語。〈傷口からーが入る〉へーがはびこ る)太宰治の『人間失格』に「銭湯には、目のつぶれるー が何十万」とある。団・Q細菌・バクテリア ハイキング野山を歩きまわる小旅行をさす外来語。「ーっ ース」「ピクニック」に比べ、山歩きに重点がある。 クニック はいく【俳句】五・七・五音から成る季語入りの短詩をさし、 会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。〈蕪村の—〉 〈—をひねる〉〈—をたしなむ〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「君ーをやりますかと来たから、こいつは大変だと思っ て、ーはやりません、左様ならと、そこそこに帰って来た とある。「俳諧の発句」の略。Q俳諧・発句 バイク「オートバイ」の意味で現在広く日常一般に使われて いる外来語。普通には「モーターバイク」の短縮形として 用いられるが、「マウンテン」のようにエンジンのつかな い自転車をさす場合もある。Qオートバイ・原付・原動機付き 自転車・自動二輪・自動二輪車・スクータ・単車・モーターバイク はいぐうしゃ【配偶者】結婚している男女の一方から見た相 手の関係をさし、主に書類などに記載する正式で事務的な 感じの硬い漢語。〈一控除〉へ一の欄に名を記載する〉へ一 のある社員自分の場合にも他人の場合にも使える客観 的な表現。ただし、その人物を個人として話題にする場合 には用いない。込連れ合い はいけい【背景】中心的な対象物の背後にある光景をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈舞台—〉〈富士山を—に して記念写真を撮る〉清岡卓行の『アカシヤの大連』に 「乾燥した感じの明るい赤を—として、ボッカリと女の顔が 浮かんでいる」とある。バック① はいけんする【拝見する】「見る」の謙譲表現。〈謹んでー・し ます〉〈お手紙をー・しました〉〈お手並みをー〉⑨井伏鱒二 の『珍品堂主人』に「あの漆塗りの机ならー・しましたが、 箸置はまだー・しませんですな」とある。手相を趣味とする 友人に「見てやろうか」と言われたときより、「ー・しよう」 と言われたほうがくすぐったい感じがするのは両者の語感 の差である。ひご覧になる はいご【背後】自分やある対象の背中の方向をさし、やや改 また会話や文章に用いられる漢語。〈相手のーに回る〉 まった会話や文章 〈ーから忍び寄る〉〈ーを振り返る〉〈ーで操る〉②具体的な 位置としては「後方」より接近している感じがある。黒井 千次の『オモチャの部屋』に「ーのドアの間から差し込む居 間の明りが、一塊になって玄関の扉口に立つ親子三人のぼ やけた影をたたきの上に投げかける」とあり、柳美里の『水 辺のゆりかご』に「ーで黒いうねりが立ちあがり、波に頭を 叩かれ」とある。なお、「関係を調べる」のように、見え ない場所、隠れたところでという意味合いでも使う。Q後 ろ・後部・後方・パック① はいし【廃止】やめて行わない意で、会話にも文章にも使わ <825> れる漢語。〈虚礼—〉〈赤字路線の—に踏み切る〉〈従来の 制度を—する〉②「中止」に比べ、将来も行わない雰囲気が 強い。芥川龍之介の『侏儒の言葉』に「奴隷—と云うこと は」とある。刂取り止め はいしゃ【歯医者】歯科専門の医師をさし、会話や硬くない 文章に使われる日常語。〈ーに通う〉〈ーにかかる〉庄野 潤三の『秋風と二人の男』に「真っ二つに割れた入れ歯をち り紙に包んで、ーへ持って行った」とある。ひ歯科医 ぼいしゃくにん【媒酌人】「仲人な」の意で、改まった会話や 文章に用いられる正式な感じの漢語。〈恩師夫妻にーをお 願いする〉ひ仲人 はいしゅつ【排出】不要物を外に出す意で、やや改まった会 話や文章に使われる漢語。〈一口〉〈体外にーする〉ひ輩出 はいしゅつ【輩出】優れた人物が世に出るという意味合いで、 主に文章の中に用いられる硬い漢語。〈偉人がーする〉〈多 くの著名な作家がーした名門〉ひ排出 ぱいしゅん【売春】女性が金銭目的で不特定の男性と性交渉 を持つ行為をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へー 宿〉へー婦〉の「春」は「春の目覚め」「春をひさぐ」同様、 性的な意味合い。買春 はいじよ【排除】好ましくないものを取り除く意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈障害を—する〉〈反 対勢力を—する〉〈暴力を—する〉物体や人間も対象にな るが、「撤去」「除去」と比べ、抽象的な要素に対して使わ れる例が目立つ。Q除去・撤去・除く外す ぱいしよう【賠償】他人や他の組織や他国に与えた損害を償 はいぞく うことをさし、改まった会話や文章に用いられるやや専門 的な漢語。〈金〉〈責任を負う〉〈損害を請求する〉 「弁償」と違い、重大で規模の大きな損害、特に違法行為に よる損害に対して用いる。国家間の問題でこの語を使うた め、個人的な場合に使うと法律の専門語といった雰囲気を かもしだす。Q弁償・補償 はいすい【配水】水を使う場所にそれぞれ配る意で、改まっ た会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈管〉〈各箇所 にーする〉彡給水 はいする【配する】適当なものを取り合わせる、適当なとこ ろに置く意で、改まった会話や文章に用いられる表現。〈梅 に鶯をー〉〈人員を適所にー〉乃配置 ぼいせき【陪席】身分の高い人と同席する意で、ごく改まっ た会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ー裁判官〉へーの栄 に浴する)謙遜して用いるケースも多い。刂同席 はいせん【敗戦】戦争に敗れる意で、特に「終戦」に代わって用いられる漢語。〈国〉〈の痛手〉〈後の混乱〉太宰治の『斜陽』に「後、私たちは世間のおとなを信頼しなくなって」とある。「終戦」という語が現実の認識をうやむやにし、ふれたくない事実の別の側面に焦点を当ててうまくおさめた絶妙のしのぎであったのに対して、現実を率直に見据える自覚を映す表現。そこに立場や考え方の違いが鮮明に見られる。り終戦・敗退・敗北・負ける・敗れる はいそう【配送】配達・発送の意で会話にも文章にも使われる 漢語。〈業〉配達 はいぞく【配属】組織内で社員などその構成員をそれぞれ一 <826> はいたい 定の部署に配してそこに所属させる意で、改まった会話や 文章に用いられる専門的な漢語。〈新入社員のーが決まる〉 〈経理部にーとなる〉乃所属 はいたい【敗退】戦いに敗れて退く意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈あっけなく—する〉スポーツ、特 にトーナメント方式の大会などで「緒戦—」のようによく使 われる。呂敗戦・敗北 はいたつ【配達】品物を配って届ける意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈新聞—〉〈郵便—〉〈荷物を—する〉鳥 崎藤村の『嵐』に「毎日の新聞はそれでーを受ける」とあ る。単配送 はいち【配置】人や物を適切な場所に置く意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈気圧—〉〈—転換〉〈要所に実力者 を—する〉〈家具の—に工夫する〉夏目漱石の『草枕』に 「全体の—が此風韻のどれ程かを伝える」とある。「—につ く」のように、そのようにきまった持ち場をさす用法もあ る。ひ配する ハイテク 先端技術の意で比較的新しい和製英語。〈一産業〉 「ハイテクノロジー」の構成要素のそれぞれ語頭を組み合 わせた語形。 パイト「アルバイト」の短縮形で、主にくだけた会話で使わ れる軽い感じの口頭語。〈一の口を探す〉〈一を雇い入れ る〉〈一に明け暮れる〉ひアルバイター・Qアルバイト はいによう【排尿】小便を排出する意で、医学的な話題の会 話や学術的な文章に用いられる専門的な漢語。「時に痛 みを伴う」ひ放尿 はいのう【背囊】兵士などが背負う革やズックでできている 四角い鞄をさし、会話にも文章にも使われる古めかしい漢 語。〈ーを背に行軍する〉、ヲデイパック・ナップザック・ランドセ ル・Qリュックサック はいひん【廃品】古くなったり役に立たなくなったりして所 有者がその場所では不用と判断した物品をさし、会話にも 別の場所で利用価値があるとして売買の対象となる場合 を連想する傾向がある。昔の「屑屋」という語に付着し た差別の感じを嫌い、ひところ「回収業」と呼び替えて一 時的によく使われた。児廃棄物・廃物 はいひんかいしゅうぎょう【廃品回収業】↓くずや はいふ【配布】広く多くの人に配る意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈教室でプリントを—する〉〈駅前で ビラを—する〉Q配付・配賦 はいふ【配付】特定の人間に一人ずつ配る意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い漢語。〈市報を各家庭にーする〉 〈各人にそれぞれの資料をーする〉②公式の感じがあるが、 法令ではともに「配布」を用いている。ひQ配布・配賦 はいふ【配賦】割り当てる意で、主に硬い文章に用いられる、 やや専門がかった漢語。〈資金を—する〉単配布・Q配付 はいぶ【背部】背中の意で、改まった文章に用いられる硬い 漢語。〈の傷がうずく〉、貴①・Q背中 イプ気体や液体を通すための細長い円筒をさし、会話に も文章にも使われる外来語。〈ーライン〉〈ーでつなぐ〉 複数のものをつなぐところに重点があり、「上層部と現場 <827> とのー役」のように、両者の間をとりもつ存在をさす比喻 的用法もある。「ーをくわえる」のように喫煙具をもさす。 Q管・簡・ホース はいぶつ【廃物】本来の目的としては役に立たなくなった物 品をさし、会話にも文章にも使われる、いくらか古風な漢 語。〈利用〉へーを有効に活用する〉ひ廃棄物・廃品 パイプル「聖書」の意で会話やさほと硬くない文章に用いられる外来語。〈片時もーを手放さない〉内田魯庵の『くれの廿八日』に「ーで真四角に育てられた静江」とあり、「聖書」と書いて「パイプル」と振り仮名を付している。「聖書」と違い、「経済学のー」のように、キリスト教と関係のない分野で最高の権威をもつ書をさす比喩的用法もある。刂聖書 はいぼく【敗北】争いに敗れることをさし、改まった会話や 文章に用いられるやや硬い感じの漢語。〈ー宣言〉へーを認 める〉へなすすべもなくーを喫する〉志賀直哉の『或る 男、其姉の死』に「兄の場合ではーと云う気が父にはしたに 違いないのです」とあり、大岡昇平の『野火』に「彼等は要 するに私同様、ーした軍隊から弾き出された不要物であっ た」とある。「勝利」と対立。本来は敗れて逃げる意。凡敗 戦・敗退・負ける・敗れる パイヤー買い付ける人、特に海外貿易での買い付け人をさ して、会話にも文章にも使われる外来語。〈外国人ーから引 き合いが来る〉、買い方・Q買い手・買い主 はいゆう【俳優】映画や演劇で演技をすることを職業とする 人をさし、会話から文章まで幅広く使われる日常の漢語。 はえる 〈映画〉〈人気ーの鏡演〉武田泰淳の『風媒花』に「あら かじめ台詞を打ち合わせておいたーのように、待ちうけて いた彼女はふり向いた」とある。別に「女優」という語があ り、対する「男優」という語があまり使われない関係で、こ の「俳優」という語からは男性を連想することが多い。女 性の場合は、「女優」に比べ、一人前の俳優として認められ たように感じるケースもあるかもしれない。男女優・男優・Q 役者 はいりよ【配慮】気を遣う意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈慎重なーが必要だ〉(ーが足りない〉〈家庭 の事情にーする〉三木清の『人生論ノート』に「過去に対 するーは未来に対するーから生じる」とある。気配り・Q 気遣い・心配り・心遣い はいれつ【排(配)列】一定の基準で並べる意で、会話でも文 章でも使われる、やや硬い感じの漢語。〈五十音順にーす る〉〈機器のーを変える〉〈ーに工夫をこらす〉本来は 「排列」だが、今は一般に「配列」と書く例が多い。そのた め「排列」という表記は古風で本格的な印象を与える。 は元如き【生え抜き】その土地に生まれ育ち、以後もずうっ とそこに住んでいる意で、会話にも文章にも使われる和語。 「の京都人」のそのことに好感を持っている感じの表現。 「の社員」「この球団の」の選手」のように、土地以外に 組織などについて用いる比喩的用法もある。Q生粋純 粋無垢 はえる【映える】光を浴びて輝く、引き立って見える意で、 会話でも文章でも使われる、いくなん詩的な和語。紅葉が <828> はえる 夕日にー〉〈常緑樹を背景に桜の花が一段とー〉〈濃紺のド レスに銀色のプローチがよくー〉林真理子の『言わなきゃ いいのに…』に「早春の陽ざしが、紺色の肩のあたりや、短 く手入れされたえり足のあたりにー・えて、私は胸がきゅん と熱くなるの」とある。専栄える はえる【栄える】引き立って見える意で会話にも文章にも使 われる和語。〈見た目がー・えない〉へー・えない成績に終わ る〉図徳田秋声の『縮図』に「俄仕込で、粒揃いの新橋では 座敷のー筈もなく」とある。単映える はか【墓】遺体や遺骨を埋葬する場所をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈先祖代々の ー〉へーを建てる〉へーを守る〉夏目漱石の『こころ』に、 「御友達の御ーへ毎月御参りをなさるんですか」と不審そう に尋ねる場面がある。福原麟太郎の『この空しき日々』には 「今さら覚えてもーの中へ運んでゆくよりほかもう用がな いかも知れない言葉や言葉づかいを、丹念に字引きで引い てみたりする」とある。Qはかいし・ぼせき・墓碑・墓標 ばか【馬鹿/莫迦】会話や軽い文章に使われる、「愚か」の意 のことば。〈ー言え〉(このー、何をしやがる〉〈ーは死なな きゃ治らない〉〈ーと鉄は使いよう〉〈ーにつける薬はな い〉尾崎一雄の『暢気眼鏡』に「思い切りの大声で「」 と云った。(略)前の原を隔てた或大学の野球部合宿の建物 が闇の中から「」と木魂を返して来た」とある。関西で生 まれ育った人が東京で「ばか」と言われてひどくショックを 受けるのは、「あほ」と違って日ごろ言われつけていないた めにきつく響くのだろうが、「ばか」という語がいきなり 「バ」という濁音で始まることも関係するかもしれない。 あほ・Qあほう・たわけ・とんま・まぬけ はかい【破壊】原形を失いまったく機能しないところまで毀 すことをさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。「 力〉〈工作〉〈環境〉〈銅像をーする〉〈建造物をーす る〉〈施設をーする〉〈敵陣をーする〉〈家庭をーする〉〈環 境ーにつながる〉大きな物でも小さな物でも部分的な場 合に使う「破損」と違って、スケールの大きな物について決 定的な打撃を与える場合に用いる。「こわす」より大掛かり で徹底した感じが強く、「家庭をーする」のように比喩的な 用法でも「こわす」以上に修復不可能なイメージがある。太 宰治の『斜陽』に「いったんーすれば永遠に完成の日が来な いかも知れぬのに」とある。ひこわす・破損 はかいし【墓石】墓にしるしとして据える石をさし、くだけ た会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈黒 御影くろみのーを注文する〉へに水を掛ける〉の上林暁の 『薔薇盗人』に「は黒い坊主頭のように並んでいた」とあ る。伊藤一彦には「死ののちも故郷にあらむ」の縁の蜻蛉 を追ひがたくいつ」という微妙な心理を詠んだ一首がある。 「ぼせき」と読まれるのを避けるためには「墓いし」のよう に仮名を交ぜる。ひ墓・Qぼせき・墓碑・墓標 はかく【破格】標準や慣例や常識などを大幅に破る意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈一の値段〉〈一の抜擢 〈一の待遇〉武者小路実篤の『お目出たき人』に「美しい、 美しい、優しい、優しい、気高い、気高い、鶴は女だ」とい う一文が出てくる。語順の乱れたこの文は、「鶴は美しい <829> 優しい気高い女だ」という整った文では表せない書き手の 気持ちの昂ぶりを伝えており、文法上の「破格」が表現効 果を奏している。「異例」とは違って、「破格」という語は 単に大きく外れているだけではない何らかの意義のあると きに使われる傾向がある。異例・特例・例外 ばかくさい【馬鹿(莫迦)臭い】何の興味もない、馬鹿みたい なの意で、主に会話に使う古風な表現。〈ー話〉へこんな日 に家にこもっているのはー〉みくだらない・つまらない・ばかば かしい・Qばからしい はかしょ【墓所】「ぼしょ」の意で、主に会話に使われる古め かしい表現。〈山のー〉専墓場・墓所・墓地・霊園 ばかしようじき【馬鹿正直】正直すぎて融通が利かない意で、 主にくだけた会話に使われる表現。〈ーに答える〉へに信 じる〉の「真っ正直」を批判的に評することば。Q愚直・真 正直・真っ正直 はがす【剝がす】接触している対象の表面のほうを取り除く 意で、会話でも文章でも広く使われる日常生活の和語。ぺ ンキをー〜〜〜〜〜〜〜 はかせ【博士】専門の学問分野において特に優れた業績を挙げた者に授与される最高の学位をさし、会話や硬くない文章に使われる漢語。〈医学—〉〈論文を提出する〉〈号 を取る)はくしよりも日常的な語で、相撲「鉄道」のように、ある分野に非常に豊富な知識のある人を俗にそう呼ぶこともある。はくし はかなくなる ばかでかい 並外れてむやみに大きいという意味の俗っぽい 日頭語。〈ーサイズ〉〈ー家に住む〉団単にきわめて大きい だけでなく、ふさわしくないというマイナスイメージを伴 う。きでかい・Qでっかい はかどる【捗る】物事が効率よく進む意で、会話にも文章に も使われる日常の和語。〈静かで勉強が—〉へこつがわかっ て仕事が—〉谷崎潤一郎の『吉野葛』に「私の旅はほぼ日 程の通りにー・った」とある。込進捗 はかない【儚い】もろく消えやすくて頼みにならない意で、 少し改まった会話や文章に用いられる、いくぶん詩的で抒 情とう的な和語。〈命〉〈夢と消える〉〈望みを抱く〉 ぬ永く続いてほしい対象に用い、火事・ピンチ・不運など好 ましくないものには用いない。円地文子の『女坂』に「男の 器量によって動かされる妻の位置は蔓草のようにーもので ある」とある。ひあっけない はかなくなる【儚くなる】「死ぬ」意の和語による間接表現。 死を忌む気持ちから、それを露骨に表現することを控え、 「儚い」状態への変化と広くとらえ、核心を外して衝撃をや わらげる婉曲表現。転転表現。転 <830> はかば する・仏になる・身罷る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝 く・臨死・臨終 はかば【墓場】墓のある場所の意で、会話にも文章にも使わ れる、いくぶん古風な日常の和語。〈ー荒らし〉〈夜ーを通 り抜ける〉②尾崎一雄の『美しい墓地からの眺め』に、「俺 はこの頃、何かーへもぐる準備ばかりしているようだが、 実は、そうではないのだ、と思う。すべては「生」のため だ」という一節があり、「人間は「生」のためには、自殺さ えする」と展開する。ひはかしょ・墓所・Q墓地・霊園 ばかばかしい馬鹿馬鹿(莫迦莫迦)しいいたって馬鹿らし くまったく価値がない意で、会話や軽い文章に使われる表 現。〈小説で読むに堪えない〉(こんなものに金を遣うの はー〉(にも程がある〉(ー・くて話にならない)「値 段」のように、常識では考えられない意に使うこともある。 「くだらない」ほどの価値もなく、「ばからしい」以上の強 調で、正常な判断力がちょっとでもあれば取り合わないと いう程度を連想させる。ひくだらない・つまらない・ばかくさい・ Qばからしい はからしい【馬鹿(莫迦)らしい】何の意義も価値も面白みも なく、ただくだらないだけという意味で、会話や軽い文章 に使われる表現。〈実に—作品だ〉〈ーめにあう〉〈何の役 にも立たない—作業〉〈考えるだけでも—〉の「酒を造るの にお前が水を出して俺が米を出すなんて—」のように、割 に合わない意に使うなど、しばしば、損だというニュアンス で用いる。马くだらない・つまらない・ばかくさい・Qばかばかし い はからずも【図(計)らずも】予想だにしない思いがけない意 で、改まった会話や文章に用いられる古風で硬い感じの和 語表現。〈—意見が一致する〉〈—恩師にめぐりあう〉〈— 部長に抜擢ざざされる〉多く好ましい結果について言う。 少端無くも ばかり【許り】「くらい」の意で、改まった会話や文章に用い られる、いくぶん古風な和語。〈二十万円—都合してもらえ まいか〉〈一週間—旅行に出かける〉②さほど改まらない会 話では「ばかし」となることもある。②程度・Qほど② はかる【図る】企てる意で、改まった会話や文章に用いられ る硬い感じの和語。〈安全を—〉〈調整を—〉〈解決を—〉 ける・Q謀る・諮る はかる【計る】数量・時間を計測する、見積もるといった意味 合いで、会話でも文章でもよく使われる、日常生活の最も 基本的な和語。〈時間を—〉〈タイミングを—〉の「測る」 「量る」「図る」の意を含めて広く使われる。Q測る・量る・ 図る はかる【測る】高さ・深さ・広さ・速さなどを測定する意で、会 話でも文章でもよく使われる日常の和語。〈距離を—〉〈面 積を—〉〈速度を—〉〈温度を—〉広義である「計る」より 厳密な数値を連想させる。Q計る・量る はかる【量る】重量や容積などを調べる意で、会話でも文章 でも使われる和語。〈重さを—〉〈体積を—〉测量関係に 限られ、「測る」より幅が狭い。「相手の気持ちを—」のよ うに推量する場合にも使われるが、推測する「測る」にも同 様の用法がある。豊計る・Q測る <831> はかる【諮る】公式に意見を求める意で、改まった会話や文 章に用いられる硬い和語。〈理事会にー〉〈職員会議にー〉 ひQ図る・計る はかる【謀る】たくらむ意で、やや改まった会話や文章に用 いられる和語。〈暗殺を—〉〈政権交代を—〉Q図る・諮る はき【破毀(棄)】不用として破り捨てる、約束を取り消すの 意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈婚約 ー〉〈書類を—する〉②上訴を認め下級裁判所の判決を取り 消す意にも用いられ、その場合は法律の専門語。専廃棄 はぎ【脛】膝から足首までをさす古めかしい和語。〈着物の裾 が割れて白いーがちらちら見える〉「すね」と逆に、後ろ 側をさす例が多い。三浦哲郎の『めまい』に、女の「足首の くびれたーに力がみなぎったり退いたりする」のを覗き見 て胸が鳴る官能的な場面がある。ひすね・Qふくらはぎ はきはき物の言い方や態度などがはっきりしている意で、 会話にも文章にも使われる和語。へー答える〉へーした態 度〉Qきびきび・てきばき はきゅう【波及】波のように影響が広がる意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈ー効果〉〈経 済面にーする〉〈全国にーする〉〈意外なところまで問題が ーする〉Q影響・波紋・余波 はく【吐く】口を通って外に出す意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる和語。へどをー〉〈道端でー〉〈血をー〉「口に出して言う」意にも使われ、時に勢いを感じさせる。夏目漱石の『坊っちゃん』に「条理に適わない議論をー・いて」とある。「泥をー」または単に「吐く」の形 はくがく で隠していたことを話す、「白状する」意をさす。専戻す はく【穿く】下半身に身につける意で、会話でも文章でも使 われる日常の和語。〆ズボンを—〉ヘスカートを—〉の壺井 栄の『二十四の瞳』に「若布のようにさけたパンツをー・ きーとある。専履く はく【履く】履き物を身につける意で、会話でも文章でも使 われる日常の和語。〈靴を—〉〈下駄を—〉弁伏鱒二の 『休憩時間』に「黒板にフランソワ・ヴィヨンの詩を書いてい た学生は、歯の高い足駄をー・いていた」とある。ひ穿く はぐ【剝ぐ】接触している対象を引き離す意で、会話でも文 章でも幅広く使われる日常の生活和語。〈布団を—〉〈木の 皮を—〉〈化けの皮を—・いでやる〉室生犀星の『杏っ子』 に「顔を観らめることを失い、はにかみを—・ぎとられてい た」という比喻表現が出る。ぴったりとくっついているも のを除去する場合に使う「はがす」に対して、表面の一部や 接触している物を分離させる場合に用いる。「布団」のよう な場合はどちらも使えるが、「はがす」ほうが途中経過が意 識され、それだけ抵抗がありそうな感じがするかもしれな い。ひはがす ぼくおん【爆音】爆発音やエンジンなどから発する激しく大 きな機械的音響をさし、改まった会話や文章に用いられる 漢語。へ飛行機のー〉へーを轟かせる〉三浦哲郎の『驢 馬』に「さいしょのーは、おくれたサイレンが鳴り終らぬう ちに、われわれの頭の真上を、建物の屋根すれすれにかす めていった」とある。轟音 はくがく【博学】学問に通じ知識の豊富な意で、会話にも文 <832> はぐくむ 章にも使われる漢語。へーの士〉へーをもって知られる 「博識」よりも知識が学問分野に限定される感じがあり、 「物知り」より体系的な知識を連想させやすい。単学識・Q博 識・物知り・有識 はぐくむ【育む】育てる意で、主として文章中に用いられる 古風で詩的な和語。〈教え子を—〉〈親鳥がひなを—〉 「夢を—」「愛を—」のようにブラスイメージの比喻的表現 として使われる。ひ育てる ばくげき【爆撃】航空機から爆弾を投下して攻撃する意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈機〉〈ーを加える〉 〈ーを受けて壊滅する〉の「爆破」が破壊に重点があるのに 対し、この語は攻撃に重点があるため、作業の手段とはな らない。弔空襲・Q空爆・爆破 はくし【博士】「はかせ」の意で、改まった会話や文章に用い られる正式な感じの漢語。〈ー請求論文〉〈文学ーの称号を 授ける〉〈ー号を取得する〉②「はかせ」より改まった語で、 物知りをさす俗な用法はない。ひはかせ はくしき【博識】物事に関して広範な知識をもっている意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へ見かけによら ずなかなかーだの「博学」ほど体系的な知識でなくともよ いが、さらに幅広い知識を連想させる。学識・Q博学・物知 り・有識 はくしゅ【拍手】期待や賞讃の意を表すために両手を打ち 鳴らすことをさし、会話にも文章にも広く使われる漢語。 〈一喝采〉〈一鳴りやまず〉〈一で迎える〉尾崎士郎の「人 生劇場」に「湧き立つようなーをうけて」とある。Qかし わで・手拍子 はくじょう【白状】悪事や秘密などを自分の口で明らかにす る意で、会話や軽い文章に使われる、いくぶん古風な感じ もある日常の漢語。へとうとうーした〉〈残らずーする〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「正直にーしてしまうが、おれ は勇気のある割合に知恵が足りない」とある。「自白」や 「自供」のような専門性は薄く、違法行為だけでなく日常生 活上の嘘やいたずらなどについても使う。少供述・告白・自 供・Q自白 はくじょう【薄情】他人を思い遣る気持ちの薄い意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ー者〉〈困っているのに見て 見ぬふりとはーなものだ〉井上靖の『氷壁』に「兄さん、 慣りますよ、ーなやつだって」とある。「冷淡」ほどひどく はない感じがある。み不親切・不人情・冷酷・Q冷淡 ぱくぜん【漠然】ものごとの範囲や内容、人の思考や感情な どがはっきりしない様子をさし、いくぶん改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ーとした話〉〈ーとした印象〉 〈ーと考える〉芥川龍之介の『玄鶴山房』に「何かーとし た不安も感じた」とある。ほんやり はくそ【歯葉(屎)】歯の表面に付着する滓などの異物をさし て、主にくだけた会話で使われる日常の俗っぽい和語。「 をきれいに落とす」と歯垢 ぱくだい【莫大】程度や数量がきわめて大きい意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈な利益〉〈な損害〉〈な 遺産がころがりこむ〉小沼丹の『お祖父さんの時計』に 「考えるのは愉快だが、実際にそんなことをしたらな費用 <833> がかかる」とある。原義は、これ以上「大」きいのは「莫」 い意。彫大 ばくち【博打】金品を賭けてさいころ・花札・トランプなどで 勝ち負けを競う遊びをさし、会話や軽い文章に使われるや や古風な表現。〈打ち〉へを打つ〉へに手を出す〉へ で身を持ち崩す)「大ーを打つ」のように、一か八かの 思い切った勝負に出る意の比喻的な用法もある。賭博 はくちゅう【白昼】一日のうち完全に明るい時間帯をさし、 改まった会話や文章に用いられる漢語。「堂々とやっての ける」「日中」のうちでも「真っ昼間」を中心としてそれ より広い範囲をさす。人目を忍ぶはずの行動、特に放火・誘 拐・強盗・殺人などの犯罪行為の行われた場合に「堂々と」 の形で使う例が多い。日中・日盛り・Q昼日中・昼間・真っ昼 間・真昼 はくちゅう【伯仲】互いに似ていて優劣の差がほとんどない 意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈実力が ーしている〉の「伯」は長兄、「仲」は次兄の意。通常、と もに優れている場合に用いる。揚抗・Q互角 はくちょう【白鳥】カモ科の大形で白く首の長い水鳥をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。「が渡来する」死に 瀕して美しい歌を歌うという北欧の伝説からその人の最 後の作品や歌唱・演奏を「の歌」とする比喩的用法もあ る。ひしらとり バクテリア「細菌」の意で会話にも文章にも使われる専門的 な外来語。〈根粒—〉Q菌・細菌・徴菌 ぱくは【爆破】火薬などの力で物を破壊する意で、会話にも はくらん 文章にも使われる漢語。〈作業〉〈軍事施設をーする〉 〈ダイナマイトで岩をーする〉 塾撃 はくはつ【白髪】白くなった頭髪の意で、主として改まった 文章に用いられる漢語。へーの紳士〉へーがひときわ目立 つ〜三島由紀夫の『鹿鳴館』に「私が女でなくなるとき に、曙がそのーを染めるのですわ」とある。全体として白 くなった頭髪をさし、一本ずつについては用いない。錫銀 髪・Qしらが 体積が極度に増大して生ずる破壊的な現象をさして、会話 にも文章にも使われる日常の漢語。〈ガス—〉〈地雷が—す る〉坂口安吾の『白痴』に「地軸もろとも引き裂くような 音」とある。Q炸裂破裂 はくぼ【薄暮】あたりが薄暗くなった状態や時間をさし、主 として文章に用いられる、「日暮れ」の意の硬い感じの漢 語。〈ー試合〉へーの迫る時刻〉の「夕方」のように時刻その ものをさすより、日が暮れかけて薄暗くなった状態をさす ほうに重点がある。専暮れ方・たそがれ・晩方・日暮れ・灯ともし 頃・夕・夕方・Q夕暮れ・夕刻・夕べ・夕間暮れ・宵・宵の口 はくや【白夜】北極や南極の暮れきらず空が薄明るい夜をさ す漢語。〈北欧でーを迎える〉「びゃくや」の伝統的な語 形。びゃくや はくらい【舶来】外国から船で運んで来る意で、会話にも文 章にも使われる古風な漢語。「の高級品」乃渡来 はくらん【博覧】各種の産業や技術などの宣伝を兼ねて広く 一般の人々に見てもらいその振興に寄与する意で、会話に <834> はくらんかい も文章にも使われる、いくらか古風な感じの漢語。〈万国— 会〉〈—に供する〉展示・Q展覧会 はくらんかい【博覧会】産業や学芸・技術などの宣伝や振興を 兼ねて各地から産物や製品や文化財などを収集・陳列する大 規模な催しをさし、会話にも文章にも使われる、やや古風 な感じの漢語。〈万国—〉〈—を開催する〉展観会・展示会・ Q展覧会・発表会 ぼくろ【暴(曝)露】悪事や秘密、醜聞などを明るみに出す意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー記事〉 〈不倫をーする〉〈秘密をーする〉Q暴くすっぽ抜く・ぱらす ① はけ【刷毛】塗料や糊などを塗るときに用いる柄のついた毛 の束をさし、会話にも文章にも使われる和語。へーでひとな でする)へーでペンキを塗る)の「ブラシ」に比べ、日本の 伝統的な道具をさす傾向が強い。ひプラシ ぼけがく【化け学】「化学」を意味する俗語。〈明日は—の試 験だ〉へーをちょっとかじる〉②日常会話で、類似した文脈 で現れる同音の「科学」と区別するために用いる言い換え のことば。俗語を用いても正確な情報伝達を心がけている ことが相手に伝わる。漢字の違いで簡単に区別がつくため 文章中では用いる必要がない。化学 はけぐち【捌け口】水や感情などが内側から外に流れ出る場 所をさし、会話にも文章にも使われる和語。へたまった汚水 のー〉〈商品のー〉〈不満のー〉②遠藤周作の『海と毒薬』に 「この犬だけが当時のわたしの愛情のーでした」とあるよう に、「やり場」と違って出口のイメージで、明らかなプラス 評価の対象にも使われる。Qやり場 はげしい【激(烈・劇)しい】ものごとの程度や変化などの勢い が強い様子をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる基本的な和語。〈ー争い〉〈ー攻撃にさらされる〉 〈ー抵抗にあう〉〈競争がー〉〈気性がー〉〈思い込みがー〉 〈雨がー・く降る〉〈痛みがー〉田宮虎彦の『沖縄の手記か ら』に「空襲の中に、やがて朝焼けに空が焼けて、夜が明 けていく日もある」とある。有島武郎の『或る女』には「雷 のようなーその怒りの声」とある。弁強烈・Q激烈・痛烈・熱烈・ 猛烈 はげむ【励む】なすべきことを一心に努める意で、会話にも 文章にも広く使われる和語。〈勉強に—〉〈仕事に—〉〈せ っせと金儲けに—〉使命を遂行し本分を尽くす場合に よく使う。いそしむ・頑張る・精進・Q努力 ばけもの【化け物】狐や狸あるいは年古りた猫など獣の化け た怪しい姿をきして、くだけた会話から文章まで幅広く使 われる和語。〈星敷〉へが出るという噂が立つ②安部 公房の『他人の顔』に「たぷんおまえの顔を掻きむしって (略)ーにしてやっていたことだろう」とある。「お化け」と 違って、人間の幽霊を連想させない。また、信じられない能 力を持つ人間をさして「あいつはーだ」などと言うことも ある。ひQお化け・亡霊・幽霊・妖怪 はげる【禿げる】頭髪が大量に抜けて頭部の皮膚が剝き出し の状態になる意で、くだけた会話から文章まで幅広く使わ れる和語。〈頭がー〉②野上弥生子の『秀吉と利休』に「ど こまでが顔で、とこから頭部になるか判明しないほどー・げ <835> て」とあり、井伏鱒二の『珍品堂主人』に「あなたがち頭のー のを気に病むわけではありません。頭がー・げ募ったと思う のは、ときたまぼろい儲けをした後になってからのことで あるのです」とある。「枯草を焼いてー・げた山」のように、 草木が枯れて地面が見える意の比喻的用法もある。脫毛・ 剥げる はげる【剝げる】剝がれ落ちる、色が薄くなる意で、会話で も文章でも使われる生活上の和語。〈塗りが—〉山本周五 郎の「青べか物語」に「青いペンキはあばたのようにー・げ」 とある。ひ禿げる はこ【箱(函)】物を入れるための厚紙・木・金属などで作った多くは蓋付きの容器をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈宝石〉〈空き〉〈入り〉〈に詰める〉の中に収納する物に応じて形をきめる「ケース」と違い、「箱」の場合は逆にその形や大きさやデザインに合わせて入れる物を選ぶ傾向がある。小沼丹の『珈琲の木』に「長さ二、三十種の細長い紙の」とある。通常は四角で蓋付き。文書を入れる小箱には「函」竹製の四角い箱には「筐」同じく丸い箱には「筥」衣類などを納める直方体の箱には「篋」小箱や手箱には「匣」というふうに、用途や材質や大きさなどに応じて特に書き分けることもあるが、いずれも古めかしい印象を与える。入れ物・ケース①・容器 はこぶ【運ぶ】物などを手に持ったり車に載せたりして他の 場所に移動させる意で、くだけた会話から文章まで幅広く 使われる基本的な和語。〈荷物を—〉〈怪我人を病院に—〉 はし の「足を」の形でその場所に行く意を表したり、「とんと ん拍子で話が」のように進展する意を表す用法もある。 小沼丹の『風光る丘』に「両脇から抱えさせて、タクシーま でー・んだ」と急性アルコール中毒の患者を運ぶ例がある。 室生犀星の『あにいもうと』には「逞しいからだをー・んで いった」とある。遅送・Q運搬・搬送 はこん【破婚】婚約や結婚を解消する意で、主に文章に用い られる硬い漢語。〈ついにーとなる〉〈ーのショックをひき ずる〉ひばついち・離縁・Q離婚 はさむ【挟(挿)む】狭い隙間に差し込んだり、対象を間に置 いてその両側に位置したり、物を両側から押さえつけたり する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 基本的な和語。ヘ本にしおりを—〉〈ドアに指を—〉〈腋の 下に体温計を—〉の「口を—」「疑いを—」のような抽象化 した用法もある。石坂洋次郎の『若い人』に「長椅子の中央 に左右からサンドイッチのように—・まれていた」とある。 弾隔てる はさん【破産】経済的に行き詰まって全財産を失う意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈自己—〉〈—宣告〉〈—手 続き〉〈—管財人〉〈経営悪化で—寸前の状態だ〉②法的な 用語としての厳密な用法以外に、日常生活の話題でもしば しば使う。井伏鱒二の初期作品『文章其他』は「自分が—し たと自覚した日の夜から、急に青春時代のように性欲が盛 んになってしまった」という五十歳の女性の滑稽で悲痛な 告白で始まる。刂倒産 はし【箸】食べ物を挟むための二本の細い棒をさし、くだけ <836> はし た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。移り ーは不作法とされる〉〈ーでつまむ〉〈ーをつける〉もおても と はし【端】細長い物の先の方、または、物の中央から遠い周 辺の部分をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の基本的な和語。〈テーブルのーに載せる〉〈ひ ものーを結ぶ〉頬語の中で最も標準的な語。Qはじ・は しっこ・はじっこ はし【橋】川や線路や道路などの上に架けて通行できるよう にした建造物をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使 われる日常の和語。「のたもと」へーを渡ってすぐ右に曲 がる)へーを架ける)へーを渡す)三島由紀夫の『橋づく し』に「自分の願い事の破れたのを知って、ーのむこうを痛 恨の目つきで見やると」とある。弔橋梁 はじ【恥】面目を失う意で、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ーをかく〉〈ーをさ らす〉〈ーをーとも思わない〉③三浦哲郎の『恥の譜』に 「からだがふるえるほどのーを感じた」とある。「ーを知れ」 のように、名誉を大事にする心をさす用法もある。恥辱と いう意味合いでは「辱」とも書く。日本は「ーの文化」と言 われることもある。含羞・照れ・恥じらい・はにかみ はじ【端】「はし」の意で、会話に使われるやや古風な和語。 〈座敷のーの方にかしこまって座る〉夏目漱石の「坊っち ゃん」に「たった一人列を離れて舞台のーに立ってるのがあ る許りだ」とあるが直筆原稿にも振り仮名がなく、「はし」 の例か「はじ」の例か確定できない。Qはしはしっこはじ コーコ はしがき【端書き】書物でその本を書いた動機や狙いなどを 記して本文の前に置く挨拶の文章をさし、いくぶん改まっ た会話や文章に使われる和語。く著書のー〉専序・緒言・序文・ Q前書き はじき ビストルをさす隠語。〈相手はーを持っているから 気をつけろ〉の弾をはじくところからの呼称。古くは「パ チンコ」とも言った。Q拳銃・小銃・短銃・ビストル はじく【弾く】瞬間的に強い力を加え、不要な物などをその 場所から遠ざける意で、会話でも文章でも広く使われる和 語。〈指でー〉(そろばんをー〉(この生地はよく水をー) 〈不良品をー〉島木健作の『生活の探求』に「頭筋をつた わって流れる汗が、喉の凹みにたまったのを、彼は大きな手 の平でー・いた」とある。かっぱじく はじさらし【恥曝し】恥を世間にさらけ出す意で、会話や硬 くない文章に使われる、やや古風な和語表現。いいだ く、関係する人や一族、組織や地元などがそのせいで恥ず かしい思いをするようなときに多く用いられる。専厚かまし い・厚顔無恥・図々しい・鉄面皮・Q恥知らず・破廉恥 はじらず【恥知らず】恥ずかしいという感情などないかの ように相手にどんな迷惑が及んでも平然としている意で、 会話や軽い文章に使われる和語表現。「にも程がある くとんだーだ」乃厚かましい・厚顔無恥・図々しい・鉄面皮・Q恥曝 し・破廉恥 はしっこ【端っこ】「端」の意で、くだけた会話に使われる、 <837> やや俗っぽい和語。〈ーに寄る〉のだけてはいるが、「す みっこ」ほど子供っぽい感じはない。Qはし・はじ・はじっこ はじっこ【端っこ】「はしっこ」の意で、くだけた会話に使わ れる、古風でやや俗っぽい和語。〈ーに集まる〉はし・Qは じ・はしっこ はしなくも【端無くも】ふと、思いがけずの意で、主として 改まった文章中に用いられる古めかしい和語表現。〈ー父の 漏らした一言〉〈ー社長の目にとまる〉ひ図らずも はじまる【始まる】それまで存在しなかったものごとが新た に起こる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く用い られる最も基本的な和語。〈会がー〉〈工事がー〉〈学校が ー〉〈喧嘩がー〉②小沼丹の『西條さんの講義』に「やっ と講義がーことになって、西條さんは持って来たプリント を学生に配った」とある。Q開始・スタート・発足 はじめ【初め】一定期間の最初の部分の意で、会話でも文章 でもよく使われる日常の基本的な和語。〈月—〉来年の ー〉〈小説のーのほう〉「一のうちが肝心〉「一からやり直 す」動的なイメージのある「始め」に比べ、これは時に関 する静的な存在としてとらえている。少始め はじめ【始め】起源や開始の意味合いで、会話にも文章にも 使われる和語。〈仕事—〉〈国の—〉へ—あるものは必ず終 わりがある》時に関する「初め」に対し、これは事に関し て使う傾向がある。「当人を—家族はみなスポーツ好きだ」 のように、いくつかのうちの主なものをさす用法では仮名 書きが多い。弔開始・初め はしゃぐ【燥ぐ】嬉しきや楽しきにじっとしていられずに騒 ばしょ ぐ意で、会話や軽い文章に使われる日常の和語。遠足を前 にして子供がー〉へお祭りで町中ーいでいる)安部公房 の「他人の顔」に「はじめて鎖を解かれた、犬のようなー・ ぎよう」とある。騒ぐ パジャマ ゆったりと仕立てた上着とズボンからなる西洋風 の寝巻きをさし、会話にも文章にも使われる外来語。「 姿」〈ーに着替える〉女性用でも「ネグリジェ」より装飾 的な要素は少なく実用的な感じがある。Qネグリジェ・寝巻 き はしゅつしょ【派出所】「交番」の旧称。主として改まった会 話や文章に用いられた、やや専門的な感じの漢語。〈巡査 」)Q交番・駐在所 はしゅつふ【派出婦】臨時に一般家庭に出向いて家事などを する女性をさすやや古風な漢語。「家政婦」ほど仕事内容が 家事に限定されない感じがあり、また、個人契約というよ り人材を派遣する会社などから送り込まれるケースを連想 しやすい。〈ーを送り込む〉ひお手伝いさん・Q家政婦・下女・女 中・召し使い はしよ【場所】人や物の存在する空間やその位置をさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な漢語。〈居ー〉〈狭いー〉〈暗いー〉〈隠しーを突き止め る〉〈待ち合わせのー〉〈ーをとる〉〈ーを移す〉〈置きーに 困る〉〈ーが不便だ〉〈ーがーだけに人通りが多い〉「所」 や「場」と違い、空間的な意味に限られる。会社などで「 が空いている」「自分の居ーがない」のようにポストをさす 用法はあるが、立場や役割のような抽象的な意味合いでは <838> はしら 使わない。木山捷平の『大陸の細道』に「一八なんて変てこ な雪隠のようなーに飛車を据えた」とある。ひ所・Q場 はしら【柱】建造物の上部を支えるために垂直に立てる材を さし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる基本的な 和語。〈大黒—〉〈一時計〉〈一がしっかりしている〉〈一に よりかかる〉夏目漱石の『倫敦塔』に「寝台の—」とある。 「一家の—」のように頼りになる存在をさしたり、「条約の —」のように中心になる部分をさしたりする比喻的用法も 多い。三島由紀夫の『金閣寺』に「白骨のようにコンクリー トの—があちこちにころがっていた」とある。専支柱 はじらい【恥じらい/含羞】恥ずかしそうな表情やしぐさの 意で、主に文章の中に用いられる、やや古風で詩的な感じ の和語。「の色を見せる」〈ーを忘れる〉三浦哲郎の 『忍ぶ川』に「顔にはーの色があふれていたが、その声には 卑屈のひびきがみじんもなかった」とある。日本文化の中 では好ましいものとして受け取られる。Q含羞・照れ 恥・はにかみ はしる【走る】速く進む意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈速く—〉〈相手に合わせてゆっくり—〉〈最後まで全速力で—〉〈高速道路をトラックが—〉図木山捷平の『大陸の細道』に「がばとはね起き、脱走犯人か何かのように、改札口目がけてーり出した」とあり、内田百閒の『東京日記』に「街の混雑の中を何の滞りもなく、水の流れる様にー・って行った」とある。「駆ける」のような制限はなく、「水が—」「道が縦横にー・っている」「筆が—」「痛みが—」などという比喩的・抽象的 な用法もある。ひ駆ける・突っ走る はしわたし【橋渡し】両者の間に立って良好な関係を築く意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈恋の—〉〈政界と財 界との—〉〈アジア諸国との—の役を果たす〉物自体に重 点を置く「懸け橋」に対し、橋でつなぐ行為に重点がある。 川によって隔てられているものを橋を渡して結びつける意 からの比喻的拡大用法。Q懸け橋・仲介・仲立ち はす【斜】「斜め」の意で、主に会話に使われる、やや古風な 和語。へ向かいへねぎをーに切る)幸田文の『おとう と』に「まだ手垢ずれていない白ズックの鞄吊りがーにかか って」とある。すじかい・Qななめ・はすかい はす【蓮】スイレシ科の水生多年草の一種をさし、会話にも 文章にも使われる和語。へーの根は食用)古くは「はち す」。仏教との縁が深く、花は「蓮華」といい浄土の象徴 で、「の台」として極楽往生した者の座とされる。な お、この語を「蓮根」の意味でも使う地域は東京近辺に限 られるという。Q睡蓮・蓮根 八ズ夫の意の古い俗語。今度いらしたらーを紹介するわ 英語「ハズバンド」の短縮形。Qうちの人・夫・主人②・且 那・亭主・宿六 大型の乗り合い自動車をさし、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の外来語。〈ーガール〉へーガ イド〉〈スクール〉へーに乗り遅れる〉小沼丹の『倫敦 のバス』に「倫敦のーの停留所に名前があるかどうかよく 判らない」とある。典型的には直方体の形をした車体で車 掌が同乗しないいわゆるワンマンバスを連想する。専乗合 <839> Q乘合自動車 ばすえ【場末】町の中心部から遠く離れた場所をさし、会話 にも文章にも使われる、いくぶん古風な和語。へーの古本 屋〉へーの酒場〉客観的な感じの「町外れ」に比べ、うら ぶれた雰囲気が漂い、謙遜としても使う。小池滋の『行間 を読む』に「一の駅のひとつひとつで降り、そのあたりのな るべく貧相な店をのぞいて」とある。込町外れ はすかい【斜交い】斜めに交差している意で、主に会話に使 われる、やや古風な和語。〈郵便局の—に銀行がある〉りす じかい・Qななめ・はす はずかしい【恥ずかしい】面目がつぶれるほどの過ちや欠点などを意識して人前に出たくない思いをさして、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。顔から火が出るほどー〉〈漢字を読み違えて思いをする〉〈まことにお限りです〉これでは世間に対して木山捷平の『長春五馬路』に「野暮なことを言って、わしはー」とある。「腕を組んで歩いているときに同僚と出会ってー・かった」のように、決まりが悪くてまともに相手の顔を見られない意にも用いる。马面映い・Q気恥ずかしい・決まり悪い・照れ臭い・ばつが悪い・間が悪い バスケットボール五人ずつの組が円い輪にとりつけた底な しの網にボールを入れる回数を競う球技をさす外来語。現 代の標準的な呼称。古くは「籠球」とも称した。「で三点 シュートを決める」徳永直の『太陽のない街』に「のよ うな顔」とあるように、ボールそのものをきすこともある。 単籠球 はずむ 「当たる」と対立。「音程を—」「狙いを—」「タイミングを—」のように、結果として外れてしまう場合にも使う。 パスタブ 洋風の浴槽をさし、会話にも文章にも使われる、 やや斬新な外来語。〈ーに体を横たえる〉のホテルなどの連 想があり、浅いイメージがある。鳥風呂桶・湯壺・湯船・Q浴槽 パステル 粉末顔料を白土に混ぜてアラピヤゴムなどで練り 固めた絵の具をさし、会話にも文章にも使われる外来語。 〈鉛筆画にーを加える〉の色調がクレヨンより淡く軟らかい 感じで、永井龍男は『風ふたたび』で「うすく、オレンジが かった夕空に、紫や黄の火薬の煙が、ゆるやかな線を描く と、ーでいたずら書きをしたような、不思議な美しさが、し ばらく空に残った」と花火を描写した。鳥クレパス・クレヨン パスト 胸囲の意で、改まらない会話などに使われる外来語。 〈ーパッド〉〈豊かなーの女性〉の女性について使われる例 が多い。鳥Q胸囲・胸回り はずむ【弾む】弾力のあるものが硬い物体に当たって勢いよ く跳ね返る意で、会話にも文章にも使われる和語。「ボール がよく」声が「」「会話が」「胸が」のように活発 <840> バスルーム に調子づく意にも使い、そういう比喻的用法はいくぶん詩 的な感じが伴う。永井龍男の『冬の目』に「元日の夕日であ った。(略)それはー・んでいるようにも見え、煮えたぎって 音を立てているようにも感じられた」とある。「跳ねる」は 「泥が跳ねる」「兎が跳ねる」のようにそれ自身は弾力が なくても使えるが、この語はそれ自体の弾力で跳ねる場合 に使う。「息がー」「・んだ声」「話がー」「心がー」のよ うに比喻的な拡大用法も広く行われる。ひ跳ねる バスルーム「浴室」の意の斬新な感じの外来語。〈最新の」 で、電話も使え、乾燥室にもなる〉〈古いアパートの一室だ が、狭いキッチンとちょっとしたーが付いている〉各家庭 の近代的な浴室やホテルなどの客室の一角に付設された浴 室部分などが連想され、ユニットパスでもイメージは合う。 逆に入浴を楽しむ感じからはほど遠く、湯上がりに涼んだ り冷たいビールをきゅうっとやるような気分にはなりにく い。まして檜の風呂や岩風呂や大浴場などには使えない雰 囲気がある。処風呂場・湯殿・Q浴室・浴場 はずれる【外れる】本来の場所や狙ったところから離れる意 で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる和語。〈障子 がー〉〈ボタンがー〉〈調子がー〉〈予想がー〉志賀直哉の 『城の崎にて』に「遠く町端れの灯が見え出した」とあるよ うに、「中心部をー」といった「それる」意の用法もある。 ひそれる パソコン 外来語「パーソナル・コンピューター」の短縮形が 一般語化。〈ーを使いこなす〉〈ーが普及する〉今では特 に俗語という感じはなく、会話でも文章でも通常この形で 用いる一般的な語となっている。最近は「PC」という語形 も使われる。马Qパーソナルコンピューター・PC はそん【破損】外から力が加わって物体の一部がこわれ、機 能に支障を来す意で、主として文章に用いられる、いくぶ ん専門的な感じの漢語。〈一箇所を点検する〉〈機械が一す る〉の「損壊」より小規模で部分的な感じが強い。刂損壊 破壊 はた【端(傍・側)】路傍や水辺など、対象のへりやそれに沿っ た外側をさし、主として会話に使われる、やや古風な和語。 《古びた池のーで休む》〈道のーで立ち話を始める〉の道 端」の「はた」で、「池之端」という地名や「川端」という 人名としても残っている。また、「ーで見るほど楽じゃな い」のように当事者の周囲をさしたり、「ーが迷惑する」の ように周囲の人をさしたりする用法もある。ほとり はだ【肌(膚)】皮膚をさして会話にも文章にも使われる日常生活の和語。〈1の手入れ〉〈1が荒れる〉〈白く艶やかな 1〉〈1を刺すような冷たい風〉②永井荷風の『腕くらべ』 に「その1の滑かさいくら抱きメめて見ても抱きメるそば からすぐ滑りぬけて行きそう」とある。「皮膚」と違って、 感触を基礎とし、主に美容的な見地から使われる例が多い。 「1を許す」「1を合わせる」のような性的な意味の間接表 現はいずれも古風な感じがある。「木の1」のように人間以 外にも使われる。はだえ・Q皮膚 はたいろ【旗色】勝負の優劣のようすをさし、会話や軽い文 章に使われる古風な和語。へーが悪い昔の戦で旗の翻る 様子から戦況を占ったところから「形勢」の意に転じた。 <841> Q形勢·情勢 はだえ【肌(膚)】「皮膚」の意の古語的な表現。〈雪の—〉 円地文子の『なまみこ物語』に「の透きとおる白さ」とあ る。美的な肌に用いられる傾向が強い。Q肌・皮膚 はだか【裸】衣服を身につけず肌が剥き出しな意の基本的な和語。類義語中で最も一般的な語。くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる。〈同然の身なり〉〈上半身になる〉の川端康成の『伊豆の踊子』に「仄暗い湯殿の奥から、突然の女が走り出して来たかと思うと」とある。この意味を強調したことばに漢語系の「全裸」和語系の「赤裸」「素裸」「素裸」「真裸」「真裸」「丸裸」などがあるが、比喩的・抽象的な用法で「をさらけ出す」「の付き合い」などとする表現では、唯一この語だけが使われる。「素裸」「素裸」系統の語と「真裸」「真裸」系統の語との間にはそれぞれの発想の違いがうかがわれる。「素肌」は衣類を、「素手」は手袋を、「素足」は足袋や靴下を、それぞれ身につけていない状態をさす。前者はこの系列だから、衣服や下着などの衣類を身につけているか、いないかを問題にするという発想から、何ひとつ身につけていない状態であることを強調することばであると考えられる。一方、後者は「真赤」「真昼間」「真正直」の系列だから、厚着の状態から少しずつ脱いで衣類を減らし、やがて薄着の状態をも通り越して、ついにほんとの裸という状態に達する、という思考経路をたどって表現したものと推定できる。これを図式的に単純化すれば、「素裸」はゼロか一以上かという二者択一のいわばデジタルのとらえ方であり、「真 はたけ 裸」のほうは衣類で覆われる面積セロに向かって連続的に 迫るいわばアナログの世界での思考法であったと考える ことができよう。「上半身」で「素裸」のほうが自然な のもそういう関係からと思われる。なお、「丸裸」の「丸」 は「まるまる」の「まる」で、どの部分もすべてという発想 の強調の仕方である。刂赤裸・素裸・素裸・全裸・真裸・真裸 はだぎ【肌着】肌に直接ふれる衣服をさし、やや改まった感 じの会話や文章で用いる和語。〈夏用の—に替える〉和服 の場合の肌襦袢はだなどは「下着」より「肌着」のほうがイ メージが合う。ともにシャツなどをさす場合は、日常生活 で多用する「下着」よりも、ワンタッション置いた感じの 「肌着」のほうがいくらか上品な印象を与えやすい。一般 に、パンツの類をさす場合は「肌着」よりも「下着」のほう がよく使われる。ひインナー・Q下着・ランジェリー はたく【叩く】たたいて払いのける意で、会話でも文章でも 使われる、やや古い感じもする和語。〈はたと膝を—〉〈は たきで埃咲を—〉〈布団を—〉の相手力士が頭を下げて突 進して来るのを体を開いて—」のように相撲けで「はたき こみ」の意味で使う場合には今でも特に古風な感じはない。 「たたく」と同じような意味合いで用いる場合には、現代で は「たたく」より接触時の衝撃が軽い感じに響く。Qたた く・なぐる・はる・ひっぱたく・ぶつ はたけ【畑(島)】野菜や穀物を栽培する耕地の意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な和語。〈麦 ー〉〈ー仕事〉〈ーを耕す〉の「畑」は水田に対して「火」を <842> はださむい 加えて乾いた意を添え、「島」は土が白く乾いた田を表し たともに日本製の国字。「ー違い」「文学」の研究者」の ように専門領域をさす用法では「畑」と書く。島崎藤村の 『千曲川のスケッチ』に「落葉松の」も見えた」とあるよ うに、苗木を育てる土地をさすこともある。安岡章太郎の 『海辺の光景』に「まるで花壇のような玩具じみた」とあ る。畑地 はださむい【肌寒い】肌に冷ややかに感じる意で、会話にも 文章にも使われる和語。ぐさすがに秋で朝夕はーく感じ る)の「薄ら寒い」より感覚的。「はだざむい」とも。深沢 七郎の「月のアペニン山」に「もう夜の風はー時もあったの で季節はずれの台風だった」とある。薄ら寒い はだざわり【肌触り】素肌に触れた感じの意で、やや改まっ た会話や文章に使われる、いくふん古風な和語。「が滑ら かだ」(がゴツゴツしている)有島武郎の『或る女』に 「暖かい桃の皮のような定子の頬のー」とある。Q感触・触 感・手触り はだし【裸足/跣】素足の意で、くだけた会話から文章まで 使われる日常の和語。〈ーで逃げ出す〉(ーになって走る) ②外村繁の『澪標』に「女のーも好色的なものである。(略) 土ふまずの浅いのはいかにも鈍臭いが、げてもの的好色を そそる」とある。足自体をさす「素足」に対し、足の裸の状 態に重点がある。ひ素足 はたして【果たして】見込んだとおりにの意で、主として改 まった文章中に用いられる、古風で格調高い和語。「彼は 大喜びだった」〈結果は成功裏に終わった〉〈予期した 通りであった) ひQ案の定・やっぱ・やっぱし・やっぱり・やはり はたち【畑地】畑にしてある土地を意味し、会話にも文章に も使われる和語。〈裏にーが広がる〉の用途による土地の種 別で、「宅地」や「田地やん」に対する語。ひ畑 はため【傍目】当事者以外の脇の人の目の意で会話にも文章 にも使われる、やや古風な和語。〈ーには楽に見える〉〈ー にも哀れに映る〉巻余所目 はためく布や紙などが風に吹かれてはたはたと音を立てて ひらひら揺れる意で、やや改まった会話や文章に用いられ る和語。〈日の丸が風に—〉石坂洋次郎の『若い人』に 「風に煽られた雨の筋が幕のように白くー・いて街頭の光の 中を移動して行った」とある。時に翻って裏を見せたりす るが、重点は音を立てるところにある。ひひらめく①・Q翻る はたらき【働き】順調に活動して本来の作用を起こすその役 割や機能をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる日 常の和語。〈肝臓の—〉〈酵素の—〉〈頭の—が鈍る〉〈回転 部分の—を調べる〉の「機能」のやわらかい表現として使 う。夏目漱石の『草枕』に「うつむいて、瞳の—が、こちら 〈通わないから」とある。「格別の—」「担当者の—による ところが大きい」のように活躍の意を表したり、「亭主の— が悪いから生活が苦しい」のように収入をさしたりする用 法もある。刂機能・作用 はたらく【働く】仕事をする、活動する、作用するの意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈朝から晩まで〉〈頭がよく〉〈引力がー〉 「盗みをー」「乱暴をー」のように、よくないことをする意 <843> にも使う。相馬泰三の『六月』に「何の変りもなく機械のよ うにー・いでいたーとある。込勤労・Q労働 はたん【破綻】ものごとが途中でうまく行かなくなって最悪 の事態に陥る意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。 「を来す」〈経営がーする〉の宮本百合子の『伸子』に「世 間に家庭生活のーを示し」とある。語源は「破れ綻ぶる」 意。及破滅 ばち【罰】悪事の報いとして与えられる懲らしめの意で、会 話や軽めの文章に使われる古風な漢語。〈ーが当たる〉(た ちの悪いいたずらをしただ)里見淳の『多情仏心』に 「それこそーを被らるところだろう」とある。偶然の結果で も神仏によってもたらされたと考える用法が多い。「バツ」 は漢音、「バチ」は呉音。 ぱつ「駄目」「間違い」を示す記号をさし、主として会話で 使うことば。〈試験の採点できびしくーをつける〉〈惜しい ところでーになる〉の「×」印を書くことが多い。「罰点」 の意だが、漢字では書かず、しばしば片仮名書きにする。 アウト・駄目・Q罰点・ペケ ばつ【跋】二冊の書物や一巻の書画の終わりに付ける文章を さし、主として文章に用いられる古めかしい漢語。〈卷物の 終わりにーを付す〉の「序」と対立する語であるが、現代で はあまり使われない。後書き・後記・Q跋文 はつ【罰】悪い行為に対する懲らしめや法律に違反した人に 対して科せられる制裁や道徳に反する行為をした人に与え られる報いをさし、会話にも文章にも使われる漢語。へに なる)〈ーを与える〉〈ーを受ける〉〈当然のーだ〉夏目漱 はっかん 石の「坊ちゃん」に「嘘を吐いてーを逃げる」とある。 刑・Q刑罰・ばち はつあん【発案】最初に思いついて案を出すことをさし、改 まった会話や文章に用いられる漢語。彼のーによる新しい 試み)何をするかというアイディアで、「立案」の前段階 に当たる。立案 ばついち【ばつ一】一度離婚した経歴を持つ意の近年の俗語。 〈一男〉〈相手はーで子供が二人いる〉回戸籍に×印が一つ 付くことから。通常「バツイチ」と書く。母破婚・離縁・離婚 はつが【発芽】植物の種が芽を出す意で、改まった会話や文 章に用いられる、やや専門的な漢語。〈一期〉《まいた種が ーする》回「芽生え」と違い、比喻的用法はない。母芽生え はっかく【発覚】悪事を犯したことが社会的に明らかになる 意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈贈賄がーす る〉〈詐欺がーする〉〈裏金がーする〉回「ばれる」はもち ろん「露見」よりも犯罪行為を連想させやすい。母ばれる・Q 露見 ばつがわるい【ばつが悪い】状況にふさわしくないと感じて 具合の悪い思いをする意で、主に会話に使われる和語表現。 へとんちんかんな答えをしてしまいー〉ぼつが悪そうに下 を向く)谷崎潤一郎の『鍵』に「意外ナトコロヲ僕二見ラ レテ彼女ハバツガ悪ソウデアッタ」とある。「ばつ」は「場 都合」の略といい、「ばつを合わせる」などとも使う。局面 映い・気恥ずかしい・決まり悪い・照れ臭い・恥ずかしい・Q間が悪 い はっかん【発刊】書籍・雑誌・新聞などを新たに刊行する意で、 <844> はっきり 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「の辞」(よ うやくにこぎつける)よく使う「発行」以上に、このた び新たにというニュアンスが強い。主に出版社側の用語。 ひ刊行・公刊・出版・上梓・Q発行 はつきり鮮明で紛らわしくなく明瞭な意で、会話や硬くな い文章に使われる和語。〈肉眼で—見える〉〈テレビが—映 る〉〈ーものを言う〉〈態度を—させる〉〈空模様が—しな い〉森田たまの『あぶら蠟燭』に「どこにも暗い陰などの ない真昼のようにーした話」とある。明らか・明快・明確・明 白・Q明瞭・歴然 ばっきん【罰金】一般に罰として払わせる金銭の意で、会話 にも文章にも使われる漢語。へ刑に処するへを科す 法律では、財産刑の一つで「科料」より重い。Q違約金・ 科料・過料・反則金 パック ①「背後」「背景」「背走」の意で、会話や硬くない 文章に使われる外来語。〈ーを信頼して投げる〉〈満開の 桜をーに一枚撮る〉〈前の車が急にーする〉〈背景・背後 ②「背泳ぎ」の意。最近は使用頻度のやや低い外来語。〈ー がもう少し早くなれば、個人メドレーで入賞が期待できる〉 の「パックストローク」の略。込背泳ぎ・Q背泳 バッグ「鞄か」の意味で使われる外来語。〈シヨルダー〉 〈ーを抱える〉〈ーを提げる〉古本ばななの『哀しい予感』 に「」の中身をぶちまけたかのように小物が散乱していた」 とある。女性が用いることの多い語。外来語だけに「鞄」 より新しい感じがある。ランドセルやスーツケースなどを さすケースは少ない。アタッシェケースは手提げ鞄の一種 だが、バッグとは呼ばないようである。単鞄 パックネット野球場で捕手の後方に高く張りめぐらした金 網をさす和製英語。〈ーを越えるファールボール〉 パックミラー自動車の内部にあって後方を確認するための 鏡をさす和製英語。「にパトカーが映る」「ミラー」は 鏡であるが、その音の環境から偶然「後方を見るもの」とい う連想が働くこともありそうだ。 はつぐん【抜群】「群を抜く」意の漢語表現で、会話にも文章 にもよく使われる。〈力量がーだ〉へーの知名度を生かして 立候補する〉の井上ひさしの『青葉繁れる』に「ーの不成 績」という表現が出るが、「痩せぎすの肥っちょ、見上げる ような小男」などと並ぶ矛盾の見本なので、この語が好ま しい方向に突出している場合に限って使うという認識を示 す。Q群を抜く・図抜ける・ずば抜ける・飛び抜ける・抜きん出る はつけん【発見】それまで知られていなかった事物を新しく 見つけ出す意で、会話にも文章にも広く使われる漢語。〈世 紀の大ー〉〈血の跡をーする〉〈文豪の意外な面をーする〉 「見つける」より大仰な感じがあり、「机の上の山の中か ら返事を出すのを忘れていた往復はがきをーした」などと 日常の些事について使うとユーモラスな味が出やすい。ち なみに、里見弾を鎌倉の自宅に訪ねた折、作者の存在を強 く意識させる表現を指摘したところ、「そりゃ君の新ーかも れねえや」とこの作家は呟いいた。Q見出す・見つける はつげん【発言】意見・主張・感想などを口頭で述べることを さし、会話でも文章でも広く使われる漢語。〈一権〉〈爆弾 〈当人のだけに注目を集めた〉〈自由にする〉 <845> を求める団単なるおしゃべりでなく、何らかの点に関する 意見を述べる感じが強い。ひ会話・Q談話・発話 ぼっこ【跋扈】好ましくない存在が周囲を無視して勝手に勢 いを揮う意で、主に文章中に用いる古風で硬い漢語。〈跳 梁おー〉〈悪がーする〉大きな魚が竹籠に入らずに跳び 上がる意から。JQのさばる・はびこる・蔓延 はつこう【発行】書籍・雑誌・新聞などを印刷・刊行する意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈所〉〈日〉 〈新しい女性向け週刊誌を—する〉著者より出版社が多く用 いる。紙幣・証券・証明書などを作,七通用させる場合に も使う。刊行・公刊・出版・上梓・Q発刊 はっこう【薄幸(侍)】運ったなく幸薄い意で、主として文章 に用いられる古めかしく硬い漢語。〈一の佳人〉〈一のうち に生涯を閉じる〉きQ不幸・不しあわせ はっしゃ【発射】矢・弾丸・ロケットなどを打ち放す意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈ピストルを—する〉〈ミサ イルを—する〉み発砲 はっしょう【発症】病状がはっきり認められるようになる意 で、学術的な会話や文章に用いられる医学の専門漢語。〈長 い潜伏期間を経て—する》「発病」より部分的・具体的。 Q発病・発作 はっしん【発疹】皮膚にできる粒状の病変をさし、会話にも 文章にも使われる医学上の専門漢語。〈チフス〉〈胸にー が現れる〉「吹き出物」より数が多く広い範囲にわたる感 じがある。専Q吹き出物・ほっしん ふっしんしゃ【発信者】話す側や文章などを書く側の人間を はったっ さし、硬い感じの会話や文章に使われる専門的な漢語。へー 不明の情報が出まわる)言語によるコミュニケーションの 場合は、話し手と書き手との総称である「送り手」に相当す る。「受信者」と対立。送り手・書き手・話し手 はつせい【発生】新たに物事が現れることをさし、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈害虫のーを防ぐ〉〈火災が ーする〉〈大惨事がーする〉〈容易ならぬ事態がーする〉 井上靖の『氷壁』に「事件のーした状態は、厳密には再現で きません」とある。「起こる」に比べ文体的なレベルが高い 関係で大規模な物事を連想させやすく、「問題がーする」と いう表現は個人よりも社会的なレベルの事柄を思わせる。 乃起きる・起こる・Q生じる・生ずる はっそう【発想】頭に思い浮かぶ考えの意で、会話にも文章 にもよく使われる漢語。〈独特の法〉〈ユニークな」で面 白いが、実現は難しい〉への転換が必要だ》小林秀雄の 『実朝』に「大海に向って心開けた人に、この様な」の到底 不可能な事を思うなら」とある。芸術や創作では最も基本 をなす考えをさし、具体的な「構想」の前段階に位置づけら れる。巻アイディア・思い付き・Q着想 はっそく【発足】↓ほっそく パッター「打者」をさす外来語で多く口頭で使う。書きこと ばではふつう「打者」を用いる。〈四番—〉〈次のーを歩か せる〉き打者 はったつ【発達】機械文明などの進歩や心身の成長を意味し、 会話にも文章にも使われる基本的な漢語。〈文明がーを遂 げる〉〈交通がーする〉〈通信手段が著しいーを見る〉〈肉 <846> ばってき 体の健全なーを妨げる結果となる伊藤整の『小説の方 法』に「フランスでーした実証的な近代小説の手法」とあ る。Q進歩・発展 ばってき【拔擢】多数の中から特にある一人を選び出して重 要な任務を与える意で、やや改まった会話や文章に用いら れる漢語。〈新人を—する〉〈異例の—〉へいきなり委員長 にーされる〉②順番を跳び越えて選ばれる感じが強い。 重用・取り立てる・引き立てる はってん【発展】勢力が盛んになる意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈ー途上国〉へー的解消〉〈会社のーに貢献 する〉〈貴社のますますの御ーを祈る〉夏目漱石の『明 暗』に「それ以上にーする余地のなかった題目は、そこでび たりと止まってしまった」とある。「事件が思わぬ方向へー する」のように、次の段階に進む意にも用いる。専栄える・進 歩・Q発達・繁栄・繁盛 ばってん【罰点】「ばつ」の記号をさし、主として会話に使わ れる漢語。〈答案に大きくーを書く〉②片仮名書きが普通。 記号で「×」印を書くこともある。ひQばつ・ペケ はってんとじょうこく【発展途上国】産業などの近代化が遅 れ発展の途中段階にある国をさす漢語。へーに対する技術 指導」「後進国」の軽蔑的な感じをやわらげるための言い 換え。開発途上国・後進国 はっとふいに思いついたり驚いたりするときに会話や硬く ない文章に使われる擬態語。〈思い当たる〉〈黒枠にーす る〉川端康成の『千羽鶴』に「医者が来ていないのかと菊 治は驚いたが、ー気がついた。/夫人は自殺なのだ」とあ る。ヨぎくっと・ぎくりと・Qぎょっと・どきっと・どきりと・どきんと はつねつ【発熱】病気などにより体温が平熱より高くなるこ とをさし、やや改まった会話や文章に用いられるやや専門 的な漢語。〈作用〉〈風邪でーする〉②中河与一の『天の 夕顔』に「八月の炎天の下を歩きつかれて、次の日にはとう とうーしてしまいました」とある。「解熱」と対立。 はっば【葉っぱ】「葉」の意味でもっぱらくだけた会話で用い る口頭語。〈柿の—〉〈—でくるむ〉の幸田文の『おとうと』 に「雨とーは煽られて斜になるが、すぐまたまっすぐにな る」とある。仲間内でざっくばらんにしゃべるときのこと ば。子供は「葉」でなくたいていこの語を使うが、これは幼 児語とは違って、あくまで緊張度の問題。そのため、格調の 高い論文のような硬い文章の中で用いると、それだけで筆 者のまじめさが疑われる。ひ葉 パッパ「パパ」の古い言い方。森茉莉の気違いマリア に、「が痰を吐く音は独逸ゾ語の咽喉の音のような声 で、吐く時の顔も素敵だった」と父鷗外を偲ぶ記述がある。 パパ はつはる【初春】「新春」の意で、年賀状などの挨拶に用いられる文語的で雅やかな和語。〈一の装い〉へ一のおよろこびを申し上げますの「初春」を訓読みしたこの語は正月の雅語となり、実際の早春の意ではめったに用いない。月・初春・Q新春・新年 はつびょう【発病】病気が起こる意で、やや改まった会話や 文章に使われる漢語。〈感染してもすぐにはーしない〉 <847> に至る過程》「発症」よりも総合的な判断として一般的に 使われる。Q発症・発作 はっぴょう【発表】一般に広く知らせる意で、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈合格—〉 〈婚約—〉〈研究—〉〈ピアノの—会〉〈結果を—する〉夏 目漱石の『坊っちゃん』に「もう—になるから話しても差し 支えないでしょう」とある。私的な事柄も公的な事柄も含 まれ、類語の中で最も広く頻繁に使う。公示・Q公表・公布 告示 はつびようかい【発表会】習い事などで練習成果を一般に公 開するための催しをさし、会話にも文章にも使われる日常 の漢語。〈ピアノの—〉〈踊りの—〉〈生け花の—〉〈展観会・ Q展示会・展覧会・博覧会 ばつぶん【跋文】「跋」として作品の末尾に置く文章をさし、 主として文章に用いられる古風な漢語。「を添える」② 「序文」と対立する語。現代ではあまり使われないが、それ でも「跋」よりはいくらか使用例が多いように思われる。 後書き・後記・跋 はっぽう【発砲】銃や大砲などを発射する意で、改まった会 話や文章に用いられるやや専門的な感じの漢語。〈逃走す る犯人を威嚇するため警官がーする〉ひ発射 ぼっぽんてき【抜本的】おおもとの原因を取り除く意で、改 まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。〜な対策を 講じる〜〈現状に合わなくなった制度をーに改める〉現状 の弊害を認識しそれを断ち切る場合によく使う。一時しの ぎの応急措置と対立する概念。Q根本的・徹底的 パティシエ はつまご【初孫】内孫と外孫を含めて初めてできた孫の意で 会話にも文章にも使われる和語。〈ーが生まれる〉「うい まご」より一般的によく使う。鳥ういまご はつらつ【潑洟(刺)】元気よくきびきびしている意で、やや 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈元気ー〉〈ーとし た姿〉へーとした動きを見せる〉谷崎潤一郎の『細雪』に 「どこかーとした、色つやのよい、張り切った感じの人」と ある。壺井栄の『二十四の瞳』に「大石先生のーとした姿 は、朝よりもいっそうおてんばらしく、村人の目にうつっ た」とあるように、「活発」に比べ、目に映る具体的な対象 に多く使う。活発 はつわ【発話】ことばを発する行為や、その際に発せられた ことばそのものをさし、言語研究の分野で用いられる専門 的な漢語。〈ー者〉〈ー行為〉〈一回のー〉沈黙から次の沈 黙までに発せられたことばのまとまりを一つの単位とする ことが多い。会話・Q談話・発言 はで【派手】衣装・外見・態度・行動などが人目をひく様子をさ し、会話にも文章にも広く使われる和語。〈好み〉へな 顔立ち〉〈な服装〉〈な暮らし〉〈な喧嘩ぜ〉〈に宣 伝する〉谷崎潤一郎の『細雪』に「衣裳がーであるから若 く見えると云うのではなくて、顔つきや体つきが余り若々 しいためにーなものを着なければ似合わない」とある。「地 味」と対立。少しマイナスのイメージがある。専華やか パティシエ洋菓子を製造する職人をさし、会話にも文章に も使われる斬新な感じのフランス語からの外来語。菓 子職人」以上に高級感が漂う。原語では男性に限るが、日 <848> はてなマーク 本語としては性別に関係なく使う。菓子職人 はてなマーク「疑問符」の記号「?」をさすユーモラスな俗語。「はてな」と首をひねるところから。ひびっくりマーク はてる【果てる】終わりになる意で、改まった会話や文章に 用いられる、いくぶん古風な和語。〈会が—〉〈人通りが—〉 〈道が—〉〈命が—〉〈いつ—ともなく続く〉梅崎春生の 『桜島』に「廃墟の—ところに海があった」とある。数量的 なイメージの濃い「尽きる」に対して、この語は一本の線が 切れるというイメージがあるため、「話が尽きる」がいろい ろ話をしてきてもうほかに話す話題が考えつかないという 意味になるのと違い、「話が—」の場合は長々と続いてきた 一つの話や一回の話す行為が終了するという意味になる。 専尽きる ばてる疲れ果てる意で、くだけた会話によく使われる俗語。 〈暑さ続きで—〉〈重労働で—〉〈途中で—〉時に「バテ る」という表記も。Qへたばる・ぼる はとう【波濤】大きな海の大きな波のうねりをさし、硬い文 章に用いられる古風な漢語。〈万里のーを越えて〉実際の 大波をさして漢文調の美文にまれに用いるほかは、大きな 困難の意の比喻的な例に出る程度で、日常生活にはあまり 使わないが、気象情報を思わせる「波浪」に比べ、文学的な 雰囲気を感じさせる。児荒波・激浪・怒濤・波・Q波浪 ぷトロール警察官などが犯罪や事故の防止・発見を目的と して巡回する意で、会話にも文章にも使われる外来語。〈 隊〉〈ーを強化する重点地域〉の「見回り」「巡回」よりもす ぐに警官を連想きせやすい。Q巡回・見回り はな【花】草の茎や木の枝の先に咲いて実を結ぶものをさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈ーが咲く〉〈ーがしおれる〉〈ーが散る〉〈ーを 活ぐける〉植物の花をさすほか、「ーを持たせる」「ーを添 える」「ーも実もある」「ーも恥じらう」「言わぬが」「両 手に」など比喩的な用法も広い。ちなみに、安西均の詩 『花の店』は「かなしみの夜の/とある街角をほのかに染め て/ー屋にはーがいっぱい/賑やかな言葉のように」と始 まる。店先にあふれる花々が自分に語りかけてくるようだ ととらえたこの詩に「華」という表記はいかにもふさわし くない。福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「わたしゃ ロンドン、ーの都の会社員」とあるように、はなやかな憧れ の象徴ともなる。ひ華 はな【華】「花」に近い意で、主に文章に用いられる古風で詩 的な和語。〈火事と喧嘩は江戸の」〈職場の」〈演技に ーがある〉②意味の広い「花」のうち、華やかで美しいもの を讃える際に特に書き分けとして用い、現実の花には用い ない。ひ花 はな【洟】鼻の粘膜から分泌され、穴を通って出てくる粘液 をさし、会話にも文章にも広く使われる日常の和語。へーを かむ〉へーをすする〉へーを垂らす〉へーもひっかけない〉 ② 室生犀星に「わらんべのーも若葉を映しけり」という俳句 がある。こういう光景は最近すっかり影をひそめたが、人 と自然との一瞬のかかわりの中に、美と醜との偶然のめぐ りあいをとらえた俳味が心にくい。専鼻・鼻汁・Q鼻水 <849> はな【鼻】嗅覚をつかさどる呼吸器官をさして、会話や文章 でよく使われる日常の基本的な和語。〈ーが高い〉〈ーが利 く〉〈ーにかかった声〉〈ーを突き合わせる〉図川端康成の 『名人』に「たくましいーも不気味なほど大きく見えた」と ある。専湊 はながた【花形】「スター」の意の古風な和語。〈ー選手〉〈ー 的存在として人気を集める〉〈歌舞伎のー〉もスター はながみ【鼻紙】鼻汁を拭うときなどに使う薄い紙をさし、 会話や軽い文章などに使われる日常の和語。「で鼻水を ぬぐう」の「塵紙が」に比べて用途が明確で汚い感じがする ため「花紙」と書いて美化することもある。Qちりがみ・ち りし・ティッシュ はなぐすり【鼻薬】少額の賄賂をさして、主にくだけた会話 に使われる古風で俗っぽい和語。へーを利かせる)の「鼻薬」 の原義に合わせて「ーを嗅がせる」という言い方をするこ ともある。Q袖の下・リベート・賄賂 はなくそ【鼻葉(屎)】鼻水と埃が混じって鼻の穴の中で固 まった異物をさし、会話や改まらない文章に使われる日常 の和語。〈人前でーをほじくる〉谷崎潤一郎の『雪後庵夜 話』に「髪の毛がちばったような、果敢ない、細い、ーの ような文字」という比喻表現が出る。 はなし【話】会話・話題・相談などの意で、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈面白い ー〉〈ーがある〉〈ーがわかる〉〈ーを持ち込む〉〈ーを合わ せる〉〈ーをそらす〉〈ーに乗る〉〈ーに身が入る〉〈ーにな らない〉②大庭みな子の『啼く鳥の』に「喋りようによって はなしぶり は激した下品なものになるーを、静かな水が流れるように、 ときには愛らしくさえ聞こえる旋律で伝える」とある。 噺 はなし【噺】落語などの作品の意で限定的に用いられる、古 風で専門的な雰囲気の和語。〈廓ちー〉〈ーを仕込む〉〈新 しいーを高座にかける〉「噺」のうち、「小」「落とし ー」のような短い笑い話をさして特に「咄」と書く傾向が見 られる。ひ話 はなしあい【話し合い】互いの意見を述べ合って妥協点を探 る意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。へーで決め る〈一に応じる〉へーが不調に終わる〉回互いの意見をぶ つけ合うだけの「言い合い」と違い、互いの利益が対立した り意見や希望の異なる問題などについて、その解決を意図 して妥協点を探りながら話し合う。刂言い合い・打ち合わせ、 会議・協議・相談・談合・ミーティング はなしことば【話し言葉】口頭表現を行うときに用いる音声 言語をさし、会話にも文章にも使われる専門的な和語。丁 重なー〉〈文章にーの調子が交じる〉②「書き言葉」と対立 する。少口語・Q口頭語 はなして【話し手】話す側の人をさし、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる和語。ヘコミュニケーションはー と聞き手との共同作業の「なかなか大しただ」のよう に、話の巧みな人をさす用法もある。「聞き手」と対立。 送り手・Q語り手・発信者・話者 はなしぶり【話し振り】話をするときの声や表現の調子をさ し、会話にも文章にも使われる和語。へおっとりとしたー <850> はなじる 〈せかせかしたーに性格が表れる〉Q語り口・口調・語気・語 調・弁 はなじる【鼻汁】洟の意で、会話にも文章にも使われる和語。 へーをすすり上げる〉へーを拭う〉の洟ほどの粘りけを感 じさせず、「鼻水」よりは水分の少ない連想がある。ひQ洟・ 鼻水 はなす【放す】拘束を解く意で、会話にも文章にも使われる 日常の和語。〈握っていた子供の手を—〉〈鎖をはずして犬 を—〉の小沼丹の『タロオ』に「夜分暫くタロオ(犬)を—こ とにしていたが」とある。ひ離す はなす【話す】ある内容を口頭で伝える意で、会話でも文章でも幅広く使われる日常生活の基本的な和語。「一部始終を」「こうなったわけを」・そう〈ー・せばわかる〉〈若いころの経験を」葉山嘉樹の『海に生くる人々』に「重々しい論調で、肋骨の間から、心臓を目がけて、錐でも刺すように」・してると」とある。「言う」と違って、発言行為よりもある程度まとまった発言内容のほうに意識が向かう表現。「言う」が一方的なので「言い合い」は口論に近いイメージがあるのに対し、相手の必要なこの「話す」から成立する「話し合い」は互いに譲り合いながら妥協点を探る印象が強くなる。また、「おしゃべり」と「お話」とを比較すると、この動詞が行為より内容に重点のあることがよくわかる。その関係で、「英語を」というと、まとまった内容を英語で表現できる感じがあり、「英語をしゃべる」人以上の本格的な英語力を連想させる。言う・Qしゃべる はなす【離す】接触をやめる、距離を置くといった意味合い で、会話や文章に広く使われる日常の和語。〈他を大きく 〈間をー・して並べる〉〈ハンドルから手をー〉〈ちょっ と目をー・した隙に〉②横山美智子の『R夫人のサロン』に 「弾かれたように、彼から身をー・した」とある。ひ放す はなすじ【鼻筋】眉間から鼻の先端までの線をさし、会話に も文章にも使われる和語。へーが通る》椎名麟三の『自由 の彼方で』に「高い上品そうなーを白く残して」とある。 鼻・Q鼻梁 はなぞの【花園】草花がたくさん植えてある比較的広い場所 をさし、主に文学的な雰囲気の文章に用いられる古風で優 雅な和語。〈ーをめぐる〉〈ーにしばし憩う〉②「花壇」と違 って必ずしも縁取りを連想させない。横光利一に『花園の 思想』と題する小説があり、愛妻の死の直後「一枚の紙のよ うにふらふらしながら、ーの中へ降りていった」と結ばれ る。もとは花を栽培する場所だったが、語感が古風になる につれて意味も美化され、「花壇」ではふさわしくない「天 国のー」といったイメージも漂う。「文学のー」といった抽 象化された用法でも「花壇」よりぴったりした感じがある。 弔花壇 はなたば【花束】草花を何本か束ねたものをさし、会話にも 文章にも使われる和語。〈一贈呈〉(教え子がーを渡す〉 〈ーを手に舞台で挨拶する〉(横光利一の『春は馬車に乗っ て』は「明るいーの中へ蒼ざめた顔を埋めると、恍惚として 眼を閉じた」と結ばれる。ヲブーケ はなっぱし【鼻っぱし】相手に負けまいと張り合う様子をさ し、主に会話に使われる、やや俗っぽい和語。〈ーが強い〉 <851> へあのーをへし折ってやる》「鼻柱」の転。外面に現れ た感じをとらえた語で、実際の力には言及していない。 強気・Q向こう意気 はなはだ【甚だ】「大変」に近い意味合いで、会話にも文章に も使われる古風で硬い和語。〈困る〉〈心細い〉〈け しからん〉〈遺憾である〉②「愉快だ」「快適だ」「 立派な心がけ」のようにも使うが、「甚だしい」同様、否定 的な意味に使う例が目立つ。大いにきわめてこくすこぶ る・大層・Qたいへんとても②・非常に はなはだしい【甚だしい】大きく度を超えている意で、やや 改まった会話や文章に用いられる和語。〈痛みがー〉〈ー心 得違い〉〈思い上がりもー〉〈誤解もー〉〈ー・く危険だ〉 「甚だ」以上に、望ましくない事柄に使う例が圧倒的に多 い。「おびただしい」と違って数量の大きさを直接表せない ため、「数の人間」などとする。凡夥しい はなばなしい【華々しい】はなやかで目立つ様子をさし、改 まった会話や文章に用いられるプラスイメージの和語。「 活躍〉〈ーデビューを飾る〉外見より行動の評価や印象に 使う傾向が強い。堀田善衛の『広場の孤独』に「舞台」と ある。専輝かしい はなびら【花卉(片)】おしべやめしべを保護する花冠のひと ひらずつをさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。 〈桜のーが一面に散り敷く〉坂口安吾の『桜の森の満開の 下』は「あとにーと、冷たい虚空がはりつめているばかりで した」として結ばれる。ひ花片・Q花卉 はなみず【鼻水】洟の意で、会話にも文章にも使われる和語 はにかみ 〈ーを垂らす〉へーが止まらない回洟」が粘液を連想させ るのに対し、この語は粘りけのない鼻汁を連想させる傾向 がある。ヨQ洟・鼻汁 はなやか【華(花)やか】明るく美しく目立つ意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈一な衣装〉(一な飾りつけ〉(一 に舞う)川端康成の『千羽鶴』に「一な振袖の肩や袂に、 やわらかい反射がある」とある。「花が咲いたような」とい うところから。「一な会」「一な暮らし」のように具体物以 外にも広く使われる。Q華麗・きらびやか・絢爛流手 はならび【歯並び】歯の並び方の意で、会話にも文章にも広く使われる日常の和語。〈きれいなー〉へーが悪い②石川淳の『紫苑物語』に「白くにおうーを光らせて、歓喜の鐘をつくような笑をひびかせた」とある。ひ歯列 はなればなれ【離れ離れ】互いに離れて過ごす意で、会話に も文章にも使われる和語。《兄弟姉妹がーに住む》の別れ 別れ」に比べ、ばらばらになる点に中心がある。また、「部 員の心がーになる」のように一つにまとまらない点に中心 を置く用法もある。刂別れ別れ はにかみ【含羞み】恥ずかしそうな表情やそぶりの意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈大仰なーを見せる〉の若い 女性が恥ずかしそうにうつ向く様子を外から見た感じのイ メージがあるが、比喩的に、文学作品などで、露骨に詳細に 書き過ぎることなく読者の推測にゆだねるといった表現の たしなみをさす場合もある。永井龍男を訪問した折、井伏 鱒二が「の文学」と評したことを話題にして、そう呼ぶ井 伏自身にもほにかみがあるのではと問いかけると、「大有 <852> りですよ」と永井龍男は目を輝かせた。Q含着照れ 恥恥じらい はね【羽】鳥などの翼や羽毛をさして広い意味で用いられる 和語。〈ーが生える〉〈ーを広げる〉〈ーをもがれる〉〈ーを 並くる〉専羽根・Q翅 はね【翅】会話でも文章でも使われる和語。〈昆虫の—〉(蟬 の—)川端康成の『雪国』に「秋風が来ると、その(蛾の) —は薄紙のようにひらひらと揺れた」とある。「羽」のうち 昆虫のものを特に区別して書く場合の表記で、厳密な印象 を与えやすい。Q羽・羽根 はね【羽根】鳥の体から離れた一本ずつの羽やそれに似た形 状のものをきして、会話や文章に使われる和語。赤いー 〈ーをつく〉〈扇風機のー〉②井伏鱒二の『屋根の上のサワ ン』に「この鳥の両方の翼をーだけ短く切って」とある。 Q羽·翅 ばね【発(撥)条】鋼を曲げたり螺旋状に巻いたりして弾力 を強めた装置をさし、会話にも文章にも使われる和語。 仕掛け〈ーを利用する〉のスプリング」はその一種。比 喩的に「足腰の」などとも言う。漢字は難しく平仮名で はわかりにくいため、しばしば片仮名書きされる。ひスプリ ング・Qぜんまい はねつける【撥ね付ける】相手からの申し出などを厳しい態 度で拒絶する意で、会話やさほど改まらない文章に使われ る和語。〈組合の要望を—〉〈親の忠告を—〉「拒絶」に比 べても、頭から問題にしない感じが強い。一蹴やり・Q拒絶・ 拒否・断る・拒む はねのける【撥ね除ける】勢いよく押しのける意で、会話に も文章にも使われる和語。〈布団を—〉〈相手の手を—〉回 「払い除ける」よりも重い対象を力を入れてはじく感じが 強く、「困難を—」のような比喻的な例でも同様。払い除 ける ハネムーン「新婚旅行」をさすやや古い感じの洋風の言い 方。〈ーでオーストラリアへ飛ぶ〉の「蜜月旅行」と訳す。 ひQ新婚旅行・蜜月旅行 パネラー「パネリスト」をさす和製英語。〈ーに専門家を起 用する〉正式名称としては避けたい。パネリスト パネリストパネルディスカッションで問題提起をする役の 討論者をさし、会話でも文章でも使われる外来語。〈地球温 暖化に関するパネルディスカッションでーを務める〉ひパネ ラー はねる【刎ねる】「はねる」のうち特に首切りを区別する場合 の表記。〈首を—〉乃跳ねる・Q撥ねる はねる【跳ねる】跳び上がる意で、会話でも文章でも使われ る和語。〈兎が—〉〈思いきり—〉〈泥が—〉〈びょんびょん —〉〈ボールが不規則に—〉正式の運動競技には「跳ぶ」 を用い、「跳ねる」というと子供が遊んでいる連想がある。 中勘助の『銀の匙』に「ねじ鉢巻の男が(略)ひょんひょん! ねながらかかってゆく」とある。「芝居が—」のように、終 わる意の場合は仮名書きが多い。马跳ぶ・弾む・Q撥ねる・刎 ねる はねる【撥ねる】勢いよく弾き飛ばす意で、会話やさほと改 まらない文章に使われる和語。〈車にー・ねられる〉〈枝を <853> 〈不良品を—〉〈要求を—〉Q跳ねる・刎ねる は母両親のうちの女のほうをさし、改また会話や文 章に用いられる最も基本的な和語。〈一に甘える〉への胸 に抱かれる〉への膝に乗る〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「乱暴で乱暴で行く先が案じられるとーが云った」とあ る。「からもよろしくとのことでございます」のように、 自分の母親のことをへりくだって他人に言うときにも用い る。「父」と対立。お母様・お母さん・お母ちゃん・おふくろ・女 親・母さん・母ちゃん・母上・Q母親・ママ はば【幅】物の左端から右端までの長さの意で、くだけた会 話から文章まで広く使われる日常の和語。〈思ったよりーが ある〉〈道のーを広げる〉専門語の「幅員」とは異なり、 永井龍男の『そばやまで』に「独り言と私の間に、思わぬー がひろがり」とあるように、「人間のー」「研究のー」その 他の抽象的用法も多い。帰員 パパ父親を親しく感じて呼ぶ外来語。〈に買ってもらう〉 〈に言いつける〉古くは「パッパ」と書いた。パパパ はばあ【婆】女性の老人をきすぞんざいな和語の口頭語。〈く そー〉〈梅干ー〉徳永直の『太陽のない街』に「は、犬 に追っかけられた牡鶏のように、ふかふかした足どりで」と ある。「ー、何しやがる」「あのー、よくまあ、しゃあしゃあ と」などとののしる感じで用いることが多いが、「あのー、 ずいぶん気前がいいや」というふうに親しみをこめて用い る例もある。「ちぇっ、ーのやつ、弁当に箸入れるのを忘れ やがった」などと口汚くののしる場合でも、そこに悪意がな ければ、むしろ親しみの表現となる。「お婆さん」の具体的 はびこる な欠点をついてくるわけでもないのに聞き手にきつく響く のは、そのことばの選択に話し手の軽蔑の気持ちが映って いるときである。ひ高齢者・Q老人 ははうえ【母上】「母」の古風な尊敬表現として、格別丁寧な 会話や文章に用いられる。〈遠く離れていると秋の夜など ーのことがしきりに思い出されます〉〈おーにもよろしく お伝え願います〉現代では手紙の中で時折使う程度で、 会話では冗談めいた響きを感じさせることもある。「父上」 と対立。Qお母様・お母さん・お母ちゃん・おふくろ・女親・母さ ん・母ちゃん・母・母親・ママ ははおや【母親】「母」の意で会話にも文章にも使われる和 語。〈老いた」〈一の愛に餓えている〉〈一が付き添う〉② 「母」に比べ、親であることを意識して使う。「父親」と対 立。母様・お母さん・お母ちゃん・おふくろ・Q女親・母さん・母 ちゃん・母・母上・ママ はばかり【憚り】「便所」を意味する古風な和風の間接表現。 〈夜中にーに起きる〉排泄は万民共通の必須の行為であ るが、文化的な伝統から人前を「憚る」ところから、それを 名詞の形にした名づけ。人目を憚るものはいろいろあるか ら当初はかなり婉曲な表現であったはずである。 りおト イレ・剛・閑所・化粧室・御不浄・雪隠・洗面所・WC・手水場・手洗 い・トイレ・トイレット・Q便所・レストルーム はばむ【阻む】自分にとって好ましくない他の行動を食い止 める意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。行 く手をー〉〈優勝をー〉乃食い止める・Q阻止 はびこる【蔓延る】好ましくないものが勢いよく広がる意で、 <854> はぶく 会話や軽い文章に使われる和語。〈庭に雑草が—〉〈悪が —〉〈悪性のインフルエンザが—〉のさばる・跋扈・蔓延 はぶく【省く】効率を考えて簡略化するために必要性の少な いものを取り除く意で、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常の基本的な和語。〈話の途中を—〉〈説明 を—〉〈手続きを—〉〈手間を—〉ぐきるだけ無駄を—〉 剷愛・Q省略・除外・略す はヘん【破片】硬質の物体が破損した際に生ずる小片をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈ガラスの—〉へが飛び 散る》弁伏鱒二の『庄野君と古備前』に「洗面器の水にあ の(備前焼の)ーを入れますと、割れ口につぶつぶの気泡が 出来ます。その可愛らしい気泡が水を清浄にしてくれるよ うな気持がします」とある。「かけら」と違い、抽象化した 用法では使いにくい。ひかけら はま【浜】海や湖の水際に沿ったなだらかな砂地をさし、会 話にも文章にも使われる日常の和語。〈一の真砂〉〈一に出 る〉夏目漱石の「坊ちゃん」に「見返えると、が小さ く見える位もう出ている」とある。り磯・うみべ・治岸・海岸・Q 海浜・かいへん・岸・岸辺・なぎさ・波打ち際・浜辺・みぎわ・水際・水辺 はまべ【浜辺】浜のほとりをさし、会話にも文章にも使われ る和語。〈一で遊ぶ〉〈一をさまよう〉林古渓作詞の唱歌 『浜辺のうた』もあり、懐かしく暖かい雰囲気がある。り磯・ うみべ・治岸・海岸・海浜・かいへん・岸・岸辺・なぎさ・波打ち際・Q浜・ みぎわ・水際・水辺 はまる【嵌(塡まる】ある場所に落ち込む、丁度入る適合 するの意で、会話にも文章にも使われる和語。〈型に 〈溝にー〉へー・り役〉の「敵の計略にー」のように「だまさ れる」意にも使う。近年、「ガーデニングにー」のように、 好きになってやめられなくなる意に使う俗な用法が広まっ ている。ああてはまる・陥る・落ちる① はむかう【歯(刃)向かう】上位者や権力者などに敵対して反 逆的な態度をとる意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈自然の圧力に」〈権威に」〈当局に」②指示に従わな いだけでなく、「逆らう」より積極的に反抗する感じがあ る。込逆らう はめつ【破滅】根底から駄目になってしまう意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈身のーを招く〉〈財政 がーする〉〈ーに向かう〉〈ーに追い込む〉③中村真一郎の 『天使の生活』に「男女の共同生活がどうして突然にーして しまったのだろうか」とある。破綻 はめる【嵌(塡)める】びったり合うように入れる意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈ポタンを—〉〈指輪を—〉 〈手袋を—〉の丸谷才一の『横しぐれ』に「この解釈を—・め こめばきれいな図柄がまとまる」とある。ふうめる ばめん【場面】物事の進行・展開している情景や情況、映画な どのシーンをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈判断 の難しいーを迎える〉へーを転換する〉〈感動の名ー〉の所・ 場 はもん【波紋】水面に物を落としたときに生じた波が次々に 大きな波を引き起こして広がっていく現象や、次から次へ と連動して生じる影響をさし、会話にも文章にも使われる 漢語。〈ーを投げる〉へーを広げる〉へーを呼ぶ〉相馬泰三 <855> の『六月』に「池の水の面」には雨が描き出す小さなーが、 音もなく夢のように数限りもなくちらちらと入り乱れてい た」とある。ひ影響・Q波及・余波 はやい【早い】時刻や時期について、標準や想定より前であ るようすをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の最も基本的な和語。まだー〉へー・起きる 「うちに手を打つ〉気がー〉へー者勝ち》⑩丼伏鱒二の 『珍品堂主人』に「おかみを喜ばせるにはまだ早すぎたと気 のついたことでした」とある。「早足」「足早」と書くよう に、「速い」の意を含めて総合的に用いる場合もある。迅速 速・速やか・速い はやい【速い】標準や想定よりスピードがある意で、会話や 文章で使われる和語。〈足が—〉〈流れが—〉〈一攻撃〉 「早い」のうち速度の部分をさして特に書き分ける場合の表 記。志賀直哉の『暗夜行路』に「隼のような飛行機」とあ って「早い」となっているが、現代では「速い」と書くこと が多い。迅速・速やか・早い ばやい【場合】「ばあい」の訛りで、かなりの高齢者を連想 させる俗語。鎌倉の自宅を訪問した際、里見弾は「こと ばの値打を測るーは」「雑誌と新聞の続きもののーは」と発 音した。ひばあい・Qばわい はやがてん【早合点】人の話を途中まで聞いて自分でわかっ たつもりになる意で、主に会話に使われる表現。へそれがと んだーで、大失敗だった》「合点」は「がってん」ともい う。ひ早とちり・Q早飲み込み はやさ【速さ】同じ行為や等量の動きに対して所要時間の少 はやし ない度合いの意で、くだけた会話から文章まで幅広く使わ れる日常の基本的な和語。〈書く—〉〈人の歩く—〉〈ーを 競う〉〈直球のーを比える〉Qスピード・速度・速力 はやし【林】樹木がたくさん生えている土地をさす、「森林」ほど改まらない日常語で、くだけた会話から硬い文章まで広く使われる和語。〈近所の杉の—〉〈木漏れ日を浴びながら—の中を散策する〉国木田独歩の『武蔵野』に「日が落ちる、野は風が強く吹く、—は鳴る、武蔵野は暮れんとする」とある。木がまばらに生えているというほどではないが、「森」に比べると木の密集の度合いが低く、奥行きの浅い感じがある。「森」の中は草を掻き分けながら進むという印象であるのに対し、「林」の中にはすでに道がついており、「森」の小路より明るい印象が強く、清純な恋は芽生えても、「森」と違って小人や魔法使いに出会いそうな雰囲気は期待できない。そして、「森」ほど厚みを持たない「林」では、その中にある家はたとい一軒家であっても、「森」の中の一軒家よりは暮らしやすいイメージがある。また、「林」には「森」ほど大木の生えている感じは薄く、「森」が雑多な木が自然に生えている感じなのに対し、「林」の場合は、人工的な感じの薄い武蔵野の雑木林などもある一方、「梅林」「からまつ林」「くぬぎ林」「白樺林」「杉林」「松林」など、同じ種類の樹木が時には計画的にまとまって植えてあるケースも少なくない。さらに、「森」が山や丘などの高地を連想させやすいのに対し、「林」は一般的に平地を連想させる場合が多く、「森」に比べて、明るく田園的で牧歌的なイメージが濃い。弁森林・森 <856> はやじに はやじに【早死に】その時代の平均寿命などをもとにした一 般常識よりかなり早く死ぬ意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈意外な—〉〈一の部類に入る〉の「早世」と同様、 「若死に」などとは違って、必ずしも若くして死亡する場合 だけではない。早世・夭逝・夭折・Q若死に はやて【疾風早手】にわかに激しく吹き起こる強い風をさ し、今では主として文章に用いられる古めかしい和語。 が襲う嵐・おおかぜ・強風・颶風・時化・Q疾風・陣風・大風・台 風・突風・暴風・暴風雨・烈風 はやとちり【早とちり】早飲み込みしてしくじる意で、主に くだけた会話に使われる俗っぽい和語。へーして大変なこと をしでかす)②「とちる」はやり損なう意。そのため、「早 飲み込み」「早合点」が勘違いする段階を表すのに対し、こ の語はそれによる失敗行動を含めて言う傾向がある。ひQ 早合点・早飲み込み はやのみこみ【早飲(呑)み込み】話などをよく聞かずに自分 で勝手に解釈する意で、会話や軽い文章に使われる和語。 〈課長の言ったことをーして大量に発注してしまう〉り早合 点・Q早とちり はやびけ【早引け】「早退」の意で、会話や軽い文章に使われ るやや古風な和語。〈生徒が学校を—する〉ひ早退 はやみち【早道】少ない時間で目的を達成する手っ取り早い 方法をさし、会話やさほど硬くない文章に用いられる和語。 〈上達のー〉へあせらずに確実にやるのが結局いちばんー だ)実際に通る道路や経路そのものをさす例はめったに ない。凡近道 はやり【流行り】今流行している意で、会話や改まらない文 章で使われる日常の和語。〈今—の色〉〜すたりのない定 番大仏次郎の『風船』に「一の絵描さん」とあるように 人間にも使う。ひナウい・ファッション・Q流行 はやりやまい【流行り病】伝染病の古めかしい言い方で、時 代劇などによく出てくる和語。〈ーで命を落とす〉疫病・感 染症・Q伝染病・流行病 はやる【流行る】一定期間もてはやされ人気が出て盛んにな る意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈あの ころー・った曲〉(今ー・っている髪型)②二葉亭四迷の『平 凡』に「だらだらと、牛の涎だのように書くのがーそうだ」 とある。「風邪がー」「妙なまねをするのがー」のように、 好ましくない対象に使うこともある。その現象を一時的な ものと認識して用いる。り流行 はら【原】耕作されずに草の生えたままになっている平らな 広い土地をさし、主に文章中に用いられる古風な和語。「焼 け野が」へ一面の雪の」大養健の「姉弟と牛乳配達」 に「小住宅の影を長々と引いた」とあるが、現在はこのよ うに単独で名詞に用いる例は少なく、たいてい「野原」か会 話的な「原っぱ」を使う。原野・野・野原・野良・原っぱ はら【腹】体の前側の胸の下から脚の付け根の上までの部分 特に胃腸を全体としてさし、くだけた会話から文章まで幅 広く使われる日常的な和語。「が減る」「いっぱい食う 「が出て来た」「を痛めた子」「を抱えて笑う」現在 では「おなか」よりぞんざいな言い方に聞こえるが、かつて は男性のふつうの言い方。横光利一の『頭ならびに腹』に <857> 「巨万の富と一世の自信とを抱蔵しているかの如く素晴らし く大きく前に突き出ていて」とあり、深沢七郎の『檜山節 考』に「大きなーを前かがみにしているので蛙みたいな恰 好」とある。肉体に関する和語の基本語によく見られるよ うに、「ーを探る」「ーに据えかねる」「ーをくくる」といっ た比喻的な慣用表現が多く、「腹部」や「胃腸」といった漢 語には見られない用法が目立つ。おなか・腹部 はらいのける【払い除ける】手で振り払って取り除く意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈蜘蛛の巣を—〉へつい た埃を—〉の「搬払除ける」よりも軽い対象をさほど力 を入れずに除去する感じがあり、「不安を—」のような比喻 的な例でも同様。揚ね除ける はらう【払う】①じゃまた物や要らない物をその場所から取り除く意で、会話でも文章でも広く使われる和語。顔の前の蠅を」〈本の埃を」〈相手の手を」いのける〉②徳田秋声の『あらくれ』に「片意地らしく脅しつけるように言って、筋張った彼の手をきびしく!・い退けた」とある。 ひかっぱらう ②代金や料金などを「支払う」意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈税金を」〈従業員に給料を」〈その場で」〈耳をそろえて」「支払う」ほど正式で改まった感じがなく、日常会話でよく使われるが、意味が広いため文脈次第で「支払う」より不明確になる場合も起こる。 ひ支払う はらくだし【腹下し】下痢の意で、主に会話に使われる古風 な和語。〈出先でのーには参る〉下剤の意でも用いられ る。見下痢・Q腹下り パラソル はらくだり【腹下り】下痢の意で、主に会話に使われる古風 な和語。〈急にーを起こす〉、Q下痢・腹下し はらす ①他人が隠している欠点などをわざと周囲に知らせ る意で、くだけた会話に使う俗っぽい和語。〈乱れた私生活 をー〉〈世間にーぞ〉〈友達のカンニングを先生にー〉〈政 治家のスキャンダルをー〉〈指輪がイミテーションなのを ー〉「機械をー」「セットものをー・して売る」のように解 体して「ばらばら」にする意味から。「本をー」「時計をー」 「鮪きをー」のように分解・解体してばらばらにする意にも 使う。「殺す」意で「やつをー」と言うのもその延長か。「あ ばく」「すっぽぬく」に比べて、しばしば脅し文句に使われ ることもあって犯罪のにおいが伴う。夢暴く・Qすっぽ抜く・ 暴露 ②「殺害する」という発想でくだけた会話に使うこと のある俗語。〈おとなしくしないとーぞ〉〈一思いにー・し ちゃえ〉の人体をばらばらにするという発想から。「束を ー」のように本来は、まとまっているものをばらばらの状態 にする意。殺人の意をはっきりさせるために「バラす」と書 くこともある。夢Q殺す・殺害・殺人・殺戮・人殺し パラス道路や線路に敷くための小石や砂の集合をさし、会 話や軽い文章に使われる、やや専門的な感じの外来語の俗 っぽい省略形。ぺ泥道にーを敷く》「バラスト」から。 砂利 パラソル強い日差しを避けるための女性用の洋傘をさし、 会話にも文章にも使われる外来語。〈海岸に色とりどりの ーが見える〉「日傘」のうち、女性用で洋風のもの。太宰 治の短編『満願』は「簡単服を着た清潔な姿が、さっさっと <858> パラダイス 飛ぶようにして歩いていった。白いーをくるくるっとまわ した」という印象的な場面で終わる。乃日傘 パラダイス一切の悩みや苦しみや悲しみから解放された安 楽の世界をさして、会話にも文章にも使われる外来語。夢 のー〉(この世のー〉のもと、旧約聖書で、人類の祖である アダムとイブが住み、やがて禁断の木の実を食って神に追 放されたというエデンの園の意。専極楽・天国・O楽園 はらだち【腹立ち】「立腹」の意で、やや改まった会話や文章 に使われる、いくぶん古風な感じの和語。〈まぎれに〉 〈おーはごもっとる〉〈ーを抑える〉「怒り」が感情そのもの のなのに対し、この語や「立腹」は感情の変化に重点があ る。専怒り・Q立腹 はらっぱ【原っぽ】「原」の意で主にくだけた会話に使う和 語。〈一で野球をして遊ぶ〉〈裏のーを走りまわる〉北杜 夫の『幽霊』に「一の雑草のはく匂い」とある。原野・野・ 野原・野良・Q原 はらばい【腹這い】腹部を下にして体を伏せる意で、会話や 軽い文章に使われる和語。へになって雑誌を読む》「う つぶせ」と同じ姿勢。「あおむけ」と対立。りうつぶせ はらばら本来一つだったもの、同じであることが望ましい ものが別々でそろわない意で、会話や軽い文章に使われる 和語。〈品質がーでそろわない〉〈分解して部品をーにす る〉〈みんなの気持ちがーになる〉〈意見がーでまとまらな い〉大岡昇平の『俘虜記』に「大して疲れた様子もなく、 元気に笑って、中央道路からーに中隊地区に入って来る」と ある。ひちぐはぐ・不ぞろい・Qまちまち はらペこ【腹ペこ】極度に空腹の意で、くだけた会話に用い られる俗語。〈朝から何も口に入れていないのでーでぶっ倒 れそうだ〉の「ペこ」は「へこむ」ようすと関連か。「空腹」 や「空き腹」のうち、程度のひどい場合を連想させやすい。 ヌQ空腹・空き腹・ひだるい・ひもじい ばらまく【ばら撒(蒔)く】細かいものをばらばらに放り投げ る、めりはりをつけずに分け与える意で、会話や改まらな い文章に使われる和語。〈豆を—〉〈名刺を—〉〈コインを ー〉〈予算を—〉②「撒き散らす」と違い、水のように一つ ずつ分かれない対象には用いにくい。金銭などの場合は無 計画な感じが強く、マイナスイメージが伴いやすい。塩振り 撒く・Q撒き散らす はらむ【孕む】妊娠する意で、会話にも文章にも使われる、 やや古風な和語。〈子を—〉②「帆が風を—」「危険を—」の ような比喻的な用法も多い。懐胎・懐妊・受胎・妊娠・身籠も る・宿す はらわた【腸】主に動物の内臓をさし、会話やさほど改まら ない文章に使われる、やや古風な和語。〈魚のーを取り出 す)尾崎士郎の『人生劇場』に「秋の夜風がーにしみるよ うだ」とある。「ーが腐る」「ーがちぎれる」「ーが煮えくり 返る」のように比喻的な慣用句の中でよく使われ、その場 合はあまり古い感じがしない。五臓六腑・臓器・臓腑・Q臓 物・内臓・もつ はらん【波瀾】ものごとの起伏・変化の意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈ー含み〉〈ー万丈〉〈ひとー ありそうだ〉〈ーを巻き起こす〉〈ーに富んだ生涯〉②騒ぎ・ <859> もめごとの意では「波乱」で代用することもあるが、軽い感 じになる。本来は大波小波という起伏を意味するため、実 際の波をさす場合はその代用漢字を使わない。もめこと 悶着 パランス左右・前後・上下などの釣り合いをさして、会話に も文章にも使われる日常の外来語。「がとれている」へー が悪い〉へーを崩す〉へーを失う〉のよい食事」のよう に数量的な配分にも用いる。刂均衡・釣り合い・平衡 はり【針】縫ったり刺したりする金属製の細い道具の意で、 会話でも文章でも使われる日常生活の和語。〈縫いー〉〈一 に糸を通す〉〈注射のー〉〈時計のー〉の井伏鱒二の『本日 休診』に「ほんの小さな、毛のような細い細い白銀色のー」 とある。鍼 はり【鍼】鍼灸 師が治療に用いる道具をさし、会話でも文 章でも使われる和語。〈治療〉〈を打つ〉治療用でも 注射針は含まない。針 はりあい【張り合い】努力の甲斐があるという満足感をさし、 会話にも文章にも使われる和語。〈ーがある〉へーがないこ とおびただしい〉徳田秋声の『あらくれ』に「反抗するー がぬけたような気がして、何だか涙ぐましくなってきた」と ある。「あっけない」「物足りない」と対立。満悩満足 はりあう【張り合う】互いに負けまいと争う意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈ライバルとー〉り対立 はりがね【針金】丸く線状に伸ばした細い金属の紐をきして、 会話にも文章にも使われる日常の和語。〈一細工〉へ一を曲 げる〉へ一を巻きつける〉物をつないだり縛ったりする際 に用いる。ヵワイヤー はる ばりき【馬力】動力や仕事率を表す単位の意から精力的な力 をさし、会話や軽い文章に使われる漢語。「がある」「 を掛ける〉「を出す」「パワー」に比べ、ある一定の行 動に強い力が発揮される点に中心があるように感じられる。 ふカパワー はりつく【張(貼)り付く】物がぴったりとくつく意で、会 話やさほど硬くない文章に使われる和語。ぴたっとー 〈ひどい汗でシャツが背中にー〉林芙美子の『放浪記』に 「目も鼻も硝子窓に押しつけて、塩辛い干物のようにー・い て泣いていた」とある。「話題の大臣に報道陣がー」のよう に、人が人に離れずにつきまとう意の比喻的用法もある。 及Qくっつく・接着・引っ付く・付着 はる【張る】たるみがなく広がるなどの意で、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。根 をー〉〈氷がー〉〈値段がー〉〈障子をー〉〈胸をー〉〈意地 をー〉〈みえをー〉永井龍男の『風ふたたび』に「人の一 生の中にも、あの花火のように、ーりつめた一瞬があり得 るのだろうか」とある。ひ貼る はる【貼る】「張る」のうち、糊などでくつける意の部分を 特に区別する場合の古風な表記。ぺポスターをーヘヘアルパ ムに写真をーヘ⑩川端康成の『千羽鶴』に「手紙がとどいて ましたよ。切手のー・ってない」とある。弜張る はる【撲(張)る】平手で横に強く打つ意で、主として会話に 使われる、やや古い感じになりかけている和語。〈頬った を思い切りー〉〈懲らしめに一発ー〉夏目漱石の『坊っち <860> はる ゃん」に「無茶苦茶にーり飛ばしたり、ーり飛ばされた り」とある。「張り倒す」の語形は今でも普通に使われる。 拳骨でもよい「叩く」や「殴る」と違って、平手打ちに限 る。叩く・殴る・はたく・Qひっぱたく・ぶつ はる【春】冬と夏の間にあり、花が咲き新緑のもえる暖かい 季節をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な和語。〈|爛漫まん〉への訪れ〉へが来 る〉へまだ浅く〉へとは名ばかり〉柳田国男の『雪国 の春』に「昨日も今日も一つ調子の、長閑なーの日の久しく 続く国」とある。陰暦では立春の頃に新しい年を迎えるの で新春の意にも使うが、その用法は古風な感じを伴う。 スプリング ルコニー洋風建築の主として二階以上の部屋から外部に 張り出した、屋根のない手摺りつきの台の意で、会話にも 文章にも使われる外来語。〈ーに出て涼む〉、テラス・ペラン ダ・露台 はるさめ【春雨】春の細かい雨をさし、やや改まった会話か ら文章まで広く使われるやわらかい感じの和語。「がし としとと降る〉〈けむるような」〈にぬれる〉岡本か の子の『花は勁し』に「生毛のように柔く短く截れて降る 」とある。伝統的に、けむるように細かくしとしとと降 る春の弱い雨をさし、日本人の季節感と深く結びついて季 語となっている。新国劇の行友李風の戯曲で月形半平太が 「じゃ、濡れて行こう」という粋な文句が吐けたのも、そ んな典型的な春雨だったからで、いくら春でも、はげしく 叩きつけるような大粒の雨だったら、河童や蛙ででもない かぎり、そんな優雅な気分にひたっていたら風邪を引く。 「春の雨」との違いは明確な語義の差というより、この語に しみついたそういうやわらかな語感の違いなのである。 雨 ばれいしよ【馬鈴薯】「じゃがいも」の意で、今では主として 文章に使われる、やや古風で硬い感じの表現。へーを薄く切 っていためる)賑鈴のように芋が生る形の連想からと る。Qじゃが芋・ジャガタラ芋 ボルネトを挟んで六(九)人ずつの組ボルを 床に落とさずに打ち合う球技をさす外来語現代の標準的 な呼称古くは「排球」とも称したが縦の時間差攻撃とか リペロとかという語とはなじまない。「でセッターを務め る」専排球 はれぎ【晴れ着】晴れの場所に着て行く衣装の意で、会話に も文章にも使われる和語。〈—姿〉〈正月用の—に袖を通 す〉の「普段着」に対する語。刂余所行き はれつ【破裂】内側から強い圧力を受けて破れ裂ける意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈水道管がーする〉〈爆弾 がーする〉比喩的に「ヒステリーがーする」などとも言 う。「談判がーする」の形で決裂の意を表す用法は古めかし い響きがある。刂炸裂・Q爆発 はればれ【晴れ晴れ】心のわだかまりが消えてすっきりする 意で、会話にも文章にも使う和語。〈ーとした顔つき〉心 がーとする》志賀直哉の『暗夜行路』に「雨の上がった戸 外の空気に触れると、急に気分のーしたのを感じた」とあ る。きっぱり・Qすかっと・すっきり・清々 <861> はれもの【腫れ物】炎症を起こして皮膚の一部が腫れた物の 意で、会話にも文章にも使われる和語。〈首の—〉〈胃に— ができる〉「出来物」よりいくらか悪性の連想が働きやす い。「に触るよう」として、こわごわ扱う意を表す比喻的 慣用表現もある。ひおでき・Q腫物と腫瘍・出来物・肉腫 「れる【腫(脹)れる】打撲や病気・炎症などで体の一部分がふ くれあがる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる和語。〈瞼まがー〉〈虫に刺された所がー〉夏目漱 石の「坊っちゃん」に「顔はいくらー・れたって、口は慥か にきけますから、授業に差し支えません」とある。ひむくむ はれるひそかにやったことや隠していたことが他人に知ら れる意で、主にくだけた会話に使われる俗っぽい和語。へい たずらがー〉へそくりがー〉〈使い込みがー〉〈妻子のい ることがー〉〈浮気がー〉露見」や「発覚」に比べ、犯 罪や悪事というほどでもない比較的些細な事柄について 多く使う傾向がある。Q発覚・露見 はれんち【破廉恥】恥を恥とも思わず平気で行う意で、会話 にも文章にも使われる、やや古風な漢語表現。〈な行為〉 〈きわまる〉〈なまねをする〉永井荷風の『かし間の 女』に「僕は女を人に取持って、それでどうこうしようと云 うようなな男じゃない」とある。特に道徳に反する、人 道にもとる行為について使い、軽い文章では時に片仮名表 記の例も見かける。「恥知らず」より強烈な響きがある。 厚かましい・厚顔無恥・図々しい・鉄面皮・恥曝し・Q恥知らず はろう【波浪】主に海面に生じる大小の波をさし、改まった 会話や文章に用いられる専門的な硬い漢語。〈注意報〉 ばん 注意報や警報の際に用いられる用語であるため、大きな高 い波を連想しやすいが、地震などによる海底の地殻変動と ともに生ずる津波は含まないという。「波濤」ほどのスケ ールは感じさせない。荳波・波・Q波濤 パワー人の肉体的な力や機械などの動力の強さをさし、会 話や軽い文章に使われる外来語。〈全開〉〈ーがある〉 〈ーにあふれる〉〈持ち前のーを発揮する〉の「馬力」と違 い、「住民ー」のような抽象的な力をさす用法もある。ま た、「馬力」に比べ、瞬間的な力より持続する力強さに重点 がある感じがする。力・馬力 ばわい【場合】「ばあい」の訛りで、高齢者を連想させる古 くさい響きがある。込ばあい・Qばやい はん【判】「印鑑」の意で、主として会話によく使われる日常 漢語。「がついてあれば有効」の「はんこ」ほどくだけて いない。三島由紀夫の『仮面の告白』に「(逢瀬は)ーで押し たようなものにすぎなかった」とあるように、変化のない意 の比喻的慣用表現もある。刂印・印鑑・印形・印章・印判・Qは んこ はん【班】集団をいくつかに区分した際の一つをさし、会 話でも文章でも広く使われる日常の漢語。〈救護〉へ各ー の報告〉の野間宏の『真空地帯』に「内は全て陰うつで残 忍な洞窟のよう」とある。自然にできあがる感じの「グル ープ」に比べ、組織の上の者の指示によってきめられ、作業 内容も与えられる場合が多く、遊びなどの楽しい活動が少 ないような印象がある。ヲグループ ばん【晩】夜全体、または、夕方以降で夜の更けないうちを <862> ばん さし、会話にも文章にも使われる漢語。へきのうのー〉何 とかーまでには仕上げる〉〈朝からーまで立ち通しだ〉夏 目漱石の『坊っちゃん』に「其ーは久し振に蕎麦を食ったの で、旨かったから天麩羅を四杯平げた」とある。「きのうの ーは一睡もしていない」のように、夜全体をさす例もある。 「朝」と対立する場合と「朝」「昼」と対立する場合とがあ る。なお、「ーの支度」のようにそれだけで間接的に「晩 飯」を暗示する用法もあるが、「お昼」の場合と違い、単独 では食事をささない。ひ晩方・夜間・夜分・夕・夕方・夕刻・夕べ・Q 宵・夜 ぼん【番】ものの順序をさし、会話にも文章にも使われる日 常の漢語。〈ーを待つ〉〈自分のーになる〉へーがなかなか 回って来ない〉横光利一の『機械』に「今度は自分が他人 を疑うーになった」とある。「順番」と違い、「店のーをす る」のように、見張りの意にも使う。単順番 はんい【範囲】空間的・時間的などに制限された内側の広さを さし、会話にも文章にも幅広く使われる日常の漢語。〈試験 〉〈交際〉〈内におさまる〉〈を逸脱する〉〈知って いるーで答える〉〈が狭い〉国の領域」地球物理学 の領域」のように使う「領域」と違い、区切られた広がりの 共通性や専門性という条件が特にない。領域・枠 はんえい【反映】光が反射して物に映る意で、主に文章に用 いられる漢語。〈夕日が窓ガラスに—する〉近くの物がそ の色を帯びて見えるところから、他の影響を受ける意に広 がり、「世相を—する」「国民性の—」「要望を—した妥協 案」のように、視覚よりもむしろその抽象化した用法でよ く使われる。ノノノ照り返し・反射 はんえい【繁栄】「栄える」意で、会話にも文章にも使われる 漢語。〈会のーに尽くす〉〈ーを招く〉〈ーを誇る〉永井荷 風の『澤東綺譚』に「この土地のーはますます盛になり」と ある。ひQ栄える・発展・繁盛 はんか【繁華】街などが栄えていて人通りが多く賑やかな意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈街〉 〈な通り〉「賑やか」と違って騒音などには無関係で、 その状態や機能は長期間継続する感じが強く、繁華街は人 通りが絶えて賑やかでなくなった深夜でも依然として繁華 街であり続ける。賑やか ハンガー洋服などを掛けたり吊したりするための道具を さし、会話にも文章にも使われる外来語。〈ーにつるす〉 「衣桁が」や「衣紋掛かけ」と違い洋風の感じが強く、針金 状のものの連想もある。専衣桁・Q衣紋掛け はんかがい【繁華街】商店や飲食店などの立ち並ぶにぎやか な通りをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈市きって のーで人通りが激しい〉軟楽街・Q盛り場 はんがく【半額】決まった金額の半分の意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈—料金〉〈—支払う〉〈通常の料金の ーで済む〉ひ半値 ばんがた【晩方】日が暮れたばかりの頃をさし、主として会 話に使われた、やや古い感じのことば。「になってから友 人を訪ねる〉(一になると急に冷えてくる)日が西に傾く 時刻よりも後の、日が沈むときからしばらくの間の時間帯 をさす。Q暮れ方・たそがれ・薄暮・日暮れ・灯ともし頃・タ・タ <863> 方・夕暮れ・夕刻・夕べ・夕間暮れ・宵・宵の口 ハンカチ 手を拭くための小さな四角の布をさす外来語。 〈見送りにーを振る〉〈ーで手を拭く〉〈ボケットにーをし のばせる〉②林芙美子の『松葉牡丹』に「娘の置き忘れた青 いーが卓の上にあじさいの花のように見えた」とある。近 年、汗を拭くのが「ハンカチ」で、涙を拭くのが「ハンケチ」 だとする俗な用法を耳にする。タオル・手拭い・Qハンケチ はんかつう【半可通】よく知りもしないのにいかにもよく知 っているようにふるまう意で、会話にも文章にも使われる 古風な漢語。〈ーを並べる〉〈ーをふりまわす〉②夏目漱石 の『吾輩は猫である』に「その言語動作が普通のーのごと く、文切り形のいやみを帯びてない」とある。単なる知った かぶりよりも、その道の通ぶって偉そうにする連想が強い。 知ったかぶり はんカラ【蛮カラ】身なりや言動の粗野な意を表す古めかし い俗語。〈ー学生〉の学ランの上のボタンをはずし、腰手拭 に朴歯はの高下駄をつっかけた往時の姿を髪髴とさせる ことば。「野蛮」の「蛮」に粗野という意味を託し、当時は やった「ハイカラ」ということばに語呂を合わせた造語。風 采や言動の粗野な人間は男に限らないし、勇壮活発な女子 学生がわざと汚い格好をてらってキャンパスを闘歩。する 姿も散見する。それでも彼らにこの語をあてはめにくいの は、語の意味のせいではなく、かつて「ばんカラ」という語 で形容されてきた人間がことごとく男子であったという歴 史的な事情が性別の語感として反映しているからである。 Q粗野・野蛮 ばんぐみ パンガローキャンプ場などに設けられる簡易小屋をさし、 会話にも文章にも使われる外来語。〈ーが点在する〉のも と、正面にペランダの付いたインドのペンガル地方独特の 平屋住宅。ひコテージ・山荘・山房・ヒュッテ・Q山小屋・ロッジ はんかん【反感】相手のやり方や時にはその存在に対して悪 感情を持ち、それに反発・反抗したい気持ちをさし、会話に も文章にも使われる漢語。へを覚える〉へを抱く〉へ相 手のーを買う)志賀直哉の『暗夜行路』に「猫背のなんと なく見すぼらしい老人だった。私はなんという事なくそれ にーを持った」とある。単憎悪・Q敵意・敵愾心・憎しみ はんきょう【反響】声や音が物体に当たって跳ね返ってくる 現象をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈壁にーす る〉〈声がーして話が聴き取りにくい〉物理現象としてと らえた感じが強く、「こだま」や「やまびこ」のような神秘 的な感じはなく、少し専門的に響く。「番組を放映したが思 ったほどのーがない」のように、反応や影響といった意味合 いの比喻的用法も多く、「大きなーがあった」のような両方 の解釈が可能な例もある。ひエコー・こだま・Q残響・山彦 パンクタイヤのチニーブが破れる意の英語の日本的短縮形。 〈自転車の後輪が—する〉の「パンクチャー」の略。「財政が —する」のように、使い過ぎて機能しなくなる意の比喻的 用法もある。 ばんぐみ【番組】放送などの組み合わせや順番などをきめた ブログラムをさし、会話にも文章にも広く使われる語。〈教 養ー〉〈報道ー〉〈特集ー〉〈ーを編成する〉庄野潤三の 「タペの雲」に「そのーを見ない木曜日の晩というのは考え <864> はんげき られないような気がする」とある。↓演目・出し物 はんげき【反撃】攻めて来た相手に逆に攻め返す意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈開始〉〈ーに出る〉〈ーに 転ずる〉の「逆襲」に比べ、攻められて被害があったかどう かを問題にせず、どの段階かで攻撃に転じたことに重点を 置く表現。ひ逆襲 ハンケチ「ハンカチ」の古い言い方。そっとーで目をぬぐ う)芥川龍之介の『手巾』「膝の上のーを、両手で裂かな いばかりに緊く握っている」とある。夢タオル・手拭い・ハン カチ はんけつ【判決】口頭弁論などを経て裁判所が言い渡す最終 判断をさし、会話にも文章にも用いられるやや専門的な漢 語。「文を読み上げる〉(ーが下る)「一審のーをくつが えす)刂判例 はんこ【判子】「印鑑」の意で、主としてくだけた会話によく 使われる日常語。〈ーをつく前に契約内容をよく読む〉(う っかりーをついてしまう》漢字表記はまれで、しばしば 片仮名で書かれる。三笠宮崇仁の「円筒印章の話」でも「お 役所ともなればすべての流れ作業がこのーを原動力として 動いていく」と片仮名表記で出る。単印・印鑑・印形・印章 印判・Q判 はんご【反語】伝えたい真意とは逆の意味のことぼを発し、 場面や文脈との違和感などをヒントに、その言語的な意味 とは正反対の真意を感じ取らせる表現法をさし、会話にも 文章にも使われる、やや専門的な漢語。「を駆使して皮肉 ぼくつぶやく」「ばか」を「おめでたい人」「死ぬ」を 「おめでたくなる」と言うような類野坂昭如の『殺さない で」に「顔に泥ぬられたやて、えらいすまなんだな、立派な 顔に泥塗って。洗うたるわな」という例があり、一見やさし そうな表現の雰囲気がかえって凄けみを感じさせる。なお、 「あれは人を見下した態度ではないか」という否定の形で問 いかけ、相手が「まさに人を見下した態度だ」と肯定的に思 うように導く修辞的な疑問表現を「反語」と言うこともあ る。ひアイロニー はんこう【反抗】上位者や強力な対象に素直に従わず寧ろ敵 対する態度をとる意で、会話にも文章にも使われる漢語。 「期」子供が親に「する」(むらむらと心がわく)上 司に対して」的な態度をとる》夏目漱石の『明暗』に「自 分の立場をいやがるのが、結局自分をいやがるのと同じ事 に帰着してくるので、彼女はそこに」の意地を出したくな った」とある。「反発」ほどではないが「抵抗」より積極的。 刂抵抗・敵対・Q反発 ばんごはん【晩御飯】夕方から晩にかけての食事の意で、会 話や軽い文章に使われる、少し丁寧な日常語。「に麺類で は物足りない)毎ディナー・晩餐・Q晩飯・夕御飯・夕食・タはん・ タめし はんざい【犯罪】罪を犯す意で、会話にも文章にも使われる、 いくぷん専門的な感じの基本的な漢語。〈戦争一人〉完全 ー〉へ行為に相当する〉へーを犯す)法律用語としては、 刑罰を科せられる行為に限定。Q罪科・罪過・罪・とが はんざいしゃ【犯罪者】「犯人」の意で改まった会話や文章に 用いられる硬い漢語。〈1の心理〉まるで扱いだ <865> 「犯人」と違い、重々しい響きがあるため、いたずらのような軽いものには用いない。ひくろ②・犯罪人・犯人 はんざいにん【犯罪人】「犯罪者」の意で改まった会話や文章 に用いられる正式な感じの漢語。〈戦争—〉「犯罪者」に は個人的な感情が働くことがあるが、この語は事務的で客 観的で冷ややかな感じもある。ひくろ②・犯罪者・Q犯人 はんざつ【煩難】複雑で煩わしい意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈一な規定〉〈一な手続き〉〈一な 仕組み〉広津和郎の『神経病時代』に「刺戦の多いーな生 活」とある。専繁雑 はんざつ【繁雑】事柄が多過ぎてごたごたする意で、主に文 章に用いられる漢語。〈窓口がーを極める〉石川達三の 『結婚の生態』に「日常のーな雑多な事務」とある。須雑 ハンサム男性の顔立ちのよいことをさし、会話や硬くない 文章に使われるいくぶん古風になりかけている外来語。 「ーボーイ」へーで通る男性に関する評価で人自体はさ さない。ひいけめん・男前・好男子・美男子 ばんさん【晚餐】改まった晩御飯の意で、主に文章に用いられる硬い漢語。〈宮中—会〉のイエス・キリストの「最後の 」が有名。一般には豪華な食事の連想がある。Qディナ ー・晩御飯・晩飯・夕御飯・夕食・夕はん・夕めし はんじ【判事】裁判官の官名の一種をさし、法律関係の話題 の会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈最高裁のーを 務める〉の判事だけだった旧制度のなごりで、俗にすべての 裁判官をさして使うこともある。乃裁判官 はんしゃ【反射】光・音・電波などが物に当たって跳ね返す意 はんぜん で、会話にも文章にも使われる漢語。「光」「鏡」「光が してまぶしい》三島由紀夫の『金閣寺』に「西日は池水 のーを、各層の庇の裏側にゆらめかせていた」とある。「条 件」「神経」「的に答える」のように、意志や意識と 無関係に、刺激に対して瞬間的に応じる意味でも使われる。 Q照り返し・反映 はんじょう【繁盛(昌】商店などが栄えて賑わう意で、会話 にも文章にも使われる日常の漢語。〈商売ー疑いなし〉〈店 がーする〉専栄える・発展・Q繁栄 はんする【反する】命令・約束事・常識・理屈・期待などの反対 になる意で、改まった会話や文章に用いられるやや硬い感 じの語。〈指示に—〉〈約束に—〉〈規則に—〉〈論理に—〉 〈趣旨に—〉〈国益に—〉〈礼儀に—〉〈大方の予想に—結 果〉Q裏切る・背く はんせい【反省】自分の言動や態度などを振り返って悪かっ た点を改めようとする意で、会話にも文章にも使われる日 常の漢語。〈材料〉ぐ深くーする〉〜の弁を述べる〜《責 任者のーを促す》〈過ちをーして出直す》堀田善衛の『広 場の孤独』に「背筋にある冷たいものの流れるようなー」と ある。専省みる・後悔・Q自省・内省 ばんせい【蛮声】下品で野蛮な声をさし、多く文章に用いられる古風な漢語。〈ーをふるう〉太宰治の「人間失格」に「雷の如きーを張り上げる」とある。ひ奇声・Q胴間声・悲鳴はんぜん【判然】はっきりわかる意で、改まった会話や文章に用いられる、やや古風な漢語。〈意図がーとしない〉〈論旨がーとしない〉夏目漱石の『虞美人草』の冒頭に、登山 <866> ハンセンびょう 口を探しながら「何処己かにもせんがね」と言う場面 がある。このように「する」をつけて動詞にする用法は今 では古めかしい感じが強い。明晰・明白・Q明瞭・歴然 ハンセンびょう【ハンセン病】癩菌によって引き起こされる 慢性の感染症をさし、会話にも文章にも使われる表現。へー の化学療法》「ハンセン氏病」ともいう。ふらい病 はんそう【搬送】重い物や貴重な物などを目的の場所まで運 んで送り届ける意で、改まった会話や文章に用いられる専 門的な感じの漢語。〈ピアノ—業〉〈絵画を美術館まで—す る〉、Q運送・運搬・運ぶ・輸送 はんそくきん【反則金】規則に違反した者に支払わせる金銭 をさし、会話にも文章にも使われる漢語。「を取られる Q違約金・罰金 はんたい【反対】「逆」の意で、くだけた会話から文章まで幅 広く使われる日常の漢語。〈正〉〈の側〉〈の方向〉 〈持ち方がだ〉〈それとの考え方もありうる〉の「の 立場」「の考え方」あたりまでは「逆」とも言えるが、こ の語はさらに「意見を述べる」「の意思表示をする」 「案に」「のように、「賛成」と対立する用法まで広が り、その場合は「逆」「さかさま」「あべこべ」などに置き換 えられない。夏目漱石の「坊ちゃん」にも「私は徹頭徹尾 「です」とある。あべこべ・Q逆・さかさ・さかさま・倒錯 はんだい【飯台】「ちゃぶ台」をさす古風な呼称。へーの前に 並ぶ)食卓・Qちゃぶ台・テーブル はんだん【判断】ものごとの真偽・善悪・美醜などの評価を定 め考えをまとめることをさし、会話にも文章にも広く使わ れる基本的な漢語。〈適切な—〉〈ーを下す〉〈ーを誤る〉 〈難しいーを迫られる〉〈ー材料〉〈ーがつかない〉中山義 秀の『醜の花』に「ーの針を狂わされたように混乱した」と ある。刂判定 ばんちゃ【番茶】摘み残りの茶葉でつくる品質の劣る煎茶を さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈熱いーをすする〉 〈ーも出花はうまい〉太宰治の『富嶽百景』に「どてらを 二枚かさねて着て、茶店の椅子に腰かけて、熱いーを啜って いたら」とあるように、「熱いーをすする」の形でよく使 う。马上がり・お茶・玉露・煎茶・茶・日本茶・碾のき茶・Q焙じ茶・抹 茶・緑茶 ハンチング「鳥打帽」の意で会話にも文章にも使われる外来 語。〈ーをあみだにかぶる〉鳥打帽 パンツ「ズボン」の意味では近年、若年層を中心に使われて いる斬新な感じの外来語の呼称で、男性用・女性用ともに使 われる。〈トレーニング〉〈赤いブラウスにピンクのーで きめる〉②下穿きの意味では伝統的な語で、男性用では 今でも、さるまた・ブリーフ・トランクスの総称として一般 的に広く使われる。女性でも家庭内の日常会話などではま だ使う。ひショーツ・Qズボン・スラックス・ズロース・パンティー はんてい【判定】よく見分けて決定することをさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈ーに従う〉へをくつがえす〉 〈ーを不服とする〉スポーツなどでよく使われる。質的に 幅のある「判断」に比べ、ニュアンスを切り捨て「ーはアウ ト」「B」のように大なたをふるう感じがある。刂判断 パンティー女性用の短いおしゃれな下穿きを意味する外 <867> 来語。女性のふつうの言い方だったが、近年「ショーツ」が 優勢になりつつある。〈おしゃれなー〉幸田文の『流れ る』に「若い娘らしく薄桃色のーが股を刳りぬいている が、胴はわりあいにずぼらんと太い」とある。ひショーツ・ズ ロースパンツ ぶンド「ペルト」の古風な言い方。〈鰐革ののーを贈られる〉 小津安二郎監督の映画『秋刀魚の味』(一九六二年)のシ ナリオに「三浦はーをゆるめる」とある。「パンド」という と今ではすぐに軽音楽の楽団を連想しやすい。弔革帯 ハンドバッグ女性用の小型の手提げ鞄をさし、会話にも文 章にも使われる外来語。〈鰐革のー〉〈ーを抱える〉 手 提げ・Qバッグ ハンドボール二チームに分かれ、互いにポールを相手方の ゴールに投げ込む回数を競う球技をさす外来語。標準的な 呼称だが、文章中では「送球」と書くこともある。込送球 ハンドル自動車などで方向などを手で操作する器具をさす 和製英語。〈ーを握る〉〈ー操作を誤る〉最近は「パワー ステアリング」のくるまが一般的になり、「パワステ」と短 縮しても使われるが、「ステアリング」を単独で用いるとま だ気障な感じは避けられない。 はんにゃとう【般若湯】「酒」をさす僧侶の隠語。顔じ葉 めかした造語かという。清酒・Q日本酒 はんにん【犯人】事件などで犯罪行為をなした人間をさし、 会話にも文章にも幅広く使われる日常の漢語。〈真ー〉〈一 検挙〉へがつかまる〉へが自首する〉の犯罪者」「犯罪 人」ほど大仰な感じがなくちょっとしたいたずらなどの場 はんぷく 合にも軽い感じで使う。木山捷平の『大陸の細道』に「がば とはね起き、脱走ーか何かのように、改札口目がけて走り 出した」とある。ひくろ②・犯罪者・犯罪人 はんね【半値】定価の半分の値段の意で、会話にも文章にも 使われるいくぶん古風な表現。〈市価の—で買う〉へいつも の—以下の安さ〉②数量的な存在の「半額」に対し、数値を 示すだけなので、「値段」と同様、それを「支払う」という 用法はない。ひ半額 ばんねん【晩年】その人の生涯の末期をさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈一の作品〉〈一は人間として円熟し た〉〈不幸なーを過ごす〉高田保の『若芽の雨』に「学問 をしなかったから、一の画は駄目になった」とある。通常は 死去する前の数年間をさし、三十代以上であれば年齢には 無関係。ちなみに、太宰治は第一創作集に『晩年』というタ イトルを選んだ。老後 はんぱく【反駁】相手の意見に反対し論難する意で、主に文 章に用いられる硬い漢語。〈ーを加える〉〈出された意見に 激しくーする〉反論 はんばつ【反発(撥)】動きや考え方に抵抗して逆方向に働き かける意で、会話にも文章にも使われる漢語。「は必至 だ》〈国民のーを買う〉〈マーケットのーを招く〉〈政府案に はーを覚える〉の「力」のように、原義は圧迫を受けて逆 に跳ね返す意。抵抗・敵対・Q反抗 はんぷく【反覆(復)】同じことをたびたび繰り返す意で、い くぶん改まった会話や文章に使われる漢語。〈ー練習〉何 度もーして覚える〉の「繰り返す」に比べ、三度以上に及ぶ <868> はんべっ 連想が働きやすい。なお「同じ失敗を繰り返す」のよう に、意図的でなく結果として起こる場合はこの語を用いに くい。ひ繰り返す はんべつ【判別】他のものとの違いを認識し区別する意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈不能〉(曰くと 日との漢字のーが難しい)鑑識・鑑定・鑑別・区別・識別・Q弁 別・見分け ばんめし【晩飯】夕方から晩にかけての食事の意で、主にく だけた会話や軽い文章に主として男性の使う日常語。へー のあとで腹ごなしに散歩に出る》ヲディナー・晩御飯・晩餐 タ御飯・夕食・タはん・Qタめし はんめん【反面】反対の側面の意で、会話でも文章でも使わ れる漢語。〈嬉しいー寂しくもある〉〈便利なー不経済で もある〉真似たくない悪い見本を意味する「ー教師」と いう用法は毛沢東を連想させ、一時期盛んに使われた。 半面 はんめん【半面】別のある面の意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈一の真理〉〈一その指摘は当たってい る〉「コートのーを使用する」のように、具体的な面の半 分の意で使う場合はくだけた会話でも用いられる。反面 はんもく【反目】憎んで対立する意として、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈互いにーし合っている〉〈長 い間ーし合ってきた国の間に交流が再開する〉もと、睨 み合う意とされるが、「仲違い」と違って、個人と個人との 間に限らず、家と家、学校と学校、会社と会社、宗教と宗 教、国家と国家などさまざまなレベルで使う。専仲違い・不 仲·Q不和 はんもと【版(板)元】書籍や雑誌の発行所をさし、会話にも 文章にも使われる専門的な表現。「に問い合わせる〉(一 に若干の残部がある)「出版元」の略。「版」はもと文字 や図形を彫った板、それを印刷して書物を造る意。Q出版 社・書肆書店・書房・本屋 はもん【煩悶】解決する方法が見当たらず心で思い悩み苦 しむ意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈日々ー が絶えない〉〈ひとりーする夜が続く〉〈問題を抱えてーす る〉〈痛烈に非難し過ぎた自分の行為にーする〉②二葉亭四 迷の『平凡』に「私は接近が出来ないで此様なにーしてい るのに、隣の俗物は苦もなく日増しに女に親しむ様子で」 とあり、井伏鱒二の『槌ツァ」と「九郎治ツァン」は喧嘩 して私は用語について煩悶すること』に「私はーした。地 球が逆に廻転するような大異変でも起らないかぎり、「カ カサン」という用語など断じて復活しないだろう」とある。 専懊悩・思い悩む・Q思い煩う・苦痛・苦悩・Q苦悶・苦しみ・悩み・悩 む・悶える・憂悶 はんらん【反(叛)乱】自分の所属する組織に背いて攻撃を仕掛ける意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈軍〉へーを起こす〉〈ーを鎮圧する〉単なる「暴動」と 違い、一般には軍の組織やその一部が引き起こす場合で、 大きくなれば内乱に発展する。騒乱・Q暴動 はんらん【氾濫】川の水が溢れ出して洪水を引き起こす意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈川がーしそう〉〈河 川のーを警戒する〉の「街に車がーする」「部屋に英語がー <869> する」のような比喩的な用法も少なくない。徳永直の『太 陽のない街』に「失業者は、驟雨を喰った河水のように都市 に農村にした」とあるのもその例。大水・Q洪水・出水・水 害 はんりよ【伴侶】「仲間」という意味で間接的に夫や妻をさす 古風で改まった漢語。〈よきーを得る〉島崎藤村の『飯倉 だより』に「終生の好いー」とある。いえの者・うちの者・お 上さん・奥方・奥様・奥さん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・妻・女 房・Qベターハーフ・令閨・令室・令夫人・ワイフ はんれい【判例】判決の実例をさし、改まった会話や文章に 用いられる専門的な漢語。〈集〉〈過去のーに照らして判 断する〉刂判決 はんろん【反論】相手の主張に対して反対する議論をさし、 会話にも文章にも使われるやや硬い漢語。〈真っ向からーす る〉へーが出る〉へーの余地がない〉及数 ひ ひ【日(陽)】「太陽」や「日光」をさして、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「の 入り〉(が出る)「が暮れる〉(が沈む)「に当た る〉(に焼ける)林芙美子の『うず潮』に「秋のーはつ るべ落しで、黄ばんだーが白く乾き」とある。「が長い」 「が短くなる」では日の出から日の入りまでの昼間の時 間、「を重ねる」「が経つ」「もうがない」では日数、 「約束の」ではある特定の一日、「若き」の思い出」では 過去のある時期をさすなど、幅広い意味で使う。お天道 様・お日様・Q太陽・日輪 ひ【比】あるものと他のものとの割合を示し、会話にも文章 にも使われる漢語。〈AとBとのーを求める〉〈Aに対する Bのーを計算する〉②「比率」と違い、「寒さは北海道のー でない」のように、比べても意味がないほど大差がある意 にも用いる。Q比率・比例・割合 【灯】照明用の光の意で、主に文章に用いられる、いくぶ ん趣を感じさせる和語。〈街の—〉〈ーをともす〉〈館内に ーが入る〉〈赤い—青い—が川面に映える〉志賀直哉の 『城の崎にて』の末尾近くに「遠く町端れの—が見えた」と あり、心理を背景とした情景描写となっている。「青い— 赤い—が美しく川面に映える」のように、特にネオンの明 かりをさす場合もある。漢字表記は「あかり」との区別が <870> ひあい 難しく、仮名書きでは読みにくい。あかり・灯火ともし火 ひあい【悲哀】悲しく哀れな意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈人生のーを感じる〉へーをなめる〉田山 花袋の『蒲団』に「此のーは華やかな青春のーでもなく、単 に男女の恋の上のーでもなく、人生の最奥に秘んで居るあ る大きなーだ」とあり、庄野潤三の『佐藤春夫』に「父の夢 を叶えられなかったことへの、心の負い目というものが語 られていて、かすかなーの情を漂わせる」とある。Q哀 感・哀愁・うら悲しい・悲しさ・Q悲しみ・傷心・悲痛・ペーソス・憂愁 ひいき【最圓】気に入った人やチームや店などに特別目をか け、他よりも大事に扱う意で、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる漢語。〈力士〉へいつもーにしている 店〉〈毎度御ーにあずかる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「母は兄ばかりーにしていた」とあるが、特に大事にしたり 応援したりするところに重点があり、「えこひいき」に比べ て不公平感に対する非難のニュアンスは弱い。Q依怙帰 圓得意③・偏愛・身帰圓・分け隔て ピーシー【PC】近年目立ってきた「パソコン」の省略形。 へーを使ってインターネットで調べる)のかなり普及しつつ あり、特に専門語とも俗語とも感じられない。パーソナル コンピューター・Qパソコン ひいでる【秀でる】抜きん出て優れている意で、改まった会 話や文章に用いられる和語。〈学業にー〉へ一芸にー〉の 「眉がー・でた青年」のように、くっきりと目立つ意に使う場 合は古風に響く。ひ優れる ピーナツ「落花生」の実を煎ったものをさす、現代では最も ふつうの日常の外来語。ただし、「ピーナッツ」の語形は古 風。〈バター〉〈ーをつまみにピールを飲む〉き南京豆・Q落 花生 ひうん【非運】運に恵まれない意で、主として文章に用いられる硬い漢語。へーの名将〉〈わが身のーを嘆く〉Q悲運不運 ひうん【悲運】不幸で悲しい運命の意で、主に文章に用いられる漢語。〈ーに泣く〉〈ーに見舞われる〉ひQ非運・不運 ひえこむ【冷え込む】寒さが増して冷たく感じられる意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈明け方はめっきりー〉 今夜は一段とー〉室内が心地よく「冷える」ことはある が、「冷え込む」となると冷えすぎて寒く感じられるよう に、客観的な「冷える」に比べ、その低温が予測や常識を超 えて不快感をよぶ感じが伴う。冷える ひえる【冷える】温度が下がって寒く、または、冷たく感じ る意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる和語。 〈朝夕はー〉〈よくー・えた西瓜ふ〉〈体がー〉村上春樹の 「遠い太鼓」に「目の奥が痛くなるくらいよくー・えたピー ルである」とあるように快感ともなる点で「冷え込む」と違 う。ひQ冷める・冷え込む ひがい【被害】損害を受ける意で、会話にも文章にも広く使 われる日常の漢語。〈ー者〉〈ー総額〉〈盗難のーに遭う〉 〈大きなーが出る〉の「遭難」や「罹災い」を含めた総称。 「ーを」の次に「受ける」「こうむる」が続くと「被」との重 複感が気になる。ひ遭難・Q罹災 ひがいしゃ【被害者】危害や損害を受けた人をさし、幅広く <871> 使われる標準的な漢語。〈一の身元を割り出す〉へとの示 談が成立する〉の「加害者」と対立。ひがいしゃ・ ひかえしつ【控え室】招かれた特定の人が会の始まりや自分 の出番を待つための部屋をさし、会話にも文章にも使われ る表現。〈講師—〉〈親戚一同が—で婚礼の始まるのを待 つ〉の「待合室」に比べ、晴れがましい雰囲気の場が多い。 ただし、かしこまった感じの「控える」を避けるためか、私 立大学などでは近年、「教員」に「ロピー」や「ラウンジ」 をつけたやわらかい表現に切り替える試みが目立つ。 合室 ひかえる【控える】①見合わせる意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈激しい運動を—〉〈公表を—〉の酒もタパ コも—」のように一切やらないというニュアンスで用いる 場合と、「塩分を—」のように少量にとどめる場合とがあ る。「隣の部屋に—」「背後に山を—」「大会を間近に—」な ど、「差し控える」にはない多様な用法がある。夏目漱石の 「坊っちゃん」に「今日の主人公だと云うのでうらなり先生、 是も日本服でー・えて居る」とある。Q差し控える・慎む ②メモ程度に書きとめる意で、会話にも文章にも使われる、 やや古風な和語。〈約束の日時を手帳に—〉の書き入れる・書 き込む・書き付ける・Q書き留める・記入 ひかく【比較】「比べる」ことをさして、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ー検討する〉(スピードをーする)〈昨年の 同時期とーする〉〈海外とーする〉②日常的な「比べる」に 比べてやや正式な感じがあり、数字を用いたりデータを調 べたりする場合によく用いる傾向がある。Q比べる・比す ひかる ひかげ【日陰(蔭)】物の陰になって日ざしが届かない場所の 意で、会話でも文章でも広く使われる和語。〈一になる〉 〈一で休む〉〈一に入ると涼しい〉②相馬泰三の『六月』に 「一と日の照るところとが鬼ごっこでもしているように走り 動いていた」とある。月日影 る ひかげ【日影】日ざしの意で、主に文章に用いられる、古風 で少し詩的な和語。ふららかな春のー〉へ雲の切れ間から ーが漏れる)夏目漱石の『草枕』に「春のーは一面に射し 込んで」とある。日陰 ひがさ【日傘】直射日光を避けるための傘をさし、会話にも 文章にも使われる和語。〈絵—〉へーを広げる)洋風の傘 も含まれるが、「パラソル」という語が別にあるため、この 語は和風の傘を連想させやすい。パラソル ひがむ【僻む】心がねじけて物事を素直にとらえず悪く解釈 する意で、会話にも文章にも使われる和語。〈自分だけ置い て行かれてー〉へいつまでも出世できずにー〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「ー・んで、そう聞くんだ」とある。Qす ねる・ねじける・ひねくれる ひかり【光】太陽や電灯などの発光体から出る光線やその反 射をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈日の—〉〈懐中電灯の—〉〈ーを当 てる〉〈ーが差す〉庄野英二の『星の牧場』に「こずえの 葉のあいだから、ーのかけらが星のように光っていた」とあ る。ひ光線 ひかる【光る】光を発する、光を反射する意で、くだけた会 <872> 話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和 語。〈稲妻が—〉〈星が—〉〈川べりで蛍が—〉〈街灯がぼう っと—〉〈海がー・って見える〉〈髪がてかてか—〉〈指に真 珠が—〉〈監視の目が—〉〈ひときわ—〉〓丸谷オ一の『彼 方へ』に「羽虫の羽のように鈍くー・っている文字盤をみつ め」とある。弾く・きらめく・Q照る・ひらめく② ひきあげる【引き上げる】引いて上方へ移動させる意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈沈没船を—〉の「引き下げ る」と対立。志賀直哉の『赤西蟻太』に「君の身体でも直っ たら、いい機会に早く白石にー・げた方がいいよ」とある。 「外地から」「現場から」なども同様、もとの場所に戻 る意に使う場合は「引き揚げる」と書くことが多い。また、 「部長に」「公定歩合を」「料金を」のように、程度・ 地位・価格などを上げる意に用いる場合は、正式に改まった 感じがある。ひ上げる・引き揚げる ひきあげる【引き揚げる】そこから本来のところ〜戻る・戻す の意で、会話でも文章でも使われる和語。〈外地から—〉 〈現場から—〉〈出資金を—〉ヲ引き上げる ひきあわせる【引き合わせる】互いに見知らぬ複数の人間を 取り持って対面させる意で、会話にも文章にも使われる和 語。「知人を先輩に」「二人を」「紹介」と違って人間 どうしの場合に使う。刂紹介 ひきいる【率いる】大勢の人間を引き連れて行ったり、指図 して行動させたりする意で、やや改まった会話や文章に用 いられる和語。〈チームを—〉〈楽団を—〉②阿川弘之の 『雲の墓標』に「先生は、法文経の学生をー・いて」とある。 Q引率·統率 ひきうける【引き受ける】仕事や役割などの依頼を受け入れ る意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な和語。〈委員を—〉〈販売を一手に—〉〈一 二もなく—〉〈二つ返事で—〉②二葉亭四迷の『平凡』に 「前以て書面で、世話を頼む、ー・けたと、話が着いてから出 て来た」とある。ひ請け負う ひきさがる【引き下がる】その場を去って離れる意で、やや 改まった会話や文章に用いられる和語。へここはおとなしく ー〉〈黙ってーわけにはいかない〉夏目漱石の『坊っちゃ ん』に「おれが間違ってたと恐れ入ってーのだけれども、今 夜はそうは行かない」とある。ひしりぞく・どく・のく・Q引っ 込む ひきさげる【引き下げる】位置や値段などを低いほうに移す 意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈賃金を 」〈関税を」〉の「引き上げる」と対立。ひ下ろす・Q下げ る ひきしまる【引き締まる】「締まる」意で、やや改まった会話 や文章に用いられる和語。〈贅肉ぜんがなくー・った肉体〉 〈気持ちがー〉〈身のー思い〉池波正太郎の『剣客商売』に 「鉄人のようにー・った、鍛練しつくした肉体」とある。「締 まる」より精神的な用法が多く、少しブラスのイメージが感 じられる。刂締まる ひぎしゃ【被疑者】「容疑者」の意で専門的な会話や文章に使 われる法律用語。へーの身柄を拘束するへーを取り調べ る)容疑者 <873> ひきだす【引き出す】内にあったものを外に出す意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈預金を—〉〈妙案を—〉〈可 能性を—〉〈解答を—〉③三島由紀夫の『潮騒』に「話題を ー・そうとは思わない」とある。「引き入れる」と対立。ひ出 す ひきたてる【引き立てる】自分より下位にある一人物に特に 目をかけて重く用いる意で、会話にも文章にも使われる和 語。〈後輩を—〉(よろしくお引き立てのほどを願いあげま す)「引き立て役」「主役を—」のように、自分が目立た ない形で一定の人物を際立たせ印象に残るようにふるまう 意にも使う。重用・Q取り立てる・抜擢 ひきちゃ【碾(挽)き茶】新芽からつくった上質の緑茶を白で 挽いて粉にした茶をさし、会話にも文章にも使われる表現。 へ入りの羊羹がみり上がり・お茶・玉露・煎茶・茶・日本茶・番茶・ 焙じ茶・Q抹茶・緑茶 ビギナースポーツなどを習い始めの人の意で、近年主に会 話に使われ出した新しい感じの外来語。スキーの向けの 講習》の初心者 ひきぬく【引き抜く】引いて抜き取る意でくだけた会話から 硬い文章まで用いる和語。〈釘を—〉〈腕利きの編集者を ー〉対象が人間である場合、相手サイドの抵抗感が意識 され、強引な感じが伴う。ひ引っこ抜く びきよ【美挙】社会的に立派な行為の意で、主に文章に用い られるやや古く硬い感じの漢語。〈賞讃に値する—〉へーを 讃える〉単快挙・義挙・壮挙 ひきょう【卑怯】臆病でずるい意で、会話に为文章にも使わ ひく れる日常の漢語。〈ー者〉〈逃げるとはーだ〉〈ーな手を使 う〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「将棋をさしたらーな待 駒をして、人が困ると嬉しそうに冷やかした」とある。勇 気がなくて正々堂々と争えない場合に使い、「卑劣」に比べ て陰険な感じは薄い。単卑劣 ひきわたし【引き渡し】他人の手に移す意で、「返還」や「返 上」に比べてやわらかい感じの和風の日常語。〈新築家屋の 」〈一の期日を定める〉返還・返上 く【引く】①対象を自分の側に近づけたり、左右や後方に動かしたり、その他の広い意味合いで、くだけた会話から硬い文章までよく使われる日常の最も基本的な和語。〈線を」〈弓を」〈幕を」〈椅子を」〈綱を」〈電話を」〈辞書を」〈風邪を」〈注意を」〈夏目漱石の『坊っちゃん』に「生徒の足を引っ攫ふんで、力任せにぐいと」・いたら、そいつは、どたりと仰向けに倒れた」とある。井伏鱒二の『珍品堂主人』に「珍品堂の気を」・いてみるためであったんでしょう」とあるように抽象化した比喻表現も多い。基本的な意味は「押す」と対立。「一歩も後へは」・かない」「第一線から身を」「腫れが」のように引き下がる意で用いる場合は「退く」「馬を」「船を」のように引き寄せる意で用いる場合には「曳く」「ロープで故障車を」のように引っ張る意で用いる場合には「牽く」「籤を」のように抜き出す意で用いる場合には「抽く」「同情を」「気を」のように引きつける意で用いる場合には「惹く」と、それぞれ特に書き分けることもあるが、いずれも古い感じが出る。Q弾く・挽く・碾く・轢く・引っ張る <874> ②引き算をする意で、くだけた会話から文章まで幅広く使 われる日常の基本的な和語。〈値段を—〉〈収入から必要経 費を—〉〈所要時間から休息した時間を—〉Q差し引く・差 っびく ひく【挽く】刃物で削る、細かく砕くの意で、会話でも文章 でも使う、やや専門的な感じの和語。へのこぎりで木をー 〈肉を細かくー〉ひ引く・弾く・Q碾く・鞢く ひく【弾く】弦楽器や鍵盤楽器を演奏する意で、会話でも文 章でもよく使われる和語。ヘピアノを—〉(三味線を—〉 中勘助の『銀の匙』に「あねさんかぶりをした女がじゃんじ ゃかじゃんじゃか三味線をー・いてくる」とある。Q引く 挽く・碾く・轢く ひく【碾く】石白などですりつぶす意で、会話でも文章でも 使われる和語。〈白で豆を〉の「コーヒーを」などの場 合は道具によって「挽く」がふさわしい場合もある。ひ引 く・弾く・Q挽く・轢く ひく【様く】乗り物が踏み潰す意で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈車で人を—〉〈電車に—・かれる〉Q引く・弾 く・挽く・碾く ひくい【低い】基準点から上方(時に前方)への距離が短い意 そこから派生して、地位・能力・品位・程度などが劣る意をさ し、くだけた会話から文章まで幅広く使われる基本的な和 語。〈一塀〉〈鼻が一〉〈気温が一〉〈関心が一〉〈問題意識 が一〉〈位が一〉田山花袋の『田舎教師』に「背の一小づ くりな弱々しそうな人」とある。水上勉の『越後つついし親 不知』に「しぼり出すような一声」とあるように低音につい ても言う。Q低級・低劣 ピクニック野外に出かけて自然と親しむ小旅行をさす外来 語。〈野山へに出かける〉の「ハイキング」より景色を眺 めながら食事を楽しむ行楽気分が強い。ひハイキング びくびく恐れていることが起こるのではないかと近い未来 の不安におびえる意で、会話や軽い文章に使われる和語。 の不安におびえる意で、会話や軽い文章に使われる和語。 へどうなるかとーしながら状況を見つめる〉〈見つかるので はないかとーしながら隠れている〉呟佐藤春夫の『田園の 憂鬱』に「ーしながら薪の上へ石油をぷっかけた」とある。 りおずおず・恐る恐る・おっかなびっくり・おどおど・ひこわごわ ひぐれ【日暮れ】日が沈むことやその時間帯をさし、さほど くだけない会話や文章に用いられる、やや古風でしっとり した感じの和語。へーが近い〉〈静かなーの村里〉の志賀直 哉の『城の崎にて』に「他の蜂が皆巣へ入って仕舞ったー、 冷たい瓦の上に一つ残った死骸を見る事は淋しかった」と ある。「時」「晩秋はーが早い」などと言うように、この 語は時刻や時間帯そのものより、日が暮れかかってあたり が薄暗くなり始めた状態をさすのに重点がある。巻れ方 Qたそがれ・薄暮・晩方・灯ともし頃・夕・夕方・夕暮れ・夕刻・夕べ・夕 間暮れ・宵・宵の口 ひげ『髭/髯/鬚』口の周りに生える毛の意で、ぐだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる和語。〈不精〉へーを 生やす〉へーを剃る〉へーを蓄える〉永井龍男の『黒い御 飯』に「ーが、湯気であろうか水鼻汁であろうか、ぬれて光 っている」とある。総称としては「髭」と書く例が多いが、 本来は「髭」は日ひげ、「髯」は頬ひげ、「鬚」は頸ひげと、 <875> 部位によって漢字を使い分ける。 ひげ【卑下】自分側を実際よりも価値を低めて表現する意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈自分をーす る〉へーし過ぎるとかえって厭味になる〉謙遜・Qへりく だる ひげそり【髭剃り】「電気かみそり」をさす会話的な和語。 〈ーをあてる〉、ひシェーバー・Q電気かみそり ひけつ【秘訣】一般に知られていない特別効果的な方法の意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈長生きの—〉〈成功 の—〉〈—を授ける〉自分の経験からつかむ感じの「こ つ」に比べ、他から伝授される雰囲気が強い。勘所・呼吸 ②・こつ・壺②・要領 ひけめ【引け目】相手や一般と比較して自分のほうが劣って いて恥ずかしいと思う気持ちの意で、会話やさほど硬くな い文章に使われる和語。〈相手にーを感じる〉〈学歴の点で ーがある〉能力的で長期にわたる「コンプレックス」や 「劣等感」と比べ、この語はある点に限っての一時的な心理 状態を連想させやすい。コンプレックス・Q劣等感 ひけらかす自慢そうに見せびらかす意でややあらたまっ た会話や文章に用いられる和語。〈学歴を—〉〈肩書きを ー〉〈知識をー〉ひ衒う・Q見せびらかす ひけん【比肩】実力において優劣がつけがたい意で、主に文 章中に用いられる硬い漢語。〈名人に—する腕前〉②肩を並 べる意から。単に同等であるだけでなく、ともに優れてい る場合に使う。拝抗・互角・五分五分・どっこいどっこい・とん とん・伯仲・Q匹敵 ひごうほう ひこ【曾孫】「ひまご」の意で主に会話に使われる古めかしい 和語。ぼけずにーの顔が見たい》孫を「ひこ」とも言っ たところから、さらにその子供という意味で「ひひこ」と言 い、「ヒーコ」「ヒコ」となったその音転という。ヒ曾孫だ Qひまご ひご【庇護】庇い守る意で、改まった会話や文章に用いられ る硬い感じの漢語。〈親の—〉(ーを受ける)Q保護・擁護 ひご【卑語】卑しい感じがあるため人前で使いにくい下品な ことばをさし、学術的な会話や文章に使われる専門的な漢 語。〈ーを交えた話し方で気品に欠ける〉彫俗語 びこう【尾行】ひそかに跡をつける意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈刑事が被疑者を—する〉〈興信所の—を受 ける〉ひ追跡・Q追尾 ひこうき【飛行機】翼に働く揚力で重さを支え、プロペラの 回転や燃焼ガスの噴射などによって空中を飛行する乗り物 をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の 漢語。〈|雲〉〈小型|〉〈|の墜落事故〉〈|が離陸する〉 航空機 ひこうじょう【飛行場】飛行機の発着する場所をさして、会 話にも文章にも使われる漢語。へーを飛び立つ〉へーを後に する〉の「空港」に比べ、地方都市にある小規模な施設にも 抵抗なく使える感じがある。ひ空港 ひごうほう【非合法】法律で認められていない意で、改まった会話や文章に使われる専門的な漢語。〈「活動〉へ組織〉の「合法に非ず」すなわち「合法でない」という意味合いで、特に政治的な体制に反する場合に用いることが多い。 <876> ひこうり ♂違法·Q不法 ひこうり【非合理】道理や理屈と合わない意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い漢語。〈説明がーで納得できな い)論理に基づかない、理屈が通らないという段階であ り、「不合理」のように積極的に逆方向とまでは踏み込んで いない評価。ひ不合理 ひこようしゃ【被雇用(価)者】雇われている側の人をさし、 改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。「の立 場」「雇用者」の多義性を回避し、意味を限定するため に、雇われる側であることを明確にした表現。「雇用者②」 と対立。雇用者① ひごろ【日頃】何でもない普通の生活においての意で、会話 やさほど硬くない文章に使われる和語。へーの心掛け〉へー の行い〉へーの鍛錬がものを言う〉へーの鬱憤を晴らす〉 図芥川龍之介の『地獄変』に「ー可愛がってくれた娘なれば こそ、猿もいっしょに火の中へはいったのでございましょう」とある。 日々・普段・平常・平生・平素 ひさ【膝】腿と脾との連結部をさして、会話にも文章にも 幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一に水がたまる〉 〈一を突き合わせて話す〉三浦朱門は『箱庭』で、女性の 膝の裏側を、「生白く、のっぺりと平らで」「形も色もあま りに無防備で、つい先刻まで、そこに何かがはりついてい たのを、むりやりはがして、はじめて外気にさらされた、と いう感じ」と描写している。なお、「枕」「はたとーを打 つ」のように、腿を含めていう用法もある。Q膝頭・膝小僧 ピザイタリア料理の平たいパイをさし、会話でも文章でも 使われる今では最も一般的な外来語。〈冷凍の海鮮—〉〈宅 配のーを注文する〉のイタリア語の発音を無視し、綴りを ローマ字読みにした語形。この食品の普及とともに広まっ た言い方。ひピザパイ・Qピッツァ ひさい【被災】「罹災」の意で、改まった会話や文章に用い られる一般的な漢語。〈ー状況〉〈ー地に足を踏み入れる〉 〈ー者を救援する〉ひ罹災 ひざがしら 【膝頭】膝の関節の前面をさして、会話や文章に 使われる、やや古風な和語。〈ーをぶつける〉四川崎長太郎 の『漂流』に「着ているものからはみ出した鈍い牛乳色の ー」とある。ひQ膝・膝小僧 ひさかたぷり【久方振り】「久しぶり」の意で、会話にも文章 にも使われる、やや古風な和語。〈—の海外旅行〉〈—に故 郷〈帰る〉③枕詞「久方の」を連想する人にとっては、それ のかかる空・雲・光などとこの語が意味的に直接つながらな いため、「久し振り」より標準的でない感じが伴う。ひQ久 し振り・久々 ひざかり【日盛り】日差しの最も強い時間帯をさし、会話に も文章にも使われる、いくぶん古風な感じの和語。へーを避 けて出かける)尾崎一雄の『虫のいろいろ』に「蠅はうる さい。もう冬だから、ーにしか出て来ないが」とあるが、一 般には暑さの苦になる夏の季節に使う。月日中・白昼・昼日中 ・Q昼間・真っ昼間・真昼 ひざこぞう【膝小僧】膝頭の意で、主にくだけた会話で使わ れる和語の擬人的表現。〈ーをすりむく〉谷崎潤一郎の <877> 『細雪』に、「洋服の癖が出て膝が崩れ、上ん前がはだけて ーが露われるのを」大人たちが「それ、悦ちゃん、弁天小 僧」とからかう場面がある。古くは「膝坊主」「膝法師」と も。弁膝・Q膝頭 ひさし【庇(廂)】雨や日光をさえぎるために突き出した小さ な屋根をさし、会話にも文章にも使われる和語。〜が深 い〜が突き出ている〜谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に 「ーをくぐり、廊下を通って、ようようそこまで辿りついた 庭の陽光は、もはや物を照らし出す力もなくなり」とある。 马屋根 ひざし【日(陽)差(射)し】太陽から降り注ぐ光線をさし、会 話でも文章でも幅広く使われる日常生活の和語。〈やわらか い春のー〉〈ーが延びる〉〈ーがきつい〉田宮虎彦はイン タビューに際し、夏の強いヒザシを「日射」秋の弱いヒザ シを「日差」と原稿で書き分け、やわらかい感じにしたいと きは「し」を送るが、校正者が統一してしまうと不満を述べ た。たしかに、安岡章太郎の『海辺の光景』でも「頭の真上 から照りつける日射し」と、「着衣の一枚一枚、体のすみず みまで染みついた陰気な臭いを太陽の熱で焼きはらいたい」 と思う強烈な光に対して「日射し」という表記を採用して いる。ひ光線・日光・Q光・陽光 ひさしぶり【久し振り】前回から長い時間を経て同様のこと が繰り返される場合に、それを懐かしく思いながら、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈ーに出かける〉〈ーの青空がのぞく〉〈ーに会に顔 を出す〉〈ーに会って旧交を温める〉永井龍男の『風ふた ビジネスマン たび」に「つきはぎだらけの、職業安定所の上にも、の青 空が見える」とある。懐かしむ気分が伴うため、地震・火 事・豪雨・事故その他の好ましくない事柄については用い ず、「に本格的な雨になる」のような例も、雨を待ちかね ていた場合に限って使う。Q久方振り・久々 ピザパイ「ピザ」の意の古めかしいことば。この食品が日 本に伝わって広まりかけたころに、「ピッツァ」とともに使 われていた説明的な言い方。イタリア語のローマ字読みと 英語とを組み合わせた語形で落ち着きが悪い。次第に普及 してそれが「パイ」の一種であることが知られるにつれて、 この説明的な語形は廃れ、単に「ピザ」と言うようになっ た。ひピザ・ピッツァ ひさびさ【久久】ほんとに久しぶりという意味で、会話にも 文章にも使われる和語。〈一のいい天気〉〈一の対面〉〈一 に作品を発表する〉の「久しぶり」をさらに強調した感じが あり、少々の期間のあとでは使いにくい雰囲気がある。 方振り・Q久し振り びじがく【美辞学】文飾の技術としての西洋レトリックを移 入した明治期に、一時期その訳語として用いられた漢語。 〈レトリックをーとも訳した〉高田早苗に『美辞学』島村 瀧太郎に『新美辞学』と題する著書があり、坪内逍遥も「美 辞学」と題して論文を発表したが、次第に「修辞学」という 訳語に統一され、今ではめったに使われない。修辭・Q修辭 学・修辞法・レトリック ビジネスマン 会社員のうち現業部門に対して特に事務系職 員をさして、会話にも文章にも使われる比較的新しい感じ <878> ひしゃかくおち の外来語。〈一必読の書〉(いかにも—といった服装)実 業家をさす用法もある。会社員・勤労者・サラリーマン・勤め 人・労働者 ひしゃかくおち【飛車角落ち】有力な部分を欠いた不利な条 件で相手に対することをさす、将棋用語の拡大用法。「で 試合に臨む)本来は、強い駒を二つとも落として不利な 条件で格下の相手と将棋を指すこと。最も有力な人物を共 に欠いている状態をそれにたとえた表現。「成金」より比喩 性が意識にまだのぼる。 びじゅつ【美術】絵画や彫刻などの視覚的芸術をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈一館〉〈一品〉〈一全集〉広 義には建築・工芸・写真なども含む。Qアート・芸術 びじよ【美女】「美人」が女性専用になった現在でも、特に女 性であることを意識して主として会話や軽い文章で男性の 使う漢語。〈目の覚めるような〉〈ーを侍ぱらせる〉稲垣 足穂の『弥勒』に「というものは何事を持ってきても似合 うな、と彼は思う。それはちょうど音楽のように、相手が最 も具体的であると同時に、この上もなく抽象的な存在であ るせいであろうか?」とある。会話や軽い文章で近年は 「ーコンテスト」「軍団」などと興味本位で使う例も多い。 ひ佳人・Q美人・麗人 びしう【微笑】にっこりと笑みを浮かべる意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ーを浮かべる〉へーを絶やさな い)永井龍男は『高田保さんのこと』で、世の中を吹く 風を、いつもさり気なく受け流し、ーを捨てたことはない が、それが悲しい表情に見える日もあった」と、鬼才の内面 を描き取った。微笑み ひじように【非常に】程度が「大変」より若干強く「きわめ て」ほどではない甚だしさをさし、会話にも文章にもよく 使われる表現。〈今朝は—寒い〉〈—優秀な成績〉〈—難し い問題〉〈—厳しい状況〉「大変」より少し硬い感じに響 く。大いに・きわめてこく・すこぶる・大層・Qたいへん・とても ②・甚だ びしよくか【美食家】美味で贅沢な料理を特に好む意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈ーで舌が肥えている〉の 鰻はこの店、ステーキはどこ産の肉に限るというふうに贅 沢な料理にこだわる雰囲気があり、「食は道楽」に比べて、 うまい料理を求めて方々を食べ歩くという感じは弱い。 食い道楽・グルメ・食通・Q食道楽 びしん【微震】震度1の旧称。弜強震・軽震・弱震・中震 じん【美人】顔や姿の美しい女性をさし、会話から改ま た文章まで幅広く使われる最も一般的な漢語。〈絶世の—〉 〈水もしたたる—〉ふるいつきたいほどの—〉四川端康成 の『山の音』に「同じ腹と信じられぬほど姉はーだった」と ある。昔は美男子を含めてこの語を用いたという。马佳人 Q美女・麗人 ピスケット小麦粉・卵・砂糖・パターで作る小型の焼き菓子 をさし、会話にも文章にも使われる外来語。ヘーの詰め合わ せ俗にイギリスで「ピスケット」アメリカで「クッキ ー」ともいわれるが、日本ではパターの含有量が多くてリッ チな感じのものを「クッキー」パターの少ない淡泊な味の ものを「ピスケット」と使い分けることもあり、乳幼児用の <879> 健康志向の食品にはこの語がびったりする。ちなみに、網 野菊は小説の登場人物にいちいち名前をつけるのが面倒で、 ある時期ABCにしたら、ビスケットみたいだと評された という。みクッキー・クラッカー・サブレ・ボーロ ピストル 片手で撃てる小型の銃をさし、会話では最も多用 される日常の外来語。〈一の口径〉〈一を発射する〉の短 銃」はもちろん「拳銃」よりも一般によく使う。尾崎士郎の 「人生劇場」に「役目を果したー自身が何事かをささやいて いるように見える」とある。改まった文章では正式な感じ の「拳銃」が使われる傾向がある。Q拳銃・小銃・短銃・はじ き ひずむ【歪む】形や音などに狂いが生じて本来の状態を失う 意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。床に落とし て容器がー〉へ音がー・んで聞こえる〉比喩的に「国家財 政がー」のように用いることもあるが、一般には物理的な 変化に用いることが多い。立体でも平面でも図形であれば 「ゆがむ」とも「ひずむ」とも言えるが、一本の線が曲がっ て見えるような場合は「ひずむ」とは言いにくい。また、顔 の形は両方言えるが、表情になると「ひずむ」はなじまな い。漢字表記は「ゆがむ」との区別が困難なので仮名書き が無難。ひいびつ・ゆがむ ひする【比する】「比べる」意で、主に硬い文章に用いられる 表現。〈労力にー・して得るものが少ない〉〈桜の開花は例 年にー・して早い〉の「ー者なし」「比すべくもない」のよう な用法は古めかしく文語的な雰囲気がある。Q比べる・比 較 ひそう ひせい【批正】批判して正しく直す意で、主に文章中に用い る硬い漢語。〈御ーを請う〉②上位の立場の相手に依頼する 場合などによく使うへりくだった表現。④改正・改定・改訂・是 正・Q訂正・補正 ぴせいぶつ【微生物】細菌や原生動物などの、肉眼で観察で きない微小な生物をきし、会話にも文章にも使われる、や や専門的な漢語。〈顕微鏡でーを調べる〉②宮本輝の『蛍』 に「蛍の大群は、滝壺の底に寂寞と舞うーの屍のように」と ある。ひかび・Q菌・細菌・微菌 ぴそ【鼻祖】物事の創始者の意で主に文章に用いられる古め かしい漢語。〈志賀直哉は私小説のーと目される〉一家の 初代という意味でも使われたが、現在はあまり使わない。 人間が胎内で鼻から先に形成されると考えたところからで きた語という。ひ開基・開山・開祖・元祖・Q始祖 ひそう【皮相】物事の表面、また、表面だけ見て判断する浅 いやり方をさし、主に文章に用いられる硬い漢語。へーにと らわれる〉へーな解釈〉へーなものの見方〉ふうわつら・上辺・ Q表層・表面 ひそう【悲壮】悲しさの中に凛々しさを秘めている意で、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈な決意〉〈な覚 悟で臨む〉〈な最期を遂げる〉回永井龍男の『枯芝』に 「大罪を犯した犯人のように、自分が思われてきて、な気 持がわいてきた」とある。悲愴 ひそう【悲愴】悲しく痛ましい意で、主に文章に用いられる 詩的な漢語。〈ー感が漂う〉〈ーな面持ち〉芥川龍之介の 『枯野抄』に「その慟哭は勿論、ーを極めていた」とある。 <880> ひそか 悲壮 ひそか【密(秘)か】他人に気づかれないように行うさまをさ し、会話にも文章にも使われる和語。へーに事を運ぶへー に運び出す〉へーに計画を練る〉、うちうち・こそこそ・こっそ り・そっと・内緒・内々・内密 ひぞく【卑俗】品位に欠け垢抜けない意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈一な話〉〈一に流れる〉「一 な例」「一な話題」のように、改まらずに身近な日常から材 をとる場合に、「卑近」に近い意味合いで用いることもあ る。少下品・下劣・俗悪・通俗・Q低俗・低劣・野卑 ひそむ【潜む】人目につかない場所に身を隠す意で、いくぶ ん改まった会話や文章に使われる和語。〈物陰に—〉〈逃亡 犯が繁華街に—〉佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「其処には いろいろの蜘蛛がー・んでいた」とある。「隠れる」よりも 悪いイメージが強い。「心に意地悪な気持ちが—」のよう に、表に出ない存在をさす比喩的な用法もある。刂隠れる ひたい【額】顔のうち髪の生え際から眉の上までの部分をさ し、会話にも文章にも使われる和語。〈富士〉へが広い へに汗する〉尾崎一雄の『虫のいろいろ』に「に出来 たしわが、蠅の足をしっかりとはさんでしまった」とあり、 島尾敏雄の『島へ』に「思慮深くそしてきまじめに見える白 いー」とある。おでこ・眉間 ひたすら【只管】もっぱら同じことだけする意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈ただー走り続ける〉〈ー研究に打 ち込む〉〈ー神に祈るのみ〉の芥川龍之介の『トロッコ』に 「良平はー走り続けた」とある。「一途が」がただ一つのこ とを継続して行うニュアンスがあるのに対し、この語は同 じ事を繰り返し行う場合をも含む。いちず・ひたむき・Qも っぱら ひだまり【陽(日)溜まり】特に日当たりがよく風も入り込ま ない暖かい場所をさし、会話にも文章にも使われる和語。 へーで暖まる)へーに集まる)のプラスイメージが強く懐か しい感じもある。ひ日向 ひたむき【直向き】一つのことに熱中する意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる和語。〈ーな愛〉〈ーな練習態 度〉〈ーに努力する〉ひいちず・Qひたすら・もっぱら ひだりきき【左利き】多くの人と違って右手より左手のほう がよく利く意で、会話にも文章にも使われる和語。へ用の グラブへの投手)鑿を持つのがふつう左手であるこ とから、その「鑿手」を同音の「飲み手」にひっかけて、俗 に酒飲みをさすこともある。ひQ酒飲み・酒豪・呑み助・呑んだ くれ・呑ん兵衛 ひたる【浸る】液体の中に浅く入ったり、部分的に濡れたり する意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。床下ま で水に」〈腰まで湯に」〈ズボンのすそが水に」 「酒に」の形で、溺れて抜け出せない意を表すこともあ り、「郷愁に」「喜びに」のように、ある雰囲気や感情 などをたっぷり味わう意に用いることもある。り浸かる ひだるい【饑い/干だるい】空腹でつらい感じをさし、文章 にまれに用いられる、古語に近い古めかしい和語。堪えが たいひだるさ〉り空腹・空き腹・腹ペこ・ひもじい ひたん【悲嘆(歎)】深く悲しみ嘆く意で、改まった会話や文 <881> 章に用いられる硬い感じの漢語。〈一の涙に暮れる〉嘉村 礦多の『業苦』に「箸を投げてーに暮るる老父の姿」とあ り、小林秀雄の『ゴッホの手紙』には「パリの老いぼれた馬 車馬が、ーにくれたクリスチャンのような、大きな美しい眼 をよくしている」という比喻表現が出る。専慨嘆・Q嘆き ひつう【悲痛】激しい悲しみに心が痛む意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈な出来事〉〈な面持ち〉〈な叫び〉井伏鱒二の『二つの話』に「顔にはやはり」の色が現われていた」とあり、中河与一の『天の夕顔』に「泣いても泣ききれないーが、胸にこみあげてくる」とある。「沈痛」より外面に現れる感じが強い。また、「沈痛」と比べ、起こってしまった事実に対する衝撃が中心。感情は激しいが「悲嘆」より内面的。悲しさ・悲しみ・傷心・沈痛・Q悲哀 ひつぎ【柩(棺)】棺ゆの意で、改まった会話や文章に用いられ る和語。〈ーを据える〉〈ーをおおう〉小沼丹は『黒と白 の猫』に「白い布に包まれたーの方に眼をやった」として、 突然の妻の死に茫然として猫の姿を見る幻覚を描く。刂棺 ひっきりなしに【引っ切り無しに】短い間隔で何度も起こる 場合に、主に会話に使われるくだけた感じの表現。〈ー電話 がかかってくる〉〈ー口を動かしている〉回数の多いこと に重点のある「しきりに」「頻繁に」と違い、間隔の短さに 重点がある。ひQしきりに・頻繁 びっくり【吃(喫)驚】「驚く」意で会話や軽い文章によく使わ れる日常の和語。〈一箱〉(おっかな)へして飛び上が る)尾崎一雄の『芳兵衛』に「ああーした。お父ちゃんを ひっこむ おどかそうと思ったら、自分がーしちゃった」とある。ひお ったまげる・Q驚く・仰天・たまげる・ぶったまげる ひっくりかえす【引っくり返す】裏表・上下・前後などを逆に する意で、会話や軽い文章に使われる和語。ちゃぶ台を 」(うっかり瓶を)〈セーターの表と裏を)〈負けてい た試合を最後に)「くつがえす」に比べ、具体的な物に 多く使う。Q裏返す・覆す びっくりマーク「感嘆符」の記号「!」をさすユーモラスな 俗語。の驚きの気持ちを表すところから。はてなマーク ひっこし【引っ越し】それまで使っていた家や社屋などから 別の場所に移ることをさし、会話や改まらない文章で使わ れる日常的な和語。〈ー先〉へーの手伝い〉移転・Q転居・転 宅 ひっこぬく引っこ抜く引き抜くという意でくだけた会 話に使われる俗語。畑で大根をー〉根元からー〉歯 をー」とすると、「引き抜くより乱暴に抜く雰囲気が出 る。引き抜く ひこみじあん【引っ込み思案】先々のことを心配するあま り、何事も積極性に欠け、新しいことに取り組む決断が困 難な意で、会話や硬くない文章に使われる表現。ーでなか なか自分の主張ができない)内気・内弁慶・Q内向的 ひっこむ【引っ込む】引き下がる意で、主に会話や改まらない文章に使われる日常の和語。〈舞台の袖に—〉〈現役を退いて田舎に—〉〈お前の出る幕じゃない、ー・め〉②具体的にその場を立ち去る意味よりも、目立たないところに控えるようなニュアンスが強く、「自分の部屋にー・んだまま出 <882> ひっし て来ない」のように、こもってしまう意にも使われる。庄野 潤三の『静物』に「商店街から少しー・んだ路地の奥にある 映画館」とあるように、人間以外にも位置関係を示すのに 使う。ひしりぞく・どく・のく・Q引き下がる ひっし【必死】おおげさに言えば死ぬ覚悟で物事に懸命にな る意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。への形 相〉〈受験生はもうだ〉へに取り組む〉〈生活に追われ ーで働く〉②有島武郎の『或る女』に「荒神最愛のもの を生牲として願いを聴いてもらおうとする太古の人のよ うなーな心」とあるが、現代では一般に、「死に物狂い」や 「命懸け」より幅広くよく使われ、現実に生命の危険が及ぶ 例がほとんどない点、それだけ軽い感じがする。ひ一所懸 命・命懸け・Q死に物狂い ひっしゃ【筆者】その文章や書画を書いた人をきし、会話に も文章にも使われる漢語。〈一の肩書き〉へ一の言わんとす るところ〉の「一の勤務先」「一は以上のように考える」の ように、書き手が一人称「私」の代わりとして使うことで客 観性を増す用法もあり、その場合は改まった感じで硬く響 く。「読者」と対立。Q書き手・作者・著者 びっしり隙間がないほど並んでいたり詰まっていたりする様子をさし、会話や硬くない文章に使われる擬態語。小さな分譲住宅がー建て込む〉〈細かい字でノートにー書き込む〉「ぎっしり」「ぎっちり」に比べ、細かいものが沢山集まっているイメージがある。Qぎっしり・ぎっちり・ぎゅうぎゅう ひっす【必須】欠かせない意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈—条件〉〈—科目〉〈この分野には—の知識〉 「必要」のうちでも、なくてはならない程度が特に高い段 階。入り用入用・Q必要 ひったくる【引っ手繰る】他人の持っている物をむりやり引 っ張って素早く奪い取る意で、主に会話に使われる、いくぶ ん俗っぽい和語。へ人込みでハンドバッグをー・られる)専 う・せしめる・取り上げる・Qふんだくる・分捕る・まきあげる ピッチャー「投手」の意の外来語。多く口頭で使う。字数が 多くなるためもあり、書きことばとしてはふつう「投手」を 用いる。〈返し〉〈交代〉〈ゴロに討ち取る〉は投手 ピッチャー取っ手付きの比較的大きな水差しをきし、会話 にも文章にも使われる新しい外来語。〈店でピールをーごと 運んで出す〉ひ水差し ピッツァイタリア料理の平たいパイをさすイタリア語から の外来語。「ビザ」という通称と一線を画し、本格的な専門 店や一部の通が頑固に守り続けている古風な語形。「専 門店」《海老とアンチョピのー》の食品が日本に伝わっ た当時使われた、イタリア語の原語に近い発音。味自慢の 店などで今でも使用しており、「ビザ」と名のる店は味がピ ンからキリまであるが、「ビッツァ」と名のる店はたいてい 本格的で、冷凍などを使用することがなく、味に定評があ りそうな雰囲気をかもしだしている。Qビザ・ビザパイ ひっく【引付(附・着)く】「くっく」の意でくだけた会 話に使われる俗っぽい和語。〈靴底にガムがー・いてなかな か取れない)きQくっつく・接着・張り付く・付着 ひってき【匹敵】力量などが同じぐらいである意で、会話に <883> も文章にも使われる漢語。〈実力はプロにも—する〉〈彼に —する人材は得がたい〉乃拮抗・互角・五分五分・どっこいどっ こい・とんとん・伯仲・Q比肩 ひっぱたく【引っぱたく】強く叩たく意で、主としてくだけた 会話でよく使われる俗っぽい和語。〈横っ面を—〉〈思いっ きり—〉正宗白鳥の『泥人形』に「我儘を云ったら御遠慮 なくー・いて下さい」とある。「たたく」の場合は軽くトン トンとたたくものから、相手をたたきのめすものまで、多 様な動作が含まれるが、この語はかなり強い叩き方に限ら れる。内田百閒の『掻痒記』に「頭を縦横無尽にー・いて、 掻き廻した」とあるように、「叩く」と違って親しみや善意 から出ることはなく、衝撃も強い。促音とそれに続く「パ」 という破裂音が働いて激しい感じを印象づける面もあるか もしれない。ひQたたく・なぐる・はたく・はる・ぶつ ひっぱる【引っ張る】力を加え対象を強く引いて自分側か進 行方向などに動かす意で、会話や改まらない文章に使われ る、少し口頭語的な和語。〈紐むを—〉〈袖を—〉〈力任せに ー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「便所へ這入いぱるのを忘 れて、おれ等を—のだろう」とあり、『吾輩は猫である』に も「餅の中へ堅く食い込んで居る歯を情け容赦もなく—」 とある。「引く」より対象に及ぶ力が強い感じがする。促音 とそれに続く「パ」という破裂音といった音構造もそういう 語感にかかわっているかもしれない。ひ引く① ひでり ひっぽう【筆法】筆運び、物事のやり方の意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い感じの漢語。へーを会得する へいつものーで行く) 単筆鋒 ひっぽう【筆鋒】筆先、文勢の意で、主に文章中に用いられ る古風な漢語。〈ー鋭く批判する〉〈鋭いーで斬って捨て る〉単法 ひつめい【筆名】文章を発表する際に執筆者名として書く本 名以外の名前をさして、主に文章中に用いる硬い感じの漢 語。〈初めてーを用いて小説を発表する〉の会話に用いると 改まった感じになり少し古風に響く。雅号・芸名・号・Qペン ネーム ひつよう【必要】どうしてもなくてはならないの意で、会話 にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈性〉〈経 費〉〈不可欠〉〈最小限〉〈資金がだ〉〈なだけ買 う〉〈に応じて〉〈に迫られる〉小林秀雄の「ゴッホ の手紙」に「現実という石の壁に頭をぶつけて了った人間 に、どうしてあれこれの理想という様なものがーであろう か」とある。必要度が「入り用」や「入用にゅう」より高いが、 「必須」ほどではない段階も含む。「不要」と対立。入り 用・入用・必須 ひてい【否定】打ち消す、認めない意で、いくらか改まった 感じの会話や文章に用いられる漢語。〈二重〉〈部分〉 〈頭からーする〉〈的な見解〉〈ーしがたい事実〉小沼丹 の『タロオ』に「医者で冷静である筈のチェホフが、自分が 結核であることを収管かーしようとしていたと云うことで ある。否定ーそれも自分に対して」とある。打ち消す Q否認 ひでり【旱】日照りのために田畑が乾ききる意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈ーの被害〉Q旱紘・日照り <884> ひてり ひでり【日照り】長い間雨が降らずに強く照りつける日が続 く意で、会話にも文章にも使われる和語。〈何日もーが続 く〉単 びてん【美点】美しいところ、秀でている点をさし、改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風なやや硬い感じの漢語。〈数々のーをそなえている〉〈ーをうまく生かす〉特に人間について、効率や経済性などよりもっと価値のある長所を積極的に主張している雰囲気がある。数量的に対比しにくい部分のよさを取り上げる例が多い。「欠点」と対立。Q長所・取り柄・利点 ひと【人】社会の構成員としての人間をさし、くだけた会話からさほど硬くない文章まで幅広く使われる日常生活の最 も基本的な和語。〈道行く—〉〈ーを求めている〉〈ーの道 を外れる〉〈ーをーとも思わぬ態度〉〈都会は何しろーが多 い〉〈ーに道を聞かれる〉〈ーに頼ってばかりいる〉〈あの ー、どこかで見たことがある〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「猿とーとが半々に住んでる様な気がする」とある。大上 段に構えた感じの「人間」よりも、生活に溶け込んだ温かみ を感じさせる語。なお、もと「われ」に対する語で自分以外 の人間をさしたため、「ひとごと」に「他人事」という漢字 をあてる場合もある。ひ人間 ひどい【酷い】「甚だしい」の意で、会話やさほど改まらない 文章などによく使われる和語。〈ー仕打ちを受ける〉〈目 にあう〉〈出来だ〉尾崎一雄の『なめくじ横丁』に「 や、ーや」と泣きながら怒り出した」とある。「こっぴどい」 とは違い、度が外れているというニュアンスで、「ー・く喜 ぶ」のようにプラスの意味合いを修飾するケースもある。 マこっびどい・むごい・むごたらしい ひといきに【一息に】途中で休まずにの意で、会話にも文章 にも使われる和語表現。〈ピールを—飲み干す〉へ仕上げ る)文字どおりには一呼吸の間にの意だけに、息をつか ずにという感じが強く、「一気に」よりも短い時間でという 雰囲気がある。Q一気に・一挙に ひとがら【人柄】人間の性格・品格の意で、会話にも文章にも 使われる和語。〈温厚な—〉へーが偲しぱれる〉へーを見抜 く〉の武田泰淳の『才子佳人』に「つつましい中に犯しがた いーをうかがうことが出来た」とある。「ーを慕って人が寄 って来る」など、多くその良さを褒めるときに使われる。 気質・気象・気性・気立て・性分・人格・人品・人物・Q性格・性向・性質 たち・人となり ひとぎき【人聞き】他人が聞いたときの印象をさし、会話や 軽い文章に使われる和語。〈ーが悪い〉へーの悪いことを言 うな〉多く悪い場合に使う。直接見られたときでなく、 あとで噂になるのを気にするところに重点がある。込外聞・ 世間体 ひときわ【一際】他と比べて特に際立つさまをさし、やや改 まった会話や文章に用いられる和語。〈ー鮮やかだ〉〈目 立つ〉〈ー美しい〉〈ー背が高い〉武者小路実篤の『友情』 に「大いなる期待をもってその勝負をむかえた。拍手はー 盛んに起った」とある。いっそう・いよいよ①・ひとしお・ます ます ひとごと【人事/他人事】自分とは直接関係のないことの意 <885> で、会話にも文章にも使われる日常の和語。「ながら気の 毒だ〉「だと思って手伝いもしない〉「とは思えない の「わたくしごと」と対立する語だから、意味上も本来は 「他人事」と書くが、「ひと」の意味が忘れられ、「たにんご と」と読む人が増えた。ひ他事・Qたにんごと・よそこと ひとごみ【人込(混)み】多くの人間が集まって込み合う意で、 会話やさほど改まらない文章に使われる和語。〈初詣ぱの ー〉へーを掻き分けて進む〉〈都会のーに紛れて姿を消す〉 〈ーに流される〉「雑踏」ほど広範囲でなく、例えば催し 物の周囲の人だかりなど、ある場所に人が固まっているよ うな場合にも使う。雑踏 ひところ【一頃】過去の一時期をさす、やや改まった和風表 現。〈一好景気に沸いた〉へ一の勢いはない〈一流行した ファッション〉森鷗外の妄想に「芸術の批評に口を 出して」とある。「先頃」より時間的に長く、「近頃」と違っ て現在を含まない。Qいちじ・過日・この間・先頃・先日・ひとと き ひとごろし【人殺し】「殺人」の意で、会話や硬くない文章に 使われるいくぶん古風になりかけている和語。〈近所で がある〉への現場を目撃する〉への疑いでしょっぴく〉 への罪を償う)谷崎潤一郎の『お艶殺し』に「斬りかけ られつつ逃げ廻って、「」と叫んだ」とある。有島武郎の 『或る女』には「ーでもするような気負いでずたずた引き裂 いた」とある。「ーが捕まる」のように殺人者をさす用法も ある。少殺す・殺害・Q殺人・殺戮はらす② としい【等しい】形や数量などがまったく同じである意で、 ひととき 改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な和語表 現。二つの図形は面積が一〉〈一数値を記録する〉〈犯罪 にも一卑劣なやり口〉〈無に一〉〈いずれも一精巧な造りで ある〉の幸田文は『おとうと』で、腹を立てて雨の中を傘も 持たずに飛び出した弟を追って、傘を渡そうと必死に急ぐ 姉のようすを「げん」自身の視点で展開する。そのシーンの 最後で、「げんも傘なしにー・く濡れていた」と、作者は視 点を転じて主人公の姿をようやく画面中央に描き出す。 Q同じ・おんなし・おんなじ・同一・同様 ひとしお【一入】きらに一段との意で、改まった会話や文章 に用いられる古風な和語。〈人の情けが—身にしみる〉(年 をとると寒さが—身にこたえる〉〈家族のこととなれば喜 びもーだ〉四川端康成は盟友横光利一への弔辞で「国破れ てこのかたー木枯にさらされる僕の骨は、君という支えさ え奪われて、寒天に砕けるようである」と述べた。染める 際に一度染め汁に入れておくと色が濃く染まることからと いう。ひQいっそう・いよいよ①・ひときわ・ますます ひとたび【一度】「一度」の意で、主に文章中に用いる古風 でやわらかい感じの和語。〈今—試みる〉〈ー言い出したら 最後てこでも動かない〉〈ー事が起こると収拾がつかなく なる〉ひいちど・一回・Q一旦・一遍 ひととおり【一通り】全体にわたってざっとの意で、会話に る文章にも使われる日常の和語。〈目を通す〉〈ー済ませ る〉〈ー説明する〉ひ一往 ひととき【一時】しばらくの間を漠然とさし、改まった会話 や文章に用いられる、いくぶん古風で趣の感じられるやわ <886> ひととなり らかい和語。〈楽しいーを過ごす〉〈一家団欒のー〉中 村真一郎の『天使の生活』に「この朝のーは、男の生活のな かで、最も甘美な味を持つ時間だった」とある。「一刻」の ように何分何秒という感じはなく、多くは一、二時間程度の 快い時間をイメージし、苦難の時にはなじまない。ただし、 「ーはやった服装」のように過去の一時期をさす場合は年単 位の長さにもなりうる。漢字表記は「いちじ」と読まれや すい。いちじ・一刻・Qいっとき・ひところ ひととなり【人となり】持って生まれた性格の意で、改まった会話やきほど硬くない文章に用いられる古風な和語。 〈ーが偲ぶばれる〉〈そのーを如実に物語る〉②宇野千代の 『色ざんげ』に「この兄という人の温和なー」とある。「人 柄」と同様にプラスのイメージがあり、「ずるい」「ひねく れた」といったマイナス評価の語と結びつきにくい。ごく まれに「為人」と漢字を当てるとおり、「人柄」という語が、 苦労を重ねることで人間的に成長するなどの後天的に獲得 した部分を含む感じがするのに対して、この語は生まれつ き有しているという先天性が強調される。見気質・気象・気性・ 気立て・性分・人格・人品・人物・性格・性向・性質・たち・Q人柄 ひとばんじゅう【一晩中】「夜通し」の意で、会話にも文章に もよく使われる日常表現。〈起きている〉へー車の往来が 絶えない〉へーかかってようやく仕上げる〉き終夜・夜っびて Q夜通し・夜もすがら ひとまず【一先ず】まずはと一区切りつける意味合いで、会 話にも文章にも使われる和語。くこれでー安心だ《今日の ところはーこれで〈帰宅する〉〈身を寄せる〉回全体 としてはまだ途中かもしれないが、といった含みがある。 十分ではないが一息ついた感じで用いる表現。「当面」「当 座」と違い、ここ当分という時間をさす用法はない。 あたり・さしずめ①・当座・当面・Qとりあえず ひとみ【瞳(眸)瞳孔の意で、会話にも文章にもよく使わ れる和語。〈黒いーの若者〉〈ーを凝らす〉「ーを輝かす」 「つぶらなー」など、目全体をさす美称ともなる。そのブラ スイメージを利用して女の子の名づけに使われる。日常的 な「黒目」は命名に用いにくい。夏目漱石は『道草』で魂と の交流を失った目を描き、「漫然と瞳孔の向いた見当を眺 めていた」と述べている。黒目・Q瞳孔・目 ひとめぼれ【一目惚れ】一度出会っただけですぐ好きになる 意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈俗に言うーってや つだの「見初める」と違い、「才能にーして引き抜く」の ように恋心以外にも用い、また、「ーしてその場で買っちゃ った」のように人間以外にも使う。見初める ひともしごろ【灯点し頃】薄暗くなって明かりをともす時間 帯をさし、主として文学的な文章で使われる、古風で詩的 な表現。「になると人恋しさが増す」②ちなみに、小沼丹 の『遠い昔』に、「人恋しーを桜散る」という白雄の句が好 きだとあり、「口誦むと遠い昔がゆらゆら浮んで、何となく 誰かと酒が飲みたくなる。どう云う訳かしらん?」と結ば れる。ヨQ暮れ方・たそがれ・薄暮・晩方・日暮れ・夕・夕方・夕暮れ・ 夕刻・夕べ・夕間暮れ・宵・宵の口 ひとり一人人間一名をさして、だけた会話から文章ま で幅広く使われる日常の基本的和語。旅たたー <887> 〈男の子と女の子がーずつ〉だれー気づかない小沼丹 の『黒と白の猫』に「大声で細君を呼ぼうとして、大寺さん は家のなかに自分ーなのに気附いた」とある。ひ独り ひとり【独り】単独・独身の意で、会話や文章によく使われる 日常の和語。〈ー者〉へ暮らし〉〈ー寂しく〉〈ーでやりと げる〉へまだーでいる〉横光利一の『春は馬車に乗って』 に「妻はそうー定めてかかると」とある。ひ一人 ひとりぐらし一人暮らし会話やさほど硬くない文章に使 われる和語。〈ーは楽じゃない〉へーは気楽でいいへーの 老人住むことに焦点のあたる「一人住まい」に対し、生 活に重点がある。一人住まい ひとりこと【独り言/一人言】相手がいないのに声に出して 物を言う口頭表現をさし、くだけた会話から文章まで使わ れる和語。ぶつぶつーを言う)小沼丹の『銀色の鈴』に 「ーを云って、ーを云ったのに気が附いて、余計面白くない 気分になる」とある。呂呟く・Q独白 ひとりじめ【独り占め】自分一人だけで占有する意で、改ま らない会話や軽い文章に使われる和語。〈もうけをーにす る〉(人気をーする〉〈母親の愛情をーにする〉四「独占」に 比べ、個人的・小規模な場合によく使われる傾向がある。 独占 ひとりずまい一人住まい自分一人だけで住む意で、会話 にも文章にも使われる、いくぶん古風な感じの和語。へわび しいー〉へに慣れないうちは、暗くなると心細くなる) 一人暮らし ひとりだち【独り立ち】自分の力だけでやっていく意で、会 ひなん 話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈息子が社会に 出てーする〉〈職人が親方から離れてーする〉「やっとー できるようになる」のように、赤ん坊が自分の力で立ち上 がる意もある。自立・Q独立 ひとりでに 意図的な働きかけなしにの意で、会話でも文章 でも使われる、やわらかい感じの日常の和語。〈ー手が出 る〉〈ー動き出す〉〈ドアがー開く〉〈自ずから・自ずと・自然・ 自然と・Q自然に ひとりぼっち 身寄りも仲間もいない意や、その場に一人だ けという意味で、会話や軽い文章に使われる和語。いつも ーで淋しい〉へーは子供のころから慣れている〉ひ孤独 ひとりみ【独り身】独身の意で、主に文章に用いられる古風 な和語。(まだーだ)〈ーは気楽でいい〉〈ーを託っつ〉福 原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「夢からさめて見ると、 自分は、一の肱かけ椅子に静かに坐っていた」とあるよう に、さびしい感じが漂う。弔売れ残り・独身・独り者・未婚 ひとりもの【独り者】独身者の意で、会話やさほど硬くない 文章に使われる和語。〈ーのわびしい暮らし〉〈ーで通す〉 児れ残り・独身・Q独り身・未婚 ひなた【日向】日光のよくあたる場所をさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈ーぼっこ〉〈ーに出る〉〈ーに干す〉 「日陰」と対立する語。ひ陽だまり ひなん【批難】批判的に非難する意で、主に文章に用いられ る漢語。〈先輩にーめいた口を利く〉単なる「非難」より も論評を交える感じがある。Q非難批判 ひなん【非難】他人の欠点や失敗を厳しく責める意で、会話 <888> びなんし にも文章にも使われる漢語。〈一畳々〜〉へ一の的となる 〈一を浴びせる〉大岡昇平の『俘虜記』に「何事にも見切 りがよすぎるといって私をーした」とある。論換が前面に 出ず、「批判」よりも感情的な感じが否めない。Q批難・批 判 ぴなんし【美男子】顔のよい男をさし、会話にも文章にも使 われるやや古風な漢語。ヘクラスでも一、二を争うー) 「ぴだんし」と読むといくぶん俗っぽく響く。ひいけめん・男 前・好男子・ハンサム ひにく【皮肉】意地悪く故意に遠まわしに批判・非難する意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーを言う〉〈ーな言 い方〉〈ーに響く〉有島武郎の『或る女』に「明白なーが 矢のように葉子の唇から岡に向かって飛ばされた」とある。 レトリックの専門語としては、「お宅は泥棒に狙われる心配 がなくて羨ましい」のように、表面上穏やかに述べながら その表現の裏に棘をひそませて当てこする修辞技法を「 法」と呼ぶ。また、「な結果」「なめぐり合わせ」のよ うに、予測と逆になるなど、思いどおりにならない意に使 う用法もある。ひQあてこすり・あてつけ ひにん【否認】事実ではないとしてそのことを認めない意で、 改まった会話や文章に用いられる専門的な雰囲気の硬い漢 語。〈犯行を—する〉〈罪状をあくまで—する〉警察や裁 判などの連想が強い。ひ打ち消す・Q否定 ひねくる【捻くる】手でいじりまわす意で、主に会話に使わ れる俗っぽい和語。〈ハンカチをー〉〈あれこれー・ってもう まく行かない)②「俳句をー」「文言をー」のように、苦労 して作り出したりあれこれ直したりする意にも使うが、小 手先でいじるという感じがつきまとい、大きな変更にはな じまない。ひいじくる・Qいじる・まさぐる・もてあそぶ ひねくれる【捻くれる】性質や考え方がねじけて素直でない 意として、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈性 格がー・れている〉「・れた根性を叩き直す〉「・れた考 え〉の川端康成の『花のワルツ』に「根性のー・れた、意地 の悪い、こましゃくれた子」とある。一時的な「すねる」に 比べ、性格的に身についている感じがある。きすねる・Qねに ける・僻む ひねる【捻る】指先でつまんで横に回す意で、会話でも文章 でも幅広く使われる日常生活の和語。〈足首を—〉〈なぜか と首を—〉〈鶏の首を—〉森鷗外の『雁』に「幾らか紙に ー・って女中に遣って」とある。強い力を加える「ねじる」 とは違って、「軽く—」と言うこともでき、また、通常一度 だけの行為であって同じ動作をすぐに繰り返すことはない。 ひねじる ひのいり【日の入り】「日没」の意で、改まった会話や文章に 用いられる古風で若干詩的な和語。へーまではまだ間が ある》坪内逍遥の『当世書生気質』に「恰どーの頃であっ た」とある。「日の出」と対立。「日没」より生活の感じがあ り視覚的なイメージも強い。日没 ひので【日の出】太陽が地平線・水平線上に姿を現すことをさ し、会話にも文章にも使われる日常的な和語。〈初ー〉へー が近いへーから日の入りまで〉プラスイメージがあって アパートなどの命名に使われたが、現在では古くさい感じ <889> になり「サンライズ」のほうが好まれる。なお「」の勢い の形で前途盛んな感じの比喻的形容ともなる。「日の入り」 と対立。月夜明け ひのべ【日延べ】予定日の延期および期間延長の意で、会話 や硬くない文章に使われる、いくぶん古風な和語。催しが ーになる〉〈一興行〉Q延期・延長・繰り下げ・繰り延べ ひばら【脾腹】「脇腹」の意の時代がかった古めかしい言い 方。〈一に傷を負う〉込横っ腹・横腹・Q脇腹 ひはん【批判】人間の考えや行動、物事のあり方などを論拠 を持って否定的に評価する意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。(政府の方針を—する)へ—的な発言を 繰り返す〉へ—を招く〉へ—にさらされる〉田山花袋の 『蒲団』に「熱い主観と冷めたい客観の—とが絡り合わせ た糸のように固く結び着けられて、一種異様の心の状態を 呈した」とあるように、「非難」よりもきちんと理屈で運ぶ 傾向があり、「批難」よりあたりがやわらかい。Q批難・非 難 ひび【鯛】亀裂の意で、会話にも文章にも使われる日常の和 語。〈ガラスに—が入る〉〈骨に—が入る〉〈両者の関係に ーが入る〉長塚節の『土』に「木材は赤い歯を喰いしばっ たような無数のーが火と煙とを吐いていた」とある。鶏 ひび【輝(戦)】手足の皮膚が乾燥しすぎて出来る細かい割れ 目の意で、会話にも文章にも使われる、やや古風な和語。 〈手にーができる〉〈寒さにーが切れる〉尾崎士郎の「人 生劇場」に「乾いた下塗りの壁のように—の入っている足の 裏」とある。漢字表記は「あかぎれ」と区別できない。 ひびく かぎれ・諫 「日日」来る日も来る日も毎日という意味で、やや改ま った会話や文章に用いられる、いくぶん古風でいくらか美 化した感じのやわらかい和語。〈努力する〉〈犬のいた ー〉〈一の暮らしに役立つ〉〈充実したーを送る〉〈過ぎ去 ったーを思い返す〉正宗白鳥の『微光』に「幸福を祈ら ぬ日とてはなし」とある。どの日も欠かさずすべてという ニュアンスのある「毎日」ほど厳密でなく、「日頃」「日常」 に近い緩やかな限定で使う傾向がある。「毎日」に比べ、一 日ずつというより普段の日をまとめてとらえた感じが強 く、「酒びたりのーが続く」「楽しいーを過ごす」のように 一定の範囲の何日かをさす用法もある。ふ日常・日頃・Q毎日・ 連日 ひびき【響き】音や声、また、耳に聞こえるその感じをさし、 会話にも文章にも使われる和語。〈列車の—〉〈鐘の美しい —〉〈—が伝わる〉〈—のいいことば〉〈音色を意識しやす い「音」に比べ、「—がきつい」「やわらかい」など、体に 感じる振動の快感・不快感の印象が強い。阿部昭は『人生の 一日』で玩具のピアノについて「幼児のちっちゃな手が無心 にふれると、グラスをはじいたような高く澄んだーを立て る」と書く。ひ音・Q音響 ひびく【響く】音が鳴り渡る、反響する意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈歌声が—〉〈教会の鐘が—〉〈耳にが んがん—〉徳田秋声の『微』に「泣いている子供の声は (略)頭脳またに針を刺すようにー・いた」とあり、石川淳の 『紫苑物語』に「谷に鳴り、崖に鳴り、いただきにー・き」と <890> ひひょう ある。「胸に」の形で強く訴える、応えるの意で使う比喻 的用法もあり、「不況が」「寝不足が」のように悪い影 響を与える意にも使う。ひQ輩く・鳴る ひひょう【批評】ものごとの長所や欠点を指摘した上でその 本質的な価値を総合的に判定する意で、会話にも文章にも 使われる日常の漢語。〈一家〉(文芸—〉〈好意的な—〉〈手 厳しく—する〉訪問時に小林秀雄は鎌倉の自宅で「まず 感動がなきゃ、僕の—はなかった」と内省する。他人を貶す のは論理でできるが、褒めるときには感動がある、批評に は、そういう分析的な論理では説明のつかないものが必要 なのだという。ひひ評論・論評 ひふ【皮膚】動物の体表組織をさして、会話にも文章にも広く使われる漢語。〈病〉(が弱い)谷崎潤一郎は『刺青』で、「清冽な岩間の水が絶えず足下を洗うかと疑われるの潤沢」と、女の足を美化して描いた。Q肌はだえピフテキ「ピフステーキ」をさし示す古めかしい呼称。今夜はーをふるまう〈肉汁のしたたる焼きたてのー〉②獅子文六の『沙羅乙女』に「好物の炭焼ーも、ゴムを噛むような気がした」とある。今ではそう珍しくないが、かつては庶民の憧れの高級料理であったため、その当時に青春を送った人にとっては、「ステーキ」以上に美味な感じのする響きを伴う。ひステーキ ぶぶん【美文】内容の正確な伝達よりも視覚的・聴覚的な快さ の面に重点を置き、各種の技巧を馭使して華麗な表現をち りばめて美しく飾り立てた文章をさし、会話にも文章にも 使われる、やや古風な漢語。「調で謳いあげる」特に、 明治中期以後に落合直文や大町桂月らの国文学者を中心に 流行した一連の文章をさし、美辞麗句を並べ立てて花鳥風 月を感傷的に扱った趣味的な擬古文が多い。高山樗牛の 『わがそでの記』にある「夕なみ千鳥あはれに鳴きわたり物 さびしき空にたぐひて」といった調子。違文・Q名文 ひほう【悲報】悲しい知らせの意で主に文章中に用いられる、 やや古風な漢語。〈—が入る〉〈—に接する〉〈旅先に—が 届く〉死の知らせを意味することが多いがそうとは限ら ない。そのため「訃報」より間接的な表現で、「凶報」より も若干婉曲に響く。Q凶報・訃音・訃報 ひぼし【干乾し】食べ物がないために飢えて痩せる意で、会 話や軽い文章に使われる古風な和語。〈一になる〉夏目漱 石は『野分』で、「自らみいらとなるのを甘んじても妻を— にする訳には行かぬ。—にならぬ余程前から妻君は既に不 平である」と書いている。日干し ひぼし【日干(乾)し】天日に干す意で、会話にも文章にも使 われる、やや専門的な和語。〈魚をーにする〉の「陰干し」 の対。ひ干乾し ひま【暇】特にすることのない時間や休暇・余暇などの意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。 〈ーを出す〉〈仕事がーだ〉〈ーをつぶす〉〈ーを持て余す〉 〈ーに飽かして〉〈ーがあればいつも庭いじりだ〉柴田翔 の『されどわれらが日々』に「君、明日はーかね」とある。 「休むーもない」「車の途切れるーがない」のように、すき まの意味合いでは「隙」と書くことが多い。「ーな人」「 な時間」のように、することがない意では「閑」と書くこと <891> もある。これらの表記は文体的なレベルを若干高める。 間隙・隙 ひまご【曾孫】孫のさらに子供をさし、会話やさほど硬くな い文章に使われる和語。〈長生きしてーの顔を見る〉の「ひ いまご」と発音することもある。刂曾孫・Qひこ ひまつ【飛沫】「しぶき」の意で、主として文章に用いられる 硬い漢語。〈噴水のーを浴びる〉〈ーが飛び散る〉呂島木健 作の『癩』に「ほったりと大きな血塊が封筒のまん中に落 ち、ーがその周囲に霧のように飛んだ」とある。Qしぶき・ 水煙 ひまん【肥満】太り過ぎた体の状態をさして、やや改まった 感じの会話や文章に用いられる漢語。〈一児〉〈一体〉〈一 を防ぐ〉北杜夫の『夜と霧の隅で』に「した身体をゆす って笑った」とある。ひQでぶ・太っちょ びみ【美味】「おいしい」意で改まった会話や文章に用いられ る硬い感じの漢語。「なる料理をふるまう」(なかなか である)水上勉の『土を喰う日々』に「(松茸の甘煮の) にはあきれた」とある。「うまい」や「おいしい」が食した 人間の感覚を直接表現している感じがするのに対して、こ の語は飲食物自体の評価に重点があり、そこから間接的に 感覚をも表す、という関係になるように思われる。 い・Qおいしい ひみつ秘密】他人に知られないように隠しておく意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な日常 的な漢語。〈ー結社〉〈企業ー〉〈ー文書が出回る〉〈ーにす る〉〈ーを守る〉〈ーを漏らす〉〈ーがばれる〉〈ー裏に事を ひめる 運ぶの「機密」と違い、二人だけの」のように個人的 な事柄にも使う。夏目漱石の『坊っちゃん』にも「昨日帰り がけに船の中で話した事は、ーにしてくれ玉え」とある。 機密 びみよう【微妙】きわめて細かい点のごくわずかな意味・感 情・感覚・性質などの違いが問題になるときに、会話にも文 章にもよく使われる漢語。〈なニュアンスの違い〉へな 情勢〉へな判定〉へに変化する〉〈当事者にしかわから ないな感情〉へな問題が絡んでくる〉林芙美子の『晩 菊』に「な人生の真実」とある。複雑過ぎて明快な分析や 表現のできない場合によく使われ、「繊細」のようなプラス のイメージはない。繊細・デリカシー・Qデリケート ひめい【悲鳴】恐怖や極度の苦痛や驚きから思わず発する叫 び声をさじ、会話にも文章にも使われる漢語。へーをあげ る)〈深夜にーが聞こえる〉②井伏鱒二の『黒い雨』に「 と喚き声に分厚く取巻かれ、僕に被さっている人を振落し て辛うじて起き上った」とあり、宮本輝の『蛍川』に、夥し い数の蛍に取り囲まれた「英子がーをあげて身をくねらせ」 るラストシーンがある。注文が殺到して製造が追いつかな いような場合に「うれしい」という喜びの例もある。Q 金切り声・奇声・叫び・叫び声・絶叫・胴間声・蛮声 ひめる【秘める】「隠す」に近い意で、主として文章に用いる やや古風でいくらか美化した感じの和語表現。思いを胸 に」〈闘志を内に」〈可能性を」谷崎潤一郎の細 雪」で「ゆく春の名残惜しさに散る花を袂のうちに」・め ておかまし」という幸子の歌に夫の貞之助は「いとせめて <892> ひめん 花見ごろもに花びらをー・めておかまし春のなごりに」という訂正案を示している。「隠し持つ」に近いが、「ふところにドスを」と来ると、「香む」であって「秘める」とはならない。この語は意図的に「隠す」という意味合いでなく、外からわからない形で内側に存在することをさす場合が多い。 马隠す ひめん【罷免】任命権者などが一方的に任務・職務、特に公職 を解いて辞めさせる意で、改まった会話や文章に用いられ る専門的な漢語。「不正のあった会計課長をーする」(ーを 言い渡す)内閣総理大臣は国務大臣の権を有する」の ように、大臣にも適用されるが、それによって直ちに議員の 身分を失うわけではない。解雇・解職・Q解任・首切り・免職 ひも【紐】物を結んだり縛ったりする糸・布・革・ビニールなど で作った細長いものの総称として、会話にも文章にも使わ れる日常の和語。「靴ーを結ぶ」(ーで結わえる)「をか けて縛る」「綱」より細く、物を一つにまとめる目的で使 うことが多い。綱・Q綱・ローブ ひもじい空腹の感覚をきし、会話にも文章にも時折用いら れる古風な和語。へ思いをする)〈ひもじさに堪える) 人前で「ひだるい」と露骨に表現するのを控えて、ヒントと なる「ひ」に「文字」を添えて間接的に表した「ひ文字」と いう女房詞の一つに現代語の形容詞の語尾を付した語形。 ひ空腹・空・き腹・腹へこ・Qひだるい ひもとく【繙く】書物を読む意で、主に文学的な文章中に用 いる古風で雅みやかな感じの和語。〈古い文献を〉〈哲学 書を」・昔の書物の帙の紐をほどいて広げる意の「紐 解く」から出た語であるため、書類・図面・地図・新聞など 綴とじていないものを読む場合には使いにくい。「ひもど く」とも。読む やかす【冷やかす】からかって恥ずかしがらせたり気をも たせたりする意で、会話や改まらない文章で使われる和語。 〈新婚夫婦を〉へたどたどしい英語で買い物をする仲間 を、さすが本場で小便して来ただけあるとー)回得意にな っている相手を覚めた目で見ながらそれに水をさして当人 の高ぷった気分を醒ます行為で、親しみの感情を伴う「か らかう」とは違い、意地悪く感じられるという指摘もある。 夏目漱石の『明暗』に「一通り夜店でもー・して」とあるよ うに、買うつもりなしに商品を見たり値段の交渉をしたり する意にも使う。三遊亭円右の新作落語『苦情』に「これが 五万円か、安いね、安い、五万円ね、安すぎはしないか、五 万円とはばかに安いね、いいのか五万円で。そうか、では またくる」とあるのはその一景。おちょくる・Qからかう ひやく【飛躍】格段に高いレベルで活躍するようになる意で 会話にも文章にも使われる漢語。へいっそうの—が望まれ る〉〈めざましい—を遂げる〉の「成績が—的に伸びる」の ように、急に大幅な向上を見せる場合に使うのもその延長 上の用法。「話が—する」「論理に—がある」のように、必 要な手順を跳び越えてしまってつながりがない意にも使う。 り躍進 ひやく【秘薬】「秘伝の薬」の意で製法などを内密にしてある 薬をさし、改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。 〈家伝の—〉〈江戸時代から伝わる—〉単に世の中に知ら <893> れていない妙薬の意にも使う。Q妙薬・良薬 ひやくしょう【百姓】農業を生業とする人の意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈一揆〉〈おーさん〉〈一が汗水 垂らして作った米〉以前「どん」「水呑み」「の 出」などと軽蔑の気持ちを込めて使われることがあったた め、現代では職業に対する不当な差別意識を伴う語として その使用を控える傾向にあるが、誇りをもって自称したり、 農業問題などを自ら提示するときに用いる例もある。大原 富枝の『婉という女』に「健やかに強い体臭を発散する、素 朴なー」とある。専農夫・農婦・Q農民 ひゃくぶんひ【百分比】「パーセント」の意で、主に文章中に 用いられる、やや古風な漢語。〈統計結果をーで示す〉 パーセント・Q百分率 ひゃくぶんりつ【百分率】「パーセント」の意で、主に文章に 用いられる漢語。〈年利率をーで表示する〉きQパーセント・ 百分比 びゃくや【白夜】「はくや」の慣用的な読み。「を体験する」 はくや ひやざけ【冷や酒】煙をしない日本酒をさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈茶碗でーをあおる〉へーはあとで利 く「冷酒」と違い、通常お煙をして飲む普通の酒を常 温で飲む場合に言う。児煙冷まし・Q冷酒 ひやっかてん【百貨店】「デパート」をさす古風な漢語。 で買い物をする〈銀座にある老舗の本店〉小林秀雄の 『モオツアルト』に「に駈け込み、レコオドを聞いたが、 もはや感動は還って来なかった」とあるように、当時はごく ビューティーパ 普通に用いられたが、今では相当古めかしい用語に感じら れるようになった。ただし、「デパート券」はスーパーでも 使え、「券」はデパートのみの使用となるケースもあると いう。現代における新しい使い分けであり、「百貨店」も 細々と権威をとどめている。ひデパート ひやびや 艶があってなめらかな感じを表す創作的なオノマ トペ。②中勘助の『銀の匙』に「円くあいた唇のおくから した声がまろびでる」という表現が出てくる。「びやびや」 は擬声語か擬態語かと一瞬迷うが、「円くあいた唇」から 「まろびでる」という言語環境に置かれたこの表現は、いず れにしても読む者に、艶のある声のなめらかな質感を連想 させる。幼い日の思い出として、「その美しい声にうたわ れた無邪気な謡は今もなおこの耳になつかしい余韻をのこ している」とそこにはある。 ひややか【冷ややか】「冷たい」意で、改まった会話や文章に 用いられる、いくぶん古風な感じの和語。〈秋の山のーな空 気〉の辻邦生の『天草の雅歌』に「ーな、威圧するような態 度」とある。「ーな目で見る」「ーに笑う」のように冷淡の 意で使う例が多い。専寒い・涼しい・Q冷たい ゆ【比喻】対象を他のイメージをとおして間接的に伝える 表現技法をさし、会話にも文章にも広く使われるやや専門 的な漢語。〈表現の一種〉へ「的意味〉の直喩・隠喩などの 種類に分かれる。「たとえ」より正式な用語。ひ喩え ピューティーパーラー「美容院」をさしてある時期盛んに用 いられた美称。今ではむしろ時代遅れの感じが伴う。 マ屋・Q美容院・美容室・ヘアサロン <894> ヒューマー ヒューマー「ユーモア」のうち、単なる滑稽ではなく、人間 らしさの横溢するしみじみとしたおかしみの部分をさす 専門的な外来語。〈人間味あふれるーの世界〉作家訪問の 際に庄野潤三は「僕の求めてるのは美しい文章じゃなくて、 読んでるとひとりでに笑えてくるような文章」だとし、「イ ギリス風に言えばーですね」と語った。ひウイット・エスプリ 機知・機転・頓智・Qユーモア ヒュッテ「山小屋」をさすやや古風な外来語。頂近くのー にたどり着く②「ザイル」や「ピッケル」などとともにド イツ語から入って来た登山用語で、ひところ斬新な感じで 愛用されたが、最近では使用頻度の減少とともに、むしろ 古い感じに受けとられる傾向がある。山小屋 ひよう【費用】何かを買ったり行ったりするのに必要な金額 をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈増築の ー〉へーを捻出する〉へーがかかり過ぎる〉へーをまかなう〉 ゆ「経費」より日常生活で気軽に使う。一定の枠で集計す る感じの「経費」に比べ、個々の事柄について算出する感じ が強い。弁経費 ひよういつ【飄逸】世俗的なことにこだわらず、型にはまらないで気楽に生きている意で、主に文章に用いられる漢語。 〈な人物〉〈明るくなところがある〉〈な作風〉小沼 丹の『木山捷平』に「虚実とりまぜながらこのことに触れた 作品で、の味がある」とある。飄然・Q飄々 びよういん【美容院】髪のカットやパーマなどを施す店をさ し、会話でも文章でも広く使われる日常漢語。行きつけの 頬語の中で最も一般的な言い方。小沼丹の『黒と白 の猫』に「大寺さんの細君はその日、珍しくに行った。 (略)それが死出の化粧となろうとは夢にも思わなかっただ ろう」とある。専パーマ屋・ビューティーパーラー・Q美容室・ヘア サロン ひよういん【病院】患者の収容病床二十以上の大規模医療施 設をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常 の基本的な漢語。〈専門〉〈大学〉〈救急〉〈勤務〉 「に担ぎ込む〉〈に入院する〉遠藤周作の『海と毒薬』 に「病院の窓々にはうるんだ灯がともり、港にはいる満艦飾 の船のように見えた」とある。専医院・クリニック・Q診療所 ひようか【評価】価値や成績を判定する意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈基準〉〈相対〉〈過大〉〈土地の 頷〉〈高いーを受ける〉〈ーが低い〉〈高くーする〉〈まだ ーの定まらない現代作家〉夏目漱石の『こころ』に「私の 論文は自分がーしているほどに、教授の目にはよく見えな かったらしい」とある。「その点はーできる」のように、近 年は高い評価に限定する用法も見られる。その場合、「評 価しない」は価値判断をしない意味ではなく、悪い評価を 与える意味になる。成績・評定 びようが【病臥】病気で床に伏す意で、主として改まった漢 文調の文章に用いられる硬い感じの漢語。〈一の身となる〉 〈長期に及ぶ一のためすっかりやつれ果てる〉瀧井孝作の 『積雪』に「老父は七八日ーしたらしかった。ーして介抱な どそうあてにせず、覚悟のよい大往生のようであった」とい う一節がある。「丈余の積雪」「瘦顔白骨の如く」といった 硬質の表現環境の中で、この語も自らの感傷を律しきった <895> 冷たく勁い響きを感じさせる。Q仰臥・伏せる ひようき【表記】ことばの書き表し方の意で、改まった会話 や文章に用いられる専門的な漢語。〈法〉へ上の約束 事〉〈簡略なーを採用する〉〈漢字でーする〉②「一の住所 に郵送する」のように、物の表面に書き記す意で用いる場 合は、主に文章に使われる改まった感じの漢語。専標記 ひようき【標記】目印・符号や題目などを書く意で主として文 章に用いられる正式な感じの硬い漢語。〈禁止事項を示す ーに注意されたし〉への件につき審議する〉表記 びようき【病気】体や心の異状の意で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。「にな る〉へにかかる〉へーが重る〉へーが快方に向かう〉綱野 菊の『風呂敷』に「主治医の見立て通りで、不治のーではな いことがハッキリした」とある。専障り・疾患・Q疾病・病魔・ 病・患い ひようきん【剽軽】言動が軽率で滑稽な感じを与える意で、 会話にも文章にも使われる、いくらか古風な感じの漢語。 「な人」(なことを言う)徳田秋声の『風呂桶』に「 な女ではあったけれど、決して踊りはしなかった」とある。 可笑しい①・傑作②・滑稽・Qコミカル・ユーモラス ひようけつ【表決】賛否などの態度を表明して決める意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。賛否をーす る〈挙手による—〉Q評決票決 ひようけつ【票決】投票による決定の意で、改まった会話や 文章に用いられる正式な感じの漢語。〈議案をーする〉ひま 決・Q評決 ひょうげんぎほ ひようけつ【評決】評議して決定する意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈陪審員による—〉Q表決票 決 ひようげん【表現】人間の内面にある思想・知識・感覚・感情などの情報を、他の人間が自分の感覚で具体的に認知できる表情・身振り・行動や言語・音楽・絵画・彫刻などの形で外面に示す行為をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈力〉〈態度〉〈言語〉〈待遇〉〈喜怒哀楽の〉〈しがたい不思議な味わい〉〈素直な〉〈大胆な〉〈微妙な心理を巧みに〉する〉〈説得力のある効果的な〉〈しがたい不思議な味わい〉小林秀雄の『モオツァルト』に「批評も亦一種の文学である限り(略)」様式の変化を経験しただけ」とある。同じく小林秀雄の『様々なる意匠』には「詩人は如何にして、これのせんと意識した効果を完全にーし得ようか」とある。意図的な行為に限定し、無意識に出る場合を「表出」「流露」などとして区別することもある。表す・Q表出・表明 ひようげんがく【表現学】「表現論」をすでに学問的整備がな されたという認識で、学術的な会話や文章に用いられる専 門的な漢語。「の成立」表現論 ひようげんぎじゅつ【表現技術】表現を行う際に採用する手 段・方法やその折に試みるさまざまな表現上の工夫をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。へに秀でている)修辞 技法や文彩もその一部にあたる。Q表現技法・表現法 ひょうげんぎほう【表現技法】個々の独立した方法として慣 用的に固定されている各種の表現技術をさし、学術的な会 <896> ひょうげんほう 話や文章に用いられる専門的な漢語。「をひととおり修 める」表現技術・表現法・Q文彩 ひようげんほう【表現法】表現の仕方を漠然とさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈国語—〉〈文章—〉②「表現技 術」というほど特殊でなく「表現技法」というほど固定的で ない場合を含めて広くさし示すゆるやかな表現。レトリッ クにおける具体的な表現部門や、ある作品・作家・シャンル などに特徴的なことばづかいをさす用法もあり、それらの 場合は専門語。表現技術・Q表現技法 ひようげんろん【表現論】主として言語表現の方法と伝達効 果との関係を研究する学問分野をさし、学術的な会話や文 章に用いられる専門的漢語。〈近代詩の—〉表現学 ひようご【標語】モットーやスローガンなど、主義主張を表 す短いことばの意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈交 通安全のー〉〈ーを掲げる〉呂評語 ひようご【評語】批評のことばの意で、改まった会話や文章 に用いられる、やや専門的な漢語。〈作品審査のーを記す〉 〈辛辣なー〉専標語 ひようこう【標高】「海拔」の意で、現在では「海拔」より一般的によく使われるいくぶん専門的な漢語。〈富士山は三七七六メートルで日本の最高峰〉乃海拔 ひようじ【表示】文書や図表などの形でわかりやすく示す意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈意思—〉 〈住居—〉〈非常口の—〉〈結果を整理して—する〉 Q揭示・ 展示 ぴょうし病死病気で死ぬ意でやや改また会話や文章 に用いられる漢語。父がーし、今は母がひっそり暮らして いる)病没 びようしつ【美容室】実質的には「美容院」に近い意味で、 会話でも文章でも使われる漢語。〈ーを経営する〉〈最近オ ーブンしたばかりのー〉②「院」と「室」との違いから「美 容院」よりこちんまりした感じを受ける一方で、店名に用 いる例が多いこともあり、一流の美容師による個性的な店 を連想させる面もあり、やや専門的な響きがあるように思 われる。马バーマ屋・ビューティーバーラー・Q美容院・ヘアサロン ひようしゃ【描写】対象を客観的に観察して知覚・認識したものをありのままに描き写す意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈自然ー〉〈人物ー〉〈見たとおりにーする〉〈夜の盛り場をーする〉「説明」と対立。永井荷風の「湮東綺譚」に「世をしのぶ境遇をーする」とある。Q描く・表現描出 ひようしゅつ【表出】内面の思想や感情などを、言語・絵画・ 音楽など相手が感覚的にとらえうる形にして表すことをさ し、改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈感情 をーする)文学作品などでは、意図的なものを「表現」、 無意識に現れるものを「表出」として区別する立場もある。 Q表す・表現・描出・表明 ぴようしゅつ【描出】観察した内容をそのまま文章などに描 き出す意で、主に文章に用いられる専門的な漢語。へー話 法夏目漱石の『草枕』に「した一種の気韻」とある。 直接話法と間接話法との中間的な話法を「話法」と呼び、 客観性を保ちながら登場人物の心理を生き生きと伝えるの <897> に効果がある。 刂描く・表現・Q描写・表出 ひようじゅん【標準】比較や判断のよりどころとなる基準や 手本などをさし、会話にも文章にも幅広く使われる基本的 な漢語。〈一語〉〈一服〉〈一時〉宮本百合子の『二つの 庭』に「何をーにしているのかとにかくきまりすぎた席次」 とある。単なる目安や平均ではなく規範とすべきものという 意識がある。単基準 ひようじゅんご【標準語】その国で規範とされ、教育の場や 公用文・放送などに用いる言語体系をさし、会話にも文章に も使われる漢語。〈ー教育〉〈人前ではーを使う〉の通用す るという実用性に重点のある「共通語」と違い、規範として 理想的にとらえるところに重点がある。単共通語 ひようじょう【表情】気持ちなどの内面が顔に現れたようす をさして、会話にも文章にも広く使われる日常の基本的な 漢語。〈ーが豊かだ〉〈ーに出やすい〉〈ーが明るい〉〈ーを 変えない〉②宮本百合子の『伸子』に「蒼白い皮膚の下から 悦びが照り出すようなー」とある。「顔色」や「面持ち」と 違い、「街のー」のような比喻的用法もあり、その場合は詩 的な雰囲気が漂う。②面持ち・Q顔色・顔つき びようじょう【病状】病気の状態の意で、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。へーが安定している〉へーの回復 を待つへーの悪化を招く②「症状」より総合的な判断。 も症状 ひょうぜん【飄然】ふらりとやって来たりふらりと立ち去 ったりする意で、主に文章に用いられる漢語。へと来てー と去る〉へと家を出る〉池谷信三郎の『橋』に「まるで びょうどう 黒いゴム風船のように、トとこの屋上庭園に上って来た」と ある。比喻的に世間離れした暢気な生き方を意味するこ ともある。観逸・Q飄々 ひようそう【表層】物の表面近くの層をさし、改まった会話 や文章に用いられる専門的な漢語。〈雪崩〉〈構造〉 「深層」と対立。りうわつら・うわべ・皮相・Q表面 ひようだい【表題】表紙に示された書物の題名をさし、改ま った会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。「がなかな か決まらない」(本のーに工夫する)刂題・タイトル・題名・題 目・標題 ひょうだい【標題】講演の演題や演劇の演目や書類の見出し などをさし、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。 〈奇抜なーを掲げる〉〈音楽〉題・タイトル・題名・題目・表題 びようたい【病態】病的な状態の意で、学術的な会話や文章 に用いられる専門的な雰囲気の漢語。〈ーに若干の変化が見 られる〉専容態 ひようちょう【表(標)徴】「象徴」の意で文章中に用いられる 硬い漢語。「碇のマークは船の「となる」「平等な話し 合いは民主主義の「である」のように、外部に現れるしる しを広くさすが、「象徴」「シンボル」と違って一般にはあ まり使われない。Q象徴・シンボル ひようてい【評定】一定の基準に従って評価を定める意で、 改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈勤務ー〉 〈価格のーが出る〉及評価 びようどう【平等】取り扱いに差別がなくすべて等しい意で やや改まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語 <898> びょうにん 〈男女—〉〈—に分配する〉(どちらの意見も—に聞く〉 の権利を有する特に人間の価値や権利などを問題とす る際に、日常的な「公平」よりよく使う。「不平等」と対立。 公正・Q公平 びようにん【病人】病気になった人の意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈家族にーが 出る〉〈ーを見舞う〉〈ーの看護〉の横光利一の『時間』に 「厄病神のように思われて皆から厄介扱いにされていたー」 とある。病院に行けば「患者」ともいえる。み患者 ひようはく【漂泊】さまよい歩く意で、主として文章中に用 いられる古風で美化した感じの漢語。あてとなくーを続 ける〉〈一の旅〉〈一の詩人〉帰宅しないだけでなく、一 つの場所にとどまっていない感じが強く、比喻的用法も多 い。ひさすらい・さまよう・Q彷徨・放浪・流浪 ひようばん【評判】世間一般の批評、世間で話題になってい ることをさし、会話にも文章にも広く使われる漢語。「倒 れ」〈前ーが高い〉〈ーがいい〉〈悪いーが立つ〉〈ーがーを よぶ〉〈今ーの品〉〈ー倒れに終わる〉〈世間でーになる〉 〈中高年にーが悪い〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「生徒 のーは堀田さんの方がええというぞなもし」とある。話題 性に重点のある「人気」と比べ、いいか悪いかの評価が含ま れる。泉鏡花の『高野聖』に「蜘蛛の巣のようにーが八方 へ」とある。Q噂・世評・人気・風説・風評・風聞 ひようひよう【飄飄】態度・考え方・行動などが世事にも形式 にもとらわれず思うままに行われる意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ーとした人柄〉へとしてとらえ どころがない山本有三の『真実一路』に「物にこだわる ところがなく、いつも、ーとしている」とある。風の吹くま まに翻る意から。Q観逸・飄然 ぴようぽつ【病没(歿)】人が病気で亡くなる意で、文章に用 いられる、やや古風で改まった漢語。〈旅先にて—〉〈祖父 のー後はや十年が経つ)回端的な「病死」に比べ、「死」の 文字を避けて「歿」と若干間接化した表現で、やや丁寧な感 じがある。児病死 ひようほん【標本】学習用の実物見本をはじめ一般に典型的 な例をさし、会話にも文章にも使われる、いくぶん専門的 な漢語。〈昆虫の—〉〈ーを集める〉〈真面目人間の—〉岡 本かの子の『母子叙情』に「十坪程の表庭の草木は、硝子箱 の中の—のように、くっきり基目立って、一きわ明るい日暮 れ前の光線に形を截り出されている」という比喻表現の例 がある。なお、標本(サンプリング)調査で母集団から抽出 された個々の対象をさす用法もあり、その場合は専門的な 響きがある。ひ一例、サンプル・典型・Q見本・例 びようま【病魔】病気の意で、主に文章に用いられる漢語。 〈に冒される〉〈に襲われる〉の重くて治り難い病気を 魔物に見立てた表現。専障り・疾患・疾病・Q病気・病・患い ひようめい【表明】立場・態度・意思などを正式に広範囲に知 らせる意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈決意 〈所信—演説〉〈引退を—する〉Q公表・表現・表出 ひようめん【表面】対象の見てわかる外に面している部分、 特に他からすぐ見える部分をさし、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈張力〉〈に光沢がある〉〈板のーがなめら <899> かだ 「ーはばりっと、中はしっとり 「ーを飾る」「内部抗争がー化する」のように物体以外にも 使う。「裏面」と対立。Qおもて・うわつら・うわべ・皮相・Q表 層 ひようろん【評論】ものごとの是非・善悪・価値・美醜・優劣な どを論ずる意で、会話にも文章にも使われる、やや硬い漢 語。〈一家〉〈美術〉〈雑誌にーを寄せる〉図式的には、 評価するまでが「批評」で、それを文章化したのが「評論」 となるが、現実にはほとんど区別なしに使われている。 Q批評・論評 ひよこり思いがけないことにの意で、くだけた会話に使 われる俗っぽい和語。〈姿を現す〉《街で出会う》小 沼丹の『障子に映る影』に「炬燵に当ってぼんやりしてい る。そんなとき、遠い昔の記憶が甦ることがある」とあ るように、どうしてそうなるのかわからないという軽い驚 きときさやかな感動がある。両偶然・Qたまたま ひよっとしたら「もしかしたら」の意で、くだけた会話に使 われる和語表現。〈ーあいつが好きなんじゃないか〉もある いは②・Qひょっとすると・もしかしたら・もしかすると ひよとすると「もしかすると」の意で、比較的くだけた会 話に使われる和語表現。〈ーもう生きていないかもしれな いなあ〉の「もしかすると」よりさらに確率の低い感じがあ る。ひあるいは②ひょっとしたら・もしかしたら・Qもしかすると ひより【日和】「天気」の意で、会話にも文章にも使われる、 いくぶん古風な感じの和語。〈遠足ー〉〈本日はおーもよ く〉の「小春」「秋ー」のように通常は好天をさすが、川 びら 上弘美は『溺レる』で、淡い雪の降る日を「ちょっと死に すぎて困ってしまいますね」と書き、まさに心中事件として さまになる天候という意味をこめた。ひ空模様・Q天気・天候 ひよろつく足元が定まずふらつく意で、くだけた会話に使 われる俗っぽい和語。〈足元がー・いて危なっかしい歩き方 ひQふらつく・よろける・よろめく ひよろながい『ひょろ長い』ぶかっこうに細長い意で、主に くだけた会話に使われる俗っぽい和語。〈一体つき〉へいや にー木・回バランスが悪く弱々しくて頼りない感じもある。 ひ長っ細い・長細い・Q細長い ひよわ【ひ弱】弱々しい感じをさす和語。「かよわい」よりこ ころもち改まった感じの語。〈ーな子供〉〈ーな体質〉〈見 るからにーな感じ〉「かよわい」が頼りなく見えて力にな ってやりたい気持ちにさせる感じが中心なのに対して、こ の語は体が弱くて病気になりそうな状態を客観的に表す感 じがある。林芙美子の『うず潮』に「雨にたたかれている、 小さなしじみ蝶のような、ひよわい悠一の姿」とあるよう に、「ひよわい」という形容詞形もある。ひか弱い・軟弱②・弱 い びら宣伝・広告のために文章や絵を印刷した紙をさし、会話 や軽い文章に使われる和語。〈アジー〉へを撒く〉〈駅前 でーを配る〉回手で配ったり新聞に折り込んだりする以外 に「ちらし」と違って壁や電柱などに貼ることもある。 「枚」や「片」の漢字を当てることもあったが、現在はむし ろ英語で三の連想もあってか「ピラ」と片仮名書きする例が 多い。散らし <900> ひらおよぎ ひらおよぎ【平泳ぎ】うつぶせになって両手で左右に水をか き分けながら進む泳法をさし、会話でも文章でも最も普通 に使われる和語。ヘー○○米ー決勝》②サトウハチローの 『バタフライその他』に「バタフライは、目下のところ、未 だーの部にはいっている」とある。ひブレスト ひらき【開き】「差」の意で、会話にも文章にも使われる和語。 〈多少のーがある〉〈実力のーは歴然としている〉「両ー の戸」「鯨はのー」「会をおーにする」「店ー」など多様な意 味で使う。専懸隔・Q隔たり らく開く】閉じた状態から広く開いた状態に変わる(変え る)意で、会話から硬い文章まで幅広く使われる、日常生活 の基本的な和語。〈扉を—〉〈窓を—〉〈新たに店を—〉〈会 を—〉〈傘が—〉〈花が—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「(手紙を)—・いて見ると、非常に長いもんだ」とある。漢 字表記は「あく」と区別がつきにくい。引き戸より押し開 くドア式の場合にぴったりし、片引きの戸の場合は若干イ メージが合わない。窓なら左右に押し開くタイプが最もイ メージがぴったりする。なお、電車の「ドアが・きます」 という車内アナウンスは、左右に分かれるドアによく合い、 片側に引き込むタイプでは多少違和感を覚える。「あく」よ りやや改まった感じがあるため、乗客へのいくらか丁寧な 表現として選ばれやすいという面もあるかもしれない。 Qあく・あける ひらたい【平たい】厚みが薄く、横に広がっていて凹凸に 乏しい意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。へ 皿〉へ顔志賀直哉の暗夜行路』に「中の海の大根島 にも陽が当り、それが赤鱒を伏せたようにーくとある。 「ーく言えば」のように、平易の意で使うこともある。 ら・Q平べったい・扁平 ピラフバターで炒めた米に肉・海老・貝・野菜などを加えて スープで炊き上げた混ぜ御飯をさし、会話にも文章にも使 われるフランス語からの外来語。ヘレストランでーを注文 する)中近東を起源とする米料理で、もとペルシャ語から 出た語という。Q炒飯焼き飯 ひらべったい【平べったい】「平たい」の意で、主にくだけた 会話に使われる俗っぽい和語。〈横に広くー建物〉〈胸が ー〉の大江健三郎の『芽むしり仔撃ち』に「広くー顔」とあ る。ひ平ら・Q平たい・扁平 ひらめき【閃き】鋭い勘の働きをさし、改まった会話や文章 に用いられるプラスイメージの和語。「一瞬の」「があ る」Qインスピレーション・勘・直観・直感・霊感 ひらめく【閃く】①風に翻る意で、会話にも文章にも使われる和語。〈旗が—〉はためく・Q翻る②一瞬びかりと光る意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈稲妻が—〉〈—雷光に一瞬浮かぶ〉り輝く・煌く・Q光る③瞬間的に思い浮かぶ意で、会話にも文章にも使われる和語。〈名案が—〉〈突然いい考えが—〉②相馬泰三の『六月』に「慄え上るような心持ちが電光のように—・いた」とある。「考えつく」はもちろん「思いつく」と比べても、論理的な思考過程とは無関係に瞬間的に脳裏をよぎる唐突な感じが強い。 びり「最下位」の意で、くだけた会話に使われる俗っぽい和 <901> 語。〈徒競走でーになる〉〈成績はクラスでーから三番目〉 Q最下位・最後尾・しんがり・どんじり・びりっけつ ひりつ【比率】一方の他方に対する割合をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ーが低い〉〈通貨の交換ー〉の「比」 と違い、「合格のー」「成功するー」のように、可能性の程 度や確率をさす用法もある。Q比・比例・割合 びりっけつ「びり」のさらに俗っぽい表現。〈なんとーとは 呆れた〉「けつ」に「穴」をあてる表記もある。最低下 位・最後尾・しんがり・どんじり・Qびり ビリヤード 台上に数個の玉を置き棒で突いて勝敗を争うゲ ームをさす外来語。現代の標準的な呼称。古くは「撞球 とも称した。(一に興じる)玉突き・Q撞球 ひりよう【肥料】植物の生育を促進するための栄養物質をさ し、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈化学—〉〈農 作物にーをやる〉下肥そや堆肥も含むが、化学肥料を 連想する傾向が強い。児肥・Q肥やし・下肥 びりょう【鼻梁】「鼻筋」の意で、主として文章中に用いられ る専門的な硬い漢語。〈一の鋭い人〉堀田善衛の「広場の 孤独」に「鋭い直線的な」とある。鼻・Q鼻筋 ひる【昼】正午、または、日の出から日の入りまでの明るい 時間をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な和語。〈前〉〈一過ぎ〉〈一のうちから 酒びたりだ〉〈一のうちに片づける〉森鷗外の『半日』に 「一の食事の支度をする」とある。「夜」と対立する場合と 「朝」「晩」と対立する場合とがある。「一の支度で忙しい時 刻」として間接的に昼食をさすこともある。「おーを済ませ ひるごはん る」のように、「お昼」の形で昼食をさす用法も多い。単 日中・Q昼間・真昼 ひる【蛭】会話でも文章でも使われる環形動物の名。〈山〉 〈一が吸い付く〉の一般に醜いもの、不快な対象とされる が、川端康成の『雪国』では、動物じみた奔放な女性として 描かれるヒロイン駒子の魅力的な唇の比喻として使われる。 「小さくつぼんだ唇はまことに美しい」の輪のように伸び 縮みがなめらかで」「映る光をぬぬぬぬめ動かしているよ う」だという。作中でこの比喻が繰り返され、象徴化が進 む。 ビル「ビルディング」の略として会話にも文章にも使われる 日常語。〈風〉〈高層〉〈の陰になる〉〈高い」がな く遠くまで見渡せる〉永井龍男の『風ふたたび』に「対岸 のの灯も、川を渡る総武線の灯も、その(花火の白煙)中 に見えがくれした」とある。建造物・建築物・建物・ビルディン グ ひるがえる【翻る】風を受けてひらひらと揺れながら時折裏 を見せる意で、改まった会話や文章に用いられる和語。〈日 章旗が翩翩と」「態度が」「決定が」のように、 ひっくり返る意にも使う。ひQはためく・ひらめく① ひるげ【昼餉】「昼飯」の意で主として文学的な雰囲気の文章 に用いられる古風で優雅な感じの和語。〈時〉へのひと とき〉お昼・午餐・ちゅうじき・ちゅうしょく・昼御飯・Q昼飯・ラ ンチ ひるごはん【昼御飯】「昼飯」の意で会話や改まらない文章に 用いる日常語。〈ーのしたくにかかる〉〈友達の家でーをご <902> ひるさがリ 馳走になる》「昼飯」より丁寧な表現だが、改まった感じ はない。お昼・午餐・ちゅうじき・ちゅうしょく・昼餉・Q昼 飯・ランチ ひるさがり【昼下がり】「昼過ぎ」に近い意味で、改まった会 話や文章に用いられる古風な和語。へのんびりとくつろぐ 日曜のー〉ふららかな春の日のー〉事務的な感じの「昼 過ぎ」に比べ、のどかな情緒が感じられ、放火事件や殺人事 件などの報道にはなじまない。感覚としては「昼過ぎ」よ りも長く、午後二時頃まで含みそうな雰囲気がある。ひ昼過 ぎ ひるすぎ【昼過ぎ】正午を少し過ぎた頃の意で、会話にも文 章にも使われる日常の和語。へから雨になるへに出か ける通常は午後一時あたりまでを連想しやすい。月昼下 がり ビルディング 鉄筋コンクリートなどの高層建築物をさし、 改まった会話や文章に用いられる少し正式な感じの外来語。 〈巨大なーが建ち並ぶ〉尾崎士郎の『人生劇場』に「高い ーの層が凹凸の線を空に描いて、削りたてた丘のようにつ らなり」とある。古くは「ビルヂング」とも書いた。児建造 物・建築物・建物・ビル ひるね【昼寝】昼間の時間に寝る意で、くだけた会話から文 章まで広く使われる日常の和語。食後のー〉へーの習慣 夜寝る人がそれ以外に昼間も寝る場合に用いるのが通例 で、夜間勤務の翌日に昼間の時間に就寝するようなケース にはなじまない。乃午睡 ひるひなか【昼日中】「昼間」の意の強調表現で、主として会 話に使われる。への犯行〉へこのーにラブシーンを見せつ けられちゃ、よけい暑くなる〉のそういう時刻にふさわし くないというニュアンスで使われる傾向がある。ひQ昼間・ 真っ昼間・真昼 ひるま【昼間】朝から夕方までの時間をさし、会話やさほど 硬くない文章によく使われる日常の和語。へーのうちに片 づける〉へーから宴会でもあるまい〉小沼丹の『タロオ』 に「夜は犬小屋に眠るが、ーは窓の下に鎖で繋がれている」 とある。Q昼日中真っ昼間・真昼 ひるむ【怯む】勢いに押されて弱気になる意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈相手の剣幕に思わずー〉へとな く立ち向かう久保田万太郎の『末枯』に「鈴むらさんは 決してー・まなかった」とある。ひたじろぐ ひるめし【昼飯】昼時の食事をさし、主として男性がくだけ た会話に用いる日常的な和語表現。〈ーを食いそこねる〉 〈急いでーをかきこむ〉のもとは普通のことばだったが、今 では「昼御飯」のぞんざいな言い方に感じられる。お昼・ 午餐・ちゅうじき・ちゅうしょく・昼餉・Q昼御飯・ランチ ひれい【比例】AとBの比がCとDの比に等しい意、または、 二つのものが互いに一定の関係で変化する意を表し、会話 にも文章にも使われるやや専門的な漢語。⑨井上ひさしの 『日本亭主図鑑』に「余暇の量と物事について考える量との 間にーの関係はまったくない」とある。Q比・比率・割合 ひれき【披瀝】心の中で考えていることを包み隠さずに打ち 明ける意で、主に文章中に用いられる硬い漢語。〈苦しい胸 のうちを—する〉〈本心を—する〉田山花袋の『田舎教 <903> 師』に「打解けて語ると言っても心の底を互にーするような ことはなかった」とある。ゆ披露 ひれつ【卑劣】品性が卑しくやり方が汚い意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い漢語。〈一な手段に訴える〉へー な行動に出る)②臆病な感じの「卑怯」と比べ、品性が劣り 陰険な感じが強い。)卑怯 ひろい【広い】幅や面積が大きい意の基本的な和語。くだけ た会話から硬い文章まで使える。〈一部屋〉〈川幅が」 〈額がー〉小沼丹の『外来者』に「かなりー芝生の庭を見 ながら」とある。くだだっ広い ひろう【拾う】落ちているものを取り上げる意で、くだけた 会話から文章まで幅広く使われる基本的な和語。落とし物 をー〉〈空き缶をー〉加能作次郎の『世の中へ』に「鼠が 物を引くように、おずおずと膝の前に散っている銀貨をー・ った」とある。敵失しで勝つ場合に「負け試合をー」という ように、失ったはずのものを手に入れる意でも使う。なお、 タクシーの場合、乗客は「車をー」と言い、運転手は「客を ー」と言う。ひ拾得 ひろう【披露】多くの人に見せたり知らせたりする意で、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈襲名—〉〈結婚— 宴〉〈長年にわたる研究で積み上げてきた薗蓄を—する〉 〈取って置きの芸を—する〉ひ披露 ひろう【疲労】肉体的・精神的に疲れることをさし、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈困憊じみ〉〈回復〉 〈ーが重なる〉安部公房の『他人の顔』に「が、つまっ た下水のようにあふれ出し、関節という関節に、ねっとりタ ひろば ールのような淀みをつくりはじめた」とある。「金属ー」のように比喰約に使うこともある。刀疲れる びろう【尾籠】人前で口に出すのをはばかるほど汚らしい意。 和語の「痴」の「を」に「尾」「こ」に「籠」という漢字 をあて、それを音読みして漢語めかした和製語。もともと の漢語ほど堅苦しい響きはないが、今では古めかしい感じ の語。「なお話で恐れ入ります」の「尾籠」と明言せず 「変な話になりますが」「例は悪いけど」などとほかす表現 も可能。ひ汚い ひろがる【広(拡)がる】幅・面積・眺望・範囲・規模などが大きくなる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な和語。〈青空が—〉〈大草原が—〉〈道幅が—〉〈傷口が—〉〈被害が—〉〈噂が—〉広まる ひろしま【広島】中国地方の瀬戸内海側に位置する県の名、 また、その県庁所在地である都市をさし、会話でも文章で も広く使われる地名。「市の平和公園」「県の南東部に 位置する城下町」の片仮名で「ヒロシマ」と書くと、とたん に原子爆弾の被災地という側面に焦点が絞られる。 ひろっぱ【広っぽ】建物のない広々とした場所をさし、くだ けた会話や軽い文章に使われるやや俗っぽい和語。へーを子 供たちが走りまわる広場 ひろば【広場】遊びや集会に利用できる町中の広く平らな場 所をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈駅前 ー〉へに大勢集まる〉小沼丹の『エシプトの涙壺』は 「長い坂道を登り詰めると、やっとーに出た」という一文で 始まる。部屋として仕切られていなければ屋根があっても <904> ひろまる 「広場」と呼ぶことがある。「話し合いの」のような比喻 的用法ではいくぶん詩的に響く。広っぱ ひろまる【広(弘)まる】広く知れ渡り行き渡る意で、会話に も文章にも使われる和語。〈店の評判が—〉〈スキャンダル が—〉〈理解が—〉〈新興宗教が—〉〈交際範囲が—〉②具体 的な空間や物体でなく、抽象的な意味での浸透をさす傾向 がある。広がる ひわい【卑猥】態度・表現・内容などが下品で慎みのない意で、 主に文章に用いる漢語。〈一な目つき〉〈一な話〉〈一な言 葉を浴びせる〉田山花袋の『田舎教師』に「七八歳の子供 が一極まる唄など覚えて来てそれを平気で学校で唄って居 る」とある。「卑しい」意と「乱れる」意の結合だけに表面 上は性的な連想が弱い。ひいやらしい・Q淫猥・淫ら・猥褻 ひん【品】人や物の価値を判断するとになる外観や質をさ し、くだけた会話から文章まで広く使われる日常の漢語。 へーがよい)〈ーがない〉へとことなくーがある)阿川弘之 の『雲の墓標』に「深井家の食事は、ーがよすぎて、われわ れにはすこし物足りなかった」とあるように、「品位」や 「品格」と違って人間以外にも用いる。Q気品・品位・品格 ひんい【品位】それぞれの人間にそなわっている格式の高さ をさし、改まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。 へーが感じられる)へいささかーに欠ける)小島信夫の 『アメリカン・スクール』に「われわれ英語を教えている者の ーをおとす」とある。Q気品・品・Q品格 ひんかく【品格】人間としての品位や格をさし、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ーを保つ〉〈ーが疑われる〉 伊藤左千夫の野菊の墓に「可憐で優しくてそうして もあった」とある。「気品」や「品位」が上流の上品さに中 心があるのに対し、この語は人物の大きさや幅も含まれる 感じがある。Q気品・品・品位 びんかん【敏感】感度がよくちょっとした刺激にもすぐ反応 する様子をさし、会話にも文章にも使われる漢語。音にー だ〈皮膚がーだ〉〈世相の変化にーだ〉〈ーに察知する〉② 有島武郎の『生れ出ずる悩み』に「少女のようにーな魂を見 出す」とある。Q鋭敏・鋭い ひんきゅう【貧窮】貧しくて生活がひどく苦しい意として、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーにあえぐ〉 〈ーのどん底にある〉三浦哲郎の『初夜』に「日ごとにー に追いこまれていった」とある。「貧苦」や「貧困」よりさ らに生活に窮した感じが強い。ひQ貧苦・貧困・貧乏・貧しい ひんく【貧苦】貧しくて生活が苦しい意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ーにめげず勉学にいそしむ〉生 活の苦しさは「貧困」と同じかやや軽い感じがする。貧 弱・Q貧困・貧乏・貧しい ピンク「桃色」の意で、会話でも文章でも広く使われる外来 語。(襟元にのスカーフをあしらう)へあえかなーで上品 な色に仕上がる)大岡信の言葉の力」に「花びらのー は、幹のーであり、樹皮のーであり、樹液のーであった」と ある。現代では「桃色」よりも気軽に使われる。性的な意 味合いで使われる場合は、「桃色」のほうは「桃色遊戲」程 度でかなり古めかしい感じであり、「街」「映画」「 がかった話」など「ピンク」のほうが広がりが見られるが、 <905> これもいくらか古い感じになりつつある。梶色 ひんこう【品行】日ごろの行いの意で、会話にも文章にも使 われる、いくぶん古風な漢語。へーが悪い」小沼丹の『銀 色の鈴』に「いまの家内を貰う迄は一方正でした」とある。 道徳的な観点から取り上げられることが多く、「操行」より る世間でよく話題になる。り行状・操行・Q素行・身持ち ひんこん【貧困】貧しくて生活に困る意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈生活〉〈に耐える〉金銭面 に重点のある「貧乏」と違い、生活の苦しさが中心になる表 現。「貧窮」に比べれば程度が軽い感じがある。「語彙が だ」のように、単に乏しい意にも使う。貧窮・貧苦・貧乏・ 貧しい ひんじゃく【貧弱】充実感に乏しく見劣りがして頼りない意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一な体格〉〈知識が ーだ〉〈内容がーで見るべきものがない〉②外見に使う「貧 相」や「みすぼらしい」と違って、外見以外にも抽象的な対 象にも使う。ひQ貧相・みすぼらしい ひんしゅく【顰蹙】非難や軽蔑の気持ちで眉をひそめる意で、 改まった会話や硬い文章に用いられる漢語。〈世間のーを買 う」②ひところ、この難解な漢語が中学生の会話からも飛 び出すほど流行した。その場合は、この難しい漢字が思い 浮かばないままにフィーリングで使用していたため、多く 片仮名書きし、「ヒンシュター!」などとほとんど感動詞の ように叫ぶ俗な用法であり、「ーを買う」といった本来の用 法は見られなかった。このような例は今ではすでに昔の流 行語といった古めかしい印象を与える。 ピンチヒッター びんしよう【敏捷】動作が素早い意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈動きがーだ〉〈一な身のこなし〉 〈一性に欠ける〉刂機敏・迅速・Q敏速 ひんそう【貧相】顔立ちや服装などが貧しい感じに見える意 で、会話にも文章にも使われる古風な漢語。〈一な顔〉〈一 な身なり〉〈見るからに一な男〉川端康成の『東京の人』 に「その真実を裏切った今となると、自分の不実ばかりが、 ーに寒け立って来た」とある。もと、貧乏になる運命の人相 をさした。「福相」と対立。「貧弱」と違って人間に限り、ま た、中身の乏しい感じは特にない。Q貧弱・みすぼらしい ぴんそく【敏速】動作が素早く仕事などがてきばきしている 意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。「な行動 〈事務をーにこなす〉の横光利一の『紋章』に「頭脳が極め てーに動きすぎる」とある。「遅鈍」と対立。機敏・迅速・敏 捷 ピンチ「危機」の意で会話や軽い文章に使われる外来語。 〈絶体絶命の—〉〈—に陥る〉〈—を免れる〉〈何とか—を乗 り越える〉スポーツ放送などでよく使う。専危機 ピンチヒッター「代打」の意から急な代役をさし、主として くだけた会話で使われる外来語。〈係の者が休みでーに起 用される〉〈社長のーとして挨拶する〉字数の関係で書き ことばではふつう「代打」を用いる。野球の「代打者」の意 味から、一般に、「臨時の代役」といった意味で広く使われ る。比喻性が抜け切れず、一瞬野球を連想することが少な くない。「代打」という訳語がこういう意味合いで使われる ことは少ない。乃代打・代理 <906> ヒント間接的な手がかりの意で、会話やさほど硬くない文 章に使われる外来語。〈ーを出す〉(そこからーを得る〉 〈それがーとなる〉小林秀雄に『考えるヒント』と題する 連載エッセイがあり、「ヒント」という題を貰って、考えつ くところを、こうして書いているわけだが」と書いている。 Q暗示示唆 ひんばつ【頻発】短い期間に頻繁に発生する意で、改まった 会話や文章に用いられるやや硬い漢語。〈通り魔事件がー する〉椎名麟三の『美しい女』に「追突事故がーしはじめ ていた」とある。多く事件や事故について使う。刂群発・続 発・Q多発・連発 ひんばん【頻繁】一定の時間・期間の間に同類の事が数多く起 こる意で、会話にも文章にも使われる日常的な漢語。へに 事件が起こる〉〈電車がーに通るので踏切がなかなか開か ない〉の間隔の短さよりも起こる回数が多いことに重点が ある。ひQしきりに・ひっきりなしに びんぼう【貧乏】財産や収入が少なく貧しい意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。「人 「暮らし」〈器用」〈な家に生まれる〉内田百閒の 「大晦日」に「の絶対境は、お金のない時であって、生中 手に入ると、しみじみーが情けなくなる」とある。和語の 「貧しい」以上に日常生活でよく使う。貧弱・Q貧苦・貧困 貧しい ピンポン「卓球」の古風な外来語表現。〈ーに興じる〉〈景品 付きのー大会〉武者小路実篤の『友情』に「女の為にーま でならうようになっては少し堕落だね」とあるが、現在では 「パレーボール」「パスケットボール」「テニス」などとは違って、同じ外来語ながらむしろ高齢者のことばとなっている。ただし、「玉」となれば古風な語感は消えるが、それでも「卓球のボール」と比べれば遊びの雰囲気が強い。「ピン」「ポン」という打球音を模したこの語は、その間延びのした音の連想から、台の上に手でボールを落とし、弾んだところをラケットで掬い上げる初心者特有のサーブに始まり、のんびりと打ち合っているような雰囲気がある。「強烈なスマッシュ、スピンの利いたカット、目にもとまらぬショートの応酬」といった高度なプレーとは縁が薄く、遊びの域を出ない感じがある。そのため、「ピンポン」という響きにはスポーツというより娯楽の印象が強く、体育館で運動靴を履いてプレーするのが「卓球」で、旅館でスリッパをつっかけて楽しむのが「ピンポン」だといったイメージが強い。Q卓球・テーブルテニス ぴんわん【敏腕】物事を判断して処理する能力に優れている 意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈刑事〉 〈ー記者〉〈ーを揮う〉〈ーをもって鳴る〉②何かを発見・創 造するというより、ものをうまく処理する能力が中心。马 Q腕利き切れ者・遣り手 <907> ふ【譜】「楽譜」の意で、会話や軽い文章に使われる日常的な 漢語。〈ーを買って来て練習する〉のだけた会話でよく使 う。川端康成の『雪国』でも、駒子が三味線を膝に構え、親 しい間柄のなじみ客である島村に「この秋、ーで稽古した のね」と言う。ひ音譜・Q楽譜・譜面 ぶあいそう【無愛想】むっつりとして相手に対する愛想のな い意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一な店員〉へー な受け答え〉へーの一言に尽きる〉四北条民雄の『いのちの 初夜』に「ぼきっと木の枝を折ったようにーな答え方」とあ る。马すげない・そっけない・つれない・Qぶっきらぼう ファイト 闘志の意で会話やさほど改まらない文章に使われ る外来語。〈ーがわく〉〈ーを燃やす〉「がんばれ」の意の 掛け声でも使う。また、「ーマネー」のように、ボクシング などの試合の意に用いることもある。込闘魂・闘志・Q闘争心 ファスナー 衣服や鞄などの合わせ目に取り付ける、金属な どの小片を互いにかみ合わせて開閉させる留め具をさして、 会話にも文章にも使われる外来語。〈開閉部にーを取り付 ける〉〈肥り過ぎてスカートのーがきつい〉商標名である 「チャック」や「ジッパー」より正式名称の雰囲気がある。 ひジッパー・Qチャック ファック「性交」の意で使われる、英語からの比較的新しい 外来語。俗っぽい「セックス」が多用されて次第に意味と フィアンセ 直結するようになってから、一部で使われたした。まださ ほど普及していないので、通じる場合には間接化の効果が 高い。ちなみに、四半世紀ほど前の、まさに語感をテーマに した座談会の折、著名な詩人谷川俊太郎が実際にこの語を 使う現場に司会者として立ち会った経験がある。夢営み・エ ッチ・関係②・合飲・交合・交接・情交・情を通じる・Q性交・性行為・性 交渉・性的行為・セックス・抱く②・契る・同衾・共寝・寝る②・懇ろに なる・深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・やる③・夜伽 ファッション 主として髪型や服装の流行について会話でも 文章でも使われる外来語。〈ーに敏感だ〉〈ーモデル〉は やりの服装そのものをさす場合もある。Qはやり・流行 ふあん【不安】悪いことが起こりそうで安心できない意で、 会話にも文章にも広く使われる日常の基本的な漢語。「 そうな面持ち〉へーを抱く〉へーに襲われる〉へーでならな い)②芥川龍之介は『或旧友へ送る手記』の中で自殺の事情 を「将来に対するほんやりした」と記している。専恐れ・ Q気掛かり・危惧・懸念・心配 フアン熱烈な愛好者をさす古風な外来語。〈一の皆様〉昔 からの宝塚ー〉〈映画ーのつどい〉〈一の心理〉ひファン ファン熱烈な愛好者をさす現代の普通の外来語。〈一レタ ーの山〉〈一ヘの感謝デー〉〈一が押しかける〉ひファン フィアンセ婚約した相手の意で、会話にも文章にも使われ る、今ではいくぶん古風でやや気取った感じの外来語。〈写 真のこの女性が彼の一らしい〉以前は「妻」をしばしば 「ワイフ」と言ったように、この語も当時は照れて外国語に 逃げたという面もあったかもしれない。ひ許婚だ。Q婚約者 <908> ふいうち ふいうち【不意打(討)ち】だしぬけに攻撃する意で、会話や さほど硬くない文章に使われる和語。〈ーをかける〉へーに あう〉へーをくらう〉②相手の備えができていない隙を狙う ところがポイントで、必ずしも珍しい戦法でなくともよく、 また、「奇襲」ほど大がかりな感じはなく個人の場合も含ま れる。専奇襲・Q抜き打ち ふいちょう【吹聴】積極的に言い触らす意で、改まった会話や文章に用いられる、いくぶん古風な感じの漢語。〈近所に ーする〉〈偉い先生の直弟子だとやたらにーしてまわる〉 正宗白鳥の『微光』に「お前の事をおれにーした時だって」 とある。「言い触らす」と比べ、「自慢話を声高にーする」 のように宣伝するニュアンスを伴う例が目立つ。「風聴」と 書く例もあり、その転かともいう。Q言い触らす・触れ回る ふいに【不意に】思ってもいない事が前ぶれもなく起こるよ うすをさし、さほどくだけていない会話や文章に使われる、 いくらか古い感じになりかけている表現。へー起こった災 難〉へー遠出を思いつく志賀直哉の『暗夜行路』に「謙 作はー脾腹を突かれたような気がした」とある。客観的な 「突然」と違って、心の準備ができていないための驚きを感 じる人間の側に立った表現。ひいきなり・Q急に・だしぬけに・ 突然 フイルム写真の感光板をさして会話でも文章でも用いられ るやや古風な感じの外来語。〈写真機にーを入れる〉〈ー を巻き戻す〉〈撮り終えたーを現像に出す〉「フィルム」 という語形が出現し、カメラに装塡するものを「フィル ム」、放映するものを「フィルム」と使い分ける傾向が生じ た。両方とも「フイルム」を使うほうがまだ多いようであ るが、若年層やマスコミ関係では両方とも「フィルム」とす る人も少なくない。ヲフィルム 「フィルム「フィルム」の意の比較的新しい感じの外来語。 〈カメラにーを装填する〉〈ーを放映する〉〈貴重なーを保 存する〉安岡章太郎の『海辺の光景』に「窓枠で四角く区 切られたそんな光景はチカチカ光りながら、ーの切れかけ た映画の一とコマをおもわせた」とある。「フィルム」より 若い世代に多く、一方、やや専門的な職業を連想させる雰囲 気もある。中年以上の場合、文章中にこの語形を記すのは 穏やかだが、日常会話でこう発音すると、若干気取って感じ られる場合がある。ただし、「エックス線」のような専門 語の場合は、通常、年齢に関係なく「フィルム」を用いる。 「カラー」の場合は、「カラーフィルム」という語形はあま り用いられず、高年齢になるほど「カラー写真のフィルム」 と言う割合が高い。ひフィルム ふいん【訃音】死亡の知らせの意で、文章に用いられる古風 で硬い漢語。〈ー至る〉〈ーを耳にする〉刂凶報・悲報・Q訃報 ふうがわり【風変わり】様子や性格ややり方などが見るから に普通と違う意で、会話にも文章にも使われる日常の表現。 〈ーな服装〉〈ーな老人〉〈やり方がーだ〉刂奇想天外・Q奇抜・ 突飛 ブーケ「花束」の意で、時に会話や軽い文章に近年使われる ようになった新しい感じのフランス語からの外来語。〜ーが ルニ〜西洋風の花の組み合わせを連想しやすい。洋服の 飾りにする小形のものもある。ひ花束 <909> ふうけい【風景】眺める対象としての自然や社会のようすを さし、やや改まった会話や文章に用いられる日常の漢語。 〈画〉〈田園〉〈山里のーを描く〉〈美しいーを写真に撮る〉井上靖の『猟銃』に「冷たく沈んだ瀬戸物の絵のような、伊豆の美しい雑木林のー」とある。自然を眺める専門の「景色」とは違って、「親子の仲むつまじい」「エールの交換ー」「野球の練習ー」というふうに人間の活動についても用いられる。景色・Q光景・眺め ふうこう【風向】「風向き」の意で、改まった会話や文章に用 いられる、専門的な雰囲気の漢語。〈ー計〉〈ーに細心の注 意を払う)和語の「風向き」と違って比喩的な用法はな い。風向き ふうさ【封鎖】通行や流通を阻止する目的で出入り口を閉ぎ したり通り道を封じたりする意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈学園—〉〈海上—〉〈港を—する〉〈預金 を—する〉のある目的のもとに一定期間に限り通行を禁止 する非常事態の臨時的手段という雰囲気がある。刂閉鎖 ふうさい【風采】外見から受けるその人の印象をさし、会話 にも文章にも使われる、やや古風な漢語。〈堂々たる—〉 〈立派な—の老人〉〈—が上がらない〉〈—がぼっとしない〉 谷崎潤一郎の『細雪』に「—の点で、写真で見たところえ らく老けていて、じじむさい感じのする顔」とある。 形・Q風体言・容姿 ふうしゅう【風習】それぞれの地域ごとの行事や衣食住に関 する慣習をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈日本特 有のー〉(この地方に古くから伝わるー)〈珍しいーが残っ ふうてい ているの「慣習」に比べ伝統的な性格が強く、地域ごとに 違う独特のというニュアンスが感じられる。専慣習・慣例・し きたり・習慣・Q習わし 今うせつ【風説】世間に流れている無責任な噂をさし、改ま った会話や文章に用いられる漢語。「が流布する〉〈単な るーと聞き流す〉噂・評判・Q風評・風聞 ふうぞく【風俗】衣食住に関する社会生活上のしきたりをさ し、やや改まった会話や文章に使われる漢語。〈小説〉 〈一描写〉〈一営業〉〈一が乱れる〉永井荷風の『瀅東綺 譚』に「市井の一を観察して自ら娯しみとしていた」とあ る。片仮名で「フーゾク」と書くと意味が限定されていかが わしい感じが強くなる。ひしきたり・習わし・風習 ようぞくえいぎょう【風俗営業】客に遊興させたり偶然の運 による損得を競う遊技をさせたりする営業の総称として、 会話にも文章にも使われる専門的な漢語。「の店〉の 届を出す喫茶店・麻雀屋・パチンコ店なども含まれるが、 すぐに連想されるのは待合・キャパレー・パーなど。俗に 「フーゾク」という表記も試みられ、いかがわしい雰囲気を 漂わせる。水商売 ふうちょう【風潮】時勢の流れ、世の中の傾向の意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈現代社会の—〉〈安易に流れ る—〉の困った—」のように、マイナス評価の表現に現れ やすい。Q時勢・時流・趨勢・成り行き ふうてい【風体】身なりを中心としたその人の外見をさし、 会話にも文章にも使われる古めかしい漢語。〈怪しいーの 者〉へのみすぼらしい男〉の永井荷風の『湮東綺譚』に <910> ふうひょう 「人相と」の悪い破落戸」とある。「容姿」や「風采」と 違って顔立ちやスタイルよりも身分や職業のうかがわれる 衣装などに重点がある。Q姿形・風采・容姿 ふうひょう【風評】人びとの間に広がる根拠のない噂、とり とめのない評判をさし、改まった会話や文章に用いられる 漢語。「が流れる」「被害」「が立つ」「を耳にす る」「とかくのーがある」「よくない噂をさすことが多い。 噂・評判・Q風説・風聞 ふうふ【夫婦】結婚している一組の男女の意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。 〈一喧嘩〉〈一別姓〉〈似たもの—〉〈仲の良い—〉〈一おそ ろいで出かける〉〈一関係にひびが入る〉四川端康成の『山 の音』に「というものは、おたがいの悪行を果しなく吸い こんでしまう、不気味な沼のようでもある」とある。「夫 妻」より日常的によく使う。ひQ夫妻・めおと ふうぶん【風聞】とこからともなく伝わってくる風の便りを さし、改まった会話や文章に用いられる、やや古風な漢語。 へーが事実なら〈単なるーに過ぎない〉へーによれば最近 離婚したらしい)有島武郎の『或る女』に「いろいろなー が(略)佗住居の周囲を霞のように取り捲き始めた」とある。 ひQ噂・評判・風説・風評 ふうみ【風味】洗練された味を意味する、やや改まった日常 の漢語。〈独特の—〉〈—を損なう〉井上靖の『氷壁』に 「他の土地のつけ物から味わえない一種独特の—」とある。 味だけでなく香りを含めていう感じが強い。Q味味わい ふうりゅう【風流】俗を超越した趣のある意で、会話にも文 章にも使われるプラスイメージの漢語。〈な庭〉〈を楽しむ〉〈を解する〉〈の道〉〈とは縁がない〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「人なんて云うものは、画を見ても、頭巾を被るか短冊を持ってるものだ」とある。児粋 ふうん【不運】運が悪い意で、会話にも文章にも使われる漢 語。〈ーに見舞われる〉〈ーな事故〉〈度重なるーにもめげ ず〉Q非運・悲運 ふえて【不得手】うまくできず苦手としている意で、主に会 話に使われるいくぶん古風になりかけている語。「な学 科〉〈力仕事はーだ〉〈小さい子供の相手はどうもーだ〉 Q苦手・不得意 ふえる【増える】数量や程度が前より多くなる意で、会話でも文章でも幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈仕事がー〉〈店がー〉〈売り上げがー〉〈人数がー〉〈水量がー・え続ける〉〈白髪がー〉〈顔の小じわがー〉〈体重が二キロー〉〈二葉亭四迷の『浮雲』に「人一人・えた事ゆえ」とあるように、「増す」が抽象的な存在について程度の増加を問題にするのに対して、この語は逆に具体的な存在についてその数量の増加現象を問題にしているとされる。増すフェンス柵・囲い・塀などの総称として、会話にも文章にも使われる、やや斬新な感じの外来語。〈金網のー〉〈白いペンキ塗りの洒落たー〉塀をさす場合は、洋風の造りを連想させ、塀よりも重厚さがなく開放的な連想が強い。塀垣・垣根・囲い・柵・Q塀 ぶか【部下】組織内で上位者の指示に従って活動する立場の 人をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈直属の <911> 〈一に命じる〉の「上司」と対立。♡家来・子分・下っ端・手先② 手下・手の者・Q配下 ふかい【深い】周囲や表面あるいは入り口から奥や底までの 距離が長い意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われ る基本的な和語。〈|穴〉〈|森〉〈雪が|〉〈彫りが|〉 〈縁が|〉〈|・く掘り下げる〉〈根が|〉〈霧が|〉〈奥が |〉「|傷を負う」「もう秋も|」「欲が|」「関係が|」 「|眠り」「味わい」「悲しみ」「仲になる」「・く考 える」のように、程度の大きい意にも使い、そのように抽象 化した用法は一般にやや改まった感じになりやすい。丹羽 文雄の『顔』にも「深淵のようにー哀しみ」とある。「浅い」 と対立。ひ濃い ふかい【不快】気分のよくない意で、会話にも文章にも広く 使われる漢語。〈ー感〉〈ーな思いをする〉〈人をーにする〉 の小沼丹の『バルセロナの書盗』に「君のような者に訊問さ れたのは洵にーである」とある。単なる気分だけでなく、 「指数」「蒸し暑くてーな一日」のように肉体的な苦痛を 伴う場合にも使う。また、「御ーの折」のように、体の具合 が悪い意に用いる古風な用法もある。ひ鬱陶しい・重苦しい・ 不愉快 ふがいない【不(腑)甲斐無い】情けないほど頼りがいがない 意で、会話やさほど硬くない文章に用いられる、やや古風 な日常語。〈—負け方〉〈生活力のない—男〉ひだらしない②・ 嘆かわしい・Q情けない ふかいなかになる【深い仲になる】まれに「性交」を意味す ることのある和語の古風な間接表現。二人はいつしかー うわ っていた)基本的には「男女関係が深まる」意。そこに含 みとして肉体関係が入ってくる場合がある、というきわめ て婉曲まな表現。専営み・エッチ・関係②・合歓・交合・交接・情 交・情を通じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・ 契る・同衾共寝・寝る②・懇ろになる・ファック・房事・枕を交わす・ 交わる・やる③・夜伽 ふかしぎ【不可思議】人間の知恵では考え及ばないほど「不 思議」の意で、改まった会話や文章に用いられる、古風で硬 い漢語。〈人知ぜんの及ばぬーな現象〉〈霊妙にしてー〉国 木田独歩の『牛肉と馬鈴薯』に「毎日太陽を見る、毎夜星を 仰ぐ、是に於てか此ーなる天地も一向ーでなくなる」とあ る。「不思議」の本来の語形で、略形の「不思議」より大仰 な感じがある。専怪奇・奇異・奇怪・奇っ怪・奇妙・奇妙奇天烈・Q 不思議・変・摩訶・不思議・妙 ふかす【蒸かす】食品を蒸むしてやわらかくする意で、主に会 話に使われるやや古風な和語。ぐさつま芋をー〉〈饅頭 をー〉ひ蒸す ぶかっこう【不恰(格)好】恰好の悪い意で、会話や軽い文章 に使われる、くだけた感じの漢語。「な帽子」「な歩き 方」物の形や人の姿・動作などについて用いる。無様・ Q不体裁 ふかん【俯瞰】高所から広範囲を見下ろす意で、主に文章に 用いられるやや古風な硬い漢語。〈一図〉〈一撮影〉〈山頂 から庄内平野をーする〉鳥瞰 ふき【附付】記】本文とは別に書き添える意で、主に文章に 用いられる硬い漢語。〈ー事項〉〈但し書きをーする〉あ <912> སྐབས くまで追加という扱いの「追記」に比べ、この語はあくまで 本文に添えるものという位置づけになる。巻追記 ぶき【武器】戦闘のための道具の意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ーを手に闘う〉〈ーを捨てて投降する〉〈ー 弾薬を輸送する〉回「兵器」に比べ、ピストルのような小型 の物についても違和感なく使え、また、刀剣や弓矢のよう な古い時代の物にも用いられる。「巧みな弁舌をーとする」 「練習熱心な点が大きなーとなる」のように、その人間の持 ち合わせている役立つ能力などをさす比喩的な用法もよく 見られる。弁兵器 ふきげん【不機嫌】機嫌の悪い意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈|な顔〉ヘ|そうにそっぽを向く〉〈途端に になる〉の「上機嫌」と対立。志賀直哉の『真鶴』に「な 皺を眉間に作って、さも厭々に歩みを運んでいた」とある。 ふ不興 ふきでもの【吹き出物】皮膚に現れる小さな出来物の意で、 くだけた会話や軽い文章に使われる専門性の薄い和語。〈顔 のー〉〈ーをつぶす〉の「発疹」より病的な感じが少なく、 にきびなど数の少ない印象もある。Q出来物はっしん・ほっ しん ふきとる【拭き取る】布や紙で汚れや水気を取り去る意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈雨に濡れた体をタオル で丁寧に—〉〈窓の汚れを—〉〈足の泥を雑巾で—〉「拭 う」「拭よく」に比べ、汚れや水気の除去という結果を強く 意識させる。Q拭う拭く ふきのきゃくとなる【不帰の客となる】「帰らぬ人となる」に 相当する漢語的な表現。勇敢え無くなると上がる②・あの世に行 く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永 眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・ くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃られる・他界・長逝・露と消 える・天に召される・亡くなる・儚なくなる・不幸がある・崩御・没す る・仏になる・身罷る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く 臨死・臨終 ぶきみ【不(無)気味】事実が不明で不安になる気持ちをさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈な姿〉〈な動き〉 〈一に静まり返る〉梅崎春生の『桜島』に「血も凍るよう な一な時間が過ぎた」とある。「一な存在」のように、正体 や実力が不明で油断ならない意にも使う。気味悪い ふきゅう【普及】広い範囲の人々の間に広がる意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。「版〉〈教育のーに 力を入れる〉〈全国にーする〉〈パソコンがーする〉それ ぞれに届く点に中心のある「行き渡る」と比べ、この語は 物や情報の伝達にとどまらず、それを活用する人々の行為 が社会に広まる現象まで含んでいる感じがある。広がる 広まる・Q行き渡る・流布 ふきよう【不況】景気が悪く経済活動が沈滞している意で、 やや改まった会話や文章に用いられる少し硬い感じの漢語。 〈一対策〉〈一にあえぐ〉〈一の波が押し寄せる〉〈長引く一 のあおりを受ける〉〈一が深刻化する〉好況と対立す る語で、「好況」より日常生活でも比較的よく使われる。 不景気 ふきよう【不興】機嫌を損ねる意で改まった会話や文章に用 <913> いられる漢語。へーを買う)へいかにもーげな様子)の上林 暁の『極楽寺門前』に「腹の底には、さっきのーがいぶりつ づけているんだなと思われた」とある。「座がーになる」の ように「白ける」意にも使う。具不機嫌 ふきよう【布教】宗教を広める意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈ー活動に従事する〉〈仏教のーに努 める〉のある宗派の布教のために派遣する人を「一師」とい う。ひQ宣教・伝道 ぶきりょう【不(無)器量】顔が醜い意で、会話や改まらない 文章に使われる古風な漢語。気立てはよいが生まれつい てのーな娘》回「不細工」に比べ、顔全体の印象に重点があ る。少不細工 ふきん【附(付)近】基準となる地点から比較的近い範囲をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈国境ーで紛争が起こ る〉〈自宅のーには店がない〉〈現場ーの地図〉⑨井伏鱒二 は『休憩時間』で「こんな大木というものは、そのーいった いに起こった伝説や挿話を真実らしく思いこませがちなの である」と書いて事実関係をうやむやにしてしまう。「界 隈」と違い、その場所自体は含まない。専界隈・近所・Q近 辺・近隣 ふく【吹く】空気を動かす、息を吐きかける、表面に出るな どの意味で、くだけた会話から硬い文章まで広く使われる 日常の和語。〈風が—〉〈笛を—〉〈お茶を—・いて冷ます〉 〈木が芽を—〉〈ほらを—〉国木田独歩の『武蔵野』に「野 は風が強く」、林が鳴る」とある。噴く ふく【拭く】汚れや水気を取り去るために布や紙をあてがっ ふぐあい て軽く押し付けるように動かす意で、会話にも文章にも使 われる日常の和語。バスタオルで全身を」〈洗い上げた 皿を布巾で」〈ハンカチで涙を」〈雑巾で廊下を」 辻邦生の『天草の雅歌』に「びかびかに」・きこんだ廊下に 新緑のかげが淡くうつっていた」とある。「拭う」ほど力 を入れない傾向がある。Q拭う・拭き取る ふく【噴く】気体や液体が勢いよく飛び出す意で、会話でも 文章でも使われる和語。〈霧を—〉〈銃口が火を—〉〈火山 が白煙を—〉呂吹く ふく【服】衣服、特に洋服の意で、会話や軽い文章に使われ る日常の漢語。〈ーを脱ぐ〉〈ーを着る〉〈着物とー〉伊藤 整の「火の鳥」に「キャンディーの包装紙のようなー」とあ る。衣服全体の意にも、洋服だけの意にも使うが、さらに、 「ズボンじゃなくーのポケット」のように、洋服の上着だけ をさす場合もある。ひ衣服・衣料・着物・Q洋服 ふぐ【不具】体の一部にハンディキャップを持つこと、また、 そういう人をさして、伝統的に用いてきたが、「かたわ」同 様、差別意識が感じられるとして使用を控えるようになっ た漢語。の川端康成の『波千鳥』に「僕はね、じゃない よ。じゃない。しかしね、僕の汚辱と背徳の記憶、そい つが、まだ、僕をゆるさない」とある。Q片端・身障者・身体 障害者 ふぐあい【不具合】変調を来しなめらかに機能しない意で、 会話や硬くない文章に使われるやや古風な表現。〈エンジ ンにーが生じる〉体調のーを訴える〉の「故障」ほど詳細 が明確でない感じがある。马故障 <914> ふくいん ふくいん【幅員】硬い文章に用いられる「幅」の意の専門的 な漢語。〈三十メートルのバイバス〉〈道路のーを拡張す る〉児幅 ふぐう【不遇】運が悪くて才能が世間に認められず、その能 力にふさわしい名誉・地位・境遇を得られない意で、改まっ た会話や文章に用いられるやや硬い感じの漢語。〈身の— をかこつ〉へのうちに世を去る〉⑨井伏鱒二の『丹下氏 邸』に「このな罪人のために、丹下氏がどのくらい遠くま で行ったか偵察してやろうとした」とある。「不運」「不幸」 に比べ、この判断は当人の感じ方もあってかなり主観的な 面がある。ひQ不運・不幸 ふくえき【服役】兵役や懲役に服する意で、改まった会話や 文章に用いられる、やや専門的な漢語。へー中の身〉へーを 終え出所する)専受刑 ふくげん【復元】元の状態に戻す意で、会話でも文章でも使 われる漢語。〈図〉〈壁画を—する〉〈山城の—作業〉 原 ふくげん【復原】乗り物の傾きを修正する意で、会話でも文 章でも使われる専門的な漢語。〈力の大きな船〉復元 ふくしゃ【複写】文書や絵画・写真などの現物をそっくり写し 取る意で、会話にも文章にも使われる、古風で正式な感じ の漢語。〈機で大量に—する〉〈絵を—する〉〈提出物は ーにても可〉必ずしも機械によるものだけでなく、カーボ ン紙などによる手書きなども合まれ、オリジナルでない点 に意味の中心がある。「コピー」より古風で、正式な感じも 漂う。写し・Qコピー・転写 ふくしゅう【復習】習ったことを自分でもう一度確認する意 で、会話でも文章でも使われる日常漢語。〈教わったことを ーする〉〈予習とーを欠かさずにやる〉学校の勉強のほ か、習い事などでも使うことがあるが、芸事の場合は「おさ らい」といったほうが収まりがよい。おさらい ふくしゅう【復豐】相手の仕打ちに対する恨みを晴らすこと をさし、改まった会話や比較的硬い文章に用いられる漢語。 へー心に燃える〉へーの鬼と化す〉へーを企てる〉福原麟太 郎の『チャールズ・ラム伝』に「やがて王子はーの念がゆら いでくる」とある。「仕返し」や「返報」に比べ、根強い恨 みのこもった行為という感じが強い。仕返し・返報・Q報復 て行動する意で、ややび 文章に用いられる漢 語。〈絶対ーを誓う〉〈上司の命令にーする〉「従う」はも ちろん「服する」よりも厳格な上下関係を連想させ、すべて において相手の意のままに行動するという含みがある。 「反抗」と対立。Q従う・服する ふくする【服する】納得して従う意で、改まった会話や文章 に用いられる硬い動詞。〈喪にー〉〈罪にー〉〈命令にー〉 「従う」や「服従」に比べ、何らかの行為を行うというニュ アンスが強い。Q従う・遵守・服従・守る① ふくそう【服装】衣服に装飾品を含めた全身の様子をさし、 会話でも文章でも広く使われる日常漢語。「に気を配る」 「ーを改める」有島武郎の『或る女』に「若々しく装った 「までが(略)瘦せ形なその肉を痛ましく虐げた」とある。 広衣装・衣服・衣類・着物・Q身なり・装い <915> ふくぶ【腹部】「腹」の部分をさし、改まった会話や硬い文章 に用いられる、やや専門的な感じの漢語。〈一の痛み〉〈一 を強打する〉〈一を押さえてうずくまる〉吉行淳之介の 『原色の街』に「正面から抱きついて脂肪のたまったーをす りよせながら」とある。和語の「腹」と違って、比喻的な用 法には発展していない。おなか・腹 ふくみ【含み】直接はっきりとは表現していないが、何とな く感じとれる意味・内容・情報をさし、会話やさほど硬くな い文章に使われる和語。「のある言い方」「を持たせ る」(ーを残す)含蓄 ふくむ【含む】物や体や頭や心などの内部に持っている意で、 会話にも文章にも幅広く使われる基本的な和語。〈湿気を 風〉〈鉄分をー・んだ水〉〈口に水をー〉〈手数料をー〉 〈卒業生をー〉〈憂いをー目〉志賀直哉の『焚火』に「新緑 の香をー・んだ気持のいい山の冷々した空気」とある。「含 める」と違い、内部に入っているものに焦点があたる感じが 強い。Q含める・包含 ふくむ【服務】職務、特に事務に従事する意で、改まった会 話や文章に用いられる正式な感じの硬い漢語。〈規程〉 〈中〉受け持ち・Q従事・担当・担任 ふくめる【含める】中に入れて全体として扱う意で、会話に も文章にも使われる日常の和語。〈交通費を—〉〈子供を ー・めて五人〉〈その点をー・めてよく検討する〉開高健の 『パニック』に「是正する意味をー・めていたのかもしれな い」とある。「含む」と違い、内部に入るものより全体に焦 点のあたる感じがある。Q含む・包含 ふくれつら ふくやく【服薬】薬を飲む意で用いられる専門的な漢語。二 週間のーという指示がある)乃服用 ふくよう【服用】薬を飲む意で一般に使われる、やや専門的 な漢語。〈食後に—する〉児服薬 ふくらはぎ【脹(膨)ら脛】「はぎ」のうち後ろ側のふっくらし 大部分をさして、会話や文章に使われる日常の和語。「を 痛める〉〈ーを揉む〉の三浦哲郎の『めまい』に「夕闇のな かでなにかをこっそり踏み洗いするときの、あのーの白さ」 という例がある。ひQこむらはぎ ふくらむ【膨らむ】内側から外側に向かって盛り上がるよう に大きくなる意で、会話でも文章でも広く使われる日常の 和語。〈パンがー〉〈風をはらんで帆がー〉〈春になって木 の芽がー〉〈女の子は成長するにつれて胸がー〉「ふくれ る」に比べ、自然で全体的で正常な膨張に対応する語感があ る。そのため、夢や希望が大きくなる場合にも、それが好 ましい方向であればこの「ふくらむ」が用いられる。川端 康成の『雪国』に、主人公の島村がヒロイン駒子の乳房を求 める場面で、「掌のありがたいふくらみはだんだん熱くな って来た」という例が出てくる。このような胸の「ふくら み」が、もしも「ふくれ」などと書かれていたとしたら、す ぐ病院で診察を受けたほうがいいような病的な雰囲気に変 化する。「ふくらむ」と「ふくれる」という両語の語感の違 いがそこに端的にあらわれている。ふふくれる ふくれつら【膨(脹)れ面】不満そうに頬を膨らませた顔をさ し、会話や軽い文章に使われる和語。「で黙って突っ立っ ている)実際に頬がふくれていなくても不満顔であれば <916> ふくれる 使い、会話ではしばしば「ふくれっつら」となる。小沼丹の 『更紗の絵』に「なに、してるんだ?」とある。仏頂面 ふくれる【膨れる】「ふくらむ」より若干会話的な和語。異 様に「〈餅を焼いたら一部分だけびゅうっと・れた〉〈食 い過ぎて腹が」「ふくらむ」に比べ、均衡のとれない膨 張をさす場合が多く、不自然さや異常さ、時には病的な感 じを伴う傾向があって、基本的に好ましくない感触で使わ れる。そのため、「ちょっと叱られるとすぐ」というよう に、頬をふくらませることで不満の意をあらわす慣用的な 比喩表現も成立する。小沼丹の『狆の二日酔い』に「中途半 端の気分で、苦い烟草を喫んでいたら、家の者が帰って来 て、「何をー・れているんですか?」と「不思議そうな顔」 をする箇所がある。「予算がふくらむ」という表現では、単 に当初の見込みよりも予算の金額が大きくなったという事 実を伝えるにすぎないが、「予算がー・れた」と表現する場 合には、予算が膨張したというその事実を好ましくないと 考えている話し手の気持ちも、ニュアンスとして相手に伝 わる。ふくらむ ふくろ【復路】目的地や折り返し点からの経路をさして、改 まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「は一転して山 道となる〈箱根駅伝、のエース区間〉の「往路」と対立。 り家路・帰り・帰り道・帰途・Q帰路 ぶけ【武家】「武士」の意で、会話にも文章にも使われる古風 な漢語。〈階級〉〈屋敷〉〈おー様〉②「の出」などと 言うように、本来は個人でなく、公家に対して武士の系統 の家柄の意。そこから間接的に個人をさすようになったた め、「武士」よりいくらか丁寧な感じが漂う。ひ侍・Q武士 ふけいき【不景気】景気が悪い意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈な世の中〉〈で物が売れない〉〈が長引 いて店がつぶれる〉の「好景気」と対立する語で、「好景気」 より日常生活でよく使われる。谷崎潤一郎の『黑白』に「 になると、雑誌などは却って売れる」とある。小林多喜二の 『蟹工船』に「今にもお陀仏がするようなな面」とあるよ うに、元気のないようすを表す用法もある。少不況 ふけいざい【不経済】金銭や時間や労力をむだに費やすこと をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈な買い物〉 〈一人暮らしは何かとだ〉乃無駄 ふけこむ【老け込む】「老ける」の強調形で、会話にも文章に も使われる和語。〈年相応に—〉〈まだ一年ではない〉及Q 老い込む・老いる・老ける ふけつ【不潔】非衛生的、けがらわしいの意で、会話でも文 章でも広く使われる日常漢語。〈一な肌着〉ヘーにしてお くヘーな交際〉小津安二郎監督の映画で潔癖派のヒロイ ンがしばしば口にする。『晩春』の紀子(原節子)は父の友人 が再婚したと聞いて当人に「何だか、ーよ。きたならしい わ」と言い、『秋日和』の紀子(司葉子)も未亡人である母に 再婚話が持ち上がったと聞いて「相手はお父さんのお友達 よ。ーだわ」と会社の同僚につぶやく。女性だけではない。 『秋刀魚の味』の周吉(笠智衆)でさえ、娘と三つ違いの若い 女と再婚した友人に面と向かって「このごろお前がどうも ーに見えるんだがね」と真情を吐露する。「清潔」と対立。 ふける【老ける】年寄りじみる意で、会話にも文章にも使わ <917> れる和語。〈ー・けた顔をしている〉ヘしばらく会わない間 にすっかりー・けた》志賀直哉の『赤西蠟太』に「三十四 五だと云うが、ー・けて居て四十以上に誰の眼にも見えた」 とある。「実際の年よりー・けて見える」とも言うように、 必ずしも老年に達しなくても使われる。男老い込む・Q老い る・老け込む ふこう【不幸】心が満たされず気持ちがつらい状態をさして、 会話にも文章にも使われる漢語。〈な生い立ち〉〈な出 来事〉〈中の幸い〉〈突然ーが襲う〉図川端康成の『山の 音』に「よろこんですることに、ーはありませんわ」とあ る。「ーにして」の形で「不運」に近い意を表すほか、「親戚 にーがある」のように人の死の婉曲表現ともなる。専薄 幸・Q不しあわせ ふごう【符号】約束により一定の情報と対応する印をきし、 会話にも文章にも使われる和語。〈モールスー〉〈長音ー〉 〈区切りー〉〈移項するとーが変わる〉⑩狭義には、プラス (正数)を表す「+」とマイナス(負数)を表す「一」との二つ の記号だけをさす。この狭義で主に「符号」を用い、広義で は多く「記号」を用いる傾向がある。そのため、広義に用い た「符号」はやや古風な感じが伴う。ひ記号 ふごう【符合】事柄どうしがつながって辻褄が合う意で、 主に文章中に用いられる硬い漢語。〈話がーする〉〈事実と ーする〉ひ一致・合致・Q整合 ふごう【富豪】莫大な財産を持つ意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈アラブの大〉〈の大邸宅〉 他の類語よりも財産が多い感じがある。森鷗外の『空車』 སྭཱཧཱ། に「の自動車(馬の牽く荷車を)避ける」とある。Q 大金持ち・金持ち・金満家・財産家・素封家・長者・物持ち 「死ぬ」ことを言う、やや丁寧な婉曲表現。〈身内に」 死を直接さすことばを口にすることを忌み嫌て表現す る場合の言いまわし。「不幸がない」とも「幸福がある」と も言わないところからも、特殊な用法であることがわかる。 勇敢え無くなる・上がる②・Qあの世に行く・息が切れる・息が絶え る・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落 ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・死ぬ・死 亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡く なる・儚なくなる・不帰の客となる・崩御・没する・仏になる・身罷 る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 ふこうへい【不公平】判断や取り扱いに偏りがある意で、会 話にも文章にも使われる日常の漢語。〈ーな扱い〉〈ーな人 事〉〈仕事の配分がーだ〉〈それではーが生ずる〉「公平」 と対立。夏目漱石の「坊っちゃん」に「御兄様おには御父様 が買って御上げなさるから(買って上げなくても)構いませ んと云う。是はーである」とある。ふ不平等 ふこうり【不合理】道理や理屈に反する意で、会話にも文章 にも広く使われる漢語。〈な要求〉〈を改める〉〈な 制度を廃止する〉「非合理」である段階を超えて、論理の むしろ逆方向にはみ出した感じがある。非合理 ぶこつ【無骨/武骨】ごつごつして垢抜けない意の古風な感 じの漢語。〈生来の—者〉ぃかにも—な手〉〜なやり方 芥川龍之介の『奉教人の死』に「な腕に幼子を抱き上げ <918> ブザー ては、にがにがしげな顔に涙を浮べて」とある。洗練され ていない体つきやしぐさは男女を問わず存在するが、従来 の用例が男性についてのものが圧倒的に多く、「な娘」な どとは言わずに「山出しの」などと言いならわしてきた関 係で、今でもこの語はすぐに男性を連想させる。 ブザー電磁石で振動板を振動させて音を出す装置をさし、 会話にも文章にも使われる外来語。〈防犯用のー〉〈終了し た合図にーを鳴らす〉ひ鈴・チャイム・Qベル・呼び鈴 ふさい【夫妻】夫と妻の一対をさして、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈部長—を招待する〉〈社長—に仲人を 頼む〉②「夫婦」より改まった丁寧な表現で、自身や自分側 には用いない。ひQ夫婦・めおと ふざい【不在】通常いるはずの場所にいない意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈一証明〉〈一地 主〉〈一者投票〉〈恩師を訪ねたがあいにくーであった〉 「留守」と違って、家を空ける場合に限らず、勤務先や自分 の席など広く使われる。また、「国民ーの政治」のように、 存在を顧慮しない意味でも使うことがある。ふ留守 ぶさいく【不(無)細工】不器量の意で、主にくだけた会話に 使われる、やや古風な漢語。〈—な顔〉の「不器量」に比べ、 目・鼻・口といった顔の構成要素の個々の形やその配置が整 っていない感じがある。凡不器量 ふさぐ【塞ぐ】空いているところを覆ったり物を詰めたりし て通じなくする意で、会話にも文章にも使われる和語。穴 をー〉〈耳をー〉〈入り口をー〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「狼狽の気味で逃げ出そうと云う景色だったから、おれが 前に廻って行手をー・いで仕舞った」とある。卻閉じる ふさく【鬱(寒)ぐ】気持ちが晴れず暗くなる意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈雨続きで気分が—〉②堀辰雄の 『美しい村』に「何もかも自分の責任のような気がされて、 私はふっと気がー・いだ」とある。他人の表情やしぐさを見 ながら「ー・いだ様子」のように外見から推測することもあ る。専アンニュイ・思い屈する・Q滅入る・物憂い ふざける【巫山戯る】不真面目な態度で冗談を言ったり戯 れたりする意で、会話や軽い文章に使われる和語。友達と ー〈若いカップルがー〉(!けた態度〉へーけたことを 抜かすな》志賀直哉の『暗夜行路』に「少しーけた調子 で」とある。戯れる ぶさま【無(不)様】見苦しい、体裁の悪い意で、会話や軽い文章に使われるいくぶん古風でやや俗っぽい表現。「な負け方」「な姿をさらす」「このていたらくは何ともだ」谷崎潤一郎は『蓼喰う虫』で「いかに感情の激越を表現するのでも、ああまでに顔を引き歪めたり、唇を曲げたり、仰け反ったり、もがいたりしないでもいい」と書き、はにかみ屋の東京人はあっさり洒落にしてしまうと、関西人との違いを述べている。みっともない程度が強く、人をあざける場合に使われる一方、「なところをお目にかけて」などと謙遜していうこともある。ひ不恰好・不体裁・みっともないふさわしい【相応しい】釣り合いや適性や能力などの点で条件にぴったり合っている意で、会話にも文章にも広く使われる日常の和語。〈地位に「人〉〈役に「俳優〉〈自分に相手〉〈場に服装〉梶井基次郎の『冬の蠅』に「回想と <919> いう言葉に一位一晩の経験としては豊富すぎる内容」とあ る。「似つかわしい」に比べ、外から客観的に判断している 感じが強い。似つかわしい ふし【節】歌の抑揚や調子をさし、会話や軽い文章に使われ る古風な日常の和語。へーをつけて歌う《歌のーは思い出 したが、文句を忘れた》夏目漱石の『吾輩は猫である』に 「朗読会と云うと何かーでも附けて詩歌文章の類を読む様に 聞えますが」とあるように音楽とは限らない。単音律調べ・ 旋律・節回し・Qメロディー ぶし【武士】武芸を身につけ主に戦に備えて主君に仕える者 をさし、会話にも文章にも使われる硬い感じの漢語。へー 道〉へーの家柄〉へーの面目が立つ〉へーに二言はない〉へー にあるまじきふるまい)Q侍・武家 ふしあわせ【不幸せ/不仕合わせ】不運による不幸の意で会 話やさほと硬くない文章に使われるいくぶん古風な表現。 へーな身の上へ晩年はーだった)専薄幸・Q不幸 ふしぎ【不思議】現象・正体・原因などについて常識や論理で 説明がつかず、人間の考えうる範囲を超えている意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な漢語。〈世界の七—〉〈一な出来事〉〈一なことが起こる〉 〈一な縁〉〈一に占いがよく当たる〉夏目漱石の『坊っちゃ ん』に「風呂の数は沢山あるのだから、同じ汽車で着いて も、同じ湯壺で逢うとは極まっていない。別段ーにも思わ なかった」とある。「不可思議」の略。き怪奇・奇異・奇怪・奇っ 怪・奇妙・奇妙奇天烈・Q不可思議・変・摩訶不思議・妙 ふしだらだらしのない、特に品行のよくない意で、会話に ふしょう も文章にも使われる古風な和語。〈一な暮らし〉〈一な女〉 〈一をしでかす〉②ありさま・始末の意の「しだら」に打消し の「不」を付けてできた語形。ひQだらしない①・不貞・不品行・ 不身持ち ふしぶし【節節】あちらこちらの関節の意で、会話や軽い文 章に使われる、やや古風な和語。体のーが痛い)永井龍 男の『一個』に「骸骨かなにかのように、ーが鳴った」とあ る。刂関節 ふしまわし【節回し】歌や語り物などの声の高低・強弱・長短 などの変化をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈独特 のーで詠み上げる〉〈民謡の素朴なー〉②井上友一郎の『受 胎』に「ねっとり吸い付いてくるような吉田のーに聴き入 る」とある。作品ごとに固定している「節」に比べ、個性的 な調子を含める傾向がある。音律・調べ・旋律・Q節・メロディ ふじよ【婦女】「婦人」に近い意の古風な漢語。「をやさし くいたわる〈家庭の」②二葉亭四迷の『浮雲』に「通常 のーと違って教育も有る」とある。「一暴行事件」のような 一定の慣用的な表現の場合を除き、古めかしい感じを与え る語。おなこ・女・じょし・女性・Q婦人 ふしょう【不詳】その点に関して詳しいことはわかっていな い意で、主に文章中に用いられる硬い漢語。〈姓名ー〉(年 齢ー)詳しいことは不明だが、少しは手掛かりがありそ うな雰囲気もある。少不明・Q未詳・未知 ふしょう【負傷】深い傷を負う意で、改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈ー者〉〈名誉のー〉〈試合中にーして退 <920> ふじょう 場する)戦争・災害・事故などの連想が強く、膝をすりむ いた程度では使いにくい大仰な感じがある。僕怪我 ふじょう【浮上】水中から水面に浮かび上がる意で、主とし て文章に用いられる硬い感じの漢語。〈潜水艦が—する〉 〈座礁した船が—する〉の一躍首位に—する「総理候補 に—する」のような比喻的用法もある。ひ浮揚 ぶしう【無(不)精】何をするのも面倒がる意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈一髭〉〈筆一〉〈一を決め込む〉 横着・ぐうたら・ずぼら・怠惰・怠慢・Qものぐさ ふしょく【腐植】土壤中で微生物の作用で分解して生ずる意 で、会話や文章中に限定的に用いられる専門的な漢語。ヘー 土)腐食 ふしよく【腐食(蝕)】腐ったり鋪ぐびたりして組織が崩壊する 意で、改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢 語。〈作用〉〈柱がーする〉〈鉄がーしてぼろぼろになる〉 の大江健三郎の『われらの時代』に「自分の周囲のあらゆる 隅ずみにー菌のように食いこみ工作し、味方を拡大した」 とある。本来は「腐蝕」で、「腐食」はその代用漢字。専傷 む・腐る・腐植・Q腐敗・腐乱 ぶじよく【侮辱】人前で相手を馬鹿にして恥をかかせる意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一罪〉〈一を受ける〉 〈部下の前で上司にーされる〉の「侮蔑」よりも程度がひど く、時には相手の人間性を傷つけることもある。Q侮蔑・ 凌辱 ふしん【不信】信用できない意で、やや改まった会話や文章 に用いる漢語。〈政治ーを招く〉〈人間ーに陥る〉〈ー感を 募らせる〉への念を抱く〉)不審 ふしん【不審】疑わしい意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈ー訳問が〉〈挙動ー〉〈ーの念が芽生える〉〈ーに思う〉佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「犬とものその様子が彼にはーでならなかった」とある。ふ不信ふしん【腐心】あれこれと心を遣い努力する意で、改まった文章に用いられる少し古風で硬い漢語。〈計画の実現に向けてーする〉〈会社の再建にーする〉Q苦心苦慮 ふじん【婦人】落ち着いた年齢の女性をさす、やや改まった 日常の漢語。〈貴—〉〈—参政権〉〈—服売場〉〈妙齢の—〉 ゆある年齢に達した家庭人を連想させる。若干古風な感じ はあるが、「婦女」ほど古めかしい語感はない。井伏鱒二の 『文章其他』は「自分が破産したと自覚した日の夜から、急 に青春時代のように性欲が盛んになってしまった」という 「すでに五十歳の—」の滑稽で悲痛な告白で始まる。ひおな ご・女・じょし・女性・Q婦女 ふしんせつ【不親切】親切さに欠けて配慮が行き届かない意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈な応対〉(な教 え方〉(な通りすがりの人〉(店員が「だ》の「冷淡」「薄 情」「不人情」に比べ、心の冷たさに限らず気が利かない場 合を含む感じが強い。専薄情・Q不人情・冷酷・冷淡 不美人を軽蔑して言うときの、俗語に近い口頭語。 「おかちめんこ」や「すべた」などと違い、差別的な意識を 件って現在でも比較的よく使われている。悪女・おかちめん こ・Qしこめ・醜女・醜婦・すべた・不美人 ふずい【附(付)随】主なものに関連してついている意で、改 <921> まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈品〉〈事項〉 〈入学に—する費用〉り随伴・Q付帯 ぶすう【部数】書物・雑誌・新聞など出版物の数をさし、会話 にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈新聞の発行 」〈売り上げーが伸びる〉の「冊数」と違い、刊行される 個々の出版物ごとに話題にする場合に使う傾向が強い。 冊数 ふすま【襖】木製の骨組みの両面に紙や布を張った建具をさ し、会話でも文章でも使う日常生活の和語。〜を張り替え る〜の陰から呼ぶ〜「襖障子」とも言った。小沼丹の 『障子に映る影』に「遠くのーに眼を向けたら途端にーが開 いて」とある。専唐紙 ふぜい【風情】そぞろ心ひかれる趣をさし、改まった会話や 文章に用いられる古風な漢語。「のある庭〉へを添え る〈何のーもない街並み〉の触れなば落ちんという」 のように「ようす」といった意味で用いた例はさらに古めか しい感じがする。小沼丹の『黒と白の猫』に「猫は落着き払 って、細君なぞ歯牙にも掛けぬというを示した」という 一文が出てくる。ここは古風というより、猫を大仰に擬人 化して滑稽な感じを添えている。Q趣・情趣・情緒 ふせぐ【防ぐ】備えをして被害が生じないようにする意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的和語。〈敵の攻撃をー〉〈事故をー〉〈細菌の感染をー〉 〈日焼けをー〉夏目漱石の『こころ』に「金だらいから立 ち上がる湯げで、呼吸の苦しくなるのをー・いでいた」とあ る。刂防止 ふそん ふせる【伏せる】「寝る」の少し丁寧な感じの和風間接表現。 「やすむ」より若干古風な言い方。〈お先に—〉へきのうから 風邪でー・せっております)病気で床に就く場合によく使 うため、体の具合が悪いような連想も働きやすい。その意 味では特に「臥せる」と書いて区別することもある。みお休 みになる・寝る①・Q休む② ふそく【不足】必要な数量や程度に足りない意で、会話にも 文章にも使われる日常の基本的な漢語。〈燃料—〉〈認識 ー〉〈練習—〉〈時間—〉〈資金が—する〉〈人数が—だ〉 野間宏の『崩壊感覚』に「意志力の—から生れる彼の弱い人 生観」とある。使い果たして底をついた感じの「欠乏」に対 じ、初めから足りない場合を含め、ある基準量に達しない という事実だけを述べた感じが強い。「何の—もない」のよ うに「不満」に近い意味合いでも使う。欠乏 ふぞく【附(付)属】主たるものに付き従う関係をさして、会 話にも文章にも使われる漢語。〈大学」の病院〉〈学部に する研究所〉〈機械の品〉の「所属」と違い、人間には用 いない。井上ひさしの『吉里吉里人』に「中学校「大学」と 常識を逆転させて矛盾感で笑いを誘う例が出る。み所属 ふぞろい【不揃い】物の形・大きさ・柄・種類などがそろってい ない意で、会話にも文章にも使われる語。〈粒がーのりん ご〉〈上下ーの背広〉〈形がーで売り物にならない〉もちぐは ぐ・Qばらばら・まちまち ふそん【不遜】思い上がって慎みに欠ける意で、主として文 章に用いられる、やや古風で硬い漢語。〈傲岸な顔つき〉 〈な態度で応対する〉Q驕慢・傲岸・高慢・傲慢・高慢ちき <922> ふだ 尊大 ふだ【札】他と区別するために必要な事項などを記した紙切 れや木・金属・プラスチックなどの板をさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈名前を書いた—〉〈神社でおーをもら う〉〈ーを貼る〉〈百人一首のーを読み上げる〉回「カード」 に比べ、和風で縦長の形が多い。ひカード ふたい【附付】帯】主たる物事に伴う意で、改まった会話や 文章に用いられる専門的な漢語。〈—条件〉〈—決議〉り随 伴・Q付随 ぶたい【舞台】演劇や舞踊などを演じて観客に見せる目的で 客席より高く造った場所をさし、会話にも文章にも広く使 われる漢語。〈晴れ—〉〈—俳優〉〈度胸〉〈初—を踏む〉 〈—に立つ〉〈—の袖〉の川端康成の『雪国』に「お座敷だの にまるで—のように弾いてるじゃないか」とある。「ステー ジ」に比べ、野外音楽や新しい音楽のライブなどに用いる と若干違和感がある。ひステージ ふたおや【二親】父親と母親の意で、会話にも文章にも使わ れる、いくぶん古風な和語。〜がそろって健在で何より 〈幼い頃にーを病気で亡くした〉「両親」や「父母」に比 べ、父親も母親も、男親も女親もそろっており、片親ではな いという意識が強く感じられる。ちちはは、父母・Q両親 ふたご【双子】一回の出産で二人生まれた子供をさし、会話 や手紙などで広く使われる日常の和語。改まった硬い文章 の中でほ「双生児」を用いることが多い。「が生まれる の兄弟石坂洋次郎の『颱風とざくろ』に「まるでー のような白いつやつやした隆起が、胸いっぱいに行儀よく 並んでいる」とある。弔双生児 ふたたび【再び】「もう一度」の意で、改まった会話や文章で 用いられる若干やわらかな感じの和語。「同じ失敗を繰 り返す」〈めぐり会う〉〈両雄が相まみえる〉Q再度・ 又 ふたりづれ二人連れ一緒に行動する二人の人間をさし、 会話にも文章にも使われる、「カップル」より一般的な和 語。男女の組み合わせとは限らない。〈仲のよさそうなー〉 ひアベック・Qカップル ふだん【不断】絶え間ない意で、改まった会話や文章に用い られる硬い感じの漢語。〈—の努力が報われる〉〈—の練習 の賜物たまの優柔—」のように、決断力に乏しい意で用い ることもある。単段 ふだん【普段】特に変わったことのない日常の意で、会話に も文章にも使われる漢語。へーの暮らし〉へーから摂生に努 める〉へーの行いが肝心だ〉へーの生活に戻る〉へーどおり のやり方で通す》山本有三の『真実一路』に「年末で最も せわしい時期だが、この一家ではーとたいして変わりがな かった」とある。「ー着」のように、日常の中でも特に家で くつろいでいるような状態をさす場合もある。ひいつも・通 常・常々・常日頃・Q日常日常茶飯事・日頃・不断・平常・平生・平素 ふだんぎ【普段着】日常の改まらない場面で着ている服装を さし、会話にも文章にも使われる表現。へーでぶらりと散歩 に出る)②永井龍男の『そばやまで』に「の上に襟巻を し、長身を少し前屈みにした歩き方」とある。「晴れ着」に 対する語で、平服の中でも特に、通勤用や外出用の衣服よ <923> り自宅でくつろいで過ごすときの服装を連想させやすい。 Q平服・略装・略服 ふち【縁】物体のうち周囲に接している最も外側の部分をさ し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生 活の和語。〈|なしの眼鏡〉〈茶碗の|が欠ける〉〈目の| が赤い〉②川端康成の『千羽鶴』に「雲のなかにかがやくの で、星はなお大きく見えるらしい。光の|が水に濡れてい るようだった」とある。「ブールの|に煉瓦をあしらう」 と「ブールのへりを歩く」との対比からうかがわれるよう に、「へり」よりも「ふち」のほうが狭い範囲で、ブールの 一部という認識の表現に感じられる。ふちどり・へり・輪郭 ふちどり【縁取り】物のへりの部分やその周辺を別の物で囲 ったり、その部分だけ特別の色や飾りなどで区別したりす るものをさし、会話にも文章にも使われる和語。〈刺繍化で ーをする〉へ赤い|が目立つふち・へり・輪郭 ふちゃく【附(付)着】物に好ましくない物がくっつく意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー物を除く〉(污 れがーして落ちない)Qくつく・接着・張り付く・引付く ふちゅうい【不注意】注意や配慮が足りない意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈前方ー〉(ーで失敗する)〈自分 のーから事故になる〉「油断」が警戒を怠ることであるの に対し、この語は当然なすべきことをしないというニュア ンスがある。手ぬかり・油断 ふちん【浮沈】栄えたり衰えたりする意で、主として文章中 に用いられる漢語。〈社のーがかかる〉〈国家のーにもかか わりかねない大事件〉②「浮き沈み」に比べ、特に「沈む」 ふっかっ 懸念として問題になりやすい。Q浮き沈み・消長 ぶつ【打つ】「打つ」の意で、主としてくだけた会話に使わ れる、やや古く俗っぽい日常語。〈お尻をー〉(いたずらし て先輩にー・たれる〉(いじわるすると、ーわよ)夏目漱 石の「坊っちゃん」に「おやこれはひどい。御」・ちになっ たのは情ない」とある。「打つ」の音転。女性のほうがよく 使った印象があり、「殴る」「ひっぱたく」より衝撃が弱い 感じもある。専Q叩く・殴る・はたく・はる・ひっぱたく ふつう【普通】特別でなく一般的の意で、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の最も基本的な漢語。〈一 列車〉〈一預金〉〈一の人の一の暮らし〉〈こく一のやり方〉 〈一の成績〉〈一誰でもそう思う〉梶井基次郎の『冬の日』 に「お前の身体も一の身体ではないのだから大切にして下 さい」とある。「特別」「特殊」と対立。日常的という感じ のある「通常」に比べ、平均的という感じが強い。 のある「通常」に ふつうに【普通に】他と比べて特に変わっていないの意だが、 近年、若年層の間で、「特別なことなしに、そのままで」 「お世辞でも誇張でもなく」といった意味合いで使われだし た俗な用法。「うまい」へかわいいの「中間的・平均 的」という従来の意味だと思い込む世代をとまどわせる。 ふつうれっしゃ【普通列車】「各駅停車」の列車をさし、会話 でも文章でも使われる、正式な感じの漢語表現。〈次の駅で ーに連絡する〉の「列車」と名がつくため、通勤電車の場合 には用いにくい。ひ各駅停車・緩行・Q鈍行 ふっかつ【復活】一度機能しなくなったものが再び盛り返す 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈折衝〉〈軍国主 <924> ぶつかる 義のーを阻止する〈昔の伝統行事をーさせる〉中村真一 郎の『天使の生活』に「以前の習慣が、いつのまにかーした のだった」とある。「キリストのー」「祭」のように、本来 は、死者が蘇生いする意。乃復帰 ぶつかる激しく接触する意で、主として会話に使われるく だけた日常語。〈電柱に—〉〈パスとトラックが—〉〈強敵 に—〉〈困難に—〉団単に「当たる」だけでなく激しい接触 による強い衝撃を感じさせる。サトウハチローの『僕の東 京地図』に「銀座を歩くと、誰かにー・らないことはない」 とあるように、「出くわす」意にも使う。単当たる ふっき【復帰】事情があって一度その場を離れた人が再び元 の場所や状態に戻る意で、やや改まった会話や文章に用い られる漢語。〈社会ーを果たす〉〈政界へのーはおぼつかな い〉〈元の職場にーする〉Q返り咲き・カムバック・再起・復活 ふつぎよう【払暁】「明け方」の意で文章に用いられる硬質の 漢語表現。〈ーに発つ〉三島由紀夫の『潮騒』に「西風の 強いーなど、富士を見ることがあった」とある。専暁・明け 方・曙・朝ぼらけ・朝まだき・しのめ・未明・夜明け・Q黎明 ぶっきらぽう【ぷっきら棒】言動に愛嬌がない意で、主に会 話に使われる少し俗っぽい表現。〈ーに答える〉〈ーな応対〉 〈ーな店員〉の木の切れ端のように粗雑な意からという。 すげない・そっけない・つれない・Q無愛想 ブックカバー 汚れ防止などのために本の表紙に掛ける覆い をさす和製英語。〈モスグリーンの革製の—〉英語では本 の表紙の意。 ふっこう【復興】衰えたり破壊されたりしたものを再び盛ん な状態に戻す意で、会話にも文章にも使われる漢語。文芸 ー〉〈戦後の日本の—〉〈被災地の—作業〉〈伝統芸能の— を図る〉具体的な物にも抽象的な存在にも広く使われる。 2再興 ふつごう【不都合】具合の悪い事情をさして、会話にも文章 にも使われる漢語。〈ーが生じる〉〈買い換えなくても一向 にーはない〉の「ーな事態」「ーな場合」のように形容動詞 の用法もあり、また、「ーを働く」のように、不屈きなとい う意味でも使う。ひ差し障り・Q差し支え ぶっし【物資】人間の活動や生活に必要な物品の総称として、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈救援ー〉へ の補給〉へを調達する〉へを輸送する〉自然のままで なく人手が入って使えるようになっている感じが強く、樹 木は「資源」で、材木は「物資」になる。処資源 ぶっしつ【物質】空間にあって形や重量やにおいなどを感覚 的にとらえうる存在の総称として、会話にも文章にも使わ れる、やや専門的な基本漢語。〈ー文明〉〈抗生ー〉〈水に溶 けるー〉へー的な豊かさ〉②固体を連想しやすい「物体」に 対し、液体も気体も含めた連想が強い。梶井基次郎は『愛 撫』で猫の耳を「硬いような、柔らかいような、なんともい えない一種特別のーである」と書いた。「精神」と対立。 物体・Q物 ふっしょく【払拭】好ましくない状態をすっかり消し去る意 で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈疑 惑を—する〉〈宗教色を—する〉⑩井上靖の『あすなろ物 語』に「その後何年かその疑いを—することはできなかっ <925> た」とある。「一掃」より抽象性が高い。掃 ぶたい【物体】さまざまな物質で構成されている個々の形 ある実体をさし、会話にも文章にも使われる、いくぶん専 門的な基本漢語。〈未確認飛行〉〈巨大な〉〈得体の知 れない〉「物質」が構成要素、「物体」はその構成物と いう図式を思わせる。液体も気体も含まれる「物質」と違 い、この語は固体を連想させる。Q物質・物 ぶったまげる【打っ魂消る】「たまげる」の強調形。さらに古 風でさらに俗語的。〈値段を見ると二桁も違うのでー・げ た) きおったまげる・驚く・仰天・Qだまげる・びっくり ぶっちきり他を寄せつけない、圧倒的なの意で、くだけた 会話で使われる俗っぽい感じのことば。「の優勝」圧倒 的な差という意味を強めて近年よく使われるようになった。 「打っ千切り」と書けるが、俗語的なので仮名書きが普通。 ぶっちょうづら【仏頂面】不機嫌な、または、無愛想な顔を さし、会話や硬くない文章に用いられる表現。〈主がーし て店に座っている〉②上林暁の『聖ヨハネ病院にて』に「妻 がぶすんとしたーをして、黙って、何んとも言わないで坐っ ている」とある。「仏頂」は仏の頂に宿る仏頂尊で、その恐 ろしい形相に喩えた表現という。ふふくれつら ふっとう【沸騰】液体が十分に熱せられて内側から気泡とな って蒸発する現象をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈一点〉(やかんのお湯がーする)の「沸く」より正式な感じ に響く。「人気」「議論がー」「株価がーする」のように、 熱くなって騒がしくなる意の比喻的な用法もある。ひたぎ る・沸き上がる・沸き返る・沸き立つ・Q沸く ふていき フットボール 古風な「蹴球」より一般的によく使われる外 来語。回サッカーだけでなくラグピーやアメリカンフット ボールを含む総称。きて式蹴球・Qサッカー・蹴球 ぶっびん【物品】取引の対象となる品物をきして、改まった 会話や硬い文章に用いられる専門的な漢語。「を購入す る」(ーを納入する)動産のみをさし、不動産や無形物は 含まない。一般人の日常会話にはなじまない。品・Q品物 ふてい【不貞】貞節に反する意、特に夫や妻の不倫をさし、 改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。行為が発 覚する)(ーを働く)だらしない①・ふしだら・Q不品行・不身持 ち ふてい【不逞】世間に従わず勝手にふるまうさまをさし、主 として文章に用いられる硬い感じの漢語。〈一の輩〉〈高 圧的な父親の態度に、一の気持ちがきざす〉藤沢周平の 『おぼろ月』は「おさとは、胸の中にほんの少しな気分が 入りこんで来たのを感じている」という一文で終わる。こ れまで親の意に逆らったことのない娘が、親が乗り気の縁 談を受け入れて間もなく嫁ぐことになっている。浮いた噂 ひとつないまま嫁に行くのが何となく物足りないという気 持ちもあり、偶然のことから思わぬ親切を受けた見知らぬ 男に別れを告げたあと、「こんなにいい月夜に、いそいで家 にもどることはない」と日ごろ感じたことのない気分がき ざす。そんな娘の心理を簡潔に描写した的確な一語である。 刂勝手②・Q気まま・わがまま ふていき【不定期】時期も期限も特に定まっていない意で、 会話にも文章にも使われる漢語(便)〈運行〉〈刊行〉 <926> ふていさい 〈一の集会〉「臨時」に比べ、何度か繰り返し実施される 雰囲気が強い。「定期(的)」と対立。x随時・Q臨時 ふていさい【不体裁】体裁の悪い意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈—な身なりで臨席する〉〈場にふさわしくな いーな行動〉の人間の世間体の悪い状態や行動について使 う。ひQ不恰好・無様 ぶとう【舞踏(蹈)】西洋風の舞踊をさして、改まった会話や 文章に用いられる古風な漢語。〈仮面—会〉〈—用の靴〉 踊り・ダンス・Q舞踊・舞 ぶどうしゅ【葡萄酒】葡萄の果汁を発酵させた酒をさし、会 話にも文章にも使われる、いくぶん古風な漢語。へーで乾 杯〉〈年代物のー〉の角田房子の『ユトリロと赤ぶどう酒』 に「飲みごろのピークを過ぎ、タンニンが勝ちはじめ渋みを 増した赤ーを、私はユトリロの顔から想像した」とある。 ワイン ふとくい【不得意】技術的に一定水準に達していないことを 苦にする意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈交渉ごと がーだ〉へーなスピーチで緊張する〉ひ苦手・Q不得手 ふところがたな【懐刀】「懐剣」の意で、会話でも文章でも使 われる古風な和語。へとっさに帯に挟んであったーを抜いて 身を守る)腹心の部下をさす比喩的な用法の場合でもや や古風な感じがある。ふヒ首・Q懐剣・こがたな・小刀・短剣・短 刀・どす・脇差 ふとっちよ【太っちょ】主にくだけた会話で、太り過ぎた人 をからかっていう俗語。〈お前のようなーには無理だ〉Q でぶ・肥満 ふとっぱら【太っ腹】度量が大きく細かいことにこだわらな いようすをさし、会話や軽い文章に使われる和語。「な親 分肌の人〉へーなところを見せる〉Q気丈・大胆 小とどき【不届き】法や道徳に反する意で、会話にも文章に も使われる古風な表現。〈千万〉〈あまりといえばーな行 為〉〈ーにも上司の命令を無視する〉もってのほか ふともも【太腿(股)】腿のうち脚の付け根に近い部分をさし て、会話や文章に使われる和語。〈ーに違和感がある〉尾 崎一雄の『まぼろしの記』に「ーも、膝の骨より細くなって いた」という例が出る。大腿部・Q腿 ふとる【太(肥)る】体が太くなる意で、会話にも文章にもよ く使われる日常の基本的な和語。〈ーりやすい体質〉〈運 動不足でー〉まるまるとー・っている〉安岡章太郎の 『海辺の光景』に「ー・ってシマリをなくしたその体」とあ る。马肥える ふとん【蒲(布)団】綿などを入れて布製の袋状に縫った寝具 をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の漢語。〈敷き—〉〈ーを掛ける〉〈ーから顔だけ出す〉 里見弴の『椿』に「左の片手に持っていた雑誌を、そうと ーの上へ置き、手先を引っ込めて、胸のところで握り合わせ た」とある。座布団もその一種だが、単に「ふとん」といえ ばふつうは夜寝るときに使う敷き布団や掛け布団をさす。 もと蒲の葉などで編んだところから。ひとこ・Q寝床 なか【不仲】人と人との仲が悪い、もしくは悪くなる意で、 会話や軽い文章に使われる、やや古風な日常語。へー説が流 れる〉〈同僚とーになる〉Q仲違い・反目・不和 <927> ふなで【船出】船が出発する意で、今では主に文章に用いられる古風な和語。〈ーを知らせる汽笛の響き〉〈横浜からーする〉の「人生の」「若い二人の」を祝す」のように、卒業や結婚などをきっかけにして新しい生活を始める意の比喩的用法も多い。出港・出航・出船・Q出帆・出ふね ふなのり【船乗り】船員の意で、主に会話や軽い文章に使わ れる、やや古風な和語。代々ーをしてきた家に生まれる) 船長をも含む。比較的小型の船や和船などに用いても特 に違和感がない。刂海員・クルー・Q水夫・セーラー・船員・乗組員・ マドロス ふにん【赴任】新たに命じられた勤務地に赴く意で、改まっ た会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈単身ー〉 〈今度ーして来た先生〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「君 が延岡にーされたら、其地の淑女にして、君子の好逑とな るべき資格あるものを択んで一日も早く円満なる家庭を」 とある。「帰任」と対立。着任 ふにんじょう【不人情】人情を解さず思いやりに欠ける意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈都会の人は概してだ〉 〈そんなーなまねはできない〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「うつくしい人がーで、冬瓜の水膨れの様な古賀さんが 善良な君子なのだから、油断が出来ない」とある。ひ薄情・ 不親切・冷酷・Q冷淡 ふぬけ【腑抜け】「意気地なし」の意で、会話や軽い文章に使 われる古風な和語。〈このーめ!〉〈ーになる〉はらわた を抜き取られたかのようなようすから。「間抜け」の意もあ る。尾崎一雄の『虫のいろいろ』に「馬鹿でーの蚤に、どこ ふびょうどう か私は似たところがあるかも知れない」とある。意気地無 し・臆病・Q腰抜け・怖がり・弱虫 ふね【船/舟】水上の乗り物をさし、会話でも文章でも日常 よく使われる基本的な和語。〈渡しー〉〈屋形ー〉〈ーを漕 ぐ〉〈ーを出す〉〈乗りかかったー〉志賀直哉の『暗夜行 路』に「ーは風に逆らい、黙って闇へ突き進む」とある。大 型のふねには「船」を用い、総称ともなる。手漕ぎなどの小 型のふねは「舟」と書く。「宝プネ」や「フナ旅」は「舟」 では心細いので「船」と書くが、「フナ下り」の場合はその 大きさによって書き分ける。弐艦船・舟艇・船舶 ふはい【腐敗】食べ物などが「腐る」意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。「防止」〈食品がーする〉「が 起こる〉「が進む〉「をくいとめる」「した政治」の ように、劣化して修復困難な状態になる意の比喻的用法も ある。傷む・腐る・Q腐食・腐乱 ふはく【浮薄】心がしっかりしておらずすぐに他の影響を受 けやすくて軽々しい意で、主に文章に用いられる硬い漢語。 〈軽佻はちー〉へな気風〉〈生活がーに流れる〉ぴ浅はか・軽 はずみ・軽率・Q軽薄 ふびじん【不美人】女性の容姿が美しくない意の漢語で、会 話よりも文章に多く用いられる。「ながら立ち居振る舞 いに気品がある」ののしる響きはなく、冷静に客観的に 評した感じの語。専悪女・おかちめんこ・しこめ・Q醜女・醜婦・す べた・ぶす ふびようどう【不平等】差別があって公正でない意でやや 改また会話や文章に用いられる漢語。〈一条約〉〈男女の <928> ふびん ーを是正する)条約や法律関係の話題によく使う。「平 等」と対立。马不公平 ふびん【不憫(愍)】かわいそうなの意で、会話にも文章にも 使われる古風な漢語。〈ーな子〉〈ーに思う〉〈ーでならな い〉巻傑れ・Qかわいそう・気の毒 ぶひん【部品】機械や器具類などの製品を組み立てている 個々の部分をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーメ ーカー〉〈ー交換〉〈自動車のー〉〈ーを組み立てる〉〈ーが そろわない〉回「部分品」の略。「パーツ」より細かい連結 部のボルトやねじ一本まで含まれる感じがある。パーツ ふひんこう【不品行】日頃の生活態度や行いが悪い、特に異 性関係にだらしのない意で、主として文章に用いられる古 風な漢語。〈ーな娘〉〈ーとして世間の噂になる〉ひだらしな い①・Qふしだら・不貞・不身持ち ふふく【不服】納得できず承服できない意で、会話にも文章 にも使われる漢語。へーを申し立てる〉〈提案をーとする〉 ⑳井上靖の『氷壁』に「相手は明らかにーそうであった」と ある。ひ不平・Q不満 ぶぶん【部分】全体をいくつかに分けた場合の一つ一つをさ し、会話にも文章にも広く使われる日常の基本的な漢語。 〈修正〉〈最も重要な—〉〈難しい—を除いて一通り読む〉 〈三つの—に分けて考える〉辻邦生の『天草の雅歌』に 「長谷川権六の態度にはどこか説明しかねる—があった」と ある。「全体」と対立。Q一部・一部分 ふへい【不平】気に入らないことがあって気持ちがおさまら ない意で、会話や軽い文章に使われる日常の漢語。へーを言 う〈ーを並べる〉〈ー不満をもらす〉四川端康成の『雪国』 に「都の落人じみた高慢なーよりも、単純な徒労の感が強 かった」とある。対象の明確な「不服」に比べ、日常のさま ざまな点が対象になりやすい。具不服・Q不満 ぶべつ【侮蔑】相手を見下して馬鹿にした態度をとる意で、 主に文章に用いられる硬い漢語。「的発言〉への目で見 る〉〈表情に—の色を浮かべる〉夏目漱石の『明暗』に 「半ば自分の直覚を信用して成り立ったこの—の裏には、ま だひとに向かって公言しない大きな因子があった」とある。 「侮辱」に比べ、気持ちの内部に中心があり、具体的な言行 よりも表情や態度に表れる場合が多い。Q侮辱・凌辱 ふぺん【不变】変わらないの意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。〈永久—〉〈—資本〉〈—の愛〉Q普遍・ 不偏 ふん【不偏】偏らないの意で、主に硬い文章に用いられる 漢語。〈不党の報道〉〈ーをモットーとして取り組む〉 多く「不党」の形で用いる。Q普遍・不変 ふヘん【普遍】あまねく行き渡る意で、改まった会話や文章 に用いられる硬い漢語。〈性がある〉〈的な問題〉〈人 類—の真理〉「妥当性」は哲学用語。「普遍」自体にも いくらか哲学的な雰囲気がある。Q不変・不偏 ふぼ【父母】父と母の意で、改まった会話や文章に用いられ る漢語。〈一の恩〉〈一の墓参り〉〈一からの仕送り〉〈一と 一緒に住む〉学校などの「会」という形では改まらない 会話にも使われる。「両親」に比べれば、父や母という個人 の意識がいくらか感じられる。母ちちはは・二親・Q両親 <929> ふほう【不法】法律に従わない意で、改まった会話や文章に 用いられる、やや専門的な感じの漢語。〈入国〉〈占拠〉 〈監禁〉〈行為として罰せられる〉他人の権利を侵し たり、必要な許可なくして物事を行ったりする場合によく 使われ、「違法」よりも若干狭い感じがあるが、一方、「 な要求」「な仕打ち」のように厳密な法律違反というより 道理にそむくといった漠然とした用法もある。Q違法非 合法 ふほう【訃報】死亡の知らせの意で、主として文章に用いら れる硬い漢語。〈突然ーが舞い込む〉〈ーに接し驚きを禁じ えない〉ひ凶報・悲報・Q訃音 ふほんい【不本意】自分の希望や本当の気持ちに合わない意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「な結 果〉「ながら従う〉「にも物別れに終わる〉意に反す る事態や相手にいやいや合わせるときによく使い、「心外」 と違って特に意外という感じは伴わない。小沼丹の『鶴鴿』 に「生憎、誰も婆さんに酒を注いでやらなかったから、婆さ んとしては甚だーであったかもしれない」とある。心外 ふまん【不満】満足できない意で、会話にも文章にも使われ る日常の漢語。〈欲求—〉「そうな顔〉「を解消する〉 〈「に思う〉〈結果にーが残る〉鳥尾敏雄の『出発は遂に 訪れず』に「やり場のないーが、からだの中をかけめぐる」 とある。ひQ不服・不平 ふみしめる【踏み締める】力を入れてしっかり踏む意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈大地を—〉有吉佐和子の 『紀ノ川』に「石段を一歩一歩—ように上って行った」とあ ふめいかく る。「踏みつける」のようなマイナスイメージはない。ヒQ 踏みつける・踏む ふみつける【踏み付ける】強く踏んで押さえつける意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈乗客の足を—〉夏目漱石 の『吾輩は猫である』に「霜柱の融けかかったのをー・けな がら」とある。「他人をー・けて出世する」のように犠牲に するというマイナスのニュアンスを伴うこともある。ひQ 踏み締める・踏む ふみもち【不身持ち】酒に溺れたり女関係にだらしがなかっ たりしてまともな暮らしができない意で、会話にも文章に も使われる古めかしい語。ヘーで女房を泣かせる)ふだらし ない①ふしだら・Q不貞・不品行 ふむ【踏む】足で押さえつける、その地に立つの意で、くだ けた会話から文章まで幅広く使われる基本的な和語。〈足で 」〈地団太を」〈薄氷を思い〉芥川龍之介の『秋』に 「久しぶりで東京の土を」・んだ」とある。「場数を」のよ うに経験する意の用法もある。躍み締める・Q踏みつける ふめい【不明】その点に関して明らかでないの意で、会話に も文章にも広く使われる漢語。〈行方—〉〈年代—〉〈原因 —〉図情報がなくまったくわからないというニュアンスが 強い。夏目漱石の『吾輩は猫である』に「自己のーを恥ずる であろう」とあるように、物事を洞察するだけの見識がな い意にも使う。Q不詳・未詳・未知 ふめいかく【不明確】はっきりしない意でいくぶん改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈ーな説明〉ひ曖昧多義的・中 間的・不明瞭 <930> ふめいりょう ふめいりよう【不明瞭】はっきりしない意で改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈肝心な点がーで判断できない〉 暖昧多義的・中間的・不明確 ふめん【譜面】楽譜の紙面をさし、やや改まった会話や文章 に用いられる、いくぶん専門的な感じの漢語。〈台〉〈 をめくる〉〈ーを見ないで弾く〉ひ音譜・Q楽譜・譜 ふもと【麓】山の最低いもの部分をさし、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「 の村に住む」の志賀直哉の『暗夜行路』に「の村は未だ山 の陰で、遠い所より却って暗く、沈んでいた」とある。「い ただき」と対立。広くなだらかな裾野だけでなく、急に盛 り上がったり切り立った崖になったりしている場所をも含 む。ひQ山麓・裾・裾野・山すそ ふやす【増やす】数量や程度を前より多くする意で、会話で も文章でも幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈正社 員を—〉〈作業量を—〉〈本数を—〉〈収入を—〉〈貯金を —〉「増す」が抽象的な存在について程度の増加を問題に するのに対して、この語は逆に具体的な存在についてその 数量を増加させる行為を問題にしているとされる。太宰治 の『斜陽』に「お金を—事を工夫なさる」とあり、財産につ いては「殖やす」と書く例が多い。増す ふゆ【冬】秋と春の間にあり、草木が枯れ雪の降る寒い季節 をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な和語。〈ー支度〉〈ー景色〉〈ーを越す〉〈厳し いーがやって来る〉四小川洋子の『冷めない紅茶』に「外に はーの闇が満ちていた。どこか甘い匂いがするような、し っとりとした闇だったとある。ゆウインター ふゆかい【不愉快】嫌な気分になる意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈千万〉へな思いをする〉〈話に聞いた だけでもになる〉幸田文の『おとうと』に「母は如何に もーそうにむっとしている」とある。肉体的な苦痛に対し て用いても、「不快」の場合と違って精神的な不快感に及ん でいる感じがある。なお、「応援したチームが負けてだ」 のような意味合いでは「面白くない」という表現を使う例 も多い。夢陶しい・重苦しい・不快 ふよ【附付与】授け与える意で、主に法律などの硬い文章 に用いられる専門的で正式な感じの漢語。〈権限を—する〉 〈資格を—する〉賦与 よ【賦与】分け与える意で、硬い文章に用いられる古風な 漢語。〈天からーされた才能〉乃附与 ふよう【不用】使わない意で、会話にも文章にも使われる漢 語。〈品〉〈一の施設を売却する〉、 ふよう【不要】要らない意で、改まった感じの会話や文章に 用いられる、やや硬い感じの漢語。〈切手—〉へー不急の業 務〉へーの品を買ってしまう〉へーになった電気製品〉〈予約 はーとのこと〉ふ不用 ふよう【扶養】生活の面倒を見る意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈ー家族〉へーの義務を負う》福原麟 太郎の『チャールズ・ラム伝』に「家のものをーしたり世話 したり」とある。経済的な面に重点がある。育てる育む・ 養う・Q養育 ふよう【浮揚】空中や水中で上方に移動する意で、改まった <931> 会話や文章に使われる、やや硬い漢語。〈軽気球がーする〉 〈沈没した船がーする〉の「力」となると専門的な雰囲気 になる。「景気ー策を打ち出す」のように、低い水準から浮 かび揚がる意の比喻的用法もある。浮上 よ 【舞踊】音楽の調子に合わせて体や手脚をリズミカル に動かす身体芸術の総称として、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈一家〉(日本—〉(民族—)へいささか一の 心得がある)和風・洋風の両方が含まれる。踊り・ダンス・ Q舞踏・舞 ぶらいかん【無賴漢】無職で素行の悪いならず者の意で、会 話にも文章にも使われる古風な漢語。へこのへんでちっとは 知られたー)ひころつき・ちんびら・ならず者・暴力団・Q無法者・や くざ・与太者 プライド「誇り」「自尊心」の意で、会話にも文章にも使わ れる日常の外来語。〈ーが高い〉〈ーが傷つく〉〈ーをずた ずたにされる〉〈ーが許さない〉児気位・矜持・自尊心・自負・ Q誇り フライトアテンダント「客室乗務員」の硬い感じを避け、新 味を出すための外来語の呼称。ひエアホステス・客室乗務員・Q キャピンクルー・スチュアデス プライバシー「私事」の意で、会話にも文章にも使われる、 少し新しい感じの外来語。へーを守る〉へーにかかわるため コメントを差し控える〉の「ーの侵害」「ーを尊重する」の ように、私生活を他人に知られたり干渉されたりしない権 利をさす用法も多い。Q私事わたくしこと フライパン柄のついた浅い鉄製などの鍋をさす和製英語。 ふらん 「一でいためる」英語「フライングバン」の日本的短縮形。 「アメリカン」が「メリケン」と聞こえたように、意図的な 省略というより、「ラ」と「バ」が強く発音されるために 「ング」の部分がほとんど聞こえなかったとも考えられる。 椎名鱗三の『自由の彼方で』に「錆びたーをたたいているよ うな声」という比喻表現の例が出る。 ブラシこすって磨いたりさっとはたいて汚れを落としたり する洋風の刷毛をさし、会話にも文章にも使われる外来 語。〈歯ー〉〈ーで洋服をはたく〉〈靴をーで磨く〉はけ からつくふらふらして安定しない意で、会話や軽い文章に 使われる和語。〈酒に酔って足元がー〉〈めまいがしてー〉 〈盛り場をー〉〈考えがー〉の「つまずいて」のように急な衝 撃の後には続きにくい。ひひひよろつく・よろける・よろめく ぶらつく何となくぶらぶら歩きまわる意で、会話や改まらない文章に使われる、「ぶらぶらする」意のくだけた表現。〈公園の周りを—〉〈銀座通りを—〉「ぶらぶら」という擬態語の動詞化で、文体的レベルは低い。「うろつく」「ほっつきまわる」などが何らかの目的を持った歩行であるのに対して、この語にはその人間が歩くこと自体を楽しむという雰囲気があり、そのため歩く速度が遅く、また疲労しない程度の範囲に限られる。ヲQうろつく・ほっつきまわる ふらん【腐乱(爛)】細菌の作用で動物の体の組織が変質して 爛れ崩れる意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。 〈死体〉〈死骸のーした臭い〉②梶井基次郎の『桜の樹の 下には』に「屍体はみなーして蛆が湧き、堪らなく臭い」と ある。傷む・腐る・Q腐食・腐敗 <932> ブラン プラン日常生活における計画の意で会話や改まらない文章 に使われる外来語。〈旅行のーを立てる〉〈ーを練る〉〈ー どおりに事が運ぶ〉詐欺や賄賂などの連法行為はもちろ ん、一般に悪事を働くような場合には用いない。刂青写真・ 企画・Q計画・構想 ランスヨロッパの西部に位置する国をさし、会話でも 文章でも広く使われる国名。〈ー語〉〈ー料理〉〈本場ーの 高級ワイン〉の「フランス」という通常の片仮名表記では特 別の語感は生じないが、「仏蘭西」と書くと漢字の重々しい 雰囲気のせいで高級感が増す感じになる。新字体の「仏」 を「佛」という正字体にすればそういう感じはさらに強ま る。「佛蘭西料理」という店の看板は単に古風だというだけ でなく、値段が心配になって店の前で財布の中身を調べた くなるような高級感を演出する。また、平仮名で書くとや わらかい感じになり、語学校の前で「ふらんす語」という看 板を見ると、宿題を出さずに手を取って教えてくれそうな 優しい雰囲気を感じ、その代わり何年通ってもスタンダー ルやサルトルが読める段階まで進まないような気がしてし まう。平仮名表記のもたらす語感である。萩原朔太郎の有 名な詩『旅上』は「ふらんすへ行きたしと思へども/ふらん すはあまりに遠し」と始まる。きおフランス ブランド「商標」の意で、会話にも文章にも使われる外来語。 〈イメージ〉〈有名〉の品を買いあさる」のように、 特に名の通った高級な銘柄を連想させる。「力で多数の志 願者を集める」のように、商品に限らず大学や企業の伝統 や信頼による集客力などを話題にする際にも比喻的に使う。 商標・トレードマーク・Q銘柄 ふり【不利】相手に比べて条件や形勢が悪い意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈体力的にだ〉〈立場がだ〉 〈戦況はだ〉〈な条件をのむ〉②損失・失敗・敗北などの 好ましから結果が予想される場合に用い、「有利」と対 立。今東光の『お吟さま』に「御父上をに陥し参らせよう と」の例があるという。「劣勢」と違い、「人数の点でだ」 など、争いの起こる前の条件や状態についても使う。労勢 ぶりかえす【ぶり返す】病気や天候などが一度よい方向に向 かったあとまた元の悪い状態に戻る意で、会話や硬くない 文章に使われる和語。〈風邪が」〈寒さが」〈騒ぎが」 病気などが治り切らないうちに元の症状に戻ってしまう 場合に言う。刂再発 ふりかえる【振り返る】後方を向く意で、会話にも文章にも 幅広く使われる日常の和語。〈今来大道を—〉〈立ち去る人 が曲がり角でー・ってお辞儀をする〉尾崎一雄の『あの日 この日』に「ー・って南方を見る。鳥居をこえて、足柄平野」 とある。後方を向き返る際に、「振り向く」が首だけを回す 感じなのに対し、首を回しても体を回してもよい感じがあ る。単に後ろを向くというより、それまで自分のいた方向 をもう一度眺めるというニュアンスがある。そのため、「過 去をー」「わが身をー」「大会をー」のように顧みるという 意味合いでの比喻的な用法に広がる。り顧みる・Q振り向く ふりそそぐ【降り注ぐ】空から雨や日光などが落ちて来てそ れに注ぐように降りかかる意で、改まった会話や文章に用 いられるいくぶん抒情だ的な感じの和語。〈川面に激しく <933> 雨太陽がさんさんと〈火の粉が〉宮本輝の 『塩川』に一陣の強風が木立を揺り動かし、川辺に沈澱し ていた塩たちをまきあげた。光は波しぶきのように二人に ーいだ」とある。専降る ふりまく【振り撒く】撒き散らす意で、会話に为文章に为使 われる和語。〈水を—〉〈塩をひとつまみ—〉〈愛嬌を—〉 「撒き散らす」より狭い範囲を連想させる。ぶばら撒く・Q撒 き散らす ふりまわす『振り回す』勢いよく振って動かす意で、会話や さほど硬くない文章に使われる和語。〈刀をー〉〈棒をー〉 〈傘をー〉石川淳の『普賢』に「しおたれた上着をつかん で縄のようにー・し」とある。ひ振る ふりむく【振り向く】首を回して後ろを向く意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。後ろか ら声をかけられてー夏目漱石の『坊っちゃん』に「何が 来たかと驚ろいてー奴を」とある。後方を見るための動作 というニュアンスが強い。「だれもーいてくれない」のよ うに注意を向ける、関心を向けるという意味合いでも使わ れる。ひ振り返る ぶりよく【武力】外交などの話し合いに対して、暴力や軍隊 の力をさし、改まった会話や文章に用いられる、やや硬い感 じの漢語。〈革命〉〈行使〉〈衝突が起こる〉〈に訴 える〉回大小さまざまな規模があり、近代以前についても 使う。専軍事力・Q戦力・兵力 ふりん【不倫】道徳に反し人道を外れる意で、主に文章に用いられる漢語。へと言われても仕方のない行為へへの恋 ふるい に落ちる「ーに走る」「ーの現場をおさえる」「ーがば れる」のように、近年、夫婦の一方が別の異性と交わる意に 限定して使う用法が広まっており、その場合は俗語の響き を伴う。ひ移り気・Q浮気 プリンター「印刷機」に近い意味で、会話でも文章でも使わ れる新しい感じの外来語。〈ーを接続する〉パソコンのー が故障する〉の「印刷機」よりも小型で簡便な器械を連想さ せやすい。単印刷機 ふる【降る】空などの上方から雨や雪などの細かいものが落 ちて来る意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈春雨が—〉〈粉雪が—〉〈灰が—〉 〈木の葉が—〉福永武彦の『風花』に「蒼空の部分は無限 に遠く見えた。かすかな粉のようなものが、次第に広がり つつあるその裂け目から、静やかに下界にー・って来た」と ある。専降り注ぐ ふる【振る】体の一部や手に持った物を前後・左右・上下に揺 り動かす意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈手を—〉〈首を—〉〈旗を—〉〈ハン カチを—〉の木山捷平の『大陸の細道』に「風に吹かれるべ コ人形が首を—ように、首を左から右にー・った」とある。 「さいころを—」「塩を—」のように手から勢いよく放す意 でも使う。ひ振り回す ふるい【古(旧)い】始まってから長い年月が経過した意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈一建物〉へ一つきあい〉〈一時代〉へ一習慣〉 「考え方が一」「感覚が一」のように、その時代に合わない <934> ふるう というマイナス感情を件う用法もあるが、主観的・感情的な 「古くさい」に比べ客観性が強い。古風・Q古くさい・古めか しい ふるう【奮う】勇み立つ意で、少し改まった感じの会話や文 章に使われる和語。〈勇気をー〉〈ー・ってご参加ください〉 ひQ振るう・飾う ふるう【篩う】篩にかける、選別するの意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈粉を—〉〈志願者を面接で—〉ひQ 振るう・蕎う ふるう『振るう』思うように扱う、勢いがある、突飛だとい ったきまざまな意味で、会話にも文章にも使われる和語。 〈刀をー〉〈采配をー〉〈言うことがー・っている〉〈成績が ー・わない〉②「権力をー」「熱弁をー」「台風が猛威をー」 「存分に腕をー」のように、発揮するという意味合いでは 「揮う」と書き分けることもある。Q奮う・歸う フルーツ「果物」の意で会話にも文章にも使われる外来語。 〈ーケーキ〉〈ーパーラー〉〈デザートにーが出る〉近年、 会話などで「果物」の代わりに単独でも使うが、果物類を漠 然とさす例が多く、個々のりんごや柿やみかんを指差して 「このー」と言う例はあまり見かけない。果実・Q果物・実・ 水菓子 ふるえあがる【震(顛)え上がる】ひどい怖さや寒さなどで体 が細かく震える意で、会話にも文章にも使われる日常の和 語。〈寒気に襲われてー〉〈恐怖のあまりー〉夏目漱石の 『吾輩は猫である』に「臆病な主人のことだからびりびりと ーに相違ない」とある。ひおののく・震える・Qわななく ふるえる【震(顫)える】寒さや恐怖・怒り・興奮などで体やそ の一部が連続して小刻みに揺れ動く意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈寒さにぶる ぶるー〉〈恐ろしくて脚がー〉〈極度の緊張で体がー〉〈声 がー〉渡辺淳一の『訪れ』に「当直の看護婦の顔は恐怖に 蒼ざめていた。白衣の袖口に入れた手がー・えている」とあ る。込動揺・震え上がる・Q揺れる ふるがお【古顔】その場所や組織などに古くからいる人の意 で、会話にも文章にも使われるやや古風な和語。〜が集ま るヘこの土地ではーの部類だヘ古参・Q古株・古手・ベテラン ふるかぶ【古株】集団や組織などに古くからいる人の意で、 会話にも文章にも使われる若干古風な感じの和語。〜店で一 番のーヘの社員ヘ古参・Q古顔・古手・ベテラン ふるくさい【古くさい】古くて新鮮みに欠けるという意味の 和語。文章にも使えるが、「古風」「古びた」「古めかしい」 に比べ、会話でよく使われる。〈昔はやったー衣装〉「デ ザイン〉(考え方がー)〈一人間〉椎名麟三の『深夜の酒 宴』に「このアパートの人々は僕には昔話の人々のような 気がしてならない」とある。なつかしさや落ち着きを感じ させる面もある「古風」評価を伴わない「古めかしい」や 「古びた」と比較し、時代遅れといったマイナス評価をこめ た表現。実際に時代を経ていなくても、様式などが古く感 じられれば使える。古風・古びた・Q古めかしい ふるさと『古里/故里』「出身地」に近い意味で会話から文章 まで幅広く使われる、やわらかいやや詩的な和語表現。「 の山〉へを懐かしく思い出す〉への訛まりが交じる〉第 <935> 二の—〉心の—〉藤沢周平の『旧友再会』に「いまは幻 となったかつての山青く水清かった」とある。「ふるさ と」と仮名書きする例が多い。「出身地」はもちろん「郷 里」よりも、情のこもった表現。生まれ故郷から長く遠く離 れている人が、昔を思い出して懐かしむ気持ちが強く、「故 郷」の和風版に相当する。思い出の土地となるのは当時の 生活圏であり、一般に「出身地」より狭い範囲を思い浮かべ る傾向が強い。生家が人手に渡り、帰省する場所を失った 人間にとって痛切に思い出すのは、この「ふるさと」か「故 郷」がふさわしい。灯ともし頃に鋪道をぬらす雨を見なが ら、まぶたに描くのは「ふるさと」の町や小川であり、「出 身地」の自然ではない。後ろ髪を引かれる思いで後にする のも同様である。ちなみに、八木重吉に「心のくらい日 に/は祭のようにあかるんでおもわれる」という一行の 詩があり、タイトルは『故郷』となっている。郷土・郷里・ Q故郷・出身地 フルスピード可能な最大の速度の意で、会話やさほど硬く ない文章に使われる外来語。〈ーを出す〉〈ーで追跡する〉 〈ーで仕上げて納品する〉②多く乗り物その他の機械類につ いて用いる。ひ全速力 ふるて【古手】その職業などに古くから携わってきた人の意 で、会話にも文章にも使われるやや古風な和語。へーの社 員〉へーの官僚〉ひ古参・古顔・Q古株・ペテラン ふるどうぐ【古道具】使い古した道具をさし、会話にも文章 にも使われるやや古風な表現。〈屋の店先〉へを安く買 う)売りに出された場合に言う例が多い。骨董品の一 ふるめかしい 部も含むが、さほど高価なイメージはない。小沼丹の『炉を 塞ぐ』に「湖畔の屋で天狗は大枚千円を投じて鉄の自在 鍵を買い求めた」とある。ゆアンティーク・Q骨董 ふるびた【古びた】時が経ってすっかり古くなったという意 味の和語。「古くさい」ほど会話的な感じがない一般的な 語。〈見るからにー家〉〈ー安物の家具〉②小林秀雄の『モ オツァルト』に「決して正確な音を出したがらぬー安物の蓄 音機」とある。「古くさい」のようなマイナスイメージもな く、「古風」のような昔なつかしい感じもなく、外見の古さ を客観的に伝える。他の類義語と違って、実際に古いど感 じられる場合に使う。ひ古風・古くさい・Q古めかしい ふるほん【古本】一度買ってから売り払った本や刊行後時が 経った本をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる日 常語。〜市〜屋〜〜で安く買う〜新本〜と対立。 ひ古書 ふるまい【振る舞い】その人間の性格や態度の表れた体の動 きや行動をさし、会話にも文章にも使われるやや古風な和 語。〈立ち居—〉〈けしからん—に及ぶ〉「美しい」「粗 野な—」のように、人前での動作を評価する場合に使う傾 向がある。稲垣足穂の『弥勒』に「懐手のまま他人の座敷を 素通りするような—」とあるようにマイナス評価の例が多 い。行い・Q挙動・行為・行動・所作・動作 ふるめかしい【古めかしい】いかにも古いという感じがする 意の和語。「古くさい」ほど会話的な感じのしない一般的な 表現。〈ー構えの建物〉〈ーしきたり〉〈ー儀式〉②堀田善衛 の『広場の孤独』に「赤煉瓦の低いビル街」とある。「古 <936> ぶれい くさい」のようなマイナス評価もなく、「古風」のように昔 なつかしさも特に感じさせない。実際に時代を経ていなく ても、様式などが古く感じられれば使う。ひ古風・古くさい・ Q古びた ぶれい【無礼】礼を失する意で、会話にも文章にも使われる 古風な漢語。〈ー者〉〈慇懃ぶー〉〈口の利き方がーだ〉〈ー を働く〉〈御ー仕ぬかる〉小沼丹の『タロオ』に「タロオを 横目に睨んで、片足上げて垣根に小便を引掛けて行く。こ のーな振舞にも」とある。「失礼」「失敬」と比べ、多く自分 の立場をわきまえず、分を超えた態度や口の利き方をする ような場合に使われる。弁失敬・失礼 プレーボーイ「遊び人」の意で、主として会話で使われる洋 風の日常語。〈なかなかのーだ〉②粋に遊びまわる点は「遊 び人」と共通するが、男女関係に放埒な印象が強い。 び人 プレス新聞・新聞社・新聞界の意で会話や軽い文章に使われ る新しい感じの外来語。〈ーセンター〉〈ーキャンペーン〉 単独ではあまり使わない。単新聞 プレスト最近は使用頻度の低い「平泳ぎ」をさすやや特殊 な外来語。〈得意種目は—〉の「プレストストローク」の略。 ひ平泳ぎ ふれまわる【触れ回る】歩き回って積極的に知らせる意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈あちこちー〉 〈自分の手柄をー〉の「言い触らす」以上に、機会を作って そのために積極的に歩き回るイメージがある。Q言い触ら す・吹聴 ふれる【触れる】「接触する」意の和語で、「さわる」に比べ、 会話的な調子が薄い。〈じかに肌に〉〈飾り物に手を」 〈すれ違うときに肩が」〈ー・れなば落ちん風情〉〈目に 〈逆鱗に〉〈法に〉〈その話題に〉〈事件の核心に 〈折に・れて〉幸田文の『流れる』に「新聞紙を通し て死骸の硬さがあわれだった」とある。自然な接触を思 わせ、「さわる」ほど露骨な感じがない。Q触る・接触 プロあることを専門とし、それを職業にしている人の意で、 会話にも文章にも使われる外来語の略。〈セミ〉へ入 り〉〈ー意識〉〈ー級の腕前〉〈ーの料理人〉〈ーを目指す〉 ②英語「プロフェッショナル」の簡略形。「専門家」がその ことを専門としている点を中心とするのに対し、この語は それを職業としてその収入で生計を立てている点を中心と した表現。ひQ玄人・スペシャリスト・専門家 ふろおけ【風呂桶】桶の形に作った木製の浴槽をさし、会話 や硬くない文章に使われる、やや古風な表現。〈檜のー〉 へーが古くなって水が漏る〉⑩徳田秋声に『風呂桶』と題す る小説があり、「ーのなかへ入っているのが窮屈で」「段々 自分の棺桶のような気がして来る」場面がある。パスタ ブ・湯壺・湯船・Q浴槽 ふろく【附(付)録】雑誌の本誌以外にサービスとして付けて ある品物や、書物の本文以外に添えたページなど、本体以外 のおまけの部分や品物をさし、会話にも文章にも使われる 日常の漢語。〈別冊—〉〈巻末—〉〈雑誌の—〉永井荷風の 『瀅東綺譚』に「ーでもあれば、意外の掘出物だ」とある。 ひおまけ・Q景品 <937> プロセス 過程・手順・工程の意で、会話やさほど硬くない文 章に使われる外来語。〈ーを踏む〉〈決定までのーを明らか にする〉の「過程」に同音異義語が多いためもあり、会話で はよくこの語を使う傾向が見られる。過程 ふろば【風呂場】入浴のために設けた部屋をさし、くだけた 会話からさほど改まらない文章で使う、やや古風な日常語。 「旅館の長い廊下の奥にーがある」(一の掃除)川崎長太 郎の『伊豆の街道』に「地下室のようなー」とある。設計図 などには「浴室」と記すことが多いが、日常会話では今でも 多くこの語を使う。やや古風な語感にユニットパスなどは びったり合わない。檜風呂などは「浴室」よりこの「風呂 場」のほうが似合う。ひバスルーム・湯殿・Q浴室・浴場 プロポーズ 結婚の申し込みをさして、会話にも文章にも広く使われる外来語。付き合い始めてすぐにーする〉へーをお受けする)現在では「求婚」より一般によく使う。専求 婚 プロマイド人気のある俳優・歌手・スポーツ選手などの小型 の肖像写真をさし、会話にも文章にも使われる外来語。〈机 上にヘップパーンのーを飾る〉、写真・スチール・スナップ・Qポ ートレート プロムナード「散歩道」の意で使われるおしゃれな感じの外 来語。ヘショピングー〉の「散歩道」や「散策路」であれ ば、腕を組む若い恋人たちでも杖をひく老人の姿でもなじ むが、おしゃれな感じのこの語にはおのずと年齢制限があ りそうな雰囲気が漂う。そういう語感を利用して、公園や 商店街などの名称に使われることが多い。四つ目垣や黒板 ふん 塀などが並ぶ小路の場合だと、こういう名づけはイメージ が合わない。呂散策路・Q散歩道・遊歩道 ふろや【風呂屋】「銭湯」の意で、会話にも文章にも使われる 古風な日常語。〈横町の—〉への煙突が見える〉公衆浴 場・Q銭湯・湯屋 プロやきゅう【プロ野球】観客から入場料をとり、職業とし て試合をする野球の意で、会話でも文章でも広く使うこと ば。〈の放送〉〈の人気選手〉サトウハチローの『青 春野球手帖』に「の方は練習はみない。/ゲームの数が多 いから、みなくてもいいのだ」とある。販業野球 フロントホテルなどの正面の受付をさし、会話にも文章に も使われる外来語。〈ーでチェックインを済ませる〉へに 部屋の鍵を預ける〉和風旅館の帳場に相当する。専受付・ 帳場・Q窓口 ふわ【不和】個人や団体や国家などの間の関係が悪化する意 で、改まった会話や文章に用いられる漢語。家庭のーが明 るみに出る〉〈グループ内のーが取り沙汰される〉〈両国間 のーが深刻な段階に達する〉志賀直哉の『和解』に「妻と の結婚が父とのーの最近の原因になっていた」とある。刂仲 違い・反目・Q不仲 ふん【糞】くその意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈犬 のー〉音読みしているだけ間接的で、「くそ」ほど露骨に 感じない。通常は動物の場合に使うが、「脱」の形では人 間の場合にも用い、上林暁の『黒鱒』に「彼が脱ーすると言 っても、彼女はかくべつ嫌な顔をしなかった」とある。 んこうんち・Qくそ・人糞・大便・糞便・便 <938> ぶん ぶん【文】句点で挟まれる一続きの言語である「センテンス」を主としてさす漢語。センテンスを意味する用法としては、くだけた会話から改まった文章まで幅広く使われる。〈命令—〉へ一つ一つの—が長い〉〈過去形で—を結ぶ〉の手紙—「は人なり」「内容はともかく—がうまい」のように、センテンスの集合としての文章やその表現を意味する世俗的な用法の場合は、非専門的という語感が働くため学術的な文章にはふさわしくない。小池滋は『行間を読む』に「ひとり灯」のもとに—をひろげて、見ぬ世の人を友とする」という『徒然草』の一文を引用している。文章 ふんいき【雰囲気】周囲の人々の気分に左右されるその場に ふさわしい期待感をさし、会話にも文章にも広く使われる 日常の漢語。〈都会の—〉〈芸人の—が感じられる〉〈えも いわれぬ—が漂う〉〈せっかくのなごやかな—をこわす〉 〈いいーをかもしだす〉〈職場の—がいい〉〈大会の—にの まれて日頃の力が発揮できない〉〓宇野千代の『刺す』に 「しっとりとした雅趣のある—」とあり、大岡昇平の『花影』 に「客が詰めかける前のパーの—が好き」とある。「独特の ーを持っている」のように、ある個人の身につけているその 人らしい感じをさすこともある。刂空気②・気色・気配・Qムー ド ぶんか【分化】発達に伴って分かれる意で、主に文章に用いられる漢語。〈未ー〉〈組織のーが進む〉も分科 ぶんか【分科】専門別に分ける意で、改まった会話や文章に 用いる、学問的雰囲気の硬い漢語。〈詳細はー会で検討す る〉〈社会科学の一ーをなす〉分化 ぶんか【文化】その社会固有の思考・行動・生活の様式をさし、 会話にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈国家〉 〈一遺産〉〈一水準〉〈一の違い〉〈伝統ーを守る〉〈一の発 展に寄与する〉小林秀雄の『ゴッホの手紙』に「翻訳ーな どという脆弱な言葉は、凡庸な文明批評家の脆弱な精神の なかに、うまく納っていればそれでよい」とある。戦後間も ない頃にもてはやされた「住宅」という語には今や古め かしい語感がしみついている。機械の発達に重点のある 「文明」に比べ、精神的な営みに重点がある。乃文明 ふんがい【憤慨】激しく腹を立てる意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈盛んにーする〉へーに堪えない。丸谷才 一の『笹まくら』に「軽蔑されるのはおかしいとーしてい た」とある。専憤り・激怒・憤激・Q憤怒 ぶんかい【分解】組み立ててある物が部分に分かれてばらば らになったり、そういう状態にしたりする意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈時計を—掃除に出す〉の「飛行機が 空中—する」とも言うが、一般には比較的小さな機械類に ついて言い、建物のような大きな構造物には用いない。「電 気—」の場合は化学変化を意味し、専門的な感じが強い。 解体・分割・分離・分裂 ぶんがく【文学】言語をとおして思想や感情、美的感動など を表現する芸術作品をさし、くだけた会話から文章まで幅 広く使われる基本的な漢語。〈近代〉〈大衆〉〈史〉 〈児童〉〈志す〉高田保の『ブラリひようたん』の 「若芽の雨」に「こんな話をすると誰もが一応面白がる。モ ウパッサンのーなどに何の関心も持たぬ連中でも面白がる。 <939> ゴシップの興味というやつだろう」とある。小説や詩歌を 研究対象とする学問分野をさすこともある。ひ文芸 ぶんがくしゃ【文学者】小説家や劇作家のほか随筆家や批評 家、詩人・歌人・俳人を含めて文学作品を書く人、それに文 学を研究する人を加えた広い範囲を漠然とさす、専門性の 薄い日常の漢語。「の端くれ〉へと言語学者との考え方 の違い小林秀雄の『文学者の思想と実生活』に「の間 には、抽象的思想というものに対する抜き難い偏見がある」 とある。Q作家・小説家・著作家・著作者・著述業・文士・文人・文筆 家・物書き ぶんかじん【文化人】豊かな知識や教養を身につけているい わゆる知識人をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へー の集まり特に学問や芸術の分野に従事する人を連想し やすい。このようなレッテルをはって特別視することへの 反発を感じる人には軽薄な響きが伝わるかもしれない。 文明人 ぶんかつ【分割】一つのものをいくつかに分ける意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈—払い〉〈—統治〉〈—民営 化〉〈土地を—して売りに出す〉②ある目的に応じて計画的 に分ける場合が多い。分解・分散・分離・分裂・分かつ・Q分ける ぶんかつばらい【分割払い】代金を一度に払わず何回かに分 けて支払う意。〈—で新築の一戸建てを購入する〉月賦 ぶんぐ【文具】文房具の意で、会話にも文章にも使われる漢 語。〈—を商う〉〈—を扱う〉②独立した用法より「商」 「—メーカー」「—専門店」のような語構成要素として近年 よく使われる。「暖房器具」などは略さずに使うところから ふんさい 見ると、「房」が部屋を意味することがわかりにくいからと いうより、書斎を意味する「文房」と文房具との関係が薄れ たために省略が起こりやすくなったとも考えられる。刂学 用品・Q文房具 ぶんげい【文芸】「文学」を芸術の一種と見る面を表に出した 用語として、やや改まった会話や文章に用いられるいくぶ ん専門的な漢語。〈一批評〉〈思潮〉〈雑誌〉〈復興〉 志賀直哉は改造社版「現代日本文学全集」の『志賀直哉 集』の序文に「作者というものからそれが完全に遊離した 存在となっているからで、これは又格別な事である。の 上で若し私にそんな仕事でも出来ることがあったら、私は 勿論それに自分の名などを冠せようとは思わないだろう」 とある。「文学」という語が研究分野をさすこともあるた め、紛らわしさを避けてこの語を用いることもある。専文学 ふんげき【憤激】激しく憤る意で、主に文章に用いられる硬 い漢語。〈大いにーする〉〈のあまり〉武田麟太郎の 『銀座八丁』に「さもーに耐えぬように、ふんと鼻をならし て、口を歪めて見せた」とある。僕り・激怒・Q憤慨・憤怒 ふんご【文語】平安時代語を基礎として発達した古典文法の きまりに則して表現する言語体系を意味し、会話にも文章 にも使われる漢語。「文」「文法」「燃ゆ」「白し」 「静かなり」のような形になる。「口語」と対立する。まれ に、「書きことば」の意味で使うこともある。書き言葉・Q 文章語 ふんさい【粉碎】力を加えて粉々に砕く意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈|機〉〈岩石を|する〉比喩的に、 <940> ぶんさい 「相手チームを」する」のように、徹底的にやっつける意に もよく使う。その場合、「撃破」と違って、相手の実力には 関係なく、打ち破る際の圧倒的な感じに重点がある。撃破 ぶんさい【文彩】話しことば・書きことばにおいて伝達効果を 高める言語表現の工夫をさし、主に文章中に用いられる古 風な漢語。〈数々の」を駆使した華麗な文章〉②かつては 「あや」とも読み、西欧レトリックにおける特殊な技法をさ した。修辞学・Q修辞法・表現技法 ぶんさん【分散】いくつかに分かれて散らばる意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。プリズムは光をーさ せる〉〈重さをーさせる〉〈施設が各地にーしている〉〈団 体旅行でーして宿泊する〉日常生活の例では「散らばる」 より意図的な感じが強く、計画的な場合もある。数学で平 均值からの散らばり具合をさす場合は専門語。散乱・Q散 らばる・散り乱れる・分割・分離・分裂 ぶんし【文士】「作家」の意の古風な用語。〈一劇〉(三文一 〈一の卵〉(一の集まり〉(一の魂)小林秀雄の『私小説 論』に「思想の力によって一気質なるものを征服した」とあ る。立松和平は、「物書き」という語に生計のためという自 虐的なにおいが感じられるのに対して、この語には凛然と していた時代の空気が感じられると述べたことがある。尾 崎一雄が没した折に「最後の」と評されたのも、文士とし ての気概を漂わせる雰囲気があったためであろう。刂作家・ 小説家・著作家・著作者・著述業・文学者・文人・文筆家・Q物書き ふんしつ【紛失】所有していた具体物が見当たらなくなる意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈書類を する〉〈家の鍵を—する〉〈パスポートを—して大使館に届け出る〉⑨井上靖の『あすなろ物語』に「物をこんどは帯に挟まないで口に銜えていた」とある。気がつかないうちに無くなっていた感じが強く、捨てたり奪われたりした場合は使わない。児喪失 ぶんしよ【文書】書類など文字で書き記したものをさし、改 まった会話や文章に用いられる正式な感じの漢語。〈公—〉 〈機密—〉〈—〉で回答する〉〈—を取り交わす〉森鷗外の 『舞姫』に「独逸語にて記せる—」とある。「古—」のように 「もんじょ」と読めば古めかしい響きに変わる。単文章 ぶんしょう【文章】文字で記載された言語作品やその表現を 意味する一般的な用法としては、会話でも書かれた文章で も使われる漢語。個々の文が文脈をなして寄り集まった意 味的統一体をさす言語学的な意味合いで用いる場合は、専 門的なニュアンスを漂わせる。〈ー作法〉へあの作家はーが 美しい〉〈小説のー〉夏目漱石の『道草』に「細君の読み 上げるーは、まるで旧幕時代の町人が町奉行か何かへ出す 訴状のように聞こえた」とある。「一つ一つのーが長すぎて わかりにくい」「極端に長いーが交じる」というふうに、 個々の文それ自体をさす俗っぽい用法の場合は意味が紛ら わしく、また、非専門的という語感がつきまとうこともあ って、学術的文章にはふさわしくない。専文・文書 ぶんしようご【文章語】硬い文章や改まったスピーチに用い られ、日常のくだけた会話で使うと違和感のある語をさし、 学術的な会話や文章に用いられる専門の漢語。〈会話に時折 が交じる〉の「かぐわしい」「あたかも」「安価」「白日」 <941> などのレベルのことば。「口頭語」と対立する。Q書き言 葉・文語 ぶんじん【文人】「武人」に対する漢語で、きわめて古風な言い方。〈趣味〉〈宰相〉小林秀雄の『私小説論』に「小説論とは当時のの純粋小説論だ」とある。趣味や教養として、詩文をよくする「文人」と、書画をよくする「墨客」とを「文人墨客」と呼んで一括し、学問や芸術を通して文雅の道に携わる人びとをそう呼んだが、現在では世情に恬淡なとした趣味人といった雰囲気で使われることも多い。り作家・小説家・著作家・著作者・著述業・Q文学者・文士・文筆家・物書きふんそう【紛争】関係がこじれて争いに発展する意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈学園〉〈国際〉に発展する〈の渦中にある〉〈が拡大する〉個人間の喧嘩などには用いず、組織や国家などの規模の場合をさし、武力衝突になれば小規模な戦争に近くなるが、通常は国家どうしの全面戦争までは含まない。刂係争・抗争・Q戦争 ふんぞりかえる【踏ん反り返る】反っくり返る意で、主にく だけた会話に使われる和語。〈高級ソファにー〉へー・って横 柄な口を利く山本有三の『波』に「赤んぼは(略)火にあ ぶったスルメのようにー・ってしまって」とあるが、一般 には「反っくり返る」以上に、相手を見下した態度が連想さ れる。反っくり返る ぶんたい【文体】文章の表現上の性格を他と対比的にとらえ た特殊性をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈夏目漱 石の」〈坊っちゃん」の」〈新聞記事の」〈語法の違 いによる文語体、文末表現の違いによるデスマス体、文章 ふんね の種類の違いによる会話体、時代の違いによる王朝体、表 現者の属性の違いによる女性の文体、老人の文体といった 類型的な文体から、新感覚派の文体、川端康成の文体、『雪 国』の文体といった個性的な文体まで多様なとらえ方があ る。ひスタイル ふんだくる力ずくで強引に奪い取る意で、主に会話に使わ れる、やや俗っぽい和語。〈財布をー・って逃げる〉実際に 腕力を用いなくても、「暴力パーでウイスキー一杯で三万円 もー・られる」のように、身に危険を感じるほどの圧力を受 けていやいや払わされる場合にも使う。また、貸したもの を無理やり取り立てる場合にも使う。専う・取り上げる・せ しめる・Qひったくる・分捕る・まきあげる ぶんどる【分捕る】他人の物を争って奪い取る意で、くだけ た会話に使われる、やや俗っぽい和語。〈敵の武器を—〉 〈座席を—〉〈予算を—〉の「ひったくる」は一瞬のうち、 「ふんだくる」もあっという間に、相手の油断をついて奪う 感じなのに対して、この語は相手と争う時間を連想させる。 ひせしめる・ひったくる・Qふんだくる・巻き上げる ふんによう【糞尿】大小便の意で、主に文章に用いる硬い漢 語。「を肥料に用いる」火野葦平に「糞尿譚」という作 品があり、安岡章太郎編で『滑稽糞尿譚』という随筆集も出 ている。Q汚わい・し尿・便 ふんぬ【憤怒】怒りに興奮する意で、主として文章に用いられる硬い漢語。〈一の形相〉中山義秀の『テニヤンの末日』に「彼のーには狂気めいた殺気がこもっていた」とある。Q憤り・激怒・憤慨・憤激 <942> ぶんばい ぶんばい【分配】分けてそれぞれに配る意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈金〉〈利益をーする〉〈残った食糧 をーする〉ひ分割・分離・分かつ・Q分ける ぶんぴつか【文筆家】著述を生業としている人をきす漢語の 文章語。「著作家」より少し古風で、いくらか自負の感じら れることば。職業を問題にする際にしばしば用いる。「 として生計を立てる」り作家・小説家・Q著作家・著作者・著述業・ 文学者・文士・文人・物書き ぶんぷ【分布】いくつかの場所に分かれて存在する意で、や や改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈図〉 〈植物のーを調べる〉ヨーロッパの各地に広くーする〉も散 らばる ふんべん【糞便】糞の意で、主に文章に用いられる硬い漢語。 〈一の処理〉うんこうんち・くそ・人糞・Q大便・ふん・便 ぶんべん【分娩】出産の意で、学術的な会話や文章に用いられる医学の専門的な漢語。〈室〉〈無痛〉学術的に現象・行為をさし、「出産」や「お産」に比べて新生児のイメージが薄い。ひお産・Q出産 ぶんぼう【文法】語の用法や文構造に関するその言語として のきまりや体系をさし、会話にも文章にも幅広く使われる 漢語。〈一論〉〈英一〉〈文語一〉〈一上の誤り〉梶井基次 郎の『城のある町にて』に「つくつく法師が鳴いた。「文法 の語尾の変化をやっているようだな」とある。「映画の一」 のように、単に作り方の法則の意で用いる比喻的用法もあ る。刂語法 ぶんぼうぐ【文房具】鉛筆・ペンなどの筆記用具や消しゴム・ ノート・下敷き・定規・糊・鉄などの総称として、会話にも 文章にも広く使われる日常の漢語。〈屋〉へ売り場〉 へーを一通りそろえる〉「文房」は書斎の意で、もと書斎 で使う道具をさした。専学用品・Q文具 ふんまつ【粉末】きわめて微細な粉状の物質をさして、やや 改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な感じのす る漢語。〈ー状〉〈金属のー〉〈ーを練る〉〈碎いてーにす る〉粉以上に細かい印象がある。専粉こな ぶんみやく【文脈】ある文の意味に関係するそれまでの言語 表現の意味や働きをさし、会話にも文章にも使われる専門 的な漢語。〈ーをたどる〉へーから類推する〉へーに合わな い)「特殊なーでの発言」のように、その言語行動に影響 を与える場面や状況や背景などをさすこともあり、その場 合は専門性が薄い。ひコンテクスト・脈絡 ぶんめい【文明】人知が開けて科学技術が進歩・発展をとげる ことにより物質的な面で生活が豊かになる意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈オリエント—〉〈機械—〉〈一の 利器〉夏目漱石の『草枕』に「一は(略)個性を発達せしめ たる後、(略)此個性を踏み付け様とする」とある。精神的な 豊かさに重点のある「文化」に比べ、物質面での豊かさに重 点がある。「開化」などの連想からいくぶん古風な響きを 感じさせる用法もある。文化 ぶんめいじん【文明人】機械文明の発達した社会に暮らす 人々をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーには耐え られない生活》の「野蛮人」と対立。文化人は文明人のごく 一部に相当。文化人 <943> ぶんめん【文面】文章、特に手紙などの表現面をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈手紙の—〉「から判断す る〉文章の表現の仕方やそこから推測される趣旨や書き 手の意図などを問題にするときに用いることが多い。 面 ぶんや新聞記者をさす隠語。〈ーが押し寄せる〉新聞 屋」の頭部省略だから漢字で書けば「聞屋」となるが、ほと んど用いず、片仮名表記がふつう。ふ新聞記者 ぶんや【分野】全体のうち自分が担当し活動する範囲をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。〈勢力ー〉〈専門ー〉〈学 問のー〉〈得意のー〉研究に関しては「領域」より広い範 囲をさす傾向がある。刂縄張り・Q領域・領分 ぶんり【分離】それぞれに分けて離すこと、特に物質を分け 離して抽出することをさし、会話にも文章にも使われる漢 語。〈中央ー帯〉〈ー課税〉〈声のーが悪く聞きづらい〉〈政 教ーの原則〉〈歩道と車道をーする〉〈言語研究所から日本 語部門がー独立する〉②横光利一の『紋章』に「あれは遠心 ー器の応用で脱臭操作はなるほど魚油の方にだと良いでし ょうね」とある。「水と油はーする」の例ではやや専門的な 感じがあり、結晶・蒸留・昇華などによって物質を分け離す 意に用いれば完全に専門語となる。一つのものがばらばら になる「分裂」と違い、もともと異質な小さな部分が本体か ら離れるというイメージがある。「結合」「総合」と対立。 ひ分解・分割・分散・分配・Q分裂・分かつ・分ける ぶんるい【分類】多くのものを一定の基準に従って各グルー ブに分けて整理する意で、会話にも文章にも広く使われる ぶんれっ 基本的な漢語。〈整理〉〈基準〉〈年代別に—する〉〈採 集した用例を細かく—する〉類別 ぶんれい【文例】例として考えついたり引用したりする文や 文章をさし、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの 漢語。〈ーを集める〉〈ーを並べる〉「集」の場合は文章 の一節であることが多い。刂一例・作例・用例・類例・例・例文 ふんれつ【分裂】一つにまとまっていたものが、いくつかの 独立した部分に分かれる意で、会話にも文章にも使われる 漢語。〈細胞〉〈〈騒ぎ〉〈内部〉〉〈党内がーする〉〈意 見がーする〉図山本有三の『波』に「男だとか、女だとか、 親だとか、子だとか(略)原生殖細胞がーし発展して、一個の 多細胞生物になっただけのことじゃないか」とある。静的 な「分離」に対して動的なイメージが強く、分かれた者どう しが反目・対立する構図を描きやすい。「細胞」「核」の ような化学反応を意味する場合は専門性が高い。異質な一 部分が本体から離れる感じの「分離」と違い、一つのものが 互いに主と従という関係なくいくつかの部分に分かれるイ メージになる。分解・分散・分割・Q分離 <944> 〈【屍】腸で発生し肛門から排出されるガスの意で、主に男 性がくだけた会話や改まらない文章に使うぞんざいな感じ の和語。〈ーをひる〉〈ーをこく〉弁伏鱒二の『丹下氏邸』 に「所詮は、ーはカゼですがな」とある。Qおなら・ガス・放 屍 アサロンひところ「美容院」をさしてよく使われた和製 洋語。「でシャンプーとカットをしてもらう」斬新な雰 囲気を演出するための横文字のつもりだったと思われるが、 英語とフランス語の合併のせいか落ち着かず、使用頻度が 次第に減ってきている印象がある。その後、新しい外国語 に置き換えられることなく、「美容院」という漢語が一般的 な名称として通用している。パーマ屋・ビューティーパーラ! Q美容院・美容室 くい【兵】「兵士」「兵卒」の意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。〈ーを挙げる〉〈ーを送る〉〈ーを率い る〉梅崎春生の『日の果て』に「支柱を失ったたちが修 羅のように青ざめてさまよい歩く」とある。「力」「を 進める」などと言うときに特に士官を除く意識はないから、 現実には将兵を含めて考えていることになるが、個人個人 を問題にする場合は将校は除かれる。「兵士」や「兵卒」よ り抽象的なとらえ方。単軍人・軍属・Q兵士・兵卒・兵隊 へい【塀】敷地の境界に設ける仕切りをさし、会話にも文章 にも使われる日常の漢語。〈黒板ーに見越しの松〉〈高いー で囲う〉への中を覗く〉頬語の中で最も遮断された感 じがあり、永続的な感じも強い。生垣・垣・垣根・囲い・柵・Q フェンス へいい【平易】理解しやすい意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈一な文章〉〈一な表現に換言する〉〈一に 解説する〉の「難解」と対立。簡単・たやすい・Q易しい・容易 へいき【平気】気にせず物に動じない意で、会話や改まらな い文章に使われる日常の漢語。〈暗くなってもーだ〉〈こん な傷ぐらいーだ〉〈一で嘘をつく〉寺田寅彦の『団栗』に 「あるき方がよほど変だ。それでも当人はーでくっついて来 る」とある。専泰然・沈着・平気の平左・平静・Q平然・悠然・悠々・冷 静 〈いき兵器】戦闘に用いて敵を殺傷し破壊するための道具。 〈核—〉〈大量破壊—〉〈生物化学—〉〈—産業〉〈新しい— を開発する〉主に近代以降について用い、「武器」より大 型の物をさす傾向がある。また、「新兵器」の形では、「イ ンターネットという新ーを利用する」といった比喩的な用法 もある。専武器 ヘいき【併記】両方とも記す意で、主に文章に用いる硬い漢 語。〆年号で記載し、西暦年を—する)並記 いき【並記】複数のものを並べて記す意で、主に文章に用 いる硬い漢語。〈贊同者の氏名を—する〉②両方記すときに は「併記」を用いるが結果として並べて書くことが多いの で、表現者の意識によって使い分ける。単併記 へいきのへいざ【平気の平左】「平気」の強調表現で、くだけ <945> た会話に使われる古風な言いまわし。これぐらいだい の幸田露伴の『五重塔』に「ーで酒に浮かれ」とある。「へ イ」の音を重ねて意味を強め、人名めかしたユーモラスな言 い方。泰然・沈着・Q平気・平静・平然・悠然・悠々・冷静 へいぎよう【閉業】〒「事業所を本日限りでーする」のよう に、営業をやめる意、イ「もうすぐー時間になる」のよう に、その日の営業を終了する意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。Q閉店・店じまい くいきん【平均】大小や多少の差がないように不ぞろいをな らすことをさし、会話にも文章にも使われる日常的な漢語。 〈ーして生活水準が高い〉〈全体のーをとる〉「値」「 点」「身長」「寿命」のように数量の大きさを代表する その集団全体を均した値を意味する用法では少し専門的な 響きがある。専平均値 いきんち【平均値】ある集合の数量を平均することで算出 される数値をさし、学術的な会話や文章の中で用いられる 専門的な漢語。〈ーを出す〉〈ーを求めよ〉専平均 いげい【睥睨】睨んで威圧する意で、主に文章に用いられ る古風で硬い漢語。へあたりを—する)本来は横目で睨む 意。比喻的に「天下を—する」のようにも用いる。児睨み付 ける・睨む・Qねめつける へいげん【平原】平地の広大な野原をさし、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈見渡す限りの大〉平 野」が整然とした田園の中に農家が点在する風景を連想さ せるのに対し、この語は人の住まない荒涼とした野を思わ せ、日本より海外を連想させやすい。井上靖の『洪水』に うこう 「の遥か向うから、あたかも黄色の熔岩でも流れ出したよ うに」とある。ひ平地・Q平野 へいこう【平行】二つの直線や面などがどこまでも交わらず に等しい間隔でのびている意で、会話でも文章でも使われ る、数学の雰囲気を感じさせる漢語。「四边形」「移動」 「二本の道がーに走っている」Q並行・平衡 ふいこう【平衡】両方の重さや力がちょうど釣り合いが取れ ている意で、主として文章に用いられる硬い漢語。ヘ感覚 がいいヘが保たれるヘが失われる小林秀雄の 『正宗白鳥』に「事実は次第に夢を征服して行ったが、この 二つのものがーを得た後も、依然として事実は夢を征服す るのを止めない」とある。Q均衡・釣り合い・バランス・平行 並行 へいこう【並行】並んで進行する意で、改まった会話や文章 で用いられる硬い感じの漢語。バスとトラックがして走 るヘ線路にして高速道路が通っている「二つの催し をして実施する」「二つの議案をして審議する」のよう に両者が同時に行われる意に用いる場合は「併行」とも書 く。Q平行・平衡 くいこう【閉口】困り果ててどうしていいかわからなくなる 意で、会話にも文章にも使われる漢語。くすっかりーする 小沼丹の『更紗の絵』に「泣いている女性を前に坐ってい ると、細君が何事かと覗いたりして、吉野君はほとほとー した」とある。もと、ことばに詰まって口を閉じてしまう 意。弔辟易 へいごう【併合】「合併」の意で、改まった会話や文章に用い <946> くこわ られる硬い漢語。〈市町村を—する〉「合併」に比べ、勢 力の強い方が弱い相手を吸収する意識があり、特に、「日韓 ー条約一の連想が働くと語感が複雑になる。合併 へいさ【閉鎖】建物の入り口を閉め切ったり機械の機能を停 止したりする意で、やや改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈インフルエンザによる学級〉〈経営不振により工 場をーする〉定期間活動を停止する場合が多い。一時 的な感じの強い「封鎖」と違い、当分の間活動を停止する雰 囲気があり、そのまま再開されないケースも多い。釣封鎖 へいさつ【併殺】野球で二人の走者を続けてアウトにする一 連のプレーをさす漢語。主として書きことばで使う。口頭 ではふつう「ダブルプレー」を用いる。〈ーを喫する〉釣 ッツー・ダブルプレー くいし兵士軍隊で士官の指揮を受ける立場の者をさし、 改まった会話や文章に使われる硬い漢語。〈ーに告ぐ〉へ として出征する〉の大岡昇平の『俘虜記』に、若い米兵を銃 で撃たなかった自分の行為の背景として殺人への嫌悪を想 定し、「この嫌悪は平和時の感覚であり、私がこのときすで にーでなかったことを示す」と述べている。軍人・軍属・兵 兵卒・Q兵隊 へいしゃ【弊社】「わが社」をさす謙称として、主として商用 文などの文章中に用いられる丁重な漢語。へーのモットー へーの製品》「貴社」と対立。夢自社・Q当社 いじょう【平常】特に故障もなく突発的な事故もなくいつ もと同じという意味合いで、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈心〉〈とおり営業する〉事故などがあっ た際の話題によく使う。ふいつも・Q通常・常々・常日頃・日常・日 頃・普段・平生・平素 くいせい【平静】興奮することなくいつもどおり落ち着いて いる意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈 を保つ〉〈ーを装う〉〈こんな時によくーでいられるな〉 森鴨外の『青年』に「心は哲人の如くにーになっている」と ある。「町がーを取り戻す」のように、他の類義語と違って 人間以外について用いることもある。夢落ち着く・泰然・沈着 平気・平気の平左・平然・悠然・悠々・Q冷静 いぜい【平生】何事もない毎日の意で、会話にも文章にも 使われる、いくぶん古風な漢語。へーから注意を怠らない へーの生活習慣が大事だ》井上靖の『氷壁』に「ーは寝床 の中で煙草を喫うことを自分に禁じているが山から帰った 翌朝は例外である」とある。ひいつも・通常・常々・Q常日頃・日 常・日頃・普段・平常・平素 いぜん【平然】取り乱さず落ち着き払っている意で、改ま た会話や文章に用いられる漢語。へと答える〉〈事態を と見守る〉里見弾の『多情仏心』に「日頃のてれ性にも 似ず、信之はーと構えていた」とある。Q泰然・沈着・平気・ 平気の平左・平静・悠然・悠々・冷静 へいそ【平素】普通の日々の意で、改まった会話や文章に使 われる漢語。〈ーの冷静さを失う〉へーからの努力の賜物 ひいつも・通常・常々・常日頃・日常・Q日頃・普段・平常・平生 くいそつ【兵卒】最下級の軍人の意で改まった会話や文章に 用いられる古風な漢語。ヘーに過ぎない)乃軍人・軍属・兵・ 兵士・Q兵隊 <947> くいそん【併(並)存】一定の分野に複数のものが同時に存在 する意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈利 害が対立するためーは困難だ〉「並立」と比べ、抽象的な 対象にも使われる傾向がある。「へいぞん」ともいう。弜共 生・共存・Q並立・両立 「いたい【兵隊】「兵士」「兵卒」の意で、会話や軽い文章に 使われる漢語。「ーを送り込む」本来は、多くの兵士によ って構成される一隊をさす。次第にその兵隊に属する一個 人をさすようになり、「ーさん」などと親しまれた。「部長 のーとなって働く」のように、軍隊と関係なく、指揮を受け て実働に参加する人間をさす比喩的用法もある。単軍人・軍 属・兵・Q兵士・兵卒 くいち【平地】傾斜のない平らな土地の意で会話にも文章に も使われる漢語。〈ーにある〉〈ーの気温〉土地が平らで あることに重点があり、「平原」や「平野」と違って、比較 的狭い土地でも言う。芥川龍之介の「トロッコ」に「村外れ のーへ来ると、自然と其処に止まってしまう」とある。「山 地」と対立。呂平原・Q平野 へいてい【平定】乱を鎮めて世の中を平穏にし人心を落ち着 かせる意で、主として文章に用いられる古風な漢語。〈武力 ー〉〈天下をーする〉の「征服」と違い、同じ国の内部での 争いについて用いる。支配者としての意識を持つ側からの 用語。刂制圧・Q征服・鎮圧・抑圧・抑制 へいてん【閉店】ア「売り尽くしセール」「通の客に惜しま れながらーの日を迎える」のように、店を閉じて営業をや める意、①「一の時間」「本日は間もなくーいたします」の へいほん ように、その日の営業を終了する意で、会話にも文章にも 使われる漢語。Q閉業店じまい へいばん【平板】抑揚・起伏に乏しいために盛り上がりに欠 け、めりはりがなくて面白みがないという意味合いで、会 話にも文章にも使われる漢語。「な記述〉ぐさしたる事件 もなくなる展開に終始する》「単調」が作中の展開を問題 にしているのに対し、この語は表現・描写や作品全体の構成 などを問題にしている感じが強い。「型のアクセント」は 専門的。単調子・単調 くいふく【平服】「礼服」に対し日常の社会生活で着用してい るふつうの服装をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 へあいにく礼服の持ち合わせがなくで間に合わせる)の語 義としては普段着まで含まれるが、現実には、招待状に「当 日はーにてお越しください」とある場合、真赤なセーター や浴衣姿などは論外で、スーツか少なくともジャケットにネ クタイを着用する程度が世間の常識と思われる。弁普段着・ 略装・Q略服 「いぼん『平凡』とこにでもあるごく普通の、といった意味 合いで、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の生活漢語。〈な人間〉〈な暮らし〉〈な考え〉〈 な記録に終わる〉②二葉亭四迷は作品『平凡』に、「! に、限る。な者がな半生を叙するに、という題は動 かぬところだ」と書いた。同じ語を繰り返すことで、「平 凡」という単語の平凡な語感では説明のつかない言語的活 力が生じた。「平凡」ということばの伝える情報としての意 味とは別に、その反復によって生まれた臨時の語感が読者 <948> へいめん に強く訴えてくる。通常・Q普通 いめん【平面】凹凸のない平らな表面をさし、学術的な会 話や文章に用いられる専門的な漢語。〈一図〉〈一幾何学〉 のものごとを—的にとらえる」のように、掘り下げずにう わべだけを扱う意味で使う場合は一般語。ひ面 へいや【平野】目立った起伏もなく広々と広がる平地をきし、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈関東〉へが広 がる〉森敦の『月山』に「庄内ーを見おろして日本海の気 流を受けて立つ月山」とある。ひQ平原・平地 いゆ【平癒】病気が治る意で主に文章中に用いられる古風 な硬い漢語。「を祈願する」の「治癒」には回復具合の程 度の幅があるが、この語は完治した状態をイメージさせや すい。専癒える・回復・Q治癒・治る へいりつ【並立】両者が対等に並び立つ意で、改まった会話 や文章に用いられる硬い漢語。〈保革—〉〈両雄—せず〉 〈科学と宗教との—〉本来が異質で対立関係にある二者に ついて用いる傾向がある。「併存」に比べ、具体的な組織や 行為に使う例が多い。専共生・共存・併存・両立 いりよく兵力兵員の数や兵器の質量などを総合した戦 闘力の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈現有 ー〉へーの削減に踏み切る〉へーを増強する〉きQ軍事力・戦 力・武力 へいわ【平和】戦争や戦闘がなく社会秩序が保たれている状 態をさして、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る基本的な漢語。〈ー憲法〉への誓いへ一条約を締結す る〈世界のーを願う〉〈鳩はーの象徴〉へな時代を迎え る)佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「と幸福とは、短い人 生の中にあって最も短い」とある。「な家庭」「に暮ら す」のように、単に揉め事のない状態という小規模な対象 にも使う。刂講和・太平・Q和平 ペースアップ賃金のペースを引き上げる意で、会話でも文 章でも使われる和製英語。〈ーを求める〉〈ーを勝ち取る〉 略して「ペア」とも言う。ひ賃上げ 「野球」の意で使われる外来語。「プレヤ ー〉〈メジャーの」②この球技が明治初期に日本に伝わっ てから少なくとも「野球」という訳語が普及するまでの間 はこの英語を使っていたため、実際にその記憶のある人や、 親から聞いて知識として知っている人にとっては「野球」以 上に昔なつかしいことばという語感が働く。ひところ人気 を博した野球解説者の小西得郎が小西節と呼ばれた独特の 口調で「ペースボール」という語を頻発したのはその一例で あろう。一方、そのような意識を持たないそれ以後の世代 の人々の多くには、逆に斬新な響きを持ったことばに感じ られる。長嶋茂雄が明るく愛用したのはそういう西洋語の スマートさを好んだ言動であったかと思われる。野球 ペーソスしんみりとした哀れみをさし、会話にも文章にも 使われる外来語。ヘューモアとー〉の理知に対する情感を意 味するギリシャ語「パトス」の英語読み。涙と笑いの背中合 わせになった人間味あふれる「ユーモア」に含まれる、しみ じみとした感じ。Q哀感・哀愁・うら悲しい・悲哀・物悲しい ペードライバー 免許を持ちながら実際には自動車の運 転をしない人を簡潔に表現する和製英語。〈運転免許を取得 <949> してからずうっとーを続けている へきえき【辟易】どうするすべもなく困り果てる意で、やや 改まった会話や文章に用いられる、やや古風な感じの漢語。 くあれにはーさせられた》永井荷風の『つゆのあときき』 に「あたりを憚らぬ松子の声に刂して」とある。本来は、相 手の勢いに押されて尻込みする意。刂閉口 くきくう【碧空】「青空」の意で文章に用いられる硬い漢語。 「の彼方」「碧」は縁がかった青。宮本百合子の『伸子』 に「透明な二月のー」とある。青空・Q青天井 「偉地」都会から遠く離れた辺鄙な片田舎をさし、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー教育〉〈交 通の便の悪いーに住む〉専奥地・Q辺境 《きめん【壁面】壁の表面をさし、改まった会話や文章に用 いられる漢語。ヘーに饅だむらをあしらって素朴な感じを出 すの壁」と違い比喩的用法はまれ。乃壁 入クトパスカル 気圧の単位「ミリパール」にあたる現在の 呼称である外来語。ミリパール ペケ「ばつ」の記号をさし、くだけた会話で使う人もある俗 語。〈こんなにーが多くちゃ通らない〉の方言的な感じもあ る。Qばつ・割点 へこたれる主として会話で使われる、「くじける」「へたば る」意の口頭語。〈途中でー〉へこれくらいではー・れない〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「男がこれしきの事にー・れ て仕様があるものか」とある。ヌQくじける・へたばる へこむ【凹む】①衝撃を受けて表面の一部分が引っ込む意で、 主として会話に使われるやや俗っぽい和語。〈卓球のボール がー〉床に落っことしてやかんがー・んだ〉くよく大型ト ラックが切り返しに使う部分だけ門先の道路がー・んでい る)木山捷平の『大陸の細道』に「地球の一部がどかんと ー・んだような戦車壕」とある。「くぼむ」よりも狭い範囲 に起こる、衝撃などによって瞬間的または短期間で生じる 変化について言う傾向がある。くぼむ②「落ちこむ」意 で近年盛んに使われる和語の俗っぽい用法。くやっつけられ てー〉〈事業に失敗してー〉③「相手にやり込められて屈服 する」という意味では以前から用いていたが、最近そこか ら意味が微妙にずれて、精神的に落ち込んで気力を喪失し ている状態に焦点を当て、「わたしがー・んでいるときに支 えてくれた」というふうに使う用例が増えている。Q落ち 込む・くじける ぺし【可し】現代でも硬い感じの表現に時折現れる推量・当 然・命令などの意を添える文語の助動詞。〈後世恐る〉 〈驚くべき事実が明らかになる〉〈実現すべく全力を尽く す〉〈立ち入るべからず〉近年、「すぐ行くべき」のよう に連体形で本来の終止形「べし」の代わりをする俗語的な 使用例が見られる。 しおる『圧し折る』強い力を加えて折る意で、会話や硬く ない文章に使われる和語。〈太い枝を力任せにー〉〈あの高 い鼻をー・ってやる〉ひ折る ペスト「チョッキ」よりやや改まった新しい感じの外来語。 〈ーを着用する〉のチョッキ へそ【臍】腹部の中央にあるへその緒のとれた跡をきし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。 <950> へそまがり 〈出ー〉〈ーのごま〉〈ーまるだし〉平林たい子の『鬼子母 神』に「ーはみずみずして母親と交通していた局所が、まだ 死にも枯れも乾きもせずに、体とは別な生存を続けている」 とある。ひほぞ 人そまがり【臍曲がり】性格がひねくれていて往々に世間の 人と違った感情・思考・行動を示す意味合いで、主としてく だけた会話や軽い文章に使われる和語。「だから素直に 喜ばない」藤沢周平に『臍曲がり新左』と題する小説があ り、「稀代のー」である治部新左衛門が娘と好き合っている 隣の若侍に何かとけちをつける場面がある。変わり者・奇 人・気難しい・Q旋毛曲がり・偏屈・変人 「た【下手】技術的に劣る意で、会話や軽い文章に使われる 日常の基本的な和語。〈話し方がだ〉〈野球がだ〉〈字 がーで読みにくい〉の小沼丹の『懐中時計』に「な人は、 得てして、そんなことを云うもんでね」とある。「ーをする と命取りになりかねない」「うっかりーなことは言えない」 「ーな学者よりよっぽど詳しい」のような多彩な用法があ る。Qつたない・へたくそ・へたっぴい・まずい ベターハーフ「妻」の古めかしい美称。「にぞっこん惚れ ている」正宗白鳥の『泥人形』に「自分のーになる所だっ た」と考える例がある。他人に言えばのろけた感じになる。 ひいえの者・うちの者・お上さん・奥方・奥様・奥さん・お内儀・家内・か みさん・愚妻・細君・妻・女房・Q伴侶・令闥・令室・令夫人・ワイフ 「下手くそ」呆れるほど下手な意を表す俗語に近い 和風の口頭語。〈野球がーだ〉〈な演技〉〈文章がーで読 むに堪えない)太宰治の「人間失格」に「図画のお手本は つまらないし、先生の絵はーだし」とある。技術的に未熟 なことの客観的な評価でなく、そのことを軽蔑する気持ち をこめた表現。「このー!ひっこめ!」と当人に向かって ののしる場合にも使う点で「下手」と違う。自分のことに ついて使えば親しい間での謙遜のことばとなるが、他人に ついて使えば相手をののしる感じになる。そういう語感が 反映して「下手」よりもっと下手な連想が生ずる傾向があ る。ひつたない・Qへた・へたっぴい・まずい だたり【隔たり】距離や差の意で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈中心からの—約五十センチ〉〈認識の—〉〈両 者の間には大きな—がある〉ひ懸隔・Q開き べたつく肌などにべたべたと粘りつく意で、会話やさほど 硬くない文章に使われる和語。〈汗で髪の毛が額に—〉〈糊 がくっついて机が—〉性質・状態を客観的に描写する感じ の「ねぼ」系統の類義語に比べて感覚的で不快感を伴い、 「人前で—」のように男女がいちゃつく意の比喻的用法もあ る。ふねばつく・ねばっこい・ねばねばする・ねばる・Qべとつく 「くたっぴい【下手っぴい】「下手」の強調表現で、くだけた会 話に使われる、いくらか古くなりかけている俗語。へやい、 ー!〉多く相手を直接ののしる場合に使うが、「へたく そ」よりさらに俗っぽく、それだけ親しい感じが伴うという 面もある。ふつたない・へた・Qへたくそ・まずい だてる【隔てる】間に物や空間的・時間的な距離を置く意 で、改まった会話や文章に用いられる和語。「テーブルを ー・てて座る〉〈川をー・てて対峙する〉〈三十年の時を 」森鷗外の『青年』に「東の窓の外は狭い庭をー・てて、 <951> すぐ往来になっている」とある。同じく空間的位置関係を 表す場合「はさむ」が間に位置する対象に向かって目に見 えない力が働く感じがあるのに対しこの語は逆に間を広 げるような力を意識させる。専挟む 〈たばる疲れ果てる意で、主にくだけた会話に使われる口 頭語。〈朝から働きずくめでー〉〈猛練習でー〉類語中で 疲労度が最も高く、その場に座り込むようなイメージを伴 う。太宰治の『富嶽百景』に「あまり好かないこの「富士三 景の一つ」と、ほど対談した」とある。ひばてる・Qぼる ぺつ【別】差異あるいは同じでない意で、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈男女の ー〉へまったくーの意見もある〉〈ーの人を推薦する〉〈あ れとこれとはーだ〉小林秀雄の『私小説論』に「ゾラは彼 等とは全くーの道を進んだ」とある。ひ異例・他・特例・Qほ か・例外 ぐつじん【別人】その人と別の人間をさし、やや改まった会 話や文章に使われる漢語。〈同姓同名の—〉へと取り違え る〉(まるで—のように見える)何らかの意味で紛らわし い場合に使う。ひ他者・Q他人 べつずり【別刷り】「抜き刷り」の意で会話にも文章にも使わ れる専門的な表現。へーを送って批評を請う人文科学の 分野では「抜き刷り」自然科学の分野では「別刷り」を使 う傾向があるという指摘もある。抜き刷り へっちやら「平気」の意の俗語。〈このぐらいの道ならーだ〉 〈こんな傷ーだい〉の「へいちゃら」の転。小津安二郎監督 の映画『東京物語』で母親に叱られた男の子が「ーだい! べっびん 怖かねえやい!」と口答えする。こういう「だい」や「や い」の形も使用頻度がぐっと減った。この「へっちゃら」も 昔の子供がよく使ったものだが、現代ではあまり耳にしな いようで、それだけ古い感じを受ける。Q平気・平気の平 左・平然 ベッド洋式の寝台をさし、会話にも文章にも広く使われる 日常の外来語。〈二段ー〉〈一メーキング〉〈一に入る〉円 地文子の『妖』に「ーは坂に面した壁に寄せてあるので」と あり、「棺の中にねているような異様な静かさ」を誘うとい う。Q寝台・寝床 ベッドタウン大都市周辺のまとまった住宅地域をさす和製 英語。〈東京のーとして人気がある〉 ペッドルーム「寝室」の意で使われたした斬新な感じの外来語。〈設計変更で、キッチン横のリピングを広く取り、ーを二階に移した〉建売住宅やマンションなどの間取りを示すときにしばしば用いられるが、日常会話で使うとまだ気障な感じが抜けない。「寝室」と違い、すぐに洋室を連想させる。通常はベッドが備えてあり、睡眠以外の目的に流用しにくい雰囲気が感じられる。Q寝室・寝所・寝間・寝屋へっぴりこし【屁っ放り腰】放屁するときのように尻を後ろに突き出した不安定な姿勢の意で、主にくだけた会話に使われる俗っぽい和語。「でこわごわ触る〉(初めてのスキーでーで滑る)「ーで事に当たる」のような比喻的な用法もあるが、そのような抽象化した意味では「及び腰」のほうをよく使う。及び腰 ぺっぴん【別嬪】主として会話などに「美人」の意で使われ <952> へっらう た古めかしい漢語。くそろいもそろって大変なー〉くすこぶ る付きのー〉夏目漱石の『倫敦塔』に「何頗だろーだっ て?ー倫敦にゃ大分ーが居ますよ、少し気を付けないと 険呑ですぜ」とある。ひ佳人・シャン・Q美女・美人・麗人 つらう【諂う】上位者に気に入られようと機嫌をとる意で、 会話にも文章にも使われる、やや古風な和語。〈直属の部長 にー・ってばかりいる〉の「阿ぬる」「媚ぐびる」と違い、権 威といった抽象的な存在や世間・大衆のような集合体に対し て迎合するというより、具体的な一個人の機嫌をとるとい う連想がある。ひおもねる・迎合・媚びる・Q取り入る ぐつり【別離】親しい人と別れる意で、主に文章に用いられ る硬質の抒情にの漂う漢語。〈肉親との—〉〈—の悲しみ〉 〈—の涙〉字野千代の『刺す』に「私達の—は、ごく自然 に行われた。秋になって、木の葉がその枝から落ちるのと 同じように」とある。短期間の一時的なものも含む「別れ」 と違い、やむを得ない事情による二度と会えないかもしれ ない長期間の別れを連想させる。Q離別・別れ・別れる ペテラン長年にわたって経験を積み、技能に熟練した人の 意で、会話やさほど改まらない文章に使われる外来語。〈大 ー〉〈ー選手〉〈ーの運転手〉〈ーがそろう〉四「古顔」「古 株」などと違い、単に長くやっているだけではなく、知識や 技能の面で安心感がもてる感じが強い。が、時にその面が 忘れられ、年をとっているという面だけを連想して敬遠す る場合も起こる。単古参・古顔・古株・古手 べてん相手を巧みに騙す意で、会話や軽い文章に使われる 俗語。〈一師〉〈一にかける〉〈まんまとーに引っかかる〉 類語の中でも特に、巧みな話の運びで鮮やかに引っ掛ける 雰囲気がある。中国語の訛りからともいわれ、片仮名表記 の例も多い。夏目漱石の『坊っちゃん』に「ハイカラ野郎 の、一師の、イカサマ師の」とあるが、ここも片仮名で出て くる。ひQいかさま・いんちき・詐欺 ヒ反(嘔)吐胃から吐き戻した汚物をさして主に会話で 使われる日常の和語。〈ーを吐く〉(ーが出る)林芙美子 の『山中歌合』に「まるでーでも吐きかけるような豪然たる 雨」という比喻表現が出る。呂嘔吐と・Qげろ べとつく不快に粘りつく意で、会話や軽い文章に使われる 和語。へつまむと指がー〉ヘ汗ばんで肌がー〉井伏鱒二の 『黒い雨』に「その水面には、油のような茶色の泡が溜っ ていた」とある。ひねばつく・ねばる・Qべたつく ぼる疲れ果てる意で、主にくだけた会話に使われる口頭 語。〈途中で!って棄権する〉ぴぼてる・Qへたぼる ピーカー乳幼児を座らせて運ぶ小型の手押し車をさし、 会話にも文章にも使われる外来語。〈折りたたみ式のー〉 近年は形にかかわらず広くこの語で間に合わせることもあ る。ヲ乳母車 ま間の抜けた失敗を意味し、主としてくだけた会話で使 われる俗ぽい和語。へとんだーをやらかすへーばかりや ってる里見弴を鎌倉の自宅に訪ねた折、小説の中に「従 来」と書いて「これまで」「行為」と書いて「しうち」と読 ませるような当て字の多いことを話題に出したら、「漢字 でへマと書きようがないのでチセツと書いて稚拙とした、 ありゃうまいと二、三人に言われた覚えがあるよ」と得意げ <953> な顔をした。 rQどじ・間抜け へや【部屋】住宅などの建物の中を壁などで仕切った一つの空間をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の生活和語。〈子供〉〈割り〉〈広い〉〈奥のーに通される〉〈が散らかっている〉田宮虎彦の『菊坂』に「にはいった時、じめじめした古畳の匂いが私をつつんで、私は、不意にうすぐらい谷間に追いつめられたような気がした」とあり、宮本輝の『二十歳の火影』に「長襦袢が畳の上に落ち、一呼吸ののち、に沈んでいた女の匂いが浮いてきた」とある。ホテルのフロントで部屋に関するいさかいを目撃した。従業員が「ちゃんとおーもご用意いたしておりますので」と弁解を始めると、客は「あれがー?」というのは窓がついていて、開ければ外が見えるようになっているものだ」と定義を始めた。おそらくその日はひどく込んでいて、その客は蒲団部屋か何かをあてがわれたのだろう。窓を開けたらすぐ壁だったのかもしれない。一往は「部屋」の概念をめぐる論争だが、「部屋」というのは物理的空間なのか生活の場なのかといった、その語のイメージにかかわる語感の問題にも発展する。単室・Q間② 会話にも文章にも使われる外来語。〈夏の晴れた日はーで朝食をとる〉へーからせせらぎを見下ろす〉単テラス・Qバルコニー・露台 ヨ【縁】「ふち」を含む外側部分の細い幅の周囲全体をさ し、会話でも文章でも使われる、やや古い感じの和語。〈畳 のーがすり減る〉〈断崖のーを一歩一歩慎重に歩く〉漢字 表記は「ふち」と読まれやすい。「川のふちを歩く」より 「川のーを歩く」ほうがいくらか安全な感じがするように、 「ふち」が川の側端という意識なのに対して、「へり」はそ れに沿った外側の部分を連想させやすい。串田孫一の『秋 の組曲』に、真紅の落日に向かう乙女たちの姿を後方から 眺める場面があり、「彼女たちの影のーは金色になり、それ が段々と影の方へ浸入して来て、しまいには細い腕だの、ひ るがえる帽子のリボンなどは光の中へ溶けてしまった」と、 時間が止まってしまいそうなまぶしい光景が描かれる。 ふちふちどり・輪郭 りくだる【謙(遜)る】自分側を低めることで相手側を高く 待遇する意で、会話にも文章にも使われる和語。「・った 言い方〉(・た態度をとる)Q謙遜・卑下 〈る【経る】時間が経過したり場所を通過したり段階を通り 過ぎたりする意で、主として文章中に用いられる、やや古 風で趣のある和語。〈時代を—〉〈過程を—〉〈京都を経て 大阪に至る〉〈時を経て味わいを増す〉Q経過・過ぎる・経つ 〈る【減る】数量や程度が少なくなる意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈収入 が—〉〈需要が—〉〈客が—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「ひろびろとした海の上で潮風に吹かれるのは薬だと思っ た。いやに腹が—」とあるように、「腹が—」の形で空腹に なる意を表す。「靴底が—」の形で磨り減る意を表す用法も あり、その場合は「減少」「減ずる」に換言できない。「増え る」「増す」と対立。Q減少・減ずる ペル 半球状の金属を手や電磁石の利用で鳴らす装置を意味 <954> ヘルシー し、会話にも文章にもよく使われる外来語。〈発車の—〉 〈自転車に—を取り付ける〉〈電話の—が鳴る〉②相馬泰三 の『六月』に「汽車の出発を知らせる大—の音が(略)幽かに 遠く聞かれた」とある。ひ鈴・Qチャイム・ブザー呼び鈴 くルシー健康によい意で、会話や硬くない文章に使われる 外来語。〈な献立〉〈おいしくてーな料理〉特に飲食物 について使う。ふ健康的 ぐろくだけた会話で使う「舌」の意の俗っぽい口頭語。ぐろりとーを出す〉〈どれ、ーを見せてごらん〉②子供に向かって言うことが多い。④舌 〈ん【変】普通と違って変わっている意で会話や硬くない文 章に使われる漢語。〈調子がだ〉〈な人〉〈に親切だ〉 の「妙」より使用頻度が高く会話的。文体的レベルは口頭 語程度で、俗語までは落ちない。梶井基次郎の『泥濘』に 「失敗の仕方のに病的だったことが後の生活にまでよくな い影響を与えていた」とある。おかしい②・へんちくりん・へ んてこ・Q妙・妙ちきりん ん【遍】同じことを繰り返す回数の意で、主に会話に使わ れるやや古風な漢語。「一—に片づける」〈あの店へは何— 行ったかわからない」の「度」や「回」より文体的にくだけ た感じで、少し古い響きもある。Q回・度・度 ん【弁(辩)】話しぶりの意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈就任のー〉〈ーをふるう〉〈ーが立つ〉語り 口・口調・語気・語調・話し振り べん【便】排泄物特に僕の意で、会話にも文章にも使わ れる、やや医学的な感じを伴う専門漢語。「が軟らかい 〈ーを調べる〉 ひうんこ・うんち・汚わい・くそ・し尿・人糞・大便・ふ ん・糞尿・糞便 んあい【偏愛】同じような関係にある者のうち特定の人だ けを大事に思う意で、主として文章に用いられる漢語。兄 弟姉妹の中で跡取りの長男だけーする)仏依ぜ屓、婦員・ Q身帛屓・分け隔て 〈んい【変位】物体が位置を変える意で、専門的な文章に用 いられる数学・物理学の学術用語。〈電流〉Q変異・変移・ 変化・変動・変貌・変容 「んい【変異】平常と違う、異変の意で、主に文章に用いられる硬い漢語。〈潮位に若干の—が認められる〉「突然」は生物学の専門語ながら、比喻的には日常会話でも使われる。Q変移・変位・変化・変動・変貌・変容 《んい【変移】移り変わる意で、主に文章に用いられる硬い 漢語。〈世相の—〉Q変異・変位・変化・変動・変貌・変容 へんか【変化】それまでの位置・形・色・状態などから変わることをさし、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。〈時代のー〉へが激しい〉へに富む〉へを持たせる〉へを遂げる〉へに応じる〉伊藤整の『氾濫』に「余震のように続いて起る可能性のある自分の地位のー」とあり、大岡昇平の『俘虜記』に「それを聞いても彼の態度には何のーも現われなかった」とある。夢える・変わる・Q変移・変異・変更・変動・変貌・変容 んかい【弁【辩】解】「言いわけ」の意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈ーに努める〉〈苦しいー〉〈ーの余地がな い〉も言い訳・Q釈明・弁明・申し開き <955> 人加きゅう【変化球】相手の予想に反する思いがけない手 段をさし、会話や軽い文章などで使われる野球用語の拡大 用法。〈交渉中に時折ーを交ぜる〉〈先方が最初からーを投 げてきたのでとまどった〉野球で投手が目先をまどわす ために投げる、軌道が打者の手元で変化するボールの意か ら、一般に、相手が予測しない手段、対応にとまどう方策を 講ずる意味でも用いる。まだまだ比喩性の強い表現。「直 球」と対立。 〈んかく【変革】社会制度や方法などを根本的に変える意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや硬い感じの漢語。 〈一の時代〉〈社会のーを求める〉〈意識のーが必要だ〉島 崎藤村の『夜明け前』に「交通の持ち来たすーは水のよう に、あらゆるーの中の最も弱く柔らかなもので、しかも最 も根深く強いもの」とある。「改革」より規模が大きく、よ り抽象的。弁改革・改変 人 人 【返還】借りたり手に入れたりしたものを元に戻す 意で、主として文章に用いるやや硬い感じの漢語。優勝旗 のー〉〈賜杯をーする〉〈北方四島のーを求める〉大岡昇 平の『父』に「その金を借財のーにはあてず、何となく使っ てしまった」とある。本来の所有権がある側に戻すという ニュアンスが強い。引き渡し・返上 へんきゃく【返却】借りたり受け取ったりしたものを返す意 で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈期日までに する〉へ借り出した図書をーする〉へ応募原稿はーしない り返す・Q返還・返済・返上 九きよう【边境(疆)】中央から遠く隔たった地域や国境地 へんけん 帯の意で、主として文章中に用いられる硬い漢語。「一の 地〉へ「に身を置く」の島国の日本では陸地で外国と接して いないため、実質的に内陸の僻地をさす傾向がある。「中 央」と対立。専奥地・Q僻地 《人きょう【勉強】講義を受けたり学術的な文献に目を通し たりして知識や技術を学び取る意で、くだけた会話から文 章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈中〉〈時 間〉〈試験〉〈よくーする〉〈ーがよく出来る〉②生徒の学 習だけでなく、大人になって真面目な本を読んだり、学者が 研究書を読んだりするのも、社会で実地に経験を積むのも、 広く含まれる。学校で教わる印象の強い「学習」に比べ、自 分の意志で学び取るという部分が多くなる。少学習 へんきん【返金】借りた金や預かった金を返す意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈期日とおりーする〉へに行き 詰まる〉の「返済」とは違い、売った商品に欠陥が見つかっ た際に代金を返すような場合にも使われる。ひQ返済・弁済 へんくつ【偏屈】性格や考え方が著しく偏っている意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈一者で知られる〉へな男 で一筋縄ではいかない〉ひ変わり者・奇人・Q気難しい・旋毛曲 がり・臍曲がり・変人 んけい【変形】形が変化する意で、会話でも文章でも使わ れる漢語。〈熱でーする〉処変化・変型・変動・変貌・変容 へんけい【変型】規格と少し違ったタイプの意で、会話でも 文章でも使われる漢語。「珍しい」の鞄》「B6判」サイ ズの辞書」のような用法は出版社などの専門語。専変形 へんけん【偏見】偏った考え方の意で、改まった会話や文章 <956> へんこう に用いられる漢語。〈女性に対する—〉〈ーを持つ〉〈ーが 強い〉の林房雄の『青年』に「俗論とーの渦巻き」とある。 ひ独断 んこう【変更】一度決めたことを変える意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈予定〉〈方針〉〈行 き先をーする〉〈開催日時をーする〉〈ーを余儀なくされ る〉〈ーを加える〉小島信夫の『アメリカン・スクール』に 「見学時刻がーになった旨達しがあった」とある。Q変え る・変化 くんさい【返済】借りた金品を返す意で、改まった会話や文 章に用いられる、やや専門的な漢語。〈ー義務〉〈月々のー 額〉〈ーに窮する〉〈借金のーに当てる〉②「返金」とは違 い、金銭以外にも使われる。込完済・Q返金・弁済 くんざい【偏在】偏って存在する意で、主に改まった文章に 用いられる硬い漢語。〈富のー〉乃遍在 《んざい【遍在】あまねく存在する意で、主に文章に用いられる、哲学的雰囲気の感じられる古風な漢語。《神の—》 《津々浦々に—する》帰在 べんさい【弁済】借りていた金品をすべて返し終わる意で、 主に文章中に用いられる専門的な硬い漢語。〈能力〉(債 務を—する)②一般的な意味で使われる「完済」に比べ、債 務の履行により債権を消滅させるという明確な規定がある。 Q完済返金返済 へんさん【編纂】材料を集めて取捨選択し書物に作り上げる 作業をさし、やや改まった会話や文章に用いられる硬い漢 語。〈辞典をーする〉辞典や大規模な全集などの場合に用 いる。新聞や雑誌やパンフレットなどにも使う「編集」より 大がかりで重い仕事という雰囲気がある。単編集 「んじ【返事(辞)】呼びかけに対する応答や問いかけに対す る返答をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の基本的な漢語。〈生—〉〈大きな声で—をする〉 〈先方の—を待つ〉〈手紙の—を書く〉夏目漱石の『草枕』 に「おい」と声を掛けたが—がない」とあり、「—がないの に床几に腰をかけて、いつ迄も待ってるのも少し二十世紀 とは受け取れない。ここらが非人情で面白い」という茶店 の場面がある。Q応答・回答・解答・答え・返答 人しゅう【編修】しっかりした資料をもとに歴史書などを 編む意で、主として硬い文章に用いられる、正式で専門的 な雰囲気の漢語。〈日本古代史の—に携わる〉〈教科書を— する〉単編集 〈んしゅう【編集(輯)】出版する目的で原稿などを整理・排列 する意で、会話でも文章でも使われる漢語。〈一者〉〈一委 員〉〈出版社の一部〉〈雑誌の〉〈フィルムを一段階でカ ットする〉「編輯」という本来の表記は、現代では古風だ が、いかにも本格的な感じを伴う。刂編修 へんじよ【便所】大小便を排泄するための場所をさす、類 語中で最も基本的で率直で感情のこもらない客観的な日常 の漢語。そのため、教科書や学術的な文章に向いているが、 長年の使用でしみついた非衛生的なにおいが嫌われ、上品 な会話では使用を避ける傾向がある。〈公衆—〉〈掃除〉 ひおトイレ・廁・閑所・化粧室・御不浄・雪隠・洗面所・WC・手水 場は手洗い・Qトイレ・トイレット・はばかり・レストルーム <957> へんじょう【返上】「返す」意の丁寧な表現で、やや改まった 感じの漢語。〈汚名—〉〈休日をーして働く〉本来の所有 権という意識が薄い。ひ引き渡し・返還 「弁償」相手に与えた損害を償うために金銭を支 払う意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。「能 力」ヘーして済む問題ではない」〈割った窓ガラスの代金を ーする」「賠償」ほど重大でない日常生活での個人的な損 害補塡に使う傾向がある。夏目漱石の『こころ』に「養家か ら出して貰った学資は、実家でーする事になった」とある。 Q賠償・補償 へんしん【変心】それまで永い間抱いていたあるいは公言 していた気持ちに変化を来す意で、少し改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈相手のーを恨む〉へしたと相手を なじる〉回恋愛感情など重要な事柄に対する態度について 使う傾向がある。専心変わり 人じん【変(偏)人】性格や言動が通常の人間と大きくかけ 離れている人をさし、会話でも文章でも使われる漢語。〈政 界でもーとして通る〉(一で多くの逸話を残す)生活レベ ルの「変わり者」に対し、この語には周囲が何と言おうと妥 協しない頑かなさが感じられる。Q変わり者・奇人・気難し い・旋毛曲がり・膽曲がり・偏屈 んせい【变成】形が変わって出来上がる意で、主に文章に 用いられる地学の専門用語。〈一岩〉変性 へんせい【変性】通常のと性質が変わっている意で、主に文 章に用いられる化学の専門用語。〈一アルコール〉専変成 へんせい【編成】個々のものを集め組み合わせて機能的にま へんてこ とめる意で、会話にも文章にも使われる、やや専門がかった 漢語。〈十両—の列車〉〈予算—〉〈番組を—する〉刂編制 へんせい【編制】団体を統一的に組織する意で、主に文章に 用いられる、古風で硬い漢語。〈部隊を—する〉「戦時—」 など軍隊の連想が強く、「学級—」などでは「編成」と書く 例が多い。刂編成 べんぜつ【弁(辯)舌】話しぶりをさし、やや改まった会話や 文章に用いられるいくぶん古風な漢語。〈ーさわやか〉〈ー をふるう〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「あのーに胡魔化 されて、即席に許諾したものだから」とある。「演説」にく らべ、主張より話す巧みさに重点があるが、「弁論」と違っ て他と競う感じはない。Q演説・スピーチ・弁論 〈んせん【変遷】時の経過とともに次第に移り変わる意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈時代のーを追 う〉〈書物のーをたどる〉②永井荷風の『澀東綺譚』に「時 勢と趣味とのーを思い知る機会」とある。Q移り変わり・推 移 べんたつ【鞭撻】厳しく指導する意で、主として文章に用い られる硬い漢語。〈今後ともよろしく御ーのほどを〉のも と、鞭で打って励ます意。Q激励・鼓舞 へんちくりん「変」の意でくだけた会話に使われる俗語。 へんちくりん「変」の意でくだけた会話に使われる俗語。 〈一な帽子〉ひ変・へんてこ・妙・妙ちきりん 人んてこ「変」の意でくだけた会話に使われる俗語。「な 格好⑨井上靖の『あすなろ物語』に「天と地がな方向で 見えたと思った。と、次の瞬間、地面が急速に自分をめがけ て突進してくる」とある。「変」より狭く視覚的にとらえた <958> へんとう 状態に使う。 Q変・へんちくりん・妙・妙ちきりん んとう【返答】呼びかけや問いかけに応じる返事をさし、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。へを迫る へに窮する)《先方の一次第で対応が変わる)簡潔な 応答」に比べ、相手の質問・依頼・要求などに対する意思表 明といった内容のある情報が含まれる傾向がある。応答・ 回答・解答・答え・Q返事 人 んどう【変動】状態や条件などがその時々で変化する意で、 改まった会話や文章に用いられる専門的な硬い漢語。〈地殻 ー〉〈一相場制〉〈物価がーして安定しない〉②林房雄の 『青年』に「飄々風のごときー」とある。専変異・変化・変貌・Q 変容 ペンネーム 筆名の意で、会話にも文章にも使われる外来語。 (二つのーを使い分ける)辞典類の記述では「筆名」が多 いが、一般にはこの語がよく使われる。小説家の福永武彦 はほかに「加田伶太郎」名で推理小説を、「船田学」名でS Fを書いた。単雅号・芸名・号・筆名 へんペい【扁(偏)平】凹凸が少なく平べったい意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈足〉(な胸)吉 行淳之介の『驟雨』に「高い場所から見下ろしている彼の眼 に映ってくる男たちの「な姿」とある。Q平たい・平べった い ぐんべつ【弁(辨)別】他との差異をわきまえて見分ける意で、 主に文章に用いられる、やや古風で硬い漢語。〈力〉へ 的特徴〉〈理非曲直を—する〉鑑識・鑑定・鑑別・区別・Q識別・ 判別・見分け くんぼう【変貌】姿や形などがすっかり変わってしまう意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈めざましいー を遂げる〉太宰治の『人間失格』に「写真の顔は、これは また、ぴっくりするくらいひどくーしていた」とある。 異・変化・変動・変容 人ぼう【返報】他人からこうむった迷惑や被害をその相手 に返すことをさし、会話でも文章でも使われる、やや古風 な漢語。〈即座にーする〉〈相手のーを恐れる〉漢語だけ に和語の「仕返し」よりは若干重く響くが、「復讐」ほど 恨みがこもっておらず、「報復」というほど大げさでない感 じがある。Q仕返し・復讐・報復 人 ある目的のために名を変えることをさし、 会話にも文章にも使われる漢語。へーを使ってホテルに宿泊 する)借金取りの目をごまかすためとか、不倫を隠すた めとか、ファンや報道陣を避けるためとか、動機はいろいろ 考えられ、「偽名」に比べて犯罪行為との結びつきが弱い感 じがある。「本名」と対立。偽名 くんめい【弁(辯)明】責任を問われた行為について説明に自 らの正当性を主張する意で、改まった会話や文章に用いら れる専門的な雰囲気の硬い漢語。「に相努める」「を求 める」「の機会を与える」「に終始する」③三島由紀夫 の「潮騒」に「まっすぐにーしついでに安夫の暴行をも打明 けた」とある。「事理をーする」のように、単に「明らかに する」という意味に使われることもあり、その場合は古風 な感じになる。言い訳・Q釈明・弁解・申し開き へんよう【変容】姿形や様子などが変わる意で、主に文章中 <959> に用いられる硬い漢語。〈文化ー〉へーを見せる〉三島由 紀夫の『金閣寺』に「この美しい顔に、突然、ーが現われた」 とある。変異・Q変化・変動・変貌 ほう 〈んり【便利】都合が好い、役に立つ、という意味合いで、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な漢語。〈な道具〉〈交通のな場所〉〈買い物にだ〉 〈携帯電話はだ〉小沼丹の『銀色の鈴』に「日頃、世の なかが矢鱈にーになって面白くない」と言っていた男が、妻 が急死したら「世のなかがーになったんで、助かるよ」と言 って友人に「一体、何の話だね?」と呆れられるしみじみと おかしい場面が出る。「利便」よりも具体的で、「重宝」よ りも幅広い場合に用い、より客観的。重宝・O利便 べんろん【弁辯論】大勢の人の前で自分の考えを筋道立て て述べることをさし、会話にも文章にも使われる漢語。へー 術〉〈口頭ー〉〈ー大会〉〈ーをたたかわせる〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「どれ程うまく論理的にーを逞しくしよう とも」とある。「演説」に比べ、話す技術を競うところに重 点のある感じが強い。马演説・スピーチ・Q弁舌 ほ はあん【保安】社会や施設の安全・秩序を保つことをさし、い くぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。「要員〉 「林」「基準を満たす」「防犯」より基本的・総合的で 大規模な感じがある。防犯 ぼいそのような割合や傾向が強いといった意を添えて、主 として会話や改まらない文章に使われる造語要素。〈水っ ー〉〈色っー〉〈湿っー〉名詞や動詞の連用形に後接して、 その度合いが多い、そういう傾向が強いといった意味合い を添える。近年、「確定っー」「前っー席」のように本来つ かないはずの単語に後接したり、「バスが行っちゃったっ ー」のように語でなく文に接続したりする俗な拡大用法が 横行し始めている。専傾向・的 ポイラー暖房や給湯のために湯を沸かす装置をさし、会話 にも文章にも使われる外来語。〈ーを焚く〉「湯沸かし 器」より大型のイメージが強い。湯沸かし器 ほう【法】ある社会の中ですべての構成員が守るべきものとして義務づけたり禁止したりしている決まりをさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一の精神〉へ一の整備〉へ一の下に平等〉へ一に照らす〉へ一に背く〉へ一に触れる〉へ一の裁きを受ける〉慣習として伝統的に決まっている場合も、統治権を握る実力者やその組織などが決める場合もある。国家単位ならば「法律」となる。児捉・Q法律 <960> ほうい 法令 ほうい【方位】水平面上に東西南北を基準として定めた方角 をさし、主に文章に使われる専門的な漢語。へーを計測す る)北北東、西南西などの十六方位が標準。「ーが悪い」 「ーを占う」のように、易で吉兆を問題にすることもある。 ひQ方角・方向 ほうえい【放映】テレビで放送することをさし、主として文 章中に用いられる専門的な漢語。〈|権〉〈|中〉「映像」 を流すことを取り立ててテレビ放送を独立させた比較的新 しい用語で、一般人の日常会話にはまだなじまない。刂放送 ぼうえい【防衛】防ぎ守る意で、やや改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈正当—〉〈専守—〉〈国家を—する〉〈タ イトルの—に成功する〉大岡昇平の『俘虜記』に「一般俘 虜に対する唯一の—法は、彼等のことを考えないことであ った」とある。「防禦」や「防戦」よりスケールが大きい 感じがある。防御・Q防戦・守る② ぼうえき【貿易】外国との間で行う商業取引をきし、会話に も文章にも広く使われる漢語。〈商〉〈収支〉〈保護〉 〈一が盛んだ〉大規模という感じが強い。易交易 ほうえつ【法悦】うっとりとするような気持ちよさをさし、 文章に用いられる古風で硬い漢語。「の境」「にひた る」のもと仏教語で、仏の教えを受けたときの無上の喜び を言う。芥川龍之介の『地獄変』に「さながら恍惚とした の輝きを、皺だらけな満面に浮べながら」とある。飲喜 喜悦・欣喜雀躍Q随喜・愉悦・喜び ほうおう【法王】ローマカトリック教会の最高聖職者である 教皇をさし、会話でも文章でも使われる漢語。〈一庁〉へロ ーマー〉ひ法皇 ほうおう【法皇】譲位して仏門に入った前の天皇をさし、会 話でも文章でも使われる、古めかしく歴史的な感じの漢語。 〈後白河ー〉は法王 ほうかい【崩潰(壊)】建造物などがこれて崩れ落ちる意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈橋がーする〉 〈線路がーする〉〈大地震でピルがーする〉②比喻的に、「内 閣がーする」「家庭のー」のように、組織などのまとまりが がたがたに崩れる意に使う例も多い。具瓦解 ぼうがい【妨害】他の行動の妨げになる意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈電波—〉〈安眠—〉〈守備—〉〈営業— になる〉〈作業を—する〉「邪魔」に比べて対象が抽象的 ながら明確で、妨げの理由や程度も客観的。単邪魔 ほうがく【方角】「方位」に近い意で、会話にも文章にも使わ れる古風な漢語。〈一違い〉〈駅の一〉〈東の一をめざす〉 〈一の見当がつかない〉「一を気にする」のように易の吉 兆を問題にする用法もある。吉行淳之介に帝国ホテルの一 室で小説を結ぶときの感覚を問うと、書き出したら「大体 の一に向かってやみくもに歩いて行きますね。そうすると、 どっかにたどり着いたような感じになってくる」と、結びを 特に意識しないことを述べた。このように抽象的な意味で も使うことがある。方位・Q方向 はうがん【砲丸】大砲の弾の意で、主に文章に用いられる少 し古風な漢語。〈ーが撃ち込まれる〉実際の弾の意では 「砲弾」ほど使われず、現在は砲丸投げに使う金属の玉をさ <961> す拡大用法のほうが多い。鈇弾・弾丸・鉄砲玉・Q砲弾 はうがん【包含】その内部に包み含む意で、主として文章中 に用いる硬い漢語。〈その論は矛盾を—する〉〈真理を—す る教え〉〈さまざまな問題を—する事態〉②抽象的な事柄に 使う。Q含む・含める ぼうかん【傍観】第三者という立場から自分には無関係なも のとして眺めたり突き放して考えたりする意で、会話にも 文章にも使われるやや硬い漢語。〈旅の—者〉(その窮状は —するに忍びない)「静観」と違い、実際に目で見ている 場合にも使う。静観 ほうき【放(抛)棄】投げ捨てて顧みない意で、やや改まった 会話や文章に用いられる、やや硬い漢語。〈戦争—〉〈試合 —〉〈権利を—する〉安岡章太郎の『海辺の光景』に「よ うやくつかんだ職場を—する」とある。捨てる・Q投棄・投 げ出す はうきぼし【箒星】大きな彗星をさし、会話や硬くない文 章に使われる和語。〈東の空にーが現れる〉の長い尾が箒の ように見えるところから。ヨQ彗星・流れ星・流星 ぼうきゃく【忘却】過去の記憶などをすっかり忘れ去る意で 主に文章に用いられる漢語。へーの彼方に去る〉〈過去をー する〉夏目漱石の『草枕』に「いくら詩人が幸福でも、あ の雲雀のように思い切って、一心不乱に、前後をーして、わ が喜びを歌うわけにはゆくまい」とある。硬い感じの語な がら美文調の文章の中にも現れる。「失念」より大仰な感じ があり、お礼を言い忘れたり一品買い忘れたりするような ちょっとしたことにはなじまない。巻失念・Q忘れる ほうげん はうきゅう【俸給】会社員や公務員などの勤め人に支払われ る給与をさし、主に文章に用いられる、やや古風な漢語。 へー表へー生活者へーが上がる)職務に対する報酬で基 本給が対象になる。Q給与・給料・月給・サラリー・賃金 はうぎよ【崩御】天皇・皇后・皇太后など格別高貴な方に対する尊敬の気持ちから、その死をさして、改まった文章に用いる丁重な間接表現。〈天皇—の報が入る〉死を忌むところから、それを「くずれる」「こわれる」といった別の概念に置き換えて婉曲に表現したことば。勇敢え無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる・儚なくなる・不帰の客となる・不幸がある・没する・仏になる・身罷る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 ぼうぎよ【防御(禦)】危険なこと、特に敵の攻撃を防ぐ意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーシステム〉 〈ー率〉へーを怠る〉へーが甘い〉の「防衛」より小規模な感 じが強い。ひ防衛・Q防戦・守る② はうけい【方形】角がすべて直角の四角形、すなわち正方形・ 長方形を意味する、古風でやや硬い漢語。〈ほぼーをなす〉 Q四角形・四边形 ほうげん【方言】一つの言語の中の地方によって異なる音韻・ 語彙・文法などの体系をさし、会話にも文章にも使われる漢 語。〈西日本—〉〈—調査〉〈その地方独特の—が今も残る〉 へいつまでも—が抜けない〉回「俚言」より体系的なとら <962> ほうげん え方。「が交じる」のように単語をさすこともある。ひ里 言葉・Q俚言 ほうげん【放言】無遠慮で無責任な発言をきし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ー締がある〉〈大臣のーが波紋を呼 ぶ〉結果として失言になる例も多いが、そういうことを 意に介さずに口に出すのが特徴。小林秀雄の『志賀直哉論』 に「これから小説は社会化するとともに堕落する(略)とい う意味のーをやって、批評家だからそんな無責任な事が言 えるのだと言われ」とある。専失言 ぼうけん【冒険】成功の確率の低いことに危険を冒して挑む 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一家〉〈小説〉 〈一談〉〈そこまで手を広げるのはーだ〉②太宰治の『斜陽』 に「小説ではずいぶん恋のーみたいな事をお書きになり」 とある。「探検(険)」と違い、特に調べるという目的はな い。専探検 ほうこう【方向】「方位」に近い意味で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈進行—〉 〈—転換〉〈—を定める〉〈—を誤る〉〈—を見失う〉時 計と同じ—に回転する」のように直線以外にも使い、「考え ている—は悪くない」のように抽象的な意味にも使う。 方位・Q方角 ほうこう【彷徨】「さまよう」意で、主として文章に用いられ る硬い漢語。〈荒野を—する〉〈深夜の大都会を—する〉 〈生死の境を—する〉夏目漱石の『草枕』に「縹緲のち またに—する」とある。ひさすらい・Qさまよう・漂泊・放浪・流 浪 ぼうこう【暴行】「強姦」の意のやや間接的な提喩的ほかしの 漢語表現。〈事件〉〈女性にーを働く〉井伏鱒二の『本 日休診』に「女は消え入るようになだれていた。ひと目 でーを受けた娘だとわかった」とある。一般に暴力をふる って事を起こせばこれに該当するから必ずしも強姦を意味 するわけではないが、相手を明言して「婦女」とすれば、 もう少しストレートな表現になる。それでも、女性に対す る殴る蹴るの暴力である可能性もあるが、その場合はわざ わざ「婦女」とは呼ばないからである。「乱暴」と比べる と、これでも露骨な表現。新聞では「強姦容疑で逮捕」とし ながら解説部分では「暴行」を採用することが多い。Q強 姦・乱暴②・レイブ ほうこうにん【奉公人】昔の武家や商家に雇われて働く人を さし、会話にも文章にも使われる古めかしい漢語。「の手 前、言葉に気をつける〉〈多くのーを抱える大店な〉番頭 や手代や丁稚、あるいは女中や下女などの連想が強い。 「あるじ」「主人」と対立。従業員・使用人・Q雇い人 はうこく【報告】下位者の立場から上位者に知らせる意を表 す、改まった感じの漢語。〈書〉〈中間〉〈上司にーす る〉の井伏鱒二の『休憩時間』に「興奮していると見え、教 壇に駆けあがると私たち一同にむかって次のようにーした」 とある。「わかり次第すぐーしてください」というふうに、 自分に知らせる意味でこの語を用いると、尊大な態度と受 け取られかねない。ひ知らせ・通達・Q通知 ほうこくしょ【報告書】指定された事柄に関してその経過や 結果や実情などを調べてまとめた文書をさし、やや改まっ <963> た会話や文章で用いられる硬い感じの漢語。研究ーヘー を作成する〈提出済みのー〉のレポートより役所や企 業などの業務という雰囲気が強く、個人の自主的な活動と いう色彩は薄い。レポート はうし【奉仕】自分の利益を度外視して他人や社会のために 貢献する意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈精神〉 〈活動〉〈勤労〉〈社会にーする〉の太宰治は『桜桃』の 中で「自分では、もっとも、おいしいーのつもりでいるのだ が、人はそれに気づかず、太宰という作家も、このごろは軽 薄である、面白さだけで読者を釣る、すこぶる安易、と私を さげすむ」と楽屋をさらけ出した。専尽力 ぼうし【防止】害を防いでその侵入を止める意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈事故を—する〉〈危険 を—する〉〈未然に—する〉〈防ぐ・予防 ぼうし【帽子】防寒や装飾などのために頭にかぶるものをさ し、会話から文章まで幅広く使われる日常漢語。へをかぶ る)へをとって会釈する)ちなみに、樋口一葉の「にご りえ」に「表を通る山高ーの三十男」という使用例が見ら れ、内田百閒には『山高帽子』と題する随筆がある。ひシャ ッポ ぼうじ【房事】改まった文章などで間接的に「性交」をさす 古風な漢語。〈—過多〉の閨房すなわち女性あるいは夫婦 の寝室で行う事柄、という語義から、そこでの男女の営み を類推させる婉曲な表現。部屋での行為というところ まで意味を抽象化してほかした分、品位を保つ表現となっ ている。専営み・エッチ・関係②・合飲・交合・交接・情交・情を通じ ほうしょう る・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・契る・同会 共寝・寝る②・懇ろになる・ファック・深い仲になる・枕を交わす・交 わる・やる③・夜伽 ほうしき【方式】あることをするのに定まっている形式や手 続きややり方をさし、やや改まった会話や文章に用いられ る漢語。〈記入—〉〜〜〜〜〜〜〜 ほうじちゃ【焙じ茶】番茶を焙じてつくった独特のにおいを 楽しむ茶をさし、会話にも文章にも使われる表現。〈香ばし いー〉②液は茶色で、通常は緑茶と区別される。上がり・お 茶・玉露・煎茶・茶・日本茶・Q番茶・碾き茶・抹茶・緑茶 はうしゃせん【放射線】放射性元素の原子核の崩壊に伴って 放出されるアルファ線・ベータ線などの電磁波の総称として 会話にも文章にも使われるやや専門的な漢語。〈治療〉 〈ーを浴びる〉のエックス線を含める用法もある。Qエッ クス線・レントゲン ほうしゅう【報酬】労働や仕事・骨折りなどに対する謝礼とし て支払う金品をさし、やや改まった会話や文章に用いられ る漢語。〈無ーで働く〉〈ーを受け取る〉夏目漱石の『明 暗』に「夫のこの驚ろきをあたかも自分の労力に対する のごとくに眺めた」とある。見返り ほうしよう【報奨】善行・精勤などに報いて金品を与え励ます 意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈全納金〉 〈永年勤続の社員を—する〉与える立場の上位者の視点が 感じられる用語。単報償 <964> ほうしょう【報償】公的機関による弁償の意で、改まった会 話や文章に用いられる、法的・専門的な感じの漢語。〈被害 者に金が支払われる〉専報奨 はうしょう【褒章】国が著しい功績のあった者に授ける勲章 の意で、会話でも文章でも使われる硬い漢語。〈紫綬ゅー〉 の授ける側の視点が感じられる用語。児喪賞 はうしょう【褒賞】褒め讃える行為や褒美の意で、会話でも 文章でも使われる硬い漢語。〈国家からーを授けられる〉の 与える立場からの視点を感じさせる用語。ひ褒章 はうじょう【豊穣】豊作の意で、改まった会話や文章に用い られる硬い漢語。〈五穀ーを祈る〉〈一の秋〉「豊饒」が土 地の性質に中心があるのに対し、この語はその成果に着目。 豊饒 ほうじょう【豊饒】肥沃でよく実る意で、改まった会話や文 章で用いられる硬い漢語。〈地味—〉小林多喜二の『蟹工 船』に「肥えた黒猫の毛並のように—な土地」とある。豊 穣 ほうじる【焙じる】お茶の葉などを火にあぶって湿り気を取 り除く意で、会話にも文章にも使われる表現。〈茶を—〉 炒める・煎いる・煎びじる・煎ずる・Q焙する ほうしん【方針】あることをなすにあたって予め定めた基 本的な方向や原則をさし、やや改まった会話や文章に用い られる漢語。〈基本—〉〈教育—〉〈経営—〉〈ーを貫く〉 〈ーを変更する〉森鴨外の『舞姫』に「前途のー」とある。 け計画・構想・Q指針 ほうしん【放心】突然の出来事などに心を奪われてぼうっと しているさまをさし、会話にも文章にも使われる漢語。 ぼらくー状態で返事もしない《驚きのあまりーする》谷 崎潤一郎の『細雪』に「事件が起ると、最初に先ず茫然とし てしまって、ーしたような状態になる」とある。失望から 来る「虚脱」と違い、あまりの驚きから生じる。豊虚脱 ぼうず【坊主】僧の総称として主にくだけた会話に使われる 日常の漢語。〈寺の—〉〈—のお経〉本来は、僧坊の主を さしたが、現代では僧を親しみや蔑みの気持ちを込めて呼 ぶときに使う。「やんちゃー」「いたずら」のように、男 の子をからかい気味に呼ぶときにも使う。専和尚は、住持・住 職・Q僧・僧侶 ほうずる【焙ずる】「焙じる」意の少し古風な表現。〈茶葉を ~) ヨ炒める・煎る・煎じる・煎ずる・Q焙じる ぼうせん【防戦】戦争や試合で相手の攻めを防ぐ意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ーに追われる〉へ一方の試 合展開〉ひ防衛・Q防御・守る② ぼうせん【傍線】縦書きの文章で文字列の右側に引く線をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。へーを引く〉へーの簡 所》ふアンダーライン・Q下線 ぼうぜん【呆然】あっけにとられぼんやりしてしまう意で、 会話にも文章にも使われる漢語。へーと見送る〉へーと立ち 尽くす)佐藤春夫の『都会の憂鬱』に「理由を解しかねて ーとしていた」とある。「啞然ん」より時間的に長い感じが ある。Q啞然茫然 ほうぜん【茫然】気が抜けてほんやりする意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。へーとして無為に日を送る <965> 「自失」のように、「呆然」に近い意で使うこともあり、 また、「前途はいまだーとしている」のように、漠然として 定まらない意にも用いる。夏目漱石の『坊っちゃん』に「赤 シャツは(略)とっさの場合返事をしかねてーとしている」と ある。ひ啞然・Q呆然 はうそう【放送】テレビやラジオで電波を通じて報道・ドラ マ・音楽・スポーツなどの番組を多数の人に送り届けること をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の 漢語。〈一局〉〈実況—〉〈一番組〉〈民間—〉〈全国向けに ーする〉の庄野潤三の『夕べの雲』に「決った日の決った時 間にあるーは、いつの間にか家族の生活の一部になってし まっていて」とある。乃放映 ほうそく【法則】一定の条件下で常に成立する関係をさし、 やや改まった会話や文章に用いられるいくぶん硬い感じの 漢語。〈万有引力の—〉〈質量不变の—〉②人為的な「規則」 に対して、おのずから定まっているというニュアンスが強 い。「自然の—」「どおりには運ばない」のように緩やか な関係をさす用法もある。児定理 ぼうだい【膨(厖)大】内容や分量・数値などが非常に大きい意 で、改まった会話や文章に使われる硬い漢語。「な金額 「な資料」「な計画」「な数にのぼる」「厖」は大き い・厚い意で「膨」はふくれあがる意。ひ莫大 はうだん【砲弾】大砲の弾の意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈ーを浴びる〉〈ーが命中して民家が大破す る〉乃銃弾・弾丸・鉄砲玉・Q砲丸 ほうち【放置】置きっ放しにする、やるべきことをせずにそ ほうとう のままにしておく意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーされた自転車の除去作業〉《遺体をその場に ーする》「なすべき職務をーする」「できない緊迫した 情勢」のように抽象的な対象にも使う。「放任」と違って、 人に限らず物にも事柄にも使い、その対象にとって好まし くない状態にある。ほうっておく・放任・ほったらかし・Qほっ たらかす・ほっておく ほうっておく【放って置く】人や物や事柄に手をかけずその ままにする意で、会話や軽い文章に使われる和語。このま まー・いたら枯れる〉〈しばらくー・いても大丈夫だ〉〈子供 の喧嘩だ、ー・け〉の「ほっておく」「ほっとく」と変化する ほど俗っぽさが増す。なすべきことをせずにというニュア ンスは「放置」や「ほったらかす」より弱く、それがいい結 果をもたらす場合もある。ひQ放置・放任・ほったらかす ほうてい【法廷】裁判官が訴訟事件を取り調べて判決を下す 場所をさし、改まった会話や文章に用いられるやや専門的 な漢語。〈一闘争〉へに持ち込む〉へーで争う空間的な 存在よりも機能を意識して用いる語。専裁判所 ほうとう【放蕩】日常的に酒や女遊びや賭け事などに夢中に なって品行がおさまらない意で、改まった会話や文章に用 いられる古風な漢語。〈息子〉〈三昧の暮らし〉への 限りを尽くす内田百閒の『特別阿房列車』に「だれが君 に貸すものか。したと云うではなし、月給が少くて生活 費がかさんだと云うのでは、そんな金を借りたって返せる 見込は初めから有りゃせん」とある。「遊蕩」「淫蕩」と同 様、酒色に溺れる意であるが、それらと比べればこの語は <966> ぼうとう まだ程度がいくらか軽く、意見をして立ち直る見込みを感じさせる。通常、女性には用いない。刂淫蕩・道楽②・Q遊蕩ぼうとう【冒頭】物事や作品などの最初の部分をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈—陳述〉〈会の—の挨拶〉〈文章の—の一文〉夏目漱石の『明暗』に「—から結末に至るまで、彼女はいつでも彼女の主人公であった」とある。「末尾」「結尾」と対立。刂発端 ぼうどう【暴動】不満を持つ者たちが徒党を組んで乱暴を働 き、社会の治安や秩序を乱す行為をさして、会話にも文章 にも使われる漢語。〈各地でーが起こる〉〈ーを鎮める〉 「反乱」と違い、軍の組織を持たない一般民衆が引き起こす 場合に言う。反乱 はうどうきかん【報道機関】新聞やテレビ・ラジオなど報道を 目的とする組織体をさし、やや改まった会話や文章に用い られるいくぶん専門的な漢語。へに通達するへに自柬 を要請する)マスコミ ほうによう【放尿】小便を出す意で、主に文章に用いられる 漢語。〈禁止〉〈木陰でーする〉⑩井伏鱒二の『本日休診』 に「娘は連れの二人をやりすごした。塀のかげにかくれて ーするためであった」とあるが、一般には、「排尿」より勢 いを感じさせ、主として男性による戸外での行為を連想さ せやすい。専排尿 ほうにん【放任】人の自由や自主性を尊重して束縛・干渉をせ ず、当人の希望どおり成り行きに任せる意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈自由—〉〈—主義〉ひ放置・ほうってお く・ほったらかす ほうのう【奉納】社寺に物品や芸能などを寄付する意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈一試合〉〈相撲〉〈神 楽をーする〉Q寄進・献納 はうはん【防犯】犯罪行為を防ぐ意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ーペル〉〈ー装置〉〈ー灯〉の保安より局 所的で具体的な感じがある。保安 はうひ【放屁】(勢いよく)屁をひる行為をさし、主として文章に用いられる硬い感じの漢語。〈所かまわずーする〉②太宰治の『富嶽百景』に「井伏氏は、濃い霧の底、岩に腰をおろし、ゆっくり煙草を吸いながら、なされた」という一文が出てくる。露骨な日常語の「へ」や間接化して少し上品にした「おなら」あるいは間接的な俗語の「ガス」などの類語に比べ、堂々たる響きのあるこの「放屁」という漢語を尊敬表現に用いた例である。苦労してパノラマ台まで登ったら折悪しく濃い霧がたちこめ富士の姿はまったく望めず「いかにも、つまらなそう」な大作家の憮然としたようすを叙する絶妙の一語。このあたり一帯に漂う上質のユーモアの点睛となっている。ちなみに、青木放屁という芸名の俳優あり、小津安二郎監督の命名になるという。ひおならガス・Q屁 ぼうびき【棒引き】金銭面での帳消しの意で、会話や改まらない文章に使われる古風な表現。これで借金をーにする 本来は帳簿の記載を棒を引いて消すこと。「帳消し」ほと 比喩的な拡大用法は認められない。刂相殺・Q帳消し ほうふ【豊富】十分な量があり豊かに富む意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈な資源〉〈知識がだ〉〈経験が <967> ーで頼もしい〈話題のーな人〉小林秀雄の『様々なる意 匠』に「種々の色彩、種々の陰翳を擁してーである」とある。 「豊か」と違い、心の状態までは踏み込んでいない。潤沢・ Q豊か ぼうふう【暴風】激しく吹いて大きな損害を与える恐れのあ る強い風をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢語。 〈—警報〉〈—で木が根こそぎ倒れる〉の風力階級11の旧称。 専風・おおかぜ・強風・颶風・時化・疾風・陣風・大風・Q台風・突風・ はやて・暴風雨・烈風 ほうふうう【暴風雨】雨を伴って激しく吹き荒れる風をきし、 主として文章に用いられる漢語。〈圏に入る〉〈激しい— に見舞われる〉の「嵐」と違って通常比喻的には用いない。 Q嵐・おおかぜ・強風・颶風・時化・疾風・陣風・大風・台風・突風・ はやて・暴風・烈風 ほうふく【報復】他人から受けたひとい仕打ちをその相手に そっくり返すことをさし、改まった会話や文章中に用いら れる、硬い感じの漢語。〈行為に及ぶ〉〈攻撃と見なす〉 の「仕返し」や「返報」より重大な行為を連想させやすい。 ひ仕返し・Q復讐・返報 はうほう【方法】やや硬いことばという印象のある「手段」 に比べ、日常会話から硬い文章まで幅広く使われる漢語。 〈一論〉〈有効なーを講じる〉〈打開のーを探る〉〈ーに若干 の問題がある〉芥川龍之介の『鼻』に「内供の考えたの は、この長い鼻を実際以上に短く見せるーである」とある。 「金儲けのー」とも「金儲けの手段」とも言えるが、「手段」 のほうが具体的で小規模なものをさすというニュアンスの ほうむる 差が感じられる。 JQ手段・手口・やり方・やり口 ほう【茫茫】草や髪などが伸びて生え乱れている意で、 主に会話に使われる漢語。〈雑草が」と生い茂る〉〈髪の毛 が」と伸び放題になっている〉「たる海原」のように、 広く遥かな意にも、「視界は」として薄墨色の世界が広が る」のように、ぼうとしてぼんやり見えるような意にも使 い、それらの用法は逆に古風で硬い感じになる。広くぼさぼさ ほうまつ【泡沫】「泡は」の意で文章中に用いられる硬い漢語。 〈」となって消える〉池澤夏樹の『骨は珊瑚、眼は真珠』 に「表面についている」をきらきらと光らせているビニー ルの袋」とあるが、「候補」「的な作家」のように、すぐ に消えてしまう取るに足らない存在をさす例が多い。広Q 泡・うたかた・水泡・みなわ ほうまん【豊満】肉づきのよい意で、くだけた会話以外で幅ひろく用いられる漢語。へな肉体〉へな肢体を投げ出す広津和郎の再会」に「美貌とは云えなくとも吉祥天のようにな肉体の匂い」とある。「恰幅がいい」が男性に対するプラスの評価であるように、この語は多く女性の肉体美を高く評価する場合に用いられる。そのため、太鼓腹の紳士やあんこ型の力士について用いると、性別の語感の点で違和感が出る。Q恰幅・体つき ほうむる『葬る』死体や遺骨を作法どおりに墓地に埋める意 で、改まった会話や文章に用いられるやや古風な和語。〈故 郷の墓に—〉森鷗外の『じいさんばあさん』に「臨終を見 届け、松泉寺にー・った」とある。「闇に—」「社会から—」 のように見えない場所に追い遣る意の比喻的用法もある。 <968> ほうもっ ♩Q弔う・埋葬 ほうもつ【宝物】珍しくて貴重な品をさし、やや改まった会 話や文章に使われる、少し古い雰囲気の漢語。〈|殿〉〈神 社のーを拝観する〉〈伝来のーを一般公開する〉普段は目 にすることのない歴史や由緒のある物を連想しやすい。 財宝・宝・Q宝もの ほうもん【訪問】目的をもって他人の家を訪ねる意で、改まった会話や文章で用いられる硬い感じの漢語。〈ー客〉へ販売〉〈家庭ー〉〈作家をーする〉〈恩師の自宅をーする〉井伏鱒二の『丸山警視総監と久米正雄氏を訪ねる』に「丸山総監をーする前の晩、カフェでひどく酒をのんだ」とある。やや大仰な語感があり、挨拶・インタビュー・商談など何かの用で訪ねるような雰囲気になるため、「ぷらりとーする」とか「仲間をーして雑談した」とかという軽い感じの例に用いると違和感を覚える。訪れる・Qたずねる・やって来るほうりだす【放(拋)り出す】投げ出す意で、主に会話や軽い文章に使われる和語。〈ごみをー〉〈ランドセルをー・して遊びに行く〉〈社長のポストをー〉「投げ出す」より粗野な感じが強く、「おっぽり出す」「ほっぽり出す」ほど乱暴な感じはしない。自分の身から離れる感じがあり、「足を投げ出す」のような場合には使いにくい。おっぽり出す・投げ捨てる・Q投げ出す・ほっぽり出す ほうりつ【法律】国民の守るべきものとして国家が制定・承認 した、文章の形で明文化された決まりをさし、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。 〈ー事務所〉へに従う〉へに触れる〉へに違反する〉 〈ーを制定する〉〈ーを遵守する〉現代の用法としては、 「法」のほうが抽象的・精神的で、この語のほうが具体的・現 実的なイメージが強い。ひ掟・Q法・法令 ぼうりゃく【謀略】相手を陥れるためのはかりごとの意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈相手のーにま んまと乗せられる〉へーが露見し失敗に終わる〉「計略」 や「策略」より悪意が感じられる。Q陰謀・計略・策略 ぼうりよくだん【暴力団】暴力行為や脅迫や麻薬・銃の密売な ど常習的に違法行為を行う無法者の組織の意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈指定—〉への取締りを強化す る〉へ同士の抗争に発展する〉構成員個人をさす場合は 「一員」という。ひごろつき・ちんぴら・ならず者・無頼漢・無法者・ Qやくざ・与太者 ほうる【拠る】投げ捨てる意で、会話や改まらない文章に使 われる日常生活の和語。〈荷物を乱暴に—〉〈紙くずを—〉 〈吸殻を窓から—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「早速起 き上がって、毛布をばっと後ろへーと」とある。意図的な 「投げる」に対し、この語は不要物などを自分から遠ざける イメージがあり、物を粗末に扱う雰囲気がある。したがっ て、「丁寧に」「慎重に」といった意味の連用修飾語をつけ にくい。毎投げる はうれい【法令】法律と命令の意で、会話でも文章でも使わ れる法律関係の専門的な漢語。〈ーを出す〉〈ーに定める〉 〈ーに従う〉処法例 ほうれい【法例】法律の適用に関する規定の意で、主に文章 に用いられる法律関係の専門的な漢語。〈ーに照らす〉 <969> 「法令」より具体的。刂法令 ぼうれい【亡霊】死者の魂が人の姿となって現れるとされる 現象をきして、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。 へーの崇たり〉へーに取り憑かれる〉安部公房の『他人の 顔』に「臭いだとか、足音だとか、そんな木霊のたぐいだけ が住んでいる、ーの館」とある。化け物類と違い、人間の 姿にイメージが限られる。お化け・化け物・幽霊・妖怪 ほうろう【放浪】さすらい旅する意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈一癖がある〉〈一の旅〉〈一の画家〉〈大陸を ーする〉の『放浪記』という林芙美子の自伝的小説の題名に もあるように象徴的・比喻的な用法が多い。さすらい・さま よう・漂泊・彷徨・Q流浪 は元る【吠える】比較的大型の獣が大きな声を出す意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。 番犬が盛んにー)小沼丹の『タロオ』に「庭に誰が這入 って来ようとー・えたことの無い犬が、猛烈にーようになっ た」とある。虎やライオンなどが大声で吠えたてる場合に は「吼える」「咆える」とも書く。犬の場合、「ワンワンと ー」「クンクンと鳴く」と使い分ける。「海がー」として荒 れ狂う音を強調する例もある。「おやじが怒ってー」のよう に、どなる、わめくの意に使う比喻的用法は俗っぽく響く。 Qいななく・さえずる・鳴く ほお頼顔の左右の耳から口にかけての柔らかい部分をさ し、会話にも文章にも使われる和語。〈ーが赤い〉〈ーを染 める〉〈ーの肉が落ちる〉宮本百合子の『伸子』に「下脹 「れた豊かなー」とあり、円地文子の『老桜』に「白いーに ポートレート は薄い桜色がさして、自分が恋しているようになまめいて 見えた」とある。現代東京語では「ほお」が一般的で、「ほ ほ」は若干古風な感じを与える。ほっべ・ほっべた・ほほ ほおかぶり【頬被(冠)り】責任逃れなどのために知らない振りをする意で、主として会話に使われるやや古風な和語。 〈ーを決め込む〉へやった張本人がーして澄ましている 頭から頬や頸まで手拭などで覆い隠す意の表現からの比喻 的な拡大用法。「頬かむり」とも言うがさらに古風。「ほっ かぶり」「ほっかむり」の語形はやや強調的で、さらに口頭 語的。ひしらばくれる・しらを切る・Q知らんぶり・そらとぼける・ とぼける ほおかむり【頬被り】↓ほおかぶり ホース液体や気体を送るために用いるゴム製・ピニール製の 管をさし、会話にも文章にも使われるオランダ語からの外 来語。ヨムーヘーで車を洗うヘ消防車のーヘごく細い 管や短い管には用いにくい。Q管・筒・バイブ ポーチ西洋建築の車寄せをさし、会話にも文章にも使われ る外来語。へーまで乗り入れる)小津安二郎の映画『麦 秋』で淡島千景の扮するアヤが「だんだらの日除けのある ーか何かでさ」と言う。専車寄せ ボード板状の材料をさし、会話にも文章にも使われる外来 語。〈石膏—〉〈—を張る〉建築用の加工板をさすことが 多い。ひ板 ポートレート 肖像画・肖像写真の意で、主に文章中に用いられる外来語。〈チャップリンのーを壁に掛ける〉、写真・スチール・スナップ・Qプロマイド <970> ボーナス ボナス賞与など臨時に支給される特別手当の意で、会話 にも文章にも広く使われる外来語。〈—払い〉ヘーが出る ヘーをはずむ)現代では日常生活で「賞与」より一般的に よく使われる。賞与 ホームドクター「かかりつけの医者」を意味する和製英語。 〈まずーに相談する〉の一部で英語の「ファミリードクター」 を用いることもあるが、まだ外国語を借用した感じが抜け ず外来語になりきれていない。ひ医者 球技に用いるゴム製・布製などの球形の道具をさし、 くだけた会話から硬い文章まで現在では最も普通に使われ る日常の外来語。〈バレー〉〈カウント〉〈記念の〉 〈が転がる〉のサトウハチローの『スタンドの古狸』に 「外野でーをひろうと、が(夜露で)しっとりしてるそう だ」とある。地球 ボロ小麦粉・砂糖・卵・牛乳などをたねにして焼いた円い 小型の南蛮菓子をさし、会話にも文章にも使われるボルト ガル語からの外来語。ヘしっとりとした佐賀ー〜《京都のそ ばー〜原語では単に「菓子」の意という。伝来当初のカス テラ系統から次第に日本化し、表記も幼児用の「衛生ボー ロ」を除いて「ぼうろ」「ぼうる」などと平仮名で書くこと が多く、今では和菓子の雰囲気が濃い。ヒクッキー・クラッカ ー・サブレ・Qビスケット ほか【外(他)】それ以外の意で、くだけた会話がら硬い文章 まで幅広く使われる日常の基本的な和語。への場所に移 る)への人に代わる)へに考えられない)への原因も 考えられる)の芥川龍之介の『芋粥』に「まるで」の話が聞 こえないらしい」とある。♪Q他・別 ばか容易なことをうっかりやり損なう意で、くだけた会話 に使われる俗語。くしょっちゅうーをやる)きエラー・しくじ る・失策・失態・失敗・とちる・抜かる・Qミス・ミスる・やり損なう ほかはないそれ以外にないの意味合いで、主として硬い文 章に用いられる古風な言いまわし。〈覚悟を決めて取り組 むー〉(事ここに至っては、徹底抗戦を試みるー)「やる しかない」などの違和感を気にする場合に、代わりに使わ れることもある。ひしか ほがらか【朗らか】人の気持ちや様子が明るく晴れ晴れとし た感じである意で、会話にも文章にも使われる和語。「な 歌声〉へ「な笑顔〉三浦朱門の『箱庭』に「何だかなん だね。外科というのはあいう陽性の人が多いのかな」と ある。「空がーに晴れる」のように晴れやかな天候をさす用 法は古風。ひ陽気 ほきょう【補強】対象の弱い部分を補って強くする意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈|材〉〈|工事〉〈地震に 備えて筋交がいを入れて建物を—する〉〈トレードで手薄な 投手陣を—する〉全体的に弱体な場合は「強化」のほうが より適切。Q強化・増強 ぼく【僕】「俺」より丁寧で、「私」よりぞんざいな男の自称 の漢語。「俺」に比べて青少年が多用する感じがあり、老年 層の使用に若干の違和感を覚える場合もある。日常会話や 改まらない手紙などで使われる。話しことばの調子がある ため、硬い文章にはなじまない。〈君とー〉へーが教えてや るよ〉夏目漱石の『坊っちゃん』の主人公も他人の前では <971> 「一の前任者が誰に乗ぜられたんです」とこの自称詞を使 う。ある中学教師の話によると、女子生徒も使うことがあ るという。ふざけて使う場合、男の子めかして使ってみる 場合、ことばの性差別に対する反抗心からあえて使う場合 など、理由や動機はさまざまであれ、ともかく思春期の不 安定な情緒から意図的に使ってみるのであれば、そういう 心理の働くこと自体が、「僕」という語が男のことばだとい う意識の強いことを示していることになる。みあたくし・あ たし・おいら・Q俺・わし・わたくし・わたし ぼくし【牧師】プロテスタントで、教会を預かり説教をして 信者を導く職に在る人をさし、会話にも文章にも使われる 漢語。へーの説教)新約聖書で、イエス・キリストが自ら を羊を飼う牧者にたとえたところから。カトリックの「神 父」にあたる。刂司教・司祭・Q神父 ぼくじょう【牧場】牛や馬を放し飼いにするための場所をさ し、会話から文章まで幅広く使われる日常的な漢語。へーを 経営する〉へーに牛を放つ〉古風な「まきば」よりも現代 生活に密着した語で、「まきば」のような詩的な雰囲気は特 に感じさせない普通の語。イメージとしては、「まきば」よ り規模が大きく近代的な設備が整っている感じがある。 まきば ほぐす【解す】固まったりくついたりしたものをばらばら に捌ぃいて離す意で、会話にも文章にも使われる和語。へも つれた糸をー〉〈寝癖のついた髪を解きー〉〈肩の凝りを 揉みー〉〈魚の身をー〉②「解きほぐす」という複合動詞も あり、「解く」がほどく段階を、「ほぐす」がそれをばらば ほくら らに広げる段階を連想させる。「緊張を」「感情のもつれ を」「別れた相手とのしこりを」のように、抽象的な対 象に使う比喻的用法も多い。ひ解く・Qほどく ほくそえむ【ほくそ笑む】自分の思い通りになってにんまり する意の和語で、やや古風な感じの語。ぐしめしめとー ぐうまくいったと独りー)太宰治の『走れメロス』に「残 虐な気持で、そっとー・んだ」とある。ひそかに喜ぶのは他 に知られたくない事情があるからで、現代ではどこか後ろ めたいマイナスの語感が働く。ふ微笑み・Q笑う ぼくたち【僕達】「僕」の複数として、男の子などが会話にも 文章にも使う表現。〈一の学校〉〈一にも分けてよ〉〈一が 大人になる頃〉の「僕等」に比べ、子供がよく使う傾向があ り、大人が使ってもいくらか幼い響きを感じさせる。ひ俺た ち・Q僕ら・わたくしたち・わたしたち・我ら・我々 ぼくちく【牧畜】牧場で馬・牛・羊などを飼い育てて増やす仕 事をさし、会話にも文章にも使われる漢語。「業」「が 盛んだ》ひ畜産・酪農 ぼくめつ【撲滅】完全に打ち滅ぼす意で、やや改まった会話 や文章に用いられる硬い漢語。〈害虫を—する〉〈癌が めざす運動〉〈振り込め詐欺の—を図る〉人間にとって有 害な対象に積極的に立ち向かう感じが強い。壊滅・Q絶滅・ 全滅 ぼくら【僕等】「僕」の複数で、会話にも文章にも使われる、 やや古風で少しくだけた感じの表現。〈一の青春〉〈一は貧 しかったが夢があった〉へにしてみればあんまり有り難く ない話だ〉へ一の時代は終わった〉へあの頃のーはみんな腹 <972> ほけんきん をすかしていたものだの「僕たち」に比べ、中年以上の男 性が昔を回顧して語る際にしばしば現れる印象が強い。小 林秀雄の『ゴッホの手紙』に「近代の日本文化が翻訳文化で あるという事と、の喜びも悲しみもその中にしかあり得 なかったし、現在も未だないという事とは違うのである」 「ーを幽閉し、監禁し、埋葬さえしようとするものが何んで あるかを、ーは、必ずしも言う事が出来ない」とある。ひ俺 たち・Q僕たち・わたくしたち・わたしたち・我ら・我々 はけんきん【保険金】保険会社が契約に従って被保険者に支 払う金額をさし、会話にも文章にも使われるやや専門的な 漢語。「が下りる」「目当ての犯行」保険料 はけんりょう【保険料】保険の加入者が契約に基づいて保険 会社に支払う料金をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 (が安い)(が滞る)保険金 はご【保護】危険から守る意で、会話にも文章にも使われる 漢語。〈ー者〉〈ー貿易〉〈過ー〉〈迷子をーする〉Q庇護。 擁護 ぼご【母語】生まれ育つ時期に用いた言語をさし、言語研究 の分野で用いられる専門的な漢語。〈ー話者〉〈第二言語習 得におけるーの干渉〉の幼時に母親や家庭の内外から自然 に習得する言語をさす。「母国語」のような国の意識を伴わ ない。単第一言語・Q母国語 ぼこう【母校】自分の卒業した学校をさし、会話でも文章で も幅広く使われる日常的な漢語。〈ーの校歌〉〈ーの先輩〉 へーの教壇に立つ卒業した学校を客観的にとらえた「出 身校」と比べ、それを自分側に引きつけて見た、話し手の思 い入れの感じられる懐かしいことば。履歴などに記す場合 は正式な感じの「出身校」を用いる。「心のふるさと」とし て自分を支えるのは「母校」であり、単なる出身校ではな い。身出身校 ぼこく【母国】自分の生まれた国の意で、会話にも文章にも 使われる漢語。へーのことぼへーを懐かしむ)自国を離 れたときに最も普通に使うことぱ。Q故国・自国・祖国・本 国・本土 ほこくご【母国語】母国の言語をさし、会話でも文章でも普 通に使われる漢語。「は日本語だが、パリシャン並みのフ ランス語を話す」〈外国語の学習に際してーの影響があら われる〉「母語」に比べ、いくらか国家意識が感じられ る。単第一言語・Q母語 ほこら【祠】神を祭った小さな社をさし、会話にも文章にも 使われる古風な和語。へーに手を合わせる)志賀直哉の 『小僧の神様』に「其番地には人の住いがなくて、小さい稲 荷のーがあった」とある。ひ社殿・神社・Qやしろ ほこり【埃】すぐに舞い上がるほど軽く微細な塵をさし、会 話にも文章にも広く使われる日常の和語。〈砂ー〉へーをか ぶる〉へーをはたく〉へーが立つ〉へーがたまる〉野間宏の 『崩解感覚』に「大きな耳がーをかむったような白い汚れた 色をして外につき出ている」とある。砂埃や土埃をさすこ とが多い。ひ芥・屑・ごみ・Q塵 はこり【誇り】自ら名誉に思う気持ちをさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈家系にーを抱く〉〈任務にーを持つ〉 〈ーに傷がつく〉有島武郎の『或る女』に「が塵芥のよ <973> うに踏みにじられる」とある。自分自身の事に限らず、「大 学の「だ」「偉人を輩出したことを「に思う」のように、自 分に関係する他人のことを自分側に引きつけて感じる場合 もある。「自慢」と違って事柄にも用い、ひそかに心に抱く ことが多い。専気位・矜持・自尊心・自負・Qブライド はさ【補(輔)佐】ある上位者を助けて務めを十分に果たさせ る意で、改まった会話や文章に用いられる形式張った感じ のやや専門的な漢語。〈課長—〉〈官〉刂補助 ほざく「言う」「しゃべる」の意で相手を軽蔑して言う、や や古い感じの俗語。〈よくも!・いたな〉へさっきから生意 気なことをー・いている〉回火野葦平の『糞尿譚』に「老い ぼれが何をーか。(略)気の利いたことをーな」とある。ひぬ かす ぼさぼさ手入れせずに先が乱れている意で、主に会話に使 われる和語。〈髪をーにしている〉〈使い古したほうきの先 がーだ〉の毛髪の場合には長くて艶のない状態を連想しや すい。ひぼうぼう ほし犯人を意味する隠語。〈ーの見当がつく〉へーを挙げ る漢字で書けば「星」だが、ふつう片仮名で書く。ひほ んぼし はし【星】恒星・惑星・衛星・彗星・流星の総称として、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈明かり〉へ一番を頂く〉へをちりばめる)定 義上は太陽・月・地球もその一種だが、日常生活ではそれ以 外をさすことが多い。川端康成の『雪国』に「弱い光の日が 落ちてからは寒気がーを磨き出すように冴えて来た」とあ ほしょ る。 ひ天体 ほじ【保持】現在の状態をそのまま続ける意で、主として文 章に用いられる硬い漢語。〈記録—者〉〈権力を—する〉 維持・Q保存 ほしい【欲しい】手に入れて自分のものとしたい意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる和語。〈玩具が 」〈人物が手に入る〉の「意欲とねばり強さが」のよう に、他人に欠けているものを期待する用法もある。専思わし い・Q望ましい ほしゅ【捕手】野球で投手からの投球を受ける役の選手をさ す漢語。主として書きことばで使う。口頭ではふつう「キ ャッチャー」と言う。〈強肩で鳴らしたー〉へのリードが冴 える〉ひキャッチャー はじゅう【補充】数量の定まっている対象に不足が生じた場合にそれを補う意で、会話にも文章にも使われる漢語。ぐ減った分をーする〈欠員をーする〉及Q補足・補填 ほしゅう【募集】希望者などを広く呼びかけて集める意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈一要項〉人生徒一の広告 を出す〈社員を—する〉夏目漱石の『坊ちゃん』に「物 理学校の前を通り掛ったら生徒一の広告が出て居た」とあ る。和語の「募る」よりむしろ日常語的。「応募」と対立。 専募る ほじよ【補助】不十分なところを補い助ける意で会話にも文 章にも使われる日常の漢語。〈ー椅子〉〈ー金〉〈生活〉 へー的な役目〉単補佐 ぼしよ【墓所】特定の家や人の墓場をさし、やや改まった会 <974> ほしょう 話や文章にも使われる古風な漢語。〈実家の—〉〈裏にある ー〉の区域全体をさす「墓地」に対し、個々の墓場をさ す傾向がある。はかしょ・Q墓場・墓地・霊園 はしよう【保証】確かだと責任を持って請け合う意で、会話 でも文章でもよく使われる漢語。〈連帯一人〉〈品質をーす る〉〈人物はーできる〉〈結果はーの限りでない〉〈Q保障・ 補償 ほしょう【保障】立場や権利の保護という意味で、主に文章 に用いられる専門的な感じの漢語。〈社会—〉〈安全—条 約〉〈国民の自由と安全を—する〉Q保証・補償 はしよう【補償】損害を償う意で、会話にも文章にも使われ る、専門的な雰囲気の漢語。〈一額〉〈損害一〉〈国にーを請 求する〉ひ賠償・弁償・Q保証・保障 ほす【干す】自然に乾燥するように広げる意で、会話でも文 章でも幅広く使われる日常生活の和語。風の通る高い場所 にー〉〈洗濯物を竿にー〉〈手摺りに布団をー〉〈軒下に大 根をー〉の「乾かす」場合と違い、目光や風などにあてる自 然乾燥に限られ、ドライヤーで髪を乾かすような場合には 使わない。転かす ポスト郵便箱・郵便受けの総称として、会話にも文章にも使 われる外来語。〈駅前の—に投函する〉へ門先の—から郵便 物を受け取る〉回郵便箱をさす例が多い。また、「重要な— につく」「大臣の—をねらう」のように、職務上の地位をさ す用法もある。郵便受け・Q郵便箱 ボストンバッグ底が長方形で広く、軟らかい感じの手提げ 鞄をさし、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な感 じの外来語。〈ーを片手に旅行に出かける〉のボストンの学 生が使い始めたからとも。ひスーツケース・トランク・Q旅行鞄 ほせい【補正】不十分な点を補って全体として正しくする意 で、会話にも文章にも使われる、専門的な感じの漢語。〈ー 予算〉〈ーを組む〉ひ改正・改定・改訂・是正・訂正・批正・補整 はせい【補整】不十分な点を補って整える意で、主に文章に 用いられる漢語。〈計器を—する〉バッドを用いて体形を ーする〉単補正 ぼせき『墓石』「はかいし」の意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。「が建ち並ぶ〉「に「森林太郎墓」と刻 む通常ともに漢字表記なので「はかいし」との区別が困 難。小沼丹の『黒と白の猫』の「石屋に寄って、を注文し た」の例も、「はかいし」のほうが自然に感じられるが、 「ぼせき」と読むと特に違和感があるほどではない。三島由 紀夫の『金閣寺』に「世界は—のように動かない」という比 喩表現の例がある。ひ墓・Qはかいし・墓碑・墓標 ぼせん【母船】遠洋漁業などの船団の中心になり、漁獲物の 保存や加工の設備を備えた大きな船をさし、会話にも文章 にも使われる、やや専門的な漢語。〈捕鯨船団の—〉ひ親船・ 本船 ほぞ【臍】「へそ」の意で会話にも文章にも稀に使われる古め かしい和語。へーを人目にさらす)回決心する意の「ーを固 める」や、後悔する意の「ーをかむ」のような慣用句として 使う程度で、実際のへそをさす例は少ない。ひへそ ほしい【細い】物の縦の割に横が著しく狭い意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な生活 <975> 和語。〈ーズボン〉目がー〉宇野千代の『おはん』に 「ー、糸みたようなおはんの眼がつりあがって」とある。 「食がー」「神経がー」のように、少ない、ひ弱い意にも使 う。ひか細い はそうどうろ【舗(鋪)装道路】コンクリートやアスファルト で舗装した道路の意で、会話にも文章にも使われる正式な 感じの漢語。今では街中はほとんどがだ》単舗道 はそく補足】不十分なところを補って充実させる意で、や や改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー説明〉〈具体 例をーする〉Q補充・補填 はそながい【細長い】幅が細く長さが長い意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈一部屋〉〈町〉〈ケース〉の長 細いより一般的・標準的。長っ細い・Q長細い・ひよろ長い ほそみ【細身】幅が狭くほっそりした作りの意で、会話にも 文章にも使われる、やわらかい感じの和語。〈一の体〉 「一の刀」「一のズボン」など、人体以外の物に広く使われ る。ひ瘦軀・Q瘦身 ほそめ【細目】すがめた目の意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈海岸の日射しを受けて思わずーになる〉〈近視の 人はーで見る癖がある〉の光の入る量を制限したり目の焦 点を調節したりする目的で実現し、他人に気づかれないよ うに開ける「薄目」より一般に開きが大きい。専薄目 はぞん【保存】そのままの状態で残す意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈食〉〈状態がよい〉〈ーが利く〉〈景 観をーする〉〈昔ながらの街並をーする〉福原麟太郎の 『チャールズ・ラム伝』に「コウルリッジからの手紙はほとん ほち どーされていないのに、コウルリッジはラムの手紙をこん なにも沢山残しておいてくれた」とある。「維持」に比べ、 具体的な物として存在する対象に用いる。ひ維持・保持 ぼたい【母体】母親の体、基盤になる組織の意で、会話でも 文章でも使われる漢語。〈ー保護〉〈ーを守る〉〈出身ー〉 〈経営ー〉母胎 ぼたい【母胎】母親の胎内の意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈一に新しい命が宿る〉〈一八の影響が懸念され る〉田久保英夫の『海図』に「海は原初、人間のいのちの ーだった」という比喻表現が出現し、「この試みが後の繁栄 の一となった」のような比喻的な用法もあるが、意味が抽象 化するほど、生々しくない「母体」のほうが使われる傾向が 強い。母体 ぼたもち【牡丹餅】もと、秋の「おはぎ」に対する春の呼称。 現在では日常一般的な「おはぎ」より会話的で、昔なつかし い感じが伴う。〈ーを作ってたらふく食う〉もおはぎ はたる【蛍】水辺に住み後から青白い光を出すホタル科の甲 虫をさすと同時に、はかなさを感じさせる語。〈一狩り〉 〈川之りの草むらにーが舞う〉宮本輝の『蛍川』に「絢爛 たるーの乱舞を一度は見てみたかった」とある。 ぼち【墓地】多くの墓のある区域をさし、会話にも文章にも 使われる漢語。〈共同—〉〈公園—〉〈外人—〉尾崎一雄の 『美しい墓地からの眺め』に、「ずっとつづいた神主だった にかかわらず、ーには仏式の墓石が二三立っていて、中学生 時分の緒方を不思議がらせた」とある。はかしょ・Q墓場・ 墓所・霊園 <976> ほっかぶり ほっかぶり【頬被り】→ほおかぶり ほっかむり【頬被り】→ほおかぶり ほっく【発句】「俳句」の意で会話にも文章にも使われた古め かしい漢語。ふざさかの心得がある)連句の第一句す なわち最初の五・七・五が独立して俳句となったところから。 夏目漱石の『坊っちゃん』に「は芭蕉か髪結床の親方のや るもんだ」とある。俳諧・Q俳句 ぼつご【没(歿)後】「死後」の意で、改まった会話や文章に用 いられる、やや硬い漢語。〈一百年の記念行事〉(先代の一 にその名を襲名する)改めて振り返る雰囲気が強い。著 名人などの場合によく用い、身内には使わない。「死後の世 界」のような用法でこの語は用いにくい。見死後 ぼっこう【勃興】急に出てきたりにわかに勢いづいたりして 盛んになる意で、主として文章中に用いられる硬い漢語。 〈新しい宗教の—〉〈北の小国が—する〉〈新興産業の—に より勢力分布が変わる〉単台頭 ほっさ【発作】症状が突発的に生ずる意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈心臓—〉〈喘息の—〉〈—が起こる〉 〈—がおさまる〉梅崎春生の『桜島』に「にが笑いは、何 か生理的な—のように、止め度なく湧き上って止まなかっ た」とある。児発症 ぼっしゅう【没収】権威によって所有物や権利などを強制的 に取り上げる意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈土地 をーされる〉〈所持品をーされる〉②法的な用語として用い られるが、「押収」「接收」ほどの専門性は意識されず、俗 に「授業中に遊んでいるのが見つかってゲームを先生に された」などと、公的機関以外にも拡大して使われることがある。弐押収・接收・Q召し上げる はっしん【発疹】「はっしん」のやや古風で専門的な雰囲気の 読み方。〈ーが広がる〉はっしん・Q吹き出物 ぼつする【没する】改まった文章で「死ぬ」意に用いら、る 硬い漢語的表現。〈異国の地で—〉死を忌む気持ちから、 それを「沈む」意にとらえ直して比喻的に真意を類推させ る婉曲表現。勇敢え無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切 れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お 隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・ 死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に 召される・亡くなる・儚くなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・ 仏になる・身罷がる・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨 死・臨終 ほっそく【発足】組織や団体などが活動を開始する意で、改 まった会話や硬い文章に用いられる正式な感じの漢語。〈会 がーする〉〈新たな事業がーする〉の「はっそく」と読むと 俗に響く。刂開始・Qスタート・始まる ほったらかしそのままにして放っておく意で、くだけた会 話に使われる俗っぽい和語。〈家事をーにする〉〈子供をー にする〉〈宿題をーにして遊ぶ〉乃放置・Qほっておく ほったらかすやるべきことをしないで放置しておく意で、 主にくだけた会話に使う俗っぽい和語。〈仕事をー〉〈子供 をー・して遊び歩く〉のほうっておく」と違って、そのほ うがいいという判断であえてそうするケースは含まれず、 「放置」以上に無責任な感じが強い。抜置・Qほうっておく・ <977> 放任 ほったん【発端】事の起こりの意で、やや改まった会話や文 章に用いられる、いくぶん古風な漢語。〈事件の—〉(そも そもこうなったーは)中野重治の『歌のわかれ』に「これ が安田の恋物語の(略)ーだった」とある。出来事の最初の部 分というより、そのきっかけになったことをさす傾向が強 い。「終末」と対立。ひ冒頭 はっつきまわる「うろつく」に近い意の俗語レベルの和語 〈怪しい男が近所を—〉の「うろつく」に比べ、目的もなく 徘徊はいしている感じが強い。うろつく ほっておく【放って置く】手当ても何もせずにそのままにす る意で、主に会話に使われる和語表現。へこのままと枯れ てしまう〉《大したことはないからーけ》ぐだけた会話 ではしばしぼ「ほっとく」となる。放置・Qほったらかし ポット壺の形をした容器をさし、会話にも文章にも使われ る外来語。〈シュガー〉へーでコーヒーを温める》「魔法 瓶」をさすこともある。Qジャー・魔法瓶 ぼっとう【没頭】あることに夢中になって他を顧みない意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈仕事にーす る〉〈実験にーする〉彷藤春夫の『田園の憂鬱』に「植木 の道楽にーし出した」とある。専心・専念・熱中・夢中 ぼつねん【没(歿)年】①死んだ年をさし、主に文章に用いられる正式な感じの漢語。(生ー)〈不詳〉(祖父のーは昭和五十四年)現代ではこの意味で使う例が多い。②死んだときの年齢の意で、主に文章に用いられる漢語。若くして他界、二十三と伝えられる)Q享年・行年 ホテル ぼっぱつ【勃発】大きな事件や事故などが突然起こる意で、 主として文章中に用いられる硬い漢語。〈戦争—〉〈大事故 がーする〉の「出来話」や「突発」に比べ望ましくない、 スケールの大きな感じが強い。ひQしゅったい・突発 ほっペ【頬っペ】「頬っペた」の幼児語。〈ーが赤い〉〈ーがふっくらしている〉はお・Qほっペた・ほほ ほっべた【頬っべた】「頬」の意で主としてだけた会話で使 われる口頭語。〈ーをふくらます〉へーをひっぽたく)頬 のあたりを意味する「頬べた」の転。木山捷平の「初恋」に 「ーが苺のように赤かった」とある。ほお・Qほっべ・ほほ ぼつらく【没落】栄えていたものが衰えておちぶれる意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈貴族〉へ一 大帝国のー〉〈旧家がーする〉〈一の憂き目にあう〉富豪 の破産や会社の倒産など特に金銭的な面で使う例もある。 おちぶれる・Q凋落・転落・落魄・雰落 ボディーガード重要人物に付き添って危険から護る人をさ し、くだけた会話や軽い文章に使う外来語。へーを雇う へーをつける)の「エスピー」と違って、警察官とは限らず 広い意味で使われる。Qエスピー・護衛 ホテル洋式旅館をきして会話でも文章でも広く使われる日 常の外来語。〈ー経営〉〈一流〉〈ーの支配人〉〈ーのブー ル〉〈ーを予約する〉伊藤整の『氾濫』に「は新式の建 築で、道路に面した壁は、高い城壁のように窓のないもの」 <978> ほてん とある。基本的なイメージは、洋風建築で客室はすべてペ ッドやバス・トイレつきの洋室、プールなどの設備が期待で きる場合もあり、食事は館内のレストランなどを利用し、 別料金となることが多い。近代的で高級な印象と結びつき やすく、現実には和風の旅館でも「ホテル」を名乗る例が多 い。専宿・宿屋・Q旅館 はてん【補填】主に金銭上の不足分を穴埋めする意で、改ま った会話や文章に用いられる専門的で硬い漢語。〈金〉 〈赤字を—する〉Q補充・補足 ほど【程】①それを限度とする程度の意で、会話や軽い文章 に使われる古風な和語。〈—にする〉(冗談にも—があ る)Q程度・度合い②「くらい」の意で、会話にも文章に も使われる和語。ヘ一万円—あれば間に合う)〈畳一枚—の 大きさ)「くらい」ほどくだけず、「ばかり」ほど丁寧で 古風な感じもない。2・Q程度・ばかり ほどう【舗(鋪)道】「舗装道路」の略で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈昔の砂利道が今ではーに変わる〉石坂洋次 郎の『青い山脈』に「午後の陽ざかりで、ーのアスファルト が溶けて、踏むとよぶよぶよした」とある。舗装道路 ほどく【解く】結んだり縫ったりしたものを元の状態に戻す 意で、会話にも文章にも使われる和語。〈結び目を—〉〈着 物をー・いて洗う〉〈風呂敷包みを—〉〈後ろで結んだ髪を ー〉③三島由紀夫の『潮騒』に「風に吹きとばされるよう に、身を伏せて、体の綱をー・いた」とある。「とく」と違っ て多様な用法はないが、現代ではこの意味では「とく」より 一般的によく使う。みとく ほとけになる【仏になる】「死ぬ」意の仏教的な雰囲気の和語 による古風な間接表現。「ー・ってからでは、もう遅い。今 のうちだ」死を忌む気持ちから、それを露骨に表現せず、 死後に成仏することに重点を移した婉曲表現。勇敢え無 くなる・上がる②・Qあの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引 き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・お めでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・死ぬ・死亡・昇天・逝 去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる・働く なる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・身罷る・脈が上が る・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 ほどこす【施す】困っている者や弱い立場にある人間に無料 で金品を与えたり必要な処置を行ったりする意で、やや改 まった会話や文章に用いられる和語。(食糧をー)〈薬をー〉 ②太宰治の『駆込み訴え』に「その金をば貧乏人にー・して やったら」とある。動作の主体が明らかに上位にある意識 が強く、施される側の反感を買うこともある。だが、「手当 てをー」「対策をー」のように、単に「行う」意の格式ばっ た表現となる例もあり、その場合は上下関係が意識に上ら ない。ひ上げる・Q与える・呉れる・差し上げる・授ける・やる② ほどなく【程無く】「間もなく」の意で、改まった会話や文章 に用いられる、やや古風な和語。へー新しい年を迎える へー姿を現すものと思われる) ひいずれ②・じきに・そのうち・Q 間も無く・やがて ほとり【畔(辺)】水辺や建物などの周辺をさし、主として文 章中に用いられる古風で詩的な和語。〈湖のーをさまよう〉 〈小川のーにたたずむ〉〈古城のーに憩う〉森鷗外の『山 <979> 椒大夫」に「泉のーに立って、並木の松に隠れては又現れる 後影を小さくなるまで見送った」とある。はた ほとんど【殆ど】全体の九割以上の感じで、会話にも文章に も使われる和語。〈ーが知らない名前だ〉〈出席者のーが賛 成した〉、あらかた・大方・おおよそ・大概・大体・大抵・Q大部分 はね【骨】脊椎動物の骨格を支え内臓を保護する組織をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈魚の—〉〈腰の—〉〈—の髄まで〉〈転んで足の ーを折る〉〈ーを埋める〉〈ーを拾う〉芥川龍之介の『地 獄変』に「と皮ばかりに痩せた、意地の悪そうな老人」と あり、北杜夫の『夜と霧の隅で』に「—に薄く皮をかぶせた 骸骨と変りがなかった」とある。 ほねぐみ【骨組み】体の骨の構造の意で、会話にも文章にも 普通に使われる日常の和語。〈一のがっしりした体〉〈大柄 でいかにも丈夫そうな—〉の芥川龍之介の『戯作三昧』に 「痩せてはいるものの一のしっかりした、寧じろいかついと 云う体格」とある。「家の一」「報告書の一だけはできてい る」のように、比喻的に建物や機械類、あるいは文章などの 基本構造という意味でも使われる。少骨格 ほねやすめ【骨休め】休息の意で、会話や軽い文章に使われ るいくらか古風な和語。〈ーをする〉②「息抜き」より時間 が長い感じがある。専息抜き ほのか【仄か】形や色や句いや暖かきなどがはっきりとでは ないがぼんやり感じられる意で、改まった会話や文章に用 いられる優雅な感じの和語。「な明かり」(ーに赤らむ) 「に句う」(ーに暖かい)川端康成の『千羽鶴』では志野 ほひょう の茶碗について「な赤」「な紅」「な赤み」と繰り返 し、優艶な印象を深化させている。聴覚的な用例はまれだ が、「な希望」のような抽象化された用例も見られる。 かすか・Qほんのり ほのぐらい【仄暗い】ほんやりと暗い意で、いくぶん改まった会話や文章に用いられる、いくらか古風で雅の雰囲気を感じさせる和語。〈小道〉〈朝早く外はまだ—〉丸谷才一の『彼方へ』に「病院の長くつづくー廊下を歩いて行った」とある。「ほの」は「ほんやりと」の意。薄暗い暗いほのめかす【仄めかす】それとなく知らせる意で、会話にも文章にも使われる和語。〈昇進人事を—〉〈引退を—〉志賀直哉の『暗夜行路』に「間接に断る意志をーして居る」とある。ひちらつかせる・Qにおわす・におわせる はばしら【帆柱】船の帆を揚げるための柱をさし、会話にも 文章にも使われる、やや古風な感じの和語。へーを立てる〉 の和風の船にも洋風の船にも使う。タマスト ばひ【墓碑】墓のしるしとして建てる平たい石の碑をさし、 主に文章に用いられる漢語。へーに事跡を刻む)阿部昭は 『子供の墓』に「小さな子どものー銘」と題する詩を引用し ている。ひ墓・はかいし・ぼせき・Q墓標 ぼひよう【墓標】死者を埋葬した場所の目印の意で、具体的 にはそこに建てた木や石の柱をさし、主に文章中に用いら れる漢語。〈白木の—〉〈土饅頭との上に仮の—を立てる〉 これを本格的にして建てたのが墓石。田山花袋の『田舎 教師』に「墓石はまだ立ててなく、風雨に曝されて黒くなっ たーが土饅頭の上にさびしく立って居る」という一節があ <980> ほほ る。時に少し感傷的な雰囲気も感じさせる。安岡章太郎の 『海辺の光景』には「歯を立てた櫛のような、ーのような、 杙の列をながめながら彼は、たしかに一つの死が自分の 手の中に捉えられたのをみた」という比喩表現の例がある。 刂墓・はかいし・ぼせき・Q墓碑 ほほ【頬】顔の両面の耳と口の間の部分をさし、会話にも文 章にも使われる和語。〈豊かな—〉へをふくらます〉へ を染める〉〈涙が—をつたう〉田沢稲舟の『五大堂』に 「女の絹のような—に、自分の桜色の—をくッつけて」とあ る。現在では「ほほえむ」の場合以外「ほお」と発音する例 が多く、この語形は単独ではいくぶん古風な響きがある。 及Qほお・ほっべ・ほっべた ほぼ【略】すべて(完全)ではないがそれに近い状態であることを表し、いくぶん改まった会話や文章に用いられる和語。 〈同じ〉〈間違いない〉〈完成だ〉〈終わった〉野 間宏の『真空地帯』に「わかったような気がした」とあ る。割合が「大体」より多く「ほとんど」や「九分九厘」ま では達しない感じで使う。 ほほえみ【微笑み】声に出さず頬のあたりをにこやかにする 表情をさして、主に文章に用いられる、いくぶん古風で詩 的な雰囲気の和語。へーを湛える〉へーを浮かべる〉へーを 絶やさない)小川洋子の『夕暮れの給食室と雨のプール』 に「間違いなくーでありながら(略)桜の花びらのようにも ろく繊細な表情」とある。ひ微笑し はまれ【誉れ】最高の評判を得て誇りに思う気持ちをさし、 主に文章に用いられる古風な和語。〈秀才のーが高い〉〈母 校のー〉当人自身よりその関係者などが感じるものとし て述べる例が目立つ。栄冠・栄光・栄誉・栄え・Q名誉 ほめそやす【褒(誉)めそやす】みんなで同じ対象を盛んに褒 める意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。今 世紀最高の傑作だとー〉〈口々にー〉専賞讃・讃える・Q褒めた たえる・褒めちぎる・褒める はめたたえる【褒(誉)め讃(称)える】素晴らしいと思う気持 ちを声に出す意で、主に文章に用いられる和語。〈神を—〉 〈妙技を—〉、Q賞讃・讃える・褒めそやす・褒めちぎる・褒める ほめちぎる【褒(誉)めちぎる】最大級の讃辞を送る意で、会 話や軽い文章に使われる和語。ヘこの世で最も美しい行為だ とー⑦井上ひさしが『自家製文章読本』で、夏目漱石の 『坊っちゃん』の末尾にある「だから清の墓は小日向の養源 寺にある」という一文中の「だから」を、「日本文学史を通 して、もっとも美しく、もっとも効果的な接続言」であり 「百万巻の御経に充分拮抗し得ている」と述べたのはその一 例。Q賞讃・讃える・褒めそやす・褒めたたえる・褒める ほめる【褒(誉)める】能力・出来栄え・行為・態度・性格などを 高く評価する意で、くだけた会話から文章まで幅広く使わ れる日常の基本的な和語。「なかなかの出来だとー」(よく 我慢したとー)「ちょっとーとすぐつけあがる)夏目漱石 の「坊っちゃん」に「あなたは真っ直でよい御気性だ」と ー事が時々あった」とある。「先生が生徒をー」「上司が部 下をー」というふうに、上位の立場の者が自分と同等以下 の人間に対して行う賞讃行為に用いるのが基本。Q賞讃・ 讃える・褒めそやす・褒めたたえる・褒めちぎる <981> ぼやくぶつぶつ不平を言う意で、会話や軽い文章に使われ る、やや俗っぽい和語。〈不注意による失敗を—〉〈身の不 運を—〉〈暇のないのを—〉〈ー・いてばかりいても始まら ない〉梅崎春生の『桜島』に「しくじりとー・いてもおっ つかない」とある。「愚痴」や「こぼす」に比べ、自身や自 分側の失敗を悔やんで言う用例が多い。愚痴ぐちる・Qこ ぼす ほよう【保養】健康の回復を待って体を休める意で、会話で も文章でも使われる漢語。〈所〉温泉にに行く病 後を連想させる「静養」と違い、疲労を癒す程度でも使わ れる。Q静養・養生・療養 ほら【洞】内部がうつろな所を意味し、会話にも文章にも使 われる古風な和語。〈大木の—に入り込む〉、刂洞窟・Q洞穴 ほら【法螺】話を誇張する意、また、その大げさなでたらめ 話をさし、会話や軽い文章に使われる表現。〈大—を吹く〉 〈また例の—話が始まった〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「世の中に何が一番—を吹くと云って、新聞程の—吹きはあ るまい」とあるが、一般には、人を欺くという陰険な感じは 薄く、話を面白くして逆に人を楽しませるという明るい雰 囲気がある。法螺貝を吹くと大きな音がすることから。 偽り・Q嘘・嘘っぱち・虚偽 ほらあな【洞穴】崖や大きな岩、大木などにできる大きな穴 をさし、会話にも文章にも使われる和語。へーに身を隠す の「ほら」は中空の意。「洞窟」に比べ、大小さまざまある 感じがする。Q洞窟・ほら ボリープ 胃や腸などの粘膜に生ずる突起状の腫れ物をさし ほれる て、学術的な会話や文章に用いられる医学の専門的な外来 語。〈大腸のーを内視鏡で切除する〉、漬癆・Q腫瘍 はりだす【掘り出す】掘って中に埋まっているものを取り出 す意で、会話にも文章にも使われる和語。〈埋めた物を—〉 ②掘るよりも取り出すほうに重点がある。「宝石を—」のよ うに、外部から見えないものを深く掘る感じが強い。井伏 鱒二の『珍品堂主人』に「よく珍品や風変りな品物を—の で、誰が云い出したともなく珍品堂主人と通称されるよう になって今日に及んでいる」とあるように、価値が世の中に 知られていない物を探し出す意でも用い、「隠れた才能を —」のように抽象化した比喻的用法もある。乃掘削・掘る ほりゅう【保留】その場で取り決めずに先送りする意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈態度を—する〉〈決定を— する〉〈処分を—する〉乃留保 ほる【掘る】地面などに穴を開ける意で、会話にも文章にも 広く使われる日常の和語。〈土を—〉〈穴を—〉〈井戸を—〉 の室生犀星の『愛猫抄』のラストシーンに「あしたー・って 見ましょうか」「何を—んだ」「あそこに猫がいるかどう か」というやりとりが出てくる。「芋を—」「石炭を—」の ように掘って地中から取り出す意でも使うが、「掘り出す」 と違って、その所在が外からわかるものでもよく、また、掘 る深さも浅くてもよい。ひ掘削・掘り出す ほれる【惚れる】異性に心を奪われて夢中になる意で、会話 や軽い文章に使われるいくぶん古風な和語。〈年上の女に ー〉〈ー・れた相手と一緒になる〉〈ぞっこんー〉小津安二 郎監督の映画『麦秋』に、紀子役の原節子が「この人なら心 <982> ほろ から安心できるって気持」と言うと、アヤ役の淡島千景は 「!れちゃったのよ、あんた!本惚れよ!」と解説する場 面がある。なお、この語は「腕前に」「気っ風に」「こ の街に」のように、恋愛関係以外に用いることもある。 愛する・恋する・慕う・Q好く ぼろ【螢襪】使い古して役に立たなくなった布や衣服をさし、 くだけた会話や軽い文章に使われる日常の和語。へにな る〉へーとして捨てる〉野間宏の『真空地帯』に「はま るで魚か牛のはらわたのように」とある。片仮名書きする こともある。ふぼろきれ ぼろきれ【襤褸切れ】ぼろになった布の切れ端をさし、くだ けた会話や軽い文章に使われる日常の和語。ヘーで靴を磨 くヘーを縫い合わせて雑巾にする)の徳永直の『太陽のな い街』に「おしめの襤褸切れが、滴ぐを氷柱らにしたまま 棒鯉のようにぶらさがっていた」とある。ヒぼろ ほろびる【滅(亡)びる】米えていた国・種族・組織などの勢力 が衰え、ついに消えて無くなる意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈悪がー〉〈国がー〉〈文明がー〉通常、個人 には用いないが、横光利一死去に際しての川端康成の弔辞 に「君の文学は永く生き、それに随って僕のー・ぴぬ時もや がて来るであろうか」とある。現代語としては「ほろぶ」よ り一般的。ひQ滅ぶ・滅亡 ほろぶ【滅(亡)ぶ】「滅びる」の意で、主として文章に用いられる古めかしい和語。〈侵略により小国がー〉の口語として も用いるが「滅ばない」の形は見られず、現代では「ほろび る」のほうが一般的。Q滅びる・滅亡 ほん【本】文章や図表などを印刷した紙を綴じたものをさし、 主として日常会話や改まらない文章中に使う、親しみやす い漢語。〈よくーを読む〉〈一の虫〉〈一の表紙〉〈初めてー を出す〉村上春樹の『風の歌を聴け』に「僕が時折時間潰 しに読んでいるーを、彼はいつもまるで蠅が蠅叩きを眺め るように物珍しそうにのぞきこんだ」とある。刂書籍・Q書 物・図書 ほんい【本意】本来の意志や願いの意で、改まった会話や文 章に用いられる硬い漢語。〈ーを伝える〉(それはーではな い〉へーを得る〉へーを遂げる〉夏目漱石の『明暗』に「話 の根をほじって、相手のーを突き留めようとした」とある。 単なる気持ちというより望みをさす例が多い。単真意・Q本 心・本音 ほんかくてき【本格的】簡略化したり自己流に変えたりせず に本来のやり方をそのまま行う意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈|な論文〉〈|な発声〉〈素人離れした|な 演技〉のアマチュアの趣味という域を脱し、専門家並みの技 術を獲得している場合のほか、「|な練習」「|に習い始め る」のように、小手先ではなく本腰を入れてといった意味合 いでも使われる。「雨が|になってきた」のように人間の行 為以外にも用いる。公式・正式・Q本式 ほんき【本気】表面だけではない本当の気持ちの意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ーになる〉〈ーで取り組む〉 〈ーを出す〉武者小路実篤の『友情』に「病気をーに見舞 ったのか、ただ礼儀に見舞ったのか」とある。ふざけていた り冗談半分のいいかげんな気持ちだったりという点をきっ <983> ばりと否定する語であり、そのうち最も真面目な段階が 「真剣」で、この語はもう少し幅が広い。ひ真剣 はんぎまり【本決極まり】本式に決まる意で、会話やさほ ど硬くない文章に使われる表現。〈採用がーになる〉〈理事 会を通ればーだ〉Q確定・決定・内定 ぼんくら【盆暗】ぼんやりして気の利かない意で、主にくだ けた会話に使われる古風な俗語。へーで場の空気が読めな い)へこの忙しいのにぼうっと突っ立ってる奴があるか、こ のー)盆の上の勝負に暗い意の賭博用語からという。ひ Qとんちき野暮天 ほんご【本碁】囲碁の意で、会話やさほど改まらない文章に 使われる漢語。〈小さい時からーに親しむ〉同じ碁石を使 う「五目並べ」などの遊びと区別して囲碁をさす。ひQ囲 碁・碁 【本国】生まれ育ちずと暮らしてきた国の意で、 改まった会話や文章に用いられる正式な感じの硬い漢語。 〈留学期間終了後ただちにーに帰還する〉特に感情を交え ないで用いる。「ーに送還する」の場合は、国籍のある国を さす。植民地に対して本来の国土をさす用法もある。「 からの指示を待つ」のように、海外に派遣された者から見 た自国の政府などをさすこともある。ひ故国・自国・Q祖国・母 国・本土 ほんしき【本式】簡略化せずに本来の形に従ったの意で、会 話にも文章にも使われる漢語。へーの懐石料理へーに習 うへーのやり方図伝統的に正しいとされてきた形。公 式・正式・Q本格的 ほんせん ほんしつ【本質】それ自体に本来そなわっている根本的な性 質をさし、改まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。 〈ーをとらえる〉〈ーを見失う〉〈ーに迫る〉〈ーを突く〉 島木健作の『生活の探求』に「ただそれだけでー的に高く立 派な道であるという考え」とある。Q核心・基底 ほんじつ【本日】「きょう」の意で、改まった会話や文章に用 いられる丁重で格式ばった漢語表現。〈一開店〉〈一の予定〉 〈一限り有効〉〈一のところは〉〈一中にお召し上がり下さ い〉の井伏鱒二に『本日休診』と題する小説があり、「開業 一周年の記念日には、「一休診」の札をかけ、八春先生が留 守番で、ほかのものはみんな遊山に出ることにした」とあ る。ひきょう・Qこんにち ほんしょうぎ【本将(將)棋】将棋の意で、会話や軽い文章に 使われる漢語。〈小学校に上がる前からーが強かった〉 「挟み将棋」や「将棋倒し」などの遊びと区別するための言 い方。単将棋 ほんしん【本心】本当の気持ちの意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈—から謝る〉〈—を明かす〉〈—を打ち明け る〉②獅子文六の『沙羅乙女』に「は藻の蔭の金魚のよう に、見え透いている」とある。表面上とは違う気持ちだと 推測される場合に使う。「—に立ち返る」のように、本来の 正しい心の意でも使う。脇中・真意・心中・内心・本意・Q本音 胸の内 ほんせき【本籍】その人の戸籍のある場所をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ー地〉〈ーを移す〉専原籍 ほんせん【本船】船団の中心となる船や、はしけに対する本 <984> ほんたい 体に相当する大型船をさして、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈ー渡し〉〈桟橋からはしけでーに向かう〉 親船・Q母船 はんたい【本体】物事の真の姿をさし、改まった会話や文章 に用いられる硬い漢語。〈ーを明かす〉神社の神体、寺院 の本尊をさすこともある。「ーだけの値段」のように、機械 などの付属品を除く主たる部分をさす場合は日常語。現象 を超越してその背後にある恒常的な存在をさす場合は哲学 の専門語。専実体・Q正体 ほんだい【本題】話題の中の中心的な部分をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈そろそろ—に入る〉〈話が—から それる〉②単発の「話題」に比べ、周辺的な部分を除いた本 格的な感じがある。志賀直哉の『濁った頭』に「事件の—に は全然触れずに」とある。Q主題・テーマ・話題 ほんだな【本棚】本を並べておくための棚の意で、会話にも 文章にもよく使われる日常語。〈リビングの壁に吊ったー〉 へーに参考書を並べる〉福原麟太郎の『書斎』に「書庫み たいな、ただーを、列べたり壁によせて立てたりしてある 室」とある。「書架」はもちろん「書棚」よりも一般人の日 常生活にとけこんだ感じがある。書架・Q書棚・本箱 ほんと『本当』「ほんとう」の意でくだけた会話によく使われ る日常語。へえ?それーの話?信じられないなあへーの ことだってばぐうそ」と対立。しばしば片仮名書きされ る。刂実際・真実・Qほんとう ほんど【本土】政治・経済・地理的に中心となる国土をさして、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈上陸〉 に渡る)島から見た主要な陸地をさす場合もあり、「アメ リカー」はハワイなどを除き、日本では本州をさす用法も ある。呂故国・自国・祖国・母国・Q本国 ほんとう【本当】偽りでない事実・真実、本来の姿をさし、会 話にも文章にも使われる日常の基本的な漢語。「のこと を言う」〈ーは違う〉〈そうなるのがーだ〉「うそ」と対 立。志賀直哉の『和解』に「大きな愛という言葉の内容を本 統に経験した事もない人間が無闇にそんな言葉を使うもの ではない」とあるように、「本統」という漢字を当てるケー スも見られる。専実際・Q真実・真理・ほんと・本来 ほんどう【本堂】本尊を安置し、寺院の中心をなす堂宇をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。へお寺のーを再建す る) 込金堂 ほんとうに【本当に】程度の大きさを強調する場合に、会話 にも文章にも使われる表現。〈あのときはーうれしかった〉 「何と申し上げたらよいか〉の「実に」や「まことに」以 上に真実の意を残しながら程度の甚だしいことに重心を移 した用法。専実に・ほんとに・Qまことに ほんとに『本当に』「ほんとうに」の意で、会話によく使われ るくだけた表現。〈ー安い〉〈ー旨かった〉〈ーしょうのない 奴だ〉刂実に・Qほんとうに・まことに ほんにん【本人】別人や代理のものではなくその人自身とい う意味で、会話にも文章にも使われる漢語。へーに直接知ら せる〉へーの意志を尊重する〉へーを呼んで確かめる〉へー が名乗り出る〉乃当人 ほんね【本音】本当の気持ちを表す言葉の意で、会話や軽い <985> 文章に使われる、いくらか古くなりかけている口頭語的な 表現。〈ーを漏らす〉〈ーを吐く〉(ついーが出る)②里見弾 に『本音』と題する小説がある。「建前」と対立する語で、 見かけや発言と違うことを考えていると思われる場合に使 う。脳中・真意・心中・内心・本意・本心・胸の内 ほんねん【本年】「今年」の意で、かなり改まった会話や文章 で用いられる硬い感じの漢語。「の下半期には景気が回 復する見通し〉へーもよろしく御厚誼の程を願いあげま す〉へーをもちまして創設十年を迎えます〉とし・Qこん ねん ほんねんど【本年度】「今年度」の意で、改まった会話や硬い 文章に用いられる、正式な感じを伴う漢語。〜の予算を執 行する〜〜の事業を粛々と進める〜〜「今年度」より形式 ばった雰囲気がある。意味の上で「前年度」や「次年度」と 対立する。文体的なレベルは「昨年度」「明年度」でも統一 がとれる。乃今年度 ほんのう【本能】動物が生まれながらにして持っている行動 様式をさし、会話にも文章にも使われるいくぶん専門的な 漢語。〈的な行動〉〈のまま自由奔放にふるまう〉〈 のおもむくまま〉〈を隠す〉川端康成の『千羽鶴』に 「女のーの秘術のようであった」とある。先天的 ぼんのう【煩悩】心の乱れを意味する仏教語。古めかしいだ けでなく、現代でも抹香くさい感じを意識する人も多い。 〈百八つのー〉へーのとりこになる〉夏目漱石の『草枕』に 「かくーを解脱する」とある。専妄想 ほんのり色・明かり・暖かさ・匂い・味などがほんの少し感じ ほんみょう られる意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。 〈一頬を染める〉〈一色づく〉〈一赤みがさす〉〈一明るくな る〉〈一暖かい〉〈一匂う〉〈一甘い〉ひかすか・Qほのか ほんばこ【本箱】本を収納するための箱型の家具をさし、会 話にも文章にも使われる日常語。〈一の奥にしまいこむ〉 書棚などよりも扉のついたものが多い。単書架・Q書棚・本棚 ほんぷく【本復】全快の意で、会話にも文章にも使われる古 風な漢語。〈短期間にーまでこぎつける〉(ここまで来れば ーが近い)僅我よりも病気の連想が強い。単完治・Q全快 全治 ほんぼし【本ポシ】真犯人を意味する隠語。〈間違いなく だ〉〈ーにたどり着く〉漢字で書けば「本星」となるが、 ふつう「本ポシ」または「ホンポシ」と書く。 はんみよう【本名】芸名・筆名・四股名・源氏名なとでない 戸籍上のほんとうの名前の意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈俳優のーを調べる〉へーで作品を発表する〉ち なみに、二葉亭四迷の本名は長谷川辰之助、鷗外の本名は林 太郎、漱石の本名は金之助。太宰治は『富嶽百景』に「天下 茶屋という、小さな茶店があって、井伏鱒二氏が初夏のころ から、ここの二階にこもって仕事をしている」と小説の中に 「井伏鱒二」を登場させ、三ツ峠頂上のパノラマ台で「放屁」 する場面を描いて井伏に叱責され、「事情の如何を問わず ーを出すことは、井伏さんのお気持ちに何かとわずらわし さを加えるのみにて」云々という謝罪の手紙を書いた話は 有名。井伏の本名は「満寿二」だから、作中に出るのは正確 には筆名であるが、手紙では「実名」といった意味合いでこ <986> ほんもの の「本名」という語を用いている。実名 ほんもの【本物】にせものや見かけだけよいものでなく、間 違いなく本当のものの意で、くだけた会話から文章まで幅 広く使われる基本的な日常語。〈ーが手に入る〉へーのダイ ヤ〉へーの実力〉②太宰治の『斜陽』に「ーの貴族は、まあ、 ママくらいのものだろう」とある。「にせもの」と対立。 現品・現物・Q実物 ほんや【本屋】本や雑誌を売る店の意で、会話や硬くない文 章に使われる日常語。へに立ち寄る)へーで立ち読みす る)出版社や編集者を揶揄して言うこともある。その場 合は俗語的。卩出版社・書肆は・Q書店・書房・版元 ほんやく【翻訳】ある言語の表現の意味を他の言語で表現す ることをさし、会話にも文章にも使われる漢語。「家」 〈一権〉〈フランスの短篇小説をーする〉小林秀雄の『コ ツホの手紙』に「文学はーで読み、音楽はレコードで聞き、 絵は複製で見る」とある。「訳」より正式な感じがする語。 専訳 ほんやり色や形、思考や感情、記憶や印象などがぼやけて はっきりしない様子をさし、会話やさほど硬くない文章に 用いられる和語。〈ー見える〉〈ーした知識〉〈ーと感じる〉 荅川龍之介の『或旧友へ送る手記』に「何か僕の将来に対 する唯ーした不安である」とある。「車窓から風景を一眺め る」「」ていて乗り越す」のように、意識や注意が集中し ない状態をさすこともある。夏目漱石の『明暗』に「霧とも 夜の色とも片付かないものの中に一描き出された町のさま はまるで寂寞たる夢であった」とある。渓然 ぼんよう【凡庸】特にこれという取り柄のないあたりまえの といった意味合いで、主に文章中に用いられる、やや古風で 硬い漢語。〈な人物〉〈な作家〉〈な作品〉図単に珍し くないというだけでなく、優れたところがないという点に 意味の中心がある。小林秀雄の『ゴッホの手紙』に「翻訳文 化などという脆弱な言葉は、な文明批評家の脆弱な精神 のなかに、うまく納っていればそれでよい」とある。りあり きたり・ありふれた・Q陳腐・月並み・平凡 ほんらい【本来】もともとそうあるべき、という意味合いで、 改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーの任務〉 〈ーの目的〉〈それがーの姿だ〉〈ーの調子に戻る〉の「元 来」に比べ、あるべき姿を問題にする感じがあるだけに、そ れが忘れられているか、失われてきたかした場合によく用 いる傾向がある。Q元来・もともと ほんりゅう【本流】川の根幹をなす大元の流れの意で、会話 にも文章にも使われる漢語。へーとは別の流れ〉「支流」 に対する語で、「保守ー」のような比喩的用法の場合も、中 心をなす意の「主流」に比べ、本来の正統的なといったニュ アンスが残っている。刂主流 <987> ま ま【間】①一続きの物や事の間の切れ目をさし、会話にも文 章にも広く使われる日常の和語。〈が空く〉〈が抜け る〉〈がない〉〈話のの取り方がうまい〉〈がもたな い〉〈をもてあます〉尾崎一雄は下曾我の自宅で「ちょ っとーをおいて読者に考えてもらいたいところは一行アキ にしたり、行を変えるのもそうだし、棒を引っぽるとか」と 語った。Q間合間②個人住宅の中の区切られた空間 をさし、会話にも文章にも使われる和語の構成要素。〈 数が多い〉〈居〉〈寝ね〉〈応接〉〈六畳〉〈単独で は使わない。「室」に比べ和風で古風な感じがある。「板の 「床の」もあるから、独立した部屋には限らない。 Q室・部屋 ま【廐】人心を惑わし人に害を与える悪霊をさし、主に文章 に用いられる漢語。〈一の手が伸びる〉〈一の交差点〉〈一 の八回裏〉〈一に魅入られる〉四川端康成の『山の音』に 「一が通りかかって山を鳴らして行ったかのようであった」 とある。「一がさす」の形で、悪い行為を起こす不可解な理 由をさす用法もあり、その場合は会話でも使う。「魔物」上 り抽象的な感じがある。悪魔・魔女・Q魔物 マーク特徴的な記号をさし、会話や硬くない文章に使われ る外来語。〈|シート〉〈若葉〉〈地図上の交番の〉〈赤 でーをつける〉の「すばらしいタイムをーする」のように マイカー 「記録する」意にも、「がきつい」のように特定選手の動 きに注意する意にも使う。ひ記号・Q印・符号 マーケット ①「市場」の意で、会話にも文章にも使われ る専門的な外来語。〈一リサーチ〉への反応が鈍いふ市 場②食料品などの日用品を商う各種の小さな個人商店 が集まっている場所をさし、会話にも文章にも使われる、や や古風な感じの外来語。〈駅前の—で買い物をする〉の一つ の建物の中を区切って各店の売り場を設ける形を連想させ やすい。スーパーマーケットは「スーパー」と略す。ひいち Qいちば② マージン「利鞘」および手数料をさして、やや専門的ながら主に会話やさほど改まらない文章に使われる外来語。 〈ーを稼ぐ〉(五パーセントのーを取る)巻差益・Q利鞘 まい【舞】音楽の調べに合わせて体や手脚を旋回させながら いろいろな姿を演ずる滑らかな動きをさし、会話にも文章 にも使われる古風な和語。〈天女の—〉〈舞妓がーを舞う〉 の上下の動きを中心とする「踊り」に対して、足をすべらせ る旋回運動が基本になるという。谷崎潤一郎の『朱雀日記』 に「京のーは如何にも大まかな、悠長なもので」とある。 踊り・ダンス・舞踏・舞踊 マイカー「自家用車」をさす比較的新しい和製英語。〈通 勤〉〈族〉次々に新しい英語に飛びつく日本人の習性 を、企業は売り込み用に、マスコミは視聴率アップに利用す る。必要に応じて自然に増える外来語は何も問題はないが、 このような商業主義によって英語が大量輸入され、大幅な 対米貿易不均衡を来している。一般民衆が手軽で金のかか <988> まいかい らないおしゃれとしてそれらを次々に身につけてきた。そ こに英語の日本的な用法や完全な和製英語が続々と加わっ て出まわり、目下混乱を極めている。特に和製英語は見極 めも難しく、思わぬところで無知をさらけだしたり、欧米 に対する劣等感を印象づけたりする危険と背中合わせにな っている。 まいかい【毎回】どの回も皆同じくの意で、会話にも文章に も使われる日常の漢語。〈一のように遅れて来る〉〈一好成 績を収める〉毎度 まいこ【舞子(妓)】祇園などで舞いを舞って酒宴に興を添 える職業の少女をさし、会話にも文章にも使われる和語。 へーの修業〉〈円山公園にーの姿がちらほら見える〉専綺麗と ころ・芸妓・Q芸子・芸者 まいそう【埋葬】死体や遺骨を土中に埋めて葬る意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈亡母のーを済ませる〉 小林秀雄の『ゴッホの手紙』に「僕等を幽閉し、監禁し、 ーさえしようとするものが何であるかを、僕等は、必ずし も言う事が出来ない」と比喻的に抽象化した例があるが、 「葬る」と違い一般に比喻的な用例は少ない。専弔う・Q葬る まいど【毎度】その度毎にの意で、会話やさほど硬くない文 章に用いられる漢語。〈ーおなじみの〉へーのことで〉へー ありがとうございます〉へー同じ失敗を繰り返す〉の「毎 回」に比べ慣用的な表現の中で使われる例が多く、それ以 外はやや古風な感じが伴う。専毎回 まいにち【毎日】日頃または、一日一日どの日もの意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な漢語。「の生活」「同じ道を通る」「散歩を欠かさない」「元気に遊びまわっている」「掃除も」となると大きな負担になる」「夏目漱石の『坊っちゃん』に「一学校へ出ては規則通り働く、ーー帰って来ると主人が御茶を入れましょうと出てくる」とある。「日々」に比べ、一日ずつが意識されやすい。日々・連日 まいる【参る】①「行く」「来る」の意の謙譲語として、改ま った会話や手紙などに用いられる和語。〈間もなくーりま す〉谷崎潤一郎の『細雪』に「学校を出て間もなくーり ました」とある。「お参りする」の形で神仏を拝む意にも使 う。来る・ゆく②相手の力に屈して降参する意で、くだ けた会話や軽い文章に使われる和語。森鴎外の『青年』 に「どうだ、ー・ったか」とある。「体がすっかり」「精神 的に」のように「弱る」意でも使い、「女の子にすっかり 」のように、ぞっこん惚れる意でも用いる。児屈服・Q降 参・降伏 まえ【前】空間的な進行方向にあたる「前方」時間的に早い 「以前」の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使わ れる日常の基本的な和語。〈ーに見える〉〈玄関のーに立 つ〉〈大勢のーで話す〉〈ーの社長〉〈ずっとーの話だ〉〈ー から考えていた〉三木卓の『隣家』に「ーにも幾度か、そ ういう事があったような気がする」とある。「後ろ」あるい は「あと」「のち」と対立。以前・先・正面・前部・Q前方・前面 まえがき【前書き】書物や学術論文などで本文の前に付ける、 挨拶や以下の本文の前置きなどを記した文章をさし、会話 にも文章にも使われる和語。〈ーで断っておく〉「はしが <989> き」ほと改まらず、「序文」ほど硬い感じがなく、必ずしも一冊の本でなくとも、正式の文章などの前に置く場合もある。冊・緒言・序文・Qはしがき まえかけ【前掛け】仕事をする際に衣服の汚れを防ぐため体 の前、特に腹部から下を覆う布をさし、会話にも文章にも 使われる和語。〈ーを掛ける〉へーを当てる〉柳田国男の 『清光』に「相撲取りの化粧まわし見たようなー」とある。 Qエプロン・前垂れ まえだれ【前垂れ】商家の使用人などが衣服の汚れを防ぐた めに腰から下を覆う布をさし、会話にも文章にも使われる 古風な和語。へー姿で店に立つ」「前掛け」の一部で、昔 風の雰囲気がある。ひエプロン・Q前掛け ま元ぶれ【前触れ】ある事柄の起こるのに先立って生じる何 らかの変化をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる、 やや古風な和語。〈天変地異の—〉〈台風の—〉島崎藤村 の『破戒』に「病気の—も無くて、突然死去した」とある。 「何の—もなくやって来る」のように「予告」を意味する用 法もある。ひ兆し・Q前兆・兆候・予兆 まがいもの【紛い物】「偽物」の意で、会話や軽い文章に使 われる、やや古風な和語。〈古道具屋でとんだーをつかまさ れた》「紛らわしい物」の意。専贋物・偽物・Qにせ物・にせ 者 まえもって【前もって】「あらかじめ」の意で、主として会話 に使われる日常的な和語。へー連絡しといたから大丈夫だ ろう〉へー用意しておかないと間に合わないよ〉ひQ予めめ・ 事前に まぎ まかせる【任せる】判断や実行を他人にやらせる意で、くだ けた会話からさほど硬くない文章まで使われる日常的な和 語。〈細かい計画はお前にーよ〉へあとはみんな後任にー せよう夏目漱石の『倫敦塔』に「閑にー・せて叮嚀な楷 書を用い」とあるように、抽象化した意味合いでも用いる。 単委任・Q委ねる まかふしぎ【摩訶不思議】きわめて不思議な意で、改まった 会話や文章に用いられる古めかしい漢語。「な幻影が立 ち現れる〉(これは」たちどころに姿が消えた)「摩訶」 は「大」の意で、「不可思議」以上に古めかしく大仰でおど ろおどろしい感じ。り怪奇・奇異・奇怪・奇っ怪・奇妙・奇妙奇天 烈・Q不可思議・不思議・変・妙 まがる【曲がる】方向が直線的でなくたわんだり折れたり傾 いたりする意、また、状態や性格が正常でない意で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈腰が—〉〈道が—〉〈次の角で右に—〉〈ネクタイが ー・っている〉〈根性がー・っている〉〈ー・ったことが大嫌 い〉森鷗外の『魚玄機』に「生れた家は、長安の大道から 横にー・って行く小さい街にあった」とある。専屈曲・Q湾曲 まがわるい【間が悪い】その場にそぐわなくて具合の悪い気 持ちをさして、会話や軽い文章に使われる和語表現。「・ くて目をそらす〉〈ひどく—思いをする〉森鷗外の『青 年』に「少し間の悪いような心持」とある。専面映いい・気恥 ずかしい・決まり悪い・照れ臭い・恥ずかしい・Qばつが悪い まき【薪】木を切り割りしてほぼ一定の長さ・太さにそろえた 燃料をさし、会話にも文章にも使われる和語。へーストー <990> まきあげる ブ〜を割る〜〈暖炉にーをくべる〜池波正太郎の『剣 客商売』に「まるで、鋏で紙を切るようにーを割っていた」 とある。「たきぎ」より太く形が整っている。ひたきぎ まきあげる【巻(捲)き上(揚)げる】脅したり騙したりして奪 い取る意で、会話や軽い文章に使われる、いくらか俗っぽい 和語。〈脅して金をー〉(ことば巧みに金をー)②「ふんだ くる」と比べ、実際の暴力より、相手が手放さないでいられ ないように誘い込んだり心理的に追い詰めたりする場合に 用いる傾向が強い。専う・せしめる・取り上げる・ひったくる Qふんだくる・分捕る まきぞえ【巻き添え】自分と無関係な事件に巻き込まれて損害を受ける意で、会話にも文章にも使われる和語。へになる〈ーを食う〉ひQそばづえ・とばっちり まきちらす【撒き散らす】あちこちに散らばるように撒く意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈水を—〉(公害を—〉 〈噂を—〉②芥川龍之介の『仙人』に「かき集めた紙銭を(略) せわしく足もとへー・した」とある。ひQばら撒く・振り撒く まきつける【巻き付ける】紐や長い布などを物の周囲にぐる ぐる巻く意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。 〈頭に包帯を—〉〈電線に絶縁テープを—〉③岡本かの子の 『やがて五月に』に「新緑の風物を胴に—もののように、一 人の乙女が丘の陰から頂の平へ、くるりくるり身を廻しな がら現れた」とある。ひ巻く まきば【牧場】「ぼくじょう」の意で主として文章に使われ る、古風で詩的な雰囲気を感じさせる和語。〈霧のたちこめ たーの朝〉へを見下ろす丘にたたずむ〉永井荷風の『あ めりか物語』に「彼方には気も晴々するーを望み」とある。 現代における生活語彙としては「ぼくじょう」のほうが一般 的。そのため、漢字表記は「ぼくじょう」と読まれやすい。 「ぼくじょう」ほど大規模でなく近代的な設備も整備されて いないような印象を与える傾向がある。文学的な響きがあ るため、くだけた日常会話で用いると、少し気どった感じを 与えやすい。のんびりとした昔なつかしい雰囲気があり、 成分無調整の自然で濃厚な牛乳が飲めそうなけはいを漂わ せる語。ほくじょう まく【巻(捲)く】軸の周囲に丸くなる、物を丸く回す意で、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる基本的な和語。 〈渦を—〉〈時計のねじを—〉〈包帯を—〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「何が釣れたって魚は握りたくない。魚も握ら れたくなかろう。そうそう糸をーいて仕舞った」とある。 乃巻き付ける まく【撒く】ばらまく意で、くだけた会話から硬い文章まで 使われる日常の和語。〈庭に水を—〉〈節分に豆を—〉〈駅 前でびらを—〉②横光利一の『春は馬車に乗って』に「此の 花(スイートピー)は馬車に乗って、海の岸を真っ先きに春を ー・きー・きやって来たのさ」とある。込時く まく【蒔(播)く】土の上に種を散らして軽く土をかける意で、 くだけた会話から硬い文章まで広く使われる和語。〈畑に 種をー〉(・かぬ種は生えぬ)漢字としては「播」が伝統 的だが、移し植える意から転じた「蒔」を用いることが多 い。ひ撒く まく【幕】仕切りや覆いにする幅の広い長い布をさし、くだ <991> けた会話から文章まで広く使われる日常の漢語。へーを垂 らす〈芝居のーが上がる〉永井荷風の『すみだ川』に 「初秋の黄昏はーの下りるように早く夜に変った」とある。 ひ緞帳・Q幔幕 まくらをかわす【枕を交わす】間接的に「性交」をほのめか す古めかしい和風の言い方。「した仲男女が共寝を する意から肉体的な結合を推測させる、気品を保つ婉曲 表現。専営み・エッチ・関係②・合飲・交合・交接・情交・情を通じる Q性交・性行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・契る・同衾共 寝・寝る②・懇ろになる・ファック・深い仲になる・房事・交わる・やる ③・夜伽 まくる【捲る】覆っているものを端から裏返す意で、会話で も文章でも広く使われる日常生活の和語。〈着物の袖を—〉 〈ズボンの裾を—〉〈尻を—〉のいくつも重なっている場合 に使う「めくる」とは違い、覆っているものを折り返して内 部を露めわにする意に用いる。めくる まけずぎらい【負けず嫌い】勝負事で負けるのを極度に嫌が る性質をさして、会話や硬くない文章に使われる和語。へー だから自分が勝つまでやめようとしない)僕勝ち気・きかん 気・Q負けん気 まける【負(敗)ける】戦いや競技などで相手に屈する意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。「が勝ち」〈試合に」〈ものか〉高井有一 の『北の河』に「・けたんだ。口惜しいだろう。口惜しい だろう。これを忘れるなよ」とある。「暑さに」「相手の 熱意に」「誘惑に」のように、対象に抵抗できずに屈す まことに る意にも使う。「勝つ」と対立。収戦・敗北・Q敗れる まけんき【負けん気】相手に負けまいとする気持ちをさして、 主に会話に使われる表現。へーの強い子供〉弜勝ち気・きかん 気・Q負けず嫌い まごこ 【孫子】「子孫」の意で主に会話に使われる古風な和 語。へこの机はーの代まで使える〉「ーを呼び集める」の ように、単に孫と子をさす用法もある。ひ後裔・Q子孫・末 裔 まごころ【真心】偽りのない真情の意で、会話にも文章にも 使われる古風な和語。〈ーを伝える〉〈ーをこめる〉呂誠意・ Q誠 まごつく状況ややり方などがわからなくてとまどう意で、 主に会話に使われる和語。入り口がわからずー〉へ慣れな い仕事にー〉夏目漱石の『吾輩は猫である』に「あてのな い探偵のようにうろうろ、ー・いている」とある。Qとま どう・面食らう まこと【誠】心の底の本当の気持ちの意で、会話やさほど硬 くない文章に使われる古風な和語。〈ーの心〉へーを尽く す〉「ーのことか」のように真実の意でも用い、「ーに申 し訳ない」のように「本当に」の意でも用いる。「真事」か ら。誠意・Q真心 まことに【誠(実・真・洵)に】「本当に」の意で、いくぶん改ま った会話や文章に使われる、やや古風な和語。「結構な 品〉〈ー遺憾だ〉〈ー申し訳ない〉〈ー困ったもんだ〉谷崎 潤一郎の『細雪』に「今度のことはー已むを得ない事情なの だ」とある。Q実に・ほんとうに・ほんとに <992> まごまごうろたえてまごつく意で、会話や軽い文章に使わ れる擬態語の和語。〈窓口がわからずーする〉(この際、ど うしたらいいかわからずにーする)②動きに重点のある 「うろうろ」と違い、心の状態に重点があるため、迷ってい る当人から見た例が多い。ひQうろうろ・うろちょろ まさか【真逆】いくら何でもそれは信じられないという気持ちを表し、主に会話で使われる和語。本気にするとは思わなかった〉へ、いくら子供でもそんな馬鹿な事をするはずはない)森鷗外の『普請中』に「一人じゃあるまい」とある。「もしも」と同様、「の時に備える」という用法もある。漢字表記は、近年の俗語「まぎゃく」と読まれかねない。よよもや まさかり【鉱】木を切り倒すための大型の斧をさして、会話 にも文章にも使われる和語。〈ーを担いで山に入る〉Qお の・なた まさぐる【弄る】指先で触って感触を楽しむ意で、主に文章 中に用いられる古風な和語。赤ん坊が母親の乳房を—〉 〈数珠を—〉の大きな対象には使わない。ひいじくる・Qいじ る・ひねくる・もてあそぶ まさご【真砂】細かい砂をさし、まれに文章中に用いられる 古めかしい雅語的な和語。〈浜のー〉ひいさご・Q砂 まさしく【正しく】疑いなくの意の「まさに」と同じ意味で、 改まった会話や文章に用いられる、やや古風な和語。へーそ の男だ〉へーそれが求めていた姿だ〉図川端康成の『東京の 人』に「今日、母から受けた感じは、ーそうであった」とあ る。ひまさに まさに【正(当)に】ほんとうに、間違いなくの意で強調する ときに、会話にも文章にも使われる、いくぶん硬い感じの 和語。〈ーその通りだ〉〈ー天才の名に恥じない出来栄え〉 〈一鬼の形相だ〉今一出発しようとしている」「始ま ろうとするその瞬間」のように、今にも事が行われそうな 状態を強めるときにも使い、その場合は「将に」とも書く。 ひまさしく まざる【交ざる】ある種類のものに別の種類のものが少なか らず入り込んで一緒になる意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈白いセーター に赤い花模様がー〉〈ひなあられに甘納豆がー〉②二葉亭四 迷の『浮雲』に「私の言葉には漢語がーから」とある。話の 中に英語か専門語か方言かが入り込む場合、大部分はそれ 以外の日本語なので「交じる」のほうが自然に感じられ、 「交ざる」にすると大量に入る感じが強くなる。同様に、 「男の中に女が交じる」とすると、女の割合がごく少なく互 いに独立して存在している感じだが、「男と女がー・た集 団」となると、どちらも三割以上はいて両者が一体になって いそうな雰囲気に変わる。退ざる・Q交じる・混じる まざる【混ざる】ある種類のものに他の種類のものが少なか らず入り込んで一体化する意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。二つの色が ー〉〈紅茶にミルクがー〉の「混じる」より混合比が大きい 感じがある。交ざる・交じる・Q混じる まじ「真面目」の短縮形。近年、若年層の間で広まった俗語。 〈ーで?〉〈ーかよ〉ゆふつう片仮名で書く。専実に・ほんと <993> うに・Oほんとに ましかく【真四角】「正方形」の会話的な表現。「な土地」 島田雅彦の『観光客』に「形式にはめ込まれてになった 紳士淑女」とあるように、「正方形」と違い、比喻的に使う こともある。刂正方形 マジック手品・奇術・魔術・魔法など不思議な現象を引き起 こすものの総称として、会話にも文章にも使われる外来語。 「ショー〉へにひっかかる〉の手品」や「奇術」よりも 大がかりな装置を使う雰囲気がある。信じられないほどの 効果をあげる巧妙な采配などをさす比喩的用法もある。 Q奇術・手品・手づま・魔術 まして【況して】実現可能性のより低い事実をあげ、だから それより可能性の高いことについては当然成り立つとして 次を認めさせる場合に、会話にも文章にも使われる和語。 〈高校の数学の問題が解けるのだから—中学のは簡単に解け るはずだ〉〈子供でも持てるぐらいだから—大人なら軽々と 持つだろう〉なおさら まじめ【真面目】真剣で誠実な意として、くだけた会話から 文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。「にこつ こつやる〉へ一方で面白みがない《態度がだ》へな 顔〉へな話〉へに答える》夏目漱石の『坊っちゃん』に 「こんな聖人にに御礼を云われたら、気の毒になって、赤 面しそうなものだが」とある。呂堅物・生真面目・Q真剣・真摯し 真率しん まじゅつ【魔術】魔法の力で不思議な現象を引き起こす術、 現実には大がかりなマジックをさし、会話にも文章にも使 まじる われる、やや古風な漢語。〈ー師〉〈ーで観客をあやつる〉 の「手品」や「奇術」より大がかりな仕掛けを使う感じがあ り、「マジック」以上に摩訶かふ不思議と思わせる印象が強い。 り奇術・マジック・Q魔法 まじよ【魔女】魔法を使う女をさし、会話にも文章にも使わ れるやや古風な漢語。〈狩り〉中世ョロッパの民間伝 承で宗教的異端を説く妖女をさし、悪のイメージが濃い。 有島武郎の『或る女』に「母は自分以上の法力を憎むーのよ うに葉子の行く道に立ちはだかった」とある。専魔・魔物 ましようじき【真正直】「正直」の強調表現で、改まった会話 や文章に用いられるやや古風な語。へに告白する)ゆくだ けた会話では「真っ正直」ということが多い。愚直・Q馬鹿 正直・真っ正直 ましょうめん【真正面】「正面」の意を強めて会話にも文章にも使われる表現。〈ーを向く〉〈ーから撮った写真〉「正面」に比べ、建物の一部よりも方向や位置関係に使う例が多い。「堂々とーから対決する」のように抽象化した比喻的用法もある。「まっしょうめん」は会話的。正面・Q真向かいまじる【交じる】別種のものが入り込む意で、くだけた会話から硬い文章まで広く使われる日常の和語。〈漢字と仮名がー〉〈方言がー〉〈男の中に女がー〉小林多喜二の「防雪林」に「白髪のー・っているモシャモシャした髪」とある。「混じる」と違って、互いに区別可能な状態の場合に用いる表記。なお、「不良品がー」のように、好ましくないものの場合には「雑じる」と書く例もある。交ざる・混ざる・混じるまじる【混じる】別種のものが混合する意で、くだけた会話 <994> まじわる から硬い文章まで広く使われる和語。〈酒に水がー〉赤に 黄色がー〉〈外国人の血がー〉〈主観がー〉水上勉の『雁 の寺』に「つきあげてくる嬉しさとかなしみがー・って膝を 固くした」とある。「交じる」と違い、異種のものが融けあ って判別しにくくなった状態の場合に用いる表記。なお、 「不純物がー」のように、好ましくないものの場合には「雑 じる」と書く例もある。渇・交ざる・混ざる・交じる まじわる【交わる】間接的に「性交」を意味することのある、 やや古風な和語表現。〈男と女がー〉人と人との交わりの 意から、一組みの男女の親密な交際に限定し、含みとして その一行為である肉体的な交わりを類推させる。専営み・エ ッチ・関係②・合歓・交合・交接・情交・情を通じる・Q性交・性行為・性 交渉・性的行為・セックス・抱く②・契る・同衾・共寝・寝る②・懇ろに なる・ファック・深い仲になる・房事・枕を交わす・やる③・夜伽 ます【増す】「ふえる」「ふやす」に近い意味合いで、会話で も文章でも広く使われる日常の和語であるが、会話的な 「増える」「増やす」より文体的なレベルが少し高く、ごく くだけた会話ではやや水くさい感じに響くこともある。 〈水かさがー〉〈圧力がー〉〈人気がー〉〈年々暑さがー〉 〈勢いをー〉〈速度をー〉〈警戒はいよいよ厳重さをー〉 の円地文子の「妖」に「薄鈍びて空に群立つ雲の層がー・して、 やがて又小絶えている雨が降りはじめるのであろう」とあ る。ひQ増える・増やす まずい【拙い】「下手」の意で会話やさほど硬くない文章に使 われる和語。〈演技がー〉〈やり方がー〉〈ー絵でも飾らな いよりはいい〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「あんまりー から、漢学の先生に、なぜあんなーものを麗麗と掛けて置 くんですと尋ねた所、先生があれは海屋と云って有名な 書家のかいた者だと教えてくれた。海屋だか何だか、おれ は今だに下手だと思って居る」というふうに、この語と「下 手」とが一緒に出てくる一節がある。なお、「料理が下手 だ」が調理技術の評価なのに対し、「料理が」や「料理」 は直接には技術の評価でなく調理された物の味を問題にし ており、両者は意味合いが違うため、「料理は下手だが、素 材がいいのでー・くはない」という言い方も可能であり、味 に言及する場合は「不味い」と書くこともある。そのほか、 この語は「見つかると」「そりゃ」のように、困ったと いう意味でも使う。その場合、「下手をするとーことにな るぞ」というふうに「下手」と共存することもある。みつた ない・Qへた・へたくそ・へたっぴい 新聞・雑誌やテレビ・ラジオなどを通じて不特定多 数の人々に多くの情報を伝えること、また、その組織・機関 をさし、会話にも文章にも広く使われる外来語の略語。へー の論調〉へーにもれる〉へーが書き立てる〉の「マスコミュ ニケーション」(当初は「大衆通報」と訳された)の略。刂報 道機関 まずしい【貧しい】財産がなく収入も乏しい意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈家が—〉〈—暮らしに甘んじる〉 の芥川龍之介の『南京の基督』に「一家計を助ける為に、 夜々なその部屋に客を迎える」とある。「心が—」のような 比喻的用法もある。志賀直哉の『暗夜行路』にも「心の—事 程、惨めな状態があろうか」とある。貧弱・貧苦・貧困・Q貧 <995> 之 マスト帆柱の意で会話にも文章にも使われる外来語。 によじ登る今では「帆柱」より一般的だが、和風の船に は使いにくい。ひ帆柱 ますます【益益/益】前よりもさらにの意で、会話にも文章 にも使われる日常の和語。へーの御活躍を〉へー面白くな る〉(老いてー旺ぶん)安岡章太郎の『海辺の光景』に「ー 大食になって行き、その大食の原因である畑の労働に専念 するばかり」とある。「増す」意から。ひいよいよ①・Qいっそ う・ひときわ・ひとしお まㄝる年齢のわりに大人びているという意味で会話にも文 章にも広く使われる日常の和語。「・せた顔だちの子供 「・せた口を利く」永井荷風の『瀅東綺譚』に「細面の 顔立」とある。大人になってからは用いない。若いのに年 寄りじみている場合はこの語ではなく「老成」と言う。ひ老 成 また【又】同じことを繰り返すさまを表し、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われている日常的な和語。「来 てね」〈失敗した〉〈一逢う日まで〉夏目漱石の『坊っ ちゃん』に「一杯しぼって飲んだ。人の茶だと思って無暗 に飲む奴だ」とある。再度・Q再び また【股】胴から両脚の分かれ始める箇所をさして、会話や さほど改まらない文章に使われる日常の和語。〈内—〉〈 割り〉〈ーを開く〉永井荷風の『澤東綺譚』に「五月人形 のようにーを八の字に開いて腰をかけ」とある。人間に限 らず、「木のー」のように、一つの本から二つに分かれる箇 またたくま 所一般について用いる。股間・Q股座 まだ「未だ」いまだ実現しない、今でも続いているさまを表し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。ぐ起きるにはー早いぐーしばらく始まらないぐー続いているぐこっちのほうがーましだぐー遠いぐ尾崎一雄の『虫のいろいろ』に「未だ星の光りが残る空に、頂近くはバラ色、胴体は暗紫色にかがやく暁方がの富士」という一節がある。「暗紫色」のレベルからは「いまだ」と読むほうがふさわしいが、「光りの残る」でなく「光りが残る」との関係で考えると「まだ」と読むほうが文体のバランスがよい。ひいまだ またぐら【股座】主に人間の両脚の間をさして、主としてく だけた会話に使われる、やや俗っぽい和語。へーをくぐり抜 ける)Q股間にか股 またたく【瞬く】まばたきする意で、主に文章に用いられる、 古風で詩的な和語。〈間もあらばこそ〉野間宏の暗い 絵』に「円い小さい顔の中で可愛いいばっちりした眼をー き」とある。「夜空に星がー」のような比喩的な用法もあ る。ひしばたたく・Qまばたく またたくま【瞬く間】瞬きをするぐらいのごく短い時間をさ し、会話やさほと硬くない文章に使われる和語。ヘーに通り 過ぎるヘーに出来上がるヘーに平らげるヘー芥川龍之介 の『羅生門』に「はぎとった檜皮色の着物をわきにかかえ て、ーに急な梯子を夜の底へかけおりた」とある。所要時 間の短さを強調する誇張表現で、「幸せな日々はーに過ぎ る」のように実際にはある程度の時間の幅をさす。ふあっと <996> マタニティーウ いう間・一瞬・瞬間・瞬時・束の間 マタニティーウエア 妊産婦用の衣服の総称として会話でも 文章でも使われる比較的新しい外来語。へーを取り揃える の「マタニティードレス」より幅が広く、ズボン類なども含 まれる。専妊婦服・Qマタニティードレス タニティードレス 妊産婦用のゆったりとした服をさし、 会話でも文章でも使われる外来語。ゆったりとしたー ヘーだから、おなかが目立たないの「妊婦服」という語の 露骨さを回避するのに利用される。ちゃんとした英語だか ら、和製英語のような品格や教養の問題はないが、いくら か作為を感じることもある。業界では「妊婦」「妊娠」とい った生命誕生にかかわる性的な連想を遠ざけ、古くからあ る漢語を使わずに、わざわざ語感の利きにくい長い外国語 に逃げることでおしゃれな雰囲気をかもしだして売り上げ を伸ばそうとする意図が見えるからである。一般の主婦も 安易にこの語を使うと、自分でも恥ずかしいと思っている ような印象を与えるかもしれない。Q妊婦服・マタニティー ウェア または【又は】「あるいは①」の意味で、会話やさほど硬くな い文章に使われる日常の和語。〈電車ーパス〉ヘビールかワ イン、日本酒〉〈電話ーファックス、あるいはメールで連 絡する〉②夏目漱石の『吾輩は猫である』に「主人が出かけ て来たら、逃げ出すか、始めから向こう側にいて知らん 顔をする」とある。他と併用する場合は、「か」より大きく 「あるいは」より小さなまとまりに対応する傾向がある。 Qあるいは①・もしくは マダム「夫人」「奥様」の意で用いられた古めかしい外来語。 〈有閑〉〈パタフライ〉「パーの」のような水商売の 店の女主人をさす用法は今でも残っているが、一般家庭の 奥様連中を「マダム」と呼ぶのは相当古い感じになった。小 津安二郎監督の映画『淑女は何を忘れたか』(一九三七年) の配役表に「牛込の重役杉山坂本武」とあり、次の行に 「そのマダム千代子飯田蝶子」とある。Q奥方・奥様・婦 人 まだるい【間怠い】「まどろっこしい」の意。会話や硬くない 文章に使われる古風な和語。〈ー話し方〉の「まだるし」の 口語形。芥川龍之介の『地獄変』に「私のやり方が!・かっ たのでありましょう」とある。ひまだるこい・Qまだるっこい・ まどろこしい・まどろっこしい まだるこい【間怠こい】「まどろっこしい」の意。やや古風な 和語。〈ー・くていらいらする〉の「まだるこし」の口語形。 みQまだるい・まだるっこい・まどろこしい・まどろっこしい まだるっこい【間怠っこい】「まどろっこしい」の意の会話的 な和語。「ー・くて見ていられない」「まだるこい」に促音 を添加した強調形。「二葉亭四迷の『平凡』に「手拭を捻っ て向鉢巻ばかりではー」とある。ひまだるい・まだるこい・まど ろこしい・Qまどろっこしい まち【町】市や村と並ぶ行政区分としての意味や、家が建ち 並び多くの住民の集まっている地域などをきして、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。〈一起こし〉〈はずれ〉〈静かなー〉〈萩焼で名高い ー〉〈に出る〉〈一の名称が変更になる〉荻木のり子の <997> 詩『はじめての町』は、「はじめてのーに入ってゆくとき/ わたしの心はかすかにときめく」と始まり、「水のきれいな ー/ちゃちなー/とろろ汁のおいしいー/がんこなー/雪 深いー/菜の花にかこまれたー/目をつりあげたー」など、 さまざまな町の点描が続く。ひ街 まち【街】商店街や繁華街などのにぎやかな地域をさし、会 話でも文章でもよく使われる和語。〈とある—角〉への 灯〉へをぶらつく〉〈ネオンの瞬く—〉〈古本屋が軒を連 ねる—〉の室生犀星の『杏っ子』に「この憐れな親子はくる まに乗り、くるまを降りて、—に出て—に入り、半分微笑い かけてまた笑わず、紅塵の中に大手を振って歩いていた」と ある。「町」と比べ、特別な思いを込めて用いる抒情的な例 が目立つ。小都市を意味するときは「町」でも「街」でもし っくりせず「都市」と書くと、『言語生活』の「語感とイメ ージ」という座談会で辻邦生が発言している。ひ町 まちあい【待合】客が芸者を揚げて遊興するための貸席をさ して、会話にも文章にも使われる古風な感じの和語。〜茶 屋〜〜政治〜〜で芸者にうつつを抜かす〜〜Q料亭・料理屋 まちあいしつ【待合室】一般の利用者が列車の到着や自分の 順番などを待つための部屋をさし、会話にも文章にも使わ れる日常の表現。〜駅の〜〜病院の〜〜き控え室 まちうける【待ち受ける】来るのを予想してそれを待つ意で、 改まった会話や文章に用いられる和語。へ来客をー〉夏目 漱石の『坊っちゃん』に「山嵐をー・けた」とある。「うれし い知らせがー」「悲しい運命がー」のような比喩的用法も多 い。Q待ち構える・待つ まちがえる まぢか【間近】空間的・時間的に接近している意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈スターを—で見る〉〈入試が—に 迫る〉〈結婚式を—に控える〉の「直前」ほど接近した感じ がない。「間遠」と対立。ゆ眼前・寸前・直前・目前 まちがい【間違い】正しくないことをさして、くだけた会話 から軽い文章まで広く使われる和語。〈ーだらけ〉〈ーを探 す〉〈ーを直す〉小沼丹の『懐中時計』に「そう思ったの がーだったことは間も無く判った。たいへん乱暴な喧嘩碁 であった」とある。「誤り」より口頭語的。一般には「過ち」 ほど深刻ではないが、「ーを犯す」となるとそれに近くな る。それが「ーをしでかす」のような形で男女関係の失敗 をさすこともあり、その用法では古風な感じが伴う。Q過 ち・誤り・過失・誤謬 まちがう【間違う】正しくない、正しい判断ができない意で、 会話でも文章でも使われる和語。〈試験問題で答えを—〉 へ!・った考えを起こす〉〈若い先生が学生とー・われる〉 〈まかりーと、とんでもないことになる〉②太宰治の『斜陽』 に「何かこの人たちはー・っている」とある。「間違える」よ りこころもち古い感じがある。世間に顔向けができないよ うな行為を連想させる「道を—」など、道徳に反する意では 「間違える」は不適。刂誤る・Q間違える まちがえる【間違える】「間違う」に近い意で、会話でも文章 でも広く使われる、最も普通の日常的な和語。〈計算を—〉 〈傘を—〉〈三叉路でうっかり道を—〉②二葉亭四迷の『平 凡』に「家を—・えたか知ら」とある。道徳に反する感じの 「道を間違う」に対して、「道を—」は才能や性格と職業と <998> まちかまえる の不適合を連想させる傾向が見られる。誤る・Q間違う まちかまえる【待ち構える】心構えや準備をして待つ意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈獲物を—〉〈今や遅しと ー〉〈手ぐすね引いてー〉二葉亭四迷の『浮雲』に「頸を 延ばしてー・えている」とある。「待ち受ける」以上に、準備 をしてそれに備えるという感じが強い。Q待ち受ける・待つ まちはずれ【町(街)外(端)れ】町の中心から遠く街並みが尽 きるあたりをさし、会話にも文章にも使われる和語。〈一の 閑静な一角〉〈一にひっそりと建つ一軒家〉志賀直哉の 『城の崎にて』には「遠くーの灯が見え出した」という心理 的な情景描写の一文がある。場末 まちまち【区区】一定であることが期待されるものがばらば らでそろわない意で、会話にも文章にも使われる和語。〈身 なりがーだ〉〈意見がーでまとめようがない〉きちぐはぐ・Q ばらばら・不ぞろい まつ【待つ】順番や人が来たり事が始まったりするのを予期 しつつ時を過ごす意で、ぐだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常生活の基本的な和語。〈人を—〉〈機会を ー〉〈ー・ちにー・った知らせ〉〈ー身になれば〉〈ー・てど暮 せど〉田宮虎彦は『沖縄の手記から』で、敵の上陸を待ち 構える兵士の気持ちを、「ーという言葉は、私たちの心のあ りようを決して正しくはつたえなかったが、それは、やは り、ーというよりほかいいようはなかった。私たちはその 日をーった。そして、その日は、間もなく来た」と表現 している。Q待ち受ける・待ち構える まつえい【末裔】その血筋を伝える遠い子孫の意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈源氏のーと名乗る男〉〈徳川家 のーに当たる〉「後裔」より一般によく使う。すでに亡 びているか現在はかつての栄光や勢力を失った有名な家柄 について用いられる傾向がある。Q後裔・子孫・まごこ まっか【真っ赤】きわめて濃い赤一色の意で、会話や軽い文 章に使われる和語。〈|なりんご〉〈ほっぺたがーだ〉〈酒 に酔って顔がーになる〉〈夕日がーに染める〉永井荷風の 『ふらんす物語』に「ーな烈しい夕陽が聳え立つこの砂山の 彼方に炎々として燃え立っている」とある。具真紅 まつかさ【松毬(笠)】松の木の果実をさし、会話にも文章に も使われる和語。〈ーを拾う〉「松ぼっくり」より標準的 で正式な感じがある。井伏鱒二の『厄除け詩集』所収の漢 詩訳に「サビシイ庭ニーオチテノトテモオマへハ寝ニクウ ゴザロ」という一節がある。ひ松ぼっくり まっくら【真暗】物がまったく見えないほどきわめて暗い 意で、会話や硬くない文章に使われる日常の和語。「ーで何 も見えない〈な夜道〉〈な部屋〉「お先」のよう に、将来にまったく明るい展望が開けない絶望的な状況を あらわす比喻的用法もある。ひ暗黒暗い まっくろ【真っ黒】黒そのもの、黒一色の意で、会話や硬く ない文章に使われる和語。〈ーに塗りつぶす〉〈ーな髪〉 有島武郎の『生れ出ずる悩み』に「ーに天までそそり立つ断 崖」とある。「ーに日焼けする」のように焦げ茶色をさした り、「ーになって働く」のように汚れに中心をおいて使った り、純粋の黒に対応しない用法もある。乃漆黒 まつさき【真っ先】一番早くの意で、会話やさほど硬くない <999> 文章に使われる和語。〈に駆けつける〉〈に知らせる〉 井上靖の『あすなろ物語』に「他紙の記者たちがみな愚か に見えた。左山町介はに帰って行った」とある。「のっ け」と違い、順番の問題。のっけ まっしょう【抹消】記載事項などを消し去る意で、改まった 会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈登録をーする〉 〈字句をーする〉〈六字ー〉の誤記や不要となった文字など を塗りつぶす意から。巻消却・消去 まっしょうじき【真っ正直】「正直」の強調表現で、会話や硬 くない文章に使われる。〈ーに生きる〉の「真正直」より口 頭語寄り。愚直・Q馬鹿正直・真正直 まっすぐ【真っ直ぐ】途中で曲がらずに伸びている様子をさ し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 和語。〈|な道〉〈|上に伸びる〉(このままー進む)会 社からー家に帰る」のように、直線的でなくてもよそに寄 らない意でも使う。「|育つ」のような比喩的な用法もあ り、夏目漱石の『坊っちゃん』には主人公が「あなたはーで よい御気性だ」と清に賞められる箇所がある。単一直線 まったく【全く】下に打消しか否定的な意味の語を伴って、 それ以外の可能性を一切排除する意味合いで、会話にも文 章にも使われる和語。〈一手掛かりがない〉〈理解できな い〉〈歯が立たない〉②小林秀雄の『私小説論』に「どん なつまらぬ思想でも、作家はこれをー新しく発明したり発 見したりするものではない」とある。「全然」よりいくらか 改まった感じがある。①一向に・からきし・からっきし・さっぱり ②・Q全然・ちっとも・てんで・まるっきり・まるで① まっばだか まったなし【待った無し】まったく猶予のならない段階・状態 を迎える意で、会話や改まらない文章に使われる表現。へ の催促を受ける〉〈食糧不足はもはやーのところまで来て いる〉回相撲は・囲碁・将棋で「待った」を認めない条件。そ こから、一般に、少しの猶予もならない逼迫した状況を さす場合にも用いられ、比喻的な感じも薄くなっている。 限界 まったん【末端】物の中心から最も遠い端の部分をさし、改 まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。「まで行き 渡る〉〈「肥大症〉②「価格」「まで指示を徹底する」の ように、経路や組織などの先の部分をさすこともある。 端末 まっちゃ【抹茶】「挽き茶」の意で、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈ーに湯を注いで茶筅でかき混ぜる〉马上がり お茶・玉露・煎茶・茶・日本茶・番茶・Q碾き茶・焙し茶・緑茶 まっとう【真』当】まともで真面目な意として、会話や軽い 文章に使われる古風な和語。〈一な暮らし〉〈一な仕事〉 〈一に生きる〉〈一なやり方〉の二葉亭四迷の『浮雲』に「律 儀一の気質」とある。「全く」の音便形「全う」から。刂正 当・Q正しい・妥当 まっばだか【真っ裸】「真裸」の会話的な和語的強調表現。 〈湯上がりにーで涼む〉全裸の状態をさす点では「素っ裸」 と同じだが、両語は発想が違う。「素肌」「素手」「素足」と 同様、「素っ裸」は衣類を一枚でも身につけているか否かと いう観点から、最後の下着を取り去った瞬間に実現する。 一方、「真っ赤」「真っ正直」と同様、「真っ裸」は厚着から <1000> まっびるま 次第に薄着の状態に近づくというように連続的に全裸状態 に接近する最終の結果である。前者は身をおおう布が一か ゼロかというデジタルの世界であり、後者はいわばパスタ オルを少しずつずらしながら最終的に実現するアナログの 世界と見ることもできるだろう。若年層は俗に「まっぱ」と 略して言う。ひ赤裸・Q素っ裸・素裸・全裸・裸・真裸丸裸 まつびるま【真っ昼間】「昼間」の意を強める口頭語。〈おや、 に酒盛りかい〉単なる強調というより、昼間にはふさ わしくないことを見聞きして驚いたり、そういうことを頭 に描いてそれに言及する場合に使われる傾向がある。促音 に続く破裂音「ピ」という音構造が激しい感じを印象づけ るのかもしれない。昼日中の昼間・Q真昼 まつぼっくり【松ぼっくり】「松かさ」の意で、会話や硬くな い文章に使われる日常の和語。〈ーを集める〉標準的な 「松かさ」に比べ、大人でも子供でも日常会話に使い、いく ぶん俗っぼく親しみを感じさせる。専松かさ まつり【祭り】神社の定例の儀式や行事をさし、会話から文 章まで幅広く使われる最も日常的な和語。(秋—)〈一囃 子は〈〉〈一に神輿はこが出る〉久保田万太郎に「神田川—の 中をながれけり」という句がある。会話では「お—」となる ことが多い。「雪—」「花火は光と音の—」など、宗教的な 雰囲気の稀薄な比喩的用法もある。祭祀・祭典・Q祭礼 まつりごと【政】領土と人民を治める意で、主として為政者 の精神などを説くときなどにまれに用いられる古めかしい 和語。〈ーを行う〉〈ーに精を出す〉夏目漱石の『倫敦塔』 に「心傲」れる市民の、君のー非なりとて蟻の如く塔下に押 し寄せて犇き騒ぐときも亦塔上の鐘を鳴らす」とある。祭 政一致だった古代では「祭り事」だったところから。刂政治 まつわりつく【纏わり付く】纏い付く意で、会話にも文章に も使われる和語。〈風でスカートが—〉の武田泰淳の『風媒 花』に「相手の迷惑を承知のうえで、ー・いて離れなかった とある。「子供が親に—」のような場合に限らず、「糸が—」 のように人間以外の物についてもよく使う。刂付き纏う・ま つわる・Q纏い付く まつわる【纏わる】絡み付く意で、やや改まった会話や文章 に使われる、いくぶん古風な和語。〈幼児が母親にー〉〈髪 の毛が額にー〉具体的な絡みより、「これにー話」のよう に、関係するという意味合いで使う例が多い。谷崎潤一郎 の『細雪』に「自分たちまでが、繋がる縁で妹にー運勢の中 へ捲き込まれたような、薄気味の悪い心持」とあるのもそ ういう例である。専付き纏う・まつわり付く・Q纏い付く まといつく【纏い付く】くっついて離れない意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈子犬が足元に—〉の野間宏の『真 空地帯』に「彼の体にー・いてくる花枝の匂い」とある。「付 き纏いう」が若干の距離感を感じさせるのに対し、この語は 肉体的な接触のイメージが強い。うるさいという気持ちは あっても、「付き纏う」とは違ってひどく迷惑な感じは薄 い。ひ付き纏う・Qまつわり付く・まつわる まどう『惑う』考えがまとまらず途方にくれる意で、主に文 章に用いられる古風で文語的な雰囲気の和語。〈逃げー〉 〈心がー〉〈四十にしてー・わず〉ひ戸惑う・Q迷う まどか【円か】「円い」意で、まれに古風な文章に詩的な雰囲 <1001> 気で使われる、古語に近い優美な感じの和語。「な月」 へな表情を浮かべる森敦の『月山』の冒頭に、まず「彼 方に白く輝くな山」として月山を描き、「渓谷の彼方につ ねにな姿を見せ、いつとはなくに拡がる雪のスロープ に導く」と、「まどか」という語を繰り返して展開する。 「折から」「遥かな」「ごとく」「ゆえん」「いかなる」「ひと たび」といった格調高く円みを帯びた語群と融けあうよう、 「円い」ではなく「まどか」が選択されたものと思われ、こ の語の文体的な質を物語っている。円い まどぎわ【窓際】建物や機内や車輛などの窓に最も近い場所 をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈一の席〉へに 座る〉の「一族」の形で、会社などで戦力として期待されな くなった社員などを意味する場合は俗っぽい語感となる。 ひ窓辺 まどぐち【窓口】カウンターなどを挟んで来客の応対をした り関連事務を処理したりする場所をさし、会話にも文章に も使われる和語。〈業務〉への応対が悪い〉〈銀行の で融資の相談をする〉〈市役所のに申し込む〉多く小窓 を通して客と接したところから。「交渉のーとなる」のよう に、外部と折衝する役目をさす比喩的な用法もある。Q受 付・帳場・フロント まどべ【窓辺】室内の窓の近くをさし、主に文章に用いられ る古風でやや詩的な和語。〈一の少女〉福原麟太郎の『チ ヤールズ・ラム伝』に「月がこれを書いている私のーにも輝 くばかり照り映えています」とある。「ーに寄り添う」のよ うに、窓の外側をさす場合もある。冊窓際 まどろっこしい まとめる【纏める】別々のものを一箇所に集める、物事にま とまりをつける意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる和語。〈荷物を—〉〈ー・めて払う〉〈自分の考え を—〉〈みんなの意見を—〉〈交渉を—〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「宿へ帰って荷物をー・めて居ると」とある。 最後の結び方に重点のある「締め括る」と違い、全体を関 連づけるところに重点がある。帰め括る まとも【真(正)面】まじめに対している意で、会話や軽い文 章に使われる和語。〈一な仕事〉〈一な人間〉〈一に暮らす〉 〈一に取り組む〉志賀直哉の『邦子』に「私は或時期少し も書けない事があって、その時にはそれを一に解し、煩悶し たが」とある。「パンチを一に受ける」「気の毒で相手の顔 を一に見られない」のように、本来は正しく相対する意。 Q正常・平常 まどろこしい【間緩こしい】「まどろっこしい」の意。やや古 風な和語。〈しゃぺりながら書き取るのはー〉の文語「まど ろし」からの変化。正宗白鳥の『寂寞』に「絵なんか画いと るのはー・くって厭だ」とある。ひまだるい・まだるこい・Qま だるっこい・まどろっこしい マドロス船員の意で、会話にも文章にもまれに使われることのあるオランダ語からの古めかしい外来語。〜姿が港町に風情を添える〜「パイプ」として使う以外、単独では小説や歌詞などで見かけることのある程度で、今は日常あまり用いない。専海員・クルー・水夫・Qセーラー・船員・乗組員・船乗り まどろっこしい【間緩っこしい】てきばきと行動せずに、見 <1002> まどろむ ていていらいらする感じをさし、主に会話で使われる和語。 〈盃ではーから茶碗をくれ〉の「まどろこしい」に促音を添 加した強調形。ひQまだるい・まだるこい・まだるっこい・まどろ こしい まどろむ【微睡む】ごく浅い眠りを意味する古風で文学的な 和語的な表現。〈縁側で春の日を浴びながら心地よく—〉 Q居眠りする・うとうとする まといた【的を射た】要点を的確にとらえたという意味の 表現。〈意見〉的を得た」は誤用。当を得た・的を得た まとをえた【的を得た】「当を得た」と「的を射た」との混同 から生じた俗語。当を得た・的を射た マナー社会生活を円滑に運ぶための節度・作法・ルールの総 称として、会話にも文章にも使われる日常の外来語。〈テー ブルー〉〈ドライパーの〉〈ーを守る〉〈ーがいい〉〈ーが まるでなってない〉〈くしゃみをするときは口を覆うのがー だ〉「エチケット」のような対婦人といった特殊な雰囲気 がなく、近年それを凌ぺく勢いで盛んに使われる。精神に裏 づけられた感じの「エチケット」と比べ、社会のきまりとし て個別に定型化した感がある。马工チケット・行儀・Q作法・礼 儀作法・礼法 まなこ【眼】主として文章に用いられる、「目」の古風な表現。 〈金壺〉へを開く幸田露伴の『五重塔』に「涙に浮 くばかりの円ぶのを剥き出し」とある。「寝ぼけをこす る」のような慣用的な表現を除き、上品な響きがある。漢 字表記は文脈上「め」との区別が難しい。「目を閉じて考え る」というと、数学の公式を思い出そうとしていても、冷蔵 庫に入っている残り物でどうやって見栄えのするご馳走に 仕立てようかと悩んでいてもかまわないが、「を閉じて 考える」となると、昔の恋を思い返すとか、読み終えた作品 の余韻に浸っているとか、そういう趣のあることを考えて いるような連想が働く。それは日常語の「目」と違って、 「まなこ」ということばの優雅な語感がそういう方向へと導 くからである。巻目 まなざし【眼(目)差し】対象を見るときの目の表情の意で、 主として文章に用いられる、やや古風でいくぶん詩的な和 語。〈温かいーで見る〉(やさしいーを注ぐ)〈疑り深いー で探る〉幸田文の『流れる』に「重い厚い花卉がひろがっ てくるような、咲くというだった」という印象的な描写が 出てくる。目つき まなじり【眦】「目尻」の意で主に文章に用いられる古風な和 語。〈一の吊りり気味の目〉川端康成の『伊豆の踊子』に 「一の紅が怒っているかのような顔に幼い凜々しさを与えて いた」とある。慣用的に「一を決する」の形で、決意を示す 真剣な表情を意味する。目尻 まなびのにわ【学びの庭】「学校」「学園」の古語に近い和風 の雅語。「がありありと目に浮かぶ」の「学窓」より古め かしく美化した感じが強く、「学び舎」よりさらに古い感 じで使用も稀。単学院・学園・学窓・学校・Q学び舎 まなびや【学び舎】「学校」の意の古風な和風の美称。振り 返りつつーを後にする》②「学窓」よりやわらかい感じの和 語。「学びの庭」と違い今でもよく使われる。単学院・学園・ 学窓・学校・Q学びの庭 <1003> まなぶ【学ぶ】繰り返し勉強して知識や技術などを習得する 意で、改まった会話や文章に用いられる和語。〈真剣に—〉 くよくー・びよく遊べ〉〈大学で哲学を—〉〈本から—ものも 多い〉森鷗外の『妄想』に「外国語を—・んでからも」と ある。口真似をする、他人の言をそのまま伝える意の「ま ねぶ」から。ひ教わる・Q習う まぬかれる【免れる】大きな負担となる義務や災難などの好 ましくない事態になりそうなところを、危うくそうならな いで済む意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。 〈間一髪で交通事故を—〉〈火災を—〉〈罪を—〉〈義務を —〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「狸と赤シャツは例外で ある。何で此両人が当然の義務を—のかと聞くと」とある。 「まぬがれる」の本来の形。「まぬがれる」の形が多用され るにつれ、いくらか古風な趣を呈しつつある。逃れる・Q まぬがれる まぬがれる【免れる】「まぬかれる」の音転。「まぬかれ る」以上によく耳にする。逃れる・Qまぬかれる まぬけ【間抜け】タイミングが遅れて間が抜けた感じがする ことや、愚鈍な者をさし、主としてくだけた会話で使われ ることば。〈ーもいいところだ〉へー、ちゃんと前見て歩け へーな泥棒もあったものだ》「ばか」や「あほう」に比べ、 生まれつきの愚か者というより、失態をしでかしたことに 対する評価というニュアンスが濃い。あほ・あほう・たわけ どじ・Qとんま・ばかへま まね【真似】他の声・話し方・動作・作風などの特徴をとらえて 意図的に似せる意で、くだけた会話から文章まで幅広く使 まねる われる日常の和語。〈猫の声を—する〉(そっくり—をす る〉(他人の—がうまい)回小沼丹の『猿』に「木の丸椅子 の上に坐って、何やら憂鬱そうに空を仰」いでいる猿が登場 し、「僕もお猿のーをして空を仰いで見ると、星が疎らに見 えて何だか憂鬱になった」とある。なお、「ばかなーはよ せ」「何というーだ」のように好ましくない行為をさす用法 もある。具模倣 マネージャーホテルやパーなどの管理人・責任者をさして、 会話にも文章にも使われる外来語。〈高級キャバレーの—〉 〈交渉は—に任せる〉「サッカー部の女子—」のように、 チームの庶務を担当する世話係の意でも、「有名タレントの ーをしている」のように、スケジュールの管理や身のまわり の世話をする人の意でも日常よく使う。ひ支配人 まねく【招く】会などに客として誘ったり、特定の仕事を依 頼して臨時に来てもらったりする意で、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。客を ー〉〈友人をパーティーにー〉〈記念行事に講師をー〉〈海外 から専門の技術者をー〉谷崎潤一郎の『細雪』に「印刷に するほど大勢の人をーのではないので」とある。「手を振っ てー」のように手招きする意でも使う。呂招待・招聘 まねる【真似る】対象にそっくり似せて行う意で、くだけた 会話から文章まで広く使われる和語。〈専門家のやり方を ー〉〈絵のタッチをー〉〈歩き方をー〉夏目漱石の『吾輩 は猫である』に「西洋人は強いから無理でもばかげていて もー・ねなければやり切れないのだろう」とある。 転なぞる 模倣 <1004> まはだか まはだか【真裸】「全裸」の意の古めかしい和風の文章語。 へーを人目に曝す)四川端康成の『伊豆の踊子』に「手拭も ない真裸だ」、「私達を見つけた喜びで真裸のまま日の光の 中に飛び出し、爪先で背一ばいに伸び上る程に子供なんだ」 という例が出るが、とりまく文章環境の品格から見て、「ま っぽだか」でなく「まはだか」と読むべき表現と思われる。 ひ赤裸・素っ裸・Q素裸・全裸・裸・真っ裸・丸裸 まばたく【瞬く】会話にも文章にも使われる少し古い感じの 和語。〈目を気にしてしきりに—〉現代の会話では「まば たき(を)する」の形が最も一般的。りしばたたく・Qまたたく まばゆい【目映い/眩い】眩しい意で、主に文章に用いられ る古風で詩的な和語。〈光を浴びる〉宮本輝の『道頓堀 川』に「川のほとりにー光が浮いてくると」とある。プラス イメージの語だけに、「ばかりのきらびやかな飾りつけ」 「ーほどの花嫁姿」のように、実際の光よりも華麗さを表現 する比喩的な用法が「眩しい」以上に目立つ。「ライトが眩 しい」は不快感だが、「ライトがー」となればむしろ美的評 価。ひ眩しい まひ【麻(麻)痺】神経の機能障害によって運動や知覚の働き が失われる意で、やや改まった会話や文章に用いられる医 学の専門的な漢語。〈心臓—〉〈神経が—する〉の「良心が ーする」「交通ーを起こす」のように、単に働きが鈍くなる 意の比喩的な拡大用法もある。永井荷風の「つゆのあとさ き」に「良心をーさせ廉恥の心を押える」とある。専痺れ る まひる【真昼】昼間の真ん中の時間帯をさし、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる和語。夏の一の耐え難 い日差しが容赦なく照りつける)横光利一の頭ならび に腹』の「ーである。特別急行列車は満員のまま全速力で 馳けていた」という有名な冒頭は新感覚派の出発点となっ た。月昼日中・昼間・Q真っ昼間 まぶしい【眩しい】光が強過ぎて目を開けていられない感覚 をさし、くだけた会話から文章まで広く使われる日常の和 語。〈朝の光がー〉〈夏の海がー・く光る〉〈対向車のライト がー〉の小川国夫の『爽かな辻』に「日の当たる斜面に、鶏 は白い花が咲いたようにー・く散らばっていた」とある。 「ーばかりの豪華な衣装」「世界的な芸術家の居並ぶー会 場」など、きらびやかでまともに見ていられない感じをさ す比喻的な用法もある。まばゆい マフラー「えり巻き」をさし、会話でも文章でも使われる外 来語。「襟巻」に代わって日常生活で普通に使われるように なった。〈黒いコートに緑の—〉、Q襟巻・首巻 まほう【魔法】魔力で不思議な現象を引き起こす術をさし、 会話にも文章にも使われる漢語。「使いのお婆さん」へ を使う)「にかかる)「が解ける)「魔術」以上に、物 語の中だけに起こる感じが強く、現実の世界では比喩的な 用法となる。魔術 まほうびん【魔法瓶】保温・保冷用に工夫された瓶をさし、会 話にも文章にも使われる、いくぶん古風な日常の漢語。へー のお湯)長時間続く保温力に驚いた頃の命名。ガラスや ステンレスの内外二層の間を真空にするという理屈がわか り、見慣れてしまった今では少々大仰に感じられる。Qジ <1005> ヤー・ポット まま【間間】「時々」に近い意味で、主として会話に使われる 古風な和語。〈思わぬ失敗をすることがーある〉へそんな こともある〉間隔の長い「時々」のうちで起こる頻度のあ まり多くない部分に対応する感じがある。時折・Q時たま・ 時々・時に ママ「お母さん」の意で、会話やさほど硬くない文章に使わ れる外来語。「のお膝〉へが付き添う年少者が比較 的よく使い、子供っぽい響きがある。「パパ」と対立。ひと ころ「お母さん」を凌ぐ勢いで広がり、現在でも「パパ」 「ママ」を用いる家庭も少なくないが、「お父さん」「お母さ ん」のほうが優勢。なお、「パーの」のように、「おかみ」 や「マダム」に代わって、酒場などの女主人をさす用法もあ る。ひお母様・Qお母さん・お母ちゃん・おふくろ・女親・母さん・母 ちゃん・母・母上・母親 ままはは【継母】実の母でない、父の配偶者をさして、会話 にも文章にも使われる日常の和語。へーに分け隔てなく育 てられる〉へーのいじめにあう〉ひ義母・Q継母・養母 まみず【真水】塩分を含まない普通の水をさし、会話にも文 章にも使われる和語。へーに浸す》「塩水礼」と対立。 淡水 まむかい【真向かい】「真正面」に近い意味で、会話やさほど 硬くない文章に使われる和語。〈一の家〉〈社長の一に座 る〉建物自体の前面をささず、主に位置関係を示す。正 面・Q真正面 まめつ 【摩(磨)滅】表面がすり減る意で、会話にも文章にも まもる 使われる漢語。〈ねじ山がーする〉〈長い間に踏み石がーす る〉乃磨耗 まもう【摩(磨)耗】何度も使っているうちにこすれて減って しまう意で、やや改まった会話や文章に用いられる、いくぶ ん専門的な漢語。〈プレーキがーする〉〈タイヤがーする〉 特に機械類の部品などに使うことが多い。専摩滅 まもなく【間も無く】それほど長い時間の経過しないうちに の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の基本的な和語。〈ー春だ〉へー到着する〉へー発売され る〉の芥川龍之介の『羅生門』に「死んだように倒れていた 老婆が、死骸の中から、その裸のからだを起こしたのは、そ れからーの事である」とある。ひじきに・そのうち・Q程なく やがて まもの【魔物】妖怪などの魔性のものの総称で、会話にも文 章にも使われる表現。〈ーが出る〉〈ーが住む〉〈ーが取り 憑っく〉〈ーのしわざ〉有島武郎の『或る女』に「葉子の姿 をーか何かのように冷笑わらおうとする」とある。「魔」「悪 魔」以上に視覚的イメージが具体化しやすい。悪魔・Q魔・ 魔女 まる【守る】①決まったことに反しない意で、会話にも文 章にも広く使われる和語。〈約束を—〉〈言いつけを—〉 〈教えを—〉〈秘密を—〉Q従う遵守・遵守・服する②他から侵 されないように防ぐ意で、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の基本的な和語。〈敵の攻撃から—〉 〈国土を—〉〈家庭を—〉〈身を—〉〈財産を—〉〈会社の利 益を—〉中村真一郎の『遠隔感応』に「わずかのイデーを <1006> まやかし 守銭奴のようにーりながら」とある。「護る」とも書く。 「攻める」と対立。Q防衛・防御・防戦 まやかしいかにもそれらしく見せる意で、会話や軽い文章 に使われる、やや古風で俗っぽい和語。それがとんだ 物まんまとに引かかる)専元せ・Qにせ まやく【麻薬】麻醉作用を持つ薬物の総称として、会話にも 文章にも使われる漢語。〈—中毒〉へ—を隠し持つ〉へ—の 密売ルート〉麻酔・鎮痛・咳止めなど医療目的に使用され るが、常用すると中毒を起こし、やがて精神・肉体をむしば むため規制が厳しい。専覚醒剤・しゃぶ・大麻・Qドラッグ・マリ ファナ・やく まゆ【眉】瞼 使われる和語。〈太い〉(ーをかく)〈ーをひそめる〉回 「眉毛」に比べ、全体の形を意識した感じが強い。野間宏は 「崩壊感覚」の中で、「細い毛並の間にぬれた黒の色をとど め、その下端をきつく剃込ませて、上り気味につくられて いる彼女のーは、すでに険しさを含み始めている」と書い ている。ひ眉毛 まゆげ【眉毛】眉を構成している毛の意で、会話やさほど改 まらない文章に使われる和語。「が薄い〉へを剃り落 とす〉へに白いものが交じる〉永井荷風は『腕くらべ』 に、「真白なだけは筆の穂のように長く垂れている」と、 いかにも福々しい眉を描いている。この例のように、全体 の形を意識させる「眉」より、部分的な毛を問題にする場合 に出やすい。ひ眉 まゆつばもの【眉唾物】真偽が怪しく、 騙されないように用 心しなければならない意で、会話や軽い文章に使われる古 風な和語。〈一の儲け話〉〈話としては面白いが、いささか だ〉団に唾をつけると狐や狸に化かされないという俗 説から。刂胡散臭い まよう【迷う】どれを選ぶかどうすべきかわからず決断でき ない意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈道に—〉〈路頭に—〉〈選択に—〉 〈判断に—〉の女の色香に—」「・わず成仏する」のよう な用法は古めかしい感じを与える。戸惑う・Q惑う まよなか【真夜中】夜中の真ん中あたりの時間帯をさし、会 話にも文章にも使われる和語。〈一に飛び起きる〉〈一の出 来事〉〈一に電話で起こされる〉〈一まで語り合う〉夜中 の二時前後を連想しやすい。「真っ昼間」と対立。み深更・深 夜・夜間・夜半・夜分・夜・Q夜中・夜更け・夜・よわ マリファナ大麻の葉を乾燥させて粉にしたものをさし、会 話にも文章にも使われる、やや専門的なスペイン語からの 外来語。〈一の取締り〉〈一を吸引する〉児覧酢剤・しゃぶ・Q 大麻・ドラッグ・麻薬・やく まる【丸】円形または球形をさし、くだけた会話から文章ま で幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一印〉文の終わ りにーを打つ〉〈正しいものにーを付ける〉〈紙に大きなー を描く〉〈ボールの形はーだ〉平面上の円形を意味する場 合でも、数学的な雰囲気の「円」とは違ってあまり厳密では なく、句点のような小さなものや、「テストでーをもらう」 のようないぴつな形をも含んで漠然と使う。また、抽象化 された用法でも、「円」が「関東一円」のように地図上の平 <1007> 面的なとらえ方なのに対し、「社内一丸がんとなって難局にあ たる」のように立体的なイメージでとらえている。刂円・円 い・丸い まるい【丸い】球形・円形の意で、くだけた会話から硬い文章 まで幅広く使われる最も基本的な和語。〈地球は—〉〈まん 一月〉〈ピンポン玉〉〈背中が—・くなる〉〈人間が—・く なる〉〈ー・くおさめる〉の野間宏の『真空地帯』に「ぬくぬ くとストーブのところに猫みたいに・うなりやがって」と ある。まるければ平面でも立体でも使えるが、もっぱら平 面的な「円い」に比べ立体的な連想が強い。「円い顔」が正 面から見た顔の形の印象を描いているのに対し、「丸い顔」 は奥行きを含めての印象を描いているようなニュアンスを 感じさせる。名月は伝統的に「円い」ととらえているが、宇 宙科学の発達とともに次第に「丸い」存在と認識されるよ うになれば表記もそうなるだろう。比喻的・抽象的な用法 にも「丸い」という表記が使われる。ひ円い まるい【円い】円形の意で使われる和語。〈血〉〈お盆〉 〈一窓〉〈一テーブル〉〈一・く輪になって座る〉大岡昇平 の『花影』に「お盆のように」顔は透き通るように白く」と ある。具体物の平面的な形態に注目して書き分ける場合の 表記で、球形の対象には用いず、比喻的な用法も少ない。 「一丸となって」が塊を連想させるのに対し、「関東一円」が 地図のような平面的イメージでとらえているという違いに 対応する。「屋根」は見る角度によって「丸い」とも「円 い」とも書ける。正木不如丘は「ゆがめた顔」の巻頭言で、 「白紙の上にコンパスで正円を画いて満足して居る人があ まるめこむ る。それを横に坐る人から見れば楕円を画いたとしか見えない」という例をあげて、「美人も横から見れば、ゆがんだ顔にしか見えない」と話を展開、「人間万事、世相万端、すべてゆがんで見えるのが当然」という結論に達する。込丸いまるつきり【丸っ切り】「まるで」の意で、主にくだけた会話に使われる、やや俗っぽい和語。へ話にならない〉へ思い出せない」の形でも使い、その場合は少し古風な感じが生じ、俗っぽさが減る。ひ一向に・からきし・からっきし・さっぱり②・全然・ちっとも・てんで・全く・Qまるで① 「まて】①下に打消しか否定的な意味の語を伴って あらゆる点で少しも可能性がない、といった意味合いを表 し、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。 へー見当もつかない〉へー似ていない〉へー駄目だ〉い一向に・ からきし・からっきし・さっぱり②・全然・ちっとも・てんで・全く・Q まるっきり②うっかり間違えそうなほどよく似ている意 で、会話にも文章にも使われる日常の和語。へー夢みたい〉 へー本物に見える〉へー絵に描いたような景色〉綱野菊の 『妻たち』に「胸の中のものを全部こそげとられて了った ような、絶望的な、うつろな気持」とある。あたかも・さし ずめ②・Qさながら・丁度 まるはだか【丸裸】「全裸」の意。「素裸」や「真裸」より日 常的だが、「素裸」や「真裸」ほどくだけていないレベ ルの和語。へーで露天風呂を楽しむ》夏目漱石の『坊っち ゃん』に「ーの越中褌どん一つになって」とある。専赤裸・素っ 裸・素裸・Q全裸・裸・真っ裸・真裸 まるめこむ【丸め込む】相手を巧みに騙して自分側に引き入 <1008> まるやけ れる意で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈相手にう まくー・まれる〉〈上司を巧みにー〉②相手を操るのは結果 であり、騙してそういう関係にするところに重点がある。 「手懐なける」や「懐柔」に比べ、その関係が長続きしない 雰囲気もある。懐柔・Q抱き込む・手懐ける・籠絡 まるやけ【丸焼け】火事で残らず焼けてしまう意で、会話や 軽い文章に使われる日常の和語。〈家がーになる〉全 焼」と違い、犬小屋・鳥屋、家具など小さなものにも言う。 ひ全焼 まれ【稀(希)】きわめて例の少ない意で、会話にも文章にも 使われる和語。ぐくな例ぐにはいいこともある たぐいな好青年ぐたぐいな美人ぐ珍しいよりも 例が少ない感じ。「稀有」のような貴重な感じを伴わず、 客観的に響く。夢稀有・珍しい まれに【稀(希)に】めったにないほど珍しい意で、やや改ま った会話や文章に用いられる和語。〈—当たることもある〉 〈—見るほほえましい光景だ〉森鷗外の『妄想』に「過去 の記憶が、長い鎖のように、刹那の間に何十年かの跡を 見わたせることがある」とある。「たまに」と違って、一度 しか起こらない場合も含む。専偶だに まわり【回(廻)り】回る、取り巻く意で、くだけた会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈遠—〉〈頭の— が速い〉〈火の—が早い〉身のマワリは「—の品」「 の世話」「—を調べられる」などと使われるが、静的にとら えれば「周り」動的にとらえれば「回り」が適切で、仮名 書きが無難。周り まわり【周り】周辺の意で、くだけた文章から硬い文章まで 幅広く使われる日常の和語。〈湖の—〉〈家の—〉〈一の景 色〉単回り まわりあわせ【回り合わせ】「巡り合わせ」の意で、主として 会話に使われる古風な和語。「が悪いらしくどうもうま く行かない」蓮・運勢・運命・宿命・天運・天命・命運・Q巡り合わせ まわる【回(廻)る】円を描くように動く意で、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。車 輪がー〉(右にー〉(酔いがー〉(目がー)梶井基次郎の 「桜の樹の下には」に「よくー・た独楽が完全な静止に澄 む」とある。「帰りによそへー」「舌がよくー」「よく気が ー」「自分に番がー」のような派生的用法も多い。Q回転・ 転がる・転回・巡る まんいち【万一】可能性はきわめて低いが、もしもの意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる漢語。「鍛に当た ったら何に使おうか〉〈駄目だったら今度こそ諦める〉 「の場合に備える」「のことがあったら、あとをよろし く」のように最悪の事態を仮想する例も多い。Q万が一・ もしも まんいん【満員】定員に達する、人でいっぱいになる意で、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈超〉〈大入り 〉〈電車〉〈で入れない〉森鷗外の『青年』に「電車 が幾台も来るが、皆ーである」とある。満席 まんえつ【満悦】心が満たされて喜ぶ意で、改まった会話や 文章に用いられる、やや古風な漢語。〈すっかり御ーの体 だ〉吉行淳之介の『驟雨』に「披露宴は滞りなく終り、 <1009> の表情を隠さず示した」とある。と得意①・張り合い・Q満足・満ち足りる まんえん【蔓延(衍)】広範囲にはびこって広がる意で、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈病原菌が—する〉〈悪 習が—する〉〈浮薄な風潮が—する〉草が生え広がる意か ら。堀辰雄の『美しい村』に「蔓草が実にややこしい方法で 絡まりながらーしていた」という例が出るが、一般的には 悪いもの、好ましくない対象に使う例が多い。のさばる 跋扈。Qはびこる まんが【漫画】諷刺や滑稽な要素を合む絵をさし、会話にも 文章にも使われる日常の漢語。〈一家〉〈少女〉〈一本を 読みあさる〉谷川俊太郎の詩『東京抒情』に東京は「読み 捨てられたーの一ページだ」とある。「戯画」に比べ、話の 流れのある作品が多い。戯画・Qミック まんがいち【万が一】「万一」の意で、会話にも文章にも使わ れる、やや古風な表現。「飛行機に乗り遅れたら旅行は取 り止めだ〉〈合格したら好きなものを買ってやる〉「親 にーのことがあれば田舎に帰って家を継ぐ」のように最悪 の事態を仮想する用法もある。Q万一・もしも まんざい【万歳】新年を祝う門付けの芸能をさし、会話でも 文章でも使われる古風な漢語。〈三河—〉乃漫才 まんざい【漫才】滑稽な対話で楽しませる二人の演芸をさし、 会話でも文章でも使われる漢語。〈ーっンピ〉〈上方ー〉 〈掛け合いー〉乃万歳 まんざら【満(真ん)更】下に打消しの語を伴って、悪い方向 のその判断や様子が絶対ではないことを表し、会話にも文 まんせき 章にも使われる表現。〈一噛とも思えない〉「嫌いでもな い様子だ〉(こういう味もー悪くはない)「出来栄えはー 悪くもない」のように、否定の形で控えめに肯定する気分 が漂う。井伏鱒二の『駅前旅館』にある「気を持たせる様な ことを言われると、ーでもない気持でした」の例では、「満 更でない」の形でむしろ「嬉しい」気分を表現している。 ひあながち・Q一概に・必ずしも マンション比較的高級な集合住宅をさし、会話にも文章に も使われる外来語。〈高級—〉へ—住まい〉原語は「大邸 宅」の意だが、後藤明生の『首塚の上のアドパルーシ』に 「一の十四階のベランダからすでにおなじみの風景を、天眼 鏡でのぞいているわけです」とあるように、鉄筋コンクリ ート造りの中高層の建物を連想させ、「アパート」と違って 賃貸以外に分譲形式もある。「日乃出荘」というアパートが マンションに建て替えられると「サンライズ」と改称される ようなイメージの差がある。リアパート まんしん【満身】体のすべての箇所の意で、主に文章に用い られる古風な漢語。〈ー創痍け〉〈ーに力がみなぎる〉堀 川直義『文体比較法の一つの試み』によれば、根本進の四コ マ漫画『クリちゃん』の内容を文章で説明するアンケートに 際し、かつての哲人文相天野貞祐は夫のようすを「尾を振 りーに喜びをみなぎらして」と表現したという。たわいの ない漫画とは思えない格調の高い文章で、この語の語感を 示すエピソードである。ひQ渾身だ・全身・総身 まんせき【満席】乗り物や会場などの座席がすべてふさがっ て空席がない意で、くだけた会話から文章まで幅広く使わ <1010> まんぞく れる日常の漢語。〈休日はいつもだ〉満員 く【満足】願いがかなって申し分ない気持ちをさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な漢語。〈—感〉〈出来栄えに—する〉〈心遣いを—に思 う〉の小島信夫の『アメリカン・スクール』に「死に行く者 が、生きている者に懺悔をしたときのようなかすかなーを おぼえたのだ」とある。ひ得意①・張り合い・満悦・Q満ち足りる まんなか【真ん中】「中央」のうちでも特にその中心部をさ し、会話や改まらない文章に用いる和語。〈的の—に当た る〉〈都会の—に住む〉〈往来の—を大手を振って歩く〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「浴衣一枚になって座敷の—へ 大の字に寝て見た」とある。ひ中央・中心・Qど真ん中 まんまく【幔幕】会場などの周りに長く張りめぐらす幕をさ し、会話にも文章にも使われるやや古風な漢語。〈紅白の ー〉石川達三の『蒼呉』に「デッキに仮舞台をつくりーを 張りまわして」とある。ひ緞帳・Q幕 み【実】「果実」の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の基本的な和語。〈柿のー〉〈ーが生る〉 「ーが熟す〉梶井基次郎の『冬の蠅』に「落葉樹が裸の枝 に朱色のーを垂れていた」とある。Q果実・果物・フルーツ・ 水菓子 あやまる【見誤る】他と取り違えたり判断を間違える意で、 改まった会話や文章に用いられる和語。〈位置を—〉〈交通 標識を—〉〈才能を—〉〈本質を—〉見損なう・見違える・見 紛う・Q見間違える みあわせる【見合わせる】状況を判断してすぐに実行に移す のを取り止める意で、会話にも文章にも使われる日常の和 語。〈購入を—〉〈出場を—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「出来るならやって見ろと来た。切れないと外聞がわるいか ら、おれはー・せた」とある。「風が収まるまで出発を—」 「しばらく運転を—」のように、一時的に中止してのちに再 開する意味の場合と、「発熱のため出席を—」のように完全 に取り止める意の控えめな表現とがあり、その区別が難し いために婉曲をの効果がある。「顔を—」のように互いに 見合う意でも、「条件を—」のように見比べる意でも用い る。見送る② みいだす【見出す】見つける意で、主として文章中に用いられる和語。得がたい人材をー《有効な方策をー》《解決 <1011> のいとぐちをー〈活路をー〉〈法則をー〉〈生きがいをー〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「増俸を受けるには忍びな い、理由をー・したからの様に聞えたが」とある。日常会話 に使うと気障に響く。「いつかすっかり興味を失っている 自分をー」のように、気がつく意で用いるのは英語の直訳 文体。見・Q見つける ミーティング 打ち合わせのための会合をきし、会話や軽い 文章に使われる斬新な感じの外来語。〈スタッフ〉〈ーを 開く〉〈試合前のー〉「会議」ほど四角ばらず、短時間の 簡単な話し合いを連想させるため、親族会議や教授会など には使わない。ひ打ち合わせ・会議・協議・相談・談合・話し合い みいる【見入る】心を集中して見る意で、やや改まった会話 や文章に用いられる和語。ヒっと作品にーヘテレビ画面 にー)Q注視・見とれる・見ほれる・見る みうち【身内】家族やごく近い親族を漠然ときして、会話や さほど硬くない文章に使われる和語。〈ーの者〉〈ーに医者 が多い〉〈ーに不幸がある〉同じ親分の配下の者をさす用 法もある。専家族・Q近親・肉親 みえ【見え(見栄)】うわべを飾る意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈ーを張る〉〈ーも外聞もない〉谷崎潤一郎 の『細雪』に「下らないーを張るよりは、少しでも財産を殖 やすように心がけた方がよい」とある。見得 みえ【見得】見せ場で演ずる目立つ表情・動作をさし、会話で も文章でも使われる古風な和語。〈ーを切る〉見栄 みおくる【見送る】①人がその場を離れるのを見届ける意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈門に立って客をー〉〈渡 みかぎる 米する恩師を空港で」同行に重点のある「送る」と違 い、この語は相手が立ち去るのを見届けるところに重点が ある。「送る」対象は人間だけでなく、その人物の乗った車 や電車などをさす場合にも使う。送る②計画を実施し ないことにする意で、やや改まった会話や文章に用いられ る和語。〈契約を—〉〈値上げを—〉②「見合わせる」と比 べ、延期というよりは取り止めというニュアンスが強い。 見合わせる みおとす【見落とす】見ておきながら気づかないでしまう意 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈看板を—〉〈集中力が足りずに誤りを ー〉〈肝腎の問題点を—〉②深田久弥の『わが愛する山々』 に「独自性のある立派な山は、多くの人々にー・されている」 とある。「見過ごす」や「見逃す」と比較し、似たようなも のの中に異質なものが交じっていることに気がつかないと いったイメージが強い。「エックス線撮影でかすかな影を ー」といえば、影の存在自体に気づかないという意味合い になる。ひ看過・見過」す・Q見逃す みかえり【見返り】謝礼・担保・保証として差し出す金品など をさし、会話や軽い文章に使われる和語。〈資金〉〈物 資〉〈先方からのーを期待する〉四「報酬」に比べ漠然とし ており、抽象的な存在でも考え方によってこれに含まれる。 ひ報酬 みかぎる【見限る】その対象の能力や将来性に失望して突き 放す意で、会話にも文章にも使われる和語。へ上司からー・ られる〉へ会社をー・って転職する〉見捨てる・Q見放す <1012> みがく みがく【磨く】表面をこすって艶を出す意で、会話でも文章 でも幅広く使われる日常生活の和語。〈靴を—〉〈鏡を—〉 〈歯を—〉李良枝の『由熙』に「毎日欠かさず手摺りを—・ き、木の一本一本が光沢を放っていた」とある。「研ぐ」が 一定方向の摩擦となるのに対して、この語の場合は多様な 方向の摩擦が試みられることが多い。ひ研ぐ みかけ【見かけ】外から見た感じの意で、会話やさほど改ま らない文章に使われる和語。〈倒し〉〈で判断する〉 〈だけは立派だ〉〈人はーによらない〉上林暁の『薔薇 盗人』に「なるほどーはがっしりした大きな骨っ節だ」とあ る。実際の中身と違う場合によく使う。Q外見・見た目・見 場 みかた【味(身・御)方】対立関係にある両者のうち、自分が属 していたり自分と協力関係にある側や仲間をさし、くだけ た会話から文章まで広く使われる和語。「が多い」へ心強 い」夏目漱石の「坊ちゃん」に「敵も」一度に引上 げて仕舞った」とあるように、「敵」と対立する語。「弱い ほうに「する」のように動詞としても使う。Q加勢・仲間 みかど【帝】天皇の意で会話にも文章にも使われた古語。「先 の「ふぐいずれの」の御世であったか」古典の現代語訳に 見られる。王・王様・君主・皇帝・国王・大王・帝王・天子・Q天皇 みがまえる【身構える】相手の動きにすぐ応じられるよう姿 勢を整える意で、会話にも文章にも使われる和語。「異様な 気配を感じてさっと」伊藤整の「火の鳥」に「役者とい うものは、色恋の話となると、それが他人の色恋でも、狐の 通り道をかぎつけた猟犬のように」とあるように精神的 な意味でも使うが、「構える」と違って人間や動物にのみ用 いる。僕構える みがわり【身代わり】本人の代わりを務める意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈人の—になる〉へーを立てる〉 「替え玉」と違い、極秘裏に進めるとは限らない。「当人の ーになって叱られる」「実行犯のーになって警察に自首す る」のように、何らかの不利益を受ける際によく使う。 賛 え玉・Q代理・名代 みかん【未完】まだ完了・完成していない意で、やや改まった 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈一の大器〉へ一の作 品〉へ一に終わる〉川端康成は「未完」として中断した小 説『千羽鶴』に後編と銘打って『波千鳥』を書き継ぐが、途 中で取材メモが盗難に遭い、最後となった章「妻の思い」の 末尾に再び「未完」と記したまま世を去った。未完成 みかんせい【未完成】まだ完成していない意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ーの建築〉へーながら将来楽しみな 逸材だ〉のシューベルトの有名な「ー交響曲」は第三楽章が 草稿の段階に終わったための通称。ひ未完 みぎわ【汀/水際】陸地の水に接するあたりをさし、主に文 章中に用いられる、古風で雅やかな和語。〈河原のーを歩 む〉の「水ぎわ」の意。海や湖や川だけでなく、谷崎潤一郎 の『細雪』には「池のー」という用例がある。り磯・うみべ・ 沿岸・海岸・海浜・かいへん・岸・岸辺・なぎさ・波打ち際・浜・浜辺・Q水 際・水辺 みくだす【見下す】「見下げる」に近い意味で、会話にも文章 にも使われる和語。〈人をーような態度をとる〉小林秀雄 <1013> の『読者』に「君は、何故ジャーナリストとして、そんな風 に、読者というものをー・しているのですか」とある。専価 る・威張る・軽蔑・蔑む・なめる②・みくびる・Q見下げる みくびる【見縊る】相手を実際より低く評価して侮る意で、 会話や軽い文章に使われる日常の和語。〈相手を—〉〈ひと をー・った態度〉ひあなどる・軽蔑・さげすむ・なめる②・Q見下す・ 見下げる みぐるしい【見苦しい】見ているだけでも不愉快になる意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈一身なり〉へーふるま い〉へー中傷合戦〉へこの期に及んで言い逃れしようとは ー〉へおーところをお見せして申し訳ありません〉の川端康 成の『伊豆の踊子』に「おー・くても、動けないのでござい ますから、このままで堪忍してやって下さいまし」とある。 正常な人間なら恥ずかしく思うようなことを平気でやる醜 い行為について言うことが多い。ひQみっともない・醜い みけん【眉間】両眉の間にあたる額の中央部をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ーの傷〉〈ーに皺むを寄せる〉 夏目漱石の『こころ』に「曇りを先生のーに認めたのは、 雑司が谷の墓地で、不意に先生を呼び掛けた時であった」と ある。ひおでこ・Q額 みこと【見(美)事】手際が鮮やかで立派だの意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈な演奏〉〈な腕〉〈な出来 栄え〉〈一切り抜ける〉〈もののにやってのける〉川 端康成の『伊豆の踊子』に「余りに期待がーに的中したから である」とある。見るだけの価値のある物事の意から。そ れだけに視覚的なイメージがあり、目の前で見て判断して みこん いる感じが伴いやすい。「すばらしい料理」と違い、「な 料理」は味わう前にも言えそうな雰囲気がある。また、評 価に重点のある「すばらしい」に比べ、技術的な巧みさに重 点のある連想が強く、自然をめでる「な景色」でも、庭造 りや借景の巧みさなり、展望台の立地条件のよさなり、人 間あるいは造物主の何らかの意思やかかわりを意識させる ことがある。すすてき・Qすばらしい・立派 みこみ【見込み】多分こうなるはずだと今から予想される将来の姿をさし、会話や硬くない文章に用いられる日常の和語。〈卒業ー〉へとんだー違いだった〉(こうなるーだ)谷崎潤一郎の『細雪』に「この先そう月給が上るーはないし、出世の道は止っている」とある。「将来大いにーがある」のように、将来の可能性をさす用法もある。見当・展望・Q見通し・予感・予期・予想・予測 みこむ【見込む】予想してあらかじめ計算に入れておく意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈月百万円の利益を—〉 〈支出を平年並みと—〉の川端康成の『伊豆の踊子』に「あ んたをー・んで頼むだがね、この婆さんを東京へ連れてって くんねえか」とある。「当て込む」より客観的な感じがあ る。「将来性をー・んで採用する」「男とー・んで頼む」のよ うに可能性があると頼りにする意にも使う。当て込む みごもる【身籠もる】妊娠する意で、改まった会話や文章に 用いられる古めかしい和語。〈子供を—〉僕胎・懐妊・受胎・ 妊娠・孕・宿す みこん【未婚】一度も結婚の経験のない意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈ー者〉〈ーの女性〉結婚していない <1014> みこんのはは のに子供がいることに対する世間の受け取り方によりマイ ナスのイメージのあった「」の母」は、離婚の結果そうなっ た場合を含めて現在「シングルマザー」という横文字に受け 継がれている。専売れ残り・Q独身・独り身・独り者 みこんのはは【未婚の母】結婚していない状態で自分の子を 産み育てている女性をさし、やや古い感じの言い方。へーだ けに苦労して子供を育てた)の結婚前に子供ができるのを 世間に恥じた時代には、その存在が大きなマイナス評価を 受け、それがこのことばの語感にも影響を与えている。 ジングルマザー みさお【操】忠誠心や貞節などを重んじる道德的な意思の堅 固な意で、会話にも文章にも使われる古めかしい和語。「 を捧げる〉へーを立てる〉へーを守る〉②世間の期待という 面のある「節操」に比べ、社会的というより人間としての道 を守るという倫理的な色彩が強い。「女の」の形で「貞 操」をさす例も多い。永井荷風の『かし間の女』に「小娘の 時分、その人の為にーを失った」とある。単節操・Q貞操 みさげる【見下げる】軽蔑に価すると判断する意で、会話や 改まらない文章に使われる日常の和語。「ー・げはてた奴 だ〉へ人をー・げた物の言い方〉単侮る・軽蔑・蔑む・なめる②・見 下す・みくびる みじかい【短い】空間的・時間的な隔たりが小さい意で、くだ けた会話から文章まで幅広く使われる基本的な和語。〈髪が 」〈1スカート〉〈距離〉〈1話〉〈1期間〉の宇野千代 の『おはん』に「いうたら蝉の命ほどもない、間のことで ござります」とある。「長い」と対立。専短小 みじまい【身仕舞い】身なりや化粧を整えることをさし、主 として文章に用いられる古風な和語。〈小ぎれいにーして 出かける〉〈ーを欠かさぬ滑らかな肌〉普通は、化粧をし て身なりを整えるという人間の行為をさすが、尾崎一雄の 『虫のいろいろ』に「用便のたび眺める富士は、天候と時刻 とによってーをいろいろにする」と、富士山を擬人化した感 じの表現例が出てくる。専支度 みじめ【惨め】かわいそうで見るに忍びない意で、会話や軽 い文章に使われる和語。〈一な生活〉〈一な負け方〉〈見る も一な姿〉〈一な思いをする〉〈言いわけをしても自分が一 になるだけだ〉石川達三の『結婚の生態』に「うちひしが れて喘ぐような一な気持ちになって」とある。嘆かわしい Q情けない みじゅく【未熟】修業や経験が足りないために技術的に劣る 意で、会話にも文章にも使われる、いくなん古風な漢語。 へー者へーな腕前)み拙劣・Q稚拙・つたない・へた・まずい みしよう【未詳】その点に関して詳しいことはまだわかって いない意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。人生没 年ー〉〈作者ー〉詳しいことまではまだわかっていない が、調查次第で今後わかる可能性がありそうな雰囲気を残 している。Q不詳・不明・未知 不注意による誤り・失敗の意で、会話や軽い文章に使わ れる外来語。〈ープリント〉〈思わぬーが出る〉〈重大なー を犯す〉、エラー・しくじる・失策・失態・Q失敗・とちる・抜かる・ぼ か・ミスる・やり損なう みず【水】無色透明で無味無臭の液体をさし、くだけた会話 <1015> から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈水 道のー〉へーを飲む〉へーのいい土地〉へーに浸かる〉古井 由吉の『水』に「透明なコップに満たされた汲立てのー」と ある。広く雨水や海水を含み、時には「ーを摂る」のように 飲み物全体をさす。「ーが出る」で洪水を意味する用法もあ る。Q飲用水・飲料水・お冷や・飲み水 みずあそび【水遊び】水辺で遊んだり水と戯れたりする意で 会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈子供がたら いでーする〉〈川原でーに興じる〉ひ泳ぐ・Q水浴び みずあび【水浴び】海や川で泳ぎを楽しむことをさし、会話 や軽い文章に使われる古風な和語。〈近くの川でーをする〉 のブールで本格的に泳ぐ風景にはなじみにくい。込泳ぐ水 泳・Q水遊び みずいろ【水色】青や藍色系統の薄く明るい色をさし、会話 にも文章にも使われる和語。「のリボンを風になびかせ る)の川端康成の『みづうみ』に「車の窓ガラスごしに見る 町は薄ーがかっている」とあり、その先に「運転手の世界は 温い桃色で客の世界は冷たい」のようにも、銀平は思う習 わしになった」とある。一般には「空色」とほとんど区別な しに使うが、専門的には、淡く緑がかった青をさすという。 呂空色 みずうみ【湖】周りを陸地に囲まれている水を湛えた場所を さし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の和語。〈一のほとりを散歩する〉〈一にポートを浮かべ る〉林芙美子の『浮雲』に「が金色の針をちりばめたよ うにこまかに小波をたてている」とある。「湖沼」として一 みずぎわ 括されるが、中央部に水深五メートル以上で沿岸植物の生 えない場所を持つ点で沼と区別される。淡水の海すなわち 「水海」の意から。刂池・湖水・Q沼 みずがし【水菓子】「果物」の意で会話にも文章にも使われる 古風な表現。〈食後にーをいただく〉今では使用頻度が減 り、料亭などで用いる程度となった。食用に供されたもの に限り、木に生っている状態では使わない。内田百閒の 『特別阿房列車』に「若い娘が食堂車の方からーを売りに来 た」とある。東京方言という。果実・Q果物・フルーツ・実 みすかす【見透かす】目に見えない相手の心の中や将来の計 画などを見抜く意で、会話にも文章にも使われる和語。へ相 手の本心を—〉の「見通す」に比べ、隠そうとしていること に対してよく使われる。見通す・Q見抜く みずから【自ら】「自己」に近い意味で、改まった会話や文章 に用いられる和語。〈一の行く末〉〈一を犠牲にする〉②佐 藤春夫は『田園の憂鬱』で、「秋の雨ーも、遠くへ行く淋し い旅人のように、この村の上を通り過ぎて行くのであった」 と雨を擬人化してこの語を用いている。「一出向く」「範 を垂れる」のように、「自分で」の意味合いで副詞的にも使 う。ひおのれ・自己・Q自身・自分 みずぎわ【水際】陸地が海・湖・川などの水面に接するあたり をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈ーに立つ〉へー に生える〉の「作戦」として、敵が上陸しようとする間際 に攻撃して撃退する戦法をさすこともあり、田宮虎彦の 『沖縄の手記から』にも「壕によって直ちにーに敵を撃退す ることになっていた」とある。刂磯・うみべ・沿岸・海岸・海浜・ <1016> みずくさい かいへん・岸・岸辺・なぎさ・Q波打ち際・浜・浜辺・みぎわ・ みずくさい【水臭い】親しい間柄なのに妙に遠慮があってよ そよそしい態度で接する意で、会話にも文章にも使われる 日常の和語。〈俺に隠すとは—〉〈割り勘なんて—〉〈夫婦 の間でそんなーことができるか〉泉鏡花の『照葉狂言』に 「あなた私たちにお隠し遊ばしてはーじゃありませんか」と ある。もと、「酒」のように食物の味が薄く水っぽい意。 りすげない・そっけない・Q他人行儀・ぶっきらぼう・よそよそしい みずけ【水気】物に含まれる水分をさし、会話や硬くない文 章に使われる日常の和語。〈ーを多く含む〉〈ーを切る〉 〈ーのものがほしい〉ひ水分 みずけむり【水煙】細かい水滴のしぶきが一面に飛び散って 煙のように見えるものをさし、会話にも文章にも使われる 和語。へーが上がる〉へーを立てて進む〉時に体感的な感 じのある「しぶき」と違い、少し距離を隔てて眺めた感じが ある。川端康成の『雪国』の火事を描いたラストシーンに 「屋根を外れたポンプの水先が揺れて、ーとなって薄白いの も、天の河の光が映るかのようだった」とある。Qしぶき 飛沫 みすごす【見過ごす】見たのに気づかない、気づいてもその ままほうっておく意で、会話でも文章でも広く使われる和 語。〈目印の看板を—〉〈ほかのことに気を取られてうっか り—〉〈そこまでずれたら—わけには行かない〉「見落と す」意のほか、気がついても大目に見て問題にせずそのま まやり過ごすという意味にも用いる。そのため、「エックス 線撮影でわずかな影を—」というと、影の存在を認識でき ない意か、気がついても異状として取り上げない意か、そ れだけでは判断ができない。見落とす・見逃す みずさし【水差(指)し】コップなどに注ぐための水を入れて おく容器をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈枕もと のーからコップに水を汲くむ〉の川端康成の『千羽鶴』に 「花は白ばらと薄色のカーネーションとであったが、その花 束が筒形のーによく似合っていた」と、志野の水指を花立に 用いて骨壺の脇に飾る場面がある。ヒッチャー みずしようぱい【水商売】客の人気次第で収入が大きく違う 不安定な職業の意で、会話や軽い文章に使われる、やや俗っ ぽい表現。へーの女〉接客業、特に風俗営業などの連想が 強い。風俗営業 ミステリー理屈で説明できない不思議な出来事をさし、会 話やさほど硬くない文章に使われる外来語。〈—現象〉へこ の世の—〉の「—小説」「—作家」「—を読む」のように特に 推理小説をさす例が多い。Q怪奇・神秘 みすてる【見捨(棄)てる】困難な状況にある対象を見ながら 助けずにそのまま放っておく意で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈師匠にー・てられる〉〈仲間をー・てて逃げる〉 ②遠藤周作の『白い人』に「その時、彼等は、既にひそかに 殺されたピエール・バンを裏切りー・てたのだ」とある。人 間の例が多いが、「銀行が中小企業をー」のように使うこと もある。ひQ見限る・見放す みずびたし【水浸し】水につかる意で、会話や軽い文章に使 われる和語。〈ーになる〉児冠水・Q浸水 みずべ【水辺】海・湖・川などの水のほとりをさし、会話にも <1017> 文章にも使われる、いくぶん趣のある和語。〈一の鳥〉へ に生える〉〈一にたたずむ〉谷崎潤一郎の『細雪』に「 の花の陰」とある。ひ磯・うみべ・沿岸・海岸・海浜・かいへん・岸・ 岸辺・なぎさ・波打ち際・浜・Q浜辺・みぎわ・水際 みすぼらしい【見窄らしい】見かけがいかにも貧乏じみた感 じのする意で、会話にも文章にも使われる和語。〈服装〉 〈落ちぶれてー姿をさらす〉〈一家に住む〉身がすぼまる ようになる意から。あくまで外見だけで、「貧弱」と違い中 身の評価とは無関係。「貧相」と違って顔立ちなどには使わ ない。中野重治の『歌のわかれ』に「石橋を前にひかえた寺 だけはひどくー小寺であった」とある。ひ貧弱・Q貧相 みずみずしい【瑞瑞しい】新鮮で生気にみちた艶々した様子 をさし、会話にも文章にも使われるプラスイメージの和語。 〈りんご〉〈ー若葉〉〈ー素肌〉〈ー感覚があふれる〉三 島由紀夫の『潮騒』に「女の健やかな一体を空想する」とあ る。藤沢周平『老年』には「帰らない青春といった感傷の中 には、まだ現在と青春をつなぐー道が通じている」とある。 ひ新鮮・生鲜 えるうっかり間違える意で、くだけた会話に使われることのあるやや古い俗語。〈易しい問題をー〉ひエラー・しくじる・失策・失態・失敗・とちる・抜かる・ぽか・Qミス・やり損なう みせ【店】売る品物を客が見やすいように並べた場所をさし くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。〈繁華街にーを出す〉〈輸入家具のーを開く〉 〈朝早くーを開ける〉〈十時にーを閉める〉〈今月いっぱい でーをたたむ〉〈一の帳場を預かる〉小沼丹の『庄野のこ みせびらき と」に「手紙を読んで行くと鰻屋のーの前で匂を嗅がされ ているようで(略)白焼は芸術品のようでしたとか何とか書 いてあると、何だか溜息が出る」とある。「見せ棚」の略で、 古くは「見世」とも書いた。「道端にーを広げる」というよ うに、「店舗」と違い、建物の外に開く露店の場合をも含 む。単商店・Q店舗・店屋 みせきき【店先】店の内側で外に面した場所、特に出入り口 の近くをさして、会話にも文章にも使われる和語。本屋の ーに立つへーに目玉商品を並べて客の目を引く店 頭」と同様、店の奥に対して、店の人目にふれる範囲を漠然 とさす場合もある。また、「ーに車を停める」のように、店 の外側のすぐ近くの路上をさすこともある。店頭 みせじまい【店仕舞い】〒「長らくご愛願を戴たきましたが、 本日をもちましてーいたします」のように、商売を打ち切 る意、①「今日は早めにーする」のように、その日の商売を 終わりにする意で、会話やさほど改まらない文章に使われ る和語。ひ閉業・Q閉店 みせびらかす【見せびらかす】自慢げに人に見せつける意で、 会話やさほど改まらない文章に使われる和語。〈宝石を—〉 〈新型の外車を—〉〈ブランド物を—〉鳥衒・Qひけらかす みせびらき【店開き】〒「近く公園のそばに—する店」のよう に、新たに店を開いて商売を始める意、①「いつも—の前か ら客で行列ができるほどの人気だ」のように、店を開けて その日の商売を始める意で、会話やさほど改まらない文章 に使われる和語。②「店」が「見せ」すなわち品物を見せる 場を意味するところから、この語も、必ずしも建物として <1018> みせや の店構えを持たない、例えば往来に品物を並べて売る露天 商などの場合に用いても特に違和感がない。刂開業・Q開店 みせや【店屋】店を出して商売をしている家をさし、会話や 硬くない文章に使われる和語。〈—が立ち並ぶ〉の「しもた 屋」と対立する概念なので、店を出していれば食堂や床屋 や不動産屋なども含まれそうだが、典型的には商店を連想 させる。志賀直哉の『雨蛙』に「道に添うた細長い町で、生 垣が多く、—は少かった」とある。刂商家・商店・店 みせる【見せる】相手に見えるようにする意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈運転免許証を—〉〈買いたての鞄を—〉〈このところ顔を ー・せない〉小沼丹の『懐中時計』に「肝腎の時計をー・せ て呉れと頼んだが、彼は決してー・せようとしなかった」と ある。「隙を—」「弱みを—」「意地を—」のように抽象的な 対象についても使う。弁示す みぞ【溝】細長く掘った人工の水路をさし、会話でも文章でも広く使われる和語。〈ーにはまる〉〈ーを埋める〉永井龍男の『風ふたたび』に「みそ汁のように赤くにごったー」とある。「どぶ」より正式な感じの表現。「どぶ」ほど汚いイメージはない。福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「(ラムからコウルリッジへの手紙が)しばらく絶えてしまう。ーが掘られた」とあるように、人間関係について「ができる」「が深まる」などと比喩的に表現する場合はやや文章語寄り。「どぶ」にはそういう抽象化した意味の用法はない。ひどぶ みぞう【未曾有】これまでに一度もなかったの意で、改まっ た会話や文章に用いられる古風で硬い大仰な漢語。これは まきに古今ーの出来事だ》横光利一の『紋章』に「わが国 の物価はーの奔騰を来たした」とある。「みぞゆう」は誤 読。弁空前・空前絶後・Q前代末聞 みそこなう【見損なう】見て誤って認識する意で、主に会話 に使われる和語。〈当選番号をー・ってぬか喜びする〉特 に、「そんな男だったのか、ーったよ」のように、誤ってそ れまで過大評価していたという意味合いで使う例が多い。 また、「楽しみにしていたドラマをー」のように、見る機会 を逃すという意味でも使う。Q見誤る・見違える・見紛きう 見間違える みそしる【味噌汁】味噌で味つけした汁物をさし、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる生活上の日常語。へー をすする〉〈油揚げと葱の入ったー〉温かい家庭の小さ なしあわせを運ぶ庶民的で懐かしい感じのことば。女優の 沢村貞子に『味噌汁』と題するエッセイがある。「浅草の路 地の朝は、ーの香りで明けた」と始まり、「それを二杯も三 杯もおかわりして、浅草の裏町の人たちの、一日がはじまっ た」と冒頭文に照応させて一編を結ぶ。 みそめる【見初(染)める】初めて出会った相手に恋心を抱く 意で、会話にも文章にも使われる古めかしい和語。〈旅先で めぐりあった娘をー〉ひ一目惚れ みそら【身空】その人間の体やそれが置かれた境遇の意で、 会話にも文章にも使われる古めかしい和語。〈若いーで〉 環境・境涯・Q境遇・身の上 みたてる【見立てる】あるものを仮に他のものだと考える意 <1019> で、会話にも文章にも使われる和語。《砂利を海に、岩を島にー・てた庭》谷崎潤一郎の『細雪』に「夕空にひろがっている紅の雲を仰ぎ見ると」とあるが、「紅の雲」は咲き誇る桜の花を雲に見立てた伝統的な表現。また、「洋服を」のように選定する意にも、「医者が胃潰癒がいと」のように診断する意にも用いる。したとえる・なぞらえる・Q見なす みため【見た目】ちょっと見た印象の意で、くだけた会話や軽い文章に使われる和語。〈ーはきれいにできている〉へにごまかされる〉へーは悪いが味はいい)幸田文の『おとうと』に「ーにも明るい人が訪ねて来てくれたことは、家の中じゅうへ光がはいって来たようなもの」とある。外見・Q見かけ・見場 みだら【淫ら】性的な面で品位と節度を欠く意で、やや改ま った会話や文章に用いられる硬い感じの和語。〈ーな言葉を 吐く〉〈ーな行為に及ぶ〉〈ーな女という噂が広がる〉②前 田河広一郎の『三等船客』に「扁平ったい顔を派手な格子縞 のスカートとに向って犯すようなーな視線を注いだ」とあ る。「ーなまねをする」といった表現はほとんど性的な方面 に限定されるが、露骨でないだけに、仮名書きすればぼか しの効果がある。ひQいやらしい・淫猥・卑猥・猥褻 みだり【濫(妄)り】正当な理由や秩序や思慮分別のない意で、 改まった会話や文章に用いられる硬い感じの和語。「に立 ち入ることを禁ずる〉(に話しかけないこと〉(に金を 浪費する)ひQむやみ・やたら みだれる【乱れる】整っていたものが崩れて無秩序になる意 で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる基本的な和 みちか 語。〈髪が—〉〈服装が—〉〈運行ダイヤが—〉〈生活が—〉 高山樗牛の『滝口入道』に「胸は麻のごとくー・れ」とあ る。入り乱れる・ぐらつく・Q混乱・争乱・騒乱 ち【道(路・途)】人や車などが通るための帯状の地面をさ し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈狭い」〈が悪い〉〈を急ぐ〉〈を譲 る〉〈暗い」を避ける〉内田百閒の「百鬼園随筆」に「細 いがあやふやな薄明りで、魚の腹のような色をして伸 びている」とある。「けもの」「無き」「がつく」の ように、何度も踏んで自然にできたものをも含む点が「道 路」と違う。林の中などの細い道の場合は特に「径」を当て ることもある。「今来たを引き返す」のようにコースの意 に抽象化すれば「道路」を使わない。また、「に外れた行 い」のように道徳をさしたり、「わがを行く」「研究者の ーを選ぶ」「を誤る」のように生活上の進路をさしたり、 「その」の権威」のように分野をさしたり、意味用法の幅が 広い。往還・往来・街道・街路・通路・Q道路・通り みち【未知】まだ知られていない意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈数〉〈の人〉〈の世界〉②大岡昇平の 『野火』に「気紛れから、私は—の林の中の道を取る気に なった」とある。「既知」と対立するが、より一般語的。 不祥・不明・未詳 みぢか【身近】生活範囲など自分に近い場所をさし、くだけ た会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。「な人 に相談する〉〈ーにそんな人はいない〉②太宰治の『走れメ ロス』に「飛鳥の如くーの一人に襲いかなり」とある。「手 <1020> みちがえる 元」はもちろん「手近」よりも広範囲に及ぶ。また、距離だ けでなく、「ーで起こる」「ーな話題」のように、自分に関 係の深い意味にも使う。空間の物理的な距離を問題にする 「手近」に比べ、親密な感じが伴う。身辺・手近・手元・身の周 り みちがえる【見違える】見て判断を誤る意で、会話にも文章 にも使われる和語。ぐすっかり大人になったので一瞬ーえ てしまった》の「見間違える」に比べ、「古ぼけた街がーほ ど近代的な都市に変貌した」「垢抜けしなかった少女がーほ ど綺麗になった」のようにプラスの変化について用いる例 が目立つ。見誤る・見損なう・見紛紛う・Q見間違える みちしるべ【道標】「道標」の意で、会話にも文章にも使 われる古風な和語。〈ーを頼りにたどる〉の小沼丹の『地蔵 さん』に「五日市街道の道端に、石のーが立っていて、或る とき、これを失敬してやろうと思い立った」という穏やかで ない一節がある。「研究のー」のように、手引きといった意 味での比喻的用法もある。Q道標・道路標識 みちたりる【満(充)ち足りる】心が満たされる思いをさし、 改まった会話や文章に用いられる和語。「・りた思い 〈!・りた生活〉の「満足」より精神的な充足感に重点があ る。田宮虎彦の『沖縄の手記から』に「異常なほど!・りた 思いであり、私はもしここでアメリカ兵に発見されれば、 殺されてもいいという思いさえした」とある。満悦・Q満 足 みちのり【道程】目的地までの空間的な長さをさし、会話や 硬くない文章に使われる、やや古風な和語。〈ーを測る〉 「思えば長いーを来たものだ」の形で抽象的な意味合いに用 いることもある。乃間隔・距離・Q行程 みちびく【導く】ある目標やよい方向へと向かうように手引 きすることをさし、会話にも文章にも使われる日常の基本 的な和語。〈生徒を—〉〈勝利に—〉〈正しい方向に—〉〈破 滅に—〉芥川龍之介の『或阿呆の一生』に「彼自身をここ へー・いたものの何であるかを考えていた」とある。Q教 える・教示・指導・指南 みちる【満(充)ちる】いっぱいになる、たっぷりあるの意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈月が—〉〈潮が—〉〈自 信に—〉〈室内に花の香りが—〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「活気にー・ちて困るなら」とある。ひみなぎる みっかい【密会】他人に気づかれないようひそかに会う意で 会話にも文章にも使われる漢語。へーしたとのもっぱらの 噂〉へーの現場を目撃する》愛し合う男女の忍び会いに限 らず、政治家同士の内密の話し合いや、会社・大学・球団関 係者などが人事問題などで極秘裏に話を進める場合など、 さまざまなケースが含まれる。ひ逢引が・逢潮・Q忍び会い デート・ランアブー みつげつりよこう【蜜月旅行】「新婚旅行」を意味する、今で は「ハネムーン」以上に古めかしい感じの漢語。へーで熱海 へと旅立つ〉の「ハネムーン」の古風な訳語。ひ新婚旅行・Q ハネムーン みつける【見付ける】探していたものがそこにあることに気 づく意で、会話や硬くない文章によく使われる日常の基本 的な和語。へいい相手をー〉(うまい店をー〉(さんざん捜 <1021> し歩いてやっとー〉〈上着のほころびをー〉〈働き口をー〉 文章語に近い「見いだす」と対照的に日常会話によく使 う。「発見」のような大仰さはなくちょっとしたものにも 使える。ひ発見・Q見出す みっこく【密告】違法行為などの不正を関係者や当局にひそ かに知らせる意で、改まった会話や文章に用いられる硬い 漢語。〈ー者〉〈警察にーする〉個人的な感じの「告げ口」 に比べ、組織など公的な性格が強く、犯罪のにおいもある。 告訴・Q告発・告げ口 みっともない不快で見ていたくない意で、会話や軽い文章 に使われる和語。「姿」く手も足も出ない試合《弁解 に終始した「会見」《他人のせいにするとはあまりに」 太宰治の『富嶽百景』に「そのありさまは、いやになるほ ど、・かった」とある。容姿のほか態度や振る舞いを酷評 するときによく用いる。「見たくもない」のウ音便「見とう もない」からの転。Q無様・見苦しい・醜い みつめる【見詰める】視線をそらさずにじっと見続ける意で、 会話にも文章にも広く使われる和語。〈正面をじっとー〉 〈驚いて相手の顔をー〉堀辰雄の『聖家族』に「肖像でも 描こうとするかのように、熱心に彼をー・めていた」とあ り、小川国夫の『貝の声』に「夕刊を読んでいる浩の横顔 を、ー・めていた」とある。ひ観察・Q凝視・眺める みつもり【見積もり】予定を概算することをさし、会話にも 文章にも使われる和語。へーを立てる〉〈建築費のー〉 「業者からーを取って検討する」のように「書」の意でも 使う。予算 みどく みつりん【密林】草や樹木が密生している森林をさし、会話 にも文章にも使われる、いくぶん古風な漢語。へーに棲息 はする〉へーの奥深く入り込む》川端康成の『伊豆の踊子』 は「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと 思う頃、雨脚が杉のーを白く染めながら、すさまじい早さ で麓から私を追って来た」と五拍に三拍を交えリズミカル に始まる。ひジャングル みとう【未到】いまだに誰も到達していない意で、主に文章 に用いられる硬い感じの漢語。〈前人—〉ひ未踏 みとう【未踏】まだ誰も足を踏み入れていない意で、主に文 章に用いられる硬い感じの漢語。〈人跡〉への奥地」 みとおし【見通し】先行きの見当をさし、会話やさほど硬く ない文章に使われる日常の和語。まったくーが立たない 今後のーは明るい〈午後には復旧のー〉何でもおー だ」のように、将来のことだけでなく他人の気持ちや考え などを含めて言う場合もある。「ーのよい場所」「遠くまで ーが利く」のように、広く見渡せる意からの拡大用法。見 当・Q展望・見込み・予感・予期・予想・予測 みとおす【見通(透)す】空間的に遠くまで見てとる、時間的 に未来のことを正しく予測する意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈遠くまで—〉ぐずっと先のことまで—〉幸 田文の『おとうと』に「ずっとー土手には点々とからかさ洋 傘が続いて、みな向うむきに行く」とある。見透かす・Q 見抜く みどく【味読】文学作品などを話の筋を追うだけでなく表現 <1022> みとめる の美しさなどをよく味わいながら鑑賞する意で、改まった 会話や文章に用いられる、やや専門的な感じの漢語。短編 小説はーしてはじめてよさがわかる芸術性を味わう点 に中心がある。熟読・Q精読 みとめる【認める】見て判断し承認して受け入れる意で、く だけた会話から文章まで幅広く使われる基本的な和語。〈痕 跡をー〉〈過失をー〉〈実力をー〉〈必要とー〉〈世間にー・ められる〉の大岡昇平の『野火』に「肩に触れてみて、私は 彼が死んでいるのをー・めた」とあり、中野重治の『むらぎ も』には「それが多数決でー・められた」とある。単肯定・Q 是認 みどりご【嬰(緑)児】生まれてから二、三年以内の幼い子供の 意で、文学的な文章などに用いられる雅語的な古い和語。 へーを抱えてしあわせそうにほほえむ母〉、赤子・赤ちゃん・赤 ん坊・Q嬰児は みとれる【見蕩(惚)れる】心を奪われて眺める意で、会話や 文章に広く使われる和語。〈あまりの見事さにしばらく—〉 〈豪華な真珠のネックレスに—〉佐々木邦の『ぐうたら日 記』に、中学校の男の先生が生徒を引率して来た女の先生に 「忽ちー・れて了って、茫然自失」その「ー・れているところ を写真に撮られた」という場面がある。見入る・Q見ほれ る・見る みな皆すべての人の意で、会話にも文章にも使われる日 常の和語。〈ーさん、こんにちは〉〈会場にお集まりのー様〉 〈ーで協力して取り組む〉〈ーの言うことを聞く〉〈ーがー 裕福なわけではない〉天皇の挨拶などでは必ず「ーの健 康」というふうにこの語が用いられるが、人をさす単独用 法ではよほど改まらない限り、会話では「みんな」となる例 が圧倒的に多い。また、この語は人間に限らず「残さずに ー食べる」「どの本も面白い」「まで言うな」などと広 く使われる。ひ一同・全員・Qみんな みなぎる【漲る】あふれ出るほどいっぽいになる意で、やや 改まった会話や文章に用いられる和語。〈水が—〉〈力が—〉 〈勇気が—〉〈若さが—〉②「満ちる」に比べ、抽象的な用法 が多く、美化した表現に利用される傾向もある。満ちる みなす【見(看)做す】実際にどうであるかには言及せず仮に そうであると判断する意で、やや改まった会話や文章に用 いられる和語。〈棄権とー〉〈賛成多数とー〉〈事実上の挑 戦とー〉の大岡昇平の『俘虜記』に「この判断にはルソン島 を不落の安全地帯とー近視眼的前提が含まれていた」とあ る。事実と類似している場合は「見立てる」に近い用法と なる。ひたとえる・なぞらえる・Q見立てる みなと【港(湊)】船が停泊し客の乗り降りや積み荷の上げ降 ろしがしやすいように造った所をさし、くだけた会話から 文章まで幅広く使われる基本的な和語。船がに入る 「町として栄える」を見下ろす倉橋由美子の「蠟 たち」に「の光景は歯の抜け落ちた人間の口のなかをみ るようでした」とある。「水の門」の意から。ひ港湾 みなもと【源】水源、広くは、ものごとの起源をさし、会話 にも文章にも使われる和語。へーを発する〉(元気のー) へーをたずねる)②宮本百合子の『伸子』に「憂愁のー」と ある。実際の水源をさす用法はやや古風。「水の元」の意か <1023> ら。源泉・Q水源 みなり【身なり】衣服を着た姿全体の感じをさし、改まった 感じの会話や文章に用いられるやや古風な和語。へきちん としたー〉へーを整える)②太宰治の『富嶽百景』に「な んか気にしないほうがいい、と小声で呟いて」とある。着 ている物自体よりも衣服を身につけた姿に重点がある。 衣装・衣服・着物・Q服装・装い みなわ【水泡】水の泡の意で古風な文章中に用いられる雅語 的な和語。水の泡の意の「みなあわ」の転。〈よとみに浮か ぶー〉の庄野英二の『星の牧場』に「なぎさでは、真珠のレ ース編みのように、ーが花をさかせていた」とある。Q 泡・うたかた・水泡野・泡沫 みにくい【醜い】見ていると不愉快になって目を背けたくな る意で、会話にも文章にも使われる、いくらか改まった会話 や文章に用いられる和語。〈顔が生まれつきー〉へー言い逃 れ〉へー遺産争い〉③三島由紀夫の『潮騒』に「自らーと信 じている顔の効能(略)美しい顔よりも、ずっと巧みに感情を いつわることができた」とある。顔や容姿がとうてい美し いとはいえない場合のほか、態度や行為が人間として恥ず かしい場合に用いる。「見難い」すなわち「見ていにくい」 意から。ひQ見苦しい・みっともない みぬく【見抜く】物事の表面に惑わされず、その奥にある真 の姿をとらえる意で、会話にも文章にも使われる和語。相 手の本心をー〉〈嘘をー〉〈本質をー〉小林秀雄の『志賀 直哉』に「慧眼の出来る事はせいぜい私の虚言をー位が関 の山である。私に恐ろしいのは決して見ようとはしないで みのたけ 見ている眼である」とある。「見破る」と違い、積極的に隠 そうとしている場合に限らない。専察知・見破る ネラルウォーターミネラルを特に多く含んだ天然水をさ し、会話にも文章にも使われる外来語。〈ーを買う〉②通常 は自然のままの水ではなく市販されているものをさす。 天然水 みのうえ【身の上】その人の運命や境遇をさして会話にも文 章にも使われる、やや古風な日常の和語。〈ー話〉〈ー相談〉 〈ーを明かす〉〈気の毒なー〉〈天涯孤独のー〉森鷗外の 『青年』に「パンのために働くには及ばないーだ」とある。 塚境・境涯・境遇・身空・身の程 みのがす【見逃す】「見過ごす」に近い意味で、会話でも文章 でも広く使われる日常生活の和語。〈絶好球をー・してあえ なく三振に倒れる〉〈近くの映画館で上映していたのに、気 がつくのが遅くて残念ながらー・してしまった〉〈不正行為 を目撃しながらー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「弊風を 杜絶する為めにこそ吾々は此学校に職を奉じて居るので、 之を一位なら始めから教師にならん方がいい」とある。見 ていながら気づかない意と、うっかりして見る機会を逸す る意と、認識しながら黙認する意とがある。社会常識や場 面の状況などから、「エックス線撮影でかすかな影をー」と いえば第一の意味、「ゴッホ展をー」といえば第二の意味、 「今度ばかりはー・してやる」といえば第三の意味と解釈す ることになる。見過・見落とす・見過」す みのたけ【身の丈】身長の意で、会話にも文章にも使われる 時代がかった古めかしい和語。へー六尺もあろうかという大 <1024> みのほど 男の「に合う生活」のように実際の自分の意に使う用法 は特に古い感じがない。森田草平の『煤煙』に「の図抜け て高い大男」とある。Q上背・身長・背②・背丈 みのほど【身の程】自分の身分や能力の程度の意で、会話や 硬くない文章に使われる古風な和語。〈ー知らず〉へーをわ きまえる〉島木健作の『生活の探求』に「ーを知ったがい いんだ」とある。軽蔑的ニュアンスを伴うことが多い。 位①・地位・Q身分 みのまわり【身の回(周)り】自分自身の周辺の場所をさし、 会話にも文章にも使われる日常の和語。〈—の世話〉へに 実際に起こった放火事件〉へを見てもそういう例は見当た らない〉の芥川龍之介の『芋粥』に「万端のみすぼらしい 事」とある。「—の物」のように普段の生活で使っている意 にも、「—の世話」のようにその人に直接関係した日常の意 にも用いる。Q身辺・手近・手元・身近 みのる【実(稔)る】草や木に実ができて熟す意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈稲が—〉〈柿が枝もたわわに—〉 ②「永年の苦労が—」「努力がようやく—」のように、成果 が上がる意の比喻的表現にもなる。卫生なる みば【見場(端)】見たときの感じの意で、主として会話に使 われる古風な和語。へーが悪いと売れないへーは悪いが味 はいい物について使うことが多い。Q外見・見かけ・見 た目 みはなす【見放す】今後の見通しに絶望し、それまで深くか かわってきた相手を諦めて関係を断つ意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈親にもー・きれる〉〈医者のー・した病 人が奇跡的に回復する》「運にー・される」「神仏にー・さ れる」のように超自然について用いる場合は通常、受身の 形をとる。見限る・Q見捨てる みはらし【見晴らし】さえぎるものがなく遠くまで見渡せる 意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈台に立 つ〉へがいい〉へが利く〉芥川龍之介の『あの頃の自 分の事』に「の好い二階の廊下」とある。Q眺望・展望 みはり【見張り】注意して番をする意で、会話やさほど改ま らない文章に使われる和語。〈一番〉へを立てる〉へを 置く〉の監視」に比べ、行為そのものよりその行為を行う 人をさす例が多い。監視 みびいき【身贔屓】身内や同郷・同窓など自分と関係の深い人 を他より贔屓にする意で、会話や硬くない文章に使われる やや古風な表現。〈同郷の選手を—する〉〈直属の部下を— する〉ひQ依怙贔屓・贔屍・偏愛・分け隔て みぶり【身振り】ことばの代わりに体を動かして、ある情報 を伝達する意で、会話にも文章にも使われる和語。へーで知 らせる〉へーを交えて話す〉の大岡昇平の『わが復員』に 「ー手振りで何を通じあっているのかわからないが、要する に巡査は(米兵に)阿諛していた」とある。ひジエスチャー・Q しぐさ・ゼスチュア・手真似 みぶん【身分】その人間が自分の属する組織や社会の中で身 を置く位置をさし、会話にも文章にも使われる表現。〈高貴 なー〉〈卑しいーの出〉〈ーを明かす〉〈ーが違う〉〈平社員 のー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「元はーのあるもので も教育のない婆さんだから仕方がない」とある。序列や上 <1025> 下関係を問題にする雰囲気があり、「証明書」のような用 例を除き、やや古風な感じのことば。単位①・Q地位・身の程 みぼうじん【未亡人】夫と死別したあと再婚していない女性 を意味する、やや改まった感じの漢語。〈故人に代わってー を招く〉②川端康成の『千羽鶴』に「ーの家へ度々強意見 に出向いたり」とある。まだ亡くなっていない人というニ ュアンスが嫌われることもある。専寡婦・Q後家・やもめ みほれる【見惚れる】見てうっとりする意で、会話や文章に 使われる古風な和語。〈舞い姿にー〉「見とれる」のほう が一般的。ひ見入る・Q見とれる・見る みほん【見本】商品などの内容や品質などを示すための一例、 全体の姿や性質を推測させるために示す代表例をさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な表現。〈国際|市〉〈内容—〉〈ーを示す〉〈ーを取り寄せ る〉②小島信夫の『アメリカン・スクール』に「僕がみなさ んにあとでーを示しますよ」とある。「悪い」「努力が報 われるーだ」のように、「標本」同様、典型的な例の意にも 使うが、基本的には一つの参考例を示す。単一例・Qサンプ ル・手本・典型・標本・モデル・模範・例 みまい【見舞い】病気や災難に遭ったりして苦しんでいる人 を元気づけるための訪問や手紙、持参した品をさし、会話 にも文章にも使われる日常の和語。〈ー客〉〈火事ー〉〈病 院にーにいく〉島崎藤村の『夜明け前』に「暑さのーに村 へ来ていた中津川の医者」とある。専慰問 みまがう【見紛う】区別がつかず見間違える意で、文章に用 いられる古めかしい和語。華やかな照明に会場は昼と みみあか 明るさ〈地面に霜が降りたかとーばかりの月明かり〉 ばしば「見まごう」となり、その場合はさらに古語的な雰囲 気が増す。見誤る・見損なう・見違える・Q見間違える まかる「身罷る」古風な文学的な表現の中で「死ぬ」意で まれに用いられる、古語に近い優雅な和語。〈母のー・りま したのは桜の咲くころでございました〉死を忌む気持ち から、それを、「身」が「罷る」すなわち、体がこの世を辞 去するという意味にとらえ直した婉曲表現。福原麟太 郎の『チャールズ・ラム伝』に「メアリーは(略)弟よりも十 三年長生きして一八四七年五月二十日八十二歳でー・った」 とある。勇敢え無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切れる・息 が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れにな る・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死 ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・ 亡くなる・儚くなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏 になる・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 みまちがえる【見間違える】うっかり実際とは違ったように 見る意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈時計の針を ー〉〈直進のみの信号をー・えて左折する〉「見違える」が しばしばプラスのイメージで用いられるのに対し、この語 は単純に誤認の部分に重点がある。見誤る・見損なう・Q見 違える・見紛う みまわり【見回(廻)り】異状がないかどうかを確認するため に見て回る意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈構内の ーを強化する〉〈警備員がーに出る〉Q巡回・パトロール みみあか【耳垢】耳の穴の中にたまる垢の意で、会話にも文 <1026> みみあたり 章にも使われる和語。「がたまる」「を取る」「耳葉 「の「奨」という響きを嫌って品位を保つ。「鼻奨」「菌葉」 に「垢」は使われず、「目垢」はあるがあまり使われない。 耳奨 みみあたり【耳あたり】耳で聞いたときの感じや印象をさす 和語表現。「のやわらかな心地よいことば」「人あた り」などと同様、感触を主観的に評価することば。近年、こ の意味で「耳ざわり」を用いる例が見られる。その用法は 俗語的。耳障り・耳触り みみくそ【耳葉(屎)】主にくだけた会話に使われる日常の俗 っぽい和語。へーをほじくる》「耳垢あか」より下品な感じ がある。弁耳垢 みみざわり【耳障り】聞いて不快になる感じをさし、会話でも文章でも使われる日常の和語。〈な音〉〈な意見〉正宗白鳥の『入江のほとり』に「呻吟が次第にになって仕様がない」とある。近年この語の音から、「耳触り」の意と誤解して、「耳ざわりのいいことば」のように「耳あたり」の意で使う俗な用法が広がっている。耳あたり・耳触りみみざわり【耳触り】近年、「耳障り」の音を「耳触り」と誤解し、「耳で聞いたときの感じ」の意で使い出してすっかり広まった俗語。〈「のいいことば〉の「手触り」「肌触り」からの連想も働いたように思われる。耳あたり・耳障り みみたぶ【耳朶】耳の下の垂れ下がったふくらみをさし、会 話にも文章にも使われる日常の和語。へーが赤い(大きな ー)宮本百合子の『伸子』に「彼女はぽっとーまで赧くし た」とある。ひじだ みみっちいくだけた会話で使う「けちくさい」意の俗語。 〈—態度〉へー商い〉へー話〉ひQけち・けちくさい・けちん坊・倹 約家・渋い・渋ちん・締まり屋・しみったれ・しわい・せこい・節倹家・吝 嗇よんし家 みめい【未明】夜明け前を意味する、やや改まった文章語レ ベルの漢語。〈八日—の火災〉(台風は明日の—に最も接近 する)太宰治の走れメロス」に「きょうメロスは村を 出発し」とある。児暁・明け方・曜・朝ぼらけ・Q朝まだき・しのの め・払暁・夜明け・黎明 みもち【身持ち】品行の意で会話にも文章にも使われる古め かしい和語。(一の悪い女)回主として男女関係の貞操観念 について用いる傾向があり、多くの類義語の中でこの語は 昔なぜか女性の連想が強かった印象がある。行状・操行・Q 素行・品行 みと【身元】氏名や本籍・現住所・経歴など、その人間に関 する外在的な情報の総合をさして、会話にも文章にも使わ れる、やや古風な和語。〈ー不明〉〈ー引受人〉〈被害者のー が判明する〉〈ーを調べる〉〈ーを保証する〉②谷崎潤一郎 の『細雪』に「こちらでもその人のーを調べるだけは調べさ せていただいて」とある。専素性 みやく【脈】血管の規則的な動きをさして、くだけた会話か ら文章まで広く使われる日常の漢語。〈ーを取る〉へーを診 る〉へーが早い生きているという意味の「まだーがあ る」という表現は、比喻的に望みがある意をも表す。こう いう用法は「脈搏みや」にはない。貝鼓動・動悸・Q脈搏 みやくがあがる【脈が上がる】「死ぬ」意の古風な間接表現 <1027> 死を忌気持ちから、死という現象を全体として指示せ ず、心臓が停止して脈拍が絶えることだけを限定的に取り 上げる換喩的な婉曲表現。勇敢え無くなる上がる②・Q あの世に行く息が切れる息が絶える息を引き取る往くいけな くなる永眠往生お隠れになる落ちる②おめでたくなる帰らぬ 人となるくたばる死去死ぬ死亡昇天逝去斃れる他界長 逝露と消える天に召される亡くなる働くなる不帰の客とな る不幸がある崩御没する仏になる身罷る空しくなる藻屑 となる逝く臨死臨終 みやくはく【脈搏(拍)】「脈」の意で、学術的な会話や文章に 用いられる、正式な感じで専門的な漢語。〈数〉へーを調 べる〉貝鼓動・動悸・Q脈 みやくらく 【脈絡】言語表現などにおける論理的な筋道をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈前後の—〉〈話に— がない〉②清岡卓行の『アカシャの大連』に「不意に、何の ーもなしに、戦争を一応忘れてしまえと、彼は自分に鞭う った」とある。ひコンテクスト・筋・筋道・Q文脈 みやげ【土産】旅行先や外出先で買って持ち帰る品、訪問先 に持参する贈り物をさし、くだけた会話から文章まで幅広 く使われる日常の和語。〈|物屋〉〈沖縄—〉〈おーを持っ て訪問する〉小沼丹の『マロニエの葉』に「多くのーのな かで僕の希望が一番厄介(略)マロニエの葉は手の届く所に は無かった」とある。特に会話では、多く「おー」の形で使 われる。ひお持たせ・Q手土産・到来物 みやこ【都】皇居や政府の置かれている都市をさし、会話や さほど硬くない文章に使われるやや古風な和語。へ落ち みょう 〈一の人〉(一住む〉(一を遷す)宮沢賢治の銀河鉄 道の夜』に「ブラタナスの木などは、中にたくさんの豆電球 がついて、ほんとうにそらは人魚の一のように見える」 とあるように、単に大都会の意でも使う。Q首都・首府 みやびやか【雅やか】気品と趣のある意で、主に文章中に用 いられる古風で雅語的な和語。「なたたずまい」〈羽子板 はーな遊び〉〈ーに舞う〉四三島由紀夫の『鹿鳴館』に「あ の人はもう頭の先から、爪の先までーで」とある。優雅・ Q優美 みやぶる【見(看)破る】隠し事を暴く意で、会話にも文章に も使われる和語。〈敵の策略を—〉〈トリックを—〉〈一目 で正体を—〉安部公房の『他人の顔』に「あっきり正体を ー・られてしまった」とある。「見抜く」と違い、相手が積極 的に隠そうとしている場合に限って用い、「人生の意味」 「作品のテーマ」「物事の本質」などにはなじまない。見抜 く ミュージック「音楽」の意で会話や軽い文章に使われる外来 語。「ポピュラー」《テーマ」音楽」に比べて軽く斬 新な語感で用いられ、クラシック音楽の連想が薄い。三浦 綾子の『石の森』に「静かなバック」が流れる店」とある。 単楽 よう娘を意味する昔の泥棒社会の隠語。漢字の「妙」 が女偏に「少ない」と書くところから「少女」をさしたもの。少女 みよう【妙】理屈で説明しにくい不思議なようすをさし、会 話や硬くない文章に使われるやや古風な日常の漢語。「変」 <1028> みょうあん ほどくだけておらず、会話でも文章でも使う。〈なまね〉 〈一に素直だ〉〈一に納得できる〉〈一な具合〉〈一な所で会 う〉〈一にくわしい〉〈いささかーである〉小沼丹の『懐 中時計』に「その人物が過去形で語られるのを聞くと、何と もーな気がして淋しかった」とある。「造化のー」「言いえ てー」のように、きわめて優れた意の用法は文章語的。 Q 変・へんちくりん・へんてこ・妙ちきりん みようあん【妙案】意外に優れた思いつきをさし、主として 文章に用いられる漢語。ふとーを思いつく〈実際にやっ てみるとーだとよくわかる〉帰広い「名案」のうち、論理 の積み重ねで到達する考えより、普通にはちょっと気づき にくい点に着目した意外な手段を連想しやすい。ひ名案 みようごにち【明後日】「あさって」の意で、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ーに伺がいます〉へーに帰国の予 定〉の「一昨日」と対立。ひあさって みようじ【苗(名)字】家の名をさして会話にも文章にも使わ れる漢語。〈珍しいー〉〈結婚してーが変わる〉改まった とき以外は「姓」よりよく使う。 みようだい【名代】目上の人の代理を務める意で、改まった 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈父のーで伺う〉〈社長 のーとして臨席する〉の「なだい」と読めば、「これがーの 東照宮」のように、通常は「有名な」の意の別語だが、まれ にこの意味でも使う。賛元玉・Q代理・身代わり みようちきりん【妙ちきりん】「妙」の意でくだけた会話で使 われる俗語。〈ーな格好〉〈ーな話〉〈ーな真似しやがる〉 変・へんちくりん・へんてこ・Q妙 みようにち【明日】「あす」の意。「あす」よりもさらに改ま った硬い漢語表現。〈一参上いたします〉へ一昨日よりーま での四日間〉菊池寛の『恩讐の彼方に』に「ともなれ ば、石工共が妨げを致そう」とある。「あす」と違い、将来 といった漠然とした意味では用いない。ひあした・Qあす みようねん【明年】「来年」の意で、相当に改まった会話や硬 い文章に用いられる、かしこまった感じの漢語。へーの春ご ろに竣工しゅんの予定〉へーには晴れて婚儀が整う〉へーにな りましたら改めて御挨拶に参上いたします)「去年」と 「来年」はほぼ「今年」並みのレベルであるが、この語は「昨 年」以上に改まりを感じさせる。来年 みようねんど【明年度】「来年度」の意で、相当改まった会話 や硬い文章に用いられる漢語。「の予算案を審議する〉 への事業計画に盛り込む》の「来年度」より丁重な表現。 来年度 みようやく【妙薬】不思議なほどよく利く薬をさし、改まった会話や文章に用いられる、やや古風な漢語。へーにめぐり あう〉〈服用してみるとなかなかのだ〉昔ながらの漢方 薬を連想しやすいが、特効のある新薬なども発見当初はこ の語にふさわしい新鮮な驚きをもって迎えられるだろう。 ひQ秘薬・良薬 みようれい【妙齢】女性のうら若い年頃をさし、やや改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。〈一の御婦人〉田山花袋の『蒲団』に「かの女は一の美しい花」とある。男性には用いない。女性でも高校生以下ではイメージが合わない。特に結婚適齢期あたりをさす用法もあるが、この語に <1029> は大人の雰囲気があって三十代に用いても違和感はない。 乃乙女・少女・娘 みより【身寄り】親戚関係にある人々の意で、会話や軽い文 章に使われる古風な和語。「のない憐れな年寄り」回ふ つう家族以外に使う。遠藤周作の『海と毒薬』に「空襲で家 族を失ったのない老人」という例がある。Q縁者・親戚・ 親族・親類 みらい【未来】過去や現在と対立する、まだ来ていない時を 冷静にさし示し、会話にも文章にも使われる基本的な漢語。 〈都市〉〈永劫ふく〉〈の大人物〉〈輝かしい〉〈を 予測する〉〈自分でーを切り開く〉〈明るいーを築く〉夏 目漱石の『こころ』に「私は寝ながら自分の過去を顧みた。 又自分のーを想像した」とある。主体側にひきつけた感じ の「将来」と違って、一秒後でも何百年後でも違和感なくさ すことのできる客観的な表現。ふ以後・今後・先行き・Q将来・行 く未 ミリバール「ヘクトバスカル」の旧称にあたる外来語。ひへ クトバスカル みりよく【魅力】それに接する人の心をとらえて離さずすっ かりとりこにしてしまう力をさし、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈的な車〉へ「的な値段〉へ「のある会社〉へ読 者を惹きつけるに富んだ本〉林芙美子の『浮雲』に「富 岡の一切が噴きこぼれるようななのだ」とある。単チャー ミング みる【見る】視覚でとらえる、および、その延長上の意味で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の最も ミルク 基本的な和語。〈前を—〉〈テレビを—〉〈まじまじと—〉〈夢を—〉〈経過を—〉〈甘く—〉森鷗外の『雁』に「その姿を目に吸い込むように見て心の内に非常な満足を覚えた」とあり、小林秀雄の『ゴッホの手紙』に「理想を抱くとは、眼前に突入すべきゴールを—事ではない」とある。「現地を「被害状況をみて回る」など、視覚を働かせて調べる意を明確に出したい場合に「視る」「芝居を—」「試合を—」など、見物する意に「観る」と書くこともある。「病人を—」「子供の勉強を—」など、世話をする意では特に「看る」と書く傾向が見られるが、これらの表記はいずれも若干古風で、意味の細かい違いを区別しようとする配慮の跡が感じられる。なお、「試して—」「数えてみたら」のような補助動詞の用法では仮名書きが普通で、そこを「見る」と書くと古い感じが伴う。正視・注視・直視・見入る・見とれる・見ほれる・診る みる【診る】診察する意に限定して、会話にも文章にも使わ れる日常の和語。〈患者を—〉〈医者にー・てもらう〉これ も「見る」の一義であるが、一般にこの表記を用いるため、 特に古風な感じはない。見る ミルク牛乳やその加工品をさして、会話にも文章にも広く使われる日常の外来語。〈粉—〉〈コンデンス—〉〈テイー〉〈コーヒーに—を入れる〉和田伝の『沃土』に「薬屋の店を覗いてごらん。まるでもう人間には乳というものが出なくなっちまったように、並んでるじゃないかね、いろんなーが」とある。牛だけでなく山羊などの乳も含まれる。 ふ牛乳 <1030> みれん みれん【未練】別れたり手放したりするときに思い切れない 気持ちをさし、会話にも文章にも使われる漢語。へなふる まい〉へーを断ち切る〉へーがましい行い〉へ別れた人にー が残る〉の辻邦生の『旅の終わり』に「おそらく私たちは明 日午後の列車で町をたつだろう、何一つーなく……」とあ る。有島武郎の『或る女』には「我が身で我が身を焼くよう なーと嫉妬のために前後も忘れてしまった」とある。「心残 り」に比べ、その感情が表情・態度・行動に出る場合が多い。 ひ愛惜・心残り・残念・無念 みわけ【見分け】似ているものを外見だけで判別する意で、 会話や軽い文章に使われる和語。へひよこの雄と雌のーが つくへ一卵性双生児で二人のーがつかない)鑑識・鑑定・鑑 別・Q区別・識別・判別・弁別 みんか【民家】一般の人が住んでいる家をさして、やや改ま った会話や文章に使われる漢語。へーがかたまっている〉 へーの建ち並ぶ通り)公共の建物、ピル、集合住宅、工場、 店舗などに対して普通の家をさし、一軒一軒が独立した二 階建て以下の木造住宅を連想させやすい。専家人家 みんしゅう【民衆】国や社会を構成している一般の人々の意 で、やや改まった会話や文章に使われる漢語。「が騒ぐ くに訴える〉への心をつかむ》国民のうち一部の支配 者階級の人々を除くという意識で使うことが多い。庶民 Q大衆 みんぞく【民俗】民衆の生活様式や風俗の意で、主に文章に 用いられる、やや専門的な漢語。〈学〉〈芸能〉専民族 みんぞく【民族】起源や文化の歴史を同じくする人間の集団 の意で、会話にも文章にも広く使われる漢語。〈ー衣装〉 〈ーの祭典〉〈農耕ー〉〈湯気なー〉児民俗 みんな皆すべての人の意で会話や硬くない文章に使われ る和語。「に愛される町」「でやればすぐ終わる」「 で考えよう」「阿川弘之の『雲の墓標』に「が野良犬のよ うに眼の色をかえ、いつもいがみあっている」とある。日 常会話では通常この語形で話す。語義は「全員」と同じで あるが、実際の用法としてはもっとルーズで、子供が親に物 をねだる場合に「友達が持ってるよ」などと、単に、持っ ている人がたくさんいるという程度の意味合いでも使われ る。「に反対されて計画がなかなか実行できない」などと 言う場合でも、「全員」ほど厳密ではない。「みな」と同様、 「宿題をーやっちゃった」「この酒はー飲んでもいいよ」な ど、人間以外にも広く使われる。み一同・全員・Qみな みんわ【民話】民間の中に生まれ民衆に語り伝えられてきた 伝説や昔話をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーの ふるさと〉へーを語り継ぐ〉ひ言い伝え・伝説・Q昔話② <1031> ムードある場所のある時の独特の雰囲気をさし、会話や軽 い文章に使われる外来語。〈ー音楽〉へーが盛り上がる〉 へいいーをかもしだす〉へーに酔う〉特に情緒的な用法が 多い。空気②・情緒・Q雰囲気 ムービー「映画」を意味して使われることのある比較的新し い感じの外来語。〈カルトー〉英語から入ったが、日常会 話で一般に使われるほど普及しておらず、硬い文章で用い られることも少ない。Q映画・活動②・活動写真・キネマ・シネ マ むえき【無益】役に立たずやる意味がまったくない意で、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈な争い〉へな殺 生を繰り返す)森鷗外の『半日』に「言うのはーだとは思 いながら」とある。「むやく」と読むと古めかしい感じにな る。り徒労・Q無駄 むえん【無縁】つながりがない意で改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈われわれ庶民にはーな話〉の「仏」「 墓地」のように、縁者のいない意にも使う。ひ無関係 むかいあう【向かい合う】人や建物などが互いに正面を向い て位置する意で、会話にも文章にも使われる和語。〈部長と ー・って座るとさすがに緊張する〉〈肉屋と魚屋がー・って店 を出す〉き差し・差し向かい・対面・Q向き合う むかう【向かう】正面に相対する、その方向に進む意で、会 むかし 話にも文章にも使われる日常の和語。〈京都へ〉〈机に ー〉へところ敵なし〉〈病気が快方にー〉〈好景気にー〉 〈面とー・って批判する〉③堀辰雄の『大和路』に「すっかり 日のかげった築土道を北にー・って歩いていった」とある。 方向性に重点のある「向く」に対し、移動を含む例が多い。 り向く むかえる【迎える】準備したり出向いたりして相手が来るの を待つ意で、会話にも文章にも広く使われる和語。客を ー〉〈チャンスをー〉〈正月をー〉〈嫁にー〉②永井龍男の 『朝霧』に「若い明るい女性をー・えて」とある。楽しみに待 つ場合だけでなく「強敵をー」などとも言う。ひ出迎える むかし【昔】現在から見てはるか以前の漠然とした時をさし、 くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。「からのなじみ」「の人はうまいことを言ったも のだ」「はよかった」「からの言い伝え」「はるか」の 話〉「を偲ぶ」「ながらの家並み」「の夢を追う」「 の面影が残る」佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「煙のような 」とある。「の力士と今の力士」「の選手と今の選手」 「の学者と今の学者」「の政治家と今の政治家」といっ た比較でたいてい前者に軍配が上がるのは、「今」をここ数 年程度の幅で考えるのに対し、範囲の漠然としたこの語を 数十年以上の幅でとらえその中から優れた人材を選んでイ メージするためもある。遠く過ぎ去った日々を懐かしむ零 囲気で使う傾向があるが、日進月歩という観念から「の 電話」「の考え」「のやり方」のように、時代に後れた という蔑みの気持ちが入る例もある。り以前・いにしえ・往時・ <1032> むかしばなし 往年,Q昔日 むかしばなし【昔話】①過去を懐かしむ回顧談をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈旧友とーをして往時を懐かしむ〉〈ーに花が咲く〉永井龍男の『朝霧』に「ーをぽつりぽつりするのが唯一の私の話題であったが」とある。「昔語り」ともいうが、古い感じに響く。単回顧談②「昔むかし」と語り始める子供向けの空想的な物語をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈浦島太郎のー〉子供にーを語って聞かせる〉特定の土地や時代や人物にまつわる「伝説」より普遍的な話が多く、『桃太郎』や『舌切り雀』『猿蟹合戦』など空想的なたとえ話も多い。「昔斬」とも書く。単言い伝え・伝説・Q民話 むがむちゅう【無我夢中】周囲の状況を顧みる余裕もなく無 意識のまま行動してしまう意で、会話やさほど硬くない文 章に使われる漢語。へーで逃げる〉〈何が何だかーで動き回 る〉一つのことに没頭する感じの強い「夢中」に比べ、 「あの頃はーでした」のように、考えずにあれこれ行動する 場合も含まれる。夢中 むかんけい【無関係】関係がない意で会話にも文章にも使う 漢語。〈事件にーだ〉乃無縁 むき【無季】季語のない意で、会話にも文章にも使われる専 門的な漢語。〈一の俳句〉無期 むき【無期】期限のない意で、会話にも文章にも使うやや硬 い漢語。〈一延期〉〈一懲役〉無季 むきあう【向き合う】「向かい合う」意で、会話にも文章にも 使われる和語。〈両者がー・って立つ〉時には子供とち ゃんとー・って話を聞いてやることが大事だ」のように、ま ともに相手になる意の抽象化された用法もある。見差し・差 し向かい・対面・Q向かい合う むきになる【向きになる】昂奮して本気になる意で、会話 やさほど硬くない文章に使われる和語表現。「ーって打ち 消すところはかえって怪しい〉「ーって反論する〉通常 はそれほど昂奮するような事柄でない場合に使う傾向があ る。近松秋江の『黒髪』に「むらむらとーってきて、体中 の血が凍るような心地になり」とある。ひ息巻くいきり立 つ・激昂・激情・激する・Q興奮・高揚・たかぶる むく【向く】対象に面する、方向づけるといった広い意味合 いで、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。〈東を—〉〈海に—・いた窓〉〈運が十・い てきた〉〈足の—まま気の—まま〉②動きを含む「向かう」 に対し、方向の状態や変化を表す。「この仕事は自分に—」 のように「適する」意でも使う。马向かう むく【剝く】表面を覆っているものを薄くはがして本体と分 離させる意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。ふ かんをーふりんごの皮をーふぎの殻をーふふ思わず目 をーふ剝がす・Q剝ぐ むく【無垢】混ぜ物がない意で、会話にも文章にも使われる 漢語。〈金—〉〈白—の装束〉〈桐の木の—をふんだんに使 った家具〉「純真—」「な心」「な乙女」のように、汚 れを知らないといった精神的・抽象的な意味合いでも使う。 椎名麟三の『永遠なる序章』に「幼女のような—なものが感 じられた」とある。卫生粹・Q純粹・生え抜き <1033> むくち【無口】口数が少なくあまりしゃ人らない意で、会話 にも文章にも使われる表現。へーでおとなしい〉人生まれつ きーな男〉の「注意されて急にーになる」のように、ある場 面での状態をさすこともある。専寡黙 むくむ【浮腫む】体内にリンパ液などがたまって体やその一 部がふくれる意で、会話にも文章にも使われる和語。〈脚が 」の「脹される」より内科的な病状を連想させやすい。内 田百開の『山高帽子』に顔の長い知人に顔が広いとからか われた話が出る。「太っている」などという生易しいもので なく「ふくれ上がっている」「はれている」「・んでいる」 と形容が次第に迫ざり上がり「もう一息で、のっべらぼうに なる顔」だとして頂点に達する。马脹れる むくろ【骸】「死骸」の意の和語の文語的表現。「が散乱す る〉〈累々とーが積み重なる〉有島武郎の生れ出ずる悩 み」に「防波堤は大蛇のーのような真黒い姿を遠く海の面 に横たえて」とある。Q遺骸・遺体・かばね・死骸・しかばね・死 屍・死者・死体・しにん・しびと・亡骸 むごい【惨(酷)い】見ていられないほど悲惨あるいは無慈悲 な様子をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。 〈ー仕打ち〉へ死にざま)樋口一葉の『にごりえ』に「出 てゆけとまでは・う御座んす」とある。漢字表記は「ひと い」と区別しにくい。残虐・Q残酷・残忍・ひどい・むごたらし い むこう【向こう】①道・山・川・海などを隔てた反対側や、遠く 離れた場所をさし、会話やさほど硬くない文章に使われる 日常の和語。〈|側〉〈山の|〉〈はるか|に見える〉〈|か むこうずね らやって来る〉へについたら連絡する〉の大学を出 ている」「ーでの暮らしに慣れる」のように特に海外・外国 をさす用法もある。小沼丹の『外来者』にも「学生にとって は英会話の練習に絶好の機会なんだろうが、一の連中は一 体どんな気でいるのかしらん」とある。ひあちら①・あっち ②相手方の意で、会話や硬くない文章に使われる日常の和 語。への言い分を聞く〉へには一の都合がある)②相手 を自分と対立する存在と見ている意識が感じられる。「先 方」よりくだけた感じだが、「あっち」ほどではない。ひ相 手・あちら②・あっち・Q先方 むこういき【向こう意気】相手に対抗して激しく張り合う様 子をさし、会話や硬くない文章に使われる、やや古風な感 じの表現。〈一の強い人〉、雄々しい・強気・Q鼻っぱし むこうがし【向こう河岸】「向こう岸」の意で、会話にも文章 にも使われる古風な和語。〈ーに渡る〉乃川向こう・対岸・向こ う岸 むこうぎし【向こう岸】川や湖などの向こう側の岸をさし、 会話にも文章にも使われる和語。〈まで泳ぐ〉〈舟をーに 着ける〉〈ーが霞んで見える〉②岸に続く土地を含む「対 岸」に比べ、岸辺だけをさす感じが強い。みQ川向こう・対 岸・向こう河岸 むこうずね【向こう臑(脛)】「すね」のうち前側を専門にさし て、会話や軽い文章に使われる和語。へをいやというほど ぶつける》の大岡昇平の『野火』に「にある一つの潰瘍 は、塩煎餅の大きさに拡がり」とある。肉が薄くぶつける とひどく痛いので俗に「弁慶の泣き所」という。ひすね <1034> むこうみず むこうみず【向こう見ず】周囲も前後もその後のことも考え ないで行動に移す意で、会話やさほど硬くない文章に使わ れる和語。〈1な行動〉〈1に飛び出す〉〈1だから何をや り出すかわからない)尾崎一雄の『虫のいろいろ』に「何 とか蜂は、盲者蛇におじずの「だ」とある。個人の性格に も行動の評価にも使う。Q無鉄砲・無分別 むさたらしい【酷(惨)たらしい】いかにもむごい様子をさし、 会話や硬くない文章に使われる和語。〈あまりの惨たらし さに思わず目をそむける〉の芥川龍之介の『偷盗』に「! く殺された女の死骸」とある。「むごい」以上にひどい感じ がする。ひ残虐・残酷・残忍・ひどい・むごい 心し無視まったく意に介さず、その対象が存在しない場 合と同じく、やりたいようにふるまう意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈信号—〉〈相手を—する〉〈忠告を— する〉〈—できない厳然たる事実〉鳥黙殺 むしあつい【蒸し暑い】気温が高く風もないため蒸されるよ うに暑く不快な意で、会話にも文章にも使われる日常の和 語。ヘ西向きの部屋ヘー・くて寝苦しい夜が続く)庄野 潤三の『蒼天』に「日であった。じっとしていても、上着 の内側で汗が背中を伝って落ちるのが分った」とある。巻 い・暑さ むしかえす【蒸し返す】一度決まったことをまた問題として 取りあげる意で、文章でも使われるが、会話で使うことが 多い和語。〈話を—〉の「戻す」や「繰り返す」に比べ、好 ましくないというマイナスイメージが強い。弔繰り返す・反 復・Q戻す むしば【虫歯】乳酸の作用で、虫が食ったように侵された歯 をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常生 活の和語。〈ーになる〉〈ーが痛む〉〈ーの治療〉③三島由紀 夫の『金閣寺』に「美というものは(略)ーのようなものなん だ。それは舌にさわり、引っかかり、痛み、自分の存在を主 張する」とある。弔齢歯 むしめがね【虫眼鏡】小さな物を拡大して見るための柄のつ いた凸レンズをさし、会話にも文章にも使われる日常の和 語。〈ーで蝶の羽を観察する〉拡大鏡・天眼鏡・Qルーベ むじゃき【無邪気】性格やしぐさなどが悪気がなく素直であ どけない意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。 な子供〉(な笑顔)〈に遊ぶ〉夏目漱石の『坊ちゃ ん』に「なら一所に笑ってもいいが、こりゃなんだ。子供 の癖に乙に毒気を持っている」とある。主に子供の自然な 状態をさし、大人に使う場合は性質というよりその折の態 度や行為を問題にし、しばしば考えが浅く実状に疎いとい うニュアンスが伴う。み純情・純真・天衣無縫・Q天真爛漫 むじゅん【矛盾】二つの事柄が論理的に両立し得ない意で、 会話でも文章でも広く使われている日常漢語。〈論理ーを 来す〉〈話にーがある〉〈言うことがーしている〉②芥川龍 之介の『鼻』に「人間の心には互いにーした二つの感情があ る」とある。昔の中国で、矛や盾を売る商人が自慢げに 「どんな物でも突き通す矛」「どんな矛で突いても通らな い盾」と宣伝しているのを聞いた人が「それでは、その矛で その盾を突いたらどうなるか」と問いかけると商人は答え に窮した、という『韓非子』の故事に由来する表現。有名な <1035> だけにこの語からすぐこの故事を連想しやすい。ほぼ同義 の「撞着」という漢語とその点で語感が違う。塩撞着 むしょ「刑務所」を意味する隠語。〈|帰り〉片仮名表記 する例が多い。「刑」を略した語形。刑務所と縁の深い特殊 な社会に棲息する人間を連想させるため、その隠微な迫力 から不本意ながらゴムひもなどを買わされそうな雰囲気を 発散する。刂刑務所 むしよう【無償】代金を請求しない意で、改まった会話や文 章に用いられる専門的な漢語。〈—増資〉の「有償」と対立。 「—の愛」のように、ある行為に対する代価を求めない意に 抽象化した拡大用法もある。専只・Q無料 むじょう【無上】この上ないの意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い感じの漢語。へーの幸せ〉へーの喜び》Q 無常・無情 むじょう【無常】すべてが変化し、とどまることのないはか なさを意味する仏教語。古風な語で、人により多少の仏教 臭や古典的な雰囲気を感じさせる。〈|観〉〈諸行—〉〈— 迅速〉〈人生は—〉小林秀雄の『無常という事』に「現代 人には、鎌倉時代の何処かのなま女房ほどにも—という事 がわかっていない」とある。あっけないはかない無上無情 むじょう【無情】思いやりのない意で、会話にも文章にも使 われる硬めの漢語。〈冷酷—〉〈|の雨〉〈|な仕打ち〉Q 無常無上 むしろ【筵(蓆)】藁・藺草・蒲などを編んで作った敷物の 総称として、会話にも文章にも使われる和語。「旗」へ の上に座る」の「ござ」よりも厚みがある。ふざざ むずがゆい むしろ【寧ろ】どちらかといえばの意で、会話にも文章にも 使われる和語。ふ涼しいというより—寒いぐらいだぐこん な絵なら—飾らないほうがすっきりする〜〜芥川龍之介の 『侏儒の言葉』に「我を恋愛から救うものは理性よりも— 多忙である」とある。みかえって むしんけい【無神経】感じ方が鈍く周囲の思惑も気にしない 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈病人に向かって な言葉を吐く〉〈相手の心を傷つけても気づかないーな男 図川端康成の『千羽鶴』に「と言えば、太田夫人もずいぶ んーだと思えぬことはない」とある。「鈍感」とは違い、 「身だしなみにはいたってーだ」のように、神経を遣わない 意にも使われる。Q鈍感・無頓着 むす【蒸す】水を沸騰させ、その蒸気で材料を熱する湿式加 熱の調理法をさして、会話にも文章にも広く使われる日常 の和語。〈残った冷や飯を—〉〈蒸籠」で—〉の「ふかす」と 違い、「タオルを—」「今夜はばかに—」のように食品以外 にも使う。ひふかす むずかしい【難しい】難解・困難の意で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。へーくて わからない〉へー問題が持ち上がる〉〈優勝はー〉夏目漱 石の『坊っちゃん』に「そんなー役なら雇う前にこれこれだ と話すがいい」とある。「むつかしい」よりも一般的。囲 難・難儀・むつかしい むずがゆい【むず痒い】むずむずするように痒い感覚をさし て、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈鼻の頭が 」〈傷の治り際が」〉三浦哲郎の『ユタと不思議な仲間 <1036> むずかる たち』に「体がー・くなるような、生暖かい春風」とある。 むずむずして落ち着かない感覚が中心で、猛烈な痒さには 使われない。弜痒い むずかる【憤る】乳幼児が機嫌が悪くて泣いたりだだをこれ たりする意で、会話にも文章にも使われる和語。へー赤ん坊 をあやす)「むつかる」ともいう。马ぐずる むすこ【息子】親から見た男の子供をさし、会話にも文章に も使われる和語。〈一人〉〈孝行〉〈の将来〉〈の 嫁〉〈お隣のーさん〉安岡章太郎の『海辺の光景』に「母 親はそのーを持ったことで償い、ーはその母親の子である ことで償う」とある。ひ子息・Qせがれ むすび【結び】今では例が少なくなった、「握り飯」の意の古 めかしい言い方。〈鮭のーを所望する〉おにぎり・Qおむす び・握り飯 むすびつき【結び付き】結合や関連の意で、会話にも文章に も使われる和語。〈親子の—〉〈企業間の—〉〈—が強い〉 「音声と意味との—」「二つの条件には何の—もない」のよ うに、単なる繋がりの意でも使う。単化合・Q結合・合成・混 合・融合 むすぶ【結ぶ】つなぎ合わせる意で、会話でも文章でも広く 使われる日常の和語。〈帯を—〉〈リボンを—〉〈紐いで—〉 〈二点間を直線で—〉〈契約を—〉②永井荷風の『あめりか 物語』に「下髪を黒いリボンで—・んだ十四五の娘」とあ る。「括くる」はもちろん「ゆわえる」や「ゆわく」も単には らばらなものを一つにまとめることに重点があるのに対し て、この語は結ぶ際に用いる道具が意識され、結んだ結果 がすっきりとした形になることをあらかじめ意図している感じが強い。揺る・Qゆわえる・ゆわく むずむずやりたいことができなくてもどかしく、じっとし ていられない状態をさして、主に会話に使われる感覚的な 和語表現。〈早く帰りたくてーする〉〈すぐにでも出発した くてーする〉回「背中がーする」「くしゃみが出そうで鼻が ーする」のように気分だけでなく実際の感覚をさす表現も あり、気分的な段階にとどまっている「うずうず」に比べ、 落ち着かず体が自然に動き出すような感覚が伴う。 うず むすめ【娘】未婚の若い女をさし、会話やさほど改まらない 文章まで広く用いられる和語。用法によって古風に響く。 〈心〉〈盛り〉〈一人〉〈の晴れ姿〉〈看板〉 端康成の『雪国』に「涼しく刺すようなの美しさ」とあ る。自分の家の女の子を親が「うちの」と呼ぶ例はまだ かなり見られるが、「隣の」「知らない」のように親子 関係のない若い女性をさす用法は今では古く感じられる。 ひ乙女・Q少女 むすめし【娘師】土蔵破りを意味した昔の泥棒社会の隠語。 の土蔵の白壁を、白粉を塗りたくった娘に見立てた粹な名 づけ。 むせびなき【咽(噎)び泣き】喉を詰まらせるように泣く意で、 主として文章中に用いられる、やや古風な感じの和語。夜 中にーの声が聞こえる)鳴咽・忍び泣き・しゃくりあげ・すす り泣き・Q泣き咽がぶ・むせぶ むせぶ【咽(噎)ぶ】煙や異物、あるいは感情の高まりなどで <1037> 帳を詰まらせる意で、主に文章に用いられる、やや古風な 和語。〈ー・び泣く〉〈涙にー〉川端康成の『美しさと哀し みと』に「せきを切ったように泣きー・んだ」とあり、坪田 譲治の『風の中の子供』に「木片をポロリと落し、両手で顔 をおおうてー・び入った」とある。単に咳き込む意で用い ると、かなり古い感じになる。鳴咽・忍び泣き・しゃくりあ げ・すすり泣き・咳き込む・泣き咽・Qむせび泣き・Q噎せる むせる【咽(噎)せる】咳き込む意で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈煙に—〉〈埃きを吸って—〉③三島由紀夫の 『潮騒』に「笑いはだんだん烈しくなって、ー・せながら笑っ た」とある。「悲しみに—」など、感情が高まって胸が詰ま る意でも使われるが、そういう意味合いでは「むせぶ」を使 うことが多い。呂咳き込む・Q咽ぶ むそう【夢想】夢の中で考えることや、夢のようにあてにな らない非現実的な思いを抱くことをさし、改まった会話や 文章に用いられるやや古風な漢語。「家」だにしな い〈遠い未来をーする〉芥川龍之介の『芋粥』に「五位 がーしていた「芋粥に飽かむ」事は、存外容易に事実となっ て現れた」とある。実際に夢に見たり、夢の中で神仏のお 告げがあったりする場合にも用いる。単空想・Q幻想・想像・妄 想・夢① ぴだ【無駄】効果も必要性もない意で、会話にも文章にも広 く使われる基本的な和語。へ遣いへーを省くへーを切 り詰めるへやってもーだ夏目漱石の『草枕』に「折角 の旅がーになる」とある。り徒労・Q不経済・無益 むだづかい【無駄遣(使)い】金銭や物品を無駄なことに使っ むっかしい たり必要以上に費やしたりする意で、会話や硬くない文章 に使われる表現。〈ーが多過ぎる〉〈ーをやめる〉〈税金の ーだ〉の「エネルギーのー」などとも言えるが、一般に時間 や労力より金や物について使う例が多い。弔空費・散財・濫費・ Q浪費 むだぼね【無駄骨】くたびれるだけで何の役にも立たない骨 折りをさし、会話や軽い文章に用いられる、やや俗っぽい和 語。〈ーを折る〉へとんだーだった》り徒労 ぴちや【無茶】筋道が立たず、あるいは、程度が異常な意で、 くだけた会話や軽い文章に使われる俗っぽい和語。へーを言 う)へーをする)へーな要求)夏目漱石の『草枕』に「痛い がな。ーをしては」とある。無鉄砲・Q無謀・無理 むちゃくちゃ【無茶苦茶】まったく理屈も何も通らない意で、 くだけた会話に使われる俗語。〈な計画〉へな運転〉 〈そんなーな話があるか〉の電車がーに込む」「問題がー に難しい」「もうーに嬉しい」のように、桁違いにひど くの意でも使う。道理に合わない意の「無茶」を強調した 表現。弁支離滅裂・Qめちゃくちゃ・めちゃめちゃ むちゅう【夢中】我を忘れて熱中する意で、会話にも文章に も使われる日常の漢語。ヶ一ムにーになる〉ヘーで跡を追 うヘーで読み続けるヘ谷崎潤一郎の『細雪』に「雪子に 見られていることに気が付かないで、遊びにーになってい た」とある。熱中・Q没頭・無我夢中 むつかしい【難しい】難解・困難の意で会話にも文章にも使わ れる和語。〈ー漢字〉〈解決がー〉伝統的な形であるが、 今ではやや古風に感じられ、西日本的な響きも伝わってく <1038> むっと る。現在は「むずかしい」のほうが標準的。むずかしい むっと突然怒りや不快感がこみあげる意で、会話や硬くな い文章に使われる擬態語。〈その一言にーする〉へーして退 席する〉谷崎潤一郎の『猫と庄造と二人のおんな』に「一 瞬間ーした顔つきで鼻の孔をふくらました」とある。熱気 や臭気に対しても使う。かっと むてっぽう【無鉄砲】せっかちで後のことなど考えもしない でいきなりやってしまう意で、会話や硬くない文章に使わ れる漢語。〈生まれつき—な男〉へーにも程がある)の ような行動の評価であるよりも、そういう行動を起こしや すい性格というところに重点をおく感じがある。夏目漱石 の『坊っちゃん』は「親譲りのーで小供の時から損ばかりし ている」という一文で始まる。「無手法」からの転ともい う。刂向こう見ず無茶・Q無分別・無謀・無理 むとんちゃく【無頓着】世間の人が気を遣うものにほとんど 神経を用いない意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈金 にはな人間だ〉〈服装にな性格〉②「むとんじゃく」と 読めば古風な語感を響かせる。Q純感・無神経 むなぐら【胸倉(座)】胸のうち着物の両方の襟がちょうど重 なるあたりをさし、会話や軽い文章に使われる、やや古風 な和語。〈ーを押さえる〉〈思わず相手のーをつかむ〉凡胸 元 むなしい【空(虚)しい】中身がなく、効果もなく無駄な意で、 会話にも文章にも使われる和語。今さら何を言ってもー) 〈一歳月〉(努力もーく)〈一思いがこみ上げる〉堀辰雄 の『大和路』に「夜おそくまで机に向かって最後の努力を試 みてみたが、それもー・かった」とある。「むなしくなる」の 形で「死ぬ」意の婉曲えん表現ともなる。Qうつろ・虚無・空 虚 むなしくなる【空しくなる】「死ぬ」意の和語による間接表 現。死を忌む気持ちから、それをストレートに表現せず、 「空しい」状態への変化と広くとらえて衝撃をやわらげる婉 曲表現。勇敢え無くなるとがる②・あの世に行く息が切れ る・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠 れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死 去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召 される・亡くなる・儚かくなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没 する・仏になる・身罷かる・脈が上がる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 むなもと【胸元】胸のみぞおちの上あたりをきし、会話にも 文章にも使われる和語。「がはだける」「に刃物を突 き付ける」「をえぐる内角速球」のように、胸自体でなく その前をさす例も多い。脳ぐら むね旨意味内容の意で、改また会話や文章に用いられ る、硬い感じの和語。〈そのーを伝える〉〈解約のーご了承 たまわりたく〉「倹約をーとする」「学生は勉学をーとす る」など、最重要という意味では「宗」とも書いたが、今で は古めかしい表記。趣旨② むね【胸】①体の前面の首と腹との間の部分をさし、ぐだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。ヘー に名札をつけるぐーをたたいて引き受けるぐーが厚い ヘーを病むぐーを締め付けられるぐー横光利一の『春は馬 車に乗って』に「ーは叩けば、軽い張子のような音を立て <1039> た」とある。ヲ胸部 ②提喩的に意味を拡大して間接的に女 性の「乳房」をさす和風の上品なことば。〈赤ん坊が母親の ーをまさぐる〉〈少女は成長とともにーがふくらむ〉〈まだ ーが発達していない〉②乳房が胸の一部であることを利用 して語の意味範囲を広げ、指示をぽかした表現。ちなみに、 オール阪神・巨人の漫才で、タレントの肉体美をほめる際 に、若い女性がいい体をしている例として「の筋肉が発 達している」と口走って笑いを誘う箇所がある。世間の常 識を破っているが、胸のふくらみも「筋肉」と言えないこと もないから、乳房を「胸」とぽかす慣用を逆手に取ってかえ って露骨な感じに引き戻すことから生じる笑いである。な お、「が躍る」「がときめく」という慣用句の場合には 乳房ではなく心臓との関連が感じられる。ふおっぱい・乳・Q ちぷさ・にゅうぼう むねのうち【胸の内(中)】心の中で思っているほんとうの気 持ちをさし、やや改まった会話や文章に用いられる古風な 和語。〈苦しいーをのぞかせる〉へーは如何ぶばかりであり ましょう)悲しみ・悔しさといったマイナス感情である場 合が多い。Q胸中・真意・心中・内心・本心・本音 むねまわり【胸回り】胸囲の意で、会話や軽い文章に使われ る、やわらかいタッチの和語。〈ーを測る〉〈ーが大きい〉 Q胸囲・バスト むねん【無念】思いどおりに運ばずきわめて悔しい気持ちを さし、やや改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。 へー千万へー遣る方ない気持ちへーを晴らす⑩井伏鱒二 の『珍品堂主人』に「ーやるかたないけれども金がない」と むめい ある。 遺憾・心残り・Q残念・未練 むふんべつ【無分別】あと先を考えずに行動を起こす意で、 会話にも文章にも使われる、やや古風な漢語。「な行動に 出る〉(なにぶんまだーな年頃だ)「無鉄砲」に比べ、性 格だけでなく年齢的にそういう判断力をまだ身につけてい ない場合も含まれる。り向こう見ず・Q無鉄砲 むぼう【無謀】あと先をよく考えもしないで行動に移す様子 をさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「運 転」〈一な計画〉〈一のそしりを免れない〉田山花袋の 『蒲団』に「私の」で郷里の父母の感情を破って」とある。 Q無茶・無鉄砲・無理 むぼうび【無防備】外敵や災害などを防ぐための備えがない 意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈地 帯〉〈敵国の侵攻に対しあまりにも—すぎる〉③三浦朱門は 『箱庭』で、思いもかけず目にした女性の膝の裏側を「形も 色もあまりに—で、つい先刻まで、そこに何かがはりつい ていたのを、むりやりにはがして、はじめて外気にさらさ れた、という感じがする」と感覚的に描き出した。ひ油断 むほうもの【無法者】道理にもとり平気で法を犯す乱暴者の 意で、会話にも文章にも使われるやや古風な漢語。〈手のつ けられない—〉へこの町で—で通る男〉ひごろつき・ちんぴら・ ならず者・Q無頼漢・暴力団・やくざ・与太者 むめい【無名】世間に名が知られていない意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ーの歌手〉〈ー時代の作品〉「ー 戦士の墓」のように、名前がわからない意で用いる場合は やや文章語に近づく。貝無銘 <1040> むめい むめい【無銘】刀剣や書画に作者名の記載がない意で、会話 にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈一の刀〉〈一 の書〉ひ無名 むやみ【無闇(暗)】手当たり次第無差別に、後のことなど考 えずに、といった意味合いで、会話や軽い文章に使われる和 語。へーに食いまくるへーに仕事を引き受けるへーにか わいがるへーに人を信じる夏目漱石の『坊っちゃん』 に「人の茶だと思ってーに飲む奴だ」とある。ひみだり・Qや たら むらがる【群がる】多数の人間や生物が一定の場所に寄り集 まる意で、会話にも文章にも使われる和語。〈花に蜂がー〉 〈菓がー・って咲く〉〈安売りで店に人がー〉巻まる・集合・ たかる・つどう・Q群れる むらさき【紫】「醤油」をさし、料亭などの会話に使われる粋 筋の女性語。〈小皿に少量にーを注ぐ〉醤油の色からの婉 曲表現。ひおしたじ・Q醤油 むらさめ【村(群・叢)雨】急に激しく降り出し、勢いが弱まっ たり強まったりして間もなくやむ雨をさし、今では主に文 章に使われる古風な和語。〈秋の—〉群がって降る点に着 目した命名。古典的な趣を感じさせる。時雨・驟雨・通 り雨・にわか雨・夕立 むり【無理】筋が通らず不可能な意で、くだけた会話から硬 い文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈一人では〉へ な注文〉〈所詮ーな話だ〉島崎藤村の『嵐』に「五間で四 十円なんて、こんな安い家を探そうたってだよ」とある。 「ーをして体をこわす」のように、困難なことを敢えて行う 意にも使う。 JQ無茶・無鉄砲・無謀・無理やり むりやり【無理やり】道理に合わないことを押し切って行う 意で、会話や硬くない文章に使われる日常語。へーやらせ る)「売りつける〉へー承知させる〉伊藤整の『馬喰の 果て』に「これからずっと鼠戻にしてもらえる筋なんだから と言ってーに持って来た」とある。Q強引・無茶・無謀・無理 むりよう【無料】料金が要らない意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。へ入場ー〉へー奉仕〉へー休憩所〉 へーで交換する)商品などにも使えるが、その場合は 「只な」のほうがよく使われる。Q只・無償 むれる【群れる】多数の動植物が一つの場所に寄り集まって 集団をなす意で、会話にも文章にも使われる和語。〈雀が ー〉〈羊がー〉乃集まる・集合・たかる・つどう・Q群がる むろん【無論】「勿論」の意で、会話にも文章にも使われる、 いくぷん古風な漢語。〈ー賛成だ〉〈ーそうするさ〉〈大都 市はーのこと、小さな村でも〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「兄とはー仲がよくないけれども」とある。広く使われ る一般的な「勿論」に比べ、この語は子供はまず使わず、大 人でも理屈っぽい男性など使う人が比較的限られているよ うに感じられる。Q勿論・もとより <1041> め目/眼視覚器官、特に眼球やその働き、さまざまな比 喻的用法を含めて広い意味を有し、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く用いられる日常の基本的な和語。「が澄 んでいる〉へが離せない〉へが近い〉へにしみる〉へ をつける〉へを細める〉へも当てられない〉へを配る〉 図川端康成の『伊豆の踊子』に「この美しく光る黒眼がちの 大きいは踊子の一番美しい持ちものだった」とある。「ひ どいに遭う」「が粗い」「畳の」「さいころの」「き ようで三日」など多様な用法が多く、目の描写の多い小説 ジャンルでは、人間の視覚器官をさす基本的な用法で「眼 と書く傾向が強い。「眼力」「眼識」といった意味合いでは 小説以外でも「眼」と書く例が少なくない。少眼球瞳・まな こ めあか【目垢】目脂の意でまれに使われる、やや古風で上 品な感じの和語。〜がたまる)目糞目脂 めあて【目当て】狙いや目印の意で、主に会話に使われる日 常の和語。〈おーの品〉〈金ーの行動〉〈樺けやの大木をーに 進む〉ひ意図・ターゲット・狙い・目的・Q目標 めいあん【名案】優れた案や思いつきの意で、会話にも文章 にもよく使われる漢語。〈ーが浮かぶ〉(これはなかなかの だ〉の「妙案」に比べ、論理的な筋道の通った正攻法の手 段を連想しやすい。ひ妙案 めいき めいうん【命運】「運命」の意の硬い文章語。「社のーを賭し て乗り出す〉へーを決する〉の「運命」と違い、「ーが尽き る」の形で生命を暗示する用法もある。込運・運勢・Q運命・宿 命・天運・天命・回り合わせ・巡り合わせ めいか【名菓】有名で美味な菓子の意で会話にも文章にも使 われる漢語。へこの地方を代表する—〉銘菓 めいか【銘菓】特別の名を有する上製の菓子の意で、主に文 章に用いられる漢語。〈老舗」の—〉和菓子に用いられる 例が多い。名菓 めいかい【明快】はっきりしていてわかりやすい意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈単純—〉へな答弁〉〈論旨 がーだ〉安岡章太郎の『海辺の光景』に「運動競技のルー ルのごとくにー」とある。明らか・はっきり・明解・明白・明瞭 めいかい【明解】明快な解釈の意で、主に文章に用いられる、 使用頻度の低い漢語。〈ーを示す〉明快 めいかく【明確】はっきりしていて確かな意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈ーな返事〉〈説明はーだ〉 〈ーに規定する〉明らか・はっきり・明快・明白・Q明瞭 めいがら【銘柄】「商標」の意で、会話にも文章にも使われる、 やや専門的な表現。〈指定—〉〈米〉〈人気の—〉〈にこ だわる〉専門語として、市場で取引の対象とする物件の 品目をさすこともある。専商標・トレードマーク・Qブランド めいき【明記】はっきり書き記す意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈理由を—する〉《条文に—されて いる〉銘記 めいき【銘記】深く記憶に刻み付ける意で、改まった会話や <1042> めいげっ 文章に用いられる硬い漢語。〈心に—する〉刂明記 めいげつ【名月】陰暦八月十五日の月(芋名月)および九月十 三日の月(栗名月)をさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈中秋のー〉(ーの観賞に時を忘れる)月明月 あいげつ【明月】曇りなく澄み切った月の意で、主に文章に 用いられる漢語。〈ーをめでる〉(今宵のーは一段と美し い)永井荷風の『瀅東綺譚』に二十五夜の当夜には早くか ら一層曇りのないーを見た」とある。「名月」をさして使わ れる例もある。単名月 めいげん【名言】人に感銘を与えるほどの優れたことばをさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〝なかなかのーだ〟 ヘーを吐く〟森茉莉の『贅沢貧乏』に「金を使ってやる贅 沢には、空想と創造の歓びがない」とある。Q至言・名文句 めいげん【明言】はっきりと言う意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〟みんなの前ではっきりそうーす る〟核心の部分はーを避ける〟み言い切る・Q公言・断言 めいさく【名作】きわめて優れた作品をさし、会話にも文章 にも広く使われる日常の漢語。〈中の〉〈二十世紀最大 のー〉〈印象派を代表する〉のある程度の大きな規模を思 わせる「傑作」と比べ、文学の例で言えば『夜明け前』や 『細雪』のような長編小説だけでなく『羅生門』や『檸檬』 のような短編小説も含まれるが、別に「名歌」「名句」「名 詩」という語があるため、小説をさすことが多い。また、 「名品」という語がある関係で、「傑作」と違い、工芸品・陶 磁器などは連想されにくい。Q傑作①・名品 めいさん【名産】その土地の有名な特産物をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈土地の—〉〈各地の—品を取り 揃える〉名物 めいし【名士】その分野・社会・地域などでその名を知られ、 重んじられており、影響力の大きい有力者をさして、会話 にも文章にも使われる漢語。〈地元ではーとして通る〉〈各 界のーを招いて記念パーティーを催す〉〈著名人・Q有名人 めいし【名詞】事物の名を表し活用のない自立語をさす品詞 名として、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。 〈普通ー〉〈固有ー〉〈一述語文〉ひ体言 めいしゅ【名手】特定の技能に群を抜いて巧みな人の意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈パイオリンの—〉〈弓の ーとして知られる〉〈守備のーとして鳴らす〉回「名人」 「達人」の域までは達していない感じがある。秀でている点 も、その分野のうちのある特定の技術に焦点を合わせて言 うケースが多い。巻達人・Q名人 めいしょ【名所】風景や史跡などで有名な場所をさし、会話 にも文章にも使われる日常の漢語。〈旧跡〉〈めぐり〉 の「自殺の」のように、単にある物事でよく知られた場所 をさす用法もあり、その場合は俗っぽい感じに響く。名勝 めいしよう【名勝】景色のすばらしい場所をさし、主に文章 中に用いられる改まった感じの漢語。への地として知られ る)名所 めいじる【命じる】命令する、任命するの意で、改まった会 話や文章に用いられるやや硬い感じの語。〈すぐに取り掛 かるようにー〉〈駅前で生徒に解散をー〉「命ずる」より 口語的でいくぶんやわらかい雰囲気がある。言い付ける <1043> Q命ずる・命令 めいじん【名人】技芸その他のさまざまな分野で、その道を 極めた人物の意で、くだけた会話から文章まで広くよく使 われる日常の漢語。〈一芸〉〈囲碁の一戦を制する〉〈一の 位に就く〉〈一の名をほしいままにする〉俗に「言いわけ の「」「サボりの」「おならの」のようにふざけて使う こともある。違人・Q名手 めいずる【命ずる】命令する、任命するの意で、主として文 章中に用いられる、やや古風で正式な感じの語。〈退去を ー〉〈経理課長をー〉〈選考委員にー〉②「言い付ける」に比 べて公的な役目という雰囲気が強い。「命じる」より文語的 な響きが強く、重く厳めしい感じがある。言い付ける・Q命 じる・命令 めいせき【明晰(暫)】論理的に筋道が通る意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い漢語。〈頭脳—〉〈—な論理〉 〈論拠にいささか—さを欠く〉事実関係や表現上の暖昧さ ではなく、思考の論理性に重点がある。刂判然・明白・Q明瞭・ 歴然 めいちゅう【命中】「的中」の意で会話やさほど硬くない文章 に使われる漢語。〈的に—する〉〈弾が鳥に—する〉「予 測がぴたりと—する」のように抽象化した用法もあるが、 「的中」に比べ、具体的な意味合いで使うことが多い。 中 めいてい【酩酊】酒に酔う意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。へいささかーの様子》北杜夫の『幽霊』に 「意味ありげな錯覚が、あたかるーのように僕を領した」と めいぶっ ある。沈没②泥酔・酔いしれる・酔い潰れる・酔う・酔っぱらう めいとう【名答】みごとな答えの意で、会話にも文章にも使 われる日常の漢語。ぐこーですぐなかなかのだ」明答 めいとう【明答】はっきりした答えの意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〜ーを避ける〜が得られな い〜名答 めいはく【明白】誰も疑う余地なくはっきりしている意で、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈な事実〉〈理由 はーだ〉〈誰の所業かはもはやーである〉長与善郎の『陸 奥直次郎』に「人生が目的を持ったものであることは彼には 太陽の光りのようにー過ぎる事実であった」とある。筋道 に重点のある「明晰せ」他と紛れないことに重点のある 「明瞭」に対し、この語は事実関係に疑わしいところのない ことに重点がある。Q明らかはっきり・判然・明快・明確・明 晰・明瞭・歴然 めいひん【名品】きわめて優れた品をさし、少し改まった会 話や文章に使われる漢語。〈室町時代の—〉へ—を所蔵す る) ②川端康成の『千羽鶴』に、「一の形見を見るうちに、 菊治はなお太田夫人が、女の最高の—であったと感じて来 る。—には汚濁がない」という一節があり、水指の評価 から比喻的に女性の評価に転用している。傑作①・Q名作 めいぶつ【名物】名産をはじめ、その土地に特有なものを広 くさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常の漢語。〈一の草団子〉ヘーにうまいもの無し〉慶産物 や漆器・陶磁器などの物品のほか、「一男」「一教授」「パリ ーの蚤の市」「ロンドンーの霧」から「上州ーは、かかあ天 <1044> めいぶん 下に空っ風」などというのもあって多彩。名産 めいぶん【名文】すぐれた文章の意で、会話にも文章にも広 く使われる日常の漢語。〈ー家〉〈当代きってのー〉〈ーと して残る〉乃明文 めいぶん【明文】条文などの形ではっきり示す意で、改まっ た会話や文章に用いられる、法律の雰囲気の漂う硬い漢語。 へいまだー化されていない)名文 めいめい【命名】「名付ける」ことをさし、改まった会話や文 章に用いられる正式な感じの漢語。〈ー式〉〈ーの由来〉 永井荷風の『瀅東綺譚』に「向島寺島町に在る遊里の見聞記 をつくって、わたくしは之を瀅東綺譚とーした」とある。 名付ける・ネーミング めいめい【銘銘】一人ひとりの意で、会話にも文章にも使わ れる、やや古風な漢語。〈一皿〉〈義士—伝〉〈一の席に配 る〉(一が勝手なことを言い合う)Qおのおの・各自・それぞ れ めいもんく【名文句】人を感心させ印象に残るような巧みな ことばをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈数々の を残す〉へとして記憶されている》藤沢周平の『蝉しぐ れ』に、ヒロインが「文四郎の御子が私の子で、私の子供が 文四郎さんの御子であるような道はなかったのでしょうか」 と、想い合いながら運命にもてあそばれてついに結ばれな かった相手に問いかける場面がある。この抑えた婉曲表 現はお福さまの気品を示すと同時に、この作家のたしなみ を映し出す。巻至言・Q名言 めいゆ【明喩】「直喩」の古風な用語として会話にも文章にも 使われる漢語。パリの老いぼれた馬車馬が、悲嘆に暮れ たクリスチャンのような、大きな美しい眼をよくしている」 という小林秀雄の『ゴッホの手紙』に出てくる例は典型的な ーである》「暗喩」と対立する語だが、「暗喩」ほど使用 されない。Q直喩 めいよ【名誉】世間から高い評価を与えられそれを誇りに思 う意で、くだけた会話から堅い文章まで幅広く使われる日 常の漢語。〈ー教授〉〈ーの戦死〉〈ーを重んじる〉〈ーにか けて守り抜く〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「だれと指す と、その人のーに関係するから云えない」とある。特別の 栄誉に限らず、「ー毀損」「ーを回復する」のように、世 の中を恥ずかしくなく生きていく人間としての誇りや尊敬 をさすこともあり、その用法ではやや専門的で硬い感じに なる。専栄冠・栄光・Q栄誉・栄え・誉れ めいりょう【明瞭】他と紛れるところがなくはっきりしてい る意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈簡単 ー〉へな誤り〉〈意味がーだ〉〈発音がーで聞き取りやす い〉の三島由紀夫の『金閣寺』に「悪を犯したというな意 識」とある。事実や論理よりも、表現などが他と紛れずは っきりわかるところに重点があり、話し方や意図などに暖 味さがない場合によく使う。明らか・はっきり・判然・Q明快・ 明確・明晰・明白・歴然 めいる【滅入る】元気を失て暗い気持ちになる意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈雨続きで気分が—〉〈暗い部 屋で寂しい曲を聴くと気がー・っていけない)尾崎一雄の 『暢気眼鏡』に「ひどい生活に不平も云わず、私だけをたよ <1045> りにしている芳枝を思うと、流石に気がーのだった」とあ り、阿川弘之は『夜の波音』で波の音を「心をーらせるよ うな単調なしらべだが、その単調さの中に一とふしずつの 区切りがあって」と描いている。「しょげる」などと異なり、 失敗・落胆という明確な原因のない場合に使われる例が多 く、「何となく気分がー」場合もある。外見からの判断も可 能な「ふさぐ」と違って内面的でもっぽら気持ちについて使 う。Qアンニュイ・思い屈する・しおれる②・しょげ返る・しょげ る・ふさぐ・物憂い めいれい【命令】上位者が下位者に対して自分の指示通りに 事を行うように義務づける意で、会話にも文章にも使われ る日常の漢語。〈ー文〉〈ー口調〉〈ー系統〉〈ーを下す〉 〈ーに従う〉〈ーに背く〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「じ ゃ相談じゃない、ーじゃありませんか」とある。類語中で最 も広範囲に使うが、「してくれるように」と丁寧さを伴う行 為要求にはなじまない。専言い付ける・指図・指示・司令・Q指令・ 命じる・命ずる めいわく【迷惑】他人の行為によって煩わしく不快な気分を 引き起こされる意で、会話にも文章にも広く使われる日常 の漢語。〈行為〉〈はた〉〈ありがた〉〈千万な話 だ〉〈ひとにーをかける〉森鷗外の『雁』に「物に柔かに 当るお玉と比べて見られるのだから、田舎から出たばかり の女中こそ好いーである」とある。困る当人の気持ちに重 点のある「困惑」「当惑」に比べ、そういう状態を引き起こ した原因を強く意識した表現。専困惑・Q当惑 メインディッシュ コースの中心となる料理をさす和製英 めがける 語。 本日のーは舌平目のムニエル めうえ【目上】自分より年齢や地位が上であること、また、 そういう人をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。 〈一の人を敬う〉〈一を大事にする〉〈一に対して無礼な態 度〉森鷗外の『雁』に「己はには一も目下もない」とある。 ひ長上 メーキャップ「化粧」に頬する意味で、やや専門的な感じの 外来語。〈派手なーを施す〉個人の化粧よりも、俳優の役 づくりのための化粧を連想させ、扮装を含めたものをさす 場合もある。「メークアップ」とも言う。马化粧・Qメーク メーク「メークアップ」の略。日常にもやや専門的にも使わ れることのあることば。〈ノー〉〈ーを落とす〉〈ーに凝 る〉偉優の役づくりのための化粧をさす例が多いが、「メ ーキャップ」よりは個人の化粧をさして日常使われることも 少なくない。「メイク」と表記することもある。専化粧・Qメ ーキャップ メード「お手伝いさん」をさす古風な外来語。〈ーを雇う〉 外国人家庭やホテルなどの連想が強く、「女中」や「召し 使い」ほど差別意識が話題に上らない。お手伝いさん・家政 婦・女中 めおと【夫婦/妻夫】妻とその夫の意で、多く会話に使われ る古めかしい和語。〈晴れてーとなる〉〈お似合いのー〉 現代では主に「ー茶碗」の形で用いる。崩れて「みょうと」 と発音することもある。Q夫婦・夫妻 めがける【目掛ける】具体的な目標を定めて直線的に行動を 起こす意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ <1046> めかた る日常の和語。〈敵陣!けて突進する〉〈鳥を・けて石を 投げる〉〈捕手のミットを・けて速球を投げ込む〉目 指す」と違い、最終目標より当座の狙いをさすことが多く、 抽象的な目標には使いにくい。鳥Q狙う・目指す めかた【目方】秤ではかった重さをさし、会話や軽い文章 に使われる、いぐぶん古風な日常の和語。〈ーを測る〉〈ー が増える〉②平林たい子の『鬼子母神』に「さめている時と 眠っているときとでは、おとぎ噺の怪物のようにーの違う ことも」とある。「いかにもーがありそうだ」のように、こ れだけで、目方が重い意を表す用法もある。及重さ・重み・Q 重量 めくそ【目糞(屎)】目脂の意で、主にくだけた会話に使わ れる日常の俗っぽい和語。〈ーを拭き取る〉の目脂」に比 べ、病気というより寝起きの連想が強い。Q目垢・目脂 めぐむ【芽ぐむ/萌む】草木が芽を出し始める意で、主とし て文章に用いられる、やや古風な和語。木々がー)芽を 出しかける段階で、はっきりと「芽吹く」よりいくぶん前の 状態を連想させやすい。Q芽生える・芽吹く萌える めくら【盲目の見えない人を伝統的にさしてきた和語。差 別意識が指摘されて、今では使用を控えている。「盲」と いう漢字を音読みした「モウ」という音で間接的にさす場 合もある。音読みすることで語感を薄め、意味との直接の つながりをほかして、一種の記号のような働きに変換する 試み。「目の不自由な方」とやわらげた表現も見られる。な お、学問がなくて文字も読めない人を意味する「明き」と いう語も「盲」を連想させるため語義とは無関係に使用を 控えている。夏目漱石の『明暗』に「突発した当時の疼痛に 就いて、彼は全くーであった」とあるように、知識がなくわ からない意に使う比喻的用法もある。 あぐりあわせ【巡り合わせ】自然にそうなる運命や境遇をさ して、会話やさほど硬くない文章に使われるやや古風な和 語。ヘーが悪いヘ不思議なーだ》処運・運勢・運命・宿命・天運・ 天命・Q回り合わせ・命運 めくる【捲る】表面にあるものを取り除いてその内側が見え るようにする意で、会話でも文章でも幅広く使われる日常 生活の和語。へ一枚ずつー〉〈カレンダーをー〉〈本のページ をー〉のサトウハチローの『センチメンタル・キッス』に「め りめりとスカートをーのです。そうすると、下にもう一枚 ペチコートという、薄いスカートをはいていて」とあり、奇 拔な街頭宣伝法が披露される。一枚の布などを折り返す意 の「まくる」に対して、トランプの札のように何枚も重なっ ているものを上から順にひっくり返す場合にも用いる。 まくる めぐる【巡(廻)る】一周する意で、改まった会話や文章に用 いられる古風な和語。〈池を—〉〈名所旧跡を—旅〉〈あの 日が今年もまたー・って来る〉〈血が全身を—〉谷崎潤一 郎の『細雪』に「花の盛りはーって来るけれども、雪子の 盛りは今年が最後ではあるまいか」とある。「予算をー攻 防」「事の真偽をー・って議論する」のように中心課題をさ す用法もある。単回転・転がる・Q回る めさき【目先】目の前、さしあたりの意で、会話にも文章に も使われる和語。〈面影がーに浮かぶ〉へーの利益にとらわ <1047> れる夏目漱石の『草枕』に「お嫁入りのときの姿が、ま だーに散らついて居る」とある。「ーが利く」の形で先の見 通しという意味にも使う。马眼前・目前 めざす【目指す】到達目標を定め、それに近づこうと努力し ながら進む意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の和語。〈頂上をー・して登山道を登る〉〈優勝 をー・して練習に励む〉〈弁護士をー・して法学部を受験す る〉の阿川弘之の『雲の墓標』に「敵はフィリッピンと日本 本土とをー・して攻めのぼって来る」とある。具体的で段階 的な「目掛ける」に比べ、遠い最終目標を見据える雰囲気が あり、抽象的な目標を掲げる例も多い。り狙う・Q目掛ける めざめ【目覚め】目を覚ますことをさし、会話にも文章にも 使われる和語。〈ーがいい〉〈おーですか〉〈ーのコーヒー ②「自我のー」「性のー」など、比喻的に、潜んでいた本能 などが動き出す意にも使われる。屢起き・Q寝覚め めざめる【目覚める】「目を覚ます」意のやや優雅な感じの表 現。〈1・めたときはすでに日が高かった〉〈春に—〉〈自我 に—〉の「起きる」が行動に重点があるのに対して、この語 は意識がはっきりすることに重点がある。ひ起きる めし【飯】主として男性がくだけた会話などで用いる「御飯」 の意のぞんざいな表現。〈どんぶりー〉〈ーを食う〉〈ーを 平らげる〉〈やっとーにありついた〉⑩筒井康隆の『薬菜飯 店』に「ーはいつ食べてもうまいものだが、そこへさしてお こげと辛いスープときたのではまさに至福の味だ」とある。 「御飯」の丁寧さが薄れるにつれて、ごく普通の語だったこ の「飯」が相対的にぞんざいな響きを帯びてきている。た めしつかい だし、「鯛」「焼き」などの伝統的な用法ではぞんざい な感じはない。器がどんぶりだと、すぐにこの語が連想さ れる。標準的な「御飯」に比べ、そういう庶民的・家庭的な くつろげる雰囲気があり、温かく親しみを感じさせる。ち なみに、新聞の投書欄に、レストランで「御飯」を注文した ら、ボーイに「ライスですか」と聞き返され、思わず「だ」 とどなった、という話が載っていた。り御飯・ライス めしあがる【召し上がる】「飲み食いする」意の尊敬語。「た っぷりー・れ」〈夕飯を客間でー・る〉の芥川龍之介の「南京 の基督」に「あなたはー・らないのでございますか」とある。 「食う」「食べる」「召し上がる」と次第に上品になるように 感じられるが、行為者をどう待遇するかという違いに過ぎ ず、別に納豆や塩辛は「食う」、茶碗蒸しや焼き鯖は「食べ る」、松茸や伊勢海老は「召し上がる」がびったり合うとい うわけではない。「目刺しを頭からがぶりとー」という表現 が奇異に感じられるのは言語表現上の問題ではなく、そう いう品のない食し方をする人間を尊敬に値するとした判断 の問題に過ぎない。Q頂く・食う・食する・食べる めしあげる【召し上げる】公的な権威によって強制的に取り 上げる意で、会話や軽い文章に使われる、やや古風な和語。 〈永年住んでいた土地が国に」・げられる》「押収」「接 収」「没収」ほど法的な専門性が意識されず、被害を受けな がら「召す」という尊敬表現を用いるところに、取り上げら れる側からの皮肉な視線が感じられる。刂押収・接收・Q没収 めしつかい【召し使い】下男や下女などの奉公人をさす古風 な和語。差別意識が感じられるとして使用を控えてい <1048> めじり る。福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「にして執事 を兼ねたジョン・ラムという人の子」とある。お手伝いさ ん・家政婦・下女・下男・女中・派出婦 めじり【目尻】目の耳に近いほうの端をさし、会話にも文章 にも使われる日常の和語。〈ーを下げる〉〈ーに皺が寄る〉 の横光利一の『上海』に「切れ上ったーから、遠く隔絶した 激情を感じると」とある。「目がしら」と対立。まなじり めじるし【目印】見つけたり区別したりするのに役立つ印の 意で、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。 〈ーを付ける〉〈灯台をーに進む〉〈ポストをーにして左に 折れる〉の「目標」と違い、それ自体が目的物とはならな い。目標 めす【召す】「呼び寄せる」「飲み食いする」「着る」「入る」 「引く」など、広い意味で慣用表現として使われる古風な尊 敬語。〈旦那様がおー・しでございます〉〈花をー・しませ〉 〈和服をー〉〈お風呂をー〉〈お風邪をー〉広津柳浪の「今 戸心中』に「お草履をー・して行らっしゃい」とある。 召しになる めずらしい【珍しい】実際に見たり聞いたりすることがめったにない意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一切手〉〈日本でも風習〉〈物を頂戴する〉〈客が現れる〉〈ーく遅刻する〉夏目漱石の『こころ』に「始めのうちはーので、この隠居じみた娯楽が私にも相当の興味を与えたが」とある。出現頻度がきわめて少ないことをさす「まれ」に比べ、この語には好奇心をそそる感情的なニュアンスが含まれる。稲有・Q まれ めせん【目線】視線の意で、くだけた会話に最近よく使われ る俗語。〈ーをもう少し下げる〉〈ーが合う〉芸能界やマ スコミなどの業界の仲間内のことばが、わかりやすいこと もあり電波をとおして一般に広まり、「国民のーで考える」 のような比喻的な拡大用法も見られるが、改まった会話や 硬い文章で使うと今でも品格を落としかねない。見視線 めだつ【目立つ】特徴が際立って人目につく意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈ひとき わー〉〈ー看板〉〈白髪がー〉〈活躍がー〉〈体力の衰えが ー〉の井上靖の『晩夏』に「今までどこにいたか解らなかっ た土地の子供の真黒い裸体がそここにー・って来る」とあ る。啓立つ めだま【目玉】「眼球」の意で、会話や軽い文章に使われる日 常の和語。〈ーを動かす〉へーのぎょろっとした顔高見 順の『故旧忘れ得べき』に「が病的にでッかい横柄な老 人」とある。観眼球 めちゃくちゃ【滅(目)茶苦茶】「むちゃくちゃ」の意で、くだ けた会話に使われる俗語。〈な話〉〈に書く〉〈な結 果になる〉「に忙しい」「なスピード」のように、桁 違がいにひどい意に用いる点も「むちゃくちゃ」と同じであ るが、この語には「めちゃめちゃ」と同じく、「にこわれ る」のように、ひどくて手がつけられない状態を表す用法 もある。具支離滅裂・Qむちゃくちゃ・めちゃめちゃ めちゃめちゃ【滅(目)茶滅(目)茶】論理も秩序もない散々な 状態をさし、くだけた会話に使われる俗語。結果はもう <1049> だ〉〈空襲で町がーになる〉〈地震で家がーに壊れる〉〈世 っかくの旅行がーになる〉「「に暑い」のように、桁違 いのひとさの意でも使う点は類語と共通するが、「一にな る」の形で、ひどく破壊されるなど手の施しようもない状 態を表す例が多い。ひ支離滅裂・むちゃくちゃ・Qめちゃくちゃ めつき【目つき】物を見るときの目の様子の意で、会話や軽 い文章に使われる日常の和語。〈ーが鋭い〉〈ーが悪い〉 〈いやなーをする〉川端康成の『千羽鶴』に「自分の鼻を 見るようなー」とある。「入試が近づくと生徒のーが違って くる」のように、目の感じを含む全体の態度を表す用法も ある。ひまなさし めっける「見つける」の転。くだけた会話に使われた古めか しい俗語。ぐこないだ、あの店でいいものー・けちゃった》 小津安二郎監督の映画『彼岸花』で、母親の清子(田中絹代) が次女の久子(桑野みゆき)に結婚相手の件で「いいのー・け てよ」と言われ、同様に「ー・けるって」と応じ、親子とも ども「見つける」でなく「めっける」という崩れた語形を使 用しているが、今ではほとんど耳にしなくなった。見出 す・Q見つける・発見 メッセージ 他人を通じて先方に届けることばや情報をさ し、会話にも文章にも使われる外来語。へーを残すへーを 伝える〉〈首相のーを届ける〉「ことづけ」「ことづて」 「伝言」が伝える行為とその内容をともにさすのに比べ、こ の語は「ーが正しく伝わる」というふうに、主に内容として の情報をさす。とづけことづて・Q伝言 めつぼう【滅亡】国や一族が滅びて姿を消す意で、改まった めばえ 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈一族がーする〉〈帝国 のーにつながる〉「滅びる」と違い、文明・伝統・学問など 抽象的なものに用いるには抵抗がある。滅びる・Q滅ぶ メディカルチェック 会話で「健康診断」の意で使われだし た和製英語。〈オフィスのクリニックでーを受ける〉日本 人が「医学的」の意の英語「メディカル」に、「調べる」意 の英語「チェック」を組み合わせ、全体として英語めかして 作ったことば。一見、斬新な印象だが、日本製とわかると気 品に欠け、軽佻浮薄な印象を与えかねない。Q健康診断・健 診・検診 めでたい目(芽)出度い喜ばしく祝福したい気持ちの意で、 会話にも文章にも広く使われる和語。〈誕生日でー〉合格 できてー)阿部昭の『父と子の夜』に「母よりも一と足先 に死んだ。それはーことなので、父の死そのものは誰も悲 しまなかった」とある。専慶賀 めど【目処」とりあえずめざす当座の目標をさし、会話や軽 い文章に使われる和語。〈何とかーが立つ〉へやりくりのー がつく幸田文の『おとうと』に「母の心のーの寄せどこ ろが変る」とある。ひめやす メニュー「献立」の意で、会話でも文章でも使われるフランス語からの外来語。ヘレストランのーヘーがみなフランス語なのでよくわからない今でも家庭では使わない。永井荷風の『ふらんす物語』では「献立」と書いて「ムニュー」と読ませている。ヘ献立 めばえ【芽生え】植物の種が芽を出すことをさし、会話や硬くない文章に使われる和語。〈一の時を迎える〉の「発芽」 <1050> めばえる のような理科的な雰囲気がなく、「自我の」のように、も のごとの起こり始めの意の比喻的用法でも使う。児芽 めばえる【芽生える】植物の種が芽を出す意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈朝顔の種が—〉種から初めて芽を 出す場合に用い、樹木が新芽を出すような場合には通常用 いない。「恋が—」「友情が—」のように、萌き、始まるの 意の比喩的用法も多い。ひQ芽ぐむ・芽吹く・萌える めはなだち【目鼻立ち】「顔立ち」の意で会話や硬くない文章 に使われる、やや古風な和語。〈一のはっきりした顔〉へ が姉さんとそっくりだ)石坂洋次郎の『嘱託医と孤児』に 「鉛筆を嘗め嘗めしながら描いたような思い切ってハッキリ したー」とある。ひ面差し・顔・Q顔立ち・顔つき・容貌 めぶく【芽吹く】樹木が新芽を出す意で、会話にも文章にも 使われる和語。へからまつが一斉にー〉〈水辺の柳がー〉 芽ぐむ・芽生える・Q萌える めまい【眩暈】目がくらくらして、周りが揺れたり回ったり しているように感じる症状をさし、会話にも文章にも使わ れる和語。〈ーを起こす〉〈ーがして倒れかかる〉の井上靖 の『猟銃』に「急に身が落ち込んで行くようなー」とある。 号立ち眩み めめしい【女女しい】意気地がなく弱々しい意で、会話にも 文章にも使われる古風な和語。〈一態度〉へーことを言う ②中島敦の『李陵』に「胸をかきむしられるようなー己の気 持」とある。男は強いはずだという価値観から、男なのに 男らしくない様子を評価する語で、女性には用いない。 「雄々しい」と対立。専意気地なし・弱虫 めやす【目安】おおよその標準をさし、会話にも文章にも使 われる和語。〈大体のーを決める〉へ一般社会の漢字使用の ー〉尾崎士郎の『人生劇場』に「何処にーを置いたらいい かわからなくなってしまう」とある。みめど めやに目脂目から出る分泌物の固まりをさし、会話でも 文章でも使われる日常の和語。〈一が出る〉(一がひとい) の三島由紀夫の『金閣寺』に「目尻に固まったーと血が瑪瑙 のようである」とある。「目糞や「目垢の」より眼病の 連想が強い。目垢・Q目菓 メリケンこ『メリケン粉』一時期盛んに用いられた「小麦粉」 の古風な言い方。〈ーを少々加える〉②輸入の関係か、「メ リケン」は「アメリカン」の意。ヲうどん粉・Q小麦粉 よりット得になる利点をさし、会話にも文章にも使われる 比較的新しい外来語。〈ーを数え上げる〉〈両案のーを比較 する〉の「デメリット」と対立。马利点 メルヘンおとぎ話・童話・民話に相当するドイツ語からの外 来語で、会話にも文章にも使われる、いくぶん専門的な表 現。〈一の世界〉の「チックな話・街並み・風景」のように も使われ、「童話」という語より神秘的・空想的で夢のよう な雰囲気が強い。Qおとぎ話・児童文学・童話 メロディー「旋律」の意で、会話にも文章にも使われる外来 語。〈聞き覚えのあるー〉へーを口ずさむ〉回小林秀雄の 『モオツアルト』に「誰でもモオツアルトの美しいーを言う が、実はーは一と息で終るほど短い」とある。単音律・調べ・ Q旋律・節・節回し めん【面】立体を構成している表面の平面をさしいくぶん <1051> 専門的な話題の会話や文章に用いられる漢語。〈立方体は六つのーがいずれも大きさの等しい正方形から成る〉「ひょっとこのー」のように顔にかぶるものをさす場合は日常語。「経済的なーで苦しい」のように取り上げる部分の意で使う場合はやや改まった感じに響く。Q側面・平面 めんかい【面会】人と顔を合わせて会う意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈ー時間〉〈ー謝絶〉〈ーを求める〉〈ー を拒否する〉見・対面・面接・Q面談 めんきよ【免許】ある特定の行為を公的機関が認定し資格を 与えることの意で、会話から文章まで広く使われる日常の 漢語。〈教員—〉〈運転—証〉〈ーを更新する〉誤可 めんくい面食い」「器量好み」を意味する若干ユーモラスな 俗語。「あれはーだから、少々の相手じゃ見向きもしない」 ②笑い話に、「うちの主人ときたら大変なーなのよ」と人前 でこぼしてみせる細君の間接的な自慢がある。 めんくらう面食(喰)らう思っても見ない状況に出合って 慌てる意で、主に会話に使われる口頭語的な表現。〈想定外 の結果に」へ突然のことですかりー〉小沼丹の『西條 さんの講義』に「この二人と相談したらいいと云ったので大 いにー・った。そんな伏兵が現れるとは予期しなかった」と ある。ひとまどう・Qまごつく めんじよ【免除】義務を果たさなくてもよいとする意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈授業料—〉〈兵役を—す る〉〈返済を—する〉専免ずる めんしょく【免職】官公吏や議員などの公職を罷免する意で、 会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な漢語。〈一処 めんだん 分〈懲戒—〉〈横領が発覚して—になる〉夏目漱石の 『坊ちゃん』に「僕等はこの事件で—になるかも知れない ね」とある。専門用語としては「罷免」とほぼ同義だが、自 分の意思の反映する「依願」もある。Q解雇・解職・解任・ 首切り・罷免 「月経」の意で用いる、ドイツ語の略形。「が遅れ る人前で口にしにくい「月経」というストレートな表現 を避け、語感の働きにくい外国語に置き換え、それも短縮 した語形で用いることで婉曲に表現しようとしたこと ば。ただし、便利な語として使いすぎた結果、最初に意図 した間接性が次第に減少し、今ではかえってドキッとする ようなことばになりつつあるという観察もある。「生理」も 「メンス」も意味と直結して婉曲表現として機能しなくな り、広告業界などでは「アンネ」「チャーム」「フリー」とい った、ほとんど関係をたどれないようなことばへの切り替 えが試みられている。Q月経・生理 めんずる【免ずる】義務などを免除する意で、主として硬い 文章に用いられる語。〈支払いを—〉役職などをやめさせ る意の用法もある。ひ免除 めんせつ【面接】人と直接会って話す意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈ー試験〉〈ー調査〉「ーを受ける」のよ うに、それだけで選考のための面接試験をさすことが多い。 ひ会見・面会・Q面談 めんだん【面談】面会して相談する意で、会話にも文章にも 使われる漢語。〈委細—〉〈親子と教師との三者—〉〈条件 は—の上で取り決める〉会見・面会・Q面接 <1052> めんどう めんどう【面倒】手数がかかって煩わしい意で会話や軽い文 章に使われる日常の漢語。〈ーをかける〉〈遠くまで出かけ るのはーだ〉〈これはーなことになった〉〈ーな争いを引き 起こす〉夏目漱石の『こころ』に「万一の事があったあと で、いちばんーの起こるのは財産の問題」とある。「ーを見 る」のように世話の意でも使う。億劫・世話・大儀・面倒臭い Q厄介①・煩わしい めんどうくさい【面倒臭い】手数がかかって煩わしい意で、 主にくだけた会話に使われる口頭語的表現。へーことは嫌 いな性分だ〉へ一人暮らしだと食事を作るのがー〉夏目漱 石の『坊っちゃん』に「手紙なんぞ書くのはー」とある。ご くくだけた会話では「めんどくさい」となることが多く、そ の語形はさらに俗っぽさを増す。働劫・大儀・面倒・Q厄介① 煩わしい メンマ【麺麻】竹の子を茹でて塩漬けにした食品をさし、会 話にも文章にも使われる中国からの外来語。〈ラーメンにー を入れる〉〈ーのしゃきしゃきした食感〉ひしなちく あんみつ【綿密】細部まで注意が行き届き遺漏のない意で、 会話にも文章にも使われる漢語。「な計画を立てる〉「 に調べ上げる」②佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「例の病的な ーさで丹念に、研究者のように見つづけた」とある。鳥厳 密・細密・精巧・精緻・精密・Q緻密 もう「すでに」の意で、会話や軽い文章に使われる和語。「いいよ」〈始まっている〉〈治った〉〈遅い〉徳田秋 声の『縮図』に「療養所へ行ったのは一九時であった」とあ る。「駄目だ」のように、これ以上はの意でも、「すぐ 試験だ」「そろそろ来そうなものだ」のように、事が迫っ ている意でも、「一つ欲しい」のように、さらにの意でも 使う。少Qすでに・もはや もうけ【儲け】商行為の結果として得られる利益をさし、主 に会話に使われる日常の和語。〈金—〉〈一はほんのわず か〉へーを度外視する〉収益・得・Q利益・利潤 もうける【設ける】組織や機関などを設置する意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの和語。〈専用の窓口を 」〈新たに支店を—〉永井荷風の『湮東綺譚』に「寺島 七丁目のはずれに車庫を—ようになった」とある。「備え る」よりも大規模な感じがある。「宴席を—」のように、用 意する意にも、「制度を—」のように、制定する意にも使 う。ひしつらえる・Q備える もうける【儲ける】利益を上げる意で、会話や軽い文章に使 われる和語。〈株でー〉〈商売が当たってがっぽりー〉「稼 ぐーと違い、働くことは特に意識されない。専稼ぐ もうしあわせ【申し合わせ】話し合いの結果合意の得られた 事柄をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈事項〉 <1053> 〈業界のーがある〉〈委員会のーに従って処理する〉取り決めほどの拘束力を持たない感じがある。取り決め もうしあわせる【申し合わせる】あらかじめ相談して取り決 めておく意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。 〈早期妥結を—〉〈交渉の日時を—〉悪いニュアンスはな い。「打ち合わせる」と違い、約束が成立した場合に使う。 ヨQ打ち合わせる・示し合わせる もうしこみび【申し込み日】申し込みをする日をさす和語。 申し込む側に立った発想の表現。へーの翌日に抽籤があ る)受付日 もうしで【申し出】公の席などで要求や意見などをしかるべ き相手に口頭で伝える意で、改まった会話や文章に用いら れる、やや丁寧な感じの和語。「があれば対応する〉へ突 然のーにとまどう立野信之の『軍隊病』に「私のーは針 金のようにひき歪められたまま、真直に伸び悩んだ」とあ る。ひ申告 もうしひらき【申し開き】非難された行為について理由や事 情を説明して自らの正当性を主張する意で、改まった会話 や文章に用いられる丁寧な感じの和語。〈ーが立つ〉何と もーのしようがない)「言いわけ」より改まった場面での 行為をさす傾向がある。Q言い訳・釈明・弁解・弁明 もうしわけない【申し訳ない】日常の謝罪表現の一つで、会 話にも文章にも使われる。〈これはこれはーことです〉のよ り丁寧に「何とも申し訳ありません」と言ったり、さらに丁 寧に「このたびはまことに申し訳ございません」と言ったり する。「申し訳ありません」の形は、申し開きのしようがな もうそう い、弁解の余地がないという意味であり、「失礼しました」 や「済みません」より謝罪の程度が大きい。そのため、あま り些細いなことに連発すると、大げさ過ぎてかえって心の こもらない感じを与えかねない。例えば、「ナカヤ・サチ コ」を「ナカタニ・ユキコ」と単に読み違えただけの失敗の 場合は「失礼しました」程度が適当であるが、読み違えた世 いで中谷(なか・やか)幸子(こち・こゅ)さんが年金を貰いそこねると いった事態に発展した場合には、そういう結果をもたらし た重大な過失に対してこの表現が適切になる。専謝る御免 失礼・謝罪・Q済まない・陳謝・詫びる もうしん【妄信】理屈抜きでみだりに信じ込む意で、改ま た会話や文章に用いられる硬い漢語。〈新聞記事をーする〉 〈宣伝文句をーする〉単盲信 もうしん【盲信】自分でよく考えもせずにただ信じ込む意で、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈師の教えをひ たすらーする〉及妄信 もうしん【盲進】計画や見通しも持たずやみくもに進む意で、 やや改まった会話や文章に用いられる硬めの漢語。へ目的も 定めずにーする)夢猛進 もうしん【猛進】猛烈な勢いで突き進む意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈猪突ー〉〈目標めざしてまっしぐらに ーする〉単盲進 もうそう妄想むやみに想像力を働かせ、実際にはありえ ないこと、何の根拠もないことを信じ込むことをきし、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈誇大ー狂〉へーにふ ける〉へーにとりつかれる〉へーを抱く〉夏目漱石の『明 <1054> もうちょい 暗』に「変なーが、今呑んでいる煙草の煙のように、淡く彼 の心を掠めて過ぎた」とあり、藤枝静男の『雛祭り』に「誰 しも死んだ瞬間に離れてしまう。私が何とーしょうとも、 父も母も兄弟も妹も、私も、妻も(略)永久に虚空に姿を消 してしまう」とある。「空想」は想像力の豊かな人、「夢想」 は底抜けの楽天家を連想させやすいのに対して、この語に は病的な雰囲気があり、好ましくない語感がつきまとう。 また、「誇大ー」「被害ー」のように、科学的・論理的根拠の ないことをむやみに信じ込むといった用法もある。彡空想・ 幻想・想像・Q夢想 ちに寄れ〉〈ーで合格点だ〉〈ゴールまでーだ〉〈ー何とか ならんか〉 【詣でる】神社や寺院にお参りに行く意で、主に文 単に用いられるやや古風で改まった感じの和語。神社に 1)〈元旦は氏神様に「〉〈墓を」〉お参り・Q参詣・参拝 もうてん【盲点】光や色を知覚しない部分の意から、一般の 人が気がつきにくい点の意に広がり、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ーを突く〉へとなっている)中谷宇吉郎 の『立春の卵』に「人間の眼にーがあることは、誰でも知っ ている。しかし人類にもーがあることは、あまり人は知ら ない」とある。目について言う場合は専門語。単間隙・空隙・ 隙間 もうはつ【毛髪】人体の毛、特に頭髪の意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ーを染める〉〈ーを傷める〉 吉行淳之介の『驟雨』に「漆黒の豊かなーが、人の好きそう な平凡な顔を縁取っていた」とある。髪・髪の毛・Q頭髪 もうれつ【猛烈】きわめて猛々餅しく激しい意で、会話にも 文章にも使われる漢語。へな勢いで突進する〉へに働 く〉へな反対を受ける〉へに腹が減る〉徳永直の『太 陽のない街』に「馬車馬のようにに闘争し」とある。「 なスピード」「に食う」「に売れる」のように、程度の 激しい意で日常生活によく使う。Q強烈・激烈・痛烈・激しい もえがら【燃え殻】燃え尽くしたあとに残っている炭や灰な どをさし、会話にも文章にも使われる和語。〈石炭の—〉 し余燼 もえさし【燃えさし】完全に燃えきらないであとに残ったも のをさし、会話にも文章にも使われる和語。へーの薪がく すぶる)ふ燃えがら・Q余燼 もえる【萌える】草木が芽を出す意で、主に文学的な文章に 用いられる、古風で詩的な和語。〈草—春となる〉〈ー若葉〉 ひ芽ぐむ・芽生える・Q芽吹く もえる【燃える】物が炎を上げて燃焼する意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈火がー〉〈小屋がー〉回川端康成の『雪国』の末尾の火事の 場面に「あら、また、あんなにー・えて、あんなに火が出た わ」という駒子の台詞がある。燃焼・Q焼ける モーターバイク「オートバイ」をさして使われる、やや正式 な感じの外来語。通称の「バイク」の形で一般によく使 われる。Qオートバイ・原付・原動機付き自転車・自動二輪・自動 二輪車・スクーター・単車・バイク モーニングコールホテルなどで宿泊客の指定した時刻に電 <1055> 話して起床を促すシステムをさす和製英語。〈ホテルのフ ロントにーを頼む〉 もがく【踰(藻掻)く】苦しさのあまり手脚を動かす意で、会 話や改まらない文章に使われる和語。〈水中でー〉へー・き 苦しむ〉の芥川龍之介の『トロッコ』に「手足をー・きなが ら、啜り上げ」とある。苦しんでいるようすに重点があり、 「あがく」ほどの抵抗感は意識されない。「入試の直前にな ってー・いても遅い」のように肉体的以外の行為について比 喩的に表現することもある。Qあがく・じたばたする もぐ【挽ぐ】手でねじって本体から離す意で、会話やさほど 硬くない文章に使われる日常生活の和語。〈柿の実を—〉 〈洋服のボタンを—〉の黒井千次の『群棲』に「蘇ってしま った記憶から身をー・ぎ放すようにして」という比喻表現が 出る。「ちぎる」が部分的に切り離すイメージがあるのに対 して、この語は対象物をまるごと力を入れて切り離す感に が強い。ひちぎる 〈建築用の—〉〈加工済みの—〉「材木」がまったくの日常 語なのに対して、いくらか専門的な感じのする語。建築や 工作など用途のきまった材料という連想が強い。長塚節の 『土』に「心部を噛まれつつあるーは赤い歯を喰いしばった ような無数の罅が火と煙とを吐いていた」とある。具材木 もくさつ【黙殺】抵抗にあってもそれに配慮しないどころか、 その対象の存在さえ認めない態度で、自分の思うようにや ってのける意で、やや改まった会話や文章に用いられる少 もくぜん し硬い漢語。〈反対意見を—する〉〈脇で泣き崩れても—する〉福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「僕を—して、傷つけようがいじめようが、それは構わない」とある。「無視」以上に積極的で時に冷酷な印象を与えやすい。無視もくずとなる【藻屑となる】海で死ぬことを意味する和語による古風な比喩的間接表現。死を忌む気持ちから、藻屑にたとえてそれとなくわからせる表現。「海の藻屑と消える」という形でも使う。勇敢え無くなる・上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・Q露と消える・天に召される・亡くなる・儚なくなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷がる・脈が上がる・空しくなる・逝く・臨死・臨終 もくする【黙する】「黙る」意で、主として硬い感じの文章に 用いることば。「ー・して語らず」の太宰治の『桜桃』で、ど こに一番汗をかくかとの問いに妻が「この、お乳とお乳の あいだに、……涙の谷」と答えた。改行して「涙の谷」と夫 の鸚鵡返 だしだけの極小の段落を据え、次も「父はー・し て、食事をつづけた」という短い一文段落を記し、さらに一 行空きにする。ひだんまり・Q沈黙・黙秘 もくぜん【目前】空間的・時間的にごく接近している意で、や や改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。へーで事故が 起こる〈応募の締め切りがーに迫る〉〈優勝をーにしてま さかの連敗〉②入学試験を例にすれば、「目前」は一ヵ月前 ぐらい、「直前」は一週間前ぐらい、「寸前」は当日になっ <1056> もくても てから、といった緊迫感の差がある。森鷗外の『妄想』に 「ーには広々と海が横わって」とあるように、自分の目の前 の意から出たが、今では時間的な用法が多い。ぴ眼前・寸前・ Q直前・間近・目先 もくてき【目的】実現または到達しようとしてめざす事柄の 意で、会話にも文章にも幅広く使われる基本的な漢語。へー 地〉へーを明確にする〉へーがかなう〉へーを達する〉巻意 図・趣旨①・ターゲット・狙い・Q目当て・目標 もくにん【黙認】暗黙のうちに認める意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈喫煙を—する〉〈少々の遅刻は—する〉 回気がつきながら見て見ぬふりをする場合もあり、注意し ないために結果として認めたのと同じことになってしまう 場合もある。Q黙過・黙許 もくひ【黙秘】黙ったまま何も言わない意で、改まった会話 や文章に用いられる専門的な硬い漢語。〈一権〉へーを続け る〉へーを貫く〉彼告や被疑者が取調人や法廷などで沈黙 する連想が強い。Qだんまり沈黙 もくひょう【目標】実現しようとしてめざす対象や基準、ま たは行動する際の目印の意で、会話にも文章にも広く使わ れる基本的な漢語。〈到達—〉〈募金の—額〉〈ーを定める〉 〈ーに向かって進む〉③三島由紀夫の『潮騒』に「エンジン から上っていた黒煙が、敵機の—になった」とある。ひ意図・ ターゲット・狙い・Q目当て・目印・目的 もぐりこむ【潜り込む】物の間にもぐって中まで入り込む意 で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。ヘたつに ーヘ〈布団にー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「人の波の なかへー・んでどっかへ行って仕舞った」とある。「敵陣に 」「有名教授の講義に」のようにひそかに入り込む意で も使う。ひもぐる もぐる【潜る】水の中や物の下などに入り姿が見えない状態 にする意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。 〈水にー〉〈縁の下にー〉阿部知二の『冬の宿』に「風呂の 中に海坊主のようにー・ったり」とある。「地下にー」の形 で潜伏する意を表す比喻的用法もある。ひくぐる・Qもぐりこ む もくれい【目礼】目で挨拶する意で、やや改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈ーを交わす〉「黙礼」と違い、首 や腰を曲げる動作が伴わない。乜挨拶・会釈・お辞儀・敬礼・最敬 礼・黙礼・礼② もくれい【黙礼】黙ってお辞儀する意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈柩」に向かってーする〉〈軽くーし て席を立つ)廃捗・会釈・お辞儀・敬礼・最敬礼・目礼・礼② もくろむ【目論む】ある目標のもとに計画をめぐらす意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈一攫ぐ千金 をー〉〈一石二鳥をー〉〈会社の乗っ取りをー〉多くは悪 い意味に用い、「企てる」より計画が漠然としている感じが ある。そのため、単に自分にとって都合のよいことをあて にして期待するという程度の場合にも使われ、しばしば 「目論見が外れる」結果になる。ひ企てる もし【若し】ある事態を仮に想定する気持ちを表し、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和 語。「雨だったら中止にする」「駄目ならすぐ連絡す <1057> る田宮虎彦の『沖縄の手記から』に「アメリカ軍が小 禄海岸に上陸作戦を行なう時は」とある。ひもしも もじ【文字】「字」の意で、会話にも文章にも使われる日常の 漢語。〈かしらー〉〈表意ー〉〈ーどおり〉〈ーづらがきれい だ〉「字」より少し正式な感じがある。Q字・もんじ もしかしたら【若しかしたら】「もしかすると」の意で主に改 まらない会話に使われる和語表現。「ーもう終わっているか もしれない)の「もしかすると」より若干会話的で、「ひょ っとしたら」ほどくだけていない。なあるいは②・ひょっとし たら・ひょっとすると・Qもしかすると もしかすると【若しかすると】場合によってはそういうこと もありえないではないという気持ちで仮定する際に、会話 やさほど改まらない文章に使われる和語表現。へ一人違い かもしれない)へ休みかもしれない)②「あるいは」より 可能性の低い場合に用いる傾向がある。ひあるいは②ひょっ としたら・Qひょっとすると・もしかしたら もしくは【若しくは】「または」の意で、改まった会話や文章 に用いられる古風で格式ばった感じの和語。〈父親—母親〉 〈剣道または柔道、—相撲〉〈両親—兄弟、あるいは他の親 族〉②他と併用する場合は一般に、「か」や「または」より 大きく「あるいは」より少し小さなまとまりに用いること が多いが、法例など一部では「鉛筆—ポールペン、または、 原稿用紙—レポート用紙」のように、逆に「または」より小 さな単位の接続に使う場合もある。Qあるいは①・または もしも【若しも】「もし」の強調表現で、会話にも文章にも使 われる。〈人生がやり直せたら〉〈この世に言葉という もたれる ものがなかったらのもし」に含まれる「仮に」という意 味合いを強めた語で、ほとんど可能性がない場合の仮定に よく使う。また、この語には「の場合に備える」「家族に のことがあったら」のように、天災や人の死といった最悪 の場合を想定して名詞的に使う用法もある。もし もす【燃す】燃やして無くする意で、会話や軽い文章に使わ れる、いくぶん古風で俗っぽい感じがある。〈火を—〉落 ち葉を—〉〈古い手紙類を—〉暖を取るために燃料として 燃焼させるより、不要なものを処分するために灰にする場 合に使う傾向がある。ふ燃焼・Q燃やす・焼く もぞう【模(摸)造】本物に似せて造る意で、会話にも文章に も使われる漢語。〈品〉〈真珠〉〈名画をーする〉井伏 鱒二の『珍品堂主人』に「師に頼んでーさせているので す」とある。「贋造」と違い、本物と偽って高く売りつけ るとは限らず、あくまで模造として安く売る場合もある。 Qイミテーション・贋造 もだえる【悶える】苦しみに耐えかねて思わず体を動かす意 で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈苦しみ ー〉〈身をー〉田山花袋の『蒲団』に「時雄はー・えた、思 い乱れた」とある。思い悩む・思い煩う・悩む・Q煩悶・憂悶 もたげる【擡げる】持ち上げる意で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈頭をー〉橫光利一の『春は馬車に乗って』に 「朝毎に、彼は海面から頭をー新しい陸地の上を素足で歩い た」とある。 もたれる【凭れる】他のものに体重を預ける意で、会話でも 文章でも幅広く使われる日常生活の和語。ぐったりと椅子 <1058> もちあわせ にー・れてそのまま眠ってしまう〈途中で疲れ果て、橋の 欄干にー・れてしばらく休む〉「寄り掛かる」よりも体重 の預け方が大きいとされる。寄り掛かる もちあわせ【持ち合わせ】その時にその場に持っていた物、 特に金銭をさし、会話にも文章にも使われる和語。へたまた まーがあったので、濡れた靴下を履き替えた〉へあいにくー がなく掘り出し物を買い損ねる〉ひ所持金・Q所持品 もちいる【用いる】「使う」に近い意味で、改まった会話や硬 い感じの文章中に用いる和語。《道具をー〉〈敵の意表をつ く策をー〉②夏目漱石の『坊っちゃん』に「沖釣には竿はー! いません」とある。「使う」より堅苦しい雰囲気がある。 り 使う もちかえり【持ち帰り】店内で食べずに買って家庭に持って 帰る意で、会話でも文章でも普通に使う日常の和風表現。 へ用に包んでもらう)専テイクアウト もちぬし【持ち主】物品などを所有していたり、思想や性格 や能力などを帯びていたりする人をさし、会話にも文章に も広く用いられる和語。〈車の—〉〈—に返す〉〈マルクス 思想の—〉〈怪力の—〉〈優しい心の—〉の太宰治の『斜陽』 に「この山荘の以前の—」とある。り所有者 もちまえ【持ち前】生まれたときから具わっている意で、会 話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈ーの明るさ〉 〈ーの器用さ〉〈ーの気前のよさ〉古井由吉の『息災』に 「ーの、事が起りさえすれば勇み立つ癖が出て」とある。 生まれつき・生まれながら・親護り・Q生得・生来 もちもの【持ち物】その人が所有している物、あるいは、そ の場に持ち合わせている物をさして、会話やさほど改まら ない文章に使われる日常の和語。入り口でーを検査する 〈ひとのーを勝手に使う〉〈自分のーに名前を書く〉所有 物と所持品との総称にあたる。凡所持品・Q所有物 もちろん【勿論】改めて言うまでもなく当然なの意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。へー 行くよ〉へそれで構わない〉〈他人はー、自分でもちょっ と変だと思っているにちがいない〉井上靖の『氷壁』に 「下宿では、ーお一人なんでしょうね」とある。「論ずる勿 れ」の意。Q無論・もとより もつ【持つ】具体的・抽象的に所有・所持・負担する広い意味 で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈荷物を—〉〈所帯を—〉〈機会を—〉〈思想 を—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「清はおれがうちでも ー・って独立したら、一所になる気で居た」とある。「勘定 は俺が—」のように、負担する、まとめて支払うの意にも使 う。持参・所持・Q所有・携える もつ料理の材料となる臓物の意で、主にくだけた会話に使 われる俗っぽい表現。へーの煮込み》「臓物」の短縮形。 しばしば片仮名書きされる。五臓六腑臓器臓腑・Q臓物 内臓はらわた もっか【目下】当面のところの意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い漢語。〈事故原因については—調査中〉〈 の課題〉〈—のところ〉〈—検討中につき〉〈—首位を独走 している〉「現在」より時間の幅が広いが、「こんにち」 ほどではない。Q今・現在・今日・只今 <1059> もつか【黙過】気がついていながら黙って見逃す意で、改ま った会話や文章に用いられる硬い漢語。〈横暴きわまる決定 でとうていーすることはできない〉へーしがたい重大な欠 陥〉黙認・Q黙許 もっきよ【黙許】気がつかないふりをして見逃す意で、主と して文章中に用いられる硬い漢語。〈断じてーするわけに はいかない〉の「黙認」以上に大目に見る感じが強い。 黙認・黙過 もったいない【勿体ない】ありがたすぎて恐縮してしまう意 で、改まった会話や文章に用いられる古風な表現。へーお言 葉を頂戴だぐりする〉へーほどのおもてなし〉夏目漱石の 『草枕』に「是はいい景色。和尚さん、障子をしめて居るの はー」とある。「こんな物に五万円も遣うのはー」「まだ使 えるのに捨てるのはー」「わが家にはーほどの高級なソフ ァー」のように、その価値を生かしきっていなくて惜しいと いった意味合いでも使われ、その場合は古風な感じを伴わ ない。ひ惜しい・Q恐れ多い・勿体ぶる もったいぶる【勿体ぶる】いかにも威厳ありげに重々しくふ るまう意で、会話や軽い文章に使われる表現。「・た態 度〉へ!ってなかなか教えない)Q気取る・取り澄ます もってのほか【以ての外】あまりに非常識で許しがたい意で、 会話や軽い文章に使われる和語表現。〈自分だけ楽をしよう なんてーだ〉〈無断外泊などーだ〉悪い方向に常識をはみ 出している場合に用い、単なる評価の「不届き」に比べ、驚 き呆れる気分が漂う。马不届き もっとそれよりさらにの意で、会話や軽い文章に使われる 和語。〈ー安いので十分だ〉〈ー勉強しなくちゃ〉〈ーずっ と大きいよ)きらに・なお もてあそぶ もっとも【最も】他の何より一番の意で、やや改まった会 話や文章に用いられる和語。〈わが国で—高い山〉「警戒 を要する〉〈—難解な問題の一つである〉小林秀雄の『言 葉』に「歌は凡そ言葉というものの、—純粋な、本質的な使 用法を保存している」とある。和語でありながら文体的な レベルが漢語の「一番」や「一等」より高く、改まった感に がある。Q一番一等 もっぱら【専ら】他を差し置いてそれだけの意で、会話にも 文章にも使われる和語。〈ーの評判だ〉〈休みの日はー寝て いる〉〈残った金はー本に注ぎ込む〉いちず・Qひたすら・ひ たむき もつれる【縄れる】糸や紐のような細長い物が絡み合って乱 れた状態になる意で、会話にも文章にも使われる和語。糸 がー〉佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「犬どもがじっとして いないために、鎖は更に複雑に!・れ合って行く」とある。 「舌がー」「脚がー」のように、思うように動かなくなる意 に拡大して使い、比喻的に、「事件がー」「交渉がー」「試合 がー」「感情がー」のように、すんなりと進展せずにこじれ てしまう意にも使う。ひこんがらかる もてあそぶ【弄(玩・翫)ぶ】特定の目的もなく慰みに小手先で いじる意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。 〈指輪を—〉〈ハンカチを—〉〈骨董を—〉〈盆栽を—〉 〈猫が鼠なずを—〉有島武郎の『或る女』に「指輪の二つ嵌 った大理石のような葉子の手にー・ぼれていた」とある。 <1060> もてなし 「いじる」と同様、本格的でないという謙遜の気持ちで使う こともあるが、「いじる」と違い、「女を」「相手の感情を ー」「運命にー・ばれる」のように、本気でなく遊びとして おもちゃにする意にも使う。ひいじくる・Qいじる・ひねくる・ まさぐる もてなし【持て成し】飲食物などでの客の扱い方の意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈丁重なーにあずかる〉〈手 厚いーを受ける〉〈何のおーも致しませんで〉ひQ襲応 接待 モデル 制作などの基本となる型、雛形、見本例をさし、 会話にも文章にも使われる外来語。〈ㄧケース〉〈ㄧルーム〉 〈ㄧチェンジ〉〈ニューゾ〉〈旧型をㄧにして斬新さを加えた デザイン〉の「絵の」「小説の」のように芸術作品の素 材をさすこともある。「ファッション」のように最新の衣 装をまとって流行の宣伝を行う人をさすこともあり、その 場合は細身の人間を連想させやすい。Q型・典型・見本 もと【下】「した」「受けて」などの意味で、改まった会話や 文章に用いられる硬い感じの和語。〈法の—に平等〉〈先生 の指導の—に〉〈ただ一撃の—に倒す〉②二葉亭四迷の『浮 雲』に「梯子段の—まで来ると」とある。多元・基・Q本と 許・因・素 もと【元】以前、起こり、元金などきわめて広い意味で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の最も基 本的な和語。〈ー首相〉〈発売ー〉〈火のーに注意〉〈ーを正 せば〉〈ーを絶つ〉〈ーの住所〉〈これでやっとーが取れる〉 夏目漱石の『草枕』に「来た路へ姿をかくす」とある。 「以前」の意では「旧」「故」とも書くが、かなり古い感じの 表記。ひ下・Q基・本・許・因・素 もと本付け根・根源の意で、会話や文章に使われる和語。 〈木のーの方〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「ーが士族だ けに双方共上品だ」とある。この意味で「元」と書くことも ある。単元・下・Q基・許・因・素 もと【因】原因の意で、会話にも文章にもよく使われる和語。 〈火事のー〉《不振のー〉《喧嘩のー》の「原」の字をあてて も「元」と書いてもよい。井上ひさしは長編小説『吉里吉里 人』を極端に長い一文で書き出し、そのうち三百字近い長 大な連体修飾を受けて「ノイローゼの原因となったこの事 件」と展開させている。马因果・原因・Q元・下・基・本・許 素 もと【素】物を作り出す材料の意で、会話にも文章にも使わ れる、やや俗っぽい和語。〈スープのー〉乃Q元・下・基・ 本・許・因 もと【基】土台・拠りどころの意で、会話にも文章にも使わ れる和語。〈資料をーに論文を書く〉〈事業のーを築く〉 この表記は硬い感じを与える。「もとい」と読めば古風。 元・下・Q本・許・因・素 もと【許】中心をなす対象の影響下といった意味合いで、や や改まった会話や文章に使われる和語。両親のから通 うの手が暗い」のような用法ではまったくの日常語で 改まった感じはまったくない。この意味で「元」とも「下」 とも書く。「許」の表記は古めかしい感じを与える。多元 Q下・基・本・因・素 <1061> もどかしいじれったい意で、改まった会話や文章に用いられる和語。〈仕事が遅すぎて見ているほうもー〉〈足が痺れて思うように動かずー思いをする〉丸谷才一の『笹まくら』に「言葉がつづかないのが、われながらー」とある。 ひじれったい もときん【元金】①「元手」の意で、会話や改まらない文章に 使われる、やや古風な表現。〈店を出すにもーが要る〉Q がん金②・資本・元手②利子を生ずる元となる金銭の意で、 会話や軽い文章に使われる表現。「が少ないから微々たる 利息だ」の「がん金」より日常語的な響きがある。Qがん 金①・元本 もどす【戻す】飲食したものが胃から逆流して口から出る意 の間接的な表現として、やや改まった会話や文章で使われ る和語。〈食べた物を—〉谷崎潤一郎の『或る少年の怖 れ』に「真白な牛乳のようなものを—んだって」とある。 「吐く」に比べ露骨な感じが弱い。基本的用法は、「元どお りに—」「前の場所に—」のように、移動・変化したのを以 前の状態に返す意。吐く もとで【元手】事業を始める際の資本金の意で、会話や軽い 文章に使われる和語。〈何をやるにもーがかかる〉へーの要 らない商売〉もがん金②・Q資本・もと金①・予算 もとね【元値】商品を仕入れたときの値段の意で、会話や軽 い文章に使われる和語。〈ーで買い取る〉へーを切って売る〉 の「原価」の会話的な言い方。Q原価・コスト・仕入れ値 もとめる【求める】要求する意で、やや改まった会話や文章 によく用いられる基本的な和語。〈説明を—〉〈辞任を—〉 もどる 〈職を—〉〈名声を—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「面会 をー・めれば」とある。Q需める・購める もとめる【需める】必要とする意で、主に文章に用いられる やや古風な和語。〈消費者の—品物〉の「求める」のうち、 もとめる【購める】買い入れる意で、やや改まった会話や文 章に用いられる丁寧な感じの和語。〈買いー〉〈近所の店で ー〉のこの漢字表記は古い感じを与える。「求める」と書い ても誤りとまでは言えない。正宗白鳥の『入江のほとり』 に「兎を一匹ー・めて」とある。りQ求める・需める もともと【元元】「元来」の意で、会話や軽い文章に使われる 和語。〈ー貧乏には慣れている〉(ここはー父の所有地だっ た〉〈ー正直にできている〉〈ー慎重派だからめったな話に は乗ってこない〉の「駄目でーだ」のように、損得なしの意 にも使う。Q元来・本来・もとより もとより【固(元)より】「勿論ち」に近い意味合いで、やや改 まった会話や文章に用いられる古風な和語。〈一当人も承知 だ〉〈妻はー子供も大賛成だ〉夏目漱石の『草枕』に「 急ぐ旅でないから、ぶらぶらと七曲りへかかる」とある。 本来は「最初から」の意で、反射的に即断する感じの「無 論」「勿論」に比べ、勘だけでなく一往の筋道を考えて判断 する感じがある。多元来・無論・もともと・Q勿論 もどる【戻る】直前の場所に引き返す、以前の状態に復する の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日 常生活の基本的な和語。〈振り出しに—〉〈忘れ物を取りに —〉〈元来大道を—〉〈職場に—〉〈落とし物が無事に—〉 <1062> もの 〈体力がー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「席にー・た」 とある。本来の場所を基準とする「帰る」とは違い、この語 はあくまで直前の場所や状態を基準とする表現。何十年も 日本に滞在して布教を続けてきた神父が久しぶりに生まれ 故郷のフランスの土を踏むときに「帰る」と言うか「戻る」 と言うかによって軸足をどちらに置いているかという帰属 意識が明るみに出る。返る・帰る の【物】人間の思考や感覚や感情の対象となる有形・無形の 存在、特に人間の用いる物品を広くさし、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の最も基本的な和語。 〈割れー〉へーを大事にする〉〈人からーをもらう〉〈ーが不 足する〉の「ーがいい」のように品質をさしたり、「ーにな る」のように役立つ存在をさしたりするほか、「ーは考えよ う」「ーは試し」など、「もの」という仮名表記を含めれば、 具体的・抽象的なあらゆる対象をさす。吉行淳之介の『鳥獣 虫魚』に「街角で出会いがしらに向い合う人間たちも、みな 私の眼の中でさまざまの変形と褪色をおこし、みるみる石 膏色の見馴れないモノになってしまった」とあり、そこの 「モノ」という無機的な片仮名表記が、自分と有機的なかか わりを持たない対象と見る意識のあり方を端的に伝えてく る。専事物・物質・Q物体・物事 ものいい【物言い】抗議を申し立てる意で、会話や改まらない文章に使われる、やや古い感じの和語。〈編集部の会議を 通過した企画に、営業部からがつくると、相撲すで、 行司の判定に対し勝負審判が異議を唱えること。そこから 一般に、物事の進行を妨げる反対意見を述べる意に広がっ た。すでに相撲の意識は薄くなっている。単異議・抗議 ものうい【物憂い/懶い】何となく気分が晴れず何をするに も気が進まない意で、改まった会話や文章に用いられる和 語。〈物憂げな様子〉〈一日を過ごす〉志賀直哉の暗 夜行路」に「沈んだ気分もさすがに慰められた」とある。 見アンニュイ・Qけだるい・大儀・ふさぐ・めいる・憂鬱 ものかき【物書き】文章を書くことで生計を立てる人をさす 和語。会話的な響きがあり、硬い文章にはなじまない。へ の暮らし〉へで生計を立てる〉立松和平は、時代を映し て凜とした響きを残す「文士」という語とは対照的に、この 語には、文筆によって生計を維持しているという自虐的な 響きがあると述べたが、たしかに堂々と作家・小説家と名乗 ることへのためらいがあり、そういう語感によって自己に 対する謙虚な呼称となっている。専作家・小説家・著作家・著作 者・Q著述業・文学者・文士・文人・文筆家 ものかげ【物影】姿かたちの意で、改まった会話や文章に用 いられる、やや古風な和語。〈ーに気づく〉〈目の前を異様 なーが横切る〉ひ物陰 ものかげ【物陰】物に隠れて見えない所の意で、やや改まっ た会話や文章に用いられる、やや古風な和語。へに隠れ る〉へに身を潜める〉専物影 ものがたり【物語】作者の体験や空想をもとに虚構として創 作し、相手に語る調子で書く散文作品をさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈軍記—〉〈恋—〉〈夢—〉森鷗外の 『雁』に「前に見た事と後に聞いた事とを、照らし合せて作 ったのが此のーである」とある。平安時代・鎌倉時代の古典 <1063> を連想しやすい。 小説 ものがない【物悲しい】とこか淋しく何となく悲しいよう な気持ちをさし、やや改まった会話や文章に用いられる和 語。〈ー気分〉〈ー表情〉〈ー旋律〉⑦井伏鱒二の『へんろう 宿』に、「脚のない将棋盤が置いてあった。これがこの部屋 の唯一の装飾品になっていて、かえってー気持ちを唆るの であった」とあり、庄野潤三の『野鴨』に「午前中とか昼間 とちょっと違うんでしょう、夕方というのは。何となくー くなって来るのかも知れないわ、赤ちゃんでも」とある。 哀感・哀愁・うら悲しい・悲しい・寂寞・寂寥・憂愁 ものぐさ【物臭/懶】めんどくさがって物事をやりたがらな い意で、会話にも文章にも使われる古風な和語。へーを決め 込む)〈根っからのーで炬燵がに入ったまま動かない〉ひQ 横着・ぐうたら・ずぼら・怠惰・怠慢・無精 ものごと【物事】物と事をまとめてさし、くだけた会話から 文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈細かい にこだわる〉〈ーには限界がある〉〈全力でーに当たる〉 〈ーはそう理屈どおりには運ばない〉石坂洋次郎の『青い 山脈』に「どんな新しいーでも(略)土が水を吸うようにスク スクと受け入れる」とある。「事物」と逆に「事」のほうに 重点がある。専事・Q事柄・事象・事物・物 ものしり【物知(識)り】幅広い領域について豊富な知識のあ る意で、会話や硬くない文章に使われる日常の和語。町内 きってのー〉〈天文学から易や武術、それにスポーツや映画 の裏話まで何でも知っている大変なーだ〉落語に出てく る横町の隠居を連想させ、雑学が多く断片的な知識で体系 ものわかり 立っていない情報通といった印象がある。学識・博学・Q博 識・有識 ものずき【物好き】常識では考えにくいほど風変わりな意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈こんな物に 大金をつき込むのはよほどのだ〉〈ーにも程がある〉回小 沼丹の『懐中時計』に「いまどき懐中時計を買おうなんてー は滅多にあるものではない」とある。少酔狂 ものたりない【物足りない】何かが欠けている感じで満足できない気持ちをさし、会話にも文章にも使われる和語。〈量が少なくて〉〈成績がー〉〈演技力がまだー〉石坂洋次郎の『若い人』に「酒と水のすりかえが行われたかのようなある物足りなさを押さえきれなかった」とある。「物足らない」の語形はやや古風で時に方言的響きを感じさせる。専Qあっけない ものとり【物盗り】「泥棒」の意で、やや古い感じの会話的な 和語。〈ー強盗〉〈ーの仕業〉行為と人の両方をさす。 窃盗・賊・盗賊・Q泥棒・ぬすっと・ぬすびと ものもち【物持ち】ちょっとした金持ちをきして、会話や軽 い文章に使われる、やや古風な和語。〈町内きってのー〉 〈なかなかのーらしい〉の「富豪」や「長者」はもちろん「素 封家」や「金満家」に比べてもはるかにスケールが小さい。 ひ大金持ち・Q金持ち・金満家・財産家・素封家・長者・富豪 ものわかり【物分かり】立場・事情・状況などをのみこんで理 解を示す意で、会話にも文章にも使われる和語。へーのいい 生徒へ今度の部長はなかなかーがいい小沼丹の『炉を 塞ぐ』に「それ程ーがいいとは思わなかったから、それを聞 <1064> もはや いてたいへん嬉しかった」とある。「聞き分け」と違って子 供以外にも用い、理解のある、いわゆる「話せる」親や上司 などの上位者についてよく使う。ひ聞き分け もはや【最早】今となっては既にの意で、会話にも文章にも 使われる古風な和語。〈これまで〉へーどうにもならな い〈成功は—望めない〉きすでに・Qもう もはん【模範】見習うべき理想的な在り方をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈一生〉〈演技〉〈解答〉〈社員 のーになる勤務態度〉の「手本」より真似るのが難しい雰囲 気がある。「規範」に比べ、正しいという感じより、ある社 会・企業・学校なりの何らかの組織にとって望ましいという イメージがある。Q規範・手本・見本 もほう【模倣】まねをする意で、改まった会話や文章に用い られる、やや硬い感じの漢語。〈自然を—する〉〈先進技術 を—する〉〈—の域を出ない〉②軽い感じで広く使う「ま ね」に比べ、悪いニュアンスが伴いやすい。なぞるまね まねる もみじ【紅葉】木の葉の色が赤や黄色に変わる意、また、そ うなった葉をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈狩 り〉〈柿〉〈流れにーが散り浮く〉石川達三の『日陰の 村』に「渓谷のーは錦繡の帯のように谷の屈曲に沿うて遠 く上流にまで連なっていた」とある。「が色づく」のよう に楓の別称ともなる。「銀杏」のように黄色い葉だけ をさす場合は「黄葉」と書き分ける。文脈上「紅葉」と紛 らわしいことも多く、仮名書きの例も少なくない。紅葉 黄葉 もめごと【揉め事】個人間や家庭間などの比較的小規模な争 いの意で、会話にも文章にも使われる和語。ちょっとした ーが起こる)(ーを収める)も誰がい・いざこざ・こたこた・Qト ラブル もも【腿(股)】股から膝までの部分をさして、会話でも文章 でも使われる日常の和語。〈一が太い〉へ一の筋肉を傷め る》三浦朱門の『箱庭』に「ポッタリ肉のついた一が二 本、太い指のように並んでいて」という例がある。丹羽文 雄は『厭がらせの年齢』で、「一のあたりの皮をつまんで右 の方にひっぽると、つままれた形のままで停止してしまう」 と、すっかり弾力を失った老女の悲惨な肉体の衰えを描写 した。具Q大腿部は太腿 ももいろ【桃色】桃の花のような淡い紅をさし、会話よりも 文章に多く用いられるやや古風な和語。〈花びらはほのか にーがかった白〉への風呂敷》湯川秀樹の『旅人』に 「いちょうのこずえが、日の光を受けて、あざやかなーにふ ちどられていた」とある。「ーの帯」「ピンクのドレス」と いうふうに、和装に「桃色」、洋装に「ピンク」と両語を使 い分けると落ち着いた印象になる。「ーのハンカチ」と「ピ ンクのハンカチ」、「ーの傘」と「ピンクの傘」というふうに 同じ対象に用いた場合は、「桃色」のほうが少し古風な感じ に響く。ひピンク もひき【股引き】細いズボン状の衣類をさし、会話にも文 章にも使われる古風な感じの和語。冬はらくだのーに限 るの「すててこ」より厚地で長く、通常は足首近くまであ る。男性用の下着のほか、作業用もある。きすててこ・Qズボ <1065> ㅜ もや【靄】視程が一キロ以上あって霧より見通しがよい状態 を意味する日常的な和語。へーがかかって遠くがかすんで見 える)壺井栄の『二十四の瞳』に「静かな海にーはふかく たちこめていて、岬の村は夢のなかに浮かんでいるように 見えた」とある。「霞」や「霧」と違い、特別の季節はない。 臓霞・Q霧 もやす【燃やす】物に火をつけて燃えるようにする意で、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。〈火を—〉〈落ち葉を—〉〈新聞紙を—〉②秋刀魚 を焼くときに油が火に落ちて黒い煙を出して燃えることも あるが、それが目的ではないから「燃やす」とは言わない。 ヲ燃焼・Q燃す・焼く もよう【模様】織物・染め物・塗り物・彫刻・紙などに装飾とし てつける絵や図柄をさし、会話にも文章にも使われる日常 の漢語。〈唐草—〉〈水玉—〉〈裾—〉〈派手な—をほどこ す〉③三島由紀夫の『仮面の告白』に「洒落た壁紙のような 花—のワンピース」とある。「部屋の—替え」「雨—の空」 「人生—」「どうやら無事に着いた—だ」のように、様子と いった意味合いでも使う。ひ柄・Q文様 もようがえ【模様替え】室内の装飾を新しくしたり、備え付 ける物の配置を変更したりする意で、会話やさほど硬くな い文章に使われる和語。〈部屋の—〉〈キッチンの—で炊事 の流れが機能的になる〉「改装」と違い、店舗に限らず事 務所や一般住宅についても使う。Q改装・新装 もよおし【催し】人を集めて行う会合や行事をさし、会話に もり も文章にも使われる和語。〈学園祭の—〉〈納涼の—〉〈歓 迎の—〉二葉亭四迷の『浮雲』に「菊見の—」とある。「行 事」ほど儀式ばらず、もっと楽しい連想が強く、また臨時の 場合も多い。行事 もらいもの【貰い物】他人からもらい受けた物をさす和語。 友達からのー〉「だけど、よかったら食べて」「頂き 物」との差はくれた人をどう待遇するかという問題であり、 社長か部下かといった与え手の身分や、いかの一夜干しか 鰐革がのベルトかといった与えられた品の価値とは無関係。 弔頂き物・Q到来物 もらす【漏(洩)らす】内部にとどめておくべき液体・気体や思 考内容・感情・情報などを外部に少し出してしまう意で、会 話にも文章にも使われる和語。〈おしっこを—〉〈溜ため息を ー〉〈秘密を—〉〈不平を—〉〈細大—・さず〉〈漏洩 モラル社会道德の意で、会話にも文章にも使われる外来語。 〈最低限のーは守る〉へーに反する〉へーの低下が嘆かわし い〉〈エチケットどころか、これはーの問題だ〉のモラルを 呼びかける中吊り広告に「捨てる人は、拾わない。捨てな い人が、拾っている。」というのがある。まさにそのとおり だと感心するのは捨てない人ばかりのような気がする。 叢理・Q道徳・倫理 もり【守】(子供などの)世話をしたり危険から守ったりする ことやその人をさし、会話でも文章でもまれに使われるこ とのある古めかしい和語。〈灯台—〉〈子—〉〈赤子のお— をする〉の「子供のお—」や「お—役」以外、現代ではめっ たに使われないが、阿川弘之の『夜の波音』は「海は、眠っ <1066> もり た町をーするように、夜じゅう鳴りつづけていた」という 比喻表現の冒頭文で幕を開ける。ひ守る 「森林」に比べ、改まらない日常語で、くだけた会話でも硬い文章でも広く使われる。〈の散歩道〉〈暗いの奥に分け入る〉村上春樹の『ノルウェイの森』に「彼女自身の心みたいに暗い」の奥で直子は首をくった」とある。「林」よりも、生えている木の密集度が高く、しかも、それらの樹木がこんもりと茂っていて、向こう側が見通せない感じがある。一面に樹木が密集し、奥が闇にのみこまれそうな深い「森」では、声の反響するいわゆる「のこだま」が聞こえるが、この雰囲気は「林」では望めない。そういう奥深い「森」は幻想をよび、小人や魔法使いでも住んでいそうなけないを漂わせる。また、「林」よりも「森」のほうが規模が大きく歴史も古い感じがある。それだけに大木がそびえている雰囲気があり、人間が計画的に植林したのでなく、長い年月を経て自然にできあがったという印象が強く、さまざまな種類の木が乱雑に生い茂っている感じがある。「森」は山や丘のような高地にある場合が多く、神社のまわりにある木立はたとい小規模であっても「鎮守の」と呼ばれる。「林」に比べ、暗く奥深い自然のイメージが強く、全貌をとらえきれない未知なるものへの恐れから、神秘的で夢幻的な存在として、人間はそこに「の精」などを想像してきた。専樹海・森林・林 もりあがる【盛り上がる】盛ったように高くなる意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈土がー〉〈筋肉がー〉 試 合がー」「会がー」「気分がー」のように、盛んになる意の 比喻的な用法も多い。刂隆起 もる【盛る】器にいっぱいに入れる意で、会話にも文章にも 使われる和語。〈茶碗に御飯を—〉〈料理を大皿に—〉 「盛り土」「盛り花」などの連想もあり、御飯の場合も「よそ う」より内容物が積み重なって盛り上がっているイメージが 浮かぶ。「酒を—」のように液体に用いると古い感じに響 く。名詞の「酒盛り」は今でもまだ動詞より使われるが、そ れでもいくらか古風な感じが伴う。「毒を—」のように、飲 食物にひそかに毒薬を混ぜる場合にも使う。近年「髪を—」 とも言う。ひ装う もる【漏る】液体・気体・光などが小さな隙間から外に出る意 で、会話でも文章でも広く使われる日常生活の和語。「水が ー〉〈雨がー〉〈桶がー〉広々木邦の『いたずら小僧日 記』に「(風呂桶は)なあに水ぐらい・ったって構やしない。 人さえー・らなけりゃ大事あるまい」とある。「漏れる」が 漏れるもの自体に意識の中心があるのに対し、この語は漏 るもの自体よりもそういう現象の生じている場所に関心の 重点があるという指摘もある。「漏れる」と違い、情報のよ うな抽象的な対象には用いない。広漏れる もれ【漏(洩)れ】「落ち」に近い意味で、会話にも文章にも使 われる和語。〈記入〉〈名簿にーがある〉〈配付先にーが 出る〉四「落ち」ほど人為的なミスという面が強くなく、原 因にふれずに事実だけを伝えている感じがある。Q遺漏・ 落ち・欠落・脱落① もれる【漏れる】液体・気体・光や情報などが外部に出て行く <1067> 意で、会話でも文章でも広く使われる日常生活の和語。ヘガ スがー〉〈明かりが外にー〉〈秘密がー〉立野信之の『流 し鈎』に「張りつめていた胸から空気がー・れ出るように溜 息をついた」とある。「漏る」は場所に、「漏れる」はものに 注目した表現といわれる。落ちる①・漏る もろい【脆い】影響を受けてこわれやすい意で、会話にも文 章にも使われる和語。「・くなった歯〉「・くも崩れる〉 〈熱に」小川洋子の『夕暮れの給食室と雨のプール』 に「桜の花びらのように」・く繊細な表情」とある。Q脆 弱い もろて【諸手】両手の意で、会話にも文章にもきまった言い まわしの中で使われる古風な和語。〈ー突き〉へーを挙げて 賛成する〉両手 もんく【文句】不平不満から出る「苦情」の意で、会話や軽い文章に使われる漢語。〈|たらたら〉〈扱いにーを言う〉〈仕事にーをつける〉〈|があるか〉〈完璧な出来でーのつけようがない〉「名ー」「歌のー」のように文章中の文や語句を意味する用法では、硬い文章にも用いる。Q苦情・クレーム もんじ【文字】「もじ」の意で、きわめて改まった会話や文章 にまれに用いられる古風で正式な感じの漢語。〈不立 (悟りは心から心に伝わるものであり、ことばや文字で伝え られるものではない、という意味の禅宗の立場を示す標語 )字・もじ もんじん【門人】師匠のところに入門した人をさし、会話に も文章にも使われる古めかしい漢語。〈道場のーとなる〉 もんよう へーとしてじきじきに教えを受ける〉ひ教え子・弟子・Q門弟 もんだい【問題】試験の問いや、解決すべき厄介な事柄をさ し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な漢語。〈環境ー〉へーを提起する〉へーの発言〉へ記 述式のーを出す〉へ入試ーを解く〉へーを起こす〉へそれは また別のーだ〉へまるでーにならない〉小林秀雄の『ゴッ ホの手紙』に「パリに来て、ゴッホを悩ました肖像画のーに は、こういう二重性があった様に思われる」とある。「解答」 と対立。ひ課題 もんちゃく【悶着】互いの意見の対立や感情のもつれから争 う意で、会話や軽い文章に使われる古風な漢語。へーを起こ す〉へひとーあることは必至だ〉の芥川龍之介の『偷盗』に 「太郎さんがこんな事を知ってごらん。また、お前さん、一 ーだろう」とある。ひいさかい・いざこざこたこた・トラブル・も めこと もんてい【門弟】師匠に入門した弟子をさし、会話にも文章 にも使われる古風な漢語。〈多数のーを抱える〉〈芭蕉のー の一人〉ひ教え子・弟子・Q門人 もんよう【文(紋)様】「模様」の意で、改まった会話や文章に 用いられる古風で専門的な雰囲気の漢語。「焼き物にーを ほどこす)専柄・Q模様 <1068> やおら「おもむろに」の意で、さらに古風な感じのする語。 へ身を起こす国木田独歩の運命論者」に父は筆を 擱いて此方に向き」とある。近年、若年層に、逆に「急 に「素早く」といった意味合いに理解する例が見られる。 そういう意味に使えば俗語的。おもむろに やがい【野外】建物の外や繁華街から離れた自然の多い場所 をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈音楽堂〉〈 劇〉〈演習〉〈で聞く〉〈で過ごす〉乃屋外・戸外 やがて【聽て】「間もなく」に近い意味で、少し改まった会話 や文章に用いられるやや古風な和語。〈一日が暮れる〉へ 大きくなる〉へ—帰る日が来る〉田宮虎彦の『沖縄の手記 から』に出る「はげしい空襲の中に、—朝焼けに空が焼け て、夜が明けていく日もあるようになった」という例は、さ ほど時間を経過しないうちの変化をさすが、すぐにではな くともいずれそのうちにというニュアンスで未来を予測す る例も多い。ひいずれ②追って・近々だ・じきに・Qそのうち・近 ちか・程なく・間も無く やかましい【喧しい】大きな音に悩まされて不快だの意で、 会話や軽い文章に使われる日常の和語。ぐさかりのついた 猫の鳴き声がー〉〈ジェット機の音がー・くて話が聞こえな い〉〈車の警笛の音がー〉の志賀直哉の『濠端の住まい』に 「暴れる猫の声がー・く、気になった」とある。「うるさい」 より音量が大きく、そのために妨害される感じを伴う。「騒 がしい」「騒々しい」以上に不快感が強い。「口・く注意す る」「親がしつけに」のように、細部にわたって厳格だと いう意味にも使う。ふうるさい・騒がしい・Q騒々しい・にぎやか やから【輩】同類の者をさし、会話にも文章にも使われる古 めかしい和語。〈不逞いの—〉へあのーには気をつけたほう がいい)多く軽侮のニュアンスが伴う。ヌ手合い・れんじゅ う・れんちゅう やかん【夜間】夜の間の意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈一営業〉〈一勤務〉〈一の外出〉〈一の照明〉〈一の工事〉〈一の学校に通う〉〈一出歩く〉〈夜〉に比べ、そのうちのある時刻をささず、時間帯という幅をイメージさせる。常識的に人の活動する日没後数時間を意味することが多いが、「料金」「の工事」などでは夜全体に近い。「昼間」と対立。刂深更・深夜・晩・真夜中・夜半・夜分・夜上・宵・夜中・夜更け・Q夜よよわ 沖ふ やかんじあい【夜間試合】夜間に行うプロ野球などの試合を さす、かなり古めかしい感じの漢語。〈用の照明〉サト ウハチローの『スタンドの古狸』に「戦争がなければ、プロ よりも、六大学の方が早く正式のーをやっていたかも知れ ない」とある。ひQナイター・ナイトゲーム やきつく【焼(灼)き付く】焼けてくつく、強く印象に残っ <1069> て忘れられない意で、会話にも文章にも使われる和語。へー ような強烈な日差し〉〈目にー〉〈心にー〉有島武郎の 『或る女』に「低い、重い声がーように耳近く聞えた」とあ る。ひQこびり付く・しみつく やきぶた【焼き豚】豚肉をたれにつけてオープンで蒸し焼き にした食品をさす和語。「チャーシュー」の使用が増えた今 でもまだ使われる用語。〈ラーメンにーを入れる〉の雁屋哲 の『美味しんぼ探偵局』に「本物のーは香ばしくって、肉に も旨味があって」とある。ひチャーシュー やきめし【焼き飯】肉や卵や野菜などを入れて油で炒めた米 飯をさし、会話にも文章にも使われる、やや古風な和語。 〈残り御飯をーにする〉現代では「チャーハン」のほうが 一般的で、この語は高齢の男性が家庭料理について言う雰 囲気がある。ひQ炒飯は・どラフ やきもき気をもんでいらいらしながら待つときの気持ちを さし、会話や軽い文章に使われる擬態語。ヘどうなるかとー しながら見守る〜〈空港に向かうパスが遅れてーする〉回小 沼丹の『鶴鴿』に「待合せた相手の三人が揃って遅刻したの だから、先生も嘸ーされていたのではないかしらん?」と ある。いらいら・Qじれったい・もどかしい やきもち【焼き餅/嫉妬】主として男女間での「ねたみ」を さし、主として会話に使われる日常的な和語。へーをやく ②芥川龍之介の『偷盗』に「疑り深いね(略)ーにも程がある よ」とある。嫉妬とする意の「焼く」に縁のある「餅」を添 えた語という。「嫉妬」よりもやわらかく若干ユーモラス。 主として男女間の感情について言う。Q嫉妬・妬み やきゅうじょう やきもの【焼き物】陶磁器や釉薬をほどこさない素焼きの 焼き物、土器などの総称として、会話にも文章にも使われ る和語。〈一の古い器で趣がある〉夏目漱石の『坊っちゃ ん』に、「瀬戸で出来るーだから、瀬戸と云うのだ」と博物 の教師に教えられる場面がある。井伏鱒二は『庄野君と古 備前』で、庄野潤三が備前焼の破片にぬたを塗ったレタスを 盛って酒を飲むことを知り、「大昔の一の破片まで生かして いる。生かしているとは、詩にしているという意味である」 と述べた。なお、この語は、「おつくりの後にーが出る」の ように、魚などを焼いた料理をさす用法もある。ひかわら け・磁器・瀬戸物・陶器・Q陶磁器・土器 やきゅう【野球】九人ずつのチームに分かれ、投手の投げた 球を一人ずつパットで打って得点を競う球技。「ペースボール」の訳語として漢語めかして作り出した十九世紀末以 来の長い伝統を持ち、すっかり日本人の生活になじんだことば。現在でも最も幅広く一般に使用されている日常 語。〈草—〉〈高校—〉〈ヨファン〉〈プローを志望する〉「ペースボール」に比べ、格別の昔なつかしさもなく、また、 斬新に響くための気障っぽさも伴わない。正岡子規は幼名 の「升る」にひっかけ、「のボール」という音になるよう「野 球」と署名した手紙もあるという。小沼丹の『リトル・リイ グ』に「テレビで子供のーの試合を観たことがある」とあ る。ひペースボール やきゅうじょう【野球場】野球の試合をするための競技場を さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈外野の両翼の広い 」略して単に「球場」と言うことが多い。込運動場・Q球 <1070> やく 場・競技場・グラウンド・グランド・コート・スタジアム やく【妬く】嫉妬する意で、主にくだけた会話に使われる、 やや俗っぽい和語。〈やきもちを—〉〈若いカップルを見て —〉〈同期生の昇格を知って—〉「焼く」のうち特に嫉妬 の意を明確に出すために書き分ける場合の表記。「焼く」と 書いても間違いではない。獅子文六の『自由学校』に「この お嬢さん、本心では、ー・いて、そして、スネていらっしゃ るのだ」とある。Q嫉妬・焼く やく【焼く】燃焼させたり食品などに火を通したりする意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な和語。へさんまをー〉〈クッキーをー〉へこんがりとー〉 〈古い手紙をー〉〈窯で壺をー〉〈火事で家をー〉の円地文 子の『女坂』に「夕餉の魚をー匂いが煙にまじってそこここ の軒下から迷い出て来る」とある。「日光に当てて肌をー」 「写真をー」のように、光を当てて変化させる意にも使う。 りQあぶる・焚たく・妬ゃく やく麻薬を意味する隠語的な俗語。〈ーの常習者〉〈ーに手 を染める〉漢字で書けば「薬」となるが、むしろ「ヤク」 と片仮名表記する例が多い。豊醒剤・しゃぶ・大麻・ドラッグ・ Q麻薬・マリファナ やく【役】与えられる任務やその担当の意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の漢語。「不足」 〈大ーをおおせつかる〉〈重要なーに就く〉〈難しいーを押し付けられる〉〈ーを無事にこなす〉福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「凶のくじはしかしそれで一応ーをすませた」とある。単に「ーが付く」「ーを演ずる」「ーを降り る」として演劇の配役などをさす用法もある。Q役目・役 割 やく【約】大まかに数えて、おおよその意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈一一週間〉〈半分〉〈一百人〉〈一二 万円〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「一時間許りのう ちに」とある。数量について使われる。ほぼ やく【訳】外国語の翻訳や古語の現代語訳をさし、会話や改 まらない文章に使われる日常の漢語。〈こなれた—〉〈ーが ぎこちない〉〈ーをつける〉小沼丹の『チェホフの葬式』 に「どこかで誰かがちょん切ったーで、無論「回想」の訳者 に責任はない」とある。単翻訳 やくいん【役員】会社などである部分の運営責任を持つ幹部 職員をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー待遇〉 〈ーに抜擢ぜくされる〉Q委員・係・幹事 ぜくざぼくち打ち・香具師・暴力団員など世の中の役に立 たないと考えられている人間の総称として、会話にも文章 にも使われる和語。へー者〉へーっぽい身なり〉へーから足 を洗う〉の敬遠する気持ちから「ヤーさん」とぼかしてあた りをやわらげる俗語もある。もと、賭博で「八・九・三」の札 がそろうと最悪の手となることから「や・く・ざ」で役に立 たない意を表したところから。「ー仕事」「ーな奴」はその 一例であり、「人生だとか文学だとか絶望だとか孤独だと か、そういう自分でもよく意味のわからぬーな言葉で頭を 一杯にして、犬の様にうろついていたのだろう」という小 林秀雄『モオツァルト』の例も同様である。ひころつき・ちん ぴら・ならず者・無頼漢・Q暴力団・無法者・与太者 <1071> やくざい【薬剤】薬、特に調合したものをさし、改まった会 話や文章で用いられる漢語。〈一師〉〈ーを散布する〉〈医 者の指示どおりに調合した—〉の「薬」より専門的な語。 薬・Q薬品・薬物 やくしゃ【役者】演劇などで役柄を演じる人をさす、やや古 風な日常の漢語。〈歌舞伎—〉へとして初舞台を踏む〉 へどさまわりの—〉伊藤整の『火の鳥』に「というもの は(略)他人の色恋でも、狐の通り道をかぎつけた猟犬のよ うに身がまえる」とある。正式な職業としては「俳優」と名 乗ることが多く、事実、「歌舞伎俳優」とも言うように、 「役者」というこの語は、古風な演劇の連想が強く、また、 昔なつかしさを感じさせるぬくもりがまつわりついてい る。刂俳優 やくしよ【役所】国や地方自治体の行政事務を行う場所をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈市〉〈勤め〉 に書類を提出する)役人のいる所という漠然とした意識 で言う場合は俗っぽい口頭語という響きがある。専官公庁・ 官庁・Q役場 やくしん【躍進】めざましい勢いで発展する意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈目を見張るばかりのー ぶり〉〈大ーを遂げる〉も飛躍 やくそく【約束】当事者の間で将来の事柄を取り決め、その 実行を互いに誓う意で、くだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常の基本的な漢語。〈事〉〈結婚の〉 〈ーを交わす〉〈ーを破る〉〈ーを果たす〉〈固くーする〉 〈ーどおりに支払う〉夏目漱石の『明暗』に「ーとおりに やふふふ しないのがわるいくらいは、妹に教わらないでも、よくわ かっていた」とある。「誓い」より具体的で詳細な内容をも つ傾向がある。ひ誓い やくにん【役人】公務員の意で、主として会話や軽い文章に 使われる、やや俗っぽい古風な漢語。〈省庁の—〉へ風を 吹かせる〉の昔の官吏と公吏の総称。民間人と比べて、威 張っていて融通の利かない人間が多いという印象があった ところから「根性」ということばが生まれ、「小」など と蔑まれる風潮もあった。現在でも好ましくない語感が残 っている。広官吏・Q公務員・公吏 やくば【役場】町や村の地方公務員や町村長、公証人などが 執務する場所をさし、会話にも文章にも使われる表現。町 ー〉(公証人ー〉(ーに届け出る)「役所」より小規模で比 較的親しみやすい感じがある。役所 やくひん【薬品】薬として用いるものをさし、やや改まった 会話や文章で用いられる漢語。〈化学—〉〈—の取り扱い〉 〈—を製造する〉〈—を調合する〉②太宰治の『東京八景』に 「Hは、生きた。私も見事に失敗した。—を用いたのであ る」とある。「薬」より専門的で、「薬剤」や「薬物」よりは 一般的な感じの語。薬・Q薬剤・薬物 やくぶそく【役不足】その人間の能力に比べて与えられた役 割が軽すぎる意の漢語表現。あれほどの実力があってこの 任務ではの感がある最近年、この身には一で務まるか どうか自信がもてないというふうに、「力不足」という意 味の謙虚な表現に用いる例が出現して話題になっている。 そのような用法の場合は誤用あるいは俗語という語感がつ <1072> やくぶっ きまとう。 ヲカ不足 やくぶつ【薬物】薬となる物質をさし、改まった会話や文章 で用いられる専門的な漢語。〈学〉〈一療法〉〈一に依存 する〉〈一を投与する〉〈一反応が出る〉薬・Q薬剤・薬品 やくめ【役目】職務としてなすべきことの意で、くだけた会 話から文章まで幅広く使われる日常語。〈大事なーを任さ れる〉〈何とかーを果たす〉〈自分のーはこれで終わりだ〉 志賀直哉の『赤西蠣太』に「彼の侍としてのー」とある。 収役・Q役割 やくわり【役割】それぞれに割り当てられた役目の意で、会 話にも文章にも使われる日常語。〈分担〉(きちんとーを 果たす〉〈途中でーを放棄する〉中村真一郎の「回転木 馬」に「地方の小都市の社会教育課勤務の人間(略)俺のー だ」とある。全体の任務を各人に割り振る感じがあり互い の連携が意識にのぼる。処役・Q役目 やけ【自棄】思いどおりに行かないために痼癥を起こし、 もうどうなってもかまわないという気分になる意で、多く 会話に使われる日常の和語。〈酒〉〈になる〉〈ーを起 こす〉〈こうなりゃーだ〉久保田万太郎の『末枯』に「 も手伝って、みずから扇朝は浪花節の仲間に身を落した」と ある。ひ自暴自棄・Q捨て缽・やけくそ・やけっぱち・やけのやん八 破れかぶれ わけくそ【自棄糞】「やけ」の意の俗語的でぞんざいな強調表 現。へになって攻めて来る里見桲の『多情多恨』に 「な気分が、時折胸もとへチリチリと焦きついて来た」 とある。自暴自棄・捨て鉢・やけ・Qやけっぱち・やけのやん八・破 れかぶれ やけっぱち【自乗っぱち】「やけ」の意の俗っぽい強調表現。 ぐこうなったらもうーだぐひ自暴自棄・捨て鉢・やけ・Qやけくそ・ やけのやん八・破れかぶれ やけのやんばち【自乗のやん八】「やけ」をユーモラスに強調 するために人名めかした古風な俗語表現。〈こちとら、もう だ〉映画『男はつらいよ』シリーズの「寅さん」(渥美 清)に「一日焼けのなすび」で始まるたき売りの口上があ る。ひ自暴自棄・捨て鉢・やけ・やけくそ・Qやけっばち・破れかぶれ やける【焼ける】物の中まで火が通る、または、燃えて灰になる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈家が—〉〈魚が—〉〈パンが—〉図川端康成の『雪国』のラストシーンに「あら、あら、繭倉がー・けてるのよ」という駒子の台詞がある。「肌が日に—」「日にー・けたカーテン」のように、長い間強い日光に照らされて変色する意にも使う。田宮虎彦の『沖縄の手記から』に「暁闇の空に曳光弾が花火のように弧を描き、はげしい空襲の中に、やがて朝焼けに空がー・けて、夜が明けていく日もあるようになった」とあるように、空が赤く染まることをもさす。ひQ燃焼・燃える 中さい【野菜】畑で栽培する食用の植物をさす日常の基本的 な漢語。現代の標準的な語。〈生—〉へ「を多く摂る〉村 上春樹の『遠い太鼓』に「トマトとホーレン草とインゲン は、口にふくむとコリッとして「ーです」という香ばしさが 口の中にさっと広がる」とある。古くは「青物」とも。乃青 物 <1073> やさしい【易しい】理解も実行も簡単な意で、会話やさほど 硬くない文章に使われる日常の基本的な和語。〈ー試験〉 〈一課題〉〈子供でもできるー組み立て〉②阿川弘之の『雲 の墓標』に「ふっくらしたー短い物語が読みたい」とある。 「難しい」と対立。Q簡単・たやすい・平易・容易 やさしい【優しい】穏やかで思いやりがある意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈他人に ー・く接する〉〈気立ての一人〉へ顔をして辛辣なことを 言う〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「妙に女の様な声を 出す人」とあるように、内面とは無関係に単にやわらかい 感じを与える意にも使う。ひ親切・Q情け深い やしき【屋敷】家屋が建っている場所を含めた全体の敷地を さして、会話にも文章にも用いられる古風な和語。「町」 「家はこちんまりとした瀟洒」な造りながら、全体が広 い」の林芙美子の『耳輪のついた馬』に「街路樹の右側に は、白い異人が船のように肩を寄せて」とある。土地と 建物の両方をまとめていう場合もあり、しばしば「邸」の字 を当てる。典型的には立派な門構えに塀をめぐらした大き な邸宅を連想させる。大きな建物でも敷地いっぽいに建っ ている場合はイメージが合わない。「大きなおーに住んでい る」の場合、建物だけでなく庭を含めた全体を「大きな」と 評したと考えられる。いえ・うち・家屋・居宅・豪邸・住居・住宅・ 住まい・邸宅 やしなう【養う】家族などの生活を支えたり動物を飼育した りする意で、会話にも文章にも使われる古風な和語。〈妻子 をー〉〈年老いた親をー〉の島崎藤村の『嵐』に「独りで子 やすうり 供をーって見ているうちに、だんだん小さなものの方へ心 をひかれるようになって行った」とある。「育てる」と違い、 成長させるという意味合いは含まれておらず、経済的な面 が主。育てる・育む・扶養・Q養育 やしよく【夜食】夜遅く小腹の空いたときに臨時にとる簡単 な食事をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーを取 る)へーにうどんを食べる)四この意味で「夜ごはん」は使 わない。乃夜御飯 やしろ【社】神社をさし、会話にも文章にも使われる古風な 和語。〈おー〉へーの森〉古くは、ほこらを含め、神を祭っ た場所を意味した。現代では境内を含めたイメージが強い。 ひ社殿・Q神社・ほこら やしん『野心』ひそかに抱く不相応に大きな望みの意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈ー家〉〈ーに燃える〉〈ー を抱く〉福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「そのー、 あくなき前進」とある。特に権力や名声あるいは莫大怨な 富などを手に入れようとする場合に使う傾向がある。会社 を乗っ取ったり、人妻を誘惑したりする魂胆など、一般には マイナスイメージの用例も多いが、「作」のように大胆な 意欲を示す、むしろプラス評価の用法もある。野望 やすい【安い】値段が低い意で、くだけた会話から文章まで 幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一時計〉〈一店〉 〈品物のわりにー〉〈一に越したことはない〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「みんなで三円ならー物だ御買なさい」と ある。「高い」と対立。Q安価・低価格・廉価 やすうり【安売り】商品を正規の値段より安く売る意で、会 <1074> やすみ 話やさほど改まらない文章に使われる日常の和語。〈歳末 の大ー〉へーの店を見つける〉児り出し・セール・叩き売り・ダ ンピング・Q特売・投げ売り・バーゲン・廉売 やすみ【休み】仕事や勉強の義務なく休むための時間・日・期間をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ーに入る〉〈ーを取る〉〈ーが多い〉〈太宰治の『思い出』に「きょうは桃の節句だから学校はーです」とある。ひオフ・休暇・休業・休憩・休日・休息・欠勤・欠場・欠席やすむ【休む】①一定時間仕事をせずに疲れをとる意で、会話でも文章でも広く使われる日常の基本的な和語。〈疲れたからちょっとー〉〈ゆっくりー・んで疲れを取る〉②小沼丹の『片片草』に「莫迦かもー・みー・み云え、と簡単に片附けられてしまった」とある。「憩う」がくつろぐことに重点があるのに対して、この語は仕事や勉強や歩行などを中断して何もしない状態をつくりだし、体力などの回復に努めるところに重点がある。ひ憩う②「寝る」の丁寧な和風の言い方。〈夜は早くーようにしている〉〈主人はもうー・んでおります〉〈おー・みなさい〉「休憩」「欠勤」「休業」などの意と紛らわしいため、「寝る」の意味では仮名書きする例が多い。ひお休みになる・寝る①・Q伏せる やすらか【安らか】平穏で心配事のない意で、改まった会話 や文章に用いられる和語。〈心ーに過ごす〉〈ーな寝顔〉 〈ーに眠れ〉三島由紀夫の『潮騒』に「島の姿が隠れると、 若者の心はーになった」とある。Q安閑・のんき・のんびり やせい【野生】動植物が山野に自然に成育する意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈ーの鹿〉〈ーの菫はみ〉、野性 やせい【野性】自然のままで粗野な意で、会話にも文章にも 使われる漢語。へー的な魅力〉へーみがあふれる〉、野生 やせほそる【痩せ細る】体が痩せて細くなる意で、会話にも 文章にも使われる和語。身がすっかり」上林暁の『薔 薇盗人』に「・ったのは飯を食わないせいもあるが、犬に 対する恐怖病にもよる」とある。「痩せる」以上に不安を感 じさせる。「身が思い」のように精神的な状態に使う例も 多い。児痩せる やせる【痩せる】体の肉が落ちて細くなる意で、くだけた会 話から文章まで使われる日常の基本的な和語。〈病気で—〉 〈成人病予防のため—必要がある〉⑨井伏鱒二の『黒い雨』 に「身は骨と皮ばかりに!・せて、蒲団を三枚も四枚も敷い て寝ていても、畳の固さが骨にこたえて痛くてならなかっ た」とある。「肥える」「太る」と対立。「土地が—」のよう に植物を育てる力が乏しくなる意にも使う。♡痩せ細る やたら【矢鱈】節度も秩序もなく不必要にの意で、主にくだ けた会話に使われる和語。〈ーにふれまわる〉〈ーにしゃべ る〉〈ーに仕事を言いつける〉〈ーに英語を交ぜる〉〈値段 がーに高い〉②小沼丹の『外来者』に「外国人と学生の群で 一杯になって、ーに英語が氾濫する」とある。「氾濫」と結 びつくことでマイナスイメージを強め、筆者がそれを好ま しく思っていない気持ちが間接的に読者に伝わる。なお、 「ーとうるさい」「ーと忙しい」のように、「に」でなく 「と」と受ける例が近年増えたが、その場合はいっそう俗っ ぽい感じが増す。ひみだり・Qむやみ やっかい【厄介】①手数がかかって煩わしい意で、会話や軽 <1075> い文章に使われる表現。〈ーをかける〉〈ーな仕事〉〈ーな 立場に立たされる〉〈ーをしょいこむ〉の「ーになる」のよ うに世話の意でも使うなど「面倒」とほぼ同義だが、「面倒 な問題」のほうが解決するまでに繁雑な手続きが必要だと いう感じなのに対して、「ーな問題」のほうは手数よりも迷 惑という意味合いが強い感じがする。Q面倒・面倒臭い ②他人の世話の意で、会話や硬くない文章に使われる、や や古風な日常の漢語。〈ーをかける〉〈一晩ーになる〉 世話 やっかみ「嫉妬」の意の若干古い感じの俗っぽい和語。へー 半分で悪口を言う主として関東地方の方言の響きがあ る。ひQ嫉妬・やきもち やっきよく【薬局】「薬屋」とほぼ同義で、改まった会話や文 章に用いられる正式な感じの漢語。〈日本一方〉〈調剤〉 〈ーを営む〉〈病院のーで薬を調合してもらう〉の「薬屋」よ り本格的なイメージがあり、しばしば店名の一部に利用さ れる。Q薬屋・ドラッグストア やってくる【やって来る】自分側に近づいて来る意で、主と して会話や改まらない文章で使われる日常の和語。友達が ー・きた〉へ向こうから二人連れがー〉〈電車がー〉へやがて その日がー・きた〉へわが家にもやっと春がー・きた〉小沼 丹の『外来者』に「外国人連中は観光パスでーらしく」とあ る。ひQ訪れる・訪ねる・訪問 やっとかろうじて、長い時間待っての意で、会話や改まらない文章に使われる日常生活の和語。「ようやく」より会話的。「たどり着く」〈ーできあがった〉〈電話が通じた〉 やど 〈ー許可が出た〉〈三度目でー合格した〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「思う様打ちのめして遣ろうと思ったが、 の事で辛抱した」とある。実現するまでの過程が意識にの ぼる「ようやく」とは違って、実現の瞬間に焦点があたると される。ひようやく やっぱ「やっぱり」の崩れた形で、若年層に広まった、ごく くだけた会話で使われる近年の俗語。へー、やめとこう 〈一、ヤバいよ〉乃案の定・果たして・Qやっぱし・やっぱり・やはり やっぱし「やっぽり」の意の少し崩れた形で、いくらか古風 に感じられることもある。〈一悪いことはできないもんで すな〉〈一旦那も下町生まれですかい〉の「やっぱ」よりも ずっと古くからある語形。乃案の定・果たして・やっぱ・Qやっぱ り・やはり やっぱり「やはり」の意で、主として会話で使われる和語。 〈ー思ったとおりだ〉へーあの手で行けばよかった〉へー駄目 だったか〉②「やはり」より強調の感じもあるが、くだけた 雰囲気のため、少しでも改まった文章中に使うと違和感が 出る。刂案の定・果たして・やっぱ・やっぱし・Qやはり やど【宿】旅行者などの宿泊施設の総称として、会話でも文 章でも使われるやや古風な感じの和語。〈ーを探す〉〈観光 地にーを取る〉〈ーに着く〉〈ーを出る〉〈ーを引き払う〉 宿泊する施設を一般的にさす場合が多く、個々の旅館やホ テルをさす例は減ってきた。物的な存在である「宿屋」「旅 館」「ホテル」と違い、単に「ーを経営する」という言い方 はあまりしない。「異国の」「山あいの」「湖畔の」 「海ぺの」のように文脈によっては詩的に響くこともあ <1076> やといいれる る。いずれの例も「宿屋」「旅館」「ホテル」という語に換 言したとたんに詩的な味わいは消えてしまう。山本有三の 『波』に「親なんてものは、ほんの仮のだよ」とあるよう に比喩的用法もある。単ホテル・Q宿屋・旅館 やといいれる【雇い入れる】新たに人を雇って仕事に従事さ せる意で、会話にも文章にも使われる和語。〈手が足りず従 業員を三人—〉②永井荷風の『澤東綺譚』に「百貨店でも売 子の外に大勢の女を—・れ」とある。概念的な関係を示す 「雇う」に比べ、小規模で雇用者と被雇用者とが職場で直接 接触するような関係を連想させやすい。専雇用・Q雇う やといにん【雇い人】雇われている人をさし、会話や軽い文 章に使われる、やや古風な表現。「を増やす」「に手当 をはずむ」「雇い主」と対立。雇用者①・従業員・Q使用人・ 奉公人 やといぬし【雇い主】働く人を雇う側の人間をさし、会話に も文章にも使われる和語。へーの指示に従う》雇用者②・Q 使用者 やとう【雇(備)う】賃金を支払って人に仕事をさせる意で、 会話にも文章にも使われる日常の和語。〈従業員を—〉へ人 をだけの資金がない)永井荷風の『瀅東綺譚』に「雷門 から円タクをー・って家に帰る」とあるように、料金を払っ て乗り物などを一定の距離・時間、自由に使う意の用法もあ るが、やや古風な感じを伴う。Q雇用・採用・雇い入れる やどす【宿す】身籠もる意で、主に文章に用いられる古風な 和語。〈子を—〉〈胤を—〉〈胎内に新しい命を—〉の悲 願を—」「月影を—」のような比喩的用法では若干詩的な響 きを感じさせる。僕胎・懐妊・受胎・妊娠・孕む・Q身籠もる 、どや【宿屋】「旅館」の意で、会話や改まらない文章に使う 古風な感じの和語。〈一の亭主〉〈一はどこも一杯だ〉〈温 泉地の一に湯治に行く〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「一 へ茶代を五円やった。かみさんが頭を板の間へすりつけた とある。基本的なイメージは、「旅館」以上にほとんどが和 風建築で、客室はすべて和室という感じで、この語が古く なった現在では、建物も古く、浴室や便所が共同の場合もあ るなど、規模や豪華さの点で「旅館」より落ちるような雰囲 気がある。ただし、食事を部屋に運んでもらえる期待は 「旅館一より大きいかもしれない。ホテル・宿・Q旅館 やどる【宿る】宿泊する意で、主に文章に用いられる古めか しい和語。〈秋日和の一日、高原のホテルに」現代で は、「木陰に」「露が」のように一時的にとどまる意や、 「子が」のように身ごもる意に用いる例のほうがむしろ多 いが、いずれも古風で文章語的。呂宿泊・Q泊まる どろく宿六くだけた会話で、妻が自分の夫を軽んじた り親しみを込めたりして呼ぶ場合に使う古めかしい俗語。 へうちのーどこほっつきまわってんだか) うちの人・夫・主人 ②・旦那・Q亭主・ハズ やなぎこし【柳腰】ほっそりとしなやかな腰つきをさす古め かしい和風の形容。ぐしとやかなーのいい女本来は、 「柳の枝のように」という比喩的な発想で成立した、しなや かな腰を意味する漢語で、「リュウヨウ」と読んだ。それを 「やなぎごし」と訓読みしてできた和語。語義としては、な よなよした細い腰というだけの意味であるが、この和語の <1077> 伝統的な使用歴から、歌麿などの浮世絵に描かれている女 か、鏑木ら清方あたりの美人画に登場する美人を連想する のが自然で、どうしても和服姿の女性を思い浮かべる。実 際には洋服姿であっても細くてしなやかな腰の持ち主は少 なくないが、ジーンズ姿の女子高生や体操競技の女子選手 などの場合に「柳腰」と形容するのは、着物姿でないという 点で抵抗がある。それは単にこの語が古いからだけではな く、主として伝統的なイメージに合わないからである。い くら柔軟性があっても「のボクサー」「の技能派力士」 と形容すると滑稽な感じになるのは、和服姿でなく女性で もないという点で、従来のイメージを大幅に破るからであ る。ひしなやか やなみ【家屋並み】「いえなみ」のやや古い感じの表現。 〈昔のーの残る旧道の一郭〉みいえなみ やぬし【家主】貸家の持ち主の意で、会話にも文章にも使わ れる、やや古風な和語。〜から家賃の催促が来る〜〜〜〜〜〜〜〜 やはん た、中高生などがことさら悪ぶって頻発する傾向もある。 へ見つかるとー〉へこのままじゃ、ちょっとー〉周囲の人に も意味がわかるので隠語本来の働きを失い、今では単なる 俗語に近くなった。中には「やべえ」などと崩して不良じみ た雰囲気を出そうとする者もあるが、もはや特殊な集団に 属すると思わせるほどの凄みは出ない。近年、若年層では、 意外だと感じると、「ヤバッ、うめえ」などと、いい意味で も使う例が目立つようになった。「ヤバい」「ヤバイ」とも 書く。児危ない危険 やはり【矢張り】予想どおりにの意で、少し改まった会話から硬い文章まで幅広く用いられる標準的な和語。〈一断念せざるを得ない〉〈今回もまた、華麗な演技を披露した〉〈一偽りであった〉福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「遮二無二にラムを弁護する。われわれはその愛情にうたれるほどだが、ラムがこのころ非常に正常であったとは一考えられない」とある。やや古風な「はたして」ほどの格式は感じさせないが、会話で多用される「やっぱり」よりも改まった感じがある。テレビの相撲が放送でNHKのアナウンサーは常にこの語を用い、解説の親方連中はたいてい「やっぱり」を使う。奪案の定・果たして・やっぱ・やっぱし・Qやっぱり やはん【夜半】夜中、特に真夜中あたりを漠然とさし、改ま った会話や文章に用いられる漢語。〈雨はー過ぎまで降り続 く見込み〉へには雪に変わる〉正宗白鳥の『入江のほと り』に「ーの寒さに身震いして、寝床の中へ藻繰込んで」と ある。零時前後からの一、二時間を連想しやすい。ふ深更 <1078> やばん 深夜・Q真夜中・夜間・夜分・夜上・夜中・夜更け・夜よわ やばん【野蛮】嗜なみがなく洗練されておらず荒々しい意で、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈な人間〉〈な 行動に出る〉〈な風習が残る〉太宰治の『斜陽』に「そ んなーな仕草も、お母さまがなさると」とある。専荒々しい 荒い荒っぽい・がさつ・粗暴・Q粗野・乱暴① やひ【野卑(鄙)】下品で洗練されていない意として、主に文 章中に用いられる漢語。へーなふるまい〉〈言葉遣いがー だ〉ひ下品・下劣・俗悪・通俗・低俗・低劣・Q卑俗 やぶく【破く】破り裂く意で、くだけた会話でまれに使われ る俗語。書き損じの手紙をびりびりっとー〉ふうっかり障 子をー〉く釘をひっかけてズボンの裾をー〉「破る」と 「裂く」の混交による語形。「裂く」の意味合いが交じってい るため、線状に引き裂くイメージが強い。「破る」と違って 抽象的な意味合いでは用いない。ひ破る やぶける【破ける】破れ裂ける意で、くだけた会話でまれに 使われる俗語。〈紙がー〉〈袋がー〉〈服がー〉「破る」と 「裂く」の混交語「やぶく」の自動詞形。「裂ける」という意 味合いが交じっているため、線状の破損を連想しやすい。 「破れる」と違って抽象的な意味では使われない。も破れる やぶにらみ左右の視線の方向がずれることを伝統的にさし てきた日常の和語。そのような障害を持つ人に対する差別 意識が感じられるとして今では使用を控えている。も斜視 やぶる【破る】引き裂く、こわすの意で、会話でも文章でも 幅広く使われる日常生活の和語。〈紙をー〉〈誤って襖ふすを ー〉〈力まかせに門をー〉俗語の「やぶく」と違って、「禁 を」「約束を」「誓いを」「世界記録を」「静寂を 」「眠りを」のような抽象化した用法も多い。有島武郎 の『或る女』に「からっと」・ったように晴れ渡っていた空」 という比喻表現が出る。ひ破く やぶれかぶれ【破れかぶれ】どうせ負けるのだと後のことな どを考えずにぶつかって行く場合の気持ちで、主にくだけ た会話に使われる俗っぽい和語。へーで向かっていく林 芙美子の『うず潮』に「地の底の地獄の門まで墜落してゆき たいようなーな気持ち」とある。「捨て鉢」より程度が強い 感じがある。自暴自棄・捨て鉢・やけ・やけくそ・Qやけっぱち やけのやん八 やぶれる【破れる】穴があく、裂ける、こわれるの意で、会 話でも文章でも幅広く使われる日常生活の和語。ぐズボンが ー〉〈書類の端が少し!・れている〉〈カーテンがー〉〈水道 管がー〉〈国!・れて山河あり〉字野千代の『おはん』に 「町もーような繁昌」という比喻表現が出る。俗語の「やぶ ける」と違って、「夢がー」「均衡がー」「恋にー」のような 抽象的な意味合いの用法も見られる。ひ破ける やぶれる【敗れる】争いことに負ける意で、改まった会話や 文章に用いられる和語。〈戦いに—〉〈選挙に—〉〈優勝候 補が—〉〈惜しくる—〉〈善戦空しく—〉田宮虎彦の『落 城』に「すでに会津落ち庄内もー・れていた」とある。 敗戦・敗北・Q負ける やぶん【夜分】夜の時分の意で、改まった会話や文章に用い られる古風な漢語。〈ーはたいてい家にいる〉へーにお邪魔 します〉の「ー遅く申し訳ありませんが」のように、夜にな <1079> ってからの行為で相手に迷惑がかかることを恐縮する気持 ちを表す丁重な表現によく用いる。常識的に夜の前半をさ し、零時以降は含まない。巻深更・深夜・晩・真夜中・夜間・Q夜 半・夜上・宵・夜中・夜更け・夜 やぼ【野暮】粋という感じから遠いの意で、会話や改まらない文章に使われることば。〈ーの骨頂〉〈聞くだけだ〉〈見るからにーな格好〉夏目漱石の『草枕』に「俳句は作らんでも既に俳三味に入って居るから、作る丈ーだ」とあ る。「野暮ったい」意のほか、男女関係に疎く気が利かないという意味でも使われる。Q垢抜けない・田舎じみるださい・泥臭い・野暮ったい やぼう『野望』身分不相応な大それた望みの意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈ーを抱く〉〈敵のーを打ち 砕く〉福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「彼はまだ 文壇へのーは捨てていない」とある。広範に使える「野心」 に対し、この語は大きなスケールの事柄について使い、誘拐 して身代金を狙うとか、社長夫人を誘惑するとかといった 個人的な問題に使うと違和感がある。野心 やぼったい【野暮ったい】「やぼ」な感じがする意で、主とし て会話に使われることば。〈ー柄の着物〉〈着こなしがー〉 ヌQ垢抜けない・田舎じみる・ださい・泥臭い・野暮 やぼてん【野暮天】人情の機微がわからず気の利かない意で、 くだけた会話に使われる古めかしい俗語。ヘカップルの間に 平気で割り込むー〉(根っからのーで、気を利かせることを 知らない)の「野暮」の強調表現で、特に男女の関係に鈍い 場合に使われる。Qとんちき・ぼんくら やまいや やま犯罪などの事件やその現場を意味する俗語で、刑事や 事件記者などがしばしば用い、隠語の響きがある。大きな ーを手がける〉〈ーを踏む〉の漢字で書けば「山」であるが、 ほとんど漢字では書かず、「ヤマ」という片仮名表記が多 い。現場・事件 やま【山】平地に比べて著しく盛り上がっている地形の場所 をさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる最も基 本的な和語。〈高い—〉への頂をめざす〉へに登る〉へ を下る〉森敦の『月山』に「彼方に白く輝くまどかなーが あり、この世ならぬ月の出を目のあたりにしたようで」と ある。「山岳」と違い、「洗濯物の—」「事件の—」のような 派生的用法も多い。山岳 やまい【病】病気の意で、主に文章中に用いられる古めかし い和語。〈心のー〉へーを得る〉へーに倒れる〉へーに冒され る〉へーがあらたまる〉へーが癒える〉へーを押して出かけ る〉専障り・疾患・疾病・Q病気・病魔・患い やまいこうこうにいる【病膏肓に入る】物事にひどく熱中す る意の古風な慣用表現。ヘここまで徹底すれば、まさにーと いうやつだ〉の「膏肓」の「肓」の字が「盲」に近似すると ころから誤って「こうもう」と読む例が多い。専熱中・没頭 やまいも【山芋】代表的なとろろ芋をさし、会話にも文章に も使われる和語。ヘーをすりおろす)野生種と栽培種に分 かれる。「山の芋」ともいう。専自然薯跡・Qとろろ芋・長芋 やまごや【山小屋】登山者の宿泊や休憩、時に避難のために 設けた建物をさす和語で、一般的に広く使われている日常 語。ヘーで一泊して山頂を目指すヘーのともし火》ヘ「ヒ <1080> やまじ ュッテ」よりやわらかく暖かい感じがある。島崎藤村の『千 曲川のスケッチ』に「漸くのことで清水のーに辿り着いた」 とある。ヒュッテ やまじ【山路】「やまみち」の意で、文学的な文章に使われる 古風な和語。〈ーを急ぐ〉〈ーをたどる〉夏目漱石の『草 枕』に「春のーをのそのそあるく」とある。ひやまみち やましい【疚(疾)しい】心に恥じるところがあって気が引け る意で、会話にも文章にも使われる和語。へなんらーところ はないへいささかやましさを覚える〉及後ろ暗い・Q後ろめ たい やますそ【山裾】山の下の方の傾斜がなだらかな部分をさし、 会話にも文章にも使われる和語。〈ーまで一望できる〉の堀 辰雄の『菜穂子』に「ーに半ば傾いた村の全体が見え出し た」とある。ひ山葦・裾・Q裾野・ふもと やまづみ【山積み】うずたかく積み上げる意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈荷物がーになっている〉〈古本屋の 奥に棚に入りきらない本がーにしてある〉②「仕事がーだ」 「問題がーだ」のようにも使うが、「山積さん」と逆に、主に具 体物に使われる。巻山積 まとことば【大和言葉】日本語、特に、漢語や外来語を除 く日本固有のことばを意味し、会話にも文章にも使われる、 いくぶん古風な和語。〈純粹のー〉へー特有のやわらかさ〉 平安時代の雅語だけをさすこともある。ひ和語 やまびこ山彦山や谷で起こる「こだま」をさし、会話に も文章にも使われる、古風な感じの和語。〈ーが答える〉 もと、「山の神」の意。山の神が真似て答えるのだと考えた ところから。自然の中の連想が強く、ビルや廃墟 ドなど街中での反響に使うには抵抗がある。ひエコー・Qこ だま・残響・反響 やまみち【山道(路)】山の中を通っている道をさし、会話に も文章にも使われる日常の和語。〈険しいー〉〈急なー〉 〈ーに差し掛かる〉の「山路」の表記は「やまじ」と読まれ やすい。夏目漱石の『草枕』は「ーを登りながら、こう考え た」で始まる。ひやまじ やまる【止まる】やめた状態に自然に導かれる意で、主とし て会話に使われることのある、使用頻度の低い和語。〈手癖 の悪いのは年を取ってもまだーらないと見える〉〈僕なん かは何度も禁煙に失敗してるが、君はよく一度でーった ね〉〈長い間の習慣になってしまうと、やめようと思っても なかなかー・らない〉自然に途絶える感じの「やむ」に対 して、この語には、やめようとする意志が前提になっている 感じが強い。調布市の自宅を訪問した際、武者小路実篤に 東大社会学科中退の事情を問うと、「あの時分は、学校出れ ば無試験で入っちゃうんでね。落第すればひとりでにー・る んだけど、落第しようがないんでね。だもんで、入るとき から、やめる決心してね」と答えた。止む やみ【闇】暗くてものが見えない状態をさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈に紛れる〉〈外は真のだ〉永井 龍男の「蚊帳」に「団扇を使う気配とか、蚊の鳴き声が一の 中にするかも知れない」とあり、小川国夫の「相良油田」に 「込み入った構造は黒土のようなーに浸されてしまってい て、なに一つ分明なものはなかった」とある。「一寸先は <1081> だ」のように、見えない・わからない意にも、「この世はー だ」のように、まったく希望のない意にも、「相場」「 取引」のように、裏に隠れてひそかに行う意にも使う。ひ暗 がり・暗闇 やむ【止む】それまで続いていたものが終わる意で、会話で も文章でも幅広く使われる和語。〈雨が—〉〈騒ぎがようや く—〉〈攻撃の—のを待って反撃に出る〉②川端康成の『山 の音』に「音は—・んだ。/音が—・んだ後で、信吾ははじめ て恐怖におそわれた」とある。「やまる」と違って、やめよ うとする意志が感じられない。ひやまる やむをえない【止むを得ない】「仕方がない」の意で改まった 会話や文章で用いられる、やや古風で硬い感じの表現。 はやー〉〈事情〉Q仕方がない・仕様がない・しょうがない やめる【止める/辞める】やっていたことや、やろうとした ことを中止する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常生活の基本的な和語。〈タパコをきっぱりと 止める〉〈仕事を途中で止める〉〈今月いっぱいで役員を辞 める〉②夏目漱石の『坊っちゃん』に「新聞屋に談判に行こ うと思ったが、学校から取消の手続はしたと云うから、! めた」とある。「止す」がもっぱら人間用であるのに対し て、この語は人間に限定されず、犬が吠えたり鳥がさえずっ たり啼ぃたりするのを中止するような場合でも使える。 また、喧嘩を「やめる」のも「よす」のも、喧嘩を思いとど まる場合と、喧嘩を始めて途中で中止にする場合と、両方 ありうる点で共通しているが、傾向として、「止める」とあ ると思いとどまる場合を、「止す」とあると途中で中止する やりかた 場合を連想しやすいという指摘もある。止す やもめ主として「未亡人」を意味する古風な日常の和語。 へ暮らし妻を亡くした男性をさすこともできるが、紛 らわしいため、その場合は「男に蛆がわく」などと性別 をはっきりさせることが多い。それとはっきり区別したい 場合は「女ーに花が咲く」ということもある。専寡婦・Q後 家・未亡人 やや【稍】他や平均・普通と比べてその程度がわずかばかり違 う場合に、改まった会話や文章に用いられる和語。〈真ん中 よりー右寄り〉〈ー大きめ〉〈一難しい問題〉二葉亭四迷 の『平凡』に「啼声がー遠くなる」とある。「あって」の ように少しの時間的隔たりをさす用法もあり、その場合は 古めかしい感じが強い。幾分・幾らか・Q若干 ややもすると【動もすると】「ややもすれば」に同じ。へつ い食べ過ぎてしまう)「やや」に募る意が含まれる。 ともすると・ともすれば・ややもすれば ややもすれば【動もすれば】「ともすれば」に近い意味で、主 に会話に使われる和語表現。へーこのような失敗をしやす い)「ともすれば」より、以下の状態になりやすい感じが いくらか強い。ともすると・Qともすれば・ややもすると やゆ【揶揄】皮肉な態度でからかう意で、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈政治をーした漫画〉〈顔を見る とーしたくなる〉②佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「意地わる の女主人に言附かって、彼をーするために来たかとさえ思 われた」とある。おちょくる・Qからかう・嘲弄 やりかた【遣り方】「方法」「手段」ほど改まらない日常の和 <1082> やりきれない 語。〈ーがよくわからない〉〈動機はいいが、ーが下手だ〉 ②梅崎春生の『崖』に「私は私のーで、この不祥事のつぐな いをする」とある。「ーが汚い」などとも言えるが、この語 自体には、「やり口」や「手口」のような悪いニュアンスが しみこんでいない。刂手段・手法・手口・方式・Q方法・やり口 やりきれない【遣り切れない】心理的に辛抱できない意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈寂しくて思いだ〉〈気 の毒でどうにも—〉の小沼丹は『銀色の鈴』で、妻が急死し て娘たちが家事をするようになったときの父親の気持ちを 「しょぼしょぼ、淋しそうな格好で食事の用意をされたら— と思う」と述べた。「せつない」や「やるせない」と違い、 「蒸し暑くて」「こう寒くてはどうにも」のように肉体 的な苦痛についても用いる。別に、「仕事がこう多くては とても一人では」のように、なし得ない意の用法もある。 りせつない・Qやるせない やりくち【遣り口】やさしい日常語である「やり方」より、 さらに口頭語的なレベルの和語。〈が汚い〉〈卑怯な〉 〈あのが気に入らない〉志賀直哉の『赤西蠣太』に「気 前のいい離れわざをやって敵を驚かした。になかなか鋭 いところがある」とある。中立的な「やり方」に対し、好ま しくないという評価を伴うため、「すばらしい」といった 用法にはなじまず、「巧みな」とするほうが落ち着く。た だし、悪いニュアンスといってもまだ灰色で、それ以上に黒 に近づけば「手口」のほうがぴったりする。刂手段・Q手口・ 方法・やり方 やりくり【遣り繰り】不足気味のところを工夫して間に合わ せる意で、会話や改まらない文章に使われる日常の和語。 〈一算段〉〈苦しい家計をなんとかーする〉〈どうにもーが つかない〉ひ切り盛り やりこめる【遣り込める】議論でやっつける意で、会話やさ ほど改まらない文章に使われる和語。偉そうにしゃべって いた相手を質問攻めでー〉夏目漱石の『坊っちゃん』に、 「なんでバッタなんか、おれの床の中へ入れた」と生徒を糾 明する教師の主人公が「そりゃ、イナゴぞな、もし」と生 意気におれをー・めた」と逆に生徒にやり込められる場面が ある。「とっちめる」以上に口頭での攻撃にしぼられる。 徳らしめる・Qとっちめる やりそこなう【遣り損なう】失敗する意で、主に会話に使わ れる和語。へー・ってばかりいる〉乃エラー・しくじる・失策・失 態・失敗・とちる・抜かる・Qぼか・ミス・ミスる やりて【遣り手】仕事をあざやかにやってのける人をさし、 会話や硬くない文章に使われる和語。今度の部長はなか なかのーだ)回他の迷惑を顧みずに事を運ぶイメージがあ り、いくぶん冷酷な雰囲気を感じさせることもある。勇腕利 き・Q切れ者・敏腕 やりば【遣り場】動かして持って行く先をさし、会話やさほ ど硬くない文章に使われる和語。〈目のーに困る〉〈腹立た しさのーがない〉埤田譲治の『風の中の子供』に二人は 取り組んだのである。うれしさ、恥しさのーはこれ以外に なかった」とある。「はけ口」が出口のイメージなのに対し、 この語は出たものの行き先というイメージが強い。みはけ口 やる【遣る】①「する」の意などで、主として会話か改まらな <1083> い文章に使われる日常的な和語。〈スポーツを—〉〈ぜひ—〉りたい〉〈これだけあれば何とか—っていけそうだ〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「最初の一時間は何だかいい加減にーってしまった」とある。「する」と両方使える例でそれぞれのニュアンスを比較してみると、例えば「する気がある」と「気がある」「勉強をする」と「勉強を」では、どちらの組み合わせでも後者のほうに積極性が感じられる。また、「卓球をする」「登山をする」の場合は遊びでもかまわず技術の程度はさほと問題にならない感じがあるが、「卓球を—」「登山を—」となると、少しは本格的な経験があってある程度の専門的な技術を備えていそうな雰囲気が増すように思われる。一方、語の文体的レベルを比べれば、「する」がどこにでも適応する一般語であるのに対し、「やる」は会話的な感じが強い。する・たしなお②同等以下の相手に与える意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈犬にえさをト〉〈子供に小遣いを—〉〈鉢植えに水を—〉「上げる」よりぞんざいな感じがあり、近年この語のぞんざいな感じの響きを嫌って「上げる」を使う傾向が特に女性に強い。上げる・Q与える・呉れる・差し上げる・授ける・施す③漠然と「性交」をほのめかすことのある俗語。すべての行為という極度に広い範囲を指示することのできる「する」と同義で、それよりやや俗っぽい語。「一杯」「酒もタバコもー・らない」のように飲食関係の意味をほかす場合にも用いる。漠然とした意味の動詞を提示することで言いにくい気持ちを伝え、相手に想像させる。意味は抽象的であるが、くだけた会話専門で隠語のような働きをする。表現構 やわらかい 造のよく似た「いとなみ」がたしなみを示すのとは対照的 に、この語はむしろ気品に欠ける。専営み・エッチ・関係②・合 歓・交合・交接・情交・情を通じる・Q性交・性行為・性交渉・性的行為・ セックス・抱く②・契る・同衾共寝・寝る②・懇ろになる・ファック・ 深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・夜伽 やるき【遣る気】物事をしようとする積極的な気持ちの意で、 会話や軽い文章に使われる日常表現。〈ー満々〉へーを出 す〉へーが起こらない)意気込み・意欲・意力・気概・気骨・気迫・ Q気力・根性・精神力・ど根性 やるせない【遣る瀬無い】どうしようもなく切なくつらい意 で、会話にも文章にも使われる和語。〈ー思い〉〈日ごとに やるせなさが募る〉庄野潤三の『小林秀雄「栗の木」に 「西行の、わが身ひとつを持てあました、胸の嘆きに共感 をよせるのも合点がいく」とある。思いを晴らす方法がな いというのが原義。ひせつない・Qやりきれない やろう【野郎】男性を意味するぞんざいな口頭の漢語。〈あの ー、勝手なまねをしやがって〉〈集まったのはーばかりだ〉 小沼丹の『猿』に「噛まれた奴は、このーとでも云うよう に相手を振向いた」とあり、「ー、覚えてろ!」「このー、ひ でえまねしやがって、ただじゃすまさんぞ!」などとののし る口調で用いることが多いが、「ーの言うとおりだ」「ああ 見えても、いいーなんだ」というふうに、むしろ仲間である という親しみの感情をこめて使う例もある。少男 やわらかい【柔らかい」ふんわり、しなやか、あるいは穏やかといった意味合いで、会話にも文章にも使われる日常の基本的な和語。「体が」〈身のこなし〉〈布団〉 <1084> やわらかい 風〉〈ー感触〉川端康成の『千羽鶴』に「右によじれ前に のめる上半身を、こんなー手ざわりで、どうして支えられ たのだろう」とある。専柔軟・軟らかい やわらかい【軟らかい】形状が変化しやすい、融通が利 堅苦しくない意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。 〈材質〉〈便がー〉〈物腰がー〉〈頭がー〉〈内容〉円 地文子の『女坂』に「華奢な骨組に川魚のような—肉が繊細 にまとっていて」とある。軟弱①・柔らかい やんごとない「身分の高い」という意味の古語的な表現。 〈一身分の御仁〉〈一方々〉自分たちとは縁がないと突き 放した感じの皮肉な言い方になることが少なくない。 やんちゃ幼い子供が親の言うことを聞かずに勝手なふるま いをする意で、主にくだけた会話に使う和語。ふうちの坊 主ふ「を言う」「腕白」と同様に男の子を連想しやすい が、この語は女の子についても使う。おきゃん・お転婆・腕白 やんぬるかな【已んぬるかな】「もはやなす術はない、もう 終わりだ」といった意味合いで、かつて美文調・絶叫調の放 送などに時折用いられた文語的な言いまわし。ぁらゆる 手を尽くしてなお果たさず。 ゆ【湯】熱して高温にした水をさし、会話にも文章にも使わ れる日常の和語。〈ーを沸かす〉〈熱いーを冷まして飲む〉 〈ーにつかる〉②中勘助の『銀の匙』に「ーが乳のへんでく びれあがって軽く糸で結えたような感じをあたえる」とあ る。「いいーだ」のように特に温泉などをさすこともある。 会話では多く「おー」の形で使う。乃白湯 ゆあがり【湯上がり】入浴を済ませた直後をきし、会話でも 文章でも使われる日常生活の和語。への浴衣姿で縁側に涼 む)への一杯はこたえられない)②「入浴後」と「湯上が り」とではビールの味に格段の違いがあるように思えるほ ど、この語にはいかにもくつろいだ気分が感じられる。 ゆいいつ【唯一】一つだけの意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い感じの漢語。〈一無二〉〈一の欠点〉〈一の企 業〉〈一の悩み〉堀田善衛の『広場の孤独』に「終戦後の ーの希望」とある。しただ一つ・たった一つ ゆいごん【遺言】死後に自分の意思、特に財産分与などに関 して言い残したり書き残したりするものをさし、会話でも 文章でも幅広く使う日常漢語。〈ー状〉へーを残す〉へーに 従う〉森鴨外の『半日』に「公證人を立てて、立派にーが してある」とある。法律関係では「いごん」と読む。きいご ん ゆいしょ【由緒】物事の起源と今までの歴史をさし、改まっ <1085> た会話や文章に用いられる古風な漢語。へーある神社へー 正しい家柄福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』は「チ ヤールズ・ラムはロンドンの人である。しかもテムブルという ーのある地域で生れた」と始まる。「由来」に比べ、価値 のある立派なものを連想させる。ひ沿革・Q由来 ゆう【夕】「夕方」の意で主として文章に使われる古風な和 語。〈ー景色〉〈朝ーの冷え込み〉〈朝にーに〉今は単独で はあまり使わない。蕃れ方・たそがれ・薄暮・晩方・日暮れ・灯と もし頃・Q夕方・夕暮れ・夕刻・夕べ・夕間暮れ・宵・宵の口 ゆうい【有為】将来役に立ちそうな能力のあるという意味で、 主に文章に用いられる硬い漢語。〈前途—の人材〉の「う い」と読むと、「転変」「の奥山」と使う別語。ま末頼も しい・Q有望 ゆううつ【憂鬱】不安や心配なことがあって気分が落ち込む 様子をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーそうな 顔〉へな毎日〉(考えただけでもーになる)平林たい子 の『施療室にて』に「恐ろしいーが額にかぶさっているのを 感じた」とあり、金井美恵子の『夢の時間』に「ひどくーで 絶望的で、不吉な気分が胃の底から頭まで雨雲のように広 がり」とある。ひ暗鬱・陰鬱・Q沈鬱 ゆうえん【悠遠】「悠久」に近い意味で用い、「悠久」よりさ らに古風な漢語の文章語。へーの太古からはるかな未来ま で)何時までも・永遠・永久・永劫・恒久・とこしえ・とこしなえ・と わ・Q悠久 ゆうえんち【遊園地】ぶらんこや滑り台など子供の遊ぶ設備 を備えた公園をさし、会話にも文章にも使われる日常の漢 ゆうぎ 語。〈児童—〉〈子供を連れて—に行く〉島崎藤村の『桜 の実の熟する時』に「ーとして公開してあった」とある。 公園 ゆうが【優雅】洗練された美しさをさし、会話にも文章にも 使われる、趣のある和語。〈な衣装〉へな立ち居振る舞 いの太宰治の『斜陽』に「お母さまのこうしてーに息づい て生きていらっしゃる事が、あまりうれしくて、ありがたく て、涙ぐんでしまった」とある。「な生活」「に暮らす」 のように、余裕があってそうなるというニュアンスの強い 場合もある。ひQみやびやか・優美 ゆうかい【誘拐】巧みに人を騙して連れ去る意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ー事件〉〈ー犯〉〈営利ー〉〈ーの 手口〉ひかどわかす・誘惑・拉致 ゆうがく【遊学】故郷を出て他の土地で勉学することをさし、 主として文章に用いられる古風な漢語。〈中の出来事〉 〈京都にーする〉〈一のため英国に渡る〉有島武郎の『生 れ出ずる悩み』に「東京にーすべき途が絶たれていた」とあ るように国内に用いる例も少なくない。単留学 ゆうがた【夕方】日の暮れる前後の時間帯をさし、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。「の 混雑〉へーまでかかる〉へーに一雨ありそう)夏目漱石の 「坊っちゃん」に「ある日の折戸の蔭に隠れて、とうとう 勘太郎を捕まえてやった」とある。数多くの類義語中最も 基本的で最もよく使われる。暮れ方・たそがれ・薄暮・晩方・日 暮れ・灯ともし頃・夕・夕暮れ・Q夕刻・夕べ・夕間暮れ・宵・宵の口 ゆうぎ【遊技】娯楽のための遊びの意で、会話にも文章にも <1086> ゆうぎ 使われる軟らかい感じの漢語。〈場〉具体的にはパチン コなどの勝負事をさすことが多い。込遊戲 ゆうぎ【遊戲】幼児の遊びや踊りをさし、会話にも文章にも 使われる、子供っぽい雰囲気の漢語。〈幼稚園でおーをす る〉のリズム感の養成などのための団体訓練といった連想 が強い。永井荷風の『澤東綺譚』に「軽い恋愛のーとはいい ながら」と大人に用いた例がある。乃遊技 ゆうきゅう【悠久】遠い過去を含めた長大な時間を意味する、 文章語レベルの詩的な漢語表現。〈一の歴史〉〈一の自然〉 田山花袋の『東京の三十年』に「人生のーって言うことを 感ぜずにはいられない」とある。几何時までも・永遠・永久・永 劫・恒久・とこしえ・とこしなえ・とわ・Q悠遠 ゆうぐう【優遇】手厚くもてなし待遇をよくする意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈一措置〉〈特別—される〉 「厚遇」に比べ、給料や諸条件など具体的な待遇を連想させ る。「冷遇」と対立。厚遇 ゆうぐれ【夕暮れ】夕方になって日が暮れる頃をさし、主として文章に用いる、やや古風な和語。〈ーが近づく〉への街の「夕方」などと違って、時刻よりも薄暗くなった状態をさすほうに重点がある。芥川龍之介の『東洋の秋』に「秋の木の間の路は、まだーが来ない内に、砂も、石も、枯草も、しっとりと濡れているらしい」という例が出る。また、堀口大学の詩には、「一の時はよい時/かぎりなくやさしいひと時」という一節がある。小川洋子の『夕暮れの給食室と雨のブール』にも「ーはもうわたしたちの間に淡い闇を運んでいた」とある。夢れ方・たそがれ・薄暮・晩方・Q日暮れ 灯ともし頃・夕・夕方・夕刻・夕べ・夕間暮れ・宵・宵の口 ゆうけい【夕景】夕方の景色の意で文章に用いられる古風で 趣のある漢語。〈山村の—〉〈春の—〉単に「夕暮れ」の意 を表す用法はさらに古めかしい。夕景色 ゆうげきしゅ【遊撃手】野球で二塁と三塁の間を守る内野手 をさす漢語。主として書きことばで使う。口頭ではふつう 「ショート」と言い、まれに「ショートストップ」という語 を用いる。〈期待の大型—〉、ひショート ゆうげしき【夕景色】夕方の景色の意で、改まった会話や文 章に用いられる趣のある和風表現。ゆなびた町のーをカ メラに収める)丸谷才一の『横しぐれ』に「亡者である山 頭火の後ろ姿が一のなかへ消えてゆくのを見送る、生きて いる山頭火……これも後ろ姿」とある。夕景 ゆうこう【友好】仲間として親しくつきあう意で、やや改ま った会話や文章に用いられる漢語。「を深める」「関係 を維持する)夢懇親・Q親善・親睦 ゆうこう【有効】効果がある意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈一期間〉〈一な手段〉〈一に利用する〉田山花袋 の『東京の三十年』に「とにかく、その金をーに使おう」と ある。「無効」と対立。専有力 ゆうごう【融合】複数の物質が溶けて一つになる意で、学術 的な会話や文章に用いられる専門的な漢語。「核」〈金属 がーする〉比喩的に「両文化の」のように抽象的な意 味でも使う。化合・結合・合成・Q混合・結びつき ゆうこく【夕刻】「夕方」の意で、改まった会話や文章に用い るやや硬い感じの漢語。〈本日のーに到着する予定〉〈ーま <1087> でには仕上げる)へ前に降りだす)三島由紀夫の潮 騒』に「その日のちかく(略)なまこをつ手土産にして訪 ねて来た」とある。会話でも盛んに使う「夕方」より文章語 的で改まりを感じさせるため、日常会話で用いると取り澄 ました感じに響く。暮れ方・たそがれ・薄暮・晩方・日暮れ・灯と もし頃・タ・Q夕方・夕暮れ・タベ・夕間暮れ・宵・宵の口 ゆうごはん【タ御飯】夕方以降にとる食事をさして、会話や 軽い文章に使われる、少し丁寧な日常語。へーのおかず) ディナー・Q晩御飯・晩餐・晩飯・夕食・タはん・タめし ゆうし【勇姿】人間の勇ましい姿の意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈馬上のーを仰ぐ〉〈選手団がーを現 す〉き雄姿 ゆうし【雄姿】立派な堂々たる姿の意で、主として文章に用 いられる硬い漢語。〈富士がーを見せる〉の「勇姿」と違い、 動かないものにも使う。勇姿 ゆうしき【有識】広く知識のある意で主に文章に用いられる 漢語。〈ー者〉〈ーの人〉ひ学識・博学・Q博識・物知り ゆうしゅう【憂愁】憂いと悲しみの情をさし、主として文章 に用いられる漢語。「一の色が浮かぶ」ぐ深いーに閉ざされ る)日野啓三の『西湖幻幻』に「異郷の湖の岸に茫々と竹 んでいる私自身も、世界という無限の書物の、任意の一行 であることを、かすかなーとともに祝福したのだった」と あり、辻邦生の『ある告別』に「その典雅な柱の残る廃墟 は、いかにも古代的なーを感じさせた」とある。専哀感・Q哀 愁・憂い・愁い・寂しい・寂寞 物悲しい ゆうしゅつ【湧(涌)出】「湧き出る」意で文章中に用いられる ゆうせい 硬い漢語。石油の量〈温泉が—する〉比喩的拡大用 法は少ない。勇湧き出す・湧き立つ・湧き出る ゆうしょく【夕食】夕方から晩にかけての原則として三回目 の食事の意で、やや改まった会話や文章に用いられる表現。 〈一会〉〈ーを共にする〉〈ーに招く〉湯桶読みながら 「朝食」「昼食」に対応するレベルの語。ふディナー・晚御飯・ 晩餐・晩飯・夕御飯・Q夕はん・夕めし ゆうじん友人友達の意で、改また会話や文章に用い られる硬い漢語。くようやくができる)への紹介で知 る)へとして親しく交際する)の友達のような気楽な 感じが薄い。森田たまの『もめん随筆』に「男のーは西洋の お酒のように、月日がたてばたつ程まったりとした味の出 てくるものである」とある。友・Q友達・仲間 ゆうせい【遊星】「惑星」の意で会話にも文章にも使われた古 風な漢語。〈太陽系の—の一つ〉も惑星 ゆうせい【優生】優秀な遺伝子を次代に伝えようとする意で、 主に文章に用いられる生物学上の専門漢語。〈学〉〈保 護法〉優性 ゆうせい【優性】他を押さえて子に現れる遺伝形質の意で、 主に文章に用いられる生物学上の専門的な漢語。〈—遺伝〉 ひ優生 ゆうせい【優勢】相手側より勢いや形勢などが優る意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈ーを保つ〉〈戦況は味方が ーだ〉〈ーに試合を進める〉尾崎一雄の『虫のいろいろ』 に「私の病気も、一進一退というのが、どうやら、進の方が ーらしく」とある。「劣勢」と対立。刂有利 <1088> ゆうぜん ゆうぜん【悠然】周囲の動きに構わずゆったりとしている意 で、改まった会話や文章に用いられる、やや硬い感じの漢 語。〈ーと構える〉〈ーと見送る〉夏目漱石の『吾輩は猫 である』に「主人がもし後架から四隣に響く大音を揚げて どなりつければ敵はあわてるけしきもなくーと根拠地へ引 きあげる」とある。専泰然・沈着・平気・平気の平左・平静・平然・Q 悠々・悠揚・冷静 ゆうぞら【夕空】晴れた日の夕方の薄赤くなった空をさし、 主として文章に用いられる、やや古風で詩的な和語。赤み がかったー〉〈晴れたー〉雨空や曇天より晴れた空を連想 させやすい。谷崎潤一郎は『細雪』で、花見行の最後のクラ イマックスをなす平安神宮の紅しだれ観賞を「ーにひろが っている紅の雲を仰ぎ見る」と表現した。一面の桜花を 「紅の雲」に見立てる伝統的な隠喩表現に、この「夕空」と いう優雅な響きが働いている。 うだち【タ立】夏の夕方に激しく降る局地的な雨をさす和 語で、くだけた会話から改まった文章まで幅広く使える日 常語。〈夏の—〉〈途中で—に遭う〉川端康成の『美しさ と哀しみと』に「京都は夕方、流れるような—で、心配しま したわ」とある。「立つ」という語構成要素の原義である、 風や波が起つという意味合いが影響して、はげしい雨を連 想させる。そのため、夕方に弱い雨の降った場合には使い にくく、もし使えば誤用に近い感じがある。昔から「馬の 背を分ける」と形容されてきた、このような局地的なはげ しい雨は、積乱雲の発達する夏の夕方に降りやすく、「夕 立」は夏の季語となっている。夏以外の夕刻に一時的には げしい雨が降った際にこの語を使うと誤用になるほど季節 がきびしく制限されているわけではないが、真っ先に夏を 連想させ、典型的な夕立の強烈で豪快なイメージがこの語 の語感として働く。ひ驟雨・Q通り雨・むらさめ ゆうとう【遊蕩】飲む・打つ・買うにうつつを抜かす意で、改 まった会話や文章に用いられる古風な漢語。〈一児〉「三 昧の暮らし〉〈一の限りを尽くす〉男性に用いる。語構成 要素「遊」の連想からさほど悪質な感じはない。「放蕩」や 「淫蕩」と同様、酒色に溺れる意であるが、「放蕩」より若干 深入りした感じで、「淫蕩」よりマイナスイメージは少な い。児湯道楽②・放蕩 ゆうどう【誘導】ある方向へ誘って導く意で、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈車を—する〉〈—尋問〉 〈客を非常出口に—する〉安部公房の『他人の顔』に「そ んな気を起こさせたのは、もとはと言えば、ぼくの意識的 なーのせいだった」とある。ひいざなう・誘う ゆうばえ【夕映え】夕日の光を受けて美しく照り輝く意で、 主に文章中に用いられる優雅な雰囲気の和語。〈一の雲〉 徳冨蘆花の『不如帰』に「赤城の峰々、入日を浴びて花やか にーすれば」とある。「一の空」のように、俗に夕焼けその ものをさすこともある。残光・残照・Q夕焼け ゆうはん【夕飯】「夕食」の意で、会話にも文章にも使われる 日常語。「の支度で忙しい朝食の「あさはん」より一 般的によく使う。ぴディナー・晩御飯・晩餐はん・晩飯・タ御飯・Qタ 食・タめし ゆうひ【タ日】夕方の太陽(の光)をさし、くだけた会話から <1089> 硬い文章まで幅広く使われる日常生活の和語。〈ーが沈む〉 〈ーを浴びてまぶしく光る〉〈ーに映える山並み〉火野葦 平の『麦と兵隊』に「ーが麦畑の上に赤い玉になって落ちて 行く」とある。「夕日」という通常の表記ではまったくの日 常語だが、「夕陽」と書くと詩的な雰囲気がきざす。ひQ入 り日・斜陽・夕陽・西日・落日・落陽 ゆうび【優美】上品で優しい美しさをさし、改まった会話や 文章に用いられる漢語。「な装飾」へに着こなす)島 崎藤村の「桜の実の熟する時」に「な精神生活を送った人 達の生涯」とある。みやびやか・Q優雅 ゆうびんうけ【郵便受け】配達される郵便物を入れるために 各家庭の入り口に設ける受け箱をさし、会話にも文章にも 使われる日常語。〈門のーに新聞を入れる〉Qポスト・郵便 箱 ゆうびんはいたつふ【郵便配達夫】「郵便集配人」を意味する 古風な漢語。「夫」のつく語は肉体労働者に対する職業差別 の意識が感じられるとして現在はほとんど用いられない。 木山捷平の『大陸の細道』に「死んで一片の白骨となっ て、小包紐でしばられ、未知のーの手で汽車に積まれたり」 とある。差別意識を避けて「郵便配達員」ということもあ るが、日常会話では「郵便配達」「郵便屋さん」などとする のがふつう。 ゆうびんばこ【郵便箱】発送する郵便物を投函するために 道路の各所に設けてある赤い箱をさして、会話にも文章に も使われる古めかしい表現。〈街角のーに手紙を投函する〉 現在では「ポスト」が普通。Qポスト・郵便受け ゆうへい ゆうべ【タペ】夕方から晩までをさし、主として文学的な文 章に用いる、古風で詩的な感じの和語。へーの祈りへ暮れ なずむ春のー〉論語に「朝あに道を聞かばーに死すとも 可なり」とある。夏目漱石が『倫敦塔』で「霜の朝あし、雪の ー、雨の日、風の夜を何遍となく鳴らした鐘は今いずこへ 行ったものやら」と、二つずつのセットを繰り返したのも同 様で、「タペ」は「朝」と対になる概念である。「軽音楽の ー」のように、晩に行われる催しをさす場合もある。単に 「タ」と書くこともある。庄野潤三に「タペの雲」と題する 小説がある。単れ方・たそがれ・薄暮・晩方・日暮れ・灯ともし頃・ Qタ・タ方・夕暮れ・夕刻・昨夜・夕間暮れ・宵・宵の口 ゆうべ【昨夜】きのうの夜の意で、主に会話で使われる日常 の和語。への会合)へは一睡もできなかった)福原麟 太郎の気を紛らされること」に「のことを思い思い顔を 洗いに下りるのである。そうしての決心のとおり学校を 休むかな」とある。文章中では「サクヤ」と読まれるので仮 名書きが無難。ひタべ ゆうへい【幽閉】当人の意志を無視して隔離した場所などに 閉じ込め、世間との連絡を断ち切る意で、改まった会話や文 章に用いられる古風な漢語。〈一の身〉(岩窟に—される) のその人間の社会に対する影響力を阻止する目的で行う雰 囲気があるため、政治力や組織力を持つ人物という連想が 働きやすく、当然長期間にわたって行動の自由を奪うケー スが多くなる。尾崎一雄は『虫のいろいろ』の中で、まず 「窓の一枚の硝子戸の間に、一匹の蜘蛛が閉じ込められてい るのを発見した」と「閉じ込める」という動詞を使ったあ <1090> ゆうぼう と「二枚の硝子板が重なることによって、—されたのだ」 と「幽閉」と換言して事情説明を続ける。「発見」とともに この語の時代がかった大仰な感じが滑稽に響く。通常は人 間の場合に限られる。Q監禁・拘束・束縛・閉じ込める・軟禁 ゆうぼう【有望】将来に期待が持てる意で、会話にも文章に も使われる日常の漢語。〈前途ーな青年〉へーな若手選手〉 の「一株」「将来ーな会社」のように人間以外にも使われ る。夢末頼もしい・Q有為ゆう ゆうほどう【遊歩道】散歩に適するように作った道路をさし、 会話でも文章でも使われる漢語。〈土手の上にーができる〉 の「散歩道」や「散策路」の場合は自然そのままということ も少なくないが、これは車を通さないなど人工的に整備し た感じが強い。ひ散策路・Q散歩道・プロムナード ゆうまぐれ夕間暮れ夕暮れの意で、美文調の文章に用 いられる、古めかしく雅語に近い和語。〈秋の山里の—〉 「まぐれ」は「目暗」の意という。単れ方・たそがれ・薄暮・晩 方・日暮れ・灯ともし頃・夕・夕方・Q夕暮れ・夕刻・夕べ・宵・宵の口 ゆうめい【有名】世の中にその名がよく知られている意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な漢語。〈大学〉へな店〉へな選手〉へ一躍にな る)夏目漱石の『吾輩は猫である』に「吾輩は新年来多少 ーになったので、猫ながら一寸鼻が高く感ぜらるのは難 有がい」とある。「な事件」「けちでーだ」のように、マ イナス評価の場合にも使う。「著名」や「名高い」以上に世 間一般に名が知られている感じがある。単高名・Q著名・名高 い・雷名 ゆうめいじん【有名人】広く世間に名前をよく知られている 人の意で、会話にも文章にもよく使われる日常の漢語。へー の記者会見〉へーを追いかけまわす〉へーのサインを求めて ファンが殺到する〉へーの出入りする名店〉へーのスキャン ダル〉の一般には「著名人」よりさらに有名で、テレビなど を通じて名前とともに顔も知られている印象がある。芸能 界やスポーツ界のスターなどが連想されやすく、皇室関係 者や一般の学者などは意識に上りにくい。大泥棒や凶悪犯 もテレビや新聞に連日報道されて脚光を浴び、突如有名に なるが、「一の仲間入り」とするには若干抵抗があり、「有 名な人」がすべて「有名人」であるとは限らない。ひQ著名 人・名士 ゆうめし【夕飯】「夕食」の意で、主にくだけた会話や軽い文 章に主として男性の使う、ぞんざいでくつろいだ感じの和 語。〈一時〉〈一を食う〉古くは今よりぞんざいな感じが 薄かった。ふディナー・晩御飯・晩餐・Q晩飯・夕御飯・夕食・タは ん 工モア緊張をやわらげる上品な笑い、特に、笑いと涙が 背中合わせになった人間味あふれるしみじみとしたおかし みをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 目常の基本的な外来語。〈小説〉〈のある人〉〈を解 する〉〈たっぷりに話す〉②小津安二郎監督の最後の映画 『秋刀魚の味』に、早く妻を亡くした父親(笠智衆)が娘の結 婚披露宴のあとモニング姿のままなじみのパーのドアを 押すと、マダム(岸田今日子)が「今日はどちらのお帰り お葬式ですか」とたわむれ半分の軽い調子で声をかけ、 <1091> 「ウーム、ま、そんなもんだよ」と答える場面がある。娘の 新しい門出は同時に親との離別を意味し、一方の幸福感は 他方の喪失感とともに実現するから、婚礼と葬式という慶 弔の二大行事は礼服以外にも心の奥で通い合う。一瞬ジョ ークに見えるこの応答はやがて物悲しさを湛だえたしみじみ としたおかしみへと深まりを見せる。ヒューマーと呼んで いい典型的なエーモアの好例。ヒーマーとエスプリ・機知・機 転・頓智・Qヒューマー・ユーモラス ユーモラスユーモアのある意で、会話にも文章にも使われ る外来語。「なしぐさ」「な話に仕立てる」「コミカ ル」より複雑で人間味や深みのある笑いにつながりやすい。 匕可笑しい①・傑作②・滑稽・コミカル・剽軽 ひとう なん・Qユーモア ゆうもん【憂悶】憂え悶える意で文章に用いられる硬い漢 語。「人知れぬーを抱える〉への情耐えがたく〉への情 遣るすべなし」の一時的な場合もある「苦悶」や「煩悶 に比べ、解決に長い時間がかかる感じが強い。太宰治の 『富嶽百景』に「となりの御隠居は、胸に深いーでもあるの か、他の遊覧客とちがって、富士には一瞥も与えず」とあ る。刂懊悩思い悩む・思い煩う・苦痛・苦悩・苦悶・苦しみ・悩み・ 悩む・Q煩悶・悶える ゆうやけ【夕焼け】日没の直前に西の空が赤くなる現象をさ し、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる和語。 〈—雲〉〈西の空が—で真っ赤に染まる〉梅崎春生の『桜 島』に「空は晴れ上って、朱を流したような—であった」と ある。三木露風の「—小やけの赤とんぼ」や中村雨紅の「— 小焼で日が暮れて」という唱歌をとおして多くの日本人に ゆうり 懐かしいイメージを呼び起こす。残光・残照・Q夕映え ゆうやみ【夕闇】日が沈んで月が上るまでの闇をさし、主に 文章に用いられる、やや詩的な和語。〈公園に—が迫る〉 「に紛れる〉小川国夫の『施療病室』に「が彼らの足 もとからわずかに立ち籠めて来た」とある。冫宵闇 ゆうゆう【悠悠】ゆったりと落ち着いている意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈自適〉へと暮らす〉へと煙 草を吸う》井上靖の『あすなろ物語』に「動作はー迫らぬ 緩慢さを持し、口のきき方も極めて鷹揚であった」とある。 「間に合う」のように、余裕を持っての意でも、「たる 時の流れ」「たる大地」のように、時間・空間の遠く遥か な意でも用いられる。泰然・沈着・平気・平気の平左・平静・平 然・Q悠然・悠揚・冷静 沙うよ【猶予】すぐに行うべき事柄の決定・実行を引き延ばす 意で、改まった会話や文章に用いられる、いくらか専門的な 漢語。〈刑の執行を—する〉〈もはや一刻の—もならぬ〉 Q延期・余裕 ゆうよう【悠揚】態度などがこせつかずゆったりとしている 様子をさし、改まった会話や文章に用いられるやや古風な 漢語。〈—迫らぬ態度〉森敦の『月山』に「臥した牛の背 のようにーとして空に曳くながい稜線」とある。り悠然・ 悠々 ゆうり【有利】ある側にとって都合がよく得になる関係をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〜な条件で契約を結 ぶ〜〜〜〜〜〜〜 <1092> ゆうりょく と対立。 優勢 ゆうりよく【有力】勢力・権力・効力・可能性などが大きい意 で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ー者〉 〈ー候補〉〈ーな手がかり〉〈ーな証拠〉〈その見方がーだ〉 福永武彦の『草の花』に「様子を見た方がいいという意見 がーだった」とある。ひ有効 ゆうれい【幽霊】死者が成仏できずにこの世に姿を現すとさ れる現象をさして、くだけた会話から硬い文章まで幅広く 使われる漢語。〈星敷〉へが出る〉への正体見たり枯 れ尾花〉谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に「われわれの空想に は常に漆黒の闇があるが、彼等西洋人)はーをさえガラス のように明るくする」とある。昔から足のない姿にほかし て描かれた。お化け・化け物・亡霊・妖怪 ゆうわ【宥和】相手の敵対的態度を大目に見て仲良くする意 で、主に文章に用いられる硬い漢語。〈政策を採る〉乃融 和 ゆうわ【融和】打ち解け合い仲良くするの意で、改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈周囲にーする〉〈両国のーを 図る〉専宥和 ゆうわく【誘惑】相手の心を惑わせて悪いことに誘い込む意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーに乗る〉〈ーに負 ける〉〈甘い餌で女をーする〉②川端康成の『千羽鶴』に 「夫人はーするつもりはなかったろうし、菊治もーされたお ぼえはなかった」とある。ひQかどわかす・誘拐 ゆえつ【愉悦】心から楽しみ喜ぶ意で、文章中に用いられる 古風で硬い漢語。〈ーの情〉へーを覚える〉へーにひたる 三浦哲郎の『忍ぶ川』に「はじめて味わうーを想い」とあ る。訳歓喜・Q喜悦・欣喜雀躍・随喜・法悦・喜び ゆか床建物の内部で地面より上げて水平に板などを張り 渡した場所をさし、くだけた会話から文章まで広く使われ る日常の和語。〈|暖房〉〈|に座り込む〉〈|にじかに置 く〉〈|が抜ける〉漢字表記は「とこ」と紛らわしい。 床板 ゆかい【愉快】楽しく気分のよい意で、会話にも文章にも使 われる漢語。〈一な話〉〈一な人〉〈一千万〉尾崎一雄の 『擬態』に「一、も少し飲もう!」とある。高田保の『河 童ひょうろん』には「大臣の権威が画伯の声望に及ばなくな ったのはーである」といった痛快に近い例もある。「不愉 快」と対立。Q嬉しい・楽しい・喜ばしい ゆかいた床板床ゆとして張ってある板をさし、会話にも文 章にも使われる和語。〈ーを張る〉へーを踏み抜くへーを 剝がす夏目漱石の『坊ちゃん』に「二階が落っこちる 程どん、どん、どんと拍子を取ってーを踏みならす音がし た」とある。ゆか ゆがく【湯掻く】あくを抜いたりやわらかくしたりするため に野菜などを熱湯に通したり浸したりする意で、会話にも 文章にも使われる日常の和語。ぼうれん草をー)堅く湯 がくことを専門家は「あおる」と言って区別するという。 うでる・ゆでる・Q湯引く ゆかした【床下】家屋の床の下の空間をさして、会話にも文 章にも使われる和語。〈ー浸水〉〈ー収納庫〉〈ーまで水に 浸っかる〉〈ーに隠す〉ひ縁の下 <1093> ゆがむ【歪む】曲がったりねじれたりして本来の形から変形 する意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。「線が 」〈顔が」〈画面が」②正木不如丘は『ゆがめた顔』 で、正円も横から見れば楕円がに見えるとし、「美人も横か ら見れば、ー・んだ顔にしか見えない」と展開する。「性格 がー」のように、本来の素直さがなくなってひねくれる意を 表す比喻的な用法もある。漢字表記は「ひずむ」と区別が つきにくい。ひいびつ・ひずむ ゆかり【縁/所(由)縁】何らかのつながりのある意で、改ま った会話や文章に用いられる、古風な趣を感じさせる和語。 〈巨匠—の品々〉(この作家—の土地〉(縁にも—もない人) 福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「知名人にラムと のーを書いて貰った」とある。ひえにし・Q縁①・関係①・関連・ つながり・連関 ゆき【雪】大気中の水蒸気が凍ってできた結晶が地上に降る 現象やそのもの自体をさし、くだけた会話から硬い文章ま で使われる和語。〈ーが降る〉(今夜はーになる)幸田文 の『蜜柑の花まで』に「ーが降るからこそ湯気の鍋よりむし ろ潔く青い野菜などが膳へつけたかった」とある。ひかざは な ゆき【行(往)き】目的地に向かう間やその道の意で、会話に も文章にも使われる日常の和語。〈東京—の列車〉への切 符〉へはバスにする〉へに立ち寄る〉独立して使う場 合は往復を前提としている。日常会話では「いき」と発音 する例が多く、「ゆき」の形は古風な響きがある。刂往路 ゆきおろし【雪下(降)ろし】星根に降り積もった雪を崩して ゆきずり 下に落とし、荷重を減らすことをさし、会話にも文章にも 使われる和語。〈屋根のーをする〉Q除雪・雪播き ゆきかえり【行き帰り】「往復」に近い意味で、会話や硬くな い文章に使われる和語。〈ーの交通費〉〈ーに要する時間〉 〈ー立ちっ放しで疲れた〉②一つの行為としてとらえる「往 復」に比べ、「行きと帰り」「行きも帰りも」というふうに 往路と復路を別々に意識する傾向がある。乃往復 ゆきかき【雪掻き】路面などに降り積もった雪を掻きのける 意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。「門の前のー をする」と除雪・Q雪下ろし ゆきがた【行き方】「ゆくえ」の意で、会話にも文章にもまれ に使われる古めかしい和語。へー知れずになる)今は「ー 知れず」の形以外にほとんど使わない。見行き先・Q行方 ゆきさき【行き先】移動する目的地をさして、会話にも文章 にも使われる日常の和語。〈ーを告げずに出かける〉へーを 確かめずに電車に飛び乗る〉「行く先」に比べて到着予定 の場所の意識が強いので、「明日ーから電話を入れる」のよ うにも言える。ひゆきがた・行方・Q行く先 ゆきずり【行きずり】たまたま通りかかったり擦れ違ったり する意で、主として文章中に用いられる、やや古風で情緒 的な和語。〈ーに見た光景〉〈旅先でのーの恋〉〈所詮はー の人に過ぎない〉岩本素白の『街の灯』に「あの時ーに見 た、夏の夜の入浴を楽しんでいたらしい町の人達も、果し て無事に彼の劫火を免れ得たかどうかは分らない」とある。 頬語の中で最も偶然性が強く、二度と出会わないかもしれ <1094> ゆきだおれ ないという気持ちから感傷的な余韻を響かせ、「の恋」の ように、「かりそめの」という意味合いを帯びる。通りが かり・通りがけ・Q通りすがり ゆきだおれ【行き倒れ】旅先などで寒さ疲れ・飢え・病などに より道端に倒れて動けなくなる意、また、そういう人をさ して、会話やさほど硬くない文章に使われる、やや古風な 和語。〈山中でーになる〉へーを担ぎ込む〉へーの人を助け る)ですでに死んでいるのを発見されるケースも少なくな い。「いきだおれ」ともいう。ひQ行路病者野垂れ死に ゆきちがい【行き違い】双方の意志がうまく通じ合わない意 で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈話のーが 起こる〉〈連絡のーで思わぬ結果になる〉②本来は、「途中 でーになって相手と会えなかった」のように、出会うはずな のに擦れ違いになったり、「手紙がーになる」のように、タ イミングが悪くて機能しなかったりする意で、それが抽象 化した用法。そのため、単にうまく合わないだけで、「食い 違い」のような矛盾感は伴わない。尾崎一雄の『玄関風呂』 は、「うちでは玄関で風呂をたてているよ」と言ったら井伏 鱒二は目を丸くして「君とこの玄関は、随分たてつけがい いんだね」と言うので、今度はこっちが目を丸くした、とい う話で結ばれる。ひQ食い違い・ずれ・齟鯨 ゆきわたる【行き渡る】すべての人や場所に届く意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈資料が全員に—〉〈指示が 隅々まで—〉広がる・Q広まる・普及・流布 ゆく【行(往)く】今いる場所から移動する意で、会話にも文 章にも広く使われる日常の基本的な和語。く遠くく電 車でー〈海上をー〉〈足早にー〉幸田文の『おとうと』に 「歯のへった歩きにくい足駄で、駈けるように砂利道をー」 とある。「大和路をー」「一年来る年」のような古風な文学 的表現で「いく」と換言すると違和感が出る。「春」も同 様で、この場合は「逝く」とも書く。「来る」と対立。 く・Q赴く・出向く・参る①・逝く く【逝く】改まった文章表現で「死ぬ」意を美化する感じ で用いられる和語の文学的でやや古風な間接表現。会話で 用いると通じにくく、通じても気障に響く。〈巨匠—〉 死を忌む気持ちから、死というものを、どこかへ行ってしま ってこの世にいなくなるという意味にとらえ直した婉曲 表現。永井荷風の『瀅東綺譚』に「花の散るがごとく、葉の 落つるがごとく、わたくしには親しかったかの人々は一人 一人相ついで逝ってしまった」とある。要するに「行く」と いう意味だが、そう書くと通じにくいので「逝く」と書くの が通例。この語の終止・連体形を「いく」と発音すると古風 な雰囲気とイメージが合わず、雅語的な響きが台無しにな るため、「ゆく」と読むのがふさわしい。勇敢え無くなる・上 がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・ いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・ 帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・ 他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる・儚くなる・不帰の 客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷がる・脈が上が る・空しくなる・藻肩となる・臨死・臨終 ゆくえ【行方】進んで行く方向の意で、会話にも文章にも使 われる和語。へーをくらます〉へーを捜す〉へーが知れない <1095> 「勝敗のーを占う」のように、時間的な先や結果をさすこともある。Qゆきがた・行き先・行く先 ゆくえふめい【行方不明】どこに行ったかわからなくなる意 で、会話にも文章にも使われる漢語表現。へー者に関する情 報へ奥地に踏み込んだままーになる)当人の意思が働く 場合のある「失跡」「失踪」と違い、この語は行為よりもそ のような現象をさす。凡家出・失跡・Q失踪・出奔・蒸発・逐電・夜 逃げ ゆくさき【行く先】移動する方向や予定地を漠然とさし、会 話にも文章にも使われる和語。へーを尋ねる〉へーをはっき り決めずにともかく出発する)②「ーにいろいろ困難が待 ち構えている」とも言えるように、「行き先」に比べ、目的 地までの道程を含めて意識している。そのため、「子供た ちのこれからのーが楽しみだ」のように時間的な将来を漠 然とさすこともある。ひゆきがた・Q行き先・行方 ゆくすえ【行く末】ずっと先の将来をさし、会話にも文章に も使われる、いくぶん古風なやわらかい感じの和語。へ来 し方ー〉〈子供のーが気になる〉〈国のーが案じられる〉回 宮本輝の『塩川』に「出遭うかどうか判らぬ一生に一遍の光 景に、千代はこれからのーをかけた」とある。「案じる」 「気にかかる」「心配」「不安」などと結びつき、暗い展望を 語る例が多い。ひ以後・今後・Q先行き・将来・未来 ゆげ【湯気】湯などの表面から立ち昇る蒸気をさし、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。へまだ ーが立っている〉へーが立ち込める〉②梶井基次郎の『泥 渟』に「ーが屏風のように立ち騰っていて匂いが鼻を撲っ ゆすり た」とある。巻気・水蒸気・Q湯煙 ゆけむり【湯煙】温泉や風呂から煙のように立ち昇る湯気を さして、会話にも文章にも使われる、やや美化した感じの 和語。「が立つ」「の宿」蒸気・水蒸気・Q湯気 ゆさぶる【揺さ振る】揺り動かして動揺させる意で、会話に も文章にも使われる和語。〈木を—〉〈肩を—〉〈心を—〉 瀧井孝作の『無限抱擁』に「樹木か何か!られているよう な」自分の心を訴える(略)それが恋だろうね」とある。 す振る・揺する ゆさん【遊山】山に出かけて行って遊ぶ意で、今では主に文 章に用いられる古めかしい漢語。〈物見—〉〈—好き〉〈— に出かける〉現在、単独ではめったに使われない。本来の 意味から離れて、単によその土地に遊びに行く意に広がる と「行楽」と同義になるが、語感がいかにも古い。行楽 ゆすぐ【濯ぐ】水を入れて揺り動かしてざっと洗う意で、会 話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈洗濯物を—〉 〈口を—〉「すすぐ」より会話的で、恥のような抽象的な 対象には用いず、もっぱら具体物に用いる。巻洗う①・Qすす ぐ・漱すぐ ゆすぶる【揺す振る】揺り動かす意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈枝を—〉森瑤子の『情事』に「魂を—・られ るほど美しかった、海に落ちていく夕日」とあるように、気 持ちを動かす意の比喻的用法もある。Q揺さぶる・揺する ゆすり【強請】人の弱みや秘密に付け込んで脅し、無理やり 金品を奪う意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和 語。〈一九加り〉へのたね〉「恐喝」に比べ、脅す迫力が <1096> ゆする 弱い感じがある。 専奪す・恐喝 ゆする【揺する】揺り動かす意で、会話にも文章にも使われ る日常の和語。〆体を—〆〆木を—〆永井荷風の『深川の 唄』に「動いているものに乗って、身体を—・られるのが、 自分には一種の快感を起こさせる」とある。揺さぶる・揺す ぶる・強請ゆる ゆする【強請る】脅して金品をまきあげる意で、主に会話に 使われる俗っぽい和語。〈写真をネタに—〉〈会社を—〉 仮名書きの例も多く、「ユスる」のような表記も試みられ る。弔揺する ゆずる【譲る】自分のものや権利などを他に与える意で、く だけた会話から文章まで幅広く使われる和語。〈席を—〉 〈順番を—〉〈子供に—〉〈互いに—・らない〉の「品物を安 く—」のように「売る」意にも用いるが、その場合にも相手 の利益や希望を受け入れるようなニュアンスを伴う。夏目 漱石の『坊っちゃん』に「人間に信用程大切なものはありま せんよ。よしんば今一歩ー・って」とあるように、自分の考 えを控えて相手の考えを受け入れる場合にも用いる。ひQ 譲渡・譲与・贈与 ゆそう【輸送】大量の物資などをトラック・貨物列車・船舶な どで遠くへ運ぶ意で、会話にも文章にも使われる漢語。へー 船へへー手段へ車輛をーするへ海外にーするへ②人員 ー」のように人数が多ければ人間を運ぶ場合にも用いる。 積載量や移動距離が「運送」より大規模な場合に使う傾向が ある。ひQ運送・運搬・搬送 ゆたか(豊(裕)か)財産・資源・能力などが満ち溢れている意 で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。 〈な国〉〈な暮らし〉〈な家に生まれる〉〈資源が だ〉〈な才能に恵まれる〉川端康成の『眠れる美女』に 「ここに眠る娘にも、あの椿のようなーさはない」とある。 「豊富」や「潤沢」と違って、「心ーに生きる」「な気持ち になれる」のように精神的に満ち足りた感じにも使う。「馬 上ーに」のように悠々としている意や、「六尺ーな大男」の ように余裕のある意に使うことがあり、その用法には古風 な響きがある。ひQ潤沢・豊富 ゆだねる【委ねる】「まかせる」意で、非常に改まった会話や 硬い感じの文章に用いられる和語。〈人の手に—〉〈最終決 定は委員長に—〉〈流れに身を—〉⑩永井荷風の『澀東綺 譚』に「九州から来た人の経営に—・ねられた」とある。親 しい間での会話には用いず、「かぼちゃを買うのを夫に」 「ゴキブリ退治を妻に」といった日常生活の話題には通常 「任せる」を使う。レベルの合わない「委ねる」をあえて使 うことでアンパランスなおかしみをつくりだす笑いの技法 もある。単委任・Q任せる ゆだん【油断】たかをくくってつい注意を怠る意で、会話に も文章にも使われる日常の漢語。〈大敵〉へは禁物〉 へーも隙もない〉へちょっとのーが命取りになる〉里見弾 の『縁談窶ねっ』に「いいえさ、子供というやつァ、うっかり ーがならないッてことさ」とある。精神的な面に重点があ る。ひ手抜かり・不注意・無防備 ゆつぼ【湯壺】温泉などで湯を湛えておく所をさし、会話に も文章にも使われる、やや古風な和語。〈岩をあしらった露 <1097> 天風の—復目漱石の『坊っちゃん』に「十五畳のーを泳 ぎ巡」る場面が出る。大きな湯船の印象が強く、家庭用の 例は少ない。ひバスタブ・風呂桶・湯船・Q浴槽 ゆでる【茹でる】食品をお湯で煮る意として、くだけた会話 から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈卵を—〉 〈枝豆を—〉、Qうでる・湯がく・湯引く ゆどの【湯殿】「風呂場」の意で用いられる古めかしい和語。 へーの世話〉へーに人のけはいがする〉サトウハチローの 『おさらい横町』に「こっそりおーへ行ってお洗濯をした」 とあり、徳田秋声の『風呂桶』に「大工が張って行った、 の板敷を鋏で叩きこわしていた」とある。きわめて古風な 語感があり、暗く湯気が立ち込めているイメージもあり、 檜の風呂などが雰囲気にぴったり合う。照明の明るい総タ イル張りの浴室でシャワーを浴びるような場合にこの語を 用いるとイメージの衝突を起こす。パスルーム・風呂場・Q浴 室・浴場 ゆとり「余裕」に近い意で、会話にも文章にも使われるプラ スイメージの和語。〈数量に少しーがある〉へーのある設 計〉〈暮らしにーがある〉〈心にーを持つ〉②「座席にーが ある」はゆったりとしている意。「余裕」より感じのよい表 現。単余地・余裕 ユニフォームスポーツなどの団体、特にそれぞれのチーム で全員が試合で着る揃いの運動服をさし、会話にも文章に も使われる外来語。〈縦縞じまのー〉〈ーの背番号〉ひ制服 ゆびく【湯引く】さくか切り身の魚をさっと熱湯に通す意で、 会話にも文章にも使われるやや専門的な和語。〈鱧もをさっ とー〉湯引いたあとすぐに冷水にとる。刺身の作り方の 一つ。ふうでる・湯がく・ゆでる ゆびさき【指先】指の先やその働きをさし、会話にも文章に も使われる和語。へに垢がたまる〉へーで遠くを指す へーが器用だ》夢島与志雄の『理想の女』に「細いしなや かなーを、顔や頸筋へ蛇のようにのたくらせながら」とあ る。身手先① ゆぶね【湯船(槽)】入浴時に人が入るために湯を溜めておく 大きな箱型の器をさし、会話にも文章にも使われる和語。 へーにどっぷり浸っかる〉へーから湯が溢される〉風呂桶も その一種。ひバスタブ・風呂桶・湯壺・Q浴槽 ゆみ【弓】弦を張って矢をつがえて射る道具をさし、くだけ た会話から文章まで幅広く使われる和語。〈ーを引く〉へー を引きしぼる〉へーを携える〉⑬井伏鱒二の『無心状』に 「先生はーを持って、邸内にある弓場の方に行きながら」と あり、庄野潤三の『静物』には「(網を)ばしっと投げて川に 落ちる時に、ーのようにすぼまっていないといけない」とい う比喻表現例がある。昔は武器、現代では武道やスポーツ に使う。和弓だけでなく洋弓をも含む。弓術・弓道 ゆめ【夢】①睡眠中に頭の中で現実の経験のように映像を感じる精神現象をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な和語。〈怖いーを見る〉②夏目漱石の「坊っちゃん」に「うとうとしたら清のーを見た」とある。夢想②将来の実現を楽しみにする事柄の意で、会話にも文章にも使われる和語の比喻的表現。〈大きなーに向かって進む〉〈子供にーを託す〉〈ーがかなう〉〈ーを持ち続ける〉 <1098> ゆめうつっ 〈一も希望るない〉〈交響楽団の指揮をするのがーだ〉多 くは「期待」や「希望」よりも実現が難しい場合に使う。 願望・期待・Q希望・願い・願い事・ねぎこと・念願・望み ゆめうつつ【夢現】夢か現実かはっきりしない状態をきして、 会話にも文章にも使われる古風な和語。〈一の状態〉へに 聞く〉二葉亭四迷の『平凡』に「恍惚として暫く一の境を 迷っていると」とある。「夢心地」や「夢見心地」が夢のよ うな現実の意識をさすのに対し、この語は実際に夢である 可能性を否定しない。ひQ夢心地・夢見心地 ゆめごこち【夢心地】夢の中のように意識のはっきりしない 気持ちをさし、会話にも文章にも使われる和語。へーで話を 聞く夢うつつ・Q夢見心地 ゆめみごち【夢見心地】まるで夢を見ている時のようにう っとりとした気分をさし、会話にも文章にも使われる和語。 〈結婚してしばらくはーで過ごす〉の太宰治の『走れメロ ス』に「花嫁は、ーでうなずいた」とある。夢うつつ・Q夢 心地 ゆや【湯屋】「銭湯」の意で会話にも文章にも使われた古風な 和語。へーの番台に座る》現代の東京ではめったに耳にし ない。公衆浴場・Q銭湯・風呂屋 ゆらい【由来】物事の起源と来歴をさし、会話にも文章にも 使われる、やや古風な漢語。〈地名のーを調べる〉〈事のー がはっきりしない〉回変遷そのものを意味する「沿革」と違 い、どういう事情で生じたか、なぜそういう名になったかと いうふうに、何らかの謎を解き明かす雰囲気がある。马沿 革・Q由緒 ゆらぐ【揺らぐ】ゆっくり揺れ動く意で、やや改まった会話 や文章に用いられる、いくぶん古風な感じの和語。木の枝 が風にー〉〈土台がー〉〈決心がー〉〈権威がー〉②横光利一 の『頭ならびに腹』に「群衆の頭は、俄に卓上がいをめがけて 旋風のようにー・ぎ出した」とある。それまで安定していた ものが動き出す感じがあり、速く激しい揺れにはなどまた い。みQぐらつく・たゆたう・動揺・なびく・揺れる ゆりいす【揺り椅子】腰掛けて自分で揺り動かせる椅子をさ す「ロッキングチェア」の古風な呼び方。〈縁側の—に座っ てぼんやり庭を眺める〉小沼丹に「揺り椅子』という題の 小説があり、「何だかーを揺する度に、昔に戻る気がする」 という一文が出てくる。「ロッキングチェア」でも揺れ方は 同じだが、この語にはそういう錯覚を起こすほど懐かしい 響きがあるのだろう。ロッキングチェア ゆりかご【揺り籠/揺籃】赤ん坊を入れて揺り動かす籠をさ し、会話でも文章でも使われる、古風で懐かしい感じのす る和語。「を静かに揺する」の人の一生を象徴的に表す 「から墓場まで」ということばは、戦後イギリスの社会保 障制度の標語から出たものという。柳美里の自伝的な作品 『水辺のゆりかご』の末尾に、砂浜に埋もれて朽ち果てた乳 母車を見つけ、「ゆりかご」のつもりで揺すってみるシーン がある。ゆりかごの中にいた記憶のない「私」にとって、 「ゆりかご」ということばは恵まれた家庭の象徴であり、つ いにかなわなかった夢である。 ゆるい【緩い】引き締める力が弱くきつくない意で、くだけ た会話から文章まで幅広く使われる基本的な和語。〈帽子が <1099> ー〉〈ひもがー〉〈一規則〉〈坂〉〈便がー〉泉鏡花の 『歌行灯』に「真黒な外套の、痩せた身体に些ちと広過ぎるを ー・く着てーとある。「きついーと対立。刂緩やか ゆるがせ【忽せ】注意を集中せずに事を行う意で、改まった 会話や文章に用いられる古風な和語。「一字一句もーにし ない」〈日ごろの練習をーにはできない〉心を緩めること から。いい加減・Q疎をかちゃらんぼらん・ないがしろ・なおざ り ゆるす【許す】認める、許可するの意で、改まった会話から 硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。外出を ー〉〈気をー〉〈自他共にー〉〈事情がー・せば〉谷崎潤一 郎の『細雪』に「二人きりで会うようなことをー・してよい かどうか私には分らない」とある。「入学をー」のような用 法には上位者という意識がうかがわれる。夢赦す ゆるす【赦す】咎がめず放免する、容赦するの意で、会話や文 章に使われる和語。〈部下の失態を—〉〈相手の非礼を—〉 〈若気の至りとおー・しあれ〉の「許す」で代用することも多 く、小沼丹の『のんびりした話』にも「憶えていないなら仕 方が無いから許してやるが、君は酔ってひどく俺を攻撃し たのだぞ」とある。ひ許す ゆるむ【緩(弛)む】きつく張ったり締めたりしてあったもの が緩くなる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の和語。張り詰めた糸が」〈帯が」〈ねじ がー〉志賀直哉の『暗夜行路』に「宿の者に買わした下駄 は下まで降りると、すっかり鼻緒がー・んでしまった」とあ る。「たるむ」段階まで達しない場合も多い。「寒気かんがー」 ゆわえる 「スピードが」「結束が」「気が」のように、力が弱く なる意の比喻的用法も多い。Qたるむだれる ゆるやか【緩やか】緩くゆったりとした様子をさし、会話に も文章にも使われる和語。〈な流れ〉〈な坂〉〈に下 る〉永井龍男の『風ふたたび』に「うすく、オレンジがか った夕空に、紫や黄の火薬の煙が、な線を描くと、パステ ルでいたずら書きをしたような、不思議な美しさが、しば らく空に残った」とある。室生犀星の『杏っ子』の「時はあ ぶらの垂れるーさで過ぎた」の例のように時間的経過をさ すこともある。「ゆるい」がどちらかというとマイナスのイ メージなのに対し、この語はむしろプラスのイメージに使 う例が多い。ひ緩い ゆれる【揺れる】支点から振れ動いて安定を失う意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈船が—〉〈地面が—〉〈計画が—〉ぐらつく」 「揺らぐ」に比べ、細かい動きを規則的に何度も繰り返す感 じが強く、「当初の決定が—」は「決心が揺らぐ」「計画が ぐらつく」の場合より原案に戻る可能性も少なくないよう な感じがある。夏目漱石の『草枕』に「心は大浪にのる一枚 の板子のように—」とある。ぐらつく・振動・震動・たゆたう・ 動揺・なび・Q揺らぐ ゆわえる【結わえる】紐などで結ぶ意で、やや俗語じみた口 頭語。〈新聞紙を紐で—〉中勘助の『銀の匙』に「湯が乳 のへんでくびれあがって軽く糸でー・えたような感じ」とい う比喩表現が出る。「髪を結ぶ」場合は綺麗に仕上がる狙い がはっきりしているが、「結わえる」場合は乱れた髪を一つ <1100> ゆわかし にまとめる点が中心になる。そのように「結ぶ」ほど結果 の形が意識されず、また、「括ぶる」よりは紐状の道具が意 識にのぼる。ひ括る・Q結ぶ・ゆわく ゆわかし【湯沸かし】湯を沸かすための器具をさし、会話に も文章にも使われる和語。〜で湯を沸かす)鉄瓶はもち ろん、広くは湯沸かし機能付きの魔法瓶やガス湯沸かし器 あたりまで含まれそうだが、通常は「やかん」をさすことが 多い。鉄瓶・Qやかん ゆわかしき【湯沸かし器】ガスや電気で瞬間的に湯を沸かす 装置をさし、会話にも文章にも使われる表現。〈瞬間—〉 業務用の連想もある「ポイラー」に比べ、家庭用の小型の機 械を連想しやすい。俗に、すぐ怒る人を「瞬間—」という。 りボイラー ゆわく【結わく】「ゆわえる」意の、俗語的な口頭語。〈古本 をビニールの紐もでー〉俗っぽさの程度を除けば、「結わ える」とほぼ同じ語感。揺る・結ぶ・Qゆわえる よ【夜】日の入りから日の出までの間をさし、会話にも文章 にも使われる和語。〈闇〉へ着〉〈夏の〉へが更け る〉へが明ける〉へあのの出来事〉へを徹して議論す る〉仮名書きではわかりにくく、漢字表記は「夜」と区 別しにくい場合がある。夏目漱石の『坊っちゃん』に「は とうにあけて居る」とあるが、現在では多く一定の言いま わしの中で使い、それ以外の用法では概して古風に感じら れる。修飾語を伴わない単独の形ではあまり使わない。 「日」と対立。単深更・深夜・晩・真夜中・夜間・夜半・夜分・宵・夜中・ 夜更け・Q夜・よわ よあかし【夜明かし】「徹夜」の意で会話やさほど硬くない文 章に使われる、いくぷん古風な和語。〈推理小説を読みふけ ってとうとうーする〉へゆうべのーがたたって頭がぼうっと している〉ひ徹夜 よあけ【夜明け】日の出時分をさす一般的な日常の和語。へー が近い)へーが待ち切れない)へーとともに畑に出る)庄 野英二の『星の牧場』に「バラの花びらをすかしてみるよう なーの光」とある。「近代日本のー」のような比喻的用法も ある。単暁・Q明け方・曙・朝ぼらけ・朝まだき・しののめ・日の出・払 暁・未明・黎明が よい【良い】優れているという方向の広範な意味で、くだけ た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の最も基本的 <1101> な和語。〈頭が—〉〈成績が—〉〈品が—〉〈健康に—〉〈仲が—〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「だまって居れば—・かった」とある。会話では「いい」となることが多い。ただし、美人の意の「いい女」は通常「よい」とは言わない。「人」「ことをする」のように「善良」の意味では「善い」「天気が—」「人が—」「調子が—」「都合が—」のように「好ましい」の意味では「好い」「このー・き日」のように「めでたい」の意味では「佳い」などと書き分けることもあるが、多少とも古風な感じを与えやすい。 よい【宵】日没後から夜が更ける前までをさし、改まった会 話や文章に用いるやや古風な和語。〈闇〉〈の明星〉 へのうちは晴れているが、夜遅くなって天気が崩れる〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「から十二時過迄」とあるよ うに昔は日常一般の語だった。前後関係で優雅な雰囲気に もなる。「今宵」となるとつねに優雅な趣を漂わせる。「 に電話があった」などと会話で単独に使うことはめったに ないが、「のうち」「の口」などの形では会話にも用い る。夢暮れ方・たそがれ・薄暮・Q晩方・日暮れ・灯ともし頃・夜間・ タ・タ方・夕暮れ・夕刻・タベ・夕間暮れ・宵の口 よいしれる【酔い痴れる】酒に酔って頭が正常に働かなくな る意で、主に文章に用いられる古風な和語。〈美酒にー〉 「名曲に思わずー」のように、うっとりする意にも使う。 沈没②・泥酔・Q酩酊・酔い潰れる・酔う・酔っ払う よいつぶれる【酔い潰れる】酒を飲み過ぎて正体をなくし体 も思うように動かなくなる意で、会話にも文章にも使われ る和語。〈までしこたま飲む〉回福原麟太郎の『チャール よいん ズ・ラム伝』に「ジン酒と水とを求め、気が狂うまでー・れ、 あきれた奴だと、戸外へ放り出される」とある。込没②・泥 酔・酩酊・Q酔い痴れる・酔う・酔っ払う よいのくち【宵の口】日没後まだあまり経過していない時間 帯の意で、会話でも文章でも用いられる日常の和語。まだ ーだ〉(ーから泥酔している)「宵」のうちの最初の部分。 専募れ方・たそがれ・薄暮・晩方・日暮れ・灯ともし頃・タ・Qタ方・夕暮 れ・夕刻・タべ・夕間暮れ・宵 よいやみ【宵闇】宵になっても月の光がなく暗い意で、主に 文章に用いられる、古風でやや詩的な和語。へーが迫る へーに紛れる》特に、月の出の遅い陰暦の月の半ば過ぎを さすこともある。小川国夫の『里にしあれば』に「縁側だけ は、いつまでも屋内のーから取り残されていた」とある。 単夕闇 よいん【余韻】鐘などが鳴ったあとに残る響きをさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈一嫋々ぱき〉へ一を残す〉へ一 を響かせる音が鳴り終わる間際の微弱な音響、鳴り終 わった直後の残響、感覚主体側の心理的な反響意識から、 「熱狂のーが残る会場」「名作のーに浸る」といった、物事 の終わったあとまで残る余情のような感覚的・感情的な雰囲 気をさす比喻的な用法へとほとんど連続的に広がる。ま た、「余情」と同様、ことばによって直接表現されていない 言外の意味や、文学作品などの読後に感じるしみじみとし た味わいをも含める。川端康成の『千羽鶴』に「文子のその 言葉は、哀切な純潔のーを深めて来た」とある。残響・反 響・Q余情・余白 <1102> よう【酔う】酒類を飲んで心身の正常な状態が崩れたり、船 などの乗り物の揺れの影響で気分が悪くなったりする意で、 会話でも文章でも幅広く使われる日常の生活和語。酒に ー〉へいい気持ちにー〉〈乗り物にー〉〈雰囲気にー〉伊藤 整の『灯をめぐる虫』に「洪水の中に浮んで遠く流されてゆ く死骸のようにー・っている」とある。ふ沈没②・泥酔・酩酊。 ・酔いしれる・酔い潰れる・酔っ払う よう【用】処理する必要のある事柄をさし、会話やさほど硬 くない文章に使われる漢語。〈急ぎの—〉へーを言いつけ る〉へーがあって出掛ける〉へーを思い出す〉夏目漱石の 『坊っちゃん』に「何か御ーですか」とある。処所用・Q用件・ 用事 ようい【用意】次の事を想定してあれこれ気を配っておくことをさし、会話でも文章でも幅広く使われる日常生活の基本的な漢語。〈周到〉へができたら出発だ。〈必要なものを予想めーする〉〈雨具をーする〉〈小銭をーする〉へした原稿を読み上げる。②一葉亭四迷の『浮雲』に「いうべき事も予知てーして」とある。次の行動を円滑に行うことができるように万事を整えておくという意味合いで用い、「支度」や「準備」に比べ、そのときに必要になりそうなものを買いそろえておくことを含むニュアンスが強い。ひ支度・Q準備 ようい【容易】することがたやすい意で、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ーな方法〉〈ーに解決できる〉 〈誰にでもできるーな仕事〉芥川龍之介の『手巾』に「長 い夏の夕暮れは、いつまでも薄明りをただよわせて、ガラ ス戸をあけはなした広いヴェランダは、まだーに、暮れそ うなけはいもない」とある。「困難」と対立。「ならざる」 の形で、重大で解決困難という意味を表す用法は、古風で硬 い感じがある。専簡単・たやすい・平易・Q易しい・楽・楽ちん よういく【養育】養い育てる意で、やや改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈ー費を支払う〉《子供をーする》ひ育 てる・育む・扶養・Q養う よういん【要因】いくつかの原因が複合して生じた場合、そ のうちの主要な原因をさし、改まった会話や文章に用いら れるやや硬い感じの漢語。〈紛争のー〉〈故障のー〉〈学力 低下のー〉〈成人病増加のー〉〈ーを分析する〉〈ーを突き 止める〉ひ因子・原因・せい・要素 ようえん【妖艶】男を惑わすほどの女の妖しい美しさをさ し、主に文章に用いられる、いくぶん古風な漢語。へーな舞 い姿〉へーな笑みを浮かべる〉ひあだっぽい・婀娜な・色っぽい・ 艶っぽい・Qなまめかしい ようかい【妖怪】人の知恵では説明のつかない不思議な現象 としての化け物をさして、会話にも文章にも使われる古風 な漢語。〈一変化のたぐい〉〈一の棲み処〉志賀直哉 の『邦子』に「狐狸」でも」とある。お化け・Q化け物・亡霊・ 幽霊 ようかい【容喙】口出しの意味で主に文章に用いられる硬い 漢語。〈他人のーを許さない〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「校長の御考にある事だから、私のーする限ではないが」 とある。語源的には、くちばしを入れる意。Q口出し・ちょ っかい・手出し <1103> ようがし【洋菓子】西洋の菓子の意で、会話にも文章にも使 われる漢語。ヘシュークリームは代表的なの一つの明治 時代には「西洋菓子」と呼んだが、「西洋料理」を「洋食」 と呼ぶようになるのに伴って「洋菓子」と呼ぶようになった という。ケーキのほか、マドレーヌ・パウムクーヘンのよう な半生菓子や、クッキー・チョコレート菓子のような干菓子 も含まれる。ひQケーキ・生菓子・南菹菓子・洋生 ようき【容器】物を入れておくための器をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈適当なーがない〉〈別のーに移す〉 〈プラスチック製の密封ー〉皿などを連想しやすい「器」 に比べ、長時間入れて保存するものを連想しやすい。入れ 物・Q器・ケース①・箱 ようき【陽気】朗らかでにぎやかな様子をさし、くだけた会 話から文章まで幅広く使われる日常の漢語。〈一な性格〉 へーに騒ぐ②谷崎潤一郎の『細雪』に「あの姉さんの方は ーで近代的だけれども」とある。「いいーになる」のように 気候の意でも使う。単朗らか ようぎしゃ【容疑者】警察が犯罪の嫌疑をかけている起訴前 の人をさして、会話にも文章にも使われる漢語。〈殺人事件 のーが捕まる〉へーを全国に指名手配する〉「被疑者」の ような正式な感じがなく、日常よく使われる。乃被疑者 ようきゅう【要求】自分のほしい物や望む事柄を相手に求め る意で、会話から改まった文章まで幅広く使われる日常語 に近い漢語。〈撤回を—する〉〈ーをはねつける〉平林た い子の『施療室にて』に「ーは、昔から貧乏人の伝統の中を 針金のように貫いて来た」とある。「要望書」に比べ「書」 ようこ は相手にきつい感じを与え、親身になってそれに応えよう とする気持ちが起こりにくく、場合によっては喧嘩腰にな る。「要求」ということばの奥に、そうあるのが当然である と考える姿勢が見てとれるからである。単申請・請願・請求・要 請・要望 ようぐ【用具】一定のことをするのに役立つように出来てい る道具をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈筆記—〉 〈掃除—〉〈体育の—〉〈一の出し入れ〉専器具・機具・Q道具・ 用品 ようけん【用件】用事の意で、やや改まった会話や文章に用 いられる漢語。へおもむろにーを切り出すへーに入る へごーを承る)庄野潤三の『秋風と二人の男』に「はひ とつもなくて、ただ酒を飲みながら話をするだけ」とある。 「用事」に比べ、その内容の主旨を連想させやすい。夢所用・ 用・要件・Q用事 ようけん【要件】重要な案件、必要な条件の意で、主として 文章に用いられる硬い漢語。〈ーを先に扱う〉〈まずはーの みにて〉〈ーを充たす〉専用件 ようご【用語】一つの話や文章の中に使うそれぞれの単語の 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈学術〉へスポー ツー〉〈差別ー〉〈ーを統一する〉福原麟太郎の『チャール ズ・ラム伝』に「前世紀の詩的—の廻りくどさの皮肉」とあ る。ひ言語・語・語彙・言葉・Q単語 ようご【養護】保護し世話をするの意で、会話にも文章にも 一定の用語中に使われる漢語。〈学校〉〈施設〉〈教 論〉ひ擁護 <1104> ようご ようご【擁護】侵害したり危害を加えたりするものから守っ てやる意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの 漢語。〈人権を—する〉〈自由貿易を—する〉応護・Q保 護・養護 ようこう【要項】必要事項の意で、会話にも文章にも使われ る企業や学校の雰囲気を感じさせる漢語。〈募集—〉へ入試 ー〉〈講義—〉へーを取り寄せる〉ひ要網 ようこう【要綱】重要な事柄の意で、主として文章に用いられるやや専門的な硬い漢語。〈法律学—〉〈政策—がほぼ固まる〉専要項 ようこう【洋行】欧米に旅行または留学する意で、会話にも 文章にも使われる古めかしい漢語。〈帰りの紳士〉へーの 経験が買われる〉外遊 ようこう【陽光】「日光」の意で、主に文章中に用いられる、 いくらか趣のある漢語。〈南国の—〉〈—が降りそそぐ〉 谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に「ようようそこまで辿りついた 庭のーは、もはや物を照らし出す力もなくなり」とある。 日光・Q日ざし ようこうがえり【洋行帰り】旅行や留学で欧米に行って帰って来たばかりの意で、かつて、あこがれや羨ましさをこめて、会話や文章に用いた古風な言いまわし。へーの紳士ゆ海外に留学するのはもちろん、渡航さえ珍しかった時代に、当時から先進国であった欧米に行って帰って来た人が、一般の人には輝いて見えたため、それを特別の人という思いで呼んだことば。発展途上の国に渡った人がいても、憧憬の気持ちが起こらなければこのことばは使わなかったと思わ れる。海外旅行も留学も海外勤務も珍しくなくなり、欧米 諸国を対等と見るようになるにつれて使用されなくなり、 今では相手をからから感じでたまに冗談めかして言う程度 で、あこがれや羨む気持ちはほとんど消えている。 ようし【要旨】文章や話の要点をさし、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈発表—〉〈ーをとらえる〉〈ーをまと める〉②国語教育では、展開に沿ってまとめた大意を、論者 の意見や主張をより明確にするために、さらに簡潔にまと めたものの骨子をさす。単大意・しゅし②・Q要約・論旨 ようし【容姿】容貌や体つき・身なりをさし、改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈一端麗〉へが整っている 「姿形すがた」に比べ、顔の美しさの比重が重い。円地文子の 「老桜」に「が美しいに拘らず、どこか竹のように勁く暢 び立って、なよなよ靡きよる風情がない」とある。Q姿形・ 風采・風体 ようじ【用事】やらなければいけない用をさし、くだけた会 話や硬くない文章に使われる日常的な漢語。へーを済ませ る)へーができる)へーがたてこむ)庄野潤三の『静物』に 「ーがある時は老人は手を叩いた」とある。「所用」や「用 件」はもちろん、「用」よりも日常一般の生活語。処所用・ 用・Q用件 ようじ【幼児】幼い子供をさし、会話にも文章にも使われる 日常の漢語。〈ー語〉〈ー園〉〈ー期〉〈ー教育〉上林暁の 月魄に「私はあたかもーの心で、月に吸いつけられた」 とあり、椎名麟三の『永遠なる序章』に「のような無垢な ものが感じられる」とある。おさな」・Q小児・ちのみ」・乳 <1105> 児 ようしき【様式】同類・同質の文化の中に見られる共通の型を さし、改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な感じ の漢語。〈美〉〈生活〉の変化〉〈新しいを取り入れる〉 〈従来のを変更する〉小林秀雄の『モオツアルト』に 「優れた芸術作品が表現する一種言い難い或るものは、その 作品固有のと離す事が出来ない」とある。「形式」よりも 総合的・抽象的・固定的。専門語としては、文学を含む芸術 作品を特徴づける時代・地域・流派などによる共通の表現 性。個人や個々の作品の特徴をも対象とする「スタイル」に 比べ、この語は個性より類型認識が強い。形・かっこう・Q 形式・スタイル ようしゃ【容赦(捨)】自分に対する相手の行為を赦めす意で、 会話にも文章にも使われる古めかしい漢語。失礼の段、平 に御ーください)〈断じてーはならぬ)泉鏡花の『高野 聖』に「茫然してると、木精が攫うぜ、昼間だってーはね えよ」とある。「勘弁」よりも重大な感じがある。「情けー もなく」のように、手加減の意でも使う。乃勘弁 ようしよ【要所】重要な場所や大事な箇所をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ーを固める〉へーーを押さえる〉 四水上勉の『越前竹人形』に「精巧なしっくい止めがーにみ られたーとある。急所・重点・要衝・要地・要諦・Q要点 ようしよう【要衝】交通や軍事などの面での重要な場所をさ し、主に文章中に用いられるやや古風で硬い漢語。へーの 地〉急所・要所・Q要地 ようじょう【養生】病後の一定期間体を休める意で、会話に ようじん も文章にも使われる、やや古風な漢語。〈不—〉〈病後の—〉 志賀直哉の『城の崎にて』の冒頭に「山の手線の電車に跳 飛ばされて怪我をした、其後ーに、一人で但馬の城崎温泉 へ出掛けた」とある。Q静養・保養・療養 ようしく【容色】女性の顔の美しさをさし、改まった会話 や文章に用いられる古風な漢語。へに優れている)への 衰えが目立つ顔立ちだけでなく肌の艶や姿を含む感じ がある。永井荷風の『墨東綺譚』に「この土地の女には似合 わしからぬーと才智とを持っていた」とある。単器量・Q容貌 「西洋料理店」の店内がすべてテーブルと椅子を連想させる のに対し、この「洋食屋」には椅子席のほか和室か畳敷きの コーナーが残っていて、中には割り箸も用意されている店も あるような雰囲気を感じさせる。志賀直哉や里見弾などの 作家がひいきにしていたとか、牛タンのシチューが絶品だ とか、偏屈なおやじが流行に背を向けて店の伝統の味を頑 固に守り続けているとかといった想像を誘う。ひカフェテリ ア・食堂・西洋料理店・Qレストラン ようじん【用(要)心】万一の場合に備えてあらかじめ注意す る意で、会話やさほど硬くない文章に使われる、いくぶん 古風な感じの漢語。〈火の—〉〈掏摸けに—する〉〈—に—を 重ねる〉〈—に越したことはない〉志賀直哉の『城の崎に て』に「(脊椎カリエスが)二三年で出なければ後は心配は いらない、鬼に角—は肝心だからといわれて、それで来た」 とある。「注意」や「警戒」に比べ、被害にあう確率の低い <1106> ようじんぶかい 場合に使い、念のためという雰囲気が強い。「要心」の表記 は古風。Q警戒注意 ようじんぷかい【用心深い】失敗を恐れ警戒心が強い意で、 会話やさほど硬くない文章に使われる表現。〈何事にも 人〉へ!く事を進める〉②檀一雄の『終りの火』に「また少 し蜜の汁をー・く飲んでいる」とある。慎重すぎることへの 批判がこめられている。増重 ようす【様(容)子】今見て感じられる状態や動きをさし、く だけた会話から文章まで幅広く使われる日常の最も基本的 な漢語。〈雲のー〉(このーでは)〈しばらくーを見る〉〈相 手のーをうかがう〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「田舎へ 行くんだと云ったら、非常に失望したーで、胡麻塩の鬢の乱 れを頻りに撫でた」とある。漢語らしい硬く冷たい感じが なく、和語のようなやわらかい感触。「ありげなそぶり」 のように、事情といった意味合いで使うと古風な感じにな る。りありさま・状況・Q状態・様相 ようする『要する』「要いる」意で、主に改まった文章に用いられる硬い表現。〈多額の資金を—〉〈当人の同意を—〉 〈かなりの日時を—〉、ひ要る ようするに【要するに】要約して言うならばの意で、やや改 まった会話や文章に用いられる、少し理屈っぽい感じの表 現。〈ー努力不足だ〉〈ー金が欲しいのだ〉〈ー言いたいこ とは何だ〉中谷宇吉郎の『立春の卵』に「、もっともら しい説明は何も要らないので、卵の形は、あれは昔から立 つような形なのである」とあり、大岡昇平の『俘虜記』に 「ーこの嫌悪は平和時の感覚であり、私がこのときすでに兵 士でなかったことを示す」とある。細かい理屈やニニアン スを抜きにして結論を急ぐ雰囲気があり、「すなわち」や 「つまり」以上にいらいらした気持ちが感じられる傾向があ る。「結局」に比べ、それまでの過程に重点がかからない。 到達点に意識を集中させる「つまり」以上に、次に簡潔な表 現の続く感じが強い。易結局・すなわち・Qつまり ようせい【天逝】若くして亡くなる意で、文章中に用いられ る漢語。「才能を惜しまれつつの」「逝く」と間接的に 表現しており、端的な「若死に」より丁寧な響きがある。 「夭折」と同様、死者を悼む気持ちが込められている。 早世早死に・Q夭折・若死に ようせい【要請】必要だと判断したことの実現を求めて願い 出る意で、改まった会話や文章に用いられる正式な感じの 硬い漢語。〈出動を—する〉〈立候補を—する〉〈—に応ず る〉〈—を受諾する〉刂申請・請願・請求・Q要求・要望 ようせつ【夭折】若くして亡くなる意で、文章中に用いられ る漢語。「の天才詩人」〈期待されながらした画家〉② 「折れる」と間接的に表現しており、端的な「若死に」より 丁寧な響きがある。「夭逝」と同様、死者を悼む気持ちが 込められている。早世早死に・Q夭逝・若死に ようそ【要素】ものごとの成立に欠かせない成分をさし、会 話にも文章にも使われるやや硬い漢語。〈構成—〉〈別に 分ける〉〈必須の—〉志賀直哉の『山科の記憶』に「その 気持に少しでも不愉快なーがあれば」とある。図子・Q成 分・要因 ようそう【様相】状態や様子をさし、主として硬い文章に用 <1107> いられる漢語。〈ーが一変する〉〈長期戦のーを呈する〉 上林暁の『聖ヨハネ病院にて』に「生活の秩序が新しいーを 帯びて来た」とある。Qありさま・状況・状態・情勢・様子 ようだい【容態(体)】病気の状態の意で、やや改まった会話 や文章に用いられる、少し古い感じの漢語。〜が悪化す る〜が急変する〜阿部昭の『父と子の夜』に「わたし どもがまた腹ごしらえをしようとしている時に父のーが急 変した」とある。「ようたい」ともいう。鼻風邪などのちょ っとした病気に使うと大げさな感じのする表現。込病態 ようだん【用談】仕事上の話し合いの意で、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。《応接室にてー中》《取引先と のーを済ませる》要談 ようだん【要談】重要な相談の意で、主に文章中に用いられ る硬い漢語。〈ーを交わす〉〈担当者とのーに臨む〉用談 ようち【用地】明確な利用目的を持つ土地をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈工場ー〉〈ーを買収する〉〈ーを 購入する〉②団地や空港などを建設するための広大な土地 をさすこともあり、逆に、自宅を建てるためなどの小規模 で個人的な土地をさす場合にはあまり使わない。ひQ地所 土地要地 ようち【要地】肝心かなめの箇所をさし、主として文章に用 いられる硬い漢語。〈交通の—〉の太宰治の『富嶽百景』に 「この峠は、甲府から東海道に出る鎌倉往還の—に当ってい て」とある。急所・要所・Q要衝・用地 ようてい【要諦】ものごとのきわめて肝要なところの意で、 主に文章に用いられる古風で硬い漢語。〈処世の—〉〈夫婦 ようぶ 和合のー)本来は「ようたい」と読み、仏教の要となる 悟りの意。急所・要所・Q要点 ようてん【要点】重要なポイントをさし、会話にも文章にも 使われる漢語。へーをとらえる〉へーをメモする〉へーをか いつまんで話す)宮本百合子の『若い息子』に「田端まで にーはすまされ、初子の買ってある鶯谷まで乗り越すあい だに付加も話された」とある。急所・重点・要所・要諦 ようと【用途】物品などを利用する先や範囲をさし、会話に も文章にも使われる漢語。〈ーが広い〉〈ー別に整理する〉 みQ使途・使い道 ようなま【洋生】「西洋生菓子」の略で、主に会話に使われる 古風で俗っぽい表現。〈一の詰め合わせ〉、Qケーキ・生菓子・ 南蛮菓子・洋菓子 ようにん【容認】認めて受け入れる意で、やや改まった会話 や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈現状を—する〉へと うていーできない行為〉へーしがたい狡猾なやり方〉 「許容」よりも主観的な感じがあり、自分としては好ましく 思わなくても状況から認めざるを得ないような場合によく 使う。専許可・許容・受諾・承諾・承知・承認・認可・了承 ようひん【用品】一定の用途の品物の意で、会話にも文章に も広く使われる日常の漢語。〈スポーツ〉〈事務〉、ヲ洋品 ようひん【洋品】西洋風の品、特に衣料品をさして、会話や 文章に使われる、やや古風な漢語。〈店〉〈を扱う〉用 品 ようぶ【腰部】腰の部分の意で、学術的な会話や硬い文章に 用いられる専門的な漢語。〈湿布をしてーの炎症を鎮める〉 <1108> ようふく ◐腰 ようふく【洋服】西洋風の衣服をさして、会話にも文章にも 使われる日常の漢語。〈一簞笥だふ〉へーをあつらえる〉へー を仕立てる〉石坂洋次郎の『麦死なず』に「青無地のーを まとい、ネクタイを無造作に垂れた」とある。「服」以上に、 下着類だけの意では用いにくい。「広衣服・衣料・着物・服 ようぼ【養母】養子に行った先の母にあたる人、または、養 い育ててくれた母親代わりの女性をさして、改まった会話 や文章に用いられる硬い感じの漢語。へとの折り合いが 悪い)Q義母・継母・まま母 ようほう【用法】どのように用いるかというその方法をさし、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈副詞の意味と ー〉へーを会得する〉へーを誤る〉き使い方 ようぼう【要望】望ましい事柄が実現するよう相手に訴える 意で、改まった会話や硬い文章に用いられる漢語。「事 項〉〈政府にーする〉へーを聞き入れる〉「要求」に比べ、 当然のことだとする姿勢があまり感じられず、可能ならば そうありたいという期待の表明に見えるため、あたりがや わらかい。刂申請・請願・請求・要求・要請 ようぼう【容貌】美醜の面から見た顔立ちをさし、改まった 会話や文章に用いられる古風な漢語。〈鬼魁偉ふふ〉〈美しい ーがひときわ目を引く〉夏目漱石の『草枕』に「丸顔の、 達磨を草書に崩したようなー」とある。ひ面差し・顔・Q顔立 ち・顔つき ようむ【用務】務めとしてなすべき仕事をさし、改まった会 話や文章に使われる漢語。〈学校のーで外出する〉「 員」の場合は特に改まった感じがない。「用事」より硬く大 仰な感じがある。「用件」が主に内容をさすのに対し、この 語は私用ではなく正式の任務であるところに重点があり、 その中身を特に問題としていない感じがある。刂用・用事・用 件・要務 ようむ【要務】重要な任務の意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。〈ーを帯びる〉専用務 【漸く】いろいろあったその後でといった意味合い で、改まった会話や文章に用いられる日常の和語表現。「や っと」より文体的レベルが高い。〈ー完成にこぎつける〉 〈何度も読んでー理解に達する〉②夏目漱石の『坊っちゃん』 に「待つより外に策はないと云うから、ーの事でとうとう 朝の五時迄我慢した」とある。実現時に意識の中心のある 「やっと」に比べ、この語は実現に至る過程に焦点を当てた 表現とされる。ひやっと ようやく【要約】文章や話の要点を短くまとめる意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈ー文〉〈内容をーする〉ひ大 意・Q要旨・論旨 ようりょう【用量】使用する分量の意で、会話にも文章にも 使われる専門的な感じの漢語。〈一回分の—〉〈薬剤の—を きちんと守る〉容量 ようりょう【要領】ものごとにとって特に大事なところをさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈学習指導—〉へーを つかむ〉へーを得ない返事〉へーがわからない〉夏目漱石 の『坊っちゃん』に「頓とーを得ない」とある。「ーがいい」 の形で、うまく立ち回るさまを言う用法もある。貴勘所 <1109> 呼吸②・Qこつ・壺②・秘訣 ようりよう【容量】容器に入る分量の意で、会話にも文章に も使われる客観的な感じの漢語。〈タンクのーが大きい〉 〈コンピューターの記憶ー〉乃用量 ようれい【用例】ことばの用法を示すための例をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈小説からーを探す〉へーが豊 富で説明がわかりやすい〉実例と作例に分かれる。一 例・作例・実例・Q文例・類例・例・例文 ようろういん【養老院】「老人ホーム」を意味する古風な漢 語。〈ーに入る〉Q老人ホーム・老人養護施設 よかん【予感】あらかじめ何となく感じ取る意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ーが当たる〉〈不吉なーがする〉 図吉本ぼななの『哀しい予感』に「そのーはその時の、秋の 夕暮れにとてもよく似ていた。胸の奥まで西陽が射し込ん でくるようだった」とある。刂勘・第六感・Q直感・直観 よき【予期】多分こうなるだろうと予 意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈したとおり〉 〈せぬ出来事〉〈に反して〉〈敗戦をーする〉夏目漱石 の『明暗』に「そこに彼のーどおり、白いシーツにつつまれ た蒲団が、彼の安臥を待つべく長々と延べてあった」とあ る。論理的・分析的にたどる感じの「予想」に比べ、主観的・ 総合的に感じられる場合が多く、何となく感じる「予感」ほ ど直観的ではない。単見当・展望・見込み・見通し・Q予感・予想・ 予測 よきよう【余興】宴会や行事などで興を添えるために演ずる 芸の類をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーに手品 よくあっ を披露する夏目漱石の『坊っちゃん』に「(祝勝の式は) それで御仕舞だ。ーは午后にあると云う話だから」とある。 「座興」と違い即興性は弱く、プログラムに予定されている 場合もある。ヒアトラクション・Q座興 よきん【預金】金銭を預ける意の漢語。「貯金」より若干専門 的な感じで少し改まった語。〈定期—〉〈—通帳〉〈—高〉 〈—を下ろす〉の「貯金」が郵便局を連想させるのに対し、 「預金」は銀行を連想させる。貯金 よく一度や二度でなく何度もある意味で、会話にも文章に も使われる日常の和語。へー乗り遅れる〉へー質問する〉 佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「そう言う事は誰にもーある事 です」とある。頻度が相対的に多い場合に用いるため、物 事によって回数に差が大きい。「ー出来る」「ー飲む」のよ うに程度の意にも用いる。ひしばしば・Q度々・ちょいちょい・ち よくちょく よく【欲(慾)】欲しくて手に入れたいと心の中で強く思う気 持ちをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な漢語。へーのかたまりへーが深いへー が出るへーのない人へーに目がくらむへーを言えばへ 「欲望」としてうごめく前のまだ行為と直結しない静的な段 階を連想させる。夏目漱石の『坊っちゃん』に「ーがすくな くって、心が奇麗だ」とある。現代では「欲がない」と言う ほうが自然。ヒ欲情・Q欲心・欲念・欲望・欲求 よくあつ【抑圧】無理に抑え付ける意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。へーをはねのける〉〈自由をーする〉 開高健の『裸の王様』に「ーの腫物のかさぶたを全身につ <1110> よくし けたまま」とある。不快な記憶などを無意識のうちに閉じ 込める精神作用をさす場合は心理学上の専門語。専制圧征 服・鎮圧・平定・Q抑制 よくし【抑止】抑えて実行させない意で、主として文章中に 用いられるやや硬い漢語。〈核の—力〉〈紛争を—する〉 禁止・Q制止 よくしっ【浴室】「風呂場」に近い意味で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈タイル張りの明るい〉「風呂 場」より正式の感じがあり、近代的でシャワーなどの設備を 備えた洋風の雰囲気を感じさせる。また、近年はやりのユ ニットバスなどの小規模な画一商品でも「浴室」と呼んで特 に違和感はない。リバスルーム・Q風呂場・湯殿・浴場 よくじつ【翌日】その日の次の日をさし、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。へーの準備〉〈注文するとー届 く〉〈徹夜をするとーに差し支える〉⑩井伏鱒二の『屋根の 上のサワン』に「ー、私はサワンの姿が見えないのに気がつ きました」とある。「前日」と対立。Qあくる日・あした・あ す・みようにち よくじょう【浴場】「風呂場」の意で主として文章に用いられる漢語。〈公衆—〉〈温泉旅館の大—〉「大—」の形では会話でも使うが、単に「浴場」の形では耳になじみがなく、漢字を見ないと通じにくい。また、不特定多数の人間が同時に入浴できる大規模な施設をさすことが多く、各家庭の風呂場やホテルの客室に付設された入浴用のスペースなどについては通常用いない。ひバスルーム・風呂場・湯殿・Q浴室よくじょう【欲情】欲望、特に性的なそれをさし、改まった 会話や文章に用いられる硬い漢語。〈ーをそそる〉〈ーを催 す〉〈ーに駆られる〉〈ーを抑える〉壇一雄の『花筐』に 「眩暈に似た」とある。愛欲・Q情欲・欲・欲心・欲念・欲望・ 欲求 よくしん【欲心】欲しいと思う気持ちをさし、主として文章 に用いられる硬い漢語。〈ーを刺激する〉へーが沸き起こ る〉へーを自制する〉菊池寛の『恩讐の彼方に』に「市九 郎のーは此の女を斬って、女の衣裳を台なしにしてはつま らないと思った」とある。鳥欲・欲情・Q欲念・欲望・欲求 よくせい【抑制】物事の勢いや人間の感情などを抑圧して制 止する意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈輸出 をーする〉〈インフレをーする〉〈感情をーする〉福原麟 太郎の『チャールズ・ラム伝』に「(酒を)もうーするだけの 力を失いかかったのではないか」とある。刂制圧・征服・鎮圧・ 平定・Q抑圧 よくそう【浴槽】「湯船」の意で、やや改まった会話や文章に 用いられる正式な感じの漢語。〈大きめのーを据える〉〈琺 瑯引ほうるきのー〉の事務的な響きがあり、「湯船」に比べ、ゆ ったりとくつろぐ雰囲気が薄い。専バスタブ・風呂桶・湯壺・Q 湯船 よくねん【欲念】「欲心」の意で、主に文章中に用いられる、 やや古風な漢語。〈ーがきざす〉〈ーが去る〉り欲・欲情・Q欲 心・欲望・欲求 よくばり【欲張り】欲の深いことやそういう人をさして、会 話にも文章にも使われる表現。〈根性〉〈な人〉〈が 過ぎる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「下宿の婆さんもけ <1111> ちん坊のー屋に相違ないが、嘘は吐かない女だ」とある。 強欲・胴欲・Q欲深 よくふか【欲深】欲張る気持ちが人一倍強い意で、会話や硬 くない文章に使われる古風な語。町内でもーで知られる 老人)も強欲・胴欲・欲張り よくぼう【欲望】満たされない思いから欲しがり望む気持ち の意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「を 抱く〉へのはけ口〉へを満たす〉へを抑える〉安部公 房の『他人の顔』に「全身」の結節でぐりぐりになり、ぼく は瘤だらけの老木さながら」とある。「欲」に比べ、行動に 向かう積極的な感じが強く、通常の食欲程度にはなじまな い。Q欲・欲情・欲心・欲念・欲求 よけい【余計】必要な程度を越して無駄である意をさし、会 話やさほど硬くない文章に使われるくだけた漢語。「な 出費〉〈会費を—払う〉〈—な心配〉小林秀雄の『無常と いう事』に「—な事は何一つ考えなかった」とある。「直し たら—悪くなった」のように、さらに一層の意でも使われ る。ひQ余り②・剰余・余剰・余分 よける【避ける】好ましくない対象と出合わないように方向 を変える意で、会話や改まらない文章に使われる日常の和 語。〈車を—〉〈歩行者を—・けて通る〉〈相手のパンチを —〉〈ー・けたパットにボールが当たる〉②抽象的なものの 回避に使われる「さける」に対し、この語は具体物に対して 用いられる傾向がある。したがって、同じ対象について使 われた場合でもニュアンスの違いが生じる。「水溜りを —」の場合は、水溜りのある道を歩きながら、その水溜りの よこく ところで跳び越えたり縁をそうっと歩いたりして水溜りに 入らないようにする行為を連想させ、「水溜りをさける」の 場合は、水溜りに近寄らないように最初から気をつけるか、 あるいは水溜りの多い道をやめて、あらかじめ舗装のよい 道路を選ぶような連想が働く。森鷗外の『空車』に「此 の車に逢えば、徒歩の人も避ける。騎馬の人も避ける。貴 人にの馬車も避ける。富豪の自動車も避ける。隊伍をなし た士卒も避ける。葬送の行列も避ける」という「避ける」の 六連続の例が出て来るが、新聞掲載時にはすべて「よける」 という振り仮名がついていた。ひさける よげん【予言】予測発言の意で、会話でも文章でも広く使わ れる漢語。「未来をーする〉へーがみごとに当たる」大仏 次郎の『風船』に「今の男が、こうーしたと聞いた」とある。 刂預言 よげん【預言】神のことばを預かって民に告げる意で限定的 に会話や文章に用いられる宗教的雰囲気の古風な漢語。へー 者)卐予言 よこ【横】「建物のーに立つ」のように前後に対する左右の方 向をさしたり、「首をーに振る」「枝がーに広がる」「芝生 にーになる」のように上下に対する水平方向をさしたりし て、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の 基本的な和語。〈一の幅が広い〉〈一を向く〉〈一から飛び 出す〉の川端康成の『伊豆の踊子』に「私のーに少年が寝て いた」とある。語源的に「よける」と関連があるという。 「縦」と対立。専水平 よこく【予告】事前に知らせる意でやや改まった会話や文 <1112> よこしま 章に用いられる漢語。〈編〉〈ーを出す〉〈ーなしに変更 する〉永井龍男の『朝霧』に「帰宅の時刻をーして置かな ければならないような、重要な用件」とある。ひ予報 よこしま【邪】曲がっていて道徳的に正しくない意で、改ま った会話や文章に用いられる古風な和語。〈ーな心〉「な 道に入る〉「横様」の転という。Q邪悪・悪い よこたおし【横倒し】横になって倒れる意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈強風で自転車がーになる〉〈投げられ てーに倒れる〉の「よこだおし」とも。賛転 よこたわる【横たわる】通常は立っている人や物が横になる 意で、改まった会話や文章に用いられる和語。〈公園のペン チにー〉〈散歩道に倒木がー〉⑩黒井千次の『群棲』に「 のでもなく、蹲ぐるのでもない不自然な姿勢で俯している」 祖父の死体が描かれる。「寝ころぶ」や「寝ころがる」と違 って、寝床の場合にも使い、「寝そべる」と違って、眠るた めに横になる場合にも使える。ごろりと横になるという人 間の動作のイメージが稀薄で、仰向けか横を向くかの姿勢 で寝る雰囲気があり、特に粗野な感じはない。「伐採した大 木がー」「平野の先に連山がー」「空に灰色の雲がー」のよ うに人間以外にも用い、「困難がー」「危険がー」のように 抽象的な対象にも使う。ひ寝転がる・Q寝転ぶ・寝そべる よこちょう【横町(丁)】表通りから横にはいった狭い通りや その町筋をさし、会話にも文章にも使われる日常語。「の 駄菓子屋〉〈ーに住む隠居〉沢村貞子の『味噌汁』に「庇 と庇がかさなりあっているようなせまい」とある。「よ こまち」と読めば、通りより町に重点が移る。裏通り・Q裏 町小路小道 よこづな【横綱】最有力者、最高権威をさす、相撲用語の 拡大用法。〈業界では—クラスの会社〉〈清酒の—〉大相 撲の最高位の意から、相撲に限らず最高の権威や力量が認 められている存在を広くさすようになっている。まだ若干 の比喻性が残存しており、相撲の連想がともなう。大御 所・権威②第一人者 よこっぱら【横腹】くだけた会話で「横腹」を強めていう 俗っぽい口頭語。〈ーが痛い〉)・Q横腹・脇腹 よこどり【横取り】他人の権利を脇から不正に奪う意で、会 話や軽い文章に使われる和語。〈儲けを—する〉〈成果を— する〉財布などの具体物より財産やポストのようなある 程度抽象的な対象に使う傾向がある。「横領」や「着服」ほ どの犯罪性は感じられないが、社会的・倫理的な制裁の対象 となりうる。Q横領・くすねる・失敬・着服・猫ばば よこばら【横腹】腹の横のほうの意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈ーを押さえる〉の「船の」のように比喻的 に人間以外についても使われる。马脾腹は横腹・Q脇腹 よされる【汚れる】汚くなる意で、くだけた会話から硬い文 章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈靴がー〉ヘシ ャツの襟がー〉〈油でー〉〈廃棄物で海がー〉ヨ川端康成の 『雪国』に「うるさくしゃぐらんのがいい。ぼんやりしてい て、よごれてないのが」とある。まれに「・れた金」「・ れた心」のように不純といった抽象的な意味合いでも使う が、「けがれる」と逆に、具体物の実際の汚れをさす例が圧 倒的に多い。きけがれる <1113> よさん【予算】あらかじめ使途や金額を決めておく費用をさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈国家—〉〈一額〉〈一 案を組む〉〈一が足りない〉〈一を使い果たす〉〈一をオー バーする〉森鷗外の『青年』に「一を立てているから、不 用な金はない」とある。Q資金・見積もり・元手 よす よし【葦ノ芦】「あし」の意で、一部の会話で使うことのある 和語。「の髄から天井覗く」「葦(蘆)」の「アシ」という音が「悪し」を連想させるために忌み嫌い、その逆の「善 し」という音に替えてできた語。そのため、この語を使う と、縁起を担ぐ古風な人間と思われることもある。かつて の吉田内閣と芦田内閣など、そういった姓にさえ「善し悪 し」という連想を働かせる人もあるかもしれない。ひあし よしゅう【予習】授業に備えてあらかじめ学習しておく意で、 会話にも文章にも使われる漢語。「を済ませる〉へを怠 らない」「下調べ」より狭く、学校の勉強の連想が強い。 「復習」と対立。ひ下調べ よじょう【余情】言語芸術、特に小説や、映画・演劇などで、 作品が終わっても消えないで残る深い味わいをさし、会話 にも文章にも使われる漢語。「たっぷりに描く」「が漂 う」「を汲む」「小林秀雄の『西行』に「まことに簡潔適 確で、而もと暗示とに富んだ言葉である」とある。作中 であっても、ことばで表現されていない、いわば表現の隙間 から感じとれる、主体の感慨や言外の意味を含めることも ある。また、文学の場合は、文章という言語の刺激を受け て形成されたイメージに対して読者が抱く情緒、そこから 読者が自身の過去の経験や記憶を思い起こすことで生ずる 情緒、さらには、その読書体験がそれ以降の読者の心に生 き続ける潜在的な情緒などをも含める場合もある。余韻・ 余白 よじょう【余剰】必要な分を差し引いた残りの意で、硬い文 章に用いられるやや専門的な漢語。〈人員〉〈一農産物〉 専余り②・Q剰余・余計・余分 よじん【余燼】燃えきらずに残った火の残骸をさし、主とし て文章に用いられる古風で硬い漢語。〈大火の—〉へがく すぶる) 永井龍男の『風ふたたび』に「数番の仕掛花火 が、終りを告げたばかりらしく、濃い一面の白煙が、ほのか にーに映えつつ、川上へもうもうと吹き上げられていた」 とある。専燃えがら・Q燃えさし よしんば【縦んば】もしも仮にそうなってもという意味合い で、主として文章に用いられる古めかしく硬い和語。〈一大 地震が起ころうと、びくともしない〉②辻邦生の『天草の雅 歌』に「キリシタン宗徒がおりましても(略)証拠になるよ うなものは所持しておりますまい」とある。強い響きを持 ち、「仮に」はもちろん「たとえ」よりも実現可能性の低い 場合に使われる傾向がある。ひQ仮に・たとえ よす【止す】自分の意志で自発的に「やめる」意で、主とし て会話に使われる、やや古い感じのくだけた和語。「おい、 いじめはー・しな〉へー・せばいいのに、よけいなことをし て〉〈タバコをー・したら急に肥っちゃった〉〈勉強なんか ー・して外で遊ぼう、いい天気だぜ〉の「止める」に比べ、 個人的な事柄について自発的に行う場合に用いられ、「大臣 がその職を」「定年で会社を」の後には使えないという分析 <1114> よそう もある。小津安二郎監督の映画『お茶漬の味』で茂吉役の 佐分利信は「もうおー・し、もうお帰り」と言い、成瀬巳喜 男監督の映画『稲妻』でも高峰秀子が母親とさんざん泣き 合った後、「おかあちゃん、もうー・そうよ」と言う。小沼丹 の『喧嘩』の中でも五六歳の男の子が「おめえ、ー・せよ。 こんな所でよせよ」と言う。いつか荻窪の鮨屋びか一で、 酔うほどに乱れる酒友を井伏鱒二が「・せ、みっともない」 とたしなめる現場に居合わせたこともある。会話的で親し みのあるこの「よす」も今ではすっかり衰えた感じで、若い 人の口から出ると古風な人間という印象を与えるだろう。 止める よそう【装う】食物を器に入れる意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈御飯のお代わりを—〉〈飯を軽く—・ってお 茶漬けにする〉の「盛る」ほど盛り上がっている連想は特に なく、程よくきれいに入れてある感じがある。ひ盛る よそう【予想】さまざまな材料や条件を考えて将来の展開に ついて見当をつける意で、くだけた会話から硬い文章まで 幅広く使われる日常の漢語。〈競馬の—〉へ—が的中する〉 へーどおりの展開〉〈大方の—をくつがえす結果〉夏目漱 石の『こころ』に「これから先の貴方に起るべき変化を—し て見ると、猶苦しくなります」とある。「予感」や「予期」 より論理的な感じがあるが、「予測」ほど精密な感じはしな い。刂見当・展望・見込み・見通し・予感・予期・Q予測 よそおい【装い】衣服に装身具を含めた普段と違う好感のも てる衣装をさし、主として文章に用いられる優雅な感じの 和語。〈華やかなー〉〈ーを凝らす〉〈初夏らしいーで出か ける)②獅子文六の「胡椒息子」に「まるでデパートの飾窓 から連れてきたような、豪奢な盛夏のの大人」とあ る。身につける服装だけでなく装身具や持ち物などを含め て言う。「服装」や「衣服」に比べて飾り立てた感じがある ため、「ありふれた」「地味な」「目立たない」といった形容 はイメージの反発がある。Q衣装・衣服・衣類・着物・服装・身な り よそく【予測】前もって今後のことを推測する意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈先のことはまったく ーが立たない〉〈台風の進路をーする〉〈景気の動向を専門 家がーする〉大岡昇平の『俘虜記』に「比島派遣軍の運命 についてかかる楽観的ーを抱懐し得た筈はない」とある。 「予感」や「予期」より客観的・論理的で、「予想」よりデー タを分析する過程が連想される。見当・展望・見込み・見通し・ 予感・予期・Q予想 よそごと【余(他)所事】「ひとごと」の意で、会話にも文章に も使われる、やや古風な和語。へーのような顔をして親身に 相談に乗ってくれない)ひ他事・たにんこと・Qひとごと よそみ【余所見】ほかのものに気をとられて肝心のものから 目を離しそちらを見ることをさし、会話でも文章でも使わ れる和語。〈ーをしながら運転する〉〈授業中にーをする〉 ののごとに集中できない幼児などによく使われる。児 よそめ【余所目】無関係な人の目の意で、会話にも文章にも 使われる、やや古い感じの和語。〈ーには幸せそうな家族〉 〈ーにも痛々しい〉専傍目 <1115> よそゆき【余所行き】他人を訪問するときなどに着る改まっ た衣装の意で、会話やさほど改まらない文章に使われる和 語。〈ーに着かえて出かける〉の「よそ行きの着物」という 意味の省略表現。「晴れ着」ほどの華やかさは感じない。 「一の顔」という用法もあり、衣服だけには限らない。見晴 れ着 よそよそしい【余所余所しい】親しい間柄なのに打ち解けた 感じがない意で、会話にも文章にも使われる和語。〈一挨 拶〉〈一態度〉〈一扱い〉②「すげない」「そっけない」「ぷ っきらぼう」などは初対面の相手の場合にも使えるが、この 語は親しげな態度を見せるのが当然である間柄の場合に限 る。ひすげない・そっけない・Q他人行儀・ぷっきらぼう・水くさい よたもの【与太者】不良やならず者の意で、会話や軽い文章 に使われる古風で俗っぽい和語。〈一見—風に見える〉〈一 に脅される〉②人名化した「与太郎」と同様、「よた」はい い加減で役に立たない意。「よたを飛ばす(言う)」などとも いう。ひごろつき・ちんびら・ならず者・Q無頼漢・暴力団・無法者・ やくざ よだん【予断】あらかじめの判断の意で、改まった会話や文 章に用いられる漢語。〈ーを許さない〉り余談 よだん【余談】本筋を外れた話の意で、主として会話に使わ れる漢語。〈ーはさておき〉福原麟太郎の『チャールズ・ラ ム伝』に「幻想の話を書いて送る。ーになってごめん」とあ る。ひ予断 よち【余地】余っている場所、ゆとりの意で、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈立錐ねのーもない〉〈弁解 よっぱらう のー〉〈考え直すーがある〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「短かい二十日間に於て生徒は君の学問人物を評価し得るー がないーとある。余り②・Qゆとり・余分・余裕 よちよう【予兆】「兆し」に近い意味で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈大地震の—〉②事柄がまだ起こり 始めないうちに、という部分を強調した感じの語。ひ兆し・ Q前兆・兆候・前触れ よっきゅう【欲求】強く欲しがり求める意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈不満〉〈ーを満たす〉〈ーを抑える〉志賀直哉の暗夜行路』に「他に何物をもーしない程の幸福」とある。心の中でうごめく感じの「欲望」に比べ、この語はそれが行為として現れる直前の活発な段階を連想させる。り欲・欲心・欲念・Q欲望 よっぱらい【酔っ払い】酒を飲んでひどく酔った人をさし、 会話や硬くない文章に使われる日常の和語。へーにからま れる〉へーがくだをまく〉へーは始末に負えない〉福原麟 太郎の『交友について』に「ーがよく私にいう。酒がかあっ と利いて来て、自分が無限に拡がったような気持になった とき、酒の法悅境があるのですよ」とある。ひQ酒酔い・酔 客・泥酔者 よっぱらう【酔っ払う】酒などを飲み過ぎてひどく「酔う」 意で、主にくだけた会話で使う口頭語。へがぶがぶ飲んでひ どくー〉へすっかりー・ってしまい、何を言ったか覚えてい ないへへとまるで人が変わる〉井伏鱒二の『夜ふけと梅 の花』に「ー・って電車に乗って帰って来る途中(略)急に電 車がカアプして、真逆様にふり落されたんだと言いたまえ」 <1116> よっびて とある。「醉う」は程度に大きな幅があるが、この語は正常 でなくなる段階以上の場合に限られる。促音とそれに続く 「バ」という破裂音も影響して耳にきつい印象を与え、同時 にそれがこの語を俗っぽい感じにしている面もあるかもし れない。症状がひどくても乗り物酔いには使わない。よ沈 没②・泥酔・酩酊・酔いしれる・酔い潰れる・酔う よっびて夜っびて「夜通し」の意で、主に会話に使われた 古風な和語表現。〈一騒がしい〉(寝ないで警戒に当た る)「夜一夜結」から転じた語形という。終夜一晩中・ Q夜通し・夜もすがら よっぽど【余っ程】「相当に」「思い切って」の意で、主にく だけた会話に使われる口頭語。〈ー好きなんだな〉〈ー言っ てやろうと思ったが〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「撲 りつけてやろうかと思った」とある。促音に続く破裂音 「ポ」という音構造が「よほど」以上の激しい感じを印象づ けるのかもしれない。よほど よてい【予定】行事・行動などを事前に考えたり決めたりして おくことをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の基本的な漢語。へー表〉へ到着ー〉へ今後のー〉 へーを立てる〉へーを変更する〉へ急にーが入って参加でき ない〉へーの行動に出る〉へ三泊四日のーで旅に出る〉へ正 式に採用するーになっている〉へーとおり事が運ぶ〉へーが 狂う〉へーが立たない〉へ当初のーより大幅にずれ込む〉 梶井基次郎の『冬の蠅』に「三里の道を歩いて次の温泉まで ゆくことに自分をーしていた」とある。単Q計画・心積もり・ 内定 よどおし【夜通し】夜から夜明けまで通しての意で、会話に も文章にも使われる和語。〈ー働く〉〈ー話し合う〉き終夜・ Q一晩中・夜っびて・夜もすがら よとぎ【夜伽】間接的に「性交」をほのめかす古語に近い和 風表現。「に出る」②基本的な意味は、一晩中そばに付き 添うこと。その一つの形として、男が寝るときに女がその 相手をする場合があり、そこに含みとして体の交わりを連 想させる。死者を守るために夜通し寝ないでそばについて いる場合にも用いるため、かなり婉曲とな感じになる。 営み・エッチ・関係②・合歓・交合・交接・情交・情を通じる・Q性交・性 行為・性交渉・性的行為・セックス・抱く②・契る・同衾共寝・寝る ②・懇ろになる・ファック・深い仲になる・房事・枕を交わす・交わる・ やる③ よなか【夜中】夜の中ほどの意で、会話にも文章にも使われ る日常の和語。〈一の火事〉〈一に目が覚める〉〈一に電話 で起こされる〉〈一に地震で飛び起きる〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「静かにしろ、だぞ」とある。通常の就寝時 より日の出の二時間ぐらい前までをさすことが多い。刂深 更・深夜・Q真夜中・夜間・夜半・夜分・夜1・夜更け・夜よわ よなれる【世慣(馴)れる】世の中に慣れて世情や人情に通じ ている意で、会話にも文章にも使われるやや古風な和語。 「!れた苦労人」〈若いわりにー・れている〉の「老獪」 「すれっからし」「世間ずれ」のようなマイナスの語感は特 に働かない。夢擦れ枯らし・Q世間ずれ・老獪 よにげ【夜逃げ】その家に住んでいられない事情ができ、夜 の間にひそかに家を抜け出て行方をくらます意で、会話や <1117> 軽い文章に使われる古風な和語。借金取りに追い詰められ てーをする〉へ一同様の引っ越し〉の「家出」と違い家族単 位での行動。家出・失跡・失踪・出奔・蒸発・Q逐電・行方不明 よのなか【世の中】人が他とかかわりながら暮らしている場 の意で、会話にも文章にも広く使われる日常の和語。「の 人」〈世知辛いー〉〈ーをうまく渡る〉〈ーのことがまるで わかっていない〉〈ーそんなに甘くはない〉林芙美子の 「放浪記」に「、何もかもが吸殻のようになってしまった」 とある。自分の関係する「世間」より広い範囲をさす傾向 がある。ひ社会・世界②・Q世間 よは【余波】風が静まってもまだ残る波の意、または、そこ から転じて一般に影響の意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈台風の—〉〈紛争の—〉図芥川龍之介の羅 生門』に「衰微の小さな」とある。悪い影響に使う傾向が 強い。影響・波及・Q波紋 よはく【余白】本のページや用紙などの本来記載すべき場所 で、絵も文字も記されずに白く残っている部分をさして、い くぶん改まった会話や文章に用いられる、いくらか専門的 な漢語。〈以下〉〈用紙のーに書き込む〉〈日本画はーを 大事にする〉の「欄外」と違い、手書きの一枚の紙について も使う。小田原下曾我の自宅で尾崎一雄は質問に答えて 「僕は十のものを六、七ぐらい言っていて、あとの三、四は読 者の想像力で補ってもらう、読者の想像力に期待する、そう いうやり方ですね。ーの意味を重要視するんですよ」と語 り、若い作家の書き過ぎをたしなめた。また、幸田文は『余 白』で「幅も丈も急に縮まったようで、私は鏡のなかに納ま よぶ りすぎるくらい納まっている。鏡のーは憎いほど秋の水色 に澄んでいる」と比喻的な表現に用いた。「欄外」に比べ情 緒的な側面もある。小津安二郎監督は映画づくりにあたっ て、観客が見たがるものは隠すよう指導したという。表現 の余白が映画を見終わったときのいい後味を生み出すと考 えたからだ。事細かく説明する鬱陶しい文章にも同じこ とが言える。余情をかもしだす表現の抑制という意味合い でもこの語はこのようにしばしば比喩的に使われる。刂欄 外・余韻・余情 よび【予備】事が起こる前にそれに備えて準備することをさ し、会話にも文章にも使われる漢語。〈ー知識〉〈ー調査〉 〈ーを用意する〉〈ーにとっておく〉〈ー費〉ひスペア よびこう【予備校】大学などの受験指導を専門とする学校を さし、会話にも文章にも使われる漢語。へに通うの「塾」 に比べ、大学受験を連想させ、相対的に大教室での講義とい うイメージが強い。塾 よびりん【呼び鈴】門や玄関などに取り付けて来客が押して 鳴らし、訪問先の人を呼び出すための装置をさして、会話 にも文章にも使われる和語。〈門のーを押す〉も鈴・チャイム・ Qプザー・ベル よぶ【呼ぶ】声をかける、名づけるの意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈遠く からー〉〈名前をー〉〈医者をー〉〈さん付けでー〉中島敦 の『山月記』に「ふと眼を覚ますと、戸外で誰かがわが名を ー・んでいる」とある。「パーティーに」「およばれ」のよ うに招待の意で用いる場合は、意味を特定するために「招 <1118> よぶ ぶと書き分けることもある。喫ぶ よぶ【喚ぶ】引き起こす意で、会話にも文章にも使われる和 語。(人気を—〉〈話題を—〉〈関心を—〉〈反響を—〉特 に好んで用いる表記で、いくぶん詩的な感じがある。この 意味で「呼ぶ」と書いても誤りではない。ひ呼ぶ よふけ【夜更(深)け】夜遅くの意で、会話にも文章にも使わ れる、いくぶん古風な感じのする和語。へーまで読みふけ る〉へーに人が訪ねて来る〉へこんなーに何事ですか〉井 伏鱒二の『夜ふけと梅の花』に「或るーのこと、正確にいえ ば去年の三月二十日午前二時頃」とあるが、一般には、一日 の活動が終わり寝床に入りかける頃合を連想させることが 多く、夜中の三時以降という連想は働きにくい。Q深更・ 深夜・真夜中・夜間・夜半・夜分・夜中・夜 よぶん【余分】必要以上で余った分をさし、会話や文章に使 われる日常の漢語。〈ーが出る〉〈ーな仕事〉〈ーがあった ら分けてもらう〉〈いつもよりーに働く〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「毎月五円ーにとれる」とある。余り②・剩余・ 余計・Q余剰・余地 よほう【予報】あらかじめ知らせる意で、会話にも文章にも 使われる日常の漢語。〈天気—〉〈雨の—が外れる〉〈ーを あてにする〉ひ予告 よぼう【予防】病気や災害などをあらかじめ防ぐ意で、会話 にも文章にも使われる漢語。〈医学〉〈線を張る〉〈風 邪のーになる〉〈注射〉〈火災ー〉森鷗外の『妄想』に 「ーもし治療もする」とある。防ぐ・防止 よほど【余程】「相当」「よくよく」の意で、会話でも文章で も普通に使われることば。〈ー好きと見える〉〈ー困ってい るらしい〉へーのことがない限り、彼は必ず来る〉の井伏鱒 二の『山椒魚』に「ー暫くしてから山椒魚はたずねた」とあ る。ひよっぽど よみがえる【蘇(甦)る】「生き返る」または、一度失われたものが元に返る意で、主に文章に用いられる和語。〈死者が 」〈枯れかかった花が」〈記憶が」〉「黄泉(あの世) から帰る」という意味から。Q生き返る・蘇生 よみて【読み手】文章を読む人を広くさし、会話にも文章に も使われる和語。〈ーに通じない〉〈ーに対するサービス〉 〈ーを意識して書く〉公刊された作品について使う「読 者」と違って、刊行物に限らず作文や手紙やメモなどを読む 場合も含まれる。「書き手」と対立。なお、「百人一首のー」 のように声に出して読み上げる人をさす用法もある。ま た、和歌や俳句を作る人をさす場合は「詠み手」と書く。 受け手・受信者・読者 よむ【詠む】詩歌を作る意で、会話にも文章にも使われる、 詩的な雰囲気の古風な和語。〈花鳥風月を—〉〈俳句を—〉 谷崎潤一郎の『細雪』に「古人の多くが花の開くのを待ち こがれ、花の散るのを愛惜して、繰り返し繰り返し一つこ とをーんでいる数々の歌」とある。読む よむ【読む】読解・音読、予測などの広い意味で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈本をー〉〈じっくりー〉〈大きな声でー〉〈相手の出方を ー〉の島崎藤村の『春』に「自分で自分のにおいを嗅いでみ るように、主人公が独白の一節をー・んだ」とある。詠む <1119> よめ【嫁】結婚相手の女性、特に、息子の妻をさし、会話や さほど硬くない文章に使われる古風な和語。〈一姑孔の仲〉 〈一に行く〉〈一をもらう〉〈一を迎える〉〈一の尻に敷かれ る〉谷崎潤一郎の『細雪』に「来年自分が再び此の花の下 に立つ頃には、恐らく雪子はもう一に行っているのではあ るまいか」とある。単に「嫁」として自分の妻をさす用法も ある。家制度の連想が強く、近年はこの語に抵抗を覚える 人も多い。ひ妻 よめいりする【嫁入りする】女性が「結婚する」意の古めか しい和風の言い方。生家を出て他家の人間になるという意 味合いが強い。〈旧家にらしい〉家庭を持つ・結婚・結婚す る・こし入れ・婚姻・所帯を持つ・嫁ぐ・Q嫁に行く よめにゆく【嫁に行く】女性が「結婚する」意の古めかしい 和風の言い方。親元を離れて嫁ぎ先の家または結婚相手の 所の人になるという感じがある。〈近くーという話だ〉谷 崎潤一郎の『細雪』に「来年自分が再び此の花の下に立つ頃 には、恐らく雪子はもう嫁に行っているのではあるまいか」 とある。刂家庭を持つ・結婚・結婚する・こし入れ・婚姻・所帯を持 つ・Q嫁ぐ・嫁入りする よもすがら夜もすがら/終夜」「夜通し」の意で、主に文章 中に用いる古めかしい雅語的表現。〈ー語り明かす〉〈ー雨 が降り続く〉石川淳の『紫苑物語』に「余韻はーひとのこ ころを打った。ひとは鬼の歌がきこえるといった」とある が、一般には「雨やまず」「机に向かひて一睡もせず」 のような文語的な言いまわしの環境になじむ。り終夜・Q一 晩中・夜っびて・夜通し よもや「まさか」の意で主に文章に用いられる古めかしい和 語。へと思ったことが現実になる)へーそのような事態に は立ち至るまい)強い響きがあり、まさか」以上に信じ られないという気持ちが強い。まさか よやく【予約】品物の購入、見物席や宿泊、行為などをあら かじめ取り交わす約束をさし、会話にも文章にも使われる 日常の漢語。〈一席〉〈一診療〉〈ホテルをーする〉〈一を入 れる〉〈一を取り消す〉商取引などの連想が強く、単に人 と会う約束には使いにくい。専アポ・Qアポイントメント・リザ ーブ よゆう【余裕】広さ・予算・人数・時間などがきりぎりの状態で なく余分がある意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広 く使われる日常の漢語。へー綽々じゃへーのある生活へー を持って出かける福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』 に「年を取って生活にーができて」とある。「座席にーがあ る」はまだ空いている席がある意。ゆとり・余地 より「から」の意で、非常に改まった会話や硬い古風な文章 などで用いられる丁重な格助詞。〈近代絵画展は九月九日— 開催いたします〉〈本日の夕刻六時半—、モーツァルトの交 響曲四十番を演奏〉最近は催し物の案内でも「から」を使 う例が増えて気楽な感じを出している。そこをあえて伝統 的な「より」にすると堅苦しい雰囲気になり、客の入りに影 響すると考えるのかもしれない。以前、アメリカのある大 学で開かれた学長招待のパーティーで、裸の上半身にネクタ イを締めた青年を見かけたことがある。「ネクタイ着用の こと」という注意書きに忠実に従いながら、改まった服装を <1120> よりあい 期待する学長側の表現意図をみごとに外してみせたいなず らである。奇抜なアイディアを考えつく茶目っけと、それ を実行に移す子供じみた大胆さ、そして、若者の不作法に 眉をひそめることなく、その稚気をほほえみに包みこむ大 人の勇気とエーモア精神。その場のそういった雰囲気に、 自由を誇ってきたあの国の伝統が映っているように思われ た。胸毛の前に揺れるあのネクタイは、いわば「きょうの夕 方の六時ちょっと過ぎから盆踊りがあるってよ」の中の気楽 な格助詞「から」だけを、格式ばった格助詞「より」に変更 して部分的に取り澄ましてみせたような、ちぐはぐなおか しさを演出したのかもしれない。みから よりあい【寄り合い】主として会話で「会合」の意で使われ る古めかしい和語。〈町内会の—〉〈今晩は—があって出か ける〉小津安二郎監督の映画『東京物語』(一九五三年) で、美容院をやっている志げ(杉村春子)が「今晩はちょいと 七時から家でーがあるけど」と言う。今ではめったに聞か れなくなった。ひ会・Q会合 よりかかる【寄り掛かる】何かを支えとして体を寄せる意で 会話でも文章でも幅広く使われる日常生活の和語。〈壁に ー〉〈橘の欄干にー・って川面を眺める〉の「もたれる」より も軽く体重を預けた感じとされる。もたれる よる【由る】そこから出て来る意で、改まった会話や文章に 用いられる和語。〈本人の努力如何かにー〉〈先例にー・っ て執り行う〉あり方に関連する、則のるの意であること を特に強調する表記。仮名書きの例が多いが、由来する意 の「勝因のー・って来るところ」といった漢文調の古風な感 じが漂う用法の場合は仮名書きはなじまない。Q依る 因る・拠る 【因る】原因となる意で、改まった会話や文章に用いら れる和語。〈子供の火遊びに—火災〉〈交通事故に—犠牲 者〉起因する意であることを特に強調する表記。仮名書 きの例が多い。ひ依る・Q拠る・由る よる【依る】それに頼る意で改まった会話や文章に用いられ る和語。〈時と場合に〉〈アルパイトにーって生計を維 持する〉依存する、手段とするの意であることを特に強 調する表記。仮名書きの例が多い。ひ因る・Q拠る・由る よる【拠る】根拠とする意で、やや改まった会話や文章に使 われる和語。(百科事典に・れば)〈古い学説に判断〉 拠りどころとする意であることを特に強調する表記。仮名 書きの例が多い。Q依る・因る・由る よる【夜】日の入りから日の出までの時間をさし、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 〈1の大都会〉〈1になる〉〈1の集まり〉〈1の仕事〉〈1 遅く帰宅する〉「夜間」と同義にも、そのうちのある時刻 やひとときをさしても用いる。「晩」よりも遅いほうに重点 がある。林芙美子の『うず潮』に「少しばかり開いた扉口か ら繻子のように光って濡れているが見える」とある。単 独で「夜」より一般的によく使う。「昼」と対立。ひ深更 深夜・晩・真夜中・Q夜間・夜半・夜分・夜三・宵・夜中・夜更け・よわ よるごはん【夜御飯】「夕飯」の意で使われることのある俗っ ぽい表現。〈ーはまだだ〉の朝・昼・晩の対立のうち、「晩」 の使用頻度が減って、朝・昼・夜というとらえ方が一般的に <1121> なるとともに、「晩御飯」に代わって若年層を中心に目立つ ようになった表現。子供っぽい感じに響くこともある。「夜 食」の意味では使わない。ゆ晩御飯・晩めし・タ御飯・Qタ飯・タ めし・夜食 よろく【余禄】正規の収入以外の所得の意で、会話にも文章 にも使われる、やや古風な漢語。へーにあずかる)余録 よろく【余録】こぼれ話の意で、主に文章に用いられる古風 な漢語。〈幕末—〉〈太平洋戦争—〉②「人生—の如し」とい うす言は、「余録」でも「余禄」でもそれなりに意味が通る ところが面白い。余禄 よろける【蹌踉ける】安定を失って足許がぐらっと揺れて倒 れそうになる意で、会話や硬くない文章に使われる日常の 和語。へ立ち上がった拍子に足許がー〉へ一瞬めまいがして 思わずー〉有島武郎の『或る女』に「切って落されたよう にふらふらとー・けながら」とある。「よろめく」に比べ、 「石に顕いでー」のように、その一度の足許のぐらつきを とらえた感じが強い。また、「よろめく」と違って比喻的な 用法はなくもっぱら具体的な動きをさして使う。ひひよろつ く・ふらつく・Qよろめく よろこぼしい【喜ばしい】よいことだと満足に思う気持ちを さす和語で、「嬉しい」や「楽しい」より若干改まった語。 へあなたがお父さまと和解できたことは限りだ)綱野菊 の『仲のよい御夫妻』に「瀧井孝作さん、尾崎一雄さん、阿 川弘之さん、それぞれ、先生のまわりの方たちがよき御夫 婦であることもー」とある。「嬉しい」や「楽しい」と違い、 原則として他人のことに対して感じる気持ちの表現だから、 よろめく 「努力が認められて我ながら」というふうに自分のことについて言うと、自分自身を突き放して客観的に見たようなニュアンスが伴う。ひQ嬉しい・楽しい よろこび【喜(歓・悦・欣)び】嬉しいと思う気持ちをさし、く だけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的 な和語。二重のー〉へーにひたる〉へーを味わう〉へーがこ み上げる〉へーを共にする〉の檀一雄の『花筐』に「白い 花弁がぽそぽそ散りかかってそれが肩の上に融けてしまい そうな美しいー」とある。新年や慶事などのめでたい意味 合いの喜びの場合は「慶び」とも書く。豊歓喜・Q喜悦・欣喜雀 躍中くきに・随喜・法悅・愉悅 よろこぶ【喜(歓・悦・欣)ぶ】嬉しいと思う意で、くだけた会 話から文章まで幅広く使われる基本的な和語。〈誕生をー〉 〈成功をー〉〈無事をー〉〈泣いてー〉志賀直哉の『山鳩』 に「山鳩も遂にいい対手を見つけ、再婚したのだと思い、こ れはいい事だったとー・んだ」とある。感情が表情や言動に あらわれるときに使うことが多い。「めでたい」意に用いる 場合は「慶ぶ」とも書く。鳩しがる よろめく【踏踉めく】足許が不安定で足取りがふらつく意で 会話にも文章にも使われる和語。石につまずいてー〉酒 に酔って足がー〉へー・きながら道路を斜めに横切る) 瞬の動きに中心のある「よろける」に比べ、この語は一瞬だ けの場合もあるが、何度も繰り返しながら移動するイメー ジが強い。「人妻にー」のように、ふらっと惹かれる意の用 法もあり、『美德のよろめき』と題する三島由紀夫の小説も ある。ひひよろつく・ふらつく・Qよろける <1122> よろん よろん【輿論】世間一般に共通する意見の意で、改まった会 話や文章に用いられる硬い漢語。〈調査〉へを喚起す る〉へに問う〉徳永直の『太陽のない街』に「は、咽 喉まで石炭を呑んだ汽鐘のように、灼熱して破裂せんばか りにふるえ沸ぎることもあった」とある。「輿論」の言い換 えである「世論」を「ヨロン」と誤読したところから「世 論」という湯桶読みの表記が広まったとされる。文脈上 「世論」との区別は至難であり、その表記は品格の点でも 好ましくない。単世論 よわ【余話】一こぼれ話」の意で、主に文章中に用いられる古 風な漢語。〈日米開戦—〉ひ逸話・裏話・エピソード・Qこぼれ話・ 挿話 よわ【夜半】漠然と夜中をさし文学的な文章などに用いられ る古語に近い和語。〈一の嵐〉(一に鳴く虫の音)②擬古文 や美文調の文章に用いる以外、現代生活の時間表現として はめったに使わない。少深更・深夜・真夜中・Q夜半夜夜中・ 夜更け よわい【弱い】力・作用・実力・意志・程度・影響力などが小さい 意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の基本的な和語。「力が」「体が」「気が」「立場が 「気の」性質なのではあるが、何処か奥の方にカチリと堅い 芯を持っている」とある。福永武彦の『草の花』には「神の 前にあっては葦のように「人間の姿」とある。「強い」と対 立。ひQかよわい・弱小・弱体・脆弱・軟弱②・ひよわ・もろい よわき【弱気】負けるのではないかと思って消極的になる気 持ちや態度をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。 〈すっかりーになる〉への攻め堀辰雄の『かげろうの 日記』に「ついーになろうとする自分を、私は一生懸命に抑 えつけて」とある。態度をさす「弱腰」と違い、劣勢を感じ て消極的になる場合のほか、性格的な場合をも含む。「強 気」と対立。弱腰 よわごし【弱腰】弱気になって消極的に事に当たる態度をさ し、会話にも文章にも使われる和語。へーで事に当たる へーの外交》の「逃げ腰」と違い、実際の腰つきをさす用法 はない。「強腰」と対立。Q逃げ腰・弱気 よわむし【弱虫】意気地がなくすぐ弱音を吐く意で、会話や 軽い文章に使われる、いくぶん古風な感じの和語。へに育 つくそんなこともできないのか、このー!夏目漱石の 『坊っちゃん』に「いくら威張っても、そこから飛び降りる 事は出来まい。ーやーい。と囃した」とある。Q意気地無 し・臆病・腰抜け・怖がり・小心・腑抜け・女々しい <1123> ら【等】複数の人を軽蔑または親密の気持ちを持って表し、 会話や軽い文章に使われる。〈貴様—〉〈お前—〉〈やつ—〉 宮沢賢治の『注文の多い料理店』に「君、ぼく—は大歓迎 にあたっているのだ」とあり、井伏鱒二の『山椒魚』には 「彼ーは唐突な蛙の出現に驚かされて」とある。「僕—」「わ たし—」のように一人称の代名詞につくとへりくだった感 じになる。そのため、「わたくし」のように改まったことば にはなじまない。また、「同氏—の協力のもとに」「田中氏 ー五名を派遣する」のように、敬意を表す「氏」の下に付け る用法には違和感を覚える人も少なくない。ひがた・たち・Q ども ラーメン醤油味などのスープにゆでた麺を入れ、焼き豚・鳴 戸巻・野菜などを入れた中国風の料理をさし、会話にも文章 にも使われる現代では最も一般的な語形。〈一丁〉への 出前を取る〉の拉(老)麺」の中国語音から。ひしなそば・Q 中華そば ライオンアフリカなどに生息する百獣の王とされるネコ科 の猛獣をさし、会話にも文章にも使われる日常の外来語。 林芙美子の『茶色の眼』に「朝から晩まで部屋の中を、檻 の中のーのように歩いている」とある。鍋子 らいきゃく【来客】訪問客の意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈中〉今日はーがある〉〈突然のー〉へー ライスカレー の応対に追われる自宅や会社などを訪ねる場合などに 用い、観客や乗客に対してはあまり使わない。店の場合も 単に「客」と言うことが多い。また、「客」が人自身をさす のに対し、この語は客がやって来ることに重点があるため、 「が笑う」「が注文する」「が腰を上げる」などと応対 の間中この語を用いるより、二度目からは「客」と言うほう が自然な感じになる。単 近年、レストランなどで用いるようになった、「御飯」の意の外来語。「の上にカレーがかけてある」(レストランで「を注文する」)「このセットには、パンかーがついてくる」「イメージとしては、「御飯」は茶碗に盛り付けた姿、「飯」はどんぶりに入った姿、この「ライス」は平たい皿の上に載った姿がぴったりと合うが、どの形であっても家庭では「ライス」と呼ばない。旅館などでも料理の名称以外に「ライス」という語はほとんど用いないようである。また、「御飯」や「飯」はおかずを含めて全体をさす場合もあるが、「ライス」は米の飯だけをさす。ちなみに、近所のあるドライブインで「御飯」と言って注文したら、「御飯になさいますか、になさいますか」と聞き返されて面くらったことがある。ウエートレスの説明によると、その店では、茶碗に入って出てくる「御飯」はお代わり自由だが、平たい皿に盛ってある「ライス」の場合は、お代わりすると別料金になるのだという。量の少ないのを「半ー」と称する店もある。Q御飯・飯 ライスカレー「カレーライス」をさす古風な和製英語。以前 盛んに使われたが、次第に「カレーライス」のほうが一般的 <1124> ライト となり、その後、会話では単に「カレー」と言うことが多く なって現在に至っている。〈 | の具〉サトウハチローの 『おさらい横町』に「オムスピの味を解せずして牛のゲロの 如きーをたべる」とある。「カレーライス」としばらく併用 されていた時期にはそれぞれの時代の様式が反映し、「カ レーライス」という語形からは、ライスを盛り付けた平たい 皿と別にカレーの入った容器があり、少しずつかけながら 食べる形の料理で、箸休めのためのらっきょうやピクル スの入ったガラスの器が別についてくる形式が連想され、 一方、古風な「ライスカレー」という語形からは、平たい皿 に盛り付けたライスの上にすでにカレーがかけてあり、そ の脇に原則として福神漬けが添えてある形の料理が連想さ れる傾向があった。この語が廃れてしまった今でも、この 古風な語からは古風な料理のイメージが浮かんでくる。 カリー・カレー・Qカレーライス ライト照明の光をさし、会話にも文章にも使われる外来語。 ヘッドーゝヘーを当てるヘーを消す幸田文の『流れ る』に「車の混雑である。ーが綾を織る」とある。ひあかり・ Q照明・灯火・ともし火 らいねん【来年】「今年」の次の年をさし、くだけた会話から それほど改まらない文章まで広く使われる日常の基本的な 漢語。〈ーは下の子が学校に上がる〉〈ーまで延期する〉 〈ーが待ち遠しい〉〈ーのことを言うと鬼が笑う〉高田保 の『若芽の雨』は、モーパッサンが養老院の庭で花壇に小石 をばらばら投げて「ーの春になって雨が降ったら、こいつが みんな芽を出して、小さなモウバッサンが生える」と言った 逸話から始まる。 単明年 らいねんど【来年度】今年度の次の年度をさし、会話でも文 章でも普通に使われる漢語。への予算をあてにする〉 「明年度」ほど改まった感じはない。乃明年度 らいはい【礼拝】仏教で、ひざまずき合掌して拝む意で、改 まった会話や文章に用いられる、古風で硬い漢語。〈本尊を ーする〉ひ参拝・Qれいはい ライバル広く競争相手をさし、会話やさほど硬くない文章 に使われる一般的な外来語。〈永遠の—〉へーどうしの一 戦〉〈宿命のーと対決する〉へーを押しのける〉スポーツ などの争いごとに限らず、選挙で当選を争ったり会社で出 世を争ったりする相手や恋敵などを含め、また、政党・企業 など人間以外にも用いる。ひ競争相手・Q好敵手 らいびょう【癩病】「ハンセン(氏)病」の旧称として、会話に も文章にも使われた漢語。「ーの患者」の不治の病であった ころに不当な差別を受けたため、今は差別語として使用を 控えている。Qハンセン病・レプラ ライブ 生放送や生演奏の意で会話やさほど硬くない文章に 使われる新しい感じの外来語。〈オリンピックを現地から— で送る〉〈日本武道館でーをやる〉〈ーで聴衆が熱狂する〉 の新しい人気歌手の個人音楽会を連想させやすく、クラシ ックの印象は薄い。〈演奏会・音楽会・Qコンサート・リサイタル らいめい【雷名】世間に響き渡っているよい評判をさし、改 まった会話や文章に用いられるやや古風な漢語。〈ーが天下 に轟く〉その分野で有名であることを敬って言うこと が多い。〈高名・Q著名・名高い・有名 <1125> らいめい【雷鳴】雷の鳴る音をさし、主として文章に用いられる漢語。「が夜の静寂を切り裂く》⑩井伏鱒二の『黒い雨』に「往還に出ると、広島市の上空に黒雲が湧き起って」が聞えていた」とある。このような遠雷もあるが、一般にこの語はかなり大きな音を連想させやすい。りかみなり ライン「線」の意で、会話や硬くない文章に使われる外来語。 〈スタートーに立つ〉〈ーをまたぐ〉〈ボールがーの上に落ち る〉巻線 らく【楽】心身ともに安らかで快い様子をさし、会話やさほ ど硬くない文章に使われる日常の漢語。「体がーだ」「ーな 仕事〉へ「に合格する〉〈生活がーになる〉石坂洋次郎の 『颱風とざくろ』に「人間には、橇で雪の坂道を下るよう な、スイスイしたーな暮し方は許されていないのだ」とあ る。刂簡単・Q容易・楽ちん らくえん【楽園】何の苦悩もなく安楽に過ごせる場所をさし、 改まった会話や文章に用いられる漢語。〈地上の—〉〈南の —〉、ひ極楽・Q天国・パラダイス らくご【落伍】同じ目標のもとに一緒に行動している人々に ついて行けずにそこから外れる意で、やや改まった会話や 文章に用いられる、いくぶん古風な漢語。へー者を出す〉 〈予想外の強行軍で途中でーしてしまう〉本来は、遅れて 「隊伍だ」からこぼれ落ちる意なので、「落後」で代用する のはふさわしくない。Q落ちこぼれ・脱落② らくじつ【落日】沈みかけている夕日をさし、主として文章 に用いられる、古風で硬い感じながら詩的な趣をかもしだ す漢語。〈孤城ー〉〈日本海ーの大観〉の串田孫一の『秋の らくだいてん 組曲』に「真紅の—へ向かって駈けて行」く乙女たちを後方 から眺める印象的なシーンがある。なお、「人生の—」のよ うに比喻的に使われることもある。入り日・斜陽・夕陽西 日・夕日・Q落陽 らくせい【落成】工事が完了して建造物がすっかり出来上が る意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈新庁舎のー式〉 〈本社ビルが無事ーする〉〈新館ー記念のパーティーを催す〉 図工事の完了に意識の重点のある「完工」「竣工」に比 べ、新しく建ち上がった建物に中心を置く表現に感じられ、 一般の会話にも比較的現れやすい。Q完工・竣工 らくだい【落第】進級に失敗する意で、会話でも文章でも使われるやや古い感じの漢語。〈昇級試験でーする〉へして原級にとどまる〉今では長期欠席でもしない限り現実に落第する例はまれであり、大学でも卒業できない場合に「留年」という体裁のいいことばに置き換えるため、この語自体の使用頻度が格段に減り、「何をやらせてもだ」などという比喩的な用法を除き、古い感じがしてきた。小津安二郎監督の映画『落第はしたけれど』(一九三〇年)に、子供に「ーって何だい?」と聞かれた学生が、落ち込んでいる仲間の落第生をかばってとっさに「偉い事だよ」と教えたらその子が当人の前で「大学へ行って、小父ちゃんのように偉くなるんだ」と言う滑稽な場面がある。「及第」と対立。 らくだいてん【落第点】及第できない悪い点数をさす漢語で 古い俗称「赤点」の正式名称。〈ーをつける〉小学校や中 学校はもちろん高等学校でも現実に落第するケースが稀に <1126> らくたん なり、大学でも再履修や留年という体裁のいい語でぼかさ れることもあり、現在では主として成績を採点する教師側 の用語という印象がある。専赤点 らくたん【落胆】期待が大きく裏切られすっかり落ち込む意 で、やや改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。入試 にことごとく失敗し、親のーぶりは目を覆うばかりだ〉へさ すがにーの色は隠せない)福原麟太郎の『チャールズ・ラ ム伝』に「(縁談を断ったことが)ラムをーさせるに忍びな かったけれども」とあり、一人称の複数形を用いた恋文がそ の一因だと推定している。がっかり・Q気落ち・失意・失望 らくちゃく【落着】争いなどが片づく意で、改まった会話や 文章に用いられる古風な漢語。ヘこれで一件だヘ揉め 事がようやくーする池田潔の『自由と規律』に「混乱の 波動が収まり、前途にーの見透しがつき」とある。刂解決 Q決着 らくちん【楽ちん】「楽だ」の意で、主にくだけた会話に使わ れるいくぶん古風で俗っぽい語。〈これはー〉(こっちのほ うがよっぽどーだ〉専簡単・Q楽・容易 らくのう【酪農】乳牛を飼育して牛乳や乳製品の生産・製造・ 販売を行う農場経営をさし、会話にも文章にも使われるや や専門的な漢語。〈一家〉〈一の盛んな地域〉ひ畜産・牧畜 らくはく【落魄】「おちぶれる」意で、主として文章中に用い られる古風な漢語。〈一の身〉〈一した姿を見るに忍びな い〉島崎藤村の『破戒』に「あの一の生涯を哀れむと同時 に」とあり、小沼丹の『揺り椅子』には「埃っぽい陸橋を渡 った先の寒寒とした家に一の子爵が住んでいる」とある。 おちぶれる・凋落・転落・Q没落・零落 らくよう【落陽】「落日」の意で改まった文章に用いられ、硬 質の抒情を感じさせる古めかしい感じの漢語。〈秋のーを 浴びつつ高原の散策を楽しむ〉夕日そのものをさす場合 と、その日ざしをさす場合とがある。入り日・斜陽・夕陽は・ 西日・夕日・Q落日 らくるい【落涙】涙をこぼす意で、主に文章に用いられる古 風な硬い漢語。〈はらはらとーする場面もあった〉井上ひ さしの『ブンとフン』に「サンスケ長官はきいてハラハラと ーした」とある。ひQ泣く・涙ぐむ・涙する ラストスパート 鏡争や競泳でゴール直前に最後の力をふり しぼること。会話や改まらない文章で使われる表現。へー でゴール寸前抜き去る》「受験直前のーが効いて合格でき た」「納期が迫りーをかける」のように、一般に、広く最後 の頑張りの意でも使う。スポーツ用語の拡大用法に相当す るが、多用されて比喩性はかなり薄れている。 ち【拉致】当人の意志を無視して強引に連れ去る意で、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈事件〉への現場 を目撃する)の大岡昇平の『俘虜記』に「家財を取りにきた 不運な住民をして帰った」とある。誘拐 らっか【落下】物や人が高い場所から落ちる意で、改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈—物〉〈—速度〉〈垂直に —する〉〈踏みはずして階段の途中から—する〉②テーブル から物が床に落ちる程度の短い距離で使うと大げさに響く。 「墜落」と違い、空中を通って落ちるだけでなく、石が斜面 を転がり落ちるような場合も含まれる。落ちる①・降下・墜 <1127> 落·Q転落 らっかせい【落花生】マメ科の一年草、特にその実をさす漢 語。「ピーナツ」に比べて少し古い感じがあるが、「南京豆」 と違って現在でも使われる。〈一の栽培〉植物として生え ている状態ではふつうこの語が使われ、「ピーナツ」より正 式名称の感じがある。単南京豆・Qピーナツ フッキー運がいい意で、主にくだけた会話に使われる軽い 感じの外来語。〈ーボーイ〉〈欲しい物が手に入ってきよう はーだった〉刂僥倖・幸運・Qつき ラブシン男女の愛の場面をさし、会話や硬くない文章に 使われる外来語。〈ーが見ものだ〉〈ーを見つかる〉〈濃厚 なー〉の芥川龍之介の『歯車』に「写真屋さん、ーって何?」 という女生徒の問いかけが出てくる。本来は映画や演劇な どでの愛の場面。鴻れ場 ラブレター「恋文」の意で会話にも文章にも使われる外来 語。〈ーを言付ける〉〈ーを出す〉の太宰治の『人間失格』に 「女から来たーで、風呂をわかしてはいった男があるそうで すよ」とある。熱烈なファンレターや切望する相手に熱意 を伝える手紙などを比喻的にさす場合は俗語的。専恋文 ラベル 品物の名や製造元、品質、取り扱い上の注意などを 表示して商品に貼り付けたり吊したりする紙片をさし、会 話にも文章にも使われる外来語。〈ーを貼る〉〈ーを剥が す〉現在は「レッテル」よりよく使う。ヒレッテル られつ【羅列】内容や性質や種類や順序などを考慮せず、た だずらりと並べたてる意で、会話にも文章にも使われる漢 語。〈数字の—〉〈単なる—に過ぎない〉の佐藤春夫の『田 らんざっ 園の憂鬱』に「全く無意味な文字がーされて居る」とある。 「列挙」に比べ、軽蔑のニュアンスが伴う。刂列挙 らんがい【欄外】書物などのページで印刷面の周囲の白く空 いている部分をさし、会話にも文章にも使われるいくぶん 専門的な漢語。〈本のーに書き込む〉の「余白」と違い印刷 物について使う。特に比喩的用法もなく、客観的な感じの 語。ひ余白 らんかん【欄干】主に橋の両側に転落防止の目的で設ける装 飾的な手摺りをさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈橘のーにもたれて川の流れを眺める〉縁側の端に付ける こともあるが、この語はすぐに橘を連想させ、特に擬宝珠 の付いた装飾的なものにぴったり合う。身手摺り ランキング人や物の優劣や、大小・新旧や人気・売れ行きな ど、何らかの基準で決定する順位をさして、会話や文章に 使われる外来語。〈ーを発表する〉〈世界ーの上位をキープ する〉〈ーでベストテンに入る〉ヲクラス・グレード・等級・Qラ ンク ランク優劣などによる細かい区分の意で、会話にも文章に も使われる外来語。〈もう一つ上のーをめざす〉〈上位にー される〉「等級」「グレード」「クラス」より細分されたも のをさす傾向があり、個々の順位をさす場合は「ランキン グ」に同じ。クラス・グレード・等級・Qランキング らんざっ【乱雑】秩序がなくばらばらに乱れている意で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈見るからに—な部屋〉〈家 具の並べ方がいかにもだ〉〈ーを極める〉高村光太郎の 詩『道程』に「なる画室の様のもの淋しさよ」とある。鎌 <1128> ランジェリー 倉の小林秀雄邸を訪問した折、初期の『Xへの手紙』で硬い 「陷穽かん」と俗っぽい「しみったれた」を一文に併用する意 図を問うと、この批評家は「要するに、形式が整っていない わけだね、用語がーで」と応じ、「ことばっていうものは、 人間にうまく使えるもんじゃないんですよ」と一般化した。 このように言語や思考などにも用いる。雑然 ランジェリー女性用の一部の下着をさして用いられる外来 語。〈派手なー〉へに金をかける〉のフランス語から入っ た語で、装飾の多い薄地の女性用下着だけをさす。肌襠袢 はや腰巻などの和装の下着はイメージが合わない。薄地の ネグリジェや部屋着をさすこともあるが、いずれにしても おしゃれな感じがある。ひインナー・Q下着・肌着 ランチ「昼飯」の意で主として日常会話に用いる外来語。 〈お子様—〉〈食堂のA—〉の太宰治の『斜陽』に「一のお菜 のハムやソーセージなども、ひょいと指先でつまんで」とあ る。多く食堂の比較的簡単な洋食のメニューなどに見られ、 パン食でも家庭での食事についてはほとんど用いない。和 食やラーメンなどの場合はこの語の語感とイメージが合わ ない。ひお昼・午餐・ちゅうじき・ちゅうしょく・昼餉・昼御飯・ Q昼飯 らんちきさわぎ【乱痴気騒ぎ】大勢の人間が酒に酔ったりし て抑制の利かないほど乱れ騒ぐ意で、主に会話に使われる 俗っぽい表現。〈宴会で皆飲み過ぎてに発展する〉②やか ましい音を立てる「どんちゃん騒ぎ」に比べ、騒音よりも正 常な人間ならしないような行為に及ぶ乱れ方に重点がある。 「乱痴気」は情事に関する嫉妬を意味したらしく、今でも 「痴話喧嘩」をさす例もある。ひどんちゃん騒ぎ ランデブー「デート」の意で戦後よく使われた古めかしい外 来語。〈銀座でーを重ねた昔が懐かしい〉「アペックの 」が「カップルのデート」に座を譲り、現在ではまれに比 喩的に使われることがある程度になっている。刂逢引ぼ・逢 瀬・忍び会い・Qデート・密会 ランドセル小学生の通学用の背負い鞄をさし、会話にも文 章にも使われるオランダ語からの外来語。ぴかびかのー を背負った小学生の壺井栄の『二十四の瞳』に「背中に手 をまわすと、はロポットのような感触で」とある。リディ バック・ナップザック・Q背藪ポリュックサック ランナー「走者」の意の外来語。多く口頭で使う。書きこと ばではふつう「走者」を用いる。二塁ーを返す」り走者 らんび【濫(乱)費】金銭や物品をあまり役に立たないものに まで無計画にたくさん使う意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。「が目に余る」「を慎む」小林多 喜二の「蟹工船」に「水のーを防ぐ」とある。時間や労力よ りも目に見える対象に使う傾向が強い。空費・散財・無駄遣 い・Q浪費 らんぼう【乱暴】①人間の言動などが荒々しく細かい配慮に 欠ける意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。言い 方がだ《ドアをに閉める》〈議論の進め方がだ》② 夏目漱石の『坊っちゃん』に「でーで行く先が案じられ る」とあり、徳田秋声の『縮図』に「僕はこういう海賊みた いなーものです」とある。「ーを働く」「通行人にーする」 のように暴力行為をさす用法もある。児々しい・荒い・荒っぽ <1129> りかい い・がさつ・Q粗暴・粗野・野蛮 ②「強姦」の意を提喻的にぼか した漢語の婉曲の表現。〈女にーを働く〉の「強姦」より も意味を広げてぽかした「暴行」という語をさらにぽかし て衝撃をやわらげた表現。一般に上品な雑誌や全国紙ほど 「乱暴」「暴行」のレベルにとどめ、娯楽紙に近づくほど逆 に「強姦」あるいは「レイブ」と露骨な表現をとる傾向にあ る。弁強姦・Q暴行・レイブ り リース長期の賃貸借契約の意で、会話にも文章にも使われ る外来語。〈—産業〉〈カラーコピーの機械は—でまかなう〉 のレンタルより長期にわたる契約で、それだけ大きな機 械や設備を連想させ、また、専門性の高い用語。専賃貸し・賃 貸・Qレンタル リーダー組織や集団を統率し指揮をとる人をさし、会話に も文章にも使われる外来語。〈格の人間〉〈チームのー〉 〈国のー〉〈ー不在でまとまらない〉の「指導者」に比べ、先 に立って行動するイメージが強い。指揮官・Q指導者 りえき【利益】収入から支出を引いた金額を意味し、会話に も文章にも使われる漢語。〈ーを上げる〉〈ーになる〉〈ー をもたらす〉②辻邦生の『天草の雅歌』に「こんなことをし ていても、互いに何のーもない」とあるように、金銭と無関 係な損得にも使う。「住民のーを最優先する」のように、抽 象的な得を意味する用法もある。収益・得・儲け・Q利潤 りえん【離縁】夫婦の縁を切る意で、会話にも文章にも使わ れる古めかしい漢語。〈ー状〉〈永年連れ添った女房をーす る〉の養子縁組の解消にも用いる語。破婚・ばついち・Q離婚 りかい【理会】ものごとの道理を悟って受け入れる意で、主 として文章に用いられる古めかしい硬い漢語。〈真意をー する〉の三島由紀夫の『仮面の告白』に「私はーした。私が 軍隊に希ったものが死だけだというのは偽わりだと」とあ <1130> りかい る。理解 りかい【理解】物事の筋道や表現内容や相手の気持ちなどが わかる意で、くだけた会話から硬い文章まで広く使われる 基本的な漢語。〈力〉(文意を正しくする〉〈を示す〉 〈に苦しむ〉小林秀雄の『Xへの手紙』に「女は男の唐 突な欲望をーしない、或はーしたくない」とある。刂理会 りかん【罹患】病気にかかる意で、主に文章に用いられる専 門的な雰囲気の漢語。〈の割合〉〈者の増加〉罹病 りきし【力士】相撲取りの意で、いくらか改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈勝ちー〉〈控えー〉〈幕内ー〉〈両 ーの入念な仕切りが続く〉「相撲取り」に比べ、正式な感 じがあり、上位の力士を連想しやすい。もと、力の強い男 の意。刂Q相撲取り・関取 りきせつ【力説】力をこめて強く訴える意で、やや改まった 会話や文章に用いられる漢語。〈独自の考えを—する〉(こ の点を特にーしておく)の「声を大にしてーする」に象徴さ れるように、相手を説得するために力をこめる点に中心が ある。ひ言い張る・Q強調・主張・提言 りきりょう【力量】ものごとを巧みにこなし、それをなし遂 げる能力の程度の意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈ーを試す〉〈ーが問われる〉〈ーの程が知れる〉 の幸田文の『おとうと』に「自分のーなりになんとかうまく やってきて」とある。「技量」に比べ、統率力・実行力などを 含む総合的な実力を連想させる。児腕②・腕前・技量・Q手腕 りく【陸】地球の表面のうち水に覆われていない部分をさし、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる漢語。〈ー 続き〈遠くにーが見える〉〈海からーに上がる〉空 「海」と対立。陸上・陸地 りくじょう【陸上】陸地の上をさし、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈ー競技〉〈ー自衛隊〉〈ー輸送〉『海上』「水 上」と対立。ヲ地上・陸・Q陸地 りくち【陸地】「陸」の意で、会話にも文章にも使われる漢語。 〈1の面積〉〈1から遠ざかる〉海や湖や川などとはっき り区別する意識で使う傾向がある。横光利一の『春は馬車 に乗って』に「朝毎に、彼は海面から頭を擡げる新しい1の 上を素足で歩いた」とあり、広がりを意識させやすい「陸 に比べ、地面の感触とつながる感じもある。Q陸・陸上 りくつ【理屈】きちんと筋道の通った考えをさし、会話や軽い文章に使われる日常の漢語。〈ーをこねる〉〈ーを並べる〉〈一往ーが通る〉〈そうそうー通りには運ばない〉〈ー抜きに楽しめる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「金や威力やーで人間の心が買える者なら、高利貸でも巡査でも大学教授でも一番人に好かれなくてはならない」とある。「ーっぽい人」「ーを並べる」「ーだけは一人前だ」のように、日本の社会では理屈に偏ると敬遠される傾向がある。こじつけるだけの「尻「理屈」はもちろん、この語はそういう軽蔑のニュアンスが伴いやすく、「道理」「理論」「論理」に比べてマイナスイメージが強い。尻道理・Q理論・論理 げん【俚言】民間で日常使われる地方色の強い俗語をさし、 主に文章中に用いられる古風な漢語。〈ーを収集する〉方 言のうちの日常語彙をさすこともある。体系的な「方言」 に比べ、個々の単語を問題にすることが多い。Q里言葉・方 <1131> 言 りこう【利(悧)口(巧)】聞き分けがよく賢い意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈おーさん〉〈な子供〉「に 立ち回る」のように、要領がよく抜け目のない意にも使わ れ、時にずるい感じを与える。夏目漱石の『坊っちゃん』に 「な顔はあまり見当らない」とある。り利発 りこう【履行】約束事などをそのとおり行って責務を果す意 で、改まった会話や文章に用いられる専門的な硬い漢語。 〈契約を—する〉〈契約不—で訴える〉夏目漱石の『坊っ ちゃん』に「此様子では留守中も勝手に御茶を入れましょう を一人でーして居るかも知れない」とあり、大仰な用語で 滑稽感を出している。乃施行・施工・執行・Q実行・実施・遂 行・施行 サニ・施工 りこん【離婚】夫婦が婚姻を解消する意で、会話にも文章に も使われる正式な感じの漢語。〈協議—〉〈—率が高まる〉 〈—の噂がちらほら〉〈性格の不一致による—〉〈—の手続 きに入る〉乃破婚・ばついち・Q離縁 リザーブ予約して自分用に取っておいてもらうことをさ し、会話や軽めの文章に使われる外来語。〈個室をーする〉 〈席をーする〉ひ予約 りさい【罹災】火災や水害や大地震などの災害、あるいは戦 争による人災に遭う意で、主として文章に用いられる専門 的で硬い漢語。〈ー者〉〈ー地〉〈ー状況を調べる〉刂遭難・Q 被害・被災 りざい【理財】財産や金銭を有利に運用する意で、改まった 会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈十に明るい〉 リズム にたける》「学」など「経済」の意に使えば古めかしい感じに響く。経済 リサイタル 独唱や独奏を聴かせる会をさし、会話にも文章 にも使われるやや専門的な外来語。ヘピアノーへを開 く「コンサート」以上にプロ的な高い技術を期待させ る。リ演奏会・音楽会・Qコンサート・ライブ りざや【利鞘】買値と売値との差額や、資金調達時と貸し出 し時の利率の差などによって生ずる利益をさし、会話にも 文章にも使われる専門的な表現。〈ーを稼ぐ〉その道の玄 人筋のこなれた用語という雰囲気があり、「差益」ほど正式 な感じはしない。Q差益・マージン りし【利子】貸し金や預金に対して一定の利率で支払われる 金銭をさし、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢 語。へがつく〈低金利でーが減る〉②日常的な「利息」に 比べ、金融機関などで一般に使われている雰囲気がある。 金利・Q利息 りじゅん【利潤】金銭的な利益をさして、主に文章中に用い られる、やや専門的な漢語。〈ーを追求する〉〈ーを上げる〉 〈ーを分配する〉②小林多喜二の『蟹工船』に「その石炭が 巨大な機械を、資本家の「」のために動かした」とある。 収益・得・儲け・Q利益 リズム 音楽や詩歌などの周期的に起こる音の長短・強弱を さし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常 の外来語。〈ーがある〉〈ーを取る〉〈軽快なーに乗って〉 〈七五調のー〉②「天体運行のー」「生活のー」のように、単 に規則的に繰り返される意を表す比喻的用法もある。刂律 <1132> リそう 動 りそう【理想】考えうる範囲での最良・最高の完全な状態をさ し、会話にも文章にも広く使われる漢語。〈像〉〈を掲 げる〉〈ーを追い求める〉〈ーの社会〉〈ーの恋人〉小林秀 雄の『ゴッホの手紙』に「現実という石の壁に頭をぶつけて 了った人間に、どうしてあれこれのーという様なものが必 要であろうか」とある。実現性を欠く「空想」とは違い、目 標として努力できる点で区別される。空想 りそく【利息】「利子」の意で、くだけた会話から文章まで幅 広く使われる日常の漢語。〈分〉へが高くてばかになら ない少し正式な感じの「利子」に比べ、日常会話でよく 使われ、「で暮らす」などとも言うが一般に特に融資を受 ける側が用いる傾向がある。福原麟太郎の『チャールズ・ラ ム伝』に「本を返すとき、書き込みというをつけてくれ る」という比喻的な用例が出る。刂金利・Q利子 りつあん【立案】発案の内容を具体化して計画を立てる段階 をさし、改まった会話や文章に用いられる、やや専門的な漢 語。〈ー者〉〈計画ー〉へーから実施まで〉児発案 りつこうほ【立候補】選挙に際し候補者として自ら名乗り出 る意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーを決意する〉 〈選挙にーする〉〈ーを締め切る〉ひ出馬 りっしゅん【立春】節分の次の日で暦の上で春の始まる日を さし、会話でも文章でも広く使われる漢語。〈ーが近づく〉 〈ーも過ぎて〉②中谷宇吉郎に『立春の卵』と題する作品が ある。立春の時に卵が立つという噂に、「春さえ立つのだ から卵ぐらい立ってもよかろう」と茶々を入れながら、卵と いうものは立つ形をしていることを立証し、「何百年もの 間、世界中で卵が立たなかったのは、皆が立たないと思って いたからである」と人類の盲点を指摘する科学随筆である。 りっしょう【立証(證)】事柄の有無や正当性などを証拠をそ ろえて証明する意で、学術的な話題の会話や文章に用いら れる専門的な硬い漢語。〈犯行を—する〉〈無罪を—する〉 〈因果関係の有無を—する〉ひ検証・実証・Q証明・論証 りっしょく【立食】立って食べる形式をさして会話にも文章 にも使われる新しい漢語。〈ーパーティー〉〈会はー形式で 行う〉の行為よりも食事会などの形態をさすことが多い。 り立ち食い りつどう【律動】「リズム」の意で主に文章中にまれに用いられる美的で古風な漢語。〈快いーが伝わる〉現代では、 「肉体のー」「生命力のー」のように周期的な反復運動を意味する比喩的な用法のほうがむしろ例が多い。リズム りっぱ【立派】堂々としていて見事な意で、くだけた会話か ら硬い文章まで幅広く使われる漢語。〈な建物〉〈な行 い〉〈な心がけ〉〈なにやってのける〉夏目漱石の『坊 っちゃん』に「教頭丈に下宿はとくの昔に引き払ってな玄 関を構えて居る」とある。外見から判断できる精神的なあ り方や態度についても使える。なお、「あそこまで横着を きめこめばなもんだ」のように、呆れた気持ちを皮肉に 表現することもある。Q偉大・偉い①堂々・見事 りっぷく【立腹】腹を立てる意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈大いにーする〉〈ごーの御様子〉⑦井伏鱒 二の『集金旅行』に「かんかんにーしている」とある。呂怒 <1133> り・Q腹立ち りてん【利点】物事の他に比べて有利なところ、ブラスに働 く点をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へーを生か す)〈数々のーが認められる〉価値を問題にする「美点」 や「長所」と違って人間については使わず、プラスになるか マイナスになるかという尺度が中心。長所・取り柄・美点・Q メリット りにん【離任】任務を離れる意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。〈このたびーすることになりました〉 「着任」と対立。刂辞任・Q退任 りねん【理念】行為・事業・計画・主義などの根底にある考えを さし、改まった会話や硬い文章に用いられる漢語。〈基本 ー〉〈教育ー〉〈政治ー〉〈民主主義のー〉本来は、経験と いうものを超越して完全に理性のみによって考えられる理 想的概念をさす哲学用語。Q概念・観念 りはつ【利(悧)発】才知があり理解の早い意で、やや改まっ た会話や文章に使われる、やや古風な感じの漢語。へ見るか らにーそうな子)の「利口発明」の短縮形。樋口一葉の『十 三夜』に「物の道理を心得た、—の人」とある。「利口」が 年齢に関係なく使われるのに対し、この語は子供に対する 評価にほぼ限られる。専利口 りはつ【理髪】(主に男性の)髪を切りそろえ形を整える意で、 改まった会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈一師〉 〈一店〉〈一の技術〉の「散髪」に比べ、店で専門の理容師が 行う場合に限られる雰囲気がある。散髪・整髪・Q調髪 りびよう【罹病】病気にかかる意で、主に文章に用いられる リめん 硬い漢語。 〈—率〉〈—者数〉 刂罹患 リビング洋室の居間をさし、会話でも文章でも使われるよ うになった新しい感じの日常的な外来語。〈明るいー〉へー でテレビを見て過ごす)洋室の場合に使われる名称。同 じ機能でも和室の場合は「居間」と呼んで区別する傾向が ある。Q居間・居室・茶の間 リベート支払い金の一部を報奨金として割り戻す意、また は、手数料の意で、会話にも文章にも使われる外来語。へー を受け取る〉(かなりのーを取る)支払い金の一部を担当 者や仲介者への謝礼として渡す場合もあり、手数料と銘打 たないと賄賂の性格を帯びる。紐袖の下・鼻薬・Q賄賂 りべつ【離別】わけあって親しい人と別れる意で、主に会話 に使われる硬い漢語。〈幼時に父とーする〉〈深い事情があ ってーする〉②二度と会えないかもしれない長期間の別れ を連想させ、「別離」以上に特別な、あるいは深刻な事情が あるような雰囲気が漂う。そのためもあって、「夫とーす る」のように離婚の意でも使われ、単に「離別」として婉 曲に離婚を表す用法もある。Q別離・別れ・別れる りべん【利便】利益があって便利な意で、主として文章中に 用いられる硬い漢語。〈通勤のーを図る〉〈使用者のーを最 優先する〉場所や物についても使う「便利」と違い、利便 性といった抽象的な意味合いで用いる。尊重宝・Q便利 りめん【裏面】物や事柄の表に出ない側をさし、改まった会 話や文章に用いられるやや硬い漢語。〈—工作〉(なめらか な表面とうらはらに—は肌理が粗くざらざらしている)の 「表面」と対立。裏 <1134> リゃくす りやくす【略す】形を簡単にしたり一部を除いたりして全体 を簡略にする意で、会話にも文章にも使われる語。〈漢字を ー〉〈敬称をー〉〈前文をー〉〈経緯はー・して結論を述べ る〉刂割愛・Q省略・省く りやくそう【略装】略式の服装の意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈式にーで参列する〉②衣服自体を連想 させやすい「略服」に比べ、それを着用した姿に重点を置い た表現。単普段着・平服・Q略服 りやくふく【略服】略式の服装の意で、改まった会話や文章 に用いられる漢語。〈ーで式に臨む〉タキシードやモーニ ングといった儀式などにふさわしい正式の服装である「正 装」ほど改まらない服装という意味であり、まったくの平服 よりは改まった服装、男性であれば黒っぽいスーツにネクタ イを着用した程度の服装が期待されている。「略装」に比 べ、着用する衣服そのものに重点を置いた表現。弁普段着・ 平服・Q略装 りゆう【理由】なぜそうかを示す根拠をさす漢語で、「わけ」 より改まった場面での会話や文章など幅広く使われる一般 的な日常語。〈反対のーを述べる〉へいかなるーがあろう と〉〈離婚のーを知りたい〉福永武彦の『夏の花』に「幾 つものーが思い浮んでは泡沫がたのように消えた」とある。 Q事由・わけ りゆうい【留意】神経を注ぎ心にとどめる意で、改まった会 話や文章に用いる、やや硬い感じの漢語。〈一点〉〈健康に ーする〉〈衛生面へのーが求められる〉具体的なある点に 関してよく使う「注意」に対して、広い範囲や抽象的な対象 について使う傾向が見られる。注意 りゅうがく【留学】よその土地、特に外国に長期滞在して学 問や技芸などを学ぶことをさし、会話にも文章にも広く使 われる日常の漢語。〈ー先〉〈ー生〉〈ー制度〉夏目漱石の 『倫敦塔』は「二年の—中只一度倫敦塔を見物した事があ る」という一文で始まる。「内地」のようにまれに国内に も使うが、ほとんどは海外の例である。鳥遊学 りゅうかん【流感】「流行性感冒」の略語で、主に日常会話で の使用頻度が高い。「が広がって学級閉鎖になる」もイン フルエンザ・Q流行性感冒 りゆうき【隆起】高く盛り上がる、特に、広範囲の土地が少 しずつ持ち上がることをさし、改まった会話や文章に使わ れる漢語。〈海岸〉〈土地がーする〉造山運動によって 引き起こされる現象をさす場合は専門語としての用法。 「沈下」と対立。盛り上がる りゅうげん【流言】事実無根の噂話をさし、主として文章に 用いられる古風な漢語。〈ー飛(蜚)語の類〉〈ーに惑わされ る〉なデマ りゅうこう【流行】一時的にもてはやされ広まる意で、会話 でも文章でも広く使われる日常漢語。〈一の服〉(今年一の 髪形〉(一を追う)小沼丹の『懐中時計』に「今日懐中時 計は一からは見放されているが、その骨董的価値は莫大で ある」とある。ひナウい・Qはやり・はやる・ファッション りゅうこうか【流行歌】ある一定の期間大衆に人気のあった 歌謡曲をさし、会話でも文章でも使われるやや古風な漢語。 〈昔のー〉へーを口ずさむ)小津安二郎監督の映画『東京 <1135> 物語』(一九五三年)のシナリオに、「遠く艶歌師のーが聞え ている」という説明がある。ひ演歌・歌謡曲 りゅうこうせいかんぼう【流行性感冒】インフルエンザの訳 語として使われる、やや専門的で少し古風な漢語。へと診 断される)の略語の「流感」のほうがよく使われる。 Qインフルエンザ・流感 りゅうこうびょう【流行病】伝染病の意の古い言い方で、古 い時代を扱った小説などに使われる漢語。「による死者の 数」「流行り病いま」ほどの時代性は感じられない。児疫 病・感染症・Q伝染病・流行り病 りゆうせい【流星】地球の引力で大気圏に突入した宇宙空間 の微粒子が摩擦で発光しながら落下するものをさし、改ま った会話や文章に用いられる専門的な漢語。〈群〉専星 ・Q流れ星・ほうき星 りゅうちょう【流暢】ことばがよどみなくすらすらと出てくる様子をさし、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。〈英語をーに話す〉〈外国人とは思えないーな日本語〉谷崎潤一郎の『蓼喰う虫』に「仏蘭西語も独逸語もーに話した」とある。「なめらか」がネイティブのような自然さを連想させやすいのに対し、この語はつっかえず言える表現力に重点がある。なめらか りゅうほ【留保】決定や実行を一時的に先延ばしする意で、 主に文章に用いられる専門的な雰囲気の硬い漢語。〈回答を ーする〉〈発表をーする〉児保留 リユックサック遠足・ピクニック・登山などに使う背負い鞄 をさし、会話にも文章にも使われるドイツ語からの外来語。 りょうが 〈ーを背負って山を歩く〉「リュック」と略せば俗っぽく なり会話用。専ディパック・Qナップザック・背裏・ランドセル りよう【利用】その物事の機能や利点を生かして使う意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本 的な漢語。〈廃物ー〉〈ー価値がある〉〈パスをーする〉〈立 場をーして有利に運ぶ〉夏目漱石の『倫敦塔』に出る「交 通機関をー仕様とすると」の例は客観的だが、「コネをーし て就職する」のように悪いニュアンスでも使い、太宰治の 『斜陽』に出る「お母さまは、私をおだましになったのよ。 直治が来るまで、私をーしていらっしゃったのよ。私は、お 母さまの女中さん」の例も同様。「活用」に比べ、自分の利 益のためにというずるい感じに使うこともある。刂運用・応 用・Q活用・駆使 りよう【寮】学校や会社などの共同住宅をさし、会話でも文 章でも普通に用いられる漢語。〈生活〉〈学生〉〈社員 ー〉〈会社のー〉〈ーの決まり〉専宿舎 りよういき【領域】力の及ぶ範囲をさして、やや改まった会 話や文章に用いられる、やや硬い漢語。〈専門—〉〈研究— が違う〉〈広い—にわたる〉②野間宏の『暗い絵』に「自分 の影響力の及ぶ—が拡がってゆくのを確認し」とある。国 際法上の専門語としては、国家の統治権の及ぶ領土・領海・ 領空をさす。一般語としては、専門とする分野の意でよく 使い、物理学という分野における光学、言語学という分野 における音声学といったイメージだが、さらに専門的な狭 い部分をさすこともある。縄張り・範囲・Q分野・領分 りようが【凌(陵)駕】他を追い越してその上に出る意で、主 <1136> りょうかい として文章に用いられる硬い漢語。〈先行企業を—する勢 い〈すでに師を—する実力を身につけている〉き凌ぐ りようかい【了(諒)解】理解した上で納得する意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈暗黙の—〉へーを求 める〉〈上司のーを取る〉梶井基次郎の『愛撫』に「閃光 のようにーした」とある。結果に重点を置く「了承」に比 べ、趣旨を十分に理解するという過程が前提となる。専承 知了承 りようし【漁師】漁をして生活している人をさし、幅広く用 いられる日常の漢語。〈一町〉〈代々ーをしてきた家〉〈一 が海に出る〉の獅子文六の『沙羅乙女』に「夕汐にーが網を 張るように、塙の帰宅を待ち伏せ」という比喩表現の例が ある。口頭では同音語の「猟師」との区別が紛らわしい。 「漁民」よりもその人間をさす感じが強い。専漁夫・Q漁民 りようじ【療治】治療の意の古めかしい漢語で、現代では針 灸しんきマッサージなどに限定的に使われる。〈揉みみー〉(荒 ー)専加療・診療・施療・Q治療・手当て りようしき【良識】社会を構成する人間として当然そなえて いるべき健全な判断力をさし、やや改まった会話や文章に 用いられる漢語。へーをそなえた社会人〉へーある行動を望 む〉〈市民のーに訴える〉の「常識」より高度で、知識より 善悪の判断に中心がある。伊藤整の『組織と人間』に「文化 的事業をーによって行っている」とある。単常識 りようしゃ【両者】両方のものの意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈ーの激突〉〈ーの言い分が食い違 う〉〈ーの関係を強化する〉「両人」や「両名」と違い、 人だけでなく人を成員とする国や組織などにも使うが、人 間を離れて単なる物や事柄をさすには少し抵抗がある。 双方・両人・両方・Q両名 りようしゅう【領収】代金などを受け取る意で、主に文章に 用いられる、改まった感じの漢語。〈ー書〉〈ー済み〉〈先月 分の賃貸料をーする〉Q查収・受領 りようしゅうしょ【領収書】代金を確かに支払ったという証 明になる書付をさし、会話にも文章にも使われる、正式な 感じの漢語。〈ーを発行する〉〈ーを書いてもらう〉図レジ スターで印字した簡単なものは含まない傾向がある。受 け取り・受領証・Qレシート りようしょう【了(諒)承】先方の報告や要求などをよしとし て認める意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 「済み」〈ーを得る〉〈すでに当人もーしている〉「了 解」に比べ、理解過程よりも認めるか否かという結果に重 点がある。単受諾・承知・承認・納得・認可・容認・了解 りようじよく【凌(陵)辱】相手のブライドがずたずたになる ほど辱める意で、主に文章中に用いられる古風で硬い漢語。 「の限りを尽くす》中島敦の『李陵』に「匡では暴民の ーを受けようとし」とある。相手が女性の場合は「暴行」の 間接表現ともなる。Q侮辱・侮蔑 りょうしん【両親】父と母という両方の親の意で、会話にも 文章にも使われる漢語。〈ーに大事に育てられる〉へ相次い でーと死別する〉へーも宜しくと申しております〉父母す なわち親という一つの存在という意識で扱っている感じが 強く、「二親はた」に比べ、片親ではないという意識が前面に <1137> 出ていない。 ひちちはは・Q一親・父母 りようしん【良心】道德的な善悪の判断がつき天に恥じない 行為をしようとする心の動きをさし、会話にも文章にも使 われる漢語。〈ーに従う〉・〈ーがとがめる〉へーの呵責かに 耐えかねる〉へーが麻痺する〉夏目漱石の『こころ』に 「私のーは其度にちくちく刺されるように痛みました」とあ る。積極的な「正義感」に対し、悪いことをしないという消 極的な部分まで含む。Q正義感・道德・倫理 りようする【領する】自分の所有として占める意で、改まっ た文章で時に使われる、古風で文体的レベルの高い硬い感 じのことば。「一国を」大岡昇平の『野火』に「悲しみ が私の心をー・していた」とあり、北杜夫の『幽霊』にも「意 味ありげな錯覚が、あたかも酩酊のように僕をー・した」と ある。いずれも翻訳調の文体で客観的な筆致を印象づける 方向で働く。専治める りようち【領地】昔、貴族や大名などの領主や寺社の所有す る土地をさし、会話にも文章にも使われる古風な漢語。へー を与える〉へーを没収する〉広く「領土」の意に使うこと もある。刂領土 りようて【両手】両方の手や腕の意で、会話にも文章にも使 われる日常語。〈ーでしっかりつかむ〉へーがふさがってい る〉き諸手 りようてい【料亭】座敷で日本料理を提供する高級な料理屋 をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈取引先のお偉方 を一流のーに招待する〉へーの女将おか〉乃待合・料理屋 りようど【領土】領有している土地の意で、会話にも文章に リょうめい も使われる、やや改まった感じの漢語。〈北方ー〉〈日本固 有のー〉〈他国のーを侵す〉国家主権の及ぶ全区域をさす 場合と、領域の中心となる陸地の部分をさす場合とがある。 佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「紫色のーが、緑色のーを見る 見る片はじから侵略して行く、と、うすれ日はだんだんと 明るくなって来る」とある。単国士・Q領地 りようにん【両人】両方の人の意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い漢語。〈御—〉〈ーを呼んで事情を聞く〉 〈ーに言い渡す〉刂双方・両者・両方・Q両名 りようぶん【領分】勢力の及ぶ範囲をさし、会話やさほど改 まらない文章に用いられる漢語。〈心理学の—〉〈子供の— に属する〉〈他人の—を侵す〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「勘太郎は四つ目垣を半分崩して、自分の—へ真逆様に 落ちて、ぐうと云った」とあるように、本来は領有する土地 を意味したが、現在は「分野」に近い抽象的な意味合いで使 うことが多く、「分野」より少しくだけた感じがある。刂縄 張り・分野・Q領域 りようほう【両方】二人とも、二つともの意で、くだけた会 話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。 〈一欲しい〉へとも譲らない〉へとも捨てがたい〉〈月曜 と火曜はー予定が入っている〉類語の中で最も広く、人・ 組織・物・事柄・時・方向など何にでも使える。「一方」「片 方」と対立。Q双方・両者・両人・両名 りようめい【両名】「両人」の意で、改まった会話や文章に用 いられる漢語。〈田中・加藤の—〉へ—の者〉へ—に告ぐ〉 「両人」以上に正式な雰囲気があり、上位者の視点が感じら <1138> リょうやく れる。 ♬双方・両者・Q両人・両方 りようやく【良薬】効き目のある薬をさし、主として文章に 用いられる古風な漢語。〈は口に苦し〉〈を得て快方に 向かう〉「秘薬」や「妙薬」よりも広く、効能さえあれば 市販の薬や家庭で簡単に作れるものも含む。ひ秘薬・Q妙薬 りようゆう【僚友】職場や軍隊などで一緒に行動している仲 間をさし、主として文章に用いられる硬い感じの漢語。〈 との交際〉〈に助けられる〉大岡昇平の『俘虜記』に 「が一人でもとなりにいたら、私は私自身の生命のいかん にかかわらず、猶予なく射っていたろう」とある。ひ仲間 りようよう【両用】両方の目的に使える意で、会話にも文章 にも使われる漢語。〈水陸ー車〉〈遠近眼鏡〉ひ両様 りようよう【両様】両方の様式の意で、改まった会話や文章 に用いられる古風な漢語。〈和戦ーの構え〉ひ両用 りようよう【療養】病気を治療し体を休めて保養する意で、 会話にも文章にも使われる漢語。〈生活〉〈転地〉福 永武彦の『風花』に「武蔵野を吹き渡る寒い風が、所の外 気小舎を取囲む松林の梢を渡って」とある。「保養」や「静 養」に比べ、治療を兼ねた静養というニュアンスが強い。 静養・治療・保養・Q養生 りようり【料理】食品の材料を切ったり煮たり焼いたり味をつけたりしておいしく食べられるようにする意で、会話にも文章にも広く使われる日常の漢語。〈手〉〈家庭〉〈人〉〈教室〉井上ひさしの『日本亭主図鑑』にフランスーは繊細で、そこがデリケートなわたくしの舌に適う」とある。「調理」と違い、「郷土」「中華」「鍋」 のように、出来上がったものの種類などをさす用法もある。 刂調理 りようりつ【両立】二つの事柄を両方うまく成り立たせる意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈勉強とスポーツの を図る〉〈仕事と家事を立派に—させる〉夏目漱石の『野 分』に「音楽会と自分とは到底—するものでない」とある。 道楽と仕事のように、楽しむことと金儲けといった困難な 組み合わせの場合に話題になる。専共生・共存・併存・Q並立 りようりや【料理屋】客室を設け、客の注文に応じて日本料 理を出す店を広くさし、会話にも文章にも使われることば。 へーの二階でクラス会を開く》「料亭」ほどの高級感を感 じさせない。専割烹・小料理屋・待合・Q料亭 。力人【旅館】旅行者などの宿泊を業とする建物をさし、 会話でも文章でも広く使われる日常漢語。〈温泉—〉への 女将おか〉へに泊まる〉への離れをとる〉の川端康成の 『伊豆の踊子』に「崖にしがみついたような小さなー」とあ る。基本的なイメージは、日本建築で客室も原則として和 室、池つきの和風庭園が望める場合もあり、夕食と翌日の 朝食の代金が宿泊代に含まれることが多い。しかし、自宅 でベッドに寝る習慣の日本人が増えるにつれて、現実には ベッドつきの洋室を備える旅館が多くなり、バス・トイレつ きの部屋を備える場合も増えている。ヲQホテル・宿・宿屋 りよくちゃ【緑茶】煎茶・抹茶など緑色を保つお茶の総称とし て、会話にも文章にも使われる漢語。〈羊羹が何には濃いーが 合う〉の通常は玉露や番茶を除く中級の煎茶をさす。ヲ上が り・お茶・玉露・Q煎茶・茶・日本茶・番茶・碾き茶・焙雑じ茶・抹茶 <1139> りよこう【旅行】楽しむために一時的に自宅を離れて遠くに 出かけ、あちこち見て回る意で、会話にも文章にも使われ る漢語。〈修学—〉〈新婚—〉〈観光—〉〈海外—〉小沼丹 の『炉を塞ぐ』に「から帰って天狗の家に行ったら、諏訪 から届いた自在鉤が部屋の片隅に転してあった」とある。 古風で優雅な「旅」より日常一般によく使われる。 りよこうかばん【旅行鞄】旅行用の鞄の総称として、会話に も文章にも使われる漢語。〈大きなーをぶら下げて旅に出 る〉のポストンバッグ・トランク・スーツケースなど。ひスー ツケース・Qトランク・ポストンバッグ りよひ【旅費】旅行にかかる費用をさし、会話にも文章にも 使われる漢語。〈出張—〉へーを申請する〉へーがかきむ〉② 二葉亭四迷の『平凡』に「だけ都合して貰いたい」とあ る。交通費のほか宿泊費なども含む。交通費 りりしい【凜凜しい】きりりと引き締まった感じをさし、や や改まった表現として用いられる語。へー立ち姿〉へー顔立 ちの若者)井伏鱒二の『さざなみ軍記』に「みなみなの ー・き風貌に接し本懐の至りである」とある。このような感 じは女性の場合でもありうるが、この語は男性を連想させ やすい。みきりっとした・きりりとした・Q凜とした りりつ【利率】元金に対する利息の割合の意で、会話にも文 章にも使われる漢語。〈—がいい〉〈—が下がる〉金利 りれき【履歴】経歴のうち学歴や職歴の部分をさし、改まっ た会話や文章に用いられる正式で事務的な感じの漢語。〈— 書を提出する〉〈—に傷がつく〉夏目漱石の『坊っちゃん』 に「—なんか構うもんですか。—より義理が大切です」と りんし ある。 ひ経歴 りろ【理路】考え方や話・文章の筋道をさし、やや改まった会 話や文章に用いられる漢語。〈—整然と説く〉〈—整然とま では行かぬが、何とか筋は通る〉③三島由紀夫の『潮騒』に 「もちろんこれほど—整然とではなく」とあるように、ほと んど「—整然」の形で用い、単独ではあまり用いない。 条理・Q筋道 りろん【理論】個別の事象を統一的に考察・説明するために体 系的に組み立てた法則的仮説をさし、会話にも文章にも使 われるやや硬い感じの漢語。〈相対性—〉〈—を構築する〉 〈なかなか—通りには行かない〉〈新しい—をふりかざす〉 ②小林秀雄の『Xへの手紙』に「どんな細かな—の網目も平 気でくぐりぬける」とある。「実践」と対立。専道理・理屈・Q 論理 りんかく【輪郭(廓)】対象とその周囲とを分かつ境界線やそ れを示す縁取りをさし、会話にも文章にも使われる漢語。 〈体の—〉〈物の—を描く〉〈木々の—がぼやける〉小川洋 子の『夕暮れの給食室と雨のプール』に「横顔の—は、その 闇の奥へ吸い込まれようとしていた」とある。ふふちふち どり・ふり りんげつ【臨月】出産が予定される月をさし、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ーを迎える〉乃産み月 りんざく【隣国】隣の国の意で、やや改まった会話や文章に 用いられる漢語。〈境を接する—〉〈—との交流を深める〉 隣邦 りんし【臨死】死に直面する意で専門語の雰囲気があり、学 <1140> りんじ 術的な文章に用いられる硬い漢語。〈一体験〉実際に死ん だ場合に用いる「臨終」と違い、その状態を経て生き返った 場合に用いる。勇敢え無くなると上がる②・あの世に行く・息が切 れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お 隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・ 死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に 召される・亡くなる・儚なくなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・ 没する・仏になる・身罷る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝 く・臨終 りんじ【臨時】長期継続でも定期的でもなく、その時の必要 に応じて一時的に行う意で、会話にも文章にも使われる日 常の漢語。〈列車〉〈休業〉〈雇い〉〈の措置〉〈 に手伝う〉度だけの場合もある。随時・Q不定期 「臨終」死にかけている時」の意で、比較的改ま た会話から硬い文章まで用いられる漢語。「ごーです を迎える」芥川龍之介の『枯野抄』に「うやうやしく の芭蕉に礼拝した」とある。死を忌む気持ちから、「死 ぬ」という語を避けて、「この世の終わりの時に臨む」とと らえ直した間接表現。勇敢え無くなるとがる②あの世に行く 息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往 生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くた ばる・最期・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と 消える・天に召される・亡くなる・儚くなる・不帰の客となる・不幸 がある・崩御・没する・仏になる・身罷る・脈が上がる・空しくなる・ 藻屑となる・逝く・臨死 りんしょくか【吝嗇家】けちな人をさし、やや古風で比較的 硬い文章に用いられる漢語。〈好人物ながら—の一面もあ る〉けち・けちん坊・Q倹約家・渋い・渋ちん・締まり屋・しみった れ・しわい・節倹家・みみっちい りんせき【臨席】式典や改まった会合などに臨む意で、改ま った会話や文章に用いられる硬い漢語。〈御ーを賜る〉〈受 賞式にーする〉列席 りんとした【凍とした】「凍々ゅしい」に近い意で、やや改ま った文章の中で用いられる、漢語調の硬い表現。〜姿勢を 貫く〜慮度で接する〜泉鏡花の『湯島詣』に「男の、 ー品の可い、取って二十五の少い顔」とある。強く爽やか な響きを感じさせる。どちらかといえば男性的な感じがあ るが、「凍々しい」ほどではない。刂毅然・きりっとした・きり りとした・Q凍々しい りんぼう【隣邦】隣国の意で、主に文章に用いられる古風で 硬い漢語。〈ー諸国と友好関係にある〉隣国 りんり【倫理】人として当然踏み行うべき道をさし、改まっ た会話や文章に用いられる、やや古風で硬い漢語。〈一学〉 〈一規定〉〈一感に欠ける〉夏目漱石の『坊っちゃん』に 「嘘をつくな、正直にしろとーの先生が教えない方がいい」 とある。人間関係や社会秩序を守るための道徳に当たる。 巻義理・正義感・Q道徳・モラル・良心 <1141> るいいご【類意語】「類義語」に同じ。同意語・同義語・Q類義 語 るいぎご【類義語】意味の似ている二つ以上の語の関係をき し、学術的な話題の会話や文章に用いられる専門的な漢語。 への微妙な意味の違いを調べる》の「女子」と「女性」 「ふれる」と「さわる」「しかし」と「ところが」など。「鑑 賞」と「観賞」「配布」と「配付」のように音も同じで意味 の似ている場合は同音類義語と呼び、区別が特に難しく誤 用が起こりやすい。単同意語・同義語・Q類意語 るいじ【類似】互いに共通点があって似ている意で、やや改 まった会話や文章に用いられる漢語。への事件が頻発す る〉〈著しいー性が認められる〉〈粗悪なー品に注意〉〈文 体上のー点〉小林秀雄の『徒然草』に「兼好は誰にも似て いない(略)よく言われる枕草子とのーなぞもほんの見掛け だけの事で」とあり、大岡昇平の『野火』には「過去にーの 情況を探してみたが、無駄であった」とある。Q近似・酷 似・相似・似通う・似る るいすい【類推】類似の例をもとに推量する意で会話にも文 章にも使われる漢語。〈筆跡から—する〉〈過去の事例から —する〉臆測・Q推察・推測・推断・推定・推理・推量・推論・忖度 るいべつ【類別】「分類」の意で主に硬い文章に用いるやや専 門的な漢語。〈文章をジャンルの違いをもとに—する〉〈蔵 ルーペ 書を著者名でーし、五十音順に並べる)分類 るいれい【類例】似たような例をさし、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈—が見つかる〉〈—をあげる〉② 谷崎潤一郎の『痴人の愛』に「あまり世間に—がないだろう と思われる私達夫婦の間柄に就いて」とある。Q一例・作 例・文例・用例・例・例文 ルーキーあるチームに新しく加わった選手の意で、主に会 話に使われる外来語。〈スーパー〉〈期待のー〉〈アンカー にいきなりーを起用する〉原義は新兵の意とされるが、 今ではスポーツ界でよく使う。新入り・新顔・新参・Q新人・二 ューフエース ルージュ「口紅」を意味するおしゃれな感じの外来語。 「赤」という意のフランス語。原語ではむしろ頬紅をさすこ とが多いという。尾崎一雄の『霖雨』に「少し厚いと思わ れる節子の唇が、一の色を失って硝子の向うで妙な形に崩 れた」とある。口紅 ルーズたるんでいて締まりがない意で、会話や硬くない文 章に使われる外来語。〈時間にーだ〉へやることがーだか ら、あてにならない小林多喜二の『党生活者』に「女の 身体検査がーなために(略)女工の身体検査が急に厳重にな り出している」とある。原語の発音は「ルース」に近い。 Q締まりがないだらしない① ルーペ 拡大鏡を意味するドイツ語からの外来語で、会話に も文章にも使われる。〈ーで詳しく点検する〉森鷗外の 『妄想』に「(略)小さい草の花などを見る」とある。折り たたみになっている金属製のものを連想しやすい。Q拡大 <1142> ルール 鏡·天眼鏡·虫眼鏡 ルル決まりの意で、会話にも文章にも使われる外来語。 〈交通ー〉〈ー違反〉〈ーを遵守する〉〈ーを無視する〉 「ー改正」「野球のー」「ーブック」など、特にスポーツの世 界で盛んに使われる。安岡章太郎の『海辺の光景』に「運動 競技のーのごとくに明快」という比喻表現の例がある。 処則規定・規程・Q決まり・規約 るす【留守】外出して家にいない意で、くだけた会話から文 章までよく使われる日常の漢語。〈一番〉〈家をーにする〉 〈ー中に訪ねて来る〉〈ーを預かる〉夏目漱石の『こころ』 に「始めて先生の宅を訪ねた時、先生はーであった」とあ り、小沼丹の『銀色の鈴』には「山とか海に行って何日かー にするときほど、この傾向が強い」とある。会社で席を外 している場合などには使われず、もっぱら家を空けるよう な場合に限られる。少不在 るふ【流布】世間一般に広まる意で、やや改まった会話や文 章に用いられる古風な漢語。「本ぜ」〈民間に—する〉〈略 式の作法が—する〉の大仏次郎の『地霊』に「こういう説も ーせられた」とある。行為が一部の人だけでなく広く一般 に行われるようになる点に中心のある「普及」に対し、一般 化する過程を問題にする感じの表現。広がる広まる・Q普 及・行き渡る ルボ「ルボルタージュ」の意で改まらない文章などに使われ る外来語の短縮形。〈ーライター〉へーにまとめて編集部に 送る)の「ルボルタージュ」より軽い感じのことば。刂探訪 記事・Qルボルタージュ・レポート ルポルタージュ現地で取材した報告記事をさし、少し改ま った会話や文章に用いられる一般的な外来語。〈現地で取材 してーを書く〉の「ルポ」より正式な感じで、「レポート」 よりやや古風。呂探訪記事・Qルポ・レポート らろう【流浪】あてもなくさまよう意で、主として文章に用 いられる古めかしく美化された漢語。「の民」くはてしな いの身」②芥川龍之介の『邪宗門』に「恋がかなわなかっ た御恨みから、俄に世を御捨てになって、唯今では筑紫の果 にして御出でになるとやら」とある。堀辰雄の『大和路』 には「舞台は、アテネに近い、或る村はずれの森。苦しい の旅をつづけてきた父と娘との二人づれが漸っといまその 森まで辿りついたところ」とある。「放浪」と比べ、住む家 もなく帰るべき国もないという孤立感が強い。ひさすらい さまよう漂泊・彷徨・Q放浪 <1143> れい【礼】①人間として守るべき社会生活上の作法の意で、 改まった会話や文章に用いられる、やや古風な漢語。へに かなう〉へを尽くす〉へに始まってに終わる〉ひQ礼 儀礼節②挨拶として頭を下げる意で、会話にも文章にも 使われる改まった漢語。へ起立、ー〉〈全員が一斉に立ち上 がってーをする〉ヲ挨拶・会釈・Qお辞儀・敬礼・最敬礼・目礼・黙礼 ③感謝の気持ちをこめて相手に送る言葉や金品の意で、会 話にも文章にも使われる漢語。へーを言う〉〈厚くおーを申 し上げる〉〈世話になった人にーをする〉夏目漱石の「坊 っちゃん」に「馬鹿にされている校長や、教頭に恭しく御ー を云っている」とある。ひQ謝礼・謝金 れい【例】同種のものの中から他を類推させるために選び出 したものをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使 われる日常の基本的な漢語。〈模範—〉〈一—〉〈具体—〉 ヘーが豊富でわかりやすい〉〈典型的なーを引く〉〈ーを挙 げて説明する〉〈具体的なーで示す〉〈このようなーは珍し くない〉「世間のーに倣う」のように「しきたり」をさし たり、「これまでにーを見ない」のように「先例」をさした り、「ーの場所」「によって」のように、いつも通りの意 で使う用法もあり、夏目漱石の『坊っちゃん』にも「ーの琥 珀のパイプを自慢そうに啣えていた、赤シャツが急に起っ て」とある。「ーの場所」「ーの物」「ーの人」など、露骨に れいかん 言うのを避けてこの語が多用される。Q一例・ケース②・作 例・サンプル・実例・事例・例え・標本・文例・見本・用例・類例・例文 れい【零】プラスとマイナスとの境目の数をさし、会話にも 文章にも使われる漢語。〈一が三つ並ぶ〉〈夜中の—時をま わる〉漢数字が並ぶ際には「三○七」のように「O」とい う記号を使う。ひゼロ れい【霊】死者の魂の意で、主に文章に用いられる硬い漢語。 〈死者のーを弔う〉〈先祖のーを祀ぱる〉〈ーが乗り移る〉 加能作次郎の『世の中へ』に「生きーが(略)小鬼のような格 好をして(略)びょんびょんと飛び跳ねながら」と具体的なイ メージを描く例もある。「山のー」のように、人知で計り知 れない不思議な力をさす場合もある。ひ魂・Q霊魂 れいえん【霊園】広大な公園風の墓地をさし、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈—に眠る〉〈—に詣ぞでる〉 「墓地」より明るい雰囲気があり、しばしば分譲用の墓地の 名称の一部に利用される。ひはかしょ・墓場・墓所・Q墓地 れいがい【例外】原則に当て嵌まらない意で、会話にも文章 にも使われる漢語。へー的な措置へーを認めるへー中の ーだへ社長もーではない夏目漱石の『坊っちゃん』に 「学校には宿直があって、職員が代る代るこれをつとめる。 但し狸と赤シャツはーである」とある。異例・Q特例・破格・ 別 れいかん【霊感】精神の感じ取る霊妙な感応をさし、主に文 章に用いられる古風な漢語。へーを得る〉へーが働く福 永武彦の『草の花』に「ーが潮のように僕に寄せた」とあ る。祈りによってもたらされる神仏のお告げといった宗教 <1144> れいぎ 的な雰囲気が漂い、時に「商法」のようないかがわしい連 想もある。Qインスピレーション・勘・直観・直感・閃き れいぎ【礼儀】社会生活を円滑に営むために人間として守る べき品位ある行動をさし、会話にも文章にも使われる日常 の漢語。〈一作法〉〈一正しくふるまう〉〈一をわきまえる〉 〈一を重んじる〉〈一を身につける〉倉田百三の『出家と その弟子』に「世の中の人は形式とーとで表面を飾って、少 しも本当の心を見せて呉れません」とあり、伊藤整の『氾 濫』には「一という檻」という隠喩表現が出る。単礼①・Q礼 節 れいぎさほう【社儀作法】社会の秩序を維持し人間関係を円 滑に保つために必要な作法をきし、会話にも文章にも使わ れる漢語。〈ーを身につける〉〈ーにやかましい〉の「エチ ケット」「マナー」より重々しく感じる。ひエチケット・行儀・ 作法・マナー・Q礼法 れいけい【令閨】年配者が改まった手紙などの硬い文章でま れに用いる、他人の妻の漢語の敬称。ひいえの者・うちの者・お 上さん・奥方・奥様・奥さん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・妻・女 房・伴侶・ベターハーフ・Q令室・令夫人・ワイフ れいけん【霊験】漢語「れいげん」の比較的新しい読み方。 〈ーあらたかな神〉ひれいげん れいげん【霊験】神仙のもたらす不可思議な御利益をさす 漢語。へーあらたかと評判の神社》の芥川龍之介の『邪宗 門』に「元よりかようなーは不思議もない」とある。「れい けん」の古風な読み方だが、この形もまだかなり残ってい る。それいけん れいこく【冷酷】心が冷たく思いやりがまったくない意で、 やや改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈—無比〉 〈—な目つき〉へ—きわまる処分〉中山義秀の『碑』に 「ぶきみな異相から、非情—な性格を感じるようになった」 とある。「冷淡」よりもひどく人間味に欠ける感じがある。 Q残酷・残忍・薄情・不親切・不人情・冷淡 れいこん【霊魂】肉体に宿って生命活動を支える霊的存在で、 肉体が亡びた後も残るとされるものをさし、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ー不滅〉〈ーが肉体に宿る〉の 河野多恵子の『最後の時』に「なんて所詮、焦立たしさと 口惜しさの塊りみたいなもの」とある。Q魂・霊 れいしつ【令室】年配者が改まった手紙などの硬い文章で時 折用いる、他人の妻の漢語の敬称。ぐー様にはお健やかに お暮らしのことと存じます)いえの者・うちの者・お上さん・奥 方・奥様・奥さん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・妻・女房・伴侶・ ベターハーフ・Q令閨・令夫人・ワイフ れいしゅ【冷酒】普通と違って爛ふをせずむしろ冷やして飲む ほうが味がよいように造った日本酒をさし、会話にも文章 にも使われる、比較的新しい漢語。〈夏は—も悪くない〉 近年はやりだし、口当たりのよさや高級感を売り物にする 商品例が多い。単なる冷や酒をさす場合もある。爛冷ま し・Q冷や酒 れいしよう【冷笑】軽蔑して冷ややかに笑う意で、主に文章 に用いられる漢語。〈地道な努力を—の目で見る〉〈口元に ーを浮かべる〉〈ーを帯びた物言い〉広津和郎の『波の 上』に「無理解な—嘲罵は、傷に塩をつけられるようなも <1145> の」とある。他の類義語があくまで口元の歪みを基本とす るイメージがあるのに対し、この語は相手を蔑む表情や態 度に重点があり、最も冷酷な心を連想させる。ひあざ笑う・ Qせせら笑う・嘲笑 れいじん【麗人】「美人」の意で主に文章に用いられる古風な 漢語。〈男装の—〉ひ佳人・美女・Q美人 れいせい【冷静】一時的な感情に左右されず落ち着いている 意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。へに考え る)「な判断」石坂洋次郎の『若い人』に「淡々水のこ とくな橋本先生の態度」とある。落ち着く・泰然・沈着・平 気・平気の平左・Q平静・平然・悠然・悠々 れいせつ【礼節】礼儀と節度の意で、改まった会話や文章に 用いられる、やや古風な漢語。〈ーを尊ぶ〉〈ーを重んじる〉 〈衣食足りてーを知る〉、礼①・Q礼儀 れいそう【礼装】儀式などに参列する際に身にまとう衣装の 意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。「にて 会に臨む〉ヘーして出かける〉②衣服自体を連想させやすい 「礼服」に比べ、それを着用して装った姿に重点を置いた表 現。正装・Q礼服 れいぞう【冷蔵】飲食物などの品質維持のために低温で貯蔵 する意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。要 1)〈開封後は—のこと〉庄野潤三の『秋風と二人の男』 に「何も—庫に入りに行くんじゃないんだ」と半袖シャツの 男が自分に言い聞かせる場面がある。専冷凍 れいたん【冷淡】他人に対する同情心に欠け冷たい態度で接 する意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈な扱い〉 〈一な態度に呆れる〉(一な仕打ちに腹を立てる)広津和 郎の『波の上』に「彼の姿が、恐ろしくに見えた。僕 らの方へ向って、彼が背中を向けているように見えた」とあ る。「一を装う」のように、熱意や関心を示さない意にも使 う。Q薄情・不親切・不人情・冷酷 れいとう【冷凍】生鮮食品などを凍らせて保存する意で、会 話にも文章にも使われる日常の漢語。〈|庫〉〈|食品〉 〈|保存〉食品の長期保存のほか、生物体の保存や医学的 処置などの場合もある。「解凍」と対立。冷蔵 れいはい【礼拝】「らいはい」のキリスト教式の読み方で、会 話にも文章にも使われる漢語。〈日曜—〉〈堂〉〈一の時 間〉福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「新約の一節 が、その日の一の中で読まれるのを聴きながら」とある。 単参拝・Qらいはい れいはいどう【礼拝堂】キリスト教で教会堂以外に設けてあ る礼拝所をさし、会話にも文章にも使われる漢語。学校の レイプ「強姦」の意で用いる英語からの外来語。〈事件〉 の「強姦」から「暴行」「乱暴」と意味範囲を広げる形で核 心をぼかすのとは別に、語感の利きにくい外国語に逃げる 形で衝撃をやわらげようとした表現。しかし、多用される につれて間接性が薄れ、今では日本語でも意味と直結する 段階に達して、「強姦」と同程度の露骨な表現と化しつつあ り、娯楽紙などで逆に人目を引く表現として利用される。 Q強姦・暴行・乱暴② れいふく【礼服】儀式や格式ばった行事などの改まった場で <1146> れいふじん 着用する衣服の意で、会話にも文章にも使われる漢語。儀 式にはーを着用のこと〉へーに身を包む〉へー着用には及ば ず〉武田泰淳の『士魂商才』に「ーとは、野獣を縛る縄、 危険動物をおとなしくさせるための手かせ、足かせである」 とある。具体的には紋付の羽織袴は、燕尾服やフロック コート、タキシード、モーニングなど。「礼装」に比べ、着 用する衣服そのものに重点を置いた表現。正装・Q礼装 れいふじん【令夫人】年配者が改まった手紙などの硬い文章 で時に用いる、他人の妻の漢語敬称。へーにもよろしくお伝 えいただければ幸甚に存じます)るとは高貴な身分の人 の妻に用いた。ひいえの者・うちの者・お上さん・奥方・奥様・奥さ ん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・妻・女房・伴侶・ベターハーフ・ 令聞・Q令室・ワイフ れいぶん【例文】具体的にわかりやすく説明するために例と して出す文または文章をさし、会話にも文章にも使われる 日常の漢語。「の豊富な辞書〉へを挙げる〉へを掲げ る》辞書では、単語の意味や用法を具体的に示す目的で、 「社員の模範になる勤務態度」「政府の正式見解」のように 一文より小さな単位の例を掲げることが多いが、それを 「例文」と言う場合もある。一例・作例・文例・用例・類例・例 れいほう【礼法】礼儀に関して伝統的に守ってきた作法をさ し、主に文章中に用いられる古風で硬い漢語。「の心得 〈所作がーに適ぶう〉へにのっとって執り行う〉〈繁雑なー をひととおりわきまえる〉「礼儀作法」以上に伝統的な型 やしきたりを強く感じさせやすい。工チケット・行儀・作法・ マナー・Q礼儀作法 れいぼう【冷房】室温を下げて快適にする装置をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈装置〉〈を入れる〉〈 が強過ぎる〉中村真一郎の『遠隔感応』に「私の首もとで は松籟のように、古い都のホテルの装置の音が鳴りつづ けていた」とある。巻工アコン・Qクトラー れいめい【黎明】「夜明け」の意の漢語で硬い文章語。へーを 迎える林芙美子の『放浪記』に「遠くでーをつげる鶏の 声がしている」とある。比喻的に「期」とも言う。鳥暁・ 明け方・曙・朝ぼらけ・朝まだき・しののめ・払暁・未明・Q夜明け れいらく【零落】「おちぶれる」意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い漢語。〈資産家がーする〉草木の枯れる意 から。小沼丹の『藁星根』に、「一時は大きな家に暮した人 間がーしてそのすぐ近くの陋屋に住んでいる、一体爺さん はどんな気持でいるのかしらん?」と思いやる場面が出て くる。Qおちぶれる・凋落・転落・没落・落魄 列車などの車輛の車輪を支え、進行方向を一定に保 つために線路内に設置される鋼鉄製の細長い軌条の意で、 会話にも文章にも使われる外来語。〈車輪が—から外れる〉 〈ーを交換する〉②檀一雄の『花筐』に「は焼刃のように 榭原の視覚と嗅覚にからみより」とある。「線路」と違い、 厳密には金属の部分だけをさす。鉄道のほか、カーテンレ ールやガードレールにも使われる。単線路 れきし歴史人間の社会がたどってきた変遷をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈小説〉まだーが浅い 〈輝かしいーを誇る〉へーの重みを感じさせる 込邦生の 旅の終りに果してここに止まることは、安らかさへの <1147> なかへの休息なのであろうか。ーもなく、ーに鞭うたれる こともなくーとある。易通史・伝統 れきぜん【歴然】はっきりしていて疑わしいところがない意 で、改まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。へーと した事実〉へ実力の差はーとしている〉はっきり・判然・明晰・ Q明白・明瞭 レクチャー「講義」の意で、会話や改まらない文章に用いられる外来語。「ーがある」〈ーを受ける〉「講義」と違い、非公式のものや個人的な場合をさすこともある。読書 レシート領収書、特にレジスターで印字した簡単なものを さし、会話や軽い文章に使われる外来語。ヘレジでーを受け 取る)受け取り・受領証・Q領収書 レストラン洋風の料理店をさし、会話でも文章でも幅広く 使われる外来語。〈ファミリー〉〈高級ーで食事をする〉 海洋食というイメージが強くて、和食や中華料理では雰囲 気が合わず、ラーメンや鰻は注文できない雰囲気がある。 「食堂」より高級感があり、値段も張りそうだ。ヲカフェテリ ア・Q食堂・西洋料理店・洋食屋 レストルーム間接的に「便所」の意をほのめかすことのあ る、英語からの外来語。上品さを競うデパートなどを中 心に使われだしたが、まだ広がりは狭いようである。本来 は「休憩するための部屋」を意味し、漢語の「休憩室」のほ うは「便所」の意味で用いないから、表現を婉曲にする 効果はたしかに大きい。ただし、一般社会でこれで通じる かどうか心もとない面もある。こんなふうに、ことばが伝 達したい対象からどんどん遠ざかるにつれて、その対象を れっこく 忌み、それをストレートに表現することを避けるその人間 の気持ちや性格が相手にそれだけ強く意識される。ことば とともに伝わるのは論理的な情報だけではない。表現の奥 にいる人間の在り方も同時に否応なく伝わってしまう。次 から次へと生まれる間接表現が回りまわって、「便所」とい うストレートな感じの表現のほうが、むしろこだわりなく 伝わる時代に戻るかもしれない。そんなとき、たわむれに 「便どころ」などと粋に読んでみるのも意外に趣があるかも しれない。「便」は必ずしも排泄関係の意味に限定されるわ けではなく、好都合という意味の「便利」の便であり、くつ ろぐという意味の「便衣」「便服」の「便」でもあり、さら に、へつらうという意味の「便巧」の「便」でもあって、か なり多義的だから案外きつくないような気がする。ひおト イレ・廁・閑所・化粧室・御不浄・雪隠・洗面所・WC・手水場・手洗 い・トイレ・トイレット・はばかり・Q便所 れつ【列】一続きに永く連なったものをさし、会話にも文章 にも使われる漢語。〈長蛇の—〉へ—をなす〉へ—に加わる〉 へ—を乱す〉へ—から抜ける〉武田泰淳の『風媒花』に「防 波堤のような三重の(人の)—」とある。行・Q行列 れっきよ【列挙】例や物・事をつずつ挙げて並べたてる意 で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈該当者をーす る〉〈参考文献をーする〉夏目漱石の『草枕』に「佳人の 品評に使用したもの(各国語のことば)をーしたならば」と ある。刂羅列 れっこく【列国】同等の立場で並び立っている主要な国々を さし、主に文章に用いられる硬い漢語。〈ーの大使〉は諸国 <1148> れっしゃ れっしゃ【列車】輸送のために編成する客車や貨車の連なり をさし、改まった会話や文章に用いる漢語。〈貨物—〉へ のダイヤ〉〈特急—の通過待ち〉の小島信夫の『汽車の中』 に「ーが、尻をぶっ叩かれた馬のように、仕方なしにあえぎ 始める」とある。東京近郊では、通常の通勤や通学に用い る山手線や中央線などの短い区間を走るものを「電車」と 呼び、この語は東海道線や中央本線などの長距離電車をさ すことが多い。高齢者の中には昔からの慣用で「汽車」と 言う人もある。その場合の典型的な客席のイメージはボッ クス型であると思われる。汽車・電車 れつする【列する】居並ぶ、参列するの意で、主に改まった 文章に用いられる硬い表現。〈祝賀式典に—〉〈会議の席に —〉迅速なる・Q並ぶ れっせい【劣勢】戦いや試合の争い事で形勢が悪い意で、改 まった会話や文章に用いられるやや硬い漢語。〈戦況はーと 伝えられる〉(ーに立たされる)〈ーをはね返す〉②「不利」 に比べ、前でなく途中での形勢判断に使う例が多い。も不利 れっせき【列席】式典や会合などの席に連なる意で、改まっ た会話や文章に用いられる少し硬い感じの漢語。〈会議に ーする〉〈御ーの方々〉〈各国首脳がーする〉も臨席 レッテル 商品名・製造元・用法などを記して商品に貼り付け る紙片をさし、会話にも文章にも使われる、やや古風なオ ランダ語からの外来語。〈ーを貼る〉〈ーが剝がれ落ちる〉 ②比喩的に、「怠け者のーを貼られる」のように、物事に対 する簡潔な評価、特に主観的な悪い評価をさすこともあり、 その用法には特に古風な感じはない。武田泰淳の『風媒花』 に「好きというだけで、ーが額の正面に、刻印のようにペッ タリ貼りつけられる神経過敏な世の中」とある。込ラベル れっとうかん【劣等感】自分が他より劣っていると思い悩む 気持ちの意で、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。 へーを抱く〉へーを植えづける〉へーにさいなまれる〉込Qコ ンプレックス・引け目 れっとうせい【劣等生】クラスなどの中で成績の劣る生徒を さし、会話にも文章にも使われる漢語。〈クラスで—の部類 に入る〉へーを相手に難しい話をする〉の「優等生」と対立 する語で、成績が悪いが「落ちこぼれ」であるとは限らな い。夢落ちこぼれ れっぷう【烈風】激しく吹きつける風をさし、主として文章 に用いられる硬い漢語。人が吹きすさぶ人に林が鳴 る人風・おおかぜ・Q強風・颶風・時化・疾風・陣風・大風・台風・突 風・はやて・暴風・暴風雨 レディー淑女か女性一般をさし、主に会話に使われる外来 語。〈ーファースト〉〈ーをエスコートする〉の「淑女」のよ うな古風さはないが、少し気障に響く。貴婦人・Q淑女 レディーメード「既製品」の意で会話や軽い文章に使われ る、いくぶん気取った感じの外来語。〈ーのスーツ〉の既 製品」「既製服」のマイナスイメージをやわらげる意図で、 主に衣服関係で使われだして広まった比較的新しい表現。 「オーダーメード」と対立する。児製・吊し・Q出来合い レトリック効果的な言語表現の方法の体系特に、古代 リシャで自らの正当性を主張する実用的な弁論術として発 達した説得の技術の総称として、会話にも文章にも使われ <1149> る専門的な外来語。〈華麗なーを駆使する〉発想・配置・修 辞・記憶・発表の五分科から成るが、時代が下るにつれて第 三部門が中心となり、やがて実質的に表現技法をさすよう になった。文章のうわべを飾る表現上の特殊なテクニック を連想させ、「単なるーに過ぎない」などとまやかしの技術 として軽視された不幸な一時期を経て、現在は有効な表現 法のすべてとして正当に位置づけられている。修辞・Q修 辞学・修辞法・美辞学 レプラ「ハンセン(氏)病」の意で、学術的な会話や文章に用 いられるドイツ語からの外来語。〈ーのクランケ〉及Qハン セン病らい病 レベル 物事の水準・段階・程度をさし、会話にも文章にも使 われる外来語。〈世界でもトップーにある〉〈学力のーが低 い〉〈合格のーに程遠い〉「事務ーで処理する」のような 用法もあり、「水準」に置き換えにくい。乃水準 レポート「ルポルタージ」や調査報告などの文章をさし、 会話でも文章でも広く使われる外来語。〈現地からの—〉の 「ルポルタージ」より軽く現代的。「期末」を提出する」の ように、学校で試験の代わりに提出させる課題報告をさす 用法も多い。刂探訪記事・ルポ・ルポルタージ・Q報告書 れんあい【恋愛】男女が互いに相手を恋い慕う意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈ー結婚〉〈ー感情が芽生える〉 〈二人はー関係にある〉室生犀星の『杏っ子』に「ーはび いるす菌みたいなものだから、いつの間にしていたのやら、 終わったのやら判らないのが本物なのよ」とある。「愛」よ りも狭く、「恋」よりも相互性が高く客観的に見た感じもあ る。愛・Q恋 れんか【廉価】値段の安い意で、改まった会話や文章に用い られる漢語。〈—販売〉〈—本〉〈—にてお頒かち致します〉 ②太宰治の『斜陽』に「本棚の本は、ほとんど—の文庫本の み」とあるが、物を売る側で使う例が多い。Q安価・低価 格・安い れんかん【連(聯)関】「関連」とほぼ同義で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〈各機関が相互にーを取り合 う〉へーがたどりにくい〉へーを保つ〉武田泰淳の『司馬 遷』に「個人の運命ではなく、中心をつくりなす人間のーが 問題にされている」とある。よく使う「関連」に比べて、大 仰な感じがあり、より抽象的で多くの事柄が関わっている 場合を連想させやすい。刂縁①・掛かり合い・関わり・係わり合 い・関係①・Q関連・繋がり れんけい【連係(繋)】互いのつながりの意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ープレー〉へーを保つ〉へーが 取れない〉の「連係」は代用漢字。単連携 れんけい【連携】連絡を取り合って協力しながら行う意で、 会話でも文章でも使われる漢語。「がうまく行く」〈立場 を超えて与野党がーする〉乃連係 れんけつ【廉潔】欲がなく心や行いが清い意で、主に文章に 用いられる硬い漢語。「の士」数少ないな政治家) 「清廉潔白」の意。中島敦の『李陵』に「な将軍」とある。 ひ潔い・高潔・Q清廉 れんこう【連行】権力などを背景に当人の意思を無視して連 れて行く意で、改まった会話や文章に用いられる専門的な <1150> れんこく 漢語。〈容疑者を—する〉特に、警察官が被疑者を訊問 のため警察署に連れて行く場合によく用いる。Q勾引・し よっ引く れんごく【煉獄】カトリックで、生前に小さな罪を犯して悔 い改めないまま死んだ者の霊魂が、罪を償うまで苦しみを 受ける場所をさし、主として文章に用いられる硬い漢語。 〈一の呵責ゆく天国と地獄との間にあるとされる。地獄 れんこん【蓮根】食用になる蓮根の地下茎をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈一をいためる〉東京では「蓮根」と 言うこともある。蓮 れんじつ【連日】その日つきの日と何日も続く期間をさして、 やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈一連夜〉へ の雨〉〈一猛練習に明け暮れる〉〈一遊び歩く〉「毎日」と いうほど日常的でなく、一定期間連続して起こる場合に使 う。ひ日々・Q毎日 れんしゅう【練習】技術をみがくために繰り返し行う意で、 くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる、最も普通 の日常漢語。〈相手〉〈ーをサボる〉〈ーに精を出す〉〈猛 ーの成果〉〈たゆまぬーのたまもの〉〓太宰治の『人間失 格』に「鉄棒のーをさせられていました」とある。「訓練」 より自主性が感じられる。精神面の鍛錬に「修錬」を用い、 技術面を中心とする「習練」にも努力を重ねてというニュア ンスが伴うのに対し、この語は楽しむ雰囲気を含む広い範 囲に適用できる。ひQ訓練・稽古・習練 れんじゅう【連中】「れんちゅう」と同義のより古風な表現。 〈気の置けないー〉〈油断のならないー〉〈ああいうーの言 うことだから〉(あのーときたら何をやらかすか知れない 谷崎潤一郎の『愛すればこそ』に「人の物も自分の物も見 さかいのないーが揃って居りまして」とある。よくない二 ュアンスで使う例が多い。「長唄ー」など、音曲などの一座 をさす用法は専門的。連歌や俳諧などの会の仲間を意味し た「連衆」から出た語という。手合い・やから・れんちゅう れんせつ【連接】複数の観念や言語表現などが前後のつなが りを持って二つのまとまった意味として関連し合うことを さし、改まった会話や文章に用いられる専門的な硬い漢語。 〈一関係〉(文と文とをーする)「接続②」のうち、「動詞 の未然形に接続する」のように、助詞や助動詞の文法的な つながりをさす部分は含まない。接続② れんそう【連(聯)想】ある事柄からそれに関連のある別の何 かを思い浮かべることをさし、会話にも文章にも使われる 漢語。〈雲から人の顔をーする〉へーが働く〉へーが悪い〉 夏目漱石の『草枕』に「深山椿を見る度にいつでも妖女の姿 をーする。黒い眼で人を釣り寄せて、しらぬ間に、嫣然大 る毒を血管に吹く」とある。専想像 れんぞく【連続】一回限りでなく定期的に続ける、短い期間 に続けざまに起こるという意味合いで、会話にも文章にも 使われる日常の漢語。〈|ドラマ〉〈放火事件〉〈身のま わりに不幸がーする〉〈地震がーして起こる〉〈失敗のー だ〉「続行」と違って一回ずつ切れめがある。「継続」に 比べて、起こる事柄どうしの幅が広く、親の死、受験の失 敗、解雇通知、家屋焼失、入院手術といった性格の違うこと が相次いでも「不運のー」などと一括できる。事柄に限ら <1151> れる他の類語と違い、「模様がーする」「境目がなく土地が ーする」のように物に用いる例もある。Q継続・続行・断続 れんたつ【練達】十分な練習を積んで高度な技を身につける 意で、改まった会話や文章に用いられるやや古風な漢語。 〈一の士〉〈弓道にーする〉Q熟達・熟練 レンタル業者が賃貸料をとって物品を短期間貸し出す制度 の意で、会話にも文章にも使われる外来語。ヘーピデオ ヘーの晴れ着で記念撮影するヘしばらくはーで間に合わせ る》刂賃貸し・賃貸・Qリース れんちゅう【連中】仲間の人々をさし、会話や軽い文章に使 われるくだけた漢語。〈学生—〉〈会社の—と一杯やる〉 〈きのう集まった—〉〈あの—のしわざだ〉②不特定多数の 人間ではなく、互いに親しい仲間であったり、何らかの基準 で括べった共通点をもつ人々をさす。親しみや蔑みの感情が こもっている例が多い。小沼丹の『外来者』に「外国人—は 観光バスでやって来る」とあり、「学生にとっては英会話の 練習に絶好の機会なんだろうが、向うの—は一体どんな気 でいるのかしらん?」と続く。Q手合い・やから・れんじゅう レントゲン「エックス線」の意で会話にも文章にも使われる 外来語。〈写真〉〈一の検査〉エックス線を発見したド イツの物理学者の名から。照射線量の強さの単位としても 使う。Qエックス線・放射線 れんばい【廉売】「安売り」の意で、改まった会話や文章に用 いられる硬い感じの漢語。〈特別大—〉、売り出し・セール・叩 き売り・ダンピング・Q特売・投げ売り・バーゲン・安売り れんばつ【連発】すぐ続けて何回も発生する意で、会話にも れんらく 文章にも使われる漢語。このところ自転車の事故が一する 「統発」より短い間隔で何度も起こる感じがある。 「一銃」のように、続けて発射する意や、「質問を一する」 「洒落を一する」のように、続けて何度も行う意でも使い、 その場合は日常語的な感じが強い。群発・続発・多発・Q頻発 れんぼ【恋慕】異性を恋い慕う意で、主に文章に使われる古 風な漢語。〈横」〉への情がつのる)森鷗外の『キタ・セ クスアリス』に「息子にーしている娘」とあり、芥川龍之介 の『邪宗門』には「御平生に似もやらず、三昧に耽って御 出でになりました」とある。Q愛慕・懸想・思慕 れんらく【連(聯)絡】つながりをつける、つながるの意で、 会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈|船〉へを取 る〉へがつく〉へが途絶える〉〈会社にーする〉〈列車の ーが悪い〉遠藤周作の『海と毒薬』に「彼と軍との間をた えずーしているのは第二外科の講師」とある。「接続①」よ り間接的なつながりを連想させ、列車の乗換えでも待ち時 間が長いイメージがある。刂接続① <1152> ろ【炉「爐】床や壁を四角く切って火を焚いて暖を取る設備 をさし、会話にも文章にも使われる古風な漢語。へ辺談 義〉へを切る〉小沼丹に『炉を塞ぐ』と題する随筆があ り、「書斎を建て増したとき、一隅にささやかなーを切って 自在鉤を吊した」と書き出し、「深深と更けて行く夜、ーに 酒を煖めて飲んでいると好い気分で醉心地も申分無かった」 という一節も出る。なお、この語はこのような囲炉裏や暖 炉のほか、「溶鉱ー」「原子ー」のように大がかりなものに も使う。ひQいろり・暖炉 ろう【牢】今の刑務所に相当する施設をさす古い漢語。〈座敷 ー〉〈名主〉〈破り〉「牢屋」は現代でもまれに耳に することがあるが、この語はめったに使われないため、それ 以上に古めかしい感じがする。豊監獄・刑務所・牢獄・Q牢屋 ろうえい【漏洩(泄)】秘密にすべき事柄が外部に漏れてしま う意で、主として文章に用いられる硬い漢語。〈入試問題 事件〉〈組織内の機密をーする〉国家的レベルの公的な機 密や企業などの組織的な機密について用いる傾向があり、 個人的な秘密に使うと大仰過ぎて違和感がある。「ろうせ つ」の慣用読み。帰らす ろうか【老化】年齢とともに肉体の各器官の機能が衰える意 で、会話にも文章にも使われる漢語。〈現象〉が始ま る〉へが進む〉精神的な衰えには「老い」のほうがなじ むこの語は「ゴムが—する」のように、物質が長い間に劣 化する場合にも使える。老い ろうか【廊下】部屋と部屋をつなぐ通常は板敷きの通路をさ し、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の漢語。 「伝いに行く」〈ーに出る〉〈ーの話し声〉の宇野浩二の 『蔵の中』に「重要な点は私の部屋の前でーが曲り角になっ ている事です」とある。②・Q縁側・ぬれ縁 ろうかい【老猶】長年の経験を悪いほうに利用して、抜け目 なくずる賢い意で、改まった会話や文章に用いられるやや 古風な硬い漢語。〈な政治家〉な手段を講じて、なか なか尻尾をつかませないへきわまる政商坂口安吾の 『堕落論』に「陰鬱な陰謀家」とある。多く中高年以上の 人物に用い、時に悪賢いというマイナスの語感を伴う。 孫れ枯らし・世間ずれ・世慣れる・老巧・Q老練 ろうきゅう【籠球】「パスケットボール」の旧称。〈ーの主将〉 パスケットボール ろうく【労苦】肉体的な苦労をさして、主に硬い文章に用い られる漢語。〈ーを重ねる〉〈ーをいとわず〉〈ーを共にす る〉〈ーに報いる〉谷崎潤一郎の『細雪』に「四人の姉妹 のうちで)肉体的ーに堪える点でも(略)雪子が一番であるこ とは自分が保証する」とある。「苦労」と違って、純粋に精 神的な骨折りには使いにくい。単苦労 ろうこ【牢乎】しっかりして動かない意で、主に漢文調の文 章に用いられる古風で硬い漢語。〈ーたる信念〉へーとした 揺るがぬ決意〉ヲ牢固 ろうこ【牢固】堅固の意で、主に文章に用いられる古風で硬 <1153> い漢語。〈ーたる守り〉〈ーとした城〉専牢乎 ろうご【老後】老人になってからの時期をさし、会話にも文 章にも使われる漢語。〈ーの暮らし〉〈ーの楽しみ〉〈ーに 備える〉〈幸福なーを送る〉福原麟太郎の『チャールズ・ラ ム伝』に「引きとって、ーを見てくれることになっていた」 とある。「晩年」と違って年齢の問題でふつう六十代後半以 降のイメージが強い。同じく老年をさす場合でも「晩年」よ り長期間を連想させる。専晩年 ろうこう【老巧】十分に経験を積んで何事にも抜かりがない 意で、会話にも文章にも使われる漢語。へーな役人〉へーな 手腕を発揮する)島崎藤村の『破戒』に「このーな教育者 の為に茶話会を開きたいと言い出した」とある。万事そつ なくこなすイメージがあり、「老猶」のようなずるさはあ まり感じられない。老猶・Q老練 ろうごく【牢獄】今の刑務所に相当する施設をさす古めかし い漢語。〈一につながれる〉〈一の窓〉の芥川龍之介の『歯 車』に「廊下はきょうも相変らずーのように憂鬱だった」と いう比喻表現の例がある。近代的な「刑務所」に比べて、食 事の質も落ち、自由も大幅に制限されている雰囲気がある。 また、「監獄」より古く、いくらか軽い感じもある「牢屋」 よりさらに恐ろしい感じのする語。Q監獄・刑務所・牢・牢屋 ろうし【労使】労働者と使用者の意で、会話にも文章にも使 われる漢語からの略称。〈間交渉〉〈一の歩み寄り〉〈一 の主張の隔たり〉専労資 ろうし【労資】労働者と資本家の意で、会話にも文章にも使 われる漢語からの略称。〈「協調〉〈「紛争〉②「労使」と指 ろうせい 示対象は違うが、同じような文脈で使われるため、会話で は区別が極めて困難である。専労使 ろうじゅ【老樹】主に文章に用いられる古風な漢語。〈山桜の ーが今年も花を着けた》野上弥生子の『哀しき少年』に 「羽の抜け変った大きな鳥のようにうっそうと若やいだその 樫のー」とある。「老木」より若干美化した感じもある。 古木・Q老木 ろうじん【老人】年を取った人をさし、やや改まった感じの 漢語。会話でも使うが、「年寄り」と比べ、親しみや蔑みと いった感情が動かないだけ客観的。〈元気な—〉への生き がい〉の志賀直哉の「暗夜行路」に「は山の老樹のよう に、あるいは苔むした岩のように、この景色の前にただそ こに置かれてあるのだ」とある。ひ高齢者・年寄り ろうじんホーム【老人ホーム】老人の世話をし安楽に生活で きるようにする施設をさし、古めかしい「養老院」に代わっ て現在最もふつうに使われるようになった日常語。「に入 居する」「養老院」より新味があり、「老人養護施設」の ような堅苦しい雰囲気がなく、気軽な感じや親しみやすさ をねらった呼称。Q養老院・老人養護施設 ろうじんようごしせつ【老人養護施設】「老人ホーム」の意の 正式な感じの硬い語。「ーでの生活」薬老院・Q老人ホーム ろうせい【老成】経験を積んで円熟の境地に達する意で、や や改まった会話や文章に用いられる漢語。〈若くしてーして いる〉小沼丹作品集の帯に井伏鱒二は「採りたての松茸」 と評し、「小沼君は人間的にーしているが(略)習作は新鮮で ある」と解説している。ひませる <1154> ろうどう ろうどう【労働】賃金などの収入を得るために頭脳や肉体を 用いて作業を行うことをさし、会話にも文章にも広く使わ れる日常の漢語。〈基準法〉〈組合〉〈条件〉〈肉体 〉〈に従事する〉〈がきつい〉知的職業を含めて用 いる場合は専門語的な色彩を帯びる。生活上は特に肉体労 働を連想する傾向がある。専勤労・働く うどうしや【労働者】肉体や頭脳による労務を提供し、雇 用者からそれに対する賃金を得る立場の人間をさして、会 話にも文章にも使われる漢語。〈階級〉への権利を擁護 する〉小林多喜二の『蟹工船』に「資本家は「モルモット」 より安く買える「」を(略)入り代り、立ち代り雑作なく使 い捨てた」とある。「」のような身なり」のように、古くは 工員などのもっぱら肉体労働に従事する者をさしたが、の ちに差別的な響きが問題になり、現在は事務系の職員や教 員・研究者など組織に属して働くすべての人を含める用語と される。しかし、山田洋次監督の『男はつらいよ』シリーズ で主人公の「寅さん」(渥美清)が裏の印刷工場の工員に向か って偉そうに「諸君!」と言うように、現実には依然とし てすぐ肉体労働者を連想する傾向がまだ残っている。ひ会 社員・勤労者・サラリーマン・勤め人・人夫・ビジネスマン ちうどく【朗読】詩歌や文章をその趣が出るように声の大小 強弱や抑揚や間などに工夫しながら音読する意で、会話に も文章にも使われる漢語。〈詩の—〉〈立って—する〉〈 して聞かせる〉刂音読 ろうねん【老年】年寄りの年齢の意で、やや改まった会話や 文章に用いられる漢語。〈学〉(になっても現役で働 く安岡章太郎の『海辺の光景』に「中年女のとなりにい るのは、の男だった」とある。少年・青年・壮年・中年など と対立するため、他の類義語に比べてその時期が比較的長 くまた一定している。少年・高齢・Q老齢 ろうばい【狼狽】慌てふためく意で、改まった会話や文章に 用いられる硬い漢語。〈周章—〉〈一の色が見てとれる〉 〈突然の指名にすっかり—する〉②井伏鱒二の『御坂峠の碑』 に「御坂の富士に—する人が、津軽富士を見て、よくも—せ ずにいられたものである」とあり、山田風太郎の『あと千回 の晩飯』に「老いが現実のものとなったときはるかに多くの 人が、きのうきょうのこととは思わなかったとーして迎え る」とある。きあわてる・Qうろたえる ろうひ【浪費】金銭・材料・エネルギー・時間・労力などを無駄 に使い過ぎる意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈次々 に車を買い換えるのは金のだ〉へやってみるだけ時間や労 力のだ〉へくだらない話で聞くだけ時間のーになる〉正 宗白鳥の『入江のほとり』に「今まで無用な書物を買込んで 月々の俸給をーしたことが後悔された」とある。金銭以外 にも物や時間や労力・エネルギーなど幅広い対象に使う。 Q空費・散財・無駄遣い・濫費 うほう【朗報】うれしい知らせの意で、やや改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈ーが入る〉〈ーに沸き返る〉 入賞・受賞・優勝や、重病からの回復、失意のどん底にあった 友人が元気を取り戻すような場合によく使われる。入試の 合格や卒業・就職などの場合は「吉報」「朗報」どちらも自 然に用いられる。呂吉報 <1155> ろうぼく【老木】樹齢を重ねて古くなった樹木をさし、会話 にも文章にも使われる漢語。〈庭の中央に梅のーがある〉の 芥川龍之介の『或日の大石内蔵助』に「独り縁側の柱により かかって、寒梅のーが、古庭の苔と石との間に、的礫だたる 花をつけたのを眺めていた」とある。「古木」が長い歴史を 経てきた点に意識の中心があるのに対し、この語には老齢 化して樹勢の衰えた感じが伴う。古木・Q老樹 ろうむしゃ【労務者】肉体労働を提供して収入を得る人をさ す、やや改まった感じの漢語。〈日雇いのー〉〈一風の男〉 の社会の実態を反映して男性を連想させる傾向が強い。職 業差別の語感も若干漂う。労働者 ろうや【牢屋】今の刑務所に相当する昔の施設をさす古めか しいことば。〈ーにぶち込む〉へーを脱け出す)木山捷平 の『大陸の細道』に「ーのような押入れの中でひとり寂しく 息をひきとるのは御免だ」という比喩表現の例がある。「監 獄」よりはるかに古い感じで、江戸時代の木製の格子の中 で絶大な権力をふるう牢名主の姿が連想されたりする。 「牢獄」より会話的で、イメージももっと軽い。蓋獄・刑務 所・牢・Q牢獄 ろうらく【籠絡】相手が自分の思いどおりに動くようにこと ば巧みに騙す意で、主として文章に用いられる古風で硬い 漢語。〈部下を巧みに—する〉谷崎潤一郎の『細雪』に 「本家の夫婦に—されてはならないと云う警戒心も強い」と ある。相手を操るのは結果であり、騙してそこまで持って 行くところに重点がある。帳柔・抱き込む・Q手懐ける・丸 め込む ろくに ろうれい【老齢】年寄りの年齢の意で、主に文章に用いられ る漢語。〈一年金〉〈に達する〉〈一の身〉連想として 「高齢」よりさらに老いた感じがある。鳥高年・高齢・老年 ろうれん【老練】長い間の経験で熟練し、技術的に熟達し、 やり方が巧みな意で、会話にも文章にも使われる、やや古 風な漢語。「な手さばき〉へな技術者》三島由紀夫の 「潮騒」に「漁の技術は、舟主でもあり親方でもあるな漁 捞長の手にあった」とある。悪賢いイメージはなく、むしろ 仕事ぶりに安心感を与える。老猶Q老巧 ローブ「綱」の意で、会話にも文章にも使われる外来語。〈 ウエー〉〈ワイヤー〉〈荷造り用の〉〈」でつるす〉〈 を張る〉小林多喜二の『蟹工船』に「麻の」が鉄管でも握 るようにパリ、パリに凍えている」とある。「綱」に比べ、 金属製のものを連想させやすい。Q綱・縄・紐 ろか【濾過】液体や気体を濾紙などを通して不要な固体の粒 子を除去する意で、やや改まった会話や文章に用いられる 漢語。〈器〉(不純物を—する)谷崎潤一郎の『陰翳礼 讃』に「側面から射して来る外光を一旦障子の紙でーして、 適当に弱める働きをしている」とある。 ろくすっぽ【碌すっぽ】「ろくに」の意でくだけた会話に使わ れる俗っぽい表現。「漢字も読めない」「挨拶もできな い」谷崎潤一郎の『悪魔』に「口も利かないのに」とあ る。「ろくに」「ろくろく」より非難する響きが強く感じら れる。Q碌に・碌々 ろくに【碌に】(あとに打消しを伴って)満足にの意で、会話や さほど改まらない文章に使われる表現。〈人に会ってもー挨 <1156> ろくろく 拶もしない 〈朝から食べていない〉 〈一本も読まない〉 志賀直哉の『和解』に「父は返事をしなかったが」とあ る。少しは「する」のだが「した」とは言えない程度である 場合に使う。Q碌すっぽ・碌々 ろくろく【碌碌】「ろくに」の意で、会話にも文章にも使われ る表現。ゆうべは寝ていない〜おかまいもせず失礼 申し上げました島崎藤村の『嵐』に「独りで唇を噛ん で、仕事も手につかない」とある。「ろくに」に比べ、い くらか古風で若干改まった感じがある。弔碌すっぽ・Q碌に ろけん【露顕(見)】隠していたことが明るみに出る意で、改 まった会話や文章に用いられる漢語。〈悪事がーする〉〈秘 密がーする〉「ばれる」よりも悪事を連想させるが、「発 覚」よりは犯罪性が弱い感じがある。Q発覚・ばれる ろじ【路地】大通り・本通りから入り込んだ、人家の間の狭い 通路の意で、会話にも文章にも使われる日常の漢語。〈 裏〉〈一の奥〉〈横丁のーを抜ける〉庄野潤三の『静物』に 「商店街から少し引っ込んだーの奥にある映画館」という例 が出てくる。屋敷内、庭内の通路の場合は「露地」とも書 き、「露路」と書くこともある。Q露地・路次 ろじ【路次】道の途中の意で、主として文章に用いられる古 風で改まった感じの漢語。〈帰宅の—〉、霧地・Q路地 ろじ【露地】屋根などにおおわれていないむきだしの土地の 意で、会話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。へー 栽培》草庵風の茶室に付属する庭をさす用法は専門語の 雰囲気が濃く、その場合は「路地」とも書く。Q路地・路次 ろせん【路線】パスや列車などの通行する交通の道筋、転じ て、一般に進路や方針をさし、会話にも文章にも使われる 漢語。〈パス〉《赤字—〉《強行—〉《基本—〉《—変更》 〈ーを敷く〉通り道 「露台」テラスやバルコニーをさす古めかしい漢語。 〈ーで名月を観賞する〉②見晴らしや夏の夕涼み、春先や晩 秋の日光浴などに利用。込テラス・Qバルコニー・ベランダ ロッキングチェア「揺り椅子」の意で会話にも文章にも使わ れる外来語。今は古風な「揺り椅子」に代わって普通に使 う。ひ揺り椅子 ロッジ 山小屋風の宿泊施設をさし、会話にも文章にも使わ れる外来語。〈ーに一泊する〉、コテージ・山荘・山房・パンガロ ー・ヒュッテ・Q山小屋 ろてん【露天】野外の意で、会話にも文章にも使われる漢語。 〈風呂〉〈商〉霧店 ろてん【露店】街頭に臨時に開く店の意で、会話にも文章に も使われる古風な雰囲気の漢語。〈縁日の—をひやかす〉 川端康成の『夜店の微笑』に「花火屋と眼鏡屋の—の前に私 は足を停めた」とある。豊露天 ちてんぶろ【露天風呂】屋外にある風呂の意で、会話にも文 章にも使われる漢語。へのんびりとーを満喫する》「野 天」より趣を感じさせるためか温泉旅館の案内書などによ く使う。ひ野天風呂 「論議」「議論」の意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈政策〉〈ーを呼ぶ〉〈ーを尽くす〉〈対策をーする〉谷崎潤一郎の『細雪』に「はいつの間にか(略)親子喧嘩にまで発展して行った」とある。Q議論・ディ <1157> スカッション・討議・討論 ろんきよ【論拠】議論を進める上での拠りどころ、論証の根 拠をさし、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。「 が弱い〉へーが曖昧だ〉〈判断のーを示す〉Q根拠・典拠 ろんし【論旨】議論の主旨をさし、改まった会話や文章に用 いられる硬い漢語。〈明快〉〈ーを正しく理解する〉国 語教育では、大意をまとめた要旨を、さらにエッセンスだけ にしぼった最短の主旨をさす。大意・しゅし②・Q要旨・要約 ろんしよう【論証(證)】ある事柄が妥当で正当性のあること を論拠を示して明らかにする意で、学術的な話題の会話や 文章に用いられる専門的で硬い漢語。〈一の過程に問題が ある〉〈資料をそろえてーする〉〈一が不十分だ〉刂検証・実 証・証明・Q立証 ろんせん【論戦】激しく議論を聞わす意で、改まった会話や 文章に用いられる硬い漢語。〜を繰り広げる)石坂洋次 郎の『若い人』に「埃をはたくような一流の栄えない」 とある。「論争」より何度も応酬があるような雰囲気があ る。刂論争 ろんそう【論争】ある問題について違った立場にある者、意 見を異にする者が互いに論拠を主張して言い争う意で、会 話にも文章にも使われる漢語。人権をめぐってーする) へーを巻き起こす)の芥川龍之介の『侏儒の言葉』に「石器 時代の脳憤しか持たぬ文明人はーより殺人を愛する」とあ る。「議論」よりも勝ち負けを争う性質が強い。込論戦 ろんびょう【論評】筋道を立てた批評の意で、主に文章に用いられる硬い漢語。〈ーを加える〉〈ーを避ける〉福原麟 太郎の『チャールズ・ラム伝』に「自由思想をもって文学と 政治をーし、しばしば当局の忌諱にふれた」とある。「批 評」にはいろいろあるため、印象だけで批評するわけでは ないことを特に表に出した表現。対象が限定的で「評論」 より短い場合が多い。少批評・Q評論 ろんり【論理】判断を下すまでの思考の筋道をさし、会話に も文章にも使われる硬い漢語。〈—学〉〈—的な思考〉〈— の飛躍〉〈—矛盾を起こす〉〈—を無視する〉伊藤整の 『灯をめぐる虫』に「頭の中では—は、なにか鋼鉄の枠のよ うに私をしめつける」とあり、開高健の『裸の王様』には 「箱庭細工のようにこじ(ち)んまりと整理のゆきとどいた ー」とある。専道理・理屈・Q理論 ろんり <1158> ワードプロセッサーコンピュータで文書の作成や印字を 行う装置をさし、硬い文章などで用いる正式で専門的な感 じの外来語。「の機能を内蔵している」理系の社会では 「ワードプロセッサ」と表記する例が目立つ。ワープロ ワードローブ洋服算箇がの意味で使われたした斬新な感じ の外来語。まだそれほど普及していないため、日常会話 で使うと西洋かぶれという雰囲気があり、気取った感じを 与えやすい。Q筆筍・チェスト ワープロ「ワード・プロセッサ」の略。外来語の短縮形が 一般語化。〈手書き原稿をーで打つ〉〈パソコンのー機能〉 今では特に俗語という感じはなく、会話でも文章でも通 常この形で用いる。ひワードプロセッサー わいきよく【歪曲】故意に内容を実際と違える意で、改まっ た会話や文章に用いられる漢語。〈事実の—も甚だしい〉 捻なじ曲げる わいせつ【猥褻】汚らわしく淫らな意で、会話にも文章にも 使われる正式な感じの漢語。〈一図書〉〈強制一罪〉〈一な 絵〉〈一行為に当たる〉小林多喜二の『蟹工船』に「共同 便所のなかにあるような一な落書」とある。性に関するこ とを人が不愉快に感じるほど興味本位に扱っていたずらに 性欲を刺激する場合に用いられ、しばしば作品における芸 術性の有無が問題になる。いやらしい・Q淫猥・卑猥・淫ら ワイフ「妻」の意の古風な外来語。ストレートに言うのを避けて外国語に逃げた表現。最近は廃れかけている。へーが里帰りしている〉〈俺はいいけど、ーがどう言うか〉内田魯庵の『くれの廿八日』に「ーを乗てたのを公然披露して」とある。いえの者・うちの者・お上さん・奥方・奥様・奥さん・お内儀・家内・かみさん・愚妻・細君・Q妻・女房・伴侶・ベターハーフ・令開令室・令夫人 ワイヤー針金や鋼線を何本も縦り合わせたワイヤロー プ」の略で会話にも文章にも使われる外来語。〈ガラス〉 〈ープラシ〉〈ーで吊す〉のワイヤ」とも書く。鈴金 わいろ【賄賂】有利に扱ってもらうためにひそかに贈る不正 な金品をさし、会話にも文章にも使われる漢語。へを贈 る)へを受け取る)へに当たる)法律用語としては、 職務に関する不正な報酬の場合に適用される。Q袖の下・ 鼻薬は、リベート ワイン「葡萄酒」の意で会話にも文章にも使われる外来 語。〈ーセラー〉〈ーグラス〉〈飲みごろの—〉現代の会話 では「葡萄酒」よりよく使う。村上春樹の『遠い太鼓』に 「腰のある美味しいシシリーの白ーを飲む」とある。刂葡萄 酒 わか【和歌】日本固有の形式による長歌・短歌・旋頭歌などの 総称として、会話にも文章にも使われる日常の漢語。へー文 学〉へーを詠む〉へーの心得がある〉現代ではほとんど短 歌を意味する。鳥歌・Q短歌 わかい【若い】生まれてからの年数が少ない意で、くだけた 会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。 <1159> 〈頃〉(まだー〉(うちに)〈夫より二歳ー〉年齢の わりにー」のように、若く見える場合にも言い、「若々しい」 と接近する。谷崎潤一郎の『春琴抄』に「実際よりも慥に十 はー・く見え色飽く迄白くして襟元などは見ている者がぞ くぞくと寒気がするように覚えた」とあるのはそういう例 である。「木」「番号」のように人間以外にも使う。 若年・Q若々しい わかい【和解】立場や意見が対立し争っていた相手と互いに 譲歩して元通りのいい関係に戻る意で、改まった会話や文 章に用いられる硬い漢語。〈親とのにこぎつける〉両者 のーを見る〉〈相手国とのーが成立する〉②「仲直り」に比 べ、個人的な関係だけでなく規模が大きく長期にわたる深 刻な対立が解消した場合に用いる傾向がある。志賀直哉に 父親との確執を描いた『和解』と題する小説があり、末尾近 くに「別れる時、其日は自然に父の眼に快い自由さで、愛情 の光りの湧くのを自分は見た。自分はーの安定をもう疑う 気はしない」とある。専仲直り わかきひ【若き日】若かった時期をさし、主に文章中に用い る古風で美化された感じの和語表現。へーの夢を追うへー の思い出へーのあやまちへーを振り返る自分の青春 を振り返る雰囲気が強い。ひ青春・Q青年期 わかじに【若死に】若いうちに死ぬ意で、会話にも文章にも 使われる和語。へーしたことが惜しまれてならない)早 死に」よりも短命な場合に使う傾向がある。早世・Q早死 に・夭逝・夭折 わかっ【分かつ】「分ける」意で文章中に用いられる文語的な わがまま 響きの和語。〈均等に—〉〈喜びを—〉〈昼夜を—・たず〉 〈稜線せんが山並みと空とを—〉〈苦労を—〉別れる意の慣 用句「たもとを—」では「分ける」に換言できない。「実費 で—」のように「分け与える」意に用いる場合は通常「頒 つ」と書く。分割・分配・分離・Q分ける わかづくり【若作り】化粧や装いが実際の年齢より若く見え るようにする意で、会話でも文章でも幅広く用いる和語。 〈十の奥さん〉年齢不相応な装いをする必要があるのは自 分の実年齢が気になる年だからであり、二十代の女性が女 子高生みたいな服装をしたり、九十代の男性が六十代に見 えるような帯を締めたりするような場合に使うとびったり しない。中年が近づいてきたあたりから老年前期あたりま でといった年齢的な語感が伴う。 わかどり【若鳥】ひなどりやまだ若い鳥一般をさし、会話に も文章にも使われる和語。へーが巣立つ)用法により詩的 な雰囲気に感じられることもある。若鶏 わかどり【若鶏】成長途上の鶏の意で、会話にも文章にも使 われる和語。〈ーのから揚げ〉も若鳥 わかば【若(嫩)葉】生えてきて間もないまだやわらかい木の 葉をさし、会話にも文章にも使われる和語。「の季節 「が萌える青葉となる前の段階を思わせるが、青葉 」と並べて言うこともあり、蕪村の俳句「不二ひとつづ み残してかな」のイメージも豊かな緑を連想させる。室 生犀星に「わらんその洟はもーを映しけり」という洒脱な句 がある。青葉・新緑 わがまま【我儘】相手や周囲のことを考えずに自分の思いど <1160> わかもの おりにふるまおうとする気持ちをさし、会話にも文章にも広く使われる日常の基本的な和語。〈一な娘〉〈一に育つ〉 〈一を聞いてやる〉〈一を押し通す〉〈一が増長する〉〈そう そうーばかり言ってはいられない〉志賀直哉の「暗夜行 路」に「一な気持ちがむやみと込み上げて来た」とある。 「勝手」が個々の行為についての評価であるのに対し、この 語はその背後にあるその人間の性格に言及する感じが強く、 自分の思い通りにする部分に重点がある。勝手①・気まま わかもの【若者】若い人をさし、会話やさほど改まらない文 章に使われる日常の和語。〈いいーだ〉〈一らしく潑刺と している〉〈一向きの企画〉〈一に絶大の人気がある〉壺 井栄の『二十四の瞳』に「素っ裸にされて検査官の前に立つ たち」とある。「このごろのーは」として批判的な言辞が 続く例が多く、軽蔑的な語感を発揮することもある。青 年・Q若人 わかれ【別れ】親しくしていた人と人とが離れて別々の場所 に移る意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の和語。〈喧嘩—〉へ「話〉への挨拶〉への杯を交 わす〉へを惜しむ〉へを告げる〉へがつらい〉三島由 紀夫の『午後の曳航』に「は三日前にこの船で二人が会っ たときからはじまっていた」とある。Q別離・離別 わかれみち【分かれ道】道が複数に分かれる場所の意で、会 話にも文章にも使われる和語。「」でしばし別れを惜し む」のように人と別れる地点の意では「別れ道(路)」とも書 く。「ここが運命の」のように、重要な選択を迫られる場 所・時・機会などを意味する比喩的用法もある。刂岐路 わかれる【別れる】一緒にいた複数の人間が別々に離れる意 で、くだけた会話から文章まで広く使われる和語。〈交差点 でー〉〈手を振ってー〉〈家族とー・れて住む〉図川端康成の 『伊豆の踊子』のラストシーンに「何か御不幸でもおありに なったのですか。「いいえ、今人とー・れて来たんです。 という対話が出る。「ー・れた女房とよりを戻す」というよ うに「離婚する」意でも使うが、井伏鱒二の『珍品堂主人』 に「惜しみながら別れた可愛い女に再会したような気持」 とあるように、そこまで明確でない例も多い。ひ別離・離別 わかれわかれ【別れ別れ】一緒にいた人たちが別々に暮らす ようになる意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和 語。〈仲の良かった家族が今ではーに住んでいる〉「離れ 離れ」に比べ、別れる辛さが意識される。ひ離れ離れ わかわかしい【若若しい】新鮮で澱凍としておりいかにも 若い感じのする意で、会話にも文章にも使われる和語。「 姿〉へ服装〉外観について言う。丹羽文雄の『青麦』に 「かおの小さな、未亡人であった」とある。若年・Q若い わき【脇】横の最も近い場所をさし、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる日常の和語。〈道のに寄る〉へ に置く〉へに控える〉〈運転中にを見る〉へから口を 出す〉「かたわら」「そば」「近く」の場合はすぐ隣に限定 されないが、通常「の人」は隣にいる人をさす。また、 「に置く」のように、正面でない場所をさすところから、 さしあたり問題にしないというニュアンスを帯びることも ある。「に抱える」の場合は「腋」と書くこともあり、「 の下」の場合は「腋」と書き分けることが多く、まれに「掖」 <1161> と書く例もある。Qかたわら・そば・近く・隣 わきあがる【沸き上がる】完全に沸く意で、会話にも文章に も使われる和語。〈お風呂がー〉滯騰して気泡が勢いよく 水面に上がって来るようなイメージがある。「歓声がー」の ように、激しく起こる意の比喻的な用法もある。ひたぎる・ 沸騰・Q沸き返る・沸き立つ・沸く わきかえる【沸き返る】十二分に沸く意で、やや改まった会 話や文章に用いられる和語。〈鍋の湯がー〉「沸き立つ」 「沸き上がる」以上に、沸騰し始めてから時間が経過した感 じがある。「場内がー」のように、群衆が熱狂する意の比喻 的な用法もある。ふたぎる・沸騰・Q沸き上がる・沸き立つ・沸く わきざし【脇差】腰に差すそれほど長くない刀の意で、会話 でも文章でも使われる古風な和語。〈長ーを落とし差しに した道中姿〉へーを腰に帯びる〉昔の道中などで腰に指す 単なる短めの刀をさす場合と、武士が大刀とともに腰に帯 びる小刀をさす場合とがある。ふヒ首・懐剣・こがたな・Q小 刀・短剣・短刀・どす・ふところがたな わきだす【湧(涌)き出す】地中など外から見えにくい場所か ら外に現れ出る意で、会話にも文章にも使われる和語。〈温 泉がー〉〈石油がー〉の「湧き出る」と同義ながら、湧き出 した液体を利用するために人間が意図的に湧出を促す場合 に使う傾向が見られ、抽象化した比喩的用法は少ない。 湧出・湧き立つ・Q湧き出る わきたつ【沸き立つ】沸騰して水面が激しく動く意で、やや 改まった会話や文章に用いられる和語。〈やかんの湯がー〉 の「観客席がー」のように、群衆が興奮して騒ぐ意の比喻的 わきみず な用法もある。たぎる・沸騰・沸き上がる・Q沸き返る・沸く わきたつ【湧(涌)き立つ】湧くように次々出てくる意で、主 に文章中に用いられる、いくぶん詩的な和語。〈雲がー〉 「湧く」の形では会話にも使う。湧出湧き出す・Q湧き出る わきでる【湧(涌)き出る】基本的に「湧き出す」に近い意味 で、会話にも文章にも使われる和語。〈泉が—〉〈霧が—〉 で、会話にも文章にも使わわ 涙がー〉〈勇気がー〉〈アイディアが次々にー〉「湧き出 す」に比べ、抽象的な意味合いでの比喻的用法まで幅広く使 う。勇出・Q湧き出す・湧き立つ わきのした【腋(脇)の下】腕の付け根の内側のくぼんだ部分 をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈一の汗〉 〈一に挟む〉伊藤整の『鳴海仙吉』に「乳房のわきの生白 い谷になったーによじれた毛が五六本風に吹かれている」 とある。脳窩 わきばら【脇腹】腹部の脇のほうの意で、会話にも文章にも よく使われる和語。へーを押さえてしゃがみ込む)藤枝静 男の『壜の中の水』に「だけがズンドウにふくらみ」とあ る。児脾腹・横っ腹・Q横腹 わきみ【脇見】肝心のものを見ずに脇の方を見る意で、会話 にも文章にも使われる和語。〈ー運転で事故を起こす〉へー をしている間に勝負が終わる)②他のものに気をとられて いる場合に限らず、正面を見ないでぼんやりしている場合 も含まれる。単余所見 わきみず【湧(涌)き水】地中から自然に湧き出る水をさし、 会話にも文章にも使われる日常の和語。「の豊かな土地」 「を汲くんでおく」長野まゆみの「少年アリス」に「地面 <1162> わきみち の奥深くーの水音が響いている」とある。美的な「泉」や 「清水」に比べ生活の雰囲気が強い。Q泉・清水 わきみち【脇道】本道から分かれた細い横道をさし、会話に も文章にも使われる和語。〈ーをとる〉〈街道のーに入る〉 の話がーにそれる」のように、本筋から外れる意に使う比 喩的用法もある。Q間道・近道・抜け道 わく【沸く】沸騰する意でくだけた会話から硬い文章まで幅 広く使われる日常の基本的な和語。〈湯が—〉(もうすぐ風 呂が—〉の「好沉に—」「大漁に—」のように、活気が出る、 熱狂する意を表す比喻的な用法もある。ひたぎる・Q沸騰・沸 き上がる・沸き返る・沸き立つ・湧く わく【湧(涌)く】自然に発生して現れる意で、会話にも文章 にも使われる和語。〈清水が—〉〈雲が—〉〈虫が—〉「疑 問が—」「勇気が—」のように、考えや感情などが内部に生 じる意の比喻的な用法もある。坪田穣治の『風の中の子供』 に「二人の胸の中に、次第にお父さんの帰ってくる喜びが、 水のようにー・いて来た」とある。Q沸く わく【枠】周囲を縁とって囲むものをさし、会話にも文章に も使われる和語。〈一に入れる〉(一からはみ出す)②「法 律の一」「予算の一」「一にとらわれない」のように、制約・ 限度の意を表す比喻的用法も多い。伊藤整の「灯をめぐる 虫」に「頭の中で論理は、なにか鋼鉄の一のように私をしめ つける」とある。観囲・ふち・Q輪郭 わくせい【惑星】恒星の周囲を公転する星の総称として、会 話にも文章にも使われる、やや専門的な漢語。〈ー探查機〉 の「恒星」と対立。違星 わくわく嬉しいことを前にして期待で心が弾み、じっとし ていられない意で、主として会話で使われる。〈初めての海 外旅行でーする〉〈結婚式が決まって、今から胸がーする〉 志賀直哉の母の死と新しい母』に「嬉しさに私の胸はー した」とあるように、本来あまりの期待で胸が高鳴るよう な場合に用いるが、近年、単に、楽しみに待つ、という程度 の軽い意味で頻用される。その場合は俗語的。いそいそ Q浮き浮き・高鳴る・ときめき わけ【訳】「理由」の意の和語で、くだけた日常会話で「理由」 よりよく使われる軽い意味の語。〈ーを話す〉〈別れたー は?〉〈大したーなんかないさ〉梶井基次郎の『樽様』に 「どうしたーかその店頭の周囲だけが妙に暗い」とある。 「ー(が)ない」の形で簡単にできる意を表す用法もある。 事由・Q理由 わけへだて【分け隔て】相手によって差別する意で、会話や さほど硬くない文章に使われる和語。〈ーなく育てる〉へど んな生徒もーなく教える〉へーなく招待する〉ひQ依怙員 ・最凪・偏愛・身最凪 わける【分ける】ひとまとまりのものに境界を設けて別々に 離す意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。二つにー〉みんなで平等にー〉 〈髪を七三にー〉〈人込みをー・けて進む〉〈血をー・けた兄 弟〉〈のれんをー〉巻分割・分配・分離・Q分かつ わご【和(倭)語】借用語でなくともと日本にあったと考え られていることばをさし、学術的な会話や文章に用いられ る専門的な漢語。〈漢語より—を多用する〉〈基本的な概念 <1163> は一般にーで表す漢語や外来語に対して言う場合は 「やまとことば」よりこの語を使うほうがパランスがとれ る。ひ大和言葉 わこうど【若人】若い人の意で主として文章中に美化して用 いる、やや古風な詩的和語。〈ーの祭典〉〈ーの集まり〉〈ー らしくすがすがしい姿〉の太宰治の『人間失格』に「ーの誇 りだとかいう言葉は、聞いて寒気がして来て」とある。会 話では気取った感じになりやすい。刂青年・Q若者 わゴム【輪ゴム】ゴム製の細い輪をさし、会話にも文章にも 使われる日常の和語。〈ーを掛ける〉、ゴムバンド・Qゴム輪 わざ【技】技術・技能の意で、会話にも文章にも使われる日常 の基本的な和語。〈得意の—〉〈多彩な—〉〈ーをみがく〉 〈ーを競う〉夏目漱石の『草枕』に「(能は)情三分芸七分 で見せるーだ」とある。②腕前・技巧・技術・技能・技法・テ クニック・業 わざ【業】行為・仕事といった意味合いで、やや改まった会話 や文章に用いられる古風な和語。〈人間ーとは思えない〉 〈至難のー〉谷崎潤一郎の『刺青』に「一点の色を注ぎ込 むのも、彼に取っては容易なーでなかった」とある。刂技 わざと【態と】意図を持って意識的にの意で、会話や軽い文 章に使われる日常の和語。〈ーぶつかる〉〈ー間違える〉 〈ー負ける〉谷崎潤一郎の『細雪』に「東京へ行って電車 に乗ったら、大阪弁で「降りまッせえ」と大きな声で云う てやりまんねん」とある。刂敢えて・Q故意・強いて・わざわざ わざわい【災い/禍】病気や天災などの不幸な出来事をこう むることをさし、会話にも文章にも使われる古風な和語。 わしづかみ 〈ーを招く〉〈ーが及ぶ〉〈口はーのもと〉専災害・災難・災厄 わざわざ【態態】敢えて意図的にの意で、会話や改まらない 文章に使われる和語。〈ー遠回りして時間をつぶす〉二葉 亭四迷の『平凡』に「一廻道をして其前を通って見た事があ る」とある。「一届ける」「一出向くことはない」「遠いとこ るをーお出でいただき恐縮です」のように、ついででなく そのことのために特にといった意味合いで使われる例が多 い。専敢えて・故意・強いて・Qわざと わし男の「わたし」の古めかしい和風の言い方。「が社長 だが、何か現代では社長でも村長でも実際には「わた し」と言うが、「…たまえ」などと同様、ドラマなどで時代 を強調し、またはその役柄らしく感じさせるために用いる ことが多い。太宰治の『走れメロス』に「だって、平和を 望んでいるのだが」とある。あたくし・あたし・おいら・俺 僕・わたくし・わたし わし【鷲】タカ科のうちの大形の鳥をさし、会話にも文章に も使われる和語。〈ーにさらわれる〉有島武郎の『生れ出 ずる悩み』に「そのーは静かに伸びやかに輪を造っている」 とある。「鷹」以上に大空を悠々と飛ぶ雄大なイメージが ある。鳥鷹 わしつ【和室】畳を敷き障子や襖で仕切るなど和風にしつ らえた部屋をさし、いくらか改まった会話や文章に使われ る漢語。〈四畳半の—〉〈庭に面した—に通される〉の「洋 室」と対立。近年は「日本間」よりよく使われる。母日本間 わしづかみ【鷲欄み】指を広げて物を無造作に、または荒々 しくつかみ取る意で、会話や改まらない文章に使われる、 <1164> わしゃ やや古風な和語。〈札束をーにする〉驚が獲物をつかみ取 るようすから。「手づかみ」より乱暴な感じ。手づかみ わしゃ【話者】「話し手」に近い意味で、主として改まった会 話や文章に用いられる専門的な雰囲気の漢語。「の腕ひ とつで面白くもつまらなくもなる〉(の交代)単なる発 話者ではなく、話をして聞かせる講師などをさす場合は一 般語で、専門語の感じがない。専語り手・話し手 わずか【僅か】「少し」よりいくらか改まった感じの日常の和 語。〈ほんのーの差〉へに及ばない〈ーばかりで失礼で すが〉②志賀直哉の『焚火』に「西の空には未だ夕映えの名 残りがーに残って居た」とある。少々・Q少し・ちょいと・ちょ こっと・ちょっと・ちょっびり わずらい【患い】病気の意で、主に文章に用いられる古めか しい和語。〈恋—〉〈長—〉Q障り・疾患・疾病・病気・病魔・病 わずらう【患う】病気になる意で、会話にも文章にも使われ る古風な和語。〈胸を—〉〈長く—〉②二葉亭四迷の『平凡』 に「長いことー・っていたから、やつれた顔は看慣れていた が」とある。専煩う わずらう【煩う】悩む意で、主に文章に用いられる古風な和 語。〈思いー〉へーことなかれ)の三島由紀夫の『潮騒』に 「非常な難問のように、彼の心をー・わせてやまなかった」 とある。ひ思う わすらわしい【煩わしい】面倒で気が重い意で、会話にも文 章にも使われる和語。〈渡航手続きがー〉〈自分で出向くの はー〉〈親戚づきあいがー〉永井荷風の『瀾東綺譚』に 「習慣になると意識よりも身体の方が先に動いてくれるの で、さほどーとも思わないようになる」とある。客観的に 煩雑な手続きや悪天候の日に長距離を歩くような負担を伴 わなくても使い、「億劫」ほどではないが、「面倒」に比 べれば気持ちの問題が大きい。億劫・面倒・Q面倒くさい わすれる【忘れる】記憶したことが思い出せなかったり、取 り紛れてやるべきことを果たさなかったりする意で、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な 和語。〈約束の時間を—〉〈学校の宿題を—〉〈担当者の名 を—〉〈財布を—・れて外出する〉森田たまの『続もめん 随筆』に「金額を—・れてしまうことは、まるで、茗荷でも たべさせられたようにいつもきまっている」とある。「時の 経つのを—」「寝食を—・れて仕事に打ち込む」のように、 物事に夢中になって、あることが一時的に意識から遠ざか る意にも使う。Q失念・忘却 わせ【早生】農作物などの生長の早い意で、会話にも文章に も使われる和語。〈—みかん〉ひ早稲 わせ【早稲】「早生」のうち、早く成熟する稲の品種の意で、 会話にも文章にも使われる専門的な和語。〈一種の銘柄米〉 ひ早生 わたあめ【綿飴】ざらめを熱して繊維状にし割り箸に巻き付 けて綿状にした飴をさし、会話にも文章にも使われる日常 の和語。〈縁日で—を買う〉東日本の人間には「綿菓子」 より昔懐かしい感じがいくぶん強いようだ。電気仕掛けの 遠心分離機で回転させるので「電気飴」ともいう。ふ綿菓子 わだい【話題】話の中心となる事柄をさし、会話にも文章に も使われる日常の漢語。〈今—の人〉「が豊富だ〉「に <1165> のぼる〉〈ーを集めている〉〈ーを投げかける〉伊藤整の 『火の鳥』に「ーが、蝶のように、蛾のように、羽虫のよう に群らがって、飛びまわっている」とある。会議や研究や芸 術作品の連想が強い「主題」に比べ、多くは日常の談話に使 い、小規模でも断片的でもよい。専題材・Qトピック・本題 わたがし【綿菓子】「綿飴あわ」の意で会話にも文章にも使われ る表現。「夜店でーを買って子供に持たせる」「菓子」と いう上位概念でとらえているぶん親しみが若干薄いような 気もする。林芙美子の『放浪記』に「車をぶんぶんまわし て、桃色のーをつくっていた」とある。あるいは西日本で 優勢な語形なのかもしれない。綿飴 わたくし【私】和語「わたし」のさらに改まった言い方。 どもといたしましては〉へーにお申し付け下さいませ)井 伏鱒二の『珍品堂主人』に「本日から、ーは人妻でございま す」とある。ひあたくし・あたし・うち②・おいら・俺・僕・わし・Q わたし わたくしこと【私事】改まった会話や文章に用いられる丁重 な感じの和語。「になって恐縮ですが」〈話がーにわた る〉の「ひとごと」と対立する語。Q私事・プライバシー わたくしたち【私達】「わたくし」の複数として、改まった会 話や文章に用いられる丁寧な和語。「の主張」へーといた しましては》漢字表記は「わたしたち」との区別が難し い。「あなたがた」と対立。僕たち・僕ら・わたしたち・ 我ら・Q我々 わたくしりつ【私立】口頭語。会話で「市立」と区別するた めの読み。〈1の学校を選ぶ〉市立大学はあまり多くない わたし ため、特に小・中・高の学校に関してよく使われる。この語 形を使用することで正確な情報伝達を図る配慮が相手に伝 わる。ひ私立 たし【私】男では「僕」より改まった言い方、女では「あたし」よりやや改まった言い方で、ともに「わたくし」ほどは改まっていない和語。男女の比較では、男の場合は子供は用いず、女の場合は子供でも用いるし、ともに大人の場合は、男のほうが改まりの度合いが大きく、女の場合はごくふつうのことばに相当する。〈ーがします〉へにやらせて〈ーとしたことが〉の丼伏鱒二の『珍品堂主人』に「が悪かったそうですね。ーが謝れば、それでいいんでしょう」とある。男の場合、家でくつろいでいる状況では通常「俺」か「僕」を用いるから、夫が「わたしは」と言って座り直したりすれば、車の買い替えか別居か何か重大な話題を切り出すのではないかと妻は緊張するかもしれない。時枝誠記教授の大学院の演習を聴講していたアメリカ人の宣教師が、発言する際に「わたし」と言いかけて「僕」と言い直した。家では宣教師として人に接するので「わたし」と言っているが、ここでは学生だから「僕」のほうが適切だと考えたらしい。日本語は自分が何であるからという基準でことばを選択する言語ではなく、相手との関係で適切なことばがきまるのだと、そのとき教授は解説した。つまり、その場では大学院の教員と学生という関係だから、「わたし」のほうがむしろふさわしいことになる。「わたくし」とすればさらに適切だったろう。漢字表記では「わたくし」との区別が困難。ふあたくし・あたし・うち②・おいら・俺・僕・わし・ <1166> わたしたち Oわたくし わたしたち【私達】「わたし」の複数として、会話にも文章に も使われる和語。〈1の町〉〈1日本人〉〈1困ってます〉 男性はやや改まった感じで使い、女性は通常の表現として よく使う。堀辰雄の『麦藁帽子』に「秋の日を浴びながら、 二人づれの女学生が下りてくるのを認めた。1は空気のよ うにすれちがった」とある。この場合は自分と相手のこと をさす。「たち」には本来敬意が含まれており、目上の相手 を含む場合は自然。現在はそのような意識が衰えた。相手 を含まない用法としては「あなたたち」と対立。儀たち・僕 たち・僕ら・わたくしたち・我ら・Q我々 わたす渡す自分の所にある人や物を他人や向こう側に移 す意で、会話にも文章にも使われる和語。〈対岸に橋を—〉 〈代金を—〉〈賞状を—〉〈手渡す わたる【渡る】隔ての向こう側に移動する意で、会話にも文 章にも使われる日常の和語。〈橋を—〉〈海を—〉〈家が人 手に—〉の小沼丹の『汽船』に「妙なことにミス・ダニエル ズはその儘二度と海をー・って来なかった」とある。「世間 を—」のような用法は若干古風。「川を歩いて—」という意 味合いの場合に「渉る」と書き分けることもあるが、古めか しい感じになる。児旦ぐる わたる【亘る】空間的・時間的に広範囲に及ぶ意で、改まった 会話や文章に用いられる和語。〈全般にーってよく出来て いる〉〈すべてにー・って気を配る〉〈十ヶ月にー交渉の結 果〉〈永年にー苦労に報いる〉〈再三にー警告を無視〉 「亘る」とも書き、「渡る」で代用することもあるが、意味が 抽象的なため仮名書きの例が多い。漢字表記は古風な印象 を与える。ゆ渡る わな【罠】獣や鳥を生け捕りにするための仕掛け、転じて他 人を陥れる手段をさし、会話にも文章にも使われる和語。 〈ーをかける〉〈ーを仕組む〉〈ーにひっかかる〉〈これは敵 のーだ〉三島由紀夫の『仮面の告白』に「俺をーにかけて 「あのこと」をきき出そうとしている」とあるように、「落 とし穴」以上に相手を欺く策戦をさす比喩的用法が多い。 ひQ落とし穴・陷穽 わなく【戦慄く】寒さ・恐ろしさ・怒り・興奮などからぶるぶ る震える意で、主に文章に用いられる古風な和語。ぁまり の寒さにー〉〈激怒のあまりー〉森鷗外の『山椒大夫』に 「ー手に紐を解いて」とある。おののく・Q震え上がる・震え る わび【侘び】質素ゆえにかえって趣のある意で、主に文章に 用いられる古風で閑寂な趣の和語。〈ー住まい〉〈ー寂ゅの 世界〉〈ーの境地〉Q寂・説び わび【詫び】謝罪の意で、会話にも文章にも使われる日常の 和語。〈状〉〈ーを入れる〉〈心よりおーを申し上げます〉 の「お詫び」に比べ「詫び」は古風で文章語的。専侘び わびしい【侘しい】心を慰めるものがなくて淋しく心細い意 で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〜夕暮 れ〜暮らし〜原民喜の『夏の花』に「ここでまた夜を 迎えるのかと思うと私は妙にー・かった」とあり、円地文子 の『女坂』に「旅路の果てに宿のないような行きくれたわび しさに若い須賀の心を閉ざす」とある。心細さに重点があ <1167> り、「食事」のように、貧しく惨めな感じをさす用法もあ る。Qさびしい・さみしい わびる【詫びる】自分の落ち度や相手に対する失礼なことば や態度や行為を反省して赦しを請う意で、会話にも文章に も使われる和語。へ心からー〉〈非礼を深くー〉夏目漱石 の『坊っちゃん』に「人があやまったりー・びたりするのを」 とある。困り抜いて相手に懇願するという雰囲気が漂い、 態度や行動に表さずに「心中深くー」ことも可能であり、時 に形式的にもなりうる「謝る」に比べ、心のこもった感じが 強い。ひQ謝る・御免・失礼・謝罪・済まない・陳謝・申し訳ない わふく【和服】着物の意で、やや改まった会話や文章に使わ れる漢語。〈ーで過ごす〉〈ーを召した婦人〉へーのほうが くつろぐ丹羽文雄の『哭壁』に「洋服からー、帯やら襟 巻やら、一切合財がほうり出され」とある。衣服全体をも さす伝統的な「着物」に比べ、特に洋服ではなくてという意 識が強い。ひ着物 わぶん【和文】日本語で書いた文章をさして、会話にも文章 にも使われる、やや古風な漢語。〈ー英訳〉〈ータイプライ ター〉の「英文」「欧文」と対立する語。ヲ国文和文体 のぶんたい【和文体】原則として和語を用い仮名で綴る文章 様式。〈源氏物語は—の最高傑作とされる〉の「漢文体」と 対立する。平安時代中期に確立し、王朝貴族の女性を中心 に発達。仮名文学という成果を残し、散文表現の典型とし て以後の時代の規範となった。広義には江戸時代以降の擬 古文や明治時代に流行した美文などの雅文をも含む。马国 文・Q国文体・和文 わらいばなし わヘい【和平】戦争が終結し平和な状態になる意で、改まっ た会話や文章に用いられる硬い漢語。〈工作〉〈会談に 臨む〉〈交渉に入る〉②単に争いごとのない状態を意味す る「平和」に比べ、ひとたび戦争が起こってからの変化を連 想させやすい。専講和・太平・Q平和 わぼく【和睦】争っている国・組織・人などが争いをやめて仲 直りする意で、改まった会話や文章に用いられる古風な漢 語。〈両者の間でーが成立する〉武者小路実篤の『小さき 世界』に「高等科三年の人は主として下の級の人にーをす すめている」とある。専講和 わめく【喚く】非難や抗議の気持ちで大きな声を発する意で、 主として会話や改まらない文章に使われる和語。〈泣こう がー・こうがお構いなし〉〈大きな声でー・き散らす〉②筒井 康隆の『文学部唯野教授』に「おいっ。君。何をするんだ」 声がした」とある。「叫ぶ」と違ってすべて何らかのこと ばに限られる。Q叫ぶ・怒鳴る わらいがお【笑い顔】おかしくて実際に笑っているときの顔 をさして、主に会話や改まらない文章に使われる和語。ヘー の写真》椎名麟三の『永遠なる序章』に「そのーには、幼 女のような無垢なものが感じられる」とある。微笑を浮か べた顔にも使えるが、他人を嘲笑している表情には用いに くい。専笑顔 わらいばなし【笑い話】聞くと笑い出すような滑稽で面白い 話をさし、会話にも文章にも使われる和語。へとっておきの ーを披露する)福原麟太郎の『チャールズ・ラム伝』に「会 社へのゆきかえりにーの種を考えた」とある。小咄答のほ <1168> わらう か西洋の笑話がなどもすべて含まれる。また、「こりゃ、と んだーだ」のように、あまりにばかばかしくまともに取り 上げる価値のない話をさす用法もある。小咄・Q笑話 わらう笑うくだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ る日常の基本的な和語。ヘにっこりー〉〈腹を抱えてー〉 「門には福来たる〉林芙美子の『風琴と魚の町』に「子 供たちは豆のように弾けてーった」とある。「鼻先でー」 「世間の人にー・われる」など、嘲笑の意では「嗤う」とも書 く。古風な表記で、悪意が露骨に感じられて衝撃が強い。 わらべうた【童歌(唄)】昔から歌い継がれてきた子供の歌を さし、会話にも文章にも使われる古風な感じの和語。〈江戸 時代の—〉の「童謡」より伝統を感じさせる。現代の童謡を さす場合は美化した感じが伴う。弔唱歌・Q童謡 わりあい【割合】他と比べての意で、会話でも文章でも広く 使われる日常の和語。〈一早起きのほうだ〉〈あの店はー良 心的だ〉〈成績はーいい〉「わりに」と同程度か若干改ま ったレペルの語。「一に暖かい」のように「に」を伴った形 で用いると、この「割合」よりもさらに改まった感じにな る。「男女の」「を計算する」といった名詞の用例では 漢字表記が一般的なので、このような副詞的な用法の場合 は仮名書きのほうが読みやすい。ふ比・比率・比例・わりかし・わ りかた・わりと・Qわりに わりかし「割合」の意の比較的新しい感じの俗語。ぎょう は元気なほうだのわりかたより新しくより俗語 的ちなみに文章の品格を重んじる円地文子は東京上野 の通称くらやみ坂の自宅で流行語などを使うと下品にな って嫌だから、「わりかし」なんていうことばは地の文には 絶対使わないし、「わりと」ぐらいのレベルでも地の文には 使いたくないと語った。刂割合・わりかた・わりと・わりに わりかた【割り方】「割合」の意のやや古風な俗語。「おとついはー暖かくていいあんぱいだった」「わりかし」より古い感じで俗語性は少ない。Q割合・わりかし・わりと・わりにわりと【割と】「割に」の意で、主として会話に使われる和語。〈値段はー安い〉〈駅からー遠いんだね〉〈一空いてるほうじゃないかな〉「わりに」よりもくだけた感じで使う。剽合・わりかし・わりかた・Qわりに わりに【割に】「比較的」に近い意で、くだけた会話から硬い 文章まで幅広く使われる標準的な日常の和語。へーよく出 来ている》〈道路が—空いている〉(今は—暇な時期だ)の 谷崎潤一郎の『細雪』に「その日は—いろいろと気軽にしゃ べった」とある。Q割合・わりかし・わりかた・わりと わりびき【割引】物の値段や料金などを通常より引き下げる 意で、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈ー料金〉 〈学生ー〉〈人数が多いとーになる〉〈老人はーがある〉のさ まざまな料金などにも使え、商品中心の「値引き」より使う 範囲が広い。乗値下げ・Q値引き わる【割る】物に力を加えて二つ以上の部分に分けて離れさ せる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる 日常の基本的な和語。〈ガラスを—〉〈西瓜はを—〉〈せん べいをー・って口に入れる〉「土地を二つに—」「三〇を 五で—」のように、単に分ける意でも、「ウイスキーを水で —」のように、ほかのものを混ぜて薄める意にも、「受験者 <1169> 数が大台をー」や「土伝をー」のように、ある範囲の外にはみ出る意にも用いる。ひ辞く わる【悪】悪いことをする人間をさし、くだけた会話に使う 俗っぽい和語。〈ちょいとしたーとして知られる〉〈ああ見 えても相当のーだ〉回いたずらの過ぎる子供をさす場合も ある。「ちょいワル」のように片仮名書きする例もある。 悪玉・悪党・悪人・悪漢・悪者 わるい【悪い】不正・劣悪など好ましくない評価として、くだ けた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の最も基本 的な和語。〈一人〉〈頭が一〉〈品質が一〉〈成績が一〉〈体 に一〉〈気分が一〉〈相手に一〉〈他人を一・く言う〉〈天気 が一〉〈都合が一〉〈人が一〉〈一ようにはしない〉北杜夫 の『夜と霧の隅で』に「その黄色味をおびた血色の一顔が歪 み」とある。「よい」と対立。悪質・悪辣・Q邪悪・よこしま わるがしこい【悪賢い】悪いことに関して頭がよく働く意で、 会話にも文章にも使われる和語。〈一相手だから油断がな らない〉伊藤整の『変容』に「彼女がだらしないのでもな く、私が一のでもない」とある。「ずるい」「こすい」以上に 悪い方面で頭を使うイメージがある。母狡猾・小賢しい・こ すい・こすっ辛い・ずるい・ずる賢い わるぎ【悪気】相手を欺くなど相手に害を与えようと意図す る心の意で、主に会話に使われる日常の和語。〈ーはない〉 へーがあってしたことではない)夢悪意 わるくち【悪口】他人を悪く言う意で、会話やさほど硬くな い文章に使われる日常の和語。〈上司のーを言う〉(さすが に当人の前でーは言えない〉〈死者のーを言うのは卑怯 われら だ 三島由紀夫の『潮騒』に「大声で笑い、お互いに遠慮 のないーを叩き合った」とある。「わるぐち」ともいう。 Qあっこう・陰口 わるさ【悪さ】ちょっとした悪事の意で、主に会話に使われ る、やや古風な和語。〈子供がーをする〉へーを働く〉へーが 過ぎる)②子供のいたずらから大人のちょっとした悪事ま でを含むが、「悪事」というほど大きな犯罪等の行為を連想 させない。Q悪戯・悪ふざけ わるふさけ【悪ふざけ】いたずらという程度を超えて他人に 多大な迷惑を与える行為をさし、会話や軽い文章に使われ る和語。〈一も度が過ぎる〉〈一もいい加減にしろ〉悪戯 ・Q悪さ わるもの『悪者』悪いことをする人間一般をさして、くだけ た会話から文章まで幅広く使われる日常の和語。〈ー扱い〉 〈ー呼ばわりされるいわれはない〉〈ーに騙される〉夏目 漱石の『坊っちゃん』に「虫の好かない奴が親切で、気の合 った友達がーだなんて」とある。常に悪い感じの「悪人」に 比べ、その時の立場や状況によって悪事を働く感じがある。 ひ悪玉・悪党・Q悪人・悪漢・悪 われら【我(吾)等】「われわれ」の意で堅苦しい会話や文章に 使われる、古風でいくらか構えた感じの和語。「の時代 「が母校」「に自由を与えよ」「の行く手に立ちはだ かる幾多の困難を乗り越えて」「若人の夢」井伏鱒二の 詩『逸題』は「今宵は仲秋明月/初恋を偲ぶ夜/万障くり あはせ/よしの屋で独り酒をのむ」と始まる。よく演説な どで気張って使う。特定の人々をさす「われわれ」に比べ、 <1170> われわれ ある条件の人間一般をさす感じが強い。帰たち・僕たち・僕 ら・わたくしたち・わたしたち・Q我々 「我(吾吾)自分達の意で、やや改まった会話や文章に用いられる硬い感じの和語。〈一の意志を伝える〉 〈一の任務を全うする〉〈一の言い分が通る〉〈一庶民には縁がない〉〈一凡人には区別がつかない〉男性は通常の会 話でも使うが、女性は正式の場面以外にあまり使わない。 石川淳の『普賢』に「は噛み合いながらめいめい勝手な方 向に遣瀬なく廻転する二枚の歯車のようなものだ」とある。 「われら」より一般的に使うが、堅苦しい感じが伴う。小林 秀雄の『様々なる意匠』は「にとって幸福な事か不幸な事 か知らないが、世に一つとして簡単に片付く問題はない」 と始まる。この場合は当然読者をも含んでいるが、この類 のことばはすべて、相手を含む場合と含まない場合とがあ り、前者は友好的、後者は対立的な響きが感じられる。働 たち・僕たち・僕ら・わたくしたち・わたしたち・Q我ら わん【椀】半球形の木製容器をさし、会話でも文章でも使わ れる日常生活の漢語。〈輪島塗のお—〉〈お—に盛る〉谷 崎潤一郎の『陰翳礼讃』に「吸物ーを前にして、ーが微かに 耳の奥へ沁むようにジイと鳴っている、あの遠い虫の音の ようなおとを聴き」とある。 わん【碗】半球形や円筒形の陶磁器製の容器をさし、会話で も文章でも使われる日常生活の漢語。〈湯呑み茶〉〈古備 前のー〉②宮沢賢治の詩『永訣の朝』では「けふのうちに/ とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ」と呼びかけ、 死を目前にした「おまへがたべるあめゆきを上らうとして」 暗いみぞれの中に飛び出す。そこには「そらからおちた雪 のさいごのひとー」とある。この「ひとわん」は「椀」だろ うか、それとも「碗」だろうか。ふ椀 わんきよく【湾(彎)曲】弓なりに曲がる意で、改まった会話 や文章に用いられる漢語。〈背骨がーしている〉への多い 海岸沿いの道〉谷崎潤一郎の『細雪』に「線路が少しーし ている土手の上で立ち往生したまま動かなくなっており」 とある。専屈曲・Q曲がる わんぱく【腕白】子供が言うことを聞かずに無茶ないたずら や乱暴な振る舞いをするようすをさし、会話でも文章でも 使われる、やや古風な語。〈|坊主〉へ「ざかり〉へに育 つ小沼丹の『コタロオとロジロオ』に「男の子はーで悪 戯ぐらいした方が良いと面白がる」とある。「やんちゃ」と 違って腕力を連想させ、男の子専用という雰囲気がある。 事実としては女の子にも十分にありうるが、「小僧」「 坊主」などと伝統的に男の子に対して用いてきた関係で、 この語からはすぐに男の子供が連想される。一説に、「関 白」をもじった造語という。おきゃん・Qお転婆・やんちゃ わんりよく【腕力】腕の力や暴力をさし、会話にも文章にも 使われる漢語。〈|でねじ伏せる〉〈|をふるう〉へに物 を言わせる〉〈|に訴える〉夏目漱石の「坊っちゃん」に 「どうしてもーでなくっちゃ駄目だ。成程世界に戦争は絶 えない訳だ」とある。Q腕ずく・腕っぷし・力ずく <1171> I 表現主体の陰翳 1 性别 男(いやあおやじ)/女(あら殿方) 2 年齢幼児(あんよねんね)/子供(げんこうん ち)/若年層(キッチンシングルマザー)/高齢者(パー マ屋ライスカレー) 3出身地(こける・しんどい) 4職業政治家関係書類提出をする/外交関係 (力ードを切る)法律関係遺言婚姻/理科系(コン ピュータ変性)医学関係(クランケオペ)建築関係 (図面に落とす)伝統芸能師匠梨園)映画界ロケ 班小津組)マスコミ・芸能界(スクープダメ出 し)/粋筋(おつくり素人衆)相撲界三番稽古ごっ つあん)仏教関係殺生功徳) 5 所属集団 医者(転失気)/大名(ささ)/僧侶(般若 湯)/盗人仲間(すけとんずら)/暴力団関係(ショバ代 ムショ帰り)/警察関係(ホシ前を洗う)/マスコミ(ブ シヤ番記者) 6 思想傾向 (大東亞戰争 敗戰) 8 教養 (一所懸命 独擅場) 語感体系表 9 誤解予防 ワタクシ立バケ学 10焦点 素養・たしなみ遠ざかる・遠のく 11 強調 どうぞ・どうか 仕返し・復讐 12 驚き 昼日中 ていたらく 13 自負 ピッツァ 文士 14気取り(とこしなえティーム) 15マイナス評価(手口言いぐさ) 16 直接待遇(おっしゃる お召しになる) 17 間接待遇 いただく申し上げる 18丁重(いつぞやいかほど) 19 謙遜 (物書き存じ上げる) 20ぞんぎい(つらめし) 21 軽蔑 ほざく おまわり 22 差別意識 (裏日本 女中) 23 忌避 (他界はばかり) Ⅱ表現対象の履歴 1 性別 男(軟弱 恰幅がいい 女(清楚 豊満) 2年齢 幼児むずかる 愛くるしい/子供利発 悪き/若年(紅顔清純)/大人(しとやか童心)/非 老齢(意地張り有為)/中高年(老獪若作り)/高齡 <1172> 語感体系表 (髪鍊) 3 特徴 (霞ヶ関 かもしか) 4 伝統文化 狸 桜 5イメージ(いでゆこうば王国) 指示形態(フィルム・フィルムごはん・めし・ ライス 7 規模 (造園・庭造り線路・レール) 7規模(造園・庭造り締 8程度(横領・着服・猫糞アマチュア・ノンプロ 9使用偏向(跳ぶ・跳ねる目掛ける・目指す) 10連想(看護・看病本棚・書棚・書架) 11雰囲気(会・会合社会・世界) Ⅲ 使用言語の体臭 1 緊張度口頭語葉ぱやぱり〜だけた会話 (しくじるてんで)俗語(やぱでっかい)幼児語 (おべんほっべ)文章語(佳人用いる)正式(火災 印鑑)略語(ストなつメロ)改まり明年差し控え る) 2時間性古語的(いみじくもやんごとない)/文語 的(ありなしべし)/廃語的寄宿舍職業婦人/旧 称(矩形ミリバール)/古めかしい(ハンケチ気散 じ/古風(宿屋天眼鏡)/斬新(ウイッグアポイント メント/新語(いまいちまじ/創作造語(しんめり生き切る/新用法(大丈夫気になる/流行語(目線怠慢力) 3品格雅語的(みどりごうたかた)優雅語らうたそがれ/上品(あたくしたしなむ)粗野(屁喰らう 4間接性露骨(強姦小便)/婉曲(下腹部小用) 5硬軟軟らかい便り姿/硬い(最大る爾後)/ 格式ばった(もしくは取り揃える)/構えた感じ(われ ら)/大仰(未曾有举行)/勢い(のめる・つんのめる) /積極性(取り戻す・取り返す学習・勉強) 6好悪プラスイメージ(瞳田園)/評価(女・女性 新顔・新人)/潔さ(桜散り際)/マイナスイメージ(小 賢しいしこたま/不快感(どぎついむしかえす)/ 悪感情(ていたらく)/不適感(昼日中)/抵抗感(女)/取 り澄ました(あす存外)/気障(キャメラレディ)/ 宣伝的(特長) 印象和風(なきがらまどか)ひそやか(片隅) 繊細(か細い)なまめかしい(艶)軽い(仕返しラッ キー重大(容態腫れ物)凜然(文士)新鮮(セン ス)趣味的(憶い出録る)分野限定(ルーキー)使 用頻度少(印章) <1173> 8情趣雅やかみぎわひもとく/美化銀盤天 空/文学的まどろむえにし/詩的ときめき残 照/おもむき(陽光夕景色/抒情的いつしか偲 ぶ/情緒的昼下がり行きずり) 9 感触 郷愁(ゆりかご 乳母車)/親しみ(母さん へたっぴい)/思い入れ(母校はかない)/家庭的(玉 子)/くつろぎ(ひととき湯上がり) 10 雰囲気 古典的(撰者)/歴史的(法皇)/学問的(分 科性向)/哲学的(直観他者)/犯罪のにおい(ばら す)/宗教色(受胎信徒)/不吉(柩葬式)/めでたい (松竹梅鶴亀) 11主観性主観的いけ好かない長ったらしい/客 観的(出身地尿) 12 具体性 感覚的(むずむず)/具体的(疑る体験)/ 抽象的(危ういけがれる)/即物的(死骸)/事務的(配 偶者) 13 季節感 春(うららか陽炎)夏(油照り端居) 秋(赤とんぼ秋刀魚)冬(風花雪晴れ) 14位相専門的母語発症対価/出自ゴールイ ン勇み足続投/方言色(おとついこさえるたわ け) 15 語の性質 漢語的漆黑 懸隔/和製英語(パネ テーハンドル/外来語(エッセイスニーカー)/オノ マトペ(どしどしやきもき)/混交語(とらまえるや ぶく) 16 言語的性格 用字(倫敦ふらんす語フーゾク) 破裂音(にっぽんかっさらう)促音(すっぽ抜くこっ ぴどく)濁音(だぼはぜばか)造語要素のイメージ (愛欲・獣欲)/接辞のニュアンス(ど田舎いけ図々し い) 17 多義性 開店 調べ 18 連想 語源の想起(矛盾蛇足)/出自の想起(ダ一 クホース全力投球成金)/同音語・類音語の連想(A 図・エーズ父さん・倒産)/同訓異語の連想(やぶ医 者・竹の子医者)/比喻的用法の連想(よろめくしびれ る)/滑稽な連想(駅弁大学新人類) 発想 (素裸・真裸くるむ・包む) 適用範囲(天気・天候表情・顔色) 21複合ニュアンス(先祖・祖先あっさり・さっぱり ちょっと・ちょいと国語・日本語ウイット・エスプ リ・ユーモア) <1174> 語感体系表 語感の全景 ことばがかもしだす雰囲気、ことばとともに伝わる感じ、 そう表現することで相手に与える印象としての「語感」は、 そのことばを選んだ人間の在り方に関する何らかの情報、そ のことばで表現してきた対象の側の指示むらや、それに関す る記憶の蓄積、そしてもう一つ、そのことば自体がいつのま にか帯びている体臭ともいうべき何らかの感じ、という三つ の方面に大別できるように思われる。表現する人〉に関する 語感と、表現されるもの・こと〉にかかわる語感と、表現に 用いる〈ことば〉にまつわる語感の三つである。 第Iの【表現主体の陰翳】には、そのことばを使う人が男か女かという「性別」、子供か大人か、若い人か年寄りかといった「年齢」、どの地方で生まれ育った人かという「出身地」、政治家か理科系の人間か、医者か弁護士か僧侶か、警察関係の人間か芸能界にくわしい人かといった「職業」や「所属集団」、どちら側に立ってものを言っているか、そのことに関してどう考えているかといった「思想傾向」、相手との関係をどうとらえているかといった発言の「立場」、言語表現に関しどの程度の知識をそなえているかといった「教養」、相手に正確に伝わるような配慮をはらっているかといった「誤解予防」、どこ を中心に述べているかという焦点」その点を力説している か否かという強調」その件についてどのような態度で接し ているかという驚きや「自負」あるいは、伝える際の気取 り」その話題に対するマイナス評価」対象に関する直接 待遇」や「間接待遇」伝える態度としての「丁重」「謙遜」「ぞん ざい」その対象に対する「軽蔑」や「差別意識」さらには、そ の対象自体を避けようとする「忌避」の気持ちなど、さまざま なものが含まれる。 第Ⅱの【表現対象の履歴】は、その語で従来さしてきた対象に指示むらがあって、そういう指示歴の累積によって受容主体側に生じている先入イメージを問題にしようとするものである。ここにも、「労務者」というと男性を、「清純」というと女性をすぐに連想するような「性別」、「やんちゃ」が子供を、「老獪」が中高年を連想させやすい「年齢」、「かもしか」というとすぐ脚部を思い浮かべるような「特徴」がまずあげられる。「狐」に比べて「狸」のほうが愛嬌があって憎めない感じがする「伝統文化」もある。これはその動物自体に対する日本人の思い込みも影響しているかもしれないが、「むじな」というとそういう感じが消えてしまうので、「ためき」という使用言語によりかかる面が大きい。 「少女」より「乙女」のほうが上品な感じがするようなイメージ、「写真機」が「カメラ」より旧式または本格的な感 <1175> じがするような「指示形態」、「飛行場」と「空港」とで違いの 感じられる「規模」や、「着服」と「横領」とで違いの感じられ る「程度」もある。そのほか、「専門家」より「スペシャリス ト」のほうが得意分野が狭い感じがするといった「使用偏向」 「看護」と「看病」とで浮かんでくる場面が違う「連想」、「囲 む」と「取り巻く」とで感じの違う「雰囲気」なども考えられ る。 第Ⅲの【使用言語の体臭】はさらに多種多様である。まず、 「緊張度」の違いによって〈口頭語〉くだけた会話〉〈俗語〉〈幼 児語〉のような文体的レベルの低い語群があり、逆に〈文章語〉 のようなレベルの高い語群を取り立てることもできる。「い のち」より「生命」、「ましかく」より「正方形」に抱く〈正式〉 な感じがあり、〈略語〉はその逆の印象を与えやすい。また、 「まかせる」より「ゆだねる」、「先日」より「過日」に感じら れる〈改まり〉もその緊張度の中に位置づけることができる。 次に、「時間性」の違いによって「けだし」のような〈古語的〉、 「あり」「なし」のような〈文語的〉、「電蓄」「級長」のような 〈廃語的〉、「矩形」のような〈旧称〉のほか、「ハンケチ」のよ うな〈古めかしい〉、あるいは「時分」のような〈古風〉、逆に 「スイーツ」のような〈斬新〉という語感もあり、「イケメン」 のような〈新語〉や〈創作造語〉や既成の語の〈新用法〉〈流行語〉 がある。「品格」に着目すれば「みどりご」のような〈雅語的〉、 語感体系表 それに近い「たそがれ」のような〈優雅〉、「たしなむ」といった〈上品〉、逆に、「喰らう」のような〈粗野〉などが立つ。 伝達の「間接性」から〈露骨〉と逆の〈婉曲〉、感じの「硬軟」から〈軟らかい〉と〈硬い〉〈格式ばった〉〈構えた感じ〉があり、〈大仰〉〈勢い〉〈積極性〉を感じさせる語群もある。「好悪」の情から〈プラスイメージ〉〈評価〉〈潔さ〉や、その逆の〈マイナスイメージ〉〈不快感〉〈悪感情〉、あるいは〈不適感〉〈抵抗感〉や〈取り澄ました〉〈気障〉、それに〈宣伝的〉が取り上げられ、〈印象」という括りで〈和風〉〈ひそやか〉〈繊細〉〈なまめかしい〉、あるいは〈軽い〉〈重大〉〈凜然〉〈新鮮〉、〈趣味的〉や、「ルーキー」のような〈分野限定〉、「印章」のような〈使用頻度少〉が数えられる。 「情趣」の点で「みぎわ」のような〈雅やか〉、「銀幕」のような〈美化〉、「タペ」のような〈文学的〉、「残照」のような〈詩的〉、「名残」のような〈おもむき〉、「偲ぶ」のような〈抒情的〉、「行きずり」のような〈情趣的〉などが取り上げられ、「感触」の点で〈郷愁〉〈親しみ〉〈思い入れ〉〈家庭的〉〈つろぎ〉など、「雰囲気」の面で〈古典的〉〈歴史的〉〈学問的〉〈哲学的〉、あるいは、「ばらす」のような〈犯罪のにおい〉や「受胎」「社殿」のような〈宗教色〉、それに、〈不吉〉〈めでたい〉などが立つ。 「主観性」の点で「主観的」と「客観的」、「具体性」の面で「感覚的」「具体的」「抽象的」「即物的」あるいは「事務的」などがあが <1176> 語感体系表 る。「季節感」の面で「おぼろ」のような〈春〉、「油照り」のよ うな〈夏〉、「いわし雲」のような〈秋〉、「雪晴れ」のような 〈冬〉のけはいに分かれる。 語学的なニュアンスに移ると、まず、「位相」の面で「供述」「対価」「草本」のような〈専門的〉があり、「勇み足」「ラストスパート」のような〈出自〉、「しんどい」「しばれる」のような〈方言色〉がある。次いで、「語の性質」として、「懸隔」のような〈漢語的〉、「シュークリーム」のような〈和製英語〉、「マジック」のような〈外来語〉、それに、「どんどん」「いらいら」のような〈オノマトペ〉や「やぷく」のような〈混交語〉がある。それ以外の「言語的性格」として、「倫敦」「フーゾク」のような〈用字〉、「にっぽん」「かっぱらう」のような〈破裂音〉や〈促音〉、「だぼはぜ」のような〈濁音〉、「獣欲」のような〈造語要素のイメージ〉や「ど近眼」などの〈接辞のニュアンス〉などを立てることができる。 次に、その語が一義的であるか二つ以上の意味をもつかに 注目し、多義的であるために他の意味が連想されてその背景 となる語感をあげることができる。「焼き物」「調べ」などは そういう「多義性」の例である。「連想」ということになれば、 「矛盾」「蛇足」などの「語源の想起」、「ダークホース」や「成 金」などの「出自の想起」、「東南」から「盗難」を思い浮かべ る〈同音語・類音語の連想〉や〈同訓異語の連想〉、「よろめく」 から浮気を想像する〈比喻的用法の連想〉、それに、各県に設 置された国立大学を「駅弁大学」と呼ぶような〈滑稽な連想〉 などもあげられる。 そのほか、「叱る」と「怒る」、「薄目」と「細目」などの「発想」の違い、「転居」と「移転」、「応接間」と「応接室」との「適用範囲」の違いなどがあり、「ウイット」と「エスプリ」と「ユーモア」、「国語」と「日本語」などには、これと一つにしばれない多岐にわたる「複合ニュアンス」の違いが認められる。 以上は語感の発揮される可能性がある個々の要素を列挙し で全体のひろがりを一覧したものである。しかし実際には、 例えば、「払暁」ということばは、表現主体として高年齢の人 間を推測させるとともに、いかにも漢語的で硬く、文章語レ ベルであると同時に、古風でやや優雅でもあり、時にはある 種の気取りを感じさせる。このように一つの単語に複数の語 感要素が働くケースは現実にけっして少なくない。というよ り、いくつかの語感をあわせ持っているのがむしろ自然な姿 かもしれない。 そういう多面性をぬった語感が伝達効果という複合体の毛 細血管に行きわたり、日本語表現の雅趣と陰翳を深めている と考えられる。 <1177> あとがき ばらも桜もコスモスも「花」であり、お茶もコーヒーも酒 も、池も川も海も要するに「水」である。「雨」にも春雨・さ みだれ・夕立・しぐれ・ひさめといろいろある。「梅雨」もそ の一種だが、さらに菜種づゆ・走りづゆ・戻りづゆと分ける 人もある。感じ分けるのはそういうことばを知っているから だ。語彙が豊富になるにつれて認識が繊細になり、人生をき め細かく味わうようになるだろう。同時に、用語に迷うとい う贅沢な悩みも増える。 無用な摩擦を避け、それなりの品格を維持するため、日常 会話できえ誰でもある程度ことばを選んでしゃべっている。 のちのちまで残る文章となれば、言葉遣いにさらに気を配る。 推敲する余裕があるときは、意味と語感の両方から最適のこ とばを探そうとするだろう。「森」か「林」か「霧」か「も や」か「日向」か「陽だまり」か「水面」か「水上」か、 「ラム」か「マトン」か「本式」か「公式」が「正式」かと いった選択は、その語が何をさすかという〈意味〉の問題で、 辞書を引けばどれが適切か容易に判断がつく。 ところが、「卓球」か「ピンボン」か「積乱雲」か「入道 雲」か「医者」か「医師」か「海岸」か「海辺」か「冗談」 あとがき か「ジョーク」か、「首巻き」か「襟巻き」か「マフラー」か、 あるいは、「霧雨」か「細雨」か「煙雨」か、「雪模様」か「雪 催い」かという選択になると、そう簡単には解決しない。判 断の基準になるのが、何が伝わるかという〈意味〉ではなく、 どう伝わるかというまさに〈語感〉だからである。 同じ事柄をさすいくつかの言い方の候補のうち、その文体や場面、相手に与える印象などを総合的に考慮した際に、表現者の気持ちにどのことばが最もしっくり合うか、という主観的で微妙な選択となる。言語表現のこういう感覚的なレベルの問題に入りこむと、国語辞典で調べてみてもなかなか結論が出ない。どの辞書もことばの〈意味〉の解説が中心であり、その語がどのような響きをもち、どんな条件のもとで相手にどういう伝達効果を奏しやすいかというあたりはほとんど説明できていないからだ。 一項目あたり平均数行以内で解説しなければならない辞典 というものの宿命として、そもそもスペース面で〈語感〉にふ れる余裕がないという事情もたしかにある。が、それよりも、 論理で律しがたいそういう微妙なニュアンスはきわめて把握 しがたく、また、感性でとらえた情報を知性で正確に記述す ることは困難であり、さらに、各個人の言語感覚の違いによ る印象の差も無視できず、結果として辞書に登録するだけの 客観的な安定感に欠けるという面のほうがはるかに大きいだ <1178> あとがき ろう。 そのような事情はむろん辞書だけではない。同じ理由で、 〈語感〉の問題を正面にすえてその全体像を本格的に論じた学 術書も現れにくい。しかし、〈意味〉とは別種のそういう〈語 感〉というものが現に存在することは明白だ。「あした」と 「あす」と「明日」はそれぞれ感じが違うし、「やはり」「やっ ぱり」「やっぱし」「やっぱ」はどれも違った響きがある。「い やあ」や「かしら」には性別の、「お勝手」「台所」「キッチン」 には年齢の翳が映る。「日本」は「にほん」と読むか「にっぽ ん」と読むかによって響きがかなり違う。「広島」と書くか 「ヒロシマ」と書くか、「風俗」と書くか「フーゾク」と書く かによってまるで違った印象になる。多少の個人差はあるに せよ、同一の対象を指示しながら、ことばによってそういっ た感じの違いが出ること自体は、誰にも否定できない厳然た る事実である。 「永久」と「永遠」、「叱る」と「怒る」、「真っ裸」と「素っ 裸」、「どうぞ」と「どうか」も、それぞれどこかしら違う感 じがする。「わたくし」とも「わたし」とも「あたし」とも異 なる「あたくし」の語感、「ちょっと」とも「ちょい」とも差 のある「ちょいと」の語感など、気になりながらうまく理詰 めで説得できないもどかしさもある。だが、輪郭がぼやけて いて正体を写真に撮れないまでも、感じの違いというものが 間違いなく存在するなら、そのイメージを淡いタッチでス ケッチすることぐらいはできるかもしれない。〈語感〉の研究 は、部分的であれ誰かがそういう木炭画の素描を試みるとこ ろから始まるだろう。 文学作品の文体研究に明け暮れていた自分が、表現分析の 具体相でいつもぷつかる〈語感〉という不可思議な存在、その 全体像に関心を抱き始めたのはいつごろからだったろうか。 「まえがき」でふれた座談会が刺激になったのか、一九八六年 の七月に早稲田大学の大隈小講堂で開催された日本語教育公 開講座で、〈語感〉体系をめぐるぼんやりした構想を随筆風に しゃべった。そのあたりが〈語感〉の全貌という問題に探りを 入れるきっかけになったような気がする。翌年『講座 日本 語教育』第二三分冊に「語感のひろがり」と題してその内容 を覚え書き風に記した。 その後、「意味と語感」を扱う全学オープン科目で、毎年新しい学生たちに発表させ、みんなで議論した経験も、自分の言語感覚に新鮮な息を吹きこんだことだろう。大学院文学研究科の演習や研究指導の時間でこれに関連するテーマをとりあげた時期もある。小林由紀(慶應義塾大学非常勤)・水藤新子(中央学院大学専任講師)・小出美河子(辞典編集者)・田中妙子(慶應義塾大学准教授)・石黒圭(一橋大学准教授)・高橋淑郎(ミュンヘン大学専任講師)・関綾子(プール学院大学専任講師)といった中村 <1179> ゼミ所属の正規のメンバーに、時に小宮千鶴子(早稲田大学教授)・佐久間まゆみ(早稲田大学教授)・ボリーザトラウスキー(ミネソタ大学教授)といったゲスト教員も交えたこのゼミの時間に、あるいは軽井沢の追分セミナーハウスでの夏合宿で、活発な議論を展開したことも思い出深い。 このような体験も目に見えない形で、〈語感〉をめぐる考察 の幅と奥行きを広げる結果となっていよう。一方、類義語の 意味の微差や用法の違いなどを分析する先行文献の中に散見 する部分的な語感メモ風の記述や、作家たちの随筆類に時折 見られる感覚的な言語論などにヒントを得るとともに、言語 感覚のアンテナに偶然ひっかかったさまざまな〈語感〉現象を 自分なりに観察し内省することをとおして実感的に探りあて た知見も増えた。 早稲田でしゃべった内容にそのあたりを補足し、新社になる前の中央公論社から一九九四年の八月、『センスある日本語表現のために』というただでも長いタイトルに、さらに「語感とは何か」という副題まで添えた中公新書を発表した。頭の中のおしゃべりを書きとめた「漫筆語感のはなし」といった調子の雑然とした語学的自叙伝まがいのエッセイにすぎない。その「あとがき」に「小さな庭にはじめて石楠花の咲いた日」とあるが、その常緑の花木もすでにない。ともあれへ語感というものを幅広く見わたした最初の試みとして、この方 あとがき 面の研究の足場を築くうえでなにがしかのヒントを与えたか もしれない。 その数百語の言及を足がかりとし、年古りていささか感度 の鈍ったアンテナにそれ以後ひっかかった約一万語を対象と して本邦初の『語感の辞典』を編むこのたびの企画は、まさ にドン・キホーテの第二弾ともいうべきだろう。が、国語辞典 が慎重である限り、こういう大胆で子供じみた叩き台でも誰 かが示さなければ、〈語感〉の研究は一向に進展しない。 分析対象が数百語から一万語に増え、その全体像が変化し た。頭に描く体系図も当然ながら中公新書のころのイメージ から変化してきている。本辞典には現段階での「語感体系表」 として三類五五種約一七○項の区分けを示した。考察する範 囲が拡大するにつれて、この表も少しずつ修正されるはずで ある。 ことばの用法の細かいところでは〈意味〉と〈語感〉とが連続 的だから、本辞典でも微妙な〈意味〉のニュアンスにおのずと 言及することになった。が、中心はあくまで〈語感〉という未 開拓で主観的な領域にある。昭和十年に出羽庄内の鶴岡市で 生まれ、大学入学以降は東京に住まい、国立国語研究所員や 早稲田大学教授として長期にわたり文学の語学的研究に携 わってきた文体論の学徒としての個人的な言語感覚が、当然 ながら本書の〈語感〉の記述に色濃く反映していることだ <1180> あとがき ろう。 勘というほかはないレベルの思いきった感性的判断を随所 で試みたつもりだが、それでも大多数の日本語話者と共通す る部分がかなりの割合にのぼるような気がする。それは個人 が獲得した気でいる〈語感〉というものが、それまでに聞いた り読んだりした体験を通じて必然的に多くの人間の語感とか かわり、それを背景として成立しているからである。本辞典 の基礎の一部をなす前著には、早稲田大学の学生、特に大学 院中村ゼミに在籍したメンバーの新鮮な感覚が反映した箇所 もある。 今回の辞典執筆にあたり、徳川宗賢・宮島達夫『類義語辞典』(東京堂出版)、柴田武・國廣哲彌ほか『ことばの意味』1.2.3(平凡社)、森田良行『基礎日本語辞典』(角川書店)、大野晋・浜西正人『角川類語新辞典』、柴田武・山田進『講談社類語大辞典』、中村明・芳賀綏・森田良行『三省堂類語新辞典』、遠藤織枝・小林賢次・村木新次郎ほか『使い方の分かる類語例解辞典』(小学館)、藤原与一・磯貝英夫・室山敏昭『表現類語辞典』(東京堂出版)、中村明『文章プロのための日本語表現活用辞典』(明治書院)、中村明『漢字を正しく使い分ける辞典』(集英社)、金田一春彦・池田弥三郎『学研国語大辞典』、山田俊雄・築島裕・白藤禮幸・奥田勲『新潮現代国語辞典』、西尾実・岩淵悦太郎・水谷静夫『岩波国語辞典』、森岡健二・徳川 宗賢・川端善明・中村明・星野晃一『集英社国語辞典』などの辞典類を特に参照した。いずれも〈語感〉そのものに関係した言及は少ないが、そこから得られたヒントは少なくない。また、ここ二年ほどの間は、家庭の食事の時間や団欒のひとときにもなぜか父親の頭から離れない〈語感〉がたびたび話題になった関係で、妻の妙子(元国際基督教大学教授)には女性の言語感覚、息子の友(早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得)と城(学習院大学法学部卒)には若いそれぞれの世代の言語感覚について多くの情報を得た。特に友には、使い分けの紛らわしい語群を選定する作業の一部でも力を借りた。 もう一つ、この辞典を生き生きしたものに仕上げる効果の あったものに、十数人の作家からじかに聞いた〈語感〉に関す る貴重な言及がある。記述中に作家の発言を引用したのは、 その作家訪問の際に直接うかがった当人の〈語感〉を紹介する 意図もある。煩瑣になることを避けて逐一その旨を注記する ことは割愛したが、その大部分は筑摩書房から単行本として 上梓し、今はちくま学芸文庫に入っている中村明編『作家の 文体』中に記録されている。 著者の構想に端を発し、今こうして『日本語語感の辞典』 として刊行されるまでにも、いろいろな方の手をわずらわせ た。岩波書店から上梓した直前の著書『文の彩り』の担当編 集者であった鈴木康之氏には辞典編集部への斡旋の労をとっ <1181> あとがき ていただいた。編集局部長の田中正明氏には企画の初めから 完成まで主たる担当者として編修のかたわら数々の貴重な意 見を頂戴した。辞典編集部の加瀬ゆかり氏には編集・校関の 過程を通じて細部にわたる具体的な鋭いご指摘を賜った。訪 問した作家や参考文献の著者、議論した仲間やかつての学生 たち、それに家族、そしてこの岩波書店編集部の方々と、さ まざまな形での善意とお力添えを得て今出帆する。その銅雛 の音に乗せて、ここに記したすべての方々に心より感謝の気 持ちをお届けしたい。 今後は波のまにまに響く読者の声を聴きながら、より多く の日本語話者の共感できる語感辞典として信頼される姿をめ ざして航海を続けるだろう。航跡をふりかえるのはその長旅 を終えてからのことである。 なお、本辞典では一般的と思われる〈語感〉に限定して扱っ たため、わかっていながら言及しなかった〈語感〉もある。そ の一つはまったく個人的な語感だ。同じ「柿」ということば でも、渋柿に閉口した人と正岡子規のような大の柿好きとで は印象が違う。一説に奈良東大寺の鐘を聞いて想を得たとも 言われるが、「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」という子規の句 を思い出して風流な気分になる人にとっても感触がいくらか 違うかもしれない。 もう一つは文学の深みに沈潜する作家独自の語感だ。自然の意思というものを信じ、おのずと湧き起こる好悪の情を倫理の基とした志賀直哉にとって、それに逆らう「拘泥」ということばは一般の人とは違う特殊な語感をもつ。「稲妻」が川端康成にとって驚異の対象であり、「世人」が小林秀雄にとって挑みかかる社会通念の偶像であったのも、あるいは、「石膏色」が吉行淳之介にとって倦怠感の象徴として、生理的な感動を象徴する「夕焼け」と対極をなす例も同様である。「文体的語感」とも称すべきこの種の表現価値についても、やはり一般化できないと考え、本書では言及していない。 二〇一〇年 重陽 高きに登らず菊酒も酌まず 東京都小金井市の自宅にて 著 者