<1> # 禿げる・生やす-289 体毛が濃い。無駄毛に悩む。無駄毛を剃る。指に燃かにみたいにたくさん生えている毛佐藤春。▼毛むくじゃら(腕が。隠すが)。毛むくじゃらな(足。犬。男)。 **しらが【白髪】** 白髪がいぶし銀のように清々サ娜しく光る本庄。髪に一筋二筋の白髪が光る。少し白髪が目立つ。愛びんに白髪がまじっている。めっきり白髪が多くなる。顔の若さに悅くらべて白髪が多い公村。頑強な額の上に獅子の없絵のような白髪が乱れ逆立っている三島。ちらほら白髪が額にほつれる=岡本。白髪のまじった老人。髪の毛が真っ白になる。恐怖で頭髪が一夜のうちに真っ白となる柴田剣。胡麻塩色ぶに礼になった頭高橋治。頭に秋霜を置く。髪に白いものが交じる熊谷。髪に白いものが目立つ内海。透き通るばかりに真っ白い髪の老人=小川。頭髪が白く変わる。生え際にうっすら霜をおく"山崎。半白の髪。真っ白な髪を北斎の波模様のようにカールさせる=大庭。真っ白なさんばら髪をふり立てる!大庭。長い白髪のような雨高橋和。乱れた白髪のような秋の長雨"倉橋。白い亀の子タワシみたいな白髪頭!富岡。見事な銀髪を朝の陽光に輝かせる三好微。 **たてがみ【嵐】** たてがみが大きく波打つ。馬の骸がゆさゆさと揺れる佐多。波の骸が白くくねって走っている極。芒討すが馬の蜜のように丘の頂上まで衍はい上る=大岡。 **ちょうはつ【長髪】** 長髪をばっさり切り落とす。ばさばさの長い髪。長い髪が(風になびく。背後の窓からの陽射しを踊るように弾く=原田宗)。縮れた長い髪が蜘蛛くもの巣のように揺れる=山田詠。解いた長い髪が一瞬散るように踊って肩に流れる=高井。寝乱れた長い髪を揺らせる。髪を長く伸ばす。 **つの【角】** 林のようにツノが並ぶトナカイの群れ=本多勝。角がほろりと落ちる。角を(生やす。矯めて牛を殺す)。板のあい目や節穴から洩もれる光線が黒い闇の(猿みたいに。熊のように。 **くろかみ【黒髪】** 黒髪(みどりの。ぬれぬれとした。扇のように広がる=福永。緑の牧場のうねりよりなお柔らかに波打つ三好達)。黒髪が海藻に似た輝きを見せる=獅子。肩に黒髪がこぼれかかる。女の黒髪につなぎとめられる=平石。肩にかかる黒髪をはらりと払う。肩に黒髪を滑らせる。長い黒髪を風に吹きなびかせる。豊かな里髪を竜宮の乙姫のように高く結う大庭。髪が黒色の芒討すのように波うつ連城。光った絹糸みたいな長い真っ黒な髪の女=大庭。黒い髪が(漣ぶのように揺れる=福水。シーツの上に海藻のように広がっている女に永倉)。髪が黒くつやつやと輝いている。黒々として豊かな髪。黒く波うつ豊かな愛をうなじのところでまとめる塩野。 **け【毛】** 足の親指にぼやぼやと生えている毛辻井。毛がばらばらと抜け落ちる。もじゃもじゃ毛が生える。白い毛が雪のように散る=本多惨。毛の根が痒かゅくなる。房々した毛のむく犬。毛の色艶が(いい。悪い)。総身の毛が(逆立つ。よだつ)。毛のような(細かい注意。細い白銀色比以ぶの針"井伏)。瞬い封った獣の黒っぽく厚い毛のような公園の茂み=日野。羊の毛のように白く靡なびく浅間の烟!も=田山。額にへばりつくように垂れている軟らかい巻き毛=阿刀田。毛並みがつやつやとしている。毛並みの美しい精悍な獣原田席。黒い毛色が漆を塗ったように美しい光沢の犬"内田百。 **けぶかい【毛深い】** ▼毛深いおそろしいほど永井荷)。すねに黒々と毛を生やす。川)。髪が櫛の歯も通らないほどにもつれ合う萩原。 なしびれた思い=林美)。頭頂にぼやぼやと髪の毛が立つ。項らょに細い髪の毛が煙る=中沢。裸の肩へ髪の毛がさやさやと触れる=中沢。ばらばらになった髪の毛が蹴ゃらのように額に垂れる=小池。ボマードで無理に寝かせつけられた髪の毛がむくむくと起き上がる岸田。無造作に伸びたやわらかい髪の毛がウェーブをかけたように波打って耳のかげにひろがる"石森。やんわりとした髪の毛の撫ぇで心地。髪の毛まで凍ってしまいそうな寒さ=原田康。髪の毛を(くるくる巻く。遂々行とさせる。短く切る。鷲掴みれみにする。くしゃくしゃにさせる。ちりちりにする。ぴったりときれいに分ける。ポニーテールにまとめる。ポマードで固める。もじゃもじゃと伸ばす。ふさふさと肩に垂らす=田辺)。雨に濡れた髪の毛をタオルで拭く。風が髪の毛をばらばらにする。所在なく髪の毛をもてあそぶ。一本一本の髪の毛をいとおしむような丁寧な愛撫・加賀。水の中に髪の毛を落としたように血がサツと流れる=伊集院。髪の毛のようなひびがはいる"小林多。細い髪の毛のような雨がまっすぐに天から垂れてくる=倉橋。流れに沿って川床の薬が髪の毛のように揺れる=高橋知。頭の毛が(弾くなる。犬が寝た後の芝生みたい=黒井)。頭の地肌が透けて見える。髪の毛一本無駄にしない。頭の毛を剃る。見違えるほど毛艶がよくなる。総たにを(張り出す。膨らませる)。発毛を促す。毛髪が梳くしにからむ。弯。細い櫛の歯のように規則正しい雨倉橋。わが身の **かみのにおい【髪の匂い】** 髪から(清潔な匂いが漂う。少し焦げたような日向の匂いが立ち昇る=落合)。髪の油が甘く漂漂う。淡い髪の香りがそっと鼻を打つ人米。尖がったような乾いた髪の匂い=黒井。 **くし【稀】** 櫛に毛髪が絡む。櫛の(歯のように生えている竹林に差しこむ陽が苔こけの生えた地面に雨のようにそそぐ=水上。歯を引くように次々と去る=多岐上に櫛の歯をひくことく襲いかかる突拍子もない出来事・野坂。櫛の歯が抜けるように記者が辞めていく横山。同志たちが次々と櫛の歯を挽くように死んでゆく"綱淵。歯の欠けた櫛のように軒並の電灯が減る徳永。櫛代わりに愛髪に指を入れる。 <2> # 挨拶する・祝う **あいさつ【挨拶】** ▼挨拶(折り目正しい。通り一遍の。生まれてはじめてお辞儀をするようにぎこちない=河野)。何しにきたんだと斬りつけるような挨拶がいきなり出る=奥泉。丁寧な挨拶で痛み入る。年頭の挨拶に伺候する。二言三言挨拶の言葉を交わす=堀。ろくに挨拶もできないなんて情けない!森場。挨拶もそこそこに(玄関を出る。用件を切り出す」西木)。挨拶を交わす程度の友達。近所一帯に挨拶をして回る。主人が挨拶を始める。粗雑な挨拶を返す。別れの挨拶を言上する。歯切れよく挨拶をして笑いかける!佐藤愛。・挨拶を交わす(儀礼的な。朝晩の。笑顔で。初対面の。丁寧な言葉で)。▼挨拶する(いい加減に。聡煎ごんに。言葉短に。しとやかに。愛想よく。明るい声で。改まって。きちんと。目顔で。礼儀正しく。顔一杯の笑みで。休を二つに折り曲げて。小腰をかがめて。親しみをこめて。三つ指をついて。きまり悪げに初めて逢う姿に=島崎。直立不動の腰を深々と折って老師に"武田炎。丁寧に両手をついて=さだ)。▼挨拶をする(管理人に。形ばかりの。久關於うの。連帯の。軽く膝を曲げて)。一度お目にかかって挨拶したい。挨拶がわりに厭味灬ゃを放つ=井上ひ。簡単に自己紹介をする。仁義を切る。▼述べる(式辞を。お悔やみの言葉を)。▼読み上げる(送辞を。答辞を)。会染者の礼に一々答える。一揖する(恭しく。さりげなく。にこっと笑って。ほっと救われたように=檀)。別辞もそこそこに見送る。意味深長な会釈を交わす。丁寧に会釈をして去っていく=山本周。軽く会釈を(送る。返す)。▼会釈する(腰を屈めて。小さく)。口上が割合すらすらと出る。憎いほど落ちついて澱ょとみのない口上だ=獅子。口上を読み上げるように料金のシステムを説明する=阿刀田。来訪の口上を聞く。一歩間違えばヘタなテキ屋の口上のような科白紗』を吐く=久間。 **あくしゅ【握手】** 握手がひとわたり済む。握手の手を差し伸べる。固い握手を交わす。別れしなに握手を求める。西洋と東洋が握手する=吉田。無邪気さが白ぶどう酒の澄明な泡に沸きたって活力と握手し声に出して歌いはじめる=開高。握手攻めにあう。差し出す(さり気なく右手を。しっかりやれよという風に手を=向田)。 **いちれい【一礼】** 丁寧な重々しい一礼。にこやかな一礼とともに客を迎える=笹沢。深々と陳謝の一礼をする。一礼する(恭しく。格式ばって。軽く。誰にともなく、深く。無言で。両手をついて。殊勝な面持ちで。本堂に向かって。優美なしぐさで=高千穂)。一礼して(座を立つ。社長室を出る)。一礼してから席につく。▶黙礼する(仏像に。神前で)。黙礼を返す。礼をして部屋を出ていく。堅苦しい礼を残して退室する。礼をする(恭しく。端然と。深々と)。目礼を交わす。目礼する(笑顔で。軽く。微笑を浮かべて)。 **いわう【祝う】** ▼祝っ(門出を。元日に餅を。結成一周記念年を。再出発を。正月の雑煮を。勝利を。中秋の月を。屠蘇と、で正月を。赤飯を炊いて。結婚するカップルを。家族がささやかに。春の祭典を心から。還暦を。喜寿を。古希を。傘寿を、卒寿を。白寿を。百年の寿を。米寿を。本卦帆んがえりを)。入れ代わり立ち代わり祝いに来る。祝いの(言葉を述べる。品を届ける)。喜びにあふれた祝いの席。娘が一人前になったことを家じゅうでお祝いする"丹羽。お祝いのシャンバンを抜く。誕生日のお祝いをする。薬玉心封を割る。慶祝の雰囲気に包まれる。▼寿にとぐ(愛の成就を。改まった年を。延年を。長寿を)。祝儀袋を懐から出す。祝儀を袱紗くに包む。祝意を表す。盛大な祝賀行事。来賓のながながしい祝辞。年頭の祝辞を述べる。無事生還を祝す。祝電を打つ。祝杯をあげる。祝砲を放つ。・除幕式(記念碑の。銅像の)。奉祝式典を開催する。前祝いの乾杯のグラスを重ねる。前祝いを兼ねる。祝福の光に包まれる。牧師の祝福を受ける。▼祝福する(奇跡の生還を。恋人たちを。出発を、勝利を。二人の前途を)。▼祝福される(運命に。神から)。万歳の声が(上がる。こだまする)。万歳を三唱する。誰からともなく万歳を唱える=なかにし。両手を挙げて万歳する。 **おじぎ【お辞儀】** ぐききっと音でもしそうな感じのぎくしゃくとしたおじぎ=椎名滅。頭が膝の所まで来るほどの丁寧なお辞儀"中島災。お辞儀のキャッチボールを繰り返す=梶尾。いよいよ固くなってお辞儀をするばかり合崎。お辞儀する(三つ指を突いて。腰を折って深々と=辺見。額を畳に吸いとられたように長ながと安岡)。▼お辞儀をする(角張った。こくりと。ぺこぺこと。びょこんと一つ。帽子に手をかけて。なびいたように草木が芝木。相手が恐縮するくらい丁重な=高井、バッタのようにひっきりなしに大庭。畳に両手をついて深い三鳥。弾かれたように高井。膝に手をついて=岡田)。▼深々とお辞儀をする(英国の女王の前に出たときのように=大庭。神妙に畳に手をつき=ねじめ)。つんのめるようにお辞儀しながら入ってくる小林信。ぬかずく(前に。拝殿に。墓前に)。▼頭を下げる(静かに。弔問客に。丁重に。愛想よく。黙って軽く。小さく。ぺこりと。マイクの前で。焼香する人たちに機械的に"貫井。ガクンと首を折るようにして向田。啄木鳥のように=川端。長い髪が頬にかぶさるほど=川端。「よ・ろ・し・く」というような変にブツギレのしぐさで=椎名誠)。両手を前に重ねて恭しく頭をさげる遠藤。股熟んに頭を下げて辞退する倉橋。深々と頭を下げる(受話器の向こうに“篠田。收居際に手をついて=小松左)。 <3> 挨拶する・祝う―1 **おれい【お礼】** お礼(世話になった。今までよくしてもらった)。お礼の(一席を設ける。言葉が見つからない。申しようもありません)。思わずお礼の言葉を洩もらし口笛を吹く気になる=佐野。一言お礼を申し上げる。ありがとうを言う。▼贈る(お礼の品を。感謝状・謝辞を(述べる。読み上げる)。深謝いたします(お力添えを。ご厚情を)。礼状を書く。丁寧な礼状を認しためる。礼を(言って電話を切る。述べて席を立つ)。しどろもどろに礼を言って話を切り上げる貫井。▼礼を言う(慇懃却从に。お義理に。手厚い看護に。丁寧に。大仰な言葉で。型通りの。口だけの。心からの厚い。胸の中で。深く腰を折って)。礼を述べる(無器用に。朴訥くに。厚く。くどくど。心底から。出迎えの。何度も。畳に額をつけるように頭を下げて=深沢)。礼に気持ちがこもっている。礼を言うには及ばぬ=福水。 **かんしゃ【感謝】** 感謝が愛情に近づく倉橋。感謝こそすれ苦情を言う筋はない。感謝と(怨恨んの間で心が乱れる=白洲。不満が胸の中で両立している丹羽)。感謝に(あふれた表情。満ちた安らかな顔)。感謝の気持ちを(惜しまない。伝える。瞳にみなぎらせる)。感謝の(祈りを捧げる。辞を述べる。念が消えない。念を捧げる。思いに満たされる。気持ちでいっぱい。言葉を口にする。気持ちが心の底から消えたことはない=丹羽)。好意に感謝の他はない。心から感謝の意を表する。常に感謝の念を忘れない。深い感謝の念が胸にあふれる。心からの感謝を捧げる。衷心より感謝を申し上げます。▼感謝する(日々の欄を。実りの秋を。神の深い愛に。行き届いた処置に。真面目な働きぶりに)。▼恵みに感謝する(大地の。天と地の)。感謝感激に堪えない。先生の方に足を向けて寝られない。感謝しないわけにはいかない。▼謝する(恩義を。ご清聴を。迎えを)。婚家の母に対する最大な謝意の表現"新田。 **へんれい【返礼】** ▼返礼(お見舞いの。香典の。葬儀の。年賀状の。法要の)。返礼が届く。返礼に名を借りた自己宣伝三島。お返しを用意する。挙手の礼を返す。 **かんばい【乾杯】** 乾杯の(音頭をとる。グラスをあげる)。何回も乾杯を重ねる。長老の発声で忙杯する。祝して悦杯する(結婚を。健康を)。▼掲げて乾杯する(グラスを。ジョッキを)。グラスを(高々と掲げる。目の高さまで持ち上げて軽く目礼する"開高)。 **ぎょうぎ【行儀】** 行儀にうるさい父。行儀のいい態度。おとなしいお行儀のいい坊ちゃんという名誉がいっぺんに崩れる=島尾。行儀作法を心得ている。行儀よく(靴が並ぶ。席に着く)。一列に行儀よく並ぶ。席に行儀よくおさまる。腿ももを行儀よく閉じる。幾つかのグループに別れてお行儀よくかたまる人間。風儀がきちんとしている。 **けいれい【敬礼】** 将軍のような威勢のいい敬礼椎名戯。お仕着せの敬礼をする。▼敬礼する(あやつり人形みたいにとびあがって=大庭。距切かを合わせてきちっと=胡桃沢)。制服の警官が挙手で迎える。挙手の礼をとる。兵隊のように挙手の礼をする=有島。天皇陛下に謁見でもしたような最敬礼連城。▼最敬礼する(腰を折って、身体を二つに折って萩原炎)。四十五度に頭を下げる。衷心から謝意を表するように最敬礼をする=阿刀田。 **しつけ【躾】** 厳格な武家のしつけ。しつけが行き届く。親のしつけがなっていない=貫井。しつけにやかましい。養家のしつけになじむ。礼儀作法のしつけに厳しい。しつけの厳しい家庭。しつける(子供を。娘を。我が子を)。 **しゅくがかい【祝賀会】** 市の有力者数百名を一堂に集めた祝賀会"里見。祝賀会が花を開いたように賑やかになる=墨有。祝賀会の席が乱れる。祝賀会を(開く。催す)。催す(お祝いの会を。祝典を)。祝いの宴を(張る。催す)。盛大な賀宴を張る。祝宴を(張る。開く、催す)。喜寿の祝宴を取り仕切る=重松。 **みやげ【土産】** 花を土産にする。冥土の土産に聞かせる。お土産を買う。どっさりお土産を抱える。せんべいを手土産にする。手土産を(持参する。携える。持って挨拶に行く)。土産物屋が参道の両側にひしめく。土産物を(売る。買う)。戦利品のように両手いっぱいに土産物を抱える=篠田。菓子折りを(届ける。持って訪ねる)。 **めいし【名刺】** 名刺と顔を見比べる。名刺を(一枚抜き出す。交換する。ドアの下に差し込む。指の先ではじく)。満遍なく名刺を配る。もらった名刺を壊れやすい宝物のようにそっと握りしめる=内館。 **れいぎ【礼儀】** 親しき仲にも礼儀あり。礼儀が身につく。礼儀に(かなう。やかましい)。礼儀を(重んじる。心得る。正しくする。あくまでも守る)。一応の礼儀をわきまえる。礼法に(かなう。外れる。反する)。古いぶよりの礼を守って生きる=辺見。▼礼をとる(師弟の。臣下の。臣従の)。▼礼式(宮中の。軍の。自衛隊の)。礼式に(かなう。反する)。死者に対する礼節。礼節を(重んじる。守る)。衣食足りて礼節を知る。エチケットに従う。全身これエチケットの塊といった風で固く構える=石坂。エチケットを(守る。わきまえる)。作法が身につく。進退の作法が水際立って見事。正しい作法によって切腹する=舟橋。作法にかなった(食べ方。振る舞い)。マナーが良い。マナーを(学ぶ。身につける)。 **れいぎただしい【礼儀正しい】** 礼儀正しい(言葉遣い。紳士。平穏な家の雰囲気"大岡)。育ちのよさそうな礼儀正しい青年「落合。礼儀正しく(育てられる。振る舞う)。折り目高に身を持する=加賀。若いながら礼儀をわきまえた男・藤沢。折り目正しい(暮らしぶり。言葉遣い。紳士の举措)。折り目正しく挨拶する。 <4> あ # 愛する・可愛がる **あい【愛】** ▼愛(家庭的なあまりに家庭的な「川端。謙虚な自己放棄の犠牲的な瀬戸内。永遠に変わらぬ!白洲。サディズムの要素を含んだ=中村真。高い空よりも高く深い澄みきった=光瀬。道成寺の安珍を焼き殺した消姫のような自滅の石川。夕陽の残光のように空しい"野間)。愛が(心に満ちる。破局に至る。芽生える。沸る湯のように躰炒。を指先までくまなく勢いよくひたす!大江。儚いかい夢のように微かな匂いを残しただけで消えて行く=中村真)。愛に(あふれた目。すっぽり包まれる。ついての空虚な言葉)。好意が愛に変わる。無償の愛に生きる。愛の(名に値しない。営みに夢中になる。幻影から覚める。手を差し伸べる)。感動的な姉弟の愛の物語。心のなかに一ひらの愛の優しさもない=野間。夫婦だけにしかわからない暗号のような愛の言葉原田康。二人の愛の熱度がシーンーのように上下する=瀬戸内。愛はあの日を最後として永久に消えてしまった芥川。愛など微塵ふじもないと否定すればするほど愛は水面の油紋に似た異形をもって心にひろがる=藤本。証を求めないではいられない愛は苦しい!佐藤春。愛を(永遠に存在させる。語り合う男女が街を満たす)。あふれる愛を万物及ぼす。自由に愛を貫く。ひたすら愛を待ち受ける。千万の言葉に勝る深い愛を告げられた思い宮尾。亡父の遺愛の品。恩愛の情など微塵もない。純愛を貫く。仁愛に篤い。仁愛の人。ひたきな父性愛。母性愛に目覚める。母性愛を発揮する。友愛を育む。 **あいこくしん【愛国心】** 愛国心(狭隘いうな。健全な)。▼愛する(郷土を。国を)。祖国を熱愛する。愛郷心を育む。殉国の至情。憂国の情。祖国愛に燃える。ナショナリズムが高揚する。排他的なナショナリズムに陥る。 **あいじょう【愛情】** ▼愛情(微温的な老人臭い。抑えようとして抑えられぬこんこんと常に湧き出る自然な中島敦。譬たとえようもなく消冽せつな純粋な中島敦。遠ざかれば忘れてしまうに違いない稀薄な円地。未熟な女の青くさい=石坂)。愛情が(ほのぼのと湧く。厚い夜具のようにかぶさる=石川。遂ら氷のようにきらきら美しい=円地)。声に愛情がこもっている。徳もゃのようにこまかく愛情で囲む大佛。愛情に金で換算した方がわかりやすいような打算がからまる瀬戸内。愛情の(雨を降り注ぐ。深さを知る。裏返しの悪たれ口)。愛情は歳月をかけて育てるもの。愛情を(重荷に感じる。人並みに持つ)。母親の愛情を奪い合う。不器用に愛情を表現する。心ひそかに愛情を懐いだく=山本周。豊かな愛情を枯らすことなく育てる石川。愛情を感じる(心から。ほのぼのとした)。 **あいする【愛する】** 愛する(人を奪われる。者を信頼する)。愛する(真心をこめて。全身全霊をあげて。溺れるように夫を"川端。待たせた時間を埋めようとするかのように激しく落合)。女を愛する技巧に長じている!舟橋。愛さずにはいられない。今でもなお愛している。故郷の愛すべき風景。▼愛される(世代を超えて。広く一般読者に。体がバラバラになるほど"半村)。人から愛されるということは生ぬるい日向水にひたっているようなもの=福永。一人の女性を愛し通す。あの世までもと誓った男。来世を契る。最愛の(人を亡くす。夫人に死に別れる)。愛情の念に堪えないっ胸に愛借の情が湧く。鍾愛礼いうおかざる美女=山田風。▼熱愛する(子供を。妻を。衷心より)。▼偏愛する(ある種の美を。体の一部を。人形を)。▼愛し合う(人と人とが。互いに。深く。せつなく思うほどに=堀)。「お互いを愛する。好いた者同士。相思相愛の仲。わりない仲になる。 **愛でる** (花鳥風月を。四方の景色を。美少年ぶりを。咲き誇った薔薇ばらを)。 **あいよく【愛欲】** 激しい愛欲が渦巻く。愛欲に(身を焦がす。満ちたどろどろした男女の関係に身を沈める=鈴木光)。愛欲の(生活を続ける。炎が燃える)。愛慾の唐草模様を織るように感情がからみあう。石川。人間の愛欲の姿。とがりやすい愛欲の感情の幾山河を越える=石坂。抜けられない愛欲の地獄"石川。愛執の(虜とになる。念を断ち切る)。女の深情けに足をすくわれ溺れきる=瀬戸内。一見献身的で犠牲的に見える深情け型の女瀬戸内。 **アベック** アベックがいちゃいちゃする。アベックにあてられる。アベックばかりで花が咲いたみたい=石坂。砂浜にいる何組かのカップルに食い入るように眼を据えつける=阿部、二人(相合傘の。新婚ほやほやの)。▼カップル(幸せそうな。好一対の。似合いの。若い)。結婚するカップルを祝う。 **あまやかす【甘やかす】** ▼甘やかす(自分で自分を。安っぽい哀れみで)。甘やかすとつけ上がる。甘やかされて育つ。弱い者に対する甘やかし。育つ(過保護に。甘やかされ放題に)。娘を甘やかして育てる。過保護な親。ちやほや甘やかす。目にあまるほどちやほやする。ちやほやされてのぼせあがる。周りからちやほやされて驕慢誌いうになる=干刈。男からちやほやされる。 **いとしい【愛しい】** 魂の記憶に刻まれた遠いあこがれいとしいのように愛しい吉本。愛しい我が子。心から愛しいと思う。胸もとにつきあげてくるような愛しさ=水上。愛しさが胸いっぱいに広がる。愛しさで胸が締めつけられる。愛しさに人目も忘れて抱きしめる瀬戸内。 **かたおもい【片思い】** 片思いが実る。初恋が片思いに終わる。一人相撲をとる恋。片恋が(成就する。実る)。 **かわいがる【可愛がる】** 可愛がる(我が子同然に。 <5> **愛する・可愛がる―2** **あ** 家族同様にかわいがっている犬"阿刀田。わが子のように可愛がっている愛車。阿刀田。日頃可愛がってもらっている教授。▼可愛がられる(上役に。先生に)。可愛がりすぎるきらいがある。▼可愛がりよう(大変な。旧に倍する。常軌を逸した。一通りではない。目に入れても痛くないほどの"里見)。猫可愛がりに優しくする。愛玩する(鳥を。人形を。花を)。動物を愛護する。愛車を駆って走りまわる。慈しむ(命を。子を。追憶を。我が子のように)。子煩悩な父親。掌中の珠たまの如く大事にする"小松太。掌中の珠を失ったように落胆する『永井荷。▼いとおしむ(命を。妹を。子を。小動物を。花を。宝石を)。いとおしげに(肩を抱く。壺ったをなでる)。涙ぐむような愛おしさが胸に迫る=有吉。溺愛に近い愛し方。溺愛する(芸術を。動物を。・娘を)。 **こい【恋】** ▼恋(老いらくの。語り草になるほど華やかな瀬戸内。呪われた悪魔的な菊池。身を灼ゃきつくすような三島。ロマンチックな人間離れをした=菊池)。恋が(愛に昇華する。成就する。芽生える)。短い恋で終わる。所詮恋というのははかないものだ、雪の溶けるようにいずれは溶けてしまう福水。恋に(原病になる。心を奪われる。目がくらむ。うつつを抜かす)。新しい恋に立ち向かう。心が恋に満ちる。同情が恋に変わる。熱烈な恋に落ちる。不断の関心ほど恋にとって豊かな湿はない!大岡。夢うつつのような恋に身も心もひたりきる=石川。アルコールに宿酔がやいがあるように恋にも酔いの名残があるのかもしれない=阿刀田。恋の(歌を歌う。とりこになる。花を咲かせる。火が燃える。炎に灼かれる。道に踏み惑う。実をもぎとる。罠ぉぉにはまる。手習いにふける。閤路に踏み迷う。箱の蓋を閉じる=瀬戸内)。甘い恋の言葉。控えめな恋の告白。みずみずしい恋の感情。胸のうちに小さな恋の卵が湧きそめる=伊藤左。めくるめく恋の炎に身を焦がす“阿刀田。恋は思案の外。心の中に恋を育てる。日一日と恋を深める。一筋の恋を貫く。昔の恋を胸に秘めて生きる=海堂。恋をする(一世一代の。命懸けで)。身を焦がすような激しい恋火坂。夏の太陽のような烈はげしい恋"菊池。恋多き女。人の恋路の邪魔をする。恋めいた気持ちを男に抱く。初恋の(思い出。人を心に描く)。▼恋心(感傷的な。思慕をしっかり胸に抱きしめてその暖かさに自足しているような稚純な"円地)。恋心が芽生える。新たな恋心をそそる。▼恋心を抱く(ほのかな。淡い)。 **こいがたき【恋敵】** 街角で恋敵と鉢合わせする。恋敵に(勝つ。負ける)。恋の閘当於てをする。恋の迷引にを演じる=井上ひ。 **こいしい【恋しい】** 恋しい(男。思い。人の面影が目の前に彷彿する=白洲)。▼恋しい(故郷の味が。街の灯が。都の空が。死ぬほど)。▼恋しく思う(両親を。肌の温かみと汗の感触を)。恋しくていとしくて気が狂いそう~源氏。里が恋しくなる。▼恋しがる(夫を。太陽の光を。暖炉を。母親の乳を。母を)。恋しさが募る。怨みや恋しさが焼くように胸に迫る菊池。なつかしさ恋しさがむらむらっと胸いっぱいにうずを巻く=山手。恋しさに身をじらす。都恋しさに堪えかねる。身も世もなく恋しさにのめり込む"船山。夫恋しさの思いに駆られる。▼恋い焦がれる(人妻に。死ぬほど。人知れず)。▼身を焦がす(恋の炎に。母への思慕に)。 **こいしたう【恋い慕う】** ▼恋い慕う(母の面影を。人を。姫を)。懸想沿くする(美女に。人妻に)。焦がれる(恋に。焦がれに。酒に。空に。ひたすら)。ほのかな恋情が芽生える。恋情に(襲われる。火をつける)。恋情をいだく。悲しさと恋慕の姿った複雑な気持ち三局。恋慕の情がやみがたい。恋慕の情を寄せる。恋慕する(女性に。人妻に)。 **こいする【恋する】** 恋する(芝居の人物に。命懸けで)。恋する男の直観でビンとくる三浦し。キューピッドが矢を射る。ハートに矢が刺さる。ほの字。見初みそめる(初対面で。パーティーで)。 **こいびと【恋人】** ▼恋人(郷里に残した。二年越しにつき合っている。行く末を契った)。恋人と(逢瀬うを楽しむ。いちゃいちゃする。一緒に食事をする。腕を組んで歩く。共に朝を迎える)。恋人に(入れこむ。夢中になる。見詰められたような感しさを感じる菊池)。恋人の(膝枕で眠る。変心をなじる。浮気に神経を尖らせる。訪れのごとくイソイソと階段を降りる"坂口。貞節を信じて疑わない! 。貞節を信じて疑わないほど能天気ではない=松浦)。素敵な恋人を見つける。他人の恋人を横取りする。別れた恋人を恋い続ける。早春の匂いを身につけたような恋人たち=原田康。恋人たちを祝福する。悲しい運命が恋人たちをひきさく大庭。恋仲に落ちる。恋仲の二人。恋人同士(仲睦まじい。すべてを許し合った)。恋人同士が(いちゃつく。戯れる。陸しっみ合う)。恋人同士のように(抱きあってキスする=常盤。優しく黙り込んで歩く=原田宗)。恋人のように肩をくっつけて寄り添う野門。しばしの別れを惜しむ恋人のように甘やかな悲しいような幸せな気持ち"壺井。意中の人。人気役者を色にする。心に思う人。小指を立てる。人目を忍ぶ仲。二人が激しく求め合う。二人の(関係が終わる。心が結びつく。愛をうっとり霞ませる。趣味が一致する)。二人の間に(水をさす。垣根が横たわっている=石坂)。二人の関係を(知り抜く。取り沙汰する)。二人の仲が(気まずくなる。恋に醱酵する。こじれる。進展する。疎遠になる。深まる。しっくりといかない)。二人の仲を(疑う。ご破算にする。裂く。囃し立てる。認める)。 <6> **あ** 愛人と駆け落ちする。愛人の子を生む。愛人を(囲う。つくる)。 **こいわずらい【恋煩い】** 恋煩いに(かかる。悩む)。恋の病に(落ちる。かかる)。かなわぬ恋に身を焦がす"玉村。四百四病しい氷の外。 **じあい【慈愛】** 慈愛に(富んだ女性。満ちた笑み)。菩薩水志のような慈愛に満ちた表情"筒井。眼差しが慈愛に満ちた光を帯びる三好後。したたるような父親の慈愛の眼で娘の方を見やる=岡本。慈愛のこもった(声。眼差し)。父母の慈愛を一身に集める。 **したう【慕う】** ▼慕う(隠逸の風を。母親以上に。兄のように。姉のように。華やかな社会を。師匠を実の親のように=中。生家のなつかしい夢を見て=太宰)。を慕って(死ぬ。やって来る)。相慕う心が鰾膠にくのごとく強い=長塚。猫のごとく忍びやかに追い慕う久米。▼追慕する(恩師を。故人を。亡き人を)。故人に対する追慕の情。姉を愛意慕する。愛慕の情が(起こる。きざす)。愛慕の情を(起こす。催す)。愛慕の念が(起こる。きざす)。愛慕の念を(起こす。催す)。 **したわしい【慕わしい】** 慕わしい思いが一挙に泥田に叩きつけられる=丹羽。実の母同様に慕わしく思い込むぃ永井荷。眼の色にとうていかなこられぬおのれの慕情がやとっている=池波。ほのかに慕情にも似た感情を秘める=源氏。うら悲しく宅もがしい発情"高見町。慕情が(烏の去ったあとの巣のように消えやらず残る=高見盾。フワフワと空に浮いている雲か霞のように捕捉しがたい=高見願)。 **しつれん【失恋】** 失恋の(苦しみに問もだえる。痛手から解放される落合。痛手の名残がありありと刻印される=加賀)。失恋を時効にかける。失恋した友人を慰める。失恋して(泣き明かす。やけになる)。終わる(二人の恋が。はかない恋愛が)。恋に破れる。彼に袖にされる。悲恋に終わる。振られる(意中の人に。男に。女に。恋人に)。 **しぼ【思慕】** 思慕が(頭をもたげる。鏡のように相手の美しさを映す福水)。故国への思慕に身をこがす。思慕を(切々と訴える。胸に抱きしめる)。亡き母を思慕する。 **じょう【情】** 石仏みたいに情がない=円地。情が移る(一緒に暮らすうちに熊谷。犬も三日飼えば=遠藤)。情に(呟くらんで溺れる。ほだされる)。温かい母親の情に触れる。情のこわい娘。情を迎えるように言う。男と情を通じる。水も漏らさぬといったような情を見せる!永井荷。ほのぼのとした情愛がにじみ出る。情愛にあふれた眼差し。強制的な情愛の押し売り!遠藤。昔と変わることない情愛を注ぐ=丹羽。 **じょうじ【情事】** ▼情事(ありふれた男女の。ソーメンをチュルチュルとすするようなあっさりと軽やかな"胡桃沢)。かりそめの情事とも呼べないような結びつきで事故のように妊娠する=瀬戸内。情事に(身を委ねる。疲れはてたような顔)。浅ましく情事に溺れる。情事の(くさぐさが心に思い浮かぶ=阿刀田。※れを全身によどませる=瀬戸内)。夫の情事を気にかける。スマートな情事を楽しむ三浦朱。色事に深入りする。色事を仕込む。欲得ずくで色事をする。色の道を仕込む。色模様の道行き。色模様を演じる。多年の女道楽で目が肥える。女道楽にふける。金を女道楽に使い果たす。女色に(うつつを抜かす。恥ふけって遊び暮らす=舟橋)。性の営みを日常の儀式のように交わす阿刀田。色恋沙汰がささやかれる。色恋沙汰で揉もめ事を起こす―熊合。色恋沙汰に目の色を変える。 **じょうち【情痴】** 借痴に狂う。情痴の坩堝っさながら乱れに乱れる=海音寺。淫欲に駆られる。ただれるような淫欲にふける。色情狂に陥る。色情を催す。色情を催す。春情を(そそる。催す)。痴情におぼれる。痴情のもつれによる刃傷沙汰んだ」。 **せいき【性器】** 性器が(勃起する。剣もき出しになる。吸いつくように組み合わさる=松浦)。性器に指を触れる。バイブレーターを性器に挿し込む平野。男の性器を口でくわえる。太腿にを開いて性器を露わにする熊谷。一物が(股間にぶら下がる。寒さのために縮み上がる)。一物を(覆い隠す。突き出す)。自慢の一物を開陳に及ぶ=西木。陰茎が(小さくしぼむ。怒張する。天井を向いてそそり立つ熊谷)。陰茎をせっせとしごく。陰部を露出する。陰毛が(繁った股の間。濃密に茂る)。おちんちんがびくびく動く。腐れかけた花野菜のような亀頭佐藤系。きんたまが膨れる。きんたまを握る。股間に(陰毛が見える。一物が揺れている。隆々たる突起物がそそり立つ"井上ひ)。猛々しいほどの下腹のジャングルを見つめる="大藪。男根が(屹立時つする。だらんと垂れ下がる。見る見るしぼんでいく)。女の恥部をいじりまわす。濃い恥毛がびっしり密生している。ちんぽを(いじくる。むき出しにする)。秘所が貝の肉のように割れる=隆。毛深い秘所に顔を埋める=隆。ふくよかに盛り上がった女の秘部斎藤栄。元気な小学生のように直立しているベニス松浦。ペニスが勃起する。ペニスを(口に含む。横ぐわえにする)。腿ももにペニスをこすりつける。 **せいこう【性交】** 性交の現場を盗撮する=平野。▼営み(初夜の。関ねゃの)。思憩いんを通じる。女と交渉を持つ舟橋。夜もすがら女の蜜を吸い尽くす!舟橋。白い蛇のようにぴったりからまりあっている二つの体胡桃沢。交わす(男女の契りを、新妻と枕を)。褥しとを一つにする。性的な行為に及ぶ。情を契り合う。娘に手をつける。女と懇ろな関係になる。男と肌を合わせる。一つ寝床で寝る。▼結ぶ(情交を。一夜の契りを)。愛の(営み。儀式)。彼女とエッチする。夫婦蜜月の交情を楽しむ"舟橋。男女の交接。合意の上の情交。情交がこまやかになる。性行為に燃える。むやみにかかる。 <7> 一橋)。寵愛を一身に集める。受けようと躍起になる。雨のように降り注ぐ=奥平)。帝以かの寵愛を受ける。寵退を一身に集める。寵幸い、こうを身一つに集める。寵」をほしいままにする。君侯の寵を得る。将軍の寵を受ける。殿様の誰を争う。 **どうせいあい【同性愛】** 見るからに男色趣味の男たち。男色に寛容な社会。レズの悦ぃぅびを教える。 **はつじょう【発償】** ▼発情する(雄が。動物が。雌が)。発情期の犬のように妙に上ずった声岡久。発情期を迎える。さかりのついた(犬みたいに往来中を手を引き合ってつるんで歩く=二葉亭。猫が雌を呼ぶようなあさましさ今日)。 **ひとこいしい【人恋しい】** 人恋しい気持ちがきざす。退屈で人恋しい思いが湧き上がってくる=原田宗。人恋しさが募る。人懐かしい(思い。心持ち。気分をそそられる)。どことなく人懐かしい雰囲気が漂う部屋。にっこりと人なつかしげな笑いをうかべる=池波。 **ひとめぼれ【一目惚れ】** いわばぐさりと胸を突き刺されるような感じの一目惚れ!南条。年がいもなく一目惚れする。目の前でバガーンと花火があがった気がしていっぺんに惚れてしまう。田辺。一目で恋をする。 **ふりん【不倫】** 不倫が原因で離婚する。不倫の愛。不倫の恋に(悩む。走る。ふける)。人目を忍ぶ関係。通→氷の現場を押さえる。姦通を犯す。▼寝取られる(妻を。女房を)。寝取る(他人の女房を。人の亭主を)。道ならぬ(恋に落ちる。しかし懸命な必死の恋"菊池)。人の道に背く関係。密通が発覚する(夫の。妻の)。男と密通する。 **ほれる【惚れる】** ▼惚れる(ぞっこん。やくざ者が堅気の娘に。今さら退ぃけないほど)。惚れると見境がない。惚れた(腫れたの装備。弱み)。▼惚れこむ(才能に。卓抜な発想に。美声に。美貌に。勇猛ぶりに)。惚れた惚れする(男に。次に。監督が役者に)。る上にもまた更に惚れ直す。べた惚れに惚れる。▼べた惚れする(男に。女に。監督が役者に)。 **よくじょう【欲情】** 欲情が激しく燃え上がる。体の奥から欲情が突き上げてくる。欲情に狂った淫らなが藤本。突然身内を吹きすぎる欲情に立ちつくす=山田太。欲情の(嵐が収まる。獣に化身する。妄動をきっぱりと制する菊池)。欲情はしばしば道徳の仮面をかぶる!大岡。欲情を愛と錯覚する。表情に欲情を読み取る。濁った白い欲情を感じる=吉行。き上がる欲情をおぼえる=水上。下半身が見る見る反応する=原田宗。しもが濡れてくる。情炎が燃える。 **よこれんぼ【横恋慕】** 横恋慕する(他人の恋人に。雇い主である男の妻に)。家来の愛妾ふふしに手を出す舟橋。他人の婚約者を好きになる。邪恋を(しかける。清算する)。 **ラブレター** ラブレターを(書く。したためる。代筆する。読む)。艶書の代筆を生業いいとする=隆。艶書を送る。恋文を(もらう。やりとりする)。熱烈な恋文を書き送る。 **れんあい【恋愛】** ▼恋愛(神に挑戦するような意気込みではじめた=中村真。燃えて燃えて燃えつきるほどの石川)。恋愛が(佳境に入る。実を結ぶ。一歩一歩深まっていく)。ふところの淋しい恋愛というものは出来の悪いマッチを擦るようなものだ、いつまでたっても燃え出すことがない=庄野。恋愛の形は無限に存在する=村山。ロマンチックな恋愛をする。恋愛感情を抱く。身を焼き滅ぼすような想い=辻井。男女の火遊び。危ない火遊びの場所。恋愛に縁がない。浮いた唸一つない。色恋に(迷う。憂き身をやつす。関わることに関心がない)。色恋の道に引かれる。 **ロマンス** ロマンス(空想豊かな。華々しい)。過去がロマンスで飾られる。恋物語に発展する。恋物語を書き上げる。 <8> # 会う・訪れる **あいたい【会いたい】** ▼会いたい(無性に。死ぬ前に一目。ぜひとも。たまらなく。何が何でも。一目なりとも。もう一度。わけもなく。いっときも早く)。会いたい思いが募る。一目会いたい願いに駆りたてられる=真継。早く会いたいの一心。無性に会いたくてたまらない。二度と会いたくない。矢も盾もたまらず会いたくなる!高樹。一度お目にかかって挨拶したい。責任者にお目にかかりたい。 **あう【会う】** ▼会う(地獄で仏に。死に目に。十年ぶりに。人生の浮沈に。同姓の人に。久しぶりに。本人に。厄介な人間に。威儀を正して。折に触れて。ばったり道で。二人きりで。三日にあげす。連絡を取って。旧知の人びとに。十何年ぶりでばったり。週に二度三度と。二人だけでゆっくり。闇の夜に紛れて)。会う(折がない。機会をなくす。日を約束する。機会が永久に失われる。手筈六はになっている)。しばしば会う機会を持つ。何かと会う機会が多くなる。人に会う約束がある。▼逢う(恋人と忍んで。誰かしら見知った顔に=島崎)。会うに(値する相手。ふさわしい場所が思い浮かばない)。ばったり会う(友遂に。昔の仲間と)。会いに行く(たびたび。毎日)。▼会いに来る(しげしげ。たびたび。人目を忍んで)。どの面下げて会いに来たんだ。▼会わせる(たまたま顔を。二人を。無理やりに)。会わせる顔がない。思いがけず会える。会える日を待ち焦がれる。一目でも会わせてやりたい。内密に会見する。会見を申し込む。月に一回の顔合わせ。▼接見する(首相が外国大使と。弁護士が被告人と)。初顔合わせの(会議。共演。対哦)。▼まみえる(両雄)。 **あわない【会わない】** ▼会わない(しばらく。誰にも。久しく)。会っていない(長い間。ただの一度すら)。未来永劫にふこの世で会うことはあるまい!なかにし。一度もお目にかかったことがない。長らくお目にかかっていない。▼出会ったことがない(かつて。ついぞ)。会えない(親の死に目に。めったに。一生。これきり。二度と。年に一回しか。一足違いで)。▼お目にかかれない(絶対。なかなか。ずいぶんと長いこと)。面会謝絶の重体。病室に面会謝絶の札がかけられている三好徹。 **インタビュー** インタビューに(応じる。答える)。インタビューを受ける。申し込む)。▼インタビューする(有名人を。タレントに。街頭で)。▼面接する(就職試験で。入試で)。面接を数多くこなす。面談に応じる。面談を(申し入れる。申し込む)。 **おとずれる【訪れる】** 訪れる(人が少ない。人を玄関払いする)。訪れる(秋の収穫期が。空前の繁栄が。幸福な結末が。地獄の夜が。人生の転機が。新緑の季節が。チャンスが。頂上の感覚が。沈黙の時が。夫婦の危機が。不穏な沈黙が。平和な日々が。部屋に静寂が。原爆ドームを。死が唐突に。地図を片手に。遠路はるばる。先触れもなく。夜陰に紛れて。秋が終わり冬が。穏やかに静けさが。この世に楽園が。ちらほらと客が。次から次に弔問客が。部屋に夕暮れのほの暗さが。取材で地方都市を。楽しげに日々畑を。破局が出し抜けに。親戚や知人が次から次と。寸刻をぬすんで。包み金を持って。休みを利用して。予告もなしにふらりと。欲楽が極まって悲哀が!高橋知。沈みこむような眠りが"長野。テレパシーのようにすぐ深い理解が吉木。決定的な瞬間が偶然に=中村真)。世上にふたたび平和がおとずれる=白洲。絶えて久しく訪れることのない眺。▼好機が訪れる(願ってもない。待ちに待った)。あどけないほどに滑らかな眠りの訪れ小川。訪れが(遅い。早い)。恋人の訪れのごとくイソイソと階段を降りる=坂口。春の訪れを告げる。朝夕に秋の訪れを思わせるような冷気がしのび込む=藤沢。▼あがる(お願いに。お詫びに)。▼お邪魔する(お宅に。突然。夜分。お忙しいところを)。お邪魔に上がる。顔を出す(実家に。たまに。病室に。しょっちゅう。ときどき。連日のように)。足しげく参内する。参内をためらう。足を運ぶ(劇場に。スタジアムに。頻繁に。せっせと。何度か)。▼伺う(お見舞いに。お詫びに。原稿の催促に。ご挨拶に。相談に。報告に)。 **おめどおり【お目通り】** お目通りが叶う。首尾よくお目通りを許される。お見得を許される。将軍に謁見を許される。王が家臣を引見する。▼謁見する(国王に。天皇陛下に)。拝謁の栄を賜わる。拝顔の栄に浴する。 **おめにかかる【お目にかかる】** ▼お目にかかる(お初に。折にふれて。ちょいちょい。ちらっと。久しぶりで。もう一度)。お目にかかる日を楽しみにする。お目にかかれて光栄です。こんな幻想的な光景にまさか現実でお目にかかれるとは思ってなかった三浦し。咫尺しょする(国王に。天皇に。初めて彼女の顔に久米)。 **ごぶさた【御無沙汰】** 御無沙汰を重ねる。長年の無沙汰を詫びる。久闇絵の友に訪われた喜び。久岡の挨拶を(交わす。述べる)。久閥を(叙する。詫びる)。 **さいかい【再会】** 再会がようやく成る。突然の再会に驚く。再会の(涙にかきくれる。日を楽しみにする)。感動的な再会の場面。今生での再会は望めない。再会を約束して別れる。久しぶりの再会を喜ぶ。再会する(旧友に。十年ぶりに。思いがけなく。旧知と偶然。将軍に。敵に)。▼相まみえる(勝利の日に。戦場で。(離れ離れだった母子が。懐かしい友人に)。再び(お目にかかる。会うこともあるまい)。 **たずねあるく【訪ね歩く】** ▼訪ね歩く(記憶の空間を。古老たちを。心跡を。ゆかりの土地を。集落内の家を一軒一軒=熊谷)。尋ねて歩く(近所を。鉄の草鞋ゆらで)。知り合いをたずねまわる。 **たずねる【訪ねる】** ▼訪ねる(アバートを。生まれ故郷を。旧友を。事務所を。友達を。病院を。マンションを。友人の家を。ご機嫌伺いに。首相を公邸に。紹介状を手に。書類を届けに。幾度となく。思い出の場所を。知らない土地を。何の前触れもなしに。菓子折りを持って。人目を忍んでひそかに獅子。なぐりこむような勢いで=司馬)。訪ねる人も稀まれになる。一軒一軒訪ねて回る。軒並み訪ねて歩く。一訪ねてくる(教え子が。時折娘が。しばしば店を。忘れた頃に。風のごとくに。友達が偶然。暇さえあれば。ひょっこり。不意に一人で。ぶらりと。入れ替わり立ち替わり。奇跡がぼたもちのように=吉本)。三日にあげず訪ね合う仲!向田。来意を(告げる。手短に述べる)。▼訪とう(家を。旧友を。寺を。墓を。林を。村を)。訪う声が聞こえる。 **たちよる【立ち寄る】** ▼立ち寄る(帰りがけに。通りがかりに。孫の顔を見に。日に一度。ぶらっと。ふらりと。郷里の家に久しぶりに。勤めの行き帰りに。見舞いかたがた。通りすがりに懐かしい家に連城)。途中に立ち寄る(航海の。旅行の)。船が寄港する。 **であいがしら【出合い頭】** 出合い頭に(衝突する。突き当たる。ぶつかる。いきなり肩をつかまれる。人をどやしつける。勢いよくドアが開く=城山。腰を抜かさんばかりの順狂声!永井荷)。 **であう【出会う】** ▼出会う(意外な人物に。頑強な抵抗に。偶然に。素敵な女性に。久しぶりに。亡父の仇劫たに。昔の同級生に。面倒な相手に。ばったり道で。ひょっこり。かつてのクラスメートに。見覚えのある顔に。むき出しの反感に。もう一人の自分に。突然に思いがけなく。ばったりと街角で)。▼出会い(偶然の。心を締めつけられるような劇的な"曽野。小説の中のようなドラマチックな森村。一生を左右するような=貫井)。出会いから結婚に至るいきさつ。意外な出会いに驚く。男と女の出逢いは神秘的な偶然"瀬戸内。最初の出会いを思い出す。しみじみとした口調で出会いを述懐する=鈴木光。偶然会う。運命的な出会い。▶行き会う(偶然に。思いがけず。たまたま)。▼来合わせる(その場に。折よく。偶然。たまたま。ちょうど。とんだところに)。旧知との奇遇を喜ぶ。めぐり合い(運命的な。奇くしき)。▼接する(外国の空気に。隠された顔に。隠れた名作に。高僧の警咳妙灬に。父の計に。異なった生活に。悪いニュースに。期せずして各地の花信に"阿川弘)。▼報に接する(遺体発見の。危篤の。逝去の)。 **デート** デートがおじゃんになる。▼デートに誘う(ちょくちょく。勇を鼓して)。デートの約束をすっぽかす。デートを申し込む。何度かデートを重ねる。」デートする(恋人と。週末にガールフレンドと)。デートする場所を選ぶ。密度の濃い逢い引き。逢い引きに出かける。逢い引きの(誘いを断る。手立てを決める)。逢瀬やうを(重ねる。ちぎる)。恋人と逢瀬を楽しむ。次の逢瀬を約束する。濃密な逢瀬を交わす。週に一度の逢瀬を心待ちする=鈴木光。密会にうつつを抜かす。女との密会に忘我の時を持つ=船山。密会の現場を盗み撮りする。 **ほうもん【訪問】** 訪問が(頻繁になる。間違になる)。困難に。難関に。難局に)。ぱったりと鉢合わせになる。危うく鉢合わせをするところ。▼鉢合わせする(旧友と。偶然。街角で恋敵と)。訪問の(意図を察知する。目的をいぶかる)。訪問を受ける。突然の訪問を詫びる。▼訪問する(非公式に。公的な立場で。散歩かたがた。ぶらりと。各家庭を戸別に。セールスマンを装って)。一軒一軒訪問して歩く。一度も訪問したことがない。不意の訪問者に胸がときめく島尾。 **めぐりあう【巡り合う】** 「めぐり合う(いい女性に。幸せに。偶然。端なくも。ひょっこりと。不思議な縁で。奇くしくも十年ぶりに。好ましい相手に。千載一退の機会に=山岡。棚からぼた併の大幸運に=山岡)。▼邂逅ご沁(劇的な。偶然の)。運命の邂逅を遂げる。思いがけない人に邂逅する。 **めんかい【面会】** 面会に(行く。応じる)。日曜日ごとに面会に来る。面会を(申し入れる。申し込む)。校長に面会を求める。たびたび面会する。刺を通じる。目通りを(廻っ。許す)。 **よりみち【寄り道】** 寄り道をする(余計な。帰りに)。友達の家に寄り道する。帰りに寄り道する(会社の。学校の)。帰り道に立ち寄る。帰宅の途中に立ち寄る。学校が終わったら寄り道しないで帰る。▼道草を食う(途中で。誰はばかることなく思う存分白井)。永遠に道草を食うことが許された子供のように途方に暮れるほどの自由が包み込む=原田宗。 **でくわす【出くわす】** ▼出くわす(奇妙な事件に。知った顔に。だしぬけに。つらい場面に。物凄もい嵐に。ばったり人と。町で偶然)。▼際会する(困難に。とんでもない事態に)。▼遭遇する(大きな地震に。国家の処難いんに。重大な結果に。生死にかかわる危難に)。逢着いちする(新しい事態に。奇妙な現象に。一らいほう【来訪】弔問客の来訪が一段落する。来訪に驚く(不意の。夜更けの)。客の来訪を告げる。突然の見も知らぬ人間の来訪を受ける=綾辻。来訪する(客が。病院に)。滅多に来訪客がいない。数多い種々雑多な来訪者。ご上洛前しばらく渇がを任まげてこ流儀伝授くださりますまいか=山岡。 <9> # 会う・訪れる-3 **あ** 会うこともあるまい)。 **たずねあるく【訪ね歩く】** ▼訪ね歩く(記憶の空間を。古老たちを。心跡を。ゆかりの土地を。集落内の家を一軒一軒=熊谷)。尋ねて歩く(近所を。鉄の草鞋ゆらで)。知り合いをたずねまわる。 **たずねる【訪ねる】** ▼訪ねる(アバートを。生まれ故郷を。旧友を。事務所を。友達を。病院を。マンションを。友人の家を。ご機嫌伺いに。首相を公邸に。紹介状を手に。書類を届けに。幾度となく。思い出の場所を。知らない土地を。何の前触れもなしに。菓子折りを持って。人目を忍んでひそかに獅子。なぐりこむような勢いで=司馬)。訪ねる人も稀まれになる。一軒一軒訪ねて回る。軒並み訪ねて歩く。一軒一軒訪ねてくる(教え子が。時折娘が。しばしば店を。忘れた頃に。風のごとくに。友達が偶然。暇さえあれば。ひょっこり。不意に一人で。ぶらりと。入れ替わり立ち替わり。奇跡がぼたもちのように=吉本)。三日にあげず訪ね合う仲!向田。来意を(告げる。手短に述べる)。▼訪とう(家を。旧友を。寺を。墓を。林を。村を)。訪う声が聞こえる。 **たちよる【立ち寄る】** ▼立ち寄る(帰りがけに。通りがかりに。孫の顔を見に。日に一度。ぶらっと。ふらりと。郷里の家に久しぶりに。勤めの行き帰りに。見舞いかたがた。通りすがりに懐かしい家に連城)。途中に立ち寄る(航海の。旅行の)。船が寄港する。 **であいがしら【出合い頭】** 出合い頭に(衝突する。突き当たる。ぶつかる。いきなり肩をつかまれる。人をどやしつける。勢いよくドアが開く=城山。腰を抜かさんばかりの順狂声!永井荷)。 **であう【出会う】** ▼出会う(意外な人物に。頑強な抵抗に。偶然に。素敵な女性に。久しぶりに。亡父の仇劫たに。昔の同級生に。面倒な相手に。ばったり道で。ひょっこり。かつてのクラスメートに。見覚えのある顔に。むき出しの反感に。もう一人の自分に。突然に思いがけなく。ばったりと街角で)。▼出会い(偶然の。心を締めつけられるような劇的な"曽野。小説の中のようなドラマチックな森村。一生を左右するような=貫井)。出会いから結婚に至るいきさつ。意外な出会いに驚く。男と女の出逢いは神秘的な偶然"瀬戸内。最初の出会いを思い出す。しみじみとした口調で出会いを述懐する=鈴木光。偶然会う。運命的な出会い。▶行き会う(偶然に。思いがけず。たまたま)。▼来合わせる(その場に。折よく。偶然。たまたま。ちょうど。とんだところに)。旧知との奇遇を喜ぶ。めぐり合い(運命的な。奇くしき)。▼接する(外国の空気に。隠された顔に。隠れた名作に。高僧の警咳妙灬に。父の計に。異なった生活に。悪いニュースに。期せずして各地の花信に"阿川弘)。▼報に接する(遺体発見の。危篤の。逝去の)。 **デート** デートがおじゃんになる。▼デートに誘う(ちょくちょく。勇を鼓して)。デートの約束をすっぽかす。デートを申し込む。何度かデートを重ねる。」デートする(恋人と。週末にガールフレンドと)。デートする場所を選ぶ。密度の濃い逢い引き。逢い引きに出かける。逢い引きの(誘いを断る。手立てを決める)。逢瀬やうを(重ねる。ちぎる)。恋人と逢瀬を楽しむ。次の逢瀬を約束する。濃密な逢瀬を交わす。週に一度の逢瀬を心待ちする=鈴木光。密会にうつつを抜かす。女との密会に忘我の時を持つ=船山。密会の現場を盗み撮りする。 **ほうもん【訪問】** 訪問が(頻繁になる。間違になる)。困難に。難関に。難局に)。ぱったりと鉢合わせになる。危うく鉢合わせをするところ。▼鉢合わせする(旧友と。偶然。街角で恋敵と)。訪問の(意図を察知する。目的をいぶかる)。訪問を受ける。突然の訪問を詫びる。▼訪問する(非公式に。公的な立場で。散歩かたがた。ぶらりと。各家庭を戸別に。セールスマンを装って)。一軒一軒訪問して歩く。一度も訪問したことがない。不意の訪問者に胸がときめく島尾。 **めぐりあう【巡り合う】** 「めぐり合う(いい女性に。幸せに。偶然。端なくも。ひょっこりと。不思議な縁で。奇くしくも十年ぶりに。好ましい相手に。千載一退の機会に=山岡。棚からぼた併の大幸運に=山岡)。▼邂逅ご沁(劇的な。偶然の)。運命の邂逅を遂げる。思いがけない人に邂逅する。 **めんかい【面会】** 面会に(行く。応じる)。日曜日ごとに面会に来る。面会を(申し入れる。申し込む)。校長に面会を求める。たびたび面会する。刺を通じる。目通りを(廻っ。許す)。 **よりみち【寄り道】** 寄り道をする(余計な。帰りに)。友達の家に寄り道する。帰りに寄り道する(会社の。学校の)。帰り道に立ち寄る。帰宅の途中に立ち寄る。学校が終わったら寄り道しないで帰る。▼道草を食う(途中で。誰はばかることなく思う存分白井)。永遠に道草を食うことが許された子供のように途方に暮れるほどの自由が包み込む=原田宗。 **らいほう【来訪】** 弔問客の来訪が一段落する。来訪を驚く(不意の。夜更けの)。客の来訪を告げる。突然の来訪を非難する。突然見も知らぬ人間の来訪を受ける=綾辻。来訪する(客が。病院に)。滅多に来訪客がいない。数多い種々雑多な来訪者。ご上洛前しばらく渇がを任まげてこ流儀伝授くださりますまいか=山岡。 **でくわす【出くわす】** ▼出くわす(奇妙な事件に。知った顔に。だしぬけに。つらい場面に。物凄もい嵐に。ばったり人と。町で偶然)。▼際会する(困難に。とんでもない事態に)。▼遭遇する(大きな地震に。国家の処難いんに。重大な結果に。生死にかかわる危難に)。逢着いちする(新しい事態に。奇妙な現象に。一大事に)。 <10> # 青い あ **あいいろ【藍色】** 黒い嵐雲の捲ょき立つ空が山際のところでだけ物凄もごく藍色に光っている=宮本百。空が不透明な藍色にとどまっている鷹沢。藍色を深めた彼方の海。海は黒と見まがうほどの濃い藍辻井。洗い立ての藍がすがすがしい。雲問を漏れる日の光が地面の陰日向を銀と藍とでくっきりと彩る有島。藍を(溶かしたような海の色。流したような濃い色の潮島崎)。稲穂の実り豊かに垂れている田の彼方に濃藍色に響くびえる山々の線-横光。藍青色に晴れきった空堀。狭い路地の果てに海が切り取られた藍青の千代紙のように細い矩形以けで冴えている=槌。夕日が次第に低くなり水の色が段々納戸色になる=田山。 **あお【青】** ▼青(深みのある。目もさめるような。インクをこぼしたような=村上春)。見上げる空に月影が浸みわたって暗い青が底知れず深い『真継。信号が赤から青に変わる。空が深い青に染まる。空は見渡す限りのまったくの青に満ちている=村上春。▼青に溶ける(空がうるんだ。光が空の)。空がインクの青色に染まる=森瑙。鈍い青色をしている空森思。淡青色の照明。空が涙ぐましいあざやかな淡青に晴れる=大江。見上げると気の遠くなるほど高く淡青の冬の空がある"大江。灰青色におぼめく朝の最初の光三房。青磁色の空が広がる。 **あおあお【青青】** 青々と(濃い剃刀秒ぇりのあと=川端。清潔な色をした畳=原田康)。空が青々と晴れ渡る。目の前に青々と広がる海。草木が青々と芽を出す“田山。青々とした(美しい山肌。芝生。髭ひげの剃り跡。雑草が生い茂る。麦が風に揺れる。若葉が萌え出す)。 **あおい【青い】** 青い(湿っぽい香り。月が照らす。火花を散らす。夜の色。煙がすっとのぼる。ぬるぬるした粘土。瀬戸物のような空石森)。青い(剃り痕が鮮やかに。空の色が心持ちよく冷たく。顔が木々の葉の反射を受けて染めたように=光瀬。空が染みつくように獅子。空が気が遠くなるほど=島尾)。紫陽花も心の色があざやかに蒼ぁぉい=泉鏡。初夏の青い風が吹く。空が青い光に柔らかく染まる。遠くに青い山並みが見える。どこまでも青い大海原。灰色がかった青い瞳。夕暮れ時の青い空気。大池の水が桔梗に憶の青い色"泉鏡。微臭いごい家の中で人々が青い息をする有吉。黒いと云ぃいたいくらい底深く青い空の色"大佛。こめかみに青い疳筋かいを走らせる=向田。静脈が青い透かし模様を染め込んでいる=阿刀田。猫のように輝いた青い眼"伊藤整。ビー玉のような青い眼=阿部。瞳に冷たい憎しみの青い生気が燃える=本庄。目に青い殺気の炎が燃える=山田風。▼青い顔(疲れたような。。幽鬼のように)。始終青い顔をしている。青く(着色する。細面な顔。凍ったような山手)。入り江が青く澄む。海がいやがうえにも青く輝く。恨みを青く放つ「顔が青くこわばる。かなたの山が青くかすんで見目。顔が青くこわばる。える。草の芽が青く伸びる。月光が青く散る。下草が青く萌える。静脈が青く浮き出る。空はあくまでも青く夏。煙草の煙が青くこもる。夜霧が青く流れる。痛々しいほど頭を青く剃った中年の僧高井。氷のように青く冷ややかな空加賀。部屋の空気が碧ぁぁく染まって海底のよう。有吉。湖が酷薄な女の眼のように冷たそうに青く光る=原田康。水は透明で日に照らされた川底の石が青く光っている三浦し。闇が夜の水のように体を青く染める=村上卷。雪の色が仄ほのなに青く煙る芥川。宵の口特有の蒼く冷えた甘い空気森瑞。白く張った皮膚の下に静脈が碧く透いて見える=大佛。空が抜けるように碧く吸い込まれそう藤本。青っぽい明かり。若葉の青っぽい匂いが体にしみこんでくる!あさの。地面が雪明かりでぼうっと浅葱色はきに蛍光をおびる”石森。蒼茫うたる大海原。蒼茫と薄暗い水の広がり。窓外が蒼茫と暮れかかかる。蒼茫とした膨大な街並み森村。海が瑠璃色以150にうねる。瑠璃色にうるんだ夏の夜空円地。瑠璃色の海に目を凝らす村山。 **あおさ【青さ】** 青さ(海の透き通るようなり泉優。空がなにもかもすいこんでしまっような灰谷。星がひとつひとつ数えられるほど目近い=石森)。指を入れてもしたら染まるような空の蒼さ塩野。海の青さがまぶしい。空の青さが目にしみる。薄衣を纏まとったような空の青さが目に染み入る=外村。日の出とともに海と空に初夏のみずみずしい青さが返ってくる=畑。空が抜けるような青さに澄み切る柴田翔。川が空の青さを映して美しい。 **あおざめる【青ざめる】** ▼青ざめる(顔が羊皮紙さながらに=宇野利。悪魔に追われたように=川端。悪魔ににらまれたように若竹。顔が死人のように=浅田。顔が透きとおるように―藤沢)。顔が青ざめる(意外な事実に。見る見る)。▼蒼ぉぉざめる(病人のように。顔が気味悪いくらいに堀)。顔色が壁のように蒼褪紡ぉめる=獅子。疲れきった青ざめた表情。白蠟のように蒼ざめた顔真継。顔が青ざめて生気を失う。顔色が心なしか青ざめている。裁きを受ける女のように首を垂れて蒼ざめている=岡本。顔色(障子の紙のような池波。火鉢の灰のような池波)。顔色を消す。顔が(草色になる。デスマスクのように変わる=黒岩)。半年間の断食を終えたドラキュラ伯爵みたいな形相で見上げる―大原。血の気のない顔を一層蒼くする=福永。青くなって(怖がる。逃げ帰る)。▼青くなる(びっくりして。顔の色がすっっと)。▼色を失う(愕然として。狼狽して)。色を失って飛び込んでくる。驚愕縫いう色を失する。顔色が青く血の気がない。 <11> **青い-4** **あ** 血の気のない青い顔。血の気のなくなった蝋人形坂。薄雲に覆われた青空が紗しゃを透かしたように見える三浦愛。▼青空がのぞく(木立の間から。染めたように)。▼青空が広がる(頭上に。水の流れを映したような=高橋三)。青空から日射しが降り注ぐ。青空に(浮いた白い雲。快音が響く。筋雲が流れる)。遠い青空に目をやる。山の雪が青空にくっきりと浮き上がる。目に青空の色がまぶしい。白い雲が青空を撫でるように流れている=丹羽。▼青い空(冷たく硬い。凍りつきそうな小川。眩まぶしいくらいきれいな=武田百。むっちりとうるんだような亜熱帯アジアの開高)。見事なまでに青い空がひろがる=高樹。星に埋まった蒼穹咲りき。雲一つない蒼穹が目の前に広がる"貫井。暗君は私の蒼穹の一角から流星が飛ぶ"高橋和。 **あおみ【青み】** 顔に青みが差す。恋に青みがさす。青みを(帯びた星。ほんのりと映す)。夕闇が青みを残している。畑が刷毛の先でかすったように麦や小麦で仄ほのかに青味を保つ=長塚。すき透るような蒼ぁぁみを帯びた空本庄。▼青みを帯びる(池の水が。空が。うっすら)。 **あおじろい【青白い】** 青白い(蒲柳に~な体。薄明の色。明かりに蛾がまつわりつく。陰気な面がまえ。火の玉が浮かぶ。頬が赤く染まる)。▼青白い(顔色が病的なほど。肌が魚の腹のように藤沢。繭をつくり始める前の蚕のように顔も手も皮膚が透きとおるように"日野)。月の青白い光。蛍光灯の青白い光に照らされる。バーナーが上げる青白い炎。けぶったような青白い夜明けの光が室の中にはいってくる=小林多。幻影が青白い炎になる=畑。全身を青白い気迫の炎が覆う三浦し。青白い顔(貧血気味の。今にも死にそうな。夜更かしと懶惰んに側にしまれた森瑙)。青白くガス灯が照らす。頬が青白く透き通る。夜光虫が青白く光る。横顔が心なしか青白く強ばっている。ガスストーブが青白く燃える」遠藤。くちなしの花が七月の月明かりに青白く浮かんでいる=伊集院。星がちかちか青光りしている。夜光虫が青光りする海。顔から血の気がひいて土気色に変わる="小林久。土気色の顔。外国暮らしに疲れたような膚はだに土色の沈んだ女千刈。 **あおぞら【青空】** 青空(雲一つない。颱風絵沁の去ったあとの澄明な三島。宇宙へ突き抜けるような飯田。切り取って体にまといたいような阿久。銀粉をぶちまけたような明るい=海音寺。澄みきってなめらかな玻璃』のような"加賀。冬のつんと澄んだ=吉本。凡庸なマンネリズムの風景画の空のような"阿部)。伶俐気にみに見える人の眼の如くに朗らかに晴れた蒼空務は=国木田。青空がくっきりと見える。秋晴れの青空が目にしみる。底抜けの青空が広がる好天。約らんのような顔黒石。全身から血の気が引くのを感じる。顔が血の気を失う。血の気を失くして一本のローソクのように佇かたむ=高橋三。顔がみるみるうちに紙のように白くなる三浦綾。 **あおみがかる【青みがかる」** 青みがかった(黎明の空。灰色のワンピース。夜の始まりの空気"大江)。ほうっと青みがかった光。黒いほど青みがかった空守石森。夜明けに近い青ずみ始めた空。かすかに青みはじめた草原山本周。▼青む(草原が。柳が)。瞼はぶく濃いまつげの影が楽の影や草の影のように青んでひろがる!大江。 **うすあおい【薄青い】** 薄青い(煙。周。夕暮れ。焰期が紙めるように紙の上を道はう黒井)。空が族もらった花の問に海青い色をなごませる芥川。遠浅の海のような薄青い色合い公村。妖しくきらめく夜光虫の仄蒼いい光福永。朝霧がほの青く残っている。 **こんいろ【紺色】** 沖へ行くほど紺色の深くなる海の青ない紺"小川。腕に紺の手刺しを穿ぅがつ。紺一色の海が広がる。紺青にんじに底光りする海の上に朝日があかあかとのぼる=中。空が紺青に晴れ上がる。紺青の海原。隈くまなく晴れ上がった紺青の冬の空長与。真っ白な雪が紺青の山肌にきわやか三浦綾。夕空の紺青を仰ぐ。紺碧に私に晴れ渡った空。空が高く紺碧に澄み渡る。紺碧の(空に白い雲が浮かぶ。潮が後から後から湧くように躍る=菊池)。手の染まるような紺碧の海宮尾。春の紺碧を斑まだにしている白い雲=吉川。濃紺の(海。サファイア。シャツ)。群青色の(秋の空。湖水)。海が群青に凪ないでいる。緑色の縞しまが幾重にも走った濃い群青の水面"福永。 **そうはく【蒼白】** 蒼白な(顔が引きつる。苦悶にもの色。顔に覚悟の瞳を輝かす菊池)。蒼白な頬に(赤みが射す。バラ色の血がよみがえる=山岡)。蒼白になる(顔色が。頬が。放心したような表情のまま=筒井)。顔面蒼白となりわなわなとふるえ出す―池波。顔面蒼白になって癖はこのように全身を頭ふるわせる=柴田錬。 **ブルー** 目に浸み込むような空のブルーが飛び込んでくる藤本。飛沫しぶの目に沁みる純白が眩味ばい海の濃いブルーとこよない対照をなす「北。店内の照明がブルーに変わる。サファイアが濃いブルーに輝く犬藪。うすいコバルト色に晴れた空石坂。海がコバルトブルーに染まる。黄金色に光るキタヨシ原のなかにコバルトブルーの川が蛇行する=加賀。海の水平線に近いところがサファイアブルーに変わる=小林信。目も醒認めるように鮮やかなトルコ石色の帽子=大庭。色鮮やかなトルコブルー=阿木。ネイビーブルーのブレザーコート。鮮やかなマリンブルーのブール。 **まっさお【真っ青】** 湖がまっ平らで空の色を映しているように真っ青=長崎。顔面が真っ青で幽霊が飛び込んできたのではないかと思ったほど=木山。真っ青な穴の中にでもいるように青空が高く遠く見える=石="大佛。インクの壺っぽをこぼしたような混じり気のない(閃光ご礼。目に沁みる海。つるつるした空を見上げる宮沢)。 <12> **あ** 真っ青な空(絵の具を塗ったようになかにし。トルコ玉のような=原田康)。一時に血行が止まったように真っ青になった顔「山本有。真っ青になって(怒る。叫ぶ。逃げまどう。逃げる。震える。がたがた震えだす木山)。顔が真っ青になる。 **みずいろ【水色】** 水色に澄んだ空。心が水色に澄む"城山。水色の(空に震のような春の雲が流れていく"三浦し。夜気の中で芝生が露に濡れて拡がる=辻井)。音が淡い水色の波になる=辻井。四囲が水色の清らかな夜明けになってくる"林美。吸いこまれるように水色の空に眼をやる“石坂。透きとおるように淡い水色の二月の空原田康。薄い水色地に秋草を染め出した涼しげな小袖!永井路。 **みどりいろ【緑色】** 緑色に郁く松の葉。陽がさすと海面がうすい緑色に透けて夥はがしい金色の粉が浮いて見える高樹。ちらちらと木洩こもれ日が緑色に踊る=柴田翔。緑色の葉が水にひたされてひとしおに緑佐藤春。濃い緑色の柊0訟の葉。濁った鈍い緑色の水の中。長身に緑色の刃を振り立てたかまきりの殺気がみなぎる=武田爽。どこかしら悲しみをたたえた碧色の阵20と人間。山が黒みがかったみどり色を呈する三浦綾。深い翠色以」をたたえた入り江火坂。緑の色が濃くなっている草原。山々に然として緑の色が祭る=海音寺。麦の葉が雨に濡れて緑の色を一層冴えさせる上月。トルコ玉に似た不思議にやわらか味のある青緑色"田島。青緑色の澄んだ海。白い肌が青緑の竹の林を背景にして抜け出てきたように見える=水上。遠い雪の山々が青緑の空にくっきりと並ぶ石森。浅緑の(匂い立つ煎茶。若菜)。踯躅いっが浅緑のあいだを彩る"立原。身も心も洗い立てられるような浅緑の芽=竹西。暗緑色の(木の葉。森)。薄緑の(カーテン。レース)。深緑に混濁した汚れた川。深緑の小山。緑色がかった葉洩にもれ日が頬を複雑に染める高橋知。緑がかった(アイシャドー。深い水の色)。背後に連なる緑濃い山並み。海面が藍碧詠の色をたたえる=津本。エメラルド色に光る草。海がエメラルド色に広がる。濃いエメラルド色の海。環礁の内側の礁湖ツが目のさめるようなエメラルド色の水をたたえている=景山。エメラルドグリーンの海。透明感のあるさわやかな翡翠色いけい。海がトロリと翡翠色にまどろむ=中局收。翡翠色の淵の水。翡翠のように透明感のある緑色。▼緑(黄味の勝った鮮やかな永井路。脂肪が腐ってひとりでにできた割れ目に咲く徴かびの華の若々しく妖艶な=岡本)。若葉の緑が輝く。夕暮れが近づき緑がぼんやりと濁って見える"伊藤整。暮春の空があざやかなみどりに晴れあがる=山本周。岸に密生しているアシが若竹の色のように晴れ晴れとした緑に輝く=山本有。空の色が冬の間に腐ったような灰色を洗い流して日一日緑に冴えて行く=菊池。老樹の緑に髪のようなみずみずしい光沢がある"島崎。白帆が側のそうに深い碧以どの上を滑って行く=田山。濃い緑の草や木の色が油絵の具のように生々して見える=徳田。絨毯にいうを敷きつめたように緑のうす苔こげが生える=水上。陽が翳かげり始め緑を含んだ水の色が深くなる=高井。 **むらさき【紫】** 栗羊羹(初はのぼってりした紫「武田泰。波がかかるたびに岩にしがみついたフジツボの紫があざやかさを増す落合。紫から藍色へと靄もゃが濃くなる。怒りで紫に燃えた目。腕が紫に膨れ上がる。唇を紫にして震える。波が濃い紫に沈んでいく。空がおだやかなうすい紫ににじみ出るようなわずかの金色をたたえる夕焼け、大庭。地平線に近く紫にかすんだ断崖"島尾。峰の蔭が紫に沈む"大岡。夕焼けが妖麗な紫に変わる"山田凪。あやめが雨に洗われて紫の色を増す"佐多。薄紫にけむる街路樹。薄紫の(朝焼けの空。夕霧ゆう。リラの花。羽のような高くふくらませた髪=大庭)。春の引き明けの薄紫の空菊池。紫色の香煙が妖しく立ちのぼる祭壇"原田康。濃い紫紺色の影が谷岡に落ちる。海が暮れ方の紫紺の水平線を長く曳なく大佛。着色料入りのジュースを飲んだと思うほど唇が紫色三浦し。藤の紫色が澄んだ月光に浮かんでほのかな夢のよう“川端。西の空が真っ赤に色づき少しずつ紫色から灰色へ変化する夕焼け=島尾。紫色にかすんだ陸地が見える。空が紫色に染まり始める。頬が紫色に変色し腫れ上がる=野岡。むこうずねが木の節のようにふくれあがり黒いほど紫色になる。石森。山の上に山が重なり秋の日の水のごとく澄んだ空気に映じて紫色に染まる=国木田。紫色の(煙草の煙。なすびの花。唇をわなわなさせる)。下瞼炊きに紫色の隈くまを置く=高樹。日を背にした山の側面が煙ったように紫色をしている"志賀。紫だった山の姿がくっきり碧ぁぉい空に見える徳田。山脈が紫がかった暗い色を長々となする芥川。空の色がめっきり春めいて紫がかった艶々しい色を帯びる外村。紫がかる(唇が。花の色が。街が)。暗鬱な茄子色ゲの雲"中野美。※い茄子色の夕空を背景に丘の疎林が影絵のようにくっきり浮く=原田康。茄子紺の深い紫。鋼鉄の硬さと茄子紺の艶やかさの溶け合った闇の輝き=日野。 **りんこう【燐光】** 青い燐光がうごめき揺れる。青白い花が燐光を帯びたように光る=日野。白樺の立ち木の降が逆光線の中に燐光を放つように白く光っている"大佛。岬に砕ける波が燐光を放つ=中。目に燐光のような青い炎が燃え上がる"西木。燐の火のような青い美しい光宮沢。限が燐のような光を放つ=福永。雪が燐のようなかすかな光を放って真っ黒に暮れ果てた家々の屋根を被う有島。空が暗い燐のようなさびしい光を残す!有局。双峰民らに妖しい情熱の光がちらちらと燐のように燃えている=山本周。 <13> # 赤い **あ** **あかあか【赤赤】** 赤々と(葬火防隊を焚たく。炭火が熾おこる。火が燃え立つ。夕日が山肌を焼く)。赤々とした火が顔を照らし出す。▼赤々と燃え上がる(ストーブが。炎が)。篝火が赤々と燃え盛る。▼赤々と燃える(火が。薪が。石油ストーブの芯が"井上ひ)。 **あかい【赤い】** 赤い(糸で結ばれる。月が上る。灯影怕かが動く。火がちらちら燃える。彼岸花が乱れ咲く)。▼赤い(他人の花は。目の縁が潤んで。頬の血色がよくて痣ぁざと見違えるほどに。島尾。厚く築いた窯の土が人間の血を日に透かして見るように吉川。顔が火のように=田山。顔がりんごのように宮沢。盗まの火がひらひらと=長塚)。子供のような紅い頬干刈。曼珠沙華はん。のように紅い唇をした女性宮部。目の覚めるような紅い薔薇ばら=田山。お地蔵様の赤いよだれかけ。くっきりと赤いルージュをひく。食紅を混ぜて赤い色をつける。べろりと赤い舌を見せる。屋台の赤い提灯ぢいい。酒の匂いまで伝わってくるような赤い声辿城。血のような赤い汚れ=中上。月が気味悪いほど赤い色をおびて黒雲に出たりかくれたりする!遠藤。ナナカマドの赤い実が安っぽいガラス玉のようにつやつやと輝く=渡辺淳。火が赤い天井を造る=長塚。炎のようにちらりと赤い蛇の舌が動く三浦綾。赤い色(血で塗りたくったような船戸。ユリの雌蕊しのうにどす黒い=池田)。▼赤い唇(形の整った。熟れたぐみのように藤沢)。花のように紅い唇=海音寺。爛ただれたように米い唇=吉川。ただれたような赤い眼宮沢。赤く(錆さびが浮き出る。上気した頬。着色する。点ったネオン。照り映える柿の実。目を泣き雁らす)。炭火が赤く燃ぉこる。血の気が赤く浮き出す。火が顔を赤く照らす。ブレーキランプが赤く光る。頬を赤くほてらせる。目が赤く腫れる。夕映えが赤くぎらぎらときらめく。石榴ぶくの花が火の燃えるように赤く咲く=田山。竹厳欲砂の中に格とばが紅く咲く=田山。手が霜焼けで赤くふくれる=宮沢。眼に憎悪が赤く充血している=黒岩。▼赤く上気する(顔が。興奮して)。赤く染める(髪を。畑を。落暉もっが顔を)。▼赤く腫れ上がる(顔が。瞼様』が)。夕映えの明るさが燃え立つような赤さ=本庄。赤っぽい(色。光)。シグナルが赤に変わる。赤の他人。上気した薄赤い顔。一様に薄赤く夕日に染まる。まぶたを遂赤く染める。ほとばしる鮮血の色。蘇芳ぉを流したように血で染まる=海音寺。嚥脂色以ひじの(ドレス。ワンピース)。バトカーの赤色灯が光る。丹にの色に燃え盛る。部屋の中が夕陽で緋色に染められる=山田休。庭が燃えるような緋色のつつじ=川端。緋の毛氈もらを敷き詰める。燃えるような緋の長襦袢がん=隆。沈みかける夕日を浴びて白哲娘の顔が茜色みゅに染まる―内田駅。真っ赤な焰が水面を茜色に染める=山崎。陽が落ちて山脈の尾根があかね色に染まる=水上。茜色の夕焼け空。 **あかみ【赤み】** 順にほのかな赤みがよみがえる。赤みを頬に浮かべる。▼赤みを帯びる(鉄格子がざらつぽく。目の緑がほんのりと)。 **あからむ【赤らむ】** ▼赤らむ(皮膚がぼっと。自分のはしたなさに。頬が少年のように=本庄)。顔が赤らむ(興奮に。はしたなさに)。▼赤く染まる(頬が。目の周囲が。血で。ほんのりと。顔がタコのように)。皮膚が泣いたように紅く染まる芝木。丹の色に染まる。紅葉もんを散らす(顔に。煩に)。頬の赤らむような胸騒ぎ=川端。汗に洗われた赧ぁから顔がぎらぎら輝く=本庄。赤ら顔のでっぷりと太った人。赤ら顔をテラテラと光らせる。上気したように赤くなった頬三浦賀。赤くなって照れる。赤くなる(顔がぼっと。朱に交われば。どぎまぎして。年がいもなく。人知れず。目が充血して。頬がほんのりと。目元がほんのり。紅を散らしたように顔が"本庄。顔が袋のように藤沢。顔がみるみるうちに怒りで=内田森。昨日お嫁入りした人のように=川端。手や足が茹でたように=長塚)。耳朵松まで紅くなる=徳田。頬っぺたが燃え上がるようにぷくなる八谷崎。赤みがかった(金色。唇)。▼赤みがかる(顔が。頬が)。頬にうっすらと赤みがさす。▼赤みを帯びる(ほのかに。頬がうっすら)。顔が赤くなる(ひとりでに。怒りで。さっと。恥ずかしさで)。 **あからめる【赤らめる】** ▼赤らめる(目元を。瞬間的に。顔を心持ち。耳の根まで。目の縁をぼっと)。顔を赤らめる(怒りに。ほんのり。娘のように)。▼頬を赤らめる(かすかに。恥ずかしそうに。心なしかほっと)。ぼっと赤らめる(顔を。軽い昂奮ぶらに限の縁を久米)。顔を朱に染めて怒る=辻井。▼赤くする(寒さで鼻を。鼻の頭を。鼻の先を、ぼっと頬を。耳たぶまでぽっと。熟した柿のように血色の良い顔を興奮にますます=大江)。▼赤める(顔を。頬を)。▼顔を赤くする(激したことく。照れてぼっと。見る見る)。 **いきち【生き血】** 美人の生き血を吸いつくしておいてひからびる一歩手前で捨て去る=瀬戸内。蛭ぃるみたいに生き血を吸い取らないと承知しないという輩が人來。夜な夜な人の生き血を欲しがる=宮部。 **オレンジいろ【オレンジ色】** ▼オレンジ色に染まる(夕日が射し込んでリビングが重松。夕日を浴びてテントが奥田。雲が千切れながら=伊集院)。オレンジ色の(太陽が輝く、火花が垂直に上る=篠田)。熟れすぎたみかんのように鮮やかなオレンジ色のワンビス=内田巻。西に傾いた陽の光を受けて山肌が橙色灬状に移っていく=福永。灯火がみかん色にきらめく武田秀。夕空にミカン色に光った雲が重なり合う石森。乾いてひび割れたようなみかん色の唇"原田康。 <14> # 赤い-5 **かっけつ【喀血】** 大量に喀血する。喀血の匂いが口の中にむっと広がる。血を吐いて倒れる。血を吐く思いで大呼した叫喚"山田美。言々が从血を吐く思いの憂憤の書網淵。喉も裂け血を吐くばかりに泣きに泣く"坂口。血を吐くような短いとぎれとぎれの慟哭ごい飯田。血を吐くように声を振り絞って叫ぶ藤本。 **かっしょく【褐色】** 新聞の切り抜きが褐色に変色する。葉が褐色に枯れ落ちる。褐色に濁った(流れ。波が岸辺に砕ける=加賀)。褐色の怒りに身をさいなまれる=高橋和。陽に焼けた褐色の肌。頬に褐色のしみが出る。カレーライスらしい褐色の匂い―連城。幾分褐色を帯びた葉。海が鈍い褐色を帯びる。埃旧には黄褐色で霧のごとく地上の凡てを掩ぉぉいかつ包む=長塚。茶褐色に枯れる。舌が鳥の舌のように舌苔べいで茶褐色になる幸田文。しおろす"岡本。 **きいろ【黄色】** 黄色というには少々トウの立った嬌声をあげる=阿久。紙が黄色に変色する。麦が黄色に熟す。青い黄色に澄むレモン柴田翔。黄色の絵の具を撮まき散らしたようにタンボボが咲いている=辺見。刈り取り前の麦の穂に沢庵於心をもたれかけさせたように真ッ黄ッ黄阿久。黄色い(歯を見せる。声を投げる女。小さなキュウリの花=飯田。電灯が輝いているように見える金木犀に乱以"山口)。月がオレンジのように黄色い=大佛。子供たちが黄色い歓声をあげる。逃想比认きが黄色い花を咲かせる。カナリヤが止まったように見える黄色い水着"大佛。嘴(くいの黄色い青二才=山口。福寿草があちこちに黄色い毬まりのように群がって咲く"原田康。黄色く暮れ残った空。銀杏ぃぅの葉が黄色く輝く。どんよりと黄色く濁った目三浦哲。皮膚が黄色みを帯びる。あでやかなほどにやかで美しいまっ黄色のオクラの花"飯田。黄土色の(砂。土)。黄に枯れた芝。菜の花畑が黄に染まる。潰物が自然の飴色に漬かる。 **こはくいろ【琥珀色】** 琥珀色に砧くの(夕まぐれ。畑が透き通るように艶やか=瀬戸内)。天井の明かり取りから落ちてくる淡い木漏れ日のような琥珀色の光森尻。薄い琥珀色のとろっとした酒"山本周。よく日にやけた稔りのよい腿ももが琥珀色の光沢を放つ=三島。 **きばむ【黄ばむ】** 黄ばむ(カーテンが。芝草が。空が。白布が。肌が)。葉が黄ばみ枯れていく。障子窓に黄ばんだ灯りが滲にじみ出る=本庄。黄ばみを漂白する。 **けつえき【血液】** 血液が(体内を回る。酸素を運搬する)。体じゅうの血液がたぎる。体に流れる血液が沸き立つ"有吉。血管に血液の固まりが詰まる。心臓が血液を体中に送り出す。脳に血液を供給する。輸血のための血液を提供する。赤いしみが広がる多岐川。温ぬるいむず痒がゅい虫のように生きている液体が噴き出す吉川。針を紙なめたような味!高樹。ピアノの音が新鮮な血液のように客たちの間に流れる=五木。フォークの先から半熟の卵が黄色い血液のようにぼたぼたと落ちる"小川。寒天様の紅綿のような凝血がほろほろと湧き出す=井伏。血糖値が(上がる。下がる。正常に戻る)。傷口から出血する。出血多量で命を落とす。 **けっこん【血痕】** ▼血痕が付着する(ナイフに。べっとり)。血の痕が生々しい。血の染みが広がっている。鮮血が(流れ出る。噴いて走る。淋漓とほとばしる)。血糊のがべっとりとつく。血糊のついた(シャツ。ナイフ)。ヘモグロビンの臭いが漂う。輸血を伴う手術。血痕のような太陽が雲に洗われて今にも消え入りそう“加賀。 **こうちょう【紅潮】** ▼紅潮する(顔が見る見る。煩がほんのり。耳の付け根まで)。顔面を紅潮させて怒る。腹立たしげに顔を紅潮させて叫ぶ上吉村。紅潮させる(怒りで顔を。恥辱に体を)。▼頬を紅潮させる(興奮が。初々しい。心持ち)。 **こがねいろ【黄金色】** 稲穂が黄金色に実る。炎が生きているように黄金色に光りながら家をのむ"中上。黄金色の(稲穂の波。暮色が消えやらぬままに漂う田局)。萃ぁしが黄金色の波を打つ。山吹の黄金色の花びらが石段に散って金箔を撒きいたように輝く=林京。金色の油をといたような月"林美。 **こんじき【金色】** 十字架が金色に輝く。名残の雲が金色に染まる。窓もゃが金色に燃える。太陽が白っぽい煙のふちを金色に彩る=本庄。日差しが金色に熟れながら斜めに落ちていく=石田衣。夕陽を浴びて金色に輝きながら降りしきる銀杏の中を歩く落合。髪を金色に染めた娘。細かい産毛が金色に光る=阿部。金びかに(飾りつける。目がくらむ)。金縁の(額。眼鏡)。金文字がきらめく。金文字の看板を掲げる。 **しゅいろ【朱色】** 血のように鮮やかな朱色。頗が朱色に染まる。朱色を帯びる。青白かった顔面にさっと朱がさす。炎が突っ立ち夜の空が朱と金に染まる=中上。朱に染まる(顔が。肌が)。朱の色をにじませる。沖を青飾色にぶの水を切って走る朱の三角帆の鮮やかさ=中局。石榴ぶくの栄の花が雨に搏ったれる=三鳥。所々にカンナの朱や黄が点在している。朱を(刷はく。注いだように真っ赤になる。流しながら灼熱丸くの太陽をどっぷりと呑みこんでいく海宮尾)。満面に米を注いでどなる。板塀が朱泥を塗ったように血でぬれる"司馬。朱塗りの鳥居。 **ち【血】** 血が(どくどくとあふれる。ぼたぼたと滴る。新たなる戦いに向かって滾たきり立つ=隆。黒味を帯びてこびり着く志賀。水面に毛糸を浮かべたように線になって走る=水上。どばどばと噴きだす=高千穂。蛇のように冷たい!水井路)。青春の血がよみがえる。歯茎から血が出る。耳の奥で血が脈打つ。野生の血が濃い。一滴の血が遠く小鳥のように飛ぶ三島。恐ろしさに五体の血が冷え渡る=柴田錬。音楽に血がリズムとなって踊る若さの本能=墨。語る言葉のすみずみにまで血が通う“三田。体の中でびちびち血が躍る"長崎。喧嘩州んと聞くと血が騒ぐ=尾辻。壮年の血が底鳴りをうつ=本庄。眠りかけていた狂暴な血がふと甦ふるい永倉。血も凍るような(絶叫をあげる。冷たい声)。血が凍りついて板のようになる=子母沢。総身の血が凍るような怖ろしさ=中局致。血がつながっていない姉弟。血でつながった兄弟。血のつながる同胞もない心細い身福永。頬にさっと刷はいたように血が昇る=高井。かあっと頭に血が上る。頭に血の上るような嫉妬を覚える!有吉。身体や顔に温かい血のほとぼりが昇ってくる=梶井。血から血に受け継がれる。手が血で汚れる。手拭いを血で汚す。同じ一族が血で血を洗う隆。血に(彩られた生涯。飢えた野獣の群れ藤本)。血に染まる(白装束が。真っ赤に)。血の(糸がしたたり落ちる=深沢。呪縛の淵ぃちから見上げる"竹西。匂いの歴史に濃くつつまれる=開高。ぬらぬらした感触"真継)。紅い糸のような細い血の筋"円地。唇が鬼灯抱誌をつぶしたような血の塊を含む=吉川。裸体が血の川でおおわれるまで鞭もちで打たれる=塩野。血の匂いに(興奮する。慣れる)。血沸き肉躍る物語。血を(見るのが嫌い。分けた我が子。きれいに拭き取る。見るような争い。もって血をつぐなう。塗りこめたような不気味な夕焼け=飯田)。血管から注射器で血を抜く。全身の血を燃え立たせる。点々と血を滴らす。放蕩行の血を持つ。林中はら従の血を失ったような疲労感を覚える=森项。酔ったように血をたぎらせる=大江。▼血を引く(外つ国の。名門の)。赤い血が(一筋滴り落ちる。池のように広がる=近藤)。顔に血が(薄く映える。うっすらと差す)。身体中の血が総毛立つようにざわめく藤沢。全身の血が(すうっと引く。怒りにたぎる思いに包まれる=勝目。たぎるほど腹が立つ舟橋。抜けていくようにぞっとする山田風。扇形に飛び散る藤本。ぴゅっと血が飛ぶ高橋和)。頭に血が(昇って怒鳴りつけそうになる古井。上って眩暈灬きを覚える=貫井)。温かい血のような涙が眼にあふれる=中上。夜の気配が血のような残照に染まる=光源。血のように赤いブドウ酒=遠藤。夕空が血のように染まる=中河。血みたいな赤さの唇高見町。返り血で顔が真っ赤に染まる。返り血を浴びる。血が流れる(殉教者の。耳の穴から。若々しい)。血が川のように流れる=隆。黒い血が死体から帯のように流れる=遠藤。白い肌の底に青黒い血が漂うように流れる=高橋三。水の中に髪の毛を落としたように血がサッと流れる=伊集院。真っ赤な血がどくどくと流れ出す。▼血が流れている(淫奔な。体に。先祖からの。農民の)。血が(どくどくと流れる。糸を引いて流れ落ちる"船戸。逆流してきそうな興奮をおぼえる"永倉)。びたり適中した自分の直感に血が逆流する思い=池波。古い生活の秩序に反逆する血の流れがかすかにふつふつと沸き立っている=石坂。血をだらだら流す。念入りに血を洗い流す。心の傷が新しい血を流す=中村兴。貴重な時間が血のように流出する森村。▼血がにじむ(あちこちに。薄く。じっとりと。じわっと)。血が(白い滑らかな肌に滲にじむ三島。にじむほど抓っねる=胡桃沢)。肌に血が滲むほどの勢いで体をこしこし洗う~原田宗。血でもにじむかと見えるほど紅く熱した腕島崎。血の滲むような日が滅茶苦茶に続く小林多。 **ちしお【血潮】** 総身の血汐封しが逆流するような激怒柴田剣。血潮が一刷毛いた、線を描いたように地面に長く続く遠藤。 **ちしぶき【血飛沫】** 一面に飛び散った血しぶきが着衣に点々とつき夏の虫がたかっているよう灰谷。部屋が血飛沫に染められる!高橋克。顔が血しぶきを浴びたように真っ赤"村山。脳天から血しぶきをあげる。鯨が潮を吹くかのように血が高くあがる『谷村。 **ちのいろ【血の色】** 汗ばんだ肌に血の色が返ってくる。顔面から血の色が引く。額のあたりに激しい血の色が動く。頬に薄く血の色が浮く。皮膚の下からほのかに血の色が透けて見える=小林久。頬に明るい血の色が浮かぶ"五木。頬に血の色がさしていきいきとして見える=石坂。美しく血の色を透かせた煩"里見。肌に血の色が(のぼる。乗ってなまめかしい多岐川)。酒気を帯びているかと思われるほど血色がよい『氷井荷。血色の(いい顔色。悪い顔)。 **ちのうみ【血の海】** あたり一面が血の海になる。畳を血の海にしてうつ伏している=柴田錬。畳に広がった血の海の中に倒れている宮部。夫婦二人が腐った魚のように目を外へたらして血の海の中に死んでいる=坂口。 **ちばしる【血走る】** 目が血走るほど台本を読んで考える=有吉、血走った(目が異様に光る。目で宙をにらむ)。血走った目を(ぎらつかせる。さまよわせる)。興奮に目を血走らせる。 **ちまみれ【血まみれ】** 雪を血に染めて死んでいる旅ちまみれ本。全身を血に染める。顔面を血まみれにする。血まみれになって(倒れる。道はいずり回る)。全身が血の色に染まる!なかにし。血に染まって倒れる。顔面がトマトを潰っぶしたようになる=大変。朱に染まって倒れている=有栖川。血だらけになって死ぬ。体中が血だらけになる。血だるまになって(助けを求める。喰う)。血みどろになって倒れる。骨肉相食む血みどろの戦いを演じる=小林久。 **ちゃいろ【茶色】** ▼茶色(焦げた紙のように汚れた光ちゃいろ瀬。目が灰色に近いような深い=鷺沢)。水が泥で茶色に濁る。絹のような茶色の髪=常盤。川の水が茶色く濁る。葉が茶色く変色する。畳が赤茶色に変色する。 <15> **赤い-5** **あ** **ち【血】** ▼血(奔放な。沸き立つ。濃い。若々しい。ほとばしる)。血が騒ぐ(胸の内で)。血が騒ぎ出す。全身に血がみなぎる。全身の血が逆流する。血が逆流する思い。体中に血が逆巻く。逆流する血に全身が引き裂かれそうになる=井上ひ。総身の血が逆さに流れるような恐怖=藤沢。頭から血の気が引く。さっと顔から血の気が引く。血の気がサーッと引いていく=井上ひ。頭にカーッと血がのぼる。頭に血が上る(とたんに。瞬間的に。怒りで)。頭に血が上ったように怒る。頭の血が沸騰する。激情に血が煮えたぎる。体の中に流れる血が煮えたぎる=高橋和。血の気の多さに五体の血が冷え渡る=柴田錬。音楽に血がリズムとなって踊る若さの本能=墨。語る言葉のすみずみにまで血が通う“三田。体の中でびちびち血が躍る"長崎。喧嘩州んと聞くと血が騒ぐ=尾辻。壮年の血が底鳴りをうつ=本庄。眠りかけていた狂暴な血がふと甦ふるい永倉。血も凍るような(絶叫をあげる。冷たい声)。血が凍りついて板のようになる=子母沢。総身の血が凍るような怖ろしさ=中局致。血がつながっていない姉弟。血でつながった兄弟。血のつながる同胞もない心細い身福永。頬にさっと刷はいたように血が昇る=高井。かあっと頭に血が上る。頭に血の上るような嫉妬を覚える!有吉。身体や顔に温かい血のほとぼりが昇ってくる=梶井。血から血に受け継がれる。手が血で汚れる。手拭いを血で汚す。同じ一族が血で血を洗う隆。血に(彩られた生涯。飢えた野獣の群れ藤本)。血に染まる(白装束が。真っ赤に)。血の(糸がしたたり落ちる=深沢。呪縛の淵ぃちから見上げる"竹西。匂いの歴史に濃くつつまれる=開高。ぬらぬらした感触"真継)。紅い糸のような細い血の筋"円地。唇が鬼灯抱誌をつぶしたような血の塊を含む=吉川。裸体が血の川でおおわれるまで鞭もちで打たれる=塩野。血の匂いに(興奮する。慣れる)。血沸き肉躍る物。血を(見るのが嫌い。分けた我が子。きれいに拭き取る。見るような争い。もって血をつぐなう。塗りこめたような不気味な夕焼け=飯田)。血管から注射器で血を抜く。全身の血を燃え立たせる。点々と血を滴らす。放蕩行の血を持つ。林中はら従の血を失ったような疲労感を覚える=森项。酔ったように血をたぎらせる=大江。▼血を引く(外つ国の。名門の)。赤い血が(一筋滴り落ちる。池のように広がる=近藤)。顔に血が(薄く映える。うっすらと差す)。身体中の血が総毛立つようにざわめく藤沢。全身の血が(すうっと引く。怒りにたぎる思いに包まれる=勝目。たぎるほど腹が立つ舟橋。抜けていくようにぞっとする高橋和)。頭に血が(昇って怒鳴りつけそうになる古井。上って眩暈灬きを覚える=貫井)。温かい血のような涙が眼にあふれる=中上。夜の気配が血のような残照に染まる=光源。血のように赤いブドウ酒=遠藤。夕空が血のように染まる=中河。血みたいな赤さの唇高見町。返り血で顔が真っ赤に染まる。返り血を浴びる。血が流れる(殉教者の。耳の穴から。若々しい)。血が川のように流れる=隆。黒い血が死体から帯のように流れる=遠藤。白い肌の底に青黒い血が漂うように流れる=高橋三。水の中に髪の毛を落としたように血がサッと流れる=伊集院。真っ赤な血がどくどくと流れ出す。▼血が流れている(淫奔な。体に。先祖からの。農民の)。血が(どくどくと流れる。糸を引いて流れ落ちる"船戸。逆流してきそうな興奮をおぼえる"永倉)。びたり適中した自分の直感に血が逆流する思い=池波。古い生活の秩序に反逆する血の流れがかすかにふつふつと沸き立っている=石坂。血をだらだら流す。念入りに血を洗い流す。心の傷が新しい血を流す=中村兴。貴重な時間が血のように流出する森村。▼血がにじむ(あちこちに。薄く。じっとりと。じわっと)。血が(白い滑らかな肌に滲にじむ三島。にじむほど抓っねる=胡桃沢)。肌に血が滲むほどの勢いで体をこしごし洗う~原田宗。血でもにじむかと見えるほど紅く熱した腕島崎。血の滲むような日が滅茶苦茶に続く小林多。 **ちしお【血潮】** 総身の血汐封しが逆流するような激怒柴田剣。血潮が一刷毛いた、線を描いたように地面に長く続く遠藤。 **ちしぶき【血飛沫】** 一面に飛び散った血しぶきが着衣に点々とつき夏の虫がたかっているよう灰谷。部屋が血飛沫に染められる!高橋克。顔が血しぶきを浴びたように真っ赤"村山。脳天から血しぶきをあげる山田風。血が扇形に飛び散る藤本。ぴゅっと血が飛ぶ。鯨が潮を吹くかのように血が高くあがる『谷村。 **ちのいろ【血の色】** 汗ばんだ肌に血の色が返ってくる。顔面から血の色が引く。額のあたりに激しい血の色が動く。頬に薄く血の色が浮く。皮膚の下からほのかに血の色が透けて見える=小林久。頬に明るい血の色が浮かぶ"五木。頬に血の色がさしていきいきとして見える=石坂。美しく血の色を透かせた煩"里見。肌に血の色が(のぼる。乗ってなまめかしい多岐川)。酒気を帯びているかと思われるほど血色がよい『氷井荷。血色の(いい顔色。悪い顔)。 **ちのうみ【血の海】** あたり一面が血の海になる。畳を血の海にしてうつ伏している=柴田錬。畳に広がった血の海の中に倒れている宮部。夫婦二人が腐った魚のように目を外へたらして血の海の中に死んでいる=坂口。 **ちばしる【血走る】** 目が血走るほど台本を読んで考える=有吉、血走った(目が異様に光る。目で宙をにらむ)。血走った目を(ぎらつかせる。さまよわせる)。興奮に目を血走らせる。 **ちまみれ【血まみれ】** 雪を血に染めて死んでいる旅ちまみれ本。全身を血に染める。顔面を血まみれにする。血まみれになって(倒れる。道はいずり回る)。全身が血の色に染まる!なかにし。血に染まって倒れる。顔面がトマトを潰っぶしたようになる=大変。朱に染まって倒れている=有栖川。血だらけになって死ぬ。体中が血だらけになる。血だるまになって(助けを求める。喰う)。血みどろになって倒れる。骨肉相食む血みどろの戦いを演じる=小林久。 **ちゃいろ【茶色】** ▼茶色(焦げた紙のように汚れた光ちゃいろ瀬。目が灰色に近いような深い=鷺沢)。水が泥で茶色に濁る。絹のような茶色の髪=常盤。川の水が茶色く濁る。葉が茶色く変色する。畳が赤茶色に変色する。赤茶色の(髪の毛。土)。 <16> **あ** 赤茶けた(丘。焼け跡。山肌)。|色に日焼けした健康な肌。夏樹。橙色以心淡に日焼けした頬や手伊藤悠。▼日焼けした顔(真っ黒に。嫌味なほどきれいに宮部)。浅黒く陽灼ひゃけした顔!有吉。日焼けして色が黒くなる。▼陽に焼ける(畳が。顔が真っ黒に。たっぷりと)。こんがりと陽にやいた小麦色の肌"飯田。渋紙のように日に焼けた顔壺井。顔が日に焼けて触れば痛そうな赤い色になる。伊藤整。腕が日に焼ける。陽の色が染み付いたような肌"高井。 **べにいろ【紅色】** 紅殻塗以以がりの表格子が指先に染べにいろめつくような淡い紅色"山崎。浜茄子様の花の濃い紅色が点々と咲いている=横光。頬にさっと紅色がさす光原。目のまわりに紅がさす。横顔にぽっと紅が浮かぶ。紅梅の枝に蕾が旋狙こびかけて点々と鮮やかな紅の色が散っている=高井。頬へ紅を散らす。葉鶏頭の真紅が庭を彩る"立原。真紅の(太陽。薔薇ばら。火花。炎)。目が染まるほど鮮やかな真紅の口紅連城。黒ずんだ雲の堆積のあいだに夕日の一点が紅に沈む"三鳥。蓮華の咲く田団が遠くまで紅に煙るよう辻井。秋海棠いうかが絵のようにかすかに紅を見せる=田山。 **まっか【真っ赤】** 真っ赤な(偽り。嘘。炎が渦を巻く。夕陽が落ちていく。ルージュを引く)。消防車の真っ赤な車体。爪に真っ赤なマニキュアをする。頬の真っ赤な娘。傷口から真っ赤な血が流れる=江戸川。濡れたような真っ赤な唇"阿久。紅を塗ったように尻が真っ赤な袋子母沢。峰を焦がさんばかりに燃えさかる真っ赤な炎=住井。真っ赤に(熾ぉこった炭。充血した目。塗った長い爪。熱した鉄板)。顔を真っ赤に上気させる。空を真っ赤に染める空襲。鉄材が真っ赤に錆、びる。目が真っ赤に充血している。目を真っ赤に腫らす。夕陽に体を真っ赤に染め抜かれる=辺見。ゆでダコのように顔をまっ赤にさせる=飯田。輪郭からはみ出るほどに真紅に塗られた唇"吉行。頬を真っ赤に染める。真っ赤になって(怒り出す。抗弁する。叫ぶ。泣く。腹を立てる。反論する)。真っ赤になる(不安と怒りで。色白な男が火がついたように=加賀。顔が首筋のあたりまで藤沢。顔が炎の照り返しで辻具どぎまぎと耳たぶまで=山手。普段はほのかな虹色に輝く鮭さけの腹が産卵期には緋鯉のように大庭。ゆで上げた蛸たこのように"阿久)。屈辱で身体が真っ赤になるほど=佐藤愛。▼真っ赤に燃える(夕焼けが。ストーブの火が)。▼顔を真っ赤にする(興奮に。怒りで。羞恥しいと憤怒で。上気して)。恥ずかしさに耳のつけねまで真っ赤にする=長崎。茹でた蟹かにのような顔いろ藤沢。顔に朱を散らす高橋和。 **ももいろ【桃色】** 桃色に膨らんだ牛の乳房。皮膚が桃色に輝く。頬を桃色にほてらせる。朝日が山々の新雪を照らして桃色になる=石森。夕日が街を桃色に染める=原田店。両瞼もに絵がぼうっと桃色に染まる=水上。鮮やかな断面にうす桃色の肉を見せる骨つきハム"安岡。薄桃色で瑞々みずしくはりきった女の肌瀬戸内。白玉のような頬が薄桃色に輝く=山本周。夕焼けがほの赤い。ほの赤いうっとりした。薄紅色に染める(炎が夜空を。自分の言葉に昂奮に心して白くあせた頬のあたりをぼうっと円地)。夕のほのかに薄紅のただようているようなと下野間。ほのぼのと二つの頬を薄紅に染める=菊池。白い陶器に薄紅を刷はいたような皮膚川端。頬がさっと桜色に上気する。桜色に染まる(目のまわりが。顔がほっと。ほんのりと)。・桜色に染める(爪を。肌をぽっと)。爪が淡い桜色をしている。頬をピンクに上気させる。目元をうっすらビンクに染める。夕日をあびて山肌の雪がピンクに染まる=石森。ピンクの可憐ふぇな花びら。サーモンピンクの細い光の帯が氷原を染める三浦湾。横顔がほんのりとビンク色に色づく=飯田。手の先が蟹かにの身のようにビンク味を帯びている=北村。 **はなぢ【鼻血】** 鼻血が(あふれ出る。止まる。流れ出る。噴き出る。執拗に流れ続ける)。逆さに振っても鼻血も出ない三好微。手の甲で鼻血を拭う。鼻から血が流れる。鼻から赤い飛沫しょが飛ぶり佐々木。 **ばらいろ【薔薇色】** 夕焼け雲が西の空からひろがっておごそかに見えるほど単純な深さで半天をばら色に染める=石森。前途がバラ色に彩られる=美濃部。薔薇色に染まる(顔が。夕陽があたって真っ白な峰が"遠藤)。薔薇色の(頬の少女。未来を描く)。蒼白時にな頬にバラ色の血がよみがえる=山岡。濃い乳白色の霧の厚い層の向こうに薔薇色の明るみがある=大江。嘘に色があるならば薔薇色の嘘をつきたい荻野。薔薇色の頬(ふっくらした。ひと刷毛はけさっと朱をはいたように明るい人間)。健康らしいばら色を帯びた容貌"有局。人生にバラ色を期待する。 **ひやけ【日焼け】** 日焼けで水ぶくれができる。日焼けを防ぐ。▼日焼けする(きれいに。赤銅色に。ほのかに。見事に。たくましく)。ココア色に日焦ぃゃけする=岡本。ビール瓶のような色に陽焼けする"干刈。日焼けした(精悍な顔。顔に誇らかな微笑が遂にじむ=加賀。肌に白い歯が鮮やかに浮き上がる=高橋二)。小麦▼赤茶ける(畳が。葉が)。額の生えぎわが薄茶色に霞んで見える三浦堂。町が自動車の排気で薄茶色に染まったように見える=曽野。薄茶色の(シャツ。需もゃ)。髪が茶色みを帯びる。器油で煮しめたような色熊谷。髪を栗色に染める。栗色の(髪の毛。瞳)。焦げ茶の大きめなジャケット。小変色に雪焼けした顔。草の枯れた川の土手が一帯に代赭色い肌に塗られて見える=田山。代赭色の雪崩れたような石塊が一面に拡がる=高井。鳶色にびに曇った空。鳶色の(瞳。目)。ブロンズ色に輝いている男の体。セビア色に(褪ぁせる。変色した古い写真)。セビア色の想い出森成。 <17> # 上がる・下りる **あ** **あげさげ【上げ下げ】** ▼上げ下げする(肩を。殺帳以礼ちを。帆を)。▼上げ下ろしする(荷物を。布団を)。箸の上げ下ろしにまでうるさく言う。上げたり下げたりする(腕を。両手を)。 **あがる【上がる】** ▼上がる(勢いよく炎が。一遍に血圧が。声のトーンが。陣中の士気が。すっかり息が。着々と成果が。文名が徐々に。息子が中学に。名声が大いに。灰がわっと。雲雀いはが高く。炎がばっと。明るい笑い声が。あちこちから悲鳴が。会場からどよめきが。幾何級数的に値段が。ぐんぐん調子が。四方八方から火の手が。三日ぶりに雨が。わっという欲声が。小走りに階段を。煙がまっすぐに。先発としてマウンドに。上がれるところまで。価格が際限なく。仕事の能率がぐんと。幕がするすると)。▼挙がる(確実な証拠が。奥さんのほうに軍配が。容疑者として名前が)。圧力計の針がじりじりと上がっていく=柳田。▼上がってくる(水が根から。寒気が足元から。下からずうっと)。一気に階段を上がりきる。上がりこむ(ずいと座敷に。土足で他人の部屋に)。▼浮かび上がる(意識の表面に。山容が薄紫色に)。▼浮き上がる(ふわりと。体が浮力を得て海面上に)。▼起き上がる(のろのろと。弾かれたように"小池)。▼躍り上がる(びょんびょん。竿立慈ぉちになって)。上り坂を気に駆け上がる。喉もとに熱いかたまりがせりあがってくる落合。不安が体の中からせり上がってくる。立ち上がる(すごい剣幕で。背筋を伸ばして)。▼積み上がる(書類が。本が)。▼飛び上がる(ぽっと。ふわりと)。▼這い上がる(蟻地獄さりしから。窮乏状態から)。はずんだバネのように弾け上がる=小林多。▼跳ね上がる(鲇あゅのように。小指がびんと)。▼舞い上がる(軽やかに。音もなく宙へ。心が鳥になって)。▼まくれ上がる(上唇が。川波が)。唇が軽くめくり上がる=吉行。土がむくむくと持ち上がる。▼盛り上がる(筋肉が隆々と。こんもりと丸く)。▼湧き上がる(歓声が。雲が)。上げ幅が(拡大する。縮小する)。▼アップする(支持率が。賃金が)。続伸する(株価が。相場が)。火事の炎が暗い夜空を一様の血の色に焦がし煙と火の粉が渦を巻きながら奔騰する=海音寺。尻上がりに(調子を上げる。勢いをつけた言い方)。仕事が尻上がりに忙しくなる。尻上がりの口調で話す。急流の奔騰するごとく乱入する=山田美。歴史の流れが奔騰を見せる=山岡。▼奔騰する(煙が。相場が)。経済が右肩上がりに成長する。右肩上がりの業績を上げる。▼上がらない(五十肩で腕が。さっぱり効果が。どうにも気勢が)。▶頭が上がらない(一生妻には。母にまるで)。田舎臭く風采の上がらない男高井。 **あげる【上げる】** ▼上げる(大きな成果を。会社が利益を。学円で名を。数々の実績を。声のトーンを。次第に高度を。女性が嬌声を。書類から顔を。早々に音を。高く足を。不意に大声を。顔を真っ直ぐ。眉をびくっと。お国言葉で気炎を。口々に隅ののり声を。苦しげなうめき声を。稽古事に血道を。徐々にスピードを。じりじりと値を。ソファーから腰を。ひゃあと歓声を。飛躍的に成績を。燃えつきる前の炎を。情報を上層部に)。▼揚げる(帯を。芸者を。船が帆を。フライを。網を水から。鶏肉を油で)。▼挙げる(解説に全力を。婚礼の式を。正式に祝言を。殊更に極端な例を。同級生の名前を)。いっぱいに上げる(速度を。ボリュームを)。声を上げる(思わず頓狂な。驚きの)。悲鳴を上げる(小さく。ひっと。ありったけの声で)。▶目を上げる(腕時計から。地図から。ゆっくり本から)。打ち上げる(フライを。ぽんぽん花火を)。抱え上げる(子供を。荷物を)。肩に担ぎ上げる。1トを切り上げる。地下水を汲み上げる。▼蹴上げる(砂を。腹を)。蹴り上げる(下腹部を。尻を)。▼こすり上げる(鼻を。横腹を)。▼差し上げる(右腕を高く。両手を目八分に)。意見を吸い上げる。すすり上げる(鼻血を。鼻水を)。▶ずり上げる(かけぶとんを。スカートを。ズボンを)。相場の倍まで競り上げる。高々と抱き上げる。たくし上げる(スカートを。ズボンを)。▼たぐり上げる(網を。親を)。▼つかみ上げる(石を。硬貨を)。布の端をつまみ上げる。▼積み上げる(うずたかく。小山のように)。▶眺め上げる(空を。ビルを)。▼投げ上げる(石を。手綱を)。▼撫で上げる(髪を。尻を)。▼運び上げる(二階に。地下から荷物を)。ボールを弾き上げる。尻尾をびんと跳ね上げる。かがんで拾い上げる。景気のいい話をぶち上げる。放り上げる(空中に。一段高いところに)。芋を掘り上げる。舞い上げる(土煙を。埃旧こを)。巻き上げる(風が雪を。埃を)。▼まくり上げる(スカートを。ズボンの裾を)。▼めくり上げる(笠の前つばを。スカートを)。盛り上げる(一段高く土を。山盛りに)。腰を揺すり上げる。肩を揺り上げる。▼アッブする(賃金を。バージョンを)。弔旗を掲揚する。▼底上げする(経済を。賃金を。労働条件を)。 **アドバルーン** アドバルーンが巨大なクラゲのように漂う開高。アドバルーンになるんじゃないかと思ってほど心も体も軽い=石森。アドバルーンを上げて様子を見る。アドバルーンのように水面に顔を出す為田。頭の上にびっくりするほど巨大なガスタンクが青白い照明をあびて気球のように浮かんでいる=阿部。 **エレベーター** 五人も乗ったらすし詰めになる狭いエレベーター=中局み。エレベーターが(一階に到着する。がくんと停止する。目的階で止まる。ゆっくり上昇する。痛ましい音をたててきしむ=宮部)。エレベーターで最上階まで行く。 <18> **あ** エスカレーターで(下る。上る)。エスカレーターに乗る。 **おしあげる【押し上げる】** ▼押し上げる(編み笠の縁を。ずり落ちた眼鏡を。シャッターを上まで)。天井を押し上げるような笑い声"角田。▼せり上げる(上唇を。年数を。役者を舞台に)。上半身をせり出す。 **おりる【下りる】** 下りる(谷一杯に霧が。夜のとばりが。一目散に丘を。栄光の座を。やっと肩の荷が。荒々しい勢いでベッドを。玄関の三和土於たに。大臣の椅子から。すっと胸の岡っかえが藤田)。早晚許可が下りるに違いない。▼降りる(車から人が。次の駅で。路地の底に光が。乗客がどやどやと。滑るようにして電柱を"宗田)。▼下りていく(ゆっくり坂を。とんとんと階段を)。言葉が深く胸の底に降りて行く三浦綫。▼下りてくる(山から人が。霧が山を)。夜霧が走るようにおりてくる壺井。車を降りしなに言い置く。降り立つ(縁側から庭へ。ひらりと地面に。ブラットホームに)。駆け下りる(一目散に石段を。あわてふためきながら)。丘から風が滑り下りてくる。伝いおりる(崖を。急斜面を。山腹を)。荷台からひらりと飛び降りる。▼乗り捨てる(車を駐車場に。タクシーを駅前で)。▼走り降りる(階段を。坂道を)。あまガエルのようにびょんぴょんはねおりる=山本有。吹き降りる(冷たい風が。山から風の子が)。▼無い下りる(光が天から。あとからあとから休むことなく雪が小川。反響した声が霧のように=村上巻)。▼駅で下車する(次の。最寄りの)。▼下山する(猛吹雪の中を。登山をあきらめて)。次の港で下船する。船客が続々と下船を始める。ゴンドラが降下する。ジェットコースターが降下を始める。▼降臨する(仏が。女神が。雷神が。神が祭りの場に)。天から下りてくる。 **おろす【下ろす】** ▼下ろす(肩の荷を。厳重に錠を。胸のつかえを。苗を地面に。荷物を床に。振り上げた拳を。ワイシャツの袖を。リュックサックを足下に。ズボンを膝まで)。▼おろす(新しい靴を。魚を三枚に)。船から荷を降ろす。▼根を下ろす(社会に。風土に深く)。胸の中に一つの考えが根をおろす=隆。▼下ろされる(帆が手際よく。首相の椅子から)。墨を磨けり下ろす。▼ずり下ろす(スカートを。ズボンを)。棚から胞ばを取り下ろす。全身をじろじろと眺め下ろす。▶投げ下ろす(視線を。縄を)。▼撫で下ろす(顔を。腹を)。引きおろす(スカートを。ズボンを。ファスナーを)。▼引きずりおろす(ずるずると。番組から。寄ってたかって)。会長の座から引きずり下ろす佐高。風が崖の上から吹き下ろす。力強く足を踏み下ろす。 **かいだん【階段】** ▼階段(梯子しみたいに急な=原田宗。蛇腹のように伸びた長い落合。建物の四隅に分散して作られた=笙野)。階段が大蛇誌ぅのようにうねる里見。一歩一歩足をのせるたびに木の階段がつぶやくようにみしみし軋きしむ小川。二階の階段が高圧線の鉄塔のように高くそびえている=萩原来。階段から足を踏み外す。階段に靴音が物愛く反響する。階段を風が吹き上げる。▼階段を駆け上がる(どやどやと。猛烈な勢いで)。階段を軽い足取りで駆け上がる=有川。つんのめるような足取りで階段をあがる小林久。階段を(一歩一歩踏みしめて降りる。大わらわで駆け降りる。転げ落ちるように駆けおりる"五木。飛ぶように降りる=檀。踏み鳴らして階下へ降りていく若竹。とんとんと小刻みに靴音をたてながら登る=日野。矢のように昇る=子母沢)。階段が毀こもれるのではないかと思うほど乱暴な音をたてて走り降りる"高樹。足音を殺して階段を降りる佐藤多。暗い階段を注意して一段ずつ降りる=日野。小さな獣のように階段を駆け下りる=原田米。階段をのぼる(小走りに。息を切らして。一歩一歩。駆け足で。手すりを頼りに)。軽く拍子をとるような足どりで階段を上る=安岡。危なっかしい足とりで階段をとたんとたんと昇る!高見町。見えない糸に引っ張られるように階段を上って行く鳥尾。非常階段の踊り場に出る。泥棒ネコのようにこっそり螺旋階段をのぼる=開高。ステッブに足をかける。バスのステッブを上がる。段差に(足を取られる。気をつける)。稲田が段々に連なる。壁に板を段々に打ちつける。段々を(上がる。降りる)。勾配の急な梯子段。梯子段を(上がる。降りる。這はってのぼる)。石段が闇に冷え冷えとほの白く浮かぶ三島。見上げるような石段が温泉場のまんなかに長く続いている高田。石段の上から足早に下りてくる"石川。石段を一段一段噛みしめるように昇る三島。ことことと石段を降りるように寝入って行く=幸田文。胸を突くような石段をのぼる=池波。 **かきあげる【掻き上げる】** ▼かき上げる(後れ毛を。額の前髪を。愛びんのほつれを。髪を無造作に。髪をブラシで。髪を優しく。髪の毛を指先で)。前髪を煩わしそうに掻き上げる=落合。▼髪をかきあげる(長い。額にへばりついた)。髪をかきあげるしぐさがこの上なく色っぽい!佐野。 **かくさげ【格下げ】** 平社員に格下げになる。公約を努力目標に格下げする。上士から足軽に格下げされる"火坂。降格を免れる。閑職に左遷される。 **きょしゅ【挙手】** 挙手による採決。手を高々と差し上げる。手が上がる(一斉に。ばらばらと)。▼手をあげる(高々と。われこそと言わないばかりにぼっと一斉に=中)。右手をさっと高くあげる。 **くだる【下る】** ▼下る(悪業に天罰が。坂を小走りに。くだる麓の町に。川を舟で。京から奥州へ。流れに沿って。天の神の裁きが。線路沿いを南に。山坂を登っては。川が溶々として流れて=田山)。▼下りになる(だんだんと。道が心もち)。川下へ漕ぎ下る。水が山腹を流れ下る。走り下る(坂道を。斜面を)。 <19> **上がる・下りる―6** **あ** **くりあげる【繰り上げる】** ▼繰り上げる(起床時間を。時期を。次点の人を。日取りを。順に)。一週間繰り上げて出港する。▼繰り上がる(桁が。順位が。終電が二十分。段階的に料金が。十の位から百の位へ。データが一つずつ)。十の位で切り上げる。 **クレーン** クレーンが動きはじめると犬のうなるような低い音が聞こえてくる=灰谷。白い霧もやの中に重なり合った帆柱やクレーンが工場地帯の煙突のように見える=吉行。クレーンで吊り上げる。鋼材をクレーンでつり上げる。クレーンのごとくたくましい腕"大原。 **げらく【下落】** 下落に歯止めをかける。底なしの下落に見舞われる。▼下落する(支持率が。値段が大幅に。評判が一度に)。▼急落する(円が。株価が。支持率が。ドルが)。▼続落する(株価が。相場が)。▼軟調に推移する(景気が。相場が)。▼反落する(円が。株価が。ドルが)。暴落する(円が。株価が。相場が。ドルが)。弱含み(株価が。業績が。景気が)。 **こみあげる【込み上げる】** ▼込み上げる(自然と笑いが。ふつふつと怒りが)。▼こみ上げる(すがろうとした手を振り払ってしまったかのような居心地の悪さが“有川。問いただしたい衝動が胸元まで三浦失。不安な気持ちがじんわりと=奥田)。▼胸に込み上げる(悲しみが。懐かしい思いが)。笑いが込み上げてくる(思わず。にやにやと)。▼思いが込み上げてくる(苦い。無性に懐かしい)。▼込み上げてくる(哀憐いの情が。喉に苦い汁が。切ない気持ちが。痛切な心持ちが。なおさらにおかしさが。不意に切なさが。むらむらと殺意が。わけの分からぬ寂しさが。じんわりとうれしさがねじめ)。▼胸に込み上げてくる(焦りが。嫌な予感が。悔しさが)。▼感じが込み上げてくる(胸苦しい。何とも言えぬ不快な)。体が震えるほどの怒りがこみ上げてくる=さだ。 **さがる【下がる】** ▼下がる(ぐんと格が。声のトーンが。命中精度が。評価が極端に。きゅうと溜飲が。情熱と努力に頭が。ただのように値が。浮きがビクンと。温度ががくっと。声が一オクターブ)。▼後ろに下がる(一歩。じりじりと)。下げ止まる気配が見られない。機首を下に向ける。紐いもの一端がだらりと垂れ下がる絵辻。つまらぬ男に成り下がる。天井からぶら下がる。▼下向きになる(売れ行きが。相場が)。▼ダウンする(給与が。売り上げが一割)。下降の一途をたどる。景気が下降局面に入る。人気が下降線をたどる。 **さげる【下げる】** 下げる(空いた食器を。あっさり値を。お膳を。声の調子を。声のトーンを。腰に手拭いを。生活水準を。帽子のつばを。ボリュームを。頭を神妙に。服を弟に。手をだらりと。戦闘機が機首を。飛行機が高度を。表情を崩して目尻を。頭をびょこんと)。提げる(買い物籠かごを。バスケットを。袋を手に。スーツケースを。カメラを首から。買い物袋を両手いっぱいに乃南)。▼両手に提げる(荷物を。デパートの紙バッグを)。ぺこぺこ頭を下げて謝る。頭を下げて詫びる。▼引っさげる(大身心ぉの槍ゃりを。斧ぉのを)。押し下げる(ズボンを。ビストンを。ボンプの柄を)。価値を多かれ少なかれおし下げる=服部。肩から背にかけて斬り下げる。ズボンをずり下げる。垂れ下げる(ナブキンを。紐いもを。ローブを)。吊り下げる(糸を。ランプを)。首からカメラをぶら下げる。地面を掘り下げる。 **しゅっせ【出世】** 出世が遅れる。出世で人問を測る。出世に(関心がない。汲々終ゅうとする)。出世の(蔓っるをつかむ。道が開ける。ために危ない橋を渡る。ためには手段を選ばない!佐高)。余りにも早い出世のため嫉視を買う「井上靖。出世の階段を(昇る。飛び上がっていく=村上元)。出世を目的とする生き方を拒む"中島敦。出世する(政府の高官に。いっばしの組頭に。相当なところまで。仲問の中で一番。人に抜きん出て。将軍の側近から老中に竹内)。群臣を排して異常な出世をする=舟橋。人を押しのけてまで出世したい気持ちはない"丹羽。出世街道を(歩む。突っ走る。蔡進山くする。まっしぐらに駆ける)。坦々たる出世街道をまっしぐらに突き進む=村上元。順風満帆の出世コース。出世コースを突っ走る。出世至上の醜い競争社会・佐高。目覚ましい出世ぶり。出世欲の権化のような壮者ぞろい=柴田錬。異例のスピード出世。立身出世がかなう。エリート街道を歩く。鯉の滝登り。階段を駈け足で上るように主任教授の位置に昇って行く松本。栄進する(次官に。重役に)。栄進の担道を歩む。栄達の望みを持つ。他人の栄達を嫉視する。栄転する(支社長に。論功行賞により)。栄転の内示を受け欣喜雀躍さんにする。▼登竜門(高級官僚への。新人の)。身を起こす(下積みから。貧窮のどん底から)。身を立てる(科学で。学問で。実業家として。政界で)。中央に出て立身を志す。出世できない。出世の(道を阻まれる。道が閉ざされる)。出世の望みが(断たれる。ほとんどない)。どうあがいても出世する見込みはない!宮本輝。緑の下のたけのこ。 **じょうげ【上下】** 上下が入れ換わる。上下に(大きく揺れる。二分割する。絶えず変動を続ける)。握手した手を何度も上下に振る。腰を上下に揺さぶる。眉を上下に動かす。つけまつげを上下に羽ばたかせて笑うに小林信。上下に動く(喉仏が。シーソーのように)。上下のバランスが悪い。▼上下する(肩が大きく。五十バーセント前後を。喉仏がゆっくりと。ボーダーラインすれすれのところを"小林久。二人の愛の熱度がシーソーのように=瀬戸内)。愉快そうに腹を上下させる。上下逆様になる。上下左右に動かす。上下対称の一組。上と下に分かれる。丘の上と下を往復する。相場が高下する。身分の高下は百も承知。縦に振る(小刻みに頭を。 <20> **あ** 渋々と首を。首をこくりと)。シーソーの一端に乗る。船がシーソーのようにはげしく揺れる=山本有。シーソーゲームを続ける。▼乱高下する(運命の秤にかが。株価が。為替相場が。先物価格が)。激しく上がり下がりする。 **じょうしょう【上昇】** 価格の大幅な上昇をもたらす。▼上昇する(らせん状に。急カーブを描いて)。▼じわじわと上昇する(圧力が。温度が)。上昇気流に乗って高いところまで飛ぶ。▼急上昇する(株価が。気温が)。 **しょうしん【昇進】** 昇進の機会を与えられる。順調に昇進の道をたどる。昇進の道を(開く。ふさがれる)。昇進や出世など頭にない=横山。順調に昇進を続ける。破格の昇進をする。昇進する(位階が。教授に。部長に。横綱に)。昇進試験に合格する。昇進昇級のチャンスを奪われる。▼格上げになる(格付けが。等級が。係長から課長に。警部補から警部に。二つ星から三つ星に)。課長から部長に(昇格する。昇任する)。昇任試験にバスする。重役に累進する。▼昇格する(院長に。監督に。二部から一部に。実績に呼応して)。 **じょうりく【上陸】** 水際で上陸を阻止する。上陸する(台風が。島に。敵前に)。陸に上がる。 **たこ【肌】** 凧が(勢いよく空に駆けのぼる。空高く舞い上がる。青い空に吸いこまれるようにおもしろいようにあがっていく=灰谷。大空の海を泳ぐ中。風に少しも逆らわず風を上手につかむ灰谷。凧糸の唸うなりを蒔き散らしながら踊る=福永)。凧の唸り声が空に聞こえる=徳田。肌を揚げる。 **たちのぼる【立ち上る】** ▼立ち上る(鼻がもげそうな臭気が=栗木。さかんな勢いで噴出する湯気が白々と高く=島崎)。▼立ちのぼる(細かな泡が。邪淫の妖気が。白い蒸気が。ふっと異臭が。煙が静かに。煙が一筋に。体からオーラが。口から白い息が。煙草から紫煙が。めらめらと炎が。香りが湯気とともに。雲がほっかりと。白い煙がもくもくと。臭いがじわじわと。噴煙がむくむくと。温かな肌の匂いが=黒井。頭から湯気がぼっぽと"石森。木の芽の匂いがむんむん=大江)。煙が立ちのぼる(ぶすぶす。深々とした)。立ち昇る(陽炎砂沢のように光が=高千穂。笑うと口許ひらにやさぐれの臭いが"藤田。濃い白い煙が縷々るると香炉の煙のように一すじに=佐藤春。疲労が足元から森)。妖しい魅力が立ちのっている。 **ちんあげ【賃上げ】** 賃上げに(合意する。難色を示す)。賃上げの交渉を始める。賃上げを要求する。三パーセントのベースアップがある。ベースアッブを(かちとる。要求する)。▼ベースアップする(給料を。賃金を)。 **つりあがる【吊り上がる】** ▼吊り上がる(目尻がひきちぎれるように痛いほど目が"阿久。唇の両端がきゅっと斜め上に=井上ひ)。つり上がる(値が。まなじりが。眉が。目尻が。眼が狐風に。目が険しく)。つりあがった胱に唸が凶相を帯びる=斎藤災。吊り上がった目をくすぐったそうにまたたかせる北村。両眼の少し釣り上がったきつい顔立ちの女南条。細い眼が吊り上がって狐の面に似た顔"黒井。▼つり上げる(口の端を。不当に値段を。まなじりを。柳眉をきりきりと)。キリキリと眉を吊り上げる=阿久。目をつり上げて(叫ぶ。どなる)。目が三角に吊っている。 **ていか【低下】** 勤労意欲の低下を招く。低下する(売り上げが。支持率が。内容が質的に。記憶力が年とともに。思考能力が極度に。日を追うごとに)。低落する(作業能率が。信用が。人気が)。長期低落傾向がはっきりしてくる。人気が低落傾向にある。 **ねあがり【値上がり】** 物価の値上がりがすさまじい。近年保険料は値上がりの一途をたどっている有川。▶値上がりする(株が。土地が。原材料が際限なく)。・青天井になる(価格が。株価が)。値上げを当て込んで土地を買い占める。▼値上げする(印刷用紙を。ガソリンを。たばこを。料金を。大幅に。横並びで)。便乗値上げに目を光らせる。 **ねさがり【値下がり】** ▼値下がりする(原材料が。資産が。パソコンが)。過去最大の下げ幅を記録する。値崩れを起こす。▼値下げ(大幅な。小幅な)。▼値下げする(小遣いを。受信料を。家賃を。料金を)。 **のしあがる【伸し上がる】** のし上がる(第一線に。地方財閥に。日本一のメーカーに。一介の浪人から将軍の側近に『永井路。闇を支配する顔役に藤沢)。順当に社長に伸し上がる=山口。下剋上げに氷の(時代。風潮に乗じる)。戦国時代の下剋上の波に乗る。主君を弑する。▼成り上がる(大金持ちに。億万長者に。指揮官に)。成り上がりを絵に描いたようなもの。 **のぼり【上り】** 線路が上りになる。道が上りにさしかかる。山道を登りにかかる=宮部。上りの一番を待ち兼ねる。ゆるい上りの一本道。爪先上がりになった草やぶ。道が爪先上がりに続く。爪先上がりの傾斜を上る。 **のぼりおり【上り下り】** ▼上り下りする(階段を。坂道を。坂を。斜面を。地下と地上を。丘をいくつも)。斜面に刻まれた道を登りおりする=吉村。▼繰り返す(上昇と下降を。上ったり下りたりを)。上ったり下りたりする(丘を。坂道を。筒の中を。エスカレーターを)。 <21> **上がる・下りる-6** **あ** **のぼりつめる【上り詰める】** ▼上りつめる(階段を。怒りが沸点に。教授の位置に。興奮の高みに。最高幹部に)。▼登りつめる(丘の頂上に。最高峰へ。頂点に向かって。演歌の女王と呼ばれる地位にまで=西木)。頂点を極める。株価が天井を打つ。登頂に成功する。登頂を果たす。坂を一気に上りきる。▼登りつく(山頂に。絶頂に。頂上に)。 **のぼる【上る】** 上る(唇に微笑が。長い石段を。噂が人の口に。屋上の庭園に。世上の噂に。世上の沙汰に。高い地位に。血が頭に。名が人選に。竜が雲に。頭にかっと血が。おびただしい数に。金の支払いが相当な額に。人々の口の端はに。メディアの俎上に北に。危なっかしい足どりで。階段を急ぎ足で。階段をもたもた。とぼとぼと暗い坂道を=長与)。当てどもなく部隊が放浪の旅にのぼる今日。▼登る(猿みたいに木に。三百メートルほどの高低差を一気に。足場を踏みしめて。松の幹にするすると。生い茂る葉を山刀で払いながら池澤。つづら折りの道を喘ぁえぎながら久問。のっしのっしと坂道を規則正しく"烏尾)。▼昇る(竜は天に。陽が高く。朝日が水平線から。白い湯気がゆらゆらと=石川)。▼階段を上る(息せき切って。先に立って)。坂を上っていく(すたこら。えっちらおっちら)。道をだらだらと上っていく=佐藤多。登っていく(するすると木を。とことこと山へ)。木々の間を縫って黙々と登って行く"外村。▼上らせる(頬に血を。目に笑みを。確信を意識に。屈辱感を胸に。笑いを唇に)。▼上り調子になる(経済が。成績が。相場が)。上り調子の(会社。チーム)。▼駆けのぼる(階段を一気に。ヒットへの道を)。▼攻め上る(京へ。都へ)。伝いのぼる(崖を。山腹を)。▼道いのぼる(蔦ったが壁を。靄もゃが山肌を)。▼走りのぼる(階段を。坂を)。 **はしご【梯子】** 伸び縮みする怪合金製の梯子"大阪。梯子が弓のようにしなう奥田。梯子からおっこちる。梯子に足をかける。梯子の(上から見下ろす。高みに登りつめる)。はしこをのぼるような急坂=深沢。天国にのぼる梯子を仰ぎ見るのにも似た目まい!小島。ヤモリのように足音をぬすんで急な梯子を這うようにして上る=芥川。梯子のような細長い枠夏目。脚立に足をかける。脚立を(肩にする。開く)。舷梯以を(下りる。上る)。タラップを(上がる。下りる。降ろす。上って乗艦する)。 **ひきあげる【引き上げる】** ▼引き上げる(腕を。生活水準を。対象年齢を。ファスナーを一気に。掛け布団を鼻まで)。▼引きずり上げる(体を。ズボンを)。▼引っ張り上げる(靴下を。ズボンを)。 **ひきさげる【引き下げる】** ▼引き下げる(価格を。関税を。金利を。公定歩合を。生活水準を。対象年齢を。帽子のつばを。半分以下に)。ファスナーを下に引く。切り下げる(為替レートを。下請け代金を。労働条件を)。 **ふきあげる【吹き上げる】** ▼吹き上げる(火炎の竜巻を。風が砂塵にじを。どうしようもなく成清が燃えてなまなましい炎を"石坂。風が前髪をばらばらと"中沢)。▼噴き上げる(濛々。ジと煙を。どっと火の粉を。欲望が火柱となって=笹沢)。▼噴き上げてくる(怒りが胸元に。屈辱の思いが胸底から=源氏)。怒りが噴き上げてくる(胸の底から。押さえきれない)。▼足元から吹き上げてくる(風が。寒気が)。吹き上げてくる(風が渓谷から。風がひゅうっと)。ささくれ立った思いが胸に噴き上がってくる=船山。風が丘を吹き上がってくる。足元から紙屑が吹き上がる。 **ふりあげる【振り上げる】** ▼振り上げる(足を。椅子を。腕を。斧ぉのを。刀を。クラブを。拳を。杖を。棒を。願ぃちを。片手を大きく)。▼振りかぶる(大上段に刀を。右腕を頭上に。腕を大きく)。▼振りかざす(ナイフを。大上段に。手を大きく。身勝手な理論を。太刀をまっこうに。苛烈な行動指針を奥泉)。 **ふりおろす【振り下ろす】** ▼振り下ろす(尻に縦もうを。電光の一閃ゃんを。刀を一直線に。手刀を首に。頭の後ろから右腕を。幾度となく拳を。力まかせにハンマーを。渾身に心の力を込めて)。▼打ちおろす(一刀を。斧ぉのを。鉄くゃを。つるはしを。手刀を)。 **もちあげる【持ち上げる】** ▼持ち上げる(足の爪先を。疑いが頭を。ぐいっと顎を。両方の肩を。目の高さに。椅子を軽々と。顔の高さまで。尻をきゅっと。青大将が鎌首を。手元のカップを。ひょいとつまんで。事あるごとに母の料理を光原。人前でわざと女房を=向田)。簡単に持ち上げることができる。▼もたげる(蟷螂沙哇が斧を。ぐいっと首を。昂然むらと頭を。奨の付け根を。蛇が鎌首を。顔をぐいと)。 **やまのぼり【山登り】** 山登りに熱中する。山登りの先達を務める。山登りを楽しむ。入山コースを検討する。登山する(冬山に。ガイド付きで。単独で)。両脇から木の枝がかぶさるような登山道-篠田。山刀で登山道を開きながら登る=池澤。単独登山を試みる。 **よくよう【抑揚】** まつわりつくような柔らかい発声と抑揚"阿部。語尾に抑揚がある。抑揚に乏しい言葉つき。殊更引きのばしたような抑揚のない口調=日野。声が抑揚を帯びる。抑揚をつけて(言う。詩を読む。話す)。ゆったりとした抑揚をつける。抑揚をつけた甲高いやり取り。抑揚のない(口調で語る。けだるそうな声。ゆっくりとした語調)。低い抑揚のない言葉。めりはりが利いている。めりはりのある芝居がかった口調"円地。役者顔負けのめりはりのある言い方曽野。めりはりをつける(演技に。歳出に)。 **よじのぼる【攀じ登る】** ▼よじ登る(崖を。急な斜面を。木に。ロープを伝って塀の上に=大阪)。▼登攀りする(胸壁を。がむしゃらに凍った岩場を=新田)。登山口から登禁を開始する。岩をよじる。 <22> # あ 明るい・暗い **あかあか【明明】** 明々と(明かりがつく。朝日がのぼる。藤火炒みを焚たく。月の光がさす。電灯がともる)。幾十の蠟燭こいがあかあかと灯る=長与。不夜城のようにあかあかと電灯のついたデバート=原田康。月の光が明か明かとさす=山本周。 **あかるい【明るい】** 明るい(朝の光。さわやかな日。人生が開ける。太陽の下。面を強調する。口調で報告する。茶色に染めた髪。潑剰はっとした五月)。▼明るい(海外の事情に。島の地理に。昼間同然に。表情が底抜けに。立ち居振る舞いがきびきびして。たっぷりと日が差し込んで。針一本落ちても見えそうに球場が…田辺。昼を欺くほどに『福永。青白い月の光が窓から差しこんで部屋全体がぼうっと"灰谷。朝日が母屋の上からさしていて雨戸を開けたらかっと眼のくらむほど“伊藤左。あたりの空気が静かに乾いたように=川端。銀杏い方や橡とちが一晩のうちに葉を落としたので庭が黄金を敷いたように=芥川。濃い紅の窓掛けが色電灯のように=川端。星のようにきらきら大佛)。月の明るい夜。海が明るい色をたたえる。からりと明るい声音。気性の明るい人。くるりとした明るい瞳。子柄の明るい子。心に明るい光が射し込む。さっぱりとした明るい性格。底抜けに明るい笑顔。茶化すような明るい口調。賑やかな明るい通り。広々とした明るい場所。論理に明るい頭脳。明日につながるような明るい話"村上箭。暗い雰囲気を吹き飛ばすように明るい声で言う角田。何という明るい笑いだ=中村真。足元の明るいうちに帰る。▼明るい男(愛想のいい。隈のない)。▼明るい声(はきはきした。つくったような人間)。明るく(冴えた秋空。励ますように言う。屈託ない声で笑う「泉俊)。足元を明るく照らす。海が明るく真っ青に澄む。顔を明るく輝かせる。髪を明るく染める。からりと明るく晴れる。声が明るく弾む。心を明るく膨らませる。精一杯明るく言う。目に明るく映る。お堀の水に秋の日が明るく踊る=山本有。▼明るく輝く(顔がばっと。ひときわ)。▼明るくする(周囲を。ばっと顔を)。ほの明るい朝もやが立ちこめる。さっきとは打って変わった明るさで笑うつか。採光のいい部屋。月は中天高く澄み渡って昼のよう子母沢。目にまぶしい。明朗ということは大いなる美徳"三浦銭。明朗な(景観を与える。性質の人)。 **あかるさ【明るさ】** ▼明るさ(影のない。屈託のない。目のくらむ。血管の隅々まで透けてしまいそうな=開高。四角い光を切り取って据えたような縁側の高樹。直射のないけぶったような「里見。乳白色の薄霧が漂っているようなぼんやりした飯田。光が粒立っているような=落合。人の顔が少し離れてもはっきり見分けがつくほどの徳永。物の紛れようもない=古井。やりきれないほど眩まぶしい透きとおった"三田)。明るさが(急速に増す。目を射る。こぼれるようにふりまかれる)。口調にいつもの明るさが戻る。朝の明るさが加速度を増して広がる=島尾。徐々にいつもの明るさに戻る。明るさを取り戻した顔。心持ち明るさを増す。星の明るさを測定する。 **あかるむ【明るむ】** ▼明るむ(表情が一様に。心がほうっと。空がぼうっと)。▼明るくする(表情を。部屋を)。満月の光が川向こうを仄ほのかに明かるませる"福永。朝の陽光が畑を明るませる。吉村。▼明るくなる(室内が。気分が次第に。表情が一瞬。ほのぼのと。花が咲いたようにばっとあたりが"大佛。窓のフラインドを上げるように表情が宮部。あたりが白い柔らかい膜に包まれたように辻井。あたりが真昼のように=山岡。暗黒であったこの世がどうやら東雲の20の空ほどには=二葉亭。億万の蛍烏賊以炊るの火を一ペに化石させてそこらじゅうに沈めたようにいきなり眼の前がばっと宮沢。暖炉の焰掘のが生き返ったように"日野。匪ももっていた目が醒めたように急にあたりの空気が冴えたように=大佛)。ぱっと明るくなる(顔が。茶の間が)。カーテンにうっすら明るみが染みる。かすかな明るみが漂いはじめる。曇った銀のような薄白い明るみが拡がる芥川。日暮れどきの明るみが海の上をたゆたう。本庄。午後のやや傾いた日が湖面に淡い明るみを流す“石川。水のような明るみを背後に受ける=本庄。闇が次第に薄れてくる。闇が消える。空が明からむ。ぼうっと薄明るくなる。 **いんき【陰気】** 陰気でどこか所在なげな影が濃い顔"椎名感。陰気な(雨が降り続く。憔悴しいうした顔。灰色の朝。無口な男。じめじめした家。天候にあきあきする)。青白い陰気な面がまえ。猫が陰気なうなり声で鳴く。古ぼけた陰気な邸宅。絶望に打ちひしがれた陰気な眼つき=大庭。毒液でも注射されたように見る見る陰気な顔色になる=椎名観。沼から出てきたという感じの陰気な女池田。陰気に(いじけて身をすくめる。ぼそぼそと話す)。海が陰気に黒く光る。声がうっそりと陰気に響く。陰気臭い(家に住む。含み笑い年取い)。古びた寮の建物が夜の色に包まれて暗く、かった大きな獣のように陰気臭い=佐藤愛。除々滅々たる異様な気倉橋。陰性な邪悪さ。陰性の孤独な性格。陰に構えて策を巡らす横山。陰にこもった(顔つき。声)。暗く陰にこもった響き。陰湿な(雨の日。意地悪さ。妬ったみやそねみ)。屈折した陰湿な感情。リストラという陰湿ないじめ。うじうじと後ずさりする陰湿な性格花岡。すべての表面も根も腐らせてしまうほど陰湿な梅雨"遠藤。 **うすぐらい【薄暗い】** 薄暗い(朝まだき。行灯はんの明かり。小屋の中。地下室。林の中。石油ランプの光を浴びる。廊下を進んでいく)。薄暗い(林の中が夕暮れのように三浦絵。放課後の理科室のように小川。店の中が夕方のように=大佛)。北向きの薄暗い小部屋。昼でも薄暗い陰気な場所。まだ薄暗いうちに出発する。じめじめと湿った薄暗い家「今兎。薄暗く(暮れかかる。たそがれる)。廊下が薄暗く静まり返る。▼薄暗くする(髭ひげが顔を。部屋の中を)。薄暗くて人がいることが分かる程度"安岡。▼薄暗くなる(あたりが。部屋の中が。陽が翳かげって)。家の中が黄昏炊のように暗くなる=山本周。昼も薄暗いような大雨の日=笙野。暮色蒼然避けとした景色。 <23> 明るい・暗い―-7 **うすやみ【薄闇】** 草も木も山も川も愉郭をなくしはじめる薄閤"中上。薄闇が迫り漁師町の灯火が蜜柑色以砂んにきらめきはじめる=武田泰。周囲に薄閥がたちこめる。窓から夜の源闇が忍び込む。輝きを残しながらも夏空に浮闇がひと刷毛はけ加えられる永井路。空に渡閣がひと刷毛加えられる永井路。部屋全体がじんわりとした薄闇に包まれる。野道の茶の花が薄闇の中に際立って白く見える=横光。 **かいかつ【快活】** 快活な(爽やかな人。若々しい表情)。明るく快活な娘。自信に満ちた快活な口調"落合。快活に話を続ける。自分を奮い立たせるかのように快活にふるまう=常盤。夜が明けたように快活になる"里見。己れの性格の中に吹き抜けるような透明な快活をたしかめる=檀。あれこれの話題の上を飛びまわる蜂のような快活さの中で食事が進む倉橋。快活さが影を潜める。さっきまでの快活さがなりをひそめる落合。 **かげり【陰り】** 陰りが頬によぎる。顔に不安の陰りが現れる。求心力に陰りが出る。眉根に陰りが宿る。目もとに陰りが横切る。表情に得体の知れない陰りが差し込む=和久。ふっと笑った頬に一抹の翳かげりが居問をよぎる=黒井。陰りが見える(幸福に。ブームに)。陰りのある暗い笑い。虚無のかげりを身につける=阿久。暗い陰りを宿している心。唇のはじに浮かんだ微笑が嘲はだるような翳りを浮かべる=本庄。景気が翳りを見せる荒巻。▼かげる(表情が一瞬。横顔がもの思わしげに。池の水面が錆びた銀色に井伏)。太陽が翳ったように暗い色が顔に流れる徳永。 **くらい【暗い】** 暗い(宿命を負う。怒りに襲われる。顔をして黙りこむ。気分から脱けきれない。気持ちを持て余す。霧を吹き飛ばす。気配は微塵ふじも感じられない。思想にとり憑っかれる。終末を予言する。衝動に駆られる。絶望的な思いに沈む。人門関係の葛藤。話をたっぷりと聞かされる。廊下にうっすらと明かりが漏れる。思いが執念深く生き残る=高樹。空洞のような眼阿部)。▼暗い(海外の事情に。科学の方面に。恥になった部分が。部屋が薄ぼんやりと。灯りなしでは探せないほど地面の上が"志賀。自家発電に頼っている宿の夜が黄ばんだ感じに=高井。家の中が洞穴のように=北原。田舎路のように武田癸。心持ちが夜のように岸田。空が嵐の来る前のように"高井)。朝も暗いうちに起きる。鬱蒼とした暗い森。埋立地に囲まれた暗い海。唇に暗い嘲笑を浮かべる。声に暗い響きがある。先のない暗い身の上。少しも暗い影がない。戦後という暗い時期。底知れぬ暗い穴。年よりも老けた暗い顔。トンネルが暗い口を開けている。昼なお暗い木立。不安そうな暗い口調。胸に暗い影が射す。胸を暗い色に染める。雨の季節の夕方のように暗い空大佛。北の国の海を見るような暗い表情!大佛。中が広く洞窟のように暗い店「新田。深く暗い穴を覗のぞき込んだ思い=横山。闇の中を泳ぐような暗い夜藤沢。昼なお暗い(藪ゃぶ。杉木立に囲まれる)。雷雲に襲われた渓問のようにけわしく暗い影"武田癸。孤独な人を寄せつけないような暗い脳がげ!永井発暗い孤独の影を引く。晴れの宴に暗い影を投げる村上元。表情に暗い翳が走る三好徹。冷たい暗い影のようなものが心をすべる内田瓦。暗く(こもる目つき。光る目。疲れきった表情をたたえる。黄昏炊にのように照明する=柴田翔)。海が暗く騒ぐ。川霧が暗く立ちこめる。視界が暗く閉ざされる。雑木林で暗く覆われた丘。眼差しが暗くかげる。胸を暗く閉ざす。暗く沈む(声が。心が。目が一瞬)。▼暗くする(明かりを。行灯以从の火を。はかなげな思いが胸を)。林の中がひっそりと小暗い。小暗い路地に立つ。丘の陰に入って小暗く見える川藤沢。昼も小暗い(場所。しとしとと降り続く鈴木三)。ロビーの明かりを落とす。行きかう人の顔も定かに見えない柴田現。暗澹はんたる光に包まれて時雨がざあと来る=長塚。 **くらがり【暗がり】** 深い穴の底のような暗がり飯田。夜の暗がりが広がる。暗がりから(手を出す。飛び出してくる)。予想だにしない光景が暗がりで動きだす辺見。暗がりに(隠れる。たたずむ。引っ張り込む。目が慣れる。影のように立つ=大佛)。目が暗がりに向かって開けられた節穴のよう宫部。薄暗がりに(沈んだ部屋。目が慣れる)。丘陵の先が薄暗がりにとけこむ。黒っぽいコートが薄暗がりにとける。声が薄暗がりの中に響く。 **くらくなる【暗くなる】** 暗くなる(不意に周囲が。日に日に表情が。ますます気持ちが。無力感で目の前が。あたりがすっかり。目の前がすっっと。声が萎縮したように「笹沢)。心が暗く沈んで行く。夜のように四辺ふたが薄暗くなる=井上端。見る見る暗みが増してくる。闇が下りる。▼暗転する(視界が。舞台が。白っぽい風景が)。 **【暗さ】** ▼暗さ(穴蔵のような。鋼鉄の貞操帯くらさでもはめられたような息苦しい=武田奈)。夕暮れのような暗さが顔一面に広がる=獅子。油煙を塗った錫箔はげのようにべっとりと暗さがまといつく安部。 <24> 暗さに(目が慣れる。乗じて落ち延びる)。傑すずをながしたような暗さの夜"室生。 **くらやみ【暗闇】** 暗閥(足もとからどこかに引きずり込まれそうな気がする=村上発。一メートル先もわからない=光瀬。様々な絵の具をバターのように厚く塗り込めた=村上存。墨を流したような=柴田梁。ナイフで切り取ったような。宇野利。鼻をつままれても分からないような吉川。目の前に広がるとてつもない=畑)。暗闇が(あたりを覆う。一寸先ごとに次第に濃く垂れ込める=福水。黒い羽毛の束のようにからだを包む宇野利)。一寸先ことに暗闇が濃くなる。前途に暗闇が待っている。どんより暗闇が広がる。暗闇からぼんやり浮きあがる。暗闇に(姿を消す。身をひそめる。目が慣れる。目を凝らす。浮かぶほのかな明かり。声が吸い込まれる。乗じて脱出する)。顔が暗閥に溶け込む。姿が暗圏に消える。目が少しずつ暗闇に慣れる。暗闇の(泥沼を歩く。中からぬっと手が出る。一部のように黙っている藤沢。牛みたいにのっそり人影が動く吉川。底を這い回るような情欲古井。・に溶け込んでしまったかのように誰の眼にもとまらない=福永)。暗い限かくしのようなものを施された心が心の暗闇の中で悶もだえる"野間。渺茫でいうと涯はてしない暗闇の海=本庄。妄想が暗闇の片隅に動き始める=高樹。暗闇を(押し割って歩く。切り裂いて稲妻が走る)。紙燭ししを差し出して欲心の暗闇を破る"幸田聡。真っ暗闇(将来は。人家の灯り一つ見えない=なかにし。墨を流したような=宮部)。この世を真っ暗閣にする。星一つ見えない(曇り空。真っ黒な空。闇夜)。闇深い夜色。暁闇ぶいうの(道を走り出す。中をけんめいに見透かして姿を探す三島)。暁闇のような海暗さ=井上靖。昼でも薄暗い木の下闇。尾根筋に出るまで切り開いたばかりの木の下圏で昼でも薄暗い=島尾。道が木の下岡に入る。五月岡が黒々と閉ざす獅子。五月岡の空が晴れない。 **はくめい【薄明】** もう夜ではないがまだ朝でもない微妙な間の薄明"日野。空全体に薄明がみなぎる。暁の爽やかな薄明が星々のまどろみを消し去って行く福永。おぼろな薄明が野に吸われる=本庄。山の頂が薄明に溶ける。薄明の(霧の光った湖。色が海辺を暖う。底に鈍く光る河原"真継)。霧がたちこめたような薄明のなか高樹。 **ひかりとかげ【光と影】** 光と影が(織りなす光景。ゆらゆらと動く。生む強烈なコントラスト』松岡。水のようにゆれ走る=原田康)。木々のあわいが不規則な光と影に充たされる=大岡。青春の光と影を描き出す。波が光と影を乗せて動く。▼明暗(勝負の。人生の)。明暗織りなされた人生。機嫌の明暗常ない人物"司馬。明暗が(交錯する。くっきりと分かれる)。明暗に彩られる。 **ほがらか【朗らか】** 朗らかで(目立つタイプ。生き生きした青年)。朗らかな性格の持ち主。朗らかに(返事をする。冗談口を叩き合う)。空が朗らかに澄む。俐気に労に見える人の眼の如くに朗らかに晴れた蒼空務站=国木田。話し声や笑い声が朗らかに響く円地。陽気で(明るい娘。よくしゃべる女)。顔立ちに似て陽気な性格。屈託のない陽気な声。人見知りをしない陽気なたち。よく笑う陽気な人。顔に花が咲いたような陽気な表情"中村真。陽気に冗談を言う。声が陽気に聞こえる。足どりが我知らず陽気に浮かれてくる"柴田湖。野放図に陽気にふるまってみせる=曽野。▼陽気さ(天真爛漫にんもんな。好々爺にこらしい。気が晴れ晴れとするような。天下の春を一手に引き受けたような=井上ひ)。 **ほのぐらい【仄暗い】** ほの暗い(酒場の照明。黄昏炊にに紛れる。地階のバー。夜の庭。ろうそくの光)。胸中のほの暗い翳かげり。裸電球のほの暗い明かり。夕闇ほの暗い頃。わずかな紫を滲ませたシャガの花が仄暗い林の中で燐光を放つように白い=篠田。ほの暗さのために遠くの山々がすうっと近づいてきたよう"川端。ほの暗く(雨雲が流れる。曇る。光る)。雪洞んがほの暗く点ともる。 **まっくら【真っ暗】** お先真っ暗。前途は闇暗にらで一点の光明も認められない二葉亭。真っ暗な(押し入れの中。木立の繁み。地下室の中。冷たい夜。トンネルの中。部屋。海面に船の灯が映る)。朝まだ真っ暗なうちに起きる。星が真っ暗な空に散る。星ひとつ見えない真っ暗な空三田。▼見えない(一寸先が。大地は真暗で一足先の道も=内田百)。深い森の中を歩いているように太宰。真っ暗になる(あたりが。一瞬目の前が。戸外が。目の先が。みるみる。とっぷり暮れて)。冥々たる(雲霧。岡。夜)。薄暮冥々たる中。 **まばゆい【呟い】** 天井の照明が目に痛いほどまばゆい光瀬。まばゆい光が室内を照らし出す。見るもまばゆい宝盛。まばゆいばかりに燃え盛る。まばゆいばかりの(海原。若さ。白さで手をふれるのがこわいよう"永井路)。まばゆいほどに(美しい。光り輝く)。明かりがまばゆく光る。星がまばゆく輝く。雪があまりまばゆくて限がすっかり紫の眼鏡をかけたよう。宮沢。 **まぶしい【眩しい】** 「まぶしい(空の青さが。目に痛いほど。朝日をまともに受けて。ガラス窓から差し込む朝の光が“阿川佐。白さと冷たさのせいで目頭が痛いくらいに=小川)。戸外にまぶしい光があふれる。白くまぶしい砂丘の起伏。目にまぶしい白壁。眼にハレーションが起きたように真白く輝いてまぶしい窓=泉俺。透き通るように眩しい竹林の新緑が風にさらさらと波を立てる=伊集院。▼目にまぶしい(白壁が。光が寝不足の)。好意をまぶしく受ける。新緑がまぶしく萌え立つ。空がまぶしく晴れわたる。花がまぶしく開く。 <25> 窓に朝日がまぶしく差す。雪が午後の日をまぶしく照り返す。まぶしくて(目を細める。しばらくまともに目を開けられない。めまいがしそう)。まぶしげな目で見上げる。肩から乳の辺りの頭ふるえるような白いまぶしさ=極。まぶしさに(視線をそらす。目がちかちかする)。まぶしそうな目で見る。まぶしそうに(顔をしかめる。初夏の太陽を見上げる。ばちばちとまばたきする)。まぶしそうに目を(しばたたく。しわめる。しょぼしょぼさせる)。眩しそうに眼をくしゃくしゃさせる=円地。まぶしいくらいの新物。まぶしいばかりの美しさ。身に一糸もまとわぬ眩しいばかりの女体-植草。花と云ぃう花が一時に咲いて眩しいほど芝木。まぶしいほどよく晴れた深い天空石森。外は眩しいほどの上天気!佐藤愛。あたりがまぶしいほどに光り輝く。まぶしいほどの(快晴。日の光が射しこむ)。眩しいほどの秋晴れ"曽野。まぶしいような七月の日光が射しこむ=山本周。女の若さが持たせる眩しいような魅惑が匂い立つ大佛。 **やみ【图】** 闇(咫尺しょを弁ぜぬ。一寸先もわからぬ。ビロードの緞帳とんちを垂らしたような濃密な=篠田。実体のない物質を鋭利な刃物でスライスした切り口のような村上春。互いの顔も判別できないほどの=倉橋。鼻をつままれても分からないような真の"隆。膜のように目玉にかぶさってくる=吉行。真っ黒に塗った板をすぐ眼の前に突きつけられたような吉行。闇のように冷たい!遠藤。汚れた古綿のような「菊池)。闇が(町の底を這ょう。あちらこちらに溜まっている廊下=開高。薄紙を剣ぐようにわずかずつ白み始める菊池。躰がらの輪郭すれすれまでひたひたと押し寄せてくる落合。木々をざわめかす雨の音だけに充たされる=堀。沼のように横たわる=長野。澱ょとんだ水のように重い=長野。夜の水のように体を青く染める霧笛が)。闇が濃い。粘るような濃い闇"日野。油のように濃く重い岡がたちこめる=小林久。森の濃い闇がひろがる=石坂。夜空も地上も見分けがたい濃い闇が一面にひろがる=杉本。落ち葉を焚たく匂いが濃くなった闇に溶ける落合。いつもに比べて闇の密度が濃い夜"永井龍。閻より濃い樹の岡、山の闇がもくもくと空へ押しのぼる=梶井。闇が深い。海の底と錯覚しそうな深い闇"小川。闇が深みを増す。深い闇に雪が白く流れる―連城。人間の深い闇を見せつけられる。おそろしい深淵しんが底知れぬ闇をのぞかせる"宇野利。灯りを消すと障子越しにやや青を含んだ闇が浮き上がってくる』高井。雨もよいの闇がたちこめている=池波。家の中に木の香りを含んだ闇がひっそり住みつく=黒井。窓際の闇が部屋の灯りに淡く剣がれる=連城。森の闇が急に重く押してきて家こと飲みこみそうになる=高田。闇から(闇に葬られる。闇を縫うようにして進む)。闇に(目が慣れる。乗じて隠密裡。ルぃに終える)。命を闇に葬る。下駄の音がかたかたと闇に響く。心の闇に踏み入る。市街が闇に沈む。真相を闇に閉じこめる。夜桜が闇に浮かび上がる。夜の闇に紛れてしのび出る。短い叫びが闇に呑まれて消える=高井、谷岡が真っ黒な閤にのまれる=梶井。山の形が闇に溶けて稜線もにうの影も浮き出ていない"高井。山のすぐ下を川が闇に白く流れている三浦し。圏のくずれが澱んで流れていくように闇に紛れやすい歩き方=獅子。提灯訪いうの明かりに包まれた横顔が闇に白く浮かぶ三浦し。▼闇に吸い込まれる(矢が。最後の一音が夜の)。▼岡に包まれる(室内が。あたりが寒い。天も地も。明かりが消えて赤川)。▼闇に溶ける(風景が。笑いが)。孤独地獄の闇に閉ざされる。闇に紛れて(脱走する。逃げる。恥をさらけ出す)。闇の(支配に服する。深さに気づく。粒子が怯ぉぃえるように宙でぶつかり合う=小川)。梢の悲鳴が渦巻く白い闇の奥で甲高く鳴る=日野。誰にも知られたくない闇の部分を覗のぞかれる"奥田。声の主が闇の幕を割って姿をあらわす池波。闇を(抱える生き方。縫って近づく。切って石が飛ぶ。切り裂いて疾はしって来た手裏剣"池波。切り裂くような銃声"景山。裂くようにサイレンの音が響く=伊集院。含んだ濡も々が漂い拡がる!高井)。暁が闇を溶かし始める。心にかかる闇を払う。光の帯が闇を掃く。窓の外の闇を透かし見る。雷鳴が闇を震わせる。稲妻がやにわに闇を二つに裂く赤川。風のない茂みがじっと閣を抱いてこもる=日野。人道の闇を照らす星山田美。野火が圏を薄くオレンジ色に焦がす=辺見。火が闇を裂くように上がる=中上。不吉な闇を集めて固めたような人物"倉橋。頼が闇を貼りつけたように暗く沈む=高橋三。▼圏を貫く(銃声が。眼差しが。累々とした閥が重なる。 **やみのそこ【闇の底】** 圏の底がぼんやりと明るくなる。隣の底から響くように言う。闇の底でざわめいている波の音。闇の底に光っている川面。静寂が闇の底を埋めている。 **やみのなか【闇の中】** ▼闇の中(真相は永遠に。文目岐ゃも分かぬ。真実は今も。前後も左右も分からないほどの)。闇の中からぬっと登場する。蛍が闇の中から次々と浮かび上がる。全てのものが闇の中で沈黙する。闇の中に(雨音がこもる。目を凝らす。ひっそりと隠れる。懐中電灯の光が大きく輸を描く=高木。小さな火がぽつんと浮かび上がる"小林久)。音が閤の中に吸いこまれる。暗い闇の中に姿を隠す。街が闇の中に横たわる。しみじみとした歌声が闇の中に流れる!高田。底のない闇の中に放り込まれた思い=高橋三。暗中に(うごめく。端座する)。 **ろうろう【朗朗】** 朗々たる気持ちが湧く。朗々と詩を吟じる。声が朗々と響き渡る。にこやかに朗々としゃべる。民謡を朗々と歌う。朗々とした(声が四囲を圧する"村上春)。音吐朗々と読み上げる。る。声で祈扉にとをあげる)。 <26> # 諦める・止める **あきらめる【諦める】** ▼諦める(早々に抵抗を。大学進学を。前世の因縁と。何事も運命と。自然の成り行きと。到底能力はないと。やけにあっさりと。悪いめぐりあわせと。沈思黙考の果てに買収を"辻井。憑。きものが落ちたようにあっさり丸谷)。諦めるより仕方がない。諦めて引き揚げる。適齢期を過ぎてゆく女の索漠としたあきらめ芝木。ひがみに似た諦め幸田文。諦めが(先に立つ。胸に広がる)。言葉に苦い諦めがこもる。さっぱりと諦めがつく。諦めに(似た虚ろさ。満ちた心)。諦めの(境地に達する。よさに感心する)。諦めの感情が(胸にきざす。胸を支配する)。絶望を静かな諦めへと変える=小池。運命論者のように半ば諦めを心にのせる=芝木。諦めを通り越して感心して眺める=中村真。きれいに諦めをつける。顔に諦めの表情が(浮かぶ。しみつく)。絶のぎを嚥のみこむような表情-梗。諦めたように溜め息をつく長野。諦めモードに取りつかれる=和久。▼思いあきらめる(再会を。夢を。一人寂しく)。心残りがない。厭世家以炊めいた諦観。諦観の域に達する。未練な気持ちを振り切る。未練を(断ち切る。きれいさっぱり捨てる)。潔く未練を投げ捨てる。最後に引導を渡す。引導を渡すように言う内田駅。思い残す何物もない。もはや思い残すことはない。▼断念する(計画を。結婚を。試合の続行を。レース出場を)。進学を断念せざるを得ない。言葉に諦念がにじむ。憤怒と諦念との間を彷徨355する=福水。諦念に似た思いを心底に潜ませて生きる藤田。泣き寝入りする(金を返してもらえずに。金をせびられたまま。仕返しを恐れて)。▼諦めない(簡単に。最後の最後まで。何回失敗しても。何度やりそこなっても)。諦めるのはまだ早い。諦めずに(繰り返す。やりとげる)。今更投げ出すわけにもいかない。不撓不屈ぶにう、道風(小野道風、平安時代の書家)の蛙砂坂口。泣き寝入りせずに補償を求める。 **あまんじる【甘んじる】** 甘んじる(三流の地位に。乏しい主食に。日陰の身に。平凡な生活に。与えられた役割に。従属物としての立場に。二流という評価に。名実共にシングルライフに。駄目な二代目に『立原)。賤吏にんに甘んじるを深しとしない=中島救。甘んじて(処罰に服する。非難を受け止める)。迫害に甘んじて耐える。交戦の最初の一発を常に受けることを甘んじている有川。甘んじて受ける(宿命を。罰を)。 **いんきょ【隠居】** 隠居の身ゆえ肩身が狭い!高橋克。気楽な隠居の身。自ら進んで隠居の役を演じる三島。▼隠居する(息子に跡を継がせて。家督を体がにゆずって藤沢)。隠居して気楽に暮らす。片意地な隠居生活。隠居然とした老人。隠居同然の暮らしをする。隠宅を構える。 **いんたい【引退】** 全勝で引退の花道を飾る。引退する(現役を。老病を理由に。活動から)。▼退く(現役を。社長の座を。指導者の地位から=常盤)。第一線から退く。地位から身を退ける。▼勇退する(定年を待たずに。後進に道を譲って)。▼リタイアする(現役を。定年退職で)。▼身を引く(運動から。事業から。世間から一歩。第一線から)。 **うちきる【打ち切る】** ▼打ち切る(会話を。捜査を。きっぱりと計画を。果てのない空想を。ミーティングを早めに。下手人の探索を=船山。流浪の生活を一日も早く=井上靖)。▼話を打ち切る(曖昧なままに。いったん)。打ち切りになる(議論が。公演が。交渉が。逃載が)。話を打ち切るように立ち上がる=田辺。 **おてあげ【お手上げ】** ほとんどお手上げになる。お手上げの状態。▼商売は上がったりだ(客が少なくて。不況で)。万策尽きて事態の展開を待つ=伊坂。ほとほと匙ょじを投げる。医者も匙を投げる重症。匙を投げたような気持ち。安部。 **おもいきる【思い切る】** ▼思い切る(一思いに。さっぱりと)。思い切りがつく。高い崖から飛び下りるような気持ち。石坂。気持ちに始末をつける。気持ちの整理をつける。清水の舞台から飛び降りるような思い"船山。古武士を思わせるいさぎよい戦ぶり!半村。深く(運命に従う。身を退く)。死ぬべきときには深く死ぬ=新田。 **かいじょ【解除】** ▼解除になる(警報が。統制が)。▼解除する(規制を。警報を。ストを。制裁を。凍結を。武装を。ロックを。非常事態宣言を)。 **【覚倍】** ▼覚悟(一身をなげうつ。こうなったらかくご一時間でも二時間でも待つ=源氏。一歩誤れば断崖から突き落とされる=瀬戸内。飢えと寒さに堪える八谷崎。さまざまの厄介を全部受けて立つ歳沢。一人残らず討ち死にの=山本周。骨をここの土に埋める=獅子)。覚悟がびくとも動かない。しかと覚悟ができる。目に厳しい覚悟がこもっている。命を捨てる覚悟で乗りこむ。全滅を覚悟で思う。粉骨砕身の覚悟でがんばる。決死の覚悟で恐る恐る近寄る=子母沢。喉から腸がらを引きずり出すような覚悟で言う萩原来。觉悟の(臍はぞを固める。ほどを聞く)。多少の困難は覚悟の前=福永。▼覚悟の上(かなりの死者が出るのは"小林信。死ぬほどの苦しみは"宫本紙)。覚悟の上の自殺。覚悟はとうにできている。かねて覚悟はしている。覚悟も何もあったものではない。覚悟を(秘めた自戒。もって臨む。決めたという風にハッキリと云いう谷崎)。眉毛のあたりに強い覚悟をにじませる=江國。もはやこれまでと覚悟を決める=柴田錬。覚悟する(最悪の事態を。多少の危険を。負け戦を。万一の場合を。かなりのダメージを。逃れられないと。下手すると命はないものと)。 <27> 覚悟なしには一歩も前進できない。飛ばされることもやむなしと腹をくくる"佐々木。誰がどんな噂を立てようとかまわない石川。腹を据えて一仕事始める。とっくりと腹をすえてかかる=本庄。どっしりと吐はらがすわっている池波。 **かんねんする【観念する】** 観念する(もはや万事休すと。ほかに道のないことを"有局。これ以上育てられないと=桐野。死人そのままにぐったりと両眼を閉じ=池波。もはや言い逃れは不可能と"夏樹)。観念して(隠れ家を吐く。身を縮め目をつぶる)。来るべきものが来たという気持ち。年貢の納め時。観念の臍根ぞを固めたと云ぃう顔つきをする谷崎。観念したように目を閉じる=火坂。 **こころならずも【心ならずも】** 心ならずも(命令に従う。世に従う。大事に巻きこまれる。立ち去らなければならない羽目になる。表現した美辞麗句。家から出される=瀬戸内。喰う構えをとらないわけにはいかない!高橋後。皆やした十年に近い歳月"平岩。ひとすじの白い泪怂んが眼からあふれる=遠藤)。 **しかたない【仕方ない】** 先の心配をしていても仕方ない。仕方なしに(答える。承知する)。▼仕方がない(うとましくて。気になって。苦しくて。邪魔で。過ぎたことは。済んだことは。退屈で。どうなっても。喉が渇いて。歯がゆくて。しがみついているほかに。危なっかしくて。今さら言っても。愚痴を並べ立てても。死んだ子の年を数えても。内心いまいましくて。毎日が楽しくて。残念ながら誤解されても"椎名銭。黙って見ているより~志賀。内心では可愛くて=山本一)。仕方がないとあきらめる。考えても仕方のない繰り言。仕方なさそうに(苦笑する。承知する)。未必の故意。背に腹は代えられない政治的取引"網淵。▼致し方がない(閉店とあらば。安全確保のためには。事ここに至っては)。致し方ない仕儀となる。▼しようがない(好きで好きで。多少遅れても。今さらぐだぐだ言っても内館。成り行きにまかせるより他庄野)。しょうがない(悔し涙が出て。今更悔やんだところで藤原。この期に及んで悪あがきしても村山。日曜日が待ち遠しくて=横山)。しょうことなしに(うなずく。つき合う)。是非ない羽目になる。是非なく承知する。是非に及ばない。是非もない。悔やんでも詮方ない。詮方なく元の座敷へ立ち戻る。泣くより外に詮がない。言っても詮ないことを口走る。死んだ人を責めても詮ないこと!火坂。▼始まらない(今更じたばたしても。取り越し苦労をしても)。終わってしまったことをとやかく言ってもはじまらない"立原。過ぎたことを言っても始まらない。憤涵転んやるかたない思い。よんどころない(事情。用が出来る)。よんところなぐ客を断る。理非もなく随願する。 **しつぎょう【失業】** 会社が倒産して失業する。失業してぶらぶらしている。失業しているときは相身互い。失業者が増える。街に失業者があふれる。失業率が(上がる。低い)。失職する(公務員が。リコールで譲貝が。リコールで首長が。非正規労働者が雇い止めで)。主家を浪々する。浪々を余儀なくされる。 **しぶしぶ【渋渋】** しぶしぶ(請求に応じる。その場を去る。最後に残った紙幣を渡す。仕事にとりかかる)。しぶしぶ重い(腰をあげる。足を引きずって出て行く"小鳥)。いかにも渋々という態で頷ったくり有川。しぶしぶながら(うなずく。賛成する)。いやいや(金を出す。承諾する。引き受ける)。いやいやながら詫びを入れる。不承不承(命令に服する。希望を引っこめる)。不承不承ながら黙認する。 **しょせん【所詮】** 所詮(他人にすぎない。かなわぬ恋とあきらめる=芥川。二流以上のものではあり得ない"長与)。噂約もはしょせん噂でしかない"辻真。所詮は負け哦。どうせ(嘘に決まっている。そう長い命ではない。長続きはしない)。どうせろくな(根性ではない。人物ではなかろう)。 **たいかい【退会】** 退会を届け出る。▼退会する(クラブを。研究会を。サークルを)。脱会する(会を。研究会を)。 **たいがく【退学】** 退学の処分を受ける。学校を退学する。無考えに退学して後悔する。中退する(高校を。大学を)。大学を中途でよす。放校処分を受ける。放校になる(高校を。大学を)。 **たいしょく【退職】** ▼退心する(会社を。学校を。教師を。銀行を。警察を。公務員を。勤めを。円満に。結婚を機に。定年間際に。定年で)。退職金の額を計算する。希望退職者が予定数に達しない。雪崩を打って退職者が出る。退職届を出す。腕を退く。教授が大学を退官する。▼離職する(一時的に。企業倒産で)。 **たいじん【退陣】** 退陣に追いこむ。退陣を余儀なくされる。取締役全員の退陣を提案する。▼退陣する(首相が。大臣が。取締役が)。 **たちがたい【断ち難い】** ▼断ちがたい(未練を。夢を)。断ちがたい肉親の情。今更ながら断ち難い愛着がある=石川。▼断ち切れない(絆が。未練が。未だに絆を)。 **ちゅうし【中止】** ▼中止になる(講演会が。イベントがスポンサーの意向で=重松)。中止のやむなきに至る。中止を余儀なくされる。計画の中止を告げる。▼中止する(強制執行を。建設計画を。作業を。仕事を。取引を。試合を急遽いう。突如として演奏を。工事をとりあえず)。▼お流れになる(雨で運動会が。会が。行事が。計画が)。出兵が沙汰やみになる。 **ちゅうだん【中断】** ▼中断する(思考の流れが。時化しけで操業を。定時番組を。惜しいかな物語はここで斎藤ぶ)。やりかけの仕事を中断させる=高树、中断されたフィルムが再び動きはじめたぐあいに風と雨とがよみがえる=島尾。思考がシャッターを降ろしたように中断される=鷺沢。 <28> タイムを(宣する。要求する)。 **ていねん【定年】** 定年が目前に迫る。定年で辞める。▼定年になる(教授が。大学を)。定年まで大過なく勤めあげる。定年を間近に控える。定年後の(再就職が決まる。手立てを考える)。▼定年退似する(会社を。役所を)。定年前に(勇退する。中途半端な年齢で退職する=城山)。 **とりけす【取り消す】** ▼取り消す(原決定を。採用を。出場を。前言を。内定を。発言を。命令を。予約を)。▼取り下げる(告訴を。請求を。申し出を)。▼撤回する(自説を。前言を。配置転換を。法案を。軽はずみな発言を)。婚約が破談になる。結婚の話を破約にする。取り消せない。取り消しの利かない重要な事柄。綸言労从汗の如し。 **とりやめる【取り止める】** ▼取りやめる(帰省を。結婚を。集会を。手術を。主張を。上映を。発表を。旅行を)。旅行が取りやめになる。土壇場になって取り止めを申し入れる安部。沙汰やみに付する。計画を沙汰やみにする。撤廃する(規制を。差別待遇を。制度を。統制を)。システムの導入を見送る。流会が決まる。流会を宣言する。▼見合わせる(刊行を。帰省を。出撃を。上陸を。渡航を。連絡を)。 **はいかん【廃刊】** ▼廃刊になる(月刊誌が。雑誌が。週刊誌が。新聞が)。▼休刊する(雑誌が。新聞が)。出版した本を絶版にする。著書が絶版になる。絶版になった本を古本屋で買い求める。 **はいぎょう【廃業】** 廃業に追い込まれる。▼廃業する(金貸しを。刑事を。店を。香具師を)。営業を停止する。道場を畳む。 **はいし【廃止】** 制度を廃止に追い込む。階級的差別を廃止する。原発廃止に踏み切る。▼全廃する(核兵器を。軍備を。制度を)。▼廃する(悪平等を。鎖国政策を。縦割りを。繁文縟礼ぶんぶんとを)。廃番が決まる。在庫限りで廃番にする。レコードを廃盤にする。廃盤になる(CDが。DVDが)。 **ひきどき【引き時】** ▼引き時だ(今が。このあたりが)。引き時を(心得る。逃す。間違える)。引き際が(肝心。もっとも大切)。 **めんしょく【免職】** ▼免職になる(官吏を。公務員を。職務怠慢で)。懲戒免職になる。諭免職になる。▼免じる(役職を。役を)。 **やむをえない【已むを得ない】** ▼やむを得ない(多少の犠牲は。事情が事情だけに)。対抗上やむを得ない手段!高橋和。やむを得ず要求に従う。必要とあらばやむをえぬ出費荒巻。▼やむなきに至る(釈放するの。搜索が小休止の)。やむなく(捜査を断念する。予定を変更する)。やむにやまれず(ペンをとる。カムバックを果たす)。やむにやまれぬ(事情で欠場する。ところまで追い詰められる"有栖川)。 **やめさせる【辞めさせる】** ▼辞めさせる(学校を。教師を)。臓を免じる。詰め腹を切らせる。解任する(会長を。議長を。取締役を。役員を。理事長を)。▼リコールする(議員を。市長を。知事を。町長を)。罷免する(裁判官を。役職を。老中を)。 **やめられない【止められない】** ▼やめられない(簡単には。なかなか。仕事が面白くて。乞食と役者は三日すれば。有吉)。何かに夢中になりだすと止められない=泉後。読み始めたらやめることができない。今さらやめるわけに行かない。足が抜けない。病みつきになる(競馬が。飲み屋通いが。一度食べると)。乗りかかった船でいまさら引っ込みはつかない=佐山。 **やめる【止める】** ▼やめる(ぷっつり酒を。無駄な議論を。今日を限りに。工事を途中で。思いきりよく悪あがきするのを。不意におしゃべりを。無節操な男漁おこりを。なんの未練もなく。いたずらに現在の状浮気を。貸し渋りを。酒を。村八分を。悪い習慣を。説得して)。一旦決めたのを横榆社にを入れて止めさせる!高井。やめるように仕向ける。▼縁を切る(きっぱり。すぱっと)。手を引く(きっぱりと。今回限りで。探索から。ビジネスから)。企てをよす。▼やめろ(変な芝居は。くだらない話は。変な言いがかりは)。やめろと言うように脇腹をこづく=泉優。まねはやめろ(下品な。ばかな)。下品なおしゃべりも大概にするがいい。罪作りなまねをするな。けで脇腹をつつく。余計な手出しをするな。▼よせ(粋がるのは。馬鹿なことを考えるのは)。態に苦しむことを=福永。風の向きが急に変わったようにふっつりと話を=小島)。▼やめさせる(行くのを。 **【辞める】** ▼辞める(教師を。会社をあっさりやめると。けつをまくって。社長と喧嘩州んして。引きとめを振り切って。二人三人とまとまって)。からだをこわしたのをしおに勤めをやめる!向田。辞めるつもりなど毛頭ない。▼会社を辞める(事件を機に。上司と諍かきいをして、反対を押し切って)。櫛くしの歯が抜けるように記者が辞めていく=横山。いとまを(ぐう。願う)。お役御免だと胸をなでおろす“江國。お役を辞する。▼降板する(投手が。ニュース番組から)。辞意が固い。辞意を(明らかにする。漏らす)。▼辞職する(閉僚が。学校を。議員を。教授を。警察祭を。大学を。責任を取って)。辞職の意を固める。▼辞する(官職を。都知事が職を)。会社に辞表を提出する。上司に辞表を叩きつける。憤然として辞表を出す。▼退任する(委員長を。会長を。社長を。失策の責任を取って)。任を解かれる。暇を貰う。▼よす(芸者を。商売を。勤めを)。▼離任する(委員を。会長を。社長を。大臣を)。辞職願いを出す。闕下がっに骸骨を乞う。▼足を洗う(記者稼業から。きっぱりと。商売から。殺し屋稼業から。サラリーマン生活から)。閣僚の辞任が相次ぐ。辞任する(社長が。首相が。委員長を。会長を)。 <29> # 明け暮れる **あかつき【暁】** 乳白の暁が闇を溶かしはじめる=円地。五更の晩に近い頃吉川。暁の(湖岸の微風がナイフのように鋭い=開高。白々とした孤独"森琉)。夜が白々と暁を迎える辻井。暁を告げる(鐘の音。鶏の声)。早暁に出発する。早晩の朝露を踏んでいく。朝は払暁とともに起きだす。雀の払暁のさえずりを迎え聞く。薄暗い朝まだき。夜がほのかな藤色に染まりかけた未明-浅田。未明に起こった火事。未明の近さを匂わせる肌。 **あけがた【明け方】** 明け方急に冷え込む。明け方近くまで話し込む。明け方の(寒さに驚く。透明な明るみ。白さを増した空。しらじらした明かりがさしこむ徳永)。明けがたの白い光が広間のすみずみにまで行きわたる=塩野。ほのかに白んでゆく明け方の凍てついた空気の底"徳水。雨の降る明け方のような寂しさが身のまわりを取り囲む芥川。明け方まで仕事をする。 **あけくれる【明け暮れる】** ▼明け暮れる(おしゃべりに。合戦に。勢力争いに。乱酒乱淫に。寝食を忘れて看護に。神仏への祈りに。毎日がお祭り騒ぎに。俄陣の荒々しい空気の中に=永井路)。▼明け暮れ(静かな。多忙な。騒がしい。その日その日の)。多忙きわまりない日常を送り迎える。紅葉のうつろいを眺め暮らす。 **あけぼの【曙】** 沖が曜に染まる"三島。山やまが曙の色に染まる"白洲。山々が曙の光を浴びながら薔薇色にかがやく=掘。山々が曙光しを浴び雪を浴びて赤青の七彩に移ってゆくさまは驚くほど=檀。 **あさ【朝】** ▼朝(口笛でも吹きたくなるようなさわやかな飯田。雨だれが柔らかに枕に響く=山木有。いつまでも狭霧にぎの郷はれぬ=山本周。いまにも空が泣き出しそうな暗い=池波。木漏れ日が屋根に映って穏やかな春の阿刀田。灰色の雲が厚く夕暮れ時のような池波。身を切るような寒い"なかにし。連休のしょっぱなに当たる=矢作)。朝ゆっくり寝ている。朝が潮のように夜を追い出していく=開高。最初は薄青く染まった空気が、ついで朝焼けのオレンジに変わり、やがて透明で清浄な朝が来た三浦し。▼朝が早い(職人は。漁師は)。朝から(ずっと立ち詰め。働き通しの一日。日がきらきらと照る。異極ぞの降る寒い日)。朝と昼を兼ねた食事を済ませる。眠れぬままに初になる。朝の(活気がみなぎる。空気が肌を刺す。時間をせわしなく過ごす。大気がすがすがしい。微風が爽やかに渡ってくる。明るさが加速度を増して広がる=島尾。明るみが涯しもない遠方からにじむようにひろがってくる=本庄。穏やかな陽射しが注ぐ=伊坂。気配が圏の中にただよいはじめる=真継。光が微笑を彩る=迹城。無遠慮な明るさ=黒井)。川の水が朝の色に染まって行く。時が朝の領分に近づく島尾。灰青色におぼめく朝の最初の光三島。朝の風が夜の淀んだ空気を騒がし始める=島尾。強くなりはじめた夏の朝の光。穏やかな朝の光が射しこむ。体を朝の光が包む。 「体を朝の光が包む。ガラス窓から差し込む朝の光がまぶしい=阿川佐。くっきりとした朝の光がテーブルクロスを引き払うように闇を消し去る=村上春。なごやかな朝の光につつまれる壺井。▼朝を迎える(気持ちよく。まんじりともせずに)。朝方まで一度も目が覚めない。朝っぱらから酒を飲む。▼明るくなる(窓の外が。空がほのぼのと)。一日の始まり。外が白みはじめる。山陰から今しも太陽が昇ったところ―なかにし。東の空を赤い日輪が昇って来る=舟橋。大都会があわただしく目覚めはじめる=畑。街がいやいやながらけだるそうに目覚める"高見待。闇が水で洗う魔法にかかったように薄れるとこの世は紺色から乳色に変わる」笹沢。夜がすっかり明け放たれる。寝足りた初のように平凡な雑草まで眼をとめて眺めたい=横光。朝霧話だがたなびく。 **あさばん【朝晩】** 朝晩(犬を散歩させる。仏壇に向かってお勤めをする。めっきり冷え込む)。朝に夕に(経を唱える。食事を調える)。朝夕愛児を送り迎えする。朝夕の(風が身にしみる。ラッシュを外す)。朝夕を心にかかる雲もなくすがすがしく送る=幸田露。旦夕切込怠らずに勉学に励む。日夜(頭を痛める。苦心を重ねる。絶え間なく考えている)。朝な夕な(山を見て育つ。聞くともなく開き馴れる水井荷)。朝な夕なに散策する。 **あさひ【朝日】** 朝日が(魇っららかに輝く。さんさんと窓辺にあふれる。部屋いっぱいに射しこむ。埋め立て地をオレンジ色に染め上げる=重松。眠りから醒めたばかりの目に眩まぶしい小池。渺々匹いたる波の彼方に昇る=菊池。山々の新雪を照らして桃色になる"石森)。銅を磨いたような朝日が遠くの模試のの大樹を染めている=獅子。北窓の雲に朝日が燃えるように照り栄える=田山。紺青にんじに底光りする海の上に朝日があかあかとのぼる=中。水面にきらきらと朝日が映る=山本周。朝陽がブナの林の間から小さな粒になって散り敷く=曽野。朝日の昇る勢い。拭うように哨れた朝日の光の美しい中を出て行く=海音寺。燃ゆるような朝日の影の霜けぶりの上に昇るのを見る"田山。山の端から昇る朝日を全身に浴びる=南木。山々が曙光したを浴びる。空が薄紅に染まる。朝焼けがにじむように東の空に広がりはじめる=阿川弘。濁った朝焼け空を樹々の梢がやたらにかきまわして騒ぐ“永井龍。薄紫の朝焼けの空『なかにし。 **いちにち【一日】** 一日(家でころころしている。ぽつねんとしている)。一日(いつもと変わりのない。冬の森の奥に落ちている凍えた木の葉のようにひそやかな小川。何十年が一瞬のうちにすぎる夢のような長くて短い=飯田)。 <30> 雨が一日降り暮らす=鳥崎。一日が(無為に過ぎる。何事もないかのように物静かに過ぎる堀)。心がうつろになり一日が一月のように永い"佐藤巻。たった一日で音をあげる。ほとんど一日で仕上げる。一日では働ききれないほどの仕事。一日といえども我慢できない。歴史的な一日に立ちぞう。一日も(安閑としてはいられない。欠かさず日記を書き続ける。むだにできない)。一日を棒に振る。幸福な春の一日を楽しむ。まるまる一日を費やす。一日おきに繰り返す。一日がかりで運ぶ。一日ごとに日が(長くなる。短くなる)。一日たりとも休んだことがない。一日も早く再婚するように説得する。まる一日歩きづめに歩く。まる一昼夜。朝起きてから夜寝るまで。 **いちにちいちにち【一日一日】** 弾圧が一日一日烈はげしくなる=円地。一日一日が単調に過ぎていく。一日一日と(終わりに近づく。衰弱の道を辿たとる)。日一日と(事態がはっきりしてくる。陽射しがやわらかくなる。水が冷たくなる。元の肉付きに戻る。容体が悪くなる。親から遠ざかってゆく三浦米)。戦争が日一日と激しくなる。日とともに傷心が薄れる。 **そうちょう【早朝】** 早朝から(作業を始める。深夜まで働く)。早朝の(空気が心地よい。ジョギングを欠かさない。薄明が忍び込む)。寝不足の頭のようにぼんやりしている早朝の空気安岡。野太い声が早朝の空気を揺する=辺見。早朝を押して出かける。朝まだ真っ暗なうちに起きる。朝も暗いうちから商売にかかる。朝早く目が覚める。 **ちゅうや【昼夜】** 昼夜を(分かたぬ猛攻。通して店を開けている。間わず凶悪犯を追う。わかたず尽きることなく滾々こんと湧き出ている湯"阿川弘)。昼夜を分かたず(稼働する。東奔西走する。働く。見張る。警戒態勢が敷かれる=有川)。昼夜兼行で(原稿を書く。働く)。昼夜二交代の作業に就く。昼も夜も考え続ける。雨が昼も夜も降り続く。昼も夜もなく働き通す。夜昼(心にかける。問わず稼ぎまくる。ぶっ通しで作業する)。夜昼なく悪っかれた人のように書きつづける=瀬戸内。朝も夜もなく空が灰色に暗く沈む"小川。夜も昼も(おちおち眠れない。休む暇もなく働く)。 **にちじょう【日常】** ▼日常(惰性に流されがちな。平凡きわまりない。砂を噛むような索涙とした森瑞)。非日常と日常が逆転する。日常と(かけ離れる。心象風景を重ね合わせる)。日常に(潜む恐怖。埋没する)。いつもの日常に戻る。日常の挨拶を交わす。聞かでもがなの日常の瑣事さしい高橋和。どろどろした日常の沼から抜け出せない"瀬戸内。平穏な日常を過ごす。平和な日常を楽しむ。日常会話の常套句。どこででも起きている日常茶飯事。生き残るための権謀術数は日常茶飯事の戦国"山岡。日常茶飯にすぎないような口ぶり。日常茶飯の平凡で退屈なこと。日常性から脱却する。先祖代々受け継がれた日常的な金层耕作業吉村。日常的に(世話になる。使う)。日常卑近の例。 **ひ【日】** ▼日(飽き飽きする時間を消しかねるような怠屈な徳田。空気が冷え冷えと身に沁しむような谷崎。ちょっと歩くとすぐ汗が出るくらい暖かい=子母沢。眠気を催すような使い高樹。三日が三年にも値するような=本庄)。家を空ける日が多い。思い立つ日が吉日。暖かい日が三日続いたあと掌に50を返したように冷え込みが厳しい日が来る“高井。ぐずぐずしているうちについ日がたってしまう海音寺。やがて笑って話せる日が来るのだろうさだ。▼日が浅い(上京後まだ。知り合って。離婚して)。またたく間に日が過ぎていく。幻覚の中を歩いているように日が過ぎる=伊藤整。▼日が続く(暗澹はふとした息苦しい。気分の勝れない。曇った底冷えのする。幾日も雨のない灼ゃけつくような"阿部。物足りないような寂しい徳田)。日に(一度立ち寄る。何度となく往復する)。吉凶は人によりて日によらず。日も夜も足らぬ忙しさ。日を送る(ぐずぐずと。のんびりと)。▼日を過ごす(なすことなく。のらりくらりと)。▼寒い日(凍てつくような美濃部。気持ちが滅入るような"軍司)。日を追って(痛みが薄らぐく。被害が増す。状況が険悪になる。生活が苦しくなる)。日を追うごとに(支持率が低下する。当初の作戦がなしくずしになる=房田)。 **ひごと【日毎】** 日毎に(暑さが募る。疑問が深まる。相場が変わる。色づいていく風景。思い出が薄れる。恋わる不安定な生活条件。疲労が累積されていく)。覚が日毎に鋭くなる。親密の度が日毎に進む。 **ひごろ【日頃】** 日頃(意識したことがない。実直な勤務ぶりを見せる。不義理を重ねる。ろくに顔も合わせていない。不健康な書斎生活に終始する=今日)。日頃から(訓練をしておく。世話になっている)。日頃の(鬱憤を晴らす。恩に報いる。念願がかなう。労をねぎらう。運動不足がたたる。苦心が水の泡になる。御厚情に感謝する。努力が報いられる。不満が爆発する)。ようよう日頃の思いが叶う。常日頃根回ししておく浅川。常日頃の親しい風景。 **ひので【日の出】** 日の出とともに出発する。日の出の勢い。日の出を拝む。日の出間際の微妙な色合いの空熊谷。太陽が(水平線上に姿を現す。東の空から昇る)。光の束が黄金の矢のように一度に飛んでくる"宮沢。御来迎を拝む。 **ひび【日日】** 日々(是これ好日。心を新たにする)。日々(酒と薔薇ばらの。仕事に明け暮れている。年々歳々の果てもない。感情が低回してゆく不安な芝木)。日々が淡々と流れる。幸せな日々が終わる。青春の日々が浮かんでは揺れる。退屈な日々が延々と続く。何の展望もなくじりじりと枯れてゆくように日々が過ぎてゆく吉本。▼日々が続く(平穏な。悶々从とした)。夢を日々に紡ぐ。日々の虚しさに耐える。 <31> 美しい日々を反芻がえする。空しく過ぎ去った日々を悔やむ。ゆったりとした時間で日々を過ごす千刈。日々刻々と風景が変わりつつある干刈。 **ひるさがり【昼下がり】** ▼昼下がり(のどかな春の。冬にはめずらしいほど暖かな眠くなるような杉本)。昼下がりの熱気が体を押し包む。暑い日盛りの午後。昼過ぎに(起き出す。帰って来る)。六月の林の揺れる梢が湯槽に写り込む昼過ぎの静かさ"川端。昼過ぎまでふて寝する。 **ひるま【昼間】** 昼用から家の中で寝転がっている=池澤。昼間の人通りがうそのように静まり返る=日野。陽が(中天にある。だいぶ高くなる)。まだ陽も高い時間带。町が気だるげな昼の光に包まれる。真夏のうだるような日中。日中休まず働く。日中でも(薄暗い坂道。あまり人影を見ない)。日中の暑さが和らぐ。昼日中からぶらぶら遊んでいる。昼日中でも寝転がっていられるほど暇~多岐川。日脚が(歩みを早める。次第に長くなる)。日足のはやい秋の日暮れ=本庄。 **まいにち【毎日】** 毎日(会社に通う。街を歩き回る。飽きることなく繰り返す。欠かさず通ってくる。なにかと忙しそう。ぶらぶら遊び暮らす。よく晴れた日が続く)。▼毎日(息のつまりそうな。家事に追われる。何の不足もない。ぴんと張りつめた緊張の。おだやかで平和な=飯田)。ほとんど毎日病室に詰めている。毎日が(地獄の苦しみ。充実した気分。順調に進む。綱渡りの生活。退屈でたまらない。変化もなく過ぎていく)。穏やかに毎日が流れていく。毎日の(献立を考える。仕事をこなす)。毎日を(いい加減にごまかして暮らす。生きるのに精一杯)。▼毎日を過ごす(まじめに。びくびくしながら)。毎日毎日土いじりに寧日がない。毎日毎日を充分に生ききる。雨の日も風の日もそのへんを歩きまわる=中。一日も休まない。修練を一日も欠かしたことがない柴田純。三日にあげず。▼日参する(お店に。球場に。神社に)。毎朝(床離れがつらい。六時に起床する)。 **まひる【真昼】** 真昼(うららかな初夏の。目もくらむような暑い暑い夏の=中局み)。太陽がにょっきり顔を出し南国の強烈な真昼がうずうずして起き上がってくる=島尾。晴れた真昼の日盛り。太陽が真上にかかった時刻=武田百。午砲が鳴る。真昼のような明るい火影の中井上靖。部屋の中が真昼のように明るくなる"光瀬。隣家の木立と屋根が一瞬の稲妻に真昼のように浮かび上がる藤沢。正午かっきりに現れる。正午に家を出る。白昼堂々と(実行する。公然と行われている不正)。白昼の幻のような光景"石坂。 **よあけ【夜明け】** 夜明け(あさきに明るんでくる"林美。しんしんと凍りつくような吉本)。夜明けに近い青ずすみはじめた空。まだ夜明けには問がある。夜明けの(薄明かりがよどむ=本庄。閣が冷たく漂う本庄)。海のおもてに薄曇りの夜明けの空が白く映る。三島。けぶったような青白い夜明けの光が室の中にはいってくる"小林多。新しい夜明けをめざす。夜明け前が一番暗い。夜明け前の朝総訪心に包まれる。明るくなる(窓外が。束がぼうっと。うっすらと空が熊谷)。窓の外が明るくなり始める。刻々に明けていく空。▼明け残る(月が。星が)。▼明けはなれる(明が。夜が)。いまだ明けやらぬ空。▼明け渡る(夜がほのかに。冬の夜がからりと)。家並みに光が舞いおりる=畑。一番鶏の声が響き渡る。鶏鳴暁を告げる=太宰。金色に輝く(山の稜線妙にうが。水面が思いきったけばけばしい=本庄)。▼白みはじめる(夜が。カーテンの向こうばかりの頃"中上。だんだんに曖昧な色あいになる=鷺沢。空が(紫色に染まり始める。白んだが)。東天が白む。差はじらいの色を含む三島、無気味な赤味を帯びて明るみ始める"五木。水色に白みかける=石森)。飲んでばかり。雪が降り続く)。空に(かすかな明るみがさす=高田。はかない水色が萌しはじめる『石坂)。空にはまだ星がある=横山。空の底が白くなりはじめる=黒井。灰色の薄明かりが灰色の野山をけじめもなく包む=本庄。夜明けには平原が淡い紫の一色に塗りつぶされる=木庄。ほのかに空がしらむころ=半村。ほのぼのとした黎明灬が東の空から湧く=本庄。ほんやり窓に青みがさす安部。窓の向こうが白々とする。ミルク色に発光する不思議な明るさ落合。閥が(次第に淡くなる。濃い紫にかわる"真継)。閥の底にほのかな明るさがある。雪が冷たく燃えるような輝きを増す“川端。空は濃い群青にんじで東に向かってゆるやかに赤いグラデーションになってゆく=吉本。四方の山やまが紫に染まる!白洲。夜が(一歩退き別が一歩踏みだす時間=落合。仄々20と明るくなる=林美)。凝固するような箱の夜が蒼ぁおさめてくる。本庄。夜の(名残が漂漂う。しらじら明けにそっと出て行く)。金星のふりまく明るみが夜をはがす鳥尾。有明の(月。光)。東雲の10の(ほのかな光。光が山脈を白っぽく染める=遠藤)。春の引き明けの薄紫の空菊池。朝日の金の矢が高く高く味爽きいの空を貫く=福水。味爽も近い頃。朝の黎光山ふが差し込む。青みがかった黎明の空。東の空が(明けはなれる。白く燃える。ほのかに白む。燃える。淡いすみれ色に明ける。明るくなって雀けずが啼き出す小沼。うっすらと明るみを帯びる!篠田。ほのぼのと白み始める火坂)。東の空に(夜明けの色が流れる。紅紫の色が兆す三島)。お日様が東の空にかかる。 **れんじつ【連日】** 連日(しとしとと雨が降り続く。若い女性客でにぎわう)。連日の(激務に耐える。大入り満員に気をよくする。行軍がこたえて疲れが出る)。毎日のように(顔を合わせる。酒盛りがある)。連日のように(顔を出す。派手な宴席を設ける。政治家や官僚が逮捕される=佐高)。来る日も来る日も(雨が降る。 <32> # 空ける **あき【空き】** 空きがまだある。席に空きが目立つ。行間の空きをとる。人員の空きを補充する。スケジュールの空きを探す。宿の空きを確認する。ツアーに欠員が生じる。欠員を(補充する。募集する)。 **あきかん【空き缶】** 空き缶が道路を斜めに転がっていくねじめ。空き缶を(蹴飛ばす。投げ捨てる。握りつぶす。拾う。ぼい捨てする。こみ箱に放り込む)。転がっていく空き缶を目で追うねじめ。空き箱を積み重ねる。煙草の空き箱をぐしゃりと潰っぶす。 **あきち【空き地】** ▼空き地(草ぼうぼうとした。がらんとした殺風景な=篠田)。坂道に沿って空き地が散らばる=高村蔗。日が傾いて空き地がオレンジの色に染まる=あさの。空き地に花を植える。広い空き地に出る。 **あきびん【空き瓶】** 空き瓶が散乱する。空き瓶をりサイクルする。頭脳が水薬の空き瓶みたいになる=徳永。空き柳を踏み台にする。 **あきや【空き家】** しばらく空き家となっている。どこから見ても空き家と分かる風情。一目で空き家と分かる家。空き家に手を入れて住めるようにする三浦し。空き家の目立つ団地。空き家同然だったのを大繁昌にぶんの料理屋に仕立て上げる=北原。建物の中がまるで空き家のように静まり返っている高木。空き家みたいにがらんとしている藤原。空き店を探しに行く北原。空き部屋が目立つ。幾らでも空き部屋がある。 **あく【空く】** 空く(席が。半年ほど問が。心に穴がほっかり。受け答えに不自然な長い間が"重松)。道が空いている。ぽっかりと空いた時間。▼空いている(壁に節穴が。座席が。夕方まで体が)。車が空いているスペースにすべりこむ―清水俊。ベッドが空き次第入院する=氷室。がらがらの(電車。ホテル)。 **あける【空ける】** 空ける(会計に穴を。間隔を。座る場所を。席を。盃をくいと。ワインを一本。一気にグラスを。長期間にわたって家を。手酌でお銚子を。ビールの残りを。ビールを一気に。アパートをしばらく。猪口をゆっくりと。美味そうにきゅうとグラスを林ど。次から次へとジョッキを"伊坂)。家を空ける日が多い。日を空けて襲ってくる。手酌でお銚子を空けている=阿木。 **あな【穴】** ▼穴(底知れぬ深い。壺っはのような。蟻地獄こうじのような摺鉢状けい沿ちの“大岡。全てを呑みこんで陥没させたかのような道路に掘られた深い=鷺沢)。穴が(ぽっかりと開口している。黒々と大口をあけている"石森)。計画に穴がある。鼻の穴が天井を向いている。アスファルトにあいた穴が傷口のよう黒井。暮らしのどこかに空虚な穴があく。梅本。黒い穴がほっかりと口を開けている“船戸。心にぽっかり穴があいたような頼りなさ=平石。底深い穴が心の中にぽっかり出来る=隆。崩壊の穴が急速に拡がる=松本。鍵を穴から抜き取る。ガスがバイブの穴から漏れる。耳の穴から血が流れる。穴に(紐ぃもを通す。すっぽり身を埋める。潜りこんで身を守る)。すっと穴に落ちこんだように眠る=日野。底のない穴に落ちこんで行くような暗く恐ろしい気持ち藤沢。とてつもない深い穴に落ちていく感覚を味わう東野。深い穴に沈むように今の自分を失う“高樹。むじなみたいに穴に入る=司馬。やっと体が通るくらいのせせこましい睡ねむりの穴に落ちこむっ安部。穴にでも(入りたいように恥ずかしい菊池。入りたそうに項垂らなれて肩をすぼめる=加賀)。穴の(中で越冬する。底に吸い込まれていく)。顔を穴の開くほど見つめる=谷崎。違いかすかな穴の奥底のような昔"佐藤巻。被害妄想の穴の底に落ちる=加賀。みやげ物の店と店の間にぼっかり穴のあいたような静かな店がある三浦綾。息のできる穴を確保する。錐きりで穴をうがつ。鼻の穴を膨らませて怒る。耳の穴をほじくって聞く。機銃掃射が空間に穴をあけながら過ぎる辻井。深く暗い穴を覗のぞき込んだ思い=横山。ぶすっと穴をあけたように一条の黄ばんだ光が閃いらく=本庄。細い穴を通る肌のようにやや甲高く腹肌。れた声=村松。胸に穴をあけられたような寂しい気持ち“石坂。▼穴を開ける(壁に。仕事に。等間隔に。ドリルで)。先の尖った棒で蜂の巣みたいな穴をあける=宫本銀。穴を掘って(死体を埋める。埋めてしまったかのように話が姿を消す=黒井)。暗い穴の底から響いてくるような声"干刈。暗い二つの穴のような眼=森境。暗い穴のような天井を見上げる=安岡。空気穴を開けるように言う。岡田。 **うろ【洞】** 小動物のすむ老木のうろ。老木に空洞ぅっろが出来る=日野。恐怖感が胸の中に暗い深い洞となって拡がる=黒墨。木のうろに巣食う。目が木のうろのようにうつろ宮部。欠けた歯の洞のように我が家の窓だけが暗い中に取り残されている=森村。虫歯のうろを詰める。 **かざあな【風穴】** 胸の片隅に持ちこんできたどうにもやりきれないがらんがらんの風穴"高樹。心の壁に風穴がすほんとぶちぬかれる石森。土手っばらに風穴をあける。胸に空いた風穴を冷たいものが抜けていく高樹。 **から【空】** 弾が空になるまで撃つ。タンクが空に近い状態。空にする(コップを。ごみ箱を。一瓶を。容器を。ティッシュ一箱を。一気にぐっと盃を=新田)。とっくに空になっている。空になる(頭が。グラスが。米権に20が。瓶が。ボトルが。容器が。皿があらかた。一本目のワインが)。空の(カッブを回収する。コーラ缶が転がっている)。 <33> 物置が空のままがらんと立つ。 **からっぽ【考ぼ】** 派手好きなだけの頭のからっぽな俗物"日野。世界が空っぽになったようなさびしさ"宮本百。胸の中が空っぽになる悲しみ!高橋三。空っぽになる(頭の中が。胃袋が。心が。タンクが。冷蔵庫が。ホールががらんと。頭の中がこころよく"石坂)。どの皿もみんな舐めたようにカラッポになる=大原。容器だけでからっぽの言葉"近藤。瓶を空っぽにする。がら空きの(映画館。駐車場。電車。バス)。ロビーががらんとしている。真空のような静かさ"吉川。 **がらんと** 街灯だけが仄明組めるいがらんと静まり返った夜の街=日野。▼がらんとしている(食堂が。時車場が。店の中が)。 **かんげき【間隙】** 問隙があっという間に埋まる。わずかの間隙にくさびを打ちこむ『高橋和。笑いの問隙を縫っていく。 **くう【空】** 空に目を据える。足が空にのめる。拳を空に打ち振る。空を(切って落ちる松落ち葉。踏むように進む"山田風)。足が空を蹴る。切っ先が空を切る。手が空を掻ゅきさぐる。天馬空を翔かける。百雷が空を裂く。 **くうせき【空席】** 空席が(なくなる。目立つ)。隣の空席が気になる。空席を見つけて腰を下ろす。客が後から後からのれんをくぐってわれ勝ちに空席を奪い合うぃ永井龍。 **くうそ【空疎】** 学術的な理論の高度な空疎"松本。空疎な(談論。駄文。響きを与える言葉)。読むに耐えない空疎なもの=浅川。言い訳が空疎に響く。祈りが歯をかたく閉じた病人の口から水がこぼれるように空疎に唇をかすめる!遠藤。▼空文化する(合意が。条約が)。内容空疎な言葉の安売り“阿川弘。たいした内容を含んでいない。中身が(からっぽ。空虚。空疎。ぜ口)。無内容な勇壮さや剛健さを強調する萩原测。 **くうどう【空洞】** 空洞がぼっかりと口を開ける『五木。心の中に空洞が空く。自分のからだの一部がごそっと空洞になるような寂しさ房尾。夜が心の空洞にしみこんでくる=吉本。暗い空洞のような眼阿部。冬の宵のしんしんとした空洞のような凍てた静謐"芝木。胸にがらんとした空しさが空洞のように拡がる=萩原薬。▼空洞化する(国内産業が。取り決めが)。空き家同然にがらんどう赤川。▼がらんどうになる(口の中が。部屋が)。がらんどうの筒抜け。 **くうはく【空白】** こっそりと白ができる。大きな音が頭を打ち、耳の底が抜けたような空白がやってくる=高樹。三十年近い白の時代を送る。長い空白の時間があるのに何日かぶりで会ったようなさりげない言い方西木。空白を漏れなく埋める。十五年の空白を越える。必要事項を空欄に記入する。スベースに余裕がある。経歴に三年のブランクがある。余白ができる。余白に書き込む。余白を埋める。 **こくう【虚空】** 淡々たる虚空が広がる。虚空に視線を投げる。音が虚空に響きわたる。バンチを虚空に放つ。惚ぃぅけた目を虚空に据える。二つの視線が虚空にからまりあう高橋和。虚空を物凄い風が吹き渡る。声が虚空に(弾ける。吸い込まれて消える=篠田山田关。 **すきま【隙間】** ▼隙間(ぼっかりできた心の。わずかに空いた)。胸の底に妙な隙間ができる=獅子。隙間から明かりが漏れる。雨戸の隙間から光が流れてくる。砂が指の隙間から滑り落ちる。扉の隙間から風が漏れる。ブラインドの隙間から外を眺める。窓の隙間から冷たい夜風が忍びこむ。板壁の隙間に渋紙を張る。心の隙間に忍びこむ。隙間を(縫って糸が伸びる。見つけて風が家の中に吹き込む=なかにし)。紙一枚の隙間を残す。雲の隙間から(陽が射しおろす。午後の日がかすかに漏れる=有島)。重苦しい疑惑が心の空隙に忍び込んでくる=加賀。▼すかすかになる(骨が。葉を落とした梢が)。スリットを通る光。 **すく【く】** ▼空く(お腹が。小腹が。手が。腹が)。▼空いている(車内が。手が。道路が。店が。レストランが。電車ががらんと)。空きっ腹に焼酎を流し込む鈴木光。空きっ腹を抱える。 **ちゅうくう【中空】** 中空に(落ちつかぬ視線を漂わせる。月が懸かっている)。照明弾が中空に交錯する。虹が中空にかかる。山々の頂の連なりが中空に浮かび出る。UFOが中空に静止する=かんべ。中空をふわふわと浮かび漂う。裳裾もすが宙空で花開く=横光。 **どうくつ【洞窟】** ▼洞窟(頑丈な岩山の。急ごしらえで掘り抜いた)。闇の洞窟でコウモリのような暮らし方をする"大庭。洞窟に迷いこむ。洞窟の(奥に踏み込む。中が氷室のようにひやりとする=島尾)。風が吹きつのり洞窟の中がホルンのように鳴る=加賀。暗い記憶の洞窟の中を右左によろめきながら奥深くたどって行く有島。洞窟のような眼窩妨んの奥にまばたきも見えぬ碧のぉい眼が凝然としている=本庄。洞窟のように暗い口をあけている円=森環。二つの目を暗い洞窟のように見開く=小川。洞窟内のしんと沈んだ湿気のある空気"島尾。鬼気人に迫るとも云うべき土窟"田)。 **ほらあな【洞穴】** 洞穴ががらんとあく。幾つもの洞穴が散在している。洞穴に(隠れる。住む。閉じ込められる)。洞穴の入り口が塁を塗ったような漆黒奥泉。洞穴を(うがつ。掘り進む)。灯りのついた洞穴のような店"河野。真っ暗な底のない洞穴のような部屋=日野。暗緑の洞穴のように見える庭萩原来。家の中が洞穴のように暗い=北原。 **もぬけのから【蛇の殻】** ▼もぬけの殻になる(アジトが。ベッドが。部屋が)。魂を奪われた人間のように。もぬけの殻の肉体菊池。 <34> # 開ける・閉じる **あく【開く】** ▼開く(障子が。襖訟すが。口があんぐり。蓋がばっと。目がばっちり。目がぼっかり。がらっと雨戸が。口がだらしなく。鉄の門がするすると)。穴が開く(あちこちに。胃に。バイブに。床板に。ぽっかり)。穴がぼっかり閉口している。 **あけしめ【開け閉め】** 開け閉めを静かにする。▼開け閉めする(ドアを。バルブを。ハンドバッグを。金魚を模すように口を=伊坂。冷蔵庫をばたばたと=角田)。▼開け閉たてする(唐紙を。障子を。ドアを。引き出しを)。▼開け閉じする(扉を。戸を。襖いすを。本を。物憂げに眼を)。▼開いたり閉じたりする(口が。二枚の貝殻が)。▼開閉する(唇が。窓が。門が。ドアが自動で。ばくぱくと口を)。 **あけはなす【開け放す】** ▼開け放す(ドアを。扉を。戸を。窓を)。▼開け放しにする(木戸を。口を。ドアを。襖いけを。窓を)。▼開け放しになる(ドアが。扉が。窓が)。▼開け放つ(カーテンを。ドアを。扉を。広間の障子を。襖を。窓をいっぱいに)。▼開け払う(障子を。扉を。戸を。欲を。窓を)。▼全開にする(エンジンを。窓を)。 **あける【開ける】** ▼開ける(雨戸を。障子を。ズボンの前を。ドアを。戸を。円を左右に。唇をぼんやり。窓を半分。うっすらと浮目を。押し入れの上の天袋を。缶切りで缶詰を。缶ビールのブルトッブを。玄関の引き戸を。こっそり押し入れを。暦どおりに店を。梱包に认された箱を。さっとカーテンを。はばかることなく大口を。格子戸をがらりと。煙草のケースをばちんと。引き出しをぐいと。複封」をそろそろと)。▼大穴を開ける(株の暴落で。どかんと)。▼口を開ける(あーん)。馬鹿のように。空洞がぽっかりと“五木)。割れ目がばっくり口をあける=武田百。口をあんぐり開けたまま見つめる=つか。ぼかんと口を開けて見ている"重松。▼細めに開ける(彼を。ブラインドを)。目を開ける(恐る恐る。ばっちりと)。まぶたをかっと開く。傷口をぐりぐりこじ開けてしまう。無理やり心をこじ開ける。引き開ける(カーテンを。ガラス戸を。ドアを)。開館を一週間後に控える。劇場が開場する。開場の時間が迫る。呼吸困難の金魚みたいに口をばくぱくさせる荻野。▼ぶちぬく(歴を。どてっ腹を。広間を三つ。奥の間と中の間を。山にトンネルを)。 **おおぐち【大口】** 大口を開けてギャハハと笑う鷺沢。穴が黒々と大口をあけている=石森。わにのような大口をあけて呆ぁきれたような表情をする木山。 **おしあける【押し開ける】** ▼押し開ける(木戸を。とばりを。扉を。戸を。蓋を。まぶたを。乱暴に。恐る恐る。元気よく)。▼押し開く(ドアを細目に。ドアを力まかせに)。▼押し広げる(才能を。狭さを。窓を。ぐいっと胸元を。割れ目を無理に)。霧を押し分けて進む。人垣を押し分けて前に出る。人波を押し分けて歩く。船が海面を押し分けて進んでいく。暖簾のれをかき分けて店に入っていく。扉を排する。 **カーテン** すっかり陽に焼けて柄が褪ぁせてしまった縞しまのカーテン・宮部。濃淡の緑で織ったしっとりしたカーテン=原田爽。カーテンが(風を孕はらんでふっくらと揺れる=阿刀田。すっと切られたほどに細く用く=加賀)。サラセン模様のカーテンが明るい灯りを吸う石森。カーテンが風に(煽ぁぉられる。膨らむ)。部屋をカーテンで仕切る。カーテンの隙間から朝日が差し込む=貫井。カーテンを(そっと開ける。勢いよく開ける)。水平線にたたずむ雲が逆光を浴びて白いカーテンのように見える=福永。棚に吊るした橙色状のカーテンのように夕陽の光線の矢が海面もれる=黒井。窓掛けを(開ける。閉める)。 **かいこく【開国】** 開国の方針を貫く。開国を(余儀なくされる。機に政情は動揺を強めてくる"津木)。ひとたび政権を握るや途端に開国を決める"網淵。鎖国政策を廃する。 **かいさい【開催】** 開催に(こぎつける。踏み切る)。▼開催する(委員会を。文化祭を)。花札博打話くを開眼する。▼主催する(会議を。祭典を。集会を。大会を。集いを)。催す(イベントを。宴会を。酒宴を。茶会を。バーティーを。花火大会を。会を盛大に)。催しを開く。 **かいたく【開拓】** 開拓の方針に身をささげる=本庄。開拓する(新たな販路を。荒野を。新分野を。活躍できる場を)。得意先を一から開拓しなおす森村。冷静にして奔放な開拓者精神"開高。開拓者精神を発揮する。干拓地が広々と続いている。▼入植する(開拓者が。開拓地に。原野に)。フロンティアスピリットをかきたててやまない。土地の開墾に従事する。▼開墾する(荒れ地を。雑木林を。畑を。山を)。開墾事業に従う。干拓する(海を。沼を。湖を)。沼を干して田にする=山本周。 **かいてん【開店】** 開店にはまだ問がある。のろくさと開店の準備にとりかかる鷺沢。▼開店する(スーパーが。デパートが午前十時に)。暖簾を表に出す。店を(開ける。始める。開く)。十時に店をオープンする。店開きする(スーパーが。デパートが)。明店休業同然にはやらなくなってしまう。高橋涼。 **かいはつ【開発】** 開発が急速に進展する。開発に(鍋乳のを削る。要した資金が無に帰する内橋)。特効薬の開発に全力をあげる。兵器の開発に血道をあげる。新製品の開発に目の色を変えている=北村。開発の波が押し寄せる。開発する(システムを。新技術を。画期的な治療法を。自然エネルギーを)。大規模な区画整理が行われる。 <35> **かいふう【開封】** ▼開封する(手紙を。遺言状を)。封を(開ける。はがす。開く。びりびりと破る)。封を切る(大急ぎで。もったいをつけて)。 **かいほうてき【開放的】** 開放的な(感情の吐露。性格)。日本の開放的な家屋。嘗かってのような呆気っにとられるほどの開放的なところが消え、引っ込み思案にさえなる=河野。夏の浜辺の開放的な雰囲気"丸谷。開けっ放しな(笑顔。気質)。オープンな性格。つきあいをオーブンにする。 **かぎ【鍵】** 謎を解く鍵。鍵のあく音が氷が寒夜にひび割れたように響きわたる=志茂田。鍵を(鍵穴に差し込む。二本の指で濡れ雑巾みたいにつまむ=尾辻)。玄関の鍵を締める。事件の鍵を握る人物。成功するかどうかの鍵を握っている。フロントから鍵を受け取る。フロントに鍵を預ける。ボケットから鍵を取り出す。運命の鍵をそっくり渡してしまう大佛。鍵をかける(車に。厳重に。部屋に。ロッカーに。内側から。がっちり)。合い鍵を使って部屋に入る。鍵穴から中を覗のぞく。ライトで鍵穴を照らす。鍵束がじゃらじゃらと涼しく音を立てる=佐藤巻。キーを(鍵穴に差し込む。ボケットにしまう。フロントに預ける)。イグニッションにキーを差し込む。 **かきわける【掻き分ける】** 光と音楽とざわめきの洪水を掻き分けて表へ出る=原田宗。人波をかき分けて進む。人込みをかき分けてやって来る。野次馬をかき分けて前に出る。厳ゃぶをかき分け山へ分け入る=池井戸。水をかきわけるように重たく手をさし出す三島。夜の闇をかきわけるようにして進む=景山。雪をかきのける。 **きりひらく【切り開く】** ▼切り開く(新しい分野を。時代の妖雲を。宅地用に山を。複雑な政局を。新しいジャンルを。自分の力で人生を)。先へ先へと道をあける。打開の方向を探る。打開する(隘路弱いを。行き詰まりを。危機を。難局を。暗礁に乗り上げた協議を。手詰まりの状態を)。 **こうかい【公開】** 公開する(写真を。情報を。资料を)。▼初公開する(映像を、原画を)。検定過程をオープンにする。 **しめる【閉める】** ▼閉める(ドアを。戸を。複訟すを。後ろ手に障子を。戸をがたびし言わせて。引き出しをぴしゃりと)。蓋を閉める(きちんと。ばたんと)。ドアを閉め直す。閉め切る(雨戸を。扉を。襖を)。閉たてる(雨戸を。障子を。戸を)。人の口には戸を立てられない=北村。▼閉てきる(雨戸を。ドアを。視を)。 **シャッター** が古びた厚紙のようにそりかえる=光瓶。シャッターを(開ける。閉める。閉ざす。上まで押し上げる)。かがんでシャッターをくぐる。思考がシャッターを降ろしたように中断される=歳沢。鎧戸にらを(下ろす。閉める。引き開ける)。 **じょう【錠】** 錠が(下ろしてある。かかっている。外れる)。錠を(開ける。下ろす。かけ忘れる。こじ開ける。外す)。ドアに錠を施す。錠前がおりている。錠前をこじ開ける。戸に錠前をかける。玄関に施錠する。掛け金が(かかっている。外れる)。掛け金を(おろす。かける。外す)。かんぬきを(おろす。外す)。かちりとロックが外される。扉をロックする。 **しょうじ【障子】** 欄間にはめ込んだ障子。障子が(がらりと開く。さっと開く。するすると開く。西陽に赤く染まる)。障子に(映る木立の影。火影が映る。青白い月明かりが落ちる=火坂)。壁に耳あり隊子に目あり舟橋。障子の(穴を張る。陰に身を引く。向こうに去る。破れ目から覗のぞく。紙を透して寒さが浸み込んでくる=夏目)。障子を(さっと開ける。すっと開ける。そっと開ける。細めに開ける。指で破る。恐る恐る開ける。がらっと開ける。力まかせに開ける)。素早く障子を閉める。風が障子を揺り立てる=山本周。がたびしと障子を引き開ける=阿部。庭に面した障子を開け放つ池波。障子一枚を隔てる。障子紙を(逃すく。体裁よく貼る)。障子戸ががらっと開く=山本一。 **たてつけ【建て付け】** 建てつけが悪くなってちゃんと閉まることのない襖訟す=宮本輝。建て付けの悪い(雨戸。板戸。障子。戸を無理に抉こじ開ける=外村)。たてつけの悪い古い家のように心臓ががたがたになる大佛。建てつけの悪い家が風で揺れるように機体のあちこちがみしみしと音を立てる=小池。 **つぶる【瞑る】** ▼目をつぶる(半眼に。気を静めようと)。目をつぶって(買う。聞く。静かにする)。目をつむる(真相に。怖くて。心持ちよさそうに)。片目をつむる。▼瞑目40いする(静かに。腕組みして。腕を組んだまま。じっと手を合わせて)。長い時間悦目している。瞑目するように眼を閉じる=徳水。 **てんかい【展開】** ▼展開(意表を突く。息詰まるような。ファンにはこたえられない。全く予期しなかった)。展開がまるで読めない。思っていた通りの展開になる。話の展開に戸惑う。予期せぬ展開に混乱する。予想外の展開に愕然とする。今後の展開を見通す。万策尽きて事態の展開を待つ=伊坂。▼展開を見せる(新たな。事件が新しい)。▼光景が展開される(無遠慮な。見るに耐えないような黒岩)。展開する(滑稽な争いが。華麗な技を。持論を。推理を。凄絶な死闘を。軍が山野に。陣を愆災に。体系的に。論理的に。一貫性のある外交政策を。具体的な主張を。堂々たる教育論を。華々しい論戦を。論戦がはなばなしく。救いのない愛の運命が!熊坂。テレビで大々的に広告を=重松。波瀾万丈雄らんびの物語を=高見願。天下の形勢が倒幕派に有利に"船山。部隊が敵の真正面に=井上苅)。唯物史観の根幹を展開させる。▼運動を展開する」(草の根の。地を這うような"小林久)。急展開する(局面が。事態が。情勢が。ドラマが)。 <36> 繰り広げる(バトルを。連日熱戦を。デッドヒートを)。 **と【戸】** ▼戸(腰をかがめなくては入れないような低い古井。冷え冷えと硬く黒ずんだ玄関の"日野)。戸が(威勢よく開く。がらりと開く。うまく閉まらない。重々しくきしむ。がたがた音を立てる。きしりながら開く多岐川。すっと息を引くような音を立てて引かれる。室生)。ばたんと戸が閉まる。歪ゅがんだ戸がきしぎしと鳴る=長塚。▼戸が開く(かたりと。がらがらと)。戸に(錠前を卸す。肩から体当たりする。心張り棒をおろす)。戸の(隙間から幾らゅう。隙間が険炷ぶを開いたように明るくなる=長塚)。夜鳥が戸のきしむような声をして鳴く内田百。戸を(静かに叩く。横に引く。軽くとんとんと叩く。叩く音で目が覚める。力いっぱい叩く。ひっそりと閉ざす)。力まかせに戸を叩く。きりぎりすが戸をひくように鳴く“中。自分の周りに戸を閉てる=高井。大工が建具をいじるように楽に戸を外す!吉川。▼戸を開ける(細めに。荒々しく。威勢よく。がたびし。がらがらと。がらっと。すうっと。するすると。ばたばたと。ぎしぎしと帆きしませながら=熊谷。声より先に転ぶようにして両刀田)。▼戸を閉める(後ろ手に。荒々しく。がたびし。がらがらと。きっちり。そっと。ちゃんと。びしゃっと)。戸を閉たてられる(鼻先で。目の前で)。網戸を(開ける。つける。閉じる)。がらりと板戸が開く。枝折り戸を開いて入る。戸板に乗せて運び出す。泥棒のようにドライバーで戸口をこじあける=原田康。引き戸に手をかける。引き戸を(閉める。がらがらと開ける)。木戸がばたんと開く。部ひとを(上げる。下ろす。開く)。雨戸に粉雪がさらさらと吹き当たる=石坂。雨戸の隙間から差しこむ細い光の筋"古井。雨戸を(風が騒がせる。どんどん叩く。敷居にはめ込む)。戸袋の雨戸を繰る。雨戸を開ける(がたびしと。ばたりと)。ガラス戸が(びりびり振動する。風にカタカタと鳴る=檀)。硝子戸がけが座にまみれて灰色に汚く汚れている=田山。ガラス戸に影が浮かぶ。ガラス戸を(がらっと開ける。こつこつと叩く)。風がガラス戸をやましく鳴らす宮本輝。ガラガラビシャンとガラス戸を締める=永井前。硝子戸が終日辻馬車の扉のようにがたがたと慄、ふぇえている=横光。格子戸を(開け放す。開ける。押し開く。くぐる。閉める。出る)。 **ドア** ガラスがあらかた割れ落ちたドア=景山。ドアが(半開きになる。押しても引いてもびくともしない。びしゃりと閉じられる。ためらいがちに開く"小川。ためらうように揺れる三島。びっくりするほど重い=椎名紙)。ぎしぎしとドアがきしむ。乗車口でドアが開くのを待つ。▼ドアが閉まる(完全に。電車の。ばたんと。鼻先で。ばたと音を立てて=桐野)。▼ドアが開く(細めに。玄関の。内側から。突然。ばたんと。エレベーターの)。ドアから(顔を出す。素早く入り込む)。ドアに(背を預ける。足をこじ入れる。鍵がかかっている。体当たりを試みる。チェーンをかける。ブレートを貼り付ける)。ドアの(陰に隠れる。ロックを外す。隙間から明かりが漏れる。施錠を確かめる。チェーンロックを外す。取っ手に手をかける。ノブに手をかける。前で立ち止まる。前を通り過ぎる。向こうに消える。ロックが外れる。上に小さな門灯がともる=高村恋)。名刺をドアの下に差し込む。閉めた鉄のドアの音が室内に反響してこもる=日野。ドアを(背にして立つ。半開きにする。開けっ放しにする。後ろ手で閉じる。内側から閉じる。蹴破るような勢いで乗り込む光原)。内側からドアをロックする。気軽にドアを押せない雰囲気。いきなりドアをびしゃっと閉める小林へ。フラフラと誘われるようにして店のドアを押すい水倉。ドアを開ける(静かに。細めに。乱暴に。荒々しく。勢いよく、運転席の。大きく。恐る恐る。寝室の。蹴飛ばして。ぱっと。部屋の。冷蔵庫の。ためらいがちに。ことりとも音を立てずに細く=小川)。ドアを押し開ける(恐る恐る。肩で。元気よく)。ドアを閉める(後ろ手に。静かに。荒々しく。きっちりと。素っ気なく。そっと。がたびしいわせて)。ドアを叩く(軽く。こつこつと。どんどん)。▼ドアをノックする(遠慮がちに。おずおずと)。ドアをばたんと(開ける。閉める)。ドアを乱暴に(開ける。閉める)。油ぎれのドアのように体の関節が悲鳴をあげる=飯田。ドアノブから手を離す。ドアノブを回す。 **とじまり【戸締まり】** 戸締まりに気をつける。戸締まりを(忘れる。しないと不用心)。家の戸締まりを済ませる。玄関を戸締まりする。厳重に戸締まりをする。 **【閉じる】** 閉じる(ばたりと窓が。固く臉娃ょとじるを。固く門戸を。ばたりと本を。花が花弁を。口をへの字に。腿ももを固く。後ろ手にドアを。かたくななほど心を。ばさばさ雑誌を。口を真一文字に。而腿いいっをぴったりと。本を勢いよく音を立てて"結城)。▼口を閉じる(開いていた。ビニール袋の)。ばたんと閉じる(雑誌を。書物を)。蓋を閉じる(貝が。棺むっの)。▼目を閉じる(静かに。薄く。うっすら。うっとりと。固く。軽く。きつく。きゅっと。恍惚にうとして。じっと。力なく。眠るように。シートの背にもたれて。両手を枕にして。力つきたように息をつき赤川)。閉じた(世界。体系)。瞑想初いするが如くに目を閉じている“なかにし。目をまともに開けていられない=城山。▼閉じ合わせる(貝殻を。両脚を)。▼立てこめる(障子を。戸を)。▼閉館する(図書館が。博物館が。美術館が)。▼閉鎖する(道場を。工場を業績悪化で)。閉鎖的な(イメージ。社会。雰囲気)。 **とびら【扉】** 頑丈な手作り風に巧んだ黒い扉「河野。扉が(ぎいっと閉じる。自動的に閉まる。ばたんと閉まる。鼻の先で閉められる。ぴくりとも動かない。岩のようにかたくしまっている。木山。 <37> 魔法使いの手で開かれるように音もなく開く=原田康)。重くきしんで扉が開く。鉄板の扉ががっちりと閉まっている。感情の扉がびたりと閉まっている=宮本頁。扉から顔を出す。部屋を厳重な扉で仕切る。扉に(鍵をかける。肩をぶつける。ぴったりと身を寄せる)。扉に背を向ける。もたせかける)。扉の(前に陣取る。隙間から風が漏れてくる。前を通り過ぎる。向こうに姿を消す)。扉を(固く閉ざす。細めに開く。開けっ放しにする。押し開けて入って来る。がたがた揺すぶる。こつこつと叩く。静かにノックする。手前に引き開ける。乱暴に押し開く。あける音が氷でも砕ける響きのように聞こえる小林多)。おもむろに扉を開く。堅牢な扉を開ける呪文のような言葉の原田宗。吸い込まれるように扉を押す萩原爽。▼扉を開ける(玄関の。用心深く。部屋の。冷蔵庫の。蝶番かいを児ミしませて=高橋和)。▼屈を閉める(後ろ手に。静かに。乱暴に。荒々しく。側から。音を立てて。素早く。そっと。ばたんと)。一扉が開かれる(没落の。輝かしい人生の"白井)。声が乾いて風できしむ古い扉のようになる=大庭。 **ひらかない【開かない】** ▼開かない(容易に口を。まぶしくてしばらくまともに目が"原田宗。口金がばかにきつくてなかなか=武田百。扉が押せども引けどもどうしても北)。外さなければ開かないような建て付けの悪い硝子が『戸=高見哨。開かずの(扉。踏切。岡)。雨戸がひっかかってうまく開かない黒井。 **ひらく【開く】** ▼開く(自動ドアが。牡丹心たの大愉が。新しい天地を。内輪の会議を。着物の前を。地獄への門を。盛大な饗宴を。送別の宴を。直ちに戦端を。小さな書店を。独自の境地を。ぱっと傘を。花が蛮20を。浴衣の裾を。足を大股に。花弁が可憐ふぇに。ドアを細めに。瞼柱を半眼に。扇をぱっと。跑分にがばっと。瞼を精一杯。両目がかっと。青空に落下傘が。エレベーターの扉が。新しいルートを。諸外国に門戸を。最寄りの銀行に口座を。両足をV字型に。薄目をぼんやり。ドアが勢いよく。目がばっちりと。才能の可能性が芽を「瀬戸内。ジャックナイフを取り出して刃を"江戸川。敗色濃厚な戦いの血路を"西木。浴衣の襟元を乱暴に=笹沢)。▼いっぱいに開く(口を。蛇口を)。▼大きく開く(驚きで目を。腿ももを)。▼唇が開く(うっすらと。だらしなく。細く)。▼口を開く(漏斗汇江のように。ばっくりと。ぽっかりと)。左右に開く(両腿を。真っ白な波頭が)。▼すうっと開く(襖が。音もなく)。▼小さく開く(口が。唇が)。▼道を開く(後進に。出世の。昇進の)。▼目を開く(うっすらと。おずおずと。ばちりと。ぼかっと大きな)。蒙もうを啓ひらく。頭の鉢の開いた子。半眼に開いた目。ことあることに宴会を開きたがる"つか。ぽつりぽつりと口を開き始める=乃南。▼開かれる(記者覓が。口頭弁論が。再審公判が。登用の途が。大陸との交通が。毎日のように朝市が。心の目がだんだん=壺井)。目を開かれる思い。敲たたけよ、さらば開かれん。▼開きかける(梅の蕾が。記憶が。心が。ドアが。扉が)。死体を切り開く。▼花開く(愛情が。才能が)。ホームページを開設する。城を開円する。用円を(拒否する。要求する)。引き戸が半開きになっている。▼半開きにする(扇を。傘を。唇を。戸を。鋏破きを。窓を)。半開きになる(口が小さく。呆気はっに取られて口が"乃南)。半開きの分厚い唇にそそられる=山田詠。▼口を半開きにする(きょとんと。だらしなく)。 **ひらける【開ける】** ▼開ける(足元に深淵れんが。運が。活路が。新天地が。突破口が。自ずと道は。遠くまで展望が。目の前に眺望が。途端に視界がばあっと横山)。▼限前に開ける(視界が。広い野が)。人生が開ける(新鮮な。明るい。新しい。思いがけない)。世界が開ける(新しい。豁然粉として広い中野孝)。▼道が開ける(安全な。上達の。打開の)。▼目の前が開ける(豁然と。ばあっと)。川筋に開けた土地。谷合いの広く開けた畑地"石坂。闇がゆるゆると開けていく『篠田。開けた(場所に出る。人)。不意に目の前の風景が明るく開けた=さだ。豁然と大海原が広がる。 **ファスナー** ファスナーを(引き上げる。引きおろす)。ワンピースのファスナーを上げる。ズボンのジッパーを引きおろす。チャックが壊れる。チャックを(引き上げる。引きおろす)。 **ふすま【視】** 襖が(肌もしんで開く。びたりと閉ざされる)。襖が開く(がらりと。すっっと。するすると)。襖の(陰に身を隠す。向こうの気配に耳を傾ける!佐多)。襖を(勢いよく横に引く。隔てて声がする)。さっと左右に襖を開く。仕切りの襖を開け放つ。細めに襖を開けて中を窺紛ゅう『船山。▼襖を開ける(静かに。無造作に。荒々しく。勢いよく。がらりと。さらりと。すっっと。そっと。そろそろと)。▼襖を閉める(後ろ手に。静かに。後ろ手で。びしゃんと。ぴったりと)。視一枚隔てた向こう。視一枚で仕切られる。唐紙を開けて入ってくる。そろりと唐紙を開ける。 **へいてん【閉店】** 閉店の時間になる。閉店まで粘る。閉店する(スーバーを。レストランを。午後十一時に。資金繰りができず)。閉店まぎわに店を出る。店を仕舞う。閉まる(銀行が。酒屋が。商店が)。暖簾を(おろす。取り込む)。店が(看板になる。閉まる。シャッターを降ろす)。店の明かりが次々と消える。店を(畳む。閉ざす。閉じる)。そそくさと店を閉めにかかる=内橋。店を看板にする。看板にはまだ時間がある。今月限りで店じまいする。早々と店じまいをする。 **【落】** ▼幕(黒い。白い。だんだらの)。暮が(降りまくる。閉まる。するすると上がる)。柝きが鳴って幕が開く。赤と白との縞模様しまもの幕が張りめぐらされる=高橋和。 <38> 霧の幕が大きく揺れる=新田。草原いっぱいにハーブの糸のような雨の幕がひろがってゆく=遠藤。遂く海面に垂れ下がっていた霧の幕が少しずつ薄れはじめる武田炎。悲喜劇の幕が上がる内橋。あたりいちめん白い雨の様に閉ざされる池波。夕暮れがかって模糊。ことした灰色の暮に包まれる=本庄。灰色の霧の幕のなかから黒い波が幾千の亡霊のように襲ってくる=加賀。式典が幕を開ける。自分で幕を引く。紗の幕を通して見る。薄い幕を隔てて触れ合うような率直さを欠いた生活落合。倦怠ぶんが意識に眠りのような幕を掛ける"夏目。声の主が闇の幕を割って姿をあらわす=池波。▼幕を下ろす(騒ぎが。芝居が)。▼幕を閉じる(青春が。オリンピックが。大反響のうちに)。芝居の幕を上げる。出る幕が終わる。お前の出る幕ではない=梶尾。従順一点張りの灰色の暮のような女=獅子。暮のように沈黙が落ちてくる=吉本。砂嵐が暮のように車の前を遮る=城山。晴れ渡った明るい海が死をかくまっている単調な幕のようにだらりとしている=横光、靄もゃが野を蔽ぉぉい幕のように光る大岡。夜風が幕のように角を曲がって彼らを押し包む伊藤整。まだ明るいと思っていた空が暗幕でもかぶせられたように急激に暗くなる池田。暗幕を(明け放つ。くぐる。取り除く。張る)。電灯を覆った黒幕が死をも柔らかく覆う高井。慢慕いを(下ろす。張る。めぐらす)。紅白の幔幕を張りめぐらす。 **まど【窓】** 窓(曇りガラスの旅はまった。ステンドグラスのはまっている。小さな明かり取りの。真っ黒に煤すすけた。銃眼のような小さな新田。ガラスの表面が赤々と夕日を照り返せば照り返すほど内側の暗さが透けて見えるような「日野。遠い高層ビルの壁面にランダムに光る=石田衣。眼にハレーションが起きたように真白く輝いてまぶしい=泉優)。窓が(細目に開く。走り過ぎて行く列車の明るい窓が目の前を水のように流れ去る=大佛。ほとんどの窓が錆び付いたようにぴったりと閉じられる=小川。窓から(小便を放つ。外へ忍び出る。身を乗り出す。雪景色を見る。明かりが漏れる。雨が降り込んでくる。家の中を覗のぞきこむ。月の光が射し込む。中庭を見下ろす。部屋に侵入する。秋めいた風が吹きこむ古井。暮れてゆく都心の風景を眺める"内館)。騒音が窓から流れ込んでくる。高い窓から落ちる光。二階の窓から顔を出す。ビルの五階の窓から見下ろす。冷気が窓から忍び込んでくる藤本。窓という窓がていねいに磨き上げられて輝くよう内海。窓に(明かりが灯る。人影が映る。シルエットが浮かび上がる=内田康)。たそがれが窓にしみ出す。窓の(サッシが外れる。外から騒がしい声が聞こえる。明かりが街路に流れ出る=野間。冴えた輝きが煙るように仄ほのかに色を薄める野間。外に去っていく景色を眺める=有栖川)。ビルに窓の明かりが並ぶ。雨が窓の汚れを流す!佐藤多。窓を(開けて換気する。土砂降りの雨粒が打ちつける=海堂)。雨のしずくが窓を伝う。五階の窓を見上げる。風が窓をばたばた鳴らす堀。鋭い風が窓を打ち鳴らす高樹。月の光に誘われたように窓をそっと開ける"半村。▼窓を開け放つ(すべての。窓という)。▼窓を開ける(いっぱいに。細めに。がらりと)。窓を閉める(荒々しく。がらがらと)。▼窓を叩く(雪と風が。秋風が時折。こつこつと)。小窓から流れこむ光。車窓から外を眺めやる。車窓越しに景色が飛んでいく。車窓に流れて行く街の家々の明かり“原田店。食い入るように車窓の景色に見入る=篠田。窓越しに(外を眺める。手を振る)。▼面した出窓(通りに。庭に)。窓に鉄格子がはまっている。窓の鉄格子を両手で掴っかんで揺する鈴木光。天窓から光が差し込む。頭上の明かり取りから斜めに差した細い光線が一本の刃のように地面に突き刺さる=池井戸。 **まどべ【窓辺】** 窓辺に(立つ。寄る。花の鉢植えが並ぶ。燦々とあふれる明日=小池)。百合を窓辺に飾る"あさの。窓際に(腰かける。座る。席を取る。立つ)。窓際の(席に案内する。一等席を確保する)。 **みかいたく【未開拓】** 未開拓の(学問分野。原野。地)。未開の広野に分け入る。広大な未開の原野。開発の(地域。天然资源)。 **みひらく【見開く】** ▼見開く(びっくりしたように喩ぶを大きく=和久。眼を放心したように安岡。眼をポッカリと=阿刀田)。▼大きく見開く(瞳を。目を。目をひときわ)。▼目を見開く(驚きに。いっぱいに。かっと。ばっちりと。はっと。ばっと。呆然と。まじまじと。真ん丸く)。目が仁王様のように見開かれている高橋三。見開かれる(目が張り裂けんばかりに"栗本。双眸ぼうが氷結したように=黒岩)。世の人を堂目記にさせる。瞠目したまま声も出ない。変貌ぶりに瞠目する。瞠目するに足る美しさ。憤ってまなじりを決する。まなじりを決して(事に当たる。立ち上がる。誓う)。▼目をみはる(美しさに。感慨深げに。恐稀に。壮麗さに。珍獣に。出来栄えに。変化に。あきれて。唖然として。驚いて。探秘として、驚異の。驚愕始いうの。きょとんと。茫然蚶いと。凛りんと大きく。何事が起こったかと。颯爽ごうとした若者ぶりに=なかにし)。まあとびっくりしたように眼をみはる=山本周。蜃気楼んきを見るように目を見張る・佐藤春。見事な出土品に目を陸ぃぃる=大佛。躍進ぶりは目を見張るものがある荒巻。目を見はるばかりの豊流に心を奪われる宮尾。目をみはるような(威容。美人)。黒目がちの嘘を大きく見はる宮部。 **りょうびらき【両開き】** 両開きの(書庫。戸。ドア。扉。仏境。窓)。円が観音開きに開かれる。ページの片側を観音開きにする。観音開きの(ドア。扉)。未土 <39> # 味わう **あく【灰汁】** あくが(浮く。抜ける)。肉のあくを取る。灰汁を掻き回したような夕立色の曇天室生。心の中に苦い灰汁のようなものが湧き出てくる首局。えぐみのある味。 **あじ【味】** 味(軽い閑雅な。マイルドな。まろやかな。こくのある。冷たい孤独の。気品にあふれた。醤油で煮しめた。しんしんと読者に伝わってくる作品の。酔い覚めの水は甘露の。あたりの空気を自然と引き締めているような堂々たる=大佛。思いがけぬうまさが咽喉のとに未練げに残る当局。何ともたとえようもない快い戸板)。味が(かなり落ちる。舌に和む。微妙に違う。ろくにわからない)。香りと味が口じゅうに広がる。中まで味が染み込んでいない。味がある(使う言葉に古風な。噛めば悩むほど)。▼味が良い(格段に。驚くほど)。味に(うるさい。舌が慣れる)。味の(奥行きを知る。変化に気づく。よさで名を知られた料亭「山本一)。しびれるほど懐かしい味のスーブ"高橋源。味も香りも申し分ない。男の味を知る。故郷の味を存分に味わう。本物の味を心得ている。長い航海のあいだに辞書の味を覚えたらしい三浦し。本来の味を満喫する=阿川佐。雌のカニは深く広大で起伏に富んだ味を持っている=開高。▼味を覚える(遊びの。酒の。放蕩行の。遊興の)。▼味ではない(感心するほどの。とりたててどうこういう)。味のある(演技。人)。あっさりした料理。脂っこい(食品。文体。ものが好き。野心。料理が苦手)。甘辛い醤油味。甘辛く煮びたす。薄味の(スーブ。料理)。大味な(果物。魚。料理)。くどい甘さ。こってりした料理。こってりと甘い砂糖漬。さっぱりした味の肉。淡泊な(味。肉。ヨーグルト)。ぴりっとした香料。風味が(生きる。落ちる。香ばしい)。格別の風味がある。 **あじわい【味わい】** 禁断の木の実の味わい=南条。奇妙な味わいが出る。文章にとつとつとした味わいがある。口中にしびれるような甘美な味わいがじーんと広がる=山手。まったりとしてこくのある味わいが舌に残る=山崎。独特の味わいのある作品。謹厳なる味わいのある表現"山口。不思議な味わいを持った落語涼風)。滋味に(あふれる。富家・加太。一味の(清風。涼風)。滋味のある老人。滋味豊かな作品。 **あじわう「味わう】** ▼味わう(季節の恵みを、孤独な生活を。静かに老境を。至福の時を。珍味佳肴分にを。どん底生活を。話の余韻を。深い疲れを。無上の悦楽を。心の底から解放感を。絶体絶命の窮境を。敗北の憂き目を。母のぬくもりを。不思議な感動を。予想外の苦労を。快感をつぶさに。苦痛と恥辱をまざまざと。体験をとっぷりと。ひんやりとした潮風を肌で。足許話しが崩れ落ちるような絶望感を"源氏。崖端に立つスリルを泉馁。炎くくが手に触れたときのような恐怖を"丸谷。腰が抜けるほどの驚愕を貫井。この世ながらの地獄を"山田風。死ぬほどの苦悶もを"山岡。しみじみと炬縫にたの温もりを池波。久しぶりで家庭の団欒伏心の楽しさを=田山。ゆっくりと口に含むようにして一杯のコッブ酒を"高井。迷惑感と小気味よさと憎悪をそれぞれ等量に=黒岩。印象を牛が反芻让礼するように何度も舌で=獅子。女の幸福をしみじみと=新田。悲しい思いを何度となく=宮部。自然と浸み込んで来る光線の暖か味を襯衣の下で貪貼るほど夏目。沈黙の爽やかさを思うさま三島。一皿のおそろしくうまい料理をソースの一滴まで舐めつくすようにゆっくりしつこく池澤。敵の強さを骨身にしみるほど=山本周)。▼思いを味わう(情けない。時にはひもじい。心の皮膚がざらつくような日野。せっかく育ててきた芽がむしり取られるような円地。船酔いで地獄の=篠田)。▼味わわされる(絶望感を。うっとうしさを)。心行くまで味わいつくす。海苔のりの出来不出来を味わい分ける"山崎。注意深く匂いや舌触りを確かめながら飲む"小川。味覚に合う。舌が味覚を失う。味わいつくせぬ無上の物。かつて味わったことのない満足。今まで味わったことのない清冽せいな新鮮な興奮遠へ。▼玩味する(舌で。じっくり)。熟統玩味する。詩を享受する。▼賞翫処に、うする(赤絵の皿を。骨董品に心を。珍味を)。賞味する(サラダを。山海の珍味を。自然の妙を。肉を)。 **あまい【甘い】** 甘い(愛のささやき。味が舌を滑る。味をむさぼる。果実の香り。考えを捨てる。期待を抱く。気分に酔う。恋の言葉。汁を吸う。手口に乗る。夜を過ごす。哀愁が襲いかかる。香りが口いっぱいに広がる。幻想を打ち砕く。合意で妥協を図る。言葉に釣られる。想像をめぐらす。休臭が鼻をつく。花の香を吸い込む。見通しを立てる。化粧の香りに包まれる=山本周。詩的な結婚生活=瀬戸内。眠りが身体を包む"中沢。夢想が大きく破綻する=高橋和)。甘い(考えが。父親。浮き浮きとした甘い感覚。犯罪の甘い誘惑。ほのかな甘い香りが漂う。聞いていて耳が落ちるくらい甘い言葉=開高。砂糖に蜂蜜をかけたような甘い攻撃・高千穂。硬ばった表情を崩しとろけそうなほど甘い笑顔になる贅沢。彫りの深い甘い顔立ち=つか。湯上がりの甘い体臭"中村貞。おそろしく甘いのに閉口する"阿部。甘い匂いが(鼻をくすぐる。どこからともなく漂ってくる=平岩)。これで帰れるのかなあ、なんて儚ゅかい希望を抱いたんだけど、もちろん甘かった三浦し。甘く(潤んだ目つき。見くびる)。山を甘く見る。恋人同士が甘く戯れる。耳元で甘くささやく。気が甘く降りてくる!古井。世の中を甘く考える=丹羽。 <40> 点を甘くする。甘々しい香り。甘々しく余韻の尾をひいた音=藤枝。甘口の(酒。味噌)。設定が甘すぎる。甘っちょろい(男。考え)。甘みが(足りない。残る)。全体に甘みが浸みこむ。焼けるような甘味で舌に額もちを当てる荻野。甘めに(採点する。評価する)。甘めの料理。甘やかな(快美感。口づけ。情景。吐息が頬にかかる)。恥じらいを含んだ甘い声。甘い声を悩ましげに聞かされる=和久。甘い響きを持った女の声夢枕。甘くすみ透った高い声=原田彦。少し舌にもつれる甘たるい声古井。鼻にかかったような甘ったるい声の持ち主=和久。濃い砂糖水のような声"江阔。甘党。甘いものに目がない!内田森。羊羹いを二本ぺろりと食べる=瀬戸内。 **あまさ【甘さ】** ▼甘さ(さわやかな。上品な。程のよい。・クッキーのさくさくと拡散していく荻野。チョコのねっとり絡みつく荻野)。甘さが口に広がる。口の中に甘さが残る。お互いの過去を愛撫しあうみたいな甘さはまるでない古井。甘さを抑えた上品な味。卵れ合った甘さを感じる。脇の甘さを思い知らされる。 **あまずっぱい【甘酸っぱい】** 甘酸っぱい(味。香り。果肉。感傷。ジャム。女の体臭が漂い出る=藤本。笑いを胸に溜める=円地)。▼甘酸っぱい(聚必っの白い果肉が林檎うんに似てさくさくと黒井。胸の奥がちょっと内館)。胸が甘酸っぱい気分。汗ばんだ甘酸っぱい匂いが鼻腔がにへ流れ入る=池波。金柑を氷砂糖で煮る甘酸っぱい匂い!向田。新婚時代の思い出が甘酸っぱく甦炊込ってくる!有吉。甘酸っぱくてしっとりした重みのあるいつまでも嗅いでいたくなるような田んぼのにおい三浦し。甘酸っぱいような喜び長崎。香水と腋臭仲もとが交じった甘酸っぱいようなほのかな匂い!谷崎。 **あまたるい【甘たるい】** 笑みの溢れそうな甘たるい目"二葉亭。気を許した女から聞かれるような甘たるい親しさがこもった声"有局。舌の廻らないような甘たるい口のきき方に永井荷。甘ったるい(味。笑顔を向ける。飲み物。花の香り)。 **いぶしぎん【燻し銀】** いぶし銀の魅力を放つ。空がボウッといぶし銀のように明るむ=宇野利。白髪がいぶし銀のように清々け悩しく光る=本庄。いぶし銀を思わせる(芸。文章。技)。 **いみありげ【意味ありげ】** 意味ありげな(視線を投げる。台詞を吐く。笑みを口の端に浮かべる=横山。言葉ではぐらかされる=石川)。目に意味ありげな微笑をふくませる=連城。意味ありげに顔を見合わせる久米。わざと意味ありげに言う。子細ありげな口ぶり。子細ありげに呼びかける。意味深長な(会釈を交わす。間合いをとる)。意味深長に返事を躊躇5,する宮本直。意味深な(ムードが漂う。笑みを浮かべる)。含みがありげな口ぶり“松本。言葉に含みが加わる。含みの多い表現。含みのある(言葉。返事)。含みを持たせる言い方。 **うまい【美味い】** うまい(酒をたっぷりと飲む。物を頂いっぱい食べる)。▼うまい(あの店の料理なら間違いなく。腸がさに沁しみるほど舟橋。半乾きの粗い小魚の味が舌に媚びるように=極)。天ぷらのうまい店を見つける。気のおけない古い友人と飲む酒ほどうまいものはない!藤沢。のどが鳴るほどうまい食べ物住井。美味い井戸水を心ゆくまで飲む村上巻。うまいと評判のラーメン屋。口の中でとろけるうまさ。うまさがのどに未練げに残る味!吉村。空気のうまさを満喫する。見るからにうまそう。併を焼くうまそうな匂い。鼻の先にうまそうな匂いをぷんぷんさせる=里見。うまそうに煙草をふかす。弁当をうまそうに頬張る。いかにもうまそうにごくんごくんと咽喉のとを鳴らして飲む!舟橋。味噌汁をうまそうに殴すする古井。ねっとりと舌に絡みつくほどのうまみ檀。頬っぺたが落ちやしないかとおそれる=井上ひ。 **おいしい【美味しい】** おいしい(お茶を飲む。蜜に群がる。料理を楽しむ。コーヒーを飲む)。美味しい(うどんのおだしが鍋を空にするくらい=田辺。腰が抜けるほど=井上ひ)。おいしい(料理がそこそこに。おじやが空っぽの胃にしみ渡るように内館。舌を鳴らすほど開高。気持ちよく盃を交わす酒が、仙人が飲んだという不老不死の酒もかくやと思われるほど白洲。よだれが出るくらい灰谷)。田舎風においしく料理する。遺物がおいしく漬かる。舌がとろけるおいしさ=辺見。おいしそうな匂いが広がる。おいしそうに(ビールを飲む。目を細める。肉を口にほうりこむ)。顎が落ちる。行ける(味。料理)。思わず唾をのみこむ萩原爽。舌が踊り胃袋が歌いだす辺見。舌から厚い苔にけが落ちたような気がする=開高。舌に溶けるような風味の白魚"獅子。小粒な肉が舌にとろけるよう“吉村。頬が落ちるばかりの味獅子。何の(魚。フルーツ。野菜)。熟れる(味が。鮨すしが。漬物が。魚が酢に)。美食の限りを尽くす。美食をむさぼる。美味な料理。舌鼓を打つ(うまそうに。珍味佳肴がこに。美味に。料理に。ちょっちょっと)。舌鼓を鳴らす。 **かみしめる「【悩み締める】** ▼噛みしめる(嬉しい驚きを。孤独の深さを。気まずい沈欺を。一抹の寂しさを谷村。ささやかな幸せを重松。失恋の苦い味を=有吉。嫉妬らしい感情を苦々しく=筒井)。かみしめる(事柄の一つ一つをゆっくり小川。言葉の意味をゆっくりと若竹)。思いを噛みしめる(幸せな。愛俏半ばした。屈折したさまざまな=小林久)。文言の味を胸みしめているようなしばらくの時間が過ぎる=本庄。 **からい【辛い】** 山椒況しは小粒でもぴりりと辛い。食べると顔がじんじんして汗が吹き出してくるほど辛いカレー=平岩。辛口の(酒。味噌)。適度な辛さが疲れた体を気持ちよく刺激する=辺見。辛みが(きつい。足りない。強い)。 <41> **がんちく【含蓄】** 含蓄に富んだ(逸話。短評。比喩ひゅ)。含答のある(言葉。表現)。味わい深い文章。临烏塗りの味わい深い光沢=有吉。 **こく** 辛さにこくが出る。こってりとしてこくがある。こくのある(酒。文章。ワイン)。 **ことわざ【譲】** ことわざを引用する。古い厳を持ち出す舟橋。格言にいわく。格言を胸に刻みつける。▼警句(刺を含んだ。不正を戒める)。持って回った整句を口にする=矢作。寸鉄人を(殺す。刺すような批判)。羊頭狗肉はいくらの故事そのままの事件=畑村。故事に倣う。故事を引き合いに出す。 **しおからい【塩辛い】** 塩辛い(味つけ。空気。漬物。水。料理)。紙切れのような実が浮かんでいる塩っぽい味哈汁小林多。妄想の蒼白は泣い肥り肉ぃじりの中で塩つぼく微笑する=開高。舌を塩気でびりびり焼く重松。しょっぱい顔をする。口が曲がりそうなほどしょっぱいなみだ!長崎。 **しぶい【渋い】** 渋い(感じの建物。上質の背広。茶をいれる。筆致で書く。ヒットを打つ。顔をして舌打ちする。タイプに憧れる。微笑をちらっと浮かべる=山手)。道具類や部屋の造りがひと昔前の優雅なしぶい雰囲気"日野。小枝模様の渋い壁紙『宮本百。素朴ななかに渋い調和がある絵"高村光。腹にしみとおるような渋い声=半村。世の中の裏も表も知りつくしたような渋い面がまえ池波。渋い喉で(木造りを聞かせてくれる三浦灯。小唄を聞かせる=有吉)。顔立ちが渋く整っている。華麗なものを渋く着こなす=有吉。柿の渋。 **すっぱい【酸っぱい】** 酸っぱい(梅干し。味。香り。汁。ものを口に含んでいるように唇をすぼめる=高橋三)。口を酸っぱくする。口の中が酸っぱくなって百面相の稽古みたいになる夏蜜柑岭=福永。関係が酸っぱくなる。口に酸いものを入れられる。酸いも甘いも知り尽くす。酸っぱそうに眉を寄せる=檀。いかにも酸っぱそうに唾液をすすったり口を歪ゅがめたり井伏。酸いような(臭い。笑いで口元を歪める『宮本百)。こめかみに浸み徹るほどの酸味"檀。酸味が(つく。歯にしみる)。甘みと苦みと酸味のバランスがちょうどよくて瑞々しい野菜三浦し。レモンの酸味のようなさわやかな味のただよう表情=田辺。 **にがい【苦い】** 苦い(経験を重ねる。現実を知る。思いが胸の中に広がる。過去を清算する。罪の意識を覚える。薬でものみこんだような顔つきになる=池波。幻滅の底に落ち込む=中局致。自嘲が怒りのなかに混じる"小林久。嫉妬の色が濃く涨ひぇる=有鳥。ものでも吐き出すように言う。阿刀田)。言葉に苦い諦めがこもる。思い出すことさえ不快な苦い体験!有栖川。経験の苦い汁をたっぷりと味わう荻野。後悔に似た苦い思いを味わう三浦写。声に苦い後悔の響きがある内館。言葉に尽くしがたいほど苦い思い出!沢木。酸が増した胃液のように苦い思いが意識に分泌される野上。吐き気を覚え苦い胃液がこみあげてくる藤本。胸に苦い失望感が広がる=横山。予感の的中した苦い満足をなめる=開高。頬に苦い笑いが浮かぶ。苦く寂しく微笑する。同じ後悔を苦く繰り返す。良藥口に苦し。口の曲がるような苦さ。酸のまじったような苦さがこみ上げてくる=原田康。苦そうに顔をしかめる。ほろ苦い味が口の中で広がる。うかつさをほろ苦い思いで噛みしめる=西木。失ったものへの追想でほろ苦い感情にひたる=立原。青春はほろ苦い味がする宗田。ちょっぴりほろ苦い独特の風味」藤沢。 **にがみ【苦味】** 苦みが(舌先に残る。口中に広がるような不快感大沢)。後悔の苦みが胸の奥にある=重松。鮎のはらわたの高貴な苦みと塩味と淡白な肉がいっしょになって美味しい=田辺。苦味のきいたいい男=池波。苦みばしった端正な風貌。精悍她心な苦み走ったいい男=常盤。 **ねこじた【猫舌】** 猫舌が治る。猫舌に(悩む。熱いスープはつらい)。熱い物が苦手。 **はごたえ【歯応え】** 歯ごたえ(ソフトな。こりこりした。しこしこした。ぷりぷりした)。歯ごたえのある相手。バリバリと音のする快い歯応えの沢庵於从"高見厠。ひっそりと睡気曲もを誘うあたりの空気に呼び声が歯ごたえなく吸われるよう=武田爽。歯当たりが柔らかい。歯当たりの感触を楽しむ。歯触り(こりこりした。さくさくした。しこしこした。しゃりっとした)。しこしこした(うどん。ラーメン)。珍しい食感。舌触り(いい。悪い。なめらかな。まろやかな)。 **まずい【不味い】** 蠟っうのようにまずい遠藤。まずい夕飯を食べる。高くてまずい店。取り合わせの悪い材料を煮込んだ不味いスープのように耳が目茶苦茶になる=小川。せっかくの酒がまずくなる。話がはずんでいる間は料理のまずさも気にならぬほど時間の経過が早い!高橋和。見た目にまずそう。まずそうに(酒をあおる。食べる。飲む)。さしてうまい物ではない。香りが飛んだコーヒー落合。 **みつ【蜜】** 月の零こぼした蜜が庭草の中で珠をなす=長野。蜜に(蟻ぁり、磁石に鉄のように引きつける=荻野。群がる蜂のようにたくさんの男のファンがいる娘!石坂)。潮の香が濃い蜜になってやわらかく自然を包む=畑。甘い蜜を吸う。花から密を取る。頭の中が密をたっぷり吸い取った海綿体になる笹沢。手にした途端、蜜を滴らすほど熟した果実=長野。とめどもなく甘い蜜をしたたらせる成熟したからだ大庭。蜜のような(甘い言葉。誘惑)。夫婦の仲が蜜のように甘い=舟橋。めくるめく炎の抱挑で体が蜜のように溶けて流れていく=阿刀田。毒蜜のような誘惑の言葉をしりぞける=石坂。コーヒーに蜂蜜を入れる。匙ぶしで蜂蜜をすくって食べる。 <42> # 遊ぶ・じゃれる **あそび【遊び】** 無邪気な子供たちの遊び。最初から遊びと割り切る=佐野。遊びに(夢中になって興じる。もってこいの仲間)。子供を遊びに連れて行く。悪い遊びに取り憑っかれる。何もかも忘れて遊びにふける"中。遊びに行く(海外に。友達の家に。夜の街に。三日にあげず。時たま気晴らしに)。▼遊びに来る(友人が。お忍びで。しばしば。ちょいちょい。時々。毎日のように。三日にあげず)。▼遊びに出かける(いそいそ。家族連れで。盛り場へ)。▼遊びに出る(泊まりがけで。久しぶりにふらりと)。遊びの(味を覚える。につまる。計画を練る。輪の中に入る。輪を抜け出す。気分に浮き立ってはしゃぐ高樹)。ろくな遊びも知らない。遊び相手を(務める。連れて来る)。遊びがてら手伝いに来る。遊び癖が(つく。直らない)。しばらく鎮まっていた遊びぐせがぶりかえす。幸田文。遊び心で絵を始める。庶民の手軽な遊び場。近くに適当な遊び場がない。村には小さな雑木林が点在し子どもたちの格好の遊び場だった飯田。 **あそびあるく【遊び歩く】** ▼遊び歩く(のんべんだらりと。男とちゃらちゃら=筒井)。▼遊び回る(肩で風を切って藤田。毎日のようにつるんで『高橋克)。遊びまわる(子供たちが元気に。何が出るかわからないような暗がりの怖さを楽しみながら=飯田。派手な身なりをしてちゃらちゃらと“乃南)。夜遊びが(過ぎる。たたって仕事を休む)。夜っぴて遊び歩く。 **あそびくらす【遊び暮らす】** ▼遊び暮らす(長い春の日を。仕事もせずに。両親の嘆きをよそに。のんべんだらりと)。ぶらぶらと遊んで暮らす。やくざなひも同然に徒食する=船山。▼遊びほうける(のらくらと。夜遅くまで。勉強もしないで。まともに職につかず)。 **あそびにん【遊び人】** ▼遊び人(評判の悪い。吉原でちょっと名を売ったほどの藤沢)。軽薄な遊び人を演じる=佐々木。四十左右の遊び人風の男徳田。一文も身銭をきらずに他人の懐でばかり泳ぎ回る遊び手里見。 **あそぶ【遊ぶ】** ▼遊ぶ(心が夢の国に。善悪の彼岸に。水鳥が湖に。無我の境地に。お手玉で。貝殻を弾いて。キャバレーで。夢中になって。夜を徹して。草地に牛や羊が。海で波乗りをして、面白いことをして。キャッチボールをして。就職の口なくぶらぶら。仲間が集まって。無軌道に屈託もなく。メルヘンの世界で。思い出の楽園で記憶を思う存分たわめて荻野。子どもが小犬のようにまつわりついて"石川)。大自然に遊ぶ動物、柳の枝に遊ぶ鶯いが。遊ぶ金に(困る。不自由しない)。▼世界に遊ぶ(空想の。漫画の)。昼日中からぶらぶら遊んでいる。▼遊ばせる(指先にキーを。目を遠くへ)。▼心を遊ばせる(桃源郷に。風雅の世界に。伸び伸び子供の)。とんと近頃は遊ばない。手が遊んでいない。遊んでいる暇はない。ふっつりと女遊びをしなくなる。 **いたずら【悪戯】** 悪戯(他意のない。手の込んだ。夢のある。はっとさせられるほど天才的な泉受)。垂れ込みを装ったいたずら=佐伯。悪戯がばれる。運命の神は悪戯が好き"海音寺。悪戯で煙草を喫う。神の悪戯としか思えない"阿刀田。悪戯の過ぎた幼児を諭す。悪戯を(して見つけられそうになった子供が年長者に向かってするような微笑芥川。見つけられた子どものように肩をすくめる落合)。運命が不思議ないたずらをする“有局。楽しい悪戯を思いついた子供のように目がキラキラ光る=辻井。戯れ(運命の。子供じみた。とめどなく動く波の。瞬間に消え去るはかない美しい光の線の"石坂)。守るにも及ばない戯れの約束=佐藤春。悪い悪戯(趣味の。たちの)。▼悪戯する(何の気なしに。女の子を酔わせて=東野。子どもが地金を出してかなり小沼)。悪戯じみた考え。目のくりくりしたいたずらそうな少年=長崎。悪戯っぽい(顔で言う。目を向ける。笑みを浮かべる)。眼の奥で悪戯っぽい光が動く。斎藤栄。悪戯っぽく(片目をつぶる。肩をすくめる。首をすくめる。ウインクを送る。舌先をちろりと覗のマかせる。小首を傾かしげてみせる=乃南)。瞳が悪戯っぽく輝く=城山。指先を筆にしてテーブルにいたずら書きをする=井上ひ。いたずら描きをしたような細く短い髭ぃ!"石坂。悪戯心が(芽生える。ふと顔をのぞかせる)。悪戯さかりの子供。悪戯電話(悪質な。不快な。心ない)。悪戯電話に悩まされる。悪さを(働く。見答悩とめられて逆切れする=角田)。 **おもちゃ【玩具】** 子供が玩具に熱中する。子供が大事な玩具を取りあげられそうになったように情けなく悲しくなる=原田康。色とりどりの装いで部屋の中はおもちゃ箱でもぶちまけたように華やか"石坂。おもちゃ箱を引っ繰り返した雑然さ=島尾。オモチャ箱をひっくり返したようなドンチャン騒ぎ=坂口。かわいいおもちゃのような足袋たが壺井。オモチャのようなたわいもない関係=坂口。玩具のような小さなそろばん=長塚。ミニカーほどの大きさの玩具のような河豚、ぐ向田。玩具のように(小さな長靴。幼稚な機械)。バネじかけで動くブリキ細工のオモチャのようにギクシャクと羽を動かす為"本多勝。甘ったるいおもちゃみたいな言葉"小川。青と赤の玩具のような小蟹にが中島敦。艦艇が小さく小さく玩具のように海上に置かれてある=武田発。 **かんらくがい【歓楽街】** 歓楽街の妖しい魅力にからめとられる!大原。歓楽街をほっつき歩く。歓楽街一帯に呪にらみをきかせる=佐々木。歓楽の巻き。こみ こみした欲楽の町。ネオン街に足を踏み入れる。 **げいしゃ【芸者】** 芸者(花柳界で鳴らした。女らしさを売り物にする=瀬戸内。引く手あまたの人気役者を色にしている押しも押されもせぬ"永井荷)。芸者が座敷に出る。芸者と呪怨じいになる。芸者の世界に身を置く。絵草紙から抜け出てきたような辰巳芸者=柴田鈍。芸妓討ぃが美しい柳眉をひそめる柴田側。小股の切れ上がった色っぽい芸妓"瀬戸内。美妓がきに囲まれる。美妓を(座敷に呼ぶ。侍らせる)。芸者を揚げる。褸っきを取る。左棲だ』を取る。 **ゲーム** 運の要素が入り込むゲーム奏。ゲームが(終盤を迎える。始まる)。ゲームに熱中する。ゲームの虜と」になる。ゲーム感覚で仕事をする。さすが女同士だけあって思いつく罰ゲームがえげつない“有川。夢と記憶の連想ゲームのような色合いの強い作品叩永倉。勝負事が大嫌い。勝負事におぼれる。 **ごらく【娯楽】** 大衆向けの娯楽。娯楽に事欠かない。娯楽の要素に乏しい街。日常生活の小さな娯楽を追い求める=中村典。良質な娯楽作品。娯楽的な読み物。エンターテインメントに徹する。エンターテインメントを楽しむ。 **じゃれる** じゃれる(子供が。猫が胸まりに)。じゃれつく(犬が。猫が足元に。無邪気な子供のように辿城)。じゃらす(小犬を。猫を)。嬉々ミミとして子犬と戯れる。いちゃつく(恋人同士が。女房と。陰に隠れてこそこそと。ソファーの上で)。いちゃいちゃする(アベックが。恋人と。女房と)。▼ふざける(無邪気に。悪戯心讼っぽく。友達と)しふざけた目でにらむ。 **つみき【積み木】** 積み木の塔を壊すときの快感。若竹。自然の暴威の前に積み木の家のように崩れた大邸宅=獅子。積み木のように組み立てては壊す高村応。農耕地の間に点在する文化住宅が積み木のような彩りで置かれてある武田奈。 **てなぐさみ【手慰み】** 手慰みに(鉛筆を転がす。興ずる。いろいろな草花を植える)。手慰みの芸。手すさびで絵を描く。 **どうらく【道楽】** 趣味と実益を兼ねた道楽。道楽がすぎる。道楽と仕事を区別する。道楽に(没頭する。憂き身をやつす)。道楽の(限りを尽くす。水をくぐる)。根が道楽の酒好き=田山。働きづめで何一つ道楽もない=浅田。さんざん道楽をする。昔の夢につながるささやかな道楽を始める=北。道楽放蕩いうを慎む。道楽息子に困り抜く。道楽者の(なれの果て。名を博する)。 **ままごと** ままごとに熱中している女の子のようにはしゃぐ三田。ままことのような(つましい日々。恋があっけなく終わる藤沢)。いわばままごとのようなつきあい戸板。ままことみたいな同棲をする=鴦沢。ままごと遊びの道具を買い与える。 **まんげきょう【万華鏡】** 熱帯の海で泳ぐ魚の群れが万華鏡のような華やかさ"中島敦。子供が百色眼鏡を覗き込んだように目じろぎもしない憧れの心持ちで眺め入る=佐藤春。 **ゆうえんち【遊園地】** 遊園地が人でごった返す。子供を遊園地に連れていく。観覧車に乗る。ジェットコースターが降下を始める。 **ゆうかく【遊郭】** 遊郭に(繰り出す。売り飛ばされる)。悪所の風に染まる=藤沢。温柔郷の歓楽。飾り窓の女を見物する=松本。大小約二百軒の楼が川水に傘をひろげたように軒端を映してならんでいる水上。私娼し礼を置いた場所を岡場所という隆。長幼の序列にやかましい花柳界。花柳の巷さまに(沈湎妨从する。足を踏み入れる)。狄斜の(地。巷)。妓楼だぅで身を売る。扉がるの水に慣れる。扉へ身売りをする。紅灯の巷。脂粉の巷。 **ゆうぎ【遊戯】** 無駄な言葉の遊戯から逃れる。子供のような熱心さで遊戯に忙ふける佐藤巻。頬を桃色にほてらせ遊戯に熱中した子供のように呟く=武田炎。小学生たちが遊戯をする。小学生の遊戯のようにはしゃいで踊る=川端。 **ゆうきょう【遊興】** 飲めや歌、えと日夜の遊興=子母沢。遊興にふける。財産を遊興に遊尽にらする辻井。遊興の味を覚える。女色に耽ょぃつて遊び暮らす!舟橋。お茶屋を遊びまわる。逸楽に(ふける。身を委ねる)。芸者遊びがたたって倒産する=中上。茶屋酒に溺れる。茶屋酒を飲み慣れる。船宿で水茶屋の女と忍びあう柴田剣。管絃詩歌の遊楽を事とする=萩原则。 **ゆうじょ【遊女】** 崩れた感じの遊女。激戦を前にした戦場に遊女が狩り出される『舟橋。岡場所の遊女を身請けする=北原。金と引き替えに男にからだを売る=向田。苦界に身を沈める。紅灯の悲さまの女。白首の女。春をひさぐ。見も知らない人様の慰み物になる=川端。喉首から肩まで水日粉以げ油を塗ったお女郎さん=武田瓦。あらゆる男性を悩殺した傾城"山田展。うまっま傾城にもてあそばれてうれしがる=坂口。傾国倾城の嘆きを見る=舟橋。娼婦に転落する。一介の娼婦に成り下がる。私娼し礼に身を落とす。娼妓儿に身をやつす。娼妓を買いに行く。遊郭で娼妓をする。 **ゆうとう【遊蕩】** 遊蕩にふける。遊蕩の(味を覚える。限りを尽くす)。遊蕩三昧に過ごす。花柳の巷まに大金を捨てる=幸田露。淫蕩、礼な(男、女)。淫蕩にふける。淫蕩の血を嫌悪する。言語に絶した淫蕩の生活"中島多。放埒淫蕩児らもうを尽くす。放蕩うの(味を覚える。血を持つ)。放蕩を尽くした挙げ句文無しになる。放遊三味にふける。放蕩無頼の生活。 **わるふざけ【悪ふざけ】** ▼悪ふざけ(いやらしい。くだらない。子供っぽい。たわいのない)。悪ふざけが過ぎる。もはや悪ふざけとしてすまし得るものではない=椎名詞。悪ふざけの言葉に受け答えする。くだらない悪ふざけの文句“高見町。 <43> # 遊ぶ・じゃれる―13 **あ** **げいしゃ【芸者】** 芸者(花柳界で鳴らした。女らしさを売り物にする=瀬戸内。引く手あまたの人気役者を色にしている押しも押されもせぬ"永井荷)。芸者が座敷に出る。芸者と呪怨じいになる。芸者の世界に身を置く。絵草紙から抜け出てきたような辰巳芸者=柴田鈍。芸妓討ぃが美しい柳眉をひそめる柴田側。小股の切れ上がった色っぽい芸妓"瀬戸内。美妓がきに囲まれる。美妓を(座敷に呼ぶ。侍らせる)。芸者を揚げる。褛っきを取る。左棲だ』を取る。 **ゲーム** 運の要素が入り込むゲーム奏。ゲームが(終盤を迎える。始まる)。ゲームに熱中する。ゲームの虜と」になる。ゲーム感覚で仕事をする。さすが女同士だけあって思いつく罰ゲームがえげつない“有川。夢と記憶の連想ゲームのような色合いの強い作品叩永倉。勝負事が大嫌い。勝負事におぼれる。 **ごらく【娯楽】** 大衆向けの娯楽。娯楽に事欠かない。娯楽の要素に乏しい街。日常生活の小さな娯楽を追い求める=中村典。良質な娯楽作品。娯楽的な読み物。エンターテインメントに徹する。エンターテインメントを楽しむ。 **じゃれる** じゃれる(子供が。猫が胸まりに)。じゃれつく(犬が。猫が足元に。無邪気な子供のように辿城)。じゃらす(小犬を。猫を)。嬉々ミミとして子犬と戯れる。いちゃつく(恋人同士が。女房と。陰に隠れてこそこそと。ソファーの上で)。いちゃいちゃする(アベックが。恋人と。女房と)。▼ふざける(無邪気に。悪戯心讼っぽく。友達と)しふざけた目でにらむ。 **つみき【積み木】** 積み木の塔を壊すときの快感。若竹。自然の暴威の前に積み木の家のように崩れた大邸宅=獅子。積み木のように組み立てては壊す高村応。農耕地の間に点在する文化住宅が積み木のような彩りで置かれてある武田奈。 **てなぐさみ【手慰み】** 手慰みに(鉛筆を転がす。興ずる。いろいろな草花を植える)。手慰みの芸。手すさびで絵を描く。 **どうらく【道楽】** 趣味と実益を兼ねた道楽。道楽がすどうらくきる。道楽と仕事を区別する。道楽に(没頭する。憂き身をやつす)。道楽の(限りを尽くす。水をくぐる)。根が道楽の酒好き=田山。働きづめで何一つ道楽もない=浅田。さんざん道楽をする。昔の夢につながるささやかな道楽を始める=北。道楽放蕩いうを慎む。道楽息子に困り抜く。道楽者の(なれの果て。名を博する)。 **ままごと** ままごとに熱中している女の子のようにはしゃぐ三田。ままことのような(つましい日々。恋があっけなく終わる藤沢)。いわばままごとのようなつきあい戸板。ままことみたいな同棲をする=鴦沢。ままごと遊びの道具を買い与える。 **まんげきょう【万華鏡】** 熱帯の海で泳ぐ魚の群れが万華鏡のような華やかさ"中島敦。子供が百色眼鏡を覗き込んだように目じろぎもしない憧れの心持ちで眺め入る=佐藤春。 **ゆうえんち【遊園地】** 遊園地が人でごった返す。子供を遊園地に連れていく。観覧車に乗る。ジェットコースターが降下を始める。 **ゆうかく【遊郭】** 遊郭に(繰り出す。売り飛ばされる)。悪所の風に染まる=藤沢。温柔郷の歓楽。飾り窓の女を見物する=松本。大小約二百軒の楼が川水に傘をひろげたように軒端を映してならんでいる水上。私娼し礼を置いた場所を岡場所という隆。長幼の序列にやかましい花柳界。花柳の巷さまに(沈湎妨从する。足を踏み入れる)。狄斜の(地。巷)。妓楼だぅで身を売る。扉がるの水に慣れる。扉へ身売りをする。紅灯の巷。脂粉の巷。 **ゆうぎ【遊戲】** 無駄な言葉の遊戯から逃れる。子供のような熱心さで遊戯に忙ふける佐藤巻。頬を桃色にほてらせ遊戯に熱中した子供のように呟く=武田炎。小学生たちが遊戯をする。小学生の遊戯のようにはしゃいで踊る=川端。 **ゆうきょう【遊興】** 飲めや歌、えと日夜の遊興=子母沢。遊興にふける。財産を遊興に遊尽にらする辻井。遊興の味を覚える。女色に耽ょぃつて遊び暮らす!舟橋。お茶屋を遊びまわる。逸楽に(ふける。身を委ねる)。芸者遊びがたたって倒産する=中上。茶屋酒に溺れる。茶屋酒を飲み慣れる。船宿で水茶屋の女と忍びあう柴田剣。管絃詩歌の遊楽を事とする=萩原则。 **ゆうじょ【遊女】** 崩れた感じの遊女。激戦を前にした戦場に遊女が狩り出される『舟橋。岡場所の遊女を身請けする=北原。金と引き替えに男にからだを売る=向田。苦界に身を沈める。紅灯の悲さまの女。白首の女。春をひさぐ。見も知らない人様の慰み物になる=川端。喉首から肩まで水日粉以げ油を塗ったお女郎さん=武田瓦。あらゆる男性を悩殺した傾城"山田展。うまっま傾城にもてあそばれてうれしがる=坂口。傾国倾城の嘆きを見る=舟橋。娼婦に転落する。一介の娼婦に成り下がる。私娼し礼に身を落とす。娼妓儿に身をやつす。娼妓を買いに行く。遊郭で娼妓をする。 **ゆうとう【遊湯】** 遊蕩にふける。遊蕩の(味を覚える。限りを尽くす)。遊蕩三昧に過ごす。花柳の巷まに大金を捨てる=幸田露。淫蕩、礼な(男、女)。淫蕩にふける。淫蕩の血を嫌悪する。言語に絶した淫蕩の生活"中島多。放埒淫蕩児らもうを尽くす。放蕩うの(味を覚える。血を持つ)。放蕩を尽くした挙げ句文無しになる。放遊三味にふける。放蕩無頼の生活。 **わるふざけ【悪ふざけ】** ▼悪ふざけ(いやらしい。くだらない。子供っぽい。たわいのない)。悪ふざけが過ぎる。もはや悪ふざけとしてすまし得るものではない=椎名詞。悪ふざけの言葉に受け答えする。くだらない悪ふざけの文句“高見町。 <44> # 与える・配る **あ** **あくえいきょう【悪影響】** 悪影響が(懸念される。避けられない。出る。広がる)。悪影響を最小限にとどめる。社会に悪影響をもたらす。他の社員に悪影響を及ぼす。夫婦問のトラブルが子供に悪影響を与える"畑村。 **あけわたす【明け渡す」** ▼明け渡す(家を。王座を。政権を。テーブルを。母の座を。部屋を。店を。持ち場を)。明け渡しを(迫る。要求する)。明け払う(家を。下宿を。部屋を。屋敷を)。 **あたえない【与えない】** ▼与えない(磨こうも不愉快を。非難の口実を。ろくに食物も。立ち直るきっかけを。一言の抗弁をする余地も=村上元)。毛ほどの傷も与えることができない。天は二物を与えず。びた一文やらない。 **あたえられる【与えられる】** ▼与えられる(昇進の機会を。あらかじめ予備知識を。思いがけない大役を藤原)。与えられた(人生を符一杯生きる。仕事の責任は生真面目に果たす奥泉。仕事を堅実にやり遂げる佐野。任務に忠実に取り組む=胡桃沢)。甘んじて外部から与えられた地位に安住する"久米。自分の器にふさわしい人生を与えられたと感謝する=高井。せっかく与えられた自由を内輪の揉もめ事で賛する"石坂。所与の(意味。条件。前提)。 **あたえる【与える】** ▼与える(強烈な印象を。現状に解釈を。十分な旅費を。神経に刺激を。人生に彩りを。生活に潤いを。他国に害を。強い感銘を。人に苦痛を。部下に訓示を。弁明の機会を。頬に一撃を。眉唾の感を。欲望に満足を。感動を読後に。心に癒しがたい傷を。自然環境にダメージを。周囲に圧迫感を。調査の進展に方向を。てきぱきと指示を。天に代わって罰を。何がしかの金を。何やかやと助言を。人間に生きる力を。経済的打撃を企業に。金銀を惜しみなく。相手に付け入れられる隙を=高木。精神に救いがたい打撃を森村。とっつきにくい印象を人に=田辺)。買い与える(菓子を。玩具を。背広を)。貸し与える(金を。書物を)。投げ与える(何を。お金を)。▼あてがう(馬に飼い葉を。ひと部屋ずつを。よりすぐりの美女を豊田)。▼及ぼす(人体に害毒を。界を主家に。心理的に効果を。世論に影響力を)。負わせる(相手に怪我を。心理に重荷を)。▼傷を負わせる(体に。精神に)。勲章を下賜する。課す(苛酷な税を。守秘義務を。罰を)。養分を給与する。▼供与する(技術を。借款を。武器を。便宜を)。死亡診断書を遺族に交付する。過わす(杯を。書面を。褒美を)。▼発給する(ビザを。旅券を)。付与する(可能性を。全権を)。恵む(金を。食事を。食べ物を)。人に物を上げる。▼利する(社会を。敵を)。やらずもがなの(失点を喫する。一点を献上する。追加点を与えてしまう)。 **えいきょう【影響】** 影響が(広範囲に及ぶ。徐々に現れる。全国に波及する)。今後に及ぼす影響に思い及ぶ。影響の(有無を確かめる。拡大が懸念される)。影響は案外少ない。大勢に影響はない。何の影響も及ぼさない。影響を(最小限に食い止める。まともに受ける)。社会に及ぼす影響を考慮する。互いに影響を及ほし合う。▼影響を与える(士気に。心証に。生徒に。人々に)。私生活の乱れが出世に影響する筒井。影響下に置く。政府に対して隠然たる影響力を持つなかにし。世論に相当の影響力をおよぼす“五木。金融恐慌のあおりを受けて倒産する。事件のあおりを食らって失脚する。不景気のあおりをまともに食らい予算と人員を削られる三浦し。▼かぶれる(外国文化に。迷信に)。問題発言の波紋が広がる。事件が波紋を広げる。▼響く(後々の計画に。全軍の士気に。座り続けが腰に)。騒ぎの余波が収まる。▼左右される(巡に。気分に。偶然に。個人的な成管に。需要と供給の変動に。致死量はもっぱら体重に。人生なんてほんのちょっとしたことで=結城)。海外の動向に左右されやすい。景気に左右されない必害吧。 **おくりもの【贈り物】** ▼贈り物(ひねりの利いた。真心のこもった。思きせがましい豪華な高橋和)。愛しい贈りものが蜜より濃い匂いを放って彼を招く=黒井。贈り物の意味がのみこめる。ほんのお印。手向たらけの言葉。はなむけの言葉。紅白の水引をかける。付け届けのお歳暮。お歳暮を贈る。進物用に包装する。進物を届ける。のし紙に寸志と書く。餞別代わりににお愛想を言う。餞別にする(お金を。言葉を)。付け届けを贈る。盆暮れに付け届けを欠かさない。熨斗袋のんぶを玄関先に置く。ささやかなはなむけを贈る。引き出物(結婚式の。法事の)。お年玉のぽち袋を差し出す。貢ぎ物を捧げる。▼プレゼント(クリスマスの。誕生日の)。金がブレゼントに消えて行く。これ見よがしに置かれたプレゼントの包み佐藤愛。プレゼントする(本を。指輪を)。 **おくる【贈る】** ▼贈る(金一封を。賞賛の拍手を。入学祝いに万年筆を。はなむけの言葉を)。遺贈する(現金を。館を。息子に。娘に)。▼贈呈する(記念品を。賞金を。花束を)。盆暮れの贈答。財産を贈与する。貢ぐ(男に金を。女に。若い男に入れ上げて売り上げを片っ端から=五木)。 **おさめる【納める】** 納める税金を。年貢を)。▼完納する(授業料を。税金を。割り当てを)。追納する(保険料を。料金を)。納付する(課徴金を。税を)。▼物納する(税金を。土地を。不動産を)。分納する(授業料を。税金を)。上納する(税金を。年責を。国に。政府に。暴力団に。売り上げの二割を)。 <45> **与える・配る-14** **あ** **おりあう【折り合う】** ▼折り合う(与野党が。円満に。巧みに)。うまく折り合いがつかない。額の折り合いがつく。兄嫁と両親の折り合いがあまりよくない=石坂。姑というとの折り合いがうまく行かず離婚する"井上ひ。折り合いが悪い(継父との。姑との)。息子夫婦と折り合いをつけて暮らす藤沢。値段の折り合いをつける。 **かんか【感化】** 感化を受ける。生い立ちや環境の空気が感化を与えたのかも知れない谷崎。▼感化する(子弟を。周囲を)。▼感化される(環境に。友人に)。麻の中の遂むも。朱に交われば赤くなる。蒸染や似する(社会を。読者を。思想に)。師に親炙し〜する。 **ぎせい【犠牲】** 多大な犠牲が払われる。利己心と犠牲という相反する価値観。おのれを犠牲にして他を救う英雄的な人々=中野美。身を空しく犠牲にするような愚かな真似まね=長与。▼犠牲に供する(生活を。人情を)。欲望の犠牲になる。犠牲になった方々を悼む。犠牲の多さに閉口する。多少の犠牲はやむを得ない"かんべ。犠牲を(国民にしわ寄せする。労働者に押し付ける)。いかなる犠牲を払っても実現させる。理不尽な犠牲を強いられる。犠牲を払う(大きな。多くの)。▶犠牲にする(家庭生活を。生涯の大半を。余暇を)。つまらない犠牲心を発揮する"太宰。謙虚な自己放棄の犠牲的な愛瀬戸内。生け贄として(捧げる。供える。血祭りにあげる)。人柱を(捧げる。立てる)。娘を人身御供ごとに(捧げる。差し出す)。犠牲者の(霊に祈る。遺族に配慮する。数を最小限にとどめる。ために黙臓(する)。犠牲者を(悼む。慰霊する。弔う)。犠牲者を出す(相当数の。多数の)。犠牲者が跡を絶たない!寺田。余計な犠牲者が出ることを恐れる=徳水。▼捨て石になる(新天地開拓の。民族独立の。新しい世の中をつくる=船山)。海中に捨て石を入れる。 **きょうきゅう【供給】** 供給(過剰に陥る。過多に陥る)。供給が需要に追いつかない。需要と供給の変動。供給する(製品を市場に。より安価に。原料を安定的に。農産物を消費者に)。需給が逼迫いにする。国内の需給が飽和状態に達する。需給を調整する。 **くばる【配る】** ▼配る(カードを。人気に神経を。ビラを。ブリントを。周りに視線を。バンフレットを。満遍なく名刺を。主賓が客に扇を=山本周)。▼気を配る(患者に。小さい子に)。心を配る(四方に。清潔さに。裏の裏まで)。▼注意を配る(顔色に絶えず。相手の目つきに)。手を配る(よい。悪い)。▼目を配る(あたり〈油断なく。笠の内から四方に『池波)。鋭い目を周囲に抜け目なくくばる=加賀。集配する(手紙を。文書を。郵便物を)。▼特配する(原料を。資材を)。米を配給する。▼配布する(印刷物を。調査票を。ビラを。ブリントを。文書を。各戸に。マニフェストを)。 **くわせる【食わせる】** ▼食わせる(当て身を。肩透かしを。しっぺ返しを。体当たりを。不意打ちを。待ちぼうけを。饅頭味えじを。飯を。頬に平手打ちを)。食わされる(抜き打ちを。冷や飯を。待ちぼうけを)。食らわす(あて身を。げんこつを。頭突きを。体当たりを。バンチを。肘鉄を。平手打ちを。頬にびんたを。腹立ち紛れにぼかりと一つ)。腹いせに一杯食わす。はったりをかます。かませる(突っ張りを。軽く一発)。くれる(馬に極もちを。刀にそりを。鋭い一瞥を。度々手紙を。猛然と体当たりを)。くれてやる(気前よく。のしをつけて)。 **ささげる【捧げる】** ▼捧げる(哀悼の誠を。一命を。技術に心魂を。研究に一生を。数別な愛を。慕前に花を。恋愛に純情を。供物を仏前に。魂を神様に。身も心も。家族のために身を。感謝の気持ちを)。祈りを捧げる(神明に。感謝の)。▼意を捧げる(感謝の。追悼の)。▶献上する(祝いの品を。巨額な金を。酒を)。神に捧げ物を奉る。お供えを包む。献じる(一灯を。良策を)。献納する(金を。米を)。供え物を(あげる。並べる)。玉串を奉奨する。▼献花する(遺影に。霊前に)。▼花を供える(祭壇に。墓に。霊前に)。▼奉納する(絵馬を神楽を。舞いを。神社に)。 **さしあげる【差し上げる】** ▼差し上げる(餞別を。手紙を。電話を。一献)。▼進ぜる(騎馬百騎を。金千枚を。粗茶を)。▼進手する(गु謝を。のしをつけて。先着二百名に粗品を)。▼奉る(あだ名を。建白書を)。▼呈上する(記念含品を。金十枚を。粗品を)。 **さしだす【差し出す】** 差し出す(現金が入った封筒を。ライターの火を。言われるままに。証拠物件として)。供出する(米を。武器を)。供出を割り当てる。献血に(応じる。協力する)。差しつける(お札を。コッブを。提灯訪にうを。猪口;~を)。叩きつける(上司に辞表を。絶縁状を。挑戦状を)。あらゆる資料を惜しげなく投げ出す。瀬戸内。 **さずける【授ける】** ▼授ける(教育を。知恵を。魔法の力を。奥義秘伝をあますところなく=中島敦)。等に叙する。授与する(栄典を。恩陽の時計を。学位を。卒業証書を。表形状を。文化勲挙を)。▼伝授する(極意を。段取りを。知識を。秘奥を。秘技を。秘術を)。 **しきゅう【支給】** 支給する(賞与を。食料を。生活費しきゅうを)。支給額が低い。支給額を引き上げる。給する(衣食を。扶持ふちを。米塩を)。給付する(年金を。補助金を)。給付金を受け取る。 **しゃれい【謝礼】** 謝礼の(額に不満を持つ。心積もりをしておく)。法外な謝礼を要求する。礼の上乗せを約束する。礼をする(相応の。たんまり)。礼金が手に入る。礼金百両の切り併を差し出す=柴田錬。礼金をたつぶりといただく=池波。 **じょうほ【譲歩】** 譲歩を(重ねる。余儀なくされる)。土壇場で譲歩を迫られる。▼譲歩する(主張を。反対派に)。 <46> **あ** **だきょう【妥協】** 妥協が成立する。妥協の道を模索する。人生は妥協の産物=阿川佐。嘘と妥協だらけのいやな関係"大佛。嘘と妥協を(積み重ねる。はなはだしく嫌う本多秋)。▼妥協する(あっさりと。現実と。しぶしぶ。折衷糸で)。妥協するのは本意ではない。敵と巧みに妥協して四畳半的にまとめあげる=坂口。妥協できる最低の線-篠田。妥協案を(受け入れる。探る)。世慣れた四十男の妥協的態度"武田泰。妥協的な精神の持ち主永井路。妥協しない(軽々しく。容易なことでは)。妥協できない気性。妥協の余地はない。全く妥協の余地を示さない=光瀬。下手な妥協はできない。妥協を許さない。 **つかみきん【掴み金】** ▼掴み金(何に使おうと自由な。使途を限定しない)。掴み金を握らせる。包み金を(持って訪れる。もらう。渡す)。 **ていきょう【提供】** ▼提供する(一夜の宿を。資金を。就労の場を。情様を。资料を。精神の禄を。判断材料を。話題を。笑いの種を。遺体を解剖に。ドラマに音楽を。輸血のための血液を。いい物を安く作って。人材を惜しみなく)。 **ていしゅつ【提出】** ▼提出する(会社に辞表を。学位論文を。疑問を。緊急動談を。建白書を。準備書面を。書類を。報告書を。法案を国会に)。奉呈する(祝辞を。上奏文を。親書を。信任状を)。 **てわたす【手渡す】** ▼手渡す(札を。写真を。タオルを。煙草を。各人に。直接)。▼手交する(計画書を。返答を。要書を)。 **はらいさげる【払い下げる】** ▼払い下げる(家財道具を。飛行機を。有償で)。下げ渡しを受ける。払い下げを受ける。 **ひきわたす【引き渡す】** ▼引き渡す(積み荷を。犯人を。捜査員に身柄を)。引き渡しに(協力する。応じられないと突っぱねる=船山)。 **ひとでにわたる【人手に渡る】** 人手に渡る(家屋敗が。生家が。土地も家も)。人手に渡った土地を買い戻す。他人の手に渡る。人手に渡す(家を。土地を。病院を。もらった金を。旅館を。右から左へ)。軽々しく他人の手に渡せない。意并。 **ぶんばい【分配】** 分配に差をつける。戦利品の分配をする。分配する(遺産を。獲物を。カルタの札を。利益を公平に。売上金を均等に)。▼配分する(財源を。食料を。役員の椅子を。予算を。均等に。重点的に。働きに応じた比率で"鈴木光)。 **ほどこす【施す】** ▼施す(美しい彫琢結いうを。応急処置を。大いに面目を。恩恵を。華麗な色彩を。訓練を。原文に修正を。細かい加筆を。小説的潤色を。丹念に刺繍しを。適切な教育を。ドアに錠を。特殊な細工を。肥料を。文章に注釈を。迷彩を。壁の隙間に目張りを。念入りに化粧を)。なぐるよりほかに手の施しようがない=室生。施しを受ける。飢えた者に緊急の施しをする"あさの。巡礼に御親謝を。報謝の念が厚い。 **ゆずらない【譲らない】** ▼譲らない(絶対に。双方互いに。相対峙はいたして。あくまで。一歩も。頑として。固辞して。断固として。思想の嵐に自分を=武者小路)。歩み寄りが期待できない。歩み寄りの余地がない。譲歩が難しい。一歩も譲歩しない。▼曲げない(自説を。断固節を)。譲ってはならない一線。▼後へは引けない(行きがかり上。今さら)。後へは引けぬ角突き合い"村上元。鍔競やはり合いみたいな押し問答高井。らちもない押し問答が続く。押し問答を繰り返す。押し問答する(さんざん。割った割らぬと=陳)。クレームがくる。納品書を(添える。同封する)。 **ゆずりわたす【譲り渡す】** ▼譲り渡す(株を。組を。政権を。宝物を。場所を。別荘を。店を娘夫婦に)。▼委譲する(権限を。交渉権を)。領土を割譲する。▼渡する(権利を。財産を。著作権を。持ち株を)。移譲する(行政事務を。業務を。財源を。所有権を。税源を。政権を平和的に)。 **ゆずる【譲る】** ▼譲る(椅子を。王の座を。位を。後進ゆずるに道を。首位の座を。席を。地位を。トップの座を。場所を。店の営業権を。店を。家督を息子に。土地を人に。店を知人に。一歩。百歩。降伏条件を大幅に)。一目置く。一歩譲らざるを得ない。譲り合いの(心。精神)。譲り合う(双方が。与野党が。席を。道を。互いに)。譲り合って問題を解決する。▼花を持たせる(勝利者に。最後の)。 **わけあたえる【分け与える】** 分け与える(獲物を。菜子を。米を。食禄を。粗食を。惜しみなく)。▼赋与する(象徴性を。何らかのイメージを)。分与する(漁業権を。権利を。相続財産を)。分かち与える(バンを。金銀財宝を惜しみなく=福水)。 **わたす【渡す】** ▼渡す(合鍵を。板で橋を。一通の封書を。引導を。原稿を。社長の座を。チップを。釣り銭を。手紙を。バトンを。花束を。プレゼントを。名刺を。メモを。リスト」を。ローブを。司直の手に。大切そうに。店を人手に。そっと。次の走者にたすきを。空へ七色の虹の糸を鈴木三。袱紗ぶくに包んだ金を池波。レストランの給仕が客にメニューを渡すときのようなうやうやしい手付きで大型の封筒を"西木)。多めに渡す(駄賃を。船員を)。鍵を渡す(部屋の。カウンター越しに)。渡さない(断固として。びた一文も。意地にかけても)。差し渡す(綱を。ローブを)。テープを張り渡す。引き渡す(綱を。慕を)。 **のうにゅう【納入】** 納入する(会費を。機械を。授業料を。注文品を)。注文品を納品する。納品先から譲歩して要求を入れる。譲歩すべしという気運が起こる=山本周。和平に向けての歩み寄り。歩み寄りの(姿勢を示す。余地がある)。問題を棚上げして歩み寄る。折れて出る(双方が。こちらから。根負けして)。 <47> # 新しい・古い **あ** **あたらしい【新しい】** 新しい(家に引っ越す。生活が始まる。段階に達する。一歩を踏み出す。ブランがいくつも浮かぶ)。身体の奥深いところから新しい力が湧いてくる=新田。心の中に新しい風が吹きこんでくる船戸。さながら新しい生活のきざしのようにテーブルに新しい食器が並ぶ"阿刀田。新しい時代が興り一切の価値批判が転回する萩原则。新しい時代の(胎動が始まる。流れに即応する)。新しく(設立した学校。発見された事実)。自分の人生を新しく切り開く野周。真新しい(下着をつける。スーツを着る)。改まる(年が。年号が)。新手の商売をする。一新する(気分が。生活を。面目を。考え方を根本的に)。人心の一新を図る。近作を目にする。最新の(設備を揃える。ファッションを欠かさずチェックする三浦し)。▼刷新する(経営陣を。人事を。人心を。政治を)。旧習に囚とらわれない斬新で個性的な発想"浅川。斬新な発想力を発揮する内橋。思いもよらなかったほどの所新な着想を得る=浅川。若い設計者たちの斬新な仕事#日野。新型の(機械。車両。インフルエンザ)。新規に(事業を始める。取引を始める)。新旧が入り交じる。新興の勢力を張る。新作が(完成する。待ち遠しい)。新作を(初演する。発表する。ひっさげてさっそうと登場する)。新式の(考え方。機械)。新種の商売。旧制から新制に切り替わる。新装なったばかりの工場。新品の背広を颯爽だらとまとう。内橋。新風が澎湃いいましもとして巻き起こる=檀。新味のある計画。社会に新来の宗教が浸透していく吉田。ホットな(ニュース。話題)。まっさらの(下着。浴衣)。新たな(一ページを加える。事態が発生する)。新たに(浮かんだ課題。証人が名乗り出る。容疑者が浮かぶ)。▼新たにする(思いを。決意を)。更新の頻度を増す。▼更新する(記録を。契約を。自己ベストを。ビザを。ブログを)。インテリアがモダンで洒落している=阿川佐。モダンな(住まい。レストラン)。 **いま【今】** 今(来た道を引き返す。持ち合わせがない。よみがえったような元気さ。見たように記憶に鮮やか檀)。いま目の前にあるようにおぼえている三浦絵。昔の光今いずこ。今が最後のチャンス。今とさして変わらない。今となっては誰にも分からない池澤。今ならまだ(間に合う。やり直せる)。今に(至るまで続いている。始まったわけではない)。さまざまな職業を経て今に至る。血筋を今に伝える。今の(稼業から足を洗う。境逃に甘んじる。仕事に十分満足している。時代に即して説く。時代にも通じる文章。道を逆に引き返す)。今の今噂をしたその人。▼今のうち(逃げるなら。行動を起こすなら)。今のうちから釘を刺しておく=和久。今のままで十分通用する。今は(すっかり落ち着いている。もう見る影もない)。今も(ありありと目に浮かぶ。衰えることなく続いている。鮮明に覚えている。手付かずのまま)。声が今も耳に残っている。真実は今も闇の中葵。今頃は(死んでいたかもしれない。手紙を受け取っているだろう)。今時(あまり聞かぬ話。はやらない言い回し)。いまどきそんな男もいるのね三島。今時珍しい(純情な娘。商売)。今風のしゃれた店。今回限りで手を引く。この際(贅沢だいは言わない。何もかもぶちまける)。今度という今度は(目がさめる。許さない)。 **いましも【今しも】** 今しも(動き出すところ。下りようとするところ。月が昇ってくる。飛び立とうとしているところ)。今まさに枝を離れようとする瞬叫。 **いろあせる【色褪せる】** ▼色あせる(娜きが。可能性に。陽に灼ゃけて。みるみるうちに皮膚の色が褐色に高橋知)。夢想が急速に色褪せる=東野。洗いざらしの粗末な着物。色が褪める。色あせた風俗画のように無味乾燥にしか映らない=円地。やや色褪せたような部ひなびた色合い!吉行。いまなお色あせない。▼褪色する(絵の具が。壁が)。褪せる(色香が。器量が。光沢が。才気が。艶が。熱意が。夏の緑の輝きが=日野。「青くさい感傷がセビア色に連城)。 **きゅうか【旧家】** ▼旧家(何代も続いた。この辺りでは有数の)。旧家が凋落らに、うする。旧家としての体面を保つ。旧家に(嫁ぐ。対する啟敬の念が残る若竹)。旧家の(出。当主)。由緒ある旧家のたたずまい!皆川。いかにも旧家らしい屋敷。 **きゅうがた【旧型】** 旧型の車が半病人のような咳せきをしながら走り去る=中局み。旧型を(改良する。中古で買う)。旧式きわまる手ぬるい方法・武田黍。旧式な心情の持ち主=阿部。旧式の測定器がお蔵入りとなる。 **きょう【今日】** 今日いっぱいで会社を退戦する。今日という今日はもう勘弁できない=加太。今日の暑さは格別。今日のところは(おとなしく引きさがる!鳥田。見て見ぬふりをする=東野)。二十年前の今日を思い起こす。今日このごろ(春まだ浅い。秋の気配が濃くなっている。家事に追われる)。是が非でも今日中にけりをつけたい!斎藤栄。今日日めったに手に入らない珍品。今日日の若い者。今朝がた聞いたニュース。 **きょうあす【今日明日】** 今日明日にも(片がつく。意識を回復するだろう)。今日明日の命。今日明日のうちに届ける。一両日中に(仕上げる。お返事をいただきたい)。 **げんざい【現在】** 現在の(生活に満足する。地位が危うくなる)。現行の(教科書。制度。法律)。現代に(通用する発想。至るまで読みつがれる)。 **げんじてん【現時点】** 現時点で(確認できない。計画を白紙に戻す)。 <48> # あ はない)。現時点では(明言を避ける。好転の兆しは見えない)。今のところ(結婚するつもりはない。好転のきっかけが見当たらない。これ一冊で間に合う)。女子の特殊防衛員は今のところ全国唯一の虎の子=有川。 **ここん【古今】**古今談者の等しく言うところ。古今の典籍を渉猟する。古フを通じて最大の事件。古今東西の(書物をあさる。不朽の典籍。美しい詩をそらんじる=曽野)。 **こっとう【骨董】**骨並に目が利く。骨董の世界に頭を突っ込む幸田露。骨董趣味の好事家だが。刑事が骨董品でも鑑賞するように死体を一瞥する=小池。皆から忘れられた骨董品の壺っはのようにそこに坐っている"小川。高価な書画骨董に凝る。古美術に凝る。古道具を(商う。買いあさる)。木製のアンティークな木棚。小ぎれいなアンティークの店。アンチックな装飾を施した電話機内田康。 **こてん【古典】**二十世紀の古典と目される。古典に流れる古人の心。古典の中の女性像のように記憶の中に眠る=中村真。古典的な(部類に属する。名著。膳が粛然と並ぶ"野上)。古典文学に親しむ。 **ことし【今年】**今年は(桜が遅い。雪が早い。梅雨の走りが早い)。今年限りで現役を引退する。今年度に探択されたブロジェクト。当年とって二十歳になる。年内に開通が予定される。 **こふう【古風】**古風でどっしりした書棚。子どもが和服を着て遊んでいてもおかしくないような古風でゆったりとした町灰谷。古風な(塗りの手鏡。二階建ての木造校舎。街のたたずまい。雅致に富む酒器「獅子。たたずまいのホテルリ高橋治。昔ながらの柄を好んで着る萩原焼。煉瓦建邺以ての建物"高橋和)。やや古風な因縁話めいた作品。生活全体が仏壇のように古風な伝統に満ちている宮本百。昔の集金人が持つような風な手提げ"小林信。古雅な趣を満たしている風景"横光。時代がかった古い背広。昔ながらに剛強素朴な武士気質を墨守する=海音寺。昔ながらの杉板の黒塀の家=灰谷。相変わらず昔ながらの風習。 **こんにち【今日】**今日に(生を受ける。通じる問題。至るもなお知る由ょしがない=今更)。精進して今日に及ぶ。初一念を今日まで守り通す。遂に今日まで鳴かず飛ばす"里見。 **じだいおくれ【時代遅れ】**要するに時代遅れということでしかない"加藤。あらゆる点で時代遅れが目立つ西木。時代遅れとなったやくざ仁義の如きものを純情一途に守り続ける"萩原朔。時代遅れの(慣行。規制。古臭いもの)。時代に合わない。前近代的な(制度。労働慣行)。色濃く封建制を残す。封建的な(家族制度。保守主義思想)。官学民卑の風潮。男尊女卑の(社会。弊習)。アナクロニズムに走る。時代錯誤の(主張。たわこと)。時代錯誤も甚だしい。 **しんきょうち【新境地】**新境地を開拓する。少女漫画に新境地を開く。新しい境地を開く。新しい分野にチャレンジする。新たな地平を切り開く。新生面を(切り開く。見せる)。新分野に(取り組む。乗り出す)。新分野を開拓する。 **しんじぎょう【新事業】**新事業から撤退する。新事業に打って出る。新事業を立ち上げる。▼新事業を始める(合弁で。社長の発起で)。新事業遂行の青信号が出る。一旗あげようと大陸に渡る。終戦のどさくさに一旗あげる。一旗組が命をかけてとびつく。ベンチャー企業を興す。 **しんしん【新進】**新進の(演出家。科学者。若手作家)。しんしん新進画家の絵を展覧会場のように並べた玄関"加賀。新進気鋭の(学者。教授。研究者。批評家)。新鋭の(科学評論家。作家)。 **しんじん【新人】**右も左もわからない新人。待望の新人が現れる。続々と先鋭な新人が出てくる"松本。新人の登竜門。ベテランと新人の共演。有能な新人を発見育成する"河盛。十年に一人という大型新人。新人賞に(応募する。ノミネートされる)。新人賞の候補に残る。新入りを(受け入れる。指導する。紹介する)。新参のメンバー。新星の出現を望む。新入生を歓迎する。新任教師として中学校に赴任する=池井戸。新任の(先生。大使を接受する)。新米の(カメラマン。教師。くせに生意気)。いやに生若い新米らしい巡査=志賀、警察に入りたてで右も左も分からない若竹。新顔(クラブの。店の)。新顔が(加わる。入る)。 **しんせいひん【新製品】**次から次へと新製品が現れる。新製品の(ラインアップ。開発に目の色を変えている=北村)。研究や改良の成果が新製品の大量生産に結びつく=高橋旬。新機種を発売する。 **しんせん【新鮮】**若々しい肉体が割られた果実のように新鮮機光。新鮮で(物珍しい光景。華やいだ雰囲気に乗り巻かれる=高橋三)。新鮮な(驚きに打たれる。空気を吸い込む。びちびちした肢体。魅力にあふれる小説。感動が心の中に拡がる=原田康)。取れ立ての新鮮な果物。今まで味わったことのない清冽な新鮮な興奮!遠藤。はじめて頬に当たるような新鮮な風=尾辻。若芽の放つ新鮮な匂い!宮部。新鮮味を失わない。明目をさまして顔を洗ったときのような心持ち=永井荷。生きのいい(語り口。魚。若者)。鮮度が(高い。低い)。フレッシュな(顔ぶれ。香り。感覚。社員)。 **しんてんち【新天地】**新天地が開ける。新天地に骨を埋める。新天地を求めて移住する。新天地開拓の捨て石となる。新たな天地を求める。 **しんにゅうしゃいん【新入社員】**▼新入社員(玉石混交の。大学を出たての)。新人社員のべいべい。新人社員を定着させる。社員(新入りの。新参の)。入社してまもない若い男"阿部。会社に入り立て。 **しんねん【新年】**新年の参賀に赴く。家族と一緒に新年を迎える。新しい年が明ける。新しい年に入る。暦が新しくなる。年の始め。改まった年を寿にとぐ。佳い年を迎える。▼年明け(希望に満ちた。雲行きが不安な不況下の)。審議が年明けから本格化する。 <49> # あ **せいしん【清新】**清新な(気風を吹き込む。空気を吸いこむ。気力がよみがえる=坂口。趣味に渇した人のように熱心に読む=田山。人道主義的作叩今更)。小さな清新な泉。清新の気を胸に抱く藤枝。楽壇に新風を送る。 **とうせい【当世】**当世の(風を断じる。若者)。当世風の(娘。モダンな店)。当世流の幸せ。当今の(政治情势。風潮。流行)。当節(はやりの服装。流行の言い方)。当代きっての名人。当代随一の(作家。名をほしいままにする)。当代無二の詩人。 **ふるい【古い】**古式な黒塗りの陳列台。古式に則る。旧正月に行われる古式の祭事"三島。古い(型の人間。殻を破る。記憶をたどる。苔蒸にぃした石碑。世代の人間。暖簾の店。物の考え方。椅子と机を廃棄処分にする。形にとらわれる。しきたりに生きる。セーターをほどく。辞書には作り手と使い手の言葉との格聞の跡が刻印されている三浦し。出来事のように遠く忘れ去る=島尾)。いまだに古い言い伝えを守る。閑静な古い住宅地。木立に囲まれた古い墓地。ずいぶん古い話。二束三文の古い機械。店の古い馴染なじみ。今にも崩れ落ちそうな古い六角堂福水。気のおけない古い友人と飲む酒ほどうまいものはない藤沢。ガラス戸が曇った古い鏡のようにぼんやりと姿を写す=島尾。城が残っている古い町大佛。年月が古い思い出を似ても似つかない美しいものに変える=大庭。変色した一枚の古い写真=味。ほんやりと古い記憶をたぐり寄せる=藤沢。名所旧蹟ぜい、うに恵まれた古い町"竹西。霊験あらたかな古いお宫やお寺=島尾。▼古い家(由緒ありげな。いまにも崩れそうな=日野)。古い記憶が(よみがえる。思いがけなく顔を出す〃小沼)。古い傷が(しくしくと痛むように思い出す=大庭。少しずつ癒されていく=宮尾)。二言目には古いと言われる=高井。歴史の古い(温泉。港)。古き郷絆にはから脱する。古き良き(時代。日々への郷愁。ものが復権する)。古くから伝わる伝説。苔の生えたような存在藤本。前世紀の遺物。古式ゆかしい行事。旧閉に属する(情報。話)。クラシックな(スタイル。嫁入り道具)。猫脚のクラシックなテーブル=藤田。古格旧例を取りやめる。古格な武士の規範"司馬。文字で書かれた最古の記録。蒼古に、うとした書物。蒼古な輝きを示す言葉=立原。微臭い神話を信奉する=海堂。古色蒼然だしもんたる(寺。墨痕)。古色蒼然とした木造の二階家=佐藤愛。古臭い(台詞を吐く。物の見方)。かびの生えた記憶=梶井。カビの生えた道徳・瀬戸内。微の生えそうなほど陳腐な欧羅巴出来にりがいの享受主義"中局救。 **ふるがお【古顔】**▼古顔(会の。クラブの)。古参の(先生。兵士)。古参を笠に着る。古株の(社員。先生)。古手の記者。 **ほやほや**ほやほや(生まれたての。しぼりたての。新婚。出来立ての。取れたての。習いたての。学校を出たての)。ほやほやの新人。しぼり立ての牛乳。とれとれ(嗲ぁじの。鰯いもの。鰹跡っの)。もぎ立ての(胡瓜10。果物。トマト。りんご)。 **ぼろ【襤褸】**すぐにボロの出そうな嘘=原田宗。ほろをぼろ出さないだけの周到な用意"立原。ほろっちい(家。車。ホテル)。くたくたになってぼろきれのようになる=松谷。なぐられてボロぎれのようになる=灰谷。鑑穫ぎれのように廃墟の町に放り出される高橋和。女をほろ屑くぅのように捨てる=石川。身も心もボロ屑のようになって寒々とした野っ原を前にうなだれる"高橋三。童貞を襤褸屑のように泥水の中に投げ捨てる"今更。ほろ屑のように殺される!安部。ぼろ布でも捨てるように追い出す=船戸。まだ健康が回復しないぼろ布のような身体・萩原葉。艦褸のように(うす汚い人間。俯伏ぶっして号泣する=柴田剣)。路傍の微穫のように無視する辻井。おんぼろの(家。車。自転車)。 **ふるびる【古びる】**▼古びる(壁が。箪笥たんが)。古びた(温泉宿。薬茸油らき屋根の家。紙の臭いが鼻をつく若竹。木箱のような粗末な汽車有吉)。草双紙にでも出てきそうな古びた店構え"獅子。檜訟のづくりの古びた浴槽"石坂。古ぼけた(黒い帽子。木造の建物)。赤いペンキの剥げかけた古ぼけた鳥居をくぐる三浦し。▼古ぼける(壁が。畳が)。油煙で古色をつける"高橋克。物寂びた(家。城下町)。▼老朽化する(家屋が。原発が。校舎が。橋が。船が)。 **ふるめかしい【古めかしい】**考え方がひどく古めかしい。古めかしい煉瓦焖んの建物。カビの生えた古めかしい小説の中の女みたいに扱う。富岡。書院風の造りの古めかしい荘重な部屋"松本。奈良か平安の昔のことのようななんとも古めかしい道具立て阿部。昔話を聞いているみたいに古めかしい話壺井。古めかしく見える洋服の着方"大佛。相当に時代がかった建物。昔流儀のやり方。大時代な(演技。台詞回り、し。ものの考え方)。頭脳誌たに徴がびが生える徳永。 **むかしふう【昔風】**昔風な言い方。作るのに手間のかかる昔風な田舎料理三浦町。復古主義を唱道する。復古調が強まる。復古調の表現。 **めあたらしい【目新しい】**目新しい(アイデア。変化。話題を仕入れる。ニュースを知らせに来るのが日課のように頻繁にやって来る萩原悲)。新奇な(工夫を凝らす。着想。服装)。耳新しい(言葉。事実。知識)。耳目に新しい。 **もっか【目下】**目下(慎重に人選中。調査している)。目下の(関心事。急務)。刻下の(急務。危機を切り抜ける)。 <50> # あせ【汗】 熱湯のような汗!山手。全身が汗びっしょりになる。汗が(糸を引く。目に入り痛い。じわっと肌に浮く。すっっと引いていく。全身から噴出する。だらだらと垂れる。油を塗ったように光る=中上。うっすらと肌を覆う中沢。体中をだらだら伝?桐野。じっとりと手のひらににじむ重松。背中をなめくじになって滑り落ちる=高橋凡。一筋こめかみに線を引く"横山)。体じゅうから汗が湧く。背に冷たい汗が流れ落ちる。額から流れる汗が目に入る。額に汗がきらめく。スポンジを絞ったように汗が出る=島田。背中にじくじくと汗がわく=原田宗。ちょっと歩くとすぐ汗が出るくらい暖かい日"子母沢。鼻の頭に玉の汗が米粒のようにのっている=角田。鼻の上にブツブツ汗が浮く=壺井。額ぎわに汗が光るほど神経をつかう幸田文。ひたいにぶっぷっと汗が吹いている=灰谷。汗が浮かぶ(首筋にうっすらと藤田。鼻の頭にボツボツと玉のような=志賀)。▼汗がしたたり落ちる(体じゅうから。雨後のしずくのように=飯田)。▼汗が滴る(ぼたぼたと。行水を浴びたように=山崎)。汗がにじみ出る(じんわり。額にじっとりと)。汗がにじむ(全身に。手のひらに。ねっとりと。べっとりと。額にうっすらと)。汗が吹き出す(全身から。どっと。首筋にじっとりと=黒井)。食べると顔がじんじんして汗が吹き出してくるほど辛いカレー=平岩。休じゅうの汗が一気に吹き出すに原田家。▼汗が噴き出る(全身に。とっと)。粟粒みみたいな汗が体中に噴き出る"宫本町。汗でねっとりと気持ちが悪い萩原葉。着物が汗でべとべとになる。シャツが汗でぐっしょりになる。体が汗でねとねとする。額に汗でへばりついた髪。わきの下が汗で湿る。手が汗でぬるぬると滑る=若竹。水を浴びたように全身が汗で濡れる荒巻。汗にまみれて働く。化粧が汗に崩れる。▼汗になる(ずくずくの。びっしょり体が)。▼汗に濡れる(髪が。体じゅうが。ぐっしょりと)。汗に濡れた体を拭く。汗のべたつきを一先ず我慢する=島尾。頭から汗の湯気が立つ芥川。髪の先に汗のしずくが下がっている=石田衣。汗を(額からぽたぽた垂らす。拭き拭きやって来る)。髪の生え際に汗をためる。袖で額の汗をぬぐう。毛の根が痒かゅくなるほどな汗を覚える=吉川。病後の疲労が粘るような汗を分泌させる=長塚。▼汗を浮かべる(顔に胆汁質な。苦痛で額に。鼻の先に。うっすらと)。汗を拭く(タオルで。手の甲で額の。ハンカチで首筋の)。汗のにおいを(恥じる。ぶんとさせる)。むっとするような若い汗の匂いが鼻をつく=黒岩。汗が額から(一筋落ちる。したたり落ちる)。額に(小豆を並べたような汗が浮いている=山岡。小粒な汗を噴き出させる=宮本部。細かい汗が帯のようにひろがる=小林久)。汗でしととになった体「瀬戸内。裸体がしとどの汗に濡れ、水をかけられたよう黒写。額に玉の汗が噴き出す“江戸川。目蓋様に玉になって汗がくっつく=中上。乱れた髪の毛ことに伝い落ちるかと思うように汗が玉をなして垂れる=長塚。砂金のように濃こまかく汗の玉が吹き出る=岡本。額に汗の(粒が浮かぶ。玉がびっしり浮かび上がる五木)。額の汗がほとりと落ちる=安部。額の汗を手の甲で拭う。汗が流れる。汗が(こめかみから頬を伝わって流れる=村山。滝のように身体に流れる=高橋三。玉をつくって流れる=宇野利。どくどくと流れる=小池。額からまぶたに流れ落ち真珠のようにぶらさがる=中上)。一筋汗が流れる。背筋を冷たい汗が虫が追うように流れる=光瀬。汗の粒が筋を引いて流れ落ちる"夢枕。汗を流す(たらたら。だらだら。たっぷり稽古に)。よく冷えてグラスが。体じゅうに冷たい。額がうっすらと。額にびっしょり。空気に溺れる魚のように不快な大原。熱い湯から上がったように全身に吉川。シャツがぐちゃぐちゃになるくらい一杯人合崎。水でも浴びたように"阿久)。全身に汗をびっしょりとかく"鈴木光。じっとりと汗をかく(体に。手のひらに)。バターの塊が汗をかいてしっとり潤む"小川。一面に汗をかいたような水蒸気で曇ったガラス=森環。蒸し暑さに電灯の灯まで汗をかいたように濡れて見える=連城。一汗かく(ジョギングで。野良仕事で)。 **あせばむ【汗ばむ】**▼汗ばむ(体が緊張して。背が冷たく。握りしめた手が。光がこまかい粒で皮膚に浮いているみたいに顔が!松本)。汗ばんだ額にほつれた髪が貼りつく三浦哲。風がはだけた胸の汗ばんだ肌をくすぐる=本庄。山の冷気を汗ばんだ肌に快く感じる椎名観。汗ばむほど急いでやってくる。汗ばむほどの暖かさ。汗ばむような緊張感をもたらす藤沢。舗道が昼の緩んだ熱さを残して温かく汗ばむように湿る"長野。じっとりと汗ばむようないやらしさ=原田宗。机の表面が汗ばんだように湿る"古井。 **あたたかい【暖かい】**暖かい(家庭を作る。湯気に包まれる=常盤)。暖かい(汗ばむほど。体がほかほか。黒い畑地に湯気が舞い立っているようにぽかぽかと林美。タクシーの中が温室のように"吉行。むっとするほど"西木)。急いで歩くと汗ばむほどの暖かい陽気"福永。初冬らしい暖かい快晴の日三島。どことなく南の国の春の暖かい夜を思わせるぬくもり“伊藤整。うらうらとしたあたたかい陽を浴びる=本庄。お父さんのようにあたたかい人"志茂田。親身な人の温かい気持ち=石川。頬をなぶって温かい風が流れる=浅田。ほかほかと温かい春の日の午後・佐藤春。皆の温かい拍手を受ける=渡辺。温かい(家族の団欒ばん。蒸気が立ちのぼる"高樹。蒲団にくるまる=水上)。あたたかい(血が通っている=丹羽。陽にぼかぼかと照らされる=海音寺。やすらぎと幸福感に浸る=山本忠)。あたたかな言葉でねぎらう「城山。温かな笑いに包まれる"高橋克。暖かな春の陽射し。心の中を横切った暖かな春風藤本。暖かく(おだやかな天気"石坂。見守って応援する=鈴木光)。温かく潤んだ目を開く=川端。眠くなるように温かく澱ょとんだ日和"石坂。ストーヴが暖かく燃える=原田康。廊下が春の野原のように暖か井上ひ。手紙から飾り気のない温かさがしみじみ伝わってくる=石森。夏の温かさが両岸の土からも川床の土からも霧もゃになって立ち昇るかと思われる夜森画。目尻に深い滅しもが刻まれそこから表情全体に温かさが広がっていく落合。兄のような暖かさを感じさせる人萩原葉。夕日が穏やかな暖かさを残す石田衣。どんな人間嫌いをも包みこむような温かみが溢れている語り口=網淵。人間的な肌触りや温かみにかける=小林久。星も風も無いとんよりと曇った夜の闇が生あたたかい池波。バラバラと生温かい雨が落ちてくる=檀。生暖かい夜気が顔に触れる=笹沢。音楽の余韻が漂っているように空気が生暖かく重たい=福水。心の奥に何かがポッと点火されたようなほの温かさ"中局汐。機械が温風を吐き出す。家庭的な(匂いのする店。ムードの女性。雰囲気を漂わせる)。暖気に包まれる。ぬくぬくと日を過ごす新田。ぬくぬくとした人生を送る=常盤。湯気がほかほか立つ。 <51> # 暑い・暖かい あ **あたたかい【暖かい】** 暖かい(血が通っている=丹羽。陽にぼかぼかと照らされる=海音寺。やすらぎと幸福感に浸る=山本忠)。あたたかな言葉でねぎらう「城山。温かな笑いに包まれる"高橋克。暖かな春の陽射し。心の中を横切った暖かな春風藤本。暖かく(おだやかな天気"石坂。見守って応援する=鈴木光)。温かく潤んだ目を開く=川端。眠くなるように温かく澱ょとんだ日和"石坂。ストーヴが暖かく燃える=原田康。廊下が春の野原のように暖か井上ひ。手紙から飾り気のない温かさがしみじみ伝わってくる=石森。夏の温かさが両岸の土からも川床の土からも霧もゃになって立ち昇るかと思われる夜森画。目尻に深い滅しもが刻まれそこから表情全体に温かさが広がっていく落合。兄のような暖かさを感じさせる人萩原葉。夕日が穏やかな暖かさを残す石田衣。どんな人間嫌いをも包みこむような温かみが溢れている語り口=網淵。人間的な肌触りや温かみにかける=小林久。星も風も無いとんよりと曇った夜の闇が生あたたかい池波。バラバラと生温かい雨が落ちてくる=檀。生暖かい夜気が顔に触れる=笹沢。音楽の余韻が漂っているように空気が生暖かく重たい=福水。心の奥に何かがポッと点火されたようなほの温かさ"中局汐。機械が温風を吐き出す。家庭的な(匂いのする店。ムードの女性。雰囲気を漂わせる)。暖気に包まれる。ぬくぬくと日を過ごす新田。ぬくぬくとした人生を送る=常盤。湯気がほかほか立つ。 **あたたまる【暖まる】** 体が少しずつ吸まる。席の暖まる間もないほどの東奔西走"船山。毛布の中に体温がたまって暖まっている=野間。▼温かくなる(懐かしさに胸が=伊坂。胸の中がほわあっと灰谷)。白湯さ湯を飲んだあとのように身体中があたたかくなる=鷺沢。部屋がなかなか暖まらない。ドラム缶に木っ端を入れて火をつけ吸を取る三浦し。▼ぬくまる(体が。心が。手のひらが。ほかほかに。体の芯から)。▼ぬくもる(体が。肌が)。顔がのぼせ上がるほとほかぼかする=有局。 **あたためる【暖める】** ▼暖める(かじかむ手を。部屋を)。温める(旧交を。冷えた指先を。たっぷりとした自信が胸を"石川。草履を懐に入れて=舟橋)。生活が温室じみた幸福に暖められる=円地。孤独を温め合う三鳥。お互いの肌を暖め合う~戸川。思い出を幸福なもののように心に抱き温める=石川。熱燗をつける。湯煎する(徳利を。膠を。バターを。チョコレートを)。湯たんぽを布団に入れる。 **あつい【暑い】** 暑い(日盛りの午後。陽射しが照りつける)。▼愛い(死ぬほど。空気が蒸れて汗を吹くほどに"高井。日本の夏は不愉快に=大庭。汗がぼとぼと落ちてくるくらい灰谷。どう逃れようもなく=中局彩。日射しが真夏のように猛たけだけしく藤沢)。いつになく暑い日が続く。初夏を思わせる暑い日。息苦しいほど暑い日=堀。焼けるように暑い炎天下=沢木。夏が駆け足でやってきそうなかんかん照りの日が続く=強井。じっとしていても汗が体を伝う“北村。焼けトタンの上の猫みたいに苦しい"小林食。夏の太陽で体がゆだるよう本多隊。わっと飛び出してくるドライヤーのような空気を押し分けて運転席に乗り込む"原田宗。気が狂ったような暑さが爆発する=五木。午後の暑さが身にこたえる=古井。夏の暑さが熱いお茶を飲むようにもって重い圏。炎暑(真夏の。燃え上がる白い=倉橋)。炎天に(あえぐ。灼ゃかれる)。かんかん照りの(太陽。天気)。例年にない酷暑。残暑が(幾分和らぐ。厳しい)。残暑の陽射しが強い。眼のくらむような大暑"島崎。熱波が(押し寄せる。襲来する)。草の海がむんむんと熱してくる=本庄。熱気でむんむんする。猛暑が続く。連日の猛暑でへたばる。猛暑を(過ごす。吹き飛ばす)。真夏のうだるように暑い一日連城。すべての物がうだってしまいそうな真夏の午後のひととき石坂。街が熱波にうだる"辺見。酷烈な暑致。暑気が(薄れ涼しくなる。体にまとわりつく)。湿気を少し含んだ暑気がゆったりと這ぃってくる『泉後。暑気に(あたる。負ける。むせ返る)。暑気を(しのぐ。払う)。▼暑熱(朝のうちから気が遠くなるような池波。水中に入るにはお誂ふっえ向きの舟橋)。暑熱がやわらぐ。黄熟した八月の妥熱がじりじり大地に滲しみ透る=徳田。暑熱にうだる。海闊ぐけい町々の建物が長い一夏の暑熱に倦;み疲れたように横たわる=徳田。昼の暑熱にあたためられた空気がどんよりと澱ょとむ藤沢。 **あつくるしい【暑苦しい】** 暑苦しい(顔。格好。感じの人物。岬ゃんの合唱。部屋。夜)。おじさん同士の絆が暑苦しい三浦し。暑苦しいほど温度が上がる=辻井。扇風機が暑苦しく廻る"大佛。暑苦しさで目を覚ます。暑苦しいような日が差し込む=徳田。 **あつさ【暑さ】** ▼暑さ(盛夏を思わせる。ジリジリとしたおさえつけるような不愉快な志賀。眩暈まがしそうな大変。クラクラするような=飯田。寝苦しいほどの三島。光の中に棘とげがあって剣山で素肌を刺・すような林京。べたつくような新田。湯の中へ飛び込んだような『高井)。暑さが(峠を越える。日ごとに募る。耐え難いほどになる)。日中の暑さが和らぐ。真夏のじっとりした暑さがこもった家の中=小川。むっとする暑さがこもる藤原。物凄もっごい暑さが続く=中村身。暑さと湿気で気が狂いそうになる=大藪。暑さに手を焼く。あまりの暑さにあえぐ。うだる暑さに閉口する熊谷。暑さをさほどには感じない。蟬せぃの声が暑さをさらに堪え難くする"宫本高。天のしずくで暑さを冷ます=小松太。うな快感"飯田。 **いきれる** (髪の根元が。むんむんと)。いきれが(こもる。濛々もうとする)。霞にいきれるよう。 <52> # いきれ な春の暮れ=中。仄にのかな草いきれが鼻に通う徳田。むせるような草いきれが顔をつつむ藤沢。草いきれが(立ちのぼる。むんむんする)。草むらが草いきれに蒸れる=真継。▼人いきれ(むっとする車内の。むせかえるような三田)。人いきれがむっと立ち込める。人いきれするほどのにぎやかさ。人いきれで蒸す車内。部屋の中が人いきれでむんむんする福永。 **いろり【囲炉裏】**囲炉裏の(自在鍵から吊った鉄鍋-熊谷。粗朶くだがバチバチと弾ける=加賀)。だだっ広い囲炉裏の間有島。囲炉裏を(囲む。切る)。 **おんせん【温泉】**温泉(湯量が豊富な。掛け流しの)。温泉が(涸ぁれる。噴き出す。奔出する)。半局の随所に温泉が湧く。石坂。温泉で湯浴みする。温泉に(出かける。投宿する。入る。ゆっくりとつかる。首までつかって目をつむると一日の興奮と疲れがとけて流れ出していく=飯田)。▼温泉に行く(泊まりがけで。骨休めのために)。家族を連れて温泉へ行く。温泉気分にひたる。温泉地(山懐の。三方を山に囲まれた谷間の藤田)。風に温泉地独特の臭気が混じる=綾辻。街道沿いにいくつか温泉地がある―藤田。悪い身体を温泉地に巻う島崎。季節外れの温泉場は森閑としている"高橋知。連休で温泉町が込み合う夏樹。温泉宿(秘湯の。邵ぃょびた村の。古びた。堂々たる構えの。山の中のひっそりとした三浦綾)。出湯の(里。町)。大小の泉源の周囲が白味の勝った灰色に染まる=高井。秘湯を(訪れる。めぐる)。湯あたりに気をつける。湯の花を(集める。風呂に入れる)。温泉へ湯治に行く。湯治の費えを工面する=山本一。湯治する(温泉で。鉱泉で)。雪の中にひっそりと佇揆たむ湯治場、熊谷。湯治場らしい風情を醸し出す。川から湯煙がゆらゆらと立ち昇る=藤田。川原のあちこちから湯煙があがる=西木。ここかしこに白い湯煙が立ち昇る=阿川弘。湯煙の向こうに花影が浮かび上がる藤田。 **おんだん【温暖】**温暖な(気候。地域)。地球の温暖化がじわじわと進む。▼温暖化する(気候が。地球が)。温暖化対策を進める。温吸前線が通過する。 **かんしょ【寒暑】**※暑に耐える。寒暑をかまう。暑さ寒さも彼序まで。寒さ暑さに苛にぃまれる。寒さ暑さをいとわない。 **ストーブ**ストーブが(いるほど寒い。真っ赤に燃える。獣のうなり声みたいにウーウーと鳴る“石森)。ストーブのまわりに集まる。心の中のストーブの火が消されたようにもの淋しい“新田。ストーブをがんがん焚たく=氷室。石灰ストーブがこうごう音をたてて燃える=原田康。石油ストーブにかけたやかんがチンチンと音を立てる!水倉。喘息患者ぜんにくの息づかいのような電気ストーブの小さな音丸谷。燃える(ガスストーブが青白く=遠藤。石油ストーブの芯が赤々と=井上ひ)。 **たいおん【体温】**類の湿った軟らかい皮膚から淡く発たいおん散する体温小藤枝。体温が(上がる。下がる。伝わる)。ほのかな体温が感じられる。受け取った傘の滑らかな柄が生き物のような体温を秘めている=黒井。体温計を(口にくわえる。脇の下に挟む)。平熱が(高い。低い)。平熱に戻る。 **だんぼう【暖房】**暖房をつける。▼効いて暖かい(暖房が。ヒーターが)。冷暖房の完備した部屋。ヒーターをつける。炬燵にたで(暖をとる。猫背になる)。炬燵に足を入れる。しみじみと炬燵の温もりを味わっ池波。 **だんろ【暖炉】**暖炉が愉たのしそうに音を立てる=堀。暖炉で薪が燃える。暖炉の焰却のが生き返ったように明るくなる=日野。斑はのある大理石造りのマントルビース=松本。炉端で火にあたる。ちょろちょろと燃える炉火=本庄。炉がにぎやかに燃える=本庄。炉に(木をくべる。柴をくべる)。炉のように燃えさかる感情三陽。 **なまぬるい【生温い】**生ぬるい(日向水。風呂)。ビールが生ぬるい。なまぬるい自己憐憫んにひたる池澤。とろりと淀んだようになまぬるい水に浸る=日野。どんより生ぬるい空気におおわれる=野坂。ほわんと妙に膨脹ぶうちしたような生ぬるい風が吹く=椎名滅。湯が生ぬるく冷める。夜明け前の夏の肌が生ぬるく頬を撫でる!~沢。 **ぬくもり【温もり】**▼温もり(女との間に酸酵した陰湿な松本。人肌の懐かしい辻仁)。陽の匂いを吸った総入れのようなぬくもり高樹。ぬくもりが(冷えた体に広がる。胸の奥まで届く)。女の肌のぬくもりがじかに伝わってくる"戸川。春を思わせるぬくもりが夜気のなかにまじる=藤沢。よそからの光を拒絶していた胸に桃色の花弁が貼りついたほどのささやかなぬくもりが湧く高橋三。そこかしこに家族の温もりが漂っている=熊谷。湯気のように温もりが伝わる"中沢。ぬくもりがある(肌に。表情に)。布団のぬくもりに浸る。かそかな生命のぬくもりを墓へ幀。肌身の温もりをしっかり感じ合っ木庄。春の近さを思わせる仄ほのかな陽のぬくみ=原田爽。 **ぬるい【温い】**ぬるい(茶。風呂)。ぬるい(水が。湯が)。春の晩のようなぬるい空気が部屋に動く吉川。ぬるくなる(お湯が。ビールが)。水がぬるみ始める春の初め。ぬるむ(風が。水が生暖かく)。早春の陽を浴びて水が温む"井上靖。ぬくい(気持ちになる。陽気)。 **ぬるまゆ【ぬるま湯】**ぬるま湯で髪を洗う。ぬるま湯に浸っているような快感”遠藤。ぬるま湯を飲む。ぬるめの(温泉。風呂に入る)。ぬるま湯のような安易さ遠藤。平穏がぬるま湯のようにびったりと家そのものを包みこむ瀬戸内。ぬるま湯みたいな夫婦仲"今束。微温湯につかる。 **ねったい【熱帯】**熱帯の(朝が幕をあげるようにするねったいすると明け放れる!大岡。花のような強烈な印象の娘=石坂)。赤道直下の国。常夏の(国。島花)。 <53> # ひなた【日向】 日向に団居にとして語り合う。髪から少し焦げたような日向の匂いが立ち昇る落合。日当たりのいい(丘陵地。部屋)。顔に悲しみと歓びとが影と日向のようにかわるがわる現れる三島。布団が日向臭い。犬が日向くさいにおいを放つ=田辺。日向臭い水枕のゴムの匂い!向田。縁側で日向ぼっこをする。▼日が当たる(ばあっと。芝生の庭に怯まぶしく"池澤)。日の当たる場所。▼陽だまり(からりとした南斜面の=檀。小路に照る淡い=真継)。ぬくぬくとした透明な日溜まり~開高。陽だまりに咲くひともとの紅梅"真継。猫が日溜まりに殴らげる!大佛。午後の日だまりのように平和な日々村上春。 **ひばち【火鉢】**火鉢に(網をのせる。炭を継ぎ足す。炭がおこっている)。やかんを火鉢にかける。手紙を火鉢にくべて焼く=村上元。火鉢の(灰を掻き散らす。火を掻き起こす)。火鉢を(囲む。据える)。炭火鉢を囲んで車座になる=熊合。火桶にょが欲しいほどの寒さ=芥川。長火鉢の(灰を掻き均ならす。火を掻き起こす。前に座って煙草盆を引き寄せる"山本周)。湯呑みを猫板の上にのせる=北原。 **ふろ【風呂】**そそくさと風呂からあがる=島尾。風呂で(のぼせる。さっぱりと汗を流すぃ高橋克)。風呂に(のんびりつかる。ぼちゃんとつかる。ゆったり身を沈める。入ってのんびりとくつろぐ=鈴木光)。子供を風呂に入れる。目白の押し合いのようにして夫妻が小さい風呂に入っている=田山。▼風呂に入る(熱い。たっぷり時間をかけて)。風呂の湯を落とす。風呂を(浴びる。済ませる。焚たきつける。水でうめる。沸かす。烏がらの行水ですます"加賀)。薪で風呂を焚く。ろくに洗いもしないで風呂を出る=長塚。とっぷり湯につかる。朝風呂を(浴びる。のんびり楽しむ)。一風呂浴びてさっぱりする。風呂上がりに下着の用意をする。風呂上がりの(艶々した顔。ビール)。上がり湯を(浴びる。使う)。朝湯に入る。朝湯を浴びる。さら湯に入る。銭湯に出かける。▼長湯する(川風で涼みながら。ぬるめの温泉で)。入浴して旅の汗を洗い流す―池波。入浴すればさっぱりとして気持ちがいい玉村。残り湯を使って洗濯する。▼湯浴みする(のんびり。ゆったり)。ちょうどいい湯加減。湯加減を(聞く。見る)。湯冷めして風邪をひく。冬場は湯冷めに注意する。蒸し風呂に(入ったような車内。入り過ぎたようなけだるさ=中島多)。部屋の中が蒸し風呂みたいに暑い=田中。蒸し風呂のような教室=岡田。 **ほてる【火照る】**▼火照る(怒りと屈辱感で体内が"小林久。かっと胸の奥が"五木。熱に病んだように体が"中上)。ほてる(体の奥が。胸の芯が。顔が真っ赤に。顔がぽっぽと。全身が熱く。手足がだるく。順がかっかと。異様な羞恥で全身が"円地。体中が燃えるようにかっかと=石坂。頬が湯上がりのように=川端。耳たぶが美しく=中)。恥で全身が火照る感じ。高見町。がほてる(含羞帖祉に。かっと。恥ずかしさで)。ぽっと火照ったようなこわばりが額から顔いっぱいに拡がる=黒井。ほてらせる(頬を。身内を。立腹したかのように顔を火のごとく=長与)。ほてりが体の奥に残る。体のほてりが伝わってくる=阿川佐。熱情が伝染し心がほてるように田辺。 **むしあつい【蒸し暑い】**蒸し暑い(夏の宵。満員電車)。空気が肌にまつわりつくように蒸し暑い"高井。風もなく蒸し暑い夜。息苦しいほどに蒸し暑い日!佐藤愛。梅雨らしい蒸し暑い日が照りわたる=徳田。夏の午後の蒸し暑い沈黙がのしかかる三島。圧ぉしつけるようにむっと澱ょとんでいた蒸し暑く濁った空気"大佛。風も絶えた夏の夜の闇が重く蒸し暑くたれこめる―池波。蒸し暑くて寝苦しい。息の詰まるような蒸し暑さ八谷崎。肌に粘りつくような暑さに蒸される"山崎。庇いきの間から見える無数の星までも蒸されるように暑い=山崎。蒸す(人いきれで。むしむしと)。蒸すような空気がこもる有島。むしむしする暑い日。朝からじりじり油照りする暑い日。油照りのじりじりした暑中。七月末の油照りの日。焼けるような油照りの空。▼蒸れる(枯れ葉が。空気が。草むらが。土が。草いきれに。蒸気に。陽に)。 **ゆあがり【湯上がり】**湯上がりに冷たいものを飲む。湯上がりの(一杯をやる。とけるような温かい肌=佐多。濡れ色が殊に美しい二葉亭。肌に艶やかな光がある!佐野。頬が心地よげに火照っている=檀)。湯から上がったときみたいな湿りを目の周りに持った女宮本烦。湯上がりのような香りをほのかにひろげる"古井。湯上がりのように肌がすべすべしている=山口。顔が湯上がりのようにつるつる光っている=阿部。 **ゆぶね【湯船】**湯船から湯があふれる。湯船に(体を沈める。首までつかる。どっぷりとつかる。ぼちゃんと入る。すっぽり首をうずめる=徳永)。ゆったりと湯船につかる。湯船を湯で満たす。バスにつかる。風呂桶訟に身を浸す島崎。湯壺唸っに身を沈める。浴槽の底へ溺死体のように横たわる=梶井。檜のづくりの古びた浴槽"石坂。浴槽からあふれ出る湯。浴槽に(身を沈める。湯を張る)。とっぷりと浴槽につかる。浴槽の縁に体を頂ける。 **よくしつ【浴室】**タイル張りの浴室。浴室にもうもうとみなぎる湯気"石坂。バスルームに入る。湯殿で体を洗う。かぐわしい匂いが湯殿に満ちる=宮尾。▼風呂場(あたたかな湯気に包まれた三田。丸太作りの素朴な味わいの飯田)。風呂場が湯気で淡々とすする。風呂場に男女が交代で入る=篠田。死の洞窟のような浴場がまるでうそのようににぎやかになる!島尾。浴場を(出る。覗のぞき込む)。人の垢ぁかにまみれない露天風呂"西木。露天風呂を(楽しむ。満喫する)。 <54> # あつい【熱い】 熱い(お灸をすえる。お茶を飲む。議論を交わす。視線を注ぐ。血潮が燃える。吐息をつく。風呂につかる。口づけを交わす。蒸しタオルを広げる。ものが胸に迫る。涙がとめどなく流れる=有島)。▶熱い(全力疾走をしているみたいに胸の中が三田。熱病にかかったように体が"阿部。手に持てないほど高樹。喉の奥が焼け燗ただれたように“船戸。ふうふう吹かなければ飲めないほど=石森。陽光に焼けたトタンのように=篠田。顔や耳が燃えているように有吉。頬が燃えるように"石坂)。炊き立ての熱いご飯。陶然と熱い思いを語る。波乱に満ちた熱い人間ドラマ。ほろほろと熱い涙をこぼす。女を愛する熱い血三浦綫。感訪する柔らかな熱い心=瀬戸内。不意に熱い衝動がこみ上げる=沢木。耳に熱い息がかかる=林美。眼に熱いきらめきがある=黒岩。▼熱い思い(故郷への。胸の中で膨らみ始めた谷村)。熱い胸の(裡うちを語り合う。たぎりを覚える)。熱く(政治論を語る。ほとばしる友情"大江)。視線を熱く向ける。瞳が熱く燃えてくる。頬が熱くほてる。幸福を胸に熱く感じる=本庄。涙が眼尻に熱く湧きあがる=林美。感慨が胸を熱くさせる。熱くする(怒りが体を。燗を。心を。日本じゅうを。瞳を。まぶたを。胸を。目頭を。目の縁を)。あつあつの(うどん。かゆ)。▼熱さ(程合いの。手で持てないくらいの)。咽喉のともと過ぎれば熱さ忘れる=山岡。熱めの(汁。スーブ。風呂に入る)。食べる(あつあつを。ふうふう吹きながら。舌の焼けるような雑炊を"高村点)。▼火のように熱い(頭が。全身が。手が。額が。額に手を当てると=住井)。胃の中にスープが。モーターが)。焦熱の砂漠。 **あつくなる【熱くなる】**▼熱くなる(じんわり顔が。胸の奥が。体が芯から。胸がじいんと。胸が我知らず。かっと体じゅうの血が。かっと体の内側が。恥じらいに耳たぶが。頭の中がかっと。羞恥しいのために全身が=山本周。体の奥の方が太陽を呑み込んだみたいに"大原。全身が沸たきるように=渡辺。瞼の奥がじんわりと“重松)。▼芯が熱くなる(かっと頭の。胸の)。▼目頭が熱くなる(柄にもなく。不覚にも)。顔が熱くなるくらい楽しい=中村真。胸が熱くなるほど嬉しい!舟橋。目頭が熱くなるほどうれしい森玩。カッと全身の血を燃え立たせる"阿刀田。かっかと(頭が燃えてくる。血が燃え上がる)。▼かっかする(頭が。顔が熱で。心中。恥ずかしさで頬が)。 **おゆ【お湯】**蛇口からお湯が流れ出る。お湯をしゅんしゅんたぎらせる=極。お風呂にお湯を張る。バスタブにお湯を満たす。ささくれ立っていた心がお湯をかけられたようにやわらかくなっていく鷺沢。お湯を入れる(ボットに。魔法瓶に)。ぐびぐびと下品な音をたてて湯水が流れはじめる=加賀。湯水のように金を使う。給湯する(温泉を。台所に。風呂に)。白湯を(すする。飲む)。温水で洗われるような穏やかな快感"松浦。温水シャワーを浴びる。ごみ焼却の余熱を利用した温水ブール。昼夜をわかたず尽きることなく滾々にんと湧き出ている湯"阿川弘。湯が(ぐらぐら煮立つ。しゅんしゅんと沸く=中沢)。鉄瓶の湯が煮えたぎる。風呂の中で湯が対流する。湯船から湯があふれる。軀紛らの芯のところからふつふつと湯がたぎるようにたかぶってくる=向田。こぼこぼと云う音を立てて湯が流れおちる=徳田。銅壺ごうで沸いている湯がチンチンと鳴る=阿部。胸いっぱいに温かい湯が満ちあふれるようなあまやかな思いに包まれる=山本周。希望を与えてくれるかのような温かい湯が胸のうちに広がっていく笹沢。湯から上がる。湯でのぼせる。湯船を湯で満たす。酒を湯でも呑むようにこくりこくりと飲み下す有吉。湯に(身を沈める。つかって疲れをほぐす)。熱い湯に入る。どぶりと湯に飛び込む。湯につかる(とつぶりと。伸び伸びと)。ひたひたと揺れる湯の音。ほんのりと湯の香りが通う。冷えきった体に湯の温かみがしみこんでくる=藤田。湯を(浴びる。かぶる。適温にする。吹いて冷ます。沸かす。釜から汲くみ出す。出しっぱなしにする。土瓶〈注ぎ入れる)。熱い湯を水でうめる。浴槽に湯を張る。湯呑みをすすいだ湯を建水にあける=北原。湯を入れる(風呂に。ボットの脳天をじゃこじゃこ押し急須に三浦し)。▼湯をかける(さぶざぶと。背中にざぶりと)。湯を注ぐ(カップに。ボットから急須に)。風呂の湯を(落とす。焚たきつける)。心が湯のような感激でいっぱい=山本周。愛が沸たきる湯のように躰紛らを指先までくまなく勢いよくひたす"大江。温かい湯のように安堵さんの感情が湧きあがってくる=大江。親の温情が湯のように自分を囲むのを感じる宮本百。懐かしい心の風景が湯のように広がる"中村明。光が湯のように流れこむ=遠藤。▼湯のように湧いてくる(愛情が熱い。うれしい気持ちが"開高)。 **しゃくねつ【灼熱】**天地が灼熱に溶ける。勝負が灼熱に達する=人米。灼熱の(恋。砂漠。修羅場と化す。太陽燈石のことき精神藤本)。心の真ん中を灼熱の針のように鋭く熱いものがつらぬく=光瀬。全身灼熱の業火に燃えたぎる!白洲。熱嵐と灼熱の燈石が狂鬼となって迫ってくる=藤本。胸の中を灼熱の怒りが貫く光瀬。脇腹から背中にかけて灼熱の炎が走る=貫井。肉体的快楽がもたらす灼熱感"野同。 **じょうき【蒸気】**蒸気が(窓を曇らせる。濛々しい。とあがる。急速に凝結する。白く立ちこめる。排気口から大気中に出ていく)。温かい蒸気が立ちのぼる=高樹。薬缶쌰ゅから勢いよく白い蒸気が吹き出る=森面。白い蒸気が夜目にも鮮やかに見える"なかにし。蒸気で発電機のタービンを回す。水が蒸気に変わる。蒸気を水に戻す。水蒸気が(ゆっくり漂漂う。火焰分流のように立つ=大岡)。海の表に立ち昇る水蒸気がところどころ煙のように酢なびく=福水。春の夜らしい水蒸気があたりに立ちこめる=伊藤整。雪にぬれた家々の砦からから陽炎分泌のように水蒸気がゆらゆらと長閑に立ち上る=長与。▼水蒸気が立ちのぼる(盛んに。地面から。ゆらゆらと)。水蒸気でガラスが曇る。水蒸気を含む春特有の空気高樹。 <55> # たぎる【滾る】 「たぎる(やかんの湯が。欲望が。放埒うな熱気に。体じゅうの血液が。鉄瓶がちんちん夏目。鉄瓶の湯がしゅんしゅん鈴木三)。かーっと血が沸たぎる=山岡。▼怒りがたきる(胸に。鬱勃たる)。沸々とたぎる(血が。物療砂いしと泣きたさが幸田文)。たぎらせる(怒りを。気持ちを。屈辱に胸を。義感を。血を。憎しみを。熱気を。熱情を。勇気を。憤りを胸の中で)。血のたぎりを覚える。たぎり立つ気持ちを制御しかねる高杉。 **ちねつ【地熱】**地熱が沸騰したような熱気がある町"池田。心が内側から吹き出る地熱のように沸々として燃え滾たきる=渡辺。地熱発電を試みる。地下に溜まっている熱水。マグマが(溜まる。噴き出す)。カッカとマグマのように熱いものが全身を駆け巡る=内田康。 **にえくりかえる【煮え繰り返る】**▼煮えくり返る(鍋が。腹が。腸址さが怒りに。裏切りに心中が舟橋)。▶煮えくりかえる(噛みついてやりたいほどと胸が"有吉。胸のうちで忌ま忌ましさが"本庄)。煮えくりかえるような憤怒の情=藤枝。▼煮え返る(悔しさに胸が。鍋が。湯が。悲しみが胸に)。心のいらだちが魔女鍋みたいにぐつぐつ煮えかえる=開高。臓腑ぶうが煮え返る思い。胸に煮え返るほどの嫉妬と憤怒を起こす中。 **にえたぎる【煮え滾る】**▼煮えたぎる(血が。鍋が。熱湯が。念感誌んが。やかんが。湯が。恨みが身内に。ぐつぐつと。怒りが胸の奥で。地獄の釜みたいに頭の中が"開高。頭の中が火にかけた薬缶バゅのように束野。嫉妬が心の底で沸々と=藤田)。怒りと嫉妬とに心も煮え滾る=福氷。煮えたぎるような思いを必死に胸の底にたたむ=勝目。 **にえたつ【煮え立つ】**▼煮え立つ(油が。恨みと憤りが。鉄瓶が。水が。いい具合に。劇場が競技場のような生な感動に=円地)。胸の内の煮え立つ思い。地獄谷みたいにぶつぶつ煮え立つものがなくなったら、人間、お仕舞だよ"高井。あとからあとから燃え上がってくる怒りと悲しみに頭が煮え立つよう円地。▼ぐらぐらと煮立つ(鉄瓶が。湯が)。 **ねつ【熱】**熱が(一向に冷めない。景気よく上がる。焰崎。焼けた釜の中のような耐えがたい"宮本輝。トタン屋根に振りそそぐ陽の重みを感じさせる=林京)。熱が伝わってくる。感情の熱が高まる。宮本百。目に異様な熱が宿る=村松。▼熱がこもる(口調に。声に。言葉に。筆勢に)。▼熱が冷める(凱旋騒ぎの。受賞の。恋愛病の)。▼熱が入らない(家業に。少しも)。熱が入る(一問一答に。演技に。演奏に。収集に。捜査に。練習に)。熱で(弱った目。足元がふらつく。うなされて苦しむ。顔がかっかする。うるんだ眼を見開く松本。ぼうっとした頭で考える=原田康)。熱に(あぶられる。犯される。絡みつかれる。負ける。浮かされたようにまくし立てる。浮かされるように手紙を出す。恐憑っかれたような眼=黒玉石)。眼が危罄沙うな熱に輝く“有島。熱に潤んだ(瞳で見つめる。目)。熱の引ききらぬ混濁した頭三島。たいそうな熱のあげよう。大変な熱の入れよう。澄んだ空から降ってくる日の光に小さな熱の棘とげが豊かに含まれている=黒井。熱のこもった(言い方。仕事ぶり。或論を交わす。早口。目つき)。センサーが熱を感知する。肩の皮が剣もけヒリヒリと熱をもつ=吉川。口調が次第に熱を帯びてくる=篠田。▼熱を上げる(勝手に。タレントに)。熱を入れる(稽古に。仕事に。商売に)。熱を入れて受験勉強する。▼熱を帯びる(体全体が。言葉が。討論が。目が異様な)。熱を帯びた口調で語る=篠田。声に熱をこめる。熱をこめてしゃべる。話に熱が(ない。入る)。熱のような怒りが去る=大江。粗熱を(飛ばす。取る)。炎々たる高熱の火吉川。真っ黒で微熱でもあるみたいに光っている眼"原田康。乳房の芯が微熱を持ったように疼く落合。▼放熱する(体温を。発生した熱を)。蛇腹のような鉄製の放熱装置『日野。 **ねっき【熱気】**▼熱気(灼ゃけるような。すべてを溶かねっきしそうな熟れた永井路。夏の焼くような=柴田理。日盛りのムッとするような落合。蒸されるような山崎。焼けた釜の中のような耐えがたい"宮本輝。トタン銀ののように瞳の奥で燃え上がる=中村真)。じわりと熱気が(体を押し包む。街にこもる。天から地上に押し付けられてくる=北村。むうっと体を押し包む光瀬)。異様な熱気がみなぎる。先刻の熱気がよみがえる。胸に熱気が充満する。圧縮されたような熱気が渦巻く。五木。地面から焦げたような埃児にっぽい熱気が立ちのぼる藤沢。真夏の熱気が釉薬粉ゆくのように皮膚にまといつく!森塚。熱気が体にまとわりつく“船戸。むっとした熱気が顔にまとわりつく=乃南、客の熱気でむせ返る。人々の熱気でむんむんする。熱気にむせ返った重い空気。会場が異様な熱気に包まれる"倉橋。煙と熱気の直撃を受けうまく目が開かない三浦し。熱気を(肌に感じる。はらんだ重い声が咽喉のからこぼれ出る=黒井)。生き生きとした熱気を醸し出す=加賀。舗装からの照り返しが熱気を強める=大藪。余熱が(消える。冷めない)。複雑な臭いを含んだムッとした部屋の温気ん=高見願。六畳の小座敷に春のような温気がこもる"海音寺。水気の多い温気が身体をもたげるように籠にもってくる=岡本。身体や顔に温かい血のほとぼりが昇ってくる=梶井。昼間の日のほとぼりがまだらに道に残る=梶井。夕映えのほとぼりがほんのり残る水井虎。▼ほとぼりが冷める(噂の。事件の)。 <56> # ねっする【熱する】 真夏の太陽がアスファルトをじりじりと熱する=林真。真っ赤に熱した鉄板。草の海がむんむんと熱してくる=本庄。熱しやすく冷めやすい質たち綾辻。金属の棒を加熱する。 **ねつっぽい【熱っぽい】**熱っぽい(頭を冷やす。快感がわく。活気がある。口調で頼む。視線をあてる。情感が氾隘似する。疲労感が全身にひろがる"五木。眼をぎらつかせる=水上)。▼熱っぽい(顔が。全身が。風邪をひいて。体が激しい運動の後のように「渡辺。筋肉がしこっていて燃え残しの根株のように武田拳。声が祈りのように大江)。眼が熱っぽい輝きを帯びる。男性ホルモンたっぷりの熱っぽい目がまつわりつく“加賀。熱っぽく(濁った目。必要性を説く)。会議が熱っぽく進行する。遊びの計画でも練るように熱っぽく語り合う。黒井。言葉が熱っぽく口から飛び出す=伊藤整。何かに憑っかれたように熱っぽく話す味。目が熱っぽくきらきら光る=石坂。体が熱っぽくなる。酒が身体にしみこんでいる熱っぽさ=石坂。吹き上がるような熱っぽさで顔中真っ赤にする=壺井。 **ねっとう【熱湯】**煮えたぎる熱湯。熱湯が(たぎる。ほとばしり出る)。沸き立つ怒りという熱湯に水をさされる!宫部。熱湯を(かける。浴びたかの勢いでがばと跳ね起きる=奥泉)。熱湯のような汗」山手。湯玉が(飛び散る。走る)。 **ねつりょう【熱量】**熱量が(大きい。小さい)。絶対的な数量が不足する。カロリーが(高い。低い)。カロリーを(計算する。制限する)。 **ふっとう【沸騰】**▼沸騰する(お湯が。糾弾する声が。議論が。血が。祭りの景気が。ふつふつと。胸が怒りで。世論が一時的な感情に安部)。沸騰したヤカンのような息づかい=飯田。沸騰して煮こぼれる。考えをまとめようとしても脳が沸騰して泡立っているようで駄目=加賀。赤ら顔が沸騰したようにさらに赤くなる=篠田。▶沸点に達する(怒りが。お湯が)。 **ボイラー**ボイラーに火を入れる。ボイラーの火を落とす。石炭をつぎくべられた汽缶のように身体の充実を感じる徳永。湯沸かし器の口火をつける。 **ゆげ【湯気】**浴室にもうもうとみなぎる湯気"石坂。湯気が(白く漂う。鬚ぃげに絡む。頬を包む。湿った暖かさを漂わせる。濛々もうと立ちこめる。顔面にまともに押し寄せる=鷺沢。やわらかく顔をつつむ野間)。頭から湯気がぽっぽと立ちのぼる"石森。大釜から湯気が白く立つ=田山。さかんな勢いで噴出する湯気が白々と高く立ち上る=島崎。地獄の釜のように湯気がもうもうと昇る=川端。白い湯気がゆらゆらと昇る=石川。暖房の湯気がとても太った年寄りの男の吐く息のような苦し気な音をたてる=常盤。▼湯気が立ちのぼる(銅壺とうから。鍋から白い)。塩を煮る湯気が小屋の屋根から太い棒を立てたように穏やかな空へ白く立ち昇る=志賀。▼湯気が立つ(ぼうっと白い。ほうぼうと。ほかほかと。ぽっぽっと)。湯気で(視界がかすむ。風呂場が濛々とする。鼻の穴がしっとり湿る"村山)。湯気で曇る(鏡が。窓ガラスが)。湯気に(火災報知器が反応する。あたって頭がクラクラする=武田飛。包まれているように上気する=伊藤整)。暖かい湯気に包まれる=常盤。湯気の柱が遂々然沿うとして釜の口から晴れた朝の空へ舞い上がる芥川。生活力の中に湯気の立つような和楽がある=林美。湯気の立ちそうな(新夫婦。禿頭雄封。)。窓ガラスの湯気を拭き取る。やかんがしゅんしゅんと湯気を噴き出す角田。▼湯気を立てる(頭から。全身がぽっぽと)。鍋が湯気を(立てる。吹く)。湯気のような白いもやが揺れる=石田衣。湯気のように(霧が立つ。温もりが伝わる=中沢)。息が白く湯気のように出る。尾辻。薄い煙が湯気のように一面に騰ぁがる=大岡。思い出が湯気のようにしっとりと胸を温める=壺井。気持ちが湯気のように蒸発する=尾辻。雲が湯気のように立つ=宮沢。▼スチーム(アイロンの。高温の。暖房の)。地虫の鳴くようなスチームの音=日野。 **ゆだる【茹だる】**卵がゆだる。大粒の茹ゅだった雨が屋根瓦を強く叩く=高橋真っ白い手足がゆだったキャベツの茎のように浮き出る谷崎。茹だったような赤い腿もも長塚。満面にできたニキビの頭が牛肉がゆだったようにぶつぶつ光る谷崎。夏の太陽で体がゆだるよう本多隊。暑さにうだった犬のように舌を出す中上。街が熱波にうだる=辺見。うだる暑熱が去って秋風が立つ=舟橋。真夏のうだるように暑い一日連城。 **わかす【沸かす】**▼沸かす(甘茶を。お湯を。牛乳を。コーヒーを。こんろで湯を。茶を。鍋を。熱湯を。肌呂を。ボイラーを。ミルクを。湯をぐらぐら)。食器を煮沸して消毒する。 **わく【沸く】**▼沸く(お湯が。どっと会場が。風呂が。勝利に。空前の好決算に。時ならぬ話題に。やかんがちんちん。怒りが腹の底からふつふつと=辺見)。鉄瓶がちんちん音を立てる。▶沸き返る(感動が。反抗心が)。沸きたぎる(怒りが。お湯が。心が。血が。熱湯が。気持ちが心の中で)。▼わきたたせる(意欲を。血潮を。闘志を)。▼沸き立つ(荒々しい血が。複雑な感情が。わっと場内が。天下が騒然と。しゅんしゅん。体に流れる血液が有吉。積もりに積もったと湯が。体に流れる血液が有吉。怨うらみと憤りが一時に=海音寺)。いきいきとした活気にわきたつ=山本間。希望と危惧とで心が湧き立つ"久米。湧き立つような騒動宮沢。 <57> # あいてにする【相手にする】 ▼相手にする(自然を。生徒を。世界を。大軍を。孫を。大勢のお客さんを)。▶相手をする(話の。一日座りきりで客の獅子)。子供相手にふざける。▼かまいつける(小犬を。子供を)。▼向こうにまわす(観客を。世用を。敵を)。 **あしらう**あしらう(いい加減に。適当に。軽く。冷たく。フンと鼻で)。菜の花をあしらった吸い物三島。生海苔をあしらった掻かき平目=池波。あしらわれる(いともやすやすと。猫の子のように村上元)。▼あしらい(ぞんざいな。犬畜生にひとしい=真継)。無下に無愛想なあしらいも出来ない高井。子供の使いをあしらうように対応される=伊坂。 **あつかいにくい【扱いにくい】**扱いにくい(男。女。道具)。腫れ物に触るような扱い=光原。取り扱いに困り抜く。大きな体を扱いかねる。御しにくい(馬。男。女容)。 **あつかいやすい【扱いやすい】**扱いやすい夫。御しやすい(馬。男。女。客)。与しやすい相手。ざっくばらんな与しやすい感じ=藤原。与しやすいと思って高をくくる。仕事がやりやすい。 **あつかう【扱う】**▼扱う(厄介な部下を。家族同様に。寛大に。邪険に。粗末に。大事に。対等に。丁寧に。乱暴に。新聞が大きく。不当に低く。社会的なテーマを。十把一ことばからげに。高級品を手広く。極秘中の極秘として。ケーキを生まれたての赤ん坊のように大切に"小川。庶民を虫けら同然に渡辺。床の間の置物同様に=舟橋)。▼あつかう(弱き器のごとく妻を"川端。人を道具のように司馬)。舶来の品物を主に扱う店。机の上から叩き落とされるゴミのように扱われる=宮部。記事の扱いが小さくなる。扱いが上手(女の。老人の)。扱いに(気をつける。不満がある)。バソコンの扱いに慣れる。綴意なく珍客の扱いをする三島。扱いを受ける(王侯のような。きちんとした。手荒い。破格の。ひどい。別格の。死ぬのを待つような"有吉)。女の扱い方が不器用。扱い方をよく心得ている。乱暴な扱い方を非難する。▼扱い慣れる(竹刀を。道具を)。手がける(高級な作目を。事件を。時代物を。直輸入を)。 **いんぎん【慇懃】**馬鹿に感塾でお愛想がいい萩原朔。聡勉な口調で尋ねる。木で鼻をくくったような感悪な挨拶・高村派。説明をないがしろにされた苛立ちを激な笑いで繕う古井。ロールスロイスにでも招待するような敷悪な態度"五木。慇懃に(挨拶をする。礼を述べる。詫びを言う)。帽子をとって思懃に間う~国木田。さながら王に対するような農薬を払う佐藤春。慇懃だが高圧的な口調で言う=篠田。恐懃無礼な役人風の対応をする=篠田。 **おうたい【応対】**人との応対が我ながら不細工谷崎。客の応対にてんてこ舞いする。電話の応対に追われる。応対する(努めて平静に。和やかに。にこやかに。愛想よく。低姿勢で。真償を尽くして=氷室。年長の人間に物怖じせず=藤沢)。物の道理のわかった応対ぶり池波。適当に愛想よく応接する。応援に(暇却とがない。休む間もない)。陳情人の応接に忙殺される。距離を置いた接し方。接し方ががらりと変わる。▼接する(客に。感謝の念をもって。ものやわらかい態度で。冷静な気持ちで)。人当たりが(ソフト。柔らかい)。人当たりの良い女性。 **かまわない【構わない】**かまわない(一向に。ある時払いで。どうなっても。恥も外聞も。人がなんと言おうと)。いちいちかまっている暇はない。かまいつけぬ身なりの老婆=古井。 **きかいてき【機械的】**機械的な声が返ってくる。エンジンの機械的なうなり。基準の機械的な運用。機械的に(足を運ぶ。箸を動かす。仕事を片付けていく)。焼香する人たちに機械的に頭を下げる=貫井。てきぱきと機械的に作業を終える=貫井。 **ききながす【聞き流す】**▼聞き流す(人の噂を。右から左に。馬耳東風と。我関せずで。相手の言葉を上の空で。別にどうということもなく。言うだけ言わせて笑顔で有川。告を嫉妬か口惜〈ゃしまぎれの放言のように=里見。無心な顔をつくって=城山。周囲の人のやりとりを異国の言葉でも耳にするような気持ちでぼんやりと"三田)。聞き流してかまわないくだらない言動貫井。聞こえよがしに言う声を潮騒乱心のように聞く“永井路。心ここにあらぬ如く好い加減に聞いて置く=二葉亭。▼聞き置く(訴えを。希望を。願いを。要求を。一応。とりあえず)。 **きゃくあしらい【客あしらい】**客あしらいが(うまい。上手。下手)。客あしらいのよい店。着物の着こなしから客あしらいまで手取り足取り教える=藤田。客のあしらいに慣れている。客扱いが(うまい。になる)。人あしらいが(うまい。下手)。 **きりまわす【切り回す】**▼切り回す(女手で店を。せっせせっせと世話女房らしく=有島)。▼切りまわす(オフィスを。会社を。しゃきしゃきと家の中を佐多)。料理屋を腕一本で切り回してくる三島。仕事を切ってまわす。 **きりもり【切り盛り】**家計の切り盛りで四苦八苦する=小林久。ごたごたしたきりもりに頭を悩ませる=水上。家政の切り盛りの巧みな妻"阿刀田。母に代わって一家の切り盛りをする=林美。▼切り盛りする(店を。てきぱきと帳場を。家事一切を一人で=山手)。仕入れから客の相手までひとりできりもりする=高樹。 **くちだしをしない【口出しをしない】**▼口出しをしない(余計な。一切)。下手に口出しをしないほうがいい。 <58> # 干渉しない (お互いに。一切。少しも)。干渉をやめる。差し出口を控える。一切他人の私事に立ち入らない芝木。不干渉(他人への。他国の内政への)。 **こうぐう【厚遇】**厚遇に甘える。▼厚遇する(食客を。給与面で)。▼退する(丁重に。手厚く)。下にも置かね(扱い。もてなし)。主の知遇に報いる。知過を得る。親善使節を礼遇する。 **こなす**▼こなす(順調に行程を。日常の瑣事さしを。課題を無事に。面接を数多く。一人で二人分を。予定通りの日程を。仕事をコンスタントに。与えられた仕事を着実に=篠田。与えられた仕事を黙々と"重松)。仕事をこなす(普段どおりに。無難に。きちんと)。▼そつなくこなす(何をやらせても。重臣たちへの応対を=北原)。▼着こなす(最上級のドレスを。スーツを身ぎれいに)。自由自在に使いこなす。巧みに馬を乗りこなす。バイオリンを弾きこなす。 **さばく【捌く】**▼さばく(運命の糸を。あえぎながら注文を。男と女の関係を。てきぱきと客を。家事を手際よく)。賭場の揉め事を器用に捌く藤沢。さばき(素早い身の。手慣れた)。品物がさばける。▼売りさばく(闇ルートで物品を。遊び金が欲しいあまりに伝来の宝物や刀剣を引き出して=池波)。▼取りさばく(需要を。情熱熱を)。 **じむてき【事務的】**事務的なごたごたが済む鷺沢。起訴状を読んでいるような事務的な声"泉受。事務的な口調で(答える。命じる。型通りの質問をする今日)。事務的に(事を処理する。打ち合わせを進める。切り口上でまくしたてる"井上ひ。冷たい数字が並べられる=阿川弘。どんどん話の極りをつける徳永)。 **しょする【処する】**▼処する(貧窮に身を。大名を改易に。身を挺てぃして事を。交通違反者を罰金に。被告人を禁鋼に)。身の処し方を心得ている。 **しょち【処置】**▼処置(冷静沈着な。一刀両断の。間に合わせの。臨機応変の)。処置がうやむやになる。寛大な処置に感謝する。処置の(仕方を心得る。つかない問題。できない混乱)。一連の処置を的確におこなう軍司。処置を取る(適切な。最善の。断固たる)。てきぱきと傷を処置する。時宜にかなった措置。措置の手ぬるさに絶望する=津本。▼措置を取る(強力な。断固とした。万全の)。必要な措置を怠る。 **しょぶん【処分】**一人決めの推量による処分=長与。担当者の処分で一件落着とする=柳田。処分に(賛成する。踏み切る)。厳重な処分を下す。早急な処分を迫られる。国外追放の処分を受ける=陳。処分する(家を。死体を。不良資産を。マンションを。人目に立たぬように=隆)。 **しょり【処理】**処理に三カ月を要する。処理に追われる(膨大な情報の。目の前で起こっている現象の"柳田)。処理する(臨機応変に。絶妙な仕方で。内規によって。法的な手段で。死体を秘密裡に。トラブルを巧みに。後腐れがないように。物事をきちんと。事件を警察内部でうやむやに高木)。▼事を処理する(穏やかに。てきぱきと要領よく)。コンピューターで画像処理する。コンビューターによる情報処理。情報処理がスムーズに行く。▼あんばいする(語呂を。上手に。適当に。スケジュールを)。▼片をつける(きれいに。うまく。お金で。金ずくで)。死体を始末する。始末をつける(手器用に。こっそり。手際よく)。 **すておく【捨て置く】**提言を捨て置く。このまま捨て置く気になれない。事は火急で一刻も捨て置きがたい=井上靖。捨て置くに忍びない。もはや打ち捨ててはおけない池波。開いた以上は捨てておけない。 **たいぐう【待遇】**▼待遇(至れり尽くせりの。世間並み以下の)。よしんば転職できたとしても今より待遇が悪くなることも大いに考えられる=畑村。ひどい待遇に甘んじる。待遇の悪さを罵る=中局救。破格の待遇を得る。待退を受ける(丁重な。一人前の)。待遇改善を要求する。▼処遇する(従業員を。受刑者を。職員を)。 **たいしょ【対処】**▼対処する(敵の襲撃に。融通無碍沙らげに。冷静に。事態に正しく。危機に二段構えで。生徒の変化を敏感に察して"貫井。大局的に情勢を見て佐藤愛)。どう対処してよいか判断できない。現実に即した対処法。望ましい対処法を考える。何らかの手を打つ。 **ちゅうかい【仲介】**仲介が不調に終わる。仲介の労をちゅうかい取る。神様と人円の仲介を果たす氷室。仲介する(男女を。和平を。口銭を取って)。間に立って努力する。介在する(裏金が。商社が。ブローカーが)。▼介する(円に人を。市場を。第三者を)。口入屋を通じて雇われる=池波。▼周旋する(衣食の口を。代わりの人を。人手を)。しかるべき人を中に立てる。媒介する(関係を。伝染病を。病原菌を)。斡旋切いが効を奏す・降旋を(依頼する。受ける。頼む)。▼降旋する(アルバイトを。再就職先を。仕事を。タレントを。部屋を。条件のいい就職口を!藤田)。▼取り持つ(縁結びを。機嫌を。男女を。取引相手を。二人の仲を)。客の取り持ちをする。▼仲立ちする(縁談を。解決を。交渉を)。両者の橋渡しの役回りを担う“阿川佐。連絡の橋渡しを頼む。橋渡しをする(取引の。二つの文明の)。 **つけっぱなし【つけっ放し】**▼つけっ放しにする(ストーブを。テレビを。電灯を。ラジオを)。▼かけっぱなしにする(扇風機を。テレビを。ラジオを)。 **ていちょう【丁重】**丁重な悔やみの言葉を残して立ち去る"江戸川。穏やかで丁重な物腰。奥平。丁重に(頭を下げる。礼を述べる。座敷へ招じ入れる)。労を丁重にねぎらう。七重のひざを八重に折ってお礼を言う。石坂。七重の膝を八重に折って懇願する。下にも置かない扱いを受ける。貫井。下にも置かず欲待する=高橋和。下にも置かぬように甘やかす永井荷。 <59> # ていねい【丁寧】 丁寧な(楷書の文字。腰の低い人。説明を加える。言葉遣いが空々しく取って付けたよう永井荷)。滑稽なほど丁寧な口調"椎名岐。人を焦じらせるように丁寧な言葉をつかう黒井。丁寧に(お辞儀をする。化粧を施す。包帯を巻く。礼を述べる。見舞の言葉を述べる。正座して頭を下げる=高街。両手をついて挨拶する=さだ)。いちいち丁寧に質問に答える。一枚一枚丁寧に剥がす。他人行儀に丁寧に言う。一つずつ丁寧に確認していく。文字を丁寧に書く。過剰な丁寧さに閉口する三好欲。皮肉らしくばか丁寧に物を言う“有島。言葉が他人行儀に馬鹿丁寧になる大佛。一点一画もおろそかにせずに写経の筆を進める=福永。▼苟いやもしない(一字一句。一点一画)。懇々と(諭す。将来を戒める。説いて聞かせる)。詳々じゅんと説くような口調=井上靖。頑固な年寄りに諄々と言い聞かせるように言う貫井。理由を詳々と説明する。辞を低くして(頼む。返答する)。噛んで含めるように(解説する。説き聞かせる。言って聞かせる)。懇切な添削指導を加える。懇切丁寧に(教える。答える。説明する)。 **てがける【手掛ける】**▼手がける(研究を。建設を。小説を。ビジネスを。編曲を。編集を。翻訳を)。いまだ手がけたことがない。 **てつかず【手付かず】**保険金がほとんど手つかずに残っている結城。何も手つかずの状態。手付かずのままに終わる。▼手をつけない(何一つ。ほとんど)。広大な土地がほとんど白紙のままに残される=外村。 **とりあつかう【取り扱う】**▼取り扱う(幅広い品目を。事件を穏便に。体をぞんざいに。老練な手つきで。子供を没義道もに=有局。三文の値打ちもないように自分の身を軽く水井荷、匹はれ物に触るように宗する取り扱いを敏感に読み取る=佐多。取り扱いに(困る。慣れている)。人の自分に対する=和久。魚のハラワタのように放って置かれる=小林多。 **とりなす【取りなす】**▼とりなす(双方を。その場を。愛想よく。おどおどと。おどすかと見ればたちまち。幸田文)。取りなし顔に(勧める。慰める)。とりなすように声を掛ける。座をとりなすように言う。 **とりはからう【取り計らう】**▼取り計らう(穏便に。好意的に。有利に。いかようにも)。要求に沿うようにできるだけ善処する美濃部。利便を図る。計らう(便宜を。穏便に)。▼計らい(粋な。寛大な。特別の)。良きに計らえ。▼便宜を図る(帰国の。できる限りの)。 **なおざり【等閑】**なおざりな返事。なおざりにする(美しさを。規律を。仕事を。大事な問題を)。等閑視する(意見を。忠告を。問題を)。 **ねんいり【念入り】**念入りな検討を加える。念入りに(顔を洗う。化粧する。目を通す)。一枚一枚念入りに調べる。手袋の指を一本一本しこくように念入りにはめる!永井龍。掃除に念が入っている。念を入れる(念には。念の上にも)。縫い物の針のあとを数えるような冷ややかな丹念さでおのれの心のありどころを追求する=山本周。丹念に一つひとつ当たっていく。髪を丹念に梳とかす。何度も丹念に読み返す。ケシ粒でもさがすように丹念に見つめる=壺井。植物の球根を植えるように丹念に死者の位置を設定する=大江。入念な(テストを施す。視線がくまなく部屋の中を見まわす池波)。入念に戸締まりをする。先生の行動パターンや食べ物の好みを入念にリサーチする三浦し。 **のばなし【野放し】**野放しに育っているお転婆娘―佐多。野放しにする(犬を。家畜を。投機マネーを。無法を)。事実上の野放し状態になる。 **ほうっておく【放っておく】**▼放っておく(容を。子供を。長い間。作りかけのまま。泣きわめいている男を遠藤)。世間の男たちがほうっておくはずがない"・ほっとく(母を。嫁を)。病気をうっちゃっておく。・おっぽり出す(子供を。トランクを。本を)。緊急の課題を閑却する。▼差し置く(根本的な問題を。定かならぬ出来事を)。提出した企画が塩漬けにされる。▼不岡に付す(一件を。失言を。責任を。罪を)。▼放任する(いじめを。子供を。雑駁にいさを)。ご馳走にもそっちのけで駆けだす。店のことなどそっちのけで世話をする。そっちのけにする(夫を。客を。用件を)。改革論議を店たなざらしにする。▼店ざらしになる(企画が。法案が。報告書が)。▼放置する(長期間。手をつかねて。草が生い茂るままに)。疑惑をそのまま放置しておく。聞いたことが意識の物置の目立たぬ片隅に放置される=奥泉。ほったらかす(学校を。仕事を。商売を)。子供をほったらかしにする。放っておけない(このまま。聞いたからには)。放っておく手はない。放っておくと(大事になりかねない。妙なことになりかねない)。閑却できない問題。ほっとけないタイプ。見るに見かねて乗りだす。 **みかぎる【見限る】**見限る(前途を。妻が夫を。不甲斐心がない教師を)。▼見切りをつける(才能に。仕事に。社長に。生活に。前途に。きっぱりと。さっさと。すばっと)。見切る(引き際を。行く末を)。大勢だけで見切ることは早計だと諭される=有川。 **みはなす【見放す】**医者が病人を見放す。▼見放される(運に。幸福に。つきに。天に)。偶然や倪倖ぶれっから見離される=本庄。愛想が尽きる。見捨てる(家業を。国を。妻子徐属サいを)。勝手にしろと突き放す。突き放した口調で言う。冷たく突き放すように言う高見順。▼見殺しにする(農民を。不況産業を。友人を)。みすみす見殺しにはしない。 **ゆうぐう【優遇】**▼優遇する(経験者を。有資格者を)。恩典が付く。恩典に(あずかる。浴する)。優待券を(配る。利用する)。優待する(株主を。高齢者を)。 <60> # 集まる・集める **あつまる【集まる】**▼集まる(一身に怨嗟設んが。心臓に血が。同好の士が。目尻に嫉しゃが。対策を相談に。注視が一身に。見物人が大勢。一万二千の観衆が。いつもの顔ぶれが。かなりの人数が。座敷に親類縁者が。見送りの人が黒山のように=海音寺)。▼人が集まる(賑やかに。雪にもめげず)。▼集まってくる(大勢の人々が。三々五々。陸続として。近所の人たちが。続々と仲間たちが。どこからともなく。あちらこちらから参詣の人びとが!白洲。砂糖に蟻ぁりがつくように人が!大佛。夕暮れには蚊が肝に音を立てるほど=田山)。集まりが(いい。悪い)。原稿の集まり具合が悪い。一寄り集まる(雑多な人間が。いろいろな人が)。散り散りになった思いが少しずつ寄り集まってくる=高樹。▼一堂に会する(各国の首脳が。全員が。朝野の名士が。異なる分野の技術者が=畑村)。どうでもよいことばかり雲集している世の中=横光。内外の碩学純に高徳が雲集する=井上荫。新役員が顔合わせをする。凝集する(人口が。力を。意識が一点に)。傘下に(集める。収める。入る)。参集する(信者が。男女が)。三人寄れば文殊の知恵=斎藤栄。女三人寄ればかしましい=源氏。▼集結する(艦隊が。部隊が。基地に)。一極に集中する。▼たかる(蠅ぃえが真っ黒に。虫がびっしりと。アリのように黒々と人が=辺見)。▼たまり場(学生の。暴走族の)。▼たむろする(客が店内に。漁船が港に)。▼集う(選手が会場に。全国から老若男女が。人を恋うるように赤とんぼの群れが頭上に"阿久)。貴神の集う場所。▼輻輳ぶぶする(記事が。交通が。事疹が)。▼吹き寄せられる(一陣の風とともに匂いが宮尾。流氷が沖から風で一挙に=本多勝。放浪人が落ち葉のように=林美)。 **あつめる【集める】**▼集める(技術の粋を。地元の住民社員全員を。大至急人材を。内角に球を。気を丹田に。金に飽かせて。森になる木々を。尽きかけた気力を。できるだけ情報を。有力者を一堂に。手に入るかぎり。ほうぼうへ手をまわして。有能の士を麾下きかに=山田風)。▼一身に集める(人望を。父母の愛を)。▼注目を集める(人々の。マスコミの)。額を集めて(相談する。いろいろ評議をする)。招請状を出す。手当たり次第に買い集める。無頼浪人を金で駆り集める=池波。金を借り集める。▼吸い集める(こみを。ほこりを)。▼掃き集める(落ち葉を。ちり取りにこみを)。拾い集める(枯れた枝を。捨てたものを)。▼もらい集める(お金を。署名を。同意書を。バンフレットを)。▶採集する(昆虫を。植物を。文例を。密を)。▼集荷する(原料を。米を。商品を)。店の売り上げを集金して回る。集金する(代金を。部屋代を)。▼集配する(手紙を。文書を。郵便物を)。開発資金の調達に腐心する内橋。調達する(食糧を。人材を。石油を。武器を)。 **えんかい【宴会】**無礼講と呼ばれる宴会"伊集院。宴会が(盛り上がる。たけなわになる)。夜遅くまで宴会が続く。ことあるごとに宴会を開きたがる=つか。宴席に顔を出す。宴席の末座に逃なる。宴席を設ける。一席設ける。宴(長夜の。雪見の)。宴たけなわとなる。お座敷に顔を出す。ういういしい可愛子ちゃんもやってきて、お座敷はばっと一時に華が咲いたように賑やかになる=胡桃沢。お座敷をあっちこっちと勤め歩く永井荷。二次会に(繰り出す。流れる)。二次会の誘いをやんわりと断る=篠田。飲めや歌えの無礼講。 **かいごう【会合】**▼会合(気詰まりな。退屈な。秘密の)。料亭を会合場所にする。会合が(お開きになる。終わる)。会合に(顔を出す。出席する)。会合を開く。・会合する(各国の大使が。社員が)。会に出席する。集まりに顔を出す。会が(お流れになる。正常に運営される。滞りなく終わる。和やかに進行する。賑やかに始まる)。会を盛大に催す。サロンを(主宰する。開く)。集会に(参加する。出席する。つめかける)。会のうちに(終わる。幕となる)。分科会に(出席する。出る。分かれる)。満座が息をのむ。満座の(注目を浴びる。中で恥をかく)。町内の寄り合い。寄り合いに(顔を出す。出席する)。例会に出る。例会を開く。一座が(しーんと静まり返る。たちまち和やかになる)。一座に(沈黙が流れる。どよめきが起こる)。一座の空気が落ち着く。素早く一座を眺めまわす。▼集い(交歓の。若人の)。集いが(終わる。始まる)。 **かいじょう【会場】**会場が(満員になる。しんと静まり返る。熱気に包まれる)。鳴り止まない拍手が会場にあふれる=海堂。会場を(埋めつくした聴衆。沈黙が支配する)。爆笑が会場をゆるがす"飯田。会場整理に協力する。式場に花を飾る。式場を予約する。満場粛として声なし。満場が(騒然となる。どよめきにわく。水を打ったように静かになる)。 **きふ【寄付】**寄付を(仰ぐ。募る)。慈善のために寄付をする。寄付する(遺産を。香典を。財産を。お金を教会に。慈善事業に)。寄付金を集める。義捐金さんを集める。多額の寄金が集まる。寄金を募る。喜捨を仰ぐ。寄贈する(蔵書を。銅像を。遺作を図書館に)。泰加帳に(記帳する。寄進者の名を記載する)。寄進を求める。寄進する(お金を。財産を。神社に。寺に)。▼献金(企業からの。個人からの。団体からの)。見返りを期待して献金する。政治献金を受け取る。 **きゃくよせ【客寄せ】**集客する(広告で。ホームページで)。客寄せの(景品。バンダ)。甲高い客寄せの声。人寄せの芸。やけに囃はゃし立てる人寄せの三味線太鼓=山本周。 **きょきん【拠金】**拠金を(集める。募る)。▼醸金する(難民救済に。福祉事業に)。▼拠出する(掛け金を。資金を。見舞金を)。 <61> # しがい【市街】 市街が(暗い闇に沈む。一望のうちに見渡せる)。雨が市街を濡らす。霧が市街を包む。街頭で(ビラを配る。インタビューする)。街角(見知らぬ。見慣れた)。街角で旧友に会う。街角に夕闇が降り積もる森村。 **グループ**グループが分立する。グループに(加わる。まとめる)。幾つかのグルーブに別れてお行儀よくかたまる=人同。班ごとに別行動する。班に(属する。分ける)。 **ぐんしゅう【群衆】**群衆(蟻ぅぅのように四方から集まってくる=徳田。前へも後へも身動きならぬほどの"中村白)。蠅はぇのように集まっている群集=遠藤。群集が(河の流れのように進む光瀬。なだれを打ってひしめく"川端)。群衆が(会堂に満ちる。水門へ吸い込まれる水みたいになだれこむ"小局。広場をぎっしりと埋める=栗本)。ひっそりとした群集が三々五々影絵のように闇の中に散り始める=福永。幾万とも知れない群衆で埋められる=津本。群衆の(中に姿を消す。中の孤独)。ビラを群衆の頭上に撒く。ぞろぞろと群衆の流れが続く=五木。 **けっしゅう【結集】**▼結集する(科学の粋を。衆知を。人民戰線を。総力を。組織を。兵力を。労働者を)。再結集する(武装勢力が。分裂した各派が)。 **サークル**大学公認のサークル。サークルに(熱を入れる。入る)。サークルを(退会する。やめる)。サークル活動にのめり込む。部活の活発な高校。部活を引退して暇を持て余す有川。クラブに(属する。入る)。クラブを退会する。 **ざっとう【雑踏】**身を揉。まれて歩かなければならないほどの雑踏高井。姿が雑踏に消える。大都会の雑踏におっぽり出されてまこついているお上りさん"高見浩。雑踏の(中の孤独。中にまぎれこむ。中を縫って歩く)。あてもなく雑踏の中を彷徨いまう=高橋知。活気を帯びた雑踏の音が津波のように寄せてくる!森瑶。雑踏を泳ぐように歩く=小林久。買い物客で賑わう商店街を行き交う人に揉まれながら歩く高樹。 **しゅうごう【集合】**集合の合図を待つ。▼集合する(総員が。駅前に。講堂に。神社の境内に。一所に。広場に。本部に。意気揚々と。ミーティングルームに)。集合時間が迫る。集合時間に遅れる。集合写真を撮る。離散集合を繰り返す。 **しゅうしゅう【収集】**資料の収集に取り組む。▼収集する(切手を。こみを。情報を。資料を。事例を。データを)。収集熱がとみに高まる。情報収集に全力を尽くす。▼コレクション(個人的な。愛蔵の。美術館の。壁を埋め尽くした膨大な書籍の"加賀)。コレクションに加える。 **しゅうだん【集団】**賑やかな集団が入ってくる谷村。集団で移住する。集団に所属する。後説集団が一団になって追う沢木。統制のとれた集団行動。集団的な狂気。集団ヒステリーにかかる。集団リンチを受ける。見るからに柄の悪そうな一団"重松。一団がそろぞろと横断する=森環。野伏せりの一団が立ちはだかる。例によって一隊が繰り込んでくる=小沼。一隊を率いる。団体で行動する。 **しゅうちゅう【集中】**過度の集中を排除する。集中する(世の非難が。エネルギーを仕事に。限られた地域に。全神経を運転に。周囲の人々のとがめる視線が"玉村)。集中して仕事をする。▼一点に集中する(注意力が。光が。意識を)。集中的に勉強する。集中力を必要とする仕事。やりかけている仕事から気持ちをそらすまいとする=堀。大量の捜査員が動員される。▼動員する(あらゆる手段を。警察官二百名を)。記事幅輳谷沢のため増ページにする。 **しゅうらく【集落】**集落(斜面に開けた。港に程近い。山肌に抱かれた)。集落が(海べりに牡蠣のようにしがみついている遠藤。ダムの湖底に沈む内田康)。神去地区は山に囲まれた小さな集落で平坦な土地がほとんどない三浦し。濃い霧が波のように斜面を下り、瞬く円に集落まで押し寄せていく三浦し。小さな集落を抜ける。集落全体が一望できる。山裾の谷間に拓かれた村落熊合。太陽が村落の彼方に沈む。 **すずなり【鈴なり】**カフェテラスのテーブルが客で鈴なり“池田。枝に蕾が鈴なりにつく。たくさんの人間が鈴なりになって乗る。バスの窓に子供たちが鈴なりに顔を並べる=三浦哲。不幸が鈴なりになって押し寄せてきた感じ=村上龍。ぼくたちは窓辺に鈴なりになって見つめていた飯田。▼鈴なりになる(りんこが。甲板に乗組員が)。手おいの猪いいのような乗客がこぼれそうな鈴なりの汽車小島。 **そうどういん【総動員】**▼総動員する(警察力を。国家権力を。知識と体験を。にわか知識を。持てる力を。あらゆる政策を。ありとあらゆる能力を)。理性と感性を総動員した全身的な理解=竹西。一家総出で迎える。家族総出で働く。町じゅう総出で欲迎する。 **チーム**チームが若返る。所属するチームが決まる。チームに(加わる。入る。新人が加入する)。古巣のチームに戻る。チームの(貝数が増える。監督。キャブテン。レギュラー)。チームを(組む。編成する)。率先してチームをまとめる。援助チームが出動する。チーム(全員が顔を揃える。全員を引き連れる)。一行がぞろぞろと移動する。引きずるように一行を導く=本庄。組に(分ける。なって行動する)。若い衆を集めて組を作る―熊谷。隊を(組む。組織する。編成する)。 **ちまた【巷】**ホームレスが巷にあふれる。浪人が巷に徘徊州いする=村松。巷の(噂にのぼる。評判になる。風聞に聞き及ぶ)。巷間から伝えられる話。巷間に(造る。 <62> # あ **饗宴** 饗宴は、う。饗宴がさりげなく終わりを告げる"有島。あまりに見事な花の饗宴に声を上げる三浦濾。 **ひとごみ【人込み】** 何百とも何千とも知れない人込み=内田瓦。歩いているだけで酔ったような気分にさせられるような人混み安岡。人込みが黒い塊になる阿木。あたふたと人ごみの中へ消えてゆく北。人込みを縫って歩く。見物人が出盛る。人が黒山のように(集まる。群れる)。黒山の人だかり。流れをよどませている人だかり“北原。人だかりが半円を描くように救急車を取り囲む=伊坂。人だかりに通路を阻まれる。お祭りのような人出"佐多。見物人が人山を築く。見高く集まった人垣。人垣が(前後左右に揺れる。わかに崩れる)。▼人垣ができる(周囲に。黒山の)。垣の背後に身を隠す。人垣を縫うように歩く"辺見。 **ひとなみ 【人波】** ▼人波(ビルからワッとあふれ出てくる=小沢。歩道いっぱいに埋まった=山崎)。人波が(ひしめきあって流れる。歩道にあふれる。渦を巻いたように多く激しい"深沢。湖の退ぃくように減ってゆく隆。堰せきを弾いて流れだす=徳永)。ガラス越しに水族館の景色を見るように人波が歳児にく阿刀田。境内の内外が人波で歩けないほどになる。人波で埋まる(駅前広場が。通りが)。人波に(流されるようにして歩く内館。もまれながら歩く柴田翔)。なだれを打つような人波に揉まれる=山崎。人波の(問を歩く。中にたたずむ。大海の中へ漕ぎ出す人谷崎)。姿が人波の中に消える。人波を(押し分けて歩く。縫うようにして歩く『船戸)。種々雑多な人の波。人の波が(渦巻く。大きく動く。寄せたり退いたりする。沖合を流れる潮目のように揺れ動く=阿久)。視界を人の波がさえぎる。石段に群がった人の波がさながら竜のようにうねる=阿久。連絡通路を人の波が寄せてくる=内海。人の波でごった返す。人の波に(のまれる。押されながら歩く=向田)。人の波の中に消えていく。人の流れが間断なく続く。人の流れと逆に歩く。人の流れに沿って進む。人の流れを突っ切る。 ションを開催する。大層見事な園遊会。善美を尽くした饗宴。客をもてなす。客を歓待する。 **巷間** (で話題になる。まことしやかに囁かれる。まことしやかな噂が流れる)。風説が巷間に流れる。巷間の話題となる。巷間に流れる噂(の出所は不明。尾ひれがついて広がる。信憑性がない)。 **都会** イルミネーションの光の渦に埋もれた都会"小池。都会から転居して田舎暮らしを始める"池井戸。都会での生活に疲れ果てる=鈴木光。都会の(空気に染まる。空気は汚い。生活に慣れる。座ちりにまみれる。潑剰につたる空気。憂愁が漂う。風を運んでくる。雑踏に身を置く。暮らしに不慣れな新入り岩尾。喧騒ご认から離れる。喧噪行礼の中で暮らす=内海。夜のムードに身をゆだねる=黒岩)。健康な生活力を失われたような都会の草木の色"島崎。洗練された都会の雰囲気を最高度に身につける=黒岩。東京のような都会って大きな海のよう“大佛。さわさわと人が群がって落ち着かない街高井。▼大都会(ごみごみして不潔な"宮本直。東京という得体のしれない=日野。人間が渦を巻く=石坂)。派手な都会暮らしを捨てる"藤田。都会人(垢抜かけのした。去勢された)。洒脱な都会人を気取る=藤田。都会生活に憧れる。都会的な感覚の持ち主。都会的に洗練される。麦藁帽子にジーンズといういでたちで都会に出てきた娘"中村真。都会風な女。都会に住み着く。失業者が都会に氾濫に似する。都心から郊外に向かう。都心の高層ビル群が見える。車が都心を抜ける。 **パーティー** パーティー(いかがわしい。肩のこらない。気の置けない。引っ越し祝いをかねた)。バーティーが(お開きになる。始まる。盛り上がる)。せっかくのバーティーが台なしになる。政治家がバーティーで金を集める。盛装してパーティーに臨む。連れ立ってバーティーに出席する。パーティーを開く。友達を自宅に招いてバーティーをする。文学賞のパーティーを開催する。レセプションに出席する。レセプションに出席する。レセプションを催す。 **ひろば【広場】** 広々した清潔な広場。広場が(圏にうずくまる。聴衆でぎっしりになる=川上)。広場に(集まる。出る。面して建つ家)。広場の(隅に駐車する。真ん中に仁王立ちになる=栗本)。広場を挟んだ遊歩道。ぽっかりとした広場のような空間"鷺沢。駅前広場を走り抜ける。 **ひろま【広間】** 広間の(障子を開け放つ。空気が一瞬にして張りついたまま動かなくなる=塩野)。広間を三つぶちぬく。息苦しい沈黙が広間を占める=山本周。ホールが(満席になる。がらんと空っぽ)。ホールの内部を歩き回る。足早にホールを横切る。ロビーで待ち合わせる。広いロビーに人がまばら。ロビーの隅に荷物を置く。 **ぶんかさい【文化祭】** 文化祭(高校の。市民の)。文化祭に参加する。文化祭を見にいく。学園祭の準備をする。学園祭を(運営する。盛り上げる)。学芸会に出演したときのようにあがる=大江。 **ぼきん【募金】** 募金に応じる。募金を集める。街頭で募金する。カンパが集まる。費用をカンパに仰ぐ。カンパを(集める。募る)。団体にカンパする。 **ぼしゅう【募集】** 募集に応じる。▼募集する(懸賞小説を。出資者を。団員を。部員を。アシスタントを)。公募する(歌を。債券を。出演者を。標語を)。 **まち【町】** 町(人がごった返しているにぎやかな藤沢。人が捨て去ったように静かな大佛。洗い立ての顔のような"開高。碁盤の目のようにきれいに区画された宮尾。様々な国籍の人間が闊歩みっする=貫井。童話に出てくる都市のように美しい遠藤。どこかに昔のたたずまいが残っている高橋涼。人の心が乾ききった高田。日に日に火の消えたようになって行く。 <63> # 集まる・集める-19 **町** よそよそしくがらんと明るい=日野)。街(迷路のように複雑な伊坂。バリは貴婦人が泣いているような=池田)。町が(白々と明ける。闇に包まれる。にわかに活気づく。紫がかって暮れ始める。荒涼とした気配に覆われる藤沢。たそがれ色に包まれる藤沢。地の底からジーンと睜まり返る=小林多)。フェンス越しに町が一望できる。小さな町が一躍全国区になる“あさの。町から(姿を消す。町へと旅をする)。遠くの町からわざわざ買いに来る。町から町を渡り歩く。偶然に町で出会う。町としての体裁が整う。観光の町として栄える。町に(根を下ろす。明かりが闘き始める)。捜査員が町に散る。連れ立って町に出かける。町の(地理に詳しい。あちこちを探しまわる。ざわめきが聞こえる。片隅で細々と商いをする=西木)。街の(灯りが赤いインクでもこぼしたように点々とにじんで見える"石坂。顔が来るたびに変わっている=丹羽)。川が町の真ん中を流れる。焦土の町の荒涼感。知らない町の気安さ。夕空が町の上に広がる。闇が町の底を這う藤沢。町へ出て買い物をする。町を(ぽんやり歩く。挙げて歓迎する。カメラにおさめる)。街を風の一団が走り抜ける倉橋。光が町を彩る。川が町を貫流する。月光が町を浮かばせる。洪水が町を洗い去る。ふらふらと町をさまよう。窓から町を眺める。夕陽が町を染める。線路が街を南北に割っている『なかにし。人影もまばらな町を急ぎ足に抜ける藤沢。あてもなく町を(歩く。うろつく)。夜の街(にぎやかな。静まり返った)。夜の街を歩き回る。昔の雰囲気の残る下町=石田衣。下町的な情緒。東京の下町に生まれ育つ。町内きっての働き者。同じ町内に住む。町内の寄り合いに出席する。噂が町じゅうにぱっとひろまる=松谷。町じゅうの笑い者になる。 **むら【村】** 海沿いの長閑とな村。ダム建設で村が水没する。村から(村を回る。村へと旅をする)。村でも評判の仲のいい夫婦"曽野。村に(腰を据える。足を踏み入れる。ゆかりのある成功者)。村の(明かりが点々と光る。主だった者を集める。向こうに山が霞む)。毎日退屈する暇もなく生命力を増していく村の風景"三浦し。村を(夕闇が包む。あげての一大行事)。一家を挙げて村を出ていく。川が村を貫いて流れる。山村が過疎化する。山村を(支援する。大切にする)。村内ににぎわいが満ちる。大手を振って村内を歩きまわる。一夜のうちに村中に知られてしまう。山から里に下りる。▼寒村(辺阪扒な。辺郿かんな。人家寧々たる。寂れていく一方の。山腰様に囲まれた。山の斜面にへばりついて暮らす=篠田)。 **むらがる【群がる】** 灌木跡しや雑草が隙間もなく淡焼らる=福永。群がる敵を撃ち倒す安岡。砂糖に群がる蟻ぁぁたちの町=池田。灌木が所々に群がっている。蚊がわんわん云ぃって弾がってくる谷崎。桜が頭上に咲き群がる。男女があちらこちらに群れている宮本百。▼群れる(烏からが。魚が。少女たちが。人々がいっぱいに)。 **むれ【群れ】** 血に飢えた野獣の群れ藤本。群れが二つに分かれる。見物人の群れがひしめきあう。小鳥の群れが飛んでいく。ぞろぞろ受験生の群れがやって来る人米。人々の群れがぞろぞろと出て来る=田山。魚が群れになって泳ぐ。人の群れに取り囲まれる。群れを(避けて一人でいる。作って分布する)。人の群れが(黒蟻(720のように集まる=有島。黒雲の動くようにこちらへ近づく=内田百)。群れ全体が一挙に崩れる。羊の一群が移動する。▼一群が襲ってくる(狼の。村を野伏せりの藤沢)。たくさんの個体が集まって群体を作る。群れをなして(移動する。泳ぐ。飛ぶ。やってくる)。人影が群れをなして集まる。若い人たちが群れをなして歩いている三島。 **もよおし【催し】** ▼催し(多彩な。珍しい)。催し物(恒例の。デパートの)。イベントがスポンサーの意向で中止になる=重松。▼行事(宗教的な。伝統的な。文化的な。慶祝の。古式ゆかしい)。 **やじうま【野次馬】** ▼野次馬(無責任な。物見高い)。野次馬が(火事場に集まる。遠巻きに現場を囲む=高木)。大勢の野次馬がひしめき合う。かなりの数の野次馬が出ている=伊集院。遠巻きにした野次馬が見物している=村上元。野次馬の整理に専念する。警察官が野次馬の整理に追われる若竹。好奇の色を宿した野次馬の視線熊谷。野次馬を(かき分けて前に出る。食い止めるのに大わらわ)。野次馬根性を出す。野次馬的な傍観者。 **よせあつめ【寄せ集め】** イメージの断片の寄せ集め。発表済みの対策の寄せ集めにすぎない。寄せ集めの(チーム。メンバー)。統率に欠ける寄り合い所带。▼▶烏合の衆(統制の取れぬ。寄せ集めの。統率が取れていない)。無気力な烏合の衆と化す"高橋和。ただの烏合の衆に過ぎない。烏合の衆のお祭り騒ぎ=山手。 **よせあつめる【寄せ集める】** ▼寄せ集める(記憶を。散らばった服を)。▼肉を寄せ集める(体の脇の。皿の)。かき集める(親戚から金を。思いつく言葉を。熊手で落ち葉を)。▼かき寄せる(襟を。小皿のねぎを。砂を。荷物を)。集約化を進める。集約する(意見を。主題を。要求を。一枚のカードに多機能を)。 **よびあつめる【呼び集める】** 呼び集める(関係者を。旧知を。親類を。隊員を。知人を。仲間を。家族を枕元に)。▼糾合する(豪族を。弟子を。天下を。同志を)。家族全員に招集をかける。▼招集する(委員会を。会議を。談会を。軍隊を。社員を)。 **よびもの【呼び物】** ▼呼び物(イベントの。学園祭の。サーカスの。大会きっての。文化祭の)。早変わりが呼び物の芝居。看板となる(観光資源。出し物)。温暖化対策の目玉。目玉として位置づける。 <64> # 浴びる・注ぐ **浴びせる** 浴びせる(悪鷹を。きつい質問を。散々大砲を。敵に連射を。罵声を。非難の声を。乱暴な言葉を。露骨な侮辱を。一太刀。侮蔑的な一瞥を。張り手を顔面に。矢継ぎ早に罵詈讒謗を。好奇の視線を)。視線を浴びせる(露骨な。突き刺すような=原田康)。皮肉の一つも浴びせてやりたい三好後。めずらしい虫を観察するときに似た視線を浴びせられる三浦し。浴びせかける(悪口雑言を。荒い声を。一斉射撃を。辛辣な皮肉を。罵詈雑言を。卑猥な野次を。威嚇のかけ声を。いきなり質問を。胡散臭さの眼を=山崎。シャワーのように砲火を司馬。太陽がさんさんと光を「宇野利。鉄砲隊が釣瓶撃ちに銃弾を=柴田剣。みだらな言葉を「徳田)。▼ぶっかける(頭から水を。顔にビールを)。 **浴びる** ▼浴びる(群衆の視線を。しこたま酒を。社会の非難を。全身に血を。全身に陽を。太陽の直射を。壇上で拍手を。揶揄ゃの声を。陽気な歓声を。学校じゅうの注目を。まばゆいスポットライトを。ゃんやの喝采を。嘲笑をまともに。日光をふんだんに。濡れ濡れとした月光を栗本。非難の集中砲火を藤本。銀燭這いしの光を真っ向に菊池。集落が午後の光をいっぱいに「篠田。世間の注目を一身に=篠田)。酒を浴びるほど飲む!森環。脚光を浴びる(一躍。観光地として。にわかに世の)。▼全身に浴びる(日の光を。山の端はから昇る朝日を南木)。▼太陽を浴びる(南国のぎらぎらした。眩まぶしいばかりの)。▼光を浴びる(明るい。薄暗い石油ランプの)。▼陽射しを浴びる(秋晴れの。朝の。初夏の)。▼眼差しを浴びる(羨望に礼の。非難の)。▼水を浴びる(ばちゃばちゃ。頭からまともに)。▼身に浴びる(燦々さんたる陽光を=内橋。不意打ちの剣を=隆)。水を浴びたように汗をかく倉橋。浴む(日を。水を。湯を)。 **あぶら【油】** 油が(切れる。水を反発する)。溢れるように鍋の油が立ち騒ぐ=河野。水面を油が膜のように閉さす長崎。熱っぽい関節に油が切れたような妙な気分安部。油に足をとられるように力が徒に働く三島。汗と油にまみれて働く。肌が油になじむ。油の中〈水を一滴垂らしたようにどうにも周囲と密度が合わない=山本周。油を(流したようにギラギラした海武田亘。引いたように光っている顔・三浦哲)。鍋に油を回す。錆びた自転車に油をさす。汗が油を塗ったように光る=中上。海上は油を流したようにとろりとしている平岩。幸福が水に油を落としたように一面にひろがる=大佛。月が金色の油をといたように光る林美。とんろりと油を張ったように静かな入り江阿刀田。情けなくなるほどぎゅうぎゅう油をしぼられる=阿川弘。目が油をさしたようにどんよりする宮本組。油のような(汗を流す。夕日の光。滑りのよいやさしさ三島。熱風が吹きぬける=光瀬)。渉羽かげろうのかさなりあった翅はぁが油のような光彩を流す梶井。油のように濃く重い闇がたちこめる=小林久。射し込んでくる光を受けてネクタイの木目の模様が水に浮く油のように変化してゆく中沢。性根の悪い色をした背黒い水が油のようにむうと流れる=内田瓦。大気が油のように重くよどむ=光瀬。鰯いもの油がじりじりと垂れて青い焰加のが立つ長塚。魚油が豆をはじくような音を立てて燃える=遠藤。 **いど **【井戸】** 壁に反響するビアノの音色の強弱が深い井戸に落ちこんでいるような澄んだものを胸に訴える=林だ。枯れた井戸に石でも放り込むように実に様々な話を語る=村上巻。井戸の底のような静けさ=若竹。森の中の井戸の中にでも落ちこんだように淋しい気持ち=林美。井戸を(埋める。掘る)。汲くんでもつきない井戸のように涙が目にあふれる=阿久。井戸端で(足を洗う。洗濯をする)。井戸水を汲み上げる。美味うまい井戸水を心ゆくまで飲む"村上卷。気分が井戸水のように落ち着く=佐藤春。古井戸を(こわごわのぞく恰好ぶらで自分の本心をのぞく!高尾。覗のぞき込んだような声を出す―辻井)。釣瓶』で水を汲み上げる。 **いれる【淹れる】** ▼淹れる(お茶を。紅茶を。慣れた手つきでコーヒーを)。茶を淹れる(熱い。渋い。武骨な手つきで村上元)。 **おけ【桶】** 水がいっぱい入った桶。桶にたがをかける。桶の中を金魚が泳ぎまわる=北原。桶を(担ぐ。小脇に抱える)。手稲にぉで(水をぶっかける。豪快に頭から水をかぶる三浦し)。手桶に水を(汲くむ。満たす)。岡持ちに入れて運ぶ。岡持ちを(肩にかける。提げる)。 **きゅうゆ【給油】** 給油する(燃料を。自動車に。飛行機に。ガソリンスタンドで)。ガソリンを(補給する。満タンにする)。 **くみとる【汲み取る】** ▼汲み取る(含意を。気持ちを。教訓を)。▼意味を汲み取る(言外の。言葉の)。心持ちが底の底から汲み取れないような不安と哀愁が心を曇らせる徳田。▼酌量する(気持ちを。情状を)。 **くむ **【汲む】** ▼汲む(意を。お茶を。海水を。気持ちを。心を。茶を。流れを。末期びっの水を。湯を。立法の主意を)。▼水を汲む(バケツに。柄杓いしに。井戸から。手桶にょから)。湯を茶碗に汲み入れる。▼汲み出す(上がり湯を。釜から湯を。バケツで水を。柄杓で。ボンブで。井戸から地下水を)。▼汲み上げる(海水を。地下水を。残り湯を。水を井戸から)。▼汲み込む(海水を。ぬるま湯を。水を)。 **しゃくし【杓子】** 杓子で(かきまわす。すくう)。お玉杓子欲しで汁をすくう。お玉で(しゃくう。すくう。スーブをお椀に入れる)。柄杓心しで水を(かける。汲くむ。飲む)。柄杓の柄を握る。柄杓を手桶にぉの中に突っ込む貫井。水を飲もうと柄杓を取る!宮部。 <65> # 浴びる・注ぐ **つぼ【壺】**ふくらみが少女の頬のような壺灰谷。壺に花を投げ入れる=瀬戸内。両方の手の指を壺の口のように一所に集める=有鳥。壷をいとおしげに撫でる"高橋前。壺のような穴。整;ち出しものの壺のように外側ばかり鮮やかで中はうつろに感じられる少年"岡本。皆から忘れられた骨董に品の壺のようにそこに坐っている=小川。甕かぁに(梅を漬ける。いっぱい水を満たす)。人一人入れそうな水瓶炽灯。水瓶から水を汲くむ。 **シャワー** ▼シャワー(巨大な滝壺吹時の中にでもいるような物淡もごいノイズ音の=辻仁。ラクダの涎はだのようにチョロチョロと水が流れるだけの=高橋三)。雪が光り輝くシャワーとなる=常盤。シャワーを(頭から浴びる。浴びて生き返った心地)。熱いシャワーを浴びたように気分が改まる=高橋治。精神にシャワーを浴びているような快さ=中村真。▼シャワーを浴びる(音の。からだにまつわりつく魚の匂いを落とすように=向田)。▼シャワーのような雨(温かい。心地好い細かい!内田春)。他人の卑しい妄想をシャワーのように浴びる=桐野。血がシャワーのように噴出する"栗本。行水を(使う。浴びたように汗が滴る=山崎)。たらいで行水する。風呂を鳥からの行水ですます=加賀。 **すくいとる【掬い取る】**▼すくい取る(上澄みを。黄身を。灰を。花びらを。魚を網の中に。唇からこぼれ落ちてくる言葉たちをできるだけくまなく=小川)。正常な船の上側を匙きじですくい取ったような形をした貨物船"吉行。相手の声の調子が沈んだのを掬いとるように言う円地。しゃくい取る(灰汁を。泡を。スープを)。 **すくう【掬う】**▼すくう(足を。砂糖を。雪を。両手で水を。川水を手で。さじで。ざるで。しゃもじで。バケツで。さで網で雑魚を=田山。箆へらで一すくいずつ土を=岡本)。▼すくい上げる(腰を。砂を。雪を。手のひらに。一匙た。転がってきたボールを。ジャムをたっぷり)。すくい出す(水を。種を一粒ずつ丹念に)。スーブを一すくいする。水を掬きくして口にふくむ。水を手に掬する。 **そそぎこむ【注ぎ込む】**▼注ぎ込む(エネルギーを。人類の英知を。精力を。全力を。金を事業に。言葉を耳の穴に)。▼注ぎ人れる(湯を土瓶に。こぽこぽと酒を獅子)。砂を流し入れる。▼注入する(オイルを。ガスを。活力を。公的資金を。水を高圧で)。漏斗にで広口瓶に移す。漏斗のように口を開くと荒巻。流し込む(喉にお酒を。水を口に。食バンを牛乳で。おにぎりをお茶で胃袋に=束野。苛立からたしさをコーヒーで若竹)。▼胃に流し込む(酒を。ビールをぐいっと)。喉に流し込む(コーラを。ビールを。スポーツドリンクを)。コッブの水を一気に喉の奥に流しこむ小林久。 **そそぐ【注ぐ】**▼注ぐ(計画に意を。コップに水を。優しい微笑を。川が海に。湯を急須に。コッブになみなみとビールを。森林保護に努力を。底抜けの愛情を。コーヒーをカップに。目をびたりと相手の面上に。蕎麦猪口ぶぅに蕎麦湯を"阿川佐。昔と変わることない情愛を=丹羽。当てどのない視線をぼんやり野上)。視線を注ぐ(熱い。気遣わしそうな)。▼全力を注ぐ(修復に。手当てに)。▼光を注ぐ(満月が地上に。月が冴え冴えとした辻井)。▼眼差しを注ぐ(穏やかな。憧れの。熱い。同情の。半信半疑の)。見つめるともなく鈍いまなざしを注ぐ。古井。▼目を注ぐ(無遠慮な。哀れみの)。▼注ぎかける(油を。スープを。ツースを。水を。密を)。雨が音もなく降り注ぐ。▼注す(カンテラへ油を。たっぷり潤滑油を。湯飲みにお茶を)。 **つぎこむ【注ぎ込む】**▼つぎこむ(事業に巨費を。給料の大半をギャンブルに)。▼金をつぎこむ(莫大雄な。博打に。ありったけの)。なけなしの金をつぎこんで買う飯田。▼投人する(新型車両を。莫大な資金を。優秀な人材を。兵力を戦線に)。 **つぐ【注ぐ】**▼つく(グラスに水を。酒を猪口に。とくとくと油を。コーラをコッブに。自分の杯に手酌で)。▼酒をつぐ(グラスに。猪口に)。なみなみとつぐ(酒をコッブに。コッブにジュースを。ジョッキにビールを)。▼湯呑みにつぐ(鉄瓶の水を。薬湯を)。 **ひしゃく【柄杓】**柄杓で(水を飲む。水を掬う。水を撒く。湯を汲む。飲む)。柄杓の柄を握る。柄杓を手桶にぉの中に突っ込む貫井。水を飲もうと柄杓を取る!宮部。 **バケツ** バケツで一杯分ぐらいの愚行。井上ひ。バケツに(水を入れる。頭を突っ込んで絶する池澤)。バケツの水をぶちまける。馬みたいにバケツの水をじかにごくごく飲む"住井。バケツを棍棒で叩くような単調で暴力的な音が続く"海堂。水中でバケツを叩くような響き=獅子。バケツ一杯にこぼれるくらい魚を貰う。阿部。バケツリレーで水を運ぶ。 **ポット** にお湯を入れる。ボットをガスレンジポットにかける。水筒に(酒をつめる。水を入れる)。魔法瓶に(お湯を入れる。冷たい水を入れる)。水差しからコップに注ぐ。水差しに手を伸ばす。 **やかん【薬缶】**やかんがしゅんしゅんと湯気を噴き出す角田。ストーブの上でやかんがしゅんしゅん鳴る小川。石油ストーブにかけたやかんがチンチンと音を立てる=永倉。薬缶が研ぎ立てたようにビカビカ光っている八谷崎。やかんに水を入れる。やかんの(湯がたぎる。湯気が立ち昇る)。やかんの蓋が(かたかた鳴る。おどりはじめる=半村)。やかんを火にかける。沸騰したヤカンのような息づかい=飯田。銅壺とうから湯気が立ちのぼる。土瓶を(火にかける。持ち上げる)。急須から茶を注ぐ。急須に湯を注ぐ。ポットの脳天をじゃこじゃこ押し急須に湯を入れる三浦し。鉄瓶が(しゅんしゅんと沸き立つ。ちんちん音を立てる)。鉄瓶をかける(七輪に。火に)。 <66> # 危ない **あぶない【危ない】** 危ない(命を助かる。橋を渡る。真似まぁをする。目に遭う。ところを助かる。目を冒して抜け出す)。危ない(雨で足元が。首が。進級が。手元が)。わずかな眼の狂いが店の算盤時を割るほど危ない勝負"山崎。危ないと見て手を出さない。危なく(ぐらつく気持ちを引きしめる。倒れそうになる。だまされるところ。泣きだしそうになる)。危なくて(仕方がない。目を放せない。二度と近づけない)。危なげな(足取り。手つき)。思春期の危なげな精神。ひやっとした出来事。一瞬ひやっとする。危なっかしい(腰つき。手つき。年齢。よちよち歩き)。目を離したら危なっかしいことこのうえない!有川。薄氷の上を歩いているように危なっかしい円地。風に吹かれるように危なっかしく見える=高井。危なっかしくて(しょうがない。見ちゃいられない)。歩き立ての赤ん坊みたいな危なっかしさで転けだす徳水。 **あぶなげない【危なげない】** 危なげない(演技。走法)。手堅く危なげない書き方。危なげなく攻める。すべてが危なげなく手順通りに運ぶ"高井。危なげがない。 **あやうい【危うい】** 危うい(均衡を保つ。命をとりとめる。バランスを取る)。▼危うい(命が。財政が。進級が。平和が)。自分から青い淵に身投げするような危うい心境=石川。剣の刃を渡るより危うい思い=小松左。事態は累卵の危うきにある。危うくする(基礎を。再建を。地位を。身を)。危うくなる(足元が。首が。暮らしが。現在の地位が。文民統制が)。頼りない危うげな娘連城。▼危うさ(前のめりの。浮き立ったままどこかへ飛んでいきそうな=荻野)。足もとの危ういような不安感鷺沢。 **剣呑** 剣呑みんな(空気が伝わる。気配)。態度が剣呑になる。 **自転車操業** 自転車操業が行き詰まる。自転車操業に陥る。自転車操業を余儀なくされる。 **いっしょくそくはつ一一触即発】** 一触即発の(危機。きわどい発言。緊張した関係。事態になる。状態)。 **きき【危機】** ▼危機(作家生命の。人生最大の。一瞬の油断もならない=高橋治。会社の命運にかかわる=高橋和)。危機が(峠を越す。ひとまず回避される。目腱しの雨かんに迫る=徳水)。深刻な危機が近づく。生命に危機が及ぶ。夫婦の危機が訪れる。核戦争の危機が叫ばれる=柳田。膨大な危機が獣のように暗い頭をすりよせてくる=大江。家庭の危機というものは台所の天窓にへばりついている守宮ものようなもの=庄野。危機に(拍正をかける。際しての心の支え。際してかつて立派に進退する=美濃部)。命を危機にさらす。てない危機にさらされる。協力して危機にあたる。先頭に立って危機に立ち向かう。占領の危機に直面する。滅亡の危機に遭う。▼危機に陥る(一家の主が。重大な。経済的に)。▼危機に瀕する(一挙全滅の。生命の。倒産の。崩壊の。リストラの)。危機の(再来を防ぐ。連鎖が起こる。出口が見えない)。危機を(回避する。好機に変える。救う。事もなげに切り抜ける)。不安以上の危機を感じる。目の前の危機を乗り切る。一触即発の危機を秘めて火花を散らす限と眼=飯田。光景が雄弁に危機を物語る=佐伯。累卵の危機を(得る。免れる)。命が風前の灯。危機感が(高まる。広がる。深まる)。危機感に押しつぶされるような戦慄の一夜"舟橋。危機的状況から脱する。危機的状況に陥る。石油危機が日本経済を直撃する。身辺に危殆にたが及ぶ"山岡。経済が危殆に瀕ぃんする=山本周。危機一髪の(危うい境に立つ。ところで助かる=宇野利)。危機一髪と云うところでスルリと逃げられる谷崎。 **きけん【危険】** ▼危険(安易な結論を出すのは"貫井。紙が風に吹かれて自然に裏へひるがえるように生から死へ無造作に身をひるがえしてしまう椎名战。帝都の中央に放たれた虎のように「徳永)。危険が(去る。間近に迫る。随所に存在する。つきまとうイメージ。重苦しい空気のように立ちこめる=福永。近づきつつあると云ぃう漠然とした予感!志賀)。安全と危険が背中合わせ。思わぬ危険が潜んでいる。危険がある(暴発の。往々見過ごされる=岸田)。▼危険が及ぶ(家族に。身に)。身辺に危険が迫る。危険から身を守る。危険と隣り合わせ。危険な(任務を負う。目に遭う。罠もたを設ける。仕事に取り組む。スピードで飛ばす。立場に身をさらす。地域に踏み込む。橋は渡りたくなない。平衡の上に立つ。役を引き受ける。芋づるの糸口を断ち切る=森村。ところへのこのこと顔を出す「阿刀田)。甘い危険な香り。熟練を要する危険な作業。どんな危険な作業もいとわない。一目で危険な状態がわかる。誤った確率論は危険な安全神話を生む=柳田。命がいくつあっても足りないような危険な修行!清水義。好んで危険な傭兵さい稼業を選ぶ萩原明。子羊の群れに飢えた狼がまぎれこむような危険な状況"飯田。進んで危険な役をかって出る=安部。徳川十五代将軍というつるぎの刃の上を踏むよりも危険な職司馬。途方もなく危険な飛行"西木。目の奥に危険な炎が宿る=火坂。体制を揺るがす危険な存在"村松。危険など眼中にない。危険に易々や対とさらされてしまったことに狼狽のいする"小島。生命の危険におびえる。万一の危険に備える。一歩まちがえば元も子も失う危険にとり巻かれる"阿佐田。仲間の命を危険に陥れる=熊谷。蚤のみが潰されるような不断の危険に曝さらされる藤枝。▼危険にさらす(命を。身を)。危険の(元凶。兆候が濃厚になる。度合いが高まる)。危険を(改ぁえて冒す。慎重に避ける。伴う作業。未然に防ぐ。最小限にとどめる。承知の上で決意する。水際で食い止める)。ガス爆発の危険を生じる。死の危険を伴う手術。多少の危険を覚悟する。身に迫った危険を悟る。リスのように危険を感じさせない男清水俊。 <67> # 危ない-21 **危険** ▼危険を冒す(一か八かの。とてつもない)。危険を感じる(本能的に。のっぴきならない身の飯田)。▼危険をはらむ(暴走の。墓穴を自ら掘る=網淵)。一か八かの危険なやり方。身の危険を顧みない。危険極まりない(男。賭け)。のこのこ出かけるのは危険極まりない"なかにし。危険極まる大罪人。危険区域に入る。危険この上ない(賭け。作戦)。尻を割りそうな危険状態"今乗。虎穴に入る危険性。犯罪を誘発する危険性が高い"有川。足元に火がつく=高橋克。油へ火を投げるようなこと=山本周。安全が置き去りにされる。安全圏から外れる。安全思想があやふやになる。安全をないがしろにする。狼の群れの中に放り出された小羊“戸板。狼を野に放つ結果になる=高橋克。火中の栗を拾う。虎の尾を踏む思いで敵中に残留する=船山。泥棒に財布を預けるようなもの"井上ひ。爆薬を懐中にするのと少しも変わらない=舟橋。薄氷を踏むような(思い。生活)。薄氷の上を歩く思い=和久。 **けいこく【警告】** 何重にもオブラートにつつんだなにげない言葉での警告=池田。警告に耳をかそうとしない=光瀬。厳しい警告の言葉を伝える。警告を深刻に受け止める。友人の口を無関心に聞き流す松浦。▼警告する(異常接近を。危険を。非人道的遣り口を鈴木四)。一木釘を刺しておく。 **けいほう【警報】** 宿命という言葉が頭の中で警報を鳴らす鷺沢。警戒警報が解除になる。警戒警報を発令する。耳が壊れそうなくらい激しい音を上げて警報音が鳴り響く=辻仁。踏切の警報機が鳴り出す。警報装置が正常に作動する=大藪。警報ベルが鳴り響く。警報ランブが点っく。館内に非常ベルが鳴り響く。頭のなかで赤信号に似た光が激しく点滅する"小林久。警鐘を鳴らす。乱打する)。赤信号がともる。赤信号を無視する。危険信号が点滅する。シグナルが赤に変わる。不安な赤いシグナルをめがけて突進しているような経済界の変動=徳永。 **つなわたり【綱渡り】** 風の強い闇夜に一本の竿でバランスをとりながら綱渡りをしているような危うい関係三浦朵。綱渡りの(勝利。生活。政権運営。一歩を踏み出す)。危うい綱渡りのような外交折衝"津本。ようやくのことでその日の飯にありつくという危うい綱渡りのような毎日=井上ひ。 **どく **【赤】** 義(見れば眼の。一命を奪うほど強烈な"永井龍)。毒が全身に回る。楽しみと赤が表裏一体。考えても仕方のない思考の毒が体中に回る=吉本。誘惑の毒が胸に滲しみ込む=大佛。毒と文化を銀粉のようにまき散らす“阿久。体が隅々まで毒に冒される。言葉の毒に気づく。薬も分量を誤れば毒になる=寺田。毒の夢を夜な夜な積み重ねる=桐野。海のある(台詞を吐く。言葉を叩きつける。評が交わされる)。毒を(あおって死ぬ。飲む。もって毒を制す。喰らわば皿までという悲壮な気にもなる=永井荷)。▼体に毒(寝なければ。少しは食べないと)。そんなに飲んでは身体に毒"黒岩。怠惰な空気や無感動が毒のようにおかす“大江。毒入りの(餌。だんこ)。毒性が(強い。弱い)。毒物の有無を検査する。心に毒針を刺されたような思い宮尾。中傷文の一節が胸に毒針のように突き刺さる=高橋和。毒の針をふくんだような言葉を浴びせる=坂口。▼猛毒(烏頭、うずのような。命に関わるほどの)。猛毒を塗った吹き矢を射込む=隆。有毒な(茸の。植物。薬品)。有毒ガスが充満する。 **どくやく【毒薬】** 毒薬を(注ぎ込む。塗る。飲む。ばらまく)。劇薬を(混入する。飲む)。毒液でも叩ぁぉるような仕ぐさで一気に飲みほす小林久。 **どっけ 【毒気】** 毒気が茶の間を満たす筒井。すっかり毒気にあてられる。毒気を抜かれたように沈黙する"内館。▼旅気礼(群衆の醸す。むせかえる夏草の高樹)。療気がにじみ出す。 **ぶっそう【物騒】** 物騒この上ない。物騒な(世の中。話題。噂で市中はもちきり“船山)。裏切られたと知って刺すような物騒なことを考える=連城。盗賊が四方に横行する物騒な時代芥川。合詞の物騒さとは裏腹に淑女のような笑みを浮かべる!有川。 **ぼうけん【冒険】** ▼冒険(ロマンに満ちた。馴れない客商売で暮らしを立てるという三浦哲)。冒険が奇功を奏する。冒険で胸が躍る。冒険に(憧れる。成功する。挑飛する。わけのわからない魅力を感じる=安岡)。不安が冒険に駆り立てる。とめどのない冒険に向かって滑りだす「加藤。冒険の夢を持て余す。、冒険を(試みる。首尾よくやってのける)。恋の冒険を楽しむ。作者は最悪の場合は失敗作と呼ばれるものになる可能性を承知の上であえて冒険をする"池澤。波乱万丈の冒険を繰り広げる=人団。▼大冒険(一世一代の。未曽有の)。決死的大冒険に乗り出す三島。冒険気分に浸る。開拓期の企業家たちのような夢と冒険心とに胸をふくらませる"五木。心の底に冒険心を残している=眉村。 **山師** 山気が(多い。強い)。山気のある男。山師と噂されたほどの人物=高橋克。恋のアバンチュール。アバンチュールを(試みる。楽しむ)。一攫千金心の詩にの夢を持つ山師的気質の持ち主西木。一か八かの山師流儀"山田美。 **ましゅ【魔手】** ▼魔手(悪辣な。誘惑の)。魔手から逃れる。魔手を伸ばす。敵の魔手を脱する。魔の手が忍び寄る。魔の手を伸ばす。 **リスク** リスクが(大きい。高い。伴う)。利便性とリスクが背中合わせ。技術開発にリスクはつきもの。リスク分散を心がける。リスクを冒して挑戦する。 <68> # 怪しい・不思議 **あやしい【怪しい】** 怪しい(男を捕まえる。影が道はい回る。節がある。物の怪%10が憑っく。男に呼び出される。女にからめとられる。期待にとらわれる。素振りを見せる。動きがあれば即座に踏み込む手筈!高橋克。快感で胸が頭ふるえる=川端)。怪しい(足元が。音程が。雲行きが。呂律が。喊か本当か。見るかどうかすら)。箸箱を突っ立てたほどのあやしい安定里見。幻を見たようなあやしい気分が胸をかすめる=藤沢。あたりの空気に怪しい気配が漂う。歓楽街の妖しい魅力にからめとられる=大原。唇に妖しい笑いが浮かぶ"深沢。ドロドロと妖しい太鼓が鳴る"深沢。なにことか一心に思いつめたような妖しい雰囲気!白洲。ベールを透かして見るような何か妖しい美しさのある顔三浦絵。細い目に妖しい光がチラチラして色っぽい"佐藤愛。目が妖しい険しさを持つ高樹。怪しいと(目をつける。いう心証をもつ)。直覚的に怪しいと呪にらむ谷崎。ばたばたと心があやしく騒ぎ立つ=小林多。紫紺色の香煙が妖しく立ちのぼる祭壇"原田康。瞳がまるで不思議な宝石のように妖しく輝く=和久。二つの相反する感情が妖しく交錯する"外村。目が蛇のように妖しく光る=梶山。▼怪しく騒ぐ(血が。胸が)。怪しくなる(足取りが。精神状態が。空度様が。段々様子が)。 **怪しむ** 怪しむ(突然の帰還を。二人の間を)。 **異形** 異形な物体を目にする。異形の者。 **いかがわしい** いかがわしい(関係。行動。情報。人物。パーティー。場所で働く。店)。 **うろんな** うろんな(男。人物。目付き)。うろんげに(一瞥心する。見る)。 **曲者** ▼曲者(元(なかなかの。忍びの術に熟達した=柴田錬)。曲者が忍び込む。 **妖気** 妖気が(漂う。あたりに満ちる)。邪淫の妖気が立ちのぼる。ただならぬ妖気が見て取れる。広大な家が化け物屋敷のような妖気に溢れる=今日。妖気めいたものがまわりに立ちこめる。 **怪しくない** 怪しくない。見知らぬ人間が入って行っても怪しまれぬ雰囲気。古井。 **怪しむに足らない** 怪しむに(足らない。足る痕跡がない)。格別怪しむ様子もない。 **不審** ▼不審な点はない(どこといって。取り立てて)。どこにも不審の影がない。不審を抱く余地はない。 **あやしげ【怪しげ】** 怪しげな(オーラを放つ。関係に陥る。術を使う。雰囲気が漂う。健康食品を売りつける。振る舞いに及ぶ。神様に祈りを捧げる"重松。灯の出ている料理屋"田山)。あやしげな蜘蛛くもの糸でとりこにする"阿部。風態の怪しげな男。双降时が怪しげな光を加える=柴田錬。妖しげな色気に欲情を覚える。熊谷。微笑に妖しげな気品が漂う~立原。目がランランと妖しげな光をおびる=飯田。闇と静寂があやしげに満ちてくる=島尾。 **いぶかしい【訝しい】** 訝しい思いが先に立つ。強い視線を詳しく感じる。訝しげな(目を向ける。表情が崩れない)。顔に訝しげな色が現れる。訝しげに(首をひねる。見る)。眉根を寄せて訝しげに言う。首を(傾かしげざるを得ない。ひねらざるを得ない)。▼おかしい(どうも様子が。話が少し。言われてみれば確かに。考えれば考えるほど。態度がどことなく)。おかしな(夢を見る。弁解をはじめる)。論理的におかしな答え。▼おかしくなる(風向きが。雲行きが。社会が)。自分でもおかしいほどうろたえる。我ながらおかしいほどいきり立つ。 **いまわしい【忌まわしい】** 忌まわしい(噂が耳に入る。病気にかかる。悪夢が激痛となって襲う~鳥田。戦争の過去に怯ぉぃえて生きる三浦綾)。思い出すさえ忌まわしい。いまわしい言葉がロケット弾のように胸をつらぬく=宇野利。過去の忌まわしい記憶。聞くさえ忌まわしい声。かつての忌まわしい噂が迫真性をもってよみがえる=陳。 **いよう【異様】** 異様な(臭気が漂う。空気を感じとる。気配が全身を包む。雰囲気が立ち込める)。なんとも形容のつかぬ異様な声=池波。眼が噛みつきでもするような異様な光を帯びる=山本周。異様なまでのにぎわいを見せる。異様に(重苦しい空気。目を光らせる。生々しいマネキン)。顔が異様に赤らむ。記憶が異様に鮮明。異様なほどのはしゃぎぶり。 **ただならぬ** 一種異様な(気配が漂う。雰囲気)。ただならぬ(気配を察する。殺気を感じる。様子に気づく。状況を察知する。雰囲気を漂わせる。事態に山の空気が不穏に揺れる三浦し)。 **病的** 病的とも言える嫉妬。病的な誇大妄想。病的なまでに清潔好き。病的に(猜疑心にふきが強い。執着をいだく)。顔色が病的に青白い。神経が病的に鋭い。 **うさんくさい【胡散臭い】** 胡散臭い(少年たちが店に出入りする=内海。目つきでじろじろ見る佐藤多)。うさん臭い(人物。説明。視線を一斉に注ぐ=藤本)。物言いにうさん臭さが漂う。うさん臭そうな目を向ける。うさんくさそうに反問する=中河。眉をしかめてうさん臭そうに書類をあらためる=安岡。すべてが吉と出る占い。 **かいき【怪奇】** 複雑にして怪奇。怪奇な(イメージ。現象。言動)。阿片に酔った人の見るような怪奇な夢=円地。怪奇下劣なものを嗅ぎつける=開高。怪奇現象の話題で盛り上がる。到底理解できない複雑怪奇な世界加賀。成痔が複雑怪奇にねじ曲がる=松浦。 **かいじゅう【怪獣】** 世にも恐ろしい怪獣。大きな怪獣が荒い息を吐いて食べにくるように電車が突進してくる灰谷。巨大な怪獣が山をまたぐ高樹。大きな怪獣に見える灰谷。妄想という怪獣の餌食になる=梶井。夜空に怪獣の牙のように暖炉の煙突が突き立っている=大佛。 **怪鳥** 怪鳥島いわのような悲鳴をあげる!大藪。怪鳥のように甲高い声=山田風。 <69> # 怪しい・不思議 あ **かいぶつ【怪物】** ▼怪物(血に飢えた。歴史という巨大な。運命という得体の知れない=杉本)。怪物が(姿を現す。心の内に巣食っている)。人門の怪物たる所以冷えを解明する=今束。怖い怪物でも見るような目付き=井上ひ。怪物の影に脅える。怪物を(追っばらう。退治する)。金権の怪物を育み続ける高村旅。 **きかい【奇怪】** 奇怪な(噂が伝わる。行動、死を遂げる。謎が解ける。疑問に苦しめられる。幻想にぞっとするほどのなまなましさを感じる=筒井。デーモンに取り愚っかれたように中村点)。世にも奇怪な事件。耳に奇怪に響く。奇々怪々な(事件。出来事。意外事が突発する)。人生は全く奇々怪々。 **きばつ【奇抜】** 奇抜な(アイデア。ファッション。舞台衣裳を着るので有名な女性歌手"高井)。奇警な言を吐く。奇手に近いアイデア。天外なる奇想。偏奇な同情心を寄せる。奇想天外な(事件。話)。奇想天外より(落つ。米る)。 **きみょう【奇妙】** 奇妙な(行動に出る。錯覚に陥る。事実に気づく。感動に襲われる。空想に身をまかせる。言動を繰り返す。叫び声をあげる。静けさに満ちた世界光瀬)。倦怠け以と空腹の入り混じった奇妙なイラ立たしさ。安岡。口角を歪ゅがめて奇妙な笑いをうかべる水上。笑いこけているように聞こえる奇妙な声を立てて男泣きをする=阿部。奇妙奇天烈な出で立ち。異なことを耳にする。けったいな(御仁。宗教。人間。話)。へんちくりんな(生き物。格好。髪型。服装)。妙ちきりんな(格好。話。人)。奇災な(印象を受ける。思いを抱く。目で見る。思いにとらわれる)。奇異に(映る。感じる)。変てこな(男、質同。動物。表現。雰囲気)。故意に変てこな言葉を使う。 **きみわるい【気味悪い】** 気味悪い(感触。化け物)。気味悪い(お化けのように。にやにやしてる得体の知れない男が三浦し)。遅まきのテーブの声を聞くみたいなた問の抜けたある意味では気味悪い声『森玩。不意に濡れたタオルで背をなでられたような気味悪いものを感じさせる女"灰谷。気味悪いほど(大きな淵。静かな口調。静まり返る)。▼気味が悪い(得体が分からず。身ぶるいするほど!永井路)。気味が悪いほど(色が白い。端正な美男子。鮮やかに思い出す)。気味の悪い(しわがれた声。話。符合。笑い声が響く。静かさが満ち広がる=有島)。死んでいくような気味の悪いうめき声=佐多。にやりと気味の悪い笑いを洩もらす=福永。腸いさにしみ通るような気味の悪い響き=福永。気味の悪いくらい興奮する。気味の悪いほど充血した限=福永。気味悪く(変色する。にたにたと笑う。ぬらぬらと滑る)。雲が気味悪くうごめく。▼気味悪く光る(目が。坂が滑石を塗ったように=梶井)。一 坂が滑石を塗ったように=梶井)。気味悪そうなまなざしを投げかける瀬戸内。酸にじわじわと犯されるような感触=開高。笑う声が薄気味悪く夜の灯火の底でゆらめく=横光、底気味悪い(笑顔。眼光)。冷静な底気味悪い態度で別居を主張する=有局。家の中が底気味悪く潜まり返る。▼薄気味悪い(見るからに。どことなく。暗闇の中に追いこまれたように!宇野利)。薄気味の悪い(話。ほくそ笑み。魔性が垣間見える=有吉)。そろそろと地の中に引き込まれて行くような薄気味の悪い零落の兆候"有局。魔に悪っかれたような薄気味の悪い笑い"堀。薄気味悪いほどの長い沈黙宮本輝。子供心に薄気味悪く思う。薄気味悪くてそばにも寄れない。自分だけが幻を見たような薄気味悪さ藤沢。薄気味悪そうに一歩二歩後退する=源氏。怪異な(現象。事件。容貌。岩山がそそり立つ)。鶏冠せきが紫色に黄色い粉をかけたように気色悪い高樹。どろどろと渦巻くような気色の悪い質問=鷺沢。濡れ雑巾で顔を拭かれたような気色の悪さ永倉。 **くしくも【奇しくも】** 奇しくも(同じ日。十年ぶりにめぐり合う。大事故で命をとりとめる。再びめぐり合う)。ふたたびかえってきた過ぎし日の夢を夢見る=中)。奇しき(因縁。運命。めぐり合い)。 **グロテスク** グロテスクな(顔つき。見せ物。ユーモア。毛虫の名前を口にするように気味悪そうに発音する=小川)。グロテスクなまでに巨大な乳房に憧れる=小林信。状況をグロテスクに反映する。自虐趣味から戯画化しグロテスクに誇張する=森瑜。 **けげん【怪訝】** 怪訝な(顔で出迎える。視線を投げる。笑いを漏らす。思いが胸をかすめる。きょとんとした顔。表情を浮かべる)。怪訝そうに(首をかしげる。を見合わせる。眉宇をひそめる)。呆ぁきれた顔でけげんそうに眺める椎名師。眉の太い威厳のある顔をケゲンそうにゆがめてシロリと見る安岡。怪訝そうな(目を向ける。目つきで見つめる。面持ちで目をしばたたく内海。視線をちらと走らせる"里井)。 **しんぴ【神秘】** 汲くんでも尽きない平明な神秘が宿るしんぴ山の姿"有局。神秘な生命力を流し込まれるかのように見る見る元気になる=川端。自然のなす神秘な業に感嘆する三浦液。自然は神秘に満ちているなかにし。神秘のベールに包まれる。神秘主義に嵌まり込む。神秘性を漂わせる清冽せいな湖水の色"笹沢。神秘的な(気配が満ちる。陶酔に誘いこまれる。つながりが存在するような間柄"佐多)。男と女の出逢いは神秘的な偶然"瀬戸内。こんもり茂った社も』に神秘的な空気がただよう。白洲。鍾乳洞測に氷のような神秘的な水の音楽が聞こえる=笙野。ミステリアスな(女。事件。ムードが漂う)。 **ちょうしぜん【超自然】** 超自然的な(存在。力)。心霊現象に凝る。霊的な(世界。存在)。深山の霊気を肌に感じる人間。脳裡120ぅうに遠い星から送られてきた霊気のようなひらめきが走る=高橋こ。 **ちょうのうりょく【超能力】** 超能力を(使う。持つ)。超能力者のように何もかも読みつくす笹沢。テレバ <70> シーの能力を持つ。テレパシーのようにすぐ深い理解が訪れる=吉本。テレパシーを信じる人のように視線を集中する=中村真。念力でスブーンを曲げる。 **とっぴ【突飛】** 傍目たには突飛とも見える転身高井。突飛な(考えが閃いらく。思いが頭をかすめる。話についていけない=赤川)。話を突飛な方向にもっていく。飛躍した突飛な意見。あまりの突飛さにすぐにはついていけない!森村。奇矯な(言動。性格の持ち主。振る舞いが目立つ。言葉を弄して人を煙にまく=井上靖)。 **ばけもの【化け物】** 化け物が出る。暗い波が化け物の口のような得体の知れない奥深さでからだを包む"大庭。ばけもののように長くぼんやりうしろへ引いている影ぼうし宮沢。髪が化け物のように乱れる"谷崎。化け物みたいな眼鏡をかける"白井。天狗にんが憑っく。お化けが(住む。出る)。顔が汚れ鼻が欠けするうちに人形がオバケのように気味悪くなる島崎。肉をミンチにするかき氷機のお化けみたいな機械"小川。お化けみたいにすっっと離れる=永井路。日本一怖いお化け屋敷=篠田。魑魅魍魎,以汎ぅが(跳梁跋扈は、うりとする。徘徊州灬する。人界にさまよい出る)。得体の知れない魑魅魍魎がうごめく赤瀬川。 **ひとだま【人魂】** 青い炎の人魂。ゆらゆらと人魂が飛び立つ=白井。灯火が不吉な人魂のように浮かび出る栗本。生っちろい女のニヒリズムが人魂のようにブワフワさまよっている=石坂。提灯坊い、うが人魂みたいに宙へ躍る。吉川。ふわふわ動くまるい火の玉松谷。火の玉がぼうっと明るく光る。青白い火の玉が浮かぶ。墓場に出る鬼火。鬼火がいくつも現れる。土饅頭に味礼の上で鬼火が燃え立つ=なかにし。たいまつがオニ火のように続く=本多喚。沼に消える鬼火のようにいたってはかない存在瀬戸内。 **きつねび【狐火】** 青白い狐火。狐火がここかしこに現れる。とぼとぼと狐火が燃える"狐。たくさんのりんどうの花が草をかくれたり出たりするのはやさしい狐火のよう宮沢。月明かりに蜜柑以ゅが狐火のようにぼつぼつ浮かんでまるで夢のともし火の海"川端。眼に燐火炒んを燃え立たせる"吉川。燐の火のような青い光。 **ふかかい【不可解】** どう考えても不可解。不可解な(女の裏切り。気分が残る。雑音が入る。態度に出る。出来事。犯罪に戸惑う。思いが頭の中を乱舞する=貰井)。実に不可解な事件。事故発生の経過には不可解な点が多い=柳田。不可解さが氷解する。胸に一抹の不可解さが澱ょとむ“林美。謎のような微笑を唇に漂わせる=据。理屈で割り切れない動物的な衝動"内田悲。海のものか山のものか得体が知れない。得体の知れない(事件が起きる。後味の悪さが残る)。東京という得体のしれない大都会日野。得体の知れぬ劣等感に苛いまれる三島。閑寂といってもいいほどの得体の知ぬだぁびしさ檀。謎めいた(挨拶。言い方。記述。答え。笑い。言葉をつぶやく。微笑を浮かべる)。行動に謎めいたものがつきまとう。 **ふかしぎ【不可思議】** およそ人智の及ばない不可思ふかしぎ議!福水。不可思議な(糸で結ばれる。力が作用する)。雷に打たれたような呆気はっにとられた不可思議な顔・椎名戯。気の向くままに不可思議な古い書物を翻訳する=村上卷。霊妙な(音楽。奇跡)。霊妙不可思議な(力。手つき)。 **ふきつ【不吉】** 不吉な(神託を恐れる。夢を見る。イメージが浮かぶ。考えを追い払う。気持ちで案じる。首葉が脳裏によみがえる。胸騒ぎを覚える。予想が幾つも重なり合う。闇を集めて固めたような人物人倉橋)。生涯に暗い影や不吉な波瀾いらがつきまとう。思いもよらない凶変でも起こりそうな不吉な気がする芥川。気味の悪い不吉な重苦しい運命三好途。死の街の不吉な形相を呈する"太宰。不吉な思いに(駆られる。とらわれる。胸が高鳴る)。不吉な影が身辺に落ちる。暗い不吉な影がさす。不吉な想像が(頭をかすめる。的中する)。不吉な妄想が(募る。湧く)。不吉な予感が(脳裏を走る。胸をかすめる)。黒い煙のように不吉な予感が胸に広がる=東野。脈搏ぬいくが不吉に昂進にする。四は不吉にも死と暗合する。けちがつく。けちのつき始め。暗影が漂う。暗影を投げかける。 **ぶきみ【不気味】** ▼不気味(身体に悪魔が乗り移ったかのように見えて萩原葉。原始林に迷いこんで雨にあうのよりもっと小林多。超高層ビルが悪魔的に聳そびえて夢魔のように=斎藤栄。流れる霧の中で別荘の建物が西洋の亡霊の家のように笹沢)。林が暗いほどにうっそうと茂っていて足を踏み入れるのも無気味!三浦窓。不気味で甘美なめまい。日野。不気味な(思い出し笑い。倦怠が以の砂漠。歯ぎしりの音。爆発音が響く。予感を抱く。衝動に駆り立てられる。変化が進行する)。大動乱をはらんだ不気味な空気。何やら予言めいた不気味な言葉。カラスが鳴くような不気味な声萩原葉。この世ならぬ不気味な光景高橋源。濁った眼に無気味な光を湛たたえる=長与。はっとして思わず顔を背けたほど無気味な顔"長与。腹をえぐられるような不気味な音"長崎。痩せたからだつきが一種不気味な空気を酵かもす石川。人間生活の無気味な断面を見せつけられる三浦綾。影が病んでいるように不気味に黒く揺れる=原田康。黒い海が無気味に闇の中にひろがる=五木。邸内が不気味に静まり返る。無気味なほど沈黙し続ける"司馬。無気味なほどの静けさ藤沢。物音一つしない不気味さ。不気味さが(際立つ。漂う。広がる)。 **ふしぎ【不思議】** 不思議(人知の及ばぬ。本当のこととは信じられないほど安岡。理性や平地での常識では測りきれない山の三浦し)。不思議と(憎めない。夫婦仲がいい。言えば不思議な話。言葉がすらすら出てくる=高井)。もとより不思議という他はない。別に不思議とも何とも思わない=野問。不思議な(つながりの糸。符合を思う。夢を見る。因縁で結ばれる。現象を発見する。能力に目覚める。星の下に生まれる。魅力に眩惑洲以される。生き物を見るような目"東野。運命から自分を解放する"有鳥。説得力を存分に発揮する三浦し)。言うに言われぬ不思議な魅力に満ちる。運命の不思議な皮肉。何とも不思議な宿縁。何とも不思議な宿縁。運命が不思議ないたずらをする有局。心を蕩とうかすような不思議な力"徳田。この世のこととも思えない不思議な出来事~鳥尾。定めし不思議な取り合わせだったに違いない谷崎。自分が自分でない不思議な気持ち=椎名綾。魂が遊離したような不思議な欲喜真継。世にも不思議な病気が取りつく=江戸川。不思議に(愛着がある。気が合う。興味を覚える。元気が出る。生々しい幻影。腹が立たない。胸を打つ音楽。いい考えが湧いてくる。恐怖感がわかない)。不思議の目をみはる。不思議を身をもって体験する。不思議を通り越して(あきれる。腹立たしい)。あまりの不思議さに(呆然となる。何度も感嘆の声を洩。らす芥川)。不思議なくらい(生きて帰国できたのが。未だに生き残っているのが=山手)。不思議なくらい昔と変わっていない!小川。不思議なほど(説得力がある。絵になっている)。気持ちが不思議なほど軽くなる。しきりに不思議がる。不思議さが胸に込み上げる。不思議さに心を奪われる。不思議さを身に沁しみて感じる。不思議そうな(顔でなりゆきを見ている。表情で見上げる)。不思議そうに(聞く。首を傾かしげる。尋ねる。見比べる。顔を見合わせる。きょとんとする)。鮮やかな奇術を見せられたような感じ倉橋。常識では(ありえない。考えられない)。常人の理解を越える。普通では考えられない。普通の尺度では計れない。摩訶ほか不思議な(縁を感じる。事件)。面妖な(機械。話)。狐につままれた思い。狐につままれたような顔つき"辻。まるで狐に化かされたように石川。 <71> **ふしぜん【不自然】** ▼不自然(説明がなんとなく。動作がぎくしゃくと人形のように=日野。なまじ断ったらかえって佐野)。不自然が自然に転化する。不自然な(経路をたどる。体勢を取る。無理をおかす。物事には作為が働いている=有川)。少し芝居がかりと見える不自然な様子=佐藤春。言葉が不自然に途切れる。笑いが不自然に凍りつく。いささか不自然を免れない。不自然さがやけに目立つ。不自然さを漠然と感じる。木に竹を継いだよう“小林多。魚が木に登るようなもの小林信。辻褄つもの合わない言葉をいたずらに重ねる=森瑞。不自然なほど(快活になる。陽気に声を張り上げる=村山)。 **ふしん【不審】** 不審が(生じる。募る。晴れる。胸に巣食う)。不審な(男が目に入る。車が出没する。死を遂げる。点が見つかる。物音を聞く。人物を尋問する。人影を見かける)。声に不審な響きが混じる。黒い染みのような不審な思いを抱く=森瑞。頭の片隅で不審に思う。目が不審に揺らぐ。不審の(念をいだく。目で見つめる。目を向ける。思いが消えない。眼差しを投げかける)。顔に不審の色が見える。不審の眉を(しかめる。寄せる)。家族に不審を持たれる。挙動不審の男を捕まえる。怯ぉぃえの混じった不審気な顔をのぞかせる=宮本輝。不審げにじろじろと眺める。不審尋問を受ける。不審そうな表情で尋ねる。目に不審そうな色が浮かぶ。不審そうに首をかしげる。 **へん【変】** 変な(噂が立つ。男がうろつく。気を起こす。癖がつく。趣味の持ち主。評判が立つ。虫がつく。目で見られる。夢を見る。言いがかりをつけられる。女に引っかかる。事件に巻き込まれる。世界に引き込まれる)。変に(甘ったるい声。感傷的になる。気を回す。意地の悪い言い方。くすぐったい気持ち。真面目くさった顔つき)。頭が変に冴え返る。嫉妬で頭が変になっている=阿部。薬で頭が変になる。気が変になるほど懐かしい"吉本。鼓膜が変になるような静けさ=島尾。▼おかしい(体の調子が。頭が完全に)。頭のおかしな人間。頭がおかしくなりそう。おかしくなる(精神状態が。体のあちこちが。エンジンの音が急に。失意と心労のあまり気持ちが"阿刀田)。 **まがまがしい【禍禍しい】** まがまがしい(静けさ。夢)。殺人というまがまがしい事件。情念呪詛怨嗟ぇんといった禍々しい単語群=横山。まがまがしいほどの力にあふれる。まがまがしく燃え続ける森。 **みょう【妙】** 妙な(噂が立つ。気を起こす。騒ぎを起こす。真似まぁをする。考えが頭をかすめる。事件に巻き込まれる。たとえを持ち出す。評判を立てられる。屁理屈をこねる)。がさこそと妙な音がする。放っておくと妙なことになりかねない。ケケケケと妙な声を出して笑う。灰谷。話が妙な方向へ転がっていく=横山。胸の底に妙な隙用ができる=獅子。妙に(印象に残る。うまが合う。気になる。手回しがいい。棘とげのある語調。話が合う。上ずった高い笑い声。濃く煮つまった静けさ=日野。ひねこびた女の子豊田)。足音が妙に耳につく。嘘をつくときに限って妙に毅然とする谷村。話が妙にしめっぽくなる!高橋涼。 **ようかい【妖怪】** 逢魔が時刈らぼの薄明かりに出て来る妖怪"梶井。妖怪が人間に化ける。妖怪に憑っかれたようなキョトンとした眼附きで晴れた大空をあてともなく見る菊池。狐狸こ」妖怪にたぶらかされる。妖怪を退治する。変化かん妖怪のたぐいが跳梁いうする。妖怪変化と化す。地獄の絵を月夜に映したような怪しの姿泉鏡。化け猫。行灯はんの油をぴちゃぴちゃとなめる=阿久。怪猫のような悲鳴をあげる=大変藪。百鬼夜行が出る。うかうかしていると百鬼どもの罠もなに落ちる=山岡。百鬼夜行といったような政治の世界に生きる=勝目。 <72> # 謝る・許す **あやまる 【謝る】** 謝る(平謝りに。土下座せんばかりに。改まった口調で。気の毒そうな表情で。ぺこぺこ頭を下げて。悪かったと言って。額を地面に擦こすりつけんばかりに=束野。頭を床にすりつけて=内田脊。消え入るような声で=長崎。口をすぼめるようにして=鷺沢。素直にこめんなさいと=畑村。とってつけたように=原田康。涙ぐみながら何度も=重松。ひいひい泣いて=東野)。あっちこっち謝って歩く。ここは謝っておいたほうが得策=束野。謝りの電話をかける。附りを入れる。平謝りに詫ゅびる。生きて合わせる顔がない。畳に手をついて平蜘蛛のように道はいつくばる藤沢。謝する(罪を。不明を。わがままを)。失礼の段深謝いたします。不始末を深謝する。申し訳なげに揉もみ手する。許しを乞う(涙ながらに。畳に頭をこすりつけて=中上)。深甚の謝意を表明する。衷心から謝意を表するように最敬礼をする=阿刀田。紋切り型の陳謝。深々と陳謝の一礼をする。▼陳謝する(過誤を。情報の流出を)。ひとことも謝らない。今更おめおめと頭を下げられない=海音寺。頭を下げるのは死よりもつらい黒墨石。謝ることを屈辱と感じる=伊坂。詫び状を書くことを拒否する!高井。自分の悪いことは棚にあげていて一言も詫びようとしない=山手。四十面をさげてのめのめと詫びられもせぬ!水井荷。 **おめこぼし【お目こぼし】** 当局によるお目こぼし。失敗をお目こぼししてもらう。お上がお目こぼしして下さる=隆。金をもらって罪を目こぼしする宮部。 **暗黙** 暗畎裡んもに許す。今日のところは見て見ぬふりをする東野。とにかくこの場は目をつぶってやる=阿部。過去の誤りに目をつぶる。▼黙過する(行動を。暴力を)。黙許の形をとる。 **宥免** 宥免心にあずかる。宥免を(被る。賜わる)。 **大目に見る** 大目に見る(落ち度を。奔放な女性関係を)。今回は大目に見てやろう。 **黙認** ▼黙認する(部下の暴走を。無礼な扱いを。密漁を。無免許を、手をこまねいて。不承不承ながら)。 **おわび【お詫び】** お詫びに(あがる。伺う)。お見舞いかたがた先日のお詫びまで。お詫びを申し上げる。何と言ってお詫びをしていいのか言葉もありません"内田康。▼お詫びする(罪を。不祥事を。幾重にも。切腹して。謹んで。丸坊主になって)。お詫びかたがた電話をする。 **おんしゃ【恩赦】** 恩赦で(釈放される。出獄する)。恩赦による減刑。▼一等を減じる(刑。罪)。減刑を喜ぶ。 **かいほう【解放】** ▼解放される(恐怖から。耐乏生活から。エネルギーが一挙に。仕事から心身ともに。息苦しい状況から。一日の束縛から。核兵器の脅威から。気分が気持ちよく。経済的困窮から。支配のくびきから。わずらわしさから。長い冬籠ごのりから中野孝。本当の家に帰りついたように=辻井)。足枷妨れの鎖を縦横に断ち切る=楨。▼解放感(全身が暗闇の中へ落ちこんでしまっ底なしの長野。水の中を泳ぐような"長野)。解放感が家の中に広がる。解放感に(ひたる。酔う)。快い解放感に包まれる。空虚な解放感につきまとわれる=城山。心の底から解放感を味わう。即時解放を要求する。桎梏ここから逃れる。桎梏を脱する。解かれる(呪いが。拘留を。張感から)。 **きょか【許可】** 許可が出る。早晚許可が下りるに違いない。許可を得たときは子供みたいに嬉しかった坂口。退院の許可を求める。▼許可する(図の転載を。入学を)。許可証を(交付する。発行する)。▼認可される(建設が。正式に)。 **しゃくほう【釈放】** 釈放の運びになる。釈放する(囚人を。受刑囚を)。縛めを解く。 **放免** 容疑者を放免する。放免を言い渡す。 **保釈** 保釈を(申消する。認める)。被告人を保釈する。保釈金を積む。 **しゃざい【謝罪】** 謝罪に身を責める羽目に立ち到る=網測。謝罪の言葉を口にする。謝罪する(心ない言葉を。被害者に。低姿勢になって。畳に手を突くばかりに=山本有。考えつくかぎりの言い方で=内田卷)。 **すまない【済まない】** 「済まない(いろいろ心配をかけて。深更に驚かして)。済まない気持ちで胸がいっぱい。つぶやくようにすまなかったと言う。西木。すまなさに(胸が凍る。慚愧ぶんするほかない=杉本)。まことに相済まない。 **ていとう【低頭】** ▼低頭する(機械人形のようにぎくしゃくと貰井。膝に手をついて=高杉。ぴたりと正座して=本庄。平グモのように=獅子)。▼頭を下げる(通すべき筋を引っ込め無様に=横山。拝まんばかりの様子で低く"戸板。おどおどしながら=山手。炬燵にたの上置きの板にやや開き加減に両手をつき=高橋肴。米揚にぃきバッタのように=大藪。膝の上に両手をそろえて笹沢。申し訳のようにちょっと=城山。両手を畳につき=東野)。▼平身低頭する(新聞沙汰にならぬようひたすら飯田。電話に向かって荻野)。平身低頭して(謝罪する。許しをぐう)。 **ときはなつ【解き放つ】** ▼解き放つ(足枷炀れを。馬を。心を。罪人を。窒息しそうな気分を)。▼解き放たれる(悪夢から。恐怖から。鎖から。苦悩から。呪縛から。習慣的な絆から有局)。解き放たれた者のすがすがしいよろこびの表情-槌。重くのしかかっていたものからようやく解き放たれたという安堵感"つか。 **どげざ【土下座】** ▼土下座する(両手をついて。額を土にこすりつけて=隆)。土下座して(頭を下げる。謝る。頼む。詫びる)。外国側の言い分を一も二もなく土下座して受け入れる"網測。土下座外交と罵られる荒巻。 <73> # 謝る・許す―23 **みすごせない【見過ごせない】** 不正を黙って見過ごせない。このまま見過ごしては悔いが残る高橋克。一見過ごしにできない(不正を。困っている人を)。黙って見過ごすことができない。▼見過ごすことはできない(傍若無人な振る舞いを。無責任な体質を)。いかない(黙って見逃すわけには。みすみす見過ごすわけには)。視ができない。もだしがたい(虐待。暴挙)。黙過できない(欠点。行為)。人権弾圧を看過できない。看過できない(悪行。問題)。 **聞き捨てならない** 聞き捨てならない(発言。話。ことを耳にする)。聞き捨てならないという感じでむきになる=向田。開き捨てのならないことを言う。 **もうしわけない【申し訳ない】** ▼中し訳ない(だしぬけで。尾籠な話で。お手数をかけて)。申し訳ない気持ちでいっぱい=阿刀田。「申し訳ないが」の百万だら=里見。死んだ人々に申し訳が立たない=隆。祖先の位牌に申し訳がない。気の毒なくらい申し訳ながる"干刈。申し訳なげに揉。み手をする=山崎。申し訳なさとほっとした気分を交互に感じる=重松。世間に対して申し訳がないような気がする=木山。 **ゆるさない【許さない】** ▼許さない(自尊心が。曖昧な態度を。違法な収益を。勝手な行動を。妥協を。敵の侵入を。絶対に。一生。勝手な真似まぁは。金輪際。断固。断じて。教育勅語の復活を。万一のことがあったら。私の目が黒いうちは勝手なことは。男としてのブライドが森院。勝負の帰超だけは予測を人今日。小手先のごまかしを一切=京野)。容易に他の追随を許さない表現=竹西。下手へたな言い逃れは許さんぞと言わんばかりに腕を組んで荒い息を吐いている=辻井。今度帰ってきたらただでは置かない。こうも情状酌量の余地はみとめられない=野岡。情状酌量もへったくれもない=井上ひ。千に一つも目こぼしをしない高橋克。黙許するわけにはいかない。無法な計画を許してはならない。▼潔しとしない(傍観を。和談を。金にかかずらうのを。ふやけた生き方を。俗物の岡に伍ごすることを=中島敦)。▼承知しない(腹の虫が。馬鹿にすると。変なまねをしたら。約束を破ったら)。 **ゆるされる【許される】** ▼許される(謁見が。拝観が。帰宅を。自由な行動を。終夜営業を。将軍に謁見を。多少の過ちは。首尾よくお目通りを。ブロジェクトに参加を。最高級の豪華な部屋に泊まる贅沢だいを笹田。贖罪金いさんを納めて赦免される=船山。 **おとがめなし** 誰もおとがめなし。なんとか勘弁してもらう篠沢。 **ゆるす【許す】** 許す(体を。帰宅を。結婚を。罪を。弟子入りを。肉体を。肌を。目通りを。自他ともに。真心に免じて。気障きぎな言い方を。くつろぎのひとときを。無制限に入場を。何の文句も言わずに。たかが猫ぐらいと気を谷崎)。小さな失敗を許すことで大きな失敗を防ぐ=畑村。許すも許さないもない。心を許す(他の男に。チームの仲間に対する気安さで"鶯沢)。気を許した女から開かれるような甘たるい親しさがこもった声"有局。神よ我らの傲慢を許したまえ若竹。数々の非礼を許していただきたい火坂。許しが出る。あっさりと許しを与える。外出の許しを得る。神に罪の許しをいう。謝るには及ばない。 **受け入れる** 受け入れる(謝罪を。陳謝を)。 **出入り禁止** 出入り禁止を解く。 **心を許せる** 心を許せる友人。 **詫び言** 詫び言を聞き入れる。 **寛大** すべてのものを許し得るような無限に寛大な気分にひたる!高橋和。 **許し合う** すべてを許し合った恋人同士。すっかり許し合った問柄"福永。 **裁き** 真に裁き得るものだけが真に許し得る"三浦蔵。 **肝胆相照らす** 肝胆相許す。 **水魚の交わり** 水魚の交わりをもって相許す仲=山岡。 **堪忍** 老人の顔に免じて堪忍する。二親に免じて勘弁する。情状酌量の余地がある。情状を(酌む。斟酌しんしする)。事情を考慮して情状酌量する。ならぬ堪忍、するが堪忍。 **赦免** 赦免するにやぶさかではない=柴田剣。重科を赦免する。御赦免船が島を離れる柴田染。 **ゆるせない【許せない】** ▼許せない(存在自体が。馴れ馴れしい口のきき方を。だまし討ちを。感儕的に。断じて。どうしても。今度という今度は)。許せないという気持ちに駆り立てられる=勝目。許しがたい(仕打ち。エゴイスティックな行為=志賀)。許す気になれない。絶対許すことのできない人物。許すべからざる(侮辱。冒愛ぃぐ)。▼許されない(道義的に。一分の狂いも。先送りは。失敗は。少しのミスも。身勝手は。予断は。楽観は。一日たりとも休むことが。いささかの運疑も。もはや一刻の猶予も=佐山)。許されていいはずがない。謝ってすむ問題ではない東野。今日という今日はもう勘弁できない=加太。乱暴狼藉粉約は勘弁ならない。▼言語道断(病状を患者の目の前で喋ん、ってしまうなんて海堂。不純異性交遊なと=葵)。言咀道断な(戦を起こす。振る舞い)。決して黙っていない。 **わびる【詫びる】** ▼詫びる(失礼を。侵略の非を。突然の訪問を。非礼を。涙ながらに。不承不承。二言三言長年の無沙汰を。夜更けの来訪を。神妙に両手をついて。畳に手をついて。額を畳にすりつけて。ひたすら頭を下げて。揉もみ手をしながら。悪懃無礼ふんばんなやり方を=高井。重なる親不孝を=坂口。先立ってゆく罪を=中。ほんとうに済まなさそうに=贅沢。拍子抜けするほどあっさりと"有栖川)。死んで詫びねばならぬほどの罪を犯す三浦綾。詫び入る(ご無沙汰を。あたかも我が犯せし罪のごとくに"里見)。詫び状を(書く。添える)。愚痴とも詫びともつかぬことを言う。詫びの言葉を口にする。心の中で詫びを繰り返す。▼詫びを言う(慇懃に。くどくどと。一言)。▼詫びを入れる(女房に。いやいやながら)。詫びるような(気弱な微笑。小声でぽつりと言う安部)。詫びるように(礼をする。小さく頭をさげる=連城)。詫び言とも恨みともつかず口走る。つらい詫び言を重ねる。ありったけの詫び言をわめく三局。おどおどと詫び言を並べる=川端。 <74> # 洗う・汚れる **あか【垢】** 垢が(こびりつく。溜まる。浮いて見えるような蒼白いらい顔「伊藤整。乾いて薄い雲母のように剥げる=小林多。粉雪でも降ったように散らばる=田中)。ふやけて白くなった垢がこよりみたいに何本にもめくれて落ちる=阿部。垢と埃にまみれる。人の垢にまみれない露天風呂"西木。▼垢にまみれる(因習の。俗世の)。垢をきれいさっぱり洗い流す。▼垢を洗い落とす(澱ぉりのごとく溜たまった“村松。三十年間にわたるサラリーマンの源氏)。▼垢を落とす(こしごしと。さっぱりと旅の)。 **浮き世の垢** 浮き世の垢の染みていない人今束。浮き世の垢を流す。 **歯垢** 歯垢がたまる。歯垢を取る。 **爪垢** 爪垢を(ためる。取る)。 **鼻くそ** 鼻くそを(はじき捨てる。丸める)。 **ふけ** ふけが落ちる。 **あらう【洗う】** ▼洗う(井戸端で足を。怨恨の線を。寒風が空を。交友関係を。波が砂浜を。関係を綿密に。墓石を丁寧に。じゃぶじゃぶ。食器を手早く。雨が窓ガラスを。ブラシで試験管を。堀の水がちゃぷちゃぷと岸を。行動を徹底的に。両手をこしこし)。木々の茂みを洗っ雨の音が聞こえる"船山。ベタンベタンと渚を洗う静かな波の音が聞こえる"壺井。混んでいて芋を洗うよう。ぬるま湯で髪を洗う。▼食器を洗う(流しで。汚れた)。血で血を洗う争い。とっくに足を洗っている。小川の岸が絶えず日光の波に洗われている=檀。洗われる(幾多の風雪に。悔恨の思いに。芝生が雨に。大地が霧に。心が清々対がしく、頬が涙で。磯が波しぶきに)。▼波に洗われる(岩が。過疎の。世の中全体が不況の"井上ひ)。背中を流す。手水られを使う。空に洗ったような月がのぼる良夜藤沢。眼を洗われるような新鮮な衝撃。魂の洗われるような実にたのしい一日=木山。胸の中が洗われるような爽やかさ=石坂。 **洗い上げる** 洗い上げる(皿を。事件を。食器を。素性を。肉体を。平素の行いを。きれいに。真っ白に)。▶洗い落とす(汚れを。血を。泥を)。▼洗い去る(塵うりを。埃児にを)。 **洗い立て** 洗い立ての(顔のような町。シャツ。陶器。ハンカチ。藍がすがすがしい)。肌が洗い立てのように清潔"川端。 **洗い直す** ▼洗い直す(計画を。歳出を。事件を。全面的に。徹底的に。一から事故原因を)。 **洗い流す** ▼い流す(泥を。ぬめりを。念入りに血を。汚れを。一日の汗と疲れを。入浴して旅の汗を=池波)。胃の内容物を水洗する。 **洗浄** ▼洗浄する(胃を。器具を。傷を)。 **手洗い** 手洗いする(シャツを。ハンカチを)。 **丸洗い** 丸洗いする(着物を。布団を。毛布を)。 **水洗い** 水洗いする(骨片を。シャツを。服を。野菜を。床を)。水仕事で(手が荒れる。手にあかぎれができる)。 **すすぐ** ▼すすぐ(髪の毛を。コップを。洗濯物を。さぶざぶと布を)。すすぎが足りない。すすきを取る。 **うがい** 帰宅後のうがいを励行する。うがいする(口中を。がらがらと)。くしゅくしゅと口をすすぐ。 **うすよごれる【薄汚れる】** 薄汚れた(感情。言葉。シうすよごれるートに座る。ネッカチーフ。部屋)。 **垢じみる** 垢ぁかじみた(汗臭い衣服。襟。シャツ。布団)。 **汗じみる** 汗じみた(襟。下着。シャツ)。 **脂じみる** 脂じみた(襟元。作業服。シャツ)。 **煤ける** 行灯もんの煤すすけた明かり。鼠色ゆずぁに煤けた空。真っ黒に煤けた窓。煤けたように古びた家"獅子。窓ガラスがすすけたように曇る=黒写。 **おせん【汚染】** 高濃度の汚染が見つかる。汚染に歯止めがかからない。汚染する(海水を。環境を。良風美俗を。放射性物質が地下水を=辺見)。▼汚染される(殺虫剤に。赤に。農薬に。病菌に。かびで。放射能で)。海洋汚染が広がる。大気汚染の元凶。 **おてん【汚点】** ▼汚点(拭えない過去の。レッドバージは戦後史の)。いくら拭っても拭いきれない過去の汚点が肉体に滲しみつく。谷崎。天井に地図のような汚点が拡がっている=林美。心に一生拭いきれない汚点を染み込ませる=高橋三。煙草の吸い殻がヴェランダの床に汚点のように落ちている=堀。 **きたない【汚い】** 汚い(言葉。手でさわる。手を使う。取引をする。真似まねをする。ものから目をそらす。ものを見るような限附き=室生)。▼汚い(意地が。食い意地が。言葉が。字が。部屋が。やり方が。金に。見た目に。都会の空気は。スリッバの裏が真っ黒になるくらい吉本)。土塊いものようにきたない宝石の原石有吉。煙草のやにで黒くなった汚い歯"高見願。頭髮が汚く伸びる。灰色に汚く汚れる。汚らしい(金。手をつかう)。ボヘミアンを気取った汚らしい身なり。佐藤春。岨うしでも湧きそう古井。シーツが鼠色ゆずみに染まる=高橋三。 **小汚い** 小汚い(格好をした男。部屋。身なり。やり方)。 **尾籠** 尾籠がちな(話で恐縮だが。話題)。 **薄汚い** 薄汚い(格好。野良猫。部屋。欲望を満たす)。艦褸ばろのようにうす汚い人間"遠藤。薄汚く汚れる。雪がところどころに薄汚く残る=堀。薄汚さに眉を寄せる。 **不衛生** 不衛生な(環境。状態。ことに神経が耐えられない)。衛生状態が悪い。環境衛生がひどく立ち遅れる。 **不潔** 不潔な(手。部屋。身なり)。身のまわりを不潔にする。▼不潔になる(家の中が。身なりが)。不潔さを気にする。 **くすむ** くすむくすんだ(銀泥の屏風に。紺色の背広。色調。染みになって残る)。煤煙ぶいでくすんだ町。色合いがどうしようもなくくすんでいる。 **しみ【染み】** ▼しみ(塩を吹いたように白っぽく浮き出した=日野。小さな虫のような黒っぽい=日野)。淡い影のような背黒いシミ藤枝。 <75> # 洗う・汚れる―-24 **染み** 染みが(あちこちにつく。うっすらと下着に付着する"平野。奇怪な文様を描く=篠田)。赤黒い染みが浮き上がる。頬に褐色の染みが出る。チョコレートのしみが銃撃戦のあとの血痕のように一面にしみこむ"村上孫。壁の染みが地図のように黄色くひろがる"原田駅。壁に灰色の染みができる。濁ったシミのない人生"石坂。肌に染み一つ見当たらない。染みや汚れが点々とにじむ。煩悩を解脱げだしてシミひとつない白紙の脳裏荻野。黒い染みのような(憎しみ。不審な思いを抱く=森塩)。胸に一点の黒い染みのような後悔が残る=森瑙。禿はげた頭に薄毛がしみのように生える=松本。ジャンクが黒い染みのように点々と浮かぶ!遠藤。 **シャンプー** シャンブー(マイルドな。さわやかな匂いのする)。シャンブーが目に染みる。髪をシャンブーする。シャンプーで髪を洗う。かすかにシャンプーの香りが漂う。 **すす【煤】** 煤で黒くなる。顔を煤で真っ黒にする。天井が煤に汚れている。燥を(溶かしたようなどす黒い空気芥川。ながしたような暗さの夜=室生)。煤のようにくらいものを目つきに漂わす=室生。煙突から道はいただいてきたような煤だらけの顔"北。 **油煙** 油煙(カンテラの。ランプのぼうと立つ)。油煙で古色をつける高橋克。 **煤煙** 煤煙ぶ心で(薄黒く汚れた家並み。椎名銭。汚れた朽ち葉のような色"松本。汚れたような靄もゃ=伊藤炎)。煤煙に霞む空。工場地帯が薄く煤煙に覆われる。 **せっけん【石鹸】** 泡立ちのよい石鹸。石鹸が肌に媚にびる=檀。石鹸で(体を洗う。手を洗う)。石鹸の(泡にまみれる。匂いをぶんぶんさせる)。たっぷりと石鹸を塗りつける。セッケンのような甘い匂い水倉。 **洗剤** 洗剤を(泡立てる。使う)。 **せんがん【洗顔】** 洗顔を(いやがる。済ませる)。お湯で洗顔する。顔を洗う(念入りに。ざぶざぶと。水で。若水で)。 **洗面器** 洗面器を(置く。引っくり返す)。 **せんたく【洗濯】** 洗濯がきいて清潔なタオル。洗濯にとりかかる。洗濯の行き届いたシャツ。▼洗濯する(着物を。心を。作業服を。下着を。夜具を。汚れ物を。じゃぶじゃぶと)。▼洗濯をする(井戸端で。久しぶりに命の=佐野)。鬼のいぬ間に命の洗濯"加太。 **洗濯機** 洗濯後に洗い物を放り込む。汚れた服を洗濯機に入れる。洗濯機を(動かす。回す)。▼クリーニングに出す(衣類を。ワイシャツを)。▼クリーニングする(背広を。部屋を)。 **せんたくもの【洗濯物】** 洗濯物が(風になびく。たまる。翻る。水を滴らせる。山ほど溜まる)。ベランダに洗濯物が並ぶ。脱衣場に山と積まれている洗濯物"筒井。乾燥機の丸窓の中で色とりどりの洗濯物が律儀に回転し続ける"原田宗。吊るされた洗濯物が万国旗のようにはためく=小林久。洗濯物を物干し竿さおに干す。家の中に洗濯物を取り込む。体が洗濯物のようにはためく”山崎。干し物が乾く。干し物を取り込む。洗い物が(たまる。きれいに片づく)。洗い物を干す。てきぱきと洗い物を片づける。 **たわし 【束子】** たわしでこする。稲を刈った後の切り株がタワシを並べたように整然と田の中に浮いて見える=水上。タワシのようなこわい胸毛"加賀。髪のさびしいタワシのような後頭部"小島。 **てあか【手垢】** 手垢で汚れる。手垢にまみれて脂光りてあかがする。まるで手垢のついていないような容姿北原。手垢のついた(辞書。笑い話)。てかてかした手垢だらけの木地。 **どそく【土足】** 土足で(上がり込む。踏み荒らす。踏みこむようなことはできない吉本。踏みにじるように言う内田春)。腹を土足で踏みつける。他人の心に土足で踏み込む綾辻。どかどかと土足で踏みこんでくる=阿刀田。土足のままずかずか踏みこむ。 **どろだらけ【泥だらけ】** ▼泥だらけになる(スカートが。身も心も)。一日中泥だらけになって働く。泥だらけにする(ズボンを。手を)。全身泥まみれになる。泥まみれの(足で歩く。ズボン。長靴)。泥んこになって田植えをする。泥んこの道をビチャビチャ歩く=北。 **はみがき【歯磨き】** ▼歯磨き(寝る前の。毎朝の)。歯をブラッシングする。歯ブラシで(こする。歯を磨く)。歯ブラシを使う。 **めやに【目脂】** 限の縁に限脂が溜まる谷崎。目脂で臉だぶが張りつく=横山。目やにを(取る。ぬぐう)。目くそを(つける。取る)。 **ものほし【物干し】** 物干し台に翻る色ものの下着類が目のやり場のないなまめかしさ"高橋和。物干しを兼ねたベランダ。物干し竿だぉを売り歩く。▼物干し場(雨ざらしの。満艦飾の)。物干し場に洗濯物を干す。 **ゆあか 【湯垢】** 湯垢が(こびりつく。付着する)。湯垢を(落とす。取る)。茶渋がつく。茶渋を(落とす。取る)。水あかがつく。水あかでぬるぬるする。 **よごれ【汚れ】** 血のような赤い汚れ=中上。汚れが(落ちる。しみこむ。付着する)。ガウンの汚れが拭ってもとれぬ烙印のように不愉快!高橋和。垣の竹の裏側に欲かがびのような汚れがある=梅本。小気味いいほど汚れが洗い流される=中沢。爪の間に黒い汚れが溜まる=桐野。丹念に汚れを落とす。汚れ物を(洗う。片付ける)。汚物にまみれる。黄色い汚物を吐く。 **よごれる【汚れる】** ▼汚れる(インクで指が。手が。血よごれるに。汚れ放題に。草の汁で。頭髪が土ぼこりに。白いレースが黄色っぽく。床がおしっこで。雨に打たれた花のように泥に=中村真。シャツやズボンが人前に出られないほど三田)。▼泥で汚れる(衣服が。体が)。汚れた(体を洗う。皿を洗う。金に手をつける)。シャツの襟が汚れている。▼黄ばむ(カーテンが。白布が)。▼まみれる(汗と泥に。汗と埃児にに)。 **汚す** ▼汚す(きれいな海を。着物を泥で。手をびちゃびちゃに)。 <76> # 争う・挑む あ **あらそい【争い】** ▼争い(竜虎の。政権の座をかけた。人間の愚かなる。一門が血で血を洗う。山手。食うか食われるかの=常盤)。争いが凄烈を極める。滑稽な争いが展開する。じくじくと女の争いがくすぶる。泥沼の争いに持ちこむ。金銭をめぐる醜い争いに発展する=西木。時に血を見るような争いになる=阿久。醜い争いに巻き込まれる=山岡。争いの(あげくの流血。種が尽きない。糸口を引き出す。渦に巻きこまれる)。馬鹿な争いは金輪際起こらない藤本。つまらぬ争いを繰り返す。数を頼んで争いを仕掛ける=高千穂。覇権争いに割り込む。係争中の案件。重要な課題が政争に埋没する。政争の具にする。争闘の(渦に加わる。まと化す)。食うか食われるかの大闘争"本多勝。▼相克(精神と肉体の。父と子との。理性と感情の。現実と思想との。血で血を洗う親子兄弟の)。のっぴきならない運命の相剋ぶら=今火。美点と弱点の相克にあえぐ山岡。小さな争い。蝸牛角上けにうかの争い。小競り合いが(絶えない。淡く)。コッブの中の嵐。 **あらそう【争う】** ▼争う(トップの座を。陰に陽に。刀を抜いて。検察側と弁護側が。日々目前の利を。家督相続をめぐって。ほぼ互角の力で)。事を構える。中原に鹿を逐ょう。すさまじいばかりの暗闘。政治的暗岡が激しい渦を巻く。いさかう(あからさまに。口汚く)。女をめぐって閘当が『てをする。初顔合わせの対戦。強豪と対戦する。対戦チームを総なめにする。闘う(眠気と。敗北を覚悟で。不安と。壊れそうな心と必死に。全身を焼くような痛みと。各人が各人の力量の限りを尽くして隆)。▼やりあう(互角に。対等に)。▼いがみ合う(嫁と姑しゅうが。細かいことで。何かというと)。いがみ合って暮らす。 **しのぎをけずる【鎬を削る】** 鎬礼のを削る(発明に。生き延びるために)。鎬を削る対立。 **せめぎあう** せめぎあう(敵と味方とが。山や谷が。悔恨と恐怖が胸の中で。尊敬する気持ちと憎む気持ちが"志茂田)。古くからの集落と新興住宅がせめぎ合う横山。 **つのつきあう【角突き合う】** 角突き合う(何かというと。つまらないことで)。世間の流れに逆らって人と角突き合わす奥泉。 **つばぜりあい【鍔迫り合い】** ▼つばぜり合い(壮絶な。激しい)。つばぜり合いを(演じる。制する)。 **いさかい【諍い】** ▼いさかい(陰湿な。深刻な。不毛な。愚にもつかない。周囲の人たちが振り返るほどの声高な=三田)。浮気が原因の諍いが絶えない結城。獲物を巡っての諍いが起きる=熊谷。いさかいの(種をまく。声が家の中で響く)。いさかいを丸く収める。 **いどむ【挑む】** ▼挑む(新たな分野に。強大な敵に。未知の世界に。総力を挙げて。困難な道路建設に。困難なミッションに。スクーブに果敢に。だめでもともとの精神で)。▼勝負を挑む(気迫の。真っ向から)。▼戦いを挑む(果敢に。敢然として。身を以もって孤独な瀬戸内)。絶的な戦いを挑みついに自滅する=司馬。戦いを挑んでひけはとらないぞというようなぎらぎらした目=幸田文。みだりに戦いをいどんではならない灰谷。声に挑むような響きがある=遠藤。頬に挑むような笑いが浮かぶ!勝目。挑むような視線で児にらむ藤田。眼に挑むような鋭い光が走る!遠藤。挑みかかりたい気持ちをあおられる。▼挑みかかる(果敢に。猫背の男が敏捷びんしな獣のように藤本)。挑みかかるようなはげしい眼で睨む=海音寺。 **うちわもめ【内輪揉め】** 内輪もめで愁嘆場を演じる。のんきに内輪もめをしている暇などない。▼内輪もめをする(親子が。仲同同士で)。暴力団同士の抗争事件。組合が内訌江沁する。内証による城の焼失。血で血を洗う内部抗争。内部抗争のバランスにのっかる。内紛で流会が続く。内紛に巻き込まれる。内乱が起こる。内乱を鎮定する。 **けんか【喧嘩】** ▼喧嘩(売り言葉に買い言葉の。しょせんはガキの。他愛ない子ども同士の)。あたしに喧嘩売ってんのか売ってんだなよし買った有川。酒の上での喧嘩が多い。ささいなことから喧嘩が始まる。派手な喧嘩が絶えない。喧嘩でも始めそうな顔で呪にらみ合う新田。喧嘩と(仲直りを繰り返す。和解を繰り返す。聞くと血が騒ぐ=尾辻)。喧嘩に花が咲く"今来。忻った張ったの喧嘩になる。賭け事と喧我に明け暮れる毎日=鈴木光。喧嘩の(けりがつく。側杖ぐぶを食う)。猫の喧嘩の声が巻き起こる。火事と喧嘩は江戸の花。つかみ合いの喧嘩をやる。やらずもがなの喧嘩を売る。売られた喧嘩を買わないわけにはいかない宮部。死に対して喧嘩をしかけんばかりの切羽つまった心持ちで出かける有房。喧嘩する(性懲りもなく。寄ると触ると。下らないことで)。喧嘩のような議論を問わせる=鎌田。金持ち喧嘩せず。殴り合いの大喧嘩。まるきり喧嘩腰かと思われるくらいぶっきらぼうな言葉づかい"井伏。喧嘩腰で(言い募る。抗議する。どなり合う。噛みつくように言う。若竹)。喧嘩腰に物を言いつのる。ちょっとのことで喧嘩腰になる。石投げのようなけんか腰の討論が続く小林多。喧壓好きな血を持て余す。喧嘩両成敗となる。痴話喧嘩が絶えない。夫婦げんかの仲裁に入る。夫婦喧嘩は犬も食わない。大立ち回りを演じる。酒の上での武勇伝に事欠かない。武男の沙汰に及ぶ。 **こうそう【抗争】** 抗争が激化の一途をたどる=有川。抗争と和談を繰り返す。やくざの抗争に絡む事件。抗争の(矢面に立つ。渦中に巻きこまれる)。他の部族と抗争する。 **ごたごた** 夫婦間のごたごたが周囲に波及する宮本瓦。夫婦の間にごたごたが絶えない=松本。女とのこたごたから逃げる。こたこたと(飾りつけが多い。積み <77> # 争う・挑む―25 **こんせん【混戦】** 敵味方が入り乱れたままの混戦!日洲。混戦が繰り広げられる。混戦に乗じて敵の馬を奪う。 **ストライキ** ストライキ(政治的な。長期にわたる)。ストライキが(方々に起こる。惨めに敗れる)。ストライキに入る。実力行使に出る。労使紛争を調停する。労働争議が起こる。労働争議を支援する。 **たいけつ【対決】** 世紀の対決が実現する。対決の場へ足を踏み入れる。対決する(強豪同士が。トッブ同士が。与野党が。悪と。強大な敵と。組織をあげて。父親の仇敵にいうと。真っ向から。面と向かって)。対決姿勢を(打ち出す。鮮明にする。強める)。対決色が(鮮明になる。強まる)。対決路線に転じる。 **切り結ぶ** 切り結ぶ(真正面から。猛然として)。真正面から理屈の木刀を抑ふるって先方の害毒の真剣と切り結ぶような不利なことをする=幸田露。 **たいりつ【対立】** 対立が(あらわになる。表沙汰になる。顕著になる。和解に向かう。ぶすぶすいぶる=島尾)。未だに対立が続いている。主張に対立がある。利害の対立が生じる。両派の対立が頂点に達する。対立を最小限に食い止める。二十年来対立を続けている。対立する(国と国が。政治思想が。両者の主張が。意見が鋭く。役員の人事をめぐって激しく三好徹)。対立一色に塗りこめられる。対立抗争が終息する。対立軸が鮮明になる。対立点を明らかにする。 **相反する** 相反する(感情。見解。立場)。相反する(目前の利害が。真っ向から)。利己心と犠牲という相反する価値観。 **ちょうせん【挑戦】** ▼挑戦(大胆不敵な。一か八かの。未知への。自己の限界への)。挑戦が不振に終わる。挑伐を受けて立つ。▼挑戦する(意欲的に。既存の道徳に。単身悪に。苦手な科目に。未知の分野に。新しいジャンルに。奮起してもう一度)。敵に挑戦する(敢然と。昂然悪いと)。神に挑戦するような意気込みではじめた恋愛中村真。挑戦者と対峙する。挑戦者をマットに沈める。辟易於持するほどの挑戦的態度・池田。挑戦的とも言える視線をよこす伊坂。挑戦的な(目を向ける。憎々しい調子で言う)。視線に挑戦的な色がある。どこか人を試すような挑戦的な気配"五木。挑戦的に胸を張る。目が挑戦的に光っている。▼チャレンジする(新しい分野に。果敢に。地域再生に。難しい目標に。夢に)。チャレンジ精神に燃える。 **ちょうせんじょう【挑戦状】** 挑戦状を叩きつける。突きつける)。一方的な果たし合い状をつきつけるような申し入れ小島。果たし状でもつきつけるような意気ごみ=山崎。 **てきたい【敵対】** 親に敵対する。敵対意識を燃やす。敵対関係に(陥る。立つ)。公然たる敵対行為。全身の皮膚が破れるほど満ち満ちていた敵対心が大きな音を立てて崩れて行くのを聞く“墨器有。 **とうそう【闘争】** ▼闘争(血みどろの。生死を賭けた激烈な)。闘争が先鋭な様相を見せる。流血の闘争が眼前に起こる。無用な闘争で血を流す。闘争に(明け暮れる。けりがつく)。闘争の(主導権を握る。先頭に立つ。炎が燃え上がる)。泥沼のような闘争のすえに結局敗北する=高橋和。柔軟に闘争を指揮する。闘争する(第一線に立って。馬車馬のように猛烈に徳永)。闘争方針(穏健な。過激な)。闘争方針を転換する。闘争本能がばちんと弾ける"船戸。闘争本能に火がつく飯田。 **とっくみあい【取っ組み合い】** 上になり下になりの取っ組み合い=里見。取っ組み合いの喧藤妙んをする。 **格闘** 毎日仕事との格闘が続く。▼格闘する(難問と。汗まみれになって。分厚い教科書と)。 **組んずほぐれつ** 組んずほぐれつの(格闘。喧嘩)。組んずほぐれつ喰う。 **どろじあい【泥仕合】** 泥仕合の様相を呈する。後継者どろじあい争いの泥仕合をする。事あるごとに泥仕合を繰り返す。 **はたしあい【果たし合い】** 果たし合いの時刻に遅れる。果たし合いを(挑む。申し込む)。決岡に応じる。 **ふんそう【紛争】** いつ果てるとも知れぬ紛争に明け暮れる清水義。紛争の(解決に当たる。種を蒔きく)。紛争を平和的に解決する。部族紛争を調停する。血で血を洗う民族紛争。 **みつどもえ【三つ巴】** 三者三つ巴の乱戦。三つ巴でやりあう。三つ巴になって争う。三つ巴の混戦。三者三つ巴になって戦う。▼鼎立てでする(三候補が。三者が。三派が)。 **もめごと【揉め事】** もめ事が(起こる。おさまる)。よその家庭のもめことが好き"大岡。色恋沙汰で揉め事を起こす熊合。もめ事を(器用にさばく。処理する)。つまらないことでもめる。 **すったもんだ** 後継者選びでこたつく。結構すったもんだする。すったもんだの騒ぎが始まる。 **紛擾** 利害をめぐる各国間の紛擾い礼じ。紛擾を(起こす。収める)。 **一悶着** 一悶着切にしくん(起きる。あるに違いない)。 **軋轢** 軋轢い(部族用の。両国間の)。軋轢が表面化する。感情の軋轢が起こる。世代間に軋轢が生まれる。人の動くところに摩擦や肌際はつきもの=畑村。 **悶着** 悶着が絶えない。悶着に巻きこまれる。悶着の種を蒔きく。悶着をおさめる。何かにつけて悶着を起こす。 **らんせん【乱戦】** 殴り合いの乱戦。至る所で乱戦が始まる。大乱戦で勝負の行方は分からない。とてつもない大乱戦となる。大乱戦を(勝ち抜く。繰り広げる)。乱戦模様になる。 **乱闘** 死傷者を出す乱闘にまで発展する"平岩。 **場外乱闘** 場外乱闘に巻き込まれる。 **大乱闘** ▼大乱闘(殴る蹴るの。両軍入り乱れての)。 <78> # 現れる・剝き出す **あからさま** あからさまな(批判に耐える。残酷無残な行為。敵意をぶつける)。あからさまに(圧力をかける。言うのがためらわれる。軽蔑の気持ちをあらわす)。攻撃の意図をあからさまにする。空腹になるとあからさまに不機嫌になる荻野。 **身も蓋もない** 身も蓋もない言い方。とんでもないくらいの角度で体が開いてしまうような身も蓋もない恰好跡内田疹。 **むきつけ** むきつけな(言葉を吐く。質問にまこつく)。好奇心をむきつけに顔に出す。 **あきらかにする【明らかにする】** ▼明らかにする(因果関係を。原因を。事件の背景を。事情を。正体を。真相を。組織の恥部を。違う点を。似た点を。身元を。もたれ合いの構図を)。▼明るみに出す(隠された情報を。警察の腐敗ぶりを=柳田)。▼あぶり出す(家庭風景を。思い出を記憶の底から)。▼詳のきらかにする(経緯を。内容を。来歴を)。▼明かす(裏金の使途を。正体を。素性を。種を。手の内を。秘密を。身分を)。▶名を明かす(客の。自分の)。▼メスを入れる(組織の体質に。腐敗に。問題点に。大企業本位の政治に)。 **あきらかになる【明らかになる】** ▼明らかになる(考えの筋道が。事件の輪郭が。事実関係が。事情が。勝敗の帰超込すが。真相が。砂機が。破綻が。矛盾が。理非曲直が。芋づる式に。鏡に映すようにすべてが"倉橋)。 **底が割れる** 底が割れる。 **明るみに出る** ▼明るみに出る(陰謀が。汚職が。事件が。大失態が。スキャンダルが)。問題が明るみに出ることを警戒する。 **あばく【暴く】** ▼あばく(正体を。政界の裏面を。墓を。秘密を。仮借なく欠陥を)。騙かたり者の面の皮をひん剥く。▼あばきだす(弱点を。醜い関係を。執拗に。隠された本性を)。▼あばき立てる(浮気を。旧悪を。醜態を。非を)。うやむやに祭られた過去の不正事件の数々を暴き立てる=開高。▼洗い立てる(落ち度を。旧悪を。暗い過去を。素性を。身元を)。 **ばらす** ばらす(男関係を。秘密を。取って置きの種を)。 **すっぱ抜く** ▼すっぱ抜く(内情を。舞台裏を。スキャンダルを)。すっぱ抜かれる(醜聞を。週刊誌に。新聞に。不正献金の事実が)。 **暴露** 暴露する(頭の悪さを。才能の不足を。正体を。秘密を。野蛮な習慣を。弱点を自ら。スキャンダルを)。欠如を暴露する(指導力の。独創性の)。暴露記事を書く。 **ほじくり出す** ほじくり出す(人の欠点を。昔のことを。墓場へ抱いていった秘密を斎藤栄)。相手の言いたくないことを無理にほじくりだす。石坂。 **あまざらし 【雨曝し】** 自転車が雨ざらしになる。雨ざらしの階段。風や雪にさらされる。 **野ざらし** 赤錆油がびた機械類が野ざらしになっている。野ざらしの石仏。 **あらわ 【露わ】** あらわな(情を見せる。反感を示す。首筋に逞於〈しさが漂う)。陽があらわな腕を焼く。太腿ふにもあらわな女。感情の起伏をあらわに示す。感情をあらわにむき出す。好奇心をあらわに見せる。煩わしげな表情があらわに浮かぶ。あらわになる(いら立ちが。欠陥が。腰から上が。全貌が。乳房が。肌が。胸が。心が覆いを取られて。野心が日一日と)。あらわにする(肩から腕を。苦衷の表情を。全身を。憎悪の念を。肌を。不快感を。不満な顔を。胸を。気持ちの高ぶりを。心根の卑しさを。憎にくしげな口調を)。 **白日の下に** 白日の下に(全身をさらす。醜さが引き出される)。白日の下にさらす(エゴイズムを。罪に汚れた姿を。プライバシーを。見たことのない一面を)。 **あらわす【現す】** ▼現す(馬脚を。瞳に悲しさを。戸惑いを顔に。喜びを満面に。おもむろに正体を。段々化けの皮を。めきめき頭角を。じりじりと揃癱筋はれし、を額に)。▼面に現す(一様に興奮を。不安の色を)。姿を現す(真相が。全谷が。雲が切れて山々が)。暗がりから影のように姿をあらわす村松。 **露骨** 露骨に現す(気構えを。女々しい弱点を)。 **表す** 表す(侮欺の念を。情を素直に。感謝の気持ちを。歡喜を顔いっぱいに。気持ちをストレートに)。心境を表している言葉。 **意を表す** ▼意を表する(哀悼の。恭順の。心から感謝の。謝罪の。満足の)。 **露呈** ▼露呈する(思想的弱さを。縦割りの弊害が)。 **あらわれでる【現れ出る】** ▼現れ出る(眼前に。空中に。目の前に)。▼顔を出す(水面から。ぬうっと。年相応の若さが)。▼現出する(悪夢が。地獄が。平和な社会を。ユートピアを)。 **発現** ▼発現する(個性が。病気が)。 **発露** ▼発露(愛国心の。母性愛の。無垢しくな童心の。抑圧されたストレスの)。真情の発露を覆い隠す。潑刺27とした生命が発露する。現代人の感情の流露である短歌。自由な感情の流露を押し隠す。 **あらわれる【現れる】** ▼現れる(影響が徐々に。結果がすぐに。彗星甘いが空に。顔に迷いの表情が。目に安堵、んの色が。陸続として後継者が。警戒感が露骨に。効果が見る見るうちに。ばっと目の前に。いずこからともなく。満月が密雲を破って。夢の中にしばしば。忘れた頃に飄然いうと。着飾った人々が入れ替わり立ち替わり若竹。霧のなかから突然幽霊のように常盤。月が稜線切にうから覗のぞき込むように大岡。どこからか風のように=円地。突然降って湧いたように泉俊)。▼あらわれる(気持ちが隠しようもなく表情に"住井。恐れていたことが現実のものになって尘丹)。▼顔に現れる(後悔の色が。心中の苦悶もがありありと二葉亭)。▼見せる(木陰から姿を。頻繁に顔を)。姿がゆらゆらと蜃気楼礼礼のように現れては消える人間。▼現れ(意地の悪い嫉妬の。金への強い執着心の)。いきなり扉を開けるような現れかた落合。あぶり出しの絵のように(現れる。にじみ出る)。▼現れない(引き取り手が。待てど暮らせど)。 <79> # 現れる・剥き出す―26 **立ち現れる** 立ち現れる(衝動が。目の前に。夢に。次から次へと)。 **顕現** ▶顕現する(啓示が。効果が。人間臭い官能や叡智伝いが=円地)。 **顕在化** ▼顕在化する(金融危機が。分極傾向が。ほころびが)。 **現ずる** ▼現ずる(効果を。神通力を。姿を)。 **表面化** 表面化する(悪循環が。隠蔽問題が。経営危機が。方針の違いが。葛藤がとみに)。 **頭をもたげる** ▼頭をもたげる(警戒心が。後悔の念が。傲慢な心が。焦燥が。ジレンマが。不信が。野心が。悪い病気が。故国への思慕が。冬の下から春が。居直りの気持ちが内橋。野暮ったい疑問が池澤)。▼首をもたげる(利かん気が。決意が。欲望が)。 **おおっぴら【大っぴら】** 大っぴらに私語を交わす。大っぴらには認めたくない。 **表立って** 表立って(非難できない。批判する)。 **晴れて** 晴れて(無罪となる。結婚式を挙げる。自由の身となる)。 **公然** 公然たる敵対行為。公然と(異を唱える。主張する。反対する。批判する)。白昼公然と行われている不正。公然の秘密。 **おおやけにする【公にする】** ▼公にする(結果を。言を。著作を。無知を。悶着もんちを)。公になる(事が。事件が)。 **おもて【表】** 表に逃れを待たせてある。感情を表にあらわす。正直律儀を表に立てる。▼表に出す(悔しさを。怪談の色を。暖簾のれを。心に秘めていた感情を。才能のあらん限りを。剣もき出しの怒りを)。▼表に出る(問題が。涼みに。二人で連れ立って)。表口を(閉める。開けっ放しにする)。 **表舞台** 政治の表舞台から去る。表舞台に(躍り出る。返り咲く)。 **かた【型】** 山の姿が額縁に収めたように型が極まる=高井。ブリンを型から抜くようにストンと大人になれそう落合。型を作る(粘土で。蠟ぅうで)。海軍という閉ざされた世界の鋳型にはまる=阿川弘。平板な鋳型に流し込まれたどろどろした光のように見える街"村上卷。鋳型を使って鋳造する。 **かたち【形】** 形が(いびつになる。はっきりしない)。形に(拘泥する。とらわれる)。イメージを形にする。正常な形に戻る。調査が書類の形にまとまる。両手を万歳の形に広げる。形のよいすらりとした体・原田康、細い月のように形のいい眉大佛。形のいい(姿臭。臍へそ。指)。恋愛の形は無限に存在する=村山。形ばかりの(挨拶をする。お礼)。今はもう影も形もない。形を(頭に叩きこむ。頭の中でなぞる)。概念が形をこなす。辛うじて形を留めている。疑惑が形をとる。空想がはっきりと形を結ぶ。最終的な形をイメージする。無理やり形を繕う。欲望に形を与える。先細りで美しい形をした手=桐野。 **形状** 千差万別の形状。形状を(描く。記憶する。変更する)。 **形態** 形態が変化する。形態を(異にする。整える。分析する)。 **流線型** 流線型の(機体。魚。車体)。 **きざし【兆し】** 初老のきざしが限元に刻まれた女たちの顔!柴田翔。改善の兆しが見られない。上達の兆しがない。崩壊の兆しがある。▼兆しが現れる(快復の。不振の。乱酒の)。▼兆しが見える(一陽来復の。解決の。態度に状化の。春の。復調の)。悪い兆しを発見する。▶兆しを見せる(荒廃の。欲情の)。 **萌芽** 悪の萌芽を摘み取る。 **予兆** 予兆が胸をよぎる。▼予兆する(地震を。敗北を。崩壊を)。 **先触れ** ▼先触れ(事件の。戦争の。夏の。春の。冬の)。時代の先触れを読み取る。 **前兆** ▼前兆(春の来る。悪いことが起こる)。勝利への前兆を見出す。一陽来復の兆候が見え始める。噴火の兆候がある。 **徴候** 徴候がかなり以前から存在していた久岡。▼兆候がない(はっきりした。依然として快復の=長塚)。 **前触れ** ▼前触れ(不吉な。凶事の。よい)。お祭り騒ぎの前触れの静けさ=安岡。 **けしん【化身】** ▼化身(悪の。神の)。欲情の獣に化身する=藤沢。邪悪の化身のような姿谷崎。鬼の生まれ変わりではないかと思えるほど酷いとい虐いじめ方をする連城。 **権化** 好奇心の権化だんと化す=梶尾。▼権化のごとき人物(岡魂の。領主は苛斂誅求訪れが法。の柴田錬)。悪の権化のような顔つき『清水義。 **げんじつ【現実】** 岩のような現実が突然に劈開心心して劈開面をチラッと見せてくれるような瞬間=梶井。現実から目をそらす。夢とも現実ともつかぬ異常な風景光瀬。現実に背を向ける。恐れていたことが現実のものとなる。仮想と現実の区別がつかない。現実は(小説のようにはうまく運ばない。神話と大して違わないほど古くて荒けずり“円地)。苛酷な現実を直視する。小説の話と現実を混同する。夢の中を揺れているように現実感がない=石森。現実感に不意にひび割れが走ったような気分"日野。 **現実主義** 現実の種々相に拘泥する現実主義者。 **現実論** 現実論と理想論の大激突"有川。 **げんば【現場】** 現場から何かの手がかりをつかむ。一刻も早く現場から立ち去ろうと焦る。現場からの離脱を図る。現場で叩き上げてきた人間。一線の現場で活躍する。現場に(足を運ぶ。横槍ににを入れる。責任を押しつける)。慌てて現場に駆けつける。バトカーを現場に急行させる。現場の(生き字引。雰囲気に圧倒される)。現場の声を(聞く。持ち帰る)。現場への執着が強い。現場を(詳しく調べる。下見に行く)。不倫の現場を押さえる。現場検証に立ち会う。現場周辺を調べる。容を現地に案内する。検査官を現地に派遣する。現地の言葉を覚える。現地へ下調べに行く。 **さらけだす【さらけ出す】** ▼さらけ出す(威信低下を。色黒の地肌を。過去の恥を。欠陥を。才能の不足を。正体を。素顔を。率直に自己を。本性を。無無残な姿を。脆もっい部分を。内部を外に。ありのままの自分を。緊張感の欠落を。真相をすっかり)。 **赤裸々** 赤裸々な(姿を現す。感情を表に出す。気持ちを吐き出す)。 **馬脚を現す** こしらえものの馬脚を現す。 **露悪趣味** 露悪趣味の男。露悪的な冗談を言う。話が露悪的に過ぎる。 **さらす【晒す】** ▼さらす(白い裸身を。素の自分を。満天下に恥を。無残な姿を。一物を人前に。命を危機に。体を冷水に。屍跡を戦場に。住民を飢えに。凶刃の前に生命を。涼しい風に肌を。熱心に書類に目を。風に髪をほつれ放題に。恥部を白日の下に。火照った顔を風に。見たことのない一面を白日に。息子の恥を世間に。ゆで上がった麺を水に。頭から尻尾まで)。▼身をさらす(寒風に。時代の流れに)。▼さらされる(寒風に。死の恐怖に。集中砲火に。他人の悪意に。身が危険に。ぞんざいな視線に)。▼目にさらされる(好奇の。万人の。人々の)。みだりに肌をさらさない。 <80> # **しせい【姿勢」** 危なっかしい姿勢でもがく。思い思いの姿勢で休憩をとる。泳ぐ姿勢でよろけ出る。くつろいだ姿勢でまどろむ。直立不動の姿勢で挙手の礼をする。低い姿勢で飛び出す。前屈みの姿勢で歩く。気をつけの姿勢になる。著者の姿勢にひかれる。姿勢を元に戻す。歩み寄りの姿勢を示す。辛うじて姿勢を立て直す。緊張して姿勢を正す。ずっと同じ姿勢を取り続ける。追求する姿勢を構える。長い問姿勢を崩さない。 **ポーズ** 姿勢をとる(受け身の。戦いの)。ビッチングフォームを身につける。くわえ煙草の気取ったボーズ=原田成。何かというと傷つくボーズに走る=永倉。▼ポーズを取る(思い思いの。胸を強調する)。 **しゅつげん【出現】** 唐突な出現に驚く。意外な敵の出現に動転する=山田風。新星の出現を望む。この世の地獄が出現する。田圃眩んのど真ん中にまるで蜃気楼礼礼』のように出現したマンモス団地=後藤。地から湧くごとく出現した黒装束の一団=柴田晃。路地の暗がりから亡霊のようにふっと出現した女阿部。 **しゅつぼつ【出没】** ▼出没する(怪しい男が。海賊が。通り魔が。不審な車が。夜な夜な)。神出鬼没な登場の仕方。神出鬼没に荒らしまわる。 **すがた【姿】** ▼炎(一糸まとわぬ。本来あるべき。満身創痍にうの無残な。輝くように若い。野育ちの荒々しい。あがいているという表現がぴったりする=黒岩。幽霊よりも影のうすい=小林多)。姿が(淡い闇に沈む。雑踏に消える。視野に入る。船内に隠れる。明かりに浮かび上がる。眼底に焼きつく。目の裏によみがえる)。ぼんやりと姿が映る。姿が岡に(包まれる。溶ける)。雪まみれの姿で軒下に立つ=船山。本来の姿に戻る。声はすれども姿は見えぬ。姿を(すっかり隠す。人目にさらす。臉ぼぶに浮かべる)。どこかへ姿をくらます。一人また一人と姿を消していく。なかなか姿を現さない。姿を現す(ぬっと。のっそりと)。▼姿を見せなくなる(ぱたりと。ふっつりと)。▼英姿(颯爽?たる。堂々たる。富士の)。 **姿態** 可憐ふぇなスレンダーな姿態。姿態を(くねらせる。目に浮かべる)。 **立ち姿** 立ち姿(姿見に映る。あたりを払う堂々たる)。立ち姿が凛りんとてている。 **風姿** 風姿(秀麗な。紳士然とした)。風姿が秀でている。 **影像** ▼影像(脳裏に描く。厳然たる)。影像が不鮮明になる。 **格好** 格好(しっくりと体にあう。ひどく疲れたような。世にも情けない。素人のように野暮ったい山本周)。思い思いの格好で(くつろぐ。働く)。 **タイプ** ▼タイプ(嫌いな。苦手な。男に尽くす。怒るとけっこう怖い。男心をくすぐるような。状況に流されやすい。神経質な二枚目という。どこにいても朗らかで目立つ。人見知りをする。一見どこかの企業の重役といった戸板。職場でお友達作って仲良くって"有川)。渋いタイプに憧れる。ごく普通の目立たないタイブの少女、鈴木光。 **たてまえ【建て前】** 建て前と本音を(使い分ける。重ね焼きにする"戸板)。建前と本音を絶妙にブレンドする=姫野。建前はしばしば実態によって裏切られる"柳田。建て前を頑固に守る。 **本音** 本音と建て前を見分ける。表向き仲よくする。表向きの理由と本音は違う。 **てきはつ【摘発】** 摘発に乗り出す。警察が摘発に動く。摘発の対象から外す。▼摘発する(悪の巣窟を。汚職を。危険分子を。脱税を。不正行為を。密貿易を。覚醒剤の密売を。人身売買組織を。窃盗グルーブを)。 **でばん【出番】** 出番が回ってくる。出番を待つ。お呼びがかかる。お呼びもかからない。お偉いさんの出番は一切なし。出る幕がない。 **デビュー** 輝かしいデビューの舞台へと駆けのぼる=内袱。華々しいデビューを飾る。デビューする(本格的に。画壇に画家として。文壇に作家として)。デビユーして数年が経つ。 **とうじょう【登場】** ▼登場する(多彩な人物が。突然前後の脈絡なしに。名がしばしば新聞に。曲に誘い出されるように若い踊り子が舞台に=西木。颯爽きっとて歴史の中央郷台に=山田風)。登場人物を(くっきりと描き分ける。知っている誰かと重ね合わせる=小川)。 **作中人物** 作中人物に感情移入する。作中人物の運命に思いを致す。 **としかっこう【年格好】** 父親くらいの年格好。年格好が似ている。 **年の頃** 年の頃七十に余る老尼。 **見かけ** 見かけより年をとっている。年齢以上に落ち着いている。年齢より若く見える。 **ばれる** ▼ばれる(悪事が。嘘が。浮気が。替え玉投票が。正体が。真相が世間に。公金のつまみ食いが)。いつかばれるに決まっている。危うく秘密がばれそうになる。 **足がつく** 足がつく。 **割れる** ▼割れる(簡単に底が。尻が)。 **発覚** 発覚する(いずれ事実が。陰謀が。使い込みが。税金の無駄遣いが。大規模な不正が)。 **露見** ▼露見する(悪事が。陰謀が。嘘が。旧悪が。使い込みが。犯行が)。 **ひとかげ【人影】** 石像のように立つ一個の人影光瀬。人影稀まれなな荒涼たる場所。人影が(乏しい通り。窓に映る。目に入る。視野の外に消える。群れをなして集まる。陸続としている。黒い塊のように山門をくぐり坂を転がっていく=長崎。地に吸い込まれるように倒れる藤本)。壁に人影がぼんやりと映る。前方に人影がうごめく。ちらほらと人影が見える。灯火の下に人影が浮かぶ。庭先に人影がさす。ほんやり人影が浮かび上がる。街に人影が少ない。目の隅にちらと人影が動くのを感じる。目前を人影が横切る。わらわらと人影が出現する。入り口にぬっと人影が立ち寒ふさがる=藤沢。姿を慕うように人影が横合いから現れてつつと寄る=多岐川。▼人影が動く(家の裏で。ちらちらと)。▼人影が映る(障子に。磨りガラスの向こうに=篠田)。▼人影がない(あたりに。街路に)。人影がなく閑散としている。薄暗い人影の疎まばらな道星行。辺りは森閑と静まり返って人影もない船山。日中でもあまり人影を見ない。不審な人影を見かける。ほとんど人影を見ぬほど荒廃する」遠藤。店の中に人影を見ることも稀なようなはやらない店曽野。あたりに人気かとがない。人の姿がまばら。 <81> # 現れる・抜き出す あ **あらわれる【現れる】** ▼現れる(人前に。夢の中に。忽然と。ぬっと。幽霊のように。音もなく)。姿を(現す。くらます)。きつねが姿を現す。目の前に(ぬっと現れる。黒い影が現れる)。▼出現する(UFOが。怪物が。新しいタイプの人間が。思いがけない人物が)。思いがけないところから出現する。 **かげ【影】** ▼影が映る(人影が。障子に。磨りガラスの向こうに。水面に)。▼影がさす(不安の。暗い。黒い。悲しみの。病気の)。人生に暗い影を落とす。心に暗い影を落とす。暗い影が将来に重くのしかかる。心に(暗い影を投げかける。一抹の不安の影を投げかける)。影が薄い。影の薄い男。影の形もない。 **かたち【形】** ▼形(目に見えない。目に見える)。姿形がはっきりしない。 **ひとけ【人気】** あたりに人気かとがない。人の姿がまばら。 **ひとかげ【人影】** ▼人影が動く(家の裏で。ちらちらと)。▼人影が映る(障子に。磨りガラスの向こうに=篠田)。▼人影がない(あたりに。街路に)。人影がなく閑散としている。薄暗い人影の疎まばらな道星行。辺りは森閑と静まり返って人影もない船山。日中でもあまり人影を見ない。不審な人影を見かける。ほとんど人影を見ぬほど荒廃する」遠藤。店の中に人影を見ることも稀なようなはやらない店曽野。あたりに人気かとがない。人の姿がまばら。 **ふうさい【風采】** ▼風采(年齢を判断しかねるような不思議な"阿刀田。一分の隙もない今東。格調高い紳士のような=水上)。風采がばっとしない。上品な風采と態度。行動が風采としっくりあてはまる三浦尖。風采のいい中年紳士。田舎臭く風采の上がらない男高井。頗討にる風采の上がらない武人"井上靖。不風流な人ていの男。 **ふうてい【風体】** 風体(堅気には見えない奥田。生活や仕事にくたびれたというような椎名誠。見たところ尾羽打ち枯らしたという“平岩)。およそ金持ちらしくない風態―藤枝。怪しい風体の男。風態のよくない連中=山本周。それとなく相手の人相風体を確かめる=阿刀田。 **ふうぼう【風貌】** ▼風貌(一癖ありげな。いかにも自信にみちた。貴公子然とした。物事に動じそうもない)。風貌に中年の気配が漂う。エキゾチックな風貌の猫。苦味走った端正な風貌の持ち主"西木。風貌を(思い浮かべる。記憶にとどめる)。海千山千の風貌を備えた老人。イギリス風紳士の風貌をした校長先生"内橋。 **まるだし【丸出し】** 警戒心丸出しで尋ねる。適当感丸出しで話をまとめる=有川。▼丸出しにする(脚を。お国言葉を。愚鈍さを。島国根性を。尻を。敵愾心にがを。喜びを)。▼丸出しになる(凶悪な感じが。尻が。雇い人根性が。豊かな胸乳坊なが)。好奇心丸出しの目を向ける。馬鹿丸出しの顔。 **みかけ【見掛け】** 見かけだけで中身を判断することは難しい"石坂。見かけと本質は違う。無遠慮な見掛けとはうらはらにかなり気を遣っている=高井。人は見かけによらない。見かけによらず(頑固。怖い人。怖がり。なかなか腕がある)。見かけによらない悪党。見かけによらぬ芯の強さが根深く遂われる=水井間。見かけは(ばっとしない。大きいが正味は少ない)。見かけほど楽ではない。見かけより(ずっと若い。遥かにしっかりした人物藤原)。 **みため【見た目】** 外形を(厭いとわない。気にする)。外面的な美しさ。外面を(気にする。取りつくろう)。観がある(集大成の。別人の。別物の)。外面のいい人。外面はいいが内面は悪い。見場が(よい。よくない。悪い)。押し出しが(立派。堂々としている)。外観に惑わされずに本質で人を見る=飯田。いまだに昔日の外観をとどめている。▼外観を呈する(醜い。別人になったかのごとき武田祭)。外見だけではうかがい得ない深淵んを心のどこかに有する=黒岩。世間は外見で人を判断する=乃南。外見と中身が <82> # あ 違う。外見に(金をかける。幻惑される。だまされる)。一人間の外見や行動からその人となりを推し量る=桐野。外見を(飾る。気にする。つくろう)。若々しい外見を保つ。見てくれだけは立派。見てくれで判断する。見てくれの(冴えない男。格好の良さに気を奪われる荒巻)。見てくれはよくないが味はいい。 **見た目** 見た目が地味。見た目に(美しい。可愛い。汚い。心強い。ちょっと卑猥な形森刑)。見た目にはまあまあ。見た目ほど悪い子ではない。見た目より遥かに歩きにくい。外貌から判断する。一見鈍重な外貌を備える。見栄えが悪い。 **身なり** ▼身なり(質素な。きちんとした。センスのない。普段着に近い。こざっぱりした)。身なりが(きちんとしている。ぱりっとしている)。身なりに(気をつける。隙がない)。あまり身なりにかまわない。粗野なくらい身なりに無頓着“円地。地味な身なりの女性。貧しい身なりの男。およそ垢抜ふかけのしない身なりの学生平野。▼身なりの紳士(立派な。りゅうとした)。身なりを(派手に飾る。びしっと決める)。爺じじむさい身なりを気にかける。羽織袴出に身なりを整える。善美を尽くした出で立ち。いでたちに神経をゆきとどかせる=柴田鍵。なりを(着がえる。こしらえる)。みすぼらしいなりをしている。 **剥き出す** ▼むき出す(鋭い牙を。露骨に敵意を)。歯をむき出して噛みつく。目をむき出して怒る。白い歯をむき出して玉石を噛む波竹西。にっと歯をむき出して笑う“山本周。白目を剝き出して問絶もする。苦労性を剥き出しにしたような話し振り黒井。▼むき出しにあらわす(美しさを。親愛の情を)。感情をむき出しにした中傷合哦。感情をむき出しにしてしゃべる。自己本位な性格をむき出しにして怒り出す。▼むき出しにする(意地悪さを。下半身を。剃刀分以の刃を。凶暴さを。好奇心を。焦燥の念を。憎悪を。敵意の爪を。憤慨の語気を。わがままを。秘めていたものを。目もとに不安を)。▼むき出しになる(肩が。感情が。恐怖が。心が。地肌が。性器が。二の腕が。配管が。表情に憎悪が。不安が。太腿にが。骨組みの木が。胸が。山肌が。じわりと。素朴な人間の生地が=石坂)。毛脛けずが裾から剝き出しになる"永井龍。剥きだしの肩がひりつく。▼むき出る(赤い肉が。歯茎が)。▼裸出する(岩肌が。亀頭が。地層が)。 **無表情** ▼無表情(石のように。岩原に突き立った棒杭に心のように=古井。男の死骸が魚のように=川端。お面でもかぶったように瀬戸内。顔が紙のように白く阿刀田。泥の上に胡粉にょを塗ったように武田祭。道が死んでしまったかのように"黒井)。停止した機械のように無表情でいる"司馬。無表情な(視線を向ける。仮面のような顔三浦愛)。おそろしく無表情な男。魚のように無表情な死骸"川端。わずかに鋭さをひそませたような無表情な眼"原田康。▼無表情な顔(凍りついたようなつか。眠っているような=伊藤整)。黙ったまま無表情に目を逸くらす。謁見式に臨んだ軍人のように無表情に言う内館。獣のように無表情にこわばった顔「大江。彫刻のように無表情になる三浦失。無表情のまま彫像のように立っているあさの。能面のような無表情さ=井上哨。眉も眼も動かさない=室生。脱水装置にかけたような表情=安部。にこりともしないで言う。微笑ひとつ浮かべない。表情が(かき消される。粘土細工のように固着している=光源。貼りついたように動かない"永井路)。表情のない事務的な顔。表情ひとつ変えない。表情を(変えずに言う。微動だにさせない)。喜怒哀楽の表情を表さない。▼表情を変えない(仮面のように。木材のひとかけらのようにほとんど清水俊)。眉一つ動かさず言へ?~井上蛾。 **容姿** 容姿(いかなる者をも目を隙みはらせるにはおかない気品のある=柴田剣。まるで手垢にぁのついていないような"北原。ミケランジェロの彫刻みたいな=村上龍)。容姿共に優れている。渡闇の中に容姿が浮かび上がる。容姿に(自信がない。こぼれるような艶なまめかしさがある=外村)。優雅な風貌容姿を裏切る悪魔の所業"今日。容姿端麗な女性。 **容貌** 容貌(緩みのない利口そうな=石川。健康らしいばら色を帯びた有鳥)。容貌が(おぼろに浮かぶ。人並み優れて美しい)。容貌に(自信がない。恵まれる。コンプレックスを持つ)。きりっと引き締まった理知的な容貌の三十男=和久。柄も立派なら容貌も立派。美しい容貌を隠す。容貌怪異な大男"豊田。▼顔貌(精悍な。渋い。面長のなかなかに端正な=池波)。顔貌に(愛敬がある。見覚えがある)。▼相貌(穏やかな。悲劇的な。荒武者の)。人相の(よくない男。悪い男)。役者のような甘いマスク=船戸。容色が優れている。容色の衰えが気にかかる。ルックス(庶民的な。端正な。甘い)。 **露骨** 露骨な(阿諛ぁゅを振りまく。言葉を口にする。視線を浴びせる。好奇心に目を輝かせる=篠田)。自己顕示欲が露骨な物言い。露骨に(嫌な顔をする。顔色を変える。はっきり言う。目をそむける。険しい表情をする。喧嘩妨んっぽい調子で詰問する。敵意をむきだしにする。皮肉な調子で言う。不快な顔をする。不機嫌な顔を見せる。むっとした顔になる。自分の人生観を押しつける=日井)。感情を露骨に表に出す。親しさを露骨に漂わせる。不満を露骨に口にする。間の悪さを露骨に顔に出す。野心を露骨に抱く。 **露出** 露出が一段と進む。メディアへの露出が増える。そこそこの露出度。▼露出する(赤土の肌が。地肌が。炉心が。肌を。赤裸々に。まだらに。ところどころ)。露出度が(高い。低い。増す)。露出度の高い服装。 <83> # あ 無理がない(気持ちに。流れる水のように少しも=本庄)。 **有り触れる** ありふれた(家庭団欒伏の図。退屈な風景。男女の情事)。ごくありふれた材料。ざらにありふれた関係。どこにでもいるありふれたサラリーマン。一山いくらのありふれた男。平凡なありふれた主婦。太陽の光のように自然でありふれた物=山田跡。▼ありふれた事件(世間に。いかにも三面記事的な鷺沢)。▼ありふれている(形容が。構図が。表現が)。奇とするに足りない。どこの家庭にもありそうなこと。日常の事象。格別目新しいことでもない。さほど珍しくない。珍しくも何ともない。別に珍しくもない。よくありがちな恋の歌。初心者にありがちなはしゃぎ過ぎ。才能のある者にありがちの独断。ありきたりの(男と女の関係。平凡な推理小説)。ごくありきたりの常識。マニュアル通りのありきたりの解き方谷村。言い古された(ことわざ。言葉が生き生きとよみがえる=白洲)。格別(驚くほどのことではない。珍しい事件でもない)。どこにでもざらにある話。使い古された(冗談。比喻ひゅ)。▼常套手段(詐欺の。手なずける際の。完全犯罪を目論む人間の笹沢)。常委的な(イメージ。美辞麗句)。 **当たり前** 当たり前の(ことのように平然としている。ことを臆面もなく言う“井上ひ)。ごく当たり前の成り行き。さも当たり前のことのように言う。▼当たり前のこと(考えてみれば。お日さんが西へ沈むのと同じくらいに"富岡)。怪しむに足りない。何の無理もない。不思議でもなんでもない。不思議ではない(あっても。さほど。少しも。いつ何が起きても)。無理からぬ話。無理のない話。まことにもっとも至極。いちいちもっともな指摘。ひがみの起こるのももっともな話。やむを得ないもっともな理由。一応もっともに聞こえる。分かりきっている(答えは。最初から。返事は)。▼自然(成り行きとして。水の低きにつくが如く花の梢につくが如く=石川)。自然な(経路をたどる。状態に戻す。死を迎える)。会話の自然な発展に従う。時代の自然な流れ。無理がなく自然な組み合わせ。以前からの知り合いだったように自然なうちとけ方"大佛。演技の匂いのない自然なはにかみ=山田太。こだわりのない自然な所作池波。動揺など少しもないような自然な声=原田康。自然の成り行きにまかせる。水が高きから低きへ流れる如くごく自然の理が2=井上ひ。水が流れるかのごとき自然さ=池波。何ら違和感がない。不自然なところがない。さして不自然なことではない。ちっとも不自然に聞こえない。何の不自然もない。老衰で自然死する。自然体で交渉に臨む。大人だって話し言葉で誤認になんて単語をナチュラルに使う奴はそういない有川。 **言うまでもない** いまさら言うまでもない。言うまでもなく最高の出来。味は言うまでもなく接客もよい。論じる(までもない。余地がない)。論を俟またない。味方は言うに及ばず。言わずと知れた(大泥棒。旧知の間柄。二人の仲)。聞くまでもなく決まりきったこと。理屈抜きに気分がいい。 **一介** 一介の(サラリーマンに過ぎない。やせ剣客となり下がる=山手。浪人から将軍の側近にのし上がる=水井路)。しがない(その日暮らし。出稼ぎの商人)。契約に縛られているしがない身泉後。ただの(中年男。小娘に過ぎない)。 **型通り** 型通りの(挨拶をする。結果に終わる。礼を言う。台詞紗」をしゃべる)。型どおりの良妻賢母を演じる=開高。事務的な口調で型通りの質問をする=今日。決まりきった(挨拶。部分的な作業の繰り返し人間)。 **常識** 常識に(富む家庭人。刃向かう。がじょうしきんじがらめになる)。形式や常識にとらわれない。世間の常識に振り回される。常識の範囲内で行動する。常識を超えた考え。排して考える。見事に覆す。根底から打ち砕く)。健全な常識を備える。世間の常識を敵に回す。俗世間の常識を破る。正常な判断力を持つ常識人。常識的な(判断を狂わす。推理を働かせる。ところへ落ち着く)。筋の通った常識的な主張"高井。常識的に考える。浅はかな常識論を述べ立てる。 **正常** 正常な(コースに戻る。食欲を示す。判断力を失う。反応を起こす)。原子炉を正常な状態に戻す。ごく正常な神経の持ち主。歪ゅがみが直り正常な形に戻る。頭が正常に働く。警報装置が正常に作動する=大藪。正常域に収まる。▼正常化する(運営が。機能が。国交を)。正常化をめざす。精神が正常さを取り戻す。異常はない(少しも。どこにも)。 **世間的** 世問的な(幸せ。常識。体面。分別)。世間的に恵まれない。世間的には分の悪いコースを辿たどる=庄野。世俗的な(おしゃべり。活動力。虚栄心。習慣。道徳。烦労汚辱を一切引き受ける=中島戦。名誉に心を労する=中野孝)。美貌のかげにかくされた世俗的な厭味、瀬戸内。 **俗っぽい** 俗っぽい(観光地。感じがする。趣味)。下情に通じたうわさ話を披露する藤沢。俗臭芬々ぶんたる(学者。僧侶。人を怪恋する)。俗昊芬々の野心の渦"山岡。俗説が流布する。単なる俗説に過ぎない。俗説を(あばく。信じる)。俗念を(去る。捨てる)。俗論に(席を譲る。惑わされる)。観光ブームで古都が俗化する。下世話なユーモアを発揮する。下世話に心が動く。話が下世話に砕ける。 **俗物** 派手好きなだけの頭のからっぽな俗物"日野。俗物に(成り下がる。伍ごすることを認しとしない)。自ら俗物をもって任じる=獅子。俗物性を(さらけ出す。風刺する)。スノッブな匂いが鼻につく。冷ややかなスノッブの集まり。俗流に媚びる。 <84> # あ **単なる** 単なる(噂でしかない。偶然の一致。気まぐれにすぎない。友人関係にとどめる)。心配は単なる杞憂だった近藤。単に(個人的なもの。頭がおかしいだけ。数が増えたばかりではない)。ただ単に面白がっているだけ。ただの(岡柄ではない。推測でしかない。通行人という風を装う佐野)。男性はただの働き蜂伊藤整。 **中位** 中くらいに位置する。サイズを中くらいにする。中くらいの(大きさ。成績)。中級の実力。中肉中背の男。中流という生活意識があまねく広く行き渡る=中沢。中流の(家庭。生活)。 **通俗** 通俗な(案内書。映画)。通俗に(堕する。流れる。走る)。通俗化に陥る。通俗的な(言い方。イメージ。見解。入門書。恋愛小説)。俗な言い方。俗に化して終生安んじる=中島敦。文章が俗に流れる。平俗な(物語。物の言い方)。 **通例** 役員会は通例第一水曜日に行われる火曜日に休むのを通例とする。通例に従う。その例に漏れない。とんでもない厄介を背負いこむためしに漏れず水井荷。他の多くの例に漏れず。 **月並み** 月並みだがあたたかい歓迎の言葉塩野。月並みな慰めを言う。格別奇もない月並みな話。この上なく月並みな話題。いささか新鮮さをうしなった月並みな文句"小松太。▼欠ける(清新さに。今一つ新鮮味に)。新鮮さが影を潜める。新鮮味に乏しい。型にはまった(訓示。恋愛論)。生活がマンネリ化する。マンネリに堕する。紙面がマンネリに陥る。いささか陳腐とも思える言葉。陳腐な台詞を口にする。言葉が陳腐に響く。 **当然** 理の当然。当然といえば当然。当然すぎるほど当然なこと。当然の(成り行き。報いを受ける。質問を口にする)。起こるべくして起こったこと。いきおい(口が重くなる。的は絞られる)。然るべき結末を迎える。復讐心しされてしかるべき人間"陳。至当な(意見。処置。報酬)。順当に勝ち進む。経過が順当に行く。子が順当に育つ。▼無無理はない(不安になるのも。周囲がたまげるのも"西木)。 **通り一遍** 通り一遍の(挨拶。つきあい。応対にとどめる。答えしか返ってこない)。目も鼻も口もちまちまとして通り一遍の出来向田。義理一遍に言う。例によって義理一遍に出席する谷崎。 **何の変哲もない** 何の変哲もない(歳月。茶封筒。陶器。話。風景。平凡な小市民。街並。いつもと変わらぬ朝のやりとり東野)。何のへんてつもない日々がやって来てはたちまちに過ぎていく=島尾。変哲のない事柄。十年一日のように藍の濃淡で変哲のない縞を織る!有吉。 **人並み** 人並みな才能。人並みに(学校に入る。健康な体)。愛情を人並みに持つ。給料を人並みにもらう。人並みの(暮らしを営む。幸せを夢見る。成績をとる)。欲を一人前に持っている。一丁前の屁理屈へりを言う。いっばしダンス通らしいことを言う谷崎。平然といっばしの口を利く。 **普段** 普段(使う辞書。明るく振る舞う。何気なく見過ごしている。飲みつけない酒を飲む。めったに笑わない。よく顔を合わせる。よく飲みに行く街)。普段から世話になっている。普段からの顔見知り。普段と(変わらない。違う)。普段の(顔に戻る。心がけが悪い。生活に戻る。落ち着きを取り戻す。自分を取り戻す。倍以上しゃべる)。普段は(大人しい。忘れている。閑散としている。気にも止めない)。普段より(一時間早く出勤する。早めにベッドに潜り込む)。普段より早く(店に着く。目が覚める)。普段着に(着替える。近い身なり)。普段着のまま出かける。 **普通** 普通に(可愛い。暮らす。使われる言葉。つき合う)。普通の(男の子。女の子。家庭。サラリーマン)。どこにでもいる普通の男。人間としての普通の体験が欠落している=辻井。別にとり立てていうところのない普通の人佐多。見た目には普通と変わらない宮部。可もなく不可もない出来。さしたる感慨もない。どうということはない。別段珍しいことではない。常態化する(底ばいが。長時間勤務が)。常道を踏む。常(午後十時頃の帰宅が。軽薄なる世人の"中島救。様々な思惑が様々に絡み合っているのが政治の有川)。病人の常として弱気になりがち。常に増して力がいる。ノーマルな(考え方。状態。生活感觉)。標準的な(モデル。ユーザー)。十大並みな生活をする。十人並みの(顔立ち。器量)。尋常な(関係。手段)。尋常に(勝負する。接待する)。世間並みにでき上がった男。世間並みの(幸福。待遇。娘。礼儀)。通常の(状態。職務を続ける。パターン。勤務に耐えられない)。並の(成績。待遇。女とは少しばかり違っている=笹沢)。 **無難** やめておいたほうが無難だと諭す熊ぶなん谷。無難な(共通の話題。ルートを選ぶ)。無難に(事を終える。仕事をこなす。平和な日々を過ごす)。役を無難に務める。角の立たない方法。大過のない一生を送る。差し障りのない(答え。質問。話題)。当たり障りのない(言い方。会話を交わす。訊きき方。答え方。話題。受け答えをする。世間話に花が咲く)。話題を当たり障りのない世間話に逸くらす“開高。 **普通** 普遍に存在する。普遍の真理。理論を普退化する。技術の普遍化をめざす。時代を超えた普遍性。普遍的な(意味を持つ。価値。基準。原理。尺度。妥当性。テーマ)。現代社会に共通する普遍的な弱点"柳田。普遍的に認められる真理。方式を一般化する。考え方が一般的に広まる。誤用が一般的になる。 <85> # あ **平常** 平常な気持ちを取り戻す。平常に倍する気配り。▼平常に戻る(感情が。呼吸が。ダイヤが)。平常心で(行動する。付き合う。業務に集中する)。平常心に帰る。平常心を(失う。保つ。取り戻す)。平常通り店を開ける。夕方まで平常通り仕事をする。平日は(開いている店。閑散としている)。平日もコンスタントに客が入る。平日通りに(開店する。出勤する)。 **平生** 平生(行きつけた家。思顧を受ける。懇意にする。無口な兄。威張って暮らす。親しく行き来する。冗談ばかり言う男、全く意識しない。呼びならわされている。気のつかない庭の風物"室生。難しい顔をしている教員=田山)。平生から(対策を講じる。抱いている考え)。平生と変わりない。平生とは異なる刺激が欲しい。平生のむしゃくしゃをひと思いにぶちまける=中。 **平素** 平素好意をいだく。平素と同じ表情をつくる。感情が平素と変わらない。平素にも似合わぬ非常識さ。平素の(闘遥かつさを失う。機嫌を損ねる。鬱憤晴らしをする。口調を取り戻す。ご愛顧に応える。ご無沙汰をお詫びします。不満が爆発する)。 **平凡** 家庭生活が平凡以外のなにものでもなくなる若竹。武骨で平凡きわまる男高橋治。平凡で(穏やかな眺め。堅実な男。幸福な家庭。よしとする。これといった取り柄も特徴もない人間倉橋)。平凡な(幸せに憧れる。人生を送る。サラリーマンの暮らしが似合う。フライを落球する)。極めて平凡な家庭の主婦。どこにでもある平凡な暮らし。何事もない平凡な夫婦。無事平凡な日を送る。今日もまた無駄に費やしたという平凡な悔恨=佐藤春。際立つことのない平凡な顔だち"有吉。ほっとするくらい平凡な話"安部。河の流れとともに平凡に歩む=武田癸。毎日が平凡に穏やかに流れ去る=小池。平凡を絵に描いたようなおっさん=辻真。平々凡々に過ごす。意外性に(欠ける。乏しい)。居るか居ないか分からぬほど目立たぬ人本庄。可もなし不可もなし=横山。これという才能のひらめきも見えない人物"石坂。世間にありふれた十ば一からげの女たち"石坂。どこも変わり映えがしない=篠田。芸のない話。碌々35(たる凡弟子中島。碌々として一生を終える。 **ポピュラー** ポピュラーな(曲。作品)。最もポピュラーな話。名前がポピュラーになる。名声がポピュラーに広がる。前衛性と大衆性のはざまに見事に落ち込む池澤。大衆的な組織。時分どきに混雑する大衆的な店"灰谷。大衆向けの娯楽。 **凡人** 天稟从の洞察力を持たぬ凡人"江戸川。有象無象の大群衆。組織の有象無象の一人高村茂。常人には考えも及ばない。常人のおよばぬはげしい勉学をつづける"真継。凡夫の浅知恵。その他大勢の一人。 **凡庸** 曲がなさすぎるほど凡庸"谷崎。凡庸で優しいだけの無害な男"瀬戸内。凡庸な(人物、内容。海の展望が広がる=檀)。いたって凡庸な原稿。どこにでもいる凡庸な酒飲み"原田歳。目を戻した瞬間に忘れそうな凡庸な風体の男"有川。人生を凡庸に過ごす。凡庸の徒。柔弱凡庸の生まれ=舟橋。凡庸以下に堕する。凡俗な出世主義。 **勿論** もちろん(馬鹿げたデマ。そうに決まっている。誰にも漏らさない。つらかったに違いない。よく知っている)。両親にはもちろん内緒。言うまでもない。あろうはずがない(否やの。無父画異論の)。挨拶はおろか顔も合わせようとしない。子供はおろか大人まで。無論(期待するほうが間違っている。高価なものに違いない。即座に承諾するとは思っていない)。もとより(異変の起こるはずもない。異論のあろうはずがない。驚くに当たらない。期待はしていない。すでに覚悟は定めている。紫外とするところ)。 **紋切り型** 紋切り型の(挨拶。口上。スビーチ。陳謝)。むやみと長ったらしい紋切り型の祝辞=飯田。決まった言い種ごむ。ステレオタイプの(考え方。行動。表現)。手垢がぁのついた(言葉。表現)。類型的な(表現。例)。ワンバターンの(行動。話。やり方)。決まり文句が続く。決まり文句に終始する。決まり文句を(言う。並べる)。 **問題にしない** ▼問題にしない(頭から。さして。てんで。まるで)。眼中にない。聞いても聞かぬでもいい。どうでもいい細かい言い間違い!高樹。物を物ともしないふうで男の目を迎える有局。度外視する(日常経験を。反作用を)。「いつもことだし」と歯牙にもかけない“有川。歯牙にもかけぬ無関心さ=本庄。歯牙の間に置くにも足らぬ瑣事さじ二楽亭。▼屁、とも思わない(女を。男に肌を見せるのを谷崎)。男なんて屈とも思っていない=山口。 **問題にならない** まるで問題にならない。問題にならないくらい拙まずい=松本。問題とするに(当たらない。足らない)。歯牙の間にも置くにも足らぬ一瑣事むじのように言いなす二葉亭。馬鹿馬鹿しくて話にならない。全くお話にならない。お話にならない人物"井伏。話にもならぬ恐者。お話にならないほど弱い=赤瀬川。話にならないくらいひどい。話にならないほど上手-武者小路。 **世の習い** ▼世の習い(有為転変は。浮き沈みは。栄枯盛衰は。会者定離は。盛者必衰しかには。生者必滅は。離合集散は)。すべては世の習いと割り切る。▼世の常(栄枯盛衰は。勝てば官軍というのが。末期政権の迷走は)。 **理屈抜き** 理屈抜きに(可愛い。感謝する。怪変する。楽しむ)。理屈抜きの幸福感。直感的な(認識力が高い。把握。インスピレーション)。直感的に(見抜く。見分ける。理解する。分かる)。 <86> # あ **ある** ある(何か裏が。言葉に説得力が。時間がたっぷり)。大いにあり得る。いかにもありそうな話。世間にためしのないことではない=山本周。まんざら(有りえないことではない。嘘でもなさそう)。有り合わせの材料を使使う。当時の面影を存する。ないわけではない(思いあたる節が。まんざら自信が)。▼なきにしも非ず(可能性は。時間つぶしの感が!木山)。 **居心地** 居心地の(いいお店。良い陽溜まりを見つけた鳥のような心境=高樹)。居心地が悪い(とどことなく。何とも)。大袈裟性誌な礼を言われてものすごく居心地が悪かった=有川。居心地悪そうに座る。▼居心地の悪さ(自分の影を引き剥がされたような=島田。尻がむず痒がゅいような"大原。裸を見られたような落合)。笑えない漫才を聞くのに似た居心地の悪さを覚える=奥泉。 **位置** 位置が逆になる。カメラを主人公の目の位置に置く=池澤。確固たる位置を占める。心持ち位置をずらす。少しずつ位置を変える。ストラッブの位置を直す。分類上の確かな位置を決める。▼位置する(中間地点に。境界線あたりに。市内の中心部に。本州の最北端に)。定位置に座る。位相が(変わる。異なる)。横軸と縦軸からなる座標。 **居ない** 肝心の時にいない。▼なり手がいない(会長の。クラス委員の)。▼いなくなる(いつの間に か。やがて誰も。客が潮の引いたように=北原。風船 から空気が抜けるようにしていつの間にか部屋から 荻野)。金輪際いるはずがない。この世に存在しない。 **居場所** 自分の居場所が見つからない。安全な居場所を確保する。犯人の居所が分からない。虫の居所が悪い。妙な証明を正しい証明と居所変わりにさせる=山田美。居所を転々と変える。 **居る** ぽつんと一人で居る。居ながらにして(花見ができる。世界のことがわかる)。▼居合わせる(事故の現場に。たまたま)。居留守を使う。▼身を置く(危険な状況に。都会の雑踏に。デモ隊列の中に)。 **オーラ** オーラを身にまとう。▼オーラを放つ(怪しげな。強烈な。気高い)。身体全体から押さえても押さえきれない怒りがオーラのように発散される内館。無言の意思表示がオーラのように立ちのぼる=姫野。 **環境** 環境が(人間を変える。変わると心細いもの=灰谷)。周囲の環境が変わる。環境に注意を払う。新しい環境に順応する。恵まれた環境に育つ。取り巻く環境は厳しい。環境破壊が進む。土壌(虐待を生む。犯罪の。暴力の)。 **客観** 客観化する(自己を。死を。世界を。歴史を)。▼客観視する(自分の欲望を。母親を。悲劇を)。客観的な基準。自分を人の目で眺める習慣を身につける佐多。自己を客観的に振り返る。事情を客観的に述べる。物事を客観的に見る。 **儀礼的** 儀礼的な挨拶を交わす。儀礼的に(聞き返す。ほほえみかける)。 **形式的** 形式的な(取り調べ。報告。和睦)。おつき合いに少し笑う。申しわけのような小さな花壇"高橋和。申し訳のようにちょっぴり口をつける=獅子。 **自然** ▼自然(荒々しい大きな。あたりに人気かとのない広大な"石坂。想像を絶するような苛烈な"新田。静かなやわらぎに充ちた"阿川弘。箱庭のようにこまかく美しい『大佛)。辛うじて昔からの自然が生きながらえている=森村、自然と人工とが調和した美しい光景"加賀。まわりの自然によく調和した古びた家庄野。自然の(暴威に耐える。法則に従う。脅威にさらされる。風光を褒めそやす。季節的推移に関心を持つ=寺田。残酷さをしかと受けとめる=畑。暴威の前に積み木の家のように崩れた大邸宅"獅子)。怒った自然の前には人間は庶ち♪ひとひらにも及ばない!有自然は(神秘に満ちているなかにし。ときどきとんでもないことをやらかす「本多勝)。厳しい自然を生き抜く。自然環境を復元する。大自然の懐に抱かれて生きる。天然の暴威による災害。故郷の山河。国破れて山河あり。山水に遊ぶ。まだ見ぬ山水に憧れる。故郷の山川草木。山川草木うたた荒涼。山川草木のたたずまい。 **実際** 理論と実際が食い違う。実際に(あった話。即して考える。目で見て判断する。やってみなければ分からない)。物は試し。現に(生存している。生きている人たち)。実況中継を続ける。実情を(つぶさに知る。事細かに聞かされる)。実地の習練を積む。 **実質的** 実質的な(意味。贡献。支配者。責任者)。実質的に(主導権を握る。独立する)。賃金が実質的に目減りする。店を実質的に仕切る。 **実態** 実態が(明らかになる。浮き彫りになる。「なかなかつかめない)。実態に(即していない。合った規制)。実態調査に乗り出す。实相(社会の。被爆の。グローバル経済の)。言葉だけで実体が伴わない。あぶくのように実体がない=平野。漠とした実体のない物語"小池。本体を確かめる。病気の本態を明らかにする。名は体を表す。 **実物** 実物を目のあたりにする。写真と実物を見比べる。実物そっくりの模型。現物を確かめる。実在の人物を主人公にする。 **存在** 存在が(邪魔になる。足手まといになる=曽野。意識を決定する=椎名綾)。存在の重みに耐えきれない=辻仁。存在を(おぼろげに知っている。ほとんど忘れてしまう)。資料の存在を確認する。人用 <87> # あ の存在を無視する。▼存在する(この世に。厳として。多かれ少なかれ)。彼女との関わりが日常生活の中に打ちこまれた柔らかなくさびのように存在感を膨らませる=村上春。既成事実を積み上げる。既成の(権威を否定する。発想にとらわれない)。現存する建物。 **誰一人** 誰一人(答えない。訪れる者がない。頼れる者はいない。寄る辺のない老人)。誰一人として(知らぬ者がない。夢にも思わなかった=柳田)。 **鎮座** ▼銀座する(神様が。巨石が地面に。壇上に)。▼銀座まします(二柱の神が。玉座に)。 **内容** 案外に古臭い内容。内容が(自ずから限定される。質的に低下する)。内容の恐常さに慄然とする。かいつまんで話の内容を告げる。じっくり内容を検討する。体裁よりも内容を重視する。ひとくさり内容を紹介する。にわかに現実的な内容を持ちはじめる=光瀬。本の内容を譜、らんじるほどによく知っている=高橋克。話の内容が飲みこめない。話の内容に(驚く。ついていけない)。有料のコンテンツ。コンテンツを(送信する。配信する。表示する)。 **中身** 中身が(現れる。濃い)。外見と中身が違う。会話の中身が聞き取れない。頭の中身がからっぽ篠田。話の中身を要約する。封筒を振って中身を一方に寄せる。鞄はばの中身を(調べる。外にぶちまける)。外面はいいが内面は悪い。実質を(備える。学ぶ。持つ)。▼実を取る(名より。名を捨てて)。正味の(重量。目方)。見かけは大きいが正味は少ない。 **如実** 如実に心の動きを物語る手紙"永井路。意力行のさまが如実にあらわれる=真継。時代の世相を如実に伝える岩淵。 **場所** ▼場所(駅から歩いてひと息の。ばっと青海原に泳ぎ出たような開豁妙かない島尾)。指定の場所に赴く。▼地(父祖伝来の。自由民権運動の発祥の。海を見下ろす景勝の火坂。壊れ果てたような荒涼たる=有島)。同じ土俵に立つ。場が(白ける。いやが上にも盛り上がる)。活躍の場が与えられる。 **否定できない** ▼否定できない(可能性が。全面的には。誰も。何人も)。あながち否定はできない。疑いが否定しがたいものとなる。 **表面的** 表面的なとらえ方。表面的には打ち解けたように見せかける=遠藤。上滑りする(議論が。言葉が白々しく)。皮相な(考え方。観察。見方)。 **風土** 風土に(合った言い習わし。深く根を下ろす)。精神的風土の懸隔に橋を架ける"中村真。土地柄(芸事に熱心な。保守的な)。 **無人** 無人の(家。荒野。島)。しんしんと静寂の中に引っ張りこまれるような無人の気配=島尾。町が無人のように静か藤沢。無人地帯のように静まりかえる山崎。▼いない(犬の子一匹。誰も)。猫の子一匹通らない。見えない(人一人。誰の姿もあたりに)。どの家も人がいないように森閑としている=幸田露。辺りに人影ひとつない=村上春。人影のない境内が森閑と静まる=外村。人っ子一人(いない。姿を見せない。通らない。見えない)。粛として人無きが如く子母沢。あたりに人の気配もない山間"川端。ひとり姿を見せない=井上靖。一人減り二人減り、ついには一人もいなくなる菊池。甲板の上が波の上のように荒涼として人気忙とがない=有局。人気のない(境内。公園。地下通路。場所。夜道。寂しい道を歩く=高見取)。がらんと人気のない部屋島尾。人けもない物寂しい原福永。人気もなくひっそりしている。 **名実** 名実が相伴う。名実共に偉大な科学者。花も実もある男。 **雰囲気** ▼雰囲気(捜査員たちの期待と好奇心と不安がないまざった異様な内田康。軽蔑の混じった冷ややかな=池田。背筋のあたりが緊張してしまっくらいの落ち着いた高級な=椎名誠。多数の人馬の醸し出す騒然たる=網淵。なにごとか一心に思いつめたような妖しい!白洲。道具類や部屋の造りがひと昔前の優雅なしぶい=日野)。雰囲気が(まるで違う。がらりと変わる)。白けた雰囲気が一座に流れる=黒岩。肉体的に一種崩れたような雰囲気が身についている"石川。重くなった雰囲気に風の通り道をつける落合。深山の渓谷のようなぐあいに幽邃妙心な雰囲気におおわれる=鳥尾。場の雰囲気を和らげる。常に一つの雰囲気を電波のように発散する=佐藤春。大学勤めらしい真面目な雰囲気を身につける―連城。洗練された都会の雰囲気を最高度に身につける=黒写。異様な雰囲気が(漂う。身に粘りこくまつわりつく柴田翔)。 **身の置き場がない** どこにも身の置き場がない。身の置き場のないほど感激する"松本。身の置き処だこがないほどに恥ずかしい高橋三。あられもない想像に身の置きどころのないほど興奮する=円地。恥ずかしくて身の置き所もない。身の置き所を持て余す。家に居づらくなる。身の置きどころがないように狼狽える谷崎。身の置き場のないような後ろめたさにすくみ上がる=森環。身の置き場もないような絶望森现。 **ムード** 悩ましいムードが部屋じゅうに立ちこめる=胡桃沢。折角ムードに浸っていたのをあっさりとぶち壊される内田康。ちょっと暗いムードにたまらず惹かれる=田辺。都会の夜のムードに身をゆだねる=黒岩。ムードも何もあったものではない。 **留守** 留守にした隙を巧妙に見計らって訪ねる藤本。手もとが留守になる。夫の単身赴任の留守に男を作った妻!池澤。留守の(間を預かる。世話を頼む)。留守にする(家を。日本を。店を。一晩)。家にとんと居つかない。家の者が出払う。全員出払っている。親の不在をいいことに勝手なことをする。 <88> # あ **足取り** ▼足取り(一歩一歩を確かめるようなあやふやな=加賀。肩を落として力ない=日野。社会科見学の小学生のように好奇心に満ちた=原田宗。バネ仕掛けの人形のようなギクシャクした小林多)。▼足どり(いらいらするほどゆっくりとした"あさの。散歩でもするようなのんびりした三田。魂が抜けた人のように覚束がない=船山。円まるく造られた庭園の外側に沿って漫歩する人のような気どった佐藤巻。酔ったような心もとない藤沢)。足取りが(皆目つかめない。ぱったりと絶える。緩やかな坂を下るように自然に早くなる=高井)。足どりが我知らず陽気に浮かれてくる=柴田翔。軽く拍子をとるような足どりで階段を上る=安岡。しっかりした足どりで人生を歩く=野間。ステッブをふむような軽い足どりで門を出ていく=吉本。悠々たる足どりでのっしのっしと歩み去る=山本周。よろめくような足どりで家へ向かう吉村。軽快な足取りで進む。元気な足取りで帰宅する。疲れた足取りで進む。何気ない足取りで席に戻る。踊るような足取りで飛び出す=福永。精気が抜けたような足取りでロボット歩きする八谷川。つんのめるような足取りで階段をあがる=小林久。弾むような足取りで出て行く=高井。夢遊病者のような足取りでふらふらと歩く小林久。悠然とした足取りで詰め寄ってくる=熊合。足取りで歩く(秋の日さしを楽しんでいる家族のようにゆったりとした三浦近、人びとの中に倒れ込むように陥踉於行とした内田康)。▼足どりで歩く(くずれるようなあぶなげな=灰谷。一歩ごとに飛び跳ねるような古井)。何度も訪れている人のように足取りに迷いがない=加賀。危ない足取りの酔っ払い。時の足取りの遅い夏。坂を足取りも軽く下る。当夜の足取りを調べる。足取りも軽く(家路につく。帰途につく)。軽快な足さばきで歩く。▼足つき(危なっかしい。旅慣れた)。▼ステップを踏む(軽やかに。楽しそうに。ダンスの)。 **足早** 足早な人々の流れ。足早に(歩いて過ぎる。歩き去る。歩を進める。道を横切る。その場から離れる。廊下を去っていく。ロビーへ向かう)。連れをうながして足早に立ち去る。時が足早に過ぎていく。日が足早に暮れる。石段の上から足早に下りてくる=石川。馬がだく足で前に出る。早歩きで病院に向かう。早足で(後を追う。駅へと急ぐ)。客の間を早足に動きまわる。人が早足に行き過ぎる。 **歩む** ▼歩む(栄進の坂道を。出世街道を。壁に沿って。エリートコースを。軽やかに通りを。肩を寄せ合って。河の流れとともに平凡に=武田泰。雪中を一歩一歩寡黙に=熊谷)。▼人生を歩む(安全な。幸福な)。道を歩む(まともな。裸足で荆棘ふばの。亡びへの。順調に流行作家の=佐野)。川に沿って馬を歩ませる。駆け出すことを懸命に堪こらえているといった切迫した歩み黒井。しっかりと歩みを進める。馬が閑雅な歩みを運ぶ=梶井。▼歩みを続ける(順風満帆の。力強い。未知の世界へやみがたい=円地)。電光のごとき歩みをつづける=北。時間の歩みが(早い。のろのろしている)。▼歩み去る(大股に。背を見せて)。 **歩き方** ▼歩き方(足音を立てない柔らかい=中局み。足をからませるような=高見町。体を左右に揺するような=野間。土体を浮かすような=中村真。背中に棒を入れたような「池田。背の少し丸まっただちょうみたいな谷村。外愉に足を交わす佐多。長身を少し前屈蛙校みにした!永井龍。電気仕掛けの人形のようなぎくしゃくとした藤本。なつかしさに体だけが先に出て足がそれにともなわないといった"長崎。白衣の裾をあおるような円地。ぽいぽいとぶような"水上。闇のくずれが澱んで流れていくように闇に紛れやすい『室生。酔っ払ったチャップリンのような=新田)。チョロチョロと辺りを掠かすようなな歩きざま=檀。凱旋族将軍がふせんしのような堂々たる歩きっぷり=里見。歩度を(速める。ゆるめる)。 **歩き出す** ▼歩き出す(後ろも見ずに。距たびを返して。元来た方向へ。くるりと背中を向けて。自分自身をもぎ取るように決然と肩をそびやかして有島)。仕方なしに足をゆっくり踏み出す=船戸。新しい人生を歩み出す。歩き始める(決意を胸に。意を決したように。目標に向かって)。 **歩き続ける** ▼歩き続ける(何も考えずに。一時間以上。ずぶ濡れのまま。予感の逃げ水を追って=山田太)。歩きつづける(熱に浮かされたように柴田翔。夜の暗さを突き破ろうとするようにどこまでも=宇野利)。 **歩き回る** ▼歩き回る(足を棒にして。荒々しい足取りで自分の運命を呪うように=加賀。こまねずみのように身軽く壺井。ロビーを娘のようにフラフラ=鳥田)。▼歩きまわる(西へ東へ。我が物顔で。島のあちこちを。足の向くままに。一师ずつ丹念に。そこらじゅうをめちゃくちゃに。あてもなく終日。家の中をぶらぶら。同じ所をぐるぐる。林の中を三時間ほど。夜道をうろうろ。抜け殻のように見知らぬ街を小林久。幽鬼のようにふらりふらりと"有吉)。歩き廻る(緊張した空気に酔ったかのように"黒井。つれづれに部屋中を柵の中の熊のように高橋和)。家のまわりをうろつき歩く。ほっつき歩く(あちこちを。盛り場を。女に迷って野良犬のように=山手。サカリのついた猫みたいに遅くまで萩原業)。▼ほっつき回る(ほうぼうを。村じゅうを)。得意先を回って歩く。客席を回り歩く。足まめに調べてまわる。 <89> # あ ▶流して歩く(温泉場を。盛り場を。町を)。▼飛び歩く(四方八方を。流れの縁を。金策に。イナゴみたいにあちこちを富岡。世界を股にかけて軍司)。 **歩く** ▼歩く(内股で。肩で風切って。肩を怒らせて。川に沿って。腰を振って。三人が並んで。三歩下がって。全国を旅して。外股で。外輪で。手をつないで。二列縦隊で。人に吹聴ぃふぅして。夕陽を浴びて。雪を蹴立てて。通いなれた道を。びちゃびちゃぬかるみを。何の目的もなしに。日本全国をつぶさに。まる一日歩きづめに。足元に気をつけながら。 あてもなくぶらぶら。一同うち揃ってぞろぞろと。一軒一軒聞いて。肩をそびやかして。体を左右に揺らしながら。首を高くもたげて。四球で一塁まで。順路を無視して。スタッフを連れて。スリッパを引きずって。隊列をなして整然と。父親に手を引かれて。千鳥足でふらふら。友達と肩を並べて。何人か連れ立って。裸足でぺたぺたと。母親に寄り添って。人込みを縫って人々の流れに逆らって、深い雪を掻き分けて。部屋の中を道はって。歩道を自転車を押しながら。道いっぱいに広がって。むっつりと黙ったまま。胸を張って颯爽だっと。横に広がってだらだらと。廊下を先に立って。わいわい騒ぎながら。残雪に足をとられながら山道を=辺見。じゃぶじゃぶと泳ぐように雨のなかを奥泉。春に浮かれる蝶のようにひらひらと町を前久。待ち設けるような視線の中を大岡。背中に風を受けて押し流されるようにめちゃくちゃに!本庄。高鳴る心臓の響きに追っかけられるように足早に"佐藤春。道の上に一線を置いたようにしてまっすぐに幸田文。足が棒になるほど!向田。足をくんと突っぱって反り返るようにして"伊藤整。脚を棒切れのように振りながら内田百。あっちこっちへちょこちょこ駆けて"谷崎。一歩一歩重い足を引き摺るようにして"中局。岩の上をびょいびょい飛ぶように灰谷。薄い氷の上をそろそろと渡るみたいに=古井。怒ったように前だけを見て=伊集院。踊るように三步四歩=黒井。カタツムリのようにゆっくりじっくり=山本号。熊みたいにのっしのっしと熊谷。心許ににっない足をからませるようにして高見順。腰巾着のようについて童門。座敷を隅から隅へ動物園の熊のようにのそりのそりと"江戸川。自分の影を踏んでその影を追うように佐藤春。しゃなりしゃなりとかまきりみたいな姿で永井路。上体を真っ直ぐにして昂然むらと井上液。魂を失ったように=川端。地図を頼りにぼつぼつ要所を見物して"岡本。爪先で探るようにして用心深く=本庄。堂々とした体軀たいで暗闇を押し割って=本庄。ぬかるみを踏むような足どりで古井。人の波に押されながら=向田。冬の柔らかい陽射しをできるだけたくさん浴びようとするかのようにのんびりと小川。ふらふらと寂しい夢でも見ているような心持ちで徳田。フラフラと夢遊病者のように斎藤栄。水の中を漂うようにゆらゆらと=小川。願もちを地面に打ち鳴らして=かんべ。目に見えない糸に引かれるように=日野。野人的に気どりげなく佐多)。▼拾って歩く(日陰を。雪道を器用に)。▼踏みしめて歩く(大地を。雪を。砂利をざくざくと)。踏みしめるように歩く(一歩一歩。一足一足)。若い人たちが群れをなして歩いている三島。見た目より遥かに歩きにくい。歩き疲れて体がばらばらになってしまいそう~村上脊。つまずく心配もせずに歩ける。町を眺め歩く。 **歩けない** ▼歩けない(足がしびれて。膝が震えて。休み休みでないと)。境内の内外が人波で歩けないほどになる。足腰がいうことをきかない。歩行が困難になる。歩行の自由を断たれる。▼足を取られる(油に。下草に。ぬかるみに。沼地に。一歩踏み外せば)。人生の泥沼に足をとられる。足を取られて転ぶ。 **大股** 大股でゆっくりと歩く。のそのそと遠慮もなく大股で入りこんでくる=有島。走るような大股で寄ってくる=壺井。大股な(足の運び。靴音を残して立ち去る)。大股にずんずん進む。足を大股に開く。ずかずかと大股に座敷を出て行く。一足大股に前に〈出る。水たまりを大股に踏み越す。膝を伸ばして大股に歩く。 **闊歩** ▼闊歩する(夜の街を。肩で風切って社内を。街のメインストリートを。ブルドーザーのような勢いでフェアウェイを=高橋三。ジョルジュ・サンドのような気取った恰好いっで=岡本)。▼大道を闊歩する(肩を怒らせて。公々然として天下の萩原朔)。 **小走り** 小走りで(後を追いかける。その場を離れる)。暗い道を小走りで抜ける。県道を小走りで横切る。小走りに(足音が近づいてくる。裏口から出て行く。横断歩道を渡る)。階段を小走りに下りてくる。脇を小走りにすり抜ける。ちょろちょろと小走りする。 **散策** 散策に打ってつけの川沿いの場所"谷川。一日の散策に終止符を打つ。朝の散策を楽しむ。散策する(池のほとりを。海辺を。河畔を。山野を。朝な夕なに。のんびり。ぶらぶら。足のおもむくままに)。逍遥に沿うする(記憶の淵を。山野を。湖のほとりを。森を)。名所旧跡をぶらぶら歩きする。 **散歩** ロマンチックな夜の散歩。散歩でもするような足取りでゆっくり歩く三浦欲。散歩に恰好このルート。犬を散歩に連れ出す。三々五々散歩に出て行く。ぶらりと散歩に出る。散歩のついでに古本屋をあさる。散歩を愉たのしんでいるような恰好で歩くい永井側。時間潰跡んしにあてのない散歩をする=大佛。▼散歩する(海岸を。公園を。桜の散る道を。気晴らしに。暖かな日差しの下を。小川のほとりを。車椅子に乗って)。散歩かたがた訪問する。▼遊歩道(川沿いの。広場を挟んだ。端正で静かな森の中の=五木)。遊歩道を歩く。桜の茂みが光をさえぎって涼しい散歩道を作る=黒井。風がブロムナードを吹き抜ける。 <90> # あ **すたすた** すたすたと(坂を上る。先を行く。橋を渡る。闇の中に消え去る)。急ぎ足にすたすたと歩く。 **そぞろ歩き** ▼そぞろ歩きする(桜の下を。並木道を。名所旧跡を)。公園を漫歩する。▼遊歩する(公園内を。湖畔を。広い庭内を。森の中を)。 **そうと歩く** 足音を(立てずに歩く。しのばせて歩く)。歩く(すり足でそろそろと。泥棒猫のように足音を盗んで"江戸川。桜の花びらがいちめんに散りしいていて踏むのも惜しいような気持ちでそっと=阿川弘)。音もなく室内に忍び入る。静かに張りつめた床を擦るような足取り古井。忍び足で病室を出る。泥棒みたいな忍び足で編集部を出る=三浦し。用心深く忍び足になる。廊下をすり足に歩む。盗み足で近寄って行く。猫足でこそこそ帰ってくる。抜き足差し足忍び足。抜き足差し足で(忍びよる。近づいて行く。やって来る。二階からおりる)。 **伝い歩く** ▼伝い歩く(木々の間を。敷き石を。飛び石を。日陰を。家の陰から陰へ)。伝って歩く(壁を。手すりを。塀を)。 **踏破** ▼踏破する(悪路を。大陸を。長い行程を。百キロの道を)。▼縦走する(連なる山を。稜線曲いうを)。 **徒歩** 徒歩で(川を渡る。観光に出る)。山の中に徒歩で分け入る。真夏の日射しの中をとぼとぼと徒歩で行く=三田。徒歩の行軍を続ける。脚力をつける。健脚にものを言わせる。歩行者が交差点を埋め尽くす。 **とぼとぼと歩く** 「とぼとぼと歩く(肩を落として。重い心を引きずって=曽野。途方に暮れながら永井荷)。 **練り歩く** ▼練り歩く(大勢の人が。提一灯喆に行列が。触れ太鼓が。御興以こが。市内を武者行列が)。蛇のようにうねり歩く真継。 **歩調** 地に吸われているように重い歩調"高井。心なしか歩調が軽やか。季節と歩調が合わない"山田太。早い歩調でさっさと進む。ゆっくりとした歩調で遠ざかっていく。規則的な歩調で影絵を動かすように歩く=大佛。ほとんど足が地につかないような歩調で歩く=堀。進取の気性が時代の歩調としっかり手を取り合う人間。歩調を合わせて行進する。 **歩道** ▼歩道(砂利を敷き詰めた。道より一段ほどう高くなった。かんかんとお天道に认さまの照っている今取。雁木球んの下の狭い=篠田)。歩道と車道を分離する。歩道に(人波があふれる。露店が軒を連ねる)。車が歩道に乗り上げる。横断歩道を渡る。歩道橋を渡る。 **歩幅** 段々と歩幅が小さくなる。歩幅で歩く(大きな。小さな。狭い)。自分の歩幅を守って歩く。コンバスが(長い。短い)。二段跳びで階段を駆け上がる。小股にちょこちょこと路地に消える。小股歩きにせかせかと退去する。 **歩を運ぶ** ▼歩を運ぶ(黙々と。脚にまかせてゆっくり本庄)。▼足の運び(長身の大股な。ともすればもつれる)。足の運びが遅い。足を片方ずつ互い違いに前に出して前進する“玉村。ゆっくりとほんの少しずつ足を前に進める"北原。早足に歩を移す。思わず知らず歩を緩める。▼足を運ぶ(半ば夢中に。リズムをとって。ぱっぱと返っ葉時に徳田。ふくらんで来る不安を踏み潰っょすように一歩一歩黒井)。▼歩を進める(確かな足取りで。ゆっくりと一歩ごとに足の下の地面の感触を味わう風に"松浦)。 **持ち運ぶ** ▼持ち運ぶ(体を。着替えを。茶を。机を。荷物を。本箱を)。持ち運びに便利。持ち運びのできる自転車。 **横歩き** 横歩きになって進む。蟹かにのように横歩きする。然みたいに横に歩く。横っ跳びに(よける。なってボールを捕る)。蟹の横ばい。 **よちよち歩き** ▼よちよち歩き(危なっかしい。可愛らしい)。よちよち歩きの(赤ん坊。女の子がまつわりつく)。よちよち歩きを始めたばかりの息子。よちよちと歩く。 **よろめく** よろめく(右に左に。二三歩。目がくらんで。脇腹を抑えて前のめりに。足を木の根にとられて。体が重心を失って。決めた心がふがいなくも。いきなり限に見えぬ力で突き飛ばされでもしたようにあっと叫びながら=山本同)。腑抜ふぁけのようによろめく粗面の男に古井。よろめいて(尻餅をつく。壁に頭を打ちつける。地面に手をつく)。大望が重すぎてよろめいているのが僕の現在のこの姿だ"太宰。よろめくように前にのめる。除眼於行と後を追っていく。ヨッバライのように瑜跟と歩く=獅子。蹌跟として帰ってくる。幼児がよちよちと駆ける。▼よろける(足腰が。背伸びして。風圧で。石につまずいて)。足もとがよろけるほど疾風の手に突かれる=長塚。よたよたと(階段を上がる。前進を始める)。力なくよたよたと歩く。よたよたした(足取り。船足)。 **よろよろ** よろよろと(足を踏み出す。階段を降りる。前へ出てくる。危なっかしい足どり。椅子から立ち上がる。おぼつかない姿勢。扉にもたれかかる)。指先がよろよろと不器用に動く。重心を失ったかのごとくよろよろと腰をつく=吉川。▼よろよろする(足が。疲れて)。よろよろと歩く(あっちへよろよろ、こっちへ谷崎。夢遊病者のように=長与)。▼よろけて歩く(ふらふら。酔った男があちこちと)。よろめくようにのろのろ歩く。蹣跚んたる足どり。隣珊と歩く。蹣跚とした大広間の往復・本庄。後ろ向きに雪の上を蛟ぁりが獲物を運ぶように蹣跚とする=本庄。 <91> # あ **足掻く** ▼あがく(泥沼の中で。青春の根もない夢を捨てかねて柴田翔。方向感覚を失った昆虫のように死に向かってひたすら“阿刀田。闇雲に発言権を得ようと=さだ)。不治の病の前で足掻く"有吉。あがけばあがくほど底のない深さに身を没してしまう=円地。指先に押さえられた蟻ぁぁのような情けない滑稽なあがき椎名戯。あがきのとれない苦痛が増大する=梶井。癒療心する手があがくようにあたりの空気を掻きまわすぃ木庄。最後の悪あがき。この期に及んで悪あがきするな。 **暴れる** ▼暴れる(思いきり。さんざん。めちゃくちゃに。馬鹿力を振り絞って。刃物を振り回して。胸を掻きかきむしって。猫が絶望的な野蛮な声を張り上げて"志賀。手足を一生懸命に動かして内田百。波が野馬のように=有島)。暴れるだけ暴れて死ぬ。手に負えないくらいに酔って暴れだす藤田。どたばた転げまわる。▼暴れまくる(ギャングが。冬将軍が。酒を飲んで)。▼暴れまわる(猛牛が。座敷じゅうを。部屋の中を。無我夢中に。馬が怯ぉびえて。めちゃくちゃに。力のありったけで)。嵐のように暴れ廻る=堀。▶じたばたさせる(足を。手足を)。▼猛る(馬が。風が)。暴虐な逆賊の大将=佐藤巻。資本の暴虐な強奪を制限する=服部。暴虐の限りを尽くす。暴虐を極める。暴れ馬を(取り押さえる。なだめる)。暴れ馬のように駆ける。ワアワアわめきながら暴れ馬のように飛び込んでくる=獅子。狂乱の態を示す。▼狂乱する(驚異と感動に。髪振り乱して。物思いが嵩こうじて)。狂乱のごとき愛撫に没入する池波。狼藉めに及ぶ。狼藉の限りを尽くす。声高に狼群を答とがめる。杯盤狼藉を極める。落花狼藉の無道。乱暴狼藉な振る舞い。乱暴狼藉を働く。狼藉者を収り押さえる。 **荒荒しい** 荒々しい(声で詰め寄る。血が沸き立つ。足どりで戻ってくる。勢いで闖入時にする。岩山を間近に望む。風と寒気が襲いかかる。手で引き寄せられる。繩目が食い込む)。陰湿で荒々しい風土。嵐の荒々しいうなり。戦国乱世の荒々しい気風。全身に荒々しいおののきが走る=小林久。戦陣の荒々しい空気の中に明け暮れる『永井路。憎悪に充ちた荒々しい心"梶井。荒々しく(女の唇を奪う。ドアを閉める。椅子を鳴らして立ち上がる。ボスターを引き裂く)。タバコの吸いさしをあらあらしくもみ消す"石坂。北風が荒々しく吹きつける。さっさっと荒々しく符いうを使う。自暴自棄に荒々しく叫ぶ。ドアを荒々しく開ける。土砂降りの雨が窓を荒々しく打つ。一度は消えた衝動が荒々しく甦に込る柴田翔。自らを蔑だげむように荒々しく言う福永。▼荒々しく揺すぶる(体を。胸倉をつかみ)。荒々しさが全身にみなぎる。暴戻らの気がみなぎる。荒くれた(男。生活)。 **荒い** 荒い(呼吸が続く。波が立つ。北の海が吠声を浴びせかける。言葉で怒鳴りちらす)。▼荒いい(金遣いが。気が。気性が。語気が。線が。人使いが)。人気託んの荒い土地。腹立たしさについ荒い言葉になる。奔放な荒い気質。▼荒い息をつく(肩で。ぜいぜいと。はあはあと)。荒く(息を弾ませる。砕ける波の音)。語気荒くまくしたてる。▼鼻息を荒くする(はあはあと。満足感で)。▼荒くする(息を。声を。語気を)。▼荒くなる(息づかいが。思わず声が。肌が。波が。呼吸が次第に)。▼荒立てる(気を。声を。語気を。言葉を)。荒い息を(整える。吐く)。 **荒らす** ▼荒らす(胃を。縄張りを。畑を。部屋を。荒らし放題に)。荒らされた形跡はない。荒らされる(部屋が。票田を。害虫に。城が無残に。足の踏み場もないほど。丹精して作った田畑を舟橋。原形を止めないほど内田康)。▼荒らしまわる(ごみ溜めを。神出鬼没に。我が物顔に。軒並みに民家を。部屋から部屋を)。▼食い荒らす(農作物を。掃き溜めを。フライドチキンを)。▼踏み荒らす(生活を。乱暴に。庭のあちこちを。胸の中を土足で=円地)。 **荒っぽい** 荒っぽい(举措に顔をしかめる。主張を展開する。ハンドルさばき)。ぼんぼん荒っぽい口を利く。ドタドタと荒っぽい足音で動き回る=連城。馬車がガタガタと荒っぽい音を立てて走る=石森。荒っぽく(車を走らせる。シャツとズボンをはぎ取る)。差し出された手を荒っぽく振り払う。戸を荒っぽく開ける。湯に入ってごしごしと荒っぽく様袋跡を使う」有吉。 **荒らげる** ▼荒らげる(足音を。息を。気を。語気を。眼の前が見えなくなるほどの嚇怒めく に言葉を=中河)。▼声を荒らげる(心外そうに。怒ったように。思わず。強気になって)。羞恥心礼いらも何もあらばこそ声を荒らげて喚ゃぁき続ける豊田。 **荒れ狂う** 荒れ狂う(波濤壮と。犬のように叫ぶ=小島)。▼荒れ狂う(海が。寒風が。強風が。暴風雨が。炎が。魔女狩りが。勝手放題に。怒りが体じゅうを)。白く荒れ狂う吹雪。▼猛たけり狂う(憎悪の念が。我を忘れて。手負いの歌のことく=池淡)。御し難い奔馬さながらにたけり狂う内橋。猛り狂った犬のようにわめく=小島。猛り狂って暴れる。 **荒れ地** ▼荒れ地(草茫々氷氷の。広漠たる。針葉樹も満足に育たないような本庄)。全くの荒れ地に鋭くゃを入れる苦労と喜び=瀬戸内。荒れ地を(開墾する。開拓する。良田となす)。草一本生えていない。不毛な土地。不毛の(荒れ野。荒野)。生産力に乏しい不毛の地篠田。 **荒れる** ▼荒れる(大荒れに。ころを巻いて。雨が風交じりに。庭が荒れ放題に。肌がかさかさに。顔が脂っ気なく。道も谷も見分かちがたいほど山が"。心の中が怒濤とのように=小鳥)。庭を荒れるにまかせる。荒れたクラスを持て余す。心の中に荒れた風が吹く。消毒液で荒れた手。寝不足の荒れた肌。もう何年も前から人の住んでいないような荒れた翳かげがにじんでいる建物の肌"原田康。屋敷が荒れたままになる。荒れて(乾いた高原。がさがさした固い手のひら)。酒乱に近いような荒れ方椎名誠。荒れ寂びた(宿場町。建物。古い都。雰囲気の庭園。屋敷)。荒れ果てた古い建物。砂の海の荒れ果てた静けさ光瀬。▼荒れ果てる(海が。人心が。乱雑に)。▼荒れ放題になる(家が。畑が。住む人がなくなって家が)。ここを先途と嵐が荒れまくる。▼荒れ模様(会議が。気分が。空が。天気が。あいにく海は)。目を覆うような荒れよう。家の中の荒れように驚く。会議が大荒れに・台風で大荒れの海。もう一荒れある。海が一荒れことに冬へと近づく。雨で一荒れする。吹き荒れる(強風が。吹雪が)。素行が荒々しくなる。▼荒立つ(心が。波が。血がむらむらっと)。荒ぶる(神。声。魂)。砂の吹き飛ぶ荒漠たる平原。荒漠とした水原。荒漠な思いに閉ざされる。海がしける。 <92> # あ **凶暴** 凶暴な(三白眼で児にらむ。思いが湧きあがる。気分に駆り立てられる。衝動に駆られる。力が身内に湧き上がる)。加点的な凶暴な感情=吉行。目が狂暴な光に満ちる。思いきり狂暴な振る舞いをやってのける=柴田側。目を凶暴に怒らせる。絶望感が狂暴に駆りたてる。妄想が日増しに狂暴になる谷崎。狂暴な(心が湧き立つ。嵐が吹き荒れる。苛立心たしい心持ち。想念が湧き起こる)。体に狂暴の血が渦をまく。凶暴さを剣もき出しにする。醜怪凶暴の極に達する=用高。 **荒野** ▼荒野(広漠たる。無人の。多々いいと広がる。人家も耕地もまばらな。寒風吹きすさぶ)。目の前に荒野が広がる。魂の荒野に水を注ぐ!隆。不毛の荒野の開拓に挫折する=内田康。荒野を吹き渡る風を思わせる声=篠田。人里を遠く離れて荒野をひとりさまようという風な自分をいたましく思う気持ちが胸にあふれる=石川。荒れ野が広がる。荒野のような-殺伐たる心"隆。荒れ野の風景を見渡す。 **荒涼** 荒涼たる(砂漠。山岳地帯。焦土の町。自然を生き抜く)。聞きしに勝る荒涼たる風景。人影稀まれな荒涼たる場所。動くものの影とてない荒涼たる砂の海"光瀬。心に荒涼たる砂感じが舞う奥泉。荒れた海の砂浜のように人気となく荒涼としている村の道"大江。甲板の上が波の上のように荒涼として人気がない=有局。荒涼とした(眺めの河川敷。溶岩台地。枯れた灌木跡んまじりの岩山北)。石の多い荒涼とした波打ち際。冬枯れのままの荒涼とした野辺三好達一木一草もない荒涼な土地。荒涼を通り越して不気味な廃屋・篠田。 **ささくれ立つ** ▼ささくれ立つ(感情が。木肌が。心が。白い糸屑が。神経が。神経の肌理さぁが。海がいたるところ白い波頭に三島。唇が全く水気を失って白く。高井)。▼ささくれる(傷痕が。気持ちが。神経が。指が)。ささくれた空気を和らげる。ささくれが指に刺さる。小さなささくれが気になる。神経にささくれができる=佐野。指のささくれを噛む。 **荒む** 心が闘牛者の槍ゃりを受けた牡牛のように荒む菊池。すさみにすさむ野分を聞きまんじりともしない夜芝木。荒んだ(顔つきで笑う。感じの若者。生活を送る。待神を癒す。空気が顔や体をこわばらせる=高樹)。感情が段々に荒んで行く。一種殺伐とした沈黙が漂う。町も人も殺伐としている。戦国の殺伐な気風。むらむらと殺伐な怒りに燃えたつ長与。殺伐に立ち働く=獅子。険を面罵しあうほどの殺伐な雰囲気"高橋和。男のように **弾圧** 弾圧が(激烈となる。強まる。一日一日烈はげしくなる=円地)。弾圧に(脅える。恐怖をいだく。抗する)。弾圧の(罠もなにかかる。網をくぐり抜ける)。弾圧を受ける(不当な。厳しい)。弾圧する(警察が。運動を。革命思想を。急進思想を。ストライキを)。権力の手によって弾圧される。▼思想弾圧事件(残忍な。峻烈な)。空想を禁圧する。 **ちんぴら** ちんぴら(地回りの。繁華街に巣食う)。その辺のちんぴらとはわけが違う。ちんぴらにちょっかいを出される=内田発。いかにも軽薄なチンピラ風情-連城。悪の道に(のめり込む。踏み迷う)。非行少年を補導する。非行に走る。非行を(悔悟する。矯正する)。札付きの(非行少年。不良。やくざ。悪っる)。ぐれた(少女。少年)。何かの弾みでぐれ出す。手の付けられない不良。不良グループと付き合う。不良がたむろする。不良にからまれる。不良の刻印を押される。 **手荒** 手荒な(行動に出る。真似まぁをする。仕打ちを悔いる。振る舞いに及ぶ)。滅多に手荒なことをしたことがない=徳田。手荒い(扱いを受ける。手段に出る)。手荒く(雨戸を開ける。ガラス戸を揺さぶる。障子を明けたてする。服を脱ぎ捨てる。腕を握って二三度揺すぶる=岡本)。新聞紙を手荒く畳む。 **テロ** テロが(相次ぐ。起きる。続発する)。テロに毅然と対処する。テロの脅威にさらされる。テロリストが暗躍する。テロリストに内通する。テロリストの凶手にかかる。先端技術がテロリストの手に渡る。 **刺刺しい** とげとげしい(硬い風。口澗て質ただす。態度。目つき。言葉を投げつける)。叫ぶようなとげとげしい声。▼とげとげしくなる(気持ちが。声が)。顔に険が出る。声に険が立つ。目に険がある。険のある(視線を投げつける。口をきくように言へ~灰谷)。眉間のあたりに険を含む。 <93> # あ 含んだ言葉。つんけん他人に当たり散らす。つんけんした調子でいう。つんつんと攻め立てる。ぎすぎす悪たれ口をつく。▼きすぎすする(人間関係が。世の中が。職場の雰囲気が)。 **ならず者** ならず者が(たむろする。膏薬代にだいを絞るように脅す=永井麗)。ならず者に因縁をつけられる。平気で殺しをやる連中。悪漢の好餌となる。悪漠を(征伐する。退治する)。荒仕事に慣れた連中。無頼の奸賊ごいになりはてる真継。奸賊を誅伐うする。凶徒に襲われる。凶徒の手に倒れる。ごろつきに(からまれる。すこまれる)。無頼漢を見るように嫌悪と怪腹がねとついた眼黒岩。暴漢に(襲われる。対する怒りが煮えたぎる)。暴漢の群れに無理無休に打ちのめされる高見明。無法者が暴れまくる。無頼の徒が横行する。無頼の徒を鎮圧する。無頼非道の振る郷い。たちの悪い無頼者。無頼浪人を金で駆り集める=池波。暴徒が乱をおこす。暴徒から身を守る。暴徒に襲われる。暴徒の(凶刃に倒れる。手によって殺される)。四方から暴徒の群れを取り囲む。 **のた打ち回る** ▼のたうちまわる(蛇が。苦しさに。苦岡にもの表情で血初のの中を藤本。悔しさのあまり歯ぎしりして森瑞)。のたうつ(苦悩に。嫉妬に。憎悪に。必死にもがき。慢ながにょろにょろ)。のたうちまわって(叩ぅぃきさけぶ。死ぬ)。七転八倒の(痛み。苦しみ)。▼七転八倒する(地を道はって。炎に焼かれ。大荷物を背負って)。 **迫害** 迫害が(言語に絶する。年毎に熾烈ひぇとなる)。迫害に甘んじて耐える。度重なる迫害に息をひそめる柴田映。無情な世間の迫害に耐える=石川。いわれのない迫害を受ける。苛酷な迫害を受けた農民がたまりかねて立ち上がる=村松。▼迫害する(異教徒を。差別的に。不当に)。 **暴挙** 暴挙(前代未聞の。黙もだしがたい。もの狂おしげな。民主主義に対する。現代史の流れに逆らう~加藤)。暴挙から自分を守る。▼暴挙に出る(暗殺という。自爆の)。暴挙を見逃せない。主殺しの暴挙を企てる=火坂。史上稀有ぃぅの大暴挙を断行する"山岡。 **暴力** 鉄槌を鶏卵に打ちおろすような暴力すなわち蛮力"山田美。むき出しの暴力が牙をむく墨石。暴力から身を守る。暴力に(青ざめる。豚える。対抗する。ひるまない)。夫の暴力に悩まされる。不条理な暴力にさらされる。暴力にはからっきし弱い。暴力の(根を絶つ。イメージに満ちる。恐怖に彩られた小説)。暴力を(追放する。許さない)。暴力を振るう(女に。誰彼の見境なく=浅田)。暴力行為を取り締まる。暴力沙汰を起こす。暴力衝動に火が点っく。暴力衝動を抑え込む。暴力的な(意志。欺瞞心ま。強制力。手段。態度に出る)。心の中に暴力的な感情が湧き起こる=辻仁。暴力的に(抑圧する。取り押さえて監禁する)。女を暴力的に犯す。突然暴力的になる。人々を暴力的に支配する。矛盾が暴力的に爆発する。死は一切を暴力的に断ち切ってしまう三好俺。斬った張ったという騒ぎ。断った張ったの(喧嘩妙んになる。巷ょに出入りする)。 **もがく** ▼もがく(懸命になって。じたばた。絶叫をあげて。瀕死いんの苦しみに。泥の中で道はい上がろうと。何とかして脱出したいと。罠もなの底に落ちて。釣るし値が泳ぐような格構をしてシャーツを脱ごうとして二葉亭。のたうつように三浦綫。罠にかかった獣みたいに=村山)。もがけばもがくほど深みに桜はまる三好歳。もがくようにして立ち上がる=高井。苦しみもがく光景を妄想する。苦しみもがいて死ぬ。身をもがいて(抵抗する。悲しげに泣き叫ぶ=山手)。死にかかった蛙粉ものようにただもがいてばかり芥川。夢中でもがいている生活。もがきながらほい出られない深みへ落ちてゆく=梶井。暑さの中をもがき回る。 **やくざ** やくざに喧嘩がんを売られる。やくざの(抗争に絡む事件。世界から足を洗う。一家に草鞋功らを脱ぐ熊谷)。やくざを相手に喧嘩をする。堅気とやくさを区別する。頬を斜めに切る仕草井上ひ。時代遅れとなったやくざ仁義の如きものを純情一途に守り続ける萩原朔。やくざっぽい(男。口調)。礼儀をわきまえないやくざふうの男!清水俊。やくざ者が殴りこんでくる。ひと目でやくざ者と分かる男たち。やくざ者に成り果てる。みかじめ料を要求する。よたがかった男。よた者にからまれる。よた者をこらしめる。よた者のような言葉を吐きかける。 **乱暴** 乱暴とも思えるほど力測する。乱暴らんぼうな(言い方。音を立てる。口の利き方。口調で訊く。目に遭う。言葉でののしる。字体で書きなぐる。手でとすんと置く)。階段が毀こぉれるのではないかと思うほど乱暴な音をたてて走り降りる=高樹。▼乱暴な話(何とも。いかにせっぱ詰まったとはいえ今日)。乱暴に(受話器を置く。突き飛ばす。電話を切る。ハンドルを切る)。腕を乱暴に振りほどく。髪を乱暴につかむ。潰してしまうのかと思うほど乱暴に鳥を掘っかう=長野。乱暴になる(言葉つきが。仕草が)。乱暴の限りを尽くす。徒党を組んで乱暴を働く隆。むちゃくちゃな乱暴をしたい衝動にかられる"小林多。女性に乱暴する。澄んだ泉に泥を投げ入れるに等しい行為=光原。手のつけられない暴れん坊。一癖も二癖もある海の荒くれ者鈴木光。腕ずくで(押さえつける。金を奪う。連れ戻す。取り返す。相手を納得させる)。粗暴な振る舞いが目立つ。性格粗暴な男。力ずくで(女の体を奪う。ドアを開ける。部屋に押し入る)。外から力ずくで強制する。報復の暴行が頻発する。暴行を受ける。殴る蹴るの暴行を加える。暴行事件をでっち上げる。 <94> # あ **相部屋** 相部屋を拒否する。同じ部屋に寝泊まりする。宿で同室になる。部屋に同宿する。 **合わさる** ▼合わさる(傷口が。上下が)。組織が合同する。合同で演奏会を開く。▼合流する(軍勢が。二つの川が。文化が。現地で)。▼一つになる(歌声が。気持ちが。国民が。心が)。小さなミスが複合して起きた事故。複合する(汚染が。多様な遊びを)。みんなが和して口ぐちに叫び立てる。高低様々な声が一斉に和する=加賀。 **合わせる** 合わせる(男と肌を。軽くグラスを。口裏を。琴と尺八を。三人で力を。収支の帳尻を。周波数を。昭遂を。戦場で槍ゃりを。タイミングを。辻褄つむを。長襦袢、心の裾を。端と端を。ぴったり息を。二人の心を。仏壇に両手を。歩調を。時代の風潮に。男性の好みに。両袖を胸に。太腿ふじをきつく。原文と翻訳文を。時報に時計の針を。シャツの襟元を。ふっとした拍子に目を。割れたガラスを。行く先々の水に。ジョッキを軽く。両腿をぴったり)。一顔を合わせる(たまに。頻繁に。初めて。ばったり。普段よく。毎日のように)。▼調子を合わせる(曖昧に。周りに)。▼手を合わせる(神様に。仏壇の前で)。▼話を合わせる(お座なりに。適当に。形だけ)。▼前を合わせる(着物の。コートの。浴衣の)。そうだねなどと口先だけ合わせてみる=有川。襟の合わせ目。めったに顔を合わせない。▼裾をかき合わせる(着物の。襦袢の)。▼かき合わせる(襟元を。袖の破れ目を。胸もとを)。合する(二つの川が。二つの集団を)。機械で合成した声。合成する(音を。写真を)。ギターのチューニングをする。二人を引き合わせる。両方の見方を複合させる。観念と現実に起こる問題を折衷する高橋利。折衷案で落着する。折衷的な態度が破綻する。 **一時に** こらえた情が一時に爆発する。水門の水を一時に切って落とす。花が一度にどっと咲き出す。みんなが一度にわめき立てる。一斉に(人が動きだす。行動を開始する)。堰せきを切ったように(強烈な飢餓感がつのってくる三田。心の澱ぉりを吐きだす人間。ほとばしり出る激情"石坂。胸の内にあるものをしゃべる=あさの)。舞がせきを切ったように急調子になる=白洲。憧れが堰を切ったように溢れる半村。仕事が堰を切ったように進捗しんちする=中村真。堰を切ったみたいに能弁になる!太宰。堰をきって溢れだすように時の勢いに乗る=木庄。う。叫ぶ)。子供たちが声を揃えてはやし立てる=新田。 **いっぺんに** いっぺんにどかっと到着する。体の力がいっぺんに抜ける。教室の空気がいっぺんに明るくなる。義理いっぺんに出席する。仕事と住居をいっぺんに失う。何もかもいっぺんに崩壊する。みんながいっぺんに泣きだす。両親をいっぺんに亡くす。 **一緒** 行きも帰りも一緒。一緒に(家を出る。お風呂に入る。死ねるなら本望)。父母と一緒に暮らす。盆と正月が一緒にやって来る。死んでも一緒になるのは脈ぃゃ徳田。その辺のミーハーとは一緒にしてもらいたくない=海堂。一緒になる(期せずして。たまたま)。▼一緒にする(温泉めぐりを。食事を。寝起きを。冗談と真面目を)。一日と難いぇも離れて暮らしたことはない!今來。味噌もくそもいっしょくたし安岡。汗と埃児にが一緒くたになる。さまざまな草花が一緒くたに咲く。何もかも一緒くたにして論じる。悲しみと腹立たしさを一緒くたに感じる宮本百。相合傘で歩く。素質と環境とが相まって才能が育つ。努力と才能が相まって現在の地位を得る。技と力が相まって横綱となる。かち合う(会合が。時間が。予約が)。手に手を取って帰る=高見町。一つ茶碗で食べあう。一つ茶碗を飲みまわす。一つ布団にくるまって寝る。死なばもろとも。もろともに(沈む。地上に倒れる)。連名で(抗議文を出す。手紙を出す)。一蓮托生いは以んたの(運命。契りを結ぶ。仲問)。兄弟が響くっを並べて参加する。くつわを並べて落選する。声を揃えて(歌う。 **外交** 外交が(断絶する。ぎくしゃくする)。外交に(辣腕をふるう。駆け引きはつきもの)。腰を据えて外交に取り組む。外交の機宜を失する。外交関係の雪解け。外交使節を派遣する。老練な外交手腕の持ち主。一貫性のある外交政策を展開する。巧妙な外交伐戦略の賜物。外交的な(解決。働きかけ)。軟弱外交を非難する。 **数合わせ** 小手先の数合わせに走る。単なる数合わせに終わる。収支の帳尻。帳尻が(合う。合わない)。帳尻を合わせる。 **合体** 合体する(二チームが。両社が)。朗読と芝居を合体させる。公武合体を唱える。 **合併** 合併が(暗礁に乗り上げる。本決まりになる)。▼合併する(企業が。市町村が。二社が)。二つの会社を併せる。合弁で(新会社を設立する。新事業を始める)。▼併合する(町村を。隣国を)。 **交わす** 交わす(笑顔で挨拶を。懐旧の情を。陰で噂を、固い握手を。固く約束を。軽く会釈を。際どい冗談を。親しく話を。自由に意見を。長い抱擁を。短い会話を。友人と杯を。お互いの近況報告を。短いやりとりを。満ち足りた微笑を。夜を徹して議論を。二言三言挨拶の言葉を=堀)。▼交わさない(一言も言葉を。会話らしい会話を)。 **組み合わせる** ▼組み合わせる(五つの要素を。体の前で腕を。長所と欠点を。直線と球型を。新しい情報と過去のデータを。断片的な真実を)。黙然と腕を組みあわせて眺める。▼組み合わせ(対照的な。巧みな。理想的な。異色の。思いがけない。好一対の。試合の。レズめいた色っぽい=半村)。吸い物に菜の花をあしらう。花柄をあしらったワンピース。たっぷりとフリルをあしらったレース=小川。異色の顔合わせが実現する。竹竿訟耕を格子に組む。丸太を組んだ足場。▼コーディネートする(色を。インテリアを。ファッションを)。抱き合わせで売り込む。抱き合わせの興行。天の配剤ともいうべき(組み合わせ。絶妙の配置)。▼取り合わせる(好みを。野菜を)。和洋折衷の(家。調度。邸宅を新築する)。滅多にない取り合わせ。取り合わせが(よい。悪い)。取り合わせの妙。厳と慈との配合宜ょぅしきを得る=寺田。▼配合する(生薬を。飼料を。バランスよく)。花が咲いたような配色"阿部。配色よくデザインする。 <95> # あ **組む** ▼組む(長い足を。腹の前で手を。頭の後ろで両手を。難しい顔で腕を。がっぷり四つに)。一 ◦がっぷり四つに。組み合う(肩を。敵と)。女子と組み合うほうが楽しいというスケベ心を隠す有川。 **交差** 不必要に甘々しく余韻の尾をひいたような音の重なりと交叉に、藤枝。交差する(直線と直線が。四つの路線が。光が縦横に。虚実が激しく。サーチライトが天空に)。赤や青の光の筋が長い剣のように交叉する=富岡。直角に交差する小道。複雑に交差する枝。交叉するほどもっとも近づき合いながら、ついに一つに重なり合わぬというようなもどかしさ=野間。▼交差させる(足首を。両腕を)。愛情と憎悪が胸の中で交差し合う~士丹。木の枝が差し交わしている。交わる(直角に。急角度で)。 **交際** 交際(通り一遍の。若い男女の。結婚を前提とした。側そばで見てさえうらやましいほど親密な=萩原朔)。交際が(滑らかに進む。始まる。深まる)。交際の密度を深める。きれいな交際を続ける。執拗に交際を求める。交際する(公明正大に。誰彼なしに。異性と。親しく。仲よく。広く)。目下の交際相手。交際範囲が広い。交際費がたっぷりと使える。交遊関係が広い。交遊関係を(洗う。探る)。朝野の紳士と交遊する。美しい交友に心を打たれる=松本。 **国交** 国交にひびが入る。国交を(回復する。樹立する。正常化する。断つ。結ぶ)。外国と国交を開く。国交断絶を(宣言する。通告する)。 **十把一絡げ** 十把一絡げに扱う。世間にありふれた十ば一からげの女たち=石坂。十把一からげの下っ端。 **社交** 社交が上手。社交の場に出る。社交界の花。社交性が身につく。行動性と社交性とを兼ねそなえた人間"野間。社交的な(愛想を見せる。明るさ。手腕)。社交的に(洗練される。振る舞う)。 **十字** 腕を十字に組む。二組の男女の視線が十字にからんで浮いて揺れる=新田。胸に十字を切る。苦悩の十字架を背負う。円屋根のてっぺんに十字架を戴いたく教会。十文字にたすきをかける。腹を十文字に切る。ローブを十文字に縛る。 **大使** 特命全権大使。列国の大使。大使を(召還する。務める。派遣する)。各国の大使を歴任する。新任の大使を接受する。大使館に保護を求める。大使館の名前をちらつかせる戸川。▼外交官(駆け引きの達者な。国益を代表する)。 **付き合う** ▼つきあう(学生の実習に。馬鹿な話に。親に隠れて。家族ぐるみで。距離を置いて。失敗とうまく。損得抜きで。とことん。分け隔てなく。悪い友達と。誰はばからず大いに。他愛ないおしゃべりに。覚悟を決めて最後まで。今日のところは我慢して。不良グルーブと)。時間の都合が許す限り付き合う荒巻。戯言ごれに付き合ってはいられない=篠田。▼つきあい(個人的な。長きにわたる。裸になっての。つかず離れずの。いわばままことのような戸板。年賀状のやりとりがある程度の"笹沢)。つきあいが(狭い。絶えない。広い。問遠になる。よい。悪い)。文人墨客とのつきあいがある。悲しみとの付き合い方を覚える=重松。つきあいで酒を飲む。友とのつきあいに身を入れる。昔のつきあいに甘える。しつこくからみつくようなつきあいに疲れる=石川。つきあいの嫌いな人間。古いつきあいの男。親しく隣同士のつきあいをする。無無駄なつきあいを避ける。▼つきあい方(さばさばした。ねっとりした)。旧交を(回復する。懐かしむ。復する)。古馴染みと旧交を温める。人づきあいが(いい。うまい。苦手。悪い)。▼交わる(親密に。親しく)。 **同席** 同席に耐えられない。同席を喜ぶ。▼同席する(友達が。有力者が)。▼連なる(婚礼の席に。末席に)。捜査会議に陪席する。▼列席する(式典に。集会に。葬儀に)。 **共に** 共に(食事をする。旅する仲間たち。知恵を出し合う)。功罪共にある。一生を共に過ごす。自然と共に生きる。十年近く共に働く。心身共にリラックスする。共にする(兄と行動を。一夜を。家族と夕簡炒うを。苦楽を。生活を。生死を。船と運命を。休日のひとときを)。 **一つにする** ▼一つにする(呼吸を。褥札とを。肌を。二人が心を。軽蔑と憐憫みんとを)。▼一にする(関係を。軌を。志を。時期を。歩調を)。 **交わり** 互いに後ろめたさを秘めた秘密な交わり!高橋和。親しい交わりを続ける。交わり(呢懇こいの。水魚の。刎頸以の)。男女の交わりの欲喜にむせび泣く声"深沢。とかく男女の交わりはルーズになりやすい玉村。雲雨の交わり。互いを貪りくうような交わりを繰り返す『立原。濃密な夫婦の交わりに溺れる=隆。琴瑟いんの交わり。 <96> # あ **あたふた** あたふたと(飯をかきこむ。帰り支度を始める)。追いかけられているように後をも見ずにあたふたと出て行く石川。追っかけをやるファンのようにあたふたと後に続く=北村。汚物溜めから逃げ出すようにあたふたと戻って行く半村、逃げる人のようにあたふたと部屋を出る有局。あたふたしながら駆けつける。 **慌ただしい** 慌ただしい(明が始まる。空気が収まる。時間を楽しむ。日が続く。身の上の変化。仕事に忙殺される)。車や人や電車の行きかうあわただしい風景"野問。廊下を走ってくるあわただしい足音=山本慮。取るものも取りあえずという慌しい様子の福永。息をつく間もない慌ただしい一日。突然の慌ただしい出発。慌ただしく(階段を上る。身辺を整える。席を立つ。外へ出て行く。人が行き交う。打ちあわせをする。着替えを始める。数日が過ぎていく。小さな旅が過ぎ去る。まばたきをする。身支度を整える)。時に山鳩があわただしく飛び去る=国木田。雲が慌ただしく流れる。日程を慌ただしくこなす。長い不在を取り戻そうとでもしているように慌ただしく人ってくる夫=辻井。にわかに身辺が慌ただしくなる。足もとから鳥の立つようなあわただしさ=壺井。鳥が止まってすぐに飛び立つよう多岐川。足許訪しに火が点っいたように活動を始める=獅子。太刀を憎さゃにおさめる間も惜しいように匆々そう逃げ出す芥川。 **慌てる** ▼慌てる(黒船の来航に。虚を祈っかれたようにひどく=獅子。前の打席で凡フライを打ってしまいそれで焦ってこんどは守備で凡ゴロをエラーしてしまったように尾辻)。▼あわてる(いよいよの間際になって。喉に棘とげが刺さったように石坂)。あわてた早口でどもって言う。あわてて(言葉を継ぐ。立ち上がる。ブレーキを踏む)。金魚のように口をばくばくさせる=井上ひ。冷静さを欠いた判断。冷静な判断ができない。狼狽いの色をかくせない池波。あわてずに落ち着いて言う。あわて気味に(車に乗る。答える)。大あわてで逃げ出す。おたおた手間取る。おたおたするばかりで満足な説明もできない。動転させる(家人を。見る者を)。おたおたとあわてふためく。あわてふためいて(逃げだす。走り去る。階段を駆け上る)。泡を食って(飛びだす。飛んでくる)。泡を食ったようにアクセルを踏む。泉災。尻に火がついたように動き回る=鈴木光。お尻に火がついたように突進する=池田。尻に火がついたみたいに(そこらを走り回る=飯田。なって追いかけ回す―用高)。ほうほうの体で(退却する。引き上げる。自室に駆け戻る)。 **急いで** 急いで家に帰る。足許しから鳥の立つように急いで帰途に就く=田山。部屋の中の空気がなくなりでもしたように急いで扉を開く意行。息せき切って(階段を上る。飛び込んでくる)。一日も早く(入手したい。手術をする必要がある)。一刻の(時間もむだにしない。器躇らいうもなく歩み出す)。一刻も早く(けりをつけなければと思う。この場を立ち去りたい。伝えようとする)。一足飛びにやって来る。至急(会って話す。対策を練る)。倉皇と(立ち去る。店を出る。洞穴を逃れ出る)。急ぎ足で(帰路につく。立ち去る。通りを遠ざかって行く)。経締訟を急ぎ足で話す。走るように急ぎ足で行く。病室の方へバタバ夕四五人の急ぎ足のスリッバの音が聞こえる=中島救急ぎ足にすたすたと歩く。我知らず急ぎ足になる。▼急遽(行動を起こす。予定を変更する)。あわてて(結論を出す。手を打つ)。 **忙しい** 忙しい(一日が始まる。毎日が続く。仕事に追われる。日程をやりくりして出席する。割に収入が少ない)。忙しい(店の手伝いが。客の応接に。夕飯の支度に。朝から晩まで。人手が足りないほど。船乗りたちは帆の操作に!塩野。後ろを振り向く暇もないくらい柴田翔。身体が二つあっても足りないくらい!永井荷。戦争か火事場みたいに=瀬戸内。何をするひまもないほど"林美。何のために働いているか考えずにいたほど"大佛)。連日忙しい日々を過ごす。校了日が間近く迫って比較的忙しい日後蔭。ねずみのような忙しい思いをさせられる=本庄。忙しいのはお互い様。準備に忙しい(結婚式の。受験の)。忙しく(飯をかき込む。あたりに目を配る。行ったり来たりする。思いをめぐらせる)。追いたてられるほど忙しく量の多い仕事・原田康。作業を忙しく繰り返す。峭岭眩んが忙しく飛び交う。人々が忙しく行き交う。忙しく動き回る(絶えず。いつにも増して)。忙しくなる(身辺が。仕事が本格的に。村中が稲刈りで)。忙しがる(必要以上に。ことさら)。忙しげに(出て行く。走りまわる)。忙しさ(千客万来の。戦争のような。猫の手も借りたいほどの。目がまわるような清水義)。忙しさが(峠を越える。ピークを迎える)。昼時の忙しさが一段落する。忙しさから解放される。忙しさに(いらいらする。かこつけて不箱になる)。総るような忙しさに足を動かす。佐藤春。忙しさにかまけて(逢っていない。連絡をしない)。追いかけるような忙しさの中で暮らす=壺井。忙しそうな空気が充満する。忙しそうにくるくると働く。ちぎれ雲が忙しそうに飛ぶ。内田百。息つく岡もない忙しさ。息をつく暇もない。体が幾つあっても足りない外村。激務に追われる一日を過ごす。仕事の絶える円がない。盆と正月が一緒にやって来たよう。貧乏暇なし。▼追われる(金の返済に。資金繰りに。スケジュールに)。家事に追われる毎日。連日の激務の疲れが出る。 <97> # 慌てる・忙しい あ **あせる【焦る】** 焦る(気持ちが。気持ちばかり。気持ちだけが)。気が(急く。もめる)。心が(急く。逸る)。焦燥に駆られる。焦燥感が(募る。こみ上げる。込み上げる。いらだたしいほどつのる)。焦燥にかられる。 **あたふた** あたふた(と逃げ出す。家を飛び出す。駆けつける)。あたふたと(身支度を整える。帰り支度をする)。 **いそがしい【忙しい】** 息つく暇もないほど忙しい毎日。息もつかさず(しゃべる。働く。動き回る)。息つく間もなく次の仕事に取りかかる。息もつかせぬ(攻撃。展開)。息を入れる暇もない。猫の手も借りたいほど忙しい。目が回るほど忙しい。てんてこ舞いの忙しさ。きりきり舞いする忙しさ。盆と正月が一緒にきたような忙しさ。息せき切って(駆け込む。訴える)。息を切らして(走る。階段を駆け上がる)。息を切らすように(話す。まくしたてる)。多忙な(毎日。日々を送る)。多忙を極める。多忙の身。多忙を口実に会おうとしない。多忙にかまけてご無沙汰する。身辺がにわかに多忙を極める=小林久。多事多忙。多事な(生活。月日)。▼手が放せない(今ちょっと。研究の)。ただいま取り込み中。▶寧日がない(奔命に。仕事に追われて)。心に寧日なき生活。退屈している暇はない。▼暇もない(席の暖まる。腰を落ち着ける)。忙中(閑あり。閑日月あり。閑を縫う)。 **いそがない【急がない】** ▼急がない(別に。さして)。事を急いではいけない。急がば回れ。別に急きの用でもない。格別急ぎもしない。格別急く旅ではない。そう急ぐ話でもない。急ぐには(当たらない。及ばない)。緊急性が低い。 **いそぐ【急ぐ】** ▼急ぐく(後も見ずに。烏からが時ゆくに。身元の割り出しを。脇目もふらずに。前後の考えもなく)。▼道を急ぐ(浮き浮きして。馬がばかばかと。足早に駈けるように=原田康)。宙を翔かけるように街道を急いで行く吉川。急ぎ(山を下りる。帰郷の途につく)。やたらと先を急ぎたがる。急げば間に合う。急ぎの(仕事。注文。用事)。いまにものめりそうなほどの急ぎよう“長崎。転がるようにして階段を駆け降りる=赤川。待つ余裕がない。急がないと手遅れになる。換金のため株を売り急ぐ。薬らしい薬ものまずに死に急ぐ=梶井。▼足を早める(無意識に。心持ち)。西空に落ちかかる日にせかされるように足をはやめる"藤沢。捜査員が現場に急行する。せきこんだ調子でまくしたてる=軍司。話のいとぐちを見つけたというふに急き込んだ話しぶりになる!永井側。せきこんで(口早に言う。尋ねる)。後片付けもそこそこに寝てしまう。挨拶もそこそこに用件を切り出す西木。ノックもそこそこにドアを押し開ける=笹沢。 **うおうさおう【右往左往】** ▼右往左往する(幻影を追って。狼狽的らして。新しい環境の中で。原因が分からなくて。売り物の熱帯魚みたいに人々が加賀。いかんともしがたい悪循環のなかで服部。錯綜終した情況に翻弄されて=辻井。逃げ場を失って=船山)。右往左往しながら逃げまどう。 **きりきり舞い** ▼きりきり舞いする(心が。自分一人が。借金で)。▼きりきり舞いさせる(相手を。母親を)。 **うろたえる【狼狽える】** ▼狼狽える(身の置きどころがないように八谷崎。悪いことをしている場を見つけられたかのように黒井)。▼うろたえる(突然の間いに。不意打ちに。なす術すべもなく。わけが分からず。呼吸ぃさが止まるほどに吃驚して=内田百。虚を突かれたように島尾。火のついた扇で煽ぁぉられたように高樹)。感蒨の均衡が完全に破れた声=田辺。視線が左右に泳ぐ。気が転倒する。目が宙をさまよう。へどもどして答える。〈どもとしながら遠慮がちに言う。度を失う(冷静の。挨拶にろくに応接できないほど=山崎)。度を失って(うろたえる。狼狽的心する)。度を失うほどうれしい=田辺。 **おおいそぎ【大急ぎ】** 大急ぎで(ご飯をかきこむ。明食を済ませる。願い事を唱える)。横っ跳びに息もつかずにとんでくる=加太。押っ取り刀で(駆けつける。飛び込んでくる)。大至急(確認する。企画書を書く。チェックする)。特急で(書き上げる。仕上げる)。取るものも取りあえず(出かけて行く。飛び出してくる。病院に駆けつける。一目散に逃げる=奥平)。気合の入った突貫工事。突貫工事で(家を建てる。構築する。仕上げる)。 **おおわらわ【大童】** 迎え撃つ準備に大わらわ。階段を大わらわで駆け降りる。散らかした衣類を大わらわで畳む。▼大わらわとなる(客の応対に。除雪に。野次馬を食い止めるのに)。開店の準備で大わらわになる。 **おろおろ** おろおろと(事の成り行きを見つめる。視線をさまよわせる。事態の推移を見守る“小林久)。おろおろする(残酷な仕打ちに。天と地がひっくり返ったみたいに吉本。目のやり場を失って=原田宗)。おろおろしながら同じことばかり繰り返す椎名战。 **きぜわしい【気忙しい】** 何かと気ぜわしい。気ぜわしく(胞ふぃの中を探る。煙草を吸う。電話を切る。荷物をまとめる)。切れ切れな淡い雲が気ぜわしく飛ばされる=志賀。気忙しく云ぃい捨ててそそくさと出て行く永井龍。法師鄭相らしの生き残りがその辺で気섣しく鳴く=永井龍。気ぜわしげに(ベルが鳴る。戻って行く。次々とページを繰る)。頁を気ぜわしげに繰る。蒼いがが気ぜわしげに枝移りをする=永井路。 **きゅうごしらえ【急拵え】** 急ごしらえでルールを用意する。急ごしらえのチーム。いささか急ごしらえの感は否めない。急造の(小屋。チーム。舞台)。 **きゅうピッチ【急ピッチ】** 急ビッチで(酒をあおる。進む。増える。ボートを漕ぐ。仕事を仕上げる)。▼急進行する(円高が。開花が。革命が。高齢化が)。どろどろと急調子な太鼓が鳴りだす幸田文。舞が急調子になる。 **きゅうむ【急務】** 急務(安全性向上が。実効ある対策が。信用を回復するのが)。財政再建が急務となる。急務の課題。焦眉の急。 **きんきゅう【緊急】** 緊急な問題。緊急に(会議を開く。調査する。手を打つ。武器が必要になる)。緊急の(記登見。手術。課題を閑却する)。緊急を要する課題。事態は緊急を要する。緊急会談を招集する。何を置いてもなすべき緊急事。緊急事態が(起こる。生じる)。緊急事態宣言を発令する。緊急事態の収拾を一任される。緊急招集をかける。緊急情報を伝える。緊急性が高い。緊急予算を組む。急な入り用がある。事は急を要する。戦雲急を告げる。 **いっこくをあらそう【一刻を争う】** 一刻を争う(課題。重 <98> # あ **さっさと** さっさと(帰ってしまう。その場を去る。話をまとめる。食事を済ませる。見切りをつける)。そそくさと(立ち去る。勘定を済ませる。部屋を出て行く)。とっとと(失せろ。帰れ。売っ払っちまう)。 **じっとしていない** じっとしていない(日曜)ことに。ひと所に。片時も。ちっとも。一体が小柄でちょこまかと目まぐるしいほどすこしも!永井荷)。▼じっとしていられない(家の中に。一刻も。思い立つと。恐怖で。怖くて。寸刻も。気がじりじりして)。じっと座ってなどしていられない。じっとしていられない焦燥に囚とらわれる=大岡。少しも同じ所にとどまっていない。じっとしていられないほど(嬉しい。興奮する)。 **しどろもどろ** しどろもどろに(言い訳する。答える。脈絡のない言葉を並べる宮本輝。礼を言って話を切り上げる=貫井)。▼しどろもどろに言う(感激のあまり。ひどく取り乱して)。▼しどろもどろになる(話が。年がいもなく)。しどろもどろの(挨拶。不得要領)。 **せっかち** ただやみくもに人より早く歩きたいというせっかちに佐野。いろいろな形の発動機船が白いしぶきをあげてせっかちな爆音を立てながら忙しげに往復する"石坂。せっかちに(車に乗り込む。結論を下す。言葉をつなぐ。電話を切る)。蝶が無閣とせっかちに飛び廻る"志賀。早く早くとせっかちに急ゃき立てる三浦誓。膝をぶるぶるとせっかちにゆすぶる"林美。短兵急な性格。性急な(口調でまくしたてる。行動を制止する)。余りに子供っぽい性急な自己反省。中島敦。性急に口火を切る。興奮にかられるままに性急に実行する=佐山。告白で万事解決という安易な性急さに駆られる―武田奈。坂道を前屈柱がみになってせかせかのぼる=長崎。せかせかと(煙草を喫う。前かがみに歩く)。せかせかした早口で言う。 **忙しい** せわしい(明け暮れ。息づかい)。せわしい(暮らしが。心が。言葉の調子が)。中断を恐れるようにせわしい調子で言葉をつづける=安部。せわしく(肩で息をする。扇子を使う。手先を動かす。あちこちを探す。いろいろのことを考える。帰り支度を始める。室内を歩き回る。まばたきを続ける)。水音が追い立てるように忙しく音を立てる=伊集院。りんりんとせわしく風鈴が鳴る=梅本。不安らしく忙しく瞬きする=円地。▼せわしくなる(足取りが。呼吸がだんだん)。せわしげに(くるくる働く。ドアチャイムが鳴る。目をしばたたく)。眼ばかりぎょろぎょろ忙しそうに働かせる芥川。 **忙しない** せわしない(足取り。人。世の中。ワイバーの動き)。せわしなく(煙草を吸う。朝食をとる。手を動かす。瞬きをする。あたりへ目を配る。左右に視線を動かす。何度もうなずく)。黒目がせわしなく動く。世の中が急にせわしなく変わる。犬が興奮しているように忙しなく嗅ぎ廻る=佐多。酸素の足りなくなった金魚よりもせわしなく大口をあけて空気を吸いまくる=飯田。 **多忙** 万倍の多忙が付随する=山田美。多忙な(日を送る。明け暮れを過ごす)。育児に多忙な時期。日常の多忙な仕事ぶり。多忙に紛れてしばらく会っていない。▼多忙になる(仕事が。身辺が。にわかに)。多忙の(極に達する。日を過ごす)。▼多忙を極める(捜査が。流行作家として)。多忙を理由に(誘いを断る。電話を切る)。大げさに言えば世界を股にかけた多忙さ=連城。極度に多忙ではないけれどさりとて暇ばかりとも言えない=阿刀田。繁多な(毎日。雑務に忙殺される)。繁忙な日常。繁忙の中に暮らす。仕事が繁忙を極める。日も夜も足らぬせわしさ。フル稼働に次ぐフル稼働の状態内橋。口も手も休む問がない。朝から晩まで休む円もない。準備に夜も日も足らぬありさま。▼書き入れ時(お盆はお寺の。お店の。冬はスキー場の)。書き入れ時を目前にする。てんやわんや(育児に。大掃除で)。店の中がてんやわんやの状態。田植えの時期と稲刈りの季節は猫の手も借りたい時阿久。猫の手も借りたいほど忙しい三浦哲。猫の手でも借りたい思い"半村。 **てんてこ舞い** 通夜と葬儀の準備にてんてこ舞い三浦し。注文の電話でてんてこ舞いになる。てんてこ舞いの(忙しさ。騒ぎ。せわしさ)。てんてこ舞いする(客の応対に。一日じゅう)。 **どぎまぎ** どぎまぎと(まばたきして目を落とすに加賀。耳たぶまで真っ赤になる=山手)。▼どぎまぎする(不意の質問に。図星をさされて。足もとから突然風が巻き上がったように=円地)。密会の現場を見られたようにわけもなくドギマギする=坂田。心がときまきするほど嬉しい『椎名蔵。どぎまぎした声で答える。どぎまぎして(顔を赤らめる。言葉を失う。視線を落とす。無関心を装う。耳元まで熱くなる)。いきなり証人席に立たされたものだからどぎまぎしている"和久。どぎまぎしながら仕方なさそうに言う。椎名詞。 **取り乱す** ▼取り乱す(愛児の死に。恐ろしさに歯の根があわぬほど"筒井。恥も外聞名忘れて藤田)。取り乱した様子を見せない。いささかも取り乱したところがない。取り乱し方が人前から連れ去られねばならぬほどの状態に達する=河野。気も狂わんばかりの取り乱しよっ里見。かっとすると前後の弁えなく半狂乱になる永井荷。半狂乱になって(怒る。つかみかかる)。半狂乱のようになって泣きわめく村上元。 **パニック** 心理的にパニック状態に陥る。慎重さを欠く報道が住民にパニック状態を惹起させる=黒田。心中のパニックが極限に達する"貫井。頭が一瞬パニックになる。パニックの連鎖が起きる。住民の間にパニックの波が伝わっていく"柳田。経済バニックが起こる。人々が恐慌に陥る。不意の恐慌に襲われる。恐慌の嵐に見舞われる。 <99> # あ **暇** 昼日中でも寝転がっていられるほど暇!多岐川。暇さえあれば(訪ねてくる。絵を描いている。地図を取りだして眺める=長崎)。暇で暇でどうしようもない。暇な(時間を有効に過ごす。部署に回される)。暇にあかせて数える。ばったり火が消えたように閑ぃょになる=徳田。▼暇になる(体が。商売が。仕事が少し)。暇に任せて(議論を戦わす。調べる。全部に目を通す)。気づくのにさして暇はかからない。暇を(出される。つぶす)。無為にして閑をむさぼる=檀。わずかな暇をぬすむようにしてこつこつと独り勉強をする=山本周。暇を盗んで(会いに来る。練習する)。暇を見つけては通ってくる。暇を見ては(研究を進める。せっせと釣りに行く)。一年中暇を持て余している。暇を持て余す日々が続く。夕方まで体が空いている。手が空く。特段忙しくもない。今夜も客が来そうにない。時間ができる。時間の使い方に困る。閑職に(移される。追われる。左遷される)。寸暇を惜しんで(研究をする。勉強する)。手隙にすの者を呼ぶ。 **暇がない** ▼暇がない(ろくに。気の休まる。研究する。心の安まる。寸時も。生傷の絶える)。息つく暇もないほど次から次へと指令が飛ぶ"三田。息つくひまもなく歳月を見送る=瀬戸内。▼暇はない(遊んでいる。ぐずぐずしている。他人の恋にかかわっている。悠長なことをやっている)。▼かまっている暇はない(家庭に。いちいち)。▼暇もない(気を抜く。膝踏ちいうする。とつおいつの。落ち着いて食べる。風景に目をとめる。やれやれと思う。夕方まで息つく。ろくろく熟睡する)。坐すゃる暇もないほど稼ぐ小鳥。席の温まる暇もないほど飛び廻る山崎。手を休める暇もないほど仕事がある壺井。暇らしい暇がなくなる。息つく間もない。▼いとまがない(応接に。思いやる。他を顧みる)。身にいとまのない日を送る。 **分刻み** 分刻みで(各国代表と会談する。県内を駆け回る)。分刻みの(仕事をこなす。スケジュール)。スケジュール表に従って分刻みの多忙な一生を送る=中野孝。 **忙殺** ▼忙殺される(仕事に。葬儀の準備に。最後の仕上げに。陳情人の応接に。焼け跡の始末に。主導権を握るための画策に=開高。半年間の外遊を前にして片付けなければならない用事に"高橋治)。 **身も世もない** 烈はげしい残り惜しさに身も世もない=福水。身も世もないといったふうに肩を落とす=向田。若いころはさほど気にもかけなかったことが老境に入ると身も世もないほどに心を責めて来ることがある=藤沢。身も世もあらず泣き悲しむ。身も世もあらぬ(大泣き。恐怖に襲われる=中河。嘆きに打ち震える=高橋和)。身も世もあらぬほど恐縮する"阿刀田。身も世もなく(心が滅入る。恋しさにのめり込む"船山)。身も世もないように失望する=菊池。 **目まぐるしい** 目まぐるしい(季節の変化。レース展開。時世の変遷にも拘跡からず旧家としての体面を保持している=南条。そわそわした夏の朝の光!佐藤春)。政党の離合集散が目まぐるしい。めまぐるしい時代から取り残される"山崎。オフィスにめまぐるしい変化が巻き起こる=内橋。あまりにも目まぐるしい展開についていけない佐々木。目まぐるしい事件の(進展。連鎖反応)。色とりどりに目まぐるしいほど雑然とした新宿の街壺井。目まぐるしく(頭を回転させる。車が往き来する)。一週間が目まぐるしく過ぎる。情勢が目まぐるしく変わる。▼目まぐるしぐ移り変わる(濃淡が。風景が)。 **ゆとりがない** ▼ゆとりがない(精神的な。他を顧みる。物を考える。冷静に眺める。生活を楽しむ心の。労かたりの言葉を忘れるほどに=辻井)。鷹揚げな心のゆとりが失せる。 **余裕がない** 余裕がない(気持ちに。心に。時間に。昔を振り返る。忙しくて家庭を顧みる)。返事する余裕さえ失う。冗談に答える余裕なとない。余裕のない(日を送る。ひとりよがりの生き方)。絶えず何かに追い立てられているという余裕のない感じ!宮本直。人に話すだけの余裕もないほど恐ろしい=佐藤春。少しも他を顧みる暇もとがないほど心が忙しい長塚。自分のことに手一杯。手が回らない。欲も得もなく逃げ帰る。あいにく余力がない。 **狼狽** 狼狽(取っておきの文句を見いだろうばいせない人米。何から先にしていいか分からない=室生)。見返した視線にかすかな狼狽が揺れる高橋涼。狼狽の(あまり逃げ出す。気配を含んだ声)。表情に狼狽の色が走る。目に狼狽の色が浮かぶ。顔に短い狼狽の翳かげが走る=小林久。心中の狼狽を隠せない。内心の狼狽を笑いでまぎらわす!高見浩。▼狼狽する(唐突な問いに。気の毒なほど。前後を忘れ。思いがけぬ患者の急変に=佐藤巻。危険に易々やだとさらされてしまったことに=小鳥。自失するくらいに"阿久。何と返事をしているのか自分でも分からないほどに=住井。自分が敗色濃厚だと気づいて=池井戸。大切な品物を落としてしまったときのように=笹沢。泣きべそをかくほど本庄。はぐらかされたように=大佛。不意を衝っかれたように"大佛)。ワナにかかったかと狼狽するほどの敵襲"飯田。みっともないほど狼狽した調子で答える=有川。狼狽して(足を踏み外す。色を失う。うろうろと走りまわる。言葉が出てこない)。周章狼狽する(経済危機に。予想外の展開に)。 <100> # い **言い方** 「言い方(いかにも人を食った。孕んで含めるような。切って捨てるような。ビシリと音がしそうな=石坂。相手の話をチョン切るような豊永井能。一語一語を慎重に息でくるむような"小川。奥歯に物が挟まったような=胡桃沢。男っぽいぼきぼきした=山口。おやっと思うほどカラッとした高橋治。女の腐ったような=沢木。活字を並べてそれを一個ずつ区切るような藤本。剃刀欲以ですぱっと物を削ぐぐような=石坂。暗い中にすとんと自分を落とし込むような=高樹。せせら笑うような=内田康。生ぬるい空気が断ち切られるような高樹。にべもない、というコトバはこういうときに使うのです、というサンブルのような=田辺。猫が獲物を弄続にぶような遠藤。ふさけたようなえげつない=石坂。まわりがしんとなってしまうような荒々しい内海。わかったようなわからないような禅問答みたいな曽野)。言い方が(真に迫っている。堂々としている)。考えつくかぎりの旨い方で謝罪する=内田脊。言い方に(棘とげがある。芸術家の片鱗へんが感じられる三好京。断々手ばんだとした力が籠にもっている=井上ひ)。▼物の言い方(短刀でひと突きするような大胆な=中村真。友達に一年ぶりに再会したような=伊集院)。▼ものの言い方(打ち据えるような=椎名綱。もたれかかるような佐多)。▼言いぐさ(聞くに堪えない。尻がくすぐったくなる。探偵小説の台詞ぶぅじみた=原田康)。言いぐさが(癖しょに障る。ふるっている)。開き直ったような言いぐさにかちんと来る=連城。神経質な言い草に少しうんざりする=池井戸。妙に肩肘張った物の言いぶり石川。言い回し(慣用的な。持って回った)。口の利き方が気にいらない。口の利き方に気をつける。猫のようにおとなしい口のきき方をする=大佛。物言い(木で鼻をくくったような。血を分けた娘とは思えない連城)。物言いが(きびきびしている。ぞんざいになる)。物言いに(可愛げがない。気遣いが欠ける)。真剣な物言いに胸打たれる。見透かされまいとして大きく羽をひろげた物言いをする=向田。 **言い切る** ▼言いきる(一気に。簡潔に。言下に。大胆に。明快に。深く。きっぱりと。最後まで。自信を持って。ずばり。力強く。もう決まりと)。喝破する(事の本質を。ものの見事に)。断定的な(言い方。意見を吐く。口調で言う)。断定的に(答える。論じる)。古人の道破した真理。▼断言する(威勢よく。きっぱりと。器躇ういうなく。はっきりと。自信たっぷりに)。断言してはばからない。 **言い過ぎる** ▼言い過ぎる(調子に乗って。生意気なことを)。かっとなって言い過ぎてしまう。言い過ぎに気がつく。云ぃい過ぎをつくろうように薄く笑う藤枝。 **言い捨てる** 「言い捨てる(切り口上に。邪険に。乱暴に。冷たく。にべもなく。吐くように)。気忙しく云ぃい捨ててそそくさと出て行く永井歯。切りつけるように言い捨てて立ち去る=池波。捨て台詞を残す。吐き捨てるように言い残して引っ込む=原田宗。 **言い添える** ▼言い添える(催促がましく。蛇足ながら)。▼言い足す(甘えるように。二言三言。説明の不足を補うように)。▼申し添える(参考までに。念のために。一言)。 **言い出す** 言い出す(タイミングを見計らう。チャンスがない)。▼言い出す(とんでもないことを。つい心にもないひどいことを"鈴木三)。口に出しかねるほど照れくさい"太宰。言い出した手前最後まで責任を持つ。言い出したら後にひかない。言い出せばきりがない。 **言い立てる** 「言い立てる(相手の非を。細かい順序を。悪しざまに。暴論を承知で。あることないことを。呪文のように毎日やかましく=田辺)。悪口を言い立てて倦;むことを知らない=坂口。▼言い はやす(欠点を。失敗を)。▼呼号する(対決を。無期限ストを。業界随一と)。無口を言挙げする。 **言い募る** ▼言い募る(片意地に。喧嘩腰ぶんかに。執拗に。怒りに狂って。恨みっぽく。口を極めて。涙ぐんで。むきになって。かさにかかって。理不尽な恨みを若竹)。 **言い直す** ▼言い直す(適切な表現に。別の言葉に。姿勢を正して。平静かな声で。分かりやすく)。一つ話を何度となく言い直したり聞き直したりする芥川。何べん言い直しても通じない。言い換え(外来語の。ちょっとした。身も蓋もない)。専門語を他の表現に言い換える。▼もじる(交通標語を。詩の一節を)。 **言いにくい** ▼言いにくい(今更他へ移せとも。いわゆる凶悪犯とは。面と向かっては)。言いにくそうに(唇を歪ゅがめる。言葉を選ぶ。つぶやく)。舌を噛むようなことを言う。正面切って言いづらい。言いづらいことを口に出す。語りにくそうに口ごもる。 **言い放つ** ▼言い放つ(こともなげに。威厳をもって。傲然と。涼しげな顔で。力強く。びしりと。わざと冷たく。きっぱりと簡潔に。ぶっきらぼうな調子で。命令するように。叱りつけるように二葉亭。叩きつけるように=景山。はすっぱな口調で落合ふてぶてしく昂然むらと岸田。水たまりに叩きつけるように「島田)。ぶつけるように云ぃい放つ志賀。 **言い張る** ▼言い張る(強情に。むきになって、飽くまで知らぬ存ぜぬと。心配はいらないと。どうしても仕事を続けたいと)。頑固に言い張って譲らない。どうしても行ってみると言ってきかない。主張を押し通す。言い通す(嘘を。頑固に。あくまで。知らぬ存ぜぬと)。最後まで(嘘をつきとおす。白を切りとおす)。▼強弁する(自分が正しいことを。頬を膨らませて)。そんな強弁は通らない。 <101> # い **言い淀む** ▼言いよどむ(気圧けぉされて、言葉を探して。おしまいの部分を。困惑した表情で)。言いよどんで下を向く。言いかけた言葉を喉元で抑える。言いかけて危うくこらえる。言いさしてじっと見つめる。途切れ途切れに言いさす。▼言い渋る(返事を。本心を。理由を)。▼口ごもる(言いにくそうに。顔を引きつらせて。言葉を探しかねて。突然のひややかさに驚いて森塔)。恥ずかしさのあまり口籠ごもる=阿木。口ごもりながら(言い訳をする。答える。尋ねる)。 **言う** ▼言う(陰で悪口を。何度も礼を。鸚鵡返她らもしに。口を尖らせて。声を大にして。誰にともなく。必死の思いで。むきになって。面と向かって。抑揚をつけて。口幅ったいことを。心にもないことを。精一杯の皮肉を。ねちねちと文句を。ぼろっと木当のことを。女々しく泣き言を。努めて穏やかに。にこりともせずに。表情を変えずに。ぶつぶつのべつまくなしに。釘を刺すように。脈絡もなしにぽつりと。安堵さんさせるように口軽に=中上。怒ったように一気に=遠藤。日記に書き込んだ文章を暗誦礼しするように一息に=松浦。引導を渡すように内田康。歌うようにふしをつけて"阿部。思いつく言葉を掻き集めるようにしてとりあえずなにか=黒井。折々手を止めて溜め息のように=円地。義理一遍のように長塚。心のゆらぐ先をいちいち抑えるように=伊藤整。多少怒りをこめて突き離すように井上靖。苦々しく吐き棄てるように藤本。喉に詰まったものを吐き出すように南糸。鼻白んだようにブスッと内田康。歯の間から言葉を絞り出すようにして西木。不安にせき立てられるように柴田翔。ぽつりと独り言みたいに!鷺沢。ゆっくり一言一言区切るように三浦朱)。気持ちに釘を打つように云ぃう~新田。▼物を言う(居丈高に。率直に。不用意に。遠慮なく。ずばずば。はっきりと。びしびしと。前後の見境もなく)。▼言いたくなる(つい恨み言を。嫌みの一つも)。何か言いたげに唇が震えている。礼を言うには及ばない。▼言い交わす(おやすみを。言葉少なに物を)。▼言い続ける(繰り返し。しつこいほど)。幸せとか不幸せを云々ふんする。計画が公然と口にのぼる。名前を口にのせる。口にする(店の名を。ありのままの心境を。弁解めいたことを。胸に湧き上がってきた疑問を。絞り出すように言葉を=原田糸)。▼口に出す(思ったことをぼんぼんと。思うことを腹にためずに=高橋治)。強硬意見が口に出る。結論を口に上せる。祝詞を奏する。▼口を利く(馀そうな。生意気な。考え深げに。対等に。小言めいた。突っけんどんな。ぼんぼんと荒っぽい。他人行儀のような"徳田)。▼口をきく(ずけずけと仲間同士の。芝居がかりな横柄な=川端)。▼口をついて出る(歌の文句が。甘ったれた声が。うまい言いぬけが。素直な気持ちが。考えたこともない言葉が魔物のように=円地)。 **言えない** ▼言えない(呆ぁきれて物も。大きな声では。口が裂けても。うっかり文句も。頼まれたら嫌とは。ちょっとやそっとでは。胸が一杯になって物が"二葉亭)。人に言えない苦しみ。物も言えないほど沈みこむ。おいそれと言い出すわけにいかない。いざとなると言い出せない。何をか言わんや。言葉に窮する。口が感電したように痺しびれ、先の言葉が続けられない連城。死人に口なし。言うべき言葉を知らない。言える筋合いではない。物を言う気が失せる。 **言える** ▼言える(口では何とでも。少なくともこれだけは。見ようによってどちらとも)。どの街にも多かれ少なかれ言えること。▼言っても言い過ぎではない(失敗したと。ナンバーワンと)。言っても過言ではない(失政と。未曽有の椿事ちんと)。 **言ってのける** ▼言ってのける(失礼な質問を。こともなげに。ずばりと。澄ました顔で。にべもなく。悠揚迫らず。思いきり言いたいことを。厳臆する色もなく。他人事ごとのように。奇怪なことを平然と=隆。技術的な説明をさらっと浅川)。さらりと言ってのける(言いにくいことを。驚くべきことを=隆)。 **言わせる** ▼言わせる(ぎゃふんと。口をばくばく。喉をころころ。鼻をくんくん。歯をがちがち。紙袋をがさがさ。コートの裾をバサバサ。扉をばたんばたん。のどをぜいぜい。旅を風にばたばた。膝頭をかたかた。世の中をあっと)。▼物を言わせる(金力と権力に。工業力に。十手に)。うんと言わさずにおかない。敢えて言わせていただく。 **言わない** ▼言わない(一言も文句を。ろくなことを。誰にも。二度と。押しつけがましいことを。あまりやかましく。良いとも悪いとも。蛤に住みたいに口を閉めて何も=田島)。何か言わないと気がすまない。口をつぐんで何も言わない。口が腐っても言うまいと思う瀬戸内。一度たりとも言ったことはない。言わず語らずに(悟らせる。理解させる)。言わず語らずのうちに頼りにする。何も言わずに突然いなくなる。何の文句も言わずに許す。不平も言わずに働きつづける。物も言わずに逃げだす。くどくど言わずに引き退きがる=舟橋。文句一つ言わずに精一杯がんばる=鈴木光。言わぬが花。▼ふっつり言わなくなる(文句を。悪口を)。おくびにも想いを外にあらわさない=杉本。さほど口うるさくない。口まで出かかった言葉をのみこむ。▼言いっこなし(お世辞は。面倒なことは。野暮は)。▼打ち明けない(絶対に。何一つ)。他人に口出ししない。▼口に出さない(決して。一言も)。 <102> # 言う い **いう【言う】** ▼言う(小声で。大声で。感情をこめて。唐突に。ぽつりと)。▼言わない(別に。一言も。決して)。胸に秘めておく。 **あえていう【敢えて言う】** あえて言う(必要もないことを。反対を押し切って)。 **いいかげん【好い加減】** 好い加減な(返事。約束。男。やり方)。好い加減なことを言う。好い加減なところで手を打つ。好い加減にしろ。 **いいすぎる【言い過ぎる】** いくら何でも言い過ぎだ。言い過ぎを謝る。 **いいそこなう【言い損なう】** うっかり言い損なう。大事なことを言い損なう。 **いいだす【言い出す】** 不意に言い出す。自分から言い出す。誰かが言い出さないと始まらない。 **いいのこす【言い残す】** 言い残すことはないか。大事なことを言い残して死ぬ。 **いいわけ【言い訳】** 言い訳がましい。言い訳に(聞こえる。終始する)。言い訳を(並べ立てる。口にする)。その場しのぎの言い訳。子供じみた言い訳。見え透いた言い訳。下手な言い訳。言い訳のしようがない。 **いわない【言わない】** 夢にも口に出したことはない"南条。一度も口に出したことがない。▼口を割らない(頑として。決して。めったなことでは)。一言の言及もない。誰にも口外したことがない。あえて言挙げしない。▼こぼさない(一言も不平を。愚痴一つ)。差し挟まない(異議を。少しの疑いも)。一言の(挨拶もない。断りもない。弁解もしない。申し開きもしない)。一言も(感想を漏らさない。愚痴を言わない。私語を挟まない。しゃべろうとしない)。一言も言葉を交わさない。胸一つに(おさめておく。しまっておく)。 **いわれる【言われる】** 「言われる(親にやいやい。こっそり陰口を。ちくちくと皮肉を。周囲から子供っぽいと。他人からとやかく。勉強しろとうるさく。耳にたこができるほど何回も=笹沢)。言われてみれば確かにその通り。何を言われても黙って従う。他人にとやかく言われたくない。いわゆる(学者肌のおとなしそうな男。やり手型の人物)。▼謳うたわれる(絶世の美人と。世に剣豪と。少年の頃から秀才の名を=津本)。小京都と称される町。世に言う(進学校。魔性の女。名作)。▼呼ばれる(演歌の女王と。尊敬の念をこめてご老体と三好徹)。 **きこえよがし【聞こえよがし】** 聞こえよがしに(言う。うそぶく。叫ぶ。溜め息をつく。咳やぶく。どなる。悪口を言う)。聞こえよがしの独り言を漏らす。近所に聞こえよがしの声を出す。わざと近所中に聞こえるように言う。 **くちかず【口数】** 口数が(多い。少なく無愛想。増える。減る)。目立って口数が少なくなる。口数の少ない陰気な女の子=加賀。口数少なに世を渡りながら勝利を得る藤本。言葉致が(多い。少ない)。 **くちさき【口先】** 口先だけの嘘を平気で言う。男の甘い口先にころりと負けてしまう瀬戸内。口先のうまい男。口先一つで商売をする。言葉が口の先まで出かかったりする。舌先三寸で(こまかす。丸めこむ。高く売りつける)。舌先三寸にだまされる。舌三寸で言いくるめる。 **くちょう【口調】** ▼口調(脅したり労かたったりするような尊大な=佐藤巻。なかば自分にも尋ねているような内省的な"石坂。ねばつくような執拗な光酒。一言ずつ確かめるような緩やかな=高井。相手の弱点をじんわり刺し貫くような皮肉っぽい宮本旅。いかにもやさしく注意してやるといった=筒井。歌うような抑揚を帯びた辻井。恨みでもあるような粘っこい"井上靖。厳しいようで一脈の温かみが通っているような石坂。殊更引きのばしたような抑揚のない=日野。子供を諭すときのような悩んで含める=人間。四五歳の子供をあやすような甘い=壺井。思慮分別ありげな落ちついた=太宰。冷たくなぶるような小林久。丁重きわまるまわりくどい"星。吐いて捨てるような倉橋。用意していたような淀みのない歳沢。路傍の石に話しかけるような谷川)。口調が(どこか素っ気ない。次第に熱を帯びてくる=篠田)。詰問するような口調で詰め寄る=五木。▼口調で答える(きっぱりとした。「いいよ、別に」と切り落とすような窓沢)。口調に(威厳が加わる。毒がある。姉とげがある。威圧的な響きがある。畏怖の色がにじむ。感情を交えない。戸惑いが含まれている。余裕が感じられる。ほんのり辛味が利かせてある=円地)。▼たんたんとした口調(自分に関係のないようなことを告げるように=原田康。少しも気負ったところのない宮本郷)。▼口つき(何か言いたげな。好感の持てない)。▼語調(陰気きわまる。皮肉な棘が含まれているような"小林久)。強い語調で話を巡る。語呂が(いい。悪い)。 **げんきゅう【言及】** あっさりした言及にとどまる。言及する(可能性に。細部まで。具体的なスケジュールに)。話題が(金銭に及ぶ。事態の核心に近づく)。 **げんじ【言辞】** ▼言辞を吐く(卑猥いもな。不作法な。げんじ的な。好戦的。時流に投じた。不逞いての)。どうにでも解釈できる言句。▼言説(不穏当な。まじめな)。言説の底に激しい潮らしのように流れている夢見る人のバッション=佐藤春。先覚の言に学ぶ。その言やよし。軽率に言を発する。口語体で書く。口語的な文体。難解な語句。訣別の辞を書く。死語を含んだフレーズ。文言(契約書の。条約の。法律の)。 **ごき【語気】** ▼語気(確信を相手の胸にも植えようとする熱心な大佛。自分に観もぅうつような強い"堀)。段々語気が弱くなる。なじるように鋭い語気で問われる。一段と語気を強める。語気荒くまくしたてる。語気鋭く(詰め寄る。問い詰める)。語気強く叱りつける。語気に怒りを込める。鋭い語気に気圧ぃぁされ柴田剣。 **ごせい【語勢】** 語勢(非難を含んだ。斬りすてるような)。語勢にじんわり憤怒が滲にじむ浅川。 **ことばずくな【言葉少な】** 言葉少なに(会話を交わす。答える。返事をする。別れを告げる)。言葉もなく(うなだれる。引きさがる)。 **ごび【語尾】** 語尾が(ため息になる。尻つぼみになって消え入るよう原田光。鋭い硬むちに変わる=山岡。ぶつぶつと泡のように溶けていく=海堂)。▼語尾が震える(かすかに。期待に。小刻みに。感動で。わなわなと)。語尾に力をこめて言う。藤躇いうを語尾に漂わせる。甘えるときのようなやや語尾のたかぶった声=吉川。語尾を(上げて尋ねる。口の中に呑み込む。はっきり発音しない)。あやふやに語尾を濁して言う鈴木光。舌足らずで語尾を引きずるような話し方鎌田。びしりと語尾を折るような喋り方"五木。言葉尻が(震える。弱々しい)。言葉尻に(力がない。かぶせるように話す)。 **そっちょく【率直】** 率直な感想を述べる。言葉が誇張のない率直な響きで耳に届く吉行。率直に(自己を <103> さらけ出す。喜びの声をあげる)。思ったことを率直に進言する。あるがままの自分をあるがままの言葉で率直に語る=飯田。感児を抜きにして事実だけを率直に見る。大佛。久しぶりに会えた喜びを率直にあらわす三浦蔵。率直に言う(誤解を恐れず。感情を交えずに)。少女らしい率直さで尋ねる。熱心さと率直さに打たれる。隔意なく(話を交わす。意見を交換する)。正直言って(羨ましい。怖い。ほっとする。迷っている)。正直な話(見当もつかない。正しいとは考えていない)。ストレートな(言い方。発言)。ストレートに断る。気持ちをストレートに出す。好意をストレートに表現する。ずばずば(言いきる。意見を言う。思うとおり言う。辛辣なことを言う)。隔たりなく話す。端的な表現。端的に(言い表す。語る。表現する)。 **ちょくげん【直言】** ずばりと核心を突く直言。▼直言する(上役に。上司に。首相に政策の不備を)。遠慮せずに言う。歯に衣着せぬ物言い。歯に衣着せずにずばりと言う。 **とやかく** とやかく(言う筋合いはない。するうちに出立の日が近づく)。他人のとやかくの干渉を極端に嫌う。今さらどうのこうの言っても仕方がない。どうのこうの言っている場合ではない。何だかんだと(理由をつける。言って執拗に食いさがる)。何のかんのと(はぐらかす。言っても仕方がない)。士農工商いったってだめ=内田瓦。四の五の(こねる。ぬかす)。四の五の言わず働け。四の五の言われる覚えはない!高杉。あれこれとうるさく言う。またぞろ誘導尋問だとか酢の蒟蒻にんにのとか言われてはかなわん=和久。 **のべたてる【述べ立てる】** ▼述べ立てる(悪口を。言い訳を。恨みつらみを。常識論を。身の上を。口々に。滔々にうと。得意になって。縷々っるとして。まことしゃかに)。弁じ立てる(演説口調で。滔々と)。 **のべる【述べる】** ▼述べる(手短に用件を。年頭の祝辞を、決意を簡潔に、事実を淡々と、持論を治々と。確定した事実だけを。紋切り型の口上を。個人的見解を勝手に。恨みのたけを綿々と)。▼意を述べる(感謝の。陳謝の)。▼辞を述べる(開会の。歓迎の)。自由に意見を述べ合う。▼申し述べる(挨拶を。礼を。事情を子細に)。▼開陳する(議論を堂々と。得々として批評を)。詳細は後述する。しみじみとした口調で出会いを述懐する=鈴木光。感動を直叙した文章。▼直叙する(事実だけを。目に映じたままを)。思うところを陳ずる。▼弁じる(一席を。豪傑談を)。▼詳述する(趣旨を。方法を。本論で)。古今の人情を曲尽する。こまごまと陳述に及ぶ。陳述を裏書きする証拠。手の平をかえしたように陳述をくつがえす野間。 **はっきりいう【はっきり言う】** 夕立といっしょにかみなりが落ちるようにはっきり云う山本周。確言を与える。言明する(正式に。はっきりと)。公言してはばからない。信念を公言する。責任を持って明言する。 **はつげん【発言】** ▼発言(勇気ある。あまりに下卑げがた。議論の本質を無視した)。発言が(二転三転する。波紋を広げる)。発言に(気をつける。耳を傾ける)。発言の(場が減る。機会が回ってくる。真意を確かめる。本気度をいぶかる)。発言を封じる。手を上げて発言を求める。▼発言する(順繰りに。上役を差し置いて。自由なスタンスで。その場の思いつきで。次々に立ち上がって)。爆弾発言を用意する。発言権が(大きい。小さい。増す)。新興国が発言権を獲得する。発言撤回に追い込まれる。発言力が(大きい。強い)。 **ひとこと【一言】** 一言(成感想を述べる。声をかける。名を呼ぶ。不満を漏らす。別れを告げる。詫びを言う。お礼を申し上げる)。▼一言(吐き捨てるような。ひとく傷つける。耳に痛いとどめの。最後の止めを刺す萩原刻。爆弾ほどの効果のある=宮部。胸にざっくり切りつけるような光瀬)。最後に一言決まったようにロリのけぞりとはつんー付け加える阿部吐き出すように) 一言が(胸に落ちるややあって胸を刺し貫く。ぐっと心にこたえる。耳にひっかかかる)。一-言で(言い表す。片付ける)。ずばり一言で評する。一言に万感の思いがこめられている。ほんの一言に要約する。一言ずつ(語る。区切る)。一言一句も(開き漏らすまいとする。忘れることができない)。一言半句もおろそかにしない。一言ごとに(声が高くなる。問を置く)。一-言二言(口を利く。挨拶の言葉を口にする)。不用意に漏らした一語。最後の一語に力を入れる。一言の下に(退ける。撥はねつける。否定する)。首相の片言隻語が国際問題になる。片言隻語をとらえて揚げ足をとる。片言隻句もゆるがせにしない。先生の片言隻句も聞き漏らさない。 **ひとこえ【一声】** 一声(大きくどなる。吠える。高く悲鳴を上げる)。甲高い声で一声叫ぶ。切って落とすようなひと声"本庄。 **ほうげん【放言】** ▼放言(勝手な。不粋な。無責任な。乱暴な。悔しまぎれの。酒に酔った上での)。酔漢の放言に閉口する。▼放言する(うっかり。前後を考えもせずに)。無責任な発言。 **ほざく** (言いたい放題のことを。馬鹿の一つ覚えを。皮肉たっぷりに)。你そうな口を叩く。▼ぬかす(勝手な文句を。ぐずぐず。つべこべ。寝言みたいなことを)。 **もうしあげる【申し上げる】** ▼申し上げる(お悔やみを。お礼を。お詫びを。老婆心ながら。偽りのないところを)。ほんの二三の実例を申し上げるにとどめる=江戸川。▶言上する(意見を。お礼を。胸中の秘を。助命を)。▼上奏する(招聘しい、うを。中止を)。要路に上書する。上奏文を奉呈する。 **ようご【用語】** ▼用語(政治的な。専門的な。明確な法律上の)。術語(科学の。文学の。法律上の)。術語を(解説する。使う。理解する)。 <104> # 行き来する・通う い **いきき【行き来】** 行き来が途絶えがちになる。現在ほとんど行き来がない。定期的な行き来が途絶える。頻繁に行き来がある。何かと行き来のあった仲。▼行き来する(往来に人が。お互いの家を。過去と現在を。三日にあげず。数えきれぬほどの車が。ロビーを雑多な人間が。テーブルの間を。着飾った男女がにこやかに。海を大小様々な船が=綾辻)。行き来する人々の足音。いろいろに行き来する心持ち。親しく行き来する者がほとんどいない。胸の底に行き来する屈託。道路を通行する。▼行き交う(人々が忙しく。ひっきりなしにトラックが。くすくす笑う声が遠く近く=有川)。行き交う人が引きも切らない。せわしげに行き交う人々。 **いったりきたり【行ったり来たり】** 行ったり来たりを繰り返す。▼行ったり来たりする(家と別宅を。奥と入り口を。同じ区間を。同じ道を。双方の部屋を。部屋の中を。店の前を。廊下を。往米を無閣に。幾度となく。しょっちゅう。何度も)。▼往ったり来たりする(橙ぉりの中の熊のように=石坂。屋根裏の廊下を鼠ゆずの如くチョコチョコと"谷崎)。懐疑と弁明の間を迷児詳ぃのように行き戻りする"高橋和。昏くれかかった灰色の雲が墨の滲にじみのような濃淡を去来させている=松木。▼行きつ戻りつする(石垣の前を。大樹の下を。街の中を。ロビーを。現実と夢の境を。家のまわりをぶらぶらと。意識と無意識の問を"山本周。思いが暗い迷路を=勝目。檻の中の動物のように芝木)。 **きょらい【去来】** ▶去来する(目に猶疑心にふきが。感慨が胸を。考えが頭を。頭の中に様々な思いが。さまざまな感情が。雲が山々の狭問を。山霧が波状的に)。▼胸に去来する(不安が。十年間の出来事が)。問いを心に去来させる。 **おうふく【往復】** 店と病院の往復を繰り返す。▼往復する(丘の上と下を。学校と家を。自宅と会社の間を。台所と茶の間を。脇目もふらずに。日に何度となく。刑務所と娑婆吼~とを"井上ひ)。仔細らしくペンをインキ逝っぇに往復させる三島。ピストンが往復運動する。同じ道を行き帰りする。行きも帰りも一緒。古典と現代を往還する。バスがビストン輸送をする。行きはよいよい帰りは怖い。上り大名の下り乞食"吉川。 **おうらい【往来】** 狭く咽喉のとのようになった往来"岡本。ざんざ降りの往来がとっぷりと暮れかける=山手。往来に面した家。往来を行ったり来たりする。路地の往来を妨げる。人の往来が(少ない。絶えない。激しい)。▶往来する(海と山とを。車が道路を)。 **おおどおり【大通り】** 大通りが大河のように横たわる=森玲。大通りから脇道に入る。大通りに往来が絶えない。大通りまで小走りに出る。大通りを歩く。ガラス越しに表通りが見える。表通りに堂々と店を張る。幹線道路から分岐する。大道を大手を振って歩く。公々然として天下の大道を開歩吵。する萩原湖。バス通りに途切れることなく商店街が続く。店舗が櫛比吼っする広い通り。広小路をゆっくり進む。目抜き通りを歩く。 **かいどう【街道】** 深い杉木立に囲まれた街道。街道が(ゆるやかに先へ延びる。崖と海との間の白い筋となってどこまでも長く延びる内田百)。街道の宿場。街道を(北上する。行ったり来たりする。西に向かって歩く)。広い往還に出る。峠の旧道をおりる。 **かよう【通う】** ▼通う(お針の稽古に。足しげく。しげしげと。予備校に毎日。草いきれが鼻に。自宅から大学に。スポーツジムに頻繁に。置段どおり学校に。がちょろちょろあえぎあえぎに。三日にあげず店に。女の許もとへせっせと)。▼歩いて通う(毎日。雨の日も風の日も)。▼血が通う(思想に。隅々にまで)。温かい血が通っている=丹羽。▼通ってくる(順に血の気が。毎日欠かさず)。▼通わせる(心を。血を)。▼通いつめる(図書館に。茶屋にせっせと)。▼通わせあう(情を。互いに心を)。▼登校する(歩いて。集団で、電車に乗って)。▼通学する(自転車で。私服で。制服で。電車で。徒歩で。バスで)。通学路を(歩く。設ける)。 **つうきん【通勤】** 通勤の足を確保する。通勤を急ぐ人々。▼通勤する(自家用車で。自転車で。電車で。バスで)。歩道を急ぎ足に流れて行く通勤者たち=日野。 **こうかい【航海】** 航海の安全を祈る。長い航海のあいだに辞書の味を覚えたらしい三浦し。無事に航海を終える。航海する(大洋を。陸地に沿って)。遥かな船路をたどる。 **ふなたび【船旅】** 船旅(世界一周の。海賊に怯ぉびえる恐怖の竹西)。単調な船旅に飽きる。 **こうこう【航行】** 航行する(公海を。大洋を)。白波を蹴って航行する艦隊。船が航行不能に陥る。船をロ <105> **こうさてん【交差点】** 交差点が目前に迫る。交差点で信号待ちをする。交差点を(曲がる。渡る。斜めに横断する)。兵を辻に配する。辻から辻へ走りまわる。四つ角を曲がる。小走りに四つ角を突っ切る。四つ辻を(折れる。曲がる)。車が十字路で停車する。十字路を(通り過ぎる。左に曲がる。右に曲がる)。ロータリーに進入する。駅前のロータリーに出る。ロータリーを(曲がる。回る)。 **こうそくどうろ【高速道路】** 高速道路に(乗る。入る)。高速道路を走る車の音が河の流れのように聞こえる=高井。車の列が高速道路を流れていく。インターチェンジから五キロの地点。インターチェンジを目指す。ハイウェイを飛ぶように走る=阿部。 **こうつう【交通】** 大陸との交通が開かれる。交通の(類繁な道路。混雑を緩和する。流れを阻害する。要衝に当たる町)。交通至便な(オフィス。住宅地。ホテル)。交通の便が(いい。悪い)。交通事情が悪い。交通事情を改善する。交通網が(寸断される。発達する)。交通量が(多い。少ない)。駅からのアクセスがよいホテル。 **こうろ【航路】** 航路(飛行機の。船の)。ゆったりと安らかに航路をたどる。人生航路に迷う舟橋。鳥と鳥の間を運航するフェリー。東京とニューヨーク問を運航するジェット機。待てば海路の日和あり。鳥が潮路の果てにかすかに見える=鈴木三。八重の潮路をたどる。 就航する(客船が。ジェット機が。定期便が。連絡船が)。 **コース** コースが毎日決まっている。食事の一通りのコースが済む。通常のコースから外れる。コースに分かれて別行動する。正常なコースに戻る。コースの外側に出る。頭の中でコースを思い描く。自在にコースを選んで疾走を続ける。途中でコースを変える。別のコースをたどる。逆コースを(進む。走る)。直線コースを歩く。噂にたがわぬ難コース。 課程(上級の。初級の。中級の)。 **すれちがう【すれ違う】** すれ違う(会話が。列車が。対向車と。廊下で。恐ろしいほどのスピードで。そっぽを向いて)。すれ違う人々が気味悪そうに見やる"池波。意見がすれ違いになる。車のすれ違いもできない。 行き違う(感情が。電車が。話が。船が)。運悪く行き違いになる。 **ちかみち【近道】** 近道(上達への。成功への。立身出世の)。かなりの近道になる。近道して目的地まで行く。近回りして急ぐ。近回りの道。 早道(出世の。上達の。問題解決の。着実にやるのが結局は)。学問に王道なし。 **つうこうにん【通行人】** 通行人が行き来する。道路を通行人が映画のように動く=尾辻。ビルの五階の窓から見下ろすと通行人が蟻もりのよう福永。通行人に声をかける。通行人の(袖を引く。間を縫って近づく。視線が気にならないほど酔う荻野)。通行人を呼びとめる。道行く人々。 **つうろ【通路】** 通路が複雑に入り組んでいる。地下の通路ががらんとしてまったく人気やとがない"五木。迷路のように通路が四通八達し入り組み合う。吉村。通路に(大勢の人が座り込む。沿うように進む)。影が薄暗い通路の奥に吸い込まれる!赤瀬川。通路を行ったり来たりする。人だかりに通路を阻まれる。 通り道(風の。台風の)。倒木が通り道をふさいでいる。煉瓦敷炊しきのアブローチが建物の玄関まで続く=阿川佐。渡り廊下を歩く。頭の回路が正常に働く。記憶の回路が切れる。回路に電流を流す。友人との距離感に悩む女子中学生のような思考回路に陥る=三浦し。 **どうろ【道路】** 道路(崖っぷちの曲がりくねった=渚水俊。涵がれた川のように白い=丸谷。やっと車をかわせるほどの幅の清水俊)。道路が(渋滞する。空いている。行き止まりになる。磯沿いにくねくねと走る。くる。行き止まりになる。ねくねと曲がっている。人で一杯になる。ほの白く見える。まっすぐに走っている。山の麓をうねうねと走る。網目のようにひろがる!安部。碁盤の目のように走る=高村慈紺のリボンのように一直線にのびる=石森)。延々と道路が続く。ラッシュで道路が込む。道路に(砂利を敷く。人影がない。水をまく。面した部屋)。道路の(流れが滞る。端を歩く)。道路を右に折れる。海岸沿いの道路を走る。県道を小走りで横切る。砂利道(強力な日光を白くはね返す。田に挟まれただらだら登りの)。直線道路が(続く。延びている)。道路標識を頼りに走る。道路網を整える。道筋が薄暗い川のように伸びている=伊坂。運転手泣かせの悪路。悪路に自ら進んで踏み入る。中央分離帯寄りの車線に移る。車線を変更する。自動車がかろうじてすれ違える程度の車道。車道に(沿った並木。飛び出す)。対向車線に飛び出す。ドライブウエーを走る。 **とおり【通り】** 通り(眠っているような静かな徳田。家々が寄りそうようにして立ち並ぶ=辻仁。黒い河のような寒々と光った"高見町。自動車がすれ違うにも苦苦労するほどな狭い!水井龍。賑やかな店舗が櫛比~っする広い=中野美。バーや飲み屋が目白押しに並んでいる=藤原。昔ながらのこみこみした『松浦)。通りが(車で混み合う。人波で埋まる)。通りから奥まったところにある。通りからの雑音が容赦なく侵入してくる。通りに(沿って並ぶ店。目を走らせる。ほとんど人影が見当たらない。まばらな灯がともる。面した席に座る)。ショーウインドーが通りに並ぶ。広い通りに出る。通りの向こう側に目をやる。通りを(左に折れる。まっすぐ歩く。急ぎ足に行き過ぎる。行ったり来たりする。ゆっくり行き過ぎる)。 通りを歩く(昔のままの。流れに逆らうように)。通り一つ挑んだ **つうこう【通航】** 通航する(船舶が。運河を。海峡を。公海を。領海を)。軍艦が遊弋行する。 <106> # 歩く・進む い **あぜみち【畦道】** 田んぼの畦道祕ぜ。あぜ道にタンボボが群れている"あさの。畑の畦道を歩く。収穫を終えたあらわな哇。 **うらどおり【裏通り】** ▼裏通り(人気ゆとのない。火の消えたように静かな=田山。台所の屑籠がげのような匂いがする=原田宗)。裏通りにごちゃごちゃ並ぶ店"原田病。わざわざ裏通りを選んで歩く!後藤。大通りを裏に入る。人生の裏街道。裏町を器用に走り抜ける。繁華街から裏道へ逸くれる。裏道を抜ける。人目を避けて暗い裏道を歩く。 **いっぽんみち【一本道】** 一本道(野中の。ゆるい上りの)。一本道が分岐にさしかかる。後ろに長く曠野心,の一本道のような跡を残して船が突き進む小林多。真っ直ぐな一本の道。一筋道に遠見がつく。 **いなかみち【田舎道】** ▼田舎道(辺郡みんな。ひなびた)。田舎道を(歩く。走る)。茫々とした草の道。細い田圃路於弘『がうねうねと野に通じる=田山。なだらかな山を切り開いた農道。野道を(歩く。辿たどる)。 **かいわい【界隈】** 町の界隈をうろつく。 **がいろ【街路】** ▼街路(舗装された。街灯がこうこうと照らす。閑散とした。人通りが少ない。夕闇が迫る)。街路に(人の姿がない。街灯がともる)。夕闇が街路を濡らす。舗装された街路を行く。街路樹が(葉を落とす。続く)。街路を歩く。街路を隔てた向こう側。蟻ぁりのように人がうごめく街路!宇野利。酒場が密集している町筋。街路が迷路状に入り組む。街路に(陽が降り注ぐ。人影がない)。窓の明かりが街路に流れ出る=野間。群衆が街路を埋める。 **とちゅう【途中】** ▼途中(仕事の。旅の。通勤の)。途中で(気が変わる。口をつぐむ。だめになる。道草を食う。くちばしを挟まれる。試合を棄権する。事業が挫折する。何度もやめたいと思う。練習を切り上げる)。▶途中で投げ出す(仕事を。物事を)。階段の途中にしゃがみこむ。航海の途中に立ち寄る。途中を飛ばして読む。言葉を途中で(切る。遮る)。途中変更を余儀なくされる。行きがけにちょっと寄る。会社への行きがけに店を覗のぞく。言いかけた言葉を中途でのみこむ。話を中途で遮る。作りかけのまま放っておく。▼途次(帰郷の。上京の。通勤の)。半ばで筆を投げる。志半ばで倒れる。思い半ばに過ぎる。まだ(先がある。テスト段階)。帰る道すがら友と語る。▼道半ば(改革は。復興は。要求実現は)。道々事情を聞く。帰る道々考える。 **ろじ【路次】** 帰宅の路次を待ち伏せする。 **とじょう【途上】** ▼途上(帰宅の。出勤の)。建設の途上にある。発展途上にある企業。 **ひとどおり【人通り】** 人通りが(次第に増す。絶えない。ばったり)。人通りが途絶える。人通りの(絶え用を見計らう。まばらな商店街)。人足が途絶える。 **びん【便】** ▼便(午後の。午前の。飛行機の。船の)。最終の便に間に合う。一日三便を増便する。定期便が(延着する。欠航する)。定期便を間引き巡航する=辺見。浦々へ回る便船。▼減便する(電車を。バスを。旅客機を)。船便で送る(手紙を。荷物を)。 **ほそみち【細道】** 山がりくねった細道。城塞託いうの頂きにでも導くかのように細道が何度も折れ曲がってつづく=武田炎。道(糸のような。車が一台ようやく通れる。自然にできた踏み跡のような=古井)。鬱蒼とした山の斜面に細い獣道がつづく三浦し。細い道が(蛇行する。曲がりくねる。入り組んでいる。ひっそり迷路のように巡る=島尾)。車のすれちがいもできないほど道が細くなる―宗田。▼小道(草に覆われた。ぽつんと街灯がついた。若い緑の間からしっとりした土の肌をのぞかせて静かに伸びている朝の=黒井)。人間一人がやっと通れるくらいの小径に=山口。小道がゆるくのぼって行く。小道に(足を踏み入れる。沿って細い川が流れる)。誘われるままに林間の小径を行く=中野美。小道を行ったり来たりする。ジグザグの小道を登る。 **ほどう【舗道】** ▼舗道(落ち葉を敷き詰めた。街灯がほうと照らす)。舗道が昼の緩んだ熱さを残して温かく汗ばむように湿る=長野。濡れた舗道が黒々と光る。かっとした太陽光線が舗道に照る。舗道の照り返しで頭がくらくらする=ねじめ。節道を車と人間がひしめきあって流れる=五木。雨が徳道を濡らす。街路樹の黄葉した落ち葉が転がるように舗道をすべってゆく五木。寒そうな音を立てて鋪道沿とを缶が転がっていく!佐藤愛。舗装からの照り返しが熱気を強める"大敵。舗装道路が川沿いに曲がりくねって続く。幅の広い舗装道路を走る。家屋の影から出て舗装路に立つと太陽が両手を一杯に広げている=原田宗。 **まわりみち【回り道】** 水溜まりを避けて回り道する。▼回り道をする(大回りに。わざわざ)。岩場をからめて登る。ぐるりと大回りする。迂遠にぇな策を弄する。迂曲らいの道をたどる。迂路ぅぅを(たどる。取る)。川が大きな迂回いかをつくって流れる。▼迂回する(施を。水たまりを。道を。ゆるやかに。山を大きく)。迂回路を(探す。たどる。通る)。遠回りなコースをとる。▼遠回りになる(道が。かえって)。わざわざ遠回りする。遠回りして帰る。 **みち【道】** 道(海岸線を走る。幸せに至る。人通りの多い。埃児にっぽい。海に臨んだ断崖の。砂利が敷き詰められた。選択肢のない唯一の。ひどく閑散とした。人通りの絶えた。薄暗い人影の疎まばらな=吉行。うっすらと朝靄紡修の消え残っている海沿いの=福永。街灯の乏しい暗い藤枝。鉤かきの手に曲がっている=高橋涼。枯れ草と若草の緑がだんだら模様になった"あさの。寒風の吹きまくっている埃っぽい夕暮れの"宮本却。底の浅い夜気の漂う黒井。太陽光を反射して雪のように輝いている未舗装の"西木。地を割って奈落の底に下りていくような暗さを増す倉橋。つまさきが痛くなるくらいの急な下りの高田。融雪水が急流になって流れる川のような=高田)。この道数十年。その道ひと筋に進む。道が(東西に走る。南北に走る。下り坂にさしかかる。ぐっと大きく曲がる。先へ先へとのびている。九十九折らぶりになる。どんどん狭くなる。上りにさしかかる。二つに分かれる。ゆるやかなカーブを描く。草の影をはらんで黒い=大岡。車幅礼いのように八方に散る"光瀬。死んでしまったかのように無表情"黒井)。他に道がない。確実な道が目の前に現れる。凍った道が滑る。照り返しで道が白く光る。平坦な道が続く。白墨で描いたように幾筋かの道が見える=佐多。山の裾を切り取るようにして路が細い帯のように捲ょく佐多。道が碁盤の目のように(走っている。張りめぐらされている宮本輝)。▼道が開ける(出世の。目のうろこが落ちでもしたようにカラッと戸板)。人々の上に最上の道が開けよかしと祈る有島。ばったり道で逢う。道に(打ち水をする。月光が散り敷く。木の葉が散り敷く。花を撒きき散らす。ひしめく自動車の群れ。夕闇が漂い始める)。作家の道に入る。詩歌管絃の道に長じる。まっとうな道に立ち戻る。元の道に引き返す。人倫の道にもとる所業菊池。道の(端に寄ってよける。曲がり鼻に姿を現す。両側に所狭しと並ぶ店。左右に低い家並みが続く=福永。中央が羊の背のように盛りあがる大江)。恐れない者の前に道は開ける有島。戦う以外に道は残されていない豊田。林の間を行く狭い道は湿っていて蹴らしに弾むような感じがある=高井。千里の道も一歩から。道を(行きつ戻りつする。行ったり来たりする。挟んで真向かいにある建物。川のように水が洗っている=飯田)。生き残る道を講じる。風が道を吹き過ぎる。堅実な道を選ぶ。自立への道を探る。数里に余る道を遠しとしない。大義の道を守って死ぬ。独自の道を模索する。斜めに道を横切る。自らの道を凛りんとして進む。落石が道をふさぐ。泥んこの道をビチャビチャ歩く=北。道を歩む(栄光に輝く。学者の。順調に流行作家の!佐野)。▼道を急ぐ(ひたすらに。足早に駈けるように=原田康)。道をたどる(渓谷に沿って。道なき)。▼道をのぼる(なだらかな。険しい。頂上への)。道が曲がりくねる。道が大蛇のように曲がりくねる=あさの。一筋の道がミミズみたいに曲がりくねる=辺見。▼道(海沿いに蛇行する。アップダウンのある曲がりくねった=篠田)。蛇のように蜿蜒うねっている路国木田。道が(波打つようにゆらゆらと下る=泉優。縫うようにうねる=中)。丘の裾に沿って道がうねる。▼道に迷う(心が。雨の中で。山中で)。わけも分からぬ道に踏み迷う。どちらへ歩いていいのだか方角もたたない=内田百。道なき山中を右往左往する。誤った道に迷い込む。 <107> **みちじゅん【道順】** 道順が分からない。道順を丁寧にたどっていく。家までの道順を尋ねる。いつもの道順を変える。教えられたとおりの道順を几帳面にたどる=古井。行き方は三通りある。▼順路(会場までの。見学の)。順路を無視して歩く。 **みちなり【道なり】** 道なりに(進む。ゆるいカーブを曲がる)。道に沿って(歩く。進む)。 **みちのり【道のり】** ▼道のり(かなりの。険しい。長い。会社までの道のりが遠く感じられる。道のりを簡略に書きこむ。遠い道のりを(歩く。やって来る)。片道(一時間の距離。四キロを歩く)。片道だけ飛行機を利用する。▼航程(船で四時間の。ジェット機で三時間の)。行程をショートカットする。具体的な行程を検討する。順調に行程をこなす。長途に就く。長途の(行脚、旅に出る。冒険旅行)。▼道程(緩慢な死への。人生の。長い。どんなに急いでも丸二日はかかる)。 **みちばた【道端】** 道端に咲いている花。道傍戯さの木蔭に腰を下ろす大岡。沿道を埋める観衆。道の端にたたずむ。道の路肩が崩れる。車を路肩に止める。路傍に行き倒れる。路傍の石に腰をおろす。 **やまみち【山道】** ▼山道(傾斜の急な。険阻な。なだらかな。暗く寂しい。人煙を離れた。羊腸たる。落石の多い。枯れ葉に埋まった。九十九折5ぶりの狭い。人ひとり通らない。つづら折れに曲がっていて険しい"長崎。七曲がり八曲がりした瞼けゃしい=林京。春の粧そいが美しい多岐川)。寂然と人煙を離れた山路獅子。胸突き八丁の山道が続く。車が山道に入る。本道から山道へ入る。山道を登りにかかる宫部。曲がりくねった山道を歩く。転げるように山路を駆け下りる佐藤奏。麓を目指して山道を駆けに駆ける"熊合。まん丸の大きな月が出て夜の山道を行く俺たちを守るように照らす三浦し。とぼとぼと山路をたどる。林の中をだらだら上りに草を踏み固めた道が奥へ向かう大岡。峠の道をあえぎあえぎのぼる。山越しの道をとる。小さな沢のような濡れた道を登る"今日。目をそむけたいくらい険しい道"吉本。夏の山道のような噂ますの味"村上券。林道をのぼる。杣道於茲を登る。傾斜が急な杣道をすべらないようにそろそろと降りる=藤沢。杣道のように細い道!藤沢。 **ルート** ルートがはっきり浮かび上がる。観光のルートに乗せる。新しいルートを開く。自前のルートを確立する。特殊なルートを持つ。無難なルートを選ぶ。海上ルートが延びる。出口への経路が分からない。来た時と同じ経路で戻る。最短の経路を結ぶ。 **ろじ【路地】** 路地(真空地帯みたいに静かな=田辺。木造アパートや長屋の集まったような狭い=つか)。路地が(格子模様に通っている=灰谷。迷路のように入り組む"重松)。生暖かく立ち込める霧を行灯はんが照らして路地が海の底のようにほの暗く静か=藤沢。路地から(路地へと彷徨、まう。路地を逃げ回る)。路地に(面した玄関。緑台を引っ張り出す。夕暮れの色が立ちこめる)。暗い路地に迷いこむ。声が路地に響く。狭い路地に連れこむ。路地に入り込む(細い。迷宫のような)。路地を(一つ間違える。隔てた向かいの家)。小さな路地を器用に抜ける。家々が肩を寄せ合っているような路地を抜けて行く=高橋治。小店のひしめく狭い路地を抜ける=内海。大きな道から小路が枝のように伸びる=高井。小路から表通りに出る。小路に入る。 **よこちょう【横丁】** 稲妻型に山がるいくつもの横町=岡本。横町に入って行く。横町を曲がる。 **ろじょう【路上】** 路上で(遊ぶ。喧嘩州んをする)。路上に(人があふれる。しょんぼりと立ちつくす伊藤整)。体が路上に投げ出される。車を路上に放置する。声が路上に響く。門灯のほのかな光が路上に落ちている。 **ろめん【路面】** 路面(平坦な。アスファルトの)。路面がうっすらと雪化粧する。七月の陽射しで路面が焼け燗ただれているように見える=伊坂。路面に(影がくっきりと落ちる。タイルを敷き詰める)。車輪が路面の変化に追従する。 **わきみち【脇道】** 脇道がうねうねと木立の中に消えていく=宮部。脇道を通る。話が脇道に(それる。入る)。 **バイパス** 岡道に入る。バイバスを(通る。走る)。会議が横道に逸くれる。話を横道にそらす。 <108> # 意気込む・気負う い **いき【意気】** 意気(颯爽、うたる。凜乎りんたる)。意気が(上がる。横溢ゅうする。消沈する。すぼむ。沮喪沢をする。沈滞する。盛り上がる)。人生意気に感ず。報国の意気に燃える。意気に燃えて赴任する。意気を(くじく。眉間にひらめかす)。不退転の意気をもって進む。慷慨だいいやしくも死を辞せぬとの淋漓いりんたる意気を発揮する=山田美。意気軒昂ぶんとして言う。意気大いにあがる。意気高らかに家に帰る。意気たるや山をも呑まんばかりに美濃部。意気は天を祈っかんばかり=隆。意気を壮とする。 **きがい【気概】** ▼気概(猪突猛進らいにんの。身命を惜しまないという萩原朔)。気概に(打たれる。満ちた文章)。峻烈しんな気概を示す。天下を呑む気概を持つ=舟橋。状況に反抗する気概ってもんが俺にはたりない三浦し。 **いきがい【生き甲斐】** 生きがいのある(命を生きる。生活。人生を見つける)。生きがいをしみじみ味わう。生きがいを感じる(仕事に。生活に。しみじみと充実した。束の間の緊張感に"椎名誠)。 **いきごむ【意気込む】** ▼意気込む(内心。しめたとばかりに。生一本に復讐戚ふれん。を"山手。将軍に鼓舞された兵隊みたいに安岡)。意気込んだ出鼻をくじかれる。果たし状でもつきつけるような意気ごみ=山崎。財産を全部投げ出しても惜しくない意気込み=江戸川。死地に活路を見いだす意気込みで出発する人間。先生と対決するような意気込みで向き合う幸田文。新たな意気込みを見せる。腕まくりしてすこむ。 **きえん【気炎】** 少壮気鋭の若き学者。新進気鋭の(政治家。評論家)。新しい仕事に張り切る。 **しき【士気】** 現場の士気が落ちる。陣中の士気が上がる。士気に悪影響を及ぼす。全軍の士気に響く。士気の(衰えを吹く。沮喪行くをおもんばかる)。 **いきさかん【意気盛ん】** 老いてなお意気盛ん。万丈の気を吐く。昂然と胸を張り千万人と難いも我れ往かんの勇気にあふれる=加藤。壮挙(史上空前の。千載一遇の)。全身が気炎で燃える。気炎に風を添える。とどまるところを知らない気炎に少し水をさすような口調藤沢。▼気炎をあげる(酒場で。飲んで)。怪気炎をあげる。いい気な空気炎をあげる。 **こうぜん【昂然】** 昂然ぜんと(頭をもたげる。敵に挑戦する。胸を張る。顔をあげて生きる)。上体を真っ直ぐにして昂然と歩く"井上焼。ふてぶてしく昂然と言い放つ。岸田。 **きせい【気勢】** 気勢がいやがうえにも上がる。どうにも気勢が上がらない。気勢に押される。相手の気勢をそぐ。反対の気勢をあげる。鋭気に満ちた行動。鋭気を蓄える。 **いさむ【勇む】** ▼勇む(気が。声が)。勇んで(答える。上京する。出かける)。心に勇みを添える=幸田露。勇み声が山野に響く。▼勇み立つ(勝ち戦に。目処ぁとが見えたと)。 **がむしゃら** がむしゃらに(事件を追う。仕事をする。坂を上っていく)。無二無三に(押し通る。突っ込む。走る。乱れ立ち騒ぐ波濤と=有島)。 **きあい【気合】** 腹の底から揺すぶられるようなすさまじい気合『久間。気合が(足りない。ほとばしる。満ちる)。出そこなった屁、のようなのどかで平和でしまりのないか細く愛らしい声=飯田)。声に気合がこもる。鋭い気合が響く。気合の入った突貫工事。丹田に気合をこめる。気合を入れる(よしっと。軽く自分の頬を叩いて"有川)。気合を入れて役作りをする。裂帛肛の気合が響く。下腹に力をこめて短く鋭く裂帛の気合をかける"飯田。ふんどしを締めてかかる。 **きおいたつ【気負い立つ】** 旧体制を糾弾しようと気負い立つ=辻井。気負い立った色を明瞭にした顔「野上。気負い立って進撃する。気負い込んで答える。気負い立っている男の姿が壮大な焰瑚のを見るような快さ高見町。 **いきおいこむ【勢い込む】** 勢い込んで(質問する。怒鳴るように答える"中島敦)。グワラリという品の悪い形容でも使わなければ間に合わないほど勢い込んでガラス戸を押し開ける太宰。鼻息も荒く宣言する。▼鼻息を荒くする(達成感で。満足感で)。鼻息荒く(勢いこむ。気負いこむ。進む)。勇躍戦場に赴く。世界に勇躍する。 **きおう【気負う】** 気負った(口ぶり。発言)。気負って報告する。出陣でもするように気負って言う円地。▼気負い(言葉の端々に窟らかわれる"高井。背伸びを強いられる者の"高樹)。気負いが(先に立つ。あっけなく崩れる)。気負い気味の言葉。気負いのない台詞。斬りこむような気負いを見せて聞く"高橋治。 **きがまえ【気構え】** 一から改革する気構えで取り組む。必殺の気構えで進発する。戦闘をも辞さない気構えをあらわす。▼辞さぬ気構え(一戦を。水火も)。 **きはく【気迫】** 鬼という鬼をあつめたようなすばらしい気晩は=坂口。声に必死の気迫がこもる。憧ふひいた眸子とから烈々たる気魄が光のように放射する=山本忠。気晩に押されて賛成してしまっ佐藤愛。相手の気魄に呑まれる=黒井。全身を青白い気迫の炎が覆?三浦し。気迫のこもった(答弁をする。打ち込みを持て余す)。やるぞという気迫を見せる。エイヤッとばかりの気迫をこめてたたく水倉。凄すさまじいまでの気迫を目の当たりにする=火坂。 **けっき【血気】** 血気に満ちた若者。暴虎馮河以うにぃの血気に任せていわれなく押し進むほどの無謀の者"山田美、若い血気に任せて大抵のことはする夏目。血気の勇にはやる。年若くして血気の多い連中。血気盛んな(男。若者)。血の気が多い。血の気に富む。 **すすんで【進んで】** 進んで考えを言う。悪路に自ら進んで踏み入る。一歩進んで考える。自ら進んで告白する。われこそと言わないばかりにばっと一斉に手をあげる=中。嫌な顔一つせずに協力する。嫌な顔もせずに親切に教える。億劫ゅうがらずに(答える。辞書を引く)。進取の気性に富む。我から(会に参加する。理由をつけて飛び出してくる)。家のことを我から話す。生活の渦巻の中に我から飛び込む。我と思わん者は手を挙げてほしい。自発的な(意志。行動。発言)。自発的に(脱退する。名乗り出る。申し出る。辞める)。 <109> **せいりょくてき【精力的】** 精力的な(製作を続ける。太い眉。気配をみなぎらせる)。精力的に(仕事を続ける。執筆活動を始める。取材に駆け回る)。見るからにエネルギッシュな男。エネルギッシュに活動する。 **せっきょくてき【積極的】** 積極的な(意見を出す。行動的人間。行動に出る。理由。思い切った態度)。積極的に(休を働かす。協力する。口を利く。声かけをする。支持する。情報を集める。取り組む。発言する。事業を推し進める。女性に話しかける。とんとん攻める。問題をつきつめる)。組合活動に積極的に参加する。自らの運命を積極的に切り拓いていく=清原。積極性に(乏しい。富む)。積極性を(失う。高める)。物事を発展的に見る。 **ポジティブ** 練習に脂が乗る。ポジティブな(生き方。思考。評価。イメージを植えつける)。 **がいこうてき【外向的】** 外向的な(性格。人)。外向的に振る舞う。 **のうどうてき【能動的】** 能動的な(アプローチ。態度を養う)。能動的に(行動する。働きかける)。 **のりき【乗り気】** 乗り気でしゃべる。話に乗り気な素振りを見せる。今一つ乗り気になれない。乗り気になる(縁談に。すぐに。すっかり)。 **まえむき【前向き】** 前向きで真摯しんな生き方。前向きな意見を提示する。計画に前向きな姿勢を示す。前向きに検討する。失敗を前向きにとらえる。 **てをあげる【手を挙げる】** 手ぃぁをあげて(欲迎する。賛成する。推挙する。待ちかねる)。 **そうしゅ【双手を挙げる】** 双手を挙げんばかりな賛意"里見。 **ちのけ【血の気】** 血の気が赤く浮き出す。顔に血の気が戻る。頬に血の気が通ってくる。▼血の気がさす(頬にばっと。顔にうっすらと。心地よい労働をした後のように頬にポッと=檀)。 **てきがいしん【敵愾心】** 笑止ながら殊勝な敵愾心"中。敵愾心が(湧く。いちどきに姿なえる。むらむらと燃え上がる)。敵愾心に燃える。敵愾心を(抱く。丸出しにする。あらわにして問い返す)。激しい敵愾心を燃やす。 **とうし【闘志】** ▼闘志(内なる。青年らしい。遅くしい。猛々しい。激しい。正義感に裏打ちされた。湧き上がり进皿にる)。岡志が(起こる。ほとばしる。みなきる。盛り上がる。湧き上がる。湧く。全身にみなぎる。もりもり湧いてくる)。むらむらと闘志がかきたてられる=飯田。不屈の闘志で再起する。闘志とでもいうのであろうか、心臓のあたりが痛痒か吹いようなむずむずする感じ=山本周。闘志に(火がつく、火を点っける)。瞳が闘志にあふれている。いかにも闘志のかたまりといった日焼けした精悍な青年加賀。闘志を(あおる。失う。抑えかねる。発散する。秘める。喷出させる。沸き立たせる。むきだしにする)。温容であるが、うちに闘志を秘めた顔「源氏。闘志をみなぎらせる(精力的な体に。横顔に)。▼闘志を燃やす(静かな。一段と。闘犬のように。猛然と)。 **せんい【戦意】** 戦意が(くじける。高揚する。沸騰する)。戦意を(失う。喪失する。催す)。 **とうこん【闘魂】** 不屈の闘魂。闘魂が潜む。闘魂の権化のごとき人物"坂口。闘魂を燃やす。勝負に賭ける闘魂を失う。 **とうそうしん【闘争心】** 闘争心が胸にうずく。闘争心に火をつける。闘争心を(あおる。失う。かき立てる。発揮する。秘める)。 **はき【覇気】** 覇気が衰える。五体に覇気が満ち満ちている。人並みに劣らぬ覇気がある。覇気に富む。 **ファイト** ▼ファイト(猛烈な。ものすごい)。ファイトが(出る。湧く)。ファイトを(促す。燃やす)。ファイト満々。 **はやる【逸る】** ▼逸る(血気に。功名心に。匹夫忍。の勇に。ふるえるほど心が深沢。心が奔馬のように獅子)。逸る気持ちを抑える。功を逸る傾きがある。 **はりあい【張り合い】** ▼張り合いが出る(気持ちに。勉強に)。生きる張り合いになる。働くことに張り合いを感じる。働き甲斐がぃが(ある。見つかる)。気持ちに張りができる。仕事に張りが出る。▼張りを持つ(心に。生活に)。やりがいのありそうな仕事。やりがいを(感じる。見つける)。 **はりきる【張り切る】** 餌のよく行き渡った小犬のように張りきる=阿久。若い女教師に課題を報告する男子学生のように張り切って我がちに不潔話の口火を切る荻野。張り切っているためか舌の回転にも拍車がかかっている=有川。腕によりをかける。気張って(言い放つ。見て歩く)。 **みずから【自ら】** 自ら(襟を正す。好んで苦労を背負い込む)。みずから実践することで指導する=池波。危険を自ら買って出る。自らに言い聞かせるようにつぶやく=畑。自らの(頭で考える。力を誇示する。非を認める。不明を恥じる。首を絞めることになる)。自らを(鼓舞する。律する。腹だげむように荒々しく言う福永)。 **てずから【手ずから】** 手ずから(植える。稽古してやる。酒肴しゅこうをすすめる)。手桶にょを手ずから下げる。老師が手ずから入れたお茶。身をもって示す。思想を身をもって実践する。身を以もって孤独な戦いを挑む=瀬戸内。 **やるき【やる気】** やる気が出る。やる気のある(人材が集まる。ところを誇示する)。俄然やる気を刺激される。せっかくのやる気を削ぐのは憚ぃられる=三浦し。やる気満々で腕まくりをする。 **モチベーション** ▼モチベーション(研究の。購買の)。モチベーションを(維持する。高める)。 **りきむ【力む】** ▼力む(声が。ここ一番になると)。力んだ勢いが抜ける。「力みよう(すごい。不自然なほどの)。力み返った慰めの言葉。▼力み返る(一生懸命に。むきになって)。 **いきむ【息む】** いきむ(全身で。強く。低く長く)。 <110> # 生きる・甦る い **いかす【生かす】** ▼生かす(過去の教訓を。削った字句を。優れた資質を。先祖の知恵を。地域の特性を。豊富な経験を。特色を上手に。原作の持ち味を。身についた学問を。限られた資源を有効に。失敗を次の仕事に)。▼最大限に生かす(趣味を。ブラス面を)。質感を生かしたデザイン。地の利を生かした人海戦術"横山。互いの個性を生かし合う。長所を十分に生かしきる。生かさず殺さずの半殺し。 **いきかえる【生き返る】** ▼生き返る(死者が。花が)。シャワーを浴びて生き返った心地。息を吹き返す。限を洗われて蘇生にもする思い=松本。▼蘇生する(イメージが。幸福が。忘れ去っていた感情が)。 **いきかた【生き方】** ▼生き方(右顧左眄らに、的な。自己に忠実な。自由奔放な。鍍金沢山だの。ひとりよがりの。身の丈に合った。家畜のようにおとなしい単純な"石坂。生活の知恵のない不器用な立原。地を道はう虫のような『高橋治)。生き方が作品に反映する。女には女の生き方がある=山本周。生き方の幅が広がる。自分の生き方は自分で決める。新しい生き方を実践する。きりっとした生き方をする。他人の思惑を気にしないで自分の生き方を貫く=阿刀田。 **いきざま【生き様】** 生き様(奔放な。孤高に徹した)。 **いきづらい【生きづらい】** 高齢者が生きづらい社会。暮らしが(立ち行かない。楽ではない)。暮らしがたい世の中。生活が日増しに苦しくなる。 **いきている【生きている】** ▼生きている(おめおめと。今日もなお。絶えずはらはらして。喜びが枯れないで。人間は夫々それに一生懸命に=中村真)。生きている公算が強い。▼生きていく(流れにまかせて。しっかりと地に足をつけて=火坂)。仕事一筋で生きてくる。まだ息がある。まだ虫の息が通っている=舟橋。目が黒いうち。涙ながらに生前のこと臨終のことなど、さながら生けるがごとくに語る"今東。存命の喜びを楽しむ=中野孝。現に存命の人。存命中に仕事を完成させる。父の存命中はお世話になりました。 **いきぬく【生き抜く】** ▼生き抜く(厳しい社会を。極道の世界を。困難な時代を。大らかに。生きて生きて。力を尽くして。何が何でも。荒涼とした自然を)。命の燃え尽きるまで力の限りに生きぬく=飯田。生き抜けるか否かの分かれ道。 **いきのこる【生き残る】** ▼生き残る(厳しい戦国の世に。環境にうまく適応して。暗い思いが執念深く高樹)。最後の生き残り。まだ絶滅寸前の生き残りがいるかもしれない!本多晖。自分の生き残りしか眼中にない。生き残りの戦略を獲得する。▼生き長らえる(この世に。時を経て。おめおめと無為に)。 **しにそこなう【死に損なう】** (危うく。一度)。落命を免れる。 **しにおくれる【死に遅れる】** (夫に。妻に)。死に遅れて生き恥をさらす。 **いきのびる【生き延びる】** ▼生き延びる(激しい戦いを。かろうじて。しぶとく。隷属に耐えて。草や木の皮を食ってでも佐藤多)。▼生きのびる(最底辺の生活のなかで。うまく立ちまわって戦火の中を=高橋和)。わずかに生きのびる道を見いだす。永井路。生き延びるために鎬礼のを削る。 **えんめい【延命】** ▼延命する(患者を。政権を)。一時的な延命策。長寿延命の酒。 **いきもの【生き物】** 不思議な生き物を見るような目"東野。生きとし生けるもの。水の躍るような運動は生き物のよう。大岡。生き物のようにあやしくおどり上がる裾さばきの乱れ"鳥尾。果汁が生き物のように勢いよく飛び散る=小川。炬火が炎と煤すずとで赤くただれ凶悪な形相をした生き物のようにのたうちまわる=本庄。縄が生き物のように揺れながら谷底へ垂れる=伊集院。 **いきる【生きる】** 生きる(力が生まれる。力を失う。望みを捨てる。張りが生じる。道を定める。目的を手にする。喜びをしみじみと味わう)。▼生きる(閥達が2な生を。別の人生を。明るく元気に。過酷な時代に。自己に誠実に。社会の底辺に。青春を十全に。歴史と伝統に。命ある限り。霞を食べて。肩肘張って。自分を捨てて。常識の枠外で。人に頼らず。太く短く。分別を持って。夢を食って。自分の心のままに。戦中戦後の谷間に。全く違う次元に。やましさを抱かずに。わがまま一杯に。一途な理想を抱いて。肩を寄せ合って。感情を押し殺して。昂然心らと顔をあげて。自然にいだかれて。衰残の姿をさらして。できるだけ目立たないように。控えめに慎ましく。まっとうな世界で。妄想に引きずられて。ユーモラスに賑々しく。若い人に気兼ねして。女として精いっぱいに=丹羽。父親の望みと正反対の方向に=篠田。およそ重量感をともなわずヒラヒラと"阿久。影のように床に張りついて=高橋三。雑草のようにしぶとく島尾。死を細かいちりみたいに肺の中に吸い込みながら=村上春。残された時間を精一杯"重松。残る若さにしがみついて有吉。毎日毎日びくびくして虚勢で福永。身を縮めるようにして高橋三。胸をいっぱいに張ってのびのびと"石坂。楽天的な明るさをもって"加太)。まだまだ生きるつもり。生きることに投げやりになる。生きることの喜びを満喫する。▼時代を生きる(同じ。苦しい)。▼縛られて生きる(過去に。幻影に)。▼背負って生きる(重い荷物を。時代を。宿命を。海幸を)。▼忠実に生きる(職に。本能に)。▼守って生きる(古い氷よりの礼を。遺言を)。生きた(英語を学ぶ。心地がしない。空がない)。生き続ける(嘘の中で。魂のうちに永遠に。連綿として社会に。千年一日のごとく。死を欣求にんしながら=隆)。 **いききる【生き切る】** (毎日毎日を。生き難い時期を。今ここにある時を完全に『中野孝。後ろを振り向くことなんか必要ないくらい充分に柴田翔)。 <111> **せい【生】** 生の(深みに沈む。不安に脅かされる。充実感が体の奥から湧き上がってくる=南木)。生を(営む。食う)。永劫以沙の生を夢見る。からくも生をつなぐ。自分の言葉で自分の生を語る。贅沢だいな生を享受する。先人たちの生を参考にする。 **ろめい【露命】** ▼露命をつなぐ(かろうじて。ほそぼそ)。 **いきづく【息づく】** 息づく(葉が緑に。気分が生き生きと)。人生が新たに息づきはじめる。伸び伸びと若さを息づかせる。 **いきられない【生きられない】** ▼生きられない(一人では。他人の物語の中で人は=あさの)。▼生きていけない(あだやおろそかには。押しが強くなくては。この人なしでは。支えられなければ)。生きていく甲斐がいがない。 **いっしょう【一生】** 一生(思い出に残る。恩に着る。現役でいたい。元気に暮らす。あくせく暮らす。うだつが上がらない。悔いがついてまわる。忘れることはない)。▼一生(三十に届かない短い。教育界に貢献した三好京。ただひたすら言葉に身を捧げた三浦し。ともかくいっぱいに生きたという点では思い残しのない=円地)。一生がめちゃめちゃになる。砂時計の砂のように一生がれる=キーン。一生に関わる一大事。一生の(運命が決まる。別れ道に立たされる)。一生は二度と繰り返せない。一生を(研究に捧げる。四季に喩たとえる。浪人で終わる。犠牲にして藩公に仕える今日。凝縮したような旅「中野孝。左右するような出会い=貫井。通じて忘れられない思い出=柴田翔)。大過なく一生を過ごす。短い一生を終わる。無名のまま一生を暮らす。安逸な生を食傷するほど貪って一生を夢のように送る=有局。▼一生を送る(平凡な。大過のない。忍苦の)。 **こうせい【後生】** 後生一生のお願い。 **いちだい【一代】** 一代で(財産を築く。産をなす)。一代の不覚として悔やむ。 **しゅうせい【終生】** 終生(忘れ得ぬ感動。変わらない友情。やむことのない夢)。俗に化して終生安んじる=中局災。 **ひっせい【畢生】** 畢生(傑作。大作。大事業)。誕生から死去まで。 **いのち【命】** 命(あっての物種。ある限り働く。からがら逃げる。大事に逃げ回る)。取り返しのきかないこの世にたった一つの命"飯田。自分の命以上に大切なもの。命が(あるだけ儲もうけ物。いくつあっても足りない。織りなすドラマ。終わりに近いことを感じ取る。危険にさらされる)。家に命が吹きこまれる。家族の命がかかっている。救える命が増える。一つ間違えば命がない。人一人の命が関わっている。恋愛という感情は命が短い。岩川。命に(別状はない。関わるような失敗を経験する=畑村)。女の命に潤いを与える。山仕事で集中力が途切れたら命にかかわる三浦し。命に関わるほどの(怪我。病気。猛毒)。命に懸けて(守る。嘘偽りは言わない)。命の(恩人。火がほどなく消える。火をかきたてる)。明日をも頼みがたい命の夕闇にさまよう~有房。風にゆらめくほどの弱い命の灯=檀。小刻みにふるえつづけている小鳥のあえかな命の重さ=飯田。人間の命の値打ちに重い軽いはな久しぶりに命の洗濯をする=佐野。命はない三好後。いものと覚悟する。花の命は短い。情け容赦もなく命まで奪う。命より大事な品。命を(金で買う。危険にさらす。犠牲にする。捨てる覚悟。粗末に扱う。的にして闘う。もって順涵がう。かけて名誉を守る。捨てて情に殉ずる。とりとめたことは不幸中の幸い。投げ出す覚悟はできている。張って試合を続ける。やりとりする戦争。賭けて火の中に飛び込む"有栖川。賭けるほどの金は貰っていない=隆。鸿毛にらの軽きにたとえる=辻真。なげ出さんばかりの険しい一日の労働"有島)。あたら命を落とした英雄。唯々として命を捨てようとしている。永遠の命を得る。金と命を天秤穴にかける。患者の命を預かる。国民の命を守る。死すべき命を長らえる。徹底的に命を狙ってくる。理不尽に命を奪われる。若くして命を絶つ。生命公のを縮められるような苦しさ=徳田。食べてその日の命を紡ぐ"辺見。女房と子のために命を捨てる気でいる=高橋点。命を賭して(助け出す。守る)。 **じんめい【人命】** 人の命は(地球より重い。はかないもの)。自らの命を(縮める。なげうつ)。人命が危険にさらされる。災害で多くの人命が失われる。人命に(危険を及ぼす。かかわる重大事)。 **しんめい【身命】** 身命を(賭して戦う。捨てて人を救う。惜しまないという気概萩原吻)。 **めいみゃく【命脈】** 唯一の命脈と頼む。命脈を保つ。 **いちめい【一命】** 一命を(捧げる。捨ててかかる。賭して闘う。賭けて大役を果たす。なげうって働く)。 **きしかいせい【起死回生】** 起死回生の(大博打おおば。策。反撃が始まる。ホームラン。言い逃れを考える。一手を思いつく)。 **きょうぞん【共存】** ▼共存する(異文化が。生と死が。世界の国が。調和的に。人が自然と。複数のメディアが)。憤慨と不安の気持ちを共存させる。 **きょうぞんきょうえい【共存共栄】** 共存共栄の(道を探る。精神を大切にする)。 **きょうせい【共生】** 共生の(関係。道を探る)。生物が共生する。 **こくみん【国民】** 国民が(納得しない。迷惑する)。圧倒的多数の国民が支持する。国民から(遊離する。広く信頼を集めている政治家-柳田)。国民と政府が離間する。国民に(畏怖される存在。負担を転嫁する。塗炭の苦しみを与える=津本)。国民の(敬愛が集まる。支持を失う。審判を仰ぐ。信頼を得る。信を問う。生活を守る。利益に資する。安全に背を向ける。か命を確保する。怨嗟紋んを一身に集める。知る権利に応える。信託にこたえる。願いを顧みない。理解の下に進める)。広く国民の意見を求める。真実を国民の目から隠す。国民の目に(明らか。映る。さらされる)。国を(味方につける。悲惨な状態に陥れる)。国民的な(運動。課題。コンセンサス。エネルギーの高揚)。 <112> **このよ【この世】** ▼この世(矛盾に満ちた。功名の心がうずまく)。この世が明るくなる。この世からはじき出される。生きた証をこの世に残す。この世の(辛酸をなめる。見納め。地獄を見る思い。ものとは思われぬ美しさ。春とばかりに浮かれ騒ぐ若竹。ものならぬ夢魔を見る思い=山田風)。この世ならぬ(凶悪な事件、華麗な祝祭の街"井上婚)。欲望の支配する現世。魑魅魍魉ふぅが人界にさまよい出る。 **しせん【死線】** 死線を越えて五銭、苦俄を越えて十銭=浅田。死の線上をさまよう。生き死にの境をさまよう。死生の岐路に立たされる。生と死の谷問を彷徨たまう藤本。 **しみん【市民】** 市民が貧しくては購買力もへったくれもない“五木。市民に暴力を振るう。市民の側に立つ。噂が市民の間に広く流布する。ニュースが市民の間に広まる。市民運動が起きる。市民的精神に裏打ちされた文化"吉田。何の変哲もない平凡な小市民。小市民的な幸福を求める。平和な小市民的な家庭の夕食後の一光景。 **じゅみょう【寿命】** 寿命が(縮む思い。延びる。短い。縮まるような態陶しさ=徳田)。遅かれ早かれ寿命の尽きる日が来る=火坂。寿命をすり減らす。 **てんじゅ【天寿】** 天寿を(恋う。早める。まっとうして死ぬ)。 **てんめい【天命】** 天の与えた命数が尽きる。天命がつきる。天命に(従う。任せる)。天命を(恐れる。拝する。果たす)。 **しょうがい【生涯】** 生涯(独身を通す。忘れることのできない日。今日の感激を忘れない=山岡)。▼生涯(平穏無事な。漂泊に明け暮れた=中野孝)。ご恩は生涯忘れない。のたうちまわるように生涯さまよいつづける=白井。新たな生涯が始まる。生涯で(一番幸せな日。最も幸福な瞬間に酔う沢木)。生涯に(終止符を打つ。おける唯一の汚点。悔いなくおだやかな死を迎える=瀬戸内。初めて味わう爽快な気持ち=海音寺)。生涯の伴侶。 **しょうがい【生涯】** 生涯(独身を通す。忘れることのできない日。今日の感激を忘れない=山岡)。▼生涯(平穏無事な。漂泊に明け暮れた=中野孝)。ご恩は生涯忘れない。のたうちまわるように生涯さまよいつづける=白井。新たな生涯が始まる。生涯で(一番幸せな日。最も幸福な瞬間に酔う沢木)。生涯に(終止符を打つ。おける唯一の汚点。悔いなくおだやかな死を迎える=瀬戸内。初めて味わう爽快な気持ち=海音寺)。生涯の伴侶。 **いっせい【一生】** 生涯(独身を通す。忘れることのできない日。今日の感激を忘れない=山岡)。▼生涯(平穏無事な。漂泊に明け暮れた=中野孝)。ご恩は生涯忘れない。のたうちまわるように生涯さまよいつづける=白井。新たな生涯が始まる。生涯で(一番幸せな日。最も幸福な瞬間に酔う沢木)。生涯に(終止符を打つ。おける唯一の汚点。悔いなくおだやかな死を迎える=瀬戸内。初めて味わう爽快な気持ち=海音寺)。生涯の伴侶。 **いっしょうがい【一生涯】** 一生涯(独身で通す。罪の意識にさいなまれる)。一生涯を下積みで終わる。 **しょせい【処世】** 処世つたなく貧乏暮らしが続く。軽しょせい薄な処世に対する冷やかし。処世の(術が巧みになる。人情に落ちこむ)。用心深い処世術。処世術を(心得る。身につける)。 **しょみん【庶民】** 庶民が戦争に駆り出される舟橋。庶民に負担を押しつける。庶民の(怒りが爆発する。活を温かく描く)。無挙しこの庶民の血を流したくない舟橋。庶民を虫けら同然に扱う渡辺。庶民的な(女。町)。 **じんみん【人民】** 人民が一丸となって決起する。人民の血と汗を吸い取って作り出した金"船戸。 **たみ【民】** 民みな鼓腹して悦ぶ萩原朔。在所を追われた民が流れこむ。民の(怨嗟玆んの声。声を聞く。幸せのために財を使うあさの)。万民の幸福を願う。朝の光が万民の身に照る。 **りょうみん【領民】** 領民から収奪する。領民の膏血にうをしぼりあげる"柴田剣。領民を(豊かにする。塗炭の境遇におとしいれる=半村)。 **じんせい【人生】** 人生(意気に感ず。一寸先は闇。最大の出来事。無上の愉快。いかに生くべきか)。人生(禍福吉凶の予測しがたい=網淵。所詮あぶくのような=小池。花咲き匂うような堀)。人生が(変わるほどの経験。神話的色彩にいろどられる=村上春)。思いがけない人生が開ける。人生に(焦りを感じる。厚みがある。彩りを与える。倦怠け以を感じる。悲観的になる。道がつく。夢を持つ。生きがいを発見する。浮き沈みはつきもの。バラ色を期待する。無駄なことは一つもない)。人生の(網の目の上を巧妙に歩く=中村兵。舵かじをしっかり握って放さない人間。ダイビングを試みる人今東)。輝かしい人生の扉が開かれる=日井。戦争と人生の残酷な真実"長部。束っかの間にひらけた人生の小春日和人同。不器用な人生の詐欺師=円地。変転常なき人生の急行列車。人間。人生は(朝露のごとし。複雑なパズル。全く奇々怪々。思い通りに行かない。それほど甘くない。なかなか楽じゃない。一寸先が光の世界か圏の世か分からない=舟橋。各自の記憶の集積に過ぎない!篠田。可能性がいっぱい!なかにし。奇跡に満ちている=佐藤愛。一筋縄ではいかない鈴木光。短いかげろうのようなもの=井上ひ。夢のようなもの"辻井)。その後の人生は不遇の一語に尽きる=清原。第二の人生へ旅立っていく。人生への期待に満ちていた頃。人生も満更悪くない。人生を(甘く考える。金に換算する。深く生きる。棒に振る。庸に過ごす。面白おかしく生きる。悟りきった穏やかさ。楽しく染め上げる。旅になぞらえる。冒険して生きる。台なしにした疫病神"笹沢。楽に平和に渡っていく=田山)。与えられた人生を精一杯生きる。新しい人生を切り開く。一縷いもの希望に人生を賭ける。各人各様の人生を歩む。幸福とは無縁に人生を生きる。楽しく人生をエンジョイする。破綻なく人生を過ごす。華やかな人生を求める。ふやけた人生を拒否する。もう一度人生をやり直す。これまでの人生をコマ落としのように見てしまう。篠田。しっかりした足とりで人生を歩く野間。自分の命を削りながら人生を生きた男!今更。人生を送る(破天荒な。平穏無事な。まっとうな)。明日どうなるか誰にも分からない。未 <113> # 生きる・甦る-36 **来は幻に過ぎない篠田。** 露骨に自分の人生観を押しつける白井。人生経験に乏しい。人生航路に迷う舟橋。順調安穏な人生コース"有吉。屈することのない積極的な人生態度"窪川。人生論を闘わせる。 **じんぶつ【人物】** ▼人物(改革遂行にふさわしい。とかく噂のある。一癖も二癖もある。閻魔封んのような鬼のような残酷な=網淵。およそ人に悪意を持たぬ穏やかな=司馬。叩けば埃児、この出そうな横山。心を託するに足る=本庄。「時は金なり」に背広を着せたような=里見)。相当の人物に違いない。ホームドラマにしたら理想的な人物配置=高井。人物本位で選ぶ。 **せいし【生死】** 生死に関わる危難。生死の(間をさまよう。関頭に立つ。危姪を冒す。瀬戸際にある。ほどは不明。確率は五分五分。観念を超越する。境目をさまよう)。チフスを思い生死の巻やまをさまよう~美濃部。生死を(掌中に握る。眼中に置かない。賭してた たかう)。人の生き死にがかかっている。死活の鍵を握る。死生をともにすると誓う。死命を決する。鉄壁をも貫く筆を督して死命を制するまでに突き通す=山田美。融資を受けられるかどうかが会社の死命を制する=池井戸。生死の境を(切り抜ける。彷徨う する)。人の生と死を見つめる。 **せいぜん【生前】** 生前に(書き残したノート。親しくしていた人)。生前の(思い出の数々。声が流される。記憶がよみがえる)。 **せいぞん【生存】** 生存が危ぶまれる。生存に適した環境。生存の根底を脅かされる。生存している可能性が高い。生存権を脅かす。▼生存者(災害の。事故の)。 生存者を(確認する。発見する)。 **せいめい【生命】** 生命が逞封くしく脈打つ。政治的生命が台無しになる。潑刺はっとした生命が発露する。生命に危機が及ぶ。生命の(糸を繰り出す。危機に瀕する。危険が去る。火花を燃やす。息吹を吹きつける。行く=島崎)。親から子へと続く途切れない大きな生命の流れ。最後のチャンスに自分の生命の火を賭ける=瀬戸内。祭壇の上を暗い河を渡る生命の火のような燭台処にくを持った影が動く辻井。自然の一隅にひそむ生命の囁ききに耳を傾ける=岸田。沸々とたぎるような生命の激しい流れ=野問。若い時代が古葉にかわろうとするようなみずみずしい生命のかがやき=島崎。生命を(危険にさらす。犠牲にする。凶刃の前にさらす。擦り減らす苦行。投げ出して戦う)。新たな生命を生み出す。多様な生命を育む森。尊い生命を棒に振る。歌手生命を絶たれる。栗鼠りすや兎さのようなすばしこくて弾力に満ちた生命感"大江。 **にんげん【人間】** 人間(心がにこっている不透明な"三浦綾。どんな奇酷父命令にも従える無気力な林京。偉大な先恐ろしげなものを秘めた安岡。色あせて艦褸ぼろのようになった遠褥。自分勝手が服を着て歩いているような=佐藤多。聖人と渾名→だされるほどの=岡本。たかだか百年ばかりの生命の高田。都会に巣食う泡沫蛆うのような今日。復讐しされてしかるべき陳。ぺらぺら喋ん。りまくる世馴れた=加賀)。地獄谷みたいにぶつぶつ煮え立つものがなくなったら、人間、お仕舞だよ!高井。地球上に人問が満ちあふれる。何とまあ沢山の人間がひしめき合っているのだろう“大庭。人に恨まれるような悪い人間ではない内田康。対等な人間に対する目で見る。人間の(格が上。生地が出る。屑。出来が違う。内面を描く。人間たる所以冷え。裏表に精通する。風上にもおけない。心とは思えない冷たい心。深部を覗のぞかせる。知恵の及ぶところではない。根を掘り下げる。一生はあざえる縄のことし藤本。悩みの根源に目を向ける"瀬戸内)。半ば錆びついた人間の機械"野間。人間は(木石にあらず。技術に比べてはるかに進歩しない"恐怖にさらされる。焰掘のが恐ろしい力で燃え尽きて浅川)。どの道人間は死ぬもの。一皮剣とけば人間はだれもがどろどろの内臓とどろどろの魂を持っている藤本。人間を(逆境に陥れる。大切にする。愛してやまない。孤独に追い込む。催眠術にかける。見抜く目が冴えている。物のように使い捨てる。牛のように扱う遠藤。品物のように扱う~渡辺。虫ケラのように扱う経営者"高橋三)。独立自尊の人間を煙たがる。共有の知的財産。人類に明るい希望をもたらす。人類を破滅に導く。頭の黒い良知ず。神ならぬ身。高度な知能を持った生物。天は二物を与えず。万物の霊長。▼擬人化する(自然の話力を。動物を)。 **ぬけがら【抜け殻】** 人間の抜け殻と化す=山田風。形骸だけの死骨と化す。抜け殻のような不幸な晩年を送る=消原。抜け殻のように生きながらえる=中。夫を失って抜け殻のようになった老いた母=西木。魂の抜け殻のように茫然虹心と立ち尽くす=池井戸。▼抜け殻のようになる(情熱が燃えつきて小林信。信じていた全てを失い人間)。生ける屍山跡と化す葵。生ける屍のような毎日を邵ぃなびた田舎の旧家で送る=島尾。死んだも同然の身。魂を奪われた人間のようにもぬけの殻の肉体!菊池。 **はんせい【半生】** 半生(清廉剛直な。華やかな。櫛風沐雨しいふうの)。半生の悪業の深きを悲しむ菊池。半生の起伏を(回想する。綴っっる)。半生をしみじみ振り返る。後半生(暗澹んとした。悠々自適の)。後半生を(田舎で暮らす。送る)。不幸な前半生。 **ひと【人】** 人(物静かで出しゃばらない。犬畜生にも等しいような卑屈な。尾辻。お友達になりたいようなとても楽しそうな内海。顔のこわいに似ず子供のきげんをとることが上手な"中。足元から鳥が立つみたいに忙しい=田辺。いかめしくて気むずかしいような"石森。石のごとくに静まりかえった=中。香り高き花の如く小鳥や蝶に慕い寄られるような里見。肩の力(を抜いて向かい合える落合。角のない物のわかった <114> 永井荷。断髪の化粧気のない女学生が年を取ったような干刈。どこにいても周囲を陴院か灬する華のある人間。どっしりとして物に動じない三浦写。百年に一度しか出ない今来。別にとり立てていうところのない普通の佐多。流星のように流れてきてすぐ消えた=大佛)。見送りの人が黒山のように集まる=海音寺。人が集まる(三々五々。身動きできないくらい)。人の(命は何物にも代えがたい。いい世話好きなおばさん=阿刀田)。人は(死んで名を残す。バンのみによって生きるものにあらず。一人では生きられない。見かけによらぬもの)。文は人なり。▼御仁(物好きな。困った。悪知恵の働く)。 **ひとびと【人人】** 人々が見る見るどっとどよみ立って風の吹き出した海のように押しつ押されつし始める芥川。さまざまな経歴を持つ人々が集まる。とやとやと人々が雪崩れ込む。衆人環視の中で恥をかかされる。衆人の(前で面罵する。目の前にさらす)。主だった衆に集まってもらう。確実な学問で衆に抜きん出る。金と衆には従え。お伴の衆を連れる。衆をたのみ衆の尻馬に乗る。縁なき衆生し沙じ。衆生がすがる仏の慈悲。諸人济度の大願を起こす。世人の(口の端はに上る。緊蹙のんしを買う)。世人をあっといわせる発明。 **ふしちょう【不死鳥】** 地獄の底から甦ぬふった不死鳥"海堂。思い出の中では昔の恋が不死鳥のように輝く瀬戸内。静かに降り積もっていた忘却の灰の下から不死鳥のように若い日の思想やモラルが甦る=中村真。焼け跡から不死鳥のように立ち上がる=隆。炎の無数の切れ端が火の鳥のように舞い狂う光瀬。灰の中からフェニックスが翔とび立つ=開高。 **みのうえ【身の上】** ▼身の上(天涯孤独の。何不自由ない。明日のことも知れない。一生食うに困らない。何の屈託もない。みなしご同様の。差し当たり行くところもない哀れな=二葉亭。帰る港のない船に似た"白洲)。身の上に(異変が起こる。危険が迫る。粗忽にがない。不幸が起こる。起こった理不尽な事件。降りかかった小さな変化曽野)。他人の不幸を自分の身の上に重ね合わせる=阿川佐。あわただしい身の上の変化。我が身の上の一大事と狼狽え騒ぐ二葉亭。身の上を(案じる。打ち明ける)。自分の身の上を人に話す。盗賊の身の上を哀れむ。身の上相談を(受ける。持ちかける)。一身上の(重大事。都合。問題。理由。ことでお世話になる)。▼御身分(けっこうな。羨ましい。悠々自適の)。幼い身空で両親をなくす。若い身空で夫に先立たれる。理想的な至福の境涯。少しずつ落ちぶれた境涯に流されて行く。惨めな境涯に落ちる。日ごとに新しい境涯に順応する=本庄。自分の境遇が大川の満潮時分に棒杭に心のあたりに漂う座りあくたのように思える今日。食うや食わずの境遇に落ちる=半村。容貌にも才能にも境遇にも恵まれない不運な男南条。境遇の変化に呆然とする。 **みんしゅう【民衆】** 民衆から根強い人気を得る。民衆にアピールする力が乏しい萩原朔。民衆の(怒りを煽あおる。活発な精神。心にしみこむ。岡に根強い力を持つ。人望を一身に集める=美濃部)。無挙もこの民衆を殺戮にする。公衆の面前で恥をかかされる。声なき声に耳を傾ける。町人の街らしい空気が漂う。村の者を驚かせる。村人が総出で道を修繕する。草の根からの闘い。草の根の(声を反映する。ボランティア。運動を展開する)。大衆の共感なしに政治は成り立たない荒巻。スポーツが大衆化する。大衆迎合的な施策。 **やせい【野生】** 植物が野山に野生する。野生動物を(飼い慣らす。乱獲する。生け捕りにする)。野草が色とりどりに咲く。 **よみがえる【甦る】** ▼甦る(昨日のことのように当時の悲しみや憎しみが三浦綾。忘れていた甘酸っぱい感情が三浦綾。昨夜のくさぐさが心に"阿刀田。職場で耳にした知識が脳裡20ぅに笹沢。遠い日のことが鮮やかに内海。二十年前の知識が記憶の箱の中から静かに藤本)。▼よみがえる(栄光の生活が。幼い日々が。顔に生気が。昨夜の屈辱が。先刻の熱気が。爽快な気分が。遠い昔が。仲絶えた恋が。記憶が鮮明に。声が耳元に。神話が現代に。姿が目の裏に。一度は消えた衝動が。かつての感触が。脳裡にイメージが。脳裏に記憶の断片が。頬にほのかな赤みが。昔の激しい気性が。忘れていた習慣が。空腹がにわかに。不吉な言葉が脳裏に。前に聞いた声が耳に。感触が生々しく。凍てついた大地の上に春が"なかにし。子供の頃の様々な情景が半刈。懐かしい心の風景が=中村明。幻がまなっらに=津本。言い古された言葉が生き生きと白洲。恐怖の思い出が淡く=真継)。昔の情事の数々が蘇る=三島。まぶたの裏によみがえる映像。思い出がよみがえる(少年の日の。昔の苦い)。▼記憶がよみがえる(見た途端に。忌々しい。苦痛の。十五年前の。古い)。▼よみがえらせる(過去の感覚を。昔の恋を。思い出を心に。かつての日々を。萎えかかった好奇心を。記憶を心の底に)。 **よめい【余命】** 余命が(長くない。いくばくもない)。あといくらも余命がない。医者から余命を告げられる。一年足らずの余命を宣告される。かろうじて余命を保つ。長くて半年の命。 **よわたり【世渡り】** 世渡りがなかなかに巧妙。世渡りに疎い。世渡りの(仕事を持つ。術すくを身につける)。女一人の世渡りは生やさしくない宮尾。まっとうな世渡りをする。器用に世渡りする。世渡り上手の小才智人。人生行路を踏みはずす。▼渡世にする(大工を。猟師を。古道具の売買を)。渡世の(義理。生業於心)。 <115> # 行く・来る-37 **あす【明日】** 明日からまた始まる一週間。明日に(なるのが待ち遠しい。なれば気が変わるだろう。向かっての希望に輝く)。後は明日に回す。結婚式が明日に迫る。▼明日に控える(試験を。出発を)。明日は(我が身。別れるという前の晩。昨日よりも大きく賢くなる=有島)。明日をも知れぬ命。明くる日を迎える。祭りの翌朝のような静かさ。仕事を翌日回しにする。明日改めて話し合う。明日は明日の風が吹く。 **あとあと【後後】** あとあと(困らないようにする。面倒が起きそう)。あとあとに影響を及ぼす。あとあとまで(禍根を残す。語り草になる)。悔しさがあとあとまで消えない。のちのちの(語り草になる。ことが思いやられる)。 **いかない【行かない】** ▼行かない(稀まれにしか。薄情にも見舞いにも)。行きたくない(できれば。二度と)。行く気がない。足が(遠のく。問遠になる)。一度も足を運んだことがない。二度と足を向けない。 **いく【行く】** ▼行く(悪事千里を。飛行船が空を。流行の先端を。温泉へ湯治に。川へ釣りに。工場に働きに。他家に嫁に。どんどん上に。一足先に。病室の回診に。よその町に。足にまかせて。一刻も早く。奥へ奥へと。ずんずん先へ。魂が天国へ。漫才を地で。すたすたと先を。それぞれ別個の道を。魚河岸に仕入れに。火葬場に骨上げに。自分の足で探しに。食料を買い出しに。スーパーに買い物に。ずんずん足早に。時々顔を見せに。間もなくお嫁に。道を真っ直ぐに。わざわざ知らせに。行くと決めたらどこまでも。かなりいい線まで。近くの喫茶店へ。走るように急ぎ足で。待ちあわせ場所に少し遅れて)。行きたくてうずうずする。行けども行けども荒れ野が続く。ひとっ走り行ってくる。行けるところまで行ってみる。乗り換えなしに目的地まで行ける。▼行ってしまう(目が胸元へ。挨拶もそこそこに。すたこらさっさと。手の届かない遠くへ。逃げるように二階へ。行くところまで。風のようにどこかに=水倉)。一二三歩行きかける。自然に足が向く。▼足を向ける(現場に。学生時代の街に)。現場に直行する。▼足を運ぶ(映画館に。音楽会に。球場に。現場に。実際に。書種売り場に。展覧会に。投所に。しげしげ。数回。何度も)。 **いけない【行けない】** 行けない(うかつに。気軽に)。どこにも行き場がない。行き場のない重みにじっと耐える=村上春。行くどころの騒ぎではない。どこにも行く当てはない。▼行く気になれない(どうしても。とても)。敷居が高い。行き場所がどこにもない。 **うちよせる【打ち寄せる】** ▼打ち寄せる(怒海北とが。陶酔が次々と。波が鈍く埠頭ふとに辻井)。波が打ち寄せる(感情の。戦争の)。大波が打ち寄せ打ち返す。波が打ち寄せては引いていく。岸壁に打ち寄せては返す波の音。 **えんらい【遠来】** 遠来の客を(ねぎらう。もてなす)。遠路はるばるやって来る。百里遠来の友。遠路をものともしない。 **おしかける【押しかける】** ▼押しかける(希望者が。借金取りが。取材記者が。野次馬が。客がわっと。大挙して。怒濤火との勢いで。どやどやと。大勢の人がどっと。患者があふれるほど)。 **おしよせる【押し寄せる】** ▼押し寄せる(大勢の人が。重い疲労が。幸福な感覚が。波が海岸に。不幸が一度に。敵が八方から。我も我もと。国境を越えて難民が。不景気の波が商店街に。波が後から後から。夕闇がひたひたと。波状的に雨雲が内田康。湯気が顔面にまともに終沢。怒りが波のように常盤。疑問が怒諦忙とのように=池田。雲が低く山の裂けめに沿って霧のように"畑。嫉妬が止むことのない波になって=高樹。火が猛威を振るって三浦し。人々が雪崩をなして菊池)。ドドーンと波が押し寄せる波打ち際=松谷。とっと押し寄せる(客が。疲労が)。波が押し寄せる(大きな。岸に。民主化の)。▼押し寄せてくる(一遍に眠気が。敵の大軍が。どっと疲れが。どっと波が。夜の気配が。四方八方から。いっぱいに光が。彼が沖のほうから。実感が波のように戸川)。不安と緊張感がじとっとおし寄せてくる=飯田。▼ひしひしと押し寄せてくる(期待感が。孤独感が)。ひたひたと押し寄せてくる(沈んだ気分が。敵が。闇が鉢炒らの輪郭すれすれまで落合)。▼寄せてくる(運命の潮が。時代の風浪が。通路を人の波が。臭いが風とともに)。 **おもむく【赴く】** ▼赴く(指定の場所に。新年の参賀に。任地に。商戦の庭へ。欣然心んとして任に。己の意志で敢然と死に"貫井)。都を捨てて西海におもむく=白洲。足の赴くままに散策する。思いの赴くままにペンを進める。任国の地を踏む。任国に向けて出発する。転々と任地を変える。夫を単身で赴任させる。▶赴任する(家族とともに。意気に燃えて)。 **かけつける【駆け付ける】** ▼駆けつける(汗もしとどに。いちばん先に。真っ先に。あたふたと。息せき切って。急遽いう。車に乗って。早速。大挙して。とやどやと。何はさておき。何を措ぉいても。あわてて現場に。仕事先から病院に。取るものも取りあえず病室に。あわてふためいて。騒ぎを聞きつけて。消火器を持って。絶妙のタイミングで。危篤状態の母親の病床に=高村虎。千里の道を遠しとせずに奥平。宙を飛ぶようにして=司馬)。▼聞いて駆けつける(急変を。急を。知らせを)。靄もゃを押し分けるように駆けつけてくる=山本周。▼馳せ付ける(応援に。急を聞いて。手勢を率いて)。▼馳せ参じる(一番に。傘下に。我先に。 <116> # 来る・去る **こうせい【後世】**後世に(伝統を伝える。至って評価が定まる。語り伝えられる)。名が後世に伝わる。名を後世にとどめる。望みを後世に託す。事実を事実として後世に伝える=船山。悪名を後世に残す。後世に残すに足る作品。後世に残る(曲。傑作。作品)。後世の(記憶に残る。目を意識する。笑い話になる)。思いの及ぶべくもない後代竹西。後代に名を残す。後の世に伝える。 **こない【来ない】**来ない(助けが一向に。車の迎え一つ。いつまでたっても電車が。いくらたっても。機会がなかなか。返事が依然として。待てど暮らせど)。来ない人を待ち明かす。なかなか来ないバスに苛立つ。日に二三人来るか来ないか。事によったら来ないかもしれない。来る気配がない。▼見せない(二度と姿を。ろくすっぽ顔を)。待ち人来たらず。人が数えるほどしか来ていない三浦綾。▼来なくなる(客がばったり。ぱったり。ふっつり)。どの面下げて来られようか。約束の時間に現れない。今出る今出ると蕎麦屋にばの出前"有川。誰一人(姿を見せない。見舞いに来る者がいない)。めったにやって来ない。▼お出でがない(とんと。久しく)。全然顔を出さない。顔を出さなくなる(ばったり。仕事にかこつけて)。 **こんご【今後】**今後ますます増えていく。今後とも一層精進する。今後に(悪例を残す。向けての展玉を語り合う)。知見を今後に生かす。今後の(研究にまつ。人生を暗示する。成り行きを見守る。身の振り方を考える)。粛々として今後の事態に対処する"西木。以後(連絡を断つ。進展を見ていない)。この先何が起こるかわかったものではない小林久。この先が案じられる。これから起こることを予感する。その後の消息はない。 **さきのさき【先の先】**先の先のほうまで見透かす。先の先まで(思案する。承知している。目に見えるよう。わかってしまう)。先の先を読む。 **さきゆき【先行き】**先行き(どうなるか分からない。長くはない衰弱した体「野坂。不透明な毎日を手探りで進む=伊坂)。先行きが(不透明になる。不安でならない)。先行きに(光が見える。見込みがない)。先行きへの(不安が広がる。安心につながる)。これから先が(思いやられる。楽しみ)。 **さっとう【殺到】**殺到する(抗議の投書が。非難の声が。安売りに客が。我も我もと希望者が。一文字に敵陣に。乗客が改札口に。怒りの叫びをあげて。軍勢が嵐のように敵陣に菊池。人々が押しあいへしあい売場に宮本郷。何千という町衆が真っ黒な流れとなって真継)。殺到する市民を整理する。▼電話が殺到する(抗議の。問い合わせの)。 **さんじょう【参上】**▼参上する(旧主の邸へ。一大事を聞いてはるばる=真継)。▼伺候する(宮中に。年頭の挨拶に)。▼まかり出る(挨拶に。御前に)。泰然自若として城中へ罷まかり出る=舟橋。 **じだい【次代】**次代に(希望を託す。望みを託す)。戦争の記憶を次代に伝える=池澤。次代を担う(青少年。若手)。次世代に(対する責任。つけを回す)。次世代のアーティストを発掘する。 **しょうらい【将来】**将来(有望なホープ。何かの役に立つ)。将来が(双肩にかかる。楽しみな新人)。娘の将来が思いやられる。計画していた将来が雲の中にかすんでしまう~小池。将来に(悪例を残す。生きる投資。希望を見出す。光明を認める。託した夢。残る仕事。望みを託す。不安を持つ。一応の自信を持つ。収穫をもたらす)。国家の将来に望みをつなぐ。息子の将来に期待をいだく。自分の将来に不安を感じる=島尾。娘の将来に大きな希望をかける豊田。将来に対する(希望。いくばくかの不安)。将来の(見込みがない。雄図に備える。大成を嘱望されている。ビジョンを持つ)。漠然と将来の不安がある。将来はかなりの地位が約束されている立原。自分の将来はもうないと思い詰める=貫井。将来への(不安が消える。布石を敷く)。将来を悲観しての自殺=池井戸。 **くる【来る】**▼来る(体に震えが。軽い雨が。自分の番が。出発の時間が。頻繁に客が。風雪の時代が。本格的な夏が。迎えの者が。哀れさが胸に。球が低めに。返事がじきに。予告もなしに。後から後へと。月に二三度。遠い国から。病気を押して。船で島へ。水が胸まで。三日にあげず。いつかは順番が。押さえようのない怒りが。お互いに飽きが。体のあちこちにがたが。千載一遇のチャンスが。不勉強の報いが。待ちに待ったその日が。時間ぴったりに。請求書がやたらに。弔問客がひきもきらずに。隣村から巻子に。匂いがつんと鼻に。花の師匠が出稽古に。不幸が電撃的に。入れ替わり立ち替わり。遠方からわざわざ。限界ぎりぎりまで。人生の折り返し点まで。注文がどんどん。ひょこひょことそばへ。遅かれ早かれ寿命の尽きる日が火坂。挫折を知らないでここまで奥田)。来る人ごとに吹聴ぃふちする。無経験から来る誤解。その日の来るのが待ち遠しい。いよいよ来るべきときが来た。とうとう来るべきものがやって来た。今しがた来たところ。もと来たほうへ歩を返す。笑う門には福来たる。来ている(もはや限界に。春がすぐそこまで)。追っつけ誰か来るだろう。来たるべき(豊かな収穫。審判の日を待つ)。▼見に来る(顔を。仕事ぶりを)。▶様子を見に来る(恐る恐る。折々。ちょいちょい。時々。何事かと)。近所の人が代わる代わる覗きに来る。ひょっこりおいでになる。わざわざご足労を願い恐縮です高杉。御来場のお客様に申し上げます。来館する(図書館に。博物館に。美術館に。ホテルに)。もう二度と来るな。一昨日来い。来るには及ばない。 <117> 大物になる。先の時代に望みを託す。ずっと先の話。行く行くは(大物になるだろう。結婚するつもり。子供に譲るつもりでいる)。先々(望みが薄い。不利な扱いを受けるだろう)。先々の(暮らしが不安。ことに備える。見通しが利かない)。近い将来に死が待つ。そう先のことではない。そう遠い先ではない。 **ぜんと【前途】** 前途暗溶はいたる展望。日暮れて道遠く前途三千里の思い。前途が(まぶしく輝いて見える。バラ色に彩られる=美濃部)。前途に(希望が見える。光明を見出す。明るい望みを託す。死が待ち構える。生活の不安が横たわる。難問題が横たわる)。会全体の前途にかかわる問題。前途は(五里霧中。波乱含み)。前途を失った行き場のない身萩原來前途有為の(人材。青年)。前途有望な事業。前途洋々たる(学生。若者)。▼先は長い(とにかく。まだまだ)。 **つめかける【詰めかける】** ▼詰めかける(後から後から。次々と。人がぎっしり。陸続と。我も我もと。政財界の大物が。押し合うように。軍勢数万がひしと。報道陣が続々と)。 **とうらい【到来】** 春の到来が待ち遠しい。▼到来する(黄金時代が。心境の変化が。悲劇の絶頂が。冬将軍が。平和な世界が。ちょうどいい機会が。ようやくチャンスが。身上认しをおこす好機が=海音寺)。いまこそ機会到来と思いたつ。 **はくらい【舶来】** 舶来の品物を主に扱う店。高級な舶来の文化として珍重する=玉村。名だたる舶来の品にも劣らない!内橋。▼舶来する(珍品が。文明が)。仏教が渡来する。外国から渡来の品。 **みらい【未来】** ▼未来(遥か遠くまで広がる。小さなよろこびや小さな悲しみで織りなされた平和で静かな安部。充分に希望を託し得る=坂口)。未来が虹のように美しく呼びとを照らす―夏目。未来に(暗雲が漂う。期待をもつ。希望を抱く。不安を覚える。余計な幻想を抱かない=井上ひ)。光明が未来に一入に照りまさる=山田美。未来の凶福を予言する。未来は(太古のように遥か安部。封じられた強い『のように開かない先はしかとは分からない夏目)。未来へ向かって進む。未来への(希望に燃える。希望を託す。扉を開ける。貴重な一歩を踏み出す=熊坂)。未来を(冷徹に見通す。生きる子どもたち)。甘い未来を夢見る。過去と未来を断ち切る。近未来を(展以差する。予測する)。未来志向が強い。行き着く先に何があるか知らない。行きつく先を視ょてしまったよう立原。遠い先のこと。 **やってくる【遣って来る】** ▼やって来る(ぼつぼつ容が。短い沈黙が。見知らぬ男が。猛烈な寒気が。連日仕事一途に。冬敵機が。長い道のりを。死が唐突に。仕事一途に。が目の前に。後を慕って。馬を飛ばして。顔色を変えて。客が大勢。徒党を組んで。三日にあげず。雪を冒して。待ちに待った日が。雪解けとともに春が。かっきり十時に。時間ぎりぎりに。眠りが間欠的に。ひきもきらずに。みんなが物珍しげに。汗ばむほど急いで。憤りにまなじりを上げて。入れ替わり立ち替わり。海の向こうから。大型バスを仕立てて。思い出したようにふらりと。遠くからわざわざ。どこからともなく。はるばる日本にまで。人込みをかき分けて。人々が群れなして。頻々とお忍びで。曲がりなりに山奥くんだりまで。よく女の子を連れて。忘れたころに災いが。ぞろぞろ受験生の群れが人米。突然なんの前ぶれもなしに=丸谷。幕を開ける時がついに内橋。疾風にゃのごとく突如!鈴木光)。やってくる(まぶたの裏がしびれるような眠気が"あさの。案の定一足遅れて向田。大儀そうに軀炒らを揺さぶりながら三浦哲)。▼持ってやって来る(添え状を。花を)。思い出がやって来ては去っていく。▼注文を取りに来る(ボーイが。ウエートレスが)。▼取りに来る(原稿を。荷物を。料金を)。 **ゆきさき【行き先】** 行き先に心当たりが(ある。ない)。運転手に行き先を告げる。目的地に着く。行く先を(突き止める。秘密にする)。行く先々で(歓待を受ける。同じことの繰り返し。陰口を叩かれる。もめ事を起こす)。追及の手が行く先々についてくる。行く先々の(水に合わせる。村で大騒ぎになる)。 **ゆくえ【行方】** 行方定めぬ旅。行方が(皆目わからない。容易に知れない。杳ょうとして知れない)。行方は五里霧中。行方も告げずに引っ越す。行方を(突き止める。冷静に見定める)。国の行方を左右するような仕事。事の行方を見守る。血眼になって行方を追う。わずかな情報を頼りに行方を捜す。一家四人が夜逃げ同然に行方をくらます笹沢。除跡好約を(くらます。絶つ)。 **ゆくすえ【行く末】** 行く末が(案じられる。思いやられる)。行く末に(望みを託す。不安を感じる)。行く末をしっかりと見極める。来し方行く末を案じる藤田。生い先が(楽しみ。長い)。末頼もしい(子。青年)。末頼もしき強の者永井荷。 **ゆくて【行く手】** 行く手に(曙光しがある。月がかかる。進路が見えてくる。ばらばらと現れた人影。揺れる火が見える。塞ふさがる樹林や丘陵=本庄)。闇が行く手にしんしんと広がっている。行く手を急ぐ(一心に。逃げるように)。 **らいにち【来日】** 来日する(国賓として。十年ぶりで)。日本に来る。来日公演が実現する。年内に訪日する。訪日の日程が決まる。 **らいねん【来年】** 来年四十歳を迎えようという働き盛り!里見。来年に先送りする。来年のことを言うと鬼が笑う。実施時期は来年以降になる。早ければ来年早々にも始まる。来年度の予算。明くる年。次年度へ繰り越す。卒業した翌年結婚する。厄年を翌年に控える。翌年へ繰り越す。 <118> # 痛い・痺れる **いたい【痛い】** 痛い(思いをする。星を落とす。目に週う)。痛い(体の節々が。青い水が眼に。汗が目に入り。照り返しが目に。唇がひび割れて。飛び上がるほどに三浦哲。冬の夜更けの冷たい空気が硬い粉のように嶮様や頬に=大江。吹きつけて来る風に面と向かうと鋭い刃物を当てられたように=新田。身体中が針で刺されたように高橋三。空気が寒いというより加賀。背中が鉄の板でもはめ込まれたように高価三。胸が錐きで突かれるように=松浦。胸が焼けるように=多岐川)。頬に痛い風。耳が痛い話。痛いところを(突かれたように溢はずかしくなる佐多。突かれて悠りだす若竹)。ズバリと鋭く痛いところを祈っいてくる=内田康。目が(ころころして痛い。ちかちかと痛い)。窓ガラスが全部一度にきらめいて目が痛い小川。片笑くぼに笑ってみせた顔が目に痛いくらい蠱惑にゃな表情吉川。光が目に痛いほどきらめく光瀬。大げさに痛がる。魂にしみとおるような痛さ宮本百。痛さに(息を詰ませる。耐えかねてぼろぼろと涙を流す=深沢)。あまりの痛さに顔をしかめる=東野。引っかくような痛さを伴った風辻仁。わが身をつねって人の痛さを知る=山田美。見るからに痛そう。痛そうに足をさする。いかにも痛そうに顔をゆがめる=宗田。右足の甲を抱えて飛び回る。足があんまり痛くてバリバリ白く燃えているよう。宮沢。痛いほど気持ちがわかる。視線を痛いほど浴びる=光瀬。母の苦悩が痛いほど伝わってくる=横山。胸がキュンと痛くなるような思い高橋三。体のあちこちが痛痒かかい。 **いたくない【痛くない】** 痛みが(嘘のように治まる。けろりと治まる。すっきり取れる)。医師の手当てで痛みがびたりと止まる。傷の痛みが嘘のように消える"てられたような高樹)。 **いたみどめ【痛み止め】** 痛み止めが効く。痛み止めを(注射する。飲む)。鎮痛剤を(注射する。飲む)。 **いたむ【痛む】** ▼痛む(限がちくちくと。切り裂くように胸が"海音寺。指が抜けそうに=加賀。足もとから激烈な寒気が吹きあげて鼻孔がじんじん=大江。背の肉がケイレンを起こすように=小林多。突き刺されたように心臓のあたりがきりきりと=山本周。肘が滲みるように黒井。ふくらはぎの肉が引き裂かれるように三浦哲。虫歯のようにズキンズキン=梶井。無数の針で一時に刺されるように今日。胸が刺されたように=北原。胸が熱火で灼ゃかれるように=海音寺。胸が鷲掴みれみされるように重く=さだ。肋骨の下あたりが折れるように=安部)。▼しくしく痛む(神経痛が。古い傷が)。▼ひりひりと痛む(傷口が。喉が。まぶたが。目や鼻が)。自分の腹を痛めた子供。▼刺すように痛む(つうーんと耳の奥底が=光源。冷えればしもやけはじりじりと凍ってきて重く=幸田文)。 **うずく【疼く】** ▼疼く(闘争心が胸に。体の中の悪い虫が。心の奥底に沈めた記憶が=横山。頭のしんがずきずきと三浦綾。恥の感情が暗く古井)。体の芯がぼんやり光るように甘美にうずく=阿部。▼疼かせる(痛みが古傷を。喜びが胸を激しく)。体の芯を震わす疼き=熊谷。疼きが腹の底までこたえる。疼きに近い快感が走る=原田康。▼疼きに耐える(官能の。歯の)。胸に小さな疼きを感じる。うずくような(希望。悦い。び)。寒さに泌しみる関節の疼痛25=徳永。重く節々の札きしむような疼痛が全身にしがみつく=坂口。剃刀汁以を走らせたような疼痛が走る"椎名踐。左肩に針を刺されたような疼痛を感じる=安部。 **かんでん【感電】** びりっと感電する。近づくと感電しそうなバワーを感じる女の子"岡田。口が感電したように痺しびれ、先の言葉が続けられない=連城。手を感電しだように引っこめる"五木。電撃のように否と強く否定する=中河。電撃的な速さで攻撃を始める。不 平石。さほど痛みを感じない。目の中に入れても痛くないほど可愛がる。 **いたみ【痛み】** 痛み(自分の肉体の一部を無理矢理にもぎとられるような切実な=森環。神経がけずられていくような=高橋三。ずきずきと脈打つような=有栖川。鋭いキリを刺しこまれるみたいなひどい大庭。全身がばらばらに砕けて勝手な方向に駆け出し飛び散っていくような激しい安部。胸が引き裂かれるほどの高橋三。胸に釘を刺すような高樹。胸をえぐられるような重松)。痛みが(骨に食いこむ。あちこちに広がる。日を追って薄らぐ。容赦なく襲いかかる)。人の痛みが分かるようになる。体に骨の鳴るような痛みが残る=原田康。身体の中を稲妻が走ったような痛みが通り抜ける=辻井。ずっしりとした痛みが胸の中心を貫く三田。鋭い痛みが頭の後ろから足の裏まで走る!清水俊。一足ごとに全身に痛みが響き渡る藤沢。ほてるような痛みが脈打つ三田。胸の奥で何かが砕けたような痛みが起こる=松浦。痛みが走る(足首に刺すような=勝目。身体に焼け火箸で刺されたような熱い=黒墨有。胸に亀裂のような=小林久)。痛みとしびれが両手の指先から両足の爪先からシュンシュンと吹き出ていく=石森。痛みに(脂汗を流す。歯を食いしばる)。傷の痛みにうめく。海老だびのように身を折り曲げて痛みに耐える萩原樂。ひたすらタオルを噛みしめて痛みに耐えぬく"開高。骨も砕ける痛みにのけぞり返る=山田風。痛みに顔をしかめる。歪ゅがめる)。痛みの芯が脳を攻撃する=北村。痛みを(感じなかったと言えば嘘になる=近藤。忘れるほど驚く"小島)。大げさに痛みを訴える。薬で痛みを和らげる。ちくちくと痛みを感じる。肩のあたりがきやきやと疼痛いだを覚える=長塚。▼痛みを覚える(良心に。胸の奥に小さな内海。胸の内側に線香の火でも押し当 <119> 幸が電撃的に来る。足が電撃的にビクンと引っ込む"尾辻。 **くつう【苦痛】** 苦痛(死に勝る。脂汗がにじみ続けるような=日野。唇が歪ゅがみ心臓がねじれるほどの=武田爽。全身に波を打つような=室生。炭酸水が胸のあたりをツーンと通るような軽い=阿川弘。治りかかった傷の皮を剝ぎ取るような遠藤。生々しい傷痕に触れられるような外村。見ていても堪えがたいほどの"司馬。身をきられるような"中村真。目に見えない巨大な力で体全体が締めつけられるような=日野)。苦痛が(なかなか収まらない。拭うがごとく消える=田山。ふしぎな幸福感に転化する三島。ブランコのように息を抜きながら間断なく責めたててくる=林美)。あがきのとれない苦痛が増大する=梶井。一枚一枚樹皮をこそげ落とすように苦痛が落ちて行く=阿刀田。灼ゃけつくような苦痛が身体の中を駆けめぐる萩原葉。苦痛から逃れる。苦痛で(顔が歪む。身もだえる。額に汗を浮かべる)。全身の苦痛で腹這いになりエビの如くに身をちちめる=坂口。苦痛に(七転八倒する。満ちた仕事。身をよじる。顔をひん曲げる。全身を痕變妙心させる)。輪廻転生以出沢の無限の苦痛に耐える"真継。▼苦痛に襲われる(火に誘惑されてそのなかに飛び込んだ虫と同じような「高見町。胸を押しつぶされるような「山本周)。苦痛の(潮が引く。どん底を覗のぞく。ない安楽往生。淵に追いやる。うめきを漏らす)。打ちひしがれたような苦痛の表情。勝目。苦痛は二度とごめん。受けた苦痛は尋常一様ではない。苦痛を(帯びた表情。懸命に押し殺す。圧倒するような積極的な心持ち菊池)。砂糖を舐める舌のようにあらゆる感覚の眼を光らせて吟味しながら苦痛を舐めつくす=横光。痛苦に耐える。痕舌を忍ぶ。 **げきつう【激痛】** 激痛が(襲う。体を貫く。全身を駆けめぐる)。激痛が走る(肩を。下腹部に。首筋に。腰のあたりに。背中に。全身に。声も凍るほどの=原田宗)。激痛に(顔をしかめる。呻吟糺从する。見舞われる)。足に激痛を覚える。激烈な痛みが走る。裂けるようなはげしい痛み"石森。目から火花が出るほどの痛み=桐野。脇腹から背中にかけて灼熱いくの炎が走る=貫井。 **しびれる【痺れる】** ▼痺れる(頭がしんの方まで凍っているように=中河。緊張感で身体中が金縛りにあったように=高橋三)。しびれるほど懐かしい味のスーブ"高橋源。痺れるほど素晴らしい夢小林信。頭の芯が痺れるほど快い=高樹。▼じんとしびれる(手が。胸の奥が)。痺れた感覚が身体の末端まで染み通る=大岡。手足がしびれて動かない。刺すような耳朵以忌のしびれ=向田。しびれが柄を通して伝わってくる。足にしびれが来る。頭にしびれが残る。体をしびれが貫く。舌の先から奥まで電流のように痺れが伝わる荻野。泣きたくなるような痺れがふくらはぎにひろがる"古井。耳から脳天にかけてジーンとしたしびれが突き抜ける=西木。▼しびれが走る(腕に。背筋に。頬に)。二人だけの生活に痺れるような欲はぁびを抱く宮本輝。しびれるような(陶酔を味わう。絶望に陥ぉちこむ檀。冷たさが襲ってくる=畑)。体がしびれるようなスリル=長崎。胸のしびれるような歳動"石川。体がばらばらにほどけて金粉や銀粉と混ざり合って浮遊していくような物凄い痺れ方=田辺。 **ずつう【頭痛】** 三本立て映画のハシゴをした時のような頭痛干刈。頭痛が(治まる。嘘のように消えていく)。堪こらえがたい頭痛が襲ってくる。頭痛に襲われる。三日にあげず頭痛に悩まされる。割れそうな頭痛にうめく、頭痛を抑えるように額に手をあてる束野。激しい頭痛を訴える。頭が(がんがん割れるように痛い島尾。締めつけられるように痛い=日野)。頭に鉄の輪をはめられたような痛さがずっと続く=新田。頭の痛い無理な注文高橋、頭の芯が(しくしくと痛む。ずきずきと痛む)。▼痛い(頭の奥がひび割れるように光瀬。頭のシンが虫歯のように三田)。▼痛み(頭を万力のように締め上げられる隆。きりきりと脳髄をしめあげるような=あさの。後頭部がズキンズキンと音を立てて鳴るような=新田)。痛みが頭の先までジーンとくる=小林多。▼痛む(二日酔いで頭が割れるように。頭が怒りと屈辱で熱く眼はれあがるように藤枝。頭の芯が渦巻くように=高樹)。女日照りに頭を痛める。後頭部に突き刺すような痛みを感じる三浦彩。刺すような痛みが後頭部まで走る=日野。 **どんつう【鈍痛】** 笑いたいような痛痒灬炊い鈍痛=岡本。腹部の鈍痛が鉛の大きな球のように腰を虐げる有局。顔が鈍痛に歪ゅがむ。石のように固いものが縮まるような重い痛み=干刈。後頭部を鈍い痛みが走る。▼鈍い痛みがある(意識に薄い膜がかかったように頭と眼の奥とに"高井。盆の窪くはあたりに"重松)。胸に鈍い痛みを感じる。 **ふくつう【腹痛】** 激しい腹痛に襲われる。腹痛を訴える。はらはらしすぎて胃が痛くなる。腹が痛くなるほど笑う。痛み(胃のよじれるような高樹。下腹部が引きしぼられるような"干刈。突き上げるような胃の篠田)。痛みが脇腹を走る。胃に痛みを覚える。痛む(しくしくと胃のあたりが。胃のあたりがきりきり。横っ腹がじくじく、脇腹が引きつるように)。しくしく痛む(鳩尾込ぞが。腎臓のあたりが)。胃のあたりに差し込みが来る。刺しこむような下腹の痛みが襲う水上。虫がかぶる。 **ようつう【腰痛】** 持病の腰痛が悪化する。腰痛で会社を休む。腰が痛いとうめく。腰の痛みがとれない。腰を痛める。腰の疼ぅずきが増す。 <120> # 祈る・弔う **あくま【悪魔】** 心に悪魔がすむ。耳元で悪魔がささやく。身体に悪魔が乗り移ったかのように見えて不気味萩原葉。悪魔との取引を連想する。悪魔に(魂を売り渡す。悪っかれる。見込まれる。襟首をつかまれる=坂口。追われたように青ざめる=川端。にらまれたように青ざめる若竹。乗り移られてでもいるように狂おしい=檀。魅入られたように失敗を繰り返すの横山)。悪魔の(舌のような焰詛の。うめき声よりもっとおぞましい声内田脊。ささやきに耳を貸さない"畑村。既さききのような甘美さを持つ声"外村)。手紙がめらめらと燃えあがって小さい悪魔のなきがらのように黒くちちこまってしまう山本有。不吉な悪魔の仕業でもあるような嫌な予感にゆすぶられる=植。悪魔の背に乗っているようにいつ振り落とされるかわからない=椎名師。打球がさながら悪魔の背に乗ったように思い通りの位置へ飛んで行く"阿刀田。悪魔のごとき美しさ=大原。人面の悪魔のごとく感じる=司馬。ふっと悪魔のような知恵が浮かぶ小林久。体じゅうに悪魔じみた精力をみなぎらせる=開高。悪魔的な(野性が潜む。考えがひらめく)。呪われた悪魔的な恋菊池。装甲車が魔王のように居座る=半村。さながら伝説の魔女を垣間見たために生きながら石と化したよう栗本。魔女の(力を恐れる。呪文に似た不気味さ"大庭。またがった答いうのように高い空に運ぶ=梶井)。 **いこつ【遺骨】** 遺骨の小箱を持った遺族が歩いてゆく。遺骨を(安置する。骨壺に入れる。墓地に埋める。納骨堂に収める)。骨壺に遺骨を収める。お骨を拾う。骨壺を(墓に納める。白木の箱に納める)。 **いのる【祈る】** 祈る(神の祝福を。航海の安全を。五穀の豊饒じうじを。心の平安を。前途の無事を。武運長久を。願い事を星に。手を合わせて。真心こめて。一日も早い回復を。行方不明者の生還を。偶像に向かって。とわに幸あれと。墓前にしゃがんで。君の上に力強く永久の春が微笑組『めよかしと=有房)。▼心から祈る(幸せを。冥福を)。▼祈り続ける(日がな一日。夜を徹して)。祈りが(叶えられる。天に届く。口をついて出る。胸の中にしみていく)。祈りに耳を傾ける。確信が祈りに変わる。心を祈りに満たす。胸に祈りにも似た思いが残る。祈りの(行に参加する。文句を口にする)。祈りを寝言のように呟つぶく遠藤。神に祈りを捧げる。つつましくお祈りする。一心に阿弥陀仏結ひだを念じる。朗々とした声で折騰とをあげる。心の中で(手を合わせる。繰り返し念じる)。声が祈りのように熱っぽい!大江。奇蹟せを祈るような気持ち"斎藤栄。祈るような気持ちで(過ごす。待つ)。祈るように胸の前で両手を組む"東野。陰唇を据える。悪霊払いの祈繭。▼祈念する(魂の浄化を。平和を。未来の救済を)。護摩を焚たく。十字を切る(額に。胸に)。千羽鶴を(折る。下げる)。▼念じる(身の安穏を。心を込めて一心に)。▼黙騰する(慰霊碑の前で。犠牲者のために。死者の安らかな眠りを祈って)。神仏に祈願をこめる。▼祈願する(安産を。恒久の平和を。道中の無事を。豊作を。水垢離ひげで)。 **いはい【位牌】** 位牌に灯明を上げる。母の位牌に祈る。位牌を仏壇に安置する。霊位を安置する。祖先の霊位を拝する。 **えんにち【縁日】** 縁日が(立つ。開かれる)。縁日にきわう。縁日の店を見て回る。祭日のにぎわい。祭日は休業する。祝日も休まず営業する。物日に紋付を着る。物日をねらって出荷する。 **おがむ【拝む】** ▼拝む(お日様の顔を。片手で仏を。土地の神を。数珠花を手に。ひざまずいて。仏像を置いて)。拝むように両手で茶碗を持つ。伏し拝む(札を。仏を)。合掌する(仏壇に向かい。墓前にぬかずき)。初前で三拝する。▼拝する(御本卓を。来迎を)。▼拝礼する(神殿に。神仏に)。拝礼を捧げる。位牌に拝礼をする。▼巡拝する(宮城を。皇居を。東方を)。▶礼拝する(神を。死者に)。礼拝いする(仏を。本尊を。仏前に)。▼柏手が礼を打つ(神社で。ばんばんと)。柏手を打ったような乾いた音。▼手を合わせる(阿弥陀陀忌みだに。遺影に。位牌に。神棚に。仏前に。祈るように。胸の中で。胸の前で。墓の前にしゃがんで。焼香台の前でじっと=ねじめ)。手を合わせて拝む。 **おきょう【お経】** 人の名をお経の文句を覚えるようにおぼえる三島。明に夕に経を唱える。冥福を祈って経を上げる。称名を唱える。ぼくぼく木魚を叩く。お経のように節がついた口調!向田。▼写経する(静かに。無心に)。経文を(そらんじる。唱える)。声が経文を読むように暗い=笹沢。噺ささくがごとく叩、うめくがごとく経文を話し。する菊池。導師の荘厳な読経。読経が流れる境内。寺から聞こえる読経の声。一心不乱な読経の声が聞こえる=古井。 **おに【鬼】** 人間の皮をかぶった鬼=柴田剣。鬼か悪魔のように憎む=長崎。鬼が棲むか蛇が棲むか。来年のことを言うと鬼が笑う。鬼でも見たようにおびえる=司馬。鬼と化す(人の心が。勝負の。政策実行の)。鬼に追われたように走る宫部。心を鬼にする。強打に巧さが加わって鬼に金棒・沢木。鬼の(目にも涙。たたりを怖がる)。冷酷な鬼の目をもつ"坂口。渡る世間に鬼はない。鬼も十八、番茶も出花。さすがの鬼も呆ぁされ返る芥川。鬼よりも(血が冷たい。怖ろしくすさまじい姿と声坂口)。鬼を(欺く大男。懐に抱える)。心に鬼を飼う。鬼という鬼をあつめたようなすばらしい気魄には坂口。袖から鬼をもひしきそうな赤銅色いてとの太い腕が逞しく出ている=中島敦。 <121> # 祈る・弔う―39 な(顔で児にらむ。眼をして睨みつける伊集院)。浅ましい鬼のような人間の多い世の中"子母沢。ひどく意地の悪い鬼のような女谷崎。勇猛さながら鬼のような将軍の山田美。小癪にしに障るこましゃくれた小鬼のような女の子=大庭。息子が悪辣な小鬼のように眼をキラキラさせて母親に挑む"阿部。泣く子も黙る悪鬼と目される=隆。悪鬼に逐ぉい迫られたようにおびえる有局。生きている悪鬼のような大鮫注必隆。悪鬼のように相手の骨までしゃぶる菊池。心が悪鬼のように憂鬱に渇く=梶井。借りるときの仏顔、返すとときの夜叉平岩。縦皺以ては女を夜叉のように見せる森成。 **おぼん【お盆】** 月遅れのお盆。お盆と正月が一緒にやって来たよう。お盆の(墓参。帰省ラッシュが始まる)。お盆はお寺の書き入れ時。盆の迎え火を焚たく。 **おまいり【お参り】** ▼お参りする(先祖の墓に。本山に。村の氏神様に。敬虔心な気持ちで)。御百度を踏む。願掛けの御百度参りのような気分高樹。賽銭ゼふを投げる。参道に並ぶ小さな石灯籠小礼に火が灯っている三浦し。寺の参道に足を進める。人波が参道を埋める。▼詣もうでる(神社に。寺に)。寺社〈参詣に出かける。あちらこちらから参詣の人びとが集まってくる=白洲。神仏に参詣する。参詣者が詰めかける。▼参拝する(皇居を。寺社仏閣を。神社を。仏閣に。本山に)。多くの参拝者で賑わう。巡礼の旅に上る。巡礼する(古寺を。聖地を。霊場を)。 **がき【餓鬼】** 骸骨がびみたいに細った身体に頭ばかりがでかくて腹の袋がだらりと垂れ、まるで絵にある餓鬼の姿古井。餓鬼のことき貪欲さ今東。餓鬼のような空腹に苦しめられる=古井。餓鬼のように(あさましい。貪り食う。ガツガツと食べる=北)。山中を餓鬼のように放浪する"今日。兵隊達は餓鬼のように食うことばかり考えるようになる今日。餓鬼道に落ちる。 **かそう【火葬】** 遺体を火葬に付す。火葬したお骨を収骨する。骨があがる。火葬場で分骨する。火葬場に骨上げに行く。▼荼毘だびに付す(遺骸を。遺体を。亡骸話を。無縁仏を)。 **かみ【神】** ▼神(縁結びの。福の。八百万种性ょの。禍幼心の)。神が(降臨する。宿る)。体に神が悪っく。救いの神が声をかけてくれる。自分を神と思い込む。神に(祈り願う。かけて習う。捧げ物を奉る。対する反逆。近い存在。誓って答える。願いが通じる。身を委ねる。魂の救済を乞う。罪の許しを乞う)。幸運を神に感謝する。どうか吉が出てくれますようにと神に念じる江戸川。神の(怒りが鎖まる。怒りに触れる。教えを信じる。御加護を得る。裁きが下る。存在を信じる。名をかたる。罰を受ける。御心にかなう。技を見る思い。深い愛に感謝する。御名みなを冒瀆いらする。悪戯か欲としか思えない=阿刀田。対極に悪魔が在る=中野美)。神の意志に(逆らう。従う)。神も仏もあったものではない。全知全能の神の如き権力を与えられるなかにし。神ならぬ(人の子。身の知る由もない)。氏神を祭る神社。神様が贈ってくれたとしか思えないような快晴=山口。神様に(選ばれた存在。感謝する。願をかける。手を合わせる)。運命の神様に見離される。魂を神様に捧げる。神様の(怒りに触れる。罰が当たる)。神様のような(夫が貧乏神に転じる=篠田。厳粛な足どりで重々しく入ってくる"松本)。私の男を見る目は運命の神様のように間違いがない=川端。大黒さまのような白い帽子!永井龍。人知を超えた神意。神意に恐れをなす。神意の発現を招き寄せる。▼神殿(神さびた。白木造りの)。エジプトの古代神殿に彫られているような象形文字"三浦し。村を護まもる道祖神-張合。忘れていた恐るべき古代の魔神の名でも口にするように苦りきって答える武田泰。鍾馗しのごとく目玉をひき剝く=柴田錬。▼神格化する(教祖を。指導者を。巫女んこを)。神明に(祈りを捧げる。かけて誓う。「誓って何も知らない)。 **きえ【帰依】** 帰依する(阿弥陀如来はふばにに。浄土きえの教えに。神仏に。土地の宗教に。土着の神に。仏教に。仏円に)。キリスト教に入信する。 **きしん【鬼神】** 鬼神につかえて修羅場に命を投じる=真継。鬼神も(恐れをなす。心を動かす。泣き出そうかという割れ鐘の大音声=飯田。魅入りそうな美しさ竹西)。断じて行えば鬼神もこれを避く辻井。鬼神を思わせるほどの働き"福永。鬼神さながらに殺人鬼の群れにとびかかってゆく佐山。 **きょうかい【教会】** 円屋根のてっぺんに十字架を感心たく教会。教会の(神父。牧師。鐘の音が鳴り渡る。尖塔比认がそびえる。塔のような尖とがった屋根"原田康)。どの教会も日曜日には礼拝に集まる人々でいっぱいになる―柳田。礼拝がすんだあとの教会のように静まりかえる=小川。礼拝堂のシルエットが棺っのように黒い=加賀。 **キリストきょう【キリスト教】** キリスト教の(神父。牧師)。キリスト教を(信仰する。伝道する。布教する)。熱別なキリスト教信者。敬虔州ふなクリスチャン。燃心なクリスチャンを自認する。▼司式する(結婚式を。洗礼式を。ミサを)。洗礼を受けてクリスチャンになる。カトリックの洗礼を受ける。福音を他人に伝える。▼ミサ(厳かな。浄福な)。 **けいだい【境内】** ほうきの目が見えるほど奇麗に掃除が行きとどいた境内=山本有。寺の境内が弔問客であふれる。人影のない境内が森閑と静まる=外村。境内に立錐切いの地も無いほど人々が参詣する=田山。砂利を踏む音が境内に響く。神社の境内に集合する。寺院の境内に参詣の人がひしめき合う平岩。神域を(犯す。けがす)。 **こふん【古墳】** 古墳から埴輪加にを掘り出す。古墳を発掘する。 <122> # い 掘する。埴輪が出土する。歴代の王の墳墓。ビラミッド形の建物。ピラミッドみたいな三角形のビル。ピラミッドを築く。 **【建立】**こんりゅう 建立する(伽藍を、教会を。寺院を。石塔を。大仏を。寺を。殿堂を。塔を。本殿を。小さな社を庭に=高橋克)。平安時代に創建された寺。鎌倉時代の創建になる寺。寺を草創する。 **【祭神】**さいじん 祭神を(分祀する。迎える)。神社に祀られている御神体。御神体を(分祀する。奉遷する。本殿に移す)。 **【地蔵】**じぞう 石の地蔵さんになった気分でじっとしている=小沼。地蔵さんの胸に真新しい赤いよだれかけがひらひらする=山崎。地蔵のように道端に佇んで待つ=小島。背中の子どもが石の地蔵を背負っているように重い=十刈。 **【宗教】**しゅうきょう 社会に新来の宗教が浸透していく=吉田。宗教に(凝り固まる。すがる。救いを求める。身を投じる)。宗教の(教祖。教理)。宗教を(否定する。布教する)。他国の宗教を異端視する。宗教上の戒律。宗教的な(光明にすがる。信条。色彩を帯びた秘密結社。エクスタシーが肉体を満たす=島田)。宗教法人は税金がかからない。新興宗教に入信する。改宗する(キリスト教に。仏教に。別の宗教に)。教祖的な(指導力。存在)。教団を組織する。宗旨を広める。信教の自由を守る。 **【数珠】**じゅず 腰に下げた数珠が僧服のひだの上を魚のようにビョンビョン跳ね上がる=阿部。数珠を(つまぐる。手首にかける)。館がまばらな数珠をつらねたように並ぶ=海音寺。つららが何本も何本もじゅずのようになってかかる=宮沢。橋の欄干に涼み客が数珠玉になっている=川端。ソーセージが数珠つなぎになってびっしりぶら下がっている=立原。念珠を(つまぐる。手にする)。 **【出家】**しゅっけ 髪を剃って出家する。出家遁世のやむなきに至る。髪を下ろし尼寺へ入る=村上元。卒然として仏門に飛び込む。 **【焼香】**しょうこう 焼香の(順番を待つ。列が後を絶たない)。仏前に進み焼香をする。焼香する(会葬者が。遺骸に。位牌に)。 **【成仏】**じょうぶつ ▼成仏する(静かに。迷わず)。即身成仏を説く。もって瞑すべし。死んでからも思いが残って成仏できない。魂が浮かばれずにふらふらさま迷っている=若竹。浮かばれない(被害者が。仏が。亡者が)。成仏できずに恨めしがる。 **【信仰】**しんこう ▼信仰(血肉にしみ込んだ。日常生活と深く結びついた)。信仰に近い畏敬を抱く=山岡。どっぷりと信仰に浸かる。信仰の(篤い女性。火種を絶やさない。火を灯し続ける=遠藤)。原始的な信仰の流れを汲む=玉村。善男善女の信仰を集める。迷信的信仰をさらけ出す。▼信仰する(神々を。観音を。芸術を。宗教を。地霊を)。宗教を奉じる。▼信仰心(金剛不壊の。烈々たる)。信仰心が(厚い。少しもない)。民間信仰を包摂した宗教。敬虔な(祈りを捧げる。伝道師)。道心が(堅固になる。定まる)。信心が芽生える。鰯の頭も信心から。▼信心する(一生懸命に。如来様を熱心に=高橋克)。 **【信者】**しんじゃ 信者(熱心な。名僧の説話に聴き入る=有吉)。信者が参集する。信者を(獲得する。教導する)。宗円に帰依する信徒。 **【神社】**じんじゃ ▼神社(霊験あらたかな。神さびて見える。山中のように静寂が深い=柴田。社殿の茅葺きが青く苔生した村外れの=奥泉)。神社の(注連縄。神楽殿で雨宿りをする)。うら寂しい神社の境内。異民族の神社を押しつける=日野。屋敷林が神社みたいにこんもり繁っている=三浦し。屋敷の庭に稲荷を祀る。お宮でお祓いをしてもらう。お宮にお参りする。代々神主を務める。檜皮葺きの社殿。社殿の前に額ずく。神式で結婚式を挙げる。神式の葬儀に参列する。神前に頭を垂れる。玉串を捧げる。鎮守の社を建てる。本殿に御神体を移す。白木造りの祠。両の手に手を合わせる。両の前に額ずく。 **【神仏】**しんぶつ 神仏が衆生を導く。神仏に(祈る。願掛けする。すがる。誓願する。手を合わせる)。神仏にも勝る大恩人=山岡。神仏の加護を得る。努力が神仏を感応させる=山岡。方々に寺社を建てる。 **【聖書】**せいしょ 聖書の朗読を始める。聖書を傍らに置く。一心に聖書を読む。▼バイブル(キリスト教の。斯界の。受験生の)。バイブルの教え。 **【線香】**せんこう 線香が煙を上げる。線香に火をつける。線香の(煙が立ちこめる。においがぷんと鼻を打つ=福永。火を押し当てたような痛み=高樹)。仏壇に線香を立てる。仏様に線香をあげる。 **【僧】**そう ▼僧(霊験あらたかな。木像のように黙然と並ぶ=光瀬)。石仏のように正坐している老僧=遠藤。袈裟をかける。黒染めの衣に身を包む=福水。仏に仕える身。高僧の賢咳妙に接する。僧形に姿をやつす。僧籍にある身。僧侶の読経を聞く。名僧が揮毫した書。名僧と仰がれる。子供っぽい尼さんが俗人の男どもの無遠慮な視線に痛々しいほど敏感に頬を染める=阿部。諸国雲水の旅に出る。和尚が住む庵。諸国を托鉢して歩く。近郷を托鉢する。托鉢の修行。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。さながら乞食坊主のように無一文=舟橋。物言いが坊主くさい。入道のように頭を剃り上げる=渡辺。 **【葬式】**そうしき 無事に葬式が終わる。葬式に(参列する。ふさわしい沈痛な顔)。葬式の段取りを相談する。内輪で葬式を済ませる。葬儀が(質素に執り行われる。盛大に営まれる。滞りなく終わる)。葬儀の列が続く。葬送行進曲が低く流れる。葬列が町を一巡りする。告別式がしめやかに営まれる。告別式に参列する。死生を分かつ直截な儀礼=石川。母の死を送る。黄泉路の旅へ送り出す。会葬者の礼に答える。会葬の列が静々と通る。香典の(袋を置く。包みを受付に渡す)。喪主を務める。歯の浮くような弔辞=佐高。弔辞を(読む。朗読する)。告別式で弔辞を述べる。お悔やみの言葉を言う。追悼の言葉。滅亡を告げる弔鐘の音を耳にする=内橋。弔鐘を打ち鳴らす。弔問の記帳をする。入れかわり立ちかわり訪れる弔問客=内田康。弔問客が思いのほか多い。野辺の送りを済ませませる。花いっぱいの野辺の送りをする=林京。喪章をつける。腕に黒い紗の布を巻く=三島。喪服に身を包む。喪服の黒が俄にわかに華やぐ=有吉。 <123> **【鎮魂】**ちんこん ▼鎮魂する(死者を。逝く友を)。鎮魂歌を捧げる。魂の安らかなことを祈る。死者の魂の安らかならんことを願う=隆。魂を鎮める。 **【通夜】**つや 通夜の(席に顔を出す。客のようにしんみりする。しんみりした通夜を嫌う)。お通夜の最中のように無口=小川。世をあげて太陽のためのお通夜をしているような陰気な雨が降り続く=宮部。お通夜のような重苦しい空気が部屋に淀む=高見。お通夜のように静かに=今。神式の通夜祭。 **【寺】**てら 寺(一宇の。古色蒼然たる。古い。由緒のある。霊験あらたかな。茅を葺いた小さな=福永。田んぼの中にぽつんと建つ=姫野。一つ目小僧でも出そうな気味の悪い=長崎)。小さなお寺が降り注ぐ日射しを受けてまどろむ=福永。寺で修行を積む。寺の山門に掛けてある扁額=さだ。片田舎の寺の住持。がらんとした寺の本堂。寺院を造立する。山寺(ささやかな。寂然とした)。山寺に止宿する。壮大な伽藍。堂塔伽藍が婉として空にそびえ立つ=山田風。平安時代に建立された古刹。古寺に映える紅葉。古寺の壮麗な甍。古寺をめぐって歩く。山門を(くぐる。入る)。仏閣を造営する。仏殿が落成する。忘れられた古寺がひっそりと眠りに沈んでいる=高橋和。本堂での仏事が済む。彼方に本堂の大屋根が望まれる。屈指の名刹。幽邃の気のたてこめた霊場=井上靖。霊場で修行する。 **【天使】**てんし 天使のような純白な肌=谷崎。死を司る天使のような恐ろしい美しさ=光原。天使のように美しい妻=常盤。娘たちが青い光の中で天使のように輝く=伊集院。ラファエロの描いた天使のように聖らかな少女の顔=堀。天使みたいにかわいい赤ちゃん=小池。可愛い天使みたいに眠る=田島。想念が素早い小天使の翼のような軽やかさで意識をかすめ飛び去って行く=柴田。天上から地獄へと投げ落とされた堕天使のように墜落する=加賀。 **【弔う】**とむらう ▼弔う(犠牲者を。後世を。死者の御霊を。死者の霊を。死んだ人を。懇ろに菩提を。成仏するように)。死者に花束を用意する。死者の再生を恐れる。線香の一本でも上げたい。戦死者を慰霊する。骨を拾う。遺灰を海に撒く。忌日命日の回向に。ねんごろに回向する。戒名を書きつける。手向ける(回向を。菊を。経を。花を)。▼弔問する(遺族を。告別式に。通夜に。喪服で)。▼追善する(一周忌を。祖先を。水子を)。▼追悼する(故人を。死んだ友を。戦死者を。戦没者を)。追悼の意を捧げる。喪に服す。▼明ける(服が。哭が)。▼霊を慰める(横死者の。死者の。戦没者の)。▼供養する(死産した子を。水子を。霊を。香華をたむけて)。供養塔を建立する。 **【鳥居】**とりい 朱の鳥居が連なる。鳥居の横木が目に入る。鳥居をくぐる(神社の。赤いペンキの剥げかけた古ぼけた=三浦し)。脚と骨盤が神社の鳥居のようなお婆さん=干刈。 **【仁王】**におう 仁王の足のようにふくれ上がる=極。仁王様のようにかっと見開いた目=横山。仁王様のようなしかめっ面=内田康。目が仁王様のように見開かれている=高橋三。仁王像のようにかっと見開いた目=横山。仁王のような逞しい肉体=有吉。仁王のように立ちはだかる=真継。 **【念仏】**ねんぶつ 歌うように念仏を誦する。念仏をあげる。念仏を唱える(一心に。高らかに。ぶつぶつと)。物憂く単調で何の芸もない念仏のような歌声=武田。念仏のように(くちずさむ。唱える。同じ言葉を繰り返す=乃南)。 **【納骨】**のうこつ ▼納骨する(寺に。墓地に。四十九日の法要を終えて)。親族の収骨に参加する。墓地に埋骨する。 **【祝詞】**のりと 神官が祝詞をあげる。神主が祝詞を(あげる。読む)。 **【墓】**はか 墓(記念碑のような大きな=尾辻。背丈ほどもある萱が生い茂った=斎藤栄)。墓に眠る死者。墓の守りをする。墓を掃除する。寺に墓を建てる。墓場からよみがえったような鬼気と妖気を感じさせる男=阿久。墓場に出る鬼火。骨が墓場のように散乱する=本多勝。揺りかごから墓場まで。先祖の墳墓を守る。見知らぬ幽霊がもうもうとした闇の中に我が物顔に漂うごく暗闇の墓地=尾辻。人間至るところに青山あり。こんもりうずたかい塚。死んだ人たちの土饅頭が並ぶ。土饅頭に盛る。木立に囲まれた古い墓地。郷里の墓地に分骨する。冬の日にきらきらと石英が光っている外人墓地=三島。 **【墓石】**はかいし 墓石が薄い灰色に鎮まる。梢から雨滴がボタボタ落ちて墓石が泣くように見える=田山。夜明けの薄明の中の墓石が殷賑な港に碇泊している多くの白い帆舟のよう=三島。墓石に(定紋を彫り込む。向かってつぶやく)。ほんのわずかな粉のような光を受けて墓石の表面がほんのりと浮かび上がる=尾辻。墓石を(丁寧に洗う。従って歩く)。点々と並んだ窓が解読不能の墓碑銘を思わせる巨大な墓石のような超高層ビル=日野。ビルが蒼黒い光の中で墓石のように寒々としている=加賀。墓碑に記す。墓碑銘を刻む。白木の墓標。墓標を立てる。 <124> # い **【墓参り】**はかまいり 父母の墓参りに行く。墓に(花を供える。参る)。墓所を詣でる。菩提寺にお参りする。仏前に供物を捧げる。伽羅と沈香を仏前に供える。墓前に(花を捧げる。報告をする。詣でる)。線香を墓前に置く。彼岸の墓参。縁者が墓参に来る。墓参のために帰郷する。ぷつりと墓参の足が絶える。 **【棺】**ひつぎ 棺がきしぎし音を立てる。棺に(取りついて大泣きする。付き添って墓地に向かう=岡本)。棺の蓋を閉じる。部屋全体が大きな棺の中のように暗い=三島。穴の大口にぺろりのみこまれるように棺を降ろす=石森。人間は棺を覆うまでが修行=山本周。火葬場へ出棺する。出棺を見送る。遺体を棺に納める。自分が棺桶のなかに横たわっているような恐ろしさに身ぶるいする=中村貞。殺風景な窓のないコンクリートの棺桶のような部屋=泉優。 **【仏教】**ぶっきょう 仏教が(伝来する。渡来する)。仏教の典籍。仏教を信仰する。禅の公案を(解く。考えて瞑想にふける)。欧米社会に禅を紹介する。仏式で結婚式を挙げる。仏式のお葬式。抹香臭い(香炉。説教)。 **【仏像】**ぶつぞう 仏像の体内に墨書する。仏像のような笑いを頬に浮かべる=高橋和。目を伏せてかすかな笑みを湛たたえている仏像のような顔=倉橋。仏像のように表情のない日本人の顔=遠藤。掌を腹の前で仏像のように組む=辻井。阿弥陀如来の尊像が端然と金色に輝く=芥川。霊験あらたかな観音様。観音様に願をかける。小ぶりで素朴な観音像。大仏が開眼する。大仏殿が天空にそそり立つ。大仏を拝観する。如来の慈悲が衆生の心に満ちる。菩薩のような(慈悲円満の相。慈愛に満ちた表情=筒井)。菩薩顔でいつもにこにこしている=高橋。本尊を安置する。寺の境内に石仏が並ぶ。目を閉じて石仏の如く黙っている=二葉亭。石仏のように寂然と趺坐する=中。石仏みたいに情がない=円地。 **【仏壇】**ぶつだん 金をふんだんに使った仏壇。仏壇に(灯明をあげる。花を供える。線香をあげ手を合わせる=三浦し)。壁ぎわに据えられた仏壇のように巨大なステレオ=干刈。生活全体が仏壇のように古風な伝統に満ちている=宮本百。神棚に(あげて拝む。灯明をあげる。向かって航海の無事を祈る)。位牌が収めてある小さな木づくりの厨子=高田。 **【仏法】**ぶっぽう 衆生を仏法に導く。仏法を修行する。仏道修行に肝胆を砕く。仏道修行を志す。仏道に帰依する。ひたすら仏道に専念する。仏道への発心を語る。 **【法事】**ほうじ ▼法事(一周忌の。三回忌の)。お布施を包む。供養の仏事を営む。▼法要(一周忌の。三回忌の。四十九日の。初七日の)。盛大な法要が営まれる。 **【葬る】**ほうむる ▼葬る(母を。死者を手厚く)。死者を(穴の底に横たえる。墓地まで運んでいく)。改葬する(墳墓を。先祖代々の骨壺を)。死者を水葬にする。埋葬する(遺体を。死者を。墓地に)。 **【仏】**ほとけ 知らぬが仏。仏つくって魂入れず。冥土から来た仏が火に宿る。仏に(祈る。帰依する)。鬼にもなれば仏にもなる。仏の(教えを説く。顔も三度。心に背く。名を称える。御手にすがる。慈悲は広大無辺)。地獄に仏の喜びよう=福永。仏の加護を(祈る。得る)。神も仏もない世の中。地獄で仏を見る思い=烏田。仏のような善人=遠藤。口許に仏のような笑みを浮かべる=平石。 **【祭り】**まつり 祭りがますます盛り上がりを見せる=三浦し。お祭りでも来たように眼を輝かせる=椎名。祭りの(情緒を楽しむ。景気が沸騰する。喧噪から逃れる。浮き立つような雰囲気=飯田)。祭の(終わりを惜しむかのように熱気が部屋じゅうにみなぎる=飯田。翌朝のような静かさ=西木。夜のように賑やかな美女の姿=芥川)。待ちに待った祭りの日が来る。祭りの当日のような喧噪ぶり=塩野。子どもの頃楽しみにしていたお祭りの夜のようなご馳走=三田。昼の花園のごとき光と色にあふれた祭りの光景=長与。香具師がお祭りで店を並べる。お祭りの提灯が何重にも繋がって下がっている=鈴木三。お祭りのような人出=佐多。お祭のようにはしゃぐ=小島。毎日がお祭りのような人の溢れよう=佐多。夜に入っても続く修復作業の鉄の音、工事の人の声が、遠い祭りのように聞こえる=山田太。祭のように屋台がずらりと並ぶ=加賀。祭りのように押し合いながら見物する=遠藤。夏祭りが数日後に迫る。旧正月に行われる古式の祭事=三島。春の祭典を心から祝う。祭礼かと見まがうばかり賑やかに飾り立てた店の前の広告塔=島崎。この世ならぬ華麗な祝祭の街=井上靖。 **【祭る】**まつる ▼祭る(鎮めの神を。守護神を。祖先の霊を。祖先を。雷神を。持仏を本尊に)。一宇のお堂。お堂に祭る。▼合祀する(祭神を。戦死者を。親の墓へ子供を)。神の依り代として祭祀に使われた石。祭壇に写真を飾る。祭壇の前に額ずく。 **【巫女】**みこ 巫女が宝剣と扇を振って舞う。巫女の口寄せ。神がかりに入った巫女のごとくつぶやく=武田炎。巫女のようにおごそかに託宣を下す=阿刀田。声が口寄せの巫女の呪文のように頭の中をブンブンと流れ過ぎて行く=阿刀田。神に巫女を奉る。死者の霊を呼び出す。口寄せで動物を集める。口寄せの呪文。憑依の去った巫者のように身も心もぐったりとくずおれる=中島敦。 **【女神】**めがみ 女神が降臨する。女神を崇拝する。幸運の女神が微笑む=荒巻。幸運の女神に抱きかかえられる=西木。巫山の神女のような人倫を絶した美女の姿=芥川。 <125> # い ## 威張る・誇る **【いい気になる】**いいきになる 「いい気になる(成功して。百点を取って)。いい気になって(遊びまわる。ぱっぱと金を使う)。ついいい気になって飲み過ぎる。調子に乗って(言い過ぎる。歌う。話す)。 **【家柄】**いえがら ▼家柄(古い。由緒ある)。王族に近い家柄の出。然るべき家柄の娘。▼正しい家柄(筋目。由緒)。家格が(違う。釣り合う)。家門の(恥。誉れ。体面にかかわる)。 **【威信】**いしん 威信が(失墜する。地に墜ちる)。警察の威信にかけて一刻も早く犯人を発見しなければならない=高木。神の威信を借り着した政治権力。軍の威信を盾にごり押しする。威信低下を国民の前にさらけ出す。威光が轟き渡る。金の威光がまかり通る。威光に(恐れをなす。ものをいわせる)。▼威武(赫々たる。帝国の)。威武を(輝かせる。天下に示す)。威望が(衰える。高い)。威望を失墜させる。武威に(屈する。服する)。武威を宣揚する。 **【威張る】**いばる 威張る(軍鶏のように。むやみに。いい気になって。いっぱし大人の仲間入りをして=今東)。ゴリラみたいにいばる=灰谷。たかが戦争成金のくせに威張り返る=坂口。威張りくさって強引に言い募る。意味もなく威張りくさる。貴族のお嬢様が貧民宿を訪れたように威張り散らす=谷崎。交渉をまとめ大威張りで帰国する。大きな顔をする。伸し歩く(肩で風切って。我が物顔で)。▼笠に着る(上役を。お上を。軍の威勢を。権威を。上級生ということを)。▶威光を笠に着る(加賀百万石の。将軍家の)。肩肘張って(生きる。おもいあがる。つっかかる)。肩肘怒らせて突っかかってくる。空威張りする(酒を飲んで。弱いくせにすぐ)。空威張りしているだけの武士になり下がる=海音寺。虎の威を(借る狐。借りて傲然となる)。不遜な(自信。態度)。思い上がった不遜な言葉=井上靖。すべて自分の思い通りになるという不遜な考え方=痔。 **【自惚れる】**うぬぼれる ▼うぬぼれる(男振りがよいと。自分は美人だと)。うぬぼれると得てして失敗しがち。落伍者ほどウヌボレの強いものはない=坂口。押しつけがましい己惚れの強さ=石川。うぬぼれを(くすぐる。増長させる)。天狗になる。金持ちだということだけで慢心する。慢心して練習を怠る。 **【横柄】**おうへい 横柄な口調で尋ねる。頭から若い娘と見くびっているような横柄な口のきき方=山手。生まれてはじめてお辞儀をするようにぎこちないどこかに横柄なところのある挨拶=河野。芝居がかりな横柄な口をきく=川端。横柄に(答える。顎をしゃくって=訳く=山手。股をひろげて椅子に腰を下ろす=安岡)。召し使いに対するような横柄さ=三好。横風な(口を利く。失敬なやつ)。 **【横暴】**おうぼう 横暴な(強権政治。大資本家。亭主に苦しむ)。軍人の横暴に反抗する。警察の横暴に泣かされる。横暴の限りを尽くす。横暴を腹に据えかねる。横暴不遜に茫然とさせられる=舟橋。専横な(君主。社長。政治)。非民主的な運営。▼暴君(残虐な。情け知らずの)。暴君の圧政。暴君ぶりを発揮する。 **【驕る】**おごる ▼驕る(心が。君臨に。自信に。富に)。驕れるものは久しからず=氷室。ずいぶん驕りたかぶった考え。驕慢な誇りをいだく。少女らしい驕慢な論理。驕りたがるような驕慢な表情=吉行。扱いにくい驕慢な美しい女=森。周りからちやほやされて驕慢になる=干刈。若さの驕慢の絶頂=柴田翔。 **【思い上がる】**おもいあがる 天然の支配に成功したと思い上がる=寺田。思い上がった態度。▼思い上がり(小賢しい。とんでもない。身のほどわきまえぬ=野坂)。思い上がりが鼻につく。思い上がりもはなはだしい。怒りに満ちた満足感。増上慢で目がくらむ。増上慢になってつけ上がる。▼のぼせ上がる(自尊心が。有頂天に。ちやほやされて)。 **【格式】**かくしき 格式が面倒な侍の家。格式の高い(神社。寺。ホテル。旅館)。格式を(重んじる。誇る)。古い格式ある旅館。 **【虚勢】**きょせい ▼虚勢(小心者のせいいっぱいな=杉本。誰の眼にもあからさまな不安を肩肘張って強情に押し隠そうとする子供らしい=高井)。強がりめいた皮肉を口にしているのは不安や怯えを隠すための虚勢に過ぎない=小林久。依然として虚勢を崩そうとしない。怯懦な小動物が虚勢を張るように勢いよく顎をしゃくって歩き出す=外村。虚勢を張る(大言壮語で。内心びくつきながら=幸田文)。こまめの歯ぎしり。張り子の虎。擬勢を(示す。張る)。 **【権勢】**けんせい 権勢に(抗う。並ぶ者がない)。恩顧を装って権勢にこびる態度=森。権勢を(振るう。めぐる角逐。ほしいままにする)。権勢欲から発した愚行。権門に(出入りする。取り入る)。 **【高慢】**こうまん 井の中の蛙が大海を知らないみたいな小さい妙な高慢=太宰。高慢な(態度。笑い)。虎の威を借る高慢な物言い=海堂。高慢に振る舞う。高慢の鼻を(折る。くじく)。入れてやるといわんばかりの高慢さ=久米。高慢さを鼻の先にぶら下げる=山岡。高慢そうな令嬢。高慢そうに鼻をツンと立ててひとを寄せつけないような顔をした女=安岡。高慢ちきな(態度。若者)。小生意気で高慢ちきな女=源氏。高慢ちきに取りすます。権高な(態度。目で見る)。権高に(言う。出る)。お高く止まった美人。 **【傲慢】**ごうまん 傲慢で放縦な振る舞い。傲慢な心が頭をもたげる。投げやりで傲慢な言葉づかい。傲慢に聞こえる言い方。高みの見物をする)。聞きさえすればいいという態度は質問本来の謙虚をしばしば傲慢にすり替えてしまう=竹西。傲慢の鼻を明かす。顔に傲慢の色が現れる。神よ我らの傲慢を許したまえ=若竹。傲慢さ(エリート特有の。人を人とも思わぬ)。傲慢さに腹を立てる。傲慢不遜な非人間的な男=黒石。傲慢無礼に憤激する。権柄ずくで自説を貫く=鈴木三。傲岸な(顔つき。口ぶり。人物)。傲然と(言い放つ。君臨する。無視する)。肩をそびやかして傲然と答える。傲然とした(気性の激しさ。優越感)。 <126> # い **【誇示】**こじ ▼誇示する(健在を。存在を世に。力を天下に。高らかに力量を。やる気のあるところを。名士と交友関係があることを=高橋克)。▼大見得を切る(役者が。太股も露わに)。演説口調できざな大見得を切ってやりたいくらいの決意を秘める=太宰。思い入れたっぷりに見得を切る。歌舞伎で見得を切るような得意絶頂のシーン=高橋三。 **【自尊心】**じそんしん 自尊心が(許さない。ずたずたに裂ける=かんべ。火のようにのぼせ上がる=本庄)。自尊心が強い(並外れて。人一倍)。自尊心に下ろし金をかけるようなことをする=倉橋。手近なところで不満を解消しようとするほど自尊心は低くない=松浦。自尊心を(くすぐる。逆なでする。満足させる。持ち続ける。いたく傷つける)。気位が高く手の届かない高貴な珠玉のように近寄りがたい=福永。想像を絶するほど気位の高い女=倉橋。相手の気位を微妙に刺激する=村松。気位高く育てられる。 **【自負】**じふ 由緒ある家の生まれだという自負=辻井。自分の才能に自負がある。実績に自負を持つ。▼自負する(生粋の江戸っ子を。テレビを見ることにおいては人後に落ちないと=高橋源)。天才にありがちな自負心=松本。自負心の強いインテリゲンチャが宿業として背負わねばならない精神の暗黒=高橋和。自負心を(くすぐる。誇示する)。粋がって言う。自恃の心。自恃を強く持つ。痩せても枯れても(一家の主人。男一匹。昨年の優勝校。日本は日本)。 **【自慢】**じまん 自慢で鼻の穴をふくらませる=戸板。語学力を自慢にする。愚痴が自慢に聞こえる=芝木。美貌の妻を自慢する。節度もなく手ばなしで子供の自慢をする=田辺。自慢げな顔つき。自慢げに(説明する。得々と語る。ひけらかす)。娘は自慢の娘。自慢話に花を咲かせる。自慢話ばかりで聞き苦しい。ひとしきり自慢話をする。息子自慢を始める。自分の手腕を誇る。鼻が高い。鼻にかける(家柄を。才能を。持参金を。大学出を。手柄を。美貌を。なまじの経験を)。 **【尊大】**そんだい 尊大で近寄りがたい人。わがままで尊大な人。脅したり賺したりするような尊大な口調=佐藤春。尊大に振る舞う。態度が尊大になる。感情に反比例した尊大さ=野上。官僚的な尊大さをおっかぶせるように笑い声を爆発させて相手を煙に巻く=徳永。 **【高飛車】**たかびしゃ 高飛車な(挨拶をする。言い方。物腰で応じる)。高飛車に(命令する。話を中断させる)。上から押しつける高飛車の態度に出る=村上元。高姿勢に出る。嵩にかかった言い方。嵩にかかってどなりつける。かさにかかったように責める=半村。高圧的な(言い方。態度に出る。調子で尋ねる)。慇懃だが高圧的な口調で言う=篠田。高圧的に叱りつける。 **【付け上がる】**つけあがる 「つけあがる(甘やかすと。優しくすれば)。▼図に乗る(おだてれば。ほめられるとすぐに)。図に乗ってよけいなことを喋る=船戸。甘やかせば図に乗って増長する。増長した女くらい始末の悪いものはない=源氏。奢侈を増長させる。つけあがるな。つけあがるのも(大概にしろ。大抵にしろ。いい加減にしろ)。▼うぬぼれるのも(大概にしろ。図に乗るのも。つけあがるのも)。 **【強気】**つよき 強気(一点張り。一辺倒)。強気な(台詞を吐く。発言)。強気に出る。強気の構えを崩さない。強気すぎる経営の付けが廻ってくる=高井。人前で弱気を見せるなどついぞない男=西木。強腰で臨む。強腰な意見を吐く。 **【得意がる】**とくいがる ▼得意がる(自分の手際を。成功して)。得意になって(説明する。述べ立てる。胸を張る)。得手に帆を揚げる。肩で風を切る。自賛したい気持ちを割り引く。手前味噌を(言う。並べる)。鬼の首でも取ったように(人の噂をする。喜ぶ。人前で言い立てる)。それ見たことかと鬼の首でもとったような勢いで反対する=新田。▼自画自賛する(我ながらよくできたと。大成功だったと=倉橋)。得意になって鼻をうごめかす。得意の鼻を誇りにかす=谷崎。小鼻をうごめかす(自慢げに。得意そうに)。 **【得意げ】**とくいげ 頬に得意気な微笑が貼りついている=三浦し。得意げに(説明する。頬を緩める。知識を吹聴する)。顔を上気させ得意げに言う。鼻が得意げに動く。得意然と(言い放つ。一席やる)。得意そうな顔で話す。得意そうに(胸を反らせる。小鼻を開いてみせる)。得意満面で答える。破顔して得意満面に言う。得意満面の笑みを浮かべる。鼻高々に自賛する。合格して鼻高々になる。手柄を鼻高々に吹聴してまわる。自分の腕前に鼻を高くする。したり顔で(解説する。説教を垂れる。目くばせする)。したり顔にものを教える。さもしたり顔に言う。得々と(吹聴して回る。人ごとに見せて回る。批評を開陳する)。得々として話す。胸を張る(得意げに。昂然と。自信たっぷりに。当然だと言いたげに=貫井。予言が的中したぞといわんばかりに=藤本。どうだ大したもんだろうというように=加賀)。 <127> **【のさばる】**のさばる のさばる(悪が。悪徳商法が。官が。雑草が。守旧派が。大資本が。我が物顔に)。▼跳梁する(ならず者が。変化妖怪のたぐいが)。海賊の跳梁にまかせる。魔の跳梁に脅かされる。跳梁ぶりが目に余る。憎まれっ子世にはばかる。 **【のろける】**のろける のろける(恋人のことを。女房との仲を。ぬけぬけと。人前で)。のろけ話が長々と止めどもなく続く=江戸川。のろけまじりに(さんざ聞かされる。しゃべり散らす)。のろけまじりの自慢話。 **【晴れがましい】**はれがましい 晴れがましい喜びを味わう=三島。舞台で晴れがましく踊る。晴れの(門出を祝う。宴に暗い影を投げる=村上元)。▼晴れ姿(一世一代の。結婚式の。優勝の)。晴れ姿を(夢見る。カメラに収める)。 **【晴れ舞台】**はれぶたい だれも一度は夢見る晴れ舞台=飯田。晴れ舞台で脚光を浴びる。晴れの舞台を新しい晴れ着で飾る=内橋。大舞台(一生一遍の。才能が花開く)。▼檜舞台(第一級の。晴れの)。檜舞台に立つ。檜舞台を踏む。 **【ひけらかす】**ひけらかす ▼ひけらかす(威厳を。知識を。文学趣味を)。衒学的な(才子。説明)。ペダンチックな(会話。批評。文章)。▼見せびらかす(きれいな歯を。若さを。才を人に。有名人のサインを)。▼てらう(学識を。学殖を。凄艶を。奇を)。てらわずに熱心な口調で語る。 **【開き直る】**ひらきなおる ▼開き直る(居丈高に。欠陥を逆手にとって。せっぱ詰まって)。開き直って腹をくくる。煮るなり焼くなりいかようにもしてくれ。ふてぶてしく居直る。悪党が居直る=淡。居直りの気持ちが頭をもたげる=内橋。 **【ふんぞり返る】**ふんぞりかえる ▼ふんぞり返る(後部座席に。傲然と。勝利者として。偉そうにソファに=貫井)。ふんぞり返って(歩く。近づいてくる)。ぞっくり返って歩く。身をそっくり返らせる。そっくり返る(椅子に。後ろに)。 **【暴言】**ぼうげん 酔余の暴言。暴言が(問題化する。口からほとばしり出る)。暴言に憤慨する。暴言を吐く。ほざく。問題視する)。妄言につきあいきれない。世上の妄言にすぎない。妄語を(口走る。慎む)。 **【誇らしい】**ほこらしい 誇らしい(顔。気持ち)。大いに誇らしく感じる。誇らかな(気持ち。微笑)。誇らかに生きる。両乳が誇らかに張る。誇らしげに(顔が輝く。大声で報告する)。成功を誇らしげに伝える。息子を誇らしげに眺める。胸を張って誇らしげに言う。どうだいと胸を張りたいような気持ち=灰谷。意気揚々と(立ち去る。出かける。引き揚げる)。これ見よがしに(飾っておく。人目にさらす。見せつける。うれしげに声をあげる。大っぴらな態度。存在を誇示する。置かれたプレゼントの包み=佐藤愛)。これ見よがしの派手な飾りつけ。誇り高い(女。考え。貴族。青年。独立した人間)。誇り高く生きる。 **【誇り】**ほこり 誇りが顔を輝かせる。自信と誇りが生活を支える=瀬戸内。密かに抱いていた誇りが瓦解する=島田。胸が誇りで破れそうになる=塩野。誇りと自尊心はいささかも姿なえていない=佐々木。誇りに傷がつく。心から誇りに思う。内心密かに誇りに感じる。誇りに満ちた(生き方。言葉)。誇りも意地もかなぐり捨てる=山本周。いたく誇りを傷つけられる。誇りを持つ(仕事に。職場に)。一寸の虫にも五分の魂。漁師としての矜持が許さない=吉村。王女としての矜持にしがみつく=山。矜持の言葉を口にする。矜持を胸にいだく。プライドが許さない。人一倍プライドが高い。ブライドを(くすぐる。持つ。かなぐり捨てる。傷つけるような言い方)。完膚なきまでにブライドを叩き潰される=海堂。 **【誇る】**ほこる ▼誇る(栄華を。旺盛な筆力を。巨大な戦力を。空想の潤沢を。権勢を。高視聴率を。最大の面積を。自由な校風を。狩猟の腕を。絶倫の精力を。先見の明を。壮大な規模を。鉄壁の陣を。豊満な肉体を。良風美俗を。圧倒的な強さを。応用範囲の広さを。きめの細かい肌を。最新式の設備を。ずば抜けた能力を。世界一の技術を。抜群の運動神経を。マナーのよさを。水揚げの多さを。心斎橋随一の古い暖簾を=山崎。ダントツの実績を=軍司。飛ぶ鳥を落とす威勢を=柴田錬)。高い業績を誇る大学者。長年の伝統と格式を誇るホテル。世界に誇るべき平和憲法を前面に押し立てる=佐高。勝ち誇った(顔。声で言う)。花が見渡す限りに咲き誇る。満々たる人員。 **【名門】**めいもん 武勇をもって鳴る名門。名門の(御曹司で。血を引く。出)。地元では名門の地主。名門を向こうへ回して闘う=村上元。東大への進学率の高さを誇る名門校=阿木。▼名家(音に聞こえた。近郷一の)。名家の(御曹司。名残をとどめる)。 **【名誉】**めいよ 名誉が失墜する。名誉と金の両方を一挙に手に入れる=瀬戸内。栄典を名誉とする。名誉に(かけて誓う。傷がつく)。愛国者としての名誉の死。名誉より実利をとる。名誉を(重んじる。回復する。傷つける)。辛うじて名誉を保つ。名誉を守る(家の。命をかけても。客の)。名誉回復を果たす。名誉毀損で訴える。名誉挽回のいいチャンス。名誉欲から発した愚行。名誉欲で我利我利亡者になる。名誉欲の塊のような奴=大藪。栄典を授与する。栄に浴する。栄職に就く。栄辱を共にする。名利に超然としている。名利の(世界にあくせくする。世界を離脱する)。現世の名利を求める。死して余栄あり。栄誉に輝く(全国一位の。チャンピオンの)。最高の栄誉を受ける。身に余る光栄。光栄ある(記録。歴史)。▼光栄です(お誉めにあずかって。お目にかかれて)。過分の光栄に浴する。▼誉れ(出藍の。勇者の)。誉れを得る。 <128> # 卑しい・けちる **【浅ましい】**あさましい 餓鬼のようにあさましい。野良犬のようなあさましい眼でじっと眺める=遠藤。さかりのついた猫が雌を呼ぶようなあさましさ=今日。言葉が泣き声で浅ましく乱れる=武田。我ながらいささかあさましくなる貪婪さ=開高。 **【卑しい】**いやしい ▼卑しい(根が。金に。女色に。食べ物に)。卑しい考えを起こす。品性の卑しい人。良心に恥ずべき卑しいこと。目に下男が美しい女主人を見るような卑しい憧れの色が浮かぶ=倉橋。人の顔色を窺うような卑しい態度=辻井。野性的な卑しい飲み癖=徳田。卑しげな奴隷根性。動物的なむき出しの卑しさ=阿川弘。心根の卑しさを露わにする。他人の不幸を喜ぶ卑しさを嫌悪する=貫井。はしたない(言葉を口にすべらせる。話題をもてあそぶ)。▼卑語(下品な。淫らな)。卑小な考え。虫よりも石よりも劣る卑小な男=中上。意地汚い(子供。役人)。金に意地汚い。さもしい(期待が胸をよぎる。心持ちを軽蔑する)。犬みたいにさもしい男=谷崎。自分がさもしい人間に思える=横山。さもしく浅ましい=品。 **【嫌らしい】**いやらしい 「いやらしい(根性が無礼で。お世辞が過ぎて。ヘドが出そうなくらい=富岡)。いやらしい猫なで声で話しかける=阿部。男の風上にも置けないいやらしい存在=石坂。べったりとしたいやらしい目つき=筒井。女房の不貞をあばく男の執拗さと嫌らしさ=佐多。虫酸が走るように生理的ないやらしさを感じる=本庄。えげつない(話題を忌み嫌う。顔でにやにやと笑う=乃南)。さすが女同士だけあって思いつく罰ゲームがえげつない=有川。 **【下種】**げす 下種な興味。下種の(浅知恵。後知恵。勘繰り。知恵は後から出る)。下種ばった口を利く。下賤げな精神。凡愚下賤の輩か。 **【けち】**けち 強欲なけち。けちな(虚栄心。虫がつく。心をかなぐり捨てる=氷室)。ケチな悪事の限りを尽くして生きている=多岐川。恨みつらみを云うようなケチな野郎=菊池。チップをけちる。けち臭い(考え。自己満足。盗みをはたらく)。支払いがけち臭い。細かい金の使い方をする。わずかな金も出し惜しみする。寄付をちびる。けちけち(食べる。使う)。いじましい(出世主義者。思いが心の中に湧く)。雅量のない男。しみったれた(まね。了見)。度量を持ち合わせていない。けちけちする(お祝いを。賛辞を。支払いを)。小心で吝嗇な父。食欲が吝嗇に転じる。義理人情を欠く吝嗇。 **【下品】**げひん 下品な(根性のいやしい人。冗談を口にする。音を立てて味噌汁をすする=南木)。酔っ払いの下品な笑い声。ぐびぐびと下品な音をたてて湯水が流れはじめる=加賀。爆笑を誘うような下品なユーモア=島田。下品に腰を振る。ブランド物を下品に着こなす=海堂。下品の極印を押される。あまり品がいいとはいえない笑いを唇に上らせる=松浦。くちゃくちゃ音を立てて食べる=辺見。繊細さや優雅さは一かけらもない=円地。下等な(言葉つき。笑い声)。雨しよぼみたいな下等な踊り=永井荷。柄の悪い男。見るからに柄の悪そうな一団=重松。反吐の出るような流行語を連発して低級な笑いを振りまく番組=高橋治。低俗な番組を乱作する。卑俗でいやらしい演技=松浦。卑俗な関心にとり憑かれる。品が悪い。品格のない男。品のない(言葉。笑い方。悪口)。野卑な喜びの色が満面に動く=国木田。猥雑な野次。口汚い(言葉の応酬。罵りの言葉を吐き散らす。罵倒の言葉が続く)。口汚く当たり散らす。下卑た物言いに腹が立つ。あまりに下卑た発言。唇の端に下卑た笑いを浮かべる=火坂。野卑な(冗談を飛ばす。微笑を口角に浮かべる=水上)。 **【下劣】**げれつ 何百倍も何千倍も下劣=丸谷。下劣な(言いがかり。手段。見せしめ)。下劣さに耳を塞ぎたくなる=佐高。低劣な(番組。読み物)。人を馬鹿にした低劣な冗談=貫井。 **【好色】**こうしょく 好色な笑みを浮かべる。目に好色な光が宿る。中年男の好色な気持ちの乱れ=山田太。下半身がだらしない。鼻の下を(長くする。伸ばす)。淫乱な(女。血に苦しむ)。エッチな(話。人)。男好きで親が手を焼いたほどの娘=舟橋。根っからの女好き。好き心を(かき立てる。そそる)。根っからの助平。助平な中年男。助平心が起きる。 **【小賢しい】**こざかしい 小賢しい(知恵をつける。細工の限りを尽くす。キツネのような顔=小池)。打算にいそがしい小ざかしい心=円地。小器用で小賢しい奴。小利口な返事が気にくわない。小利巧で生意気な顔をした女の子=遠藤。 **【下ねた】**しもねた 尾籠な下ねた。下ねたを(嫌う。楽しむ。話す)。際どい話。猥談(単刀直入な。露骨な)。猥談に花を咲かせる。 **【守銭奴】**しゅせんど ▼守銭奴(吝嗇な。拝金主義の)。魂を売り渡した金の亡者=飯田。金儲けしか頭にない。金儲けのためならあこぎなことも平気でする=竹内。金の奴隷。 **【小心】**しょうしん 小心で実直が取り柄。根は小心で保身に汲々とする=小林久。小心な善人に困らされる=曽野。心配性で小心な性格。動作の端々に小心な性格が現れている=煉。小心の魔にとりつかれる=阿部。▼小心者(体は大きいが見かけ倒しの。短気で我が儘な坊ちゃん気質の=今)。小心者のせいいっぱいな虚勢=杉本。小心翼々たる(暮らしぶり。正直な男。人間)。小心汲々と家を守る。気の小さな男。肝っ玉が小さい。けつの穴が(狭い。小さい)。胆力に欠ける。冒険のできない性格。料簡が狭い。 <129> **【狡い】**ずるい ずるい(考え。性格。やり方)。少女が狡い小犬のようについて来る=大江。ずるそうな(表情。笑い方)。小さな狡そうな眼でじろじろ見る=岸田。▶ずるをする(ゲームで。試験で)。自分だけ甘い汁を吸う=灰谷。小狡いことに頭が働く。万事について小狡く要領よく立ちまわる=遠藤。小狡そうな目で眺める。悪ごすい目をする。悪ごすく(立ちまわる。裏で甘い汁を吸う)。こすからい(男。手段。世の中)。こすからく(立ち回る。世を送る)。こすい(狐。商人)。 **【狡賢い】**ずるがしこい ずる賢い(人間。抜け道。目で反応を窺う)。狡猾な(知恵を働かす。手段を思いつく)。中年男の狡猾な物言い。心理を見抜いたような狡猾な微笑=福永。蛇のような狡猾さで巧みな方法を駆使する=遠藤。利害に関しては商人以上の狡猾さ=有。 **【世知辛い】**せちがらい せちがらい(浮き世。考え。世の中)。▼せちがらくなる(時代が。人が)。こせこせした(態度。人)。こせこせと忙しい。 **【退廃】**たいはい 退廃に身を沈める。頽廃した生活から足を洗う=松浦。退廃的な風潮に眉をひそめる。頽廃が骨の髄まで食い込む。頽廃した感情。 **【堕落】**だらく 堕落の(一途をたどる。底に沈む。道をひた走る)。▼堕落する(政治が。性道徳が。思想的に。精神的に。見る影もないほど)。誇りを地におとす。腐敗堕落がきわまる。▼堕する(空虚の世界に。扇情的に。通俗に。二番煎じに。幹部がイエスマンに。敗残者の群れに。マンネリズムに)。 **【成り下がる】**なりさがる ▼成り下がる(下請け根性に。俗物に。つまらぬ男に。恥知らずに。破廉恥に。負け犬に。密告者に。無用の長物に。卑怯者に)。なり下がる(空威張りしているだけの武士に=海音寺。捨て鉢な悪たれ女に=宮本百。一介のやせ剣客と=山手)。警察が権力者の走狗になりさがる=常盤。なり果てる(哀れな人間に。やくざ者に。西海の波にただよう浮き身と=白洲)。無頼の奸賊になりはてる=真継。肉欲の餓鬼と成り果てる=江戸川。 **【抜け目ない】**ぬけめない 抜け目ない利口な買い方。如才なく抜け目ない男。抜け目なく(頭を使う。算盤をはじく。条件付きで合意する)。鋭い目を周囲に抜け目なくくばる=加賀。▼抜け目がない(売りこみに。金に。万事に。狐みたいに)。抜け目のない(頭を働かす。金融業者。商売人)。表情に抜け目のない計算が漂う=原田。隅におけない。目から鼻へぬけるような人物=坂口。計算高い(男。女)。計算高そうな顔。 **【卑怯】**ひきょう 卑怯な(威しをかける。手を使う)。醜い卑怯な態度をとる。この期におよんで未練な考えをおこすほど卑怯な者はない=山本周。底意に満ちた卑怯な手段=今日。人をなめた卑怯な振る舞い=米山。卑怯にも退却する。卑怯のそしりを免れない。男の風上にも置けない奴=佐野。敵前逃亡を図る。敵に後ろを見せる。闇の中から矢を放つ=横山。この期に及んで命乞いをする卑怯者=奥泉。卑怯者にならずに済む。責任逃れと受け取れる発言。 **【卑屈】**ひくつ 卑屈な(奴隷根性。悲笑いを頬にうかべる=遠藤)。一層相手の疑惑を増すような卑屈な態度=今日。犬畜生に等しい卑屈な人間=尾辻。感激を通り越した卑屈な声=高見。機嫌をとるように卑屈な笑いを浮かべる=遠藤。態度が不自然にいじけた卑屈なものになる=南条。卑屈なほど従順。 **【卑劣】**ひれつ 卑劣な(脅迫用の科白。だまし討ち。やり口を思いやる。陰謀をめぐらす)。何という見下げた卑劣な奴。恥ずべき卑劣な行為。女性の不幸につけ込む卑劣な男=光原。罠にかけるような卑劣なまね=石川。卑劣極まりない蛮行。 **【卑猥】**ひわい 卑猥な(想像をめぐらせる。野次が飛び交う)。男たちの卑猥な笑い声=伊集院。見た目にちょっと卑猥な形=森。露骨で卑猥な冗談=藤枝。ともすると卑猥になりがち。際どい(冗談を飛ばす。話を平気でする)。猥歌を歌う。 **【不品行】**ふひんこう ▼不品行(性的な。目に余る)。不品行な(男。振る舞い)。不行状が目立つ。不行跡を(悲しむ。悔いる)。ふしだらな(生活を送る。遊びかたをする)。乱行が(著しい。きわまる)。乱行をいさめる。夫の不身持ちに苦しむ。大名にあるまじき不身持=村上元。身を持ち崩す(酒で。博打で)。身をもち崩した女たちのような言い方=石川。 **【淫ら】**みだら 淫らな(妄想を描く。夢に浸る。視線にさらされる)。思わず眉をしかめるほどみだらなイメージ=筒井。聞くに堪えないみだらな話=永井荷。女の淫らな嬌声。欲情に狂った淫らな声=藤本。娘の中に淫奔な血が流れる。淫猥な侮蔑の言葉を投げる。淫靡な(匂いを嗅ぎ取る。笑い声を漏らす)。男と女がさまざまに絡み合う淫靡な写真=宮本輝。邪悪淫扉の所行。みだりがましい(冗談。素振り)。淫りがましいしおれた容色の厭らしさ=芥川。猥褻な(遊楽にふける。セックスシーン)。言葉が猥褻に響く。 **【みみっちい】**みみっちい みみっちい権力欲を持つ男=小林信。内兜を見透かされ見縊られるのではないかと警戒するようなみみっちさ=田辺。せこい(商売。手口)。せこく勝ちを狙う。 **【猥語】**わいご 悲願千人斬りという江戸時代の猥語が一号活字で鼻先にのし上がる=武田。みだらな言葉を浴びせかける=徳田。猥雑な言葉。便所の落書きに見られるような猥褻なコトバをつぶてのように投げつける=阿部。聞くに堪えない卑猥な言葉で揶揄される=あさの。卑猥な言葉を(投げつける。交えてからかう)。 <130> # 苛立つ・焦る **【焦る】**あせる ▼焦る(気ばかりが。身をもんで。是が非にも説き伏せてしまおうと。テンポに遅れまいとして。一刻も早くスランプを脱しようとして=小林久)。いたずらに焦るばかり。焦れば焦るほど(混乱が増す。深みにはまる。よからぬ方向に事は流れる=あさの)。焦ってどもりながら言う。心が掻きむしられるように焦って来る=岡本。焦りが(募る。出る。湧く。胸にこみ上げてくる)。不安が焦りに変わる。心の底にあせりに似たものが走る=三浦哲。焦りに似た思いを胸に抱く。焦りの色が隠せない。内心の焦りを隠す。何とも言えない焦りを覚える。心の高ぶりと焦りを抑えきれない乱れた声音=光瀬。▼焦りを感じる(人生に。気持ちの)。▼気持ち(緊張して咽喉のからからするような切迫した=福永。じっと寝ていられない=三好徹)。電車の速度がばかにもどかしく思える=勝目。余裕が(影を潜める。姿を消す)。余裕のある態度が崩れる。意味もなく気がせく。急いては事をし損じる。急く(気持ちが。心が)。 **【苛苛】**いらいら 日を重ねるごとにいらいらが募る。いらいらと部屋じゅうを歩きまわる。▼苛々する(要領の悪い話し振りに=高橋。ずいぶんと待たされて=若竹)。▼いらいらする(出発が遅れて。拷問にかけられているように=泉俊。解けないクロスワードを相手にしているかのように=山田詠。指先に細い刺でもあるように=円地)。いらいらするほどゆっくりとした足どり=あさの。いらいらした(声で怒鳴る。手つき。はがゆさ。表情。貧乏ゆすり)。いらいらして(落ち着かない。気分が休まらない。煙草に火をつける)。頭をかきむしる。 **【苛立たしい】**いらだたしい 苛立たしい(感情が渦巻く。不安な心持ち。思いに駆られる。気分をかき立てられる)。得体の知れない苛立たしい悩み=岡本。沈黙を拳で突き破るような勢いでいらだたしく言う=水上。時間ばかりが苛立たしく流れていく=阿刀田。苛立たしげな舌打ちをくれる。▼イラ立たしさ(倦怠がんと空腹の入り混じった奇妙な=安岡。取り残されたような=安岡)。どうにもならない苛立たしさ。叫び出したいような苛立たしさ=石川。心の墨汁のような悔恨やいらだたしさが拡がってゆく=梶井。表情に苛立たしさが走る。苛立たしさに(駆られる。煙草ばかりをふかす=中村真)。絶望的な苛立たしさに落ちてゆく=舟橋。酔うとして酔えない苛立たしさに索然とする=円地。苛立たしさをコーヒーで流し込む=若竹。陥穽にかかった獣のような焦燥しさを感じる=有島。いらいらしい(気持ち。心地。目をすえてじっと見る)。 **【苛立ち】**いらだち ▼苛立ち(いたずらに歯を噛み鳴らすような苛酷な=外村。身代を横取りでもされそうな=壺井。厚い壁に突き当たったような=吉村。喚きだしたいような=小林久)。苛立ちが(露骨に態度に出る。しこりのように胸に残る=近藤)。心のいらだちが魔女鍋みたいにぐつぐつ煮えかえる=開高。自分では何もできないもどかしさにいらだちだけが募る=浅川。ほとんど怒りといってもいいほどの苛立ちが湧く=若竹。苛立ちと不安に揺れ動く。かすかな苛立ちに似た思いが腹の底の方で渦を巻く=歳沢。腹の底に苛立ちに似た感情がうごめく=乃南。苛立ちの波が襲ってくる。抑えていた苛立ちの堰が切れる=三田。やり場のない苛立ちのために頭の芯がちりちり音を立てそう=原田宗。苛立ちを(含んだ眼差し。露わにして顔を歪める。隠しながら話す)。奇妙な苛立ちを覚える。口調が苛立ちを帯びる。神経の苛立ちを慰める。必死で苛立ちを抑える。胸に苛立ちを抱える。説明をないがしろにされた苛立ちを感じる。いびつな笑いで繕う=古井。声に苛立ちが(加わる。混じる)。 **【苛立つ】**いらだつ ▼苛立つ(妙に気が。客の長居に。物音に過敏に。なす術のなさに。熱意の乏しさに。不安定な関係に。回りくどい言い方に。悠長な話しぶりに。一刻も早くやりたくて。疲労が重なって。無力感に駆られて。恋猫の鳴き声に=北原。不安になるほどに=高井。若い女のきんきん声に=鈴木光)。▼いらだつ(口もきけないほど=永井路。なんて優柔不斷なんだと=池澤)。母の苛立つ声を聞く。苛立つようにボールペンで机をたたく=泉優。▼意地悪さに苛立つ(間の。物分かりの)。▼苛立たせる(癇を。神経を。まわりを)。苛立てる(物を。神経を)。目に焦燥の色が湧く。胸を掻きむしりたい衝動に駆られる=横山。気をいらつかせる。遅々として進まない車の列にいらつく。▼業を煮やす(心の矛盾に。審議の遅れに。生返事に。会議の結論が出なくて。連絡がないので)。業を煮やして訴訟を起こす。業を煮やすほど待ちあぐねる。 **【焦燥】**しょうそう ▼焦燥(胃の腑の焼けるような=松本。誰しもの心を揺り動かさずにはおかないような時代の=島崎)。焦燥が頭をもたげる。怒りと焦燥が胸に渦巻く。不安と焦燥が高まる。細かい霧のようにかすかな焦燥が漂う=柴田翔。人生に対する焦燥が蠟燭の炎のようにじりじりと生命をむしり取る=野間周。不安と焦燥に駆られる。じっとしていられない焦燥に囚われる=大岡。▼焦燥を感じる(言うに言われぬ。じっとしてはいられないほどの=新田)。胸があぶられるような焦燥感=小林久。つき上げてくる焦燥の感覚に抗う=山田太。心の中に焦燥の念が広がる。厭悪と焦燥の念をむき出しにする=武田。心の中を掻きむしられるような烈しい焦燥を感じる=菊池。焦燥感が嘔吐のように繰り返し襲ってくる=阿刀田。不安と焦燥感でいたたまれない。 <131> 焦燥感に居ても立ってもいられない。言い知れぬ焦燥感にとらえられる。追いつめられた心境が焦燥感を招く=笹沢。焦慮が(心にきざす。胸に巣食う。胸を噛む)。焼きつくような焦慮を覚える=本庄。遅々として進捗しないことに焦慮する。 **【焦らす】**じらす 恋しさに身をじらす。じらすように(ゆっくりと目をもどす=村松。わざと欠伸をする=遠藤)。人を焦らせるように丁寧な言葉をつかう=黒井。あまりの腑甲斐なささにじりじりする=谷崎。怒ったようなじりじりした表情。何かを置き忘れてどうしても想い出せないようなジリジリした気分=安岡。塩でもなめたような苦いジリジリした気持ち=石坂。気がじりじりしてじっとしていられない。内心じりじりしながら待つ。泣き出したいほど気がじれる=芥川。グルグル廻りの状態に置かれて懊れる=谷崎。じれて声を高める。長い話にじれじれする。じれじれと待ちあぐむ。見ている方がじれるほどまだるっこしい手つき=藤沢。 **【焦れったい】**じれったい ▼じれったい(待つ間が。思い出せないから)。焦れったいとでもいうような目つき=堀。病気のせいか、脳味噌が半分分厚い半透明のビニールをかぶったようで焦れったくなる=向田。じれったくなるほどゆっくりした物の言い方=永井荷。説明がじれったくなるほど詳細にわたる=内田康。あまりのじれったさに疳癪を起こす=中島。じれったそうに(立ち上がる。身を乗り出す)。早く見たくてうずうずする。何か言いたくてうずうずしている。化けの皮をひん剥いてやりたくてウズウズしている=内田康。 **【出し抜け】**だしぬけ 出し抜けに(言う。大声をあげる。起こる銃声。男が入ってくる。甲高い声で笑う)。出し抜けの攻撃。いきなり出し抜けの出来事。抜き打ちで(試験をする。視察する)。抜き打ちに切りつける。抜き打ちの所持品検査。抜き打ちを食わされる。いきなり抜き打ちを浴びせる=三好徹。寝耳に水と驚く。寝耳に水の(事件。知らせ。話。不意打ち)。 **【短気】**たんき 短気な(性格。人)。歳をとるにつれて短気になっていく夫をもてあます=筒井。短気を起こす。気が短い。激しやすい(気性。性格)。気短な性格。気短に先を促す。ベルが気短にチリンチリンと鳴る=二葉亭。 **【唐突】**とうとつ 唐突な(印象を与える。心境の変化。勧誘に虚を突かれる。話題の転換にとまどう)。唐突に(言葉を切る。話を切りだす。思いつきが閃く。露骨な話題を持ち出す)。死が唐突に訪れる。唐突のそしりを免れがたい。あまりの唐突さに(二の句が継げない。すぐには事情が飲みこめない=安部)。何の脈絡もなく。不意打ちを喰ったような変な顔=宮本百。不意を襲われたように微かすかに動揺の色を示す=大佛。 **【歯痒い】**はがゆい 両親の古い考え方が歯痒い=新田。歯がゆい念いを胸に包む=黒石。微温的態度が歯がゆい。歯がゆいほどにゆっくりと橋をわたる=池渡。歯がゆそうに(癇癪声を立てる。言葉を遮る)。歯がゆいような苛立ちを覚える。 **【不意に】**ふいに 不意に(足を止める。心に波が立つ。寒けがする。視野が開ける。目の前が霞む。闇に包まれる。アイデアが浮かぶ。犬の鳴き声がやむ。後ろから声がする。がたごとと動きだす。体が動かなくなる。疑惑が心を横切る。口もとからほほえみが消える。周囲が暗くなる。涙がこみあげてくる。胸に迫るものがある。行方をくらます。笑いがこみあげてくる)。記憶が不意によみがえる。声が不意に大きくなる。背後から不意に声をかけられる。不意に声を(高くする。かけられびくっとする)。 **【もどかしい】**もどかしい もどかしい(毎日が続く。思いにとらわれる。思いを持て余す。気分に駆られる)。▼もどかしい(逆に動いているベルトの上を駆けているようで=長崎。どうしてこんな簡単なことが分からないのかと=辻井)。解決に近づいている扉を逆に封鎖されてゆくようなもどかしい不安=複。もどかしいほどのどかな手紙=永井路。もどかしくてタクシーの中でも駆け出したくなるくらい=軍司。不快な気分がもどかしげな怒気に変わってくる=藤沢。▼もどかしさ(言葉が通じない。最上の運命に逢えない。自分では何もできない。自分の思うとおりに行かない。そばにいながら寄り添えない。交叉するほどもっとも近づき合いながら、ついに一つに重なり合わぬというような=野間。濁った水底を透かすような=阿刀田)。故郷を眼の当たりにしながら上陸出来ないもどかしさと不安=平岩。もどかしさに(いらいらする。居ても立ってもいられない)。意の如くにならないもどかしさに心中では火を焚く想いがある=二葉亭。もどかしさの果て場に困って安坐していられない=二葉亭。言葉のもどかしさをかこつ。もどかしそうに(唇を歪める。無器用な手付きを見ている。両膝を交互に揺する)。隔靴搔痒の感がある。まだるっこいほど丁寧な言葉づかい=椎名誠。やきもきしながら待つ。▼やきもきする(不成績に。時計を見ながら)。 **【躍起】**やっき 躍起になって(調べ回る。否定する。弁解する。信じさせようとする。手に入れようとする)。やっきになって部屋を片づける=古井。▼躍起になる(打ち消しに。自己弁護に。てこ入れに。火消しに。自分の地位を守るために。寵愛を受けようと。味方に引き入れようと)。否定することに躍起となる。▼狂奔する(買い占めに。合戦の準備に。金策に。職探しに。マネーゲームに。ミスった個所の発見に=内橋)。順位を上げることにむきになる=有川。むきになって(言い返す。言い張る。追及する。反論する)。 <132> # 入れる・収める **【一定】**いってい ▼一定に保つ(温度を。機内の気圧を。速度を)。一定の(距離を置く。水準を保つ。長さに揃える。年齢に達する。比率を設ける。リズムを刻む。間隔を置いて並べる)。考えが一定の形をとる。▼一定している(動きがほぼ。判で押したように=阿部)。一定数を維持する。コンスタントに(三割を打つ。作品を書き続ける)。試験でコンスタントに八十点を取る。仕事をコンスタントにこなす。平日もコンスタントに客が入る。 **【入れる】**いれる ▼入れる(家に風を。グラスに氷を。炬燵に足を。仕事に活を。商売に気を。灯籠に火を。ばちんと鋏を。本人の希望を。羊羹に包丁を。乱暴にギアを。遺骨を骨壺に。弟を大学に。鍵を鍵穴に。靴を下駄箱に。車を駐車場に。子供を風呂に。事情を計算に。十分に考慮に。状況を念頭に。全体を考えに。土地を抵当に。広口の容器に。袋の中に。みっちり頭に。ほっと一息。カレーにローリエを。急須にお茶っ葉を。静脈にカテーテルを。寝室にベッドを。ズボンに片足を。徹底的にメスを。パソコンの電源を。パンにイースト菌を。ボケットに両手を。よしっと気合を。洗った皿を水切り籠に。ギアをバックに。自殺防止のため保護室に。釣り上げた魚を魚籠に。赤ん坊を竹籠へ。スイッチをかちりと。土下座して詫びを=高千穂。若い二人の相合傘に半畳を=山手。あらゆる可能性を勘定に=江戸川)。▼容れる(患者の要望を。乞いを。願いを)。▼視野に入れる(動きを。可能性を)。▼スイッチを入れる(パソコンの。ラジオの。セルフタイマーの)。▼力を入れる(お腹に。踵に。下っ腹に。爪先に。手に。腹に。鳩尾に)。▼手を入れる(帯の間に。袂へ。懐へ。ジーンズの尻ボケットに。胸のポケットに)。▼電話を入れる(会社に。自宅に。事務所に。本社に)。水を入れる(釜に。やかんに)。念を入れて確かめる。順繰りに頭に入れていく。▼入れよう(大層な肩の。大変な熱の)。探りを入れるような口調=三好徹。間髪を入れずにうなずく。枠に入れこむ。経験を移し入れる。押し入れる(腕を。指を)。▼かき入れる(後れ毛を。硬貨を。土を)。▶担ぎ入れる(荷を。棺を)。湯を茶碗に汲み入れる。ドアに足をこじ入れる。▼招じ入れる(家の中に。店内に)。ごぼごぼと酒を注ぎ入れる=獅子。突き入れる(頭を。剣を)。▼手に入れる(切符を。巨万の富を)。溶き入れる(卵を。味噌を)。砂を流し入れる。運び入れる(資材を。食糧を)。▼引き入れる(仲間に。味方に)。息を吹き入れる。振り入れる(胡椒を。塩を。調味料を)。ほぐし入れる(うどんを。手打ち蕎麦を)。▼招き入れる(客間に。座敷に)。▼迎え入れる(客を。春の風を)。▼雇い入れる(技術者を。職人を)。▼呼び入れる(男を。記者団を)。鍋に卵を割り入れる。自動販売機に百円玉を投入する。▼盛り込む(具体的に要求を。専門的な情報をふんだんに)。▼盛る(逸話の数々を。民衆の強さを作中に)。▼割り込ませる(足を。肩を。体を。車を)。 **【収まる】**おさまる ▼収まる(風の勢いが。気の昂ぶりが。世間の批判が。膝の震えが。胸の動悸が。事が円満に。元の鞘に。騒ぎが一応。風波が幾分。あわただしい空気が。胃のむかつきが。胸のむかむかが。八つ当たりしたい気分が。自然に収まるところに。グローブに球がすっぽりと。四方八方が丸く。吐き気がどうやら)。乱れていた呼吸がすっとおさまる=吉行。手のひらにすっぽりおさまる乳房=三田。納まる(刀が刀架に。全員が写真に。短刀が鞘に。画にうまく。席に行儀よく。専業主婦の座に)。▼場所に収まる(それぞれの。元の)。どうにか収まりがつく。▼納まり返る(社長の奥様に。正妻の座に)。作り物のようにちんまりおさまりかえる=永井路。無理矢理中断したようなおさまりの悪い空気が残る=山田太。▼収束する(意見が。危機が。問題が)。事態が収束に向かう。収束の時を迎える。どうにか収拾がつく。緊急事態の収拾を一任される。▼収拾する(異常事態を。混乱を。その場をうまく)。事態収拾に乗り出す。▼収まらない(頭の興奮が。腹の虫が。気持ちの昂ぶりが。やり場のない苛立ちが。悲しみが一向に。ざわざわという胸騒ぎが=熊谷)。胸にさざめきだっている波がおさまらない=司馬。▼なかなか収まらない(怒りが。苦痛が)。八幡の藪知らずに迷い込んだようでどうにも自分の気持ちの収拾がつかなくなる=円地。収拾できない大混乱が続く。感情が収拾のつかぬほど混乱する=菊池。▼済まされない(知らぬ顔では。笑い事では)。 **【収める】**おさめる ▼収める(試みが効果を。選挙で勝利を。本に作品を。問答の矛を。優秀な成績を。権力を手に。事を穏便に。帳面を懐に。天下を掌中に。秘密を胸に。料理を腹に。遺骨を納骨堂に。現場をビデオに。ディナーを胃袋に)。▼おさめる(熱くなりかけた感情を腹に=加賀。憤りを自分の胸一つに=黒岩。咽喉まで出かかった次の言葉を胸の奥に=武田。一日の上がりの一割を上納金として=隆)。▼納める(お骨を。遺体を棺に。刀を鞘に。骨を骨壺に。名刺をシャツのボケットに=井上ひ)。▼カメラに収める(笑顔を。街を)。▼手中に収める(試合を。城を。全権を)。▼成功を収める(まずまずの。目覚ましい。予想以上の)。▼ボケットに収める(金を。携帯電話を。巻き尺を)。▼ホルスターに収める(拳銃を。ピストルを)。 <133> **【押し入れ】**おしいれ 押し入れから(段ボール箱を引っ張り出す=東野。布団を引きずり出す=高村)。血糊の付いた短刀を押し入れに隠す=高橋克。布団を押入れに片付ける。押し入れの(奥に押し込む。中を覗き込む。上の天袋を開ける。奥深くしまいこむ)。押入れの天井に蜘蛛の巣が張っている=江戸川。 **【確保】**かくほ 財源の確保に苦心する。食料の確保に走り回る。▼確保する(一定の収入を。国民の安全を。最高の位置を。手元に現金を。有利な立場を。良質の水を。両手の自由を。息のできる穴を。居心地のよいボジションを。今夜のねぐらを。心理的な優位を。生活に必要な物を。前年度の水準を。高い経済効率を。窓際の一等席を。エースとしての地位を=伊集院)。キーブする(部屋を。ボールを。ボトルを。トップに近い位置を)。めぼしいものに唾をつけておく。 **【籠】**かご 籠から放された小鳥。籠に鳥を飼う。筒抜けを籠に詰める。野菜を籠に入れる。籠の中の生活に慣れきる=石坂。籠を背負って歩く。供物を入れた籠を捧げ持つ。手に手に籠を持つ。どさりと籠を降ろす。両肩から籠を下げる。バスケットを提げる。ざるで水切りをする。不ぞろいな豆をざるでふるいにかける=辺見。ゆで上がった麺をざるにあける。 **【鞄】**かばん 世界を家とする巡礼者のような心であちこちと提げ廻った古い鞄=島崎。鞄から書類を取り出す。参考書を鞄につめる。鞄の中にこっそりと忍ばせておく。鞄を(足元に置く。肩から下げる。小脇に抱える。抱える)。片手にぶら下げる。テーブルに置く。荷台にくくりつける。膝の上に載せる。ぼんぼんと叩く)。ごそごそと鞄を探る。胸元に折り鞄を抱える。車掌の首から下げた黒鞄が振り子のように揺れる=伊集院。旅行鞄を手に持つ。アタッシェケースをテーブルの上に置く。雑嚢を肩にかける。雑嚢の釣り紐が食い込むような重さを肩に加える=大岡。ショルダーバッグを肩から下ろす。肩からショルダーバッグを下げる。手提げの中を探る。手提げをさげる。ポシェットを肩から斜めがけにする=江國。 **【花瓶】**かびん ▼花瓶(白菊が数本無雑作に投げこまれた=落合。花を無造作に投げ入れた=日野)。花瓶にあふれるほどの薔薇の花=石川。花瓶に花を生ける。挿す)。花器に花を挿す。茶席に花入れを飾る。 **【肝臓】**かんぞう 肝臓が癌に冒される。グリコーゲンを肝臓に蓄える。肝臓をよくよくいたわる=開高。レバーに火を通す。レバーを(炒める。食べる)。 **【金庫】**きんこ 金庫に入れる。札束を金庫に収める。金庫の(奥深くしまう。あけ方を教える)。青蛙が鳴くみたいに金庫の錠前がギイギイと音を立てる=岸田。金庫を(開ける。閉める)。 **【杭】**くい 背骨に杭が打ち込まれるような激痛=萩原爽。杭にゆわえた纜を解く。頭の先から杭を打たれたようにびくつく=伊集院。言葉が耳に一本一本杭を打ちこむのに似て聞こえる=有吉。斜交いに杭を打ったような枝々=長野。杭のように立っている=池田。砂地の杭のようにぐらぐらと危うい歯=辺見。棒杭のでも倒れるように簡単にひっくりかえる=椎名。巻くいに(小舟をつなぐ。網を結びつける)。棒杭のように(動かずにいる。押し黙る)。岩に突き立った棒杭のように無表情=古井。人の流れの中で棒杭のようになってしばらくショーウインドーを眺めつづける=内海。棒杭よりもっとキョトンとする=小林多。一句一句をハンマーで棒杭を打つようにたたき込む=徳永。 **【楔】**くさび ハンマーで楔を打つ。▼楔を打ち込む(間に。敵陣に。派閥に。父子の関係に)。彼女との関わりが日常生活の中に打ちこまれた柔らかなくさびのように存在感を膨らませる=村上。言葉が楔のようにしっかりと打ちこまれる=連城。砂の上でハゼが楔形文字を描く=開高。 **【組み込む】**くみこむ ▼組み込む(トリックを作中に。無茶苦茶なねたを小説に=葵)。身動きできないように組み込まれた管理社会=大庭。▼組み入れる(経験知識を。提案を計画に)。利子を元本に繰り入れる。別のクラスに編入する。 **【蔵】**くら 蔵が(並ぶ。焼け落ちる)。蔵から酒を出す。蔵に(押し込めて折檻する。穀物を詰めこむ。うなるほど金銀が眠っている=火坂)。蔵を建てる。庭に蔵をこしらえる。▼土蔵(鬱蒼とした屋敷森に囲まれた=奥泉。夕陽で赤く染まりはじめた白壁の=高橋克)。土蔵に金がうなっている=柴田。 **【ケース】**ケース ウェファースのようなきゃしゃなケース=宇野。ケースから双眼鏡を出す。ケースに(収まっている小さな展示品。双眼鏡を収める)。煙草のケースをばらまく=川。商品ケースの前に陣取る。書類ケースを開く。そこここに乱暴に積みあげられたビールケース=贅沢。ちんと開ける。バッグからビルケースを取り出す=亨。 **【コンセント】**コンセント コンセントからブラグを引き抜く。コンセントにブラグを差し込む。差し込みにコードをつなぐ。ブラグを電源に差し込む。 **【在庫】**ざいこ 在庫が(底をつく。手薄。増える。膨らむ。山をなす。残り少なくなる)。あっという間に在庫がなくなる。在庫の山に音をあげる。大量の在庫を抱え込む。在庫一掃の叩き売り。在庫品を(売りさばく。抱える)。ストックを(売り払う。取り崩す)。▼ストックする(商品を。品を。冷蔵庫に)。 **【財布】**さいふ 端切れで作った小さな財布=山本周。財布が小銭で膨れ上がる。ボケットから財布が覗く。財布の口を開ける。財布から紙幣を出す。財布を(落とす。無くす。家に忘れてくる)。札入れから札を出す。がま口を開ける。がま口から十円玉を出す。 <134> # い く。財布から(金を取り出す。札を取り出す)。財布に入れる(金を。紙切れを)。財布の底をはたくようにして買った土産の叩古井。財布を投げてよこす。女房が財布を握っている。拾った財布を猫ばばする。懐から財布を取り出す。紛失した財布を捜す。空っぽの財布のような泳い腹=向田。金入れを(抜き取る。盗み取る)。がま口が膨らむ。なけなしのがま口をはたく。紙入れの底をはたく。懐中から紙入れを拘り取る。札入れをポケットにしまう。 **さいよう【採用】** 採用が本決まりになる。▼採用する(意見を。システムを。自主的に。正式に。積極的に。無批判に。無試験で。全く違うスタイルを。提案をことごとく)。契約社員として採用される。未だに採用されない。企画を没にする。原稿が没になる。青田買いをする。採否の結果を通知する。採否を決める。特殊な作喰を採る。▼任用する(外部から。民間から)。採択する(決議を。条約を。声明を。宣言を。助議を。不信任案を。全会一致で)。 **さしこむ【差し込む】** ▼差し込む(鍵を鍵穴に。イグニッションにキーを。ホルスターに拳銃を。イヤホンを耳に。拳銃をベルトに。給油口にノズルの口を篠田)。バイブレーターを性器に挿し込む=平野。差し入れる(鍵穴に鍵を。片足をドアと柱の隙間に=梶山)。▶差す(腰に刀を。松っを水面に)。▼すげる(柄を。下駄の緑絡を。下駄の歯を)。▼挿入する(叙情的な場を。文章を)。 **さしはさむ【差し挟む】** ▼差し挟む(話題に口を。補足的な説明を)。疑いを差し挟む余地がない。▼合いの手を入れる(短い。気休めのような"山田太)。もっともらしく合の手を入れながら開く=福水。 **さす【挿す】** 挿す(簪砂いを。提灯ぅいうを帯に。花を花瓶に。花を愛びんに。鼻に酸素吸入のチューブを)。▼強に活ける(薔薇はらを。脱を)。▼活ける(季節の花を。花を水盤に)。 **さや【鞘】** 傷一つない滑らかな仰。元の鞘に戻る。再び崩におさまる。▼鞘におさめる(軍刀を。太刀を。脇差を。刀を拭って)。▼峭を払う(佩刀はいの。帯の間から懐剣を取り出し舟橋)。 **しまう【仕舞う】** ▼しまう(安全な場所に。悲しみを胸に。靴を下駄箱に。写真を机に。箸を箸箱に。弁当箱を絶妙ばに。そそくさと竿きゃを。キーをボケットに。拳銃をホルスターに。食料を冷蔵庫に。書類を引き出しに。手帳をハンドバッグに。テレホンカードを財布に。身分証明書を内ポケットに)。▼しまいこむ(不満を心に。宝玉を手箱に。苦しみを胸の中に。情景を脳のひだに。書類を引き出しに。封筒をボケットに)。奥にしまいこむ(考えを頭の。机の)。▼格納する(艇を。飛行機を)。蔵の奥深く死蔵される。貴重な資料を死蔵する。▼収納する(小物を。ファイルを。フィルムを。薬品を)。▼取っておく(領収書を。レシートを)。入庫する(車を。自動車を。電車を。飛行機を。ボートを)。愛蔵の(コレクション。品)。▼愛蔵する(絵画を。骨董品に心を。宝玉を)。▼収蔵する(遺骨を。穀物を。古文献を。史料を。文化財を)。▼収蔵品(博物館の。美術館の)。 **しゃこ【車庫】** 車庫から車を出す。車庫に車を入れる。ガレージから(車を出す。自動車を出す)。ガレージで雨露をしのぐ。ガレージに車を入れる。車をガレージに戻す。ガレージへ車を取りに行く。 **しゅうよう【収容】** 遺体の収容作業を続ける。収容する(監獄に。施設に。病院に。霊安室に死体を)。収容所から逃げ出す。収容所に入れる。収容人数いっぱいまで部屋に押し込む=篠田。 **せっしゅ【摂取】** ▼摂取する(栄養を。カルシウムを。食物を。たんぱく質を。ビタミンを。他の文化を。必要なカロリーを。良質の食糧をふんだんに吉村)。ねばりのある文章の滋養を食物のように島尾)。栄養をよく摂取するためには歯が丈夫であるに越したことはない=阿刀田。 **せともの【瀬戸物】** 瀬戸物が割れる。青磁色が濃くなって来て空が美しい瀬戸物の肌のよう川端。瀬戸物を焼く。陶磁器を焼く。瀬戸物のように冷たい感じの肌水井廊。釉薬杉吐くを(かける。塗る)。素焼きの(植木鉢。壺っは。土器)。青磁の(花瓶。大皿に花びらのようなふぐの刺身がひろがる落合)。星が一つ二つ消えそうにほの白くちらちらと青磁の空にまたたく=吉本。陶磁器の(釉薬。食器)。海の反映で琺瑯質沿いのように固くつややかに見える雲三島。琺瑯引きの鋼。うすい磁器のようにこわれやすい運命を背負う司馬。白い磁器のように美しい淑しとやかさに占められている顔・円地。目が磁器のように光る"海音寺。白磁のような生硬さだった肌の白さに柔らかさが出る―連城。肌が美しく白磁のように引き締まる=有吉。陶器が割れる。白い光を反射して陶器が白く冷たく骨のように見える三浦米。陶器の(皿のような心。冷たい肌ざわり)。長く続くなぎさの、割れた陶器の傷口のような白『光涵。陶器を焼く。陶器のような固い感じの顔高見期。洗い立ての陶器のような顔!高井。うっすら赤味を帯びる陶器のような目"高樹。純白な陶器のようなつやを放つ白い雲"石坂。陶器のように(つやつやした頰「光瀬。滑らかそうな肌束野)。白い肌が陶器のように鮮やかに映える三浦絵。 **そうこ【倉庫】** 倉庫が軒を連ねて建ち並ぶ。倉庫から商品を出す。倉庫に(貯蔵する。搬入する)。品物が倉庫に山積みされたまま。トラックが倉庫に横付けになる。倉庫の中に押しこめる。倉庫を工場に改造する。狭い倉庫みたいな事務室"村上前。格納庫に(入れる。納める)。巨大な格納庫のような建物干刈。 **たな【棚】** 初から(瓶を取り出す。ぼたもちで転がり込む)。 <135> # 入れる・収める **にゅうこん【入魂】**入魂の演技。▼入魂する(位牌はに。墓石に)。技術に心魂を捧げる。仕事に心魂を傾ける。精魂を(傾ける。込めて作る)。人形に魂が注入されて行くような表情の変化"阿久。一心不乱に仕事の中に魂を打ち込む=有島。 **にゅうりょく【入力】**コンピューターにデータを入力する。インプットした情報をアウトプットする。データを機械に打ち込む。▼インプットする(情報を。データを)。 **たな【棚】**棚から(ぼた餅。物が落ちる)。荷物を棚から降ろす。棚に(手を伸ばす。目を走らせる。洋酒が並ぶ)。本を棚に戻す。ずらりと棚に並べる。本が棚にぎっしり並んでいる。伸び上がって棚の上のものを取る。壁に棚をしつらえる。棚のように崖が突き出す「杉本。網棚から荷物を下ろす。網棚に(包みを置く。荷物を載せる)。網棚の鞄はげを降ろす。荷棚に荷物を置き忘れる。 **たわら【俵】**米を俵に詰める。石の入った俵のようになかなか起き上がらない"小林多。からだが芋俵のように好き勝手にころがされる=小林多。階段の下に影のように置いてある炭俵"久米。馬橇そに炭俵を満載する。かますに入れる(穀物を。炭を、肥料を)。 **たんす【箪笥】**青貝の旅はまった箪笥=鈴木气。箪笥に樟脳のうを入れる。箪笥の(中からバスタオルを取り出す。底に後生大事にしまいこむ"古井)。桐きりの窓笥を二棟置く。 **どうふう【同封】**▼同封する(写真を。地図を。咎品書を。旅費を。履歴書を。押し花を手紙に)。 **とだな【戸棚】**日常の出し入れに不便するほどぎっしり物が並ぶ戸棚"河野。戸棚を(開ける。閉める)。造り付けの衣装戸棚。背の届かないような天袋=篠田。ロッカーから紙袋を取り出す。ロッカーに(鍵をかける。しまう)。 **トランク** 身の回りの物をトランクに詰める。荷物を車のトランクに積み込む"高井。トランクを(車に積む。手に下げる)。トランクのような固い矩形以けの建物吉行。行李にうの底にしまっておく。行李を開ける。定紋付きの長持。着物を長持にしまう。スーツケースに旅行用品を詰める。スーツケースを(下げる。押し入れの奥から引き出す)。 **とりいれる【取り入れる】**▼取り入れる(外国の文化を。新鮮なた気を。西欧文明を。意見を方針に。方言を巧みに。新しいシステムを。意見を可能な限り)。囲い込む(情報を。制度に)。▼取水する(水道用水を。発電用水を)。吸い上げる(意見を。金を。利益を)。取り込む(酸素を体内に。政敵を閣内に。洗濯物を家の中に)。読み込む(データを。テキストを)。 **ないぞう【内臓】**内臓が(すこやかに機能する。ねじれるように感じる=石川)。口から内臓が飛び出るかと思うほどの衝撃を受ける『若竹。内臓に手を入れて撫なでまわすようなしつこさ=安部。内臓の奥まで強烈な視線を投げ入れる=武田癸。肌を通して内臓まで喰い入るような夏の光"高井。内臓を素早くえぐりとる。陽に当たったことのない内臓のように生白い指"黒井。五臓六腑に呼ぶが煮えくり返る。五臓六腑に(酒がしみ渡る。冷たさが沁しみわたる=杉本)。一日の労働の疲れが五臓六腑にしみわたる"荻野。臓腑ぶ、を抜かれたような絶望大岡。臓腑をえぐる(声。言葉)。臓物のにおいを嗅がされたように不愉快"司馬。光の衰えた空に鼠色ゆずぃの膜をかぶった臓物のような雲が低く垂れこめる倉橋。 **なげいれる【投げ入れる】**石を川にはちゃんと投げ入れる。▼投げ込む(風呂場の焚たき口に薪を。インコースの低めに。紙コップをごみ入れに。小石を次々と流れの中に)。▼放り込む(簀巻きにして川に。日記を抱けばの中に。脱いだ服を洗濯機に。無造作にごみ箱に)。 **はこ【箱】**箱がぺしゃんこになる。箱に入れる。ブレゼントを箱に収める。箱の中をがらがらとひっかきまわす内田巻。箱を(足元に置く。重ねて置く。山積みにする。高々と積み上げる)。怪々と箱を運ぶ。紙箱をギュッと押し潰っぶす。木箱に腰かける。木箱を机にする。小箱を抱え込む。段ボール箱が山と積まれてある。段ボール箱を抱える。違い棚から手文庫を取り出す。 **はさむ【挟む】**▼挟む(帯に団扇らちを。指先に煙草を。紙を画板に。情報を小耳に。体温計を脇に。ピンセットで。しとやかに言葉を。本にスリップを。読みさしの本にしおりを。浴銃をベルトに。肉片を揚げバンに。箸を操って上手に。生真面目な口調で異議を=有川)。▼耳に挟む(噂を。鉛筆を。煙草を)。両手で挟む(顔を。頬を)。連休を挟んだ五日問。道路を挟んで向かい合う。廊下を挟んで両側に部屋がある。機械に人が挟まれる。▼挟まない(私語を。一言も口を。交渉事に私情を)。挟み込む(クッションを。帯の間に栓抜きを。質問を会話の随所に)。▼挟みつける(頸部沿いを。手首を。頬を。胸を)。新聞にチラシを折り込む。クリップで留める。クリップを髪に巻きつける。 **はち【鉢】**手入れの行き届いた鉢=高橋克。鉢が一列に並ぶ。雑然と鉢が並ぶ。頭の鉢の開いた子。サラダを盛った大鉢。ボウルに水を張る。切った野菜をボウルに入れる。 **バッグ** から(手帳を取り出す。ハンカチを取り出す)。手紙をバッグにしまう。本をバッグに入れる。バッグの底をごそごそと探る。バッグを(足元に置く。網棚に置く。肩から提げる。小脇に抱える。手に持つ。がさがさとかきまわす。膝の上に乗せる。持って立ち上がる。抛にうり投げたいくらい有頂天=田辺)。スポーツバッグを提げる。ハンドバッグから小銭入れを取り出す。ハンカチーフをハンドバッグから <136> # い **はらわた【腸】** 腸が(よじれるほど口惜〈ゃしい!有吉。よじれるように可笑ぉかしい!檀)。くやしさにはらわたが煮え返る=杉本。酒の味が腸にしみる=獅子。腸に響くような鋭い声=山岡。腸の(煮え返るような憤り獅子。ねじれるような怒りが湧く!高橋和)。腐った魚の腸の匂いを感じさせる言葉"円地。無念さに陽の煮ゆる思い二葉亭。はらわたまで冷たくなる恐怖にかられる柴田鈍。腸を(えぐられるような思い藤田。しぼるようなうめき声藤原。つかまれるようなさびしさに襲われる=藤沢)。罪の恐ろしさに腸をずたずたに切られるよう菊池。喉から腸を引きずり出すような覚悟で言う萩原爽。 **ひきだし【引き出し】** 頭の中に幾つもの引き出しがある。胸の引き出しが勝手に開いたように不満を並べる=伊集院。引き出しに無造作に突っ込む。引き出しの中を整理する。胸の引き出しの奥から新品の嫉妬の塊を取り出す荻野。引き出しの奥に(隠す。しまい込む)。引き出しを(ぐいと開ける。力任せに押し込む。ぴしゃりと閉める。ひっかきまわす)。注意深く引き出しを開けるようにさしさわりのない答えを出す村上巻。引き出しを開ける(記憶の。机の)。 **ひたす【浸す】** ▼浸す(勝負事に頭を。清流に足を。水に手足を。流れの中に体を。水がひたひたと。おしゃべりの声に耳を"重松)。▼心を浸す(寂しさが。絶望が)。全身を浸す(疲れが。淋しい喜びに)。▼身を浸す(使い疲れに。闇に)。じくじくと浸してくる不安に耐える。インクに浸された紙のようにみるみる同じ気持ちが皆の気持ちの隅から隅まで浸してゆく小林多。浸される(葉が水に。深い絶望感に。目が微笑に)。浸ける(金盥幼いだに雑巾を。小豆を水に)。豆を冷やかす。 **ふうとう【封筒】** 封筒から(便箋を抜く。書類を取り出す)。封筒に(手を伸ばす。鋏を入れる)。十五枚の便箋を封筒に入れ胞分はに収める三浦し。▼封筒に入れる(手紙を。便箋を)。封筒の中から紙幣が飛び出している=伊坂。封筒をボストに入れる。内ポケットから封筒を取り出す。何の変哲もない茶封筒。 **ふくろ【袋】** ビニールの袋が日ざしにきらめく。林檎ふくろいんの実に掛けられた袋が闇の中で吉凶占いの結び籤くじのように見える“干刈。袋の(口を絞る。中をかき探る)。袋をどさりと置く。肩に袋をしょいあげる。軀份らの工合心ぁが袋をかぶっているようにはっきりしない=林美。袋のようなたった一つの出入口=宮本百。女が袋のようにぐったりとなる安部。紙袋を(小脇に抱える。手にさげる。床に置く。がさがさいわせる)。こそこそと紙袋を取り出す。古い皮袋に新しい酒を盛るようなものだと冷笑する"円地。リュックサックを(足下に下ろす。担ぐ。背負う。枕に寝そべる)。 **ぶちこむ【ぶち込む】** ▼ぶち込む(肩に弾丸を。刑務所に。独房に。豚箱に。牢屋に。拳銃をホルスターに)。▼叩き込まれる(監獄に。夢の坩堝にっに。恐怖のどん底に)。地図を頭に叩き込む。 **ふところ【懐】** 懐から丁寧に畳んだ書状を取り出す"福永。懐から(財布を出す。一通の手紙を取り出す)。懐に(短刀をのむ。本を忍ばせる)。相手の懐に飛び込む。写真を懐にしまう。かじかんだ手を懐につっこむ"小林多。懐に手を(差し入れる。伸ばす)。内懐から(小刀を出す。一枚の短冊を取り出す)。 **ほかん【保管】** 荷物の保管を頼まれる。▼保管する(安全な場所に。厳重に。倉庫に。大事に。大切に。冷暗所に。銀行の貸し金庫に。ライフルを規定どおりに夏樹)。くれぐれもしっかり保管しておいてくれ宮部。 **ボケット** ボケットからハンカチを取り出す。貧しいポケットから払える最高を払う。おもむろにポケットから煙草を取り出す。斎藤栄。ボケットに(札をねじこむ。入れて持ち歩く。両手を突っ込む)。本をそっとボケットに忍ばせる。殺意を財布のように胸のボケットに隠す―島田。悟られないよう手品師のように静かにポケットに戻す=泉俊。そっと頭のボケットにしまいこむ=黒井。ごそごそとボケットの中からなにかつかみ出す"灰谷。驢馬うばの耳みたいに垂れたボケットの袋=岸田。写真を内ボケットへしまう。背広の内ボケットをこそこそと探る。胸ポケットからハンカチを出す。隠しに手を入れる。 **ほぞん【保存】** 長期の保存に耐える。保存する(ファイルを。歴史的遺産を。大事に。大切に。ホルマリンに漬けて。頭の中のビデオテーブに=島田)。記憶が濃厚に保存される=中村貞。本能が単純な自己保存にきざしている極。自己保存の本能ばかり強くて理想のない男=武田爽。自己保存欲の強い保守的な生活"中村炎、種族保存のための厳粛な営み"有吉。冷暗所に貯蔵する。 **ほんだな【本棚】** 本棚(重厚な。作り付けの)。本棚が様々な本で埋まる。本棚から本を一冊抜き取る。本棚に専門書が並ぶ。木を本棚に並べる。一渡りあちこちと本棚を覗のぞいてみる。書架が林のように並ぶ"宮本瓦。書架に(本を並べる。本がそろっている)。図書が所狭しと書架をうずめている。▼書庫(かび臭い。図書館の)。古風でどっしりした書棚。書棚に(ずらりと並んだ本の背表紙を眺める。本がぎっしりと詰まっている)。本箱から本を取り出す。 **ようき【容器】** 容器がこなこなに破裂する。容器だけでからっぽの言葉・近藤。紙容器を片手で潤っょす。入れ物に(入れる。押し込む。詰める)。バッケージのデザインを変える。 <137> # 飢える・渇く-44 **うえる【飢える】** ▼飢える(おしゃべりに。家族の愛情に。活字に。家庭料理に。情報に)。眼がくらみそうになるほど欲ぅえる=大江。飢えた(心を持て余す。者を救済する。犬のようにがつがつ食べる長崎。狼が隙を狙っているよう~武者小路。狼よりも恐ろしい表情"飯田。豚のような食べ方"永倉。者に緊急の施しをする=あさの)。血に飢えた怪物。飢えてやせ衰える。一家が飢えて死ぬ。親とのスキンシップに飢えている。女に飢えている男。▼飢えさせる(妻子を。社員を)。飢えが募る。飢えから救う。辛うじて飢えから免れる。口も利けないほど飢え疲れる=徳田。焼けつくような飢えで話し相手が欲しい萩原棄。飢えに(苦しむ。さいなまれる。さらされる。直面する)。住民を飢えにさらす。飢えの苦痛に耐える。すさまじい飢えの記憶を持つ=辺見。心の飢えを満たす。芋の変っるで飢えを凌しのぐ=獅子。ろくろく三度の飯にもありつけない。行く手の茫洋にうたる旅を飢渇する檀。、もじい(思いを味わう。腹を満たす)。ひもじくて死にそう。ひもじそうに口を動かす。 **かわき【渇き】** ▼渇き(咽喉のとがひりひりするような瀬戸内。幻を求めて満たされない!安部)。渇きが満たされない。心の渇きが慰められる。胸の中に灼けるような渇きが走る=城山。身を焼くような渇きと飢えとが烈はげしく身に迫ってくる菊池。渇きに耐える。飢餓と渇きに苦しむ。渇きにも似た切なさが心を締め付ける=篠田。肉体の渇きを満たす。喉に渇きを覚える。喉の渇きが耐えがたい。喉の渇きを癒す。訴える)。渇を(癒す。覚える)。 **かわく【渇く】** 渇く(心が。のどの奥が。無性に口が。愛に。音楽に。心が悪鬼のように憂鬱に=梶井。のどがひりひりと"石森。ノドが焼けつくように=坂口)。▼からからに渇く(口の中が。のどが)。▶のどが渇く(無性に。焼けつくように)。ひび割れそうなほど渇いた水晶レンズが虚ぅっろに宙を見つめる=長野。渇いたのどを潤す。渇くような興味を覚える。渇した人が泉に臨むような情で男を迎える=森思。▼渇する(井戸が。愛情に。肉親の愛に)。 **きが【飢餓】** 飢餓と病に朽ちていく。飢餓に(襲われる。苦しむ。さらされる)。精神が飢餓に瀕する。人々を飢餓に陥れる。飢餓のように女を漁る=里密。堰せきを切ったように強烈な飢餓感がつのってくる三田。活字に対する飢餓状態が続く泉優。 **ききん【飢饉】** 飢饉で(飢え死にする。餓死する。多くの民が飢える)。飢饉に(襲われる。苦しむ)。餓死者が(大量に出る。路傍に絶えない)。 **くうふく【空腹】** 空腹が(おさまる。さらに激しくなくうふくる)。鳩尾紗ぶのあたりがキリキリと痛くなるような空腹から解放される=落合。空腹でたまらない。空腹に(さいなまれる。耐えかねる。耐える。疲労が重なってさしこみがくる)。餓鬼のような空腹に苦しめられる=古井。空腹の(虫がおさまる。大波小波が押し寄せてくる=荻野)。お腹が空腹を訴える。不思議に空腹を感じない。目がくらくらするほど空腹を感じる=徳田。空腹を覚える(にわかに。軽い。風が吹き抜けるような=本庄)。おなかが(ぐぐぐと鳴る。ぐうぐうと鳴る。ぺこぺこになる。ぺちゃんこになる)。お腹がグーっと鳴る=赤川。すぐにおなかが空く。おなかを空かして指をくわえる。小腹が空く。何か食べたくて倒れそう。朝から何も食べていない。▼鳴る(ぐうと腹が。ぐうぐう腹の虫が)。空っぽの財布のような薄い腹向田。腹が(ぐぐぐと鳴る。空く。背に貼りつく。ぐうぐうと鳴る。猛烈に減る。減って動けない。減っては戦はできぬ奥泉)。腹が減る(無催に。胃袋が背中にくっつくほどに高橋三)。腹部の皮が背中へひっついてしまっているかのように感じられる=横光。空腹感が(薄れる。襲ってくる。募る)。慢性的名腹感がじわじわと胃から大脳へ攻め上って怒りっぽくなる=荻野。のどのあたりが泣くような空腹感に押しつぶされる=石坂。胃袋が空っぽになる。しょっちゅうお腹が空いているような惨めなうっとうしい自由"石坂。おなかが減ったみたいなひょろひょろの字=長崎。何日も食うや食わずでいる。腹が減って(死にそう。目もくらみそう)。腹ぺこで力が出ない。腹を(空かす。減らす)。水腹で一日過ごす。お茶を飲みすぎて水腹になる。空きっ腹に焼酎を流し込む=鈴木光。寒さが空きっ腹にこたえる徳永。空きっ-腹をぐうと鳴らす。 **ひでり【日照り】** 日照りで(作物が枯れる。乾いた大地が雨を吸いこむように声が胸にしみこむ=石坂)。日照りに苦しむ。日照りの(果ての慈雨。日が続く。ときの雨のようにありがたい=住井)。例年にない日照りの年。百日の日照りの石畳よりなお乾いている笑い光瀬。雨らしい雨がほとんど降らない。待てと暮らせど雨が降ってくれない。干害に(苦しむ。悩む)。干天に雨を待つ。旱天ひんに喘ぁえぐ魚のように怒鳴る=徳永。干天の慈雨と喜ぶ。旱魃んに(見舞われる。よる飢饉に、き)。雨乞いの祭り。水の恵みを天に祈る。 **ふさく【不作】** 不作(作物が。例年にない。一生の。百年の)。不作に泣く。農薬が不作に見舞われる。冷害で米が不作になる。不作の年を切り抜ける。稲の不作を心配する。凶作が襲う。凶作に見舞われる。米が凶作になる。去年の凶作の記憶も生々しい熊谷。 **みずぶそく【水不足】** 水不足に苦しむ。慢性的な水不足に悩まされる。水飢饉ふぶきが(起きる。深刻化する)。水飢欲に苦しむ。水飢饉を(ぼやく。何度か経験する)。 <138> # 植える・耕す **あんず【杏】** 杏の花の香りが熟れるㄓ吉川。小さく赤っぽい杏の実のような未発育なセクス=大江。熟れた杏のような(太陽が山の端ににかかる頃=獅子。肉厚のぽってりした唇落合)。 **いちご【苺】** 熟れたイチゴが電灯の下でつややかに光る三浦穹。ふわふわにとろけそう苺のショートケーキ=小川。熟れた苺のような赤い唇"大庭。唇が苺のように紅くなる=有局。唇が苺のように鮮やかに光る堀。野イチゴをつみに森へやって来た少女のような微笑みを浮かべる大原。 **いちょう【銀杏】** 秋になると銀杏が鮮やかな黄金の衣装をまとう=山本島。秋晴れの空から時折銀杏の葉が金色の魚の形をして降ってくる歩道"倉橋。大きな銀杏の木の影が舟の帆のように雑貨屋の屋根瓦まで伸びる=伊集院。夕陽を浴びて金色に輝きながら降りしきる銀杏の中を歩く落合。落葉した銀杏の樹々の枝が無数の矢羽根を突き刺したように空に伸びる小林久。銀杏や像とちが一晩のうちに薬を落としたので庭が黄金を敷いたように明るい芥川。道が黄金色の落ち葉で埋めつくされる"北原。境内の大銀杏が風もないのに絶えず葉を落としてよこすような夕方里見。 **いね【稲】** 稲が(いもち病にかかる。重そうに穂を垂れる。すっかり刈り取られて切り株がネズミ色に変わる=灰谷)。田んぼでずいぶん態を重くした稲がさらさら鳴る三浦し。照りつける陽光から存分に栄養を吸った稲が青々と地を埋めつくす夏"奥泉。野には稲が黄色く稔る=菊池。稲の(垂り秘。株から心細げに伸びる集いにの薄緑藤沢。絨毯にいうが燃え上がるように輝き、その上をトンボの群れが不規則な軌跡を描いて飛行する奥泉)。一日一日と頭を垂れていく稲の穂=横光。稲の穂が(黄金色に燃える。重そうな首を止まず動かしてはさらさらと寂しく笑う長塚)。稲を刈った後の切り株がタワシを並べたように整然と田の中に浮いて見える=水上。稲架はさから稲を外す。 **いも【芋】** 三四十人の老兵を芋壺かもに芋でも投げ込いもむようにごろごろ押し込める=木山。芋の子を洗うみたいに混む=井上ひ。同じ部屋で芋を洗うように生活する今日。芋蔓式かい的に記憶が飛び出してくる=伊坂。山芋を掘る。 **うえき【植木】** 植木を抜いたあとのようにぽっかり穴になる=山本冇。水をそそがれた植木のように生き生きとした顔色になる=獅子。前栽純以に面した縁側。きれいに刈りこまれた庭木。庭木の枝を撓たぁめるように思いどおりにできる=山本周。暦をめくるように季節で貌かぉを変える庭木や下草!向田。庭木を剪定ごいする。 **うえこみ【植え込み】** 植え込みが臆病な動物の群れのようにざわめく=宮部。植え込みに露がしっとりと下りる。植え込みの陰に隠れる。道が植え込みを縫って通る。 **うえつける【植え付ける】** ▼植え付ける(心に厭世数を。固定観念を。被害者意識を。喜びの感情を。あきらめを胸に。正しい考えを心に)。心に淋しさを植え付ける菊池。努力を扶植する。党勢の扶植に努める。 **うえる【植える】** ▼植える(道徳観念を。庭に花を。未来の種を。いろいろな木を。年百年中花が絶え間なく咲くように灌木を幾重にも"有吉)。風景が生活の感情を植えていく佐多。土手に植わった柳。植え替える(株を。木を)。▼植え込む(球根を。勇猛心を)。木を植え並べる。庭木を移し植える。球根を掘り上げる。 **うるし【漆】** 漆にかぶれる。俺「えた漆の臭気に息を詰まらせる=有吉。漆のごとく森が黒い=泉鏡。うるしを塗りつぶしたような闇がたちこめている=池波。漆を塗ったような黒い顔・福永。漆のような黒い水-岡本。漆のようにビカビカに拭き込んである柱=獅子。黒漆のように黒い闇!幸田露。漆器で名高い町。 **かかし【案山子】** 所々に案山子が立つ。深沈とした心境を案山子に託す司馬。竹の棒を横に通したかかしのような格好"玉村。 **かき【柿】** 農家の軒に柿が真紅の珠を連ねる=菊池。柿の枯れ木が氷雨に濡れてふるえている=檀。下着が柿の皮をむいたようによじれて吊りさがっている=林芙。垣根の外から柿の実をひょいともがれたような気持ち=山本有。真っ赤に熟した柿の実=川端。柿の実が赤く照り映える。熟した柿のように血色の良い顔を興奮にますます赤くする"大江。而家の境から斜めにさし出た柿若葉久米。熟柿じいが落ちて来るのを待つ=山岡。熟柿の地に落ちる如く自然の推移に待つ=舟橋。大きな落日が熟柿のようにとろけながら海に沈む阿久。タルガキが目のないほど好き=石森。・ゴ柿とでもいったように頭が尖っている檀。顔が富有柿のように丸く平べったい=山本有。軒先に干し柿が暖簾㎞ものように下がっている=篠田。干し柿のようなべったりした薄い蝦接口学妹小林多。 **かだん【花壇】** ▼花壇(デコレーションケーキのように丸く華やかな=小池。申しわけのような小さな高橋和)。スタンドが笑顔の花壇となる=奥田。庭に花壇をつくる。猫の額ほどのお花畑。三色の小旗をお花畑のように揺り動かす=大佛。光がいっぱいに花園に溢れる三浦綾。言葉の魅力に惹かれると、かつて灰色だった世界が色彩豊かな花図へと変貌する"小沼。昼の花園のごとき光と色にあふれた祭りの光景。長与。 **かぼちゃ【南瓜】** 南瓜の肉のオレンジ色の美しさよ=川端。生垣に黄色い花をつけた南瓜の夢の道はっている。 <139> # 植える・耕す-45 **かぼちゃ【南瓜】** 南瓜の蔓のようにだらしなく伸びる家=黒井。出臍で、というやつ、南瓜の恋ほどな異形なもの=泉鏡。南瓜のようにゴロゴロしている頭"小林多。 **からまつ【落葉松】** 落葉松の(枝が林床に繊細な影を落とす篠田。小枝から霧氷がばらばら散って桜の落花のように川端)。カラマツの落ち葉の雨がちかちかと陽をはじきながら降る三浦哲。落葉松林(黒みがかった見本林の緑の中でひときわ目立つ金茶色の"三浦彩。山麓をすっかり黄ばませながら傾いている=堀)。唐松林が金の針をきらめかす=加賀。 **カリフラワー** 浅間山が花キャベツに似た噴煙をむくむくと持ち上げる=堀。腐れかけた花野菜のような亀頭佐藤春。 **かんがい【灌漑】** 田畑を灌漑する。灌漑設備を整える。灌漑用水を引く。灌漑用の溜め池。山をくり抜いて掘られた疎水矢作。 **キャベツ** 真っ白い手足がゆだったキャベツの茎のように浮き出る谷崎。むくむくした煙が小さな芽キャベツのように連なり合う福水。 **きゅうり【胡瓜】** ナマコは巨大な海の胡瓜"大庭。黄色い小さなキュウリの花"飯田。胡瓜の浅漬けがこりこりと爽やかな音を立てる有吉。 **くだもの【果物】** 果樹園から選りすぐった果物"あさの。果物の馥郁いくたる匂い。乾燥した果物のような絞しゃだらけの老人=伊坂。顔が暗い電灯の下で黄色い果物のように見える=野間。裸の肌が果物のように匂う~林美。星が無数の熟れた果物のように大きく美しい=加賀。果実がたわわに実る。粗悪な商品をバナナの叩き売りのように売り飛ばす「山崎。百果のみのりに恵まれる=阿川弘。フルーツを盛り合わせる。熟れた楊梅いまは小指でつついてもすぐ汁が噴き出すほど膨らんでいる=宮尾。芳烈な柚ゅずの匂い。神を湯に入れる。果肉(充実したはちきれんばかりの大原。たっぷりと蜜を含んだ=長野)。灯の消えた街灯の硝子珠材ジュが剣きだしの白い果肉のように身をすくめて立つ長野。 **くり【栗】** 焼けた栗がはじける。栗の実がぼとりぼとり地に落ちる=杉本。青い小さい栗のイガがボンボンのように垂れ下がる=田辺。栗のような頭をした男"野間。 **くわ【桑】** 暁の霜によろわれた桑の木のような老武士くわ=池波。蚕が桑を食うようにめちゃくちゃに本を読む=白井。蚕が桑の葉を(かじるようにして無味乾燥な参考書の頁を一枚一枚と読みすすむ!高橋和。食っているような音を立てて魂がすりへらされてゆく林美)。桑畑(紙捻に」を植えたような長塚。山から見下ろすと豊かな海のようにも見える一面の=村上春)。桑畑が黄葉の少しばかりを残した針のよう。水上。 **ごま【胡麻】** 胡麻で芹せりを汚す。すりこぎで胡麻をする。黒いゴマ粒のような驅炒らの蟻ぉり!安岡。高い空を飛ぶ鳶とびが胡麻粒ほどに小さく見える=中局災。 **こやし【肥やし】** 芸の肥やしにする。読者の欠伸く春の早蕨みのように萌えはじめる!白洲。両端がの肥料にゃになるくらいが関の山の文章=井上ひ。肥やしをまく。土に石灰をやる。▼追肥する(作物に。野菜に)。元肥を(置く。施す)。堆肥をすき込む。去年の落ち葉が堆肥のように腐っている山の尾根!吉川。口惜しさが代々積み上げられ堆肥のように動くっずんできている=有吉。生ごみを肥料に変える。葉が雨を肥料のように吸収する"有吉。 **さいばい【栽培】** ▼栽培する(作物を。花を。野菜を)。作柄が(不良。良好。悪い)。冷害で(米が不作になる。大豆が減産する)。野菜を連作する。連作の害を避ける。 **さくもつ【作物】** 作物を刈り取る。大地から育てる作物。畑に苦心の作物が所狭しと緑の葉を繁らせる=飯田。作物の生育が順調。作物を慈しみ育てる。農作物が病害を受ける。農作物に被害が及ぶ。 **ざくろ【柘榴】** 見物人が柘榴の実を割ったようにいっばいに詰まる=内田百。手にざくろのようなあかぎれをつくる=山崎。鼻が石榴ぶくのように赤く裂ける!真継。柘榴のように額を割られる=火坂。断り口が柘榴のように開いた肉志賀。 **さつまいも【薩摩芋】** 栗のようなホコホコとした味のサツマ芋"阿川弘。さつま芋が琥珀にはのようにふけ上がる=極。さつまいもを蒸かす。ぬくもりのあるねっとり甘い藷いもの粒子が舌と口腔にらをくまなく塗りつぶすような味極。ほくほくした焼き芋。焼芋屋の声がのどかに消えて行く=曽野。 **さといも【里芋】** てっぺんが里芋になった頭!向田。芋幹からのような細い腕小松左。芋の葉にキラキラと露が光る=田山。きぬかつぎを口に入れる。 **さんさい【山菜】** 山菜や茸いのといった山の幸。ぜんまいの(灰汁ぁくを抜く。芽のようにまるまった消火栓の先端=黒井)。ぜんまいのように曲がった背の高い水銀灯"村上卷。ふきのとうを(天ぷらにする。湯がく)。ふきを煮る。蕨みらの灰汁を抜く。嫉妬心が物愛の腕が腋ゃきの下へ入ってきてワラビのように巻く獅子。 **しばふ【芝生】** ▼芝生(青々とした。雨上がりのじゅくじゅくした。手入れの行き届いた。きれいに刈りそろえられた上等な"小川。絨毯にいうのように目のつまった=小松太。玉突き台のように緑色をした小松太)。緑の芝生が濡れたように冴えた色を見せる"石坂。沈んでいく夕陽の中で緑の芝生が泣き叫ぶように赤く燃え上がる=高橋三。芝生の(葉を丹念にむしる。庭に眩まぶしく日が当たる=池澤)。艶々した鮮やかな芝生の緑。雨後の芝生の緑が鮮やか"阿川弘。枯れた芝生の底に緑が消え残る=川端。芝が露に濡れる。雨に洗われたあとの芝がふりそそぐ秋の日ざしの中で目がさめるように鮮やか=五木。隙間なく生え揃った芝が滑 <140> # う らかな緑の毛氈もらを敷きつめたよう辻井。針金の芯がとおってでもいるように芝が細く硬く薬は先端を刃物でそぎ落とされたように尖とがる=日野。手入れの行き届いた芝生のように刈りこまれた言葉開高。頭の毛が犬が寝た後の芝生みたい"黒井。 **じゃがいも【じゃが芋】** じゃが芋を口いっぱいにほおばる。ジャガイモをころころと転がす=石森。馬鈴薯はれぃと南瓜幼心で食べつなぐ=横光。にぶい切れ味の庖丁で馬鈴薯の白い肉をトントンと苛ぐぃむように切っていく。マッシュポテトのような顔をした学生池田。 **しゅうかく【収穫】** 思いがけない収穫に驚く。収穫はほとんどゼロに等しい。それ相応の収穫を期待する。自己の将来によき収穫をもたらす“阿川弘。種から青てて収穫するときの喜びはひとしお宮尾。収穫されないまま霜に痛む野菜が白々と光る=大江。収穫期が近づく。収穫期を迎える。村中が稲刈りで忙しくなる。麦を刈り取る。収量が(多い。少ない。増える。減る)。脱殺する(稲を。小麦を。もみを)。▼取り入れ(稲の。小麦の。作物の)。▼刈り入れる(稲を。蕎麦でばを。麦を)。稲の刈り入れが終わる。 **しょくりん【植林】** 山に(木を植える。植林する)。ヒノキは水はけと日当たりがいい場所を好む三浦し。杉はたいてい八合目より下に植える三浦し。人工林を(問伐する。仕立てる。造成する。伐採する)。▼造林地(杉の。榆のの。松の)。 **すいか【西瓜】** 西瓜の種子みたいに小さいが黒光りする目"向田。声が自信と憎悪で西瓜の切り口のように赤く濡れる=武田癸。後頭部がつぶれたスイカみたいになるまで殴る=村上爬。 **すぎ【杉】** 杉が(亭々と生い茂る。雪折れで倒れる。針のような雪の梢を見せて空にきりたつ=水上)。杉の(香りが漂う。木が雪の重みに耐えかね大きく谷側にしなってしまう三浦し)。我意を高山の頂に生いたった杉の樹のようにちくちくとひひらす菊池。月をつかみ取るようなかっこうに杉の枝が空に伸びる=長崎。天を摩して亭々とそびえる杉の美林宮尾。ひときわ巨大な杉の古木がそびえている=飯田。杉を(植える。伐り出す)。厚い藻のかたまりが糸杉の森のように水底から垂直に立っている=開高。▼杉林(暮れるに先立って黒ずむ。静けさが冷たい滴となって落ちそうな"川端。規則正しく空に伸びた"伊集院)。くろぐろとした杉林がバノラマのようにめぐって行く手を深い閤で包む=梶井。天に突き刺さるように並んでいる杉林の梢の鋭さを感じさせる小さな乳首吉行。 **だいこん【大根】** すが入って大根がすかすかになる。大根を(うろ抜く。畑から引き抜く。紙のように薄く切る向田。さくさくさくと切る=檀。抜くようにすっほり抜き取る=真継)。大根のような脚谷崎。手や足が大根のように冷える=小林多。ばったばったと人を大根みたいに斬りまくる人灭。練馬大根のように健康で太々とした女性"獅子。練馬の大根畑から引っこ抜いてきたような女"つか。度しがたい大根役者中。 **だいず【大豆】** 壁に大豆ほどの穴が開いている=池波。大豆を(煎る。煮る。挽ぃく)。枝豆を一つずつ摘んで鼠姑ずのように端から齧がじる=高樹。豆腐をやっこに切る。豆腐のように雪を切る=中河。糸のふわふわに引いた納豆。納豆の(糸のような雨。糸のように細い糸三浦波)。視線が納豆のごとく後ろ姿に向かって糸を引く荻野。 **たがやす【耕す】** ▼耕す(畝間を。鋤きで畑を。土を。犂すきを馬に引かせて田畑を)。青春を耕し直す!高橋和。畑を打つ。鋭くもを手に畝うっを起こす。鎌を振る手に力を入れる。掌、に唾して鍬をふりかぶる=本庄。▼鍬を入れる(荒れ地に。畑に)。▼鋤き返す(田畑を。土を)。土を中耕する。ぐいと一鍬い入れて引き起こす鈴木三。耕作に従事する。▼耕作する(作物を。水田を。田畑を。土地を)。 **たけ【竹】** 櫛くしの歯のように生えそろった竹=水上。竹が(雪の重みで曲がる。美しい節を並べ糸でくくったように白い線を描く水上)。風が来て竹がそよぐ。挖たぁみきった竹が手から放たれると声を上げるように風を切る"伊集院。朝顔を竹に絡ませる。竹の(梢がさらさらと鳴る。こももでびしびし叩く。一葉が紙の薄緑色を一枚一枚切って飾りつけたように見事な林色"伊集院。緑のように冴えた余韻=竹西)。風が竹の葉を鳴らす。とくさで竹の肌をみがくキコキコと絹でこするような音"水上。脚が竹のように細い"小島。円く張った滑らかな足と手が竹のように痩せる=横光。竹を割ったような(気性。直管型)。青竹を炙ぁぶって油を絞るほどの苦しみ"夏目。筆の毛ほども細く刻まれた竹皮水上。櫛の歯のように生えている竹林に差しこむ陽が苔こけの生えた地面に雨のようにそそぐ=水上。竹林を風が渡っていく。竹落ち葉の間から竹の皮を落とした若竹が根の周りに遊んでいるふうに顔をのぞかせている"伊集院。りんとした若竹のような力が全身に張りつめる"飯田。割り竹でぐるっと垣を回す。がりがりの彫にさ。庭でこする。風が篠をざわざわと揺るがす。笹が風に吹かれてさらさらと鳴る夏目。七夕の笹がさやさや風にうたう=住井、短冊を笹の枝に下げる。笹の葉が青々と茂る。熊笹が(密生する。まだらに生える。かさかさと音を立てる三浦綫。ざわざわと鳴る=祓辻)。熊笹の群生した小高い山。小笹をかさかさと踏む。円飾りの笹竹ががさがさとくたびれた神経に刺さるような音を立てる徳田。笹原が風になびく。▼竹藪袱紗(青い竹が鬱蒼と生えた萩原爽。絨毯にいっても敷いたみたいに美しく掃かれた水上)。竹鹸が(風にそよぐ。さやさやと鳴る)。 <141> # 植える・耕す-45 **たけのこ【筍】** 竹の子がにょきっと出る。春先の符のような勢いでずんずん成長する=島崎。雨後の竹の子のように大学が乱立する藤本。雨後の筍のように増える=舟橋。若い筍のように手足が伸びて行く=川端。 **たね【種】** 種が芽を出す。苦労の種が多い。希望の種が心に一粒まかれる=石森、話の種に事欠かない。▼種になる(ゴシップの。傍焼油がき半分の噂の=高井)。蒔まかぬ種は生えぬ。播ょいた種は刈らねばならない=小松太。種も仕掛けもない。殿様の胤たぉを宿す。種を大地に蒔く。誤解の種を蒔く=中島必。仕事に種を蒔き、水をほどこす=阿川弘。無尽蔵に話の種を持っている=中。笑いと噂と好奇の種を蒔き散らす―佐藤巻。一種を蒔く(花壇に。畑に)。物笑いの種に(される。胞なほど下手従い=谷崎)。小さな種子が飛び散る。種子が(休眠する。できる)。 **たはた【田畑】** 田畑が(一面に広がる。緩やかな起伏となって続く。流域に広く展開する。水を吸った黒い地肌をのぞかせる=永井路)。鮮やかな直線と曲線で区画された田畑が延々と続く風景は一幅の名画さながら奥泉。田畑を(潤す恵みの雨。営々と耕す。抵当に入れる)。猪いいが田畑を荒らす。水害で田畑を失う。濁流が田畑を呑む。丹精して作った田畑を荒らされる"舟橋。山の土を客土する。耕地が少ない。農地を(開拓する。開発する。耕す。宅地に転用する)。黒々と広がった野良。 **たんぼ【田圃】** 青畳を敷いたような田四"長塚。田んぼが土の匂いを含んで広がるぃあさの。田んぼに水を引く。田んぼを(掻き均砂はす。耕す。風が渡っていく)。茶色く乾いたさびしげな田んぼを横目に川のほうへ下りていく三浦し。田が(潤いを含む。黒々と地肌を見せる)。一面の田が広がる。田に(水を張る。苗の緑が一面に広がる=大野登)。陽炎砂洲の立つ田雨道。青田から水蒸気が立ちのぼる。風が青田を渡る。田の畦あぜにたたずむ。風に吹かれて波のような模様を描いている稲田"中沢。稲田が風にそよぐ。色づきかけた稲田が一面に見える。秋の陽ざしが刈り田の上に斜めにおちる=本庄。黄色く熟した田"田山。五月の田植え時分。泥んこになって田植えをする。夕霧的竹のおぼろな田では蛙砂ぇの声がしきり~山木周。山裾に張り付いた棚田。田の面父のに夕闇が這ょう。薄霧いけが田の面をこめる。風が田の面をゆるやかに蠕動さんして進む佐藤春。田地の潰れを厭ぃとう。泥田に(足を踏み入れる。はまりこんだときのように体だけが前にのめるばかりで足は少しも動かない=山本有)。器わしい思いが一挙に泥田に叩きつけられる=丹羽。国策によるおびただしい休耕田赤瀬川。水田が減反政策で休耕田になる。田んぼを休耕する。水田が広がる田岡。乳白色の靄の中に田植えが終わったばかりの水田が薄い緑を刷毛はけではいたようにひろがる=阿久。水田に水が満々とみなぎる。水田の青のみずみずしさが目に沁しみる=山口。水田を風が渡る。 **つちいじり【土いじり】** 土いじりに(寧日がない。夢中になる)。園芸に親しむ。園芸を楽しむ。家庭菜園づくりに年季が入っている。▼草取り(花壇の。田の。庭の)。庭いじりを趣味とする。仕事の片手間に庭いじりをする。好きな庭いじりをして暮らす。 **トマト** 夕方の空が淡い米色から熟したトマト色に、やがて薄い紫色に変わる落合。トマトが火に照らされてルビーのように赤く光る=曽野。熟れすぎたトマトのようにつぶれた筋肉"小川。洗い立ての熟したトマトの皮のように張り切った鋼赤色の皮膚"中島必。顔が熟れすぎたトマトみたいな色になる=飯田。トマトを輪切りにしたような大口をあける笑い方獅子。 **なえ【苗】** 水田から子供のように頭を出している苗"伊集院。赤ちゃんがおかあさんのおっぱいをほしがるように苗が水を欲しがる=住井。苗の植え方を教わる。苗を(地面に下ろす。土に下ろす)。温床で苗を育てる。挿し木で(苗木を作る。殖やす)。植えたばかりの杉の苗木が青々とした薬をそよがせる三浦し。苗木を(植える。問引く)。苗床をこしらえる。実生苗ふんを地面におろす。小枝を挿し木にする。 **なし【梨】** 手紙を書いても梨のつぶて=有吉。梨の花のような仄青加切い頸筋(=海音寺。腐った梨のようにぶよぶよした男=木山。しゃりっと音を立てて梨を食べる。繊細なカットをほどこした洋梨型の小瓶小川。 **なす【茄子】** 十日前のナスのようにひしゃげている老獣医=高橋三。腐った茄子のようにブシ色に胍れ上がった顔藤枝。紫色のなすびの花飯田。 **なつめ【棗】** 棗形の小麦色のきめの滑らかな顔付き=宮本百。棗の白い果肉が林檎うんに似てさくさくと甘酸っぱい=黒井。聚みたいな丸っこい眼。吉川。 **なみき【並木】** 並木が(葉を落とす。緑の葉をつけ始める。影くろぐろと生ける人の列のよう=岡本)。川岸に桜の並木が連なる。木々が道の両側に並木のように梢を光らせて並ぶ=大岡。ケヤキ並木が遠近法のお手本のように先へ行くほどに細い緑の帯になる=高田。重くじっとりと葉をしげらせた桜並木の堤るっ=安岡。移り香が漂うほどのすばらしい桜の並木=飯田。並木道(車道に沿った。落ち葉の舞い落ちる)。花びらの大半が散り落ちて残骸のようになってしまった桜並木宮部。街路樹が(通りの両側に並ぶ。軟らかな若葉をそよがせる)。街路樹の(並びが車道に降かな旅を落とす“日野。枝先を柔らかな緑がくるむ=石田衣)。雨が街路樹を(洗う。濡らす)。コンクリートの柱が端から端まで街路樹のようにびっしりと続く人間。 **なんてん【南天】** 南天が肝につかえるほど成長する"壺井。背の低い南天の木が真ん丸く雪を冠かぶって並ぶ。 <142> # う ぶ=福永。 **ねぎ【葱】** 白い葱のように長い上品な鼻が顔を柔和にひきのばしている=円地。長ねぎをざくざくと切る。 **のうぎょう【農業】** ▼農業(集約的な。粗放な。多角的な)。農業が(苦境に追い込まれる。不作に見舞われる)。農業で生計を立てる。農業に(従事する。携わる)。農業を営む。細々と農業を続ける。農業技術を普及する。稲作に従事する。農園を(買い取る。再建する。処分する)。先祖代々受け継がれた日常的な農耕作業"吉丹。農耕に(従事する。適した土地)。農産物を出荷する。農場を(経営する。処分する)。典型的な都市近郊型の農村。農村が疲弊する。農村と都会が共存共栄する。眠ったような農村の風物のなかで過ごす津本。農に帰る。農は国の本。 **のうみん【農民】** ▼農民(富裕な。豊かな。零細な。土に生きる。貧しい)。苛酷な迫害を受けた農民がたまかねて立ち上がる=村松。農民の苦しみと共に生きようと決意する。労働者と農民の同盟を基礎にする"森安。農民を(組織する。一揆に駆り立てる。救うために奔走する)。▼農家(富裕な。貧しい)。農家に生まれる。三軒あるいは五軒とかたまって点在する農家のたたずまい藤沢。農家を継ぐ。 **のらしごと【野良仕事】** 野良仕事で節くれだった指"熊谷。野良仕事に精を出す。野良仕事を一人でこなす。▼野良仕事をする(田んぼで。畑で)。野良で働く。野良に出る。野良をこく。 **はたけ【畑】** ▼畑(猫の額ほどの。霜柱でささくれ立った加賀)。畑が雪をかぶる。延々と畑が続く。▼畑が広がる(坦々とした黒い。傾斜が尽きたあたりから"丹羽)。ウサギが一族郎党を引きつれ畑でディナーを摂る三浦し。畑に作物が緑の葉を繁らせる。畑の(畦道効謎を歩く。草をむしる)。行けども行けども畑ばかり。畑へ出て狩を出す。楽しげに日々畑を訪れる。庭と畑を区切る。黙々と畑を耕す。耕して天に至る=吉村。畑地がしっとりした湿り気にうるおう柴田翔。段々畑(几帳面治らんに耕されたり島尾。村の後方にせり上がるようにひろがる吉村)。山の中腹から人家のある山裾まで段々畑が続く=壺井。段々畠が美しい縞模様し注もを描く吉村。山腹に段々畑のように作られた墓地"中沢。 **はちうえ【鉢植え】** 窓辺に赤い花の鉢植えが並ぶ"内田康。鉢植えに水をやる。日に当たらぬための蒼白いぶい皮膚の印象からか、いたいけな鉢植えの草花を思わせる少女高見順。鉢植えにする(球根を。花を)。店先に植木の小鉢を並べる。植木鉢を並べる。盆栽に凝る。盆栽をいじる。 **ひょうたん【瓢箪】** 瓢箪から駒が出る。青瓢箪法はい、のような冴えない顔!壷井。瓢箪のような頭川端。うらなりの瓢箪のような顔斎藤栄。 **ひよく【肥沃】** 肥沃な(水田地帯。土壤。土地。平野)。▶肥えている(地味が。土が)。広大な沃土に恵まれる。一面の緑の沃野。豊饒うしな(緑の地。山野が無限に広がる。自然の中に暮らす)。豊饒の大海に流れこむ河瀬戸内。五殺の機能を祈る。 **ぶどう【葡萄】** 葡萄の粒が転がっていくような細く勁っょい鈴虫の声!辻井。少女たちの姿が葡萄の房のようにゆらゆらと揺れながら見える=堀。幾房の葡萄を胸につぶしたように白い肌が血に塗りつぶされる"吉川。而荷のようにころころしている糞ぶん"子母沢。瞳が黒ぶどうのように濡れている=山田詠。干しぶどうをつけたような二つの乳房=小林多。 **ほうさく【豊作】** 近年稀まれなほどの豊作。豊作が続く。米が豊作になる。豊作を祈る。祝う。祈願する)。秋の豊作を願う。実り豊かな秋を迎える。豊穣の秋。五穀豊穣を祈る。 **まく【蒔く】** ▼まく(苗代に籾もみを。畑に麦を。苗畑に松の実を)。▼種をまく(諍いきいの。近代科学の。花の。紛争の。悶着も仏もの)。野菜の種まき。▼種まきする(畑に。ブランターに)。 **まつ【松】** 見越しの松。松が(濃い緑を見せる。松食い虫で全滅する。覗のぞき込むように道の上へ幹を伸ばす佐多)。海岸線に松が点綴以する。簇々そうと緑を抽ぬいた松が静かに涼しさを守る芥川。松に(覆われた山。鶴を描く)。松の(根を燃やす。枝が円口にかぶさりかかる。枝を通して射し込む月光。木越しに海が見え隠れする道)。鷹たかが松の枝に羽を休める。錯落とした松の影を踏む=梶井。針のような松の葉水上。松を植える。風がひゅうひゅうと松を鳴らす。アカマツの林が額縁の絵のように見える三浦愛。赤松の幹のような脚!森噂。枝振りの見事な老松。広大な斜面を昼も陽ざしが通らぬほどに生い繁った老松が埋める=高橋涼。根元の大きな古松が池に伺ょうように大きく枝を張る=水上。松の古木が静かに参道を包む。頭の上から矢を射るように空を切って落ちる松落ち葉伊集院。はらはらと松葉が降る。松林の中を通り抜ける。 **まめ【豆】** 豆がざらざらと床に流れる。葉を失って枯れ黒んだ豆がショボショボと泣きそうな姿をして立っている幸田露。豆に虫がつく。豆を(妙いるような小銃の散発する音人灭。撒いたようにニキビの吹き出た額"獅子)。鳩に豆を与える。逃げ出した患者たちが力を失い豆を撒いたように倒れて動かない大岡。ボンボンと豆を弾くようにまくしたてる=和人。豆を噛む(ぽつりぽつり。ぼりぼり)。黒豆のように人の姿が点在する=阿川弘。坐り胼胝だこが豆のように堅い島崎。炒ぃり豆をぼりぼりかじる。塩豆をぼりぼり噛む。小豆で餡ぁんを作る。小豆ともち米で赤飯を炊く。額に小豆を並べたような汗が浮いている山岡。ピーナッツの殻を割る。ビーナッツを口にほうり込む。 <143> # 植える・耕す―-45 **みかん【蜜柑】** 心を躍らすばかり暖かな日の色に染まっている蜜柑芥川。みかんが(たわわに実る。床に転がる)。月明かりに蜜柑が狐火のようにぼつぼつ浮かんでまるで夢のともし火の海"川端。鮮やかな蜜柑の色。陽の光に包まれて葉蔭にのぞく蜜柑の実の色が滴るように見える=高井。みかん畑がだだっ広く広がる=中上。姿しなびた蜜柑のような顔を並べる徳永。オレンジの肌が艶々と光る。たわわに実ったオレンジの木が長くほの暗いトンネルをつくる果樹園常盤。口の中が酸っぱくなって百面相の稽古みたいになる夏蜜柑「福永。肌理ものが粗くて脂ぎっていて、いくらかぼこぼこしていて夏蜜柑の皮を想わせる皮膚大庭。夏みかんの鮮やかな黄色が青い波隅にたぶたぷと揺れている=村山。高く盛り上げた夏蜜柑の胸を突き出す"向田。実の少ない夏蜜柑の木のような街路灯=北村。夏みかんを手の中で転がす。ホームベースの上に置いた夏みかんを外野から見るくらいに小さい村上春。 **むぎ【麦】** 麦が(青々と伸びる。黄色に熟す。黄熟して刈り取られる=田山)。青々とした変が風に揺れる。菜の花と麦の青葉とで錦を敷いたような島々=国木田。麦の(穂がさやさやと微かすかな響きを立てて動く"長塚。穂のように健康な笑い声を立てる=徳永)。刈り取り前の麦の穂に沢庵於心をもたれかけさせたように真ッ黄ッ黄=阿久。鋭くとがった針のような麦の穂先"飯田。緑色の小さな麦の穂が小波のように波打つ。飯田。小麦の穂にびっしりと微かびのような花がつく=長塚。青々と豊かな穂波を打っている麦畑"加賀。 **もも【桃】** 金色の産毛の生えた赤ん坊の肌のように擦こすれて傷つきやすい桃"阿部。桃が花を咲せる。熟れて落ちた桃が地上で蒸れて腐りながら放つ甘ったるい芳香が庭にも家の中にも充満する=阿部。桃の匂いが気にむせ返るような夏の日"阿部。白い桃の実のような乳房のふくらみ=円地。丸ぼちゃの肉づきが白い桃のように美しい=円地。幼い子の白桃のような肌"高井。生毛粉”のある頬のあたりが若い白桃のようにういういしい娘"山本周。頬のようにほのかに赤らみ顎のようにふくらかにくびれた水蜜"中。水蜜桃のような少女"筒井。 **もやし** もやしのひげ取りを頼む"阿川佐。もやしのように(蒼白いらい触手。ひょろひょろと伸びた薄赤い新芽=壺井)。もやしみたいに育った連中とは出来が違う小林信。 **やさい【野菜】** 野菜(新鮮な。食卓に欠かせない。甘みと苦みと酸味のバランスがちょうどよくて瑞々しい三浦し)。野菜を(売る。買う。刻む。塩漬けにする。食べる。煮る。たっぷりと添える。生かじりにする。水にくぐらせる)。洗った野菜を笊ざるに上げる=松浦。生野菜をばりばりとかじる。青菜に塩といったしおれ方今日。青菜のおひたし。青菜を漬ける。青物を(商う。かじる)。新鮮な蔬菜心さの味を欲する。腐った玉ねぎの臭いがぶんと鼻につく=安岡。菜っぱになった気分で震えながら塩を全身にすりこむ三浦し。菜っ葉を味噌汁に入れる。菜を(刻む。間引く。ゆでる)。白菜を漬ける。ほうれん草のおひたし。 **らっきょう【辣重】** 不快なことの一切を辣韮の皮をむくようにむいて何にもなくなるのを見なければ承知できない=円地。ラッキョウの(皮むきみたいな真相追及の追っかけ=川崎。皮を剣じいていく猿の気分歩野)。ラッキョが転がってもおかしい年頃=飯田。 **りんぎょう【林業】** ▼林業(集約な。粗放な。多角的な。長い年月をかけて木を育てる三浦し。百年単位でサイクルする三浦し)。林業が苦境に追い込まれる。林業に従事する。林業の再生を図る。山仕事で集中力が途切れたら命にかかわる三浦し。 **りんご【林檎】** 林檎の(甘い匂いが漂う。枝が熟した果実でたわわになる=有局。皮を剝もき損なったみたいな娘!連城。実に掛けられた袋が岡の中で吉凶占いの結び籤くじのように見える=千刈)。歯をあてられた林檎の白い果肉が噛み跡からたちまち変色するように別れは会ったときから始まる三段。腐りかけた林檎は良い匂いがするもの=石川。猿のような口つきでりんこをかじる=住井。リンゴをおろし金ですり下ろす。剣きかけの紅い表皮が発糸はねのように巻き戻る=長野。林檎のような頬っぺた宮本瓦。顔がりんごのように赤い宮沢。健康な色の頬をなお林檎のように紅くする=長与。 **レモン** 青い黄色に澄むレモン=柴田翔。レモンの酸味のうなさわやかな味のただよう表情"田辺。卒塔婆の前に十三夜の月を積み重ねたようにるいるいとレモンの明るい灯明がともる=川端。掌K50から身内に浸み透ってゆくような檸檬ルもの冷たさが快い"梶井。 **【薬】** 薬がぐっしょりと湿る。藁で(編んだ草履。わら屋根を葺く)。ワラにもすがりつくような表情で聞き返す西木。藁にもすがりたい患者の心理につけ込む人間。追いつめられ藁にもすがる思いで来た男女"西木。藁を(細かく刻む。とんとん打つ)。溺れながら必死に薬をつかもうとする高見浩。さらさらと薬を扱しごく音"長塚。溺れるものはわらをもつかむ=美濃部。薬をも掴っかみたいような頼みをすげなく断る後藤一片のワラのように押し流される=獅子。ばらばらになった髪の毛が薬のように額に垂れる=小池。麦薬のようなカマキリが老いさらばえた妹炒。を引きずってのろのろと歩く=内海。藁屑を(かき払う。掃き寄せる)。薬しべが水面に浮かび揺れる。一筋の薬しべのように差しのべられた愛される幸福にしがみつく有吉。薬束を(くくる。しばりつける)。 <144> # 浮かぶ・沈む **いかだ【筏】** 三つのイカダが矢がすりの模様のように互い違いにつなぎ合わせてある=山本有。夜に乗って海を漂流する。丸太を筏に組む。山奥で伐り出した材木を筏に組んで川を下る"中上。車がゆるやかな流れに吸い込まれるイカダのように右に寄って行く=干刈。 **うかびあがる【浮かび上がる】** 浮かび上がる(意外な事実が。意識の表面に。思い出が心に。姿が明かりに。人柄が鮮烈に。記憶の底から。奈落の底から。顔に激しい悪意が。隠された真実が。一つの可能性が。ぼんやり人影が。ライトの中に前の車が。忽然だんとして眼前に。山容が薄紫色に。まざまざと想像に。境界線がおぼろげながら。深い眠りの底から。湯煙の向こうに花影が藤田。今のさきそこにあったようにはっきり記憶に=円地。口紅の一点の赤が鮮やかに"三島。金色の月が圏の中に小川。両の眼で見ているように心の中に=住井。明かりがぽっかりと横山。言葉が呪文のように水倉。たち並ぶ家々の軒並がくっきり影絵のように=山崎)。▼色が浮かび上がる(顔に憤怒の。おさえようもない喜悦の=杉本)。二人だけがスポットライトを浴びたみたいに鮮烈に浮かび上がって見える=飯田。▼浮かび上がってくる(光景が鮮明に。風景が目の前に。次々に記憶から)。愛も心も言葉によって象いたられ昏くらい海から浮かびあがってくる三浦し。ただ浮かび上がりたい一心。顔一面に恐怖の色を浮かび上がらせる。浮いて出る(表情に影が。目に殺気が。声が耳に)。▼浮かび出る(目に光が。姿が水面に。心の中に考えが。亡霊のように目の前にふっと佐藤多)。景気の浮揚策。▼浮揚する(気球が。人気が)。浮上する(疑惑が。計画が。ゆっくりと水面に。二位タイにまで)。疑問が胸の底から浮上してくる。 **うかぶ【浮かぶ】** 浮かぶ(頭に答えが。いい知恵が。顔に苛立からちが。顔に渋面が。顔に羨望が。顔に迷いが。唇に歌が。心に追憶が。額に脂汗が。ふっと疑問が。目の底に姿が。夜空に月が。面影が験だぶに。体が宙に。考えが念頭に。木は水に。苦笑が頬に。死骸が運河に。捜査線上に。月が夜空に。星が空に。水鳥がお堀に。汗がうっすら。雲がぽっかり。言葉がふと。姿が茫漠取付と。いいアイデアが。海上に大小の汽船が。顔に愛想笑いが。顔に諦めの表情が。顔にちらと不快が。顔に当惑した気配が。こめかみに青筋が。瞳孔に奇妙な光が。灯火に吒の下に人影が。ほうと薄白い明かりが。ぽっかりと雲が。ぽつぽつと汗が。目に怒りの炎が。うつ伏せに水に。悲しみが鮮明に。言葉が切れ切れに。死に様が眼前に。姿がおぼろげに。情けない表情が顔に。微苦笑が口元に。微笑組はみが自然に。山勘が頭の中に。輪郭が鮮やかに。空中にふわりと。光景が眼前に髪発汨っと。不安がありありと。雨に姻けむってぼんやりと白い花がぼつぼつ"志賀。白い雲が一つぽっかりと三浦綾。提灯坊いうの明かりに包まれた横顔が闇に白く“三浦し。透視絵のように透けて内橋。腹立たしさの中から微笑がはみ出るように=横光)。夜に浮かぶ月。頭に浮かぶ(文字が。理由が)。▼色が浮かぶ(顔に怒りの。顔に驚きの。顔に後悔の。瞳に賛嘆の。表情に安堵んの。表情に期待の。表情に警戒の。表情に好奇の。目に当惑の。目に狼狽らいの。頬に明るい血の"五木)。▼笑みが浮かぶ(顔に。口元に)。▼影が浮かぶ(顔に怯ぁびえた。頬に苦悩の。ガラス戸にすっと)。心に浮かぶ(誓願が。問いかけが。考えがひとりでに)。涙が浮かぶ(瞼に。目に)。▼脳裏に浮かぶ(思い出が。恋人の顔が。光景が。言葉が)。▼微笑が浮かぶ(頬に。ほんのり)。胸に浮かぶ(感慨が。考えが。言葉が。名前が。確信めいた思いが。姿が彷彿ぶづとして)。▼目に浮かぶ(表情が。臨終の顔が。家の中の様子が。ほっとしている顔が。昨日のことのようにまざまざと=三浦絵)。頭の中に浮かんだ言葉。水に浮かんだ木の葉。屋根の上にぽっかり浮かんだ山。数年前の生活が限前に浮かんで通る。▶浮かんでくる(顔が胸に。まぶたの裏に。後から後から。次から次へと。抑えても抑えても微笑が。知らず知らずのうちに涙が。ありありと目の前に。情景がまざまざと目に。あぶり出しの絵のように。過去の場面が後から後からと。何の脈絡もなく。光景がスイッチを入れたテレビ画面のように鮮やかに=佐藤愛)。▶浮かんで見える(くっきりと。ほんやりと闇に)。ぶかぶか波間に浮いている。浮かばない(いい知恵が。他に妙案が。これといったアイデアが)。浮かぶ瀬がない。浮かんでこない(言葉がうまく。てんで考えの中に)。 **うかべる【浮かべる】** ▼浮かべる(空が月を。額に汗の玉を。額に脂汗を。満面に喜色を。喜色を満面に。苦笑を片頬に。言葉を脳裏に。フィを海上に。愛想のいい笑顔を。嘘臭い愛想笑いを。海にぼかりと身を。具体的イメージを。口元に薄笑いを。頬に含み笑いを。目にいたわりの光を。面白そうな笑いを頬に。困惑を顔一面に。凄惨な姿を瞼だぶに。澄みきった空が雲を高く。意味ありげな笑みを口の端に=横山)。卑屈な薄笑いを頬にうかべる=遠藤。▼色を浮かべる(瞳に切なげな。顔に怒りの。顔に緊張の。顔に不快そうな。頬にはにかみの)。▼笑みを浮かべる(顔いっぱいに。顔颜中に。ニヒルに。うっすらと。满而面に美しい。片頬に勝ち誇った=有川)。▼顔に浮かべる(苦悶心もの表情を。柔和な笑みを)。▼微笑を浮かべる(顔に。片頬に。唇に。口元に。目色に。弱々しく)。▼表情を浮かべる(驚愕岭いうの。困惑の。ほっとした。明らかに迷惑そうな)。 <145> # 浮かぶ・沈む-46 な。臍へそがやわらかな「小林信)。▼浮かす(思わず腰を。尻を椅子から。鞍くらの上で尻を宙に)。宙に浮かせる(視線を。箸を)。椅子から腰を浮かせる。浮かばせる(頬にうっすら微笑を。遠い日を目裏に。茫ほうと視線を宙に)。進水する(タンカーが。船が)。 **うきあがる【浮き上がる】** ▼浮き上がる(赤黒いしみが。頬に笑いが。目尻の小皺がしが。低迷状態から。ふわりと。水中から坊主頭が。体が浮力を得て海面上に。ぽっかりと海面に。模様が鮮やかに。山の雪が青ぷかりと腹を見せて)。家庭で浮き上がった存在になる。浮き上がってくる(うっすらと山影が。記憶の中から光景が)。形を鮮明に浮き上がらせる。 **うきしずみ【浮き沈み】** 浮き沈みする(思いが。感情が。情緒が。言葉が頭に。波間に)。浮きつ沈みつ(必死にもがく。川下に流れていく)。潮の流れのまにまに浮きつ沈みつ没し去る佐藤春。浮きつ沈みつする(波間を。ぶかぶか)。 **うきでる【浮き出る】** ▼浮き出る(赤く錆びが。順のあたりにそばかすが。やせ細って肋骨こつが)。浮き出させる(凹凸を。曲線を。黒さを。文字を。輪郭を。腕をゴムバンドで縛って血管を大藪)。浮き出す(胸に肋骨が。目尻に欲しゃが。指紋が明瞭に)。 **うく【浮く】** ▼浮く(顔に脂汗が。額に汗が。目に憂いが。体が水に。興奮すると額に血管が。泉水に緋鯉の影が。頬に薄く血の色が。両頬にえくぼが。ふわりと体が宙に。身体が宙に舞ったように泉優。雲にでも乗ったように軽くフワフワと=石坂)。青みどろの浮いた池。赤錆絡みが浮いた澱ょとみ。一面に脂の浮いた顔。額に浮いた汗を拭う。浮いている(緑青が。光の中に無数の埃児にが。天の川が屋根の上に。ちぎれ雲が空に。白い雲がぼっかりと)。歯の浮くような台詞を言う三浦し。歯の浮くような言葉。 **かい【櫂】** 櫂の音をきしませる。きいきいと鳴る極の音。権を取って漕ぎはじめる。オールがバシャッと永を叩く=長崎。オールを漕ぐ。 **かいてい【海底】** 光が届かぬ海底の水が死んだように黒い=畑。▼海底のよう(部屋の空気が碧ぁぉく染まって『有吉。仄暗1550い地階のバーが音もなく静かで=田辺)。ひっそりした海底のように暗鬱な廊下松本。海底深く葬り去る。海の底と錯覚しそうな深い闇"小川。薄暗くて煙がただよい黒い影がうごめいて海の底に似ている店内"石森。傘の青い色を浴びて深い海の底にいるよう。高樹。青い風呂敷きで電灯を覆ったので部屋は海の底のような光の中に沈んでいる=中島救。深い海の底のような光が底まで届かない迷路”森村。青葉をとおしてくる日の光のせいかあたりは青くらく深い海の底のように見える=長崎。 **こぐ【漕ぐ】** ▼漕ぐ(力任せに船を。舟を。ボートを。薄暮を縫って。満身の力で。ゆらゆらぶらんこを。二人が息を合わせて)。雪の中を泳ぐようにこいでいく"石森。ブッシュを漕いでいく。広く深い言葉の海に力を合わせて漕ぎだしていく三浦し。▼漕ぎ出す(沖へ磯舟を。沖に。舟を湖に。沖へ沖へと)。漕ぎ下る(川を。急流を。川下へ)。必死で漕ぎ抜いてきた人生。▶漕ぎ抜く(激流を。瀬戸を。一気に。全力で。一週間で三百キロを)。▶漕ぎ回る(海を。ボートを。水の上を)。▶漕ぎ寄せる(舟を。ボートで陸地へ)。流れを漕ぎ渡る。バドリングで沖へ出ていく。乱暴とも思えるほど力泄する。漕ぎ手(ボートの。丸木舟の)。潽ぎ手が(足りない。乗り込む)。漕ぎ手に(号令をかける。指示を出す)。漕ぎ手を(入れ替える。確保する。務める。励ます)。 **こぶね【小舟】** ▼小舟(波にたゆたう。洋上を漂う。流れにもやってある。海上に点々と浮かんだ有島)。小舟三艘くうをつなぐ。小舟が(波に呑まれる。櫓ぅの音をきしませる。うねりに持ち上げられる=高樹)。小船が一筋の光明のように真っ直ぐ沖へ走って行く=川端。小舟で島に渡る。小舟を操って湖へ出る。心が風に弄絡にばれる小舟のように揺れ動く海音寺。釣り舟が点々と浮かぶ。明日をも知れぬ泥舟。母親のない身の上は大海に漂う一葉舟にもひとしい=福永。渡し舟で川を渡る。渡し舟の船頭。流れにひたひたと揺れている丸木舟。丸木舟を漕ぐ。鳥のように速く岩のように頑丈な楠の刳くり船高田。 **しずむ【沈む】** ▼沈む(不愉快で気が。思いの沼に。生の深みに。谷が闇の中に。通りが灰色に。山々が霧に。心が暗く。船が暴風雨で。顔が青黒い影に。悲しげな表情に。暗く重い虚脱感に。昏々にんと深い眠りに。太陽が山の向こうに。ひっそりと思いに。ぶくぶくと波間に。ぼんやりと物思いに。夕日の一点が紅に。宴会の疲れが頭の奥底に重く。靴がずぼずぼと。長靴が雪の中にずぶりと。深い渓谷が闇の中へ。水を打った土の色が黒く。霧の底にせせらぎの音が=檀。家々が薄黒く宵闇のなかに=本庄。亡父の遺骸にとりついて秋愁族に=舟橋)。▼海に沈む(船が。落日が)。▼海底に沈む(船が。艦が深く千尋ちぃの=津本)。▼底に沈む(海の。記憶の。声が静けさの。堕落の。深い快楽の。深い夜の。街が眠りの。湖の)。▼淵に沈む(失意の。絶望の。忘却の)。▼闇に沈む(市街が。草原が)。顔色が沈みがちになる。沈んだ気分をひきたたせる。灰色に沈んだ都会。深く内側に沈んだ響き。流れのまにまに浮いたり沈んだりする。▶沈んで行く(町が夜の深みに藤沢。水に吸われるように今日)。沈んでいく(放が濃い紫に。夢現2020ぅの境に。みじめな気持ちに)。沈んでいる(声が異様に。思いなしかひどく。感情の底に劣等感が"小林久)。沈んで見える(景色が眼下に。いつになく)。野の果てに日が沈んでゆく三島。籐椅子にうに体を沈ませる。海の藻屑もくと消える=鈴木光。二度と浮かび上がることはない。水の底に沈んで行くような心持ち。内田瓦。悲しみに打ち沈む。瞑想ごいの水に沈みかける。沈みこむ(草原に夕濡らが。記憶が圏の底に。球が手元でわずかに。深い眠りの底に。物も言えないくらい。ものも言えぬくらいに=富岡。ガンを宣告されたみたいに=宗田)。▼重く沈みこむ(気持ちが。胸の底に)。深い沈黙の底に沈み込む佐藤系。悲しみに泣き沈む。沈潜する(驚きが。悲しみが。笑いが)。忘我の中に沈淪,从する。 <146> # う 藻屑となる(船が海底の。むなしく海の)。沈没する(暴風に遭って。あっという間に。船が海中の巨大な手にひきずりこまれるように音もなく=西木)。船が海面スレスレまで沈んでまさに沈没寸前"本多俊。沈没船を引き上げる。没する(水中に姿を。水中に身を。太陽が水平線に。夕日が山の稜線もいっに。荒い時代の波の中に内橋)。波濤沢との間に没し去る。 **しずめる【沈める】** 『沈める(丹田に力を。低く腰を。船を。枕に頭を。体を湯船に。キャンバスに膝を。ファーに体を。記憶の底に。水の底に。妄念を心の底に=阿川弘)。▼身を沈める(シートに。安楽椅子に深々と=高橋和)。▼深く身を沈める(座席に。ソファーに)。海の底に石のように沈められる遠藤。船を海底の薬屑も〈にする=柴田錬。魚雷に撃沈される。▼撃沈する(軍艦を。輸送船を)。 **すいてい【水底】** 水底に没する。水底の石が透いて見える。浅い水底を思わせる静かなほの明かり“日野。濁った水底を透かすようなもどかしさ=刀田。平和な沼地の底に降りていくように眠りに沈んでいく=加賀。深い沼の底に引き入れられるように夢うつつの境に沈んでいく=白洲。窓からもれる銀色の月光が室内を水底のように浮き上がらせる=光瀬。悲蒼お村い闇が押し寄せ庭が水底のように謐しずまっている"落合。暗い店内が水底のように静まり返る=浅田。堂内が一瞬水底のように静まりかえる=井上靖。集落がダムの湖底に沈む=内田康。湖底の幽幻な青い色を湛えた双峰に柴田辿。湖底を浚渫れんする。深い沼の底にいるように息苦しい=阿部。湖の底に消える。水の底から(発せられたもののように重い響きを伝える声=高井。湧き上がってくるような声=高井)。深い水の底から浮かんでくるように考えがぼっかりと浮かぶ松谷。水の底の深い沈黙のなかに二人きりで向かい合ったように中村真。陽が翳かげってすうっと部屋の中が水の底のように薄暗くなる=小林久。 **せんしゅ【船首】** 船首が恍惚こっとした薄い顎のような形に仰向く三島。船首の向きを変える。船首を波に向かって立てる。とがった顎が巡洋艦の船首のように空気を切り開く=清水俊。嘴獣のように突き出た水押以外村。水押が水を切る。舳先さで水を切って行く=国木田。船の舳先に立つ。大波に向かって删訟を立てる。船の勉首訟とが心地よい音をさせて水を切って進む=国木田。 **せんたい【船体】** 船体が(きしむ。がたがた震える)。船体に(穴が開く。傷がつく。着水する)。船体を(改修する。白く塗る。立て直す)。艦体が真っ二つに割れる。艦体に亀裂が走る。 **せんばく【船舶】** 船舶が港に出入りする。船舶を建造する。貨物船が沖合に停泊する=なかにし。大小さまざまの艦船がすきまもないほどに海をうめている"灰谷。港があまたの艦船で埋めつくされる。汽船が波を蹴開く。大きな建物が思い汽船のように見える=石森。海に浮かぶ大ビルディングのような巨船「斎藤栄。船影がゆらゆらと遠く映って過ぎる三島。船影を沖合に認める。遠ざかる船影を見つめる。レーダーが船影を捉える。船団が沖合にたむろする。船団を組む。孵忙しが港内を走りまわる。積み荷を艀で岸壁まで巡ぶなかにし。荷物を艀に積み替える。荷揚げをしないはしけはどこかのんびりしていてたいくつそう灰谷。発動機船がポンポン音を立てて行き来する=壺井。フェリーが島と島の間を運航する。車がフェリーに乗りこむ。輸送船を(攻撃する。喪失する)。 **せんび【船尾】** 船尾に立つ。船の彼とも。嘘から鯨のように舵かとの尾を出す=有島。娘に座る。触乘吐もりが舵を取る!丹橋。 **はんせん【帆船】** 帆船がマストを高々と掲げる。沖に帆船が停泊する。帆をかけた船。斜めに傾いている白い帆が斑点のように海に散らばる=清水俊。夜明けの薄明の中の墓石が殷賑いんな港に碇泊にいしている多くの白い帆舟のよう三島。帆かけ船が滑るように進む。帆掛け舟が海から浜に寄りつつある=山本一。帆かけ舟の帆が銀のようにかがやく中。白い蝶々のよう な帆かけ船!庄野。海原を疾走するヨット。ヨットが(海を走る。並走する)。ヨットに乗る。ヨットを操る。 **ふなあそび【船遊び】** 王朝絵巻さながらの絢爛豪華な船遊び、和久。取引先を船遊びに招待する。 **ふなばた【舷】** 舷から身を乗り出す。舷を水がむちうつ。舷側ぜんにぴたぴたと川波が砕ける。泡立つ激浪がじゃま物へでも食ってかかるように舷側へぶつかってくる=山手。波が舷側をびしゃびしゃと叩く。縁心心から身を乗り出す。舟べりに(腰を下ろす。もたれ海面を見つめる)。月が舟べりにきらきらと美しく砕ける。波がべちゃべちゃと船べりを叩く伊集院。 **ふなよい【船酔い】** 地獄の苦しみともいうべき船酔い=井上苑。船酔いで地獄の思いを味わう〜篠田。船酔いの苦しさに辟易於談する吉村。つき上げてくるような船酔いの苦しみをねじ伏せるかのように力を込めてさすりおろす壺井。したたかな船酔いを経験する。 **ふね【船】** ▼船(喫水の浅い。喫水の深い。波を切ってふね進む!壺井。港を出離れて木の葉のように小さくなった=有島)。舟(辞書は言葉の海を渡る=三浦し。芥子粒ほどに見える遠くの"真継)。船が(錨いかを下ろす。 <147> # 浮かぶ・沈む-46 す。海で遭難する。沖合に現れる。沖へ向かう。外洋に出る。岸壁を離れる。左舷にげにかしぐ。桟橋を離れる。ドックに入る。漂流を続ける。帆を張る。港を離れる。洋上を漂う。浅瀬に乗り上げる。朝靄益やをかきわけて進む。暗礁に乗り上げる。海の彼方に消え去る。浦から浦を回る。沖合に投節というびする。海面を押し分けて進んでいく。影をにじませて遠ざかる。かろうじて転後を免れる。岸から遠ざかる。航行不能に陥る。湖岸に着船する。潮風に吹き送られる。水面を滑っていく。灯台に導かれる。怒応とにもてあそばれる。風波の難に遭う。見る見るうちに小さくなる。青い浪なぁを揺らめきわけて進む=本庄。青空を流れる燕らばのように早い=川端。荒波に木の葉のように翻弄される=なかにし。氷をすべるように川を下って行く吉川。残照を浴びて光る=福永。すっと流れるように動き出す=内田百。滑るように動き出す菊池。疲れきった魚のように黒く横たわる=有局。波に木の葉のようにもてあそばれる=白洲。何回も波濤社との山の上に上り波濤の谷へ落ち込む=井上靖。真っ直ぐに溶ぁぁを引いて沖合に出て行く=福永。見る見る巨大な音楽のようにふくれ上がる三島)。氷山に船がぶつかる。一葉の舟が天から落ちた大鳥の一枚の羽のようにふわりとしている=幸田露。うねりに乗って船が青々と晴れた海を疾走する=福永。鋲び、がゆるみでもするようにギイギイと船がきしむ"小林多。霊を得たように船が波を切り段々と早くなる一定のテンボを取って沖に乗り出して行く=有局。舟が(川面を滑り出す。竿だぁを弓のように張って流れを遡って行く=田山)。船が桟橋に横付けになる。青い海の上を白い穂先を見せ真っ白な航跡を曳いいて船がはしる=阿川弘。船が港に停泊する。船が大きく揺れてしぶきが雨のように飛びこむ"山本有。船から(荷揚げする。荷を降ろす。身を投げる)。船と運命を共にする。船に乗り遅れた口借くゃしさのようなものがある池田。同じ船に乗り合わせる。数隻の船に分乗する。帰る港のない船に似た身の上白洲。船の(舵かしをとる。もやいを解く。灯りが海に映り揺らめく=なかにし)。船を(港に泊める。入り江に進める。湖上に浮かべる。埠頭ぶとに係留する。船蔵につないでおく)。舟を(沖に漕ぎ出す。岸につなぐ)。筋もゃい杭に舟をつなぐ。岸に船を着ける。岸辺に船を寄せる。懸命に船を漕ぐ、巧みに船を操る。取り舵一杯で船を回す。引き湖を見計らって船を沖合へ出す。迎えの船を(差し向ける。待つ)。船に乗っているように上体をぐらぐら動かす=円地。積まれた材木が港に折り重なって睡ねむる舟のように静か高樹。曇った空に雨をふくんだ雲が船のようにゆっくり流れる遠藤。木蓮1んの花弁が白い船のように落ちて来る=川端。船客が(乗船を始める。続々と下船を始める)。船足が(遅い。速い)。舟底を叩く水音。船が揺れる。船が(大揺れに揺れる。木の葉のように揺れる=井上菜。子守歌ほどに揺れる=小林多。シーソーのようにはげしく揺れる=山本有)。横波を受けて船が大きく揺れる。 **ほ【帆】** 風を帆いっぱいにはらむ。帆が(風をはらむ。手際よく下ろされる。萎え調に眩んだように垂れる外村)。風が立ち帆が鳴る。白帆が波闇に浮かぶ。夜目にも真っ白な帆が迫る=隆。帆を朝風にはたはたとなびかせる菊池。いい口実ができたとばかりに尻に帆をかける"安部。逆風なのに巧みに帆を操りながら進む船!塩野。▼帆を揚げる(得手に。順風に)。大きな銀杏いの木の影が舟の帆のように雑貨屋の屋根瓦まで伸びる"伊集院。白帆が(湖を行き交う。水面を滑っていく)。沖に白帆が見える。ヨットが帆走する。帆影が湖面に浮かぶ。水平線に現れた帆影を眺める。帆綱にしがみつく。帆網を握る。帆布を広げる。満帆の風に送られる。満帆万里の風。 **ボート** 船外機で走るボート。ボートが(岸に着く。潮に流される。水面を滑る。転覆する。漂流する。ギーギーと音を立てる。岬に沿って走ってゆく。夜霧の中に消えていく。広い海の上に蚊のように小さくところどころに浮いている"大佛。山のような波の波頭に乗り上がる佐山。別のボートを目に見えない長いローブで曳航にふでもされているかのように追送する=景山)。波でボートがひっくり返る。ボートが点々と浮かんでいる。木の葉を散らしたようにボートがいっぱい浮かんでいる=田辺。ボートから落ちる。波がちゃぷちゃぷボートの横腹をたたく"長崎。ボートを岸に着ける。砂浜へボートを引き上げる。ゴムボートを膨らませる。モーターボートが突っ走る。モーターボートを(操縦する。走らせる)。クルーザーで(釣りに行く。島めぐりをする)。クルーザーを操縦する。艇が緩やかに滑り出す。 **ほばしら【帆柱】** 林のように立ち並んでいる何百という帆柱"井上菜。帆柱に縄を巻きつける。旗を帆柱に掲げる。白い靄もゃの中に重なり合った帆柱やクレーンが工場地帯の煙突のように見える=吉行。地震で家が時化しげにあった漁船の帆柱みたいに揺れる=里見。マストが釣竿釣りのようにたわんでビュウビュウ鳴く=小林多。クルーザーのマストが月明かりに映えて白く林立する!泉後。マストをかすめる鳥の姿。風がマストを鳴らして吹いて行く。 **ろ【櫓】** 櫓が梭ぃのように波を切り破る=有島。櫓の(手応えが重い。跡がゆるい波紋をえがく)。櫓縁心にから百足ひぃのように櫓の足を出す"有島。柔らかな櫓の音がギーギー聞こえる=田山。漕いでゆく櫓の音が獣の子の乳をもとめる声のよう~中。櫓を(操る。構える。漕ぐ)。さあ来いと云わんばかりに櫓をひしげるほど押し掘っかむ有島。▼舟を漕ぐ(小刻みに。舟の)。舟を二挺櫓」で漕ぐ。 <148> # 受ける・引き受ける **アンテナ** アンテナが(空高く伸びる。敏感に反応する)。触角のようにアンテナが伸びている=伊坂。アンテナで受信する。聞かれたくないことばかりにビンと反応するアンテナの感度といったらスパイ衛星並みの耳"宮部。あらゆるアンテナを張りめぐらせる。都会の若い娘たちは敏感なアンテナのように人の言葉の裏にあるものを見分ける=大佛。 **うけいれる【受け入れる】** ▼受け入れる(外来の思想を。快く注文を。社会の常識を。人権宣言を。現実を素直に。死を冷静に。抵抗なく。中年期に入った自分を。超自然な現象を。すべてをあるがままに。結果をそのまま。事実を事実として。どんな結果でも敢然と。何の疑問もなく。申し出を一も二もなく)。到底受け入れることのできない無理難題"火坂。研修生を受け入れて熱心に指導してくれる三浦し。やすやすと死を受け入れてしまう。是が非でも要求を受け入れさせる。受け入れられる(社会的に。提案がすんなり)。受け入れ数が(多い。少ない)。受け入れ態勢が整う。清濁を併せ呑む。▼がえんじる(降伏を。上梓沿いを)。嘉納する(祈りを。建白を。参詣を。花束を)。▼感受する(経験的事実を。言葉のありがたさを。言葉の恐ろしさを)。▼開き入れる(諫言かんを。希望を。忠告を。わがままを。奥さんの願いを仕方なく内海)。▼受容する(活発な行動を。作品を。肉体を)。 **うけおう【請け負う】** ▼請け負う(家の補修を。建築を。工事を。仕事を。報酬次第で)。請け負いで仕事をする。 **うけつける【受け付ける】** ▼受け付ける(願書を。由し込みを。先着順に。早い者勝ちで)。受付に立つ。 **うけとめる【受け止める】** ▼受け止める(真剣に勧告を。鋭い視線を。槍ゃりの穂先を。警麺を謙虚に。失敗を深刻に。びしびし胸に。批判を冷静に。我が身一つに。言葉を背中で。判決を重く。甘んじて非難を。降りかかる不幸を。相手の言葉を素直に。気持ちを敏感に。体をがっしりと。事実は事実として。視線を真正面から。嘲笑を真正面から。敗戦という手痛い事実を=栗本)。 **うけみ【受け身】** 受け身に(構える。回る)。受け身の(姿勢をとる。姿勢から脱却する。発想で縮こまる)。柔道の受け身を練習する。激しい質問攻めに受け腰になる。受け腰の姿勢で交渉に臨む。受けに回れば意外にもろい性格。受動的な態度をとる。 **うける【受ける】** ▼受ける(何の光を。炎上の災いを。奇異な印象を。原爆の惨禍を。財産の分与を。事件の余波を。十分に訓練を。将軍の龍はを。新鮮な刺激を。心理的抑圧を。正当な罰を。先人の遺沢を。鮮烈な感動を。多大の援助を。断崖が浸食を。直接指導を。罪の報いを。転勤の内示を。人様の恨みを。深い感銘を。深い心の傷を。法の裁きを。帝以ゅの寵愛誘いうを。身に穢けがれを。無言の威圧を。喜んで話を。旅券の交付を。感化を十分に。観客に大いに。銃弾を頭に。太陽を背に。峰打ちを肩に。猛撃を頭上に。影響を強く。風を正面から。謂ぃわれもない迫害を。インタビューを。思いがけない質問を。思いもよらない災難を。壊滅的な被害を。きびしい叱責を。警察の取り調べを。事故発生の通報を。しつこい誘惑を。社会的な制裁を。重要参考人として事情聴取を。精神的にダメージを。世人の買いかぶりを。相当重い処罰を。粗末な取り扱いを。怠惰のそしりを。他国から侵入を。他人から嫉妬を。致命的な打撃を。朝敵という汚名を。強い風当たりを。手厚いもてなしを。とんだとばっちりを。人用ドックで検査を。非難の集中攻撃を。まこうかたなき教訓を。自ら進んで手術を。名状しがたいショックを。ストのあおりをもろに。雪のひとひらを手に。レッスンを密かに。はいはいと軽く。ぶん殴られたような衝撃を隆。役者が方言指導を=重松)。この世に生を享;ける=大沢。勅命をつつしんで承ける。扱いを受ける(不当な。破格の)。一身に受ける(視線を。世間の非難を)。待遇を受ける(丁重な。破格の)。▼評価を受ける(不当な。高い)。▼身に受ける(神の強さを。人間の弱さを。非難を。不幸を)。これほど手厳しい扱いを受けたことがない。一旦受けた侮辱は容易に消えがたい=森陽。月光を受けて木の葉が銀色に輝いている三浦し。▼受け口(電球の。郵便物の)。▼受け皿(権限委譲の。雇用の。政権の。余剰労働力の)。▼受け直す(検査を。試験を)。言うほどダメージを受けているようには見えない=有川。オーディションを片っ端から受けまくる。▼受給する(生活保護を。年金を)。▼拝する(下命を。君恩を)。食らう(首筋に手刀を。発禁処分を。腹にバンチを。突きをまともに)。一撃を食らう(痛烈な。ストレートの)。受けない(さして感銘を。恩恵を何一つ。敵の情けは。何人の支配も。人の施しは。ろくろく手当ても)。受け損ねる(恵みを。予防接種を。レッスンを)。 **おう【負う】** ▼負う(頭に裂傷を。重い十字架を。顔に火傷を。結果責任を。心に傷手を。相当の深手を。獄の業を。瀕死いんの重傷を。殺傷沙汰の責任を)。▼一身に負う(悪名を。責めを)。▼傷を負う(満身に。拭えない心の。取り返しのつかない)。借財を負って出奔する。平地が山を負って扇形に開いている。厄介な荷物を負わされる。一眼見損なえば痛手を負わねばならない瀬に立つ幸田露。 **おやすいごよう【お安い御用】** お安い御用とばかり要求に応じる。お安い御用と引き受ける。 **おん【恩】** 恩に(感謝する。こたえる。報いる。着せる)。 <149> # 受ける・引き受ける―47 **かんじゅ【甘受】** 甘受する(苦痛を。酷遇を。そしりを。悲哀を。不公平を。何と非難されようと。落晩く貴族の運命を=舟橋)。▼甘んじて受ける(運命を。谷とがめを。ひどい罵倒を。皮肉な嘲笑を。どのような闇でも)。 **きょうじゅ【享受】** ▼享受する(読書の自由を。特権を。莫大態にな利益を。平和を。優越感を。旺盛な消費生活を)。 **こうむる【被る】** ▼こうむる(地震の惨禍を。被害を。不利益を。不慮の災害を。迷惑を。虜囚の恥辱を。御免)。身にこうむるいわれのない中傷。当てられる(酷暑に。毒気に。熱気に)。▼食らう(一撃を。停学処分を。巻き添えを)。▼喫する(一驚を。苦杯を。惨败を。大敗を。敗戦を。致命的な敗北を)。 **しょうだく【承諾】** 承諾の返事を与えて使いの者を帰す船山。承諾する(結婚を。申し出を。離婚を。気軽に。いやいや。すぐさま。二つ返事で。ほいほいと。喜んで。何の疑いもなく。意外なほどあっさりと宮本輝)。承諾させる(強引に。否応なく)。うんと言う。応と答える。合点承知之助。首を縦に振る。乞いを容れる。事後承諾で構わない。承諾書にサインする。応諾する(条件を。申し出を)。渡りに船とオーケーする。こつくりと合点する。▼許諾する(交渉を。取引を。要求を)。従順に承服する。▼内諾する(就任を。転勤を。売却を)。▼受諾する(オファーを。会長就任を。講演を。提案を。任命を。申し込みを)。百も承知二百も合点。▼承知する(一も二もなく。望みを快く。申し出をしぶしぶ)。二つ返事でオーケーする。二つ返事で承知する。歓喜のあまりなんの目算もないまま二つ返事で引き受ける=阿刀田。 **ひきうける【引き受ける】** ▼引き受ける(嫌な役目を。快く整理を。面倒な役を。一身に替えて。軽い気持ちで。快く。三度に一度は。何を措ぉいても。胸を叩いて。喜んで。結果のすべてを。他人の苦しみを。気味悪がらずに。人の哀れを身に。依頼を二つ返事で。たっての頼みで。どんないやな仕事でも。何でもほいほいと。不利益を承知で。無考えに何でも。他人のやりたがらない仕事を進んで=眉村。待っていたと言わんばかりに喜んで=里見)。頼むほうも頼むほうだが引き受けるほうも引き受けるほう渡辺。最後にはあきらめて引き受けざるを得ない!若竹。少々の無理でも引き受けてしまう。引き受け顔に言う。懇望に負ける。預かる(事務所を。出納を)。しかと承る。諧ける(工事を。仕事を)。聞きとどける(祈りを。希望を。願いを。不平を)。▼受託する(運営を。業務を。仕事を)。商品を受託して販売する。受託契約を結ぶ。どんと胸を叩く。▼一役買う(計画に。実現に。犯行に。町の歴史に。政権を生み出すのに)。 **ひきとる【引き取る】** ▼引き取る(人の言を。夫婦がひきとる寝室へ。みなしこの少女を。逃げてきた者たちを手分けして藤沢)。手元に引き取って育てる。▼引き取られる(施設に。親戚に。母の実家に)。引き取りに行く。引き取りを買って出る。▼請け出す(質草を。指輪を)。▼下取りする(カメラを。車を。パソコンを)。 **みうけ【身請け】** ▼身請けする(芸者を。吉原の太夫を。岡場所の遊女を"北原)。身請け人に名を連ねる。遊女を請け出す。芸者を落籍ひかす。 **むくわれる【報われる】** ▼報われる(誠意が。努力が。長い沈潜が。今まで骨を折ってきたことが)。今までの苦労が報われて感無量。 **やすうけあい【安請け合い】** ▼安腊け合いする(あまり考えずに。お人好しぶって)。安請け合いして後悔する。 **よくする【浴する】** 浴する(恩赦に。恩典に。の光栄に。恵沢に。天恵に。同情に。拝顔の栄に。栄に。ぽかぽかとした太陽の光に)。 <150> # 動かない・止まる **いすわる【居座る】** ▼居座る(寒波が。胸に絶望が。天下り先に。政権の座に。土間に冬の名残が。我が物顔で店に。あの手この手を使って)。胸の底に重石が居座っている重松。 **うごかせない【動かせない】** むやみに動かせない。動かせない証拠を突きつける。いったんこうと決めたら梃てこでも動かせない石のように硬い芯がおとなしそうな表面に隠されている=連城。動かすことのできない結果。▼動かさない(顔色一つ。表情一つ。睫毛性っ一本。眉一つ。微塵ふじも)。動かしがたい(決意。事実。証拠)。▼動かしがたい(大勢は既に。優劣はもはや)。現実は動かしがたい悪夢辻に。 **うごかない【動かない】** ▼動かない(食指が。元の場所を。置物のように。毫こうも。自分の席から。石像のように。銅像のように。仏像のように。御興以にを据えて。あがっていて口が。思うように体が。思うように体が。覚悟がびくとも。体が思うように。空気がそよとも。その場を一歩も。算盤ににずくでしか。どっかり座り込んで。右半身が麻痺まぃして。元の位置を少しも。足が床に吸い付いてしまったように「篠田。左足を右へ左〈回そうとしたがギブスの中のように=伊集院。頭がのろのろとしか光原。貝のようにうずくまり終日同じ姿勢で=加賀。海面が油を流したように。塩野。影が切り絵のように黒々と"高樹。必ずうまくいくと確信すまでは決して自分から=束野。口元が凍てついたように=あさの。黒い影が巨大な巌いものように島略。熟睡でもしているように石森。死んだように横たわって=井上靖。水面に突き刺さった銀の針のように釣り糸がビクリとも=村上発。石像のように呼吸を止め!泉優。立ったまま石像のように束野。黙りこくったまま若竹。釣り糸を垂れている人の姿が置物のように三浦絵。泥田にはまりこんだときのように体だけが前にのめるばかりで足は少しも"山本有。納得しないと艇てこでも=落合。児にもみ据えるように見詰めたまま!有吉。目が貼りつけられたように光瀬。表情が凍りついたように=笹沢。古びた額縁のなかの絵のように老女も白猫も「落合。棒のように硬直して"原田康。虫が死んだように畳に横になったまま"阿佐田。床に根を生やしたように谷川。歪がんだ嘲笑が刻みつけられでもしたように=山本用。よどんだ水が羊かんを流したようにびったりと=林美)。死骸のように動かずにいる=森岡。両足が地べたに吸いついて動かなくなりそうに石森。▼動かなくなる(バスが故障して。ぜんまいの切れた人形のように=東野。何かの拍子にばったり「佐藤春。呪いをかけられたように井上ひ)。動かぬ証拠をつかむ。てこでも動かぬ強観にいうな庶民精神"小沼。動くきっかけを失う。石に坐すもっているように長いこと動く気配を見せない黒い影"高井。尻を落ち着ける。座視するだけで行動しない。体が小揺るぎもしない。ストーリーがうまく転がらない。酔っぱらった人のように目がすわっている灰谷。据わる(赤ん坊の首が。瞳が。視点が宙に。狐憑2つきみたいに眼が"石川)。根が生えたように(動こうともしない!有吉。冷たい板の間へ坐りこむ芝木。つっ立っている「宇野利。床の上に腰を据える=福永)。だらりと床に伸びている。他愛なく伸びてしまう。一フリーズする(パソコンが。ハードディスクが)。 **うごけない【動けない】** 動けない(うかつに。動こうにも。具合が悪くて。腹が減って。協力したいのは山々だがまだ。足に根が生えたように=宫部。車が渋滞してかたつむりより早くは=宇野利。磁石で吸い付けられたように両足が固く重くなって=有島)。もう一歩も動けないほど疲れている=大原。動けないほど満腹する。すくんで動けない(足が。身が)。吹き溜まりにはまって動けなくなる"夏樹。体が言うことをきかない。蛇ににらまれた蛙砂ぇのように中上。指一本動かせない。恐怖に居すくむ。▼動きが取れない(思うように。逃げようにも)。体が石膏細工のにうのように固まってしまいそう。安岡。さしもの柴崎も肝を冷やしたようで息を飲んで固まる=有川。進退の自由が利かない。▼乗り上げる(車を歩道に。ボートが島の砂浜に)。 **えき【駅】** 駅(特急も止まらない小さな。ホームが一つだけの小さくて静かな"西村)。駅から(五分の道のりを歩く。だいぶ離れている。まっすぐにホテルへ乗りつける)。人々が駅から吐き出される。都会風の母子を駅から温泉まで運ぶ"曽野。駅でバスに乗り換える。次の駅で降りる。駅と逆の方角に歩く。駅に電車が停まる。軽快な足取りで駅に向かう。列車が駅に到着する。駅の(改札を抜ける。構内に入る。ベンチで休む。ホームで落ち合う。周辺をぐるぐる歩き回る=井上ひ。人ごみの中に隠れる=丹羽)。電車が駅のホームに滑り込む。ラッシュ時の駅のホームのように学生がひしめくキャンパス三田。病院から駅へ向かうバス"重松。早足で駅へと急ぐ。駅まで迎えに行く。車で駅まで送る。ダッシュで駅まで走る。黙りこくって駅まで歩く。駅をいくつかやり過ごす。電車が駅を通過する。貨物専用駅のだだっびろい構内"高橋知。バスがターミナルに入ってくる。車内アナウンスが次の到着駅を告げる=伊坂。バスがターミナルを出発する。停留所で乗り降りする。「停留所で乗り降りする。駅舎に隣接したバスターミナル。バス停まで送る。 **えきまえ【駅前】** 駅前が(こった返す。閑散としている)。駅前から続くアーケード街。店が駅前に並ぶ。駅前のロータリーに出る。人々が忙しげに行き交う駅前の広場野間。広々とした駅前広場。駅前広場が人でごった返している。列車が着くたびに猫の額ほどの駅前広場が人波で埋まる=西木。駅頭でビラを配る。 <151> # 動かない・止まる-48 **かせき【化石】** 心の底におし潜ませた不満が化石になる=本庄。顔が化石したごとく蒼ぉぉく硬ばる=長与。化石したように動かない"加賀。さながら伝説の魔女を垣間見たために生きながら石と化したよう栗本。一同はぎょっとして化石になったように小林信。化石のように(立ちつくす。みじろぎひとつしない灰谷)。こめかみが石化したように感じられるほど緊張する三浦し。啞然応ぜと大口を開けて石化する谷川。 **かなしばり【金縛り】** 不動の金縛り。金縛りから解けたように動き出す=貫井。金縛りに遭ったように身動きができない=小松左。掟はきに金縛りにされる。体が金縛りに遭ったような具合に硬直する倉橋。体全体が金縛りにあったように硬直する=小林久。緊張感で身体中が金縛りにあったように痺しぃれる=高橋元。金縛りにでもあったように身動きができない南条。金縛りの状態に陥る。 **くぎづけ【釘付け】** その場に釘付けにされたように突っ立っている=和久。釘づけにされたようにぼんやりする=武者小路。画面に視線を釘づけにされる。一付けにする(固く。人々の目をテレビに=胡桃沢)。働者を資本に釘づけにする=森宏。鎌の形をした下弦の月が中空に舞台のバックのように釘付けになっている徳永。▼釘付けになる(足が。座席に。月が中空に。デスクに。目が本に。ディスプレイの前に。目が窓の外の光景に。机の上のお菓子の山に視線が=海堂)。視線が一点に釘づけになる=高橋和。釘づけされたように動きを止めて出来事を眺めている=椎名誠。 **こてい【固定】** ▼固定する(映像が頭の中に。ベルトで座席に。生活が単調なまま。留め金できちんと)。固定観念を(生む。覆す)。固定客がつく。作り付けの(洗面所。本棚)。留める(肖像を壁に。紙片を画鋲で。蝶を虫ピンで)。 **さげどまる【下げ止まる】** ▼下げ止まる(価格が。株価が)。▼底を打つ(不景気が。景気が。不況が)。 **じじょうじばく【自縄自縛】** 自縄自縛に陥る。自縄自縛の罠ゃなに陥る=高橋克。自縄自縛もはなはだしい。自分で自分をがんじがらめにする。我が手で首に組をかけるようなもの。 **じっと** じっと(話に聞き入る。嵐が去るのを待つ。息をつめて見守る。鳴りをしずめる。歯をくいしばって我慢する。用心深く身構える)。じっとしている(息を殺して。動きもしないで。手をこまねいて。壁際に貼り付けられたように=田辺。縛られたようにしばらく=伊藤整。ニカワでくっつけたみたいに=田辺。人影が人形のように大岡)。置物のようにじっとして跡る=菊池。息を殺して(光景を眺める。家に閉じこもる。痛みの去るのを待つ=黒井)。そうっと息を殺して振り返る=さだ。ひねもす部屋の隅でじっと息をころしている=山本周。静かに息を詰める。息を(つめるような歓び"原田康。つめるようにして見つめる三浦俊)。うっと息をつめる思い。詰めていた息をふうと吐き出す向田。息を詰めて(身動きしない。身を凍らせる)。息を潜める(失意の中で。じっと。ひっそりと)。山肌にへばりつくようにして息を潜める集落"熊谷。息をひそめたように静か"山田太。息をひそめるようにして反応をうかがう。司馬。聴衆が息を潜めて開き入る。固唾粉たをのんで(動きを見守る。児にらみ合う)。固唾を飲んで成り行きを見守る三浦し。固唾を呑んで次の言葉を待つ=獅子。凝然と(壁に目を据える。窓外の闇を見る)。その場に凝然と立ち尽くす。石段の頂上に縛いまめられたように凝然と立っている"三島。氷の彫像と化したかのごとく凝然と突っ立っている=山田凤。凝然として口を(閉している。脚さなでいる)。▼鳴りをひそめる(ブームが。しばらく。すっかり。ぴたっと。息を詰めたようにじっと井上靖)。 **すくむ【竦む】** ▼竦む(凍った花みたいに身が!吉川。雷に打たれたように=内田百。釘を踏んだようにぎょっと"吉川)。怯ぉぃえて身がすくむ。足がすくむほど怖い=内田康。体が竦むほど厭ぃゃな気持ち=徳田。体が冷水を浴びたようになってすくんでくる=国木田。蛇に見込まれた蛙砂ぇ=氷室。身のうちが竦むような恥ずかしさ=岡本。▼すくみ上がる(足が。体が。肝が。恐怖に)。哀れな小動物のようにすくみあがる=三浦し。 **ストップ** ストッブがかかる。▼ストップをかける(行動に。話に)。▼ストップする(工事が。審議が。生產が。連勝記録が。作業を。出荷を。輸入を。機能が完全に)。 **せいし【制止】** 制止を聞かず外に出る=多岐川。▶制止する(性急な行動を。生徒を。仲間を。手を上げて。手を振って。ものやわらかに。必死に声をからして。むっとした声で)。 **せいし【静止】** ▼静止する(重力に抗して。ベルトコンベヤーが。アクリル樹脂の中で固められた蠅はぇのようによくぼんやりその場に。唖然としたまま。息をのんで呆然と。ぎょっと驚いて。しまったと思って。呆気怯。一辺ぶんに避雷針が。気抜けしたように。緊張した面持ちで。寒そうに唇をすぼめて。直立不動の姿勢で。ぼかんと口を開けたまま。凍てついたように徳永。に溶け込むようにさりげなく=ねじめ。夜空を背景にして黒い影となって=なかにし)。 **たちすくむ【立ち竦む】** ▼立ち竦む(駭殆どいたように。二の句が継げずに谷崎)。▼立ちすくむ(息をつめて。石のように。言葉を失って。天を仰いで。しばらくあたりは全てが"村上春。UFOが中空に=かんべ。スローモーションの映画が止まったときのように萩原來)。僕たちは蝋人形約らんのように静止した"宫部。映画のストッブモーションのように動きを止めたまま=鎌田。電源スイッチを切られたように舞台の上の男女が動きを止める"西木。静的な(美しさ。西瓜。とらえ方)。 **たちどまる【立ち止まる】** ▼立ち止まる(息をのんで。ドアの前で。二三歩歩いて。落ち葉のただ中に。通路の真ん中で。びょんと両足を揃えて、めまいを覚えて。足が姿『えたようにその場に=福永。異常な気配に驚いたように“黒岩。思いつめたように=壺井。きくりとしたように谷川。警備員に万引きを見咎娠とめられた犯人のようにつんのめるようにして=小林久。心臓をしめつけられたように堀。少し歩きくたびれたように“伊藤整。戸口のところでためらうように"古井。電気にかけられたように"椎名戯。はっと息を呑むように柴田翔。ハッとしたように"小林多)。一瞬身を引くように立ち停まる=黒井。釘付けになったように立ち止まって見つめる=宫沢。しばらく立ち止まって考え込む。何度となく立ち止まって振り返る。かなり長いこと立ち止まっている=山本段。足の運びを止める三好徹。はっと立ち止まるような美人"小沢。校門の前で足が止まる。▼足を止める(不意に。驚いたように。思わず。ぎくっとして。拝殿の前で。はたと。ぴたりと。ぎょっとなって)。足を止めて(振り返る。振り向く)。▼歩みを止める(おごそかに。ぎくりとして。びたりと。足に根が生えたように=泉優)。 **たちつくす【立ち尽くす】** ▼立ち尽くす(根が生えたようにその場に若竹。茫乎うとして闇に辻真。過去も未来も持たない人のようにつくねんと突っ立ったまま小半時有鳥。棒を呑んだように「有栖川)。立ちつくす(所在なげに。途方に暮れて。光を浴びて。棒のように。ぽつねんと。無念無想で。現実と非現実のあわいに。反論することすらできずに。うつけた様子で。体をかたくして。グラウンドの真ん中で。しばらくそこへ。その場にじっと。そぼ降る小雨の中に"高見浩。突然身内を吹きすぎる欲情に"山田太。入り口を塞ふさぐような形で=原田宗。口をあんぐりと開いて"景山。しばし茫然細心となって池波。しばらく思い詰めたように=内海。喪心したように=壺井。根が生えたように=勝目。放心したように三田。茫然と見とれて=柴田鍵)。▼その場に立ちつくす(唖然として。ものもいえず。魂を引き抜かれた者のごとく=村松)。▼動かない(立ったまま。突っ立ったまま)。呆然として突っ立ったまま、朝からずっと立ちずくめで仕事をする。立っている(顔面蒼白に行で。屋根の天にとられたようにぼんやり芥川。おののくように小池。おびえたように"石坂。壁ぎわに押しつけられたように"阿部。雷にあった原始人みたいに大庭。からだじゅう凍ったように宮沢。恐怖に駆られた表情で=五木。釘づけにされたように"江戸川。凍りついたように宮部。喉へ綿でもつめられたように小林多。蛇に見すくめられた蛙砂流のように柴田湖。丸太ん棒のように=小林多。畠が無残な光景を呈しているのを眼にして上昇。屋根の端まで来て急に目が覚めた夢遊病者のように=日野。幽霊でも見たように佐山。裸体を見られた女のように固くなって=有島)。棒のように佇ち竦かけむ=獅子。はっと立ちすくむほど驚く有局。 **ていし【停止】** ▼停止する(機能が。思考が。最恵国待遇を。車が静かに。びたりと。エレベーターががくんと)。停止させる(時効の進行を。車をゆっくりと)。信号が赤に変わる。活動停止のやむなきに至る。エレベーターが急停止する。操業停止を余儀なくされる。 **ていしゃ【停車】** 救急車が目の前で停車する=佐々木。▼急停車する(車が。電車が。バスが)。アナウンスが次の停車駅を伝える=伊坂。 **とまる【止まる】** 止まる(体の震えが。ふと手が。足音が耳に。蠅はぇが天井に。音がふいと。車がすっと。話がぴたっと。変にお高く。急にエンジンが。ぱったりと動きが。ぴたっと周囲のざわめきが。胸のむかつきが。バスが停留所に。エレベーターが目的階で。風がいつの間にか。客足がばたりと。泣く声がはたと。息の根が止まったように声が=深沢。足が凍りついたように火坂。電池切れを起こしたみたいに谷川)。車が問合いを計ったように円の前に停まる=高井。▼流れが止まる(金と物の。水の)。▼びたりと止まる(歩みが。動いていた手が。薄紙一枚の差で。岡合い一寸まで詰めて=藤沢)。▼目が止まる(活字に。看板に。小さな花に)。▼目に止まる(看板が。標識が。スカウトの)。▼停車する(電車が。特急が。各駅に。車が十字路で)。 **とめる【止める】** ▼止める(公金の支出を。商品の流通を。途中で箸を。無謀な企てを。村の過疎化を。扇風機のファンを。びたりと動きを。メモを取る手を。勢いがついていた軀炒。をかろうじて『北原)。▼停める(船を。乗用車を道端に。車を歩道に寄せて)。▼動かす手を止める(針を。フォークを)。▼手を止める(掃除の。パソコンを打つ)。▼目を止める(花に。小さな書き込みに)。▼止められる(親に仕送りを。酒を医者から)。止めにかかる。「あわてて止めに入る。鋭い視線を受け止める。食い止める(衝動を未然に。表沙汰になるのを)。▼差し止める(記事を。出版を)。ダムで川をせき止める。▼つなぎとめる(各部分を。手足を)。腕をつかんで引き止める。通行人を呼び止める。ゴロをカットする。停車を命じる。不審船を停船させる。停船に応じる。停船を命じる。ボールをブロックする。待ったをかける(行動に。政策に。立ち合いで)。バックルのついたベルト。バックルを(締める。ゆるめる)。ベルトのバックルをしごく。留め金で止める。 <152> # う **たちすくむ【立ち竦む】** ▼立ち竦む(はっとして。呆然と。ぎょっと驚いて。しまったと思って。呆気にとられたようにぼんやり芥川。おののくように小池。おびえたように"石坂。壁ぎわに押しつけられたように"阿部。雷にあった原始人みたいに大庭。からだじゅう凍ったように宮沢。恐怖に駆られた表情で=五木。釘づけにされたように"江戸川。凍りついたように宮部。喉へ綿でもつめられたように小林多。蛇に見すくめられた蛙砂流のように柴田湖。丸太ん棒のように=小林多。畠が無残な光景を呈しているのを眼にして上昇。屋根の端まで来て急に目が覚めた夢遊病者のように=日野。幽霊でも見たように佐山。裸体を見られた女のように固くなって=有島)。棒のように佇ち竦かけむ=獅子。はっと立ちすくむほど驚く有局。 **たちどまる【立ち止まる】** ▼立ち止まる(息をのんで。ドアの前で。二三歩歩いて。落ち葉のただ中に。通路の真ん中で。びょんと両足を揃えて、めまいを覚えて。足が姿『えたようにその場に=福永。異常な気配に驚いたように“黒岩。思いつめたように=壺井。きくりとしたように谷川。警備員に万引きを見咎娠とめられた犯人のようにつんのめるようにして=小林久。心臓をしめつけられたように堀。少し歩きくたびれたように“伊藤整。戸口のところでためらうように"古井。電気にかけられたように"椎名戯。はっと息を呑むように柴田翔。ハッとしたように"小林多)。一瞬身を引くように立ち停まる=黒井。釘付けになったように立ち止まって見つめる=宫沢。しばらく立ち止まって考え込む。何度となく立ち止まって振り返る。かなり長いこと立ち止まっている=山本段。足の運びを止める三好徹。はっと立ち止まるような美人"小沢。校門の前で足が止まる。▼足を止める(不意に。驚いたように。思わず。ぎくっとして。拝殿の前で。はたと。ぴたりと。ぎょっとなって)。足を止めて(振り返る。振り向く)。▼歩みを止める(おごそかに。ぎくりとして。びたりと。足に根が生えたように=泉優)。 **たちつくす【立ち尽くす】** ▼立ち尽くす(根が生えたようにその場に若竹。茫乎うとして闇に辻真。過去も未来も持たない人のようにつくねんと突っ立ったまま小半時有鳥。棒を呑んだように「有栖川)。立ちつくす(所在なげに。途方に暮れて。光を浴びて。棒のように。ぽつねんと。無念無想で。現実と非現実のあわいに。反論することすらできずに。うつけた様子で。体をかたくして。グラウンドの真ん中で。しばらくそこへ。その場にじっと。そぼ降る小雨の中に"高見浩。突然身内を吹きすぎる欲情に"山田太。入り口を塞ふさぐような形で=原田宗。口をあんぐりと開いて"景山。しばし茫然細心となって池波。しばらく思い詰めたように=内海。喪心したように=壺井。根が生えたように=勝目。放心したように三田。茫然と見とれて=柴田鍵)。▼その場に立ちつくす(唖然として。ものもいえず。魂を引き抜かれた者のごとく=村松)。▼動かない(立ったまま。突っ立ったまま)。呆然として突っ立ったまま、朝からずっと立ちずくめで仕事をする。立っている(顔面蒼白に行で。屋根の天辺ぶんに避雷針が。気抜けしたように。緊張した面持ちで。寒そうに唇をすぼめて。直立不動の姿勢で。ぼかんと口を開けたまま。凍てついたように徳永。闇に溶け込むようにさりげなく=ねじめ。夜空を背景にして黒い影となって=なかにし)。 **ていし【停止】** ▼停止する(機能が。思考が。最恵国待遇を。車が静かに。びたりと。エレベーターががくんと)。停止させる(時効の進行を。車をゆっくりと)。信号が赤に変わる。活動停止のやむなきに至る。エレベーターが急停止する。操業停止を余儀なくされる。 **ていしゃ【停車】** 救急車が目の前で停車する=佐々木。▼急停車する(車が。電車が。バスが)。アナウンスが次の停車駅を伝える=伊坂。 **とまる【止まる】** 止まる(体の震えが。ふと手が。足音が耳に。蠅はぇが天井に。音がふいと。車がすっと。話がぴたっと。変にお高く。急にエンジンが。ぱったりと動きが。ぴたっと周囲のざわめきが。胸のむかつきが。バスが停留所に。エレベーターが目的階で。風がいつの間にか。客足がばたりと。泣く声がはたと。息の根が止まったように声が=深沢。足が凍りついたように火坂。電池切れを起こしたみたいに谷川)。車が問合いを計ったように円の前に停まる=高井。▼流れが止まる(金と物の。水の)。▼びたりと止まる(歩みが。動いていた手が。薄紙一枚の差で。岡合い一寸まで詰めて=藤沢)。▼目が止まる(活字に。看板に。小さな花に)。▼目に止まる(看板が。標識が。スカウトの)。▼停車する(電車が。特急が。各駅に。車が十字路で)。 **とめる【止める】** ▼止める(公金の支出を。商品の流通を。途中で箸を。無謀な企てを。村の過疎化を。扇風機のファンを。びたりと動きを。メモを取る手を。勢いがついていた軀炒。をかろうじて『北原)。▼停める(船を。乗用車を道端に。車を歩道に寄せて)。▼動かす手を止める(針を。フォークを)。▼手を止める(掃除の。バソコンを打つ)。▼目を止める(花に。小さな書き込みに)。▼止められる(親に仕送りを。酒を医者から)。止めにかかる。「あわてて止めに入る。鋭い視線を受け止める。食い止める(衝動を未然に。表沙汰になるのを)。▼差し止める(記事を。出版を)。ダムで川をせき止める。▼つなぎとめる(各部分を。手足を)。腕をつかんで引き止める。通行人を呼び止める。ゴロをカットする。停車を命じる。不審船を停船させる。停船に応じる。停船を命じる。ボールをブロックする。待ったをかける(行動に。政策に。立ち合いで)。 **バックル** バックルのついたベルト。バックルを(締める。ゆるめる)。ベルトのバックルをしごく。留め金が締まる。 <153> # 動かない・止まる-48 **はどめ【歯止め】** 感情の高まりに歯止めがきかない。低落傾向に歯止めがかかる。客離れに歯止めがかからない池井戸。車輪に歯止めをかませる。▼歯止めをかける(悪循環に。下落に。混乱に。シェア低下に。事故の風化に。需要の減少に。暴走に。非正規雇用の拡大に)。 **ばんじゃく【磐石】** 磐石な関係。磐石に押しひしがれる。磐石の(重みで居座る。重みを加える)。盤石の如く安泰-菊池。大磐石のような(構え。企業。備え)。押しても引いてもびくとも動かず大磐石のように突っ立っている=福水。 **ぴたりと** ぴたりと(嵐がおさまる。息が合う。顔を見せなくなる。正座して低頭する=本庄)。一刀をぴたりと青眼につける。男漁りをびたりとやめる。呼吸がびたりと合う。戸口をびたりと閉ざす。番号がびたりと一致する。判断がぴたりと当たる。襖髟すがびたりと閉まる。「前の車にぴたりとついて走る。窓をびたりと閉め切る。要所要所がぴたりと決まる。横にびたりと寄り添う。両足をぴたりと揃える。感情の扉がぴたりと閉まっている=宮本百。ビタリと心のツボに触れる=永倉。雨戸をびたりと閉める。目をぴたりと(正面に据える。相手の面上に注ぐ)。ぴたっと(足を止める。ざわめきが止まる)。体にぴたっとくっつく。 **びどうもしない【微動もしない】** ▼微動もしない(心が。表情が)。微動だにさせない(足を。肩を。表情を)、微動だにしない(巨大な施設が。腰が。扉が。体を硬直させ。うずくまったまま)。微動だにせず前方を見つめる=貫井。微動だにせずに立ちはだかる。微動もせずに呪にらみつける。 **ふどう【不動】** 不動の(地位を築く。覚悟をかためる)。地位が不動のものになる。不壊ふぇ不動の境地に至る。新しい体制が不動のものになる=赤瀬川。電柱のように不動の姿勢をとる徳永。 **ブレーキ** 耳を裂くブレーキの音が響く“乃南。アクセルとブレーキを踏み間違える。急ブレーキで(車を停める。車がスビンする)。急ブレーキとシフトダウンでスピードを殺す=大敵。急ブレーキをかける。踏む)。うまくブレーキが利かない。思考にブレーキがかかる。おしゃべりにブレーキがかからない=辻真。ブレーキとアクセルを踏みまちがえる。ブレーキを(いつばいに踏みこむ。かけられたようにびたりと止まる=山本有)。自転車のブレーキを握る。早めにブレーキを踏む。ブレーキをかける(動きに。暴走に。突っ走る思考に=横山。年齢が気持ちに"連城。何にでも真剣になってしまう自分に注意深く落合)。サイドブレーキを引く。 **みうごきしない【身動きしない】** ▼身動きもしない(じっと。呼吸をやめたかのようにひそと光瀬)。身動きもしないでまじまじと見守る。身動きもせずに(開く。見る。小半時立ちつくす)。石に化したかのように身動きもせずに立ちつくす=光瀬。▼身動きできない(足がすくんで。怖さに捉えられて。視線にからめ取られて。魔法をかけられたように=山田詠)。身動きできないくらい人が集まる。身動き出来ぬくらい満腹する=今日。凍りついたように身動き一つしない福永。身動き一つせずに見つめる。しばらく身動きができない。身動きが取れない(拘束具で。どうにも。押し合いへし合いで)。たちまち身動きが取れなくなる。身動きならない(大渋滞。羽目に陥る)。▼身動きならない(前へも後へも。心が独房に密封されて=開高)。身動き一つできないすさまじい混雑。・小太刀の先を当てられたように緊張し身動きもできない有吉。身動きもできないほどの重病人。身動きもならず立ちすくむ。大勢の乗客で身動きもならないほど。野次馬がどっと押しよせてきて身動きもならぬほどの黒山になる=壺井。 **みじろぎしない【身じろぎしない】** 長いこと身じろき一つしない。▼身じろぎもしない(群集が沈黙し涨かっのように武田癸。然然として石の地蔵のように=幸田露)。身じろぎもしないで(聴いている。見ている)。身じろぎもせず(座っている。立ちつづける。見つめる。耳をそばだてている)。 **やまない【止まない】** ▼一向にやまない(嗚咽ぇが。風が)。▼やまない(睡魔の襲撃が。涙が流れて。しばらく耳鳴りが。話がいつになっても)。小止みないさえずり。葉の一枚一枚が小止みなく翻る。雪が小止みなく降る。小止みなく降り続く(雨が。雪が)。▼やみがたい(望郷の思いが。恋慕の情が)。やみがたい欲望が続く。未知の世界へやみがたい歩みを続ける=円地。やむ時がない。片時もやむことがない。 **やむ【止む】** ▼やむ(地虫の声が。不意に音が。ふっと音が。話がにわかに。風がふっと。足音がぱったり。話し声がはたと。震えがいつの間にか)。干戈姉んの止む時がない=中島敦▼いつの間にかやむ(雨が。雪が)。▼はたとやむ(音が。風が)。▼ばたりとやむ(風が。鳴り続けていた電話が)。▼ぴたりとやむ(雨が。会話が。風が。喧騒謝礼が。ざわめきが。手の震えが。泣き声が。物音が。笑いが)。▼吹きやむ(嵐が。風が)。▼降りやむ(雨が。雪が)。▼小止みになる(雨が。雪が)。▼小止みを待つ(雨の。雪の)。 **ゆるがない【揺るがない】** ▼揺るがない(決意が少しも。いかなる攻撃にも)。確固とした揺るがない足。少々の動乱や恐慌に遭っても揺るがない地位有吉。揺るぎがない(覚悟に。信念に)。揺るぎない(決心。信念。世界観。地位を占める)。位置を揺るぎないものにする。三百年間揺るぎなく続く。学問の世界が揺るぎなく築き上げられる=柴田湖。揺るぎのない(強固な反抗。口調。眼差し)。価値観に揺るぎはない。 <154> # 動く・動かす **あやつりにんぎょう【操り人形】** どうかすると操り人形に似たぎくしゃくした歩行を繰り返す辻井。操り人形のようなぎくしゃくした仕草!篠田。糸が切れたあやつり人形のように膝の力がぬける西木。あやつり人形のように首を動かす“野間。操り人形のように手も足もいっぱいにひろげて動かす=石坂。糸に引かれた操り人形のようにすっっと立ち上がる谷川。糸の切れた操り人形のようにくたくたとなる=向田。周囲の人達の動くのに連れられて操り人形のようにボンヤリ動く菊池。あやつり人形みたいに(踊らされる。とびあがって敬礼する=大庭)。 **あやつる【操る】** ▼操る(後ろで糸を。自在に小舟を。巧みに竿もぉを。ハンドルを。船を。意のままに。男を自由に。思いのままに。舵かじを巧みに。裏で。陰で。活殺自在に人を。自由自在に巨大な機械を。流暢りいいにフランス語を。飛行機を上手に。鵜匠いしが鵜を川へ放って。なれた手つきで)。巧みに操る(機械を。史実と虚構を)。操られる(運命に。資本の論理に。見えない糸に)。陰で糸を引く。夢魔の手にあやつられたようにひたすら前へ前へと進んでゆく北。目に見えぬ糸で操られているような人生三浦湾。おどらされる(誤報に。マスコミに)。馬を御する。指図のままに傀儡くくのごとく動く=菊池。傀儡のように命じられるままに坐すゃる=福永。操られて傀儡のように動く菊池。傀儡政権をつくる。 **うごかされる【動かされる】** ▼動かされる(我欲に。私情に。涙に。熱意に。熱心な言葉に。優しさに)。心を動かされる(花鳥風月に。誘いに。不憫でな願いに)。▼つき動かされる(怒りに。痛みに。嫌な予感に。期待に。友情に。欲望に)。 **うごかす【動かす】** ▼動かす(忙しくベンを。風が山を。思想が世界を。将棋の駒を。時計の針を。鳥が껏を。熱情が人を。ぴくりと眉を。人の心を。魔法の杖を。もぞもぞ体を。ゆるく団扇らちを。歴史の歯車を。顎を縦に。舌を滑らかに。眉を上下に。体を浮き浮き。箸を忙しく、目をぐりぐり。飽きもせずに筆を。意のままに国を。気ぜわしく箸を。きょろきょろと視線ぎょろりと黒目を。くるくると瞳を。こくこくとを。ぎょろりと黒目を。首を。せわしく編み棒を。ちょいと食指を。鳥がばさっと羽を。ばたばた毛布を。ひくひくと鼻を。相手を自分の思うとおりに。小さい手を一生懸命に。ビジネスを円滑に。頭をゆさゆさと。体をくねくねと。気持ちを多少なりとも。手のひらをひらひらと。險ぶをびくびくと。右手をゆらゆらと。目を落ち着きなく。目をぎょろきょろ。毛布をばたばたと。犬でも追い払うように手を高礎。着物の中に手を入れてもそもそと安岡。唇が光をぬめぬめ=川端。成長願望のように体をくねくね"干刈。門弟を手足の如く=小松左)。動かす手を止める(針を。フォークを)。▼足を動かす(のろのろと。ちょこちょこと)。▼肩を動かす(ひくっと。びくっと)。口を動かす(もこもこ。バクバクと酸素の足りぬ金魚のように=北)。▼腰を動かす(ひくひく。もぞもぞ)。左右に動かす(目をせわしなく。迷うように黒目を"東野)。▼尻を動かす(もじもじと。もぞもぞと)。新しい時代を動かしていく。▼身の動かし方(がむしゃらな。へらへらした)。▼押し動かす(車を。歴史を)。▼つき動かす(体を。気持ちを。読者を)。▶振り動かす(頭を。腕を)。駆動する(車輪を。モーターを)。コンピューターのシステムを作動させる。びくつかせる(犬が耳を。肩を。鼻を)。御する(夫を。客を。心を。妻を。天下を。民衆を)。 **うごき【動き】** ▼動き(指の繊細な。複雑な心の。無駄がない。物音を殺した。抑制の利いた。リズムのある。せわしないワイバーの。ひときわ目立った。一瞬でも離れていると生きていられないかのようなひたすらな黒井。タイトスカートの肉感的な"高橋和。ナイフのように切れ味のいい"五木。亡霊のように重さを感じさせない!高橋源)。動きが(活発になる。滑らかになる。ふいに止まる。いよいよ急になる。急にあわただしくなる。次第に緩慢になる。速すぎて目で追いきれない。ほぼ一定している。見る見る遅くなる)。心の動きが手に取るように分かる。反対の動きが高まる。びたりと動きが止まる。不自然なお金の動きがある。ペンの動きが鈍い。世間の動きから超然としている。世の中の雑然とした動きから身を遠ざける=藤田。スローモーションのような動きで振り返る!鷺沢。動きに(変化が起こる。ゆとりがある。ブレーキをかける)。前方の怪しい動きに目を凝らす。天下の動きに疎くなる。世の動きに呼応する。話が決まれば動きは早い。わずかな動きも見落とすまいとする。動きを(目で追う。視界の隅にとらえる)。息を殺して動きを見守る。各国の動きを調べる。期待通りの動きをする。細かな動きを一つひとつ知りたがる。市場の裏の動きを教える。組織的な動きを封じる。電光石火の動きを見せる。派手な動きを控える。犯人の動きを追う。動きを止める(一瞬。はたと)。心の動きを(物語る手紙。読み取る)。全体の動きを(掌握する。見失う)。動きがない(無駄な。目立った)。アクションが(大きい。小さい)。 **うごきだす【動き出す】** ▼動き出す(船がすうと流れるように=内田百。船が滑るように=菊池)。▼動きだす(浮気の虫が。体が勝手に。・ゆるゆると車が。近しい力が体の内に。不意にがたことと。落成式典に向けて。うたたねから揺り起こされたように急にもぞもぞと"本庄。つっかえ棒をとられたように=木庄。ががさこそ。すさまじい勢いで。喉仏がごくりと。・の波が大きく。炎がゆらゆらと。水がたぷたぷと。目がくるくるとよく。目尻がびりびりと。目玉がきょろきょろ。リズムに合わせて。ワイパーがせわしく。隊士間に暗い雲が=子母沢。影のように静かに=佐藤春。頭の中がハツカネズミの回転車のようにせわしなく高樹。女の姿が薄い影のようにぼんやり内田百。体がしなやかに晴れ晴れと"日野。止まりそうなほど遅いテンボで=辻仁)。色が動く(顔に当惑の。目に軽侮の)。▼影が動く(壁の上を薄い。視界の隅で何かの)。▶勝手に動く(足が。口が。体が)。▼ちらちらと動く(人影が。光が川面に)。▼ゆっくりと動く(焦じらすかのように=伊坂。せきとめられた人の流れが港内の泡のように=武田泰)。麦藁帽子ぶしらが桑畑に見え隠れして動いて行く=田山。ダイヤはめちゃめちゃながら動くことは動いている=椎名成。心動く(痛ましさに。美しさに)。視線がぐらぐらと揺れ動く。地球が太陽の周囲を運行する。小舟が気味の悪い蠕動だを繰り返す=福永。▼嬢動して進む(虫が。風が田の面のをゆるやかに=佐藤春)。腸が蟠動運動をする。ゆっくりと蛎動運動を繰り返す。静中動あり。動的な(表現。描写)。人気の浮動に左右される。身動きが自由になる。やっと身動きができる。身じろぎをする(不器用な。物問いたげに)。流動化する(雇用が。情勢が。政情が)。流動的な(考え。社会)。機械が作動を始める。▼作動する(エンジンが。システムが。幾つもの装置が一斉に。警報装置が正常に"大藪)。 <155> # 動く・動かす-49 **うごく【動く】** 動く(赤い灯影児かが。関心の対象が。胸に緊張感が。狼狽的いの気配が。意のままに。感情が複雑に。口が滑らかに。唇がかすかに。指図通りに。衝動のままに。政局が一挙に。前後左右に。装置が正常に。手先が細かに。鼻が得意げに。指が器用に。気持ちが強く。猛烈な早さで。家の裏で人影が。顔に抑えきれぬ得意さが。渋りがちだった心が。ちろちろと舌が。待ちきれなくなったように敵が。胸にかすかな不快感が。むらむらと意志が。株価が強含みに。視線が落ち着きなく左右に。私利私欲のために。欲望があらわに。世の中がスムーズに。口がぱくぱくと。子猫ががさこそ。すさまじい勢いで。喉仏がごくりと。・の波が大きく。炎がゆらゆらと。水がたぷたぷと。目がくるくるとよく。目尻がびりびりと。目玉がきょろきょろ。リズムに合わせて。ワイパーがせわしく。隊士間に暗い雲が=子母沢。影のように静かに=佐藤春。頭の中がハツカネズミの回転車のようにせわしなく高樹。女の姿が薄い影のようにぼんやり内田百。体がしなやかに晴れ晴れと"日野。止まりそうなほど遅いテンボで=辻仁)。色が動く(顔に当惑の。目に軽侮の)。▼影が動く(壁の上を薄い。視界の隅で何かの)。▶勝手に動く(足が。口が。体が)。▼ちらちらと動く(人影が。光が川面に)。▼ゆっくりと動く(焦じらすかのように=伊坂。せきとめられた人の流れが港内の泡のように=武田泰)。麦藁帽子ぶしらが桑畑に見え隠れして動いて行く=田山。ダイヤはめちゃめちゃながら動くことは動いている=椎名成。心動く(痛ましさに。美しさに)。視線がぐらぐらと揺れ動く。地球が太陽の周囲を運行する。小舟が気味の悪い蠕動だを繰り返す=福永。▼嬢動して進む(虫が。風が田の面のをゆるやかに=佐藤春)。腸が蟠動運動をする。ゆっくりと蛎動運動を繰り返す。静中動あり。動的な(表現。描写)。人気の浮動に左右される。身動きが自由になる。やっと身動きができる。身じろぎをする(不器用な。物問いたげに)。流動化する(雇用が。情勢が。政情が)。流動的な(考え。社会)。機械が作動を始める。▼作動する(エンジンが。システムが。幾つもの装置が一斉に。警報装置が正常に"大藪)。 **うごめく【蠢く】** 区切られた寝床にゴロゴロしていうごめくる人間が蛆虫らしのようにうごめいて見える"小林多。▼蠢く(得体の知れない疑惑が"小林久。ガラス越しに水族館の景色を見るように人波が“阿刀田。こまかい虫の集まりのように町の灯が"岡本。荷物の山が造山活動のさなかのように右に左に=尾辻)。▼うこめく(もぞもぞ。得体の知れない魑魅魍魎以ろうが赤瀬川。底の浅い欲望が"高橋和。腹の底に苛立心もちに似た感情が"乃南。かすかに黄色味がかった濃い灰色の雲がよじれた腸管のように気味悪く"日野)。ざわざわとうごめく群衆。情痴の世界でうごめく人間。神経質にひくひくうごめく鼻。見知らぬ幽霊がもうもうとした闇の中に我が物顔に蠢く暗闇の墓地=尾辻。人間がうごめく(狭い土地に多くの若竹。まるで湧いてくるもののように大勢の"石坂)。倉の壁に入り江の潮の反射光がユラユラユラユラうごめいている=榔。得意の鼻を総かす谷崎。春たけなわの生き物の命の息づかいとうごめきが草地一面に満ちる=柴田。妖しいように蒼ぉぉい燐光がうごめき揺れる=福永。理解もできない不気味な未来が遠くの地平線で恋いているような感じ辻井。▼総動しいんする(蛆うしが。反対派が。不満分子が)。本能の裔動に身を委ねる=高橋和。 **うんてん【運転】** 日頃から乱暴な運転が目立つ=光原。運転に(専念する。慣れる。神経を集中させる)。▼巡転に集中する(全神経を。車の)。だましだまし運転を続ける。運転する(自動車を。電車を。トラックを。ライトバンを。慎重に。危なかしい手付きで。ちゃんと前を見て)。運転席に座る。車の運転席におさまる。運転免許を取る。運転資金が不足する。運転資金もままならない。ギアをドライブに入れる。クラッチを(切る。つなぐ。踏む)。車間距離を(あける。詰める。取る)。定期便を問引き運航する"辺見。▼運行する(電車を。バスを。列車を。周期的に。定時を守って。決められた時間通りに。時間表とおりに)。 **うんてんしゅ【運転手】** 運転手(役員のお抱え。初老の気のよさそうな=日野)。運転手に行き先を告げる。ベテランのドライバー。レース中にドライバーが交代する。乗り手(馬の。オートバイの。自転車の。ボートの)。▼オペレーター(機械の。新機種の)。オペレーターを(募集する。養成する)。▼パイロット(航空機の。ジェット機の。戦闘機の)。熟練したバイロットがあらかた戦死してしまっている=西木。バイロットになるのが夢。パイロットを養成する。 <156> # う **うんどう【運動】** 体力に応じた運動。運動が(上げ潮に乗る。先細りになる。進展する。広がる。不成功に終わる)。自主的な運動が巻き起こる。歯車から歯車へと運動が伝わる=内橋。運動から(手を引く。身を引く)。運動に(頭を突っ込む。全面的に参加する)。過激な運動に没入する。政治的な運動に携わる。運動の(音頭をとる。一角を切り崩す。再然に弾みがつく。正しさを事実で示す。火の手が盛んになる)。地道に運動を続ける。地を這うような運動を展開する"小林久。▼運動する(活発に。不断に)。運動能力が高い。運動能力に恵まれない。運動不足が気になる。日頃の運動不足がたたる。運動不足を解消する。学生運動に熱中する。屈伸運動を繰り返す。市民運動が起きる。不買運動に立ち上がる。入念な準備体操を繰り返す。 **うんどうしんけい【運動神経】** 敏捷びんしな運動神経。運動神経が(優れている。鈍い)。運動神経に恵まれる。天才的に運動神経のない女の子小池。抜群の運動神経を誇る。 **エンジン** バワフルなエンジン。エンジンが(一発でかかる。唸うなりを上げる。猫が咽喉のとを鳴らすような音を立てる=田中)。急にエンジンが止まる。トラクターのエンジンがかかったような笑い声=清水俊。エンジンの(音を響かせる。かかりが悪い。音が静謐かを満たたえる林間を縫って聞こえてくる=池井戸。回転音をむやみに夜の厚い空気の層に響かせる=大江)。うめくようなエンジンの響きを上げて坂を登るトラック=新田。地だんだを踏むようにエンジンの唸り声が荒々しく響きわたる=横田。エンジンの回転を(上げる。落とす)。エンジンをフルに回転させる。なんとかエンジンをなだめて走る。八つ当たりのようにエンジンを空ぶかしさせる=中上。オートバイのエンジンのような「ブンブンブン」というやかましい音が研究室の中に響く=景山。▼エンジン音(軽快な。よどみない。赤ん坊が口唇話で遊ぶときのブリブリと鳴らすような=伊集院。漁船のまどろっこしい泉優。けたたましいバイクの"つか。底力のある大型トラックの"五木)。エンジン音が心地よく響く。切れ切れにエンジン音が聞こえる。あたりをとよもすようにエンジン音が響き渡る=高井。車のエンジン音が風のように過ぎる=黒井。エンジントラブルに悩まされる。ジェットエンジンでもついているような勢いで飛び出す"田中。船外機が始動する轟音に心がとどろく。船外機で走るボート。発動機が動き出す。発動機の響きがびりびりとあたりの空を鳴動させる"大佛。発動機を据えつける。 **かじ【舵】** しっかりとおしゃべりの舵にしがみつく"安部。舵のとり方を間違える=加賀。彼ともから鯨のように舵の尾を出す=有局。舵を(操る。取る。いっぱいに切って急旋回する)。人生の舵をしっかり握って放さない人円。面舵一杯で船を回す。舵を右にきる。取り舵一杯で船を回す。舵を左にきる。 **かられる【駆られる】** ▼駆られる(あらぬ想像に。郷愁の念に。後悔の念に。自己顕示欲に。自責の念に。不安と焦燥に。郷愁の念に。一時的な激情に。得体の知れない怒りに。押さえがたい誘惑に。叫びたい欲求に。もどかしい気分に。聞きたがり知りたがる性情に=長塚。収拾のつかない自己嫌悪に=本庄)。思いに駆られる(不安な。理不尽な。暗溶んたる。居心地の悪い。腹立たしい。冷汗三斗の)。▼衝動に駆られる(凶暴な。開き返したい。声をかけたい。殴りつけたい。激しい。抱きしめたいような)。▼駆り立てられる(焦る気持ちに。憎悪に。内心の衝動に。熱狂に。狂おしい気分に)。 **きかい【機械】** 半ば錆びついた人間の機械野問。機械が(故障する。規則正しく動く。正常に作動する)。大きな機械が禰々にらと音を立てて動く=池澤。言葉が次々と機械が旋回するように出てくる=司馬。・機械で(合成した声。する仕事のように必ず正確に行くととは断言できない=志賀)。機械に人が挟まれる。カードを機械に差し込む。髪が機械に巻き込まれる。データを機械に打ち込む。機械の(設計に携わる。力を借りる。据え付けに手間取る。使い方を実演してみせる)。単調な機械のつぶやきしか聞こえない=安部。機械はたくさんの部品から成り立っている。機械を動かす。高い機械を売りつける。機械のごとく渾身にんの力を入れて槌をあげ渾身の力をもって降り降ろす「菊池。エンジンがかかって始動する機械のようなエネルギーを周囲に掻きちらす萩原來。不思議に勢いづいた機械のような足でぶらぶら歩く=徳田。機械のように箸を動かす筒井。確実な機械のように働く=横光。陶另如這いは。として機械のように不動で直立している佐藤巻。若い頭脳が機械のように正確に動作する=柴田翔。停止した機械のように無表情でいる=司馬。機械化が進む。機械力を(駆使する。備える)。 **ぎこちない** ぎこちない(後味を残す。空気が消える。沈黙の時。苦笑を浮かべる。空気を取り繕う熊仓。ひりひりとした空気が漂う永倉。雰囲気を微塵ふじもつくり出さなかったといえばそれは嘘になる!驚沢)。体の動きがぎこちない。一瞬ぎこちない空気が流れる。がたがたとぎこちない音をたてる。生まれてはじめてお辞儀をするようにぎこちない挨拶=河野。わざとつまずくようなぎこちない踊り大庭。ぎこちない(言葉に苛立心。つ。空気を払うように気軽く云ぃう宮本百。言葉でもどかしそうに説明する=古井)。とって付けたようなぎこちない愛嬌笑いを振りまく=山崎。ぎこちなく(頭を下げる。着物を着る。腰をおろす。話を途切らす。礼を返す。足をこわばらせる)。体がぎこちなく強ばる。言葉がぎこちなく耳に響く。ぎこちなくしっくりしないしこりを残した未成育な安堵ん=大江。喋る言葉がぎこちなく沈黙の中からそのつどどぎまぎと投げ出すよう古井。何か思い惑うようにぎこちなく見つめる三田。笑わなければいけないというようにぎこちなく笑う原田康。ぎこちなさ(連れ込み宿に逃れこまれた娘のような"中村爽。場違いの場所にいる藤枝)。懐剣でも帯に挟んでいるように固まってしまったぎこちなさを解きほこす=円地。ぎこちなくなる(糸をゆるめられた操り人形のように急に軀炒。が"古井。監視されているような気がしていよいよ=中村真)。 <157> # 動く・動かす-49 **ぎこちない【ぎこちない】** ぎこちない(挨拶を交わす。手つき。身のこなし。笑みを浮かべる。動作。口調)。ぎこちない(態度。笑顔。仕草。手つきで。会話)。ぎこちなくお辞儀をする。ぎこちない足取りで歩く。ぎこちなく笑う。どこかぎこちない雰囲気。無理に作ったようなぎこちない笑い。とって付けたようなぎこちない愛嬌笑いを振りまく=山崎。ぎこちなく(頭を下げる。着物を着る。腰をおろす。話を途切らす。礼を返す。足をこわばらせる)。体がぎこちなく強ばる。言葉がぎこちなく耳に響く。ぎこちなくしっくりしないしこりを残した未成育な安堵ん=大江。喋る言葉がぎこちなく沈黙の中からそのつどどぎまぎと投げ出すよう古井。何か思い惑うようにぎこちなく見つめる三田。笑わなければいけないというようにぎこちなく笑う原田康。ぎこちなさ(連れ込み宿に逃れこまれた娘のような"中村爽。場違いの場所にいる藤枝)。懐剣でも帯に挟んでいるように固まってしまったぎこちなさを解きほこす=円地。ぎこちなくなる(糸をゆるめられた操り人形のように急に軀炒。が"古井。監視されているような気がしていよいよ=中村真)。ざくざく(角ばった字。のど仏が動く。膝を曲げる)。▼ざくざくする(足腰が。動作が)。手足がぎくしゃくとしてマリオネットになったように山田詠。▼ぎくしゃくする(人間関係が。夫婦仲が。世の中が)。ぎくしゃくした(雰囲気が漂う。雰囲気を和ませる。空気などどこ吹く風といった顔の光原)。緩慢でぎくしゃくした動作。バネ仕掛けの人形のようなギクシャクした足取り“小林多。 **きびきび** きびきび事を運ぶ。きびきびした口調。立ち居のきびきびした若者藤沢。肥ふとった体に似合わずきびきびした動作"五木。立ち居振る舞いがきびきびして明るい。きびきびしている(物言いが。万事につけて)。 **げきどう【激動】** 激動の(一週間。時代。時期を乗り越える)。激動する(経済が。政治が)。幕末の激動期を剣一筋に生き抜いた男たち=清原。 **こきざみ【小刻み】** 小刻みな(振動。投手交代。歩調で歩く。リズム。嗚咽えに肩を震わせる。呼吸を繰り返す。震えが全身を貫く三浦し)。小刻みに(相槌を打つ。足を動かす。足を運ぶ。うなずく。かぶりを振る。体を揺する。旅攣い心を始める。船を漕ぐ。あくびを噛み殺す。警笛を鳴らし続ける。ヒップをくねらせる。肩を震わせて泣く福永)。足音が小刻みに早くなる。肩が小刻みに動く。指揮棒を小刻みに揺する。全身を小刻みにわななかせる。突きが小刻みに鋭くなる。テーブルを小刻みに叩く。手を小刻みに左右へ逃がす古井。遠くからひたひたと小刻みに駆けてくる泉鏡。▼小刻みに震える(肩が。体が。唇が。口もとが。語尾が。拳が。全身が。膝が。睫毛性っが。指先が)。小刻みに揺れる(体が。水平線がちりちりと=重松)。 **こどう【鼓動】** 早鐘のように鼓動が打ち始める近藤。鼓動が高鳴る(心臓の。胸の)。手のひらに城るほどの小さな島の鼓動に似て消え入りそうな音信長野。どくどくと鼓動を響かせる。胸が鼓動を刻む。鼓動を打つ(生活が。心臓が軀炒らの外へ飛びだしそうに激しい"井上ひ)。心臓の鼓動が(大きくなる。激しさを増す。速くなる。規則正しく脈打つ。聞こえるほど静まり返る=辺見。止まるほど心がかっとなる=有島)。胸の鼓動が(伝わる。速まる)。▼鼓動する(胸が激しく。心臓がときどきと。心臓が獣のように宮本百。走ったあとのように心臓が強く芝木)。女の吐息が心臓の鼓動のように規則正しく伝わってくる=柴田錬。心拍が(高い。低い)。心拍数が(上がる。いきなり跳ね上がる)。脈が(正常に戻る。不整に打つ。しっかりしている)。どくどくと脈が耳の中で響く近湊。脈を(調べる。取る)。脈搏いくが(不吉に昂進する。カタンと止まって身体が冷たくなるような不安安岡)。脈搏の不整が現れる。静かな家の脈搏のように時計が分秒を刻む音がする佐藤奈。岸に押し寄せ押し寄せする波が自然の生命を伝える脈搏のように間をおいては響き砕ける島崎。 **さゆうする【左右する】** ▼左右する(国家の運命を。政権の行方を)。人生を左右する一大事。民族の帰超すを左右する大問題。原則は状況によって左右されるべきではない有川。 **じどう【自動】** 自動で開閉する。自動操縦を手動に切り替える。自動的にロックする。データが自動的に暗号化される。扉が自動的に閉まる。計算を自動的に連続処理する=内橋。自動ドアが開く。オートマチックの(車。銃)。 **しゅどう【手動】** 手動と電動を切り替える。手動の(ドア。扉)。手で動かす。マニュアルで操作する。 **しんぞう【心臓】** 心臓が(規則正しく脈打つ。血液を体中に送り出す。どきどき高鳴る。どくどくと脈打つ。いまにも破裂しそうに波打つ=林美。エイトビートで鳴る=小林信。凍りつきそうなショックを受ける=内田康。ことことと音をたてる=中沢。ことんごとんと音を立てる三浦。しぼむようなため息が湧きおこる"大原。処女の血を盛ったようにときめく=有局。潰っぷれそうに驚く=江國。飛び出るほど驚く佐伯。飛び跳ねる思い=貫井。止まるほど驚く=阿刀田。凪なぎの海のように平静になる=高橋和。喉へ突き上げてくるような苦しさに襲われる=山本息。ばくばく鳴って今にも口からこぼれ出てきそう鷺沢。早鐘のように打ち出す柴田翔。早鐘を打つように鳴り出す小松左。破裂しそうな驚きに打たれる=有島。焼き玉エンジンのように躍りはじめる阿久。破れんばかりに高鳴って口の中が乾く=赤川)。唇が歪ゅがみ心臓がねじれるほどの苦痛・武田祭。動悸の激しかった心臓が波がひくように楽になる“干刈。死ぬかと思うほど心臓が高鳴る=大原。驚いて心臓が瞬間冷凍でバキバキになる=荻野。たてつけの悪い古い家のように心臓ががたがたになる=大佛。胸に焼けた石でも入っていてそれが躍ってでもいるかのように心臓がはずむ=勝目。心臓に(不整脈が現れる。ぐさりと突き刺さるようなひと <158> # う **ずらす** ずらす(椅子を。一日日取りを。体を。時間を。視線を。一つずつ前に。蓋を横に。話を核心から。心持ち肩の位置を。老眼鏡を鼻の頭の方に「藤田)。だらしなく足をずらし横坐りになる=中上。 **そうさ【操作】** むだな操作が多すぎる。操作に(習熱する。専念する)。船乗りたちは帆の操作に忙しい塩野。▼操作する(機械を。帳簿を。ボタンを。マウスを。コンビューターを。市場の価格を裏から=軍司)。操作性が飛躍的に向上する。操作マニュアルを読む。リモコンで(操る。動かす。テレビを点っける)。リモコンのボタンを押す。 **そうじゅう【操縦】** 暴風雨のためにひとたまりもなく操縦の自由をなくすぃ小林多。操縦を練習する。操縦する(機械を。クルーザーを。飛行機を。リモコンで)。操縦不能に陥る。 **たづな【手綱】** ひきしぼった手綱のゆるむように心持ちもゆるやかになる三好淺。手綱を(ぐいぐいとしこく。びしっびしっと鳴らす。引き締めてもはね出す奔馬旺んのように押さえようがない欲求―佐多)。馬の手綱をひきしぼる。猛烈な音を立てていた土砂降りが手綱を引いたようにやむ"小松太。理性の手綱を締める三浦し。▼手綱さばき(巧みな。見事な)。手綱さばきに感心する。 **てあし【手足】** ▼手足(なめらかにすんなりと伸びた"山本网。日蔭の細い蔓っるみたいな=大庭)。手足が(華奢な体。無成覚になる。すらりと伸びる。麻痺し腰骨の砕けるような深い疲労吉村。いつでも眠れるというほど気怠けだく鉛のよう=長野。ちぎれるかと思うような寒気"島尾。バネ仕掛けのように震える林美)。あまりの衝撃に手足が動かない=福永。千切れてばらばらになるかと思うほど手足がだるい!徳永。水に浮かんでいるように手足が軽くなる=長野。若い筒吹けのように手足が伸びて行く"川端。手足に力をこめる。手足の(あがきがつかない。感覚がなくなるほど疲れはてる=安部)。細面の手足の伸びた青年“五木。手足の如くに働く者が周囲を離れない子母沢。手足の先が氷のように冷たい―渡辺。手足を(ローブで縛る。ぶるぶる震わせる)。ひくひく手足を痙療心させる。むちゃくちゃに手足を振りまわす。ゆったりと手足を伸ばす。おどけたように手足を動かす=吉村。蟹かにの手足をもぐように施設がもぎとられる"島尾、手と足の先が揺り粉木ごものように感覚がなくなる=小林多。ボスの手となり足となる。荒っぽい仕事のできる人間を手足のように動かす=勝目。四肢が(麻痺まむする。のびやかに発達する)。強張った四肢がほぐれる。四肢に力がみなぎる。両手両足を(縛りあげる。振りまわす)。大の字に(手足を広げる。なって眠る。寝そべる)。手足を大の字なりに倒れる谷崎。 **てこ【梃】** てこで持ち上げる。てこでも動かぬ強靱てこにいうな庶民精神"小沼。言い出したら最後テコでも退ぃかない=阿部。無視するとてこでも助かない古井。いったんこうと決めたら挺でも動かせない石のように硬い芯がおとなしそうな表面に隠されている連城。納得しないと艇でも動かない落合。てこを押す。機械のレバー。 **てつき【手付き】** ▼手つき(器用な。不器用な。乱暴な。堂に入った。疲れを帯びたような力なげな坷。見ている方がじれるほどまだるっこしい=藤沢)。手品師のようなきゃしゃな手付き"福永。手つきが(おどおどする。震える。宝物を扱うように慎重"有吉)。芸者が撥ばちを持つときのような手つきで肩を摘む谷崎。危なっかしい手つきで運転する。慣れた手つきで舟を操る。肩まである髪のすそを女みたいな手つきで整える=宮本邮。武骨な手つきで茶を淹ぃれる=村上元。水面に落ちたきれいな花をすくうような手つきで相手の頭を胸に抱き寄せる三浦し。何でもない何でもないと虫でも払うような手つきをする灰谷。▼手さばき(鮮やかな。軽やかな。見事な。手慣れた)。 **どうき【動悸】** 早鐘みたいな胸の動悸=宇野干。動悸がどうき(こめかみで脈打つ。全身に高鳴り始める。早く打ち始める。ますます激しくなる。気味の悪いほど速くなる=原田康。品たかぶって飯も喉へ通らない久米。激しく血液がすべて逆流するよう藤本)。息が苦しくなるほどの動悸がようやく収まる=黒井。何かに追われているように胸の動悸が速い=大佛。胸にとどろくような動悸が鳴る"小林久。胸の動悸が速くなるのをどうすることもできない"原田康。はげしい動悸で気分が悪くなる=灰谷。軽い動悸を覚える。心臓が激しく動悸を打ち胸がしめつけられるよう“干刈。咽喉のとのすぐ奥まで膨れあがってくる動悸を抑える=黒井。走った動悸を数え上げるような息をする芝木。怖いものを見たときのように胸が動悸を打ちはじめる=林身。心臓が不穏な動悸を打ち始める"夏樹。胸の動悸が(激しくなる。速くなる)。胸の動作を(鎮める。抑えることができない)。胸が(どきどきする。ときどきする。どうどうと鳴る)。心臓の(鼓動が激しくなる。早鐘のように波打つ)。動悸に(苦しむ。悩む)。動悸が(高鳴る。鎮まる)。心臓の音が(高くなる。耳につく)。 <159> # 動く・動かす-49 **どうせい【動静】** 敵陣の動静が手にとるように分かる=舟橋。動静に(詳しい。通じる)。豪族たちの動静を牽制樹以する。諸大名の動凈を探る。敵の動静を窺らがう。天下の向背を決する。 **とまらない【止まらない】** ▼止まらない(傷口の血が。なかなか咳せきが。胸の動悸が。食べ始めると。飲み始めたら。弾みがついて、涙が流れてきて)。目にも止まらない速さ。なかなか止まらない(振動が。震えが)。涙が止まらない(嬉しくて。不覚にも。拭っても拭っても)。震えが止まらない(がたがたと。体の。指先の)。笑いが止まらない(うれしくて。おかしくて)。いったん笑いだすと止まらなくなる。目にも止まらぬ(急激な回転。早業)。言葉の奔流を止められない。怒りが湧いてきて自制がきかない。制止が利かない。制止を(振り切る。無視する。聞かず外に出る多岐川)。誰も足を止めない。歯止めがかからない(汚染に。読書惟れに)。ノンストップで走り続ける。東京から大阪までノンストップで結ぶ列車。終点までノンストップの電車。 **のっそり** のっそり(体を起こす。腰をおろす。犬が起き上がる。部屋に入ってくる。部屋を出て行く)。雲つくような獣に似た姿をのっそり現す=本庄。のそりと物愛げに体を動かす。のそのそ(後に続く。牛が歩く。犬が餌をあさる)。蚤のみが体じゅうをのそのそ道はいまわる。 **はしらせる【走らせる】** ▼走らせる(威勢よく車を。不快な表情を。鉛筆を一心に。小舟を海上に。馬を全力で。顔に驚きの色を。キーボードに指を。腰の警棒に手を。さらさらと絵筆を。残忍な笑いを頬に。怪訝けいそうな視線をちらと黒井)。▼視線を走らせる(壁の時計に。前後左右に。窓外に。ちらっと。周りに鋭い)。筆を走らせる(仮面に。便箋に)。▼目を走らせる(素早く周囲に。書類にざっと。服装にさっと。あたりにゆっくりと。しきりに腕時計に水倉)。駆る(愛車を。馬を。車を)。▼すっ飛ばす(車を。高速道路を。タクシーを)。▼ぶっ飛ばす(オートバイを。高速道路を。スポーツカーを)。 **ハンドル** ハンドルから手を離す。ハンドルに(しがみつく。手をかける)。ハンドルを(ぐいと回す。取られる。握る手に力がこもる。握ると人格が変わる。切りそこねて反対車線に飛び出す=永倉)。右に左にハンドルを切る。▼ハンドルさばき(鮮やかな。荒っぽい。余裕のある)。根棒眇えを(取る。握る)。ステアリングを(切る。握る。回す)。操縦桿州にゅを(動かす。倒す。握る。引く)。 **ひくひく** ひくひく動く(嗯えらが。舌が。のどが。鼻が。まぶたが。両目が)。大きなくしゃみをする前のようにひくひくと波打つ倉橋。▼ひくひくさせる(犬みたいに鼻を"野間。こみあげる笑いで腹を開高)。体がひくっと動く。 **ぴくぴく** ぴくぴく動く(おちんちんが。親指が。体が。口元が。興奮で頬が。こめかみが。頬が。眉が)。浅く走っていく水がびくびくする痙攣い心の発作のように光る佐藤春。▼ぴくっと動く(口元が。眉が)。びくりと動く(休が。頬が)。▼ぴくんと動く(体が。眉毛が)。 **みぎにひだりに「右に左に】** 右に左に(舵かじを切る。逃げ惑う。体をよろつかせる。ジグザグ運動をする。ゆらゆらと揺れる。穴を回避しながら車を走らせる"池澤。蛇行しながら進む"貫井)。一歩ことに右に左に傾く、切っ先を右に左にかわす=杉本。魚舟の篝火|が右に左に動く。壺井。バスが右に左に車体を揺らしながら上っていく=伊集院。麦畑がそよ風に揺れて右に左に波うつ緑色の海飯田。右へ左へ(うろうろする。細い砂利道が走る)。立ち昇る煙が右へ左へなびく。心が右へ左へ大きく揺れる阿川弘。右へ左へとステップを踏む。せわしなく左右に視線を動かす。 **みこなし【身ごなし】** ▼身こなし(軽快な。喧嘩艸ん慣れした。悠揚とした)。にわかに身こなしが軽くなる。子をあやす母のような所作「あさの。所作を(演じる。稽古する。基本から叩き込まれる)。十年一日のごとく同じ所作をする=津本。▼身のこなし(エレガントな。軽やかな。柔軟な。颯爽だっとした。隙のない。素早い。弾むような。柔らかい。淑しとやかで同時にしたたかな=吉行。遠くから見ると白い蝶がたわむれているように見える軽やかな灰谷。舞っているように自然ではなやかな日野。手負い猪としのような=加賀。槍ゃりを投げるような本庄)。身のこなしが(活発。怪い。崩れている。すばしこい)。獣のような身のこなしで外へ走り出る=古井。豹心」を思わせる身のこなしで客席から舞台へ飛び上がる=森環。身のこなしに妖艶さが漂う“山田及。 **みゃくうつ【脈打つ」** ▼脈打つ(血管が。鼓動が。罪の意識が。耳の奥で血が。生命が逞たくしく。どくんどくんと。生きもののようなメロディーが=五木。ほてるような痛みが三田。白く太いホースが血管のように三浦し)。黒い渦巻きが時計のぜんまいみたいに脈をうつ=中。ずきずきと脈打つような痛み有栖川。一脈動する(地殻が。新時代の精神が)。 **ロボット** 精気が抜けたような足取りでロボット歩きする谷川。あらかじめ命令が与えられているロボットが喋心。っているみたいに声に感情が籠にもっていない=辻井。錆びついたロボットの足のように一歩一歩が固くなる=尾辻。瞳がロボットの口のように開く徳永。ロボットを(動かす。制御する。操作する)。機械仕掛けのように(ぎくしゃくした動き"貫井。ぎこちなく顔を向ける=日野)。両腕がのろのろと機械仕掛けのように上にあがる=日野。 # 歌う・演奏する <160> **うた【歌】** 歌(心に深く染み入る。どこか哀調をおびた。よくありがちな恋の。宗教音楽のような厳かな小川。長閑とで平和な牧歌調の萩原朔。胸に漂っている情感の水のようなものを重く冷たく凍らせる"阿久)。歌が(唇に浮かぶ。朗々と響く)。風に乗って歌が流れてくる。歌でも歌うようにしゃべる=梅本。歌と踊りでにぎやかに一夜を過ごす=池澤。歌に(聞きほれる。釣り込まれる。耳を傾ける。合わせて碗まりをつく。まつわる思い出を紹介する)。自分たちの歌に陶酔する。歌の(フレーズが脳裏をよぎる。終わりをフェイドアウトさせる=海堂。世界に深みと広がりが生まれる=重松)。木々の葉と風の歌を聞く“辺見。口から出まかせの替え歌。校歌の作詞を頼まれる。新曲を披露する。童謡が口をついて出る。 **うたう【歌う】** ▼歌う(校歌を。心の揺らぎを。子守歌を。賛美歌を。童謡を。鼻歌を。花の光郷を。流行の曲を。我が世の春を。悠々閑雅に。静かな調子で。調子にのって。調子を外して。低い声で。口から出まかせに。感に堪えたように。キャンブファイアーを囲んで。小節を利かせて。さびを利かせて。知っている歌をかたっぱしから。陶然とした顔つきで。ビアノに合わせて。満ちてくる潮のように、あるいは引いていく潮のように一心に灰谷。頭のてっぺんからつん出るような声をしぼって=室生。左手を腰にあて右手を上下させながら=なかにし。窓も割れんばかりに声を張り上げて。飯田。仰まりのようにふくらんだ上体を怪く揺すぶりながら=円地)。七夕の笹がさやさや風にうたう“住井。朗々としたバリトンで唱うたう“加賀。口癖に歌う歌。歌を歌う(静かに。朗らかに。大声で。バンドをバックに)。とちらずに歌い終わる。誰からともなく歌い始める。歌い方(うなるような。ロマンチックな。思い入れたっぷりの)。渋い喉で聞かせる。歌うような抑揚を帯びた口調に辻井。歌歌うように借金の言い訳を述べ立てる=坂口。▼歌い上げる(哀感を。愛の歓びを。情感豊かに。朗々と)。唱歌を愛唱する。精いっぱいに生きた小さな命の絶唱=飯田。豊かな声量で絶唱する。絶唱に聞き入る。のど自慢大会で熱唱する。▼放歌高吟する(思いきり。酒に酔って)。カラオケの(曲目を選ぶ。マイクを握る)。カラオケを(歌う。楽しむ。熱唱する)。 **うたごえ【歌声】** ▼歌声(段々に盛り上がっていく。物愛く単調で何の芸もない念仏のような「武田奈)。歌声が(高く低く響く。優しくうるむ。腹の底までしみわたる。集まって一つになり、つむじ風のように部屋に立ちのぼる=飯田。嫋々にいうと心にからみつく鳥尾)。歓喜の歌声が響き渡る。陽気な歌声が耳朵しだを打つ。雨音を縫って歌声が流れる=浅田。しみじみとした歌声が圏の中に流れる=高田。単調な歌声が風に消え行く狩の角笛の音のようにほそぼそといつまでも響く中局多。夜ごとにぎやかな音楽や歌声が聞こえる=池澤。雨の音が歌声みたいに聞こえる=高橋元。 **えんそう【演奏】** 演奏が(店内に流れる。慌ただしい印象だけを残してあっけなく終わる=森照)。オーケストラの演奏が終わる。出し抜けに演奏が始まる。生バンドの演奏が入る。演奏に(熱が入る。耳を傾ける)。好き勝手な演奏をやって遊ぶ。突如として演奏を中止する。演奏する(ワルツを。即興で。吹奏楽を)。想いがオーケストラのフォルテシモの演奏のように僕の内部で反響する"福水。即興演奏に没入する。オーケストラが鳴り響く。管弦楽が流れる。▼奏する(オルガンを。音楽を。神楽を。楽器を。行進曲を。琴を。太鼓を)。官能的なシンコペーションをつけた奏法"松浦。▼独奏する(オルガンを。バイオリンを。ピアノを。フルートを)。アドリブで(演奏する。ピアノを弾く)。一糸乱れぬ合奏。▼合奏する(弦楽器を。幾つかの楽器で)。▼奏でる(音楽を。楽器を。オルゴールがメロディーを。家全体が木管楽器となって悲しげな曲を“加賀。巷さまの人々の心の底の糸が自然の調べを"国木田)。蟬せんが俗界の執念を奏でるように鳴きさかる=辻井。 **おんいき【音域】** 音域が(狭い。広い)。音域の高い声。一オクターブ(上げる。下げる。高い。低い)。 **おんがく【音楽】** 脳天をトンカチで叩くような感じの音楽"干刈。スピーカーから音楽が流れる。あたりの賑わしさを頭から叩き伏せるように力ずくの音楽が破裂する=岡本。身体の中で美しい音楽が演奏されているような不思議な興奮=円地。小屋に灯がともるように音楽が始まる=五木。音楽で神々の心を魅了する。音楽に合わせて踊る。癒しを求める。造詣が深い。耳を傾ける。優れた耳を持つ。乗るように上体が前後に揺れる=高樹)。遠くの音楽に聞き入っているような心持ちでうっとりとなる!佐藤春。音楽の良し悪しが分からない。音楽は人間の内面を映す鏡みたいなもの=五木。音楽を(館内に流す。愛する心が育つ。主体にした番組を放送する)。体の中にいきなり悪い音楽のようなものがわき上がってくる。堀。音楽のように鳴る梢の葉ずれの音=中上。思い出が快い音楽のように魂の中に鳴りひびく“福永。女たちの話を音楽のように聞く=高橋迦。固く身をすぼめた花冠が音楽のようにゆるやかに開く大岡。船が見る見る巨大な音楽のようにふくれ上がる三局。反復の多い音楽的手法。音楽的な刺激を与える。▼楽の音(消益な。妙なる)。恍惚こうとして楽の音に聞き惚れる=佐藤奏。オルゴールが同じ曲を繰り返す。BGMは控えめなクラシック。クラシックに造詣が深い。ノクターンが静かに流れる。 # 歌う・演奏する-50 <161> 物憂いブルース。ブルースを演奏する。ロックを鳴りとどろかせる。ジャズが好きな客。ジャズに陶酔する。ジャズを演奏する。 **おんかん【音感】** 音感が(いい。悪い)。音感に富む文章。音程が(怪しい。狂う。正確。外れる)。 **がくだん【楽団】** 楽団を(結成する。創設する。立ち上げる)。オーケストラを指揮する。バンドがファンファーレを高らかに奏する戸川。バンドを(組む。結成する)。 **がくふ【楽譜】** 楽譜を読む。眼を皿のようにして楽譜を見つめる=宮沢。楽譜なしで演奏する。葉が装飾音符のように散る=辻井。譜面があかんべえしているような作品中島み。譜面に書きとめる。 **かしゅ【歌手】** ▼歌手(声量のある。水際立った)。歌手が熱唱する。歌手としてデビューを果たす。カンツォーネ歌手みたいにビンビン響かせるタイブの声=中島み。歌手生命を絶たれる。奇抜な舞台衣裳を着るので有名な女性歌手=高并。 **がっき【楽器】** 楽器が鳴り響く。楽器の(調子が狂う。虜とりになる)。楽器をかき鳴らす。調子の狂った楽器のようなひどく嗄れ「れた声が止めどもなく逆にり出る=山本周。ワイシャツを風琴いいみたいに積み重ねる=河野。パイプオルガンが朗らかに響き渡る=加賀。 **がっしょう【合唱】** 熱した油で水滴がはじけたような暑苦しい蟬ゃぁの合唱=阿久。蛙砂ぇの合唱がこだまする=松岡。合唱の声が起こる。▼合唱する(校歌を。賛美歌を。唱歌を。寮歌を。声を張り上げて)。声を合わせて歌う。蟬の大合唱が響き渡る。非難の大合唱が起こる。川の音をかき消すほど虫が大合唱する三浦し。夜な夜な壁も砕けんばかりの大合唱で煮えくりかえる酒場"開高。春が来たような清らかなコーラス"伊集院。 **かようきょく【歌謡曲】** 歌謡曲がスピーカーから流れる。歌謡曲を(歌う。口ずさむ)。感傷的な演歌。演歌を口ずさむ。小節をきかせて演歌を歌う。流行歌のメロディーが流れる。小声で流行歌を口ずさむ。下手くそな流行歌を歌う。 **かんがっき【管楽器】** 管楽器の音が途方もなく甲高く響く石坂。ファンファーレが鳴る。風が吹きつのり洞窟の中がホルンのように鳴る=加賀。はじけるようにトランペットが鳴る柴田翔。トランペットのファンファーレ=島田。廃々にいたるトランペットの音。 **きょく【曲】** ▼曲(イントロに聞き覚えがある昔の。聞き応えのある。魂を揺すられるような美しい灰谷)。ラジオから曲が流れる。曲に合わせて体が動く。うっとりして曲に聴き惚れる。曲の触りを弾く、楽団が静かな曲を演奏する。歌詞に曲をつける。即興で曲を作る。歌曲(成感傷的な。勇壮な)。曲目を適当に選ぶ。交響曲を(演奏する。指揮する)。屈指の名曲。勇壮な行進曲。行進曲の一節を口ずさむ。 **くちずさむ【口ずさむ】** ▼口ずさむ(流行歌を。口三味線で。我知らず。悲しい歌を物憂げに!柴田銀)。▼一節を口ずさむ(歌の。メロディーの)。▼誦じ。する(お経を。呪文を。真言を。勅語を。声高に)。 **くちぶえ【口笛】** ひやかしの口笛が鳴る。唇から知らず知らず軽い口笛が漏れる"有房。犬でも呼ぶようにヒューと口笛を鳴らす=森局。思わずお礼の言葉を洩もらし口笛を吹く気になる=佐野。▼口笛を吹く(朗らかに。陽気に。元気よく。ピュービュー)。口笛を吹きたくなるようなさわやかな朝。 **げん【弦】** 弦を(かき鳴らす。ぴんと張る)。一種の不安が耳馴られぬ絃をひびかせる=福永。チェロの弦をふるわせるような響き=野間。絃げんを震わすように細くしかしどこかに居直りを感じさせる不屈な声"高樹。四六時中張りきっていた弦のような極度の緊張"高村光。張りつめた弦のように震える少女光原。 **げんがっき【弦楽器】** 弦楽器を弾き鳴らす。コントラバスのような太い声=徳永。竪琴を(かき鳴らす。弾く)。ハーブを(奏でる。弾く)。波の音が琵琶歌沁↔のように長閑と高橋和。ベースが心臓をえぐるような音を響かせる=船戸。ギターの(チューニングをする。弾き語りを開かせる)。魂というギターでアルベジオを奏でているような笑い声=宫部。ギターを(かき鳴らす。爪弾く。弾きこなす。弾き鳴らす)。チェーンソーの機械音がひずむギター音みたいに山に響く三浦し。バイオリンの(調べが流れる。妙なる調べ)。バイオリンを(弾きこなす。弾き鳴らす)。ヴァイオリンの弦のように哀がなしげに震える声"小川。二人の間でヴァイオリンの弦が切れるように何かがぶつんと切れる!森瑕。 **こうおん【高音】** 高音と低音が絡み合う。鼓膜を切り裂くような高い音光瀬。甘くすみ透った高い声=原田康。カナリヤがさえずってでもいるようによく通る声岩板。クリスタルクラスを打つような声=大原。ひいっと布を裂くような声=平平岩。甲高い声で歌う。裏声で歌う。ヨーデルみたいに声を裏返らせる=村上爬。裏声のような空高く細くふるえる声古井。きんきん響くソプラノ。ソプラノが(固まった空気を突き抜けるような鋭さで伝わってくる=壺井。夕凪砂彩の海に響き渡る谷崎)。のびやかに粘る黒人独特のソプラノが春の日差しのように耳に染み入ってくる荻野。丸みのあるソブラノを張り上げる。 **こうた【小唄】** 引かれ者の小唄。小唄を(うたう。口ずさむ。弾く)。渋い喉で小唄を聞かせる=有吉。落葵5げたる歓楽の絃歌。絃歌州んの音が胸をそぞろに波立たせる=田山。 **こと【琴】** 琴と尺八を合わせる。琴の(音に聞き惚れる。爪を仕舞うほどの小さい石鹸箱健林京)。妙なる琴の音。雲のような木目のある琴の胴=中。琴を弾く。 # 撃つ・射る―52 <162> # う **コンサート** コンサートのブログラム。コンサートを(聴く。催す)。ロックコンサートの会場にいるように大声で話す=小池。音楽会に足を運ぶ。▼リサイタル(歌手の。ビアノの)。リサイタルが大当たりになる。リサイタルを聞きに行く。 **さっきょく【作曲】** ▼作曲する(交響曲を。行進曲を。大作を)。作曲家(寡作な。傑出した。当代随一の)。オリジナルの曲を編曲する。交響曲をピアノ曲に(アレンジする。編曲する)。 **しゃくはち【尺八】** 首をでこでこ振りながら吹き鳴らす尺八岩坂。素朴な尺八の音。幽玄な尺八の調べ。一管の尺八を携える。 **しゃみせん【三味線】** 三味線の(糸を締める。稽古に精を出す)。猫が三味線の皮になる。陽気な三味線の音が賑やかに聞こえる=田山。三味線を(かき鳴らす。爪弾く。弾きこなす。弾き鳴らす。忍び音で弾く)。 **たいこ 【太鼓】** どんどんよくなる法華児っの太鼓。太鼓が(厳かに鳴り渡る。どろどろと鳴る。迫るように押し潰っぶした音で鳴る=幸田文)。ぼうっとして太鼓に聞き惚れる。太鼓の(胴のような路。音を聞いても気絶するほどの雷嫌い=川端)。耳に響く太鼓の音。古い太鼓の皮のように光沢の消えた腹"横光。太鼓の音が(殷々灬んと森とく。腹にこたえる。明るく澄んだ空へ響き渡る=栗木。単調に鳴り響く=福永)。太鼓を(打ち鳴らす。打って雷鳴に和する。叩くように尻を叩く=小島。張ったようにすべすべとふくれた腹泉災)。撥ばちも折れよと太鼓を鳴らす長塚。暗い太鼓のような波の音=遠藤。鼓を打つ。 **だがっき【打楽器】** 打楽器を(打ち鳴らす。叩く)。平手打ちの音がロビーのドーム全体がシンバルになったかのように響き渡る=島田。「旦那はあんたに惚れている」という言葉が耳の中でシンバルの連打のように響く=勝目。シンバルを打ち鳴らす。バァーンとシンバルをたたいたような感じの光梶井。ドラムが途切れることなく正確なビートを刻み続ける=辻仁。ドラムの(音が部屋じゅうに響き渡る=船戸。ソロでも聴いているみたいに高鳴る鼓動が聞こえる=飯田)。ドラムを叩く。 **ていおん【低音】** ▼低音(どすの利いた。柔らかい)。心の中がさまざまな楽器の最低音でいっぱいに満たされて行くような思い=原田歩。湿気と陰気が生活の底に主調低音のように持続している=大岡。地を這うようなバス=加賀。 **どら【銅鑼】** 銅鑼が鳴り渡る。海の底から響いてくるような開幕のドラの音=円地。船の出発を告げる銅鑼の音。けたたましい銅鑼の音が響く=有島。銅鑼を(打つ。鳴らす)。 **ねいろ【音色】** ▼音色(鼓膜を突き刺す機械的な小川。抑えがきいていて洗練された小川。柔らかく澄んだ音叉誌んの藤枝)。音色が心の中に沁しみ通る=福永。きれいな音色がとけるように浸みるように風につれて流れてくる宮沢。涼しい音色が湧き上がり、ひと度水脈から噴き出した泉のようにとどまることを知らない福永。音色に滴るような弾力があり服ふくらみがある=横光。美しい音色を奏でる楽器。なかんずく音調の優れた箇所三好達。▼声調(気品ある。響きの深い)。声のトーンが下がる。低いトーンの声。ユーモラスなトーンを帯びた声。 **ばち【撥】** ▼撥(三味線の。太鼓の)。撥の音が強く冴える。芸者が撥を持つときのような手つきで肩を摘む"谷崎。流麗な撥さばき。 **はなうた【感歌】** 鼻唄でも口ずさむように腰で拍子をとりながら砂利道や飛び石をつたい歩く=有吉。らあらあらあと現金に鼻唄でも唄いたい娯たのしさ艺木。千鳥足で鼻歌という御酩酊にぃぶりに瀬戸内。ラジオから流れる曲に合わせて鼻歌を歌う鈴木光。暢気30んな声で鼻唄をうたう』山本周。歌をハミングする。 **ばんそう【伴奏】** 母親がわが子を抱えるようなあたたかい伴奏"石森。ビアノの伴奏で歌う。伴奏する(ギターで。オルガンで)。無伴奏で(歌う。バイオリンを弾く)。前奏がゆるやかに響く。お囃子にゃに合わせて踊る。お囃子の音が(拡声器から流れてくる=ねじめ。潮風に乗って聞こえてくる=伊集院)。祭り囃子にゃがゆったりとした調子で流れる=山口。口三味線で前奏を口ずさむ。口三味線に合わせて歌う。 **ピアノ** ピアノが気ままに散歩するようなフレーズを開かせる"五木。ビアノの(音が新鮮な血液のように客たちの間に流れる"五木。和音がさらさらと光りながら意識の中を通り過ぎる=福永)。壁に反響するビアノの音色の強弱が深い井戸に落ちこんでいるような澄んだものを胸に訴える=林炎。憑っかれたような淀みないビアノの音=田島。陽気にビアノを弾く。指が鮮やかに鍵盤の上を動きまわる=村山。▼ピアニスト(屈指の。不世出の)。 **ひく【弾く】** ▼弾く(楽器を。ギターを。曲を。変を。三味線を。バイオリンを。ビアノを。琵琶びもを。嵐のような勢いで「印度の虎狩り」という謎を"宮沢。オルガンを。キーボードを)。弾く手をやめる。ぽろんぽろんと爪弾く。曲を弾きこなす。 **びせい【美声】** 天使のような美声=畑。美声に(嫉妬する。惚れ込む)。美声の持ち主。聞こえもせぬ遠い船の人を呼ぶような悲しいほど美しい声=川端。金管楽器を思わせる輝きや張りのある声"五木。鈴をふるわすような声"真継。玉を転がすような笑い声=井上菜。 **ふえ【笛】** 笛吹けど踊らず。笛がいみじげな音色を奏でる=福永。清水の潞々せんと流れ行くのにも似た響きが、あるいは高くあるいは低く笛から溢ぁふれ出る=福永。誰かがハーメルンの笛でも吹いたみたいに街を歩いてる子供の数が少なくなる=北村。笛に心を奪われる。積み上げた杉材の隙間から隙問を笛に似たやわらかな音を立てて風が抜けていく"高樹。どこからともなく笛の調べが流れてくる。肝却びが高くなり低くなり調子の悪い笛のよう遠藤。冬の夜風に調べを合わせるかのように蕭々しいと鳴り続ける笛の響き=福水。だれかが吹きはじめた笛の音にあわせて踊りだす三浦し。空に吸い込まれていくような笛の音の爽やかな響き=高橋三。笛よりももっと細くかすかな響き=松谷。笛を(吹き始めると清冽せつな響きが管の中から溢れるように流れ出す=福永。吹けばひとかどの名手。吹くような息を繰り返す渡辺)。月夜の海辺の岩によりかかって笛を吹きたいようなロマンティックな気分=大庭。圀哓10と笛を吹き鳴らす福永。笛を鳴らす(ぴいぴい。ビリビリビリッと)。かすれた笛のような呼吸音をたてて死ぬ=黒岩。こわれた笛のような泣き声が断続的に聞こえる=柴田翔。水品の笛のような鹿の声宮沢。内心の憤りがたちまち唇を押し開け笛のような息と共に外に溢れ出る"岸田。泣き声にひゅうひゅうと笛のような音が混じる=束野。はきだしていた息が逆流し喉の奥で壊れた笛のような音をたてる=安部。明防ぎりが笛のように唇から逆畑にる=野上。大気を鋭い笛のように裂いて弾丸が頭上を飛び交う光瀬。痰たんがからんで笛のように聞こえる悲鳴"真継。のどが笛のようにビイビイ鳴る=灰谷。水を吸いこんだ笛のように震える声"小池、笛のように鳴る(風がひょうひょうと巨大な"日野。風が絶え間なく=光源)。遠い流れの向こうから聞こえてくる草笛の音のような甘酸っぱい感傷の情の趣横光。笹笛を吹くような悲鳴"平岩。軽快なフルートのメロディー。流麗なフルートの調べ。ホイッスルをけたたましく鳴らす。けたたましくホイッスルを吹く。▼笛の音(哀調を帯びた。妙なる。院々いらたる)。笛の音色に耳を澄ませる。笛の音が(嫋々にいらと響く。隙もる風のように啾々しいうと障子紙に泣きすがってくる=吉川。野面を煽々とうねりながら渡っていく"小松左。ゆるやかに流れる=辻井)。捕り方の吹き鳴らす笛の音が響く高橋克。 <163> # う **ふきならす【吹き鳴らす】** ▼吹き鳴らす(風が空を。管楽器を。尺八を。ハーモニカを。笛を。ほら貝を。らっばを。トランペットを)。吹奏する(行進曲を。国歌を。マーチを)。 **ふしまわし【節回し】** ▼節回し(センチメンタルな。哀切をきわめた)。大げさな節回しで歌う。重松。小節のきいた歌い方。小節を回す。 **みんよう【民謡】** 民謡の踊りの群れへ分け入る三局。民謡を(口ずさむ。採録する。朗々と歌う)。小節をきかせて民謡を歌う。音頭を(歌う。踊る)。渋い喉で木遣りを聞かせてくれる三浦哲。 **メロディー** 訴えるような嘆くような独特のメロディー佐多。メロディーが口をついて出る。耳の奥でメロディーが鳴る。生きもののようなメロディーが脈打つ=五木。詞にメロディーをつける。古い歌のメロディーを懐かしむ。▼山調(厳かな。明るい)。調べが耳に流れ込む。玲瓏ふふとした調べが流れる人間。▼旋律(少し哀調を帯びた。強烈な頭が割れるような“黒岩)。旋律が耳に残る。チェロの旋律が店内に流れている夢枕。夢見るような旋律が個性的な美しさで隅々にまで鉍貼りめられる=福氷。軍歌の旋律をまき散らす。日本の子守唄そっくりの物悲しさを帯びた韻律藤枝。谷音が天の旋律のように心を魅了する"中河。お経のように節がついた口調!向田。歌うようにふしをつけて言う~阿部、勝手な節をつける。 **もちうた【持ち獣】** はつらつとした楽しい持ち歌"中島み。持ち歌が(多い。少ない)。持ち歌を歌う。レパートリーが広い。レパートリーを増やす。 **ようきょく【謡曲】** 謡曲を(謳う。うなる。郷う)。謡いたの稽古をする。謡いたを(一くさり謡うたう。朗吟する)。▼謳う(さびのある美しい声調で"山本周。腹の底から唸うなるように今来)。 **らっぱ【喇叭】** 真鍮礼ちの喇叭の響きのように鳴り渡る熱帯の太陽三島。廃々にうたる喇叭の音が起こる柴田逑。馭者いいが伸びやかにらっばを吹く。天使の吹き鳴らす喇叭のような笑い声=井上ひ。両手を唇に喇叭のようにあてて呼ぶ。林美。 **リズム** ピタピタといつまでもつづく雨垂れのようなリズム"尾辻。リズムが狂ったように激しくなる=向田。仕事にリズムが出てくる。うまいリズムで展開する。波が単調なリズムで浜辺に打ち寄せている=石坂。リズムに(合わせて踊る。乗って踊る。ぴったりと合う)。リズムを取って足を運ぶ。曲に合わせてリズムを取る。小気味よいリズムを作り出す。▼リズムを刻む(指が軽やかに。一定の。メトロノームが規則的な辻仁)。仕事のリズムが平常に戻る。仕事のリズムを身につける。リズム感にあふれる文章。足拍子にあわせてはやしたてる。▼韻律(詩の。短歌の。物悲しさを帯びた)。手拍子に合わせて手を振り足を出す。しゃんしゃん手拍子をする。▼拍子を取る(体全体で。腰で)。確かな律動が腹に響く。律動的なダンス。リズミカルに(とんとんとんと切る。ベダルを踏み続ける)。音がリズミカルに聞こえる。敷き石の上をリズミカルに跳び歩く。機はたを織る音がリズミカルに響く。太鼓の音に声がリズミカルに乗る=辺見。 **ろうえい【朗詠】** 朗詠する(漢詩を。詩吟を。詩を)。詩吟をうなる。▼吟詠する(漢詩を。情感を)。吟じる(詩吟を。詩を。朗々と。途切れ途切れに)。漢詩を朗吟する。▼朗唱する(漢詩を。詩吟を。和歌を)。 <164> # う **うたがい【疑い】** ▼疑い(根も葉もない。何の根拠もない)。疑いが(頭をもたげる。疑いを呼ぶ。心に萌す。頭の隅に生じる。否定しがたいものとなる。胸の中に広がる。護謨移封以のように時が経つとまたもとにかえる徳田。八方から胸をしめつけて来る=石川)。かすかな疑いがひらめく。偽造の疑いが濃い。自分に疑いがかかるのを恐れる。胸に小さな疑いが広がる。灰色を帯びた疑いが脳裏をかすめる=阿刀田。殺人の疑いで逮捕する。疑いに満ちた視線。疑いの目を向ける。かすかな疑いの影が走る。露骨に疑いの眼差しを投げつける。それからそれへと同じ幹から疑いのっるが伸びて際限がなくなる=獅子。わずかの疑いも見逃さない。疑いを胸一つに畳む。辛うじて疑いを逃れる。多少の疑いをいだく。ますます疑いを深くする。▼疑いを持つ(根本的な。一抹の)。疑懼さくが(頭をもたげる。心の奥に潜む)。嫌疑が(解ける。晴れる。深まる)。容疑が(かかる。晴れる)。容疑を晴らす。否認する)。疑心が(頭をもたげる。際限なく増殖する。次第に膨らんでいく。理性を凌駕する)。疑心の(渦がひたひたと拡がる=本庄。真っ只中欲綻へ放り出される=綾辻)。 **うたがう【疑う】** ▼疑う(頭の程度を。あるか否かを。一瞬目を。二人の仲を。身の潔白を。むやみに人を。紅葉を錦と。目の錯覚かと。本音かどうかを。嘘ではないかと。気のせいではないかと。夢ではないか狐につままれたのではないかと、われと我が身の嬉しさを「永井荷)。疑う気持ちが芽生える。疑うに足る十分な理由がある。殴りかかってくるのではないかと疑うほどの剣幕=原田宗。頭から疑ってかかる必要がある。嘘ではないかと勘繰る。疑問を挟む。鼎跡の軽重を問う渡辺。死因に腑に落ちない点がある。妥当性をいぶかしむ。泥棒を見るような眼付き小島。頭の奥に灰色の霧が渦巻く=小林久。疑うような目を向ける。耳を疑うような話。どこから声を出してんのかと疑うような猫かぶり声有川。眼を疑うような好青年=石川。いぶかる(訪問の目的を。なぜ姿を見せないかと)。いぶかるような視線を投げる=安部。疑る・疑問視する(効果を。即効性を)。心に(腹を。人を)。疑問視する(効果を。即効性を)。疑問符を抱える"貫井。疑い深い(態度で接する。目で眺める)。疑い深げな眼差し。疑い深げにじっと見る。疑り深い(眼差し。目で見る。役人)。疑問符がつく(資質に。指導力に。統治能力に)。 **うたがわしい【疑わしい】** ▼疑わしい(一流かどうか。極めて。真実かどうか。できるかどうか)。疑わしい点が見つかる。嘘と本当がゴチャゴチャになってあたりのものがみな疑わしく見える!安岡。疑わしげな(目を向ける。目つきで眺める)。疑わしげに(口をはさむ。尋ねる)。疑わしそうな視線を向ける。さも疑わしそうにじろじろ見る。額面通りに取れる話ではない。疑義が生じる。重大な疑義がある。疑点が残る。執念深く疑点を探る。記事を眉唾で読む。眉唾の感を与える。眉に唾をつけて(聞く。読む)。眉唾臭い話。眉唾物の(唸。話)。ホントかなと何度も眉にツバしたくなるくらい=開高。 **うたがわない【疑わない】** ▼疑わない(毛筋ほども。信じて。少しも。すご礼も。誰一人。つゆほども。微座ふじも。夢にも。つゆいささかも)。疑いのない真理。疑いはいささかもない。一点の疑いもない。疑いもなく(最善の方法。信じ込む)。何の疑いもなく承諾する。疑いようのない事実。もはや疑うことはできない。およそ人を疑うことを知らない。無実をこれっぽっちも疑っていない。みだりに人を疑ってはいけない。何の疑心もない。疑ったためしがない。何の疑念も持たない。腹ちりほども疑問に思わない=松本。一点の疑問もない。ゆめゆめ(疑うなかれ。疑ってはならない)。余地がない(疑問の。霧がはれて山の姿がハッキリ見え出すように疑う石坂)。 **うたがわれる【疑われる】** ▼疑われる(改竄紛いが。金の出所が。関与が。常習性が。隠蔽を。深酒を。不忠を。下手に言い訳するとよけい)。まず疑われる心配はない。疑われても(仕方がない。やむを得ない)。疑いをかけられる(あらぬ。つまらない。人殺しの)。余計な疑いを持たれる。能力に深刻な疑問符が突きつけられる。謂ぃわれのない容疑をかけられる。痛くもない腹を探られる!高橋冶。病まぬ腹を疑られる。嫌疑がかかる。犯罪の嫌疑を受ける。身に露ほどの覚えもない嫌疑をかけられる=柴田泌。泥棒呼ばわりは心外。泥棒呼ばわりをされて黙っている法があるか=三好意。人を泥棒呼ばわりする。 **かいぎ【懐疑】** ▼懐疑(漠然たる。青年の感傷的な)。懐かいぎ疑が(起こる。きざす。芽生える)。懐疑と弁明の間を迷児びぃのように行き戻りする=高橋和。懐疑に陥る。かつての矜持を喪失し懐疑にくれて彷徨うしながら老いた浦島のように漂泊する萩原朔。懐疑の目を向ける。シニカルな懐疑の鬼"中村真。開放的な懷疑を知らぬ精神の美しさ=中村真。▼懐疑する(社会制度を。宗教思想を。戦争の前途を)。懐疑的に口を挟む。 **かくしん【確信】** 確信が(祈りに変わる。心の底からかくしん起こってくる。胸いっぱいに広がる。密雲から太陽がおどり出たように意識を明るく照らす=加賀)。疑いが徐々に確信に変わっていく。思いが確信にまで高まる。思いつきが確信に近いものになる。予言者のように確信にみちて物語る=高橋和。確信に近い(思いを抱く。予感)。確信に満ちた(言い方。態度)。確信を(裏付ける根拠。こめてきっぱりと言う。相手の胸にも植えようとする熱心な語気"大佛。心の奥深く養う菊池)。間違いないという確信を得る。▼確信する(合格を。勝利を。成功を。無罪を。九分通り成功するのを)。必ずうまくいくと確信するまでは決して自分から動かない=束野。確信ありげな(口調。態度。ふりをする)。確信ありげに(言う。豪語する。答える。主張する)。 <165> # う **かしん【過信】** 自己の才能に対する無反省な過信=中島災。過信する(科学を。才能を。自分の能力を。成績を。力を)。度外れた自己過信。鳥過剰を悔いる。 **ぎしんあんき【疑心暗鬼】** 地鳴りのような疑心暗鬼=常盤。疑心暗鬼が広がる。疑心暗鬼に(陥る。とらわれる。なっていらいらする)。疑心暗鬼の中に取り残される。確信が持てない。 **ぎねん【疑念】** 容易に拭い去りがたい疑念。疑念が(頭に浮かぶ。頭をもたげる。不安を生む。胸の底に残る。心にわだかまる。心の中でくすぶる。ふっと頭をかすめる。恐怖にすり替わる=横山)。新たな疑念が生まれる。すべての疑念が霧散する。脳裏に疑念が広がる。胸の内に疑念が湧き起こる。軀炒。の底に小さな点のように生じた疑念がしだいに大きくなっていく村松。どす黒い疑念が鎌首をもたげる=小林久。疑念が胸に(去来する。湧く)。疑念に(駆られる。取りつかれる)。怒りと疑念に胸を咬ままれる=勝目。疑念のこもった目を向ける=東野。嵐のような疑念の渦に襲われる=高村茂。タールのように粘つく疑念の海に放り出される荻野。疑念を(いだくに足る事実。おくびにも出さない)。かねて疑念をいだいている。死因に疑念を持つ。心に疑念が(浮かぶ。走る)。疑団が限りなく広がる。胸に鬱結した疑団が幾らもある二葉亭。 **ぎもん【疑問】** 得体の知れない雲のようなものの上を歩くのに似ている疑問鷺沢。疑問が(頭をもたげる。顔に出る。体に充満する。心に浮かぶ。胸に巣くう。頭の隅をかすめる。たちまち氷解する。次々に襲ってくる。雲のように湧く=獅子。小さく縮んでコロコロに固まってボケットにしまえるくらいになる!尾辻。怒滹沱とのように押し寄せる―池田。沼に浮かんでくるどす汚い水泡のように意識に浮かび上がってくる=遠藤)。頭の中で疑問が渦巻く。頭の中に疑問が行き交う。新たな疑問が生じる。効果に疑問がある。さまざまな疑問が噴き上げてくる。日毎に疑問が深まる。まだまだ多くの疑問が残る。曇った硝子の表面がみるみる澄明になっていくみたいに疑問が解ける=松本。心の底を棒ふらのような微小な疑問が閃心。き過ぎる=宮本百。疑問が心の(底でくすぶり続ける。片隅に引っかかる"和久)。疑問が心を(曇らせる。引き裂く)。疑問が胸の(底で摇曳いする。底から浮上してくる)。疑問が胸を(染める。よぎる。重苦しく圧迫する)。疑問に思っていることを口に出す。最初の疑問に立ち戻る。常々疑問に思っている。解きかねる疑問に口を引き結ぶ。はなはだ疑問に思う。数多くの疑問に答えがしっくりと当てはまる=鈴木光。疑問の(声をあげる。言葉をぶつける)。空しい疑問ばかりが残る=福永。疑問を(胸にいだく。できるだけ遠くに押しやる。解決することはさしあたって不可能!南条)。穏やかに疑問を述べる。実現性に疑問を示す。なおいくらか疑問を残す。何にも疑問を感じない。能力に疑問をいだく。胸に引っかかった疑問を吐き出す。定説とされることに疑問をつきつける=高橋泊。内心の疑問をずばりと言い当てられてますます肩が縮む有川。疑問が脳裏を(かすめる。よぎる)。素朴な疑問が湧く。素朴な疑問を口にする。 **ぎわく【疑惑】** 疑惑が(頭をもたげる。憤りに変わる。一応晴れる。心にくすぶる。心を横切る。憎悪に変じる。闇に葬られる。頭いっぱいに広がる。頭の片恥を走る。さらに拡大される。邪推でないことを確信しする。ちらと脳裏をかすめる。はっきりした形をとる。わざと波立つ小林久。稲妻のようにひらめく森瑜。閃光さんのように頭を掠かすめる菊池。胸に色濃く貼りつく小林久。胸の奥深くに根を下ろす=有栖川。胸の底でくすぶる=加賀)。心を暗い疑惑がかすめる。次々と疑惑が出てくる。得体の知れない疑惑が蠢めにく=小林久。重苦しい疑惑が心の空隙に忍び込んでくる=加賀。かすかにくすぶっていた疑惑が軀炒。の奥でふくれあがる"村松。黒い疑惑が胸の中にむらくものように湧く。胡桃沢。刺すような疑惑が胸の底にやる=加賀。次から次へと疑惑が胸の中に広がっていく"高橋克。胸にゾッとするような疑惑が湧きあがる―藤枝。胸の中に疑惑が芽生える=藤沢。疑惑で目つきが尖る。強い疑惑にとらわれる。心がひとつの疑惑に向かってぐいと傾斜する小林久。疑惑の(糸をたぐる。視線を浴びる。目を向ける。愉郭をつかむ。愉を広げる。宙吊り状態では何にも考えられない=島田。フィルターを通して見る=小林久)。胸が疑惑のためにふさがれる=山本周。疑惑を(打ち消すことができない。そのまま放置しておく。胸に閉じ込めておく)。忌まわしい疑惑を一掃する。漠然と疑惑をいだく。疑惑解明を急ぐ。 **さいぎ【猜疑】** 猜疑が胸をえぐる。憎悪や猜疑が膿、うみのように流れ出る=真継。猜疑にみちて用心深く言う大江。心が猜疑に凍りつく。目が猶疑に満ちた光を帯びる。猜疑の(鬼になる。目で眺める。眼差しを向ける。網に引っかかる“あさの)。蒼ぁぉい猜疑の降るとをあげてじっと見つめる石川。けわしい眼に消えがたい猶疑の念がやどる=真継。猜疑を宿しているような暗い眼藤沢。相互に猶疑しあう無気力な鳥合いにの衆と化す=高橋知。目に猶疑心が去来する。年寄りくさい猜疑心が目尻の嫉しゃににじみ出る=武田炎。日を追って猜疑心が大きく拡がる=筒井。目の光に人を見たら泥棒と思うような猜疑心が宿る=有吉。猶疑心の強い冷たい性格=船山。 <166> # う **じしん【自信】** ▼自信(世間の目に平然と立ち向かえるだけの瀬戸内。どんなむずかしい役でも立派にやってみせるという深沢)。自信が(顔と体全体にあふれている。奥底深く沈潜している=太宰)。顔に自信が光る。傷ついた自信が償われる。崩れかけた自信が復活する。まんざら自信がないわけではない。よほど自信があるらしい。運の悪さには自信がある三浦し。たつぶりとした自信が胸を温める=石川。▼自信がある(足腰に。腕に。鑑賞眼に。仕事に。判断に。いささか。勝つ。勝負に対する)。自信に(娜いて冴え冴えとした気分。支えられた鋼のような映張光瀬)。自分の言うことは絶対正しいという自信に満ちた言い方長崎。胸のすくような自信に充ちた愉たのしさ=芝木。自信のほどを(示す。匂わせる。表情に見せる)。失っていた自信を取り戻す。仕上がりに自信を持っている。▼自信を持つ(自分の実力に。地球よりも大きい!笹沢)。自信をもって(答える。主張する。断言するように一語一語に力をこめてはっきり言う=遠藤)。意を強くする。この世に怖いものはない。自分の見る目が正しいと思い込む"高橋克。私の目に間違いはない。迷いも不安もない。自信ありげな笑いを浮かべる。自信ありげに(答える。振る源う)。いささか腕に覚えのある分野内橋。▼見得を切る(昂然心心と。思い入れたっぷりに)。 **じしんがない【自信がない】** ▼自信がない(腕に。体力に。容姿に。最後まで聞く。できるかどうか。果たして断れるかどうか)。だんだん自信がなくなる。・葉がかすかにふるえて自信がなさそうに響く“石坂。自信が(揺らぐ。憑っき物でも落ちたようにおちる=井上站)。それまでの実績と自信が音を立てて崩れていく。 **じにん【自任】** ▼自任する(第一人者と。ベテランだと。天才をもって。大政治家をもって。名物教授をもって)。▼自認する(あわて者を。罪を。筆不精を。すれっからしを。熱心なクリスチャンを)。任じる(自ら芸術家をもって。自ら専門家をもって。自ら俗物をもって獅子)。第一人者を以もって任じている=舟橋。 **しんじこむ【信じ込む】** 「信じ込む(一途に。一方的に。かたくなに。勝手に。疑いなく。てんから。頭から丸のみに)。開きかじりの評判を鵜呑ぅのみに信じこむ。安岡。思い込みが激しい。根拠のない思い込みにとらわれる。一人で勝手に思い込む。妄信する(軽率に。ひたすら。わけも分からず)。妄信的に恐怖する。 **しんじない【信じない】** 「信じない(てんから。頭から馬鹿にして=瀬戸内)。誰も彼も頭から信じていない。信じてはいない(完全に。露ほども)。爪の垢ぁかほども信用していない"井上ひ。信用しない(一言力に)。自信は(毛ほどもない。まるでない)。さしもの天狗にんの鼻も折れまがる=杉本。すっかり自信をなくす。記憶に自信を喪失している老人辻爽。自信を失って子供のようにしおれる=開高。自信喪失に陥る。自信なげに(うつむく。答える。下を向く)。自信なさそうな素振り。いかにも自信なさそうな態度。 **じしんたっぷり【自信たっぷり】** 自信たっぷりな(言い方。答え)。自信たっぷりに(うなずく。断言する。胸を張る)。自信たっぷりの(声で答える。図々しい男)。自信にあふれた(言葉。微笑)。自信に満ちた(足どり。言い方。笑顔。顔。語り口。行動。態度)。日に日に自信に満ちてくる。自信満々たる(口調。早熟の天才児。面魂)。自信満々で立ち向かう。自信満々に胸を反らす。自信満々の(面持ち。顔つき。振る舞い)。声が自信に満ちている。態度が自信に満ち満ちている。 **しんきょう【信教】** はなから人間を=畑村)。不信心な人。不信心を悔いる。くれぐれも心を許してはならない。 **しんじょう【信条】** ▼信条(政治的な。生活上の。是々非々の中正な。多種多様な宗教的)。信条がぐらぐらと揺れる。信条に反する。哲学と信条はかくも人を強くする=池澤。信条を曲げる。座右の銘。 **しんじられない【信じられない】** 信じられない(自分で自分が。自分の耳が。自分の目が。悪い夢でも見ているように森村)。信じられないことが現実に起こる。前夜の大雪が信じられないほど空が青く晴れ渡る=連城。とても信じられない壮大なばかばかしい嘘三島。信じられないとでもいうように首を振る=浅川。信じられないほどの数の蠅はぇがワッと飛び立つ=景山。にわかには信じがたい。信じがたい目で見つめる。信じがたいほど変わり果てる。▼信じる気になれない(到底。相手の言葉を素直に)。端はなから信じるわけに行かない。▼疑う(一瞬自分の目を=眉村。しばしわが眼を=黒石)。自分の眼を疑わざるをえない=小島。▼信用できない(気が多くて。何となく)。できない(容易に信じることが。にわかに信じることは)。あまりに話ができすぎている。頬をつねる。信じられないというように忙ゃぁしく瞬きを続ける=笹沢。自分の眼を疑いたくなるような光景"干刈。我と我が目を疑う。▼耳を疑う(一瞬。自分の。気のせいではないかと)。耳を疑るほどうまい話"深沢。 **しんじる【信じる】** 信じる(相手の言を。占いを。神の教えを。神を。自分の才能を。勝利を。成功を。一途に。言葉を素直に。全面的に。素朴に。一から十まで。固く。ひたすら。本気で。本人の言い分を。無限の可能性を。観測結果をそのまま)。信じる心が篤い。信じるに(足る男。足る根拠)。信じている(今でも。心中深く。長いこと。幽霊の存在を半ば"星)。頭から信じてかかる。信する者は救われる。一筋に信じ抜く。一点の疑いも(入れない。持っていない)。▼疑いもさしはさまない(いささかの。少しの)。疑いを入れない。▼疑いを持たない(いささかも。少しも)。疑うべくもない。疑うことを知らない。さして疑問も抱かない。何の疑問もなく受け入れる。毛筋ほどの疑惑も持たない=新田。露ほどの疑いも抱かない"高村光。何の疑いも(いだかない。さしはさまない太宰)。てっきり本当だと思う。味方と信じて疑わない。ゆめ他人を信じてはなりませぬ。▼真に受ける(言ったことを。お世辞を。冗談を。話を。うかうかと)。 <167> # う **しんねん【信念】** 信念(怖れを知らぬ不抜の"加藤。正しい判断に基づく=白井)。信念が(根本から崩れる。絶えず揺すぶられる。びくともしない)。信念に(揺るぎがない。もとづいて行動する。輝いている黒い瞳”獅子)。自己の信念に従う。信念を持って頑張り続ける。自分の信念を貫く。耳を覆って鐘を盗む。 **しんぴょうせい【信憑性】** 信憑性が高い。証言に信憑性がある。▼信憑性が高まる(ねたの。話の)。内容の信憑性に自信を持てない=束野。信憑性の低い情報の裏取りを命じられる=横山。 **しんぼう【信奉】** 信忝する(徴臭いごい神話を。共産主義を。共和制を。資本主義を。社会主義を。社会の掟を。宗教を。自由主義を)。 **しんよう【信用】** 信用が(高まる。しっかり地に着く)。重役の信用が厚い。営々として培ってきた信用が一挙に地に落ちる=里密。若いに似ず上の者からも下の者からも信用される=平岩。信用できる相棒。信用の置ける(上司。友達。仲間。部下)。確実に信用の置ける人間。信用を博する。社会的信用を築く。世間の信用を集める。絶大な信用を得る。約束に信用を置く。奈落の底にまで失墜している信用を一挙に回復する司馬。▼信用する(言い分を。自分の娘を。全面的に。頭から。一にも二にも。額面どおり。すっかり。医者の言うことを)。人をすぐに信用してしまう。暖簾ぉにかかわる。信用力が高い。 **しんようがない【信用がない】** 信用がない(生憎はい。さっぱり)。信用が(地に落ちる。がた落ちになる。根底からぐらつく)。社会的信用が丸つぶれとなる。酔っ払いの言動がいかに信用がおけないくらいは知っている=立原。信用失墜が甚だしい。悪に気づいて見ぬふりをするような男は信用できない=さだ。二股膏薬に於けの信用できない人。信用に傷がつく。信用力が低い。信用を(損ねる。台なしにする。ゼロに叩き落とす)。一挙に信用を落とす。客の信用を失う。社会的な信用をなくす。信憑性礼れいが低い。証拠に信憑性が乏しい。信頼が(刻々失われる。失墜する。地に落ちる。なくなる。崩壊する。揺らぐ。根底から覆される)。信頼回復がおぼつかない。信頼性が低い。信頼性に欠ける情報。信頼を(失う。裏切る。根底から崩壊させる)。全面的な信頼を置けない。信を失う。暖簾のれに傷が付く。 **しんらい【信頼】** 信頼が置ける。上司や部下の信頼が厚い。人々の信頼が厚い。信頼に(価する。満ちた表情。報いる。全身を投げ出す)。信頼の度合いが深まる。信頼の置ける(上司。人物。部下)。信頼を(つなぎとめる。寄せる)。全面的に信頼を置く。地に落ちた信頼を取り戻す。▼信頼を得る(国民の。従業員の。絶大の)。男を信頼する。信頼するに足る人。かねがね疑問なく信頼している"松本。信頼できる(出所。筋の情報。相談相手。典拠)。確実に信頼できる記録。最も信頼できる人間。より信頼できる情報。人々から信頼される。信頼回復に向かう。信頼関係が(できる。揺らぐ)。強い信頼関係で結ばれている。信頼関係に(傷がつく。ひびが入る)。信頼関係を深める。信頼感を(与える。高める)。信頼性が高い。高い信頼性が要求される。覚えがめでたい(親分の。宮中での。社長の。所長の。殿様の)。部下からの傷ぶ厚い。信を(置く。寄せる)。信を得る(国民の。・有旅者の)。 **はんしんはんぎ【半信半疑】** 半信半疑で話を聞く。半信半疑ながら心当てにする=木山。半信半疑に聞き返す。半信半疑の(気持ちを抱く。眼差しを注ぐ)。 **ふしん【不信】** ずしりとした重みでひろがってゆく不信永井路。不信が(頭をもたげる。極に達する。頂点に達する)。女に対する不信が芽生える。不信の念をいだく。人間同士を不信の淵へ陥れる壺井。不信を隠さずに言う。愛に隣り合わせた不信を見つめて生きる"永井路。頑固な薬不信に陥る三浦哲。人間不信のどん底にある。警察に対する根強い不信感。不信感が(根強い。氷解する)。 **めいしん【迷信】** 迷信が(はびこる。猛威を振るう)。一概に迷信だと思うわけにはいかない“阿川弘。非科学的で奇怪な迷信として徹底的に排斥せいする人間。あながち迷信とも言えない。小さい迷信なら愛嬌にもなるが大きな迷信は最悪の赤となる!舟橋。迷信にかぶれる。単なる迷信にすぎない。古い迷信にとらわれる。迷信的崇拝をさらけ出す。ありとあらゆる迷信めいた思いに苦しめられる=古井。俗信に惑わされる。非科学的な考え方。 **ようぎしゃ【容疑者】** 容疑者が(新たに浮かぶ。出頭する。逃走する。捜査線上に浮かぶ)。めぼしい容疑者がいない。容疑者と目される人物。容疑者に(仕立て上げる。祭り上げられる)。容疑者の(首実検をする。目星がつく。家を家宅捜索する。リストに加える)。容疑者を(書類送検する。罠ゃなにかける)。被疑者を取り調べる。情で被疑者を落とす。 **わがめ【我が目】** 我が目を信じる。思いがけない幸福な出会いにわが目を疑う三島。わが目を疑うほどの虹の橋、竹西。この目で見るまで信じない。この目でしっかり(確かめる。見届ける)。この目に狂いはない。 <168> # う **いる【射る」** 射る(愛が胸を。炯眼好心人を。矢をつがえて。読みが見事に正箇といを)。▼目を射る(強烈な光が。閃光ざんが)。的を射た表現。▼的を射ている(質問が。指摘が)。射るような視線にさらされる=安岡。陽射しが瞼を射るように強い!篠田。限が射るように光る=横光。射かける(矢を。矢継ぎ早に。太陽が光を燦々さんと)。▼射込む(眼光を。標的に。ずばりと急所へ矢を徳永)。じろりと視線を射付ける。 **うたれる【撃たれる】** 頭部をビストルで撃たれる。撃たれて死ぬ(拳銃で胸を。ピストルで)。銃撃で死ぬ。銃弾を浴びる。▼倒れる(銃弾に。敵弾に)。弾丸が心臓を貫通する。弾丸に当たって死ぬ。弾丸を食らう。蜂の巣になる。▼射抜かれる(心臓を。鋭い視線に)。銃弾が一発撃ちこまれる。弾が(頭に当たる。体を貫通する。体内に留まる。腹に当たる。眉間を貫く。胸に当たる。心臓に命中する。皮膚にめりこむ)。弾に当たって死ぬ。弾を食らう。 **うちまくる【撃ちまくる】** ▼撃ちまくる(機関銃を。自動小銃を。やみくもに。撃って撃って。この時とばかり)。▼撃つ(続けざまに。ひっきりなしに)。大砲小銃の釣瓶…。打ち。鉄砲隊が釣瓶撃ちに銃弾を浴びせかける=柴田剣。乱射する(機関銃を。マシンガンを)。連射する(機関銃を。マシンガンを)。 **うつ【撃つ】** ▼撃つ(腰だめに銃を。至近距離から。ずどんと大砲を。木を標的にして。腹ばいになって水平に泉優)。撃ち合う(機関銃を。大砲を。鉄砲を。ビストルを。マシンガンを)。ずどんと弾丸が飛び出す。一斉に鉄砲を撃ちかける。▼撃ち込む(機関銃を。銃弾を。小銃を。大砲を。弾を。弾丸を。砲弾を。矢を。ロケット砲を)。弾丸をすべて撃ちつくす。撃ち抜く(銃弾が腿ももを。心臓を。脳天を。ハートを)。機関銃を威嚇射撃する。一斉射撃の砲列を敷く。一斉射撃を浴びせかける。慎重に狙いをつけて射撃する。銃撃戦で深手を負う。すさまじい銃撃戦の末に殺される"船戸。銃撃喰を伴う救出作戦。銃口に硝煙が漂っている。硝煙の臭いが鼻を衝っく。硝煙反応が認められる。トリガーを(絞る。引く)。▼発砲する(海賊が。警官が。護衛艦が)。引き金を絞る。拳銃の引き金をためらわずに引く。火を噴く(機銃が。銃が)。肩を拳銃でぶち抜く。ぶっ放す(ずどんと一発。ここぞとばかり大砲を。勘を頼りに腰だめで)。砲煙が山野に満ちる。ミサイルを撃ち込む。連射する)。 **きかんじゅう【機関銃】** 機関銃より早くカメラのシャッターを押す―北。機関銃を撃ち合うように喋る"森境。機関銃のような早口でしゃべりまくる=新田。兵士が機関銃座に就く。マシンガンを撃ち続ける。 **きじゅうそうしゃ【機銃掃射】** 機銃掃射が空間に穴をあけながら過ぎる=辻井。ボルシェが機銃掃射のような爆発音を癖とかせながら走りだす森境。鳥が機銃掃射のように鳴きまくる=村上春。 **けんじゅう【拳銃】** 拳銃が(火を噴く。床に転がる)。拳銃に手を伸ばす。拳銃の(知識に乏しい。安全装置を外す。撃ち方を練習する。森音が耳につく)。拳銃を(ベルトに挑む。両手で構える。ホルスターにしまう。脇腹に突きつける。袖口にこすりつけて磨くかんべ)。ボケットから拳銃を取り出す。枕の下に浴銃を忍ばせる。拳銃の腕を買われる藤本。切符切り器を拳銃のようにクルクルと回転させる=伊集院。しゃべるコトバが早射ち二挺拳銃にちはいうけみたいにだれおちる=田辺。撃鉄を起こす。短銃をずどんと放つ。ピストルで窓つようにバックファイアの音をさせる=中上。ピストルの音が耳に響く。ビストルを(空に向かって放つ。ホルスターに収める)。 **じゅう【銃】** 銃に実弾を込める。銃の(筒先を向ける。先で小突かれる。射程外に逃れる)。銃を(肩に担ぐ。水平に構える。手に取る。持って戦う。頭に突きつける。構えて四方へ目を配る。腰だめに構える)。肩の高さに銃を構える。空に向けて銃を放つ。銃のように鋭くもをかつぐ=大江。銃床で顔面を殴り続ける。銃床を(肩にあてる。脇の下にあてる)。銃身に消音器をつける。銃把で力任せに殴る。銃把の弾倉を替える。 **じゅうこう【銃口】** 銃口が火を噴く。銃口から煙が立つ。銃口を(額に押しつける。向けられても従容としている)。こめかみに銃口をあてる。鼻先に銃口を突きつける。脇腹に銃口を押し当てる。 **じゅうだん【銃弾】** 銃弾が(体を逸くれる。全身をかすめる。床板を貫通する。雨あられと降り注ぐ=有川。ミシンで縫うように座席を撃ち抜いていくなかにし)。あられのような銃弾がさっと街頭を払う美濃部。蜂の巣状に銃弾が撃ちこまれている=辺見。銃弾で蜂の巣にされる。銃弾の雨をたくみにかいくぐる"大原。銃弾を(見舞う。驟雨礼沙のように頭上へ浴びせかける柴田剣。蜂の巣のように浴びる 藤本)。散弾が命中する。散弾をほじくり出す。実弾の入ったビストル。実弾を装填する。薬莢いつきが空中を舞う。空の薬莢がばらばらと落ちてくる。 **しょうじゅう【小銃】** 小銃が三挺に礼ちずつ叉銃は礼して立てられる=津本。豆を妙ぃるような小銃の散発する音"今取。小銃を(肩にかける。手にした警備兵)。散弾銃を撃つ。ライフルに弾をこめる。ライフルの(腕を買われる。引き金を引く)。猟銃を構える。 **たいほう【大砲】** 大砲を轟然彩りととどろかせる。空砲を鳴らす。どかんどかんと空砲を放つ。砲身を(砲架に載せる。攻撃目標に向ける)。砲塔が火を噴く。戦車が砲塔をめぐらせる。砲門を開く。砲列が火を噴く。 <169> **だんがん【弾丸】** 弾丸が(雨飛する。的に当たる。びゅんびゅん飛んでくる)。大気を鋭い笛のように裂いて弾丸が頭上を飛び交う光瀬。肩に弾丸をぶち込む。死体から弾丸を摘出する。弾丸のように(直進する。走り着く。行って弾丸のように帰ってくる=艘。川鳥幼わがが飛び抜ける=梶井)。弾丸みたいに突進する=連城。銃丸で蜂の巣にされる。弾幕の(中を駆ける。間をかいくぐる)。弾薬が尽きる。弾たまが(木にめり込む。空になるまで撃つ。ぐんぐん弾着を延ばす)。どこから弾が飛んでくるか判ゃからない泉優。弾から銃の種類を割り出す。弾の装填に手間がかかる。弾を(銃に込める。薬室に送り込む)。遺体から弾を摘出する。弾倉に弾を装填する。敵弾がヒュルヒュルと音を立てて頭上を飛び去る=多岐川。 **だんそう【弾倉】** はずみをくらった小さな動物のように弾倉が軽い音で回転する=藤本。実包を弾倉に詰める。弾倉を(回転させる。引き抜く)。弾倉帯を腰に巻く。 **てっぽう【鉄砲】** 鉄砲に弾丸を装填する。鉄砲の台尻で殴る。ヘタな鉄砲も数射ちゃあたる=田辺、鉄砲を肩に担ぐ。やたらにそこらを鉄砲を打つように撮っっす大岡。鳩が豆鉄砲を食らったように目を丸くする池井戸。ずっしりと持ち重りするモデルガン。モデルガンを(改造する。指先でくるくる回す~西木)。 **てっぽうだま【鉄砲玉】** 鉄砲玉の下をくぐる"子母沢。鉄砲玉のように飛び出して行く池波。まっくろなものが、いくかたまりもいくかたまりも鉄砲玉のように川の向うの方へ飛んで行く=宮沢。鉄砲玉みたいに(頭からぶつかっていく=長崎。飛び出したきり帰らない!高橋和)。 **どくや【毒矢】** 毒矢を射る。放つ)。猛毒を塗った吹き矢を射込む=隆。▼赤を塗る(鏃0℃に。矢に)。毒のある言葉の矢を放ち合う森瑞。 **ねらいうち【狙い撃ち】** 「狙い撃ちする(心臓部を。敵を。標的を)。狙い撃つ(背中を。頭部を)。慎重に狙って撃つ。 **はっしゃ【発射】** 発射と同時に遊底が後退して空薬莢跡やっを蹴り出すぃ大藪。▼発射する(魚雷を。弾丸を。花火を。ミサイルを。ロケットを。脇腹に拳銃をあてがって=高木)。かなり近くでバンバンと小銃の発射音がする。辺見。サブマシンガンの発射音が軽快に響く良後。バチンコの球を射出する。 **ほうげき【砲撃】** 砲撃が問断なく続く。砲撃で壁をぶち抜く。砲撃する(軍艦を。敵の陣地を。町を)。砲火で応戦する。砲火を浴びる。砲弾が(島を直撃する。頭上を通過する。ひゅるひると飛んで行く)。分厚い壁が砲弾に撃ち抜かれる。砲弾の雨を降らせる。 **や【矢】** 矢が(弦を放れる。命中する。肩を掠め過ぎる。真一文字に飛ぶ。雨歌分泌ぁと降って来る=隆。黒い弧を画ぇがいて雨のように降りそそぐ=半村。体へふつふつと突き立つ=山本周。ひょろひょろと飛ぶ=飯田)。針鼠りゃのように夥さがしい矢が全身に突き立つ=隆。非難の矢が向けられる=飯田。火のような聖なょい矢が魂に向かって放たれる=中島敦。ルンという音とともに矢が闇に吸いこまれる=飯田。夏々妙っと音をたてて矢が突き刺さる!真継。矢で射るように質問を投げかけてくる=伊坂。矢でも鉄砲でも来いという気分“田辺。矢の催促をする。帰心矢のごとし。急ぐ日脚が矢よりもはやい=石森。雪の群れが矢よりも早く飛び過ぎる=有局。矢を(的に当てる。弓につがえる。ひょうと射放す。突くような急流落語)。輝かしい太陽が光の箭ゃを投げかけてよこす「島尾。刺さった矢を抜く。間髪をおかず、二の矢、三の矢を撃ちこむ=飯田。山上から矢を雨のごとくに注ぐ=中島乳。矢を放つ(続けざまに。社会に向けて)。質問の矢を(浴びせる。放つ)。刀折れ、矢尽きた感じ宮尾。緊急法令を矢のごとく発射する=山田美。矢のような帰心をぐっと抑える=高見浩。華麗な足さばきでボールに追いつき、ファーストに矢のような送球をする=高橋源。鋭い矢のような文章を発表し続ける=佐高。矢のように(切っ先を突き出す」柴田剣。きらめきながら打算が走る=加賀。催促の電話がかかってくる=高橋源。山上へ駆け登る=子母沢。進む時計の針を気にしながら帰途につく=木山)。獲物めがけて飛ぶ矢のように声が放たれる=飯田。思い出が矢のように早く頭の中をひらめき通る!有局。小禽にとの群れが放たれた矢のように飛んでいく=遠藤。視線が矢のように体中に刺さる向田。駿馬んが矢のように駆ける=山手。楽しい時間は矢のように過ぎる=石田衣。鳥が狭い空面を矢のように飛び交う大岡。バイクが矢のように走りだし、もうちょっとで振り落とされるところだった三浦し。光の束が黄金の矢のように一度に飛んでくる=宮沢。舟が矢のように走る=本多除。毎日が矢のように過ぎて行く。塩野。水が矢のように流れる=内田百。無言の声が見えない矢のように体のそこここに突き刺さる=飯田。ハブが矢のように飛びかかってくる=畑。流れ矢に当たって命を落とす。矢玉が飛び交う。矢玉の中を進む。黒曜石の鏃じ。 **ゆみ【弓】** 弓で鳥を射落とす。弓に矢をつがえる。弓を(満々と引き絞って勢いよく放つ。満月のごとくに引き絞ってひょうと放つ=中島敦)。一射必殺の射程距離に的が入るまで満々と弓を引きしぼって待つ=飯田。腹部に弓を張ったような突張感がある萩原発。弓のように(湾曲した浜。しなやかで勁っこい子=落合)。体が弓のようにしないたわむ瀬戸内。身体を弓のようにそらせる=中沢。腰が弓のように曲がる=中島敦。舟が竿さぁを弓のように張って流れを遡って行く=田山。背筋が弓のように反る=勝目。梯子ぶしが弓のようにしなつ奥田。胸を弓のように張る=川端。弓弦のように神経が張りつめる=遠藤。 # 季節 <170> # う **あいらしい【愛らしい】** ▼愛らしい(人目を魅ぃくほと=大庭。柳の枝に遊ぶうぐいすが金粉を散らしたように白洲)。愛らしいおどけた微笑。カナリヤよりももっと愛らしい声で囁く=大庭。田舎娘のような愛らしさのある言い方佐多。目がつぶらで愛くるしい。少し受け口な愛くるしい唇"中。見るからに愛くるしくすがすがしい娘山本周。 **うつくしい【美しい】** 美しい(がくばかりに。目も綾あゃに。均整がとれて。川が空の青さを映して。ひときわ華やかで。悲しいほどに星が"加賀。声を上げたいいくらい五月の新緑が宗田。青い海と空を背景に構成された景色が息をのむほどに明るく=石坂。朝顔の花が友禅染のように=田山。高貴で端正で匂うように倉橋。肌理の細かい長い指が白魚のように『萩原業。そんじょそこらに見かけないほど藤沢。肌が透き通るように笹沢。灯が濡れたように=伊藤整。まばゆいように、武者小路。山も川もおぼろに霞んでひとつにとけ合っている風景が夢のように!白洲)。美しい目がきらきらと輝く。青々とした美しい山肌。様々な美しい花が咲き乱れる。生涯の最も美しい瞬間。すべすべした美しい肌。澄んだ美しい音色。古い歴史の残る美しい港町。満面に美しい笑みを浮かべる。この世のものとも思えぬ美しい景色"なかにし。澄み上がって悲しいほど美しい声=川端。ぞっとするくらい美しい光景・吉本。大輪の花のように美しい女谷崎。魂を揺すられるような美しい曲"灰谷。弾力のある鋼鉄によく戦なぁした革を張ったように滑らかで美しい鉢炒。=柴田剣。黄ばんだ赤茶けた色が泣きたいほど美しい=大江。年月が古い思い出を似ても似つかない美しいものに変える"大庭。はっと足をすくめたほと美しい夕映え=城山。小麦色の皮膚が輝くように美しい少女大佛。みめかたちのすぐれて美しい生まれつき=山本周。燃えるような美しい瞳"中局救。花のような美しい笑い=隆。花のように美しい唇=海音寺。美しく(着飾った女性。整った顔立ち。昇華された思い出。波打った長い髪)。きらびやかに美しく装飾的。一美しくする(恋愛が女を。モラルが人を一層中河)。ばあっと灯がともったように女が美しくなる=丹羽。▶美しく見える(水際立って。ちょっと見には)。錦上花を添える。鈴をふるわすような声真継。宝石をちりばめた王冠のよう。加賀。夜目遠目笠のうち。艶美な舞い姿。可憐れ艶美な花。絢爛けん艶美な彫琢さい。艶麗な(笑顔を作る。情趣。文体)。现魔ごいな(花。文字)。善美を尽くした建物。壮美な(宫殿。姿に心打たれる)。典麗な(アンティーク。花嫁姿。文章)。花も恥じらう(乙女。年頃)。眉目秀麗な青年。見目よく気立てのよい子。幽婉いな(女性。音色。花)。百花妍けんを競う。たくさんの花々が妍を競うように咲き誇る=多岐川。古寺の壮麗な空心。大自然を背景にした壮麗な野外劇。大空いっぱいに立った壮麗な虹河盛。宝塔王殿の壮麗さに眼を奪われる。井上頭。美々しい(行列。言辞。国家目標)。庭にある美々しい前栽さい。美々しく(飾る。装う)。 **うつくしさ【美しさ】** ▼美しさ(清楚ごいな。世に稀まれたな。悪魔のことき。得も言われぬ。自然の成せる。錦絵のような。比類のない。夕景の桜の。息を飲むような。心にしみ入るような。この世のものとは思われぬ。周囲の者を振り返らせるほどの。城下町のしっとりした。ぞくぞくする秘密めいた。はっと心を奪われる。筆舌に尽くしがたい。目の覚めるような。鬼神も魅入りそうな竹西。百合の花にも似た清らかな石坂。甘やかされた愛らしい少女のような引っかかりのない佐多。雨に煙る睡蓮に心の本多秋。絵にも描けない落語。絵はがきでも見るような"高橋克。思わず足を止めて見入るほどの"隆。歌舞伎役者が羽子板の押し絵そのままの永井荷。心の奥まで温められるような山本周。この世の終わりのようななかにし。涼しく刺すような娘の=川端。魂が惹き入れられて行くような福永。バッと花が開いた感じの源氏。花の精と比べても遜色がない=舟橋。晩春から初夏へ移り変わる山里の新緑の=池波。人の心をうたずにはおかない不思議な生き生きとした=梶井。ふるいつきたいほどの色香を湛たたえた=柴田態)。美しさが燃えているような顔"中河。ただですみそうもないハラハラするような美しさがにじみ出る=石坂。透明なゼリーのような弱々しい美しさが女らしい情緒に溢れている=大庭。顔に火花が散るような動物的な美しさがひらめく“石坂。美しさと気品を兼ね備える。美しさに(恍惚にっとなる。磨きがかかる。目を奪われる。酔わされて身体が浮き出しそう~石坂)。上品な美しさに見惚ぃとれる。宝石の美しさに魅了される。心臓が止まるかと思われるほどの美しさに打たれる=玉村。マネキン人形のような美しさに整いすぎている娘=岡本。胸がしびれるような美しさに酔う~石川。倭絵いきの中から抜け出してきたような美しさの若殿と姫!芥川。美しさを(売り物にする。鼻にかける)。全体に落ち着いた美しさを保つ。日毎に美しさを増していく。妖しいまでの美しさをたたえる=奥野。花の美しさを野に咲いたままで愛』でる=火坂。美しさが艶消しとなる。 **うるわしい【麗しい】** 麗しい(而差し。師弟愛の物語。花。夫婦仲)。見目麗しい(女性。美人)。端麗な(姿。横顔。容貌の品のよい老婦人芝木)。容姿端麗な女性。美しい雲佐藤春。念入りに調教した馬のように美しいしい雲佐藤春。念入りに調教した馬のように美しい美麗な(衣装。御殿。礼服を着用する)。染み一つない美麗な肌。▼麗容(富士の。アルブス連山の)。気品高い麗容の人。秀麗な(姿。文章)。富士の秀麗な遠望を楽しむ。秀麗な顔(彫りの深い。痛々しいくらい=海音寺)。豊麗な(顔立ち。詩文。乳房。肉体。美人画。丸顔)。流麗な(言葉に酔う。筆跡。文章。ワルツ。フルートの調べ)。 <171> # う **かっこいい【格好いい】** 颯爽ぞっとしたかっこいい行動。格好のいい唇。格好のよい乳房。見てくれの格好の良さに気を奪われる荒巻。かっこよく(カウンターをとびこえる。羽織を引っかける)。ヒップをかっこよく突きだす。 **かれん【可憐】** 可憐な(紅顔の少年。求愛のジェスチャー1。赤紫のれんげそうの花「飯田。少女が深情けの鬼姿に変貌する=瀬戸内)。小さい指が奇麗に並んで、姉妹たちが肩を並べ合っているように可憐"中河。華奢はな可憐な。無邪気な可憐な恋。花弁が可憐に開く。ボブラの若葉が可憐に微風にそよぐ。花がはずかしそうにうつむいたという風情の女性"戸板。純情可憐な娘。 **かわいい【可愛い】** 可愛い(悲鳴をあげる。あくびを漏らす。子には旅をさせよ。声でキャピキャビ喋る葵。女房の身を案じる高橋克)。▼可愛い(抱きしめてやりたいほど徳永。食べてしまいたいほど=岸田。できの悪い子ほど"富岡、眩暈灬きを覚えるほど谷川)。丸い可愛い目。小柄な可愛い娘。大事な可愛い一人娘。天真爛漫に从もんな可愛い女。ぽっちゃりとした可愛い顔。涙がこぼれるほど可愛い子供"有吉。人形のように可愛い女の子=梅本。まくれ上がったような可愛い上唇=五木。▼可愛い少女(無邪気で。胸が震えるほど"山田太)。可愛く涙ぐましいまでの一途さ萩原来。猫なで声で可愛く言う。軒端やきの小さい氷柱的ちが可愛く光る=川端。鼻の皮が可愛く剣もける=落合。我が子が可愛くてたまらない。▼可愛さ(子供っぽい。少女っぽい)。可愛さあまって憎さ百倍。▼可愛らしい(笑顔があどけなくて、目鼻だちが全て小振りで泉医)。ピンクの可愛らしいワンピース。娘が可愛らしい盛りに育つ。開いていると思わず微笑が浮かぶほど可愛らしい声音『福永。だだっ児のような可愛らしい口調合崎。雛人形紗ぃんのように可愛らしい顔立ち北原。幼女のような可愛らしい老婦人"内海。可愛らしく首をかしげる。頬を可愛らしく膨らませる。リボンが可愛らしく風になびく。可愛くない部下と見なされる。キュートな(赤ちゃん。笑顔。娘)。チャーミングな(笑顔。お嬢さん)。精一杯チャーミングな微笑をご披露する=五木。 **きりょうよし【器量良し】** 標緻よしの女の子。色白で限のばっちりした器量よし"有吉。標緻のいい若侍。▼標緻(町内の小町娘と謳うたわれたほどの里見。どこへ出しても恥ずかしくない"舟橋)。標紋自慢の娘。 **び【美】** 異常と言えるほどのエネルギーに満ちた美野問。魔界の美に耽溺仕込する"江戸川。美の象徴のことき端整な富士山"村松。ヨーロッパの街角に立つ中世の彫刻のような美を湛たたえる女性の顔「辻仁。美が内側からにじみ出てくるような女性藤沢。 **びいしき【美意識】** ▼美意識(鋭利な。繊細な)。天才的な美意識に恵まれる。美感が鋭い。典麗な美的情趣。美的な(感覚。センス)。 **びかん【美観】** 美観に目を奪われる。▼美観を損ねる(地域の。町の)。山紫水明の(美しい町。地)。美景が眼前に展ける。白砂青松の美景を呈する。美しい風光。山間の明媚な風光に魅される=山岡。自然の風光を褒めそやす。▼美化する(面影を。過去を。校内を。生活を。組織を。街を)。風光明媚な(高原地帯。鳥。湖水の景色)。川と海に囲まれた風光明媚な水辺の町"竹内。風光明媚の地。文人画にでもありそうな風致。風致を(害する。損ねる。保存する守る) **びじょ【美女】** ▼美女(憂いを含んだ。鍾愛記に、うおかざる。ほれぼれするような。見る方がぞくっとするような。いつも和服の楚々とそとした感じの『半村。高級な苦悩を化粧品と芸術とによって撒きちらしている武田泰。透きとおるくらいに遅娟忙从たる=太宰。水の滴るような風情がある=子母沢)。美女と野獣のような取り合わせ。美女に懸想沿えする。桜の精かと見まこうほどの美女の舞姿"白洲。巫山心の神女のような人倫を絶した美女の姿氷川。名花(一輪の。銀幕の。社交界の。深窓の)。名花とうたわれる。▼歴人(男装の。和装の。目を見張るような)。 **びじん【美人】** 美人(彫のなには稀まれな。噂にたがわぬ。瓜実顔の非常な。男にちやほやされる。女でも見とれるほどの。清楚でぃできりっとした。誰もが振り返る。とびきり上等の。ひときわ目立つ大柄の。目の覚めるような。目のばっちりした。秋草にでもたとえたいようなおとなしくしとやかな「戸板。しとやかなっちに仄ぇのかなる媚びを満たたえた幽艶な谷崎。牡丹にたの大輪が開いたように笑顔が華やかな=佐藤愛。あでやかさに眼もあけていられぬ!今日。色白で清潔な感じの半村。大ぶりで華がある向田。折り目もつかないピンとした紙幣みたいな佐藤春。器量と声と人柄と三拍子揃った"有吉。切れ長の目の浮世絵風篠田。端麗な美貌で他の追随を許さぬ。有吉。床の問の置物のような=森思。人形のようにただ綺麗なばかりで表情に乏しい=永井荷。はっと立ち止まるような"小沢。引き目鉤鼻跡の王朝風!篠田。水商売風の和服の高村慮、目鼻立ちが少年のようにくっきりした"五木)。絶世の美人とうたわれた女林美。美人という点なら人後に落ちない獅子。十分に美人として通用する。美人に(縁がない。魂を奪われる)。美人の(聞こえが高い。部類に入る。女は同性からはそねまれ嫌われるのが相場=瀬戸内)。美人を鼻にかける。▼あでやかな美人(友都のように。大輪の打ち上げ花火のように=小沢)。▼評判の美人(近所でも。城下でも)。桐りの花のように典雅でつくねんとした美しさが匂う女性岡本。美しい(容貌姿が人並み優れて。絵草子の中の女のように外村)。見違えるほど美しい女になる。目鼻立ちの整った美しい少女。天女のように美しい横顔若竹。天人のように美しい人=中村真。美しい女(どこか寂しげなくせに勝ち気な平岩。大きい二皮目が吹かに夢みるような輝きのある=円地。顔に雀斑のある=今東)。▼美しい女性(笑顔の。音に聞こえた)。滴るような中年の女の美しさ石坂。白い肌の下に青い膜が透けて見えるような美しい女の表情=高橋三。お人形さんみたいにきれい半刈。いずれがアヤメ、カキツバター小沢。白い百合の花のように幽婉ぶらな顔海音寺。立てば芍薬しいく座れば牡丹歩く姿は百合の花。美色に心を奪われる。額は三国一の富士額落語。眉は遠山の三日月眉毛落論。女性弁護士の柳眉がぴくっと動く“和久。目は鈴を張ったような黒目がち落語。▼美しい娘(花のように。百合のように)。すこぶるつきのいい女火坂。佳人薄命。きれいどころが勢揃いする。きれいどころを(集める。侍らせる)。震いつきたくなるような飛びっきりの別嬪※=船戸。明眸皓歯沁いうの(女性。持ち主)。小股の切れあがった(いい女。年増の女房)。▼小町娘(町内の。評判の)。小町娘と謳うたわれるほどの器量。渋皮の剣もけた(いい女。素晴らしい美人人巫)。姿がほっそりして柳腰九鬼。柳腰みたいな細い腰・石川。 <172> # う **びなんし【美男子】** ▼美男子(現代風な。端正な。目元涼やかな。なかなかの。眉目秀麗の。色白で鼻筋が通った=山口)。美男の相を備える。きりっとしまった男ぶり。男ぶりが(上がる。台なしになる。際立って見える。よいと自惚的ぬれる)。眉目秀麗な若者。いい男(精悍她心な。すっきりした。苦み走った。水の滴る。気持ちのさっぱりした。岡惚眩がれしそうな=船山)。「色男金と力はなかりけり。色男の(部類に入る。見本みたいな顔つきの男"宮本輝)。男前(きりっとした。なかなかの。彫りが深い)。男前が(上がる。いい)。神経質な二枚目というタイブ。二枚目の条件を見事に備えている。二枚目風に構える。ハンサムで凜々』』しい男。ハンサムな(男の子。男性。見かけに騙だまされる)。ハンサムの部類に入る。美丈夫(六尺豊かな。背の高い。白皙出の。色白で眉の濃いなかなかの=山本周。押し出しの立派な色白の=原田康)。優男ジごぉ(色の小白い面長な=徳田。洋服の宣伝に出てきそうな端正な顔立ちの三田)。 **びぼう【美貌】** ▼美貌(並ぶ者がない。人並み外れた。人目を引く。目の覚めるような。一度見たら忘れることのできないような蠱惑的にゆくな獅子。淋しげな翳かげのある=南条。整いすぎた目鼻立ちが冷え冷えとした印象を与えるほどの人間。やや下ぶくれで唇が小さく咲いて出たような天女型の=岡本)。美貌が(衰えを見せる。輝きを増す)。高校きっての美貌で知られる。磨かれる「小林久。美貌に(惹かれる。迷わされる。磨きがかかる。目がくらむ。恵まれる。気品と落ち着きが加わる。寸分の隙も見出せない。有吉)。美貌の(女性。若者)。みずみずしい美貌の娘。あたりにいた人々がはっと注目するほど華やかな美貌の女平岩。美貌の持ち主(都会的な。和服の似合う日本調の三好徹)。美貌を(売り物にする。鼻にかける。もって知られる。わずらわしく感じる)。昔の輝くような美貌を偲しのばすに足る均斉の正しい上品な、しかし老いしなびた顔菊池。人目を引かずにはおかない容貌倉橋。美貌以外たいして取り柄のなさそうな人物"井上靖。目を見張るほどの美形。美形の(女性。女優。男子。俳優)。美形をやたらに鼻にかける。 **ぶさいく【不細工】** ▼不細工(顔の造作のほとんどがぶさいく池波。人との応対が我ながら八谷崎)。ポケットが無細工にふくらむ=山田太。お世辞にも(いい男とは言えない。美しいとは言えない)。男ぶりが悪い。あまり器量がよくない。美女だとはお世辞にも言えない。取り立てて美人というほどではない。どう見ても美人というには縁が違い=村上元。美人の条件から外れる。美貌には違いが醜いと言うほどではない=黒岩。およそ美貌には遠い顔。竈いいから出てきた猫みたいな顔落語。不器量な(生まれつき。男。娘)。みっともない不格好なもの。どたどたとした不恰好ぶがっな走り方重松。字を不格好に書く。 **みにくい【醜い】** 醜い(外観を呈する。傷痕をさらす。過去を語ることは禁忌"浅田。欲望を隠そうとする虚栄心藤枝)。反吐、とが出るほど薄汚く醜い=筒井。男と女の醜い関係。密かにの這いつくばったような醜い岩山"大岡。枯れしぼんだ醜い花の骸泣く"有吉。金銭をめぐる醜い争いに発展する=西木。魔女のように醜く変形した顔「大庭。欲望の火が消えもしないでブスプスと醜く燻すっている"志賀。醜く隠いのり合う。顔が醜く歴れ上がる。火傷のあとが醜くひきつる平気。醜さが白日のもとに引き出される。醜さを活然忙从としてさらけ出しているような横顔「高見町。フンギリのない醜さを見せつけられる!安岡。醜怪な(鬼。容貌)。いかにも見世物めいた醜悪な情景・加賀。人間の醜態な匂いがむんむんする=黒岩。不潔で醜悪なものに触れたような身震いの反応"瀬戸内。見えすいた権謀術策が通用する醜悪な世界。常盤。▼醜悪さ(耐えがたい。正視に堪えざる=坂口)。 **ゆうび【優美】** 優美な(踊り手。顔立ち。手の動き。声でころころと笑うぃ円地)。優美に(カーブした長い階段。首を曲げた白鳥)。得も言われぬ優美さが匂いたつ。 <173> # う **あき【秋】** ▼秋(天高く馬肥ゆる。穆々咄くたる垂り穂の=獅子。山そのものが色絵師の陶器のような=吉川)。秋が(束の間に移そう。日に日に深くなる。林を乱雑にする=堀)。爽やかな秋がからりと展開する。人生の秋にさしかかる。秋の(豊作を願う。収穫期が訪れる。涼しい空気が流れ込む。夜長を読書して過ごす。そこはかとない悲しさ=大野晋。初めのまぶしいほど晴れ上がった午後倉橋。日射しが並木の上に踊るように輝く高橋和。虫が折り重なるように鳴き続ける村上巻)。涼しい秋の空気。釣瓶落としの秋の日。木という木が銅色や金色、燃えるような朱色に染まる美しい秋の森"松谷。きらきらとまぶしく光る秋の海!小松左。冷たく澄んだ秋の光大佛。庭の朝顔の葉が弱まった陽ざしにかさかさと鳴って秋の音を伝えだす連城。林は秋の色がたけなわ"松本。不自然なほど明るい秋の月"村上春。窓から射しこむ浪の反射が秋の雲のようにちらちらする本庄。短い秋の日は瞬く間に暮れる永井路。秋を思わせる涼しい風。更け行く秋を静かに眺める。葉のうらにそれとなく漂っている冷気が季節の秋を吐き出している=本庄。▼秋の夕暮れ(静かな。侘ゃびしい)。日足のはやい秋の日暮れ=本庄。夕方の淡く滲にじむような秋の長い陽差し「小池。日毎に日暮れが早くなってくる。紅葉の(美しい季節。シーズンが始まる)。紅葉が満山を彩る。木々が色づき始める。秋刀魚鬆んの旬。釣瓶落としに暗くなりはじめた夕闇"大沢。都会の花瓶にも可憐れなコスモスのほころびる頃荻野。野には稲が黄色く稔る菊池。山麓が秋色に彩られる。秋色を楽しみながら歩く=山岡。町を秋風が渡る季節。秋たけなわの十月。中秋の月を祝う。 **あきかぜ【秋風】** 秋風が(木の葉をさわさわ揺すぶっているのを耳にひやりと聞く“堀。さあっと木の葉を掃いて行く吉川。爽やかに頬を掠めていく笹沢)。さわやかな秋風が吹き込んでくる。一陣の秋風が楓砂ぇの葉を高く鳴らして吹く=舟橋。一面の草の原にうそ寒い秋風が吹く=福水。秋風が立つ(商売に。身辺に無情の。うだる暑熱が去って『舟橋)。秋風の(音にも追っ手が寄せるかとおびやかされる=白洲。中にただ一人取り残された気持ち=佐藤春)。身辺に立つ秋風の冷たさを悟る。秋の暮れの冷たい風が蕭糸しょうと吹き過ぎる。秋風のような涼しい空気が流れる=獅子。物言えば唇寒し秋の風。秋の風が寂しく吹き抜けていく。空に秋の風が鳴る。 **あきさめ【秋雨】** 秋雨が(そぼ降る。じめじめと降り続く。夏の記憶を綺麗さっぱり洗い流す=横山)。細く強い秋雨がしとしとと蕎麦そばの花を洗う長塚。秋雨のような雨がじとじと降る=徳田。秋雨前線が停滞する。秋の(長雨に降りこめられる。村雨が降りしきる)。遠くへ行く淋しい旅人のように秋の雨が通り過ぎる佐藤森。秋霖しゅうを思わせるような陰気な降り方の雨=新田。 **あきのそら【秋の空】** 秋の空(男心と。女心と。群青色の。紺青の。水のように澄みきった=伊藤左)。青く澄んだ空を赤蜻蛉は跡との群れが飛ぶ"外村。広い空に秋の静かな雲が斜めに流れる=佐藤春。空の天井が抜けたような秋リ倉橋。秋の薄い雲が青空に貼りつく=加賀。台風が過ぎてにわかに秋の色を深めた空野坂。 **あきばれ【秋晴れ】** 空がきりっと秋晴れに澄み上がる=黒井。秋晴れの(さわやかなお天気"石坂。空は青く赤とんぼが気持ちよさそうに飛ぶ"内館)。空は秋晴れの深い澄んだ色連城。涼風吹き渡る秋晴れの空の下=奥泉。真っ青に晴れ上がった秋の空。小気味よく晴れ上がった秋の一日赤川。晴れきった秋の日ざしが透きとおる=日野。水色に澄んだ秋の空が気が遠くなるほど高く晴れ上がる=石坂。▼秋日和(風もなく穏やかな。空が晴れ上がって外は嘘のような。有吉)。秋日和と名のつくほどの上天気"夏目。 **うつりかわる【移り変わる】** 移り変わる(時代が。時代とともに。時につれて。風景がめまぐるしく)。時世の移り変わりに取り残される!高田。物変わり星移る世檀。人間は世のに変からまぬがれることはできない。山本周。転変常なきこの世の景色,白洲。転変の世を鎮める。▼変移する(価値観が。性向が。世相が)。滄海鮮ら変じて桑田となる。目まぐるしい時世の変遷。冷徹な歴史の変遷に目をやる。変遷の跡をたどる。世がめまぐるしいほど変転する"海音寺。有為転変常なき様相。有為転変は世の習い。有為転変を(乗り越える。経る)。流転の(生涯を送る。旅路をたどる)。▶流転する(運命が。万物は)。生々流転を地で行く人生"辺見。 **きせつ【季節】** 季節が(あっという間に過ぎていく谷村。緑と花の洪水になって氾濫に似する=伊藤整)。焦る心より先に季節が先走りする=岡本。人生の花盛りという季節がめぐってくる=瀬戸内。春と夏とが同時に押し寄せてきたかのように季節が急速に進む=堀。ゆっくりとたしかな色どりを見せて季節が移っていく=飯田。季節と歩調が合わない=山田太。それぞれの季節にそれぞれの風俗がある=加藤。沼の湖面が季節によって様々に色を変える鈴木光。冬が去り若葉の芽ぶく季節になる=飯田。季節の(移り変わりに敏感になる!安岡。移り変わりのように厳粛な事実竹西。変わり目になるときまって子供みたいに扁桃腺を歴はらす三浦誓。変わり目の他愛ない感傷"落合。命じるままにはしゃいだりおびえたり虫のように生きている=阿久。恵みが一脈のやわらぎを伝え秋めいた日の清々すがしい朝。 <174> **きせつ【季節】** 季節が(移り変わる。一巡する。いつの間にか移り変わる。進む。戻る)。季節の(変わり目。到来を告げる)。いつしか季節は移り行く。季節の変わり目にはめっきり弱い。季節を先取りする。盛夏が過ぎて穏やかな季節が来る。季節の変化に鈍感になる。季節が一巡する=本庄)。常に季節の花が咲き誇る。肌寒い季節の中を薄倖の蝶のように悲しげに過ごす=阿久。楠葉ひばの垣のくすんだ緑が季節の移り行きに従って色合いの濃淡を明らかにする=高井。微妙な風の肌触りに秋を予感するほど季節の感覚が研ぎすまされる加藤。季節を(織りなす花園。さまで先走らない料理=岡本。問わず一年中流通する=赤瀬川)。花が醸し出す季節感。季節感に富む。季節的景観の多様性。自然の季節的推移に関心を持つ『寺田。時候に相応した着物。しかつめらしい時候の挨拶。▼時節(不入りな。心の和む。収穫の)。シーズンが到来する。夏の行楽シーズン。忘年会シーズンの真っ盛り。 **きせつはずれ【季節外れ】** 季節外れの(温泉場は森閑としている=高橋和。すっからかんとした高原=堀)。気まぐれな季節外れの花のような鹿鳴館時代,佐藤春。シーズンオフに入る。 **こはるびより【小春日日和】** ▼小春日和(穏やかな。のどやかな。一天ぬぐうが如き。束っかの間にひらけた人生の人間。冬がすぐそこまできているというのにただゆっくり道を歩いているだけで汗ばんでくるような三浦哲)。小春日和で気持ちのいい日。小春日和の(暖かな日。ちょっとけだるい日差し灰谷)。快く空の晴れ渡った小春日和の一日有烏。小春日のぼかぼかする街。晩秋の晴れた日。うららかな小春日和。 **しき【四季】** 一生を四季に喩たとえる=国木田。男女の仲を四季の移りゆきになぞらえる!大野号。四季折々の(眺め。花)。春夏秋冬知名の士の集まる料亭林美。日本は春夏秋冬がはっきりしている。 **しょか【初夏】** ▼初夏(風薫る。やわらかな新緑にからだこと染まってしまいそうな竹西。天地がわかわかしくさえざえしい=中)。初夏の(空が青く澄んで絹のように光る=阿部。日がひっそりと光を降らして土には物の影が濃い=久米。緑が目に眩まぶしい人間)。空気のなかに初夏のかおりの漂う黄昏炊にどき=宮部。コンクリートの床に初夏の光が眩しいほど照りかえる小林多。小さな波がキラキラと初夏の太陽を照り返す。村上卷。日射しに瑞々しい初夏の匂いがする村上春。豊満な初夏の風が吹き抜ける"村上姿。ライラックの花束のような初夏の明るさ=川端。青空に鯉のぼりが泳ぐ。青葉を渡る風が清々対がしい=山岡。石畳に木々の緑がしたたる季節!林京。五月の青い風が吹く=川端。春からやがて夏が訪れる。夏の気配が漂い出す。一雨ごとに若葉の緑が濃くなって行く=徳田。 **しょしゅう【初秋】** 初秋の(冴えた夜気。涼しい夜。朝は肌にさらりとして気持ちがいい!向田)。しっとりと降りそそぐ初秋の雨。冷たい初秋の風が頬に快い"菊池。びしゃびしゃと初秋の糠雨秘妙の降る夕方子母沢。柔らかな初秋の陽射しを浴びて歩いてゆく=さだ。爽やかな初秋の空が急に薄気味の悪い台風を予兆する黒ずんだ雲に覆われる=中村典。町に秋風が立ち始める=船山。秋風が立ちそめる頃。秋口の陽がまぶしい日。秋の(気配が濃厚となる。蛾のようにひっそりと立っている女"大庭。気配を運ぶ冷たい朝の風倉橋)。ひんやりした風に秋の匂いがする!佐藤多。川を吹く風にどことなく秋の気配が感じられる=南木。平野を吹き抜ける風に秋の気配がする"西木。朝晩に秋めいた風が吹き始める。残暑が遠のくと季節は露骨なほどに秋らしい顔を見せる藤沢。九月も半ばというのに真夏が一日戻ってきたような暑い日北村。暑さが衰えを見せる。陰暦八月の風も爽やか!舟橋。九月の(雨が木の楽を黄ばませるより先に腐らせるかと見えるほど降り続く“堀。声を聞き猛暑に翳かげりが見え始める=樅山。なかごろのようやく風が爽やかになってきた週末の宮部)。残暑もそろそろ衰えかかった芽や花の匂いが交じっている=円地。頼りないほど青けた九月の半ば過ぎ"谷崎。空がわずかに夏の輝きをさしさをとどめている九月の始め=村上巻。透明感を増した九月の日盛りの陽落合。夏の光が目に見えぬ分水嶺を越えるかのように色合いを微かすかに変えるころ=村上春。まだ陽射しに夏が残っている頃=重松。涼風が立ち初める。 **しょとう【初冬】** 初冬の(やわらかい陽射し。午後の薄日が舗道の濡れた石を弱々しく照らす=井上ひ。月が冴え冴えと葉を落とした植え込みの上に懸かっている=辻井。不透明な夕日が斜めに射す森瑞。夕暮れが落ちてくる宮本線)。黄土色に彩られた初冬の日だまり。蒼然ぞらとけぶり渡った初冬の夜!永井荷。日暮れ近い穏やかな初冬の陽が静かに褪めかける=岡本。秋が終わり朝の空気が肌を刺すようになる=村上卷。冬が音もなく忍び寄ってくる。冬の(気配が忍び寄る。到来を思わせる寒い日)。季節はまだ冬のとば口。天候の急変を告げているらしい霧の中に冬の匂いがまじる=原田康。 **すいい【推移】** 世論の無節操な推移のありさま=阿刀田。事態の推移を冷静に見ている。▼推移を見守る(慎重に。おろおろと。注意深く。気を揉もみながら)。・推移する(株価が軟調に。右肩上がりに。横ばい状態で。計画通り順調に)。 **そうしゅん【早春】** 早春が匂やかに訪れる。早春の(暖かな日差し。匂いを身につけたような恋人たち原田時。陽を浴びて水が温む"井上靖。陽光がさんさんとして降り注ぐ源氏)。燦々さんと早春の光が降りそそぐ。まだ風の冷たい早春のある日。蒼いのさえずりが早春の谷間に響く=曽野。部屋の中に早春の陽射しがみなぎる=開高。早春を告げ知らせるような大雪"梶井。一面を敵ぉぉっていた雪が溶けて沢の水が音をたてて流れはじめる春の日"永井路。三月の声を聞く。まだ春寒の残っている冷たい空気の中に何やら芽や花の匂いが交じっている=円地。 # 季節(夏・冬) <175> # う **なつ【夏】** 夏が自殺するかのように荒々しい雷の足音”川端。ひたすら夏が去ってくれることを願うしかない宮本輝。夏になるにしたがって町そのものが障子を取り外したようになる=佐多。夏には蛍と夕立加蔭。夏の(暑さにまいっている。路地を彩る朝顔。浜辺の開放的な雰囲気"丸谷。焼くような熱気!柴田期)。街路が夏の朝特有のすがすがしさに包まれる=原田家。風も絶えた夏の夜の闇が重く蒸し愛くたれこめる池波。樹々の葉のあまい匂いと爽やかな花の香がほのかにしみこんでいる夏の朝の風=山本周。暮れ鈍る夏の宵の光が景物をほの黒く浮かせる=川端。桃の匂いが暑気にむせ返るような夏の日"阿部。夏は小川の流れが青さを増す=高橋和。日本の夏は不愉快に暑い"大庭。海が夏の陽光に照り輝く。欲望を公然と認めて生きることは夏の海に輝く太陽のように明るい=柴田翔。七月の海がとろりと光を流して青い"大佛。油蝉もぶらが喧却かしく鳴く蒸し暑い夏の午後=奥泉。ジリジリと音が聞こえるような午後の陽光"阿久。夏の午後の陽があらわな腕を灼ゃく。蝉の鳴き声が鬱陶しい午後北原。一夏を過ごす。夏の短夜を寝借しむ。暑中見舞いを出す。暑を避けて旅行へ出かける三島。避暑に出かける。真っ白な入道雲がわき立つ=飯田。緑が次第に濃くなる。夏場だけ(観光客で混雑する。にぎわう観光地)。夏場の食中毒を防ぐ。夏場を元気に過ごす。一雨ごとに芒討すがのびて武蔵野が夏めいてくる=吉川。夏物のようなペラペラの上着三田。夢のように幸福な夏休み"阿久。夏休みがあっという間に終わる=灰谷。夏山から滲しみ出すように蝉の声が送られてくる=大佛。夏ばてで元気がない。夏負けして食欲不振に陥る。 **なつくさ【夏草】** 猛々労しいまでに生い茂った夏草落合。夏草が(葉を広げる。生い茂る荒れ地。湿った匂いを発散させる。青々と生い茂る。伸び放題に伸びる。ぼうぼうと伸びる。背丈よりも高く生い茂る。住井。ぶざまに伸び繁る=山崎)。庭に露をふくんだ夏草が生い茂る=白洲。夏草のように高く茂った灌木跡んが目の前に迫る!有吉。背の高い夏の草が伸びほうだいになる=阿部。 **なつぞら【夏空】** 夏空が輝きわたる。土耳古玉却』のような夏の午前の空」佐藤春。空はあくまでも青く夏。野放図に明るい北海道の夏の空のような笑い=内田康。夏の日が空にあふれ輝く。 **なつのひ【夏の陽】** 夏の陽が(ぎらぎら照りつける。かんかんと照る=子母沢)。日ざかりの夏の陽がかっと白い=田辺。ばかみたいに晴れあがった夏の陽に首すじを焼かれる=古井。夏の太陽がじりじりと照りつける。かっと夏の夕日が照りつける。まばゆい夏の陽光につつまれる=吉村。何物をも燃やさずにはおかないような夏の光線「堀。肌を通して内臓まで喰い入るような夏の光高井。 **はる【春】** 春(雪解け水が土壌を洗う。気懈ひだいよな変態な森瑙)。春が(装いを凝らす。どこともなく地上に揺れ立つ人米。爛熟らんの色をなす菊池)。一冬越えて春が来る。突然春がやってきたような素晴らしい日和大庭。姿に背いて逝った人を惜しむ"佐高。時が巡って春になる。春にはずーっとむこうまで淡い桃色が霞んでみえる干刈。春の(香りが朝の大気と共に漂ってくる。気配が日増しに濃くなる。柔らかさが風景をすべて包む小川)。折しも春の盛り。さわやかな春の街。長い春の日を遊び暮らす。久方の光のどけき春の日。木漏れ日が屋根に映って穏やかな春の朝"阿刀田。▼春の日の午後(晴れた静かな。ぼかぽかと温かい佐藤春)。春の午後の穏やかな光が差しこむ。北国の春は爆発的にやってくる=畑。春も胸だけて寝間の闇も暖かい!池波。過ぎた春を回顧する。わが世の春を謳歌始する。一日一日と次第に去ってゆく冬を思い春を迎える=中河。天下の春を一手にお引き受けたような陽気さ=井上ひ。ちかちか輝く薄緑のレースで飾られる美しい春の森"松谷。新緑が華やかに森を彩る=加賀。声を上げたいくらい五月の新緑が美しい宗田。樹々がいっせいに緑の芽を吹く!永井路。谷全体が薄い緑のベールをかけたみたいに見える『あさの。山々の地肌の茶に薄い緑が淡く溶け合う。藤田。山は木の芽立ちの季節!山本周。春色を濃くする山々。満山これ蒼いという時中河。あらゆる樹々の梢がそれぞれの新芽の色で腕に彩られる=山本周。川のせせらぎの音がおもいなしか明るさをましたようぃ永井路。木々の息吹を肌にじかに感じる=丹羽。季節(桜の花が咲く。百草花開く。若葉の芽ぶく)。木の芽時で頭のたがが緩んでいる=光原。樹木が芽吹く時季。林が日ごとに生気を帯びて来る=堀。これまではモノクロにくすんでいた画面に一瞬で色がつくみたい三浦し。冬のあいだは硬く冷たく流れる川が草木が芽吹きはじめるのとほぼ同時にさらさらと優しい音に変わる=三浦し。長い冬が明ける。忍苦の冬が去る。 <176> # う **はるいちばん【春一番】** 春一番が吹く。春先の南風。南風が吹き荒れる。 **はるがすみ【春霞】** 薄い春霞がもやもや煙る=太宰。冷たい感じのする白皙との秀才顔がぼんやりと春霞がかかったようになこんでいる佐藤愛。のどかな春霞が水平線にたなびく・福永。山塊が春霞に煙る。富士がぼっかり春霞に浮かぶ福永。春霞に煙る(山々を望む。湖の面に・白帆がゆきかう~白洲)。春霞のかかった満月のようなおぼろに白い顔"宮部。遠くに見える山のなだらかな稜線もに、が春霞の中に揺らいでいる=南木。満開の桜がうららの春祓の下で眠くなるような色合いで連なっている=阿久。山々が重なり合って次第に遠く春霞のなかに溶けこむ=阿川弘。春には花と霞。春の後が薄くかかる。春深く霞んだ平野が遠く見渡せる=島崎。春霞のようにとらえどころのない悲哀=萩原葉。 **はるかぜ【春風】** 心の中を横切った暖かな春風藤本。部屋を春風が吹き抜ける。胸にほのぼのとした春風が通ってくる=山岡。やわらかな春風が日光を絹のように渡にして流れる=開高。春風に揺れるブリーツのロングスカート。蝶が春風に舞う。桜の花びらが春風に乱れるように美しく舞う白洲。そよ吹く春風の中をそぞろ歩きする。柔らかい春の風が足もとをなぶって通り過ぎる藤沢。風に春の朝のうそ寒い湿りけが残る=福永。気持ちのいい四月の風が首筋を撫でる藤沢。春が南の風を送ってくる。春独特の生あたたかい風が桜の匂いを含んでさまよう!鷺沢。春の風が吹きすさぶ。やわらかい風が樹々の幼い緑をゆする永井路。渡る風もすがすがしい季節。今までにない長閑とな景色が春風のように吹き込んでくる芥川。春風駘蕩灬以ぶぅの笑顔。 **はるさめ【春雨】** ▼春雨(産毛のように柔らかく短く截”れて降る=岡本。濡れはしないがなんとはなしに肌の湿る霧のような川端)。春雨がしとしと降る。・ 。春雨がしとしと降る。心ない春雨が散らした花びら。絹糸のような春雨が降る=宮尾。春雨じゃ濡れて行こうとしゃれてみる三浦愛。柳の細枝を伝う春雨の零しずのようなはかなさ竹西。春雨のような雨がぼつぼつ顔にかかる=徳田。静かな春雨のように降っている雨有局。 **はるのうみ【春の海】** うららかな春の海。春の海が穂やかに輝く。粘っこいような春の海が薄緑にひろがる=本庄。表情が春の海のように穏やか"火坂。海水の色が暗い鋼色から少しずつ淡い緑のまざった青へ変化する=阿部。眠たげな甘さを含んだ四月の海。落合。春が薄緑の海から南の風を送ってくる=本庄。岸に近い海面が春の海藻の丹のいろに染まる三島。 **はるのそら【春の空】** ▼春の空(霞のかかった。明けてもなお霞んでいるような=竹西)。街の上に黄を交えて澄みとおった春の空が開けている「野間。青空に雲雀10日のさえずりが響き渡る=阿木。四月半ばの空が晴れたままつるんだ青に溶ける=円地。空には雲雀がせわしく聴だえっている"太宰。花曇りの空が林の上に眠っているように静か三浦綾。ぼんやりとした春特有の不透明なヴェールに被われた空村上奏。 **はるのはな【春の花】** 満開の桜が春の嵐に散る。一面の菜の花。白梅が二三輪ほころび、日はうららかで春の気配がそこはかとなく漂う瀬戸内。風が吹くたびに桜の花びらがちらちらと空中に舞う“阿川佐。小鳥たちの合唱が色とりどりの花と競い合って世は春"加賀。桜がちらほらと咲き始めた頃=藤田。桜の散る春たけなわ。春にさきがけて美しく梅を咲かす宮尾。春は桜と梅が花を競う高橋和。花々が春を彩る。平凡な風景が桜の花に彩られて豪勢な春色を演出する森村。今春の桜が見ごろになる。春の村は野の花の匂いに明け暮れる=住井。 **はるのひ【春の陽】** ほろほろとこぼれるような春の陽"曽野。心が春の陽に撫でられる。▼春の陽射し(暖かな。ぼんやりとした)。春の陽射しが(降り注ぐ。ベランダにあふれている)。島や花が春の陽射しに酔う。静かな春の陽射しにうらうらとする=佐多。全身に燦々さんたる春光を浴びる。苔こけの緑が春陽に映える庭。うららかな春の光。春の光が白っぽく散る=井上靖。地にも空にも長閑とに春の光が動く"大佛。日が暖かに春をあぶる芥川。 **はるのよる【春の夜】** 短い春の夜がほのぼのと明けてゆく!白洲。あたたかい雨が街を包む煙った春の夜"吉本。春の(夜風に乗って梅の香りが漂ってくる。気配が夜気にたれこめる=池波。晩のようなぬるい空気が部屋に動く=吉川。微風に頬をくすぐられるような穏やかな夜"永倉)。あやふやで朧月夜宠ぶらのようにぼやけている"阿木。春の夜のような心のときめき=梶井。春の夜らしい水蒸気があたりに立ちこめる=伊藤。星の潤んだ春夜。春宵一刻值千金。春宵の一刻を惜しむ。どこか吸かい夕日の一片が隠れているような春の長い黄昏絵に"野上。桜が入相いツの鐘に散る春の夕!森殿。淡く春の夕闇がただよう池波。若草の芽も一晩のうちに伸びるような暖かい春の宵島崎。静かに流れていく春の宵に浸りきる=藤田。心地よい春の宵の風に当たる=梅本。 **はるめく【春めく】** 朝夕の空の模様が春めく。春めいたうららかな天気が続く=海音寺。俄にゃかに春めいた日の朝"福永。空の色がめっきり春めいて紫がかった艶々しい色を帯びる=外村。柔らかい星の影が春めいて見える徳田。日ごとに春めいてくる。世の中が昴然粉心と春めき立つ。 <177> # う **ばんか【晩夏】** 晩夏の(陽炎砂沢が立ち昇る。陽がようやく西に傾く。景色をつつむ引き締まった空気"有島)。ねっとりとした晩夏の光が原っぱを照らす藤沢。秋の声が聞こえる頃=藤田。残暑の厳しい頃。夏が最後の生命を振り絞っているような暑い日が続く谷村。若い者にとって夏の終わりくらい悲しいことはない!今日。夏の終わりの(閑散とした駅に降りる"宮本輝。入道雲には見つめていると涙のにじみそうな輝きがある=竹西)。 **ばんしゅう【晩秋】** 晩秋の(気が山野に満ちる。月光が白々と流れる。柔らかい光の中。気持ちのよい陽が射す=河野。澄みきった空の下に緑色の山箋だが鮮明"山崎。冷たい爲もゃが地に低く淀んで空は紺青にんじに澄んだ美しい宵=円地。宵やみが深い水色となって四周を冷たく浸す=本庄。落莫咲くとした愁い=島尾)。時雨そぼ降る晩秋の哀感。落ち続ける桜の葉が地面に落ちきる音さえ聞こえるような晩秋の夜の静寂"連城。窓から射し込む晩秋の仄白350い光を浴びる=落合。秋の終わりの黄色く乾燥した野と色ガラスのように張りつめた青い空円地。秋も終わりに近いころ=船山。肌にまつわるような風の冷たさに深まり行く秋を感じる=石川。風がすっかり冷え切って鋼の空には冬の予感がある=加賀。紅葉の銹色は0で日毎に暗くなっていた山が初雪であざやかに生きかえる"川端。霜月の冷ややかな夜のしじま。萧条しいうたる十一月の浜辺。何もかもがすきとおってしまいそうなほどの十一月の静かな日曜日=村上脊。間もなく冬になる。夜寒が次第に増してくる。忍び寄る夜寒の静かな気配。落葉樹が裸になりはじめるころ=本多惨。わけもなく心細さが増してくる頃"乃南。一生の秋深い晩のような老年の域に入る=大佛。 **ばんしゅん【晩春】** 晩春から初夏へ移り変わる山里の新緑の美しさ=池波。晩春の(静かな午後。のどかな空。悲曇りの空の下。霧のような雨のびしゃびしゃと降りつづく夕方=子母沢)。潤んだような晩春の光が町を照らす藤沢。花の便りも終わりに近いある日"船山。暮春の(候。空があざやかなみどりに晴れあがる=山本周)。 **ほんとう【晩冬】** 透きとおるように淡い水色の二月の空原田康。春がすぐそこまで来ている。春の(気配を感じる。足音がすぐそこまで近寄っている。近さを思わせる仄ほのかな陽のぬくみ 原田康)。長く地の上を領していた冬が老いる=有局。 **ふゆ【冬】** ▼冬(異常に雪が多い。兎行きが白い衣に着替える=高橋三。空も地面も区別のない灰白のなかに地吹雪の舞う―奥泉。肌の筋肉が寒い肌に抵抗して一時に緊縮するような=夏目。凜冽107という言葉がぴったりする=加賀)。この冬一番の冷え込み。すっかり葉を落とした操や樫かしが叩けばかあんと音を立てそうな固さで静かに立っている=黒井。冬が(霜を這わせる。ひたすら踏踏らいぅしつつ地上に沈もうとする=長塚)。年々に冬が辛くなる。暗い冬が日毎に寒くなる=鈴木三。冬になると色彩が失せ何もかもが灰色の風景の中に閉じこめられる阿久。冬には枯れ木と雪"加藤。冬の(風に痛めつけられる。厳しさに耐える。寒さが身にこたえる。寒さにもめげない。寒風吹きすさぶ暮れ方。宵のしんしんとした静謐。の匂いをはらんだ冷たい風藤田。日の春づき隠れる早さ。有房。夕方の空が硝子戏。のような色をする=大佛)。刺すような冬の雨。蕭然乳に、うたる冬の原野。のどかな冬の昼下がり。スキー場が冬の賑わいを見せる=篠田。弱いけれども幻想的な赤みを帯びた冬の夕陽=日野。冬の海が荒々しく吠える!火坂。冬の暗鬱な雲の下に拡がっている呦くろい海"松本。師走礼もの風が街を走る"船山。快かった風が冷たい冬の刺とげに変わる!連城。冬の午後の(淡い陽射しが部屋の中を満たす=山本昌。淋しい灰色の光が斜めに差す倉橋)。▼冬の午後(晴れ渡った。穏やかな陽射しの)。冬の午後にしては珍しく明るい日。一人で長い冬を暮らす。長い冬に(倦、む。踏みしだかれた枯れ草が寝そべったままで風に吹き殴られる=中島み)。秋が過ぎて厳寒の季節を迎える。朝夕の冷え込みがめっきり厳しくなる。寒が(明ける。戻る)。木々の枝を覆っていた氷が水晶細工の森のように光り輝く“加賀。季節(ストーブが恋しい。野山が色彩を失う)。厳寒の候。氷をたたき割るような寒い時鐘の音が聞こえる=有島。木枯らしの吹く季節。寒さに向かう季節・山本周。寒さの厳しい盛り。正月が雪を率いて注連飾礼怒りの都を白くする=夏目。遠い春を待つ日々熊合。花のない季節。春の訪れを待つ。みぞれまじりの空気が歯にしみるような寒い夕暮れ宫部。例年になく(暖かい冬。厳しい冬)。一冬持ちこたえる。冬型の気圧配置。冬将軍が(暴れまくる。荒れ狂う。やって来る)。冬特有の透明感のある朝。冬場の肌荒れを防ぐ。冬場は(肌が乾燥しがち。湯冷めに注意する)。冬休みに(実家に帰る。スキーに行く)。 **ふゆがれ【冬枯れ】** 冬枯れから一足飛びに姿になった部屋梶井。畑が冬枯れでばさばさに乾いている。石川。穏やかな午後の陽差しが白い障子に冬枯れの樹立にだの影を映す小沼。冬涸いれの湖水がみすぼらしいまでに蒸しょんでいる=檀。冬枯れのままの荒涼とした野辺三好達。山陰に斑雪性談らの残っている冬枯れたままの山国らしい景色"堀。閑々とした枯れ色|の景色。寒空にのびている裸木。森の木々があらかた裸木となる。霜枯れた冬の野。葉を落として裸になった冬の木々。枯れ野(寒々とした。蕭然乳いったる)。遠見に枯れ野の中に黒々と点在している森山手。冬されの森に雪が残る。まだ森は冬ざれの裸木のまま。 <178> **かれき【枯れ木】** 枯れ木が(寒風に震える。立っている)。枝も葉もない枯れ木。裸木となる。霜枯れた冬の野。葉を落として裸になった冬の木々。 **かれの【枯れ野】** 枯れ野(寒々とした。蕭然乳いったる)。遠見に枯れ野の中に黒々と点在している森山手。冬されの森に雪が残る。まだ森は冬ざれの裸木のまま。 **ふゆげしょう【冬化粧】** 冬化粧をした(庭園。富士山)。▼冬化粧する(北の山々が。雪で真っ白に)。雪化粧する(山々が。路面がうっすらと)。 **ふゆごもり【冬籠り】** 長い冬籠ごゆりから解放される=中野孝。女の下半身が冬ごもりの半ば眠っている小動物のように緩慢に動く三島。山の動物が冬ごもりの準備で忙しく走りまわる三浦し。熊が冬ごもりをする。 **ふゆのそら【冬の空】** 冬の空(陰鬱な。からりと哨れた。隈くまなく晴れ上がった紺青にんしの長与。黒々と磨き上げられた倉橋)。▼冬空(北国の暗鬱な。月の姿のたしかな=竹西。ザラついた粒子の粗い=阿久)。冬の硬さのゆるみかけた空。裸木の梢が寒空に突き出る。寒空の下での暮らし。灰鼠色いゆずの冬空のように嶮ぃゃしい夕雲室生。 **ふゆのひ【冬の陽】** 冬の陽が弱くあたりに散る=井上靖。冬の(乏しい日の光が中庭の植え込みの上に落ちる=福永。弱々しい陽射しが斜めに入ってくる=乃南)。カーテンに冬の弱い日差しがぼんやり反射する=村山。希薄で澄んだ冬の光三島。絨毯に、うに冬日がさやかに射しこむ=坂口。落葉した銀杏ぃぅの枝の間から淡い冬の陽射しが漏れる"小林久。 **ふゆのよる【冬の夜】** 窓に冬の夜が執拗に貼りついている业城。冬の夜の乾いて硬質になった空気"大江。冬の(凍てつく深夜。夜半の底冷えが身にこたえる。夜空に皓々こうと輝く月。風が夜の街で白い牙をむく黒岩。月が夜気を白刃のように凍らせる=川端。長い夜な夜なを縄を綯ょうたり草鞋を編んだりして夜を更かす佐藤巻。夜更けの冷たい空気が硬い粉のように鹸や頬に痛い―大江)。残雪の庭を渡る冬の夜風。木枯らしのきつい冬の晩向田。冷たく華やかな冬の月夜の眺め=石坂。風に紙屑切れの舞っているのが冬の夜更けのよう獅子。しんしんと冷える冬の夜道が豪華な星空にいろどられる=吉本。星座が凍りつくように満天に広がりきらめく瀬戸内。晴れた星の夜はちかちかと青光りしている酷いこいような冷たさ木庄。村が寒気の底に寝静まる=川端。 **ふゆやま【冬山】** ▼冬山(奥深く寂寞心とした。何もかも凍りつくような厳冬の=飯田)。冬山で凍死する。冬山の美しさに打たれる。こめかみを押しつけるような冬山の森厳な沈黙"大佛。峰々が頂に雪をのせる。遠い雪の山々が青緑の空にくっきりと並ぶ=石森。晴れた冬の日のアルプスの山々が岩の殿堂のように厳かに立ち並ぶ景観"大佛。美しく雪化粧した山々。山々が雪に覆われる。 **まなつ【真夏】** 真夏の(炎暑。生ぬるい夜。太陽がじりじりと照りつける。熱気が皮膚にまといつく。じっとりした暑さがこもった家の中小川。太陽の下で日談を恵んでくれる木=内海。直射日光が籬垣純に照りつける=斎藤栄)。頭の芯に突き刺さってくるような真夏の道の反射藤枝。熱い頭を冷やすような真夏の夜の雨に濡れそぼちつつ歩み帰る"久米。風がそよともしない真夏の晩はまわりの濃い闇がじわじわと皮膚の毛孔研ぁにまでしみこんでくるように阿部。かったるい真夏の眠気をぶっ飛ばす~中局み。じっとしていても汗が噴き出すような真夏の日差しの中=高村薦。すべての物がうだってしまいそうな真夏の午後のひととき=石坂。人も荷車も乾いた静物のように銀灰色に焼け、水ひとつない風景の中で真夏の光を容赦なく受ける=伊集院。窓から真夏の強い陽が射し込む"さだ。灼ゃけつくような真夏の陽射し"山崎。陽射しが真夏を思わせるように色濃くなる=北原。八月の暑い盛り。眼がクラクラするような夏の炎天=獅子。炎天下(真夏の。焼けるように暑い沢木)。炎天下の道を歩く。炎熱に灼かれる。炎暑の候。七月の陽にあぶられた虚っっろな野が拡がる"大岡。梅雨明けと同時に暑い陽射しが照りつけるようになる=北原。夏の盛りの火の粉がはぜるような日差し=高村茂。梅雨が終わりいよいよ本格的な夏を迎える=連城。針一本落としてもなにか崩れそうな七月の正午前=川端。連日の熱帯夜で寝苦しい思いをする=横山。焼けつくような盛夏の街"山崎。盛夏を思わせる暑さ。土用の(丑、うしの日。鰻約。虫干し)。 **まふゆ【真冬】** 真冬とは思えない暖かさ。真冬に舞い戻ったような寒い日=高樹。真冬の(朝の冷気が部屋に流れ込む。荒い風に揉まれる)。枯れ枯れとした真冬の庭。春ではあるが桜の蕾ははまだ固く暁の風は真冬の冷たさを持っている=井上靖。骨の髄まで凍えそうな真冬の朝まだき=火坂。 **ゆきどけ【雪解け】** 外交関係の雪解け。雪解けの(音を耳にする。消冽な水が土壌を洗う春!奥泉。水が一冬の塵埃就以に染まって泥炭地の湧き水のような色でどぶどぶと漂う」有鳥)。廂いきから雪解けの滴りが雨のように流れ下る=横光。湯気をたてた雪解け水が水音も高く川へ流れこむ=水上。雪解け水の激しい川音。春の雪解け水のように流れて行く言葉の流れ"小局。ひっそりした農家の槍先初に雪消ゆきの点滴が間断なく落ちている"大佛。 # 生まれる・産む―59 <179> # う **いんえい【陰影】** 銀粉を撒きいたような陰影"国木田。谷の底に一筋の陰影が延びる=新田。目つきに知的な陰翳んが感じられる青年“五木。竹と桟の陰翳が複雑微妙に絡んで美しい“竹西。陰影に(包まれる。乏しい顔立ち)。人妻の陰影に富んだ美しさ=原田底。頬の表情の気難しい陰影にいくらかの淋しさを付け加える目佐多。目鼻の彫りが深く陰影に富む光瀬。陰影に富んだ(顔。言葉)。言葉の陰影の細部までも開き逃すまいと耳をそばだてる=辻井。光の点滅が顔に陰影を与える。歴史の一幕に陰影を添える。言葉の微妙な陰影を理解する=塩野。疲労がくっきりと陰影を宿した頬徳水。ほとんどあるかないかのわずかな起伏が平原に掃いたような陰翳を曳く=光瀬。面が微妙な凹凸の陰影を蓄えている"辻真。陽射しが表情に濃い陰影をつくる=泉俊。ランプの光で顔がフィルムのネガのような陰影を作る!高尾。 **うつる【映る】** ▼映る(顔のアッブが。障子に人影が。窓に明かりが。顔が鏡に。姿が心に。目に異様に。目に新鮮に。壁にくっきりと影が。ガラス戸に影が。黒い池の面に倒影が。水面に空の色が。真っ暗な海面に船の灯が。明かりが路地に。薄い月明かりが隊子に。街のネオンサインが華やかに。壁に人影がぼんやりと。心眼にありありとして。誰の目にも誘がぶしいものと。ビデオに事故の様子が生々しく。暗く沈んだ鏡面に幻のように自分の影が=島尾。樹々の緑がみずみずしく水面に=梶井。掘り割りの水に夕日が真っ赤に"高井。街明かりがどよめきながら久米)。池に映る月。水に映る影。くっきりと映る(目に。葉影がアスファルトに)。小春日の淡い空を映した海=高樹。文字が画面に映し出される。映りが(いい。悪い)。幻灯のように映し出す=梶井。▼映す(湖が空の色を。風が雲を払い、月が木の葉の影を窓に三浦し)。心の投影が色濃く出る。 **えいが【映画】** ▼映画(字幕つきの。波瀾はらに富んだ大がかりな三島。テレビの連続ドラマを何回分かまとめたようなだるい印象を残す"池澤)。映画でも見ているような浮遊感が心地良い!高樹。映画に(端役として出る。なりそうなくらいドラマチック"小池)。恋は映画にぴったりの主題。やけに気取った一昔前の映画に出てくるようななりをして街を歩く"大庭。映画の(試写会。一シーンをありありと思い浮かべる。ストップモーションのように動きを止めたまま=鎌田)。過去の生活の断片的なシーンが映画のフラッシュバックのように音もなく逆流する"石坂。姿や顔が映画のフラッシュのように浮かんだり消えたりする=円地。一願いとり映画の感想を披露し合う乃南。映画は人町の心理の歪ゅがんだ鏡に映った真実をそのまま利用する"池澤。映画を配給する。強烈な映画を観たあとのように頭の中で場面場面のフラッシュがひらめく飯田。外国映画のように下着のままで部屋を歩きまわる=干刈。カフカの小説を香港で映画化したような現実=小林信。いかにも映画的なふくらみの多いたっぷりした作品『池澤。ギャング映画にして十篇分ぐらいの裏切り。井上ひ。ギャング映画の一シーンのような事件=常盤。自主映画を作って上映する。フェデリコ・フェリーニの白黒映画に出てきそうな感じの車=村上春。人生はB級映画のようなもの、途中で席を立とうとは思わないが、かといって二度と観たいとも思わない=小林信。映写機が回転を続ける。荒唐無稽な活劇世界。スクリーンに登場する。封切りの洋画を見る。▼放映する(人工衛星の打ち上げを。オリンピックを全世界に。映画をテレビで)。アニメに夢を燃やす。アニメのキャラクター。アニメを(観る。録画する)。ビデオで再生したように再現される=貫井。現場をビデオに収める。ビデオの早送りを見ているように風景が変わっていく=中島み。ビデオを再生にかける。スローモーションビデオのような緩慢な動き小林久。頭の中のビデオテープに保存する=島田。DVDを見る。 **えいぞう【映像】** 生々しくショッキングな映像。映像が(頭の中に固定する。まぶたの裏にやきついて離れない=高見浩)。脈絡のない映像が続く。臉娃ょを閉じれば映像が浮かんでくる人っ束。死が映像となって近づく=大岡。映像を画面に呼び出す。敵の動きがスローモーション映像を見ているようにとてもゆっくりとしたものに見える=清水義。 **かがみ【鏡】** 鏡が(過去を映し出す。粉々に砕け散る)。・鏡が曇る(息で。湯気で。良心の)。自分の姿を鏡で見る。今まで自分でも気がつかずにいた自分を鏡で見せつけられたような不快有局。化粧するために鏡と大格闘してきたような顔連城。鏡に(顔を映す。映すようにすべてが明らかになる倉橋。向かって何度も練習を積んだような微笑組み方"村上春)。思っていることが鏡に映すようにわかる=阿刀田。鏡に向かって(化粧を直す。にっこり笑ってみる)。鏡の(上を歩いているような舗道の照り返し=中村貞。中に黄昏|炊忙の色が沈み、暮れた湖面のように紫色の総もゃがたち迷う瀬戸内)。海はどこまでも青く磨きたてた青銅の鏡の色をしている=倉橋。不意に鏡の奥に何かの影を見かけたような不安=日野。鏡の前で(にらめっこする。百面相をつくる=高樹)。研磨された金属の面は鏡よりも美しく人の顔を映す高橋和。鏡を見るのが怖くなる。鏡台に鏡を立てる。鏡の中でまた鏡を見るような奥へ奥へ引っぱられる重苦しい夢のような気持ち=安岡。食い入るように鏡を覗のぞき込む!有吉。波が夏の陽を反射して鏡を撒まいたように輝き摇れる=船山。海が鏡のように凪なぐ“阿久。澱ょとんで流れる辺りは鏡のごとく瀬をなして流れる処は月光が砕けてぎらぎら光る=国木田。海が静かで鏡のよう佐山。凪いで鏡のような海を船が滑っていく=辺見。鏡のように(しずもる湖水。磨かれた氷。相手と同じ表情になる=丸谷。まぶしく眼を射るおだやかな午後の海真継)。お日様が砕けた鏡のように樺の木の向こうに落ちる=宮沢。ガラス板が夢を映し出す二重の鏡のように心を映す“村上巻。ガラス戸が曇った古い鏡のようにぼんやりと姿を写す島尾。思慕が鏡のように相手の美しさを映す=福永。梳ときながした髪が鏡のように輝く宮部。涙の酒がれた女の目がひび割れた鏡のように白くなる=高橋二。灰色のさざなみをよせる湖の水面が、磨くのを忘れた鏡のようにさむざむと開ける!芥川。吹雪が原野の面を磨いて一枚の鏡のようにまっ平らにする"本庄。ホテルの廊下や広間の床が秋の淡い雲が写る鏡のように静か川端。▼鏡のように光る(海が。食卓が暗い)。青剣7270婴の鏡のように鈍く光る泥溜まり“長野。磨きこんだ床板が鏡のように光っている=津本。音楽は人間の内面を映す鏡みたいなもの“五木。鏡台の前に座る。鏡面のように静かになっている過去連城。手鏡に背後を写す。陽光に水鏡がきらきら輝く奥泉。顔を水鏡に映す。姿見で全身を眺める。姿見に映る立ち姿。姿見の前に立つ。バックミラーを見る。▼バックミラーを覗く(上目づかいに。ちらっと)。ルームミラーの角度を調整する。 <180> # う **かげ【影】** ▼影(眼差しに宿るはかなげな"小川。一筋線を引いたように伸びている三浦綫。靄もゃのごとく立ち込めている=村松)。▼翳かげ(少し窪くほんだ眼のあたりに漂う陰気な黒岩。孤独な人を寄せつけないような暗い!永井路)。影が(壁に踊る。壁を這ょう。地面に落ちる。霧の背後に沈む。ゴムのように長くなる阿久)。心に影がかかる。参詣客の影がまばら。月明かりで影がくっきりと地面に印される。妻に男の影がつきまとう。火の影がちょろちょろ見える。不快な影が心を去らない。もつれあっていた影が離れる。横顔に寂しげな影が生じる。陽を背にして歩く影が路上を長くなぞる=原田彩。怨念の影が揺曳社いする=源氏。曇った日の山の斜面を降りてくる霧のようにひやりとした影が背筋を初はう“大佛。ショーウインドーに映るひょろ長い影が台所の壁に立てかけてある固くなったフランスバンそっくり“向田。電車や群衆の影が夢のように動く=徳田。山の巨大な影が谷を覆う高井。憂鬱な影が頬のあたりに漂漂う野間。▼影がある(瞳に邪悪な。顔に憂愁の)。▼影が浮かぶ(ガラス戸に。目に)。▼影が動く(壁の上を。窓に。すっっと)。▼影が映る(壁に。障子に。鏡面に自分の)。▼影が漂う(身辺に。眉間に)。肩に覆いきれぬ影がにじむ。顔に薄笑いじみた翳がにじむ=永井路。▼影が走る(眉間に。ちらちら。顔に怯ぉぃえのような"古井)。視線に影が宿る。▼影がよぎる(心を。頬に。顔を一瞬。ふっと人の)。顔に悲しみと欲びとが影と日向のようにかわるがわる現れる三島。顔が影に限収とまられる。影の(多い人物。あるニヒルな笑い。ない明るさが広がる。形に添うごとく付き随う井上靖)。月が白くほっかりと陰翳かげを投げる=長塚。過去が影を引きずる。三尺さがって師の影を踏まず。地面に影を置く。前途に影を投げかける。長々と影を引く。道の上の小石が影を立てる。腫れぼったい目に不服そうな影をたたえる三好殺。目に苦岡にもの影を宿す。江戸川。幽霊みたいに影をなくす=日野。落葉樹の古木がレースのような影をひろげる=曽野。自分の影を(引き剥がされたような居心地の悪さ=鳥田。踏んでその影を追うように歩く佐藤谷)。影のごとく音もなく動く=佐藤巻。回想を影のごとく脳裡1203に引く今日。砂と見分けられない淡い影のような蟹かに=中島救。まるで影のような後ろ姿"高見町。柔らかい細い影のような小さい睫毛性っ野間。ゆらめく影のようなあやうい感じのある女"日野。影のように(現れる。静かな女。静かに歩く。音もなく離れる=北。暗い微笑を浮かべる"石川。バルコニーの大理石を踏んで広間に戻る=光瀬。ひっそりと歩く角田。ひっそりとした黒服の人々=中沢。ふらふら吸い寄せられる=川端。床に張りついて生きる=高橋三。ゆっくりと近づく中沢。夜の闇に溶け込む=福永)。歩くたびに動く影のように実体がない=中上。動いている人が影のように見え、次第に霧に呑まれて薄らいでいく“大佛。階段の下に影のように置いてある炭俵"久米。霧の中にスキーヤーが影のように源黒く泛ぅかぶ"大佛。鈍くひろがる視野の中を影のように移っていく姿古井。走り雲の落としてゆく影のように顔が瞬間暗くなる=小林多。影も形も(なくなる。見当たらない)。華のない影のうすい存在向田。自分の影がうすく消えて行ってしまっような頼りない気持ち"島尾。大きな紗し、で掩ぉぉうたかと思うように薄い陰翳かげが世間を包む=長塚。女の姿が浮い影のようにぼんやり動く=内田百。▼影が濃い(魚の。初夏の日がひっそりと光を降ろして土には物の人米)。影が鋳込んだように濃い=日野。衰退の影を濃くする。樹々の緑が一段と翳を濃くする=永井路。影が射す(頬に。胸に。喜びに。噂をすれば。顔にちらと)。蜜のように甘い夫婦仲に不安な影がさす戸板。日の光がしぼむように心に影がさしこむ藤沢。▼影を落とす(一家に不吉な。向かいの山に雲が。生き方に大きな。人間関係に微妙な。虚無感が意識に。街路樹の並びが車道に静かな"日野。人家が暗がりの中に=勝目。疲労と倦怠けが雪曇りの空のようなどんよりとした芥川)。心に濃い不安が翳を落とす光瀬。遠い日の確執が影を落としている光原。湖に影を落としている古い建物。▼影が落ちる(水面に。路面に。黒々と)。黒い影が(海面に吸い込まれる。格子の上に一面に映る)。山々の黒い影が闇よりもずっしりと黒い吉木。丘の緑の縞しまに黒い影の糸が織り込まれる佐藤巻。目の縁に黒い影を持つ。影が(切り絵のように黒々と定まって動かない高樹。病んでいるように不気味に黒く揺れる=原田康)。 **かげえ【影絵】** 夕空を背景にしたビルの影絵が遠く見える=日野。影絵でも見るようなぼんやりした書き割り“阿部。影影絵の人形みたいに真っ黒"山口。規則的な歩調で絵を動かすように歩く=大佛。富士が夕焼けの空にくっきりと絵を描き出す大岡。影絵のように向こうの白い山はだに影が映る遠藤。ありさまが影絵のように髪荒ぶっと心に浮かぶ"阿刀田。薄い茄子色心付の夕空を背景に丘の疎林が影絵のようにくっきり浮く原田店。雪原の動物が影絵のように淡く明滅する=加賀。空が白んで椰子ゃしの葉が梢に影絵のように見える=今日。たち並ぶ家々の軒並がくっきり影絵のように浮かび上がる"山崎。乳色の濃い靄もゃの中から影絵のように姿を現す=山本円。はるかな地平線に林のようなものが遠く影絵のように浮く光源。ひっそりとした群集が三々五々影絵のように闇の中に散り始める=福永。 <181> # う **かげぼうし【影法師】** ばけもののように長くぼんやりうしろへ引いている影ぼうし!宮沢。影法師が(足元に落ちる。伸びたり縮んだりする。行灯とんの紙に途方もなく大きく映る=中)。障子に影法師が写る。卵色の雪道に影法師が銀ねず色になってちらちらと助く=石森。だいぶ傾いた日が影法師を細長くななめに地に映す壺井。影法師のように(座っている。佇かたむ。いつも側そばを離れない高橋治)。男が霧の中に影法師のように立つ『大佛。たった独り影法師のようにに坐り続ける"阿刀田。 **がぞう【画像】** ▼画像(X線を用いた。思いもかけない鮮明な。ネット上に氾濫は从する"平野)。目の前にぶら下がっていた源紙が突然引き剥がされ思いもかけない鮮明な画像が現れたような感じ=小池。画像を横並びで表示する。鮮明な画像を得る。パソコンに画像を古めかしい画像のように朦朧とする谷送る。古めかしい画像のように朦朧とする谷崎。コンピューターで画像処理する。画質が(いい。悪い)。子供が描いたような稚拙な線を持つ図像"井上靖。はっきりとした像を結ぶ。 **がめん【画面】** 画面が(ぐらぐら揺れる。ちらちらして見にくい)。画面から(顔を逸らせる。目が離せない。躍り出て襲いかかってでもきそう=高橋克)。画面に(目を近づける。視線を釘づけにされる)。視聴者の目を画面に引きつける。画面を斜めに横切る。バソコンの画面をスクロールする。ぼんやり画面を見つめる。画面いっぱいに大写しにする。モニターが待ち受け画面になる。モニターに(ノイズが走る。見入る。目を向ける)。パソコンのモニターに映し出される。男がモニターに大映しになる佐々木。パソコンのモニターを覗のぞきこむ。 **シルエット** 馬が一頭すっくと立った美しいシルエット内田康。シルエットが陽炎効氷のように目に映る"泉優。山の黒いシルエットが横たわる。木々や畑や山々のシルエットが切り絵のように行き過ぎる"吉本。隙間なく重なりあう山のシルエットが闇に沈む"三浦し。ビルの巨大なシルエットが夕空を圧する=石田衣。富士山のシルエットがぼんやり浮かんでいる"佐藤多。礼拝堂のシルエットが棺ごっのように黒い"加賀。▼シルエットが浮かび上がる(窓に。夜景をバックに=笹沢)。屋敷林がすっきりしたシルエットで空にのびている三浦し。青い空にくっきりと見える飛行機のシルエットを見つめる=池澤。暮れはじめた海を背景に鋭角的なシルエットを浮き上がらせる=半村。 **テレビ** テレビから目を離さない。テレビで(映画を放映する。全国に中継される)。人々の目をテレビに釘付けにする=胡桃沢。テレビの(映りが悪い。音量を下げる。画面に見入る。前に陣取る。画面から目を離す。チャンネルを切り替える。ボリュームを上げる。リモコンに手を伸ばす。録画を繰り返し見る。画面が頭に焼き付いて離れない東野)。放送終了後のテレビの砂嵐、テレビを(電源につなぐ。つけっ放しにする)。リモコンでテレビをつける。見るともなしにぼんやりとテレビを眺める=鷺沢。▼テレビを見る(退屈しのぎに。だらだらと)。テレビ画面に目を据える。一世を風靡ふぅしたテレビドラマ。テレビドラマを録画する。 **はんえい【反映】** 海の反映で琺瑯質沿いのように固くつややかに見える雲三島。▼反映する(草の根の声を。時代の風潮を。犯罪は世相を。感情が歌に。民意を正確に。民意を政治に。考え方が作品に。気持ちが態度に。世の中の声を正しく。鏡のように母親の举措言動がそのまま子供の上に=山本戍。気持ちの乱れが業務にも如実に=有川。きりっと出来あがった身こしらえが気持ちに"本庄)。素朴に好悪を行動に反映させる=中村真。 **はんしゃ【反射】** 頭の芯に突き刺さってくるような真夏の道の反射・藤枝。▼反射する(太陽の光を。海面に明るい陽光が。眼鏡のレンズに光が。暁の白さが波に。蛍光灯がガラスに。初夏の日差しがアスファルトに。湖面が星明かりを鈍く。火があかあかと清流に"獅子。内海に午前の太陽がきらきらと=福永。涙が月の光をきらきら=大江)。倉の壁に入り江の湖の反射光がユラユラユラユラうこめいている=檀。銀箔かアルミの粉末でもまぶしたようにビニール袋が直射日光を乱反射して輝きわたる=日野。光が乱反射する。 <182> # う **うつる【移る】** 移る(新しい職場に。最後の質問に。即座に行動に。隣の棟に。別の病院に。右側の車線に。がやがやと雑談に。関心が別の方向に。作業が最終段階に。総務から営業に。茶の間から書斎に。次のステップに。番組が次のコーナーに。一つの営為から次の営為に。マンションから実家に。太陽が山のほうへ)。 病気が人にうつる。 とっさに行動に移れない。 乗り移る(悪魔が。憎しみが。不安が。霊が。船に)。 ストーブの火がカーテンに燃え移る。 ▼異動する(支店に。別の部署に)。 ▼転移する(美意識が。癌がんが全身に)。 **うわき【浮気】** 浮気が(ばれる。離婚問題に発展する。原因の諍いが絶えない"結城)。 浮気な(男。女。亭主を持つと苦労する=筒井)。 浮気に(いそしむ。嫉妬する)。 恋人の浮気に神経を尖らせる。 妻の浮気に腹を立てる。 男の浮気に深刻に悩まされる=松浦。 さんざ亭主の浮気に泣かされる=野坂。 浮気の(現場を目撃する。尻尾をつかまれる)。 浮気の虫がなかなかおさまらない=池波。 すぐ浮気の虫が動きだす赤川。 気を餌に口止め料を釣ろうとするゆすり~鳥田。 男なんて多かれ少なかれ浮気をしている落合。 まさか浮気をすることはあるまい谷崎。 浮気をするごこっそり。弾みで)。 他の女に心を移す。 尻軽な女。 尻軽女のように軽口を言う。中上。 **かわりめ【変わり目】** ▼変わり目(学年の。時代の。歴史の。目まぐるしい運命の瀬戸内)。 少年から青年への鮮やかな変わり目が訪れる=平岩。 季節の変わり目の他愛ない感傷落合。 信号の変わり目を縫う。 月番の変わり目を狙う。 移行期を迎える。 転換期を迎える。 移行期に入る。 過渡期にさしかかる。 過渡期を乗り切る。 過渡的な(時期。段階)。 方針の転換期に当たる。 ▼転換点(生活の大きな。歴史の)。 端境期がやって来る。 端境期に入る。 端境期を迎える。 **いきがかり【行きがかり】** 行きがかりの惰性で次を訳かないではいられない=岡本。 一切の行きがかりを捨てる。 これまでの行きがかりを水に流す舟橋。 行きがかり上(後へは退けない。仕方なく参加する。申し出を断れない。虚勢を示したに過ぎない!水井荷。付きあわないわけにはいかない!宮部)。 **いしょく【移植】** ▼移植する(革命の成果を。苗を。皮膚を。文化を。骨を。知識をコンピューターに)。 臓移植を受ける。 ▼移し植える(科学の芽を。フランスの象徴詩を見事な邦語に三好述)。 ▼接種する(ウイルスを。ワクチンを)。 **いせき【移籍】** 移籍する(子会社に。歌手がレコード会社を。選手がチームを)。 籍を移す。 転籍する(子会社に。他の市町村に)。 **いどう【移動】** 自由で奔放な視点の移動。 移動の自由を制限する。 移動する(道路上を。昼と夜の境を。安全な場所に。場所を転々と。左から右へ。群れをなして。トレーラーハウスで次の町に。屋根伝いに隣の家に。位置が少しずつ。押し合いながら。漁場から漁場へと。濡れ縁の端まで。部屋から部屋へ。足場の悪い急斜面を身軽に三浦し。ほんのひと膝いざるだけずつ幸田文)。 移駐する(軍隊が。部隊が)。 よそへ河岸を変える。 河岸をかえて飲み直す。 別の場所に移動する。 **うつす【移す】** ▼移す(壁の陰に身を。地方に権限を。灯明に炎を。早足に歩を。洋館に居を。安全な場所に。遺体を棺桶紛れに。考えを行動に。話を本題に。別の容器に。理論を実践に。手煽こに明かりを。長屋に住まいを。本殿に御神体を。ろうそくに火を。大徳利の酒をちろりに。ご飯を電気釜からお橙ぃっに。漏斗で広口瓶に。席を立って庭先へ歩みを=山岡)。 ▼視線を移す(手元に。窓の外に。メモに。顔から胸へと)。 ▼実行に移す(思いつきを。隠れた欲望を。婴作ブランを。腹案を。計画を着々と)。 ▼実施に移す(改革を。新しいブロジェクトを。あらかじめ組んでいた計画を)。 ▼目を移す(庭の桜に。バネル上に。ホームの時計に)。 口移しに水を飲ませる。 移し入れる(別な次元へ。疎林の中に戦闘の場所を"中局救)。 転々と居所を移し変える内橋。 移管する(管心を。権限を。事業を。国から民間へ)。 移設する(工場を。信号機を。建物を)。 感情移入が深くなって声が少し上ずる=辻井。 文章の節々に自分の感情を移入して読む=辻井。 物資を移入する。 泰遷する(御神体を。神霊を。御霊詠たを)。 移転する(技術を。庁舎を。物権を。本社を。隣町に)。 門扉に移転先を告げる貼り紙がある。 **うつっていく【移って行く】** ▼移っていく(季節が。日が空を。視界の左から右へ。順調に本格生産へと。親近感が恋愛感情に=円地)。 移り行く世相を眺める。 季節の移ろいを眺める。 一人一人にとって生死にかかわることが暦の移ろいのように坦々と動いていく"渡辺。 なんの抵抗もなくするりと移行できる。 移行する(徐々に。新政府に。速やかに。年金生活に。慢性に。ゆるやかに)。 ▼移ろう(影が。感情が。季節が。想念が。木々の間を)。 転々と(下宿を替わる。引っ越しを繰り返す)。 各地を順々と放浪する。 あちらこちららの旅籠たを転々と泊まりあるく=柴田剣。 ▼転々とする(各種の職業を。いろいろな心を。都内のあっちこっちを。町から町へ村から村へ全国を=辺見)。 **うつりぎ【移り気】** 移り気な(女。心)。 浮気な移り気な男。 移り気に(泣かされる。翻弄される)。 ▼気移りする(あれこれ。一つ選ぶとなると)。 多情な夫。 生まれつき多情な女。 むら気が激しい。 むら気な(女性格)。 姑のむら気に対する反撥皿を洩もらす里見。 嗜好礼にがむら気になる。 <183> **かんせん【感染】** ▼感染する(あくびが。恐怖が。笑いが。お祭り気分に。病気に。浅はかな外来思想に。おかしな趣味に。気合がスタッフに。コンビューターウイルスに)。感染している可能性がきわめて高い辺見。感染拡大を防ぐ。感染者が増える。感染力が(強い。弱い)。細菌感染によって命を落とす。 **きまぐれ【気紛れ】** 気まぐれ(男心のように。女心のように。単なる。人の心は。一時の浮ついた浅川。趣味がずいぶん=開高。ほんのちょっとした佐藤春)。風のように気まぐれでとらえどころがない=石坂。気まぐれな(思いつき。偶然の悪戯朴公。行動。季節外れの花のような鹿鳴館時代・佐藤春)。他愛もない気まぐれな一言。子供じみた気まぐれな空想を捨てる!後藤。妙にきまぐれな落ち着かない女=林美。気まぐれに(手を焼く。身をまかせる。しゃべりまくる)。何ごとかが突発的に気まぐれに起こる「武田奈。わがままなお嬢さんの気まぐれに過ぎない=結城。気まぐれの虫が騒ぐ。五十がらみの年齢に似もやらぬ少年詩人のごとき気分屋"坂口。虫の居所に左右される。猫の目みたよに機嫌が変わる=宇野千。機嫌買いな天気が一日のうちに幾度となく顔をしかめる=有鳥。機嫌にむらがある。機嫌の明暗常ない人物"司馬。 **じょうせい 【情勢】** 情勢が(一挙に緊迫する。急速に悪化する。めまぐるしく変わる。有利に展開する)。情勢の急変に対応する。情勢を(正確につかむ。大局的に見る)。国際情勢を見極める。敵の情勢を察知する。 **たいせい【大勢】** 大勢だけで見切ることは早計だと論される=有川。時代の大勢に巻き込まれる。世の大勢に逆らう。大勢の流れに抗幅もう発言。大勢は既に動かしがたい。大勢を左右し得るほどの勢力美濃部。大勢に従う。小異を捨てて大同につく。大勢に順応する。大勢に影響がない。コッブの中の嵐。大局に影響がない。 **てんしょく【転職】** 転職を考える。希ツする。繰り返す)。転職する(他の分野に。役所から民間へ)。よしんば転職できたとしても今より待遇が悪くなることも大いに考えられる=畑村。▼転業する(他の業種に。魚屋に見切りをつけてラーメン屋に=ねじめ)。伝業を(考える。決意する)。違う職種に転じる。 **てんじる【転じる】** ▼転じる(屈辱を栄光に。困難を他に。反転攻勢に。目を客席に。株価が戻り歩調に。最終段階で賛成に。明の世界から暗の世界に。夢が確固たる望みに。横ばいから下落に。はぐらかして巧妙に話頭を谷崎)。▼方向に転じる(話が思わぬ。ブラスの)。話題を転じる(おもむろに。唐突に)。身を転じて木立の中へ走り込む。禍加心を転じて福となす。 **てんしん【転身】** 傍目には突飛とも見える転身!高井。転身を(思い立つ。決意する)。転身する(タレントに。役人から弁護士に)。変わり身が早い。干変万化从がんの変わり身を秘める=隆。 **でんせん【伝染】** 伝染の(気遣いはない。危険にさらされる)。伝染する(あくびが。緊張感が。病気が。不安が瞬時に。またたく間に)。 **とびつつる【飛び移る】** ▼飛び移る(樹間を。舟を。筏なかに。舟から岸に。枝から枝へと。木から木へと。梢から梢へと。びょんと。ひょいと対岸に。猿ぼしのように別の木へ=柴田鍊)。 **なりゆき【成り行き】** ▼成り行き(ごく自然な。案に相違した)。成り行きで体を任せる。流れ行く木の薬のように自然な成り行きで病院のベッドから墓へと運ばれる=奥泉。喜ばしい成り行きではない。成り行きに不安を感じる。▼成り行きを見守る(固唾扮たを飲んで。啞然ふぜとしてことの"安岡)。事の成り行きがのみこめる。事の成り行きに危惧をいだく。意外な事の成り行きに茫然搬らとする。風向きが変わる。話の風向きを変える。どういう風の吹き回し。局面がくるくると変転する。事態が新しい局面を迎える。話が妙な具合に転がる。変な具合に耳に伝わる。戦争になるかもしれないような雲行き。計画の雲行きが怪しくなる。形勢が(自分に有利に展開する。日に日に悪くなる)。天下の形勢が逆転する。形勢不利と見て逃げ出す。時局が(緊迫する。逼迫にする)。多難な時局に対処する。時局の認識に欠ける。今後の動向をト悪い)。事と次第によっては(話してもよい。考え直してもいい)。話次第によっては手伝ってもいい。物のはずみで(言ってしまう。どうなるか分からない小局)。はずみで大事が出来礼いっする。 **ひっこす【引っ越す】** ▼引っ越す(新しい家に。隣町に。マンションに。新居へ。行方も告げずに。郊外にできたばかりの団地に干刈)。晩ぉぞかれ早かれ引っ越さなければならない!永井荷。引っ越しの(荷物が届く。手伝いを頼まれる)。住民でを移す。マンションに移る。引っ越し祝いをかねたバーティ。引っ越しそばを食べる。移住する(外国に。新天地を求めて。一族を引き連れて北海道に=窪川)。移民を(欲迎する。敵視する)。移り住む(家を。アバートに。他の市町村に。山の中に。転々と。手頃な貸し家を見つけて)。▼居を移す(地方に。転々と)。近くに越してくる。小さな借家へ移る。疎開する(郷里に。山奥に。縁故を頼って)。転居する(田舎に。都会に)。病気の妻を転地させる。隣町から転入する。▼引き払う(家を。下宿を)。▶雌村する(住民が。一家で)。離村で集落が崩壊する。 **わたりあるく【渡り歩く】** ▼渡り歩く(時々の主流を。町から町を。男から男へと。重要なボストを。興行地から興行地へと。飯場から飯場へと。上手に男の間を水倉。悲劇から悲劇へと=辺見。リレー競走のバトンみたいに目まぐるしく太宰)。旅から旅を先生顔で渡りあるく幸田露。 <184> # 頷く・従う **おとも【お供】** お供の衆を連れる。供を(従える。逃れる。引き連れる)。▼お供をする(社長の。先生の)。従者を(従える。連れる)。従卒のように後に続く国木田。随行する(社長に。首相に。大統領に)。随伴する(社長に。特使に)。 **おべっか** 心にもないおべっか。おべっかを使う(上司に。先生に。ちゃらちゃらと)。▼お追従いいし(見えすいた。歯の浮くような)。見えすいたおべんちゃらを言う。調子のいい(お追従が口から飛び出す=貫井。べんちゃらを並べたてる=山崎)。 **おやふこう【親不孝】** 親不孝な(息子。娘)。親不孝は承知の上だが行かせてほしいと呪文のように繰り返す鷺沢。親不孝を(たしなめる。詫びる)。さんざ親不学をする。親にむかって手をあげる。不孝の(罰が当たる。かぎりをつくす)。親に先立つ不孝者。先立つ不孝をお許しください。 **けらい【家来】** 家米(従順な。忠順な。腹心の)。主君が家来をねぎらう。自分の家来のようにあごで使う舟橋。家臣を代表して発言する。王が家臣を引見する。家中の(士風が乱れる。言論を統一する)。重臣たちがこぞって反対する。天皇の股肱にこの臣。臣下として主君に仕える。臣下の注進に応える。爪牙好,の(士。臣)。老臣を(従える。まとめる)。▼郎党(忠義な。忠順な)。家の子郎党を引き連れる。 **ごきげんとり【御機嫌取り】** 御機嫌取りに終始する。歓心を買うように言う。尻尾を振ってご機嫌を取る。機嫌を(取り結ぶ。とるような弱いまなざしと声壷井。取るように訊たずねる=黒井)。▼機嫌を伺う(罪亡ぼしに。おどおどして)。 **いいなり【言いなり】** 言いなりになる(売り手の。親の。親分の。会社の。他人の)。あなた任せな投げやり。あなだ任せの気楽な旅。へいこらする(僚い人に。上司に。保身のために)。▼盲従する(言いつけに。上役に。権威に)。唯々諾々と(付き従う。命令に従う。言いつけに従う。言うことを聞く。命を捨てようとしている)。理不尽な指図を唯々諾々と受け入れる!高杉。 **うなずく 【頷く】** ▼頷く(見えるか見えないくらいに井伏。いかにも渋々という態で=有川。ギニョール人形の首の部分だけががっくりと前に崩れたように"藤本。叱られた子供のように唇を曲げて=内海。魂を抜かれたようにただコクコクと何度も=鷺沢。得心がいったようにひとつ辻井。猫のようにこくりと高樹)。▼うなずく(面倒臭そうに。優しく寛大に。肩をすくめて。心で深く。したり顔で。力を込めて。なるほどと。二度三度と。不承不承。間髪を入れずに。自信たっぷりに。ため息まじりに。納得顔で小刻みに。濁った目で曖昧に。にこりともせずに。表情を変えずに。うんうんと頭を振って。考え深げな目で。感に逃えたように。さも感心したように。しぶしぶながら。自分の考えに自分で。殊勝な面持ちで。神妙に聴き入りながら。適当に調子を合わせて。拍子抜けするほどあっさりと。万事心得ているというふうに水井路。子供のようにこっくりと"小池。心中を見透かしたかのように永井路。見つめられてつりこまれるように長崎。よくわかったというふうに深々と有島)。大きく頷く(薄暗闇でもはっきり見えるくらい高樹。併を呑み込むように=獅子)。▼何度もうなずく(うれしそうに。せわしなく)。表情でうなずく(真面目な。固い)。大きくうなずいて肯定する。ふむふむとうなずいて聞く。うなずいてしまう(うっかり。思わず)。わが意を得たりというように大きく頷いてみせる"内田店。直立不動で立たされていた生徒が教師からやっと許しを得たような大げさな肯粉ぇき方連城。分かったような分からないようなうなずき方。こくりと首を縦に振る。▼うなずき合う(親しげに。目顔で。顔を見合わせうれしげに=池波)。▼うなずき返す(曖昧に。神妙に。適当に。悠然と)。首振り人形のように領ぢょき交わす井上ひ。なるほどと首肯点頭する。こっくりと点頭する。▼相槌を打つ(如才なく話に。にこやかに。不承不承に。うんうんと。取りあえず適当に。他人事ごとのように三浦哲)。いちいち相槌を打つのに疲れる=小池。相槌を打つのも忘れて聞き惚にれる=海音寺。溜め息をつくような声で相槌をうつ。木山。上の空でいい加減な相づちを打つ三浦綾。 **うのみ【鵜呑み】** 鵜呑みに信じこむ。▼鵜呑みにする(無批判に。専門家の意見を。新聞記事をそのまま。悪性の腫れ物のように触れることをはばかって頭から=中)。怪々に過去の研究家の所説を鵜呑みにするのは危険!舟橋。相手の言葉を鵜呑みにするな「池井戸。▼受け売り(西洋思想の。ガイドブックの)。▼口写し(評論家の。マスコミの)。頭から丸呑みに信じ込む。話を丸呑みにする。 **おせじ【お世辞】** ▼お世辞(歯の浮くような。とってつけたような"石森。下手、たなだけに真味の感じられる=連城)。お世辞が(うまい。上手。何の苦もなく言える)。まんざらお世辞でもないらしい。お世辞はもう聞き飽きた"阿川佐。お世辞も度が過ぎると嫌み近藤。お世辞を言っておだてる。べたべたお世辞を並べる。当たらずさわらずのお世辞を述べる=太宰辛。▼お世辞を言う(へらへら。見え透いた)。舐めまわさんばかりにお世辞を云ぃう坂口。尻がくすぐったくなるような言いぐさ藤本。外交辞令に過ぎない賛辞。外交辞令を真に受ける。見えすいた胡麻ごますり。社交辞令を真に受ける。 <185> **じだいしゅぎ【事大主義】** ▼事大主義(因襲的な。の利に従う)。 事大主義に陥る。 事大主義を排斥する。 寄らば大樹の陰。 強い者にへいこらする。 長いものには巻かれろ。 **したがう【従う】** ▼従う(御意のままに。近所の習慣に。憲政の常道に。婚家の家風に。自己の信念に。自然の法則に。時代の要請に。師の考えに。社会通念に。上司の指示に。先生の言葉に。ためらわずに。天下の大義に。天の摂理に。時の利に。古い伝統に。良心の声に。唯々諾々と。一も二もなく。心ならずも。指示に逐一。不承不承。あっさりと勧めに。委員会の決定に。口答え一つせずに。自然の成り行きに。衝動の赴くままに。心情の赴くところに。その国の風習に。他人のいうままに。泣く泣く上意に。みんなの意見に。何を言われても黙って。命令におとなしく。されるがままに人形のように=貫井)。 かくなる上は信じて従うよりほかはない。 ▼意志に従う(神の。自分の)。 金と衆には従え。 ▼用従する(権威に。大国に)。 理非もなくただいちずに随順する。 ▼追従する(後尾を。権力に。目前の情況に。タイヤが路面の変化に)。 服する(支配に。命令に。ルールに)。 ▼奉じる(朝廷を。勅命を。大義に)。 ▼屈服する(異教徒に。権力のもとに。拷問にんに。敵に。圧倒的な力の前に。オーソリティに)。 避難命令に従わない。 屈服をがえんじない。 同意を拒む。 服従という視念に欠ける。 **したがわせる【従わせる】** 従わせる(女を。民心を。力ずくで)。 ▼圧伏する(異教徒を。強権で)。 ▼屈服させる(敵を。手っ取り早く、腕力であからさまに)。 心服させる(学生を。下士官を)。 ▼服従させる(社会を。農民を。労働者を。威圧して)。 **じゅうじゅん【従順】** 従順(催眠術にかかったかのように小川。身を投げ出したように"大佛)。 従順な神の僕も。 呃びにかかった晩牛沿いのような従順な忍耐"有島。 教えに従順に従う。 親に従順になる。 指示通りに従順に働く。 羊のように従順に言うことを聞く=鈴木三。 従順一点張りの灰色の暮のような女獅子。 **しゅじゅう【主従】** 主従の(関係にある。境を隔てる。矩の)。 主従の隔てを(超える。破って夫婦になる=吉川)。 君臣義あり。 君臣の(縁を絶つ。礼)。 **じょうし【上司】** 上司から叱責される。 上司からの受けが悪い。 上司に伺いを立てる。 直属の上司に報告する。 上司の(指示を受ける。腹を持たのむ。了解を得る。意向にたてつく。心ない言動が部下を傷つける。言葉に発奮する。悪口を言い始める。寛容さの上にあぐらをかく新田)。 上司風を吹かす。 上官口調で命令する。 上役に(可愛がられる。袖の下を使う)。 上役の(機嫌を取る。前をつくろう。顔色をうかがう)。 上役を差し置いて発言する。 **そっきん【側近】** 側近(首相の。代議士の)。 将軍の側近から老中に出世する竹内。 側近を集めて対応策を話し合う。 ▼片腕となって働く(社長の。首相の)。 腹心の部下。 ▼懐刀(社長の。将軍の。大臣の)。 右腕と頼む部下。 社長の右腕となって働く。 総理の右腕と言われた男。 **つきしたがう【付き従う」** ▼付き従う(権力者に。大国に。離れずに)。 ▼追随する(時代に。大衆に。米国に)。 他の追随を許さぬ強みを持つ。 足もとにからみつくようについて回る=住井。 ▼後塵に心を拝する(先人の。他国の。他党の)。 ▼従属する(国家に。政治的に。大組織に)。 従属物としての立場に甘んじる。 **てさき【手先】** ▼手先(悪事の。警察の。権力の)。 手先がわなわな震える。 体制側の手先となって働く。 手先の感覚が鈍る。 手先を務める(悪事の。お上の。抜け荷の)。 走狗に、(権力の。資本家の)。 **てした【手下】** やくざの手下。 手下の反乱に手を焼く。 **こび【媚】** しぐさに媚がある。 目に媚が現れる。 上眼づかいに見上げるような媚びが含まれている声=高橋治。 媚のある笑い方。 しとやかなうちに仄ほのかなる媚びを湛たたえた幽艶な美人谷崎。 しなだれかかるような媚びを含んだ澄んだ悲鳴"阿部。 瞳が若々しい媚を示す。 媚を含んだ(微笑。目)。 目が媚を(湛える。漂わせる)。 **こびる【媚びる】** ▼媚びる(上役に。客に。権力に。主人に。先輩に。猫のように。へらへら)。 温順を装って権勢にこびる態度森崎。 媚びた笑いを浮かべる。 旅行者の味覚に媚びた「郷土料理」『竹西。 眼に媚びるような色が浮かぶ吉村。 媚びるようなしなをつくる池田。 **さんせい【賛成】** 賛成か否か確答する。 賛成と反対が同数。 最終段階で賛成に転じる。 賛成の(意を表する。声が上がる。論陣を張る)。 ▼賛成する(全貝が。大多数が。意見に。積極的に。一も二もなく、大筋で。双手あげて。提案に全面的に。しぶしぶながら。よんどころなく。言葉が終わるか終わらないかのうちに"菊池)。 気魄にはに押されて賛成してしまう佐藤愛。 賛成多数で議決する。 異議を挑まない。 誰も異存はない。 少しの異存もない。 双手いっを挙げんばかりな賛意"里見。 満腔ほんの賛意を示す。 膝を打って提案を首肯する=舟橋。 賛同が広がる。 ▼賛同する(意見に。趣意に)。 ▼賛成しない(容易に。誰も)。 はかばかしく賛成する者がない。 おいそれと賛成する者もいない。 **さんぴ【賛否】** 賛否が(二分される。二つに割れる)。 賛否両論を呼ぶ。 可否を(決する。間う)。 認否の基準。 認否を拒否する。 罪状の認否を問う。 諾否の返事を保留する。 諾否は即答しかねる。 諾否を明らかにしない。 **じじょ【侍女】** 誰よりも信頼している侍女!あさの。 侍女にかしずかれる。 侍女を供に逃れる。 鈴を鳴らして侍女を呼ぶ=山本周。 秋の紅葉が散るように腰元どもが去って行く=山手。 <186> **ひしょ【秘書】** 秘書が口述筆記する。 指令を待っている秘書のような顔つきで立っている=池田。 文学趣味のある女秘書のような目で観察する"後藤。 社長秘書を務める。 ▼付き人(芸能人の。力士の)。 **ぶか【部下】** 部下が入れ替わり立ち替わり出入りする。 部下から連絡を受ける。 部下と酒席を共にする。 部下に(声をかける。指示を与える。人気がある。示しがつかない。用事を言いつける)。 電話で部下に連絡をとる。 峻厳れいんな軍律をもって部下にのぞむ"山岡。 部下の(進言に従う。提案を用いる。労に報いる。健康に目配りする。失敗を叱責する。突き上げが激しい。不始末に気づく。暴走を黙認する)。 部下を殺された腹いせをする=大沢。 声をからして部下を叱咤し。 激励する=筒井。 配下の心服を得る。 持ち駒の豈富なチーム。 **ふくじゅう【服従】** ▼服従する(主の命に。権力に。従順に。目前の運命に。二言もなく。命令に唯々として美濃部)。 絶対的服従を強いる。 反乱軍が政府に帰順する。 帰順を申し出る。 反発と帰順を繰り返す。 心服する(恩師に。師の教えに)。 **へつらう【諂う】** ▼へつらう(お僚方に。権力者に。社長に。上司に)。 媚びへつらう(上役に。主人に)。 欲心を買う。 うまく言いなして機嫌をとる。 媚こびを売る。 味噌を揺する。 巧言令色鲜付くし仁。 巧言令色の徒。 部長にごまをする。 大ボスに茶坊主のように取り入る。 追従いふしの徒が集まる。 追従笑いを浮かべる。 追従を言って取り入ろうとする。 露骨に追従をする。 ▼阿諛ぁゅ(あからさまな。露骨な)。 教授に阿映する医局員。 阿諛を適度に混ぜて述べる=松本。 阿諛追従を並べる。 帰還してくる武将たちの意を迎える=山岡。 意を迎えることに巧み。 おもねる(上司に。時流に。スポンサーに。大国に。大勢の力に。多数派に)。 政府におもねる御用学者。 幕府におもねる御用人におもねるような声。 ▼迎合する(権力に。上司に。時流に。世論に。体制に)。 **みさお【操】** 操が固い。 金のために操を捨てるような腐った女=山手。 操を立てる(死んだ女房に。好きな男のために渡辺)。 清節を(持する。全てする)。 節に殉じる。 節を曲げずに正義を貫く。 遺臣としての節を守る。 断固節を曲げない。 武人としての節を全うする。 貞節の(志が堅い。美名に隠れて罪悪を犯す=江戸川)。 貞節を守る。 恋人の貞節を信じて疑わない。 貞操を(失う。守る)。 貞操に無頓着。 貞操が堅い。 少々男好きのする貞操観念の薄い女倉橋。 **むじょうけん【無条件】** 無条件で(降伏する。釈放する)。 無条件に(承認する。信じる。喜ぶ)。 言い分を無条件に受け入れる。 理由の如何心ゅに拘わらず。 文句なしにチャンビオンに選ばれる。 文句なしのべた褒め。 **めしつかい【召し使い】** 召し使い(従順な。忠実な)。 召し使いか何かのようにこき使う太宰。 召し使いに対するような横柄さ三好说。 手を鳴らして召し使いを呼ぶ=海音寺。 忠実な召し使いのように真っ直ぐに立つ小池。 影のように寄り添っている従僕!本庄。 老僕にかしずかれて暮らす。 **めんじゅうふくはい【面従腹背】** 面従腹背の(国民。態度をとる。徒)。 ▼面従腹背する(支配者に。上からの指示に)。 陰でべろりと舌を出す。 舌を出す(後ろ向きに。内心赤い)。 命令に従順なふりをする。 **れいぞく【隷属】** 隷属が恨みを作る。 隷属に耐えて生き延びる。 隷属を拒否する。 ▼隷属する(大国に。都会に)。 隷属化する(弱小民族を。人々を)。 ▼隷従する(強国に。大国に)。 **てした【手下】** 手下を(顎で使う。連れて乗りこむ)。 手下のように働く。 お先棒を担ぐ。 下働きを務める。 手の者を送りこむ。 目下を(こき使う。叱する)。 子分の(杯を返す。面倒を見る)。 政府の提灯持ちいいち。 ちょうちん持ち的な記事を書く=西木。 提灯持ちのような真似もはできない=高橋克。 提灯記事を書く。 **どうい【同意】** 同意を求めるように周囲を見廻す藤枝。 強引に同意を求める。 ▼同意を得る(うわべだけの。本人の)。 ▼同意する(提案に。一も二もなく。しかたなく。しぶしぶ。不承不承。胸を叩いて)。 同意書を(作成する。もらい集める)。 うわべだけうべなう。 **とりいる【取り入る】** ▼取り入る(上役に。お上に。権円に。言葉巧みに。先生に。社長のぼんぼんに)。 立場が上の人に取り入るのが上手い"畑村。 **とりまき【取り巻き】** 取り巻きに囲まれる。 取り巻きの顔ぶれが一変する。 金魚のうんこのようについていく=沢木。 ぞろぞろと金魚の奨ょんみたいにあとについていく=北。 社長の腰ぎんちゃく。 腰巾着のようについて歩く。 童門。 医局長の腰巾着のように附いて廻る佐藤糸。 **どれい【奴隷】** 賃金労働者を奴隷に転化する。 奴隷になる(心が物の。欲望の)。 奴隷の身が悲しい。 哀れな奴隷の身の上。 奴隷を(解放する。買う。搾取する)。 奴隷の如く奉仕する。 奴隷のように卑しい身分住井。 なかば奴隷的な生活を強いられる三好徹。 **ねこなでごえ【猫撫で声】** ▼猫なで声(優しくつくった。甘ったれるようなそのくせ変に冷やかすような"谷崎。とってつけたような"石坂)。 猫なで声で(可愛く言う。口説く)。 いやらしい猫なで声で話しかける"阿部。 われながら浅ましいと思うような猫なで声で尋ねる"高見浩。 ひとを小馬鹿にしたような猫撫で声ですり寄って来る=福永。 **はべる【侍る】** ▼侍る(酒宴の席に。王座のそば近くに)。 侍らせる(少年を。美妓びきを。ホステスを。きれいどころを)。 ▼侍する(君側に。姑しゅうの臨終に。枕頭に)。 <187> **きこう【技巧】** ▼技巧(素朴な。熟練した。超絶した)。 技巧に(長だける。満ちた文体)。 女を愛する技巧に長じている!舟橋。 技巧的な(文体。声を張りあげる)。 巧を(尽くす。もてあそぶ)。 **きまずい【気まずい】** 気まずい(思いをさせる。空気が漂う)。 借金取りに会ったような気まずい顔!半村。 白けた気まずい沈黙がよどむ"五木。 やりきれない気まずい食い違いの感僧=大江。 気まずく視線をそらす。 二人の仲が気まずくなる。 気まずさが(先に立つ。胸に募る)。 気まずそうに(顔を背ける。目をそらす)。 **きよう【器用】** 手先が器用。 器用な(手つき。包丁さばき)。 器用に(糸を繰る。小刀をつかう。機械を分解する)。 障子の破れを器用に繕う。 包丁を器用に使いこなす。 指が器用に動く。 いくつもの物事を器用にさばく=村松。 小器用で小賢にだしい奴。 手先の小器用な男。 小器用に(立ち回る。まとめた文章)。 **きようびんぼう【器用貧乏】** 器用貧乏で苦労する。 器用すぎて大成しない。 多芸は無芸。 **くちじょうず【口上手】** 口上手な人。 口上手に乗せられる。 口も八丁手も八丁。 口巧者にに(説き伏せる。しゃべり立てる)。 口先巧みに売りつける。 口達者で人を丸めこむ。 口達者に理屈を並べる。 言葉巧みに連れ出す。 弁舌巧みに丸めこむ。 **くちべた【口下手】** 口下手で(困る。損をする)。 口下手な人。 口不調法で損をする。 口不調法な父親。 **くろうと【玄人】** 玄人の域に達する。 一応は玄人の水準に達する。 素人に毛の生えたようなプロ。 ブロと(見込んで頼みがある。アマの実力の差を見せつけられる=高橋三)。 アマチュアからブロに転向する。 ブロの道に踏み込む。 一応ブロのつもり。 ブロ中のブロをうならせた傑作。 玄人はだしの隠し芸。 玄人顔負けの技量。 専門家も(顔負け。舌を巻くほど)。 ブロと比べても遜色ない。 ブロも(顔負け。形なし)。 **うまい【上手い】** ▼うまい(客あしらいが。人の使い方が。目が回るほど。お話を作るのが。時間の割り振りが。話の引き出し方が。人を乗せるのが。洋服の着こなしが。足許協しにも寄れないほど"深沢)。 立場が上の人に取り入るのが上手い=畑村。 ビンポイントに人の気持ちを逆撫にかでするのが巧くうまい=有川。 口のうまい男。 組織に乗るのがうまい人間。 うまい(口実を考える。汁を吸う。手を考える。言い方が見つからない)。 うまく(頭が働かない。一発で仕留める。表情を取り繕う)。 能ぁたう限りうまく立ちまわる。 言いたいことがうまく言葉にならない。 交渉がうまく進む。 さつばり物事がうまく進まない。 勢力争いをうまく利用する。 付き合い方がうまくなる。 うまくやる(期待以上に。人一倍)。 一二を争うくらいのうまさ。 口のうまさでは敵わない。 あまりのうまさにびっくりする。 小説づくりのうまさに定評がある。 うまい話が無いこむ。 うまい話に乗るものではない。 うまい話には裏がある。 餡ぁんころ餅でほっぺたを叩かれるような話"永井荷。 話がうますぎる。 軽妙な(作品。テンボ。風刺)。 怪妙洒脱しいな(筆致。文章)。 **うまくいかない【上手く行かない】** 何をやってもうまく行かない。 現実は小説のようにうまくいくものではない=本多欲。 物事がうまくいったためしがない"小池。 商売に秋風が立つ『井上ひ。 思わしい就職口がない。 カンバが思わしく集まらない。 逆の目が出そう。 上司と反りが合わない。 そうは問屋が卸さない。 間屋はなかなか思いどおりには卸してくれない!木山。 かばかしい反応を示さない。 事態がはかばかしく進展しない。 歯車が狂う。 ▼思うに任せない(経済再建が。組織の拡大が)。 ▼結果が得られない(思わしい。はかばかしい)。 ▼左前になる(会社が。事業が。商売が)。 不首尾な結果に終わる。 ▼不首尾に終わる(商談が。調停が)。 **うまくいく【上手く行く】** ▼うまく行く(売り込みが。計画が。資金繰りが。話し合いが。思い通りに)。 何もかもがうまく行きそうな気がする。 この分ならうまく行くだろう。 うまく行ったらお慰み。 あまりにもうまく行き過ぎる。 軌道に乗る。 船が順風を得たと同じ。 してやったりと(ほくそ笑む。言わんばかりの微笑)。 人生を順境に過ごす。 話し合いが上首尾に運ぶ。 しめたとばかりに(意気込む。会心の笑みを浮かべる『和久)。 しめたと膝を打つ。 得たり賢しとばかりに(追及する。膝を打つ)。 首尾よく(事が運ぶ。話がまとまる。本懐を達する。試験に合格する)。 上々の首尾。 **えて【得手】** 人間にはそれぞれの得手不得手がある。 得手としている(歌うのを。スポーツを)。 お家芸に属する分野。 お株を始める。 ▼お手のもの(接待は。パソコンは。料理は。人をだますのは)。 特技を(発揮する。身につける)。 得意中の得意の分野。 最も得意とするやり口。 得意な(学科。芸)。 **かいうん【開運】** 開運のお守り。 無病息災の開運を招来する。 運が向いてくる。 運勢がひらける。 定めのように運命が開かれる=坂口。 一陽来復の(お札。お守り。兆候が見え始める)。 **かこつける【託ける】** 忙しさにかこつけてひどく不精になる。 仕事にかこつけて顔を出さなくなる。 小用にかこつけてちょっと息抜きにくる。 病気にかこつけて仕事をしない。 見舞いにかこつけて会いに行く。 恨みをドラマの役柄にかこつけて思いきり晴らす井上ひ。 冗談にかこつけて話をかきまわす“野間。 公務にかずけて物見遊山をする。 仕事に事寄せて外出する。 花火に事寄せて肩を抱く。 病気に事寄せて欠席する。 <188> **こううん【幸運】** 目もくらむような幸運!宮部。幸運が(団体で訪れる。郷い込む。静かな喜びを運ぶ三島)。いくつかの幸運が重なる。思わぬ幸運が転がり込む。思いもかけないような幸巡がめぐって来る鷺沢。意外な好運に発音する。幸運に遭遇する。不運を幸運に変える。目の覚めるような幸運に出会う永倉。好運の日々が続く。幸運の女神が(一ダースほどもとっついたかのようにつきまくる"北。ほほえみかける西木)。いい目が出る。空おそろしいような幸迎つづき=井上ひ。棚からぼた餅の大幸運にめぐり合う山岡。運よく(合格する。助かる。つてがある)。棚からぼたもちで転がり込んできたハワイ旅行=平岩。棚ほた式の(儲もうけ。優勝)。つきが(続く。まわってくる。替わって逆転する)。つきを(粗末にする。大切にする)。▼つく(運が。馬鹿つきに)。なんて間がいいんでしょう~里見。▼有卦うけに入る(商売繁盛で。連戦連勝で)。ラッキーな(一日。人生。数字。出来事。ブレー)。 **こうじつ【口実】** 会う口実ができる。▼口実がない(断る適当な。休む)。婉曲ぶんきな口実でやんわり逃げる。忙しさを口実に会わない。病気を口実に会社を休む。家を抜け出す口実を考える。うまい口実を見つける。何かと口実を作っては外出する。非難の口実を与えない。会うための口実を懸命に探し求める高橋和。楽しい口実をたくさん考えつく=田辺。▼口実を設ける(何のかのと。もっともらしい)。▼口実にする(結婚を。多忙を。不況を)。だしに使う。客をだしにして酒を飲む。▼盾にとる(覚え書きを。条約を)。名分が立つ。人道支援を名分に出兵する。訓練に名を借りた私的制裁。国連平和維持活動に名を借りた軍事行動。視察に名を借りたブライベートの旅!佐伯。返礼に名を借りた自己宣伝"三島。 **こうつごう【好都合】** 何かにつけて好都合。好都合な(条件。話)。好都合に事が運ぶ。万事が好都合に展開する。鳴かもが葱ゃきを背負ってくる"志賀。うまい具合に相手が現れる。絶好の機会に恵まれる。攻撃に絶好の材料。待ち合わせに絶好の店。世の中に出る絶好のチャンス。都合がいい(すこぶる。はなはだ)。都合のいいほうに考えを持っていく。都合よく事が巡ぶ。男に都合よくできている社会多岐川。▼都合よく解釈する(相手の言葉を。自分に)。よくしたもので悪いことの後には救いの神が現れる。世間はよくしたもので決して悪は栄えない。渡りに舟で話がまとまる=野坂。渡りに舟とオーケーする。渡りに舟とばかり勧めに従う。渡りに舟の好条件。 **こうみょう【巧妙】** 巧妙この上ない手練。巧妙な(毘わなをしかける。偽装がなされている。不正が進行する)。演技賞に価する巧妙な演技!小林久。▼巧妙なやり方(意表を突いた。緻密で)。巧妙に(弱みをつく。摘発逃れを図る)。はぐらかして巧妙に話頭を転じる八谷崎。語り口の卓抜な巧妙さ。 **こじつける** 下手な理由をこじつける。こじつけの論理。多少こじつけのきらいがある。尻尾をくわえた蛇のようなこじつけめいた感じ=安部。いささか牽強付会沿いの気味がある。その場しのぎの牽強付会の説。屁理屈いつを(言い豢る。こねる。並べ立てる)。老翁いな詭弁にべ。詭弁に(陥る。だまされる)。詭弁を駆使する。弄する)。どんな詭弁を使っても押し通す。詭弁的な飛躍を犯す萩原ツ。 **さいわい 【幸い】** 幸い(あたりには誰もいない。罹災いを免れる。命だけは取りとめる。大事にいたらなない)。傷は幸いに浅い。これ幸いと申し出を受け入れる。幸か不幸か(心覚えがない。一度もばれたことがない)。もっけの幸いと図々しく居座る。雨をもっけの幸いに仕事を休む。 **じょうず【上手】** 上手(味の付け方が。女の扱いが。男ながらに料理が荻原傘)。あんよは上手、転ぶはお下手。褒めることの上手な人。顔のこわいに似ず子供のきげんをとることが上手な人=中。上手に(嘘をつく。お世辞を言う。男の間を渡り歩く水倉)。飛行機を上手に操る。笛を上手に吹く。老若男女が上手に付き合う。物語として極めて上手にできている=キーン。上手になる(口が。仕事が)。上手ほど上手を知る。商売上手な人四。要領よく(まとめて話す。適当に抜け目なくやる=阿部)。要領のいい手紙。 **じょうたつ【上達】** ▼上達する(腕がめきめき。目に見えて)。▼腕を上げる(めきめき。板場をまかせてもらえるほど=伊集院)。▼暦く(腕を。テクニックを)。熟達する(遊びに。使い方に)。実業の世界に熟達した人。忍びの術に熟達した曲者(=柴田錬。▼マスターする(英語を。技術を。操作を。基本を完全に。知識を一通り)。▼上達しない(一向に。少しも。なかなか)。技量の上達が鈍い。上達の兆しがない。 **しろうと 【素人】** ずぶの素人。素人が(手を出すものではない。見よう見まねで作る)。素人だけに許された甘い無責任な感想"曽野。素人とは一線を画す。人にしてやられる。素人には見分けがつかない。素人の(浅知恵。城を脱しない。怖いもの知らず)。素人ほど恐ろしいものはない=外村。素人商法がまぐれ当たりをしただけ獅子。素人目に見ても傑作と分かる。しろうと眼によくわかるまでに腸の変化が形をとってくる=幸田文。アマチュアの(カメラマン。資格を失う。選手。バンド)。▼門外漢(踊りのことは。音楽に関しては。法律については)。門外漢だからよく分からない。門外漢のくせに大きな口を叩く。 **せいこう【精巧】** 精巧な(仕組み。偽札)。精巧に(印刷する。作られた贋物跡~)。巧緻きわまる描写を繰り広げる。巧緻な(工芸品。彫り物)。 **ぜつみょう【絶妙】** 絶妙な(紀行文を書き上げる。仕方 <189> # 上手い・下手 **ぜつみょう【絶妙】** 絶妙な(仕方で空間を処理する=加藤)。せわしくもなければのろくもない絶妙の間隔=伊坂。絶妙のタイミングで(駆けつける。言葉を引き継ぐ=内館)。精妙な(機械。組み立て)。企画を精妙に練り上げる。 **たくみ【巧み】** ▼巧み(意を迎えることに。サスペンス作りが実に。取り回しが年に似ず)。巧みな(話術を身につける。芝居に陥だぇされる=大佛)。家政の切り盛りの巧みな委"阿刀田、困難な立場を容易な立場につくりかえる巧みな手法"石川。心は巧みなる画師のごとし幸田露。巧みに帆を操る。気づかれないように巧みに隠す。木や草花を巧みに配置する。旧勢力を巧みに押さえ込む。欠陥を巧みにつく。生活を巧みに調節する。複雑なブロットを破綻なくまとめる構成の巧みさ=三輪。接吻涎いの巧みさに圧倒される。弁舌では当代一流の巧者。弁舌が驚くほど達者。なんでも達者にこなす。老巧な(政治家。やり口)。 **たける【長ける】** 弁才胆略に長ける。悪才に長けた男。権謀術数に長けた政略家。世故に長けた女。有職故実、ふらくに長けた役人。▼長けている(視相の術に。情報収集力に。手練手管に。利殖の道に。悪知恵に。言葉を操る技術に)。利に聡さとい(企業家。商人)。堪能(英語に。書道に。ピアノに)。航海の術に長じている。保身の術に長じる。 **てぎわよく【手際よく】** 手際よく(始末をつける。任務を果たす)。あらかじめ手順を予習していたかのように手際よく料理する小川。手際のよさに(感心する。舌を巻く。ほれぼれする。脱帽せざるを得ない"中島河)。▼手際のよさ(能率的な。問然するところのない。目を見張るような加賀)。一種の芸術のごとく手ぎわがいい=星。仕事ぶりは冷静で手際がよい原田眺。見ていて気持ちがいいほどの手際の良さ"阿川佐。手ぎわのいい遊戯のような仕事ぶり!小島。手際のよい処置。 **にがて【苦手】** ▼苦手(女の涙は。脂っこい料理が。親類づきあいが。人前で話すのが)。苦手な科目に挑戦する。苦手を克服する。苦手意識が先に立つ=有川。苦手とする(暗算を。数字を。料理を)。得手ではない。なめくじに塩。友達づきあいが不得意。不得意な科目。理財の道に暗い。有局。▼不得手(英語は。数学は)。不得手な(学科。種目。食べ物)。▼不慣れ(諸事に。犯罪くさい仕事に)。不慣れな(仕事。場所)。都会の暮らしに不慣れな新入り。宮尾。 **ぶきよう【不器用】** 女の扱い方が不器用。無器用な(道を選んで顎やまくに水井路。若さを懐かしく思う落合)。不器用な愛の動作。ぼそっとした不器用な喋心。り方。現実についてゆけない不器用な男小林信。感情の表現が無器用な男!水井応。箸を不器用に持つ。要領が悪い。不器用きわまる手つき。不器用さに歯がゆさを感じる。不器用さを鼻で笑う。決して器用とは言えない。鈍くさいから仲間外れにする。 **ふつごう【不都合】** あながち不都合とは思っていない。不都合な(事実を隠そうとする。実験結果を隠す)。いろいろと不都合な結果がでる。重なる商いの不都合に懲りる。予期しなかった不都合に逢う。 **へた【下手】** 字がまるで下手。下手な(小細工をする。芝居をする。歌に興醒信にめする。不動産屋より顔が広い)。下手に(動いて尻尾をつかまれる。騒ぎ立てないほうがいい。口出しをするとかえって話がこじれる"三浦哲)。下手の(長談義。横好き。考え休むに似たり)。下手をすると命はないものと覚悟する。すれば死罪にもなりかねない=高橋克)。自分ながら下手さにあきれる。腕が(落ちる。悪い)。腕を下げる。お世辞にも(うまいとは言えない。達筆とは呼べない字)。上手とは言えない(お世辞にも。決して)。手際が悪い。下手くそで読むに堪えない。下手くそな(絵。演技。小説。詩を書く。流行歌を歌う)。見るに堪えない下手な芝居。度しがたい大根役者"中局。演技が下手。馬の足。 **まずい【拙い】** ▼まずい(質問の仕方が。表に出ては。まずいなまじ隠すとかえって。下手に隠し立てするのは。万が一誰かに知られたら)。後々まずいことになりかねない。まずくなる(商売が。夫婦仲が)。稚拙な(踊り。表現)。素朴で稚拙な彫り。子供が描いたような稚拙な線を持つ図像"井上靖。つたない(文字を連ねる。英語でしゃべる)。▼つたない(人づきあいが。金銭の勘定に)。 **みょうしゅ【妙手】** ▼妙手(尺八の。郷いの。愉ゃりの)。次の妙手に思いをめぐらす。鬼手を(打つ。放つ)。神業の妙技。妙技にうなるほかない。妙技を披露する。 **めいじん 【名人】** ▼名人(伝説的な。世にも稀まれな。稀代の。傑出した。名にし負う。三本の指に折られる)。名人とうぬぼれる。名人に弟子入りする。名人の手になる作。何とも心憎い名人芸。名人芸に驚嘆する。名人芸の域に近づきつつある。久しぶりに名人芸を発揮する。▼名手(剣の。射撃の。舞の。弓の。笛を吹けばひとかどの)。▼名選手(往年の。不滅の)。達人(剣の。暦学の。人生を楽しむ。武技を極めた。文章の)。 **ゆうべん【雄弁】** ▼雄弁(迅雷烈嵐の。沈黙のあいだに話を溜め込んでいたかのような"加賀。水を流すように石川)。美辞麗句を並べた雄弁な演説!美濃部。雄弁に説いて聞かせる。訴えるような眼が何よりも雄弁に語る=島崎。混乱した声が事態を雄弁に物語っている=貫井。▼雄弁に物語る(沈黙が心の中の騒乱を。表情が胸にあるものを)。溢れるばかりの雄弁をふるう~美濃部。他人を呆然柑いとさせるような雄弁家"司馬。滔々とらと懸河の弁を振るう。滑らかな能弁に聞き惚れる。なかなか弁が立つ。火のような熱弁。熱弁で論じ立てる。熱弁を振るう。 <190> # 生まれる・産む **うむ【産む】** ▼産む(赤ん坊を。卵を。恋とびが鷹たかを。月満ちて男の子を)。▼生む(疑いが疑いを。唸が噂を。確実に利益を。金が金を。よき芸術を。利が利を。殺人事件が悲劇を)。▼結果を生む(いい。悪い)。生みの(苦しみ。親より育ての親。恩より育ての恩)。産み落とす(赤子を。卵を)。産み分ける(雄と雌を。男と女を)。産み月が近い。産み月を待つ。お産が(重い。軽い)。産休が明ける。産休に入る。妊婦が産気づく。一向に産気づく気配がない。産卵が終わる。産卵のため川を上る。雄なしで処女生殖を繰り返す。▶生す(子を。卵を)。まるまる一昼夜に及ぶひどい難産の末に娘が生まれる―熊合。分娩する(子を。女児を。男児を)。分娩の日が迫る。臨月が近くなる。臨月を迎える。安産のお守り。安産を祈願する。出産を間近に控える。出産する(子供を。女児を。男児を)。出産日が目の前に近づく。赤ん坊を死産する。赤ん坊を堕胎する。死産した子を供養する。胎児を(水にする。闇に葬る)。▼堕ょっす(お腹の子を。胎児を)。▼掻爬ぼぅする(死胎を。胎児を)。妊娠を中絶する。 **おおおとこ 【大男】** ▼大男(雄牛のような。象みたいな。入道のような。色の真っ黒な海坊主のようない氷井荷。雲を突くような「佐藤春)。大男総身に知恵が回りかね貫井。大男を一撃で地べたへ撲なぐり倒す。古井。見上げるような巨額」に圧倒される=本庄。巨漢(六尺ゆたかな。海坊主のような小林位)。大兵で力自慢の男。 **おとこ【男】** ▼男(いや味な通人気どりの。一山いくらのありふれた。およそ毒気のない快活な辻井。俺についてこい式の強引な=干刈。妻の口先に全く操られるほど愚かな"有吉。ドアみたいに頑丈な常盤。金で右にも左にも転ぶ=梅本。首が厚い胴にめり込んだような脚の短い三浦町。七十歳とはとても思えないぎらぎらした宗田。女性が思わず避けて通るようなむさ苦しい!清水義。血走った目に口を歪がめた幽鬼のような=宮部。つきあいにくいほど堅い=永井龍。敵に回せば面倒だが味方にすればずいぶんと心強い!舟橋。どこの誰ともわからないような=丹羽。何という見下げた=武者小路。人間と呼ぶに値しない隆。ねずみのような眼をした気のいい=椎名験。飲む打つ買うの三拍子そろった池波。ヒモが一番よく似合う藤田。不安と怯ぉびえが背広を着て歩いているような『宮部。フカフカの布団のように心地良い!永倉。蛇みたいにしつこい=横山。骨の抜けたような山本周。水のようなクセのない=田辺。見るからにやくざ風の"奥田。無垢むくな悪摺わるれの見えない吉川。やくざな生活に流されながら過去を恨むような女々しい"黒岩)。男が(男にほれる。送り狼に変身する=小林久)。悪い男が付く。怪しい男がうろつく。男から男へと渡り歩く。男と(情を尽くす。見込んで頼む。ちゃらちゃら遊び歩く筒井)。好きな男と一緒になる。男としての(魅力に欠ける。ブライドが許さない=森玲)。男なんて(多かれ少なかれ浮気をしている落合。屁、とも思っていない=山口)。とことん悪い男なんていやしない。男に(金を貢ぐ。体を売る。心を傾ける。妮こびを売る。倍する働き。肌を見せる。花を持たせる。献身的に尽くす。手ごめにされる。望まれて嫁になる。都合よくできている社会多岐川)。頼もしい男に惹ぃかれる。つまらない男に引っかかる。他の男に心を許す。若い男にちやほやされる。年下の男に甘える=田辺。よくぞ男に生まれける=獅子。もう男にはこりごり池波。男に身をもてあそばれた悔しさ永井荷。男の(我がままを嫌悪する。甘い口先にころりと負けてしまう瀬戸内。沽券にけに関わる一大事隆。段々分かってくる=舟橋。独り暮らしは蛆ぅじが湧く" **うまれる【生まれる】** ▼生まれる(新たな謎が。あらぬ疑いが。考える余裕が。気のゆるみが。頬に微笑が。子供が次々に。戦乱の世に。相当な門地に。人として世に。不幸な時代に。山間於心の村に。地球の片隅で。新たなアイデアが。丈夫な赤ちゃんが。小さい動揺の芽が。表情に寂しげな翳かげが。胸の中に送皇せんが。悠揚とした安心感が。楽観的な空気が。ある種の才能を持って。極端な除が次々と。寂しさが胸の中で。時を同じくして。歌の世界に深みと広がりが重松。のような子供が三島。胸の奥にかすかな緊張が夏樹)。いっかな生まれる気色がない。▼家に生まれる(金のある。貧しい)。▼星の下に生まれる(不思議な。幸運の)。生まれたときから一緒にいる。生まれたての赤ん坊。生まれたばかりの子供。口から先に生まれたよう。生まれて育った土地。生まれてくる子に罪はない。ニュースが毎日生まれては消える。生まれて周もない(赤ん坊。子犬)。小さな命をこの世に迎える。この世の片隅に生を得る。▼生まれ合わせる(この世に。戦乱の時代に。親子の縁薄く)。この世に生まれ落ちる。▼生まれ出る(感謝の情が。生命が。微妙な風合が。技術は修練から)。▼この世に生まれ出る(命が。母の胎内から)。持って生まれた(一種の才能。不仕合わせ)。呱々ここの声をあげる。生後間もなく祖父母のもとに引き取られる=網淵。没年から逆算して生年を推定する。この世に生を享;ける=大沢。今日に生を受ける。かすかな産声が息もつけない緊張の沈黙を破って細く響く。有局。壁を突き破るような産声が湧き起こる=有吉。ずっと胸につかえていたものがやっと生まれた産声のような泣き声"内田存。出生にまつわる秘密。出生の(地。秘密を明らかにする)。出生率が(下がる。上昇する)。市役所に出生届を出しに行く。 <191> **おとしご【落とし子】** ▼落とし子(格差社会の。戦争の。好奇心に駆られた研究の。高度経済成長の)。時代の申し子。 **おんな【女】** ▼女(コケティッシュで奔放な瀬戸内。酒も飲む、博奕址くも好きという鉄火な池波。赤い頬にあどけなさが残る藤本。美しいという中にも白い花のように清楚な趣きの勝った=円地。生まれながらに薄幸を背負って生きているように見える=萩原爽。追い払っても追い払ってもついてくる子犬のような"原田病。大年増だが肉置扒しきのよい、ちょいと箸をつけたくなるような「池波。男の征服欲をかき立てるような笹沢。男のような野太い声を出すずんぐりと肥った伊藤整。顔に雀斑峠がのある美しい今飛。風にも折れそうな風情の人束。我の強そうな顔立ちをした痩せぎすの筒井。感情の起伏の激しい=中村真。きつい眼をした狐のような=阿部。気分の交代のはげしい=椎名戯。小悪魔みたいなつか。性行為に没入すると肉食獣のようにふるまう―小林信。好奇心の塊のような"加賀。高慢そうに鼻をツンと立ててひとを寄せつけないような顔をした。安岡。小柄だがぽちゃぽちゃと肉附きのいい"里見。心を丸ごと吸い取ってしまうような=日野。こんこんと湧く泉を持つ芝木。時代離れした雰囲気を持つ=大庭。周囲の者を振り返らせるだけの輝きを持った=西木。相想像を絶するほど気位の高いリ倉橋。だらしなく男に引っかかるようなタイプのできない"小林久。どの男でも踏み込ませるような防御のない"伊藤整。肉づきのいい体が消潔に匂うような野用。人形のような顔立ちの=篠田。猫のようになまめかしい谷崎。人なつこい小さな動物を想像させる"原田宗。水際立った震いつきたいような芥川。無邪気で心立てのよい"永井路。無表情な硬い感じの=日野。雌牛のようにがっちりとした肩幅をもつ=小池。夕顔の花のように静かに咲いている=川端。ゆらめく影のようなあやうい感じのある“日野。若くてしなやかな動き方で魚なら鲇ぁゅを考えてよい大佛。わがままが足を生やして動きまわっているような西木)。女三界に家なし=氷室。女が手がかりのない城壁のようになる=庄野。女から女へと経めぐる。手近な女で間に合わせる=山田詠。女と思ってなめてかかる。並の女とは少しばかり巡っている=笹沢。女ながら相当の玉。女なんか渋くそ食らえ。女なんて一皮むけばみなおなじだよ=常盤。女に(太刀打ちできない。無関心ではない。目がない小悪党)。下らない女に熱中する。少女から女になる。たちのよくない女に惑わされる。他の女に心を移す。女の(肌におぼれる。盛りの頂点にある輝き。尻を追いかけまわす。命を燃し尽くした華麗さ=渡辺)。力ずくで女の体を奪う。甘酸っぱい女の体臭が漂い出る藤本。戦後の女の強さを靴下に警たとえる=瀬戸内。女は(性に絶望して死を選ぶようなことはしない瀬戸内。手のかかる赤ん坊のようなもの大庭)。機会あるごとに蛇は女を誘惑する=石川。仔猫のように身を擦り寄せてくる女達"山田泳。はっはっと男のように闊達がつに笑う密井。華奢にいな女のような指"野上。捨てられた女のようにわめき散らして嘆く安岡。女ではない(一筋縄で行く。とうてい手に負える)。女冥利につきる。 **おんなごころ【女心】** 女心の微妙な傷を推察する=大岡。女心も女傘のように仇ぁだし男の手に渡らぬとは保証できない川端。女心をほろりとさせる。デリケートな女心を頭から無視してかかる=丹羽。 **おんなたらし【女たらし】** 女たらし(きざな。名っの)。女たらしの男。女を喰い物にする人でなし野郎藤沢。女癖が悪い。色魔の本性を現す。色魔めいた不徳義な行為。 **おんなっぽい「女っぽい】** 女っぽい(しぐさ。話し方)。女っぽくちょこちょこと歩く=小林多。めっきり女っぽくなる。女っぽさがぐっと増す。 **おとこ【男】** 女臭ふんぶんたる家。小林信)。野太い男の声。筋骨逞蛉くしい男の体。据え膳食わぬは男の恥!佐野。男の気をそそる色気。男のくせに(おしゃべり。細かい)。男は(女を漁ぁさる蠅はぇみたいなもの=石坂。死に際と死に方で値打ちが決まる藤本)。腕はくろがね男は度胸福永。男という男は皆敵"川端。男を(男とも思わない。手もなくあやす。悩殺するボーズ。見る目が出来る)。金で男を手なずける。官能的に男を引きつける。男たちが伊達を競う。現実についてゆけない不器用な男"小林信。感情の表現が無器用な男。永井龍。女運が悪い。肉欲を隠した衣をきた狼=武者小路。男冥利につきる。男やもめに虹がわく。男子一生を賭ける仕事。さながら火を吹くばかり意気きわめて凄封とまじかった剛胆な男児=山田美。何事につけて女嫌いで通す。 **おとここころ 【男心】** 怒りが男心に火をつける=平岩。男心を誘う色気をたたえている藤沢。ちょっと男心をくすぐる。仕草に男心をそそる色っぽさがにじむ=船山。男心をそそる(声。仕草)。男心のように気まぐれ=加藤。 **おところぽい【男っぽい】** 男っぽい(歩き方。しぐさ。ほきぼきした言い方=山口)。男っぽく喋心『るおばさん=伊集院。ボーイッシュな(髪型。スタイル。ファッション)。 **おとこで【男手】** 男手が(足りない。欲しい)。男手一つで(息子を育てる。娘を育てる)。 **おとこらしい【男らしい】** 男らしい(優しさ。きびきびした舞いぶり。白洲)。どっしりと男らしい旅丈な胡坐を組む=有局。眉頭が曇るほど眉毛が濃く男らしい顔だち=山崎。男らしく(きっぱり断る。堂々と言う)。にやけてないで男らしくしろ。自分に迫る運命を男らしく肩に担い上げる=有島。無口な男らしく黙ったまま死んでいく!連城。豪放な男らしさに改めて惚れ直す内海。男臭芬々ぶんという男くさい男"田辺。 <192> **おんなで【女手】** 女手で店を切り回す=佐藤愛。女手一つで(家計を支える。子供を育てあげる)。女の細腕で二人の子を育てる。女の痩せ腕で家の暮らしを支える。 **おんならしい【女らしい】** 女らしい(華奢にいいな手。細やかな心。冗漫さで書く。つつましやかさ。意地悪さや嫉妬心の殆凪とどない素直な気質"円地。ねばりのある調子で早口にしゃべる=中村真。ひねくれた妬カたみやひがみ!有鳥)。オレンジとチーズを交ぜたような女らしい体臭=胡桃沢。透明なゼリーのような弱々しい美しさが女らしい情緒に溢れている=大庭。何くれとなく女らしい気の配り方を見せると水井路。涙にしめった女らしい潤いの滲にじむような声=山本周。めっきり女らしい繊たおやかな後ろ姿芝木。ユウモアを交えた女らしい筆致"小沼。女らしく行き届いた残酷さで細かいあらまで云う=宮本百。▼女らしさ(円熟した。匂うばかりの。なよなよとした)。女らしさが(花用く年齢。すみずみにまで息づいている部屋三島)。女らしさのとほしい棒のような胴体“三田。女らしさを売り物にする芸者"瀬戸内。 **かえる【孵る】** ▼孵る(鳥の卵が。雛のなが。ひよこが幼虫が。蛹さたから。卵から)。▼孵す(卵から子を。離を)。孵化、ふぁさせる(卵を。人工で)。▼孵化する(卵が。幼虫が)。 **げっけい【月経】** 月経が(ある。閉止する)。月経のよみがえりを喜ぶ。初潮のあったことを気づかれる=有吉。初潮を迎える。生理が(遅れる。始まる)。 **こうび【交尾】** 交尾を(済ます。続ける)。▼交尾する(雄と雌が。動物が。虫が)。種族保存のための厳粛な営み有吉。▼つがう(犬が。烏が)。犬がつるむ。 **さんご【産後】** 産後の肥立ちが(思わしくない。順調。よい。悪い)。お産の後腹。後腹が(痛む。病める)。肥立ちのよい子。 **しきゅう【子宮】** 子宮に癒着した胎盤を剝離する。子を子宮の中で育てる。羊水が子宮を満たす。胎盤を通して栄養をとる。母親と脳へその緒でつながる。 **しゅっしん【出身】** ▼出身(地方の。名もない家の。傍流の)。出身の大学。官僚出身の政治家。自校出身者を優先する。出自にからむ謎。▼出(旧家の。地方の。町の名家の。名門の。門岡の。由緒ある家柄の)。 **しょうじる【生じる】** ▼生じる(体に異変が。心に憎しみが。胸に疑問が。行動に蹉跌ででを。無から有を。愛に馴れ合いが。考え方に大きな差が。言葉遣いに乱れが。仕事に差し障りが。政策に大きな変更が。派生的に問題が。二人の間に距離が。目の奥に小さな光が。疑いが頭の隅に)。生成と消滅を繰り返す。▼生成する(宇宙が。火山が)。 **じょけつ【女傑】** 稀まれに見る女傑。男勝りな気性。女性社長というと気の強い男勝りのやり手が多いわけでこの社長もご多分にれずそんな女だった=池井戸。家の危うきを既倒に廻し止めた女丈夫"岡本。いかにも気の強そうな女丈夫タイブ平岩。 **じょせい【女性】** ▼女性(男まさりの。才色兼備の。新しい日本を背負って立つ健気けぇな=新田。一見温和しそうだが芯の強い、うらやましいくらいたおやかな宮本輝。おとなしく控え目な。庄野。清純が少し齢としを取ったという感じの小柄な=山口。まーるい眼が若い魚のようにくりっと張っているきれいな灰谷。ミロのヴィーナスのように豊満な=日野。美しく気高くかよわい=玉村。美しさを鼻にかけるような"藤沢。笑顔のやわらかな手足のすらりと伸びた"椎名溅。ちょっと男心をくすぐるようなタイプの赤川。風にも堪えぬような楚々そ、とした=獅子。家庭的なムードの"夏樹。体中に水分が回りきった切り花のようにみずみずしい"胡桃沢。感情の起伏の激しい=森場。かな彫像のように揺ぎない=吉本。周囲にいつも甘美な雰囲気が漂う中村真。たいへんしとやかでおとなしい=石坂。肉の厚い桃色の大輪の花のような=円地。練馬大根のように健康で太々とした=獅子。花が咲いたような明るさをもたらす“石坂。柔らかい微笑組みを絶やさない=泉優。若いころはさぞ綺麗だったろうと思われる=常盤)。女性が健康な脚を惜しみなく日にさらす=高橋和。女性から秋波を送られる。一人の女性に心を占領される=沢木。女性の(地位向上を叫ぶ。年齢をあげつらう。美質に惹ぃかれる。部下へのセクハラ)。若い女性のロマンチックな夢。香をたきこめた絹のような女性の柔肌"真継。窈窕はうちたる女性の淡い影今日。女性を玩具のようにもてあそぶ=丹羽。クライアントを説得するような熱意で女性を口説くぃ水倉。女性のように甘い顔をした男の子"泉受。優美な女性的曲線"萩原朔。女性的なものの言い方。甲高い女性的な方。稜線切いうが丸みを帯びた女性的な景色笹沢。有能な独身女性には世間の風当たりが強い=和久。大女(金髪を鳥の巣のように盛り上がらせた"西木。天を祈っくような「池澤)。紅一点(委員会の。出場者中の)。やや下ぶくれで唇が小さく咲いて出たような天女型の美貌"岡本。天人のように美しい人=中村鸟。豊艶な女体。ふわふわふくらんだ大柄な婦人"円地。解語ふぃの花が婀娜ぁだを競う。満場悉ごとく解語の花ともいうべき場内の光景を見渡す永井荷。解語の花を見て情を悩ます。 **じんつう【陣痛】** 陣痛がひどくなる。新しい日本が誕生するための陣痛が始まる。まだまだ陣痛が四選。ゆるい剛痛が起こる。 **せいし【精子】** 精子が精巣で作られる。精子と卵子が合一する。スベルマの匂いに顔をしかめる=大変。口の中に精液を受ける平野。射精の快感に身を委ねる机上の清楚でぃな一輪の花といった存在の"阿部。=熊谷。さんざん棒でなぐられた犬みたいに震えて射精する阿部。たわいなく射精してしまう畑。 <193> **しゃせい【射精】** 射精する阿部。たわいなく射精してしまう畑。男のが切なくなりそうになる=梅本。 **たいじ【胎児】** 胎児が(順調に育つ。ひくひくと動く)。胎児のような形で棺ひっに納まる=高井。抱きかかえられて大きな胎児のように呼吸する人間。 **たねつけ【種付け】** 種付け(犬の。牛の。家畜の)。卵が受褙する。魚の受精で海が白濁する。 **たんじょう【誕生】** 新しい命の誕生によって長編を結ぶ。▼誕生する(新しい人間が。国が。新政権が。生命が。世界新記録が。夫婦が。孫が)。たったいま地上に誕生したかのようにみずみずしく躍動する海"宮尾。誕生日が来ると一つ歳を取る=高杉。誕生日のお祝いをする。 **たまご【卵】** ▼卵(有能な学者の。ビンボンの球そっくりの殻がぶよぶよで柔らかい海亀の=勝目)。潰っぶれた卵がどろりと流れる。胸のうちに小さな恋の卵が湧きそめる=伊藤左。卵からひよこがかえる。黄金の卵でも生んだみたいにころころ喜んで喋ん『る=円地。卵の白身を泡立てる。耳の先っぽが空気でも注入したように膨らんで鴉らずの卵ほどに大きくなる三浦哲。卵を(固ゆでにする。半熟にゆでる)。言い残した言葉が胸のうちで大きな不安のタマゴを孵化ふかさせる=笹沢。白粥机。へ卵を落とし込む。鍋に卵を割り入れる。卵を産みつける(蛙砂流が。鳥が。虫が)。白い雲が卵の白身のように泡立っている=林美。都会の卵色の濁った夕空の前に庭の松が黒く見える!宮本頁。卵巣を(切除する。取り出す)。厚い鱈子ひらのような唇唇=伊坂。鶏卵を(割り入れる。割り落とす)。鶏卵の黄味が赤みがかったような月の色=庄野。 **だんじょ【男女】** 男女の(機微に精通する。道についての蘊蓄らいを知りたがる=隆)。風に漂う落ち葉のようなもろい男女のつながり“林美。自然なやすらぎのある男女の間柄=瀬戸内。馴れ合った男女の感じで肌を寄せる=古井。颯爽だうと腕を組んだ若い男女"高見町。若い男女の華やかな笑い声。異性に(目もくれない。恋々とする)。若い二人が雉子きじの雌雄が舞ったようにバラバラと逃げだす吉川。雌雄を(決する。判別する)。素敵な同性に憧れる乙女心。同性の贔屓目を)。両性を具有する。男と女が(さまざまに絡み合う淫靡みんな写真"宮本輝。深みにはまっていく鈴木光)。男と女の(愛憎に絡んだ事件。声を使い分ける。あれこれなんて波乗りみたいなもので、一度いい波を逃したら次の波が来るのは半年後か二年後か落合)。惰性が男と女の世界をするりずるりと引いている芝木。男と女ってのは最後のゲタをはくまではわかんねえ"つか。 **だんせい【男性】** ▼男性(徹頭徹尾女性的なものを持たない典型的な"円地。色の浅黒い筋肉質タイブの"筒井。痩せてはいるが精悍她心な感じの富岡)。危険な男性がうようよしている。男性としての機能を要失する=丹羽。男性に(目もくれない。かしずかれて奴緑を従えた女王のように振る舞う瀬戸内)。常に露骨に曝露する男性のエゴイズム=野上。男性はただの働き峰伊藤整。男性を見る眼をしっかり身につける"千刈。骨張った男性的な顔立ち。切れ味のよい刃物のような男性的な風景"宫尾。はっきりした男性的な風貌中局災。胸幅の広い男性的な体格"円地。男性ホルモンたっぷりの熱っぽい目がまつわりつく=加賀。平凡なあやふやな顔の中年男性小川。 **つわり【悪阻】** つわりが(おさまる。重い。軽い。きつい。ひどい。ずぶ濡れのブラウスのようにじっとり彼女に貼りついている=小川)。つわりに(苦しむ。悩む)。悪阻の時みたいに生唾が咽喉元初とまで上ってくる"大庭。 **にんしん【妊娠】** 妊娠の兆候が見える。ドラマチックに妊娠を告げる=小池。▼妊娠する(恋人が。女房が)。▼妊娠させる(女友達を。同級生を)。妊娠した体が目立つ。妊娠したという事実がじわじわと胸の底に定着していく鈴木光。新しい命が芽生える鈴木光。今にもこぼれそうな腹。密井。腹部が目立って大きくなる。大きなお腹を抱える。体の中に小さな生命が宿る藤木。子を腹に宿す。下腹のふくらみが目につく娘落合。腹に(赤子を抱える。子を孕ぃらむ)。まるい地球儀のような感触の腹部"萩原発。▼宿す(子供を。胤たねを。腹に赤ん坊を。忘れ形見を)。▼宿る(子が腹に。赤ちゃんがお腹に)。両手を腹に当て大切そうに何度もさする=横山。何人もの女に子を孕ませた種馬のような男“中上。猫が子をはらむ。・身重の体。身ごもる(子を。二人目を)。 **はっせい【発生】** ▼発生する(緊急事態が。脳波に異常が。問題が絶えず。しばしばトラブルが。一番恐れていた事態が=有川)。▼大発生する(茸ぃのが。水母火。が。虫が)。わかせる(蛆うじを。しらみを)。 **ひにん【避妊】** 避妊リングを入れる。避妊に気を使う。コンドームを(つける。用意する。ふくらましたような格好の半透明のビニール袋"阿部)。 **ぼこく【母国】** 母国が忘れられない。母国を懐かしむ。生まれた国に(一生縛りつけられる。感傷的に執着する)。久しぶりで懐かしい故国に帰る=山田美。故国の事情に疎い。何年ぶりかで故国の土を踏む。自国の芸術を外国に紹介する。祖国の(危機を救う。土を踏む。ために粉骨砕身する)。祖国への郷愁が湧き上がる。 **ほんごく【本国】** 本国に(帰還する。強制送還する)。本土から離れた孤島。沖縄が本土に復帰する。島と本土を行き来する。台風が本土を襲う。 **りゅうざん【流産】** 流産であたら胎児を失う舟橋。▼流産する(計画が。法案が。子を)。水子を供養する。水子というのは生まれていくばくもなく文字通り水沁心のように消えた恐児にぃたち=阿部。 # 埋める・掘る <194> **あなうめ【穴埋め】** ▼穴埋めする(赤字を借金で。不良債権を公的資金で)。▼補填する(赤字を。財源の不足を。損失を)。▼埋め合わせる(恨みを。失言を)。借金の埋め合わせ。どうあがいても埋め合わせできない。遅刻の埋め合わせに食事をおごる。 **うまる【埋まる】** ▼埋まる(庭が雪に。乾いた砂に足が。河原が人の波で。周囲がやかましい炸裂音で。ずいぶん先まで予約で。スタンドが観客で。テーブルが八割方。寺が今を盛りの花で。雪にくるぶしまで)。▼真っ黒に埋まる(二階席まで。眼の前が怒号する敵勢で=真継)。紙が文字で埋まっていく。尻が埋まるような柔らかいソファー=小池。▼生き埋めになる(崖崩れで。崩れた土砂で)。重要な課題が政争に埋没する。家事や育児という際限ない日常リアリズムの中に埋没して暮らす瀬戸内。社会の片隅に埋没して生きる。 **うめたてる【埋め立てる】** ▼埋め立てる(池を。海を。小川を。沼地を)。河口の西にひろがる埋立地!高樹。埋め立て地に囲まれた暗い海。ごみを埋め立て地に運ぶ。▼埋め立てでつぶす(干潟を。藻場を)。埋め立てを中止する。 **うめる【埋める】** ▼埋める(濃い味を。書物が壁面を。抜けた穴を。人波が参道を。貧富の差を。闇が空間を。遺骨を墓地に。熱い湯を水で。多くの人が道を。参拝者が境内を。聴衆が八分通りホールを。ボスターが壁を。理論と観測のギャップを。秋虫の声が野を一面に。対談企画でベージを=奥田。男女がびっしりと狭い庭を"黒井)。街路を真っ黒に埋めて逃げ走る人々=光瀬。▼うずめる(座席に体を。胸に頬を。闇の中に心を。頬を両手に。微笑の中に丸い目を)。枕に顔をうずめてくっくと笑いこける。胸に顔をうずめて泣く。顔をうずめる(男の胸に。花束に。本に。胸の谷間に。オーバーの襟に)。▼骨をうずめる(異郷に。故山に。新天地に。辺土に)。▼身をうずめる(シートに。毛布に)。計器をびっしり埋めこんだ制御盤。▼埋め尽くされる(壁が落書きで。文面が誹謗中傷で横山)。身じろぎもできないほどぎっしり埋めつくされる=安部。▼埋めつくす(稲が水田を。岡が地平を。喚声があたりを。びっしりと壁面を。歩行者が交差点を)。拥った穴を埋め戻す。▼埋ぃける(ごぼうを。大根を。土管を。ねぎを。炭火を灰に)。▼埋設する(ケーブルを壁に。水道管を地下に)。▼埋蔵する(鉱物を。石油を)。 **うもれる【埋もれる】** ▼埋もれる(場が笑いに。道が落ち葉に。疑念が頭の隅に。恐怖感が胸の底に。大地が火山灰に。散ってゆく花に。歴史のかなたに)。▼雪に埋もれる(花壇が。道が)。▼山に埋もれる(本の。ごみとほこりの)。埋もれた(才能。逸材。天才。ものを振り出す)。本に埋もれて暮らす。 **こうざん【鉱山】** 坑道掘りの鉱山。鉱山に働き口を求める。鉱山の利権を与える。鉱山を開発する。四通八達の坑道を掘りめぐらす。爆風が坑道を吹き抜ける。坑内に音が反響する。豊かな鉱脈を掘り当てる。坑道掘りの炭鉱。炭鉱が閉山になる。炭鉱で栄えた町。露天掘りで鉱石を採取する。露天掘りの(鉱山。炭鉱)。 **じゃり【砂利】** 砂利を(蹴立てて走り去る。ざくざくと踏みしめる。踏む音が境内に響く。満載したダンブカ1)。口の中に砂利をつめ込まれたようにつっっとうなり声をあげる=池田。渋紙の上に砂利を撒いたような声今束。砂利みたいなガラガラ声=常盤。 **スコップ** スコッブで(穴を掘る。掘る。雪下ろしする)。猛然とスコップを振るう。シャベルで(掘る。雪下ろしする)。 **すな【砂】** 砂が(じゃりじゃりと歯に触る。濡れて色が濃くなる。ばらばらと落ちてくる。足元から軽い煙霧のように舞い上がる光瀬。痛いほど吹きつける徳田。眩まぶしいくらい白い=岡本)。足元の砂がざくりと砕ける。足の下で砂が乾いた音を立てる=村上卷。頭の中に熱い砂が詰まったような気分倉橋。身体の中が乾ききってさらさらと砂が流れている=黒井。乾いた砂が水を吸うように新太郎は阿蘭陀語分ランをおほえた=平行。吹きつける砂がさらさらと音を立てる光瀬。▼砂が崩れる(足もとでさくりさくりと藤沢。高山のなだれのように=畑)。砂がさらさらと(崩れる。指の間からこぼれ落ちる)。通い箱を砂でも投げ込むようにさっと放り出す"林美。口の中が砂でも悩んだようにじゃりじゃりする=中沢。砂に足を取られる。下駄が砂に沈む。波が砂に染み込む。金色にがく川底の砂に透明なメダカの群れの影が映っている三浦し。波が波打ち際で砕けて砂に広がる=重松。砂の(風紋。広場が白い湖のように輝く光瀬。亡霊のような小蟹にが=中局多)。足の裏に伝わる砂のざらついた感触。動くものの影とてない荒涼たる砂の海光瀬。砂を(蹴って走る。踏んで歩く。ばらばらっと振りかける。一つかみつかむ。噛むような味気なさ。高橋和。かむような不快な思い=坂口)。セメントに砂を混ぜる。後足で砂をかけるようにしてどこかへ行ってしまっ“岩川。西風が乾いた砂をさらさらと掃くようにして吹く=長塚。キシキシと濡れた砂を踏みしめていく"光瀬。途方に暮れて足元の砂を蹴る若竹。手で砂を(かける。払う)。雨が雑木林に砂のような音を立てる遠藤。樹々の葉が砂のように乾いた音をたてて鳴る遠藤。砂のような雲が空をさらさらと流れる=堀。砂のように(細かい鋼の粒。静かに流れていく毎日遠藤)。一瞬のうろたえが完璧な優位を砂のようにくずす光洒。砂地に水が染みこむように新しい知識を吸収する野。 # 埋める・掘る-60 <195> # 埋める・掘る **すな【砂】**砂(さらさらした。粒の細かい)。砂が風に舞う。道路を砂ぼこりが舞う。砂を噛む。砂にまみれる。靴に砂が入る。砂を(洗い流す。払い落とす)。砂漠がどこまでも続く。砂丘を上る。砂地を歩く。砂浜を散歩する。砂浜に(寝そべる。足跡を残す。波が打ち寄せる)。砂の粒子のように個々ばらばらに分解して霧散する=野間。砂のようにざらざらした感情だけが残る"石坂。病気が穏やかな砂地に舞い降りる=小川。セメントの床が乾ききった砂地のように白々とざらつく=日野。陽に暖められた砂地のように他者の淋しさを際限なく吸いつくす=瀬戸内。砂粒を(洗い流す。払い落とす)。 **ちりばめる【鏤める】**▼ちりばめる(色とりどりのネオンを。くすぐりを随所に)。文字をちりばめる(現麗いいな。荘重な。所々に珠玉の)。金をちりばめた箱。宝玉をちりばめたガウンに身をくるんだ皇帝=村上巻。くすぐりが万遍なくちりばめられている。満天に星がちりばめられる。 **つち【土】**乾き切ってささくれだつように白い土高井。土が(乾燥してかちかちになる。しとしとと濡れる。ばらばらとこぼれる。水を吸って黒々と潤う。乾ききって灰色がかって白っぽい"日野。ひび割れて石のようにかたくなる=小松太)。掘り上げられた土がうずたかく積み重なる。▼土が盛り上がる(こんもりと。もこもこと)。土から(根が現れる。得たものを土に返す。生まれたような純朴な農夫=山本周)。土に(雨がしみこむ。まみれて働く)。苗を土に下ろす。雪が吸い取られるように土に消える=阿川弘。土の(肌をのぞかせる。匂いが黒い地面から冷え冷えと湧いてくる佐藤谷)。遠く虫の声が土の響きのように聞こえる=野間。ほのかに土の匂いが香り立つ『池井戸。むっとする土の香りが匂うぃ本庄。土の塊を(砕く。もみつぶす)。土を(ぐちゃぐちゃと足でこねる。どさどさとかぶせる)。霜解けの土をざくざく踏む。新芽が土を割って芽吹く。ブルドーザーで土を均す。朝の総もゃがしっとりと庭の土を湿す=長塚。▼土を運ぶ(トラックが。もっこで)。土を踏む(甲子聞の。内地の)。土のような汗と埃旧にで染まった手拭い=長塚。土くれをほぐす。土砂が(堆積する。流れ出す)。大量の土砂が崩れ落ちる。崩れた土砂が生まれたての獣のように濡れた肌を光らせる=古川、上丁に上葉のを積む。工事の跡の絶壁の赤土がまだ生々しく露出している『太宰。赤土の茫々たる野原。諸土切のように盛り上がった頬=松本。▼土盛りする(低地に。堤防に)。 **トンネル** が(圆通する。貫通する。暗い口を開けている。黒々とした口を開けている=佐伯)。心に大きなトンネルがあって、すうすう風が湿っぽく吹き通るようなわびしさを感じる=石森。不景気のトンネルから抜け出す。列車がトンネルに入る。長い問トンネルにでも潜っていたような弱々しい顔黒井。トンネルの(外に出る。中を進む。出口はいまだ見えない。中に閉じ込められる。なかに嵐が吹き抜けるような轟音だけが響く=宇野利)。真っ暗なトンネルの中。両側の木が枯れた白い枝を伸ばし、車が骨を組み合わせたトンネルの中を走っているよう=原田康。列車がトンネルを出る。燃えるような紅葉にぃのトンネルを抜ける=曽野。禍切にはこの辺が絶頂であったと見えてトンネルを抜けたよう。泉〜。山にトンネルを(通す。ぶちぬく)。 **はっくつ【発掘】**発掘に立ち会う。発掘を思いとどまる。発掘する(新しい才能を。遺跡を。貝塚を。古墳を。作家を。人材を。石器を。若手選手を。埋もれたものを)。 **ほじくる** (地面を。重箱の隅を。砂を。土を。泉券は衿を。歯の間を。歯を。根掘り葉掘り)。▶穴をほじくる(鼻の。耳の)。耳の穴をかっぽじって聞く。ほじくり返す(枯れ葉を。事件を。土を)。ほじる(鼻を。歯を。ブライベートな問題を)。 **ほり【堀】**堀に(沿った細道。映る星の光が水に揺れる藤沢)。堀の(水があふれる。水に夕方から不意に暗くなった雲が重そうに沈む=連城)。澱ょとんで冷たそうな濠に』の水―安岡。堀をめぐらした城。お堀端にある柳。お堀端を散歩する。壕こうの底に転げ落ちる。 **ほりわり【掘り割り】**運河を掘る。捌る)。運河を(州削する。俊人する。通航する)。地峡に運河を掘る。船が運河を上下する。巡河開削を(企てる。夢見る)。掘り割りにあふれた雨後の水。掘り割りの水に明かりが映る。溢れんばかりに勢いよく流れて行く掘り割りの水=福永。葉柳の闇が狭く水をつつんでいる割り下水声。 **ほりおこす【掘り起こす】**▼掘り起こす(地面を。土を。隠れている欲念を)。鮮やかに記憶が掘り起こされる藤本。▼掘り返す(記憶の層を。砂を。土を。一生懸命)。▼掘り出す(芋を。真実を。埴輪加にを。瓦礫ぇの下から。埋もれていたものを)。 **ほりとる【掘り取る】**▼掘り取る(球根を。草花を。根を)。▼採掘する(金を。鉱石を。鉱物を。石炭を)。試押する(海洋資源を。鉱山を。石油を)。▼掘り上げる(芋を。球根を。株を根こそぎ)。 **ほる【掘る】**▼抓る(坑道を。野慶さんを。地面に穴を。土を。爪先で砂を。防空壕を。満を。横穴を。下手にしゃべると墓穴を。井戸を試験的に)。退避壕を掘り上げる。掘り窪める(穴を。切り口を。地面を)。地面を掘り下げる。▼掘り進む(土竜6くが。地下を。トンネルを。地底へ)。▼掘り抜く(岩山を。山の腹を)。地面に垂直に穿;がたれた穴。▼穿つ(点滴石を。憎悪が心に錐を)。▼開削する(運河を。用水を)。▼掘削する(トンネルを。排水路を)。襟が浅く列くってある。▼くりぬく(穴を。岩を。壁を。台地を弓形に)。丸木を削る。つるはしを(打ち込む。振りおろす)。 **みぞ【溝】**ビッと爪で引っ掻いたくらいの細い溝=尾辻。越えがたい溝が二人の間に横たわる。両者の溝が深まる。溝に車輪を落とす。自ら掘った溝へ生活を水のように素直に流しこんで行く=里見。溝を埋める。仲間との間に決定的な満をつくる=椎名錢。溝状に掘りくぼめる。轍誌だに沿って進む。厳の(跡が残る。できた道)。雪が深い敬を作る。 <196> # 描く・表現する **いいあらわす【言い表す】**「言い表す(胸のうちを。端的に。的確に。一言で)。言い得て妙。表現する(巧みな文章で。常識的な言葉で)。 **いいしれぬ【言い知れぬ】**言い知れぬ(悲しみが襲う。嫉妬を覚える。希望にわくわくする。恐怖に襲われる。緊張があたりに漂う。苦痛の色を顔に浮かべる。孤独感に心をしめつけられる。寂しさを身に感じる。焦燥感にとらえられる)。言い知れない恐裄が湧く。言うに言われぬ(悩ましい一日。悲哀がこもる)。とこか言うに言われぬ優しいところがある。 **いれずみ【刺青】**黒子張くのような青い小さい入れ墨徳田。胸から二の腕にかけて薬がきの肌のように入れ墨のぼかしが見える=吉川。刺青を(入れる。彫る)。入れ墨を背中一面に咲かせる=辺見。▼刺青する(イニシャルを。頭文字を)。唐獅子牡丹砂にしを背中一面に彫る=奥田。 **うきよえ【浮世絵】**切れ長の目の浮世絵風美人"篠田。錦絵のような美しさ=林美。明治頃の錦絵のような毒々しい色彩の図柄"今日。古びてしまった錦絵のように淡くくすんだ艶の失せた遠い記憶・石川。倭絵やだの中から抜け出してきたような美しさの若殿と姫芥川。 **え【絵】**▼絵(一幅の。近景と遠景をうまく組み合わせた。画商の間で引っ張り凧だこの人乗)。絵に(魂を奪われる。なる風景。なりそうな構図)。▼絵に描く(情景を。姿を)。絵の(構図。真贋れんを見極める)。絵を(壁に飾る。イーゼルに立てる)。アトリエにこもって絵を描く。熱心に絵を鑑賞する。利根川の広い流れが絵を展ぃっげたように美しく見渡せる=田山。泥絵の具で描かれた暗い絵を見ているような思い勝目。絵を描く(余技に。さらさらと。暇さえあれば)。凡庸なマンネリズムの風景画の空のような青空阿部。色あせた風俗画のように無味乾燥にしか映らない"円地。絵のような(景色。眺め)。現代史は近すぎて全体が見えない大きな絵のようなもの池澤。絵のように遊んでいる字=黒井。古びた額縁のなかの絵のように老女も白猫も動かない落合。夕暮れの光の束がレンブラントの絵のように地上を照らす“五木。連山の巽ひだに夕日が絵のように美しく光線を派ならす田山。油絵を描く。絵心が顔をのぞかせる。絵心を(かきたてる。そそられる)。絵画に造詣がある。絵画的な(印象。俳風)。似顔絵を(描く。得意とする画家)。名刺に似顔絵を使う。一幅の掛け軸。而集を(手に取る。開く)。どぎつい泥絵の具でけばけばしく塗り立てた見世物小屋の看板絵"円地。肖像画を壁にかける。頭にある計画が蜃気楼儿认きか古い版画のように迫力の薄い他愛ないものに見える"大佛。版画を刷る。美人画に天才的な才能を示す。高橋克。▼壁画(巨大な。見事な彩色を施された三浦哲)。門外不出の名画。名画を(贋作詠いする。鑑賞する)。オークションで名画を競り落とす。巨匠の麗筆になる名画。真面目を絵に描いたような人=佐高。絵に描いたような(中間管理職。涙の雫しょ。優等生。マイホームバパ重松)。優柔不断を絵に描いたような男"松岡。絵にかいたように明るい家庭安岡。絵に描いたように紳士的な態度"小池。挿絵を描く。小説に挿絵を入れる。イラストを描く。 **えがきだす【描き出す】**▼描き出す(人生の哀欲を。社会の一断面を。一つのエビソードで人物像を。まざまさと眼前に。宇宙の進化の姿を佐藤勝)。▼豊かに描き出す(イメージも。陰影)。▼描出する(姿を。善を。美を)。▼描破する(官能の世界を。人物を)。 **えがく【描く】**描く(幾何学模様を。人生の軌跡を。痛快な活躍を。色彩豊かに。植物を細密に。花嫁姿を夢に。簡潔に力強く。魂を注いで。日常を淡々と。軌道が平行線を。未来の設計図を。虫のいい空想を。手で宙に円を。イメージを心の中に。事物を具体的に。姿をはっきりと脳裏に。たどってきた道を頭に。男女の性心理を奔放に。人間の心理を鮮やかに。気持ちを込めて。写生に基づいて。小説的な方法によって。庶民の生活を温かく。図をフリーハンドで。的確に対象を捉えて。人間性を余すところなく。今際いまのきわに妄想を。阿刀田。道がU字型のカーブを=高木。歴史の英雄を過度に美化して=阿刀田)。曲線を描く(底がたわんで。木の枠が優雅な)。▼弧を描く(二羽の意とびが。渚が白く。眉がやさしく)。夢を描く(期待の。都合のいい)。▼稜線もに、今を描く(山塊がたおやかな熊合。山が青い空にぎざぎざの“村山)。犯人の人物像が描けない。描き込む(心情の揺れを。青春の匂いを)。登場人物を描き分ける。下図を描き上げる。活写する(人生を。世相を)。キャンバスに向かう。画架にキャンバスを置く。▼点描する(世界情勢を。カメラで)。点描で表現する。タッチが陰鬱で重い。色彩のタッチが淡い。▼タッチで描く(軽快な。姿を精緻な。しゃれた)。タッチの荒い奔放な水彩画"丸谷。筆致(恐ろしいまでに冴えた柴田剣。ユウモアを交えた女らしい"小沼)。素早い筆致で景色を定着させる=加賀。筆致で描く(こまやかな。辛辣な。さらりとした)。筆致に柔軟さが加わる。描写(無駄のない的確な。志賀直哉ばりの簡潔なリアリズムの"石坂)。巧緻きわまる描写を繰り広げる。説明的な描写を避ける。描写する(戦争の悲惨を。ディテールを。巨細にきに。生き生きと。顔立ちを細かに。庶罠の人情をたくみに。ありありと眼に映るように夏目)。感情を差し挟まない冷徹な客観描写。描写力が <197> **えのぐ【絵の具】** ペンキのようにぎらぎら光る緑青色以孔」の絵の具谷崎。絵の具で(絵を描く。塗りつぶす)。絵の具を画布に塗る。バレットに絵の具を出す。様々な絵の具をバターのように厚く塗り込めた暗闇"村上春。想像の絵の具を塗りつける=梶井。濃い緑の草や木の色が油絵の具のように生々して見える=徳田。絵の具のような灰色の霧が視界を閉ざす=加賀。怒りと嫉妬が色の違う絵の具みたいにグニャアと混じり合う大原。記憶が水彩絵の具のように滑らかに混じり合う小川。顔料を塗る。パステルで描く。バステルのような華やかな雰囲気の文章・三浦朱。▼バステルカラー(おしゃれな。可愛い)。 **がか【画家】** ▼画家(腕のたしかな。革新的な。伝統的な。異端の。売れない。名の聞こえた)。画家として大成する。部屋が画家のアトリエのように広い=山口。名の知られた日曜画家であることを誇りにする"筒井。同世代の中堅の中では先頭を走っている日本画家=松木。浮世絵の終焉しゅうを飾った絵師高橋克。心は巧みなる画師のごとし。幸田露。当時長崎きっての版画師長与。 **かきあらわす【書き表す】** ▼書き表す(日本語を。文字で)。一般になじみが深い表記。表記が不統一。 **さくふう【作風】** ▼作風(斬新な。地味な。写実的な。重厚な。清新な。格調高い。完成した。前例のない)。ひところの作風と違う。▼画風(華麗な。写実的な。静的な。独自な)。画風が(改まる。変化する)。 **さっか【作家】** ▼作家(名の聞こえた。人気随一の。無名に近い。押しも押されもせぬ。芸術家気質に徹した。批判精神に欠如した。ユーモアにすぐれた)。いろいろな作家が競って書く。作家として文壇に雄飛する。作家としての(地歩を築く。立場を築き上げる“石坂)。作家の(道に入る。仲間入りをする)。作家への道を歩む。操觚ごぅの人。作家生活に入る。五本の指に入るベストセラー作家=東野。書き手の思いが読み手に伝わる。ブロの小説家を目指す。著作権を(譲渡する。所有する。侵害する)。筆者の言わんとするところ。文筆活動を始める。文筆生活に入る。文筆を(薬とする。もって立つ)。物書きの一人として発言する。 **しま【縞】** 波の縞が誘うように沖へ逃げる"大岡。水の白い縞が陽とたわむれて水の底でゆらゆらする=開高。緑色の縞が幾重にも走った濃い群青の水面=福水。縞になって横降りに降りしきる雪有島。淡い慕れ方の日光が湖面の認もゃを通してほの赤い縞になって射す“石川。縞の股引。もきをはいた藪蚊や水井荷。窓からもれる灯が地面に太い光の縞を描く=光瀬。ブラインドの細いたくさんの隙間から明るい陽が縞のように顔の上に落ちる=原田慮。赤と白との縞模様の幕が張りめぐらされる=高橋和。段々畠が美しい縞模様を描く"士吉村。くっきりとした大名縞だいね。を描き出す林!佐藤春。源明るい空にだんだらになった白い雲。▼ストライプ(幅広の。細い)。ストライブの(シャツ。ズボン)。 **しゃせい【写生】** ▼写生する(丘を。景色を。静物を)。解剖学の教科書から写生したような精密な浮き彫り=小川。▼スケッチする(印象を。形を。風景を。露頭を)。スケッチブックを(閉じる。取り出す。開く。広げる)。ばたんと音を立ててスケッチ帖を閉じる"有島。 **しょうちょう【象徴】** 苦しい状況を象徴する光景。時代を象徴する言葉。象徴的な(意味を持つ。作品。存在。出来事。例)。象徴的に二人の関係を現している。▼シンボル(繁栄の。平和の)。▼表象する(イメージを。暗い感じを。豪傑タイブを。自於美を。平和を)。 **ずしき【図式】** ▼図式(単純な。普遍的な。大事故すべてに共通する=柳田)。図式で示す。図式を頭の中に描く。▼図式化する(関係を。事柄を。おおまかに)。 **スタイル** スタイル(長年培ってきた。歯に衣良ぬ着せぬ天衣無縫の)。文章のスタイルを書き分ける。流行のスタイルをまねする。頑休公にクラシックなスタイルを変えようとしない椎名誠。 **ずひょう【図表】** 図表で示す。図表にまとめる。一覧表にまとめる。一覧表を作成する。グラフに(あらわす。まとめる)。グラフを読む。▼作図する(道順を。略画を。定規とコンパスで)。▼図解する(構造を。仕事の流れを)。▼図示する(会場を。系図を。順路を。進化の過程を)。図版から目を離す。簡単な図を描いて説明する。表を参照する。 **すみえ【墨絵】** 墨絵の中の幻想的な風景!藤田。淡くけぶる湿原の中をくろぐろとうねり流れる釧路川が墨絵のよう。内田康。どんよりと垂れこめた雨雲の下に墨絵のような風景が展ぃらける"外村。微かすかな月光が城下の街を墨絵のように浮かばせる菊池。巨大な建屋群が絵のように浮かび上がる=柳田。時折切れ切れの霧が窓をかすめて沿線風景を墨絵のようにほかす内田應。純然たる水墨画的な風景。 **ずめん【図面】** 図面とにらめっこをする。図面を(描く。畳む。引く)。机の上に図面を広げる。▼見取り図(部屋の正確な。家の。公園の)。見取り図を描く。 **ちず【地図】** 地図がとてつもなく大きな峨の翅はねのように見える=福永。頭に地図が焼きついている土地。地図とにらめっこする。地図を(壁に張る。頼りに町を歩きまわる。机の上に広げる)。詳細な地図を手に入れる。テーブルに地図を広げる。メモ用紙に地図を書く。暇さえあれば地図を取りだして眺める=長崎、天井に地図のような汚点が拡がっている=林美。壁の染みが地図のように黄色くひろがる=原田晓。割れ目が地図のように入っているガタガタのストーヴ"小林多。政治地図が急速に塗り替えられる鈴木四。勢力地図が書き換えられる。 # 描く・表現する <198> 絵図を描く。地獄絵図目にする。海図に載っている島々。地球儀を回す。まるい地球儀のような感触の腹部萩原棄。 **デザイン** デザイン(白木のムク材をふんだんに使った北欧調の内田康。妙に押しつけがましく末梢神経を刺戦記げしてくるような=高井)。▼デザインする(生活を。パッケージを。服を。配色よく)。▼デザイナー(売れっ子の。新進の)。意匠を施す。様々な意匠を凝らす。図柄(細密な。美しい。絵の)。▼図案(標識の。ボスターの)。ちまちまと図案のような字を書く内田糸。抽象的に図案化する。 **デッサン** 正確なデッサン。デッサンを描く。胸像をデッサンする。 **パターン** パターン(いつもの。事件に共通する)。いつもとバターンが違う。お決まりのバターンが出来上がる。三つのバターンに分類できる。基本的なバターンを維持する。逆のバターンを考える。通俗的なバターンを思い浮かべる。これまでのバターンを(繰り返す。踏まえる)。 **はなもよう【花模様】** 点々と赤い花模様が散る。大胆に図案化された花模様の着物。花模様を(あしらう。織り出す)。花柄の(ネクタイ。ハンカチ。服を着る。ブラウス)。 **ひょうげん【表現】** ▼表現(曖昧な。奥行きのある。仮借のない。手垢がぁのついた。魅力のある。論理的に的確な。オブラートに包んだ。簡潔で的を射た)。表現がぶっきらぼうに過ぎる。根のひろがりと深さが大規模になればなるほど上澄みのような平明な表現が求められる竹西。気の利いた表現に腐心する"大野淺。表現の可能性を広げる。表現を工夫する。一足飛びに飛躍した表現をとる=丹羽。▼表現を借りる(古風な。今様の。地元紙の)。▼表現する(怒りを。感情を。で。不器用に愛情を。限度ぎりぎりのところで)。表現技巧が老練の域に達している=高橋英。表現力(秀逸な。見事な)。表現力が備わった文章。表現力に恵まれる。意を尽くす。▼形容する(女性を。生活ぶりを。人間を。比喻的でに)。修辞の多い文章。修辞を施す。▼造形する(イメージを。人物像を)。▼パフォーマンス(派手な。前代未聞の)。▼表出する(自己を。感情を自由に)。▼体現する(思想を。理想を。エロチズムを)。監督の意図を見事に体現して動く俳優池澤。 **ひょうげんできない【表現できない】** ▼美しさ(何とも形容のしようがない。絵にも描けない落語)。十分に意を尽くせない。一種言い表しがたい感動。言い表す術すべを知らない。言葉に言い表せない。口では言い表せない感情。言いようのない(惨めな敗北感。恐怖にとらわれる。優しいまなざし)。言いようもなく(うれしい。苦痛な仕事。懐かしい)。いわく言いがたい(美しさ。効用)。絵筆も及びがたいほど。凄絶形容を絶する。とても言葉で書きあらわすことができない=小松太。口に尽くせないほど盛ん。何ともかとも(言えぬ顔つきになる。言われないような不安な気持ち=堀)。表現に苦しむ。荒涼たる光景は筆も口も叶わない=国木田。言いつくせない怨恨の数々。口に言いつくせない多事な一年=宮本百。万分の一も言いつくせない。一口に語りつくせない。言葉では言いつくせないほど恩義を受ける"丹羽。得も言われぬ(美しい姿態。対照をなす。芳香に包まれる)。得も言えぬ(かぐわしい香り。優美さがにおいたつ)。言語に絶する(淫蕩い认の生活。苦痛。労苦)。▼言語に絶する(恐怖が。困難が。迫害が。勇猛)。言語を絶する(混乱。非道)。言葉に尽くせない数々の心の重荷、言葉に尽くせないほどの(敬愛。唯儀)。筆舌につくしがたい苦雑!内田康。▼筆紙に尽くしがたい(惨状は。惨憺んさは)。筆舌に尽くしがたい(あばら家。美しさ)。筆にも(紙にも尽くされない!宇野干。言葉にもつくせないほどの喜びよう~松谷)。何とも言えない(嫌な気持ち。香ばしい味。魅力。うれしそうな顔つき。親しさを感じる。懐かしげな微笑。不気味さが漂う)。声に何とも言えない艶がある。何とも言えず(寂しくなる。すがすがしい)。名状しがたい(斐ず、まじい悪臭。壮快な気持ち。孤立感を覚える。混乱のなかへ落ちこむ。ショックを受ける。不安感にとらわれる=高橋和。酩酊感にのなかに置かれる=井上靖)。 **ふでづかい【筆遣い】** ▼筆遣い(玄妙な。繊細な。大胆な。巧みな。力強い)。▼書きぶり(正直な。飾りのない。熱に浮かされたような)。ハードボイルドタッチの犯罪小説。 **もよう【模様】** 模様が(鮮やかに浮き上がる。くっきりと浮き出す)。自動車の群れが光の模様を描く。色模様をつける。唐草模様の風呂敷。水の絞ぁゃが乱れる。バターンを綾なす。複雑に綾なす心。視線が綾をなして乱れ飛ぶり有段。雪が飛曰》『模様に見える程に降る三浦朱。三つのイカダが矢がすりの模様のように互い違いにつなぎ合わせてある=山本有。地紋を(織り出す。染め出す)。▼風紋(砂漠の。砂の。雪の)。文様(亀甲の。土器の。波の)。種々の文様を織り出す。染みが奇怪な文様を描く篠田。▼柄(いきな。古風な。地味な。派手な。おとなしい。子供っぽい。昔ながらの。若向きの)。柄が(凝っている。ハイカラ過ぎる)。サイケデリックな柄に編んだセーター=志茂田。柄を(選ぶ。見立てる)。木目が(まっすぐに通った板。波のように浮かんでいる天井板"北村)。柱に美しい木目が浮く原田康。木目の模様をプリントする。杉材の木目のように清楚でぃでキリッとした美人=小沢。モザイクの壁画。さまざまな色のモザイク模様。 **よむ【詠む】** ▼詠む(花鳥風月を。辞世を)。▼歌に詠む(感動を。喜怒哀楽を。気持ちを。喜びを。適切な言葉を。心境を。七草を)。情趣を詠み込む。 # 選ぶ <199> # 選ぶ **にしゃたくいつ【二者択一】**二者択一に答えを出す。家族か仕事かの二者択一を迫られる。高級ホテルか南京虫の出る安宿かの二者択一しかない若竹。二者択一的心境に追いこまれる=獅子。二者択一的に判断する。二つに一つ(言うことをきくか出て行くか。生きるか死ぬか。行くかとどまるか)。 **アトランダム** に(選ぶ。抽出する。抜き出す)。任意の一つを摘出する。無作為に選び出す。標本を無作為に抽出する。 **えらびだす【選び出す】**▼選び出す(一編を。系統を。手頃な材木を。一株を。一つを。一鉢を。一人を)。▼選び取る(古風な方法を。仕事を。一つを)。いい物を送り出す。▼選出する(クラス委員を。三役を。代議貝を。代表を。合議によって。投票により)。 **えらぶ【選ぶ】**▼選ぶ(確実な方法を。最高の人を。慎重に言葉を。抽選で三人を。時と場所を。別の選択肢を。楽な道を。曲目を適当に。現代を題材に。自らの意思で。引っ越しに方角を。攻撃目標の一つに。実験のモデルに。材料をあれこれと。さんざん迷って。自分の気に染む人を=柴田网。この里を終焉の地に=山岡。レストランを待ち合わせの場所に=伊集院)。香水の選び方を誤る。弘法は筆を選ばず。目的のためには手段を選ばない!高木。厳選する(原料を。候補者を。材料を)。▼互選(委員による。取締役による)。互選する(委員長を。議長を)。互選で決める。選定する(歌手を。機種を。場所を)。▼ビックアップする(重要個所を。有力選手を。読みたい本を)。▼拾い出す(言葉を。ボイントを。要点を)。▼見立てる(いい柄を。祝いの品を。傘を。ワインを)。▼見繕う(贈り物を。ブレゼントを。料理の材料を)。▼より取り見取り(お菓子が。美女が。料理が)。▼選はる(浅瀬を。よい品だけを。選りに)。白羽の矢が立つ。これはと思う人物に白羽の矢を立てる=井上靖。白羽の征矢ぞゃが立つ。▼選任する(委員を。会長を。役員を。理事を)。選抜に漏れる。選抜する(メンバーを。候補者の中から)。▼選ばれる(佳作に。国民に。裁判員に。総裁に。大統領に。評議員に。補欠に。選挙によって。チャンピオンに)。選ばれなくて(ひがむ。落胆する)。▼選出される(縦長に。大統領に)。 **えりぬき【選り抜き】**選り抜きの(老師。選手。チーム)。エリートを鼻にかける。エリート意識を持つ。エリートコースを歩む。▼選りすぐる(一流選手を。精鋭を。美女を)。選りすぐった逸材。果樹園から選りすぐった果物"あさの。各地からよりすぐった精鋭"豊田。精鋭が勢揃いする。精鋭をもって臨む。▼精選する(材料を。著作を)。精選された美術品。飛び切り精選された材料。 **せんきょ【選挙】**本選挙が始まる。選挙で国民の審判を仰ぐ。選挙に出馬を予定している。選挙の(洗礼を受ける。裏方として走りまわる)。▼選挙する(議員を。クラス委員を)。一票を投じる。選挙違反に問われる。選挙戦が始まる。選挙戦に突入する。選挙目当ての人気取り。総選挙で国民の信任を得る。衆参の同時選挙が行われる。改誕期を迎える。役員を改選する。開票結果を速報する。開票に立ち会う。候補者の政見放送。投票が無効となる。投票所に足を運ぶ。投票の半数を得る。▼投票日を公示する(参院選の。総選挙の)。投票用紙を箱に投じる。▼票差で勝つ(大きな。わずかな)。まとまった票田。票の(取りまとめを任される。掘り起こしにかかる)。浮動票をあてにする。 **せんこう【選考】**▼選考(公正な。不正な)。選考が雑航する。選考の公平を期す。最終選考に残る。選考委員の意見が一致する。▼選者(短歌の。投稿原稿の。俳句の)。選者が一致して推す。▼人選(無難な。実力本位の。適材適所の)。人選に(苦慮する。漏れる)。 **せんたく【選択】**選択に(過誤がある。迷いがない)。個人の選択にゆだねる。言葉の選択に迷う。選択の(幅を広げる。余地がない)。いきなり思いがけない選択をせまられてためらう=安部。▼選択する(自由に。慎重に。やむにやまれず)。あれかこれかと選択する余裕のない日を送る=立原。▼選択肢(現実的な。多様な)。選択肢のない唯一の道。▼取捨選択する(材料を。情報を)。取捨選択して決定する。取捨選択に迷う。取捨選択の余地なし。 **ふるい【篩】**夢のように朧法にな昔の追憶の篩檀。▼ふるいにかける(志願者を。受験生を。灰を。単一の尺度で。不ぞろいな豆をさるで=辺見)。いろいろな人間に対する厳重なフルイのような事件=小林多。 **ゆうけんしゃ【有権者】**新しいリーダーを有権者に売り込む。マニフェストを有権者に知らせる。有権者の(審判を仰ぐ。関心を引きつける)。有権者の信を(得る。問う)。選挙権を持つ。 **よせん【予選】**予選が(スタートする。始まる)。予選で失格する。予選に落ちる。予選を勝ち抜く。あえなく予選落ちをする。前もって選ぶ。 **よりわける【選り分ける】**▼選り分ける(こみと魚を。一級品と二級品を。おいしそうなものを)。▼選別する(果物を。人材を。野菜を)。▼ふるい分ける(粉を。米を。砂を。灰を。迷惑メールを)。 **りっこうほ【立候補】**▼立候補する(国会議員に。市長選に。生徒会長に。選挙に。総裁選に。代議員に。町長に。未公認で。無所属で)。自薦(他薦を問わず。他薦いずれも可)。不出馬を(決める。表明する)。出馬に意欲を示す。出馬の決心を固める。▼出馬する(選挙に。知事選に)。 <200> # 追い払う・取り除く **おいおとす【追い落とす】**▼座から追い落とす(社長の。政権の)。追い落としを図る。成績上位者の追い落としを狙う。▼蹴落とす(他人を。同僚を。仲間を)。群臣を排して異常な出世をする=舟橋。 **おいかえす【追い返す】**▼追い返す(恥っさらしを。邪険に。入り口で。玄関で。啖呵於んを切って。けんもほろろに。拝むようにしてやっと。適当に聞き流して。返事にも及ばずと使者を=坂口)。客をむげに追い返すこともできない。▼撃退する(追っ手を。退屈な客を。敵の攻撃を。敵を城外に)。訪れる人を玄関払いする。▶食わされる(門前払いを。門前で玄関払いを"佐高)。 **おいだされる【追い出される】**▼追い出される(アパートを。酒場を。仕事場を。店を。石もて。涙金で。嫁入り先の家を)。追い出されるように(会社を退順する。仕方なく縁側に出る)。▼追い立てられる(自分の土地を。島を)。追われるように(階下へ降りる。帰宅を急ぐ)。塩を撒ほかれる。親父が家から叩きだされる日も近いかもしれない三浦し。▼弾き出される(この世から。市場から。集団から)。 **おいだす【追い出す】**▼追い出す(腐敗分子を。面影を心から。裸同然で。病人にとりついている死霊を椎名師。さんざん働かした挙げ句に=獅子。ぼろ布でも捨てるように=船戸)。朝が夜を追い出していく。追い出しに成功する。▼叩き出す(裏切り者を。客を)。つまみ出す(男を。荒っぽく)。人払いして密談する。人払いを命じる。破門を言い渡す。▼破円する(信者を。信徒を。弟子を)。 **おいはらう【追い払う】**▼追い払う(嫌な考えを。押し売りを。風が雲を。怯懦いたな心を。ふさぎの虫を。頭から不吉な考えを。いたずらな思いを。不愉快な気分を。兵隊が銃を振り回し人々を)。手で追い払う仕草をする。野良犬でも追い払うように邪険にする=高橋元。追い払ってもついて来る。渋い顔で追い払うように手を振る=有川。どろぼう猫でも追い払うように追い返す森城。打ち払う(黒船を。並み居る敵を)。敵の軍勢を潰走动沙させる。▼駆逐する(敵を。鼠込ずを。病を。大資本が小資本を)。退散させる(怨敵を。怨霊を)。敵勢を敗走させる。▼放逐する(国外に。会社から。日本から)。▼追っ払う(犬を。息を。蠅はぇを。貧乏神を。虫を。やじ馬を。うるさそうに)。 **おしのける【押し退ける】**▼押しのける(一方が他を。古い道徳を。前にいる者を。警官を突き飛ばさんばかりに。必死に腕を伸ばして相手の身体を"黒井)。人を押しのけてまで出世したい気持ちはない=丹羽。見物客を押しのけるように飛び出してくる=ねじめ。突きのける(相手を。母親を。胸もとを)。 **おしゃる【押し遣る】**▼押しやる(グラスを脇に。ノートを脇へ。感情を遠い過去に。疑問をできるだけ遠くに。食器をテーブルの中央に。できるだけ遠くへ)。記憶が遠くに押しやられる。 **きょせい【去勢】**▼去勢する(犬を。雄を。家畜を。猫を。敵を文化的に)。去勢された猫のように大人しく気だるそうにテレビを観る=原田宗。生殖器を切り取る。 **けちらす【蹴散らす】**▼蹴散らす(砂を。敵を。がむしゃらに。かんじきで雪を熊合。せっかく積み上げた過去を夏目)。浸してくる無力感を小気味いいまでに蹴散らしてくれる高樹。ほかの車をけちらすようなラフな走り方"五木。▼追い散らす(鶏を。鼠砂ずを。民衆を)。 **こす【滩す】**▼逃す(油を。陥ぁんを。スーブを。味噌かすを)。逃し取る(雑音を。スーブを。沈殿物を。濁りを)。フィルターが目詰まりする。疑惑のフィルターを通して見る=小林久。▼濾過ぅかする(沈殿を。泥水を。濁りを。不純物を)。濾紙ぅしを(セットする。取り替える)。 **さらう【浚う】**▼さらう(池を。川底を。どぶを)。川ざらいをして捜す。浚渫しんする(運河を。汚泥を。川を。湖底を)。 **たちのき【立ち退き】**立ち退きを(拒む。迫られる。要求する)。道路工事のために立ち退きを余儀なくされる=金井。追い立てに遭う。追い立てを食う。 **ついほう【追放】**追放の(憂き目に遭う。身となる)。追放する(異分子を。暴力を。疫病神を。浪人者を。公職から。国外へ。島から。町から。領内から。手の届ぬ遠い異郷へ=森瑙)。江戸十里四方を追放になる=多岐川。▼追放される(家を。故郷を。地位を)。国外追放の処分を受ける=陳。▼追われる(石持て大学を。課長の椅子を。社長の地位を。日本を。都を。生まれた土地を)。追われるように家を出る。 **つみとる【摘み取る】**▼摘み取る(早めに芽を。蕾いにのうちに。双葉のうちに。背中を二つに折って道端から花を裕永。花の最後の一本を"中野美)。悪の芽を根こそぎつみとる=石森。▼芽を摘む(若い研究者の。若手の)。道端の花を摘む。 **どける【退ける】**▼どける(石を。車を。邪魔ものを。たんすを。荷物を。箱を。鉢を。本を。毛布を)。のける(石を。掛け布団を。壁を。邪魔物を。トタン板を。荷物を。横へ)。よける(紙屑を。木の葉を。破片を)。▼どかす(足を。車を。自転車を。箱を。バリケードを)。 **とりさる【取り去る】**▼取り去る(無駄な部分を。角を滑らかに。身のうちに鬱積した澱ぉりを火坂)。撤去する(基地を。障害物を。バリケードを。オープンセットを)。 **とりのぞく【取り除く】**▼取り除く(原因を。心の重荷を。邪魔物を。障害物を。癌細胞修臥於を手術で。封建的残りものを森宏)。▼取りのける(仕切り板を。倒木を。日覆いを。枠を。邪魔っけな石を)。除去する(かびを。脅威を。歯垢儿”を。地雷を。不安を)。抜き去る(政治性を。精神性を。歯を)。常識や先入観を排して考える。▼排する(曖昧な言葉を。安易な妥協を。偏見を)。▼駆除する(害虫を。ごきぶりを。しらみを。鼠わずを。虫の卵を)。 <201> # 追い払う・取り除く-63 **とりはずす【取り外す】**▼取り外す(アダプターを 。覆いの布を。襖転すを)。取り外しが(利く。自由)。取り外しのできる棚。▼取っ払う(カーテンを。階段を。壁を。座席を)。▼取り払う(垣根を。仕切りを。視を)。 **なかまはずれ【仲間外れ】**▼仲間外れにされる(クラスで。従わないと)。仲間外れの子供のようにぽんやりと郊外を散策する=高橋和。仲岡外れにする(嫌われ者を。鈍くさいから)。仲間から締め出す。話の圏外に惱き去りにされる。締め出しに遭う。締め出しを(食う。食わせる)。▼外に置かれる(渦の。囲いの)。蚊帳がゃの外に置かれた気分“三浦し。国民を蚊帳の外に置く。爪弾きに遭う。▼爪弾きにされる(社会の。親類縁者から。仲間から。みんなから)。よそ者を爪弾きにする。のけ者扱いをされる。のけ者に(される。する。なる)。村八分に(遭う。される。なる)。家庭内村八分の憂き目を見る荻野。 **ぬぐいさる【拭い去る】**▼拭い去る(感傷性を。疑念を。強迫観念を。不安を。悪い夢を。跡方もなく。すっかり。負のイメージを。俗塵にくをきれいさっぱりと"玉村)。拭い去られる(痛みが。夜のとばりが)。 **のぞく【除く】**▼除く(一家の災いを。少数の例外を。特別の時期を。老人を)。除外する(少数者を。名簿から。他の売り手たちを)。学生を除籍する。学校を除籍になる。除名する(会員を。組合員を。党員を。メンバーを)。 **はいじょ【排除】**▼排除する(異質のものを。邪魔者を。精神主義を。敵対関係を。特権意識を。優秀な女を。規格外として。警察力で。職場から。力ずくで。敗者は容赦なく。あくまでも諧調を保ちながら独立的に他を"開高。速やかに過度の経済力の集中を=高橋和。思い出を意識の裡っちから=梶尾)。人為による淘汰。淘汰が起こる。 **はいせき【排斥】**▼排斥する(感傷を。享楽を。事大主義を。岡入者を。肉体的快楽を。物欲を。一言の下に。非科学的で奇怪な迷信として徹底的に人岡)。外国人排斥を阻む。▼排外する(外国を。特定の人々を)。軍国主義を排撃する。排撃の火の手が(収まる。容易に消えない)。排他的な(愛国心。思想。態度をとる)。恐端的な邪恶事として擯斥や込する。民族排外主義が高まる。 **はずす【外す】**▼外す(急いで座を。腕から時計を。壁から額を。義足を。質問の矢を。羽織の紐もを。稲架はきから稲を。大刀を腰から。朝夕のラッシュを。簡単なパットを。気を利かせて席を。拳銃の安全装置を。さり気なく視線を。スカートのホックを。ドアのロックを。リストから名前を。ワイシャツのボタンを。イヤホンを耳から。検討の対象から。指輪を薬指から)。▼外される(レギュラーから。ローテーションから)。人倫の道を踏み外す。抜かす(勘定から。メンバーから)。 **はらいのける【払い除ける】**▼払いのける(幻影を。湿っぽくなりそうな気を。つかみにきた手を。視線を小うるさそうに。降りかかる火の粉を"石坂。言葉を無気力に古井。差し出した手を邪険に熊合)。軽く頭をひと振りし頬にかかる髪を小馬のようにはらいのける宮部。不快な幻影を払いのけようと頭を打ち振る=長与。うるさいものでも払い除けるように目をそむける=有島。▼はねのける(外圧を。邪険に。剣をぼっと)。一掃する(忌まわしい疑惑を。重苦しい空気を。害をなす分子を。暗いイメージを。じめじめした気分を。暴力容認の風潮を)。 **ふっしょく【払拭】**▼払拭する(過去の悪名を。疑心暗鬼を。疑念を。疑惑を。懸念を。不安を。野蛮な感じを)。払拭される(迷いの色が。憂鬱な気分が)。 **ふるう【篩う】**▼ふるう(小麦粉を。米を。砂を。蕎麦粉を)。▼ふるい落とす(異物を。受験者を。不適格者を。不要なメールを)。 **ほうりだされる【放り出される】**▼放り出される(大学を。勤め先を。海に。寒空に。大平原に。ぽつんと。とどのつまりは倒産して。着のみ着のままで路土に司馬。疑心の真っ只中欲城へ=綾辻)。 **まじょがり【魔女狩り】**魔女狩りが荒れ狂う。魔女狩りとか踏み絵の類いは大嫌い=島田。忌まわしい魔女裁判。魔女に対する火あぶりの刑。異端者を(審問する。火あぶりにする)。異端を排除する。 **まびく【間引く】**▼間引く(苗木を。苗を。菜を)。電車を間引いて巡行する。定期便を円引き運航する=辺見。うろ抜く(大根を。人参を。苗の混んでいるところを)。むしる(毛を。雑草を。畳の毛羽を。畑のむしる草を。花びらを。花を。羽を。もっさり肉を。芝生の葉を丹念に)。尻の毛までむしられる。髪を引きむしる。むしり取る(金を。芝を。肉を。ネクタイを。葉を。壁に掛かった絵を。シャツのボタンを)。▼つまみ取る(銀貨を。毛玉を。歯を。指で)。 **もぎとる【もぎ取る】**▼もぎ取る(力ずくで賞を。葉を。実を。無理やり。未熟な果物をせっかちに)。もいでは食べる。片腕をもがれる。▼もぐ(果実を。翼を。入場券を。実を)。▼もぎはなす(腕を。手を。身を。指を)。▼もぎる(切符を。トマトを。入場券を。半券を。りんこを)。▼ちぎり取る(片祉を。葉を。房を)。 <202> # お ## 追う・離れない **おいあげる【追い上げる】** ▼追い上げる(トッブ集団を。勉強で。レースで。先行する対立候補を)。敵の急追を(かわす。振り切る)。猛追にあって一点差となる。猛追も及ばず小差で敗れる。首位を猛追する。 **おいかける【追いかける】** ▼追いかける(新しいものを。事件を。沈む陽を。ボールを。執拗に。後ろから。後ろ姿を目で。執念深く。猛烈な勢いで。女房の尻ばかり。子供たちが船売りを"北原。鳥たちの噂だえりが闇の中を=長野。後ろ姿に縋すがりつくように萩原葉)。背中をまるくしてぼんぼん飛ぶように追いかける犬"石森。間髪の隙間をさえも洩もらさずに追っかけて来る=横光。声が背中を追っかけてくる。▼後を追いかける(急いで。小走りで)。▼追いかけてくる(声が。雨が西から。不揃いな足音が"高樹)。追いかけるような忙しさの中で暮らす=壺井。追いかけるように後に従う。背後から追いかけるように言う。風が後ろから追いかけるように吹いてくる=内田亘。アイドル歌手の追っかけに走る。ゴシップを追っかける。追っかけをやるファン。力を振り絞って追走する。追尾するパトカーを振り切る。一定の距離を保って追尾を続ける。白バイの追尾を振り切る。▼後を追う(あわてて。こっそり。着かず離れず。未練がましく、無我夢中で。小走りになって。磁石に鉄片が吸いつけられるように=山田风)。後を追うようにこの世を去る=陳。 **おいこむ【追い込む】** ▼追い込む(網の中に。閣僚を辞任に。関係を破綻に。山村を過疎に。制度を廃止に。人間を孤独に)。大学入試に備えて最後の追い込みにかかる。追いつめられた立場に追いやる。 **おいつく【追いつく】** ▼追いつく(先頭集団に。ぐんぐん。あっという間に)。稼ぐに追いつく貧乏なし=北原。先進諸国のレベルに追いつき追い越せ=浅川。唐突に言われ頭が追いつかない=横山。▼追いつけない(フル稼働でも注文に内橋。変化するスピードに=高橋源)。 **おいつめる【追い詰める】** ▼追い詰める(血相を変えて。じわじわと獲物を。徳川家の御時世を剣が峰まで=船山)。▼追いつめる(徹底的に。警察が被疑者を。借金取りが債務者を。じりじりと獲物を。とことん自分を。今一歩のところに。言わねばならない羽目に。抜き差しならないところまで。犯人をあと一歩まで=松岡)。 **おいまわす【追い回す】** ▼追いまわす(敵を。ボールを。辛抱強く。目のかたきにして)。追いかけまわす(女の尻を。執拗に。女の子のけつを)。尻に火がついたみたいになって追いかけ回す―開高。▼追いまくられる(家事に。雑用に。仕事に。締め切りに。ハードスケジュールに)。ひるんだ敵を追いまくる。▼追っかけまわす(アイドルを。面白いものを。女の尻を)。付け回す(後を。女を。親の敵と)。 **おう【追う】** ▼追う(新しい流行を。往年の夢を。女の子の尻を。現世の幸福を。父親の幻影を。変化の過程を。目先の利益を。理想を。猟犬が兎を。行動を丹念に。支配の座から。つかず離れず。蠅をぃぇ手で。がむしゃらに事件を。遠ざかって行く姿を。ニュースの材料を。ひたすらに現世の悦楽を。一挙手一投足を熱心に。カメラが静かに。こけつまろびつ。メモ帳の姓名を指で。獲物を追う猟師のように一散に後を菊池。後続集団が一団になって=沢木。ボディガードのようにビッタリと後について=景山)。年を追うに従って数が増える。▼目で追う(題名を。文面を。ボールの行方を。転がっていく空き缶をねじめ。遠のいていく赤いテールランプを=桐野)。▼行方を追う(血眼になって。盗品の)。▼追っていく(足跡を。捜査過程を克明に)。▼追ってくる(吹雪の中を。いつでも。後ろから。声が後から。執念深く)。追い続ける(一途に夢を。頭の中で一心に一つの考えを=結城。最後の最後まで真相を=東野)。追いかけられているように後をも見ずにあたふたと出て行く"石川。勢いに乗って追い迫る。後ろから牛を追い立てる。▼追尾される(白バイに。パトカーに)。怪しい男に尾けられる=谷崎。後を見え隠れに尾ける=三好徹。引きずられるように後を尾行する。財界の動きをフォローした記事。問題を深追いする。 **おって【追っ手】** 追っ手が(かかる。迫る)。追っ手に(おびえる。つかまる。見つかる)。追っ手を蹴散らし逃げ失せる。上手に追っ手をやり過ごす。討手の目をくらまして脱出する=山岡。 **かりたてる【駆り立てる】** ▼駆り立てる(短絡な行動に。貧困が犯罪へ。むやみに欲望を。世界を破滅へと)。▼駆り立てられる(凶暴な気分に。許せないという気持ちに=勝目)。一目会いたい願いに駆りたてられる=真継。▼駆る(政略的に談話を。不断の生存競争に人類を。確信が冒険的勇気に。絶望的な憤りへと)。 **くいさがる【食い下がる】** ▼食い下がる(必死に。圧力に負けず。しつこく。粘っこく。最後の最後まで)。なんだかんだ言って執拗に喰いさがる=山口。 **さいこうび【最後尾】** 最後尾にくっついて走る。最後尾の車両に乗る。最後尾をのろのろとついていく=石田衣。列の最後を歩く。隊列のしんがり。列のとん尻。 **すがる【縋る】** ▼すがる(過去の成果に。肉親の絆に。人の情けに。心細く一心な目付きで)。衆生しじがすがる仏の慈悲。藁にもすがる思い。▼可能性にすがる(万に一つの。わずかの)。ステッキにすがって歩く。父母の情にすがって生きる。物にすがって立つ。袖に縋らんばかりにして泣訴する=司馬。すがるような目を夫に向ける=東野。すがるように記憶をたぐる=村松。 <203> ## 追う・離れない-64 **そう【沿う】** 故人の遺志に沿う。意図に沿う方向。川に沿って上流へさかのぼる。入り江に沿った道。国策に沿った事業。堀に沿った細道。壁に沿って歩む。川に沿って遡る。経絡に沿ってもみほぐす。柵に沿って歩く。テーマに沿って書く。道路が海岸に沿って走る。人の流れに沿って進む。町が海に沿って延びている。ルートに沿って歩く。海岸に沿って背の低い黒松の林が茂っている=火坂。街路に沿って露店が並ぶ=内橋。坂道に沿って流れる小さな川=藤田。時代の流れに沿って進む=美濃部。塀に沿って敷地の周囲を回る=高村薫。山裾に沿って曲がる道=清水義。 **そう【添う】** ▼添う(会社の意向に。社長の期待に。買い手のご機嫌に)。馬には乗ってみろ人には添ってみろ=北原。相愛の二人を添わせる。影の形に添うごとく(付きまとう。しつこくついてくる)。身に影の添うごとく=竹西。▼添わない(意に。気に)。要望に添いかねる。 **ついきゅう【追求】** ▼追求する(完璧な美を。原因を。現世の富貴を。本来的な姿を。理想の女性を。根気よく。あらゆる可能性を。人間性の真実を。利益を最大限に)。▼追い求める(快楽を。成功を。夢を。日常生活の小さな娯楽を=中村真)。 **ついせき【追跡】** 追跡の手を逃れる。▼追跡する(敵を。犯人を。執拗に。辛抱強く。狐犬のように。半狂乱になって=山田風)。 **ついていく【付いて行く】** ▼ついていく(黙って後に。距離をおいて。黙々と後から。相手の気持ちに。言われるままに。誘われてうかうかと。歩調をぴったり合わせて。ぞろぞろと金魚の糞ふんみたいに後に=北杜)。どこへでも一緒に行く。▼ついていけない(仕事に。時代の変化に。とっぴな話に。話の内容に。強引な手法には)。父親の任地が変わるのについて歩く。 **ついてくる【付いて来る】** ▼ついてくる(尻尾を振って。ぞろぞろと。半歩遅れて。後ろから足音が。後ろからのこのこ。うれしげな足取りで。影の形に添う如く。追及の手が行く先々へ。金魚のフンのように=遠藤)。 **つかずはなれず【付かず離れず】** つかず離れず歩いてゆく。つかず離れずに行を共にする。つかず離れずの長いつきあい。北極星の周りを北斗七星が回るよう=武者小路。不即不離の(関係。存在)。 **つきそう【付き添う】** ▼付き添う(ガイドが。患者に。生徒に。病人に。レッスンに。影のように)。付き添って看病する。▼付き添わせる(医師を。看護師を。用人を)。ほとんど枕元につききり。枕元に付ききりで過ごす。つきっきりで(コーチをする。指導する)。病人の夜伽をする。 **つきまとう【付き纏う】** ▼つきまとう(一生涯。不安が絶えず。行動に謎めいたものが。非常ないかがわしさが。何事にも苦労は)。身辺に影のように付きまとう=津木。危険がつきまとうイメージ。▼つきまとわれる(送り狼に。未練な考えに。不安に絶えず。居心地の悪い感じに。ためらいの気持ちに。自分がよけい者だという意識に=石坂)。▼つきまとって離れない(視線が。身に)。だるさが執拗につきまとってはなれない=新田。 **はなれない【離れない】** ▼離れない(終始念頭から。気になって頭を。未練たらしくその場を。一生身につきまとって。押しても引いても。片時も心の隅から。噛みついたまま。記憶に絡みついて。懸念がとりついて。においがしみついて。脳裏に貼りついて。ぴったりくっついて。悲鳴が耳について。目に焼きついて。影法師のようにいつも側そばを=高橋治。うわばみみたいに財産を使い果たすまで=小池。吸いついたように=小島。忠告が心に引っかかって=綾辻。強く脳裏に刻みつけられて=島尾。テレビの画面が頭に焼き付いて=東野。臭いが鼻の先にまとわりついて=中沢。不愉快感が吐きかけられた痰たんのようにねばりついて=高橋知)。頭にまつわって離れない不快な事柄。のどにひっかかって離れない骨。耳に六時中ついて離れない音。ぴったりとくっついてダニのように離れない男=藤沢。こびりついて離れない(いやな言葉が。後悔が。夢が。声が頭の芯に。笑い声が耳に)。▼まつわりついて離れない(うるさい目が。袖へ)。影が離れずに付き従う。土手から離れずに走る。考えに取りつかれる(珍妙な。とてつもない。一つの)。▼ついてまわる(一生。どこに行こうと)。▼取りつかれる(諦めモードに。異常な興奮に。色と欲に。重い病気に。貧乏神に。復讐の一念に。ふさぎの虫に。悪い遊びに。妄想に根強く。芸術的な情熱に。ホームシックに。みじめな運命に。矛盾した思いに。わけもなく感傷的な気分に=高井)。とりつかれる(厄介な考えに。清潔という強迫観念に=開高)。▼魅力に取りつかれる(賭け事の。狩りの。仕事の)。他人の弱みにつけこんでダニみたいに食らいつく=宮本輝。最後まで相手にくらいついていく執念=水上。 **よりそう【寄り添う】** 寄り添う(遺体の傍らに。影よりそうの如く。相手の気持ちに。声も立てずひっそりと。傷ついた小鳥のように=小川。記念写真風に二人=田辺。恋人のように肩をくっつけて=野間)。家族が寄り添って楽しく暮らす=原田康。小さく固まって身を寄せ合う雑草の株のように互いに寄り添って暖かみを分かち合う=有島。寄り添って歩く(母親に。恋人にぴったり)。寄り添って生きる(人が。苦しみに。喜びに)。影のように寄り添っている従僕=本庄。寄り添うように(歩く。座る。立つ)。後ろからぴったり寄り添うように羽織を着せかける=永井荷。どちらからともなく寄り添い合う。 <204> # お ## 多い・少ない **あるていど【ある程度】** ある程度(満足できる。やむをえない。わがままがきく)。話にある程度説得力がある。ある程度の(体面を保つ。類推が効く)。ある程度まで通用する。そこそこ(頭のいい人間。裕福な家)。名前がそこそこ知られている。日本語がそこそこしゃべれる人。そこそこの(生活を続ける。値で売れる)。 **いくつか【幾つか】** 幾つか例を挙げる。丘が幾つか並ぶ。部屋を幾つかに仕切る。幾度か身震いをする。何度か(繰り返す。聞いたメロディ。食べたことがある)。複数の(意見がある。選択肢を持つ。人間の仕業。容疑者が浮かぶ)。複数候補が競う。 **いくら** いくら(あっても足りない。金を注ぎこんでも底なし。説明しても納得してくれない。努力してもできない相談。話しても話し足りない)。いくらでも(長々と話す。言葉が浮かんでくる)。金はいくらでも出す。あといくらも余命がない。世間にはいくらも例がある。手もとにいくらも残らない。いくらもある(他に方法が。遊ぶ場所は)。▼いかばかりであろうか(両親の心配は。子供を失った悲しみは)。命がいくつあっても足りない。例はいくつでも見つかる。蟬せみの声が幾つにも重なる=中上。どれだけ言葉を尽くしても納得しない。 **いちごいちご【一語一語】** 一語一語(区切って言う。噛みしめるように言う。押し出すように呟く=眉村)。一語一語が胸を打つ。一語一語に力を込めて言う。一語一語を(はっきり発音する。ゆっくり口にする。確かめつつ口から出していく=北村)。一語ずつ区切りながらゆっくりと言う。言々(肺腑を衝く。火を吐く。血を吐く思いの憂憤の書=綱淵)。逐語的に検討する。一言一言はっきりと言う。一言一言が胸に突き刺さる。一言一言に(力をこめる。万感の思いがこめられている)。一言一言を慎重に選ぶ。 **いちじょう【一条】** 煙が一条立ち昇る。血を一条垂らす。一条の(希望もない。小道。線。綱。涙が糸を引く。光が射す。光明を見いだす)。一道の(光明を認め、希望の微光がさす)。一筋風が通り過ぎる。紫煙を唇から一筋吐く。空に飛行機雲が一筋浮いている。冷たい空気が一筋すうっと流れこむ。額から汗が一筋落ちる。頬に髪の後れ毛が一筋かかる。よだれを一筋流す。一筋に連なる五つの小高い峰々。口の端から一筋の血が流れる。びしりと一筋の亀裂が走る。目から一筋の涙が流れる。髪を一筋の乱れもなく結い上げる=藤沢。 **いちど【一度】** 一度(あることは二度ある。言い出したらきかない。見たら忘れることができない。火がつくと燃え尽きるまで燃えてしまう=舟橋)。前に一度使ったことがある。一度で(お払い箱。気に入る)。一度の(失敗で臆病になる。見合いであっさりと結婚する)。週に一度の割で起こる。後にも先にもその一度きり。チャンスは一度しかない。後にも先にもたった一度だけ。一生に一度の(贅沢だい。出来事)。一度きりのチャンスに賭ける。最初で最後。後にも先にも一回きり。あれほど興奮したことは後にも先にもない。茶は一期一会の精神の実現=童門。いっぺんこっきりのキャンペーン。いっぺんでお陀仏になる。後生一生の願い。 **いちぶぶん【一部分】** 破損した一部分を修理する。言葉の切れ端が耳に飛び込んでくる=村山。ほんの一部を紹介する。部分的な訂正。部分的に承認する。端くれに数えられる(音楽家の。文筆家の)。一かけらの(愛情。チーズ)。空に雲が一切れ浮いている。花びらがひとひら舞い落ちる。 **いっせいちだい【一世一代】** 一世一代の(大勝負。恋をする。芝居を打つ。人生の賭け。浮き名を立てる。知恵を振り絞る。名演技を見せる)。一生一遍の大舞台。一生に一度きり。 **いってん【一点】** 一点に視点が釘付けになる。気持ちが一点に集中する。一点の(悔いもなく生きる。光明も認められない)。やましいところは一点もない。押し出しの一点を献上する。 **いっぱつ【一発】** 一発(がつんとやる。蹴りを入れる。くらわしてサッと引きあげる=飯田)。女と一発やりたい。軽く一発かませる。銃弾が一発撃ちこまれる。ずどんと一発ぶっ放す。頭に一発ゲンコツを見舞う=飯田。一発でエンジンがかかる。うまく一発で仕止める。的を一発で当てる。とどめの一発を放つ。 **おおい【多い】** ▼多い(靴を脱いで放れば当たるといわれるほど数が=光瀬。一々数え立てるのも煩わしいくらい=芥川)。影の多い性格。山気の多い男。屈曲の多い渓流。修辞の多い言葉。身振り手振りの多い話し方。一本でも多く手に入れる。多くなる(沿道に緑が。何かと会う機会が。収入がみるみる)。多くの(言葉を費やす。友人から鼻つまみにされる)。かなり多くの誤字脱字を改訂する。あまりの多さにうんざりする。▼多すぎる(不確定要素が。目に余る行きすぎが。整理に困るほど人が=新田)。いつもより多めにする。余る(五指に。十指に。業績が五本の指に=柴田翔)。うじゃうじゃと網ですくうほどいる=灰谷。人の数は浜の真砂の読みつくされぬほどあればとて=二葉亭。星の数ほどある。十の指に余るほど。掃いて捨てるほどある。何千何百となく。掃いて捨てるほどいる。半端な数ではない。ビール樽で一樽分くらいの涙=井上ひ。プール一杯分ぐらいの汗=井上ひ。万をもって数えられる。両手の指では足りないほどの戦を転々とする=落合。多極化した国際情勢。世界が多極化する。 <205> ## 多い・少ない―65 **おおぜい【大勢】** 大勢(雁首を並べる。出迎えに来る)。大勢で一人をいじめる。大勢の(客で混み合う。見物人に取り囲まれる。人々でごった返す)。せまい小屋にはちきれるほど大勢の人で埋まる=水上。わいてくるもののように大勢の人間がうごめく=石坂。大勢の人が(右往左往する。頻繁に出入りする。洪水のように部屋の中に入ってくる=新田)。雲霞のごとき軍勢=舟橋。烏のような人数がどっとなだれ込む=吉川。数を頼んで争いを仕掛ける=高千穂。人海戦術をとる。ぞろぞろと(観光客の一団が続く。受験生の群れがやって来る)。みんなでぞろぞろと見送りに行く。大挙して(見送る。一箇所に集まる。引っ越してくる)。赤とんぼの大群が頭上を覆う。シベリアから白鳥の大群が渡ってくる。二本の傘を持った人妻の大群が駅の出口を十重二十重に取り囲む=川端。多人数が参加する。廊下まで人があふれている。雪崩を打って(乗船が始まる。退く。退職者が届ける。逃げる)。なだれを打って寄せてくる敵の大軍=井上靖。戦車群が雪崩を打って侵入する=今日。寄ってたかって(いじめる。愚弄する。責める。侮辱する。やっつける。引きずり下ろす)。 **かぎりある【限りある】** 限りある命を大事にする。限りがある(予算に。我慢にも。資源には。人間の体力には=隆)。▼無尽蔵ではない(石油は。天然資源は)。無尽蔵に金があるわけではない。有限の天然資源。 **きれぎれ【切れ切れ】** 切れ切れに(エンジン音が聞こえる。低い話し声が聞こえる)。こおろぎが切れ切れに鳴く。言葉が切れ切れに浮かぶ。姿が切れ切れに頭に浮かぶ。▼切れ切れになる(記憶が。霧が。雲が)。切れ切れの(夢を見る。叫び声がかすかに聞こえてくる。思いが頭の中を浮遊する=光原)。きれぎれの話をつなぎ合わせる=大庭。記憶の断片がよみがえる。言葉の断片が耳の奥で交錯する。断片的な(言葉を書きつける。情報が飛び交う。真実を整合させる)。断片的にによぎっていく思いの数々。 **しこたま** しこたま儲ける。色とりどりの料理がしこたま並ぶ。金をしこたま取られる。ご馳走をしこたま食べる。勘定をしこたま溜めて逃げ廻る=高見順。がっぽり(稼ぎまくる。儲ける)。 **じっくり** 可能性をじっくり話し合う。じっくりと(言い分を聞く。時間をかける。耳を傾ける。内容を検討する)。事態をじっくりと考察する。じっくりと腰を(落ち着ける。据える)。顔をつくづく見つめる。つらつら観察する。とくと(吟味する。話を聞く。見届ける)。 **しょうすう【少数】** 少数(意見として葬り去る。民族を圧迫する)。少数ながら増えてくる。例外的な少数にすぎない。少数の(兵で大軍に立ち向かう。例外があるに過ぎない)。キャスティングボートを握る。少数者を(除外する。代表する)。全体から見ればまだ少数派。少数派の声に耳を傾ける。小勢と見てあなどる。小勢ながら善戦する。少人数で(楽しむ。飲む)。 **すうかい【数回】** 数回繰り返す。数回の面識がある。二、三度続けざまに聞こえる。二度三度(うなずく。重なる。声をかける。ノックする)。 **すうじつ【数日】** 数日があわただしく過ぎていく。あわただしく数日が過ぎていく。数日間ぶらぶらと遊んでいる。夏祭りが数日後に迫る。幾日か日を送る。何日か滞在する。高熱が何日か続く。ここ二三日が山。 **すうほ【数歩】** 数歩(歩みよる。前進する。前に歩み出る)。ほんの数歩の距離。二三歩(後ずさる。先にいる。進み出る。近づく。歩いて立ち止まる)。 **すくない【少ない】** ▼少ない(訪れる人が。感情の起伏が。寒暖の差が。拒否反応が。街に人影が。今や知る者も。影響は案外。客がはなはだ。他地との往来が。他に見るべきものが。残された時間は。忘れられたように人通りが=円地)。口数が少ない男。万に一つの少ない確率。極めて少ない(可能性が。絶対量が。利益が)。観光客が潮が引くように少なくなる=西木。労多くして益少ない。残り少ない人生。人の気持ちを滅入らせるような口数の少なさ=藤沢。少なめ(いつもより。口数が心なしか)。少なめに(入れる。見積もる)。いくばくもない。いない(そうさらには。百人に一人も。世に何人も。ほんのひと握りしか)。数は知れたもの。必ずしも多いとは言えない。小指の先ほどしかない。百年に一度しか出ない。後にも先にも(一度だけ)。多極的に取り組む。幾多の(辛酸をなめる。困難を乗り越える)。今まで幾たびとなくあったこと。▼うじゃうじゃいる(人間が。黴菌が。蛇が)。▼うようよいる(子供が。黴菌が)。過剰な(反応を示す。影響を排除する)。過剰のそしりを免れない。いささか感情過多の美辞麗句。情報過多の世の中。戦後最多となる。千万の言葉に勝る深い愛。千万無量の(感に堪えない。思いが胸に鬱積する=瀬戸崎)。精力的に多作する。多作な(作家。作曲家。漫画家)。多産系の豚。多産種の鶏。▼多産する(子を。卵を)。多々ますます弁ず。不穏な動きが多々見受けられる。多々ある(至らない点が。学ぶべきものが)。多分な金をもらう。多分の寄付がある。万斛の(涙を流す。恨みをのんで死ぬ=山田風)。少なからず(驚く。腹を立てる。胸が痛む。狼狽ろうばいする)。少なからぬ(金額を費やす。不満をもつ。忍耐心を必要とする)。知っている顔が少なくない。多数派に(おもねる。与くみする。属する)。多数派を(形成する。占める)。多大な(影響を与える。犠牲が払われる)。多大の(損害を受ける。反響を呼ぶ)。▼多発する(一揆が。誤用が。地震が。訴訟が。類似の事件が)。枚挙にいとまがない悪評の数々。実例は枚挙に遑いとまがない=舟橋。 <206> ## 多い・少ない―65 **たいはん【大半】** 援軍の大半がひきあげる。管理費の大半が飛ぶ。客の大半が降りる。クラスの大半が出席する。受験者の大半が合格する。花びらの大半が散り落ちる。大部分を占める。半数を超える。過半数に達する。過半数を(獲得する。確保する)。国民の大多数が一致する。大多数の(人が賛成する。国民が反対する)。 **たいりょう【大量】** 大量に生産する。大量の(ガスが発生する。放射能がばらまかれる)。大口に仕入れる。睡眠薬を多量に飲んで死ぬ。食べきれないほどの多量のえさ=井伏。浴槽に充たすほどの多量の血=中野美。出血多量で命を落とす。物量にものを言わせる。豊富な物量を誇る。物量作戦をとる。 **たがく【多額】** 多額なパテント料を支払う。▼多額に上る(献金が。驚くほど)。大口の(寄付。取引)。まとまった額の現金。巨費を(つぎ込む。投じる)。指折りの高額所得者。高額な報酬を要求する。ジャンボな賞金。天文学的な(金額。数字)。まとまった金(いくらか。かなりの)。巨額な金を献上する。補償コストが巨額に上る。巨額の金を横領する。 **たかくてき【多角的】** 多角的な(経営。研究。調査)。問題を多角的に見る。▼多角化する(経営を。事業を)。物事を立体的に見る。問題を立体的に検討する。多面的な(才能。費用。知識)。多面的に物事を見る。 **たき【多岐】** 多岐にわたる(応用が。行動が。仕事が。話が)。複雑多岐を極める。多方面で活躍する。多方面に(わたる問題。才能を発揮する)。 **たくさん【沢山】** たまげるほどたくさんいる。鰯のごとく沢山ある=外村。もうたくさんといった顔をする。たくさんの(ファンがいる。人でごったがえす)。数えきれないほどたくさんの物。少し大きく動くとほかにぶつかってしまうほどたくさんの男女が踊っている=石坂。ありあまるほどいる。数の知れないほどいる。一二三にとどまらない。▼盛りだくさん(アイデアが。趣向が)。盛りだくさんのブログラム。花房を幾つとなく重ねる。段ボール箱が幾つも重ねてある。幾つもの季節が流れ去る。一度や二度ではない。一回や二回のことではない。帆に風をいっぱいはらむ。厄介なことがいっぱい起きる。ごちゃごちゃといっぱいある。花が枝いっぱいに咲く。灯火がいっぱいにきらめいた夜景=石川。▼うなるほどある(大判小判が。お金が。札束が)。軍勢が雲霞のごとく城をめがけて殺到する=柴田錬。うんと(力を入れる。厳しい罰を与える)。華やかな行事の数々。数々の好条件に恵まれる。英雄にまつわる数々の遺品。金はないが時間だけは腐るほどある=荻野。油をこってりつける。こてこてと不平を並べる。こまんと言い分がある。金をこまんと貯め込む。ざくざくある(金貨が。掘り出し物が)。たんと(御馳走にする。採れる)。たんまり(礼をする。ご褒美にあずかる)。感動的な話がてんこもり。所狭しと並ぶ。どっさり(お金を儲ける。食べる)。何百べんとなく繰り返す。ふんだんに紙を消費する。汗をふんだんにかく。万言を費やしても足りない。縷々万言を費やす。無尽蔵に話の種を持っている=中上。声に無量の思いが籠められている。わんさと客が乗っている。心ない見物人があまた群がる。屋敷があまた立ちならぶ。あまたの部下を持つ。大小あまたの川。ゲップが出るほど(見る。女の体を堪能する=胡桃沢。ごちそうになる=飯田)。ラムネをゲップが出るほど飲む=人网。 **たげん【多言】** 多言を(費やす。慎む。要しない)。千言万語を費やす。百万言を費やす。 **たげんてき【多元的】** 多元的な(価値基準。考え方。経済発展。文化。コミュニケーション能力)。▼多元化する(価値観が。社会が。文化が)。臭い娘と思われるのが=中上。細々とその日暮らしをするのが=熊谷)。一軒ぽつんと家が建っている。一軒だけ開いている店。▼多くない(あまり。数はそう。さほど)。寡作な(映画監督。作家)。小口の(現金。注文)。ごく一握りの人たち。一握りの大企業だけが繁栄する。芝居が不入り。寧々にいたる例しかない。金額が過少。過少な報酬。過少に見積もる。数えるほどしか(人影がない。会ったことがない=鷺沢。いない。客を乗せたバス=宮尾)。ほんの数えるほどしかない。人が数えるほどしか来ていない=三浦綾。飛行機に数えるくらいしか乗ったことがない=鷺沢。 **すくなくとも【少なくとも】** 少なくとも(一つはある。悪人ではなさそう。一時間はかかるだろう。数年の歳月が必要。二千人以上いる)。せめて(あと一日あれば完成するのだが。祝言なりとしておきたい。花を手向けてやりたい。一目なりとも会いたい。日曜くらいたっぷり朝寝したい=宮尾)。 **すくなくなる【少なくなる】** ▼少なくなる(数が極端に。いたって口数が)。▼減殺される(力が。魅力が。勇気が)。▼手薄になる(懐中が。在庫が)。▼乏しくなる(金が。食糧が。物資が)。過疎からの脱皮を図る。過疎化が進む。過疎化に歯止めがかからない。過疎化の波に襲われる。村の過疎化を止める。じり貧に追いこまれる。▼じり貧になる(業績が。儲けが)。じり貧の道をたどる。じり貧を(避ける。打開する)。 **せいぜい【精々】** せいぜい(五本くらいしかない。調子を合わせる。三日もあれば陥落する)。長くてせいぜい三年。苦笑するくらいがせいぜいの落ち=室生。いいところ二位止まり。誰も見ていないことがせめてもの救い。敗者にとってせめてもの慰め。たかが(失敗の一つや二つ。戦争成金のくせに威張り返る=坂口)。たかだか百年ばかりの生命の人間=高田。相手はたかだか一人。物の十メートルも行かないうちに。どん尻争いをするのが。水掛け論になるのが。田舎の小便の。 <207> ## 多い・少ない―-65 **たしょう【多少】** 多少(気がひける。抵抗がある。無理が利く。からかい気味に言う。こじつけのきらいがある。言葉をついやす。不安な気持ちになる。勇気を取り戻す)。懐に多少余裕がある。多少とも(痛みをやわらげる。戦争に批判的な考えを持つ=加藤)。多少なりとも(気持ちを動かす。他人と違った人生を送る)。多少の(訂正を加える。反発を覚える。不便を忍ぶ。混乱には動揺しない。違いは無視する)。言葉に多少の皮肉が込められる。分かるまでに多少の時間がかかる。多少は(気になる。役立つ。やむを得ない)。 **たすう【多数】** ▼多数(圧倒的な。絶対的な)。死傷者が多数出る。質問が多数寄せられる。多数から批判される。多数に支持される。多数を占める。多数決で決める。不特定多数の(人々。利益を図る)。▼数多い(参加者が。利点が)。数多く(接する。登場する)。数多くの(エッセイをものする。ヒット曲を生み出す)。南海に散らばっている数多くの島々。 **たっぷり** たっぷり(一時間かかる。時間をとる)。時間はあり余るほどたっぷりある=鷺沢。たっぷりと(報酬が出る。ゆとりを残す。筆に墨を含ませる)。一週間はたっぷりとかかる。霧がたっぷりと月光を含む。コーヒーにミルクをたっぷりと注ぐ。たっぷりした(声。肉付き。ゆとり)。十二分に(経験する。道具を調える。装いを凝らす)。魅力を十二分に発揮する。とっくりと言って聞かせる。よくよく考えてみる。嫌というほど(味わう。食べる。見せつけられる)。大杯になみなみ酌をする。水をなみなみ湛える。なみなみとつぐ(グラスに。コップに。ジョッキに)。 **たまに** たまに(顔を合わせる。外で食べる。用事で上京する)。たまにしか(起こらない。電話をよこさない)。たまには(いいことを言う。ビフテキを食いたい)。たまさか(起こる。出会う)。たまさかの風の音しか聞こえない静謐の中=三好京。たまの(機会。休日)。時たま(顔を合わせる。ひどい目に遭う)。時として涙をこぼす。陽気で時として騒々しいくらい。時には(血が流れる。不安になる。釣りに出かける)。ちょいちょい(散歩に行く。注意を与える。目を向ける)。ちょくちょく(無断で借用する。めまいを起こす)。 **ときどき【時々】** 時々(一緒に食事をする。大きな溜め息をつく。悲しそうな目をする。自信を失いかける。晴れ間が見える。妙なことを言う。様子を見に来る)。自然はときどきとんでもないことをやらかす=本多時。時々の状況に応じる。その時々の流行に弱い。往々にして(失敗する場合が多い。退屈に流れるきらいがある。見過ごされる危険がある)。折節涼風が吹き過ぎる。折節の挨拶。時に(不安におののく。両親に反抗する。即興の色合いをおびる=岸田)。時には失敗することがある。▼時々ある(失敗も。歩いて行くことも)。折々(噂を聞かされる。様子を見に来る)。消息が折々耳に漏れる。四季折々の料理。時折(たまらなく懐かしくなる。様子を見に来る。横顔を盗み見る)。 **どくりょく【独力】** 独力で(商売を始める。大業に当たる)。裸一貫で独力で築き上げる。自助努力で(活路を開く。持ちこたえるしかない)。自力で(解決を図る。現実と渡り合う。資金調達ができない。生きていくための算段をする=貫井)。 **とぼしい【乏しい】** 乏しい(食事に耐える。知識を動員する。予算をやりくりする)。▼乏しい(衛生の観念が。宣伝効果が。罪の意識が。向学の念に。時間の観念に。時代感覚に。実地経験に。世間の常識に。科学的考え方に。立ち居振る舞いが品に)。脂分の乏しい毛。陰影に乏しい顔立ち。感情の乏しい瞳。生活臭に乏しい家。調度に乏しい部屋。抑揚の乏しい声。人形のようにただ綺麗なばかりで表情に乏しい美人=永井荷。視力の乏しさに切歯する。創意の乏しさにいらだつ。 **ばくだい【莫大】** 莫大な(金を注ぎ込む。富を得る。費用をかける。利益を上げる。エネルギーの放出。研究費を投じる。資金を調達する)。莫大に(消費する。増える)。巨億の富を得る。巨万の兵。膨大な(時間をかける。情報を制御する。報告書を読破する)。厖大な翻訳の仕事を完成する=小沼。 **はしたがね【端金】** ほんのはした金で話がつく。はした金ではとても間に合わない。えさ代にも足りないくらいの金額=岩尾。恥ずかしいほどの少額の金。涙金で追い出される。こんな涙金では納得できない。びた一文(受け取らない。貸さない。払わない。負けようとしない)。目腐れ金で揉み消す。そんな目腐れ金では応じられない。雀の涙ほどの(お金。微禄にしがみつく=船山)。月給が雀の涙のように少ない=高橋和。 **ひとあし【一足】** 一足(にじり寄る。遅れて店を出る)。一足一足階段を降りる。確かめるように一足一足歩く。一足ごとに(うめきながら歩く。全身に痛みが響き渡る=藤沢)。一足違いで(会えない。間に合わない)。一歩一歩を慎重に踏んでいく。一歩も(前に進めない。足を踏み入れたことがない)。 **ひとつ** 一つ(落ち着く所は。選択肢の。根っこは。あまたある職業の)。一つ年をとる。ため息を一つつく。ぽかりと一つ食わせる。ぽつんと一つ灯火が見える。路地を一つ間違える。一つに群れて固まる。攻撃目標の一つに選ぶ。透き間なく一つに重なる。皆が心を一つにする。人柄と作品が一つに結する=河盛。▼一つにまとめる(髪を。荷物を)。一つの(落ち度もない。結論に達する。考えに取りつかれる)。一つも手を着けていない。無駄な手は一つも打っていない。▼一つする(あくびを。お辞儀を。深呼吸を。咳を)。一つ置きに(椅子に座る。アクセントをつける)。 <208> # 一つ・二つ **ひとつ【一つ】**一つ(貸しができる。確信を持つ。頼りになる)。ただ一つの望み。一つになる(心が。気持ちが。クラスが)。心を一つにする。一つ間違えれば(大変なことになる。死んでいた)。心を一つにして応援する。一つ残らず(食べる。奪う。焼き払う)。一つも(売れない。当てはまらない)。一つとして同じものがない。心を一つにして事に当たる。心を一つにまとめる。一つになって取り組む。一つ屋根の下に暮らす。唯一の(肉親。欠点。楽しみ)。唯一無二の存在。唯一のこだわり。単一の(民族。細胞)。単一化を進める。一元的な(思想。システム)。一元管理に(移行する。切り替える)。一つ間遮えば命がない。▼一元化する(指揮系統を。事務を。人事を。窓口を)。物流を一元管理する。一元的な価値への純化。葉っぱがばらりと一枚数る=石森。単に一個の怠け者にすぎない。最後の一個を口に入れる。一本また一本と落としていく。筋が一本通る。ウイスキーをあらかた一本飲む。線香の一本でも上げたい。三位一体となって(事に当たる。難局を乗り切る)。単品ごとに管理する。単品で絵の具を買う。眉一筋動かさずに問い返す=高木。 **ひとつこと【一つ事】**一つ事を(気にかける。繰り返し言う)。一つのことを貫き通す。一つ話を(くどくどと繰り返す。何度となく言い直す)。 **ひとつずつ【一つずつ】**一つずつ(当たっていく。前にずらす。着実に処理する)。一枚ずつ(確かめる。綴とじ込みを繰る)。指を一本ずつ引きはがす。一つまた一つと失せていく。 **ひとり【一人】**一人(悦に入る。去り二人去る。机に向かう。くよくよ思い悩む。残して行くに忍びない。ぽつんと離れている。また一人と客が退散する)。一人(社内の実力者の。戦後を代表する作家の。組織の有象無象の=高村慈)。豈ぁにひとり日本のみならんや=山田美。こつこつと一人勉強をする。人知れず一人考える。犯罪シンジケートに独り敢然と立ち向かう常盤。一人で(勝手に決める。気をもむ。食事を始める。留守番をする。いるのが心細い。こっそり楽しむ。しきりに感心している。しょんぼりと待つ。ぼんやり時間をつぶす。立派にやっていく。三人分の働きをこなす熊谷)。仕入れから客の相手までひとりできりもりする=高樹。罪を一人で背負う。群れを避けて一人でいる。家事一切を一人で切り盛りする=山手。一人では(生きられない。手に余る)。一人でも(多くの人に伝えたい。攻めて行く勢い。余計に客をとる)。一人として(知らぬ者がない。満足に成功しない)。一人に権力が集中する。無性に一人になりたい。一人の(殻に閉じこもる。考えの中に沈む。女性を愛し通す。世界に引きこもる)。一人も合格者がいない。自分一人の胸に(納める。秘める)。何もかも一人で(決めてしまう。背負いこむ)。人一人(通らない山道。入れそうな水がめ)。人一人の命は何物にも代えがたい。一人ずつ(立ち去る。出て行く。順番に紹介する)。言う者は一人もいない(とやかく。悪く)。人一人が(歩けるだけの幅しかない通路。やっと通れるくらいの小道)。一人つくねんと膝を抱いている。一貝(家族の。社会の。メンバーの)。個が確立する。個に徹する。個を尊重する。ソロで(歌う。踊る)。単身(悪の巣に乗りこむ。ニューヨークに渡る)。はるばる単身上京する。家族を東京に残し単身赴任する。 **ひとりきり【一人きり】**暗闇の中に一人きり取り残される。何から何まで一人きりでやってのける。一人きりの味気ない食事。部屋にただ一人取り残される。ただ一人の掛け替えのない男。一人だけ(生き残る。浮いたような存在。ぽつんと座っている)。たった一人しか勤務についていない。たった一人で(勤務につく。死んでいく。座り続ける。崖のきわに立つ=有房)。単独で(登山する。飛行する。問題を処理する)。単独行動を(避ける。取る)。単独行を(思い立つ。企てる)。ぽつねんと(立ち尽くす。寂しそうに待つ)。一日ぽつねんとしている。植い。の前にぽつねんと座っている。ぽつねんと一人(机に座る。取り残される)。 **ふたつ【二つ】**二つが(合流する。交互に現れては消える)。波が二つに割れる。二つの(間に立つ。気持ちがない交ぜになる。議論が同時に存在する。写真を見比べる)。正反対の二つの感情が同時に高まる。紅白に染め分ける。紅白のチームに分かれる。双の(腕。房。目)。二手から攻め込む。二通り(縦と横の。可能か不可能かの)。二通りに解釈できる。二通りのやり方がある。両軍入り乱れての大乱闘。両軍に多数の死傷者が出る。両国間で解決すべき問題。両国の利害が一致する。両様の解釈が可能。和他両様の構えで行く。両輪(運動を支える。会社経営の。車の)。両論を併記する。 **ふたり【二人】**二人手を携えて行く。一人去り二人去り。一人減り二人減り。二人が(代わる代わる呼ぶ。同時にしゃべる)。二人だけの秘密を共有する。二人が(かかってもかなわない。代わり番こに持つ)。一人でも二人でも客がくれば見つけもの=北原。二人の(距離が広がる。声が重なる。意見が一致する)。二人の顔を(交互に見る。見比べる)。二人きりで(会う。話をする)。双子が生まれる。ペアを組む。而人がこもこも語る。両人の言い分を聞く。▼コンビ(理想的な。気の合った。好一対の)。コンビを(解消する。組む)。両者(相打ちとなる。引き分けとする)。両者が児にらみ合ったまま対峙する=鈴木四。両者の(距離が狭まる。溝が深まる。感情が対立する)。 **ほうふ【豊富】**▼豊富(話題が。ボキャブラリーが。声量が生まれつき)。豊富な(趣味の持ち主。資料を駆使する。声量で音吐朗々読みあげる=坂口)。水が豊富な川。経験の豊富な女。三十年近い豊富な経験を生かす。握るにあまるほど豊富な亜麻色の口ひげ=本庄。豊富に商品が並ぶ。鉱物を豊富に埋蔵する。話を景品に知っている。潤沢な(資金を持つ。予算に恵まれる)。▶潤沢にある(資金が。物資が)。 **まいすう【枚数】**枚数を数える。確かめる)。紙幅が(足りない。尽きる。許さない)。紙幅の都合で割愛せざるをえない。 **まばら【疎ら】**まばらな(拍手が起こる。樹間を透して建物が見える=大岡)。乗客もまばらな郊外電正。乗降客がまばらな駅。街灯もまばらな道がやけに暗く見える鷺沢。髪がバーコードのマークのようにまばら <209> 程よくうねっている人影のまばらな静かな道=檀。館がまばらな数珠北。をつらねたように並ぶ=海音寺。まばらに人家が点在する。小さな細い樹々がまばらに植えてある=丸谷。星がまばらに散らばる=平岩。▼まばらになる(客の姿が。人家が。人影が。人通りが。髪が浮く。往き来する人々の足音が"大庭)。晨らしの星のように畠と畠の間に家が一軒二軒と残る=田山。小銃の散発する音。散発する(事故が。地震が)。散発的な銃声が聞こえる。散発的に拍手が起きる。雷鳴が散発的に続く。 **まんいち【万一】** 万一(ばれても怖くない。他に漏れたら一大事。起こるかもしれないと考えられる事態黒井)。万一に備える。万一の(ことがあったら許さない。事態を心配する)。身に万一のことがあるといけない。万一の場合に備える。万一の場合を(慮必悩んる。覚悟する)。万々一母が倒れるようなことがあったら。万々一のとき死に目ぐらいには逢いたい。身にもしものことがあれば。万が一(事故に遭ったらどうしよう。誰かに知られたらまずい。ばれたら恐ろしい。まちがいが起きたらと不安になる三浦し)。万が一にも(嘘はない。仕損じはない。発見される心配はない=松岡)。万が一の時に備える。もし万が一のことがあった場合。仮に動機があったとしても。よし仮にできたとしても。仮にも許すことはできない。万(澄漏なく手を打つ。やむを得ずに要求に従う。やむを得ない事情)。ひょっとしたら(勝つかもしれない。人遂いかもしれない)。ひょっとすると間に合うかもしれない。もし事故でも起こそうものなら。もしかしたら(もう帰ってしまったのではないだろうか。知っているかもしれない。間に合うかもしれない)。もしかして(事故に遭うかもしれない。出会ったら困る)。もしも(失敗したらどうしよう。間違っていたら大変なことになる)。もしもの時に備える。もしものことがあったら困る。あると取り返しがつかない)。 **むすう【無数】** 無数に(散在する。ひしめく)。小さな傷が無数にできる。無数の鱗いろのような雲城。空の無数の星。雪が空から地上に流れ落ちているように無数の線となって降る三浦湾。大小無数の船。▼数限りない(空の星は。つらい思い出は)。数限りなく殴られる。数知れない(犠牲者が出る。小鳥のさえずり)。数知れないほどたくさんある。 **やまほど【山ほど】** 山ほどお金を持っている。することが山ほど残っている。面白いデータが山ほど溜まる=倉橋。▼山ほどある(教えることが。言いたいことが。聞きたいことが。究明しなければならないことが)。山のような(買い物をする。書類を抱える。吸い殻、洗濯物。布片を抱える)。山のように(たまる。積まれる。盛り上げる)。薪を山のように積む=長塚。山のようにある(話したいことが。やるべきことが)。大根を山と積み上げる。鉢に山と盛られる。脱衣場に山と積まれている洗濯物筒井。山なして積まれる。皿に食べ物を山盛りにする。山をなす(粗大ごみが。屍此跡が重なり合って)。 **ゆいいつ【唯一】** 唯一の(正しい方法。味方を失う。命脈と頼む)。残された唯一の機会。人に誇れる唯一の宝。唯一無二の酒。この世に一つしかない。世界に一枚しかない。天下に二人とない女。一意的に定まる。何を言っても嫌だよの一点張り。ただ一つ(この世に。世界じゅうに。日本で)。単一の(国家。通貨)。二つとない(大事な命。舶載の珍品)。世に二つとない貴重な品。たった一つ(この世に。世界に。とるべき方法は)。たった一つの(命。とりえ)。 **ゆたか【豊か】** 豊かな(胸が波打つ。資質を持った作家。頬にえくぼを見せる。水がゆるやかに流れる。利益をもたらす。才能を思う存分発揮する今項。森が延々と続く=熊合)。果物の豊かな匂いを嗅ぐ。黒々と豊かな髪。自然が豊かな恵みを与える。しみじみとした豊かな人生。白い豊かな乳房。人生経験の豊かな人。洗練された豊かな食生活。肉付き豊かな二の腕。人間的感情の豊かな芸術家。伸び伸びと屈託のない豊かな顔。実り豊かな大地。胸の厚い豊かな肉体。▶豊かな男(個性。想像力の)。▼豊かな頬(下膨れた。少女らしい)。豊かに(殺物が実る。波打つ髪。魅力を湛たたえる)。川がゆったりと水量ゆたかに流れる!高田。稲穂の実り豊かに垂れている田。馬上豊かに立つ。まどかに豊かに見える水面。▼豊かになる(彩りが。国民生活が。思想が。生活が。世の中が。経済的に。物質的に)。表情の豊かな(女。目)。頬の豊かな(面長の顔。顔)。▼豊かにする(感性を。教養を。人生を。生活を。表情を。連想を)。一つ一つの能力の優秀さが全然目立たないほど過不及なく均整のとれた巡かさ=中局多。感性の豊かさに驚く。心の豊かさを忘れる。生活に豊かさをもたらす。こんこんと水がわき出るような豊かさを人間は持ちたい。白井。郷土色豊かな風俗行事。色彩豊かに描く。詩情豊かな作品。童心豊かな抒情詩三好達。表情豊かにしゃべる。緑豊かな(時期。大地)。豊徳山行じな陶酔に誘い込む。 **りょう【量】** ▼量(膨大な。おびただしい。とるに足らない)。量が(多い。次第に増える。質に転化する。少ない。たっぷりある。足りない。減る)。量より質を重んじる。数量が(増える。減る)。定量の水を加える。分量(必要な。一回の。一定の)。決められた分量を飲む。量感にあふれる彫刻。胸の量感に圧倒される。量的な関係を計算する。量的に(十分。不足)。嵩かさが(張る。増える。減る)。体積が(大きい。小さい。増える)。定量を(決める。過ごす)。ボリュームのある(食事。本)。容積が(大きい。小さい)。用量を(誤る。守る)。容量(水槽の。ダムの。ハードディスクの)。容量が(大きい。小さい)。 # 覆う・被る <210> # 覆う・被る **おうかん【王冠】** 泥水が巨大な王冠を描いてハネる"大原。怒髪冠を祈っく。李下りかに冠を正さず。汚名の冠をかぶる=山本周。富士山のてっぺんに冠みたいに雲がかかる=阿部。 **おおう【覆う】** ▼覆う(体を倦怠感が炊が。心を霧が。髪が耳を。寒気が平野を。着物で体を。雲が目路ゃじを。旅こもで荷を。新緑が大地を。宵が地を両手で火口を。体を皮膚で。言葉にならぬ思いが胸を。凄惨な光景に思わず目を。無力感が全身を。全体をすっぽり。夜霧があたりを深く。会議室を重苦しい沈黙が"篠田。青白い薄明のいろが海辺を=藤沢。気の抜けたような沈黙が教室を三田。痩せた顔を無精髭ぶんはが影のように=森瑙)。▼掩ぉぉう(剃刀を当てない髯ひげがぼうぼうとして痩せこけた頬を菊池。蔵ったが外壁をふさふさと=田辺)。心を石で厳ぉぉう。▼あたりを覆う(瀞けさが。宵闇が)。▼顔を覆う(黒い頭巾で。ハンカチで)。雲が覆う(心の中を。空を)。空を覆う(煙がぼんやりと。灰色の雲が厚く)。袂にもで顔を覆って泣きだす=山本周。黒い陰が事件の根にあるものを日蝕にこしのように覆っている=勝目。覆われる(心が哀愁に。月が黒雲に。岬が灌木跡いに。夜のとばりに。体が固い殻で。庭が雑草で。一面が白い雪に。薄黄色の暮色に。海面が泡立つ激浪に。湖面が三角波に。島が潮しぶきに)。▼おおわれる(心が不安の黒雲に佐山。どんより生ぬるい空気に=野坂)。雲に覆われる(山が悪品色の。空がいつの間にか“江國)。段ボールで小さな覆いを作る。あまりの惨状に目を覆いたくなる=内田康。耳を覆いたいような不快感!中村真。疲労がしっとりと肩の上におおいかぶさる=鷺沢。空に分厚い雲が覆いかぶさる=山本一。おおいかぶせるように言葉を並べる=贅沢。覆い尽くす(山を若葉が。不安感が胸を)。蔦の葉がびっしりと建物を覆いつくす日野。電線を樹脂で被援する。フードを頭からかぶる。幌が風をはらむ。日除けの幌を下ろす。ボンネットを(かぶせる。閉める)。窓に目隠しする。目隠しを(取る。外す)。覆いがたい(屈辱。矛盾)。覆うべくもない(いらだちは。劣勢は)。コーティングがワックスをはじく。▼コーティングする(歯を。表面を。レンズを)。 **かさ【笠】** 笠にしぶく雨。笠の(紐いもを解く。内から四方に目を配る=池波)。笠を深くかぶる。笠のように垂れかかっている葉桜森町。編み笠の縁を押し上げる。編み笠を深々とかぶる。菅笠を(かぶる。脱ぐ)。深編み笠で顔を隠す。満開の八重桜の大木が大きい花傘のように枝をひろげて咲き満ちる=円地。 **かさ【傘】** 傘がバラシウトのように風を孕にもむ宮本百。傘などさしていられない吹き降り。傘を(打つ雨の音。杖にする。半開きにする。傾かしげて顔を隠すようにする。半すぼめにしてその中へくぐりこんだみたいな恰好跡の家=水上)。一つ傘を分け合う。ばっと傘を開く。自分の仕掛けた花火が突然途方もなく大きな傘をひらいてしまったのにタマげる=安岡。雨傘を(かざす。さす)。傘立てから傘を引き抜く。傘を傘立てに置く。日傘で顔を隠す。輝いた洋傘が何かの魔力で太陽を吸い寄せながら四方に虹を吐いて歩くように見える人米。黒い花の開くように蝙蝠いい傘が開く!大野透。ドレスの裾がこうもり傘のように広がる=山田詠。蝙蝠傘のように枝を広げた一本の樅もみの木塊。パラソルを(くるくると回すなかにし。子供の鉄砲のように軽く肩に担ぐ=川端)。 **かざす【翳す】** ▼かさす(紙を光に。手に手に松明封かを)。手をかざす(ストーブに。額に。火鉢に)。▼前にかざす(手を顔の。マッチを煙草の)。▼差しかざす(余を。片手を)。差しかける(傘を。日が暖かに)。 **かぶせる【被せる】** ▼かぶせる(歯に金を。罪を人に。土をどさどさと。死に顔に白い布を=柴田鉄)。ふうわりと羽根布団のように被せる=室生。毛布を押しかぶせる。ダメを押すように言葉をおっかぶせる人間。押しかぶせるようにまくしたてる=遠藤。おっかぶせるように言葉を続ける。不安が心に押しかぶさる。もっさり肩にかぶさってくる。低くかぶさってくる枝。頭上に桜の花びらがかぶさる。耳にかぶさるほどの長髪。冠する(言葉を。町名を。名称を)。 **かぶる【被る】** かぶる(月が暈かきを。畑が雪を。不景気の波を。店の隅で埃児にを。頭からすっぽりと毛布を。二重スパイの汚名を。まともに皺寄しゃせを。野球帽を目深に。時代の波を全身で。シャワーを頭から。手桶にぉで豪快に頭から水を三浦し)。女が猫を被る。引っかぶる(一人で罪を。布団を。毛布を)。かつらをつける。いただく(頭に霜を。山頂に書を。帽子を頭に)。かずく(笠を。衣を。苦ときを。ベールを)。かむる(頭巾を。帽子を。埃を)。頬被りをして野良仕事をする。手拭いで頬かむりをする。 **かわら【瓦】** 瓦が(てらてらと輝く。魚の鱗いっをこそいだように重なり合う~林京)。やくような日の下に渦を捲まいて狂い出しそうな瓦の色"夏目。屋根の瓦の一枚一枚が鱗のような黒い影をつけて浮き上がる"野問。瓦を(焼く窯。霰ふらがばらばら打つ。重ねて積み上げる)。鬼瓦のような額=貫井。古い屋根瓦が慌てて化粧でもしたようにまぶしく光る=阿久。朝日が屋根瓦を斜めから照らす。薨べらが降りそそぐ陽に輝く。 **こうら【甲羅】** 甲羅が生えた婆さん=篠田。甲羅に合わせてマイホームにひきこもる"阴高。未熟で甲羅を経ていない小沼。額や頬の筋肉が蟹かにの甲羅のような顔尾辻。 <211> ## 覆う・被る―66 **たれこめる【垂れこめる】** ▼垂れこめる(俄雲が。空に重い雲が。夕闇が。雨雲が低く。恐ろしいほどの静寂が=日野)。雪催いの空が低く垂れ込める=福永。 **てんがい【天蓋】** 漆黒の天蓋の中央に銀河が鮮やかな筋を描いている=奥泉。天蓋を(掲げ持つ。かさす)。見るもまばゆい宝蓋。天蓋のように覆いかぶさってくる現実=福永。 **てんじょう【天井】** 黒飴色に光る天井=獅子。天井が(高く広々とした大部屋=塩野。震えるような笑い声=高樹)。空の天井が抜けたような=倉橋。花の天井が深々とかぶさる=高樹。天井から蜘蛛くもが下がって来る。天井にヒビが入るようなカン高い声=高橋三。足音が天井に反響する。声が天井に跳ね返る。拳を天井に向かって突き上げる。梁を天井に張り渡す。放心したように天井に目を向けている=陣。天井を(仰いで嘆息する。押し上げるような笑い声=角田)。鼠が天井を駆け回る。腕を組み天井を睨んで思案する=隆。暗い穴のような天井を見上げる=安岡。炎が天井を(なめる。這う)。梁が蛇のようにうねっている=高田。鼠が梁を渡る。 **のき【軒】** 軒から軒を覗いて歩く。軒に(看板がかかる。蚊が集まってくる)。煙が軒を伝う。雨脚が軒を渡っていく。軒ごとに松飾りが立ち並ぶ。軒を連ねて建ち並ぶ。▼軒を連ねる(家が。商店が。飲み屋が。町工場が)。▼軒を並べる(家々が。商店が。町家が。昔からの店が。夜店が。道路に沿って)。人家が窮屈そうに軒を並べ合う=徳田。軒を並べて住む。 **ひさし【庇】** 庇から雨水が流れ落ちる。雪が庇から落ちる。煙が庇の下を這い進む。霰が庇を打つ。雨が庇を濡らす。家の軒から庇を張り出す。深々と空を閉ざす庇を持った寺=大江。眼深にかぶった鳥打ち帽の廂のようにかなり垂れ下がっている家の廂=梶井。庇のように張り出したサンルーム=日野。 **ふく【葺く】** ▼葺く(屋根に瓦を。屋根に茅を。屋根を椰子の葉で=荒巻)。屋根を葺く(茅で、瓦で。トタンで。藁で)。茅葺きの民家。草ぶきの(庵。小屋)。しっとりとした草ぶきの田舎家。粗末な草ぶきの門。檜皮葺きの(家。社殿)。藁葺きの(家。農家)。 **ふた【蓋】** 蓋が(ばっと開く。飛んだようにすっかり心の中が見える=幸田文)。バルブの蓋が外れる。やかんの蓋がかたかた鳴る。嬉しさの蓋が明く=二葉亭。蓋を(開けたり閉めたりする。ばたんと閉める)。貝がふたを閉じたように口を閉ざす=日野。椀の蓋を取る。そっと蓋を開ける。口に蓋をするようにハンカチを当てる=伊集院。恋の箱の蓋を閉じる=瀬戸内。眼に蓋をするように石垣が視野一杯に滑りこんで来る=武田泰。蓋のようにかぶさる頭上の霧=本庄。 **ベール** ぼやっとベールがかかる。いつわりのベールに覆われる。ぼんやりとした春特有の不透明なヴェールに被われた=寺田。▼ベールに包まれる(神秘の。未知の)。ベールほど薄い雲のかかった月=佐藤春。ベールを透かして見るような何か妖しい美しさのある顔=三浦綾。無関心のベールを脱ぎ捨てる=佐藤愛。黄昏の夕靄が桜の白さをうす紫に滲ませ抒情的なヴェールを着せかける=円地。春の霞が薄く被衣のようにかかる=田山。 **ぼうし【帽子】** ▼帽子(すっぽり耳まで被さる。ドラ焼きを叩きつけたような小さな=獅子。向日葵のような大仰な=三島。大黒さまのような白い=永井龍)。帽子が風で飛びそうになる。何百回となくかぶりつけたもののように帽子がぴたっと合う=宇野利。帽子で顔を隠す。帽子に(紐をつける。手をかけてお辞儀をする)。帽子のまびさしをつまむ。右手の指を帽子のひさしに当てる=高橋和。帽子のつばを(後ろに回す。引き下げる)。帽子を(浅めにかぶる。目深にかぶる。あみだにかぶる。後ろ前にかぶる。横ちょにかぶる)。感服して帽子を脱ぐ。二サイズばかり小さな帽子をかぶったように何かが頭のまわりをしめつける嫌な気分=村上春。雪を帽子のように丸くかぶっている栗の老木の樹幹=大江。つばの広い夏帽子。麦藁帽子らが桑畑に見え隠れして動いて行く=田山。キャップを(かぶる。取る)。シャッポを(かぶる。取る)。頭巾をすっぽりとかぶる。鉄兜をかぶる。シルクハットを(抱える。脱ぐ。目深にかぶる)。お釜を逆さに伏せたような山高帽子=胡桃沢。ソフト帽を目深にかぶる。ソフトを脱ぐ。ハンチングを(目深にかぶる。あみだにかぶる)。ヘルメットを(かぶる。着用する。取る。脱ぐ)。 **やね【屋根】** ▼屋根(緑青を帯びた。教会の塔のような尖った=原田康。鈍色にどっしりと落ち着きをもって光っているささやかな藁葺きの=佐藤春)。屋根が陽射しを反射して鈍く光る。谷あいに旅館の屋根が見える。銀の鱗を並べたように人家の屋根が連なる=獅子。爆撃でも食ったように屋根が落ちる=獅子。家の屋根から落ちる。屋根に(雨が跳ね返る。木漏れ日が映る。トタンを被せる)。屋根の(高さを越す。天辺に避雷針が立っている。棟を風が吹き渡る。上に上って星を見る=曽野)。規則正しい屋根の列。夜の茅葺き屋根の威嚇するような重さ=三島。屋根の下で暮らす(同じ。一つ)。屋根を(伝って走る。吹き飛ばしそうな突風。掃くような雨の音が起こる=池波)。雨が屋根を叩く。雄渾な曲線の屋根をのせた仏殿=高橋治。広い肩が寺院の屋根のように怒る=三島。瓦屋根が(濡れた唇のように光る=島尾。低く幾重にも重なってひろがる=大佛)。陽のあたる瓦屋根が油を流したように照り返す=高樹。屋根すれすれに飛ぶ。タイムスリップしたような昔ながらの藁葺き屋根=森村。 <212> # 犯す・裁く **あくぎょう【悪行】** 悪行の限りを尽くす。悪行の数々を(暴露ぁばき立てる。余さず報告する)。犯した悪行を悔い改める。血なまぐさい行状。行状が(荒れる。乱れる)。 **あくじ【悪事】** 悪事が(発覚する。露見する)。今までに犯した悪事が一々旅に怒って自分の心を喰い割く"菊池。悪事でも働いたように心が痛い荷島。悪事に(加担する。与くみする。手を貸す)。悪事の(数々がばれる。手先をつとめる)。悪事を(犯す。企む。働く)。仲間とつるんで悪事を重ねる。日々何か悪事を働いているようなやましい気分"小島。悪事千里を(行く。走る)。危ない橋を渡る。美名の陰に隠れた陰険さ。悪逆残忍な行為。悪逆無道の(限りを尽くす。盗賊)。悪逆を責める。悪業に天罰がくだる。前世で重ねた悪業の報い。悪業を(重ねる。しんそこ懺悔だんする)。諸悪と闘う。諸悪の根源。悪い水に染まる。別に悪いことはしていない。もう絶対に悪いことはしない。悪いことを仕出かす。 **あくとく【悪徳】** 悪徳の深みにはまっていく。悪徳商法で罪のない老人を騙だます。▼横行する(悪徳商人が。悪徳政治家が)。 **あんこくがい【暗黒街】** 暗黒街で名をなす。暗黒街の(顔役。ボス)。暗黒街を(牛耳る。敵にまわす)。 **いはん【違反】** 違反を(犯す。取り締まる)。守秘義務に違反する。違反すれすれの行為。違反行為を処罰する。スピード違反で捕まる。悪質な選挙違反。上司にルール違反を強要される。▼抵触する(規範に。憲法に。条例に。法律に。ルールに)。反則して失格する。反則を犯す。 **いほう【違法】** 違法な(工事を差し止める。収益を許さない)。違法行為を見逃す。住居に違法侵入する。違法駐車を取り締まる。法律にひっかかる。禁制を犯す。禁令を(犯す。無視する。破る)。禁を破る。国禁を(犯す。破る)。幕府の法度じっに触れる。無免許でバイクに乗る。 **うらがね【裏金】** 裏金が取引に介在する。裏金の(使途を明かす。使途を特定する。流れを解明する)。裏金を(賄賂に充てる。私的に流用する。政治家にばらまく)。 **おかす【犯す】** ▼犯す(女を。重大な過失を。大罪を。大量殺人を。タブーを。非道な所業を。法律を。娘を。初歩的なミスを。途方もない見当違いを。途方もない失策を。不当労働行為を。小さなミスを立て続けに。根本的に大きな錯誤を吉村。取り返しのつかない失敗を宮本輝。取るに足りない悪事を=大江。犯罪史上に残るような犯罪を"大庭)。▼過ちを犯す(大きな。愚かな。重大な)。▼誤りを犯す(金銭的な。平然と)。▼罪を犯す(重い。窃盗の。つまらない)。▼間違いを犯す(根本的な。思いがけない)。重大な判断ミスを次々に犯していく=柳田。男に乱暴に犯される。 **かんぜんはんざい【完全犯罪】** 完全犯罪が崩れる。完全犯罪を(成功させる。成し遂げる。目論む人間の常套手段には、笹沢)。証拠を残さない。 **きゅうあく【旧悪】** 旧悪が露見する。旧悪を(あばく。洗い立てる。暴露する)。四半世紀も昔の旧悪を引っ張り出す内田成。互いの旧悪をなじりあう辺見。 **きょうき【凶器】** 凶器に使った(拳銃。刃物)。凶器の拳銃を発見する。凶器を(隠す。手にする)。ボケットに凶器を忍ばせる。 **きょうはん【共犯】** 共犯ではないかと児にらむ。共通の痛みを分けた共犯者森成。共犯者に(仕立てる。なったような暗い喜び藤沢)。共犯者のように微笑退みあう。共犯者を(捕まえる。密告する)。▼片棒を担ぐ(悪事の。押し込みの。恐喝の。犯罪の。いかがわしい催しの篠田)。 **ごうかん【強姦】** 強姦を犯す。▼強姦する(女を。少女を)。手ごめにする(子供を。娘を。いやがる女を無理やり)。男に手ごめにされる。 **ざいあく【罪悪】** 罪悪の意識が働く。罪悪を(摘発する。撲滅する。犯しつつあるかの如く心がおどおどする=伊藤左)。▼罪悪を犯す(死に価するほどの志賀。貞節の美名に隠れて=江戸川)。罪悪視する(性を。余暇を)。 **ざいあくかん【罪悪感】** 罪悪感が薄い。罪悪感に(苦しむ。苛ぐいまれる。とらわれる。悩まされる。身を委ねる)。深い罪悪感に身が裂かれそうになる。罪悪感の(虜とになる。ジュースをしぼられる=大原)。▼罪の意識(苦い。激しい。急激に広がって行く)。罪の意識が(悪い。重い。消えない。乏しい。ない。脈打つ)。罪の意識から解放される。罪の意識に(おびえる。脅かされる。苦しめられる。さいなまれる。責められる)。罪の意識を(覚える。欠く。感じる。自覚する)。 **さいてい【裁定】** 裁定(公平な。議長の。公正さを欠く。理事会の)。裁定が下る。裁定に従う。裁定を下す。神託の当否を裁定する豊田。 **ざいにん【罪人】** 罪人に刑を申し渡す。徳をもって罪人に接する。自分が罪人になって追われるみたいで、穴の中に落ちこんだような気持ち萩原葉。罪人を打ちえこることく体の芯まで冷やす雨"大原。懺悔聴開僧さんがもれに懺悔する罪人のような口調で言う~井上ひ。罪人のようにオーバーの襟に顔を埋める!高橋和。青い顔で罪人のようにうなだれる=源氏。シベリア送りにあったロシア人の罪人のように吹雪にジッと耐える!永倉。危険極まる大罪人。盗人のような組付き。細付きを引きすえる。身内から縄付きを出す。組 <213> ## 犯す・裁く-67 **さばく【裁く】** ▼裁く(戦犯を。罪を。歴史的事実を。法で)。▼名の下に裁く(復讐という。法の)。裁きが下る。神の裁きに委ねる。裁きをつける。裁きを受ける(死罪の。法律の。いさぎよく法の)。▼裁きを期待する(寛大な。公平な)。裁断を下す。厳しく処断する。 **しんぱん【審判】** 審判が下る。審判の日の近づいた不吉な不安の幾日か=島尾。来たるべき審判の日を待つ。手厳しい審判を下す。選挙で国民の審判を(仰ぐ。受ける)。 **ちかん【痴漢】** 痴漢に(遭う。襲われる)。痴漢を捕まえる。変態的な(性欲。野心を持つ)。 **ちゅうさい【仲裁】** 夫婦げんかの仲裁に入る。会社と労働組合の仲裁をする。友人に仲裁を頼む。▼仲裁する(喧嘩を。紛争を。見るに見かねて)。間に入って(止める。とりなす)。仲裁役に呼ばれる。仲裁役を務める。時の氏神。 **ちょうてい【調停】** 調停が不調に終わる。調停する(争いを。労使紛争を。意見の食い違いを)。玉虫色の調停案。調停役を(買って出る。引き受ける)。 **つみ【罪】** 死しても償えぬ罪。罪万死に値する。罪が(重い。軽い。消える。下る。たたる。深い。累加する)。自分に罪があるかのような気弱い心=石川。謀反の罪で捕らえる。罪な仕打ち。罪に(処する。問う。服する。巻きこむ。汚れる)。自分の犯した罪に悩み続ける。他人の罪に帰する。無実の者を罪に陥れる。罪に問われる(反逆の。一族ことごとく)。罪の(重さに気づく。償いをする。匂いのする恋。恐ろしさを自覚する。深さに苦悩する。レッテルを貼る。恐ろしさに陽物をずたずたに切られるよう=菊池)。一瞬の忘我が罪の深みのように深い=高橋和。行為に罪の匂いが付きまとう=福永。泥棒でも働いたような罪の意識=小遠藤。罪の上に罪を(重ねる。塗る)。罪の発覚を(恐れる。予期する)。罪を(他に帰する。帳消しにする。人にかぶせる。不問に付す。洗いざらい告白する。憎んで人を悩まず。認めて自首する。犯した者のように夜を待ってこそこそと街に入る=中上)。殺人の罪を着せられる。自分の罪を棚に上げる。性懲りもなく罪を繰り返す。死をもって罪をあがなう。他人に重い罪をなすりつける。人に罪を着せる。一人で罪を引っかぶる。深く心のうちに罪を感じる。亡父の罪を詫びる。一生償っても償いきれない罪を背負う=畑村。死んで詫びねばならぬほどの罪を犯す=三浦綾。重い罪を責められている者のように首をうなだれる=福永。罪を償う(生きて。犯した)。罪業が積み重なる。生前の罪業が深い。罪業の深さが心にひしひしと迫る=佐山。罪業を(犯す。償う)。罪障が減ずる。罪障を償う。罪状が明白となる。罪状の認否を問う。罪名を(すすぐ。背負う)。虚偽の罪名を一身に引き受ける。重罪に(処する。手を染める)。重罪を犯す。白状する)。大罪を(謝す。問う)。罪深い(行為。人間を許す)。咎を(犯す。着せる。背負う)。 **はんけつ【判決】** 判決(無罪の。有罪の。原審を破棄する)。判決が(確定する。下る)。執行猶予の判決が出る。判決の主文を読み上げる。判決を(言い渡す。下す)。信念に基づいて判決を書く=横山。判決(言い渡しの日を迎える。理由を朗読する)。▼勝訴する(原告が。被告が)。勝訴判決が確定する。敗訴が確定する。敗訴する(原告が。被告が)。判例が確立する。判例に(当たる。従う。照らす)。訴訟の判例を細かく列記する。有罪無罪は五分五分。有罪が確定する。執行猶予付きの有罪判決。有罪判決を(言い渡す。受ける)。 **はんこう【犯行】** ▼犯行(計画的な。極刑に値する。顔見知りによる。通りがかりの強盗の。内部事情に詳しい者の。行きずりの計画性のない)。犯行が(急増する。絶える。発覚する。露見する)。犯行に(加わる。走る。一役買う。ついて悪びれることもなく淡々と供述する=池井戸)。▼犯行に及ぶ(泥棒が居直って。やむにやまれぬ思いで=横山)。犯行のチャンスを待ち続ける。犯行を(重ねる。自供する。自白する。示唆する書き込み。外部の人間の仕業に見せかける=東野)。あっさり犯行を認める。次の犯行を食い止める。犯行現場からできるだけ遠くに逃げる。犯行後自首する。犯行声明を送りつける。凶行に(及ぶ。走る)。犯跡を(隠す。くらます)。 **さいばん【裁判】** 裁判(公正な。歴史上有名な。略式の)。裁判が(結審する。長期化する。始まる)。裁判で争う。裁判に(訴える。勝訴する。負ける。持ちこむ。証人として召喚する)。裁判の(原告になる。被告になる)。裁判沙汰になる。裁判沙汰を嫌う。裁判所から(召喚状がくる。逮捕令状が下りる)。裁判所に呼び出される。裁判員に選ばれる。裁判員を務める。お白州に引き据えられる。原告と被告が対峙する。原告の(主張を認める。請求を棄却する)。検察側と弁護側が争う。公訴権の乱用。高裁に控訴する。公訴を提起する。控訴を棄却する。口頭弁論が開かれる。再審開始を決定する。再審を(開始する。請求する)。準備書面を提出する。▼上告する(高裁に。最高裁に)。上告を(棄却する。却下する)。上訴して争う。上訴する(高裁に。最高裁に)。▼審理する(刑事事件を。民事事件を)。審理を地裁に差し戻す。▼送検する(身柄を。容疑者を)。訴状の写しを同封する。訴状を(受理する。提出する)。身柄を地検に移す。▼提訴する(容疑者を。地裁に。著作権侵害で。名誉毀損で)。陪審員の評決。陪審員を務める。判事を(務める。めざす)。反対尋問に臨む。反対尋問を受ける。被告席に座る。不起訴処分にする。不起訴を(決める。不当とする)。起訴と不起訴の分かれ目。▼起訴する(犯罪者を。容疑者を)。起訴される(殺人罪で。収賄罪で)。起訴事実を全面的に否定する。証拠不十分で起訴猶予になる。検事が(論告を終える。被告人に求刑する)。公判で(刑事責任能力を争う。証拠として認められる)。公判に(備える。臨む)。事件を公判に付する。裁判所に公判を請求する。次回公判期日を指定する。再審公判が開かれる。訴訟が(増える。持ち上がる)。訴訟に(勝つ。敗れる)。訴訟を提起する。住民訴訟を起こす。 **さいばんかん【裁判官】** 裁判官が尋問する。裁判官の(心証を動かす。忌避を申し立てる)。司直の(追及をかわす。手によって明してもらう)。法服を身にまとう。 <214> # 犯す **こうこう【犯行】**犯行の(手口が巧妙。動機が分からない。目撃者がいない。行きずりの計画性のない)。犯行が(急増する。絶える。発覚する。露見する)。犯行に(加わる。走る。一役買う。ついて悪びれることもなく淡々と供述する=池井戸)。▼犯行に及ぶ(泥棒が居直って。やむにやまれぬ思いで=横山)。犯行のチャンスを待ち続ける。犯行を(重ねる。自供する。自白する。示唆する書き込み。外部の人間の仕業に見せかける=東野)。あっさり犯行を認める。次の犯行を食い止める。犯行現場からできるだけ遠くに逃げる。犯行後自首する。犯行声明を送りつける。凶行に(及ぶ。走る)。犯跡を(隠す。くらます)。 **はんざい【犯罪】**遺産を狙った犯罪。犯罪が(後を絶たない。起きる。激増する。続発する。組織化する。増える。複雑化する。狂暴化の一途をたどる"高見浩)。犯罪に(走る。巻き込まれる)。不可解な犯罪に戸惑う。犯罪に手を(貸す。染める)。犯罪の(甘い誘惑。嫌疑を受ける。渦中に投げ込まれる)。犯罪は世相を反映する。犯罪を(隠蔽する。生み出す素地。未然に防止する。誘発する危険性が高い=有川)。残忍な犯罪を犯す。密かに犯罪を計画する。偽証罪に問われる。詐欺罪で豚箱に放り込まれる宗田。犯罪行為を忌み憎む。犯罪者を捕らえる。身の毛もよだつような犯罪組織=常盤。犯罪組織を壊滅させる。余罪が発覚する。余罪を(自供する。追及する)。重大な余罪を抱える。 **はんにん【犯人】**犯人かどうかを確かめる。犯人が(自供する。男と決めてかかる)。外から犯人が侵入する。犯人であることを(告白する。自白する。立証する)。犯人と(おぼしい男。決めつける)。犯人に(仕立て上げる。でっちあげる。同情する。心当たりがある。結びつく手がかり)。犯人の(動きを追う。姿を目撃する。遺留品を探し回る。検挙に功績をあげる。心当たりがない。正体を示す手がかり。人物像が描けない。家族のことまで心配する優しさ=西村。探装に引っかかる夏樹。首根っこを押さえる=辻真。絞り込みが暗礁に乗り上げる=池井戸)。犯人を(心から憎む。自供に追い込む。あと一歩まで追いつめる=松岡。追いつめる刑事のような口調"小林久)。躍起になって犯人を挙げようとする=高木。真犯人と思われる男の行動を密かにマークする=池井戸。真犯人の手がかりが消える。真犯人を隠蔽する。犯人捜しに血眼になる。お尋ね者を(捜し出す。逮捕する。捕まえる。ひっとらえる)。下手人にでっち上げる。下手人の割り出しに必死になる。下手人を(引っくくる。捕縛する。見つけ出す)。現行犯で(逮捕する。捕まる。捕らえる)。犯人が逃げる。犯人が(雲隠れする。高飛びする)。犯人にあっさり逃走される。犯人が分かる。犯人が(割れる。誰かを突きとめる)。犯人の(見当がつく。目星がつく。名前が判明する)。犯人を(探し出す。特定する)。真犯人の目処ぁとがつく。真犯人を突きとめる。下手人がはっきりする。 **びざい【微罪】**取るに足らない微罪で逮捕される。微罪を重ねる。ごく軽い罪。 **べんごし【弁護士】**弁護士(経験豊かな。敏腕な。優秀な。ベテランの。辣腕の)。交渉を弁護士に任せる。弁護士を代理人に立てる。被告人の弁護を引き受ける。 **ほうてい【法廷】**法廷で(裁く。審理する)。満を持して法廷に臨む。断罪の空気が法廷に充満する=横山。法廷の再開を宣言する。開廷を宣言する。裁きの庭。緊張感が廷内にみなぎる。▼入延する(原告が。裁判官が。被告が。・弁護士が)。出廷を(拒否する。命じる。求める)。出廷する(証人が。公判に。裁判所に)。 **まやく【麻薬】**麻薬から手を引く。麻薬に(依存する。手を染める)。麻薬にでも触れるような恐怖大庭。麻薬の常用者。麻薬を密売する。麻薬のような強さの酒萩原業。麻薬のように人の心をひきつける村上春。言葉が麻薬のように作用する=石坂。麻薬しみた魅力。麻薬中毒になる。阿片を(吸飲する。密貿易する)。大麻が遊延まんする。大麻に手を出す。大麻を吸う。ドラッグでハイになる。 **みつばい【密売】**覚醒剤の密売で逮捕される。▼密売する(拳銃を。大麻を)。闇ルートで物品を売りさばく。ひそかに売買する。覚醒剤の密売買に手を染める=佐々木。闇値で(高く売れる。取引する)。 **みつゆ【密輸】**密輸する(覚醒剤を。禁制品を。拳銃を)。▼密貿易する(禁制の品を。外国と。禁を犯して)。抜け荷の手先を務める。抜け荷と称する密輸入。 **むほう【無法】**無法が過ぎる。無法な(越境攻撃。戦争。テロ。抑圧を憎む。掠奪酢炒くに備える。リンチ。浪人くすれ。計画を許してはならない。行動を正しく見せかける。理不尽な仕打ち)。なんとしても敵しがたい強力な腕に無法に張り倒される=高見照。無法は無茶で叩き潰っぶすのが図書隊の流儀「有川。無法を(犯す。野放しにする)。 **よこながし【横流し】**横流しを告発する。▼横流しする(情報を。物資を。不正に。撮影したビデオを業者に"貫井)。転売先を明らかにする。転売を繰り返す。 **わいろ【賄賂】**賄賂とか買い占めなどとはおよそ縁が遠い船山。賄賂を使う。役人に賄賂を贈る。金をもらって罪を目こぼしする=宮部。役人に金をつかませる。疑獄に連座する。大型疑獄の様相を呈する。受託収賄の罪に問われる。贈賄の(罪に問われる。容疑がかかる)。賂いに(精を出す。手を染める)。汚職が明るみに出る。汚職を摘発する。汚職議員の追及に明け暮れる。袖の下が効く。袖の下の役得がある。・を(使う。つかませる。握らせる。要求する)。あこぎに袖の下をとる。鼻薬が効を奏する。たっぷりと鼻薬がわたっている=佐々木。鼻薬を(使う。嗅ががして抱き込む)。 <215> **おくる【送る】** ▼送る(合図を。ウインクを。会釈を。応援の声を。国許がにへ手紙を。原稿を。サインを。静かな老後を。四方へ兵を。写真を。情報を。団槳んの一夜を。匿名で金を。流し目を。拍手を。微笑を。ファックスを。不安な夜を。メッセージを。新聞を読者に。宅配便で。次から次へと。バス停まで。気ままな学生生活を。気持ちのよい朝夕を。幸せな結婚生活を。充実した内的生活を。手のひらで顔に風を。熱狂的な声援を。まともに社会生活を。みじめな一生を。やんやの喝采を。悠々自適の後半生を。よたよたと足を。優れた作品を世に。その日その日を無気力な倦意紺で。タクシーで自宅まで。居心地よく会社生活を三浦し。打ちのめされたような数日を"戸川。すかさず視線を捕らえて強いまなざしを藤枝。呪われた幻の格園でいまわしい夜を=梶井)。▼視線を送る(ちらりと。引きつけられるように=有島)。▼生涯を送る(不本意な。我がままな)。▼人生を送る(破天荒な。平穏無事な。平凡な。面白い。屈折した。寂しい)。生活を送る(自由気ままな。割合幸せな。荒ずさんだ)。▼月日を送る(忙しい。楽しい)。▼日々を送る(無為な。安らかに。心楽しい。心細い。遊蕩三味沙んまいの)。▼日を送る(ころころのんびりと。自由に伸び伸びと。絶望と岡いつつ=池波)。▼毎日を送る(酒びたりの。充実した)。▼世を送る(安らかに。太く短く)。春が海から南の風を送ってくる。流刑の地へ送られる。敵対する組織から送りこまれたスバイ三浦し。▼送り込む(弾を薬室に。タンクにガスを)。送りつける(テーブを。手紙を。果たし状を。犯行声明を)。安全な場所に送り届ける。▼書き送る(詳しい事情を。事の成り行きを。せっせと手紙を)。風を吹き送る。▼回送する(電車を。バスを)。繰り出す(次々と新手を。援軍を続々と。画期的な戦術を。外堀を埋めてから質問を)。腰送する(囚人を。タンカーを。犯人を)。▼集散する(商品を。生産物を)。▼送達する(召喚状を。信書を)。▼送致する(身柄を。容疑者を)。▼送付する(勧告書を。書類を。請求書を)。▼直送する(データを。農家から野菜を。海産物を産地から)。▼転送する(メールを。関係者に)。▼発送する(案内状を。お歳暮を。ダイレクトメールを)。郵便物を転居先に(回送する。転送する)。 **さしむける【差し向ける】** ▼差し向ける(医師を。援助の手を。軍勢を。刺客を。使いの者を。迎えの船を)。押しつけがましく銚子をさし向ける三浦愛。使者を差し立てる。迎えの車を差し回す。 **しおくり【仕送り】** 仕送りがふっつり絶える。学費を親の仕送りに頼る。親元から仕送りを受ける。欠かさず仕送りをする。送金がばったり途絶える。 **ししゃ【使者】** ▼使者が来る(火急の。恭しく進物を持って=坂口)。使者の(役目が無事につとまる。役目を引き受ける)。結納の使者を立てる。返事にも及ばずと使者を追い返す=坂口。急便の者が馬を飛ばして来る。使節を(派遣する。礼遇する)。勅使を(接待する。派遣する)。特使を派遣する。密使を走らせる。子供の使い同然にすごすごと帰ってくる藤沢。部下を使いに出す。仲間もうを使いに立てる=菊池。使いの者に心づけを渡す。使い走りの労を取る。使いを走らせる。ほんの走り使いにすぎない。 **しゅつか【出荷】** 出荷を調整する。▼出荷する(製品を。野菜を。業務用として)。農作物の出荷地として発展する。▼出庫する(商品を。製品を)。▼積み出す(婴品を。貨車で。トラックで、船で)。荷動きが(活発になる。低迷する。鈍化する)。 **じゅんおくり【順送り】** 順送りに(席に案内する。ボストにつく)。▼順送りする(話を。ボストを)。順繰りに(経験する。紹介する。発言する)。室内を順繰りに調べる。 **とうこう【投稿】** ▼投稿する(詩を。短歌を。論文を。雑誌に。新聞に)。 **はけん【派遣】** 援軍の派遣を要請する。顧問弁護士を派遣する。現地に派遣する(検査官を。専門家を)。一急派する(警官を。特便を)。親王を差巡する。差し遣わす(使者を。勅使を)。増派する(特派員を。兵力を)。遣わす(使者を。兵を)。▼派する(斥候ごうを。使いを)。 **ふいご【開】** ふいごで風を送る。咽のとの奥に仕掛けられた隣でも押すような締まりのない笑い声"里見。上から貼りつけた色変わりの布がフイゴの蓋のように一歩あるくたびにバクバク閉じたり開いたりする=安岡。巨大な碗を吹くような噴火口の唸うなり“宮本百。つく息がふいごのよう宮沢。ばねのゆるいこわれた猫のような音を立てる楽器「野上。ふいごのように息を吸ったり吐いたりする"石森。胸がやくざなふいこのようにぜいぜいあえぐ=梶井。意識が朦朧としてきて地り出された手続にぃのようにしぼむ徳永。 **ゆうびん【郵便】** 郵便で送る。郵便を配達する。▼書留で送る(貴重品を。現金を)。書留を出す。郵便受けから紙が頭を覗のぞかせている。ボストに郵便物が溜まる。郵便物の宛名を一つひとつチェックする。郵便物を局に留め置く。切手を貼る。手紙を出す。▼郵送する(回答用紙を。原稿を。入学願書を。文書を)。ポストに入れる(手紙を。封筒を)。▼ポストに投函する(手紙を。はがきを)。 # 怒る・憤る <216> **あたりちらす【当たり散らす】** ▼当たり散らす(家族に。従業員に。猫に。つんけん。ぷりぷりと。理由もなく。ささいなことで。むしゃくしゃ腹で四方八方〈永井荷)。 **いかり【怒り】** ▼怒り(ぐっと胸を突いて湧きあがる"石川。煮え返った湯の玉が跳ねているような村上元)。怒りが(体の芯を貫く。恐怖に変わる。頂点に達する。体いっぱいに満ちる。殺意に転化する。絶望感に変わる。全身を駆けめぐる。突如噴き上がる。勃然と燃え上がる。胸の奥で煮えたぎる。悲しみに溶ける"円地。体を突風のように通り抜ける「遠藤。遠くから潮のように迫ってくる=中村真。波のように押し寄せる=常盤。吐き気のようにこみ上げる=山田太。ふつふつと沸き上がる宮部。暴風雨のように吹きまくる!円地。わめき叫ぶ女のように肩のところで爆発する"野岡)。新たな怒りが呼び覚まされる。むらむらと怒りが込み上げる。身体全体から押さえても押さえきれない怒りがオーラのように発散される内館。体を怒りが這いのぼっていく高樹。逆上するような怒りが胸にこみあげてくる藤枝。じわじわと怒りが体の中に広がっている=藤田。にえたぎるような怒りが胸で渦を巻く=黒岩。陽が5のねじれるような怒りが湧く高橋和。ふくらし粉を入れたバンがふくれてくるように怒りがふくれあがる=小鳥。不当な仕打ちに対する怒りが炎のごとく燃える=菊池。胸の中を灼熱いくの怒りが貫く=光瀬。やり場のない怒りが思いの底に蹲ら封る=小林久。訳の分からない怒りがこみあげる=池田。体が震えるほどの怒りがこみ上げてくる=さだ。全身に怒りがみなぎる。怒りで目も呟くむ思い。声が怒りで尖る。胸が怒りで沸騰する。火をのんだように怒りで体の中が熱くなる=城山。あとからあとから燃え上がってくる怒りと悲しみに頭が煮え立つよう“円地。怒りに(我を忘れる。心ノ臓が破裂しそうになる=池波。堪えぬが如く拳を握って自分の腿ももを叩く永井荷)。得体の知れない怒りに駆られる。名状しがたい怒りに襲われる。腸が怒りに煮てくり返る=佐伯。怒りに変わる(甘い感傷が苦い!中村真。羞恥礼砂が裏返しの安岡)。怒りの(爆発を必死に抑える。持って行き場がない。燠火吧。を掻き立てる―奥泉。捌け口に切にしているみたいに口汚い言葉で怒鳴りつける三田。矛先を政府に向ける=船戸)。つかみかかりたいほど怒りの衝動にかられる=坂口。咽喉のとまで出かかった怒りの言葉をそのまま嚥のみ下す=斎藤栄。胸に怒りの発火がある。横山。怒りを(露わにして眠いのる。抑えた声で言う。通り越し諦めの状態"海堂。発したように猛然と唸っなる=住井)。神の怒りを買う。ぐっと怒りをこらえる。消すことのできない怒りを持つ。語気に怒りを込める。こみ上げる怒りをかろうじて抑える。押さえつけていた怒りを <217> # 怒る・憤る―69 できらきらと輝く=山田詠。怒りに燃えた目で見据える。限の中にキラリと怒りに似た光が通り過ぎる=森環。怒りに満ちた目を向ける。すずしげな目に浮いた怒りの粒のような小さな炎"高橋三。燃えるような怒りの目で見つめる=杉本。怒りの色が瞳から消える。目が怒りに(氷る。燃えさかる)。些細なことに目くじらを立てる。目を三角にする。目に角立てて(怒る。非難する)。 **おこらせる【怒らせる】**取引先の重役を怒らせる。忌諱きぃに触れる。逆鱗に触れる。▼憤激させる(志士を。市民を)。烈火に油を加える=山田美。 **おこられる【怒られる】**凄すとまじい勢いで怒られる。怒られるいわれはない。大目玉を食う。散々にお目玉を頂戴さにする。雷が落ちる。 **おこる【怒る】**怒る(顔色を変えて。体を震わせて。血相を変えて、声を震わせて。腹の底から。むきになって。歯をくいしばって。半狂乱になって。目くじら立てて。目の色を変えて。ものすごい形相で。手に噛みついてやりたいほど=新田)。怒るというよりあきれる。怒ると何をするか分からない。いったん怒ると見境がない。▼怒り出す(真っ赤になって。しまいには馬鹿にするなと=古井。火のついたように=内田巻)。痛いところを突かれて怒りだす若竹。慢性的な空腹感がじわじわと胃から大脳へ攻め上って怒りっぽくなる=荻野。頭に湯気をたてる=北原。かっかっと頭が燃えてくる!南糸。髪が頭上に逆立つ=阿刀田。雷を落とす。感情が激してくる。堪忍袋の緒が切れる。冗談を言うのもほどほどにしてくれ=木山。全身の血が逆流するのを覚える=小林久。惣身の血潮が煮えくり返ってグングン頭へ逆上するよう菊池。机を叩いて立ち上がる。鶏冠忙だにくる。腹に据えかねる。はらわたが燃え上がる。ぶん殴ってやりたい気持ち。怒ったような(声で質問する。目で見つめる。表情で院にらみまわす。いかつい目つき北)。怒ったように(一気に言う。声を荒らげる。ぶすりと言う。無口で出て行く)。ぶっと怒ったように口をつぐむ=山手。いい加減頭にくる。胸の底に熱いものが煮えたぎる。気色ばんで(詰め寄る。岡い返す。反論する)。中っ腹な声。腹の中に怒気が動くのを感じる=藤沢。怒気を発する。声が怒気をふくむ。煮えくり返る(腹の中が。はらわたが)。ものをいわなくなったおやじを前にして、おふくろは子供でも叱りつけるみたいにぷりぷりする"阿部。ぷりぷりして(帰ってゆく。どなりつける)。まなじりを決して叫ぶ。むかっ腹を立てる。姫君の柳眉が逆立つ=山手。吉原の太夫が柳眉を逆立ててさっさと帰ってしまう隆。憤然として色をなす。色をなしたといったような表情"山本周。色をなして(叱りつける。となる)。女房が角を生やす三浦綾。頭に指を二本角のようにかざす=高橋克。癇癖の筋を伺わせる=柴田颂。 **ぎゃくじょう【逆上】**▼逆上する(失敗の恐怖に。見境もなく)。逆上して(自分を失う。人を殺す。心ないことを口走る。とんでもない台詞沁)を口走る=阿久。ヒステリックに叱りつける=小林久)。 **かっと**かっと(怒りが湧く。血が頭にのぼる。全身の血を逆流させる柴田剣)。ついかっとなって大声を上げる。意外な抵抗を受けてかっとなる。無視されていっそうかっとする。 **かんしゃく【癇癪】**かんしゃくが起こって顔が火の玉みたいになる=中。胸のなかの苦痛をそのままつかみ出して相手にたたきつけたいような痛痛が起こる"梶井。狗粮のはけ口を探す。あまりのじれったさに疳痕を起こす=中島救。理由もなく癇癪を起こす。癇癪を起こした子供のように続けざまに頭を打つ=松浦。こめかみにびりびりと癇癪筋が立つ=中。癇癪筋を額に張る。額に癇癪筋をあらわす。涧瀚玉が爆発する鈴木四。病癒玉を破裂させる。夏は蟬せんが落ちる酷暑、冬は二階の屋根が埋まる豪雪と、天候が癇瘡持ちみたいに極端!奥泉。青筋がぴくりと症塵心する。こめかみに青筋を立てる。額に青筋を立てて怒る。物癖の強い人物。眉間に枷癖の影が走る。こめかみに冷氷のようなものがぴりぴりと走る。 **げきど【激怒】**▼激怒(心の中であり余った力が外にはみ出したような菊池。総身の血汐らしが逆流するような柴田錬)。▼激怒する(あまりのしつこさに。子供のように単純な役人が言い負かされると単純に"遠藤)。火のように激しいかんしゃくを起こす光原。▼激昂げする(刀を抜かんばかりに=海音寺。前後を失うほど『村上元)。激昂に恐れをなす。臆恚いんの(焰組のを燃やす。剣を抜きそばめる。火に心を焦がす)。不意に故知れぬ瞋恚の虜と』になる=高橋和。▼激しい怒り(屈辱感と裏腹の=城山。八つ当たりせずにはいられないほどの=筒井)。激しい怒りが胸に湧きあがる。肩が激しい怒りに頭ふぅえる=川端。雷のような激しい怒りの声に打たれる=有局。錯乱に近い激しい怒りを覚える。宮部。胸の底から湧き上がってくる激しい憤りに筒井。激しい憤りが頭のなかで渦を巻く"中島。敵意に似た激しい腹立ち=幸田文。烈火のごとく怒る=火坂。烈烈火のように激する!菊池。怒り狂う(絶望的に。かっとなって。我を忘れて)。怒り狂って(手のつけられない状態に陥る。罵詈雑言沿いをまき散らす)。怒髪冠を祈っく。怒髪天を衝くという形相で言う船山。 **ごうはら【業腹】**業腹(誤解されているのも。このまま手を引くのは。おめおめと帰ることはなかにし。せっかくのかもを横取りされたのは=山手)。 **どき【怒気】**顔に怒気がこもる。目に怒気が加わる。自分でも制しようのない怒気に拳を震わせる=山本周。言い方に一筋の怒気も含まれていない。怒気を(はらんだきつい顔つき。含んだ一喝をくれる)。思わず怒気に食ってかかる。 <218> # どせい【怒声】 怒声が(耳を切りつける。わめいて過ぎる)。館内に怒声が渦巻く。鋭い怒声が響く。怒声が飛んでくる(頭ごなしに。四方八方から)。歯がゆそうに癇癪声は以礼。になる。癇癪声を立てる。 **はらだたしい【腹立たしい】**▼腹立たしい(自分の愚かしさが。無神経さが無性に。殺したいほどに"司馬。甘美な夢想をよこされてでもしまったように樹。人の言葉が硬ぉぅのように=横光)。腹立たしい思いに駆られる。得体の知れない腹立たしい感情を持て余す丹羽。羨ましいのを通り越して腹立たしくなる。腹立たしげに(言葉を返す。顔を紅潮させて叫ぶ村。紙片をビリビリとひっちゃぶく北。やけくそに言う幸田文)。腹立たしそうな眼で眺める。▼腹立たしさ(やり場のない。いたたまれない。自分で自分を軽蔑したような情けない=山手。むかむかと悪気がきづくほどの里見)。腹立たしさが荒い声になって弾ける"黒井。腹立たしさでこめかみが癒感心する。腹立たしさに(涙が出る。つい荒い言葉になる)。無性に腹立たしさを覚える。業が(湧く。煮えたように叫ぶ)。腹が癒えない。噛みついてやりたいほど胸が煮えくりかえる=有吉。 **はらだち【腹立ち】**腹立ちが(悔恨に変わる。頂点に達する。冷たい錘はもをつける"野上)。腹立ちに唇を噛む。疲れが腹立ちに拍車をかける。▼腹が立つ(厚かましさに。おせっかいに。無性に。思い出しても。考えただけで。むかむかと。むらむらと。自分の迂闊づかさ加減に。自分のぶざまさに。殴りたいほどに。煮えきらない態度に。問抜けさ加減に。すぐ他人の言いなりになる自分に=高樹。汚辱の中へはまり込んだように=伊藤格。からだが震えるほど!向田。キッーキッーとならないくらい=田辺。全身の血がたぎるほど舟橋。恥辱でも受けるように"宮本百。拍子抜けを通り越して"重松。胸の奥が熱くなってくるほど佐藤愛)。腹を立てる(かんかんに。逆上するほど。心の底から。火のごとく。自分の無力さに。つまらないことに。分かりの悪さに。約束を破ったことに。ルーズな仕事ぶりに。視野が黒くせばまって見えるほど安部)。腹を立てて声を荒立てる。腹立ちまぎれに(毒づく。どなりつける。なぐる)。腹立ち紛れにぼかりと一つ喰わせる谷崎。かちんと来る。小腹が立つ。小腹を立てる。癒し、が起こる。痛の種。▼むかっ腹(見当違いな。筋違いの)。立腹したかのように顔を火のごとくほてらせる=長与。多少立腹しているようなずばずばしたことば=幸田文。▼癪に障る(言いぐさが。無神経さが。考えれば考えるほど。相手の得手勝手が叩き切ってやりたいほど菊池)。大切な愉たのしみを奪われたように癪にさわる=原田废。不思議に腹が立たない。あきれて腹も立たない。腹も立てられないような情けなさ壺井。 **ふんがい【憤慨】**憤慨に(堪えない。顔の血の気がなくなる=山田美)。憤慨の情。憤慨の語気を(漏らす。むき出しにする)。▼憤慨する(読者が。噂に。大いに。酷遇に。暴言に。虫のよさに。腕まくりして。えらく。陰で。むきになって)。痛憤が胸を掻きむしる。痛償に燃える。痛償の(声を上げる。涙)。痛憤やるかたない思い。国民の痛憤を代弁する。 **ふんぬ【憤怒】**渦巻きのぼる黒煙のように激しい憤怒徳水。憤怒が(静かに満ちてくる。赤黒く顔に燃えている=加賀)。一時的に理性を喪失させる勃然たる憤怒がこみ上げてくる=南条。語勢にじんわり憤怒が滲にじむ浅川。火のような憤怒が燃え上がる"有鳥。激しい憤怒に燃えた瞳。胸が憤怒に満ちる。憤怒の目を物烈に空ぶかしさせる=中上。投げつける。顔に憤怒の色が浮かび上がる。全身を憤怒の火にする"吉川。煮えくりかえるような憤怒の情藤枝。目に言うに言われぬ憤怒の色が現れる=永井荷。込み上げてくる憤怒を押さえつける『江戸川。一倍烈はげしく憤怒する永井荷。 **ふんまん【憤懣】**慣感が(心中に鬱積する。文章の行間に満ちている=津本)。憤懣が胸中に(煮えたぎる。淑なる)。憤懣にはけ口を与える。慣感のやり場のないような病高除がい恥ずかしさを総身に感じる「植。常々慣惑の念をいだいている。寸刻の隣躇ういうも許さないような食感払いの感情を抱く外村。歯がゆい念惑を胸に包む"黒岩。憤惑やるかたなく苛立っているような叫び"大江。怒気を含んだ声になる。声に怒気を遂にじませる。声に怒気を滲にじませる。満面に怒気を浮かべる。眼に角が立って怒気のようなものがあがってくる!幸田文。怒気鋭く叫ぶ。 **むしゃくしゃ**むしゃくしゃをひと思いにぶちまける。むしゃくしゃする(気が。気分が。気持ちが。胸の中が)。むしゃくしゃした気分を噛み殺す。むしゃくしゃしてどなりつける。胸がむしゃくしゃしておさまらない。一向に気分が晴れない。中っ腹になる。自分でも抑えがきかないほどむかつく高村素。知らないことがこの世にはムカつくくらいいっぱいある“村上則。思わずむかっと来る。むかむかする(考えるだけで胸が。殴りつけてやりたいくらい=源氏)。むかむかと怒りが込み上げる。 **むっとする**むっとする(不愉快そうに。高飛車な調子に。話の腰を折られて)。むっとした顔で言い募る。露骨にむっとした顔になる。むっと(不機嫌になる。目をつり上げて言う)。俳然転いとして食ってかかる。顔に勃然たる色が浮かぶ。 **やつあたり【八つ当たり】**物窺いしまぎれの八つ当たり。八つ当たりの種を探す。八つ当たりをして愛さ晴らしをする。▼八つ当たりする(悔しまぎれに。子供に)。裏切られた思いをガスレンジにぶつけて荒々しく栓をひねる=黒井。八つ当たりのようにエンジンを吹かす。 <219> # 起こる・立ち上がる―70 ## 起こる・立ち上がる **おきあがる【起き上がる】**▼起き上がる(大儀そうに。ベッドの上に。助けを借りて。のろのろと。やおら。勢いをつけてベッドから。犬がのっそりと。不機嫌な顔でこそこそ。夜具をはねのけて。芝居の終わった俳優のように唐突に=中村真。弾かれたように=小池)。勢いよく起き上がる(弾みをつけて。バネに撥はねられたように=黒岩)。分娩後の犬が立ち上がるような頼りない起き方。有吉。からだを尺取り虫のようにして起き上がろうとする=小林多。ひょろりとした軀炒らが起き上がり小法師に『のように前後に大きく揺れる三浦哲。起き上がりこぼしのように(立ちあがる。左右に身体をゆする=宮部)。一瞬たじろいだが起きあがりこぼしみたいにすぐに笑顔で立ち直る=連城。▼体を起こす(がばりと。そろそろと。反動をつけて。むっくりと。ゆっくりと)。▼身を起こす(おもむろに。なよやかに。反射的に。背もたれから。ソファ1から。そろそろと。寝床から。約10~のようになめらかに=有島)。体が鉛になってベッドから起き上がれない=倉橋。石の入った俵のようになかなか起き上がらない"小林多。背中がベッドに貼りついたように起き上がりがたい『宮本百。 **おきない【起きない】**▼起きない(転んでもただでは。胸に何の小波にぶも)。▼起こらない(買う気が。しゃべる気が。めったに。たまにしか。何事も。そうそうは食欲が。憎しみが少しも)。 **おきる【起きる】**▼起きる(嫌なことが。嫉妬の情が。天下に大乱が。仲間割れが。胸に波紋が。モラル低下が。厄介なことが。思いもかけない災難が。客席から歓声と拍手が。立て続けに事件が。次から次へと新しい事態が。どっと笑い声が。突発的な問題が。取り付け騒ぎが。むらむらと欲望が。朝も暗いうちに。いつもの時刻に。いつもより早めに。夜のしらじら明けに。いつもより遅く。大儀そうにむっくりと。飛び上がるように)。何が起きるか分からない。変化が起きる(内部に密かな。感情に)。今しがた起きたばかり。あとあと面倒が起きそうな予感。▼起き出す(昼過ぎに。床から。夜中にそっと。いつもの時刻に)。寝床の上に起き直る。ベッドから飛び起きる。▼跳ね起きる(がばっと。寝床から。布団から)。起きている(夜っびて。明け方近くまで)。▼継起する(凶悪犯罪が。重大な事件が。不祥事が)。床離れが(よい。悪い)。毎朝床離れが辛い。寝起きが悪い。 **おこされる【起こされる】**寝入りばなを起こされる。▼叩き起こされる(朝まだきに。深夜に。眠っているところを)。うたた寝から揺り起こされる。眠りの国のとば口から乱暴に連れ戻される“井上ひ。 **おこす【起こす】**起こす(一斉に行動を。風がさざ波を。拒絶反応を。際どい望みを。国に内乱を。自殺未遂を。殊勝な心を。精神に変化を。接触不良を。息ざんの発作を。装置が故障を。肉が痙攣け心を。に変調を。暴徒が乱を。面倒な問題を。物凄い反響を。世の中に風を。流血の惨事を。撃鉄を親指で。遺伝子が突然変異を。柄にない慈善心を。強硬な反対運動を。攻撃的な気持ちを。仕事と適性がミスマッチを。斜面が地滑りを。女性がらみの不祥事を。しょっちゅう面倒を。途方もない錯覚を。取り返しのつかない不始末を。流れる水に目まいを。何かにつけて悶着もんちを。のっそりと巨体を。むっくり上体を。体をベッドから。粛々として軍勢が進撃を柴田錬)。▼顔を起こす(ぐいっと。うつむいていた)。考えを起こす(不好ふらな。妙な。卑しい。つまらぬ)。▼気を起こす(変な。妙な)。情を起こす(愛憐いの。惻隠にんの。憐憫味似の)。念を起こす(奇異の。尊敬の)。問題ばかり起こしている手合い。眠りの沼から引きずり出す北村。上半身を抱え起こす。▼かき起こす(理、うずみ火を。火鉢の火を)。抱き起こす(男を。体を)。少女を助け起こす。▼叩き起こす(家族を。眠ってる子を。真夜中に)。地面を掘り起こす。そっと妻を揺り起こす。▼催す(不意に哀れを。うつらうつらと眠りを。耐えがたいほどの哀情を。むらむらと戦意を)。情を催す(哀憐15いの。惻隠の。憐憫の)。 **おこる【起こる】**▼起こる(感情の札慄いが。作成に支隊が。どっと欲声が。激しい怒号が。流血沙汰が。頭痛が頻繁に。次から次へと。天災が頻々と。一座にざわざわと動揺が。恐れていた事態が。恐ろしい叫び声が。思いがけない事件が。各地で暴動や一揆が。車内に動揺の波が。小さなどよめきが。致命的な障害が。ちょっとした異変が。とんでもないことが。似たような不祥事が。ひいっという悲鳴が。ひときわ大きい拍手が。人と人との間に不和が。勃然と収集熱が。ぽつぽつと話し声が。むらむらと攻撃的な気持ちが。名状しがたい憂愁の感情が。廊下にばらばらと足音が。ささやきが周囲に。事件が矢継ぎ早に。信じられないことが現実に。ストライキが方々に。泣き声がそこここに。拍手がひときわ盛んに。いろいろな感情が暴風のように。嗚咽咕ぇする声があっちこっちから。週に一度の割で。衝動がふつふつと。慟哭ごいの声がそこここから。日常茶飯事のように。見下げられたという感情が勃然と。欲望がむらむらと。笑い声がどっと。譲歩すべしという気運が"山本周。人間の動くところには必ず失敗が"畑村。嫌なことは続け様に「黒井。何ことかが突発的に気まぐれに武田奏。笑いが破裂するように角田)。この先何が起こるかわかったものではない=小林久。▼声が起こる(喝采の。叱責の。わっと言う岡ときの)。▼変化が起こる(心に。身の上のことに)。 <220> # お 起こるべくして起こったこと。確信が心の底から起こってくる。夏の雨がにわかに降り出してやがてぴたりとやむように事が起こりそして終わる=高井。何か起こりそうな予感がする。▼起こりがちなこと(えてして。よく)。澎湃ば、心として新風が巻き起こる。▼湧き起こる(反対の声が。望郷の念が)。鬱勃たる怒りがたきる。気運が鬱勃と感じられる。鬱勃とした野心の持って行き場所がない。こらえた情が一時脳喘に激発する。出来れ灬っする(異常事態が。火急の用が。大事が)。出来する可能性のあるトラブル三浦し。絶えず新しい心配事が生起する。▼発祥の地(先祖の。仏教の。自由民権運動の)。涙を澎湃と流す。民族主義の波が澎湃として押し寄せる。勃然と(欲望が湧く。野望に目覚める)。恨みがましい気分が勃然と湧き上がる。熱意が勃然と湧いてくる。勃々たる(虚栄。野心)。事故の勃発を警戒する。▼勃発する(革命が。事変が。世界恐慌が。戦争が。騒動が。独立運動が)。 **おこる【興る】**▼興る(新しい時代が。学問が。国が。経済が。産業が)。興す(新しい会社を。家を。事業を。思想運動を。別派を。ベンチャー企業を)。勃興する(科学が。大衆芸術が)。勃興する時代精神の目覚ましさ極。旗揚げの公演。▼旗揚げする(劇団を。政党を。団体を)。天下動乱の狼火のをあげる柴田蝕。 **さめる【覚める】**▼覚める(迷いの夢が。はっと夢から。幻から現づつへ。いっぺんに眠気が。酔いがすっかり。楽しかった時間の輝く結晶が記憶の底の深い眠りから突然吉本。泥のような眠りから山田屋)。浮いた気分が一度に冷める。夢から覚めやらぬ様子。 **しぜんに【自然に】**自然に(涙がこみあげてくる。のびのびと振る舞う。芽生えてきた感情)。関係が自然に成り立つ。傷が自然に癒える。気持ちが自然に休まる。口元が自然にほころぶ。表情が自然に和らぐ。役割が自然に決まる。朽ち木のように自然に倒れる=司馬。ずっと以前から付き合っていた人々のようにごく自然に心に入り込む"加賀。何事もなかったように自然にふるまう~三田。水が流れることく自然にまかせる=村松。ごく自然に(受け止める。年を重ねる)。ごく自然に関係が(終了する。始まる)。ごく自然な(流れ。成り行き)。噂が自然と消える。話し声が自然と耳に入る。水の低きに就くように。けれんみなく朗らかに笑う。素顔をけれんみなく描く。何のけれんも巧まざる(美しさ。賛辞。ユーモア)。巧まずして(成功する。真実に到達する)。 **たちあがる【立ち上がる】**▼立ち上がる(のそりと獣が。二人が同時に。椅子を倒して。血相を変えて。尻をはたいて。すごい剣幕で、席を蹴って。太刀を取って。杖にすがって。弾みをつけて。一呼吸入れて。我を忘れて。ノックの音がすると反射的に。話が切れたのをしおに。椅子をきしませて。肩掛けをとって。肩をよじらせるようにして。壁にすがりながら。軽く咳払逊会いをして。座卓に手をついて。背筋を伸ばして。伝票を手にして。とうとう我慢しきれず。長い黙想の中から。弾かれたように。はたと気を取り直して。バッグを持って。歯を食いしばって。ばんとテーブルを叩いて。やっとの思いで。床を蹴る勢いで。ゆらりとベッドから。よっこらしょと声をかけて。わざとらしくゆっくりと。聞くだけ聞くともう用はないとばかりに田辺。一同が棒のように長与。糸に引かれた操り人形のようにすうっと谷川。入れ替わりのように=向田。思い出したように壺井。車にはねられた犬のようによろよろと"小池。高速度写真のようにノロノロ=小林多。腰を持ち上げるようにして高樹。こみ上げてくる思いを振り切るように落合。これから競技場に出る陸上選手のようにすっくと佐藤愛。そっと目立たぬように「堀。電気に打たれたように"光瀬。流れ藻のように揺れながら"小林久。何かにせきたてられるかのように=柴田用。寝ていた岩から身を剣がすようにして菊池。不貞腐れたように内海。待っていたように大佛。夢想を自分から振り払おっとでもするように荒々しく堀。もがくようにして高井。やっこらさというように"田辺。余韻を振り払うように『有吉)。▼立ちあがる(スッと猫のように音もなく=北。話に深入りするのを避けるかのように木山。バネ仕掛けの人形のように癒沢。ほこりをはらうように"岡田。身をひるがえすように=本庄)。すうっと音もなく起ぇち上がる=立原。▼椅子から立ち上がる(荒々しく、音を立てて。そろりと。のっそりと。ゆっくりと)。▼椅子から立ちあがる(とびあがるように"五木。飛び跳ねるみたいにして=阿刀田)。▼さっと立ち上がる(身軽に。バネのように)。▼動作で立ち上がる(敏捷いしな。のろのろとした)。店内の客がぽつぽつ立ち上がっていく。立ち上がろうとする(必死に。無意識に)。立ち上がりが(遅い。早い。悪い)。そわそわと立ち上がりかける。▼蹴るようにして立ち上がる(椅子を。畳を)。立ち上がれないほど落ち込む村上龍。座を立つ(さっと。つと。逃げるように)。 **けんこく【建国】**建国の(精神。父)。国を(興す。建てる。造る)。立国の精神。 **きざす【兆す】**「きざす(哀憐込心の情が。胸に後悔が)。辛抱してみようと思う心が萌す=島崎。気持ちがきざす(ひがみっぽい。人恋しい)。心にきざす(疑いが。希望が。不安が)。胸にきざす(諦めの感情が。不安が)。 **けっき【決起】**決起する(抗日ゲリラが。圧制に抗して。同志を率いて。人民一丸となって)。蜂起派、する(一揆が。労働者が。群雄が各地に。風を望んで)。挙兵に加わる。挙兵して侵略者と戦う。兵を挙げる。戦いののろしを上げる。革命の狼煙いうをあげる=隆。 <221> # 起こる・立ち上がる-70 に。ゆっくり。弾かれたように=永井路)。やっと御興ほにをあげる。▼腰をあげる(優雅に。椅子から。しぶしぶ。そそくさと。ソファーから。突然。やおら。悠揚と。ゆっくりと。よいせっと)。席を立つ(入れ替わりに。勝手に。静かに。すぐに。返事もせずに。荒々しく。一礼して。私用で。そそくさと。膨れっ面で。ゆっくりと)。 **できごころ【出来心】**出来心で盗む。その場の出来心で押し入った強盗。出来心による犯行。その場限りの出来心に過ぎない。一時の気の迷い。魔が差す。 **できごと【出来事】**▼出来事(些細な。不可解な。不辛な。遠い昔の。あっという間の。みんなで話し合っていた矢先の。胸がどきっとするような。世にも恐ろしい)。予期せぬ出来事が持ち上がる。厄介な出来事に巻き込まれる。取るに足りぬ出来事に過ぎない"高井。一日の出来事を頭に思い浮かべる。続々と同じような現象が発見される。現象に関与するパラメーターを調べる。時事問題を論じる。時事を物知り顔に解説する。 **はやおき【早起き】**早起きは三文の得。早起きして遠出をする。早寝早起きの規則正しい生活。▼起き出す(払暁とともに。鶏も鳴かないうちに。まだ夜の明けわないうちに)。早暁に起床する。 **ひきおこす【引き起こす】**▼引き起こす(外交断絶を。家庭争議を。金融危機を。社会不安を。刃傷沙汰ひだを。不幸な事態を。貿易摩擦を。連鎖反応を。ねじれた関係が死を。前のめりにしていた体を。よくない結果を)。放射能漏れという事態を惹ぃき起こす」柳田。恐れていた事態が惹起される。▼惹起する(事件を。問題を)。▼触発する(行動を。性欲を)。発砲して雪崩を誘発する。 **ひとりでに**ひとりでに(口元がゆるんでくる。心が浮き立ってくる。涙が湧いてくる。笑いが込み上げてくる)。考えがひとりでに心に浮かぶ。気分がひとりでに弾んでくる。道はおのずから開ける。話題もおのずから限られる。おのずと(語尾に力が入る。状況が明らかになる)。性格がおのずと現れる。 **ふってわく【降って湧く】**▼降って湧く(いやなことが。一生の不幸せが)。天から降ったような(金。気まぐれ)。降って湧いたような(アクシデント。災難。珍事。厄介事。うまい利用方法が現れる=深沢)。突然降って湧いたように不思議なことが起きる=阿刀田。降って湧いたように仕事の話が飛び込んでくる=獅子。▼巻き起こる(一陣の風が。拍手の嵐が。猛烈な野次が。頭の中に大きな混乱が源氏)。▼巻き起こす(大変動を。幅広い議論を。一大フィーバーを。センセーションを。騒然とした話題を。嵐のような旋風を=美濃部)。 **めざめる【目覚める】**▼目覚める(母性本能が。自己の解放に。社会意識に。政治的に。昏睡状態から。夢現;うの境から。眠っていた色気が。深い眠りの底から。スイッチを入れられたように不意に=加賀。霧の中からでも迷い出たように舰。街がいやいやながらけだるそうに=高見浩)。圧ぉしつけられていた心が跳ねあがるように目ざめる=徳田。眼醒めざめるばかりの美しさ=横光。▼目覚めさせる(好奇心を。眠っていた唇を。もう一人の自分を)。目覚ましにコーヒーを飲む。▼目覚め(個の。自我の。性の)。目覚めの縁にもたれかかる"小川。否応が沢なしに眠りから引きずり出される三好後。生死のはざまにいるような深い眠りから覚める"宮尾。深い眠りの底からゆっくり浮かび上がる"小川。夢から覚める。とりとめもない夢の底から浮かび上がる=徳永。麻酔の覚め際。覚めぎわに見た夢。眠りの沼から這い上がる小林信。▼開眼する(才能が。演技に。教義に)。▼覚醒する(意識が。潜在能力が。頭が完全に)。▼覚ます(長夜の夢を。眠気を。迷夢を)。寝覚めが(さわやか。悪い)。物音が寝覚めの耳に入る。起き抜けに(水を飲む。大きなあくびを一つする。軽い運動をする)。起き抜けの(ぼやけた顔。しどけない格好)。寝起きの時の朦朧とした状態。▼目が覚める(いっぺんに。夜中に。朝早く。足音で。戸を叩く音で。ばっちり。くしゃみとともに。今度という今度は。揺り起こされて。耳の底でざわめく物音で=光瀬)。▼目を覚ます(子供が。神経が。良心が。夜半に。夜中に。暑苦しさで。鳥の鳴き声で。尿意を覚えて。ぱっちりと。時計のアラームで。朝の日に葉末の露の干るように=福水)。▼音で目を覚ます(ノックの。ベルの)。黒く眠っていた山々がひとつひとつ限をさます“阿川弘。声があまり大きいので隣の部屋に寝ている子供たちが眼をさますほど美濃部。目を覚ます気配がない。 **もたらす【齎す】**もたらす(いい縁起を。下流に水害を。最悪の事態を。重大な結果を。爽快な気分を。珍奇な文化を。人々に恩恵を。売り上げの低下を。思いがけない変化を。重苦しい心に一条の光を。価格の大幅な上昇を。強烈な読後感を。恒久的な平和を。混沌に心の中に秩序を。社会に悪影響を。人類に明るい希望を。生活に豊かさを。そこはかとない幸せを。致命的な破局を。希望と落胆を交互に。深刻な危機を人生に。際限のない問いと答えの循環を"斎藤塚。組織に甚大な損害を"畑村)。▼結果をもたらす(より良い。悪い)。▼情報をもたらす(重要な。詳細な)。▼もたらされる(耳寄りな報告が。匿名の電話が警察に=横山)。▼招来する(悪感情を。重大な結果を。次の時代を。無病息災の開運を)。 **もちあがる【持ち上がる】**▼持ち上がる(とんだ不幸が。不利な事態が。離婚話が。思いがけない騒ぎが。またぞろごたごたが。予期せざる出来事が)。降って湧いたように起こる。 <222> # 押さえる・押す **おさえきれない【押さえ切れない】**押さえきれない(怒りが噴き上げてくる。心の動揺を感じる)。押さえきれない(感情の高まりを。湧き上がる興奮を)。顔に押さえ切れない喜びの色が浮かび上がる=藤沢。抑えきれない悲しみが遣る瀬なく湧き立つ徳田。自分の弱い心に負ける。押さえがたい憎しみを感じる。熱意が抑えがたく募る。苛立心らった気持ちを抑えかねる。禁じ得ない(心中不快を。同情を。微苦笑を。密かに戦慄を)。冷笑の唇端に上るのを禁じえない"二葉亭。自分で自分をコントロールできない。自制心が(瓦解する。胸からこぼれて落ちる。北原)。自制心をなくす。怒りと哀かなしみで自制心を悲しうと宮本皿。自制のきかない弱い人間。制御が(利かない。できない)。たぎり立つ気持ちを制御しかねる!高杉。どうにも抑制がきかない。 **おさえつけ【押さえつける】**▼押さえつける(首根っこを。高飛車に。力まかせに。不安を必死に。欲望を無理に。頭から。上から足で。腕ずくで。ぎゅうぎゅう。ぎゅっと。のしかかって。両脇から。込み上げてくる憤怒を"江戸川。震える膝頭を両手で=高杉)。何ともいえぬ淋しさが重い黒雲のように頭を抑えつける=長与。圧殺する(自由を。不快な記憶を。暴動を)。押し伏せる(女を。憤慨が同情を。恋情を。地べたに)。▼制圧する(海賊を。戦場を。敵を。軍事力で)。夜具の上へねじ伏せられる。▼ねじ伏せる(力で強引に。腕力でむりやり)。暴圧に(屈しない。抗議する)。暴圧する(デモ隊を。決起する民衆を)。 **おさえられない【抑えられない】**むずむずする口を抑えられない。抑えても抑えても(喉の奥から笑い声が洩れる!有吉。湧き上がる歓喜をどうしようもない松本)。いったん火がつくともう押さえようがない宮木皿。押さえようもなく心が浮き立ってくる!藤沢。抑えようもなく胸がときどきする=原田宗。抑えようとして抑えられぬこんこんと常に湧き出る自然な愛情中局災。抑えることができない(衝動を。胸の動悸を。吹きこぼれるような悦いっびを=獅子)。 **おさえる【押さえる】**▼押さえる(感情の起伏を。首の根を。亭主の頭を。手で傷口を。どきつく胸を。肩を軽く。口元を両手で。文鎮で。苦しそうに心臓を。涙目になって鼻を。ハンカチで目を。指先でこめかみを。両手で鼻と口を。紙の端を手のひらで。逃げないようにがっちりと。必要な点をきちんと。眼鏡のつるを指で。風に吹き上げられるスカートの裾を笹沢。唾を吐きかけてやりたい気持ちを辛うじて南条)。▼抑える(体の火照りを。川の氾濫はんを。感情の波を。声の震えを。反対勢力を、感情の高ぶりを。口まで出かかった声を。心の揺らぐ先を。殴りつけたい衝動を。喉まで出てきた文句を。破れかける癇癪玉は心も、を。質問を喉元で必死に。闇雲な欲望を懸命に。言いかけた言葉を喉元で)。にやにや笑いを抑えるのに苦労するかんべ。怒りを抑える(内心の。湧き立つ)。▼かろうじて抑える(衝動を。こみ上げる怒りを)。叫んでやりたい気持ちを辛うじて抑える=黒井。▼気持ちを抑える(逸はゃる。突っかかりたい)。負債を低く抑えられる。押さえられていた言葉が我れがちに群がり出たようにしゃべり出す伊藤整。▼押さえ込む(懸命にしゃっくりを。旧勢力をたくみに)。獲物を捕った虎のように別物台)を押さえこむ=梶井。つい速歩になるのをセーブする。▼鎮圧する(反乱を。無頼の徒を。蜂起を。暴動を)。反乱軍を武力鎮圧する。▼扼ゃくする(隘路ふぃを。入り口を。咽喉を。進路を。湾口を)。 **おされる【押される】**▼押される(軽く背中を。落伍者の判を。勢いに。気迫に。周囲の熱気に。安い品に。相手のスピードに。場慣れした態度に。船が潮の流れに)。▼烙印を押される(監督失格という。ふしだ **あっぱく【圧迫】**堪え難いハケ口のない陰鬱な圧迫"小林多。圧迫が日毎に強まる。上からの圧迫が取れたように急に酒宴がはずみかける菊池。圧迫に(抗する。耐えかねる)。圧迫をはねのける。家風に圧迫を感じる。精神的な圧迫を与える。腹部に圧迫を加える。有形無形の圧迫を受ける。▼圧迫する(信教の自由を。手で頸部紗ぃを。弱い者を。生命力の発露を。疑問が胸を重苦しく。物価騰貴が庶民の暮らしを竹内)。圧迫感(ずしっと肩に食いこむような生理的な瀬戸内。息苦しいような心の内側からの日野。霊が監視しているような「瀬戸内)。圧迫感がじわじわと自分を押しつけて息苦しい=円地。周囲に圧迫感を与える。不快な圧迫感を覚える。鉛の箱に詰め込まれたような気がする=村上春。育てるどころかむしろ逆に圧殺する。▼圧する(威風四辺を。朗々とした声が。騒がしい物音が耳を)。官憲の圧制と闘う。圧制に抗して決起する。暴君の圧政に苦しむ。心に不満や孤独感の内部圧が高まるに小林久。 **あつりょく【圧力】**圧力がじわじわと高まる。首相から圧力がかかる。上から圧力がかかって握りつぶされる=北村。視線の圧力だけで体が後ろへ退きそうになる=有川。圧力に負けず食い下がる。時勢の圧力に屈する。圧力を徐々に上げていく。怒ったような眼に圧力を感じる=林美。無言の圧力を柳に風と受け流す。海堂。胸に無言の圧力を加える=石坂。▼圧力をかける(約束を盾に。裏で)。外圧に(屈する。抗する)。外圧をはねのける。強圧的な(言い方。権力。命令。やり方)。水を高圧で注入する。水圧が(上がる。下がる。高い)。巨大な水圧に耐える。水圧をかける。 <223> # 押さえる・押す―71 **おしあう【押し合う】**▼押し合う(大勢の人が。満員電車の中で)。押し合いながら移動する。押し合いへしあい見物する。気管あたりで言葉が押しくらまんじゅうしているよう梶尾。押し合うように(患者が詰めかける。坂を下りてゆく)。 **おしかえす【押し返す】**▼押し返す(敵を。胸を。きっぱりと。出かかった名前を懸命に喉元へ"高杉)。抑し戻す(邪険に。丁重に。じりじり。出かかった言葉を喉の奥に。ずり落ちた眼鏡を録のつけ根に三浦し)。 **おしとどめる【押し留める】**▼押しとどめる(手を上げて。喉のところで言葉を。怒りを辛うじて)。長らく胸に押しとどめている。 **おしまくる【押しまくる】**▼押しまくる(相手を。肩を。敵を。ボタンを。一気に。邪険に。しゃにむに。縦横無尽に。ぐいぐい。怒濤どとの進撃で)。 **おす【押す】**押す(絶望が胸を。手押し車を。乱暴に背中を。背中をどんと。頬を指先で。決裁書類に判を。玄関で呼び鈴を。書類にはんこを。大丈夫と太鼓判を。シャッターを続けざまに。乳母車をそろそろと。力強くぐいぐいと。ばしゃばしゃとカメラのシャッターを=西村)。▼捺ぉす(印鑑を。印を。スタンプを。爪印を)。ボタンを押す(チャイムの。リモコンの。エレベーターの)。▼烙印を押す(悪女の。裏切り者の。密告者の)。押して(談判する。面会を求める)。高熱を押して試験を受ける。発熱を押して執筆する。病軀ぷにを押して儀式に臨む。▼押して出かける(雨を。病気を)。押しても引いてもびくとも動かない。押せどたたけど反響がない。押せども引けともびくともしない。無神経なくらい押しが強い=南条。判で押したように繰り返す。キーを押しまちがえる。押捺ゞうする(印鑑を。実印を。指紋を。判を)。背中を軽く一押しする。気持ちに最後の一押しを加える。 **くみふせる【組み伏せる】**▼組み伏せる(男を。女を。敵を。若者を。力で。がんじがらめに)。▼組み敷かれる(男に。遅くしい体に)。 **じせい【自制】**自制が(きく。働く)。怒りが湧いてきて自制がきかない。最後の自制と罪の意識が粉みじんになって崩れ散る=瀬戸内。自制に自制を重ねてきたものが腫れ物が破れるように滲にじみ出て拡がってくる大佛。怒鳴ろうとする気持ちと自制の意志が激しくせめぎあう~筒井。▼自制する(衝動を。想像を。欲心を)。自制心も何もあったものではない阿木。自制心を働かせる。 **じゅうあつ【重圧】**何百トンもあろうかという水を全身で浴びているような重圧"辻仁。制服の重圧から解放される=横山。心理的な重圧に耐えているような息苦しい表情"伊藤整。重圧を(はね返す。ものともしない)。精神的な重圧感がのしかかる。精神的な重圧感から解放される。 **せいする【制する】**▼制する(勝ちを。大乱心を。天下を。片手を上げて。低い声で。力をもって力を。長老の意見が一座を。とがめ立てる声を。毒をもって毒を。いらだった様子で)。 **つきつける【突き付ける】**▼突きつける(動かぬ証拠を。刀の切っ先を。最後通牒だかにつを。請求書を。挑喰状を。喉元に剣を。鼻先に指を。三行半以比べを。胸に刃物を。零点の答茶を。拳銃を脇腹に。銃を頭に。悪魔除けの護符を。決定的な証拠を。誰彼構わずマイクを。レッドカードを。証拠を目の前に。右手の人差し指を胸に。出刃包丁を胸倉へ=梅本)。▼つきつける(定説とされることに疑問を=高橋治。抜き身の刃先を相手の胸に=山本周。人間の正体をまざまざと=白井)。▶銃口を突きつける(鼻先に。額に)。▼ナイフを突きつける(首筋に。喉元に)。▼要求を突きつける(過大な。途方もない)。事実をまざまざと鼻先へ突き付けられる谷崎。 **つきとばす【突き飛ばす】**▼突き飛ばす(邪険に。力まかせに。乱暴に。力一杯)。思い切り突き飛ばされて派手に尻併しりをつく。有川。▼突き倒す(男の子を。女を。柱を。渾身にんの力をこめて)。組み付いてくる相手を突き放す。 **プレス**プレスで(圧延する。鍛造する)。▼ブレスする(鋼板を。ズボンを)。青銅を成型して像を作る。▼成型する(鋼板を。ブラスチックを)。 **プレッシャー**プレッシャーがかかる。プレッシャーに(抗する。耐える。負ける)。裸の肌に藪蚊やぶが群がってきたみたいにわっとプレッシャーに襲われる高橋。プレッシャーをはね返す。無言のブレッシャーをかける。無用のプレッシャーを与える。 **もみあう【揉み合う】**▼揉み合う(御興はこが。酔っ払いが。ぶざまな腰つきで)。もみ合って押し合いになる。▼揉み合わせる(手のひらを。指先を。両手を)。 **よくあつ【抑圧】**心理的抑圧を受ける。▼抑圧する(自由を。創造性を。被搾取階級を。政治的に。暴力的に)。競争社会に抑圧される。抑圧感を(解放する。消散させる)。 **よくし【抑止】**▼抑止する (戦争を。テロを。トラブルを。犯罪を。物価の高騰を。核兵器の拡散を)。抑止力として作用する。 **よくせい【抑制】**▼抑制する(長時四労働を。焼き餅を爆発の一歩手前で谷崎)。抑制力に欠ける。抑制力を(佻える。発揮する)。抑えがきいていて洗練された音色小川。自分でも抑えがきかないほどむかつく=高村茂。堪忍袋を抑えに抑える。抑えに抑えた河水が堤20っを決したように軍勢が雪崩れ入る菊池。抑えに抑えていた(憎悪が噴き出す。ものがほとばしり出る。口惜しさがどっと胸へつきあげる=山本周)。今まで抑えに抑えてきた激しい力。 <224> # 幼い **あかんぼう【赤ん坊】**▼赤ん坊(蟹かにのように泡を吹いている生まれたばかりの丸谷。やっと羽毛が生えそろったばかりのすずめの=飯田)。赤ん坊が(生まれる。揺り籠で眠る。おんぎゃあと泣く。伝い歩きを始める。耳をつんざくように泣く=姫野)。火がついたように赤ん坊が泣き出す=筒井。赤ん坊に(添え乳於ぇをする。似た甘い体臭。乳房をふくませる。毛の生えた程度の子供"小池)。おしゃぶりを赤ん坊に持たせる。赤ん坊の(お守りをする。首が据わる。しぐさに見とれる。笑顔が気持ちを隅々まで晴れ晴れとさせる"角田。関節は頼りなくて今にもはずれそうな気がする宮部)。桜の花びらのように薄くて頼りない赤ん坊の唇萩原來。百日紅の枝がすべすべして赤ん坊の肌のよう祁水。金色の産毛の生えた赤ん坊の肌のように擦こずれて傷つきやすい桃"阿部。赤ん坊を(母乳で育てる。産着にくるむ。ねんねこにくろむ。揺らしてあやす。あやすように微笑悲しみかける。古井。宝物を守るようにしっかりと膝の上に載せる=阿刀田)。ねんねこで赤ん坊を背負う。産着を着せる。湯を使う。祯褓っに包まれる。女は手のかかる赤ん坊のようなもの=大庭。赤ん坊のように無邪気に笑う。おとうさんの胸にすがって赤ん坊のように泣く灰谷。すやすやと赤ん坊のように眠る=室生。歩き立ての赤ん坊みたいな危なっかしさで駆けだす徳水。赤ん坊みたいに大きな口をあけて泣く=阿部。▼赤ちゃん(幼弱な。天使みたいにかわいい!小池)。丈夫な赤ちゃんが生まれる。赤ちゃんをこの世に迎える。乳飲み子を抱えた母親。乳児を保育園に預ける。年上の女性に保護されたいというベビー願望北村。ミルクの入った哺乳瓶识。赤子に(産湯を使う。添え乳をする)。赤子の力強い泣き声が響き渡る。つきたての併のような赤子の頬・三浦朵。赤子の手を(ねじるようにひねりつぶす!富岡。ひねるよりもたやすい=福永)。赤子のような安らぎを感じる荻野。嬰児以ぃ(猿のような顔をした=本庄。人形よりも小さな生まれたばかりの萩原棄)。股の上で鮮魚のようにぴたびたと要児が跳ねる"有吉。嬰児をあやすような仕種もぐに吉村。嬰児のように頼りなげな表情真継。気むずかしい嬰児のように微笑ひとつしない"司馬。 **いたずらっこ【悪戯っ子】**いたずらっ子のような(茶目っけに富んだ行為"志茂田。目つきになって笑う戸板)。いたずらっ子のように口をすぼめる=奥田。悪戯小僧ごひげのように顔じゅうをくしゃくしゃさせて泣き笑いをする=今日。嬉しくてたまらない悪戯小僧のように笑いを殺す!宮本貞。悪童が悪さをする。蜘蛛くもの子みたいにばたくさと悪童たちが逃げる=吉川。子供の頃はガキ大将でさんざ手こずらせた弟連城。餓鬼大将の位置を乗っ取る。泣きべそをかいた餓鬼大将みたいな顔"五木。 **おさない【幼い】**幼い子供を抱える。街路樹がかすかに幼い緑の葉をつけはじめる=吉本。木もれ陽のなかをつんのめるように走って行く幼い後ろ姿干刈。実際の年齢より幼く見られる。幼くして母と死に別れる。初々しいというより幼さが目立つ半村。▼幼さが残る(顔立ちに。早口に呼びかける話し方に=黒井)。自分の幼さに思い当たる。幼心にも悲しいと感じる。幼心を呼びます。年端吐しの行かぬ(少女。少年)。年端も行かぬ子供。幼少の面影をとどめる。險結ぶの裏を幼い日の姿が次から次へと行列をつくって通って行く黒井。幼い日を思い出す。有無を言わさず摘み取られてしまったような幼い日を手繰り寄せる=辻井。幼い頃(無邪気だった。物心のつかぬ。記憶もないような)。幼いころから言葉に興味があった三浦し。幼い頃に両親と死に別れる。幼い頃の思い出が薄くなる。小学校に上がるか上がらないかの頃。少時より画才をあらわす。幼時の記憶がよみがえる。幼少期から家庭的愛情に恵まれずに育つ"網淵。幼年時代の(追想にふける。思い出が心によみがえる)。 **おてんば【お転婆】**手のつけられないお転婆。お転婆な女の子。おとなしい姉に引き換えお転婆な妹。野放しに育っているお転婆娘―佐多。おきゃんな娘。川育ちのおきゃんな気っ風が頭をもたげる=船山。はねっ返りの女房にけしかけられる=なかにし。 **こ【子】**▼子(フライパンの上でハネるゴマ粒のように元気な"干刈、マザーコンプレックスのかたまりのような=丹羽)。子が子であれば親も親。子に恥じぬ人生を送る。老いては子に従え。お腹の子に悪い。▼子に育つ(元気で明るい。強く雄々しい)。かわいい子には旅をさせろ。子は天からの授かり物。一子を(挙げる。もうける)。子宝に恵まれる。子玉を授かる。子連れで(結婚する。旅行する)。子女を教育する。 **こども【子供】**子供(血のつながった。こまっしゃくれて小憎らしい=井上靖。さえざえしたピンクの薔薇ばらのような=田辺。涙がこぼれるほど可愛い=有吉)。右も左もわからない子ども=熊合。熱と湿気を多量に帯びた子ども特有の匂い若竹。子供が(すくすく仲びる。母親の腰にまつわりつく。利発そうにうなずく。すねるようにブイと横を向く"石坂。駄々をこねるように体を揺する=奥田)。子どもがすばしこいりスのように走りまわる=飯田。珠のような子供が生まれる三島。子供から手が離れる。人を子供だと思ってばかにするな”住井。子供であろうと容赦しない。子供なりにあれこれ考える。子供に絵本を読んでやる。ほんの子供にすぎない。子供の(教育に熱心。自主性を重んじる。将来に夢を賭ける。成長を楽しみにする。使いみたいに何の役にも立たない宮本郷)。ギヤアッという火のついたような子どもの泣き声が響く=大原。勉強勉強と子供の尻を叩く。子供は風の子。子供を(膝の上に抱く。置き去りにして雲隠れする。健やかに育て上げる。あやすような言い方中沢。一人歩きさせているような心許ににっない感じ谷崎)。大声で子供を叱りつける。軽々と子供を抱き上げる。床の上に人形を置くように子供を坐すゃらせる高井。未来を生きる子どもたち。子供たちがてんでんばらばらにおしゃべりしている騒々しさ=島尾。三々五々子供たちが校庭に飛び出してくる=貫井。子供らの声が感喚符を打ったように浮かんで残る=庄野。愛の結晶。子供のような(あどけない仕種しく=黒井。嬉々ききとした表情=内海。熱心さで遊戯に耽ふける"佐藤谷)。すねた子供のような口調!佐藤多。ひいひいと子供のような泣き声を立てる=村上元。子供のように(甘える。こっくり領ちょく。にこっと笑う。無邪気になってはしゃぐ=軍司)。わあわあと子どものように泣く。当てにしている以上の小遣いを貰った子供のように戸惑う。中村真。甘いものを見た子供のように貪欲になり前後を忘れる"有鳥。悪戯れを見破られた子供のように具合悪そうな顔をする=小林何。可愛い子供のように大切にしてきた釣り道具"伊集院。言葉を覚えたての頃の特別におしゃべりな子供のように覚えたばかりの車種の名を口に出していく谷村。母親に抱かれた子供のように前後を知らず深い眠りに落ちる=掘。人にほめられるのが子供のようにうれしくてたまらない=坂口。人見知りする子供のように黙りこくる=小川。無器用で手の掛かる子供のように目の放せない夫大佛。むずかる子供のように地だんだを踏む=有房。ものに驚いた子供のように眼を見張る=石坂。両手を打ち合わせて子供のように喜ぶ=中村長。子供みたいに(かわいらしいところがあるお母さん=壺井。泣いてくやしがる=高樹)。 <225> # 幼い-72 聞きわけのない子どもみたいに頭を振る"阿刀田。頭から子供扱いされる。物心ついた(頃の記憶。ときから親を知らない)。物心ついてからずっっと続く。物心つかぬ幼い頃 **こどもごころ【子供心】**子供心に(覚えている。悲しむ)。無垢もくな子供の心。無垢な童心の発露。いつまでも章心を失わない。 **こどもっぽい【子供っぽい】**頬のあたりがふっくらとして子供っぽい=中沢。年齢にふさわしい子どもっぽい表情"あさの。周囲から子供っぽいと言われる。子供っぽく(頭をかく。大げさに喜ぶ。かぶりを振る)。爪先で子供っぽく床を蹴る=原田康。子供っぽさの残った顔立ち。素朴な子供っぽさを発散する。子供じみた(考えを抱く。歓声をあげる。悲鳴をあげる。夢が挫折する。たわいもない夢=高井)。ひどく子供じみた仕草。ふっと子供じみた恐怖を覚える。きゃあと子供じみた声をあげる=黒井。物分かりの悪い子供じみた正義漢!浅川。子供らしい(好奇心。甘えたような口の利き方)。誰の眼にもあからさまな不安を肩肘張って強情に押し隠そうとする子供らしい虚勢"高井。児戯に(類した企て。類する戦法)。大人気ない(態度。やり方)。ささいなことを騒ぎ立てるのは大人気ない。警官が大人気なく学生を連行する"大佛。 **ちゃめ【茶目】**瞳に子供っぽい茶目な光が浮かぶ福永。顔を茶目にしゃくってみせる=野上。お茶目な(子。人)。茶目っぽく笑う。 **どうじょ【童女】**童女のような(声と口調。あどけない微笑を浮かべる老女=阿部)。童女のように(まるく肥ぶとる。澄みきった単純なそれでいてみつめられたものをまどわせるような硫、永井路)。瞳を童女のように輝かせる=高橋三。 **ひな【雛】**維が(孵がえる。果立つ。親を求めて鳴く)。餌を求める雛のさえずり。雛を育てる。雄のように(うずくまり抱かれたまま眠る“長野。たがいにからだをくっつけて桜をとる=阿川弘)。親鳥の餌を待つ雄のように口をポカンとあけている"阿久。雛鳥が巣から落ちる。食べてもらえるだけで嬉しいという目付きには雛鳥に餌を与える母鳥の風情がある荻野。ヒヨコが卵からかえる瞬間を見ようとしているように期待に満ちた目をする宮部。ひよこの雌雄を鑑別する。ひよっこの頭くびを絞めるよりたやすい茶川。やんちゃな(男の子。子供)。やんちゃぶりやんちゃを発揮する。腕白な男の子。手に負えない腕白小僧。腕白小僧とお転婆娘。腕白ざかりの少年。腕白ぶりを発揮する。 **ようじ【幼児】**幼児が(いやいやをする。よちよちと歩く)。無邪気な幼児の寝る。強く触れれば破れてしまいそうな幼児の唇竹西。萩の葉のふくらみを思わせる幼児の肌竹西。幼児を保育聞に預ける。眠った幼児を胸に押しつけるように抱く三浦哲。幼児のように(あどけないあこがれ=川端。澄んだどことなく酷もこい笑い声古井。頼りない眼差し=光瀬。泣きながら眠り込む!高橋三。眼をまるくする=大江)。緊張と期待で幼児のように震える=光瀬。言葉を知らない幼児のようにやきもきして涙ぐむ!大江。褥札とに包まれて眠る幼児のように安らかな死に顔「高橋和。大事なものを取り上げられそうになった幼児のようにあとずさりする灰谷。肌が幼児のように柔らかでつやがある人倉橋。母親にまつわりつく幼児のように哀願の声が続く!遠藤。無防備な寝顔が幼児のようにあどけない三浦穹。保育に欠ける乳幼児。幼児さながらに首からナブキンをかける=北。幼子のように無邪気。小児性が表面に出てくる。小児のように邪気がない。小児病的な冒険主義。幼稚園児に言うような口調。幼稚園に(通う。入る)。 <226> # 教える・学ぶ **おうぎ【奥義】**▼奥義(学問の。武芸の。兵法の)。奥義を会得する。柳生心陰流を学んで奥義を受ける"隆。奥義秘伝をあますところなく授ける=中局。蘊奥のル(学問の。哲学の)。奥秘を(極める。伝授する)。極意を(悟る。伝授する)。秘伝の(裂法。妙薬)。 **おさめる【修める】**▼修める(学業を。技術を。正規な学問を)。修学に励む。修学の道を踏む。履修する(一般科目を。教職課程を。専門科目を)。 **おしえみちびく【教え導く】**▼教え導く(信者を。迷える者を)。▼教化する(学生を。同胞を。民衆を。同じ思想に)。▼教導する(信者を。懇切に。厳しく)。善導する(精神を。若者を)。 **おしえる【教える】**▼教える(絵の描き方を。男の味を。一から。手順を細かく。手取り足取り。身をもって。市場の裏の動きを。商売のいろはを。現実の醜悪さを衝撃的に。マンツーマンで)。教えることは学ぶこと。歴史の教えるところ。いやというほど教えられる。教え方が(うまい。上手。下手。悪い)。先輩からさんさん教え込まれる。▼教えこむ(基礎技術を。口を酸っぱくして=森尻)。ありがたい教えを日夜説く。垂れる(訓示を。校長が訓辞を。縷々るっとして教えを)。教示する(技術を、こつを。懇切に)。教授する(点茶を。大砲の取り扱い方を)。母校の教壇に立つ。・教鞭心に、うを執る(大学で。母校で)。講師を務める。▶講読する(原書を。古典文学を。文献を)。示教を(仰ぐ。請う)。みっしり芸を仕込む。▼指南する(剣術を。素読を。武芸を)。レッスンをつける。手品の種明かしをする。種を割ってみれば。 **おそわる【教わる】**▼教わる(新しい言葉を。読み書きを。捜査のいろはを)。▼受ける(薫陶を。個人教授を。多大な教えを。手ほどきを。有形無形の蒸陶感化を)。直接教えをいう。師事する(教授に。作曲家に。先生に。有名な作家に)。 **がくしゃ【学者】**▼学者(研究熱心な。新進気鋭の。俗臭芬々ぶんたる。当代一流の。世に知られた。誠実で良心的な。世界的に高名な。自由な考え方をする。むずかしそうな言葉をばらまく割には根が軽薄な倉橋。学問の垢ぁかだらけの高橋治)。有能な学者の卵。▶科学者(天才的な。優秀な。新進の)。学者らしい重々しい口調"柴田翔。取るに足らない砂がはたる青年学徒"松本。学究の徒。真面目な学究肌で書物の虫。世間知らずの学究肌の人間"開高。 **がくせい【学生】**学生(真面目な秀才型の。およそ垢抜かけのしない身なりの平野)。優秀な学生に奨学金を出す南木。学生の分際には過ぎた料理三浦失。ゴミ捨て場を漁ぁきる鳥からは好奇心の旺盛な考古学の学生のよう“山本昌。色とりどりのファッションに身をかためた学生たち『三田。キャンバスに学生たちがあふれている。学生運動に首を突っ込む。全力を挙げて学生運動に打ち込む。勇敢に学生運動に飛びこむ=瀬戸内。学生気分が抜けない。学生時代の(一時期を思い出す。街に足を向ける)。久しぶりに学生時代の友人と会う。▼学生生活(有意義な。のんびりした)。淵藪认の地に集う学徒。敗戦間際に学徒出跡する。青二才の書生談義。 **がくもん【学問】**付け焼き刃の学問。学問から遠ざかる。学問で(名を上げる。身を立てる。衆に抜きん出る)。学問に(王道なし。興味を失う。執念を燃やす)。切磋琢磨にいきして学問に励む。学問の(師と仰ぐ。造詣が深い。嗜欲しみがある。道に分け入る。道を極める。世界を築き上げる)。未到の学問の沃土に足を踏み入れる=菊池。学問の自由を(蹂躙うする。擁護する)。学問を(冒漬はぐする行為。実践の道に当てはめて説く"舟橋)。学問技芸を身につける。学問的業績に乏しい。学問的業績をあげる。学問的に(裏付ける。立証する)。アカデミックな(学風。議論。研究)。学芸に志す。少時より学に親しむ。才学豊かな人。才学に秀でる。諸学に通じる。まるで哲学者のように思慮深く見える=山本昌、哲学を実践に移す。自分の哲学を持つ。晩学の(志を褒める。人)。学術に心を傾ける。学術の進歩を図る。学術的な(概念。価値。成果)。文武に(優れる。富む)。文武の(誉れが高い。道に励む)。文武両道で好成績をあげる。文武両道に秀でる。 **がくりょく【学力】**学力が(高い。伸びる。低い。不足する)。学力に合った公立高校を選ぶ。学力の低下を嘆く。学校の成績だけで人円を測ってはならない佐高。抜群に学校の成績がいい。 **がくれき【学歴】**学歴が(高い。低い)。学歴のいかんによらず。さしたる学歴も技能もない。学歴を(偽る。鼻にかける)。 **がっこう【学校】**学校から(飛んで帰る。連絡を受ける)。子供をいい学校に入れる。上級の学校に進む。寝過ごして学校に遅れる。学校を(ずる休みする。出たてのほやほや)。裏口から学校を出る。かろうじて学校を卒業する。学校教育が荒廃する。▼学風(官学的な。反官学的な。質実剛健の)。校歌の作詞を頼まれる。校内をくまなく探しまわる。▼松自由な)。塾に通う。塾を開く。職員室に行く。全校の話題をさらう。校則違反で停学させられる。停学処分を受ける。学びの(図。庭。窓)。夜学に通う。夜学の(高校。大学)。 **きょういく【教育】**教育に(金をかける。力を入れる。熱心な母親)。専門的な教育を受ける。適切な教育を施す。▼教育する(国民を、新人職員を。若者を。成長中の世代を。子供を人並みに)。教育的な(効果。配慮)。 <227> # 教える・学ぶ-73 教育熱心な先生。堂々たる教育論を展開する。体系だった高等教育を受ける。 **きょうかしょ【教科書】**分厚い教科書と格闘する。教科書の(編集に従事する。隅から隅まで頭に入っている=飯田)。参考書を(読む。ばらばらとめくる)。学生が授業で使うテキスト。声を出してテキストを読む。 **きょうぎ【教義】**教義を(説く。広める)。教理を(説く。学ぶ)。ドグマを(持する。主張する)。 **きょうくん【教訓】**土壇場でしくじった者の数多の古来の教訓が頭の中に渦巻く安岡。偉そうに教訓を垂れる。貴重な教訓を引き出す。事件から教訓を汲み取る。失敗の教訓を生かす。教訓的なエビソード。先祖の遺訓を守る。▶戒め(親の。先人の。前車の覆るは後車の)。神の教えに背く。▼教えに従う(親の。祖先の)。教えを(忠実に守る。金科玉条とする)。家訓に(従う。背く)。家訓を守る。頂門の一針ともいうべき(教訓。言葉。批判)。 **きょうしつ【教室】**教室が鳥籠みたいにざわつく岡田。さわついていた教室が少しずつ静かになる。脱兎だっのごとく教室から飛び出す谷川。教室の空気が(いっぺんに明るくなる。一瞬にして凍りつく飯田)。講義をきく教室のような静謐でひな場所=円地。教室中に(緊張感が広がる。さわめきが起こる。聞こえるような大きな声=重松)。 **クラス**クラス(上級の。初級の)。別のクラスに編入する。クラス委員を務める。学級の担任。インフルエンザで学級閉鎖になる。▼進級する(専門課程に。一級ずつ。二年生から三年生に)。 **けいこ【稽古】**稽古に(力を入れる。熱を入れる。身が入らない)。お針の稽古に通う。三味線の稽古に精を出す。たっぷり稽古に汗を流す。熱心に稽古に励む。稽古を毎日続ける。▼稽古する(運転を。踊りを。ピアノを)。▼稽古をする(謡の。乗馬の)。出稽古に(来る。出かける)。出稽古をお願いする。師伝なしの無茶苦茶なひとり稽古海音寺。習い事を(楽しむ。始める。やめる)。手習いに(気を入れる。熱を入れる)。恋の手習いにふける。文字を手習いする。 **けいもう【啓蒙】**人々を啓蒙する。蒙もうを啓ひらく。分かりやすい啓蒙的な文章。▼啓発する(国民を。読者を。自らを)。▼啓発される(講義に。本に)。 **けんきゅうしゃ【研究者】**▼研究者(独創的な。良心的な。在野の。少壮の。第一線の。天才肌の)。若い研究者の芽を摘む=高橋克。ばりばりの若手研究者。 **けんしゅう【研修】**新人研修が終わる。研修に出される。研修や講演でひっぱりだこ。非人間的な研修を社員に押しつける佐高。 **こうがくしん【向学心】**向学心が強い。向学心に(富む。満ちる。燃える)。向学の(志。念)。蛍雪の(功を積む。功成って大学を卒業する)。篤学の(研究者。士。青年)。 **こうぎ【講義】**講義が熱を帯びる。▼講義する(経書を。社会問題を。蘊蓄らいを傾けて)。ゼミが開講する。▶講座(初学者を対象とした。定期的に開かれる)。哲学を講じる。進講する(皇太子に。藩王に)。 **こうこう【高校】**部活の活発な高校。高校で長年英語を教える。高校に(合格する。在学する。入学する)。高校を中退する。地元の高校を出る。黒い制服姿の高校生。ミッション系の品の良い女子高"村上春。 **さとす【諭す】**▼諭す(心得を。懇々と。淳々にゅんと。悪戯か父の過ぎた幼児を。言葉を尽くして不心得を。年長者が目下の者を。やめておいたほうが無難だと"熊谷)。ルール違反をした初心の選手を審判が諭すような口調"北村。優しく論すように言う。▼教え諭す(子供を。生徒を)。教え諭すように言って聞かせる。▶説諭される(教師に。警察で)。懇々と説諭する。 **しどう【指導】**▼指導(実態に見合った。マンツーマンの)。学生の指導に当たる。指導の先頭に立つ。直接指導を受ける。指導する(具体的に。懇切丁寧に。手取り足取りで。特に目をかけて)。指導方法を考える。コーチとして頭角を現す。コーチを務める。非行少年を知導する。 **じゅぎょう【授業】**授業が(終わる。開講する。休講になる。始まる。上の空で過ぎて行く柴田翔)。授業に(身が入らない。ついていくのに必死)。新たな気持ちで授業に臨む。補習の授業を受ける。学生の実習に付き合う。料理の実習をする。レッスンを(受ける。予約する)。新学期が始まる。新学期の緊張がやわらぐ。 **じゅぎょうりょう【授業料】**授業料の値上げに反対する。高い授業料を払う。学資に困る。学資を援助する。学費を親の仕送りに頼る。月謝を払う。 **じゅこう【受講】**受講を(希望する。申し込む)。講義を(受ける。聞く)。講習会に参加する。講習を受ける。机を並べて聴講する。 **しょうがくせい【小学生】**小学生が遠足に出かけるように従順に列を整える=宮本解。仔犬のような小学生たちと遊戯をする=阿川弘。小学校に上がったばかりの女の子=東野。達する(子供が学齢に。就学年齢に)。元気な小学生のように直立しているベニス松浦。ランドセルに(教科書を入れる。宿題を入れ忘れる)。 **じょしがくせい【女子学生】**表情が女子学生のように活潑に動く=辻井。セーラー服の女学生。女学生同士のような他愛もないお喋り(連城。女学生特有の甘い夢を見たような手紙"有吉。あどけない顔つきの女子高生。反抗期の女子中学生顔負けの素行の悪さ=局田。 **しんがく【進学】**子供の進学に金がかかる。進学を(志す。断念せざるを得ない)。▼進学する(高校に。大学に)。教授から大学院進学を勧められる=綾辻。 <228> # お **せいと【生徒】**生徒(優秀な。頭のいい。出来の悪い。目立たない)。生徒に(付き添う。にらみが利く)。生徒の自主性を重んじる。躍起となって生徒の大量獲得を急ぐ"井伏。立派な生徒を世に送り出す。生徒を集める(講堂に。安い月謝で)。先生に叱られた生徒のようにそそくさと出ていく=内海。宿に着いた修学旅行の生徒のようにひとしきりザワめく小林多。児童(学齢期の。就学期の。就学前の)。児童向けの(図書本)。 **せっきょう【説教】**▼説教(抹香臭い。教会の全聴衆を泣かせるほどの激しい"伊藤整。教師として不穏当な内容の"光原。総理大臣の訓辞みたいな=白井)。余分な説教などしないほうがさっぱりしている=加太。説教に耳をかたむける。したり顔で説教をたれる。くどくどとお説教をする。説教する(神父が。えらそうに。子供に。口うるさく。みっちりと。老婆心ながら)。牧師が説教しているような演説"西木。お説教じみた口を利く。味もそっけもないお説教風な言葉=石森。部下を集めて訓示する。精神訓話を話す。 **せんせい【先生】**▼先生(評判のいい。生徒に人気がある)。先生に(言いつける。目をつけられる)。先生の(受けが良い。言葉に従う)。師事する先生を得る。先生たちが一丸となって生徒指導にあたる=飯田。真面目くさった学校の先生みたいな顔「連城。恩師に心服する。恩師の温情に感泣する。大学教授という社会的な肩書"小林久。教授の位置に昇りつめる。教職に就く。教職の道を目指す。大学院を出たての講師。多士済々の講師陣。師匠を実の親のように姿へ。中。師弟関係が厳しい。師父と仰ぐ。師父の恩。師父を敬愛する。老師が手ずから入れたお茶。直立不動の腰を深々と折って老師に挨拶する武田炎。▼教師(常々尊敬している。いつも生徒となっている猛獣使いのような富岡)。苟いぐも教師たる者のすることではない。教師としてあるまじき行為。教師らしい風格を漂わせる=高樹。家庭教師の口が見つかる。息子に家庭教師をつける。▼教員(高校の。大学の)。教貝生活を送る。大学の教官。教師ぶりが板につく。師から弟子へ受け継がれる。師と(敬う。仰ぐべき人物に巡り合える)。師の(歩みに倣う。教えを体する。温容に接する)。三尺さがって師の影を踏まず。師の言葉を(金科玉糸とする。自分流に咀嚼にしする)。▼師匠(お茶の。華道の)。師匠が出稽古に来る。師匠と肩を並べる。師匠の(名代として出席する。温かい思い遣りが痛いほどありがたく胸にしみる=山本周)。 **ちゅうがっこう【中学校】**中学校に(通う。入学する)。新任教師として中学校に赴任する=池井戸。中学時代を懐かしく思い出す。中学に入る。中学を出る。中学生(食べ盛りの。生意気ざかりの)。 **でし【弟子】**弟子を教え導く。弟子(子飼いの。直系の。秘蔵の)。弟子に取り立てる。弟子を(育てる。破門する)。親方の命令で働く徒弟。徒弟奉公に上がる。門下に俊秀を集める。門人となって日が浅い。門人に稽古をつける。門弟二百余を数える。教え子が訪ねてくる。教え子に囲まれる。教え子の誘惑に乗りかける光原。 **でしいり【弟子入り】**弟子入りを(願い出る。許す)。▶弟子入りする(師匠に。職人に。名人に。親方のところに)。門を叩いて教えを請う。▼入門する(相撲部屋に。有名な先生に)。捌きばき切れぬ入門希望者の数に辟易する=高橋克。 **そつぎょう【卒業】**卒業の運びに漕ぎつける。卒業を(間近に控える。目前にする)。▼卒業する(高校を。大学を順調に。お情けで。首席で。優秀な成績で。そつなく学校を。理科系の学部を)。卒業して(十年以上経つ。一刻も早く自活する)。卒業後直ちに上京する。卒業式を目前に控える。卒業証書を見せびらかす。▼修了する(全学課を。全科目を。大学院を。博士課程を)。 **だいがく【大学】**▼大学(広大なキャンバスを持つ。社会に開かれた万人の。滑り止めで受けた)。大学からこっちずっと一人暮らし。大学で(研究を続ける。専門に分かれる)。大学に(勤務する。合格する。籍を置く。休学届けを出す)。子供を大学に入れる。自宅から大学に通う。大学に入る(一浪して。現役で。首尾よく希望の)。大学の(職を辞する。学費値上げに反対する)。大学の自治を(蹂胴にいうする。守り通す)。大学を放校になる。あっさりと大学をやめる。同じ大学を出た誼ょしみ。苦学して大学を出る。留年を繰り返しようやく大学を卒業する=篠田。学問の府。独善的で狭い象牙の塔。大学院に進む。大学公認のサークル。大学時代の友人。大学進学を(諦める。機に上京する)。大学出の若い社員。大学出を(鼻にかける。ひけらかす)。学内きっての切れ者。都内の中堅どころの私大に入る。短大に入学する。学位を(取得する。授与する)。博士号を取得する。大学生(真面目な。文系の。理系の。繁栄のおこぼれを頂戴さにうして遊びほうけている=加賀)。 **てびき【手引き】**手引き(学習の。入門の。初学者のための)。盗みの手引きをさせる。説明書を読む。マニュアルと首っ引きで作業する。マニュアルに頼る。マニュアルを覚える。操作マニュアルを読む。マニュアル通りに作業する。 **てほどき【手ほどき】**▼手ほどき(囲碁の。恋の。商売の)。▼手ほどきする(遊びの味を。初歩を。親切に)。 **といてきかせる【説いて聞かせる】**▼説いて聞かせる(意味を。関係を。雄弁に。懇々と)。檀徒に説法する。説法を受ける。 **どうじょう【道場】**道場が手不足になる。道場で(三羽烏だんがと呼ばれる三人。竹刀を振りまわす)。道場に(通う。姿を見せる)。道場の(代稽古をつとめる。天狗と噂されるほどの腕前船山)。 <229> # 教える・学ぶ-73 小さな道場を構える。大道場の主にふさわしい威容をそなえる=池波。雨の日も風の日もただ一筋に道場通いに打ち込む"船山。稽古場に通いつめる。稽古場を弟子に任せる。 **どうそう【同窓】**同窓会で再会する。同窓会に顔を出す。同窓のよしみ。母校の同窓会。卒業生が集う。母校の(出身者を推す。先輩)。 **ならいおぼえる【習い覚える】**▼習い覚える(絵の道を。漢字を。仕事を。一生懸命)。習得する(外国語を。科学の方法を。技術を。知識を。最新の技術水準を)。▼ものにする(英会話を。語学を。師匠の芸を自分の)。 **ならう【習う】**▼習う(英語を。お茶を。踊りを。お花を。琴を。バレエを。ピアノを。フランス語を。洋裁を。読み書きを。包丁の使い方を)。習うより慣れろ。▼独習する(英語を。ギターを。ピアノを)。 **にゅうがく【入学】**▼入学する(進学校に。専門学校に。大学に。無試験で)。入学式がつつがなく終了する。入学式を数日後に控える。入学手続きを済ませる。入学金を(納める。払う)。東俯呼ぶしを(納める。差し出す)。 **ふくしゅう【復習】**授業の復習をする。四十八手を復習する。さらう(教科書を。奨を。素読を。長唄を。譜面を)。▼おさらい(授業の。謡曲の)。もう一度おさらいをする。▼おさらいする(一から基本を。習ったことを)。 **べんきょう【勉強】**勉強が(手につかない。そこそこできる)。一向に勉強が進まない。何によらず勉強が肝腎永井荷。勉強に(気が乗らない。精を出す。本腰を入れる。身を入れる。張り合いが出る)。いい勉強になる。好奇心を勉強に振りむける。一から勉強をし直す。本格的に勉強を始める。▼勉強を続ける(毎晩一人で。真面目に自分の)。勉強勉強と(うるさく言う。子供の尻を叩く)。勉強する(気が出てくる。気をなくす)。▼勉強する(一生懸命に。一心不乱に。地道に。いろはから。がりがりと。ねじり鉢巻で。身を入れて。ビジネスのノウハウを。寸陰を惜しんで。机にかじりついて)。▼勉強をする(血のにじむような網淵。わずかな暇をぬすむようにしてこつこつと独りに山本周)。勉強すればそれだけ成績も上がる。大学の受験勉強が佳境に入る。受験勉強に打ち込む。勉強一途に励む。猛勉強する(試験のために。合格するために)。猛烈にがり処する。▼自習する(課題曲を。静かに)。▼予習する(授業の内容を。手順を)。こつこつと予習と復習を積み重ねる。学業が(優秀な生徒。おろそかになる)。学業に(励む。見切りをつける)。学業の(研鑽却从を終える。志が挫くじける)。学楽をなげうって国許にに帰る。経済的な理由で学業をあきらめる。初歩からこつこつと学習を重ねる=内橋。▼学習する(外国語を。漢字を)。宿題がたまる。どっと宿題が出る。宿題に追われる。宿題を終える。勉学に(明け暮れる。いそしむ)。懸命に勉学に励む。寝食を忘れて勉学する。何物にも煩わされぬ勉学三味の毎日"井上崎。 **ほいくえん【保育園】**子供を託児所に預ける。保育園に(入所する。幼児を預ける)。保育園に子供を送り届ける。幼稚園の送り迎え。 **まなぶ【学ぶ】**▼学ぶ(生きた英語を。学間の基礎を。生活の知恵を。対処の仕方を。料理の手順を。偉人の知恵に。古人の考えに。歴史の教訓に。記録のつけ方を。自然の仕組みを。ひと通りのことを。他人の失敗から。苛酷な現実精神を身をもって「中島敦)。学ぶに足る人物。苦学力行の士。▼学び取る(駆け引きを。技術を。教訓を。リアリズムを)。独学で学者になる。英語を独学する。門前の小僧習わぬ経を読む=丹羽。研鑽却从に(努める。励む)。研鑽を積む。諸学を研鑽する。 **みならう【見習う】**見習う(先人のやり方を。人のやり方を。いい頭に。人人たちのぐり方を)。見習うべき手木。見習わせる(家業を。家事を。商売を)。爪の垢ぁぁを煎じて飲ませたい。驥尾きびに(つく。付する)。 **リーダー**▼リーダー(控え目な。時代の創造的)。リーダーを選ぶ。指導的立場に立つ人物。各界のオビニオンリーダーを揃える。幻想文学の有能な旗手として立つ。指導者を育成する。社会の木鐸始化。天下万代の木鐸としての使命に目覚める=中島敦。▼名将(古今無類の。知勇兼備の。名にし負う。文武に名を得た)。名将の名をほしいままにする。先達に学ぶ。先達の(教えるところ。経験を踏まえる)。 **リーダーシップ**▼リーダーシップ(果敢な。強い)。リーダーシップに欠ける。リーダーシップを(取る。発揮する)。▼指導力(教祖的な。天才的な)。指導力が(陰る。問われる。不足する。試される正念場)。指導力の欠如を暴露する。 **りゅうがく【留学】**留学を終えて帰国する。▼留学する(外国に。国費で。自費で。社費で)。一年半に亘る留学生活を終える若竹。留学生を受け入れる。▼遊学する(海外に。外国に。故郷を出て)。 **れんしゅう【練習】**練習がきつい。練習に(油が乗る。打ち込む。精を出す。熱が入る。没頭する。身が入らない。余念がない)。一生懸命練習に励む。練習の成果を試す。練習を(黙々と続ける。途中で切り上げる)。・練習する(使い方を。発声を。いい加減に。熱心に。反復して。本腰を入れて。校庭に一人残って。歯をくいしばって。ひまを盗んでは。血のにじむ思いで=氷室)。まじめにこつこつと反復練習をする=飯田。猛練習が実る。猛練習でへばる。習作を(書き溜める。重ねる)。習練に励む。習練を(怠る。積む)。▼リハーサル(運動会の。劇の)。リハーサルに立ち会う。リハーサルを繰り返す。 <230> # 遅い・早い **あっというま【あっという間】**あっという間に(月日が過ぎる。夏休みが終わる)。急性肺炎にかかってあっという間に亡くなる=新田。呆気怖っないほどあっという問の出来事-鷺沢。またたく間に(時が流れる。評判になる。金を使い果たす)。頭の中でまたたく間に計算が成立する=小池。噂がまたたく間に町を駆け抜ける。歳月がまたたく間に過ぎる。資金をまたたく間に食いつぶす。 **いちもにもなく【一も二もなく】**一も二もなく(賛成する。承諾する。話に飛びつく。否定せざるをえない。獄へと投げ込む=山田美。すぐに話が決まる=佐藤愛)。 **いっきに【一気に】**一気に(杯を空にする。雌雄を決する。怒りを爆発させる。都へ攻めのぼる)。一気呵成に(書き上げる。仕上げる)。一瀉千里心しょとも言える濃密な発明の記録が続く。内橋。一瀉千里に書きまくる。一瀉千里の勢い胡桃沢。 **いっしゅん【一瞬】**一瞬(答えに詰まる。狼狽らが走る。あたりが暗くなる。息が止まりそうになる。微笑が凍りつく。何かを期待するように胸が騒ぐ=有川)。▼一瞬(永遠のように長い!柴田翔。背筋が凍りつくような=永倉)。電光が一瞬ひらめいて消え去る。張りつめた表情が一瞬ゆるむ。一瞬に永遠をこめようとする=竹西。一瞬の(差で難を逃れる。間をおいて答える。油断もならない危機!高橋治)。風のように来て風のように去ったという形容がそのまま当てはまるほど一瞬の出来事"墨石。ぼんやりしていると見逃してしまいそうなくらい一瞬の動作「小川。秒を(争う。競う)。ほんのわずかな時間。一瞬間呆気協っに取られる。人々が瞬時ざわめきすぐに鎮まる。瞬時の幸福に酔う。恋も生き方も花火のように刹那にっ刹那で行く男」吉川。たまゆらの(歓喜。時間)。一目見た刹那たじたじとなる。通り過ぎようとする刹那に思わず呼びかける=中村真。刹那的な享楽気分。 **いまさら【今更】**今更(悔いてみてもお笑いぐさ=高井。責めたところで詮ない話!斎藤栄)。今さら(後へは引けない。改めて問う必要はない。言えた筋合いではない。言ってみても始まらない。いやとは言えない。嘘をつく必要もない。驚くには当たらない。談論する気になれない。悔やんでも追いつかない。説得するのはとうてい無理。どうのこうの言うつもりはない。逃げ隠れしない。引っ込みがつかない。他へ移せとも言いにくい。欲しいとは思わない。元に戻すことはできない。何を言っても弁解になるだけ“高橋克)。約束をいまさら破るわけにいかない=池波。何を今さらという思いが募る。頼んだものを今さら要らないとは言いかねる=河野。今さらに驚いている迂闊らかさ。 **おくらせる【遅らせる】**▼遅らせる(時計の針を。なんだかんだと言って離婚を=丹羽)。遅くする(歩みを。回転速度を。時期を。発火を)。▼遅延させる(調査の日を。本国帰還を)。月遅れのお盆。 **おくれる【遅れる】**▼遅れる(一旬近く花が。気づくのが。救援の手が。仕事の期日に。締め切りに。終電車に。大事な会議に。待ち合わせに。門限に。約束の刻限に。一拍。一呼吸。予定より。ほんの一瞬言葉が。果たし合いの時刻に。原稿がすっかり。定刻より二十分。返事がワンテンボ。警察の出動が大幅に。有川)。大幅に遅れる(工事が。着工が)。一歩遅れて歩き出す。少々遅れて到着する。少し遅れて笑いに加わる。半歩遅れてついて行く。一足遅れて店を出る。集まりに遅れて来る。遅れが出る。帰宅の遅れが気にかかる。対応の遅れが指摘される。判断の遅れが致命傷になりかねない。▼遅れがちになる(仕事が。払いが。ともすれば)。遅れがちの仕事を片づける。死に遅れる(夫に。妻に)。▼出し遅れる(お礼の品を。年賀はがきを)。火事で逃げ遅れる。▼乗り遅れる(時代に。終電車に。バスに)。延着する(定期便が。電車が。飛行機が)。▼遅くなる(足取りが。帰りが。帰宅時間が。残業で帰宅が。進み方が。動きが見る見る)。▼遅滞する(工事が。支払いが。発達が)。▼遅配になる(給料が。支払いが)。後塵にいを拝する。対応策の遅延が目立つ。思いもかけぬ事故によって遅延を余儀なくされる=隆。▼遅延する(回答が。完成時期が。作業が)。 **おそい【遅い】**遅い(昼食をとる。春が始まる。朝食をおそい済ませる)。▼遅い(足の運びが。今年は桜が。時間の流れが。父の帰りが。思いのほか治りが。帰宅が相変わらず。春の訪れが平年より。残春の夕暮れの歩みは『永井路)。人が歩くより遅い速度。眠たくなるような遅いテンボ=辻仁。朝遅く目覚める。あまり遅くならないうちに帰る。いつもより遅く起きる。時間のたつのりが遅く感じられる。飲みほうけて夜遅く帰る。遅くとも(明日までには帰るつもり。今晩やって来るだろう。やらないよりはまし)。遅くまで(酒を飲む。ほっつき歩く)。毎晩遅くまで働いてくたくた。毎夜遅くまで仕事に没頭する。速力が駄馬のように減退する=島尾。遅々たる歩み。嬢もりが拶を造るような遅々たる行動幸田露。遅々としている(歩みが。改革が)。遅々として進まない(審査が。時計の針が)。 **おそかれはやかれ【遅かれ早かれ】**遅かれ早かれ(終わりが来る。必ず夢から覚める。気づかずには済まされまい。降参しなければならない。失敗するだろう)。いつかは順番が来る。ここまできたらあとは時間の問題。早晚(起こったことに相違ない。こうなることは覚悟していた。衝突せざるを得ない。出て行かなければならない)。 **おそすぎる【遅過ぎる】**▼遅すぎる(気がつくのが。来るのが。出来上がるのが)。遅きに過ぎる。遅きに失する(公表が。対応が)。 <231> # 遅い・早い-74 **おちこぼれ【落ちこぼれ】**落ちこぼれを(救う。出さない。なくす)。落ちこぼれる(勉強で。木陰に点々と日の光が)。何事にも集中できない散漫な劣等生のように窓の外を眺める=大庭。 **おもむろに**おもむろに(顔をあげる。口を開く。話を切り出す。身を起こす。あたりを見回す)。やおら(頭をもたげる。起き上がる。声をかける。腰を上げる。拳銃を持ち上げる。その場にひざまずく)。 **かそく【加速】**▼加速する(動きが。危機が。退陣論が。流れが。徐々に。ぐんぐん。グローバル戦略を。ほぼ光速になるまで)。直線的なラインを取りながら急加速する"大藪。スビードを増す。▼スピードを上げる(徐々に。ぐんぐん)。ぐんぐん速度が上がる。速度を(徐々に上げる。増す)。見る見る速力が加わる。速力を(加える。増す)。アクセルを(全開にする。吹かす。ぐっと踏み込む)。思いきりアクセルを踏む。 **きびん【機敏】**機敏な(処道。精神の持ち主。動作)。無駄のない機敏な動き。機敏に(立ち回る。走り回る。判断する。目を四方に配る)。神速機敏を旨とする。俊敏な才能。鍛えられた俊敏な頭脳。見るに敏(機を。時代を)。 **きゅうそく【急速】**急速な(業績悪化。増大。変化に驚く)。急速に(体が衰える。地歩を固める。親密の度を加える。力をつけてくる)。開発が急速に進展する。科学技術が急速に発達する。近年急速に発展している地域。病状が急速に悪化する。高速フィルムを見るように急速に陽が傾く=松浦。急速度で復興が進行する。 **きゅうに【急に】**急に(態度が変わる。雨足が強くなる。気分が悪くなる。元気がなくなる。二段階くらい明るくなった声で言う鷺沢)。つと(首をかしげる。そばに寄る。目をそらす)。ふいと(顔を背ける。目を覚ます。家を出て行方が知れない。どこかへ飛びだしていく人合崎)。音がふいと止まる。口元からふいに微笑組みが消える。▼ふいに止まる(足が。動きが)。 **げんそく【減速】**列車が減速を始める。減速する(正が。景気が。経済が)。▼落ちる(速力が。がくんと速度が。活字を追うスピードが)。速度を落とす。緩める)。速力を(落とす。緩める)。▼緩める(アクセルを。スピードを)。アクセルから足を離す。アクセルをゆっくり戻す。スピードが鈍る。スピードを殺して投げる。スピードを落とす(車の。ふらふらするほど自転車の三浦哲)。速度が鈍くなる。速力が鈍くなる。 **このごにおよんで「この期に及んで】**この期に及んで(なおためらう。何を言うことがあるか。悪あがきしてもしょうがない=村山)。この期に及んでまだ(尻込みする。何か隠している)。この期に至ってもまだ決心がつかない。この期に臨んでまだ白を切る。事ここに至っては。いよいよの間際になってあわてる。今になって(思い出す。後悔する。ようやく気づく)。 **さきばしる【先走る】**▼先走る(感情が。気持ちが。計算が。夢が)。先走った(行動。想像に過ぎない)。▼先走りする(季節が。想像が)。季節をさまで先走らない料理=岡本。あまり先走りをしない。突飛でお先走りな空想家"開高。お先走りの気味がある。 **しばらく【暫く】**しばらく(口を利かない。沈黙が続く。余韻を楽しむ。押し問答を繰り返す。その場に立ちすくむ。ためらった末に注意する。見ない問にすっかりおとなびる。胸騒ぎが止まらない)。しばらくの間(考え込む。じっとしている)。しばらくは声も出ない。ひとしきり(熱弁を振るう。声をあげて泣く)。とりとめない話をひとしきりする。ひと時の(平安を見出す。平穏を与える)。ひと時も休むことなく流れている。彼女との楽しいひと時を空想する=鈴木光。 **すぐに**すぐに(意味を悟る。懇意になる。名前を覚える。ばれるような嘘)。すぐにも(逢いたい。出発できるように待機する)。あっけないくらいすぐ済む。思ったことをすぐ口に出す。感情をすぐ顔にあらわす。すぐさま(行動に移す。使者を出す。身支度をする)。相手が出た途端電話を切る。あっと思う間に手首をつかまれる。あっと思う間もなく追いつかれる。あれよあれよという間に動きだす。死が須臾叭。の間に訪れる。すべって転ぶ閑ぃまもないうちに決める=北。すわと言う間もなく。魔法使いの馬車が現れたような早さでタクシーが来る萩原爽。いち早く(気配を察する。動きをキャッチする)。一瞬に事態を悟る。勝敗を一瞬に決する。百年の恋も一瞬にさめる=池田。一瞬にして生命いのを落とす白洲。努力が一瞬にして水の泡になる=宮尾。一瞬のうちに(跡形もなくなる。事態を把握する)。死の気配を一瞬のうちに察知する=篠田。一刀両断に解決する。今すぐ支度ができる。今にも(噛みつきそうな顔つき。泣きそうな表情)。いまにも雨が降り出しそうな模様"宮本部。打てば響くような返事"加賀。遅れなく身を処する。折り返し(電話をする。返事がある)。可及的速やかに対策を講じる。問髪を置かず。間髪を入れずに(言う。答える)。言下に(否定する。相手を罵倒する。うなずいて言う)。提案を言下に断る。忽焉にんとして(逝く。姿を消す)。忽然むんと(現れる。消え失せる)。忽然として噴き出してくる不満。平和な田舎に忽然として起こった事件=田山。早速(手続きをとる。聞かせてもらう。仕事に取りかかる)。七色に変わるシャボン玉の色のように倏忽しっに気持ちが変わる=梶井。迅速に(事を運ぶ。準備を進める。対策を打ち出す)。すかさず(言い返す。口を挟む。第二案を出す)。電話が鳴るとすかさず受話器をとる。速やかな(決断。処置)。速やかに(実行に移す。現場を離脱する)。帰る早々用を言いつかる。就任早々難題に直面する。早々 <232> # お に(立ち去る。引き上げる。用件を済ませる)。優劣は倉卒に判断できない。倉卒の間に書き記す。たちまち(流れに巻き込まれる。何もかも消えてしまう)。忽封もち黒山の人垣ができる=阿佐田。たちまちにして(信頼を得る。地位を失う)。たちまちのうちに(すっかり親しくなる。日がたっていく)。お湯をかけて三分のカップラーメンのように短期速成で深みにハマってしまう荻野。遅疑なく(選ぶ。応じる)。時を移さす(実行する。出発する)。にわかに(あたりが暗くなる。活気を帯びてくる)。俄にゃかに戦慄の風が吹き荒れだす=舟橋。言った端から忘れる。二つ返事でOKする。瞬くうちにいずこかへ逃げ去る。涙のかわく間もない。ほとんど間を置かずに戻ってくる。ものの五分もすれば高肝吹跡ぃが聞こえてくる。向田。舌の根の乾かぬうちにまた嘘をつく。舌の根も乾かぬうちにまたミスを繰り返すの海堂。瞬時に(答えが出る。判断する)。瞬時にして(炎に包まれる。夢が消える)。刹那に一切を了解する。顔の色が刹那に青ざめる。車から降りた途端地面に座り込む。言われた途端に強い怯ょびえの色が浮かぶ。外へ出た途端に雨が降り出す。見た途端に感嘆の声をあげる。 **すぐには**すぐには(うんと言わない。眠れそうにない)。実の兄にもすぐには弟と見分けられないほど顔つきが変わる=古井。面倒くさいことをきく男だといわんばかりにすぐには返事をしない=小局。急には返事ができない。なかなか(寝つかれない。その場を立ち去りがたい)。にわかに信じられない。 **すばしこい**身のこなしがすばしこい。すばしこい動き。すばしこく(駆ける。走り去る)。老人とは思えぬすばしこさ。栗鼠っけのようにすばしっこい徳永。こちょこちょ動きまわる。俊敏な(動き。身のこなし)。はしっこい子供。鹿のようにはしっこい目つき=大佛。はしっこくて小回りが利く。一定の速度でゆっくり歩く。速度ともいえない速度で色という色を墨色の濃淡にうつしかえていく竹西。歩く速度よりずっとゆるやかに風景が流れる=鷺沢。速度を(いっぱいに上げる。少しも落とさない。ゆるめずに走り去る)。二人の確執が頂点に向かって速度を早める黒墨石。ピッチが(出る。早い)。ビッチを(落とす。下げる)。ぐいぐいビッチを上げる。ぐんぐんピッチを上げて進む。 **すばやい【素早い】**素早い(視線を走らす。目配せを送る)。素早い(頭の回転が。動作が。逃げ足が)。蜥蜴忙かのようなすばやい身こなし藤沢。さあ来いといわぬばかりの素早い身構え=佐藤春。左右にすばやい一瞥心を投げかける三輪。素早く(陰に身を隠す。反応する。火事を消しとめる。周囲に目を走らせる)。相手の考えを素早く読む。▼素早さ(驚くべき。目にも止まらぬ)。タイブを打つような素早さで薬を薬包紙に包む黒岩。機動性に(欠ける。富む)。機動的に(対応する。取り組む)。小回りが利く。視線が聡さい動きをする。疾風迅雷の(進撃ぶり。勢いで勝ち進む)。疾風迅雷のように乗り込んでくる=本庄。放活に(仕事をする。事務を処理する)。電光石火に意志を決定する=北。電光石火の(動きを見せる。早業。見事な作戦)。本能的に電光石火のスピードで目をそらす!島田。この世は電光石火のようにはかなく消えるかりそめの世界!白洲。 **スピード**異例のスピード出世。スピードが出る。がったりとスピードが落ちる。予想以上にスピードが速い。車のスピードが心なしか落ちたように思える"勝目。恐ろしいほどのスピードですれ違う。すごいスピードで流れる川。相当に危険なスピードで飛ばす相当のスピードで夜道を飛ばす。猛烈なスピードで疾走する。物凄いスピードで通り過ぎる。車がかなりのスピードで走り抜けていく=城山。ナイフを電光のようなスピードで抜く=大阪。▼スピードで走る(ゆったりとした。車が魔物がついたような=獅子)。相手のスピードに押される。変化するスピードに追いつけない=高橋部。スピードもゆるめずに走り去る。一向にスピードを落とさない。回転スビードの遅い扇風機がのったりと回る=椎名誠。スピード感のある決断が求められる。時速百キロは優に超えている。制限時速を超える。壮絶この上ない速力に身を委ねる。平气 **スローモーション**スローモーションで(動く。投げる)。スローモーションの映画が止まったときのように静止する萩原刻。大きな波が来て、水滴がスローモーションの画面のようにわたし達の前にふっと流れ、それから落ちた=北村。スローモーションのような動きで振り返る=鶯沢。スローモーションのようにゆっくりとしたスピード=西木。スローモーションビデオのような緩慢な動き"小林久。 **ぜんそくりょく【全速力】**全速力で(駆ける。突っ込む。飛ばす。運ぶ。走る)。一気にスバートする。スバートをかける。フルスピードで(疾走する。飛ばす。走る)。 **そくざ【即座】**即座に(結論を下す。行動に移る。反応する。返事が戻ってくる)。即時停戦を求める。即時に行動を起こす。即興の(詩を書く。舞いに興じる)。即刻検査にとりかかる。 **ただちに【直ちに】**直ちに(心に決する。次の行動に移る。判断がつかない)。一刻の猶予もなく直ちに。時を移さず直ちに参る。 **たちおくれる【立ち遅れる】**▼立ち遅れる(研究開発が。福祉政策が。スタートで。環境衛生がひどく)。立ち遅れが歴然となる。立ち遅れを取り戻す。▼出遅れる(選挙で。レースで)。後れを取る(諸外国に。他紙に。他社に。一歩)。一歩も二歩も遅れを取る=向田。みすみす遅れをとって臆病だと笑われるのも心外"国平气 <233> # 遅い・早い **たちどころに【立ちどころに】**立ちどころに(三人倒す。真相を見破る。話を決める)。秘密がたちどころに氷解する。その気になって調べたらたちどころに判明する嘘=宮本輝。発見されたらたちどころに殺される=多岐川。てきめんに(体にこたえる。効く。機嫌がよくなる)。不勉強の報いがてきめんに来る。悪業に天罰がてきめんにくだる=佐山。 **ちこく【遅刻】**遅刻の常習犯。▼遅刻する(集合時間に。一時間近く。朝寝坊して学校に)。遅刻するのは毎度のこと。二十分遅れで到着する。寝過ごす(うっかり。覚えず気持ちよく森岡)。寝過ごして(会社に遅れる。学校に遅れる)。夜更かしが災いして寝過ごしてしまう。寝過ごして遅刻する。 **ておくれ【手遅れ】**▼手遅れ(今さら後悔しても。気がついたがもう。事態が起きてしまっては。もはや取り返しのつかないほど=森環)。▼手遅れになる(急がないと。早くしないと)。かかる事態となっては致し方ない。一巻の終わり。今となってはどうともならない。今さら騒いでも追いつかない。十日の菊でしかない何年も前のカレンダー竹西。▼仕方がない(今さらどうこう言っても。今となってはもう)。▼始まらない(今さら愚痴っても。今さらじたばたしても。今さら話しても)。義軍は大抵滅裂して世は殆にとど米国のものとなッた今日、何と云ッても早六日の菖蒲岐ゃである=山田美。駆けつけた時には万事がもう終わっていた=福永。矢が弦っっを離れてしまったようなもの=源氏。矢は既に弦を離れた=海音寺。▼遅い(諸事に手配りが。気づいた時はすでに。今さら言っても)。▶もう遅い(後悔しても。あっと思ったときは。今頃気づいても。今ころじたばたしても)。▼遅すぎる(事ここに至ってはすべてが。今頃気がついても)。常に後手後手で問題をさらに深刻にする佐高。後手後手に回る。後手の対応に終始する。今さらどうしようもない。後の祭り(今となっては。切歯扼腕にわんゃしたが。内心舌打ちしたが。悔やんでももはや。なぜもっと早く気がつかなかったのだろうと内心歯ぎしりをしたが"落合。後悔したときはもう既に=山田詠)。 **てばやい【手早い】**▼手早い(仕事が。料理が)。手早いスケッチ。手早く(料理を作る。後片づけをする。書類を片付ける。乱れた髪を直す)。買い物を手早く済ます。髪を手早く結ぶ。暖簾のれを手早く丸める。手ばしこく(作業する。掃除する。針を動かす)。▼早業(手練の。目にも止まらない。盗品でも処分するような=阿部)。早業に気をのまれる。鋭い早業に舌をまく。 **テンポ** (快調な。軽快な。軽妙な。絶妙な。一定の。遅い)。テンボが(合う。遅い。狂う。ずれる。高まる。のろい。速い。次第に速くなる)。快いテンボで進行する。早いテンポで攻撃する。多くの記憶が瓶の栓を抜いたように快いテンポで流れ出て来る"中村真。テンボに遅れまいとして焦る。テンポの速さに慣れる。急テンポで(工事が進む。発展する。生産が増加する)。人情話がテンポよく転がっていく。投球の緩急がうまい。緩急自在の(語り口。ピッチング)。 **とっさ【咄嗟】**とっさに(思い出せない。判断する。考えついた口実。言葉が出てこない。何と答えてよいか分からない)。とっさの(返事に窮する。問に思案をめぐらす)。反射的に(頭を下げる。答える。立ち上がる。振り向く)。びくんと反射的にはね起きる。 **どろなわ【泥縄】**泥縄の対応策。一夜漬けの即席勉強。泥棒を見て縄をなう。泥縄式にまとめる。泥繩的な対応。遅ればせながら対策を講じる。遅ればせに後から駆けてくる。遅まきながら(気がつく。調査を始める。改革に着手する)。 **のろい【鈍い】**▼のろい(歩みが。回転が。仕事が。スピードが。動作が。走るのが。会話のテンポが苛々いらいらするくらい落合。立ち居の動作がじれったいほど"山本周)。歩調がのろくなる。のろくさ(立ちあがる。準備にとりかかる)。のろくさい口の利き方。一見のろくさく聞こえる言葉。のろくさと時間をつぶす。なめくじが地面を側はうほどののろさ=小林多。遅鈍な動作。のろまでぐず。のろまな(考え。動作。人間)。動作の敏活を欠く。牛の歩みよりのろのろ走る=椎名踐。高速のろのろ度写真のようにノロノロ立ち上がる=小林多。のろのろと(足を動かす。階段を降りる。体を起こす。口を動かす。腰をあげる。時間が過ぎる。仕事にかかる。電車を降りる。練って歩く。服を着る。歩を運ぶ。身を起こす。車を徐行させる。スピードを落とす。タラップを上がる。道はうように車を進める三浦後)。頭をかきつつのろのろと退散する。坂道をのろのろと登る。トラックが連なってのろのろと進む。虫のようにのろのろと歩く藤沢。老人のようにのろのろと料理をいじる=武田瓦。のろのろとベッドから(下りる。道い出す)。のろのろした動作で起き上がる。ひどくのろのろした仕草。老人くさいのろのろした人間=野間。時間の歩みがのろのろしている。 **はたと** (行き詰まる。気がつく。言葉につまはたとはたとる。返事に窮する。お金に行きづまる。気を取り直して立ち上がる)。手をはたと打ち合わせる。はたと膝を打つ。はったと(行き詰まる。膝を叩く)。 **はやい【早い】**▼早い(朝が。変わり身が。気が。決断が。時間の歩みが。呑み込みが。話が。反応が。耳が。酔いの回りが。頭の切り替えが。年寄りは目がさめるのが。訪れが予想より。チェックインの時間には。入るのも早いが出るのも。まだ諦めるのは。足が飛ぶように木山)。急ぐ日脚が矢よりもはやい=石森。あまりに早い死。女に手が早い男。かなり早い段階。想像している以上に早い時期。月日の経つのは早いもの。早ければ早い方がいい。速いピッチで飲む。 <234> # 頭お (足が。呼吸が。潮の流れが)。▼回転が速い(頭の。頭脳の)。まだ早い(紅葉には。寝るには)。矢よりも早く走る=有島。馬が風より早くかけ出す。宮沢。あっけないほどの早さ=永井路。飛ぶような速さで歩く人間。山から風の子が吹きおりてくるような早さで賑け戻る=阿久。華奢な少女の脚とは信じられない速さで走る=日野。到底追いつける速さではない。▼早すぎる(帰るにはまだ時間が。何ぼ何でも事があんまり)。あっけにとられるようなペースで事態が進んで行く=松浦。工事が枯れ葉を焼く火のように進む菊池。崖を向こうへおどり越えて鹿のように先へ走って行く=吉川。韋駄天走ふばいりに(駆ける。逃げる。走る)。音速で飛ぶ。音速の(壁を破る。ジェット機)。音速を超える。快足を(飛ばす。買われたビンチランナー)。列車が快足を利して走る。川が急な濁流をなす。高速で(運転する。回転する。飛ぶ。走る)。時期尚早だという判断が働く。迅速な発育を遂げる。全速で(進む。走る)。エンジンを全速にする。早期実施にこだわる。早期に(癌がんを発見する。事件を解決する)。早期の実現を期する。目の覚めるような速度。狭い歩幅の取り返しをつけるかの如き驚くばかりの早足=里見。限にもとまらぬ速さで近づく=真継。眼のくらむような知的でスピード感のある会話筒井。円下一の駿足。駿足のランナー。駿足を飛ばしてゴロを内野安打にする。駿足ぶりを披露する。脱兎だっの勢いで路地を駆け抜ける藤本。脱兎のごとく(外に飛び出す。脱け出す。教室から飛び出す谷川。階段を駆けあがって逃げる贅沢。部屋から飛び出す=高見造)。雑踏の垣をぶち破って脱兎のことく逃走する!膝本。脱兎のように場外に走り出る=徳永。 **はやいものがち【早い者勝ち】**バーゲンは早い者勝ち。先着順に(受け付ける。決める。抽選券を渡す)。 **はやおくり【早送り】**早送りを止める。▼早送りする(画像を。DVDを。テーブを)。コマ落としの映画みたいなスピードで二階へ駆け上がる=赤川。これまでの人生をコマ落としのよっに見てしまう篠田。 **はやく【早く】**早く(家に帰りたい。片づける。会いたいの一心。帰ってこいの一点張り。見切りをつける)。あまり早く着くのも善し悪し。一日も早く戦争を終わらせたい。親に早く死に別れる。顔を早く見たい。存外早く終わると思う。誰より早く覚える。普段より早く目が覚める。毎朝早く家を出る。風よりも速く走る沢木。早くから着目する。両親と早くから死に別れる。早くに(両親を亡くす。文字を使い始めた民族)。早くも(終盤に入る。出来上がる。リードする)。早く早くとせき立てる。速成する(技術者を。教師を。短期間で)。即席で講演する。できるだけ早く(帰る。決着させる。取り戻す。忘れてしまいたい)。一刻も早く(逃げ出したい。会って話を聞きたい。結果を知りたい)。いっときも早く会いたい。 **はやくち【早口】**せきこんだような早口"星。早口で(説明する。たたみかける。まくしたてる。一気にしゃべる。歯切れのいい話し方。べらべら話しかける)。苛立恋らたしげに唇をなめ、せきこむような早口で喋こりはじめる=安部。機関銃のような早口でしゃべりまくる=新田。はにかむように早口で言う本庄。早口に(口上を述べる。用件を言う。押し殺した声でしゃべる。ぺらぺらとしゃべる)。あわてて早口になる。猛然と早口に反発する。暗誦场礼ししてあったように早口に喋る=高井。ディスクジョッキーみたいに早口に滑らかに喋る=村上龍。▼早口にしゃべる(言葉が自分の羞恥しいを蔽ぉぉいかくしてくれる楯でもあるかのように=海音寺。熱に浮かされたごとく谷崎)。聞き取れぬくらい低い早口の声で話す=城山。口早に(答える。名乗る。命じる。わめく。いろいろな言葉をささやく。せきこむように言う)。長い台詞謎)を口早にしゃべる。 **はやばや【早早】**早々と(家を出る。準備にかかる。寝てしまう。部屋へ引き揚げる。店じまいをする)。当選が早々と決まる。 **はやまる【早まる】**▼早まる(死が。時間が。年々時期が。自然に)。速まる(足が。胸の鼓動が。足が次第に)。決して早まってはいけない。早まって離婚する。速くなる(雲の流れが。次第に雨脚が。動悸が。脈が。にわかに足取りが。足音が小刻みに。水車の車が段々に。季節の巡りが少しずつ)。早計な決定。早計に(失する。過ぎる)。拙速に(結論を出すべきではない。見直しを進めてはいけない)。拙速のあまり審理が粗雑になる。拙速を(戒める。避ける)。 **はやめに【早めに】**早めに(家を出る。帰る。手を打つ。床につく。夕飯を済ます。仕事を切り上げる)。災難の芽を早めに摘んでおく。残業を早めに切り上げる。食事を早めに済ます。卒業論文を早めに仕上げる。いつもより早めに(起きる。会社を出る)。早め早めに(済ませる。手を打つ)。 **はやめる【早める】**▼早める(死期を。精神的破綻を。予定を。世を)。速める(足取りを。足を。歩みを。心臓が脈搏以にくを。歩調を。歩度を。テンポを一段と)。速くする(回転速度を。ワイパーの動きを)。前倒しで(執行する。実施する)。▼前倒しする(日程を。予算執行を。猟期を)。予定が早まる。 **ひといきに【一息に】**一息に(石段を登る。グラスをあける)。ぐいと一息に飲む。ぐっと一息にあおる。コップの水を一息に飲み干す。胸の内を一息に吐露する。一息で呑みこめそうな小さな卵。丘を一息でかけのぼる。一口でぱくっと食べる。一口に(がぶりと飲み干す。ばくりと飲みこむ)。 **びんしょう【敏捷】**敏捷な(動き。運動神経)。幾度も訓練されていたもののように極めて敏捷な助作!外村。 <235> # 遅い・早い-74 口に出して言いつけられぬうちに何の用事でも果たすような敏捷な若者"森嶋。生死の瀬戸際にはまり込んでいる人々の本能は恐ろしいほど敏捷な働きをする=有局。敏捷に(動き回る。行動する。立ち上がる。走りまわる。やってのける。身をくねらせて逃げる)。体を敏捷に起こす。敏捷さ(動物的な。並外れた。やもりのような徳永)。怪捷な動作。怪捷に立ち回る。 **びんそく【敏速】**敏速な(頭の回転。動き。反応。身のこなし)。敏速に(事務を片付ける。抜かりなくやる)。活躍が敏速を極める。スピーディーな(応酬。仕事。ストーリー展開。捜査を展開する)。 **ふっと**ふっと(足を止める。我に返る。頭から抜け落ちる。現れては消える。言葉が口をついて出る。姿を見せなくなる。消えるように死ぬ。住井)。あたりがふっと静かになる。風がふっと止む。肩の力をふっと抜いてみる。空気がふっと柔らかくなる。出がけにふっと気が変わる。鬱屈の霧がふっと晴れる=横山。亡霊のように目の前にふっと浮かび出る佐藤多。明かりをふっと吹き消す。口元だけでふっと笑う。表情がふっと(翳かげる。和む)。 **ペース**ペースが(遅い。落ちる。鈍る。速い。乱れる)。電池が切れかけたように仕事のベースが落ちる=村上卷。同じペースで進む。自分のペースで飲む。自由なペースで歩く。相手をこちらのペースに巻き込む。普段のペースに戻る。相手のベースに(乗せられる。はまり込む。巻きこまれる)。 **みぎからひだり【右から左】**右から左に(忘れる。大金を自由にできる)。右から左へ(会社を変える。片付ける。耳を揃えて弁償する=二葉学)。金を右から左〈使い果たす。もらった金を右から左へ人手に渡す。右から左へと売れる。 **みみざとい【耳聡い】**▼耳ざとい(噂に。大人の話に)。耳ざとく聞きつける。地獄耳といわれる情報網。噂に人一倍早耳。早耳の情報通。 **みるみる【見る見る】**見る見る(顔色が変わる。顔が青ざめる。顔を赤くする。態度を変える。遠ざかる。溶けて流れ去る)。気味の悪い夢が薄れるように見る見る消え失せる芥川。あたりが見る見る暗くなる。顔から見る見る血の気が引く。心が見る見る晴れていく。表情が見る見る不機嫌に変わる。目に見る見る涙があふれる。豆粒大であったものが見る見る大きく迫ってくる=城山。見る見るうちに(数が増える。効果が現れる。生気を失う。速力が加わる。大富挙となる。飯を平らげる。形勢が好転する。元気を取り戻す。膨れ上がる不吉な予感)。焼け棒杭け旧が燻するいとまもあらばこそ、みるみるうちに燃え盛る=里見。屑籠が見る見るうちに一杯になる。見る間に一揆が広がる。顔が見る間に赤くなる。火が見る間に燃え広がる。 **めざとい【目敏い】**目敏く(気がつく。心理を読む。姿に気づく。見つける。見て取る。見分ける。ウイスキーを見つける)。▼早い(見つけるのが。目が)。 **ゆっくり**ゆっくり(お風呂に入る。階段を降りる。休暇を取る。時間をかける。話を聞く。余生を楽しむ)。スローモーションのフィルムを眺めているようにゆっくり“林京。二人だけでゆっくり会う。ぽつりぽつりとゆっくりしゃべる。みんなとゆっくり相談する。列がゆっくり進む。幼い子に言い聞かせるようにゆっくり言う〜永井路。煙草の煙を何秒もかけてゆっくり吐き出す=高樹。ゆっくりと(家で過ごす。顔をあげる。体を起こす。首を横に振る。腰を上げる。深呼吸をする。茶をすする。振り向く。目を開ける。一歩一歩を踏みしめて歩く。落ち着いて話す。時間をかけて回る。煙草の煙を吐き出す。雪が舞い落ちる)。あたりをゆっくりと眺め回す。大股でゆっくりと歩く。肩をゆっくりと上下させる。混乱がゆっくりと渦巻く。時間がゆっくりと過ぎていく。手がゆっくりと伸びる。淡い空にうすい雲がゆっくりと流れる=吉本。一語一語ゆっくりと言葉を続ける=光瀬。一歩一歩確かめるようにゆっくりと通り抜ける=小川。大きい波濤沿との上に船がゆっくりと漂っている=井上靖。口に出す言葉で自分の考えを確かめるようにゆっくりと呟やぶく連城。深呼吸するようにゆっくりと空気を吸って少しずつ吐く=日野。スローモーション映画のようにゆっくりと打ちおろす=高橋和。敵の動きがスローモーション映像を見ているようにとてもゆっくりとしたものに見える清水義。廃屋が長い年月をかけてゆっくりと朽ち果てる=村上春。歯がゆいほどにゆっくりと橋をわたる=池波。難しい台詞沁)を暗唱するかのように一語一語区切りながらゆっくりと言う宮部。用心深い猫のように眼をゆっくりと見開く"中村真。ゆっくりと動く(頭が機械仕掛けのように"中村。焦じらすかのように=伊坂)。もどかしいくらいゆっくりなめる=島尾。いいことはなるべくゆっくりとのほうが楽しみが深い小島。そうゆっくりもしていられない。ゆっくりした(足どり。動き。手つき。歩調)。じれったくなるほどゆっくりした物の言い方永井荷。歩く(牛歩のように。カタツムリの歩みのように北)。蝸牛込の歩み。杖で歩く老人並みの速度で移動する=石田衣。そろそろと(腰を上げる。進む。手を伸ばす。梯子ぶしを降りる。身を起こす。ふすまを開ける)。そろそろと足を(運ぶ。踏み出す)。ゆるりと(語り合う。くつろぐ)。階段をゆるりと一段ずつ降りる。低速で(運転する。航行する。進む。回る)。ゆるゆると(帰路を辿たとる。意図を説明する。機会を見て策を立てる。広場をめぐり歩く。船が向きを変える)。艦がゆるゆると岸壁を離れる。ゆるゆるとした足どり。 <236> # 襲う・遭う **あう【遭う】**▼遭う(いじめに。返り討ちに。神隠しに。体が金縛りに。危難に。災難に。窃盗被害に。鉄火の罵詈ぃぅに。なぶり殺しに。ひどい拷問に。袋叩きに。店が火災に。闇討ちに。核攻撃の被害に。地獄の責め苦に。十歳のときに父の災厄に。半死半生の大事故に。予想外の抵抗に)。▼憂き目に遭う(追放の。倒産という)。▼目に遭う(危険な。さんざいやな。因果応報の。えらい。悲しい。死ぬより辛い。とんでもない。ひどい。むこたらしい。死ぬほど恐ろしい=横山)。かくも恥ずかしい目にあう=室生。▼遭わされる(危ない目に。つらい目に。半殺しの目に。ひどい目に)。 **うんのつき【運の尽き】**▼運の尽き(出かけて行ったのが。おかし金融商品に手を出したのが=篠田)。運が(末に至る。尽きる)。年貢の納め時。天運が尽きる。 **おいうち【追い討ち】**追い討ちをかけるように言う内館。▼追い討ちをかける(次から次へと。得たりとばかり)。傷に塩をなすり込む光原。 **おそいかかる【襲いかかる】**▼襲いかかる(甘い哀愁が。最初の一撃が。どっと風が。世の荒波が。稲妻のように。すきを見て。突如として。情け容赦なく。猛烈な勢いで。思いがけない事態が。痛みが容赦なく。音が波のように藤本。牛刀を振りかざして"大藪。軍勢が怒濤北とのごとく=柴田錬。待ちかまえたように"司馬)。猛然と襲いかかる刃風が鋭い=池波。波が襲いかかる(大きな。不況の)。画面から躍り出て襲いかってでもきそう高橋克。風の直撃を免れる。金融危機の直撃を受ける。▼直撃する(砲弾が島を。石油危機が日本経済を。台風が関東地方を)。▼顔面を直撃する(打球が。肘が)。 **おそう【襲う】**▼襲う(激しい怒りが。激しい寒気が。悪臭が鼻を。移送の途中を。悪寒が体を。森音ぶらが耳を。賊の本拠を。寝込みを。蜂が一斉に。言いようのない恐怖が。凄すさまじい衝撃が。致命的な打撃が。容赦のない足蹴りが。横殴りの太刀が。大地震が日本列島を。津波が沿岸の各地を。山火事が一帯の村々を。吐き気が周期的に。自分はこんなに間抜けだっただろうかと自己嫌悪が"有川。波のような眠りが=水上。激しい悔恨と憤激が=獅子。不幸な雲や疾風にゃが三好達。孤独感が耐えがたいほどに"山田太。激情が満々たる水のように=井上靖。ザアーンと波が岩を洗うように=伊集院。懐かしさと心細さがどっと"幸田文)。顔面を襲う(ジャブが。左右のワンツーが)。心を襲う(驚きと落胆が。不安が)。胸を襲う(後悔が。不安が)。むごい運命が見郷う。夜討ちを(かける。しかける)。敵に夜襲をかける。 **おそってくる【襲って来る】**襲ってくる(一日の疲れが。苛立心らちの波が。眠気が。吐き気が。疑問が次々に。夜ことに。余震が頻繁に。嵐が激しく。嵐のように。束になって。予期しない緊張感が。疲労と安堵めんが一度に。間もなく寒さが一斉に。記憶が群れをなして。畳みかけるように。ぶよが小うるさく。村を野伏せりの一群が藤沢。睡魔が急に脳味噌を蕩とっかすように=阿刀田)。▼波のように襲ってくる(感慨が。後悔が)。敵機の来襲が激しくなる。台風が続けさまに来襲する。敵の襲来に備える。▼襲来する(烏からの群れが。台風が。熱波が。暴涎が)。 **おそわれる【襲われる】**▼襲われる(嫌な予感に。悔恨の情に。軽い眩暈めまに。恐怖の念に。強烈な痛みに。心が闇に。言葉の奔流に。心臓発作に。強い悔恨に。激しい後悔に。激しい混乱に。激しい腹痛に。不意な弱気に。不意の恐慌に。深い感慨に。深い喪失感に。不快な気分に。複雑な感情に。猛烈な嫉妬に。夜盗の群れに。不安に強く。言いようのない心細さに。いたたまれぬ思いに。胃のむかつきに。官能的な快感に。心臓が苦しさに。そこはかとない恐怖に。たまらない寂しさに。何とも言えない気味悪さに。激しい自己嫌悪に。不意に既視感に。名状しがたい怒りに。物悲しい無力感に。緩みない寒波に。地震にたびたび。足元がおぼつかない不安に"村松。得体の知れぬ恐ろしさに"山田風。療らこのような慄、ふるえに"里見。胸を押しつぶされるような苦痛に=山本周。目がくらみそうな物寂しさに“三田。予期しなかった深い悲しみに高見町)。▼気分に襲われる(索漠たる。たまらなく嫌な)。▼気持ちに襲われる(寂しい。救われがたい)。▼好奇心に襲われる(強烈な。強い)。▼発作に襲われる(怒りの。ヒステリーの。笑いの)。▼見舞われる(怒りの発作に。恐慌の嵐に。経営破綻に。計画が支障に。景気後退に。減収減益に。災難に。資金繰り難に。食糧危機に。心臓発作に。天変地異に。農業が不作に。不幸に。暴風雨に。思いもかけぬ厄災に。想定を超えた揺れに。激しい羞恥心礼いらに)。 **おとしいれる【陥れる】**▼陥れる(教師を絶望に。制口にこを窮地に。生活を困難に。世界を荒廃に。人間を不幸に。人々を不安に。滅亡の淵に。国民を悲惨な状態に。市民をバニック状態に。住民を大混乱に。立ち直れないような羽目に。無実の者を罪に。人々を恐怖のどん底へ。仲間の命を危険に「熊谷。人間同士を不信の淵へ=壺井)。寝首を掻く、寝首をかかれて死ぬ。 **ぎゃっきょう【逆境】**逆境にめげず努力する。逆境のうちに物故する。逆境を逆手に取る。苦節十年。苦節を乗り越える。悲境に(泣く。めげない)。 **きょうじ【凶事】**凶事が続く。凶事の前触れ。凶事を暗示する。凶変が(起こる。続く)。大凶変に肝を押しひしがれる。 <237> # 襲う・遭う **こうつうじこ【交通事故】** 飲酒運転に起因する交通事故。交通事故で(命を落とす。突然亡くなる)。父を交通事故で亡くす。交通事故に(遭う。見せかけた殺人)。交通事故を起こす。車が衝突する。自動車が(横転する。正面衝突する)。▼輪禍から守る(子供を。老人を)。輪禍に見舞われる。見るもむざんな輪禍に遭う=阿部。 **さいがい【災害】** いつ何時災害が起こらないとも限らない。聞けば聞くほどおぞましい災害が至る所を襲う=有吉。夢にも思わぬ災害が身の上に起こる=森鷗。未然に災害を防ぐ。震災に見舞われる。天災に見舞われる。台風がもたらした惨害。天災地変による被害。被災者に支援物資を届ける。被災者のために炊き出しをする。被災者を支援する。被災する(洪水で。地震で)。▼罹災りさいする(洪水で。地震で。嵐で)。 **さいなん【災難】** 降って湧いたような災難=飯田。災難が出迎えにきたら笑ってぶち当たってやる=城山。思いもかけない災難が起きる。突然災難が降りかかる。思いもかけなかった災難が頭上に降ってくる=獅子。▼災難に遭う(いわれのない。重ね重ねの。とんでもない)。奇禍に遭遇する。友人の奇禍を伝え聞く。急難にさらされる。挙国一致して国難を克服する。惨禍(原爆の。地震の。戦争の)。惨禍を身をもって経験する。水難の相がある。▼難を逃れる(危うく。かろうじて)。筆禍に見舞われる。災難が続く。一難去って(一難来る。また一難)。前門の虎、後門の狼。 **じけん【事件】** ▼事件(実に不可解な。突風のような。謎の多い。迷路のような。歴史に残る。世間にありふれた。大層な物々しい。理屈では割り切れない。いろいろな人間に対する厳重なフルイのような=小林多。せいぜい新聞の三面記事に小さく載る程度の=鈴木光。話を聞いただけでも身震いするような=高橋克。胸を塞ふさがれるような=竹西)。事件が(明るみに出る。後を絶たない。尾を引く。時効を迎える。曖昧のまま残される。新しい展開を見せる。暗礁に乗り上げる。うやむやになる。過去のものになる。すっきりと解決する。政治問題に膨れあがる。迷宮入りになる。闇から闇に葬られる)。思いがけぬ方向へ事件が広がる。先般の事件が脳裏にひらめく。めぼしい事件がない。厄介な事件が持ち上がる。事件から教訓を汲くみ取る。事件に(深くかかわる。まつわる謎。一枚かんでいる。先立つこと三年前)。表立った事件にならない。気になる事件に片端から首を突っ込む。奇妙な事件に出くわす。とんでもない事件に巻き込まれる。事件の(鍵を握る人物。真相が分かる。全貌をつかむ。余波を受ける。全貌がはっきりする。背後に潜む問題)。事件を(内輪に済ます。穏便に計らう。軽く見る。公判に付する。うまく処理する。うやむやに終わらせる。警察沙汰にする)。十数年前の事件を蒸し返す。手際よく事件を揉もみ消す。二つの事件を比べる。迷宮入りの事件を解決する。難事件に(挑む。挑戦する)。担当する)。迷宮入り濃厚といわれる難事件=池井戸。 **じこ【事故】** ▼事故(ごく些細な。あと数分で着くという矢先の。故意に引き起こされた。青天の霹靂へきれきのような。不可抗力による)。事故が(後を絶たない。起きて動転する)。同種の事故が次々と起こる。事故で重傷を負う。事故に(遭って死にかかる。見せかけて殺す)。出先で事故に遭う。事故の(処理を誤る。側杖そばづえを食う。渦中に巻き込まれる。原因を究明する。現場に居合わせる。第一報をキャッチする)。致命的な事故へと発展する。事故を(示談で済ます。実感として受け止められない。再び起こさない)。事故を起こす(故意に。不注意から)。身に(何かある。もしものことがある)。原発事故が起こる。事故原因を分析する。事故現場に駆けつける。事故処理に手間取る。人身事故で電車が止まる。人身事故を起こす。降って湧いたアクシデント。不測のアクシデントに見舞われる。 **しゅうげき【襲撃】** これでもかこれでもかという執拗しゅうような襲撃=松本。襲撃が失敗に終わる。睡魔の襲撃がやまない。敵の襲撃に対処する。不意の襲撃に備える。匪賊ひぞくの襲撃に脅かされる=なかにし。襲撃する(軍艦を。警察を。倉庫を。村を。頭上からむささびのように=山田風)。 **そうなん【遭難】** ▼遭難する(海で漁船が。山で登山家が)。遭難すれば元も子もなくなる=高田。遭難者を(救う。助ける)。海難事故で落命する。救援信号を送り続ける。救難信号を(キャッチする。発信する)。横波を受けて船が転覆する。嵐のために船が難破する。 **とおりま【通り魔】** 通り魔に襲われる。思いがけもしない通り魔のような涙を臉おもてに浮かべる=林美。いがけず会えるという通り魔みたいな幸せ=田辺。通り魔的な犯行。刀試しの辻斬りをやる=池波。 **とびかかる【飛びかかる】** ▼飛びかかる(獲物めがけて。虎のように。疾風はやてのように。やにわに四方から。バネ仕掛けの人形のように女に=池田。声にならない叫びを上げて=三浦。十重二十重にはたと折り重なって=中島敦。飛燕ひえんの如く身を躍らせて=菊池)。黒犬のような影が足もとへとびかかる=水上。ハブが矢のように飛びかかってくる=畑。▼踊りかかる(ばっと。猛然と)。 **ひのめをみない【日の目を見ない】** ▼日の目を見ない(永遠に。ついに。一生)。ついに日の目を見るに至らない。二度と日の目を見ることができない。誰にも知られずに死んでゆく。法案が葬られる。世に入れられない。世に出る望みはない。▼お蔵入りする(企画が。原稿が)。 **ふいうち【不意打ち】** 寝耳に水の不意打ち。不意打ち。 <238> # ふうん【不運】 **不意打ちの(戸惑いを感じる。剣を身に浴びる=隆)。敵の不意打ちを受ける。思いがけない不意打ちを食らわせる=高樹。不意を打たれて(ぎょっとする。面食らう)。不意打ちを(食ったような顔。喰ったように胸がさわぐ藤沢)。不意を(つかれたようにぎくりとする。つかれてたじろぐ。衝っかれたように狼狽する大佛)。不意を食らって(たまげる。びっくりする)。不意の(恐慌におののく。弱気に誘われる)。全く不意の出来事。だまし討ちに遭う。願だまし討ちにしたくない心理が働く=泉俊。舌の根が乾かないうちに白を黒と言う騙し討ちをかける"山崎。卑劣なだまし討ち。ばっさり闇討ちに討ち果たす舟橋。闇討ちを食ったような眼山本周。** **不巡が濃い影を落とす。陋巷ら行の他人の中で朽ちていかねばならぬ不運が胸に迫る=山手。不運という重荷を肩にめりこませる!永井路。不運な(偶然が続く。めぐり合わせ)。** ▼不運な男(どちらかといえば"西村。容貌にも才能にも境遇にも恵まれない=南条)。あまりの不運に言葉もない。身の不運に涙をこぼす。不巡の(くじを引く。底に突き落とす)。不運を(幸運に変える。吹くよりほかない)。身の不運を呪う。運勢が(よくない。悪い)。つくづく運のつたなさがはかなまれる。せっかく伸びかけた運の芽を摘み取ってしまう。司馬。偶然や僥倖ぶいうから見離される=本庄。折角手にした幸運がつるりと掌から逃げていく=小林久。遵命に泣く。▼見放される(巡に。幸運の神に。つきに)。▼悪い(運が。折が。めぐり合わせが)。悪い運が楽しい日々の代償を取り立てに来る=石田衣。悪いことが重なる。悪運が尽きる。よくよく運がない。運がないにもほどがある。逐の悪い男。巡の悪さに泣きたいくらい=源氏。運悪く(交通事故に遭う。借金取りに出くわす)。逆運に泣く。占いは凶と出る。処世つたなく貧乏暮らしが続く。つきが(落ちる。ない。逃げる。離れる)。しみじみ我が運命のつたなきを嘆く。武巡つたなく致命傷を負う。悲運に(泣く。見舞われる)。非運の(英雄。生涯)。まずいところでまずい奴に会う。めぐり合わせ(気の毒な。間の悪い)。不幸なめぐり合わせを背負う。▼ついていない(ほとほと。まったく。よくよく)。ついていないことおびただしい。ついてないことが続く。ついてないにも程がある。 # ふぐう【不遇】 **不過な(生活を送る。晩年を過ごす)。世間にもめったに例のないような家庭の不遇な条件の中で育つ=萩原棄。不過のうちに死ぬ。その後の人生は不遇の一語に尽きる=消原。不過をかこつ。** # ふこう【不幸】 **不幸(とてつもなく大きな"林亭。みじめな境遇に生まれついた。佐山)。不幸が(身にしみる。一度に押し寄せる。心の片隅を侵食する=山田詠。鈴なりになって押し寄せてきた感じ=村上龍)。身に不幸が起きる。幸せのすぐうしろには不幸が歩調を合わせてついてくる=加太。父の死という思いがけない不幸が起こる=山崎。眼にあまる不幸がつぎつぎに足許銘しからまくし上がる"有局。喜び事があるときには不幸がつけ入る=曽野。** ▼不幸がある(家に。身内に)。一日をまったき不幸で塗りつぶす-柴田翔。不幸と闘う力が幼い子供のようにない=円地。不幸な(過去を背負う。境遇に陥る。偶然が重なる。経験を重ねる。結果を招く。死を遂げる。目に遭う。時代に生まれる。事態に立ち至る。幼年時代を過ごす)。少年期の不幸な体験。夫婦喧嘩がら松も大っぴらにできないような不幸な生活"川端。不幸にめげず強く生きる。他人の不幸につけ込む。他人の不幸に自らの境遇を重ね合わせる。目に見えて不幸になる。救い難い我が身の不幸に汲くめども尽きぬ悲しみが湧いて来る今日。女性の不幸につけ込む卑劣な男"光原。なまじっか大金を手にしたために不幸におちいる人間"飯田。不幸の(影がさす。引き金を引く。手紙が舞い込む。どん底に突き落とす。あとには幸福が来る=壺井)。幸せと不幸は背中合わせ。美しい女性の不幸は聞くに耐えない=山岡。不幸を身に受ける。降りかかる不幸を受け止める。世の不幸を救う。不意に思わぬ不幸を背負う三浦哲。降り注いだ幾多の不ぎをすべて帳消しにする幸せ"宮本輝。他人の不幸を(肌のぞき見る。喜ぶ)。周りの人を不幸にする。子供を不幸にするわけにはいかない。幸福に黒い汚点しょができる徳田。身についた幸せをわざと剝ぎとって寒い風にあたっているようなひねくれた気持ち=伊藤彩。白い砂が指の間からこぼれていくようにつかみかけた幸せが逃げていく!森環。幸せではない(決して。それほど)。 # ふしあわせ【不幸せ】 **▼不仕合わせ(芸が身を助ける"永井荷。持って生まれた壺井)。不幸せに見舞われる。薄い(幸福が。幸が)。幸せに縁遠い人々。父に先立った薄幸の母親。薄ヂを背負って生きる。** # わざわい 【災い】 **禍加に転じて福となす。忘れたころに災いがやって来る。いつもたらされるか分からない災いに怯おびえて暮らす熊谷。災いの(根を断つ。神を背負い込む)。口は災いの鬥。災いを未然に防ぐ。一災いする(前科が。不徳が。喧嘩がんっ早い性格が)。めったに起こらない偶然に災いされる=和久。バンドラの箱の蓋を開ける。物言えば唇寒し秋の風。近親者に累を及ぼす。身に危難が迫る。生死にかかわる危難に遭遇する。目前の災禍に驚く。いつわが身に降りかかってくるかもしれない災厄=藤沢。面倒な災厄が身の上を覆う島尾。不吉な災厄の予感におびえる。厄年に厄払いする。四十二歳の厄年を迎える。厄難に遭う。厄日のような一日。飛んで火に入る夏の虫。禍根が影を落とす。将来の禍根を絶つ=山田風。** ▼禍根を残す(後世に。後々まで)。 <239> # おそるおそる【恐る恐る】 **恐る恐る(声をかける。尋ねる。手にとる。目を開ける。受話器に手をのばす。指で紙ぇめてみる)。ドアを恐る恐る開ける。地雷原に向かうように恐る恐る足を出す半村。虎の尾を踏むような思いでびくつきながら入っていく井上ひ。薄氷の上を歩く思い=和久。腫れ物にでも触るように扱う小林久。おっかなびっくり(足音をしのばせて死骸のかたわらを通過する"杉本。及び腰ながら援助を与える=里見)。今じゃけんにされては木から落ちた猿も同然だとおっかなびっくりでおずおずと控えている=泉鏡。釜の蓋をおっかなびっくりのようにそっと開けてなかを覗のぞき込む=高見町。こわごわ(足を踏み出す。声をかける。成り行きを眺める)。岩場をこわごわ歩く。身を縮めてこわごわ眺める。窓を細目にあけて外をこわごわ覗く=高田。** # おそれ 【恐れ】 **爆撃の恐れなきにしもあらずぃなかにし。恐れが的中する。侵略される恐れが十分にある。** ▼恐れがある(悪用される。貸し倒れの。後遺症の出る。自殺の。証拠隠滅の。同士討ちの。爆発する。危機が表面化する。収拾がつかなくなる。責任を問われる。バニックが広がる。ぶちこわしにしてしまう)。▼恐れが強い(インフレの。決壊の)。 # おそれない【恐れない】 **▼恐れない(万死を。向こう傷を。目先の失敗を)。何物をも恐れない勇気。重複を恐れずに書く。死を恐れずに生きるのが勇者"飯田。神をも恐れぬ贅沢だいの果て。さのみ怖れもしない。少しも恐れる気配がない。恐れを知らない。** ▼怖いものはない(天下に。世の中に)。臆した様子が微感ふじも感じられない。臆する(色もなく言ってのける。気配もなく質問を続ける)。物怖銘のじしない(能天気き。目で見据える)。物怖じせずに応対する。子供が物怖じせずに訊きかえす。 # おそれる【恐れる】 **▼恐れる(神の罰を。自然の威力を。罪の発覚を。同僚の詮索を。人の目や耳を。見えざる敵を。夜の闇を。顔を見られることを。関わり合いになるのを。死者たちの再生を。自分に疑いがかかるのを。盗作がばれるのを。行き過ぎを何よりも。魔物でもあるかのように風を夏目)。** ▼怖れる(若さを必要以上に=筒井、海外出兵熟熱を魔物のように=坂口。狂信を蛇のごとく=獅子)。死を恐れる心がきざす。出ることを恐れる(弱みが明るみに。余計な犠牲者が徳水)。恐れていたことが現実になる。一番恐れていた事態が発生する"有川。▼恐れられる(世間から。みんなから)。恐れが(心を片時も離れない。全身を支配する)。疑いと恐れが交錯する。怖れが半ば痺しびれるような感覚で襲う。高井。怒りと恐れで体が震える。恐れに(足がすくむ。身をすくめる)。死に対する恐れをいだく。本能的といってもいいような畏怖!内田康。畏怖の(感情を持つ。念をいだく)。口調に畏怖の色がにじむ。畏怖を(覚える。感じる)。霊威に打たれて畏怖する。崇敬すべき心がわずかでも渉らげば天地が崩れるのではないかという畏怖心"司馬。▼臆する(気持ちが。心が。敵に)。隠した(顔になる。声で告げる)。 # おそろしい【恐ろしい】 **恐ろしい(結論に達する。世の中になる。目で呪にらみつける。夢に悩まされる。ものでも見るように睨みつける連城)。恐ろしい(崇たたりが。行く末が。口に出すだに。思い出すのも。欲も得もなく。想像しただけでも。たまらないほど。心臓が止まりそうに=林天。秘密を見透かされているようで三浦設)。最後に恐ろしい結末が待っている。さぞ恐ろしい気がするだろう。見るも恐ろしい光景。巨人のような恐ろしい存在"中村真。死ぬほど恐ろしい目に遭う横山。総身の毛がよだつような恐ろしい思いをする芥川。沼の深みのような恐ろしい所=梅本。恐ろしいほどの冷淡さ。素人ほど恐ろしいものはない"外村。鬼よりも怖ろしくすさまじい姿と声=坂口。恐ろしくて(口も利けない。たまらない)。いざとなれば恐ろしくて勇気が姿をえる=奥泉。恐ろしげに(顔をゆがめる。首をすくめる。身を引く)。見るからに恐ろしそう。恐ろしそうに(体をすくめる。わななと震える)。生きた子もない。襟元に冷水を浴びた思い=坂口。頭から水を浴びたような気がして髪の毛が一本立ちになる=内田瓦。髪の毛の根をしめつけられるよう森岡。髪の根が逆立つ思い=杉本。消え入りそうな気持ち。五体がすくむ。心臓が(凍る思い。縮み上がる)。体中の血が凍りつく宮部。目の前に短刀を突きつけられたような気持ち三浦紗。末恐ろしい(子供たち。不良少女)。** ▼おっかない(女は。逆らうと)。おどろおどろしい(印象。恐怖。世界。描写。ムード)。全身が総毛立つ思い。▼ひやりとする(一瞬。内心)。おぞましい(殺人事件。破滅の様相。記憶を思い出す。異変が突如として起こる=阿刀田)。身を震わせて厭ぃとうほどにおぞましい宮部。ペーバーテストの結果のみで人を判別するというおぞましい風潮にとっぷりとつかる=飯田。おぞましさに(ぞっとする。震える)。耐えがたいおぞましさを感じる。空恐ろしい(気持ち。光景)。空恐ろしいまでの記憶力。空恐ろしくて身内が震える。空恐ろしさに(わなわなと震える。胆きももつぶれる思い=宇野干)。空恐ろしさが背に降りる。 # おそろしさ【恐ろしさ】 **恐ろしさ(人が人を裁く。身も心もない。居ても立ってもいられない。口には言われぬ。たとえようもない。針の筵於しに座っているような村上元。身震いの出るような=隆)。恐ろしさが引き潮のように去っていく遠藤。恐ろしさに(肝をつぶす。声も出ない。血が冷え渡る。縮み上がる。休がすくみあがる。ぞうっと寒気立つ。身がすくむ思い。歯の根があわぬほど取り乱す=筒井)。** <240> # 恐れる **こわい【怖い】**怖い(遊びを楽しむ。思いをする。声を出す。話を聞く。目に遭う。ものを見るように眺める。夢にうなされる)。怖い(正直言って。世間の目は。真相を知るのが。無下にあしらうと後が。足がすくむほど=内田康。叫び出したくなるほど"小池。なまじの怪談よりよっぽど宮部)。怒るとけっこう怖いタイプ。敵に回すと怖い人間。怖くて(口にできない。手が **おそろしい【恐ろしい】**恐ろしい(形相で睨みつける。声も出ない。血が冷え渡る。縮み上がる。体がすくみあがる。ぞうっと寒気立つ。身がすくむ思い。歯の根があわぬほど取り乱す=筒井)。おそろしさに背筋が冷える=筒井。あまりの恐ろしさにたじろぐ。あまりの恐ろしさにがたがた震える=筒井。得体の知れぬ恐ろしさに襲われる=山田風。自分が棺桶紗帆のなかに横たわっているような恐ろしさに身ぶるいする=中村真。恐ろしさを(肌で感じる。身にしみて知る)。自然災害の恐ろしさを再認識する。戦争の恐ろしさを実感する。底知れぬ恐ろしさを感じる。罪の恐ろしさを自覚する。火の恐ろしさを目の当たりにする。迷信の恐ろしさを説く。敗軍の恐ろしさを如実に思い知らされる=真継。 **きき【鬼気】**鬼気人に迫るとも云うべき土窟"山田炎。鬼気が身に迫る。墓場からよみがえったような鬼気と妖気を感じさせる男"阿久。鬼気迫る(死帝。情景。肖像。表情)。 **ぎくりと** ぎくりと(肩をすくめる。胸にこたえる。身を強張らせる)。▼ぎくりとする(一瞬。思わず。内心。図星をさされて。不意をつかれたように)。ぎくりとした様子でそっぽを向く。顔にぎくりとした表情が走る。ぎくりとして(歩みを止める。顔色を変える。振り向く)。ぎくりとしたように立ち止まる、谷川。ざくっとして(足を止める。体を震わせる。振り返る)。 **きょうしゅく【恐縮】**わざわざご足労を願い恐縮です!高杉。尾籠な話で恐縮ですが。恐縮する(手を突かんばかりに!有吉。身の置き場所もなく=岡本。身も世もあらぬほど"阿刀田。悪いことでもしたように顔色を変えて=山崎)。恥ずかしいことのようにすっかり恐縮しきる=外村。恐縮して(頭を下げる。陳謝する。目を伏せる)。恐れ入ったという表情を作って恐縮してみせる=中村鳥。小柄な躰炒。をさらに小さく縮めるようにして頷かなく=内海。身が細る思い。痛み入ります(丁寧なご挨拶に。過分のお褒めで)。 **きょうふ【恐怖】**恐怖(じかに刃物を突きつけられたような生理的な黒写。正体不明なものへの本能的な飯田。奈落の底へさらわれそうな極。悪夢のように忌まわしい=福永。一瞬血が逆流するような=安岡。肝をすくみ上がるような藤沢)。恐怖が(怒りに変わる。心を捕らえる。刻々に募る。頂点に達する。頭の中で渦を巻く。心に膨れ上がる。胸の奥底から湧く。淡雪のように溶けて行く=中村良。大波のように襲ってくる=光瀬。悪寒のように体の奥を走り抜ける黒井。心の底に固い塊のようにわだかまる藤枝。何か手応えのある被膜のように頭をすっぽり包む南糸。骨に絡みついたように消えることがない=勝目)。老いることへの恐怖が芽生える。声に恐怖がこもっている。胸をかすめるように恐怖が走る=山田太。胸を締めつける恐怖が迫ってくる=加賀。目のくらむような恐怖が背筋を走る=船山。長い恐怖から解き放たれる。恐怖で(足が震え出す。髪が逆立つ。息も止まりそう。口の中がからからになる。胃が飛び出してきそう氷室。体が凍ってしまう~大原。背筋が凍えるよう北。頭髪が一夜のうちに真っ白となる柴田鍵)。生きた心地もなく恐怖と戦う。恐怖に(体を震わせる。駆られて叫ぶ。引きつった顔。我を忘れる。体がすくみ上がる。唇の色まで変わる。なかは気を失う。満ちた声を上げる。駆られた表情で立ちすくむ"五木。心臓が縮みあがる奥泉)。言いようもない恐怖にとらわれる。得体の知れない恐怖に包まれる。不安が恐怖に変わる。名状しがたい恐怖に打たれる。疑念が恐怖にすり替わる=横山。だしぬけに小便をもらしそうな恐怖にとらえられる三田。取り殺されでもするような恐怖にわななく=徳田。はらわたまで冷たくなる恐怖にかられる=柴田錬。恐怖に襲われる(百雷一時に落ちるような=獅子。ふぐりのちぢみあがる!真継。水を浴びせられたような"永井叫。身も世もあらぬ=中河)。雪崩の恐怖にさらされる。恐怖の(一夜が過ぎる。心が薄らぐ。脂汗を滴らせる。去らぬ胸の慄ふるえでがくがくと歯が鳴る=佐多。思い出が淡くよみがえる=真継)。繰り返し押し寄せる恐怖の波を浴びて五体をふるわせる真継。心を締めつけるような烈はげしい恐怖の感情が甦る野心。性の喘ぁぇぎに似た恐怖の喘ぎ藤本。恐怖のあまり(全身の毛がそそけ立つ。逸散に走り出す=獅子。跳び上がらんばかり!倉橋。目が飛び出さんばかりの形相をして絶叫する=飯田)。眼が恐怖のあまり眼球が飛び出そうなほどまで開かれる=内田康。我を忘れ恐怖のあまり叫び声を上げそうになる=鈴木光。瞳が恐怖の色に支配される。満面に恐怖の色を浮かべる。恐怖のどん底に(叩きこむ。突き落とす)。夜の恐怖は太陽の輝きを渇望する=中野美。根深い恐部を胸に植えつける。憎悪が恐怖を麻痺まぃさせる"船山。▼恐稀を覚える(ぞっとするような。ふっと子供じみた。ガラス細工のような透明な=阿刀田)。死の恐怖に(おびえる。苛玆ぃまれる。耐えかねる)。 **きょうふかん【恐怖感】**恐怖感(戦慄するような。誰かが殺しに忍びこんでくるような黒岩。身の竦すくむような"山本周)。茫漠旺らたる恐怖の念に襲われる夏目。でっと立ちすくむほどの恐怖感が生まれる=野坂。恐怖感が胸の(底に埋もれる。洞うぁとなって拡がる=墨石)。 <241> # こわさ【怖さ】 **怖さ(漠然たる。得体の知れない。思いがけずも目撃者になってしまった=和久)。何が出るかわからないような暗がりの怖さを楽しみながら遊びまわる"飯田。怖そうに身をすくめる。一秒ごとに命がすりへってゆくような思い=原田康。寿命の縮む思い。怪談めいた話。暗いがらんとした部屋の中で悪い眠りから覚めたよう高尾。心臓が凍りつく思い=つか。手の甲の血管までが頭ぃぃえているよう司馬。肌に粟ぁぁが立つほど怖い=清水秀。** ▼肌に栗を生じる(想像するさえ。髪の毛の根をしめつけられるように感じて全身の森岡)。▼怖い顔(狼のような。話しかけてはいけないような=内田康)。怖い顔で(答える。どなりつける。精一杯に怒鳴りつける“子母沢)。春の日差しめいた顔がにわかに怖い顔に変わる!倉橋。般若はんの面のようなこわい顔をして怒る=長崎。見るからに怖い顔をして釘を刺す。今にも飛びかからんばかりの形相で睨にらみつける=森瑞。顔が鬼のように恐ろしい=内田瓦。恐ろしい顔をして睨む。二目と見られぬ恐ろしい顔。▼形相(鬼のような。鬼気迫る。仇跡ぇを討つような=高橋三。眼球も飛び出さんばかりにひき剣もいた柴田銀。狂った野獣のような=黒岩。遂要曲の振り乱れたすさまじい真継)。隠れていた凶暴なものが表に出て来たように形相が一変する藤沢。できるだけ怖そうな顔をつくる。凄すごみのある顔つき。 # こわがる【怖がる】 **▼怖がる(鬼の崇たたりを。青くなって。こわもての連中を)。見かけによらず怖がり。一怖がりよう(大げさな。ぶざまな。異常なほどの。つも以上の。並ではない)。自分の怖がりようが情けなくなる。真っ青になって飛び上がる=杉本。こわがっているみたいにフトンに顔を隠す=小島。** ▼恐ろしがる(主人を。鉄砲を。病気を)。肝が冷える。肝を(消す。冷やす)。胆をつぶしたような声。無気味さに胆をつぶす。悚然札にうとして立ちすくむ。▼恐れをなす(威光に。大喧嘩は妨げに。眼力に。鬼気に。神意に。高い料金に。四十度を超す暑さに)。恐れをなして(尻尾をまく。退散する)。一も二もなく取調室の空気に恐れをなしてしまう。江戸川。 # こわくない【怖くない】 **▼怖くない(ちっとも。まるっきり。万一ばれても)。何も恐れるには及ばない。恐ろしさなど微座ふじも感じさせない。恐怖感がたちまち失せる。不思議に恐怖感がわかない。** # せんりつ 【戦慄】 **薄い刃物で背をなでられるような戦慄=梶井。戰慄が背筋を走り抜ける。風が木々の葉裏を返すように戦慄が伝わる三島。氷のような戦慄が背中を道はい上がる=江戸川。強い戦慄が身体を伝うて流れるのを感じる菊池。ゾッとするような減慄が背筋を這いのぼる"大原。戦慄が体の奥を駆け抜ける。かすかな戦慄が背を走る。気遠くなるような快い戦慄が全身を走る!柴田泌。目まいに似た戦慄が身内を走る=船山。名前を開けば背筋に戦慄が走るくらいの大物"胡桃沢。戦慄に似た感動を覚える三浦綫。肉体を貫いて電光のように駆ける不安な戦慄に似た息苦しさ=伊藤整。危機感に押しつぶされるような戦慄の一夜舟橋。俄にゃかに戦慄の風が吹き荒れだす舟橋。密かに戦慄を禁じ得ない。名状しがたい戦慄を覚える。** ▼戦慄する(恐ろしさに。恐怖を感じて。死の深淵しんの魅力の前に=福永)。戦慄すべき真実を淡々とした口調で告げる=辻貞。酸鼻戰慄の状を聞く。ただ脅えおののくばかり。人心を愉々きたらしめる=菊池。恂々として試験場に臨む=久米。▼恐れおののく(不安に。黄禍の悪夢を現実に見て萩原朔)。眼球が飛び出してしまうほど怖れ戦のく萩原爽。 # ぞっとする **ぞっとする(体じゅうが。背筋が。身内が。思わず。考えただけで。感動で。背中に冷水をかけられたように太宰。全身の血が抜けていくように高橋和。肌へ氷をあてられたように=山本周)。ぞっとするほど(美しい光景。勘が冴える。冷たい視線。冷ややかな声。投げやりな語測)。ぞっとするほどの冷酷さ。そとして(青ざめる。立ちすくむ)。ぞっと背筋が寒くなる。** ▼気がする(背中に冷水を浴びせられた熊合。不意に水を浴びたような=内田百)。首を冷たい手で撫でられた気分=伊坂。背筋が(ぞくっとする。ヒヤリとする。凍るような思い=石坂)。背筋に(寒気が走る。冷たいものを当てられたような気持ち安岡。氷柱的。を当てられたよう“伊坂。水片をあてられたような気分〃小林久)。背筋〈水を浴びたように思う~山本周。背へ風が吹き込むに似た心地"村上元。頬から血の退ぃくのがはっきりと判る"高井。胸を冷たくする。ぞっとするような(寒さ。戦慄。冷たさ。不気味さ。絶望感に全身を冒される=貫井)。気味悪くておぞけ立つ。おぞけ立つほどの(醜悪な姿。不安)。ぞうっと(寒け立つ。恐怖感がこみあげる)。慄然と(息をのむ。身を震わす)。▼慄然とする(内容の異常さに。水をあびせられたように“北)。 # みのけがよだつ【身の毛がよだつ】 **▼身の毛がよだつ(開くだに。想像するだに。ぶるぶると。想像しただけで)。身の毛がよだつほど嫌い抜く=筒井。身の毛がよだつように全身が寒くなってふるえる=深沢。身の毛のよだつ(思い。話)。身の毛もよだつ嫌悪を感じる"中野美。身の毛もよだつほど恐ろしい=阿刀田。身の毛もよだつほどの恐怖"北。身の毛のよだつようなうめき声"白洲。身の毛もよだつような犯罪組織「常盤。** ぞっと総毛立つ。総毛立つような(快感を覚える。白刃の光)。すべての感覚器官が総毛だつような戦慄!光瀬。総身の毛が(逆立つ。よだつ)。 <242> # 落ち着く **あんてい【安定】**人心が次第に安定に向かう。安定を欠いた状況に身を置く。精神的な安定を得る。舟の安定を巧みにとる。安定する(システムが。生活が。政権が。経済的に。情緒的に。社内における地位が)。安定させる(社会を。重心を)。公務員という安定した地位に安住する=鈴木光。悪安定を絵に描いたような夫婦の暮らしぶり~曽野。品質の安定化を図る。安定感が増す。安定期を迎える。安定性が(向上する。低下する。増す)。安定的な(財源。電源)。安寧に満ちた死。組織の安寧を図る。文章の中でぴたりと据わった言葉。据わりがいい。磐石の如く安泰。安泰な暮らしを築き上げる。自分の身の安泰を考える。 **いっきいちゆう【一喜一憂】**一喜一憂する(株価の変動に。順位の上下に。テスト結果に。預金残高に。主人公の運命に。ボーナスの査定に)。 **うきあしだつ【浮き足立つ】**▼浮き足立つ(教室の空気が。社員が。敵陣が。連勝に。そわそわして)。 **うわのそら【上の空】**上の空で(授業を聞く。人の話を聞く。返事をする。いい加減な相づちを打つ三浦絵)。うわの空で目があさっての方を見ている宮部。相手の言葉を上の空で聞き流す。上の空といった虚ろな状態=森玲。▼上の空になる(会話が。うなずきが自然と間遠に=古井)。新聞を読んでも内容が頭に入らない=鈴木光。話が右の耳から入って左の耳へ通り抜ける=舟橋。話の内容が耳を素通りする。目は字面を追っているが頭には何も入らない三浦綾。上の空のように口先で言う佐多。心ここに(あらずといった感じ=貫井。あらぬ如く好い加減に開いて置く"二葉亭)。▼身が入らない(仕事に。授業に。商売に)。 **おちついている【落ち着いている】**▼落ち着いている(心憎いほど。始めたばかりなのに何年も前からやっている者のように=伊藤整)。態度に落ち着きが出てくる。世故慣れた母らしい落ち着きの声長与。おたおたしないだけの度胸ができる。せっつかずにしまいまで聞く。耳のそばで狼が吠えようが心を取り乱さない=国木田。自若として厳かに言う。何事もなかったように自若として退く森段。神色自若として前に進む長与。従容として死をうける。従容としている(死に際しでも。銃口を向けられても)。泰然たる(覚悟。態度)。泰然と座っている。泰然として乱れない。泰然自若たる言葉。悠揚迫らざる優雅さ。悠揚たる(態度。風格)。悠揚とした落ち着きを身につける。悠揚とした安心感。悠揚として品位に満ちた顔立ちや身こなし=海音寺。悠揚迫らぬ(態度で答える。落ち着いた物腰)。 **おちつかせる【落ち着かせる】**落ち着かせる(気分を。心を。何とか気持ちを)。落ち着ける(椅子に腰を。一生懸命心を。上ずった声を。腰掛けに尻を。枕に頭を)。何度か深呼吸を繰り返す。 **おちつかない【落ち着かない】**落ち着かない日々を過ごす。落ち着かない(どうも気になって。網にかかって突然外光の中にひきだされた魚たちのように"加賀。おちおち相手のいうことも耳に入らないくらい芥川。怖いものに追いすがられるように=有局。とかく旅の心は島崎)。背から追われるような落ちつかない気持ち=山本周。腰が落ち着かない男。何か落ち着かない苛立たしさ。妙に落ち着かない騒々しさ。なにが起こるかわからないといった落ち着かない気持ち=黒井。妙にきまぐれな落ち着かない女林芙。五分と落ち着いて座っていられない。荏苒いたずらの境に落ち着いてはいられない夏目。不安が突然襲ってきでもしたような落ち着かなさ=壺井。行動に落ち着きがなくなる。落ち着きがない(気持ちに。態度に。おどおどして)。落ち着きなくキョロキョロ辺りを見廻す南条。檻おりの中の動物のように落ち着きなく歩き回る=加賀。落ち着きのない(しぐさ。視線。性行)。きょときょと落ち着きのない目をする。不当に丁重な扱いを受けているような落ち着きの悪さ=千刈。すっかり落ち着きをなくしている。落ち着きを失う(心がふだんの。目の色を変えて)。足が地についていない!宮部。家に黙って座っていられない思い太宰。浮き足になる。気持ちの収まりがつかない。腰の浮き立つような手持ち無沙汰の気持ち“古井。仕事に手がつかない。尻の据わりがすこぶる悪い。立ちつ居つ待つ。眼が上ずってあらぬ方を凝視する=島尾。若い人が居つかない。おちおち(酒も飲めない。ものも食べられない)。生活の変化に気もそぞろ。きょときょと(目が動く。態度が落ち着かない)。きょろきょろ(周囲を見る。視線が動く。目を入の群れに放つ)。心乱れる(悲しみに。恥ずかしさに)。静心とてない焦燥。静心なく散る桜。むずむずする(腕が。踊りたくて体が。口を出したくて)。視線を背中に感じてムズムズするように体を頭ふるわす。長与。▼居ても立ってもいられない(狂おしさに。焦燥感に。不安に。もどかしさに。よい案が思い浮かぶと三島)。居ても立ってもいられない激しい衝動を覚える=貫井。居ても立ってもいられないほどと嬉しい=永井術。居ても立ってもいられないほどの(恐ろしさ。危機感)。 **おちつきはらう【落ち着き払う】**落ち着き払う(平然と。どこを風が吹くかと"獅子)。眼を見据えたように落ち付き払う。有局。落ち着き払った(声で説明する。態度で答える。動作で立ち上がる)。堂々たる落ち着き払った様子。びくともせずに落ち着き払って答える。冷然と落ち着き払って言う。気負いなく言う。気負った様子もなく答える。 **おちつく【落ち着く】**▼落ち着く(一座の空気が。指に宝石が。淡く、落ち着きに。安心してそれぞれの場所に。気持ちがいくらか。心がゆったりと。常識的なところへ。気分が井戸水のように佐藤谷)。落ち着く先が(決まる。見つかる)。落ち着いた(足取り。声で告げる)。静かな落ち着いた雰囲気。全体に落ち着いた美しさを保つ。どっしりと落ち着いた座り方。泣くだけ泣いてしまうと全てが終わったような落ち着いた気持ちになる=伊集院。ゆっくり落ち着いて話す。落ち着いてくる(吹雪が。水の流れが。世の中が)。分別ざかりのくすんだような落ち着きが漂う加賀。しっとりとした落ち着きが備わる。落ち着きのある渋い作りの喫茶店 永井脱。顔に木彫りのような深い落ち着きを見せる=有島。次第に落ち着きを取り戻す。あわてるには及ばない。揺れている振り子が止まったような静かな気持ち“干刈。激しく舞い上がった埃が次第に沈んでいくように気持ちが鎮まる=森瑙。人心地がつく思い。▼人心地がつく(ほっと。やっと)。ようやく人心地を取り戻す。 <243> # 落ち着く **どうじない【動じない】**▼動じない(頑として。少しも。ナイフを目にしても一向に。ちょっとやそっとでは)。どっしりとして物に動じない人三浦。ものに動じない沈毅な姿勢山田風。物に動じない豪胆な人間。動じる気配がない。いささかも動じる風がない。性根の据わった気の強い女。胆力が据わった人。度胸が据わった人物。腹の据わった男。▼動揺しない(いささかも。多少の混乱には)。さしたる動揺もない。びくともしない(無遠慮な視線の束に。押せども引けども。どんな風が吹こうと)。 **ふあんてい【不安定】**不安定な(日々が続く。関係にいら立つ。状態から抜け出す。状態を余儀なくされる)。極度に不安定な構図。日毎に変わる不安定な生活条件。運転を誤るほど不安定な精神状態"筒井。興奮と緊張がない交ぜとなった不安定な心藤田。感情が不安定になる。心が不安定に崩れる。安定感を欠く。安定にほど遠い。据わりが悪い。箸箱を突っ立てたほどのあやしい安定"里見。機嫌にむらがある。がたつく(経営が。生活が)。愚痴っぽく情緒不安定向田。感情の起伏が激しい。情緒が(カメレオンのように色を変える=梶井。空の雲のように姿を変える梶井)。 **そわそわ**そわそわいつも落ち着いていない。娘を見合いに連れだした父親のようにそわそわと落ちつかない=畑。▼そわそわする(居心地悪そうに。興奮がさめやらずに)。何か隠しているみたいなソワソワしたそぶり内田爽。そわそわして(出かける。待つ)。心がそわそわとして落ちつかない=長塚。 **やすらか【安らか】**安らかな(往生を遂げる。心を得る。寝息をたてる。寝顔を見せて昏々と眠る有吉)。安堵感とが漂う安らかな寝顔「つか。かつて得たことのない安らかな眠りにおちる=塩野。仕事をしてそれが円満に成就した時の安らかな得意と満足芥川。安らかな顔(薄く微笑したままの連城。苦しまずに死んだ"干刈)。安らかに(世を送る。極楽浄土へ向かう)。老妻に看取られて安らかに死んでゆく。自由の天地に人民が安らかに身を置く=山田美。安らかになる(心が。魂が)。心安らかな気分。心安らかに眠りに就く。晏如として日を送る。晏如の心を得る。 **やすらぐ【安らぐ】**▼安らぐ(気持ちが。心が。精神が)。安らげる(気分を。心を)。柔らかい絹の褥にくるまっているような安らぎ高橋和。安らぎが心を満たす。安らぎの(ある男女の間柄。場所を見いだす)。束の間の安らぎを得る。赤子のような安らぎを感じる荻野。▼安らぎを覚える(心に。得も言われぬ)。復讐しを果たしたあとの安らぎのよう吉行。 **ゆとり**ゆとり(自分の難儀を自分でおかしがっているみたいな透明な田辺。楽しんで味わうような気持ちの=山本周)。声にゆとりが滲み出る。▼ゆとりがある(動きに。気持ちに)。▼ゆとりができる(経済的な。心に。時間の。車内に涼しい風が吹き込むように向田)。ゆとりのある暮らしに憧れる。相手の孤独を汲み取るゆとりのある優しさ瀬戸内。心のゆとりを取り戻す。余地がある(歩み寄りの。改良の。拡大の。検討の。話し合いの。もっと工夫の。相手が折れてくる)。 **れいせい【冷静】**冷静でいるに越したことはない。仕事ぶりは冷静で手際がよい=原田康。冷静な(顔で言う。議論を待つ。声で応える。目で観察する。理性の働き。批判の目を向ける)。痛みと恐怖が冷静な判断力を奪うあさの。残酷とも思えるくらい冷静な口調立原。専門家もちょっと舌を巻くほどの冷静な判断"阿刀田。浮薄な情熱で左右されない理智を身体に滲みつけているような冷静な話し方円地。冷静に(物事を考える。考えをまとめる。事態を把握しようと努める。対応策を考える。申し出を受け入れる。行方を見定める)。心を冷静に保つ。努めて冷静に言う。感情に左右されずに事態を冷静に分析できる!佐野。キッチンの煮物の味つけでも調べに行くときのようにゆっくりと冷静に部屋に行く小池。先刻の興奮がまるきり嘘だったかのように冷静になる菊池。ともすれば冷静に沈んでいきがちなハートに油をぬたくって火種を探す気分になる荻野。内心のざわめきを抑えつつ努めて冷静に促す貫井。冷静の度を失う。上辺は冷静を装う。沈着冷静な人。沈着冷静に行動する。事の処理にあたって冷静沈着。冷静沈着が背広を着て歩いているような男赤川。冷静沈着な処置を褒める。クールな印象を受ける。クールに物事をとらえる。関係がクールに推移する。冷徹した目で見守る。感情を差し挟まない冷徹な客観描写。 <244> # 落ちる・落とす **うちおとす【打ち落とす】**▼打ち落す(手裏剣を。手に持ったナイフを)。撃ち落とす(鳥を。飛行機を)。あえなく首を打ち落とされる。大きな鳥をはっしと撃ち止める。ひとたまりもなく撃墜される。敵の飛行機を撃墜する。 **おちいる【陥る】**▼陥る(感情の錯迷に。孤独な思いに。昏々と眠りに。思想の混迷に。重大な危機に。精神的な病に。人々が恐慌に。深い熟睡に。不幸な運命に。不利な状況に。一家離散の苦境に。軽い興奮状態に。孤立無援の悲運に。社会全体が大混乱に。収拾のつかない混乱に。心理的にバニック状態に。操業の続行が不可能な状態に。突発的な不調に。途方もない妄想に。ぬきさしならぬ関係に。末期症的な考え方に。みすみす策謀に。暗澹たる絶的な気持ちに菊池。頑固な薬不信に三浦哲)。▼気分に陥る(絶望的な。不機嫌な。暗澹とした)。▼羽目に陥る(命を狙われる。取り返しのつかない)。ともすると単調に陥りがち。▼はまる(詭計に。計略に。策略に。術策に。まんまと謀に。誘惑の罠に)。 **おちこむ【落ち込む】**▼落ち込む(暗い気持ちに。氷の割れ目に。自虐の世界に。奈落の底に。眠りの淵に。深い眠りに。眼窩が深く。浮かない気分に。惨めな気分のなかに。シェアが数パーセントにまで。底知らぬ深みへ。のめったように谷底へ。名状しがたい混乱のなかへ。崖が海へ向かって=柴田翔。生産量がビーク時の三分の一にまで=畑村)。気分が下がりすぎて鬱に落ちこむ=加賀。落ち込んだ(夫を励ます。気持ちが。表情が底なしの)。▼落ち込んでいる(気分が。生産が)。落ち込みが(続く。目立つ)。落ち込みよう(そばで見ていられないほどの。統計を取り始めて以来最大の)。 **おちる【落ちる】**落ちる(頭から兜が。川に灯影が。帆が。車の速力が。現場の士気が。仕事の能率が。ぽたぽた滴が。目から鱗が。穴の底に。一帯が静寂に。思わぬ罠に。影が水面に。声が耳に。心が絶望に。逆落としに。情婦の境遇に。手形が期日に。敵の手に。話が猥褻に。陽が柔らかに。魔の手に。惨めな境涯に。若い娘と恋に。穴にすぼっと。子供が川へ。猿も木から。滴が一滴。涙がぼとりと。槍が手から。雪が庇から。活字を追うスピードが。テストの順位が。西の空に夕陽が。二人の間に沈黙が。うつらうつらと仮睡に。影法師が足元に。雲の影が斜面の上に。木の実が地表に。不吉な影が身辺に。酔って岸壁から海に。リンゴが地面に。足を踏みはずして階段から。売り上げががくんと。切れ味ががくっと。首から胸へ汗が幾筋も。地面に背中から。涙が目からはらはらと。葉が一枚一枚と。春の日差しが明るく。貧乏のどん底まで。頬肉がげっそりと。路面に影がくっきりと。胸に不安の影が=横山。栗の実がほとりぽとりと地に=杉本。日本が疲弊のどん底に=坂口。葉洩れ陽が石垣の上に点々と=中島激)。ほっぺたが落ちるほど美味しい檀。▼明かりが落ちる(看板の。庭に部屋の)。▼ばらばらと落ちる(木の葉が。小さな光が)。▼はらりと落ちる(煙草の灰が。前髪が。紙片が一枚)。▼ひらひらと落ちる(紙片が。柔らかに雪が。紙切れが床に)。▼淵に落ちる(憎しみの。眠りの)。▼すとんと胸に落ちる(言葉が。一言が)。床に落ちる(鍵が。コップが。ばさりと服が。手元からバッグが)。日差しが金色に熟れながら斜めに落ちていく=石田衣。鮮明度がかなり落ちている。落ちてくる(葵からはぜた実が。細かい雪がちらちら。涙がぼろぼろ頬へ。花びらがはらはらと。天空から大粒の雨がぽつりぽつりと藤田)。汚れの落ちがいい。落っこちる(困った羽目に。崖からまっさかさまに。どしんと梯子から)。落ちていない(腕はさほど。埃一つ)。罠にみすみす落ちない。この世に生まれ落ちる。ばらりと頬に落ちかかる髪。葉が枯れ落ちる。壁土がざらざらと崩れ落ちる。山間の日が早々と暮れ落ちる。髪から水が滴り落ちる。止まらぬ涙が暗がりにしみ落ちる。滑り落ちる(雨が葉の上を。雪が屋根を)。ぼたぼたと滴が垂れ落ちる。▼流れ落ちる(吐け口から水が。汗が背中を)。▼抜け落ちる(髪が。髪から毛筋立てが=川端)。壁が剥げ落ちる。雨垂れがはらはらと乱れ落ちる。「燃え落ちる(家が。建物が)。光が漏れ落ちる。▼焼け落ちる(橋が。屋根が)。 **おとす【落とす】**落とす(明かりを。一日の疲れを。うっかり鍵を。鋭くもの罵を。声のトーンを。座布団に尻を。情で被疑者を。旅の垢を。丹念に汚れを。手から刀を。並木が葉を。はらりと紙を。ブールの水を。溝に前輪を。メモに視線を。料亭に金を。影を地面に。視線を足元に。視線を手元に。人を地獄に。肩をがっくり。腰を低く。葉をすっかり。急に声の調子を。車がスピードを。ほとりと池の中に小石を。ぽろぽろと種を。見る見る速度を。目を伏せ気味にして声を。視線をテーブルに。煙草の灰を灰皿に。塩をほんのちょっぴり。スピードをぐっと。雨が水面に和やかな円い波紋を"小林多。どぎまぎとまばたきして目を"加賀。もはや反駁する気力もなくし溜め息混じりで肩を"有川。けだるい目を窓の下に"高樹。日本全土を疲弊のどん底へ=坂口)。▼影を落とす(水の面に星が。籬が畳に。不運が濃い。向かいの山に雲が。悪い予感が心に。人家が暗がりの中に=勝目。マロニエが白壁に=辺見)。▼腰を落とす(力なくソファーに。どっかり地面へ)。危うく命を落しかける。危うく何せんの谷に落とされる。▼落とし込む(白粥へ卵を。バンを胃の腑に。村の者を飢餓に)。落とさない(作品の質を。一向にスピードを)。▼洗い落とす(汚れを。泥を)。扇の的を射落とす。▼追い落とす(社長の座から。谷底に向かって)。かき落とす(砂を。雪を)。郵便番号を書き落とす。刈り落とす(杖を。髪の毛を)。▼聞き落とす(肝心なところを。重要なポイントを)。▼切って落とす(水門の水を。蚊帳の吊り手を)。すばりと切り落とす。くどき落とす(王を。娘を)。▼蹴落とす(他人を。同僚を。仲間を)。▼削り落とす(汚れを。余分のものを)。焦げた部分をこすり落とす。油虫をこそげ落とす。ずるりと襦袢を滑り落とす。高値で競り落とす。▼そぎ落とす(贅肉を。余分なものを)。▼剃り落とす(ひげを。むだ毛を)。どしんと深い落とし穴へ叩き落とされる。▼叩き落とす(素っ首を。バイブの灰を。信用をゼロに。地獄の底へ)。▼裁ち落とす(小枝を。リボンの端を)。▼取り落とす(グラスを。抱いていた風呂敷包みを)。▼投げ落とす(死体を。ナイフを)。脱ぎ落とす(着物を。スリッバを)。▼掃き落とす(毛虫を。ちりを)。▼はたき落とす(体中の雪を。粉を。砂埃を。砂を。灰を)。髪にかかった雪を払い落とす。家賃を口座から引き落とす。吹き落としそう(風が今にも梢から月を=国木田。風が赤い太陽を海に倉橋)。拭き落とす(窓の曇りを。落書きを)。▼振り落とす(小銭を。垢を)。さらさらと淡雪をふり落とす松の梢"長与。振るい落とす(負い目を。梢が日の光を。砂を。土を。雪を)。不適格者をふるい落とす。▼見落とす(誤植を。うっかり)。原稿の一部を読み落とす。▼落っことす(金を。がま口を。財布を)。平凡なフライを落球する。 <245> # 落ちる・落とす **がたおち【がた落ち】**信用ががた落ちになる。がた落ちする(作業能率が。生産が)。 **かんらく【陥落】**城が陥落の直前にある。▼陥落する(首都が。要塞が。大関から。敵の圧倒的な攻撃に。ひとたまりもなく)。城を攻め落とす。抵抗もむなしく落城する。落城寸前に追いこまれる。 **こぼれおちる【こぼれ落ちる】**こぼれ落ちる(煙草の先端から灰が。目から涙の粒が。雨水が糸をひいて。砂礫がざらざらと。砂がさらさらと指の間から。セーフティーネッドから。泥がぽろぽろと。光が梢の葉に当たり地面に次々と=中上)。▼涙がこぼれ落ちる(目から大粒の。目からほろりと『長崎)。 **ころげおちる【転げ落ちる】**▼転げ落ちる(椅子から床に。奈落の底に。斜面を派手に。ぽろりと口から言葉が。肩からもんどりうって。高いところから低いところへ。涙が玉となって。山上から人影が石ころのように=徳永。巨大な岩が森然たる音を立てて"佐山)。危うく海に転げ落ちかける。▼こけ落ちる(椅子から。台から)。転がり落ちる(涙が頬を。ライターが足下に。丸太ん棒のように丘を!泉俊。石が生き物のように唸りながら=川端)。戦況が坂道を転がり落ちるように悪化し続ける=西木。 **ずりおちる【ずり落ちる】**▼ずり落ちる(眼鏡が。屋根の瓦が。椅子から。王座から)。▼ずり落とす(ズボンを。バンツを)。ずり下ろす(スカートを。ズボンを。ストッキングを)。ずり下げる(ズボンを。パンツを)。枕からこける。椅子からずっこける。 **ついらく【墜落】**墜落する(戦闘機が。飛行機が。山中に。住宅地に。ヘリコプターが。天上から地獄へと投げ落とされた堕天使のように=加賀)。飛行機が失速する。 **つきおとす【突き落とす】**▼突き落とす(絶望の淵に。社会の最下層に。崖の際から真っ逆様に=有島)。どん底に突き落とす(失意の。絶望の)。突き落とされる(悲しみの底に。混乱の谷間に。奈落の底に。不運の底に)。 **つたいおちる【伝い落ちる】**▼伝い落ちる(水滴が壁を。涙が頬を。水が顎を。こめかみから汗が。雨水が木の幹を)。伝わり落ちる(涙が幾筋も糸をひいて頬を森瑞。白塗りのマストを雨滴が光って三島)。 **てんらく【転落】**転落の(一途をたどる。道を歩む)。政権からの転落を怖がる。転落する(夢破れて巷に。馬の鞍から。政権の座から。吸いこまれるように濁流の渦に"杉本。岩場から足を滑らせ海へ火坂)。人間から縦に転落したような格下げ後藤。破滅に向かって転落していく。転落事故を起こす。 **ぬけおちる【抜け落ちる】**▼力が抜け落ちる(全身から。指の先から)。体から精気が抜けていくよう。肝心な部分がすっぽりと抜けている。落ちがないように注意する。提出書類に落ちがある。ページが脱落する。力が抜ける(肩から。体から。全身から。膝から。すうっと全身の)。抜けをチェックする。漏れがないか確かめる。 **らくご【落伍】**落伍する(競争社会から。本隊から。列から)。落伍者ほどウヌボレの強いものはない=坂口。脱落者が相次ぐ。脱落者の極印を打たれる。組織から脱落する。 **らくせん【落選】**落選する(コンテストに。憎がっらを並べて)。落ちる(一次予選に。選外に)。次点に(甘んじる。泣く)。選に漏れる。 **らくだい【落第】**落第の憂き目を見る。試験に落第する。生徒を落第させる。原級に(とどめる。留め置く)。一年生をやり直す。 **らっか【落下】**押しつけられるような重たい音の落下=辻仁。落下する(逆落としに。瀬然たる音響とともに天井が。奈落に向かって。もんどり打って頭から。悪夢のようにワッと=大原)。落下地点を予測する。葉がひらひらと地上に舞い落ちる。 <246> # 脅す・怯える **いあつ【威圧】**無言の威圧に訴える。押しひしゃげられるような威圧を感じる=有局。激しい眼光で威圧する。相手を威圧して服従させる。威圧感に圧倒される。威圧感をやわらげる。威圧的に(にらむ。そそり立つ岩壁。ゆっくりと見まわす)。ひときわ威圧的にそびえるビル=五木。大上段に(構えた談論。振りかぶった主張)。問題を大上段に振りかざす。鋭い目で射すくめる。鋭く射すくめる視線。射竦めるような瞳獅子。射すくめるような目で見る。射すくめられたように(体を固くする。黙って下を向く)。 **いかく【威嚇】**鼠に対する猫の嘲弄のような陰湿な威嚇=松浦。威嚇の(うなり声を発する。かけ声を浴びせかける)。威嚇する(敵を。自動小銃で。近づいて来るものを。槍を振り回して)。威嚇するような大声をあげる=なかにし。機関銃を威嚇射撃する。威嚇的な(身構え。目を向ける)。 **いくじない【意気地ない】**▼意気地がない(いざとなると。からきし。いざとなるとからきし)。とたんに意気地がなくなってうろうろする=古井。年と共に意気地がなくなる。意気地なく(しょげる。泣き出す。シャッボを脱いで引き下がる『大佛)。▼意気地なし(根っからの。図体が大きいくせに。生来おとなしく。臆病な気の小さい=水井荷)。恐怖で萎靡沈滞する。 **おくびょう【臆病】**▼臆病(小鳥のように。大きな図体の割に。態度がでかい割には)。臆病な(心を乗り越える。子供のように目をぱちぱちさせる=宮部)。臆病なウサギみたいに震えている姉!小池。病的なまでに臆病な質たち=奥泉。▼感病な人間(人一倍。一切の不正を不正として感じないほど意気地のない=芥川)。根っから憶病にできている。▼障病になる(恋に。必要以上に)。臆病にも早々に退散する。臆病そうな泣き笑いの表情"中村真。卑しい臆病そうな笑い。障病そうに絶えずきょときょとする。目が病んだ小動物のように臆病そうに動く=小林久。臆病風に吹かれて(尻尾を巻く。逃げ出す)。▼臆病者(滑稽な。根は小心な。希代の)。臆病者という汚名に耐える。もの怖じした子供のように微笑する=堀。ものおじをする仔鹿のような表情"山本周。怯懦な(心を追い払う。小動物が虚勢を張る)。妄想にふけるだけで実行力のない怯儒な人用藤枝。自分の怯懦に便ももを入れる=小林久。顔面に怯儒の色がにじみ出る。因循法儒とあざける。 **おじけづく【怖じ気づく】**▼怖じ気づく(天変地異に。土壇場にきて)。怖じ気づいて逃げ出す。怖じけづいていると思われるのは心外安岡。怖気だつほどの快楽"宮本机。おぞ気の立つほど煩わしい泉鏡。夜道で酔漠とすれ違ったときのようにおそ気をふるう古井。虎に向かっている羊のような怖じ気菊池。怖じ気を(ふるう。むき出しにする)。風声鶴唳の身。風声鶴唳に驚かされる。敵を前にして風声鹤唳にもびくびくする。恐怖心が(頭をもたげる。頭の中を渦巻く。胸に刺しこんでくる=安岡)。いたたまれないほどの恐怖心が湧く“小池。興奮が乗じて恐怖心が麻痺する=横山。心の奥に恐怖心が巣くう景山。恐怖心と羞恥心しいらがないまぜになる。 **おずおず【怖ず怖ず】**辛い厭なことでもいい出されるかと案ずるように怖す怖ずいう長塚。おずおずと(異を唱える。手を挙げる。足を踏み入れる。あたりを見まわす。上目づかいに盗み見る。引き出しを開ける。椅子に腰掛ける=安岡。差し障りのない話題しか口に出さない=遠藤)。どぶ風知ずのようにおずおずとした眼付き=徳永。おずおずした声で質問する。不安丸出しでおどおどやって来る。おどおどと(卑屈になる。あたりに目を配る。ためらいがちに話す。お世辞を並べる=川端)。▼おどおどする(必要以上に。何につけて。人前へ出て。雌豹の群れに襲われた驢馬のように=中)。おどおどした(声で訊く。目付き)。気弱なおどおどした男。おどおどして(落ち着きがない。機嫌をうかがう)。 **おどす【脅す】**▼脅す(子供を。社長を。周辺国を。年寄りを。冗談半分に。ビストルで。牙を剥き出して。短刀を突きつけて。刃物をちらつかせて。ならず者が膏薬代に心を絞るように水井龍)。おどすかと見ればたちまちとりなす。幸田文。移したり(すかしたりする。なだめたりして納得させる)。言うことを聞かなかったら殺すと脅される=松本。脅し(口先だけの。底意地の悪い。迫力ある)。脅しが効く。言外の脅しがちらつく言葉=浅川。まんざら脅しとも思えない眼の色"里見。脅しに(屈する。負ける)。どんな脅しにも屈しない。脅しの骨法を心得る。脅し文句を(実行に移す。並べ立てる)。いきなり軍艦で乗り込んで脅しをかける"船山。半ば脅すように言う。下級生を脅し付ける。脅かしをかませる。▼おどかす(田舎者を。男を。親を。女を。客を。新参を)。投げつけられた恫喝に一瞬ぎくりと心が冷える=有川。恫喝して金を巻き上げる。恫喝的な(言動。響きのある言葉)。 **おびえる【怯える】**▼怯える(自分の山彦に。居丈高な叱声に身をここめて萩原薬。子供のように理由もなく=中村兵。眠りと目覚めとのあいだで獣のように丸谷)。おびえる(生命の危険に。罪の意識に。犯人の報復に。人の気配に。不吉な予感に。未知の運命に。死ぬほど。暗い予感の的中に。生活への不安に。身に覚えもないことに。自分の影におびえる犬のようにありもせぬ幻に高橋和。悪鬼に追い迫られたように有局。鬼でも見たように司馬。びくっと飛び上がるように=川端)。時代の頂上の感覚に脅える=中野美。おびえる心を励ます。止まり木でおびえる小島。影におびえる(怪物の。死の)。おびえた目をして震える。蜥蜴のように怯えた眼遠藤。おびえて身がすくむ。傲慢な妻の態度に怯えている哀れな夫藤本。野鼠のように怯えている女の子=高橋三。おびえが全身に走る。怒りとおびえが交ざった表情=光原。おびえ方が尋常ではない。おびえで瞳が揺れる。怯えにも似たとまどい"村松。おびえの目に安堵が宿る。顔におびえの影が走る。不安と怯えの混じった目で見る東野。脅えの翳が消え失せる=横山。おとおとと怯えたような目つき=小川。おびえたように(後ずさる。立ちすくむ)。一瞬おびえたように顔を見合わせる。脅えたように一点を見据える=外村。おびえきる(心の底まで。骨の髄まで)。おびえてびくびく暮らす。毎日毎日びくびくして虚勢で生きる福永。来る日も来る日もびくびくしながら隣近所へ目を配って鼠のような一生を送る三局。 <247> # 脅す・怯える **おびやかす【脅かす】**▼脅かす(エースの座を。国家の安全を。陰に陽に生活を)。▼脅かされる(足元が。希望が。境界を。生存の根底を。悪夢に。恐怖に。後悔に。生の不安に。罪の意識に。匪賊の襲撃に。魔の跳梁に。夢魔に。余震に)。 **きおくれ【気後れ】**気後れが先に立つ。▼気後れがする(いざとなると。この期になって)。気後れして言いそびれる。気が引ける。虚を祈かれたように鼻白む。鼻白んだ気持ちを押し隠す。鼻白んだようにブスッと言う内田康。 **きょうい【脅威】**▼脅威(疫病の。地震の。戦争の)。核兵器の脅威から解放される。生命の脅威におののく。▶脅威にさらされる(自然の。テロの)。 **きょうはく【脅迫】**脅迫に(応じる。屈する)。度重なる脅迫に堪えかねる。ほとんど脅迫に近い言い方。脅迫のねたを集める。追及するような脅迫の眼つき=森環。たじたじとなって(青ざめる。後退りする)。たじろぐ(意外な質問に。思わぬ反撃に。激しい抵抗に。有無を言わせぬ調子に。思い詰めた表情に。驚愕のあまりの深さに。迫力ある脅しに。予期せぬ反応に。お株を奪われたかたちで小局。率直に心の中を見せられたようで却って=石川)。不意を突かれてたじろいだようにちょっと顎を引く森一環。たじたじとなって(青ざめる。後退りする)。たじたじとなる(意外な強敵に。気迫の前に。一目見た刹那。さしもの強敵も。図星をさされて)。 **けんまく【剣幕】**▼剣幕(鋭く現実をむしって切り捨ててしまう鳥尾。殴りかかってくるのではないかと疑うほどの原田糸)。今にも噛みつくかと思うくらい恐ろしいけんまく=芥川。恐ろしい見幕だったことが嘘だったようににこにこする。幸田文。恐ろしい剣幕で怒鳴りつける。すごい剣幕でまくしたてる。岩に対して恨みでもあるような剣幕でハーケンを打つ=新田。怒鳴り込みに行きかねない剣幕で息巻く=重松。何かまだ文句があるかという剣幕で睨め回す「加賀。 **こけおどし【虚仮威し】**こけおどしの(名前。文句。効果は十分にある=篠田)。鬼面人を驚かす。はったりを(かける。かます)。 **すごむ【凄む】**▼すこむ(金を出せと。血相を変えて。短刀をちらつかせて。殴られたいのかと。どすを利かせて)。ごろつきにすこまれる。凄み(悪党が居直る。ぎょっとするような。白刃を構えたような高樹)。凄みの利いた声で一喝する=篠田。一瞬はっとするほど渋みのある美しさ=日野。ニヤリと凄味のある微笑を浮かべる=半村。目に依然として射抜くような凄みを残す高樹。どすの利いた太い声。低くどすを利かせて言う。 **たじろぐ**たじろぐ(意外な質問に。思わぬ反撃に。激しい抵抗に。有無を言わせぬ調子に。思い詰めた表情に。驚愕のあまりの深さに。迫力ある脅しに。予期せぬ反応に。お株を奪われたかたちで小局。率直に心の中を見せられたようで却って=石川)。不意を突かれてたじろいだようにちょっと顎を引く森一環。たじたじとなって(青ざめる。後退りする)。たじとなる(意外な強敵に。気迫の前に。一目見た刹那。さしもの強敵も。図星をさされて)。 **びくつく**必要もないのにびくつく。内心びくつきながら尋ねる。びくっとする(不意に声をかけられ。棒で叩かれたように「池澤)。かすかな物音にもびくっとなる=福永。びくびくする(主人一挙一笑かいに。顔色ばかりうかがい。だれかに盗まれるのではないかと=阿刀田)。びくりとして顔をあげる。全身に電気が走ったみたいにびくりとする=乃南。戦々恐々遠巻きに眺める。悪事が発覚するのではないかと戦々恐々とする。のろわれている者のように戦々兢々とする佐藤泰。 **ひるまない【怯まない】**いかなる暴力にもひるまない。ひるまず作業を続ける。ひるむことなく(言い返す。かみついたまま離れない=石森)。非難にひるむことなく解剖を決行する=渡辺。▼たじろがない(いささかも。少しも。何があっても)。 **ひるむ【怯む】**▼怯む(ぎくりとするような恐い声に一瞬有川。容易ならない剣幕にいささか谷崎)。▼ひるむ(思わぬ伏兵に。語気の鋭さに相手が。土壇場になって)。相手がひるむ隙に逃げる。ひるみがちな心を励ます。ともすればひるみそうになる心を奮い立たせる=眉村。ひるんだところを飛びかかる。ひるんで(浮き足立つ。言葉尻が弱々しい)。ひるみが心に湧く。ひるんだようにおどおどする。一瞬ひるんだように半歩後ずさる。 **ふぬけ【腑抜け】**腑抜けになった魂。腑抜けの(状態に陥る。木偶の坊)。腑抜けた体を無理に支え直す。腑抜けのようによろめく粒面の男"古井。身体がすくんだようになるほど物に臆する=長塚。意気地なしの腰抜け。腰抜け武士と非難される=舟橋。意気地のない弱虫。弱虫のやるネチネチした攻撃法"今日。勝ち気な気性とはおよそ正反対な弱虫さん=有吉。 <248> # 踊る・演じる **えんぎ【演技】**▼演技(食い足りない。臭気芬々たる。真に迫った。迫真の。卑俗でいやらしい=松浦)。演技に(熱が入る。磨きをかける。めりはりをつける)。演技の匂いのない自然なはにかみ=山田太。頭の中で演技をイメージする。多少なりとも演技を要求される。必死の演技を続ける。伸び伸びと演技する。演技しているようなきれいな泣き方“小川。まれに見る名演技。一世一代の名演技を見せる。 **えんしゅつ【演出】**演出(心憎いばかりの。人知の限りを尽くして考え出された=横山)。演出が(冴えに冴える。堂に入っている)。▼演出する(映画を。危機を。劇を。ドラマを。友好的な雰囲気を。相手の印象に強く残るように京野)。 **えんじる【演じる】**▼演じる(親子喧嘩を。子別れの場を。損な役割を。剣の刃渡りを。派手な騒ぎを。一人二役を。株がストップ高を。健気なな嫁の役を。滑稽な役回りを。島抜けのくだりを。仲のよい親子を。理想的な父親を。思いきり狂想を"半村。型どおりの良妻賢母を"開高)。悲劇のヒロインを演じたがる=角田。人が違うのではないかと思わせる好演。使い方を実演する。▼熱演する(女優が。俳優が。ヒーローを。ヒロインを)。 **おどりこ【踊り子】**名も売れていない踊り子。踊り子のように葉を差し上げた若い椰子大岡。舞台の踊り子のように反動をつけてくるりとこちら側に向き直る=池田。優美な踊り手。踊り手に精霊が乗り移る。見目麗しい白拍子舟橋。細身ではあるが、ダンサーだけにバネのありそうな身体つき"西村。水際立った舞妓姿。 **おどる【踊る】**▼踊る(ワルツを。優雅に。光がちらちら。振りをつけて。脇目もふらずに。次々と相手を替えて。身振り手振りもおかしく。リズムに乗って。壁に春の明るい陽が=開高。兎とが跳ねるように=石坂。お堀の水に秋の日が明るく=山本有。転げ回るように"加賀。小学生の遊戯のようにはしゃいで=川端。凧が凧糸の唸りを蒔き散らしながら=福永。つむじ風のように=村上春。渚に水と光が郷かしく山本有)。▼合わせて踊る(お囃子に。音楽に。リズムに)。だれかが吹きはじめた笛の音にあわせて踊りだす三浦し。やかんの蓋がおどりはじめる=半村。あやつり人形みたいに踊らされる=日井。バネ仕掛けの人形のように楽しく体を踊らせる=川端。▼踊り(雨乞みたいな下等な永井荷。ラジオ体操をやっているような西木。わざとつまずくようなぎこちない=大庭)。七十五まで踊り忘れず。陣中の徒然に踊り戯れる=舟橋。踊りの振付をする。民謡の踊りの群れへ分け入る三島。踊るような足取りで飛び出す=福水。踊り明かす(朝まで。徹夜で)。ものの怪に憑かれたかのように一晩じゅう踊りあかす畑。▼踊り狂う(焚き火のまわりを。髪を振り立てて。火がついたように『宮本輝)。▼踊り回る(草の上を。舞台上を)。舞い踊る(光の中を埃が。雪が。紙屑が潮風に。笛や鼓を鳴らして)。日本舞踊一筋に生きる。バレエを(習う。見に行く)。▼ダンス(軽やかな。芸術的な。律動的な)。ダンスに興じる。ダンスを踊る。 **げきじょう【劇場】**劇場が(はねる。満席になる。競技場のような生な感動に煮え立つ円地)。劇場に(足を運ぶ。観客がびっちりつまる=円地)。観客が劇場を埋め尽くす。心の中が見物が帰って行ったあとの劇場のように空虚=梶井。映画館に入る。筵張りの芝居小屋が立ち並ぶ=村上元。 **げきだん【劇団】**劇団が巡業する。劇団に(所属する。入る)。劇団の門を叩く。劇団を(主宰する。旗揚げする)。一座の(一枚看板。大立て者。立て役者。人気者。花形)。一座を組む。 **しばい【芝居】**▼芝居(大仰に泣いたり笑ったりする。若手のお披露目にはうってつけの=高橋克)。芝居が(大当たりする。不入り。舞台に上る)。芝居の(脚本を書く。人物に恋する。幕間。幕開きを待つ。見巧者。暮が切って落とされる。台詞のように呟やぶく=小川)。芝居の幕を(上げる。おろす)。歌舞伎座へ芝居を見に行く。芝居見物に(打ち興じる。出かける)。歌舞伎を(鑑賞する。見に行く)。劇の(進行を見守る。台本。配役。リハーサル)。手に汗握るショー。ショーを(演じる。見に行く)。西部劇を見る。▼見せ物(奇抜な。グロテスクな。珍しい)。前衛的な演劇。演劇に血道を上げる。演劇的な感興に興奮する。 **しゅつえん【出演】**▼出演する(広報担当者が。映画に。テレビに。番組に。舞台に。ピンチヒッターで)。二大スターが共演する。▼出ずっぱりになる(試合に。テレビに。舞台に)。 **しゅやく【主役】**テレビドラマの主役に抜擢される。歴史の主役に躍り出る。主役の座に返り咲く。、役を演じる。おしゃべりの主役を娘たちに任せる=重松。主演に抜擢される。名女優を主演に迎える。▼主演を務める(映画で。テレビドラマで)。 **じょうえん【上演】**▼上演する(影絵を。戯曲を。脚本を。狂言を。作品を。芝居を。人形劇を。人形浄瑠璃を。翻訳劇を)。▼再演する(劇を。芝居を)。▼初演する(戯曲を。新作を)。本邦初演の劇。公演が(一ヵ月後に迫る。打ち切りになる)。全国各地で公演する。地方公演に出る。来日公演が実現する。 **だしもの【出し物】**▼出し物(学園祭の。学芸会の。看板となる。サーカスの。変わりばえのしない)。客受けのする演目。小屋の演目に掛けられる=高橋克。 <249> # 踊る・演じる **タレント**全国に顔を知られたタレント。タレントに(転身する。熱を上げる)。プロダクションに所属する。売り出し中の芸人。素人の芸人が跋扈する。伝統的な芸能を継承する。▼芸風(地味な。重厚な。軽い)。 **ドラマ**ドラマ(大して面白くもない。見ごたえのある)。遠い歴史がテレビのドラマで一挙に現代に復活する藤本。ドラマを再現するうえで欠かせない資料。命が織りなすドラマを生きる。スリリングなドラマを楽しむ。青春ドラマのワンシーンでも見るように眺める=岡田。ものことがいつもテレビドラマのように都合よく進行するとは限らない=星。ホームドラマにしたら理想的な人物配置高井。 **ぬれば【濡れ場】**▼濡れ場(過激な。大胆な)。濡れ場を演じる。数刻なラブシーン。 **はなれわざ【離れ業】**▼離れ業(危険な。巧妙至極な)。離れ業を(演じる。やってのける)。人間離れをした行為。軽業をやってのける。▼曲芸(象の。綱渡りの)。ちょっとできかねる芸当。超人的な(活躍。記憶力。働き)。人間業とは思えない怪力の持ち主。神業に近い。神業の妙技。神業を見るよう。技が神に入る。人間の業ではない。神の技を見る思い。 **ピエロ**ピエロ(悲しそうな。サーカスの。人を笑わせる。鮫は踊り疲れた海の=横光)。ビエロの派手な衣装。力みかえった慰めの言葉がビエロの台詞めいておかしい=石川。ビエロを演じる。夫を道化に仕立て上げる=筒井。道化師のように(愛嬌のある医師-徳永。派手な服装の男"石坂)。道化師に扮する。道化役的な難儀を強いられる。道化役を演じる。 **ぶたい【舞台】**舞台(荷が重い。目がさめるような)。舞台が(暗転する。はねる)。清水の舞台から飛び降りるよう。晴れの舞台で活躍する。舞台に(穴をあける。彩りを添える)。用意周到な舞台を作り上げる。▼舞台にする(外国を。近未来を。現代を)。舞台稽古に入る。舞台中央に走り出る。壇上で拍手を浴びる。影絵でも見るようなぼんやりした書き割り=阿部。芝居の書き割りでも見るみたいに花やかな旅館街水上。背景が書き割りになっている。海をメロドラマじみた安っぽい書き割りに利用する"阿部。芝居の書き割りのような乾いた空「大岡。書き割りのように薄っぺらな商店街"井上ひ。後半のステージに入る。マイク片手にステージに向かう。もう一つ上のステージに上がる。ステージの袖に引っ込む。花道に登場する。男の花道を飾る。六方を踏んで花道を引っ込む"深沢。 **まう【舞う】**▼舞う(細かい雪が。不況の風が。神楽を。颯爽と舞を。埃が部屋に。檜扇を取って。空に円を描いて恋とびが。桜の花びらが春風に。白い粉が辺りに。ちぎれたテーブが風に。葉がひらひらと空に。花弁がはらりと。蝙蝠がひらひら。巫女が宝剣と扇を振って。風花がちらちら空を永井滝。新聞が巨大な蛾のごとく宙を="横山。五色のたんざくがひらひらとそよ風に"住井。新雪が煙のように足もとから大佛。華やかな着物の長い袂がひらひらと"谷崎。飛雪が吹雪のように=加賀)。風に舞う花吹雪。▼宙に舞う(体が。布がひらひらと)。飛蝶のように軽がると舞い続ける=白洲。手のひらをひらひらと舞わせる。舞がせきを切ったように急調子になる!白洲。即興の舞に興じる。▼舞いぶり(男らしいきびきびしたり白洲。しなの決まった=氷室)。風の中で舞を踊るような気持ちのよいスイング=高橋三。掌上の舞をも能くするような細い姿佐藤春。舞のようにしぐさが美しい!有吉。▼舞い狂う(赤とんぼが。雪片が。炎の切れ端が)。神楽を奉納する。▼群舞する(蝶が。白鳥が)。一糸乱れぬ群舞のような動き=なかにし。灰色の雪の乱舞鳥尾。光の乱舞が静まる。▼乱舞する(桜吹雪が。蝶が。火の雨が。蛍が。不可解な思いが頭の中を貫井)。狂気乱舞のにぎわい。 **まんざい【漫才】**軽い言い争いが台本があって何度も稽古をした漫才みたいに息が合っている=丸谷。漫才を地で行ったような会話"高見町。笑えない漫才を聞くのに似た居心地の悪さを覚える=奥泉。漫才師(駆け出しの。ひとかどの)。 **みせば【見せ場】**▼見せ場(劇の。芝居の)。見せ場を作る。日頃の腕の見せ所。▼佳境に入る(大会が。物語が。大学の受験勉強が)。▼ハイライト(今週の。試合の。祭りの)。見どころ(一番の。この映画の。試合の)。■読みどころ(今週号の。小説の。新聞の)。読みどころを(教える。紹介する)。 **やくしゃ【役者】**役者が(そろう。自分の出番を待つ。一枚も二枚も上=舟橋。方言指導を受ける=重松)。役者に(入れ上げる。べた惚れする。見とれる)。役者の(声色をまねる。はまり役)。声が芝居の役者のセリフのようによく通る=深沢。乞食と役者は三日すればやめられない!有吉。腐ってる役者を奮起させる=高見順。役者のような甘いマスク=船戸。決定的なセリフを吐いたあとの役者のようなもったいぶった動作!小池。役者絵に描かれた人気役者"北原。役者顔負けのめりはりのある言い方曽野。演劇界で鳴らした女優。女優として花開く。女優の品定めに熱中する。銀幕の女王。名女優(往年の。伝説の。映画界を代表する)。見どころがある俳優。俳優としてのキャリア。銀幕のスター。ニューフェイスとして売り出した映画俳優新田。名優の至芸に酔う。名優のような問い合いで顔をあげる=小林信。名優のように上手に読む“大庭。 **らくご【落語】**落語が寄席にかかる。一席の短いお粗末をぶつ。小話を枕にふる。真打が(高座に上がる。高座を務める)。 **わきやく【脇役】**脇役に(甘んじる。徹する)。脇役を(演じる。務める)。主人公の周囲に魅力的な脇役を配する=重松。端役で映画に出る。 <250> # 驚く・呆れる **あきれる【呆れる】**▼呆れる(あまりのせせこましさに=島田。人間観察のつたなさに"小池。ヴォキャブラリーの貧困にわれながら=開高)。▼あきれる(堅気が聞いて。自分の迂闊さに。やり方の強引さに。不思議を通り越して)。よくもそんなに泣けるものだと呆れるほど泣きつづける=椎名綱。呆れるのを通り越して笑いたくなる!熊谷。呆れるほど逃げ足が速い"熊谷。あきれた(顔で眺める。声を投げる)。心底あきれたと言いたげな目で見る三浦し。呆れたというふうに肩をすぼめる=庄野。あきれて(後が続かない。口も利けない。返す言葉がない。しばらく声が出ない。二の句が継げない。返事も出来ない)。拍手を送りたくなるほどあきれて感心する"村上龍。呆れて腹も立てぬというような顔付き=永井荷。感心とあきれが相半ばする表情で言う三浦し。呆れ顔で見る。呆れ顔を背にして立ち去る。口を半開きにし、しばらくそのままになる!佐野。何ともかとも話にならない谷崎。面倒を見切れない。よくもまあ出鱈目にばかり書けるものだ三島。わにのような大口をあけて呆れたような表情をする=木山。あきれ返った(馬鹿馬鹿しさ。薄情者)。棒のように突っ立ったまま呆れ返ったと云う風ににらみつける谷崎。あきれかえってものが言えない=加太。大げさにあきれ返る。さすがの鬼も呆れ返る芥川。あきれ果てた顔つき。呆れはてたような軽淡の眼つき=太宰。あきれ果てて言葉もない。呆れ果てて二の句をつぐことさえ忘れる芥川。▼あきれ果てる(いい加減。我ながら)。▼開いた口がふさがらない(あきれて。ばからしさのあまり~開高)。あんぐりと口を開けたまま見つめる。▼あっけにとられる(一瞬。並み居る人々が。あまりに意外な事の展開に=中)。あっけにとられて(口あんぐり。見とれる)。呆気に取られて眼をバチクリする=幸田露。呆気に取られたように(見送る。じっと顔を見つめる!永井荷)。思いがけない提案にあっけにとられたように沈黙したまま五木。 **あぜん【唖然】**これまでに見たこともない光景が眼前に展開されたみたいに息を呑んだまま唖然となる"笹沢。唖然とした面持ち。唖然として(息を呑む。声を失う。言葉もない。舌を巻く。絶句する。口をきく気力もない=住井。その場に立ちつくすぃ原田宗)。ただ唖然としてうなずく。▼唖然とする(手際の良さに。被害に。驚きを通り越して高橋三)。▼唖然とさせる(周囲を。人々を)。 **いきをのむ【息を呑む】**息を(飲むような素晴らしさ"劉淵。呑むような胸苦しさ=石川)。息をのむ(一瞬。思わず。世間がはっと)。ゲッと息をのみ気絶しそうになる阿久。息をのむほど美しい!隆。はっと息を呑むように立ち止まる=柴田湖。アッと息をのむような美人=小沢。息をのんで(棒立ちになる。目を見張る)。ハッと息をのんだように身体を固くする=小池。 **いっきょう【一驚】**ただただ一驚のほかはない。一驚を喫する。▼一驚する(着物の趣味のよさに=瀬戸内。想像以上に美しいのに有吉)。 **おどろかす【驚かす】**▼驚かす(家の者を。一同を。一世を。関係者を。鬼面人を。近所を。周囲を。世間を。友達を。人々を。みんなを。世を。日露開戦の報が急雷のように人々の耳を=田山)。暗がりからわっと飛び出してきておどかされる=壺井。▼驚かされる(因縁の妙に。風声鶴唳に。膨大な数に。いささか。今更ながら。少なからず。ちょっと。はっと)。肝を奪う(心胆を。胆もを)。尻毛を抜く。驚かさずにはおかない。世間をあっと言わせる。荒肝を(くじく。ひしぐ)。驚愕させる(一同を。全員を。敵兵を。人々を)。▼驚咲させる(全校を。ブロを)。▼仰天させる(周囲を。まわりを。みんなを)。驚倒させる(敵を。内外を)。世間を驚倒させる大事件。▼聳動する(世間の視聴を。万人の耳目を)。みんなをたまげさせる。人騒がせな話。▼震撼させる(社内を。世界を。朝野を。人々を)。度胆を抜くような光景。人の度胆を抜くような大胆さ=永井路。 **おどろかない【驚かない】**驚かない(一向に。めったに。さして。さほど。少しも。まったく。毎度のこととて誰も)。表情に驚きの色がほとんどない。別段驚きもしない。驚くに(値しない。足らない)。驚くには当たらない(今更。それほど。別段)。何事もなかったかのようにお喋りを続ける"小池。 **おどろき【驚き】**驚き(感覚に近い。遠いところにかすかに見えていたような灯が突然眼の前で輝いたような思石。抜きうちを喰わされたようなとっさの"木庄)。爽やかにのびのびした気持ちが一時に飛び去る愕とき!宮木百。驚きが(心を襲う。頂点に達する)。あまりの驚きに驚きが声にならない"有吉。突然すぎる話のせいか驚きが伸びきったゴムのように緊張も実感もない連城。驚きで目を大きく開く"連城。驚きに打たれる(心臓が破裂しそうな「有島。血が逆流するような"石坂)。驚きの(声が漏れる。声を噛み殺す。色を両目に宿す。表情を隠そうとしない)。あっと驚きの声をあげる。誰もが一様に驚きの色を隠せずにいる=西村。おどろきのあまり二の句がつげない!池波。驚きのあまり声が出ない。飛び上がるほどの驚きを見せる=司馬。驚きを通り越して(腹が立ってくる熊合。もはや虚脱の境地谷川)。顔に驚きの(色が浮かぶ。表情が貼り付いている=池井戸)。寝耳に水の知らせ。 <251> # 驚く・呆れる **きょうい【驚異】**驚異的な(躍進を誇る。記録を打ち立てる。視聴率をあげる)。驚異に値する。驚天動地の(大騒ぎ。大変)。驚天動地のような事件が起こる=舟橋。戦争勃発のニュースに驚倒する。 **おどろく【驚く】**驚く(仰天するほど。すわ戦争かと。寝耳に水と。あまりのタイミングのよさに。意外な事の成り行きに。他愛もないことに大げさに。家の中の荒れように。口に手を当てて。図星をさされて。どきっとするほど。いつの間にか納得している自分に)。思いもかけない惨事に「芥川。息が止まりそうになるほど宫部。思わず声をあげるほど安部。思わず飛び上がるほど=福水。狐につままれたように長塚。手にしていた煙管を落とすほど宫部。背後にのけぞるほど"井上靖。白昼夢を見ているのではないかと眼を疑ったほど萩原求。はっと立ちすくむほど"有局。針を刺されたように=川端。魔術でも見たように渡辺)。気絶するほど愕とく南条。ドシンと一段梯子からおっこちたような気持ち=佐藤愛。鼻の先で爆弾が炸裂したよう。宇野利。ひっくり返るほど驚く(肝っ玉が。大地が)。驚いたの驚かないのではない。驚いて(後の言葉が続かない。とっさに返事ができない)。驚きのあまりあいづちも打てない西木。はるか彼方に見えていた流星が頭の上に落下したよう。岡田。頭の中でいくつもストロボが焚かれたような光が炸裂する=光原。息を止め棒立ちになる=墨有。一瞬言葉を失う小林久。お茶を噴き出しそうになる=高橋克。思いもかけない知らせが届く。思わず(奇声を発する。息を止めて見つめる三浦哲)。▶気がする(身体の血が泡立ったような藤沢。心の底を見透かされたような海堂。心臓がきゅんと跳び上がったような井上ひ。胸がつぶれるような字野千)。背負い投げを食わされたような奇妙な気持ち=向田。喉がとがつまって=水上)。座席から飛び上がりそうになる=伊坂。しばらくは後の声も出ない"池波。自分の耳が信じられない。寿命が縮まる。新聞を持つ手が震える高橋克。出し抜けに底知れぬ谷を覗かされたよう眉付。たまぎるような絶叫が起こる=隆。箸がビタッと止まる=つか。ひっくり返らんばかりにのけぞる=田辺。冬枯れの山から緑葉の野に出たような変化=田山。棒を飲みこんだようになる=坂口。いきなり棒を飲んだ思いに襲われる熊谷。まるで闇討ちを食ったよう山本周。見た途端心臓がドキンとする高橋治。胸が氷を当てられたように縮む=陳。目が飛び出るほどの法外な値段。目が覚めれば何もかも烟けむになってしまうのではないかというような心持ちぃ永井荷。目が回るほどうまい"辺見。眼をむくほどの膨大な費用=塩野。もう少しで心臓がつぶれるところ=坂口。ものに弾かれたように飛び上がる=灰谷。闇の中で鼻をつままれたよう。石坂。蝋人形のように静止する宮部。あっと驚くような(大技。結末を用意する"常盤)。他人があっと驚くようなことをする。自分でも驚くほど冷静。自分でも驚くほどの大声"連城。今更のように驚かないではいられない。心臓が(ジャンブする。口から飛び出しそうになる!佐藤多。コーヒーカップの中に飛び出してしまうのではないかと思う谷村。コトリと音を立ててそのまま止まってしまったような感じ"小池。瞬間冷凍でバキバキになる=获野。ずきゅんと収縮する東野。飛び出るほど驚く!佐伯。止まるほど驚く“阿刀田。ばくばく鳴って今にも口からこぼれ出てきそう鷺沢)。泡を吹くほど金する=梅本。一瞬時が停止したよう。高橋三。驚いた表情。顔(物に驚いたような頓狂な=田山。お化けでも見たような=勝目。心当たりのないところから矢が飛んできたという干刈。鳩が豆鉄砲を喰らったような鷺沢)。顔色がたちまち変わり紙のような色になる=池波。顔が化石したごとく蒼く硬ばる=長与。見る見るうちに顔の色が変わっていく=高橋克。眼の玉が飛び出しそうな形相"平岩。口をあんぐりと開いて立ちつくす景山。阿呆みたいに口を開いたきり=開高。驚いたように口をばくばくさせる"貫井。心臓が喉から飛び出しそうな表情大藪。そんなばかなことがあってたまるかといった表情井上靖。表情が貼りついたように動かない=永井路。白紙にサッと黒刷毛をはいたような表情の変化"獅子。思いがけない人の名を聞いたという感じで眉をあげる!就沢。目があちこちをさまよう宮本郷。欲しい本が山ほどあるので目が点になりそう高橋源。幽霊でも見るような目つき=曽野。青い人参を出されたうさぎのような目で見る=北村。目と口があらん限り開かれる熊熊谷。かっと眼をひらきだらしなく口をあけている灰谷。闇討ちを食ったような眼をする=山本周。驚いて目をぱちくりする。突然の難題に目を白黒させる"胡桃沢。物に驚いたように急に目を上げる="大佛。 **おどろくべき【驚くべき】**驚くべき(才能を示す。政治的手腕。力を秘める。繁栄を示す。勢いで膨張を続ける。実行力を発揮する。速度で発展する。早さで崩壊が訪れる)。とりたてて驚くべき考えとは感じられない=村松。 **きょうがく【驚愕】**想像に絶する驚愕。顔に驚愕が走る。惑いと驚愕が絢いまざる。驚愕と恐怖に歪がんだ顔。眼が潰ぶれるような驚愕と羨望"室生。驚愕に襲われる。驚愕の(叫びをあげる。あまりの深さにたじろぐ。エンディングを迎える。眼差しを向ける)。顔に驚愕の色が浮かぶ。全世界を驚愕の嵐に巻き込む=黒田。得意の絶頂から驚愕の淵へ突き落とされる"山手。見ていた者が思わず目をそらしたほど驚愕の色を現す宮本貞。驚愕のあまり(声もない。言葉を失う)。驚愕の表情を浮かべる。腰が抜けるほどの驚愕を味わう貫井。国家の機密でも耳にしたみたいに驚愕する=丸谷。驚愕ぶりは察するに余りある。 <252> # 驚く・呆れる **きょうたん【驚嘆】**驚嘆に値する。驚嘆の目で見つめる。思わず驚嘆の声をあげる。顔に驚嘆の色が広がる。見る者の驚嘆を誘う。▼驚嘆する(眼力の鋭さに。技巧の冴えに。力強さに。名人芸に。冴えきった腕前に=池波)。驚嘆すべき(人物。筆をふるう。色彩のコントラスト)。あまりの幸にごうに驚嘆せずにはいられない今項。見事な手法に驚き入る。何とも驚き入った次第。驚き入って口も利けない。 **ぎょうてん【仰天】**仰天する(思わぬ事態に。あまりの失態に。いきなりの警笛に。豹変した態度に。腰を抜かさんばかりに=熊谷)。仰天して腰を抜かす。話を聞いてびっくり仰天する。 **ぎょっと**ぎょっと(胸も凍る思い。胸を冷やす。驚いて立ちすくむ)。ぎょっとなって(足を止める。立ちすくむ)。▼ぎょっとする(一瞬。思わず。気味の悪い声に。不意を打たれて。自分の弱点を見抜かれていたことに有川。のけぞるほどに=太宰。針でも踏みつけたように"有局。胸を祈っかれたように「大佛)。ぎょっとするほど似ている。ぎょっとして(体を固くする。立ちすくむ。飛びのく。のけぞる。振り向く。耳をすます。あたりを見回す。顔を見合わせる)。 **きょとんと**きょとんと(目を見開く。あらぬ方を見上げる。口を半開きにする)。きょとんとする(不思議そうに。驚いて。わけが分からずに。奇妙な事実を発見したように=中沢)。きょとんとした(面持ちで見つめる=人間。顔で周りを眺める=海堂。目で顔を振り仰ぐ欲辻)。けげんなきょとんとした顔。 **こしをぬかす【腰を抜かす】**▼腰を抜かす(驚いて。百鬼夜行を見て)。腰を抜かさんばかりに驚く。柳田。腰が抜けてへたへと座りこむ小松左。腰が抜けるほど(嬉しい。美味しい。驚く。叱りつける)。 **しょうげき【衝撃】**▼衝撃(頭の中が白く溶け落ちるような=高樹。後頭部を鈍器で殴打されたような氷室。背筋が凍りつくような"和久。脳天からつま先へかけて骨の髄を電気が駆けぬけるような=飯田。脳天をぶん殴られたような隆。太い針をぶすりと突き刺されたような"石坂)。衝撃が(心を揺さぶる。胸を揺るがせる)。学校じゅうに衝撃が走る。鼓膜に衝撃が伝わる。稲妻に打たれたかのような衝撃が体を貫く松岡。雷に打たれたような衝撃が全身を駆けめぐる"近藤。衝撃から立ち直る。衝撃で窓ガラスが割れる。あまりの衝撃で気を失うばかり萩原来。ガーンという衝撃で目の前が真っ暗"田辺。衝撃に近い感動を受ける=司馬。立て続けの衝撃に感情が麻痺する。あまりの衝撃に手足が動かない=福永。鈍い衝撃を後頭部に受ける。思わず視線をそらさずにはいられなかったほど強い衝撃を感じる芥川。衝撃を与える(少なからず。知人の死が身に火を放たれたような横光)。▼衝撃を受ける(夫の急死に。思いがけぬ話に。はっとばかり心に。口から内臓が飛び出るかと思うほどの若竹。電気に打たれたような強い=小局。ぶん殴られたような=隆)。腹の底に響く衝撃音。衝撃的な(結末。出来事。デビュー作。悲報が届く)。強烈なインパクトを受ける。激震が走る。 **ショック**▼ショック(相槌も打てぬほどの壷井。いきなり心臓に氷塊をあてがわれたような小林久。したたかに打ち据えられたような"庄野。人間を並べておいていきなりブルドーザーで大量殺戮されたような"山崎。平手で殴りつけられたような円地。身近な者が急に死んだような=池澤)。ショックが(じわじわと浸透していく。鳩尾に入ってがくりとうなだれる=有川)。頭を殴られたようなショックが全身を貫く=大原。精神的ショックから立ち直る。ショックで(頭が混乱する。しばらく何も手につかない。飯が喉を通らない)。一日起き上がれないくらいのショックで嘆き悲しむ=瀬戸内。ショックに打ちのめされる。激しいショックに辛うじて耐える。あまりのショックに口がきけない!住井。目にショックの色がまざまざと浮かぶ。ショックのあまり(卒倒する。病人のような顔になる勝目)。ショックを酒で紛らわす。少なからずショックを覚える。▼ショックを受ける(心臓が凍りつきそうな=内田康。心臓を握りつぶされるような=石坂)。ショッキングな(事実を知る。ニュースが流れる)。いきなり棍棒に氷で肩を殴られたよう佐藤愛。ガーンと頭を叩かれたよう。深沢。背中に冷水を浴びせられたような感じ=小池。▼気がする(頭をハンマーで殴られたような赤川。頭をぶん殴られたような=向田。金槌か何かでガンと頭を打たれたような田山)。▼気持ち(頭から冷水を浴びせかけられたような=井上ひ。頭の中へ熱い鉄の塊を押し込まれたような=斎藤栄)。心臓が強く握り締められたよう内海。心臓に鶴嘴を打ち込まれる気がする=小林多。心臓を鷲掴みにされたよう藤田。心臓をぎゅつとつかみしめられたような思いがする=池波。大鉄槌で打たれたような気がする=幸田露。血が音を立てて流れるよう三好徴。手の先から冷たい湖水が全身に流れ込んだような思い三浦紗。焼けた栗がつづけざまに頭の中ではじけたよう飯田。色恋沙汰という単語が鳩尾に入る"有川。胸に焼きごてを当てる=岡本。目と鼻の間を玄翁で殴るようなことを平気で言う落語。予期しないところからバンチが飛んできたような気分!東野。愕然として(色を失う。目を見張る)。失ったものの大きさに愕然とする。 **どうてん【動転】**▼動転する(気持ちが。心が。事の重大さに。妻の死に。事故が起きて。意外な敵の出現に=山田艮)。胸の中が煮え返るように動頭する犬米。気が動転して言葉が見つからない"村松。ことごとく動転して為すところを失うぃ坂口。気が脈動する。気が転倒するほどの驚きと悲しみ萩原来。 <253> # 驚く・呆れる **はっと**はっと(息を呑む。身を固くする。目を見開く。思わせるほど真っ青な顔=壺井。夢からさめたように気がつく=江戸川)。はっと顔を(輝かせる。見合わせる)。はっと胸を(打たれる。突かれる思い)。▼はっとする(思いがけない言葉に。異様な気配を感じて。夢からさめたように長崎)。はっとするほど(典雅なしぐさ。見事な武者振り=井上靖)。はっとして(口をつぐむ。現実に戻る。声も出ない。身を起こす。目をそらす。夢から覚める。我に返る。あたりを見回す。聞き耳を立てる。声を上げそうになる)。ハッとしたように体が固くなる=獅子。 **びっくりする**▼びっくりする(唐突な訴えに。お腹の底から。あまりのうまさに。大胆きわまる相手の出方に。藪から棒の申し出に。不意を食らって。魂も消えるほどに!宇野干。尻餅をつくほど内田百。ナマズが口を利いたように=田辺)。提灯を取り落とすほど吃驚する=内田百。尋ねる声がびっくりするくらい不安気になっている!有川。びっくりするほど(いい天気が続く。空のきれいな日。とげとげしい表情)。自分でもびっくりするほど切羽つまった声。びっくりするほどの(従順さ。達筆)。びっくりした(目できょとんと見つめる。猫のように丸い目で見つめる谷川)。びっくりして(青くなる。浮き足立つ。腰が抜ける。立ち止まる。飛び上がる。飛びのく。逃げ出す。振り向く。棒立ちになる)。呼吸が止まるほどに吃驚してうろたえる=内田百。▼びっくりさせる(親を。学会を。社長を。世の中を)。びっくりしたような声を出す。びっくりしたように(顔をあげる。口をつぐむ。眼を丸くする)。あんぐりと口をあけてびっくりしたように見る『灰谷。しんからびっくりしたように綺隘な眼をみはる=田辺。びっくりするような大声で叫ぶ。人がびっくりするような大仕事。喫驚する(あまりのばかばかしさに。容易ならぬ計画に)。喫驚の声をあげる。信じられない思いで見つめる。信じられないというような表情。信じられないといった(面持ち。目つきで見つめる)。▼たまげる(様変わりの早さに。不意を食らって)。ビックリ箱のようにおやっと思うような事実がビョンピョン跳び出して来る谷崎。暗かった胸の中に照明弾を落とされたように意表をつかれる=高橋三。桁外れの人物に度胆を抜かれる。度胆を抜かれるような内容を淡々と口にする"村松。度胆を抜かれて口も利けない。▼耳を疑う(聞き違えではないかと。何十年前の話かと)。耳を疑うような話。自分の耳を疑うくらい意外"深沢。 **ぶぜん【憮然】**憮然たる表情を浮かべる。内心憮然たる思い。憮然とした眼差しで見送る。我知らず憮然とする。憮然とした顔で(黙りこくる。茶を啜る)。憮然として(顎を撫でる。腕を組む。感想を述べる)。 **ぼうぜん【茫然】**茫然たる虚脱の状態。茫然と(一日を過ごす。宙を見つめる。日々を過ごす。口を開けて見上げる。死体を打ち眺める。座ったままでいる。その場に立ちつくす。寝ぼけ眼を瞬く。見守るよりほかにない。見とれて立ちつくす=柴田錬)。呆然と後ろ姿を見送る三浦穹。空腹と疲れで茫然と座っている。しばし茫然とたたずむ。魂の抜け殻のように茫然と立ち尽くす池井戸。木偶のごとく立ったまま茫然と見続ける"高井。呆然としてしばらくどこか分からぬ一点を見つめている=石坂。茫然とする(唐突な指示に。意外なことの成り行きに。思いがけない結果に。思いがけぬ急変に。怒りを通り越して。ショックを受けて。背を量感のある重々しい力で激しく殴りつけられた山羊のように"大江。棒か何かで打たれた後のように=大佛。夢でも見ているように芥川)。▼呆然とする(思いもかけぬ境遇の変化に=佐山。落花狼藉の有様に!向田)。▼茫然となる(あまりの不思議さに。魅入られたように"有島)。茫然として(驚きにあえぐ。口も利けない。言葉がない。喝采するのさえ忘れる。考えがまとまらない)。あんぐりと口を開けて見送る=飯田。魂が(宙に浮く。飛ぶよう)。魂を抜かれたような表情!鷺沢。珍種の金魚を見るように見つめる=宮部。他人を呆然とさせるような雄弁家"司馬。茫然自失して声もない。▼茫然自失する(急死の報を聞き。妻に先立たれ子供を抱えて)。処理せねばならない事柄のあまりの泥臭さにしばしば呆然自失する=高橋和。茫然自失の状態から正気に引き戻す佐山。時代の流れのすさまじさに自失する"本庄。自失するくらいに狼狽する阿久。しばらくほんやりと壁の一点を見つめている=遠藤。惘然と(宙を見つめる。成り行きを見守る)。惘然とした日を送る。 **ぽかんと**口をぽかんとあけて眺める。狐につままれたような表情でぼかんと眺める=井上ひ。虚を祈っかれて一瞬ぽかんと口を開く"貫井。ぽかんと口を(あけたまま立っている=小池。あけて目にしている=あさの。半開きにしたままでいる=伊坂)。一瞬ぼかんとした顔になる。ほかんとして話を聞く。 **めをまるくする【目を丸くする】**▼目を丸くする(意外さに。驚いたように。へえと。思いがけない偶然に。鳩が豆鉄砲を食らったように=池井戸)。空気銃で撃たれた小鳥のように眼を丸くする」遠藤。目を丸くして驚く。 **よりによって【選りに選って】**よりによって(あんな男と結婚しなくてもいいのに。こんなものを買ってくるなんて)。選りに選って毒のあることばかり云う山本周。よりによって馬鹿しか言わない!水倉。 <254> # 重い・軽い **うもう【羽毛】**羽毛が(宙に舞う。飛び散る。抜け替わる)。進水式の薬玉のように空いっぱいに白い羽毛の花が咲く=阿刀田。染めあげたような羽毛の彩り"河野。雪が羽の毛になってふわりふわりと落ちる"石森。軟らかくて軽い羽毛のような感覚”円地。羽毛のように無紋の雪片が漂う~大佛。藍色の空に羽毛状の白い雲が浮かぶ=野上。身命を鴻毛の怪きに比する=子母沢。身を鸿毛の怪きに置く=小林信。 **おもい【重い】**背中の子どもが石の地蔵を背負っているように重い干刈。石臼のように重い体安岡。足が半生の石膏のように重く持ちあげることができない=長野。重い(過去を背負う。口を開く。腰を上げる。病にかかる。荷を背負って歩く)。▼重い(座の空気が白けきって。タッチが陰鬱で。人の命は地球より。女手ひとりには少し荷が"山本同。鍋でもかぶったように頭が“新田。生活の疲れが心に"石川。石を引き上げるみたいに宗田。身体が大岩のように=佐藤愛。心が死刑におもむく囚人のように=佐山。提げ袋が指に食い入るほど"黒井。熱に疲れたからだが据えられた置物のように志賀。のしかかってくる体があばら骨が折れるかと思うほど=飯田。闇が澱とんだ水のように=長野。トランクが鉄の塊でも下げているように"井上ひ。鉛の鎧を着たように全身が東野。足が鉛をつけたように=中河。心の底が鉛を呑んだように=さだ)。口の重い男。荷が重い舞台。空に重い雲が垂れ込める。他人に重い罪をなすりつける。なかなか重い腰を上げられない。箸より重いものは持ったことがない。口もきけないくらい重い気分!内田巻。言葉に重い力が加わる=高橋三。ズシンという重い爆発音が響き渡る"西木。薔薇のめくるめくばかりの重い香り~佐藤春。鉛のように重い(眠り。疲労感)。鉛のように重い(顎が。頭が。軀。全体が)。重く苦しい夢の中にいる。体が重くぐったりと疲れる。空気が重く淀む。言葉が胸に重くずしりと響く。死という事実が心に重くのしかかる。風のない重くよどんだ静寂『日野。声が獣の咆哮のように重く激しく響き渡る!あさの。疲労感が体を重く覆ってくる篠田。重くする(失意が胸を。おびただしい疲労が瞼を阿刀田)。重くなった雰囲気に風の通り道をつける"落合。▼重くなる(喩がとろんと。風が湿り気を帯びて。部屋の空気が緊張して=開高)。▼重たい(空が雪でも来そうに=壺井。頭が石のように=武田百。部屋の空気が湿気を吸ったように驚沢)。重たい気配を吹き飛ばす。黒く濁った雲が重たく垂れこめる。後悔が心を重たくする。雪もよいに重たく曇っている空。空気が葛湯のように重たくなる=向田。鉛が底に溜まっているように重たく感じられる胃高橋三。過重な(責任。負担。労働)。重度の(身障者。難聴。発作。火傷を負う)。ゆっくりした重い足取り。重い心を引きずってとぼとぼと歩く"曽野。疲れきった流浪人のような足どりで歩く=佐藤を。とぼとぼ重い足を引きずって行く。重たげな足取りで近づく。地面にめり込みそうな歩き方で帰って行く"五木。 **おもさ【重さ】**真っ黒な天が磐石の重さで押しつけている=中局汐。夜の茅葺屋根の威嚇するような重さ三島。重さが(肩にのしかかる。ひしひしとこたえる)。沈黙の重さから逃げる。泥濘を歩くような重さで云う=宮本百。無言の叱責が千貫の重さで頭上へのしかかる=山本周。静寂の重さに耐える。罪の重さに気づく。紙包みを常に秤にのせ重さをはかるように軽く上下させる=半村。雑愛の釣り紐が食い込むような重さを肩に加える=大岡。心の中に沈んでゆくような呼び声の重たさ=壺井。重みで(つぶれる。ロープがたわむ)。重みに(耐える。押しつぶされる。耐えかねてあえぐ)。▼重みを感じる(歳月の。どっしりと)。ウエートを(置く。かける)。荷重を制限する。後輸に荷重をかける。事の軽重を量る。人間の軽重を問う。▼質量(太陽の。地球の。物体の)。目方が(重い。軽い。増える。減る)。重量が(加わる。超過する)。それぞれの罪の重量を肩に背負う高橋和。 **おもし【重し】**重石が取れたように伸び伸びと振る舞う~小林久。胸の底に重石が居座っている=重松。全身が羨と驚の重石の下になる!有吉。靴が水を吸って重石をつけたよう。今日。死体に重しをつけて海に棄てる=隆。線路の上に重しのようにずしりと止まる機関車=尾辻。文鎮を(置く。載せる)。重りを(つり下げる。載せる)。腹立ちが冷たい錘をつける=野上。 **おもそう【重そう】**重そうなリュックを背負う。稲が重そうに穂を垂れる。太った体を重そうに揺すって歩く。まぶたが重そうに上下する。堀の水に夕方から不意に暗くなった雲が重そうに沈む!連城。 **おもに【重荷】**重荷(言葉につくせぬ数々の心の宇野干。醜女のこの深情けは耐えがたい!遠藤)。心の重荷がすっっと軽くなる。否応なしに暮らしの重荷が押しつけられる=石坂。長年の心の重荷から解放される=乃南。愛情を重荷に感じる。重荷を(おろしたような打ち解けた口ぶり人合崎。下ろしたように冴え冴えとした顔「山本周。おろしたようにほっとする=住井)。心の重荷を取り除く。自分では背負いきれない重荷を自分に課す大岡。不運という重荷を肩にめりこませる=永井路。体が二つに折れるほどの重い荷を背負う宮尾。肩の荷が(重い。軽くなる。おりたように気が楽になる=深沢。下りて安堵の息を吐く横山)。肩の荷をおろしたような明るい表情=源氏。ほっと肩の荷をおろした気持ち=石川。 <255> # おもみ【重み】 **と肩の荷をおろした気持ち=石川。** **経験に支えられた言葉の重み=竹西。肩に重みがかかる。背中に重みがのしかかる。不巡の重みがまつわりつく。沈黙の重みから身をかわす。内部矛盾の重みで自己崩壊する"池澤。爪先に全身の重みをかける。役割が重みを増す。冷気が重みを加える。鉛のような足の重み=萩原爽。千鈞ぎんの重みを(感じさせる業績。背負ったようにひしゃげる徳永)。千鈞の重みある言葉。** # かるい【軽い】 **軽い(いびきをかく。失望を覚える。渡れを感じる。寝息を立てる。夕食を食べる。気持ちで引き受ける。ショックを受ける。処分で済ませる。呟暈…」と吐き気を覚える)。** ▼軽い(紙のように自分の身体が"伊藤整。アドバルーンになるんじゃないかと思うほど心も体も=石森。体が枯れ木の束のように"有吉、ふわりと飛んでいってしまう羽みたいに大庭)。肩慣らしの軽いキャッチボール。目方の軽い小説。風に流されるちぎれ雲のように軽い心持ち=栋本。風のように軽い衣の裾谷崎。花弁のように軽い体=岡本。乾いた軽い雪がさらさらと面を打つ=泉鏡。危機を通り抜けたような軽い気分=島尾。シャリシャリッと軽い金属音が走る谷村。中身が空のように軽い紙袋直行。へえそうだったのかという怪い舌打ち気味の言葉=藤本。軽く(手で制する。鼻を鳴らす。目を閉じる。グラスを合わせる。咳払いを一つする)。肩に軽く手を当てる。人命を軽く見る。黙って軽く頭を下げる。はいはいと軽く受ける。不満を軽く匂わす。幸いけがが軽くすむ"浅川。にやりと笑って軽くはぐらかす!永井路。▼軽くする(肩の荷を。気持ちを。負担を)。▶軽く叩く(お尻を。ドアを。とんとんと指で)。軽くなる(刑が。心の重荷が。酒で口が。胸が。体がふわりと。身も心も。気持ちがすっっと。水に浮かんでいるように手足が長野。からだが紙っきれのように=小林多)。紙を拡げて投げた軽さで埃唄こがおさまる=新田。空気のような軽さと透明さで愛する人をつつむ瀬戸内。軽みが(出る。増す)。軽みの(句。俳瓜)。壊れた椅子に楽々と体重をあずけられるほどの悲しい重さ=阿部。なきに等しい重み。軽度の(近視。身障者。難聴。発作)。▼怪量化する(自動車を。データを。ファイルを)。 # かるがる【軽軽】 **軽々と(箱を運ぶ。両腕に抱える。肩に担ぎ上げる。子供を抱き上げる。荷物を持ち上げる)。軽々とした身のこなし。** # かろやか【軽やか】 **▼軽やか(心なしか歩調が。ぽっかろやかかりと浮かぶ雲のように心が"飯田。風に舞う蝶のように=光原)。軽やかな(寝息を立てる。エンジン音を響かせる。氷のぶつかり合う音。雪片が舞い落ちる)。糸繰り車が軽やかな音を立てて回る藤田。軽やかに(通りを歩む。ふわりと浮く)。燕らばのようにかろやかに舞う中野美。風が軽やかに吹き抜ける。ステッブを軽やかに踏む。スポーティーな(格好。ジャケット。服装)。軽快な(タッチで描く。身のこなし。足取りで自分の家へ入っていく三浦し)。軽快な足取りで歩く。** # ずっしり **ずっしり手応えのある大判の書物。声が腹|にずっしり響く。寂寂感泄峠り、がずっしりと襲ってくる。体格がずっしりと肥えている。雪がずっしりと固く積もる。ずっしりした感触が残る。手にとるとずしりと引っ張られるように重い煙草入れ梅本。** # たいじゅう【体重】 **体重に任せて体を押しつけてくる。致死量はもっぱら体重に左右される。椅子に体重をあずける。一定の体重を維持する。ダイエットして体重を減らす。** # ふわふわ **風船がふわふわ飛んでいく。ふわふわと(動く火の玉。空中を漂う。空に浮かぶ。紙飛行機が旋回する。声が空中を舞う。膨らんだ大柄な婦人)。髪の毛がふわふわと揺れる。中空をふわふわと浮かび漂う。綿毛がふわふわと飛ぶ。魂が体から抜け出してふわふわと浮いてしまいそう。東野。雲の上を歩いているようにふわふわする=阿木。ふわふわした(言葉つき。にこげ。綿飴)。ふわっと(香りが立つ。体が浮く。宙を舞う。空中を漂漂?心地。湯気が立ちのぼる)。ふわっとした食欲が体の周りを包む。ふうわりと布をかぶせる。思いがふうわりと脳裏に漂う。ふうわりとした軽い重み。厚いふかふかした手袋。** ▼ふかふかにする(土を。ベッドを)。ふかふかの絨毯礼ぅの上を歩く。ふんわりと(靄もゃに包まれる。草の上に倒れる。ソファーに腰を沈める)。 # ふわりと **ふわりと(風に乗る。体が宙に浮く。軽やかに浮く。髪を後ろに流す。宙に舞い上がる)。髪がふわりと広がる。スカートをふわりと広げる。鼻の回りをふわりと匂いが包む。独り言のようにふわりと言う高樹。ふわりとした(やわらかな土。懐かしさが全身を包む)。空に白い雲がふわりふわりと流れる。毎日がふわりふわりと過ぎていく。** # みがる【身軽】 **身軽な(足取り。格好。生活。立場。動作)。身軽に(体を動かす。宿を出る。さっと立ち上がる)。飛鼠純咲のように身軽に城を脱けて出る森思。青年期の心細くて淋しい身軽さ=山田太。追い風を背に受けるような身軽さがある=円地。彼はしに似た身軽さでひょいひょいとのぼっていく!柴田剣。山揆のような身軽さで塀を乗り越える"池波。あの身軽さはただ者ではない。梢から梢へ鳥のように飛び移る身軽さを身につける=飯田。** ▼身のこなし(軽やかな。軽い)。軽装で(出かける。登山する)。▼フットワーク(小気味よい。天下一品の)。フットワークが(軽い。冴え渡る)。 # もちおもり【持ち重り】 **サイズの割に持ち重りがする。持ち重りがする分厚い字引き。ずっしりと持ち重りするモデルガン。** <256> # 思い付く・気付く **アイデア** ▼アイデア(奇抜な。秀抜な。ありきたりの。一石二鳥の。突拍子もない。悪くない。とっさに思いついた。考えること自体がおぞましい邪悪な束野)。アイデアが(喝采を博する。続々と湧く。電光のごとくひらめく荒巻)。いいアイデアが天から降ってくる。これといったアイデアが浮かばない。打ち上げ花火みたいに頭にアイデアがひらめく=岡田。卓抜なアイデアが生まれる。いいアイデアはおいそれと出ない。アイデアを実行に移す。新しいアイデアを付け加える。せきをきったように次から次へとアイデアを話し出すつか。脳裏に線香花火ほどのアイデアのひらめくこともない=北村。 **いつのまに【いつの間に】**いつの間にか(ずるずると一線を越えてしまう瀬戸内。とんでもないところに誘導されている=伊坂。納得している自分に驚く鷺沢)。話がいつの間にか立ち消えになる。いつの間にやら忘れてしまう。あれよあれよといううちに終わってしまう。いつか降り始めている静かな雨。いつしか十五年余りの時が流れ去る。いつとはなしにやり方を覚えこむ。いつともなく習慣が出来上がる。知らぬ間に加害者になっている。そうこうするうちに(雨が降り出す。試験日が近づく)。 **おもいあたる【思い当たる】**▼思い当たる(自分の幼さに。今になって)。思い当たることが一つある。思い当たる節が(多い。ないわけではない)。身に覚えがある。横手ぃこを打つ。▼思い当たらない(原因が。理由が)。送り主の名前に思い当たるところがない。思い当たる節がない。身に覚えがない。 **おもいつかない【思い付かない】**▼思いつかない(適当な人間が。適当な話題が。他に手段を。まるきり。夢にも。言うべき言葉が。うまい言い訳が。いくら考えても。慰めの言葉一つ)。凡人には思いつかない考え。常人の思い及ぶところではない。凡人には考え及ばない。いまだ前人の考え及ばなかった独特の方法。▶考えつかない(凡人には。普通の神経では)。 **おもいつき【思い付き】**▼思いつき(一石二鳥の。気のきいた。突拍子もない。子供じみた他愛のない原田康)。思いつきが(頭の片隅に湧いて出る。口をついて出る)。悪魔的な思い付きがムラムラと湧いてくる"菊池。その場の思いつきで発言する。一生を左右するようなことを思いつきで口走ってしまう田辺。まんさら悪い思いつきでもない。昨日や今日の思いつきでもなさそう。漠然とした思いつきに過ぎない。思いつきの意見を勇み立って披瀝ひぇする=河野。単なる思いつきの出まかせ。とっさの思いつきをさも前から考えていたことのように口にする=勝目。思いつきを実行に移す。口から出まかせの思いつきを言う。目の付けどころが(いい。違う)。古今に類を絶した着想"中島河。思いもよらなかったほどの斬新な着想を得る浅川。▼着想する(新たなルートを。現実の事件に示唆を受けて物語を)。 **おもいつく【思い付く】**▼思いつく(アイデアを。いたずらを。うまい手段を。次善の策を。妙案を。気の利いた台詞試)を)。思いつく理由をいくつか挙げる。思いつくままに(しゃべる。長々と書きつらねる)。方法を思いつく(破天荒な。いい)。思いついた言葉をとりあえず口にする。思いついたままを話す。思いついたら即実行。頭の中がビカリと光ったよう森村。行き詰まっていた思考に一閃からの光が射し込む森村。考えが稲妻のように胸に浮かぶ国木田。深い水の底から浮かんでくるように考えがぼっかりと浮かぶ"松谷。直感に鋭い針が一本突き刺さる=藤本。電光のように頭に閃いひらく=獅子。思いついたように話題をかえる。時々思いついたように冗談を言う。楽しい口実をたくさん考えつく田辺。新機灿を(打ち出す。工夫する。開く)。小説の形式に新機心を出す。▼頭に浮かぶ(アイデアが。考えが。反論の言葉が。妙案が)。 **かんがえだす【考え出す】**▼考え出す(新たな手段を。安全な方法を。簡便な形を。巧妙な策略を。苦心の末に。新しい治療法を。巧妙なトリックを。整然とした回路を)。▼編み出す(新たな漁法を。勝つ方法を。苦肉の策を。独自の剣法を)。▼条出する(一計を。解決策を。策略を。巧妙なブロットを)。考案する(新たな漁法を。小説のプロットを。方法を自分なりに)。様々の老糸をめぐらす。▼創系する(企画を。新機種を)。 **きづかない【気付かない】**▼気づかない(事の重大性に。今の今まで。窓こうも。誰も。露ほども。全く。まるで)。なんにも気づかないでいるような空虚な眼ざし=堀。うかつにも気がつかない。気づかぬ(風を装う。周に雨に変わる)。▼気づかれない(一向。全然)。 **きづく【気付く】**▼気づく(異常な事態に。体の変調に。危険な状態に。奇妙な事実に。事の重大さに。一葉の毒に。事件の真相に。弱点の所在に。微妙な変化に。読み間違いに。いつにない真剣な眼差しに。内ポケットの膨らみに。詐欺師の手口に。自分の愚かさに。ただならぬ様子に。認識の不十分さに。容易ならぬ情勢に。様子がおかしいのに。今になってようやく。しばらくしてやっと)。入った瞬間にしまったと気づくが時はすでに遅い"玉村。気づくのが遅れる。そろそろ気づいてもいい頃。単純な事実に気づかされる。気がつく(遅まきながら。たった今。ようやく。ほっと小さな豆電球に灯りがともるように=島尾)。▼思い至る(真の使命に。問題の本質に。事態の深刻さに。我が身の不明に)。▼思い及ぶ(敵の意図に。今後に及ぼす影響に)。根本の理由に考え及ぶ。以前から <257> # くふう【工夫】 **不審な点を気づかれる。気づかれる心配はない。怪しいと感づかれる。気取られる(関係を。動揺を。疲労感を)。** **細心の工夫が施されている。まだまだ工夫が足りない。工夫に富んだ生活。工夫の跡がうかがえる。もっと工夫の余地がある。解釈上の工夫を加える。売り方に工夫を凝らす。陳列に工夫を凝らした飾り窓"大佛。** ▼工夫する(色の配列を。塩の加減を。一網打尽の策を。腕によりをかけて)。目先を変える。インテリアに凝った店。普請の凝った家。室内装飾が凝りに凝っている。▼算段をする(逃げる。自力で生きていくための=貫井)。落ちにひねりが効いている。ひねりの利いた贈り物。趣向が盛りだくさん。花見の趣向で盛り上がる。趣向に知恵を絞る。派手な趣向を思いつく。さまざまな趣向を凝らす。 # こころあたり【心当たり】 **▼心当たりがある(犯人に。行き先に)。心当たりに電話する。他人に恨まれるような心当たりはない夏樹。心当たりを(探して歩く。訪ねる)。自殺の理由に心当たりがない。** ▼目星がつく(犯人の。容疑者の)。 # さとる【悟る】 **▼悟る(異変の突発を。恐怖の根源を。心の貧しさを。事の重大さを。質問の意味を。だまされたと。万事休すと。身にしみて。圧倒的な不利を。一を聞いて十を。浮き世の哀れを。出すぎた振る舞いを。とっさに一切を。見通しの甘さを。死を現実として)。** ▼悟られる(ショックを。動揺を。膝の震えを)。悟りの(境地に達する。世界に入る)。悟りを得る。開く)。目を開かれる思い。悟ったような(言い方。口ぶり。表情)。▼感得する(現実の暗さを。自然の影響を。全身全霊が土地の精を)。▼解脱がする(煩悩を。苦しみから)。解脱に達する。解脱の境地。翻然大悟する。大悟の境に到達する。 # そうい 【創意】 **創意に(舌を巻く。満ちた業績を遺す)。創意工夫を(凝らす。発揮する。阻む)。創見あふれる新説。創見に(富む。よる事業計画)。** # ちゃくがん【着眼】 **▼着限(面白い。鋭い)。着眼が正しい。着眼する(いいところに。意識の変容に。規則性に。変化に)。** ▼着目する(将来性に。人気に。早くから)。狙い目の仕事。狙い目を(探す。絞る)。着眼点(警抜な。独創的な。而白い)。着眼点がいい。 # ちょっかん【直感】 **▼直感(本能的な。芸術家らしい)。直感が(頭に閃らく。当たる。浮かぶ。正鵠ごいを射る。正しい。的中する。動物的に鋭い。頭を走り抜ける。稲妻のように閃く宮部)。看護婦の受け応えに嫌な直感が働く高樹。恋する男の直観でピンとくる"三浦し。直感に支えられた想像「桐野。びたり適中した自分の直感に血が逆流する思い池波。直観に従って己れの生きる道を定める。** ▼直視する(真実を。真理を。大局を。本質を)。▼直感感する(異変の勃発を。恐ろしさを。危険を。虚偽を。負けを。悪い出来事を)。一目見るなりぴんと来る。霊感が(湧く。潮らしのように寄せる=福永)。▼インスピレーション(直感的な。創作の)。インスピレーションが(働く。湧く)。 # はっそう【発想】 **卓抜な発想に惚れ込む。思いきった発想の転換が必要。専門家の自由な発想を引き出す。ユニークな発想を育てる。斬新な発想力を発揮する内橋。** # ひらめく 【閃く】 **▼ひらめく(奇抜な考えが。きらりと刃が。目に精彩が。かすかな疑いが。カメラのフラッシュが。脳裏にアイデアが。闇を裂いて稲妻が。素晴らしい考えが頭に。恐ろしい答えがばっと電光のように柴田翔)。胸に天来の啓示のごとく考えが閃く"海音寺。浅く走っていく水の小さな閃きが魚の鱗ぅのように重なり合う佐藤春。脳裡10に遠い星から送られてきた霊気のようなひらめきが走る=高橋三。まなざしにこすっからい閃きが走る=開高。** ▼ひらめき過ぎる(影が。考えが。疑問が)。一閃からの光が进畑にる。一閃する(白刃が闇を。刀が横薙なこぎに。脇差が帶走眩いって)。▼一閃させる(気合を。火矢を)。 # みのがさない【見逃さない】 **▼見逃さない(一挙一動を。ごまかしを。どんな小さな変化も。どんなささいなサインも=重松)。見逃すまいとして一字一句読む。どんな影も見逃すまいと目をこらす。見逃せない(映画。テレビ番組。特集)。** # みのがす【見逃す】 **▼見逃す(違法行為を。好球を。勝負どころを。不法滞在者を。変化を。うっかり。前もって察知しながらみすみす)。めったにない機会を見逃す手はない熊谷。見忘れる(予定表を。うかうかと)。不本意ながら見逃さざるを得ない。** # みょうあん【妙案】 **妙案(活殺自在の。一挙に解決すみょうあんる)。妙案が(浮かぶ。功を奏する。ひらめく)。他に妙案が浮かばない。妙案に(感心する。すっかり有頂天になる)。我ながらの妙案にひとりで感心する!谷崎。妙案を実行に移す。** # めいあん【名案】 **一石二鳥の名案。名案が浮かぶ。名案に感心する。考えれば考えるほど名案に思えてくる美合。名糸を思いつく。いいアイデアが浮かぶ。一服しているときに思いがけずいい案が浮かぶ=開高。うまい手を思いつく。愚者にも千慮に一得あり。** # やりくり【遣り繰り】 **やりくりに四苦八苦する。家計のやりくりに苦労する。金子だんのやりくりに窮する。毎月の遣り繰りに骨が折れる谷崎。何とかやりくりをつける。やりくりする(時間を。生活費を。乏しい予算を。スケジュールを)。やりくり算段をする。時間を繰り合わせてお見舞いに行く。万障繰り合わせてご出席ください。** ▼都合する(金を。時間を)。▼都合をつける(時間の。仕事の。なんとか)。▼順う(兵馬の糧食を。年金を税で)。都合がつかない。やりくりがつかない(運転資金の。仕事の)。 <258> # いしき【意識】 **意識が(外界と遮断される。現実から遊離する。現実と結びつく。波が引くように遠くなる!辻井。朦朧としてきて抛ほうり出された手続にぶのようにしぼむ=徳永)。守りの意識が働く。恐ろしいほど意識がはっきりしている=海音寺。罪の意識から解放される。意識と無意識の間を行きつ戻りつする"山本周。意識に(活を入れる。抜きがたい棘とげが刺さる=山本周)。意識の片隅に疑いが浮かぶ。ぼんやりと意識の端に浮かぶ。断末魔のような意識のふるえ高橋知。意識を一点に集中する。ぼんやりと意識を取り戻す。意識する(視野の隅を。周囲の目を。病の再発を。来客の耳を。カメラの位置を。母親となる日を)。特権意識を排除する。縄張り意識が強い。** # いっしん【一心】 **一心(こけの。無事を願う。気に入られたい。事実を知りたい。女優になりたい。苦しみから一刻も早く逃れたい=東野)。一心こめて死に立ち向かう。一心な目付きですがる。** ▼一念(逃れたい。持病を治したい)。一念念石をも通す。 # イメージ **イメージがいまだに固まっていない。忌まわしいイメージが脳裏をかすめる。様々なイメージが交錯する。二つのイメージが結びつく。無責任なイメージから脱却する。イメージも豊かに描き出す。イメージを(頭に浮かべる。心の中に描く。無限に紡ぎ出す)。何らかのイメージを威与する。ボジティブなイメージを植えつける。明確なイメージを共有する。悪いイメージを吹きこむ。聖なる母のイメージを土足で踏み躙にじる=高橋和。** ▼イメージする(最終的な形を。タイミングを。頭の中で演技を)。イメージアップを図る。本質を的確にイメージ化する。明瞭な画像イメージが浮かぶ。指のなかを水が流れるままにまかせるようにイマージュや言葉を流れるにまかせる=開高。イマージュを自分勝手につくり上げる=堀。心象が漠然と浮かぶ。心象に(鮮やかに浮かぶ。映じた形を描く)。心象を外界に投影する。心象風景が現実と重なり合う。日常と心象風景を重ね合わせる。 # おもい 【思い】 **思いが(千々に乱れる。頭の中で渦を巻く。体の底から湧きあがってくる。心の底にわだかまる。水のように胸に拡がる=川端)。後味の悪い思いが残る。種々雑多な思いが頭の中をめぐる。やるせない思いが胸を突き上げてくる。様々な想いが頭に脈絡もなく浮かんでは消える=村上春。想いが口をほとばしるという感じであふれだす=瀬戸内。一日が千日の思いで待つ。血を吐く思いで詫びる。なつかしい思いで胸がいっぱいになる。とりとめない思いにふける。胸がキューンと切ない想いに締めつけられる=高見順。** ▼思いにとらわれる(甘美な。理不尽な。索漠たる)。思いの重さに耐えられない。自分の思いの中に引きこもる。思いを(胸に秘める。率直に言葉にする)。いろいろと思いをめぐらせる。さばさばとした思いを味わう。生国への思いを捨てない。ほのかに思いを寄せる。胸の思いを溜め息と一緒に口にする。思いを抱く(飽き足らぬ。悶々結んとした)。▼思いを致す(相手の立場に。作中人物の運命に。娘なりに男親の心情に=氷室)。▼思いを噛みしめる(うれしい。屈折した。つらい)。痛い思いをする。思いを馳せる(青春時代に。地球の運命に。娘の身に。遠い昔へ)。 # おもいつかぶ【思い浮かぶ】 **▼思い浮かぶ(考えが頭に。情景が脳裏に)。思い浮かぶままに長々と文字を連ねる。** ▼頭に浮かぶ(疑念が。言葉が)。▼浮かぶ(心頭に。念頭に)。心に浮かぶ(考えが。疑問が。追憶が)。脳裏に浮かぶ(言葉が。情景が。老母の顔が)。目に浮かぶ(様子が。今でもはっきり)。様子が眼に見えるようぃ阿佐田。何一つ頭に浮かばない。思い浮かばない(解決策が。適切な文句が。会うにふさわしい場所が)。▼彷彿組と浮かぶ(姿が胸に。ありさまが心に)。彷彿として目に浮かぶ。面影が心の中に髪昴細うと思い浮かぶ=遠藤。恋しい人の面影が彷彿する。当時の状況を彷彿させる。子供の頃の姿を彷彿させる情景。モデルの肉体を彷彿させる彫像。 # おもいえがく【思い描く】 **▼思い描く(情景を。贅沢だいな生活を。顔を脳裏に。頭の中でコースを。漠然と胸の中に。夢現、ぅのごとくあれこれと=横光)。** ▼思い測る(衝撃を。心中を。人の心を)。▼頭に描く(イメージを。情景を。図式を。配置を。たどってきた道を)。壮図を胸に描く。 # おもいつかべる【思い浮かべる】 **▼思い浮かべる(絵を頭の中に。頭に一人の人物を。一日の出来事を。映画の一シーンをありありと)。** ▼頭に浮かべる(アイデアを。名前を)。浮かべる(姿を心に。過ぎ去った年月を胸に)。心に描く(面影を。楽しさを。初恋の人を)。意識に上せる。 # おもいどおり【思い通り】 **思い通りに事が運ぶ。自分の思い通りに動かす。打球が思い通りの位置へ飛んでいく。息子を思い通りの人間に育てる。自分の思いのままに生きる。思いのままに計算できる。群衆を思いのままに操る。万事が思いのままに運ぶ。略奪暴行を思いのままにする。思うがままに(操る。事を運ぶ。振る舞う。引きずりまわす)。思うとおりに事が運ぶ。思ったとおりに(言ってのける。口に出す)。自家薬籠中の物とする。願ったり叶ったり。活殺自在に人を操る。活殺自在の使い方。心の選ぶままに行動する。心任せに歌う。どうなとあなたの心任せにしてください。心任せの一人旅。煮るなり焼くなり先方の随意。随意に出入りを許される。生殺与奪比心っの権を(握る。持つ)。注文通りに段取りよく行く。任意の大きさに変える。** <259> # おもいどおりにならない 【思い通りにならない】 **望み通りに事が運ぶ。意のままに(動く操り人形。支配する)。相手の意のままになる。男たちの意のままに手続にばれる。必死の手向かいも空しく意のままにされる。富貴栄達が意の如くなる。** **思い通りになると思ったら大間違い。人生は思い通りに行かない。物事は思い通りにならない。問屋はなかなか思いどおりには卸してくれない“木山。おいそれと思いのままになるとは思えない。思うとおりに進まない。修繕も思うにまかせない。何一つ自分の思うままにならない。なかなか思うようにならない。よしそれが思うようにならなかったとしても。意の如く動かない。意の如くならないもどかしさ。意のままにならない。体が意のままに動かない。そうは問屋が卸さない。注文通りに行かない。** # おもう【思う】 **思う(心に寸分の変わりもない。ところを口にする)。** ▼思う(心中ひそかに。ざまあ見ろと。すわ落馬かと。来し方行く末のことを。去ってゆく冬を。ぼつぼつ引き揚げようと。よっぽど追い返そうかと)。心に思う人。休みたいと思う心が先に立つ。忘れたと思う間もなく現れる。親の七光りが通用すると思うなよ=奥田。思うより早く行動を起こしている。今にして思えば馬鹿な話。思ったほどには込んでいない。思うとおりずばずばと言う。思ったままを打ち明ける。思ったより成果がありそう。仕事が思ったより手間取る。人を子供だと思ってばかにする。思っていた以上に値がつく。ちょうど書きたいと思っていたところ。▼思っている(常々疑問に。家族のようにお互いに。かねがね好ましく)。秋を思わせる涼しい風。春を思わせるぬくもり。要塞を思わせる建物。はっと思わせるほど真っ青な顔の壺井。▼思われる(おそらく成功すると。なにがなし情けなく)。万感胸に迫るものがある。抱壊する(懐疑を。楽観的予測を)。熱い胸のたけを告白する。 # おもえる【思える】 **▼思える(ひどく下劣に。いやに長く。悪夢のひとこまに。一見簡単そうに。とてつもなく立派に。何よりの慰藉〜に。自分がさもしい人間に=横山)。濡れ衣泌泌と思われる節がある。住宅街とおぼしいあたり。出口とおぼしい方向へ急ぐ。首謀者とおぼしき人物。隊長とおぼしき男。** ▼思えない(恋としか。一見して悪い女には。この世のものとも。さほど高い山にも。そう手間取るとも。たいして大きいとも。単なる偶然とは。とても正常とは。無事にすむとは。まともな精神状態とは。まんざら途方もない夢とは)。この世とは思えない光景。老人とは思えない身のこなし。人間とは思えない人非人ぶり“中上。思われない(現実のものと。さほど悪いとも)。 # おもわない【思わない】 **▼思わない(男を男とも。女を屈、とも。さほどとも。座ちりほども。露ほども。人を人とも。夢にも。あだやおろそかに。あながち間違っているとは。格別羨ましいとも。殊更に聞きたいと。爪の垢ぁかほどにも。みすみす殺されるとは。別に不思議とも何とも=野間)。** ▼思っていない(あながち不都合とは。無即座に承諾するとは)。思ってもいないことをぬけぬけと言う。心にもない(迎合をする。言葉。ことをまことしやかに説く)。心にもなく欲心を買うようなことを言う。 # こころ 【心】 **心(欲しい物の前で足の痛みを気にするほど散漫な=山田詠。童やらのようなのびやかな!菊池。金銭への執着が儿きしむような響きをたてる=野岡。白い河床のように乾いた遠藤。何者も触れたことのない処女のような=有房。鉛を胸にも足にも抱いたような重い黒岩。全くこだわりのない開け放たれた"野間。水に映る月影のように捉えどころがない獅子)。心が(荒波を立てる。期待に弾む。弾力を失う。喜びに満ちる。明るさを取り返す。暗く沈んで行く。結婚に傾いて行く。すがすがしく洗われる。内側から吹き出る地熱のように沸々として燃え滾たさる=渡辺。躍るようで一睡もなされない菊池。自分自身持て余すほどに暖まる宮本郎。自由に羽音を立てる=林莢。独房に密封されて身動きならない=開高。不思議に明るい色で息づく=高橋三元。ボールのように弾みを持ってひとりでに上のほうに飛び上がる=山本有。毎日履いて会社に行く靴と同じように磨滅する=遠藤。妙にしんと底冷えがしたように棘々とげしく澄みきる=有鳥。物悲しさで一杯になる=吉行)。相築?心が鳔膠にベのごとく強い=長塚。風が吹けば乾いた音を立てそうなくらい心がひどくかさつく意沢。かなわぬ恋のために心が千々に乱れる=福水。からんからんと笑いたいように心が軽くなる=吉川。暗い眼かくしのようなものを施された心が心の暗闇の中で岡もだえる=野尚。ここえそうな心が胸に宿る=石森。木っ端微塵いぶに砕かれた二人の心が鱗ごろになって、きれぎれの思いの中に光る=林关。罪悪を犯しつつあるかの如く心がおどおどする=伊藤左。ささくれ立っていた心がお湯をかけられたようにやわらかくなっていく歳沢。消極的に総てから雌れてしまおうと思うほど心が傷つく"田山。少女の祈りのごとき幼い心が今なお宿る=坂口。少年のように心が躍る=大佛。白く凝り固まった心が日とともに透きとおる=本庄。人の好意に包まれて心があたたかく溶ける=真継。火の玉のように心が燃え上がる=海音寺。病後の人のような平和な快感に心が溶けて行く"中村真。心に(愛が満ちる。暗黒が訪れる。隙間風が吹く。悲しみがあふれる。疑惑が芽生える。ぽっかり穴があく。土足で踏み込む"荻野)。祖父のようにやさしい心になる=坂口。心の(傷が癒える。こもった料理。整理がつく。和む日々。ねじけた人間。髄まで凍りつくようなうら悲しさ今日。ずっと奥にぼかっと灯がともる=石廃。夕方がこと一日。)** <260> # 思う・想像する **こころから【心から】**心から(気の毒に思う。敬意を表する。犯人を憎む。打ち解けた顔になる。すまなそうに言う)。妻を心から愛する。冥福を心から祈る。心から覚える(愛情を。憤りを。満足を)。心からの懺悔をする。心の底から(憎む。望む)。心より感謝する。しんから憎々しそうに言う。友の切なる言葉に心が動く=中島敦。胸の内で切に願う。ぞっこん(男に迷い込む。惚れこむ。首ったけになる)。魂の底から狂層する。衷心から(願う。望む。哀悼の意を表する)。衷心より(お悔やみ申し上げます。感謝申し上げる)。腹から(憎いと思う。不愉快を感じる)。心底(安心した顔になる。打ち解けて話す。羨ましそうに言う。おかしそうに笑う。物欲しげな瞳で眺める。あきれたと言いたげな目で見る=三浦し)。心底から(情けなく思う。徹底的に照れる。不思議そうな目)。 **ざつねん【雑念】**心頭を去来する雑念"横光。雑念がきれいに頭から消える。雑念に惑わされる。雑念の汚れた雪が溶けていく荻野。雑念を捨て去る。庭の雑草を一本ずつ抜いていくようにして一時間ほどかけて丁寧に雑念を抜く荻野。 **しみじみ**しみじみ(哀れと思う。嬉しい気になる) 。しみじみと(思いにふける。有り難い気持ちになる。いたわる口調で言う。実感のこもった挨拶。花を美しく思う)。遠く旅をしているという思いがしみじみと迫ってくる"古尾。嘆きとあこがれがしみじみと胸の底から湧いてくる=中。なつかしい友に向かうように沁みじみと山の姿を眺めやる=有。こおろぎの声を沁み沁みと聞く」佐藤春。語調にしみじみとした温かさがある。母の懐に抱かれているようなしみじみしたもの=山本有。じいんと胸に迫る。心にじんとしみこむ。昔話をしんみり語る。しんみりとした声で言う。一人でしんみりと酒を飲む。雨の音がしんみりと耳の奥にしみ込む"小川。切々たる(愛情。願い)。切々と(歌う。胸に迫る。思い出にひたる)。 **しんい【真意】**真意が(つかめない。伝わらない。のみこめない。分からない)。真意を(探るような用心深い眼差し=開高。計りかねているようにドギマギと顔色をうかがう“阿刀田。本能的に見破る=松本)。水深を測るように真意を見定める=人米。▼真意を測りかねる(相手の。質問の)。 **しんじょう【心情】**心情にぴったりしない。心情を(察する。詩歌に託す。伝える)。琴線に触れる(作品。美談)。心の琴線に(触れる。起きる共鳴現象)。 **じんしん【人心】**人心が(荒れ果てる。安定する。離反する。次第に安定に向かう)。人心から乖離した悪政。人心の(安定に努める。一新を図る)。人心を(掌握する。不安に陥れる)。日本的な見えすいた人心収攬術、三浦朵。人の心には宝石がある吉本。人の心の宿痾を見せつけられる=辺見。人の心は気まぐれ。人の心を(誘いこむようないい香り!三好達。冷え冷えとさせるような嘲笑"多岐川)。 **せいしん【精神】**精神が(陰影を失う。不安定になる。錯乱状態にある。肉体に支配される。異様な霧に包まれる=中村真。苛烈な風に吹きさらしになる=中村貞。蓄音機の針のように摩すり減らされる=川端。水を吸う海綿のように豊かに潤?清水後)。不退転の精神が心の内に燃える。青年の強烈な精神が日々に光を放つ野岡。精神に(異常を来たす。打撃を与える。変化を起こす。雄勁な魂が息づいている三好京)。高邁な精神に生きる。精神の(均衡を保つ。高揚に努める。失調に苦しむ。平衡を失う。病に冒される。遺産が永遠に残る。バランスが取れる)。柔軟な精神の持ち主。緩慢な精神の死がはじまる=阿部。健全なる精神は健全なる身体に宿る。精神を癒すための音楽。いたずらに精神を消磨する。屈せざる精神を持つ。精神主義を(忌み嫌う。排除する)。のんびりと田舎の休暇を楽しんでいるような精神状態"泉優。不安定な精神状態に陥る。精神的(消耗を余儀なくされる。ストレスに拍車がかかる。ダメージが大きすぎる)。精神的な(圧迫を与える。安定を得る。無理を重ねる。重圧感から解放される。負担が軽くなる。弱さを克服する。ショックで頭が真っ白になる=畑村)。生き生きとした精神的な活力。肉欲を精神的な美の様式に昇華する"円地。精神的に(自由になる。疲労困憊にする。相当参っている。不安定な日々が続く)。神気が充実する。心神が錯乱する。 **せいれい【精霊】**森に精霊が満ち満ちる。見るからに精霊でも出てきそうな部屋井川。精霊と(交欲する。共に暮らす)。沼から湧いて出た獣の精かなにかのように薄気味が悪い黒犬"阿部。部族を守護する神霊。全身全霊が土地の精を感得する。 <261> # 思う・想像する **そうぞう【想像】**直感に支えられた想像「桐野。想像が(頭の中で膨らむ。際限なく広がる。とどまることを知らない。点のようなかたちから大きくふくらんでいく=村松)。悪い想像がしばしばあたる。想像に(魂を奪われる。火を点っける。まかせて言う)。あらぬ想像にとらわれる。読者の想像にまかせる。まざまざと想像に浮かび上がる。野放図に自己の想像に淫する奥野。想像の(網を広げる。域を出ない。世界に生きる。翼を広げる。絵の具を塗りつける=梶井)。厭な想像の焰のを消す「武田泰。まざまざと想像の視野に現れ出てくる=有房。想像を(たくましくする。ほしいままにする。交えて他人に言いふらす=東野)。勝手な想像を責める。不安な想像を忘れようと努める。▼想像する(愛撫の姿態を。最悪の事態を。行ったことのない国を。いやらしいシーンを。具体的な場面を。地獄のありさまを。電気のない時代を。内心あれこれと。街の将来の繁栄ぶりを"なかにし)。想像するだに(恐怖を覚える。険しい冬景色。胸が悪くなる)。想像しただけでも身の毛がよだつ。 **そうぞうできない【想像できない】**▼想像できない(逆立ちしても。みじんも。夢にも)。想像もできない(今からは。凡人には)。現状を超えた想像ができない。作り手の苦労には想像が及ばない。いまだかつて想像したこともない。想像していたのとはまるで違う。想像していたより(地味な人。はるかに無力)。ちょっと想像しにくい。想像するイメージとはおよそ縁遠い。想像だにしていない。想像に(余る。絶する驚愕に、う)。想像の(限りではない。範囲を超える。外にある)。想像もつかない苦労。皆目想像もつかない。想像もできないような忙しさ。想像を超える嘆きや不安。遥かに超えている)。人間の想像を許さない。想像を絶する(光景。ストレス。つらさ。変化を遂げる。人生上の大問題)。▼察するに余りある(胸中。狼狽ぶりは)。 **そうぞうできる【想像できる】**想像できる(容易に。ありありと。十分。まざまざと。おぼろげながら。手に取るように)。▼想像がつく(容易に。かろうじて。大体)。想像に難くない。どれほど憤慨したかは相想像に余りある。目に見えるよう。 **そうぞうりょく【想像力】**想像力が底を突く。孤独をまぎらわすために想像力が幻影をこしらえる=島田。想像力に恵まれる。想像力の豊かな男。並の想像力の持ち主ではない。想像力を大胆に駆使する=赤瀬川。奔放に想像力を働かせる。地球の運命に思いをはせるほどに大きな視野と豊かな想像力を持つ=飯田。なけなしの想像力を(一片残らず奪われる=開高。働かせて物語をつくり上げる"高橋源)。イマジネーションが(欠如する。豊か)。イマジネーションに欠ける。イマジネーションを(かき立てる。喚起する)。 **そうねん【想念】**想念が(次第に膨れ上がる。気持ちの中に煮えるようにわきたつ=伊藤整)。頭を様々な想念が掠かすめる。心に巣喰う一切の想念が洗い流される=真継。とりとめのない想念が心の表層に湧き上がってきては音をたてて破裂する=光瀬。美しい想念に浸る。想念の中で迷子になりそうになる=村松。白く燃えあがるような想念を育て上げる=伊藤整。思念が頭に滑りこんでくる。暗い思念が全身を露出して胎から出た虫のように気味悪く這いまわる“伊藤紫。 **たましい【魂】**魂(少女のように敏感な"有島。人並すぐれて滑らかな水井路。あらゆる痛苦と汚辱を忍んで胸の純潔を守りぬく焰のような=坂口)。人々の魂深く沁しみ入る。三つ子の魂百までも。魂が(腐る。天に帰る。火花を散らす。どこかに飛び去っていく。この世に留まる=宮部。絶えず文学の世界に遊ぶ今取。血を流して崩れてゆくような時間がいつまでつづくのかと堪えられなくなる『南条。惹き入れられて行くような美しさ福永。震えるような物語!奥田。体から抜け出しふわふわと浮いてしまいそう。東野。抜け落ちていくようなため息"あさの。抜けたみたいになって喜びや悲しみの感情の動きに生気がなくなる浅川。脱けたように甚だしく老いる=有吉)。亡き人の魂が戻ってくる。傷つきやすい魂が傷つききって両目に露出しているような目=日野。魂の(うちに永遠に生き続ける。洗われるような実にたのしい一日=木山。奥深くにたたみ込まれた記憶人間。荒野に水を注ぐ=隆。離れたような体で家のなかをあちらへこちらへとふらふらと歩く梅本。抜けたような空ろな表情豊田。ぬけたような目付きでビックリ見る=坂口)。無垢の魂に誘われる思慕「福水。死んだ人たちの魂の声を代弁する有吉。夢中になって叫び出したいような燃え上がる魂の歓喜「福永。友情は魂の共鳴のようなもの=福永。魂も消えるほどにびっくりする=宇野干。魂を(失ったように歩く"川端。奪われたように聴き入る=海堂。絞り出すようなつぶやき=光原。臍下丹田に落ち着ける=落語。抜かれたようにただコクコクと何度も頷なく鷺沢。引き抜かれた者のごとくその場に立ちつくす村松)。悪魔に魂を売る。寂寥感が魂を底まで凍らせる=井上靖。美人に魂を奪われる小沢。心魂に徹して思い知る。幽魂とどまりて祖国を守れ。霊魂の不滅。 <262> # お **ないしん【内心】** 内心(侠快哉紛いを叫ぶ。いまいましくて仕方がない。穏やかならぬものがある。怖くてたまらない。忸怩じくたるものがある。舌打ちしたが後の祭り。してやったりと思う。密かに誇りに感じる)。あまりのあくどさに内心辟易於結する=隆。内心で(悪態をつく。大いに同情する。ガッツポーズを取る。舌を出している)。内心では可愛くて仕方がない=山本一。誇りを内心にみなぎらす。内心の(動揺を隠しきれない。喜びを押し殺す。苦悩に心を引き裂かれる=福永)。内心は不安で仕方がない。容易に内心を余人にうかがわせない=津本。 **のうり【脳裏】** 前夜の出来事が脳裏で生々しく再現される=鈴木光。脳裏に(さまざまなことが去来する。鮮明に焼きつけられる。絶望という二文字が浮かぶ!鈴木光)。顔が脳裏にちらついて消えない。幻影が脳裏にはりつく。焦燥が脳裏にきざす。姿をはっきりと脳裏に描く。一連の不吉な言葉が脳裡20ぅに飛び散る=高橋和。バノラマのように脳裏に展開する=多岐川。捉えどころのない侮辱が脳裡に翳かげる=本庄。想像が脳裏を駆けめぐる。不吉な予感が脳裏を走る。記憶の断片が脳裡を駆けすぎる=高橋和。一刻たりとも脳裡から離れたことがない=有吉。脳裏に疑念が(わだかまる。広がる)。脳娶をよぎる(いやな予感が。歌のフレーズが。かすかな疑いが)。 **ほんしん【本心】** どこまでが本心か分からない。本心が(そのまま言葉になって出る。薬の蔭の金魚のように見え透いている=獅子)。本心からうれしそうに叫ぶ。偽りない本心からの声。本心を(明かす。打ち明ける。口に出す。吐露する。偽ってさも嬉しそうな顔をする=福氷)。器用に相手から本心を引き出す。古井戸をこわごわのぞく恰好い”で自分の本心をのぞく=島尾。意のあるところを汲くむ。本心を探る。本心を見窮める=有房。心にもないことを(言う。口走る)。本意ではない(妥協するのは。だますのは)。 **ほんね【本音】** つい本音が(こぼれ出る。出る)。本音(言葉にできない。言葉の陰に潜む)。本音かどうかを疑う。本音が(あらわになる。垣間見える)。▼本音が出る(久しぶりに。思わず。ぼろりと)。本音で話をする。本音を(言う。吐く)。ちらっと本音を漏らす。本音を読み取る(表情から。手紙の行間に潜む)。建て前と本音を重ね焼きにする"戸板。建前と本音を絶妙にブレンドする=姫野。 **むいしき【無意識】** 無意識で追っているおもかげの花竹西。無意識な反感を持つ。無意識に(影響を受ける。手を伸ばす。以前の行動をなぞる。聞き耳をたてる。拒否反応が出る。口をついて出た言葉)。無意識のうちに(記憶する。値踏みする。判断が働く)。無自覚に(日々を過ごす。流行を追う女性)。無自覚ぶりが目に余る。 **もうそう【妄想】** ▼妄想(根も葉もない。客観的な根拠のない。とほうもなくロマンチックな安部)。妄想が(頭を支配する。とてつもなく広がる。崖崩れのように襲う黒井。ガリバーみたいに大きくなる=尾辻。暗闇の片隅に動き始める=高樹。日増しに狂暴になる"谷崎。胸を悩み裂きながら広がっていく=船山)。頭の中で妄想が膨らんでいく。いろいろな妄想が浮かんでは消える。ちらっと妄想が頭の中をかすめる。後から後から妄想が現実の出来事のようにはっきりとして頭の中を通って行く志賀。妄想から解放される。妄想という怪獣の餌食になる=梶井。妄想に(とらわれる。どっぷり浸かる。引きずられて生きる。ふけるだけで実行力のない法儒いだな人間藤枝)。おかしな妄想に取りつかれる。快い妄想に没入する。自己欺瞞北にょの妄想に落ちる。とりとめもない妄想にふける。悪しき妄想に憑っかれる高橋和。逆転し横すべりする妄想にはつきあいかねるほど疲れきる=武田爽。妄想の(拠を広げる。炎が燃える。世界へのめりこんでいく。蒼白はい肥り肉ぃに』の中で塩っぽく微笑す=開高)。自分の妄想の中に閉じこもる=清水義。性的な妄想の沼=桐野。妄想を必死になって振り捨てる。あらぬ妄想をかきたてる。性的妄想を膨らませる。馬鹿げた妄想を信じる。淫らな妄想を描く。セクシュアルな女の妄想をいろいろ頭に描く=安岡。他人の卑しい妄想をシャワーのように浴びる=桐野。苦しみもがく光景を妄想する。誇大妄想狂的な思考に取り憑かれる=鈴木四。誇大妄想に取りつかれる。誇大妄想のような考え。末は大臣などという誇大妄想みたいな夢今灭。被害妄想にとらわれる。被害妄想の穴の底に落ちる=加賀。思考回路に被害妄想の渦ができる=島田。あらぬ(想像に駆られる。想像をたくましくする)。 **れんそう【連想】** 連想が(思いがけない方向に走る。とめどなく広がる。頭の中で点滅する内田康)。悪意ある連想が働く。連想の(糸を断ち切る。赴くままに話す。回路がすばやく働く=佐野)。とりとめもない連想の糸に繋ったがる=福永。奇妙な連想をいだく。連想する(過ぎた恋を。悪魔との取引を)。陣心とが金茶色をおびて猛禽類んらいの鋭さを連想させる=杉本。衣紋掛けを連想させるいかり肩!藤田。どことなく雨上がりの植物園を連想させるしっとりした香り小川。陶器の冷たさを連想させるような肌の白さ=永井龍。夢と記憶の連想ゲームのような色合いの強い作叩永倉。 **われながら【我ながら】** 我ながら(気味が悪い。芸がない。最高の出来。自慢の種。だらしがない。情けない。腹が立つ。浅ましいと思う。うまくいったと思う。馬鹿馬鹿しいと思う。年寄り臭い言葉が口から出る=篠田。ひどい人間だと思う。川上。よい仕上がりだと(思う。阿刀田)。自分ながら(他愛がない。情けない声)。 <263> # 泳ぐ・溺れる-85 # 泳ぐ・溺れる **あゆ【鮎】** 鮎が翔とぶように泳ぐ=中上。光の塊のような鮎が手の中ではねる=中上。鮎のはらわたの高貴な苦みと塩味と淡白な肉がいっしょになって美味しい=田辺。鮎を梁ゃなで捕る。鵜ぅが鮎を呑む。嶋から鲇を吐かせる。鵜を操って鮎を獲る。若くてしなやかな動き方で魚なら鮎を考えてよい女"大佛。艶やかで丸いお尻がベッドの上で若鮎のように何度もはねる"池田。細くて冷たい指が鮎のように跳ねる荻野。 **あんこう【赅鱇】** 巨大な脱色したお玉杓子のような鮟鱇"北村。チョーチンアンコウのあくびみたいに「バーカッ」と言う=岡田。鮟鱇は踊り疲れた海のビエ口=横光。 **いか【烏賊】** イカが群遊する海面。イカから吐き出されたスミのような黒煙=西木。イカの泳ぎ方はマンガ映画用に創作したんじゃないかと思うくらい変な格好"本多勝。心が烏賊のすみのようにくすほる=林美。火にかざしたスルメのようにひねくりかえって悶絶もする藤枝。スルメのように押し潰っょされる『福永。火にあぶったスルメのようにふんぞり返る=山本有。 **いわし【鰯】** 鰯が手ランブの光できらきらと青く見える=長塚。鋸の(頭も信心から。油がじりじりと垂れて青い焰が立つ=長塚)。楽屋に鰯の缶詰みたいにぎっしり詰まって寝る=高見順。鰯のごとく沢山ある=外村。空に鰯雲が広がる。 **うなぎ【鰻】** 鰻がにょろにょろのたうつ。蕎麦そばのように細っこいウナギの子=北。ウナギの寝床のように長細い造りの店内田康。鰻の蒲焼物はきを食う。うなぎのようにぬらりくらりとすり抜ける藤沢。鰻のようにローブの先がのびる=小林多。 # お **うろこ【鱗】** 魚が鱗をきらめかせる。瓦が魚の鱗をこそいだように重なり合?林京。銀の鱗を並べたように人家の屋根が連なる=獅子。前の割れた光った薄いローブをうろこのようにきらめかせる=大庭。川の流れの表面が海風になぶられて錆色にびの隣のような小波を立てている"高樹。無数の隣のような雲堀。屋根の瓦の一枚一枚が鱗のような黒い影をつけて浮き上がる=野間。鳞のように立ち重なる宵の人出岡本。白く乾き隣のように皮膚がむけている足"大江。魚の鱗のように重なり合う(浅く走っていく水の小さな閃からきが!佐藤巻。今年の新葉も去年の古葉も=水上)。雨に光沢を得た樹の葉が灯りの下で数知れない魚鱗時にのような光を放つ=梶井。太陽の光がさざめく波に落ちて銀鱗にんに変わる!綾辻。 **えび【海老】** 海老は甲冑ゅっちをつけて倒れた海の武者=横光。えびを(天ぷらに揚げる。フライに揚げる)。海老のような背をしたきたない蟋蟀銘志賀。海老のように(後へ後へ退く。赤い手足がしもやけでまるまるとふくれている壺井。身を折り曲げて痛みに耐える=荻原集)。えびのように(腰を曲げる。丸まって寝る。体を折って寝る=灰谷)。エビのように軀份らをまげて痛さに耐えようと努める=水上。蝦えびのように腰を二つに折る=小林多。足を蝦のように屈かがめて寝る=田山。体を海老のように折り曲げて丸くなる"井上ひ。寒さに手を海老のように赤くへし曲げる"有庵。生温かい水の中で煮られはじめた海老のようにやみくもに妹炒。をくねらせる=大江。寝床の上を海老のように跳ねる=梶井。両膝を曲げて海老のように窮屈になる=夏目。海老みたいにここんで縫いものをする=中。 **おぼれる【溺れる】** ▼溺れる(女の肉体に。快楽の海に。官能の世界に。ギャンブルに。酒池肉林しいかにに。肉体の喜びに。情に呟くらんで。浅ましく惰事に。骨董品にいんの趣味に。細君にべったり。全身の健けんがしびれたような快さに"円地。年下の男の手管に"藤沢。濃密な夫婦の交わりに=隆)。溺れるものはわらをもつかむ=美濃部。▼女に溺れる(酒や。年甲斐もなく)。海でおぼれて水死する。一日しのぎに酒に溺れて過ごす=林美。溺れながら必死に薬もらをつかもうとする=高見浩。水死体となって発見される。深みにはまって溺死する。溺死体が岸にあがる。土左衛門が上がる。溺れるように幸福に感じる=大佛。▶溺れかける(波に押し流されて。大きな時代の流れの中で=阿久)。▼溺れこむ(淫靡みんな淵に。快感の中に)。愛に惑溺して目がくらむ。▼惑溺する(不思議な世界に。豊かな幻影に際限もなく=檀)。 **およぐ【泳ぐ】** お玉杓子が尾をひらひらと動かしながら泳いでいる=長塚。泳ぐ(浮き袋をして。岸に向かって。障害物につまずいて体が。鯉のぼりが青空に。足をばちゃばちゃさせて。流れに逆らって、抜き手を切って。水しぶきをあげて。闇雲に沖へ沖へと。高く低く積まれた本の島の間を干刈。二人の子供が仲のよい犬の仔のように=庄野)。じゃぶじゃぶと泳ぐように雨のなかを歩く奥泉。水中を泳ぐように上体をふらつかせながらやって来る=中村貞。川を泳いで渡る。足がふらりふらりと泳ぎだす。▼視線を泳がせる(壁の品書きに。ぼんやりと宙に)。▼泳がせる(風に便箋を。視線を左右に。片手をひらひらと)。堂に入った泳ぎっぷり。尾鰭はびを動かす。ブールでばしゃばしゃやる。雑踏を泳ぐように歩く“小林久。畳の上を泳ぐように這い回る=住井。泥の海を泳ぐように前進する=栗本。向かい風の中を泳ぐように走る三好觅。雪の中を泳ぐようにこいでいく“石森。金槌で泳げない。泳ぎ着く(沖から海岸に。向こう岸に)。▼泳ぎまわる(魚が海藻の間を。海を我が物顔に)。喧噪台认の巷を泳ぎ回る=藤田。▼泳ぎ渡る(海峡を。川を)。 <264> # お を)。遊弋する(咬さぁが。大きな鯉が抓を)。 **かいすいよく【海水浴】** 海水浴でにぎわう砂浜。海水浴に出かける。海水浴を楽しむ。名の売れている海水浴場。水禽類付い心の群れた池は海水浴場のような賑やかさ=永井龍。 **きんぎょ【金魚】** 金魚が長い尾を揺らして泳ぐ。おけの中を金魚が泳ぎまわる=北原。女の唇がどす黒い赤色に塗られ灰色の沼の表面に金魚が下腹を出して浮いているよう池田。金魚の(うんこのようについていく沢木。尻尾みたいにふわふわした帯を締める三浦し。フンみたいにくっついてゆく人間)。金魚のように口をばくばくあける=灰谷。赤いネオンが金魚のようにゆらめく三島。いきな芸妓姿で会場を金魚のように華やかに泳ぐ=胡桃沢。死にかけた金魚のようにベンチにへたりこむ阿久。死にかけの金魚のように喘ぐ=曽野。バクバクと酸素の足りぬ金魚のように口を動かす北。本心が薬の蔭の金魚のように見え透いている=獅子。水に帰った金魚のようにいよいよ華やぎ若やぐ=有吉。 **くじら【鯨】** 鯨が潮を吹くかのように血が高くあがる谷村。断末魔の鲸が荒れ狂う波濤沚との間に身体をのたうっているような船"小林多。鯨のような(悲しげな咆哮ぶう。長い呼吸を吐く=獅子)。大小の鯨のような岩が氷をかき回す=加賀。鯨のように(酒を噴く。小っちゃい眼)。「ふゥ」といい気持ちの溜め息を鲸のように吹き上げる=獅子。鑣ともから鯨のように舵かじの尾を出す有島。橋が巨鯨の白骨のような姿岡本。商業捕鯨を中止する。調査捕鯨を続ける。汽船の流す屑くずを追いながらどこまでも追いかける海豚がるのような侘ゃぁしい存在=伊藤垮。波間をつきすすむドルフィンのように体を反らせる=五木。 **こい【鯉】** 水の中を泳ぐ鯉か鲋ぶたのようによろよろとむ。雨の波紋の中を泳ぎ回る=横光)。鯉の口のように口をあけて奥深く空気をすっと吸いこむ島尾。俎板岐陰に載せられた鯉のていたらく=藤本。鯉のように肉づきのよい腕水井能。池の鯉のように口をぱくぱくさせる"有栖川。緋鯉の稚魚のような敏捷さ=永井的。 **こざかな【小魚】** 小魚が(鱗ごろをきらきらきらめかせる。ちょろちょろ泳ぐ)。おびただしい小魚が雲のように群れ集まる=光瀬。小魚の腹がナイフのようにひらめく開高。小魚の群れが(一斉に向きを変える"池澤。銀色にぎらっと光る=池澤)。渓流の中で静かに泳ぐ小魚を見るような透明感"高橋三。透明に近い躰炒らに糸くずほどの骨が透けて見える小さな魚落合。待ち針みたいに小さな魚が群れになって泳いでいる=小川。 **さかな【魚】** 魚が(網にかかる。酢に熟れる。銀鱗んをひらめかせる。ぴちぴちと跳ねる。群れになって泳いでいる。藻場に卵を産みつける)。魚河岸に魚が届く。竿先誌で魚が躍る。釣り針に魚がかかる。男が魚が生まれた川へ戻ってくるように帰ってくる=渡辺。水に浮かんだ木の葉を魚に見立てる=向田。魚の(からだが銀色に光る=島崎。骨つきを裏返すように体をぐるりとこっちへ引っくりかえす谷崎)。岩陰に佇忙たんでいる青味を帯びた魚の肌を想わせる肌"大庭。瞬きを忘れた魚の目のように精気のない目"高橋和。魚を(針から外す。 魚籠がくに入れる。焼いて食べる。躍るように盛りつける=梅本)。梁ゃなで魚を捕る。生け贄けで魚を飼う。川で魚を捕まえる。大きな魚を釣り落としたような悔いと苛立迦らちで頭を抱える=内田康。魚の腐ったような(臭気。目)。声が突然舟板に飛び上がった魚のようにはねる=柴田翔。小さい魚のような形の目=梅本。どんよりと曇った魚のような目=小池。魚のように(冷たい指。口をあぶあぶさせる=小島)。網にすくいとられた魚のように全身をびくっと震わせる=小林久。生賚かけに群れいる魚のように室内を歩き回る=加賀。空気に溺れる魚のように不快な汗をかく大原。すばしこい魚のように敏捷氷し"大江。開いた口を魚のようにとがらせる!安岡。船が疲れきった魚のように黒く横たわる=有房。まるい眼が若い魚のようにくりっと張っているきれいな女性灰谷。水から揚げられた魚のようにただ荒い息だけして横たわっている=松浦。頭の細胞がイキのいい魚みたいにぴちぴちしている富岡。瞳が魚みたいに悲しい=林美。肌が魚のように(濡れている。ヒンヤリとしている=石坂)。茫然とフナのような口をあけて見つめる=坂口。魚ぅぉが(水に辿ったような喜び=有局。水を得たように身に備わっていた算勘の才を発揮する=藤沢)。ぎとぎとする包丁が口をとがらせた魚類めいている=北村。深海魚のようにぬめぬめと青白い体「五木。稚魚が育つ藻場。稚魚を海に放流する。水を得た魚のように(新鮮で潑刺はつ。生き生きと動き回る=黒岩)。竜の落とし子さながらに大きく反り曲がる=井上靖。飛魚の群れが銀色に光りながら波間をはねる=遠藤。砂の上でハゼが楔形文字が結びを描く開高。病人が干し鳏げぇのように平たくなって昏睡にいしている=吉川。まぐろのようにだらしなく床にのびている=江國。 **さけ【鮭】** 鮭が(生まれた川に戻ってくる。川いっぱいになって押しあいへしあいしている=辺見)。普段はほのかな虹色に郷く鮭の腹が産卵期には緋鯉のように真っ赤になる=大庭。 **さば【鯖】** 鯖が青光りに光る。錆の生き腐れ。死んだ錆の目玉のように澱ょとんだ頭の中中沢。鯖を三枚におろす。酢で鯖をしめる。 **さめ【頭】** 見るからに狂暴な餃。鮫が(獲物をひと呑みするような派手な動きで車が走り出す=藤本。ひれを立てて海原をなめらかに泳ぐ真継。群れをなして泳ぐように何をするにも組んだほうが都合がよい=真継)。ガリガリという鮫がボートの船底を齧かじるような音"景山。サメの皮のようにざらざらしている木のはだ=山本有。赤茶けた花崗岩妙に、ぅの細末が鮫の皮みたいに固まっている=中。足袋も穿かぬ足の甲が鮫の皮のようにばりばりと師ぃぃだらけになる長塚。何千匹の餞ふかのように白い歯をむいてくる波"小林多。生きている悪鬼のような大餃=隆。 <265> # お **しぎょ【死魚】** 死魚の浮く池水のように生彩を失う円地。焦点の定まらない目が死魚のよう笹沢。 **しらうお【白魚】** 白魚のくねったように細長く湾曲している町の姿!宮尾。白魚のような細うて白い指"二葉亭。肌理の細かい長い指が白魚のように美しい萩原爽。右手の小指がコッブから白魚のようにはね上がる=新田。肌が白魚のように透きとおる"中局彩。 **すいそう【水槽】** 水槽が飴のように曲がる=林美。丸い大きな水槽が水玉模様のように一面に散らばる"小川。周囲に山をめぐらした盆地そのものが冷たい藤色の大気を満たたえた水槽のように大佛。 **すいぞくかん【水族館】** 水族館の飾ょりの群れのように雨の中をあてもなく歩きまわる=村上春。海の底の死体が水族館の魚のようにはっきり見える=川端。 **すいちゅう【水中】** 水中から(浮かび上がる。顔を出す)。水中に姿を隠す。頭から水中に没する。櫂がいを水中に突っ込む。もんどり打って水中に身を没する。とぼんどぼんと水中へ飛び込む!本多酸。村がダムの建設によって水没する。たとえ火の中、水の中。水の中から引き上げる。水の中で身をもがく。頭から水の中に転げ落ちる。水の中を(じゃぶじゃぶと歩く。泳ぐような解放感"長野)。 **せんすいかん【潜水艦】** 潜水艦が海中を進む。潜水艦の魚雷攻撃を受ける。『鏡を海面に出す。深海へ下降する潜水艇ほどにも重圧によくもちこたえる精神=飯田。 **たい【鯛】** 真鯛が人目をひかずにはおかない見事な色合いと形のよさ竹西。腐っても鯛。鯛のように口を尖らせる=伊集院。 **たこ【婚】** 足の力が抜け落ちて骨のないタコの足のようになる萩原薬。タコのスミは水中で煙器のように広がる=本多俊。章魚たこの吸盤のある足のように意地悪くからむ=萩原朔。茹でられたタコさながらにくたびれはてる=北。頭脳も精神も思想もかたまらず、からだこと骨抜きの章魚のよう。島尾。死んだ峭射しに雲母をちりばめたように光っている=落合。のような乳房"川端。唇を蛸のように突き出す=小林多。ゆで上げた蛸のように真っ赤になる=阿久。蛸壺にを沈めるようなあてどもないこと=長塚。 **どじょう【泥鰌】** 水田には泥鰌が水をチリチリふるわせてうごいている"阿川弘。館としがちょろちょろと跳ね返りつつ、その身を慌しく動かしている=長塚。同じ柳の下に泥鰌は二匹いない!柴田錬。二匹目の泥準を狙う。結局は自分のことしか考えられない自分が泥鰌のように泥くさい"島尾。後先濁らせ逃げてしまう泥館野郎-室生。 **にしん【穌】** にしんが(獲れなくなる。豊漁になる)。鯨の群来くきが年々減って行く有房。にしんの群れが(来る。途絶える)。 **ねったいぎょ【熱帯魚】** 熱帯魚が閃必らくように泳ぐ"有吉。政財官界の大物たちの間を華麗な熱帯魚のように泳ぎまわる=小林久。売り物の熱帯魚みたいに人々が右往左往する=加賀。 **ひれ【略】** 太刀魚於訪のひれのように掌60をひらひらさせる=武田。足を鰭のようにくねくねさせる八合崎。背鳍せびが刺とげのように立つ=加賀。魚の背鳍のようにぎざぎざな岩礁が沖まで突き出る=中。 **プール** ▼ブール(鮮やかなマリンブルーの。なみなみと透明な水を湛たたえた"阿部)。ブールが午後の日射しに雲母をちりばめたように光っている=落合。ブールで(水浴びする。ばしゃばしゃ泳ぐ。さんざん水浴びした後みたいに軀中以がが重たい三浦近)。ブールにまっさかさまに飛び込む。折り曲げたナイフのような姿勢でブールに飛び込む"庄野。水泳の選手がブールに飛び込む格好で倒れる宮本師。雨粒が作り出す水模様でブールの表面が無数の小魚が餌を欲しがってうこめいているみたいに見える=小川。ブール付きの豪邸。 **ふぐ【河豚】** ミニカーほどの大きさの玩具のような河豚向田。青磁の大皿に花びらのようなふぐの刺身がひろがる落合。フグのように両頬をふくらませて吐くのをこらえる=西木。 **ます【鰹】** 夏の山道のような鱒の味村上奈。バスが渓流を上下する巨大な鱒のように往き来する=村上春。 **みずあそび【水遊び】** 水遊びに適した川。たらいで水遊びをする。▼水遊びする(川原で。浜辺で)。たらいで水浴びする。 **みずすまし【水澄まし】** ミズスマシのように水面を泳ぎ回る=獅子。船が水すましのようにすっとなめらかな水面に流れ出る=林炎。 **めだか【目高】** めだかが群れて泳ぐ。メダカの群れがバッと散り水に溶けたみたいに姿を隠す三浦し。金色に輝く川底の砂に透明なメダカの群れの影が映っている三浦し。とかくメダカは群れたがる"林真。メダカのような形をした胎児安部。気の合った者だけがメダカのように集まる=白井。めだかみたいに鼻を並べて飲む"中。 **もぐる【潜る】** 潜る(海に。寝床に。布団に。水に。泥にずぶずぶと)。雪がズブリとふくらはぎまでもぐる三浦朵。天に消えたか地に潜ったか=山田風。潜行する(工作員が。スバイが。テロリストが)。▼潜水する(海に。湖に)。 <266> # 終わる・終える # お **おえる【終える】** ▼終える(一日の仕事を。一連の作業を。学業の研鑽汀んを。簡単な食事を。事情聴取を。資料の作成を。第一段階を。長い話を。話の山場を。無事に航海を。本源的蓄積を。歴史的使命を。教師として生涯を。終始笑顔で説明を。リーグ戦の前半を。撮影をようやく)。終えるか終えないうちに。結末をつける。文末をしめくくる。▼書き終える(作品を。弔辞を)。▼なし終える(仕事を。用意を)。読み終える(一冊を。手紙を)。秘密裏に事を終結させる。手仕郷いにかかる。めでたしめでたしと手をしめる。▼打ち上げ(興行の。巡業の)。打ち上げの酒の席。▼打ち上げる(公演を。仕事を)。 **おおづめ【大詰め】** 捜査が大詰めに来る。大詰めを迎える(仕事が。戦況が)。最終日を迎える。大学入試に備えて最後の追い込みにかかる。追い込みに入る(工事が。受験勉強が)。最終盤に入る。寄せに入る。終盤で(逆転する。巻き返す。もつれる)。 **おおみそか【大晦日】** 大晦日に聞く除夜の鐘。大晦日を迎える。いい正月が迎えられる。年越し蕎麦そばを食べる。除夜の鐘が鳴る。除夜の鐘を(開く。撞っく)。 **おわり【終わり】** 死ねば何もかも終わり。終わり良ければすべて良し。終わりにさしかかる。だんだん終わりに近づく。猟の終わりを知らせる合図―熊熊谷。終わりを告げる(結婚生活が。饗宴心うがさりげなく有島)。▼終わりになる(作家生命が。持ち場の作業が)。鉄にまで感情を切断されたようなあっけない終わり方辻仁。こういう終わり方も悪くない=伊坂。 **おわる【終わる】** ▼終わる(新人研修が。戦乱の世が。試みが徒労に。予定より早く。あらかた工事が。一つのサイクルが。一通りのトレーニングが。瞬く間に作業が。専業主婦で一生を。型通りの結果に。さんざんな結末に。真相が分からずじまいに。調停が不首尾に。とうとう言えずじまいに。全くの期待外れに。無意味な暴挙に。議事が滞りなく。攻撃がようやく。いつ終わったとも分からずに=横光。一般の目にはほとんど触れずじまいに内橋。ついに本流とはなりえずに内橋。夏休みがあっという間に"灰谷。はっきりしたけりがつかないままうやむやに!幸田文。道端の霜の消えることく世に無名の死に=山手。夏の雨がにわかに降り出してやがてぴたりとやむように、事が起こりそして=高井。二人の間が見事な幕切れを見せて『黒岩。めでたしめでたしで=皆川)。あっけなく終わる(何年も続いた二人の関係が"五木。演奏が慌ただしい印象だけを残して=森瑞)。歓送会が味気なくも一時間ほどで終わってしまう~椎名感。働き蟻ぁりのまま人生が終わってしまうのは悔しい=山本島。今が切り上げ時。最後を結ぶ。ここで会ったが百年目。この世の終わりのような美しさ=なかにし。終わりにする(関係を。見物を)。▼完了する(準備が。拠点の確立を。予定の行動を。インストールが)。打ち止め(興行の。バチンコの。この一番にて本日の)。▼打ち止めにする(今日の仕事を。論争を)。驚愕だいのエンディングを迎える。お後がよろしいようで=横山。落ち(恨みを買うのが。噂の種にされるのが。最後は自分が惨めになるのが。冗談として聞き流されるのが。元も子もなくして帰ってくるのが)。話に落ちがつく。落ちにひねりが効いている。お開きになる(パーティーが。一次会がそろそろ)。▼完結する(愛が。長編が。ドラマが)。期末に決算する。絶望の生活に切りがつく。会議が散会する。独裁体制が終焉しいっする。出る幕が。長い一日が。企てが失敗に。交渉が不調に。一浮世絵の終焉を飾った絵師高橋克。終結する(訴訟が。内戦が。紛糾が。冷戦が)。終着の電車。終点に着く。終了する(内部調査を。録音が無事。つつがなく結婚式が。関係がごく自然に。予定時間より早く)。それまで(思いつきと言ってしまえば。自業自得と言えば。絵空事といってしまえば瀬戸内)。大尾を(飾る。結ぶ)。巡の尽き。▼果てる(披露宴が。一場の夢と)。劇場がはねる。引け際(会社の。市場の)。引け際を見極める。会社が引ける。話題にビリオドを打つ。フィナーレを迎える。▼閉会する(式が。国会を)。問題を曖昧にしたまま幕引きする。満了の日を迎える。満了する(契約期間が。任期が。有効期限が)。刑期が満了になる。明ける(行ぼ」が。勤務が。通夜が。梅雨が。長い冬が。年季が。喪が。休みが)。壮大な十字軍運動の最後の幕をひくにふさわしい熾烈しもな攻防戦!塩野。幕が引かれる。▼満期になる(刑が。契約が。定期預金が)。満期の日を迎える。 **かいけつ【解決】** 一挙に解決がつく。解決に(心を砕く。向けて一歩を踏み出す)。紛争の解決に当たる。問題が解決に近づく。事件が解決に向けて大きく前進する=松岡。解決の(目途が立つ。糸口を見つける)。金で解決のつく話。話し合いによる解決へ持っていく=和久。穏便な解決を主張する。▼解決する(トラブルを。難事件を。一刀両断に。問題が円満に。万事めでたく。歳月がすべてを。迷宮入りの事件を。紛争を平和的に。問題を根本的に。事件がすっきり)。一日も早く解決したい。時が万事を解決してくれる。他の解決案を見つける。有効な解決案を出す。優れた解決方法を見出す。課題解決への脈絡を考える。難凹を一刀両断する。きっちり落とし前をつける。快刀乱麻を断つ。片付く(右から左へ。わずか数日で。三十分もあれば。事件がすっかり)。目の前の難問が一つ片づく。 **かいけつしない【解決しない】** 解決が遅々として進まない。いまだに解決がつかない。問題の解決から遠のく。解決されるべき問題が残る。解決に程遠い。なかなか解決に至らない。根本的な問題の解決にはならない。解決の(糸口が見つからない。見通しがつかない。目途とが立たない=池井戸)。容易に謎が解けない。解けない数式に悩む。未解決の(課題。事件。問題)。事件が迷宮入りになる。懸案を(解決する。処理する)。▼懸案(去年からの。長い間の)。懸案の疑問をぶつける。懸茶事項を抱える。 <267> # 終わる・終える-86 # お **きりあげる【切り上げる】** ▼切り上げる(電話の長話を。早めに仕事を。練習を途中で。そそくさと話を。この辺でそろそろ。適当なところで。ほどよいところで)。▼早々に切り上げる(散歩を。挨拶も)。▼早めに切り上げる(授業を。飲み会を)。 **さいご【最後】** 言い出したら最後絶対に後に引かない。別れたが最後またとめぐりあわない。最後で踏みとどまる。これが最後というように改めてゆっくりと見まわす“日野。最後に(お目にかかったのは三年前。一言付け加える。笑うものが本当に笑う)。最後には腰砕けになる。最後の(一線を守る。仕上げに入る。勝負に出る。戦いを挑む。力を振り絞る。抵抗を試みる。望みを託す。生き残りをかける。一語に力を入れる。一枚が仕上がる。一個を奪い合う。一兵まで戦い抜く。質問を口にする。絆が断ち切られた思い"山崎)。人生の最後の一日に臨む。最後の最後になって告白する。最後の最後まで(諦めない。頑張り抜く。ねばる。とことん調べあげる=船戸)。最後まで(相手にくらいついていく。言うことを聞かない。一歩も退「かずに抵抗する。希望を失わない。懸命に生きようとする。職責を全うする。黙って聞いている。踏みとどまって頑張る)。どん尻の成績。リレーのアンカーを務める。雨ざらしの物干し場のようにごくささやかなエピローグ=村上脊。これでおつもりにしよう。優勝で最終戦を飾る。しまいには(泣きだす始末。声も出なくなる。どうでもよくなる)。おしまいまで我慢する。しまいまで忍耐づよく聞く。食事の締めにケーキを食べる。絶筆となった(作品。小説)。終っぃの(すみか。別れ)。掉尾吒ぅの勇を振るう。二十世紀の掉尾を飾る。とん尻でゴールインする。びりになる(成績が。かけっこで)。末尾(手紙の。文章の。論文の)。結末が気になる。幸福な結末が訪れる。最後まで結末が読めない。無残な結末が待っている。最悪の結末だけは免れる。呆気はっない終末を遂げる。人生の終末を暗示する。世界が終末を迎える。この世の終末のような凄すさまじい美しさを滲ませた空の色"原田康。おおいようもない終末感が暗い夕闇のように胸にしずみこむ=光瀬。政権の末期。病状が末期になる。末期の患者。末期症状を呈する。▼見納め(この世の。しばらくの)。これが見納めになるかもしれない。余韻に富む結び。結びの(一番。一句。言葉)。ラストが近づく。ラストで(追い込む。どんでん返しが待っている)。ラストを飾る。ラストスパートをかける。 **さいしゅう【最終】** 最終の便に間に合う。次第に最終の姿に近づいていく内橋。最終局面に入る。最終候補として残る。最終コーナーを曲がる。最終選考に残る。最終段階を迎える。最終電車に飛び乗る。最終バスに間に合う。 **しめくくる【締め括る】** ▼締めくくる(演説を。おしまいを。結末を。最後の一行を。深い溜め息で話を"隆)。締めくくりがつかない。締めくくりをつける。 **しゅうしふ【終止符】** 二人の間に終止符が打たれたような気がする=源氏。▼終止符が打たれる(甘く楽しい日々に。方針上の混迷に=柴田翔)。終止符を打つ(口争いに。結婚に。永い生涯に)。まだ話していたい気持ちに軽くビリオドを打つように受話器を置く"落合。▼ピリオドを打つ(関係に。気持ちに)。 **しゅうせん【終戦】** 終戦の(詔勅を聞く。どさくさに一旗あげる)。現地で終戦を迎える。戦を収める。収まる(戦火が。戦乱の世が)。城下の盟宀か。戦争が(終結する。終わって復員する)。戦争に負ける。泥沼と化した戦争を終結させる。戦乱が(終わる。やむ)。大戦が終了する。矛を収める。早急に和談を整える。和を結ぶ。終戦後の混乱を経る。合戦がやむ。合戦に終わりを告げる瑞兆がふち。講和条約を結ぶ。停戦協定に調印する。停戦に(応じる。合意する)。休戦に持ちこむ。休戦のやむなきに至る。休戦協定を結ぶ。 **しゅうそく【終息】** ▼終息する(インフレが。景気後退が。抗争が。混乱が。戦争が。流行が)。 **だいだんえん【大団円】** 物語が大団円で終わる。発端と大団円とがしっくりと照応できる物語のように景色が少しの無理もなくまとまっている=佐藤森。ハッピーエンドで救われる。▼ハッピーエンドで終わる(映画が。小説が。物語が)。 **ねんまつ【年末】** 年末から(来春にかけて。年明けにかけて。年始にかけて旅行に行く)。年末で期限切れになる。正月を間近に控える。年が暮れる。年も押し詰まった寒い夜。今年も残り少なくなる。街角にジングルベルがあふれる。年が暮れに迫る。暮れも(おしせまったある日。押しつまった底冷えの日=日野)。師走の(風が吹く。声を聞く)。師走も半ばを過ぎたある日。年の市が立つ。忘年会シーズンの真っ盛り。年の暮れが近い。歳末に近づく。歳末の街に人があふれる。華々しい歳末の大売り出し。気ぜわしい年の瀬。年の瀬が迫る。年の瀬も押し詰まったある日。年の瀬をひかえて買い物客で賑わう商店街"高樹。年末年始。大晦日祜姉ぇから正月にかけて忙しい=柴田鍵。 **へいまく【閉幕】** ▼閉幕する(会議が。国会が。オリンビックが)。舞台の照明が落ちる。幕がおりる。終幕を迎える。味な幕切れを見せる。騒動が幕になる。復讐劇ぶ火託が幕を閉じる。 <268> # 飼う # か **いぬ【大】** 犬(耳をビンと立てた利口そうな小川。大人の腕ほどもある太い尻尾の=向田。黒い毛色が漆を塗ったように美しい光沢の内田百)。犬が(尻尾を巻く。くんくんと鼻を鳴らす。地面に鼻を近づける。鋭い牙を見せて唸ったる。ちんちんをする。西向きゃ尾は束。のっそりと起き上がる。気だるげに地面に寝そべっている=永井ル。よくやる走り方のように一所懸命に駆け出しては後ろを見る=岸田)。暑さにへたった犬がだらしなく舌を垂らしているように見えるア・バート落合。賢い犬が遠い物音を聞き澄ましているように見物する谷崎。太った女が横坐れたりになったような恰好いっで犬が陽を浴びている三浦哲。分娩後の犬が立ち上がるような頼りない起き方!有吉。犬に(首輪を着ける。ブラシをかける)。犬の頭のように大きい懐中電灯=大江。びしょ濡れの犬のごとく憎然しにうとする=武田炎。部屋の片隅に捨てられた犬の母子のようにうずくまる=大庭。雪の上を犬の足痕のような花弁の模様が点々と走っている=福水。若い二人の議論が犬の喧嘩州んのような愉快な活気を呈する=中村貞。犬は物言わぬ賢い友達。夫婦喧嘩は犬も食わない。犬を(鎖につなぐ。散歩に連れ出す。追うように手を振る=中上。調教するような厳しいしつけ玉村)。ちぎれんばかり尾を振って飛びかかる犬さながらの姿"里見。女の指は犬の尻尾のように正直阿刀田。犬でも(けしかけるように言う。追い払うように手を動かす高樹。飼うことを決めるみたいにあっさりと再婚を決める!連城。食わぬことぐらいに事柄を軽く自然に話す=古井。招くように両手を広げる"松浦。呼ぶようにヒューと口笛を鳴らす=森城)。犬のようなすばやさで方角を嗅ぐ有島。哀願する犬のような表情獅子。揆らたれた犬のような怯ぉぃえた表情=遠藤。犬のように(荒々しく体を慄ふるわせて水を払う三島。哀れみをくっている眼!遠藤。男の匂いを嗅ぎ分ける=石川。舌先を覗のぞかせる=東野。ハアハアと口をあける=田辺)。頭の足りない犬のようにじっと坐って夫を待っている妻"大庭。お預けをくった犬のようにいつまでも栗まんじゅうをもらえない=萩原突。車にはねられた犬のようによろよろと立ち上がる=小池。自分の影におびえる犬のようにありもせぬ幻におびえる!高橋和。主人に叱られた犬のように眼をそらせる=遠藤。樹木に犬のようにつながれる"遠藤。電柱のまわりをまわる犬のようにぐるぐると回って歩く=西木。毒を食った犬のように手と足を硬直させて空へのばすに小林多。放浪を続けて犬のように死ぬ大庭。水の中から引き上げられた犬のように身をふるわせる=野問。みすぼらしく狭い肩を寄せあって犬のようにいくたびも身震いする=大江。水を渴いた犬のように飲む"有吉。目が怯えた犬のようにおとおどと震える=山本周。犬みたいに(さもしい男。すぐ嗅ぎつける徳永。鼻をひくひくさせる=野間)。お預けされた犬みたいに涎はだを垂らし唾をのみ込む"萩原來。さんざん棒でなぐられた犬みたいに震えて射精する=阿部。闘犬のように闘志を燃やす阿川弘。二人の息子が狛犬に雌のように並ぶ!森岡。犬が吠える。犬が(悲しげに吠える。キャンキャン鳴く。けたたましく吠え立てる。切なげに吠える。わんわんと吠える。狂ったように吠えまわる有吉。神経質そうに甲高く吠えたてる=原田康。火のついたように吠える遠藤)。辻に立って犬が遠吠えするように空に向かって呼ばわる=海音寺。■犬が吠える(猛々しく。みんなが飛び上がるほど猛烈な声で=岸田)。割れたブリキ缶を叩くような犬の声"宮部。寂しげに甲高い犬の吠え声"石川。弱い犬ほどよくほえる=飯田。けたたましい犬の鳴き声。 **うし【牛】** 牛が(モーと鳴く。飼い葉を食べる。のっそりと立っている。のったりのったり歩いて行く。舌を出して鼻を舐めずっているような焰組のがべろべろと立つ=長塚。寝ているように奥深く豊かな形をしている山中河。吼えるような汽笛=長塚)。海に向かって開いた奥深い谷の真ん中をめがけて牛がのさばりでたような格好をしている峰=中。海底の牛が啼?くような鈍い汽笛"武田爽。ゆっくりと無成動に牛が草を食はむように仕事をする!向田。印象を牛が反芻礼するように何度も舌で味わう獅子。することなすこと牛そっくりにスローモー=住井。牛に(草を食わせる。材木を引かせる。すきを引かせる)。牛の(乳を搾る。歩みよりのろのろ走る=椎名感。うめき声のような泣き声が気疎い、うく聞こえる=有島。啼き声のような汽笛"小林多)。黒い岩のような牛の首筋獅子。食用蛙びが牛の遠吠えみたいに啼く=田辺。牛ほどの大きさの岩"高橋三。牛や馬みたいに働かされる"なかにし。牛を放し飼いにする。牛のような(うなり声を上げる=篠田。食用蛙の啼き声=阿部)。牛のように押し黙って答えない藤沢。綱を放れた牛のように斬ってかかる=芥川。長い厳冬を牛のように忍耐強く辛抱しぬく有島。人間を牛のように扱う遠藤。胸に拡がっていた不安を牛のようにもう一度反芻する"遠藤。暗闇の牛みたいにのっそり人影が動く=吉川。牡牛のように肩のいかった巨体筒井。心が闘牛者の榆ゃりを受けた牡牛のように荒ずさむ!菊池。雄牛のようにがっちりとした肩幅をもつ女小池。猛牛のように(駆けめぐる。突進する)。雄牛のような首っ玉篠田。霧田が群れをはぐれた仔牛のような鋭い悲鳴を上げる=村上春。乳牛から乳を取る。乳牛の乳の出が悪くなる。赤べこのように律儀に頭を下げてまわる三浦し。闘牛士のように体をかわす「加賀。 <269> # 飼う-87 # か **うま【馬】** ▼馬(濡れそぼって黒光りする。人間万事塞翁拦ふが=福永。山のように荷物を積み上げた荷車を黙って汗をかきながらひっぱっている=小沼)。馬が(怯ぉぃえて暴れ回る。尻尾を振り振り走る。鼻をぶるっと鳴らす。ヒヒンといななく。棒立ちになって客を振り落とす。閑雅な歩みを運ぶ=梶井。高くさお立ちになる=光瀬。風より早くかけ出す。宮沢)。客を乗せた馬が通りかかる。荷を積んだ馬が通る。ばかばかと馬が走る。馬から(転げ落ちる。ばっと飛び降りる)。馬に(蹄鉄にかをつける。荷を引かせる。拍車をかける。乗って山野を駆けめぐる。鞭もちを当てて走らせる)。孤包みを馬に積む。犂すきを馬に引かせて田畑を耕す。ひらりと馬にまたがる。馬の(背に揺られる。耳に念仏。鈴がしゃんしゃんと鳴る。背からひらりと飛び下りる。全身をブラッシングする。背中が波のように並ぶ=吉川。背中のような丘三島。背のような峠をかけ上る三浦朱。たてがみのざらざらした手ざわりが棕櫚礼”の毛のように手にまといつく野間。鼻息のような吐息を洩もらす藤沢)。とこの馬の骨だか分からない。トラックが馬の尻尾のように跳ね上がりながら突進する=徳永。馬の鼻面を(叩く。鼻面を撫でる)。馬を(牛に乗りかえる。走りづめに走らせる)。厩うまから馬を引き出す。急使の者が馬を飛ばして来る。巧みに馬を乗りこなす。昼夜兼行で馬を駆けさせる。風のように馬を飛ばしていく=光瀬。将を射んとすれば馬を射よ。馬のような勢いで駆け寄『馬のように(後足で蹴る。大きい白い歯。ただ頑丈な男。長い顔。おとなしく立っている=阿部)。スターティングゲートに入るのを嫌がる馬のようにかなか仕事にかからない=高橋治。体力のつきた馬のように両足をふにゃふにゃと折って膝をつく野間。念入りに調教した馬のように美しい兵隊たち『大江。ライトバンがロデオの馬のようにお尻を跳ね上げながら走る"干刈。馬みたいにバケツの水をじかにごくごく飲む"住井。軽く頭をひと振りし頬にかかる髪を小馬のようにはらいのける=宮部。生き馬の目を抜く業界。絶えず体を震わし蹄いっを蹴り立てて神経のかたまりのようにビリビリしている競走馬"加賀。駿馬しが矢のように駆ける=山手。娘達が栗毛の駿馬のように街を歩く=川端。何人もの女に子を孕はらませた種馬のような男。中上。速力が駄馬のように減退する"島尾。馬方が荷馬を引く。馬腹を蹴って走りだす。馬炎はょが道に落ちている。大勢の野次馬がひしめき合う。あぶみに足を掛ける。馬にくつわをかませる。ひらりと鞍くらにまたがる。馬に鞍を置く。三人が骸を並べて駆け過ぎる。駒の頭分しを立て直す。馬具を(つけた馬。取り外す)。蹄鉄を蹄に固定する。凍ぃてついた道を夏々妙つと踏んでゆく馬のひづめ"吉川。ばかばかと蹄の音を立てる。夏々と蹄の音を響かせて馬を駆けさせる=中局浮。 **えさ【例】** 誘惑の餌がぶら下がる=山岡。現世利益他の奇蹟せを餌として大衆を釣る萩原则。浮気を餌に口止め料を釣ろうとするゆすり“島田。鳥が何をついばむ。我勝ちに押し合いへし合い餌を漁る。鳥が餌をついばむような調子で質問を続ける落合。餌をやる(金魚に。小鳥に)。餌にする(魚の身を。地位を。肉体を。褒美の金を)。餌代が馬鹿にならない。好餌で誘い出す。好餌に釣られる。飼葉の枯れ草みたいな甘いにおい!安岡。馬が飼い柒を食べる。馬に飼い葉をあてがう。▼飼料(牛の。鶏の。豚の)。 **かいいぬ【飼い犬】** 飼い犬に(餌をやる。手を悩まれる)。飼い犬を自慢する。吠えることを禁じられた番犬のように無抵抗"西木。全身肉のかたまりのようなブルドッグ三浦苔。ブルドッグがこわんこわんと声を喉で転がすようにして長々と吠える=三浦写。ブルドッグのような順をした男藤田。 **かう【飼う】** ▼飼う(愛玩動物を。生け簀けで魚を。犬を。兎約を。牛を。馬を。蚕を。家畜を。金魚を。心に鬼を。小鳥を。猿を。鹿を。狸を。二十日鼠加や砂を。番犬を。約ひを。豚を。ベットを。山羊ゃさを。栗鼠りすを。カナリアを窓かごに入れて)。▼放し飼いにする(家畜を。鶏を)。飼い主に(噛みつく。忠実)。餌付けに成功する。▼肥育する(牛を。家畜を。魚を)。飼育を断念しなければならない立場に追いこまれる当月。飼育する(動物を。ブロイラーを)。 **かちく【家畜】** おとなしい家畜の群れのように人の指図にしたがって生きる=石坂。家畜を養い育てる。寝薬はゅを取り替える。家畜のようによく光る眼で眺める遠藤。膝なぁされた素直な家畜のように素直な娘"岡本。牛馬のように(こき使う。働き死んでいく=遠藤)。人を牛馬と同一に見る。 **くろいぬ【黒犬】** 沼から湧いて出た獣の精かなにかのように浮気味が悪い黒犬"阿部。黒犬のような影が足もとへとびかかる=水上。 **こいぬ【小犬】** 水浸しになったぬいぐるみのようにぐったりと倒れている小犬高橋三。生まれて間もない子犬。小犬がくんくん鳴く。子犬のもらい手がない。子犬を抱きかかえるよりも容易"池田。ころころと転がる子犬のような女の子に小池。追い払っても追い払ってもついてくる子犬のような女"原田宗。靴が足もとでかしこまった二匹の仔犬のように見える=村上発。小犬のように土手を駈けおりる"住井。雨に打たれた小犬のように心細げ高橋三。餌のよく行き渡った小犬のように張りきる=阿久。おどおどした小犬のように微笑む田辺。逐ょわれても主人のあとを慕う小犬のようにまつわりついて離れない武田奏。小さい犬がきゃんきゃん鳴く。雪の中をきゃあきゃあ言いながら犬っころのように走り廻る=海音寺。犬の子犬ががたがたふるえる。子犬がじゃれあって遊ぶ。三匹の子犬が親のあとを追う。 <270> # か **こねこ【子猫】** 両手に包み込めるほどの痩せた小さな子猫"内海。掌~60に乗るほどの仔猫三島。子猫が親猫にじゃれるようにおとうさんに甘える=灰谷。甘えた仔猫に似た声"倉橋。仔猫を(あやすように撫でる=大原。ねらわれた雌猫のような烈はげしい瞳のきらめき円地)。仔猫のような頼りない姿でうずくまる!萩原菜。首の根っ子をつまみ上げられた仔猫のような気持ち壺井。子猫のように(愛くるしい。体をくねらせてキスを投げる=岡田)。子猫のように身を擦り寄せてくる女達"山田詠。あまりネコに関心のない家に入りこんだ子ネコのようにどうふるまってよいのかわからない=清水俊。猫の子のようにあしらわれる=村上元。貰い手さえあれば猫の子のようにボイと嫁にやる=壺井。猫の子を扱うように頭を押さえて無理に顔を洗ってやる=大佛。犬の子か猫の子を処置するように引っ張ってきて牢屋にブチこむ=小林多。 **こひつじ【子羊】** 身替わりの小羊の必要を痛感する"隆。一群の仔羊のように孤立する遠藤。狼の悪だくみにのった小羊のように哀れな存在"石坂。自身の心には一つの鞭ももも加えずにさながら汚れなき小羊のように祝福を与える宮本直。 **とりごや【鳥小屋】** 鶏小屋で鶏を飼う。鶏小舎に初に鼬いたが入りこんだような騒ぎ=阿久。鶏小屋のような(バラック。病室)。鳥屋に入る。鳥屋を作る。 **ねこ【猫】** 上質のカシミヤのような手触りの猫村上春。猫が(爪を立てる。膝の上に乗る。胸まぁにじゃれる。起き上がって伸びをする。ころころのどを鳴らす。三味線の皮になる。ニャアニャア鳴く。宇宙を呪うような陰気な唸ったり声で鳴く=武田巻。首筋の毛を逆立てる=村山。ぐるるると喉を鳴らす荻野。鼠々ずをもてあそぶようにいじめて楽しむ"星。ブールヴァールを歩く貴婦人のようにゆうゆうと歩く=梶井)。エンジンが猫が咽喉のとを鳴らすような音を立てる=田中。好奇心にかられた猫が獲物にじゃれるしつこさで開きほじる=大庭。白い猫が海いっぱいにかけまわっているみたいに海一面が白く波立つ"松谷。猫が獲物を(前に舌舐めずりをするように皮肉な目で見渡す内田康。弄。そぶような言い方=遠藤)。猫の(淡ふんが臭う。細く澄んだ声。喧嘩州んの声が巻き起こる。家出みたいに戻る気があれば戻るだろう今東。化粧のように両手で顔をこする"川端。ぶよぶよした跡の肉崎)。自分の耳が猫の耳のようにとがってぴんとするような気がする=梅本。背広の衿ぇりを猫の首でもつるすようにつまみ上げる=円地。猫の額のように狭い。列車が着くたびに猫の額ほどの駅前広場が人波で埋まる=西木。猫は魔性のもの=松谷。女が猫を被る。窮鼠猫もいらを噛む反逆!高橋和。借りてきた猫のように静かにしている=阿久。猫のような体のしなりを見せる=伊坂。獲物を狙う猫のような顔をして構える"阿久。無理に隅っこから引っ張り出される猫のような迷惑そうな顔「伊藤整。雪の中を猫のような足どりで忍び寄る=山本周。路地の気配を窺紛ゅう猫。猫のように(よく光る目。足音のような目つき「古井。を忍ばせる今日。おとなしい口のきき方をする=大佛。音もなく忍び寄る=小松左。背を丸めて眠りにつく"山田詠。なまめかしい女谷崎)。丘が眠りについた巨大な猫のように時の日だまりの中にうずくまる"村上春。去勢された猫のように大人しく気だるそうにテレビを観る=原田宗。主人の怒りにおびえきった猫のように身を固くする=泉優。スッと猫のように音もなてあそぶ猫の眼で見る=黒岩。猫の目のような雲の切れ目林京。猫の眼のように(変わる命令。天候が変わる。時代の推移に従って自己を変える=高橋和)。目が暗がりのネコの目のように光る=日野。愛憎の念が一と晩のうちに幾回でも猫の眼のように変わる谷崎。瞳が猫の眼のようにすぼまって動かない=大岡。猫の目みたよに機嫌が変わる=宇野干。く立ちあがる=北。小さな生き物をいじめる猫のようにみだらな快感を味わう遠藤。煮え湯を浴びた猫のように飛び上がる=宮部。逃げだしてやろうと隙をうかがっている猫のように全筋をたわめて機会を待ち受ける=安部。びっくりした猫のように丸い目で見つめる谷川。日向ぼっこの猫のようにおとなしい黒岩。ひらりと猫のように飛び下りる"川端。耳鳴りが淋しがり屋の猫のように決してそばを離れない=小川。眼も耳も鼠を待ち構える猫のように敏感になる=阿部。用心深い猫のように眼をゆっくりと見開く=中村真。猫みたいな大きな瞳"村山。歳下の亭主は猫みたいなもので、口では叱りながら手では撫でている=連城。首根っ子を掘っかまれた猫みたいに何もできない高樹。サカリのついた猫みたいに遅くまでほっつき歩く萩原棄。日向ぼっこの猫みたいに背を丸めて跨いって眼を細めたくなるような快さ=高見取。気になった雌猫のように女がげっそりする=徳永。飼い猫のようにだらりとした生活"阿佐田。右手にタバコを持って頭の高さに招き猫みたいにかざしている坂口。 **ねこのめ【猫の目】** 手中に入った鼠ゆずをもてあそぶ猫の眼で見る=黒岩。猫の目のような雲の切れ目林京。猫の眼のように(変わる命令。天候が変わる。時代の推移に従って自己を変える=高橋和)。目が暗がりのネコの目のように光る=日野。愛憎の念が一と晩のうちに幾回でも猫の眼のように変わる谷崎。瞳が猫の眼のようにすぼまって動かない=大岡。猫の目みたよに機嫌が変わる=宇野干。 **のらいぬ【野良犬】** 野良犬でも追い払うように邪険にする=高橋三。雨に濡れて尾を垂れた野良犬よりも哀れ藤本。野良犬のような(あさましい眼でじっと眺める!遠藤。本能で嗅ぎつける=墨。みじめなかっこのらいぬ【野良犬】野良犬でも追い払うように邪険にする=高橋三。雨に濡れて尾を垂れた野良犬よりも哀れ藤本。野良犬のような(あさましい眼でじっと眺める!遠藤。本能で嗅ぎつける=墨。みじめなかっこう長崎)。野良犬のように(ほっつき歩く。問隔をおいてついてくる=遠藤。世間を転々とする=小池。泥だらけになった顔遠藤。眼の色を変えていがみあう阿川弘)。飢えた野良犬のようにわめき散らす黒墨石。女に迷って野良犬のようにほっつき歩く=山手。最愛の者を野良犬のように撃ち殺される=斎藤栄、飼い主のない尨犬心心のように朱雀大路时以をうろつく"芥川。狂犬のことき浪人が押し寄せる=今束。眼つきの異常さが狂犬のように黒密写。足の辺りにまだ捨て犬のようにうごめいている欲望の切れはし"野間。やせた野犬。野犬が走りまわる。野犬の群れを追い払う。野犬を(狩る。撲殺する)。飢えきった痩せ犬が不時の食にありついたかのようにがつがつとたちまちの問に平らげる志賀。痩せ犬のように骨ばった肉体=武田瘀。鼻が宿なし犬のように敏感で水井龍。 <271> # 飼う-87 # か **のらねこ【野良猫】** 人馴れした野良猫。野良猫が(一声不機嫌に鳴く。呪いかけるような含み声で陰惨なあいびきをする=阿部)。野良猫を追いはらうように「シッ」と手をふる=岡田。痩せ細って毛並みが悪くなった野良猫のような男"小池。のら猫みたいにネコ足でこそこそ帰ってくる萩原葉。野良猫みたいに放浪する江國。 **ばしゃうま【馬車馬】** 馬車馬に目隠しするように見えない幅をひろげる=大佛。馬車馬のように(まっしぐらに駆ける=畑。猛烈に闘争する=徳永)。若い時は馬車馬みたいなもので四囲のことは何も見えない"林。 **ひつじ【羊】** 羊が牧草を食はむ。羊の(皮を着た狼。毛を刈る。群れのように見える白い岩=曽野)。首うなだれて屠所にしにひかれる羊の群れのように歩く阿久。牧草に覆われた低い丘の斜面を羊の群れがゆっくりと移動する=池澤。道の中央が羊の背のように盛りあ。眠るまでの問羊を数える=阿木。羊のような柔和な顔長与。刈りこまれたつつじが草をはむ羊のような姿でところどころにちらばる=村上春。虎に向かっている羊のような怖ぉじ気菊池。真っ白い羊のような顔!向田。羊のように(薄赤い柔和な限つき「田。従順に言うことを聞く=鈴木三)。仔羊のようなあとけない目つき三島。普段は子羊よりも大人しい男が約2~に変身する"荻野。緬羊以认がのどかに鳴く。 **ぶた【豚】** 豚がブーブー鳴く。スローモーションで豚がのけぞるようにドタンと背中から床に倒れる=永倉。四頭の豚が驚いて四方八方へ走り出す=池澤。豚の(脚を煮つめる。子を追いまわす。啼き声のような太い声=小島)。相互の弱点によって結びつく「豚の友」中村亮。バケツの水をいっぺんにぶちまけるような豚の豪快なおしっこ飯田。貪欲な小さなブタのような眼開高。飢えた豚のような食べ方!永倉。考えない者の幸福は船酔いを知らぬ豚のようなもの=中局災。丸々と肥公とった豚のような閥ぃぁい肩、幸田露。豚のように(鼻をならす。肥った主人。よく眠る。音を立ててスーブを飲む"玉村。ころごろしている=小林多)。神経が豚のように鈍感白井。居所としで暴れる豚みたいに喧封かしい=小島。動きまわるぬいぐるみのような子豚"飯田。子豚はびろうどのおもちゃが生きて動いているよう壺井。 **ペット** ▼ベット(寂しさを癒す。人形のように美しいペットだけが取り柄の瀬戸内)。ベットに(犬を飼う。猫を飼う)。ベットを連れて歩く。 **ぼくそう【牧草】** 太陽の光を十分に吸い込んだ牧草の匂い=吉行。陽射しが牧草の湿気と香りをあたりに振り撒く泉俊。牧草を(刈る。貯蔵する)。牧草地に牛や羊が遊ぶ。 **ほんぼ【奔馬】** 御し難い奔馬さながらにたけり狂う内橋。全州を奔馬の速力で征服する=山田美。手綱なき奔馬の如く手がつけられない=子母沢。奔馬のような波頭有島。心が奔馬のように逸る=獅子。手綱を引き締めてもはね出す奔馬のように押さえようがない欲求―佐多。 **まきば【牧場】** なだらかな起伏のある牧場。生活が牧場の柵のように自分たちを取り巻く"宮本百。緑の牧場のうねりよりなお柔らかに波打つ黒髪三好達。牧畜の盛んな国。▼放牧する(馬を。家畜を山林に。草原に)。牧草地に放牧する(牛を。羊を)。 **みけねこ【三毛猫】** 三毛猫が(一匹たっぷりとした風情で丸くなっている落合。昼寝しているみたいな顔=北)。 **むくいぬ【形犬】** いつも耳までかかっている杉犬のような髪の毛!徳田。むく犬みたいに丸くなって箱の問を這いずりまわる=大庭。 **やぎ【山羊】** 山羊がめえと鳴く。栄養充分のヤギだったら何の苦もなく跳びうつれる距離「清水食。山羊の口に挟みこまれるように札がモグモグと指に握り取られる=武田癸。山羊を飼い馴ぇらす。艶のないやせた山羊のような下腹部-池田。背を量感のある重おもしい力で激しく殴りつけられた山羊のように茫然那とする"大江。興奮した山羊みたいにふっふっと口から鋭い息を吐いて己れを奮い立たせる!奥泉。 **ようしょく【養殖】** 養殖する(海老を。牡蠣かきを。魚を。真珠を。海苔のぅを)。浴槽が養殖池かプールのように殺風景"干刈。 **ろば【賭馬】** ロバが口を利いたようにびっくりする=田辺。オドオドと愚鈍なロバのように隠れている男=阿刀田。驢馬のように満足し切った表情"福永。市に出された隣馬のように一列に並ばされる=遠藤。おずおずと土の上に驢馬のように膝を曲げる遠藤。雌豹の群れに襲われた驢馬のようにおどおどする=中。ろばみたいに沢山の荷物を背負う三輪。 <272> # 買う・売る # か **あきなう【商う】** ▼商う(食料品を。日用雑貨を)。商いする(今までにない商法で。町の片隅で細々と)。商いに精を出す。しょぼしょぼと商いを続けるねじめ。▼小売り(雑貨の。食品の)。商業資本が膨張する。商業的に成功する。 **いちば【市場】** 市場が活気に満たされる。市場で買い物をする。毎日のように朝市が開かれる。市が立つ。市へ買い物に行く。 **うりあげ【売り上げ】** 売り上げが(増える。減る。がくんと落ちる)。思うように売り上げが伸びない。況で売り上げが激減する。少しでも売り上げを伸ばしたい。売上金を均等に分配する。 **うりあるく【売り歩く】** ▼売り歩く(呼び売りが。魚を。津々浦々を。怒っているような大声で叫んで太宰)。トラックに品物を載せて売りに来る。金魚の呼び売り。新聞を呼び売りする。 **うりきれる【売り切れる】** ▼売り切れる(本日の分が。予定数が)。とっくの昔に売り切れている。好評につき売り切れとなる。売り切れの節はご容赦ください。▼完売する(チケットが。用意した商品が)。商品が品切れになる。 **うりこむ【売り込む】** ▼売り込む(積極的に。如才なく。抱き合わせで)。売り込みが(うまく行く。成功する)。売り込みにうかうかと乗る。 **うりだす【売り出す】** ▼売り出す(新しい商品を。名前を大いに。うたい文句で)。華々しい歳末の売り出し。半期に一度の大売り出し。▼発売する(新機種を。新商品を)。 **うりつける【売り付ける】** ▼売りつける(高い機械を。口先巧みに。舌先三寸で。安物を高く。怪しげな健康食品を。下らない品物を。なるべく高価に。インチキまがいの代物を「井上ひ)。高値での購入を強いる。押し売りを追い払う。▼押し売りする(愛情を。親切を。同作を)。 **うりて【売り手】** 売り手が見つかる。売り手の言いなりになる。売り主を探す。 **うりはらう【売り払う】** ▼売り払う(家屋敷を。家財道具を。思いきりよく。二束三文で。身も魂も。所有地のほとんどを。きれいさっぱり)。売り飛ばす(お家代々の宝物を惜し気もなく=永井荷。粗悪な商品をバナナの叩き売りのように=山崎)。何もかも洗いざらい売りに出す。売却の望みがなくなる。高値に釣られて売却を希望する=松岡。売却する(家を、株式を。資産を。土地を)。 **うりもの【売り物】** 清々しい少女風な印象を売り物にしている女=川端。センセーショナルな記事を売り物にする夕刊紙=かんべ。▼売り物にする(技術を。質実剛健を。肉体美を。美貌を。ユーモアを。若さを。滝の見える庭を。とんでん返しを)。分かりやすい解説を売りにした雑誌。格安の出物を見つける。 **うりわたす【売り渡す】** ▼売り渡す(悪魔に魂を。国土の一部を)。廊が。へ身売りをする。▼身売りする(工場を。娘を)。長女を身売りして現金を手に入れる熊谷。借金の形に身売りされる。 **うる【売る】** 売る(甘酒を。家を。絵を。おでんを。男に体を。男に媚こびを。思を。顔を。切符を。妓楼だちで身を。車を。喧嘩州んを。米を。魚を。酒を。塩を。煙草を。魂を。土地を。仲間を。花を。本を。豆を。土産物を。娘を。野菜を。市価の半値で。正札の値段で。二束三文で。値引きして。悪疫除けのお札を。マスコミに名前を。屋台を引いてうどんを。安く仕入れて高く)。毎日売りに来る。ただ同然で売りに出される。▼売りに出す(家玉を。球団を。店を。屋敷を)。売りの(注文を出す。機会を外さない)。友人を売るような真似まぁは絶対にしない多岐川。売り言葉に買い言葉で応酬する。安い売り家を見つける。▼売り上げる(年商一億円を。月に五百万円)。換金のため株を売り急ぐ。▼売りさばく(会員券を。在庫品を。チケットを。右から左へ。遊び金が欲しいあまりに伝来の宝物や刀剣を引き出して=池波)。▼売り抜ける(塩漬けになっていた株をどうにか。安値で仕入れて高値で)。売って売って売りまくる。ガレージセールを開く。商品がさばける。市販の(薬。品)。▼即売する(婴作して。展示して)。販路を何倍にもひろげる。新たな販路を開拓する。▼ひさく(飴を。情けを。春を)。分売が可能。セールスの経験がある。セールスを仕事にする。堂々と正面からセールスする。製品の販売を一手で引き受ける。▼販売する(廉価で。商品を受託して)。販売網を張りめぐらせる。販売ルートを開拓する。分譲する(宅地を。土地を)。分譲地を造成する。 **うれる【売れる】** ▼売れる(一帯に顔が。片っ端から。実によく。そこそこ。飛ぶように。前評判どおり。右から左へと。芸者として名が。そこそこの値で。途方もない値で。ときどきテレビ出演するくらいには名が"山口。羽根が生えたように斎藤栄)。売れ足が(いい。速い)。洛陽45の紙価を高からしめる。売り場の定番。在庫品がはける。史上に残るベストセラー。ロングセラーとして読み継がれる。▼売れ行き(好調な。空前の)。売れ行きが(上向く。増える。飛躍的に伸びる。よくてほくほく顔になる)。上々の売れ行きに気をよくする。売れない(絵を描く。作家。女優)。▼売れない(本が一冊も。予想したほどに。全くと言っていいほど)。▼売れなくなる(がたっと。ばったり)。売れ足が(遅い。鈍る。悪い)。売れていないタレントを見下す。商品があらかた売れ残る。売れ行きが(落ちる。渋る。低調。悪い)。マンションの売れ行きがかんばしくない。売れ行きはさっぱり。商品が店たなざらしになる。本を店ざらしにする。店ざらしの古着。夏枯れで客足が減る。相場が夏枯れになる。 <273> # 買う・売る **うれる【売れる】**売れ行きが(いい。芳しくない。落ちる。渋る。低調。悪い)。マンションの売れ行きがかんばしくない。売れ行きはさっぱり。商品が店たなざらしになる。本を店ざらしにする。店ざらしの古着。夏枯れで客足が減る。相場が夏枯れになる。 **かいあさる【買い漁る】**▼買いあさる(土地を。古道具を。欲しい物を)。金に糸目を付けずに買い漁ぁさる=宮部。▼買いこむ(木をたくさん。不必要と思われるものまでどんどん三田)。▼買いまくる(欲しい物を。買って買って。手当たり次第に)。 **かいいれる【買い入れる】**▼買い入れる(米を。地所を。食糧を)。▼買い上げる(婴品を。土地を)。▼買い受ける(住宅を。中古車を。土地を)。買い付けに(駆けまわる。飛びまわる)。▼買い付ける(大量に。行き当たりばったりで)。 **かいしめる【買い占める】**▼買い占める(米を。土地を。ありったけ)。買い占めに(狂奔する。走る)。 **かいそろえる【買い揃える】**▼買い揃える(多めに材料を。小道具を。什器汇認を。上物を。筆記用具を。化粧道具一式を)。▼買い調える(家具を。道具を)。 **かいて【買い手】**いい買い手がつく。適当な買い手があれば売りたい。なかなか買い手が見つからない。有望な買い手が見つかる。買い手のご機嫌に添う。買い手を抽選で決めるほどの人気"篠田。 **かいとる【買い取る】**そっくり買い取る。まるごと買い取る(島を。一船分)。買い取りを(計画する。働きかける)。一手買い取りを申し入れる。土地を強制的に収用する。買収がスムーズに運ぶ。▼買収する(会社を。家屋を。球団を。権利を。土地を)。 **かいもどす【買い戻す】**▼買い戻す(売った商品を。倍の値段で。割安感のある銘柄を。人手に渡った屋敷を篠田)。 **かいもの【買い物】**大盤振る舞いとでも言うべき買い物藤沢。買い物が一段落する。スーバーに買い物に行く。連れ立って買い物に出かける。買い物の(時間を楽しむ。リストを作る)。買い物を早めに済ませる。買い物をする(山のような。クレジットカードで)。買い物籠かごを(提げる。ぶら下げる)。買い物がてら寄ってくる。買い物客が通りいっぱいにひろがって河のように絶えず流れていく=小林久。買い物客でにぎわう。買い物袋を(抱える。提げる)。 **かう【買う】**▼買う(怒りを。欲心を。下落した株を。失笑を。自動車を。世人の墾蹙んしを。入場券を。反感を。人の恨みを。不興を。仏壇用の花を。身の安全を。土産物を。洋服の生地を。命を金で。大金を出して、高い値で。力量を高く。アイスクリームを。一戸建ての家を。他人の憎しみを。天才的な指導力を。自分の小遣いで。生物が岩石の風化に一役。なけなしの金をはたいて。安値に吊られて。ローンを組んで)。まとめて買うと割安になる。売られた喧嘩寧州んを買わないわけにはいかない宮部。あたしに喧嘩売ってんのか売ってんだなよし買った=有川。▼腕を買われる(射撃の。料理の)。▼買われる(状況判断力を。人徳を)。買いが買いを呼ぶ。ぜいたくな物の買い方。買いに(行く。来る。出る)。買いの(機会を逃す。注文を出す)。買いを入れる。財布のひもをゆるめる。支払う(即金で。クレジットカードで)。▼買いかえる(車を。テレビを)。桟敷を買いきる。▼買い支える(自国の通貨を。ドルを売って円を)。▼買い出しに行く(食料を。市場へ。スーバーへ)。▼買い足す(食料を。土地を)。買い叩きにあう。▼買い叩く(足元を見て。安く)。二束三文で買い叩かれる。▼買い求める(原書を。高価な生地を。土産を)。▼購玆がう(家を。米を。食料品を。土地を。本を)。安いものを衝動買いする。買いやすい。▼買える(お手軽価格で。市価より三割安く)。値頃感を(覚える。出す)。値頃の価格。買わない。買う(つもりはない。気が起こらない)。財布のひもを締める。不買運動に立ち上がる。 **かぶか【株価】**株価が(額面を割る。強含みに動く。天井を打つ。鍋底を経て上昇に転じる。軟調に推移する。激しく乱高下する。戻り歩調に転じる)。株価の変動に一喜一憂する。 **かぶしき【株式】**株式を上場する。株式暴落のような深刻な騒ぎ『山崎。株がストップ高を演じる。株に(血道をあげる。見切りをつける)。株の(取引で大火傷する。暴落で大穴を開ける)。株安が進む。保有株の時価が目減りする。持ち株を譲渡する。 **かわせ【為替】**為替(差益で儲もうける。差損で大損する)。為替相場が(乱高下する。軟調に推移する)。為替レートが(上がる。下がる)。円高差益で利益を出す。円安が一服する。 **きっぷ【切符】**切符が(売りきれる。手に入る)。熟練のきっぷ歯科医が前歯を抜くような手つきで器用にばちんと切符に鉄雄だを入れる=太宰。切符の半券。切符を改札機に通す。自動販売機で切符を買う。券を(買う。手に入れる)。有り金をかき集めチケットを買う。入場券の半券。半券を(ちぎる。もぎろ?)。 **ぎょうしょう【行商】**行商に(出る。回る)。▼行商する(薬を。魚を。野菜を)。荷箱を担いで商売に出る"船山。 **きょうばい【競売】**競売で(絵を買う。家具を買う)。きょうばい競売にかける。相場の倍まで競り上げる。競り落とす(高値で。安値で)。競りで(売る。買う)。オークションで(競り落とす。名画を競る)。オークションに(かける。出品する)。入札で談合する。入札にかける。一番高値で入札する。競争入札で受注する。落札する(競り合って。無競争で。請け負い工事を。競りにかけられた美術品を)。落札価格を競り上げる。 **けいざい【経済】**経済が(危殆峙たに瀕ぃんする。破綻けいざいに瀕する。上り調子になる。右肩上がりに成長する)。 <274> # か **こうにゅう【購入】** ▼購入する(土地を。分譲住宅を。マンションを。ローンを使って。通販カタログで下着を=平野。給料を度外視した額の資料を自費で三浦し)。割安で購入できる。▼購読する(雑誌を。新聞を)。月ぎめの購読者。購読料を前払いする。物品を購賞する。客の購買意欲をそそる。購買欲をあおる。市民が貧しくては購買力もへったくれもない=五木。 **さいけん【債券】** 債券を売る。買う。公募する。償還する)。国債を(買い入れる。発行する)。 **しいれる【仕入れる】** ▼仕入れる(原料を。材料を。魚を。品物を。情報を。知識を。話の種を。目新しい話題を。新しい情報を数多く)。魚河岸に仕入れに行く。仕入れを少なめにする。▼入荷する(商品が。新物を。大量に)。 **しじょう【市場】** 市場が(安定する。活性化する。過熱する。混乱する。冷え込む。有効に働く。機能不全に陥る)。市場から撤退する。日本製品が市場にあふれている。市場の(開拓に熱意がある。価格を裏から操作する=軍司)。市場は無謬心びではない。市況が(下落する。高騰する)。マーケットに参入する。マーケットを開拓する。 **しょうてん【商店】** 町で一二を争う商店、商店が(軒を並べる。ぎっしり軒を連ねる)。大通りに沿って商店が続く。通りの両側に隙間なく商店が並ぶ。小売店が軒並みにさびれる。スーバーが(開店する。進出する)。スーパーで買い物をする。雑居ビルのテナント。テナントを募集する。狭い路地を挟んで左右に軒を連ねる店舗。店舗がばらばらと点在する。洋裁店を開く。夜店が(立ち並ぶ。旧を並べる)。デパートがアドバルーンをあげる。デパートで買い物をする。デバートの(紙バッグを両手に提げる。食品売り場を物色する)。 **しょうてんがい【商店街】** ▼商店街(疲れる一方の。人通りのまばらな。買い物客でにぎわう。書き割りのように薄っぺらな井上ひ。大型店に客足を奪われた"横山)。バス通りに途切れることなく商店街が続く。商店街で買い物をする。不景気の波が商店街に押し寄せる。商店街の明かりがあちこちで弾けている=角田。アーケードの下を歩く。繁華街の中にぼっかりエアボケットのような場所ができた感じ!吉行。 **しょうにん【商人】** 商人(商魂たくましい。雲助のように悪辣な"山崎)。上等のお客に媚びる商人の笑い声"佐藤春。無作法に図々しい商人の面構え"本庄。商人らしくへり下った笑顔。江戸で名を知らぬ者がいないという豪商"山木一。商才に(長たける。恵まれる)。如才のない商社マン。商売上手な人間。商売人(いっぱしの。抜け目のない)。▼セールスマン(駆け出しの。ベテランの)。 **しょうばい【商売】** 商売が(うまく行く。軌道に乗る。左前になる。上がったりになる。すっかり駄目になる)。商売から足を洗う。どんな遣り繰り算段をしてでも欲しがっているお客にお応えするのが商売ってもの内海。商売に(精を出す。熱心な主人。熱を入れる。身を入れる)。商売の(礎を造る。つぼを外さない)。細々と商売を続ける。もぐりで商売をしている。▼商売を始める(独力で。慣れない)。薄利で商売する。商売をする(新手の。手堅い。手広く)。店を構える。客商売の労苦を訴える。商売替えを考える。どさくさまぎれに商売っ気を出す。商売繁盛で有卦;けに入る。商売一筋に生きる。すっかり水商売が板につく。水商売に憂き身をやつす。水商売の垢ぁかを身体一杯につけた、くたびれきった中年女黒石。サラリーマンより水商売のほうが向いている=井上ひ。商機を(つかむ。逃す)。商談が(順調にいく。成立する。まとまる)。素人商法がまぐれ当たりをする。十族の商法に失敗する。商用で出かける。新しいビジネスが生まれる。ビジネスに本格的に参入する=軍司。話がビジネスに終始する。ビジネスのノウハウを勉強する。ビジネスチャンスを(逃す。見つける)。 **しょうひん【商品】** 商品が(売り場に並ぶ。消費者に渡る)。商品に(値をつける。正当な対価を払う)。商品の(回転が鈍い。説明を始める。魅力を訴求する。価値はそれらの生産に用いられる労働時間に正比例する=服部)。商品を(選ぶ基準。傷物にする。レジに運ぶ)。新鮮な商品を豊富に揃える。倉庫から商品を出す。伝票と商品を読み合わせる。商品価値が(高い。低い)。商品価値を高める。人気商品に仕立て上げる。製品の質を高める。製品を市場に出す。 **そうば【相場】** 相場が(頭打ちになる。下向きになる。軟調に推移する。上り調子になる)。相場で穴をあける。金を相場ですってしまう。手間賃を相場よりはずむ。お礼を相場以上にたっぷりと支払う。大引けが前日比三十円高になる。時価数百万円の絵画。 **てんいん【店員】** 店員(顔なじみの。住み込みの)。優秀な店員がそろう。店員を雇い入れる。小僧から叩き上げる。丁稚にっから叩き上げる。丁稚に毛が生えたような待遇。丁稚奉公に行く。店の人に気を遣う。店の者が奥から飛び出してくる。 **ね【値】** 値が一挙に暴落する。大層値が張る。高い値がつく。鰻登りきりに値が上がる"津本。かなりいい値で買い取る。破格の値で売れる。株が値を戻す。あっさり値を下げる。法外な値を吹っかける。言い値で買わざるを得ない。とうとう言い値の半分までまけさせる=火坂。売り値を(上げる。決める。下げる)。指し値で(売る。買う。注文する)。▼値動き(大幅な。小幅な。安定した)。値動きが(強含み。弱含み)。 <275> # 買う・売る-88 # か **ねだん【値段】** ▼値段(法外な。掛け値なしの。飛び切り高い。二束三文の)。値段が(下落する。高い。張る。半額になる。暴落する。安い。うなぎのぼりになる)。幾何級数的に値段が上がる。いいなりの値段で買わされる。高い値段で売りつける。ただみたいな値段で手に入る。安い値段で売る。値段の(交渉に入る。折り合いをつける)。とんでもない値段をふっかけられる=大原。代価を(償う。払う)。単価が(上がる。下がる)。定価で売る。定価の一割引きで買う。割高な(運賃。品)。価格が(一気に跳ね上がる。際限なく上がる。じりじりと上がり続ける)。価格を(低く維持する。法外に高くする)。正札で(買う。販売する)。 **ばいばい【売買】** 売買の駆け引きに熱中する三好徹。▶売買する(株式を。商品を。土地を)。人身売買組織を摘発する。人身売買を禁止する。売買契約を交わす。済ませる)。売り買いが交錯する。人の売り買いを禁じる。売り買いする(株を。商品を)。 **ぶっか【物価】** 物価が(上がる。安定する。高騰を続ける。騰貴する。うなぎのぼりになる)。格段に物価が安い。原油高が物価に跳ね返る。物価の(高騰に苛立つ。上昇を抑える)。物価騰貴が庶民の暮らしを圧迫する=竹内。インフレが(静まる。日毎に進む)。デフレが(緩和する。進む)。 **ぼうえき【貿易】** 貿易に依存する国。貿易の利を収める。貿易する(海外と。外国と)。貿易上の利を得る。貿易戦争が熾烈しゃになる。貿易摩擦が起こる。外国と交易する。交易の利を独占する。税関の手続き。通商で栄える。 **みせ【店】** ▼店(行きつけの。今風の洒落にょた。通りに面した。名の通った。古いこちんまりした。屋台に毛の生えた程度の小さな歩夢枕)。店が(あえなく傾く。軌道に乗る。客で埋まる。軒を連ねる。たいそう繁盛する。つぶれるかどうかの境目)。小さな店がごちゃこちゃ並ぶ。良心的な店ということで名が通っている佐野。店に活気が戻る。客が店に入ってくる。肌染なじみの店に向かう。三日にあげず店に通う。店に「立てこむ)。店に来る(頻繁に。ふ客が(いなくなる。立てこむ)。▼店に来る(頻繁に。らりと)。▼店に入る(ふらふらっと。誘いこまれるように)。店の(営業権を譲る。奥を覗のっきこむ。女に手を出す。経営を任せる。仕事を手伝う。権利を買い取る。模様替えをする。隅々にまで神経を行き渡らせる=瀬戸内。名声に一も二もなく恐れ入る=開高)。店の金を(使い込む。持ち出す)。店の中がすっかり閑散とする。ぐるりと店の中を見渡す。めずらしそうに店の中をきょろきょろ見る灰谷。店の名を(思い出す。告げる)。お目当ての店は一軒きり。他の店へ回る。しげしげ店へ出入りする。店を(切り盛りする。抵当に入れる。手に入れる。人手に渡す。人任せにする。留守にする。娘夫婦に譲り渡す。立派に建て直す)。たふたと店を出る。表通りに堂々と店を張る。暦どおりに店を開ける。しばしば店を訪ねてくる。自分の店を持つ。何軒か店をはしごする。知恵を絞って店を生き返らせる=北原。▼お店(居心地のいい。雰囲気の良い)。店内が(客で込み合う。声高な喧噪汁礼に包まれる。人でごった返す。広々と見渡せる)。店内に(足を踏み入れる。活気があふれる)。威勢のいい声が店内に響く。チェロの旋律が店内に流れている夢枕。店内の見通しが利かない。店内を(覗きこむ。隈くまなく掃除する。ぐるっと見回す)。きょろきょろ店内を見回す。▼売店(駅の。学校の。ホテルの)。店内アナウンスが聞こえる。閑散とした売り場。売り場が混雑する。売り場に活気が満ちる。 **みせがまえ【店構え】** ▼店構え(比較的大きな。風格のある。草双紙にでも出てきそうな古びた獅子)。店構えの立派さがかつての繁栄を物語る=池井戸。店の(格にふさわしい造り。構えを立派にする。造りに金をかける)。 **みせさき【店先】** 店先に(縁台を出す。提灯らい、を下げげる。群がる若い男女)。店先の脇にある通用口。店先を掃き清める。店頭に客があふれる。雑誌が店頭に並ぶ。本が店頭に平積みになる。店の前に(打ち水をする。ワゴンを出す)。 **やすうり【安売り】** 内容空疎な言葉の安売り=阿川弘。安売りに(客が殺到する。釣られる)。盗品の背広みたいに安売りする=常盤。一山いくらで売る。安い値で売買される。安く売り飛ばす。捨て値で売りに出す。捨て値同然で買い取る。▼投げ売りする(店じまいで。売れ残った品を。大幅な値引きで)。二束三文の値で買う。▼叩き売る(捨て値で。値を下げて。半値で。家財道具を一切合財)。▼叩き売り(在庫一掃の。店じまいの)。スーバーの特売。特売で買った上着、特売の日に目玉商品をまとめ買いする。泥沼のような特売合成。 **やたい【屋台】** 屋台が(所狭しと並ぶ。軒を並べる。ずらりと立ち並ぶ)。屋台の赤い提灯に、う。屋台を引っ張ってくる。模擬店(学園祭の。祭りの)。露店が軒を並べる。歩道に露店が軒を連ねる。街路に沿って露店が並ぶ内橋。 **ゆしゅつにゅう【輸出入】** 輸出入を(規制する。自由化する)。輸出が(落ち込む。伸び悩む。増える)。▼輸出する(車を。商品を。品を。他国に)。▼輸入する(漢字を。原材料を。様々な文物を。西洋思想を。大規模に)。▼直輸入する(ブランド品を。海外から。フランスからワインを)。輸人が輸出を超える。緊急輸入に踏み切る。石油のほとんどを輸入に頼る。 <276> # 帰る・返す # か **いえじ【家路】** 気分の重さに比例して家路が遠くなる荻野。疲れきった五体を銘々の家路に運ぶり有島。家路につく(足取りも軽く。しょげ返って)。家路を急ぐサラリーマンの群れ。逃げ出すように一散に家路を急ぐ。▼家路を辿たとる(月に黒き我が影を踏んで"二葉亭。見えぬ力に引かれるように二葉亭)。 **うちかえす【打ち返す】** ▼打ち返す(ボールを。冗談を笑いで)。テニスボールを打って返す。打っで返すような答えが返ってくる。サーブをレシーブする。 **おくりかえす【送り返す】** 送り返す(原稿を。書類を。手紙を。流し目を。船を。メッセージを)。送還する(使者を。捕虜を)。本国送還を促進する。 **おつり【お釣り】** お釣りを(数える。渡す)。釣り銭を(数える。勘定する。ごまかす。渡す)。 **かえす【帰す】** 帰す(獣を野に。返書を持たせて)。▼送り帰す(客を。使者を。家出娘を親元に)。送り届ける(家まで無事に。娘を家に。母親の許もとへ)。 **かえす【返す】** ▼返す(借りた車を。軽く会釈を。挙手の礼を。杯を。冷たい一瞥心を。丁寧に挨拶を。封筒の姿を。遺体を遺族に。妻子を里に。元の場所に。夢を現づっに。釣られて同じ仕草を。ばつの悪そうな笑みを。山なりのボールを。陽気な顔で冗談を。空の湯呑みを盆の上に。土から得たものを土に。五十万円を耳を揃えて。波が打ち寄せては。人の親切を仇ぁだで)。帰すに忍びない。言葉を返す(腹立たしげに。反射的に。二言三言。ぶっきらぼうに。短いフレーズで)。くるりと身を返して出て行く。そびらを返して行ってしまう。曇りのない、けれど控えめな微笑を返してくる三浦し。熨斗のしをつけて返してやる。矢を送書射返す。相手の言葉を受け返す。▼うなずき返す(曖昧に。神妙に)。負けずに叫び返す。▼鋤き返す(田畑を。土を)。今来た道を取って返す。ボールを投げ返す。差し出された手を握り返す。じろりとにらみ返す。激しい言葉で腐り返す。▼弾き返す(バットが球を。壁のように言葉を"大佛)。▼ほほえみ返す(うれしそうに。にこやかに)。きょとんとして見つめ返す。出た者を呼び返す。▼笑い返す(さわやかに。無邪気に)。子供たちの下校を見送る。▼返還する(土地を。保険証を。優勝旗を。領土を)。▼返却する(預かり物を。本を図書館に)。▼返上する(指定を。夏休みを。扶持を。領地を。のろまという名を)。▼返納する(許可証を。保険証を。免許証を)。▼返品する(売れない品を。汚染米を輸出国に)。返品の利かない商品。奉還する(士籍を。大政を。滞籍を)。 **かえすことばがない【返す言葉がない】** 呆ぁきれて返す言葉がない。冷たく吐き捨てる声に返す言葉もない有川。返す言葉もなく頭を垂れる。返す言葉に困る。思わず返す言葉に詰まる=有川。返す言葉を(失う。とっさに見つけられない)。 **かえせない【返せない】** すぐには答えが返せない。▼返しきれないほどの贈り物。一生かかっても返しきれないほどの借金"林兵。返すあてがない。借金の返済に(窮する。四苦八苦する)。返済期限がとうに過ぎている。返済のめどが立たない。 **かえってゆく【帰って行く】** 帰っていく(挨拶もそこそこに。心を残しながら。ふてくされたように。満足そうな顔で)。裏木戸から逃げるように帰って行く渡辺。かなりの人がぞろぞろ帰ってゆく!丸谷。 **かえってくる【帰って来る】** 帰ってくる(足取りも軽く。月に一度。何年振りかで。夜遅く。一文なしになって。仕事を放り出して。久しぶりに日本へ。夜を日に継いで。日暮れ前に家を出て翌朝に池波。用を足して真っ直ぐに=貫井。弾丸のように行って弾丸のように極。予告もなしにふらりと“阿久)。帰ってくるころを見計らう。そろそろ帰ってくるはず。 **かえらない【帰らない】** ▼帰らない(ほとんどアパートに。鉄砲玉みたいに飛び出したきり!高橋和)。夕方までに帰らないとお目玉を食うぃ円地。呼んでも帰らぬ過去長いこと帰っていない。帰ってこない(なかなか。いつまでたっても)。家へ帰る気になれない。帰るかどうか分からない。いつ帰るか分からない。何となく帰る気がしない。帰るにはまだ時間が早すぎる。なかなか帰ろうとしない。 **かえり【帰り】** 帰りが遅くなる。父の帰りが遅い。今か今かと帰りを待ちわびる。帰りを待つ(今日か明日かと。握り拳を固めるような心で=壺井)。 **かえりぎわ【帰り際】** 帰りぎわに(言い残す。キスされる。声をかけられる)。帰りがけに(言い残す。立ち寄る)。帰りしなに(尋ねる。立ち寄る。頼む)。去り際に耳打ちする。去り際を(きれいにする。大事にする)。 **かえりつく【帰り着く】** ▼帰り着く(自宅に。母国に)。毎夜のように夜おそく家に帰りつく=木山。参加者全員の帰着を確認する。予想外に早い帰還!景山。万一の帰還に備える。突然の帰還を怪しむ。無事に帰還する。 **かえる【帰る】** 帰る(急いで家に。一番先に。獣が穴に。自分の部屋に。もとの部署に。暇とを告げて。客があらかた。急を聞いて。脱兎だっの勢いで。何食わぬ顔で。錦を飾って。旗を巻いて。一人とぼとぼ。暮色の濃くなった道を。あまり遅くならないうちに。日のあるうちに。真っ直ぐにアパートに。いい加減に切り上げて。遅くなっても必ず。かなりの距離を歩いて。汽車に揺られて。心残りな面持ちで。参会者がどやどやと。始発電車を待って。捨て台詞謎』を残して。タクシーを飛ばして。適当にきりをつけて。できるだけ早く。とぼとぼ雨の中を濡れて。別々な道を通って。毎晩のように酔っ払って。道草をしないで。用件を済ませて。車に揺られながら荷物のように横光。日陰者みたいにこっそり部屋へ=中。部屋へ脱兎のごとく=田辺。負け犬のように湖垂れて三好京。夢見心地で飛び跳ねながら=内田祥)。帰る日を延ばす。帰るか帰るまいか迷う。飛んで帰る(一目散に。学校から。挨拶もそこそこに)。▼走って帰る(小走りに。家まで)。今さっき帰ったところ。今しがた帰ったばかり。▼帰ってしまう(しびれを切らして。ものもいわずにさっさと。娘たちが波の引くように三浦米)。用を済ませてすぐに戻ってくる=貫井。▼円に合うように帰る(終電に。夕食に)。▼帰り支度を始める(あたふたと。せわしく。そそくさと)。あまりの嬉しさに帰り道を間違えるほど内田脊。▼連れ帰る(犬を。娘を)。▼連れて帰る(子供を。女房を。首に縄をつけてでも=北原)。逃げ帰る(一目散に。命からがら)。操業短縮で帰休する。修学旅行を終えて帰校する。旧港王のもとに帰参する。矢のような帰心をぐっと抑える高見造。帰任する(本社に。本隊に。出向から)。帰任の途につく。生徒が下校する。とんぼ返りの出張。▼家に帰りたい(すぐにでも。早く)。一刻も早く帰りたい。帰る日を指折り数えて待つ。そろそろ帰る潮どき。帰れる日を待ち望む。帰心矢のことし"有吉。帰心が募る。とっとと帰れ。用事が済んだらさっさと戻れ有川。遠まわしに帰れと言う。帰ってくださいの一点張り。顔を洗って出直せ。とっとと(失せろ。消え失せろ。消えろ)。帰れよがしの扱いを受ける。 <277> # 帰る・返す―89 # か **かえる【返る】** ▼返る(安堵はんが胸に。心が平静に。正気に。本来の生活に。夢から現実に。はっとして我に。本卦怛んがえりで子供に)。▼返ってくる(こだまが。空に青さが。肌に血の色が。金が手許にもに。手にしたたかな反動が。若い日の望みが。分かりきった答えが。努力が報酬として)。▼返事が返ってくる(意外な。ぶっきらぼうな)。出発点に立ち返る。 **かえれない【帰れない】** 帰れない(帰るに。いつまで経っても。今更おめおめと。このまま黙って)。帰りそびれる(いつの間にか。ぐずぐずと。もたもたして)。帰りたいのは山々だけれど。帰る場所がない。帰るべき家を持たない。生きて再び帰れる見込みはない。家の敷居が高い=柴田錬。その場を去りもあえず。去るに忍びない。生還を期しがたい。やらずの雨。 **ききょう【帰郷】** 帰郷の(途につく。情耐え難いものがある。望みを断たれる豊田)。帰郷を心から待ちわびる。帰郷する(墓参のために。妻子を伴って)。生まれ故郷の町に帰ってくる。▼帰る(生まれ故郷に。郷里に。厳入ぶりで家に)。故山に帰臥きがする。故郷に銅を飾る。故郷の土を踏む。 **きこく【帰国】** 帰国の(希望を捨てる。途につく。便を乞う。道を失う)。帰国を一日延ばしにする。帰国する(家をあげて。留学を終えて。交渉をまとめて。なんら成すところなくおめおめ=里見)。帰国する人が相次ぐ。昨日帰国したばかり。故国に帰着する。日本に戻って来る。久しぶりで懐かしい故国に帰る=山田美。海外調査を終えて帰朝する。 **きたく【帰宅】** 帰宅が相変わらず遅い。午後十時頃の帰宅が常。帰宅の(足が乱れる。途に着く。遅れが気にかかる。路次に友人と会う)。夫の帰宅を待つ。まだ日の高いうちに帰宅する"重松。帰宅時間が遅くなる。家に(とって返す。飛んで帰る)。家に戻る(早めに。逃げるように)。家への道を辿たとる。帰ってくる(久しぶりに家に。仕事を終えて飛ぶように家へ"森村)。家に帰る(意気高らかに。泣く泣く。ひとまず。気まずい別れ方をして)。木から落ちた徴のようにすごすごと家へ帰る=中。我が家へと歩を進める。 **きろ【帰路】** 帰路に(立ちふさがる。病院へ寄る)。▼帰路に就く(急ぎ足で。そそくさと。複雑な思いを胸に東野)。ゆるゆると帰路をたどる。帰途に就く(足取りも軽く。空路。足音もしめやかに)。脚力の及ぶ限り帰途を急ぐ。 **せいかん【生還】** 生還の希望を持つ。出陣するとなれは生還を期し難い。無事生還を祝す。▼生還する(奇跡的に。地獄の一歩手前から。ランナーが駿足を飛ばして二塁から)。死なずに帰る。 **つきかえす【突き返す】** ▼突き返す(菓子折りを。金を。書類を。リストを)。▼叩き返す(食を。指輪を)。 **はねかえす【撥ね返す】** ▼はね返す(鏡が光を。壁が音を。水たまりの水を)。降り積もった雪が陽光を跳ね返す篠田。ビチャビチャと水を撥ね返す音中島。視線を背中ではね返すように歩く内館。視線をはね返す(挑むように。燃える瞳で)。 **ふくいん【復員】** 復員する(慨地から。戦争が終わって)。復員したての後備兵を思わせる服装"武田飛。街に復員者の姿が溢れる=山崎。戦場から帰ってくる。 **へんきん【返金】** ▼返金する(全額を。期日どおりに。月末までに。今週中に)。お金を返す。納めすぎた税金を還付する。 **へんきゃく【返却】** ▼返却する(借りたものを。ただちに。即座に)。本を図書館に返す。 **へんさい【返済】** 返済が(滞る。長びく)。▼返済する(元本を。借金を。負債を。ローンを)。借りた金を戻す。返済期限を延ばす。返済資金に行き詰まる。返済資金を工面する。▼完済する(月賦を。債務を。借金を。ローンを)。借金を(月賦で返す。済す)。借りた物を済す。弁済する(債務を。借金を)。 **もちかえる【持ち帰る】** ▼持ち帰る(現場の声を。遺骨を日本に。仕事を家に。食べ残したものを)。▼持って帰る(いい知らせを。バーのマッチを)。 <278> # 抱える・抱く # か **いだく【抱く】** ▼抱く(殺意に近い憎しみを佐高。胸に一抹の後ろめたさを"束野。胸に屈折した思いを"南木)。▼いだく(淡い期待を。淡い夢を。絵に興味を。勝手な夢想を。奇異な感じを。仕事に不満を。女性に憧れを。青雲の志を。前途に不安を。強い疑問を。根強い不信を。漠然と疑惑を。深い懸念を。未来に希望を。胸に憂いを。悶々弱いの情を。悔恨を胸に。疑いを強く。一途やちな復讐心ふくん』を。お上に対して不服を。経営方針に一抹の危惧を。子供じみた考えを。釈然としない気分を。憧憬に近い気持ちを。大それた願いを。並々ならぬ関心を。のっぴきならない憎悪を。場違いな感想を。ほのかな恋心を。本能的な敵意を。満々たる野心を)。誰しも好感を抱くに違いない=和久。思いをいだく(確信に近い。忸怩にくたる)。▼感情をいだく(父のような。愛相相半ばする)。▼感をいだく(不快な。心細い)。▼念をいだく(畏敬の。感謝の。憎悪の)。▼望みをいだく(一縷ふちの。はかない)。かねて疑念をいだいている。かねがね計り知れない興味を抱いている=辺見。密かにいだいている夢。平生からいだいている考え。心に漠然と抱いている目標「村松。山懐にいだかれた小さな町。▼いだかれる(自然の懐に。大地に深々と)。何の疑いもいだかない。▼かきいだく(望みを。旗竿細談を。心に。大事に。胸に。しっかりと)。心に宿す。 **うで【腕】** ▼腕(芋幹、6のような細い=小松左。カマキリのように痩せた=水上。クレーンのごとくたくましい"大原。鯉にぃのように肉づきのよい=水井能。血でもにじむかと見えるほど紅く熱した"島崎)。腕が(腰に上がる。横から伸びてくる。わなわなと震える。針金のように細くなる=遠藤。丸太のように硬くなる=飯田)。五十肩で腕が上がらない。あげっぱなしの腕がしびれて丸太のようになる=杉本。首に巻きついている腕がはずれる=船戸。しなやかな腕が蠟石やらみたいに見える=中。痩せた腕が鉄のごとく屈しない菊池。腕がぬけるほど両方へひっぱられる=中。腕が抜けるほど痛い佐藤春。腕から(力が抜ける。するりと抜ける)。腕で汗をぬぐう。甘い感情の腕で抱く=川端。腕と腕をがっしり組み合わせる。腕に(しびれが走る。力が入る。力をこめる。顔を押しつけて泣く。かけても嫌とは言わせない。手ごたえが伝わる。ひしとしがみ付く)。男の腕に飛びこむ。コートを腕に掛ける。抱く腕に力がこもる。腕章を腕につける。腕の(力を緩める。筋肉が盛り上がる。下に肩を入れて担ぐ藤沢。中で少女のように震える=遠藤)。細い腕の白さが痛々しい“井上菜。人間の腕ほどの太さの鉄で編んだ鎖塩野。腕を(引き上げる。横殴りに振るる。乱暴に取る。ぎゅっとつかむ。力まかせに振る。天に突き上げる。ほどいて逃げる。むんずとつかむ。だらりと棒のように下げる=伊集院)。組んだ腕をほどく。コ1トに腕を通す。三角巾で腕を吊る。つかんだ腕を離す。肩に当たる高い草を斬るように腕を振る=伊集院。月を捕ろうとするかのように腕をあげる=辻井。逃げやすい小さな動物を捕らえようとする手付きで箱の中にそろそろと腕を差し入れる=黒井。いかにも弱ったというように腕を組む!水井倚。颯爽と腕を組んだ若い男女!高見取。腕を組んで(歩く。考え込む。思茶にふける。床の一点を見つめる)。▼腕を伸ばす(まっすぐに。にゅうっと)。▼腕を回す(肩に。腰に。背中に。ぐるぐると)。丸太ん棒のような太い腕"辺見。袖から鬼をもひしぎそうな赤銅色礼いとの太い腕が逞しく出ている=中島災。片腕で全身を支える。利き腕の手首をつかまれる。利き腕を撃って自由を奪う。右腕を(ぐるぐると回す。頭上に振りかぶる。高く差し上げる。バックスイングさせる)。両腕がのろのろと機械仕掛けのように上にあがる=日野。両腕を鳥のように宙で大きく振る“伊藤整。敵から身を守る子供のように両腕を顔の上で組む=森瑶。横にひろげた両腕を鳥が羽ばたくように波打たせる三浦哲。猿臂吸咬んを(差し伸べる。伸ばす。伸べる)。 **うでぐみ【腕組み】** 腕組みして瞑目。いする。腕組みしたまま目を閉じる。 **かかえこむ【抱え込む】** ▼抱え込む(頭を。大量の在庫を。トラブルを。悩みの種を。荷厄介を。腹に屈辱を。両膝を。怒りを腹に。寒そうに自分の両腕を。もやもやした思いを。画用紙を小脇に)。体に不透明な澱ょとみを抱えこむ島田。▼かい込む(杖を。薙刀だを。槍ゃりを。矢を)。抱き込む(腕を。影を)。 **かかえる【抱える】** ▼抱える(幼い子供を。胸中に不安を。長思いの妻を。薔薇ばらの花束を。病気の亭主を。胸に苛立心。ちを。胸に屈託を。胸に本を。鬼を懐に。軽々と両腕に。銛もりを右脇に。原因不明の病を。仕事上の悩みを。どっさりお土産を。寝たきりの父親を。脱ぎ捨てた服を一まとめに。ボードを横抱きに。両手いっぱいに。こんがらかった記憶の糸玉を"浅田。ボールを挟んだグラブを脇に“あさの。胸に押しつけるように『森)。▼頭を抱える(両手で。答案用紙を前に)。▼小脇に抱える(紙袋を。バッグを)。胸に抱える(刀を。包みを大事そうに三浦哲)。■抱える(深刻な。幾多の)。大なり小なり共通するものを裡うちに抱えている=貫井。▼抱え直す(赤ん坊を。包みを。バッグを)。▼抱え持つ(胞はばを。鶏を。ハンドバッグを)。抱きかかかえる(杖を胸に。横ざまに。両膝をしっかりと)。▼抱きとめる(悲しさを。青年を。体を後ろから)。親丸抱えの生活。企業丸抱えのチーム。業界丸抱えの選挙。▼召し抱える(家来を。武芸者を)。抱え起こす(死体を。上半身を)。 <279> # 抱える・抱く-90 # か **かじりつく【齧り付く】** ▼かじりつく(堅気な生活に。我を忘れて。自分の小さい利益に。必死の形相でハンドルに=つか)。石にかじりついても(卒業する。天下に名をあげる=山本岡)。机にかじりついて勉強する。本にかじりついてくそ勉強をする。石にかじりつくようにして役者を続ける清水義。 **くみつく【組み付く】** ▼組みつく(泥棒に。背後から。がむしゃらに女の体に)。▼組み止める(がっぷりと。しっかり)。▼つかみかかる(胸ぐらに。半狂乱になって)。今にもつかみかからんばかりの勢い=松岡。 **しがみつく** しがみつく(過去の栄光に。部長の椅子に。古い権威に。腕にぎゅっと。死に物狂いで。必死になって。小さな縄張りに。肩にしっかりと。王女としての矜持込いに豊田。渾身に心の力を振り絞って荻野。飛び付くように森ひしと"二葉亭)。執拗にしがみついて離れない。集落が海べりに牡蠣がきのようにしがみついている=遠藤。しがみついているほかに仕方がない。抱きつく(知らない人に。胸にひしと。やにわに後ろから)。震いついて泣きじゃくる。震いつきたくなるような飛びっきりの別嬪ぶん=船戸。 **すがりつく【綻り付く】** ▼すがりつく(昔の思い出に。我を忘れて。我知らず父親の腕に。うれしさのあまり)。すがりつきたい衝動に駆られる。薬もらにもすがりつきたい気持ち。あわれみをぐっようなすがりつくような眼つき=安岡。▼追いすがる(背中に。必死な思いで。みっともなく)。植沦っに取りついて大泣きする。▼取りつく(体に癌がんが。蛍光灯に娘が。男の膝に)。▼寄りすがる(思い出に。善意に。膝に)。親に寄りすがって生活する。おろおろと取りすがる。手に取りすがって口説く。▼取りすがって泣く(死体に。母親に。ベッドに)。 **だきあげる【抱き上げる】** ▼抱き上げる(子供を胸に。赤ん坊を膝へ。そうっと。高々と)。▼腕で抱き上げる(たくましい。力強い)。▼抱え上げる(子供を。荷物を。体を軽々と)。 **だきしめる【抱き締める】** ▼抱きしめる(胸に思慕を。羽交いじめに。肩を力強く。体をきつく。胸にひしと。あらん限りの力で。息がつまるほど。骨が砕けそうに宮本百。若い女の裸身を両腕に"小松左。息が止まるほどぎゅっと=山本有。愛しさに人目も忘れて"瀬戸内。双腕に力を込めて=池波)。▼抱きすくめられる(大きな心に。肩の骨も砕けるかと思うほど"梅本)。腕の中にふわりと抱きすくめる。 **だく【抱く】** ▼抱く(猫を膝に。肩を優しく。荒々しく女の肩を。子供を膝の上に。野獣のように女を"墨有。父親を赤子のように軽々と=加賀。眠った幼児を胸に押しつけるように三浦哲)。▼胸に抱く(果物とバンを。風呂敷包みを。ハンドバッグを)。いとおしくて肩を抱いてやりたくなる=鎌田。嬰児にぃが母親の懐に抱かれる。寝もやらずに抱き合う。抱き合って(キスする。泣く。ぐるぐる踊り回る)。母の懐に抱かれているようなしみじみしたもの=山本有。思い出を幸福なもののように心に抱き温める=石川。▼抱き起こす(男を。体を。泣いている子を)。重傷者を抱きおろす。抱き支える(体を。後ろから。下から)。抱き取る(赤ん坊を。小犬を。ハンドバッグを)。抱き寄せる(愛妻を。体を。両手で肩を。水面に落ちたきれいな花をすくうような手つきで相手の頭を胸に三浦し)。▼だっこする(赤ん坊を。子供を。小さな娘を)。お姫様だっこをする。 **つかまる【掴まる】** ▼つかまる(吊り革に。手すりに。ロープに。お母さんのエブロンに。必死の思いでしっかりと。おぶさるように肩に=福永)。壁につかまって立ち上がる。柱につかまって立つ。 **にのうで【二の腕】** 二の腕(きりりと引き締まった。むっちりと白い)。真っ白な二の腕が見える。むきだしの二の腕が太く選封くしい古井。肩から二の腕にかけて筋肉が逞しく発達している鈴木光。二の腕のゴムまりのようなはずみ=島尾。にゅっと二の腕を伸ばす。半袖のシャツから太い二の腕を出す。 **ほうよう【抱擁】** 抱擁に身を委ねる。飽くなき抱擁に溺れる=舟橋。長い抱擁を交わす。退屈な夫婦のように抱擁を繰り返す中村真。▼抱擁する(男女が。荒々しく。柔らかく)。皮膚のすべての部分が接触しあわねば不安で耐えられないかのように抱擁し合う高橋和。しばし抱擁したまま時を過ごす!白洲。清い月の光が抱擁するように満身に照りかかる=中。 **むしゃぶりつく** むしゃぶりつく(魚に。乳首に。バンに。大声をあげて。泣きながら。真っ赤になって)。むしゃぶりついて(食べる。泣く)。おっぱいにむしゃぶりつくみたいに蛇口に吸いつく=阿部。 **よこがかえ【横抱え】** ▼横抱えにする(子供を。太鼓を。畳を)。横抱きにする(赤ん坊を。女の子を。子供を)。 **りょううで【両腕】** 広げた両腕を鳥がはばたくように波打たせる三浦哲。ハンマーのようなモリモリした両腕開高。両腕が(だらりと下に伸びる。抜けるほどに伸びをする=永井荷)。両腕で(顔面をガードする。自分の体を抱き締める)。頭を両腕でかばう。双眼鏡を両腕でがっちりと支持する。両腕に(余るほど大きい。かんぬきをかける。すっぽりと収まる)。両腕を(力なく垂らす。膝に置く。大きく振りかぶる。がしっとつかむ。天に突き上げる。伸ばして深呼吸する。広げて歓迎する。耳の高さまで持っていく。軽く垂らして身構える三好微。振り子のように振る=岸田)。窮屈そうに両腕を絞り合わせる。両腕を思いきり(後ろに伸ばす。振り動かす)。 <280> # 書く・記す # か **あてな【宛名】** 宛名を書く。手紙の宛名を見る。郵便物の宛名を一つひとつチェックする。宛先を調べる。封筒の上書き。 **あらわす【著す】** 著す(書物を。専門書を。入門書を)。▼大著(後世に残る。十数巻に及ぶ)。大著を出版する。著作を(公にする。発表する)。テーマを決めて著述する。著述を仕事とする。著書が絶版になる。著書にサインする。▼名著(古典的な。東西の)。名著と評されて現在でも版を重ねている=高橋克。名著を復刻する。 **インク** 街の灯が赤いインクでもこぼしたように点々とにじんで見える=石坂。インクに浸された紙のようにみるみる同じ気持ちが皆の気持ちの隅から隅まで浸してゆく=小林多。インクの(乗り具合を確かめる。しみのような太陽がわずかばかりの薄明を地上に投げる=福永。盗っぃをこぼしたような混じり気のない紺・小川)。色褪かっせたインクの文字。夏の海がインクを溶かしたように青く静か!阿久。夜がインキをぶちまいたように黒く染まる"宇野利。インキも匂う。 **えんぴつ【鉛筆】** 鉛筆の芯が折れる。鉛筆を削る。耳に挟む。一心に走らせる。構えて聞き入る。筆入れから出す)。筆箱から鉛筆を取り出す。コブラのベニスは鲸のそれに似て先端は鉛筆のようにとがっている開高。 **かかない【書かない】** 金輪際もう書かない。一行も書かれなかった事実。筆を断つ。ぱったりと筆を折る。筆不精で(ご無沙汰する。返事を出さない)。筆不精な人。筆不精を自認する。 **かきあげる【書き上げる】** ▼書き上げる(一編の小説を。原稿を。報告書を。短編を一つ。細心の筆づかいで。心血を注いで一つの作品を=東野)。 **かきうつす【書き写す】** ▼書き写す(氏名を。住所を。問題を。手帳に)。一字一句おろそかにせず写し取る。計算結果を書類に転記する。原本を謄写する。なぞる(目で字面を。指で字を)。筆写する(系図を。古文書を。板書を)。 **かきおえる【書き終える】** ▼書き終える(一編を。作品を。曲がりなりにも。思いがけぬ出口を見つけた下水のように物語の静かな表面に淡々にんと湧き上がってくるところを=堀)。一文を結ぶ。ひとまずペンをとどめる。ベンを置く。依ってくだんの如し。脱稿する(小説を。論文を。締め切り間際に)。十年の棚筆ののち再び筆を執る。胴筆する(今回をもって連載を。この章をもって)。脳を終えて筆を掴ぉく。 **かきおこす【書き起こす】** ▼書き起こす(脚本を。小説を。論文を。入学の思い出から)。稿を起こす。▼恋き始める(小説を。ペンを執って)。筆を起こす。筆を染める(小説に。第一行に)。机上の筆を取り上げる。起稿して一年で脱稿する。起稿する(小説を。論文を)。建白書の起草に参画する。 **かきかえる【書き換える】** ▼書き換える(記録を。データを。名義を。遺言状を。歴史を。物語を骨格だけの寓話が、に=開高)。努力地図が書き換えられる。名義書き換えを請求する。字配りを考えて上書きする。データを上書き保存する。改竄紛心の疑いが強い。改竄する(記録を。書類を。データを。日誌を)。 **かきこむ【書き込む】** ▼書き込む(細かな字で。航海日誌に現在の位置を。スケジュール表に予定を。思いつくままに。数字をメモ用紙に。電話番号を名札の裏に)。書き込みが(殺到する。集中する)。新たな書き込みがある。小さな書き込みに目をとめる。書き込みをする(掲示板に。写真の裏に)。記載に偽りがある。地記載する(売上額を。スコアを。番号を。カルテに。帳簿に。名簿に)。 **かきそえる【書き添える】** ▼書き添える(住所を。職業を。年齢を。念のために)。▼書き加える(注を。新たな一ページを。書き足りなかったことを)。▼後書き(手紙の。本の)。後書きを(書く。添える)。添え書きがついている。 **かきそこなう【書き損なう】** ▼書き損なう(署名を。年賀状を。用件を)。書き損じの(原稿用紙。履歴書)。▶書き損じる(あて名を。住所を)。 **かきたてる【書き立てる】** ▼書き立てる(悪口を。誇大に。猟奇的に。スキャンダルを。ブライバシーを。でかでかと新聞に。派手な人間模様を興味本位に=中村制)。 **かきつぐ【書き継ぐ】** ▼書き継ぐ(連載を。思いつくままに)。絶えることなく書き継がれる。書き進めていく(順を追って。行き当たりばったりで)。▼書き続ける(孜々ししとして。コンスタントに作品を)。夜昼なく悪っかれた人のように書きつづける=瀬戸内。 **かきつける【書き付ける】** ▼書きつける(こまごまと。断片的な言葉を。手帳に電話番号を。番地をメモ用紙に)。▼書きとめる(名前を手帳に。巨細にさ漏らさず。今しがたの夢を。車のナンバーを。気がついたことをいくつか)。書き取る(住所を。番号を。要点を)。電話費を控える。 **かきつらねる【書き連ねる】** ▼書き連ねる(暢気30~な夢を。感情的に。延々と。感激を縷々るる。詳しく。思いつくままに長々と)。あらゆる買談商総々と。健的を書きつらねる今死。書き並べる(名前を。くどくどと。まことしやかに嘘を)。箇条書きに(整理する。番号を振る)。箇条書きにする(要点を。連絡事項を)。 <281> # かきなおす【書き直す】 **▼書き直す(最後の場面を。書類を)。書き直し(大幅な。ちょっとした)。書き直しに応じる。書き直しを命じる。** ▼書き改める(原稿を。論文を)。 # かきながす【書き流す】 **▼書き流す(腰折れを。身辺の日常を。さらさらと短冊に)。** ▼書き下す(詩を。一気に。興に乗って)。 # かきなぐる【書き殴る】 **▼書きなぐる(思ったままを。字を乱暴に。下手な字で。乱暴な字体で)。原稿を書き飛ばす。** # かきまくる【書きまくる】 **▼書きまくる(原稿を。小・説を。宣伝文を。天馬空を行くがごとくに作品を今※)。適当に書き散らした雑文。** ▼書き散らす(思いついたままを。とりとめもなく。くだらないエッセイを=桐野)。 # かきわける【書き分ける】 **▼書き分ける(スタイルを。消濁を。明暗を。意味用法の違いに応じて)。微妙な書き分けを行う。** # かく【書く】 **▼書く(即興の詩を。畳にのの字を。書式「通りに。一筆で一気に。墨痕鮮やかに。文字を丁寧に。回想の形式で。渋い筆致で。字を崩して。伝聞の形で。筆跡を似せて。筆も折れよと。乱暴な字で。行き当たりばったりに。幾分皮肉をまじえて。思い入れを込めて。きちんと調べて。ごくあっさりと要約して。できるだけ詳しく。読者に話しかけるように。何気なくさらりと。信念に基づいて判決を=横山。一字一句もゆるがせにしないで慎重に灭。細かい字でくちゃくちゃ石森。自分の体を切り刻むような思いで=城山。巻紙を片手で持ったままさらさらと=鈴木三)。描く(コンバスで丸を。ライン引きでトラックを)。書く決心がつく。字を書く(下手な。角張った)。** ▼タッチで書く(しゃれた。柔らかい)。熱に浮かされたような書きっぷり!中局救。こつこつ書き物をする。気持ちよく答案が書ける。忙しく鉛筆を動かす。手がしなやかに紙の上を往き来する=岸田。空虚な文字をあやつって単に字面をととのえる=坂口。原稿用紙の朴目峙すに文字を埋めていく=奥泉。健筆を振るう。所々に珠玉の文字をちりばめる。世の移り変わりを筆にする。▼筆を進める(一人よがりに。淡々と)。筆を執る(威儀を正して。いそいそと。機会あることに)。書き下ろす(脚本を。小説を。長編を)。▼書きしたためる(胸のうちを。遺言状を)。書き溜める(シナリオを。訊。くべきことをメモに)。▼書き慣れる(文章を。レポートを。論文を)。▼書き残す(記録を。メモを)。一字一字刻んで行く。一字一句に神経を使う。一点一画もおろそかにしない。一筆入れる。書き入れる(姓名を。伝票に数字を。行く先を。こまごまと)。身辺の日常を書き流して行くふうの気楽な書き方藤枝。名僧が揮毫急にした書。▼揮発する(絵を。書を。色紙に)。原稿用紙に向かう。稿を改める。過去をふりかえってみるようなつもりで稿を進める三好遠。傷ついた脚を引き摺りながら目的地へ向かう旅人のようにとぼとほと稿を継いで行く=中島返。字配りに気をつけて書く。朱書する(戒名を。要点を。欄外に)。▼綴っヴる(釈明の言葉を。謝絶の絞ぁゃを。文字を便箋に。思いを綿々と。生還するまでの日々を)。筆圧が(高い。強い。低い。弱い)。筆談で会話する。筆談を交わす。寄せ書きする(色紙に。ハンカチに)。寄せ書きを贈る。▼したためる(遺書を。書状を。丁寧な礼状を。手紙を。ラブレターを。一筆。生活のありさまを便箋に。状況を簡潔な筆致で)。執筆の依頼が来る。口述筆記によって執筆を行う。執筆する(エッセイを。記事を。原稿を。小説を。論文を。シリーズの第三弾を)。精力的に執筆活動を始める。にわかに執筆量が増える。筆を運ぶ(自由に。たどたどしい。神がかりのように夢中になって=有島)。▼筆を走らせる(便箋の上を走らせる。手帳にベンを。メモの手を。紙の上に鉛筆を。カルテにボールペンを)。 に。手紙の)。机に向かって書類に筆を走らせている"船山。▼ # かけない【書けない】 **▼書けない(うまく。ろくな作品も)。原稿の執筆も思うにまかせない。忍びない(書くに。筆にするに)。筆が(重くなる。言うことを聞かない。なかなか進まない)。締めの一行で筆が完全に止まっている=有川。ペンが凍りつく。うまい言葉が捜せなくてベンが渋る=斎藤栄。ベンの動きが鈍い。べくンを片手に固まっている奥田。濛々たる暗霧の中に包まれて筆が躊躇らいらする=山田美。** ▼書きあぐむ(作品を。返事を)。 # きしゃ【記者】 **▼記者(社内で最古参の。スクープを狙う。ばりばりの一流新聞の)。多くの記者が取材に駆けずり回る。大勢の記者に囲まれる。ジャーナリストをめざす。ジャーナリズムの仕事に就く。報道に携わる。いっぱしのライターを気取る。** # げんこう【原稿】 **▼原稿(直筆の。いたって凡庸な。「いいかげんに書きました」という気配がにじみでている三浦し)。原稿が(お蔵になる。仕上がる。すっかり遅れる)。概ね順調に原稿が集まる。原稿執筆を依頼する。一通り原稿に目を通す。原稿の(集まりが悪い。整理を終わる。通りしゃべる。劈頭い込に書く。一部分を読み飛ばす。締め切りが迫る)。原稿を(印刷所に回す。活字にする。苦心して書く。せっせと書く。送稿する。没にする)。しこしこと原稿を書く。出版社に原稿を持ち込む。短時間に何枚もの原稿をこなす。手書き原稿を清書する。いざとなったら脅してでも原稿をもぎ取る三浦し。かねて用意してきた原稿を読み上げる美濃部。旧稿を改作する。玉稿を(賜わる。拝受する)。送稿する(記事を。ファックスで。メールで)。データを入稿する。入稿の締め切りを守る。** # こくばん【黒板】 **黒板に書く。黒板の前に立つ。黒板を引っ掻かくみたいな耳障りな音"光原。** <282> # しるす【記す】 **板書して生徒に教える。板書する(注意事項を。要点を)。** **▼記す(感謝の意を。現在の状況を。事の始終を。事情を簡単に。芳名録に名前を。思い出すままに。病名をカルテに。文字をノートに)。** ▼記されてある(端正な文字が。名がぎっしりと)。書き記す(墨黒々と。細大漏らさず逐一。微細にわたって。平易の文章でさらさらと太宰)。▼記入する(使用目的を。アンケートに。回答用紙に。交付申請書に所定の事項を。書類にデータを。申込書に必要事項を)。▼叙述する(処世観を。人類の発展を)。▼叙する(軍の動きを。史的展開を。老境の悲哀を)。▼草する(詩文を。小説を)。速記する(講演を。講義を。口述を)。注意事項を特記する。筆記する(語るところを。講演を。講義を。口述を。談話を)。▼併記する(各条を。年号と西暦を。両論を。現住所と本籍を)。▼明記する(原産地を。個人名を。出典を。年度を。理由を)。記述を要約する。おもしろい記述を見つける。▼記述する(心の動きを。事件の進行を。歴史を)。弔問の記帳をする。▼記帳する(帳簿に金額を。宿帳に名前を。貯金通帳に。奉加帳に)。 # しじん 【詩人】 **詩人(語感に敏感な。彫心鉄骨「漂泊の)。詩人として名をなす。詩人の名声がようやく識者の間に喧伝される=檀。言うことがまるで詩人の言葉のよう。中島多。地の霊が詩人の口を裔がりてその心を歌ったような句"中野孝。思い上がった詩人めかした海梶井。** # したがき【下書き】 **下書きを(地の文に移す。清書する)。** ▼下書きする(原稿を。あらかじめ)。下書きなしで講演する。徐文(弔辞の。報告書の)。草稿(作品の。スビーチの)。文案を(考える。練る)。草案(演説の。規約の)。草案を(起草する。たたき台にする)。 # じでん【自伝】 **自伝を(書き記す。上梓ㄦいする)。自叙伝を(書く。残す)。自伝的な(影の濃い作品。恋愛小説。要素を多分に含んだ作品)。** # じひつ【自筆】 **自筆の(原稿。サイン)。作者自筆の色紙。自筆原稿を発見する。肉筆の(絵。原稿)。** # しょどう【書道】 **背道に(堪能。天楽を示す)。書道の造詣が深い。習字の練習をする。** ▼墨書する(証文を。俳句を。半紙に。仏像の体内に。和紙に)。 # しょめい【署名】 **署名が目に飛び込んでくる。** ▶署名する(協定に。契約書に。墨で達筆に。宣誓書に。フルネームで。メッセージを添え)。▼署名捺印心心する(契約書に。書類に。離婚届に)。記名して(押印する。捺印する)。▼調印する(共同声明に。合意書に。和平協定に)。サインが読みにくい。調書にサインをする。▼サインする(契約書に。承諾書に。伝票に。末尾に)。無記名でアンケートに答える。無記名投票で選ぶ。 # すいこう【推敲】 **推敲に推隊を重ねる。** ▼推敲する(原稿を。文章を)。加筆する(振り仮名を。大幅に)。▼加筆訂正する(旧作を。論文を)。細かい加筆を施す。手を入れる(旧稿に。原稿に)。添削する(歌を。旧作を。作文を)。仕上げの筆を入れる。筆を加える(適宜に。改訂の)。文章に斧鉞ふえを加える。文章の不備を直す。文章を整える。不必要な部分をばっさり切る横山。 # せいしょ【清書】 **▼清書する(原稿を。履歴書を)。浄恋する(原稿を。下書きを)。** # たいしょ【大】 **▼大書する(定価を。名前を。文字を。ビラに)。大安売りと大書した看板。特筆大書した定価の文字。** # たんぶん【短文】 **短文にまとめる。短文を書く。読む)。断章を(書きつける。書きとめる)。短い文章。** # てがき【手書き】 **手書きの(資料。文書)。楷書で書く。楷書の文字。殴り書きでよく読めない。走り書きでメモする。走り書きに目を通す。走り書きを残して死に| ように白い大佛。向かう。** ▼走り書きする(電話番号を。野けいを無視して。二三三行)。 # てちょう【手帳】 **手帳に(メモする。住所を写し取る。電話番号を控える)。手帳を(内ボケットにしまう。バラパラめくる。ハンドバッグにしまう)。** ▼手帳を取り出す(バッグから。ポケットから)。メモ帳を手に取る。 # にっき【日記】 **日記を(書く。読む)。丹念に日記をつける。苦労が手に取るように伝わってくる飼育日記"畑。日記帳の一ページをちぎる。日誌に(書き入れる。目を通す)。日報で売り上げを把握する。ブログに書き込みをする。** # ぬきがき【抜き書き】 **▼抜き書きする(記事を。一二三の例を)。** ▼書き出す(品物の数を。注文を。名前を。ベストテンを)。書き抜く(一節を。必要な部分を。文章を)。小説からの抜粋。▼抜粋する(必要な個所を。要点を)。 # ノート **生前に書き残したノート。ノートが手垢にぁで汚れる。ノートに(手控えをする。ベンを走らす)。逐一ノートに書き留める。ノートを(手に取る。べりっと破る。脇へ押しやる。テーブルの上に広げる。手元に引き寄せる。ばらばらとめくる。引き出しに放りこむ)。忙しそうにノートをとる。絶跡はからノートを取り出す。半紙を綴とした帳面。帳面に(筆を走らせる。目を通す)。帳面を(繰る。懐に収める。めくる)。** # はくぼく【白墨】 **白墨で描いたように幾筋かの道が見える。佐多。白黒の(粉を払い落とす。文字を手のひらで消し去る=横山)。黒板から降る白墨の粒のような暗い冷たい霧の粒宮沢。夏の初めの白墨の粉のような日の光がちらちらちらちらと降る人米。自息を黒板に走らす。チョークで(黒板に書く。印を付ける。さっと線を引いたような飛行機雲"重松)。チョークのように真っ白な髪清水俊。皮膚の色がチョークのように白い大佛。** <283> # ひっせき 【筆跡】 **筆跡(流麗な。筋のいい。絶筆となった)。筆跡を鑑定する。先生の麗筆による手本。麗筆を(したためる。ふるう)。悪筆に(泣く。悩む)。金釘流で書く。達者な手跡。びっくりするほどの達筆。お世辞にも遂築とは呼べぬ字。** # ひつりょく 【筆力】 **旺盛な筆力を誇る。筆力雄健に文壇に出現する人坂。筆勢が(衰える。鈍る)。筆勢鋭く描く。筆勢に作者の熱がこもる。** ▼文才がある(すぐれた。なかなか)。文才に恵まれる。文藻が豊かな人。文藻を養う。文筆に秀でる。軍部批判の鋭い筆鋒こう=美濃部。筆鋒鋭く(論評する。批判の矢を放つ)。 # びんせん【便箋】 **便箋三枚にわたって記す。便箋が黄ばんでぼろぼろになる。便箋に(書く。したためる)。便箋を(一枚取り出す。風に泳がせる。封筒に戻す)。封書から便箋を引き出す。一枚一枚身の皮を剥ぐように便箋を使う氷室。** # ふで【筆】 **筆が(はかどる。すらすらと進む。伸び伸びしている)。筆に(墨を含ませる。墨汁をつける。従って一気に成ったような速成品三好達)。筆の(立つ書き手。毛ほども細く刻まれた竹皮水上)。弘法にも筆のあやまり。他愛のない筆のすさび。雅やかな筆の運び。真っ白な眉毛が筆の穂のように長く垂れる!永井荷。筆の穂を墨壺づみにたっぷり浸す。筆を(口にくわえる。極めて賞賛する。とっては並ぶものがない今円)。各紙が筆をそろえて褒める。弘法は筆を選ばず。矢立から筆を取る。鉄壁をも貫く筆を督して死命を別するまでに突き通す=山田美。筆一本で生きる。絵筆を(捨てる。握る。ふるう)。さらさらと絵筆を走らせる。画筆を(執る。ふるう)。** # ふでまめ【筆まめ】 **年の割に筆まめ。筆まめな人。筆まめに手紙を(書く。くれる)。筆はまめなほう。** # ぶんしょう【文章】 **▼文章(改行の多い。艶のある。歯切れのよい。今の時代にも通じる。格調の高い論文調| 法律に)。殊更に揶揄するような文句!徳永。秀拔の。簡潔な淡々とした。端正で分かりやすい。平明でリズム感にあふれる。柔らかな語り口の。青年らしい激情に満ちた求愛の華やかな=石川。音吐朗々と読むに堪える人灭。感嘆詞でふんだんに修飾された藤枝。すがりつくような哀れさの滲にじみ出た有吉。底に淀んだ冥く。さや重さの少しもない春の緑のようなけばけばしい新鮮さのある=円地。読者の役に立つように整理が行き届いた平岩。バステルのような華やかな雰囲気の三浦糸。膝をつきあわせて肉声を聞くような親しみやすい瀬戸内。まわりくどい少し古風な飾りのある=伊藤整。耳で聞くだけでは意味がわからない=中村真。妙に冷静ぶって理論的に人生を整理してしまったような自信ありげな気取った石川。ロマンティシズムが溢れるような言葉が並んでいる『有吉)。文章が(俗に流れる。こちこちに硬い。ふっくらとしてくる)。流行はゃりの言葉を安易に使うと文章が軽くなる=阿川佐。巧みな文章で表現する。文章に(段落をつける。むだがない)。文章の(紙背を読み取る。網の目が粗い。つながりが少しおかしい。刻みが的確で強い!」岩橋)。ねばりのある文章の滋養を食物のように摂取する=烏尾。文章を書くことに慣れている。鋭い矢のような文章を発表し続ける=佐高。一行(書き出しの。気転の利いた。さりげない)。一文を(書く。草する。寄せる)。好意や共感が 行間ににじみ出る=常盤。憤懣おんが文章の行間に満ちている=津本。読点を句点に改める。句読点を打つ。列車の窓を流れて行く景色が電柱で句読を打ちながら目の前で閉じたり開いたりする=有忌。語順を(逆にする。整える。ひっくり返す)。作文を(書く。読む)。散文を書く。難解な字句。字句が精練を欠く。措辞に優れる。措辞を巧みに駆使する。長文にしたためる。長文の(声明。手紙)。文は人なり。文を書く。綴っっる。結な文句が頭に浮かぶ。適切な文句が思い浮かばない。▼文体(なよやかな繊細な。贅肉にいの一切ない彫琢さうされた)。作家の文体をまねて書く。文面に(愛情がにじむ。微妙なよそよそしさが見える=高村旅)。過激な言葉が文面に躍る。広告の文面に釣られて来る。長い文面の手紙。さっと文面を読み取る。** # ペン **言葉が苦いペンの先から走り出る=黒井。透明にしんとした時間がベンの音とともに一滴一滴落ちる吉木。ベンの先から思いが溢れてこぼれ散る三浦慾。ベンは剣より強し。ペンを手元に引き寄せる。からりとベンを投げすてる。テーブルの上にベンを置く。ノートにペンを走らせる。やむにやまれずベンをとる。ここぞとばかり存分にベンを抓、ふるう横山。仔細らしくベンをインキ壺っほに往復させる三島。ボールペンで書く。焦立心。つようにボールペンで机をたたく泉優。書き味(スムーズな。滑らかな)。書き味を試す。入学祝いに万年筆を贈る。** # メモ **メモを(画鋲でドアに留める。テーブルの上に置く。取る手を止める)。机の上にメモを残す。** ▼メモする(経過を。質問事項を。特徴を。話の要点を。欄外に。住所と電話番号を手帳に)。メモ用紙に鉛筆を走らせる。覚え書きを(盾にとる。取り交わす。朗読する)。書き付けを(受け取る。差し出す。無理に書かされる羽目になる=高橋克)。心覚えに印をつける。心党えを書き込む。▼手帳に控える(住所氏名を。番号を)。念書を残す。▼手控える(手帳に。ノートに)。手控えを残す。 # らくがき【落書き】 **▼落書き(下品な。卑猥いもな。相合傘の)。壁にスプレーの落書きがある。壁が落書きで埋め尽くされる=重松。** ▼落書きする(壁に。便所に)。乱暴ないたずら書き。指先を筆にしてテーブルにいたずら書きをする井上ひ。 <284> **いんとん【隠遁】** 年寄りじみた隠道の生活『阿川弘。一暮らす(俗世間から離れて。世に離れて一人)。しいて浮き世を離れた侘ゃび住まいを送る辻井。應外純以の地に住む。他との交通を絶って隠者のように屏息へいする萩原町。世を捨てて生きる。現世ぜんを厭離にんする。厭離の情を募らせる。世間と交渉を絶つ。俗事を離れて沈思以考する。御仏に仕える世捨て人"山岡。世捨て人のようにだらりと寂しく部屋の隅にかかったままの着物有房。 **うしろ【後ろ」** 後ろから(突っかい棒をする。羽交い締めにする。ばっさりとやられる)。いきなり後ろから肩をつかまれる。不意に後ろから声がする。髪を後ろで結い束ねる。後ろに(気を取られる。のけぞる。身を反らす)。傘を後ろに傾ける。先生の後ろに隠れる。手を後ろにねじ上げる。バイクの後ろに乗る。ばたんと後ろに倒れる。半歩後ろに下がる。見る見る後ろに遠ざかる。両腕を思いきり後ろに伸ばす。怖ぃず怖ぉず後ろへ回る。髪を後ろへ撫なでつける。視線の圧力だけで体が後ろへ退きそうになる=有川。山が荒磯のすぐ後ろまで迫っている。後ろも(振り返らずに去って行く。見ずに逃げて行く)。姿で首の後ろを叩く。ひょいと後ろを振り向く。未練そうに後ろを見返る。斜め後ろから肌を受けて帆走する。振り返る(後部座席を。斜め後ろを。肩越しに後ろを)。現実を裏から見る。長屋の裏手に住む。ビルの裏手に回る。旅館の裏手の山。家の裏に回る。裏山に(登る。潜む)。後尾につける。後尾を追従する。後方から迫る。尾をびんと後方に伸ばす。頭を後方へぐいっと反らす。後方を山に囲まれた扇状地。▼背にする(海を。壁を。川を。太陽を。床の間を。窓を。山を)。 **おおいかくす【覆い隠す】** ▼覆い隠す(厳しい現実を。真情の発露を。秘密を。髪の毛が首筋を)。人間の言葉の八十バアセントぐらいは真実を隠蔽する着物のような働きをしている=伊藤整。秘密主義のベールに包まれる。▼葬る(事をうやむやのうちに。自らの不名誉をうやむやのなかに=中島敦)。疑惑が闇に葬られる。隠蔽が表面化する。▼隠蔽する(犯罪を。都合の悪い情報を)。隠蔽工作に走る。隠蔽工作を図る。 **おくのて【奥の手】** 奥の手で切り抜ける。奥の手を(出す。使う)。裏技を身につける。最後の手段。伝家の宝刀を抜く。秘技を受け継ぐ。伝授する)。秘術を(授ける。尽くして戦う)。長寿の秘法。秘法を(習う。盗む)。▼切り札(最後の。とっておきの。何にも勝る)。 **おくびにださない【おくびに出さない】** 不快な思いなどおくびに出さない。▼おくびにも出さない(感情を。疑念を。不満を。自分の好みは)。おくびにも(漏らさない。想いを外にあらわさない=杉本)。 **かくさない【隠さない】** ▼隠さない(不快の色を。落胆の表情を)。狼狽らいの色をかくせない池波。隠さずに(打ち明ける。公表する)。何も隠せずに話す。隠せずに言う(悔しさを。失望を。うんざりした気分を)。どんなに変装しても人骨柄はかくしおおせない!白洲。隠しきれない(動揺を。喜びを。狼狽の色を。こぼれる笑みを)。隠し立てをせずに話して聞かせる。隠せない(驚きを。動揺を。不快の念を。年は)。隠そうとしない(驚きの表情を。不快感を。敢ぁえて)。好奇心を隠そうともしない。 **かくしだて【隠し立て】** 隠し立てしてはためにならない。今更隠し立てする必要もない。下手に隠し立てするのはまずい。隠し立ては無用。 **かくす【隠す】** ▼隠す(雲が月を。鳥陰に舟を。濃霧が波を。金を床下に。笑いを懸命に。灌木卧いの茂みにバックを。能ある鷹たかは爪を。胸の内の感動を。怒りを腹の中に。気づかれないように巧みに。写真を書類の下に。引き出しの奥に。色の白いは七難。意識的に世間から存在を"軍司。言葉の中に針を=有吉。女子と組み合うほうが楽しいというスケベ心を有川。鋭い眼差しを微笑のなかに"小林久。血糊のの付いた短刀を押し入れに=高橋克)。隠すなんて水臭い。強いて隠すほどのことでもない。▼顔を隠す(ショールで。手で。覆面で。マスクで)。▼姿を隠す(人込みの中に。メダカの群れがバッと散り水に溶けたみたいに三浦し)。身を隠す(岩襞いやに。柱の陰に。襖ぶすの陰に。物陰に)。頭隠して尻隠さず。腹に何かを隠している。隠し事が明るみに出る。隠し事をしている後ろめたさが募る連城。臭いものに蓋をする。まだ公表する段階ではない。闇から闇へ葬られる。隠された(力が姿を現す。欲望をあばく。真実が浮かび上がる)。▶隠されている(意外な事実が。言葉の底に別の意味が三好談)。▼隠される(稜線もいうが雲に。秘密のベールに)。ずっと胸の奥に隠し通す。▼表沙汰にしない(不祥事を。問題を)。表沙汰になるのをなんとか食い止める。ちょっと表沙汰には出来ない。▼影を潜める(快活さが。新鮮さが。大胆さが)。事をばらさない周到さ。秘匿する(財貨を。取材源を。清報源を。名前を)。伏せ字の箇所を調べる。伏せ字を起こす。屋敷に兵を伏せておく。具体的な事例を伏せる。▼身を潜める(木陰に。小屋の陰に)。墓場に持って行く。秘密を墓の中に持っていく=丹羽。▼明らかにしない(使途を。諾否を)。かたくなに居所をあかそうとしない灰谷。▼隠匿する(集めた金を。死体を。重要書類を。犯人を。物資を)。隠匿を(追及する。容認する)。▼押し隠す(心の動揺を。内部の変化を。ばつの悪さを。扉白んだ気持ちを)。▼かくまつ(愛人を。逃亡者を。犯人を。亡命者を)。化けの皮をひん剥むいてやりたくてウズウズしている=内田康。段々化けの皮を現す。偽者の化けの皮を剝ぐ。正体をひた隠しに隠す。▼ひた隠しにする(住まいを。能力を。家族に)。▼隠せない(驚愕終いうの色を。心中の狼狽的、らを。内心の動揺を)。とだい隠しおおせる話ではない。隠すより現るるは無し。隠そうとしても隠しきれない。声に隠そうとしても不本意さが漏れる=有川。 <285> **かくれが【隠れ家】** ▼隠れ家(格好の。秘密の)。隠れ家を(嗅ぎつける。確保する。探し当てる。突きとめる。見つける)。観念して隠れ家を吐く。ギャングの隠れ家を急襲する。安全な隠れ場所。隠れ場所に逃げこむ。適当な隠れ場所を物色する。▼巣窟(悪の。盗賊の。暴力団の)。▼アジト(ギャングの。犯行グルーブの)。アジトがもぬけの殻になる。敵のアジトに乗り込む。▼根城(ギャングの。盗賊の。泥棒の)。山中に根城をかためる。 **かくれる【隠れる】** ▼隠れる(畦ぁゃが雪に。安全な所に。縁の下に。茂みに。樹木の背後に。美名の下に。物陰に。雲の後ろに太陽が。植え込みの陰に。身を沈めて盾に。耳がすっぽりと。野鼠物如のように山の中に遠藤)。▼雲に隠れる(頂上が。月が)。親に隠れて(酒を飲む。つき合う)。匿名に隠れ言いたい放題。隠れた(桜の名所。名作に接する。欲望を実行に移す)。月も隠れた暗い晩。美名の陰に隠れた陰険さ。不幸のうちに幸福が隠れている。逃げも隠れもしない。物陰に潜む。藪ゃぶに身をかがめる。世を忍ぶ仮の姿舟橋。闇に隠れるようにして顔出しをする=壺井。雲隠れする(責任者が。容疑者が。子供を置き去りにして。借金取りに追われて)。暗部に光を当てる。社会の暗部をえぐる。幾つもの暗流が渦巻き流れる。嫉妬の暗流が渦巻く。隠然たる(勢力をふるう。力を持つ)。暗圏の中に身を隠す。▼身を寄せる(物陰に。鳥居の陰へ。そっと電柱の陰に)。▼逼塞いいする(郷里に。山砦に。鳴りを静めて)。追恋して(暮らす。静かな生活を続ける)。身をひそめる(悲しみの淵に。暗闇に。木立の陰に。人目に立たぬ隅に)。 **かげ【陰】** 陰から(陰へ伝い歩く。そっと覗のぞく)。物事を陰から左右する。塀の陰から人影が現れる。除で(噂を交わす。愚痴をこぼす。不満を言う。悪口を言う。後ろ指をさされる。着々と手を打つ。何をやっているかわからない)。陰になって見えない。家の陰に消える。壁の陰に引きずり込む。灌木砂んの陰にうずくまる。太陽が山の陰に沈む。物事の陰に潜む現実。蔽ゃぶの陰に隠れる。陰にまわって(画策する。悪辣なまねをする)。陰を拾って歩く。大きな樹木が道に心地よさそうな陰をつくる=遠藤。岩陰から声が聞こえる。岩陰に(隠れる。潜む)。人陰に(隠れる。紛れる)。物陰からそっと盗み見る。物陰に潜んで様子を窺がょう。 **かめん【仮面】** 無理やり貼りつけていた笑顔の仮面がはがれかかる=池井戸。仮面をかぶって人を陥れる。偽善の仮面をかぶる。仮面のようなサラリーマンの顔つき「小林久。凍った仮面のような顔「墨石。表情が石膏ごうの仮面みたいに白く強ばりつく"阿刀田。髭づらが苦痛にゆがみ眼は血走って狂暴な風貌がなおいっそう鬼の面のように見える=杉本。顔がお面のようになお面みたいに顔を変えないギャング=干刈。面体を黒頭巾に包む。黒い頭巾で顔を覆う。顔が白狐面を連想させる=城山。防護マスクを着ける。能面のような(表情が崩れる。表情をくずさない=つか)。蒼ぁぉい能面のような顔。高樹。感情を殺した能面のような表情"辻井。冷ややかな能面のようなぞっとする冷笑的な薄笑い=日野。能面のように(無表情になる。感情の起伏がない=藤本)。覆面の男が猛々しく襲いかかる。覆面を頭からすっぽりかぶる。▶覆面する(手ぬぐいで。目出し帽で)。 **くらます【晦ます】** ▼くらます(敵の目を。一家四人が夜逃げ同然に行方を=笹沢)。▼姿をくらます(不意に。いつの間にか。素早く。突然)。▼まく(尾行を。うまく追っ手を)。 **くろまく【黒幕】** ▼黒幕(事件の。政界の)。黒幕が策動する。電灯を覆った黒幕が死をも柔らかく覆う高井。後ろにあって巧みに糸を引く=子母沢。陰性で黒幕型の人物"石坂。黒幕的な隠然たる存在。 **こっそり** こっそり(後を追う。浮気をする。始末をつける。外で会う。様子を窺っかう。悩みを打ち明ける。耳元でささやく)。窓からこっそり入ってくる。夜中にこっそり捨てる。こっそりと家を抜け出す。跑分ばの中にこっそりと忍ばせておく。音を立てぬように爪先立ちをしてこっそりと歩き去る=伊藤整。裏口から人目を忍んで入ってくる。お忍びで(遊びにくる。視察する)。こちょこちょ(探りまわる。告げ口する)。こそこそと(噂をしあう。内緒話をする。隠し事をささやく。小声でささやく。宵闇の中に消え去る。逃げるように帰っていく=藤原)。陰に隠れてこそこそといちゃつく。捨て台詞就一つ残さずにこそこそと立ち去る=中島救。逃げるようにこそこそと外へ出る=永井荷。泥棒猫のようにこそこそ歩く森瑞。取るに足らないこそこそ話。▼目を盗む(教師の。女房の。まわりの)。人目を盗んで夜歩きをする。夫の目を盗んで遊び歩く。親の目を盗んで映画を見に行く佐高。 **こもる 【籠もる】** ▼籠もる(陰々として深山の気が=泉鏡。匂いが部屋の中にむうっと合崎)。▼こもる(川の水音が。声に気合が。声に反感が。深山の気が。煙罩の煙が。通りに薄禽ら付が。象牙の塔に。小さな巣に。臭いが家中に。憎しみが内に。内へ内へと。言い方に悲哀が。口調に苛立心。ちが。口調に尊敬の念が。声に不安げな響きが。セクシーな雰囲気が。臭いが猛々しいように。薙ぎ払われぬ鬱屈の気持ちが「檀。六畳の小座吸に春のような温気んが"海音寺。返事に辛く福な心持ちが"大佛)。▼気迫がこもる(声に必死の。全身に若さと)。空気がこもる(温かな。陰惨な。蒸すような)。▼力がこもる(腕に。体に。持つ手に。両の拳に)。怒気がこもる(声に。顔にいつにない)。熱がこもる(口調に。言葉に)。悪意のこもった言い方。愛情のこもった目つき。好意のこもった微笑。親しみのこもった笑顔。実感のこもった声。非難のこもった視線。ぼこぼこというこもった音。アトリエにこもって絵を描く。キッチンにこもって料理を作る。こもっている(声に憎しみが。言葉に実感が。目に覚悟が。礼に気持ちが。愛着が本に。終日部屋に。口調に軽淡の響きが。湿っぽい匂いが。においが混じり合って)。真心のこもった(挨拶。看病)。▼こもらせる(恨みを陰に。煙を濛々もうと。おいしそうな匂いを家中に)。恥ずかしさのあまり口籠ごもる=阿木。穴ごもりの熊くぐもった鈍い音。たった今土の底から立ち上がったようなくぐもった声!高樹。聞き取れないくらいのくぐもり声。くぐもり声で話す。 <286> **しのばせる【忍ばせる】** 忍ばせる(どすを懐に。足音をそっと。湖岸の芦屋とに身を。ポケットに凶器を。お守りをバッグに。手紙をバッグの底に)。拳銃を忍ばせる(ポケットに。枕の下に)。足音を忍ばせて出ていく。声を忍ばせて泣く。忍ばせて歩く(靴音を。恐る恐る足音を)。ナイフを長靴に隠し持つ。身を忍んで逃げる。人目を忍んでひそかに訪ねる=御子。▼忍んでいく(夜中に。夜毎に恋人のところに)。夜半に忍んでくる。 **すいめんか【水面下】** 水面下で(工作を続ける。着々と進行する)。水面下に隠れる。鵜の群れが一斉に水面下にもぐる=吉村。水面下の(交渉。氷山のような脳大な改良"高橋知)。表面に出にくい。潜水艦が海中を進む。海面下に大きな氷塊が潜んでいる。航行中に海面下に注意を払わない=畑村。 **つつみかくさず【包み隠さず】** 一部始終を包み隠さず話す。一切を包み隠さず打ち明ける。事実を包み隠さず公表する。何も包み隠しはしない。腹を割って話し合う。腹蔵なく(語り合う。しゃべる)。腹蔵のない(仲。意見が聞きたい)。 **つつみかくす「包み隠す」** ▼包み隠す(謎を。矛盾を。胸を)。韜晦術にのみぃを駆使した言葉。▼韜晦けする(企てを。消息を。戦争責任を。罪の呵責いし、を酒で)。 **とじこもる【閉じ籠もる】** ▼閉じこもる(書斎に。蛸壺にに。日がな一日。家庭の中だけに。すっぽりと殻の中に。家にひっそりと。自分の小さな殻の中へ花岡)。▼殻に閉じこもる(沈黙の。一人の)。▼世界に閉じこもる(自分だけの。趣味の。狭い)。部屋に閉じこもる(自分の。ホテルの)。引きこもる(家に。家庭に。自分の部屋に。物思いの内に。傷心のあまり)。内向き志向が強まる。意識が内向きに働く。社会が内向きになる。▼蟄居診する(家に。社会の裡面。に)。屋敷で公然居生活を送る。 **とっておき【取って置き】** とっておきの(笑顔。酒。文章。ワンシーン)。女子の特殊防衛員は今のところ全国唯一の虎の子=有川。虎の子の(一点を守りきる。財産を巻き上げられる)。虎の子を奪われる。虎の子のように大切なもの。 **ないしょ【内緒】** 両親にはもちろん内緒。内緒で(売り払う。話をする。勝手な行動をとる。こそっと抜け出る)。親に内緒で外泊をする。くれぐれも内緒に願う。当分の間内緒にしておく。口に人差し指を当てる。ここだけの話。人差し指を口の前で立てる=池井戸。 **ないない【内内】** 内々(考えている。何か企む。娘に気がある。計画を知っている。こそばゆく思う)。内々で資金を出す。内々に(打診を受ける。手を貸す。根回しする。相談したいことがある。調査をすすめる。連絡を取り合う)。・ **ないみつ【内密】** 内密に(事をおさめる。事情を探る。話したいことがある)。内密の謀はいりを持ちかけられる。不始末が内密のままに済む。世間に知られたくない内密の依頼!柴田鍵。内輪だけの秘密。内輪で適当に処理する。隠密に(行動する。事を運ぶ)。闇に乗じて隠密裡ぶんんに終える。内閉に(済ます。願う)。非公開で練習する。委員会を非公開で開催する。非公開の(会議。情報)。 **はいけい【背景】** 背景に山並みが迫る町。姿が夕焼け雲を背景に浮かび上がる。大自然を背景にした壮麗な野外劇。事件の背景を説明する。複雑な金音背景を持った事件。▼背景にする(強大な勢力を。空を。山の緑を)。バンドをバックに歌を歌う。バックにする(木立を。夕空を)。 **はいご【背後】** 背後が気になる。背後から(視線が背筋をなでる。押されるように脈けだす徳永)。ゆっくりと背後から近づく。背後から声が(かかる。追いかけてくる)。背後で(ささやかれる言葉。人の気配が漂う)。背後に(気をとられる。注意を払う。大がかりな組織がある。靴音が迫ってくる。潜む邪悪をえぐり出す。人の立つ気配がする。のけぞるほど驚く=井上婚)。音を背後に聞く。髪を束ねて背後に流す。搜索の手が背後に伸びる。パトロンが背後に控えている。山の背後に出る。追っ手が背後に迫る。都市の背後に迫る丘陵。背後へそうっと忍び寄る。背後を(ちらりと見る。振り返る。山に守られる。ぐるりと城壁が囲む)。くるりと背後を振り向く。軍勢の背後を祈っく。背面から攻撃する。 <287> **ひかげもの【日陰者】** 日陰者の(レッテルを貼られる。暗い霧を吹き飛ばすような笑い方獅子)。日陰の(道を歩く。身に甘んじる)。日陰者みたいにこっそり部屋へ帰る=中。日の当たらぬところでなめくじのように生きる=渡辺。 **ひそか【密か】** 密かな(憧れを抱く。思いを伝える。快・期待をいだく。笑いが漏れる。勝利感をもって見る。対抗心を燃やす。優越感を感じる)。密かに(思いを寄せる。期待する。心に響う。探りを入れる。精進を重ねる。城を抜け出す。願う。溜飲を下げる。計画をめぐらす。胸を撫で下ろす。連絡を取り合う)。霜が窃ぃ、かに地を掩ぉぉう〜長塚。決意が密かに頭をもたげる。内心密かに喜ぶ。自ら密かに侍たのむところがある。胸に密かに刻まれる。余人に知られぬように事を運ぶ=福永。一人密かに(憧れる。祈る。思い悩む。願う)。秘密裏に(決行する。約束する。事を終結させる。死体を処理する)。心密かに(祈る。恨む。心配する。得意になる。願う。待ち望む。自慢の種にする)。幸福を心密かに喜ぶ。 **ひそむ【潜む】** ▼潜む(思想の萌芽が。目に哀かなしみが。闇に魔物が。家の裏手に。木立の中に。ドアの陰に。窓の下に。幸福のうちに不幸が。心のうちに魔性。心の底に邪悪な気持ちが。胸の底に自信が。人跡もまれな山中に。不機嫌の背後に屈託が菊池)。ナンセンスの底に楽天性がひそむ=加太。自分の奥底にひそむ黒い炎を憎悪する=黒岩。心に潜む衝動。言葉の陰に潜む本音。事件の陰に潜む真実。心奥に潜む幼児の頃の郷愁。背後に潜む問題。人の心の奥に潜むわびしい魂。胸のうちに潜む憧れ。歴史の裏に潜む謎。▼潜んでいる(心の中に鬼が。言葉に真実が。言葉のやりとりの背後に隠された刃が三好微。照れの裏側には恥の感覚が阿木)潜ませる(木陰に身を。匕首はいを懐に)。潜伏する(病気が。町に。物陰に凝然と)。伏在する(異常な事態が。重要な過程が)。潜在する(危険が。情熱が)。潜在意識が(胸底に潜む。顕在化する)。潜在的な(意図を秘める。願。危険。ユーザー。記憶として残る)。潜在能力が覚醒する。潜在能力を限界まで引き出す。 **ひとしれず【人知れず】** 人知れず(苦労する。恋いこがれる。心を苦しめる。努力を重ねる。一人考える。胸騒ぎがする。狼狽的にする。心の中であたためる。今生の暇乞いといをする。胸をなで下ろす)。心の中で人知れず思う。弛緩しょした空気に人知れず染まる。悲痛のあまり人知れず泣き伏す。 **ひみつ【秘密】** ▼秘密(公然の。出生にまつわる。かたくななまでに守り通した斎藤栄)。秘密に(あずかる。関与する。頼した用件)。秘密の(重さを負う。会合を重ねる。快楽にふける。壁に挑む。任務に就く。暴露を恐れる。ベールを脱ぐ。居場所を確保する。うちに葬られる。儀式に熱中する。工程を盗み出す。通路が見つかる。匂いを振り扱ょく。ベールに包まれる)。秘密の一端を(聞く。握る人物)。秘密を(明かす。嗅ぎつける。固く守る。共有する仲間。厳守する。探る。知られる。保つ。盗む。暴露する。あくまでも守る。気弱そうに漏らす。絶対に口外しない。託すに足る人物、胸にたたみ込む。打ち明けるように声をひそめる落合、墓の下まで持って行く藤沢。見透かされているようで恐ろしい三浦綾)。意中の秘密をさらけ出す。完全に秘密を守りきる。出生の秘密を知る。生殺与奪の秘密を握る。人の秘密を探り出す。二人だけの秘密を楽しむ。胸に秘密を蓄える。我から秘密を打ち明ける。さも重大な秘密を打ち明けるかのように語る宮本邮。墓場へ抱いていった秘密をほじくり出す"斎藤栄。▼秘密を持つ(共通の。暗い)。重大な秘密を隠す。探るような眼つき=野間)。▼秘密にする(会議の内容を。正体を。裂法を。行く先を)。謎の秘密結社が犯行に絡んでいる=東野。秘密っぽい雰囲気に気圧けぉされる。戦闘能力を秘めた秘密兵器。秘密兵器を製作する。秘密保持に万全を尽くす。秘密めいた(匂い。場所に踏みこんでいく)。ぞくぞくする秘密めいた美しさ。声が一段落ちて秘密めく。厳秘に付する。厳秘を要求する。守秘義務に違反する。守秘義務を果たす。秘中の秘。機密が漏れる。機密を(暴露する。保持する。漏らす。漏洩らいする)。国家機密に触れる。最高機密に属する図面。軍事機密を探り出す。厳重な機密管理。極秘に(処理する。捜査する)。極秘の任務を与える。極秘中の極秘として扱う。極秘情報を手に入れる。極秘裏に(捜査を進める。内偵を進める)。部外秘の(情報。書類)。部外秘に指定する。部外秘指定を解除する。 **ひめる【秘める】** 秘める(神秘的な力を。謎を。決意ひめるを胸に。落胆を心に。悪魔的な笑いを。一触即発のものを。おびただしい可能性を。自分一人の胸に。おのれの胸ひとつに池波)。胸に秘めた夢。内に闘志を秘めた顔。輝きを底に秘めた目。知性を秘めた瞳。理を秘めた軽やかさ。内部に強敵にいうなものを秘めている。そっと胸の奥に秘めておく。秘め事を(開き出す。もらす)。固く秘して口をつぐむ。秘事を(明かす。ち明ける。嗅ぎ出す。漏らす)。自分一人の胸におさめる。門外不出の(家宝。珍木。名画。名刀)。▼秘する(関係を。決心を。自説を。名前を。行き先を。一人胸の中に)。秘蔵の(絵画。書。弟子)。文書を秘蔵する。 **ほうむりさる【葬り去る】** ▼郯り去る(精神的文化を。チャンスを。永遠に。社会的に。海底深く。この世から。事実をうやむやに。少数意見として)。▼抹殺する(仮説を。嫉妬を。単一性を。反対意見を。歴史から)。揉み消す(悪事を。スキャンダルを。手際よく)。 <288> **いしだたみ【石畳】** 掃き清めたように綺麗な石畳内田瓦。石畳が湿っていてひたひたと足に吸いつくよう高樹。長い石畳が続く。朝日の照り返しに眼がチクチクとしみるような石だたみの道"長与。百日の日照りの石だたみよりなお花いた笑い=光瀬。苔で滑りやすい石畳路ふちが紆余曲折られ。」して続く中島敦。微かびのような白い斑点のいっぱいある石坂三島。 **かかる【掛かる】** ▼かかる(壁に肖像画が。木の上に月が。蜘蛛くもの巣が。子供に金が。空に悲雲が。空に虹が。息が耳に。一度お目に。霧が一面に。声が鼻に。魚が針に。太陽が真上に。月が中天に。次の仕事に。手が刀の柄に。道が坂に。道を渡りに。雲が空低く。いちだんと磨きが。大向こうから声が。外套びかの肩に雪が。ずいぶん時間が。ずいぶん手問が。姉を追い出しに。お日様が東の空に。ぼつぼつ支度に。練達の演者の手に。頭から馬鹿にして。たっぷり一週間は)。社長の息のかかった人物。▼かかっている(女の意地が。壁に額が。小さな看板が。ドアに鍵が。猟に生活が。霞が一面に。満月が中空に。人の生き死にが。山の背に三日月が。双肩に町の将来が=篠田)。ひっきりなしに電話がかかってくる。暗示にかかりやすい。かからない(一度も声が。エンジンが。さっぱり魚が。滅多にお目に。ものの五分と。それほど時間が)。 **がく【額】** 額に入れて眺めて楽しむ。写真を額に入れる。麗々しく額に飾る。壁から額を外す。額縁に(収まった絵。写真が収まっている)。寺の山門に掛けてある扁額かんさだ。扁額の文字を読み上げる。 **かけじく【掛け軸】** 一幅の掛け軸。掛け側を表装する。床の間に掛け軸をかける。掛け物をさらさらと巻く。軸物をくるくると広げる。 **かけつらねる【掛け連ねる】** ▼掛け連ねる(洗濯物を。提灯に、うを。見世物小屋を)。▼掛け並べる(洗濯物を。万国旗を。毛布を)。 **かける【架ける】** ▼架ける(足場を。電線を。屋根を)。電線が架かる。川に架かる橋。橋を架け替える。島と島の間を架橋する。▼架する(屋上屋を。橋を)。電線を架設する。差し渡す(綱を。ローブを)。 **かける【掛ける」** かける(一縷いちの望みを。糸によりを。親に心配を。女に銭を。髪にバーマを。髪にブラシを。混乱に拍車を。周囲に迷惑を。尻に帆を。ドアに鍵を。長い年月を。慰めの言葉を。のどに無理を。引き金に指を。人々に号令を。魅力に磨きを。胞ばをたすきに。着物を衣桁かこに。コートを腕に。勤め先を心に。出刃を砥石にぃに。土鍋を火鉢に。美人を鼻に。人をべてんに。毛布を膝に。指を引き金に。髪にウエーブを。がんじがらめに縄を。心当たりに電話を。実現に二十年を。政治と事業の二股を。たっぷり時間を。熱い息を耳もとに。うまうまと罠ゃなに。経験と体力を秤はぁに。志願者をふるいに。ショルダーバックを肩に。槍ゃりを長押にげの上に。たっぷり三年も)。声をかける(優しく。取り成すように)。疑いをかけられる(つまらない。盗みの)。乱れた毛布をかけ直す。あちこち電話をかけまくる。フックに引っかけて吊る。受話器をフックに戻す。 **ざぶとん【座布団】** 悪べったい煎餅みたいな座蒲団"ざぶとん今取。敷かれた座布団が大概ふさがる。坐っていた座蒲団が谷底のように低まって見える=水上。座布団に座る。下へもおかず一番上等な座蒲団を出して迎える=梅本。二つ折りにした座布団を枕にして寝かされる船山。ふかふかしたクッション。クッションからスポンジがはみ出す。クッションを背中に当てる。 **シーツ** 洗いざらしのこわこわしたシーツ。シーツが(汗を吸い込む。くしゃくしゃにめくれ上がる)。シーツに欲しもが寄る。ゴキブリのようにシーツにへばりつく池田。山ほど抱えたシーツに顎をうずめる=横山。シーツを取り替える。晴れた空を皺だらけのシーツのような雲が走る倉析。風が冷たい敷布のようにからだを包む。岸田。敷布が真っ白で、石灰のように乾いている『長野。敷布を平らに伸ばす。 **しきいし 【敷き石】** 敷き石の上をリズミカルに跳び歩く。敷石を一つ置きに跨またいで進む=ねじめ。庭を渡る踏み石。飛び石を伝い歩く。軽やかに飛び石を踏む足音。飛び石伝いに歩く。沢の対岸へ飛び石伝いに渡る。濡れ縁から飛び石伝いに外へ出る。 **しきもの【敷物】** ▼敷物(薄い。分厚い)。円座の上に座る。円座を編む。マットで靴をぬぐう。シートが風にハタハタと鳴る。シートをかぶせる。監後ばらの花のしとねにくるまる=瀬戸内。草の褥しとに腰を下ろす福永。茵肌とのような落ち葉の上にすわる=森湯。 **しく【敷く】** ▼敷く(青畳を。板に英莖こさを。板の岡に延びしを。渡縁へけを。カーベットを。箝口令かんにを。恐怖政治を。草を。厳戒態勢を。座布団を。砂利を。被毯に心を。新聞紙を。タオルを。畳を。背水の陣を。布団を。報道管制を。マットを。毛氈もいを。毛布を。薬もらを。刈り取った芝を。セーフティーネットを)。坂かれる(女房の尻に。地面に枯れ葉が。昼夜を分かたず警戒態勢が"有川)。▼吹き込む(チップを。薬を)。▼敷きつめる(石を。砂利を。煉瓦納んを。薬を。一面に。びっしりと)。▼敷き並べる(座布団を。畳を。庭を)。桜の花びらが一面に散り敷く。▼敷設する(ガス管を。機雷を。鉄道を。道路を)。▼下敷きになる(大きな岩の。倒れた建物の。土砂の)。他の作品を下敷きにする。 **じゅうたん【絨毯】** ▼絨毯(真っ赤な。毛足の長い)。稲の絨毯が燃え上がるように輝き、その上をトンボの群れが不規則な軌跡を描いて飛行する=奥泉。海に出ると夕陽が落ちかかり赤い波の絨毯が敷かれる"加賀。古びた絨毯がとっしりと光を吸いこむ=日野。絨毯でも敷いたみたいに美しく掃かれた竹敵水上。ふかふかの絨毯の上を歩く。絨毯を敷きつめたように緑のうす苔こぃが生える"水上。市街が炎の絨毯を敷きつめたよう光瀬。コウモリの群れが魔法のジユウタンのように上空を渡る=本多勝。絨毯のように目のつまった芝生"小松太。赤い花が絨毯のように咲く遠藤。▼カーペット(毛足の長い。ふかふかの)。カーペットに額をこすりつけて頼む"筒井。カーペットの上にあぐらをかく。カーペットを敷きつめる。毛氈もんを敷いた縁台。緋の毛氈を敷き詰める。げんげが赤い毛氈を扱いたように綺麗に咲く=田山。隙間なく生え揃った芝が滑らかな緑の毛氈を敷きつめたよう辻井。八つ手の樹の根本にうすく苔が繁茂し荷ぁぉい毛氈のように光っている!高橋和。 <289> **たたみ【畳】** 青々と清潔な色をした畳"原田来。畳が(赤茶色に変色する。陽に焼けて黒ずむ。板のように緊しまって固い=横光。びっしょり水を含んだかと思われる鎮まり方をしている家~幸田文)。月が深く射しこんで昼が冷たく青むよう。川端。畳に(毛羽が立つ。視線を落とす。長々と寝そべる。寝転んで本を読む。伏せて泣きじゃくる。頭をこすりつけて許しを乞う中上。へばりつくように坐すぅる"水上。めりこむほど体を低くする=獅子)。ごろりと畳に寝転がる。頭を畳にすりつけて悪願する=井伏。畳に手を(ついて詫びる。突かんばかりに謝罪する=山本有)。畳の(表を替える。匂いのような体臭島尾。目が細かい線を引いたように奇麗にそろう。梅本)。色の変わった畳の色が古い柱と映り合って皆を物語るように寂び果てる夏目。畳の上で死ぬ。畳の上に(仰向けに寝る。胡坐ふぐをかく。正座する。身を横たえる。ずかずかと上がる。大の一字に寝転ぶ福永)。体を畳の上に押し倒す。これ幸いと畳の上にだらしなく横たわる。だらしなく足を畳の上に投げだす。跳ね上がるように畳の上に立つ=吉行。畳の上を(転がる。滑る)。あばら家同様に柱はゆがみ畳はぼろぼろ=島尾。畳を(蹴るようにして立ち上がる=墨有。たぐるように這い寄る=古井)。職人を入れて畳を替える。火が畳をなめる。巨大な海藻が畳を敷いたようにギッシリ生える=本多勝。無念のあまり畳を掻きむしる=武田泰。青畳の香りが漂う。青畳を吸いたような田丽欧ん"長塚。顔が拡大されて畳一畳敷きほどあるような迫力を感じさせる=獅子。 **にじ【虹】** ▼虹(目のさめるような色鮮やかな飯田。大きく弧線を描いて海上の空にあらわれた島崎)。虹が(空にかかる。うっすらと出ている。ほのかに見える)。飛瀑いはに虹がかかる。瞼だょの裏に虹が出る向田。空想の虹に背を向ける!岸田。色とりどりな服装が虹のよう堀。権威が虹のことくに騰ぁがる=司馬。空へ七色の虹の糸を渡す鈴木三。文学で身を立てようと虹のごとき気を吐く=今來。わが目を疑うほどの虹の橋"竹西。美しい虹を見つけて喜ぶ。ガラスに虹を映す。心に虹を見せる。輝いた洋傘が何かの魔力で太陽を吸い寄せながら四方に虹を吐いて歩くように見える久米。デカンタに射し込む陽が波打つ水に跳ね返り分厚いガラスに虹を映し戯れる=泉俊。白刃が虹を曳いいて陽光を切る"光瀬。瞳が虹を呼ぶようにきらきら光っている=瀬戸内。虹のような橋がかかる"島崎。鳥と花を虹のようなカラーグラデーションで描く干刈。酒を飲み干しフーッと虹のような息を吐く開高。虹のように(霧を噴く。色が重なり合って見える"松谷。ギラギラ光る水晶の頸飾がごり、谷崎)。自分の立場を輝く虹のように美しく幻想する石川。宝石の光彩が虹のように輝く。有吉。未来が虹のように美しく酢とを照らす夏目。▼虹色(ほのかな。ロマンチックな)。虹色に(輝く。光る)。ぬれて光る小路が虹色にうつる中をばしゃばしゃ歩く=吉本。一度カシャーンと砕け散ったあとのガラスを拾い集め再びつなぎ合わせたような虹色のビル=大原。瞳に怪しい虹色の光がちらついて射るように見る=円地。 **ハンガー** ブラウスをハンガーから外す。洋服をハンガーに吊るす。ハンガーにかける(上着を。オーバーを、背広を。脱いだ服を)。 **ひっかかる【引っ掛かる」** 引っかかる(頭の奥に。男の誘惑に。言葉が耳に。非常線に。骨がのどに。誘導尋問に。嘘にころっと。手もなく。蜘蛛くもの巣が顔に。つまらない女に。ひものような男に。風船が木の枝に。作り話にうまく)。子供っぽい駆け引きにたわいなくひっかかる=川端。▼片隅に引っかかる(頭の。記憶の。疑問が心の)。▼心に引っかかる(反応が。言われた言葉が)。▼引っかかっている(意識の片隅に。ずっと頭の中に)。あっちこっちにひっかかりつつよたよた読む若竹。引っかかりがほうぼうに出てくる。心に引っかかりを残す。記憶に引っ掛かりを覚える=伊坂。引っかける(椅子に上着を。小便を。唾を。手桶忙ぉの柄を。ひょいと肩に。軽く一杯)。 **むしろ【筵】** 進で死体を覆う。針の庭に坐るような思い南条。前後左右に筵を敷き並べる。筵を敷いただけのだだっ広い居用"水上。根をこも包みにする。こも包みを馬に積む。こもで荷を覆う。 **もうふ【毛布】** 毛布で全身を包む。上等な毛布ですっぽり包まれたように安心する=小川。毛布に(身をうずめる。すっぽり包まれる。くるまったような優しさのある温かい音=辻仁)。ライナスのように毛布にくるまって眠る吉本。毛布の中に体温がたまって吸まっている=野間。毛布を頭からすっぽりかぶる。毛布のように厚い生地"大庭。山脈が絞しゃのよった毛布のように拡がる=遠慮。膝掛けを(はぐる。引っかける)。 <290> **アクセサリー** アクセサリーを(つける。外す)。胸元にコサージュをつける。胸にコサージュを飾る。小間物を並べる。小物(洋装の。和装の)。世にも珍しい装飾品。装身具を身につける。ブローチ(高価な金の。サファイアの。翡翠ゆずの)。ペンダントをぶら下げる。勾玉球を飾りにする。 **あつげしょう【厚化粧】** こってり厚化粧をする。おおあわてに厚化粧を整える=高橋和。白粉はいを濃くはいた顔が夕闇に浮かぶ梶井。ごてごてと白粉をつけて赤いものずくめの衣服で飾り立てた女=田山。白粉を厚く塗る。化粧するために鋭と大格闘してきたような顔連城。化粧(蛍光塗料を塗りたくったような派手な=小池。ふつうの家庭の主婦が見れば眉をひそめそうなきつい=半村)。舞台化粧と見まごうばかりに濃く引いた眉!宮本期。三色版の夕焼け空のような煩化粧獅子。 **イヤリング** 一対のイヤリング。イヤリングを(つける。外す)。耳にピアスをつけている。耳飾りをつける。耳輪を(つける。ゆらめかせる)。 **うすげしょう【薄化粧】** きめのこまかい肌を誇るような渡化粧"半村。激化粧がほのかに匂う。薄化粧をした上品な老女=具行。新雪で薄化粧した山々。夕顔の花ぐらいにうすく白粉おいを襟に刷はく吉川。目立たない程度に化粧する。 **おしろい【白粉】** 白粉が(石楠花やくの花みたいにぼっと浮く=吉川。ばかばかに剣げる今日)。粉にがふいたように白粉が塗ってある谷崎。白粉に疲れた鉛色の肌"真継。白粉の香りが鼻をつく。梅の香をぬくもりで溶かしたような白粉の香=泉鏡。粉のふいたような白粉のつけ方永井荷。不覚の涙が白粉の砂漠に肉色の流れをつくる=武田泰。喉首から肩まで水白粉を塗ったお女郎さん!武田百。バフを(叩く。はたく)。 **かざる【飾る】** ▼飾る(有終の美を。絵を壁に。写真を枕元に。鉄砲を銃架に。麗々しく額に。庭を花で。新調の家具が部屋を。茶席に花入れを。ドレスと宝石で身を。二十世紀の掉尾;を。葉が日に日に枝を。華々しいデビューを。歴史の一ページを。羽子板を鴨居ゅもに。絵をギャラリーにずらりと。開幕戦を勝利で。新聞の紙面を大きく。床の間に恭しく。晴れの舞台を新しい晴れ着で内橋)。祭壇に飾る(写真を。花を)。花道を飾る(引退の。男の)。花を飾る(一輪挿しに。式場に。テーブルに。出窓に。枕元に)。▼窓辺に飾る(薔薇ばらを。百合を)。写真が隙間もないくらい壁にぎっしり飾ってある=佐藤多。目立つ所に飾っておく。▼飾られる(会社の名が麗々しく、過去が華々しいロマンスのいくつかで"瀬戸内)。胸元に飾りがつく。飾りに幻惑される。まわりくどい少し古風な飾りののある文章=伊藤整。人目を奪うような飾り物。頭に飾りをつける。飾り立てる(色とりどりに。きらびやかに。ぴかぴかに。クリスマスツリーを。入れ物を豪華に。美しい包装紙や桃色のリボンで箱を三島)。精一怀華やかに飾りたてられたショーウィンドウ森瑠。・飾りつけ(これ見よがしの派手な。いかにも安っぽい)。金ピカに飾りつけたあまり趣味のよくない応接間石坂。飾り付けにひかれて入ってくる=北村。飾りつける(壁面を。部屋を。花をたくさん)。▼着飾る(晴れ着を。振り袖を)。言葉に絵ぁゃをつける。言葉で謝絶の絵をつづる=高橋和。▼かざす(縁起の征を。花を髪に)。▼クリスマスツリー(色とりどりに飾り立てられた大きな=加賀。目がくらむような豪旅で巨大な=常盤)。修飾する(叙述を。表現を)。▼表装する(絵を。掛け軸を。有名人の手紙を)。▼房飾り(華麗な。可愛らしい)。文学的な粉節。満艦飾に着飾る。賑やかな色彩が満艦飾に散らばる―奥泉。満艦飾の(万国旋。船)。軍艦に満艦飾を施す。 **くちべに【口紅】** 鶏の臓物の心臓のような口紅=獅子。真紅の口紅がどきっとするほど鮮やか!落合。べったりとグラスについた口紅の跡“干刈。唇に真一文字にぐいと口紅を引く!阿部。▼赤い(唇が紅を塗ったように大岡。唇に引いた紅が花びらのように=新田)。唇に紅を(さす。引く)。濡れた花びらが口紅のようにつやつやとする=小川。唇にルージュを引く。 **けしょう【化粧】** 齢としに似合わない化粧。安岡。化粧が汗に崩れる。無残に化粧が剥げ落ちる。古い屋根瓦が慌てて化粧でもしたようにまぶしく光る阿久。甘い化粧の香りに包まれる=山本周。化粧の乗りが(いい。悪い)。化粧を夜の灯の下で映える色味で仕上げる=松浦。小ぎれいに化粧をする。手早く化粧を済ませる。化粧する(念入りに。美しく。魔面もなく人前で)。顔をこしらえる。紅を薄く頬に刷はく。猫の化粧のように両手で顔をこする=川端。淡い化粧水の匂いが漂う。化粧水を含ませたコットンを畑にあてる。コンパクトを(覗のぞき込む。開いて顔を直す)。脂粉の香りに包まれる。脂粉の香に(迷う。むせる)。頬紅を(つける。塗る)。メーキャップを(落とす。直す)。青痣締結のような強いブルーのアイシャドー池田。緑がかったアイシャドーが鱗粉りんのように暗くきらめく=日野。濃いアイシャドーで目の縁を隈取にまる=高杉。アイラインを(入れる。引く)。死に化粧を施す。口紅をつけ死に化粧する。死顔に施した化粧のように華やかであればあるほどいたましい"岩川。マニキュアを爪に塗る。きれいにマニキュアをした爪。爪に真っ赤なマニキュアをする。化粧気のない(顔。女性)。顔に白粉気ばれるがない。生まれてこの方化粧なんかしたことがない!宮部。ほとんど化粧をしていない顔。 <291> **しんじゅ【真珠】** 夜を彩る明かりが通りの両側をイミテーションの真珠の首飾りのようにびっしりと埋め。真珠のような(美しい歯並び。清浄な胸)。大粒の真珠のような涙"戸板。真珠のように(白く塗られた爪先山田詠。小さい記憶の粒「小川)。汗が額からまぶたに流れ落ち真珠のようにぶらさがる=中上。小さな黒い恨みの粒を胸の奥に抱きかかえてそのまわりを長い年月をかけて真珠のように巻き育てる=大庭、夜露が真珠のように光る=森照。水色がかった真珠色に霞んだ地平。白っぽいタイル張りの新しいマンションが真珠色にきらめく=日野。真珠色の空の光がほのかに差す=徳田。月が厚い雲の向こうにひそんで真珠色の光沢を雲の遠い縁に与える=大江。桃色真珠をばらまいたような暖かい光が広がる林京。 **すいしょう【水晶】** 水晶の(大簾防はずのような雪崩”有局。笛のような鹿の声"宮沢)。霧が切れると森も草原も水晶の粉をまいたようにキラめく加賀。虹のようにギラギラ光る水品の頸飾り、谷崎。子牛の醯が深い湖の色をたたえて青紫の水晶のよう飯田。水晶のように(固い美しい歯。美しい筧けの水溜め=梶井)。コップの厚い底が水晶のように冷たく光る=佐藤巻。澄みきって冷たい水晶のように輝跡がく眼福永。木々の枝を覆っていた水が水島細工の森のように光り輝く=加賀。 **そうしょく 【装飾】** 人生の中で最も貴重な装飾だと思わずにはいられない見事な微笑"横光。けばけばしい装飾の店。派手な装飾のついた器。贅沢だいな装飾を施す。アンチックな装飾を施した電話機内田晓。いっさいの装飾を省いた簡素な造りの高田。楽天的な装飾をなしている太い眉武田奈。きらびやかに装飾する。装飾音をつけて泣き出す局田。装飾過多に思えるシャンデリア。布を装飾的に結ぶ。 **ダイヤモンド** 胸けばダイヤモンドになるくらい素質は十分ある=宗田。指にダイヤが光る。自分で見つけ出して磨きをかけたダイヤモンドのような宝物"谷崎。水滴がダイヤモンドのように光っては水に消える林美。夕日が明るく射してきて葉末の滴を金剛石砂ンドのように輝かせる=里見。星が深淵んの底に光る金剛石にれにのように寒くまたたく=長与。 **ネックレス** 真珠のネックレス。胸元に銀のネックレスが揺れる。にぶく光って美しさが遠くからやってくるような奥ゆかしい感じの首飾り“灰谷。 **ブレスレット** ブレスレットが光る。ブレスレットをはめる。貴婦人がダイヤのブレスレットを身につける=乃南。腕輪を(つける。外す)。 **ほうせき 【宝石】** 光彩陸離たる宝石。宝石が(さまざまな光彩を放って燦峠らくに有吉。指にしっくりと落ち着いてよく似合う。有吉)。人の心には宝石がある"吉本。宝石に見まごうほどの品々坂口。魚が宝石に飾られているように燦然ぜんと光る舟橋。宝石の(目利きが確か。光彩が虹のように郷く=有吉)。土地101135のようにきたない宝石の原石=有吉。星のように煌きらめく宝石の数々=あさの。宝石は女の虚栄心を満足させる裸の王様の糸のない着物のようなもの大庭。宝石を(象眼する。砕いてばらまいたような多彩な色と光の氾濫光瀬)。布地に宝石を縫いつけたドレス=あさの。宝石のような(肌を持った女。思い出を記憶の中から拾い上げる=山田詠)。ガラスの破片が蛍光灯の光を受けて砕けた宝石のように光る“小林久。コンソメスープが宝石のように透き通っている宮部。太陽が大きな空の宝石のように橙だいや緑やかがやきの粉を散らす。宮沢。瞳が不思議な宝石のように妖しく輝く和久。子供たちの会話は宝石のようにキラリと光る言葉をもったいないほど何気なく撒き散らす半刈。山が宝石のようにあおくつやつや光る=住井。欲びのあるときは静かな澄んだ瞳の奥が夜の宝石のように郷く=中島多。列車の窓の明かりが遠くにひとすじ黙ったげられた宝石みたいに煌岭らいている=奥泉。窓に溢れんばかりの星が豪華な宝石箱のよ?~加賀。湖水が孔雀石くにいの色に何条もの美しい縮しまになる=宮沢。柘榴石にいろのように鋭く輝いている女獅子。トルコ玉に似た不思議にやわらか味のある青緑色"田島。焼け跡の菜園に宝珠のような赤瀬紗がキッチリとすわっている=檀。手の内の宝珠をむりやり横取りされでもするような焦りとくやしさ=杉本。オパールを朕はめこんだような蝶貝=宮本百。円い膝頭が指環びの蛋白石はぶのよう川端。琥珀にはの中に閉じこめられた遠い記憶の森塔。琥珀を焦がしたような肌"田辺。さつま芋が琥珀のようにふけ上がる=憾。サファイアが濃いブルーに輝く=大阪。晴とが煌き夜の海のような底深い暗さの中に碧玉を浮かべてみせる=長野。トルコ玉のような真っ青な空原田晓。土耳古玉』のような夏の午前の空佐藤春。木の葉の一枚一枚が宝玉の一断面のように輝く佐藤谷。宝玉をちりばめたガウンに身をくるんだ皇帝"村上春。雲一つない夕焼けで瑪瑙のの中に富士山があるよう永井能。骨董店にこの陳列台に売れ残った瑪瑙石のような輪郭のはっきりした眼!武田炎。先を走っている車の尾灯の赤い連なりがルビーの首飾りのように曲がりながらのびる柴田現。トマトが火に照らされてルビーのように赤く光る=曽野。 **ゆびわ 【指輪】** ▼指輪(エメラルドの。サファイアの。真珠の。ダイヤの。ブラチナの。ルビーの)。▼指環(目玉のようにギラギラした大きな谷崎。ばかでかい青い石の=阿部)。宝石のリング。 **リボン** ポニーテールの髪をリボンで結ぶ大藪。車輪の跡が二本のリボンのようによじれきれいな曲線を描く=大原。道路が紺のリボンのように一直線にのびる=石森。 <292> **あくじょ【悪女】** 悪女の(烙印を押される。ッテルを貼られる)。どことなしに性悪な臭いがする美人=源氏。男を虜とりにする妖婦。妖婦に(魅せられる。惑乱される)。 **あさはか【浅はか】** 浅はかな(嘘をあばく。考え。常識論を述べ立てる。成り上がり者根性)。われながらあさはかな考えに不快感が襲う池田。患者をただの実験材料として扱うような浅はかな医者「渡辺。自分の浅はかさを反省する。軍事力で物事を解決する。新知識を生半可に使用する豊田。一知半解の知識しかない。あざとい(手段。商法)。感情を手玉にとるあざとさ=高井。浅渉な(思いつき。知識。お洒落し、に抵抗する三島)。浅慮が悔やまれる。浅慮の致すところ。浅慮を恥じる。短絡的な(感動。思考)。短絡的に考える。短絡な行動に駆り立てる。付け焼き刃の(学問。教養)。鼻にかける(才知を。知識を)。▼浅知恵(下種げすの。素人の。凡夫の)。浅知恵では事は進まない。軽佻な文化。少し軽佻ぶふちに見えるほど身軽な感じの中年紳士"円地。軽佻浮薄沿いはにな(タイブ。風俗)。軽佻浮薄を絵に描いたような男=篠田。若気の短慮。短慮な死を選ぶ。焦りと短慮は禁物。一微短慮の武将。 **えいめい 【英明】** 英明の(聞こえが高い。君主を欲する)。英明闊達がつな領王。パキバキと英明ぶりを発揮する=長与。英邁麸いな君王。英邁なる精神。豪毅英邁を画に描いたよう綱淵。 **おろか【愚か】** 愚かな(混乱から救われる。執着に目がくらむ。迷信が生んだ結果)。身を空しく犠牲にするような愚かな真似まぁ"長与。人間の愚かなる争い。よそ目には愚かに見える。自分の愚かさを(悔やむ。思い知らされる)。煙をその形のままに手でとらえようとするにも似た愚かさ=中局救。自分の愚かさに気づく。世評を盲信した愚かさに自責を感じる=山本周。同じ谷態に違った処方をする多くの医者たちの間を往復するような愚かさを繰り返す中島敦。愚かしい(口論沙汰。事態が起こる。無駄骨折り。言葉を口にする)。愚かしさを(嘆く。笑う)。利発な才覚がない。社交辞令をまともに取る。聡明を欠く。血のめぐりが遅い。暗愚な(王様。人物)。自分の愚鈍さに呆ぁきれる。愚鈍さをむき出しにする。愚鈍な(うぬぼれ。怠け者)。オドオドと愚鈍なロバのように隠れている男"阿刀田。患にもつかぬ(戦争。問いを発する)。愚の骨頂。愚味な(将軍。政治家。殿様)。他人の思を(からかう。痛罵する)。不肖の(子。弟子。身)。魯鈍らとな(動物。人)。眠そうな恐鈍な顔。 **おろかもの【愚か者】** ▼愚か者(無軌道な。無能な。世にまたとない)。妻の口先に全く操られるほど愚かな男有吉。揃いも揃ってうつけ者ばかり。話にもならぬ思者。愚者にも千慮に一得あり。痴しれ者のような話を交わす。身の程を知らぬたわけ者。たわけ者とののしる。教養を鼻にかけた馬鹿女筒井。 **かしこい【賢い】** 賢い(少年。女性。動物。母親)。賢い(世事に。年の割に)。賢く立ちまわる。さもいろいろ考えているかのように賢そうに喋ん『る=笙野。頭の(いい子。血の巡りがいい)。頭の回転がいい。おつむがいい。知恵の袋を持っている。冷静で頭のきれる男小林長。頭の切れる秀才。一を聞いて十を(悟る。知る)。蛇のごとく悧にかい=長与。小さく賢さぁしくおさまる。賢しげな(声。目)。賢しげに答える。頭が聡きとい。明敏な資質の持ち主。頭脳明敏な器量人。明敏に役目を処理する。利発な子。図抜けて利発な娘。怜悧れいな(若者。女性を要にする=伊藤整)。冷たいくらい怜悧な頭"山本周。賢明な(選択。判断。道を選ぶ。やり方)。賢明に(対応する。批判する)。聡明な(為政者。女性。紳士。理解の表情が浮かぶ)。若い聡明な娘。円熟した年齢が聡明さに暖かさを添える=中村真。美と聡明さを兼ね備える。聡明闊達王者のような青年紳士=坂口。目から鼻へ抜ける利口者。目から鼻へぬけるような人物"坂口。目から鼻へ抜けたようなことを言う外村。目から鼻へ抜けるように賢い!森岡。目から鼻へ抜けるような(挨拶。利発さ)。 **かしこそう【賢そう】** 賢そうな赤ちゃん。二十日鼠雄や砂みたいに賢そうな目。利口そうな犬。ゆるみのない利口そうな容貌"石川。利発そうなはきはきした声。怜悧そうな顔立ち。理知的な(顔。話し方。人。容貌。思考を働かせる。光を湛たたえた黒い瞳を輝かせる=景山)。理知的に判断する。 **ぐこう【愚行】** ▼愚行(権勢欲から発した。身の程をわきまえぬ。名誉欲から発した。時代に逆行する無無用の阿川弘。所有欲から発した=中野孝)。人の愚行に理解と同情を示す。愚行を(改俊灬しする。反省する)。愚行の上に愚行を重ねる。 **けいはく 【軽薄】** 怪薄とも思える厚かましさ=加賀。軽薄な(嘘をつく。根性を露骨に出す。遊び人を演じる=佐々木。小才子以外の何ものでもない=山岡。性根を入れ替える=杉本)。飽きっぽい軽源な性質。世間の軽薄な評判。いかにも軽薄なチンビラ風情連城。いつもヘラヘラしている軽薄な男鷺沢。笑顔を絶やさない軽薄な二枚目半"鷺沢。吹けば飛ぶような軽薄才子小林信。浮ついた根も葉もないような狂言『菊池。一時の浮ついた気まぐれ浅川。ちゃらちゃら(遊び歩く。おべっかを使う)。若くてちゃらちゃらした女。当世の風を浮薄と断じる。浮薄な商業主義のあだ花。へらへら(お世辞を言う。笑う)。へらへらして誰にでも愛想がいい。 **こどもだまし【子供騙し】** いくら何でも子供だましが過ぎる。子供だましに乗る。子供だましの(嘘。品)。子どもだましの大ほらが大手を振ってまかり通る"畑。子供騙しの戦闘をしかける=島尾。子供だましのうな詐術で次ぎ次ぎに権益をだまし取る"海音寺。子供欺だ。しみたいな偶然の一致後藤。 <293> **しゅうさい【秀才】** 秀才(白香松の。稀まれに見る。剃刀以のような神経を持った早熟の“阿久)。冷たい感じのする白哲の秀才顔がぼんやりと春霞がかかったようになこんでいる=佐藤愛。真面目な秀才型の学生。凡才と秀才とはおのずから見ることが違う山手。秀才の(名が高い。評判が高い。誉れが高い)。少年の頃から秀才の名を謳うたわれる=津本。せっせと勉強している秀才の心境がまんざら不可解でもなくなるような新境地をひらく=坂口。秀才ぶりを発揮する。 **ちえ【知恵】** 知恵(お年寄りの深い。自然に体得した。先祖代々伝わってきた。長年かかって蓄積してきた)。知恵が(備わる。つく。働く。よく回る。頭に浮かばない)。頭の中に知恵がたくさん詰まっている。途方もない知恵が湧く。ふっと悪魔のような知恵が浮かぶ=小林久。天啓のごとくずる賢い智慧ちぇが浮かぶ=北。謀ぶい』をめぐらす知恵がかれる=梅本。知識を知恵に変える。知恵の(浅い凡夫。ない人間。実を食う。深さに感心する。芽が真夏の雑草のような勢いで広がりはじめる=壺井)。人間の知恵の及ぶところではない。忍耐がすべての知恵の母。生活の知恵のない不器用な生き方"立原。やたらに知恵のない者が増える藤原。ない知恵は絞れぬ。一世一代の知恵を振り絞る。古来の知恵を無視する。人生の知恵を蓄積する。先祖の知恵を生かす。ひとつ知恵を貸してもらいたい。人の知恵を越えた存在。▼知恵を絞る(趣向に。対策に。必死に。ありったけの。あれこれ。目標に向かって)。知恵を絞って店を生き返らせる=北原。ない知恵を絞って考える。故知に(倣う。学ぶ)。衆知を集める。人知の(及ぶ範囲を越えている。限りを尽くして考え出された演出=横山)。人智をもってはかり知れない神秘小松太。人知を超えた(運命。神意)。世間智が備わる。世間智に富む。知慮が浅い。知慮に富む。▼入れ知恵する(子供に。あれこれ)。小賢がきしい知恵をつける。 **ちてき【知的】** 知的で(美しい女性。冴えた瞳)。知的な(関心を持つ。精神の作業。想像力の産物。比喩ひゅにみちたやりとり)。顔つきに知的なものがひらめく。目もとに知的な輝きがある。 **ばか【馬鹿】** ▼馬鹿(底の知れない。どうしようもない。木の根っこみたいな―小林多。手がつけられない"安岡。土砂降りの晩に傘もささずにうろついている"阿部)。バカがつくほど人が良い"西村。馬鹿がつくほど糞真面目に好き。馬鹿だと自分で認める。馬鹿ではないかと思うほどおおとか井上靖。馬鹿でもわかる理屈。馬鹿な(気を起こす。子ほど可愛い。戦争を起こす。ことをやらかす。真似まねをしでかす。争いは金輪際起こらない藤本)。金を溝とぶに捨てるような馬鹿なまね永井荷。底が透けてみえる馬鹿な話"有吉。馬鹿につける薬はない。言うことが馬鹿に横柄。肌が馬鹿に生暖かい。自分が馬鹿に思えて仕方がない。無能なくせに努力もしないバカは一番迷有川。馬鹿は馬鹿なりに必死になる=かんべ。揃いも揃って馬鹿ばかり。うだうだと馬鹿を言う。花柳界は馬鹿を承知で馬鹿話を続けるところ。有吉。自分のバカさ加減に腹が立つ。西村。馬鹿のように口をあけて笑う遠藤。最後まで馬鹿のようにダマされぬく安岡。莫迦ばかのように大きな口を開ける芥川。馬鹿丸出しの顔。阿呆のように(突っ立つ。口を開いたきり)。たわけが過ぎる。底の知れないとんま。とんまな(質問。話。顔をして聞いている)。 **はすっぱ【蓮っ葉】** 進っ葉な(女。愛嬌をふりまく阿門。偉そうに賢ミかしらをする。口調で言い放つ=落合。自分でも驚くような蓮っ葉な言葉が口から出る=黒井。初心うぶな娘の声をわざと巡っ葉に走らせる=岡本。ぱっぱと蓮つ葉に足を運ぶ=徳田。すれっからしの女。 **ふけんしき 【不見識】** 不見識な(意見。人)。不見識のきわみ。見識が(欠如している。問われる。ない政治家)。不明を率直に詫びる。▼不明を恥じる(己の。自身の。自分の)。良識が問われる。良識を欠く。無定見な(経営者。施策。政治家。発言)。無定見にテーマを決める。 **まぬけ【岡抜け】** 間抜けな(男。会話を笑う。声。姿をさらす。話。泥棒のように逃げ損なって馬鹿をみる"山本有)。ちょっと間抜けなくらい素っ頓狂な声鷺沢。問抜けさが身にしみて痛感される毎日=坂口。問抜けさ加減に(赤面する。腹が立つ)。自らの問抜けさ加減に耳朶ふふまで撮ぁぁくなる"久間。問抜けさを馬鹿にする。間抜けた啖呵於んを吾知はゃらずたたきつける=徳水。間抜け面で声を漏らす「熊谷。自分の間抜けぶりにあきれる。どじな人。間の抜けた笑い。問の抜けたようなしゃべり方干刈。▼ぼんくら(偏屈な。救いようのない)。ほんくらな(人。返事。役人)。 **むち 【無知】** 頭も体も麻痺まぃしてしまった人間が堆積した無知の砂漠が広がる=島田。無知をさらけ出す。石のように無智な僧侶「徳永。無知無能の男。無知蒙味もいな人間。仰天するほどの無知蒙昧ぶり。無知ツスの誤解。知識が白紙に近い。子供並みの知識も覚束ない。知識をひとかけらも持ち合わさない。無無学の(徒。輩が)。無学をさらけ出す。 **りこう【利口】** 抜け目ない利口な買い方。恥に置けない利巧な女『永井荷。利口に立ち回る。利口がる癖を戒める。眼に隙のない利口さがあふれる=石川。利口ぶった女。さかしらに心を見抜くような目を向ける!童部)。 <294> **あさぎり【朝霧】** 朝霧が(おだやかな入り江の海の上を這はい廻る=島尾。街の上に低く垂れる佐藤巻)。恨みが朝霧のように消散する=海音寺。 **あさもや【朝靄】** 朝もやが(新緑に絡む。林の中を流れ出す)。朝謡が包みまつげがしっとり冷たくなる"小川。朝もやに閉ざされた薄明調高。うっすらと胡総の消え残っている海沿いの道『福永。朝もやをついて港を出て行く漁船の心地よい響き『阿久。 **いぶす【燻す】** いぶす(青葉を。枯れ葉を)。表面にいぶしをかける。低煙がもうもうと上がる。燻製(烏賊いかの。鮭ごけの)。燻製を(食べる。作る)。 **うすぎり【薄霧】** 冷たげな白い薄霧が地に初はうと本庄。薄霧の散るように顔から険しい相が消える=外村。薄い霧が(立ちこめる。森の奥からにじみ出るように湖岸の道に漂う原田康)。 **うすもや【薄霧】** 川面に薄翁がたちこめる。通りに朝霧のような渡認がこもる=横光。雑木林が乳のような渋叙につつまれる=藤沢。山々が黄昏炊にの蒼い薄霧に包まれる合崎。 **えんとつ【煙突】** 暖炉用の大きな煙突。夜空に怪獣の牙のように暖炉の煙突が突き立っている=大佛。煙突から煙が立ちのぼる。▼煙突から煙を出す(むくむくと。淡々と)。墓場のような煙突の林"林关。 **えんまく 【煙幕】** むくむくと透視のきかない煙幕が盛り上がる=烏尾。タコのスミは水中で煙幕のように広がる=本多厥。ばあーっと煙幕のように埃唄にがたつ林良。 **えんむ【煙霧】** 視界の限りに広く漂う春の煙霧。太陽がその反映を赤い煙霧が漂うように直下の水に落とす二鳥。煙霧に覆われる。煙霧のような淡い雲!阿部。砂が足元から軽い煙霧のように舞い上がる=光源。スモッグが(かかる。立ち込める)。スモッグにかすむ東京の眺め“日野。 **かいむ【海霧】** 渦巻くように流れる海霧"原田康。海霧かいむが(流れる。一面に淡くかかる)。海霧に乗じて退却する。深い海霧に包まれる。夕陽が海霧を染める。海霧で川もお花畑も乳白色に漬かる=加賀。 **かすみ【霞】** 春には花と霞。雲か霞か金が消えている"北。霞がかかるほどに遠い存在"村松。頭の中で灰色の霞が渦巻きはじめる=小林へ。女が布をゆっくり振っているように霞が揺れる“辻井。桜の大木が白い八重の花を枝先に無数に咲かせ遠目には霞が湧き立ったように見える三浦し。春の霞が薄く被衣紗ずのようにかかる=田山。雲を霞と逃げ去る。霞に(煙る山々。いきれるような春の暮れ"中)。霞の彼方に消える。口惜しい想い、嫉妬の記憶が、裾野に霞のかかった春の山の風景さながらに回想される=辻井。霧か後のかたまりみたいにフワフワな感じの関係、富岡。島々が霞の奥に浮いているように見える=国木田。山が乳いろの霞の中にとけこむ水上。霞を食って生きる=宮部。水色の空に霞のような春の雲が流れていく“三浦し。暁の光の中に最後の光を霞のように融とけこませ蛍が死んでいく連城。いろいろな風闘が周囲を霞のように取り巻く!有島。眠りが次第に朝霞のように消えていく三浦采。 **かすむ【霞む】** ▼霞む(意識が。山が遠くに。もやもやと。うっすらと視界が。排気ガスと埃唄にに車が。不意に目の前が。山の連なりが鈍色にがに。脈々たる峰が白く。目の前がぼんやりと。眼の中が布を張ったように岸田)。▼かすむ(山々が違く幻のように光瀬。道の両側が霧のように=川端)。沖合に霞む船。煤煙が心に後む空。視界の霞む湯気の中。前方に霞む山脈。蚊帳ぁゃの中にいる人物のようにぼうっと霞んだ存在感しか与えない=原田宗。紫色に霞んだ陸地。丘の群れが薄化粧した女のように白く霞んで静まり返る=大岡。島が雨に霞んでぼんやり見える。春にはずーっとむこうまで淡い桃色が霞んでみえる"干刈。霞んでいる(記憶が曖味に。部屋全部が夢の中の一室のように赤黒くり高樹)。▼霞んで見えない(水平線が。水刷毛以好でさっと撫でたようにおぼろに=山本周)。霞んで見える(光がぼうっと。彼方の山が青く。霧しゃに包まれて陸も空も。彼方に富士山が“千刈)。▼見えない(小さい字が霞んでよく。道路の果てが熱気にかすんで=阿部)。目がほうっとかすんだようにくもる!五木。山の黛色いぶに霞み渡っている眺め円地。 **かわぎり【川霧】** 川霧が(暗く立ちこめる。道はい上ってくる)。月の色の隈くもなきにつれて河霧が夢のごとく淡く水面に浮かぶ国木田。姿が川霧の中に隠頭する=井上焼。 **きり【霧】** 霧(陽の光を縫うようにただよう=原田悲きり蓋のようにかぶさる頭上の=木庄)。霧が(幾らか渉れる。体を濡らす。渓谷を満たす。谷間をひたす。灰色に光る。木の芽を濡らす。細かな雨に変わる。静かに舞い降りる。すべてをほの白く染める。ずんずん薄らいでいく。谷に満ち大きく渦を巻くように動く=高井。執拗に地表から離れない!藤沢。たっぷりと月光を含み羽二重はぶのようにほの白く光っている=山手。地の底から湧くように窪地にから道はい上がる"原田康。剣ぐように消える=木庄。林の梢の方から器踏めっているように降りてくる辻井。ほのぼのと恋れかかる=本庄。湖の上に帳にぃのように広がっていく“福永。山をしずしずと降りてくる=大佛)。心を霧が覆う。谷問に霧が立ち込める。夜の街に霧が動く。絵の具のような灰色の霧が視界を閉ざす"加賀。尾根方向からなだれをうって乳白色の霧が下りてくる三浦し。ユーモアを讃えるオホホ笑いの霧がたちこめる島田。疑念が霧が去っていくように取り払われる"井上靖。窓の外は雨ともみじで霧が山を織っている=泉災。時折切れ切れの霧が窓をかすめて沿線風景を墨絵のようにぼかす。内田康。四方八方の山から霧が押し寄せる三浦し。砂浜をひた押しに這い寄る霧が突堤と海水を区切る線をも消す―武田発。拭い去ったように霧が消える=笹沢。目の中に虹が架け渡されているように七彩の霧が渦巻く=瀬戸内。湯気のように霧が立つ=大佛。霧で視界が悪い。霧に煙る湖。大地が霧に洗われる。乳色の霧に取り巻かれる。遠くの山が霧に隠れる。過去の歴史の霧にかすむ=瀬戸内。▼霧に包まれる(精神が異様な。咽もせぶような)。山の姿が淡墨で刷はいたように霧につつまれる=徳田。▼霧に閉ざされる(深い迷いの。胸が不安の)。霧の(切れ間から青い空が覗のぞく。ために停船する)。山肌が霧の問に隠見する。ねっとりと霧のたちこめる古沼にはまりこむ=日野。霧の底に(沈んで鋼鉄のように青ざめた町=宇野利。せせらぎの音が沈む檀)。灯火のあたりだけ霧は藤紫色にかわり海が次第に黒みを増しつつある=武田奈。夜は暗く霧は重くはてのない沼のよう“国木田。霧を吸い込むみたいに手がかりがなくてあやふや=小川。肌が霧を吹き分ける。紙が一面に濡れるほど霧を吹く夏目。太陽の明るさが霧を乳色にぼかす=新田。虹のように霧を噴く=光瀬。埃児には黄褐色で霧のごとく地上の凡てを掩ぉぉいかつ包む=長塚。霧のような小雨が降る。生温かい霧のような欲望野間、霧のように(煙る氷雨。心を溺らせる悲しみ=大佛。しみとおる冬の重い冷気"吉本。飛んでいる雨のしぶき=山本有。降ってくる火山灰"松本。ぼーっと過去のことを思い出す「深沢。輪郭があいまい三島)。呼吸い、で霧のように少しぬれた口髭("長塚。かすかな歓喜が匂いのある霧のように全身に浸み込む野上。軽く吐き出した紫煙が白い霧のように天井へ立ち昇る!斎藤栄。彼の気持ちは霧のように不透明=加賀。完璧な沈黙が重い霧のように地表に淀む村上発。細かい霧のようにかすかな焦燥が漂う柴田翔。昆布に酢を柔らかく霧のように打つ=山崎。抵抗やこだわりが霧のように薄れる=内田康。にんにくの匂いが細かな霧のように辺りを漂う“村上祥。反響した声が霧のように舞い下りる=村上春。光が霧のように落ちてくる徳永。まだ黄昏炊にになりきれない影があたたかい霧のように低く地面をぼかす野上。夜のびっしり敷きつめた重い空気がそよ風となって霧のように消え去る=島尾、山に厚い霧がかかる。意識が霧がかかったように遠のいていく=辻井。全体が霧がかかったように薄ぼんやりとする"加賀。顔に霧に似た薄い膜がかかる=黒井。霧のかかったような顔黒井。ほてった頬に霧が冷たい。霧が線路を濡らして冷たく光らせる=大佛。硬い粉のような冷たい霧大江。霧が流れる。霧が(乳色に流れる。無数の捲まき毛となって流れている=加賀。ゆっくりうねりながら流れる=小川)。山頂に霧のような薄雲が緩く流れる=外村。▼霧が晴れる(すっっと。目の前の)。霧が拭うように晴れる=憾。頭の中の霧が晴れて行くよう。小沼。霧がいつまでも晴れない。 <295> # きりのうみ【霧の海】 **る三浦し。ユーモアを讃えるオホホ笑いの霧がたちこめる島田。疑念が霧が去っていくように取り払われる"井上靖。窓の外は雨ともみじで霧が山を織っている=泉災。時折切れ切れの霧が窓をかすめて沿線風景を墨絵のようにぼかす。内田康。四方八方の山から霧が押し寄せる三浦し。砂浜をひた押しに這い寄る霧が突堤と海水を区切る線をも消す―武田発。拭い去ったように霧が消える=笹沢。目の中に虹が架け渡されているように七彩の霧が渦巻く=瀬戸内。湯気のように霧が立つ=大佛。霧で視界が悪い。霧に煙る湖。大地が霧に洗われる。乳色の霧に取り巻かれる。遠くの山が霧に隠れる。過去の歴史の霧にかすむ=瀬戸内。** ▼霧に包まれる(精神が異様な。咽もせぶような)。山の姿が淡墨で刷はいたように霧につつまれる=徳田。▼霧に閉ざされる(深い迷いの。胸が不安の)。霧の(切れ間から青い空が覗のぞく。ために停船する)。山肌が霧の問に隠見する。ねっとりと霧のたちこめる古沼にはまりこむ=日野。霧の底に(沈んで鋼鉄のように青ざめた町=宇野利。せせらぎの音が沈む檀)。灯火のあたりだけ霧は藤紫色にかわり海が次第に黒みを増しつつある=武田奈。夜は暗く霧は重くはてのない沼のよう“国木田。霧を吸い込むみたいに手がかりがなくてあやふや=小川。肌が霧を吹き分ける。紙が一面に濡れるほど霧を吹く夏目。太陽の明るさが霧を乳色にぼかす=新田。虹のように霧を噴く=光瀬。埃児には黄褐色で霧のごとく地上の凡てを掩ぉぉいかつ包む=長塚。霧のような小雨が降る。生温かい霧のような欲望野間、霧のように(煙る氷雨。心を溺らせる悲しみ=大佛。しみとおる冬の重い冷気"吉本。飛んでいる雨のしぶき=山本有。降ってくる火山灰"松本。ぼーっと過去のことを思い出す「深沢。輪郭があいまい三島)。呼吸い、で霧のように少しぬれた口髭("長塚。かすかな歓喜が匂いのある霧のように全身に浸み込む野上。軽く吐き出した紫煙が白い霧のように天井へ立ち昇る!斎藤栄。彼の気持ちは霧のように不透明=加賀。完璧な沈黙が重い霧のように地表に淀む村上発。細かい霧のようにかすかな焦燥が漂う柴田翔。昆布に酢を柔らかく霧のように打つ=山崎。抵抗やこだわりが霧のように薄れる=内田康。にんにくの匂いが細かな霧のように辺りを漂う“村上祥。反響した声が霧のように舞い下りる=村上春。光が霧のように落ちてくる徳永。まだ黄昏炊にになりきれない影があたたかい霧のように低く地面をぼかす野上。夜のびっしり敷きつめた重い空気がそよ風となって霧のように消え去る=島尾、山に厚い霧がかかる。意識が霧がかかったように遠のいていく=辻井。全体が霧がかかったように薄ぼんやりとする"加賀。顔に霧に似た薄い膜がかかる=黒井。霧のかかったような顔黒井。ほてった頬に霧が冷たい。霧が線路を濡らして冷たく光らせる=大佛。硬い粉のような冷たい霧大江。霧が流れる。霧が(乳色に流れる。無数の捲まき毛となって流れている=加賀。ゆっくりうねりながら流れる=小川)。山頂に霧のような薄雲が緩く流れる=外村。▼霧が晴れる(すっっと。目の前の)。霧が拭うように晴れる=憾。頭の中の霧が晴れて行くよう。小沼。霧がいつまでも晴れない。** **霧の海の底から水の流れる音がする。霧が海のようにあたりをひたす!大佛。** # きりのつぶ【霧の粒】 **黒板から降る白墨の粒のような暗い冷たい霧の粒「宮沢。巨大な霧の粒のように咲く紫陽花"曽野。雨滴と見紛がぼうばかりの大粒の霧が山を包む=畑。** # きりのなか【霧の中】 **霧の中に(消える。さまよいこむ)。** ▼霧の中に浮かぶ(城が。向こう岸が)。霧の中からでも迷い出たように目覚める=檀。電車が霧の中から吐き出されるように姿を見せる"重松。男が霧の中に影法師のように立つ=大佛。乳白色の霧の中に迷い込むさだ。景色がほうっと霧の中のように遠くなる高沢。奇声を上げながら霧の中へ走り出る三浦哲。渦巻くような霧の中を帰る=原田駅。町が不透明な明るみに満たされる藤沢。濃い乳白色の霧の厚い層の向こうに薔薇色以35の明るみがある=大江。霧中に迷う心持ち=山田美。五里霧中(前途は。この後どうなるのか)。探索が今もって五里霧中の有様“船山。五里霧中をさまよう思い『太宰。 # きりのまく【霧の幕】 **霧の幕が(大きく揺れる。ふくれあがりおしのけられてはなだれ落ちる=武田泰)。霧が流れてきて風景が白い幕に閉ざされる=奥泉。** # くすぶる【燻る】 **「くすぶる(焚たき火の煙が。ごみを燃やした跡が。焼けぼっくいが。忌々しい気持ちが胸の中に佐多。疑惑が胸の底で=加賀)。ぶすぶすくすぶっている火。くすぶりながら消えて行く火。燃えくすぶる(たき火が。生木が。薪が。夢が。欲求が)。燻るようにうごめいている人々=加賀。心が烏賊ぃかのすみのようにくすぼる"林美。いぶる(落ち葉が。線香が。たき火が。もやもやしたものが。焼け残りの柱が。対立がぶすぶす=島尾)。** # くゆらす【燻らす】 **▼くゆらす(香を。紫煙を。線香を。煙草の煙を。煙草をぶかりぶかり)。** ▼くゆらせる(バイブを。葉巻を)。 # けむり 【煙】 **仄青100い天頂をしたたかに汚す夥誌がしい煙三島。煙が(宙に漂う。天井板を這ょう。軒を伝う。庇いきを這う。目にしみる。いろいろな形になる。小屋に充満する。ふわふわとなびく。ぼんやりと空を覆う。濛々と車内にみなぎる。もくもくと湧く。上で折れ釘のように曲がる"大岡。霧のようにたなびく=水上。けだるそうに風になびく=中沢。薄討すの穂のようにたなびく=福水。空の風と戯れるように揺れて靡なびく=大岡。津波のように寄せる=室生。綿のようにちぎれて飛んでいく=大岡)。** <296> # けむる 【煙る】 **香の煙がおぼろに揺らぐ。銃口から煙が立つ。部屋に煙が籠もる。朝の煙が光を透して羅らけのように柿の枝にまつわる=佐藤春。一糸の細い煙が朝の微風になぶられてためらうように揺れる=大岡。浅間山の煙が刷毛だけでではいたように夕焼けの空に靡く=田山。午後の光の中を煙がエクトブラズムのようにゆっくりと彷徨まう~村上巻。煙草の煙が雲のようにこめる小林多。攫っかんだと思う姻けもが手を開けると何時ぃっの間ににか無くなっているようにはかない夏目。むくむくした煙が小さな芽キャベツのように連なり合う福永。焼け残りの草の根方を煙が水底に動く影のように低く側はう大岡。煙が風に吹き飛ばされて四散する。飛び立つ鳥が羽ばたくように河面の雪が消えるように煙がざわめく=武田奏。煙と熱気の直撃を受けうまく目が開かない三浦し。煙に(巻かれて窒息する。むせて咳せきをする)。時ならぬ煙に驚く。煙の(においがほのかに漂う。折れた先が磁針のように絶え間なく不安に揺れる=大岡。先が祭組のようにかすれる=大岡)。煙の輪をつくる。火のないところに煙は立たない。煙を(立てて燃える。その形のままに手でとらえようとするにも似た愚かさ=中局放)。ぽっぽと煙を出す。頭から煙を出して怒る。線香が煙を上げる。煙を吐く(鼻から。もくもくと)。天に届くように煙を噴き上げる火山。** ▶煙にする(一生涯を。紙屑を)。煙のごとく静かに世を去る=中局乳。煙の如く埃唄にを浴びせ掛ける=長塚。煙のような雲が山々の峡だを去来する=中島敦。山に紅い煙のような山桜が咲く獅子。煙のように(姿を消す。弱まった意識)。けむりのようにしなやかな鉋屑切れた"司馬。意識が烟のように消失する=菊池。枝から雪が滑って煙のように散る"大佛。面影が塩を焼く煙のようにゆらゆらと消えずに立つ=鳥尾。新雪が煙のように足もとから舞うぃ大佛。たけり狂う白い波頭が煙のように吹き千切れる"光瀬。何事もなかったようにすべてのことが煙のようにそっと消えて行く=林美。半透明の明るさが煙のように拡がる柴田翔。鬱陶しさが煙みたいに明るい部分を埋めてしまう。富岡。ざわざわという音が平らな煙みたいに目の高さを漂う~村上巻。煙が上がる。煙が(ゆらゆらと上がる。空気の重さと争うように早く勢い込めて勝ぁがる=大岡)。バーベキューの煙があがる。雪の煙が舞い上がる。熱気を孕はらんだ煙が渦をなして舞い上がる=福永。斜光のなかを埃が煙のように舞いあがる=里見。煙が立ち込める。煙が(深々と立ち込める。廊下に立ち込める)。脂っこい煙がむっと立ちこめる。線香の煙が立ちこめる。煙が立ちのぼる(一条。淡々と。もくもくと。ゆらりと。纓々るると)。か細い煙が幾筋も立ちのぼっている。窓から煙がたちのぼる。細い煙がゆるやかに立ち上る。落ち葉を焚たく細い煙が魔法の縄のようにまっすぐに空に立ちのぼる=村上孫。煙が(青い空に立ちのぼる。静かに立ちのぼる)。夜もすがら絶え間もなく立ち昇る煙福永。煙が流れる。煙が(横に流れる。重苦しく流れる。部屋の中に流れる。ゆるやかに流れる。海上を這うように流れる=吉村)。煙が風にあおられて流れる。店内に漂っている煙の流れと同じくらい薄く頼りない夢の中の時間の壁"宮部。煙が上る。煙が(けだるげにのぼる。青々と末ひろがりに天にのぼって薄れて行く=本庄。真っ直ぐにのぼり末は扇のようにひろがって空にまぎれ込む=大岡。松の木の間を濡もゃのようになびいて昇る=佐多)。青い煙がすっとのぼる。細い煙が風のない空に毛糸のように上る=小林多。** **▼煙る(雨でネオンが。山塊が春霞に。風景が灰色に。山肌が霧に。どんより。ほの白く。水平線が暖かさに。墓石が月の光に青く。空が地面の近くで淡い紫色に=日野。薄い春霞がもやもや太宰。部屋が花盛りのように=山崎)。雨が霧のようにけむる=池波。霧に煙る海。源紫に煙る街路樹。細かい雨に煙る桑畑。遠方に模様もこと煙るが如く白くひろがっている十三湖太宰。雨に煙る(睡蓮心の美しさ。林の梢)。▼雨に煙る(信号が。野原が。高層ビルの窓の明かりが)。▼煙い(焚き火が。煙草が)。煙くてせきが出る。ぼうっと煙った霧雨の彼方。一面が霖雨りんに煙っている。ぼうと煙ったような顔黒井。煙ったような眉!向田。煙るような葉を落としたエルムの木立三浦裟。雨が姻けむるように降る=夏目。** ▼けぶる(霧雨が。松の上に雨が。灰色に。黄色く。四方の山々が渉く)。・淡くけぶる湿原。直射のないけぶったような明るさ=里見。 # こくえん 【黒煙】 **▼黒煙(明るく冴えた秋空に淡々もうと立ち昇る=海音寺。イカから吐き出されたスミのような=西木)。黒煙が(濛々と立ちのぼる。一筋の乱れも見せずに空に昇る=林京)。遠い煙突の黒煙が静かに絶え間なく町の人々をおびやかすように流れる=武田炎。黒煙にいぶされて逃げ惑う。煙突から黒煙を吐く。黒い煙が一帯に立ちふさがる。もくもくと黒い煙が湧く。墨汁のような一面の煙室生。後悔が黒い煙のように胸に充満する森流。渦巻きのぼる黒煙のように激しい憤怒「徳永。** # さぎり【狭霧】 **狭霧が川面に立ちこめる。狭霧にこもる枯れ葉の匂い。いつまでも狭霧の郷はれぬ阴=山本周。段々消えて行く狭霧のような取り止めもない意識菊池。** # さじん【砂塵】 **砂磨砂磨が(渦を巻く。舞い上がる。舞い立つ)。心に荒涼たる砂底が郷う奥泉。沙漠地帯で舞い上がった砂磨が霧のように降る=井上靖。砂塵を(巻いて駆ける。あげて疾走するラリーカー)。風が砂塵を吹き上げる。砂塵のように雪が人気ないホームに何重もの髪となって流れている連城。** <297> # すなぼこり【砂埃】 **煙にとりまかれる=大原。白い煙のような雨森環。白煙のごとく悠々と連なった山々に伊集院。漫画の吹き出しのように天井に浮かんだ白い煙"村上卷。羊の毛のように白く顔なびく浅田の烟けも=田山。煙が潮風に白く漂う。** **砂埃が(漂い残る。舞い上がる。巻き上がる。黒い苔こけのように付着している上衣野間)。深々もらと砂埃が立ちのぼる。砂埃にまみれる。風が砂埃を吹き込む。顔をそむけて吹きつける砂埃を避ける=山本周。体の中を虚しい風が砂埃をあげ音もなく通り過ぎる藤本。荷車が砂埃を巻き上げて通り過ぎる=北原。地平線に雲のごとく黄座にけが揚がる=中局災。黄座万丈のものすごい風が吹く阿川弘。砂煙が(ぱっと立つ。キノコ雲のようにせり上がる"光瀬)。犬が砂煙を立てて走る。土煙が(舞いのぼる。巻き上がる。勢いよく吹き上がる)。濛々たる土煙が舞い上がる=なかにし。土煙を立てて倒れる。トラックが土煙を上げて走る。埃が土煙のように舞い上がる=高橋三。土埃が舞い上がる。深々と土埃が舞いたつ=山本局。頭髪が土埃に汚れる。硝煙と土ぼこりのはためきなびく最前線=山本周。** # のうむ【濃霧】 **濃霧が(波を隠す。谷間に立ちこめている三好旅)。峠の向こう側からやっと観はい上がってきたように見える濃霧が峠の上方一面にかぶさる"堀。濃霧に(閉ざされる。恋ふさがれた森の中へ踏み込むような一種の不安=長塚)。濃い霧が視界を限る。一面に濃い霧が広がる。白い濃い霧が渦を巻く。濃い霧に覆われる。霧が(濃さを増す。濃密になる。濃く巻いている)。濃やかな霧が市街を包む。水のように濃くこめた霧「小林多。霧の深い朝。滝から流れてくる濃い霧のようにひんやりと湿った空気高橋和。ロンドンの裏街に漂う濃霧のようなものが右脳と左脳の間にたなびいている荻野。** # はくえん【白煙】 **白煙が(淡々と立ちのぼる。ゆっくりと乳を流すように草原を這って行く"加賀)。囲炉裏の白煙が顔にふりかかる水上。濃い白い煙が縷々るると香炉の煙のように一すじに立ち昇る=佐藤炎。熱い澄石の上に冷たい水をブチまけたように白い煤煙ぶいで汚れたような認!伊藤紫。窓が(みるみる消える。足に冷たく絡まりつく=原田康。煙のごとくに水を渡る=鈴木。野を厳ぉぉい正面の林がかすんで見える=大岡)。** # もや【靄】 **もやが重たく海の上にかぶさる=山本有。自分が覚醒しているのか睡眠中なのかも判然としないくらいに頭の中にもやがかかっている鷺沢。湯気のような白いもやが揺れる=石田衣。白い靄がおりる。朝の靄がしっとりと庭の土を湿す!長塚。頭の中が靄がかかったようにぼんやりする=日野。うすい黄昏炊にの靄が幕を下ろすように坂道の継木のあいだに拡がる=伊藤整。山腹に靄が静かに棚引く外村。湿っぽいねばつく総が立って遠方の高い建築物をぼやかして見せる"宮本百。深くなった乳色の靄が木立に絡まるように漂う。原田康。水薬のような蒼ぁぁい窓が一面に地上から道はいのぼる=徳田。闇を含んだ靄が漂い拡がる=高井。** ▼靄がかかる(意識の上に。空に浮く。眼のまわりに瀬桃色の"吉行)。▼靄が漂漂う(夜更けの街に。暮れ際の)。見通すことができないほど白いもやが立ちこめる高樹。濃い霧がたちこめる。酒の香ばしさが熱い満となってゆらめく=開高。飛に閉ざされた白濁した世界石坂。思い出のすべてが靄に包まれる。姿が紙にまぎれて消える。都心のビル群が濡にかすむ。黄色いスーブのような窓におおわれる=北。ふんわりとした禽に包まれて陸も空もぼかされたようにかすんで見える=壺井。あらゆるものが夢の国のようにほのぼのとしたもやの中に蒸っている夜のやみ=山本有。靄のごとく立ち込めている影"村松。街が灰色の靄の中に沈む=生局。乳色の濃い靄の中から影絵のように姿を現す=山本局。畠が漏の闇を湛たたえる=武田炎。水面にうすい靄を這わせた川。記憶にかかった霰を追い払うように頭を振る"荻野。初春の太陽が薄ぼけた靄をかぶって天心にある久米。生温かい棚のりのような空気が頭に浸透してきて灰色の術をかける=中島敦。わずかに空に残る日の色が薄い桃色に家を染める=藤沢。景色が乳白色にもやる。▼かかったような頭(酔いで靄が。睡眠不足のせいでいつももやの鷺沢)。靄のような悲しみがゆるゆると光の中に流れ出す=高樹。シグナルが靄のような暈がきを帯びる=永井間。もやのように悲しみが脳細胞の円にしみとおる=大原。白い煙草の煙が通風のよくない広間にもやのように立てこめる"石坂。需のようにこまかく愛情で囲む。大佛。香りが靄のように揺らめきながら闇の中を立ち上る=小川。こまかいづのように相手の優しい心遣いが私を包む"大佛。二人の間に絡みついていた靄みたいなものが晴れる"村松。 # ゆうもや【夕霧】 **夕闇がもやり始める。夕窩(牛乳のような色の寒い有局。水のように拡がる=黒井)。夕窓があたりを包む。しんしんとして夕術がかかる。黄昏於忙の夕罷が桜の白さをうす紫に滲ませ抒情的なヴェールを着せかける=円地。緑の色が濃くなっている草原の全面に淡青い夕靄が沈みこむ=日野。灰色の夕窓に包まれる。夕もやのなかに陸地が凝然とうずくまる=本庄。夕霧のとばり。街が夕靄の中に溶ける。町に青白い霧のような夕色がただよう藤沢。** # よぎり【夜霧】 **夜霧が(あたりを深く覆う。走るようにおりてくる=壺井。ひそひそと青く流れる=開高。プラットフォームの灯りの周囲にこまかい虫のように動く大佛)。街灯が夜霧ににじむ。夜霧の彼方に消える。夕霧が(立ちのぼる。あたりに立ちこめる)。** <298> # あくびょうどう【悪平等】 **悪平等を(生む。解消する。正す)。総花的な(支援策。予算)。** # かたむく【傾く】 **▼傾く(次第に家運が。形勢が不利に。天秤氏んが片方に。陽が西に。冷静な方向に。体がゆらりと。店があえなく。ぐらりと車体が。心がオーケーに。悲観から楽観に。上半身がぐらっと前へ)。いまにも崩れてきそうなくらいに傾いた古い軒堀。傾いて行く自分の心に歯止めを掛ける=高井。傾きがある(先走りする。可愛がりすぎる)。** ▼傾きかける(午後の陽が。月が西に)。きらいがある(我田引水の。公私混同の。退屈に流れる。朝令暮改の)。世論が厳罰化になびく。▼かしぐ(機体が。車体が。左右に。斜めに)。ぐらりとかしぐ(体が。船が)。 # かたよる【偏る】 **▼偏る(栄養が。好みが。進路が。食べ物が。発言が。一方に。主観に。派閥に。個人的な体験に。打算めいた対策に)。偏った(意見。判断。見方)。一面的な(解釈。談論。見方)。極端に一面的な考え。アメリカ一辺倒の政策。消費税一辺倒の談論。学歴偏重の社会气。知育偏重を問題にする。偏頗ぬんな(意見。議論。裁き)。偏向を(憂える。是正する)。偏向した(教育。思想)。中正を欠く(意見。判断)。▼偏在する(医師が。資源が。税源が。富が)。▼偏する(一党一派に。一方に。右に)。** # かしげる【傾げる】 **不安げに小首をかしげる。日傘を斜めに傾げる。** ▼首をかしげる(いぶかしげに。怪訝げそうに。自信なげに。不思議そうに。不審そうに。おやと。可愛らしく。はてなと。戸惑ったように。不得要領な表情で。腑、ぃに落ちないように。思案するように藤沢)。路路ぅしているように首を傾げる=大佛。頭を心持ちかしげて見やる。悪戯れはっぽく小首を傾げてみせる=乃南。 # きゅうけいしゃ【急傾斜】 **急傾斜の(坂。屋根)。登るのに手を焼くような傾斜井伏。急勾配の階段。急勾配を(転げ落ちる。上る)。水が急斜面を流れ降る。足場の悪い急斜面を身軽に移動する三浦し。動きのきわめて緩慢なゼンマイ仕掛けの人形のように急斜面をおりる=吉村。急な丘を登る。梯子ぶしみたいに急な階段"原田宗。傾斜が急な(知道。非常階段)。急角度に傾斜する。勾配が急になる(線路の。道路の)。勾配の急な梯子段。酸険れいんな(山稜。山がそびえ立つ)。爪先上がりの傾斜を上る。はしこをのぼるような急坂"深沢。列車が急坂をゆっくりと登っていく。医師が「急坂を転がるように」と言ったように心臓は肥大し悪化した"干刈。峠の胸突き八丁にさしかかる"深沢。胸突き八丁を一つ一つの足場を捜し踏みしめ登る"小林多。険しい(崖が迫る。勾配の坂。峠を越す。山がそそり立つ)。気が遠くなりそうな険しい岩壁等萩原爽。七曲がり八曲がりした瞼けゃしい山道林京。険しく切り立った崖。道がさらに険しくなる。** # くだりざか【下り坂】 **▼下り坂(急な。なだらかな。緩い)。道が下り坂にさしかかる。人生の下り坂に差し掛かる=阿刀田。砂丘がだらだらと下り坂になる"谷崎。努力が下り坂をたどる。爪先立ちになって急な坂を押し合っように下りてゆく“伊藤整。とぼとぼとゆっくり坂を下りていく。坂を下りる(小走りに。足取りも軽く。だらだらと)。長い坂を下りて行く=鈴木三。一つ傘を挟んで並んでのっしのっしと坂道を規則正しく登る=島尾。** # けいこう【傾向】 **保守的な傾向が強い。作品に新しい傾向が目立ちはじめる三浦朱。ファッショへの傾向が日とともに甚だしくなる美濃部。年々増加の傾向をたどる。悲観的傾向を帯びる。売り上げが減少傾向にある。長期低落傾向がはっきりしてくる。** # けいしゃ【傾斜】 **傾斜が尽きたあたりから畑が広がる"丹羽。なだらかな傾斜の丘。傾斜の急な(山道。螺旋せ階段)。緩い傾斜の道。裾野がきれいな傾斜を引く。心がひとつの疑惑に向かってぐいと傾斜する"小林久。傾斜地(凸凹にこの多い。小さな湾にのしかかるように迫る=吉村)。勾配が急になる。勾配のなだらかな山。緩やかな勾配の坂。道の勾配がきつくなる。** # さか【坂】 **▼坂(うねうね曲がりくねった。大蛇站ぅのうねるような=泉鏡。胸を突くばかりの二葉亭)。まさかの坂が越えられない=落語。道が坂にさしかかる。坂の(上を見上げる。多い町。途中の家。上から湾を望見する)。六十の坂を越す。山坂を登っては下る。幾多の山坂を越える。** # さかみち【坂道】 **▼坂道(険しい人生の。目の前に広がるなだらかな。スリッブ止めがキザキザに刻みつけられたとんでもない急勾配の"中島み)。坂道にさしかかる。坂道を(颯爽給っと上る。一散に駆け下りる。うんうん言いながら上る。がむしゃらに上る。のろのろと上る。一走りに駆け下りる。ゆっくりとバスが上がってくる。風のように一気に駆けのぼるジーブ阿久。転げる石のようにどうしようもない力でひきずってゆく"山本周。前屈だがみになってせかせかのぼる=長崎)。** ▼坂道を上る(緩やかなS字状の。とぼとぼと暗い=長与)。バスが坂道をぐいぐいのぼってゆく。急咬いらな森の坂道をあえぎあえぎのぼる"開高。見えない壁に向かって坂道をのぼるような歯がゆさ。 # かたむける【傾ける】 **▼傾ける(蘊蓄らいを。精魂を。全身全霊を。布教に努力を。顔をわずかに。傘を後ろに。一瞬不審そうに首を。科学技術の粋を。かぶせるように上体を。興味深そうに耳を。こっくりと頭を前に。徳利をたてつづけに手酌で=佐藤愛)。心を傾ける(学術に。年上の男に)。** ▼情熱を傾ける(男に。仕事に)。傾注する(全精力を。全力を。努力を)。 <299> # さべつ【差別】 **心拠で音もなくすべってゆくように自転車のペダルを踏む足をとめて静かに坂道を下って行く"阿部。** **差別に(苦しむ。反対する)。故なき差別を受ける。差別する(高齢者を。身障者を。人種で)。差別待遇を撤廃する。差別的に(取り扱う。迫害する)。人種差別を一掃する。** # しゃめん【斜面】 **▼斜面(急峻な。急な。なだらかな。緩やかな。急傾斜の。笹が密生した。谷川に臨む急な)。斜面が崩落する。斜面に(開けた集落。刻まれた道を登りおりする吉村)。山の斜面にへばりついて暮らす寒村=篠田。斜面を(降りてくる霧。吹き渡る風。一気に駆け下りる。派手に転げ落ちる。巻いて山頂へ向かう。滑るように走りおりる=遠藤)。あえぎながら斜面をよじ登る。足から先に滑って斜面を下りる。風が緑の斜面を滑る。ころころと斜面を転がる。石が動いて斜面を転げ出したように動き出すと停めることができない!大佛。這うように斜面をのぼる本庄。** ▼スロープ(急な。なだらかな。緩やかな)。 # せんにゅうかん【先入観】 **先入観が心を支配する。先入観にとらわれる。先入観を排して考える。不当な先入観を証人に植えつける=和久。黒々と大きな目が世界に対して何の先入観もなく虚心に見開かれた心そのもののよう“日野。先入主があぐらをかく。敵側の人間Dすることはどうしても色眼鏡で見たくなる源氏。成心にとらわれる。予断に基づく調査。予断は禁物。** # だらだらざか 【だらだら坂】 **緩い勾配のだらだら坂。だらだら坂を(歩く。下りる。上る)。林の中をだらだらしりに草を踏み固めた道が奥へ向かう大岡。田に挟まれただらだら登りの砂利道。** # ちゅうかん【中間】 **中間にあたる地点。中間地点に位置する。外野スタンドの中段に打ち込む。志中道にして倒れる。中道を歩む。中の(下。上)。中盤に(差しかかる。入る)。中店の美徳。中庸を得た意見。** # ちゅうりつ【中立】 **厳正に中立な立場をとる。中立の(立場を貫く。態度を保持する)。どちらにも与くみしない中立の立場。中立を(国是とする。守る)。どちらの派にも与しない。中立性を(保つ。守る)。偏らない。一党一派に偏らない。ニュートラルな立場を(とる。守る)。不偏不党の(立場に立つ。立場を貫く。報道姿勢)。** # つんのめる **▼つんのめる(砂の上に。土俵に。頭から。勢い余って。朽木が倒れるようにがくっと前に"小松左)。つんのめって(歩く。倒れる)。つんのめりそうな格好で駆ける。つんのめるようにお辞儀しながら入ってくる=小林信。木もれ陽のなかをつんのめるように走って行く幼い後ろ姿"干刈。** # のぼりざか【上り坂】 **▼上り坂(急な。長い緩やかな。なだらかな)。坂をぶらぶら上がっていく。一気に坂を上りきる。バスがあえぐように坂を登ってくる篠田。坂を上っていく(がむしゃらに。えっちらおっちら)。** ▼坂を上る(あえぎながら。すたすたと。ぶらぶら。荷物を抱えてえっちらおっちら八谷川)。 # のめる **のめる(がくんと体が。気持ちが。顔から地面に。床に頭から。泥に足を取られて)。** ▼前にのめる(がっくりと。よろめくように)。前にのめって倒れる。のめって転ぶ。とっと前へのめっていく。のめるように(駆ける。がくりと突っぶす=山本有)。足がたたらを踏む。つまずいたようにたたらを踏んで止まる=村松。二三歩たたらを踏むように前に出る。 # はすかい【斜交い】 **斜交いに(杭を打つ。水筒を背負う。丸太を組む。身を構える)。帽子を斜交いにかぶる。闇のなかを斜交いに雨が糸をひく中村貞。斜交いの位置に座る。風が雨の糸を筋交いに運んでくる。鉄筋を筋交いに渡す。** # ふうちょう【風潮】 **男尊女卑の風潮がはびこる。社会に革命的風潮が流れ出す=舟橋。軍国主義の風潮に反抗する。当時の過熱した風潮に引きずられる!有川。退廃した風潮を吹じる。時代の風潮を反映する赤瀬川。** # ふこうへい【不公平】 **不公平な(扱い。分配。やり方)。不公平の上にあぐらをかく。公平性を欠く。男女平等の精神に反する=笹沢。不平等な扱い。不平等を(除去する。助長する。是正する)。** # へんけん【偏見】 **偏見に(苦しむ。とらわれる)。排他的熱狂と偏見に満ちた論文“大岡。偏見に満ちた(価値観。台詞を並べ立てる)。偏見のない目を持つ。親の欲目と他人の僻目が。僻目に満ちた発言。** # ななめ【斜め】 **斜めに(差し出た葉。ひびが入る)。脚を斜めに流す。雨が斜めに降りかける。顔を斜めに伏せる。肩を心持ち斜めにねじる。首を斜めに突き出す。煙が斜めに広がる。こぶしを斜めにあげる。たすきを斜めにかける。光が壁を斜めに走る。日差しが斜めに射しこむ。道を斜めに突っ切る。雪が庭園灯を斜めによぎる。雪が斜めに舞い降りる。連山が空を斜めに区切る。空き缶が道路を斜めに転がっていく=ねじめ。広い空に秋の静かな雲が斜めに流れる=佐藤春。** ▼斜めに射す(明かりが。朝の日光が。光線が。西日が。夕日が。冬の午後の光が)。▼斜めに横切る(画面を。川が野を)。斜めを向く。斜めにする(傘を。塾かめを。上休を)。斜め上を(振り返る。見る)。斜に(眺める。見上げる)。雨が斜に降りかかる。骤雨儿が斜に注ぐ。日傘を斜にかしげる。▼雁行ぶれする(艦隊が洋上を。狐とそれを追う猟師のように降る雪の中を二人が"大佛)。飛行機が飛行飛行する。 # まえのめり【前のめり】 **前のめりに(歩く。生きる。転ぶ。していた体を引き起こす)。頭から前のめりに仮倒する。腰が引けて体が前のめりに泳ぐ。脇腹を押さえて前のめりによろめく。前のめりの(危うさ。政策を次々打ち出す)。** ▼前のめりになる(体が。気持ちが)。 <300> **うちまかす【打ち負かす】** ▼打ち負かす(敵を。ライバルを。こてんぱんに。さんざんに。完膚なきまでに相手を)。打ち取る(打者を凡打に。バッターを三振に)。▼打ち破る(強力な布陣を。敵の軍勢を)。敵の戦艦を撃破する。▼総なめにする(出場チームを。対戦チームを)。上位を撫で切りにする。敵を居にふる。 **おおしょうぶ【大勝負】** 最後の力をふりしぼって仕かけた一世一代の大勝負・藤沢。大郷台に強い選手。大舞台の勝負。最後の勝負に出る。一か八かの勝負をかける。食うか食われるかの真剣勝負三浦愛。一発勝負に(かける。弱い)。思いきった大胆な企画で一発勝負する"五木。乾坤一擲」に私の(大博打はおば。賭けをする。勝負に出る。大合戦を敢行する)。 **がいせん 【凱旋】** 凱旋の途につく。▼凱旋する(英雄が。大手を振って)。勝ち戦から帰る。故郷に錦を飾る。凱旋行進を始める。凱旋将軍のような堂々たる歩きっぷり里見。 **かちどき【勝関】** 天をどよもして勝岡の声があがる"山本虎。勝利の勝岡をあげる。凱歌がいをあげるような笑い声が廊下を遠ざかって行く=中村咲。勝利の凱歌をあげる。小さな凯歌のような成情が起こる=佐多。 **かちぬく【勝ち抜く」** ▼勝ち抜く(価格競争を。市場争奪戦を。受験戦争を。大乱心を。予選を。トーナメントを)。簡単に勝ち抜くことはできない。勝ち進む(順当に。決勝晩まで)。▼勢いで勝ち進む(疾風迅雷の。破竹の)。勝ち残る(激戒に。決勝に。本選に)。 **かちほこる【勝ち誇る】** 勝ち誇った(声で言う。笑みを浮かべる)。自分の言い分に十分な条理があることを信じるように勝ち誇った表情をする菊池。明るい勝ち誇ったような笑い声をふりまく柴田到。勝ち誇ったように小さな眼をキラキラさせて言う。阿部。 **かちまけ【勝ち負け】** 勝ち負けが決まる。勝ち負けのバランスが崩れる。勝ち負けを(争う。競う。決める)。勝敗が(決まる。つく)。勝敗にこだわる。勝敗の(帰趨ずは不明。決着をつける。帰趣が明らかになる。予断を許さない)。合戦の勝敗は時の運。勝敗を(争う。一挙に決する。競う)。 **かつ【勝つ】** ▼勝つ(試合に。正は必ず邪に。戦いに。賭博で勝ちに。ストレートで。堂々と戦って。力の強いものが)。勝つ自信がある。ひょっとしたら勝つかもしれない。勝つに決まっている。黒みの勝った外套切い。白みの勝った灰色。勝って(気をよくする。兜いぶの緒を締めよ)。勝って勝って勝ちまくる。勝っても高が知れている。勝てば官軍負ければ賊軍。負けるが勝ち。勝ちが(決まる。回ってくる)。▼勝ちすぎる(荷が。あまりにも)。勝ちに(終わる。乗じて攻め入る)。勝ち逃げする(ギャンブルで。ほどほどのところで)。勝ちの目が出る。勝ち星が労せずして転がりこむ。勝ち星を(挙げる。拾う)。鮮やかな勝ちを別する。好奇心が勝ちを占める。我が手に勝ちを握る。緒戦のリードを保ったまま逃げきる。▼一勝する(とりあえず。ようやく)。一勝に甘んじる。行司が軍配を上げる。勝運に恵まれる。白星をあげる。土俵に転がす。必勝を(祈願する。期する)。Vサインをかざす。右の指でVサインを出す。▼楽勝する(相手チームに。選挙に。大差をつけて)。連敗がやっと終わる。連敗から抜け出す。圧勝に終わる。▼圧勝する(選挙に。試合で。投票総發の三分の二を集め)。無血に等しい勝ち。十対ゼロで完勝する。完勝を飾る。▼打ち勝つ(運命に。恐怖に。誘惑に。熾烈兀ャなサバイバル競争に。動物的な弱さに。ブレッシャーに)。快勝に終わる。▼快勝する(八対ゼロで。ダブルスコアで)。勝ち戦に(勢いを得る。勇み立つ)。勝ち戦からでも帰るようにはしゃぎまわる!水井路。戦勝を祝う。勝ちにこだわる。どんな真似まぁをしても勝たずには置かない。せこく勝ちを狙う。勝つ(ことに固執する。ためには手段を選ばない真継)。勝つのが先決。 **かてない【勝てない」「** 勝てない(金の誘惑に。一遍も。運命の力には。誰にも。ついに一番も。どう抗炀らっても。時の勢いには。年には。寄る年波には。いかな勇士でも)。一勝もできない。勝ち味が(薄い。乏しい)。全然勝ち味のない戦はすべきものではない=山岡。勝ち味はない(あまり。とても)。勝つ(見込みがない。べくもないむだな争い)。勝ったためしがない。果たして勝てるかどうかわからない。勝算が立たない。勝算のない戦争。味方の勝利がおぼつかない。太刀打ちできる道理がない。時代の流れに抗いがたい。言葉に抗いがたい強い響きがある。抗し難い(時流に。誘惑に。寄る年波に)。抗し難い力で押しまくられる。波に抗しきれない(時代の。不況の)。▼抗しきれない(圧力に。誘惑に)。▼勝ち目はない(万に一つも。まともに闘って)。勝ち目があるようには見えない。勝ち目のない喰い。 **かてる【勝てる】** たやすく勝てる。勝てる相手ではない。ふんぞり返る。▼覇者(今シーズンの。試合の。前年度の)。名実共に天下の覇者となる。刷者の風格がある。 <301> **かなわない【敵わない】** ▼敵わない(寄る年波には。口のうまさでは。どう逆立ちしても。二人でかかっても。理屈ではとても)。及ぶべくもない。衆涙の勢いが懸絶する。手も足も出ない。及びもつかない(凡人には。財力にかけては)。どうやったって敵うわけがない。歯が立たない(とうてい。まるで)。多勢に無勢で(勝ち目がない。逃げ出す)。衆寡敵せず。太刀打ちできる相手ではない。▼太刀打ちできない(とうてい。いくら頑張っても。常人の神経ではとても横山)。 **こうさん【降参】** 降参に追い込まれる。▼降参する(戦わずに。一も二もなく)。白旗を揚げるに等しい徒労感貫井。セコンドがタオルを投げ入れる。▼投降する(敵軍に。白旗を掲げて)。ぎゃふんと(言わせる。参る)。ぐうの音も出ない。投降を受け入れる。▼兜跡ぶを脱ぐ(いさぎよく。一たまりもなく)。兜を脱いで降参する。敵の軍門に降くだる。悪戦苦闘したがついに抗しきれずに軍門にくだる笹沢。降伏を(申し出る。余儀なくされる)。▼降伏する(刀を捨てて、無条件で。戦いも交えずに)。脱帽するより他はない。▼脱帽する(鑑賞眼に。努力に。勇気に。力量に)。手際のよさに脱帽せざるを得ない=中島河。シャッボを脱ぐ。 **こくふく【克服】** 克服する(数々の失敗を。言語障害を。円単な状況を。負の遺産を。精神的な弱さを。ハンディキャップを。過去の失敗を一つひとつ"畑村)。 **こっき【克己】** 克己の精神。うち克つ(自己に。自分の弱さに)。おのれの弱い心に勝つ。克己心に富む。克己心を(育てる。追う)。 **しょうり【勝利】** 勝利が(近づく。目の前にぶら下がる)。勝利に(終わる。狂移する。貢献する。尽力する。対する確信。酔う。沸く。向かって進軍する)。本戦が勝利に帰する。戦を勝利に運ぶ=井上靖。勝利に導く(革命を。戦争を。戦いを。チームを。母校を。味方を)。勝利の(確信に導く。実感が湧く。女神が微笑組む。余韻を楽しむ。余勢を駆る。笑みを浮かべる。喜びに沸き立つ)。久しぶりに勝利の快感を楽しむ。虎視眈々に礼にと勝利の瞬間を窺らかう~井上靖。静かな微笑で勝利の満足をあらわす野上。是が非でも勝利へ持って行く。勝利を(祈る。確実にする。確信する。手中に収める。目前にする。もたらす。ものにする)。圧倒的勝利を収める。記録より勝利を優先する。最後の勝利を握る。地すべり的勝利を得る。実力で勝利をつかむ。率直に勝利を喜ぶ。▼勝利する(人民戦線が。野党が。与党が。恋敵に。選挙に。争奪喰に。訴訟に。死力を尽くして。赤子の手をひねるようになかにし)。 **しんしょう【辛勝】** 辛勝する(一点差で。僅差で。小差で)。▼勝つ(鼻一つの差で。追い込みをかわして)。接戦をものにする。競り勝つ(ライバルに。延長戦の末。接代の末)。競り負ける(ライバルに。延長代の末。接戦の末)。 **せきはい【惜敗】** 惜敗を喫する。▼惜敗する(一点差で。延長喰の末)。僅差で涙をのむ。わずかの差で敗れる。 **たいしょう【大勝】** 大勝に沸く。大勝を得る。相手チームに大勝する。勝つ(大きな票差で。大差をつけて)。かつてなかったほどの大勝ぶり。 **たいはい【大敗】** 大敗を喫する。▼大敗する(選挙で。ダブルスコアで)。▼惨敗する(選挙で。五対ゼロで相手チームに)。▼総崩れになる(敵勢が。味方が。あっという間に)。虫けらのように負けまくる吉本。 **チャンピオン** チャンビオン(常勝の。不敗の)。チャンピオンの(栄誉に輝く。座に就く)。チャンピオンの座を(失う。獲得する。奪還する。保持する。守る)。チャンピオンを下し王座を奪う。王者が復活を遂げる。王者たる威厳に満ちた顔「遠藤。王者のような風格を備える"宮尾。 **はいいん【敗因】** ▼敗因(練習不足が。試合の)。敗因を分析する。決定的な敗着。敗着の一手。 **はいしゃ【敗者】** ▼敗者(試合の。戦いの)。敗者の悔しさを噛みしめる。敗者は容赦なく排除する。敗軍の恐ろしさを如実に思い知らされる=真継。惨憺にいたる **しょうしゃ 【勝者】** 勝者(試合の。戦争の。堂々たる)。勝者の正義がまかり通る=火坂。勝利者然としてい。レースで勝てると確信する。勝ち目は(五分五分。十分ある。なきにしも非ず)。勝機を(得る。つかむ。とらえる)。国際的に太刀打ちできる。勝算歴々たるものがある。勝算が十分ある。勝算のある試合。 **しょうぶ 【勝負】** ▼勝負(どっこいどっこいの。犬の喩みあいのような=武者小路。掛け値なしの一騎討ちの"岡本。わずかな限の狂いが店の算盤にんを割るほど危ない"山崎)。勝負が(一瞬で決まる。灼熱くに達する。続く。早い。あっけなく終わる。痛み分けに終わる。どうしてもつかない)。ひとまず勝負がつく。勝負に(かたがつく。夢中になる。賭ける闘魂を失う。対する自信がある。なると見境がない)。相撲に勝って勝負に負ける。てんで勝負にならない。勝負の(鬼。けりをつける。剣が峰)。好むと好まざるとにかかわらず勝負の決着をつけなければならぬ"池波。心理の複雑なカケヒキが勝負の裏に暗闘する=坂口。勝負は(時の運。水物)。とうに勝負はついている。勝負を(決める。続ける。限中に置かない)。一気に勝負をつける。さしの勝負を望む。淡々と勝負をする。早く勝負を決めたい。真っ向から勝負を挑む。いちかばちかの勝負を試みる=清水俊。血相さえ変わるかと思うほど夢中になって勝負を争う芥川。勝負どころを(外さない。見逃す)。▼勝負する(互角に。尋常に。中身と値段で)。じゃんけんで(勝つ。決める)。じゃんけんぼんを繰り返す。 <302> # か はいせん【敗戦】 **敗戦**の日を迎える。屈辱的な敗戦を喫して弱りきる=阿久。敗戦間際に学徒出陣する。敗勢に奮発して逆転を図る。敗勢を挽回する。▼敗色が濃くなる(戦争の。チームの)。敗色濃い戦時下"内橋。戦局が敗色に傾く。自分が敗色濃厚だと気づいて狼狽的、いする=池井戸。 はいぼく【敗北】 **敗北**(屈辱的な。ぶざまな。惨憺たる。思い返しても胃液がこみ上げてくるような惨めな"阿刀田)。壊滅的な敗北に終わる。敗北の(憂き目に会う。苦汁をなめる。屈辱を受ける)。敗北を覚悟で闘う。みじめな敗北を喫する。沈痛な面持ちで敗北を宣言する赤瀬川。▼敗北する(戦争に。争議に。なす術すべもなく。完膚なきまでに)。苦い敗北感のような気分をあじわう“五木。聞き方次第では敗北宣言ともとれる科白松浦。 まけない【負けない】 **負けない**(死の誘惑に。そう筒単に。めったに。腕は誰にも)。我慢だけは誰にも負けない男!高橋涼。誰にも負けないと(うそぶく。豪語する)。負けじ魂を発揮する。負けじと反撃に出る。負けじとばかり(言い返す。打ち返す)。負けずに(言い返す。主張する。にらみ返す。やり返す)。他人との議論で負けたためしがない=加賀。負けてたまるか。むざむざ負けてしまうわけにはいかない=横山。人に負けまいと必死になる。風に負けまいと張りあげる大声―連城。万に一つも負ける気遣いはない。生涯一度も敗れたことがない。無理無体に降参せよと言われても従うものではない多岐川。不敗の記録。不敗を(続ける。誇る)。 まける「負ける】 **負ける**(あくの強さに。大負けに。女の情熱に。賭けに。恐怖に。試合に。戦争に。目前の打算に。欲望に。弱い心に。ストレートで。他愛なく。武運つたなく。一時の気の迷いに。こてんこてんに。一回戦でころりと。立て続けに二番。ひとたまりもなく。うるさい感情の粘着力に石川)。誘惑に負ける弱さを持つ=丹羽。みすみす負けると分かっている戦争を仕掛ける"山手。負けたふりをして見せる。はじめに負けて自殺する。感情に負けて涙を見せる。肉体の苦痛に負けて白を黒と言ってしまう。円地。大抵いつも負けている。負ければ悔しい。負けが(かさむ。込む)。深く負けを認める。勝ちを譲る。黒星を喫する。白星を逃す。土俵に這ょう。土俵の砂を低める。土俵を割る。星を落とす。負け戦を覚悟する。生やさしい負け方ではない。怪我をしないような負け方を覚える=海堂。▼負け方をする(ぶざまな。もろい)。負けっぷり(見事な。見るも無残な。潔い)。負けっぷりが(いい。悪い)。打ち負ける(悲しみに。誘惑に。乱打戦で)。負け越す(三連戦を。七勝八敗で。二場所連続で。成績が二勝三敗と)。手痛い一敗を喫する。黒星が(つく。並ぶ)。さよなら負けを喫する。勝運に見放される。勝機を(逸する。失う。逃す)。小勢ながら善戦する。善戦むなしく敗退する。予想以上の善戦をする。横綱に土がつく。▼取りこぼす(勝てる試合を。初戦を。下位に)。敗残の(色に塗られる。生涯。身)。收退する(一回戦で。初戦で)。敗報に接して色を失う。小気味のいいほど負かされる=山本有。負け晩に終わる。負けに終わる。▼やられる(こてんばんに。こっぴどく)。いつも予選でいちころ。いちころでダウンする。強豪チームにいちころにされる。お株を(とられる。奪われたかたちでたじろぐ=小島)。実質的な負け。▼負ける(試合に勝って勝負に。劫こうに勝って碁に高橋和)。▼敗れる(合戦に。善戦むなしく。力尽きて。ストライキが惨めに。戦いにあえなく。敵の大軍の前にもろくも)。敗れ去る(戦いに。武道つたなく)。 やっつける **やっつける**(悪徳を痛烈に。くそみそに。こてんぱんに。無茶苦茶に。手厳しく。殺なく。完膚なきまでに。こてんこんに。ばったばったと。目の前の敵を全力で。寄ってたかって。反動的な考え方を徹底的に=黒井)。こてんこてんに負かす。負かす(議論で。三点差で。試合で。小気味のいいほど)。簡単にやっつける。鎧袖一触ばかしい(相手を投げ飛ばす。簡単に打ち滅ぼす。一合戦で片付ける!舟橋)。▶ひねりつぶす(悪党を。敵を。一つまみに。手もなう)。毛虫や油虫のようにひねり潰っぶす=里見。 ゆうしょう 【優勝】 **優勝**(棚ぼた式の。通算して三度目の)。優勝で最終戦を飾る。優勝の(バレード。晴れ姿)。優勝はほぼ確実。▼優勝する(コンテストに。だんトツで。曲がりなりにもコンクールで葵)。優勝するために発奮する。優勝してうれし泣きする。総合優勝を飾る。優勝回数で大きく水をあけられる佐高。優勝カップを受け取る。優勝旗を先頭に行進する。優勝候補と目される。優勝候補を(倒す。破る)。グランプリに輝く。グランプリを獲得する。最優秀賞にノミネートされる。大会を制覇する。今度こそは全国制覇をと密かに目論んくむ奥泉。 れんしょう【連勝】 **連勝**を十に伸ばす。五試合に連勝する。向かうところ敵なし(百戰百勝で。連戦連勝で)。連戦連勝で有卦っけに入る。連戦連勝の感がある。常勝街道を(進む。総逃いにする。まっしぐら)。常勝の(軍勢。チーム)。全勝街道を(突っ走る。藤進する)。全勝で引退の花道を飾る。全勝を続ける。進覇を達成する。果たす。めざす)。 <303> # 悲しむ・哀れむ あいしゅう【哀愁】 **哀愁**が(心を曇らせる。こめかみをちかちかと痛める=有島)。妻をうしなった男の孤独な影にみち哀愁が肩からにじみ出てくるよう“石川。胸に限りなき哀愁が漲怒り渡る=田山。瞳に哀愁の色が浮く。眼差しに哀愁の影が宿る谷崎。一抹の哀愁をまじえた顔、佐多。悲愁が潮封しのように全身を浸してくる=山岡。ペーソスのあふれる作品。物のあわれの哀傷がりを知る民族的情操=萩原吻。 あいとう【哀悼】 **哀悼**の(言葉を寄せる。誠を捧げる。意を衷心から表する)。死んだ友人を哀悼する。哀悼する気持ちが言葉の端々ににじみ出ている=陳。述べる(哀悼の辞を。悔やみの言葉を)。衷心よりお悔やみ申し上げます。心からご冥福をお祈り申し上げます。半旗を掲げて弔意を表する。弔旗を掲揚する。謹んで冥福を祈る。 あわれ【哀れ】 **哀れ**雨に濡れて尾を垂れた野良犬よりも哀れ藤本。火に入る夏の虫のように憐ぁぁれ!本庄。哀れな(最期を遂げる。奴隷の身の上。人間になりはてる。話にもらい泣きをする)。正視できないほどあわれなものに映る!白洲。人生の哀れな落伍者。傲慢な妻の態度に怯ょびえている哀れな夫藤本。差し当たり行くところもない哀れな身の上二葉亭。その日の暮らしにも困るくらい哀れな身分芥川。破れ笛のような哀れな悲鳴=柴田錬。旅雁刈にが列を乱すに似た哀れなありさま。白洲。哀れな姿(尾羽打ち枯らした=本庄。追われている落人のような"山手)。浮き世の哀れを悟る。しみじみと人の哀れを身に引き受ける森殿。痩せ猫の哀れげな啼き声武田祭。目もあてられぬ哀れさ。すがりつくような哀れさの渉にじみ出た文章,有点。哀れっぽい(声で泣く。言葉で話しかける。目つきで見上げる)。大罪を犯したと信じて嘆いている悠然やんさ伊藤厅。人びとの涙を誘わずにはおかない=白洲。哀れなほど貧しいなりかたち"山本周。見るも哀れなほど惟悴礼いうしている。悲しみが惻々行くと伝わってくる。憐憫てんの(情を催す。思いが心を揺さぶる。情が胸を突き上げる)。優者がみじめな者に感じるような憐憫の感情遠藤。憐憫を(こめた瞳で眺める。買いたくないという反抗心芥川)。 あわれむ【哀れむ】 **哀れむ**同病相哀れむ。哀れむ(病気の息子を。飢餓きわまった城兵を。不憫な母と子を)。天涯によるべなき孤身をあわれむ"海音寺。哀れむ表情を見せる。いかにも隣ぁぁれみに堪えないという眼つき=山本周。魂のぬけた生き物を見るような憐れみの感情が胸をしめつける=遠藤。犬のように哀れみを乞うている眼"遠藤。憐れみを乞うかのことく頂いたを垂れる八谷崎。あわれみをいうように深い悲しみの色を見せる三浦へ。哀憐は心の情が起こる。哀憐の情を催す。愛憐心の情を覚える。庇がばいつくさねばやまぬ愛憐を覚える芝木。 いたいたしい【痛痛しい】 **痛々しい**(小柄な母親の苦闘ぶりが内海。細い腕の白さが"井上靖)。老体が全く骨ばかりのようにいたいたしい!永井荷、痛々しい姿を見るに忍びない。痛々しいくらい秀麗な顔の海音寺。痛々しいほど(頭を青く剃った中年の僧"高井。にしょんぼりしている=加賀。柔らかく優しい乳房"黒井)。頭に痛々しいほど白く包帯を巻かれる=乃南。痛いたしいほど痩せる=山本周。痛々しいまでに弱り果てる。傷跡が痛々しく残る。痛々しさ(愛情よりも愛憐誌公を男の心のうちに掻き立てる少女の高見戚。背中が赤剣かけに剣けているような=半村。目を閉ざしたくなるような高橋知)。 いたましい【痛ましい】 **痛ましい**(破綻に終わる。思いをこらえる)。胸が疼いずくように痛ましい=海音寺。どうにもやり切れぬ傷ましい気持ち~中島敦。声に痛ましい響きがある。何とも痛ましい光景。人里を遠く離れて荒野をひとりさまようという風な自分をいたましく思う気持ちが胸にあふれる"石川。心が痛ましく傷つく。痛ましげに眉をひそめる。見る者に痛ましさを感じさせる。痛ましそうに目をそらす。悽愴せふきわまりない死闘が展開される。死出の支度に似て悽愴な交。沈痛な(表情を作る。焦燥の色を帯びた瀬)。表情に沈痛な色をたたえる。 いたむ【悼む】 **悼む**(永訣を。犠牲者を。死者を。死んだ肉親を。逝去を。早世を。夭折もうした主人を)。死を悼む(愛する人の。故人の。戦友の。友人の)。 かなしい【悲しい】 **悲しい**(運命を担う。人間の性が。感情で胸が一杯になる。思いを何度となく味わう宮部。心もちが心を凍らせる芥川)。悲しい(涙を流して抱き合うほど小川。瞳が魚みたいに林炎。胸が張り裂けるほど長崎。もう生きていけないと思うほど光原)。哀かなしい身過ぎ世過ぎの憂愁が漂う熊坂。腹の底からしぼり出すような哀しい声"井上ひ。心の中に悲しいものが流れる。自嘲的な救いがたいほどに悲しいみじめな笑い=阿刀田。悲しいかな我らには力がない。目も鼻も唇も細い願ぁこも哀しいほどくっきりと愉郭を保っている古井。悲しいほど澄み通って木魂にだしそうな声=川端。心が悲しく乱れる。何物にも代えがたく悲しく口惜しい母の死"有局。悲しくて胸が張り裂けそう。悲しくなる(話せば話すほど。失望を通り越して"松岡)。胸の痛くなるような話。この世の地獄を見て胸のつぶれる思い灰谷。心中に冷たいものが流れる。涙なくては聞けない。胸がキュンと痛む"飯田。胸の奥に小さな痛みを覚える内海。照れたようなうら哀しいような苦笑を洩らす源氏。うら悲しく侘ゃびしい慕情"高見刷。心の髄まで凍りついたましい。 <304> かなしさ【悲しさ】 **悲しさ**(秋のそこはかとない!大野晋。雨の音だけが心を慰めてくれているような"大佛。肉体的な痛みのような「宮本百。鼻のつけ根がつんとなる落合)。久しぶりに飯らしい飯にありついたような哀しさ=古井。悲しさが(胸いっぱいに広がる。暗いしこりと化す萩原來)。火の玉のように体の中を悲しさが転げまわり走り狂っている=坂口。悲しさが胸に(刺さる。ひしひしと堪こたえる菊池)。悲しさが胸の(中で肥大する。うちにあふれる)。胸をしめつけられるような悲しさに襲われる佐多。あまりの悲しさに泣き暮らす。目が悲しさを訴える。 かなしみ【悲しみ】 **悲しみ**(胸を灼ゃく。霧のように心を溺らせる=大佛。親戚の厄介物として見られるような島崎。胸の中が空っぽになる=高橋三)。哀かなしみ(声をあげて泣きわめきたいほどの大江。澄んだ水のような=光原)。悲しみが(心を貫く。鮮明に浮かぶ。胸を去来する。一向に収まらない。月日と共に弱まる。とっぷり身に滲しみこむ=円地。水垢詠村のように沈殿する=高橋和)。耐えに耐えていた悲しみが一時に爆発する=武者小路。濁った哀しみがふつふつと胸の底から湧いてくる荻野。激しい悲しみが胸におしよせる=林兴。もやのように悲しみが脳細胞の間にしみとおる=大原。わたしの裡っちに悲しみが石のように沈んでいる=原田康。捉えどころのない哀しみが心を被う村上券。一段と悲しみが募る。感傷的な悲しみが強まる。心に一抹の悲しみがある。透明な悲しみが漂う。何とも言えない悲しみが胸を突いてくる。淡とした悲しみが胸に湧く。荒々しい悲しみが心の底から湧き上がってくる=中局救。抑えきれない悲しみが遣る瀬なく湧き立つ=徳田。救い難い我が身の不幸に汲くめども尽きぬ悲しみが湧いて来る!今日。悲しみが洗い落とせるかのように時間をかけて顔を洗う=森場。悲しみが透きとおる結品にかたまったようなきらきらしさ=円地。悲しみが宿る(胸に。目に)。悲しみから目をそむける。悲しみと腹立たしさを一緒くたに感じる宮本百。名状しがたい哀しみと愛着の情がこみあげる藤枝。悲しみとの付き合い方を覚える=重松。悲しみに(身を沈める。胸をふさがれる)。しんみりと悲しみに浸る。不安が現実的な悲しみになる。口がきけないほど悲しみに打ちひしがれる=日野。精一杯肩肘を怒らせて悲しみに耐えている男高橋凉。ふっと潮が満ちてくるように微かすかな哀しみに包まれる=北村。予期しなかった深い悲しみに襲われる高見題。悲しみの(塊を抱えたよう丹羽。淵に身を潜めている=飯田)。渋がひたひたと引き返してくるように顔に痛みと悲しみの影が戻ってくる=原田康。悲しみを胸にしまう。こみ上げてくる悲しみをむせるように鼻からもらす志賀。胸が悲しみに満ちる。 かなしむ【悲しむ】 **悲しむ**(悪業の深きを。兄の死を。死んだ夫を。空しい努力を)。泣きの涙で(泣き暮らす。別れる)。泣きの涙にくれる。哀僧が心の中に広がっていく。鋭く哀情が走る。哀借の(念が心を貫く。こもった眼差し)。亡き人を哀借する。 かわいそう【可哀相】 **可哀相**あんまりいじめるとかわいそう。かわいそうで胸がつぶれそう。いたわしいほどよく辛抱する。はたで見ていてもかわいそうなほどの落ちこみよう~つか。あんまりいじらしいので思わず抱きしめたくなる"椎名滅。いじらしく愛らしい弟。たまらなくいじらしく思う。女の持ついじらしさに感動する。不幸せな命数を不憫ふびに思う。不憫さが先に立つ。不憫そうな目を投げる。 かんしょう【感傷】 **感傷**煙のような感傷"福永。感傷が(尾をひく。胸に湿る。胸をよぎる)。青くさい感傷がセピア色に褪ぁせる連城。少年のころの澄明な感傷がよみがえる"司馬。孤独を時折の感傷でまぎらせる。感傷にまみれた心。過去を思い出して感傷にひたる。少女のような感傷に襲われる"司馬。感傷の(跡を消し去る。涙を流す)。感情の揺らぎを感傷の領域にとどめる。感傷の入りこむ余地はない。若かりし日々への感傷を呼び醒ます三好微。少年の日がかすかな胸の痛みとともによみがえってゆれる=飯田。感傷などこれっぽっちもない。▼感傷に過ぎない(なくもがなの。娘心の)。砂糖の洪水のような感傷性"中村真。他人の同情を惹くだけの感傷的な行為“福水。青年らしい純粋さと感傷癖"中村共。センチメンタルな(気分に浸る。節回し)。後ろ向きのセンチメンタルな姿勢。回想のセンチメンタリズムに酔う。島田。 しょうしん【傷心】 **傷心**が日とともに薄れる。傷心に身を任せる。小さな傷心におぼれこむ。傷心の日々を送る。傷心のあまり(引きこもる。ベンチでうなだれているなかにし)。いたく傷心した面持ち。 せつない【切ない】 **切ない**(涙が出る。胸のときめき。気持ちが込み上げてくる。願いが心にくすぶる。目でちらと見上げる。思いに胸を締めつけられる"夏樹。までに愉たのしい日々=堀)。甘く切ない響き。黒髪の切ない香り。寂しく切ない心。身をきられるように切ない夢=坂口。哀かなしみが切なく胸元にこみあげる"本庄。恋が切なく燃え上がる。いきなり大好きなお人形を取り上げられた子どものように切なくなる=大原。▼切なさ(のっぴきならない。胸が苦しくなるよりな=吉野。無理心中でもしたくなるような=河野)。切なさが胸を噛む。不意に切なさが込み上げてくる。渇きにも似た切なさが心を締め付ける=篠田。胸が切なさで硬直する=宮本百。息苦しいような切なさに胸を緊しめつけられる=山本周。不意に湧いてきた切なさをを持て余す。切なそうな声で泣く。 <305> どうじょう【同情】 **同情**が恋にかわる。悲しい身の上に同情が集まる。同情に満ちた言葉。いかにも同情に堪えないといった様子で嘆息する=原田宗。同情の(響きをこめる。目を向ける。涙に目を潤ませる)。うたた同情の念に堪えない。悲しい運命に同情の涙を流す。周囲の同情の目にさらされる。同情の念が(薄れていく。胸に迫る)。同情を(一身に集める。笑いに紛らす。買うような限付き=泉後。拒否するような厳しく悲しげな顔"辻井)。おせっかいな同情を寄せる。同情する(他人の不幸に。内心で大いに。被害者に。心中を察して)。同情してもらい泣きする。油然として同情心が現前の川の潮のように突っ掛けてくる幸田露。同情心を(あおる。そそる)。惻隠从の情を(起こす。催す)。同情しない。誰一人として同情するものはいない。同情の余地がない。毛の末ほども同情のない心有局。憤慨が同情を押し伏せる。一片の憐情況じも示さない。 なげきかなしむ【嘆き悲しむ】 **嘆き悲しむ**(父の死を。不運を。一日起き上がれないくらいのショックで=瀬戸内。夫をうしなって=泌。身も世もないように=福永)。嘆き悲しむより他に術すべがない。天を仰いで慨嘆する。身も世もあらず泣き悲しむ。▼悲嘆に沈む(身も世もない。親兄弟に死に別れでもしたような谷崎)。悲嘆のどん底へおちる。 なげく【嘆く】 **嘆く**(学力の低下を。世代の断絶を。身の不運を。心魂に徹して。我が運命の拙いたきを。我が身の不幸を。非力をしみじみ。捨てられた女のようにわめき散らして=安岡。身がやつれるほど森町)。嘆きが(薄らいでいく。一通りではない。胸の底から湧いてくる。深く心のなかに食い込む=壺井)。悲しみと怒りが吹きに変わる。身も世もあらぬ嘆きに打ち震える=高橋和。嘆きの(日々を送る。どん底につき落とす)。切実な吹きの声。想像を超える嘆きや不安。▼嗟嘆にだする(己れの不運を。天を仰いで)。嘆じる(才能の相違を。日暮れて道遠いのを)。髀肉いにの嘆に堪える。孤独の嘆を漏らす。 ひあい【悲哀】 **悲哀**が胸に込み上げる。言い方に悲哀ひあいがこもる。風景を潮風の中の塩分のようなひりひりする悲哀が蝕む三島。悲哀と孤独感はともすれば慣りに変わる=源氏。悲哀の中に光明を見る。悲哀を笑いに変換する。この世の悲哀を一身にかぶる。じいんと耳鳴りのするような悲哀を感じる=林天。そぞろに不思議な悲哀を覚える=有局。深い悲哀感が後から後から湧いてくる。 ひきげき【悲喜劇】 **悲喜劇**慌ただしい新旧交替の悲喜劇がひきげき悲喜劇の幕が上がる内橋。結果に巻き起こる=内橋。悲喜劇の幕が上がる!内橋。ついては悲喜こもごもといったところ。悲喜こもごもの(一年。思い)。 ひげき【悲劇】 **悲劇**自らの嘘が招いた悲劇。悲劇から悲劇へと渡り歩く=辺見。悲劇に耐えているような近づきがたい気配!山田太。一円全滅の悲劇につながる最初の機緑舟橋。悲劇の(主人公を装う。匂いを嗅ぎ取る。ヒロインを演じる。渦中にある人間は笑うことができない=阿刀田)。自分を悲劇の主人公に見立てる=今呎。悲劇を(肌で感じる。目をそらさずに見つめているだけの強さをもつ=石川。冷然と観察する"石川)。殺人事件が悲劇を生む。まざまざと痛ましい悲劇を見せつけられる=徳永。悲劇的な境迅に感傷的な魅力を感じる=石川。内輪もめで愁嘆場を演じる。 ひそう【悲壮】 **悲壮**な(気持ちが湧く。空気が漂う。戦死を遂げる。感慨に胸をしめつけられる=海音寺)。沈痛悲壮な面持ち。しわがれた悲壮な声が水を浴びせるように徹してくる菊池。毒を喰らわば皿までという悲壮な気にもなる=永井荷。顔に悲壮感をにじませる。 ひつう【悲痛】 **悲痛**泣いても泣ききれない悲痛が胸にこみあげる=中河。悲痛な(結末を迎える。知らせが入る。声で泣きじゃくる。叫び声をあげる。絶叫が聞こえる。叩きを含めた言葉を耳にする=柴田錬)。声が悲痛な響きを帯びる。胸の奥に悲痛な思いが横切る。臨終のきわの悲痛な願い。肺腑証いを絞るような悲痛な声隆。顔が悲痛に歪ゅがむ。悲痛のあまり泣き伏す。 ひほう【悲報】 **悲報**(衝撃的な。母死去の)。悲報に接ひほうし畏心状態になる。悲報を耳にする。悲しい知らせが届く。不幸な知らせ。 ふほう【訃報】 **訃報**が届く。訃報に接する。父の計に接する。忽然にんとして死去の報知を受け取る人米。計を聞いてはせ参じる。 ものがなしい【物悲しい】 **物悲しい**(夕暮れ時がとりわけ。梢をもれる月影が!白洲)。涙を誘うもの悲しい話。物悲しい響きの曲。目に物悲しい光が浮かぶ。小馬鹿にされたような物悲しさ=壺井。日本の子守唄そっくりの物悲しさを帯びた韻律藤枝。物哀20しいような気持ちで胸が塞ふさがれる=干刈。後ろ姿に哀感が漂う。手と脚が奇妙なほど長いアンバランスな体つきに少年のような哀感が漂う小林久。とぼけたユーモアの陰からそこはかとない哀感がにじみ出る=中村明。ほのかな哀感をそそられる。深い哀傷に打たれる。哀調のある叫び声。哀調を帯びた笛の音。少し哀調を帯びた旋律。 <306> # 噛む・食い付く あご(顎】 **顎**(魚の小骨みたいな貧弱な連城域。ふっくりと二重にくくれた=山本周)。顎が(ほっそりと締まる。胸につくほどうなだれる=原田宗)。思い出し笑いで顎が緩む。貝のような形のいい顎がふくふくと動く=中。顎でこき使う。▼顎でしゃくる(椅子を。部屋の奥を。テーブルのほうを)。自分の家来のようにあごで使う舟橋。手下を顎で使う。師匠を顎で使う心算20%=海堂。顎に指を当てる。こつい拳が顎に飛んでくる宮本所。顎の尖った顔。いかつく顎の張った精力的な顔"石川。つまんでみたいようなくくれ顎の愛くるしい顔立ち=山本周。抜けるように色の白いくくり頭ぁこの咽喉のどのあたり、猫のように撫でてみたいような気がするほど=永井荷。抜き打ちに胸から顎へかけて斬り上げる=池波。顎を(崩して笑う。縦に振る。がくりと落とす。ぼりぼりと掻かく。しゃくって立ち去ることをうながす=大江)。アッパーが顎をえぐる。ぐいと顎を突き出す。ぐっと顎を引きしめる。しきりに顎をなでる。膝に顎を埋めて黙りこくる。不意を突かれてたじろいだようにちょっと顎を引く"森瑙。惚手の指先を出して頭を撫でる=池波。無表情のまま顎を引いて肯定する=貫井。▼顎をうずめる(襟巻に。山ほど抱えたシーツに=横山)。船首が恍惚にうとした薄い顎のような形に仰向く三房。頬のようにほのかに赤らみ、顎のようにふくらかにくびれた水蜜中。しゃくり上げるように突き出た下顎野間。おとがいを(垂れる。突き出す)。 おくば【奥歯】 **奥歯**がカスタネットのように鳴る奥田。奥歯に物がはさまったような度"小林久。奥歯に物が挟まったような言い方=胡桃沢。奥歯を噛んで屈辱に耐える=東野。ヒステリックに奥歯をぎりぎりと噛み鳴らす=石川。頬に硬いこぶができるほどきつく奥歯を噛みしめる=西木。親知らずが生える。親知らずを抜く。 かじる【齧る】 **かじる**(親のすねを。蚕が桑の葉を。ばりばりと生野菜を。炒ぃり豆をぽりぽり。トーストを一口。らっきょうをかりかりと)。爪を歯でかじり取る。いつどこでともなしに聞きかじる。 かみあう【噛み合う】 **噛み合う**(議論が。投打が。現場の努力と調査の実践が。木口とほぞが寸分の狂いもなく皆川)。あまり悩みあっていない会話を交わす三浦し。歯をしっかり噛み合わせる。噛み合わせが悪い。噛み合わせをよくする。歯車が食い合う。食いしばる(奥歯を。歯の根を。身を硬くして歯を)。 かみくだく【噛み砕く】 **噛み砕く**(骨を。実を。歯で。一口ずつ。チョコレートを。煎餅をばりばり。ナッツをぼりぼりと。シャリシャリと音を立てて肉を"山田詠)。古い隠居の耳にも分かるように噛み砕いて話をする=二葉亭。奥歯で悩噛みつぶす。言葉を頭の中で噛んだり砕いたりする=夏目。▼咀嚼しする(食べ物を。師の言葉を自分流に)。感性豊かな咀嚼力。 かみつく【噛み付く】 **噛みつく**(犬が。波が。腕に。手に。がぶりと。上司に対しても隠せず)。親の敵に向かうように咬がみつく子母沢。噛みつく声でどなりつける。噛みついたまま離れない。手に噛みついてやりたいほど怒る=新田。噛みつきそうな目で呪にらむ=山本周。飛びついて噛みつきそうな眼"山本周。噛みつくような口調で言う。噛みつくように(問いかける。喚わめく)。 かむ【噛む】 **噛む**(腕を。舌の先を。舌を。濁流が岸を。手を。波が浜を。荷車が石を。肉を。筆の穂先を。指を。唇を強く。企みに一枚。耳たぶを軽く。いらいらと爪を。かりかりと沢庵於心を。ぐしゃぐしゃレタスを。くちゃくちゃチューインガムを。さくっとトーストを。しまったとほぞを。蒼糸しいらとした孤独を。ボールペンの端を。ぽつりぽつりと豆を。前歯でおしんこを。柿の種をぼりぼりと。ご飯をもぐもぐと。塩豆をぼりぼり。せんべいをばりばり。飯をむしゃむしゃ。興奮の去った後の空しさを高橋和)。砂を噛む思い。岩を噛む(激浪が。白い波が激しく)。▼唇を噛む(悔しそうに。わななきそうになる)。胸を噛む(呵責砂しが。焦慮が。切なさが。不安が)。頬の裏側の粘膜を軽く噛みできるかぎり真面目な表情を保つよう努める三浦し。舌を噛みそうな言葉。危うく舌を噛みそうになる。噛んで含めるように言う。下唇を噛んでにらむ。舌を噛んで自殺する。腕にぞを噛んで悔しがる。答えない代わりに唇を噛んで俯らっく=有川。▼噛んでいる(一枚話に。事件に)。▼噛ませる(馬に戦がっを。ガーゼを。猿ぐつわを)。▼噛まれる(毒蛇に。野良犬に)。孤独感に胸を噛まれる。怒りと疑念に胸を咬かまれる=勝目。りんごが噛み跡から変色する。くちゃくちゃ音を立てて食べる=辺見。口をもぐもぐと助かす。噛まずに呑みこむ。▼嶝み当てる(魚の骨を。真実を)。噛みしめる(下唇をきつく。奥歯をぎりぎりと。唇が破れるほど。悔しさと恥ずかしさで唇を=池井戸。バイブを歯形が残るほど=景山)。血が出るほどきつく唇を噛み締める=栗本。 くいつく【食い付く】 **食いつく**(獲物が。虫が。うまい話に。餌に。のどに。がぶりと。ばくっと。ためらいがちに。だにのようにしっかり島尾)。うっとりとした視線がいつまでも食いついているので眼のやりばもないし眩まぶしくてしかたがない=山本周。食いつきそうな(真剣な表情。激しい表情)。食いつくような目で聞く。食いつくように顔を見つめる。かぶりつく(果物に。握り飯に。肉の塊に。桃に。フライドチキンに)。食らい付く(足に。肉に。のど笛に。飯にがつがつ)。 <307> は【歯】 **歯**(ウツボよりもスッポンよりも強そうな"畑。獣の牙のような大きい"城山。水品のように固い美しい!有鳥。砂地の杭のようにぐらぐらと危うい"辺見)。歯が折れるくらい殴られる。笑うとまっしろい歯がこぼれるほどの美しさ=林美。歯がかちかちと(鳴る。震える)。歯が立たない(どうしても。とうてい。まるで。あまりに強くて)。歯が(がくがくと鳴る。がたがたと鳴る。カチカチ音をたてて鳴る=原田店。微かすかながら青味が感じられるほどの透き通るような白さ=高見順)。歯を鳴らす(かちかちと。きりきりと。ツウと)。唇がふるえカチカチ歯が鳴るほど恐い萩原。歯で(糸を切る。元結をきゅっと締める)。歯に(金をかぶせる。詰め物をする。衣さ着せぬ物言い)。するめが歯に挟まる。▼歯にしみる(空気が。酸味が。冷たい水が)。歯の(間が透く。跡をつける。痛みに苛立からつ。疼ぅぅきに耐える。間からしいしい息を吸い込む=村山。浮くような台詞を言う三浦し。抜けたような淋しさ高橋和)。歯を(清潔に保つ。見せずに笑う。指ではじく。がちがち言わせる。シーシーと鳴らす。舌の先でなめる。出してにっと笑う)。乳首に軽く歯を当てる。脱いだ下駄を歯を外にして重ねる。歯ブラシで歯を磨く。願ぁこが痛くなるほど歯を食いしばる=原田家。烈はげしい苦痛が胸に歯を入れる=大佛。▼歯を噛み合わせる(ぎりぎりと。しっかり)。歯を食いしばって(叩うぁく。立ち上がる)。▼歯を見せて笑う(美しい。にっと。真っ白い)。歯を見せる(黄色い。ちらりと)。彼のように歯を剥き出す裟辻。人物のような歯を創き出しにして暗い水底に潜んでいる熱加賀。がちがちと歯を(噛み合わせる。鳴らす)。白い前を(見せて微笑む。むき出して玉石を噛む波・竹山)。白い歯が(小麦色の肌によく似合う。こぼれるように光る池田)。馬のように大きい白い歯阿刀田。唇の間から白い歯がちらりと覗のぞく。笑うと白い歯がきれい。さっと流れてくる光のなかへ道の上の小石が歯のような影を立てる=梶井。数本の釘が深海魚の歯のように突き出す藤本。微笑みからこぼれる歯のように真っ白『村上卷。歯型を取る。入れ歯を(はめる。外してふがふが言う)。出っ歯を(そらす。むき出す)。反っ歯眠っを天に剣き出す。ぽろっと歯が抜ける。埃旧こっぽい檜薬なばの生け垣がところどころ歯が抜けたように投げやりに縦く黒井。踏み板が歯がかけたように抜けた吊り橋新田。棚の上に並べられた器具がところどころ歯が欠けたように空隙を作る=光瀬。歯が抜けたような荒廃の大通り鈴木四。歯が抜けるように欠けていく渡辺。歯の根ががくがく震える。恐ろしくて歯の根が合わない。冷えが全身にしみ渡り歯の根が合わなくなる藤田。歯の根も合わないくらい慄ふぇえが来る=外村。乱杭歯をむき出す。笑うと物凄い乱杙歯吼くが露われるフ灭。口の端に八重歯がのぞく。 はぐき【歯茎】 **歯茎**がむき出る。腫れた奥の歯茎が痛む。歯茎から血の出るほどに歯ブラシで口の中をかきまわす三島。歯茎に泡をためる。歯茎を見せてにいっと笑う江國。 はがみ【歯噛み】 **歯噛み**をして悔しがる。苛立心もったような歯噛みをする。歯噛みする(憤怒に。ちくしょうと。さも無念そうに)。歯噛みして(にらむ。見送る)。憤りに歯を噛む。歯がみするようなヒステリックな声=椎名厩。おのが視力の乏しさに切歯する柴田泌。 はぎしり【歯軋り】 **歯ぎしり**(ごまめの。硝子がの表に思い切り疵;をつけるような無気味な小林多)。まるで歯ぎしりでも聞こえてきそうな表情谷村。不気味な歯ぎしりの音。ぎりぎりという歯儿りの音が漏れ出る=熊谷。歯ぎしりをして泣く。砕けた水を混ぜ合わす海がすさまじい歯軋りを繰り返す~加賀。歯ぎしりする(ひそかに。きりきりと。内心)。歯ぎしりするほどくやしい=森環。悔しさのあまり歯ぎしりしてのたうちまわる森環。歯をきりきり言わせる。歯軋りのような空調の音"小川。奥歯をぎりぎりと噛み鳴らす。 はぐるま【歯車】 **歯車**が(回転を始める。噛み合う。逆転する。順調に回る。一つ外れる。うまく噛み合う。食い違ったようなとどこおり〃小局。二つばかり抜けたような諭旨獅子)。世の中の歯車が狂う。こまかい歯車がカッチンカッチンカッチンと規則正しくひびく"石森。うまく歯車が噛み合わない。お互いの歯車がしっくりと噛み合わない=中村真。歯車から歯車へと運動が伝わる"内橋。自分を殺して組織の歯車になる=南木。急激に廻転している歯車の前に立ったときのように手の出しようがない!徳水。歴史の歯車を動かす。噛み合わせの悪い歯車のように不安定な動作安岡。ギアを切り換える。乱暴にギアを入れる。 はならび【歯並び】 **歯並び**真珠のような美しい歯並び大庭。歯並びが(そろう。悪い)。歯並びのいい歯をこぼれるように見せて笑う梅本。揃った歯並びの真っ白な歯がばっとあたりを照らすように光る=加賀。歯並びを(気にする。矯正する。直す)。粒の揃ったつやのある綺麗な歯列谷崎。笑顔の鮮やかな歯列の白さ=三島。歯列矯正用のブリッジをはめる。粒のそろった種子のように歯が一列に並ぶ=小川。粒の揃った白い歯を見せる=石坂。 まえば【前歯】 **前歯**が二本ねずみのようにのぞく=中沢。唇から前歯がのぞく。唇の間から前歯が顔をのぞかせる。兎約でみたいに前歯がぴょこんと大きい=宫本旅。前歯で唇をしごく。唇を前歯で噛む。前歯を見せて笑う。鼠砧ずのように前歯を動かす遠藤。ビーバーみたいに前歯を出す岡田。 <308> # 借りる・貸す かしかり【貸し借り】 **貸し借り**がなくなる。貸し借りにこだわる。貸し借りを(差し引きする。相殺らする)。貸し借りする(金を。品物を)。ずいぶんと貸しがある。貸しはいずれ返してもらう。貸しを作る。借りが(ざかさむ。できる。増える)。ほうぼうに借りがある。借りを(返す。作る)。▼融通する(衣類を。金銭を。米を)。 かしや【貸家】 **貸家**手頃な食家を見つけて移り住む。足にまかせて貸家をさがし歩く永井荷。大家に連絡する。家主と交渉する。家作から上がる家賃。借家住まいをする。アパートの賃貸しで収入を得る。 かす【貸す】 **貸す**(家を。一臂みっの力を。腕を。男に膝を。傘を。金を。知恵を。電話を。道具を。二階を。膝を。部屋を。本を。マッチを。宿を。ギャンブルのごとき奇策に手を「横山。水のせせらぎに耳を佐藤巻。恵まれない人々に力をぃ永井路。若い女が甲斐甲斐妙灬しく肩を「古井)。忠言に耳を貸す暇とがない寺田。貸したものを催促する。貸した金を(回収する。取りっぱぐれる)。ひとつ知恵を貸してもらいたい。貸し金が焦げ付く。貸し金を清算する。貸し手に回る。右から左へ貸してやれる。貸し手を見つける。▼貸し出す(衣装を。車を。スキーを。図書を)。貸し付ける(金を。資金を。高利で)。▼貸し与える(金を。書物を)。貸与する(金品を。奨学金を。制服を)。▼前貸しする(給料を。現金を)。無利子で(貸し付ける。金を貸してくれる)。用立てる(お金を。車を。資金を。資材を)。金融機関による貸し渋り。貸し渋りに苦しめられる。銀行が貸し渋りを続ける。債権を(回収する。放棄する)。不良債権を抱える。又貸しを(嫌う。禁じる)。又貸しする(部屋を。本を)。びた一文貸さない。▼耳を貸さない(取り成しに。悪魔のささやきに=畑村)。貸し出しを手控える。簡単に金を貸せない。▶拒否する(貸し出しを。融資を)。▼渋る(貸し出しを。融資を)。 かねかし【金貸し】 **金貸し**(因業ごんな。強欲な)。金貸しのあくどい罠もなに落ちる=隊。▼金を借りる(金貸しから。サラ金から)。抜け目のない金融業者。消費者金融に借金がある。▼高利貸し(あこぎな。胴欲な。たちのよくない)。 かりかえる【借り換える】 **借り換える**(事務所を。借金を。本を)。借り換えが(進む。必要になる)。借り換えを(繰り返す。勧める)。 かりきる【借り切る】 **借り切る**(宴会場を。大広問を。漁船を。グラウンドを。小屋を。市民会館を。バスを。店を)。▼貸し切る(劇場の席を。バスを。列車を)。チャーターする(小型機を。バスを。船を)。 かりる【借りる】 **借りる**(家を。一室を。傘を。形を。金を。口を。車を。助けを。知恵を。提灯らいうを。電話を。トイレを。図書館で本を。土地を。名を。ノートを。ビルを。別荘を。部屋を。マンションを。店を。レンタカーを。本を図責屈で。ただ同然の安さで)。借りるときの仏顔、返すときの夜叉~"平岩。わざわざ機械の手を借りるほどのこともない=安部。▼アパートを借りる(会社の近くに。友達と共同で)。力を借りる(機械の。酒の。仲間の。酔いの)。▼表現を借りる(古風な。今様の。地元紙の)。借りた車を返す。借り物の(衣装。知識)。借り上げる(車を。土地を。部屋を。民家を)。▼借り集める(金を。小金を)。▼借り歩く(お金を。人脈をたどり)。借り入れる(お金を。外国船を。資金を。銀行から。消費者金融から)。借り受ける(一室を。鍵を。看板を。車を。工場を。品物を。ただ同然の安さで)。▼借り着する(威信を。晴れ着を)。借り出す(金を。トラックを。本を。モーターボートを)。賃借りする(車を。船を。部屋を)。▼恩借する(金品を。生活費を)。レンタカーを(運転する。返す)。▼レンタルする(車椅子を。車を。DVDを。ドレスを)。 ぎんこう【銀行】 **銀行**から金を借りる。銀行に(融資を頼む。依存しない経営体質を築き上げる佐高)。最寄りの銀行に口座を開く。銀行の(貸し金庫に保管する。融資担当者を抱き込む=池井戸)。預金するときの銀行の窓口の係のような愛想のいい口調に赤川。銀行を国の管理下に置く。公的資金で銀行を甘やかす。▼預ける(銀行に金を。金融機関にお金を)。口座に(入金する。振り込む)。預金の取り付け騒ぎ。取り付け騒ぎが(起きる。現実のものとなる)。 きんゆうきき【金融危機】 **金融危機**(国際的な。世界的な)。金融危機が(起こる。おさまらない。拡大する。加速する。顕在化する。再燃する。終息する。深刻になる。進む。峠を越す。始まる。深まる。各国経済を直撃する。世界に暗い影を落とす)。金融危機から脱出する。金融危機の(震源地。根は深い)。金融不安が(再燃する。高まる。広がる)。 きんり【金利】 **金利**が(上がる。急騰する。急落する。下がる。上昇する。高い。高止まりする。跳ね上がる)。高金利で金を貸す。雪だるま式に倍加する高利=山崎。高利で(金を貸す。借りる)。高利の金に手を出す。利息が利息を呼ぶ。 くめん【工面】 **工面**金の工面がつかない。金の工面にフーフーでう高見町。工面する(学資を。湯治の費えを。渡航費を。入院料を。返済資金を。療養費を)。工面して金をつくる。お金の算段がつく。 こげつき【焦げ付き】 **焦げ付き**保証が焦げ付きになる。焦げ付きの危険が高い。不良債権を(償却する。処理する。金融機関から切り離す。公的資金で穴埋めする)。不良資産を(抱える。切り離す。処分する。売却する)。貸し倒れが増加する。貸し倒れに備える。貸し倒れの恐れがある。 <309> しきんぐり【資金繰り】 **資金繰り**が(悪化する。うまく行く。厳しい。苦しい。つく。つかず青息吐息)。資金繰りに(行き詰まる。追われる生活を余儀なくされる=軍司)。資金繰りの当てがある。金繰りが(苦しい。つかない)。金詰まりで倒産する。金詰まりに陥る。やっと金策がつく。金策に(奔走する。駆けずりまわる)。金策のめどが立たない。資金集めに東奔西走する。資金調達の道を求めて駆けずり回る=内橋。 しちや【質屋】 **質屋**で指輪を金に換える。時計を質屋に入れる。質入れする(着物を。背広を。めぼしい物を)。質草が流れる。質草を(入れる。請け出す)。質に入れる(貴金属を。着物を。指輪を)。▼質流れになる(質屋に預けた物が。質屋に入れた指輪が)。質流れの品を(売る。買う)。質入れした物を流す。 しゃくよう【借用】 **借用**する(アイデアを。金を。言葉を。路躇いなく名を。文章を。無断で)。 しゃっきん【借金】 **借金**(一生かかっても返しきれないほどの林攻。背を焼くような=梶井)。借金が(徐々に増える。きれいさっぱりなくなる。雪だるま式に増える)。あっちこっちに借金がある。借金で(あっぷあっぷする。きりきり舞いをする。首が回らなくなる)。借金を背負って夜逃げする藤田。不義理な借金を残して夜逃げする三好後。借金に(苦しむ。困じ果てる。追われて夜逃げする。次ぐ借金という財政難)。借金の(片がつく。つけを回す。尻拭いが終わる。全額を返済する。取り立てに足を運ぶ。返済に四苦八苦する)。歌うように借金の言い訳を述べ立てる=坂口。田んぽを借金のかたに取り上げる=熊谷。借金ばかりの火の車経営、森村。借金を(肩代わりする。残して逃げに負けて山のような借金をこしらえる井上ひ。借金を背負い込む(莫大巡にな。多額の)。首が回らないほど借金する藤沢。ある時払いの催促なし。 ある時払いの催促なし。勘定が溜まる。債鬼に追われる身“西木。あちらこちらに不義理ができる。返し難くなる借金のように心の負い目を増す。瀬戸内。掛けで(売る。買う)。借財が嵩かさむ。借財を残して出奔する。多額の借財を背負う。負いきれぬほどの借財を負って夜逃げをする=阿部。借款(長期の。低利の)。借款を供与する。債務が(超過する。累積する。累増する)。債務を負う。抱える。完済する。決済する。支払う。償却する。減らす。弁済する。履行する)。債務残高を縮減する。債務超過に陥る。巨額な負債が残る。負債を(圧縮する。抱える。償却する。背負い込む。償う)。ローンが(焦げつく。まだ残っている)。ローンを(借りる。組む。返済する)。 しゃっきんとり【借金取り】 **借金取り**因業ごんな借金取り。借金取りが(押しかける。債務者を追い詰める)。借金取りと(借り手との攻防。借り手が話し合いでもしているような冷ややかなよそよそしさ=赤川)。借金取りに(追われて雲隠れする。やいのやいのと言われる。会ったような気まずい顔半村)。債鬼に(追われる。責められる。借金の返済を迫られる)。債権者が押しかける。債権者の執拗な催促。 ていきんり【低金利】 **低金利**で金を貸す。低金利によていきんりる金余り。金利が低い。低利で(貸し付ける。金を借りる。融資する)。 ていとう【抵当】 **抵当**貸し金の抵当に預かった品。▼抵当に入れる(家を。田畑を。土地を)。▼抵当にする(畑を。店を。山を)。抵当流れになる(家が。田畑が。土地が。店が)。借金の形かたに(預ける。とる。身売りされる)。家屋敷を担保に入れる。土地を担保にして金を借りる。融資する)。を借りる。担保の株券を差し押さえる。無無担保で(金を借りる)。 とうき【投機】 **投機**が過熱する。投機で失敗する。投機に熱中する。投機の色合いが濃い。投機的な仕事に手を出す。投機マネーが国境を超えて膨張する。投機マネーを野放しにする。値上げを見越して先買いする。土地の先買いをする。 はいしゃく【拝借】 **拝借**する(顔を。金を。紙とペンを。小遣い銭を。資料を、知恵を。庭先を。耳を)。 ふみたおす【踏み倒す】 **踏み倒す**(借りた金を。勘定を。借金を。宿泊費を。店賃を。部屋代を)。 まえがり【前借り】 **前借り**する(給料を。退職金を)。▼前借する(給料を。原稿料を。賃金を)。 やちん【家賃】 **家賃**が(高い。安い)。ただみたいな家賃で店を借りる=獅子。稼ぎの大半が家賃に消える。家賃を滞納する。払う。口座から引き落とす)。下宿代を払う。店員於公を(催促する。払う)。地代を(集める。支払う)。部屋代がびっくりするほど安い=小川。給料の四分の一以上が部屋代に消える内海。部屋代をとどこおりなく済ませる=佐多。 ゆうし【融資】 **融資**が焼け石に水となる。融資に慎重になる。金融機関からの融資に支隊を来たす内橋。融資を受けられるかどうかが会社の死命を制する"池井戸。銀行から融資を受ける。住宅資金を融資する。融資先が倒産する。リフレッシュ資金を社内融資する=浅川。 りそく【利息】 **利息**が(高い。つく。低い)。アクロバットのごとく利息をかせぐ“星。公定歩合を(引き上げる。引き下げる)。歩を取る。無利子で(金を貸す。融資する)。利上げに踏みきる。利上げを見送る。利下げに踏み切る。利子がばかにならない。利子の払いに追われる。利子を(元本に繰り入れる。日割りで計算する)。利回りが(いい。高い。低い。悪い)。利率が(高い。低い)。利率を(上げる。下げる)。 <310> # 変わる あいかわらず【相変わらず】 **相変わらず**(帰りが遅い。口の減らぬ男。ちっとも変わってない。無表情に黙りこくっている)。相変わらずのひどい渋滞。相も変わらず空いたまま。相も変わらぬ言いぐさ。依然として(空いたまま。疑問が残る。潜伏中。同じ酒場で働いている。口を開こうとしない)。 あらためる【改める】 **改める**(営業方針を。翻然と心を。紋服に身を。悪い風習を。読点を句点に。考え方を根本から)。晴れ着に身を更ふらめる=獅子。愚を改めるにはばかることはない佐山。▼現代風に改める(仮名遣いを。文章を)。口調を改めて言う。書き改める(原稿を。論文を)。改定する(運賃を。基準を。税率を。法律を。料金を)。あっという間に皆の頭を洗脳する連城。怪しい教義で洗脳される。 いってん【一転】 **一転**する(局面が。状況が。情勢が。舞台が。会場の雰囲気が)。一転して真顔になる。異常な食欲が一転して食事拒否のような状態になる"灰谷。楽しいドライブ気分が一転して悪い夢の続きを見ているような気がしてきた内田康。心機一転今までとまったく違ったことにトライする=畑村。 いっぺん【一変】 **一変**する(四囲の景観が。形勢がとんでん返しに。さしもの伝統も。事情がたちまち。新兵器によって合戦の様相が舟橋)。空気が一変する(職場の。世の中の)。事態が一変しそうな不安。童顔を険しく一変させる。 いつもどおり「いつも通り】 **いつも通り**の行動。例によって(例のごとく。例の通り。義理一遍に出席する公崎)。例のごとく大酒をあおる。 いへん【異変】 **異変**体に異変が生じる。▼異変が起こる(新たな。身の上に。ちょっとした)。おぞましい異変が突如として起こる=阿刀田。周辺に異変を感じる。驚天動地の大異変!鈴木四。突如として予期せぬ天異が起こる=阿刀田。天変地異が国土を襲う。 うってかわる【打って変わる】 **打って変わる**今までと打って変わった笑顔を見せる。昨日とは打って変わった充実した気分。先刻とは打って変わった上機嫌。さっきとは打って変わった明るさで笑うつか。さっきまでとは打って変わった態度佐藤春。それまでの快活とは打って変わった真剣さ=川端。たしなめたときとは打って変わったやさしい声志茂田。打って変わってきっぱりと言い放つ。以前とは打って変わって明るくなる。昨日までとは打って変わって元気な様子。先程と打って変わって顔がほころぶ。先刻とは打って変わって愛想のよい笑いを浮かべる=佐野。 かいかく【改革】 **改革**が(腰砕けになる。骨抜きになる。絵に描いた餅に終わる。中途半半端に終わる)。改革の(原点に立つ。旅を振る)。改革は道半ば。社会の根本的改革を意図する。改革する(教育を。国政を。システムを。制度を。大学を。弊風を)。改革案を実行に移す。 かいしょう【改称】 **改称**する(駅名を。チーム名を。名前を。江戸を東京と)。名前を変える。名称を変更する。改名して出直す。 かいはい【改廃】 **改廃**路線の改廃を伴うダイヤ改正。改廃する(例度を。組織を。法律を)。▼統廃合する(省庁を。出先機関を)。 かいへん【改変】 **改変**システムの改変を余儀なくされる畑村。改変する(意識を。教育内容を。社会の構造を。社会の矛盾を。制度を)。▼変改する(言葉が。制度を)。 かえる【変える】 **変える**(川が流路を。環境が人間を。急に話を。偶然が運命を。口紅の色を。攻守所を。拷問にらの趣向を。声の調子を。さっと顔色を。組織の体質を。次々に男を。顔色を蒼白にげに。屈辱を栄光に。資産を現金に。知識を知恵に。負を正に。夢を望みに。一夜にして姿を。いつもの道順を。ころころ発言を。次から次へと相手を。途中でコースを。ボイスチェンジャーで声を。見る見る態度を。世の中の流れを。怒りをエネルギーに。思い出を美しいものに。登録側から届け出制に。任意の大きさに。ちょこまかと細かく場所を奥泉。マニュファクチュアを近代的な大工業に=石田前)。位置を変える(体の。枕の)。▼形を変える(自在に。どんどん)。▼表情を変える(ころっと。庭の木々が日々。入り江が日の光を受けて刻一刻とその=阿刀田)。▼方向を変える(くるりと。流れの)。▼矛先を変える(質問の。話の。非難の)。▼向きを変える(体の。くるりと。船首の)。▼話題を変える(急に。唐突に)。顔色を変えて走ってくる。血相を変えて怒りだす。知らず識しらずのうちに意識しを変えていく干刈。変えない(あまり表情を。顔色一つ。表情一つ。簡単には意見を)。転々と居所を移し変える内橋。一転させる(気分を。心持ちを。表情を)。可変にする(犬きさを。サイズを。長さを。幅を。範囲を)。目の色を違えて騒ぐ。▼デフォルメする(人物を。強調したい部分を。特徴をとらえて)。変換する(悲哀を笑いに。悲劇的な素材を喜劇に。ひらがなを漢字に)。変形する(記憶が。固体が。精神が。物質が)。節を変じる。変造する(カードを。紙幣を)。 かくめい【革命】 **革命**が大きな峠を越える。革命の(狼かくめい煙いっをあげる。血を乗り越える。理想に燃え立つ。風雲が高潮に達する萩原町)。底流に革命の要素が蔵される舟橋。革命を勝利に導く。ラディカルな革命を推進する。革命する(工業生産を。社会を。生産関係を)。革命運動に身を投じる。革命運動を(支持する。弾圧する)。革命思想に共鳴する。革命的精神を(鼓舞する。歪曲はいきする)。社会に革命的風潮が流れ出す。 <311> かす【化す】 **化す**(生ける屍此跡と。一編の物語と。瓦礫談もの街と。紙片が灰と。修羅の巷さまと。人の心が鬼と。炎の広野と。徳をもって人を。一片の思い出と。興奮のるつぼと。この世の地獄図絵と。見渡す限りの焼け野原と。好奇心の権化と=梶尾。人間の抜け殻と山田風)。 がらりと **がらりと**(趣を変える。気が変わる。口潤を変える。語調を変える。世相が変わる。表情を変える。接し方を変える。打って変わった乱暴な口調筒井)。先刻とはがらりと変わった店の空気=黒井。がらりと変わる(口潤が。事情が。態度が。物の見方が。様子が)。がらりと態度を変える。 かわらない【変わらない】 **変わらない**(事態が一向に。いつの世にも。今に至るまで。前とさして。地金はめったに。あの頃と少しも。いくつになっても。小学生の頃から一貫して。性格が大人になっても。見た目には普通と=宮部)。いつに変わらないおだやかな口調世永井路。これと言って変わったこともない。す垒討況も変わったところがない。特に変わった様子はない。別段変わったところはない。変わっていない(一木一草も。往時と。事態は何一つ。少しも。普段とちっとも。幼少時代とあまり。不思議なくらい昔と=小川)。変わりがない(以前とさほど。寸分も)。当面変わりそうにない。日々が変わりなく平穏に過ぎて行く赤川。ちっとも変わらない(いつもと。今までと)。相手変われど主は変わらず。あえて異とするに足らぬ。最前見たときと同じよう。一向にそれらしい様子がない。鉈なたでぶっ切った屁、みたいにテーマの変転にヴァリエーションがない人束。終始一貫している。いつもと(同じ道筋。変わらぬ立ち居振る舞い。変わりない口調。変わりのない一日)。恒常的な現象。温度を恒常的に保つ。十年一日のごとく同じ所作をする=津本。十年一日の如く変わりのないオフィス赤川。前回と同様の結果になる。武士に二言はない。二言もなく服従する。▼不変(永遠に。未来永劫ふ)。変化がない(一向に。表情に。病状に。雰囲気に。これという。す楽も。とりたてて)。わずかな変化も認められない。変化もない(いささかの。何の)。変化もなく毎日が過ぎる。横ばい(売り上げが。支持率が。前年に比べてほぼ)。横ばいで推移する。横ばいを続ける。 かわりばえ【変わり映え】 **変わり映え**同じ顔ぶれで変わり映えがしない灰谷。どこといって変わりばえのしない港"高樹。変わり映えのしない(毎日を送る。だらだらした毎日が過ぎていく三浦し)。変わりばえのしない(暮らし。出し物)。一向に変わり映えしない!辻真。 かわりやすい【変わりやすい】 **変わりやすい**(人の心は。雪国の空は)。人間の心は移ろいやすい。移ろいやすい好悪の感膺。 かわる【変わる】 **変わる**(風の向きが。声の調子が。社会の様態が。周囲の状況が。人生の流れが。ぱっと印象が。藩主の代が。人を見る目が。雨が雪に。疑惑が嫌悪に。苦笑が渋面に。事態が徐々に。好きが嫌いに。無残な姿に。顔色がさっと。戦況が刻々と。見る影もなく。来るたびに様子が。見た途端表情が。かたくなさが傲慢に。信号が赤から青に。不安がおぼろげな期待に。夕暮れが夜の闇に。幼虫がさなぎに。割合がいろいろに。印象がずいぶん。基準がころころ。がらっと人が)。世の中変われば変わるもの。猫の眼のように変わる命令武田奈。いつ何時変わるかもしれない。枕が変わると寝られない。▼雨に変わる(先ほど来の淡雪が"さだ。霧雨が本格的な森瑶)。怒りに変わる(恐怖が。羞恥礼が)。▼大きく変わる(暮らしが。事態が)。くるくるとよく変わる(相手が。表情が。態度が変わる(急に。ころっと。前とは)。一風変わった面白い人物。目先の変わった面白味。▼変わっていく(会うたびに。状況が刻々と。知らず知らず。見る見るうちに顔つきが)。時代はどんどんかわって行く半村。陰日向が刻々に変わって行く=川端。変わっている(明くる日には。いつしか。ちょっと。街の顔が来るたびに=丹羽)。▼変わりつつある(時代の空気が。何かが少しずつ)。時代が大きく変わろうとしている。毛色の変わった(色気。道を歩いた先輩"井上靖)。時代が移り変わる。▼生まれ変わる(次の世に。新しい工業都市に)。変わり果てた(死体が転がっている。姿に声も出ない)。▼変わり果てる(街が。冷たい骸泣くと。信じがたいほど)。あらゆる事物が根底から改変される美濃部。がらっと(機嫌が直る。面目を一新する)。変質する(文化が。ワインが。奨学事業が金融事業に。屈辱感が憎悪に"小林久)。変色する(写真がセピア色に。りんごが茶褐色に)。▼紫色に変色する(顔が。皮膚が)。変じる(驚きが怒りに。疑惑が憎悪に。進路を北に。心を鬼と。顔がさっと蒼白にいらに)。▼激変する(情勢が。政治地図が。天候が)。激変した時代に即応する。手のひらを返すように冷淡になる赤瀬川。掌050を返すように(不機嫌になる。にこにこと上機嫌になる=海音寺)。陰気に沈んでいた顔に手のひらを返したように笑いが浮かぶ"藤沢。それまでほめていたのに、結果が悪いほうに向いてくると手のひらを返したように責める=長崎。手の平をかえしたように陳述をくつがえす野間。暖かい日が三日続いたあと学を返したように冷え込みが厳しい日が来る=高井。態度が学を返したように変わる=梶井。手の裏を返したような優しい言葉が口から出る=丹羽。突然羊の裏を返すように冷たい人になる萩原求裘。 きゅうたいいぜん【旧態依然】 **旧態依然**たる(体錢。世界に切りこむ)。旧態依然としたやり方。旧態依然の亭主関白を夢見る男たち=瀬戸内。因習的な旧態依然の結婚・瀬戸内。依然として旧態のまま。事新しいことは何もない。新味に乏しい。 <312> きゅうへん【急変】 **急変**思いがけぬ急変に茫然都心とする。急変を聞いて駆けつける。急変する(事態が。情勢が。体調が。態度が。天候が。病状が。容態が)。急変した状況が理解できない=高井。急転する(運命が。事態が。情勢が)。事件が急転直下解決する。 くいあらためる【悔い改める】 **悔い改める**(犯した悪業を。前非を。罪を)。改まる(行状が。生活態度が)。心を入れ替える。犯罪人が改心する。改心の見込みがない。非を悔いる。悔俊しして真人間にかえる=野問。改後の情を示す。愚行を改悛する。 こころがわり【心変わり】 **心変わり**相手の心変わりが理解できない。相手の心変わりをむなしくながめている作者の吐息が伝わってくるような歌"竹西。ころころと心変わりする。心境に変化をきたす。他の花へ心が向く=舟橋。秋の空(男心と。女心と)。変心を(責める。なじる。詫びる)。▼気が変わる(あっさり。ころりと。出がけにふっと)。明日になれば気が変わるだろう。 しょうか【昇華】 **昇華**する(恋が愛に。女体が美に。肉欲を精神的な美の様式に=円地)。美しく昇華された思い出が体をやさしく刺激する=山田泳。 せいへん【政変】 **政変**が起こる。政変の機運が濃く漂う。維新の風雲をくぐる。維新を経て新しい時代になる。クーデターが(失敗する。成功する。未遂に終わる)。クーデターで政権を倒す。 たんちょう【単調】 **単調**この上ない生活。単調で耐えがたい労役。単調な(仕事に飽きる。リズム)。コンプレッサーの単調な響き。なんの装飾もない単調な構成光瀬。眠気を誘われるほど単調な回転の音=石坂。浜辺に打ち寄せては返す限りない潮騒乱はのように単調なしかししつつこい繰り返し=島尾。飛行機の爆音が蜜蜂の羽音のように単調な唸ったり大岡。単調に響く雨の音。一日一日が単調に明け暮れる。ともすると単調に陥りがち。バラエティーに乏しい。一本調子で長々としゃべる。一本調子の話し方。火災報知のベルのように野太く一本調子の声=田鳥。千篇一律の(感想文。テレビドラマ)。棒読みする(原稿を。台詞を)。平板で退屈な印象。感情のこもらない平板な物言い勝目。すべてが平板に見える。 つくりかえる【作り変える】 **作り変える**細部を作り変える。店を造り変える。設定を一から作り直す。▼カスタマイズする(車を。設定を。パソコンを。ソフトウエアを。好みに合わせて)。 てんか【転化】 **転化**する(悪意が軽恋に。怒りが殺意に。反対物に。量が質に。苦痛が幸福感に。楽しい旅行が悪夢に。不自然が自然に。自由競争が独占に石田村)。▼転化させる(偶然を必然に。生産手段を資本に)。 てんかい【転回】 **転回**(百八十度の。物の見方のコベルニクス的"中野孝)。▼転回する(逆の方向へと。新しい時代が興り一切の価値批判が萩原则。思想をコペルニクス的に萩原町)。コウモリは羽根が伸縮自在だから電光形に急忙回できる=本多俊。政治の急転回を期待する=津本。 てんかん【転換】 **転換**思いきった発想の転換が必要。イメージの転換に成功する。重大な転換の契機を取り逃がす。根本的な転換を強いられる。産業構造の転換を迫られる。転換する(外交姿勢を。旧来の発想を。時代が大きく。行き詰まった政治を。思いきって方向を。強硬路線から柔軟路線に。不利な立場を有利に。単独行動主義から協調主義へ)。百八十度転換した戦後の新教育夏樹。▼大転換(歴史的な。百八十度の)。イメージチェンジを計る。人生の転機が訪れる。またとない大きい転機が来る。神が運んでくれる自然の転機を素直に受け入れる=想。 てんこう【転向】 **転向**(運命的な。百八十度の)。転向を(強要する。拒否する。正当化する。表明する)。転向する(右翼に。アマチュアからプロに。拷問にらにたえかねて)。上衣を着替えるように思想を変える辻井。 にてんさんてん【二転三転】 **二転三転**どんでん返しというスリリングなストーリー竹内。体が二転三転と揉もみくちゃになる。気持ちが二転三転と大きく揺れ動く熊谷。二転三転する(供述が。方針が。乱世の形相が。推理小説のように事件が=遠藤)。終局で二転三転する軽妙な意外性三輪。 ばける【化ける】 **化ける**(狐がお姫様に。妖怪が人間に。凶悪な意志は容易に優しい言葉に"島田)。うらめしゃと化けて出る。客に化けて潜りこむ。 へんか【変化】 **変化**(身の上に降りかかった小さな"曽野。思いがけない心境の瀬戸内。人形に魂が注入されて行くような表情の前久)。さして外見に変化がない。心境に変化がある。表情に変化が現れる。▼変化が起きる(内部に密かな。感情に)。▼変化が起こる(構造的な。急激に。心に。徐々に。生活に)。変化に必死になってついて行こうとする=氷室。大きな変化に直面する。画風の変化に驚く。環境の変化に耐える。感情の変化に目を見張る。急激な変化についていけない。生活の変化に気もそぞろ。天地取り違えたような環境の変化にとまどう野坂。天地も顔動に认する大きな変化に身をさらされる=本庄。変化の兆しがある。内部の変化を押し隠す。口調の変化を敏感に嗅ぎとる=明高。表情の微妙な変化を読み取る藤本。状況の変化に気づく。状況の変化を待つ。▼刻々と変化する(情勢が。戦況が)。変化する(ことを余儀なくされる。スピードに追いつけない=高橋源)。▼変化する(猛烈な勢いで。物事が著しく。刻一刻と状況が。顔色が土気色に。色合いが少しずつ)。流行の婦人服のように絶えず変化している研究題目=野上。▼微妙に変化する(色合いが。雰朗気が)。三日見ぬ間の桜。あまりの変わり方に気も転倒する。自分で自分の変わり方に照れる芝木。あまりの変わりようにびっくりする。街の変わりように驚く。様変わりの早さにたまげる。町がすっかり様変わりする。微妙な変化曲折を与える。曲折を経る。心理が曲折を極める。官能的なシンコペーションをつけた奏法"松浦。千変万化せんがんの(玄妙ぶり。試みを次々と行う)。相手の動きに応じて千変万化の術を繰り出す隆。変幻きわまりない宇宙。男女関係の変幻極まりない世界円地。変幻自在に形を変える。モチーフが様々に変奏される。▼早変わりする(舞台の上で。ソファーがベッドに)。早変わりが呼び物の芝居。▼バリエーション(多彩な。豊富な)。攻撃にバリエーションが出る。 <313> へんかく【変革】 **変革**往々にしてひょいとしたきっかけから始まる政治変革高橋知。変革が不発に終わる。組織の変革に乗り出す。激しい変革の怒濤との逆巻く時代"辻井。政治の変革を求める。変革する(経済構造を。国家組織を。システムを。生産体系を)。時代の変革期を迎える。反体制運動に共感する。革新の風が吹き込む。保守革新を問わず。革新的な(政治思想。政策を打ち出す)。 へんこう【変更】 **変更**政策に大きな変更が生じる。変更の必要が生じる。解釈の変更を余儀なくされる。変更する(計画を。コースを。作業手順を。方針を。行く先を。予定を。新たな区分に)。車線変更を繰り返す。日程変更を連絡する。 へんそう【変装】 **変装**を見抜く。▼変装する(老人に。野暮ったく)。仮装を(つける。整える。まとう)。着ぐるみを(つける。脱ぐ)。男装の麗人。扮ょんする(主役に。ピエロに。妖婦に。老人に)。アニメのキャラクターに扮装する。見慣れぬ扮装に変わる。 へんしん【変身】 **変身**する(男が送り狼に。束の間の有名人に)。古今東西の月にまつわる変身譚くひんやら怪異譚やらが脳内に渦巻く三浦し。あまりの変身ぶりに驚く。 へんてん【変転】 **変転**時勢の変転に際してうろたえ騒ぐ津本。人の世の変転はわからない。変転する(くるくると局面が。世がめまぐるしいほど=海音寺)。変転極まりない応対に悩まされる=津本。変にきわまりなき時局に直面する=山手。環境が常に変転する。変転常なき(生活。人生の急行列車人間)。変転絶え間なき流れ。 へんどう【変動】 **変動**需要と供給の変動に左右される。変動の渦中に投げこまれる。▼変動する(株価が。リスクが。小刻みに。年ごとに。大きく。日々)。狂瀾怒濤にいらの時代の波をかぶる。地殻変動が(起こる。続く)。▼風雲(革命の。幕末維新の)。風雲急を告げる。血気の若者が遠く風雲を望む=多岐川。 へんぼう【変貌】 **変貌**一口に語りつくせぬほど大きな変貌"有吉。景色が土地開発で見違えるほどの変貌を遂げる鈴木光。▼変貌する(蛹きなが蝶に変貌するように姿が=中村真。可憐な少女が深情けの鬼婆に=瀬戸内。別人のような形相に阿久。日々を重ねるにつれ目に見えて美しく=刀田)。開きしにまさる変貌ぶり。豹変心はうする(違う人間に。がらっと態度が。交易船が海城に)。▼変容する(意識が。意味が。夢が)。 ほしゅ【保守】 **保守**リベラルと保守が対立する。保守の(牙城。金城湯池)。線路を保守する。保守点検をいい加減にしておく。守旧派がのさばる。守旧を(打ち破る。よしとする)。 ほしゅてき【保守的】 **保守的**な(傾向が強い。色彩が強い。思想。政治家。土地柄。人間)。自己保存欲の強い保守的な生活「中村貞。保守的に物を考える。保守色が(強い。濃厚)。 むけかえる【向け変える】 **向けかえる**(顔を。関心を。気を。扇風機を。膝を)。▼向け直す(顔を。体を。銃口を。馬首を)。 やくす【訳す】 **訳す**(英文を。英語に。各国語に)。現代風な口調で意訳する。▼誤訳する(英語を。外国語を)。通訳する(英語を。外国語を。言葉を。要点を)。下沢を(頼む。使う。任せる)。通辞の饒舌が無意味な言葉のように耳を素通りしていく遠藤。適切な訳語。適当な訳語がない。▼訳出する(英語の文献を。原書の一部を。海外の出版物を。外国語の論文を)。外国語の講演を訳述する。訳書を(参考にする。出版する。読む)。訳注を(書きたす。つける)。訳筆が進まない。訳筆を振るう。訳文に手を加える。訳文を(覚える。書き写す)。日本語の訳を当てる。直訳と意訳を比べる。直訳する(外国語を。文芸思潮を。論文を)。逐語的な翻訳。逐語的に訳す。翻訳が(進む。一行も進まない)。厖大畑にな翻訳の仕事を完成する=小沼。一翻訳する(印象を言葉に。各国語に)。生硬な翻訳調。 りんきおうへん【臨機応変】 **臨機応変**に(考える。処理する。データを活用する)。政局に臨機応変に対応する。臨機応変の処置をとる。問然するところのない臨機応変ぶり。時間的に融通が利く。変化と融通性に富む。 れいねん【例年】 **例年**雪が少ない。例年に比べて(厳しい暑さ。花の見頃は遅れている)。例年にも増して雨が少ない。例年より(芽立ちが早い。寒さが早く訪れる。早く梅雨が来る)。毎年のように(海を訪ねる。が絶えない)。例年のように嵐が襲う。例年にない(酷暑。不作。豊漁が続く)。例年になく(暖かい冬。季節が遅れる。冬の寒さが厳しい)。毎年の恒例になる。毎年(恒例の集まり。続けていく)。時節を違えず毎年花を咲かせる。平年より早い桜の便り。平年を(上回る。下回る)。平年並みの(気温。出来)。 <314> # 考える あたま【頭】 **頭**(白のような。南瓜分破のようにゴロゴロしている=小林多。睡眠不足のために朦朧としている=大庭。熱の引ききらぬ混濁した三島。ばさばさに髪の乱れた=石川)。頭が(活発に働く。ずきんと鳴る。一瞬バニックになる。かっと熱くなる。からっぽになる。冴えて寝つかれない。次第にはっきりしてくる。正常に回転する。つるつるに禿じげる。海の中にかくれ波にもまれた思いこみのようにぽっかりと姿を見せる!遠藤。数で一杯になって割れんばかりになる小島。乾いた海綿のように軽くカサカサする志賀。機械仕掛けのようにゆっくりと動く“中村災。腐った野菜のようにあちこちぶよぶよになる内田巻。しんの方まで凍っているように痺しびれる=中河。他人の物みたいに重い古井。暴風のように廻転する谷崎。火照ったままふくらみきったように重く感じられる=勝目。ぼんやりするくらいに感激する=乃南)。薬で頭が変になる。自分のことで頭がいっぱいになる。ショックで頭が混乱する。熱意に頭が下がる。他のことに頭が回らない。枕から頭が上がらない。目がくらんだようにふらふらと頭が揺れる=梅本。湯気にあたって頭がクラクラする―武田泰。頭から(爪弾きにする。打ち消しにかかる。すっぽりかぶる。ずぶ濡れになる。ばくっと食べる。押さえるように言う石川。突っ込むようにして倒れる=勝目)。ぐいぐい頭から潜り込む。床に頭からのめる。頭から水を(かぶる。ぶっかける)。なま乾きのセメントのような頭で考える=阿刀田。頭に(手を置く。変調を来す。包帯を巻く。余裕がない。裂傷を負う。かっと血がのぼる。げんこつを見舞う。情報をたたきこむ。はちまきをする。饅頭笠ほん託を縛りつける。問題がこびりつく)。アイデアが頭にひらめく。一応頭に入れておく。今の今まで頭に浮かばずにいた。書かれてあることが頭に入らない。羽飾りを頭につける。頭に血が(逆流する。上る思い)。頭の(皮を剥ぐ。切れる秀才。程度を疑う。鉢が広い。いかれかけた女。奥がジーンとしびれる。細胞がイキのいい魚みたいにぴちぴちしている富岡)。不安が頭の隅をかすめる。頭の回転が(遅い。鈍る)。頭の回転の早い男。頭の片隅でちらと考える。頭の片隅を疑惑が走る。頭の働きが(鈍い。悪い)。頭を(七三に分ける。虎刈りにする。ぼかっと殴る。丸刈りにする。ぐいぐいこすりつける。坊主刈りにする。速度のゆるんできた独楽こまのように動かす野間。床にすりつけて謝る=内田春)。怒りが頭を占める。椅子の背に頭をもたせる。氷で頭を冷やす。直感が頭を走り抜ける。つるりと頭をなでる。慢性的な赤字に頭を悩ます。珈頬吵いしを起こした子供のように続けざまに頭を打つ=松浦。栗のような頭をした男"野間。言葉が走馬灯のごとく頭を駆けめぐる=村松。疲れきった人のように頭をうなだれて歩く=井伏。熱病患者のように濁りきった頭を持て余す有島。▼頭を上げる(昂然ぞらと。ひょいと。むっくり)。頭を掻かく(照れ隠しに。ぼりぼりと。ばつが悪そうに。言い訳がましく)。▼頭をかすめる(考えが。疑念が。恐怖が。不安が。予感が)。頭を下げて頼む。お得意様に頭を下げて回る。詫ゃびるように小さく頭をさげる"人間。どこかしら意志的な雰囲気が漂う。意思疎通がを追い払うように荻野。子供のようにこくんと黒井。眠気を振り払うように佐藤愛)。イヤイヤをするように頭をゆるく二三度振る=小林多。ゼンマイ人形みたいにいつまでも頭を振りつづける古井。 あたまのしん【頭の芯】 **頭の芯**が(しびれる。ほうっとする)。声が頭の芯にこびりついて離れない!佐藤愛。泣き声が頭の芯に突き通る=中沢。 あたまのなか【頭の中】 **頭の中**が(白紙になる。思いつきでいっぱいになる。痺しぃれて何も考えることができない=小林信。白く溶け落ちるような衝撃高樹。真空のように冷たく凍りつく=島尾。広々とした雪の草原のように真っ白になる=小川。月夜の世界のようにひっそりと明るい=石坂)。息苦しいくらい頭の中が一杯=小川。頭の中で(憤りが渦を巻く。考えをこねくり回す。ざっと計算する)。頭の中に(靄もゃがかかる。熱い砂が詰まったような気分!倉橋)。頭のなかに白い窓のようなものが広がる=小林久。頭の中を(整理する。思考が駆けめぐる)。 いし【意思】 **意思**口振りに軽度の意思が表れる。互いの意思が通じ合う。眉宇につよい意志があらわれる=山本周。意思がない(戦う。離婚の)。己の意志で敢然と死に赴く=貫井。自分の意志に従う。本人の意思にまかせる。意思の有無を確かめる。意志の力が衰える。意志の力でコントロールする。▼意志のない存在(石のように。花のように)。結婚する意思は毛頭ない。意志を全身にみなぎらせる。アルコールが意志を麻痺まひさせる。はっきりと自分の意志を表明する。復讐しの意志を行動に移す。不退転の意志を貫く。電光石火に意志を決定する=北。意思を明確に示す。国民の意思を代表する。▼意志を伝える(明確な。神の)。▶意志を持つ(確固たる。強い)。自分の意思で(幸福な道を選ぶ。右か左かを決める)。意志的で行動的なおつむが弱い。金儲け泣けしか頭にない。頭一つ高い。頭部をピストルで撃たれる。長男を頭に三人の子供がいる。控えおろう、頭が高い=飯田。頭を叩く。頭を(こつんと叩く。びたびた叩く。おどけたようにたたくㄓ月)。棒で頭を叩かれる。▼頭を振る(嫌なものを見てしまったというふうに小林多。考えを振り落とすようにゆっくり“原田康。記憶にかかった。意思疎通のチャンネルを遮断する=横山。意思統一して団交に臨む。▼意思表示する(まっさきに。ちらりと)。 <315> # おもいめぐらす【思い巡らす」 **意思統一して団交に臨む。** ▼意思表示する(まっさきに。ちらりと)。 **▼思いめぐらす(さまざまに。頭の中で。あれやこれや。先の先まで。」去を夢のように=佐藤巻)。古き良き時代を思いふける。結婚の日を思い見る。考え巡らす(結果を。こっちゃに。あれこれ。いろんな事柄を)。** # かえりみない【顧みない】 **▼顧みない(人命を。浅学非才を。身の危険を。社会的な役割を)。** ▼迷惑を顧みない(他人の。周りの)。一顧だに与えない。部屋の汚さを一願だにしない。一願の注意も払わない。一順もせずに出て行く。背を向ける(過去に。冷ややかに)。 # かえりみる【顧みる】 **▼顧みる(幼い時を。自分の行為を。一転してわが身の上を=森聡)。捨てて願みる者がない。他を顧みる(暇却とがない。ゆとりがない)。一願の(価値もない。値打ちもない)。** # かちかん【価値観】 **▼価値観(多様な。お仕着せの。偏見に満ちた。ゆがんだ)。価値観が(多様になる。違う)。異なる価値観に直面する。自分の価値観を押しつける。他の価値観を包摂する。古い価値観を死守する。人生観が変わるような事件。世界観に裏打ちされた行為。人間観(複雑な。ユーモラスな。楽天的な)。** # かんがえ【考え】 **考え(ずいぶん驕ぉこりたかぶった。一見馬鹿げた妄想のような黒岩。責任を逃れようとするずるい=永井荷)。下手の考え休むに似たり。考えが(頭を去らない。念頭に浮かぶ。がらりと変わる。ころっと変わる。ちらりと浮かぶ。とりとめなく浮かぶ。ひょいと浮かぶ。まるっきり反対。脈絡なく浮かぶ。楽天的な方向に傾く。頭の中で白い光を放つて爆発する"有栖川。混沌にふとして雲のごとくに動く=夏目。神経質な手のようにはげしく揺れ動く=清水俊。何処とこからともなく頭を擦もたげてくる=谷崎。「揺れ動く無数の薬草のようにゆらゆらとたゆたうに中島敦。頭の中で二十日鼠品や砂のようにはげしく働く有島)。頭の中で考えがひしめき合う。若い時分の考えがいまだに抜けない。さまざまな考えがばっぱっぱっと頭の中で点って消える=有吉。なやましい考えが心にしつこく巣喰う~島尾。考えに筋が通っている。相手の考えに同調する。考えにふける(ぼんやり。遠い一点に心を絞るように=高樹)。考えを(口に出す。実行に移す。都合のいい方に持っていく)。相手の考えを隊重する。戦争に批判的な考えを持つ。茶目っ気のある考えを起こす。頭に浮かんだ考えを整理するようにつぶやき続ける=西木。カメレオンみたいにその時々によって考えを変える=石森。自分の考えをまとめようとするかのように動かずじっとしている=野間。火のように考えを胸に燃やす=山田美。考えことでもするかのように黙り込む=堀。** ▼思ぉにし召し(神の。仏様の)。未来を見据えた賢慮。賢慮が必要な時。ご高説を拝聴する。▼趣意(設立の。募金の)。主旨を(説明する。ほかして言う)。検視の所見が出る。所見をカルテに書く。▼総意(クラスの。国民の)。▼通念(社会の。陳腐化した)。通念への安易なもたれかかり。定義づけを試みる。考えがまとまる。ボンと筒が抜けるように工夫がつく=獅子。ばらばらにちらばっていたバズルの断片が一つの図柄を構成していくような感じ=小池。▼思索(哲学的な。透徹した。深い)。思索にふける。思索の壁が屈辱というちかちかと寒く光る色でいちめんに塗りつぶされる=有鳥。行うとはより明確な思索の仕方=中局效。 # かんがえあわせる【考え合わせる】 **▼考え合わせる(諸般の事情を。背景と心境を。諸々の条件を。両者を。いろいろ。全体とのバランスを。その後の歩みを)。** ▼思い合わせる(因縁を。気性を。境遇を。行状具合を)。▼思い比べる(今と未来を。運命を。昔と今を)。▼にらみ合わせる(条件を。品質と値段を。懐具合を)。▼勘案する(諸事情を。バランスを。必要性を)。諸要素を勘案して計画を立てる。 # かんがえかた【考え方】 **世間と違った考え方。考え方に(差が生じる。ずれを感じる)。形而上学的沿松じじまな考え方にはまりこむ。末期症的な考え方に陥る。合理的な考え方を身につける。物は考えよう。既成の学術的概念に縛られる。概念を(根本から変える。明催に定義する)。巧みに弁証法を駆使する。社会改革の理念に燃える。コンセプトが(曖昧。ユニーク。しっかりしている)。コンセプト作りから関わる。唯物論と観念論の間を動揺する=森公。唯物論を体系化する。** # かんがえこむ【考え込む】 **▼考えこむ(頭を抱えて。色を失って。真剣な表情で。頬杖をついて。眉を寄せて。顎を撫でながら。思いつめた顔で。口答えもできず黙って。暗い気持ちのまま。言葉を選ぶかのように。しばらく立ち止まって。途方に暮れた顔で。額に手を当てて。本の山を前にして。しかつめらしく腕を組んで=杉本。眉間に深い欲しもを寄せて=古井)。遠いところを見るような眼をして考え込む人米。じっと考え込む(腕を共にまいて。催眠術にかかったように目を宙に据えて=内田脈)。** ▶考え込んでいる(言葉が耳に入らないほど、菊池。寝もやらずじっと=福永)。考えこむようにバンフレットを覗のぞきこむ=伊集院。考え込むように人差し指を頬にあてる=原田康。眉をひそめて沈思する。腕組みをして考え込む。腕組みをしたまま目を閉じる。 # かんがえない【考えない】 **▼考えない(あまり深く。一切。毛の先ほども。露ほども)。自分のことしか考えないエゴイスト。後先も考えず突っ走る。何も考えず歩き続ける。後先を考えずに口を滑らす。あえて考えてみようとしない。考えていない(まるきり。夢にも)。今まで考えてもみない。かりそめにも考えに浮かぶことのない動き。 <316> # か **かんだことはない本庄。** さらさら考えもしない。深く前後を考えもせずに放言する。後先の考えもなく手紙を投函する。前後の考えもなく逃げ出す。深く考えようとしない。意識しない(一切。全く)。思い及ばない(夢にも。他人の苦しみには)。行くなど思いも寄らない。思考が停止する。しばし思考停止の状態。思考を(断ち切る。中断する)。一切の思考を拒否する"野坂。利得しか念頭にない。 **かんがえなおす【考え直す】** ▼考え直す(時間割を。対策を。一から。もう一度。大原則に戻って)。思い直す(すぐに。その都度)。▼練り直す(計画を。戦略を。ブランを)。再考の(余地がある。余地はない)。対応を再考する。自分の立場を再考三思する。 **かんがえぬく【考え抜く】** ▼考え抜く(考えに。自分なりに。あれこれ。徹宵して。必死で)。考え抜かれた(計画。方針)。場当たり的でない考え抜かれた長期政策荒巻。考え明かす(一句一章を。朝まで。一晩)。一心に考え詰める。突きつめた(強い表情。話し合い)。▶突きつめる(魂のあり方を。問題を。論理的に。とことんまで)。 **かんがえられない【考えられない】** ▼考えられない(絶対に。依然として。これ以上は。常識では。とうてい。何一つ。普通では。頭が混乱して何も。疑惑の宙吊り状態では何にも=房田)。▼及ばない(その先に考えが。常人には考えも)。考えが同じところをぐるぐる廻ってばかりいる=中島救。考えようがない(ほかに。それ以外)。考えをまとめようとしても脳が沸騰して泡立っているようで駄目=加賀。思案にあまる。思考が一向にまとまらない。 **かんがえる【考える】** 夜もろくに眠らないほど考えつづける=宮本百。考える(気力がない。時間が欲しい。力を失う。習慣を身につける)。考える(言葉の意味を。最悪の場合を。真剣に結婚を。次なる策を。他の道を。万一の場合を。冷静に物事を。弁証法的に。折にふれて。気をまわして。先から先へと。事物に即して。人生を甘く。筋道を立てて。知恵を絞って。突きつめて。一皮むいて。暇にまかせて。真心を第一と。むきになって。夢見るように。欲も得もなく。あの手この手を。けち臭いことを。大それたことを。保守的にものを。物事を形而上的ふ化とに。一歩掘り下げて。腰を落ち着けて。さまざまな角度から。自分に当てはめて。問題を煎じ詰めて。何とかごまかそうと。他人事ごとのように。深く突っ込んで。ほんやり考えるともなく。物事をきちんと。問題を単純化させて。わが身に照らして。いっそのこと逃げてしまおうかと内田百。首のすわらない子どもみたいにゆらゆら揺れている頭でぼんやり内田卷。仔細らしく悪ぁごの下の髯ひげを握って何か"夏目。びっくりしたように小首をかしげながら=横光。理非由直をぼつぼつと中)。深く考える余裕がない。自分のことを考えるだけで精一杯。▼頭で考える(寝惚ねはけた。朦朧とした)。難しい試験のようにしばらく考える=岡本。考え考え(答える。言葉を継ぐ)。考えた跡が読み取れる。いろいろと考えた揚げ句のこと。しばらく考えた末に言う。考えただけでも(へどが出る。とろけそうな気分)。考え続ける(一つのことを。長い間。昼も夜も。帳転反側はんこいしながら)。くよくよと考えて思い悩む。自分の頭で考えて行動する。冷静に考えて選択する。考えていたほど(つらくはない。難しくない)。考えている(一日中。明けても暮れても。いつまでもくよくよと。いつもぼんやり何か。寝ても覚めても)。何を考えているのか分からない。よく考えてから物を言う。考えても(無駄。仕方のない思考の毒が体中に回る=吉本)。あれこれ考えても埒らちがあかない。考えても分からない(いくら。どう)。親身になって考えてやる。考えに考えた(上でのこと。末に下した決断)。考えれば考えるほど(痛しょにさわる。不安が増大する。分からなくなる。名案に思えてくる"熊谷)。どう考えても(不可解。不思議)。つくづく考えさせられる。考えられる答えは一つしかない三好徹。万一起こるかもしれないと考えられる事態"黒井。頭をフル回転させる。小首を傾ける。はてと小首をひねる。頭脳をありったけ回転させる=泉俊。脳味噌を絞る。問題点を掘り下げる。早手回しに考えすぎる。暑さを身に感じる閑ぃまもないほど考え胱、ふける=佐藤発考え回す(さまざまに。あれこれと。埒もなく)。一考の(価値がある。余地が残る)。考証がしっかりしている。様式考証が発達する。時代考証を担当する。中断された思惟が頭の片隅でくすぶる。歴史を思惟しぃする。熟慮の末に出した結論。とことんまで熟考する。悲考に熟考を重ねる。事の是非を思量する。とりとめのない思量にふける。長考に(入る。ふける)。俗事を離れて沈思黙考する。沈思考にふける。沈思黙考の果てに買収を諦める=辻井。▼判じる(言葉の裏を。夢を)。▼算盤を弾く(好色な。頭の中で。抜け目なく)。 **かんねん【観念】** 観念と(肉体との乖離けい。現実に起こる問題を折衷する=高橋和)。観念に血脈を与える。時間の観念に乏しい。服従という観念に欠ける。観念をくっきりと植えつける。事実と観念を区別する。二つの観念を結びつける。時間の観念がおぼつかなくなる。義務観念にとらわれる。経済観念が乏しい。 **けんとう【検討】** 検討をなおざりにする。▼検討する(調査方法を。入山コースを。残された点を。費用対効果を。早急に。前向きに。事前に充分。上司に酔って。本腰を入れて。あらゆる可能性を。じっくり内容を。細部にわたって。さまざまな角度から。納得が行くまで。生物学的な特徴を"景山。答えるのが得策かどうか伊坂)。全面的に再検討を迫られている。慎重に比較検討する。 <317> # 考える―103 **こうさつ【考察】** ▼考察する(精神構造を。渡来の経路を。文明を。歴史を。事態をじっくりと)。考究する(地方差を。問題を)。▼論究する(学説の当否を。昨今の情勢を)。 **こうとうぶ【後頭部】** ▼後頭部(髪のさびしいタワシのような"小島。地肌が透けて見える=高杉)。後頭部が鉛のようにどんより重い谷崎。後頭部に(一撃を加える。痙墾心が走る)。後頭部を(殴られて昏倒に认する。鈍器で殴打されたような衝撃「氷室)。壁に後頭部をぶつける。 **こうりょ【考慮】** 実際的な考慮が足りない。▼考慮に入れる(社会の変化を。十分に)。考慮する(時間のロスを。自殺の恐れを。社会的背景を。進展状況を。反対意見を。遺族の悲しみを。社会に及ぼす影響を。すべてのケースを)。現実的な勘定が働く。▼勘定に入れる(食い扶持を。性格を。道路の混雑を。広さを。あらゆる可能性を=江戸川)。▶計算に入れる(運動の状態を。あらかじめ。意識のあり方を。男性であることを)。 **しあん【思案】** いい思案が浮かばない。思案に(屈した顔。思案を重ねる)。しばし思案に暮れる。とつおいつの思案に日を暮らす「山田美。頬杖をつきながら思案に耽ふける=丸谷。思案の(首をかしげる。臍はきを固める。溜め息を漏らす。道をさまよい歩く)。およそ思案の外だか。あれこれ思糸をめぐらせる。とつおいつ思茶をめぐらす。▼思案する(明日食う米を。先の先まで。さてどうしたものかと。額に手を当てて。腕を組み天井を呪にらんで=隆)。思浴するように足の指という指をじっとたわめる三島。何かを思案するように視線を宙に這わせる=西木。思茶ありげに肩までまるめて歩く=藤沢。思案顔で首をひねる。ぼんやりした思案げな声。思案投げ首で座りこむ。思案投げ首という恰好いうでのどかに坐りこむ=川端。 **しこう【思考】** 息苦しくなるほど論理的な思考斎藤栄。思考が(一旦途切れる。整序を保つ。鈍重になる。大混乱を始める)。頭の中を思考が乱舞する。頭の中を様々な思考が駆けめぐる=泉優。岩をも砕く波の勢いでいろいろな思考がめまぐるしく脳の中を駆けめぐる歳沢。断片的な思考が頭の中で渦巻く=梶尾。逃げまどう風ゆずの群れみたいに思考があらぬかたに散乱する=奥泉。思考にブレーキがかかる。難解な迷路のような思考に吸いこまれていきそう贅沢。ファッション的思考に凝り固まった人物"鈴木四。思考の(埒外に置く。流れが中断する。迷路に入りこむ。秩序がボロボロ剣げ落ちる=島田。沼地に足を踏み入れる内橋)。▼思考の持ち主(現実的な。ごく一般的な)。思考をブラスに転じる。主体的な思考を続ける。理知的な思考を働かせる。たじろいだように思考をつまらせる=大原。思考回路に被害妄想の渦ができる鳥田。思考力(卓越した。不限のためにとりとめもなくなった堀)。思考力が完全に麻痺まぃする。若々しい思考力の持ち主。思考力を失う。 **しりょ【思慮】** 思慮が胸にひらめく。あまりにも思慮のない行動。思慮も分別も定まった年輩=海音寺。思慮ありげな表情。思慮ありげに言う。思慮分別ありげな落ちついた口調"太宰。思慮分別に欠ける。心ある人々を驚かす。一軍の勝敗だけを念慮する。思慮深い(言葉。人物)。考え深い目つきで見つめる。考え深げな目でうなずく。 **ずのう【頭脳】** ▼頭脳(一滴の水も洩もらすまいとする緻密な林京。眠り足りたスポンジのような宮本百)。頭脳が(正常に働く。氷点下の泥沼のように凍結して一時活動を停止する=木山)。若い頭脳が機械のように正確に動作する=柴田翔。頭脳に(徴かびが生える。快い刺激を与える)。鋭いかみそりのような頭脳の持ち主!美濃部。頭脳的ブレーが光る。 **そうてい【想定】** ▼想定する(いくつかの場合を。起こりうる失敗を)。▼事態を想定する(最悪の。大地震が起きたときの=柳田)。仮想上の敵。仮想と現実の区別がつかない。仮定に(符合する。基づいてしゃべる)。仮定に基づく推測。仮定の質問をくどくどと繰り返す。仮定する(存在を。有利な立場を)。 **のう【脳】** 脳が(反乱を起こす。唸っょりを上げて急回転を始める=横山)。脳に(変調を起こす。血液を供給する)。刺激が脳に伝わる。脳の(コンピュータが恐ろしい速さで働く倉橋。正常な働きが損なわれる=鈴木光)。脳漿らしが流れ出るほどの深手。疲れた脳髄をほぐす。脳味噌が(空っぽ。足りない。詰まっている)。言葉が脳味噌に深く突き刺さる=井上ひ。澱ょどんだ沼のような脳味噌に光と新鮮な酸素を送る"島田。脳味噌を絞って考え抜く=氷室。睡魔が急に脳味噌を湯とぅかすように襲ってくる=阿刀田。 **のうてん【脳天】** 脳天から(唐竹割りにする。血しぶきのうてんをあげる=山田風。抜けるような声を発する三好後)。ジーンというしびれが脳天からつま先へ突き抜ける飯田。脳天に(快感が走る。穴が開いてそこから吹き出てくるような声=曽野。突き抜けるような悲鳴隆。響くほど虫歯が痛い!向田)。脳天の毛が禿げ上がる。脳天まで痛みが走る。脳天をトンカチで叩くような感じの音楽"于刈。 **ふんべつ【分別】** 分別が(定まる。中年男の分別がある。分別と諦めをすり替える。分別に富む。大人の分別に汚されていない。分別のある高齢者。分別を(心得る。知る。働かせる。持って生きる。わきまえる。失わしむるほどの怒りにかりたてるにじゅうぶんな言葉光瀬)。心を静めて分別する。分別臭い(言い方。腕組みをする)。年齢に似合わぬ分別くさい顔で言う北原。分別臭く言ってのける。わきまえがつく。わきまえを持つ。 <318> # 関係する・関わる **あいだがら【間柄】** ▼間柄(遠慮の不要な。気心の知れた。旧知の。ごく親しい。仲のいい。心の底では許し合えない。気軽に言葉が交わせる=高橋治。恋人や自分の体のことを隠さず話せる"高樹。詩筒の往反心心織るがごとき「森思。すっかり許し合った=福永。たまたま顔を合わせただけの=和久。強い糸で結ばれた=村松。年来懇意にしている=森陽。不倶戴天心ではの仇敵まったく見ず知らずの和久)。昨日今日の間柄ではない。 **あかのたにん【赤の他人】** ▼赤の他人(全くの。見も知らぬ。面識もない。名即も分からない)。赤の他人とは思えない。赤の他人のような顔をする。赤の他人のように疎遠な日々藤沢。何の血のつながりもない。 **あずかる【与る】** ▼与る(ご相伴に。天下の政ぶりに。思いがけぬ余禄に。格別のお引き立てに。たんまりご褒美に。会社の内部の秘密に=城山。高度経済成長の恩沢に=高井。店の経営の相談に『高井)。 **えん【縁】** あまりに釣り合わない縁。緑が(薄い。遠い。深い)。よくよく縁がある。縁で結ばれる。不思議な縁でめぐり会う。金の切れ目は縁の切れ目。緑は異なもの味なもの=落語。緑を(神に感謝する。粗略にする。大事にする。元に戻す。離れて流浪の身となる=高橋克)。浅かった縁を補う。縁の妙味を噛み締める=山本一。縁故を頼って疎開する。緑故で就職する。強力なコネがある。コネで就職する。親父のコネを利用する。王家にゆかりのある人。村にゆかりのある成功者。▼よしみ(近所の。同郷の。同窓の。昔の。同じ会社という)。親類のよしみで頼む。▼縁を切る(過去と。義兄弟の。金輪際)。博奕誠くとはきっぱり縁を切った藤沢。早晚縁を切らねばならない二葉亭。びしゃっと縁を切られる。絶縁状を叩きつける。悪い仲間ときっぱり手を切る。 **えんどおい【縁遠い】** ▼縁遠い(結婚に。病気とは。想像するイメージとはおよそ)。縁遠い娘。陰謀めいたものとは縁遠い人柄。幸せに縁遠い人々。縁談が不縁に終わる。夫と不縁になる。釣り合わぬは不縁のもと。不緑のまま一生を終える。 **かかわりあう【関わり合う】** ▼関わり合う(事故に。政治に)。何らかの関わりを持つ。事件に一枚噛んでいる。掛かり合う(つまらない女に。酔っ払いの喧嘩炒んに)。関係する(工事に。犯罪に)。 **かかわる【関わる】** ▼関わる(お家の大事に。男の沽券にげに。親の威信に。国会の品位に。計画段階から。コンセプト作りから)。命に関わる傷。作品の本質に関わる部分。生死に関わる危難。一生に関する重大問題。車に関する情報。細部に関する最終的な詰め。仕事に関する話。現代にコミットする問題。他者の関与が一目瞭然。現象に関与するバラメーターを調べる。▶関与する(口利きに。事件に。テロに。秘密に)。秘密に関与する。あまり関わりがない。関わり合いになるのを恐れる。あまり関わり合いになりたくない。商売女にかかわり合うのは病気がこわい=日野。 **かくかい【各界】** 各界から論客を募る。各界の名士を集める。楽壇に(新風を送る。認められる)。画壇に名をはせる。歌壇を風靡ぶぅする。俳壇の(一匹狼。大御所)。文壇から吸殺される。文壇に地歩を占める。颯爽ぞっとして文壇を席捲性にする今呎。論壇に一石を投じる。学界に燦然やんたる光彩を放つ。学界の(注目を浴びる。発展に尽くす)。官界の大物。業界(勢いのある。生き馬の目を抜く)。業界きってのやり手。業界にさきがけて開発に乗り出す。柴田翔。財界(活動から退く。切っての実力者)。贈収賄事件が政界全体へ広がる=高村蔵。政界に野心がある。政界の内幕を暴く。政界を揺るがす事件。 **かたがき【肩書】** 大学教授という社会的な肩書"小林久。肩書が(物を言う。自然に働いてくれる=坂口)。肩書の(重みに押しつぶされる。要らない裃いいを脱いだ晩餐会似心三浦哲)。肩書を振りまわす。今年は無冠に終わる。無冠の(大器。帝王)。役職に(背を向ける。就く)。役職を離れる。役職ボストを増やす。 **かんけい【関係】** 関係が(いびつになる。険悪になる。袋小路に入る。闇の幕に入る。大っぴらになる。クールに推移する。しっくり行かない。どん詰まりに来る。もつれにもつれる。純然たる過去となって詩のように心に残る"志賀)。結んだ関係が解ける。誤解に誤解が重なって関係がこじれる=奥泉。ずるずるべったりに関係が続く=林美。関係に(傷がつく。波が立つ)。・関係に陥る(あやしげな。ぬきさしならぬ)。建築に関係のある職業。音楽がどのように美しくともやがて終わるように二人の関係も終わる=高橋机。背後関係を(洗う。追及する)。聖人にちなんだ名前。 **かんけいしゃ【関係者】** 関係者から事情を聴取する。関係者に(迷惑がかかる。連絡を取る)。関係者の(注目を集める。家族を優先的に避難させる。反対に遭い断念する)。関係者全員を足止めする。政府関係者の介入を退ける。▼当事者(瓦解に導いた。事件の)。当事者に情報が伝わる。当事者の責任にゆだねる。当事者を不愉快にさせる。 **かんしん【関心】** 関心が(恋れる。高まる。強い。急速に衰えて行く。別の方向に移る)。新鮮な関心が湧く。異性に対する関心が現実的でねちっこい=石坂。周囲の人の関心が集まる。関心の対象が動く。不断の関心ほど恋にとって豊かな程はない大岡。関心を大いにそそる。重大な関心を払う。積極的な関心を抱く。全国的な関心を集める。特別な関心を寄せる。他人に関心のない人町は自分にも関心を抱かない鈴木光。 <319> # 関係する・関わる-104 関心を持つ(異常なまでの。並々ならぬ。何らかの。人一倍)。関心を呼ぶ(大いに。社会的。幅広い)。▼関心事(重大な。日常的な)。世間の耳目が集まる。 **かんせつ【間接】** 間接に(影響が出る。被害を受ける)。間接の資料から想像する他はない"加藤。間接的な(知り合い。批判)。間接的に(つながる。手助けする)。 **かんどう【勘当】** 勘当も同然の扱い。勘当を(受ける。食う)。子供を勘当する。親子の縁を切る。久離を切る。勘気に触れる。勘気を(受ける。こうむる)。 **かんれん【関連】** 相互に関連する。関連する部署に根回しする。関連会社に出向する。関連本を何冊か読む。▼連関する(相互に。有機的に)。 **きずな【絆】** 肉親のような断ち切りがたいきずな芝木。切っても切れぬ親子の絆=田辺。家族という絆が崩れる。しっかりとした絆ができる。伝来の絆がゆるむ。夫婦の絆が強くなる。おじさん同士の絆が暑苦しい三浦し。お互いの間に親密な絆ができあがる=伊坂。最後の絆が断ち切られた思い=山崎。絆から解き放たれる。強い絆で結ばれる。絆をぷっつりと断ち切る。心の絆を強くする。 **ぎり【義理】** 義理が(立つ。悪い。しがらみになる)。金を借りた義理がある。昔の義理が消える。義理と人情を秤にゃにかける。義理の(親子の縁を結ぶ。縄でがんじがらめにする)。義理を(欠く。十分果たす。立てる)。お義理に(一口食べる。礼を言う)。義理堅い男。義理かたがた顔を出す。約束を義理堅く大事にする。義理人情を欠く吝嗇淡りんしょ。市井いでの義理人情をわきまえる。死者に対するせめてもの仁義。 **くされえん【腐れ縁】** 悪友との腐れ縁。腐れ縁でつながっている。腐れ縁を断ち切る。腐れ縁とでもいうような問柄永井荷。悪縁の根を断ち切る。悪縁を絶つ。血族のしがらみから離れる。社会のしがらみに巻き込まれて大人しくなる=荻野。世の中の柵に砂を背負う隆。 **こうきょう【公共】** 公共に益する。公共事業に絡む燈収賄。公共事業を落札する。公共施設を利用する。公共心を(育てる。養う)。公共料金を銀行の口座から引き落とす。公益に資する。公的権力を強化する。公的な(制度。組織)。 **こうし【公私】** 公私ともに忙しい。公私の(区別を正す。別を重んじる。けじめをつける)。公事と私事の区別が歴然としている。私人と公人を使い分ける。公私混同が(苦しい。はなはだしい)。公私混同を(戒める。慎む)。公私混同のきらいがある。 **こじんてき【個人的】** 個人的な(恨みを持つ。興味に溺れる。感清に左右される。思い入れ過多の文章三浦し。態度がどうあろうが文句を言われる筋合いはない有川)。個人的に親しい間柄。個人的見解を勝手に述べる。私事に(首を突っ込む。立ち入る)。質問が私事にわたる。あえて私事を語ろうとしない。私的な会話を交わす。裏金を私的に流用する。情実で昇進する。ブライベートな時用を過ごす。視察に名を借りたプライベートの旅・佐伯。 **ざいや【在野】** 在野の(学者。研究者。人材。有力者)。在野草莽行の志士。▼下野する(公職を辞して。野党に政権を譲って)。草莽の中に彫ぃなびる。草莽無名の者。野々に下る。あくまでも野に在って初志を貫く多岐川。 **じかに【直に】** じかに(手を触れる。会って話をする)。地面にじかに座りこむ。校長じきじきに注意される。社長からのじきじきのお声がかり。ひたと袖に顔を当てる。二人の胸にひたと共鳴する響きが潜む。直接(会って問いただす。聞いたほうが手っ取り早い)。ペットボトルに直接口をつけて飲む。本人の口から直接開く。国民の利益を直接に代表する議会"美濃部。直接的な(愛を交わす。利害関係)。 **せんもん【専門】** 専門家(折紙付きの。斯道礼との。その道の)。専門家と称する人たち。専門家の(威厳が漂う。見解を聞く。手にゆだねる。自由な発想を引き出す。養成に力を入れる)。いっぱしの専門家ぶる。専門誌に発表した論文。本棚に専門書が並ぶ。知識を専門書から得る。専門的知識を活用する。専門的な(教育を受ける。情報をふんだんに盛り込む)。専門用語がやたらに多い文章。その道のエキスパート。斯界にゅの(権威。重鎮)。斯学しょの(権威。第一人者)。斯道の(権威。第一人者。大家)。専攻する(経済学を。数学を。哲学を。文学を。歴史を)。その道一筋に歩む。その道の(泰斗。オーソリティー)。 **だいさんしゃ【第三者】** 第三者が(介入する。監視する。立ち会う)。二人の間のやり取りに第三者が割り込む=池井戸。第三者に(聞かせるための言葉。とっては不親切きわまる話し方=丹羽)。第三者にもよくわかるように一々筋を立てて説明する=堀。第三者の判断を仰ぐ。部外者が口出しをする。部外者の(意見を聞く。立ち入りを禁じる)。 **たずさわる【携わる】** ▼携わる(魚撈ぶの仕事に。国の政治に。雑誌の編集に。政務の機密に。天下のご政道に=池波)。▼事にあたる(協同して。全力をあげて。万策つくして)。▼参与する(計画に。福祉事業に。一国の為政の枢機に)。▼従事する(気象観測に。研究に。作戦に。生産に。特殊な仕事に。農業に。非合法運動に。一生懸命に労働に。寝食を忘れて製作に)。 **たにん【他人】** ▼他人(見知らぬ。縁もゆかりもない。遠くの親戚より近くの)。他人が口を出す問題ではない。他人からとやかく言われる筋合いはない。他人と(関係を持つ。コミュニケーションを持つ)。他人との(関係を拒絶する。共同生活に耐えられない)。他人に(関係を及ぼす。気を使う。迷惑をかける。後ろ指をさされない。聞かれて困る話。責任を押しつける。 <320> # か とやかく言われたくない。任せておけない)。他人の(恨みを買う。干渉を嫌う。空似。目に触れる。家に上がりこむ。視線を気にする。つけ入る際はない=高井。泣き言につきあっていられない=北原)。兄弟は他人の始まり。他人の目を(気にする。ごまかす)。身内と他人を区別する。他人のようによそよそしい態度をとる=吉村。いわば他人みたいな関係。他者に深く立ち入るのを避ける。人には他者の心は見えない=高橋和。他者への(思いやりが深い。配慮を著しく欠く)。自分の生活に他者を入り込ませない桐野。人様に(迷惑をかける。顔向けができない)。人様の(恨みを受ける。家に厄介になる。ために役に立つ)。余人に(分からぬ事情。知られぬように事を運ぶ福永)。容易に内心を余人にうかがわせない=津本。余人の手を借りる。余人を(交えずに話す。もって代えがたい)。 **だんじょかんけい【男女関係】** どろどろした男女関ありきたりの男と女の関係。男と女の関係をうまくさばく。派手な男関係を展開しクルクルと相手を替える水倉。男出入りが(絶えない。激しい)。女関係がだらしない。女関係のスキャンダルが山ほどある。女出入りが(絶えない。激しい)。女性関係が乱脈を極める。奔放な女性関係を大目に見る。男女の間柄(狎ょれあった。自然なやすらぎのある=瀬戸内)。三角関係が(こじれる。発覚する)。男女が仲よく生きる。男女の仲。仲(子まで生ょした。人も羨む。いわば相思相愛の。神に誓って変わるまいと契った)。わけありの仲と呪にらむ。女の子と深い仲になる。仲のいいところを見せつける。 **ちい【地位】** 押しも押されもせぬ地位。地位が不動のものになる。社会的な地位が高まる。社内における地位が安定する。将来はかなりの地位が約束されている=立原。地位に準じた働き。低い地位に甘んじる。地位を(がっちりと固める。どことなく匂わす服。不動のものとする)。安定した地位を手に入れる。以前の地位を取り戻す。今の地位を築く。社会的に重要な地位を占める。せっかく築いた地位を手放す。着々と地位を築きつつある。エースとしての地位を確保する"伊集院。さまざまの苦労のあげくに今日の地位を得る三島、自分の地位を(保つことに腐心する。守るために躍起になる)。社会的地位が上がる。社会的地位を危うくする。部長の椅子に座る。・王の位を(退く。譲る)。上の位を窺らかう。正当な後継者の地歩を固める。文学史上に独自の地歩を占める。作家としての地歩を築く中村明。主役の座が転がりこんでくる。最高権力の座にある。首相の座に居座り続ける。将軍の座に就く。妻の座に収まる。君主の座を継ぐ。社長の座を狙う。第一党の座を争う。知事の座を競り合う。トップの座を維持する。総理の座を占める。座をつかむ(スターの。レギュラーの)。高い地位から引きずり下ろす。高い地位に居座る。高い地位を擁する。位人臣を極める。最高の地位を極める。高い位に(就く。昇る)。▼ポストに就く(順送りに。重職の)。数々のボストを踏む。古株がポストをふさぐ。 **ちからかんけい【力関係】** ▼力関係(対立勢力の。労使の)。力関係が逆転する。力関係のバランスを図る。政治の力学が働く。 **つて【伝手】** 運よくつてがある。親類のつてを頼って身を寄せる。友人のつてをたどる。伝手から伝手を求めて粘り抜く=山崎。あらゆる手変にっを頼る。 **てだし【手出し】** ▼手出しができない(うかつに。誰一人)。下手な手出しはかえって邪魔。二度と手出しをしない。▼手が出せない(うかつに。こわくて。すぐには)。二度と手を出さない。ふっつりと手を出さなくなる。素人が手を出すものではない。下手に手を出せない。 **とりくむ【取り組む】** ▼取り組む(再発防止に。問題解明に。かび臭い本と。腰を据えて。総力をあげて。本腰を入れて。希望に燃えて新技術に。真実に真正面から。不退転の気構えで)。▼仕事に取り組む(快活果敢に。真面目に)。▼取り組み(多角的な。一枚岩の。地域ぐるみの)。がっぷり四つに組む。 **にんげんかんけい【人間関係】** 人間関係が(ぎすぎすする。希薄になる。うまくいかない。ぎくしゃくする)。人間関係に神経をすり減らす。人間関係を(金に換算する。うまく処理する)。生気涨以なる面白い人間模様!岩橋。対人関係に傷つく。 **ひとごと【他人事】** 他人事と放っておく。他人事のような冷淡な言い方。他人事のように(相槌を打つ。見物する。けろりとしている)。他人事みたいな口振りで言う。他事として聞き流す。他事を顧みる余裕がない。どこか別世界の出来事のよう近藤。余事に(関心を向ける。関知しない)。よそ事の世界。 **ひとごとではない【他人事ではない】** 他人事では済まない。決して他人事ではない。他人事とは思えない。よそ事では済まない。他人の失敗はよそ事ではない。明日は我が身。身につまされる思い。身につまされて(思い出される。グッとくる話)。「哀れな話ね」と身につまされたような声を出す=宗田。 **ひれい【比例】** 価値は労働時間に比例する。▼距離に比例する(料金が。旅の疲れは移動する=高井)。重力は距離の二乗に比例して弱くなる。気分の重さに比例して家路が遠くなる荻野。室、ゃが高い天井に比例して広く寒い!夏目。相関関係を持つ。 **プライバシー** ブライバシーが失われる。プライバシーに配慮する。他人のプライバシーに立ち入る。プライバシーへの配慮を欠く。プライバシーを白日のもとにさらす。恥ずかしいプライバシーを告白する。私行に立ち入る。私生活(地味な。派手な)。私生活を暴露する。 <321> # 関係する・関わる **べつじん【別人】**別人かと思うほどに面変わりする藤沢。別人になったかのごとき外観を呈する武田泰。全くの別人に見える。別人の観がある。まるで別人を見るよう。別人のよう(この前会ったときとは。青ざめて石膏どのような顔は"深沢)。まるで別人のような険しい人相になる三好後。別人のように(落ち着いた声。無口になる。やつれた姿。生き生きと弾んだ声で恍惚にっとしゃべる=日野。華やかに見える=向田)。顔が苦痛で別人のようにゆがむ光瀬。 **まきぞえ【巻き添え】**とんだ巻き添えを食う。巻き添えにする(青少年を。女房子供を)。流れ弾に当たる。累が及ぶ。しわ寄せする(労働者に犠牲を。社会のゆがみを貧困層に)。まともにしわ寄せをかぶる。側杖デぶを食う(喧嘩の。事故の)。意外なとばっちりに面食らう。とばっちりを食う。▼連座する(疑獄に。選挙違反に)。▼巻き込まれる(事件の渦中に。トラブルに。相手のベースに。時代の渦巻きに。飛行機が乱気流に)。 **みぶん【身分】**身分(隠居の気楽な。奴隷のように卑しい住井)。身分が(敵に割れる。特に抜きん出ているということはない)。贅沢だいの言える身分ではない。身分に(応じた処遇。相応な外貌)。世間から楽隠居と言われる身分になる"かんべ。何不自由のない身分の生まれ。身分差を苦もなく蹴飛ばす。身分不相応な生活。銭を隠し持つ。法蝶はらを吹く)。お里が知れる。分限に応じて生きる。分限をわきまえる。学生の分際で高級な車を乗り回す。すねかじりの分際で贅沢を言うな。分に(相応した貸用。不相応な上等の酒)。無位無官の侍。無位無禄の浪人。分に過ぎた(幸運。贅沢。行いは自他ともにはなはだ迷惑なもの里見)。 **みんかん【民間】**役所と民間との人事交流。民間に払い下げる。国から民川に移管する。民間企業に勤める。民間人を装って疑わしい一味に近づく佐々木。民営化する(国の事業を。郵政事業を)。 **むかんけい【無関係】**無関係な(態度を保つ。人間を巻き込む)。事件とは無関係な話。自らの意志とは無関係な体の動き。一指をだに染めることをしない。関係が切れる。全く関係ない。いかなる関係をも持っていない。自分は与妨げり知らぬこと。およそ権力にも出世にも縁がない。一切関知しない。実力と成績は必ずしも比例しない。住人同士が互いに没交渉。佐野。世間と没交渉で暮らす。村民と没交渉のまま暮らす辺見。我関せず総ぇん。我関せずと(聞き流す。知らぬふりをする)。我関せずとばかりに本を読む。 **むかんしん【無関心】**▼無関心(百パーセント。周囲の視線など全く。自分以外の世界には一切合財2壺井)。無関心が(世界を台無しにする=伊坂。鞭打ちたれるよりもつらい三浦談)。見知らぬ動物の動作でも見るような無関心で見る=大岡。昔の女を見るような無関心で眺める"大岡。淡々として素っ気ないくらいに無関心なそぶりを見せる"石川。警を無関心に聞き流す。無関心のベールを脱ぎ捨てる=佐藤多。努めて無関心を装う。歯牙にもかけぬ無関心さ=本庄。▼関心がない(出世に。あまり。さほど。たいして。てんで。とんと。色恋に関わることに)。石ころを眺めるように通りすぎる=阿佐田。関心が零に近い=源氏。まるで関心のない顔つき。何の関心も示さない。関心をほとんど示さない。さっぱり関心を持たない。少しも関心を持とうとしない。気にしない(いつも鳴く鳥ほどに=壺井。蚊が止まったほどにも柴田羽)。気のない声で答える。誰も怪しまない。違い対岸の火災としか眺めることをしない=綱淵。死んだ男の苦衷を遠い風景のように眺める=本庄。大陸での戦争の雲行きは遠い村の火事のように映る"辻井。遠くの火事を見ているようなもの=白井。蚤のみが喰ったほどにも思わない=武者小路。よその家の火事を見るよう。文壇の動きなどには風馬牛である。世間の出来事に風馬牛の研究生活。見向きもしない(大金に。ポストに。誰も。とんと)。▼背を向ける(空想の虹に。現実に。公序良俗に。国民の安全に。時代に。社会に。願いに。流行に)。対岸の火事として見過ごす。同級生の死を対岸の火事と見倣ったす貫井。対岸の火事のようなものであまり気にもかけていない平岩。対岸の火事ほどにも思っていない!獅子。▼馬耳東風だ(意見をしても。彼にいくら言っても)。▼馬耳東風と聞き流す(忠告を。嫌味を言われても)。 **むかんどう【無感動】**無感動な冷たい眼の壁をつくる柴田翔。異様に無成勤な笑い声=原田康。眼も鼻も唇も氷漬けの中から出てきたように凍りついた無感動な調子で話す鳥尾。感激のさらにない死のような世界有房。感動のない眼差し。たいした感動もない。なんの感動も起こらない。ほとんど感動を示さない。 **やりすごす【やり過ごす】**▼やり過ごす(幾つか駅を。退屈な生活を。知らぬ顔で。バスを何台も。店を横目で。身をかわして。目をそむけて。笑いとぼけて。見て見ぬふりで。幻のように現れるか現れないかわからない結婚相手を待って自分の人生をそのまま"干刈)。やり過ごすつもりで息をひそめる。かろうじて気づかれずにやりすごすことができる高树。 <322> # 感じる **いんしょう【印象】** ▼印象(ひとつ間違うと狂暴な西木。どろどろした重苦しい"松浦。脳裏に妖しく刻印されのちのちまでも消えないほど強い宮尾。ばっと見は可愛い!笙野)。印象が(うっすらと希渉になる。心に刻みつけられる。なまなましく脳裡20ぅに焼きつく=筒井。焼き金をあてたように鮮烈に灼ゃきつく光瀬)。遠い日の夢のように印象が淡くなる=石坂。笑顔が印象に残る。朴訥くな印象の人物。ぼんやりした印象の少女=桐野。印象を(記憶に刻み込む。一顰一笑ふいに认ぃに到るまで書き記す"久米)。ネガティブな印象を持たれる。悪い印象を持っていない。寒々とした印象を拭うことができない辻真。終生忘れることのできない印象を与える町佐藤巻。どこかちぐはぐな印象を拭いきれない=池井戸。▼印象を与える(古風な。淫らな)。▼印象を受ける(クールな。全く違った)。・印象を残す(鮮やかな。強烈な。平板な)。印象づける(急速な悪化を。存在を)。印象的なしゃべり方。印象深い(思い出。作品)。係官の心証を害する。裁判官の心証を動かす。有力な心証を得る。硬い感じの第一印象。第一印象は決していいものではなかった!高橋源。 **おぼえる【覚える】** ▼覚える(足に激痛を。嫌な予感を。体に震えを。軽い嫉妬を。軽い失望を。現状に不満を。心から満足を。心に安らぎを。尻に痛みを。喉に渇きを。不安な戦慄を。深い安堵感とを。未来に不安を。無上の愉悦を。良心の呵責分しを。熱い胸のたぎりを。安培の気持ちを。居心地の悪さを。いささかの戸惑いを。少なからずショックを。生理的な嫌悪を。たまらない恥ずかしさを。何とも言えない焦りを。にわかに疲れを。不意に緊張感を。不快な圧迫感を。ほのかな愛着を。無性に腹立たしさを。胸に息苦しさを。頭がくらくらするほどの疲労を=乃南。いじめに対して強い憤りを=貫井。体が吸い込まれるような眩暈きを"貫井。五休がしびれるほどの歓喜を!柴田剣。全身に水を被せられたような悪寒を"村上元。戦慄にも似た興奮をなかにし。想像するだに恐怖以上のものを藤本。なぜともわからない胸騒ぎを=勝目。胸の奥に冷たい流れを「高樹)。叩きのめしてやりたいくらいの憤りをおぼえる=小局。顔を見覚える。 か **かんがい【感慨】** 感慨が(心を満たす。胸に迫る。波のように襲ってくる=森環)。胸中にいろいろな感慨が湧く。様々な感慨が心頭に去来する。悲壮な感慨が胸に潮らしのごとく湧きあふれる=海音寺。感慨に(胸をしめつけられる。堪えぬように頭を掘する宮本日)。うたた感慨に堪えない。しばし感慨にふける。深い感慨に襲われる。複雑な感慨にとらえられる。感慨のこもった眼差し。感慨をこめて言う。感慨深く心にとめる。感慨深げにうなずく。感慨無量で胸がいっぱいになる。感慨無量なものが水のように胸を浸してくる"山手。 **かんかく【感覚】** 感覚がバランスを失う。動物的感觉が鋭い。ユーモアの感覚が欠落する。指先の感覚が狂う。歴史的感覚が欠如する。手と足の先が揺り粉木け紗のように感覚がなくなる=小林多。▼感覚が走る(全身にくすぐったいような藤沢。耳の中に痺しびれるような中沢)。時代の頂上の感覚に脅える=中野美。感觉のどこかが獣みたいに冴えてくる=吉本。都会的な成覚の持ち主。言葉に対する感覚を磨く。論理より感覚を重んじる。鈍磨した感覚を研ぎ直す=あさの。感覚的に噛み合わない表現"大野透。時間感觉が完全に狂ってしま〜三浦し。フィーリングが(ぴったり来る。よい。悪い)。自然界の法則を五感でとらえるりめぐらせる=氷室)。常に五感を研ぎ澄ましている=横山。 **かんじ【感じ】** 動作の端々に本を大事にしていることが窺かかえて感じがいい"有川。陰湿な感じのいさかい。しゃれた感じの外装。ぬるぬるした感じの女。粘つこい感じの声。瑞々しい感じのする街。とほほという感じの笑顔鷺沢。▼質感(硬い。ふわふわした。ぬくもりのある)。素材の質感にこだわる。質感を生かしたデザイン。 **かんじいる【感じ入る】** ▼感じ入る(意気に。美に。表現に。いたく。つくづく。ほとほと)。美文調を含んだ詠嘆。▼詠嘆する(見事な芸に。過ぎて行く時を)。詠嘆の声をあげる。 **かんじとる【感じ取る】** ▼感じ取る(愛情を。人の気配を。本能的に。肌で。まざまざと。命が終わりに近いことを。気配にただならぬものを。かすかな臭気も敏感に。雰囲気を暗黙のうちに)。▼感じ取れる(漠と。はっきりと。言外に明らかな不快が)。 **かんじやすい【感じやすい】** 感じやすい年頃。物事に感じやすいたち。心が柔らかく物にも感じやすい若い娘―島崎。多感な(少女。少年。青年時代。年頃。時期に母親が死ぬ)。有為多感な青年。 **かんじゅせい【感受性】** ▼感受性(繊細な。豊かな。事物の微細な変化を見逃さぬ竹西)。感受性が人一倍鋭い。体内の感受性が点滴を受けたかのように勢いを持って成長する=山田泳。感受性に富む。盛ス性の豊かな子供に育つ。鋭い感受性の持ち主。少女のように感受性の強い人三浦綾。研ぎ澄まされた剃刀动以のような感性連城。感性豊かな咀嚼力しいく。感性が(狂う。鈍くなる)。感性に(あふれる。富む)。大衆の感性にアピールする。鋭い感性の持ち主。 **かんじょう【感情】** 感情が一つ事に捉われてしまうと容易に平静には戻れない高井。いろいろな感情が <323> 鳴門の渦潮のように渦巻く阿久。波のような感情がサッと身体を突っ走ってゆく=小林多。胸の奥に隠していた感情が一挙に爆発する=連城。恋々たる感情が泉のようにあふれてくる"山手。感情と行動がどうにもちぐはぐになりうまく制御できない三浦し。感情に鍵をかける内田脊。感情の(整理がつく。堰せきが切れる。波が静まる。出口に蓋をする=岡本)。激しい感情の嵐。網の目のような感情のからみあい=石川。あるときは憧れあるときは憎らしくもなる感情の起伏"原田康。お互いに消えることのないほど根深い感情のもつれ=壺井。とがりやすい愛欲の感情の幾山河を越える=石坂。突如として感情の大渦巻きが声を立てて流れはじめる菊池。能面のように感情の起伏がない!藤本。二人の間に日に日に太い感情の糸が捩ょしれながら編まれる谷村、格別感情もこめずに語る“三田。感情を(人質に取る。あからさまに表情に出す。オーバーに表現する。心の底に秘める。抑えようとする努力の現れた言葉つき"野間。押し殺したような声=斎藤栄。刺激しないような穏やかな仕方 中村点。制するような静かな語調三浦綾)。荒っぽい言葉遣いで感情をむきだしにして喋ん、る三田。鬱屈した成管を美の世界に解放する"本多秋。体じゅうぼっと熱くなったほど感情を動かされる宮本瓦。殻で覆っていたはずの感情を日に日にあらわにしていく谷村。一入い址の感情をこめた言葉。高井。感情的にいがみ合う。エゴイズムの謳歌始ぅには感情的に同調しえない!高橋和。感情むき出しの中傷合戦。直情一徹の武士。竹を割ったような直情型"舟橋。直情径行の人。胸に情が湧く。情に訴える。情操が欠乏する。情操を養う。情動に突き動かされる。自分でもよく判もからぬ情動に身をゆだねる=人間。理不尽な情助を持て余す。腹の虫が治まらない。腹の虫を押さえる。喜怒哀楽様々の顔付き。喜怒哀楽が激しい。喜怒哀楽をどこかに忘れてきたように無表情-陳。滅多に喜怒哀楽を表にあらわさない。私情を捨てて大義につく。大義親を滅す。情感が(しぶとく未練げにくすぶっている"田辺。浪のようにうねり立つ=円地)。自分体を包み隙間もなく羽がいじめにしているような熱っぽい情感が氾濫に从する=伊藤整。情感豊かに歌い上げる。相手にすがろうとする切羽詰まった情念有吉。心から情念が消え失せる。心の中で情念が育つ。ささくれだつ情念が針のように突き刺さる"真継。毒々しい情念が心にあふれる="真継。感情がない。無機質な言葉感情の全くない無機質な声。感情のこもらなの羅列。感情の全くない無機質な声。い平板な物言い=勝目。遠いところからものを言っているような感情のこもらない声小林久。 **かんじる【感じる】** ▼感じる(一抹の危惧を。心に苦痛を。実直な人柄を。居心地の悪さを。一倍深く恥辱を。体いっぱいに懐かしさを。青春の血のよみがえりを。ただならぬ気配を。肉体的な痛みを。時間の流れを速く。実際よりも大きく。存在をうるさく。欲望をふつふつと。暗闇の中からの眼を全身に=大江。人面の悪魔のごとく"司馬)。感じたままを(言う。書く)。感じさせる(政治のうねりを。とことなく歩けこみを。並々ならぬ才能を)。▼感じられる(時間が長く。世代交替の気配が)。肌身のぬくもりを感じ合う。▼感応する(暗示に。事実に。気持ちが相手に)。懸念がぎっくり胸にこたえる=長塚。▼感知する(気配を。磁気を。動作を。内奥の輝きを。光を。魅力を。妖気を。喜びを)。アンテナの感度。感度が(上がる。鈍い。よい。悪い)。痛感する(戦争の責任を。必要性を。今更ながら。しみじみ。つくづくと。身にしみて。事態の重大さを。身替わりの小羊の必要を=隆)。 **かんそう【感想】** 感想に差が出る。映画の感想を披露し合う。素直な感想を口にする。▼感想を言う(一品ごとに。率直に)。▼感想を述べる(口々に。一言)。日常の雑感を綴っっる。年頭の所感を述べ **き【気】** 気が(変になりそう。なさそうに言う。向かなければ仕事をしない。滅入るような雨の音。転倒するほどの驚きと悲しみ萩原爽)。一瞬たりとも気が抜けない。今から気がついてももう遅い。子供時代に戻った気がする。自分の目でチェックしないと気が済まない。ずいぶんと気が利く。何となく気が進まない。恥ずかしさに気が引ける。まじめに怒る気が失せる。恋しくていとしくて気が狂いそう源氏。何と言ったか覚えていないほど気が頭倒に认する=今日。気の合った者だけがメダカのように集まる=白井。病は気から。気の(合う友達。強い女。張りを失くす。弱い性分。あるような素振り。せいとして見過ごす。よさそうな運転手)。気の利いた(言葉。表現)。気の抜けた(ビール。表情)。まんざら悪い気はしない。気も(そぞろになる。根も尽きはてる)。気を(大きく持つ。落ち着けて読み返す。抜くゆとりもない)。足元に気をつけながら歩く。あれこれ気を回す。勢いに気をのまれる。けろっと気を変える。懸命に気を張り続ける。酒で気を紛らす。さぞかし気を悪くしたに違いない。つまらない気を起こす。いちいち記す気になれない。 **きぶん【気分】** ▼気分(一人になりたい。厄介払いをしで消々とした)。気分が(爽やかになる。壮快になる。ハイになる。ひどく滅入る。楽になる。一向に晴れない。次第に明るくなる。すかっと晴れる。すっかりよくなる。天気同様に湿っている藤沢)。重苦しい気分が続く。くるっと気分が裏返しになる。この上なく気分がいい。幸せな気分がすうっとしほんでいく。すっと気分が落ち着く。滅入った気分からなかなか抜け出せない。気分にむらがある。暗澹さんとした気分に陥る。浮かない気分に落ちこむ。甘美な気分にとらえられる。釈然としない気分に捕わられる。不快な気分に襲われる。若返った気分になる。幻滅の気分を味 か <324> わう。場にそぐわしい気分を醸し出す。沈んだ客の気分を引き立たせる=半村。気分一新を図る。気分転換が(うまい。必要)。気分転換に濡れ縁でボーッとしている三浦し。気色を(害する。損じる)。 **きもち【気持ち】** ▼気持ち(義務を負わされたような億劫な柴田湖。相手の顔も見返せないような押し潰っぶされた川端)。気持ちが(ざわついて落ち着かない。しょぼんと縮まる)。心の中に感謝の気持ちが広がる。ためらう気持ちが尾を引く。張りつめていた気持ちがほぐれる。反抗的な気持ちが心に食い込む。ひがみっぽい気持ちが胸にきざす。うれしい気持ちが湯のように湧いてくる=開高。エアボケットに入りこんだように気持ちが弛緩しょする"西木。針で風船を突いたように気持ちが小さく現実へと姿しぃむ"連城。気持ちに(張りが出る。ゆとりがない。ほかっりと穴があく)。言われた言葉が気持ちにひっかかる。自分の気持ちに重ね合わせて考える。気持ちの(収まりが悪い。隙につけこむ。整理がつく。切り換えが早い。高ぶりを抑える。動揺が静まらない。張りが一瞬にして断ち切られる=塩野)。彼の気持ちは霧のように不透明=加賀。死に近づいて日一日と気持ちも透明に澄んでいく連城。心地(めまいに似た。夢に夢見る)。生きた心地もない。心根の優しい女。心の緒をそれとなくくくる=島尾。心緒が乱れる。心気が(爽快になる。たかぶる)。ハートを(射落とす。射抜く)。心持ち(息の根が止まったような=宇野干。魂を抜かれたような菊池。継ぎ穂を失った頼りない大佛。途方に暮れたような森町)。心持ちが夜のように暗い!」岸田。物恋しい心持ちに包まれる。生きようという心持ちを失う。心境(複雑な。じっとしていられない)。心境が(一転する。がらりと急変する)。 **きょうちゅう【胸中】** 胸中に(秘策がある。みなぎる憤懣ん。嫉妬がうごめく。清風が吹き入る。複数の思いが交錯する。憤懣が煮えたぎる。もやもやとしている思い。わだかまる謎責感汁がべ)。怨恨んと憎悪とが胸中に渦巻く=里見。未整理の感情が胸中に渦を巻く=綱淵。胸中に広がる(寂寥せ」の念が。不吉な予感が)。羞恥礼と不安と悔恨とで胸の裡ぅぅが掻きむしられるよう菊池。胸の内で(大きな溜め息をつく。疑問を繰り返す。何度もバカヤローと叫ぶ南木)。胸の内に(悪意がとぐろを巻く。不愉快な思いがわだかまる)。胸の中がほわあっと温かくなる灰谷。胸の中で(怒りが渦となる。思わず苦笑する。悔恨と恐怖が激しくせめぎ合う。手を合わせて礼を言う。ふふんと冷笑する)。言い知れない侘ゃびしさが胸の中で広がる=内海。胸の中に(思い出が居座る。心配事を抱え込む。羨望謎礼が生まれる。苦い思いが広がる。芽生えかけている野心を見抜く=村上元)。次から次へと疑窓が胸の中に広がっていく=高橋克。心中(おおいに悔しがる。恥ずかしいものがある)。心中に(焦燥を醸す。万の宝を持つ)。心中深く(覚悟を決める。思徹さんを忘れない)。哀かなしい自己呵責を心の中で反芻认する=中島敦。心の中に恐ろしい企みが目覚める=有島。野武士の心事のごとく粗放旅雑だ=坂口。 **じが【自我】** ▼自我(鬱勃して絶えず噴出しようとあじがいている=円地。繊細でナイーブな傷つきやすい"筒井)。民族主義的な目我が醸成される豊田。自我に目覚める。自我の強さに圧倒される。生あたたかい自我の内部へとっぷりと浸る=筒井。自我を殺し辛抱する。傷ついた自我を回復させる。自意識が強い。 **じっかん【実感】** 実感が波のように押し寄せてくる"戸川。あまり実感が湧かない。言葉に実感がこもる。勝利の実感が湧く。たしかな実感がある。実感としてびんと来ない。事故を実感として受け止められない。実感のこもった声。実感を(素直に口にする。もって胸に迫る)。▼実感する(身にしみて。一日の終わりを。権力の恐ろしさを)。ノーマルな生活感觉。緊迫した空気を肌身に感じる。 **じょうちょ【情緒】** ▼情緒(感傷的な。柔らかな。渓谷にほとばしる清冽な水のような勁っょく奔流する円地。ナイロンの肌着や靴下のようになよなよと滑つこい快さを感じさせる=円地)。情緒が(心を満たす。作品に漂う)。南国の情緒にあふれる。緑したたる山の姿が絵筆もおよびがたいほど纏綿に似たる情緒にあふれる!白洲。とかく情緒に流されがちの日本語中村真。眠り草のように萎えしぼまる情緒に快くひたる=円地。情緒の肌理ぃぁがこまかい=岡本。得体の知れない情緒の浮き沈みに戸惑う高树。異国情緒を漂わせる。下町情緒を奇蹟せのようにとどめている路地を歩く=丹羽。情緒あふれる湯浴み。詩的な情緒的文章瀬戸内。情緒的な性感。情緒的に安定する。 **じょうねつ【情熱】** 情熱(死をも怖れないほどの境地へまで駆り立ててゆくふしぎな三房。荒い浪なみのようにたけっている=円地。身体中の血潮が悉ことく湧き立つような菊池。火のような野性の=瀬戸内。胸いっぱいにあふれてくるはげしい=山本周)。情熱が(色あせみるみる焰坦のの輝きを失う瀬戸内。水を浴びせられたように冷えきる三浦失。燃えつきて抜け殻のようになる=小林信)。老いかけた情熱が残り火のように燃える"松木。物狂わしい情熱が心と身体とを沸々燃やす菊池。蠟燭うらの火が消えるときにように情熱がはかなげに揺れ動く=瀬戸内。情熱に(富んだ娘。身を焦がす。燃える女。冷水三斗を浴びせる"舟橋)。幸福な情熱に酔う。若い情熱に駆られる。一時の情熱に任せて発作的に口走る=中村真。火のような情熱に焼かれる=有局。無垢もくな情熱に身を浸せる藤田。情熱の(嵐の中にいる。おもむくままに身を委ねる。火が残り少なになる=瀬戸内。焰が力強く燃え上がる=瀬戸内)。恋を貫く情熱の人。溢れるような情熱の男=獅子。静かな川の流れのように情熱の沈静した落ち着いた生活"石坂。凄まじいほどの情熱の奔流=瀬戸内。生命への恐怖を変しのぐほど強い情熱の虜とりになる=円地。胸の奥に若々しく燃えさかる情熱の火"畑。情熱を(支えにする。傾けて説得する。込めた魅力的な目)。鬱積した情熱を発散させる。芸術に情熱を傾ける。商売に対する情熱を失う。もはや情熱をかきたてる何ものもない人攻。胸のどこかを小突かれたように感情が燃え立つ『宮本百。燃える(熱い血潮が。胸中には炎々たる政治の理想が=獅子。屈撓いつされぬ意気が烈烈火のごとく=山田美)。情熱的な思いを語る。女でもどきっとするような情熱的な目=林京。情熱的に接吻認する。瞳が情熱的に郷く。満身の熱血を沸かす。熱血あふれる硬骨淡。押しとスタミナが売り物の熱血型"五木。悪や不正を見逃せない熱血漢。 か <325> # 感じる-105 な情熱の男=獅子。静かな川の流れのように情熱の沈静した落ち着いた生活"石坂。凄まじいほどの情熱の奔流=瀬戸内。生命への恐怖を変しのぐほど強い情熱の虜とりになる=円地。胸の奥に若々しく燃えさかる情熱の火"畑。情熱を(支えにする。傾けて説得する。込めた魅力的な目)。鬱積した情熱を発散させる。芸術に情熱を傾ける。商売に対する情熱を失う。もはや情熱をかきたてる何ものもない人攻。胸のどこかを小突かれたように感情が燃え立つ『宮本百。燃える(熱い血潮が。胸中には炎々たる政治の理想が=獅子。屈撓いつされぬ意気が烈烈火のごとく=山田美)。情熱的な思いを語る。女でもどきっとするような情熱的な目=林京。情熱的に接吻認する。瞳が情熱的に郷く。満身の熱血を沸かす。熱血あふれる硬骨淡。押しとスタミナが売り物の熱血型"五木。悪や不正を見逃せない熱血漢。 **じょじょう【叙情】** 叙情に富む。抒情を愛情と見あやまる=円地。童心豊かな抒情詩"三好達。叙情的な(味わい。表現。雰囲気。文章)。▼リリシズム(清冽せいな。針金で支えられたカーネーションをコッブに投げ入れたみたいな女学生くさい『太宰)。幽玄極まりなきリリシズムの極致-萩原明。 **しんけい【神経】** 神経(都会育ちの初恋の少年のような傷つきやすい三島。震えを覚えるばかりに激昂ぶらした=有島)。神経が(異様に昂たかぶる。過敏になる。ざわざわと騒ぎ立つ。隅々まで行き届いている。凍てついたように凝結する徳永。けずられていくような痛み=高橋三。象のように太い"貫井。水に浮いた粟粒砂のようにうようよと動き始める=伊藤炎。豚のように鈍感白井)。一本の神経がびんと通る。だらしないことに神経が耐えられない。極度の不安と緊張とで神経が放電中の裸電線のようにボロボロになる=小林久。弛緩しがした神経が冷たい水を浴びたように引き締まる=山本周。立ち居振る舞いのすべてに神経がゆきとどく“有吉。弓弦のように神経が張りつめる遠藤。鬼界ヶ島の流人のように尖とがった神経でひたすら夫を待つ"川端。常人の神経ではとても太刀打ちできない=横山。神経に(異常を来たす。動揺を来たす。グサッと突き刺さるような悪口"石坂。ささくれができる!佐野。鋭く刺さる針を含んだ言葉”小林久)。▼神経に障る(いちいち。能天気な口調が篠田)。神経の(緊張を強いる。弱い善良な人間。末端が焼かれるような刺戦記が吉行)。存外神経の細かい山男。大人がピリピリしてしまうような神経のとがった子供"有吉。身体の中に蛇が一匹棲すんでいていらいらする神経の根に噛みついている=島尾。少々の風当てくらいびくともしない強靭にいうな神経の所有者"里見。必要なことも遠慮して口に出さなそうな神経の細い印象の女性"松浦。一流兵法者のいわば霊感的な本能ともいえる神経の冴え柴田然。▼神経の持ち主(デリケートな。図太い)。神経までもずたずたに切り刻む疲れ藤本。神経を(逆なでする声。異常に刺激する。すり減らす仕事。ぼろぼろに痛めつける。針のように尖らせる=獅子)。全身の神経を研ぎ澄ます。絶えず神経を緊張させている。調整に神経を使う。まともな神経を失う。油断なくまわりに神経を配る。剃刀似のような神経を持った早熟の秀才。阿久。庭時もで神経を洗われる不安"夏目。針のような神経を立てる=本庄。店の隅々にまで神経を行き渡らせる瀬戸内。耳をつんざくような鋭い音響が神経をわななかすっ有局。▼神経を集中させる(運転に。指先に)。神経をとがらせる(周囲に。びりびりと)。▼鋭い神経(刃物のような。針のように)。 **しんり【心理】** 倒錯した心理に陥る。心理の(綾ぁゃを与える。人格を無視した心理的な拷問にら=高橋和。心理的に(効果を及ぼす。優位に立つ)。センスが(鋭い。古い)。服装のセンスが垢抜けている。洋服のセンスがいい。▼センスがある(画家としての。ユーモアの)。センスの(ない身なり。良さに舌を巻く。良し悪しを問う)。上品なセンスの服を身にまとう。 **つくづく** つくづく(愛想が尽きる。頭が下がる。甘い話。気が滅入る。馬鹿だと思う。呆ぁきれたというふうに言う。自分が嫌になる。戦争が嫌になる)。つらつら(考える。批評する)。 **ねつじょう【熱情】** 身をこがす激しい熱情"中河。熱情が(衰える。人を動かす。ほとばしる。胸に燃え出す。伝染し心がほてるように田辺)。熱情に(浮かされる。駆られる。ほだされる。燃える)。熱情を(駆り立てる。たぎらせる。胸の底におさめる)。哀れな男の熱情を笑う。熱情あふれる話を聞く。熱情的な目を昂然にらとあげる。 **ほねみにこたえる【骨身に応える】** ▼骨身にこたえる(苦しみが。冷気が。人は褒切るものだという事実が"加賀)。骨身にこたえるほど叱られる“灰谷。▼骨にこたえる(声が。言葉が)。 **ほねみにしみる【骨身に染みる】** 寒気が骨身にしみる。規則を破るということはこういうことだと骨身に沁しみる有川。骨身にしみて(思い知る。懲りる)。骨にしみるほど知り抜く有局。骨にしみるような底冷え=日野。▼身にしみる(自由の価値が。人生の無常が。人の情けが。金のありがたさが。しみじみと美しさが。世間の風の冷酷さが)。 **ほねみにてっする【骨身に徹する】** 骨身に徹する寒さ。骨身に徹して(知る。体得する。分かる)。憎しみが骨身に徹している。▼骨に徹する(寒冷の気が。寒さが)。自覚する。機微を読み取る)。繊細な心理の動き。不安定な心理状態。心理的負担をかける。心理的な打撃をあたえる。 <326> # 感心する・敬う **いかめしい【厳めしい】** いかめしい(鉄柵の塀、武器を手にする。威厳にみちた顔つき=北)。制服しか似合わないような厳めしい顔の巡査―連城。胸を張っていかめしく構える。いかめしげな髭ぃげをびんと八の字に生やす椎名綾。骨太のいかつい体つき。 **いからせる【怒らせる】** 肩肘怒らせて突っかかってくる。肩を怒らせて(歩く。抗議する)。目を怒らせて(一喝する。叱りつける)。 **いげん【威厳】** 威厳(冒しがたい大自然の菊池。霜の如く犯し難き菊池)。いつもの威厳が影を潜める。休から威厳がにじみ出る。毅然とした姿勢に威厳が漂う。口調に威厳が加わる。言葉の威厳に打たれる。王者たる威厳に満ちた顔「遠藤。威厳の片鱗んもうかがえない。重々しく威厳を保つ。銅像のような威厳をつくろって二言三言詫びる=大岡。安っぽい威厳を撒き散らす伊坂。威厳をもって(言い放つ。答える)。モーニングや紋付きに威儀を正す。威徳を兼ね備える。神様の威徳を説く。▼成谷(堂々たる。主にふさわしい。目を見張るほどの)。威容に目をもっていかれる。五十階の威容を見上げる。門人三百を数える大道場の主にふさわしい威容をそなえる=池波。犯しがたく匂う気叩瀬戸内。 **いちまいかんばん【一枚看板】** 一枚看板(一座の。組織の)。このレストランの一枚看板の料理。大喜利にかまえた看板役者。金看板の(商品。プレーヤー)。金看板を高々と掲げる。 **いちりゅう【一流】** 商売にかけては一流。一流の(企業に勤める。カメラマンになるのも夢ではない。版元め秋一流選手を選りすぐる。一流どころに固執する。当代一流の(学者。文化人)。弁舌では当代一流の巧者。一級の(学者。品)。一線級の投手。第一級の(発見。檜舞台砂切。もてなしを受ける)。錚々たる(学者。財界人。知識人。論客。顔ぶれが集まる)。 **いふう【威風】** 威風(あたりを払う。四辺を圧する)。人を寄せつけぬ威風が双峰民にきらめく。威風堂々たる建物。威風堂々と(行進する。海上を行く艦隊)。 **うやうやしい【恭しい】** 額を擦こすりつけるようなうやうやしい態度!本庄。神主が祝詞切りでも読むように恭しく巻紙をひろげる水井荷。両手を前に重ねて恭しく頭をさげる=遠藤。恭しく書状を巻く。床の間に恭しく飾る。巻物を悲しく取り出す。悲しげに額を垂れる。たしなみ深い態度。慎み深い深窓の婦人。極度に慎み深くはにかみ屋。謹んで(祝意を表する。こ冥福をお祈りします)。勅命を謹んで承っける。 **うやまう【敬う】** ▼敬う(兄を。老いを。神を。芸術を。女性を。祖先を。父親を。師と)。一目も二目も置く。学問の師と仰ぐ。師と仰ぐべき人物に巡り合える。礼砲を撃つ。畏敬する心が募る。畏敬の眼差しを向ける。畏敬の念を(抱く。こめる)。信仰に近い畏敬を抱く=山岡。敬慕の念がいとど増す。敬慕の念をいだく。▶敬慕する(父を。母を。養父母を)。 **うやまわれる【敬われる】** ▼敬われる(子供から。村人から)。一身に集める(敬愛を。点敬を)。あっぱれ名僧知識と仰がれる。聖人君子とあがめられる。周囲から一目置かれる存在。人々の崇敬を集める。尊敬の(眼差しで見つめる。念をこめてご老体と呼ばれる"三好後)。 **えいこう【栄光】** 栄光が頭上に輝く。栄光という名の胶蛙ばい輝きの下に生きる=沢木。栄光に向かって走り続ける。過去の栄光にしがみつく。栄光の生活を夢みる。栄光ある殉教を遂げる遠藤。勝利の栄冠に輝く。栄冠を手にする。栄に浴する(受賞の。叙勲の)。▶栄を賜わる(御臨席の。拝謁の)。栄えある(賞に輝く。優勝。代表に選ばれる)。 **エース** エースの(器ではない。座を脅かす)。チームのエース。エースに抜擢される。エースとしての地位を確保する=伊集院。エース級のピッチャー。次期エースの座を虎視眈々にに欲と狙う。 **えらい【偉い】** 雲の上の偉い人。人の上に立つ偉い人間山本周。偉い人に(あやかる。対してへいこらする)。偉そうな(言い草。口を利く。ことを言う。理屈。顔で勝手なことをしゃべる)。えらそうに説教する灰谷。你そうに教訓を垂れる。偉そうにするな。いったい何様だと思ってるんだ。いったい何様のつもりなんだ。 **おおだてもの【大立て者】** 大立て者(一座の。実業界の。政界の。派閥の)。財界の大立者を親戚筋にひかえている=横光。▼重鎮(斯界いかの。政界の。文壇の)。日本建築界の重鎮として知られた人。 **おおもの【大物】** 政財界の大物が詰めかける。大物たる風格を備える。大物の資質が泣こうというもの村松。釣りに行って大物を上げる。いっぱしの大物気取り。大物巡が勢揃いする。一り。大物連が勢揃いする。巨星(実業界の。政界の)。▶大家(世界的な。斯道礼との。文名晴々さくたる)。大家の城に(達する。近づきつつある)。▼巨匠(音楽の。文壇の。ルネサンスの)。巨匠と言われる映画監督。 **おごそか【厳か】** 厳かな口調で言う。宗教音楽のような厳かな歌「小川。おごそかに祝詞をあげる!白洲。巫女ぃこのようにおごそかに託宣を下す。阿刀田。儀式が厳かにおこなわれる。古式床しく厳かに行う。太鼓が厳かに鳴り渡る。冬山の森厳な沈。荘厳華麗を極める。荘厳な(葬送行進曲をBGMに使うかんべ。森の空気にあてられる三浦し)。導師の荘厳な読経。人間の尊厳を踏みにじる。端厳な武家風の教育。厳然たる(生きた実在。事実)。厳然とした(口調。証拠)。 <327> # 感心する・敬う―106 **おしもおされもせぬ【押しも押されもせぬ】** 押しも押されもせぬ(大スター。天下の学者。新聞社の中核記者。ミステリ界の重鎮。地位を築き上げる=加賀)。おしもおされもせぬ一家のあるじ=本庄。名が押しも押されもせぬものになる。押しも押されもしない存在。 **おそれおおい【恐れ多い】** 恐れ多いお言葉を賜わる。口にするのも畏れ多い!舟橋。恐れ多くも畏ぶしくも。恐懼だしおくところを知らず。恐懼に堪えない。はばかりながら一言申し上げます。 **おもおもしい【重重しい】** 重々しい口調。丁寧な重々しい一礼。言葉が重々しい響きをもって胸にずしりとこたえる三好後。重々しく(断定を下す。首を左右に振る)。親分が重々しく口を開く=奥田。空気が深い水の底のように重々しく淀む=江戸川。 **かがやかしい【輝かしい】** 輝かしい(朝を迎える。栄光の日々。業績を残す。経歴の持ち主。生涯を終える。第一歩を踏み出す。デビューの舞台へと駆けのぼる内橋)。幾多の輝かしい職歴。一千年の輝かしい歴史をもつ=塩野。渚に水と光が輝かしく踊る=山本有。空がわずかに夏の輝かしさをとどめている九月の始め"村上春。輝ける(青春。日本の星)。日本女性史の輝ける金字塔「瀬戸内。赫々かいとして世界に覇を唱える"萩原朔。赫々たる戦果をあげる。名赫々たる戦いの歴史。光輝ある(生涯。伝統)。 **かたくるしい【堅苦しい】** 堅苦しい(書き出しの通知。礼を残して退室する)。年頃にそぐわない堅苦しい言葉を多用する喋心『り方"有川。固苦しい気持ちがだんだんにほぐれる藤沢。愛情が裃いいをつけた表現・石川。窮屈で退屈な儀式。四角四面な(感度。人)。切り口上で(挨拶する。意地悪な響きのある声=原田康)。堅苦しい切り口上で言う。切り口上にきっぱりと答える。 **かんしんする【感心する】** ▼感心する(心の広さに。知恵の深さに。舌を巻いて。すっかり。つくづく。気配りの適切さに。見事な司会ぶりに。日頃に似合わない心がけと。拍手を送りたくなるほどあきれて=村上。落胆を通り越して=光原)。どえらい豪速球にただただ感心するばかり“ねじめ。感心するほど一所懸命働く=加賀。▼よさに感心する(諦めの。手際の。用意の)。諦めを通り越して感心して眺める=中村真一人でしきりに感心している。感心している場合ではない=飯田。感心とあきれが相半ばする表情で言う三浦し。いまどき感心な娘。感心に一日も休まずに続いている。妙技にうなるほかない。人間観察の能力に欲服する。しおらしく振る舞う。立ち居振る舞いをしおらしくする。▼感服する(太刀さばきに。勇気に。ほとほと。時間感覚の精妙さに)。感服したように(うなる。見入る)。膝を打つ(はたと。ぼんと。得たりとばかりに。うまいネーミングだと=横山)。 **かんろく【貫禄】** ▼貫禄(親分の。社長の。堂々たる)。貫禄が(備わる。つく)。貫禄だとか威厳とかに程違い池波。貫禄に(欠ける。乏しい)。貫禄の点では大分見劣りがする。貫禄をつけて言う。新社長としての貫禄を見せる。山が泰然とした貫禄を備えている伊坂。貫禄十分に太る。 **きぞく【貴族】** 資族の(血が流れる。お嬢様が貧民窟を訪れたように威張り散らす谷崎)。王侯貴族になったような優雅な顔で待つ平岩。おっとりした貴族的な顔松本。雲上人(やんごとない。会うなど思いもよらぬ=村松)。貴公子然とした(青年。風貌)。貴公子を思わせる品のよさ。 **きひん【気品】** ▼気品(えも言われぬ優雅な火坂。さっぱりとした瀟洒しょうな三好達。真っ黒いどっしりした大きい岩に白菊一輪のような太宰。無邪気なつくろわぬ=太宰)。気品が体全体から匂い立つ。凛りんとした気品が漂う。気品にあふれた味。気品の(高い一举措。ある美しい面立ち)。いかなる者をも目を陸みはらせずにはおかない気品のある容姿柴田剣。梨の花を見るような寂しげなうちにも気品のある娘=海音寺。気品をたたえた顔。美しい気品を漂わせる。気品高く(穏やかな母。咲く梅)。品格にかかわる問題。 **きんげん【謹厳】** 謹厳な(書体。父親。風貌の持ち主。モラル。口許を償わずかに綻犯にばせる=外村)。冗談口一つ利かない謹厳な侍"村上元。謹厳なる味わいのある表現=山口。 **けいい【敬意】** 本に対する敬意が微塵ふじも感じられない着川。敬意のこもった言葉をかける。根気に敬意を表する。最上級の敬意を払う。 **けいご【敬語】** 取ってつけたような敬語。敬語が乱れる。敬語の使用が過度になりがち。岩淵。▼敬語を使う(目上の人に。使い慣れない)。名前に敬称をつけて呼ぶ。尊称をもって呼ぶ。 **けだかい【気高い】** 気高い(美しさ。心ばえ。精神)。美しく気高くかよわい女性"玉村。高遠な(哲理談義。理想)。貴神の高嵐。師の高風を巻う。高適に、いな(精神に生きる。理想)。神韻襟渺札认以沿とした捕捉しがたい夢見心地谷崎。崇高な(愛の境地。精神。理想)。努力の崇高さを説く。 **けなげ【健気】** 健気な嫁。健気に(生きる。頑張る。振る舞う)。少女が健気に働く。健気にも(涙をおさえる。女手一つで二人の子を育て上げる)。甲斐甲斐しく(看護に当たる。夫の世話をする)。 **けんい【権威】** 権威が失隊する。権威に(抗らう。かかわる問題。反抗する。盲従する)。権威の(座から落ちる。失墜に拍車をかける。地下茎とも言うべき学閥高橋知)。言葉を生み出す心は権威や権力とはまったく無縁な自由なもの三浦し。権威を(回復する。ほしいままにする。ことごとく喪失する=阿部)。一朝にして権威を失う。学校の権威を失墜させる。頑迷な権威を打ち破る。 <328> # か 古い権威にしがみつく。古い権威を否定する。泰斗(経済学の。斯界にゅの。その道の。日本画の。物理学の)。鶴の一声。▼一家をなす(学界で。事業家として)。▼オーソリティー(その分野の。その道の)。オーソリティーに従う。オーソリティーを厚重する。法律を錦の御旗にする。錦の御旗を押し立てる。 **げんしゅく【厳粛】** 物思いに沈んだ人などと似通うたような厳粛ともいうべき真面目さ佐藤を。厳粛な(気分に浸る。習いを立てる)。神様のような厳粛な足どりで重々しく入ってくる松本。厳粛に(一日を反省する。会議が進行する)。儀式を厳粛に果たす。粛々と行列が通り過ぎる。 **こうき【高貴】** 真っ直ぐに伸びた鼻梁切りが高貴な印象を与える=阿刀田。高貴の生まれ。貴師の集う場所。十八世紀頃の貴婦人の概念が薔薇色のサングラステをかけて今に甦ふったと言いたいほど優雅で上品な夫人倉橋。みやびやかな姫。玉のような姫君。やんごとない(殿様。姫君。身分の方。お生まれのお方)。・貴婦人の気品が漂う。貴婦人のように着飾る=大庭。思慮深い貴女のような物腰有局。 **こうごうしい【神神しい】** 古びた神々しい顔。顔が神々しいまでの笑みに彩られる谷川。山が神々しく見える。神々しいような渉光に包まれる。神さびた神殿。神さびて見える神社。 **しかつめらしい** しかつめらしい(顔。口調。時候の挨拶。態度)。しかつめらしく(居ずまいを改める。腕を組んで考えこむ=杉本)。改まった(口調で尋ねる。言葉づかい。席)。改まって頭を下げる。格式ばった(儀式。店)。格式ばって一礼する。儀式張った(挨拶。晩餐会以)。事を堅苦しく儀式張らせる谷崎。 **じゅうこう【重厚】** 重厚な(木のドア。文体)。とっしりした重厚な感じの古い建物"小沼。謹直重厚な人物。古典的な重厚さを漂わせる雰囲気の洋室笹沢。鈍重と云ってもいいくらいの性格の重厚さ藤枝。 **しゅしょう【殊勝】** 殊勝な(心がけ。面持ちで一礼する)。笑止ながら殊勝な敵心に中。殊勝に涙を流す。殊勝げに(頭を下げる。顔を赤らめる)。奇特な(心がけ。篤志家)。しおらしく頭を下げる。 **じょうひん【上品】** 慎み深い深窓の婦人のように上品『有段。上品な(言葉遣い。風采と態度。物悸。顔つきをした青年。スーツを着こなす。立ち居振る舞い。手つきで食べる。はんなりとした脂身)。甘さを抑えた上品な味。すれてない上品な娘。細面の上品な老婦人。虫も殺さぬ上品な顔立ち今日。目をみはるような上品なセンスの服を身にまとうに吉本。六十歳過ぎの上品な婦人!宗田。上辺は上品に取り澄ます。色白の上品そうな顔立ち!宮本虾。上品さを身につけた教養人。しっとりした(落ち着きが備わる。飾らないかぐわしさ。草ぶきの田舎家)。しっとりと(短歌を詠む。落ち着いて行儀正しい女"山手)。はんなりとした着物。そこはかとない品が感じられる。物腰に品がある。品のよい六十がらみの老武士池波。ミッション系の品の良い女子高"村上巻。毅然とした品のある態度。粋に走らず品のあるいい帯=有吉。品のいい(笑顔。奥様。言葉。雰囲気が漂う)。老成した品のいい顔立ち"石坂。エレガントな(ドレス。身のこなし。立ち居振る舞い)。高尚な(芸術。思想。趣味に憂き身をやつす)。話が高尚に過ぎる。﨟ぅぅたけた(女性。姫君)。目ざめるような橋たけた美しさ=柴田錬。 **しんみょう【神妙】** 神妙な(顔で答える。反省の面持ち。而持ちで畏まっている。表情でうなずく)。神妙に(頭を下げる。手を合わせる。両手をついて詫びる。畳に手をつき深々とお辞儀をする=ねじめ)。 **すうはい【崇拝】** 崇拝の的。迷信的崇拝をさらけ出す。崇拝する(金を。偶像を。師を。西洋を。さながら女神を打ち仰ぐように八谷崎)。偶像ががらがらと音を立てて崩れるなかにし。偶像に向かって祈る。 **せいせいどうどう【正正堂堂】** 正々堂々と(玄関から入る。闘い抜く。申し開きする)。裏のない正々堂々とした商売。正攻法で(闘う。立ち向かう。問題を処理する)。 **そうちょう【荘重】** 荘重な(足取りで入ってくる。厚織りのカーテン。口調で申し渡す)。バロック風の荘重な造り。荘重の一語に尽きる。端厳荘重な調べ。 **そんけい【尊敬】** 尊敬に値する人物。尊敬の(念を持つ。目を向ける)。口調に尊敬の念がこもる。密かに学敬の目で眺める。旧家に対する原敬の念が残る若竹。原敬をひとしお深く持つ。▼原敬する(先生を。父親を。心から)。尊敬する気持ちと憎む気持ちがせめぎあう志茂田。互いの賢を原敬しあう。仰ぐ(你人と。師と。盟主と)。▼あがめる(神を。祖先を。雷神を。命の恩人と。仏と)。崇敬の念をあらわす。尊崇の心が厚い。尊宗措ぉく能ぁたわざる人物。▼原崇する(皇室を。朝廷を)。尊ぶ(心根の高雅を。自然の掟はきを。質実剛健を)。敬愛の念をいだく。敬愛する(師父を。女性を、先生を)。▼拝外する(アメリカを。西洋を)。拝外思想(屈辱的な。素朴な)。 **だいいちにんしゃ【第一人者】** 第一人者(この分野の。斯界にかの。斯学しがの。この学問に関する)。第一人者ともなりかねまじき勢い。第一人者を以もって任じている舟橋。大御所(楽壇の。学界の。政界の。文壇の)。▼雄(戦国の。文壇の。乱世の)。一方の雄と目される。 **だいじんぶつ【大人物】** ▼大人物(立志伝中の。歴史に残る。よっぽど上等の)。大人に心の風格を漂わせる。一代の傑物になる。世界的に有名な偉人。你人に心酔する。偉人の知恵に学ぶ。聖人と深名姉だされるほどの人間=岡本。聖人にちなんだ名前。聖人君子のような人格者萩原吻。 <329> # 感心する・敬う **たいせい【大成】**将来の大成を嘱望される。▼大成する(学者として。芸術家として。選手として)。瑠璃も玻璃はりも照らせば光る。 **ちゃんとする**ちゃんとした(口を探す。教養のある人間。調査に基づいた案)。ひとかどの(主張を持つ。手柄を立てる。店を持つ)。 **とうとい【尊い】**生命は比類もなく尊い=福永。啟い人命を失う。雲の上の尊い方。和をもって噂しとなす。▶尊さ(命の。平和の。労働の)。山高きが故に貴とぅからず太宰。 **どうどう【堂堂】**堂々たる(構えの温泉宿。体軀たいの持ち主。ビルを構える。落ち着き払った様子)。デッブリ体格のよい堂々たるお婆さん=坂口。背の高い堂々たる男。堂々と(自説を貫く。表通りに店を張る。屑をそびやかせて歩く)。勝ち誇ったように肩をそびやかせて堂々と歩く=長崎。玄関から堂々と入る。白昼に堂々と実行する。人前で堂々と抱き合って歩く。胸を堂々と張る。悪びれもせずに堂々と答える。堂々とした(体軀。風格を備える。立派な風貌)。大柄で堂々とした恰幅跡に。言い方が堂々としていて少しも悪びれていない=源氏。押し出しが堂々としている。堂々の(論陣を張る。試合を繰り広げる)。・あたりを払う堂々たる(歩き方。立ち姿)。体軀堂々たる警官。卑屈な感じは微塵もない。上司に対しても臆せず悩みつく。怖ぉめず臆せず(意見を述べる。堂々と反論する。真っ先に手を上げる)。大手を振って(凱旋が心する。親から独立する)。▼大手を振って歩く(大道を。堂々と)。誰憚燃炊はらず大いにつき合う。誰はばかることなく思い切って泣く=武者小路。誰憚るところなく高声に語り合う。 **とく【徳】**徳は孤ならず必ず隣あり。徳をもって罪人に接する。遺徳(故人の。先人の)。人徳が備わる。人徳に欠ける。徳がある。有徳の(師。神父。士。者に帝位を譲る)。内外の碩学焼き高徳が雲集する井上蹟。高徳の(師。僧)。俗世間を超越した高徳の士の面影遠藤。徳が高い。徳を具そなえた人物。 **なみだぐましい【涙ぐましい】**涙ぐましい(献身。努力を重ねる)。涙ぐましいまでの一途さ。涙ぐましいほどの看護。 **はなばなしい【華華しい】**華々しい(戦功を上げる。才能の開花をみせる)。華々しく文壇へデビューする。宣伝広告部に行ったらせいぜい華々しく手柄を立ててやる=三浦し。 **ひんい【品位】**落ち着いて品位がある。品位に(関わる問題。満ちた身ごなし)。全体的に優れた品位の高い調子を保つ三好淺。零落ぉちぶれた武士にあるようなやさしみと品位を持った男菊池。人品いやしからぬ紳士。どんなに変装しても人品骨柄はかくしおおせない=白洲。王者のような風格を備える宮尾。教師らしい風格を漂わせる=高樹。 **みごと【見事】**痛いところに的確に釘を打ち込んでいく手並みが見事「有川。みごと司法試験に合格する。難しい仕事を見事やってのける。見事な(けりのつけ方。効果をあげる。手腕を見せる。成功を収める。出土品に目を瞠ょはる=大佛。水練の手並みを見せる=村上元)。枝振りの見事な老松。桜が見事な花を咲かせる。大層見事な園遊会。ぐっと後ろに張り出した見事な尻小松左。はたで聞いていてもほれぼれするほど見事な話し方戸板。我ながら見とれるほどの見事なできばえ=江戸川。見事に(一杯食う。一本取られる。裏をかかれる。功名を立てる。采配を振る。復讐心しを遂げる。危機を乗り越える。権力を叩きのめす。図星をさされる。難問を処理する。練り上げられた論理)。二枚目の条件を見事に備えている。バランスが見事に保たれる。紛糾した物事を見事に処理する。夢を見事に実現する。予想が見事に外れる。切り出そうとした言葉を物の見事にさえぎる=有島。見事に当たる(推理が。予言が)。見事の一語に尽きる。ものの見事に(出し抜かれる。投げ倒す。命中する。肩透かしを食う。仕掛けた罠ゃなに陥る。形勢を逆転させる和久)。自信がものの見事に砕かれる。▼ものの見事に的中する(作戦が。予言が)。出処進退の見事さ。 **ものものしい【物物しい】**物々しい(捜査頭勢。護衛に囲まれる。雰囲気を呈する)。大層な物々しい事件。物々しく(武装する。立ち騒ぐ風と波)。 **りっぱ【立派】**おやと見直したくなるほど立派石坂。立派な(家に住む。家のお嬢さん。一人前の男。甲冑みっちを帯する。体格をした男。邸宅を構える。手木を示す。身なりの紳士。セールスの手腕を持っている。花嫁道具を持たせる)。商人としての立派な才覚。人格も識見も立派な男。一粒選りの立派な人物ばかり。思いの外に厚みのあるたっぷりとした立派な肩=谷崎。家内の人たちを感嘆させたほど立派な大往生"菊池。素人目にも風格のある立派な文字「佐野。相撲取りのような立派な体椎名誠。立派に(大任を果たす。通用する。仕事を成し遂げる)。跡継ぎとして立派に育てる。衝撃を立派に受け止める。風格が立派に備わる。二人の子供を立派に育て上げる。見違えるくらい立派になる。店の構えを立派にする。天晴れ見上げた才子。偉大な(勝利の瞬間。一歩を踏みだす)。感性が創り上げた偉大な財産"大野透。卑しからぬ人品人品卑しからぬ老紳士。善美を尽くした(出での男。人品卑しからぬ老紳士。饗宴)。▼壮とする(意気を。志を)。デラックスな(気分を味わう。車。ホテル)。見上げた男。りゅうとした(着こなし。身なりの紳士。服装の武家。背広の三つ揃い)。麗々しい(飾りつけ。肩書)。麗々しく(言葉を掲げる。ポスターが貼られる)。れっきとした(学者。老舗。証拠品。名門。理由がある。エリートコース。お店のおかみさん。手がかりがある)。 <330> # 消える・失う **あらわれてはきえる【現れては消える】** ▼現れては消える(脳裏に。二つが交互に。いくつもの情景が頭の奥に=高井)。▼消える(往来の人や車が幻影のように現れては幻影のように霧のうちに=国木田。どこからともなく現れてどこへともなく=開高)。雑多な思いが次から次へと現れたり消えたりする藤枝。 **うかんではきえる【浮かんでは消える】** 浮かんでは消える(疑問符が。横顔に苦悶心もが。脳変に。まぶたの裏に。いろいろな妄想が。途方もない考えが胸に。頭の中でめまぐるしく様々な絵が次々にさだ。フラッシュバックが頭の中に=佐藤多)。幾つもの理由が思い浮かんでは泡沫にのように消える=福永。 **うしなう【失う】** ▼失う(生きる希望を。顔が表情を。髪が脂気を。唇が湿り気を。心が平衡を。心の張りを。心の拠はり所を。言葉が脈絡を。事故で片足を。仕事に興味を。質問の機会を。掌中の珠を。水害で家を。昔日の威を。血の色を。中心的人物を。手が感触を。尊い人命を。話の接ぎ穂を。皮膚が光沢を。方向感觉を。目が輝きを。両親を一度に。元も子も。生きていく気力を。心がふだんの落ち着きを。言葉を切り出すタイミングを。自分の居場所を。社会的な立場を。商売に対する情熱を。小利を貪って大利を。陣容を立て直す機を。精神が正常さを。大事な得意先を。立ちどころに客を。非難する気持ちを。まともな神経を。見る見る生気を。世の中に望みを。権限を少なからず。一つ間違えば何もかも。恐怖のために唇の色まで=壺井)。怒りと哀かなしみで自制心を喪らしう。宮本錢。▼意欲を失う(生きる。働く)。▼面影を失う(昔日の。昔の)。▼声を失う(唖然として。悶絶も~したように)。言葉を失う(後の。言うべき。返す。束の間。あまりのことに全員が"有川)。しばし言葉を失って黙り込む。▼自信を失う(自分の魅力に。ぐらりと)。自由を失う(体の。心の)。▼力を失う(声が徐々に。考える)。血の気を失う(顔が。頬が)。▼判断力を失う(正常な。総合的な。冷静な)。失った(金を取り戻す。物の貴重さを思い知らされる)。昏々にふとして意識を失って行く石川。ぐったり気を失っている。空しく失われた青春への郷愁=中村貞。失われる(多様性が。信頼が刻々。おびただしい人命が。人々の暮らしが。ブライバシーが。真相を知る機会が永久に=藤沢)。財布を落とす。失する(当を。礼を。遅きに。意見を挟むタイミングを)。金を相場ですってしまう。財力を根こそぎに覆す。やらずもがなの失点。失点を(重ねる。喫する。最小限にとどめる)。▼失わない(一縷びちの希望を。一縷の望みを。気品を。いつまでも童心を。常住背年らしい闘志を"岡本)。失う物は何一つない。巧みな見切りの頃合いを失わず立ち上がる=横光。 **うせる【失せる】** ▼失せる(顔から輝きが。心の張りが。威勢がとみに。笑みがすっと。鷹揚うな心のゆとりが。顔から血の気が。恐怖感がたちまち。余韻がすっかり)。▼気が失せる(意見する。仕事を任せる。抵抗する。話す)。▼気力が失せる(逆らう。物を言う)。光が失せる(瞳から。目から)。光沢の失せた髪。生気の失せた体を抱き起こす。艶の失せた薄い煩。全く興味の失せた表情。雲を霞と逃げ失せる。 **かいしょう【解消】** 暗雲が解消に向かう。不安の解消に努める。▼解消する(供給過剰が。敵対関係が。運動不足を。婚約を。夫婦関係を。欲求不満を。発展的に。個人を集団のうちに)。ストレス解消に役立つ。▼解く(祈りの形を。疑いを。恨みの感情を。疑問を。緊張を。警戒の構えを。誤解を。沈黙の輪を。武装を。窓のロックを。怪訝けげな面持ちを)。軟禁状態を解かれる。ようやく初対面の緊張がとける=森玲。場の緊張が解ける。▼解ける(怒りが。苦しい憂いが。呪縛が。隘法が。胸のしこりが。胸のつかえが。重苦しかった雰囲気が。自分の中にいつのまにか築いていた堰せきが"干刈)。多年の疑問が解けて胸がすっきりと軽くなる藤沢。疑惑の糸がすらすらと解けてゆく=山岡。 **かききえる【掻き消える】** ▼かき消える(安堵はんが。笑いが。一瞬にして。さっきまでの暗い顔色が嘘のように隆)。 **かきけす【掻き消す】** ▼かき消す(声を銃声が。嫌な予感を。面影を。悲しみを。心配を。陶酔を。不安を)。▼かき消される(声が轟音ぶんに。声が潮騒乱心に。溜め息が風に。声がどよめきに。返事が風の音に。後ろ姿が吹雪で)。 **かげをひそめる【影を潜める】** ▼影を潜める(いつもの威厳が。いつもの歯切れのよさが。日頃の大言壮語が。口の悪さがすっかり)。着道楽が影を潜めて着回しが多くなる=池井戸。 **きえいる【消え入る】** 消え入りそうな声で言い訳する。今にも消え入りそうな細い声。消え入りそうな声でごめんなさいと言う。消え入りたいほど恥ずかしい幸田文。消え入りたいほどの呵責唸しを胸に受ける久米。 **きえうせる【消え失せる】** ▼消え失せる(怒りの色が。気の強さが。跡形もなく。忽然ぜんと。夢のように。一瞬目を離した隙に。いずことも知れず。きれいさっぱり。存在の名残もなく。一人残らず視界から。宿に荷物を残して若竹)。影さえとどめていない。▼消えてなくなる(感慨が。宝の山が。不安が。あっという間に。線香花火のようにばっと=木山)。消失する(意識が。違和感が。危険性が。傷が拭い去られた如く菊池)。霧散する(夢が。欲情が。すべての疑念が)。▼雲散霧消する(期待感が。疑問が。恐怖の念が。 <331> # 消える・失う―107 チャンスが。悩みが)。▼消散する(恨みが。霞が。苦痛の影が。煩悶いんが。不安が。抑圧感が)。 **きえかける【消えかける】** ▼消えかける(嬢ぉさが。焚たき火が。空に夏の日の名残の色が赤沢)。炭火が消えかかる。消えかけた炎が再び燃え上がる=山田風。▶風前のともし火(命が。政権が)。 **きえさる【消え去る】** ▼消え去る(足音が遠くに。煙のように。幻のように。闇から闇へ。猛々しい欲望が。すたすたと闇の中に。いずこへともなく。船が海の彼方にすっかり。夜に溶けこんで。茫漠啦ぐとした夜の広がりの中に=黒井。決意が泡のように野間。一陣の風のごとくに視界から=池波。過去の出来事が時問の裂け目に陥ぉち込んで吉行。十二時過ぎたシンデレラの衣裳同様あとかたなく安岡。夢があぶくのように石坂)。 **きえていく【消えて行く】** ▼消えて行く(焼芋屋の声がのどかに=曽町。旅客機が悠々と雲の彼方へ平岩)。▶消えていく(足早に闇に。姿が霧の中に。見る見る視界の彼方に。意識がすっっと頭の中から。波のまにまに沖へ。豆粒のように小さく=檀。我が家の資産が底の抜けた風呂桶から心地よい湯が音を立てて流れ出すように北村)。ありとあらゆるわだかまりが消えてゆく=さだ。風に消え行く音。歌の終わりをフェイドアウトさせる=海堂。 **きえてしまう【消えてしまう】** ▼消えてしまう(煙のごとく。右から左へ。いつの間にかどこかに。誰に記憶されることもなく時の中に=村上春。神隠しにでもあったように高橋治)。一瞬にして消えてしまう夢。 **きえない【消えない】** ▼消えない(なかなか火が。不審の思いが。印象が未だに。記憶が容易に。感動が一生。顔から訝灬ょしげな色が。一度広まった噂はなかなか。顔が脳裏にちらついて。消そうとしても)。一生消えない傷を負う。少女らしさの消えない体。焼ついて消えない(瞼に残像が。網膜に)。消えやらず残る(慕情が。たそがれの光が)。消しがたい反感がくすぶる。 **きえる【消える】** ▼消える(顔から笑みが。顔から微笑が。忽然だんと姿が。私語の波が。死の恐怖が。信仰の灯が。人の気配が。部屋の電気が。目から殺気が。目尻から鋏しゃが。目の下の隈くまが。残照が次第に。照明が徐々に。姿が暗闇に。店の奥に。夜霧の彼方に。歴史の闇に。絞首台の露と。声がぶつりと。姿が眼前から。手品のごとく。電気がばっと。光がすっと。魔法みたいに。露もゃがみるみる。初々しい面影が。後ろ暗い思いが。顔から険しい相が。顔から迷いの表情が。顔から喜びの色が。煌々こうとついていた照明が。瞬時にして夢が。将来への不安が。表情から険悪さが。表情から笑いが。胸のもやもやが。目から激情の光が。やりきれない重苦しさが。後ろ姿が闇の中に。臆していた気持ちが静かに。給料が部屋代に。書類がどこかに。太陽が尾根の陰に。ドアの向こうに。人影が視野の外に。あっという間に目の前から。甘い気分がさっぱりと。海に飲み込まれて。幻像がたわいもなく。雑念がきれいに頭から。すっっと音もなく。姿がいつの間にか。捨て台詞べりを残して。望みがあっけなく。店の明かりが次々と。拭い去ったように霧が笹沢。表情から一切の笑みが=泉俊。暗い空の中にひらめく稲妻のようにすぐに“長与。張りつめていた緊張感が微笑と共に=新田。終いまめられた跡が潮が引いてゆくように人間。風にさらわれるようにあさの。壁の中に吸い込まれるようにして=柴田剣。霧が剣ぐように=本庄。声が虚空に吸い込まれて=篠田。銃声が山々にこだまして“石川。門の中に吸いこまれるように森岳)。▼明かりが消える(ビルから。部屋の。ろうそくの)。▼ふっと消える(幻影が。寂しさが。姿が)。ぴうと消える(一場の。うたかたの。はかない)。明かりが一つずつ消え始める。嘘のように消える(怒りが。痛みが)。 **けしさる【消し去る】** ▼消し去る(朝の光が闇を。心の傾火』を。痕跡をことごとく。白墨の文字を手のひらで=横山)。▼クリアする(メモリーを。以前のデークを)。▼消去する(データを。テープの録音を)。消去法で考える。 **けしとぶ【消し飛ぶ】** ▼消し飛ぶ(嫌な思いが。恐怖感が。上機嫌が。疲れが。喜びが。一切の心配事が。あらゆる想念が心から=隆)。友情が木っ端微塵にいににけし飛ぶ海音寺。どこかへ消し飛ぶ(気鬱が。憎らしさが)。 **けす【消す】** 消す(明かりを。足跡を。雨が景色を。笑みを。音を。声から皮肉を。邪魔者を。生命の灯を。談合に時を。テレビを。電気を。電灯を。微笑を。ライトを。落書きを。ラジオを。笑いを。ぐずぐずと日を。枕元のスタンドを。ライターの火を。存在を記憶から。煙草を灰皿に押しつけて)。▼消せない(思うように。消そうとしても)。▼消し取る(刺青六知を。壁の落書きを。色素を。文字を)。にじり消す(煙草を。火を)。吹き消す(手燗にしを。ろうそくの火を)。▼ふっと吹き消す(行灯器从の火を。マッチの炎を。ランブの明かりを)。▼踏み消す(吸い殻を。草の火を。煙草を。火のついた築束さを)。▼揉もみ消す(煙草の火を。スキャンダルを。煙草の吸いさしを)。落とす(明かりを。ライトを)。火を落とす(行灯の。ボイラーの)。名前をリストから消却する。▶抹消する(字句を。登録を。記憶から。名簿から)。姿を消す(全員が。岩の向こうに。暗闇に。群衆の中に。扉の向こうに。アバートから。いずこかへ。いつの間にか。表舞台から。教室から。記録の上から。忽然だんと。この世から。地上から。次々と。飄然心に、うと。町から。目の前から。あっという間に。どこへとも <332> # き なく。周囲に気づかれないように内桥。娘を置き去りにして柴田錬)。一人また一人と姿を消していく。 **しっきゃく【失脚】** ▼失脚する(権力者が。クーデターで。総言だんによって。事件のあおりを食らって。己れの策に倒れて=中島多)。支配者の地位を崩される。▶地位を追われる(会長の。代表の)。 **しっつい【失墜】** ▼失墜する(威信が。イメージが。会社の信用が。権威が。社会的信用が。信頼が。声価が。威望を。地位を。名誉を)、 **しょうか【消火】** 消火する(消火器で。水で)。火を消す。消火器を持って駆けつける。ぜんまいの芽のようにまるまった消火栓の先端黒井。▼消し止める(火事を。消火器で火を。火災を素早く。ぼやで。大事に至らぬうちに)。▼銀火する(火事が。ほやのうちに)。火消し同士が消し口を争う。搬にとを(掲げる。振る)。 **しょうぼうしゃ【消防車】** 消防車が消火に当たる。消防車から放水が始まる。消防車の(真っ赤な車体。サイレンが鳴り出す。放つ赤い光が点滅する。サイレンの音を聞いてびっくりして外に飛び出す=小林久)。 **しょうめつ【消滅】** 生成と消滅を繰り返す。▼消滅する(記録が。苦悩が。権利が。憎悪が。伝統が。地上から永遠に。問題がうやむやに)。▼消滅させる(恐怖心を。痕跡を。毒素を)。 **しょうもう【消耗】** 消耗が(回復する。激しい)。消耗する(エネルギーを。いたずらに堂々めぐりをしてあたら体力を飯田)。心身ともに消耗しきる。消耗した体力を回復する。▼損耗する(人命を。物資を。兵を)。 **そうしつ【喪失】** ▼喪失する(資格を。戦意を。地位を。男性としての機能を=丹羽。権威をことごとく=阿部)。記憶喪失にかかる。自信竖失に陥る。深い痛みを伴った喪失感。喪失感が胸をえぐる。どうしようもない喪失感に襲われる。手ひどい喪失感を噛みしめる。心中きにぽっかりと穴があいたよう梅本。 **そん【損】** ▼損(言うだけ。盾突くだけ。先走って心配をするだけ)。損な(くじをひく。性分。立場。役割。卦けを取りたくない=舟橋)。損になることを嫌う。▼損はない(知っておいて、得こそすれ。どう転んでも決して)。どっちにしても損にはならない。覚えておいて損はしない。みすみす損をするのが目に見えている。含み損が発生する。含み損を抱える。▼損する(時間を。銭を)。▼損をする(口不調法で。口下手で。糠喜加沙ょびして)。損して得取れ。算盤にに合わない。歩が悪い。割の悪い話。割を食う。大損する(為替差損で。欲に駆られて)。みすみす大損をしたような重い気持ち。収入が欠損する。一千万円の実損が出る。損金に計上する。巨額の損失を出す。これまでの損失を一挙に取り戻す。丸担を(覚悟する。被る。免れる)。▼ためにならない(言うことを聞かないと。隠し立てしては。かばい立てすると)。得にもならない(一円の。一銭の。三文の。何の)。▼馬鹿をみる(あんまり心配するとあとで三浦哲。岡抜けな泥棒のように逃げ損なって=山本有)。問尺に合わない(広告料。仕事)。割に合わない仕事。経済的に割が合わない。割の合わない取引。 **たちぎえ【立ち消え】** ▼立ち消えになる(噂が。問題が。縁談がいつとはなしに。話がいつの間にか。計画が噂にのぼる程度で=高橋和)。会話が立ち消えになり黙り込む鈴木光。 **ちょうけし【帳消し】** ▼帳消しになる(失態が。きれいさっぱり)。帳消しにする(恨みを。借金を。罪を。滞納した保険料を)。▼棒引きになる(借金が。家賃が)。棒引きする(借金を。入院料を、融通した金子だんを火坂)。 **なくす【失くす】** ▼なくす(会う機会を。生きた心地を。生きる気力を。意識を。元気を。後顧の憂いを。勉強する気を。防御する術ずくを。やる気を。酔って正体を。元も子も。社会的な信用を。すっかり自信を。そわそわと落ち着きを。幽霊みたいに影を。日野)。仕事に立ち向かう気力を失くす=内館。すっかり落ち着きをなくしている。何もかもなくしてしまう。▼廃絶する(階級対立を。核兵器を。不公正を。不平等を)。放火で亡失した寺。▼亡失する(主権を。戦災で財産を)。紛失する(鍵を。切符を。原稿を。資料を。部品を)。紛失した財布を捜す。 **はい【灰】** 灰が(土に和する。分厚く積もる。わっと上がる。所構わず飛び散る。ゆっくり舞い落ちる)。煙草の灰がぼとりと落ちる。悲哀の情が灰となる。高橋和。灰にまみれる。火箸を灰に刺す。▼灰になる(死んで。燃えて。真っ白に燃えつきた)。灰の下からよみがえる。灰を吹き飛ばす。火掻ぃかき棒で灰を落とす。頭から灰をかぶったように全体が煤すずけている女池田。長火鉢の灰を掻き均妙す北原。烏有、りゅに帰する。灰のような細かな粉雪が乱れ降る=海音寺。火鉢の灰のような顔色=池波。灰のように冷えきった我が家"岡本。戦吐のく木の葉が灰のように白く見える=大佛。二人の間が灰のように冷えきる"石坂。灰神楽が立つ。灰神楽をあげる。 **ひょうかい【氷解】** ▼水解する(疑問が。謎が。秘密が。不信感が。わだかまりが。不透明な不可解さが。しっくりしなかった理由が宮本旨)。数カ月問苦しんできたことがスウッと氷解したような気分軍司。悩みつづけていた胸の氷がふっと解ける=杉本。 **もえつきる【燃え尽きる】** ▼燃えつきる(情熱が。生命が。ろうそくが。たちまちのうちに)。燃えつきる寸前に炎の尾が伸びる=藤本。一度火がつくと燃え尽きるまで燃えてしまう舟橋。命を燃やしつくす。▼烏有ゅに帰す(火災で家屋が。戦災で町が。工場が空襲のために焼け)。▼灰燼いふに帰する(家が。空襲で)。 <333> # 聞く-108 **イヤホン** イヤホンを(はめる。耳から外す。耳に差し込む)。イヤホンを耳に(当てる。突っ込む)。ヘッドホンを(頭にかける。耳に当てる)。レシーバーを耳に当てる。 **きかされる【聞かされる】** ▼聞かされる(さんざっぱら。思いもよらない言葉を。くだくだしい詮議を。飽きるほど何度も。暗い話をたっぷりと。退屈な話を長々。女の口から芝居の真相を=高橋克。甘い声を悩ましげに=和久。耳にたこが出来るほど度々"舟橋)。 **きかせる【聞かせる】** ▼聞かせる(話の続きを。秘密の一端を。冥土の土産に。渋い喉で。長々と昔の話を。変な話をたくさん。不用意に事故の話を"辻兵)。聞かせる歌。かねがね言って聞かせている。聞き応えのある(演説。曲)。曲の触りを弾く。 **きかない【聞かない】** ▼聞かない(人の話を。たまにしか。あまりいい噂を。言うことを最後まで)。こうと言ったら聞かない性質たち=鈴木三。聞かないでも分かる。聞かずとも察しがつく。不快なスキャンダルを聞かずにすむ。▼聞いていない(ろくに話を。ほとんど)。聞いているふりをする。誰も聞く者はいない。ろくろく聞こうともしない。話に背を向ける。話に身を入れない。耳に蓋をする。両手で耳に栓をする。一耳にしない(とんと。久しく)。▼耳に入らない(頼みが。言葉がまるで)。耳をふさぐ。はなから聞く耳など持たない篠田。耳を貸さない(警告に。抗議に。忠告に。取り成しに。意地になって。誰も。いっさい弁明に)。相手のいうことなど耳も貸さない。 **きかれる【聞かれる】** ▼聞かれる(根掘り葉掘り。アリバイの有無を)。誰かに聞かれるのを憚ばかるように声を低くする高井。聞かれるままにぽつりぽつりと正直に答える=古井。警察官に事情を聴取される。事情聴取を受ける。 **ききいる【聞き入る】** ▼聞き入る(美しい声に。息をひそめて。うっとりと。鉛筆を構えて。驚きをもって。真剣な顔で。尖とがった耳で。箸を止めて。かたずをのんで。膝を乗り出して。身を乗り出すようにして。呼吸を止める思いで=鈴木光。テーブルの上に乗り出すほどの関心を示して鈴木光)。聴き入る(息を凝らすようにニュースに"高井。全身を耳にして省吉。魂を奪われたように=海堂)。木偶でくのように黙念と聴きいる=真継。全神経を聴覚に集める=藤本。耳に(神経を集める。注意を集める)。賢い犬が遠い物音を開き澄ましているように見物する"谷崎。▼開き澄ます(戸外の雨を。速い物音を)。考え込みながら斧ぉのの音に聞き耽ぃける。井伏。▼熱心に聞く(話を。誰よりも。眼を凝らせ肩をつめて"円地)。傾聴に値する意見。人の意見を傾聴する。傾聴すべき点が少なくない。 **ききつける【聞きつける】** ▼聞きつける(噂を。かすかな音を。騒ぎを。事件を。物音を。靴音を敏感に。耳ざとく。潺湲她从たる水の音を。一家の身の振り方を内橋。安くてうまいという評判を"北原)。 **ききづらい【聞きづらい】** ▼聞きづらい(小さな声は。直接。ちょっと)。▼聞きにくい(雑音が多くて。女性の年齢は。離婚の原因は。周りがうるさくて)。聞くのがためらわれる鈴木光。 **ききて【聞き手】** 聞き手に回る。聞き手の(反響。評判。顔を一人一人見回す。江戸川。感嘆の声や驚きの表現が入る間まで計算して語る=落合)。ひたすら聞き役に徹する。もっぱら聞き役に回る。黙って聞き役をつとめる。聞く者の(耳を覆わせる。胸を打つ。心を滅入らせる)。聞く者を温かく包み込む。 **ききとる【聞き取る】** ▼聞き取る(証言を。妙な響きを。話を正しく)。全身を耳にして一語一語をむさぼるように聴きとる=飯田。話を聞き取るのに骨が折れる。聞き取り調査を始める。聞き取りの(試験。結果をまとめる)。一言たりとも聞き落とさない。▼聞き漏らさない(一言一句も。一言も。先生の片言隻句も)。聴覚によって惹起し。。される思い出"氷室。聴覚を働かす。意見を聴閉する。小一時間ほどで聴取が終わる。▼聴取する(意見を。関係者から事情を)。聴取内容は別紙の通り。▼ヒアリング(英語の。有識者からの)。ヒアリングを(受ける。実施する)。 **ききとれない【聞き取れない】** ▼聞き取れない(会話の中身が。声が低くて。訛なまりがひどくて。発音が不明瞭で)。自分でも聞き取れないほど声をひそめる=小池。話し声も満足に聞き取れないほどの騒音"中沢。聞き取れないような小さな声佐藤多。▼聞き取りにくい(声が遠くて。車の風切り音で会話が)。声が聞き取りにくいほど低い"北原。 **ききとれる【聞き取れる】** ▼聞き取れる(余響が。かすかに気配が。台詞謎」がはっきり。言葉の端々が明瞭に=永井能)。 **ききほれる【聞き惚れる】** ▼聞き惚れる(ぼうっととして太鼓に。恍惚にうとして楽の音に佐藤巻。相槌を打つのも忘れて海音寺)。▼聞きほれる(居住まいを正して。気が遠くなるほど小鳥たちの声に=大江)。▼聴き惚れる(うっとりして曲に。宙を見るような眼つきでビアノに=林炎)。 **ききまわる【聞き回る】** ▼聞き回る(評判をそれとなく。一帯に点在する瓦焼き場を藤沢)。▼聞きまわる(あたり一帯を。住所を頼りに。あちこち)。▼聞いて歩く(注文を。反響を。一軒一軒)。聞いてまわる(意見を。注文を。友達の間を。一軒一軒。片っ端から)。 **ききみみ【聞き耳】** 獣のように開き耳を立ててじっと見張っている=野間。▼聞き耳を立てる(会話に。証言を。 <334> # き 話を。人の話に。隣の席で。はっとして。全身全霊で周囲に。ただならない気配に。鉤はりにかかった脆じゃも忘れるくらい芥川。一言も聞き逃すまいと必枕。黙想から取って返して"有島)。耳をとがらすようにして聞く=梅本。▼耳を立てる(話に。犬が胡散らそうに。聞くともなしに)。▼耳をそばだてる(会話に。次の言葉に。客たちが一斉に。言葉の陰影の細部までも聞き逃すまいと=辻井。じっと暗闇に眼を開き大江)。かつて覚えぬほど待ち侘びて門の開く度に耳を登だばてる=二葉亭。わずかな響きにも耳をそば立てる"志賀。身じろぎもせずに耳をそばだてている宮部。 **ききもらす【聞き漏らす】** ▼聞き漏らす(名前を。ニュースを。話を)。教授の一言一句を聞き漏らすまいと緊張する=藤本。一言も開き漏らすまいと構える=貫井。うっかりすると聞き漏らしてしまいそうな小さなつぶやき=開高。少しの物音も聞き漏らさない"江戸川。▶聞き落とす(うっかり。肝心なところを。重要なポイントを。いつもなら真っ先に気づく声を横山)。▶聞き過ごす(何の気なしに。うっかりと。上の空で)。金の返し方を聞き損ねる。▼聞きそびれる(名前を。話を。方角を)。聞き逃す(情報を。話を)。言葉を聞き逃すまいと必死になる。 **ききわける【聞き分ける】** ▼聞き分ける(足音を。エンジン音を。音の高低を。声を。物音を。まわりくどい言葉を鉱石の中から乏しい金属を抽出するようによく=中島災)。 **きく【聞く】** ▼聞く(恋の悩みを。話の続きを。風鈴の音色を。不審な物音を。来訪の口上を。話半分に。風の便りで。固唾扮たをのんで。興奮を抑えて。真剣な表情で。根掘り葉掘り。身を入れて。結婚したという噂を。地面に耳をつけて音を。担当者から事情を。父と母のなれそめを。とりとめのない昔語りを。引きこまれたように話を。両者の言い分を。言うことを素直に。一言も口を挟まずに。一歩突っ込んで。おしまいまでよく。この耳ではっきりと。細部にわたって。辛抱強く黙って。他人事ごとのように。駄目押しをするように。手に耳をあてて。手持ち無沙汰な顔で。なかば上の空で。何気ない様子を装って。耳の穴をほじくって。木々の薬と風の歌を=辺見。子供のようにうなずきながら話を五木。全身を耳にして言葉を"山本周。夢のようにあたりが騒がしいのを森思。言葉を平伏した頭上に"真継。さびしく吹いて過ぎる風の音を耳に=堀。雨の音を心に沁しみ入るように大佛。言葉を水の流れのように"島尾。説明を音楽でも聞くように=大岡。人の話を首を傾かしげて吸い込まれるように"干刈。胸の底に雪が降りつむように=川端。もっともらしく合の手を入れながら=福永)。よく聞く話。最後まで聞く自信がない芦川。人に聞くさえ面伏な空を攫っかむような尋ね物二葉亭。人に聞くさえ面伏結。せなたを挑むような尋ね物二葉亭。聞くだけ聞くともう用はないとばかり立ち上がる=田辺。聞くだに(慄然とする。身の毛がよだつ)。聞くと見るとは大違い。雨の音を聞くともなく聞く。聞くともなしに会話を聞く。聞くに耐えないような卑猥な言葉が飛ぶ=新田。見るにぶざま聞くに無残。開くも(涙の物語。耳のけがれ)。▼言うことを聞く(素直に。おとなしく)。一端を聞く(計画の。初めて秘密の)。話が聞ける(面白い。望外の)。▼詳しく聞く(事情を。状況を)。道を聞く(交番で。通りがかりの人に)。見るもの開くもの(すべてが悲しく感じられる!白洲。珍しいものばかり宮宮尾)。▼聞いている(かねがね噂に。かねて話に。最後まで黙って。身じろぎもしないで。耳にタコができるほどに開高)。一通り話を聞き終える。話を聞き終わる。ちゃんと話が聞きたい。黙って話を聞き続ける。▼開きに行く(演奏会を。講演を。リサイタルを)。▼聞きに来る(コメントを。ボーイが指名を佐野)。耳の穴をかっぽじって聞け。聞けば(聞き腹。気の毒見れば目の巻)。▼聞き方(答とがめるような。あたりさわりのない)。聞いてくれたって罰は当たらないでしょう。北村。耳寄りな話を聞きこむ。叫びを開きとめる。▼開き直す(何度となく。もう一度)。意味をとろうとして歯痒がそうに訊き直す=伊藤整。・伝え聞く(哀れな最期を。一部始終を)。沙もれ聞く(消息を。姉の口から)。▼試聴する(音楽を。楽曲を。CDを)。暮らしぶりを仄開疑似する。▼耳にとめる(言葉を。メロディーを)。言葉に耳をあずける。▼耳に挟む(噂を。会話をふと。二人のやり取りを)。▼小耳に挟む(噂を。ちょっといい話を"辺見)。 **きこえない【聞こえない】** ▼聞こえない(耳が。ことりとも。何の物音も。ちっとも不自然に。とても冗談には。よほど近づいてからでないと)。耳を塞ふさいで聞こえないふりをする。聞こえないほど小さな声。隣の人に聞こえないよう小声で話し合う。わざと聞こえぬふりをする。耳が(不目由。悪い)。相手の声が耳から引いて行く。耳に(栓を詰める。音がほとんど入ってこない)。耳の中が隅から隅までどこまで行っても真っ白小川。蠍ぅぅを詰めたうえに更に入り口にラムネ玉でもはめこんだように言葉をはね返す耳大庭。足音が聞こえないように歩く。音のない(画面。微笑)。聴覚が麻痺まぃする。聴覚を失う。聴力が(落ちる。衰える。低下する)。聴力を失う。▼難聴(軽度の。重度の)。耳遠いお年寄り。年をとって耳遠くなる。耳も魂もどろうするような大音響=山田風。話のあいだに何度も補聴器の調子を直さなければならないほど耳が遠い宮部。最近とみに耳が遠くなってきた。耳が遠くなる(じいんと。水の中に沈んでいるように長野)。 **きこえる【聞こえる】** ▼聞こえる(蒸らの遠音が。狼の遠吠えが。階下で物音が。心臓の鼓動が。世間に名が。殴る音が。馬蹄以ての森ときが。物凄い絶叫一つ。 <335> # 聞く **きこえる【聞こえる】** ▼聞こえる(声が。足音が。物音が。ヘリコプターの音が。話し声が。電話のベルが。鐘の音が。潮騒が。さざ波の音が。風の音が。波の音が。雨の音が。地鳴りが。遠雷が。エンジン音が。銃声が。サイレンが。いびきが。咳せきが。寝息が。泣き声が。うめき声が。嬌声が。笑い声が。歓声が。拍手が。足音が。馬蹄ばていの音が。物凄い絶叫一つ。音が単調に。名が近隣に。話が襖越しに。耳に唐突に。噂がちらほら。瀬音が蕭々しょうしょうと。弁解がましく。耳がよく。あちこちから啜すすり泣きが。かすかな寝息が。川のせせらぎが。小鳥のさえずりが。小鳥の鳴き声が。こほんと咳払ぜきばらいが。凧たこのうなり声が。搭乗案内のアナウンスが。遠くから騒ぎが。どこからともなく美しい音色が。鳥の羽ばたきが。人のどよめきが。一応もっともに。音がリズミカルに。口振りが悔しげに。こおろぎの音が寂しげに。谷川の音が穏やかに。遠い物音が鮮やかに。波音が途切れ途切れに。足音がばたばた。汽笛がボーボーと。車の音が遠く近く。琴の音がおりおり。至極もっともらしく。滴の音がぽたりぽたりと。太鼓の音がどんどんと。滝の音が耳近く。寝息が規則正しく。機はたの音がそこにもここにも。ひときわ大きく。水の響きがちろちろと。音が響きをうつように間断なく=大佛。鎖の音ががちゃがちゃと=佐藤。手にとるようにはっきり=芥川)。息遣いが耳元で聞こえる。音が聞こえる(岸を打つ波の。銅鑼どらの。蹄の。らっぱの。戦車のキャタピラーの。ばちばちと拍手の)。聞こえたかどうか分からない。聞こえてくる(風に乗ってどよめきが。鐘の音がだしぬけに。会話が風に流れて。隣の話がびんびん。ほえ声が朗々と。音が降り注ぐように=辻。悲鳴が闇を裂いて=飯田)。音が耳の(中に入り込む。奥深くまで届く)。音の渦が流れこむ=城山。言葉が耳の底にかっきりと残る=宮尾。耳いっぱいに騒々しい音が広がる。耳に補聴器をつける。教室中に聞こえるような大きな声=重松。音が耳を刺す。言葉を小耳に入れる。失った聴力が回復する。耳が聴力を取り戻す。補聴器を耳につける。言葉が耳朶したに飛び込んでくる。子供の甲高い叫びが耳に刺さる。殴る音が。▼耳に突き刺さる(言葉が。悲鳴が)。足音が耳にとまる。音が耳に流れ込む。ハミングが耳に流れ込んでくる。言葉が耳に流れ込んでくる。陶酔の紋げんが耳に鳴り響く=福永。浜辺に打ち寄せる音が耳にまつわる。猛烈な爆発音が耳の穴になだれこんで来る=西木。騒がしい物音が耳を圧する。女の声がなまめかしく耳を襲う。=泉。言葉が耳をかすめる。言葉が耳を刺す。遠く近くに話し声が耳を騒がす=長塚。小鳥の声が耳をつつく=森塚。 **こえ【声】** ▼声(どすの利いた。鼻にかかった甘えた。無機的な感じのする。歌っているように滑らかな=辻井。カラスが鳴くような不気味な=荻原。起訴状を読むんでいるような事務的な=泉。少女のどこか危なげのある爽やかな=干刈。少女のように興奮した無邪気な=中村真。どこかにあどけないものを残しているようなふくよかな=福永。喉の奥にひび割れがあるのではないかと思えるような妙に耳ざわりな=椎名誠。甘えるときのようなやや語尾のたかぶった=吉川。慌てて前の言葉を揉もみ消そうとするような勢い込んだ=高見。鶯のように可愛らしい=円地。聞こえるか聞こえないほどの低い=日野。苦痛と恐怖と哀願が混じり合ったような=檀。心の芯まで凍るような冷たい=田辺。子供みたいなしまりのない=古井。酒の匂いで伝わってくるような赤い=連城。声帯にパラフィン紙でもはりつけられたような哀れっぽい=安部。直接に先方に射込むようなよく徹る=本庄。烏がうたうようなまるみのある=司馬。咽喉のんどを毀こわした角力取すもうとりのように荒い=川端。発情期の犬のように妙に上ずった=阿久。腹にしみ渡るような幅のある=井上靖。腹の底からしぼり出すような=壺井。瞳を引き寄せずにおかないような力のこもった=永井路。ふがふがと空気の抜けたゴム毬まりをつぶすみたいな=大庭。細い金属の線を思わせる繊細な=微かすかに震えを帯びた感じの=高見。むりやり景気をつけているような力のこもらない=三田。ゆっくりとまつわりつくような軟らかく湿った=藤枝。露店の叩き売りのような低くてかすれた=椎名)。声が(乾いて風できしむ古い扉のようになる=大庭。萎縮したように暗くなる=笹沢。いまにも歌いだしそうに弾んでいる=灰谷。風に飛ばされて切れ切れに聞こえる=西村。絡みつくような粘っこさを帯びる=藤沢。経文を読むように暗い=笹沢。さざ波のようにひろがる=椎名誠。芝居の役者のセリフのようによく通る=深沢。断続的にふわふわと現れ空中を舞う=山田詠。投網あみのようにかぶさる=加賀。遥ようように伝わって行く=黒井。ひゅうひゅうと隙間風のようにかすれる=本庄。むなしく浜風に吹きさらわれる=本庄。抑制を外れてふつつかに突っ走る=円地)。元気なおばさんの声がグラデーションで沈んでくる=荻野。全身に声がぎりぎりと銹さびた錐きりのように刺し込んでくる=有吉。二人の声が木霊こだまのように重なる=福永。丸くあいた唇の奥からびやびやした声がまろびでる=中。活を入れるようにきびしい声で言う=胡桃沢。急に二段階くらい明るくなった声で言う=歳沢。声に(厚みがある。冷たい響きがある。怒気をにじませる。憎しみがこもっている。少女のような華やかさが漲る=有吉)。腹立たしさが荒い声になって弾ける=黒井。声の響きに打たれる=高井。声のトーンを(上げる。落とす)。声を励まして言う。うれしそうに声を弾ませる。変わり果てた姿に声をのむ。そっと声をひそめる。のどまで出かかった声をのみこむ。牛の鳴き声みたいな声を出す=赤川。女教師が黄色い声を立てて生徒を叱る=田山。ほとんど度をうしなったように声をうわずらせる=司馬。獣の呻うめくような低い声をあげる=田島。声を立てる=黒井。虫の声が耳にしみる。群衆の足音が耳に立つ。腰の折れた瓦斯ガスのような=寧。喉の奥から悲鳴を絞り出す=川端。顔に似合わぬ(だみ声。甘えた声。低い声。澄んだ声)。 <336> # き 鳴のような=有吉)。▼くぐもった声(たった今土の底から立ち上がったような高樹。粘りつく糸のような鼻にかかる=日野)。震える声(ヴァイオリンの弦のように哀かなしげに小川。水を吸いこんだ笛のように小池)。裏声のような高く細くふるえる声古井。太い声(女義太夫のような=円地。豚の啼き声のような=小島)。優しい声(湿った絹糸のような獅子。変声期前の少年のような甘くて松浦)。きゃっと奇声 をあげる。声紋が一致する。声紋を分析する。歌舞伎の子役のせりふじみた長くひっぱる甘い声=川端。▼声(甘ったるい香りが沁しみこんだような=鷺沢。少し舌にもつれる甘たるい=古井。耳奥に絡みつくような甘い掠がずれた"辻仁。ミントシャーベットみたいな"松浦)。熱気をはらんだ重い声が咽喉からこぼれ出る=黒井。声(ぎくりとするような重い響きを持った"新田。ひどく消沈したような暗く重い鷺沢。水の底から発せられたもののように重い響きを伝える高井)。重量ある声が巻かれた分厚い敷物をほどきひろげるように皆の胸を圧する=光瀬。▼声が聞こえる(遠くで一番鶏の。のどかに小鳥の。旅行客のざわめきの)。声が(耳に聞こえる。がやがや聞こえる。切れ切れに聞こえる。背中に聞こえる。ドア越しに聞こえる。遠く近くに聞こえる。投げやりに聞こえる。店の奥から聞こえる。耳元に迫って聞こえる。陽気に聞こえる)。小鳥の声がどこからともなく聞こえる=中河。遠くで叫んでいる声が風に乗って聞こえてくる=中村境。聞こえる(きゃつきゃっと笑い声が。切れ切れに低い話し声が。子供たちのはしゃぎ声が。話し声がほそぼそ。闇を切り裂き叫び声が"宮部。すすり泣く声がしめやかに=江戸川)。吶喊忙給の声が耳に徹する。声が響く。声が(車内に響く。耳の奥で響く。頭の奥に染みるように響く高井。地鳴りのように耳の奥に響く=小林久。刺とげを含んで響く=長塚。怒号のように響き渡る=吉本。一筋の風のように響いてくる小川。耳に鎧を叩くように響く。深沢。耳も破れんばかりに響く萩原爽。若々しく快活に響く伊藤整)。耳いっぱいに声が響いてくる。甲走った声が脳天までびんと響く=徳田。乾からびた声が霜に響くせいか凜々いりんとして風に跡のように一語ずつ聞く者の骨に応えるよう芥川。ぶすりと呟く声が耳の底に響く=長塚。声に軽い失望の響きがある。▼声(井戸の底から響いてくるような暗く凄すこみを帯びた篠田。キンキン響くような女の笹沢。暗い穴の底から響いてくるような"干刈。鼓膜にびんびん響く=中沢。低くて太い洞窟の奥から響くような池澤。娘のように細くてきれいな響きをもった=山本周)。音吐が梁はりの廃ちりも動くほどによく響く=司馬。奇声が周囲に響き渡る。遅まきのテーブの声を聞くみたいな問の抜けたある意味では気味悪い声=森玲。声を(背中に開く。耳に響かせる)。街の声を聞く。無性に声を聞いてみたくなる。こおろぎの声を沁み沁みと聞く=佐藤春。人々の話し声を意味のない風の音のようにざわざわと聞く=本庄。声を聞く(小鳥の。民の)。一座がはつとするほど鋭い声=黒岩。▼声(叱咤しっするような鋭い医師の=福永。突っかかってくるような鋭い強い獅子)。声が心を鋭い刃のように刺す=遠藤。 **こまく【鼓膜】** 鼓膜が破れるほどの森音になかにし。鼓膜に残響音が残る。声が鼓膜に吸い込まれる。粘っこい感じの声が鼓膜にからみつく=小林久。鼓膜に言葉が(届く。突き刺さる)。▼鼓膜に伝わる(音が。衝撃が)。言葉が鼓膜の網の目を通り抜けられないままいつまでも耳の途中で淀んでいる=小川。鼓膜を(突き刺す鋭い音。とらえて離さない)。金切り声が鼓膜をつんざく。叫びが鼓膜を震わせる。爆音が鼓膜を揺さぶる。咆哮うが鼓膜を打つ。▼鼓膜を叩く(罵声が。大声が容赦なく=加賀)。 **じしてい【耳底】** 声が不協和音のように耳底に残る=加賀。大きな音が頭を打ち、耳の底が抜けたような百がやってくる!高樹。言葉が耳の底でこだまする。耳の底に声がこびりつく。言葉が耳の底に残っている。伯父の最期の言葉が耳の底によみがえる=篠田。友達の弾んだ口調が耳の底に残る落合。びしゃびしゃと落ちる滴りが耳の底を打つ長塚。耳の奥が疼、うずく。耳の奥でメロディが鳴る。言葉が耳の奥で渦巻いている。声が耳の奥で水の中で聞いたように鈍く反響する=高橋三。耳の奥に(雨の音がしみ込む。いきなり突き刺さってくるような金属音"日野)。言葉が耳の奥に残る。つうーんと耳の奥底が刺すように痛む光瀬。 **ちょうしゅう【聴衆】** 会場を埋めつくした聴衆。聴衆が(総立ちになる。拍手を送る。息をひそめて聞き入る。いっせいに歓声を上げる=伊坂。ホールを八分通り埋める=城山)。広場が聴衆でぎっしりになる=川上。聴衆の心をつかむ。ぐるりと聴衆を見回す。 **ぬすみぎく【盗み聞く】** ▼盗み開く(会話を。話し合いを。密談を)。館長室のドアに忍び足で近寄りドアにびたりと耳を押しつける"有川。話を盗み聞きする(大人の。人の)。傍受する(交信を。電波を)。▼立ち聞きする(会話を。電話を。秘密を)。立聞きは喧嘩州んよりも行儀が悪い!落合。盗聴する(会話を。電話を)。盗聴器を仕掛ける。 **はいちょう【拝聴】** ▼拝聴する(意見を。講義を。ご高説を。名論卓説を)。謹聴する(訓辞を。講師の話を。講話を。式辞を。鳴りを浄めて)。高名な学者の警咳好いに接する。御消聴を感謝します。談論ぶりを静聴する。 **ぼうちょう【傍聴】** ▼傍聴する(公判を。裁判を。本会議を)。傍聴席に座る。オブザーバーとして(参加する。出席する)。 **みみ【耳】** ▼耳(聞かれたくないことばかりにビンと反応するアンテナの感度といったらスパイ衛星並みの <337> # 聞く-108 官部。小さなかたつむりのような女の子の尚田。小さな椎茸さかのように黒ずんだ水上。綻ぶこびかけた薔薇はらの花みたいな三浦哲)。耳が(茸ぃのみたいにぺたりと顔についている=丸谷。裂けるほどの悲鳴を上げる=多岐川)。愛の言葉を聞いたように耳が熱くなる荻野。鼓膜が直接ハンマーで叩かれたのかと思うほど耳が震え上がる=小川。重い声が耳から胸へびんびんと伝い落ちる=幸田文。耳で聞いて快い。耳に(声が押し入る。障る声。かかる髪を払う。ビアスをつけている)。アクセントが耳にこびりつく。悪評が耳に伝わってくる。足音が耳にこびりついている。いまでも耳に聞こえてくるよう。一言が耳に引っかかる。響きが耳に涼しい。名声が耳にしみている。あどけなさを残した声が耳に心地よい藤田。ありありと耳に残っている声を反芻拟認する=勝目。今まで耳にしたこともない得体の知れぬ音主持。楽切り者という言葉が耳に渦巻く=江國。言葉がすんなりと耳になじむ=重松。言葉が耳に粘りついたまま容易に消えようとしない黒井。タイプライターの音が耳に弾ける=生島。粘っこく耳にからみついてくるような陰湿な声"小林久。浜辺に打ち寄せる音がしつこく耳にまつわる=島尾。▼耳に伝える(上司の。ハイカラな響きを)。古い隠居の耳にも分かるように噛み砕いて話をする"二葉学。耳の(穴を指で掻かく。痛い言葉。つけ根まで赤らめる。破れるような大音響。吉川)。放心した耳のなかにただ細い泣き声ばかりが流れ込む!奥泉。耳を(疑いたくなる頼りなさ。くすぐるような声)。略話に耳を突っ込む。音楽に優れた耳を持つ。借りた金を耳をそろえて返す。周囲の耳をで戒する。悲鳴が耳を引き裂く。周りの耳をはばかる。笑い声が耳をくすぐる。温かい声が真綿のように耳をつつむ"水上。家の中の気配に耳を澄ませる。宮部。カーテン越しに聞こえてくる会話に耳を澄ます=海堂。日露開戦の報が急雷のように人々の耳を驚かす田山。絶叫が耳をするどく切り裂く=光瀬。話の内容がほとんど耳を素通りする=円地。悲鳴とも歓声ともつかない声が耳を裂く=高橋元。声が耳をすり抜ける。兎らの耳のように敏感になる鳥尾。▼耳にする(足音を。異様な叫びを。鳴き声を。評判を。山鳴りの音を。良くない心を)。▼耳に届く(掛け声が。ざわめきが。初ぶきが。拍手の響きが。話が。言葉が鮮明に。言葉が切れ切れに。言葉がいたわり深く。聞こえるか聞こえないかの声が黒井。歌声が平らかな海面に柔らげられ優しくうるんで大岡。歓声が空中をこだましながら揺れ動くように泉後)。▼耳に飛び込んでくる(足音が。会話が。甲高い声が。叫び声が。雑音が。鳥の声が。生々しいやり取りが。賑やかな笑い声が。空気を裂くような摩擦音が『泉後。言葉の切れ端が=村山)。言葉ががんがんと耳にとびこんでくる=本庄。近くの人の会話が時々耳に飛びこむ森環。▼耳に入る(悪意の声が。会話が。陰口が。川の瀬音が。奇妙な話が。声が。情報が。世間の風評が。話し声が。話の断片が。拍子木の音が。風聞が。やりとりが。聞くともなく。いつとはなしに。忌まわしい噂が"山本周。聞くともなしに村のいろいろな話が=田山)。周囲のさまざまな音が溢れたように耳に入って来る=辻井。▼耳に響く(潮の音が。騒音が。声が優しく。声が歴々として。言葉がぎこちなく)。何の屈託もない笑い声を耳に響かせる=連城。声が耳にがんがんと響く。▼耳を打つ(固い音が。叫びが。泣き声が。雨音が大きく。水音が絶えず。蟬せんの声がやかましく)。▼耳を貸す(意見に。歌声に。質問に。説明に。忠告に。批判に)。悪魔のささやきに耳を藉す“海音寺。▼耳を傾ける(相手の話に。雨の音に。一心に。演奏に。甘美な声に。興味深げに。真剣に。説明に。害に。遠い潮騒斗に。ニュースに。庭の蒼いがの声に。真面目に。辛抱強く。ほろりとして。黙然と。質問を挟まずに。興味津々にいいふな様子で。最後まで黙って。雨の響きに何心もなく永井荷)。好奇心に眼を輝かせて耳をかたむける=開高。耳を傾けて聞く。▼耳を澄ます(怪訝けけそうに。ぎょっとして。じっと。注意深く。闇に溶けていく水音に奥泉。敏捷しな小動物のように藤本)。耳をすます(一晩中まんじりともしないであらゆる物音に=本庄。みじろぎもせず周囲の気配に=池波)。壁越しに耳を澄まして聞く。▼耳を澄ませる(道路情報に。笛の音色に。無線の交信に)。 **みみたぶ【耳朶】** 耳たぶが(寒さに痛む。蛤に味の貝のような暖かい色をしている=芥川)。耳たぶに(熱い息をからませる。息を吹きかける)。刺すような耳朶のしびれ向田。人前で裸にでもされたように耳たぶまで赤くなる=山手。羞恥しいの念に耳朵まで真っ赤にする=永井荷。自らの間抜けさ加減に耳朶まで赧ぁかくなる人間。耳たぶを(軽く噛む。指で摘む)。 **みみもと【耳元】** 耳元で(曜ぁえぐように言う。そっとささやく)。抱かんばかりに耳元でささやく。変蚊やぶが耳元でぶんぶんと唸らなる。言葉が耳元で遊んでいる=阿木。耳元に(息をかける。口を近づける。消え残っている話し声。ざわめきが残る。メロディーがまつわりつく)。耳元まで熱くなる。耳許以以をなめるように唇を寄せる=源氏。風の音が耳元をかすめる。 **ラジオ** ラジオから(曲が流れる。流れてくるアナウンサーの声にじっと耳を傾ける=船戸。流れる曲に合わせて鼻歌を歌う鈴木光)。魅惑的な響きがラジオから流れる=阿久。ラジオに雑音が混じる。ラジオの(音を大きくする。スイッチを入れる。ボリュームを一杯にあげる。音楽がぶつりと切れてしまったような淋しさ=大庭)。ラジオをつけっ放しにする。ラジオ番組を(聞く。収録する)。 <338> # 築く・建てる **きずく【築く】**▼築く(足場を。基礎を。巨大な努力を。巨万の富を。社会的信用を。城を。遂者な芸を。堤防を。統一国家を。砦』を。磐石の状態を。万里の長城を。不動の地位を。良好な関係を)。家庭を築く(幸せな。平和な。楽しい)。▼山を築く(紙屑の。屍此妙の。吸い殻の)。三振の山を築く快投ぶり!阿久。着実に地歩を築いていく。着々と地位を築きつつある。▼築き上げる(安泰な暮らしを。無一文から身代を。石とセメントで。押しも押されもせぬ地位を加賀。銀行に依存しない経営体質を佐高。作家としての立場を=石坂)。作者の構築した世界。▼構築する(必の世界を。明確な方法論を)。 **きねんひ【記念碑】**記念碑の除幕式。記念碑を建てる。記念御のような大きな墓尾辻。察碑に名前を刻む。慰霊碑の前で黙秘しもする。古い苔蒸にけした石碑"島崎。石碑を建てる。碑銘を彫り込む。雲に碑銘を誌して静かに眠る=阿川弘。碑を建立する。 **けんせつ【建設】**高層ビルの建設が相次ぐ。建設と破壊を繰り返す。平和の建設に邁進はいする。建設の途上にある。新しい社会を建設する。建設現場で働く。建設工事が始まる。建設的な(意見。提案)。 **けんちく【建築】**建物を建築する。建築資材を運ぶ。古い風格ある建築物。岩から削り出したような巨大な建築物が聳くびえ立つ"日野。立派な建築物のように秀でた鼻人谷崎。建材(良質な。不燃性の。新機能を付加した)。家の施工。ビルが着工する。その場しのぎの安普請。安普請の(家。感が否めない)。 **こうじ【工事】**▼工事(杜撰げさな。大規模な。疵るずの目立つ)。工事が(大幅に遅れる。完成する。竣工しゅんする。ストップする。着々と進む。難航を極める。追い込みに入る。急テンボで進む)。なかなか工事が進まない。工事に(着手する。とりかかる)。工事の状況を視察する。基礎工事を終える。公共工事を地元企業が受注する。大がかりな土木工事。着工が大幅に遅れる。強引に反対を押し切って着工する。普請する(石垣を。堀を)。普請の凝った家。ブルドーザーが地面を削る。ブルドーザーのような勢いでフェアウェイを闊歩みっする=高橋三。 **こや【小屋】**バラック建ての粗末な小屋。小屋が点々とあちこちに建つ。地を這うように低い木造の小屋が並ぶ=高見浩。小屋に閉じ込める。小屋の陰に身を潜める。狭苦しい小屋の中。小屋を建てて住む。陽光が小屋を吸かく包む。炭焼き小屋に泊まり込む。粗末な掘っ立て小屋。掘っ立て小屋の柱を立てる。丸太小屋を建てる。納屋に(押し込む。貯蔵する)。瀟酒しなバンガロー風の家。こちんまりとしたあずまや。薬登…。き屋根のひなびた東屋"火坂。 **ざいもく【材木】**材木に(虫が巣食う。かんなをかける)。材木を挽ぃき切る。山奥で伐り出した材木を筏かぁに組んで川を下る=中上。角材をナギナタのように振るう。加賀。骨壺に的を白木の箱に納める。廃材を(有効利用する。リサイクルする)。用材を山から伐り出す。木材が(炭化する。腐朽する)。巨大な虫が這いずるようにずるずると木材が運ばれて行く本庄。木材のひとかけらのようにほとんど表情を変えない清水俊。木材チッブをバルブにする。 **ぞうちく【増築】**▼増築する(家を。校舎を。新館を。二階を)。一間を建て増しする。▼建て増す(茶の間を。部屋を)。火の燃燃えるような勢いに乗じて新館建て増しにかかる=泉鏡。 **たつ【建つ】**▼建つ(原っぱに家が。間隔を置いて。高層マンションが。ごちゃごちゃと固まって)。丘陵の上に建つ二階家。山頂に建つ神社。高台に建つマンション。広場に面して建つ家。田んぼの中にぽつんと建つ寺=姫野。建っている(住宅がびっしりと。洒落したブティックがぽつりぽつりと藤田)。 **たてかえる【建て替える】**▼建て替える(家を。校舎を。庁舎を。ホテルを。古いアパートをマンションに)。家の建て替えをする。改築する(アバートを。家を。母屋を。寺を。店舗を)。▼建て直す(教会を。寺社を。自宅を。屋台骨を)。 **たてもの【建物】**建物(木造平屋の粗末な。四角い窓のびっしり並んだ。中世の城のような。写真にでも撮りたくなるような立派な消水。レンガ造りの瀟洒しうな高橋克。いかにも歴史を感じさせる構えの"西村。簡素な山小屋風の三浦鸯。巨大な格納庫のような干刈。古風な煉瓦建灿灿ての高橋和。瀟洒な灯台風の倉橋。たっぷりと水気を含んだ古城のように重く座っている=高樹。どっしりした重厚な感じの古い"小沼。ぽつんと忘れ去られたような=宮本郷。夕焼け空を背景にそそり立つ=篠田)。建物が(木立に包まれて眠る。ぬっと建っている)。石造りの建物が連綿と続く街並み。周りに同じ高さの建物がない。洋館風の建物が姿を現す。薄闇に付い町々の建物が長い一夏の暑熱に倦、み疲れたように横たわる徳田。殿堂のような建物が黒々と夜空に銼、がえる今来。灰色の大さな建物が巨大客船のようにそびえている=五木。建物が空を(鋭角に区切る。塞ふさぐ)。音が周囲の建物に谺にだする。庭から建物に忍び寄る。建物の(玄関に近づく。中に入る。裏手に素早く回る。陰を拾って歩く。背後に山が迫る。脇を通り過ぎる。中がまるで空き家のように静まり返っている=高木)。午後五時過ぎの西陽が建物の影を長ながと曳く高井。もう何年も前から人の住んでいないような荒れた翳かげがにじんでいる建物の肌"原田康。▼大きな建物(うだつ <339> # 築く・建てる (続き)の上がった。宿場町の本陣のような構えの丸谷。ビルディングのような=大佛)。炎が瞬く間に建物全体を包む。▼講堂(学校の。寺の)。施設の完成を見る。殿堂を建立する。空にそそりたつ巨大なドーム。広い庭を挟んで向き合った棟。隣の棟に移る。 **たてる【建てる】**建てる(稲荷の祠明にを。宮殿を。教会を。国を。蔵を。工場を。住宅を。城を。素敵な邸宅を。倉庫を。建物を。鎮守の社を。寺に墓を。寺を。銅像を。塔を。離れを。病院を。ビルを。別荘を。方々に寺社を。ホテルを。町を。マンションを。店を。屋敷を。レストランを。掘っ立て小屋を)。▼家を建てる(小ぎれいな。ささやかな。立派な)。移築する(家を。建物を。民家を)。仮設する(飯場を。舞台を)。一新築する(家を。邸宅を。二階家を。ビルを)。造営する(宮殿を。寺院を。神社を。大邸宅を。仏閣を)。 **つくり【造り】**▼造り(バロック風の荘重な。広くはないが贅沢だいな)。一見したところいかにも無造作なつくり椎名誠。店の造りに金をかける。格式ばった構えの店。しゃれた構えの家。古めかしい構えの料理屋。▼こしらえ(西洋風の。がっしりとした)。 **とう【塔】**▼塔(頭上に高くそびえる。天まで届くような)。塔が(黒々とそびえ立つ。目の前にそそり立つ)。小さな土蔵が高い火の塔となって炎上する大江。塔のようなマンションのベランダから都心の夜景を眺め渡す=日野。天空を歴してすっくと立ち上がった五重「宮尾。教会の尖塔比认。尖塔が居心地わるそうにそびえている=五木。天にとどく槍ゃぁの穂先のような塔群光瀬。石塔を(建立する。造立時うもする。建てる)。高圧線の鉄塔が一定の間隔をおいて走っている=高橋和。変電所の鉄塔群が蜃気楼礼礼』のように見える=尾辻。鉄骨の塔。二階の階段が高圧線の鉄塔のように高くそびえている萩原爽。 **どだい【土台】**土台から一気に崩れ落ちる若竹。慣習が土台から崩される―熊谷。土台を堅牢に保つ手立て。確かな土台を作る。▼土台にする(岩を。知識を。理屈を)。家の屋台がぐらつく。屋公合骨が火の中へ紙細工のようにヒラヒラと呑まれて消える=山崎。屋台骨を(守る。揺るがす)。 **ないそう【内装】**部屋の内装がしゃれている。豪華な内装の店内。室内装飾が凝りに凝っている。壁掛けを部屋に飾る。壁紙を張る。部屋を装飾する。インテリアがモダンで洒落している=阿川佐。インテリアに凝った店。欄間もんから漏れる光が廊下に斑はだな模様を作っている=篠田。欄問にはめ込んだ障子。 **ビル**ビル(がっしりとした石造りの。くたびれ果てたようなおんぼろ。道を隔てた向かいの。一度カシャーンと砕け散ったあとのガラスを拾い集め再びつなぎ合わせたような虹色の“大原。杭を打ったように問隔を置いて建つ=浅田。ひときわ威圧的にそびえる"五木。皮膚病にかかったようにコンクリートの剥げた古い=獅子)。ビルが(細長く立つ。幾つも立ち並ぶ。整然と建ち並ぶ。蒼黒は体い光の中で墓石のように寒々としている=加賀)。巨大なビルがそそり立つ。肌俗店の入ったビルが並ぶ。朝翁誌にの底から上の方だけ現れかけているビルが白い墓石のよう=日野。ビルから(明かりが消える。ワッとあふれ出てくる人波小沢)。ビルに(出入りする。足を踏み入れる)。ビルの(エントランスに入る。屋上から身投げする。正面ドアをくぐる。巨大なシルエットが夕空を圧する=石田衣)。鋼鉄のように黒々と磨きあげられたビルの表面=日野。夏の陽に白々と輝いているビルの列高橋泊。ビルを(設計する。見上げる)。自前のビルを持つ。堂々たるビルを構える。首都圏を睥睨的心するような高層ビル=佐伯。ビル群が(立ち並ぶ。並び立つ)。居丈高なビルディングが建ち並ぶ=田島。海に浮かぶ大ビルディングのような巨船=斎藤栄。楼閣が(そびえる。連なる)。どれほど停がい希望の楼閣といえども、強い言葉と声に支えられれば砂上に建たぬものでもない奥泉。 **まるた【丸太】**丸太が(ぶすぶすと燃える。倒れるようにふとんに横になる=岡田)。水に浮かぶ丸太が艶やかに光る。丸太の散乱したさまがマッチの箱から軸木をぶちまけたように井伏。丸太を(筏状い切状に組む。井桁に組む)。小川に丸太を渡す。斧ぉので丸太を割る。粗い丸太を組み合わせた桟橋"福永。手頃な丸太をバット代わりにして打つ北村。丸太のように黙っている女連城。あげっぱなしの腕がしびれて丸太のようになる杉本。死体が全身丸太のように硬直する海音寺。丸太みたいな太い両足"石森。丸太ん棒でひっぱたかれたような衝撃と灼熱にく里見。丸太ん棒のような太い腕=辺見。丸太ん棒のように(立ちすくむ。丘を転がり落ちる=泉俊)。仕事が終わって丸太ん棒のように棚の中に横倒れに倒れる=小林多。地べたに丸太ん棒のように横倒しになる=泉優。ふくらはぎが丸太ん棒のように太い=中村白。丸太ん棒みたいな体のアザラシ=本多除。 **ものおき【物置】**物置が空のままがらんと立つ。物置に毛の生えたような小さな建物"若竹。台風で傷んだ物置の屋根を直す篠田。物置小屋を改造して住み暮らす。納戸にしまいこむ。納戸を(出る。掃く)。 **やぐら【櫓】**やぐらが青空に穴をあけるかのように聳やぐらそびえ立つ=山本一。物々しい橋が出現する。櫓にのぼる。柳を組む。望楼から見張る。望校に上る。・ **リフォーム**リフォームする(家を。キッチンを。住宅を。部屋を。マンションを。和室を洋間に)。▼改装する(台所を。店を。和室を洋室に)。物置を改造する。模様替えをする(部屋の。店の)。改造する(倉庫を工場に。アパートの内部を)。土間を改造した粗末な部屋。 <340> # 傷付く・損なう **あかぎれ【皸】**あかぎれが切れる。水仕事で手にあかぎれができる。笑うとあかぎれが口をあいたようになろ細い目!向田。あかぎれに膏薬を付ける。手にざくろのようなあかぎれをつくる=山崎。手の甲があかぎれを起こして痛々しいくらいにひび割れている"熊谷。水仕事で手にひびができる。足袋も穿かぬ足の甲が鮫さぁの皮のようにばりばりと願ぃぃだらけになる=長塚。 **いたで【痛手】**痛手(心を引き裂かれるほどの=山本周。永い涙の忍従と苦い血とによってようよう皮を被せたばかりの深い=長与)。心身の痛手から立ち直る。痛手を最小限に食い止める。再起不能なほどの痛手を受ける=飯田。失恋の痛手がこんな女にしてしまった=林美。失恋の痛手の名残がありありと刻印される"加賀。失恋の痛手から解放される落合。失恋の痛手 **いたむ【傷む】**▼傷む(食べ物が。本が。建物の内部が寿命がきた小学校の校舎のように=安部)。傷んだ部分を補修する。潮風で傷んだ板壁。▼傷める(髪を。羽を)。 **がい【害】**害をなす分子を一掃する。社会に害を与える。他人に害を及ぼす恐れがある。煙草の害を声高に喧伝さんする=佐高。世に害悪をもたらす。社会に害毒を流す。家族の身に危害が及ぶ。危害を加える。百害あって一利なし。蒸害を引き起こす。▼害する(係官の心証を。感炉を。気分を。健康を。良風美俗を)。他人に害心を抱く。自然が人間に仇ぁだなす。この身に仇なす危険な敵。世に仇なす悪党。▼加害者(事件の。事故のこかに藤本。有害な(ものとして白眼視する。習慣がますます猖懲れっ、うをきわめる!高見淡。部分を解毒する=渡辺)。有害物質が混入する。有害物質を検出する。 **きず【傷】**ばくっと開いた傷。傷が(自然に癒える。熱を持つ。しくしくと痛む。生々しく口をあいている。拭い去られた如く消失する=菊池)。消えない傷が残る。どんどん傷が大きくなる。国威に疵きずがつく。傷に寒さがしみとおる。傷の(痛みが消える。痛みにうめく。手当てをする。治りが悪い。深さに気づく。養生に専念する)。誰にも行なだめようのない傷の痛み"曽野。疵の目立つ工事。心に癒しがたい傷を与える。脛ぅぁに傷を持つ身。互いの傷をなめ合う。年じゅう傷をこしらえている。お互いの傷を傷で探り合うような凄絶な時刻が流れる=原田康。過去に傷を持つ女高樹。傷を負う(満身に。心に深い。取り返しのつかない)。心に傷を残さない程度の叱り方乃南。心の傷が(赤剣→かけになる。新しい血を流す中村真)。心の傷を癒す。顔が過労のため傷のような城しゃに荒らされる=開高。外傷を負う。あちこちが傷だらけになる。刺し傷(胸の。指の)。すり傷に塗り薬をつける。いつも生傷が絶えない。体中を引っかき傷だらけにして走り続ける。眉用に向こう傷を受ける。肩に銃創を負う。満身創痍认いんになって(戦う。よろめき進む軍艦=西木)。極細の赤い絹糸を貼りつけ たような切り傷高樹。閉じた眼が悩んだ顔に切り傷のようについている=大岡。木の幹に切り傷をつける。遂い過去に沈んでいる古傷"斎藤栄。古傷が(痛む。うずく)。古傷をいきなりひきめくられたようでかっとなる=平気。古い傷が少しずつ癒されていく=宮尾。 **きずあと【傷痕】**歴史のなまなましい傷痕"五木。傷痕が(ささくれる。くっきりと残っている。胸に刻みこまれる=黒岩)。足首にかたくゴム輪をはめたような傷痕が刻みつけられる土母。精神の傷痕が終生癒されることなく残る=福永。傷痕に指をはわせる。生々しい傷痕に触れられるような苦痛"外村。戦争の傷痕を深く残す。醜い傷痕をさらす。 **きずぐち【傷口】**傷口が(ぱっくりと開く。ひりひりと痛む。まだふさがっていない)。生活の創口付がが口を真紅にあけて責め立てる=梶井。傷口から真っ赤な血が流れる=江戸川。傷口に(薄皮が張る。ガーゼをあてがう)。傷口の血が止まらない。アスファルトにあいた穴が傷口のよう黒井。かさぶたが傷口を覆う。手で傷口を押さえる。互いの傷口を紙めるように癒し合う。高井。無理にこじ開けられた痛々しい傷口のような赤土をいたわるようにところどころを薄い雪が覆う干刈。折れ曲がった崖の縁へりが地球の傷口のように底深い口を開けている"有局。 **きずつく【傷付く】**▼傷つく(イメージが。心が。魂が。ブライドが。勇み足の結果に少なからずに氷室。裏切られたように思って=中村真)。傷がつく(看板に。社歴に。信用に。暖簾㎞もに。評判に。品位に。誇りに。店の名に)。傷ついた(体を癒す。心を慰める。兵士。自信が償われる。獣のごとくうめく=中島致)。傷つきやすい(自我。性格。年頃の娘)。傷つける(相手の心を。気持ちを、幸福を。自尊心を。ブライドを。名誉を)。子供を必要以上に傷つけることはないという意思が先行する有川。▼人を傷つける(些細心とな一言で。言葉が刃物より深くに火坂)。汚損する(貴重本を。宝石を。名誉を)。▼傷物にされる(商品を。娘を)。傷物を安く買う。▼毀損に、する(壁画が。自尊心を。信用を。文化財を。名誉を)。▼損傷する(車体を。交通事故で脊髄を)。手負いの(償。獣のごとく猛たけり狂う池波)。 **けいしょう【軽傷】**怪我が怪傷で済む。傷は(割に浅い。大したことがない)。幸いけがが軽くすむ=浅川。たいした怪我ではない。ノミが食ったようなけが長 <341> # 傷付く・損なう (続き)崎。深手に至らずに済む。痛いというより痒かゅいほどの浅い傷"高樹。肩口に浅い傷を受ける。浅手を負う。薄手を負う。かすり傷を負う。爪で引っ掻かいたぐらいの疵まず=新田。注意して見なければわからぬほどの傷三島。かすり傷一つせずにすむ。 **けが【怪我】**怪我によく効く温泉。怪我の功名を生む。生兵法は怪我のもと。幸いけがをした者はいない=三涼紗。怪我をするような羽目になる。相手に怪我を負わせる。怪我する(足を。腕を。指を)。うかうか歩いていると怪我をする。赤剣かけになる(背中が。皮膚が)。打ち身が痛む。打ち身に湿布をあてる。くじく(足を。手首を。腫切かをいやというほど)。擦りむく(足を。膝を。けを)。擦りむける(手の皮が。外の頭が)。▼打撲する(足を。全身を。胸を)。▼捻挫する(足首を。足を。指を。転んで)。負傷が全快に赴く。戦闘中の負傷がもとで死亡する=辺見。▼負傷する(大腿部を。事故で)。負傷の痛手が治る。 **さわる【障る】**▼障る(妙に気に。得手勝手な振る舞いが癇かんに。冷えがおなかの子供に。無神経さが縦し、に)。耳に障る甲高い声。仕事の進行に差し障る。 **じゅうしょう【重傷】**重傷にあえぐ、事故で頭に重傷を負う。瀕死の重傷を負わされる。傷が意外に深い。深い手傷。致命的な手傷を負う。脳漿、うしが流れ出るほどの深手。銃撃戦で深手を負う。 **そこなう【損なう】**▼損をう(信頼関係を。風味を)。損なわれた名声の挽回州以に努力する。健康が日一日と損なわれていく。▼損なわれる(公正が。効率性が。中立が人間の命が。脳の正常な働きが鈴木光)。▼損ねる(相手の機嫌を。感情を。町の美観を)。書き損なう(署名を。用件を)。欠損する(器具が。機能が)。機嫌を損じる。 **そんがい【損害】**損害が軽く済む。損害を最小限にとどめる。多大の損害を受ける。組織に甚大な損害をもたらす=畑村。敵に多大の損害を与える=阿川弘。損害賠償を請求する。実害が出る。 **ダメージ**あまりにもダメージが大きすぎる。前の試合のダメージが残っている。かなりのダメージを覚悟する。言うほどダメージを受けているようには見えない有川。取り返しのつかないダメージを受ける。 **にんじょうざた【刃傷沙汰】**痴情のもつれによる刃傷沙汰。ちょっとした刃傷沙汰が起こる。刃傷沙汰を引き起こす。股中で刃傷に及ぶ。傷害事件を起こす。 **ひがい【被害】**極めて甚大な被害。被害が(広範囲に及ぶ。最小になる道を選ぶ。日を追って増す)。強盗の被害が極度に多い。被害に(目をつぶる。打ちひしがれる)。核攻撃の被害に遭う。被害の拡大を防ぐ。被害はさほどでもない。被害を最小限にとどめる。健康に被害を及ぼす。▼大被害(枯死寸前の。全滅に近い。死者数百人という)。被害者意識が胸に渦巻く。被害者意識に凝り固まる。被害者救済に最善を尽くす。被害者に(謝罪する。同償する)。被害者の(相談に乗る。心をもてあそぶ)。被害者の身元が(はっきりする。分からない)。被害状況をまとめる。激甚な被害地の状況を伝開する。風評被害を受ける。 **ふしょうしゃ【負傷者】**負傷者が(続出する。出る)。負傷者の苦しみがひどいので何はさておきまず医者を探そうとした=江戸川。負傷者を(救護する。助ける。搬送する)。熱狂のあげくけが人が出る=阿久。下手をすれば怪我人が出る。怪我人を(救護する。背負って運ぶ)。 **ふみにじる【踏み躙る】**▼踏みにじる(人間の尊厳を。一踏みに。吐いた唾を紙で。床に捨てたマッチを乱暴に"原田康。厳粛な誓約を非道にも=服部)。聖なる母のイメージを土足で踏み跚る=高橋和。▼踏みにじられる(飛車群に。暴力で。むざむざ敵の自由に山田美)。土足をもって頭上から踏みにじられたような気持ち=菊池。土足で踏みにじるように言う内田泰。にじり潰っぶす(煙草を。虫を)。身を路上に投げ出して他人の蹂躙じゅうにまかせようというほどの見栄も飾りもない姿"石川。▶蹂躙する(学問の自由を。権利を。人権を。大学の自治を。人の尊厳を。完膚なきまでに相手を"阿佐田)。▼蹂躙される(敵の手に。華やかな王朝文化が泥土にむごたらしく萩原吻)。 **へいがい【弊害】**▼弊害(学園の。縦割り行政の。長老支配の)。弊害が目に余る。長年の弊害が改まる。弊害を取り除く。一夫多妻の弊害を身に沁しみて知っている=舟橋。ひどい社会的弊害を生みだす。石田柄。語弊のある言い方。宿弊を(打破する。除く)。積弊を(改める。除く)。通弊(役所の。役人の)。病弊(現代社会の。社会制度の)。 **むがい【無害】**凡庸で優しいだけの無害な男。瀬戸内。猛毒を無害にする。毒にも薬にもならない人物。無害な(男。存在)。人体に害がない。他人に害を与えない。解講する(毒素を。有害物質を。アルコールを酵素で)。言葉に毒がない。薬にこそなれ毒にはなるまい=今日。心に毒のない人。ちっとも赤気がない。無毒化する(ウイルスを。毒素を。毒物を)。 **むきず【無傷】**ほとんど無傷。無傷で(生還する。脱出する)。無傷の十連勝。かすり傷ひとつ負わない!宇野千。肌に傷がない。別段傷はない。奇跡的に怪我がない。 **やけど【火傷】**火傷で水ぶくれができる。火傷のあとが醜くひきつる=平岩。顔に火傷を負う。火傷する(足を。指を)。触れるとヤケドしたみたいにとびあがる"田辺。株の取引で大火傷する。胸の芯に火傷跡のようにひりつくものがある=高樹。焼けただれる(肌が。皮膚が。見るも無残に。顔がめちゃめちゃに)。水袋のような火ぶくれ=光瀬。▼火ぶくれになる(皮膚が。火傷で)。背中がカチカチ山の狸於ぁさながら火ぶくれを起こす=平岩。 <342> # 競う き **うんどうかい【運動会】** 雨で運動会がお流れになる。よく晴れ渡った運動会にうってつけの日和鈴木光。競技会で入賞する。競技会に出場する。 **オリンピック** オリンピックが(終わる。開幕する。幕を閉じる)。オリンピックに(参加する。出場する)。オリンピックの聖火リレー。オリンピックを(招致する。全世界に放映する)。聖火がともる。聖火を運ぶ。五輪が(開幕する。幕を閉じる)。五輪に(参加する。出場する)。五輪を(開催する。招致する)。 **きそう【競う】** ▼競う(複数候補が。勝ち負けを。時間の長短を。花々が肝けんを。抜け駆けの功名を。見せかけの豪華さを)。競って漁にはげむ。いろいろな作家が競って書く。▼競い合う(腕を。充実度を。技を)。権勢をめぐる角逐。我慢比べを続ける。▼競演する(二大スターが。二つの劇団が)。▼競合する(二つの会社が。ライバル店と。利権をめぐって)。新進作家が競作する。根比べに(勝つ。負ける)。競り合う(支持率を。首位を。知事の座を。トッブを。横一線で)。競る(トッブを。ゴール寸前まで)。デッドヒートを(演じる。繰り広げる。制する)。 **きゅうじょう【球場】** 針一本落ちても見えそうに球場が明るい=田辺。大勢の観客が球場を埋める。大声援が球場を覆う。超満員のスタジアム。スタジアムに足を運ぶ。 **きょうそう【競争】** 生き馬の目を抜くような競争。競争が(激化する。熾烈しゃになる。続く)。競争に(生き残る。勝つ。駆り立てる。傾注する。負ける。敗れる)。厳しい競争にさらされる。競争の渦中に巻きこまれる。公正な競争を阻害する。她烈な競争を繰り返す。▶競争する(自由に。むきになって)。競争のように一種の虚栄心で本を読む=白井。二人とも競争のようにおんおん泣く壺井。価格競争を勝ち抜く。競争相手がいない。競争相手を押しのけて前進する。出世至上心が芽生える。競争心を(あおる。かき立てる)。競争力が(強い。弱まる)。競争力を(強化する。高める)。熾烈なサバイバル競争に打ち勝つ。無競争で(当選する。入社する。落札する)。▼張り合う(ころつきが。意地を。女を。事ことに。対等に。人と)。 **グラウンド** グラウンドで精一杯プレーする。グラウンドをトンボで整地する"佐藤多。ホームグラウンドで試合をする。運動場を(駆け足する。走りまわる)。競技場に入る。コートを(チェンジする。挟んで向かい合う)。テニスコートから三鞭酒心バンを抜くようなラケットの音が愉快そうに聞こえてくる=堀。 **ご【碁】** 碁会所で碁を打つ。盤を石で打つとばしっと屹いた音を発する=山本一。ばちりばちりと並べられていく碁石。碁盤を(囲む。挟んで向き合う)。 **ゴルフ** ゴルフバッグを担ぐ。ゴルフ焼けした精悍な顔。人工芝のあざといグリーンが照明に浮かび上がってSFの一場面のような室内ゴルフ場荻野。ボールがフェアウェイに落ちる。パットを(決める。沈める)。ボールが(グリーンに減る。バンカーにつかまる)。 **コンクール** 曲がりなりにもコンクールで優勝する"葵。コンクールに(応募する。参加する。出場する。入選する。エントリーする)。晴れて本戦に出場する。本選に勝ち残る。コンテストで入賞する。コンテストに優勝する。コンテストの本選に残る。 **しあい【試合】** 試合が(白熱してくる。中だるみになる)。雨で試合が流れる。試合で(圧勝する。難敵を倒す。負かす。エキサイトする)。試合に(穴を開ける。大金を賭ける。勝って勝負に負ける)。試合に負けて(悔しがる。切歯扼腕にかんゃする)。試合の(間隔があく。決着がつく。最大の山場。続行を迫る。疲れが出る。流れが変わる。前の肩慣らし。経過を振り返る)。試合を(明日に控える。急遽中止する。押し気味に進める。捨てずに粘り抜く。途中で楽権する)。正面切って試合を挑む。次々に試合を申し込まれる=石坂。他流試合で技を磨く。他流試合を(数多くこなす。禁じる)。後攻を選ぶ。トスで先攻を決める。生死を賭けた立ち合い。面白い立ち合いを見せる。トーナメントに出場する。トーナメントを勝ち抜く。▼好試合(手に汗握る。白熱した。まれに見る。見ごたえある。忘れがたい。決勝にふさわしい)。手合わせする機会がある。折悪しく手合わせする機会がない。手合わせを願う。手合わせする(一度。初めて)。 **しょうぎ【将棋】** 将棋の(駒のような角ばった顔「福水。腕を動かすようにあまりにも機械的に事を運ぼうとする=石川)。飛びかかった六人が将棋の駒でも倒したかのようにはね飛ばされる"池波。将棋をさす。王が詰む。駒を盤面に置く。厨子を片手に盤を囲む=さだ。一度押しきられると後は将棋倒し連城。 **しんばんいん【審判員】** 審判員の判定に従う。審判に食ってかかる。行司が(軍配を返す。差し違える。力士の四股名を呼び上げる)。大一番に行司が水を入れる宮部。行司の軍配が(あがる。返る)。レフェリーが(両者を分ける。割って入る。カウントを取りはじめる)。レフェリーの出したレッドカード。スポーツが大衆化する。入念な準備体操を繰り返す。テレビでスポーツ観戦をする。スポーツジムに通う。柔軟体操で体をほぐす。 **すもう【相撲】** 相撲に勝って勝負に負ける。相撲の稽古がいっさいの感傷を拒否するすがすがしさに満ちている=飯田。四股を踏む。立ち合いで(ぶちかます。待ったをかける)。力水をつける。ボクシングのカウンターのような突っばりが炸裂にくする=飯田。 <343> # 競う-111 き **せんしゅ【選手】** ▼選手(大舞台に強い。攻走守の三拍子そろった)。走り幅跳びの選手くらいにとびあがって喜ぶ『北。選手の層が厚い。頭髪をスポーツ選手のように短く刈る=佐野。これから競技場に出る陸上選手のようにすっくと立ち上がる=佐藤愛。頭をスポーツ選手のような角刈りにする"五木。マラソン選手が決勝点へたどりつくような激しい息づかい=中村貞。唇が鍛えぬかれた陸上選手の太股いいのようにたくましく動く小川。ブレーヤー(一流の。金看板の)。 **せんしゅけん【選手権】** 選手権の保持者。選手権を(争う。ものにする)。世界タイトルの保持者。タイトル防衛に成功する。 **たいこう【対抗】** ▼対抗する(競争者に。不当な搾取に。暴力に。保護王義に。必死になって。どこまでもだんまりをきめて高樹)。対抗意識がエスカレートする。対抗手段に訴える。むき出しの対抗心。密かな対抗心を燃やす。むらむらと対抗心を持つ。対抗馬との一騎打ち。対抗馬を立てる。 **トランプ** トランブの(札をめくる。カードを何枚も横に並べてみせたような神戸の街"灰谷)。街の景色がタクシーの窓からトランプのカードを切るようにうしろへ飛んでいく=向田。カードを(受け取る。配る。めくる)。ボーカーで脈絡のないバラバラのカードを抱えたまま途方に暮れる=村上春。花札博打話くを開恨する。花札に興じる。 **ねっせん【熱戦】** 三時間になんなんとする熱戦。熱戦の(余韻が残る。火蓋が切られる)。熱戦を展開する。熱闘が(続く。展開される)。熱闘を繰り広げる。 **ぶげい【武芸】** 武芸の(修行を積む。達人)。武芸に秀でる。武術の達人。武術に秀でる。武道に励む。武道の達人。▼剣客(錚々たる。ひとかどの。世に聞こえた)。剣術の(道場を開く。修業に打ち込む)。剣道師範を務める。剣法の奥義に達する。独自の剣法を編み出す。柔道の(受け身。技)。正限と八双で対峙する "池波。武技を極めた達人。兵法の奥義をきわめる。 **プレー** ▼ブレー(鮮やかな。堅実な。雑な。フェアな。ラッキーな。手堅い。派刺1つたる)。頭脳的ブレーが光る。連係プレーがうまく行く。快適なプレーを楽しむ。淡々としたブレーを続ける。水際立ったブレーを見せる=眉村。選手がブレーする。フォアボール(押し出しの。敬遠の)。フライが高く上がる。フライを落球する。ベンチを吸める。ボールが(バットに当たる。ミットに収まる)。満塁にしてゲッツーを狙う。打者を歩かせて満塁にする。 **よこづな【横綱】** 横網が敗れる番狂わせ。両横綱が対決する。横綱の胸を借りる幕下力士みたいな情けない恰好ブ三浦し。横綱まで上り詰める。横綱を張る。力士の最高位に昇る。 **プロレス** ブロレスへの熱き思いは募るばかり荻野。格闘技を身につける。レスラーにも見える筋骨隆々の男=島田。タッグマッチの二人のブロレスラーのように掌760を合わせてタッチする"干刈。レスラーみたいに(大きな人。がっしりしている=田中)。プロレスラーと子供ぐらいの差がある=小林信。 **ホームラン** ▼ホームラン(起死回生の。決勝の。だめ押しの。飛距離の長い。劇的なさよなら。。 飛距離の長い。劇的なさよなら。バックスクリーンに飛び込む=赤瀬川)。ホームランを打つ。アーチをかける。打球が(スタンドに突き刺さる。スタンド下の最上段に飛び込む=高橋源)。本塁打(逆転の。先制の)。本塁打を(打つ。放つ)。 **マージャン【麻雀】** 麻雀に(興じる。ふける。うつつを抜かす)。麻雀の(卓を囲む。面子”がそろう)。麻雀の牌バィを(かきまぜる。並べる)。競馬はおろか麻雀も知らない。麻雀を打つ。手牌にはを(倒す。並べる)。牌を(倒す。積む。つもる)。 **やきゅう【野球】** 野球が熱戦を繰り広げる。敵の強打者をバッターボックスに迎える。アウトにする(走者を。打者を)。ゴロを(お手玉する。後逸する。捕る)。三者凡退に終わる。▼出塁する(安打で。エラーで。四球で。ヒットで。フォアボールで)。投打がかみ合う。盗塁に(失敗する。成功する)。ナインが守りにつく。 **ライバル** ▼ライバル(宿命の。お互いに抜きつ抜かれつの。好成績を争い合う)。人も知るライバル同士。ライバルとの差を広げる。ライバルに(こだわる。競り勝つ。対抗する)。セールス競争でライバルの関係にある。ライバル意識に燃える。ライバル意識を(あおる。持つ)。競争相手が市場に参入する。競争相手に足元をさらわれる。有力な競争者が現れる。我にもあらす競争者に同情する。宿敵と対決する。宿敵を倒す。敵手を(侮る。打ち負かす。褒める)。好敵手が現れる。好敵手に(対抗する。出会う。めぐり合う)。鼠やずを駆逐する天敵。天敵のように毛嫌いする=飯田。 **りきし【力士】** 力士が懸賞金をもらうように手刀を切る三好後。土俵際に押し込まれた力士のように弓なりになってこらえる後藤。かど番の大関。大関から陥落する。大関に(返り咲く。昇進する)。相撲取りのような立派な体椎名誠。土俵につんのめった相撲取りのように他愛ない姿"獅子。咽喉のとを毀こぁした角力取りのように荒い声=川端。 **リング** リングに上がる。リングの中央に飛び出す。リング上でエキサイトする。レース(八百長の。呼び物の)。レースからリタイアする。レースで(出遅れる。勝てると確信す る)。レースに(勝つ。参加する。負ける)。レース結果を見守る。目まぐるしいレース展開。 <344> # 厳しい き **かこく【過酷】** 過酷な(戦争の体験。責め苦に屈する。年責に耐えかねる)。苛酷な(搾取にあえぐ。税を課す。労働で痛めつけられた体)。戦時下の苛酷な生活。この上なく苛酷な運命-阿刀田。苛酷さに息を呑む。苛烈な戦闘場裡比以让けに入って行く。残酷苛烈な処刑方法。戦争がとみに苛烈になる。領主は苛斂誅求沙試み方』の権化だんのごとき人物=柴田錬。 **かしゃくない【仮借ない】** 仮借ない犠牲を強いる。透徹して仮借ない鋭い判断"有吉。仮借なき批判を加える。仮借なく(欠陥をあばく、我がまま増長を便打がんする)。仮借のない表現。厳酷に懲罰して仮借するところがない長与。 **きびしい【厳しい】** 厳しい(稽古をつける。刑罰を科す。弾圧を受ける。谷とがめを受ける。督促が続く。罰を与える。害の言葉を伝える。現実と向き合う。現実を覆い隠す。視線にさらされる。取り調べに耐える)。厳しい(警戒が。残暑が。寒気が殊の外。年貢の取り立てがはなはだ)。活を入れるようにきびしい声で言う胡桃沢。思いのほか厳しい目つきになる。顔に厳しい表情がよぎる。残暑の厳しい九月初旬。躾れっの厳しい家庭。底冷えが厳しい一日。冷え込みの厳しい朝。ひときわ寒さの厳しい日。例年になく厳しい冬。犬を調教するような厳しいしつけ=玉村。顔に暗く厳しい皴しもが刻まれている=辺見。声が厳しい鞭もちに一変する=山岡。打ってかからんばかりにきびしく追及する三浦綾。厳しく小言を言う。自分なりに厳しく決め事をする"阿木。厳しくする(管理を。吟味を。取り締まりを。踏み込みを)。厳しくなる(寒さが一段と。監視がますます)。▼厳しさ(開きしまさる。静かだが人に口を開かせないようせ永井路。人の眼を逃れて生きるということの永井路)。規例が厳しすぎる。愛の鞭。千に一つも目こぼしをしない"高橋克。厳格な秩序で統制する。厳正に(取り締まる。取り調べをする)。厳として拒絶する。一瞬たりとも気をゆるめていない峻厳しいんな動作!宮本年。剃刀のように峻厳な態度"加賀。峻岭な学者。峻烈しんな(気概を示す。思想弾圧事件)。世間の目はそれほど甘くない。冷厳な自然の意志。冷厳に突き放す。▼シビア(値段に。金には)。シビアな(指摘。批評)。秋霜のような語調で間責する司馬。秋霜の如く犯し難き威厳菊池。秋霜烈日の如き権力。 **けわしい【険しい】** 険しい(空気が流れる。声でどなる。人生の坂道。表情を向ける。道を歩く。眼差しを向ける。流れを束ねてくる河高樹)。▼険しい(前途が。道はなお)。鳥のように目だけがけわしい=安部。顔に険しい翳かげがさす。目に険しい光が浮かび出る。眉根を零しかめて険しい表情をつくる久間。まるで別人のような険しい人相になる『三好做。険しく(対立する。眉をひそめる。見据える)。童顔を険しく一変させる。表情が険しく尖る。目が険しく吊り上がる。険しくする(呼吸を。表情を。目を)。険しくなる(見る見る顔が。声が次第に。顔つきが日に日に)。敵地に足を踏み入れたような険しさ=本庄。顔に年増芸者のようなけわしさがたつ=坂口。道のりの険しさを認識する。憤死すると思うばかりの険相。険相な(顔。面構え)。 **げんじゅう【厳重】** 厳重な(箝口令分似にがしかれる。警戒網に囲まれる。チェックを受ける。防衛能勢をとる)。監督の厳重な寄宿舎。厳重に蒸縄は16で縛り上げる。四六時中厳重に監視される。針を刺すように厳重に取り調べる"子母沢。円を厳重に鎖とさして静まり返る=森殿。厳重を極める(警戒が。取り締まりが)。厳重にする(監督を。警戒を。警談を。戸締まりを。取り締まりを。見張りを)。きっと相手をにらむ。きっとした(口調で言う。目でにらむ)。開き祭とがめてきっとした顔をする。腹を立てたようにきっとする。厳に(戒める。禁止する。言葉を慎む)。▼厳にする(監視を。監督を。警戒を)。厳密な(検査。審査。チェック。取り調べ)。厳密に解釈する。 **しんらつ【辛辣】** 辛辣な(批評を下す。意見を口にする。嘲笑を浴びせる。皮肉を浴びせる)。ずばずばと辛辣なことを言う。騒動を辛辣な筆致で描く。針を含んだ辛辣な言葉海音寺。辛辣に(描く。非難する)。▼辛い(採点が。点が。評点が)。辛口の批評。口調にほんのり辛味が利かせてある=円地。 **てきびしい【手厳しい】** 手厳しい(言葉を吐く。審判を下す。反撃を加える。批評を下す。意見に思わず首をすくめる=東野)。もろくも手厳しく退けられる。 **ようしゃない【容赦ない】** 見せまいとする部分に容赦ない光を当てる黒井。容赦しない(年上だろうと。子供であろうと)。容赦のない(刑罰を加える。批評を浴びる)。何の容赦もなく切り捨てる。容赦なく(金をしぼり取る。欠点を見つける。好奇の目が注がれる。集中攻撃を浴びせかける)。雨が容赦なく勢いよく降る。抗秘らう者を容赦なく罰する。風が容赦なく吹きつける。夏の光が容赦なく射し込む。大声が容赦なく鼓膜を叩く=加賀。海流が容赦なく小さな舟を弄。そぶ藤木。手加減というものを知らない=貫井。情け容赦なく火をつける。情け容赦のない拷問にら。情け容赦もなく(命まで奪う。襲いかかる。ぶん殴る)。遠慮会釈なく(びしびしゃる。人を使う。相手をやりこめる。ずけずけと尋ねる。次から次へと注文をつける=阿刀田)。冷たい外気が遠慮会釈なく流れ込む。遠慮会釈のない口を利く。 <345> # 嫌う・好む―113 **いみきらう【忌み嫌う】** ▼忌み嫌う(政略結婚を。不公平を。蛇を。貧しさを。仇敵にいうのことく。えげつない話題を。腹立たしい出来事を)。毛虫のように忌みきらう。石坂。平和の攪乱者はいいのように忌み嫌われる=徳田。▼忌む(血族結婚を。巧弁を。不潔を)。鬼門にあたる方角。 **いや【嫌】** 『嫌(ぞくぞくするほど=幸田文。身がちちむほど=壺井)。ああ嫌だと反射的に思う。嫌な(後味が残る。夢を見る。予感を覚える。思いが胸を走る。考えを追い払う。気分に襲われる。言葉が横行する。臭いをぶんぶんさせる。ものは絶対に嫌。役回りを押しつけられるのは続け様に起こる=黒井)。地面の底から聞こえてくるようないやな音"長崎。吐き気がするくらいいやな人間"灰谷。ネチネチした助兵衛ッたらしいようなほぃゃな方"永井荷。思い出すのも嫌な事柄。さんざ嫌な目にあう。どんな嫌な仕事でも引き受ける。身震いするほどいやな男"梅本。死刑宣告をするようないやな気分"五木。晴れた日も曇るほど歴な気分二葉亭。エレベーターで四十階から急降下したときのような嫌な気分"宮部。土の中に埋没してゆくような厭な声=林美。咽喉のとがかさかさしてひび割れたような嫌な声になる=本庄。▼嫌になる(自分で自分が。胸がむかつくほど=隆)。お互いに顔を見るのもいやになる=武者小路。嫌になるくらいどっさり見る。嫌になるほど(食べる。見慣れた景色)。露骨に嫌そうな顔をする。嫌そうに顔をしかめる。苦痛は二度と御免。金輪際御免こうむりたい。まっぴら御免被る。まっぴら(お説教なら。死ぬのは)。▼嫌気がさす(人間関係に。ほとほと。政治の機能不全に。嘘に嘘を重ねる自分に熊合。狭い村での暮らしに熊谷)。うとましい(興奮の記憶が。人の目が)。内心疎ましく思う。うとましげな態度を見せる。心に厭世以を植えつける=舟橋。世の中がつくづく嫌になる。厭世観に(陥る。支配される)。厭世的な気分。 **いやがる【嫌がる】** ▼嫌がる(横柄な口調を。深夜作業を)。▼いとう(死を。光を、煩わしさを)。厭悪説んと焦燥の念をむき出しにする=武田炎。▼渋る(支払いを。さんざん。何やかやと)。 **うらむ【恨む】** 恨みが(深く根を結ぶ。骨髄に徹する。身内に煮えたぎる。胸の中にしこる)。深いうらみでもあるような口ぶり“灰谷。恨みでもあるような粘っこい口調"井上靖。岩に対して恨みでもあるような剣幕でハーケンを打つ=新田。積もりに積もったうらみの数かずをのべる=白洲。小さな黒い恨みの粒を胸の奥に抱きかかえてそのまわりを長い年月をかけて真珠のように巻き育てる"大庭。食べ物の恨みは恐ろしい。恨みを(根に持つ。瞳に焚たく。受ける覚えはない。しつこく忘れない)。万言の恨みを聞く思い。目に恨みを含んでいる。万斛ぶんの恨みをのんで死ぬ=山田風。封じられた恨みを覗かせるように小さな眼をきょときょとさせる=河野。恨み声が夜な夜な聞こえる。恨み言をユーモアにまぶす"干刈。つい恨み言を言いたくなる。握せきを切ったように恨み言を並べ立てる篠田。恨みつらみが(山ほどある。一度に爆発する)。▼恨む(過酷な政策を。身勝手な父親を)。恨む心でいっぱい。恨むのはお門違い。一生根み続ける。恨んでいた心がクラゲのように獣化する"獅子。恨みがましい目を向ける。過ぎ去ったことを恨みがましく言う。恨みっぽく言い募る。意趣に含む。化けて出る。恨み言のような諫ぃさめの言葉"深沢。恨むようなさびしい笑顔"中。百年の遺恨があるような心地=二葉亭。民の怨嗟ぶんの声が満ちる。目に怨嗟の念が宿る。怨嗟を込めて姑しうを掲いのる有吉。国民の怨嗟を一身に集める。持って行き場のない怨嗟を爆発させる"杉本。気持ちのなかから怨讐站認しの炎が消滅する。他人の忠告を逆恨みする。私恨がわだかまる。私恨を晴らす。何やら胸に含む気色=獅子。内に含むところあるらしい表情"大岡。話の中身に含むところがある=山本一。▼恨まれる(失点が。家族に)。感謝されることがあっても恨まれることなどない=横山。他人の恨みを買う。他人に恨まれるような心当たりはない夏樹。人から逆恨みされる。怨恨が胸中に渦巻く。長い間悩まされつづけた怨恨から解放される=白洲。怨恨による殺人。怨恨の線が極めて濃厚。怨念に彩られた過去。怨念を晴らす。恨まない。温情が仇ぁだとなる。金が仇の世の中。恨みが朝霧のように消散する=海音寺。怨ぅらみが泡のように頭から消え去る菊池。思をもって恨みに報いる。昔日の恨みは残っていない。もない。恨みを帳消しにする。昔の恨みをさらりと水に流す。川端。恨む(気は毛頭ない。筋合いはない)。どんな結果になっても恨みっこなし。後に遺恨を残さない。怨念が消える。私怨を捨てる。 **うらやましい【羨ましい】** 幸福な身の上が羨ましい。羨ましい才能の持ち主。格別羨ましいとも思わない。羨ましいのを通り越して腹立たしくなる。側そばで見てさえうらやましいほど親密な交際萩原明。羨ましいほどきれいな声。 **うらやむ【羨む】** ▼羨む(他人の幸福を。高嶺欲かの花と)。世にも幸福な人妻と羨まれる=瀬戸内。人に羨まれる種が増える。陰で妬ゃたんだり羨ましがる。人も淡むような円満な似合いの夫婦=今東。▼羨望(憎しみに近いほどの"阿刀田。眼が潰っぶれるような驚愕岭にうと"室生)。羨望と嫉妬とが渦を巻く。羨望の <346> # 嫌う・好む き **えんせん【厭戦】** 歴代気分が広がる。厭凧気分に満ちる。合戦に乗り気でない。戦争がつくづく嫌になる。戦争は(まっぴら。やりたくない)。一日も早く戦争を終わらせたい。戦乱に倦;み疲れる。戦う気力を失う。 **かたき【敵】** 敵を取る。兄の仇跡たを討つ。親の敵と狙う。親の仇にめぐり合っみたいに探しに探してついにめぐり合う~白井。親の敵に向かうように咬ゅみつく=子母沢。敵同士のように(児にらみ合う。お互いにだまりこくって働く=小林多)。形だけは夫婦でありながら敵以上に呪いあっている男女"吉川。怨敵はしを(退散させる。滅ぼす)。仇敵にいっでも見つけたように身体に飛びかかる=松本。父親の仇敵と対決する"東野。百年の仇敵に会えるがごとくに詰め寄る=坂口。不倶戴天ふぐの仇敵の問柄"網淵。仇敵のように憎み合う。南条。 **きにいらない【気に入らない】** ▼気に入らない(言い方が。性格が。出来栄えが。しゃらくさくて)。意に(染まない。沿わない仕事)。心に染まぬ結婚。気に食わない(言い方が。魂胆が。やり方が。小利口な返事が)。何か気に喰わないと喉が裂けるほどに怒号する=子母沢。気に染まぬ話題。お気に召さない様子。癇かんに障る(言い方。笑い方)。▼癇に障る(甲高い声が。得手勝手な振る舞いが)。 **きにいる【気に入る】** ▼気に入る(いたく。すっかり。一目見て。こだわらない態度が)。よっぽど気に入ったと見える。一番のお気に入り。お気に入りの(靴。帽子)。自分の気に染む人を選ぶ!柴田塚。必ずやお気に召すはず。社長のお眼鏡にかなう。まんざらでもないといった表情。 **きらい【嫌い】** ▼嫌い(血を見るのが。毛虫よりも。死ぬほど。図々しい人は。根っから。骨の髄から。軽薄な物の言い方は。猫みたいに雨が人フ東。思い出しても身震いするほど今束。強圧的な権力がヘドが出るほど泉優。ゾーッとするくらい三浦朵。吐き気をもよおすほど高橋和)。論理が嫌いなタイプ。好きが嫌いに変わる。大嫌い(勝負事が。うじうじするのが。喧噂州ん口論の類が)。いけ好かない奴。身震いが出るほど嫌で嫌でたまらない=丹羽。虫が好かない。逆立ちしても好きになれない南木。食わず嫌いで(演歌が嫌い。納豆を口にしない)。食べず嫌いで(クラシックを聞かない。なまこを食べない)。虫酸だしが走るほど軽蔑する藤原。考えただけで虫酸が走る。 **きらう【嫌う」** ▼嫌う(官僚統制を。軽佻浮薄け出しを。裁判沙汰を。殺傷沙汰を。他人の干渉を。醜いものを。雑音を極度に。蛭ぃるのように。大仰な言い方を。十三日の金曜日を。・定石を外したやり方を。見苦しいものを。借財というものを毛虫のように森過)。スタンドブレーを嫌う地道な社風=浅川。言葉を嫌う(無神経な。気取った。こけおどしの。生煮えの)。身の毛がよだつほど嫌い抜く筒井。小細工をあまり好まない。▼毛嫌いする(人を。頭から。天敵のように)。 **きらわれる【嫌われる】** ▼嫌われる(姉艇游比のように。毛虫のように。周囲の人から。世間から)。炊にもだ蛇だと嫌われる男に水井降。鼻つまみの嫌われ者。このままでは日本は世界中の嫌われ者になる=中野孝。嫌われ者を仲間外れにする。チームメイトから総すかんを食う。憎まれっ子世にはばかる。蛇蝎咲かのように憎まれる有局。社会の鼻つまみとなる。友人から鼻つまみにされる。 **けむたい【煙たい】** 探るようになった目が煙たい!連城。煙たい感じの上役。煙たがられる(若い世代に。理屈っぽいと。上からも下からも)。煙たがられる存在。煙たがる(厳格な父親を。独立自尊の人間を)。おっかなくて煙ったいおばさん"つか。 **けんお【嫌悪】** 嫌悪(胸がむかむかする。生理的な限度を越えた高樹)。嫌悪が(心に住みつく。そろそろ背筋をはい上ってくる=島尾)。声に嫌悪がこもる。怒りが嫌悪に変わる。顔が嫌悪に歪ゅがむ。目が嫌悪にひきつる。嫌悪の(いりまじった恐怖。表情をあらわにする。情が快感に変わる"加賀。戦慄が身内を走る"佐多)。吐きたくなるような嫌悪の情が胸を襲う藤枝。胸に嫌悪の震えが走る=あさの。▼嫌悪する(淫蕩いんの血を。自堕落を。性的乱脈を。男の我がままを。他人の不幸を喜ぶ卑しさを"貫井)。生理的な嫌恶感。嫌悪感が怒りに油を注ぐ=丹羽。本能的な嫌悪感が胸の底から突き上げてくる=中村真。胸をしめつけるような嫌悪感が湧き起こる=泉優。嫌悪感が胸にわだかまる。激しい嫌悪感に体を震わせる。 **こうい【好意】** 巅ゃらしべ一本ほどの好意"宮本百。いまさらのように好意が身にしみる=渡辺。ほのかな好意が愛情に変わる"つか。目には見えない先生や友達の好意がかげろうのように周囲に燃えたっている=石森。好意に(甘える。背く。包まれる。報いる)。他人の好意にあぐらをかく。人の好意に包まれて心があたたかく溶ける"真継。好意に満ちた(心持ち。眼差し。笑顔で話しかける)。好意の(こもった微笑。目で見守る)。好意を(抱く。婉曲以ん』に示す。素直に受ける。ストレートに表現する。もって迎えられる)。異性に好意を寄せる。たっぷりと好意を注ぐ。並々でない好意をいだく。分け隔てのない好意を示す。うるさいほどの好意を持つ堀。せっかくの好意を無にするわけにいかない=貫井。妙にこちらの好意を殺ぐぐような言い方=中村真。好意的な(解釈。態度を見せる。意見を口にする)。好意的に(取り計らう。評価する)。善意が(裏目に出る。悪意にとられる)。善意にあふれる。 <347> # 嫌う・好む―113 き **こうかん【好感】** 仕草に好感が持てる。好感の持てる人。意志の強そうな表情に好感を抱く落合。誰しも好感を抱くに違いない=和久。好感度が高まる。好印象を与える。受ける)。 **このみ【好み】** ▼好み(渋い。品のいい)。好みに合わせてカスタマイズする。着物の柄が好みに合わない。好みの(衣装を着る。タイブ。食べ物)。全身を電流が走るくらいに好みの条件がそろっている男と知り合う笹沢。人の好みは十人十色。好みを一方的に押しつける。自分の好みを正当化する。消費者の好みをつかむ。お好みの料理。好尚に合う。藜たで食う虫も好き好き。▼好物(辛い料理が。大の)。好物が食卓に並ぶ。猫に(鰹節跡いぉ。マタタビ)。嗜好礼にが偏る。嗜好のむら気が激しい。 **このむ【好む】** ▼好む(淡い色合いを。英雄色を。温和な気候を。簡潔な表現を。明敏な頭脳を)。好んで(口にする。身につけた芸。危険な傭兵心、稼業を選ぶ萩原朔)。好き好んで苦労をしているわけではない。誰も好き好んで重労働はしない。心憎からず思う。愛好する(芸術を。平和を)。▼愛用する(国産品を。長年にわたって)。▼たしなむ(酒を。煎茶を。煙草を)。 **しゅみ【趣味】** 趣味が(洗練される。高じてその方面の評論家になる=倉橋)。趣味と実益を兼ねそなえた一石二鳥木山。趣味に生きる。習慣が趣味に発展する。趣味の(域を出ない。領域を超える。いい着物を着る)。豊富な趣味の持ち主。人の趣味は千差万別。而親が読書などの静的な趣味を推奨するリ有川。▼趣味とする(散歩を。庭いじりを)。余技で(絵を描く。詩を書く)。本業を離れて余技を楽しむ。 **すかれる「好かれる】** ▼好かれる(生徒に。みんなに。子供から。誰にでも。ものに拘泥しないさっくりした気質が人に=有吉)。人好きのする(顔。タイブ)。人を逸らさぬ(円満な人格。話術の持ち主)。 **すき【好き】** 気が狂いそうなほど好き=石坂。好きこそ物の上手なれ。好きで好きで(しょうがない。たまらない)。好きな(酒を断つ。食べ物。道に進む。男に捨てられ自棄ゃけになる。仕事に全力を打ち込む。書物を読んで暮らす。方法を実行する)。絵木が好きな人。思い思いに好きな料理を注文する。金儲いわけの好きな人物。ジャズが好きな客。てんでに好きな座を占める。どこなと好きなところへ行きなさい。好きなだけ(甘やかす。泣かせておく)。好きな人の(子を産む悦こっび。胸に飛び込む)。好きにならずにいられない。どうでも好きにできる。煮るなと焼くなと好きなようにしておくんなはれ"宫本趣。好き放題(使う。やらせる)。▼大好き(甘いものが。踊りが。山が)。大好きな歌手。下手の横好き。ほの字。言葉ほど嫌じゃない。まんざら嫌いでもない。憎からず思う。▼首ったけになる(ぞっこん。一目で)。あの子に首ったけ。▼目がない(着る物に。コーヒーに。饅頭味礼しに)。タルガキが目のないほど好き=石森。 **すききらい【好き嫌い】** 好き嫌いが(多い。激しい。はっきりしている)。好きと嫌いをはっきりと区別する『有吉。好悪がはっきりと分かれる。自己の好悪に偏執する。好悪の情が激しい。うつろいやすい好悪の感情。好悪を露骨にあらわす。偏食が(激しい。ひどい)。愛憎(相半ばする感情を抱く。こもごもの追憶)。愛憎が(入り乱れる。交錯する。めまぐるしく入れ替わる“辻井)。男と女の愛僧に絡んだ事件。愛憎の念が一と晩のうちに幾回でも猫の眼のように変わる八谷崎。爱と憎しみがごたまぜになる。愛と憎しみのるつぼ。 **ぞうお【憎悪】** ▼憎恶(慈しみと紙一重の=長野。火花を散らすような黒岩。理性を超越した豊田)。憎恶が(胸に燃え立つ。心にわだかまる。恐怖を麻痺まひさせる"船山。虱礼らのようにわく=小林多。蛇の舌のようにちろちろこもった言葉の黒岩)。表情に憎悪が剣もき出しになる。言葉に憎悪が火を吹くように現れる=黒岩。堪こらえきれぬ憎悪が身の内に燃え上がる" **しっと【嫉妬】** ▼嫉妬(胃がキリキリするような=田辺。どこにも出口のない=石川。胸の中にできた飲み下すことができない塊のような“阿久。胸を刺されるような=森岡)。嫉attoが(胸中にうごめく。心にわだかまる。心の底で沸々と煮えたぎる=藤田。底知れない色を見せる古井。止むことのない波になって押し寄せる"高樹)。はっきりした手応えのある疼うずくような嫉妬が湧き上がる=士行。烈はげしい嫉妬がムラムラと心に渦巻く菊池。嫉妬で頭が変になっている阿部。焼けつくような嫉妬で居ても立ってもいられない"安部。嫉妬に(根ざす密告。胸を焦がす。目が呟くらむ。足をすくわれる)。腹立ちが吹きとんでしまうほどの激しい嫉妬に燃えあがる=筒井。嫉妬に似た胸の痛みを隠すのに苦労する=北原。嫉妬の炎が目に燃える。青白い嫉妬の念が体の奥底でちろちろと燃え続ける熊谷。頭の芯を嫉妬の血が熱いようにのぼる"吉川。胸の引き出しの奥から新品の嫉妬の塊を取り出す荻野。嫉妬を(気ぶりにも出さない。むき出しにする)。行き場のない嫉妬を持て余す。他人から嫉妬を受ける。同僚の嫉妬を買う。▼嫉妬を覚える(頭に血の上るような"有吉。胸が痛くなるような=福永)。▼嫉妬する(蛇のごとく。横目で身震いするほど人日)。嫉妬以外の何物でもない。嫉妬心が物憂い春の早戚みのように萌えはじめる!白洲。人一倍嫉妬心が強い。女のように嫉妬深いので有名な男"山本周。他人の栄達を嫉視する。余りにも早い出世のため嫉視を買う井上靖。妬心が強い。妬心をあおる。拭っても拭いきれない激しい妬ゃたみ心三浦裟。 <348> # 嫌う・好む き **てき【敵】** 男という男は皆敵"川端。敵が(姿を現す。攻めてくる。総崩れになる。退散する。四方八方から押し寄せてくる)。社内に敵が少ない。待ちきれなくなったように敵が動く。敵が迫ってくる(じりじりと。盛り上がるように=山手)。敵から身を守る。正面の敵と対峙する。敵ながら(見事な策略。天晴れな武者振り)。敵に(塩を送る。一泡吹かせる。夜襲をかける。攻撃材料を与える。寝首をかかれる。包囲されて籠城する。回すと怖い人間。向かって突進する。多大の損害を与える=阿川弘)。強大な敵に挑む。一人で多数の敵に立ち向かう。敵に当たる(一致して、ばらばらで)。▶敵に回す(軍部を。警察を。世論を。全人類を)。▼敵にまわすことになる(心ならずも一方に味方し一方を=飯田。好むと好まざるとにかかわらず豊田)。敵の(意表を突く。裏をかく。思う壺っぽぼ。逆襲に遭う。弱点を探る。手勢を退ける。手に落ちる。動静を窺らかう。目をくらます。罠もなに落ちる。情勢を察知する。大軍の前にもろくも敗れる。不意討ちを受ける。兵士を蹴散らす。本陣に斬り込む。鈍重さを嘲笑ふぶうかのように悠々と罠を逃れる=奥泉)。敵は袋の服知ず。きのうの敵はきょうの友。敵も味方もごちゃごちゃになって戦う山本周。敵を撃退する。蹴散らす。袋の鼠にする。罠に掛ける。生け捕りにする。過大に評価する。山中で要撃する。挟み撃ちにする。めがけて突撃する。欺くにはまず味方を欺かねばならぬ=塩野)。並み居る敵を打ち払う。必要以上に敵を作る。見えざる敵を怖れる。 **てきい【敵意】** 敵意に(囲まれて暮らす"大庭。似た激しい腹立ち=幸田文)。怒りと怨ぅらみの念を敵意に練り固める=有吉。目に敵意に近い黒い光が宿る=小林久。敵意に満ちた(一瞥心を投げる。視線を向ける)。敵意の爪をむき出しにする“連城。目から敵意の色が消える。視線に激しい敵意の火花が散る=黒岩。敵意を(含まない穏やかな目。含んだ風がびゅうびゅうと空に鳴る=福永)。あらわな敵意を心が滝に打たれたかのように感じ取る=野問。外からの侵入者に警戒するような幾分敵意を含んだ目"中局将。目がなみなみならぬ敵意をたたえる=高見浩。反感がとぐろを巻く。心の内側に秘めていた反感がむかと押し返してくる=本庄。むき出しの反感に出会う。 **なかたがい【仲違い】** ▼仲たがいする(兄弟が。夫婦が。友達と)。仲間割れが(起きる。始まる)。仲間割れに(巻き込まれる。端を発する集団リンチ)。分け前のことで仲間割れをする。 **にくい【憎い】** 刺し殺しても飽き足りないほど憎い!谷崎。憎い敵と思う。憎いほど(落ち着いた声。冷静な言葉態度"山手)。弱点を面の憎いほど知り抜く合崎。ぶってやりたいくらい憎く思う。太宰。可愛さ余って憎さ百倍。愛情よりも先に憎さが胸に来る。 **にくしみ【憎しみ】** ▼憎しみ(黒い染みのような森環。ひっそりとした足音にこもる=古井)。憎しみが(心の中に渦巻いている。身内に湧き上がる。むらむらと燃え上がる)。目に憎しみが宿る。石のような憎しみが眼にある=野上。顔にひりつくような憎しみが浮かぶ藤枝。昨日のことのように当時の悲しみや憎しみが甦処ひる三浦綾。兇暴な憎しみが青い火花になって眼のさきにちらつく=林美。烈はげしい憎しみが五体をつんざくように走り抜ける=井上靖。胸の底に憎しみが詰まっている=武田発。憎しみに凝り固まった人間=阿部。悲憤が憎しみに変わる。屈辱と憎しみの情が身体を包む"藤枝。瞳に冷たい憎しみの青い生気が燃える=木庄。憎しみのこもった(声で言う。目でにらむ)。憎しみを(後悔する涙。全身に浴びる。肌に感じる。焼き印のようにおしつける=野間)。殺意に近い憎しみを抱く佐高。 **にくにくしい【憎憎しい】** 敵の顔をでもにらむような憎々しい目『森殿。挑代的な憎々しい調子で言う。憎々しげに(そっぽを向く。唾を吐く。毒づく。にらみつける)。呪いの牙を噛むように憎々しげに言う?真継。毒々しい罪のレッテルを貼る。顔に青筋を立てて毒々しい言葉を浴びせかける!徳田。 <349> # 嫌う・好む―113 き **にくまれやく【憎まれ役】** 憎まれ役に徹する。憎まれ役を(買って出る。一身に引き受ける)。悪役に徹する。敵役のイメージを負わされる。敵役を買って出る。務める。魅力的に描く)。 **にくむ【憎む】** ▼憎む(傲慢な態度を。薄情な友人を。非情な処置を。見捨てた者を。腹の底から。犯人を心から。ひどい仕打ちを。身勝手な振る舞いを。鬼か悪魔のように"長崎。殺してしまいたいほど=黒黒岩。肉の中に刺さった抜くことのできない棘とげであるかのように=椎名感)。憎んでも憎み足りない。八ツざきにしても飽き足りない!本庄。意地の悪いことをしているのに間の抜けたようなユーモアがありしんから憎めない灰谷。あつかましいくせに悩めない男"田辺。 **にくらしい【憎らしい」** 力一杯叩いてやりたいほど憎らしい“新田。腹の底から憎らしいと思う。憎らしさがどこかへ消し飛ぶ。さも憎らしげににらみつける。酒臭い息から憎らしそうに顔をそむける=武田発。さもさも憎らしそうに後ろ姿を見送る!永井荷。面が憎い。小憎らしい(ことをずけずけ言う。顔を引っ叩きたくなる=東野)。こまっしゃくれて小憎らしい子供=井上靖。小憎らしく(澄ましきる。空とぼける)。さもいとわしそうな顔をする。可愛げのない(声。嫉妬)。小癪にしな(言い分。真似まね)。無駄口を叩かないところが小面憎い。小面憎くこづきまわす。面憎い発言をする。面憎いほど弱点を知り抜く。憎たらしい(男。女。旋毛いも曲がり)。憎まれ口が喉まで出かかる。下らない憎まれ口を利く。口々に憎まれ口を叩く。 **ねたむ【妬む】** ▼妬む(幸福を。才能を。声望を。年若い連中を。人気を)。妬みがましく不服に思う。猜忌さいの(念をいだく。目をみはる)。▼そねむ(才気を。同僚の出世を)。そねみから出た皮肉。▼やっかむ(人気を。他人の幸福を)。恪気りんして骨と皮に痩せる藤沢。 **はんせん【反戦】** 反順を唱える。軍国主義の復活を阻止する。再軍備に反対する。戦争に批判的な考えを持つ。反視思想を(高くぅした小説。盛り込む)。反軍的な思想の持ち主。非戦論を(説く。唱える)。 **ひいき【贔屓】** ひいきの(引き倒し。欲目。客を仲間にひいきとられる)。年来ご品屓の手堅い客"永井荷。▼ひいきする(できる子を。身内を。女の子ばかり)。芸人をひいきにする。先生が生徒をえこひいきする。知らず知らずえこひいきになる。同郷の者を身びいきする。目をかける(事ごとに。なにくれとなく)。特に目をかけて指導する。かねてから目をかけている。社長に目をかけてもらう。上司に目をかけられる。 **ひきたて【引き立て】** 引き立てをこうむる。社長のひきたてで部長になる。引き立て役に回る。平素の御愛顧に応える。御愛顧を賜わる。重用する(側近を。若手を。マネジャーに。要心に)。社長の取り立てで部長に昇進する。取り立てる(支配人に。弟子に。門弟に)。 **ファン** ▼ファン(熱狂的な。熱熱烈な)。ファンにはこたえられない展開。ファンの(期待に応える。心をつかむ。問から欲声が上がる=篠田)。多くのファンを獲得する。根強いファンを持つ。若い女性ファンが黄色い声を上げる=篠田。音楽の愛好家。スポーツの愛好者。同好者が集まる。同好の士が集まる。 **ふわ【不和】** 不和が色濃くなる。人と人との間に不和が起こる。家庭が不和になる。不和の種をまく。▼折り合いが悪い(継父と。世間と)。犬猿もただならぬ仲。敵こうのように憎悪し合うほどの険悪きわまる仲海音寺。水火の仲。背中合わせの仲。仲が(急激に悪くなる。しっくり行かない)。恐ろしく仲が悪い。不仲になる(夫と。恋人と。同僚と)。▼確執(世代間の。嫁と姑しいうの。両家の感情的な。どろどろした人間同士の)。遠い日の確執が影を落としている=光原。水争いの確執の歴史。▼反目する(夫浜が。隣家と)。反目しあう(互いに。それぞれの親が)。不但戴天の(仲。仇討たででもあるように眠いのる=江戸川)。俱ともに天を感心いたかざる大猿の仲。 **めのかたき【目の敵】** 新人社員を目の敵にする。目の敵にして憎む。当局から目の敵にされる。▼敵視する(官僚を。反対運動を)。 **もてる** ▼もてる(男の子に。女の子に)。女性にもてる(年上の。やたらめったら)。艶福を(羨望认する。誇る)。女好きの(しそうな眉目。する男)。もてない男。自分で言うほどにはモテないらしい三浦し。女性に縁のない男。 **ものずき【物好き】** 物好きな(経営者。御仁。人)。物好きにも程がある。骨董に趣味の好事家たら。酔狂な(人。振る舞い)。物見高い野次馬。物見高い人垣。沿道の見物が物見高く集まる=舟橋。 **やきもち【焼き餅】** 声にやきもちがこもっている。自慢ではないがお菓子とヤキモチだけは焼いたことがない荻野、やきもちも露ぁらわな顔つき。焼き餅を(爆発の一歩手前で抑制する谷崎。焼く気なんてさらさらない=阿川佐)。やきもちを派手にねちっこく焼く=石坂。▼やきもちを焼く(艶福に。小うるさく)。角を出す。 **やくびょうがみ【疫病神】** ▼疫病神(人生を台なしにした笹沢。周りの人間にとっての熊谷)。疫病神を(しょいこむ。追放する)。疫病神のように憑っいてる=坂口。 **よくめ【欲目】** 惚れた欲目。欲目で可愛く見える。親の欲目と他人の催目いが。あばたもえくぼ。同性の晶屓目心。最屓目に見る。親馬鹿を(絵に描いたよう。丸出しにして可愛がる『高井)。親馬鹿ぶりを発揮する。 <350> # 切る・刻む き **えぐりだす【抉り出す】** ▼えぐり出す(暗黒の部分を。真理の一点を。本質を。悪いところを)。▼摘出する(遺体から弾を。患部を。腫瘍を。臓器を)。 **えぐる【抉る】** ▼えぐる(悔恨が胸を。社会の暗部を。短刀が腹部を。大量の水が川底を。ナイフで横腹を。人の弱点を鋭く)。偽善を仮借なく抉る"高見順。腸がらをえぐられるような思い藤田。胸をえぐられるような痛み=重松。身をえぐられるように痛切に感じる=大佛。胸をえぐるような苦痛な言葉萩原爽。人の肺腑ぶぃをえぐるような皮肉=新田。▼えぐり取る(肉を。内臓を素早く)。ナイフでこじる。剔抉に3つする(収賄事件を。哲学的意味を。病巣を)。 **おの【斧】** 斧が太腿を断ち割る。斧で丸太を割る。幾十挺もの斧の音の夕立井伏。天から突然落ちてきて陸との間を裂く途方もなく巨大な斧の断面のような船腹三島。斧を振るう。かまきりが斧をもたげる。斧のような岩の刃=景山。千古斧鉞を知らない大森林が無限に続く蝦夷地が、海音寺。まさかりを(打ち込む。振り下ろす)。 **かいぼう【解剖】** ▼解剖する(犬を、蛙跡を。事件を。死体を。犯罪を)。切り開く(死体を。人体を)。 **かたな【刀】** 刀(刀鍛冶妙にたが心血を注いで鍛えた宮部。木挽に『きが大木を切り倒す幅の広い鋸初にのような=川端)。刀折れ矢尽きた感じ宮尾。刀が(刀架に納まる。横薙はこぎに一閃心心する)。氷のような白い裸の刀がぎらぎら光る=吉川。抜き身の刀がまぶしく陽を弾く"津本。返す刀といった勢い。刀に(魂を奪われる。手をかける。拭いをかける。かけて正邪を決する)。刀に反りを(打たせる。くれる)。刀の(鯉口を切る。鞘きゃを払う。柄を握る。目釘を湿す。切っ先を突きつける。柄に手を伸ばす。つばを押し上げる)。月光の中に氷のようにきらめきつつ振り回される刀の光が言いようもないほどおそろしい"海音寺。刀を(腰に差す。上段に構える。正限に構える。中段に構える。一・中段に構える。宙に飛ばす。低く構える。胸に抱える。横に払う。脇構こにする。一直線に振り下ろす。捨てて降伏する。つかんで駆け出す。抜かねばならぬ羽目に陥る。抜きざまに斬りつける。真っ向に振りかさす。猛然と打ち下ろす)。斬り込んできた刀を打ち払う。首に刀を突きつける。すらりと刀を抜く。大上段に刀を振りかぶる。抜いた刀を元の階へ収める。横腹へ刀を突き入れる。刀を抜いて(応戦する。身構える)。刀を振り下ろす(力まかせに。滅多打ちに)。▼ 滅多打ちに)。▼刀を振りまわす(やみくもに。夢中で。めったやたらに)。真剣勝負を繰り広げる。刀一振りを賜わる。刀槍が日に輝く。角材をナギナタのように振るう加賀。名刀(家伝の。門外不出の。歴史に残る)。軍刀を抜く。鯉口をゆるめる。サーベルを(下げる。ちゃがちゃいわせる)。水車のように長刀感を回す"落語。薙刀はさを風車のように打ちふる=加太。日本刀を振りかざす。名刀を(鍛える。手に取る)。脇差が陥走って一閃する。脇差を逆手に持つ。やみくもに脇差を突き込んでくる。両刀を腰に帯びる。大小二刀を鹉走らせる。大小の刀をさす。大小を帯びる。 **かま【鎌】** 鎌の銀色の刃が鈍い光を放つ=池井戸。草刈かまり鎌でそくそくと土をつつくようにして掘る=長塚。研ぎ澄ました草刈り鎌の刃。鎌のごとく澄んだ三日 **かみきる【噛み切る】** ▼噛み切る(糸を。漬物を。爪を。のど笛を。穂を)。舌を噛み切って自ら死ぬ。食いちぎる(包みを。内臓を。肉を)。 **かみそり【剃刀】** 剃刀が銀色の虫が這うようにしてなだらかな肌を這い下る八合崎。剃刀で(顔をあたる。咽喉のとを掻かき切る=井上ひ。物を裁ち切るように言うぃ石坂)。薄いかみそりで頬をひとなでされたような鋭い冷たさ=光瀬。怒ると細い目が剃刀になる=連城。剃刀の刃のようにブレスしたズボン三浦糸。青々と濃い剃刀のあと=川端。剃刀を(逆手に持ちかえる。走らせたような疼痛が走る=椎名感)。剃刀のような(鋭い目。神経を持った早熟の秀才阿久)。鋭いかみそりのような頭脳の持ち主・美濃部。霧に遡る湧水池の水の剃刀のような冷たさ=長野。研ぎ澄まされた剃刀のような成催!連城。戸の外から剃刀のような寒気がすべり込んでくる"小林多。剃刀のように峻厳れんな態度"加賀。 **かる【刈る】** ▼刈る(稲を。羊の毛を。牧草を。麦を。鎌を振るって草を。髪の毛を毬栗ごぷに藤枝。自分の播まいた種は自分で豊田)。播いた種は刈らねばならない小松太。きれいに刈り込まれた庭木。刈り上げる(頭を。口髭(労を。髪を短く)。刈り落とす(枝を。髪の毛を。葉を)。刈り込む(生け垣を。口髭を。芝生を。髪を短く)。刈り揃える(枝を。芝生を。庭木を)。 **きぎれ【木切れ】** 木切れが(波に漂う。水面に浮かび揺れる)。硬直した木ぎれのようなからだを木ぎれを投げるようにしてフトンの上に放りだす小島。浮き世の浪に翻弄されて木っ端のようにくたくたになる今日。ドラム缶に木っ端を入れて火をつけ暖を取る=三浦し。言葉が急に固い木片にでもなったかのように咽喉のとにつっかかる=黒井。難破した舟の木片のようにしばらく漂っている遠藤。 **きくず【木屑】** 木屑が風に舞う。細かい木屑が辺りに飛ぶ。木屑を(掃き寄せる。ぱっぱと払う)。願みるにも足りない木のくずのよう。有島。木の切り屑。けむりのようにしなやかな鉋屑はれた"司馬。飽くずのような薄い木片“日野。宛屑を掃き寄せる。組より浮い <351> # 切る・刻む―114 き **きざまれる【刻まれる】** ▼刻まれる(災害の爪跡が。顔に浮き世の苦労が。目尻に薄く嫉しゃが。決然たる色が顔に。眉間に深い縦皺が=池井戸。マンションから見た夜景が脳裏に!篠田)。▼刻みこまれる(傷痕が胸に。忘我の恍惚こうが深く体に"阿刀田。思い出が記憶の中に深く遠藤)。足首に傷痕が刻みつけられる。全身脸泣きの如くに切り刻まれて死ぬ"中島乳。身体を切り刻まれるほど辛い=笹沢。顔面に彫り込まれた深い皺。 **きざむ【刻む】** ▼刻む(眉間に縦筋にてを。歴史に名を。用法を頭に。慰霊碑に名前を。顔に深い陰影を。規則的に足音を。大根の千六本を。時計がチクタク時を。目尻に深い皺を。指が軽やかにリズムを。しっかりと記憶に。皮肉な笑いを頬に。口のまわりに笑いの線を"石坂。瞳が人妻を奪う罪深い男の苦悩をありありと=菊池)。岩に刻みを入れたような細い目"貫井。頬に刻みをつけて微笑する=幸田文。自分の体を切り刻むような思いで書く=城山。一語一語を胸に刻むようにゆっくり言う水井路。▼刻みこむ(印象を胸に。表情を脳楽に。名前を記憶に深く。脳袋にはっきりと)。死体をばらばらに切り刻む。 **きりおとす【切り落とす】** ▼切り落とす(腕を。指を。すばりと。長髪をばさり)。水門の水を切って落とす。枝を切り払う。▼裁ち落とす(小枝を。余分な部分を。リボンの端を。はみ出たところを)。 **きりかぶ【切り株】** 地に根を張った切り株が容易に朽ち果てない有吉。切り株に腰かける。働きぬいたために指が成長を邪魔されたかのように先がちびてしまって株っちょになる=壺井。株を根こそぎ掘り上げる。根株を積み上げる。 **きりこむ【切り込む】** ▼切り込む(先頭に立って。問題に鋭く。専門家の牙城に)。敵兵の真っ只中欲がに斬り込んでいく=舟橋。切り込みに鋭さがない。切り込み不足に終わる。 **きりさく「切り裂く】** ▼切り裂く(弾丸が空気を。かく。悲鳴が暗がりを。サーチライトの強烈な光が夜空を大原)。暗闇を切り裂いて稲妻が走る。着物も袴しかも野分の風にあたった芭蕉の葉のように切り裂かれる"海音寺。振りしぼるような声が夜のしじまを切り裂くように響くつか。腹を割く。ずたずたに(切り裂く。裂かれた紙片)。シャツがずたずたに細かく切れる。陽加芯をずたずたに切られる。ずたずたにされる(誇りを。身も心も)。神経がずたずたになる。 **きりさげる【斬り下げる】** 肩から背にかけて斬り下げる。袈裟けきがけに(一太刀浴びせる。一撃を浴びせる柴田錬。斬って捨てたと思える言い方=高橋道)。後ろからばっさりと袈裟がけにやられる。輪にしたローブを袈裟がけにして持ち運ぶ。相手を袈裟斬りにするような具合に目を肩先から斜め下へじろりと動かす辻井。 **きりすてる【切り捨てる】** ▼切り捨てる(社会保障を。弱者を。端数を。無駄な部分を。非正規労働者を。何の容赦もなく)。一刀の下に斬り捨てる。鋭く現実をむしって切り捨ててしまう剣幕島尾。切り捨てるような(口調。語勢)。無下に切り捨てることもできない=貫井。▼斬って捨てる(一刀の下に。真っ二つに。一議に及ばず)。過去を今のモラルで切って捨てる"さだ。切って捨てるようなものの言い方="田辺。有無を言わさず一刀両断にする。 **きりつける【切りつける】** 怒声が耳を切りつける。斬りつける(敵に一太刀。真っ向から。むやみやたらと刀を振り回して)。切りつけるように鋭く言う池淡。▼斬りかかる(見境なしに。いきなり。猛然と。問答抜きで)。抜き打ちに(斬る。胸から顎へかけて斬り上げる=池波)。 **きりとる【切り取る】** ▼切り取る(四角く。気に入った部分を。点線のところで)。切り取っておきたいような景色"森村。現実の動きを切り取って見せる。切除する(がん細胞を。できものを。病巣を。胃の三分の二を)。▼剪定ごいする(枝を。街路樹を。果樹を。シュートを。庭木を)。耳をそぐ。 **きりぬく【切り抜く】** ▼切り抜く(型紙を。布地を鉄破きで)。新聞記事の切り抜き。新聞の切り抜きが褐色に変色する。新聞記事をスクラップする。 **きる【切る】** ▼切る(足の筋を。足の爪を。肩で風を。刀が空を。義兄弟の縁を。執着の根を。手紙の封を。途中で言葉を。ぶつっと話を。水押以ょが波を。髪を短く。バンを導く。改札口で切符を。がちゃんと電話を。体を振るって水気を。気前よくチッブを。ゴールまで残り一キロを。作法通りに腹を。締め切りまで十日を。人生の再スタートを、鋭い声が大気を。ちょんちょん枝を。ちょんちょんと手刀を。テレビの電源を。ばしゃっとシャッターを。ふっつり言葉の尻を。ぶつりと語尾を。ぼつんぽつんと枝豆を。ラジオのスイッチを。電話を一方的に。トマトをさいころ状に。葱を斜交加ずいに。グレープフルーツをざくりと。スイッチをそっと。長い髪をばっさりと。長ねぎをざくざくと。レモンをすばすばと。豆腐のように雪を"中河。スイッチをバチンと乱暴に=小川。缶詰の蓋をじゃきじゃき=井上ひ。不機嫌な声で電話を叩きつけるように=連城)。▼斬る(肩を。敵を。人を。めった斬りに)。ちょきんと切る(糸を。髪を)。水を切る(投げた石が。シャツを両手で絞って)。死に物狂いで斬って出る=船山。銃弾が風を切って全身をかすめる。舳先訟さで水を切っていく“国木田。▼切って走る(先頭を。波を)。気前よく派手に札びらを切ってみせる。切るような激しい視線外付。水が日一日と切るように冷たくなる=柴田翔。叩き切るような鋭い言葉黒岩。鉋屑を舞わせる=荒。 <352> # 切る・刻む き **きれあじ【切れ味】** 無類の切れ味。切れ味が鋭い新品の鎌。切れ味のいい(解決。ナイフ)。犀利にぃな切れ味を保つ。鋭い腰の切れ。切れの(いい表現。いい技)。 **きれめ【切れ目】** 金の切れ目が縁の切れ目。線路に包丁を入れたような切れ目が入っている=尾辻。切れ目がない(客の。空に雲の)。雲の切れ目から月が覗のぞく。切れ目もなく降り注ぐ。▼切り目を入れる(肉に。野菜に)。雲の切れ間から陽が射す。スリットの入ったスカート。人通りの絶え間を見計らう。 **きれる【切れる】** ▼切れる(感情の堰せきが。記憶の回路が。心の糸が。道路の舗装が。途中で息が。話の種が。ぶつんと紐ぃもが。有効期限が。電話が一方的に。糸がぶっつりと。期限が間もなく。緊張の糸がぶっつり)。冷静で頭のきれる男”小林信。▼緒が切れる(草履の。ついに堪忍袋の)。ぶつりと切れる(理性が。ローブが)。雲がきれて青い色を見せてきた空武田瓦。切れている(有効期限はとうに。記憶がぶつんと)。手が切れるような冷たさ熊合、電池が切れかける。切らす(酒を。煙草を。沈黙の長さにしびれを)。▼息を切らす(苦しそうに。ぜいぜい。はあはあと)。 **けずりとる【削り取る】** ▼削り取る(崖を。小山を。肉を。過剰なエネルギーをひたすら落合)。削り落とす(文字を。汚れを。余分のものを)。かき落とす(砂を。ふけを。雪を)。こそげ落とす(油虫を。海苔のりの細片を。飯粒を)。▼そぎ落とす(栄養分を。贅肉ぱいを。対立項を。ナイフで肉を。余分なものを)。そぎ取る(皮を。余計なものを。両耳を)。 **けずる【削る】** 削る(板を。命を。鉛筆を。軍事費を。睡眠時間を。竹を。埋め草的な記事を。ブルドーザーが地面を。文章を書くことに骨身を。鰹節紛いぉをすっすっと薄く。補助金をばっさりと)。▼削り上げる(板を。鉛筆を)。開析の進んだ山。旋盤を回す。面を取る。▼浸食する(波が海岸を。流水が岸を)。 **けん【剣】** 剣が(突き刺さる。肩先に食い込む。陽炎幼衍のようにひらめく=海音寺)。胸を剣で刺し貫く。剣の(腕が立つ。心得がある。柄を握る。道に志す。切っ先を突きつける。修築に諸国を歩く。使い手として名を知られる)。ペンは剣より強し。剣を(憎きゃにおさめる。正眼に構える。大上段に振りかぶる。取っては名っての名手。ぱっとはねのける)。あわやというところで剣をかわす。ぐいと剣を引き抜く。喉元に剣を突きつける。めちゃくちゃに剣を振り回す。足元の草がしなやかな細い剣を泳がせる"高樹。山々が鋭い剣のような姿を見せる!遠藤。赤や青の光の筋が長い剣のように交叉こうさする冨岡。寒さや霜が剣のように鋭い剣のように交叉に、うする冨岡。寒さや霜が剣のように鋭い剣のように交叉に、うする冨岡。寒さや霜が剣のように鋭い剣のように交叉に、うする冨岡。寒さや霜が剣のように鋭い剣のように交叉に、うする冨岡。寒さや霜が剣のようによだかを刺す。宮沢。月が数々の葉末を剣のように光らす=大岡。フランスパンを剣のように振り回す阿川佐。銃剣で突く。銃剣を小脇に抱える。諸刃の剣。 **さくじょ【削除】** ▼削除する(書き込みを。規定を。アプリケーションを。証言を記録から)。▼カットする(歳出を。文章を。余剰人貝を)。 **すりきれる【擦り切れる】** ▼擦り切れる(糸が。毛が。思考能力が。絨毯にいぅが。神経が。ズボンが。生命が)。擦り切れた袖口が気になる。 **そぐ【削ぐ】** 相手の気勢をそぐ。ヘッドライトが家の壁を削ぐに大佛。▼そがれる(気が。ふっと気勢を。甚だしく感興を)。川波の頭が削いだように三角=幸田文。頬の肉がそいだように落ちる=森境。剃刀动以ですばっと物を削ぐような言い方=石坂。 **そる【剃る】** ▼剃る(剃刀初以で髭ぃげを。毛を。眉毛を。頭をくりくりに。頭を坊主のように)。剃刀で髭をあたる。髭の剃り跡が青々としている。剃りあげる(首筋を。月代で跡を。長呂もに、うを。前髪を)。入道のように頭を剃り上げる渡辺。▼剃り落とす(髪の毛を。すね毛を。頭髪を。ひげを。眉を。むだ毛を。脇毛を)。 **たち【太刀】** 太刀が(附走にいる。頭上の闇を切り裂く池波。身に食い入るたびにまりをたたくようなまるくこもった音が立つ"司馬)。素早い太刀の使い手。太刀を(腰に差す。佩ぃく。引き抜く。取って立ち上がる。まっこうに振りかざす。窓もしづかみにする。振り回して敵を薙ぎ倒す福永)。敵と太刀を交える。太刀さばき(鮮やかな。見事な)。太刀筋が(いい。鋭い。乱れる)。大刀が幣走る。太刀のつかを押さえる。大刀を(腰から外す。腰に帯びる。階に収める)。ぎらりと大刀を引き抜く。猛然と大刀を打ち込む。階ごと大刀を帯から抜き取る=村上元。 **たちきる【断ち切る」** ▼断ち切る(愛叡の念を。悪循環を。過去と未来を。感情の尾を。固定観念を。しがらみを。鉄の鎖を。負の連鎖を。望郷の思いを。未練を。愛をいさぎよく。関係をきっぱりと。絆をぷっつりと。腐れ縁をすっばり)。▼根を断ち切る(悪縁の。妄執の)。線がぷつんと断ち切れる。▼断ち切られる(食物連鎖が。頼みの綱が。気持ちの張りが)。鉛のような闇が一条の白い細い道に切断されている=加賀。断裁する(紙を。布を。不要になった文書を。仕上がりサイズに)。シュレッダーで書類を裁断する。シュ <353> # 切る・刻む―114 き **たつ【断つ】** ▼断つ(後顧の憂いを。世間と交渉を。連絡を一切。暴力団の根道を。関係をきっぱりと)。絶つ(小説の筆を。将来の禍根を。若くして命を)。消息を絶つ(ぶっつりと。杳ょぅとして)。▼断たれる(交渉の糸が。選手生命が。帰郷の望みを。収入の道を。退路を)。▼絶たれる(望みが。一縷いもの望みを)。絶交状態に入る。友達と絶交する。▼断交する(両国が。隣国と)。断交を宣言する。電気を絶縁する。 **たんとう【短刀】** 言葉の短刀が胸を快く突き刺す=中村貞。短刀で(刺し殺す。ひと突きする)。呪文に似た単語を短刀でも閃206かすように口走る=武田泰。短刀の刃先が魚の腹のように光る=本庄。短刀を(腰のあたりに低く構える。陥だゃから抜き放つ。ちらつかせて凄けこむ。突きつけて脅す。三方に似せて運んでくる=奥田)。差し添えの短刀を抜く。懐に短刀をのむ。匕首はかが腹に突き刺さる。匕首を(闇に納める。懐にのむ。胸に突き立てる)。懐剣で喉を突く。懐剣を帯に挟む。帯の問から懐剣を取り出し鄲を払うぃ舟橋。短剣で刺し殺す。 **ちぎれる** ちぎれる(煙が。声が)。雲がちぎれて散る。声がちぎれて消えていく。▼ちぎれる(シャツが。葉が。旗が。ボタンが)。ちぎれるほど(尻尾を振るる。手を振る)。指がちぎれるほど痛い=司馬。▼引きちぎる(カーテンを。新聞紙を。ノートを。ボタンを。手紙を細かく)。着衣がびりびりに引きちぎられる。吹きちぎられる(声が風に。屋根板が嵐に)。風が強くて会話をぼろぼろになった旗のように吹きちぎる"曽野。後続を振りちぎる。風が悲鳴を吹きさらう。 **ちょうこく【彫刻】** 彫刻のような固い微笑!高樹。彫刻のように無表情になる三浦朵。肖像を浮き彫りにする。浮き彫りを一心不乱に刻む。顔に木彫りのような深い落ちつきを見せる"有島。生の哀愁を表象しているような灰がかった肉づけで仕上げられた婦人の半裸像野上。石像がいまにも自然に歩き出しそうに生き生きと見える=日野。石像に化したかのように動かない!光源。塑像のように(端正な姿勢。堅くなって見送る=本庄)。男たちが塑像のように動かない!藤本。見た人が思わず撫なでさすりたくなるような肉感的な彫像"小林信。氷の彫像と化したかのごとく凝然と突っ立っている=山田順。逞封くしい腕と首が彫りあげた彫像のよう~加賀。若者が雄々しく彫像のように立つ三島。静かな彫像のように揺るぎない女性吉本。青銅の彫像のように沈黙する"石坂。人間としては刻みかけたばかりの彫像のように未完成でそぼくな存在"石坂。無表情のまま彫像のように立っているあさの。無口な動く木像のような存在"山本周。木像のように(黙念と並ぶ僧。突っ立っている=清水俊)。いかつい木像のように立っている男藤沢。噛みつくように怒号されても木像みたいな顔をして平気で別の人と話をしている今灭。 **ちぎる** ▼ちぎる(バンを。封筒の端を)。▼細かくちぎる(紙を。野菜を)。ちぎって(捨てる。投げる)。風にちぎれる(煙が。声が)。雲がちぎれて散る。声がち **どうぞう【銅像】** 銅像を建てる。銅像のような威厳をつくろって二言三言詫びる=大岡。銅像のように堅くなる進城。ブロンズ色に輝いている男の体。青剣70嬰の鏡のように鈍く光る泥溜まり“長野。ブロンズのような膚はだ"千刈。犬が前足を立てたまま青銅で作った置物のようにじっと座っている=石森。青銅の像を鋳造する。青銅を成型して像を作る。 **なた【蛇】** 鉈を腰からぶら下げる。双肌脱も好きになって鉈を振るう福永。銃のような大きな包丁平司。片手を鉈のように振り下ろす人谷川。 **ナイフ** 投げたナイフが体すれすれに突き刺さる。胸にナイフが突き刺さる。ナイフで(切り取る。刺される。刺し殺す。ぐさりと一刺しする。どこかを刺してまぎらせたいと思うほどのだるさ=山田太)。ナイフの(柄を握る。刃のような金岩稜=新田)。思い出がナイフの刃のように鋭く甦10ふる遠藤。ナイフを(腰だめに構える。長靴に隠し持つ。テーブルに突き立てる。喉元に突きつける。目にしても一向に動じない)。首筋にナイフを突きつける。背中にナイフを突き刺す。折り曲げたナイフのような姿勢でプールに飛び込む"庄野。ナイフのように切れ味のいい動き=五木。言葉がナイフのように鋭く心を刺す。小魚の腹がナイフのようにひらめく=開高。言葉の一つ一つがナイフのように心に突き刺さる"東野。まなざしがナイフのように鋭い=長野。ジャックナイフを取り出して刃を開く"江戸川。小刀が生きもののように地面につきさりぶるんぶるんと音を立ててふるえる=水上。器用に小刀を使う。ぐさりと小刀を畳に突き立てる。はっしと小刀を投げつける。七本の小柄にっが茨の棘とげみたいに白く立つ吉川。闇を切り裂いて疾はしって来た手裏剣池波。手裏剣が壁にぶすりと突き刺さる=柴田剣。壁に突き刺さった手裏剣に封じ文がくくりつけられてある柴田剣。言葉が胸に手裏剣のように飛んでくる三浦低。 **のこぎり【鋸】** 鋸がざっくんざっくんと眠いようか音を立てる=本庄。鋸で木を挽ぃく。柱を鋸で切る。鋸の(目立てをする。歯のように連なっている山々=中河)。 <354> # き **のこぎり【鋸】** 鋸の歯が並んだような山並み。ギコギコ鋸を引く音がする=津本。鋸の刃のようにギザギザな稜線を立てる=本庄。鋸で木を挽ひく。柱を鋸で切る。鋸の目立てをする。歯のように連なっている山々=中河。松もみの林が鋸の歯のような猛々しい緑の稜線を切った空にしんと描く=原田康。鷲わしが鋸のような羽根を立てる=内田百。おが屑を(掃き寄せる。固めたような小さなウサギの糞ふん=石森)。チェーンソーで立ち木を伐り倒す。チェーンソーの機械音がひずむギター音みたいに山に響く=三浦し。 **のみ【鑿】** 彫刻家がノミで丹精に刻んだような美しい貌かお=森。鑿で穿うがつように鋭く説く=中野孝。問いが木の肌に打ち込まれるのみのように心に突き刺さる=柴田翔。 **はくじん【白刃】** 白刃が(胸を貫く。闇を一閃いっせんする。稲妻のように閃ひらめく=子母沢。月光を受けてきらりと光る=なかにし。虹を曳ひいて陽光を切る=光瀬)。白刃の下をかいくぐる。総毛立つような白刃の光=半村。白刃を(上段に構える。冒して死闘する。構えたような凄すごみ=高樹)。暗中に卒然として白刃を見る思いがする視線=夏目。強い凝視を白刃を合わせたように見つめ返す=円地。無数の白刃を振り回すように雪が飛ぶ=加賀。小さな波が水際を弄もてあそんでいるらしく長い線が白刃のように光っては消える=国木田。白刃渡りのような緊迫した精神=竹西。刀身が血に優る。刀身に晒さらしを巻く。刀身を拭って鞘さやへおさめる。抜き身の刃先を相手の胸につきつける=山本周。長刀なぎなたを抜き身のまま握っている。剣の刃渡りを演じる。 **はさみ【鋏】** 鋏で(ちょきんと切る。切り抜いたような空=小川)。改札口で駅員が客の流れを鋏の音で小刻みに切る=連城。鋏の音が(耳に響く。ちょきちょき鳴る=夏目)。ちょきちょき鋏を鳴らす。鋏を入れる(庭木に。封筒に。熟練の歯科医が前歯を抜くような手つきで器用にばちんと切符に=太宰)。ばちんばちんと剪定鋏せんていばさみを鳴らす。血迷ったように裁ち鋏で突きかかる=藤本。ちょきちょき鋏で切る。 **ばっさい【伐採】** ▼伐採する(木を。森林を)。竹を伐きる。木を(伐る。樵こる)。山から木を出す。幹を鋸で挽ひく。人工林を間伐する。切り倒す(木を。大木を。斧おので。鋸で。チェーンソーで)。乱伐が水害を招く。山林の乱伐を憂慮する。▼伐り出す(木を。材木を。杉を。パルプ材を。楡にれの木を。用材を山から)。 **はもの【刃物】** 切れ味のよい刃物。刃物が錆びる。手に刃物が光る。足許あしもとに刃物が隠されているような緊張感=中沢。刃物で(めった刺しにされる。斬るような言い方=高橋治)。鋭利な刃物で胸を一突きされる。薄い刃物で背をなでられるような戦慄せんりつ=梶井。言葉が刃物より深く人を傷つける=火坂。刃物を(懐にのむ。ちらつかせて脅す。振り回して暴れる)。胸に刃物を突きつける。吹きつけて来る風に面と向かうと鋭い刃物を当てられたように痛い=新田。じかに刃物を突きつけられたような生理的な恐怖=黒岩。自己防禦の刃物を心にのんでいる=石森。刃物のような歯を剥き出しにして暗い水底に潜んでいる=加賀。鋭い刃物のような厳しい寒さ=なかにし。刃物のような鋭い(神経。鼻梁びりょう)。自分が磨かれた刃物のように思われるほど頭が冴える=伊藤整。眠たそうな目が時折刃物のように鋭く光る=小林久。刃物沙汰に及ぶ。刃物三昧の喧嘩けんか。カッターを突き出してくる腕を反射ではらう=有川。鎌が不気味な動物を思わせる青黒い光を放つ。=安岡。材木にしゅうしゅっと鉋跡かんあとをかける。 **ひとたち【一太刀】** 肩に一太刀斬り込まれる。一太刀で胴を薙なぎ払う。一太刀が空を切る。一太刀の下に(斬り殺す。斬り伏せる)。一太刀を(肩口に見舞う。ぴたりと青眼につける)。だらりと一太刀をひっさげる。必殺の一刀を揮ふるう。一太刀両断に成敗する。 **ぶんだん【分断】** 分断に成功する。分断を(危惧する。固定化する。図る)。▼分断する(勢力を。敵の主力を。列を)。分断される(国が。線路が。ずたずたに。東西に。南北に。二つに)。 **ほる【彫る】** ▼彫る(刺青いれずみを。印章を。季節の花を。文字を。仄明るさが顔を浄物のように=徳永)。素朴で稚拙な彫り。目鼻の彫りが陰影に富む。彫りの深い(彫刻的な顔立ち=小林久。目鼻立ちのはっきりした顔=萩原)。簡勁かんけいで彫りがふかい文体。一瞬はっとするくらい彫りの深い秀麗な顔立ち=宮本郁。石に仏像を刻する。彫り上げる(竹の水仙を。彫像を)。▼彫り込む(墓石に定紋を。碑銘を。うれしさを心に)。露あらわになった梢が細い線を空に彫り付けたように見える=高井。▼彫りつける(印象を。神を。楔形くさびがたの符号を。言葉を。姿を。文字を。紋章を)。模刻の出来にばらつきが出る。▼鐫せんこくする(銘を。名を石に)。 **メス** 強制捜査のメスが入る。沈着冷静にメスを振るう。追及のメスを加える。日本的組織にくさりとメスを入れる=柳田。黒い岩の山体に鋭いメスを入れて切り開いたような白い肉の雪渓=新田。解剖刀とうのような日頃の批判力が鉛のように鈍る。=有吉。 **やいば【刃】** ▼刃(渓流の迅はやい水のように冴えた=奥泉)。抜けば玉散る氷の刃=落語。刃が冴えた美しい輝きを見せる。ぎらりと刃が閃ひらめく。刃で突き刺されたような恐れと痛みを覚える=萩原。刃を床に突き刺すように脛すねを立てる=川端。寒い風が冷たい刃を浴びせる=長塚。刃のような薄い唇=加賀。刃のように(鋭いことば。冷たい闇)。声が心を鋭い刃のように刺す=遠藤。言葉が刃のように冷たい=開高。月が青い水のなかの刃のように澄み出る=川端。瞳が刃のように澄みきる=菊池。目が刃のように鋭くなる=高橋三。言葉が刃のようにつきささる=三田。陽の光が眼に鋭い刃のように突き刺さる=遠藤。刃がぎざぎざにこぼれる。親指に刃を当てる。 <355> # 着る・履く―115 き **いしょう【衣装】** 衣装(贅ぜいを尽くした。馬子にも。りゅうとした)。衣裳(色とりどりのきらびやかな阿木。綺羅志らを極めたあでやかな、谷崎。雲母を薄く引き延ばしたような光った白い=原田康。ぎらぎらした眩まぶしい地質化しの谷崎。けばけばしい言葉の"池澤)。無数の衣装が通路の両脇に電線にとまる鳥たちのように群れをなす!柴田翔。眼もあやな衣袋を纏まとう谷崎。コスチュームをまとう。 **うわぎ【上着】** 上着(ぬれたようにまっ黒な=宮沢。ガウンみたいな長めの荻原葉。夏物のようなベラベラの三田)。上衣が水死人のように半ば浮き半ば沈みつつ川に流れている小局。上着を(ばたばたと払う。ハンガーにかける)。椅子に上着を引っかける。ゴワゴワに満の」のきいた白い上っぱり「佐藤愛。っ張りがかばかばに凍る=本庄。上っ張りを脱ぐ。肌触りのいいシルクのガウン。上等な仕立てのジャケット。ジャケットの襟を立てる。洗濯の行き届いたジャンバー。岩場を登っている人のえんじ色のジャンバーが岩に咲いた花のように見える=新田。 **がいとう【外套】** 外套が体にぴったり合う。風にあおられて外套の恋がひるがえったように秘密にしていた心を見る=安岡。呆然として外套を脱ぐことすら忘れる=獅子。合羽をかぶる。マントが風に(膨らむ。はたはたと鳴る)。マントにくるまる。マントを脱ぐ。 **きがえる【着替える】** ▼着替える(急いで服を。バジャマを。ブラウスを。ユニホームを。外出着に。作業服に。制服に。丹前に。とてらに。ネグリジェに。寝巻きに。白衣に。パジャマに。普段着に。宿の浴衣に。ユニホームに。制服から私服に)。▼服に着替える(きれいな。よそ行きの)。着替えが済む。着替えの世話を焼く。着替えもそこそこにホテルを出る。着替えを(絶妙ばに詰める。手伝う)。慌ただしく着替えを始める。手早く着替えを済ませる。上衣を着替えるように思想を変える=辻井。▼着せ替える(下着を。寝巻きを)。▼脱ぎ替える(外出着を。洋服を)。 **きかさねる【着重ねる】** 着重ねる(衣装を何枚も。寒いので。さらに一枚)。厚着をする。重ね着する(裕ちゃと羽織を。給に袖なしを。シャツにセーターを)。着物を何枚も重ねて着る。ころころに着膨れる。 **きかざる【着飾る】** 着飾る(晴れ着を。振り袖を。牡丹似たの花が咲いたように絵羽錦紗を美しく=萩原薬)。着飾った男女がにこやかに往き来する。美しく着飾った女性。浮き浮きと着飾って買い物に歩く芝木。盛装してパーティーに臨む。美装をこらす。豪華な衣装で身を装う。美しく装って人の前に立つ。 **きこなす【着こなす】** 着こなす(派手なものを。安いものを。着物を粋に。着物を品良く、高価な上着を無造作に。背広をスマートに。タキシードを爽やかに。上質な背広を隙なく。スーツをしゃきっと。スーツをびしりと。背広をびしりと。直衣いうをゆったりと。和服をきりりと。和服をすっきりと。華麗なものを渋く=有吉)。服を着こなす(流行の。奇抜なデザインの)。▼着こなし(センスの良い。洗練された。りゅうとした)。着こなしが(うまい。どことなくだらしない。水際立っている)。 **きこむ【着込む】** ▼着込む(外套がいを。学生服を。合羽を。着物を。コートを。作業服を。シャツを。ジャンバーを。スーツを。セーターを。背広を。チョッキを。三つ揃いを。ワンピースを。カーディガンを。きっちりと服を。レインコートをすっぽりと)。 **きせる【着せる】** ▼着せる(汚名を。恩を。着物を。心に鎧にちを。寝衣を。制服を。セーラー服を。罪を。どてらを。濡れ衣ぎゅを。パジャマを。服を。浴衣を。洋服を。夜着を。綿入れを。ワンピースを)。恩に着せるような言い方。歯に衣を着せない。▼着せかける(上着を。コートを。羽織を。浴衣を。夜着を。夕飜いりがベールを)。▼かずける(頭巾を。罪を人に)。 **きもの【着物】** 着物(木綿の縦かずの。体の線を隠してしまう。ぞろりとしたお召しの。オシメの廃物で作ったようなヨレヨレの小さな=坂口。世捨て人のようにだらりと寂しく部屋の隅にかかったままの有島)。着物に(羽織を重ねる。袴邽かを着ける)。反物を着物に仕立てる。匂いが着物に染み込む。着物の(丈を詰める。似合う女。上前の裾がはたはたと跳ね上がる。袖をたくし上げる。趣味のよさに一発する=瀬戸内)。着物の裾を(からげる。蹴開く。はしょる。翻す。まくり上げる。割る)。着物や帯を自分の皮を一枚剝ぐような仕草で脱ぎ捨てる=梅本。着物を(衣桁いににかける。何枚も重ねて着て熊みたいにもこもこ膨れる=高井)。するすると着物を脱ぐ。▼仕立て直す(給ちゃを。留め袖を。古い着物を)。▼縫い上げる(単衣辺とを。着物をひと晩で高橋治)。労働が仕立てのよい着物のように体と心にぴったりと合う三島。衣冠束帯を(着ける。解く)。衣冠を脱ぐ。徒約ちの裾をかいどる。桂を(着ける。脱ぐ。召す)。衣紋にもを(くつろげる。抜く)。お召しを縫う。肩上げが(取れる。似合う)。肩上げを(下ろす。縫う)。着流しで歩く。蹴出しの裾をなびかせる。腰紐にしをするすると解く。▼腰紐を締める(しどけなく。野袴細玆の)。裾前を(合わせる。翻す)。裾許討にがきりっとする。粋な白地の単衣物。振り袖がぴったりと似合う。陽の匂いを吸った綿入れのようなぬくもり!高樹。綿入れを(着込む。縫う。脱ぐ)。夕風が袂にも涼しく吹く中円専華やかな着物の長い袂がひらひらと舞う行順、狭から(ちり紙を出す。手拭いを出す)。快で(口元を腹へ。 <356> # 着る・履く き **きる【着る】** ▼着る(合着を。合い服を。給切っを。衣服を。打ち掛けを。上っ張りを。お仕着せを。お召しを。外套いいを。ガウンを。学生服を。隠れ覚みのを。割京着が約を。裃いふを。既製服を。軍服を。毛皮を。小袖を。好みの衣装を。紺絆たんがを。作業服を。仕事着を。私服を。ジャージを。ジャケットを。ジャンバーを。襦袢此心を。白装束を。寝衣を。制服を。セーターを。セーラー服を。背広を。袖なしを。揃いの法被叫。を。タキシードを。丹前を。チョッキを。袖約もを。Tシャツを。胴着を。どてらを。留め袖を。トレーナーを。ネグリジェを。寝巻きを。年齢的な鎧はぁを。羽織を。白衣を。パジャマを。派手な洋服を。半纏いんを。単衣ひとを。ブラウスを。振り袖を。ブルゾンを。ベストを。ポロシャツを。水着を。道行きを。三つ揃いを。蓑を。モーニングを。物日に紋付を。喪服を。浴衣を。ユニホームを。よそ行きを。礼服を。ローブを。ワイシャツを。綿入れを。和服を。ワンピースを。厚ぼったいオーバーを。ウエディングドレスを。カーディガンを。結婚式で白無労しにを。コスチュームを。ぞろりと組物を。だぶだぶの上着を。チマチョゴリを。ちゃんちゃんこを。フロックコートを。ミンクのコートを。レインコートを。衣紋にもを抜き加減に。シャツを素肌に。あれこれ取り替えて。襟元をゆったり。きゅっと襟元を詰めて。思う存分化粧をして一番の晴れ着を=有局。着物を若々しく襟を合わせて=幸田文。地味な背広をしっくり“円地。汚名を。心に錦を。精々恩に)。着る物に(うるさい。不自由する。目がない)。着物を着る(きれいな。趣味のいい。ぽてぽてと)。▼スーツを着る(きっちりと。だらしなく)。服を着る(新調の。小さめの。花柄の。びかびかの。、流行の)。▼着たがる(派手な物を。色彩に富んだ衣服を)。着物を着付ける。上布を一着に及ぶ。伊達の薄着。薄着をして風邪をひく。着崩れしない着付け。着心地が(よい。悪い)。着直す(着物を。コートを。寝巻きを。浴衣を)。着崩れを直す。着衣の乱れを直す。ぞろりと着流す(お召しを。浴衣を)。ほろぽろに着古す。寝巻きに袖を通す。雑木林がこんもりとした雪で肌を鎧ょろう三好京。とても着られた物ではない。腕を通す(上着に。新調の服に。袖に)。一身につける(スカートを。消潔な白衣を。制服を。背広を。チョッキを。パジャマを。肌着を。ブラウスを。数笠を。ぴしっとしたスーツを)。身を固める(旅美な軍装に。軍服に。スーツに。制服に。戦闘服に。飛行服に。鎧兜が紡いで)。▼身を包む(外套に。コートに。ジャケットに。ドレスに。流行の服に)。 **くつ【靴】** ▼靴(踵跡ゅの高い。舞踏靴のような華奢にな野上)。靴が(泥に染まる。揃えて置いてある。足もとでかしこまった二匹の仔犬のように見える=村上春。いかにもくたびれたといったかっこうで横たわっている=清水食。水を吸って重石はもをつけたよう今日)。靴が足に(なじむ。びったりとおさまる)。ゴム底の靴で歩く。煙草を靴で揉もみ消す。心が毎日履いて会社に行く靴と同じように廃滅する=遠藤。靴の(踵で床を蹴る。甲を踏んづける。底をすり減らす。爪先で地面を蹴る)。いらだたしく靴の鋲を床に響かせる=加賀。靴を(鳴らして歩く。下駄箱に入れる。玄関に脱ぎ捨てる)。マットで靴をぬぐう。靴を脱ぐ(三和土於たで。もぞもぞと)。運動靴の題を踏みつぶす。革靴をきゅきゅっと鳴らす「武田奏。靴紐を結ぶ。泥靴のままどたどたと上がりこむ。スニーカーを脱ぐ。ぬかるみにハイヒールをとられる。 **くつした【靴下】** 靴下を(編む。脱ぐ)。▼ソックス(履き心地のいい。履き心地の悪い)。ストッキングが伝線する。ストッキングに伝線が走る。ストッキングを(ずり上げる。脱ぐ)。▼足袋たが(小さな足にビッチリと嵌はまった谷崎。かわいいおもちゃのような壺井)。足袋の(こはぜをはめる。底を打ち合わせる)。不精たらしく蒲団の中で足袋をとる=林关。不安を与える真っ白い生きものの耳のような白足袋の爪先宮本百。履物を脱ぎ捨て足袋跳びはとなる=池波。 **グラブ** ボールがグラブに吸い込まれる。グラブを手にはめる。打球がグラブをかすめる。ボールを挟んだグラブを脇に抱える=あさの。球がグローブにすっぽりとおさまる。 **けがわ【毛皮】** 毛皮が現金収入をもたらす。高価な毛皮のコート。ラッコの毛皮は宝石みたいに高価=本多吟。毛皮を(肩に羽織る。競りにかける。身にまとう)。獣皮を(縫い合わせる。はぎ取る)。 **げた【下駄】** 下駄(桐りの。朴菌脂ぉのような高い=向田)。下駄が乱雑に脱ぎ捨ててある。下駄の(音がかったかたと響く。歯に雪が挟まる)。がらんころんという下駄の音。板っぺらのようにすり減った下駄の裏"山本有。からころと下駄の音を立ててゆっくり歩く=伊藤整。下駄を(揃える。脱ぐ。からからと引きずるように歩く長塚)。男と女ってのは最後のゲタをはくまではわかんねえ"つか。素足に下駄を履く。脱いだ下駄を歯を外にして重ねる。朴歯の下駄を鳴らしながら学校へ通う。ほとんど歯のないようなチビた下駄をはく=田中。切れた下駄の鼻緒を捨て猫のようにぶら下げる=新田。四角い下駄のような顔!灰谷。まるで雨に濡れた古下駄のようにぱっとしない。胸下駄を鳴らして駆け寄る"北原。雪を食った高下駄を穿いて歩くような不自由さ=川端。なまめかしい足もとを想わせる日和下駄の薄歯のキッキッといきに鳴っている音=高見町。からからと日和下駄を引きずっている。 <357> # 着る・履く―115 き **コート** ▼コート(しゃりしゃりした薄っぺらな。少しくたびれた。衣紋竹なもんを背負っているように肩の張った=獅子)。黒っぽいコートが薄暗がりにとけて白い顔だけが夢の世界の人物のように浮いている"高橋和。コートに腕を通す。コートの襟を(かき合わせる。立てる)。コートの裾を(押さえる。翻す。バサバサと揺らす=鷺沢)。コートを(衣桁沁にに掛ける。手に持つ。仲居に預ける。脱ぎ捨てる。引っかける。ハンガーに掛ける)。気に入ったコートを探し当てる。旅人のコートを脱がせるのは北風ではなく太陽だ"有川。眼に見えない何物かから身を守ろうとでもするようにレインコートの中に身体を縮める石坂。冬物のオーバー。オーバーにくるまる。罪人のようにオーバーの襟に顔を埋める=高橋和。オーバーを(引っかける。ハンガーにかける)。心の動きを押し隠すように大急ぎで着ていたオーバーを脱ぐ=原田康。 **ころも【衣】** 雅趣のある白い衣。兎約が白い衣に着替える冬高橋三。衣の(下の鎧はぁ。裾を翻す)。衣を(かずく。びりびりっと破く)。白い満げな衣を着た卯の花島崎。衣をふわりと(かける。投げる)。 **したぎ【下着】** 下着が(透けて見える。まとわりつく)。下半身を下着で隠す。染みがうっすらと下着に付着する=平野。下着のままで部屋を歩き回る。下着を(洗う。取り替える。脱ぐ。くしゃくしゃに丸める)。真新しい下着をつける。物干し台に翻る色ものの下着類が目のやり場のないなまめかしさ=高橋知。腰巻きを(解く。巻く)。コルセットを(締めつける。外す。はめる)。下穿比たきを脱ぐ。襦袢に一枚のしどけない姿渡辺。榴袢の裾を(かき合わせる。乱す)。襦袢を(滑り落とす。脱ぐ)。シュミーズを(蹴出す。着ける。脱ぐ)。象の足みたいなズボン下瀬戸内。ズボン下を脱ぐ。スリップの肩紐のにを落とす。言葉が女のスリッブみたいにさらさらしている=常盤。スリップを(蹴出す。着ける。むしり取る)。燃えるような緋の長襦袢隆。しどけない長襦袢姿"船山。長襦袢の裾を合わせる。肌着が汚れる。肌着を洗う。パンツをずり下げる。ブラジャーを着ける。乱暴にブラジャーをはぎ取る。股引もき(白茶けた。らくだの)。股引きの端をくくる。股引きを脱ぐ。湯文字を(蹴出す。巻く。ひらひらさせる)。パンティーが丸見え。パンティーを(脱がす。脱ぐ。むしり取る)。 **シャツ** シャツ(洗濯の行き届いた。乳首の形がくっきりと見えるくらい薄い=村上春)。シャツが(汗で湿る。びっしょり濡れて肌に貼りつく。ぼろぼろにちぎれる。汗のためにしとどになる三島。ぐちゃぐちゃになるくらい一杯汗をかく谷崎)。半袖のシャツから太い二の腕を出す。シャツの(袖に腕を通す。前をはだける。襟が汚れている。裾をジーンズに押し込む。袖をまくりあげる)。名刺をシャツのポケットに納める=井上ひ。シャツを(脱ぐ。両手で絞って水を切る)。こざっぱりした水色の開襟シャツ。三色アイスクリイムみたいな派手なスポオツシャツ武田巻。一Tシャツ(白い。丸首の。薄荷糖はいつかのような白さの北村)。Tシャツが体に張りつく。 **ズボン** ▼ズボン(剃刀の刃のようにブレスした"三浦米。ぴっちりとまとわりつく細身の=玉村)。濡れたズボンが脚にまとわりつく。大きな鳥が拠を羽ばたかせたようにズボンが空中に舞い上がる=福水。長い騰すぁを包んだズボンが蝙蝠にらのように踊る=福永。ズボンについた砂を払う。ズボンの(膝が抜ける。前を開ける。ボケットに手を突っ込む。裾が濡れるのもかまわず川へ踏み入る三浦し)。蜂のように胴体のくびれた形のいいズボン姿の女中村真。ジーバンを踏みしだくように脱ぐ落合。洗いざらしのジーンズ。股下が(長い。短い)。 **スリッパ** 革のスリッバが氷のように硬く冷たい!大佛。廊下をバタバタとスリッパがすべって行く力ない足音"阿部。スリッパに(足を突っ込む。履き替える)。スリッパの(音が滲しみこむようにひびく=高橋和。音も荒々しく迎えに来る=木山)。ばたばた廊下を走るスリッパの音。病室の方へバタバタ四五人の急ぎ足のスリッパの音が聞こえる=中島敦。スリッパを(揃えて出す。ばたばた鳴らしてキッチンに入る=重松)。運動靴の踵いかを踏みつぶしたままバタバタとスリッパのようにして歩く=阿部。上履きに履き替える。上履きを脱ぐ。 **スカート** 脇にスリットの入ったスカート。スカートが(風に翻る。風にめくれ上がる。ひらひらと揺れる)。真っ黒い喪服のスカートが階段の暗がりで夜の波のように光る石川。スカートのホックを外す。指をスカートの下に忍ばせる=山田詠。スカートの(裾を翻す。裾がふわりとひらめく)。風に吹き上げられるスカートの裾を押さえる『笹沢。スカートの丈を(詰める。伸ばす)。スカアトを蹴るようにしてぐんぐん歩く伊藤整。コートの裾がスカートのように広がる東野。泥だらけのスカートのように心がみじめ内館。裾が朝顔の花のように広がったフレアースカート落合。 **せいそう【正装】** 正装に着替える。▼正装する(裃い好に。モーニングに。留め袖で)。裃を(着ける。脱ぐ)。式服を着る。着用する)。タキシードで決める。タキシードを着こなす。モーニングに成儀を正す。モーニングを(着込む。新調する)。紋服に(改める。身を改める)。礼装に威儀を正す。礼服に身を(改める。固める)。礼服を着用する。晴れ着を(縫い上げる。身にまとう)。晴れ着に身を更はらめる=獅子。晴れ着姿で式典に臨む。紋付に成儀を正す。紋付の羽織冷如切。紋付袴に正装する。黒の紋付羽織。華麗な紋付彥安で正座する。 <358> # 着る・履く き **せいふく【制服】** 制服しか似合わないような厳ぃかめしい顔の巡査!連城。心に制服という窮屈袋を着る"井上ひ。制服の(警官が挙手で迎える。重圧から解放される=横山。よく似合うスマートなドアボーイッ小川)。そろそろ戦ぁぁのように入り口へ吸われて行く制服の群れ幸田文。制服を着ける。▼学生服(黒の。詰め襟の)。軍服を(仕立てる。縫う)。作業着に両袖を通す。仕事着に着替える。仕事着を脱ぐ。セーラー服の女生徒。セーラー服を脱ぐ。ユニホームのレブリカを着る。お仕着せに袖を通す。お仕着せの服を着る。お仕着せを脱ぐ。 **セーター** ▼セーター(カシミヤの。手編みの。毛玉の出た古い。サイケデリックな柄に編んだ志茂田)。セーターがつんつるてんになる。セーターの(袖をまくり上げる。胸が大きく波打つ)。セーターを編む。 **せびろ【背広】** ▼背広(形が崩れた。渋い上質の。三つ組みの。三つ揃いの。身丈に合わないだぶだぶの)。背広が体になじむ。背広の衿ぇ』を猫の首でもつるすようにつまみ上げる=円地。背広をハンガーにかける。「時は金なり」に背広を着せたような人物"里見。▼背広を着て歩いているような男(不安と怯ぁびえが。冷静沈着が)。▼スーツ(仕立てのよい。三つ揃いの)。スーツに腕を通す。スーツを一着作る。高価なスーツを誂ふっえる。しゃれた新調のスーツを着込む。 **ちゃくよう【着用】** 背広を着用に及ぶ。救命胴衣の着用を怠る。私服の着用を許す。▼着用する(学生服を。軍服を。背広にネクタイを)。シートベルト着用サインが消える。▼着する(祚いふを。喪服を。鎧はうを)。 **てぶくろ【手袋】** 手袋の片一方をなくす。手袋を(手にはめる。脱ぐ)。他人の手の内側に指を入れていくような気味の悪い感触を味わいながら炊事用のゴム手袋をはめる=黒井。軍手を手にはめる。手甲につを(脱ぐ。はめる)。 **ながぐつ【長靴】** 玩具のように小さな長靴"小川。長靴を脱ぐ。長靴のようなコック帽佐藤愛。長靴のように細長い入り江鳥尾。▼ブーツ(おしゃれな。本革の)。ブーツを脱ぐ。 **ねまき【寝巻き】** うそ寒い寝巻き一枚の子供。寝巻きねまきに綿を入れる。寝巻きの(紐ぃもを締める。前をかき合わせる)。掻巻いいを(かける。はねのける)。室内に寝衣一枚で立つ。寝衣で体をくるむ。悩ましいネグリジェ姿。ネグリジェを脱ぎ捨てる。夜着を取り出す。汗で濡れたパジャマが気持ち悪い=村山。バジャマを脱ぐ。バジャマ姿でベッドに横になる。 **はおり【羽織】** 羽織を(重ねる。引っかける)。するりと羽織を脱ぐ。陣羽織が風にばたばた鳴る。羽織袴姉もに身なりを整える。羽織袴を着ける。 **はおる【羽織る】** 羽織る(打ち掛けを。上着を。上っ張りを。撮巻封部を。ガウンを。ジャンバーを。襦袢此いを。袖なしを。とてらを。羽織を。半纏ぃんを。ブルゾンを。マントを。浴衣に丹前を。夜着を。ローブを。肩にカーディガンを。シャツの上にジャケットを。ちゃんちゃんこを。レインコートを)。▼肩に羽織る(外套がいを。コートを)。引っかける(ガウンを。カーディガンを)。 **はかま【袴】** 袴のひだを叩く。風に袴の裾をはためかせる。袴を着ける。穿はく。つかんで一膝進む)。静かに袴をさばいて座る。土筆いくの袴を(廻く、もぐ)。羽織袴に身を正す。▼股立ももちを取る(高々と。袴の)。 **はきごこち【履き心地】** 履き心地が(いい。よくない。悪い)。履き心地のいい靴。歩き心地が柔らかくて気持ちよい。 **はきもの【履き物】** 三和土誌たに履き物が乱れている。履き物を裏口に回す。サンダルを(つっかけて外へ出る。びたびたと鳴らす)。乱暴にサンダルを脱ぎ捨てる。バタバタバタバタと草履で走る跫音協し=志賀。ベタンベタンとゴム草履の音が遠ざかって行く佐藤愛。草履を(鳴らして走る。懐に入れて温める=舟橋)。とぼりとほり草履を引きずって寂しそうに帰っていく鈴木三。ばたばた草履を鳴らして去る=井上ひ。女を古草後のように棄て去る武田発。草履みたいに大きいカキ=加賀。鉄がねの草鞋らで探す。草産の緒を男結びにする。草鞋の証ぃもを(締める。解く)。草鞋を編む。宿場に草鞋を脱ぐ。 **はく【穿く】** 穿く(脚絆を。靴下を。ゴム手袋を。さるまたを。ジーパンを。ジーンズを。下着を。スカートを。ズボン下を。ズボンを。スラックスを。足袋を。バンツを。パンティーを。股引もきを。もんぺを。山裕や蛙ばを。後ろ前に。ストッキングを)。つける(スカートを。草鞋を)。▼はめる(純白の手袋を。手袋の指を一本一本しこくように念入りに=永井龍)。 **はく【履く】** 履く(足駄を。運動靴を。革靴を。靴を。下駄を。ゴム長を。サンダルを。スニーカーを。スリッパを。草履を。長靴を。二足の草鞋功らを。ハイヒールを。ブーツを。ちぐはぐに。バスケットシューズを)。靴を履く(距纷ゅの低い。玄関で)。履き違える(靴の右と左を。他人の靴と)。▼履きつぶす(靴を。スニーカーを。タイヤを)。突っかける(靴を、下駄を。サンダルを。スニーカーを。スリッパを。草履を。履き物を)。履き替える(靴を。サンダルを。草誰を)。穿き替える(足袋を。バンツを)。 **ふく【服】** ▼服(高価な最新流行の。地位をどことなくふくよかな体つきにぴったりと合った上品なラシャの=永井荷。体に合わないだぶだぶの。仕立てのいい。一張羅いつの)。服を(着こなす。着替える。脱ぎ捨てる。脱ぐ)。 **ドレス** ドレスが繊細にやわらかく光る。ドレスの(裾をたくしあげる。裾がこうもり傘のように広がる"山田詠)。ドレスを縫う。豪華なドレスをお召しになる=あさの。何の飾り気もない白いドレスを着た姿は波の上で羽を休めている水鳥のよう大庭。▼イブニングドレス(裾の長い。豪華燦然とした。恋い蟬せんの羽のような藤本)。 <359> # 着る・履く―115 き **ふくそう【服装】** さっぱりした清楚でぃな服装。服装が(至って地味。かなり派手。こざっぱりしている)。色とりどりな服装が虹のよう堀。服装に(かまわない。こだわる。無無敵着。やかましいレストラン=平岩)。服装に気を(配る。使う)。服装の(趣味が申し分ない。センスが垢抜けている)。風変わりな服装の女。服装は人格を規制する=飯田。どぎつくない趣味の服装を心がける。▼装束(神主の。宮廷の。武士の)。 **ブラウス** ▼ブラウス(シースルーの。花柄の。縁飾りのある。無地の。襟くりが大きく開いた。レースのフリルがついた花模様の大酸)。ブラウスの(ボタンを外す。ホックをブチブチとはめる三浦朱)。ブラウスをハンガーから外す。 **ふんどし【褌】** ふんどしがゆるむ。ふんどしを(かく。締める。解く)。ふんどし一本になる。回しが解ける。回しの引き付けが強い。回しを(締める。取る)。 **ボタン** ズボシのボタンがもぎとれそうなほど肥満した下半身=武田奏。固いボタンを器用に外す。ジャケットのボタンを外す。ボタンを留める(シャツの。襟元まできっちり)。こはぜを留める。スナップを(留める。外す)。ホックを(留める。外す。はめる)。ぶつぶつホックをかける。 **まえかけ【前掛け】** 前掛けで手を拭く。前掛けを(かける。着ける)。腹掛けを(着ける。外す。巻く)。屋号を染め抜いた前垂れ。前垂れで手を拭く。前垂れを(かける。締める)。▼エプロン(いかにも主婦が働いていますというみたいな=田辺。幼児服のようなフリルのついた“干刈)。エブロンで手を拭く。お母さんのエブロンにつかまる。エブロンを顔にあてて泣く。小さな白いエブロンをかけて蝶のように人々の間を往ったり来たりする今取。 **まとう【纏う】** ▼まとう(熊の毛皮を。軍服を。衣を。こんもり雪を。作業服を。陣羽織を。胴着を。どてらを。ネグリジェを。羽織を。バジャマを。単衣むとを。被布を。ぼろを。マントを。カーディガンを。墨染めの法衣を)。衣装をまとう(奇抜な。華やかな。風変わりな)。▼雰囲気をまとう(豪華な。洒脱丸な)。▼身にまとう(衣服を。薄物を。美しい衣装を。上着を。ガウンを。甲冑みっちを。緊張感を。衣を。ドレスを。法服を。鎧にっを。びっちりと。ゆったりと。目をみはるような上品なセンスの服を=吉本)。 **みずぎ【水着】** 色とりどりの水着が花のように開く"住井。はち切れそうな水着がぴんと弾けてしまいそう谷崎。水着に身を包む。華やいだ彩りの水着に身を包んだ娘の柴田翔。水着姿で悩殺する。 **みだしなみ【身だしなみ】** 身だしなみがよい。身だしなみに(気をつける。人一倍気を使う)。紳士の身だしなみに外れる。端正な身だしなみのよさを見せつける。身だしなみのよい(男。若者)。身だしなみを(きちんとする。気にする。整える)。 **ゆかた【浴衣】** 浴衣が(よく似合う女。つんつるてんになる)。浴衣の(襟がはだける。袖をまくる。紐ひもを解く。袖から腕を剣もき出しにする。襟元を乱暴に開く笹沢)。浴衣の裾がはだける。浴衣の裾を(からげる。端折る。開く。割る)。浴衣の前を(かき合わせる。はだける)。浴衣を着て縁台に腰かける。白地の浴衣をくっきりと闇に見せる。おろしたてのそろいの浴衣を着て夏祭りに臨む三浦し。 **ようふく【洋服】** いもりがはらわたをだしたようなようふく・坂口。洋服が似合う女。洋服に無頓着な人。洋服の(センスがいい。着こなしがうまい)。古めかしく見える洋服の着方“大佛。洋服を(仕立てる。新調する。縫い上げる)。ハイカラな洋服を着る。洋装で結婚式に臨む。透けるような源地の長いローブ=日野。前の割れた光った薄いローブをうろこのようにきらめかせる=大庭。 **よそおい【装い】** 飾り気のない装い。誰にも負けない美々しい粧くい=有吉。華やいだ装いが目にまぶしい。春の粧いが美しい山道多岐川。装いに(神経を砕く清潔感が漂う)。美しすぎる装いに圧倒される。装いをこらす(思い思いに。十二分に。春がにわかに。脂粉の)。容儀を(一変させる。正す)。 **よそゆき【余所行き】** 一番いいよそ行き。よそゆきの笑顔で答える連城。一張羅いつらのよそ行きのスーツ。よそいきのメッキが剣げる=田辺。外出着を(着こなす。脱ぐ)。 **ワイシャツ** ワイシャツの襟がよごれる。ワイシャツのボタンを(外す。はめる)。ワイシャツを(洗う。血で染める。脱ぐ。クリーニングに出す。風琴いいみたいに積み重ねる=河野)。 **ワンピース** ▼ワンピース(野暮ったい。小花を散らしたブリントの。ピンクの可愛らしい。フリルのついた)。ワンピースで体を包む。ワンピースのファスナーを上げる。ワンピースを(縫う。足元に脱ぎ捨てる)。 <360> # 記録する・写す き **うつしとる【写し取る】** ▼写し取る(手帳に住所を。姿をくまなく。一字一句おろそかにせず)。写しを原本と照合する。訴状の写しを同封する。冒頭の一段を引き写す。複写する(絵を。写真を。データを。文書を)。丸写しする(教科書を。参考資料を)。コピーに・目を通す。鞄がばからコビーを取り出す。▼コピーする(写真を。書類を。データを。ファイルを)。 **うつす【写す】** ▼写す(記念写真を。手鏡に背後を。顔を大きく。講義の内容をノートに。一字一句もゆるがせにせずに=井上靖)。やたらにそこらを鉄砲を打つように扱うっす=大岡。海を背景にして写してもらう。書き写す(住所を。問題を)。カメラが船名をアップする。画面いっぱいに大写しにする。▼接写する(昆虫を。花を。宝石を)。▼転写する(絵を。経を。原本から)。克明な模写。模写に取りかかる。模写する(絵を。物音を人間の声で)。 **カメラ** カメラが静かに追う。カメラからフィルムを抜く。フィルムをカメラから取り出す。カメラに(目線を送る。フィルムを装填する)。▼カメラに収める(一部始終を。笑顔を。世界の秘境を。晴れ姿を。工事のもようを)。カメラの(放列を敷く。前から離れる。位置を意識する。フラッシュがひらめく。フレームにおさまる)。カメラを(手に待機する。回す。つかんで飛び出す)。首からカメラをぶら下げる。三脚にカメラを据える。真っ直ぐカメラを見据える。▼カメラマン(腕のいい。新聞の。新米の)。赤外線カメラで撮影する。防犯カメラに写っている。絞りを(開け放す。加減する)。シャッターの連続音が射精に近い快感を与える=小林信。シャッターを続けざまに押す。立て続けにシャッターを切る。▼カメラのシャッターを押す(機関銃より早く=北。ばしゃばしゃと=西村)。突然のシャッター音で金縛り状態に陥る『荻野。 **きろく【記録】** 思うように記録が伸びない。過去の記録が参考になる。通帳に記録が残る。記録から削除する。名前が記録に残る。記録より勝利を優先する。過去の記録を忘れないように努力する。数多くの記録を残す。日本一の記録を持つ。▼記録する(過去最高を。過去最低を。飛行経路を。民用伝承を。ありのままに。子細に観察結果を。滅びゆく動物を)。記録的な(暑さ。大雪。落ち込み。敗戦を続ける)。世界記録を作る。世界新記録をマークする。通話記録を調べる。所見をカルテに書く。病名をカルテに記す。一間一答を再録する。▼収録する(作品を。新曲を。ラジオ番組を。曲をCDに。全集に。テーブに。本に)。レコードを破る。録する(行状を。事実そのままを)。手記に書きつづる。体験を手記にする。手記を(書く。発表する。読む)。 **さいろく【採録】** ▼採録する(説話を。発言の要点を。方言を。民謡を。民話を。野鳥の声を)。未採録の(作品。論文)。 **さつえい【撮影】** 撮影が(終わる。順調に進む)。撮影にうってつけの場所。撮影を終える。開始する。続ける)。撮影する(群集の場面を。空中から。念を入れて。ラストシーンを)。レンズを向ける。 **しゃしん【写真】** ▼写真(暗い不鮮明な。粒子の粗い。正面から撮った。セビア色に変色した古い。鮮明に撮れている。破いて焼いて捨ててしまいたいほど不快な=新田)。写真が(新聞に収る。額縁に納まっている。目に飛びこんでくる。雄弁に事実を物語る)。はがれた写真がばらばらと落ちる。写真から目を背ける。写真と素顔を見比べる。一枚の写真に目をとめる。野草の写真に倦ぁかずに眺め入る=大岡。▼写真におさまる(全員が。すまし顔で)。写真の裏に書き込みをする。鍋墨を塗ったような真っ暗な室内が古い写真の印画に似て朦朧と浮かぶ獅子。写真を(大きく伸ばす。額に入れる。壁にかける。祭壇に飾る。アルバムに貼る。書類の下に隠す。取り出して眺める。一通り撮り終わる。びりびりに破く。べたべたと貼りつける。真ん中から引き裂く。食い入るように見つめる=重松)。暗室で写真を現像する。興信所に写真を撮られる。雑誌に写真を掲載する。テーブルの上に写真を並べる。二枚の写真を見比べる。ポケットから写真を取り出す。籠を葬式の写真を両手で抱えるようにして持つ人谷村。▼写真を撮る(一心不乱に。ばちりと)。家族の写真を(飾る。バスケースに入れて持ち歩く=重松)。カメラに収まる。顔写真を撮る。新聞に写真入りで出る。印画紙に焼き付ける。巻頭のグラビア。雑誌のグラビアを切り抜く。ボートレートを(飾る。撮る)。遺影に(笑顔を選ぶ。献花する。手を合わせる)。遺影の前に正座する。遺影を(胸に抱く。前にして目頭を押さえる=姫野)。ランプの光で顔がフィルムのネガのような陰影を作る=島尾。暗い表情が心に陰画のように焼きつけられる柴田翔。 **しょるい【書類】** 書類が(雑然と積んである。山のように積まれる)。書類から顔を上げる。書類とにらめっこする。書類に(判を押す。ざっと目を走らせる)。せわしなく書類に目を通す。書類の(山に埋もれる。綴っっりを取り出す)。書類を窓口に提出する。テーブルの上に書類を広げる。封筒から書類を取り出す。古い書類を引っ張り出す。書面で(意見を届ける。拒絶の意を表す)。書面に目を落とす。趣旨を書面にしたためて差し出す。文書を(紀案する。捏造やつする。配布する)。内部文書を持ち出す。調書に目を通す。調沓を(作成する。取る)。 **ちょうぼ【帳簿】** 帳簿に(大穴を開ける。不正を加える)。帳簿の数字を読み上げる。自分の目で帳簿の細かいところまでチェックしないと気が済まない=鷺沢。帳簿を(チェックする。洗いざらい調べる。ばらばらとめくる)。出納簿をつける。台帳を(閲覧する。照合する)。 <361> # 記録する・写す―116 き **でんぴょう【伝票】** 伝票と商品を突き合わせる。伝票に数字を書き入れる。テーブルの上の伝票に手を伸ばす佐野。伝票を(台帳に転記する。手にして立ち上がる。持って席を立ちかける。阿川佐)。注文伝票が悪夢のように捌さばいても捌いてもあとからあとから増える=千刈。伝票類を一まとめにする=永井能。 **とうろく【登録】** ▼登録する(応募する旨を。著作権を。版権を。正式に)。住民登録を済ませる。登録制から届け出制に変える。▼登記する(商号を。土地を。不動産を)。 **とる【撮る】** ▼撮る(映画を。記念写真を。逆光で写真を。集合写真を。週に一本を。ビデオに。お見合い写真を。真に迫る場面を)。▼撮りまくる(家の中を。村じゅうの人間を)。 **ぬすみどり【盗み撮り】** ▼盗み撮りする(顔を。密会現場を。性交する男女を"山田太)。密かに撮影する。性交の現場を盗撮する=平野。 **はっこう【発行】** ▼発行する(営業許可証を。国債を。雑誌を。新聞を)。発行停止に追い込まれる。発行停止を余儀なくされる。▼刊行する(雑誌を。矢継ぎ早に。シリーズで)。研究の成果を公刊する。▼発刊する(雑誌を。新聞を)。版権を(獲得する。侵害する。持っている)。振り出す(小切手を。約束手形を)。 **ふくせい【複製】** 複製する(著作物を。名画を)。CDをダビングする。レプリカ(実物大の。本物そっくりの)。ユニホームのレプリカを着る。バックアップを取る。バックアップする(データを。ファイルを)。 **ふっこく【復刻】** 復刻する(浮世絵を。古典を。写本を)。名著を復刻出版する。原文に忠実な翻刻。翻刻する(古文書を。資料を)。 **マイク** マイクが(声を拾う。突故障を起こす。ハウリングを起こす)。マイクに(口を近づける。向かって呼びかける。しがみつくように怒号する高橋和)。マイクの(前へ進み出る。音量を確かめる。スイッチを入れる。前で頭を下げる)。マイクを(通して話す。手に話し始める。握ってしゃべる)。誰彼構わずマイクを突きつける。マイク片手にステージに向かう。 **めいぼ【名簿】** 名簿から名前を削る。社会の各層の人間が名簿に名を列ねる"今日。宿泊者名簿を偽名にする泉。金蘭簿に記す。住所録をめくる。 **もくろく【目録】** 目録の中に書名を見つける。目録を(一覧する。作成する)。カタログに目を通す。カタログを(取り寄せる。手当たり次第に見る)。通販カタログで下着を購入する=平野。 **リスト** リストが(出来上がる。詳細をきわめる)。リストから名前を外す。リストに名前が載る。新たなリストに加える。氏名が容疑者リストに上がる。リストの筆頭に名前が挙がる。買い物のリストを作る。出席者のリストを用意する。▼リストアップする(買いたい本を。材料を。作品を)。 **れきし【歴史】** ▼歴史(血塗られた。水争いの確執の)。歴史始まって以来の大事件。歴史が(浅い。古い。幕を閉じる)。かなりの歴史がある。長い苦難の歴史が始まる。歴史という巨大な怪物!丸谷。歴史に(ありがちな謎。埋もれた真実。名を残す。おける人間の諸相)。名を歴史に伝える。町の歴史に一役買う。心の歴史に照らして考える=大岡。血の匂いの歴史に濃くつつまれる=開高。歴史に残る(大事件。大発見)。歴史の(裏に潜む謎。解釈が揺らぐ。教訓に学ぶ。闇に消える。一ページを飾る。かなたに埋もれる。動向を見定める。歯車を推し進める。渦の中へのみ込まれる=高橋源。中でのほんの一行の出来事にすぎない=なかにし。流れが奔騰を見せる=山岡)。長い歴史の中で培われてくる。過去の歴史の霧にかすむ!瀬戸内。颯爽たらとして歴史の中央舞台に登場する=山田風。歴史は(繰り返す。時として決定的瞬間を平凡な人間に委ねる"佐高)。歴史を(濃く彩る。しっかり踏まえる)。生きた歴史を(書きとめる。創造する)。十年そこそこの歴史しかない。歴史上(数知れない。例がない)。歴史上の(事実。人物)。歴史的感覚が欠如した総理大臣。歴史的な(使命を終える。一瞬を見届ける。一歩を踏み出す。経過を踏まえる。変化を体験する)。人間の歩みを歴史的に見る。沿革(会社の。学校の。神社の。町の)。現代史の流れに逆らう暴挙「加藤。独自の史観を明快な形で打ち出す。史実に(準拠する。基づく小説)。史実を歪ゅがめる。史的価値を持つ古典。史的な意義を重要視する。史料を(収蔵する。渉猟する。所蔵する)。史上(かつて例を見ない。例のない金字塔を打ち立てる。まれに見る扇動的政治家美濃部)。史上に残るベストセラー。史上空前の(功績。壮挙)。史上最悪と酷評する。 **レジ** レジで(接客をする。支払いを済ませる)。商品をレジに運ぶ。レジの順番を待つ。スーバーのレジを打つ。帳場で伝票をつける。てきばきと帳場を切り盛りする。 **ろくおん【録音】** 録音が無事終了する。録音する(会話を。講演を。自供を)。一日に何回もテーブレコーダーのように同じことを喋ん、る=富岡。▼録画する(アニメを。テレビドラマを)。テレビの録画を繰り返し見る。痴態を収めたテープ=横山。▼テーブにとる(自供を。証言を)。テーブの声に耳を澄ませる。 <362> # 極まる・尽きる き **いちばん【一番】**いちばん言いたかったことをさりげなく口にする=西木。一番いい頃の思い出。生涯で一番幸せな日。一番の落とし穴系にわざわざ桜はまりに行く。有川。近所で一番の豪邸。誰にもまして元気がいい。誰よりも優れている。人気投票で一位になる。一押しの(書。商品。バンド)。一二と数えられる。一二を(競う。指差される老舗)。日本でも一二を争う名監督=伊集院。一席に入選する。くじ引きで一等が当たる。一等賞を獲得する。福引きで一等賞を引く。金メダルを獲得する。最高位にのぼりつめる。最高級と格付けされる。最高級との折紙付き。世界最高の水準に達する。番付の最上位。最上位に格付けする。首席で卒業する。刻苦勉励して首席を勝ち得る。業界随一と呼号する。セリーグ随一の強打者。当代随一の作家。世界一の(技術を誇る。座を奪還する)。全国一位の栄誉に輝く。安全を第一と心がける。第一に注意しなければならない点。全作品中第一に推すべき代表作三好達。特貧に入選する。特賞の栄誉に輝く。展覧会で特選になる。▼とどめを刺す(色は年増に。花は吉野に)。何にもまさる宝。何にも増して(悲しい。好き。辛い。優先する)。行き過ぎを何よりも恐れる。誇りと名誉を何よりも重んじる。ナンバーワンと言っても言い過ぎではない。日本一の記録を持つ。筆頭にうンクする。候補者の筆頭に数えられる。リストの筆頭に名前が挙がる。世界でも右に出るものがいない=畑村。張り込みをやらせたら右に出る者がいない旨部。▼最高峰(世界の。日本の)。文壇の最高峰に立つ大家。最高峰をめざす。だんトツで当選する。だんトツの(一位。実績。首位を独走中)。最終的に落ち着いた場所。人生の究極的な目的。 **このうえない【この上ない】**この上ない(美しい笑顔。幸福な境遇。心配の種。侮辱を与える)。目を離したら危なっかしいことこのうえない"有川。危険この上ない賭け。新鮮この上ない刺身。単調この上ない生活。この上なく(危険な存在。惨めな存在)。この上なし(健康。貧乏)。この上もなく(苛酷な運命。気高い心。細心な心遣い。痛烈な批判。卑劣な人間)。心がこの上もなくなぐさめられる=阿川弘。▼骨頂(愚の。やぼの)。こよない対照をなす。子供にこよない慰めを見出す。こよなく楽しいひと時。これ以上いい言葉は見つからない。これ以上ないという色っぽい目。これ以上ないほど幸せ。これ以上ないほどの残酷な仕打ち。これ以上のはまり役はない。これ以上は望めないほどの贅沢だい。これほどのチャンスを逃す手はない。絶妙のタイミング。至上の(快感に至る。幸福に酔う)。どうしても遂行しなければいけない至上命令―田辺。無上に(重苦しい闇。悔しくてならない)。無上の喜びを感じる。人生無上の愉快を味わう。無上法悦の瞬間を持続させる。 **きょくち【極地】**極地に向かう。極地を探検する。南極で越冬する。南極を探検する。北極点に達する。 **きわまる【極まる】**▼極まる(寂しさが。乱行が。既然とした気持ちが)。矢尽き道窮まる=中局派。進退ここに谷ミゃまる。滑稽極まる邪推。厄介極まる事態。いよいよ運命が極まってくる。濃厚極まりないエロティシズム。能天気極まりない口調。不規則極まりない生活。一人に極まれば万人に通ずる高村光。▼ここに極まれり(悪趣味も。極悪非道も)。酸鼻の極みに達する。おぞましい極みの災い。精徹さの極みを尽くす。極限に達する。才能を可能性の極限まで抑し拡げる"瀬戸内。極限状況に追い込まれる。 **きわめる【極める】**極める(嵐が猛烈ぞ。驚愕だいうが激烈を。仕事が繁忙を。貸借が乱脈を。探索が困難を。道中が難儀を。物語が錯綜ごを。取り調べが過酷を。エクスタシーを際限なく)。執拠を極める(陳情が。復讐ふくしが)。酸鼻を極めた騒乱。精殺を極めた油絵。彫琢さい、を極めた文章。丁重を極めた挨拶。 **けっきょく【結局】**結局(願いが叶う。犯人は分からずじまい。無駄足に終わる。別れることに話が決まる)。結局は元も子も失ってしまう。思い出せそうで結局は思い出せない。骨折りが結局は徒労に終わる。結局何も(言えない。できない)。長い貧乏暮らしのあげくに死ぬ。さんざん迷ったあげくの結論。結句(それなりの利益を上げる。手も足も出ない。不首尾に終わる)。飽きてしまってついてこないのを結句仕合わせに思う菊池。さしずめそんなところだろう。詰まるところ国民の判断で決着をつけるほかない。とどのつまり(会社を首になる。泣くよりほかはない。なんにもしない)。早い話がひもに過ぎない。畢竟いつき(この一点にかかっている。単なる現象にすぎない)。挙げ句の果てに悲惨な死に方をする。遊ばれてあげくの果てに逃げられる。誘拐し揚げ句の果てに殺してしまう西村。最終的な(結論。勝利。責任を持つ)。 **さいこうちょう【最高潮】**▼最高潮に達する(緊張が。スタンドの興奮が=つか。幕をおろす直前のオベラのように儀式が=小林信)。クライマックスに途する。高潮する(意識が。感情が)。 **さいだいげん【最大限】**必要な知識を最大限身につける。最大限に(皮肉をこめて言う。利益を追求する)。能力を最大限に伸ばす。メリットを最大限に利用する。最大限の(努力を払う。効果を発揮する)。人間の能力の最大限を発揮する高見町。 **しゅい【首位】**首位に躍り出る。同率で首位に並ぶ。首位の座を譲る。首位を(争う。競り合う。奪回する。独走する。猛追する)。王座からずり落ちる。王座に返り咲く。就く)。チャンピオンを下し王座を奪う。 <363> # 極まる・尽きる―117 ぜっちょう【絶頂】** 絶頂(若さの驕慢誌に、うの。肉体の血を燃やす歓喜の=石坂)。得意の絶頂から突き落とされる。禍切にはこの辺が絶頂であったと見えてトンネルを抜けたよう泉災。絶頂にある(栄光の。幸福の。「人気の)。絶頂にいる(幸福の。喜びの)。性の究極のところにのぼりつめる。絶頂感が押し寄せてくる。歌舞伎で見得を切るような得意絶頂のシーン"高橋三。オルガスムスが指先にまでしみ通る=松浦。最上のオルガスムスを経験する。我が世の春を謳歌始ぅする。我が世の春がめぐってくる。 **ちからつきる【力尽きる】** 「力尽きる(途中で。もうじき)。力尽きて(倒れる。敗れる)。刀折れ矢尽きた思い=本庄。力を使い果たす。力つきたように(膝を折って床に崩れ落ちる!森環。息をつき目を閉じる赤川)。逃げ出した患者たちが力を失い豆を撒いたように倒れて動かない"大岡。精根尽き果ててへとへとになる。精根尽き果てるくらいに働く。精も根も尽き果てる。使い果たす(精根を。精も根も)。 **ちょうじょう【頂上】** 頂上が(雲に隠れる。目の前に迫る)。南の山の稜線やいうの奥から神去山の頂上が黒々と顔を覗のぞかせている三浦し。丘の頂上に登りつめる。成功の頂上にたどりつく。崖の頂上へ辿たどり着く。頂上への道を登る。性的に頂上まで上りつめる。ケーブルカーとローブウェイを乗り継いで頂上まで上がる。頂が薄明に溶ける。頂をちょこんと山上から逆落としに突入する。しんしんと山上の静寂を感じる獅子。 **ちょうてん【頂点】** 頂点に向かって登りつめる。頂点に立つ大組織の。ピラミッドの)。▼頂点に達する(勢いが。にぎわいが。憎しみが。疲弊が。不信が)。ブームの頂点へと登りつめる内橋。極致(栄華の。美の)。矛盾が極致に達する。美風良俗の極致のようにもてはやされる"舟橋。混雑のビークに達する。ビークを迎える(忙しさが。疲労が)。 **つきる【尽きる】** ▼尽きる(運が。最後の力が。すぐに話題が。体力が。話の種が。命運が。森の中の道が。男冥利に。女冥利に。紙数がもはや。ついに万策。天の与えた命数が。ビール一本はたちまちに高井)。ねたはとうに尽きている。たちまちざえが尽きてしまう。食料がほとんど尽きかける。尽き果てる(愛想もこそも。考える気も根も)。燃えつきる(情熱が。ろうそくが)。▼尽きない(争いの種が。興味は津々しんとして)。尽きない思いにとらわれる。汲くめどもつきぬ泉=岸田。 **てっていてき【徹底的】** 徹底的な(捜査をおこなう。変革を要求する)。徹底的にシステムを変革する。基礎知識を徹底的に教えこむ。なぜ負けたのかを徹底的に話し合う~横山。年末の大掃除かと思うくらい徹底的に汚れを取り埃児にを払う。宮本輝。事件を徹底検証する。徹頭徹尾(聞かなかったような顔を見せる。気持ちよく答案が書ける)。骨の髄まで(しゃぶる。寒さがしみこむ。凍えそうな真冬の明まだき=火坂。みわたるような疲労感"小池)。己の弱さを骨の髄まで知っている熊谷。 **とことん** とことん(徹底的にやる。自分を追いつめる)。一度仕事を任せたら相手を信頼してとことん任せきる=胡桃沢。最後の最後までとことん調べあげる“船戸。とことんまで世話を見る。一旦疑いを持てばとことんまで調べあげる=安部。博奕ぶくにのめりこむととことんまで打つ宮尾。 **トップ** ▼トッブ(断然。ぶっちぎりの)。トップが(交代する。辞任する)。トッブでゴールに飛び込む。トップに近い位置をキーブする。一躍トップになる。トップの地位を保ち続ける。社内でトップの成績を上げる。トップの座を(維持する。守る)。トッブダウンで指導力をアピールする。トップバッターを務める。 **なれのはて【成れの果て】** ▼なれの果て(道楽者の。往年のスターの。妖精めいた少女の中村息。末路(哀れな。悲劇的な。無残な。典型的な浮気男の葵)。盗人の末路など知れたもの=高橋克。 **はて【果て】** 牛飲した果てに酔い倒れる。南涙の果てに散る。異境の果ての心細さ。地の果てまで逃げる。氷雪に閉ざされた最果ての海辺。 **またとない【又と無い】** またとない(機会を逸する。貴重な資料。よい機会。大きい転機が来る)。世にまたとない愚か者。またとなくよい前触れ。要害無双の地。怪力無双の力士。古今無双の英雄。天下無双の豪傑。無二の(親友。盟友)。互いに無二の友として相許す。当代無二の詩人。犀利ぃ無比とも言うべき観察の眼岸田。無比の力を仰ぎみる。勤勉無比の人。空前の繁栄に沸く。史上空前のスケール。空前絶後の(快挙。記録。大事業)。 **もっとも【最も】** 最も(苛酷な極刑。適切な処置。有力な容疑者、円熟した時期の作品。恐れていた事態がやってくる。始末の悪い欠点。重要な目撃証人。信頼できる人円。得意とするところ。晴れがましい機会)。誤解されるのが最も辛い。事件にまつわる最も不可解な部分。生存と繁殖に最も適した環境。 **もはや【最早】** もはや(後の祭り。時間の問題、事態は絶望的。意地を張っている余裕はない。疑う者はいない。思い出すことすら困難。過去のものとなる。修正がきかない。何一つ思い残すことはない。何の反応も示さない。逃れる術すくはない。逃げ出すことも隠れることもできない=森垢)。これ以上(先送りできない。適当な表現はない。話をしたくない。引き延ばせない。一言も言えない)。これ以上は我慢できない。これきり会えない。もう(そろそろ限界。円に合わない。一歩も進めない。じたばたしても始まらない)。チャンピオンの座に(返り咲く。就く)。チャンピオンを下し王座を奪う。 <364> # 禁じる・認める き **いけない**いけない(あまり欲張っては。軽はずみなことをしては。決して口に出しては。人の失敗を笑っては。下手に刺激したら。滅多なことを言っては。余程注意しないと。地道な仕事を蔑視しては=畑村、他人のブライバシーをみだりに侵しては"灰谷)。人間こんな風に年をとってはいけないという反面教師"小林信。見てはいけないものの実体をまざまざ見てしまった恐ろしさ=鳥尾。 **かいきん【解禁】**漁が解禁になる。解禁を急ぐ。解禁する(狩猟を。輸出を。利用を)。禁止が解ける。解く(禁止を。禁令を。禁を)。 **きせい【規制】**規制が(厳しすぎる。緩い)。規制に(踏み出す。後ろ向きの姿勢をとる)。規制をかける。規制する(交通を。生産を。投機を。服装は人格を。しく)。規制緩和を(推進する。続ける)。規制緩和が進む。規制緩和による弊害。規制を(解除する。緩和する。緩める)。規制強化を(求める。盛り込む)。規制強化に慎重になる。規制を強める。 **きょよう【許容】**許容の(限度。範囲)。▼許容する(いたずらを。参加を。わがままを。自由な連合は自由な離脱を=高橋和)。社会が許容している不合理。理解の許容度を越える=海堂。 **きんし【禁止】**店が営業禁止になる。禁止を(命じる。命令する)。禁止する(車の進入を。政治活動を。立ち入りを。持ち出しを。いかがわしき吕品物を公に売ることを=隆)。禁止されていたものが全部いっぺんに復活する!安岡。立ち入り禁止区域内に足を踏み入れる東野。 **きんじる【禁じる】**禁じる(地雷の使用を。他との接触を。直接の交渉を。出入りを。持ち出しを。Uターンを。抜け駆けの功名手柄を=新田)。人心の自由を禁じるためには組織的な国家権力や暴力を用いなければならない!舟橋。そぞろに爽快な戦慄を禁じることができない=梶井。奈落の底へ落ち込むような気持ちを禁じ得ない=福永。人心の自由を強いて禁じようとするときに悪が起こるリ舟橋。▼厳禁する(飲酒を。喫煙を)。禁じ手と言うべき使い方。禁じ手を犯す。禁じられた手段に訴える。▼まかりならぬ(口答えは。入ることは。不正行為は。弁解は。ここで喫煙することは。撮影することは)。 **きんもつ【禁物】**▼禁物(焦りと短慮は。甘い合意は。遠慮は。予断は。楽観は。力を過信するのは。下手な口出しは。むやみに騒ぐのは。余計なおしゃべりは。妙な忠義立ては山岡)。 **きんよく【禁欲】**禁欲に(耐える。徹する)。禁欲の重要さを説く、一種禁欲的な食焚心に何かを求めているような限付きの若者たち=島尾。ストイックな(男。性格。正義感。人間)。 **こうてい【肯定】**肯定とも否定ともつかないほやけた微笑を洩らす“石川。否定とも肯定ともつかずゆるく首を振る=城山。肯定も否定もしない。▼肯定する(生を。おおっぴらに。あっさり。無批判に現状を。大きうなずいて。無表情のまま顎を引いて=貫井)。肯定的な(意見。感情を抱く)。質問に対して肯定的な供述をする=和久。酔いが廻るほどに肯定的な気分が広がってくる=島尾。肯定的に(描く。答える)。失敗を肯定的にとらえる。 **しかく【資格】**仲間に入る資格に欠ける。資格は十分ある。資格を(手に入れる。取る)。ブロとしての資格を問われる。資格試験をクリアする。資格審査をバスする。 **じゆう【自由】**自由(言論出版の。集集会結社の。しょっちゅう源ら寒い風に吹かれているような惨ょじめなうっとうしい=石坂。曇天の日の底光りのように背後で脅かされているつかのまの島尾)。思うがままに自由自在にもてあそぶ"江戸川。両足の自由が利かなくなる。自由と祖国のために戦う。自由な(時間を楽しむ。批判的な精神。意志で自らの行動を決める。考え方をする学者。感情の流露を押し隠す。空気がみなぎる。発想を引き出す)。月夜の峠でのそよ風が自由な羽ばたきへの誘いをひそめている=島尾。物にとらわれない自由な気持ち大佛。自由に(腕を揮、ふるう。大空を飛ぶ。各地を歩く。出入りできる。行き来ができる。意見を出し合う。使えるお金がある。させてしばらく様子を見る=高木。対する国家の侵犯"矢作)。男を自由に操る。感情を自由に表出する。仲び伸びと自由に働く。部屋を自由に使う。右から左に自由にできる。両手が自由に使える。沼のなかを自由に泳ぎ回る亀のよう“三好役。▼自由に生きる(風の吹くように"高村光。雲が飛ぶように=高村光)。▼自由になる(心が。時間が。通行が。手足が。雰囲気が。身動きが。母親から。身も心も。物への執着から)。自由の(風に吹かれる。鐘が鳴り響く。もたらす恵沢。気分を満喫する。天地に身を置く。旗のもとに集う)。晴れて自由の身になる。学問の自由を保証する。心の自由を失う。両手の自由を確保する。▼自由にする(腕を、空想を。天下の権を。娘を)。押し付けられた定型の枠を食い破って生きる不郷ふきの魂"あさの。自由化する(技術導入を。輸出入を)。自由閥達がつに論議する。自由化に備える。自由化の波が高まる。自由気ままに生きる。オーブンな価格。オーブンに話し合う。▼開放する(運動場を。市場を。門戸を)。独立国を承認する。 **さしとめる【差し止める】**差し止める(違法工事を。記事を。出港を。出版を。使用を。出入りを)。出入り差し止めにする。差し止めを(食う。命じる)。 <365> # 禁じる・認める-118 き **しょうにん【承認】**▼承認(議会の。上司の)。全会一致の承認が必要。承認に傾く。承認を(与える。受ける。先送りする。渋る。迫る。取り消す。求める)。正式に承認を得る。有力者の承認を取りつける。承認する(大学の自治を。あっさり。満場一致で)。事後承認を得る。新事業遂行の青信号が出る。夫人の一言が青信号だったように夫がすぐに言葉を続ける清水俊。計画に青信号を出す。ゴーサインが出る。ゴーサインを出す。条約を批准する。批准を(急ぐ。働きかける)。 **じりつ【自律】**自律の(生活。精神)。▼律する(自分で自分を。生活を規則正しく)。自律的な経済成長。自律的に運動を続ける。 **しんにん【信任】**上司の信任が厚い。総選挙で国民の信任を得る。将軍の絶大な信任をバックに専権をほしいままにする=竹内。▼信任する(政権を。内閣を)。大使が信任状を提出する。不信任案を否決する。 **せいげん【制限】**制限が(きつい。ゆるい)。地理的な例限がある。▼制限する(天下りを。移動の自由を。持ち込みを)。▼量を制限する(アルコールの。酒の)。年齢制限がある。無制限に駆使されたおびただしい語彙こいの氾濫組ん瀬戸内。資源に制約がある。制約する(一方が他方を。行動を。参加を。自由を。役割を)。 **はっきん【発禁】**暴行場面の生々しさをはじめとする暴力描写の過激さのため発禁になったといういわくつきの作品権田。▼発禁になる(雑誌が。本が。風俗壊乱のかとで。二冊の本が相次いで=高橋克)。発禁処分を食らう。発売を(禁止する。禁じる。差し止める)。 **ビザ**ビザが(おりる。切れる)。ビザを(更新する。申請する。発給する。もらう)。査証が(降りる。切れる)。査証を(受ける。更新する。発給する)。 **みとめない【認めない】**▼認めない(断固として、断じて)。▼認められない(外傷が。特に別状は。わずかな変化も)。こうも情状酌量の余地はみとめられない"野間。断固認めるわけにはいかない。なかなか首を縦に振らない。▼是としない(彼の説を。リンチを)。今に至るも是認する気になれない!柴田翔。否決する(蹤案を。批准を。法案を。方針案を。反対多数で)。▼否認する(頑強に犯行を。容疑を。頑として。きっぱりとした調子で)。冷然と不承認を示す。対する不信任(市長に。知事に。内閣に)。不信任案を可決する。議会が不信任を決議する。未公認で立候補する。▼容認しない(核兵器を。虚偽を。セクハラを。テロを。暴力を)。 **みとめる【認める】**▼認める(相手の人格を。一日の長を。改悛ぶしの情を。権利を。才能を。自由裁量を。罪を。必要性を。二人の仲を。自他ともに。正式に。船影を沖合に。例外的に。姿をちらと。特例として。人間を丸ごと。あっさり犯行を。主張を全面的に。馬鹿だと自分で。費用を経費として。現在の国家をあるがままに美濃部)。認めるのにやぶさかではない。非を認める(あっさりと。自分の)。▼認めさせる(他人に自分の力を。無理やり負けを)。▼認められる(腕が。両方を。一般的に。顕著に。世に。多少。公判で証拠として)。手腕を認められる(優れた。部長昇進早々)。うんと言う。否認から自白に転じる。認めないわけにはいかない。首を縦に(動かす。振る)。叩頭にうせざるを得ない。▼公認する(記録を。候補者を)。公認を決める。ドルの信認が揺らぐ。▼信認される(円が。ドルが)。信認を(拒む。高める)。▼是認する(考え方を。行動を。誇張を。スローガンを。体制を。人間性を。積極的に)。▼追認する(既成事実を。現状を。与党の政策を)。認容する(法律が。控訴を。行動を。抗弁を)。▼否定しない(一概に。あえて。ひと言も)。容認する(斡旋を。隠匿を。円高を。結論を。続投を。賃上げを。独立を。当面は)。誰もが認める。十人が十人を首肯せしめるに足る=本多秋。何人も認めざるを得ない。認可が下りる。認可を(与える。得る。取る)。正式に認可を受ける。開発を認可する。認知を求める。認知する(子を。学校がいじめと)。認知される(世間に広く。内外で)。認定を(受ける。求める)。▼認定する(公式に。原爆症と。公害病患者と)。 **むしかく【無資格】**無資格で(営業する。薬を処方する。治療する。河豚ふぐを調理する)。▼言う資格はない(人の悪口を。とやかく)。父親として資格皆無の男。閣僚の資格がない。短気で喧嘩州んっ早い性格は指導者の資格に欠ける=常盤。著書の内容が大学教授としての資格に背馳ぶいする=美濃部。ブロを名乗る資格はない。とやかく言う資格も権利もない奥泉。 **めんきょ【免許】**免許が停止になる。免許を(得る。更新する。取得する。取り消される)。運転免許を取る。免許皆伝の腕前。免許皆伝を受ける。免許証を(悪用する。更新する。交付する。返納する。没収する)。印可を(与える。受ける。得る)。免状が手に入る。免状を(いただく。もらう)。有資格者を(採用する。優逃する)。有資格を(確認する。証明する。)。無免許で(営業する。バイクに乗る)。無免許を取り締まる。ライセンスを(取得する。発行する)。ライセンス契約を結ぶ。 **めんじょ【免除】**免除を願い出る。▼免除する(試験を。税金を。返済を)。減免を(受ける。申消する)。減免する(課徴金を。授業料を)。 **リベラル**リベラルと保守が対立する。リベラルな(考え。政治家)。政治的にリベラルな立場。 <366> # 腐る・枯れる **おちば【落ち葉】**落ち葉(地上に散り布いた細かな"国木田。斑はだに紅葉した小さな"内海)。落ち葉が(風に舞い散る。足元に厚く重なる。かさこそと足元で鳴る。弧を描いて落ちてくる。徳道をすべってゆく。庭に走るのがさらさらと聞こえる=長塚)。木の根方に落ち葉が吹き寄せられるように足元が一時のふきだまりになる=山本有。落ち葉の(舞い落ちる並木道。舞う木枯らしの町。雨がしきりに降りそそぐ=井伏。積もった林の中へと分け入る=福永)。雨上がりの雑木林に湿った落ち葉の匂いが漂う=村上春。乾いた落ち葉の音を足許はしにまといつかせる黒井。茵いとのような落ち葉の上にすわる!森賜。冷たい風が香ばしい落ち葉のにおいを山から運んでくる三浦し。濡れた落ち葉の御礼とを踏む=倉橋。針金のような火をちらりと持った落ち葉の一片一片が煙とともに軽く騰ぁがる=長塚。湿った落ち葉をむりやり焚ぇきつけたような匂い=村上巻。風に漂う落ち葉のようなもろい男女のつながり~林关。風に吹き寄せられた落ち葉のような共同生活"辻井。手が木枯らしの中の落ち葉のように頭ふぇえやまない椀。野分の風に舞い散る落ち葉のようにきれぎれで統一のない雑多な思いが頭を狂い舞う海音寺。木々が落葉する。飛花落葉のはかなさ。朽ち葉が露を含み、物のけの眼のようにあやしげな光を発する!島尾。ぬれた朽ち葉の匂いが鼻を打つ=石川。煤煙ぶぶで汚れた朽ち葉のような色=松本。一枚の朽ち葉みたいになった蛾の死骸"堀。紙が朽ち葉色に変色する。本の紙が粗末で六十年余りの歳月に朽ち葉色に変色している=瀬戸内。 **かび【徴】**併にかびが生える。細かい敵が娘の翅の粉を撒きいたように滲しみつく=宮本百。徹で緑や黒に彩色される=篠田。水が濁りに濁り公衆便所に生じた徴の色になる=山口。皿に盛られた飯が岩を敵ぉぉう海苔のような緑と蜜柑色以沙んの徴を生やす「武田爽。徹のような白い斑点のいっぱいある石敷三島。垣の竹の裏側に微のような汚れがある=梅本。ごく微細なほんの微のような光三島。良心が心臓に敵のようにこびりつく連城。 **かびる【磁びる】**▼かびる(バンが。餅が。タイルの目地が)。かび臭い(書庫。匂いが鼻をつく)。押し入れのかび臭いスーツケース。倉庫からひっぱり出したばかりの黴くさい綿布"山崎。図書館みたいに敵くさい紙のにおい三浦し。かびの匂いが漂う。 **かれき【枯れ木】**虫喰いの枯れ木が倒れるように死ぬ=水上。冬には枯れ木と雪"加へ。枯れ木の折れるように老衰で死ぬ=吉川。風が枯れ木の枝を泣かせる"長塚。笹地に白々と骨を立てたような枯れ木の原高田。枯れ木も山のにぎわいという程度の藤沢。枯れ木のごとく痩せた手脚鷺沢。ひからびて思ずんだ枯れ木のような肉体"坂口。一本の枯れ木のようにたわいなく倒れる=高橋。手首が枯れ木のようにかさかさ原田康。遠い林の黒ずんだ枯れ枝の交錯が解読不能の石碑の文字のように白っぽい空に刻みこまれる=日野。枯れ枝がばしりと折れる。裸になった落葉樹の交錯する枯れ枝が空間のひび割れのよう~日野。枯れ枝に火を点っける。枯れ枝のような指"佐藤卷。足が枯れ枝のように細くなる=山田詠。朽ち木を打つが如く何の手答えもない菊池。朽木が倒れるようにがくっと前につんのめる=小松左。朽ち木さながらに軽い体。ひとくあっけない朽ち木の折れるような死=山本周。襟もとまですっぽり組蒲団をかぶって朽ち木のように寝ている=水上。 **かれくさ【枯れ草】**枯れ草が(風にそよぐ。一面に夕陽を帯びる。かさかさと鳴る)。長い冬に踏みしだかれた枯れ草が寝そべったままで風に吹き殴られる"中島み。陽にむれた枯れ草に似た刺すような匂い真継。肌が枯れ草を渡る。口の中が枯れ草をいっぱい押し込まれたように乾き切る=三島。枯れた草が紐ひるのように垂れ下がる=黒井。霜に打たれてちりちりと枯れはてた草木"本庄。飼葉の枯れ草みたいな甘いにおい!安岡。枯れ葦ぁしが(縦横に乱れる。こすれ合って乾いた音をたてる)。蕭糸しいうたる幾叢いくの枯れすすき芥川。乾し草が山のように積んである。乾し草の甘い匂い。乾し草のような甘い匂いの香を焚たく=人四。乾し草のように香ばしい体臭"岡本。 **かれは【枯れ葉】**枯れ葉が(かさこそと風に鳴る。宙に娜う。びゅうと郷う。積もった地面はふかふかだ"三浦し)。枝々からばらばらと枯れ葉が降る。地面に枯れ葉が敷かれる。カサコソと枯れ葉が骸骨ぶぶの踊りを鳴らす梶井。庭先に散った枯れ葉が雨を受けて驚いたように跳ねる=辻井。枯れ葉に埋まった山道。枯れ葉のむれたような子供の体臭=島尾。枯れ葉を掃き集める。風が枯れ葉を巻きあげる。工事が枯れ葉を焼く火のように進む菊池。疾風にゃが枯れ葉を吹き捲くかのような情勢"山田美。茶褐色に枯れたくぬぎの葉がかさかさと風に鳴る=井上靖。枯れ葉のように(空中に舞い上げられる=高橋治。吹き飛ばされてしまうのではないかと地面を踏みしめる=山田詠)。大きな水の渦に乗った枯れ葉のように鷲もしが静かに伸びやかに輪を造る有局。ガラスの破片が枯れ葉のように散り溜まる=河野。心の中をひらめき過ぎる断片的な影を枯れ葉のように払いのける=有高。病葉42(がひらひらと舞い落ちる。 **かれる【枯れる】**▼枯れる(色香が。木が。人間が。日照りで作物が)。枯れた(味わい。芸。手腕。花が落ちるようにあっけなく息を引き取る“平岩。花のように陽を帯びる。かさかさと鳴る)。 <367> < # 腐る・枯れる―119 衰える=山田町)。焦げ茶色に枯れた葉。霜に打たれて枯れた草。風が芒討すの枯れた徳をなびかせる=福水。花が見る影もなく枯れていく"辻真。枯れ枯れとした尾花。真冬の枯れ枯れとした庭。花がしぼむように恨が閉じられる=石坂。稲が立ち枯れを起こす。野山のうら枯れた晩秋の景色。草が黄色くうら枯れる。葉が枯れ落ちる。蔦ったの葉が日ごとに黄ばんで枯れ散る"日野。枯れはてた(草木。心の重苦しさ)。住ゃびしく枯れはてた小さな庭萩原明。霜枯れた冬の野。▼霜枯れる(草が。蔦が)。霜枯れることなく元気に育つ。▼立ち枯れる(木が。才能の芽が。芋かゃが茶色く。作物が実りを待たずに)。▼枯らす(愛情を。木を。草を。葉を)。枯死寸前の大被害。▼枯死する(樹木が。松が)。花がすがれる。根腐れが起きる。 **きのこ【茸】**キノコがにょきにょき頭を出す和久。落ち葉の問から無気味な色をした茸がちらりと覗のぞく=堀。馥郁、いくと匂う茸が今を限りと欲沁らり生える"木庄。村落の茅屋ら心が落ち葉をもたげて出た茸のよう長塚。茸を入れて炊き込む。洗濯し忘れた体操着に茸を生やす若介。枯れ木の上に生えていた茸みたいにぽろりと其処にこにくずおれる=大庭。耳が茸みたいにぺたりと顔についている=丸谷。なめ茸たけのどろりとした汁が舌の脇に残っている声黒井。傘が開ききった松茸烂的。ぷーんと松茸のいい匂いが鼻を持っつ田辺。松茸をしゃきしゃきと噛んで食べる。 **くさる【腐る】**腐る(性根が。食べ物が。魂が。とぶの水が。リンゴが芯まで)。腐るほどある(時間が。嫌なことは)。腐った(缶詰みたいに持ち古す徳永。梨のようにぶよぶよした男木山)。言葉が死んだまま腐った詩"永倉。心根まで腐った男。性根の腐った人。人間そうまで腹が腐っちまっちゃ、もう駄目だ永井荷。腐ってぶよぶよになった玉ねぎ。腐っている(心が。精神が。就職がうまく行かず)。口が腐っても言わない=福永。▼腐らせる(魚肉を。材木を。能力を。葉っぱを)。腐りが(出る。入る)。内臓に溜まった排泄物叫ぶせよりも汚い運命の腐肉"黒岩。むれるような暑熱の中に腐肉の匂いが鼻を祈っく今日。すえる(牛乳が。ご飯が)。▼腐朽する(木材が。茶色に。白く)。死体が腐爛ふらする。 **くちる【朽ちる】**▼朽ちる(桟橋が。橋が。名声が。屋根が)。半ば朽ちた木の階段。朽ちかけた古い巨木。家が朽ちかける。▼朽ち果てる(切り株が。陋巷に。一生その家で。名もなく。人知れず。山奥で)。埋もれ木のように朽ち果てるのを待つ=津本。 **さび【錆】**錆が(赤く浮き出る。ぼつぼつ浮き出る)。錆が浮く(赤黒い。表面に点々と)。錆の鱗を生じさせる=井伏。赤錆がぼろぼろと降りかかる。緑青しを帯びた屋根"阿部。 **さびる【錆びる】**▼錆びる(鉄筋が。ナイフが。ねじ釘が。刃物が。真っ赤に。黒く)。錆びた(自転車に油をさす。蝶番からがきしんで鳴る)。汚い錆びた水。太い錆びた声が一しきり本堂に響き渡る=田山。紅葉の錆色が日毎に暗くなる。錆色がかったグレー。空が錆色に暮れなずむ。最後の陽の輝きが銹きびたような色を湖面一面に漂わせる=井上靖。ほとんどの窓が錆び付いたようにびったりと閉じられる"小川。錆びついたロボットの足のように一歩一歩が固くなる=尾辻。▶錆びつく(エンジンが。刀が。体が。ナイフが。ブレーキが)。身体が油の切れかかった車同様にさびつく藤沢。赤錆びた(機械類が野ざらしになっている。引き込み線の線路)。▼赤錆びる(鉄材が。トタン屋根が)。▼酸化する(鉄が。銅が)。 **しおれる【萎れる】**▼しおれる(草が。心が。花が。花が茶色に。自信を失って子供のように=開高。日暮れ時の合欲ももの木のように=壺井)。萎れた花のように首を垂れる=大佛。このごろの店先のホウレンソウみたいにしおれきる"灰谷。青菜に塩といったしおれ方も今日。今にも消こ入らんばかりの悄しゃれ方里見。打ち姿れたような様子がたまらなくいじらしい掘。打ちしおれる(挫折感に。しょんぼりと)。▼しなびる(才能が。乳房が。蜜柑しなびるふぃが。野菜が。頭ががくがくするのではないかと思われるほど首が細く=小林多)。動く限だけが生きていることを証明しているしなびた老婆"黒石。疲れはてたような蒼ぁぉく萎びた顔の壺井。萎びた蜜柑のような顔を並べる=徳永。枯れ草のように凋しなびた気持ち“石川。枯れても散らずに萎びて行く花のように日増しに身装いなが新鮮でなくなってくる!佐藤春。 **ひからびる【干からびる】**▼干からびる(梅干しが。ご飯粒が。のどが。蚯蚓粉が。かさかさに。からからに。ミイラの目玉のように"小川)。干からびた(寂しい笑い声。梅干しのような感情倉橋)。乾涸いかびた砂漠の翳かげのような陰鬱さ=加賀。足の甲はいつか肉が落ち鶏の足のように干からびて水に濡れにくい"大岡。ひからびたような老人本庄。 **ふしゅう【腐臭】**腐臭(冬のあいだに山深い場所で死んだ獣のかすかな三浦し。吐き気を催させるほどの屍肉しにの"大庭)。腐臭が鼻を打つ。すえた臭気に息を詰まらせる。食べ物のすえた臭い。 **ふしょく【腐食】**金属腐食によるひび割れが生じる。憂鬱の腐蝕ぶしに耐える=開高。歳月の腐蝕を寄せつけない=開高。金属が腐食する。▼腐食させる(健康を。精神を。性欲を)。鉄鋼のように張った気持ちが少しずつ腐蝕していく!遠藤。 **ふはい【腐敗】**腐敗が(横行する。はびこる)。腐敗の(泥にまみれる。根を除く。横行を放置する)。腐敗する(人心が。政治が。食べ物が。魂が。向が。汚職で)。腐敗した(情欲的な関係。政治家。匂いを放つ。腐敗臭が町に澱ょとむ"加賀。 # 繰り返す―124 <368> # 崩れる・歪む **いびつ**いびつな(性格。制度。歴史認識。家庭にもめげない)。我知らずいびつな笑いを浮かべる。いびつに歪む。口をいびつに結ぶ。いびつになる(形が。関係が。税制が)。 **うす【臼】**臼で粉に挽むく。臼と杵きゃで併をつく。豆を臼に入れ杵でつく=辺見。臼のような頭。石臼がごろごろと重い音をたてて回る。ゲゲゲの鬼太郎に出てくる石臼のお化けそっくりの顔・荻野。石臼のように重い体安岡。 **うちくだく【打ち砕く】**▼打ち砕く(希望を残酷に。夢見がちな心を。あとかたもなく)。▼無残に打ち砕かれる(願いが。夢が)。試みが一言で打ち砕かれる。▼粉砕する(陰謀を。帝国主義を。腹黒い意図を。封建制度を。木っ端微塵にいぶに)。 **おしつぶす【押し潰す】**『押しつぶす(ぺちゃんこに。吸いさしの煙芋を灰皿に。紙箱をギュッと。あやふやな気持ちを虫けらのように=伊藤整)。相手の顔も見返せないような押し潰された気持ち=川端。押し潰される(スルメのように=福水。全身に漲ふぇっていた歓喜が音を立てて=有吉)。▼押しつぶされる(魂が。胸が。肩書の重みに。生活の負担に。責任の重さに。のどのあたりが泣くような空腹感に"石坂)。押しつぶされる寸前まで編む=内橋。▼ひしぐ(荒肝を。鬼を。脊骨を。心を。身を)。 **おしひしがれる【押し拉がれる】**押しひしがれる(大凶変に肝を。憤りに。悲しみに。孤独の重みに。絶望に。不安に。不当な運命に。巨大で冷酷な力に)。押しひしがれた生気のない顔。 **きりくずす【切り崩す】**▼切り崩す(運動の一角を。丘を。ストを。デモを。土台を。バリケードを。山を)。懸命な切り崩しが予想される。切り崩しに(かかる。もってこいの材料=高橋克)。 **くずす【崩す】**▼崩す(崖を。精神の均衡を。体勢を。積み木の家を。反抗の意識を。山を。リズムを。夢を残酷に。いったん決めたスケジュールを。鉄壁のアリバイを。ほっとしたように顔を。名誉を根底から)。一瞬のうろたえが完璧な優位を砂のようにくずす。光瀬。バランスを崩す(心が。精神的に。体の。感情の。心身の)。表情を崩す(硬い。強張った)。漢字を崩して書く。身体をくたくたに崩して寝入る=横光。▼崩して喜ぶ(顔を。相好を)。▼崩して笑う(表情を。くしゃっと顔を)。膝を崩して(座る。胡座ふぐをかく)。支配者の地位を崩される。服をだらしなく着別す。取り崩す(貯金を。予備費を)。突き崩す(業績を。原則を。地盤を。信頼関係を。妙な気を。喜びを)。掘り崩す(足元を。基礎を。原則を。国内市場を。社会保障を。雪を)。▼崩さない(端正な姿を。関係をずっと。生活のリズムを)。能面のような表情をくずさない=つか。表情を崩さない(穏やかな。真剣な。うんざりした。厳しい)。▼態度を崩さない(かたくなな。平浄な。固い。強気の。凛りんとした)。姿勢を崩さない(基本的な。厳しい。長い間)。口調を崩さない(冷静な。最後まで優しい)。表情を崩さずに観戦する。柔らかな顔を崩さずに言う。 **くずれおちる【崩れ落ちる】**▼崩れ落ちる(社会秩序が。大量の土砂が。炎の中で薪が。本の山が。体が床の上に。その場に。膝を折って。声も立てずに地面に。大音響とともに。壁ががらがらと。夜空に火の粉をまき散らして屋敷が"小松左。力つきたように膝を折って床に=森瑜。土台から一気に若竹。身体が空気が抜けたゴム人形のように膝から=西木)。今にも崩れ落ちそうな古い六角堂『福永。足の下が崩れ落ちてゆくような力なさ=中。崩れ落ちるように倒れる。崩落への第一歩を踏み出す。▼崩落する(崖が。株価が。斜面が)。崩落事故が起こる。 **くずれやすい【崩れやすい】**ショートケーキのようにボロボロ崩れやすい土小松太。まやかしの崩れやすい家庭という名の砂の城・瀬戸内。弱々しく崩れやすい優男!武田夸。 **くずれる【崩れる】**▼崩れる(肩のラインが。体の線が。体の平衡が。完全犯罪が。デマの一端が。包囲の輪が。本の山が。道の路肩が。顔が笑いに。情熱が惨めに。表情が柔和に。波が足下で。家族という絆が。ぐにゃぐにゃ体が。コンビの首尾が。従来のモデルが。人間としての尊厳が。不意にへなへなっと気持ちが。顔がくしゃくしゃに。地面へうつ伏せに。人垣がにわかに。群れ全体が一挙に。目元が嬉しそうに。気負いがあっけなく。信念が根本から。人の輪がさっと。表情がくしゃくしゃと。表情が燃え上がるように。平静さが他愛なく。内から辛うじて支えていたものが黒井。イメージがバラバラに『大原。声が濡れた泣き声に“黒井。家が腰が挫くじけたように、辻井。顔が嬉しそうな笑いで=山口。家庭が砂の上の塔のようにもろくも!有局。自分の姿勢と意見がぬらぬら=島尾。生活がボール紙細工の家のように=中村真)。▼足元から崩れる(生活が。政権が)。▼一角が崩れる(枢軸の。砦での)。▼音を立てて崩れる(理性が。がらがらと)。▼砂が崩れる(足もとでさくりさくりと藤沢。高山のなだれのように畑)。▼バランスが崩れる(絶妙な。勝ち負けの)。▼表情が崩れる(かたくなな。能面のような。張り詰めた)。▼もろくも崩れる(決意が。幸せが)。辛うじて押さえていたものが崩れそうになる=椎名誠。崩れた体勢を整える。所々崩れた扉。形が崩れた背広。▼崩れていく(心が弱々しく、勝利に対する確信が)。▼音を立てて崩れていく(抱いていたイメージが渡辺。それまでの実績と自信が=軍司)。全身の皮膚が破れるほど満ち満ちていた敵対心が大きな音を立てて崩れて行くのを聞く=黒石。 <369> # 崩れる・歪む **くずれる【崩れる】** ▼崩れる(堰が。自信が。平衡感覚が。統制が。陣形が。姿勢が。総意が。足元から。あっけなく。もろく。がらがらと。天気予報が。土手が。がけが。ダムが。山が。氷が。足場が。積荷が。表情が。笑った拍子に。膝ががくりと。バランスが。文体が。統率が。笑顔が。計画が。これまでの実績と自信が=軍司)。全身の皮膚が破れるほど満ち満ちていた敵対心が大きな音を立てて崩れて行くのを聞く=黒石。身のこなしが崩れている。跡形もなく崩れて消える。解きほぐされたように列が崩れはじめる=円地。崩れればどこまで崩れていくか分からぬ不安=城山。人柄に崩れが目立つ。信じがたいような崩れを見せる。足もとから崩れるように眠りこける=大原。崩れるような弱々しい微笑=高橋和。崩れるように(膝へ泣き伏す。身を横たえる)。花が崩れるように笑う=獅子。崩れるように床に(坐りこむ。倒れる)。吸い殻だらけの灰皿。吸い殻でいっぱいになる。誘いかしげな表情が崩れない。荷崩れを(起こす。防ぐ)。崩れかかった(陣形を立て直す。岸のここかしこに水が浸み込む=山田美)。崩れかかっていた気持ちがにわかに立ち直る=山本周。波頭が崩れこむ。▼崩れ去る(伝統が。夢が。一朝にして。推論がもろくも。打ち返す波にさらわれるように=柴田翔)。味方がどっと崩れ立つ。▼泣き崩れる(声をあげて。よよと)。▼煮崩れる(栗が。玉ねぎが)。満座の者が笑い崩れる。▼決壊する(堰堤えんていが。ダムが。堤防が)。河水が堤防を決する。 **くだく【砕く】** ▼砕く(岩が波を。波が日の光を。装いに神経を。心を千々に。細かい破片に。事件解決に心を。ダイナマイトで岩山を。土を掘り返してやわらかく)。身を砕いて働く。▼噛み砕く(骨を。実を)。踏み砕く(ガラスを。義理人情を。膳を。眼鏡の玉を)。破砕する(板ガラスを。岩を。国家権力を。組織を)。▶挽く(コーヒーを。粉を。豆を。麦を臼で粉に)。 **くだける【砕ける】** ▼砕ける(波が岸辺に。話が下世話に。舷側げんそくにぴたぴたと川波が。ざくりと足元の砂が。ふらふらと腰が。窓ガラスが粉々に。波頭が船の舳先へさきで。葉の表に雨がばさばさ。光が風に動く葉末はずえに=国木田)。荒磯に砕ける波の音。寄せては砕ける波。砕けた言葉で言う。▼砕け散る(荒波が磯に。グラスが。敵の包囲網が。夢が。はかなく)。ガラスの破片が砕け散る。 **つぶす【潰す】** ▼つぶす(株で身上を。昔話に時を。虫を。紙容器を片手で。くしゃくしゃに。ぐちゃぐちゃに。会をことごとく。せっかくの休みを一日。煙草の空き箱をぐしゃりと。嘲笑を口の中で)。▼時間をつぶす(貴重な。喫茶店で。ぶらぶらと。他愛もない世間話で)。可能性を一つずつ潰していく=海堂。暴動をつぶしにかかる。▼取りつぶす(家を。藩を)。▼叩きつぶす(蜂の巣を。蚊をびしゃりと)。相手の論を完膚なきまでに。微塵みじんとなって。コップが粉々に。波濤とうが押し寄せて。ガラス窓が物凄い音とともに=石川)。粉々に砕けて散る。めりめりと割れ砕ける。 **こな【粉】** 白い粉が辺りに舞う。頭を掻くと雲脂ふけが粉のごとくばらばらと飛ぶ=二葉亭。霧が切れると森も草原も水晶の粉をまいたようにキラめく=加賀。日を受けて山の際が白っぽく粉をまいたように見える=中上。硬い粉のような冷たい霧=大江。雪が粉のように散る=立原。氷を粉末にしたような霜が固まる=長塚。粉をふいたような生気はてた倦意が目の匂いのある少女=黒井。潮風にさらされて粉をふいたように風化した墓石=吉村。肌から粉を吹いたように生気のない顔の=高井。潮風に荒びた皮膚が黒ずんだ皺しゃに塩さながらの粉をふいている=加賀。萎しゃれて粉を吹いているみたいな木々=田辺。淡い新緑が粉を噴いているように見える=林美。 **こなごな【粉々】** 砕けて粉々に散る。瓶を粉々にする。ガラスを粉微塵こっぱみじんにする。最後の自制と罪の意識が粉みじんになって崩れ散る=瀬戸内。感傷が微塵に砕ける。鉄壁を微塵に突き砕く。身体が爆発してこっぱみじんになった気がする=高橋三。木っ端微塵に砕かれた心=林美。ダンプカーに激突されるリヤカーみたいなもんで木っ端微塵になるだろう=三浦し。友情が木っ端微塵にけし飛ぶ=海音寺。 **つく【搗く】** ▼つく(米を。餅を。杵きねで)。脳漿のうしょうを搗き砕かれたような神経の遅鈍状態=林美。 **ひねりつぶす** (空き缶を。指先で。ぐにゃりと。虫を。ごみを)。踏みつぶす。握りつぶす。にじりつぶす。押しつぶす(空き缶を。封筒を。生きた蛙を。手で。ぐしゃりと。ぐにっという音とともに。指で簡単に。指先で)。握りつぶす。ひねりつぶす。踏みつぶす。押しつぶす(虫けらを。指先で)。押しつぶすように殺す。押しつぶされる(人波に。満員電車で)。叩き潰す=奥泉。煙草をにじり潰す。ひねりつぶす(煙草を。指先でにきびを。虫けらを一つまみに)。毛虫や油虫のようにひねり潰す=里見。 **つぶれる【潰れる】** ▼つぶれる(見たら目が。ぐしゃりと。酔って。働いていた店が)。手のひらがママレードみたいにぐしゃぐしゃに潰れる=村上春。つぶれる一歩手前。もう少しで心臓がつぶれるところ=坂口。つぶれるまで飲む。泣いて泣いて眼がつぶれそう。=中河。今にもつぶれそうな小屋。浪曲語りのように声がつぶれている=井伏。もう二度と会えないと思うと胸がつぶれてしまいそう=灰谷。つぶれもせずに続いている店。胸が潰れるような思い。社会的信用が丸つぶれとなる。面目が丸つぶれになる。理屈で相手をぺしゃんこにする=伊坂。▼ぺしゃんこになる(箱が。木の葉みたいに=飯田)。胸のぺちゃんこな娘。ぺちゃんこに轢きつぶす。 **でいりゅう【泥流】** 泥流が(流れ下る。町をのみ込む)。泥流に(埋まる。押し流される)。雨期には火山灰が泥流になって襲ってくる。鉄砲水が(押し寄せる。家屋を流す)。鉄砲水で被害が出る。鉄砲水に押し流される。泡立つ白波が湾の中に鉄砲水のように流れ込んで失せる=荒巻。 **どしゃくずれ【土砂崩れ】** 土砂崩れで(家が埋まる。道路が不通になる)。土砂が(崩れ落ちる。迫る。崩壊する。崩落する)。土砂に(埋まる。埋もれる)。土砂の(下敷きになる。流れがもわもわと動く=古井)。落石が道をふさぐ。落石の多い山道。崖崩れが起きる。崖崩れで(家が埋まる。生き埋めになる。道路が不通になる)。妄想が崖崩れのように襲う=黒井。 **なだれ【雪崩】** 水晶の大簾だいれんのような雪崩=有吉。雪崩が(村をのみ込む。山肌を滑り落ちていく=熊谷)。雪崩で家がつぶれる。雪崩に巻き込まれて死ぬ。雪崩の恐怖にさらされる。いつ落ちてくるかも知れない雪崩の下にいるような不安=伊藤整。なだれを打って寄せてくる敵の大軍の=井上靖。発砲して雪崩を誘発する。天罰が雪崩をなして身にふりかかる=高橋和。人々が雪崩をなして押し寄せる=菊池。雪崩のようなおしゃべりがようやく跡切れる=落合。大勢の人が雪崩のように押し寄せる=宇野千。警官が雪崩のように駆け込んでくる=なかにし。すべてを押し倒し揉み潰す雪崩のようになにもかもを手からもぎ去ってゆく=山本。麦畠の被害がゆるやかな雪崩のように下方へ下方へとひろがって行く=吉村。 <370> # な **なだれおちる【雪崩れ落ちる】** ▼なだれ落ちる(安直な方向に人の思考が。雨が車体を烈はげしく叩き滝のように=円地)。しゃべるコトバが早射ち二挺拳銃にちょうけんじゅうみたいになだれおちる=田辺。屋根の雪がどおっと谷じゅうに響きわたるような音を立てながら雪崩れ落ちる=堀。暗鬱な色をたたえた木の葉が頭上になだれ落ちそうに繁茂する=本庄。なだれるような星空が広がる=久間。 **にぎりつぶす【握り潰す】** ▼握りつぶす(遺書を。空の缶を。きんたまを。トマトを。袋を。命令を。メッセージを。遺言状を)。ビールの缶を握りつぶすほど力をこめて言う=景山。▼くしゃくしゃに握りつぶす(手紙を。野苺のいちごを)。手紙を封筒ごと握りつぶし足元に叩きつける=高樹。上から圧力がかかって握りつぶされる=北村。▼つかみつぶす(紙片を。心臓を)。 **ひしゃげる** ひしゃげる(缶が。車が。汗が。箱が。バンパーが。容器が。ぺしゃんこに。めりっと椅子が。千鈞どんの重みを背負ったように=徳永)。馬に踏みつぶされたようなひしゃげた揉み烏帽子もみえぼし=杉本。十日前のナスのようにひしゃげている老獣医=高橋三。 **ひずむ【歪む】** ▼ひずむ(音が。形が。箱が。声が寒さに)。ひずみが(あらわになる。拡大する。生じる。出る)。ひずみのない音。 **ふみつぶす【踏み潰す】** ▼踏みつぶす(運動靴の踵かかとを。花壇を。蝶を。望みを。百足むかでを。ぐしゃりと)。ふくらんで来る不安を踏み潰すように一歩一歩足を運ぶ=黒井。▼踏みしだく(枯れ草を。花びらを)。大地を踏みしだく重く鈍い足音=飯田。 **ほうかい【崩壊】** 崩壊がさらに進む。崩壊に直面する。崩壊の(危機に瀕する。兆しがある)。崩壊は時間の問題。人格の崩壊を起こす。倫理の崩壊を招く。▼崩壊する(砂上の楼閣が。地域社会が。同盟の一角が。独裁体制が。バブル経済が。少女らしい憧憬が。大音響とともに。水を含んだ角砂糖のように=倉橋)。がらがらと無惨に崩壊する音が聞こえるように=山本周。信頼を根底から崩壊させる。今や崩壊寸前。▼瓦解する(自制心が。制度が。組織が。内閣が。幕府が。密かに抱いていた誇りが=島田)。 **もみつぶす【揉み潰す】** ▼揉みつぶす(渋紙を。煙草を。土の塊を。ひと揉みに)。▼揉みしだく(お尻を。全身を。乳房を。胸を)。 **もろい【脆い】** ひとたび崩れた軍勢はもろい=栗本。受けに回ればもろい性格。男は名声にもろいもの=太宰。結晶が剝がれやすい脆い岩質=奥泉。不愉快なことから免れていられるだけの脆い幸せ=高橋和。繊細な硝子細工のようにひどく脆くて危険な微笑=三島。▼もろくなる(絆が。気持ちが)。▼脆さ(体の内側から音でも立てて崩れていくような=渡辺。白蟻に食いつくされた柱のように一突きで崩れる=瀬戸内)。あっというまに崩壊してしまうもろさ=小林久。ふてぶてしく冷笑的な態度の下に気弱なもろさが潜む=小林久。涙もろい感傷的な人物。=服部。 **やまつなみ【山津波】** 山津波が(押し寄せる。谷を駆け下る)。山津波に(埋もれる。のまれる)。山崩れで(家が埋まる。川がせき止められる)。組織が地滑りを起こして崩壊する。▼地滑りを起こす(景気が。斜面が)。地滑りしやすい地質。地滑り的な大勝利。株価の地滑り的な大暴落。 **ゆがむ【歪む】** ▼歪む(空間が。地震で家が。顔が自嘲に。顔が鈍痛に。態度が奇妙に。頬が笑いで。自己嫌悪で顔が。顔が意地悪そうに。顔が泣き笑いに。口元が自嘲的に。表情が悲しげに。満面がほくそ笑みに。顔が怒りと苦しみのために=三好。顔が痛みを耐える子供のように頼りなく=黒井。表情が何かの痛みに耐えるように=高橋和。幽霊でも見たかのように顔が醜く=五木)。▼ゆがむ(顔が苦痛でまるで別人のように=光潮。顔が悪いガラスを通して見るように=扔。整った顔が腹立ちと不安とで心持ち=内海)。歪んだ(関係。経済構造。精神状態。歴史認識。笑みを浮かべる)。冷笑に似た歪んだ笑み=小林久。驚愕きょうがくと恐怖に歪んだ顔。たち並ぶビル群がかげろうのようにゆらゆらと歪んで見える猛暑=中上。▼歪ませる(唇を。性格を。頬を)。顔を歪ませる(三角に。憎悪に。泣き笑いに。ぐにゃりと)。歪みが直る。声に歪みが加わる。姿勢に歪みがある。奇怪な歪みを持つ観念。性格の歪みを自覚する。世の中の歪みを一身に背負う。引き歪むような苦しげな表情=宮本百。 **ゆがめる【歪める】** ▼歪める(天下の大道を。口を三角形に。悲しみが表情を。皮肉っぽく口元を。酸いような笑いで口元を=宮本百)。▼顔を歪める(忌々しそうに。屈辱に。苦しげに。くしゃくしゃに)。唇を歪める(言いにくそうに。はにかんだように=小池。自らを噬笑ちょうしょうするように=綾辻)。▼口を歪める(大げさに。不満げに。不満そうに)。唇を思い切りゆがめて唾をはく=小林多。きゅつっと頬を歪めて泣く。唇の端を歪めて笑う。物事を歪めて見る。▼しかめる(片目を。鼻を。眉根を。眉を)。国の掟おきてを曲げる。▼歪曲わいきょくする(革命的精神を。結論を。史実を。事実を故意に)。 <371> # 悔しい・後悔する **あいにく【生憎】**あいにく持ち合わせがない。名をあいにく聞き漏らす。あいにくの雨模様。開が悪い。折悪しくお金の持ち合わせがない。 **おしい【惜しい】**惜しい(命をいたわる。機会を逃す。手を逃す。人を亡くす)。▼惜しい(命が。時間が。捨てるのが。手放すのが。費用が)。寸暇も惜しい毎日。一瞬でも眼を離すのが惜しいというふうに見つめる"永井路。にわかに金が惜しくなる。惜しくも(入選を逃す。敗れる。落選する。二位にとどまる)。惜しがる(金を。暇を)。寝てしまうには惜しいほど月が綺麗林美。桜の花びらがいちめんに散りしいていて踏むのも惜しいような気持ちでそっと歩く阿川弘。あたら(好機を逸する。若い命を絶つ。男ぶりが台なしになる。人生を棒にふる)。無益にあたら将兵を殺す。 **おしまない【惜しまない】**▼惜しまない(慰藉灬しの言葉を。金を。賛辞を。地道な努力を。手間を。費用を。労力を。あらゆる援助を。感謝の気持ちを。全面的な協力を。やんやの喝采を。積極的な支持を"円地)。惜しみない声援を送る。惜しみなく(愛を示す。分け与える)。あらゆる手段を惜しみなく使う。金銀財宝を惜しみなく分かち与える=福永。惜しむところなく涙を流す。命など惜しくない。財産を全部投げ出しても惜しくない意気込み"江戸川。惜しむに足るほどの価値はない佐藤系。骨身を惜しまず働く。金に糸目をつけずに服を作る。金に糸目を付けずに買い漁るさる宮部。物借しみをしない。あらゆる資料を惜しげなく投げ出す瀬戸内。惜しげもなく(捨てる。他人にあげる。黄金をばらまく=住井)。時間と金を惜しげもなく注ぎ込む。財宝を惜しげもなくばらまく永井路。惜しげもない喝采を送る。惜しげもなく知らない異性の前に白い豊かな乳房を出す藤木。金に飽かせて(買い集める。建てられた家。土地を買い上げる)。 **かいこん【悔恨】**身を切るような悔恨=柴田颊。悔恨が(頭をもたげる。襲う。忍び寄る。残る。胸をえぐる)。淡い悔恨が胸に入りこむ。不安と悔恨が胸に沁み出す。むなしい悔恨が心を陰惨に塗りこめる真継。激しい悔恨と憤激が襲う獅子。悔恨に(苦しむ。とらわれる。取りつかれる)。強い悔恨に襲われる。名状することのできない悔恨に胸をしめつけられる!今来。悔恨の(情が深く刻まれた思い出=吉野。仄ほのかな薫りがただよう“福水)。悔恨の念に苛峙ぃまれる。心の墨汁のような悔恨やいらだたしさが拡がってゆく=梶井。苦い悔恨を味わう。心の底から悔恨する。 **くいる【悔いる】**▼悔いる(自信過剰を。罪を。放縦な生涯を。手荒な仕打ちを。はしたない振る郷いを。不用意な言葉を。自らの落ち度を。細心に育て上げてきたものを自分の軽はずみから一瞬に打ち壊してしまいでもしたように"堀)。前非を悔いて謝る。胸を灼ゃかれるような悔い=中局救。悔いが(胸を噛む。芽生える。心の隅にはらむ。ちょっぴりある)。一生悔いがついてまわる。▼悔いが残る(いつまでも。このまま見過ごしては高橋克)。大きな魚を釣り落としたような悔いと苛立心;ちで頭を抱える=内田康。祖国を裏切ったという悔いに胸を焼かれてすこす塩野。悔いに心の底まで冒される。▼悔いを残す(生涯に。千代に。生涯。後々)。苦い悔悟が胸の中に起こる。悔悟の念に責められる。▼悔悟する(前非を。罪を。非行を)。 **きまえよく【気前よく】**気前よく(金を使う。チッブを切る。分けてやる。有り金をはたく。派手に札束をきってみせる=山崎)。▼はずむ(祝儀を。チッブを。寄付をたっぷり)。奮発してフルコースを食べる。奮発する(ご祝儀を。チッブを)。大盤振る舞いとでも言うべき買い物藤沢。大盤振る舞いにならないように歯止めが必要。大盤振る舞いの宴。 **くつじょく【屈辱】**屈辱が(怒りを呼び起こす。身体くつじょくにおりのようにたまる=柴田翔)。胸中を屈辱が走りぬける。おおいがたい屈辱がほおをけいれんさせる=光瀬。屈辱で身体が真っ赤になるほど=佐藤愛。屈辱と(暗い怒りに胸を荒れくるわせる=大江。羞恥礼かと憤りがあらわになった顔三浦し。憎しみの情が身体を包む藤枝)。謝ることを屈辱と感じる=伊坂。屈辱に(顔をゆがめる。身をよじらせる。胸をたぎらせる)。自国を屈辱にさらす。奥歯を噛んで屈辱に耐える東野。忍びがたい屈辱の日が続く。屈辱の思いが(薄らぐ。萌す。胸底から噴き上げてくる源氏)。屈辱の想いが胸を激しく締めつける=福水。屈辱のため目の前が真っ暗になる=真継。屈辱を(栄光に変える。速やかに晴らす。雪ぐ。晴らす術ずくを持たない)。のこのこ屈辱を受けに出てくる。敗北の屈辱を受ける。身の置きところのない屈辱感"宮本卸。屈辱感が憎悪に変質する"小林久。屈辱感で体内がほてる。皮膚をヒリヒリと屈辱感で焼く綱淵。屈辱感と裏腹の激しい怒り城山。いいようのない屈辱感と自己嫌悪"安岡。屈辱感に顔がゆがむ。ひどい屈辱感に息を詰ませる=安部。屈辱感のためにはげしく身が震える=山本周。体中に屈辱感をいっぱい詰め込む安岡。屈辱的な(運命に遭遇する。仕事から解放する。取り調べを受ける)。排泄する小動物のような屈辱的な姿勢"大江。 <372> # 悔しい・後悔する くやしい【悔しい】▼悔しい(自分だけが余所者い扱いにされているようで=新田。働き蟻ぁりのまま人生が終わってしまうのは=山本昌)。相手の話を嘘だと突き崩すだけの根拠が見つからないのがなんともくやしい=永井路。腸がよじれるほど口惜〈ゃしい有吉。悔しい(思いに駆られる。思いを引きずる)。わが身の不運をつくづくくやしいと思う。白洲。悔しくて(涙がこぼれる。涙も出ない。腹が立つ。夜も眠れない)。悔しくても傷ついた熊のように唸うなるほかはない!獅子。▼口惜しがる(死ぬほど。地団駄踏むばかりに絶叫して=海音寺)。悔しがる(涙を流して、歯悩みをして。歯ぎしりして。臍ぇぞを噛んで。身を揉もんで)。子供みたいに泣いてくやしがる=高樹。▼悔しさ(男に身をもてあそばれた。永井荷。歯ぎしりするほどの飯田)。声に悔しさがにじむ。こらえにこらえていた悔しさが爆発する=長崎。口惜しさが代々積み上げられ堆肥のように坳くぅずんできている=有吉。悔しさが胸に(針を刺す。こみ上げてくる)。絶望と悔しさで眼が呟くらむ森環。悔しさと恥ずかしさで(涙が出そう。唇を噛みしめる=池井戸)。悔しさに(唇を震わせる。声を震わせる。ほろほろと涙を流す)。くやしさに耐えるように唇を噛む高橋和。悔しさにはらわたがよじれるよう大沢。悔しさの持って行き場がない。悔しさのあまり(身悶炒もえする。歯ぎしりしてのたうちまわる=森忌)。悔しさも腹立たしさも情けない自分から目をそらすために生まれてきた感情三浦し。敗者の悔しさを噛みしめる。やり場のない悔しさをどうしていいのかわからないようにこぶしでケヤキの太い幹をたたく=長崎。悔しそうに(唇を噛む。唇を震わせる。舌打ちする。黙りこくる。机を叩く。泣きじゃくる。頬を膨らませる。ぼろぼろ涙を流す)。悔しまぎれに(コップを投げつける。八つ当たりする)。悔しまぎれの放言。唇を噛む思い。魚は大きい(釣り落とした。逃がした)。下唇をきつく噛む。みすみす宝の山を放棄するようなもの=軍司。烈しい舌打ちをしたいほどの思い!高橋治。船に乗り遅れた口惜しさのようなものがある「池田。なぜもっと早く気がつかなかったのだろうと内心歯ぎしりしたが後の祭り~落合。抑えに抑えていた口惜しさがとっと胸へつきあげる=山本周。▼切歯扼腕せわしゃする(己れの非力に。試合に負けて)。思い出すたびに歯噛みをする思い=村上元。心の中で歯ぎしりをする。 **くやしなみだ【悔し涙】**悔し涙が(噴きこぼれる。類くやしなみだを伝う。とめどもなく湧きだす。出てしょうがない"乃南)。目に悔し涙が浮かぶ。悔し涙に(くれる。むせぶ)。ぼろぼろ悔し涙を流す。悔しそうにぼろぼろ涙を流す=徳田。涙が出るほど悔しい。 **くやむ【悔やむ】**▼悔やむ(迂周っかさを。気の迷いを。軽挙を。決断の悪さを。死んだ者を。浅慮を。自分の愚かさを。過ぎ去った日々を。とんだ人のところへ嫁に来てしまったと=舟橋)。悔やんでも(かいがない。詮のないこと。もはや後の祭り。悔やみきれない失策幸田文)。いくら悔やんでも足りない。返す返すも悔やまれてならない。▼臍ぞを噛む(後悔の。しまったと。無念の。惜しいことをしたと)。臍を噛むような呪わしさ=本庄。 **こうかい【後悔】**後悔(先に立たず。骨を噛むものがある=海音寺)。▼後悔(友を売った。下賤げせな行為をした。岩陰にしがみついて押し流されて行く海藻のような福永)。後悔が(苦く心を刺す。身を責める。胸にきざす。こびりついて離れない。じわじわと胸に湧き上がってくる。黒い煙のように胸に充満する!森端。堰せきを切ったように襲う梶尾、どこまでも尽きない原始林のように心の中に薄暗く生い茂る=福永。波のように襲ってくる"乃南。胸の中に小石のように沈んでいる=石坂)。軽い後悔が胸をかすめる。切実な後悔が湧き起こる。胸に一点の黒い染みのような後悔が残る森環、後悔が心を(重たくする。噛む)。後悔が胸を(襲う。噛む)。後悔で(気が転倒しそう。胸がいっぱいになる)。後悔と期待とが半々に胸の中で渦巻く夢枕、空腹の胃に吐き気がくるような後悔と不安の念藤枝。激しい後悔に襲われる。つい叫びだしてしまうほど恐ろしい後悔に責められる=山本周。身を切り刻む後悔に苛にぃまれる=中局救。後悔に胸を(つかまれる。しめつけられる)。後悔の(種を遺す。涙を見せる。念に駆られる。念を募らせる。日々を送る。色が顔に現れる。気持ちが心をよぎる。牙が鋭く心を噛む福永。苦みが胸の奥にある=重松)。表情に後悔の翳かげりが横切る三好致。後悔の念が(頭をもたげる。湧き起こる。つき上げてくる。深く心に刺さる=島尾)。後悔は後ろ向きの感情-柴田翔。後悔を酒とともに飲み下す南木。同じ後悔を苦く繰り返す。いくら後悔しても(し足りない。取り返しがつかない!大犬野透)。今さら後悔しても(手遅れ。間に合わない)。一後悔する(余計な質問を。前夜の悪業をつくづく。無考えに退学して。安請け合いして、うかつに引き受けなければよかったと干刈。胸を掻きむしりたいほど有吉)。なまじ昔を懐かしがると後悔するだけ=船橋。 <373> # 悔しい・後悔する―121 **こころのこり【心残り】**心残り(どうにも割り切れない。挨拶も述べずに立ち去るのは=船山。見えない花の香を嗅ぐような淡い=阿刀田)。もやもや迷った心残りがはけ口を見つけた風に元気づく川端。心残りでならない。心残りな表情をして去る。大老の地位に恋々たるものがある=舟橋。恋々とする(異性に。旧法の墨守に)。不思議なほど未練がない。妻に未練がないと言えば嘘になる=小林久。未練げもなく(退場する。置き去りにする。さらりと捨てる)。 **ざんねん【残念】**残念で(仕方ない。たまらない)。返す返すも残念でならない。心の中が残念で満ちる。一残念に思う(心から。少し)。眉を八の字にして残念がる=奥田。残念そうな(口ぶり。素振りを見せる)。残念そうに(言う。身を引く)。残念ながら(欠席する。まだ見つからない。誤解されても仕方がない=椎名盛)。いかんせん(弾が尽きた。職務が束縛する)。匹敵するものは遺憾ながら他にない。泥棒呼ばわりは心外。怖じけづいていると思われるのは心外だ。丹精して磨き上げている家の中に汚らわしい人間に入りこまれて心外でたまらないという口調"石坂。心外な(取り沙汰。批判)。心外そうな(顔をする。口ぶり)。心外そうに(言う。声を荒らげる)。痛恨に堪えない。痛恨の(エラー。ミスショット。落球。思いで服役する)。 **したうち【舌打ち】**舌打ちする(口惜しそうに。頭をかいて。顔をしかめて。小憎らしく。逃げむように渋い顔をして。ちえっと。ちっと。眉を縮めて。いらだたしげに。うんざりしたように。さも惜しいことをしたように=徳田。付け入る隙を断たれて軽く"有川)。舌打ちをする(渋面を作って。胸の内で)。わざと大きく舌打ちをしてみせる。 **じだんだ【地団駄】**▼地団駄を踏む(悔しまぎれに。もどかしさに。仰山に体をゆすぷって八谷崎、突然堰を切ったように烈はげしく泣き出し=辻井)。後悔で地だんだを踏みたい気持ち=筒井。地団駄を踏んで泣き立てる。地団駄を踏むようにエンジンの唸うなり声を荒々しく響かせる=田辺。地団駄を踏むように忙しく足を踏み鳴らす三浦哲。 **なごりおしい【名残惜しい】**▼名残惜しい(散り行く桜が。友との別れが。返す返すも。これでお別れとは)。名残惜しげに(見つめる。呼びかける)。▼名残を惜しむ(口々に。心から)。名残が(惜しい。尽きない)。名残でも惜しむように家を振り返る=壺井。後ろ髪をひかれるような未遂行の心残り!島尾。後ろ髪を引かれるような未練が残る=徳田。後ろ髪を引かれるように(思う。振り返る)。 **ふほんい【不本意】**不本意な(生涯を送る。打撃が続く。別れを嘆く。形で去らなければならない=藤田)。声に隠そうとしても不本意さが漏れる有川。不本意そうに唇を尖とがらせる。不本意ながら(承諾する。計画を断念する。見逃さざるを得ない)。 **まけおしみ【負け惜しみ】**負け惜しみが(強い。手伝う)。負け惜しみを言う。何ぼ何でもあんまり負け惜しみ過ぎる=岡本。喧嘩州ん過ぎての棒ちぎり“石坂。手のとどかぬ葡萄ぶとは酸っぱいという感情"五木。減らず口を叩く。 **みれん【未練】**未練(躰炒らのすみずみまでこころゆみれんくまでよろこばせてくれた男への=池波。狂態を演じるほどの芝木)。愛着に未練が混じる。出て行った奥さんに未練がある若竹。欲望が未練がましく心の中に粘りつく"阿刀田。未練な考えにつきまとわれる。この期ににおよんで未練な考えをおこすほど卑怯な者はない=山本周。いつまでも未練を持っている。たっぷりの未練を残して立ち去る。この期になっても未練を捨て切れない=福永。寝心地のいいベッドへの未練を断ち切るように大きく伸びをする内館。▼未練を残す(この世に。ちっぽけな才能に)。未練がましい言葉。未練がましく(後を追う。再度訪ねる。何度も振り返る。もう一度取り上げてみる。いつまでも見送る=椎名感)。雨が未練がましくしょぼしょぼと降る"阿久。もう一度未練げに見直す。情感がしぶとく未練げにくすぶっている=田辺。未練たっぷりな言い方。未練たらしく(器路51~する。呼んでみる。いつまでも残っている。その場を離れない)。思いを残して立ち去る。見果てぬ(大願。大望。望み。夢を追う)。夢を見果てることなく追い求める。 **むねん【無念】**せっかく宝の山に入りながら空しく引き返すのはさぞかし無念だっただろう“丹羽。いかばかり無念であろう。何とも無念な顔をする。無念の(横死を遂げる。唇を噛む。最期を遂げる。涙をのむ。うちに他界する。あまり畳を掻きむしる=武田奈)。中に無念の思いがたきる=津本。無念の思いに(打たれる。押し包まれる。駆られる)。遺族の無念は察するに余りある。父親の無念を晴らす。非業に倒れた父の無念を思う。憤りのやり場のない無念さ。無念が言葉ににじむ。無念さに腸25の煮ゆる思い二便。無念さを(心に刻みつける。じっと記憶の暗い部分に抱きしめる"五木)。さも無念そうに歯み寸為 **もったいない【勿体ない」**▼もったいない(金が。月曜が)。もったいない話。もったいないくらいや福大优 <374> # 暮らす **かけい【家計】**内需の要をなす家計。家計が楽になる。物価上昇が家計に負担となる。家計の(足しにする。やりくりに苦労する)。家計を豊かにする。バートで家計を支える。物価高騰が家計を圧迫する。台所が潤う。暮らし向きが楽になる。暮らし向きに贅沢だいなことが増える。内証が(窮迫する。火の車)。家計が苦しい。家計が(逼迫的にする。火の車)。台所が(窮迫して首がまわらない!柴田剣。火の車)。 **かてい【家庭】**家庭(波風のないこく穏やかな鈴木光。絵にかいたように明るい=安岡。食料に裏打ちされたいかにも安定した=野坂。閉鎖的な小ブルジョワの=中村良)。家庭が(砂の上の塔のようにもろくも崩れる=有局。断崖に向かってずり落ちようとしている"小林久)。たぎる欲を水で薄めた欲のぬるま湯が家庭かもしれない荻野。家庭で浮き上がった存在になる。家庭と仕事を切り離す。同期の女の子たちは皆家庭という殻に収まったヤドカリになっている荻野。家庭という枠からはみ出す。家庭に(かまっている暇はない。喧嘩がんが絶えない)。にぎやかな家庭に育つ。家庭の(込み入った事情を話す。危機というものは台所の天窓にへばりついている守宮いものようなもの庄野)。裕福な家庭の娘。よその家庭のもめごとが好き。大岡。家庭より仕事を優先する。円満な家庭を構築する。職業と家庭を両立させる。ちゃんとした家庭をつくる。平和な家庭を築く。疲れて帰ってきたとき安らげる母港のような存在"五木。家庭生活に適合しない性格の人間。家庭用品を販売する。 **くらし【暮らし】**暮らし(皇帝にも負けないくらい贅沢だいな芥川。世間から隔絶されたがごとき貧窮の富岡。誰にも頼らない独立独歩の=中野孝。なにもないおだやかな黙々と草を食はむような毎日の!向田)。暮らしが(窮乏を極める。一向によくならない)。女の暮らしが匂い立つ。ここの暮らしが性に合っている。先々の暮らしが不安。市井の暮らしとかけ離れる。過去の暮らしと手を切る―藤沢。暮らしに暗い影を落とす。新しい土地の暮らしになじむ。差し当たって暮らしに困ることはない。その日の暮らしに困る。ゆとりのある暮らしに憧れる。暮らしの(秩序をつくる。変化になじむ。金を無心に来る)。当座の暮らしの金に事欠く。否応なしに暮らしの重荷が押しつけられる=石坂。穏やかな暮らしを手に入れる。かつかつ暮らしを立てる。社会保障が暮らしを支える。贅沢な暮らしを改める。日々の暮らしを営む。寮での暮らしを始める。宅もびしい暮らしを悲しく思う。暮らしを送る(豊かな。さほど不満のない)。▼静かな暮らし(張り合いのないくらいに堀。ひっそりとして人の出入りも稀まれなほど=山本忠)。惨めな暮らしを(送る。恥じる)。暮らしをする(相当に派手な。隠居同然の。のうのうと気楽な)。現代人の日常生活から風呂敷きが消える=竹西。日常生活と深く結びついた信仰。かつがつ身過ぎができる。そこそこの身過ぎしかできない。身すぎ世すぎのために金を稼ぐ中野孝。身過ぎ世過ぎの才覚。 **くらす【暮らす】**暮らす(一生呑気こんに。波風立てずに。日々を幸福に。雪深い田舎に。生に飽満して。世間を避けて。世事に疎く。泣きの涙で日を。のらりくらりと日を。せせこましく窮屈に。広い留守宅の一隅に。豊能坦うじな自然の中に。身を堅めて地道に。生きた心地もなく。衣食に不自由なく。田舎でのんびりと。怯おびえてびくびく。親と子が別れて。家族がみな健康で。四六時中顔を突き合わせて。世間と没交渉で。成り行きに従って。本ばかり読んで。毎日ぶらぶらと。持ち物を売り食いして。老後をひっそり。老後を悠々閑々と。老僕にかしずかれて。己をもてあまし気味に=さだ。酒と博打で勝手放題に―池波。世間との交渉を断ちひそやかに"司馬。世間のしきたりの中に首まで浸って無反省に"石坂。怠惰なうえにも怠惰に"北。親子水入らずで=舟橋。ころころと毎日を所在なく灭。世間の目に怯えながらひっそりと=横山。村民と没交渉のまま=辺見。小さな灯りを守るように"落合。敵意に囲まれて=大庭。日常的な俗悪さの中にとっぷりつかって=大庭)。▼共に暮らす(精霊と。常に死と)。▼仲良く暮らす(母と。皆で)。▼細々と暮らす(森の片隅で。内職仕事をしながら=窪川)。山間の水の美しい場所で暮らしたい=火坂。何とか暮らしていくだけで精いっぱい。人間が暮らしている匂いがある。便りのないのは無事に暮らしている証拠谷崎。自分の口を養う。日々の口を初のりする。その日の飯にありつく。バンのために働く。のんべんだらりと遊び暮らす。紅葉のうつろいを眺め暮らす。愛児を亡くして泣き暮らす。▼寝て暮らす(三が日を。一日)。便りを待ち暮らす。▼売り食いする(着物を。林を)。▼食いつなぐ(今ある食料で。年金で細々)。父母と一緒に暮らす。一緒に暮らすうちに情が移る『熊谷。子供の頃から一緒に暮らしてくる。一つ篭まの飯を食う(宇野十。一つ釜のご飯を食べる=宮尾。 **くらせない【暮らせない】**▼暮らせない(あだやおろそかには。あなたなしでは一日も)。 **こまる【困る】**困る(衣食住に。食うに。その日のたつきに。食べていけなくなるくらいお金に、笹沢)。米櫃にが心細くなる。満足に生活できない。生計が立ちゆかない。生計に窮する。生計の道を断たれる。いくら働いても食べていけない。日常生活に支隊をきたす。▼干上がる(顎が。鼻の下が)。▼食い上げになる(おまんまの。首になったら飯の)。各地を食いつめた渡り者。食いつめて夜逃げする。束京を食いつめて故郷に戻る。今の稼ぎでは食えない。路頭に放り出される。路頭をさまよう。▼路頭に迷う(一家が。国民が。妻子が。社員が)。 **くらしぶり【暮らしぶり】**▼暮らしぶり(奥様に小くらしぶり心翼々たる藤沢。浮草のように流れ漂うような半村)。暮らし方(ぐずぐずな。わがままな)。 <375> # 暮らす **たべる【食べる】** ▼食べる(朝食を。うまいものを。ろくなものを食べていない。腹一杯。人のものを横から)。食事が喉を通らない。食事がまずくなる。何を食っても砂を噛むような味=菊池。食が進まない。食が細い。食に(ありつく。困る。窮する)。食いはぐれる。食いっぱぐれる。食いっぱぐれのない商売。食いぶちを(探す。稼ぐ。失う)。生きていくのがやっと。食べていけない。生きる道を断たれる。いくら働いても食べていけない。日常生活に支障をきたす。▼干上がる(顎が。鼻の下が)。▼食い上げになる(おまんまの。首になったら飯の)。各地を食いつめた渡り者。食いつめて夜逃げする。東京を食いつめて故郷に戻る。今の稼ぎでは食えない。路頭に放り出される。路頭をさまよう。▼路頭に迷う(一家が。国民が。妻子が。社員が)。 **くらせる【暮らせる】** 何年か遊んで暮らせる金=横山。食いっぱぐれのない商売。一生食いっぱぐれのない職場。当分は何をしないでも食べていけるだけの蓄えが残る=なかにし。 **しょうひしゃ【消費者】** 消費者が過剰反応する。商品が消費者に渡る。消費者の(好みをつかむ。台所を直撃する。動向に敏感な企業。立場に立って対策を講じる=畑村)。消費者離れが進む。 **しょたい【所帯】** 所帯を(構える。持って分家する)。所帯道具をそろえる。世帯道具一式を貰う。暮らしが並みの世帯になる。利口な世帯持ちの上手な女。=中村日。所帯じみた娘。糠ぬかみそくさい(小言。話。人)。 **せいかつ【生活】** ▼生活(戦時下の苛酷な。食って寝るだけの。何一つ不自由のない。大人子供のような中途半端な=中村真。静かな川の流れのようにおだやかな=石坂。大名も及ばぬ豪奢ごうしゃな=円地。弥縫びほうにするこもできないほどあまりに支離滅裂な=梶井。夫婦喧嘩げんかすらも大っぴらにできないような不幸な=川端。老夫婦の淡い愛情と静かさとに満ちた=佐藤。足かけ五年に及ぶ江戸での=高橋克。異境での恵まれぬ=豊田。浮草のように流れていくだけの=渡辺。薄い壁を隔てて触れ合うような率直さを欠いた=落合。修道院の坊主みたいな=田中。砂を噛むように索漠たる=菊池。薄氷を踏むような=。針地獄に等しい=村上元。ひっそりとした貝のような=三田)。生活が(安定する。かなり派手。旧に復する。緊張の連続。単調に流れる。楽ではない。乱脈を極める。足元から崩れる。がらりと一変する。向上の一途をたどる。伝統に満ちている。細い蔓つるにいうな根をのばす=柴田)。生活が続く(息苦しい。面白おかしい)。生活に(進歩がない。退屈を感じる。弾みがつく。はりがある。変化が起こる。ゆとりがある。余裕がない)。新しい生活に踏み出す。安定した生活に入る。一生生活に困らない。差し当たっての生活に不自由はしない。単調な生活に飽き飽きする。都会の生活に疲れきる。日常の生活に即して説明する。畑違いの生活に挑戦する。日々の生活に追われる。元通りの生活に戻る。自分の生活に他者を入り込ませない=桐野。生活の安定を得る。不遇な生活のうっぷんを晴らす=高橋三。生活のにおいの(しない俳優。しみこんだ家具=日野)。生活を(破壊に導く。内面から高める。守ることに汲々きゅうきゅうとする)。新しい生活を始める。自分の生活を打ち立てる。十人並みな生活をする。四六時中生活をともにする。他人の生活を詮索する。風景に生活を調和させる。貧しい生活を強いられる。苦行者のごとく簡易質素の生活を選ぶ=太宰。自由な生活を屈託なく楽しむ=石坂。わが骨を噛かんだむがような求道との生活をつづける=司馬。▼生活を送る(平穏無事な。鬱々とした。こざっぱりとした)。生活を続ける(愛欲の。悶々もんもんと暗い思いで=伊坂)。共同生活(他人との。風に吹き寄せられた落ち葉のような=辻井)。国民生活が(疲弊する。豊かになる)。夢に没入して実生活を荒廃させる。生活手段に事欠く。生活手段を確保する。生活程度が(高くなる。低い)。生活水準が(上がる。目に見えて向上する)。生活水準を下げる。生活物資を(確保する。備蓄する)。慎ましい生活ぶり。日常の生活ぶりは質素。上流階級にふさわしい生活様式。民生が安定する。 **せいかつする【生活する】** 同じ部屋で芋を洗うように生活する=今日。どうにか生活できる。食っていく道を考える。衣食足りて礼節を知る。衣食住に(お金を使う。事欠かない。不自由しない)。衣食の口を周旋する。身を立てる(商いで。板前として)。 **せいけい【生計】** 生計の道を講じる。家の生計を助ける。▼生計を立てる(アルバイトで。仕立物をして。農業で)。一家の生計が成り立つ。一家の生計を支える。なんとか口を糊こうするだけの収入。糊口ここうを(潤す。凌しのぐ)。たつきを(助ける。立てる)。 **ひとりぐらし【一人暮らし】** 一人暮らし(気ままな。気楽な。寂しい。大学からこっちずっと)。一人暮らしの生活不如意。男の独り暮らしは蛆うじが湧く=小林信。家を出て一人暮らしを始める。暮らす(一人寂しく。一人でぽつんと。世に離れて一人。孤島で一人だけで=丹羽)。一人わびしく住む。一人で優雅に暮らす。山の中で一人で暮らす。山中に独居する。独居に慣れる。気楽な一人住まい。一人住まいする(親元を離れて。都会で。辺鄙へんぴな所で)。 **ひとりもの【独り者】** 独り者(親不孝な。気楽な。恋人なしの)。一生結婚しないままで終わる。独り身の気楽さ。不如意な独り身の生活。独り身を通す。男後家おとこやもめには蛆うじがわく=富岡。生涯後家を通す。未婚の(男。女性。母。娘に手を出す)。独身でいると決めてかかる。一生独身で過ごす。生涯を独身で通す。独身に(甘んじる。徹する。戻る)。独身の気楽なアパート住まい。ずっと独身を通している。独身生活を続ける。優雅に独身生活を楽しむ。蛆を湧かせた男やもめ=有栖川。男やもめにうじが湧く。女やもめに花が咲く。 **ふうぞく【風俗】** 風俗(軽佻浮薄けいちょうふはくな。派手な。粗野そうやな。市井の。流行の)。まだ見ぬ風俗に憧れる。華美な風俗の限りを尽くす。風俗を(描く。商売にする)。時事風俗を扱った小説。風俗営業を取り締まる。風紀が(乱れる。悪い)。風紀の乱れを正す。風紀を(害する。紊乱びんらんに処する。乱す。よくする)。 <376> # 比べる・測る **おんど【温度】**温度が(著しく下降する。じわじわと上昇する)。暑苦しいほど温度が上がる=辻井。快適な温度と湿度に保たれる。高い温度に耐える。お湯の温度を調節する。温度差が(大きい。小さい)。温度差を感じる。涼しいを通りこして肌寒い気温三浦し。昼と夜の気温差が激しい。体感温度が(高い。低い)。寒暖の差が(小さい。激しい)。高温で(殺菌する。溶かす)。低温で保存する。低温を(好む細菌。利用した貯蔵)。適温に保つ。適温にする(室内を。湯を)。 **かくど【角度】**いろいろな角度から眺める。異なった角度から分析する。様々な角度から検討する。見る角度によって色が変わる。ルームミラーの角度を調節する。急角度に(傾斜する。曲がる)。急角度で話題を屈折させる。山裾が急角度でなだれ込んでいる。 **かくりつ【確率】**万に一つの少ない確率。確率が(皆無に等しい。高いと踏む)。何万分の一かの確率に賭ける。確率はゼロに近い。生死の確率は五分五分。確率を(計算する。基に線引きする)。蓋炎性が(ある。高い。ない。低い)。確度の高い情報を得る。 **きじゅん【基準】**基準(客観的な。公明正大な。商品を選ぶ。善悪の)。基準がころころ変わる。基準から外れる。生活の基準を失う。ガイドラインを(示す。まとめる。設ける)。▼金科玉条とする(教典の教えを。師の言葉を)。思想の次元が高い。理解の次元が低すぎる。別の次元に属する。次元の違う問題。次元を異にする。 **くらべられない【比べられない】**何物にも比べられない。他に比べるものがないほど最低。比べるものがないほどの喜び。遠く及ぶところではない。比較ができない。まるで比較にならない大きな差。比較にならないほど(優れている。難しい)。比較にならぬほどの被害。比較を絶する。比すべくもない。比する者がいない。頭の鋭いことは比類がない。比類なき(感覚の持ち主。剛勇の士)。なくてはかなわぬ比類なき価値。比類のない美しさ。生命は比類もなく厚い=福水。比類を絶する正確なデッサン。 **くらべる【比べる】**▼比べる(直訳と意訳を。二つの文章を。昔と今とを。自国を他国と)。以前に比べて進歩が顕著。昨年に比べて作物の出来が良い。前年に比べてほぼ横ばい。都会に比べて緑も多い。例年に比べて厳しい暑さ。顔の若さに咬くらべて白髪が多い谷村。大きさに比して意外に軽い。思い比べる(今と未来を。昔と今を)。▼引き比べる(自分の境涯に。我が身に。自分と相手の環境を)。▼読み比べる(関係資料を。記事を)。▼対比(今昔の。新旧の。動と静の)。際立った対比の妙を浮き彫りにする。▼対比する(二つの小説を。雪の白さと墨を)。▼天秤んにかける(命と金を。女と将来を。両者を)。▼秤吐かにかける(愛と打算を。職業意識を)。自分の深情けぶりと相手の遂情ぶりをはかりにかける瀬戸内。秤にかけて比べる。経験と体力を秤にかけるような鋭い眼=新田。 **けいき【計器】**計器に依存する社会。計器の針が(はね上がる。ゼロの位置に戻る)。測定用のゲージ。ゲージが満タンを示す。旧式の測定器がお蔵入りとなる。メーターが(回る。ぐんぐん上がる)。メーターの針が振れる。▼メーターを検針する(ガスの。電気の)。 **こうせい【校正】**校正に一区切りつける。校正の(赤鉛筆。赤ベン。朱筆)。ゲラを校正する。赤インクが咲く=原田康。朱筆を(入れる。加える。握る)。米を入れる。校正者の見落とし。ゲラと原稿を(突き合わせる。引き合わせる。読み合わせる)。ゲラに(赤字を入れる。朱を入れる。赤ペンを走らせる)。校了明けてどんなに疲れて帰宅しても肌の手入れは怠らない三浦し。校了日が間近く迫って比較的忙しい日=後藤。素統みする(ゲラを。校正刷りを)。 **こうりつ【効率】**効率が(いい。悪い)。効率を(心がける。追求する。上げることに血道を上げる)。高い経済効率を確保する。▼効率化する(経営を。流れ作業を。物流を)。効率化を(推進する。図る)。効率性を(損なう。高める)。燃費が(向上する。悪い)。 **じょうぎ【定規】**定規で引いたように真っ直ぐな道路じょうぎ"東野。ウキが定規で引いたみたいに一線上に並ぶ"開高。薔薇ばらのつぼみがどれも定規で計ったように大きさがそろっている=小川。定規を当てる。定規のようなしっかりした目を向ける=連城。背中を定規のようにビンとさせる=宇野利。 **すいじゅん【水準】**水準(過去最高の。過去最低の。史上空前の。要求とは程遠い)。知識的水準が高い。一応は玄人の水準に達する。危機的な水準に沈む。国際的に高い水準にある。低い水準にとどまる。平均値以下の水準に低迷する。十年前の水準まで戻る。水準を遥かに超える。一定の水準を保つ。最新の技術水準を習得する。最高水準を誇示する。水準以上の出来。要求水準に応える。レベルが(高い。低い)。日に日にレベルが上。幼児的なレベルにまで退行する。一般レベルを遥かに超える。 **ぜったい【絶対】**絶対の(権力。自信を持つ。真理)。▼絶対視する(経験を。理論を。個人的な好みを)。絶対的な(価値、権威。勝利。真理。多数を占める。優位に立つ)。絶対的に(支持する。信用する)。 **そうたいてき【相対的】**相対的な見方。相対的に(順位が上がる。見る。緑が残っている)。▼相対化する(愛を。文化を。歴史を)。 **たいしょう【対照】**二人の気質が火に水といった対照をなす。▼対照をなす(えも言われぬ。絶好の。飛沫しょの目に沁みる純白が広吐はい海の濃いブルーとこよない=北)。▼対照する(二つの場合を。原文と)。好対照の二人。山の濃いみどりと入道雲の白が対照的三浦裟。対照的な(関係。人物。性格。存在。立場。場所。二人)。天真爛漫にんもんな母に対して物静かな父という対照的な組み合わせ=阿川佐。対立する者が赤鬼と青鬼のように対照的に見える!高橋和。対跡的にいれな(立場。二人。文化)。光と影が生む強烈なコントラスト=松岡。コントラストがひときわ目立つ。コントラストを(強めにする。弱めにする)。鮮やかなコントラストをつくる。対極に(位置する。立つ)。神の対極に悪魔が在る=中野美。対極の立場。 <377> # 比べる・測る **たいしょう【対照】** 二つの色彩が美しい対照の妙を生かす。▼対照をなす(えも言われぬ。絶好の。飛沫しぶきの目に沁みる純白が広汎はい海の濃いブルーとこよない=北)。▼対照する(二つの場合を。原文と)。好対照の二人。山の濃いみどりと入道雲の白が対照的=三浦。対照的な(関係。人物。性格。存在。立場。場所。二人)。天真爛漫らんまんな母に対して物静かな父という対照的な組み合わせ=阿川。対立する者が赤鬼と青鬼のように対照的に見える=高橋和。対照的に妙な(立場。二人。文化)。光と影が生む強烈なコントラスト=松岡。コントラストがひときわ目立つ。コントラストを(強めにする。弱めにする)。鮮やかなコントラストをつくる。対極に(位置する。立つ)。神の対極に悪魔が在る=中野美。対極の立場。 **ていど【程度】** 程度(差し支えのない。枯れ木も山のにぎわいという=藤沢)。衰弱の程度が激しい。かなりの程度に上達する。一応言ってみるという程度のこと。▼加減(ほどよい。ちょうどころあいの)。度が(進む。強い。弱い)。悪戯いたずらにしては度が過ぎる。破壊の度が深まる。眼鏡の度が合わない。度を(重ねて逢う。過ぎた介入は困る)。親密の度を深める。▼度を加える(困惑が。貧困の)。▼度を増す(事態が緊迫の。次第に興奮の)。ほどの(よい甘さ。いいところで切り上げる)。ほどを見計らう。 **どあい【度合い】** 危険の度合いが高まる。疲労の度合いが激しい。拒絶される公算が大きい=舟橋。聞き入れてくれる公算はゼロに近い。目撃者のいる公算は少ない。 **のうりつ【能率】** 能率が(落ちる。向上する。低下する。よい。悪い)。能率のいい経済システム。▼上がる(仕事の能率が。生産能率が)。仕事の能率が悪くなる。 **はかり【秤】** どっちつかずに揺れる胸の秤=連城。▼秤にかける(重みを。菓子を。才能を)。二人の愛の秤の重みが水平に保たれる=瀬戸内。秤を水平に保つ。親子の情愛の秤の目盛りが揺れ動く。愛情を秤にかける。関係がいつも緊張をはらんだ情愛のなかに秤のように懸かっている=辻井。水平線が長い秤のように左右にかしぐ=阿部。天秤てんびんが片方に傾く。天秤に載せる。 **はかる【測る】** ▼測る(長さを。深さを。量を。距離を正確に。世間並みの物差しで)。▼計る(基礎体温を。血圧を。時間を。人間の価値を。熱を。間合いを)。目方を量る。重さを量る(不安の。風袋ふうたい引きで)。人間を測る(金で。出世で)。▼思い測る(心中を。人の心を)。計測する(握力を。距離を。健全度を。深さを)。実測する(遺跡を。建築物を。面積を)。測定する(雨量を。距離を。体力を。放射能を。星の明るさを)。秤量はかりする(重さを。重量を。貨幣で富の価値を)。目盛りを読む。計量をパスする。▼計量する(重さを。強度を。範囲を。風袋を省いて)。日本全土の測量を完成する=吉田。▼測量する(水深を。道路を。土地を)。距離を歩測で確かめる。部屋の長さを歩測する。距離を歩数で記憶する=陳。歩数を(数える。計る)。▼目測する(位置を。距離を。高さを。幅を。量を)。傾斜を目で測る。目分量で(こしらえる。測る)。ざっと目分量で決める。 **ひかく【比較】** ▼比較する(一長一短を。支出と効果を。優劣を。父と先生を。二つの報告を。二人の芸を。大ざっぱに。念入りに。孤独と寂しさを。ゴリラと人間を)。すべての要素を吟味比較する。比較検討する(条件を。両方を)。▼比較対照する(二つのものを。自社製品と他社製品を)。費用の割に役に立たない。大きな図体の割には臆病。騒ぎの割にはたいしたことがない。 **ひかくてき【比較的】** 比較的(大きな店構え。気楽な生活。構造が単純。静かな場所。地味な仕事。時間に余裕がある。のんびりした旅。変化しにくい物質)。仕事が比較的早く進む。割合(小柄な女。単純な仕事)。割合に(記憶力が確か。金銭に淡白。種類が少ない。台所が広い。冷たい手。例外が多い。時間が自由になる)。 **ひょうか【評価】** 評価が(高い。低い。分かれる。定まる)。評価を(下す。与える。受ける)。過大に評価する。評価に値しない。 **ひょうじゅん【標準】** 標準に達する。標準より(大きい。小さい)。標準を(上回る成績。定める)。世界共通の標準的なやり方。スタンダードな(技術。製品。理論)。規格に(合う。あてはめる。外れる)。規格を(画一化する。そろえる)。 **ひりつ【比率】** 比率が(上がる。下がる。高い。低い。減る)。働きに応じた比率で配分する=鈴木光。比べる。一定の比率を設ける。用途に応じて比率を変える。高率の(関税。ポイント)。定率の(税。利子)。レンズの倍率。倍率が(高い。低い)。歩合で(計算する。払う)。歩留ぶどまりが(いい。高い。悪い)。率が(上がる。安定する。いい。下がる。高い。低い。日増しに低下する)。レートが(上がる。下がる)。割合が(変わる。高い。低い)。一週間に一回の割でやって来る。一月に一回の割で支払う。比重が(大きい。重い。高い。小さい。低い)。比重を(測る。増す)。 **みくらべる【見比べる】** ▼見比べる(写真と実物を。二枚の写真を。母親と姉を。二つの表を。二人を交互に。ためつすがめつ)。▼顔を見比べる(名刺と。まじまじと二人の)。規則に照らして処置する。実地に照らして確かめる。▼照らして考える(心の歴史に。データに。法に)。 **ものさし【物差し】** 物差しが狂う。物差しで額をびしゃりと叩く=横山。▼尺度(普遍的な。世間に流通する)。考え方の尺度が違う。単一の尺度でふるいにかける。普通の尺度では計れない。巻尺で(寸法を測る。長さを測る)。巻尺を巻き取る。 **わりに【割に】** 割に(長い記事。低い天井。広い部屋。安く手に入る。はきはきした口調。はっきり覚えている)。割と(いける味。気のいい男)。割合(声。好みがうるさい。真面目な口調で叱る)。 <378> # 繰り返す **あいつぐ【相次ぐ】**▼相次ぐ(閣僚の辞任が。帰国する人が。トラブルが。警察に問い合わせが。高層ビルの建設が。受信料の不払いが)。相次いで(帰ってくる。事故が起こる。父母が世を去る)。度重なる(脅迫に堪えかねる。催促にも応じない。悲運に眼をうるませる半月)。外泊が度重なる。 **あらためて【改めて】**改めて(頭を下げる。肝に銘じる。姿勢を正す。戦いを挑む。読み直す。礼を言う。検討を要する問題。紹介するまでもない。問うまでもない)。明日改めて話し合う。いずれ後に改めて説く。端倪すべからざる力量を改めて痛感させられる。 **いまさらながら【今更ながら】**今さらながら(頭の下がる思い。恐ろしく思われてならない。恋しくてならない。腹が立ってくる。身にしみて痛感する)。今更ながら断ち難い愛着がある=石川。今さらのように(驚かないではいられない。感激が脳裏によみがえる。寂しく思われる。自分の非力を悟る。胸をときめかせる)。いまさらのように好意が身にしみる渡辺。あの頃が今さらのように懐かしい荒巻。 **うまれかわる【生まれ変わる】**▼生まれ変わる(細胞が。次の世に。新しい工業都市に。驚くほど勤勉な男に=黒井)。生まれ変わったつもりで頑張る。市民社会が劇的に生まれ変わろうとしている"五木。鬼の生まれ変わりではないかと思えるほど酷いとい虐いじめ方をする連城。 **かさねがさね【重ね重ね】**重ね重ねの(災難。難儀。不幸。無礼を詫びる)。重々(心得ている。承知している。わかっている)。 **かんこつだったい【換骨奪胎】**古典の換骨奪胎に過ぎない。換骨奪胎のテレビ番組。原話を見事に換骨奪胎した名作。換骨奪胎した作品(先人の作を。中国の怪異話を)。先人が考案した手を失敬して自作に用いる鮎川。 **くどくど**くどくど(文句を言う。言わずに引き退さがる=舟橋)。くどくどと(お説教をする。小言を言う。長くしゃべる。念を押す。繰り言を並べる。知ったかぶりを並べたてる。何度も詫びを言う)。▼繰り返す(いつまでもくどくどと一つ話を。臭いセリフをくどくど=田中)。くだくだ言い訳する。くだくだしい(おしゃべり。詮談を聞かされる)。くだくだしく(言うに及ばない。述べる要もない)。▼くだを巻く(はた迷惑な。飲み屋で。酔って)。勝手な理屈をつけてこねる。 **くりかえし【繰り返し】**繰り返し(何度も見る。一つくりかえし事を言う。同じことを言う。自分に言い聞かせる。辛抱強く説明する)。▼繰り返し(決まりきった作業の。単純なメロディーの。似たり寄ったりの質問の)。心の中で繰り返し念じる。手紙を何回も繰り返し読む。機械的な繰り返しが長く続く。繰り返しにうんざりする。繰り返しの多い話。繰り返しを(重ねる。避ける)。▼同じことの繰り返し(毎日。行く先々で)。同じ個所を繰り返して見る。くどいほど何遍も繰り返して話す。口を酸っぱくして(言う。数えこむ。説教する。説明する。注意する。説く)。口が酸っぱくなるほど細かく説明する谷崎。 **くりかえす【繰り返す】**▼繰り返す(同じ失敗を。同じ動作を。同じ返事を。帰納と演繹しを。建設と破壊を。細胞分裂を。失言と陳謝を。執拗な攻撃を。車線変更を。喪失と回復を。躁と鬱を。単調な仕事を。同様の質問を。何回も再生を。口癖のように。次から次へと。雨が降ったり止んだりを。くっついたり惟れたりを。心の中で詫びを。これまでのバターンを。しばらく姿逡巡し以を。絶えざる戦闘を。小さく一進一退を。つまらないミスを。つまらぬ争いを。出会いと別れを。飛行機が上昇下降を。胸の内で疑問を。良くなったり悪くなったりを。一日じゅう飽きずに。幾度も心の中で。同じ言葉を何度も。同じことを何十遍となく。言葉を噛みしめるように。言葉を胸の中で。根気よく何べんも。先の陳述をもう一度。単調な動作を延々と。何度も性懲りもなく。打ち寄せては砕け、打ち寄せては砕け、波がゆううつなほど同じ調べを"山本有。同じ容態に違った処方をする多くの医者たちの間を往復するような愚かさを=中島。空疎な高笑いを=高橋和。個体発生は系統発生を安部。切なそうに弱い呼吸を高橋三。判で捺ぉしたように同じことを"内田康。飛行機が何度も離着陸を"柳田。若い頃の苦労話を"重松。憑っかれたように執拗に"つか。どこかで言い出したことをオウムのように口の先だけで=白井。同じ言葉を鸚崎は、のように森理。同じ質問をテープレコーダーを再生するように"西木。同じような役目を飽きずに毎日芥川。回転扉の連続運動のように長野。壊れたレコードのように=辺見。欲しい欲しいと呪文のように鷺沢。黙々と何度も倦、うまずたゆまず開高)。かんでふくめるように何度も同じことばをくりかえす飯田。とっくりと得心の行くように何万回でもくり返す子母沢。幾度も繰り返す(玩具に熱中する子供のように『有吉。自分に言い聞かせるように"日野)。▼同じ言葉を繰り返す(譫言ごとのように。念仏のように。うつけたように"福水。馬鹿の一つ覚えのように=村山。耳にタコができるほど=獅子)。▼言葉を繰り返す(呪文のように。復唱するように相手の言った=本庄)。うるさがられるほど繰り返し言う~二葉亭。循環小数の如く繰り返して飽くことを知らない=夏目。▼繰り返される(冤罪んが。惨劇が。歴史は。いたちごっこが)。裏を返す。回を重ねる。二度と繰り返さない。 **じょうしゅう【常習】**常習者(賭博の。麻薬の)。▼常習犯(空き巣の。遅刻の)。 <379> 麻薬の)。▼常習犯(空き巣の。遅刻の)。前倣で水を踏む。復唱する(台詞を。名前を。命令を。恐旨を)。 **さいかい【再開】**再開の目鼻がつく。再開を(決定する。宣言する)。取引の再開を望む。▼再開する(運航を。活動を。供給を。工事を。仕事を。実験を。週明けから)。▼再燃する(金融危機が。対立が。紛争が。見直し論議が)。運動の再燃に弾みがつく。 **さいきょ【再挙】**再挙の(機をつかむ。機会が遠くなる)。再挙を図る。他日の再挙を期する。捲土重来叶んど心のチャンス。▼捲土重来を期する(他日の。七転び八起きの精神で)。 **さいげん【再現】**英雄の再現。失敗の再現を避ける。▼再現する(過去の事件を。当時の地図を。正確に。忠実に。見事に。生き生きと。決定的な瞬間を。やりとりの模様を)。ドラマを再現するうえで欠かせない資料。▼再現される(昔の記憶が。三十年前の争いがまたぞろ藤沢。前夜の出来事が脳裏で生々しく鈴木光。ビデオで再生したように=貫井)。ユーカラの中の英雄の再現のような風貌"海音寺。再現フィルムふうに状況を説明する=志茂田。危機の再来を防ぐ。混乱の再来を回避する。悪夢の再来を決して許さない"有川。 **さいさん【再三】**再三(押して頼む。電話をかける。ならずある。念を押す。耳にする。言ってもきかない。慰留につとめる)。再三に(わたって願い出る。わたり救ってやる)。再三のチャンスを逸する。再三再四(懇望する。辞退する。立候補を総洒しいぅする)。一度ならず(口にする。経験する。見た記憶がある。二度までも過ちを繰り返す貫井)。 **さいせい【再生】**再生に取りかかる。ビデオを再生にかける。再生への第一歩。再生を信じる。死者たちの再生を恐れる。組織の再生を誓う。▼再生する(記憶が。システムが。生物が。環境を。曲を。組織を。DVDを。藻場を。留守番電話を。テーブレコーダーを)。再生ボタンを押す。廃品を再生利用する。 **さいにん【再任】**再任を妨げない。役員に再任される。役職を重任する。重任を(妨げない。果たす。引き受ける)。 **さしもどす【差し戻す】**▼差し戻す(控訴を。申請書を。事件を地獄に。法案を委員会に)。提糸をにべもなく却下する。 **しばしば**しばしば(会話に挟む。顔を見せる。口にする。失敗を犯す。名前が出る。耳にしている。猛威をふるう。例を引く。話題になる。各地を旅行する。計算間違いをする。混同して用いられる。トラブルが起こる。夢の中に現れる)。マスコミにしばしば登場する。建前はしばしば実態によって裏切られる=柳田。 **しゅうきてき【周期的】**周期的な(運動。恐慌)。周期的に(現れる。巡行する。めぐる)。月が周期的に満ち欠けする。吐き気が周期的に襲う。 **たてつづけ【立て続け】**立て続けに(事件が起きる。問いを発する。二番負ける。横波を受ける。石を川に投げ込む。クラクションを鳴らす。シャッターの音が響き渡る。何人か殺される。ビールを何杯も飲む)。コップの水を立て続けに飲む。銃声が立て続けに鳴る。煙草を立て続けに何本も吸う。とりとめもない夢を立て続けに見る。二三度立て続けに声をかける。べらべらと立て続けにしゃべり立てる。ぐいぐいと三四杯立てつづけにあおる=中島敦。堰せきを切ったように立て続けに話しかける=中局み。 **たびたび【度度】**たびたび(逢いに行く。足を運ぶ。外泊をする。顔を合わせる。台風が襲う。電話をくれる。話題に上る。後ろを振り返って見る。外国に出かける。記憶によみがえる。激励にあずかる。来られると迷惑。滑りそうになる)。耳にたこが出来るほど度々聞かされる=舟橋。仕打ちがたびたびに及ぶ。たびたびの実例がある。今に始まったことではない。一度や二度ではない。一再ならず(賭場へ出かける。入会することを勧められる)。饗応ぶり」を受けたことも一再にとどまらない藤沢。仏の顔も三度。二度あることは三度ある。二度三度と(うなずく。重なる)。一度ならず二度までも。二度も三度も重なる。二度や三度ではない。よく(遊びに行く。聞く話)。名をよく耳にする。足繁く(里帰りする。出入りする。店に通う)。足しげく金の催促に来る=吉川。訪れが足繁くなる。繁く会う。邺せんが繁く鳴く。繁くなる(秋の虫の声が。雨足が。往来が。客が。雪が)。虫の羽音が繁くする。三日にあげず(会う。遊びにくる。行き来する。訪ねてくる。やって来る。頭痛に悩まされる)。三日と置かずにやって来る。 **つづけざま【続け様】**続けざまに(仕事を頼む。質問を投げる。大杯を干す。煙草を吸う。引き金を引く。頬をなぐる。四発を撃つ。くしゃみが出る。拳を振り下ろす。シャッターを押す。ピストルの音が響く。頬っぺたを打つ。三口ほど味わう)。茶を二三杯続けざまに飲む。七つ八つ続けざまに叩く。二三度続けざまに銃声が聞こえる。平手打ちを三つ四つ続けざまに食らわす。二声三声続けざまに叫ぶ。クラッカーの乾いた音がつづけざまにはじける三浦。 **なんど【何度】**何度(言ったか知れない。見ても飽きない)。幾度(聞いても聞き飽きることがない。運んだか数え切れない)。幾度となく(顔をしかめる。恋におちる。試練を経る)。日に幾度となく鏡に見入る。淡度も同じ話をする。根気よく幾度も繰り返す。何回となく(足を運ぶ。話を前に戻す。耳を傾ける)。何べん開かされたか分からない。何べんとなく夢に見る。同じことを何べんも反復する。 **なんども【何度も】**何度も(足を運ぶ。頭を下げる。うなずく。顔を出す。口の中で呟く。繰り返し見る。話を聞く。読み返す。礼を言う。失敗を繰り返す。電話をかけて来る)。途中で何度もやめたいと思う。 # <380> 涙ぐみながら何度も謝る=重松。何度となく(世話になる。夢に見る。口に出しかける)。日に何度となく電話がかかってくる。一つ話を何度となく言い直したり聞き直したりする氷川。 **にほんせんじ【二番煎じ】**二番煎じと言えば初めの作品に劣るものと相場が決まっている。二番煎じに堕する。旧作の二番煎じに過ぎない。二番煎じの(作品。茶番めいた芝居村松)。二番煎じはきかない。 **はんすう【反芻】**希望が反芻するにつれて大きくなる大岡。反芻する(美しい日々を。先程の会話を。繰り返し。何度も。いま開いた説教を。耳に残っている声を。言葉を頭の中で。夢とうつつの間で記憶を"光原。肌の触れ合いの感触を動物的に筒井。胸に拡がっていた不安を牛のようにもう一度=遠藤)。一つことを執念深く反芻し続ける筒井。 **はんぷく【反復】**反復が多い。反復の多い音楽的手法。反復を経る。波の音が単調な反復を繰り返す。反復する(同じことを。機械的に。執拗に。何度となく)。反復して(使う。練習する)。 **ひんばん【頻繁】**頻繁な(車の行き来。書簡の往復)。交通の頻繁な道路。人通りの頻繁な道。頻繁に(足を運ぶ。行き来がある。発作を起こす。メールが来る。ミーティングを開く。連絡を取り合う)。追い追い頻繁に出入りするようになる。頭痛が頻繁に起こる。手紙が頻繁に往来する。名が頻繁に出る。頻繁に顔を(合わせる。出す)。頻繁になる(交流が。度数が。訪問が)。頻々と(店へ立ち寄る。お忍びでやって来る)。便りを頻々とよこす。天災が頻々と起こる。敗報が頻々と伝えられる。流言が頻々と飛ぶ。 **ふたたび【再び】**再び(かえらぬ青春。活動し始める。旧に復する。口を開く。鞘ゃに納まる。姿を現す。手元にかえる。筆を執る。平和が訪れる。逢うことももう二度と再び見たくない。もう二度と再び戻っては来ない。呼べど再び帰らず。再々家を留守にする。再々の警告にもかかわらず。同じ言葉を二度繰り返す。また(思い出したように始まる。姿を見せるようになる。一雨きそうな模様。話題を蒸し返す)。再度(犯行に及ぶ。連絡を試みる。同じ質問をする)。練がましく再度訪ねる。再度の事情聴取を試みる。よしんば再度の企てがあったにせよ。 **ぶりかえす【ぶり返す】**▼ぶり返す(暑さが。痛みが。変な思想が。昔の病気が。放蕩汨分がまたぞろ)。しばらく鎮まっていた遊びぐせがぶりかえす幸田文ぶり返した恐怖と悲しみで心臓が苦しい松浦。いつ再発するか分からない。病気が再発する。再発防止に(最善を尽くす。努める)。 **またしても【又しても】**またしても(チャンスを逃がす。ミスをしてしまう)。性懲りもなく(あれこれ思い処?三好応。脱走の試みを繰り返す=大江)。またぞろ(けしからぬことを考える。例の馬鹿げた話を持ちだす)。しばらくするとまたそろそろ行きたくなる=開高。またまた(ショックを受ける。大事故が発生する。チャンスを逃す。追加点をあげる)。 **むしかえす【蒸し返す】**蒸し返す(前のことを。別れ話を。折にふれて。際限もなく。ねちねちと。十数年前の事件を。終わってしまっていた話題を=鎌田。五十年も前の犯行を=船山)。▼話を蒸し返す(昔の。なにかの拍子に最初の夜の"原田康)。紛争の蒸し返し。寝た子を起こす。 **もういちど【もう一度】**もう一度(お目にかかる。顔を出す。頑張ってみる。繰り返す。攻勢をかける。相談してみる。念を押す。おさらいをする。現場を確認する。最初から丁寧に見ていく。人生をやり直す。駄目を押すように言う。初めから読み直す。ブランを練り直す)。▼もう一度(黄金の時代を。夢よ)。改めてもう一度見やる。死ぬまでにもう一度見たい。今一度(確かめる。お目にかかりたい)。もう一遍(会いたい。考え直す。花を咲かせる。やり直す)。 **やきなおし【焼き直し】**▼焼き直し(失敗作の。古いドラマの。安っぽい。よくある表現の)。焼き直しを(試みる。批判する)。▼翻糸する(戯曲に。小説を舞台用に)。改作を試みる。改作する(歌を。旧作を。詩を。文章を)。 **やりなおす【やり直す】**▼やり直す(計画を一から。最初から。ゼロから。初めから。裸一貫で。日を改めて。勇敢に何度も。四十代から先を)。人生をもう一度やり直すには遅すぎる=小林久。もう一度やり直し。やり直しにかかる。捜査のやり直しを求める。今ならまだやり直せる。▼きかない(済んだことはやり直しが。今さらやり直しは)。▼し直す(挨拶を。一から勉強を。着付けを。計算を。化粧を。しつけを)。心機一転(新しい仕事に取り組む。今までとまったく違ったことにトライする=畑村)。新規巻き直しの生活を始める=庄野。新規巻き直しを図る。再編の動きが出る。▼再編する(政界を。組織を。国民経済を合理的に)。中期経営計画に基づく事業再編=姫野。▼出直す(新たに。頭を冷やして。改めて。改名して。顔を洗って、初めから。部屋を畳んで。もう一度。裸になって一から=篠田)。出直しを図る。リセットを繰り返す。▼リセットする(気持ちを。ゲームを。政治を。設定を)。リセットボタンを押す。 **れんぞく【連続】**連続(月並みな言葉の。毎日が新しい発見の)。苦しい緊張の連続から逃れる。会議の連続でへとへとになる。細かな不祥事が連続する。連発する(エラーを。愚問を。舌打ちを。質問を。ジャブを。新記録を。駄洒落心を。凡ミスを。小さなあくびを)。 # 苦しむ・喘ぐ <381> **あえぐ【喘ぐ】**▼喘ぐ(胸苦しいほど。息が切れて犬のように藤沢。死にかけの金魚のように=曽野)。▼あえぐ(重い税に。業績不振に。資金難に。生活苦に。あまりの暑さに。悲愁のどん底に。重みに耐えかねて。数日の間歩き続けていたようなひどい疲労に=光酒。胸にこみ上げる不安に=山田太。列車が尻をぶっ叩かれた馬のように=小島)。▼出してあえぐ(犬が舌を。情けない声を)。あえぎながら(坂を登る。注文をさばく)。悲鳴のようなあえぎ=大江。あえぎあえぎしゃがれ声をしぼる"杉本。急な坂道をあえぎあえぎ登る。水がちょろちょろあえぎあえぎに通う。あえぎがいかにも苦しげ。性の喘ぎに似た恐怖の喘ぎ藤本。閩房时ぶでの喘ぎを連想させるような声=源氏。息が上がる。息切れする(階段をのぼると。ちょっと走っただけで)。はあはあと(荒い息をつく。肩で息をする。胸が高く波を打つ)。ぜいぜいと荒い息をつく。ぜいぜい息を切らして駆ける。喉がぜいぜい鳴る。 **いきぐるしい【息苦しい】**息苦しい(家族制度のしがらみ。状況から解放される)。息苦しい(圧迫感がじわじわと自分を押しつけて"円地。良人法っの記憶をかみしめながら暮らした二ヶ月が泥沼のように"石川。肺臓が胸壁に貼りついたように吉村。肺に空気がなくなったように泉俊。深い沼の底にいるように"阿部)。押さえようもなく胸が高鳴って息苦しいほど=船山。中国茶の息苦しいくらいにきつい香りの小川。不安と焦躁と嫉妬の交錯した息苦しい生活!舟橋。息苦しいくらい胸がいっぱいになる=山口。息苦しいほど(胸がひきしまる=中村真。膝に胸を押しつける=半村)。息苦しいほどに蒸し袋い日佐藤愛。息苦しいほどの山の緑曽野。不安に胸が詰まって息苦しくなる伊集院。息苦しさ(あたりの空気が重みをもっていて四方から圧ぉし縮まってくるような山本周。胃袋を掘っかみ上げられたような「阿久。心臓をしめつけられるような=堀。肉塊を鼻先に見るように切迫した伊藤整。真綿で首を締めつけられるようなぃ小林久)。胸の息苦しさがいくらか薄らぐ、息苦しさに耐える。聞くに耐えない息苦しさを感じる=石川。 **いたたまれない【居たたまれない】**▼いたたまれない(恥ずかしさに。傍観しているのが。不安と焦燥感で。なつかしい気持ちとうらめしい思いが入り交じって白洲)。無気味な沈黙の中に居たたまれない=新田。心理的な不安定さが照れ臭さになっていたたまれない思い三浦朱。身体中に火が燃えているような居たたまれない気持ち円地。いたたまれなくなって逃げるように出てくる=曽野。沈黙にいたたまれなくなる。居たたまれぬほどに張りつめる不安古井。座に堪えない。 **おもいつめる【思い詰める】**▼思い詰める(一家心中をしようとまで宮部。自分の将来はもうないと貫井)。何事か一心に思いつめる。思いつめると(他の物が見えなくなる。見境もないことをやる)。思いつめた(顔で考え込む。様子にただならないものがある)。何かを思いつめたような熱っぽい眼差し。 **おもいなやむ【思い悩む】**▼思い悩む(心中密かに。あれこれ。くよくよ。一睡もできずに。一人の胸にしまい込んで)。気が病める。 **おもくるしい【重苦しい】**重苦しい(顔でうなずく。沈黙が続く。気分に包まれる。心に一条の光をもたらす。静寂があたりに垂れ込める。疲労がのしかかる。雰囲気から逃れる)。▼重苦しい(家の空気が飴のように=内田稔。胸の中がどしんと重たいものがかぶさりでもしたように宇野千)。どんよりと重苦しい曇天。雪にでもなりそうな重苦しい空。お通夜のような重苦しい空気が部屋に淀む"高見明。胸底に重苦しい泥の塊りが沈殿する=藤本。自分の意志に反したことを無理やりせねばならぬような重苦しい気持ち=柴田翔。麝香しか何かのように重苦しい匂い芥川。墨をまぜたような重苦しい夕焼け空永井龍。重苦しい空気が(漂う。立ちこめる)。重苦しい空気に耐えかねる。重苦しかった雰囲気が溶ける。不安が心を重苦しく押しつける。胸が重苦しくふさがれる。枯れ果てた心の重苦しさ。やりきれない重苦しさが消える。 **くきょう【苦境】**苦境(経済的な。一家離散の)。苦境から脱出する。苦境に(落ちる。耐える。立たされる)。農業が苦境に追い込まれる。苦しい立場。 **くじゅう【苦渋】**顔に暗鬱な苦渋がにじむ。苦渋に(彩られた顔。満ちた表情)。苦渋の決断を下す。顔に苦渋の色を浮かべる。 **くにする【苦にする】**▼苦にする(暑さを。略を。失敗を。敗北を。うじうじと)。苦にするには及ばない。いじめを苦に自殺する。経営無を苦に蒸発する。文学的感覚の欠乏を苦にやむ!宮本百。 **くのう【苦悩】**▼苦悩(酒で紛らわせなければならないような重大な森環。呼吸の止まるような=宮本百。身を切り刻むような「徳永)。苦悩が(はたの目にもありありと現れる。嵐のように襲う佐山)。新たな苦悩が始まる。顔に苦悩が宿る。じりじりと苦悩が内攻する。母の苦悩が痛いほど伝わってくる=横山。締切りの苦悩から解放される荻野。苦悩と絶望の日々を送る。苦悩に心を引き裂かれる。激しい苦悩に心が打ちひしがれる佐山。苦悩の(一夜を過ごす。重みに耐えかねる。十字架を背負う)。深い苦悩の淵に立つ烦に苦悩の影が浮かぶ。眉に浮かんだ苦悩の影大同。沸きたつ苦悩の底に坩堝っのなかの黄金のようにひとつの貴い喜びが残る=中。人類の苦悩をひとりで # 越える・区切る <382> # くるしみ **くもん【苦悶】** 思想と現実とののっぴきならぬ苦悶"横光。心の裡うちに芸術的な苦悶が渦巻く菊池。燃燃えつきようとする火の最後の輝きのような苦悶と恍惚こうに彩られた顔「加賀。苦悶とともに絶命する。苦悶に顔を歪ゅがめる。苦悶の(果ての決断。表情で血糊防のの中をのたうちまわる藤本)。死ぬほどの苦悶を味わう山岡。死の苦悶を見せつける!佐藤系。 **くるしい【苦しい】** 苦しい(憂いが解ける。訓練を経る。経験をなめる。困窮を訴える。時代を生きる。ときの神頼み。境遇を切り抜ける。境地に追い込まれる。緊張の連続から逃れる。戦いを余儀なくされる。練習をやり抜く)。苦しい(お腹が張って。部屋の外から火で培ぁぶられているように高樹。身を引き裂かれるように=つか。胸が押しつぶされるように=長与。胸が締めつけられるように。泉後。目ん玉が飛び出るくらい灰谷)。苦しい気持ちを(打ち明ける。まぎらわす)。苦しいほど(胸が焼ける。官能をかきたてられる)。苦しくて仕方がない。死ぬかと思うほど苦しくてたまらない=曽野。▼苦しくなる(資金の回転が。立場が。生活が日増しに。練習が日を追って)。胸が苦しくなるくらいどきどきする宗田。厚意が胸が苦しくなるくらいありがたい!鷺沢。白目を剣もいて苦しがる。血を吐くような思い林京。熱鉄を飲む思い。胸の苦しくなるような感張北村。▼楽ではない(暮らしが。生活が)。楽あれば苦あり。しんどい(仕事。気持ちが先に立つ)。体がしんどい。胸を楽しめ付けられるような中局多)。苦しさが(はけ口を求める。胸の底をかき立てる)。苦しさから目をそむける。苦しさに(身もだえする。喉をかきむしる)。身体に火のついたような苦しさにのたうちまわる=円地。心臓が喉へ突き上げてくるような苦しさに襲われる=山本周。練習の苦しさに耐えかねて合宿を逃げ出す久米。気が遠くなるほどの苦しさを我慢する=新田。生活の苦しさが(じんと伝わってくる。待ちかまえている)。 **くるしさ【苦しさ】** ▼苦しさ(働きたいのに働けない。 **くるしそう【苦しそう】** 苦しそうな岬うめき声を漏らす。笑いを咬かみ殺した苦しそうな表情"井上靖。苦しそうに(肩で息をする。胸を押さえる)。叩きとも祈りともつかぬ苦しげな声が切れ切れに洩れる黒井。肺腑結いから搾り出すような苦しげな声を洩らす福永。表情が苦しげに歪がむ。ぐすぐすと苦しげにせきこむ=石坂。声が苦しげに跳びはねる=黒井。 **くるしまぎれ【苦し紛れ】** 苦しまぎれの(言い逃れ。自白をする)。苦し紛れの企画が意外に当たる=さだ。窮余の一策。苦肉の選択。苦肉の策(不利を承知の。せっば詰まった)。 **くるしみ【苦しみ】** 苦しみ(死ぬよりつらい。青竹くるしみを炙ぁぶって油を絞るほどの夏目。生き死にの境にでもあるような徳田。緩慢なじめじめした醜い=中島多。生命の奥に深くじっとおとなしく獣のようにひそんでいる=野間)。苦しみが骨身にこたえる。死の苦しみが過ぎ去る。苦しみから(解放される。解脱する。脱け出す)。農民の苦しみと共に生きようと決意する。地獄の苦しみともいうべき船酔い=井上靖。苦しみに(蓋をする。苦しみを重ねる。寄り添って生きる)。民の苦しみに気がつかない!あさの。人の世は苦しみに満ちている=大庭。胸がはりさける苦しみに襲われる=坂口。苦しみに耐える(塗炭の。脂汗を流すほどの=福水)。苦しみのあまり叩ぅぁき叫ぶ。苦しみを(和らげる。黙々と受け入れる)。死ぬほどの苦しみを味わう。人に言えない苦しみを経験する。雪ダルマのように苦しみを身体に背負いこむ=小林多。苦しみをなめる(砕身の。塗炭の)。幾多の艱苦いんに耐える。流離艱苦の生活を強いる。修羅道の苦患にげから救われる。苦衷の表情をあらわにする。苦衷を当然の報いと白眼視する。業苦に悩む。業苦を背負う。困苦に(耐える。疲れはてる)。戦争の惨苦をなめる。辛苦の情が深く刻まれた思い出。水火の(苦しみ。責め苦)。地獄の責め苦。つらい責め苦に耐える。国民に塗炭の苦しみを与える=津本。領民を塗炭の境遇におとしいれる=半村。銀難いん汝はんを玉にす。艱難に鍛えられる。爆難の道を選ぶ。辛苦艱難して育てる。爆難辛苦を乗り越える。険阻艱難を経る。 **くるしむ【苦しむ】** 焦熱の苦しみに堪える。苦しむ(淫乱な血に。横暴な亭主に。心身の不調に。精神の失調に。喉の渇きに。ひどい境退に。二日酔いに。浪費の後腹に。身を削るほど。夫の不身持ちに。現実との隔たりに。難問を解きえずに。惨めな無力感に。熱でうなされて。他人以上に傷ついて。冷や汗を流して。目を白黒にむいて。苛酷な年責の取り立てに平岩。夜もろくろく寝ないくらいに八谷崎。息の根が止まるかと思うくらい吉本)。▼矛盾に苦しむ(社会の。精神と肉体との)。▼問題に苦しむ(家庭の様々な。分からない)。後悔に苦しみ抜く。七転八倒の思い。血反吐と、を吐く。苦しまずに死んだ安らかな顔"干刈。うめき苦しむ(悪政に。重圧に。重税で)。▼もがき苦しむ(絶望の谷間で。自分の心に爪を立てて=山田詠。胸がはちきれるほど=住井)。恐ろしい夢を見てうなされる。呻吟紀似する(激痛に。顔をしかめて。病気を抱えて)。無明の闇に落ち込む。宗教的な憂悶いら。愛問を(いだく。晴らす)。▼四苦八苦する(板挟みになり。言葉が通じず。家計のやりくりに。厳しい取り立てに。台詞を覚えるのに。売れない物件を抱えて。不況の波をもろにかぶって)。 <383> # 苦しむ・喘ぐ **つらい【辛い】** 目に苦渋の色が浮かぶ。つらい(訓練に耐える。日々を過ごす。思い出は数限りない。思いに他此しまれる。場面に出くわす。詫び言を重ねる)。辛い(涙が出るほど。死んでしまいたいほど宮部。身がねじれるほど森瑙。身を切られるより有吉。身を引き裂かれるように火坂。胸が掻き省がいられるように“あさの。胸が締めつけられるように=森瑞)。つらい(嘘をつくのが。今更手放すのは。誤解されるのが最も。頑張れの言葉が追い討ちをかけられるように=新田。身を斬り刻まれるほど"杉本。無関心が鞭打北ちたれるよりも三浦綾)。死ぬより辛い(恥を忍ぶ。目に遭う)。さぞかしつらかったに違いない。▼つらく当たられる(舅礼に。姑しゅうに。継母は時に。人から)。▼つらく当たる(あからさまに。嫁に。何かにつけて変に。面当てがましく)。年々に冬がつらくなる。情が移って別れるのが辛くなる=内海。つらがる(図さを。寒さを。仕事を)。▼つらさ(待つ身の。はかない逢瀬怙うの)。我が身を鞭打たれるような辛さ=山岡。客商売のつらさが分かる。奉公の辛さをなまなましく思い返す=山崎。身を剥ぐような辛さを忍ぶ=山崎。別れるときの辛さを毎日丸薬みたいに一粒ずつ服のんでいる感じ=田辺。つらそうに目を伏せる。愛に隣り合わせた不信を見つめて生きる=永井路。はらわたの千切れるような思い“山本周。胸が痛む。胸に小さな棘とげが刺さる=海堂。愛き身をかこつ。家庭内村八分の憂き目を見る=荻野。悔恨に似た苦汁をなめる。苦杯を(喫する。なめる。飲む)。骨をけずる思い=林考。身を削る思い。切ない思いに胸が張り裂けそう。悩ましい考えが心に巣食う。肺腑ぶいを抉えぐられるような気持ち藤本。身を裂かれる思い=なかにし。断腸の念に堪えない。断腸の思いで別れを告げる=白洲。針の筵分しに(座っているような恐ろしさ=村上元。座っているように辛い『瀬戸内。坐すゃっているより辛い!斎藤栄)。毎日針の筵に座っているような思いで居たたまらない船山。さほどつらくない。格別つらいとも思えない。泣きを見ないで済む。 **ていたい【手痛い】** 手痛い(失策。損害。打撃。反撃を食らう。ミスを冒す。目に遭う)。敗戦という手痛い事実を受け止める"栗本。手痛くしっぺ返しされる。 **なやみ【悩み】** ▼悩み(出口の見えない。得体の知れない苛立からたしい=岡本)。悩みが(雲散霧消する。山ほどある。胸の底にわだかまっている)。長年抱えてた悩みが解決する。大人になるといろいろと悩みが増える=池井戸。誠実であろうとするがゆえに悩みが深い内田康。悩みに鬱々とする。深刻な悩みに行き当たる。悩みの(種を抱え込む。棘とげを柔らかく包み込む連城)。己れの悩みの深さに絶望する=消水飛。悩みを胸に畳む。共通の悩みを持つ。恋の悩みを開く。仕事の悩みを打ち明ける。心中の悩みを語る。恋愛の悩みを教師に打ち明ける=貫井。暖かい悩みのようなものが柔らかく胸を締めつける藤枝。 **なやむ【悩む】** ▼悩む(夫の浮気に。体の不調に。三角関係に。失恋の痛手に。販路の狭小に。ひどい腋臭拗。に。不眠に。くよくよと。一人悶々もんと。生理的なリズムの不順に。解けない数式に。やりきれない思いに。髪をかきむしって。昼も夜も骨を刻けずるような業苦に芥川)。悩ます(ああでもないこうでもないと頭を。十五年前の想い出が亡霊のように=中村真)。自分の犯した罪に悩み続ける。さんざん悩んだ末の結論。行くも地獄、とどまるも地獄。日夜頭を痛める浅川。気のくるうような懐悩ゅうがうすらぐ=室生。火のように胸を焼く懊悩にすっかり当惑する=大江。顔に懊悩の色が現れる。責任を感じて懊悩する。懊悩転々の苦しみを舐める=室生。▼煩悩(宗教上の。百八つの)。煩悩がむらむらっと湧き起こる。 **ひのくるま【火の車】** ▼火の車(経営が。財政が。商売が。台所が。内証が。借金を抱え。内情は今や)。借金ばかりの火の車経営森村。 **みもだえ【身悶え】** 死の舞踏のような歓喜の身悶え佐藤糸。身悶えする(髪が乱れ身がちぎれるほど"円地。穽もなにかかった狐のように牙ばかりむき出してまだ未練らしく喘ぁえぎながら芥川)。▼身もだえする(痛みに。苦しそうに。恥ずかしさに)。苦しさに身もだえして叫ぶ。呪縛から逃れようと身もだえる。嫉妬に身をもだえる。身もだえるようにお辞儀をする。身を揉むような叫び藤枝。身を揉んで(悔しがる。泣きじゃくる。笑う)。 **むなぐるしい【胸苦しい】** 胸苦しい(圧迫を感じる。不安な夜。感じが込み上げてくる)。息が詰まりそうに胸苦しい。死なせてしまった赤ん坊のことが悪夢のように胸苦しく責めてくる萩原葉。息を呑むような胸苦しさ"石川。痙摩心の前兆のような胸苦しさが喉の奥からこみあげる三田。たまった胸苦しさを財布のように握りしめる。安岡。胸苦しいような思いが胸の中にたゆたう三浦絵。何となく胸苦しいような雰囲気。 **もだえる【悶える】** ▼もだえる(恐怖のうめきに。心が物狂おしく)。苦しみにもだえる(失恋の。断末魔の)。屈託を胸に抱える。嫉妬に(身を焦がす。身を焼く)。▼煩悶いんする(狂するばかりに。帰るに帰られず)。煩悶の(時を脱する。あまりもだえ死にする)。身を焦がす(焦燥に。激しい熱情に。大望野心の炎に)。 **もんもん【悶悶】** 悶々たる一夜を過ごす。悶々と(眠れぬ夜に耐える。理由を詮索する。暗い思いで生活を続ける=伊坂)。不安と焦りの中で悶々と思いを凝らす。悶々の日々を送る。悶々の情を、酒に紛らせる。胸の中に納める)。総身の快感に転々悶々する水井町。 <384> # 暮れる **くれる【暮れる】** ▼暮れる(年が。一日が雨に。小寒い日がとっぷり。短い秋の日は瞬く間に=永井路)。▼日が暮れる(とっぷりと。いつのまにやら。ぐずぐずしてると)。途方に暮れて溜め息をつく。日暮れて道遠し。街が紫がかって暮れはじめる。毎日がお祭り騒ぎに明け暮れる。行き暮れて不安になる。見知らぬ土地で行き暮れる。窓外が蒼茫民らと暮れかかる。暮れかける(町がそろそろ。さんざ降りの往来がとっぷりと=山手)。暮れ残る(空がわずかに。海の上がほんやり)。秋の日は釣瓶落とし。 **ざんしょう【残照】** 空にはまだ残照があって黒ずんだ牡丹色欲んに雲を染めている=山本周。金砂を刷はいたような残照の空篠田。日が沈み薄い残照の中に青みが流れる=村上春。夕焼けの残照をとどめる。船が残照を浴びて光る=福水。夕陽の残光のように空しい愛"野間。海が最後の残光を湛たたえる。夕明かりが(残る。水平線を朱色に染める)。薄れゆく夕明かりの中。夕影に映える山々。▼余映(大火の。落日の)。余光が残る。余光を浴びる。 **たそがれ【黄昏】** どこか暖かい夕日の一片が隠れているような春の長い黄昏=野上。黄昏が(やや深まって空気が赤から紫に変わる=阿久。水のように窓に沁しみだすころ=開高)。たそがれが夜に移るあわいの色がシンと五体にとろけこむ=檀。人生の黄昏どきにおけるささやかな幸福の一齣10北人間。黄昏の(色が濃い。翳かげが物陰に濃くなる=柴田錬。底にかすかな光がある落合。光がぼんやりとたゆたう祝水)。燃えたぎる太陽がジュッと音でも立てそうにして金色の海に落ちると黄昏は沖のほうから暮れはじめる=阿刀田。たそがれる(人生が。町が)。たそがれのような静けさに満ちる=光瀬。家の中が黄昏のように暗くなる=山本周。暗く黄昏のように照明する柴田翔。太陽の残していった金色の微粒子が都会の底で次々と音もなく弾けて光を失いつつある黄昏時=森现。 **にしび【西日】** 西日が(斜めに射す。燦々さんと降り注ぐ。じりじりと照りつける。台所に斜めに入り込む。軒先に差し込む。まぶしく躍り込む)。太い帯になった横流れの西日が殆俎とと路面と平行に射す、谷崎。午後五時過ぎの西陽が建物の影を長ながと児ぃく高井。西日に光る遠い川。庭の木が西日に燃える。西日の光が雲の裏ににじみ渡る=内田瓦。 **にちぼつ【日没】** 日没までには到着する。日没を迎える。沈む(日が西に。太陽が西の空に)。没する(太陽が海に。夕日が山の稜線もいうに)。冬の日の春かすき隠れる早さ=有岛。日が西に春きだす。斜陽が西山に春く。お日様が砕けた鏡のように樺の木の向こうに落ちる宮沢。山間はの日が早々と暮れ落ちる。心寒くなるような日の入り。日の入りの時刻。夕日が(海に沈む。地平線に沈む。島陰に沈みかかる)。 **ぼしょく【暮色】** 暮色が(垂れる。野面を這ょう。消えやらぬままに漂う。山の陰にうずくまる)。低い空に暮色が漂う。低い空に薄墨色の暮色がただよう藤沢。暮色に溶けかかった庭逃城。暮色の濃くなった道を帰る。鐘が暮色の中に寂寞地にと懸かる=幸田露。旗がものうげに暮色を揺する=芥川。暮色蒼然長らとした寂しい雪山の景色が限にちらつく=中河。 **ゆうがた【夕方】** ▼夕方(渓間を冷たく沈ませていく"梶井。境内の大銀杏坊坊心が風もないのに絶えず葉を落としてよこすような"里見)。夕方に飛び交う蝙蝠いう。夕方の町の活気のあるどよめきが迎える=大佛。褪せたような白っぽい夕方の空気の中を人々が忙しそうに往き来する=志賀。薄青い夜が漂いだす=開高。日が傾いて空き地がオレンジの色に染まる=あさの。立ち並ぶビルの群れが朱色に染まる=伊集院。昼と夜のあいだにある薄赤く淀んだような時間鷺沢。秋の陽がみるみる赤味を帯びる=日野。森の上にひとはけ刷はいたほどの浅黄色が残る高樹。あたりがいつの間にか薄暗くなる=阿川佐。陽を背にして歩く影が路上を長くなぞる=原田宗。湿った往来に暗い影が射し募る"夏目。影法師がしだいに長くなる柴田錦。暮れかかる空が次第に光を失う大岡。暮れ方の空が広がる。午後の日が傾きかけた頃。午後も遅くなってきた頃。空が鼠色ゆずに暮れる。空に(一つ二つ星がまたたきはじめる=江戸川。ひと刷毛はけほどの黄色い光が残っている=藤沢)。輝きを残しながらも夏空に薄胸がひと刷毛加えられる"永井路。空にはまだ明るみが残っている=福永。太陽が(沈みかける。西に沈む)。熟れた杏炒んのような太陽が山の端はにかかる頃獅子。鳶色にびになった空。どんよりと薄曇った西空に日の気配が残っている藤沢。▼西に傾く(陽が大きく。日がだいぶ)。西の海面が赤く染まる=鈴木光。ネオンがぽつぽつと点り始める。春の陽が西の方に傾きかける=梗。そろそろ陽が傾いてきた頃合熊谷。まだ陽が残っている頃。日が山の際近くに移る=中上。灯ともし頃。最後の陽の輝きが銹きびたような色を湖面一面に漂わせる=井上靖。店の中が夕方のように薄暗い!大佛。入相かいの(鐘が山にこだまして消えていく。鐘の音が湖の上に長い余韻を残して消えてゆく。白洲)。桜が入相の鐘に散る春の夕森陽。雪の頂から星が一つ下がったように入相の座敷に電灯が点っくり泉鏡。海を残光が彩る。残照の中に青みが流れる頃。夕景を目に収める。夕刻に家を出る。夕月が(皓々にらと輝く。まん丸に淡く出る=鈴木三)。木の上に夕月が美しくかかる。夕月の影淡き頃。日の光が黄色く夕づく芥川。夕の気配が野を包む藤沢。町に白っぽい夕の光が漂いはじめる藤沢。 <385> # 暮れる **ゆうぐれ【夕暮れ】** ▼夕暮れ(穏やかな小春日和の"川端。空気まで冷え冷えとざらつくような人工島の"日野。時雨の降る寂しい!白洲。みぞれまじりの空気が歯にしみるような寒い。宮部)。夕暮れが(淡い闇を運ぶ。カーテンを破って侵入してくる=池田。しめやかに匂っている坂道『立原。近づき緑がぼんやりと濁って見える=伊藤整)。家の中を静かに夕暮れが満たす久米。初冬の夕暮れが落ちてくる=宮本郷。夕暮れと変わらない暗さ=高橋。夕暮れの(風がヒュウヒュウと肌を刺すように寒く吹く=田山。気配が足許しに漂い始める=日野。なかで花の白さが冴え返る=石田衣。光の束がレンブラントの絵のように地上を照らす=五木)。部屋に夕暮れのほの暗さが訪れる。町が夕暮れの色に染まる。海面が夕暮れの陽射しを浴びて油色に照り輝く火坂。寒風の吹きまくっている埃児にっぽい夕暮れの道=宮本旅。残春の夕暮れの歩みは遅い=永井路。遠くの林がわずかに梢のあたりに夕暮れの名残をとどめている=福永。夕暮れの淡い(光。闇が流れはじめる=北原)。夕暮れの色が(下りる。濃い。迫る。催してくる)。路地に薄青い夕暮れのいろが立ちこめる藤沢。あたりが急に薄暗くなる=平岩。薄紫の帳忙ぃがかかる。路上に薄闇が漂い出る。あたりに薄闇が漂い始める"鈴木光。庭にうすい愚がかかる=向田。白い花にかすかな光がまつわりつく藤沢。窓の外が(とっぷりと暗くなる。薄ねずみ色になる=向田)。夕暮れのような暗さが顔一面に広がる=獅子。林の中が夕暮れのように薄暗い三浦綾。夕暮れ迫る海岸。▶夕暮れどき(もの悲しい。じりじりする夏の)。池や湖の夕暮れどき金色の光と葦ぁしの影が交錯する竹西。三月なかばの冷えびえと曇り立った暮れ方=堀。暮れ方の(紫紺の水平線。冷たい風が渡る)。晴れ渡ったまま暮れていく空。暮れなずみ対岸の崖が墨色を濃く滲にじませる―連城。暮れなずむ(日を惜しむ。山の景色を眺める。空に花のような雲のひと切れがういている=水上)。暮れ残った西の空。西の空が暮れ残る。夕まぐれ(琥珀色に沿くの。晴れた日の)。窓から薄暮の光が差し込む。冥々たる薄暮の中。町が薄暮の中に沈む=福永。夕顔の花が薄暮の中にはっきりと際立って見える=田山。薄暮を縫って舟を漕ぐ。日暮れが低いところから湧いてくる=本庄。いつの間にか日暮れになる。日暮れにはまだ間がある。日暮れの(鐘が鳴る。悲翁ら付に包まれる)。いつしか日暮れ近くなる。肌に冷たい風の吹く日暮れ時津本。 **ゆうぞら【夕空】** 星の湧き出す夕空佐藤森。夕空が(鼠色ゆがみに暮れる。真っ赤に染まる。血のように染まる=中河)。朱を含んだ紫陽花色の夕空が街の上にひろがる=原田康。晴れあがった夕空がインド監をぼかして水っぽい光を見せる=石森。夕空に星が一粒淡く光る三浦哲。明るい夕空の紺青に氷でを仰ぐ佐藤春。名残の明るみを漂わす空高井。 **ゆうばえ【夕映え】** ▼夕映え(黄色崎幼ゃに柳く。はっと足をすくめたほど美しい=城山)。夕映えが(ほの明るい夏の夜の空に融けて行く=庄野。まがまがしいほどの色で空と雲を焦がす飯田)。ぼんやりとした鱗雲的にに夕映えが残る=伊藤整。夕栄えが赤々と西の空を染める=二葉亭。荒涼たる荒野が燃えるような瑞々しい夕映えに包まれる=曽野。日があかあかと夕ばえの雲になごりをとどめて暮れる=中。夕映えの明るさが燃え立つような赤さ。本庄。西空にひっかかるほどに残っている夕映えの空藤沢。 **ゆうひ【夕日】** 海に沈もうとする丸く巨大な夕日南木。連山の奨ぃだに夕日が絵のように美しく光線を厥怒らす田山。夕陽(水平線に沈む。弱いけれども幻想的な赤みを帯びた冬の=日野)。夕日が(海に光を投げる。射し込んでリビングがオレンジ色に染まる=重松。沈んで対岸の土手に微かすかに余光が残る=田山。真紅の色に燃え立つ菊池。街を桃色に染める=原田康)。夏の夕日がかっと照りつける。薄黄色い夕日が部屋を静かに染める人米。海に出ると夕陽が落ちかかり赤い波の絨毯にいうが敷かれる=加賀。背後にある夕日が影を槍のように長く尖とがらせる=原田宗。掘り割りの水に夕日が真っ赤に映る高井。真っ赤なほおずきのような夕陽が波を染めながら沈む=宮尾。窓ガラスに夕陽が燃えるように映る=高井。夕陽が赤きこと丹朱のようになる柴田錬。幾重にも横に刷毛で掃いたような遊雲の襞を夕陽が赤く爛ただれさせる=福氷。西の空に都会の座にまみれた夕陽がとろんと落ちかける=連城。夕陽が(赤々と山肌を焼く福永。うるんだ赤い硝子玉材封、のように海に沈んでいく遠藤。四方の山々の頂きをほのぼのと染め出す"山岡。すすり泣くように身を震わせて沈んでいく"高橋三。空一面に広がった雲を茜色砂ゃに染める=高橋和。ひたひたと部屋の中に沈みこんでくる=日野)。夕日が画のように照り渡る=田山。山から光背のように夕日がさす“石田衣。斜めに夕日が射す。漁船の帆が夕日で茜色に染まる=山本一。射し込む夕日で壁や床が赤く照り映える=石田衣。夕陽で赤く染まりはじめた白壁の土蔵高橋克。部屋の中が夕陽で緋色に染められる=山田詠。夕日にきらめく海。海面が夕日に染まる。顔が夕日に赤く彩られる。川が美しく夕日に映える。夕陽に体を真っ赤に染め抜かれる=辺見。霊が夕陽にぽっと赤く染まっている=藤田、油のような夕日の光芥川。黒ずんだ雲の堆積のあいだに夕日の一点がかかる日。 <386> # ゆうひ **ゆうやけ【夕焼け】** 夕焼け(刻々と色を濃くしてゆく=吉行。しばらく見入ってしまうほどの悲すさまじい=原田完。空がおだやかなうすい紫ににじみ出るようなわずかの金色をたたえる=大庭。西の空が真っ赤に色づき少しずつ紫色から灰色へ変化する=島尾)。夕焼けが(大火事のよう。照り映える。夕闇に変わる。ほの赤く天末を染める。真っ赤に燃える。妖麗な紫に変わる=山田版)。山の端はに夕焼けが広がり始める。夕焼けに染まった光が部屋を満たす。夕焼けの色が濃くなる。雑木林が黒い塊となって夕焼けの美しさを引き立てる遠藤。遥かの山の空はまだ夕焼けの名残の色がほのか=川端。日差しが柔らかい赤味を帯びた光になる=伊集院。まわりの景色が赤っぽくなる"灰谷。赤く黄色くかすかに黒色を含んだ色彩=日野。見渡す限りの砂のうねりが薄い茜色崎ふぉに染められる=城山。サーモンピンクの細い光の帯が水原を染める三浦歳。残映が照り映える。底には深く快活な黄色を暖かくしてうわべだけが紅!佐藤春。钏色に絵の光に包まれる=高樹、屋根もガラス窓も看板もみな蜜柑ふか色に輝く=向田。夕照としが海面を華やかに彩る吉村。夕日の反照。かすかな茜誌がの残映がある=黒玉岩)。空にみかん色に光った雲が重なり合う“石森。夕方の空が淡い朱色から逃したトマト色に、やがて薄い紫色に変わる落。 **ゆうやけぐも【夕焼け雲】** 西の空に赤い鳥の羽を一面にまき散らしたような夕焼け雲"大庭。夕焼け雲が(だんだん死灰に変していく=梶井。西の空からひろがっておごそかに見えるほど単純な深さで半天をばら色に染める=石森)。美しい夕焼け雲が空を流れる=梶井。雲が(茜色跡』に染まる。千切れながらオレンジ色に染まる=伊集院。ばら色のぼかし模様になって空を染める=小川)。富士の中腹に群がる雲が黄金色に染まる=国木田。雲の縁が金色に光る落合。真紅の雲が放射線をなして天頂まで延びる=大岡。牡丹色欲んに染まった愛。ちぎれ雲が縁を赤く染めて覚束は心なく浮いている=田山。夕雲がもやしの三つ葉のような射光をひそませる時分室生。夕焼けが銀色の雲と波とを薄桃色に染める。重くたれこめた雲の裂け目から夕焼けが滲にじんで見える=池液。 **ゆうやけぞら【夕焼け空】** ▼夕焼け空(空をゆっくりと染めていく。燃え立つような。墨をまぜたような重苦しい=永井龍)。夕焼け空にくるくると小さな巻き毛雲が浮かぶ"石森。三色版の夕焼け空のような頬化粧獅子。茜色ゅみゅをした細長い雲が色づいた西空堀。この世の終末のような凄すさまじい美しさを滲ませた空の色"原田成。源紅のちぎれ雲が散らばってオリーブ色の空に浮かぶ"石森。夕のほのかに薄紅のただようているような先干野間。気に濁ったような暮れなすんだ空が白さを残して広がる連城。空が(真っ赤に染まる。夕映えに照り返る。あかがね色に染まる=中上。薔薇色に暮れていく=遠藤。わずかに細く橙色い従に染まる=原田康)。夕焼けが始まり空が朱と金に染まる=中上。淡い赤黄色に染まった西干日野。夏の陽が一日の輝きを終えて西空に沈む城山。西の空が(茜色に染まる。淡い赤黄色に染まる。オレンジ色に染まる。紫色から灰色へ変化する。ほかしたような桃色に染まる藤田)。西の空に(落ちかかる日。 **ゆうやみ【夕闇】** 夕闇ほのぐらい頃。夕闇が(あたりを覆う。漂いはじめようとする時刻。ひたひたと押し寄せる。街角に降り積もる。道に漂い始める。夜の闇に変わりつつある。急速に濃さを増す椎名候。まだ浅い水底のような青みを残している=日野)。次第に夕闇が濃くなる。田の面於のに夕闇が追ょう。夏の夕閤がゆっくりと忍びよる。あたりに刻々と夕闇が迫る=白洲。濃い夕闇が土間へ這いこんでくる=池波。部屋の隅からゆっくり夕闇が流れ込む"小川。淡く夕闇がただよう池波。みんなの顔がぼんやりするほど夕闇が教室に漂う。石森。夕闇に染まりはじめた空。川面が夕闇に溶ける。明日をも頼みがたい命の夕闇にさまよう。有島。白粉ぶいを濃くはいた顔が夕闇に浮かぶ梶井。夕闇の中を遠くから鐘の音が聞こえてくる福水。ひっそりと夕闇の中に消えていく。暖炉の低い焰組のが時々ひらひら燃え上がってあたりをぼんやり赤く照らす夕闇の中=宮本百。陸地が夕闇の中に吸い込まれて行く福水。草も木も山も川も輪郭をなくしはじめる薄閤"中上。薄蒼らい闇が押し寄せ庭が水底のように謐しずまっている=落合。夕暮れの前のわずかな薄い闇のひととき『村上春。おおいようもない終末感が暗い夕闇のように胸にしずみこむ。光涵。宵闇迫る頃。 **らくじつ【落日】** 大きな落日が熟柿にゃくのようにとろけながら海に沈む=阿久。落日に彩られて光を呼吸するように見える雲"有島。落日の(残光が一瞬鮮やかに輝く=笹沢。光が金属のように色が冷たい=大佛)。日が落ちる。遠い地平に落ちてゆく入り日。満面に血をしたたらせて落ちてゆく大きな入り陽真継。 <387> # 加わる **いちみ【一味】** ▼一味(悪党の。泥棒の。犯人の)。一味に加わる。一味の首領。一味徒党を語らう。一党悉ごとく最後と知れる=子母沢。山城の一党に加わる。徒党に(与くぃする。加わる)。徒党を組んで乱暴を働く"隆。一つ穴の(狸。絡むじ)。 **かおぶれ【顔ぶれ】** ▼顔ぶれ(豪華絢爛(けんな。錚々そうたる。多士済々の)。顔ぶれがあらかた揃う。日によって顔ぶれが変わる。客はだいたい顔ぶれが決まっている驚沢。顔ぶれが集まる(いつもの。知った)。腕に覚えのある面々。▼ラインアッブ(新製品の。新チームの)。ラインアッブに加える。 **かにゅう【加入】** 加入を(勧誘する。強制する。勧める)。加入する(会に。共済に。クラブに。保険に。連盟に。労働組合に。チームに新人が)。加盟する(国連に。条約に。組織に。団体に)。▼入隊する(軍隊に。自衛隊に)。▼入団する(応援団に。巨人軍に。劇団に)。▼入部する(運動部に。クラブに。サークルに。文化部に)。▼入会する(会派に。クラブに。研究会に。サークルに)。入会金を払い込む。 **ぐるになる** ぐるになって(詐欺を働く。悪いことをする)。会社側と気脈を通じる=高橋知。▼結託する(恋人たちが。業者と役人が)。城と気脈を通じている福水。互いに呼応して行動する。 **くわわる【加わる】** ▼加わる(新しい機種が。新たな負担が。声に苛立心。ちが。声に真剣味が。寒さの度が。人の手が。会話に。感傷が多分に。行列に。事件の捜査に。仕事の一貝に。消火活動に。盗賊の一味に。仲間に。話の輪に。顔つきに痰ずごみが。見る見る速力が。会のメンバーに。朝夕の寒さがめっきり。言葉に重い力が高橋三。眼差しに冷たさが=桐野。限に生き生きとした光が=池波)。一億総懺悔にげさに加わるつもりは毛頭ない=池澤。負担が加重する。 **こくせき【国籍】** 国籍が違う。国籍にこだわる。様々な国籍の人間が闊歩みっする町=貫井。日本に帰化する。帰化の申請をする。 **こせき【戸籍】** こせきを(作成する。分ける)。入籍の届け出をする。本籍を移す。現住所と本籍を併記する。一入籍する(結婚式の前に。婚姻届を出して)。 **ざいせき【在籍】** ▼在籍する(学部に。高校に。大学に。編集部に)。▼籍がある(会社に。大学に)。▼籍を置く(同じ課に。会社に。政界に。大学に)。在学の(年限。年次)。在学する(高校に。大学に)。在職の(期間。年限)。▼在職する(学校に。関に)。 **さんか【参加】** ▼参加する(ゲームに。抗日戦争に。市民運動に。進んで計画に。ツアーに。デモに。武装蜂起に。レースに。率先して。飛び入りで。自ら希望して。喜び勇んで。闘争に積極的に。オブザーバーとして。会に毎回欠かさず)。同人として参加する雑誌。参加者が(減少する。増える)。参加者の寄りが悪い。▼参画する(陰謀に。運動に。作戒に。建白書の起草に)。▼参じる(膝下に。陣に)。帷幄いぁに参じる幕僚=井上靖。▼参入する(異業種分野に。マーケットに。外資が国内市場に。後発企業として。ビジネスに本格的に軍司)。飛び入りで出演する。▼参列する(儀式に。行事に。結婚式に。告別式に。式典に。葬式に。父の名代で)。 **しゅつじょう【出場】** ▼出場する(大会に。オリンピックに。選手が競技会に。トーナメントに。勇気凛恋戦んとして菊池)。出場チームを総なめにする。出場枠を決める。レース出場を断念する。競技大会に参戦する。 **しゅっせき【出席】** ▼出席する(会合に。結婚式に。講義に。着実に。パーティーに。父の名代で。忙しい日程をやりくりして。オブザーバーとして。例によって義理一遍に八谷崎)。出席者が全員立ち上がる。出席者の(顔を眺め渡す。不評を買う。判断に一任する。リストを用意する)。出席簿を教卓に置く。国王がお出ましになる。殿のお出ましを待つ。集会に顔出しする。・顔を出す(集まりに。お座敷に。通夜の席に。寄り合いに)。座中皆爆笑する。座中から選ぶ。座中を見まわす。出欠を(確認する。調べる。問う)。▼臨席する(市長が。首相が)。将軍の臨席を仰ぐ。欠席する(学校を。行事を。授業を。本会議を。例会を)。 **しゅってん【出展】** 出展を(検討する。予定する)。▼出展する(イベントに。展覧会に。博覧会に)。▼出品する(原画を。作品を。展覧会に。オークションに)。 **しょぞく【所属】** ▼所属する(会派に。クラブに。劇団に。組織に。団体に。政治的なグルーブに)。専属の(歌手。女優。タレント)。支社に転属されてからすでに二年が経過する若竹。フリーの(アナウンサー。カメラマン。校正者。編集者。ジャーナリスト)。 **ぞくする【属する】** ▼属する(同じ階級に。同じ組織に。グルーブに。系列に。違う世界に。違った種類に。古い世代に。別の次元に。稀ょぉな種族に。異例中の異例に。まともな男の部類に=源氏)。直属の(上司。部下)。日本に帰属する島。領土の帰属をめぐって対立する。帰属する(会社に。個人に。社会に。組織に)。帰属意識が働く。 **ふかいり【深入り】** 思わぬ深入りをする。深入りする(争いに。色事に。運動に。事件に。他人の生活に。賭場に。話に。問題に。ずるずると)。うかうか深入りするとえらいことになる=円地。病育育や江沙にに入る。突っ込む(商売に首を。政治運動に頭を)。 **れんちゅう【連中】** ▼連中(荒仕事に慣れた。町内顔なじみの)。妙な連中が出入りする高橋克。手合い拿に負えない。問題ばかり起こしている)。 <388> # 経営する・営む **いとなむ【営む】** ▼営む(愛の巣を。堅実な生活を。新居を。農業を。店を。エネルギー代謝を。日々の暮らしを。愛妻と旺盛な性生活を=斎藤環)。家庭を営む(幸せな。つつがない)。▼営まれる(盛大な法要が。葬儀が盛大に。告別式がしめやかに)。愛の営みに夢中になる。大自然の営みを肌で触れる。日々の営みを続ける。一つの営為から次の営為に移る。日々の常為を成立させる。 **うんえい【運営】** 運営が軌道に乗る。▼運営する(球団を。組合を。組織を。大会を)。会が正常に運営される。国家は理屈や理想だけでは運営できない=さだ。 **えいぎょう【営業】** 営業を(続ける。始める)。▼営業する(年中無休で。無許可で)。営業努力が足りない。営業不振で転業せざるを得ない。営業部門を担当する。 **かいしゃ【会社】** 会社(最近急速に発展した。日本で五指に入る。堅実地道な技術第一主義の=浅川)。会社が(左前になる。利益を上げる。隆々栄える。減収減益に悩む。団体交渉を拒否したのは不当労働行為に当たる=佐高)。立派な社が後ろ盾にある"大庭。会社から(給料を貰う。自宅にまっすぐに戻る)。同じ会社というよしみ。会社に(辞表を出す。籍を置く。損害を与える。忠誠をぞう。電話を入れる。迷惑をかける。とって必要な人材)。アバートから会社に通う。夫を会社に送り出す。そろそろ会社に行く時間。名のある会社に勤める。寝過ごして会社に遅れる。会社の(金を使い込む。危急存亡の際。景気がいい。全権を握る。体面に関わる。ために働く。ひける時問。付託に答える。言いなりになる。経営に乗り出す。所在地を教える。信用が失墜する。中の風通しがよくなる。名が麗々しく飾られる。浮沈の鍵を握る。恥を外へ吹聴いかぁして回る高杉。命運にかかわる危機 高橋和)。会社の業績が(上向く。悪い)。一握りの会社や個人が潤うだけ。軍司。会社を(定刻に出る。お払い箱になる。自己都合で退職する。定年で退職する。辞めて独立する。我が子に継がせる)。知り合いの会社を紹介する。独立して会社を興す。早めに会社を出る。事件を機に会社を辞める=辺見。▼社員(社歴二十年の。会社に入り立ての)。会社側と気脈を通じる高橋和。会社ぐるみで不正に手を染める。子社に出向する。順風満帆の社運。社運隆々たるものがある。社運が傾く。社運をかけた新事業。社業が(発展する。繁栄する)。社業に精を出す。粉骨砕身社業に打ち込む所存。社業を通じて社会貢献する。社に戻る。よその社に気を遣う。社風(質実剛健の。家族的な雰囲気の)。社風が異なる。社肌に合わない。社命が下る。社命を(帯びる。受けてやって来る)。社用で(出張する。使う)。社歴に傷がつく。退勤時刻を過ぎる。退社時間が近づく。▼退社する(定時に。三月いっぱいで)。他社に(後れを取る。引き抜かれる)。同期入社した社員。▼入社する(無試験で。中途半端な時期に)。 **ぎしき【儀式】** 厳粛な儀式。儀式が(終わる。済む。始まる)。幕をおろす直前のオベラのように儀式が最高潮に達する=小林信。儀式に(参列する。臨む)。厳かな儀式を見守るように次の動作を待つ"小川。国歌を(演奏する。斉唱する)。祭壇に花を供える。教会で洗礼を受ける。儀式めいた(格調。照明)。儀を執り行う(婚礼の。設立の。埋葬の)。典礼式事に通暁する。 **きぎょう【企業】** 企業(日本の代表的な。発展途上にある)。企業からの献金を禁止する。企業に(忠誠を~う。寄生する総会屋)。有名な企業に入社する。特定の企業におもねる議員=伊坂。企業の系列化が進む。大小様々な企業の緊密なネットワーク荒巻。若々しい企業活力を保つ。企業整理の波が押し寄せる。名門企業の名をありがたがる。 **ぎょうしゃ【業者】** 業者から金品をもらう。業者と役人が結託する。目倣い業者にたちまち見つかる。業者の都合を優先する。他の業者の手に渡る。役所と業者のもたれ合い。同業者が共倒れになる。同業者と提携する。親しい同業者に相談する。同業者の悪口を言う。 **けいえい【経営】** 経営(杜撰な。乱脈な。強気の。井勘定の)。経営から手を引く。経営の(一線から退く。才がある)。経営を(近代化する。合理化する)。野放図な経営をする。少数精鋭主義に徹した経営を実践する=梶尾。手堅い経営で定評がある。手堅い経営に徹する。店の経営が軌道に乗る。店の経営を任せる。・経営する(喫茶店を。工場を。直営店を。美容院を。病院を。牧場を。ホテルを。旅館を。レストランを。会社を友人と共に)。球団経営から撤退する。経営危機が表面化する。経営危機に陥る。経営主体が変わる。優れた経営手腕がものをいう。経営戦略を立てる。経営難に(あえぐ。陥る)。経営難の会社を救済する。経営不振から抜け出す。経営不振に陥る。経営不振を打開する。堅実経営を看板にする。町が直営するレストラン。 **ざいせい【財政】** 財政が(逼迫にする。火の車)。財政に余裕がある。財政の危急を切り抜ける。財政緊縮政策が行き詰まる。財政立て直しに努力する。財政的に余裕がない。借金につぐ借金という財政難。財政難に苦しむ。財政難を解決する。 **しき【式】** 式が(終わる。滞りなく進む。始まる。箏に済む。予定通りに運ぶ)。式に(参列する。出席する)。式典が幕を開ける。 **じぎょう【事業】** 事業が(上げ潮に乗る。軌道に乗る。左前になる。安定期に達する。首尾よく成果を上げる)。事業から身を退く。事業に熱中して妻子を忘れる。 <389> # 経営する・営む **じぎょうか【事業家】** 事業家(放腕な。勇敢な)。経営者の個人的才腕に依存する。経営陣を同族で固める。実業家(すご腕の。エネルギッシュな)。実業家として身を立てる。実業の世界に熟達した人。資本家から労働者を分かつ。資本家たちは抜け目なく機会をとらえて労働者からだまし取ろうとする=服部。资本家の走狗にっと成り下がる。你大な創業者。 **しきん【資金】** 資金が潤沢にある。資金に余裕がある。貯めた金を資金にする。資金の流れを解明する。借りた資金を返済する。銀行から資金を借り入れる。回転資金が不足する。回転資金を確保する。軍資金の(ありかを口外する。めどがあらかたつく)。政治献金の原資に裏金が充てられる。生活の資を稼ぐ。増資の目処ぁとが立たない。何をするにも体が資本。資本に国境はない。生産手段が資本に転化する。資本の論理が働く。資本不足が懸念される。大資本が小資本を駆逐する。まとまった元手が要る。稼いだ金を元手にする。元手を親から分けてもらう。 **しにせ【老舗】** ▼老師(江戸でも有名な。一二を指差される。創業百五十年余を誇る。れっきとした大阪の。創業は江戸時代に遡るとかいう驚沢)。心斎橋随一の古い吸簾のれを誇る=山崎。 **しほんしゅぎ【資本主義】** 資本主義が発達する。资本主義を(打ち倒す。信奉する。分析する)。資本主義的所有を批判する。弱肉強食の新自由主義的政策。 **しゃかい【社会】** 電子装置に依存する社会=柳田。社会が諸階級に分裂する。社会から目を背ける。社会に(害毒を流す。開かれた大学。頭角をあらわす)。連綿として社会に生き続ける。社会の(現実を見る。注目を集める。底辺に生きる。非難を浴びる。最下層に突き落とす。仕組みを変える。秩序を重んじる。鼻つまみとなる)。社会への適応性をつける。社会を(不安に陥れる。混乱に陥れる)。社会に(反感を持つ。不満を持つ。貢献する)。社会の(底辺でうごめく。闇に葬る)。社会が(成熟する。閉塞する。腐敗する。混乱する)。現代社会を(相手取って怒号する=高橋和)。現代社会の(縮図。病幣)。現代社会を風刺する。実社会に出る。平穏な社会生活を送る。社会的信用が失墜する。企業には重い社会的責任がある。社会的責任を果たす。社会的な(関心を呼ぶ。視野に乏しい。制裁を受ける。地位が高い。体面を気にする。適応性に欠ける)。社会的に(葬り去られる。受け入れられる)。新しい観念が社会的に定着する=大野晋。ひどい社会的弊害を生みだす石田能。社会復帰を支援する。 **しゃない【社内】** 社内で(最古参の記者。もっぱらの噂)。社内での株が大いに上がる。社内に(敵が少ない。跋展ぶっしているゴシップ)。社内の実力者の一人。社内を震撼礼从させた大事件。社内一の(石頭。切れ者)。社内きっての(業界通。酒豪)。社内事情に疎い。 **しゅっし【出資】** 出資を募る。多額の出資をする。▼出資する(会社に。事業に)。出資金を(集める。巡用する)。出資者を(集める。募る)。株主になる。株主への配当。投資者に配当する。 **そしき【組織】** 組織が支離滅裂になる。組織に乗るのがうまい人間。何らかの組織に属する。組織の(動きを調べる。制約を受ける。体質を変える。運営を円滑に進める。拡大が思うに任せない。実態を調べ上げる。上層部から追及される。大綱を変革する。中の人間の自己疎外。腐敗を証言する。変革に乗り出す。末端にまで統制が及ぶ。萌芽期から発展期を経験する"畑村)。自分を殺して組織の歯車になる南木。組織をあげて対決する。潰っぶされた組織を再構築する。弱体な組織力を露ぁらわにする。 **たいかい【大会】** 大会が(開幕する。佳境に入る。深夜に及ぶ。不成立に終わる。本決まりになる)。大会に(参加する。出場する)。大会を(開催する。開く。目前に控える。催す)。総会に出席する。総会を開く。 **だいきぎょう【大企業】** ▼大企業(業界に名だたる。世界中に名が知られた。日本でも屈指の。二万人の社員を擁する)。大企業が(大儲誌诂けを続ける。ぼろ儲もうけをする)。大企業に(応分の負担を求める。社会的責任を果たさせる)。大企業の(横暴を規制する。利益を優先させる)。 **だいじぎょう【大事業】** ▼大事業(空前絶後の。畢生いの一)。大事業に取り組む。大事業をしとげる。一世を覆うような大業。諸人救済の大業を為す。 **だんたい【団体】** 団体に(加盟する。入る)。団体の成員となる。団体を(解散する。設立する。旗揚げする)。会に(加入する。参加する)。会賀を(集める。納める。徴収する。払う)。会を設立する。学会で(発表する。名が通っている)。学会に出席する。協会に属する。協会を設立する。法人として(承認を受ける。登記する)。結社に(属する。入る)。結社を(支援する。組織する)。集会結社の自由。秘密結社をつくる。 **ちゅうしょうきぎょう【中小企業】** 中小企業が(元気になる。倒産する)。金融危機のつけを中小企業に回す。中小企業の資金繰りを支援する。中小企業を応援する。中小の(私鉄。出版社。メーカー)。 **とうし【投資】** 投資(無謀な。将来に生きる)。投資が(落ち込む。活発化する)。投資の時期を間違えて失敗する=畑村。▼投資する(株に。技術開発に。事案に)。投資した額を回収する。資本を投下する。 **ほんしゃ【本社】** 本社に(帰任する。電話を入れる)。利益のほとんどを本社に吸い上げられて青息吐息篠田。本社への顔が立つ。東京に本社を置く。地万都市に本店を持つ。 <390> # 計算する・数える **あかじ【赤字】** ▼赤字(莫大郊にな。慢性的な)。赤字が(かさむ。膨らむ。累積する。累増する)。赤字から(脱却する。抜け出す)。赤字に(頭を悩ます。陥る。転じる)。収支が赤字になる。赤字を借金で穴埋めする。赤字経営を余儀なくされる。 **かず【数】** 役柄を数こなす。数が(徐々に減る。急激に増加する。急速に減少する。年々増えていく。みるみる増える)。客の数がまばらになる。見物客の数が増す。ぴったり数が合う。日を追うに従って数が増える。めっきり数が減る。▼数が減っていく(だんだん。年ごとに門人の池波)。頭が数で一杯になる。数に(おいて優る。限りがある)。弟子の数に加える。数の(力で押しきる。多さに目をむく)。おびただしい数の星。数の上で(勝る。劣勢)。数の上の優勢が物を言う"井上州。数を(大幅に増やす。統計にとる。揃えることに汲々試ゅうとする)。後から後から数を増してゆく。加速度的に数を増していく。犠牲者の数を最小限にとどめる。品物の数を書き出す。▼数を増す(日を追って。恐ろしい勢いで)。かなりの(数に上る。数の野次馬が出ている=伊集院)。件数がうなぎ登りになる。売買件数が落ち込む。▼個致(商品の。荷物の)。語数が(多い。少ない。足りない)。個数を数える。皿数が(多い。少ない。にぎやか)。字数(一行の。作文の)。紙数がもはや尽きる。紙数の都合で詳細は省く。品が(極度に少ない。豊富)。品数をそろえる。生産台数が順調に伸びる。絶対数が(足りない。不足する)。度数を(数える。計る)。日数がどんどん過ぎて行く。んでからだいぶ日数が経つ。連絡に日数がかかる。年数が(かかる。経っている)。審理に日数を要する。部数(印刷の。注文の)。部数が伸びる。本数を(数える。調べる。減らす)。例数が少ない。例数を(多くする。増やす)。回数が(増える。減る)。爆撃の回数が日増しに多くなる=西木。優勝回数で大きく水をあけられる佐高。 **かぞえあげる【数え上げる】** ▼数え上げる(合戦の数々を。代表校を。違いを。名前を)。数え上げればきりがない。 **かぞえたてる【数え立てる】** ▼数え立てる(悪事を。苦しみを。項目を。いちいち。一つひとつ。楽しいと思う事柄を)。数え立てれば(きりがない。際限がない)。 **かぞえる【数える】** ▼数える(ゆっくり数を。齢いもかぞえる五十を。大ざっぱに。原因の一つに。倹約を美徳に。暇にあかせて。指を折って。消え残った明かりを。巡命が見せる悪意の数々を"石田衣。眠るまでの間羊を"阿木)。出席者を数えるともなく眺める久米。数えるほどしか会ったことがない=鷺沢。一年を通じて数えるほどしかない。星の数をかぞえるほどに気の長い困難なこと=壺井。数えて五歳になる。ざっと数えて三十枚の写真。とてもいちいち数えてはいられない=芥川。死んだ子の歳を数えても仕方がない。少なく数えても百は下らない。▼数え直す(おつりを。再度。もう一度)。きちんと重ねた小切れを札でも数えるように手早くめくって行く=川端。レフェリーがカウントを取りはじめる。▼カウントする(乗客数を。入場者数を。枚数を)。勘定する(数を。金を。札束を。銅貨を。一つひとつ)。 **くろじ【黒字】** 収支決算が黒字になる。黒字を計上する。黒字経営に転じる。収支を黒字化する。好決算で巨額の内部留保を確保する。空前の好決算に沸く。 **けいさん【計算】** 計算が(狂う。図に当たる)。エゴイスティックな計算が働く。大体計算が合う。頭の中でまたたく間に計算が成立する=小池。計算と戦略に基づいた作戦。計算に(長たけている。強い。弱い。ひどく時間がかかる)。男の計算に気づく。複雑な計算に没頭する。計算に入れる(可能性を。反応を)。計算のミスが目立つ。計算を間違える。頭の中で計算を始める。こまごました計算をしつこく繰り返す隆。計算通りにうまくいく。▼計算する(効果を。退職金の額を。星の年齢を。綿密に。ざっと。電卓で。指を折って。勝ち負けの可能性を。利害得失のバランスを=五木)。計算をする(虫のいい。計画的に綿密な=石川)。思いのままに計算できる。▼日割りで計算する(賃金を。利子を)。電卓を叩く。分母で分子を割る。分母を払う。計算機のキーを器用に叩く。▼計算書を(見る。作る。見せる。提出する)。加減乘除の演算を進める。概算する(距離を。人口を。費用を)。▼換算する(時価に。ドルを円に。年号を西暦に)。▼お金に換算する(人生を。人間関係を)。計上する(赤字を。経費を。含み損を。予算を)。計数が苦手。計数に明るい。▼算定する(運賃を。経費を。費用を)。▼算入する(経費を。経費に。費用を予算に)。▼算用する(建築費を。小遣いの足しを)。▼積算する(費用を。各支店の売上高を)。出入りの勘定が釣り合わない。勘定を間違える。暗算で答えを出す。暗算の才に長だける。暗算する(合計金額を。すばやく)。▼算出する(位置を。合計を。指数を。総額を。平均点を。率を)。 **けいり【経理】** ▼経理(杜撰げな。乱脈な)。経理に穴をあける。経理をびしっと見る。経理畑を歩いてきた人。貸借対照表を(作成する。粉飾する)。簿記を(つける。学ぶ)。 **けっさん【決算】** ▼決算(今期の。半期ごとの)。決算が減益となる。決算は総じて好調。決算する(切末に。年度末に)。決算報告が出来上がる。▼総決算(一年の。長年の研究の。年度末の)。 **げんか【原価】** 原価を(計算する。割る)。元値を(上回る。 <391> # 計算する・数える 切る。下回る)。 **ごうけい【合計】** 合計する(数を。金額を。資産を)。▼合算する(経費を。収入を。所得を)。集計する(アンケートを。売り上げを。調査結果を)。費用を総計する。総計を(算出する。出す)。▼総和(売り上げの。支出の。収入の)。仕事の高が減っていく。得点をトータルする。トータルを出す。▼総額(賞金の。被害の。予算の)。総額が膨れ上がる。総額を抑制する。 **コンピューター** コンピューターが(起動する。誤作動する)。コンピューターからアウトプットする。コンビューターで(システムを制御する。シミュレーションする)。コンピューターに(依存する社会。接続する。よる情報処理。データを入力する)。脳のコンビユータが恐ろしい速さで働く倉橋。コンビューターのようにすらすらと数字を出す=泉優。コンビューターウイルスに感染する。コンピューターシステムを導入する。 **さいさん【採算】** 採算が(合う。悪化する。取れない)。十分に採算が取れる。採算を(度外視する。割る)。採算性を重視する。十分勘定が合う。 **さいてん【採点】** 採点が(甘い。辛い)。▼採点する(解答を。試験を。甘めに。厳格に。減点法で)。点数をつける。配点が(高い。低い)。 **しさん【試算】** ▼試算する(費用を。見通しを。来場者数を。ざっと。五兆円の赤字と)。食い入るように試算表を見つめる=池井戸。仮定に基づく推計。推計する(交通量を。得票数を。費用を)。 **しゅうし【収支】** 収支が(合う。黒字になる。とんとんになる)。収支の帳尻を合わせる。金の出入りを一切取り仕切る。現金の出納。お金を出し入れする。 **すうがく【数学】** 数学が(得意。不得意)。数学の問題を解く。量子力学に数学的基礎を与える。漸ぜんを追って解析的に進んでゆく微妙で精確な一種数学的な智的な閃き三好淺。算数が(得意。苦手)。 **すうじ【数字】** 数字が(合わない。一人歩きする。若い。実際とかけ離れる。虫のように散乱している=獅子)。見積もりの数字が岡巡っている。具体的な数字で裏打ちされた主張=浅川。数字と(首っ引き。にらめっこする)。数字という誤解を招きやすい現代の魔物柳田。数字に(明るい。敏感)。数字は時としてとんでもない落とし穴を作る=柳田。数字を(頭に刻みつける。メモ用紙に書きこむ)。怪しげな数字を羅列する。具体的な数字を口にする。細かい数字をあげて説明する。その場しのぎの適当な数字を出す。淀みなく数字を並べてみせる。数値で評価する。目先の数値にこだわる。数値目標を掲げる。数値を自己目的化する。 **せいさん【精算】** 手早く精算を済ませる。精算する(運賃を。仮払いを。残金を。料金を。精算機で)。差し引き千円の損。貸し借りを差し引きする。 **そろばん【算盤】** 算盤が合う。算盤を(習う。間違える。横へ寄せる)。帳簿に算盤を入れる。算盤玉を弾く。 **にんずう【人数】** 人数が(多い。少ない。足りない。増える。一日ごとに減って行く)。かなりの人数が集まる。人数に(物を言わせる。応じて按分為似する)。相当の人数に及ぶ。六十名そこそこの人数に減る”子母沢。総人数が三百人に達する。人数分を用意する。員数が足りない。チームの員数が増える。人員がぽつりぽつりと欠けていく。余剰人員が出る。頭数が(足らない。減る)。注文の頭数を揃える。人口が(頭打ちになる。徐々に減る。爆発的に増える)。膨大な人口を擁する都市。人口密度が高い。 **はじきだす【弾き出す】** ▼弾き出す(推計値を。推定量を。正確な数字を。データを。愉送料を。算盤で。対応可能な客数を)。 **パソコン** パソコンからメールを送る。パソコンで顧客名簿を検索する篠田。パソコンに(入力する。ソフトを装着する)。プリンターをパソコンに接続する。パソコンの(前に座る。画面に目をやる。画面をスクロールする。キーボードを叩く。スイッチを入れる。モニターを覗のぞきこむ)。パソコンの電源を(入れる。落とす)。在庫管理にパソコンを使う川上。パソコン操作に長けている。アイコンを(クリックする。追加する。変更する)。アブリケーションを(削除する。追加する。ダウンロードする)。データを上書き保存する。カーソルを(合わせる。動かす)。キーボード操作に習熟している。キーボードに指を走らせる。データベースの端末を相手にする。ハードディスクが(壊れる。フリーズする。クラッシュする)。ハッカーが(ホームページに侵入する。ホームページを書き換える)。ハッカーに攻撃される。マウスのクリック音をカチカチと立てる=平野。マウスをクリックする。オンラインで(処理する。つなぐ)。▼オンライン化する(記録を。情報処理を)。ソフトウェアがバージョンアップする。ソフトウェアに不具合がある。ソフトウェアをインストールする。ファイルが流出する。ファイルを(コピーする。閉じる。開く)。 **ばんごう【番号】** 番号を(手帳に控える。丸で囲む)。箇条書きに番号を振る。部屋の番号を確かめる。電話番号を走り書きする。通し番号を振る。車のナンバーを自動的に読み取る=高村慈。 **ほうていしき【方程式】** 方程式がきれいに解ける。定数を方程式に導入する。方程式の解を導く。簡単な方程式を解く。連立方程式を解く。数式が並んでいる。解けない数式に悩む。 **ゆびおりかぞえる【指折り数える】** 残された時間を指折り数える=黒井。▼日を指折り数えて待つ一幅る。花嫁を迎える)。指折り数えて式の当日を待ちわびる=里見。片手の指を折りながら早口に数を数える=開高。 <392> # 結婚する・嫁ぐ **えんだん【縁談】** 縁談が(正式に決まる。降るほどある。まとまる。いつとはなしに立ち消えになる。とんとん拍子に運ぶ)。縁談に乗り気になる。半ば命令的に縁談をまとめる。良縁に恵まれる。縁組が(正式に決まる。不調に終わる。まとまる)。養子縁組を持ちかける。縁結びの神。縁結びを(買って出る。取り持つ)。 **おっと【夫】** 夫(ぐうたらな自分勝手な「萩原意。大きい樹か岩のように安心してよりかかれる=円地。夫の名に値しない"大岡。はっきりしないぐずぐずした"萩原棄。無器用で手の掛かる子供のように目の放せない大佛)。問いつめられた夫が四十を過ぎた女のように居直る=大庭。夫と不仲になる。夫の(浮気に悩む。心に寄り添う。身を案じる。裏切りに気づく。帰りを待ちわびる。死から立ち直る。性格が歯がゆい。不実を恨みに思う)。夫を(うまくおだてる。うしなって噂き悲しむ=陳)。他人の夫を盗む。溺れるように夫を愛する=川端。手に据えるように夫を大切にする=森剛。何かにつけて夫を頭から押さえつけようとする=村上元。夫恋しさの思いに駆られる。旦那さんと早くに死に別れる=あさの。旦那の仕事に興味がない。娘の婿に部下を望む。婿を取る。女房妬ゃくほど亭主もてもせず“阿木。亭主と恋人を使い分ける。先代に見込まれて一人娘の亭主となる=北原。亭主にするには物足りない男=山手。亭主の(頭を押さえる。顔に泥を塗る。顔を立てる)。さんざ亭主の浮気に泣かされる=野坂。亭主を(尻に敷く。粗末にする)。他人の亭主を横取りする。めざわりな亭主をやっかいばらいする森環。旧態依然の亭主関白を夢見る男たち瀬戸内。 **おみあい【お見合い】** お見合いで結婚する。お見合い写真を撮る。見合いが不首尾に終わる。見合い話が(ご破算になる。持ち上がる)。 **けっこん【結婚】** 両性の合意に基づく結婚。結婚が(本決まりになる。はかない一場の夢に終わる今東)。結婚という(ことの先の先まで目の前に見えるような気がして心がはずんでこない=石川。言葉が発散する甘やかな情景を思い描く=高樹)。晴れて結婚にゴールインする。娘の結婚に快諾する。憎しみと復讐心ふくん。を謎はり合わせた繊維のような血の通わない指一本で結婚にぶら下がる=高樹。結婚の(噂が立つ。日取りが決まる)。結婚はそもそも敗隣にぼを孕はらんだ幻想"玉村。結婚を前提としたまじめなお付き合い荻野。間に人を立てて結婚を申し込む。正式に結婚を申し入れる。結婚する(大恋愛の末に。幼なじみと。子連れで。夫妻の媒酌で。めでたく。上司の肝煎りで。何を差し置いても。偶然のようにひょいと佐多。周囲の反対を押し切って結城。面倒ないきさつを忘れて=石川)。結婚する意志は毛頭ない。ゆくゆくは結婚するつもり。▼結婚させる(二人を。無理強いに)。心から結婚したいと思う。結婚して(家を出る。家庭に収まる。当主に直る)。▼女性と結婚する(現地の。学生時代に知り合った伊集院)。見つけて結婚する(いい人を。適当な相手を)。愛の巣を営む。一戸を構える。祝言を挙げる。新居を(営む。構える)。二人がめでたく結ばれる。身を固める。結婚相手を見つける。多分に仲人口で結婚後失する=円地。結婚行進曲が流れる。結婚詐欺に遭う。結婚生活(一枚の布を織り上げるようにしてきた二人の鷺沢。平和と愛とに満ちた=石川)。結婚話が(だめになる。とんとん拍子に進む)。結婚話を(切り出す。持ってくる)。結婚指輪を(交換する。はめる)。いずれ一緒になるつもり。二人を一緒にさせる。▼一緒になる(好きな男と。惚れて。ずるずるべったりに)。既婚の(女性。男性)。男女が婚姻する。婚姻届を出す。父親の再婚に賛成する。玉の輿こしに乗るのを夢見る。娘を娶ぁぁわせる。人生の落とし穴に足を踏み込む=川端。 **けっこんしき【結婚式】** 内愉だけのささやかな結婚式。結婚式が(無事に終わる。間近に迫る。つつがなく終了する)。結婚式に(参列する。出席する)。結婚式の日取りが決まる。内々で結婚式を済ませる。結婚式を挙げる(簡素な。神前で。晴れて。仏式で)。金屏風んごの前に媒酌人と双方の両親とならんで立っている姿戸板。結婚の杯を取り交わす。白無垢い5の花嫁衣装を着る"北原。夫婦の杯をかわす。ウエディングベルが鳴り響く。お色直し(新婦の。花嫁の)。華燭いしの典を挙げる。▼挙式する(教会で。神社で)。婚儀が無事に済む。吉日を選んで婚儀を執り行う。婚礼に呼ばれる。婚礼の席に連なる。めでたく婚礼の日を迎える。滞りなく盃が済む。新郎新婦が三三九度の杯を交わす。▼式を挙げる(佳日を選んで。華燭の。婚礼の)。花婿と花嫁が並ぶ。▼披露宴(豪華な。盛大な)。披露宴を会費制にする。結婚披露宴に招かれる。 **こんやく【婚約】** 婚約が(正式に整う。破談になる)。婚約の運びになる。婚約を解消する。正式に婚約する。将来を約束している仲。行く末を契った恋人。将来を誓い合った婚約者。事故死した婚約者の忘れ形見として子供を一人で育てる=貫井。親の決めたいなずけと結婚する。いいなずけを妻に迎える。娘と末を約束する。夫婦約束を交わす。結納の(使者を立てる。日取りが決まる)。結納を取り交わす。 **しゅうげん【祝言】** めでたく祝言が済む。祝言の(杯をあげる。式が済む。式を挙げる。日取りを相談する)。正式に祝言を挙げる。新郎新婦の両家が会食する。 **しんこん【新婚】** 新婚の夢まどか。新婚ほやほやの二人。新婚旅行に出かける。新婚時代の思い出が甘酸っぱく甦忙ぶってくる=有吉。新婚生活がスタートする。 <393> # 結婚する・嫁ぐ **つま【妻】** 妻(糟糠ごうの。夫に尽くす貞淑な"島田。産後の経過が思わしくなくて床に臥はせがちな高橋和。頭の足りない犬のようにじっと坐って夫を待っている=大庭。幼い子供を残したまま早く世を去った"竹西。亭主に尽くす働きのよい!熊谷。天使のように美しい=常盤。娘のように若い=有吉)。残してきた妻が気がかり。妻と抱き合って眠る。前の妻とよりを戻す。妻として完全な女性。妻に(頭が上がらない。先立たれて泣き暮らす。見守られながら死ぬ)。何かにつけて妻につらく当たる。貰いたての妻に没頭する。娘のことはすべて妻に任せきり吉村。妻の(死に動転する。尻に敷かれる。手前を繕う。身を気遣う。浮気に腹を立てる。死から立ち直る。心境が手に取るように理解できる=貫井)。日本にいる妻の顔を思い浮かべる=城山。妻の座に(あぐらをかく。収まる)。妻を(心から愛する。優しくいたわる。雑巾のように扱う=笹沢)。亡き妻を思い出す。小意地の悪い姑しゅうから妻をかばう“北原。死んだ妻を追い求めて冥界に下る=鈴木光。弱き器のごとく妻をあつかう川端。最愛の夫人に死に別れる。別れた妻に(執着する。未練はない)。内助の妻的な奉仕。甲斐甲斐紛いしく夫の世話をする。▼悪妻(手に負えない。ソクラテス以上の)。妻女がかいがいしく酒でもてなす。新妻のように楚々として立つ=斎藤栄。善良な教養のある人妻。人妻に(色目を使う。懸想する。恋慕する)。傍目たにも幸福な人妻に見える。人妻の陰影に富んだ美しさ 原田康。二本の傘を持った人妻の大群が駅の出口を十重二十重にはに取り囲む"川端。人妻らしい色気がにじむ。若妻の役をしんみりと演じる。家内に先立たれる。後妻に入る。後妻をもらう。後添いが来る。後添いを迎える。かみさんを(世話する。もらう。娘のように可愛がる=高橋治)。細君にべったり溺れる。専業主婦で一生を終わる。家庭の主婦におさまる。夫人と二人きりの水入らずの生活。山の神がやかましい。山の神に頭が上がらない。愛妻と旺盛な性生活を営む。斎藤環。今は亡き愛妻の忘れ形見。奥さんが旦那さんに冷たくなる。奥さんに(軍配が挙がる。逃げられる)。出て行った奥さんに未練がある若竹。奥さんの(尻に敷かれる。悪口を言う。願いを聞き入れる)。奥さんを(大事にする。病気で亡くす)。 **つれあい【連れ合い】** つれあいに早く死に別れる=武田百。連れ合いに先立たれる。人生のバートナー。配偶者を(得る。捜し求める。大切にする)。生活の伴侶。生涯の伴侶を求める。 **とつぐ【嫁ぐ】** ▼嫁ぐ(旧家に。商家に。他家に)。嫁がせる(妹を。娘を)。嫁ぎ先の両親。娘の嫁ぎ先を訪れる。娘を縁づかせる。姉が縁づく。やがてお嫁さんになる。他家に嫁する。婚家に慣れる。婚家の家瓜に従う。婚家を(出る。逃げ出す)。姑しゅうもいない気楽な嫁入り先。 **なこうど【仲人】** 仲人が(間に入る。話をまとめる)。仲人を(お願いする。頼む。引き受ける)。間に人をたてて結婚の申し込みをする=武者小路。媒酌の労を取る。結婚を媒酌する。媒酌人を務める。 **にょうぼう【女房】** 物分かりのいい女房。女房が財布を握っている。女房といちゃつく。女房との仲をのろける。女房に(逃げられる。頭が上がらない。言えた義理ではない)。人の女房に手を出す。死んだ女房に操を立てる=藤田。女房の(尻に敷かれる。尻ばかり追いかける。手前をつくろう)。前の女房のありがたみが分かる。別れた女房のために一肌脱ぐ藤沢。女房を亡くしてからかれこれ十五年になる藤田。人前でわざと女房を持ち上げる=向田。気が利く世話女房。いそいそと世話女房の役をつとめる。かいがいしい女房ぶり。古女房を紙屑いねのように捨てる=和久。女房子供を(路頭に迷わす。巻き添えにする)。 **はなよめ【花嫁】** 花嫁の父の悲哀をしみじみ感じる=内田駅。花嫁姿(豪華絢爛な。バージンロードを行く)。立派な花嫁道具を持たせる。▼花嫁衣装(あでやかな。豪華な)。花嫁衣装を着る。純白のウエディングドレス。白無垢しこの花嫁姿。真綿を紙のように遂く仲のした綿帽子有吉。綿帽子をかぶったお嫁さん。小止みなく降る雪を綿帽子のようにかぶる=加賀。 **プロポーズ** プロポーズに応じる。ブロボーズには花がつきもの=光原。ブロボーズを(受け入れる。一日伸ばしに伸ばす)。正式にプロポーズする。意を決して結婚を申しこむ。婉曲にんきに求愛する。熟別な求愛を受ける。求婚に応じる。▼求婚する(執拗に。正式に。清水の舞台から飛び下りる気で=曽野)。 **よめ【嫁】** 嫁と(姑しいとの板挟み。姑の対立)。嫁につらく当たる。いい嫁に恵まれる。男に望まれて嫁になる。地味な娘を嫁に迎える。▼嫁に行く(娘が。他家に)。嫁にやる(娘を。貰い手さえあれば猫の子のようにボイと壺井)。嫁の(来手がない。口がある。もらい手がない)。嫁を実家に戻す。花のことき嫁を娶っとる=里見。お嫁さんの口がある。お嫁さんを世話する。 **よめいり【嫁入り】** 嫁入りを(成功に導く。控える)。娘を嫁入りさせる。昨日嫁入りした人。嫁入り道具を揃える。嫁入り先を(探す。逃げる)。嫁入り支度が出来上がる。嫁入り道具を調える。売れ口が(決まらない。見つかる)。嫁入り前の(大事な体。娘を持つ。新婚生活に夢を託す)。 <394> # 決定する・決まる **おきて【掟】** ▼掟(弱肉強食の自然の。鉄のように勁烈妙な=山田風)。掟に金縛りにされる。厳しい掟に縛られる。掟を(守る。破る)。国の掟を曲げる。宗教上の戒律。戒律より欲情を重んじる。規律の弛緩しかぶりを注意する。軍律に背く。軍律を(犯す。課する)。峻厳しいんな軍律をもって部下にのぞむ=山岡。不文律に従う。不文律のまま口伝えに生きている掟渡辺。不文律を(犯す。守る)。 **おきまり【お決まり】** お決まりの(挨拶。コースをたどる。バターンが出来上がる)。お定まりの(ケース。自慢話)。決まりきった部分的な作業の繰り返し人間。 **おもいきって【思い切って】** 思い切って(攻勢に出る。恥を話す。派手におこる。室内に足を踏み入れる。ぶつかってみる)。誰はばかることなく思い切って泣く=武者小路。思いきりよく(裸になる。荷物を処分する)。一思いに(決着をつける。死を選ぶ。運命の結末をつける)。敢然と(言い放つ。闘いを挑む。一歩を踏み出す)。犯罪シンジケートに独り必然と立ち向かう常盤。決然たる色がハッキリ顔にきざまれる=坂口。決然と(男と別れる。号令をかける。事態に立ち向かう)。決然とした口調で言う。 **おもいたつ【思い立つ】** ▼思い立つ(いまこそ機会到来と。是が非でも会おうと。正月元旦に書き初めを中野孝)。思い立つと(じっとしていられない。すぐ行動に出る。矢も楯もたまらなくなる)。思い立ったが吉日。一念発起して(大学に通う。深酒を断つ)。社長の発起で新事業を始める。発起人に名を連ねる。仏道への発心を語る。 **かくてい【確定】** ▼確定する(刑が。原告勝訴が。敗訴が。評価が。無罪が。有罪が。期日を。スケジュールを)。 **きぜん【毅然】** 毅然たる態度で臨む。言葉に毅然たる響きがある。毅然とした(口調で言う。姿勢に威厳が漂う。態度で立ち向かう。気品と大胆さを感じさせる=中河)。毅然として不合理に立ち向かう黒墨肴。嘘をつくときに限って妙に毅然とする谷村。屹然と正面を向く。屹然とした表情。 **きそく【規則】** やかましい規則でしばる。規則に(違反する。緊縛酔いされる。従う。外れる。反する)。規則の網を掛ける。規則を破るということはこういうことだと骨身に沁しみる=有川。定めに従う。規則規律でがんじがらめに縛る=横山。会則にしばられる。会則を(守る。破る)。世間の規矩きくの中に入って行く。まっすぐな規矩の正しい道。規約に(従う。則る)。校則に(違反する。従う)。校則を守る。細則を追加する。正則に(かなう。従う)。▼通則(古来の。自然の)。通則から(外れる。はみ出す)。内規に(定める。従う。反する。よって処理する)。例規に従う。 **きまっている【決まっている】** ▼決まっている(昔から相場が。嘘に。すでに。どうせだめに。コースが毎日。いつかばれるに。その方がずっといいに。客はだいたい顔ぶれが1歳沢。誰だって幸せになりたいに=横山)。あらかじめ定められている。既決の(事項。書類)。既定の(事実。条件)。既定方針を貫く。 **きまらない【決まらない】** ▼決まらない(いずれとも。一朝一夕には)。なかなか一決しない。いまだに決めずにいる。小田原評定。▼確定しない(いつまでも。なかなか)。百バーセント決まったわけではない。はっきりと決めたわけではない。決められない(そう簡単には。私の一存では)。意見が二分したまま決着しない。決着とは程遠い状況。まだ決着を見ていない。決定が困難な問題。▼決定できない(容易に。軽々しく)。▼定まらない(狙いが。ぐにゃぐにゃと腰が。甲論乙駁にうめんして容易に。世評が区々として。動揺しているように視線が=泉優)。ほんやりして視点の定まらない目。輪郭が定まらない辛い気分。焦点の定まらないぼんやりとした目付き若竹。容易に断定を下しがたい。▼不定(数が。収入が。病状が)。未決の(事項。問題)。▼埒らちが明かない(一向に。いつまでも。さっぱり。いくら考えても)。 **きまる【決まる】** ▼決まる(一生の運命が。左右の連きまる打が。住む家が。身の振り方が。縁談が正式に。木刀が胴に。技がきれいに。勝負が一瞬で。当選が早々と。一流企業に就職が。面白いようにバンチが。はっきり気持ちが。婿養子の縁組が。気持ちが即座に。話が九分どおり。要所要所がびたりと)。▼話が決まる(すんなり。とんとん拍子に)。毎日決まって同じ時間にやってくる。ほぼ決まりの感触を得る。▼一決する(衆議が。相談が)。決する(試合の帰趨込すが。勝敗が)。定まった(収入。方法)。▼定まる(世の中を見る目が。歴史的な評価が)。▼可決する(圧倒的多数で。小差で。全会一致で)。可決される(岡責決議が。原案どおりに。満場一致で)。▼本決まりになる(合併が。計画が。結婚が。採用が。大会が。本社の移転が)。 **きめる【決める】** 決める(覚倍の臍に、を。将来の方針を。進むべき道を。身の振り方を。浴衣の柄を。暗黙のうちに。腹をとっさに。合議によって。タキシーで。妻に相談して。話し合いの末。分担を細かく。一日のノルマを。落ち合う時間を。自分の意思で右か左かを。自由な意志で自らの行動を、待ち合わせ場所を。何ということなしに。ここを死に所と。ざっと目分量で。自分の生き方は自分で。すべって転ぶ閑ぃまもないうちに=北)。心を決める(いざと。固く)。▼話を決める(一方的に。立ちどころに)。決めたことを行動に移す。早く勝負を決めたい。あらかじめ話を決めている。前もって決めておく。何もかも一人で決めてしまう。 <395> # 決定する・決まる 決められた場所を回る。▼取り決める(会場を。規約を)。可決する(議糸を。決議を、修正案を。不信任案を)。全体が部分を規定する。▼協定する(数を。販売方法を。品質を)。▼決する(雌雄を。勝敗を一挙に。万機公論に)。▼策定する(計画を。綱領を。方針を。ルールを。ガイドラインを)。査定(甘い。厳しい)。▼指定する(国宝に。相続人に)。所定の位置につく。交付申請書に所定の事項を記入する。制定する(憲法を。条例を。法を。ユニホームを)。 **けつい【決意】** 決意(悲壮な。不退転の。牢固たる。死を賭けるほどの。草の根分けても捜し出そうという堅い奥平)。決意が(鉄石より堅い。火と燃える。宿っている眼。もろくも崩れる。泡のように消え去る"野間)。離婚の決意が固まる。決意に満ちた強い声。決意のほどを眉宇に示す。決意を(新たにする。込めた目。胸に秘める。胸に歩き始める)。固い決意を述べる。表情から決意を読み取る。演説口調できざな大見得を切ってやりたいくらいの決意を秘める=太宰。何やかやと理由をつけて決意を翻す。篠田。断乎びんとして初志を貫徹する決意を固める=美濃部。決意する(結婚を。死を。危険を承知の上で。ゼロからの出発を"内橋)。水火も辞さぬ気構え。万里の波濤沿とを乗り越え骨を異境の土に埋むるていの一大決意を固める=里見。▶期する(捲土重来叫儿父にを。固く心に)。抱負を(語る。述べる。とうとうとまくしたてる)。▼腹を決める(即座に。ええままよと。応戦の)。 **けつぎ【決議】** 決議が満場一致で採択される。決議に従う。決議を採択する。議会が不信任を決議する。決議案に(賛成する。反対する)。決議文を読み上げる。予算糸を發成多数で談決する。議決に加わる。 **けっさい【決裁】** 決裁を仰ぐ。重要事項を決裁する。決裁印を押す。裁可を(仰ぐ。いただく)。裁決が(下りる。確定する)。裁決を(仰ぐ。下す)。 **けっしん【決心】** どうしても動かすことのできぬほど堅固な決心森吗。決心が(ぐらつく。相当に固い。あっけなく崩れる)。心の中に大胆な決心が稲妻のように閃206き渡る=芥川。決心がつかない(いざとなるとなかなか。どうしたらいいか)。眉宇に間に決心の色を浮かべる!佐藤系。決心を(実行に移す。翻す。一日延ばしにする。不動なものにする)。きっぱりと別れる決心をする。出馬の決心を固める。思い入った決心を眉に集める=有房。▼決心する(死んでも言うまいと。つくづく考えて。金輪際相手にならぬと二葉亭)。覚悟を決める。腹を固める。腹を決めたというようにうなずく“西木。一大決心をして手に入れた自分の城=篠田。心中に深く決することがある=日洲。気持ちに踏ん切りがつく。踏ん切りをつける。まなじりを決して誓う。意を決して(質問する。結婚を申しこむ。はと切りだす)。意を決したように(顔を上げる。立ち上がる)。▼心に決める(固く。何もしゃべるまいと。振り返るまいと)。かねてから心に決めている。口が裂けてもいうまいと心にきめる高橋治。▼臍以ぞを固める(覚悟の。決心の。壮挙に与〈ょする)。 **けつだん【決断】** ▼決断(苦悶(もの果ての。沈着で素早い。考えに考えた末に下した)。決断が胸のすくほど素早い=井上靖。スピード感のある決断が求められる。決断の(糸口をつかむ。腰を折る)。早すぎる決断は往々にして裏目に出る=柳田。執拗に決断を迫る。重大な決断をする。決断を下す(即座に。思いきった)。決断する(ためらわずに。きっぱりと。断腸の思いで。十二分に苦悩した末に"東野)。決断力が(鈍る。働く)。英断を下す。勇断を(下す。ふるう)。 **けっちゃく【決着】** 玉虫色の決着。すでに決着がついている。和解による決着が望ましい。決着がつく(こたこたに。問題に。試合の)。政治判断により決着を図る。年内の決着を迫られる。一思いに運命の決着を見てしまう人米。▼決着をつける(内々に。勝敗の)。▼決着する(話が。離婚問題が)。▼決まりをつける(きちんと。はっきり。話の)。▼けりをつける(気持ちに。仕事に。もやもやに。勝負の。持ち越した喧嘩対しに。後腐れがないように)。是が非でも今日中にけりをつけたい斎藤栄。▼けりがつく(気持ちに。仕事に。闘争に。喧嘩の)。 **けつろん【結論】** ▼結論(単純明快な。悩んだ末の。衆目の一致した。熟慮の末に出した。いろいろと苦慮したあげくの最良の倉橋)。結論が(宙に浮く。持ち越しになる。予測の域を出ない)。追っつけ結論が出るだろう。▼結論が出ない(容易に。なかなか。いくら考えても。どちらが正しいか。三人の意見がまちまちで"加賀)。結論が出る(学問的な。簡単に。早々に)。結論から先に言う。手短に絞論だけを述べる。思ったとおりの結論に気をよくする。▼結論に達する(恐ろしい。都合のいい。より高い)。結論を(曖昧にする。吞うのみにする。急ぎすぎたきらいがある。先延ばしにする。先に見つけてから後に順に石を積むようにして考える=大佛)。誤った結論を引き出す。演繹的にん結論を導く。議論を重ねて結論を出す。最初に結論を述べる。是が非でも結論を出さねばならない。淡々と話の結論をつける。一つの結論を得る。安易な結論を出すのは危険"貫井。 **けってい【決定】** 決定する(工事中止を。再亦開始を。重大事項を。他局の帰趨治すを。存在が意識を。原案どおりに。方針を新たに。取捨選択して。すんなりと。有罪かどうかを。生産条件の優劣が死活を"石田観。涙を呑んで一旦休戦することに徳永)。決定権を握る。決定づける(生き方を。運命を)。決定的な(意味を持つ。打撃を与える。一線を踏み越える。証拠をつきつける)。夫婦の間に決定的な亀裂が生じる=森環。決定的な影響を与える。及ぼす)。破局が決定的になる。断の一字あるのみ。断を(仰ぐ。下す)。 <396> # けつろん 実験が思ってもみなかったような結論を導き出す筒井。結論を下す(即座に。思案の末)。▼結論する(こともなげに。あれこれ考えた末に)。煮詰まる(計画が。話し合いが)。落とし所(無難な。交渉の)。話の落としどころに困る。落とし所を(問違える。見つける)。 **けんぽう【憲法】** 憲法で保障する権利。憲法に(違反する。抵触する。明文化する。戦争放棄を謳う)。意法の精神に(反する。基づく)。憲法を(改正する。布する)。憲法翔護を主唱する。世界に誇るべき乎和憲法を前面に押し立てる佐高。違憲判決が出る。不磨の大典。 **さいけつ【採決】** 採決に(反対する。踏み切る)。採決を議長に一任する。▼採決する(議案を。法案を)。決を採る。挙手による表決。▼表決する(議系を。賛否を。動談を)。票決する(議案を。法案を)。 **さだめる【定める】** ▼定める(位置を。覚悟を。期限を。基準を。居を。拳銃の狙いを。心を。責任を。範囲を、方針を。目標を。労働時間を。法律に)。▼思い定める(心のうちに。決行しようと)。▼考え定める(喰略を。方針を。目標を)。▼見定める(次の変化を。人の動きを)。▼画定する(境界線を。国境を。範囲を)。画定を棚上げにする。 **せいさん【清算】** ▼清算する(借金を。苦い過去を。過去の出来事を)。▼関係を清算する(燗ただれた。幾ばくかの手切れ金を渡して=池井戸)。とっくの昔に清算された思想"大岡。重箱の隅を楊枝でせせるほどの正鵠ごいを期した清算事務"里見。 **そくだん【即断】** 即断で契約する。即断するのは急に過ぎる。にわかに即断しかねる。即断即決を迫る。問題を即決する。即決を要する事態。速決を(戒める。迫る)。 **ためらわない【躊躇わない】** ためらわずに(撃つ。口にする。答える。承知する。進む。近づいて行く)。ためらいなく突進する。ためらいを(ぬぐい去る。みじんも感じさせない)。跡踏らいする暇もない。いささかも踏踏する必要はない。躊躇なく(選ぶ。決意をする。志願する。断言する。名を借用する)。一刻の器躇もなく歩み出す。何の躊躇もなく答える。遅疑なく明日の朝も出勤するだろう。宮本直。いささかの運疑も許されない。何の遅疑もなく答える。まったく戸惑いが見られない。何のためらいもなく(答える。飲む)。▼やぶさかではない(協力するに。赦免するに。認めるに。過ちを改めるのに)。善は急げ。逡巡しゅんする思いを振り切る。もはや逡巡している段階ではない西木。 **ていいん【定員】** 定員が(増える。減る)。定員に達する。定員を(超える。増やす。減らす。割る)。定員割れを起こす。▼定数(委員の。議員の)。定数が(増える。減る)。定数に満たない。定足数に(達する。足りない。満たない)。定足数を(満たす。割る)。 **ていこく【定刻】** 定刻に少し間がある。会社を定刻に出る。定刻より五分遅れる。定刻を一時間近く過ぎる。定時で仕事を終える。定時に(出勤する。退社する)。定時を守って運行する。 **どくだん【独断】** 独断が目立つ。独断で決める。独断に満ちた(感脱。考え)。独断を交えて自由に書く。重大事を独断する。独断専行の(手法。提案)。独断的な(意見。談論。主張)。大将の一存で命令を下す。勝手に決め込む。人事を専断する。ドグマに陥る。できないものと独り決めする。独り決めの推量による処分長与。 **はんてい【判定】** ▼判定(アンフェアな。公平な。フェアな。甘めの)。勝負の判定が覆る。判定を下す。判定する(及落を。魚種を。血液型を。合否を。白黒を。真偽を。正誤を。適否を。能力を)。軍配が上がる(若さに。奥さんのほうに)。適正なジャッジを下す。 **ほうりつ【法律】** 法律が(成立する。発効する)。こと法律となるとからきし弱い=永井龍。法律に(違反する。抵触する。従って摘発する。ついては門外淡。疎い者をだます"中上)。法律の(知識に優れる。不備を突く。網の目に引っかかる。条文を暗記する)。法律を(成文化する。恣意的に解釈する。錦の御旗にする)。法律的な枠をはめる。慣習法を成文化する。法度書きの箇条に照らす。厳しい法度に縛られる。法案が(廃案になる。衆議院を通過する。店たなざらしになる)。法案の成立に固執する。法案を国会に提出する。法整備がなかなか進まない。法的拘束力を持つ。法的な(保護を受ける。手段で処理する。手続きを済ませる)。法的に効力が発する。法の(裁きを受ける。名の下に裁く。下の平等)。法令遵守を(徹底する。求める)。法令に違反する。準拠する)。 **らくちゃく【落着】** 落着に漕ぎつける。落着の様子を見届ける。折衷案で落着する。▼片がつく(勝負に。一二年で。金で。今日明日にも。借金の。話の)。これにて一件落着。名実共に一件落着となる。一件落着という段になる。担当者の処分で一件落着とする―柳田。とにもかくにも一件落着した。一件落着して安堵いんする。当事者の処分が決まる。 **ルール** 間違ったルールがまかり通る。ルールに(違反する。従う。則する。抵触する。のっとる。反する)。ルールを厳格に適用する。最低限のルールをわきまえる。ルール違反で失格する。上司にルール違反を強要される。規定をまじめに守る。決まりが人を束縛する。決まりに従う。決まりを(守る。破る)。 **わりきる【割り切る】** ▼割り切る(簡単に。大胆に。すっぱり。すべては世の習いと。最初から遊びと!佐野。人生を単純な公式で阿刀田)。割り切った(言い方。関係。人生観。つき合い)。ドライな(性格。生活態度)。 <397> # 元気・生き生き **いきいき【生き生き】** 生き生きと(思い出を語る。輝く双峰時う。目を輝かす。自由で闊達は2つな雰囲気。楽しそうにしゃべる。はしゃいでおしゃべりする。胸によみがえる)。声が生き生きと張りを持つ。当代の実相を今に生き生きと伝える。石像がいまにも自然に歩き出しそうに生き生きと見える=日野。表情が水に潘れたように生き生きと虾く=遠藤。生き生きとした(頬の色。屈託なげな表情。熱気を醸し出す・加賀)。秋雨の後の日射しを思わせるいきいきとした顔色大佛。汚れを知らぬ生き生きとした生気。目が生き生きとした光を帯びる。新鮮な生き生きとした作品岩淵。▼生き生きする(街路樹が。水を得た魚っぁのごとく=筒井)。生き生きした(輝きを瞳に浮かべる。張りのある色艶)。朗らかで生き生きした青年。命が入ったような生き生きした表脩"三浦絵。顔に生色が戻る。顔に生色を取り戻す。▼生動する(美しさが。気韻が。芸術が。歴史が)。ぴちびち(魚が跳ねる。生気が感じられる女)。びちびちと活気を見せる。清流に放たれた若鮎のようにびちびちと伸びる=山岡。ぴちびちしている(頭の細胞が。肌が)。 **いぶき【息吹】** 春の息吹が立ち昇る。どこからともなく春の息吹が漂って来る=本庄。芽の息吹きがそこここに感じられる「池波。青春の息吹に触れる。逞麸くしい労働者の息吹を伝える「岩淵。時代の息吹を濃く伝える作品。大自然の息吹を楽しめる行楽地。新しい時代の息吹を吹き込む人フ束。祈禱師にが人形に息吹を吹き入れるように教えつづける"司馬。 **かいか【開花】** ▼開花する(才能が。資質が。努力が。文化が。青春の力が様々に。行方知れぬ混沌にんの情熱が曲高)。▼開花させる(可能性を。天才を)。花開く(愛情が。女らしさが。才能が。文化が。女優として。新たな宇宙論が)。 **かっき【活気】** 道の両側にところせましと並ぶ店の猥雄さいな活気塩野。活気が(横溢ゅっする。満ちあふれる)。いやに活気がある。売り場に活気が満ちる。店内に活気があふれる。店に活気が戻る。世の中に活気がみなぎる。夫婦生活に新婚当初のような活気が甦ふる=有吉。活気に(満ちた店。乏しいたたずまい)。街の活気に圧倒される。いきいきとした活気にわきたつ=山本周。活気にあふれる(一種異様な。喧噪えといってよいほどの=塩野)。▼活気に満ちる(青春の。目覚ましいほどの)。活気のある(市場。生活。討論町)。往時の活気を取り戻す。会話が活気を帯びる。漁師たちが綾ぁゃを織るように雪の解けた砂浜を行き違って目まぐるしい活気を見せる=有島。▼活気を呈する(若い二人の議論が犬の喧嘩妙んのような愉快な)。 **かつきづく【活気付く】** ▼活気づく(ベンチの中が。町がにわかに。春を迎えて。沈滞していた町が。台所が遠慮がちな慌ただしさで!常盤)。▼活気立つ(家の中が。部屋の隅々まで)。商いで活気立つ雰囲気。 **かっぱつ【活発】** 談笑の泡立ちが活発!倉橋。活発な(意見を戦わす。行動を受容する。選挙運動を展開する)。行動力に満ちた活発な性格。ばちばちと活発な音を立てて燃える=堀。活発に会話を交わす。頭が活発に働く。▼活発になる(言動が。前線の活動が。荷動きが。見違えるほど)。▼活発化する(合従連衡がんこうが。株式投資が。梅雨前線が)。▼活性化する(経済が。現場が。内需が。沿線の地域を)。活動的な(教師。人)。活動的に仕事をする。 **かつりょく【活力】** 一刻もじっとしていることのできぬほどの活力=野間。活力が(作品にいきわたっている。風船から空気が抜けて行くように姿しょんで行く=円地)。体に活力がみなぎる。若々しい活力があふれている。労働の活力が湧き昇ってくる三島。活力に満ちる。うえつすするほどの活力を感じる。清々汁がしい活力を覚える。生活力が強い。▼生活力(強級いったな。遅くしい)。▼バイタリティー(したたかな。八方破れの)。バイタリティーに満ちあふれる。 **きりょく【気力】** ▼気力(翌鑠ゅくしとした。肩をそびきりょくやかすような軒昂ぶんとした=松本)。気力が充実する。減退しかけていた気力が回復する。声に気力がこもっている。かろうじて気力で持っている。体力の不足を気力で補う。火事場で発揮するバカ力のような気力で越え難いものを何の苦もなく越える安岡。気力の(限りを尽くす。衰えを見せない)。尽きかけた気力を集める。どうにかこうにか気力を奮い立たせる。気力を振り絞る(最後の。残された)。 **げんき【元気】** 元気(予期したよりも遥かに。鮮やかな曇りのない。老いてますます。てっぺんから足の先まで。鳥が飛び立つような=梅本。春の草のように萌え出した=有島)。腹の底から元気が盛り上がってくる。昔の元気がよみがえる。小娘のような元気が肩にも腰にも躍る円地。元気だけが取り柄。相変わらず元気でなによりです。口々に元気な返事をする。疲れを知らぬ元気な足取りで歩く。張りのある元気な声。両親の元気な姿を思い出す。フライバンの上でハネるゴマ粒のように元気な子"干刈。元気に飛び回る子供たち。子供たちが元気に遊び回る。夏中ずっと元気に押し通す。わいわい元気に騒ぐ。元気のいい親父さん。体から元気のオーラのようなものが発散している荻野。日頃の元気もどこへやら。元気全一册子一投足にみなぎらせる。奮い起こすように首をブルンブルンと振る=獅子)。苦しく元気を回復する。圧死しそうな空気が流れる。 <398> # げんき た元気を底に湛たたえたような顔つき人米。眉のあたりに元気を深く蔵した浅黒い顔人米。元気を取戻す(すっかり。見る見る)。▼元気になる(中小企業が。一夜明けると。見違えるほど。あっという間に。生き返ったように。神秘な生命力を流し込まれるかのように見る見る=川端)。一向に気落ちしていない。元気いっぱいに子供たちが飛びはねる。元気旺盛な若者。熱に浮かされたような病気っぽい元気さ=大原。元気そうな声。元気そうに振る舞う。にわかに元気づく。すこぶる元気潑刺はつたる娘。元気よく(家を飛び出す。仕事にとりかかる。ドアを押し開ける)。更元気よく返事をする。手を元気よくパンバンと叩く。廊下を元気よく踏みしだいていく。気を取り直してよく考える。はたと気を取り直して立ち上がる。両親が健在。しゃんしゃんした(お年寄り。足どりで廊下へ出る=宮本百)。怪我が治ってびんびんしている。頬に薔薇色が甦る=平石。異鑠いくしたる老人。七十を過ぎてなお嬰録と元気藤沢。老体ながら運鑠としている。調子よく跳ね上がった空元気だけの言葉"小林多。空元気に身を任せる。空元気を出して騒ぐ。顔に精彩がある。目に精彩がひらめく。生彩を放つ人物。生き生きと精彩を帯びる。 **げんきがない【元気がない】** ▼元気がない(声に。見るからに。いつになく。声に心なし。どことなく。夏ばてで。疲れ切って小屋に向かう人のように新田。半病人みたいに萩原來)。あんまり元気ではない。元気なく(うなずく。見上げる)。元気のない(足取り。声)。お通夜みたいな顔「つか。元気が影を潜める。日に日に元気がなくなる。元気を(失う。なくす)。食べる気力もないといった感じ=鷺沢。何か大事なものでもなくしちゃったみたいにげっそりとした後ろ姿森環。冷然として槁木死灰にくの如くなる二葉亭。顔色に精彩がない。今一つ精彩を欠く。死魚の浮く池水のように生彩を失う“円地。生色を失う。覇気のない人間。不活発な(気体。クラブ。市場)。バイタリティーが微座ふじも感じられない。 **けんこう【健康】** 身も心もいたって健康。健康この上ない生活。健康が回復に向かう。▼健康が回復する(すっかり。めきめきと)。家族がみな健康で暮らす。何はなくとも健康でさえあればいい。健康な寝息を立てる。規則正しい健康な寝息。入一倍健康な若い体。よく食べるのは健康な証拠。健康に(自信を失う。関して何の不安もない)。恵まれた健康の持ち主。幸い健康もすっかり快復している。健康を祝して乾杯する。健康を取り戻す(めきめきと。目に見えて。見違えるほどに)。病気とは縁遠く暮らす"有吉。無病息災で過ごす。病らしい病にかかったことがない平岩。風邪を寄せつけない。たくましい健康そうな女。躍動感のある健康的な全身像"干刈。体がめきめきと遂者になる。ヘルシーな(食べ物。料理。和食)。 **しゃんと** しゃんと(気を取り直す。身を立て直す。胸を張る)。体をしゃんと立てる。しゃんと伸ばす(腰を。背筋を)。▼しゃんとする(足が。体が。気持ちが。腰が。姿勢を)。しゃんとさせる(頭を。気分を。背筋を)。しゃんとした(体つき。姿勢。服装)。 **じょうぶ【丈夫】** 風邪一つひいたことがないほど丈夫"重松。丈夫で(長生きする。長持ちする)。丈夫な(紙を漉すく。子を産む。体だけが取り柄)。地質がしっかりと丈夫な布"長塚。すくすくと丈夫に育つ。目に見えて丈夫になる。見るからに丈夫そう。丈夫そうな(男。洋服)。強健な(腕。体。人)。タフで屈託のない女。見るからにタフな刑事。 **すこやか【健やか】** 心身共に健やか。健やかな(心根の持ち主。眠りにおちる。若さに輝く)。病気一つせず健やかに育つ落合。明るく健やかに成長する。内臓が健やかに機能する。健全な社会生活を営む。眼の前に存在する事実を健全な悟性で判断する=柴田翔。健全なる精神は健全なる身体に宿る。 **せいき【生気】** 生気(液刺狙ったる述べ方。張扱ぇる面白い人間模様!岩橋)。若い女の柔肌のような汚れを知らぬ生き生きとした生気柴田剣。生気が(あふれる。宿る。ぴちぴち感じられる女)。顔に生気がさす。顔にぱっと生気がよみがえる。若々しい生気が日焼けした眉字に漂う?~加賀。▼生気が戻る(顔に。・目に)。顔に生気と愛情がみなぎる。声が生気に満ちている。体の内部から自然に湧き出てくる軽やかな生気のままに体がしなやかに晴れ晴れと動く=日野。植物がねっとりと濃緑の生気を醸し出す"日野。動物的な生気を放ってくろぐろと輝くドングリ眼は=石坂。暑熱にうだっていた木々や庭の草が雨を浴びて生気を取りもどす藤沢。瞳が生気を取り戻す。 **せいき【精気】** 精気が(体に満ちる。むんむんする。あたりじゅうに張りつめる)。顔に精気があふれている。体の隅々まで精気がみなぎる。胸中に清らかな精気が満ち満ちる。濃い緑の精気が朝の山道を包む。動物的な精気が発散する。体から精気が抜けて行くよう。体全体に精気が乏しい。脂切った精気でかがやくように見える顔・藤沢。精気に(あふれる。みなぎる)。若々しい精気に満ちる。水を得た魚ぅぉのごとく精気を取り戻す武田炎。瞬きを忘れた魚の目のように精気のない目!高橋和。 **せいきがない【生気がない】** ▼生気がない(顔に。髪に。表情に。頬に。目に)。生気がなくなる(体から。魂が抜けたみたいになって喜びや悲しみの感情の動きに浅川)。生気のない無聊510が来る。▼生気のない顔(押しひしがれた。肌から粉にを吹いたように高井)。生気なく窪くんだような目。生気に欠ける。生気の失せた体を抱き起こす。見る見る生気を失う。デスマスクを思わせる生気を失った顔=勝目。 <399> # 元気・生き生き **せいめいりょく【生命力】** したたかな生命力。生命力が(横溢ゅうする。強い。みなぎる)。生命力に(あふれる。乏しい。みちみちた若さ=瀬戸内)。逞封くしい生命力に感動を覚える=なかにし。素朴でなまなましい生命力を感じさせる陽気なライブハウス=五木。 **せいりょく【精力】** 精力が(あり余る。減退する。尽きる。みなぎる。湧いて出る。全身にみなぎる)。精力に(欠ける。満ちあふれた男)。若々しい精力に満ちる。精力の(やり場に困る。はけ口を求める)。バンのために精力のあらん限りを用いつくす有島。仕事に精力を集中する。取材に精力を傾ける。絶倫の精力を誇る。体じゅうに悪魔じみた精力をみなぎらせる=開高。全精力を(傾注する。集中する。注ぎ込む)。馬力が(強い。弱い)。馬力を(あげる。かけて仕事を仕上げる)。一生懸命馬力をかける。 **ちんたい【沈滞】** 沈滞した空気が広まる。意気が沈滞していく。経済が沈滞する。恐怖で萎靡いび沈滞する。沈滞ムードが漂う。世間がげっそりと寂しく沈む長塚。 **どんどん** どんどん(火を燃やす。道が狭くなる。後ろ姿が小さくなる。奥に入っていく。寒さが厳しくなる。時間がたっていく。仕事が詰まっていく。話が大きくなる)。遠慮しないでどんどん食べる。空想の世界をどんどん広げる。じゃんじゃん(手紙を出す。仕事が舞いこむ)。ずんずん(先へ進む。奥へ入っていく)。ずんずんと林を突っ切る。としどし(意見を出す。階段を降りる。子供をつくる)。ばんばん(利益を上げる。見つかるほどたくさんいる)。めきめき(腕を上げる。素質が伸びる。力をつける)。体がめきめきと発育する。背丈がめきめきと伸びる。 **はっき【発揮】** ▼発揮する(非凡の器量を。料理の腕を。ここ一番という時に力を。サービス精神を。縦横無尽の才能を。独特の面白さを。不思議な魅力を。やんちゃぶりを素直に。手腕を余すところなく。つまらない犠牲心を太宰)。存分に発揮する(若い力を。不思議な説得力を三浦し)。大いに手腕を発揮してもらいたい。遺憾なく発揮する(才能を。強さを。力量を)。▼遺憾なく発揮される(才能が。実力が)。効力が十全に発揮される。満足に性能を発揮できない。 **はつらつ【潑刺】** 水を得た魚ぅぉのように新鮮で潑剰"今来。潑剰たる官能が燃え盛る=里見。都会の潑刺たる空気。日光が浚刺と輝く。潑剰とした(歩き方。若さに輝く美しい娘。高見順)。若さの魅力がはつらつとした可愛い娘!宇野利。常春の萌えるような緑に塗りつぶされ爽やかに潑刺とした光景!佐山。潑刺として屈託がない。元気潑刺たる娘。 **ふるいおこす【奮い起こす】** ▼奮い起こす(激情を。元気を。精気を。勇気を。勇猛心を)。▼興起する(軍備の充実を。人心の一致を。世論を)。鼓する(勇気を。勇を)。▼発揚する(愛国心を。[然として(攻撃に転じる。強敵に立ち向かう)。 **ふるいたつ【奮い立つ】** ▼奮い立つ(気力が。軍兵が)。ふるいたつようなしっかりとした声=檀。▼発奮する(上司の言葉に。優勝するために)。発奮して勉強に取り組む。▼奮い立たせる(気持ちを。心を。自分を。人々を。勇気を。ともすればひるみそうになる心を"眉村)。▶鼓舞する(革命的精神を。組合運動を。士気を。将兵を。勇気を)。ここ一番とばかりに奮起する。奮起して(仕事に取りかかる。もう一度挑戦する)。▼奮起させる(社員を。腐っている役者を)。ここは奮起せざるを得ない。 **ふるう【振るう】** ▼振るう(大いに権力を。怖気じを。斧ぉのを。娘が翅はぁを。刀鍛冶妙になが槌を。強大な努力を。鋭くもを。健筆を。剣を。縦横に手腕を。必死の勇を。吹雪が猛威を。鞭もちを。勇気を。料理の腕を。一刀流の極意を。機構改革に大鉈さを。縦一横無尽の武勇を。力を込めてバンチを。沈着冷静にメスを。滔々懸河忙於ぅの弁を。日本中に勢成を。ひとしきり熱弁を。猛然とスコッブを。双肌脱らはぎになって鉈を福永)。▼ふるう(溢れるばかりの雄弁を"美濃部。政権保持に辣腕を藤沢)。抓ょう(ここぞとばかり存分にペンを横山。死力を尽くして弁舌を"村上元)。▼縦横に振るう(巧妙な毒舌を。才腕を)。蛮勇を奮って(ただ闇雲に突進する。がむしゃらに実行する浅川)。槍ゃ♪を振るって闘う。奮っている(言いぐさが。スピーチが)。 **みずみずしい【瑞瑞しい】** みずみずしい(恋の感情。美貌の娘。筆で報告する。色気にみちみちた女池波。人間的感情にあふれた魅力ある人物=瀬戸内。はじけるような生命の輝き=飯田。花の色がそのまま黒土にしたたるように紫陽花誌にの花に雨が降りしきる=曽野)。頬や体の線がみずみずしい。顔にみずみずしい光沢がある。女の健やかなみずみずしい体三島。体中に水分が回りきった切り花のようにみずみずしい女性"胡桃沢。思春期の少女のようなみずみずしい感じのする街"五木。張りのある黒目がちな水々しい目"芥川。日射しに瑞々しい初夏の匂いがする=村上春。わが目を疑いたくなるような瑞々しい若芽が吹き出す竹西。年に似合わず水々しい大がらな婆さん"芥川。みずみずしくつややかなほんとうに汚れのない感じのふっくらとした脚"高見町。たったいま地上に誕生したかのようにみずみずしくきらびやかに躍動する海宮尾。青春を瑞々しく描く。水田の青のみずみずしさが目に沁しみる=山口。豊満な肉体が未だに瑞々しさを保っている"隆。水色の花弁を持つ花の水々しさを見せるような女の表情高橋三。 **ものをいわせる【物を言わせる】** 物を言わせる(威光に。威力に。顔に。数に。金に。権力に。工業力に。人数に。武力に)。 <400> # 濃い・薄い **あつい【厚い】** ▼厚い(上司の信任が。信仰心が。信望が。人望が。尊崇の心が。面の皮が。報謝の念が。秘密主義の壁が。唇がぽってりと高橋涼。手のひらがグローブのように=椎名誠)。厚い(雲が光を遮る。信心の持ち主。外套幼沙にくるまる。ビニールで頑丈にくるんだ包み。ふかふかした手袋)。胸の病が篤い。真情が厚い人。友情に厚い男。心からの厚い礼を言う。胸の厚い豊かな肉体。山に厚い霧がかかる。企業秘密の厚い壁に阻まれる=小林久。毛布のように厚い生地大庭、信頼が厚い。(上司や部下の。人々の)。厚く(お礼を申し上げる。感謝の念を述べる)。枯れ葉が厚く散り順かれる。▼厚くする(助成を。交わりを)。艶々と光る厚手の葉。ぼてっとした厚手の布地。野暮ったい鼠色ゆずぃの厚手の半コート。厚ぼったい(オーバを着る。雪片が吹きつける)。浮腫もくんだような厚ぼったい目蓋だぶ=篠田。声に厚みがなくなる。厚みがある(人生に。ずいぶん。人間としての)。厚みのある(肩。声)。一層の厚みを増す。立体的な厚みを持つ。肉厚の(椎茸しい。葉。ぽってりした唇)。 **あわい【淡い】** 淡い(憧れ。髪の香り。期待を抱く。恋心を抱く。冬の陽射し。夢を抱く、悔恨が胸に入りこむ。悲しみにとらわれる。寂しさを覚える。陽炎分のような予感"夏樹)。街灯が淡い光を投げかける。姿が淡い闇に沈む。夕暮れの淡い光。言葉にしようとすると消えてしまっ淡い感動を胸にしまっ吉本。水のように淡い心のわびしさ=石川。夢よりも淡い過去林美。桜が淡く咲く。思い出が淡くよみがえる。海霧が一面に淡くかかる。谷間を淡くひたしていた霧がすばやく晴れていく大江。淡くなる(印象が。日影が)。淡々しい(明るみ。色。雪)。淡々とかすむ水平線上。 **いろこい【色濃い】** 影響が色濃くにじむ。過去の染みを色濃くにじませる。狂気の傾向を色濃く内蔵する。顔に疲労が色濃く滲にじみ出る=城山。疑惑が胸に色濃く貼りつく小林久。失敗が色濃く胸中に残る=太宰。陽射しが真夏を思わせるように色濃くなる=北原。▼色濃く残す(職人気質を。方言を)。 **うすい【薄い】** 薄い(煙のような雲。陽が射す。笑みを口もとに浮かべる。月明かりが障子に映る。布団にくるまる。宵が地を低く掩ぉぉう長塚)。薄い(女の子に縁が。壁が。髪が。客になじみが。唇が。唇に血の気が。魚の影が。母性の意識が。壁が紙並みに。裁判に勝つ見込みは。物音も人の姿も夢のなかのように感触が"中沢)。肉の薄い肩。血の気のない薄い唇。戸から薄い光が射しこむ。どことなく影の薄い娘。ほんやりした薄い眉。目に溶い涙をにじませる。目の回りに薄い限くまをつくる。自分を一枚の紙のように薄い存在に感じる藤沢。今にも消えてなくなりそうなほど薄い明かり辻仁。紙のように薄いコウモリの皮膚"畑。仮面のような薄い笑い=石田衣。鉋いんくずのような薄い木片=日野。山腹から上が薄い雲に呑まれる"高樹。自分の影に漂白剤をかけて、ただでさえ薄い印象をさらに悲めようと努力しているような男荻野。提灯らいうの薄い光が辺りに流れる=内田百。薄い子供(幸の。おとなしくて目立たない存在感の倉橋)。渉く(霜がおりる。焦げるくらいに焼く。煙っているような眼"原田店。微笑したままの安らかな顔」連城)。絹地のように渉く柔らかな葉連城。霞が薄くかかる。クリームを薄く塗る。四方の山々が薄くけぶる。すっすっと薄く削る。空に薄く馬もゃがかかる。チーズを薄く切る。頬の肉が薄く削、げる。まぶたを薄く閉じる。目だけで薄く笑う。▼渉くなる(頭の天辺ぶんが。影が。髪がだいぶ。幼い頃の思い出が)。薄く目を開ける。閉じる)。薄っぺらな(お世辞。コート。思想。安物のコビー製品)。薄手の(紙。生地。コート。布)。薄べったい(座布団。胸)。薄めに味つける。薄めの(色。布)。手の切れるような(新しい札。包装紙)。ぺらぺらした人組の反物。ぺらぺらの(薄い紙。単衣ひとを着る)。水っぽい(牛乳。酒。スーブ)。 **うすめる【薄める】** ▼薄める(印象を。嫌悪感を。効果を。欲望を。弱かっを水で。苦い茶を湯で。恥ずかしさを笑みで)。薄くする(感銘を。色調を)。 **うすらぐ【薄らぐ】** 薄らぐともなく吹きが薄らいで行く=岡本。▼薄らぐ(感謝の念が。窮屈な印象が。恐怖の心が。険悪な表情が。不安が。胸の痛みが。胸の息苦しさがいくらか。ろうそくを吹き消した後のしぶったいような異臭が=山本有)。憂鬱が少しずつ薄らいでゆく=佐藤春。 **うすれる【薄れる】** ▼薄れる(体の火照りが。関心が。記憶が。警戒心が。効果が。表面の艶が。気配が段々に。張り詰めた気分が。夜気の冷たさが。容貌へのコンプレックスが。娘っぽさがすっかり)。薄れていく(意識が徐々に。年ごとに記憶が。痛みが日に日に。思い出が日ごとに。傷心が日とともに。耳鳴りが少しずつ)。霧が少しずつ薄れ始める。薄まる(色が。感動が。関与の度が。匂いが。年齢相応に情熱が)。霧がほのぼのと薄れかかる=本庄。 **うっすら** うっすら目を閉じる。頬にうっすら脂が浮いている。うっすらと(赤みを帯びる。汗がにじむ。跡がつく、記憶がある。霧がかかる。涙をためる。においがつく。肌が汗ばむ。半眼を閉じる。日がさす。光が漏れる。髭ぃげが生える。埃にこが積もる。埃をかぶる。目を開ける。輪郭を現す。青みを帯びた空。明総結時が消え残っている。浮き出して見える。笑みを浮かべる。顔に笑いが浮かぶ。口紅の跡が残る。霜に覆われた石段。涙が両目を覆う。額に汗を浮かべる)。 <401> # 濃い・薄い **うんも【雲母】** 雲母が渉くはがれる。雲母を薄く引き延ばしたような光った白い衣裳"原田底。ブールが午後の日射しに雲母をちりばめたように光っている"落合。雲母を浮かしたような薄氷が張る=吉川。雲母のようにきらきらと光る午後の光!遠藤。垢ぁかが乾いて薄い雲母のように剥げる=小林多。日当たりの雪の壁が雲母のように薄い氷になって重なる"石森。底光りのする雲母色心祈らの雨雲が縫い目なしにどんよりと重く空いっぱいにはだかる有局。 **きはく【希薄】** 希薄(意識が。時間の感覚が。生命感が。物語性が)。空気の希薄な富士山頂。生存力の希遊な人。意識が次第に希薄になっていく。▼希薄になる(事件の記憶が。人間関係が。印象がうっすらと)。▶希薄化する(関心が。近所づきあいが)。 **こい【濃い】** 濃い(藍色の湖面。霧に覆われる。すみれ色の空。沈が落ちる。乳白色の霧。灰色の雲。エメラルド色の海。化粧を施した顔。たそがれが迫る。需ちゃが立ちこめる。夕闇に包まれる。緑を曇り日の下に澱ょとませる=大岡)。▼渋い(偽造の疑いが。草木の緑が。香水の匂いが。肉親の情が。野生の血が。血は水よりも。宣伝的な色彩が。血のつながりが。投機の色合いが。つながりが殊の外。山々の緑がおそろしく。影が鋳込んだように=日野)。化粧の濃い女。きりりと濃い眉。滴るばかりの濃い緑。反体制的な匂いが濃い行為。緑の濃い木々を風が揺らす。窒息しそうな濃い粘りつくように闇の濃い夜藤沢。愛しい贈りものが蜜より濃い匂いを放って彼を招く黒井。森の濃い闇がひろがる=石坂。▼色が濃い(人波に師走しゃの。表情に失望の)。▼影が濃い(イワナの。木々の枝が落とす)。濃く淹ぃれた茶。ガスが濃く立ちこめる。視線が濃く絡みつく。嫉妬の色が濃くみなぎる。不安の色が濃くにじみ出る。歴史を濃く彩る。花の香があたりに濃くただよう平岩。妙に濃く煮つまった静けさ=日野。▼濃くする(疲労の色を。胸に絶望的な思いが影を=勝目)。▼濃くなる(次第に夕闇が。哦争の敗色が。日増しに緑が。暮色が。狎れ合いめいた感情が自然に。森の緑がいやましに。日増しに春の気配が"日野。不安が暗闇とともに=福水。夕焼けの色がますます“内館)。▼色が濃くなる(秋の。砂が濡れて。生活に困窮の。圏の。夜の)。▼一段と濃くなる(香りが。臭気が)。濃いめに(味つける。顔をつくる。化粧する)。白粉にを濃いめに塗る。濃いめの(お茶。コーヒー)。濃さを増す。血の濃さを感じる。高濃度の汚染が見つかる。こってりした(色気。カレー。ソース)。濃度が(高い。低い。増す)。 **こまやか【濃やか】** ▼こまやか(愛情が。きめが。神経が。夫婦の情愛が。夫婦の仲が)。こまやかな(心配り。筆致で描く)。女らしいこまやかな心。こまやかに(看病する。ケアする)。空気の粒が細やかに湿りを帯びる=黒井。情交がこまやかになる。空気が濃やかになる=田山。▼こまやかさ(作品の巽ぃだの。上等なスーブの味の)。纏綿にんたる(情愛、情緒にあふれる)。情緒纏綿の別れ。 **のうこう【濃厚】** 怨恨の線が極めて濃厚。濃厚な(キスが続く。鼠色ゆげぇの雲。香りが立ちのぼる。内容を淡々と現す。場面を見せつける)。嗜虐性しだいの濃厚な場面。エロチシズムの濃厚交官能小説権田。肉の塊が焼ける濃厚な匂いがたちこめる!大江。濃厚な匂いが(鼻を打つ。あたりに充満する)。悪臭が濃厚に立ちこめる。疑いを濃厚に持つ。夢の後味が濃厚に残る。▼濃厚になる(危険の兆候が。他殺の疑いが。疑いがい一層)。秋の気配が濃厚となる。敗色濃厚な戦い。 **のうたん【濃淡】** 風景を分ける極端なほどの光の濃淡藤沢。濃淡が目まぐるしく移り変わる。濃淡の緑で織ったカーテン。頭上を覆った枝々の間から午後の太陽の光線が奇妙な濃淡の斑模様はだ16をなして流れ込む福永。水紋のように闇が濃淡を描いてひろがる山肌!高橋和。昏くれかかった灰色の雲が墨の滲にしみのような濃淡を去来させている"松本。談話が幾度かの曲折と濃淡を経て続く!久米。色の微妙なグラデーション。元気なおばさんの声がグラデーションで沈んでくる荻野。鳥と花を虹のようなカラーグラデーションで描く“干刈。 **のうみつ【濃密】** 濃密な(色と匂い。逢瀬や、うを交わす。人間関係。闇に包まれる)。空気がにわかに濃密な肌触りで身を包む"黒井。逃げ場のない濃密な静寂竹西。陰毛が濃密に茂る。青春の匂いを濃密に描きこむ。愛をせつなく濃密に描き上げた筆・田辺。濃密になる(仲が。夕暮れの気配が)。 **ぶあつい【分厚い】** 分厚い(脂肪の層。面の皮を被る。鎧はぅに覆われる。コンクリートの壁。沈黙に遮られる。レンズのついた眼鏡)。部厚い書籍を渉猟する=斎藤栄。樫かしの分厚い扉。空に分厚い雲が覆いかぶさる=山本一。ビンの底のような分厚い眼鏡"西木。森が分厚い雪に閉ざされる=加賀。分厚く(綴とじた帳面。膨らんだ紙封筒)。 **みつど【密度】** 密度が(大きい。小さい)。仕事の密度が低い。心の密度が薄い人間高樹。ちょうど油の中へ水を一滴垂らしたようにどうにも周囲と密度が合わない=山本周。いつもに比べて圀の密度が濃い夜。永井飢。奥に入って行くとますます静けさの密度が濃くなる=小川。密度の(濃い逢い引き。高い視線)。交際の密度を深める。人口密度が高い。 <402> # 興奮する・感動する **かんげき【感激】** ▼感激が(全身を駆けめぐる。脳裏によみがえる。いまさらのように脳裏に甦る=和人。かっかっと沸き立つ=本庄)。宗教的な感激が湧く。感激で胸が一杯。心が湯のような感激でいっぱい=山本忠。感激に(価する大事件。潤む感。頬を染める。身が震える。目を潤ませる。胸をおののかせる)。感激の(極に達する。声を上げる。涙を流す。さらにない死のような世界有局)。顔が感激のため紅潮する。感激のあまり(しどろもどろで言う大江。手を取り合って泣く=大庭)。苦労の甲斐があって綺麗に仕上がったときの感激はひとしお奥泉。感激を表現することを惜しむように黙っている=新田。胸に感激を呼び起こす。生涯今日の感激を忘れない=山岡。感激する(いたく。英雄的な闘争に。涙をこぼさんばかりに。頭がぼんやりするくらいに=乃南。膝小僧が震えるほど=有吉。身の置き場のないほど=松木)。感激して涙が出そう。感懐が(込み上げる。つきない)。感懐に打たれる。感極まった(言葉が漏れる。涙がはらはらと頬を転がり落ちる=宮本百)。感きわまって(嗚咽えする。男泣きに泣く。号泣する。涙を流す)。感に堪えた(という顔つき。顔で幾度もうなずく)。感に堪えたような叫び。感に堪えたように(歌う。黙り込む)。感に堪えぬといったつぶやきを漏らす。さも感に堪えぬといった言い方をする。 **かんたん【感嘆】** ▼感嘆に近い驚き。感嘆の(叫びを上げる。目で見る。ざわめきが満ちる。溜め息を漏らす)。聞き手の感嘆の声。感嘆の声が上がる。感嘆の声を(発する。漏らす)。無邪気に感嘆の声をあげる。感嘆する(記憶のよさに。素早い動きに。目を丸くして。自然のなす神秘な業に三浦絵)。感嘆符を打つ。嘆美の(息が漏れる。声が上がる)。▼嘆声(感慨じみた。おこがましい)。期せずして大きな嘆声が上がる。小さな葉の美しさに嘆声をあげる。 **かんどう【感動】** ▼感動(神の啓示にあったような新鮮な瀬戸内。甘美な溺れるような大佛。魂の奥底からの切実な呼び掛けを持ち心身を貫き通すような深い=加賀。身が引きしまるような"小林多。胸のしびれるような石川。目に涙が出て指が震えてくるような"田辺。悪い酒に酔ったときのような"中村貞)。感動が(一生消えない。一層深まる。胸にあふれる。胸底に染み渡る。腹の底に落ち着く本庄。水で薄められる島田)。すぐには感動が言葉にならない。激しい感動が体を貫く。満員だった客全体に寒気がするような感動が伝わる=高橋治。新鮮な感動が心の中に拡がる=原田康。深い感動が体の奥底から湧き上がってくる!!有吉。まじり気のない感動が胸の中に光る=中村身。感動で(語尾が震える。体が揺すぶられる。胸がいっぱいになって声が出ない!柴田錬)。胸がしめつけられるような感動でいっぱいになる=堀。感動に(声をうわずらせる。胸を締めつけられる)。うたた感動にたえない。心が感動に打ち震える。爽やかな感動に満ちる。感動のあまり涙ぐむ。見ず知らずの川や湖へ入って釣れたときの感動は旅先の思いがけない恋に似て感動が大きい=開高。感動を(こめて言う。読後に与える。胸に湛たたえる。笑いに紛らす。言葉に定着させる。わざと押し隠した声。永井路)。不思議な感動を味わう。胸の内の感動を隠す。奥深い感動をつつみ出来るだけ何気ないように装う―大佛。言葉にしようとすると消えてしまう淡い感動を胸にしまう。吉本。小さな感動を胸に育てる=大江。▼感動を受ける(鮮烈な。衝撃に近い。重大な約束の時間もしばし念頭を放れてしまったほど深刻な=坂口)。▼感動を覚える(言い知れぬ。戦慄に似た。心が冷え行くようなむごたらしい=中島宛。全身が凍るような=間。寛ぃぅい大。 <403> **こうふん【興奮】** ▼興奮(身が引き締まるような。身体の中で美しい音楽が演奏されているような不思議な円地。好きな俳優とでもいるような淡いひそやかな石川。喜びと恐怖が交錯した一種異様な江戸川。頭の芯がしびれる=阿久。重い酔いのような古井。心臓がキュウウとしぼられるような"大原。骨まで溶けるような=日野。胸がしめつけられるような=畑。眩暈めまいがするほどの=岡本。焼け残った綿のようにくすぶっている=高樹)。胸の中に花が咲いたような美しい昂奮=石川。興奮いまだ冷めやらず。興奮が(尾を引く。まだ冷めない。極限にまで達する。澱のように残る。もやもやと燃えさし火のように燃え続ける!高村)。頭の興奮がおさまらない。声に興奮が入り混じる。戦勝の興奮がしずまる。前夜の興奮がよみがえる。スタンドの興奮が最高潮に達する"つか。先刻の興奮がまるきり嘘だったかのように冷静になる=菊池。驟雨のような昂奮が通りすぎるのを待つ=本庄。興奮で声が上ずる。瞳が異常な興奮で燃える。生身の興奮というるつぼの中に身を投じる"阿久。興奮に顔を真っ赤にする。体が熱っぽくなる興奮にとらえられる。身体が燃えるような興奮にとりつかれる=石坂。遠い異郷への目くるめくような興奮に心をふるわせる=飯田。興奮に目を(血走らせる。光らせる)。興奮の(あまりどもる。極に達する。るつぼと化す。後の空虚が心に広がる。高みにのぼりつめる。去った後の空しさを噛む=高橋和)。燃えるように興奮の度が増す多岐川。興奮を(眉宇に秘める。わくわくと感じる)。初経験に異常な興奮を注ぐ。血が逆流してきそうな興奮をおぼえる永倉。▼興奮を覚える(得も言われぬ。課せられた任務の重さに身が引き締まるような"西木。肌が粟立つほどの=原田宗)。興奮する(自分の言葉に。血の匂いに。異様な光景に接して。吉報に少なからず。気味の悪いくらい。他の客があきれてシラーッとこちらを見ているのにも気づかなかったぐらいに飯田。今にもこめかみの血管が破裂するのではないかと思われるほど=大原。大声で叫び出したいほど=軍司。舌がもつれるほど=辺見。熱病やみのように=谷崎。胸が苦しくなるほど=原田宗)。寝つかれないほど昂奮する=松浦。亢奮しがちな神経に休みを与える宮本百。興奮した(気持ちを鎮静させる。声で喚き立てる)。あれほど興奮したことはない。興奮して(金切り声を上げる。体をぶるぶる震わせる。とても眠れそうにない)。興奮気味に(話す。目を輝かせる)。躁的な興奮状態。快い興奮状態に浸る。頭が熱くなる。アドレナリンが体を駆け巡る。カーッと全身が熱くなる=山岡。体じゅうの細胞の一つ一つが浮き立ってくるような気分三好徹。声が耳に入らない。心が激して溢れ出る言葉をとどめることができない=福永。心に火をつける。周囲が視野に入らなくなる。神経が昂ぶる。心臓の打つ音が顔面で感じられるような気がする=鷺沢。全く制御できない気持ちに駆られる=井上靖。全身の血が(カッと燃え上がるような気がする=源氏。逆流するのを覚える=小林久)。血沸き肉躍る。手に汗を握って見つめる=江戸川。禿げた頭にまで血の色が上る松本。額の深い皺を波立てる=加賀。▼色めき立つ(家じゅうが。捜査本部が。にわかに。すわ泥棒と)。エキサイトする(応援団が。場内が。議論で。リング上で)。 <404> ハイになる。 **わかせる【沸かせる】** ▼沸かせる(観衆を。血を。ファンを)。 **こうよう【高揚】** ▼不自然にかきたてられた破局的な感情の高揚=高橋和。胸をかきたてる昂揚が内側から満たす=大江。全身の血が逆流していくような感情の昂揚を味わう小林久。高揚する(意欲が。士気が。戦意が。文化的精神が。労働運動が。ナショナリズムが)。心の中がねじ曲がって堰き止められては野放図に昂揚する三島。高揚した(気分に浸る。口調で褒める)。良質のウイスキーでもなめたような高揚した気分=五木。心がおどるような魅力=白井。気持ちを高揚させるような風景"干刈。二十歳になるという得体の知れぬ余裕と高揚感は全財産を懐にして歩いている状態によく似ている=原田宗。躁状態にまで喋りまくる。テンションが(上がる。高い)。気分が。 **こころおどる【心躍る】** ▼心躍る想像の世界で遊ぶかのごとく含み笑いをつづける=村松。心躍るほどの期待をする。身体の中からワクワクするような思いが湧いてくる=つか。心のおどるような素晴らしい世界白井。心が軽く飛び立つような気持ち。中河。胸が躍る(喜びに。うれしさで。我知らず)。胸がまるで早鐘をつくように躍っている芥川。胸が躍る話。▼胸躍らせる(期待に。希望に)。▼胸を躍らせる(期待に。物珍しさに。わくわくと)。胸躍る気持ち。 **したをまく【舌を巻く】** ▼舌を巻く(細かな工作に。神経の鋭さに。深慮遠謀に。働きぶりに。あまりにも手のこんだやり方に=村松。竹の皮を利用してつくつた創意に水上。放胆不敵な実践力に柴田錬)。▼巧さに舌を巻く(頭の。センスの。手際の)。若い者も舌を巻くくらい芸能人のゴシップに詳しい=宮本。 **じょうきする【上気する】** ▼上気する(顔が真っ赤に。興奮して赤く。頬がうっすらと。眩暈めきを感ずるほどに"有吉。頭が沸き返るほど"中。顔がゆでだこみたいに=江戸川。見合いをする娘のように初心うぶらしく芥川。胸がどきどきして顔が火の出るように"中。湯気に包まれているように=伊藤整)。上気した声でけたたましく笑う。微かすかに汗ばんでいるように上気した頬・海音寺。顔が上気して赤くなる。▼上気させる(頬をピンクに。頬をほんのり)。頬にかっと血がのぼる=五木。青白い頬に薄く血の色を染める=船山。耳朶をかっと赤くする!高井。学芸会に出演したときのようにあがる=大江。何もかもわからないほどのぼせきる=宮本百。▼のぼせる(湯気に。風呂で)。 **しょうどう【衝動】** ▼衝動(理屈で割り切れない動物的な内田康。性に飢えた男の=高橋こ。生への動物的な烈しい=萩原。フォルマリン漬けのオオサンショウウオのような青黒いのっぺらぼうの暗い=日野)。一度は消えた衝動が荒々しく甦る柴田翔。兇暴な衝動が波のように引いていく三浦。心の一角に悪い衝動が夏の雲のように立ち現れたと思うとみるみる心の空全体に拡がって行く中村真。創造的衝動が奔流のごとく溢れ出る=中村真。問いただしたい衝動が胸元までこみ上げる三浦朱。まっすぐに怒鳴りつけてやりたい衝動が動く黒井。落涙の衝動が伝染病のように蔓延する=貫井。狂気に似た衝動と戦う奥田。見届けたい思いが灼熱の衝動となって体を貫く光瀬。内なる衝動につき動かされる。大きな声で怒鳴り散らしたいような衝動に駆り立てる"堀。このまま眠りこけてしまいたい衝動に強く誘われる=島尾。性の衝動に振りまわされている夫を嘲笑する=筒井。だらしなくてその時の衝動に負ける=大岡。殴りつけたい衝動に耐えるのに苦労する"山口。激しい憎悪が笑いの衝動に変わる=開高。衝動に駆られる(自殺の。殴りつけたい。笑いだしたい。抱きしめたいような。大声で叫びだしたい“小林久。胸を掻きむしりたい=横山。われ知らずすがりつきたいような“山本)。衝動にかられる(獣のように叫び出しそうな原田。つかみかかりたいほど怒りの坂口。むちゃくちゃな乱暴をしたい=小林多)。思いきったことをやってみたいという衝動を唆そそる=山本周。何かを壁にたたきつけたい衝動を抑えるのがせいいっぱい池田。身内に荒々しく動きまわる衝動を辛うじて押し殺す小林久。衝動を抑える(こみ上げる。殴りつけたい)。衝動を押し殺す(凶暴な。叫びたい)。▼衝動を感じる(小走りに駆けてみたいような水上。泣き出したいような=大岡)。▼激しい衝動を覚える(憎悪に近い。居ても立ってもいられない貫井)。衝動のような突然さで反乱を思い立つ=司馬。衝動的な(悪意。男。思いつき。行動に走る。振る舞い。欲求)。衝動的に(殺人を犯す。自殺を図る。立ち上がる。暴力行為に走る)。 **スリル** ▼スリル(胸がどきどきする。体がしびれるような=長崎。身の破滅ともなりかねない瀬戸内)。スリルとサスペンスに満ちた物語。狼に追われるスリルと快感が湧きおこる=田辺。スリルに富んだ人生。スリルも行き過ぎるとたががゆるんでいろんな感情がブレンドされるらしい三浦。▼スリルを味わう(深淵に立つ。ぎりぎりの)。スリル満点の仕掛け。スリリングなドラマを楽しむ。 **たかなる【高鳴る】** ▼高鳴る(エンジン音が。心臓がときどき。心臓が破裂せんばかりに小池。胸が破れるように=子母沢)。高鳴る胸の鼓動。▼胸が高鳴る(思わぬ展開に。期待に。不吉な思いに。我にもなく)。高鳴らせる(弦を。胸を)。濃い霧がしだいに晴れて望ましく楽しい景色が見えてくるような胸の高鳴り=山本周。胸に高鳴りを覚える。 **たかぶる【高ぶる】** ▼高ぶる(緊張で心が。やたらに。勘が。神経が異様に。神経的な苛立ちが。不意に気持ちが)。高ぶる気持ちを制しかねる。高ぶった気持ちを鎮める。▼昂り(スクープを目前にした=横山。敵を迎え撃つような"野坂)。冒険をもう一度夢見る心のたかぶり瀬戸内。空腹と疲労から来る神経の高ぶり。ふっと昂ぶりが破れたように涙が流れ出す中上。高ぶりが体の奥から波のように盛り上がってくる=あさの。気持ちの高ぶりがおさまらない。物も言えないほどの高ぶり方。高ぶりに満ちた会話。かすかな高ぶりを覚える。感情の高ぶりを抑える。ほとんど度をうしなったように声をうわずらせる司馬。心臓がにわかに鼓動を増す梶井。胸が(早鐘を打つ。膨れ上がり高い動悸を打ちはじめる=小林久)。▼上ずる(感情が。気が)。残忍性が怒りとともに昂進する=横光。哀傷感が高調する。情が咳き上げる。 <405> **つのる【募る】** ▼募る(緊張と不安が。腹立たしさが。出資者を。恐怖が刻々に。悔しさが一層。釈然としない思いが。日ごとに悲しみが。無性にいらいらが。我が身のつたなさが。ボランティアを。好奇心がますます。不安がいやがうえにも)。疲弊が募る一方。敗北感が日増しに募るばかり。心が募る(畏敬する。うらめしい。慕う)。念が募る(奇異の。憎悪の。望郷の)。不安が沸々と胸の中に募ってくる=貫井。▼募らせる(危機感を。反感を。蛮行に怒りを。不安を。不満を。望郷の念を。ぐうっと不快を)。いやまさる(胸の思い。娘心の思慕の情)。見えつ隠れつする面影に思いがいやまさる=白洲。いや増す(いとしさが。数が。寂しさが)。いや増す興奮を隠しきれない。 **どきどき** ▼どきどきする(年甲斐もなく胸が。いざ実行に移そうとすると。心臓が早鐘のように=常盤)。大鯉のひそむ淵にそっと仕掛けをしてその場を離れる時のように胸をドキドキさせる=飯田。てっきり看破されたと胸をどきつかせる=田山。どきつく胸を押さえる。どきっとして(足を止める。立ち止まる)。どきっとするほど驚く。真紅の口紅がどきっとするほど鮮やか落合。どきんと心悸が高まる。心臓がどきんと鳴る。どきんとして(飛び上がる。しばらく動悸が消えない)。▼どきりとする(胸が。一瞬。思わず)。どきっとする(胸が。内心)。どきりとして(立ち止まる。振り向けない)。どきりとすることを平気で言う。どきりとするほど艶なやかな表情熊谷。胸がどきんとする。 **ときめく** ▼ときめく(心が子供のように本庄。心臓が処女の血を盛ったように"有吉)。胸がときめく(新しい発見に。期待に。年がいもなく。不意の訪問者に=虎尾)。▼ときめかせる(心を。胸を)。心ときめかして郷里に帰る。心のときめき(清純な。春の夜のような=梶井)。胸騒ぎめいたときめき。おののきと期待が交錯したような奇妙なときめきが胸を押しつつむ三田。肩の動きに童児のような心のときめきが現れる=本庄。切ないような胸のときめきがよみがえる"千刈。胸のときめき(うれしいような。かつての日に燃えた=有吉)。ちょっと胸のときめくようないい気持ち=有吉。あやしく心ときめく。 **ねっきょう【熱狂】** ▼熱狂が(冷める。とりつく。みるみる潮のように引く。湛水)。群衆の熱狂が高まる。熱狂というよりは狂気に近い『森。排他的熱狂と偏見に満ちた論文大岡。熱狂に駆り立てられる。ささいな障害が熱狂に油を撒き火を放つ=富岡。熱狂のあげくけが人が出る"阿久。人々を熱狂の渦に巻き込む。献身ぶりがおのずと熱狂の色彩を帯びる藤沢。▼熱狂する(観客が。ゲームに)。日本じゅうを熱狂させる。熱狂的な(信仰。声援を送る。接待ぶり。ファン。奮闘。拍手で迎えられる。気分ががっくり衰える美濃部)。甲高い熱狂的な調子で喋る=辻井。ゴルフにでは夜も日も明けぬ熱狂的な愛好家"阿刀田。はしゃぎ方に一種の熱狂的な不安がこもる三島。熱狂的に(興奮する。叫ぶ。拍手する)。ピアノの曲が熱狂的に高まる。▼過熱する(市場が。受験戦争が。投機が。討議が。ブームが)。狂熱的な(愛撫。興奮)。狂熱に(浮かされる。とりつかれる。駆られて書いた文章)。一大フィーバーを巻き起こす。 **ヒステリー** ▼ヒステリーが(起きる。爆発する)。ヒステリーの(発作を起こす。発作に襲われる)。ヒステリーを起こす気分にもなれないほどしらじらした気分"大庭。集団ヒステリーにかかる。 **ヒステリック** ▼ヒステリックな(勢いが刻々募る。笑い声を立てる。感情に囚われる藤本。捨て鉢な気持ち石川)。突如ヒステリックな声を出す。歯がみするようなヒステリックな声。椎名。ヒステリックな声が(会場に響く。割って入る)。ヒステリックに(奥歯をぎりぎりと噛み鳴らす石川。怒鳴る女の声に閉口する=南条)。逆上してヒステリックに叱りつける"小林久。とめどもなくヒステリックになりつつある=筒井。 **ものぐるおしい【物狂おしい】** ▼物狂おしい(情欲が五体にみなぎる。回想が悪夢に溶けこんでしまった一夜が明ける=中村真)。生の苦悩に深く執念くもの狂おしく潜入する三好達。心に物狂わしい飄風が起こる=菊池。物狂わしく抱きつく。▼もだえる(心が物狂おしく。物ぐるおしい肉欲がもりあがって女性の幻影の前に真継)。▼気が狂いそう(嫉妬と羨望で。心配と恐怖とで)。 **わくわく** ▼遠足に出かける前の子供のような不安とわくわく期待の混じったわくわくする心=山田詠。胸がわくわくするほど楽しい=柴田翔。わくわくと興奮を感じる。わくわくする(面白さに。幸福感に。いい知れぬ希望に。立っても座ってもいられないほど有吉)。全身をわくわくさせて喜ぶ。わくわくしながら成り行きを見守る。 <406> **いっせん【一線】**譲ってはならない一線。最後の一線で踏みこらえる。相手との間に一線を引く。かたくなに一線を守る。最後の一線を固く守る。素人とは一線を画す。▼一線を越える(最後の。越えてはならない)。いつの間にかずるずると一線を越えてしまう。瀬戸内。 **うわまわる【上回る】**▼上回る(大幅に。はるかに。わずかに。大きく)。予想を遥かに上回る素晴らしさ。」下らない(犠牲者の数が日に六七十人を。安く見積もっても五千万円は=宗田)。 **えっきょう【越境】**▼越境する(危険を冒して。隣国へ)。越境して空爆する。無法な越境攻撃。越境攻撃に踏み切る。越境攻撃を(正当化する。強める)。 **かぎられる【限られる」**▼限られる(打つ手が。表現の範囲が。狭い地域に。話題もおのずから)。限られた(資源。地域)。ごく限られた範囲。▼限られている(使い道が。用途が)。▼局限する(一部に。小部分に)。▼局限される(産地が。地域が)。 **かど【過度】**核反応が過度に進まないように制御する=柳田。敬語の使用が過度になりがち岩淵。過度の幻想を抱く。感情の過度の高ぶり。過当競争を象徴する出来事。過当な援助を差し控える。 **きかん【期間】**契約した期間が終わる。平和な風なさの期間が続く。相当の期間にわたる。見習い期間を終える。拘束期問が長くなる。準備期間を経る。試用期間が終わる。会期(国会の。展覧会の)。年限が(切れる。来る)。年限を(切る。延ばす)。 **きょうかいせん【境界線】**境界線がおぼろげながら浮かびあがる。両説の境界線が滲にじんでくる。愛しているのか憎んでいるのか境界線がおぼろになる"池井戸。境界線を引く。当落線が分からない。当落線上にある。候補が当落線上にいる。当落線より下にある。ボーダーライン(及落の。合否の。当落の)。ボーダーラインすれすれのところを上下する小林久。 **くぎり「区切り】**人生の一つの区切り。区切りがつく(気持ちに。仕事に)。▼区切りをつける(過去に。気持ちに。迷いに。話の)。一言一言出しおしむように区切りをつけては叩きつける=安部。 **くぎる【区切る】**▼区切る(過去と未来を。庭と畑を。眉が額を。店と調理場を。計画を三期に。いくつかの時期に。価格を三段階に。連山が空を斜めに)。単語を区切って書く。電線が夏の空を幾つものブロックに区切っている=落合。一語一語区切りながら言う。ゆっくり一言一言区切るように言う三浦作。エポックを迎える。▼画す(一時代を。時代に一時期を)。括弧で囲む。括弧をつける。▼きりがつく(気持ちに。絶望の生活に)。工場経営にきりをつける。碁盤の目のように区画された町。てきぱきと仕分けを始める。線引きする(範囲を。確率を基に)。文章に段落をつける。節目(五十年目の。人生の)。立ち居にしっかり節目をつける。画期的な(考え方。成果。出来事。発明)。エポックメーキングな事件。 **くに【国】**国が(滅びへ向かう。泰平を取り戻す)。国から民間へ移管する。旅人が国から国へ渡り歩く。詩の国に足を踏み入れる=佐藤巻。国の礎となる。農は国の一本。いろいろな国の男女が参集する。国は難癖をつけるために金棒をもって突っ立っている理屈のわからない鬼みたいなもの=大庭。国をまたぐ犯罪。あちこちの国をめぐる。意のままに国を動かす。悲観が国を覆う。ほうぼうの国々から来る。各国が足並みをそろえる。観光立国をめざす。国運が傾く。国益がぶつかり合う。国情が騒然とする。国庫からの補助に頼る。小国が生き延びる道。小国を侮る。諸国遊歴の旅に出る。先進国と発展段階が違う新興国。新興国が発言権を獲得する。新興国を支援する。大国意識に目覚める。大国におもねる。列国間の対立が続く。一国の(領主になる。支配が崩壊する)。各国の(動きを調べる。大使を歴任する)。国益を(損なう。守る。代表する外交官)。国土が(焦土と化す。若い力に満ちる=山本周)。天変地異が国土を襲う。大国の(利己的行為を断罪する。言語支配を排する=佐高)。 **けじめ**けじめ(金銭の。公私の。善悪の。身分の)。けじめが(曖昧。つく。ゆるむ。きっちりとしている)。何をするにもけじめがない。けじめがつかない(嘘と本当の。親子と個人の)。 **けんがい【圏外】**携帯電話が圏外にある。話の圏外に置き去りにされる。優勝の圏外に去る。限りではない(想像の。支払われるかどうかは保証の高見浩)。支配の埒外に置かれる。市民生活の埒外に押し出される。道徳の埒外の問題。 **げんかい【限界】**年齢的にそろそろ限界近蔭。我慢に限界が来る。辛抱には限界がある。▼限界に達する(体力が。努力が。疲労が)。肉体の限界まで働く。自分の力の限界を知っている。力の限界を感じる。」の限界を知らされる。能力の限界を(指し示す。鮮明に浮かび上がらせる=柳田)。限界ぎりぎりまで来る。閾値い。に達する。足を限りに歩みを続ける。限る限りの手を尽くす。暗黒の極みに立ち至る。疲労の極みの夢遊状態。終極の目標。 # <407> # 越える・区切る **けんげん【権限】** ▼権限が(地方に移る。曖昧で拡大解釈の余地が広い=有川)。権限を(一手に掌握する。少なからず失う)。生殺与奪の権限を握る。職権で土地を収用する。職権に基づく行為。全権を手中に収める。会社の全権を握る。 **げんてい【限定】** ▼限定する(意味を。期間を。使途を。用途を)。内容が自ずから限定される。限定的な打撃にとどめる。▼限る(霧が視界を。狭い範囲に)。絞り込む(区域を。候補を。重点課題を。事例を。容疑者を)。無限定な規制緩和。局地的な(集中豪雨。土砂降り。紛争)。局地的に激しい雨が続く。 **げんど【限度】** ▼我慢するにも限度がある。我慢が限度に来る。許容の限度に達する。神経が限度まで緊張し、生理的な限度を越えた嫌悪高樹。容量の限度すれすれまで満たす。限度額いっぱいに買い物をする。アクセルをいっぱいに吹かす。雨戸をいっぱいに開ける。水筒をいっぱいに満たす。ブレーキをいっぱいに踏みこむ。これでもかこれでもかと(いじめる。自分に鞭打つ)。アクセルをこれでもかとばかり思い切り踏みつける泉優。タイムリミットを迎える。リミットに達する。目いっぱい(体を使う仕事。力をこめる。皮肉っぽく言う)。アクセルを目いっぱい踏み込む。目いっぱいのスケジュールをこなす。 **こえる【越える】** ▼越える(幾多の山坂を。丘を。海峡を。川を。境界を。県境の稜線を。限度を。五十の坂を。国家の垣根を。国境を。柵を。人種の壁を。頭上を。線路を。谷を。手すりを。波が防波堤を。橋を。万里の波濤を。踏切を。屋根を。山を。幾つかの尾根を。知識と能力の限界を。ボールが勢いよく塀を。偉大な父親の存在を"吉野。とがりやすい愛欲の感情の殻も山河を"石坂)。▼超える(記憶の容量を。許容量を。次元を。時代を。趣味の領域を。常識を。優に五千部を。輸入が輸出を。キャパシティを。想定していた額を)。百九十センチを超える長身。遥かに超える(一般レベルを。能力を。予想を。理解の範囲を)。越えがたい懸隔が横たわる。単なる懐古趣味を超えている。越え出る(限界を。立場を)。薪の山を躍り越える。忌ましい過去を乗り越える。▼踏み越える(垣根を。木の根を。限界を)。▼オーバーする(予定の枚数を。センターラインを)。過ぎたるはなお及ばざるが如し。光栄これに過ぎたるはなし。▼過ぎる(所定の数量を。いささか言葉が。ちといたずらが)。生死を超越した哲人の面影"胡桃沢。▼超越する(時流を。是非善悪を)。予定を大幅に超過する。山越えの道。山越しに見える。山越しの道。山伝いに歩く。山伝いの道。 **こくげん【刻限】** ▼出立の刻限が迫る。約束の刻限を過ぎる。一時間の時限スト。三年間の時限措置。門限に(遅れる。間に合わない)。門限を守る。 **こす【越す】** ▼越す(頭の上を。厳しい冬を。五十の峠を。年を。屋根の高さを。六十の坂を。山を一つ)。相手に先を越される。 **こっか【国家】** ▼国家(百年の大計。権力を批判する論調は目をつけられやすい有川)。国家に超越する価値"加藤。国家の(安全を脅かす。安泰を保つ。前途を憂える。難局に当たる。枠を飛び越える)。自由に対する国家の侵犯"矢作。国家は理屈や理想だけでは運営できない。現在の国家をあるがままに認める"美濃部。国家機構を(打ち砕く。強化する。奪取する)。国家機密に触れる。国家的な(事業。損失)。 **こっきょう【国境】** ▼大量の難民が着の身着のままで国境を越える=辺見。▼国境はない(資本に。放射能に)。国境なし(音楽に。芸術に)。隣町へ入ったと思うや、たちまち国境侵犯者のごとき扱いを受ける阿久。 **さかい【境】** ▼空想と現実の境がはっきりしない。職を境にして社会が変わる。境界を画定する。境目(明かりと闇の。幸と不幸の。夢と現つの。生きるか死ぬかの。店がつぶれるかどうかの)。境目が分からなくなる。内と外の境目がなくなる。一千万人の大台に乗る。五割の大台を越える。境界(科学と宗教の。夢と現実との。動物の分布上重要な)。潮目が変わる。海に潮目がくっきりと見える。社会の潮目の変化を読み誤る。 **しきり【仕切り】** ▼仕切りの襖を開け放つ。仕切りを(しつらえる。取り払う。設ける)。襖一枚で仕切られる。▼仕切る(おおまかな線で。部屋をカーテンで)。間仕切りする(座敷を。広間を。部屋を。カーテンで)。隔壁を(取り去る。取り付ける。設ける)。 **したまわる【下回る】** ▼下回る(基準を。平均点を。見込みを。予想を。平均を遥かに。ボーダーラインを)。▼割る(下限価格を。下限を)。 **しめきる【締め切る】** ▼締め切る(受付を。募集を。申し込みを。期日ごとに。先着百名で)。締め切りが迫る。原稿の締め切りが近づく。締め切り時間が刻々と迫る。締め切りに(遅れる。追われる)。原稿が締め切りに間に合う。締め切りの(期日が迫る。日が近づく。苦悩から解放される荻野)。締め切りまで十日を切る。平気で締め切りを無視する=東野。 **しゅるい【種類】** ▼種類が(多い。異なる。少ない。豊富)。種類を(異にする。あらかた識別できる)。機種(パソコンの。飛行機の)。新しい機種が加わる。機種を(決める。選定する)。▼種目(不得手な。競技の。スポーツの)。喧嘩口論の類が大きらい。狐狸の類にたぶらかされる。軍機に属する類の話。品種を(生み出す。改良する。見分ける)。品目ごとに並べる。類は友を呼ぶ。類を(同じくする。異にする)。 **そこぬけ【底抜け】** ▼底抜けに(明るい声。酒を飲む)。表情が底抜けに明るい。底抜けの(愛情を注ぐ。楽天精神があふれる)。底が抜けたように楽天的倉橋。底の抜けたような不思議なやさしさ鷹沢。 <408> # た **たてわり【縦割り】** 縦割りの悪弊を改める。所管官庁による縦割りの弊害。縦割り行政では対応できない。縦割り行政の弊害を見直す。封建的な上下関係の厳しい部。上意下達の(関係。組織)。 **ちいき【地域】** 地域に(根を下ろして生きる。役立つ仕事をめざす)。限られた地域に集中する。地域経済が(悪化する。発展する。疲弊する)。地域社会が崩壊する。地域社会を維持する。地域文化を育む。域内の平和を構築する。独立した区域に分かれる。地区をカバーする。地産地消による国産品の消費拡大。 **ちほう【地方】** 地方から上京する。地方に(拠点を構える。権限を移す。社員を飛ばす)。地方を旅して歩く。小まめに地方を回る。地方自治体の首長。地方的な特色に富んでいる民家建築=萩原。取材で地方都市を訪れる。地方分権の時代を迎える。 **なわばり【縄張り】** 小さな縄張りにしがみつく。他の縄張りにずかずか入る。勝手知ったる縄張りのうち。一帯を縄張りにする。縄張り意識が強い。勢力が及ぶ範囲。 **にんき【任期】** ▼任期(議員の。市長の。大統領の。知事の。役員の)。任期を大過なく終える。任期切れを迎える。任期半ばでバトンタッチする。任期満了を迎える。 **ねんき【年季】** 年季が(終わる。満ちる)。家庭菜園づくりに年季が入っている。奉公の年季が明ける。年季の入った前掛はんをを着る。年季明けを迎える。 **はんい【範囲】** 目の届く範囲。辞書に魅入られた人々は、どうも西岡の理解の範囲から外れる=三浦し。範囲に絞りをかける。範囲を限定する。統計の誤差の範囲内。▼圏内にある(合格の。当選の。優勝の)。通信の帯域を節約する。新たな地平を切り開く。知識の地平を広げる。狭い枠内にとどまる。 **びょうぶ【屏風】** 火山灰層の崖が名工の刻んだ天然の屏風=石森。部屋の一隅を屏風で囲う。山が西陽をはねかやして、屏風なりに崖が囲む。屏風の陰を出たり入ったりする。屏風を(枕元に立てて寝る。立てたようになって襲いかかる高波=竹西)。夜具を囲うように屏風をまわす=山之間。屏風のごとき(壁立千仞へきりつせんじん。山つづき)。屏風のように(折り畳まれる。切り立った大きな岩=山本有。立ち並んだ椰子の木=梶井)。丘が屏風のように立ちふさがる=大岡。崖が屏風のようにそそり立つ=西木。岩壁が屏風のようにめぐる=中。木立を屏風のように廻した内側。=松本。山並みが屏風のように住宅地をかこう=水上。山々が屏風のように立ち並ぶ=井上靖。屏風を立てたような(炎の幕。山が間近に迫った町=高橋治)。一齣ご一齣に仕切られた大きな衝立ついたて=芝木。衝立で仕切る。涼しそうな緑の衝立の蔭かげ=梶井。衝立を隔てた隣。肩から足まで衝立のように四角で頑丈な体軀たいく=山崎。 **ぶもん【部門】** 部門の責任者が異動する。部門別に集計する。広範な分野を担う。話題があらゆる分野をかすめて滑る=中村。困難なジャンルに挑む。▼ジャンルに挑戦する(新しい。未経験の)。新しいジャンルを切り開く。様々なジャンルを横断する。 **ぶるい【部類】** 一定の部類に分ける。▼部類に属する(同じ。まともな男の)。▼部類に入る(高級の。最悪の。上の。ハンサムの。劣等生の。人間として最低の=さだ)。可愛い部類に入る女の子=久間。 **まどのそと【窓の外】** 窓の外がとっぷりと暗くなる。窓の外で鳥が鳴く。窓の外に(視線を向ける。広がる渓谷美。降りそぼつ雨。夕闇が迫る。夕べの星が瞬き始める。雪が舞い降りる。夜が舞い降りる)。窓の外は暗澹あんたんとして閉。物憂げに窓の外を見る。カーテン越しに窓の外を見やる。放心したように窓の外を眺める=沢木。窓外に遠く鶏の声を聞く。何気なく窓外に目を投げる。 <409> # 快い・不快 **いいきぶん【いい気分】** いい気分で酒を飲む。客をいい気分にさせる。さぞいい気分に違いない。何となくいい気分になる。この上なく気分がいい。この上もなくいい気持ち。悪い気持ちはしない。▼気をよくする(成功に。勝って。すっかり。褒められて。思ったとおりの結論に。連日の大入り満員に)。 **いがらっぽい** いがらっぽい(味。鼠ねずみの体臭)。喉が いがらっぽい。▼えぐい(口の中が。喉が)。えぐい味。 **いまいましい【忌ま忌ましい】** 忌々しい(思いを頭の奥に押し込める=伊坂。気持ちが胸の中にくすぶる=佐多)。僻ひがんだ子供のような自分の言い草が忌々しい=有川。いまいましいったらありゃしない=高見。いまいましげに(小言を言う。舌打ちする。テーブルを軽く叩く=開高)。▼忌々しさ(思い出したくない過去が急に顔を出したような=辻井。知っていても実行できない=阿木)。思い出してもいまいましさが胸底から込み上げてくる=源氏。胸のうちで忌々しさが煮えくりかえる=本庄。いまいましさに泣きたくなる。いまいましそうに舌打ちをする。 **うさばらし【憂さ晴らし】** 憂さ晴らしに出かける。▼憂さ晴らしする(酒を飲んで。旅に出て。八つ当たりをして)。心の憂さの捨て所。憂さを(慰める。晴らす。吹き飛ばす)。しばらくの間憂さを忘れる。平素の鬱憤晴らしをする。▼鬱憤を晴らす(たまっていた。日頃の。積もり積もった)。 **かいかん【快感】** ▼快感(有頂天とでも言いたいほどの=佐藤裕。温水で洗われるような穏やかな=松浦。うずくような一種の復讐心に似た=芝木。大きな獲物を追って山野を駆ける狩人のような=五木。心にたまっているものを発散するような=壺井。積み木の塔を壊すときの=若竹。ぬるま湯に浸っているような=遠藤)。快感が一段と強くなる。かすかな快感が蠟燭ろうそくの火のように点ともる=池澤。全身を痺しびれるような快感が走り抜ける=熊谷。▼快感が走る(疼うずきに近い。胸をときめかせる)。快感で胸が震える。強烈な快感で目がくらむ。快感に身を震わせる。自虐的な快感にひきずられる。嫌悪の情が快感に変わる=加賀。総身の快感に転々悶々てんてんもんもんする=永井荷。病後の人のような平和な快感に心が溶けて行く=中村真。下腹部を貫く快感の波に身をゆだねる=熊谷。苦しさがかえって胸の底を掻き立てるような苛立たしい快感を生み出す=黒井。シャッターの連続音が射精に近い快感を与える=小林信。ジワジワと獲物を追い詰める快感を楽しんでいるような顔=内田康。▼快感を味わう(被虐的な。小さな生き物をいじめる猫のようにみだらな=遠藤)。▼快感を覚える(他人をいじめることに。あえぐ。総毛立つような=北村)。 **かいらく【快楽】** 他所の家の火事を見るような加虐的な快楽=瀬戸内。快楽が発条ばねのように強靭きょうじんにたわむ=三島。肉体的快楽がもたらす灼熱感=野間。快楽に(身を任せる。我を忘れる)。意気地なく快楽に溺れるというような女々しい遣り方=田島。花火のような肉体的快楽に酔いしれる=大原。無心に快楽に没入する=多岐川。快楽の(声を漏らす。海におぼれた仮死状態=柴田)。深い快楽の底に沈む。死と官能の快楽は隣りあわせに寝ている=中野美。死の前の快楽ほど奥床しくも華やかで玲瓏れいろうとしているものはない=横光。快楽三昧の日々を過ごす。歓楽の果を偸ぬすむ=徳田。▼享楽する(気楽なた空気を。自分の時間を。自由を。人生を)。享楽的な性格。歓楽が極まって悲哀が訪れる=高橋和。歓楽に(おぼれる。時を過ごす)。 **かんのう【官能】** 官能がもたらす束の間の喜び。官に身を委ねる。必死に歯を食いしばって官能の疼うずきに堪える=柴田。官能の喜びに溺れる。押し寄せてくる官能の嵐に抗あらがう=藤田。苦しいほどに官能をかきたてられる=島尾。官能的な快楽に没頭する。淫楽に(おぼれる。ふける)。一つ一つの動作の継ぎ目や隙間から生温かい性感が分泌物のように滲にじみ出る=吉行。性感に磨きがかけられる。愛し愛されているという思いが性感を昂たかめる=松浦。 **かんび【甘美】** 甘美な(夢に酔う。香りのする記憶に浸る。感情が胸いっぱいにあふれてくる。声に耳を傾ける。雰囲気が漂う女性)。妖しい甘美な雰囲気。口中にしびれるような甘美な味わいがじーんと広がる=山手。魂をとろかすような甘美な体験=中村真。見るたびに胸が息苦しいほどの甘美な気分に捉えられる=中村真。めまいがしそうな甘美な世界。=東野。 **がんぷく【眼福】** 眼福にあずかる。奇品に面した眼福を喜ぶ=幸田露。目の(正月。法楽。保養)。忝かたじけなきいほどの目の慰め=竹西。 **ききぐるしい【聞き苦しい】** 聞き苦しい(言い訳。弁解)。▼聞き苦しい(風邪声で。自慢話ばかりで)。少々聞き苦しい饒舌じょうぜつ。聞いただけでも忌々いまいましい。とても聞いていられない。聞いているほうが恥ずかしくなる。他人の悪口は聞きづらい。聞くさえ忌まわしい。耳が痛い。耳が腐る。言葉が耳に痛い。耳に痛いとどめの一言。下劣さに耳を塞ふさぎたくなる=佐高。良薬は口に苦し。耳を覆いたいような不快感=中村。耳を覆いたくなる金属音。声に聞く者の耳を覆わしむるような傷ましい響きがある=光。 **きくにたえない【聞くに耐えない】** 聞くにたえない(悪態。言いぐさ。噂。雑言。言葉でののしる。毒口を浴びせかける=里見)。美しい女性の不幸は聞くに耐えない=山岡。聞くに堪えない卑猥な言葉で揶揄やゆされる=あさの。聞くに耐えないような卑猥な言葉が飛ぶ=新田。聞くにたえぬような言葉を平気で口にする=北村。 <410> で揶揄ゃゅされる=あさの。聞くに耐えないような卑猥な言葉が飛ぶ=新田。聞くにたえぬような言葉を平気で口にする=北村。 **きづまり【気詰まり】**座を白けさすような気づまり水上。気づまりな(重苦しい空気。沈黙が続く。連中がいなくなってほっとする落合)。ボッカリ穴があいたような気詰まりな沈黙が残る!佐藤愛。お互いが気詰まりになるような席。気詰まりを解消するように問いかける=阿刀田。気が置けて窮屈。気ぶっせい「な人。何かと気ぶっせいな嫁。 **きばらし【気晴らし】**気晴らしに(酒を飲む。散歩する。ばあっと遊ぶ。ドライブに行く)。外へ気晴らしに出かける。時たま気晴らしに遊びに行く。鬼のいぬ間に命の洗濯・加太。気散じに旅行する。気散じの(日々を送る。毎日を過ごす)。他愛のない筆のすさび。慰み(気まぐれな。好事家の)。なぐさみに植えた草花。 **きぶんがわるい【気分が悪い】**気分が悪くなって吐きそうになる。頭と喉と胃を新品と取り替えたくなるような気分=北村。寝覚めが(よくない。悪い)。反吐へとを吐きたくなる。悪くなる(人いきれで胸が。見た途端気分が)。 **きもちよい【気持ちよい】**歩き心地が柔らかくて気持ちよい。気持ちがいい(晴れ晴れとして。てきぱきと仕事をかたづけていくので見ていて=つか。入浴すればさっぱりとして"玉村。骨がとけてしまいそうなくらい半村)。雨あがりの夕暮れは格別に気持ちがよい志賀。気持ちのいい(一日。せせらぎの音。天気。笑い声)。新緑の香りを含んだ気持ちのいい山の冷え冷えした空気が流れ込む志賀。誰もが微笑組みたくなるくらい気持ちのいい午後"小川。気持ちよく(事が運ぶ。答案が書ける。スケジュールをこなす。仲よくやっていく)。気分が気持ちよく解放される。酒の酔いが気持ちよく体内にまわる。仕事が気持ちよく進む。そよ風が気持ちよく吹く。空が気持ちよく晴れる。バーンと気持ちよく割れる。気持ちよさそうに(歌う。酒を飲む。寝息を立てる。目を細める。笑う。居眠りを始める)。青空に快音が響く。体の芯が甘美にうずく。いい心持ちで風に当たる。心持ちのよい(朝風。眺め)。心持ちよげに目をつむる。心持ちよさそうに悠然と立ち去る。こたえられない(快感。魅力。昼寝の夢に入っていく=池波)。風呂上がりのビールはこたえられない。成功に意をよくする。いい気持ち(いい男に足の裏へ噛みつかれたみたいに=川端。体が溶けそうなほど三輪。ちょっと胸のときめくような『有吉)。気分よく(帰途に就く。眠る)。日々是これ好日。名状しがたい壮快な気持ち。気分が壮快になる。悪い心持ちはしない。小気味よい(啖呵炊ん。風がそよそよと吹く)。小気味よく(ダッシュする。汚れが洗い流される。晴れ上がった秋の一日=赤川)。男どもを小気味よく投げ飛ばす。小気味がいいほど言葉がはきはきしている白洲。 **きもちわるい【気持ち悪い】**気持ち悪い(残酷な場面。におい)。気持ち悪い(びしょびしょで。虫酸が走るほど。汗で濡れたバジャマが=村山。生あたたかでぬめっとした感触が藤本)。気持ち悪いほどのべた褒め。ものを押し潰っぶすような気持ちの悪い笑い声高見町。身体中の体液が波打っているような気持ち悪さがなかなか消えない小川。気持ち悪そうな目をじろじろと向ける。胃袋に鉛を押し込まれたような気持ち。佐藤愛。体をすっぽり暗くべとべとしたものに包まれてしまったような気がする!安岡。眉にも手にも染みがついたような感感触=開高。雑巾で顔を逆撫でされるような感触"開高。 **ここちよい【心地好い】**心地よい(そよ風を受ける。深い眠りに落ちる。興奮の世界に引きずり込まれる"佐藤隊。疲れに身を浸す藤田)。心地よい(感触が。浮遊感が。潮騒乱ゅが耳に。風が汗ばんだ皮膚に。花びらの中に包み込まれたように=泉鏡)。汗ばんだ首筋に心地よい風。ふかふかの布団のように心地好い男永倉。空気が心地よい(早朝の。春先の林の)。心地よく(胃の腑に染み透る。クーラーをきかせる)。声が耳に心地よく響く。心が心地よく緩んでいく。ほてった頬を心地よく冷気がなでる。寝息が耳に心地よく忍び込んでくる!高橋元。心地よげに(杯を重ねる。眠り続ける)。慎ましい態度を心地よげに見やる。湯上がりの頬が心地よげに火照っている=檀。心地よさ(茨に刺された傷の痕を親切な手でさすってもらってでもいるような、谷崎。何か大きなものに包まれているような小川。母親の手の動きに身を任せきっている=三田)。雲の上に持ち上げられたような心地良さ=高樹。心地よさそうな寝息を立てる。心地よさそうに(昼寝をする。体をくつろげる)。一種官能的な心地よさに包まれる。 **こころよい【快い】**快い(眠りにおちる。解放感に包まれる。興奮が尾をひく。興奮状態に浸る)。▼快い(林を渡る風の音が。ほてった頬に川風が。風が汗ばんだ肌に。酒の酔いが気だるく。陶然とするほど。風呂がしみじみと。熟練した手の動きが眼に=高井。頭の芯が痺しびれるほど=高樹)。エンジンが快い音を立てる。からりと快い空。滑らかで耳に快い声。心臓をぎゅっと擱っかまれたような快い衝撃曽野。快く(質問に答える。世話を引き受ける)。自信を快くくすぐる。望みを快く承知する。頭の中がこころよく空っぽになる=石坂。快げな寝息を立てる。▼快さ(精神にシャワーを浴びているような"中村真。張りつめ通した心と。ブラウスのボタンが弾けて飛びそうなくらい=小林久)。 **ごうかい【豪快】**豪快な笑い声が響く。豪快に(ビールをつぐ。ラーメンをすする)。豪快に笑う(がはははと。ブラウスのボタンが弾けて飛びそうなくらい=小林久)。 # 快い・不快 <411> の糸が思う存分ゆるんだかと思われる悲しい=有局。日向ぼっこの猫みたいに背を丸めて蹲いって眼を細めたくなるような=高見感)。快さに身をまかせる。ナイロンの肌着や靴下のようになよなよと滑っこい快さを感じさせる情緒=円地。居心地の(いい場所。よさを味わう)。家族と過ごす毎日は穏やかな日溜まりに居座ったような時問高樹。穏やかな向かい風に身をあずけるような足取り~古井。温泉に首までつかって目をつむると一日の興奮と疲れがとけて流れ出していく飯田。心があでやかな思いに吸い込まれる"梅本。快適な(温度と湿度に保たれる。三日問を過ごす)。深い快美感に包まれる。快美な感覚のうねりが体を突き抜ける。 **さっぱりする**▼さっぱりする(散髪して。入浴すれば。ひげを剃って。一風呂浴びて。泣くだけ泣いたせいか気持ちが林美。恐っき物が落ちたように=山口。便秘が貫通したかのように=北)。さっぱりした(気性。癒酒しな気品。欲のない人)。後味がさっぱりしている。さっぱりと(諦めがつく。機嫌を直す。疲れがとれる。旅の垢ぁかを落とす)。部屋がさっぱりと片づく。さっぱりとした気性の人。さばさばした(女。気質)。さばさばと振る舞う。すてうっとする(頭が。気持ちが。胸が)。 **さわやか【爽やか】**読後感はあくまでも爽やか。さわやかな(初秋の空。涼しい木陰。春の街。山の朝。秋がからりと展開する。酸味がほのかにつく。新緑の季節が訪れる。すがすがしい気分。微風が吹きかよう。夜気が開けた窓辺に漂っている。疲労感が湯にとけて流れ出す=飯田)。青葉若葉のさわやかな景色。晩のさわやかな薄明。秋晴れのさわやかな天気。阿鼻叫喚とは無縁のさわやかな風が吹く=なかにし。口笛でも吹きたくなるようなさわやかな朝=飯田。旅の疲れが吹き飛んだようなさわやかな気持ち新田。眼をみはるようにさわやかな横顔"石坂。レモン汁のさわやかな刺戟しげで肌を冷やす=川端。まぶしいほど爽やかな笑い=坂口。さわやかな風が(頬に心地よい。踊りながら入ってくる=眉村)。さわやかに(目を覚ます。よく晴れた朝。伸び伸びした気持ち)。一番鶏の声がさわやかに響き渡る。梢がさわやかに日を浴びる。秋風が爽やかに頬を掠かすめていく=笹沢。日影が爽やかに畳へ射し込む人米。爽やかさ(動いている風はにおいを含んでいてひと呼吸するごとに肺を洗うような=石森。洗われるような石坂)。木々の中を通り過ぎていく風のような気分=辻仁。胸中一陣の清風が吹き入ったよう外村。暗い森をくぐって夜明けの山頂に立ったような心地高樹。すかっと気分が晴れる。すかっとする(気分が。胸が)。 **しかめつら【顰めっ面】**仁王様のようなしかめっ面"内田能。しかめっ面を見せる。痛くてしかめっ面をする。面白くなさそうにしかめっ面をして訊く内田歳。苦い薬を飲みくだすような顔三浦綾。顔をしかめる(甲高い音に。激痛に。さも痛そうに。酸っぱさに。嵐に。不愉快そうに。まぶしげに。無意識に。乱雑さに。思わず。獄のように。くしゃくしゃに)。▼しかめる(顔を大げさに。顔を不機嫌に)。顔をしかめたくなる噂伊坂。塩辛を飲み込んだような表情三好後。顔に渋面が浮かぶ。くすぐったさをこらえて渋面になる。渋面を作って(困却する。舌打ちをする)。 **じょうきげん【上機嫌】**▼上機嫌(浮き浮きして。笑いがとまらないといわんばかりに浅川。第一次大戦を向こう河岸の火事と眺めながら思う存分肥やした懐中で日本の経済界はほくほくの里見。よほど嬉しいことがあったらしく=和久)。上機嫌で(軽口を叩く。高笑いする。引き揚げる)。上機嫌な笑いで応じる。何事もなかったような上機嫌な顔。上機嫌に(片目を細める。声を高める)。▼上機嫌になる(にこにこと。酔うに従って)。誰かに挨拶されれば陽気な声でも返しそうな気分古井。鼻歌の一つも出ようというもの赤瀬川。覿面心に機嫌がよくなる。晴れ晴れと機嫌を直す。機嫌が直る。曲がった臍へそを真っ直ぐに直す!舟橋。ほろ酔い機嫌でにこにこする。機嫌がいい(一日中。いつになく)。機嫌がすこぶるよい。機嫌のよい声で答える。ほろ酔いの機嫌のよい声。機嫌よく(歌を歌う。声をかける。酒を飲む。冗談を言う)。 **すがすがしい【清清しい】**すがすがしい(朝の空気。土の香が立つ。祭部ぅの音。青畳の上を風が吹き通る。笑みを口元に浮かべる)。▼すがすがしい(身も心も。真新しい暖簾のれが)。いかにも満足そうなすがすがしい表情。心にすがすがしい思いが流れる。渡る風もすがすがいい季節。怨っちみも悲しみも忘れ果てたように清々しい気持ち菊池。胸一杯に吸い込みたくなるようなすがすがしい香りの小川。すがすがしいほど率直に心を打ち明ける=山本周。胸の中がすがすがしくなる。▼清々しさ(悪夢が消えたような"川端。体の深い部分に冷気が一筋流れこんできたような高樹。胸に吹き込んでくる一颯いつの空気の=山岡。胸の奥が涼しくなるような=林良)。洗われたような清々しさが心を満たす際。朝目をさまして顔を洗ったときのような心持ち永井荷。身体の中に浮かすのようにたまった小利口で臆病気質の沈澱物がきれいに洗い流されるよう“石坂。つかえていたものが下りていくよう高樹。すがしい(朝日。香り)。潔い態度に打たれる。深く(兜跡”を脱ぐ。法の裁きを受ける)。一陣の清風が通り過ぎるような深さ。見苦しくない振る舞い。飛ぶ鳥後を濁さず。立つ鳥跡を濁さず。 **すっきり**筋が通る。事件がすっきり解決する。すっきりと(垢抜かけした心。謎が解ける)。空がすっきりと晴れている。和服をすっきりと着こなす。多年の疑問が解けて胸がすっきりと軽くなる!藤沢。すっきりする(意識が。気持ちが。心が。だいぶ頭が。のどが。腹の中が。文章が。頬が。胸が。邪魔な物が消えて景色が高井。恐っき物が落ちたように気分が=内田春)。すっきりした顔立ち。垢抜けてすっきりした服装。▼すっきりしている(気筋が。目鼻立ちが)。▼せいせいする(気分が。胸が。荷が軽くなって。厄介払いをして)。心からせいせいした顔つき。 **すっきりしない**すっきりしない(気分が。別れ際が。何となく)。すっきりしない気持ちを抱く。胸の中のもやもやが消えない。事務所に閉じこもってくさくさする。くさくさするような雨降りの日"徳田。気分がくさくさするような天気。釈然としない(顔つき。気分を抱く。気分に捕らわれる)。どこか釈然としないものが胸の中に沈殿する佐藤愛。釈然としない思いが(募る。残る)。割り切れない(感じが残る。感情をいだく。違和感をいだく)。▼割り切れない(どうにも。事情はそう単純には)。何となく割り切れない気持ちを訴える。 **せつじょく【雪辱】**雪辱を果たす。▼雪辱する(汚名を。不名誉を)。汚名を返上する。逆臣の汚名をすすぐ。▼雪でぐぐ(冤罪を。死を。汚名を。恥辱を。恥を。屈辱を遠からず)。 **そうかい【爽快】**爽快な(台詞絆」を聞く。気分に包まれる。気分をもたらす。風景が展開する)。朝の爽快な気の中を走る。体の中をブレーンソーダで丸洗いしたような爽快な気分!落合。生涯に初めて味わう爽快な気持ち=海音寺。大自然の息吹を楽しめる爽快な行楽地笹沢。心が爽快になる。山葵きのきいたのを口に含むと鼻の裏側をキュッとくすぐられる一種の快さに似た爽快感を与える声=高見町。ひと吹きの涼風を得たような爽快さ=竹西。霧が取り払われたような爽快さが漂う伊坂。 **つうかい【痛快】**盛大というより痛快というようなパーティー!鷺沢。痛快に暴れまわる。痛快無類の大アクション。快挙(空前絶後の。金メダル獲得の)。快挙を(祝う。称える。なしとげる)。胸のすく(思いで眺める。凛りんとした態度)。すかっと胸のすくカーアクション。決断が胸のすくほど素早い=井上靖。胸のすくような(快速球。貧乏ぶり。猛烈な攻め)。 **にがにがしい【苦苦しい】**苦々しい(思いで言う。気分だけが漠然と残る。笑いが口辺に漂う)。噛んで捨てるような苦々しい口調。胸中を苦々しいものが走る。苦々しく(眉をよせる。吐き棄てるように言う籐本)。嫉妬を苦々しく噛みしめる。苦々しげに頬をゆがめる。苦々しさが胸の底に澱ょとむ貫井。苦々しさを(苦笑と酒で紛らす。笑いに紛らせる)。 **はらす【晴らす】**▼晴らす(遺恨を。意趣を。疑いを。鬱憤を。冤罪を。疑念を。嫌疑を。心のぷもゃを。心の闇を。私怨を。父親の無念を。濡れ衣紗泌を。容疑を。積もった恨みを)。遺恨を散じる。腹が癒える。 **はればれ【晴れ晴れ】**晴れ晴れと声を張り上げる。晴れ晴れとした笑いをたたえる。スキップしたいくらいに晴れ晴れとした気分=乃南。▼晴れ晴れする(顔が。気持ちが。心が)。声に晴れ晴れした調子がこもる。からりと晴れた気持ち。胸のつかえが降りたように晴ればれしい気持ち。今日。晴れ晴れしい眉を張る"夏目。晴れ晴れしく笑い立てる。気鬱がどこかへ消し飛ぶ。心が見る見る晴れていく。▼晴れる(心のくもりが。胸がすすうっと。数日来の悩みが。すっばりとこだわりが)。心が爽やかに晴れ渡る。憂鬱な気分が払拭される。気が晴れ晴れとするような陽気さ。▼散じる(鬱気を。気鬱を。胸中の鬱を。鬱勃たるものを)。 **はれやか【晴れやか】**気持ちがいつになく晴れやか。晴れやかな(印象を残す。舞台に立つ。気分が心を充たす。笑い声を立てる。色を顔に浮かべる=有島)。いつにも増して晴れやかな笑顔。森が晴れやかな新緑に彩られる。若々しい晴れやかな声。恍惚ごうとした声で晴れやかに言う。▼晴れやかになる(気分が。心が。目の色が)。晴朗に無邪気に笑う。わだかまりなく言う。わだかまりのない磊落らいさ。何のわだかまりも抱いていない。 **ふかい【不快】**不快(今まで自分でも気がつかずにいた自分を鏡で見せつけられたような。有鳥。綺麗な花を罪もないのに妄んだりに襲うつと同じような夏目)。不快な(印象を与える。重い痛み。感をいだく。気分に包まれる。臭気が鼻につく。苦味が口の中に一杯になる。表情を隠さない。気持ちが胸に沈殿する高橋三)。客に不快な思いをさせない。何とも言えぬ不快な感じがこみ上げてくる。露骨に不快な顔を示す。蜘蛛くもの巣に顔をつっこんだような粘っこく不快な感じに小林久。砂をかむような不快な思い=坂口。底のほうに気持ちの悪い暗流を潜めながら作り笑いをしているような不快な気分!有局。破いて焼いて捨ててしまいたいほど不快な写真新田。頭がどんよりと不快に濁っている。かねがね不快に思っている。言葉が不快に響く。不快の色を(顔にあらわす。眉間に漂わせる)。不快を押し包んだ何気ない顔「志賀。心から不快を感じる。心中不快を禁じ得ない。生理的な不快を覚える。記憶が苦い不快を伴って後あとまで造る=高井。奥歯が砂粒を噛んだよう高樹。胸を紙ヤスリで撫でられたようなザラつきを覚える=高橋三。体じゅうに紙やすりをかけられたような気分"村上脊。体の中にいきなり悪い音楽のようなものがわき上がってくる=堀。母の一語一語が私の気持ちに棘とげを植える=高井。心が埃限この中に立たされたようになる=松本。心の皮膚がざらつくような思いを味わう日野。神経を撫にかでする。寝汗のようにいやな汗が皮膚の毛穴から滲にじむように大佛。吐き気を起こさせるほど厭ぃゃな態度"中村真。悪感情が高まる。悪 # 叫ぶ・怒鳴る <412> # てにをは連想表現辞典 **ふかい【不快】** 不快(今まで自分でも気がつかずにいた自分を鏡で見せつけられたような。有鳥。綺麗な花を罪もないのに妄んだりに襲うつと同じような夏目)。不快な(印象を与える。重い痛み。感をいだく。気分に包まれる。臭気が鼻につく。苦味が口の中に一杯になる。表情を隠さない。気持ちが胸に沈殿する高橋三)。客に不快な思いをさせない。何とも言えぬ不快な感じがこみ上げてくる。露骨に不快な顔を示す。蜘蛛くもの巣に顔をつっこんだような粘っこく不快な感じに小林久。砂をかむような不快な思い=坂口。底のほうに気持ちの悪い暗流を潜めながら作り笑いをしているような不快な気分!有局。破いて焼いて捨ててしまいたいほど不快な写真新田。頭がどんよりと不快に濁っている。かねがね不快に思っている。言葉が不快に響く。不快の色を(顔にあらわす。眉間に漂わせる)。不快を押し包んだ何気ない顔「志賀。心から不快を感じる。心中不快を禁じ得ない。生理的な不快を覚える。記憶が苦い不快を伴って後あとまで造る=高井。奥歯が砂粒を噛んだよう高樹。胸を紙ヤスリで撫でられたようなザラつきを覚える=高橋三。体じゅうに紙やすりをかけられたような気分"村上脊。体の中にいきなり悪い音楽のようなものがわき上がってくる=堀。母の一語一語が私の気持ちに棘とげを植える=高井。心が埃限この中に立たされたようになる=松本。心の皮膚がざらつくような思いを味わう日野。神経を撫にかでする。寝汗のようにいやな汗が皮膚の毛穴から滲にじむように大佛。吐き気を起こさせるほど厭ぃゃな態度"中村真。悪感情が高まる。悪声で晴れやかに言う。▼晴れやかになる(気分が。心が。目の色が)。晴朗に無邪気に笑う。わだかまりなく言う。わだかまりのない磊落らいさ。何のわだかまりも抱いていない。 **ふじさわ【藤沢】** すっきりする(意識が。気持ちが。心が。だいぶ頭が。のどが。腹の中が。文章が。頬が。胸が。邪魔な物が消えて景色が高井。恐っき物が落ちたように気分が=内田春)。すっきりした顔立ち。垢抜けてすっきりした服装。▼すっきりしている(気筋が。目鼻立ちが)。▼せいせいする(気分が。胸が。荷が軽くなって。厄介払いをして)。心からせいせいした顔つき。すっきりしない(気分が。別れ際が。何となく)。すっきりしない気持ちを抱く。胸の中のもやもやが消えない。事務所に閉じこもってくさくさする。くさくさするような雨降りの日"徳田。気分がくさくさするような天気。釈然としない(顔つき。気分を抱く。気分に捕らわれる)。どこか釈然としないものが胸の中に沈殿する佐藤愛。釈然としない思いが(募る。残る)。割り切れない(感じが残る。感情をいだく。違和感をいだく)。▼割り切れない(どうにも。事情はそう単純には)。何となく割り切れない気持ちを訴える。 **せつじょく【雪辱】** 雪辱を果たす。▼雪辱する(汚名を。不名誉を)。汚名を返上する。逆臣の汚名をすすぐ。▼雪でぐぐ(冤罪を。死を。汚名を。恥辱を。恥を。屈辱を遠からず)。 **そうかい【爽快】** 爽快な(台詞絆」を聞く。気分に包まれる。気分をもたらす。風景が展開する)。朝の爽快な気の中を走る。体の中をブレーンソーダで丸洗いしたような爽快な気分!落合。生涯に初めて味わう爽快な気持ち=海音寺。大自然の息吹を楽しめる爽快な行楽地笹沢。心が爽快になる。山葵きのきいたのを口に含むと鼻の裏側をキュッとくすぐられる一種の快さに似た爽快感を与える声=高見町。ひと吹きの涼風を得たような爽快さ=竹西。霧が取り払われたような爽快さが漂う伊坂。 **つうかい【痛快】** 盛大というより痛快というようなパーティー!鷺沢。痛快に暴れまわる。痛快無類の大アクション。快挙(空前絶後の。金メダル獲得の)。快挙を(祝う。称える。なしとげる)。胸のすく(思いで眺める。凛りんとした態度)。すかっと胸のすくカーアクション。決断が胸のすくほど素早い=井上靖。胸のすくような(快速球。貧乏ぶり。猛烈な攻め)。 **にがにがしい【苦苦しい】** 苦々しい(思いで言う。気分だけが漠然と残る。笑いが口辺に漂う)。噛んで捨てるような苦々しい口調。胸中を苦々しいものが走る。苦々しく(眉をよせる。吐き棄てるように言う籐本)。嫉妬を苦々しく噛みしめる。苦々しげに頬をゆがめる。苦々しさが胸の底に澱ょとむ貫井。苦々しさを(苦笑と酒で紛らす。笑いに紛らせる)。 **はらす【晴らす】** ▼晴らす(遺恨を。意趣を。疑いを。鬱憤を。冤罪を。疑念を。嫌疑を。心のぷもゃを。心の闇を。私怨を。父親の無念を。濡れ衣紗泌を。容疑を。積もった恨みを)。遺恨を散じる。腹が癒える。 **はればれ【晴れ晴れ】** 晴れ晴れと声を張り上げる。晴れ晴れとした笑いをたたえる。スキップしたいくらいに晴れ晴れとした気分=乃南。▼晴れ晴れする(顔が。気持ちが。心が)。声に晴れ晴れした調子がこもる。からりと晴れた気持ち。胸のつかえが降りたように晴ればれしい気持ち。今日。晴れ晴れしい眉を張る"夏目。晴れ晴れしく笑い立てる。気鬱がどこかへ消し飛ぶ。心が見る見る晴れていく。▼晴れる(心のくもりが。胸がすすうっと。数日来の悩みが。すっばりとこだわりが)。心が爽やかに晴れ渡る。憂鬱な気分が払拭される。気が晴れ晴れとするような陽気さ。▼散じる(鬱気を。気鬱を。胸中の鬱を。鬱勃たるものを)。 **はれやか【晴れやか】** 気持ちがいつになく晴れやか。晴れやかな(印象を残す。舞台に立つ。気分が心を満足す。笑い声を立てる。色を顔に浮かべる=有島)。いつにも増して晴れやかな笑顔。森が晴れやかな新緑に彩られる。若々しい晴れやかな声。恍惚ごうとした声。 <413> **ふかい【不快】** ▼不快(今まで自分でも気がつかずにいた自分を鏡で見せつけられたような。有吉。綺麗な花を罪もないのに妄んだりに襲うつと同じような夏目)。不快な(印象を与える。重い痛み。感をいだく。気分に包まれる。臭気が鼻につく。苦味が口の中に一杯になる。表情を隠さない。気持ちが胸に沈殿する高橋三)。客に不快な思いをさせない。何とも言えぬ不快な感じがこみ上げてくる。露骨に不快な顔を示す。蜘蛛の巣に顔をつっこんだような粘っこく不快な感じに小林久。砂をかむような不快な思い=坂口。底のほうに気持ちの悪い暗流を潜めながら作り笑いをしているような不快な気分!有吉。破いて焼いて捨ててしまいたいほど不快な写真新田。頭がどんよりと不快に濁っている。かねがね不快に思っている。言葉が不快に響く。不快の色を(顔にあらわす。眉間に漂わせる)。不快を押し包んだ何気ない顔「志賀。心から不快を感じる。心中不快を禁じ得ない。生理的な不快を覚える。記憶が苦い不快を伴って後あとまで残る=高井。奥歯が砂粒を噛んだよう高樹。胸を紙ヤスリで撫でられたようなザラつきを覚える=高橋三。体じゅうに紙やすりをかけられたような気分"村上。体の中にいきなり悪い音楽のようなものがわき上がってくる=堀。母の一語一語が私の気持ちに棘を植える=高井。心が埃の中に立たされたようになる=松本。心の皮膚がざらつくような思いを味わう日野。神経を逆なでする。寝汗のようにいやな汗が皮膚の毛穴から滲むように大佛。吐き気を起こさせるほど厭な態度"中村真。悪感情が高まる。悪感情をいだく。かちんと来る(あまりの無神経さに。開き直った言いぐさに)。▼腹が立つ(世間の。周りの人たちの)。歯の浮くような(お世辞。賛辞。弔辞。作り話。台詞で丸め込む=横山)。上さまの心の底まで見すかした歯の浮くような追従!永井路。 **ふかいかん【不快感】** ▼エレヴェーターで下りる瞬間のくすぐったい不快さ=小林多。▼不快感(宙に浮き上がるような=多岐川。泥を被せられたような「藤田。苦みが口中に広がるような=大沢。股の隙間を手探りされたような"武田。耳栓が奥に入りすぎて取れなくなったような小川)。不快感が(胸に広がる。奥深いところに蟠る=福永)。胸にかすかな不快感が動く。生理的な不快さが逆立った毛穴からむんむんと放出する=本庄。顔に不快そうな色が萌す。思い出すのも不快そうに頭を振る。 **ふきげん【不機嫌】** ▼出端を折られていささか不機嫌海音寺。不機嫌この上ない声で答える。寝入りばなを起こされて不機嫌きわまりない浅川。不機嫌な(顔つきで黙りこむ。表情を隠そうとしない。声で電話を叩きつけるように切る―連城)。段々に不機嫌な顔つきになっていく。どこか鬱積したように不機嫌な浅黒い顔三島。灰色の海が風とともに不機嫌な波を泡立たせている=山手。昼寝を揺すぶり起こされたときのように不機嫌に云う徳永。▼不機嫌になる(目に見えて。空腹になるとあからさまに荻野)。不機嫌の塊を目の端から投げつけてくる!高村。不機嫌さを顔に出す。不機嫌そうな(声で訊く。腫れぼったい顔)。ぶすっとした不機嫌そうな顔。不機嫌そうに頬を膨らせる。唇を不機嫌そうにすぼめる。冠を曲げる。口をへの字にする。機嫌が(すこぶる悪い。しだいに悪くなる)。ひどく機嫌が悪い。機嫌を悪くする。朝からご機嫌斜め。苦りきって(顔をそむける。吐き出すように言う)。忘れていた畏るべき古代の魔神の名でも口にするように苦りきって答える武田。むくれた顔をする。大むくれにむくれる。虫の居所が悪い。運悪く虫のいどころにそぐわない『幸田文。▼機嫌を損ねる(相手の。平素の)。いたく機嫌を損じる。忌諱に触れる。不興を買う。苦虫を噛みつぶしたような(言い方。顔で言う。横顔を見せる)。苦虫を噛みつぶしたようなサギのような顔つき=開高。苦虫を噛みつぶしたように不機嫌な顔北。むすっと(黙り込む。にらむ)。むすっとして(挨拶もしない。答える)。 **ぶっちょうづら【仏頂面】** ▼仏頂面(にがりきった。いかにも不満があるみたいな筒井)。仏頂面で口をつぐむ。思わず仏頂面になる。仏頂面をつくって取り合わない。衿首のあたりの毛を立てた怒ったときの猫そっくりの顔、落合。顔を三角に歪ませる=開高。口をへの字に(して黙り込む。曲げる)。唇をへの字に結ぶ。むすっとした顔。膨れっ面で席を立つ。一挙手一投足を蛙みたいなふくれっつらで監視する加賀。叱られて膨れっ面になる。何がそんなに不服なのか尋ねてみたいようなふくれっ面の雲=竹西。 **ふゆかい【不愉快】** ▼不愉快(おさえていた気持ちをむりやり掻き立てられたようで。安部。ガウンの汚れが拭ってもとれぬ烙印のように高橋和。臓物のにおいを嗅がされたように"司馬。安っぽい同情なんか!高井)。思い出しても不愉快だというように身震いする=宮部。なんとも不愉快でならない。不愉快な(扱いを受ける。後味が残る。一夜が過ぎる。思いが胸のうちにわだかまる。気持ちに襲われる。結論に到達する)。ぐちゃぐちゃに溶けたキャラメルを口移しされたような不愉快な気持ち=山本有。ジリジリとしたおさえつけるような不愉快な暑さ志賀。言葉が耳に不愉快に響く。当事者を不愉快にさせる。不愉快の感は否めない。不愉快を通り越して憤りすら覚える。快く思わない。不意に鼻先で戸を閉てられたような気がする…高井。愉快な話ではない。不愉快極まる生活を強いられる。不愉快さ(粗い舌でザラッとどこかを舐められたような安岡。こちらの手の内を知らぬ間にのぞかれてしまったような安岡)。不愉快さが胸の中を走り抜ける。あまりの不愉快さに憤りを感じる。露骨に不愉快そうな顔をする。不愉快そうに口を歪める。あまりいい気はしない。かちんと来る。せっかくの(酒がまずくなる。ご馳走がまずくなる=井上ひ)。楽しまない(鬱々として。快々として)。胸くそ悪くなるような仕事。考えただけでも胸くそが悪い。顔を見ただけでも胸くその悪くなるいやな野郎!柴田。見ているだけで胸が悪くなる。 **まゆをひそめる【眉をひそめる】** ▼眉をひそめる(心配げに。不安そうに。不興げに。不愉快そうに。好ましくない行状に。粗末な扱われ方に。退廃的な風潮に)。眉をひそめて(意見をする。悲しげな顔つきになる)。ひそめる(眉宇を。眉根を)。▼眉を寄せる(いとわしげに。忌々しげに。不快そうに。迷惑そうに)。 **ゆかい【愉快】** ▼愉快な(日々を送る。思いがこみあげる)。陽気で愉快なお年寄り。とりとめなく愉快に雑談する。今日の一日をすばらしく愉快に終わらせる=小松。はね上がりたいくらい愉快になる=宮沢。人生無上の愉快を味わっているような声の調子=獅子。愉快げな笑い顔を久しぶりに見る。天空が急に開けたような愉快さを覚える多岐川。愉快そうに(笑い声を上げる。腹を揺すって笑い上げる=外村)。心底から愉快そうに笑う。手を叩いて愉快がる。快を(覚える。むさぼる)。 **りゅういんをさげる【溜飲を下げる】** ▼溜飲を下げる(密かに。いい気味だと)。溜飲の下がる思い。百年の溜飲が一度におりた気がする。水上。一斗の溜飲を吐いたようにいい気持ち獅子。 <414> # 答える・応じる **うけこたえ【受け答え】** 受け答えがひどく頼りない。ろくに受け答えができない。押し殺したような受け答えが続く!藤枝。受け答えに窮する。▼受け答えをする(お座なりな。うるさそうに。楽しげに。真面目に。当意即妙の。はきはきと。とんちんかんな。当たり障りのない。ふふんと鼻であしらうような=乃南)。 **うてばひびく【打てば響く】** 打てば響く応答をする。打てば響くような(心の働き。敏感な言葉。反応が返ってくる=黒井)。打てば響くように答えを返す。 **おうじる【応じる】** ▼応じる(客の懐具合に。言葉少なに。個別の要望に。質問に。招待に。注文に。取引に。申し出に。要求に。呼びかけに。呼び出しに。一も二もなく。誘いに喜んで。二つ返事で。離婚の話し合いに。いつも静かに笑顔で。打って返すように。緊張の面持ちで。上機嫌な笑いで。ぶすっとした声で)。売り言葉に買い言葉で応酬する。微塵も応じる気色を示さない。▼受けて立つ(後始末を。挑戦を。申し入れを)。世の動きに呼応する。▼即応する(情勢の変化に。新しい時代の流れに)。束になってかかって来い。来るなら来いという感じ。矢でも鉄砲でも来いという気分=田辺。 **おんがえし【恩返し】** 鶴の恩返し。▼恩返しする(親に。師に)。義理立てをする(主人に。旦那に)。報恩する(親に。世の中に)。 **かいとう【回答】** 回答に責任を持つ。▼回答する(アンケートに。熟慮のうえ)。回答用紙に記入する。しどろもどろの応答。▼応答する(すらすらと質疑に。その場の勢いで)。応答に(窮する。当惑する)。即答を避ける。すばやい即答を投げつける。臆せず即答する。即答しかねる。 **ごう【業】** ▼業(堕獄の。欲望は人間の)。業が深い。女の業の悲しみ。人間の業のすさまじさ。業を(背負う。担う)。宿業の(身。報い)。宿業を背負う。 **こたえ【答え】** ▼答え(質問に対する。要領を得ない。予想通りの。当たり障りのない。まごころのこもった。打てば響くといった調子ではね返ってくる=北村)。答えが(予想と違う。弁解のような空々しい響きになる=連城)。頭に答えが浮かぶ。うまい答えが見つからない。簡単に答えが出る。決定的な答えが得られない。ひょんなところから答えが舞い込む。数多くの疑問に答えがしっくりと当てはまる鈴木光。気軽な答えが唇頭にのぼる=中村真。▼答えが返ってくる(意外な。分かりきった)。通り一遍の答えしか返ってこない。答えと反論とを頭の中で戦わせる=丸谷。答えに納得のいかない様子。全然答えになっていない。考えられる答えは一つしかない三好。その場で答えを出す。取りつく島のない答えを返す。問題と答えをあべこべに書く。野暮な答えを口にする。問いに対する答えを頭の中で組み立てる=貫井。▼答えを出す(問いに。当意即妙に。二者択一に。数秒で。間違った。注意深く引き出しを開けるようにさしさわりのない"村上春)。答え方(中途半端な。当たり障りのない)。いい加減な答え方しかしない。 **こたえない【答えない】** ▼答えない(口を閉ざして。質問に直接。牛のように押し黙って藤沢)。答えもしない(横を向いて。ろくろく)。おいそれと応じるわけに行かない。応答がない。肯定も否定もしない。まともに答える気がない。答えるには及ばない。諾否は軽々しく答えられない(うかつに。満足に。軽々しく。質問にうまく)。答えが一向に出てこない。とっさに答えが出てこない。答えが出ない(すぐには。どんなに考えても)。答えに窮する。答える(言葉がない。術を知らない)。いずれの問いにも答えることができない。白紙に近い答案用紙。 **こたえる【応える】** ▼応える(連日の行軍が。客の希望に。国民の負託に。読者の期待に。独り寝の寒さが。不当な仕打ちが)。▼胸に応える(懸念が。言葉が)。要求に応える(時代の。社会の)。▼身にこたえる(夏の暑さが。冬の寒さが。風が刺すようにひしひしと=山本有)。身にしみる(朝夕の風が。底冷えが。肌寒さが)。 **とうべん【答弁】** ▼答弁(歯切れのいい。歯切れの悪い)。答弁に(窮する。立つ)。苦しい答弁を余儀なくされる。 <415> # 答える・応じる **そうだん【相談】** ▼相談(結婚の。込み入った)。相談が(まとまる。持ち込まれる)。相談に乗る(親身に。気軽に)。相談する(腹を割って)。相談相手になる。相談を持ちかける。内密に相談する。 **だんこう【談合】** 談合して入札価格を決める。談合が発覚する。 **ちんじょう【陳情】** 陳情が(殺到する。受理される)。陳情に(行く。応える)。陳情する(救済を求めて。熱心に)。 **ていあん【提案】** 提案が(出る。受理される)。提案を(する。受け入れる)。画期的な提案。 **ていしゅつ【提出】** 提出する(辞表を。宿題を。要求書を。報告書を。議題を)。 **とうしん【答申】** ▼玉虫色の答申。答申が出る。答申を(提出する。まとめる)。諮問会が答申する。▼具申する(意見を。復帰を。上司に)。 **なまへんじ【生返事】** いい加減な生返事。生返事に業を煮やす。浮かぬ顔つきで生返事をする谷崎。上の空で生返事する。 **はんのう【反応】** ▼反応が(驚くほど早い。陽性になる)。驚きの反応が広がる。思いがけない反応に狼狽する。予期せぬ反応にたじろぐ。反応を窺いながら小出しにしゃべる=幸田文。相手の反応を視察する。正常な反応を起こす。一たん口を噤み反応を確かめるように周りを見廻す"高井。▼反応をうかがうずる賢い目で。息をひそめるようにして"司馬)。反応を示す(言葉に敏感な。予想した通りの)。▼反応する(体が勝手に。刺激に機械的に。外からの刺激に敏捷に=藤原。ちょっとした刺激にも敏感に松浦。下半身が見る見る=原田宗)。異常なほど過剰反応する。拒否反応が起きる。硝煙反応が認められる。 **はんのうがない【反応がない】** これといった反応がない。押せどたたけど反響がない。何の反応も示さない。はかばかしい反応を示さない。▼無反応(必死に。刺激に。呼びかけに)。 **へんじ【返事】** ▼返事(気のない。間の抜けた。一年にいっぺんくらいのいい灰谷。木で鼻をくくったような若竹。気の抜けた風船玉のような獅子)。寄るべもないほどぽきっとした返辞林美。返事が(気に入らない。心なしか冴えない。ワンテンポ遅れる)。折り返し返事がある。即座に返事が返ってくる。返事に幸福な心持ちがこもる"大佛。うかつな返事は危険。威勢のいい返事を残して飛び出していく。色よい返事をもらえない平野。玄関払い同然の返事を貰って帰る=高橋治。一両日中にお返事をいただきたい。やたら愛想よく返事する。返事する余裕さえ失う。▼返事をする(わざと冷淡な。朗らかに。はきはきと。打てば響くような。質朴にのらりくらりと。我知らず気のいい。見下げられたという感情が勃然と起こり、つい符号のような島尾)。二つ返事で承知する。鸚鵡返しに言う。言葉を鸚鵡返しに口に出す。▼返書(丁寧な。無礼な)。返書を(したためる。持たせて帰す)。返信を(したためる。出す)。 **へんじができない【返事ができない】** 返事ができない(とっさに。うまい。急には。あだやおろそかに)。とっさの返事に窮する。あきれて返事もできない。返事もできずに震えている。どう返事をしていいか分からない。とっさに返答ができない。明確な返答に窮する。 **へんじがない【返事がない】** 満足の行くような返事がない。返事が(なかなか来ない。延び延びになる。ばったりと途絶える)。とんと返事が頂けない。返事一つよこさない。返事もせずに席を立つ。筆不精で返事を出さない。ろくに返事もしない。▼返事をしない(かたくなに。誰も)。はかばかしい返答がない。梨のつぶて(手紙を出したが。調査の実施を促しても)。 **へんとう【返答】** ▼返答(小気味のいい。素っ気なく控え目な。つっけんどんな。さしさわりのない。相手をうならせるような気のきいた三田。木で鼻をくくるような"里見)。しかと返答を聞きたい。微笑で返答をごまかす。辞を低くして返答する。たまに一言二言ぐらい口返答をする谷崎。 **てごたえ【手応え】** ▼腕に手応えが伝わる。▼手応えがある(確かな。十分に。重い。本物の)。存分に祈った手ごたえがある=藤沢。手応えのある話し相手が欲しい。ずっしりと手応えのある書物。はっきりした手応えのある疼くような嫉妬が湧き上がる=吉行。手応えがない(確かな。いま一つ。芳しい。さっぱり)。手応えが(ほとんどない。とんとつかめない)。ぐにゃりと手応えがなくなる。手応えのない返事にいらだつ。夢が手応えもなく実現する=坂口。朽ち木を打つが如く何の手答えもない菊池。糠に釘を打つよう。暖簾に腕押し。 <416> # 拘る・気にしない **いじ【意地】** 意地でも別れてやらない!柴田。意地と慾との二筋道をかける=石川。意地に(かけても渡さない。なって耳を貸さない三浦)。意地のかたまりのような角ばったいかつい顔椎名。誇りも意地もかなぐり棄てる=山本周。意地を剥き出しにして頑張り通す高井。 **いってんぱり【一点張り】** ▼一点張り(話はなかったことにしてくれの。早く帰ってこいの。とにかく別れてくれの落合)。知らないの一点張りで通す。従順一点張りの女。勇猛剛強一点張りの男。授業の内容は受験対策一本槍。勉強一本槍で頑張る。 **いとわない【厭わない】** ▼厭わない(苦労を。献身を。寒さ暑さを。死を。馳駆の労を。手間を。骨折り損を。どんな危険な作業も)。 **えんぎ【縁起】** 縁起が(いい。悪い)。縁起でもない話。縁起の悪い夢。縁起を(祝う。担ぐ)。いい縁起をもたらす。験が(ある。いい。悪い)。一向はかばかしい験がない。験を直す。日柄がよい。縁起を気にする。熊手を景気よく飾る。験を担ぐ。御幣担ぎになる。御幣を担ぐ。日柄を選ぶ。些細な偶然をジンクスと受け取る。ジンクスを(信じる。破る)。 **おもいいれ【思い入れ】** 思い入れが強い。思い入れを込めて書く。さしたる思い入れを持っていない。特別な思い入れをいだく。思い入れたっぷりに言う。 **がいぶん【外聞】** 外聞が悪い。見栄も外聞も捨て切った身の投げ出し方!井上靖。外聞もなく怒鳴り続ける。聞こえが悪い。世間への聞こえを気にする。 **かたくな【頑な】** かたくなな(拒否に会う。表情が崩れる。態度を批判する)。閉じた貝のようにかたくなな沈黙飯田。かたくななまでに守り通した秘密斎藤栄。かたくなに(人を拒む。口をつぐんでいる。自説をまげない。自分の殻に閉じこもる=渡辺)。頑なにクラシックなスタイルを変えようとしない=椎名誠。頑なさ(一度決めたことは絶対に翻さないという熊谷。田舎の老爺が一心に思いつめたような"阿刀田。十二年前の過去から自分を護ろうとしている鎧いうのような「連城)。誰が何と云っても自分の意見を曲げないかたくなさ=椎名。かたくなさが傲慢に変わる。書物で城壁を築いてその中に立て籠もっていたような心夏目。 **がんこ【頑固】** ▼頑固(石みたいに。あきれるくらいに。見かけによらず)。頑固な頭痛に悩まされる。頭から肩にかけて岩のように頑固な力がこもる=高樹。ちょっとやそっとじゃ治らないかなり頑固な夜尿症"…周。頑固なまでに口を閉ざす。頑固にやり方を変えようとしない。年をとるとだんだん頑固になる。顔つきも身体つきも四角ばって頑固そう“石坂。いったん言い出したらきかない。自分の主張を譲らない。結論を素直に受け入れようとしない。頑固一徹の老人。頑固一点張りの父。▼頑固さ(こだわりを捨てない。老いの一徹ともいうような=船山)。目にひたむきな情熱と頑固さと負けん気が闇の中の犬の眼光みたいにぎらつく宫本。頑固さに手を焼く。融通が利かない頑固者。反対されるとかえって意固地になる。意固地になって反対する。激情的な意地っ張り。意地っ張りで勝ち気な女。一刻な老人。病癖のつよい一刻な性質。一刻者で評判の主人。感情を寸時も心に包んでおくことのできない一徹さ=海音寺。剛直一徹な性格。直情一徹の武士。頑強に(主張する。抵抗を続ける。反対する)。心の中に持ち前の利かん気が首をもたげてくる=辻井。濃い眉が負けん気にぴりりと上がる三浦。変に骨ばった物の言い方。昔気質の(刑事。老人)。▼石頭(頭の固い。かちんかちんの。融通が利かない)。石頭だから何を言っても無駄。心配をかけまいと意地を張る。運命と意地の張り合いをしているような姿中。意地を張ったふうに口をきこうとしない三田。片意地で我が強い。片意地な少しも人を頼ろうとしない女有島。片意地に言い募る。頑迷な(性格。権威を打ち破る)。頑迷に昔からの習慣を守る井伏。度しがたい頑迷さ。 **がりゅう【我流】** 我流で(茶をたてる。ピアノを弾く)。我流の崩し字。自己流の(絵。踊り)。 **きにしない【気にしない】** ▼気にしない(少しも。たいして。誰も。別段。髪の毛の乱れを)。いちいち気にはしていられない。▼気にもしない(さまで。別段)。相手の気持ちなどおかまいなし。とくにどうという気持ちはない"阿川。意に止めない。相手の気持ちには委細お構いなし。委細構わず実行に移す。殊更に意識しているわけではない。気にかけない(それほど。たいして。誰も)。気にかける必要はこれっぽっちもない"かんべ。いてもいなくても気にならない。苦にしない(貧乏を。体を動かすことを)。とんと頓着する様子がない。念頭から(遠のく。去る)。念頭に毛ほども浮かばない。家庭をまるで念頭に置かない。▼意に介さない(謹慎を。冷たい仕打ちを。いや味を一向に"阿久)。意に介する様子もない。人の思惑を介意しない。弱者を介意しない政治。▼眼中にない(危険など。自分の生き残りしか)。眼中にないといわんばかり。眼中に置かない(衆評を。生死を)。眼中に入れない。誰にも気兼ねしない。気兼ねなく(飲む。話す。冗談を飛ばし合う)。遠慮や気兼ねはいっさい無用笹沢。▼気に止めない(大して。誰も。ほとんど)。 **くどい【諄い】** ▼性質にくどいところがある。酔った人間のくどい調子。くどいほど確認を繰り返す。くどく念を押す。くどくない程度に礼を述べる。あくどい色。 <417> # 拘る・気にしない **けろりと** けろりと(何事も忘れる。熱が冷める)。ちっとも動じないけろりとした顔。時が過ぎると後はけろりとしている。何もなかったようにけろっとしている。あっけらかんとした(笑顔。返事)。 **ごうじょう【強情】** 強情(頑固なほど。底の知れない)。強情な不貞腐れた少年"中島。言い出したらきかない強情な子。滑稽なくらい強情な痩せ我慢中島。強情に(言い張る。意地を張る。拒否する。突っぱねる。押し黙っている)。強情にも程がある。強情のつっかい棒を外す=池波。強情を張る。あまりの強情さに父親が薄気味悪がって叩く手を止めるまでじっと叩かれるままになっている古井。一回言い出したら肯かない=小沼。情の強い女。鼻っ柱が強い。 **こだわらない【拘らない】** ▼小さなことにこだわらない。物にこだわらないあっさりした性質"子母沢。屈託ない笑い声を上げる。屈託のない笑顔を見せる。明るくて屈託のない娘。ものに拘泥しない気質。つまらないことにこせこせしない。こだわりのない(笑顔。自然な所作)。全くこだわりのない開け放たれた心"野間。次から次の事柄へと軽く移って行くこだわりのなさ。幸田文。執心の晴れる心地。金に執着がない。物への執着から自由になる。▼捨てる(我執を。こだわりを。現世への執着を)。大行は細謹をかえりみず海音寺。▼とらわれない(形式に。常識に。前例に)。妄執の根を断ち切る=山岡。妄念が快く叩き潰される=山本周。悪い夢をさっぱりと心から拭い去る=石川。闊達な(気性の人。生を生きる。張りのある声)。生き生きと自由で闊達な雰囲気。息子を闊達に育てる。自由闊達に時を過ごす。闊達無碍の働き。磊落な(愛想のよさ。声がとどろく)。豪傑肌の磊落な人物美濃部。わだかまりのない磊落さを取り戻す=有吉。豪放磊落な(考え方。性格)。 **こだわる【拘る】** ▼こだわる(下らぬ面子に。形式に。細かいことに。最後の一線に。枝葉末節に。目先の成果に。書き出しの一節に。かつての栄光の名前に。つまらぬことに。徹底して具体的事実に)。こだわりが根を張る。一語一語に生硬なこだわりが匂う山岡。旧弊な思考や感覚にとらわれる三浦。かずらう(細かい辞句に。小事に。意地悪く相手の言葉に。小さな体面だけに三島)。かまける(育児に。子供に。仕事に。商売に。生活に。日々の忙しさに)。旧弊な(家風。考え。人間)。▼固執する(己の判断に。勝つことに。自分の意見に。一つの視点に。一人の女性に。頑固に自分の芸術に=松本)。固執するに充分な理由。固定観念にしばられる。固定観念を心に植えつける。▼事とする(阿諛追従を。一身の利欲を)。凝り性な人間。凝り性を発揮する。凝る(競輪に。風流の道に)。▼拘泥する(形式に。瑣末なことに。理論の末節に。つまらないことに。日常的な感情の起伏に。むきになって自分の言い分に=高井)。 **こともなげ【事もなげ】** 事もなげな(笑顔を見せる。様子で働く)。事もなげに(言ってのける。ひょいとかわす)。危機を事もなげに切り抜ける。 **しつこい** しつこい(辟易するほど話が。熊ん蜂のように“石坂)。蛇みたいにしつこい男=横山。しつこいほど念を押す。リハーサルをしつこいほど繰り返す。しつこく(小言を続ける。同意を求める。理由を訊ねる)。鈍い痛みがしつこく残る。訪問がしつこく頻繁になる。暗い気持ちが馬虻のようにしつこくからだにまつわって離れない=小林多。内臓に手を入れて撫でまわすようなしつこさ=安部。しつこさが度を越す。好奇心にかられた猫が獲物にじゃれるしつこさで聞きほじる=大庭。あまりのしつこさに激怒する。しつこく(後を慕う。黙っている。つきまとう)。やにっこい男。やにっこくからむ。ねちっこい口調で訊く。ねちっこく(からみつく。皮肉を言う。やきもちを焼く)。 **しつよう【執拗】** 執拗な(脅迫を受ける。説得についに折れる。傷が木肌にめり込む。熱と咳がいつまでも続く。申し出を退ける。練習を繰り返す)。繰り返し執拗な訊問を受ける。犬のような執拗な眼つき=森。これでもかこれでもかという執拗な襲撃~松本。ねばつくような執拗な口調光源。果てしのないような執拗な愛に心を続ける"堀。蛇のように執拗な男"石川。執拗に(回答を迫る。夢を追う。言い合いを続ける。同じ言葉をささやく。質問を繰り返す)。交際を執拗に求める。電話のベルが執拗に鳴り続ける。疑問が執拗に取りついて離れない=福永。憑かれたように執拗に繰り返す」つか。なんだかんだ言って執拗に喰いさがる=山口。ねっとりと執拗をきわめている愛撫池波。ねちねちと絡みつくような執拗さ=船山。女房の不貞をあばく男の執拗さと嫌らしさ=佐多。 **しゅうちゃく【執着】** 執着が昂じて自分を見失う高橋知。現場への執着が強い。執着でがんじがらめになる。執着にとらわれる。愚かな執着に目が昏む。無益な執着に一日一日を見送る。執着の根を切る。権力の座に異常なまでの執着を示す。根強い執着を持つ。病的に執着をいだく。執着する(金銭に。小さな自分に。古いしきたりに)。▼執着心(異常な。激しい)。我執に(とらわれる。心を支配される)。小さな我執に凝り固まる=山岡。▼御執心(お金に。彼女に)。身に影の添うごとく執心深い竹西。 **しゅうねん【執念】** ▼執念(並々ならぬ人間の。ひたむきな仕事への。最後まで相手にくらいついていく。永倉。もはや夢というもののない亡者のような坂口)。執念が(頭をもたげる。凝り固まる)。女の執念が沸々として燃え続ける=石川。執念にとりつかれる。あまりのしつこさに激怒する。執念く(後を慕う。 <418> **さまになる** (格好が。何をやっても)。人前を(意識する。とりつくろう。はばかる)。世間の体裁が悪い。体裁の悪さに途方に暮れる。不体裁な(格好。仕上がり。出来栄え)。格好がつかない。さまにも何もならない。世間体が悪い。 **ていよく【体よく】** 体よく(操られる。追い出される。断られる。逃げられる。利用される。はぐらかされる)。体のいい(口実。労働力として使われる)。態のいい断り文句"有川。起こした問題が行政側の態のいい攻撃材料になる=有川。 **とらわれる【捕らわれる】** ▼とらわれる(新たな驚きに。あらぬ想像に。陰気な考えに。懐旧の情に。疑心暗鬼に。強迫観念に。固定観念に。錯覚に。先入観に。強い疑惑に。被害妄想に。古い迷信に。岩郷の念に。目先のことに。良心の呵責砂しに。言いようもない恐怖に。感傷的な心持ちに。めまいに近い心地に)。ヒステリックな感情に囚とらわれる=藤本。▼思いにとらわれる(感傷的な。憂愁な)。捕らわれの身となる。網の目に繰り込まれて身動きがとれない"古井。形式や常識にとらわれない。強迫観念に(駆られる。取り悪っかれる)。 **なんでもない【何でもない】** 何でもない(ことのように言う。素振りを見せる)。やがて晴れる何でもない通り雨。▼何のその(金融危機も。寒さなんて。不況も。二日酔いも)。 **ひたすら** ひたすら(道を急ぐ。力で押さえ込む。勉強に没頭する)。寝食を忘れてひたすら看護の手を尽くす平岩。ただひたすら言葉に身を捧げた一生三浦し。一瞬でも離れているど生きていられないかのようなひたすらな動き『黒井。ひたすらに平静を装う。一心不乱というのはこのことかと思うほどただひたすらに食べる三浦失。脇目もふらずに物事をひたすらする。胸へこみあげてくる毒々しい妄念を否定するように進める=岩淵。一路(空港へ向かう。平安を祈る。目的地をめざす)。衰亡の一路をたどる。▼一途をたどる(拡大の。病状が悪化の)。君を思うや切。ただ(右往左往するばかり。感心して見入るばかり。気をもむよりほかない)。ただただ(恥じ入るのみ。頭の下がる思い。一驚のほかはない。一心不乱に進み続ける。心配するばかり)。相手をひたと見つめる。顔をひたと正面に向けて話す。ひたぶるに(信じる。闇を走る)。一途に目標に向かう。▼一途さ(常に未来を指向する。可愛く涙ぐましいまでの萩原薬)。一途さに(ほだされる。たじたじとなる)。一筋に(求道に努める。出世をめざす)。一筋の恋を貫く。芸道一筋の名手。修行一筋の日々に入る。欲一筋の男。この道一筋に何十年。日本舞踊一筋に生きる。 **ひとりよがり【独り善がり】** ひとりよがりな(考え。小説)。ひとりよがりに(陥る。決めてかかる)。一人よがりに筆を進める三好京。ひとりよがりの(生き方。一人相撲)。いい気な(寝言を言う。熱を吹く。真似まぁはさせない)。よこしまに我意を通す。我の強い性格。主観的な価値判断。主観的に物事を見る。勝手に独り合点する。独り合点の正義感。暴力を正当化する独善。独善に陥る。独善的な(為政者。考え方。政策)。独善ぶりを鋭く批判する。 **へいき【平気】** 平気(無視されても。何と言われても)。平気で(嘘をつく。人を裏切る男。約束を破る。横槍を入れる)。残酷なことを平気で口にする。平気で言う(どきりとすることを。今しがた意見したのとはあべこべなことを岡本)。徹夜をしても平気な若さ。コーラでも飲むように平気な顔をしてビールを飲む三浦判。心の動きを見せないように平気な顔をつくろう“高樹。平気の平左で飛びまわる=辺見。痛くもかゆくもない。とこ吹く風。風や雪を蚊とんぼほどにも思わない"海音寺。▼感じない(何の痛痒もうに烈はげしく首を振っては酒を叩ぁぉる=山本周。妄執に(襲われる。とらわれる)。男女の妄執に絡め取られる。妄執の虜に。になる。絶えず沈下しつづけてゆくような妄念に追われる=檀。無意味な妄念の氾濫檀。妄念を心の底に沈める=阿川弘。胸に溢れている妄念を一挙に爆発させる=山本周。 **しゅうねんぶかい【執念深い】** 執念深い(男。女。抵抗。妨害)。執念深く(攻撃が続く。時機を狙う。初一念を捨てない。何度も同じことを繰り返す芥川。二十回ほど試みる=太宰)。恐怖が執念深く心を捕らえる。飢え疲れた旅人の後をつける曠野に、ぅの狼のように執念深く追ってくる=中島災。一つことを執念深く反芻し続ける=筒井。 **たいめん【体面】** 体面が気になる。世間的な体面がある。体面に(こだわる。縛られて思うようにできない=石川)。体面にかかわる(会社の。家門の。社長の)。体面を(重んじる。気にする。取りつくろう。かなぐり捨てる)。からくも上司としての体面を保つ=横山。目まぐるしい時世の変遷にも拘协ゅらず旧家としての体面を保持している=南条。他聞をはばかる(間柄。話)。人聞きの悪いことを言う。男の意地と沽券にけで態度を硬化させるのは目に見えている=森環。おいそれと話にのったのでは沽券にかかわる=飯田。男の沽券に関わる一大事"隆。世間体が気になる。世間体にこだわる。世間体を気にする。体面を傷つける。体面を汚す。顔に泥を塗る。 **つよがる【強がる】** 強がる(しきりに。むやみに。一人で)。言ったことはあながち強がりではない。強がりに聞こえる。言葉に強がりの匂いが漂う。心の弱い強がり屋。強がりを言う。 **ていさい【体裁】** 休裁がいい。ファッショナブルな街としての体裁がととのう西木。体裁を繕う。体成よく(かたづける。障子紙を貼る)。一応の格好がつく。 <419> # 拘る・気にしない **むくい【報い】** ▼報い(悪業の。しし食った。前世の。不勉強の)。報いの少ない孤独な闘い。罪の報いを受ける。人を呪わば穴二つ。強気すぎる経営のつけが重くのしかかる。失敗のつけが回ってくる。 **むくいる【報いる】** ▼報いる(恩に。親切に。沈黙で問いに。長年の労苦に。一矢。今までの労苦に何ほどか三島)。悪に報いるに悪をもってする。日ごろの努力が報いられる。報奨金が出る。永年勤続者を報奨する。 大酒を飲んでもしれっとしている。眉一つ動かず言う井上靖。眉一つ動かさずに要求を呑む=山本一。 **みえ【見栄】** ▼見栄が先に立つ。見栄に(生きる。こだわる)。豪胆さについて常日頃見栄を競う。伊達に大学に行ったわけではない。伊達の着流し。男たちが伊達を競う。面子が丸潰れ。面子に(かかわる。拘泥する。とらわれる)。 **みえっぱり【見栄っ張り】** ▼見栄っ張り(いささか。比類のない)。見栄っ張りな人。底の浅い見栄坊。打算的で見栄坊な人物。見栄を張る(初物食いに。つまらない。人目を気にして)。見栄を張った金の使い方=石坂。言っていることが上げ底になる=向田。 **むきになる** ▼むきになる(大人げなく。年甲斐もなく)。むきになるところが(怪しい。可愛い)。むきになった(がむしゃらな調子。気分がとうに去っている)。むきになって(怒る。答える。戸をこじ開けようとする)。 **むとんちゃく【無頓着】** ▼無頓着(貞操に。粗野なくらい身なりに円地)。服装に無頓着な人。無頓着に聞き流す。傍若無人に無頓着にふるまう。▼頓着しない(言葉遣いに。間違いに)。ものに頓着しない気性。一向に頓着する風がない。相手の顔色に頓着なく長広舌を振るう奥泉。 **めんぼく【面目】** ▼身に余る面目。面目が立つ。つまらない面目にかかずらう。武士の面目にかけて生かしてはおけぬ"山本周。大いに面目を施す。武士の面目を果たす。▼面目を保つ(大店の。男の。かろうじて)。面目躍如たる(講演。エピソード)。 **もったいぶる【勿体ぶる】** ▼もったいぶった(口の利き方。承諾の返事。注釈をつける)。決定的なセリフを吐いたあとの役者のようなもったいぶった動作小池。もったいぶって売りつける。あることないこと、うんと大げさにもったいつけて話す=飯田。やることがいちいち勿体らしくなる古井。子細らしい顔をする。子細らしく(見比べる。小声で話し合う)。資料を子細らしく点検する。下らぬことにもったいをつける。手品師のようにもったいをつけて封を切る=宮部。もったいをつけるような言い方=深沢。 **ものともしない【物ともしない】** ▼物ともしない(悪条件を。苦難を。寒さを。重圧を。非難の視線を。偏見を。向かい風を)。風雨をものともせず駆けつける。吹雪をものともせずやって来る。 **やいのやいの** やいのやいのと(催促する。しつこく迫る。見合い話をもってくる)。借金取りにやいのやいのと言われる。やいやい(親に言われる。せかされる)。 **ゆうずうがきかない【融通が利かない】** ▼まるで融通が利かない。融通が利かないバカに余計な方向づけしないでください"有川。融通の利かない(石頭。堅物。ガチガチな男。頑固者。律儀者)。融通性を欠く。杓子定規な(考え。人。やり方)。馬鹿の一つ覚えしか言わない。馬鹿の一つ覚えのように同じ言葉を繰り返す“村山。 **わからずや【分からず屋】** ▼石の地蔵さんに洋服を着せたような分からずや石坂。理不尽な分からず屋。分からずやの女の口を封じる=中村真。分からず屋を(相手にしない。言う)。物分かりの(悪さに苛立つ。悪い子供じみた正義漢浅川)。▼朴念仁(感情の枯れた。手に負えない。女の気持ちが分からない)。朴念仁に見えてけっこう芝居っ気がある―池波。 **わるびれない【悪びれない】** ▼悪びれずに(挨拶する。金を受け取る。素直に話す。申し開きする。運命を受け取る)。悪びれたところはみじんも見えない。格別悪びれた様子もない。いささかも悪びれることなく素直に受ける。犯行について悪びれることもなく淡々と供述する池井戸。悪びれるふうもなく(答える。笑いかける)。 **へいぜん【平然】** ▼平然と(嘘をつく。不正を犯す。いっぱしの口を利く。ぺてんにかける。眉毛も動かさずに坐っている芥川)。残虐行為を平然と行う。奇怪なことを平然と言ってのける隆。何事もなかったかのように平然としている三島。平然とした(足取りで歩く。態度を装う)。平然として(のほほんと突っ立っている。自分たちだけの道を突き進んでいく)。誘惑に平然として耐える。表情に戸惑いの色がほとんどない。いけしゃあしゃあと(嘘を言う。でたらめを話す)何もかも知っていながらしゃあしゃあと空とぼける=村上元。しゃあしゃあとしている(浮気がばれても。何を言われても)。しゃらっと聞き流す。しゃらっとした顔でやってのける。しれっと伝票を出す。一次会でしれっと帰る。しれっとした顔で言う。 <420> # 捏ねる・練る **あん【案】** いい案が浮かぶ。改正案を起草する。私案に基づいて議論する。試案の(域を出ない。段階にすぎない)。座長が私案を出す。成案を得る。草案を起草する。対案を(出す。提示する)。代案を用意する。腹案が(固まる。出来上がる)。両案の(接点を見出す。隔たりは大きい)。両案を(一本化する。併記する)。 **い【胃】** ▼鉛が底に溜まっているように重たく感じられる胃=高橋三、胃が(痛みを訴える。きりきり痛む。しくしく痛む。どんよりと重い。ひきつけを起こす。キリキリするような嫉妬・田辺。削られるように痛い"池田。下から持ちあげられるかと思うほど強く突きあげられる=渡辺。飛び出すのではないかと思うまで吐き続ける=筒井)。恐怖で胃が飛び出してきそう氷室。▼胃が痛くなる(緊張で、仕事で。はらはらしすぎて)。胃に(穴があく。痛みを覚える。鈍痛が生じる。重い振動が走る=高橋三)。蕎麦を胃に収める。料理が胃に重い。おじやが空っぽの胃にしみ渡るようにおいしい!内館。空腹の胃に吐き気がくるような後悔と不安の念藤枝。▼胃に流し込む(カプセルを。酒を。ビールを)。胃の(具合が悪い。三分の二を切除する。内容物を吐瀉する。中に食べ物を詰め込む。むかつきがおさまる。よじれるような痛み!高樹)。しくしくと胃のあたりが痛む。鉄の胃の持ち主水倉。胃の痛み(突き上げるような=篠田。ねじれるような"三田)。胃の腑に(おさめる。流し込む。パン片を落とし込む)。胃の腑の焼けるような焦燥"松本。酒が胃の腑へ落ちていく。胃炎に悩む。胃痙攣を起こしそうなほど体をよじり畳を叩いて笑いころげる"安部。胃腸が(丈夫。弱い)。胃袋が(炭火でチリチリ焼け縮まってゆくような歳覚"吉行。背中にくっつくほどに腹が減る=高橋三)。貧弱な胃袋が驚き恐れて縮み上がる安岡。ステーキの山を登りバターソースの海を渡る頑丈な胃袋荻野。ディナーを胃袋に収める。おにぎりをお茶で胃袋に流し込む"東野。食べたものが食道を通って胃袋へと落ちていく村山。食べ物が胃袋までたどり着く=辺見。胃袋を掴み上げられたような息苦しさ=阿久。腸が蠕動運動をする。強靭な腸のようなゴム管武田泰。 **いえき【胃液】** ▼思い返しても胃液がこみ上げてくるような惨めな敗北"阿刀田。吐き気を覚え苦い胃液がこみあげてくる藤本。酸が増した胃液のように苦い思いが意識に分泌される=野上。焼けるような胃液を喉に感じる=黒井。 **おでい【汚泥】** ▼汚泥を(さらう。処理する)。疲労が河底の汚泥のように日ごとに累積されて行く=阿刀田。汚泥を捏ね返したような雪道"有吉。どぶの底に積もったへどろ。へどろが(堆積する。溜まる)。 **ぎあん【議案】** ▼議案(審議未了の。総会の)。議案が(議会を通過する。不成立に終わる)。議案を(可決する。採決する。上程する。否決する。議会に提出する)。ごり押しで議案を通す。原案通りに可決される。動議を(採択する。否決する)。 **こなれる** ▼こなれる(土が。人間が。人柄が。柔らかに。よく)。こなれた芸。よくこなれた試み。こなれない。こなれがよくない。こなれきれない言葉。こなれの悪い夢。生硬な(翻訳調の文章。華僑談を交わす。体の緊張を解きほぐす)。熟していない生硬な表現。 **こねる【捏ねる】** ▼こねる(うどん粉を。勝手な理屈を。パンの種を。屁理屈を。ボールを手で。土をぐちゃぐちゃと足で)。▼生地をこねあげる(うどんの。パスタの。パンの)。妙な理屈をこねあげる。▼こね返す(粘土を。土を)。泥をこねくり返す。▼こねくりまわす(コルクの栓を。考えを頭の中で)。▼こねまわす(乳房を。ボールを。とめどなく理論を。愛欲の泥海をひとこね!真継)。▼こねくる(粘土を。指でひげを)。泥でつくねた壁。 **コンクリート** ▼コンクリートが剥き出しになった殺風景な部屋"大藪。コンクリートの劣化が静かに進行する"辺見。谷岡をコンクリートの壁が塞ぐ。明るくそのくせ硬そうな白っぽいコンクリートの肌原田康。足元からコンクリートの冷えが這い上がってくる!高樹。頑丈一点張りのコンクリートのかたまり"畑。のっぺりとしたコンクリートの壁=村上春。見上げるばかりの無表情なコンクリートの構築物=黒井。コンクリートやタイルの肌を冷え冷えと剥き出しにする=日野。コンクリートのような気の毒な頭の役人今東。モルタルが剝落する。モルタルを(塗る。吹きつける)。モルタル塗りの家。 **じゅし【樹脂】** ▼樹脂が(固まる。流れ出る)。透明な樹脂のような分厚い沈黙に閉じこめられる宮部。樹液(無色透明な。甘い)。樹液に虫が群がる。松脂を(採る。塗る)。 **しょうか【消化】** ▼消化する(作業量を。食物を。食べたものを。注文を。有給休暇を。輸入枠を。予算を。これというアクシデントもなく旅の予定を=平岩)。グラタンのホワイトソースが内臓の消化液みたい=小川。消化酵素を分泌する。消化試合をこなす。食べ物がこなれる。腹ごなしに散歩する。 **しょうかふりょう【消化不良】** ▼消化不良を起こしそうな話安部。食事が胃にもたれる。消化不良のような言い合いで別れることになってしまう鎌田。不消化な(思想。食べ物。知識)。不消化に悩む。 **セメント** ▼目地をセメントで埋める。セメントの床が乾ききった砂地のように白々とざらつく=日野。セメントを(流し込む。塗る)。なま乾きのセメントのよう。 <421> # 捏ねる・練る **たたきだい【叩き台】** ▼たたき台と(位置づける。なる私案)。たたき台をもとに議論を進める。▼たたき台にする(草案を。草案を)。素案をもとに原案を作る。 **どろ【泥】** ▼泥が(点々とついている。ぽろぽろとこぼれ落ちる。海草のようにまとわりつく大原)。ズボンに泥がこびりつく。溶けた泥が煙のごとく水を濁す"長塚。着物を泥で汚す。水が泥で茶色く濁る。泥で汚れる(衣服が。顔が。体が)。泥と垢にまみれる。泥に(足を取られる。足跡がを取られる。沈むような眠り=長野)。靴が泥に染まる。雨に打たれた花のように泥に汚れる=中村真。▼泥につかる(膝から腰まで、胸まで)。泥の(中でもがく。中から足を抜き上げる。海を泳ぐように前進する栗本。はね上がる鈍い音"大岡)。胸底に重苦しい泥の塊が沈澱する藤本。泥を(被せられたような不快感藤田。ちぎって投げたような雲=長塚)。親の顔に泥を塗る。顔に泥を塗られる。鉄くずの泥を落とす。神話に泥を浴びせる。何もかも泥を吐かせる。先を争う人間がひと塊になって泥をかくようにしてなだれ寄る=本庄。▼泥をはね上げる(びちゃびちゃと。ぴちゃぴちゃと)。泥のような(昏睡におちこむ=開高。眠りから覚める=山田厚。眠りに押し流される藤沢)。酔余の泥のような感覚から漸く眼を醒ます"高井。心の内の泥のような言葉を吐く梅本。泥のように眠りの淵に落ちる藤本。流れの色が泥のように濁る=石坂。泥土に靴がめりこむ。野良犬のように泥だらけになった顔「遠藤。泥人形みたいな姿古井。白壁が泥はねでまだらに染まる。 **どろみず【泥水】** ▼泥水が(靴の中へじとじととしみ込む。巨大な王冠を描いてハネる=大原)。溜まった泥水に寒そうなさざ波が立つ=国木田。泥水を(掻い出す。はね飛ばす)。胸の中が泥水をかきまわしたように濁る=石坂。泥水のように記憶が流れてくる=伊坂。 **ぬかる** ぬかる(庭が。道が。雨で。雪で。足元がずくずくと。足元がずぶずぶと)。ぬかって滑りやすい道。ぬかるむ(雨で足元が。グラウンドが。道が)。 **ぬかるみ【泥濘】** ▼雨降り揚げ句の深い泥濘鳥崎。ぬかるみに(足を取られる。足を踏み入れる。ハイヒールをとられる。深く踏みこんでいく。足をすべらせて転ぶ=長崎)。心が真っ黒い泥濘につぶされる松本。ぬかるみを(ばしゃっと踏む。歩いているみたいに足が重い=飯田。踏むような足どりで歩く古井)。びちゃびちゃぬかるみを歩く。泥濘を歩くような重さで云う宮本百。泥濘の中を軍靴を引きずりながら進む一兵卒高橋知。ぬかるんだ闇が空間を埋める=長野。 **ねる【練る】** ▼練る(小説の構想を。慎重に対策を。戦略を。密かに策を。復讐の計画を。綿密な作戦を。極秘にプランを。小説のアイデアを。全体の構成から細部の展開に至るまで徹底的に=東野)。行列が道を練っていく。練りに練った(予定の行動。計画を実行する)。練りに練って考え出した罠。遊びの計画でも練るように熱っぽく語り合う。黒井。 **ねんど【粘土】** ▼青いぬるぬるした粘土。粘土で型を作る。粘土でもこねるようにひょいひょいと手に持ち替えて形を直しているうちにちゃんと夫婦になっていく=佐多。粘土をこねあげる。表情が粘土のように冷酷になる=高橋和。死骸が柔らかい作りかけの粘土細工のように生々しい=長野。表情が粘土細工のように固着している=光。 **ビニール** ▼コンドームをふくらましたような格好の半透明のビニール袋=阿部。ビニールが風にばたばたと音を立てる。厚いビニールで頑丈にくるんだ包み。残りの雪がうす紫のビニールをかぶせたようになる"石森。病気のせいか脳味噌が半分分厚い半透明のビニールをかぶったようで焦じれったくなる=向田。クラゲのようにただよいついた半透明のビニール袋"阿部。銀箔かアルミの粉末でもまぶしたようにビニール袋が直射日光を乱反射して輝きわたる=日野。粗末なプラスチックの椅子。陽が乾きプラスチックきってプラスチックをはめ込んだよう。高橋三。プラスチック製の日用品。固められた雪の中央が硬質のセルロイドのような色に凍りつく大江。月がセルロイドのように薄くひび割れる=長野。 **もまれる【揉まれる】** ▼揉まれる(人生の波風に。船が大波に。世の荒波に。激しい揺れに身を。鈍色の土用波に。真冬の荒い風に。満員電車の人波に。ラッシュアワーの混雑に。体が御輿のように=獅子)。波に揉まれる(鳥が。船が)。激しく揉み抜かれる。▼揉みくちゃにされる(体を。報道陣に。満員電車で)。衣類を揉みくちゃに重ねる。顔の造作を揉みくちゃにする。紙を揉みくちゃにして捨てる。体が二転三転と揉みくちゃになる。 **もむ【揉む】** ▼揉む(頭を。肩を。腰を。注射のあとを。手を。乳房を両手で。指をこめかみに当てて。虚ろな目つきで中年女みたいにこめかみを宮本。ぎくしゃくした空気を気づかって涼子ひとりが気を"高樹)。揉みこむ(塩を。土を)。▼揉み出す(声を。綿の塊を)。内なる欲望に揉み立てられる。揉み立てる(乳を。胸を)。▼揉みほぐす(体を。凝りを。丹念に経絡に沿って。的確に凝ったところを探り当てて藤沢)。心のしこりをもみほぐす円地。▼マッサージする(体を。背中を。膝小僧を)。あんまに腕を揉ませる。 **やに【脂】** ▼やにが(粘る。べとつく)。煙草のやにで狐色に染まっている指先=黒井。桜のやにを小指に白く巻いて遊ぶ三浦。 **りつあん【立案】** ▼立案する(イベントを。計画を。作戦を。政策を。法律を)。起案する(会則を。例規を)。 <422> # 細かい・粗い **あらい【粗い】** 肌理もぁの粗い肌。織り目の粗い布地。粒子の粗い写真。男の粗い感覚的な欲望の躍動!芝木。目の粗い生地。粗くかんなをかける。粗放な計画。野武士の心事のごとく粗放蕪雑が坂口。 **あらけずり【荒削り】** 現実は神話と大して違わないほど古くて荒けずり“円地。荒削りな(性格。文章)。元気のいい饒舌町2)に荒削りな野趣がある三好達。川の左に聳くじえる荒削りされたような山県菊池。デリカシーのない人。 **おおざっぱ【大ざっぱば】** 大ざっぱな(比較。物の言い方)。大ざっぱに(考える。要約する)。大胆なだけに隅には疎い=連城。大味な演技。大摑みな報告。大擱みに決める。万事大まかで太っ腹に永井段。大まかに(図式化する。説明する)。勘を頼りに腰だめでぶっ放す。ラフな(格好。計画)。アバウトな(性格。やり方)。少しアバウトな独り暮らしの女の子の部屋荻野。 **おおすじ【大筋】** 大筋において一致する。局部の現象に気をとられて大筋を見失う三好後。▼概略(活動の。事件の)。話の概略をかいつまんで紹介する。大略次のような話。事情を大略説明する。 **ぐたいてき【具体的】** 具体的な(行動に移る。指示を与える。金額を口にする。主張を展開する。処理方法を決める。データを突きつける)。具体的に(名前をあげる。事例をもって示す)。条件を具体的に示す。話を具体的に進める。方法を具体的に教える。目標地点を具体的に列挙する。離婚について具体的に話し合うぃ南糸。具体系を(提示する。まとめる)。具体策を(考える。立てる)。具体性に(欠ける。富む)。徹底して具体的事実にこだわる。具体例を二三挙げる。具現する(意志を。思想を)。 **くわしい【詳しい】** 詳しい(情報が入る。説明を求める。話を聞く。事情を打ち明ける)。▼詳しい(一家の内情に。海外の事情に。界限幼いの地理に。男女の機微に)。建築史に詳しい人。更に詳しい情報を求める。内部事情に詳しい者の犯行。詳しく(事の頃末式を話す。説明すると長くなる)。現場の状況を詳しく調べる。症状を詳しく説明する。見てきたように詳しく話す今日。委曲を(尽くして説明する。尽くすように書く)。委細を(告白に及ぶ。尽くす)。克明な記録を取る。克明に裏付けをとる。年月日まで克明に思い出す。エビソードの一つひとつを克明に書きつづる=飯田。巨細にに(描写する。わたって報告する)。事細かに話して聞かせる。経過を事細かに書く。家庭内外の雑事を事細かに並べる『永井龍。子細に(観察結果を記録する。店内を見て回る)。一部始終を子細に点検する。事情を子細に申し述べる。資料を子細に調べる。精細な描写。精細に検査する。つぶさに実態を調べる。日本全国をつぶさに歩く。初めから終わりまでつぶさに眺める。詳らかに(調査する。点検する)。 **こまかい【細かい】** 細かい(算盤をはじく。産毛が金色に光る"阿部。徴が蛇の翅の粉を撒いたように滲しみつく宮本百。字でくちゃくちゃ書く石森)。細かい(肌の肌理きめが。男のくせに)。一挙一動に細かい注意を払う。お金に細かい人。織り目の細かい布地。ガラスの細かいかけら。きめの細かいサービス。コーヒーを細かい目で挽いく。妻の細かい心づかい。文章の細かいニュアンス。毛のような細かい注意"山田美。現実の細かいことが目にも耳にも入らない"富岡。砂のように細かい鋼の粒浅川。糠ぬかのように細かい雨があたりにたちこめている=高樹。熱心に見ていると三ページくらいで目が疲れてしまう細かい一覧表宮部。総ぼこりのような細かい昆布糸が黒く白く宙に郷う山崎。細かな(気遣いを示す。気配りを忘れない。神経がゆきわたる。雨が降っている陰鬱な日藤田。活字が眼に辛い=丸谷。ところまでを虫眼鏡で観察するように見る:谷村)。霧とも雨もゃともつかない細かな雨長野。何かにつけて細かな気配りを見せる=佐藤愛。灰のような細かな粉雪が乱れ降る=海音寺。細かく(注文をつける。才覚を働かせる。連絡をとりあう)。子供たちに細かく目配りする。症状を細かく説明する。手順を細かく教える。顔の筋肉を細かくビリビリさせる"小島。肌理が細かく美しいが青白く沈んだ肌"川端。ちょこまかと細かく場所を変える=奥泉。手紙を細かく引きちぎる=石坂。葉が細かく風に揺れる=山田太。光の斑点が細かく地の上にそよいでいる=檀。餡ぁんのきめを細かくする。睫毛性っが細かく震える。細かにきらきらと輝く雪。顔立ちを細かに描写する。細微にわたる記録。微細な埃児にがゆっくりと渦を巻く=池井戸。微細にわたって書き記す。微視的な(分析。見方)。微視的に論じる。微に入り(細にわたって話す。細をうがった分析)。末梢的な(問題)。行儀作法にやかましい。服装にやかましいレストラン=平岩。きめ細かい(アドバイス。配慮)。きめ細かく(サービスする。分類する)。きめ細かな情報収集。細心の注意を払って作る=三浦し。細心の注意を怠らない。 **こまごま【細細】** こまごまと(指示を与える。身の上を話す。面倒をみる。理屈を言う)。こまごまとした(身の回りの世話。注意事項をまくしたてる=椎名滅)。こまごました計算をしつこく繰り返す=隆。縷々るる(教えを垂れる。万言を費やす。思いの丈を訴える)。感激を縷々書き連ねる。 **さいしん【細心】** この上なく細心な深い心遣い=野岡。細心の(気を遣う。工夫を施す。努力をする。筆づかいで書き上げる)。漢字ひとつにいたるまで細心の注意を払って作る=三浦し。細心の注意を怠らない。 <423> # 細かい・粗い **さいぶ【細部】** 細部に関する最終的な詰め。細部に至るまで(知悉しする。克明に分析する)。▼細部にわたる(検査が。報告が)。細部の仕上げに余念がない。細部への目が雑になる。細部まではっきりと見える。細部を丹念に観察する。描写のディテールの細かさに驚く村上龍。 **しょうさい【詳細】** 詳細な(注解を施す。情報をもたらす。地図を手に入れる)。詳細に事実を跡づける。意見を詳細に聴取する。業績を詳細に記す。頭末を詳細にわたって聞く。事故の詳細を知る。リストが詳細を極める。 **しようまっせつ【枝葉末節】** 枝葉末節に(拘泥する。こだわる。すぎない)。話が枝葉に入る。枝葉の問題をいじくりまわす。重箱の隅を(ほじくる。楊枝でせせるほどの正岡ごいを期した消算事務"里見)。重箱の恥をつつくような(質問。指摘)。 **せいみつ【精密】** 精密な模型。解剖学の教科書から写生したような精密な浮き彫り“小川。部品を精密に作り上げる。刻薄なまでの精密さで書かれた描写=長部。精密検査を受ける。 **せんさい【繊細】** 繊細で(鋭利な分析。ナイーブな傷つきやすい自我=筒井)。見るからに繊細でやわらかい肌"藤沢。繊細な(神経の持ち主。カットを施した小瓶。筆によって躍動的に描く)。なよやかな繊細な文体。ほっそりして繊細な男性。指の繊細な動き。桜の花びらのようにもろく繊細な表情"小川。ショパンコンクールにでも出場した方が似合いそうなほど繊細な指先景山。恥じらうような繊細な微笑"高橋和。繊細さと不器用さを併せ持つ。 **そざつ【粗雑】** 扱いが粗雑で軽率に流れる=川端。粗雑な(挨拶を返す。頭で考える。規格品といった感じの建造物荻野)。所々塗抹された粗雑な文字"横光。手紙を粗雑に書く、雑な(計算。仕事。ブレー)。雑にボールを打つ。粗製の(ガソリン。土器)。粗茶な(計画。論理)。粗悪な(生地。品。商品をバナナの叩き売りのように売り飛ばす=山崎)。粗品を乱造する。 **たいきょくてき【大局的】** 大局的な視野に立つ。大局的に情勢を見て対処する佐藤愛。広い視野で見る。大局観を持つ。巨視的な総合的世界観。巨視的に見る。情勢を大観する。▼達観する(国の将来を。国際情勢を)。達観の境地に至る。大所高所から検討する。大所高所からの提言を得る。大所高所から判断する。大局観がない。大局観に乏しい。大局を(誤る。見失う)。劫こうに勝って碁に負ける=高橋知。 **だいたい【大体】** 大体事の次第が分かる。からくりが大体分かる。大体が無口な人。大体の(筋をつかむ。構想が出来上がる。事情がのみこめる。筋書きが読める)。おおむね(平穏に過ごす。順調に推移する)。予定はおおむね決まっている。おしなべて経営は困難。今年の作柄はおしなべてよい。概して(評判がいい。あまり評判はよくない)。人を見る目が概して温かい。無慮(数百種もある。数万の群衆。一万人が亡くなる)。大切なポイントをあらまし述べる。動向をあらましつかむ。事件のあらましを説明する。 **ちみつ【緻密】** 緻密な(織り方。観察。計画。計算。スケジュール)。質の緻密な玉。集中力を必要とする緻密な仕事。緻密に(推理する。計算された小説作法"佐藤隆)。頭脳の働きを緻密にする。細緻な描写。微妙細緻な音。細緻に彫りこむ。細密な(図柄。地図。描写)。細密に調べる。植物を細密に描く。精緻な(絵画。自然の観察者。描写)。精緻を極めた油絵。 **デリケート** デリケートで高雅な味わい=田辺。デリケートな(神経の持ち主。表現。女心を頭から無視してかかる=丹羽)。体に変調の来るデリケートな年頃"曽野。根源的でデリケートな問題"小川。女学生のようにデリケートな上品な神経"小林多。 **ねほりはほり【根掘り葉掘り】** 根掘り葉掘り(聞きたがる。詮索する。尋ねる。追及する。問いただす。聞きだそうとする。身の上話を聞きたがる)。 **びみょう【微妙】** 賛成が得られるかどうかは微妙。微妙な(感情の綾。心の揺れ動き。色調の変化。心理の交錯。濃淡の差。変化に気づく。沈黙が支配する。ニュアンスを見逃す。バランスの上に立つ。変化を読み取る。目配せを交わし合う)。色の微妙なグラデーション。運命に微妙な狂いがおこる。人間関係に微妙な影を落とす。怒りと悲哀が混じった微妙な表情人谷川。好奇心とも悪戯心ともつかない微妙な心理が働く=阿刀田。言葉の微妙な陰影を理解する=塩野。自然の微妙な色の変化にうっとりする=隆。遠くの風のざわめきのような微妙な音"中島敦。文面に微妙なよそよそしさが見える高村旅。微妙に(声色がかわる。混乱して言葉が巧く出てこない=有川)。思いが微妙に屈折する。動揺が微妙に声に出る。▼微妙に変化する(生活が。立場が。雰囲気が)。微妙に揺れる(心が。表情が)。政治的な立場の微妙さを知る。 **むぞうさ【無造作】** 気がないみたいに無造作“田中。無造作な石の配置。一見したところいかにも無造作なつくり椎名誠。綾はいばかりの無造作な若さ=有吉。無造作に(ぐしゃぐしゃと丸める。服を脱ぎ捨てる。本を積み上げる)。使い古したハンカチでも棄てるように無造作に扱う徳永。総髪を後ろで無造作に束ねる。樹木が庭先に無造作に茂る=小松左。荷物でも退けるように無造作に女を列から離す=円地。鼻紙より無造作に労働者を使い捨てる小林多。 **めんみつ【綿密】** 綿密な(観察に熟練する。ブランを練り上げる)。計画的に綿密な計算をする=石川。綿密に連絡を取り合う。移転先を一々綿密に当たる。計画を綿密に練り上げる。長編のブロットを綿密に考える。論理を綿密にする。周到綿密な配慮。 <424> # 誤魔化す・騙す **あざむく【欺く】** ▼欺く(言葉巧みに。偽の情報を流して敵を)。鬼を欺く大男。昼を欺く光。世間を欺く仮の姿。▼目を欺く(官憲の。周囲の。世間の。敵の)。事実をも良心をも欺かない。 **いいかげん【いい加減】** いい加減な(嘘を並べる。答え方しかしない。情報がまことしやかに流れる)。酔った勢いでいい加減なことを言う。云ぃうも恥ずかしい、いい加減な解決!本庄。電話ですむほどいい加減な仕事=泉優。ルーズでいい加減な女芝木。いい加減に(悟ってもよさそうなもの。毎日をごまかして暮らす。世の中を渡ってくる)。保守点検をいい加減にしておく。いい加減にしろ(甘ったれるのも。白ばっくれるのも)。図書隊の人員運用はよく言えばフレキシブル、悪く言えばいい加減さが特色"有川。仕事がちゃらんぽらん。ちゃらんぽらんな態度。放漫な(会社経営。財政運営)。何でもやりっぱなしで後片付けをしない。おざなりな受け答えをする。声にどこかおざなりな響きがある。熱のこもらないお座なりの演説"福永。おざなりに話を合わせる。言いつけをおろそかに聞く。▼おろそかにする(管理を。仕事を。本務を)。▶おろそかになる(学業が。大事なことが。勉強が。本業が。家族サービスが。博奕ぶくに溺れて仕事が藤沢)。適当に(相槌を打つ。お茶を濁す。手を抜く。聞き流して追い返す。調子を合わせる)。適当感丸出しで話をまとめる=有川。 **いつわり【偽り】** 真っ赤な偽り。記載に偽りがある。話に偽りがない。偽りの(愛。事実。陳述。身上書を見破る。ベールに覆われる)。偽りはない(気持ちに。言葉に。道に)。言葉に(偽りはない。偽りの匂いがする=内館)。偽りのない(心。事実。ところを申し上げる)。仮の姿(猫をかぶった。世をあざむくための)。アリバイの偽証を頼まれる。偽証する(国会で。法廷で)。虚妄に惑わされる。観念の虚妄をあざける。 **いつわる【偽る】** ▼偽る(学歴を。過去を、職歴を。年齢を。身分を。自分の気持ちを。人の口が恐ろしくて本心を平岩)。本心を偽ってさも嬉しそうな顔をする=福水。偽らない心を明かす。▼詐称する(学歴を。経歴を。氏名を、職業を。身分を)。七歳もさばを読む。いんちきがばれる。いんちきな(からくり。いんちき商売、商品を売りつける)。いかさまがばれる。いかさまに憤る。いかさまを見抜く。似而非科学的な説明=阿刀田。簡単とは似て非なる曖昧さで言葉尻を濁す。自由と放任は似て非なるもの。とんだ食わせ者。役に立たない食わせ物。食わせ物をつかまされる。まやかしがはびこる。政治家のまやかしにうんざりする。まやかしの(改正。正義)。 **うそ【嘘】** 嘘(真っ赤な。すぐにわかる。嘘も方便という程度の他愛ない!向田。さりげなさを懸命に演出 しつつ訴えている=原田糸。とても信じられない壮大なばかばかしい三島。その気になって調べたらたちどころに判明するような「宮本輝)。嘘か(本当か知らないが。真実か区別がつかない)。嘘が(通用しない。ばれる。露見する)。思わず嘘が口をついて出る。会話にめっきり嘘が多くなる。供述に嘘がある。ぬけぬけと嘘が出る。平然と嘘がつける強心臓。自らの嘘が招いた悲劇。嘘から出た実。真実か嘘かを見極める。女向けの雑誌に出てる嘘だか本当だか判ゃからない記事高井。すぐに嘘だと分かる。嘘で固めた話。半ば嘘で半ば本当。嘘と(本当を見分ける。真実の境目が分からなくなる。妥協だらけのいやな関係大佛。妥協をはなはだしく嫌う本多秋。本当がごちゃごちゃになってあたりのものがみな疑わしく見える=安岡)。全くの嘘というわけではない。調べもしないで嘘と決め付ける=高橋克。まるきり嘘とは言えない。あながち嘘とも言いがたい。まんざら嘘とも思えない。嘘に(嘘を重ねる。気づいていながら無視する。ころっと引っかかる)。どうせ嘘に決まっている。嘘の(上塗りをする。数々が走馬灯のように記憶の中を巡っている荻野。微粒子が瀰漫する=倉橋)。嘘も隠しもない事実。口から出まかせのうそを並べる=杉本。浅はかな嘘をあばく。巧妙な嘘を交える。誰が嘘を言うものか。反射的に嘘を口にする。▼嘘を言う(わざと。口から出まかせの)。▼嘘を平気で言う(口先だけの。見え透く)。▼嘘になる(考えていないと言えば。寂しくないと言えば。痛みを感じなかったと言えば近藤。妻に未練がないと言えば"小林久)。ことばに嘘のかげりがない=池波。言葉に嘘のないことを証明する。内心でベロを出す=宮部。嘘のような幸先のよさ熊谷。痛みが嘘のように消える有吉。昨日の吹雪がまるで嘘のように空が青々と晴れ渡る=辻仁。苦痛に歪ゅがんでいた顔が嘘のように穏やかな表情に変わる熊谷。さっきまでの暗い顔色が嘘のようにかき消える=隆。さっきまでの騒ぎが嘘のように静か=日野。それまで暇だったのが嘘のように繁昌する北原。嘘みたいな本当の話。決して嘘ではない。嘘ではないかと(勘繰る。目を疑う)。嘘いつわりのない真実の言葉"森尻。命にかけて嘘偽りは言わない。言葉に嘘偽りはない。嘘臭い愛想笑いを浮かべる。何もかも嘘っぱちに決まっている。感傷の気分で染めあげた嘘八百の美しい追憶"阿部。嘘八百を並べて何とか言い逃れる=中野美。絵空事といってしまえばそれまで=瀬戸内。▼食言する(保身のために。前言を翻して)。 **うそつき【嘘つき】** なんて意地の悪い嘘つき!幸田文。 <425> # 誤魔化す・騙す **うそつき【嘘つき】** 嘘つきでいい加減な男。嘘つきの(汚名を免れる。言うことは信用できない)。嘘つきは泥棒の始まり。地獄へ落ちて閻魔さんに舌を引っこ抜かれる=高橋和。虚言癖がある。不正直な人。不正直を嫌う。嘘をつく(下手な。国民に。でまかせに。臆面もなく。さりげなく。底の知れた。必要に応じて。見てきたような)。猫をかぶって嘘を吐き続ける=武田奏。嘘をついて学校を休む。最後まで嘘をつきとおす。つい嘘をついてしまう。嘘に色があるならば薔薇色の嘘をつきたい荻野。かりそめにも嘘はつくな。 **うみせんやません【海千山千】** 海千山千の(老獪な商人。犯罪者と対峙する。風貌を備えた老人)。人をたぶらかす古狐。古狐を黙らせる。▼古だぬき(職場の。町内の)。 **おしばい【お芝居】** ▼お芝居(意識的な。なれあいの)。お芝居を見抜く。茶番めいた芝居。芝居にだまされる。打った芝居にまんまとひっかかる。芝居の底の浅さに気がつく"有吉。芝居を上手にやってのける。芝居を打つ(一世一代の。手の込んだ)。一世一代の大芝居。大芝居を打つ。浮ついた根も葉もないような狂言菊池。火事がほんの狂言のようにすぐ鎮まる=徳永。 **おとしあな【落とし穴】** 至る所に落とし穴がある。落とし穴に(足を踏み込む。落ちる。はまる)。うかうか計略の落とし穴に近づく島尾。数字は時としてとんでもない落とし穴を作る=柳田。一番の落とし穴にわざわざはまりに行く"有川。逃れがたい噂の陥穽。陥穽に(落ちる。はまる)。 **おもわせぶり【思わせ振り】** 思わせぶりな(言い方。仕草。メタファをちりばめた独白永倉)。思わせぶりに(笑顔を作る。沈黙する。笑う。声をひそめて言う)。▶期待を持たせる(妙な。さんざん)。 **かくれみの【隠れ蓑】** 誠実さは重宝なかくれみの永井路。精神主義は多くは無能な者の隠れ蓑であることが多い"司馬。照れを隠れ蓑にする=阿木。正義を隠れ蓑にして自分の弱さを隠そうとする藤田。組織を隠れ蓑にして個人の責任を頬かむりする=畑村。隠れ蓑を着る。人工衛星打ち上げを隠れ蓑にしたミサイル発射。政治団体を隠れ蓑にした違法な企業献金。 **カムフラージュ** カムフラージュする(汚点を。罪を。後ろ暗い取引を)。やましさをカムフラージュするわざとらしさ=島田。入り口が普通ではとうていわからないほど巧妙にカムフラージュされている"大原。保護色に身をひそめる。迷彩を施す。 **かんげん【甘言】** 甘言に(溺れる。釣られる。乗せられる。迷わされる)。甘言を(用いて籠絡する。もって誘き出す)。いかなる甘言をもっても籠絡しがたい=獅子。鞭もてと甘言を使い分ける=萩原。巧辞や甘言がさながら無尽蔵の見切り売りのように島民に浴びせかけられる=山田美。言葉巧みに(勧める。だます。取り入る。少女の心をつかむ)。甘口に乗る。うまい話はいつでも騙されるに決まっている=戸川。巧言に乗る。巧言は徳を紊す=中島敦。巧言令色に乗せられる荒巻。▼美辞麗句(常套的に連ねる。感情過多の)。美辞麗句の多い演説。 **ぎぜん【偽善】** 偽善に満ちた社会。偽善の仮面をかぶる。偽善を仮借なく抉る"高見。正義の味方を装う。親切めかして恩に着せる。相手の身になって考えるというお為ごかし=井上ひ。お為ごかしに(恩を売る。仕事を与える。勉強を教える)。おためごかしの誘い文句につられる=西木。親切めかしたお為ごかしの言い方。親切ごかしに(気を引く。ひっかかる)。親切ごかしの無責任な提案。 **ぎそう【偽装】** 強盗に見せかけるための偽装"高村。偽装が幾重にも張りめぐらされる。巧妙な偽装がなされている。犯人の偽装に引っかかる=夏樹。▼偽装する(アリバイを。汚染米を食用に。あの手この手で。中国産を日本産と)。 **こうとうむけい【荒唐無稽】** まさに荒唐無稽、子供の寝言ほどの価値もない笹沢。荒唐無稽な(嘘をつく。絵空事。活劇世界。説をぶち上げる=横山)。現実離れした荒唐無稽なお話。荒唐無稽の(おとぎ話。嘘八百を並べる)。 **ごまかす【誤魔化す】** こまかす(自分の弱さを。ばつの悪さを。いい加減に。曖昧な答えで。舌先三寸で。焦じれを煙草で。適当な嘘で。何とかうまく。自分の間抜けさ加減を。うふふと笑って。小手先の手直しで。とりとめのない返事をして)。ひ弱な精神を巧妙に誤魔化す藤田。笑ってごまかす一手。ごまかすのに骨を折る。▼目をごまかす(世間の。他人の。役人の)。ごまかしが利くとは思っていない。ごまかしに気がつく。気休めのごまかしにすぎない。ごまかしはいつまでも続かない"高橋克。小手先のごまかしを一切許さない!束野。煙幕を張る。顧みて他を言う。口先だけで謝る。白を黒と言う。お互いの胸の中を笑い声でごまかすように声を揃えて笑う佐多。言いくるめる(うまいこと。黒を白と。鷺を烏と。舌三寸で)。不明朗な(会計。財政運営)。▼お茶を濁す(いい加減な返事で。下っ端の役人の逮捕で。他愛もないお話で)。▼煙に巻く(質問者を。取材記者を。訪問客を)。▼煙にまく(奇矯な言葉を弄して人を井上。口から出まかせを並べて=杉本)。▼鯖を読む(適当に。三歳)。二枚舌を(駆使する。使うけしからぬ奴美濃部)。▼目をくらます(追っ手の。警戒の。見張りの)。支度金に目をくらまされる"北原。 **さぎ【詐欺】** 詐欺(悪質な。巧妙な)。詐欺が明るみに出る。悪質な詐欺に引っかかる。詐欺の(常套手段にだまされる。容疑で逮捕する)。下手をすると詐欺のお先棒を担がされかねない戸川。詐欺同然の不正。 **じこぎまん【自己欺瞞】** 行為とうらはらな意識の自己欺瞞筒井。 <426> # 誤魔化す・騙す **じこぎまん【自己欺瞞】** 自己欺瞞に(日を過ごす。身を委ねる)。自己欺瞞の妄想に落ちる。▼欺く(己れを。自分で自分を)。自己を偽る。自分の心をごまかす。 **しらんかお【知らん顔】** 知らん顔で通り過ぎる。知らん顔を決めこむ。当分の間知らん顔をしている。知らぬ顔で(通す。やり過ごす)。知らぬ顔では済まされない。知らぬ顔の半兵衛を決め込む。知らぬ顔を装う。当たらず触らず知らぬ顔をする。▼知らん顔をする(あくまで。関係ないと)。知らんふりを装う。横着に知らんふりを通す。知らないふりをする。知らぬ存ぜぬの一点張り。知らぬ風を(取りつくろう。装う)。知らぬふりで行き過ぎる。▼どこ吹く風(子供たちの騒ぎなど。必死のわめき声にも)。口を拭って(知らぬ顔をする。素知らぬ顔をする=福永)。口をぬぐって知らんふりをする=石坂。計算違いを公表しないまま口を拭ってしまう~柳田。素知らぬ(顔で首を振る。風を装う。ふりを続ける)。耳に栓をして素知らぬふりを装う高橋和。何食わぬ(ふりを装う。顔をして逃げ出さない)。何食わぬ顔で(訊く。答える。澄ます。元に戻しておく)。頬被りを決め込む。▼頬被りをする(もめ事に。自分のしたことに。迷惑をかけたまま)。見て見ぬふりで(通り過ぎる。やり過ごす)。見て見ぬふりを決め込む。 **ずさん【杜撰】** 杜撰な(チェック体制。品質管理。計画では成功はおぼつかない=奥泉)。言葉を杜撰に使う。管理の杜撰をとがめる。さるで水をすくうような造り口林京。 **そのばしのぎ【その場凌ぎ】** その場しのぎに嘘をつく。その場しのぎの(牽強付会な説。言い逃れ。安普請。ごまかしを言う)。その場逃れの(言い訳をする。嘘をつく)。当座をしのぐ。場当たり的な改革案。行き当たりばったりの対応に終始する。一時しのぎにごまかす。一時しのぎのお手軽なやり方阿部。一時逃れのでたらめを言う。一夜漬けで試験に臨む。一夜勉強の恥ずかしいメッキ。太宰。急場凌ぎの円滑剤ぐらいには役に立つ=大岡。口しのぎに菓子を食べる。対症療法で済ませる。付け焼き刃の教養を身につける。付け焼き刃でない制度を設計する。急場しのぎの(仮住まい。対策)。姑息な(行動に出る。行為に恥じ入る)。因循姑息なやり方。 **そらぞらしい【空空しい】** 叔父の優しい声がにわかに空々しい萩原。空々しいご機嫌をとる。裏切り者の空々しい涙。空々しく耳に響く。丁寧な言葉遣いが空々しく取って付けたよう永井。言葉が白々しく上滑りする。 **ぞんざい** 目鼻の描線がぞんざいで朗らかな顔立ち三島。ぞんざいな(口調。言葉で押しつけるように言う~石坂)。言葉遣いにぞんざいな人間。まるで客扱いしないぞんざいな口をきく=高見。ぞんざいに(戸を閉める。丸めて捨てる)。体をぞんざいに取り扱う。ぞんざいになる(挨拶が。物言いが)。いけぞんざいに話し合う。粗略な(扱い。服装)。縁を粗略にする。がさつな(言葉を吐く。無神経な言い方)。耳障りながさつな音。ガサツに大口を開けてガハハと笑うつか。 **だっぽう【脱法】** 巧みに脱法する。脱法的な(行為。政治献金)。法の網をかいくぐる。法網を(うまくくぐる。逃れる)。法律の網をくぐる。 **たぶらかす【誑かす】** たぶらかす(学者を。若い娘を。手練手管で男を)。永の年月自分をたぶらかしてきた記憶・阿部。▼たぶらかされる(狐に。虚言に。狐狸の類に)。 **だまされる【騙される】** だまされる(外見に。詭弁に。口上手に。舌先三寸に。ころりと。たちの悪い周旋屋に。ハンサムな見かけに。柔和な外交辞令に"平気。手もなくコロッと杉本。下手な演技にあっさりと三浦し)。スボリと背負い投げを喰わされたみたいにきれいに騙される"谷崎。巧みな芝居に騙される=大佛。▼男に騙される(ろくでもない。悪い)。騙されたと思ってやってみる。騙されて一文なしになる。器に騙されて客がとんとん箸をすすめる=有吉。楽しそうな顔につい騙されてしまう。内海。他愛なく甘えかかるようなだまされかた芝木。最後まで馬鹿のようにダマされぬく安岡。おっとりして人に騙されやすい。鼻毛を抜かれる。見事にはめられる。だまされたような形で急に家から放りだされ心細く悔しくさびしかった三浦し。まんまといっぱいかつがれる。詭計に(陥る。はまる)。口車にうまうま乗せられる。うかうか口車に乗る。▼してやられる(まんまと。無邪気な笑顔に=さだ)。取り込み詐欺に遭う。▼化かされる(狐に。狸に)。まんまと謀られる。見事に一杯食う。▼一杯食わされる(女に。まんまと)。騙されない。決して騙されはしない。その手には引っかからない。誰がその手に乗るか。みすみす罠に嵌まってたまるものか谷崎。 **だます【騙す】** 色仕掛けで男を騙す。騙すのは本意ではない。だましだまし運転を続ける。騙し騙し走らせる。騙しにかかる。一芝居打つ。人を(担ぐ。罠にはめる)。罠を仕掛ける。最後まで騙しおおす。▼一杯食わせる(腹いせに。まんまと)。詭計を(めぐらす。弄する)。欺瞞と言い訳に満ちた暮らし=大庭。うまい口車で説得する。口三味線に乗せる。子供だましのような詐術で次ぎ次ぎに権益をだまし取る。海音寺。正直者を誣いる。▼たばかる(主人を。良民を)。狐と狸の化かしあい。化かす(狐が。狸が。人を)。引っかける(女の子を。女を)。▼隔意する(私心で同志を。世間を。大衆を。人々を)。名前を騙る。▼名を騙る(神の。死者の。仙人の)。騙りに引っかかる。騙りの罪で訴える。騙りを働く。たらし込む(女を。将校を。世間知らずの男を)。 <427> # 誤魔化す・騙す **てじな【手品】** 手品の(芸当。種明かしをする)。手品を使う。手品師のように(しきりに指を動かす遠藤。もったいをつけて封を切る=宮部)。手品のごとく消える。他愛もなく幻術のとりこになる。マジックに造詣が深い。妖術に(かかる。敗れる)。妖術を(かける。使う)。 **てじなし【手品師】** 手品師のようなきゃしゃな手付き=福永。魔術師の持つ不思議な牽引力けんいん中野美。魔術師のように笑顔がゆらゆら揺れる=阿刀田。舞台の上の魔術師のように愛想がいい"大原。 **でたらめ【出鱈目】** でたらめ(誇張に満ちた。冗談半分の)。でたらめなことを口走る。だらしなでたらめな若者。根拠のないでたらめな情報にたぶらかされる=小林久。足の向く方へでたらめに歩く。全くでたらめの誇大な作り話=瀬戸内。いけしゃあしゃあとでたらめを話す。よたを(飛ばす。並べる)。取るに足りないたわごと。年寄りのたわごとと片づけられる"篠田。たわ言にけちをつける。根も葉もない(ことと笑い飛ばす。噂がばら撒かれる=横山。流言に惑わされる=山本周)。妄説に惑わされる。何の根拠もない妄説に騙される=中村真。 **でっちあげる【でっち上げる】** でっち上げる(適当な用事を。暴行事件を。意味不明の理屈を。架空の製造元を)。▼話をでっち上げる(ありもしない。神懸かりの)。売名の徒の不埒な捏造。▼捏造する(記事を。事件を。文書を)。 **てなずける【手懐ける】** ▼手なずける(犬を。馬を。金で男を。動物を。猫を。欲望を。部下を籠絡して)。手なずける際の常套手段。▼懐柔する(征服者を。父親を。敵を。被征服者を)。懐柔策が効を奏する。▼飼い馴らす(兎を。馬を。鵜を。病気を。山羊を。野生動物を)。 **デマ** 中傷の目的で流したデマ。デマが(乱れ飛ぶ。猛威を振るう。市中を吹き荒れる)。様々に憶測したデマが飛ぶ。デマに惑わされる。デマの一端が崩れる。 **でまかせ【出任せ】** 単なる思いつきの出まかせ。出まかせがたまたま的中する。どうせ出まかせに決まっている。酔った紛れに出まかせを言う。口から出まかせに(言いたい放題。言ったでたらめ=川端)。口から出まかせの(嘘。歌を歌う。替え歌。発言。思いつきを言う)。口から出まかせを並べる。 **てれんてくだ【手練手管】** 恋の手練手管。手練手管で男をだます。手練手管に長けている。手練手管を弄する。女の手練手管を知り抜いている。巧みな手管につりこまれる。年下の男の手管に溺れる藤沢。 **とぼける「惚ける」** とぼけるのもいい加減にしろ。とぼけた調子で聞く。とぼけたような顔で応える。そんなことは知らないとうそぶく。この期に及んで白ばくれる。白ばくれるのもいい加減にしろ。ペンギンみたいなとぼけ顔本多勝。▼白を切る(あくまで。図々しく。この期に及んでまだ。知らぬ存ぜぬと)。最後まで白を切りとおす。空とぼけた(顔。振る舞い)。空とぼけて尋ねる。「空とぼける(小憎らしいほど。何もかも知っていながらしゃあしゃあと“村上元)。 **トリック** ▼トリック(奇抜な。奇術の基本的な)。トリックが頭に浮かぶ。トリックにひっかかる。トリックを(解明する。作中に組み込む)。巧妙なトリックを考え出す。魔術のトリックを見破る。 **とりつくろう【取り繕う】** ▼取り繕う(明るい表情を。相手に好印象を与えようと。何事もなかったように。ぎこちない空気を熊谷)。取り繕う術がない。取り繕いに必死となる。取り繕ったような(薄笑い。わざとらしさ)。▼言い繕う(いい加減に。あれこれ)。うまく言いなして機嫌をとる。言葉巧みに言いなす。▶糊塗する(失敗を。醜態を。未熟さを。言わずもがなの冗談でその場を=高橋和)。▼繕う(慌てて失言を。心の破れ目を。世間体を。体裁を。無理やり形を。気まずい場面を)。▼手前を繕う(客の。妻の)。紆余曲折の弥縫を尽くす=山田峻。▼弥縫する(失言を。失策を)。一時しのぎの弥縫策でやり過ごす津本。 **なりすます【成り済ます】** ▼なりすます(警官に。芸術家に。社長に。別の人物に。専門誌の記者に)。一人旅がさらりと似合う女に成りすます谷村。なりきる(馬鹿に。役に)。 **にせさつ【偽札】** ▼偽札(精巧な。精度の高い)。偽札が(使われる。見つかる)。偽札をつかまされる。紙幣を偽造する。 **にせもの【偽物】** 真っ赤な偽物。偽物が(世間にあふれる。本物として通ってしまう高橋克)。▼贋作する(仏像を。名画を)。精巧に作られた贋物。偽造する(記録を。公文書を。小切手を)。作り物の感がある。偽か本物かを見分ける。偽の情報に振り回される。象牙まがいの細工物。まがい物の真珠。まがい物を高く売りつける。本物と紛らわしい模造品。イミテーションと見破る。イミテーションの(絵。宝石)。 **のせられる【乗せられる】** ▼乗せられる(陰謀の手に。うまい話に。口車に。口上手に。計略に。尻馬に。謀略に。うっかり。まんまと。相手のベースに。おためごかしに。相手に。きっぱりと。見えすいた狂言に易々と志賀)。 **はぐらかす** はぐらかす(質問を。話を。なんのかのと。意味ありげな言葉で。なんだかんだと。禅問答みたいなやり方で宮本。にやりと笑って軽く水上)。はぐらかされる(妙な具合に。体よく。意気込んでいた気持ちが)。巧妙な論点のはぐらかし。はぐらかすような態度を取る。はぐらかすように(フワと笑う。曖昧に聞き返す“黒井)。わざとはぐらかすように答える。のらりくらりと雪を左右にする。言を左右にして(賛成しようとしない。はっきりした返事をしない)。 <428> # 誤魔化す・騙す **ふんしょく【粉飾】** ぼろぼろと剥げて落ちそうな粉飾長与。▼粉飾する(貸借対照表を。噂で)。粉飾決算が表沙汰になる。めっきがはげる。胴間声にメッキのようなツヤをかぶせて御婦人を讃美礼讃したり口説いたりする=坂口。鍍金沢山の生き方円地。地金が出る。 **ぺてん** うまうま人をベテンにかけて知らん顔をしている時。ぺてんを食わす。べてん師に(騙される。つけこまれる。引っかかる)。ぺてん師がつけこむ欲ぼけ。不器用な人生の詐欺師"円地。 **まどわす【惑わす】** ▼惑わす(国民を。信者を。人を。世を)。童女のような澄みきった単純なそれでいて見つめられたものを惑わせるような瞳=永井路。迷わす(男を。心を)。▼惑わされる(女の色香に。虚報に。巷説に。俗論に。物欲に。流言飛語に。たちのよくない女に。人気取りの手法に)。不思議な魅力に惑わされる。デマに迷わされる。 **まるめこむ【丸め込む】** ▼丸め込む(スタッフを。妻を。役員を。口達者で。舌先三寸で)。苦悩する担当さんを口八丁で丸め込んで執筆に取りかかる=有川。子どもをあやすように丸めこまれる=鷺沢。女と酒に籠絡される。籠絡に時間をかける。 **みかけだおし【見掛け倒し】** 見かけ倒しで(がっかりする。役に立たない)。見かけ倒しの(男。力士)。体は大きいが見かけ倒しの小心者。見掛け倒しもいいところ。上げ底の(みやげ物。容器)。看板倒れに終わる。看板に偽りあり。内柔外剛で気が弱い。内柔外剛の(男。性格)。羊頭狗肉の(公約。政策。広告に釣られる。故事そのままの事件"畑村)。 **みせかける【見せかける】** ▼見せかける(自殺を他殺に。規模を大きく)。▼仕業に見せかける(強盗の。自殺に見せかけて殺す。気障で柔弱そうな見せかけ。見せかけだけで真心が薄い。ほんのうわべだけの見せかけに過ぎない=筒井。見せかけの(豪華さを競う。強がり。平和に酔いしれる)。虚名が広がる。フエイントを(入れる。かける)。まことしやかな嘘が流れる。まことしやかに(書き立てる。嘘を書き並べる)。珍説がまことしやかに伝えられる。▼ふりをする(命令に従順な。素知らぬ。わざと驚いた。敢えて気づかない。一応聞いている。相手の意図に気がつかない"戸川。ぐにゃりと死んだ=中)。 **むせきにん【無責任】** その場しのぎの無責任きわまる方針津本。無責任とのそしりを免れない。無責任な(感想を述べる。行動を取る。つぶやきをもらす)。酒の上の無責任な放談。火事を見物する無責任な野次馬のように興味津々=飯田。素人だけに許された甘い無責任な感想"曽野。無責任に(騒ぎ立てる。仕事を放り出す。やたらに騒ぎ立てる)。言葉を無責任に濫用する。後は野となれ山となれ。自分の責めを誰かに押しつける=貫井。無責任極まる噂話。無責任さをさらけ出す。無責任ぶりが(際立つ。はなはだしい。目に余る)。 **むせっそう【無節操】** 無節操な(若者。男漁りをやめる。生活を反省する)。世論の無節操な推移のありさま"阿刀田。▼汚す(操節を。節操を)。内股膏薬をやる。節操のない(男。女。経歴)。節操のなさに絶望する。 **ゆうめいむじつ「有名無実】** 有名無実と化する。有名無実の(操り人形。社長。名誉職。ルール)。名目だけの社長。その場に華を添えるだけのお飾りの女性。飾り物のような地位。床の間の飾り物的存在に祭り上げられる網野。 **よそおう【装う】** ▼装う(苦しいふりを。さあらぬ態を。強いて平気を。努めて平静を。罪のない者を。寝たふりを。平気なふうを。平静な顔を。忘れたふりを。いやいやながらを。気づかぬふうを。気のないふうを。殊更に冷ややかさを。知っていながら初耳を。努めて無関心を。何食わぬふうを。何気ない世間話を。何気ないふりを。寝ていたい口実に病気を。悲劇の主人公を。ひたすらに平静を。貧しい暮らしを。人前ではしおらしく。ただの通行人というふうを佐野)。声を装う(元気な。明るい)。▼態度を装う(陽気な。さりげない。平然とした)。▼表情を装う(冷ややかな。無邪気な)。偶然を装って会う。セールスマンを装って訪問する。 **わな【罠】** ▼罠(恐ろしい。巧妙に仕組まれた。練りに練って考え出した)。罠が口を開けて待つ。罠で野兎を捕まえる。罠に(かかったかと狼狽する。かかった獣のように身もだえする=武田奈。かけるような卑劣なまね=石川)。仕掛けた罠にまんまとはまる。容疑者を罠にかける。恋の罠にはまる=阿川佐。▼罠に陥る(自縄自縛の。物の見事に仕掛けた)。▶罠に落ちる(敵の。うかうかしていると百鬼どもの=山岡。金貸しのあくどい=隆)。▼罠に引っかかる(やすやすと。まんまと)。罠の底に落ちてもがく。黒い罠の仕掛けに足をさらわれる―萩原。罠を恐れるかのように注意深く見る=堀。巧妙な罠を張りめぐらす。▼罠を仕掛ける(そこかしこに。手の込んだ)。獲物が罠に(かかる。飛び込んでくる)。敵の目をくらますためのおとり。おとりにひっかかる。まんまと術中にはまる。 <429> # 困る・持て余す **ありがためいわく【有り難迷惑】** 話が刺激的過ぎてありがた迷惑。ありがた迷惑の(援助。忠告)。ありがたいようで迷惑な思い。大きなお世話。半ば有り難く半ば迷惑。深情け(悪女の。押しつけがましい)。 **いざこざ** 感情が唐草模様を織るようないざこざ『石川。甘いとも苦いとも解らないような苦しい生活の紛紜徳田。いざこざが(起きる。絶えない)。望みもしないいざこざが身辺につきまとう~石川。いざこざに巻きこまれる。いざこざの面倒を嫌う無精な性格武田。いざこざばかりの毎日を回想する萩原。先ほどのいざこざを水に流すい白洲。 **くせん【苦戦】** 苦戦に苦戦を重ねる。苦戦また苦戦の連続。苦戦を強いられる。死線を越えて五銭、苦戦を越えて十銭=浅田。成果を上げられず苦戦する。生々しい苦闘の跡。小柄な母親の苦闘ぶりが痛々しい内海。悪戦苦闘の姿を報告する。難問に悪戦苦闘する。悪戦苦闘したがついに抗しきれずに軍門にくだる"笹沢。孤軍奮闘の立場に追い込まれる。孤軍奮闘を余儀なくされる。大勢の敵を前にして孤軍奮闘する。一人で悪戦苦闘する。 **くなん【苦難】** 苦難(身に降りかかる。筆舌につくしがたい=内田康)。苦難から逃れてのほほんとしている西木。苦難に(苦難を重ねる。満ちた人生)。苦難の(旅路を続ける。道を歩む)。長い苦難の歴史が始まる。苦難を(乗り越える。喜びに代える。ものともしない)。幾多の苦難を経る。荆棘の道。七難八苦に耐える。時代の風霜に耐える。七難八苦を乗り越える。受難の日々。 **けおされる【気圧される】** ▼気圧される(鋭い語気に。自信に満ちた顔に。社長室の空気に。秘密っぽい雰囲気に。意表をついた一喝に三田。乾いた鋭い視線に=小林久)。語勢に気圧されて黙りこむ。気圧されたように神妙に答える浅川。気押されたように一二歩後退る"小林久。相手の勢いに顔色なしといったところ。顔色を失う。▼飲まれる(気魄に。雰囲気に)。圧倒される(自然の威力に。街の活気に。現場の雰囲気に。生命力の強烈さに)。 **こまりはてる【困り果てる】** ▼困り果てる(難しい言葉に。命令の混乱に。今度という今度は)。困り果てて(自殺を図る。宗教にすがる)。ほとんど手も足も出ない=村上元。▼困りきる(浮気な主人に。金がなくて)。▼困り抜く(資金調達に。道楽息子に)。ほとほと困ったというふうに頭をかかえこむ"つか。頭を抱える(後継者難に。心の中で。サボタージュに)。▼困じ果てる(利子を払うに。ほとほと。貴賓の思いがけない来訪に)。▼青息吐息(借金を抱えて。資金繰りがつかず。不況のあおりを受けて。利益のほとんどを本社に吸い上げられて=篠田)。 **こまる【困る】** ▼困る(返す言葉に。突然の質問に。話の接ぎ穂に。客が長居して。癖になったら。いざというときに。力の入れどころに。話の落としどころに。簡単に一件落着としては。急に言われても。しっかりしてもらわねば。その日のたつきにも。手違いがあっては。人質に万一のことがあっては。万一事故でも起こしたら。妙なことになると。もしものことがあったら。安請け合いして後で)。▼やり場に困る(目の。振りあげた拳の)。困った(事態に当面する。立場に立たされる。ときは相身互い)。藪から棒に言われても困ってしまう。頭が痛い。笑い事では済まされない。笑ってすませるわけにはいかない。困ったように(口ごもる。唇を噛む。もじもじする。頭をかいて笑う)。返答に困る。▼困じる(思案に。借金に)。▼困却する(無理な注文に。渋面を作って)。とんだ世話をかける。余計な世話を焼かせる。持って行き場がない(怒りの。悔しさの。不満の)。窮状が目に見えるよう。大げさに窮状を訴える。難題を持ち出して人を困らせる。困らせたくてうずうずしている。故意に困らせようとたくらむ。▼辟易させる(まわりの人間を。大言壮語して村人を"有吉)。難解さで読者を困らせるような歌竹西。子供に手がかかる。手がかかる男。取りあえず食うには困らない。遊びに困らない程度の金。一生食うに困らない身の上。▼困ることはない(食べるに。さしあたって。とりたてて)。 **こんなん【困難】** ▼困難(なかなか発見が。対応を誤れば由々しい政治問題になりかねない辻井)。いかに困難か知っている。困難が(言語に絶する。待ち受ける)。▼困難が伴う(大きな。収集に)。困難から抜け出す。困難な(任務を果たす。道をたどる。運命に打ち勝つ。課題に着手する。事態に直面する。時代を生き抜く。状況にはまり込む。状態を打破する。指令を次々にこなす。ミッションに挑む。立場に立っても決してめげない=山本周)。孤立している困難な立場。戦後の困難な時代を乗り切る。予想以上に困難な仕事。あるかなきかを判定することさえ困難なほどのかすかな小さな点"野間。星の数をかぞえるほどに気の長い困難なこと"壺井。▼困難な問題(決定するのが。解決の)。幾多の困難にぶつかる。多くの困難にぶち当たる。▼困難になる(経営が。呼吸が。資金調達が。立場が。補給が。歩行が。市民が本を自由に入手することが有川)。いかなる困難にも耐える。多少の困難は覚悟の前=福永。多大な困難を乗り越える。探索が困難を極める。どんな困難に出会ってもたしょうがない。どんな困難にもまっすぐに立ち向かっていく。立証困難な事件。多事多難な(生活。時を迎える)。 <430> # 困る・持て余す **たじ【多事】** 前途の多難が予想される。多難な(船出を迎える。時局に対処する)。難局に(直面する。逢着する)。国家の難局に当たる。難局を(切り抜ける。打開する。乗り越える)。 **こんわく【困惑】** ▼困惑(持ち重りのする荷物をかかえこんでしまったような妙な"永井路。自分の力では押すも引くもできない崖に左右から挟み込まれたような宮本百)。困惑が(度を加える。高じて投げやりになる。全身を駆けめぐる=柴田錬)。顔に困惑が広がる。声に困惑が混じる。目の底に深い困惑がかげを引く"光瀬。恐縮と困惑で弱りはてる。顔に困惑の表情が浮かぶ。感銘と困惑の入り混じった複雑な気分。口の端に困惑の色が浮かぶ。ちょっとどうしたらいいか解らぬというような軽い困惑の色を浮かべる人米。困惑を振り切るように言う。▼困惑する(半ば安心し半ば。予定が狂って大いに=北。戦闘中に突然陣形を変えさせられる艦隊のように=安岡)。困惑した(薄笑いを浮かべる。表情で言い淀む)。あからさまに困惑した表情を浮かべる。困惑して(途方に暮れる。取るものも手につかない)。進入した道路が行き止まりで困惑しているドライバーのような顔"笹沢。飴をなくしてむずかっている子供を持て余しているような顔つき安部。断片が混じりあってしまった二種類のバズルを同時に組み立てているような気分=村上祥。目の前に厄介なバブルを突きつけられたよう藤本。物に突き当たったような心持ち“伊藤左。 **すくいがたい【救い難い】** 救い難い(悪党。思い違い)。救いがたいほどに孤立する。自嘲的な救いがたいほどに悲しいみじめな笑い阿刀田。救いのない(世相。世の中)。救いようのない(馬鹿。ぼんくら。汚辱の中へ突き落とす=山岡。敗残者の群れに堕する=服部)。救われがたい気持ちに襲われる。永遠に救われない。度しがたい(臆病さ。頑迷さ。大根役者。身勝手さ)。縁なき衆生は度しがたし。 **すべがない【術がない】** ▼術がない(逆らう。質問に答える。知らせる。確かめる。取り繕う。逃れる。引き止める。待つより他。嘆き悲しむより他に。自らを統御する)。他にどうする術もない三島。なす術がない(他に。何も)。なす術もなく(息を引き取る。うろたえる。ただ息をのむ。立ちつくす。敗北する)。する術を持たない。▼術を知らない(言いあらわす。闘う。なす)。術なさを(隠す。増す)。 **てがつけられない【手がつけられない】** 手がつけられない(切れたが最後。手綱なき奔馬の如く=子母沢。メチャクチャにあばれまわって=本多勝)。手がつけられないほどふさぎこむ。手のつけられない(暴れん坊。お転婆。馬鹿。道楽者になりおおせる!永井)。何から手をつけていいかわからない=本庄。 **てにおえない【手に負えない】** 手に負えない(重荷。ひねくれ女。不良。朴念仁。厄介事。腕白小僧)。勘定高くて始末に負えない。 **どうしようもない** どうしようもない(悲しさ。気まずさ。苦しさ。代物。木偶の坊。馬鹿。半端物。ぼろ船。ろくでなし。憤懣を持て余す)。暇で暇でどうしようもない。どうしようもないほど座が白ける。どうしようもなく(気が滅入る。涙が流れる)。色合いがとうしようもなくくすんでいる。下半身がどうしようもなくだらしい。肩をすくめ両手を広げる。口は悪いわ礼儀は知らないわ若竹。匙を投げる。どうにもしようがない。毒蛇に見込まれた青蛙のよう舟橋。ない袖は振れぬ。万策尽きる。万事休す。不運を嘆くより他はない。矢尽き道窮まる=中島敦。刀折れ矢尽きた思い=木庄。何をやっても駄目な時は駄目"阿部。国力の差はいかんともしがたい。もう処置なしといったふうに首をすくめる=阿刀田。何一つ手の打ちようがない。なぐるよりほかに手の施しようがない=室生。手をこまねいて見ている他はない玉村。なすこともなく数か月が経過する。なすところなく(うろたえる。帰国する。日が暮れる)。素人が割り込んだとて何ができよう。にっちもさっちもいかない場面を打開する=高見浩。事態がにっちもさっちもいかなくなる。でかい出費でにっちもさっちもいかない。二進も三進も行かない。煮ても焼いても食えないような女黒岩。無為無策に座っているだけ。目もあてられない体たらく=有吉。箸にも棒にもかからない(代物。ゴミみたいなもの小池。まったくの愚作"井上ひ)。箸にも棒にもかからないような笑い方=梶井。 **とほうにくれる【途方に暮れる】** ▼途方に暮れる(秘密の重さに。すっかり。ほとほと。どうしたらいいのか。一人取り残されて。連絡がつかなくて。女房に出て行かれて赤川)。途方に暮れた(顔で考え込む。迷子。倦怠の視線を投げる=有島)。鉄棒から落ちた子供のように途方に暮れた心細そうな顔"宫部。途方に暮れて泣きだす。周囲を見回して見せた横顔は泣き出す寸前のように途方に暮れている=有川。途方にくれたような目を宙に泳がせる"小林久。途方に暮れたように(足をとめる。黙っている。とぼとぼと歩く)。 **トラブル** トラブル (金銭や離婚にからむ卑近な。出来する可能性のある三浦し)。トラブルが(起きる。しばしば発生する)。つまらない些細なトラブルが原因で人が殺される"戸板。夫婦間のトラブルが子供に悪影響を与える=畑村。トラブルに巻き込まれる。余計なトラブルに悩まされる。情報の断絶がトラブルにつながる=畑村。トラブルを(起こす。解決する。未然に防ぐ。巧みに処理する)。 **とりつくしまがない【取り付く島がない】** 取りつく島のない(言い方。答えを返す)。取りつく島のないような答え。めんどくさそうな返事で取りつく島もない=田辺。 <431> # 困る・持て余す **とりつくしまがない【取り付く島がない】** 声にとりつくしまもないような拒絶の響きがある=森。取りつく島もないように無表情。 **なやまされる【悩まされる】** ▼悩まされる(悪夢に。夫の暴力に。頑固な頭痛に。罪悪感に。死の幻影に。激しい嘔吐に。人手不足に。不眠症に。いたずら電話に。慢性的な水不足に。突如として襲ってくる倦怠感のようなものに水上。変転極まりない応対に=津本)。▼不調に悩まされる(心身の。肉体の)。何物にも煩わされぬ勉学三昧の毎日"井上靖。猜疑心にわずらわされる。世事に心をわずらわす。 **はめ【羽目】** 立ち直れないような羽目に陥れる。刀を抜かねばならぬ羽目に立ち至る=村上元。▼羽目に陥る(命を狙われる。苦しい。困った。とんでもない。高価な代償を支払う。取り返しのつかない。身動きならない)。▼羽目になる(殺される。職を失う。是非ない。墓穴を掘る。没頭できない。あたら多くの勇士を殺す。いずれ苦い薬を飲まされる。書き付けを無理に書かされる高橋克)。 **ふうせつ【風雪】** 記憶を歳月という風雪が埋めつくす=瀬戸内。世の風雪から遠い富家の深窓に育つ。風雪に(さらされた顔。耐えたという感じを抱かせる皮膚=山口)。風雪に耐える(幾多の。人生の。何百年という長い歳月の=白井)。風雪の鍛錬を経る。風雪を経た男のきびしさとやさしさがあるような横顔“平有。 **ふかこうりょく【不可抗力】** 不可抗力な天災。不可抗力によって引き寄せられる。いかんともすることができない。いかんともしがたい急激な力。どうにもならないいらだたしさ。 **ふせい【不正】** 不正(詐欺同然の。機構の不備に乗じた。不心得者による)。巧妙な不正が進行する。大規模な不正が発覚する。不正な行為で金を手にする。小さな不正も見逃さない。不正を(平然と犯す。見過ごしにできない)。組織の不正を明らかにする。役人が不正を働く。不正献金の事実がすっぱ抜かれる。不正行為が(後を絶たない。表沙汰になる)。不正行為に手を染める。不正行為はまかりならぬ。不正転売に手を染める。試験でカンニングをする。私曲が露見する。 **ふとう【不当】** 不当な(弾圧を受ける。侵略に対処する。交易を無理強いする=新田。搾取に対抗する豊田。先入観を証人に植えつける=和久)。ムシ歯の神経にじかにさわられるように不当な仕打ちが全身にこたえる=小林多。不当に(低く評価する。拉致される。値段を吊り上げる。犯されて五感が肥厚していく不快感林京。丁重な扱いを受けているような落ち着きの悪さ=干刈)。相場を不当にあおる。貴重な人間のエネルギーを不当に浪費させる=高橋和。商品を客に不当に値切られた商人のような声=椎名。不起訴を不当とする。不当解雇とたたかう。逮捕の不当性を訴える。会社が団体交渉を拒否したのは不当労働行為に当たる=佐高。▼言われる覚えはない(あほと。四の五の)。恨みを受ける覚えはない。正当さを欠いた指摘。正当性に欠ける。当を失する。 **ふほう【不法】** 不法な(手段。要求。リンチ)。不法に(出国する。侵入する。占拠する。入国する)。不法行為をなじる。拳銃を不法所持する。不法滞在者を見逃す。不法入国者を退去させる。反社会的な(行為。勢力。組織。団体)。非合法な(薬に溺れる。手段で金を稼ぐ。情報の提供を要求する=有川)。非合法運動に従事する。 **へいこう[閉口]】** ▼閉口する(汗臭さに。犠牲の多さに。船酔いに。見当違いの想像に。おそろしく甘いのに"阿部、過剰な丁寧さに三好徹。しつこく吠えるスピッツに"林真)。辟易するような問題を出して閉口させる=新田。 **へきえき【辟易】** ▼辟易する(住居の汚さに。腐った肉の臭いに。むっとするにおいに。根気のいる仕事に苦しさに"古吉村。身の置きどころのない退屈に有吉。若い女たちのハダカのにおいの強さに"富岡。あまりのあくどさに内心=隆)。辟易するほど話がしつこい。辟易するほどの挑戦的態度「池田。相手の剣幕に辟易して後じさりする=加賀。集団になった女の子の恐れを知らぬ居直り攻撃には辟易してしまう鷺沢。辟易したように苦笑する。人を辟易させるほどのエネルギーを持つ『鎌田。 **ままならない** ままならない(運転資金も。経済の再生は。介護者の手を借りなければ食事も鈴木光)。お肌の手入れもままならない日々が続く荻野。生活が不如意。不如意な(暮らし。独り身の生活)。生活の不如意に見舞われる。 **めいわく【迷惑】** 無能なくせに努力もしないバカは一番迷惑”有川。「迷惑」という字が刻み込まれているような皺を鼻の頭に寄せる=佐藤愛。迷惑が及ぶ(一門郎党に。関係者に)。迷惑がかかる(近隣に。親類縁者に。仲間に)。つけを回されるのは迷惑だと顔に書いてある=藤沢。迷惑な(噂を立てられる。気持ちを婉曲に示す。時間に電話をかけてくる。ものが転がり込んでくる)。分に過ぎた行いは自他ともにはなはだ迷惑なもの"里見。迷惑をかけるに忍びない。会社に迷惑を及ぼす。周囲の迷惑を顧みない。なるべく迷惑をかけないようにする。人様に迷惑をかけたくない。迷惑をかける(親に。会社に。家族に。友達に。さんさん。とんだ。飛んだ関わり合いで谷崎)。迷惑をこうむる(えらい。とんだ)。迷惑する(近所が。国民が。世間が。いわれなき中傷や曲解を受けて"飯田)。後足で砂をかけるように隊を去ってゆく=船山。ちっともありがたくない。いい面の皮。見たくないものを見せられる。世話を焼かせる。招かれざる客。はた迷惑(とんだ。勝手なことをして)。 <432> # 困る・持て余す **めんくらう【面食らう】** ▼面食らう(意外な返事に。大いに。いささか。少々。一方ならず。まるで違う生活様式に。見慣れぬ文章に。予想外の問いに。不意を打たれて。意外なとばっちりで野上。パッと夜空にイルミネーションが点いたように=獅子。耳の端で万雷の拍手を聞いたように=獅子)。面食らってしばし口が利けない藤田。一瞬面喰らったような顔をすぐに笑顔に飲みこむ=連城。面食らったように目を大きくして見る=長崎。 **めんどう【面倒】** 面倒な(手続きを踏む。立場に追い込まれる。いきさつを忘れて結婚する=石川。ことになる前に逃げる=小池。災厄が身の上を覆う~島尾)。時間のかかる面倒な仕事。うっかりと面倒なことに乗りかかってしまう。佐藤春。思いがけなく早く面倒な仕事が片付く“日野。口をきくのも面倒なほどくたびれる古井。他人に面倒な関係を及ぼす。幸田露。面倒になる(事が。話が。あとあと)。しょっちゅう面倒を起こす。 **もてあます【持て余す】** ▼持て余す(日々の無聊を。老残の身を。行き場のない嫉妬を。大きすぎる車体を。小回りの利かないベンツを。所在ない時間を。手持ち無沙汰な自分を。内心の息苦しいうずきを。濁りきった頭を。不意に湧いてきた切なさを。わけの分からない憤りを。得体の知れない腹立たしい感情を"丹羽。昼日中からやるせない性欲を=原田家。部活を引退して暇を有川)。エキセントリックな歪んだ精神状態をもてあます=小池。得体の知れない空虚な気持ちを持てあます堀。▼思いを持て余す(もどかしい。堂々めぐりする)。肉体を持て余す(成熟した。若い)。持て余しついでに酒でも一杯引っかける。一年中暇を持て余している。パワーを持て余し気味。己をもてあまし気味に暮らすぃさだ。幾らか持てあまし気味の堂々とした体軀にぃ"本庄。やりきれないほどの身体の持て余しよう“島尾。間が持たない。推し返された紙包みを持て扱う。理不尽な怒りを持ち扱う。てこずる(悪路に。いたずらに。交渉に。処置に)。子供の頃はガキ大将でさんざ手こずらせた弟連城。手に余る(仕事。大工事)。▼手に余る(いささか。一人では)。手に余るほどの強敵もない=子母沢。▼手を焼く(暑さに。事態収拾に。反対運動に。不心得者に)。登るのに手を焼くような傾斜井伏。 **やっかい【厄介】** 厄介(極まる事態。この上ない)。場所が場所だけにかなりやっかい=つか。厄介な(手順を踏む。悩みを抱える。羽目に落ちる。目に遭う。あやまちを起こす。考えにとり憑っかれる。現実から逃げる。事件が持ち上がる。仕事を押しつけられる。付き合いを押しつける。出来事に巻き込まれる。荷物を取り払う。ブロジェクトが完了する。問題が一挙に解決に向かう)。世話のかかる厄介な奴。すぐには引き返すことのできぬ厄介な傾斜に身が乗り出している"黒井。もてあますというより呪いたいほど厄介な時間の安岡。忙し草の中からビンを捜し出すのと同じくらい厄介な問題三愉。事が厄介になる。▼厄介をかける(経済的に。みんなに)。厄介事に首を突っ込む。厄介払いをしてせいせいする。断れば角が立つ。面と向かって事を構える。▼難物(なかなかの。おろそかには扱えない)。煩いを後日に残す。俗世の煩いを避ける。殺人の技術を失った暗殺者は死んだ鼠よりも始末が悪い 藤本。増長した女くらい始末の悪いものはない"源氏。水の底で海草にからまれたような始末の悪さ=安岡。厄介者(迷惑な。腹立たしい)。厄介者扱いされる。とんだ厄介者を背負わせられる。みんなの足を引っ張る困り者。余計者(無力な。厄介な)。余計者を排除する。 **りふじん【理不尽】** 理不尽といえば理不尽な申し込み。理不尽な(辱めを受ける。怒りに捕らえられる。犠牲を強いられる。振る舞いをたしなめる。理由で怒鳴られる。言いがかりをつけられる=平野。指図を唯々諾々と受け入れる=高杉。沙汰書きの一字一句までが脳裡に甦ってくる"船山。要求を受けるわけにはいかない=火坂)。身の上に起こった理不尽な事件。無法な理不尽な仕打ちあまりの意外さに理不尽な仕方で騙し討ちにあったような気に陥る=浅川。はたから見れば理不尽な恨みを生涯抱き続ける=北原。わけも分からずいきなり刑を執行されるというような理不尽な目に会う。安部。理不尽に迫害される。小さくて弱いために理不尽におさえつけられるのが悔しい=中。石が流れて木の葉が沈む=源氏。試験の得点だけで人間に差をつける。反する(条理に。道理に)。無実の民が重科に問われる=山本。無実の人間が死刑に追い込まれる。道理が立たない。道理に合わない。物事の道理にそぐわない。一片の道理もない。不条理な(暴力にさらされる。世相に非難の石を抛つ=有島)。不条理に満ちた世界。話が不条理に展開する。無理無体な(ことを言う。真似をする)。無理無体に(戸を開ける。抱えたまま離そうとしない。勧めて嫁にやる。弟子の恋路の邪魔をする。降参せよと言われても従うものではない=多岐川)。暴漢の群れに無理無体に打ちのめされる高見。 <433> # 壊す・爆発する **うちゃぶる【打ち破る】** ▼打ち破る(因習の壁を。敵の軍勢を。体当たりで戸を。古いしきたりを。膠着状態を一気に)。縦割り行政の打破を目指す。打破する(行き詰まりを。因習を。困難な状態を。出版不況を。袋小路を。迷信を)。 **かさん【火山】** 火山(顔の小さな。真っ白な煙を噴き上げる=原田康)。火山が(噴火する。鳴動を始める)。火山の山肌が茶と緑との混じり合った微妙な色合いを見せ壁のようにそそり立つ=福永。死火山の群れが駱駝の瘤のような輪郭を描く“大岡。空に噴煙がたなびく。雨と降る火山弾。荒涼とした溶岩台地。溶岩石を噴き上げる。 **きれつ【亀裂】** 岩壁の表面にガラスのように亀裂が入る=西木。頭蓋に亀裂が入るかと思うように痛みが激しい"有吉。夫婦間の亀裂が埋めようもないほど深まる"落合。夫婦の間に決定的な亀裂が生じる=森。亀裂が走る(艦体に。氷に。水が裂けるように表情にゆっくりと高橋知)。親しさの底に零点一の余剰が細い亀裂を走らせている連城。胸に亀裂のような痛みが走る=小林久。 **くいやぶる【食い破る】** ▼食い破る(体じゅうを。頭皮を。皮膚を繭を)。今までに犯した悪事が一々蘇って自分の心を喰い割く=菊池。 **けつれつ【決裂】** ▼決裂する(会談が。協議が。談判が。友好関係が。労使交渉が)。▼物別れに終わる(交渉が。折衝が。二国間の協議が)。話し合いが物別れになる。 **こしょう【故障】** 膝の故障で引退を余儀なくされる。故障と背中合わせの厳しいトレーニング。故障の(有無を判断する。原因を見極める)。▼故障を起こす(機械が。装置が)。故障する(エンジンが。クーラーが。車が。計器が。ブリンターが)。バスが故障して動かなくなる。故障車を(押す。引っ張る)。年老いて体のあちこちにがたがくる=重松。がたのきたテーブル。システムがダウンする。 **こわす【壊す】** ▼壊す(家族の幸せを。古い家を。せっかく抱いている夢を。食べ過ぎで腹を。町のイメージを。よってたかって車をめちゃくちゃに。積み木のように組み立てては=高村)。片っ端から壊して回る。体を壊して寝込む。▼打ち壊す(機械を。錠前を。迷妄を。手当たり次第に)。▼ぶち壊す(絶好の機会を。まとまる話を。ものの見事に)。▼ぶっ壊す(壁を。窓を)。石畳がでこぼこに毀れる。組織を毀つ。▼叩き壊す(巣を。窓を。目論見を。夢を。めちゃめちゃに)。▶叩き破る(ガラス窓を。ガラスを。太鼓を。扉を。戸を。パネルを)。▼取り壊す(家を。囲いを。小屋を。建物を。ばらばらに)。取り壊し作業が始まる。 **こわれる【壊れる】** ▼壊れる(心の防波堤が。夫婦関係が。家が無残に。すべてが一挙に。めりめりと音を立てて。水道管が凍って=原田康)。がしゃんと物の壊れる音。壊れたドアを修繕する。壊れ物でも扱うように丁寧に掌を動かす"小川。こわれものにでもさわるようにして寝かす=壺井。壊れやすい(代物。宝物。ものを抱き取る)。▼クラッシュする(車が。システムが。アブリケーションが。ハードディスクが)。全壊する(家屋が。建物が。ビルが)。▼損壊する(遺体が。家屋が。壁画が。器物を。道路を)。▼大破する(機体が。車体が。トラックが。船が。機体の前部を)。二人の仲を御破算にする。▼御破算になる(計画が。取引が。見合い話が)。破損する(建物が。器物を)。破損した部分を修理する。ところどころ破損した屋根。 **さく【裂く】** ▼裂く(稲妻が天を。声が耳を。絶叫がのどを。二人の仲を。船が水を。写真を二つに。皮をすっと)。▼闇を裂く(閃光が。鈍い音が。やにわに稲妻が)。川が森を裂いて流れる=竹西。炎が夜を裂いて燃え上がる=綾辻。絹を裂くような声を張り上げる"山田周。身を裂くような寂しさが襲ってくる=菊池。八つ裂きにしたいほど悩む。屍を八つ裂きにする。八つ裂きにしても飽き足りない=本庄。 **さくれつ【炸裂】** 炸裂する(突っ張りが。爆弾が。光が。ビーンと耳をしびらすほどの大声があたりいっぱいに=杉本。言葉が火薬のように=椎名)。▼顔面に炸裂する(ストレートが。バンチが。フックが)。 **さける【裂ける】** 裂ける(口が耳まで。岩石が真っ二つに。樹皮がめりめりと。自尊心がずたずたに=かんべ)。口が裂けても言えない。天地も裂けよとばかりに叫ぶ=田島。▼裂けそう(息苦しさに心臓が"小林久。恥ずかしくて身が=岡田)。裂けるようなはげしい痛み=石森。心が痛ましく裂け乱れる。▼断裂する(アキレス腱が。筋肉が。靱帯が)。 **さんがい【残骸】** ▼残骸(解体された古自動車の。真っ黒に焼け落ちた=河野)。花びらの大半が散り落ちて残骸のようになってしまった桜並木=宮部。瓦礫がうずたかく積もる。焼け跡に瓦礫が散乱する。瓦礫の街と化す。草ぼうぼうの瓦礫の跡に立つ。 **せんこうはなび【線香花火】** 線香花火の(火玉が落ちる。火玉みたいな真紅の太陽が海岸丘陵に落ちていく奥泉)。脳裏に線香花火ほどのアイディアのひらめくこともない=北村。公衆電話が線香花火のような雑音をずっと鳴らし続ける"小川。胸の中に線香花火のような火花が散る=高橋。線香花火のように(赤い実を散らした野バラ干刈。ばっと消えてなくなる木山。文句が点いたり消えたりする。宮木百)。血管の小枝が小さく線香花火のように散っている安部。棒の先から小さな滝のように冷たそうな群青色の火花がほとばしり出る"北村。 <434> # 壊す・爆発する **つきやぶる【突き破る】** ▼突き破る(天井を。皮膚を。膜を。コンクリートの壁を)。心臓を突き破りそうな響き。向こう側まで突き抜ける。貫通する(トンネルが。弾が体を)。 **つんざく** つんざく(稲妻が雲を。稲妻が空を。サイレンが夜気を。ガラスの砕ける音が耳を=原田宗)。喉をつんざく悲鳴。つんざくような叫びが聞こえる=福永。きんきんとつんざくような声=山本。 **はかい【破壊】** ▼破壊する(旧来の思想を。古い形式を。欲望が思考を。通俗的イメージを。手あたり次第に。めちゃめちゃに。いち早く目標物を捕捉し。原形をとどめないほどに佐伯)。人間を内部から破壊させる"桐野。 **はきょく【破局】** 破局が(決定的になる。出し抜けに訪れる)。愛が破局に至る。破局を迎える。破局的な事態が生じる。婚礼が破鏡の嘆きを見る!舟橋。 **ばくだん【爆弾】** 爆弾が(落ちる。命中する)。信管を爆弾から外す。無実の市民を爆弾で吹き飛ばす大沢。爆弾の雨を降らせる=樹。バフバフと地心を揺るがし踏みにじるような爆弾の落下音=楨。爆弾ほどの効果のある一言=宮部。爆弾を(落とす。仕掛ける。雨のようにばらまく=西木。雨みたいに降らす灰谷)。爆撃機が爆弾を投下する。原子爆弾の弾頭。時限爆弾が爆発する。いつどんな醜聞を起こすかと時限爆弾を抱えたよう辻井。爆弾発言を用意する。潜水艦の魚雷攻撃を受ける。魚雷に撃沈される。引き揚げ船が機雷に触れる事故に遭う金井。時限装置を仕掛ける。手榴弾を(投げる。放り込む)。▼弾頭(砲弾の。ミサイルの)。弾頭に信管を装着する。爆雷攻撃を食らう。不発弾を処理する。雷管を(装填する。発火させる)。焼夷弾がばらばら落ちる。狐火のような焰が暗い空からチョロチョロ追い降りて来てはばっと地上に燃えつく=山崎。焼夷弾攻撃を受ける。地雷が(爆発する。埋めてある草原に立ったように全身を緊張させる=小池)。地雷を埋める。地雷原に向かうように恐る恐る足を出す=半村。 **ばくは【爆破】** ▼爆破する(機体を。ビルを。船を。列車を)。発破に点火する。発破の音が(響き渡る。山々にしみこんで消える)。発破をかける。 **ばくはつ【爆発】** 飛行船が爆発炎上する。爆発の轟音だけを発する。怒りの爆発を必死に抑える。▼爆発する(異常な興奮が。積もり積もった怒りが。わだかまっていた不満が。大音響とともに。矛盾が暴力的に。気の狂ったような暑さが五木。こらえにこらえていた悔しさが長崎。怒りがわめき叫ぶ女のように肩のところで=野間)。胸に溢れている妄念を一挙に爆発させる=山本。全身怒りの塊で耐えきれずに爆発したように叫ぶ萩原。▼一度に爆発する(恨みつらみが。胸に溜まっているものが。鬱屈した気分が"日野)。一挙に爆発する(不安感が。胸の奥に隠していた感情が連城)。爆発するような拍手が湧く高樹。ちょっとつつけば爆発しかねないほど緊張を昂めている=松浦。爆発事故で落命する。爆風が(全身を打つ。坑道を吹き抜ける)。爆風に吹き飛ばされる。暴発する(感情が。花火が。ビストルが)。水柱を立てる。誘爆が誘爆を呼ぶ。火薬庫が誘爆する。天にまで届く火柱。火柱があがる。赤い火柱が立つ『なかにし。火柱のような赤い炎"山本有。 **ばくやく【爆薬】** 爆薬の扱いに長けている。爆薬をしかける。病気以来自分の身体を爆薬のように怖れる=円地。森然とダイナマイトが爆発する。ダイナマイトを仕掛ける。火薬が爆発する。火薬よりも強い不平と不満が心の中に詰まっている=小林多。大量の火薬を使用する。落とせば爆発する火薬玉でも乗せたように百両の封金を二つの手に持つ吉川。 **はたん【破綻】** 破綻が現実味を帯びる。文脈の破綻が随所に見られる=横山。決定的な破綻から遠ざかる。食うに困るほどの破綻に追いこまれる『開高。破綻の連鎖が止まらない。経済的な破綻を救う。▼破綻をきたす(生活が。経営に)。平穏無事な日常に破綻を来す井伏。破綻する(結婚生活が。国家財政が。夫婦の関係が。甘い夢想が大きく高橋和)。言葉を破綻なく使いこなす。経営が破綻寸前になる。 **はちきれる【はち切れる】** ▼はちきれる(腰が。若さで)。腹がはち切れそう。はちきれそう(喜びで頬が。食べすぎでおなかが)。はちきれそうな(青春。生命力)。腰のあたりがはちきれそうなスカート。丸いはちきれそうな頬や顎。はちきれそうに(肉がつく。まるまると太る)。太腿がはちきれそうに張る。 **はなび【花火】** 花火が(夜空に花咲く。星水母ほどのさやけさに光っては消える=梶井。夢のようにはかなく一瞬の花を開いて空の中に消えてゆく中河)。大きな花火があがる。自分の仕掛けた花火が突然途方もなく大きな傘をひらいてしまったのにタマげる安岡。目の前でバガーンと花火があがった気がしていっぺんに惚れてしまう。田辺。夜空に数条の花火が打ち上げられる=吉村。花火が弾ける(夜 空で。ボンボンと山吹の芯を抜くような音がして白い"向田)。花火に事寄せて人に気づかれぬように肩を抱く曽野。花火の音が夜空に響く。高射砲が花火の炸裂するような音を立てる『福永。花火を(次々に打ち上げる。ぼんぼん打ち上げる)。漆黒の夜空に大輪の花が開く隆。夜空に描き出された花びらが涙が流れるように垂れて消える"重松。花火のような肉体的快楽に酔いしれる!大原。銃が花火のような音を立てて射ち出される=高井。フラッシュがひっきりなしに焚かれ花火のような盛大さ=今日。花火のように美しく勢いがいい!幸田露。青と赤の照明弾が花火のように中空に交錯する大岡。おびただしい蛍の群れが花火のように吹きこんでくる=中村真。 <435> # 壊す・爆発する **はりさける【張り裂ける】** 目が張り裂けんばかりに見開かれる=栗本。胸が張り裂けそう(切ない思いに。不安に。悲しくて。慚愧の思いで。懐かしさで。恥ずかしさで)。喉の張り裂けるような悲鳴宮部。 **はれつ【破裂】** 破裂する(泣き声が。爆弾が。光が。瓶が。容器が粉々に。わあっと言う声が)。▼破裂させる(鬱憤を。癇癪玉を)。▼破裂しそう(気持ちが。胸が。体が緊張感で)。心臓が破裂せんばかりに高鳴る=小池。針で風船を突く。▼パンクする(回線が。自転車が。タイヤが。腹が)。 **ひきさく【引き裂く】** ▼引き裂く(悲鳴が夜を。雷鳴が夜気を。びりびりと。手紙をずたずたに。思いきり力をこめて。写真を真ん中から。ボスターを荒々しく。稲妻が雲をジグザグに=堀)。闇を引き裂くような風に叩かれる=山本周。▼引き裂かれる(心が絶望に。内心の苦悩に心を=福永)。胸が引き裂かれるように痛い。身を引き裂かれるように(苦しい。辛い)。 **ひびわれる【罅割れる】** ▼ひびわれる(壁が。ゴムが。地面が。樹皮が寒さに。ところどころ。唇が白く乾いて)。ひびが縦横に走る。放射状にひびが走る。天井にヒビが入るようなカン高い声=高橋三。ひび割れが走る(壁面を。壁一面に無数の)。▼ひびが入る(鏡に。壁に。考えに。心に。国交に。信頼関係に。組織に。骨に。細かい)。髪の毛のようなひびがはいる=小林多。罅の入った陶器のように冷たい顔円地。裸になった落葉樹の交錯する枯れ枝が空間のひび割れのよう。日野。顔中にめりめりとひび割れを起こすほどの思い高樹。干割れが起こる。干割れる(田んぼが。乾燥して)。 **ふんか【噴火】** 噴火が起こる。噴煙が(上がる。空にたなびく。立ち昇る。天を覆う)。浅間山が花キャベツに似た噴煙をむくむくと持ち上げる=堀。浅間山がむくむくと真っ白い噴煙を吐き出す福水。霧のように降ってくる火山灰"松本。火山灰が降り積もる。雨期には火山灰が泥流になって襲ってくる。溶岩石が(急流のように走る=光瀬。怒濤のように天高く噴き上げる光瀬)。熱風と灼熱の石が狂鬼となって迫ってくる藤本。溶岩石の流れが山肌をずたずたに切り裂く。灼熱の溶岩石のごとき精神藤本。流れ出た溶岩流が山麓で扇状にひろがる=高田。 **まっぷたつ【真っ二つ】** 意見が真っ二つにわかれる。真っ二つに割れる(見解が。賛否で)。▼両断する(首を。綱を。水平線が風景を)。一刀両断にする。 **やぶりすてる【破り捨てる】** ▼破り捨てる(誓いを。手紙を。外れ馬券を。包装を。メモ帳を。ひと思いに)。▶破棄する(協定を。原判決を。婚約を。密約を。約束を。条約を一方的に)。 **やぶる【破る】** ▼破る(旧来の陋習を。旧例古格を。心の垣根を。再三規律を。十秒の壁を。従来の記録を。敵の包囲網を。長い沈黙を。古い慣習を。約束を勝手に。紙をびりっと。障子を指で。気まずい空気を。俗世間の常識を。手帳のページを。封建社会の殻を。封をびりびりと。約束をあっけなく)。武装している心の殻が破れない=高橋和。写真を破いて捨てる。心の均衡が破られる。▼破く(ばりばり油紙を。手紙をびりびり)。▼びりびりに破く(紙を。写真を)。押し破る(板壁を。膜を)。▼噛み破る(皮膚を。袋を。膜を)。切り破る(壁を。船が波を)。▼蹴破る(ガラスを。ドアを。戸を。窓を)。▼引き破る(写真を。手紙を。封筒を。袋を)。竹垣を踏み破る。▼破り取る(包み紙を。封筒の一端を)。 **やぶれる【破れる】** ▼破れる(紙が。恋に。夢がはかなく。気持ちの平衡が。服が滅茶苦茶に)。心の破れ目を繕う。耳の破れるような爆音獅子。破けそう(嫉妬で胸が。胸が不安で)。ズボンがびりりと破ける。夢がむなしく破れ去る。 **わる【割る】** 割る(重い口を。着物の裾を。全体を三つに。敵を二つに。足して二で。為替レートが百円を。ばちんと割り箸を。長い髪を両肩に。いやになったらブイと尻を"中上。錐で氷をサクサクと落合)。山の間を割って流れる谷川。遮二無二敵を二つに割ろうとする=井上靖。▼打ち割る(頭を。酒樽を。頭蓋を)。心を打ち割る打撃。▼斬り割る(高股を。骨を)。断ち割る(斧が太腿を。煙が空を)。ぶち割る(頭を。壁を。氷を素手で)。▼踏み割る(板を。卵を。皿を。薄氷を。眼鏡の玉を)。花瓶の口を欠く。叩き割る(斧で頭を。ガラスを。氷を。戸を。脳天を。醤油びんを)。 **われめ【割れ目】** 割れ目が(地図のように入っているガタガタのストーヴ=小林多。ぱっくり口をあける=武田百)。ぱくっと割れ目ができる。乳首に錠剤にあるような割れ目が入っている=小林信。氷河の割れ目に落ちこむ。地震のあとの地割れ。重くたれこめた雲の裂け目から夕焼けが滲んで見える=池波。裂け目に落ちていくような不安小林久。 **われる【割れる】** 割れる(意見が。着物の裾が。ねたが。風船が。身分が敵に。被害者の身元が。努力が真っ二つに。丸太がすぼんと。ガラスが硬質な音を立ててゆっくりと「林京)。▼二つに割れる(国中が。先が。賛否両論で村が高橋和)。とっくに底が割れている。割れんばかりの拍手"角田。割れるように頭が痛む!畑。岩のような現実が突然に劈開して劈開面をチラッと見せてくれるような瞬間=梶井。 <436> # 遮る・邪魔する **かべ【壁】** 壁(木材の肌をあらわにした。のっぺりとしたコンクリートの村上春。びっしりと蔦が絡みついた三田。目の前に立ちはだかる現実の=篠田)。壁が(紙並みに薄い。行く手を遮る。がらがらと崩れ落ちる。目の前に立ちはだかる。崩れるような笑い方=獅子)。秘密主義の壁が厚い。赤い壁がばっと日を受けて燃えているように久米。裸の壁が寒々とした色に見える=大佛。冷ややかな壁が父と子の間にはさまったような感じ=小林久。沈黙の壁でさえぎられる安部。壁に(穴をあける。亀裂が入る。ペンキを塗る。かったカレンダー。くっきりと影が映る。すがしながら立ち上がる。手を当てて歩く。額をぴったりと押しつける。節穴が空いている。雪明かりが映る。頭でもぶつけたくなるほどの恥ずかしさ=松浦。突き刺さった手裏剣に封じ文がくくりつけられてある=柴田剣。ぶつかったようにはっと足を止める=田中。守宮のようにへばりつく=川端)。ぐったりと壁に寄りかかる。捜査が壁にぶつかる。半身を壁にあずける。笑い声がコンクリートの壁に反響する。動かない壁に向かい合ったような心持ち大佛。大きな壁にぶち当たったような絶望感藤本。実践しようとするとたちまち大きな壁に突き当たる=灰谷。▼壁にかける(絵を。写真を)。壁に背を(向ける。もたせかける)。壁の(陰に引きずり込む。窪みに身を隠す)。壁を(水滴が伝わる。背にして立つ。一つ越える。白く塗り替える。立てたように雪が視野を塞ぐ大佛)。光が壁を走る。虫が壁を這う。四方の壁を本だらけにする。社会的な様々の壁をとっぱらう。遠く壁を隔てた感じ。砲撃で壁をぶち抜く。火の壁をくぐって亡霊のような人影がもつれ合いながらよろめき出る"光瀬。自ら好んで自分の廻りに夢想と孤独との壁を置く=福永。▼壁を埋める(ボスターが。落書きが)。壁のように言葉を弾き返す大佛。厚い壁のように手に触れそうな沈黙が二人を遠く他人のように隔てている森。奥さんが聳え立つ壁のように思える=内海。積雪が白い壁のように立ちはだる=加賀。沈黙が重苦しく強固に壁のように続く清水俊。半透明の白い壁のように見える雨が視界を遮る=長野。板壁に音を立ててぶつかる。闘牛のように首を少しまげて板壁に体全体で打ち当たって行く小林多。外壁に(蔦が這う。煉瓦を張る。ひび割れが入っている)。壁板を白ベンキで塗りつぶす。壁一枚を隔てる。壁一面に無数のひび割れが走る。壁いっぱいに布を垂らす。壁際に貼り付けられたようにじっとしている=田辺。壁越しに(声を交わす。耳をすまして聞く)。壁伝いに歩く。白壁が(目にまぶしい。泥はねでまだらに染まる)。壁面を塗装する。ひび割れが壁面を走る。 **かんもん【関門】** 避けて通れぬ関門。最初の関門を突破する。自動改札を抜ける。十重二十重に関所を固める。関を設けて一歩も入らせない。改札口で精算する。改札口に向かう。改札口を(出て来る。通り抜ける)。駅の改札を抜ける。 **きざわり【気障り】** 気障りなことを言う。ささいなことがいちいち気に障る=重松。ちょっとした言動が気にさわる=ねじめ。能天気な口調が神経に障る=篠田。癇にさわる笑い方。 **ぎゃっこう【逆行】** 逆行する(核軍縮に。流れに。歴史に。和平に)。時代に逆行する無用の愚行=阿川弘。逆流を乗りきるときのように頭を前に突き出し体を少し斜めにする=山本有。▼逆流する(頭に血が。川が。水が)。全身の血が逆流するよう。反動的な(性格を隠す。政権。政策。考え方を徹底的にやっつける=黒井)。反動性を(隠蔽する。批判する)。反動分子と目される。 **くいとめる【食い止める】** ▼食い止める(衝動を未然に。身をもって。表沙汰になるのを。破滅的な事態を。悪い方向に進むのを。大事故になる寸前に)。▼最小限に食い止める(影響を。拡散を。被害を)。外界の威力を防遏する。防遏の手を打つ。 **さえぎる【遮る】** ▼遮る(話を中途で、視界を人の波が。西日を岬の防風林が。強い語調で話を。フラッシュが光り視界を真っ白に=原田定)。切り出そうとした言葉を物の見事にさえぎる!有。地平線のかなたまでさえぎるもののない広々とした眺め“五木。びしりと叩くように相手の言葉を遮る=山本周。厚い雲が光を遮る。行く手を遮る(障壁が。壁がきっぱりと"黒井)。ぶ厚い雨のカーテンにさえぎられて見えない西木。遮られる(眺望が木立に。日の光が茂った枝の重なりに=かんべ)。行く手に塞がる樹林や丘陵"本庄。▼遮る何物もない(眼界を。目を)。▼遮蔽する(光を。壁で。帯で)。ひたすら冷ややかな入りこむ余地のない他人を遮断する言い方=小池。▼遮断する(きっちりと外気を。意思疎通のチャンネルを=横山)。遮断機が(上がる。お辞儀をする。下りる)。 **さしつかえる【差し支える】** ▼差し支える(営業に。暮らしに。仕事に。診察に。通常の勤務に。病状回復に。勉強に)。業務に差し支えが生じる。スケジュールに差し支えが出る。日程に差し支えがある。いろいろと差し障りが出てくる。仕事に差し障りが生じる。仕事の進行に差し障る。大きな障りがある。修行の障りになる。仕事の上で支障が起こる。利用に支障が出る。業務に支障が出るほど抗議の電話が殺到する=有川。支障をきたす(営業に。活動に。観測に。議事運営に。仕事に。捜査に。日常生活に。勉強に)。金融機関からの融資に支障を来たす内橋。一向に差し支えない。人に聞かれても差し支えない譬え話。 <437> # 遮る・邪魔する **さしつかえる【差し支える】** ほとんど差し支えがない。差し支えのない程度。治療に差し支えのない範囲。何の障りもなく過ごす。差し障りがない(体に。仕事に)。差し障りのない嘘。当たらず障らずに相槌を打つ。当たらずさわらずの(交遊を続ける。お世辞を述べる=太宰)。 **さまたげる【妨げる】** ▼妨げる(学問の自由を。血液の凝固を。順調な発育を。豊かな発展を。路地の往来を。執拗にベルの音が耳に粘り着いて眠りを"山田詠)。通行の妨げとなる。▼阻害する(研究を。交通の流れを。行動を。進行を。生産を。発展を)。 **じゃま【邪魔】** 邪魔(下手な手出しはかえって。足にからみついてくる草の蔓のように=石川)。邪魔で仕方がない。木立が邪魔になって見えない。箱が邪魔になってドアが開かない。▼邪魔になる(仕事の。商売の。通行の)。▼邪魔する(人の恋路を。人の商売を。こちゃごちゃ言って)。▼邪魔をする(恋路の。仕事の。荷厄介な付属物のように傍にくっついて=島尾。水の中から流木が逆茂木になって船の"加賀)。邪魔以外の何物でもない。出世を邪魔立てする。睡眠の邪魔立てをする。甚だしく邪魔っけだと感じる"江戸川。邪魔っけな石を取りのける。のどに刺さった魚の小骨のような存在飯田。自分の家のなかに小さいが猛毒をもつ蛇の群れが潜む巣をもつ思い塩野。折角燃え上がった火に水をぶっかけるようなもの=隆。茶々が入る。話の(腰を折る。中途で言葉を挟む)。喉にひっかかって離れない骨のような存在塩野。行く手を塞ぐ。横槍を出す。娑婆ふたげになる。他人の足を引っ張る。みんなの足を引っ張る困り者。同僚に足を引っ張られる。▼邪魔が入る(思わぬ。とんだ)。好事魔多し。様々な妨害を跳ね飛ばす。妨害する(安寧秩序を。安眠を。営業を。取り組みを)。▼水をさす(議論に。幸福に。父子の間に。友情に。話題に。二人の間へ)。▼水をさされる(楽しい気分に。華やぐ気持ちに)。邪魔しない。楽しみを邪魔しては悪い。邪魔する気は全然ない。あまり邪魔立てをしない。少しも邪魔にならない。なるべく邪魔をしたくない。 **じゃまもの【邪魔物】** はなはだ面白からぬ邪魔物。邪魔者扱いする。とんだ邪魔物をくわえこむ安部。足手まといになる(一緒にいると。親の。脱出のさい)。露骨にお荷物扱いする。お荷物を(背負いこむ。押しつける絶好のチャンス=海堂)。荷厄介な(義理の身内。子供。土地に手を出す)。継子扱いされる。 **しょうがい【障害】** 機能に障害が残る。あらゆる障害を乗り越える。心身に障害を来たす。障害物につまずいて体が泳ぐ。思いもかけぬ障害物に足をすくわれる内橋。隘路が開ける。隘路を(切り開く。打開する。扼する)。ハードルが高い。バリケード内に籠城しする。机で入り口にバリケードを築く。打ち破ることのできない障壁がそびえたつ=野間。連山が障壁のように空を斜めに区切る藤沢。 **じょうへき【城壁】** 城壁(市街をぐるりと囲む。大軍の攻勢に立ちはだかる=塩野)。城壁の防衛を受け持つ。漆喰を張った城壁のような石垣=横光。波が砕け散って波頭が白い城壁のよう~西木。城壁のように蜿蜒と連なっている山々=新田。女が手がかりのない城壁のようになる=庄野。 **せきとめる【堰き止める】** ダムで川をせき止める。感情の流れを塞き止める=高樹。石で水の流れを堰く。水門を(開ける。閉める)。 **たちはだかる【立ちはだかる】** ▼立ちはだかる(目の前に壁が。仁王のように。視野を遮らんとするごとく前に=柴田。バリケードが頑丈な壁のように"大江。吹きつける冷たい風のように前にしっかりと"野問)。黒く立ちはだかる島影。▼立ちふさがる(ドアの前に。黒い煙が一帯に)。入り口にぬっと人影が立ちふさがる藤沢。難問が行く手にはだかる。 **どて【土手】** 低い土手が続く。土手から河原を見下ろす。土手に(土嚢を積む。柳が並ぶ)。くの字に曲がった土堤の小道を下りていく水上。川の水が土手を越える。小犬のように土手を駈けおりる=住井。西の空の土手のような雲"長塚。土手沿いに進む。巨大な城壁に似た堤防"井伏。 **はばむ【阻む】** ▼阻む(黒船の侵入を。敵の進撃を。巨大企画が行く手を=横山)。阻まれる(出世の道を。悪条件に。悪天候に。企業秘密の厚い壁に小林久)。阻止する(改悪を。体を張って。あの手この手で)。 **ひよけ【日除け】** 日除けの(カーテン。帆を下ろす)。シェードを(かける。取り付ける)。日覆いをかけ渡す。よしずを張る。ブラインドから差し込むぼんやりとした光=乃南。陽光がブラインドの隙間から射し込む。ブラインドをばたんと閉める。窓のブラインドを(上げるように表情が明るくなる=宮部。風が鳴らすような軽い言い方=高樹)。 **ぼうはてい【防波堤】** ▼防波堤(岸に沿って彎曲している=長与。謙遜は愛を拒む有吉)。防波堤が大蛇の亡骸のような真っ黒い姿を海の面に横たえる"有。心の防波堤が壊れる東野。岩が天然の防波堤となった小さな入り江"加賀。要求に対する防波堤になる。波が防波堤を越える。天然の突堤を形成する。 **みみざわり【耳障り】** 耳障りな(金属質の声。細い嗄れ声)。黒板を引っ掻かくみたいな耳障りな音光原。耳に障る甲高い声。きいきい(鳴る櫂の音。大声でしゃべりまくる)。回転椅子がきいきいと音を立てる。マイクにノイズが乗る。モニターにノイズが走る。マイクがハウリングを起こす。虫の音が耳立つ。 **めざわり【目障り】** 石を投げつけたいほど目障り新田。めざわりな亭主をやっかいばらいする=森。目の上のたんこぶのような存在。美濃部。 <438> # 栄える・衰える **おちぶれる【落ちぶれる】** ▼落ちぶれる(ぐずぐずな暮らし方に気持ちが“林美。このていたらくにまで"杉本。商工ローンに手を出すほど。池井戸)。落ちぶれた(境遇を逆手にとってもてなしを強要する藤沢。姿を見られまいと逃げるように帰って行く=阿部)。落ちぶれて今や見る影もない。すっかり落ちぶれて気の毒なくらい。みすみす落ちぶれてゆく友達にすげないこともできない=林美。陋巷に朽ち果てる。▶凋落する(旧家が。人気が)。凋落の(一途をたどる。気配を感じる)。▼沈淪する(花柳の巷に。淪落の沼底に。陋巷に)。▼身を落とす(強盗に。女郎に。夜鷹に)。苦界に身を沈める。痩せても枯れても一家の主人公二葉亭。淪落の(淵に沈む。身)。一家が零落する。零落のどん底。落ち目になって弱音を吐く。落ち目になる(会社が。商売が。人気が)。尾羽打ち枯らした(哀れなく。ていたらく。敗軍の将)。見たところ尾羽打ち枯らしたという風体平岩。落魄の身をアルコールに紛らす。亡命落魄の身。荒涼たる家に住む落魄の貴族"中村明。天涯に落魄している身の上。落魄貴族の運命を甘受する=舟橋。落魄孤寂の身。落魄的雰囲気が漂う。 **おとろえる【衰える】** ▼衰える(命の火が。派閥の力が。火の勢いが。風雨の音が。古い表現が。文化の創造が。健康が次第に。最近とみに記憶力が。熱狂的な気分が。霊力がいつの間にか。枯れた花のように山田風)。▼急速に衰える(関心が。視力が。人気が)。病後の衰えた体。体力的に衰えが出てくる。容色の衰えが気にかかる。衰えが目立つ(体力と気力の。皮膚の)。体の衰えに気づく。老齢から来る衰えは争われない=井上。美貌が衰えを見せる。士気の衰えを嘆く。焼きが回る。▼痩せ衰える(体が。見た目にはっきり)。体力が萎靡する。衰運の兆し。衰運を一気に盛り返そうという魂胆。衰勢が明らかになる。衰勢を挽回する。産業が衰退する。衰退の(一路をたどる。一途をたどる。影を濃くする。兆しが現れる。度を強める。道をたどる)。▼衰微する(感受性が。産業が)。衰微の(一途をたどる。極にある)。退勢を(挽回する。持ちこたえる)。▼退潮する(景気が。騒がしさが。保守が)。退潮に(向かう。歯止めがかかる)。退潮の兆しが見える。花の盛りを過ぎる=火坂。盛りを過ぎた梅の花が雨に濡れて泣くように見える=田山。▶過ぎる(最盛期を。全盛期を)。墓標が立つ。少しも衰えない(記憶が。報復の執念が)。雨勢が一向に衰えない。▼衰えを見せない(火勢が。気力が)。いささかの衰えも感じられない。逆巻く吹雪が衰えるふうもない三浦。今も衰えることなく続いている。 **けいき【景気】** 景気が(上向きになる。翳りを見せる。厳しさを増す。よくなる。悪い。変わった時に備える。後退局面に入る。徐々に上昇する。中だるみになる。軟調に推移する)。景気に左右されない必需品。景気の低迷が長期化する。景気のいい(掛け声。空論家。話)。やみくもに景気のいい言葉を吐き散らす磐田。景気後退が(懸念される。深刻化する)。財政出動による景気対策。景気対策を優先する。景気づく(拍子の音が。世の中が。にわかに)。景気判断を(下方修正する。上方修正する)。景気浮揚の牽引車。バブル景気に酔う。景況感が(悪化する。改善する)。 **こうけいき【好景気】** 好景気が町を潤す。▼好景気に沸く(空前の。未曾有の)。運よく繁昌して毎夜お座敷が足りないくらいの景気!水上。活況が(続く。戻る)。活況を呈する。取り戻す)。好況に(転じる。沸く)。好況の波に乗る。 **こうはい【荒廃】** 戦争による荒廃が甚だしい。敗戦の荒廃が時代の津波として押し寄せる"阿久。荒廃の兆しを見せる。道路の両側にうちつづく荒廃の家屋が亡霊のよう檀。歯が抜けたような荒廃の大通り!鈴木四。肌を粟立たせる荒廃の景色"貫井。目を覆うばかりの荒廃の地“あさの。▼荒廃する(学校教育が。心が。実生活が。政治が。山が。ほとんど人影を見ぬほど遠藤)。荒廃した(家庭。無人の都市)。 **こうぼう【興亡】** 興亡の岐路に立たされる。安危を一縷に決する。国の興廃がかかった戦い。国の存亡にかかわる。存亡の危機に立たされる。民族の存亡をかけて戦いぬく。 **さかえる【栄える】** 栄える(一門が。国が。大企業が。湯治場として。観光の町として。石炭の集積地として。風雅の里として柴田錬)。かつてニシン御殿の栄えたころ。もうひと花咲かせる。殷盛を極める。不夜城の殷盛を誇る。かつてない栄耀の暮らし。子々孫々の栄耀を期する=舟橋。黄金時代が(続く。到来する)。黄金時代を(彩る。築く)。黄金の日々。共存共栄する(農村と都会が。農薬と工業とが)。盛運に(おもむく。向かう)。家業の盛運を祈る。栄華の夢を見る。過去の栄華の思い出三島。栄華を誇る。栄耀栄華を(独り占めにする)。一身の栄耀栄華を望む。時を得て猛然と暴れだす。野菜が時を得顔に伸びる。浪士が時を得顔に横行する。蟋蟀が時を得顔に喧やかしく鳴く"田山。 **さかりば【盛り場】** 酔客がさんざめく盛り場。夜の盛り場が車の音と人の声でごったがえす=鎌田。ネオンのけばけばしい盛り場からほど遠からぬ道端「松浦。盛り場に(繰り出す。逃れ出す)。夜の盛り場に臆することなく出入りできる男高樹。盛り場の(顔役。扇情的なネオン)。盛り場へ遊びに出かける。埃っぽい盛り場をうろつき歩く=柴田翔。夜の盛り場を徘徊する伊達男といった様子中野美。 <439> # 栄える・衰える **さかん【盛ん】** 盛んな(気炎を吐く。食欲を満たす。拍手が起こる。非難を浴びる。もてなしを受ける。笑い声が起こる)。盛んに(文句を言う。悪口雑言を投げつける。自分を売り込む。天下国家を論じる。拍手や声援を送る)。熱情が盛んに胸に燃え出す“山田美。小屋が太い火束となって盛んに燃える=大岡。燃焼を盛んにする。▼盛んになる(血行が。研究が。交易が。運動の火の手が)。血気盛んな男。▼油を注ぐ(内輪もめに。喧嘩に。火に。欲望の芯に)。鬱然たる勢力を持す。旺然たる憎悪を感じる。▼興隆する(一門が。国力が。産業が)。盛る(芝居が。火が。店が。明るく)。振興する(学術を。産業を。伝統文化を。農業を)。一花が咲く(井戸端会議に。世間話に。手柄話に)。料理談義に花を咲かせる。▼盛り上がりを見せる(反対運動が。祭りがますます三浦し)。油然と懐かしさが胸にあふれる。油然として愛念が起こる。▼旺盛(洒落っ気が。精力が。知識欲が。サービス精神が。やじうま根性が)。旺盛な(食欲を見せる。消費生活を享受する)。好奇心の旺盛な若者。貯蓄精神の旺盛な男。隆盛に向かう。国を隆盛に導く。隆盛の一途をたどる。隆盛を極める。 **さきぼそり【先細り】** 先細りで美しい形をした手"桐野。▼先細りになる(運動が。会員数が。景気が。事業が。商売が)。マングローブの気根を細く裂いて編んだ細長くて先細りの籠がご池澤。声が次第に先細りしていく。先細の(美しい手。指)。 **さびれる【寂れる】** ▼寂れる(駅の裏側が。虫の音が。見る影もなく。小売店が軒並みに)。疲れる一方の赤い灯青い灯がともる=なかにし。ネオンが林立する繁華街。繁華街に(巣食うチンピラ。人が出盛っている)。繁華街の中にぽっかりエアポケットのような場所ができた感じ吉行。ほろ酔い気分で繁華街を歩く。 **しにたい【死に体】** 死に体と見なされる。内閣が死に体と化す。死に体となった(大臣。内閣。力士)。レームダック化した大統領。▼レームダック化する(政権が。内閣が)。 **すいじゃく【衰弱】** 見る影もないほど衰弱がはなはだしい=斎藤栄。一日一日と衰弱の道を辿る。▼衰弱する(心臓が。心身ともに。精神的に。肉体的に。日に日に。過労で。体が目に見えて。もぐらが天日にさらされたように体が"石坂。いつ倒れても不思議ではないほどに=高橋三。一晩のうちに十も年をとったように円地)。みじめで不潔で、ときに生きているのが面倒になるくらい衰弱しきった人間たち。跳躍台に登っただけでよろめくにちがいないほど衰弱しきる=武田。衰弱した体調の回復につとめる。先行き長くはない衰弱した体。野坂。病みほうけた姿をさらす。病みほうける(父が。病身の妻が。痛々しく)。 **スター** スターが綺羅星の如く居並ぶ。一躍スターになる。スターの(座から降りる。座に就く。座をつかむ。仲間入りをする)。▼花形(一座の。歌舞伎の。時代の。マスコミの)。一躍文壇の寵児となる。 **すたれる【廃れる】** ▼すたれる(遊びが。敬語が。風習が。町が。流行が)。ひところすたれていた行事が最近復活した飯田。▼地に落ちる(威信が。権威が。信用が。信頼が。道義が。評判が)。 **せいきょう【盛況】** ▼盛況(車内はほぼ満席の。立錐の余地もない)。盛況のうちに終わる。大賑わいを見せる。▼大盛況(大入り満員の。千客万来の。押すな押すなの。立ち見も出るほどの)。盛観を(極める。呈する)。 **せいすい【盛衰】** 栄枯盛衰は世の常。浮き沈みは世の習い。栄枯常無し。盛者必衰の理。盛者必衰は世の習い。▼消長(活動の。勢力の)。人生は七転び八起き。一家の浮沈に関わる大事。国の浮沈に関わる一大事。天国と地獄の間のジェットコースター"池澤。 **せいだい【盛大】** 盛大な(宴を張る。歓迎を受ける。式を挙げる。拍手を送る。法事供養を営む)。一帯を万灯会のように盛大な篝火が埋める=真継。盛大に(お披露目をする。股をおっぴろげる=多岐川)。大きな鉄板で盛大に肉を焼く=田辺。 **ぜつめつ【絶滅】** 絶滅に(追いこむ。追いやる。瀕する)。ほぼ絶滅に近い。絶滅の危機に瀕する。絶滅する(狼が。人類が。生物が)。絶滅した(恐竜。マンモス)。このままでは早晩絶滅してしまうであろう飯田。絶滅寸前となったのでついに禁猟になる=本多。絶滅寸前に追いこまれる。死に絶える(一族が。家畜が。すべての生き物が)。 <440> # 栄える・衰える **ぜんめつ【全滅】** 全滅に近い被害。全滅の(憂き目に遭う。運命に陥る)。一挙全滅の危機に瀕する。全滅を覚悟で戦う。▼全滅する(作物が。部隊が。猪突して。松が松食い虫で)。玉砕を期して立ち向かう。部隊が玉砕する。一人残らず討ち死にの覚悟「山木。ことごとく戦死する。 **ついえる【潰える】** ▼潰える(軍勢が。計画が。望みが。野望が。研究者としての生命が=高橋克)。▼潰え去る(夢が。むなしく。ひとたまりもなく)。 **とうさん【倒産】** 倒産が全国に野火のように広がる"開高。倒産という憂き目に遭う。老舗の大手証券を倒産に追いやる。倒産の(噂が流れる。危機に瀕する)。▼倒産する(会社が。企業が。融資先が。不況で。金融恐慌のあおりを受けて。芸者遊びがたたって=中上)。とどのつまりは倒産して放り出される。経営が立ち行かなくなる。会社がこける。事業に失敗する。倒産寸前の会社を立ち直らせる。▼行き詰まる(経営が。経営に。事業に)。経営破綻に(立ち至る。見舞われる)。経営破綻を(招く。余儀なくされる)。 **にぎわい【賑わい】** ▼賑わい(狂気乱舞の。祭礼のような。千客万来の。老若男女の幸福そうな。押すな押すなの。正月が二度来たような"海音寺、日本中から人が集まったような=新田)。賑わいが頂点に達する。霧が晴れるがごとく宴席の賑わいが消え去る=横山。今通ってきた仲見世の賑わいが夢のような感じがする蕭条とした場所。高見。枯れ木も山の賑わいと憎まれ口をきく落語。時ならぬ賑わいに包まれる。賑わいに湧き立つ(活気のある。時ならぬ)。往年の賑わいを取り戻す。フロアがクリスマスのような賑わいをみせる=高橋こ。街の賑わいが海の音のようにほの暗い店の中にしみ入る=原田康。大賑わいの祭り。 **にぎわう【賑わう】** ▼賑わう(美しい花々で。大勢の人々で。家族連れで、がやがや。多くの参拝者で。大勢の行楽客で。潮干狩りの客で。むせかえる人いきれで。連日若い女性客で。各地からやってくる客を迎えて浜が"宮尾。花盛りのように叔母たちが集まって"萩原)。▼にぎわう(縁日のように。祭りのように。荷のあげおろしに忙しい人々で=塩野)。赤い灯青い灯で賑わう道頓堀。デパートの家具売り場のように新品の調度で賑わう新婚生活"阿刀田。年の瀬をひかえて買い物客で賑わう商店街"高樹。ついぞ大賑わいに賑わったことがない=庄野。門前市をなす。殷賑な(通り。町。港)。殷賑を極める。 **にんきもの【人気者】** ▼人気者(圧倒的な。一座の。学内の。巷の。なかなかの。奇想天外なおどけぶりで一座の腹の皮を縒らせる=里見)。引く手あまたの(売れっ子。芸人衆)。▼アイドル(往年の。若者の。我が家の。引っ張りだこの)。アイドルに憧れる。アイドルの座から滑り落ちる。▼引っ張りだこ(研修や講演で。若者の間で。若手の女優として)。演芸の間で引っ張りだこの絵「今東。引っ張りだこのタレント。 **ねだやし【根絶やし】** ▼根絶やしにする(悪習を。悪を。一族の男子を。核兵器を。雑草を)。批判努力を根こそぎにする。▼根絶する(海賊を。残酷な所業を。テロを。弊風を。薬害を。ワーキングブアを)。 **はいおく【廃屋】** ▼廃屋(月明かりの中にうっそりと立つ。荒涼を通り越して不気味な篠田)。廃屋が長い年月をかけてゆっくりと朽ち果てる“村上春。文字通りの廃屋となった民家。廃屋に限りなく近い建物。廃屋同然の住まい。 **はいきょ【廃墟】** 文字通り何一つない廃墟中野孝。廃墟が白々と広がる。廃墟となった町。廃墟と化す(国土が。都市が空襲で)。襤褸切れのように廃墟の町に放り出される=高橋。がらんと廃墟のような沈黙がのしかかる"山手。寒風吹き荒ぶ廃墟のような街"加賀。死の街の不吉な形相を呈する太宰。 **はさん【破産】** 一家が破産の状態に直面する。▼破産する(事業が。不景気のあおりを食って)。破産して(丸裸になる。無一物になる)。自己破産して(一文なしになる。債務を整理する)。株で身上をつぶす。身代が傾く。 **はめつ【破滅】** 破滅に向かって転落していく。結婚生活が破滅に瀕する。人類を破滅に導く。自ら進んで破滅に走る。一歩間違えば身の破滅にもなりかねない=火坂。破滅の(瀬戸際。淵に追いこまれる)。一路破滅の淵へと突進する=美濃部。世界を破滅へと駆り立てる。破滅への(道をたどる。コースをたどる)。身の破滅を招く。破滅する(一家が。経済的に)。▼破滅させる(一身を。仲間を)。人生に破滅した男。破滅的な(打撃を受ける。空想へと疾走する。事態に追いこまれる。事態を食いとめる)。粋が身を食う。身を滅ぼす。 **はやる【流行る】** ▼はやる(風邪が。言葉が。店が。悪い病気が。爆発的に。ひとしきり)。怒り肩みたいなブラウスが流行る=山口。▼はやりすたりがある(名前には。服には)。はやりの色。当節はやりの服装。時々のはやり物。流行語は新陳代謝が激しい。風靡する(考え方が。ブームが。文壇を。世間を。全国を。俳壇を。流行を。青年子女の間を)。今どきはやらな言い回し。一向にはやらない三文文士"坂口。店の中に人影を見ることも稀なようなはやらない店曽野。開店休業同然にはやらなくなってしまう高橋。閑古鳥が鳴く。 **はんえい【繁栄】** 見せかけの繁栄。空前の繁栄が訪れる。繁栄と衰退を繰り返す。空前の繁栄に沸く。繁栄に導く(会社を。デモクラシーを=美濃部)。繁栄の(一途をたどる。時代を迎える。おこぼれを頂戴さいうして遊びほうけている大学生=加賀)。▼繁栄する(経済が。子孫が。社業が。種族が。街が。店が)。街の将来の繁栄ぶりを想像するなかにし。 <441> # 栄える・衰える **はんじょう【繁盛】** 食べるに事欠かないほどの繁盛はある=連城。繁盛を(極める。誇る)。天下に並ぶもののない繁昌を極めた都芥川。▼繁盛する(商売が。店が。行列ができるほど"西木)。それまで暇だったのが嘘のように繁昌する=北原。結構繁盛している店。客が後から後のれんをくぐってわれ勝ちに空席を奪い合う永井。客が店の前に並んで待つ。客の絶えない料理屋。繁華な(商店街。通り。都会。都に住む)。商いで繁華を極める。 **ファッション** ファッション(華麗な。奇抜な。地味な。風変わりな。今風の。ボーイッシュな)。▼ファッションに身を包む(最新の。流行の)。ファッションをコーディネートする。最新のファッションを欠かさずチェックする三浦し。 **ファッションモデル** ファッションモデルのような動作できれいにハンカチを返す=泉優。細身のファッションモデルのような背の高い女"西村。モデルになってもいいほどの長い足高橋元。スカウトされてモデルになる。 **ブーム** ▼ブーム(爆発的な。はかない)。ブームが(起こる。過熱する。下火に向かう。鳴りをひそめる)。あっというまにブームが去る。ブームに(乗る。火をつける。便乗する。かげりが見える)。▼ブームに終わる(一時の。一過性の)。ブームの(さなかにある。頂点へと登りつめる=内橋)。 **ふきょう【不況】** 不況が長期化する。日本経済を不況が襲う。不況から抜け出す。不況で売り上げが激減する。不況の(風が吹き荒れる。影が小さな飲み屋にまで波及する藤田)。一段と不況の厳しさが増す。不況の波が襲いかかる。世の中全体が不況の波に洗われる=井上ひ。不況の波を(ものともしない。もろにかぶって四苦八苦する)。 **ふけいき【不景気】** 不景気が底を打つ。不景気で(青息吐息。店じまいする)。今にもお陀仏するというような不景気な面"小林多。兎に荒されたらしいいたって不景気な豆畑幸田露。従業員を解雇せずに不景気に何とか耐える=畑村。不景気の(時期を切り抜ける。波が商店街に押し寄せる。あおりをまともに食らい予算と人員を削られる三浦し)。冷たい不景気の風が吹く。いかにも閑散として不景気そうな事務所"小林久。 **ふるわない【振るわない】** ▼振るわない(売り上げが。家業が。結果が。事業が。視聴率が。需要が。商売が。成績が。打線が。販売が)。幕府の威権が振るわなくなる=津本。 **ぼつらく【没落】** 実家の没落に心を痛める。没落の(一途をたどる。憂き目を見る。扉が開かれる)。一路没落の過程をたどる。興隆から没落へ。敵の没落を確信するどす黒い知慧、武田泰。▼没落する(家が。会社が。帝国が。資本主義社会が=安部)。 **ほろびる【滅びる】** ▼滅びる(学問が。家名が。国が。人類が。肉体が。万物が。武家政治が。都が。人間の身勝手な欲望のために森が。飯田)。滅びゆく(種族。文化。動物を記録する)。国が滅びへ向かう。滅びへの道を歩む。▼滅ぶ(人類が。祖国が。地球が。孤独の果てに)。日本の美が滅んでゆく。文化が衰滅する。国家の敗亡。国が敗亡する。敗亡のそしりを受ける。壊滅する(組織が。連合艦隊がほぼ)。▼壊滅させる(敵の犯罪組織を)。死滅に瀕する。死滅の道をたどる。▼死滅する(国家が。人間が)。衰亡の(一路をたどる。結果を招く。兆候が現れる。途が黒い口をあけて待つ=本庄)。衰亡への道を歩む。▼衰亡する(国家が。民族が)。 **ほろぼす【滅ぼす】** ▼滅ぼす(家を。国を。人間を。文明を。我と我が身を。一族をことごとく。情け容赦もなく)。身を焼き滅ぼす。▼撃滅する(ゲリラを。敵の戦力を。敵を)。亡国的な思想。亡国に瀕する。亡国の憂き目を見る。▼絶滅する(害虫を。感染症を。犯罪を。邪説を。性犯罪を)。敵を滅却する。 **まっさかり【真っ盛り】** 真っ盛り(桜が。花が。夏の。春の)。夏の暑い盛り。盛りが巡ってくる。生涯の盛りが過ぎる。▼盛りになる(騒ぎが。花が)。盛りには少し早い。女の盛りの頂点にある輝き。▼最盛期(秋刀魚の。人生の。漁の)。最盛期に入る。最盛期を迎える。全盛期に入る。全盛期を迎える。全盛を(極める。誇る)。受験産業の花盛り。人生の花盛りという季節がめぐってくる=瀬戸内。今を盛りと(時めく。咲いているバラ)。梅が今を盛りと咲き匂う火坂。萩が今を盛りに咲き乱れる=田山。寺が今を盛りの花で埋まる。今が盛りの桜。 **めつぼう【滅亡】** 滅亡の(危機に遭う。淵に陥れる。道へ突進する)。今や滅亡の時が迫る。あやうく滅亡の運命をまぬがれる。司馬。滅亡を告げる弔鐘の音を耳にする=内橋。▼滅亡する(帝国が。影も残さずに。あっという間に)。 **もてはやされる【持て囃される】** もてはやされる(テレビで。格好の投機商品として。貴重な知識源として。有力な武器として。若い人たちの間で。美風良俗の極致のように=舟橋)。今を時めく(大スター。人気タレント。流行作家)。世に時めいている人。広く人口に膾炙する。 **りゅうこう【流行】** 流行が(下火になる。終息する。広まる)。流行に(背を向ける。飛びつく。拍車をかける。遅れまいとするはなやかな心有。敏感な身だしなみを気にする男=常盤)。一時の流行にすぎない。流行の(曲を歌う。服を着る。思想に毒される=氷室。婦人服のように絶えず変化している研究題目=野上)。むやみに流行を追う。▼流行する(新しい言葉が。インフルエンザが。熱病がハヤるように文通というものが"永倉)。世間の好尚に乗る。時代の好尚を追う。 <442> # 探す・見つける **あさる【漁る】**▼漁る(残飯を。食べ物を。掘り出し物を。古今東西の書物を。散歩のついでに古本屋を。我勝ちに押し合いへし合い餌を。飢餓のように女を黒岩。動物のようにゴミ捨て場を"村上龍。水の上を白い鳥が行きつ戻りつ魚を"中)。食料を漁って歩く。足を摺り粉木寸約のようにしながらどこまでも品物を漁あさりに行く合崎。男漁りに余念のない女立原。結婚を機に男漁りをやめる=熊谷。女漁りに精を出す小池。あらゆる物を貪欲なまでに買い漁る今呎。 **かぎつける【嗅ぎ付ける】**▼嗅ぎつける(匂いを。不穏な空気を。論理の乱れを。怪奇下劣なものを=開高。犬みたいにすぐ=徳水。野良犬のような本能で"黒写。醜さを匂いのように=横光)。 **けんしゅつ【検出】**▼検出する(血痕を。指紋を。特異な数値を。赤物を。農薬を。放射能を。ニュートリノを)。▼検知する(アルコールを。ガス漏れを。漏電を)。センサーが(煙を感知する。熱を感知する)。 **さがしあるく【探し歩く】**▼探し歩く(空き家を。富の機会を)。足にまかせて貸家をさがし歩く=永井俺。死に場所を捜し歩いている宿なし女のようにぶらぶらする=徳田。暗間の世界に秘密の歓楽を捜し歩いているような猥みだらな女と男の姿や笑い声=徳田。▶探して歩く(家の中を。方々心当たりを)。 **さがしだす【探し出す】**▼探し出す(金のありかを。真犯人を。目指す一通を。目撃者を)。石を起こし草の根分けても捜し出す!舟橋。ひょっとしたら探し出せるかもしれない=福水。居所をたずねあてる。 **さがしまわる【探し回る】**▼探しまわる(会場の内外を。足を棒にして。血眼になって。部屋から部屋を。町のあちこちを。しらみつぶしに歩いて)。床に目を吸いつけるようにして部屋中をくまなく探し回る"池田。▼隈くまなく探しまわる(階上階下を。校内を。屋敷の中を)。 **さがしもとめる【探し求める】**▼探し求める(父の敵を。あわてふためいて。矢も盾もたまらず。会っための口実を懸命に=高橋和)。エイドリアンを捜し求めるロッキー・バルボアのように父を捜す。内田祭。何か素晴らしいことばかりを探し求めているような女石川。▶探求する(科学を。幸福を。人生を。真理を)。探求心(飽くなき。毎日がはじけるような感動と好奇心に満ち満ちている幼児の旺盛な飯田)。 **さがす【探す】**▼探す(金目の物を。声の主を。仕事の相棒を。適当な店を。他の方法を。安いホテルを。鉦かぁや太鼓で。姿を目で。必死になって。一生懸命率せを。言葉の接ぎ穂を。知っている限りの悪態を。自分に合った道を。手分けしてあたりを。人間のいない土地を。憤懣益从のやり場を。八つ当たりの種を。頭の中で言葉を懸命に。わずかな情報を頼りに。あわてふためいて。八方手を尽くして。みんなで手分けして。血眼になって行方を“源氏。うっかりしたら見過ごしてしまいそうなものを目を皿のようにして大庭)。▼捜す(離散の家族を。川さらいをして。根気よく気に入ったのが見つかるまで=飯田)。探すのに(骨が折れる。かなり手間取る)。▼隈くまなく探す(あたり。城中を。庭の隅々まで)。▼言葉を探す(極力冷静に。語るべき。反駁啞いの。ぴったりくる。弁解の)。▶姿を探す(獲物の。きょろきょろと母親の)。▼場所を探す(座り心地のよさそうな。逃げ延びるべき)。親の仇跡たにめぐり合うみたいに探しに探してついにめぐり合う!白井。なくした財布を捜しに行く。青い鳥を探しに行く。山狩りに出る。鵜の目鷹たかの目で(少しだす。探し求める)。鵜の目鷹の目を注ぐ。▶検索する(五十音で。ウェブサイトを。インターネットで。パソコンで価客名簿を=篠田)。 **さくいん【索引】**▼索引にあたる。索引を(つくる。引く)。インデックスを(つける。引く)。目次を(見る。めくる。読む)。 **しょくさがし【職探し】**▼職探しに(狂奔する。奔走する)。職探しを始める。▼口を探す(仕事の。働く)。自力で再就職先を探す。仕事探しで血眼になる。 **そうさく【搜索】**▼雲を掴っかむがごとき覚束ない捜索菊池。警察の必死の捜索にも拘协ゅらず事件が迷宮入りになる=南条。捜索の(幅を縮める。協力を依頼する)。▼捜索を続ける(地道な。草の根を分けて=山田風)。▼搜索する(家の中を。行方不明者を。周辺を隈くまなく。一帯をしらみ潰っぶしに。二手に分かれて)。家宅捜索令状をかざして見せる=高村応。捜索願いを警察に出す。 **たんさく【探索】**▼探索が(軌道に乗る。手間どる。今もって五里霧中の有様・船山)。探索に時間を費やす。探索の手が伸びる。隈くまなく探索の網を張る=船山。きびしい探索を逃れる。▼探索する(裏切り者を。市中を。身辺を。逃亡者を。目を皿のようにして付近一帯を"和久)。 **つきとめる【突き止める】**▼突き止める(意外な真相を。居場所を。原因を。正体を。真犯人を。犯人が誰かを。身元を。持ち主の名を。行方を。背後にいる人間を)。船宿にシケこむところを突きとめる藤沢。血眼的になって隠匿場所にんにくを突き止めようとする=柴田泌。▼探し当てる(香りの正体を。ついに隠れ家を。気に入ったコートを)。▼家を探し当てる(記憶を頼りに。目的の)。▼探り当てる(正体を。真実の芯を。ページを。身元を。理由を)。 **ていさつ【偵察】**▼偵察に出かける。偵察する(敵情を。動向を)。敵情を探る。偵察機が獲物を追う鳥のよっ <443> に小さな円を描いて旋回する=大岡。斥候ざぷに出る。 **てさぐり【手探り】**▼闇を手さぐりでゆくような落ち着かぬ気持ち=山本周。手探りで巡を試みる。暗い階段を手探りで下りる。▼手探りで進む(少しずつ。先行き不透明な毎日を=伊坂)。闇を手探りながら歩く。手探りに奥へ進みよる。壁を手探りに探す。手探りの道を歩き続ける。雲を掴っかむような手探りの捜査 高村蒸。記憶の中を手探りする。手探りしながら進む。▼手探る(所在を。存在を)。股の隙間を手探りされたような不快感"武田爽。暗中模索の域を出ない。▼暗中模索する(解決策を。よりよい方法を求めて)。 **はっけん【発見】**▼次々に新しい発見が続く。目ぼしい発見がない。新しい発見に胸がときめく。とんでもない発見に胸のあたりが震える"永倉。毎日が新しい発見の連続。▼発見する(真相の一端を。悪い兆しを。重要な手がかりを。不思議な現象を。類似のテーマを。甘い蜜の湧き出る泉を=戸川。安定と子育ての中に小さな喜びを藤田)。万が一にも発見される心配はない=松岡。奇妙な事実を発見したようにきょとんとする=中沢。宇宙の秘密にふれる一つの発見のように感動的"高橋和。▼再発見する(文化を。魅力を。歴史を)。事件の第一発見者という勲章がビンで心臓にとめつけられる=宮部。残る大発見(科学史に。歴史に)。ノーベル賞に値する大発見。 **ぶっしょく【物色】**▼物色する(獲物を。金目の物を。候補地を。室内を。部屋の中を。有望な事業を。適当な隠れ場所を。デバートの食品売り場を)。 **みあたらない【見当たらない】**▼見当たらない(つけ入る隙が。適切な言葉が。適当な者が。脱いだ靴が。雪らしい雪が。影も形も。特に問題は。肌に染み一つ。人っ子ひとり。埃旧にひとつ。荒らされた形跡が。気持ちのはけ口が。知っている顔が。通りにほとんど人影が)。 **みいだす【見出す】**▼見いだす(安住の地を。安息の場所を。会話の糸口を。前途に希望を。言うべき言葉を。生き延びる道を。勝利への前兆を。優れた解決方法を。取りあえずの楽しみを。不老不死の妙薬を)。両者の符合に特別な意味を見出す欲辻。 **みちびきだす【導き出す】**▼導き出す(新しい対応を。解決点を、答えを。実験が思ってもみなかったような結論を「筒井)。演繹的ひまに(結論を導く。体系を理論づける)。▼帰納する(結論を。法則を)。 **みつからない【見つからない】**▼見つからない(うまい答えが。解決の糸口が。断る口実が。就職先が。全く隙が。残念ながら。言うきっかけが。うまい言い方が。なかなか買い手が。反対する理由が)。▼言葉が見つからない(お礼の。返す。気が動転して。次の。ぴったりくる)。天に消えたか地に潜ったか=山田風。うまい言葉が探せない。完璧な治療法は未だ発見されていない!有吉。死体が永遠の謎のように発見されない=遠藤。未だ発見に至らない。▼見いだせない(共通の話題が。他に例が。何の解答も。言うべき言葉が)。美貌に寸分の隙も見出せない=有吉。▼探しあぐねる(自分の場所を。そこやかしこを)。探しあぐねた末にたどりつく。言葉を探しあぐねて戸惑う。▼目を盗む(親の。教師の。同僚の。周りの)。人目を盗む。 **みつかる【見つかる】**▼見つかる(新しい職場が。いい物件が。疑わしい点が。簡単に解答が。秘密の通路が。不審な点が。掘り出し物が。目当ての家が。気立てのいい嫁さんが。ようやく答えが。目敏い業者にたちまち)。動けばすぐに見つかりそう。▼発見される(切りなく欠陥が。続々と同じような現象が。金鉱が相次いで。いくらでも糸がたぐりよせられるように新しい事実が瀬戸内)。発見されるのは時間の問題。 **みつける【見つける】**▼見つける(落とし所を。解決の糸口を。警察に職を。結婚相手を、素敵な恋人を。妥協の余地を。次の仕事を。適当な口実を。似合いの男を。働き口を。話のつぎ穂を。避難場所を。他の解決案を。掘り出し物を。めざす店を。安い売り家を。いの一番に。新しい就職先を。新しい住まいを。新たな仕事先を。いち早く空いた席を。おもしろい記述を。自分のボジションを。注文通りの場所を。目敏くウイスキーを。目録の中に書名を)。星座を見つけるのも困難なほどたくさんの星が輝いている三浦し。▼相手を見つける(恰好いいの。理想の)。▼地を見つける(安住の。閑居の)。▼道を見つける(ベストな。平和に至る。雑木林の中に細い=あさの)。値引きのタイミングの見つけ方がうまい。▼見つけ出す(目当ての蝶を。いつかきっと。暇つぶしの相手を。わずかな違いを)。秘密を嗅ぎ当てる。▼嗅ぎ出す(秘密を。行方を)。匂いを嗅ぎ当てる(かすかな。不正の)。▼掘り当てる(小判の壺っはを。水脈を。石油を。豊かな鉱脈を)。 **もくげき【目撃】**▼目撃する(一部始終を。浮気の現場を。犯人の姿を。お楽しみの最中を。虐げられていく自然を=畑)。▼瞬間を目撃する(事故の。人が殺される)。たったいま事故を目撃した人のような表情常思いがけずも目撃者になってしまった怖さ=和久。目撃者のいる公算は少ない。目撃証言が得られない。目撃証人が現れる。目撃情報を集める。 **やさがし【家捜し】**▼住まいを突きとめて家捜しをする=福水。徹底的に家捜しする。家投しして金を持ち去る。がさを入れる。容疑者の家を家宅捜索する。 **レーダー**▼レーダーが(機影を捕らえる。船影を捕らえる。敵機を捕らえる)。レーダーから機彩が消える。レーダーを持っているみたいに動きまわる=高見淡。 **わりだす【割り出す】**▼割り出す(貸し出し先を。原因を。死体の身元を。所要時間を。犯人を。容疑者を。弾から銃の種類を)。割り出しに成功する。下手人の割り出しに必死になる。割り出しを急ぐ。 <444> # 先んじる **あらかじめ【予め】**▼あらかじめ(許可を得る。打ち合わせておく。手配をしておく。内情を突きとめる。目星をつけておく。用意された言葉。慎重に練りあげた作戦行動の椎名誠)。前もって(許しを得る。片をつけておく。定められている。察知しながらみすみす見逃す)。計画を前もって知っている。 **いきなり**▼いきなり(話を振られる。足をすくわれる。腕をつかまれる。お膳をひっくりかえす。選択を迫られる)。ついと(踵だびをめぐらす。先に歩き出す。早に歩を進める)。つと(足をとめる。顔をける。てはつと消え去る)。ぶっつけ本番で(試合に臨む。テストを受ける)。 **いちばんのり【一番乗り】**▼一番乗りの功名。一番乗りを(自慢する。果たす)。現地に一番乗りする。順番が一番先になる。一番にはせ参じる。真っ先に(功名を挙げる。現場へ駆けつける。ゴールに飛び込む)。 **さいぜんれつ【最前列】**▼最前列に座る。最前列の席に陣取る。蹴込みの守宮客も。かぶりつき(劇場の。舞台の)。かぶりつきに席を取る。 **さき【先】**▼先に手を出す。言おうとすると涙が先に出る。▼先に立つ(苦手意識が。しんどい気持ちが。休みたいと思う心が)。涙が先に立って返答もできない。考える前に走り出す。 **さきがけ【先駆け】**▼夏に先駆けて燕つばがやってくる。春に先駆けて梅を咲かす。世に先駆けて何かを生み出す。業界にさきがけて開発に乗り出す柴田翔。▼先駆けとなる(時代の。ブームの)。計画実行の先駆けをする。▶先駆ける(時代に。諸人に。世界に)。梅雨の走り。▶前衛を(組織する。務める)。前衛的な(演劇。手法)。 **さきどり【先取り】**▼先取りする(季節を。時代を。未来を。予算を。流行を)。先取りする形で示す。春を先取りするように小さな赤い花をつけた鉢植え中島み。▼先食いする(希望を。需要を。ボーナスを。利益を)。▼先取する(一点を。変化を)。先取点を(挙げる。奪う)。 **さきんじる【先んじる】**▼先んじる(時代に。他国に。敵に一歩。他の人より)。一同に先んじて突進する。一歩先んじて発表する。先んずれば人を制す。事件に先立つこと一年前。相手に先を越される。▼先決(事件の究明が。状況把握が。信頼回復が)。旧制高校を前身とする大学。前任者からの申し送りを聞く、予備調査隊が先発する。先を越して言う。めぼしいものに唾をつけておく。だいぶ手前から気づく。早手回しに事を進める。先回りをした返事を返す。人の心の先回りをする。先回りした盤目が網を張って待つ徳永。気持ちを先回りして察知する。▼先鞭せんをつける(開発の。新技術導入の。ブームの。流行の)。 **じぜん【事前】**▼事前に(下調べをする。十分検討する。連絡を入れる。情報が筒抜けになる。手を打っておく。知らされない場合が多い=松浦)。入試問題が事前に漏れる。問題を事前に入手する。事前の予想を覆す。攻撃を未然に回避する。逃亡が未然に発覚する。▼未然に防ぐ(災害を。事故を。不測の事態を)。 **スクープ**▼スクーブのねたをつかむ。スクープを(狙う記者。目前にした昂たかぶり“横山)。世界的スクープを発信する。▼スクープする(新聞が密約を。雑誌がスキャンダルを)。特ダネを書く。他社に特ダネを抜かれる。 **せんく【先駆】**▼先駆をなす。▼先駆者(你大な。勇敢な)。世の先駆者が多かれ少なかれたどる道蔵原。先の走りのような雨=椎名誠。梅雨の走りを思わせる雨。▶先駆的な(役割を果たす。理論)。 **ぜんげん【前言】**▼前言を(撤回する。取り消す)。今更前言を翻すこともできない。前述の如く。先に書いたとおり。先に見たように。先にも述べたとおり。 **せんこう【先行】**▼先行する(イメージが。恐怖感というより驚きが)。頭一つ抜け出す。▼歩く(一二歩先を。ずっと前を)。▼先を行く(季節が半歩。すたすたと)。じりっじりっと先行者との距離を縮める“干刈。一歩先へ出る。先口から処理する。 **せんじん【先人】**▼先人の(遺沢に浴する。後應にらを拝する。ひそみに倣う。你功をたたえる。知恵を受け継ぐ。知恵を深い井戸から汲み出して今の人の喉を潤す池澤)。古人の(考えに学ぶ。言によれば。道破した真理。肌を偲しのぶ)。 **せんじん【先陣】**▼先陣に立つ。先師の功を焦る。先陣を(切る。務める)。▼先鋒过认(運動の。改革の。隊列の)。先鋒に立つ。先鋒を務める。 **せんせい【先制】**▼先制の本塁打。二点を先制する。▼気先を制しく(気先を。意気込んでいる出鼻を=石坂)。鼻を折られていささか不機嫌!海音寺。気負い込んだ出鼻を挫くじく=永井路。それまで聞いたこともないような嶮けゃしい口調で出鼻を叩く"井上ひ。すかさず機先を制する。人の機先を制するような物言いの癖が抜けない=高井。敵の機先を制して攻めかける。先制攻撃が功を奏する。先制攻撃をかける。意表を突いた攻撃をかける。先に攻撃をしかける。先制バンチをかまされる。先手攻撃が成功する。先手を打つ(先を見越して。非難されないように)。先手を打って(言う。攻撃する。計画を実行する)。先手を取る。 **せんとう【先頭】**▼先頭との差を縮める。大将を先頭に押したてる。先頭に立つ(一団の。クラスの。道案内のために)。先頭に立って(歩く。切り込む。戦う。危機に立ち向かう)。順番に先頭を交代する。先頭を切って(逃げだす。登る。走る)。先になって歩く。先頭を切って(駆け込む。乗り込む)。先頭集団に追いつく。先頭集団の尻尾が近づいてくる。先頭打者を三振に切ってとる。先に立って(歩く。進む)。車首を(出口に向ける。真っ直ぐに立て直す)。陣頭指揮に(あたる。立つ)。陣頭で指揮を執る。急先鋒(改革運動の。クーデターの)。反対派の急先鋒となる。批判派の急先鋒に立つ。 <445> **せんばい【先輩】**▼先輩(一級上の。母校の)。先輩からさんざん教え込まれる。先輩と机を並べる。先輩に対する口の利き方が生意気"ねじめ。先輩の風格を持っている。先輩を(差し置いて眠るわけにはいかない。頼って上京する)。同郷の先輩を頼って大阪に来る=姫野。人生の先輩のような余裕を感じさせる=高樹。先輩風を吹かす。 **せんやく【先約】**▼先約を(果たす。反故にごにする)。約束が入っている。先口の約束がある。前約を(果たす。反故にする)。 **そっせん【率先】**▼率先して(参加する。実行する。力を尽くす。帰り支度を始める。チームをまとめる)。隗かぃより始めよ。先に立って(歩きだす。下りる。登る)。 **だいいっせん【第一線】**▼第一線から身を引く。第一線で活躍する。第一線に立って闘争する。常に第一線に立つ。第一線の(演奏家。研究者。作家)。一線の(現場で活躍する。仕事に耐えられない)。前線に立って哦う。猛然と前線に飛びだす。▼最前線(営業の。平和運動の。矢玉の飛び交う)。最前線で活躍する。 **だしぬく【出し抜く】**▼出し抜く(警察を。周囲を)。裏の裏を行くやり方。抜け駆け的行動に出る。抜け駆けの功名をもくろむ。敵の裏をかく。人の裏をかくやり方。まんまと裏をかかれる。ものの見事に出し抜かれる。先を(越される。取られる)。▼鼻を明かす(だしぬけに。傲慢の。重役どもの。皆の)。まんまと身を明かされる。 **たんとうちょくにゅう【単刀直入】**▼単刀直入な(建言。質問)。単刀直入に(謝る。尋ねる。性的な関係を求める。用件を切り出す)。 **としうえ【年上】**▼年上だろうと容赦しない。年上の(お兄さん。お姉さん。女に甘える。女性にもてる。男に心を傾ける。男を好きになる)。年上のように振る舞う。長上と衝突する。長上に逆らう。長上の指示を仰ぐ。長上めいたことを言う。上級生に手向かう。上級生を笠に着る。年下の(男を愛する。女を贔屓幻ぃする)。自分より年長に見える。年長の人門に物怖鋭のじせず応対する=藤沢。年長者が目下の者を諭す。年長者のようなだめる口調で言う安岡。年長者を敬う。目上の人に(敬意を払う。敬語を使う)。目上の人を(かばう。笑わせる)。 **とつぜん【突然】**▼突然(足元から風が巻き上がる。叫び声をあげる。降って湧いた危難。見知らぬ男が現れる)。仕事中に突然倒れる。何も言わずに突然いなくなる。突然の(あわただしい出発。轟音ぶらに仰天する。申し出にどう答えていいか迷う)。足元から鳥が立つように(忙しい人。帰途に就く)。俄然(勢いを出す。好奇心が湧く。注目が集まる)。卒爾にっなお願い卒御ながら少々物を訊たずねるが。卒然として(方向を変える。仏門に飛び込む)。短兵急に(たたみかける。突いてくる質問)。予期せぬ天異が突如起こる。突如として(奇声を発する。襲ってくる倦怠感叫从众)。何の前触れもなく(現れる。帰ってくる)。何の前触れもなしに訪ねる。何の脈絡もなくまぶたの裏に浮かんでくる。何の予兆もない。青天の霹靂のごとく事件が突発する=海音寺。青天の霹窓のような事故。突発する(意外事が。問題が)。突発事故が起こる。突発的な(事件。犯行)。発作的な(恐怖。犯行)。発作的に(買う。死を選ぶ)。やにわに(身を起こす。胸に抱きつく。着物を脱ぎ捨てる。四方から飛びかかる)。藪ゃぶから棒に(現れる。言い出す。戦争を始める。無茶なことを言う)。藪から棒の申し出にびっくりする。 **はやびけ【早退け】**▼早退けする(会社を。学校を。恥場を。店を。風邪を理由に)。▼早退する(会社を。学校を。職場を)。▼早仕郷いする(仕事を。畑を。店を)。 **ひとあしさき【一足先】**▼一足先に(行く。帰る。部屋を出る)。一足先を(歩く。行く)。駕籠かごより一足先を走る。一足早く(卒業する。春がやってくる)。一歩先に(出る。手を打つ)。一歩先を(行く。見越す。見通す)。世の動きの一歩先を読む。 **まえから【前から】**▼前から後ろから流れ寄せる人々の群れ。ずっと前から用意している。何年も前からこうしている。何年も前からの知り合い。前々から(覚悟している。知っている。用意してある)。昨日今日に始まったことではない。昨日今日の(間柄ではない。客ではない。仲ではない)。つとに(評判が高い。名が知れわたる)。とうから(承知している。気になっている。見切りをつけている)。以前から(噂のある男。薄々勘付いている)。かなり久しい以前から。ずっと以前から知っている。徴候がかなり以前から存在していた人間。 **ゆうせん【優先】**▼優先する(何にもまして。捜査より事故調査が。家庭より仕事を)。優先順位をつける。優先的に出場できる。▼最優先する(景気回復を。財政再建を。市場安定を。受験勉強を。賃上げを。負担を抑えることを)。 **われさきに【我先に】**▼我先に(外に出る。船に乗る)。我先にと逃げまどう。我勝ちに(駆け出す。しゃべり出す。空席を奪い合う)。三人が我勝ちに責め立てる。見物人が我も我もと押し寄せる。志願者が我も我もと詰めかける。先を争って(買う。飛び出す。水に飛び込む)。先を争うようにして(逃げていく。階下に下りていく)。 <446> # 咲く **あさがお【朝顔】**▼夏の路地を彩る朝顔。朝顔が汚れた紙屑切れのように枯れている=獅子。庭の朝顔の葉が弱まった陽ざしにかさかさと鳴って秋の音を伝えだす―連城。裾が朝顔の花のように広がったフレアースカート=落合。朝顔の茎のように細いしっとりした指=開高。朝顔の花が(一日にしてしぼむようにはかない=白洲。友禅染のように美しい=田山)。 **あじさい【紫陽花】**▼巨大な霧の粒のように咲く紫陽花"曽野。紫陽花の色があざやかに蒼ぁぉい!泉鏡。みずみずしい花の色がそのまま黒土にしたたるように紫陽花の花に雨が降りしきる=曽野。紫陽花ほど碧あおい限=野上。朱を含んだ紫陽花色の夕空が街の上にひろがる=原田康。 **あやめ【菖蒲】**▼あやめが雨に洗われて紫の色を増す佐多。青紫色の菖蒲の花が風にそよぐ=伊集院。白い菖蒲の花弁が闇に淡く漂うように拡がっている高井。あやめの切り花のように花を養う水が根から上がって来ないので水分が不足したような顔つき=石川。杜若跡だっがぞっくり揃った芽を出す=宮本百。 **うのはな【卯の花】**▼白い清げな衣を着た卯の花島崎。卯の花が真っ白に咲いている垣=森殿。卯の花の白く仄にのめくのも一段と風情を添える芥川。雨が卯の花を腐くたした後すぐ梅雨に続きそのまま惰性のように降り続ける!有吉。 **うめ【梅】**▼寒さにめげず気品高く咲く梅"宫尾。梅が(蕾20日を膨らませる。今を盛りと咲き匂う(火坂)。白梅が二三輪ほころび、日はうららかで春の気配がそこはかとなく漂う。瀬戸内。梅に鶯いて。梅の(花びらがはらはらと散る。実を焼酎に漬け込む。新しい枝が直立して長く高く天を刺し貫こうとする愉ぐりのように突っ立つ佐藤春。根元に春の闇が溜まっているあさの)。微風に乗って梅の香が匂う山本周。梅の花がちぢこまるほどの寒さ=曽野。盛りを過ぎた梅の花が雨に潘れて泣くように見える=田山。ちらほらと綻こびた梅の花のかすかな香りが流れてくる=福永。春にさきがけて美しく梅を咲かす"宮尾。紅梅の枝に蕾が綻びかけて点々と鮮やかな紅の色が散っている高井。しいんとした午ぃぃさがりの弱い陽ざしのなかで紅梅の花弁が鮮明"立原。野梅が細長い家の飾りのように青澄んだ白い花を綻ばせる=円地。 **きんもくせい【金木犀】**▼金木犀(黄色い電灯が輝いているように見える=山口。まわりの地面にまるくおが屑でも扱ょいたように橙色ばい従の落花を散らしている黒井)。夥さびしいほどの金木犀の香りが風に乗って漂ってくる=小池。ほのかに金木犀の匂いが漂う=丹羽。 **くさばな【草花】**▼草花(名もない。野に咲く)。庭の草花に水をやる。草花や小鳥の噂だぇりに気持ちを託す辻井。草花を(植える。育てる。摘み取る)。雨が草花を洗う。押し花でしおりを作る。 **くちなし【梔子】**▼くちなしの花が七月の月明かりに青白く浮かんでいる=伊集院。梔子のにおいが強くて、ドアをあけると車の中まではいってきた=田辺。 **コスモス**▼コスモスが(いっぱいに咲き乱れる。燃え立つ炎のように揺れる=石川。優しい花をつけて風に揺らぐ佐多)。コスモスの残りの花がうらぶれて倒れている庭石川。都会の花版にも可憐れなコスモスのほころびる頃=荻野。そこここに咲き乱れている野菊やコスモスを手当たり次第に採る=堀。 **こばな【小花】**▼真白い小花が柔らかい紙を散らしたように咲く高樹。小さな花が風で揺らいだような弱々しい微笑み高橋三。 **さきほこる【咲き誇る】**▼咲き誇る(花々が一面に。今を盛りと。常に季節の花が。花が見渡す限りに)。咲き誇る花のように美しい二十の処女姉と=海音寺。▶競う(百花が妍けんを。万朶さんの花と花が色を柴田外)。▶咲きこぼれる(庭に花が。花がいっぱいに)。野に咲き満ちている花。花が咲きあふれる(地に。枝々に桜の)。花が爛漫もんと咲きあふれる。百花繚乱の春。花が爛漫と咲き競う。花がきれいに咲きそろう。花が咲きそろう(いろいろな。花壇の。春の)。百花齐放の(活気に満ちる。華やかさ)。 **さきみだれる【咲き乱れる】**▼咲き乱れる(庭に薔薇ばらが。花が一面に。花が山腹に。花が爛漫もんと。 <447> 百花添乱と)。花が咲き乱れる(今を盛りと。様々な美しい。野山の。文字通り百花縦乱という具合に数えきれないほどの種類の人倉橋)。一帯の湿地にいろんな高山植物が花咲き乱れる=川端。いろんな種類の草花が乱れ咲く。百花乱れ咲く盛観を呈する。 **さきむらがる【咲き群がる】**▼桜が頭上に咲き群がる。花がうっとうしく頭上に咲き群がっている=伊藤斃。白い花が足元に群れて咲いている。▼むらがり咲く(小花が。花が)。 **さく【咲く】**▼咲く(花が美しく。小さい花がぼちぼち。子どもたちの笑い声が=石田衣。赤い花が減毯ふぅのように遠藤。泥中に一輪の清冽な花として誇り高く隆。花がそこらいちめんに夢の中からでも薫りだしたというように宮沢)。▼花が咲く(枝いっぱいに。親子喧嘩州んに。苦労談に。心に。昔話に。色とりどりの。ちらりほらり。年百年中。万朶ぶんの。当たり障りのない世間話に。ばあっと少女の顔に。お母さんが笑うとばっと子らの心に『住井。進水式の薬玉が対のように空いっぱいに白い羽毛の=阿刀田)。花が咲いている(あちこちに。そこかしこに。道端に。ひっそりと)。顔に花が咲いたような陽気な表情"中村真。胸の中に花が咲いたような美しい昂奮ぶら岩川。花が咲いたようにほほえむ有鳥。お天気にだまされて花が咲くほどの暖かい日が続く=山本有。アベックばかりで花が咲いたみたい=石坂。果てしのない会話が花が咲いたような賑わいを呈する栽原來。岩場を登っている人のえんじ色のジャンバーが岩に咲いた花のように見える=新田。花の美しさを野に咲いたままで愛ぁ』でる=火坂。花と云ぃう花が一度に咲いて呟まぶしいほど芝木。丹精こめて咲かせた花。▶咲かせる(返り花を。もう一花)。▼花を咲かせる(積もる話に。盛りの。爛漫もんと。淫靡いんなひそひそ話に萩原乗)。すでに咲きかけた花のようなところがある少女=武者小路。花が咲き匂う。▼咲きはじめる(春の花が。花々が一斉に。花がちらほら。花がぼつぼつ)。花咲き匂うような人生"掘。花火が夜空に花咲く。花が(色を競う。笑む。枝先にほころび始める)。最初の一輪がほころびる。一面春の花盛り。花盛りの花壇。庭じゅうが花であふれかえる。花を枝いっぱいにこびりついたように付ける。年百年中花が絶え間なく咲くように灌木を幾重にも植える『有吉。花が咲いたような(配色。華やかな笑顔。明るさをもたらす女性"石坂)。ばっと音立てて朝開く花の割れ咲くような笑顔・横光。美しい女の顔というものは一輪咲きの花のように浮き上がって見えるもの開高。遅咲きの花。早咲きの花。八重咲きの花。 **さくら【桜】**▼桜が(花嵐に舞う。見頃を迎える。七分咲きになる。山裾にたなびく。いかにも雪に洗われて咲いたという感じ=太宰。狂ったように咲き誇る隆。咲き乱れ全山雲の林のように見える!白洲。静かに淡く咲く太宰。バッと咲いたような娘"戸板)。岸の桜が白じろと水に影を映す三浦絵。雲ひとつなく晴れ上がった空を背景に満開の桜が時折花びらを散らせてくる!高橋涼。電灯に照らされて桜が真っ白に闇の中から浮き出す=伊藤彩。三分咲きの桜が幔幕蛙んをめぐらしたよう梅本。落葉松劫の小枝から霧氷がばらばら散って桜の落花のよう川端。枝いっぱいに浴れるほどつけた花を肌にホロホロと散らせる=中沢。桜は散りぎわが美しい。桜の散る(春たけなわ。道を散歩する)。桜の(樹の下には屍体したが埋まっている"梶井。精かと見まごうほどの美女の舞姿!白洲)。満開の桜の下を歩く。夕景の桜の美しさ。遠山にかかる白雲が散った桜の形見のように見える。白洲。春ではあるが桜の蕾るにはまだ固く暁の風は真冬の冷たさを持っている=井上靖。黄昏終於の夕需いらが桜の白さをうす紫に滲ませ抒情的なヴェールを着せかける"円地。吉野の桜も遠くからながめれば雲のようにつかみどころがない!白洲。山腹に桜の花が白い。枝々に桜の花が白い渦のように咲き溢れる=円地。そこここに散っている桜の花が点々と白い色をこぼす芥川。ちらほらと桜の花がほころび始める歩枕。平凡な風景が桜の花に彩られて豪勢な春色を演出する"森村、山やまが見渡すかぎり白雪のような桜の花にうずもれる!白洲。姉妹が全員集まり桜の花が咲いたような賑わいを呈する萩原葉。霜に美しく灼ゃけた桜の葉~梶井。笠のように垂れかかっている葉桜森暖。梅雨時の桜の葉のうっとうしく重なったような懊鬱泌=円地。雨に洗われた桜若葉がほのかにかぐわしい幸田文。全山花の雲のかかった山の景観~永井路。見渡すかぎり花の雲に包まれる=白洲。満開の桜が(うららの春霞の下で眠くなるような色合いで連なっている=阿久。低い雲のように咲き誇る=桐野)。桜色した天の網をかぶせる=武田瓦。花の天井が深々とかぶさる=高樹。春にはずーっとむこうまで淡い桃色が霞んでみえる"干刈。春爛漫もんの(桜吹雪の中。満開の桜)。桜前線が北上する。桜吹雪が(舞い散る。おびただしい数の蝶の乱舞に思える=飯田)。桜の花びらが(小さな蝶のように地面に舞い降りる小川。足もとに散り敷いて雪のように干刈。はらはらと舞い散る藤田。春風に乱れるように美しく舞う白洲。ひとひらふたひら空を舞う梅本。ゆったりと風に揺れている夢枕)。こぼれた桜の花びらが貝殻のように白く光る氷川。夜風に桜の花びらが踊らされている驚沢。桜が盛大に花びらを散らす森村。桜の花弁を貼りつけたような淡い色の指先"高樹。桜の花びらのように(薄くて頼りない赤ん坊の唇萩原葉。もろく繊細な表情"小川)。▼花明かり(幻想的な。ほのかな)。花明かりを頼りに散歩する。もっこりと八重桜が咲く。夜気にうなだれた八重桜が夢のように仄白1720く咲く= <448> 海音寺。八重桜のごとき大房雪がほとほとと降る=綱淵。満開の八重桜の大木が大きい花傘のように枝をひろげて咲き満ちる"円地。牡丹桜にんが陥まりのように咲き集まった花房をいくつとなく重ねる=円地。 **ざくろ【石榴】**▼石榴の花が(灯火に呼のように咲く=川端。火の燃えるように赤く咲く田山)。石榴の朱の花が雨に持ったれる=三島。 **さるすべり【百日紅】**▼サルスベリが鼈甲、ぶつのようにつややかにねじ曲がる=長野。さるすべりの花がほってりと紅く咲いている=江國。百日紅の枝がすべすべして赤ん坊の肌のよう福永。塀の上からはみ出している百日紅の淡紅色の花高樹。 **シクラメン**▼シクラメンの花びら(兎約との耳のように背後にそり上がった牡丹色の"円地。蝶の羽を赤く染めたような「高橋和)。 **しゃくやく【芍薬】**▼立てば芍薬座れば牡丹心だ歩く姿は百合の花。女の新しい愛が花弁をもぎ取って蕊しべだけになった芍薬のように川端。 **すいせん【水仙】**▼水仙の花のような清い感じの女性!佐多。無邪気そうに見える水仙のような女の子=開高。 **ぞうか【造花】**▼原色の毒々しい造花"原田爽。新緑の中を造花生花のさまざまの色彩がさながら絵のように対照を為す=田山。桜の老樹が枝の先に造花のような小さな花びらをくっつける=山本有。造花のようにもちがいい獅子。 **たんぽぽ【蒲公英】**▼あぜ道にタンポポが群れている"あさの。黄色の絵の具を撒き散らしたようにタンポポが咲いている=辺見。タンボボの(綿毛が舞い上がる。綿帽子を飛ばす=住井)。微細な粉と化した鏡がタンポポの種子のように風に乗って飛ぶ=阿刀田。瞼の裏に子供のころのさまざまな生活の姿がタンポボの綿毛のように浮かんでは消える"石坂。たんぽぽ色のろうそくの光に顔がうっすらと染まる=北村。 **ちゃのはな【茶の花】**▼なんの奇もないながらかすかなさびのある茶の花"中。野道の茶の花が薄闇の中に際立って白く見える=横光。 **つつじ【踯躅】**▼庭が燃えるような緋色のつつじ川端。黄色な布を掩ぉぉうたような長塚。目にしむような刈りこまれたつつじが草をはむ羊のような姿でところどころにちらばる=村上春。庭のつつじが悪魔の血のように腐っている=川端。ツツジが火のついたような紅い花を咲かせる=曽野。踯躅が浅緑のあいだを彩る=立原。白い岩の上に目のさめるような踯躅が古風の屏風の絵にでもあるような鮮やかさで咲く徳田。丸く刈り込んだud躅にひっそりと陽が当たる=高井。つつじの花が満開になる。山野につつじの紅が映える津本。ツツジの赤が目にしみるほど鮮やか!宮部。大きな赤いくちばしを並べている様子は満開のツツジを見ているよう=本多匪。 **つばき【椿】**▼竹藪欲湖の中に椿が紅く咲く=田山。椿の(花がぽたぽたと赤く落ちている=鈴木三。花のようなふっくらした唇"立原)。どっしりと重い露けく軟らかい無数の花びらが降ってくるような快さ谷崎)。毎年のように椿の花をつける静かな坂道"島崎。汐水礼ちで荒く洗われた寒椿が目覚めるばかり赤い感。 **つぼみ【蕾】**▼ほのかに水を含んだ驚。つぼみがほころぶように笑う光原。枝に蕾が鈴なりにつく。花の蕾が日増しに膨らむ。改札の向こうで手を振る彼の姿が蓄だった私の心を一気に花開かせる荻野。将来性のある優秀なつぼみに着目する"石坂。胸の蕾に唇を押しつける笹沢。蕾のような幼い子供の唇島崎。固い蕾のようなところがある少女=武者小路、簡素な白いブラウスの答はのような美人佐藤愛。蕾のように丸くなってかたまる=機光。未来は封じられた番のように開かない先はしかとは分からない=夏目。 **なでしこ【撫子】**▼撫子が可憐ふぇ艶美な花をつけ唐渡りの錦繍を引きわたしたように美しい"海音寺。小川の縁にはもも色の石竹の花が草にまじって咲いていた佐多。ビロードのような石竹の花"中。 **つきみそう【月見草】**▼夜目にもほっかりと匂うている月見草=長塚。月見草がはかない黄色を点在させている=大岡。大待宵草比心住約が結び目をほどくように黄色の花を淡く咲かせた夕暮れ時=落合。 **なのはな【菜の花】**▼菜の花(一面の。春の野を飾って色あざやかな黄の=飯田。眼もさめるように黄色い"田山)。菜の花が揺れ動く心に歩調を合わせるように海風に震えながらどこまでも続いている=曽野。菜の花と麦の青葉とで銅を敷いたような島々=国木田。教会が夥さがしい菜の花に囲まれ黄色い波間に浮かんでいるよう=高樹。菜の花の蜜の緑っぽい匂いが蜜蜂の巣箱の辺りに馥郁心くと香り立つ『有吉。遠眼には油絵の具を流しこんだような黄一色の菜の花も寄ってみると思いがけず疎まばらな痩せた幹と花"檀。莱の花をあしらった吸い物三島。菜の花畑が息も詰まりそうな黄に染まる=辻井。 **ねむ【合歓】**▼合緑の葉が細かい影をハッキリ道に落としている=中島愛。合歓の木が(枝や葉をさしのべて桃色の綿毛を持った花を盛んに散らす井伏。水の上に思うさま枝を広げる"三島)。合歓の木のうす紅いぼうぼうした花"中。錆びた水に夢見るような赤いねむの花が微かすかに映る=田山。日暮れ時の合欲の木のようにしおれる=壺井。 **はぎ【萩】**▼萩が今を盛りに咲き乱れる=田山。萩の(花片が散りこぼれて波の上に斑雪似だのように流れる=福永。花がほの白く咲きこぼれる逑月夜=菊池。葉のふくらみを思わせる幼児の肌"竹西。紫色の花がぽつんぽつんと咲く=山本一)。 **はす【蓮】**▼枯れ果てた道が砲火に撃ちのめされた武器のように鋭い線を薄闇の中に残している=永井肌。逆 <449> の花が開くときにするのに似た大きな接吻謎の音阿部。池が逆の花に埋めつくされる=北原。大きな瞳が青い蓮の花びらのようにりんとみんなを見る宮沢。濃い緑色となった蓮の葉が鬱陶しく重なり合う"北原。夕立に珠を転ばす蓮の葉永井荷。紅蓮白蓮はんびの造り花が族々そうと咲きならぶ!芥川。重苦しい色の夕焼けの名残が蓮池以げの面をぼんやり浮き出す!水井龍。車輪のように大きい真紅や雪白の蓮華が騒々ち(と生える菊池。造り花の蓮華にふる日の光の音さえ聞こえるくらいしんと静まり返る芥川。 **はな【花】**▼秋の花のような娘"戸板。山に振りそそぐ秋の日光そのもののように花が光る=川端。花(名も知らない。遠くから眺めているだけの高嶺かの舟橋。マロニエの蠟燭型前足の白い=加賀)。花が(醸し出す季節感。雨の足に叩かれる=鈴木三。はずかしそうにうつむいたという風情の女性"戸板。崩れるように笑う"獅子。散るような死を望む"西木。わびしく散り果でる鈴木三)。花壇の花が日増しに伸びて色彩を増す谷崎。娘の巨大な群集が光をめぐっているように花が翅ぃぁを広げて灯に透かされる=伊藤整。カンナの花が日に燃える=三島。微風が吹いてくると白い花がいっせいに散って雪のよう~開高。裁ち落とされた小枝の切り口の白さが細かな花を散らしたように映る高井。机上の清楚ごいな一輪の花といった存在の女性"阿部。花ならば蕾はの年頃。蝶々が花に止まる。路傍の花に対するような淡々たる一瞥菊池。きれいな花には棘とげがある。花の命は短い。春の村は野の花の匂いに明け暮れる住井。水の低きにつくが如く 花の梢につくが如く自介石川。どこからか花の香が漂ってくる。香り高き花の如く小鳥や蝶に※い寄られるような人=里見。花を(欺く美人。髪にかざす。踏むようにそっと遠ざかっていく=連城)。男に花を持たせる。錦上更に花を添える。仏壇に花を供える。道端の花を摘む。コブジが白い炎のように無数の花をつけている三浦し。目鼻立ちのはっきりした南国の花を偲しのばせる面差し=阿刀田。▼花を飾る(出窓に。枕元に)。雪のような白い花"塩野。雨に烟いしってぼんやりと白い花がぽつぽつ浮かぶ志賀。美しい水際の白い花みたいな指"村上側。美しい中にも白い花のように清楚な趣きの勝った女"円地。大輪の花のような色香を発する=光原。花のごとき嫁を娶っとる=里見。花のような美しい笑い隆。純粋培養の花のような危うさのある少女!中村真。肉の厚い桃色の大輪の花のような女性=円地。人間の肺から出たとは思えない甘い花のような薫りのする息人谷崎。花のように(あでやかないでたち!白洲。意志のない存在"大江)。桐きりの花のように典雅でつくねんとした美しさが匂う女性"岡本。一茎の花のように群集の中に目立っている項にも合崎。真っ青な空におとぎ話の花のように落下傘があやしく美しく揺れる=長崎。水をかけられた花のようによみがえった自分を見出す瀬戸内。風に吹かれた落花が点々と幾ひらもこぼれている芥川。大ぶりで華のある美人。華のない影のうすい存在=向田。 **はなたば「花束】**▼花束(歌手が引退するときみたいな果てしなくこっつい=田辺。見るからに高価な物すごい!高見歌)。花束にかぶせられたセロハンがカサカサ音を立てる鷺沢。花束を崩したように廊下へ座ってしまう“村上元。死者に花束を用意する。コットンブーケを抱いた花嫁!内館。可憐なブーケ。 **はなだより【花便り】**▼四季の花便り。花便りが届く。花の便りも終わりに近いある日=船山。花信が届く。期せずして各地の花信に接する=阿川弘。 **はなびら【花びら」**▼花びらが(上から舞い落ちてくる。ちらりほらりと降ってくる。はらはら舞い落ちる。ひとひらふたひら空を舞う。ひらひらと舞い散る。闇の中に白く舞う)。小さな紙片がひらひらと花びらが舞い込むように落ちてくる=柴田剣。地面に花びらが蝶の死骸のように散り広がっている=藤田。潘れた花びらが口紅のようにつやつやとする"小川。▶びらに(露を浮かべる。微妙な濃淡の差がある=飯田)。花びらの(雨を降らす。煎りの中にすっかり埋まってしまったような夢見心地合崎。中に包み込まれたように心地よい泉鏡)。白い花びらをむしって撒き散らしたような雪の大群人倉橋。風が花びらを散らす。唇が花びらをくっつけたようにつやつやとする=石森。平凡な日常の人生に暗示の花びらを撒きちらす"岸田。花びらのような薄い紙"深沢。青磁の大皿に花びらのようなふぐの刺身がひろがる落合。色褪からせた花びらのように青白い頰「海音寺。唇に引いた紅が花びらのように赤い“新田。修学旅行の少女たちが白い花びらのように群れる=原田康。手が、甲を下に掌17090を上に、錠加こびかけた花びらのように柔らかに握られる谷崎。雪片が花びらのように漂う三好意。花片が散りこぼれる。花の糌気が抜きとられたようにぐったりと花弁が勢いを失う“有吉。水色の花弁を持つ花の水々しさを見せるような女の表情!高橋三。花弁がそよ風に揺らく。桜の花弁がはらりと舞う。雪柳の小さな花弁がひらひらとこぼれる=綾辻。花弁が散る(はらはらと。吹雪のように)。花弁のように怪い体岡本。険だぶが花弁のように閉じる=大阿。 **はなひらく【花開く】**▼百草花開く季節“石川。花冠が開く。花が(蕾を開く。ぱっと開く。ひっそりと開く。光線のように眩まぶしく開く=松本)。夢想の花が開く=山田風。バッと花が開いた感じの美しさ=源氏。花が開いたような笑顔壺井。色とりどりの水着が花のように開く"住井。黒い花のように蝙蝠に傘が開く=大野透。祝賀会が花を開いたように賑やかになる=黒岩。テーブルが花を開いたように並ぶ三浦穹。 <450> **はなぶさ【花房】**▼ミモザの黄色い花房がカウンターに淡い影を落としている=落合。あるかないかの風が花房をかすかに揺する=永井路。 **はなふぶき【花吹雪】**▼風に舞う花吹雪。花吹雪が散りかかる。花吹雪となって舞い散る。風を受けた桜が花吹雪となる。花吹雪にまぎれて姿を消す。 **ばら【薔薇】**▼今を盛りと咲いているバラ。咲ききってだらしなく花びらを緩めた薔薇と宮本輝。ビロードのような薔薇が咲き誇る=檀。薔薇の(花束を抱える。ほみがどれ、立定規で計ったように大きさがそろっている。花がわがもの顔に乱れ咲く"佐藤巻。花のしとねにくるまる=瀬戸内。めくるめくばかりの重い香り佐藤春)。霜じめりした朝の薔薇の匂い林美。綻祖こびかけた薔薇の花みたいな耳三浦哲。庭に咲く薔薇より艶あでやかあさの。薔薇を(壺に活ける。窓辺に飾る)。開きかかった薔薇のような笑みが唇の上に開きかかっている死に顔「佐藤春。目がバラのように酩酊いする=光瀬。大輪の薔薇のように艶やかぃあさの。野イバラが茂みを作り白い五弁の花びらを慎ましく広げる三浦し。線香花火のように赤い実を散らした野バラ“干刈。処女の昨ひとを見開いたような野薔薇高崎。 **ひがんばな【彼岸花】**▼赤い彼岸花が乱れ咲く。あたり一面血が燃え立つように彼岸花が群生する倉橋。▼咲いている(赤い海みたいに曼珠沙華にんが灰谷。点々と野火でも燃えているように赤いまんじゅしゃげの花が=椎名誠)。真っ赤なのにどことなく陰気な花宮部。曼珠沙華のように紅い唇をした女性宮部。 **ひまわり【向日葵】**▼向日葵の(天きな花。種を食べる)。ばっとひまわりの花でも咲いたような感じで明るく清潔に笑う椎名誠。嬉しく咲き誇る向日葵を思わせる日傘=阿久。向日葵のような(明るい娘。大仰な帽子)。ヒマワリのような笑顔人谷川。少女が向日葵のように立っている=堀。 **ふじ【藤】**▼藤の(つるが虜に。を捕らえた綱のように松の幹をぐるぐる巻きに巻く佐藤巻。花房のように小島が連なる!白洲。紫色が澄んだ月光に浮かんでほのかな夢のよう川端)。池の水にさわやかな星の光が落ちて散り残った藤の匂いがかすかに漂ってくるような夜芥川。 **ぼたん【牡丹】**▼夢の国の女王のごとく牡丹が咲く=中。牡丹の(大愉が開いたように笑顔が華やかな美人佐藤愛。花が咲いたように絵羽錦紗を美しく着飾る萩原薬)。いろいろに咲き乱れた牡丹の花に今も昔の夢に酔うかのように幾羽の蝶が舞う中。娜好忙从たる夫人の姿が牡丹の花のように輝く=中島敦。まさに開かんとする牡丹の花のような少女森嶋。唐獅子牡丹を背中一面に彫る=奥田。紫に白牡丹を染め抜いた被布川端。唇が緋牡丹の苦い『みを置いたように山本周。牡丹色の夕焼け。 **まんかい【満開】**▼笑顔を満開にする荻野。満開の花が咲き乱れる。色があせるのを待つばかりの満開の花"石坂。満開の花のような雰囲気!萩原痰。 **もくれん【木蓮】**▼木蓮の花弁が白い船のように落ちて来る=川端。暑さを感じさせる黄ばんだ光が狭い庭の縁に植えられた貧弱な木蓮の葉にべとつく=黒井。白い木蓮の花のように白い横顔"佐藤春。塀の上から木逆の白い花が覗のぞいている=藤沢。林のところどころに木蓮らしい白い花が夢のように浮き上がる"横光。白木蓮が奮幻』をどっさりつけた枝をひろげている三浦哲。 **もものはな【桃の花】**▼桃の(花で雛壇の両端を飾る。つぼみが今にも咲きかけているような感じの少女"武者小路)。水につかった手足が薄紅色に染まって花芯だけくれないのほかしを刷いた桃の花を見るよう=杉本。 **やまぶき【山吹】**▼豪華な黄色い花をつけ山吹が重そうに枝垂しだれている三浦し。山吹の(黄色が目に飛び込んでくる=藤田。黄金色の花びらが石段に散って金箔を撒きいたように輝く“林京。花の黄色が目に沁しみる=舟橋)。ボンボンと山吹の芯を抜くような音がして白い花火が弾ける!向田。 **ゆうがお【夕顔】**▼夕顔の(花が薄暮の中にはっきりと際立って見える=田山。花ぐらいにうすく白粉弦にを襟に刷はく吉川。花のような照り色のシャンデリア=岡本。花のように静かに咲いている女"川端)。 **ゆり【百合】**▼ユリの雌蕊泌しのようにどす黒い赤い色池田。百合の匂いがどこからか忍んでくる吉川。白い百合の花のように幽婉いらな顔「海音寺。電灯が百合の花がしぼむように消える"有局。包み紙を百合の根を剣がすように一枚一枚むいて行く。有局。暮れてゆく谷間に咲いている百合のような女人辻井。百合のように美しい娘辺見。山百合の花が点々と白く浮き出す“新田。色の白い山百合の花のようにやさしく香り高い感じの女性"石川。 **ライラック**▼ライラックの花束のような初夏の明るさ川端。咲き匂うライラックの花に目をとめる三浦綫。ライラックの花が(白孔雀しくの尾のように贅沢だいに置かれる=川端。紫に盛り上がって咲いている=三浦絵)。ライラックよりも蒼ぁぁさめる=川端。薄紫のリラの花。 **れんげそう【蓮華草】**▼田に追華草が敷いたように見事に咲く=田山。可憐ふぇな赤紫のれんげそうの花=飯田。小さなぼんぼりのようなレンゲソウの花があちこちにぽっぽっと咲いている=灰谷。野面をうずめている紫雲英げんの美をしきりに褒める"山岡。巡華の咲く田皿が遠くまで紅に煙るよう辻井。蓮華の色が美しい薄暮れの色と融とけ合う松浦。げんげが赤い毛氈もんを敷いたように綺麗に咲く=田山。 <451> # 叫ぶ・怒鳴る **うなりごえ【唸り声】**▼唸り声が鼓膜を叩く。肌たこの唸り声が空に聞こえる=徳田。ブルンブルンと飛行機の唸り声が聞こえる=槌。猫が宇宙を呪うような陰気な唸り声で鳴く=武田癸。空気中に放電してゆく低い唸り声に似た音響"吉行。うーんと唸り声を発する。蜜蜂が群がりぶんぶん唸り声を立てる堀。 **うなる【唸る】**▼唸る(耳元でうるさく蚊が。肌がごうごうと。敷蚊やぶが耳元でぶんぶんと)。矢が唸って飛ぶ。唸りながら石が転がり落ちる。巨大な闘ぶぃを吹くような噴火口の唸りぃ宮本百。様々な音が混じりあったやわらかなうなりが雲のように街の上に浮かぶ"村上脊。唸りがあたりの空気を間断なく嫉立礼ったせる"三島。エンジンの低い唸りが聞こえる。蚊が渦を巻いてうなりを立てている=柴田跳。凄封じい唸りを立てて町全体が燃える=辻井。空を遠雷のような唸りを伴った砲声が渡る「大岡。脳が唸りを上げて急回転を始める=横山。車が唸りをあげて突っ走る。吹雪がうなりを上げて襲いかかる三浦綾。風がひょうひょうとうなりをあげる=日野。 **うめきごえ【呻き声】**▼うめき声(おそろしく気の抜けた気味の悪い!佐多。喉をしめあげられたような勝目。腸がさをしぼるような藤原。身の毛のよだつような"白洲)。地獄の底から洩もれるような呻き声菊池。うめき声が夜をのたうちまわる=船戸。悪魔のうめき声よりもっとおぞましい声内田巻。うめき声をあげて身もだえする。苦悶从ものうめき声を漏らす。痛みを耐える獣のように呻き声を出す=中上。「むう」という、ふんづけられたガマガエルの発するような叩き声をたてる荻野。 **うめく【呻く】**▼呻く(悪鬼のように。感に耐えたというように低く=山本周。身を絞るように=山本周)。▼うめく(歯を食いしばって。傷ついた獣のごとく=中島救。腹の底から絞りだすように=佐藤多)。うめきながら床を転げまわる。ひと足ごとにうめきながら歩く。聞く耳に刺すようなうめき。幸田文。地獄のうめきに引きずりこまれる=島尾。吠えるようなうめきを続ける志賀。寒風が呻きをあげて渦巻く=徳永。血を吐くような叩きを洩らす藤本。悲痛な叫きを含めた言葉を耳にする=柴田泌。呻くような嘆息が出る=人米。低く叩くように言う藤本。苦しみのあまりうめき叫ぶ。自然が粉雪を煽りたてて処きらわずたたきつけながらのたうち廻って叩き叫ぶ。有房。 **うわずる【上ずる】**▼上ずる(声が怒りに。声が涙で)。妙に上ずった高い笑い声。興奮に上ずった声で叫ぶ。声が緊張して上ずっている=柳田。▼声を上ずらせる(感動に。興奮に)。 **おおごえ【大声】**▼大声(森とくような。吼えるような。北風に逆らって物を言うような非常な三島。相手を飛び上がらせるほどの河野。肌に負けまいと張りあげる=連城。彼方に広がる都会のバノラマの隅々にまで響き渡るような=原田宗。喉の石が飛礫ごぶとなって口から飛び出したような連城。腹に響くような"五木)。大声が(鼓膜を叩く。室内に響く。耳を打つ)。ビーンと耳をしびらすほどの大声があたりいっぱいに炸裂さくする=杉本。大声で(威勢よく言う。歌を歌う。げらげら笑う。助けを求める。子供を叱りつける)。あたりかまわず大声でしゃべる。やたら大声で喚ぁぁき散らす。家中に響き渡るような大声で呼びかける宮尾。鼓膜が破れるほど大声で怒鳴る連城。怒鳴りつけるように大声で妻に用事を命じる=横光。山の雷のような大声で叫ぶ=清水俊。猟犬が吠えるように喉を反らして大声で呼ぶ=田島。ロックコンサートの会場にいるときのように大声で話す=小池。大声を(あげて泣く。出して食ってかかる)。うかつに大声を出せない。風に負けまいと大声を張り上げる。びっくりするほどの大声を出す。やけくそで大声を発する。▼聞こえるような大声(車両中に。向こう三軒両隣に=篠田)。雨音より騒がしい声=連城。騒ぐ声が湿った土地の底に吸い込まれていくかのように声が嵐のように聞こえる"田山。堰せきが崩壊するふうな声藤本。高頬へ平手打ちをくれるような烈にげしい声"山本周。建物が崩れるほど凄すさまじい声で喚く=芥川。泣き出す(引き裂くような大きな声をして内田百。火のつくような大声で=円地)。▼張り上げる(胴周声を。蛮声を。あたりに響き渡るような声を腹に力をこめて大音声を=飯田)。割れるような地声で引導を渡す。水上。▼大きな声(高い天井に一直線で届くような小川。人が振り返って見るほど"新田)。高声に(語り合う。しゃべりちらす)。思わず声を荒らげる。声を限りに(叫びたてる。名を呼ぶ。わめく)。声量が生まれつき登高。豊かな声量で絶唱する。豊富な声量で音吐朗々読みあげる=坂口。声量のある歌手。藪ゃぶから棒に大音声にいわんを発する。声が一段と高調子になる。高調子の(会話。話し声)。▼胴周声(潮風に荒びた。やぶれかぶれの)。胴問声の猛々しいわめき。どら声を張り上げて話す。ちっぽけな痩身のどこからでると思うような破れ鐘洳址の声=坂口。わざと怒りつけるような破れ鐘の大音声=坂口。割れ鐘のような声が落雷の直撃のように脳天をおそう飯田。破れ鐘のような(大きな声。声が鳴り響く)。 **かけごえ【掛け声】**▼掛け声(客席後方の壁に突き刺さるような鋭く透る=井上ひ。鶏がわめき合っているような=飯田)。威勢のいいかけ声。掛け声がリズミカルに空に散っていくように耳を快く打つ藤枝。待ってましたの掛け声が小屋中に響き渡る=高橋克。かけ <452> 声だけでなかなか進まない。よっこらしょと(腰をおろす。声をかけて立ち上がる。荷物を担ぎ上げる)。 **かなきりごえ【金切り声】**▼宿屋中に響き渡るに違いない金切り声=川端。金切り声が鼓膜をつんざく。病棟中に響き渡るような金切り声で喚ゃぁく佐藤愛。叫びあう女の金切り声を耳にする。興奮して金切り声をあげる。火事場を見つけたように金切り声を上げる安岡。 **かんせい【喚声】**▼巨獣の咆哮泊りにも似た喚声三好微。喚声が(ひっきりなしに聞こえる。冷たい夜気を引き裂く=井上靖)。わっと喚声が上がる。獣の雄叫びじみた喚声が渦巻く三好旅。頭のてっぺんから出るような喚声をやたらにあげる"阿川弘。 **かんだかい【甲高い】**▼甲高い(乾いた笑い声。音に顔をしかめる。声を張り上げる。明らかな声をあげる。声でむりにつくったように笑う」清水俊)。頭のうしろから噴射するようなおそろしくカン高い声をだす=椎名滅。細く甲高い声を絞り出す。横から甲高い声が飛んでくる。▼甲高い声(苛立心らった。上ずった。女のように。怪鳥が法のように。突拍子もない。びりびりした。からかうような。きんきんと響く。頭の天辺にいから発するような悲鳴に近い!隆)。甲高い声が(尾を引く。癇かんに障る)。甲高い声で(言い放つ。叫ぶ。まくしたてる。命令する)。▼甲高い声で笑う(出し抜けに。泣き声のような=日野)。甲高く鳥が鳴きかわす。犬が甲高く吠えたてる。ベルが甲高く鳴る。声が甲高く(尖る。夜の空気に突き刺さる=高尾)。一オクターブ高い声を発する。脳天に穴が開いてそこから吹き出てくるような声=曽野。甲走った笑い声をあげる。唐突に甲走った泣き声がおこる。鶏が甲走って鳴く。子供たちの黄色い声が今までにも増して甲高く響く=加賀。女衆が黄色い声を張り上げる=ねじめ。二言目にはたつみ上がりになる=泉鏡。耳の底まできんきん響く。きんきんと声が立つ。きんきんした(声でどなる。声を張り上げる)。きんきん声で話す。 **こえをはりあげる【声を張り上げる】**▼声を張り上げる(威勢のいい。ここを先途と。精一杯。怒気を含んだ。突拍子もない。必死で。悲鳴交じりの。人目もはばからず。不自然なほど陽気に=村山)。声を張り上げて(歌う。笑とにする。泣き立てる。呼ぶ)。 **こわだか【声高】**▼声高な(いさかい。会話を慎む。話し声が飛び交う)。声高に(叫ぶ。わめくようにしゃべる)。主張を声高に唱える。声高く(快活に笑う。叫ぶ)。子供が声高く泣く。声高々と(歌う。叫ぶ。ののしる)。声高らかに(叫ぶ。宣言する)。▼高唱する(憲法擁護を。辞世の和歌を。核兵器の廃絶を)。傍若無人の高話。だみ声で高話をする。 **さけび【叫び】**▼叫び(断末魔の。怒濤どとのような。耳を躍ぅうする。得体の知れない獣の大江。身体にあるものを力の限り嘔吐はぅしている感じの黒井。叩きつけてくるような=光瀬。血を吐くような"山田屋。動物の吼える声のような野太い=本庄。笑い声のような短く高い=中島致)。子供の甲高い叫びが耳に刺さる=黒井。短い叫びが闇に呑まれて消える"高井。慣感誌从やるかたなく苛立炊らっているような叫びが谷底に反響して駆けまわる=大江。鵲紗終の鋭い叫びが聞こえる=辺見。▼叫びをあげる(素っ頓狂な。感嘆の。狂喜の。悶もだえるような悦楽の大原)。小鳥の悲鳴のような叫びを上げる=佐藤春。 **さけびごえ【叫び声】**▼叫び声(けたたましい女の。一度聞いたら心にそのまましみ込んで一生忘れることができないような悲痛な小林多。コヨーテの啼なき声のようなしだいに高まってゆく哀調のある=清水食。悲鳴とも関ときの声ともつかない=塩野。我が身が引きちぎられたような田島)。叫び声が(唄でも歌っているように続く=遠藤。豆の木のつるのようにするすると伸びる=山田泳)。けたたましい叫び声が広がる。闇を切り裂き叫び声が聞こえる!宮部。叫び声が耳に(飛び込んでくる。焼きついている)。▼叫び声をあげる(歓喜の。きゃあと。ひいっと。わけの分からぬ)。獣のような叫び声を上げる=横山。叫声を(あげる。発する)。雄叫怙たび(勇ましい。けたたましい)。雄叫びがとどろく。雄叫びをあげて走り回る。 **さけぶ【叫ぶ】**▼叫ぶ(下品な言葉を。人民の解放を。戦争反対を。著作権擁護を。声を限りに。あっと小さく。大声をあげて。雷のように。血相を変えて。天を仰いで。怒気鋭く。喉を頃からして。必死になって。吠えるように。烈火の怒りで。我を忘れて。生活環境の改善を。息も絶え絶えに。晴れ晴れと嬉しそうに。ヒステリックに。二声三声続け様に。二人が異口同音に。叱りつけるように。叩きつけるように。懲剛を求めるように。何もかも忘れたように。恥も外聞もなく。身を乗り出して。目を吊り上げて。やけくそになって。咽のとも張り裂けんばかりに里見。荒れ狂う犬のように小鳥。女がいきなり細い首をたてて嘶いなくように一声黒井。顔を猿のようにくしゃくしゃにして泣き声で志茂田。暇みつかんばかりの勢いで=三好~。恐怖に近い狼狽眩いを示して吃どもりながら"中島。心に蓋をして言葉にしなかった無数の思いをこめて落合。子供たちがいっせいに火がついたように阿部。搾りきった生命を声にしたように。有局。狭い部屋がわれるように小局。全身怒りの塊で耐えきれずに爆発したように萩原発。総身の気合を籠にめて隆。血を吐くように声を振り絞って藤本。腹の底からしぼり出すように村上面。胸の内で何度もバカヤローと=南木。喜びに我を忘れて声高く佐山)。叫ぶ声が細い糸になって朝の空気の中を伝わってくる黒井。大声で叫ぶ(池を隔てて。うれしさと懐かしさに我を忘れて立ち上がり~井上ひ)。▼快哉を叫ぶ(心の中で。胸の内で。よくやったと)。声で叫ぶ(百舌もずのような。野獣のような。空に突き抜けるような鮮やかな小川。甲高い悲鳴のような森)。叫びたい(衝動を押し殺す。欲求に駆られる)。うれしさのあまり声をあげて叫びたくなる=小松太。大声で叫び出したいほど興奮する=軍司。叫び出す(夢中になって。火がついたように)。▼叫び続ける(声をからして。怒り狂いながら)。叫ばれる(核戦争の危機が=柳田。創造性という言葉が声高に内橋)。▼叫び返す(負けずに。いまいましげに)。叫び立てる(群衆が。一生懸命に。大声に。口ぐちに。威勢よく。ここを先途と。みんなが和して)。ばかでかい声で叫びまくる。泣き叫ぶ(声を限りに。顔を真っ赤にして。火がついたように隆)。がなり立てる(猥歌やぃを。大声で)。がなる(カラオケを。寮歌を)。大音声に呼ばわる。連呼する(候補者名を。アイラブユーを)。 **ぜっきょう【絶叫】**▼絶叫(獣のような斐すきまじい=山田風。棺っの蓋も開くかと思われるような=有吉)。絶叫が(耳に突き刺さる。耳をするどく切り裂く光瀬)。たまぎるような絶叫が起こる=隆。絶叫に近い歌声。絶叫をあげてもがく。恐怖の絶叫をほとばしらせる。▼絶叫をあげる(断末魔の。血も凍るような大餃。血を吐くような藤本)。▼絶叫する(狂ったかと思われるほど=村上龍。淼音にらに負けじと=横山。最期の力を絞って=中島。とどめを刺すように=海音寺)。絶叫して悔しがる。▼声で絶叫する(あらんかぎりの=海音寺。天地のひっくり返るような=子母沢)。 **だみごえ【濁声】**▼だみ声(耳障りな。潤いのない。のどにひっかかった)。だみ声で(どなる。話す)。少し耳障りな濁声の混じる声=森環。 **とき【鬨】**▼大勢の男たちのあげる岡の声。関の声をあげて攻め寄せる。ウォーッというトキの声が満開の桜を散らさんばかりに響く=阿久。潮騒乱心のような喧噪汁氷の合間を縫って怒鳴り返す。こっちから怒鳴り込むのも業度。鯨波ときが起こる柴田錬。包囲した岡の声のような喧噪计认"岡本。関をつくって突っ込む。兵が吶喊せんして攻めかける。吶喊の声が耳に徹する。喊声以が(とどろき渡る。広場中にとどろく)。淡すさまじい喊声が上がる。地軸を揺るがす喊声が起こる井上靖。喊声と(共に兵が殺到する。銃声の渦巻く修羅場柴田銀)。喊声をあげて突っ込む。 **どごう【怒号】**▼怒号が飛び交う。怒号に居すくんでその場に佇立する=本庄。広問が怒号に包まれる。▼怒号する(ものすごい形相で。何か気に喰わないと喉が裂けるほどに“子母沢。マイクにしがみつくように高橋和)。怒号するような野次が飛ぶ!高橋和。 **どなる【怒鳴る】**▼怒鳴る(頭ごなしに。声を限りに。事あることに。青筋を立てて。色をなして。えらい剣幕で。顔を赤くして。口を歪がめて。声を裏返して。声を吸ゃらして。我を忘れて。聞こえよがしに。殴りつけんばかりに。全身を震わせて。誰に言うでもなく。手をメガホンにして。仁王立ちになって。真っ赤になって。やけくそになって。両手を口に当てて。旱天びんに喘ぁえぐ魚のように徳永。自分の耳ががんとするほど八谷崎。唾を飛ばすほどの語気で三高。とうとう爆発したように徳水。鼻っ面を殴りつけるように=小林多。自棄ゃけっぱちのように内田康)。▼となる(喉も張り裂けそうに=城山。満面朱を注いで=阿川弘)。怒鳴る声が筒抜けに響いてくる。大声で怒鳴る(ありったけの。腹立ちまぎれに。家中の壁がひび割れそうな=大庭)。▼声で怒鳴る(いらいらした。険しい。ものすごい。憎悪のみなぎる。割れ鍮のような。あたりをはばからない甲高い=三田)。騒々しい怒鳴り声が聞こえる=野間。不意に怒鳴り本庄。怒鳴るより声をあげる。怒鳴るような鋭い声で(叫ぶ。話す)。勢い込んで怒鳴るように答える"血相を変えて怒鳴り込んでくる。▼▶怒鳴り立てる(がみがみ。噛みつきそうに。がらがらな大声で)。▼怒鳴り散らす(頭から。荒い言葉で。大きな声で。理由もなく)。▼怒鳴りつける(頭ごなしに。嵩かさにかかって。かっとなって。噛みつく声で。腹立ちまぎれに。ヒステリックに。恐ろしい剣幕で。顔を真っ赤にして。しゃくしゃくして。怖い顔で精一杯に=子母沢。頭からガミガミ=中局災。怒りの捌け口似けにしているみたいに口汚い言葉で三田。我を忘れたように福永)。女のくせにって昔流に呶鳴となりつける=高井。頭に血が昇って怒鳴りつけそうになる古井。とやしつける(出合い頭に人を。部屋を出て行きしなに)。怒鳴られる(背後から大声で。理不尽な理由で)。頭ごなしにどやされる。 **ひめい【悲鳴】**▼悲鳴(傷ついた海鳥が泣くようなかすかな菊池。破れ笛のような哀れな柴田蝕。恐怖を出しきったふうの志茂田。獣の吠え声みたいなあさの。笹笛を吹くような平岩。しなだれかかるような姻にびを含んだ澄んだ=阿部。痰たんがからんで笛のように聞こえる=真継。二メートルの距離を隔てかラス越しにも聞こえてくる物凄い!宮部。脳天に突き抜けるような=隆。喉の張り裂けるような宮部)。悲鳴が(号泣に変わる。夜を引き裂く。耳について離れない。天井と壁にわんわんと反響して重なり合2日野。闇を裂いて聞こえてくる=飯田)。あちこちから悲鳴があがる。女の悲鳴が響き渡る。口から押し殺した悲鳴が漏れる。姿すさまじい悲鳴が聞こえる。おそろしい悲鳴が流星のように走りふっと消える=光瀬。おびただしい断末魔の悲鳴が耳につきささる真継。悶絶もするまぎわの喉からのような死にものぐるいの悲鳴が起こる=大江。幕閣に対しほとんど悲鳴といっていい請願がとどく=司馬。悲鳴とも号泣ともつか <453> **さけぶ【叫ぶ】**叫ぶ(心の中で。胸の内で。よくやったと)。声で叫ぶ(百舌もずのような。野獣のような。空に突き抜けるような鮮やかな小川。甲高い悲鳴のような森)。叫びたい(衝動を押し殺す。欲求に駆られる)。うれしさのあまり声をあげて叫びたくなる=小松太。大声で叫び出したいほど興奮する=軍司。叫び出す(夢中になって。火がついたように)。▼叫び続ける(声をからして。怒り狂いながら)。叫ばれる(核戦争の危機が=柳田。創造性という言葉が声高に内橋)。▼叫び返す(負けずに。いまいましげに)。叫び立てる(群衆が。一生懸命に。大声に。口ぐちに。威勢よく。ここを先途と。みんなが和して)。ばかでかい声で叫びまくる。泣き叫ぶ(声を限りに。顔を真っ赤にして。火がついたように隆)。がなり立てる(猥歌やぃを。大声で)。がなる(カラオケを。寮歌を)。大音声に呼ばわる。連呼する(候補者名を。アイラブユーを)。 **ぜっきょう【絶叫】**▼絶叫(獣のような斐すきまじい=山田風。棺っの蓋も開くかと思われるような=有吉)。絶叫が(耳に突き刺さる。耳をするどく切り裂く光瀬)。たまぎるような絶叫が起こる=隆。絶叫に近い歌声。絶叫をあげてもがく。恐怖の絶叫をほとばしらせる。▼絶叫をあげる(断末魔の。血も凍るような大餃。血を吐くような藤本)。▼絶叫する(狂ったかと思われるほど=村上龍。淼音にらに負けじと=横山。最期の力を絞って=中島。とどめを刺すように=海音寺)。絶叫して悔しがる。▼声で絶叫する(あらんかぎりの=海音寺。天地のひっくり返るような=子母沢)。 **だみごえ【濁声】**だみ声(耳障りな。潤いのない。のどにひっかかった)。だみ声で(どなる。話す)。少し耳障りな濁声の混じる声=森環。 **とき【鬨】**大勢の男たちのあげる岡の声。関の声をあげて攻め寄せる。ウォーッというトキの声が満開の桜を散らさんばかりに響く=阿久。潮騒乱心のような喧噪计认"岡本。関をつくって突っ込む。兵が吶喊せんして攻めかける。吶喊の声が耳に徹する。喊声が(とどろき渡る。広場中にとどろく)。淡すさまじい喊声が上がる。地軸を揺るがす喊声が起こる井上靖。喊声と(共に兵が殺到する。銃声の渦巻く修羅場柴田銀)。喊声をあげて突っ込む。 **どごう【怒号】**怒号が飛び交う。怒号に居すくんでその場に佇立する=本庄。広問が怒号に包まれる。怒号する(ものすごい形相で。何か気に喰わないと喉が裂けるほどに“子母沢。マイクにしがみつくように高橋和)。怒号するような野次が飛ぶ!高橋和。 **どなる【怒鳴る】**▼怒鳴る(頭ごなしに。声を限りに。事あることに。青筋を立てて。色をなして。えらい剣幕で。顔を赤くして。口を歪がめて。声を裏返して。声を吸ゃらして。我を忘れて。聞こえよがしに。殴りつけんばかりに。全身を震わせて。誰に言うでもなく。手をメガホンにして。仁王立ちになって。真っ赤になって。やけくそになって。両手を口に当てて。旱天びんに喘ぁえぐ魚のように徳永。自分の耳ががんとするほど八谷崎。唾を飛ばすほどの語気で三高。とうとう爆発したように徳水。鼻っ面を殴りつけるように=小林多。自棄ゃけっぱちのように内田康)。▼となる(喉も張り裂けそうに=城山。満面朱を注いで=阿川弘)。怒鳴る声が筒抜けに響いてくる。大声で怒鳴る(ありったけの。腹立ちまぎれに。家中の壁がひび割れそうな=大庭)。▼声で怒鳴る(いらいらした。険しい。ものすごい。憎悪のみなぎる。割れ鍮のような。あたりをはばからない甲高い=三田)。騒々しい怒鳴り声が聞こえる=野間。不意に怒鳴り散らす本庄。怒鳴るように(叫ぶ。話す)。勢い込んで怒鳴るように答える"中島敦。喧嘩腰ひいかで怒鳴り合う。喧噪汁氷の合間を縫って怒鳴り返す。こっちから怒鳴り込むのも業度。血相を変えて怒鳴り込んでくる。▼▶怒鳴り立てる(がみがみ。噛みつきそうに。がらがらな大声で)。▼怒鳴り散らす(頭から。荒い言葉で。大きな声で。理由もなく)。▼怒鳴りつける(頭ごなしに。嵩かさにかかって。かっとなって。噛みつく声で。腹立ちまぎれに。ヒステリックに。恐ろしい剣幕で。顔を真っ赤にして。しゃくしゃくして。怖い顔で精一杯に=子母沢。頭からガミガミ=中局災。怒りの捌け口似けにしているみたいに口汚い言葉で三田。我を忘れたように福永)。女のくせにって昔流に呶鳴となりつける=高井。頭に血が昇って怒鳴りつけそうになる古井。とやしつける(出合い頭に人を。部屋を出て行きしなに)。怒鳴られる(背後から大声で。理不尽な理由で)。頭ごなしにどやされる。 **ひめい【悲鳴】**悲鳴(傷ついた海鳥が泣くようなかすかな菊池。破れ笛のような哀れな柴田蝕。恐怖を出しきったふうの志茂田。獣の吠え声みたいなあさの。笹笛を吹くような平岩。しなだれかかるような姻にびを含んだ澄んだ=阿部。痰たんがからんで笛のように聞こえる=真継。二メートルの距離を隔てかラス越しにも聞こえてくる物凄い!宮部。脳天に突き抜けるような=隆。喉の張り裂けるような宮部)。悲鳴が(号泣に変わる。夜を引き裂く。耳について離れない。天井と壁にわんわんと反響して重なり合2日野。闇を裂いて聞こえてくる=飯田)。あちこちから悲鳴があがる。女の悲鳴が響き渡る。口から押し殺した悲鳴が漏れる。姿すさまじい悲鳴が聞こえる。おそろしい悲鳴が流星のように走りふっと消える=光瀬。おびただしい断末魔の悲鳴が耳につきささる真継。悶絶もするまぎわの喉からのような死にものぐるいの悲鳴が起こる=大江。幕閣に対しほとんど悲鳴といっていい請願がとどく=司馬。悲鳴とも号泣ともつか # 酒を飲む・酔う <454> **ほえる【吠える】** ▼吠える(こうっと風が。一声。けたたましい声で、声にどすを利かせて。長く尾を引いて。みんなが飛び上がるほど猛烈な声で犬が岸田。犬が火のついたように遠藤。禿頭はげぁのてっぺんまで赤くして大声で"原田宗。冬の海が荒々しく火坂。ブルドッグがこわんこわんと声を喉で転がすようにして長々と三浦哲)。遠くで吠える犬の声が折々聞こえる。しつこく吠えるスビッツに閉口する=林炎。地が揺れるような声で吼える=飯田。▼犬が吠える(悲しげに。切なげに。うるさく。甲高く。きゃんきゃん。けたたましく。猛々しく。激しく。猛然と。ワンワン)。ほえるような電車の淼音にら"石坂。吠えるような声で笑う栗本。吼えるような叫びをあげる=遠藤。▼吼え声(深山幽谷に響き渡る勇壮な=住井、頭の真上でいきなり耳をつんざくような雷の音がとどろいたような=飯田)。狼の吠え声を聞く。畜生の吠え声を真似まねる。獣のような吠え声をあげる!高橋源。吠えたける犬をなだめる。▼吠え立てる(一生懸命に。犬が神経質に。遠巻きに。甲高く。激しく。犬がけたたましく)。犬が狂ったように吠えまわる=有吉。▼たける(荒海が。獣が。虎が。波が。雷鳴が)。犬の遠吠えが(聞こえる。一声響く)。辻に立って犬が遠吠えするように空に向かって呼ばわる=海音寺。演練の声が無意味な遠吠えのように聞こえる=檀。尾を長くひく狼の遠吠え真継。狼の遠吠えのような声が喉の奥からひっきりなしにしぼり出される=小池。咆哮が鼓膜を打つ。雷のような咆哮がとどろく=筒井。獣のような咆哮を発する=池波。野獣の咆哮を聞く=山岡。▼咆哮する(大砲が。野獣が。天に向かって)。 **よびかける【呼び掛ける】** ▼呼びかける(核軍縮を。戦争終結を。大同団結を。静かに。大声で。心の中で。必死になって。朗らかな声で。マイクに向かって。浴びせかけるように成勢よく=山崎。追いすがるようにして本庄。通り過ぎようとする刹那終っに思わず=中村真)。直接に呼びかける他なくなる。呼びかけが(電波に乗って流れる。耳元によみがえる)。呼びかけに(応じる。応える)。販売員の声かけ。▼声かけをする(高齢者に。子供に)。 **よびごえ【呼び声】** 色めき立った女たちの呼び声大野透。呼び声に空しい谺ただしか戻ってこない円地。何人比にも察知できない心の傷の深淵江从よりの呼び声に従う~開高。心の中に沈んでゆくような呼び声の重たさ=壺井。澄んだ呼び声をあたりに響かせる。呼ぶ声が間近で聞こえる。 **よびとめる【呼び止める】** ▼呼び止める(自動車を。タクシーを。通行人を。大声で。背後から)。呼び止める声が恨めしげになる。古井。 **よぶ【呼ぶ】** ▼呼ぶ(大声で助けを。息子の名を。遠慮がちに名前を。二人の名を交互に)。甲高に呼ぶ女の声。声で呼ぶ(ありったけの。けたたましい。怒気をはらんだ)。呼べと再び帰らず。すんなりと名前を呼べない。競うように呼び上げる。呼び交わす声が騒がしく起こる。▼呼び立てる(名を。家号を。甲高く。けたたましく。やかましく)。 **わめきたてる【喚き立てる】** ▼わめき立てる(一斉に。大げさに。大声に。口々に。早口に。興奮した声で。恥も外聞もなく)。顔中を口にして喚ゃぁき立てる"村上元。 **わめく【喚く】** ▼わめく(衝動的に。いきり立ってきゃあぎゃあ。血相を変えて。ここを先途と。奨すさまじい声で。騒々しく。わあわあ。わけの分からないことを。ヒステリックに。きゃあきゃあと。猛り狂った犬のように小局。邸中にひびきわたるような大声で=海音寺)。拳を空に打ち振って喚ぁぁく=長与。せきを切ったようにわめきだす。安部。わめきながら飛び込んでくる。▼わめき声(子供たちの盛大な阿部。獣のほえるようなか野問。とびあがるほどのけたたましい=飯田)。わめき声が(わんわんと反響する。ブスブスと矢のように音を立てて体のそこここに突き刺さる=飯田)。わめき声をあげて躍り込む。▼わめき叫ぶ(女が。人々が。大きな声で)。▼泣きわめく(ありったけの声で。きゃあきゃあと)。▼わめき散らす(無遠慮に。大声で。言いたい放題を。飢えた野良犬のように=黒墨石。口から泡を飛ばして熊谷)。わあんと耳を蔽ぉぉう叫喚"山本周。叫喚の(声があがる。巷ちょと化す)。天からともなく地からともなく湧き起こる大叫喚有島。ぬ声遠藤。人々が悲鳴に近い抗議の声をあげる=半村。ほとんど悲鳴に近い云い方藤枝。風が悲鳴を吹きさらう。▼悲鳴を上げる(息が切れ全身の筋肉が小池、耳が裂けるほどの=多岐川)。▼悲鳴をあげる(体の関節が。嬉しい。臆面もなく。可愛い。けたたましい。怪鳥のような。ひいっと。悶絶の。ありったけの声で。月へまで届きそうな=吉川。舟が押し潰っぶされそうな福永。松葉杖が悲しげな"阿久。烏からの鳴き声に似た"宮本輝。たまぎるような山田風)。異様な悲鳴をあげて逃げだす=隆。襲われた動物のような悲鳴をあげて体を丸める=高樹。列車が悲鳴をあげてカーブを廻る=小島。悲鳴をあげながら逃げ惑う。いきなり煮られる猫みたいな声出さないでより有川。絹を裂くような叫び。瀕死いんの野獣の悲鳴のような汽笛が聞こえる"高橋和。悲鳴のような(女の嬌声。ため息をつく。泣き声を発する=坂口)。風が悲鳴のような音を立てる=篠田。喉の奥から悲鳴のような声を立てる有吉。バスが速度を落とし悲鳴のような音を立てて険しい道を上る=伊集院。倫理的な悲鳴のようなもので暗い獸性に抵抗する=伊藤整。窓ガラスが悲鳴のようにガタガタ震える=田辺。 <455> なって暴れる男。手に負えないくらいに酔って暴れだす!藤田。 **さけずき【酒好き】**▼酒好き(根っからの。無類の)。お酒はかなりいける口。終日酒瓶を離さない。病気をよそにして酒を飲み続ける。毎晩のように酒を飲みに出かける=ねじめ。ザルみたいに酒が飲める=小池。毎夜酒浸りになる。大酒を飲んでもしれっとしている。酒焼けして赤くなる。酒が好きな質たち。無性に酒が飲みたい。酒で身を持ち崩す。酒に目がない。酒豪の聞こえが高い。飲める口。結構飲めるほう。毎日のように飲んだくれる。 **さけによう【酒に酔う】**▼酒に酔った上での放言。酒に酔って(寝てしまう。放歌高吟する。ふらふらと歩く)。怪しい手つきで盃を口へもってゆく=獅子。かなりアルコールが入っている。からだじゅうの関節がぐにゃぐにゃになる=灰谷。酒が身体にしみこんでいる熱っぽさ=石坂。酒に正気を奪われる。顔が酒にほてる。酒に魂を浸す。酒にでも(酔ったかと思うような覚束ない身のこなしでおもむろに体を起こす芥川。酔ってでなければ話せないほどむごたらしい出来事有吉)。酒の勢いをかりて言い募る=向田。酒の酔いに任せて激烈な言葉を吐く!佐藤春。酔いも手伝って陽気にしゃべる。酔いが白い頬を薄桃色に染める=藤田。大酔して放吟する。へべれけになる。目の縁がほんのり赤い。目のふちのあたりがボーッと赤くなる!永倉。酔いに煽ぁぁられて饒舌じょうになる=高井。アルコールが(全身に回る。体内に行き渡る!姫野)。一杯機嫌になる。羽化登仙の感興をほしいままにする。酒で口が軽くなる。酒の酔いがけだるく快い。酒気に頬をほんのり染める。酒気を帯びた声が荒々しい。酔余の泥のような感覚から酒ひっく眼を醒ます高井。くどくどと酔余の言い訳をする。酔っ払いの千島足。千鳥足でふらふら歩く。ほろ酔い気分で繁華街を歩く。雲を踏むような不安な酔い!安岡。酔いが(足に来る。眠気を誘い出す。胃の底で重いとぐろを巻く古井。身体の隅ずみにまで満ちる=高井。ゆっくりと疲れた血の中をめぐっていく=森稲)。酒の酔いが手伝って色っぽくしなだれる舟橋。とろりとした酔いがおもむろにひろがる=田辺。全身に泥がしみわたり泥細工の濡れ人形に化したような酔い方坂口。酔いで器もゃがかかったような頭光原。この数週間に起きた様々な出来事がエンドレステープのように頭を巡り酔いに拍車をかける=原田糸。酔いにまかせて(絡む。言いたいことを言う。しゃべっては笑い転げる。深夜の訪問をする)。酔いの乱れを微塵ふじも見せない=武田奈。目のまわりに酔いのゆらめきが残る=高樹。酔いのまわった潤んだような目を泳がせる=高樹。酔いの回った笑い声を立てる=山田太。数日来の心身の疲れが酔いを誘い出す城山。ビールの酔いを肩先にあらわす=梶井。ひょうひょうろうろうとして足許しが定まらないくらいに酔う。子母沢。酔うに従って上機嫌になる。酔った(勢いでいい加減なことを言う。声でにぎやかな歌が始まる)。酔ったように赤いうっとりとした表情・石坂。酔って(遅く帰宅する。へどを吐く。胸の思いを紛らわす)。ろれつの怪しくなりかけた口調で言う後藤。悪酔いして頭が痛くなる。安酒で悪酔いする。 **さけのみ【酒飲み】**▼酒飲み(ねじあげの。どこにでもいる凡肘な=原田康)。酒飲み本性たがわず。叔父が酒飲みになったのもむべなるかなと思う藤沢。酒飲みのどうしようもないだらしない叔父さん=太宰。酒飲みは意地が汚い。かなりの大酒飲み。 **さけをのまない【酒を飲まない】**▼酒を飲まない(全然。程々にしか。申し訳程度にしか)。飲酒を節制する。口にしない(酒を一滴も。ふだん一滴の酒も"藤沢)。杯を伏せる。好きな酒をばったりやめる。ぷっつり酒をやめる。ふだん飲みつけない酒を飲む。量を制限する(アルコールの。酒の)。 **さけをのむ【酒を飲む】**▼酒を飲む(静かに。したたかに。無茶苦茶に。朝っぱらから。浴びるように。居酒屋で。奥の座敷で。がぶがぶ。機嫌よく。ぐびぐび。車座になって。心置きなく。立て膝で。楽しく。茶のごとく。手酌で。ピッチの早い。夜遅くまで。一人でしんみり。ぽつんと座って。月の出を眺めているようにぼんやり“岡本。なけなしの財布をはたいて=船山)。飲む(泡盛を。ウイスキーを。お酒を。カクテルを。缶ビールを。コッブ酒を。コニャックを。地酒を。シャンパンを。焼酎を。ジンを。清酒を。茶碗酒を。どぶろくを。日本酒を。寝酒を。ビールを。ぶどう酒を。ブランデーを。水割りを。やけ酒を。安酒を。ワインを。腰を据えて。酒をちゅうと。酒を一口。泥酔するまで。酒を楽しそうに。自分のペースで冷静に。注がれるままに。時間を気にしつつ)。飲むピッチをあげる。酒を飲んで(くだを巻く。大言壮語する。盛り上がる。気炎をあげる。憂さ晴らしをする。どんちゃん騒ぎをする。へべれけになる。メートルをあげる)。たらふく酒を飲ませる。一杯が二杯になる。一杯やって帰る。胃の中に火がついたような熱さが走る=辻に。カッと焼けるような感覚が胃の中で拡がる=五木。お酒を召し上がる。喉にお酒を流し込む。酒のスピードが上がる。酒の飲み方(不安を紛らすために飲むような五木。みるみる酔いが深まるのが判ゃかるような高井)。酒を(あがる。聞こし召す。食らう。馳走汚くになる。亦欲する。水でも飲むような無表情な顔で悠然ど飲む!高価)。しこたま酒を浴びる。酒を紙なめるように愛すする谷崎。酒をらっぱ飲みにぐびりとやる=二葉亭。酒杯を口に押しつける。じりじりと喉が焦げるような酒"長塚。軽い気持ちで飲みに誘う。結構頻繁に飲みに来る。時々飲みに出かける。飲 <456> **さけずき【酒好き】** 酒好き(根っからの。無類の)。お酒はかなりいける口。終日酒瓶を離さない。病気をよそにして酒を飲み続ける。毎晩のように酒を飲みに出かける=ねじめ。ザルみたいに酒が飲める=小池。毎夜酒浸りになる。大酒を飲んでもしれっとしている。酒焼けして赤くなる。酒が好きな質たち。無性に酒が飲みたい。酒で身を持ち崩す。酒に目がない。酒豪の聞こえが高い。飲める口。結構飲めるほう。毎日のように飲んだくれる。 **さけによう【酒に酔う】** 酒に酔った上での放言。酒に酔って(寝てしまう。放歌高吟する。ふらふらと歩く)。怪しい手つきで盃を口へもってゆく=獅子。かなりアルコールが入っている。からだじゅうの関節がぐにゃぐにゃになる=灰谷。酒が身体にしみこんでくる熱っぽさ=石坂。酒に正気を奪われる。顔が酒にほてる。酒に魂を浸す。酒にでも(酔ったかと思うような覚束ない身のこなしでおもむろに体を起こす芥川。酔ってでなければ話せないほどむごたらしい出来事有吉)。酒の勢いをかりて言いつのる=向田。酒の酔いに任せて激烈な言葉を吐く!佐藤春。酔いも手伝って陽気にしゃべる。酔いが白い頬を薄桃色に染める=藤田。大酔して放吟する。へべれけになる。目の縁がほんのり赤い。目のふちのあたりがボーッと赤くなる!永倉。酔いに煽ぁぁられて饒舌じょうになる=高井。アルコールが(全身に回る。体内に行き渡る!姫野)。一杯機嫌になる。羽化登仙の感興をほしいままにする。酒で口が軽くなる。酒の酔いがけだるく快い。酒気に頬をほんのり染める。酒気を帯びた声が荒々しい。酔余の泥のような感覚から酒ひっく眼を醒ます高井。くどくどと酔余の言い訳をする。酔っ払いの千島足。千鳥足でふらふら歩く。ほろ酔い気分で繁華街を歩く。雲を踏むような不安な酔い!安岡。酔いが(足に来る。眠気を誘い出す。胃の底で重いとぐろを巻く古井。身体の隅ずみにまで満ちる=高井。ゆっくりと疲れた血の中をめぐっていく=森稲)。酒の酔いが手伝って色っぽくしなだれる舟橋。とろりとした酔いがおもむろにひろがる=田辺。全身に泥がしみわたり泥細工の濡れ人形に化したような酔い方坂口。酔いで器もゃがかかったような頭光原。この数週間に起きた様々な出来事がエンドレステープのように頭を巡り酔いに拍車をかける=原田糸。酔いにまかせて(絡む。言いたいことを言う。しゃべっては笑い転げる。深夜の訪問をする)。酔いの乱れを微塵ふじも見せない=武田奈。目のまわりに酔いのゆらめきが残る=高樹。酔いのまわった潤んだような目を泳がせる=高樹。酔いの回った笑い声を立てる=山田太。数日来の心身の疲れが酔いを誘い出す城山。ビールの酔いを肩先にあらわす=梶井。ひょうひょうろうろうとして足許しが定まらないくらいに酔う。子母沢。酔うに従って上機嫌になる。酔った(勢いでいい加減なことを言う。声でにぎやかな歌が始まる)。酔ったように赤いうっとりとした表情・石坂。酔って(遅く帰宅する。へどを吐く。胸の思いを紛らわす)。ろれつの怪しくなりかけた口調で言う後藤。悪酔いして頭が痛くなる。安酒で悪酔いする。 **さけのみ【酒飲み】** ▼酒飲み(ねじあげの。どこにでもいる凡肘な=原田康)。酒飲み本性たがわず。叔父が酒飲みになったのもむべなるかなと思う藤沢。酒飲みのたしなしない叔父さん=太宰。酒飲みは意地が汚い。かなりの大酒飲み。 **さけをのまない【酒を飲まない】** 酒を飲まない(全然。程々にしか。申し訳程度にしか)。飲酒を節制する。口にしない(酒を一滴も。ふだん一滴の酒も"藤沢)。杯を伏せる。好きな酒をばったりやめる。ぷっつり酒をやめる。ふだん飲みつけない酒を飲む。量を制限する(アルコールの。酒の)。 **さけをのむ【酒を飲む】** ▼酒を飲む(静かに。したたかに。無茶苦茶に。朝っぱらから。浴びるように。居酒屋で。奥の座敷で。がぶがぶ。機嫌よく。ぐびぐび。車座になって。心置きなく。立て膝で。楽しく。茶のごとく。手酌で。ビッチの早い。夜遅くまで。一人でしんみり。ぽつんと座って。月の出を眺めているようにぼんやり“岡本。なけなしの財布をはたいて=船山)。飲む(泡盛を。ウイスキーを。お酒を。カクテルを。缶ビールを。コッブ酒を。コニャックを。地酒を。シャンバンを。焼酎を。ジンを。清酒を。茶碗酒を。どぶろくを。日本酒を。寝酒を。ビールを。ぶどう酒を。ブランデーを。水割りを。やけ酒を。安酒を。ワインを。腰を据えて。酒をちゅうと。酒を一口。泥酔するまで。酒を楽しそうに。自分のベースで冷静に。注がれるままに。時間を気にしつつ)。飲むビッチをあげる。酒を飲んで(くだを巻く。大言壮語する。盛り上がる。気炎をあげる。憂さ晴らしをする。どんちゃん騒ぎをする。へべれけになる。メートルをあげる)。たらふく酒を飲ませる。一杯が二杯になる。一杯やって帰る。胃の中に火がついたような熱さが走る=辻に。カッと焼けるような感覚が胃の中で拡がる=五木。お酒を召し上がる。喉にお酒を流し込む。酒のスピードが上がる。酒の飲み方(不安を紛らすために飲むような五木。みるみる酔いが深まるのが判ゃかるような高井)。酒を(あがる。聞こし召す。食らう。馳走汚くになる。亦欲する。水でも飲むような無表情な顔で悠然ど飲む!高価)。しこたま酒を浴びる。酒を紙なめるように愛すする谷崎。酒をらっば飲みにぐびりとやる=二葉亭。酒杯を口に押しつける。じりじりと喉が焦げるような酒"長塚。軽い気持ちで飲みに誘う。結構頻繁に飲みに来る。時々飲みに出かける。飲が変わる男。手に負えないくらいに酔って暴れだす!藤田。 <457> **しゃく【酌】** 猪口~に酌をする。お酌に(立つ。回る)。お酌をして回る。酒のお酌をする。▼酌をする(お銚子を取り上げて。大杯になみなみと)。▼お酌する(酒を。銚子を。ビールを)。酒を汲くむ。▼ついで回る(客人に酒を。あっちこっちと)。みんなのグラスにワインを注いで回る=有栖川。▼つぎ回る(酒を。ビールを)。手酌でお銚子を空ける。自分の杯に手酌で注ぐ。徳利を手許にもに置いて手酌で飲む!高井。 **しゅこう【酒肴】** 酒肴の(支度を言いつける。膳が運ばれてくる)。かいがいしく酒肴の世話をする後藤。酒肴を出してもてなす。愚痴を肴にがに酒を酌む!隆。酒の肴をつまむ。珍味佳肴かにを味わう。 **ジョッキ** ジョッキにビールをなみなみとつぐ。ジョッキを(掲げて乾杯をする。両手で包むように持つ)。ビールのジョッキを傾ける。 **ちょこ【猪口】** 猪口に酒をつぐ。猪口をゆっくりと空ける。おちょこで一杯やる。傘がおちょこになる。口をおちょこにする。 **でいすい【泥酔】** ▼泥酔する(大酒を飲んで。記憶がなくなるほど。前後もないほどに司馬)。泥酔して(眠りこける。自宅に辿たどり着く=篠田)。ベッドまで巡ばれるほど正体がなくなる=清水俊。正体がなくなるほど飲む=高橋三。朦朧と淀んだ酔眼。べろんべろんに酔う。▼酔う(わけが分からなくなるまで。足元がふらつくほど=瀬戸内)。▼酔っ払う(へべれけに。ぐでんぐでんになるほど。前後不覚になるほど宮部)。波問に浮かんで何処とこかの果てへ流れ去ってゆきたいような異様な酩酊いに落ち込む=槌。目がバラのように酩酊する=光瀬。酩酊して足元が定まらない。千鳥足で鼻歌という御酩酊ぶり瀬戸内。 **とうすい【陶酔】** ▼陶酔(そのまま目が覚めないでいたらきっと味わうことができるにちがいない=日野。夢の世界に遊ぶような白洲)。陶酔が(一度に吹き飛ぶ。静かに湧き起こってくる。波のように次つぎと打ち寄せる藤沢。音楽と舞台効果によって麻酔ガスのうに空間へ拡散する=島田)。陶酔から覚める。陶酔と見まがうほどの死への想いが遠のく=辻井。陶酔の絞げんが耳に鳴り響く=福永。人々を陶酔の渦の中に巻きこむ。至高の陶酔のうちに最期を迎える倉橋。しびれるような陶酔を味わう源氏。▼陶酔する(音楽に。ジャズに。自分たちの歌に。付け焼き刃の文明に"寺田)。全身ことごとく男性を陶酔させるほどの匂やかなものがある女性。石川。陶酔したようにうつろな目をする=大原。軽い陶酔感を以もって眺める=井上靖。 **とっくり【徳利】** 徳利の酒をこぼさぬように盆を水平にして運ぶ=武田泰。徳利へ手を伸ばす。徳利を(空にする。たてつづけに手酌で傾ける佐藤愛)。ごろりと徳利を転がす。大徳利の酒をちろりに移す。お銚子を一本注文する。銚子を膳に添える。見るからに重たげな瓶子いいを紙風船のように軽々と掘っかみ上げる=獅子。 **のみあるく【飲み歩く】** ▼飲み歩く(クラブを。飲みまわる(銀座裏を。酒を。ほうぼうを)。一しこする(居酒屋を。何軒か店を)。 **のみすぎる【飲み過ぎ】** 飲み過ぎがたたる。酒の飲み過のみすぎぎで頭痛がする。酒を飲み過ごす。だいぶ酒が乱れてくる。乱酒の兆しが現れる。乱酒乱淫に明け暮れる。 **のみほす【飲み干す】** ▼飲み干す(最後の一杯を。きゆっと一杯。杯をぐいと。一息にぐっと。息をもつがずに。一滴も余さずに。喜びを酒とともに。酒をごくごくと。一口にがぶりと)。一気に飲み干す(酒を。コップ一杯のビールを。飢えた獣のように=桐野)。▼酒を飲み干す(ぐいっと。大杯の。自分の弱さをごまかすように一気に=外村)。ビールを飲みつくす。ビールを一気に空ける。杯を(空にする。干す)。グラスの酒を一息にあける。 **ビール** こくがあり切れもいいビール=開高。一本のビールが心地よく胃の腑ょに染み透り野を馳かける火のように体のすみずみまで熱く広がる=阿刀田。ビ乱れることがない。飲めば飲むほど饒舌牝2)になる。飲めや歌えの大騒ぎ。気楽に飲める店。月給をあらかた飲んでしまう。ビールを(口にする。らっば飲みする)。酔わない程度に少し飲む。おちおち酒も飲めない。▼あおる(ぐいと杯を。杯の酒を乱暴に。コッブの酒をきゅっと)。真っ昼間から酒を叩ぁぉる"山田風。アルコールが体に染みていく。何はなくともまず一献。一献傾ける。一盞知んの祝杯を挙げる。一盞を傾ける。雨宿りでちょっと一杯。一杯引っかける(酒を。帰りに。軽く)。一杯やる(景気づけに。前祝いに。熱刺で。飲み屋で。取りたての魚を肴にかに)。飲酒の害を説く。お流れを頂戴さいする。お神酒みきが入る。口に運ぶ(猪口も“を。水割りを。しんみりして盃を=有吉)。▼口に含む(カクテルを。酒を)。▶酌み交わす(固めの盃を。別杯を。親しい友と酒を。膝を突き合わせて酒を)。盃の数を重ねる。盃の酒を(あおるように飲む=村松。口の中に放り込むような豪快な飲みぶり“外村)。杯を(重ねる。傾ける。ぐっと空にする)。酒が(舌に溶ける。五臓六腑ぶぶぶにしみわたる)。火のような酒で喉を焼く=辺見。酒に手を伸ばす。ストレートで飲む。悠然として大杯を傾ける。二本目の徳利にかかる。晩酌を楽しむ。▼やる(酒をちびちび。湯上がりの一杯を。ウイスキーをちびりちびりと)。手酌でグビリグビリ飲る=二葉亭。 **じことうすい【自己陶酔】** 自己陶酔に陥る。うっとりと自己陶酔に浸る。多分に自己陶酔の気がある。自分で自分の(話に感動する。声に聞き惚れる)。自分の(感情に酔う。言葉に酔う。アイデアに酔う)。 <458> イルが軽く上気するような酔いに誘い込む伊藤整。ビールで乾杯する。乾いた喉をビールで潤す。ビールの泡(クリームのような=開高。ビロードの布に唇を触れたような=北村)。ビールの泡が山をなしてあふれかかる=田山。ビールの泡を口元につける。唇についたビールの泡を拭う。宵越しのビールはまずい。さまざまな酒を喉に通した後のビールは青い味がした荻野。ビールを(一気に飲む。喉に流し込む。一息にあおる。浴びるように飲む。息もつかずに飲む。おいしそうに飲む。おもむろに一口飲む。がぶがぶと飲む。豪快に喉に通す。こくりと飲み込む。コッブに満たす。ちびちびとすする)。グラスにビールを満たす。のどを鳴らしてうまそうにビールを飲み干す=つか。ビールをぐいと(雪に流し込む。飲み干す)。ビールを口に(運ぶ。含む)。▼ビールを注ぐ(手酌で。とほどほと豪快に=椎名誠)。▼ビールを飲む(冷たい。ボテトチップスをつまみに。コーラでも飲むように平気な顔をして三浦哲)。立て続けにビールを何杯も飲む。泡がグラスの縁で止まる。缶ビールのブルトップを開ける。冷蔵庫から缶ビールを出す。ビール一本はたちまちに尽きる=高井。ビール瓶を手許にもに引き寄せる。ホテル屋上のビヤガーデン。 **びしゅ【美酒】** ▼美酒に酔う(歓喜の。勝利の。成功の)。美酒の誘惑に身をまかせて存分に酔う三好途。美酒佳肴沙にに陶酔する。こくのある佳ょい酒柴田剣。 **ふつかよい【二日酔い】** アルコールに宿酔がいいがあるように恋にも酔いの名残があるのかもしれない"阿刀田。二日酔いで話が頭にがんがん響く佐野。二日酔いで頭が(割れるように痛む。枕から上がりかねる=佐藤愛)。ひどい二日酔いに苦しむ。二日酔いのむかつきをこらえる。自己嫌悪が二日酔いの吐き気のように胸にこみあげる!遠藤。歯ブラシを口に入れると二日酔いのあとのように吐き気がする=安部。頭が他人の物みたいに重い古井。睡眠不足がたたって頭が二日酔いのように重い=小林久。 **ブランデー** ブランデーを(口に運ぶ。紅茶に入れる)。砂糖にブランデーをたらす。コニャックが火の塊のように喉を落ちる=大佛。 **▼回し飲みする(一升瓶を。** まわしのみ【回し飲み】グラスを。酒瓶を。祝杯を)。▼飲みまわす(一つの椀を。一つのグラスを)。 **よいざめ【酔い覚め】** 酔い覚めの水は甘露の味。酔い醒めの水をガブガブ飲む獅子。▼さます(酔いを。酒を風に吹かれて)。酔いが(いっぺんに覚める。すっかり覚める)。酔いが急速に潮を引いていく=開高。酔いから覚めたように疲れた目=光酒。酒の酔いが醒める。 **【酔い痴れる】** ▼酔いしれる(悦楽に。快よいしれる。恋に。幸福に。酒に。喜びに。意識が朦朧楽に。恋に。幸福に。となるばかりに今日)。椅子に正坐できぬほどに酔い痴れる=今日。酔いしびれる(幸福に。酒に)。 **よいつぶれる【酔い潰れる】** ▼酔いつぶれる(正体もなく。飲みすぎて。娘だてらに酒に)。酔いつぶれて(意識を失う。寝てしまう)。酒で盛り潰して遁走社认する。つぶれるまで飲んだくれる。 **よう【酔う】** ▼酔う(甘い気分に。勇ましい話に。女の肉体に。官能の悦楽に。甘美な夢に。車に。勝利に。バブル景気に。流麗な言葉に。清らかな幸福感に。残酷な復讐しの快感に。自分の思いつきに。生活を味わう楽しみに。追憶の甘美さに。謎解きの爽快さに。悲劇のヒロイン役に。レトロな雰囲気に。今死んでも悔やむところもないほどの法悦に長与。痺しびれるような辛福に=川端。鳥や花が春の陽ざしの中に三好淺。胸がしびれるような美しさに"石川。夢のような喜びに=杉木)。バスに酔って胸が悪くなる。うっとり酔うように胸の内でつぶやく!宮本師。酔ったように(歌い続ける。ビアノを弾く。陶然として争い続ける有吉)。夫人の胸に抱かれて踊る一時間が芳烈な酒のように酔わせずには置かない八谷崎。酔い心地(感傷的な。得も言われぬ。陶然たる)。うっとりと酔った心地。 **よっぱらい【酔っ払い】** 危ない足取りの酔っ払い。たちの悪い酔っ払いにからまれる。酔っ払いの(下品な笑い声。寝言に一々取り合っていても始まらない=瀬戸内。マダムの店が成功したためしはない瀬戸内)。ヨッパライのように跪跟行うと歩く獅子。言葉と言葉が酔っ払いのように散り散りによろめいた順序の狂った日本語"小林多。酔客がさんさめく盛り場。酔客を狙ったすり。寝過ごした酔客を起こす。泥酔した人のように眼を据えて見詰める志賀、夜道で酔漢とすれ違ったときのようにおぞ気をふるう。古井。酔漢特有の廻りくどい表現"中村真。酔淡に因縁をつけられる。酔漢の放言に閉口する。酔漢のように身体をぐらぐらさせて歩く=横光。 **よっぱらう【酔っ払う】** 酔っ払う(いい心持ちに。大屑機嫌よく。酒にたわいもなく。舌先が痺しびれるほと村上龍)。どうもうまい具合に酔っ払えない。酔っ払って足元がふらつく。芳醇らじなワイン。ワインに頬を赤く染める藤田。ワインの栓を抜く。口の中で転がすようなワインの飲み方=高橋涼。勢いよくシャンバンの栓が飛ぶ。お祝いのシャンパンを抜く。テニスコートから三鞭酒心バンを抜くようなラケットの音が愉快そうに聞こえてくる=堀。血のように赤いブドウ酒-遠藤。すっぱくて渋くって泡の立つ葡萄酒に叱うのようなコクの強い野蛮な海・梶井。豊年作の古葡萄酒の風味が一同の絶讚を博す=加賀。赤ブドウ酒がキリストの血を象徴する=玉村。 <459> # 支える **あしこし【足腰】** 足腰が(しっかりしている。めっきり弱くなる。冷えて棒のようになる宮尾)。足腰に自信がある。足腰の(力が萎える。粘りがなくなる)。なまった足腰を鍛え直す。せまり来る老境に備えて足腰を鍛える藤沢。 **あしば【足場】** 丸太を組んだ足場。足場の(悪い斜面での作業がこわくてたまらずへっぴり腰でしか組を引けない三浦し。わるい雪道をすすむように会見にはつらいものがふくまれている藤沢)。足場を固める。胸突き八丁を一つ一つの足場を捜し踏みしめ登る"小林多。▼足場を組む(建物の周囲に。縦横に鉄バイブの"干刈)。ビルの足場みたいに頑丈=住井。 **うらかた【裏方】** 裏方に徹する。裏方を務める。縁の下の力持ち。黒子のような働きを見せる竹西。▼下支えする(労働者が。活動を。経済を。雇用を)。 **がいこつ【骸骨】** カサコソと枯れ葉が骸骨の踊りを鳴らす=梶井。葉を落とした骸骨のような木々常盤。巨大な流木が奇怪な骸骨のように砂に寝そべって濃い長い影を水の上に吹き流す"本庄。目を骸骨のように落ち窪ませる=古井。骸骨みたいに細った身体"古井。闕下がっに燃管をこう。 **かはんしん【下半身】** ズボンのボタンがもぎとれそうなほど肥満した下半身“武田泰。下半身が(不随になる。何となくだるい。蛇のようにうねる=池田)。居ても立ってもいられないほど下半身が疼、うずく熊谷。女の素裸の下半身が棒のように投げ出される=池田。女の下半身が冬ごもりの半ば眠っている小動物のように緩慢に動く三島。わきあがってきた暖かい風に下半身が欲望に開くときのようにほてる"加賀。下半身から力が抜ける。下半身に(快感が残る。力がみなきる。痺しびれたような熱い感覚がまとわりついて離れない=黒井)。下半身を(むき出しにする。粘っこい視線で舐めまわす=梶尾)。 **きんにく【筋肉】** 熟れすぎたトマトのようにつぶれた筋肉"小川。筋肉が(痙攣いいを起こす。たくましく発遂した腕。赭土砂のように盛り上がる~松本。しこっていて燃え残しの根株のように熱っぽい=武田泰)。肩から二の腕にかけて筋肉が涅訟(しく発達している=鈴木光。身体中の筋肉が腐っていくようなだるさ=山田太。体中の筋肉が弾力を失って伸びきったゴムのような感じになる"高村虎。ギリシャの彫刻を思わせる筋肉が躍動している"乃南。首の筋肉が褐色の皮膚の下でカンバスの下のローブのように盛り上がる"清水俊。手足のふしぶしに癖こぶのような筋肉が盛り上がる=山本周。こわばった筋肉がやわらかく溶けてゆく吉行。強張っていた筋肉がじわじわと柔らかくなる=加賀。四肢の筋肉がすばらしいバネのように屈伸する=光瀬。肌の筋肉が寒い風に抵抗して一時に緊縮するような交夏目。胸にも腕にも見事な筋肉が盛り上がっている藤沢。盛り上がる筋肉が岩のように固く張る=奥泉。笑ってばかりいたから顔の筋肉が突っ張る="小池。筋肉という筋肉に力がみなぎる。筋肉は使わなければ退化する"山本局。筋肉を(解きほぐす。ぴくぴく震わせる)。頬の筋肉を緩める。顔中の筋肉をゆるめて笑う城山。全身の筋肉を針金のように緊張させる谷崎。断り口が柘榴ぶくのように開いた肉志賀。血沸き肉躍る物語=赤瀬川。肉が(痙攣を起こす。つきすぎてしまりがない顔「丸谷。髪の毛のように垂れ下がる=松浦)。顎の下の肉がぶくぶくと膨れる。下腹部に肉がみなぎる。首筋の肉がこわばる。一本有。げっそりと肉が落ちる。肉がつく(がっしりと。むっちりと)。肉の(締まった体つき。欲望に渇いている。歓びに無私になる立原)。眉間の肉を指でつまむ。浮き浮きと頬の肉を緩ませる=船戸。顔の筋肉がゆるんで意味のない微笑が浮き上がる=中沢。顔の筋肉を細かくビリビリさせる=小島。筋肉一つ動かさずに見つめる。全身の筋肉が(緊張する。弛緩しかする。きゅっと引き締まる。ほどけやわらかく溶けて横たわる=吉行)。緊張に締め上げられて全身の筋肉が古革のようにこわばる=安部。息が切れ全身の筋肉が悲鳴を上げる=小池。頬の筋肉が(ひくひくと震える。便ばるほどにこにこ笑う~大庭)。筋肉質で強級にいうな体。筋肉質のたくましい体つき。強級そうな筋肉質の体でそのうえ敏捷性がしい」も兼ね備えている三浦し。やや痩せて筋肉質の一枚皮を剝いいた白菜のような背中藤枝。全身筋肉痛でがに股でしか歩けない三浦し。アキレス腱を(痛める。断裂する)。腱が(しびれる。引きつれる)。腱を切る。顔の筋一つ動かさずに答える。足の筋がびくんと痙攣する。頬の筋が強張る。筋の多い肉。引きつるような筋の動き。筋張っている体。筋張らせる(顔を。関節を)。足が筋張る。力こぶが(出る。隆起する)。肉離れが起きる。肉離れを起こす。腹筋に力を(込める。ためる)。腹筋を鍛える。 **こころのかて【心の糧】** 日頃の心の糧とするような書物島崎。気持ちに支えができる。危機に際しての心の支え。精神的な(活力。支え)。 **こし【腰】** 腰が(強いラーメン。落ちつかない男。引けて体が前のめりに泳ぐ。ひとまわり華奢にいになる。ふらふらと砕ける。海老ぇぃのように曲がる梶尾。処きしむように痛い!丸谷。巨大なせいうちのくびれた臀部ぶんのように盛り上がる=大庭。立たなくなるほどなぐりつける=小林多。柳のようにしなやか=海音寺。弓のように曲がる=中局级)。どことなく腰がすわっていない。もろくも腰が挫くじける。体中の血管の先が一斉にお湯になって腰が抜けたようになる向田。たくましい腰が蛇のように柔らかにくねくね動。八十の老婆のように腰が重い荻野。旅館の番頭のように腰が低い倉橋。腰で拍子をとる。腰に(腕をまわす。しがみつく。短剣を吊る。蓑みのを着ける。脇差を帯びる。手拭いをぶら下げる。バスタオルを巻きつける。ベルトを巻きつける。美容師が身につけるような薄べったい道具入れのバッグが巻いてある三浦し)。木刀を腰に差す。両手を腰に置く。ローブを腰に巻きつける。女の腰に手をまわししっかりと抱きしめるように指先に力をこめる=大庭。腰の(強い声。曲がった老人。あたりに激痛が走る。痛みがとれない。落ち着きが悪い。ばねがびんとする)。いかにも腰の軽そうな男。短刀を腰のあたりに低く構える。丁寧な腰の低い人。乱暴な腰の下ろし方。腰まで(水に漬かる。雪に埋まる)。腰を(下品に振る。深く割る。振って踊る。屈めて会釈する。くねらせながら踊る。低く安定させる。持ち上げるようにして立ち上がる=高樹)。軽く腰をひねる。サドルから腰を浮かす。ソファから腰を浮かせる。籐椅子に粉に腰をかける。なかなか重い腰を上げられない。ぽつんと腰をかけている。もぞもぞと腰を動かす。床にどっかりと腰を下ろす。重心を失ったかのごとくよろよろと腰をつく=吉川。柔軟な生き物のように腰をきゅうっとひねる古井。▼腰を上げる(しぶしぶ重い。やっと重い)。腰を落ち着ける(オフィスに。指定席に)。腰を落ち着けて待つ。じっくり腰を落ち着けて話す。腰を回転させる(なまめかしく。女が性能のいいグラインダーみたいに機械的に"阿部)。▼腰をかがめる(愍懲ごんに。地べたへ顔がつくほど=壺井)。腰を沈める(ソファーに。低く)。▼腰を抜かす(仰天して。百鬼夜行を見て)。腰を伸ばす(屈めていた。しゃんと。ひょいと)。腰を振る(優雅に。なよなよと)。小腰をかがめ挨拶する。中腰になって構える。柳腰(粋な女の。姿がほっそりして九鬼)。ウエストが(くびれる。太い。細い)。ウエストのサイズを気にする。腰を落とす(がっくりと。力なく。どっかり。低く。足もとから疲労がドッと押し寄せて来てヘナヘナと縁先に阿刀田。尻餅でも掲っいたようにくたりと島崎)。腰を落として踏ん張る。相手の話の腰を折る。腰を(内側に折る。直角に折る)。蝦えびのように腰を二つに折る=小林多。深く腰を折って礼を言う。話の腰を折られてむっとする。▼腰を据える(椅子に。小屋に。村に。じっくり。どっかりと。どっしりと)。安心して腰を据える気になる。腰を据えた研究。土地に腰を据えた商売。腰を据えて(考えこむ。議論する。仕事にかかる。飲む。外交に取り組む。問題に取り組む)。 <460> **こしつき【腰つき】** 労働には不向きな腰つき。危なっかしい腰つきで滑る。おどけたような腰つきで歩く。 **こしぼね【腰骨】** 腰骨が(砕ける。張る)。腰骨を(痛める。したたか打つ)。まともに腰骨を打ちつける。骨盤が(大きい。狭い。張っている)。 **こぼね【小骨】** 喉の奥に魚の小骨が引っかかっているよう阿木。舌に貼りついた魚の小骨を吐き捨てる"重松。喉にひっかかっている小骨を吐き出そうとするように何度か喉を鳴らす干刈。言葉が心の片隅に魚の小骨のように残る=松本。魚の小骨みたいな貧弱な額連城。 **ささえる【支える】** 支える(片腕で全身を。ふらつく体を。子分として親分を。弱者を社会的に。家の暮らしを女の細腕で。母が女手一つで一家を"三鳥。激浪の中に立つ巌いものように敵勢を「菊池。自信と誇りが生活を瀬戸内。崩れそうになる身体をやっと"島尾)。姿勢が崩れないように後ろから支えてやる"開高。持ち前の利かん気に支えられる=船山。▼支え合い(住民による。世代間の。地域の)。支え合いを(進める。続ける。広げる)。▼支え合う(友情を。皆で)。▼支えにする(片手を。情熱を)。寄りかかる支えを失いたくない。全く支えのない空虚な深みへ突き放される野間。生きていく支えが欲しい。▼買い支える(自国の通貨を。ドルを売って円を)。▼抱き支える(後ろから。下から)。▼糧(思想の。人生の)。▶サポートする(委員長を。活動を。社長を。首相を)。軸足に力を入れる。経済政策の軸足を家計に移す。支柱となる(堅固な。精神的)。尻を支点に体を前後に揺らす三浦し。添え木をあてる。▼添え木をする(骨折した脚に。庭木に)。 **しじ【支持】** 幅広い支持がある。国民の支持を失う。熱烈な支持を受ける。広く支持を集める。積極的な支持を惜しまない=円地。支持を得る(女たちの。国民の。世論の。読者の)。▼支持する(革命運動を。文化活動を。全面的に。全町がこぞって)。大方の支持するところ。積極的な支持者。支持者を増やす。支持率が(頭打ちになる。期待ほど伸びない)。支持率の下落に歯止めがかからない。高い支持率を維持する。 **じばん【地盤】** じくじくと水のしみだす軟弱な地盤!加賀。雨のために地盤がゆるむ。保守政党の地盤に食い込む。地盤の揺れが激しい。地盤を固める。社会に確かな地盤を築く。選挙の地盤を食い合う。路盤を(固める。強化する)。 **じょうたい【上体】** 上体が薬のようにゆらりゆらりと緩慢に動く=中村总。上体を(しゃんと伸ばす。ゆらゆらと揺する。すらりと誇らかに形よく伸ばす=有吉)。むっくりと上体を起こす。イヤイヤをするように上体を振る=原田系。船に乗っているように上体をぐらぐら動かす=円地。 **じょうはんしん【上半身】** 筋骨たくましい上半身。上半身裸になる。上半身がぐらっと前へ傾く。上半身 <461> から乗り出す)。裸の上半身をさらす。 **スポンサー** ▼スポンサー(広告の。番組の)。スポンサーからのお知らせ。スボンサーにおもねる。しっかりした後ろ盾がある。立派大社が後ろ盾にある=大庭。▼後ろ盾にする(妻の財産を。幕府の成権を)。当時の文化を支えた強大なバトロン=高橋克。バトロンが背後に控えている。バトロンと手が切れる。金使いの綺麗なバトロン肌の友人=円地。 **せぼね【背骨】** 背骨が(くっきりと浮き上がる。きしむほどまわした腕に力をこめる=高樹。蒟蒻にんにかなんかに化したと思われるみたいにぐったりと坐る"高見明。微感じになるほど殴りつける=内田百)。背骨に(杭が打ち込まれるような激痛!萩原薬。差し込むような強い痛みが来る萩原葉)。寒さがしんしんと背骨まで徹る"有島。背骨をしゃんと伸ばす。愛は人間の生の背骨のようなもの=瀬戸内。島の背骨のようにある山脈=塩野。物事すべてに背骨一本びんと通さないと気が済まない=連城。交通事故で脊髄を損傷する。 **つえ【杖】** 危なげな足元をかろうじて支える杖"原田糸。打ちふった杖がびゅっとするどく鳴る=光瀬。杖で(あたりの草を払って歩く三島。歩く老人並みの速度で移動する=石田衣)。俳句を杖として人生を生きる=佐高。杖とも柱とも頼む。杖に(白刃を納める。すがって立ち上がる。すがればどうにか歩ける。願った稚拙な足どり“加賀。見せかけて引き抜けば無反りの刀身が現れる=池波)。▼杖をついて歩く(覚束なく。とほとぼと)。右手の杖を左手に持ち替える。▼杖にする(こうもり傘を。箒詛うを。木刀を。槍ゃりを。情緒的嫌悪感を"中野美)。ステッキにすがって歩く。手が魔法の杖のように動く="大原。松葉杖が悲しげな悲鳴をあげる=阿久。錫杖にぶ氷をつく。じゃらんじゃらんと鳴る錫杖をつきしめながら歩く"海音寺。ステッキを(つく。こつこつと鳴らす)。松葉杖に(すがって歩く。全体重をかける)。松葉杖を塀に立てかける。 **つつかいぼう【突っかい棒】** 突っかい棒を(かう。外されたように笑う倉橋)。強情のつっかい棒を外す=池波。後ろから突っかい棒をする。節を曲げたら心のつっかえ棒が折れてしまいそう。向田。つっかえ棒をとられたように動きだす木庄。膝に両腕をつっかえ棒のように置く今東。心張り棒を(かう。外す)。戸に心張り棒を下ろす。 **どう【胴】** ぬめぬめのような女の胴=山田風。制服の胴がはらはらするほど細くくびれている女学生三浦哲。木刀が胴に決まる。蜂のような胴のくびれ=姫野。一太刀で胴を雑なぎ斬る。撃剣の胴のようなコルセット"川端。首が胴体から離れる。胴長の(犬。体型)。 **はっこつ【白骨】** 肉の失せた白骨の上を乾いた風がさらさら吹き過ぎるようなものを書く"小沼。白骨のような枯れ枝"山本周。橋が巨鲸の白骨のような姿"岡本。白骨のように無無気味に白く横たわっているシラカバの枯れ木=外村。白骨死体が見つかる。 **ほね【骨】** 骨が(白く光る。ずきずき痛む。からからと鳴る。きしきしと鳴る。粉々に砕け散る。すかすかになる。ぼきばきと鳴る。とけてしまいそうなくらい気持ちがいい=半村。墓場のように散乱する本多吟。みりみり音を立てるほどの勇ましさ=小島)。凍てた地面に骨が割れるほど叩きつけられる=真継。吊るした帆立貝の殻が枯れた骨が触れ合うような音を立てる光瀬。骨が折れる(肩の。首の)。骨ごと食べる。骨と肉を離す。骨と皮ばかりになって悲しい死に方をする=坂口。すっかり痩せ衰え骨と皮ばかりになる"鈴木光。骨に(ひびが入る。食い込むような非難の声"宮部)。痛みが骨に食いこむ。その日暮らしが骨にからむ。焼き場で骨になる。恐怖が骨に絡みついたように消えることがない=勝目。骨の(かけらを拾いあげる。抜けたような男"山本周)。風の中で枯れた野葡萄ぶの蔓が骨の触れ合うような音をたてる=原田康。骨の髄からにじみ出てくるような死の恐怖が心を占める=勝目。窓の隙円から骨の髄を刺すような風が吹き込んで来る徳永。骨まで溶けるような興奮"日野。寒気が骨までしみこむ。悪鬼のように相手の骨までしゃぶる『菊池。博奕邡くの而白みが骨まで染みる=藤沢。骨も砕ける痛みにのけぞり返る=山田風。骨を(刺す寒風。惜しまずに働く。刺すような諷刺い、有島。抜かれたように田舎でおとなしくおさまっている=川端)。今まで骨を折ってきたことが報われる。首の骨を折られる。後悔骨を喲むものがある「海音寺。笹地に白々と骨を立てたような枯れ木の原=高田。昼も夜も骨を刻けずるような業苦に悩む=芥川。わが骨を纓ミさむがような求道沢との生活をつづける司馬。しゃぶりつくされた骨のような顔-清水俊。空が骨のような色をして低く垂れ込める真継。▼骨のように見える(黒い山々の尾根が古い地球の=梶井。白い光を反射して陶器が白く冷たく三浦朱)。老体が全く骨ばかりのようにいたいたしい水井荷。あばら骨が(浮いて見える。折れる)。乾いた骨片が骨壺にの中でカサカサ音を立てる=島田。骨片を寄せ集める。死骨が道に満ちる。肋骨が折れる。肋骨にひびが入る。がら(鳥の。豚の)。がらでスーブをとる。形談だけの死骨と化す。人骨を(鑑定する。展示する。発抓する)。骨っぽい(男。テレビ番組)。骨っぽくて食べにくい魚。 **ほねぐみ【骨組み】** 骨組みが(がっしりとしている。しっかりしている。ほっそりと華奢に~)。骨組みの(木が剣もき出しになる。たくましい見事な体=山本周)。がっちり骨組みのできた話。骨組みを正しくしっかりと作る。骨格が(透けて見える。細く女の子のよう高橋三)。骨格の(がっちりした感じの大柄な人物"井上靖。しっかりした大柄な老人!水井前)。 <462> # 誘う・引き込む **いろじかけ【色仕掛け】** 色仕掛けで(男を騙だます。情報を得る。迫る。金を巻き上げる。話を持ちかける)。 **さそいこむ【誘い込む】** ▼誘い込む(愛の世界に。官能的欲望に。人を迷路に。豊饒追うしな陶酔に。色仕掛けで。肉欲的な幻想に。やけくそな気分に)。感傷的な酔い心地に誘い込まれる。誘いこまれるように入ってゆく=日野。香りを誘いこむように障子を開け放す新田。▼誘い入れる(読者を。霊を)。男を誘い寄せる。まんまと罠もなにおびき寄せる。抱き込みが功を奏する。抱き込む(総屋を。役人を)。釣る(広告で客を。高給で。高金利で。信心を利で)。誘引する(二次感染を。爆発を)。 **さそいだす【誘い出す】** ▼誘い出す(浮気の虫を。数日来の心身の疲れが酔いを=城山。人気かとのないところに『東野。あまりにも壮大な意味ありげな風景が少年の心を人さらいのように遠くへ"村松)。快い疲労が睡気ぬもを誘い出す=加賀。酔いが眠気を誘い出す。誘い出される(悲しみが。頑固さがむらむらと)。めまいを誘い出すような疲労感伊藤整。▼かどわかす(女を。子供を。幼児を)。▼おびき出す(犯人を。甘言をもって)。▼おびき出される(まんまと。ともすると放恣うな生活に=徳田)。 **さそう【誘う】** 誘う(客の笑いを。特殊な感興を。悪の道に。うまい言葉で。利をもって。陽の強さがめまいを。見る者の驚険を。軽い気持ちで飲みに。雲が違い思いに。ちょくちょくデートに)。嫌悪を誘っ光景。端はなから誘う気などない。眠気を誘う低く単調な音=篠田。喉から手の出そうな誘い=村松。誘いに(喜んで応じる。頑として応じない。心を動かされる。のこのこ出てくる。双手をあげて飛びつく)。▼誘いに乗る(色と欲の。うっかり)。誘いの(声をかける。言葉を手を伸ばす)。誘いを(適当にいなす。むげに断れない。断られたことをジョークに変える=落合)。かたくなに誘いを断る。遠回しに誘いをかける。誘いを受ける(気軽な。天鵞絨にゆのようなすべすべとした林美)。誘うような視線を向ける。雨を誘うような風伊集院。誘いかける(友人に。客となるよう。さりげなく。ベッドの上から。妖艶な身振りで)。誘ぎう(恍惚こうの仙境へ。燃える目で。広大な活字の海に)。道行く客の袖を引く=武田泰。話の水を向ける。 **さそわれる【誘われる】** ▼誘われる(何に。甘言に。春の陽気に。ホテルに。香ばしい匂いに。心地よい眠りに。とめどない妄想に)。誘われるままに車に乗る。誘われてうかうかとついて行く。夜桜に誘われて人が集まる。そそられる(絵心を。好奇心を。思慕の念を。強く興味を。色っぽい唇に。人懐かしい気分を。ほのかな哀感を。身近な親しみを)。内密の謀ご跡』を持ちかけられる。 **すいせん【推薦】** 推薦で入学を決めた大学=有川。推すいせん薦する(後任を。候補を。本を。優秀な人材を)。推薦状を添える。推薦文を書く。▼推す(教授候補を。委員に。自分が気に入った作品を。母校の出身者を。ほとんどの選者が一致して)。総裁に担ぎ出す。▼推挙する(会長に。横綱に。理事長に。もろ手をあげて)。他薦自薦を問わず。他恋する(後任を。候補者を)。他薦での応募も可。 **すいよせられる【吸い寄せられる】** 吸い寄せられる(磁石に。耳が音に。魅力に。目が新聞の記事に人間。影のようにふらふら=川端)。季節はずれの娘のようにふらふらと吸いよせられる荻野。▼目が吸い寄せられる(写真に。盤面に)。▼引き寄せられる(荒々しい手で。否応なく。海の見える風景に佐高。魅入られたごとく=柴田剤)。眼に見えない糸で引き寄せられるように劇場に足が向く=高見町。 **スカウト** スカウトの(手が伸びる。目にとまる)。」スカウトする(学生を。人材を。選手を)。スカウトされてモデルになる。移籍の誘いが来る。人材を釣る。有能な人材を確保する。有能な新人を発見する。有望な新人を発掘する。▼引き抜かれる(他社に。他チームに)。引き抜く(腕のいい職人を。他チームの選手を)。優秀な記者を引っこ抜く。 **すすめる【勧める】** ▼勧める(椅子を。加入を。記念撮影を。結婚を。紅茶を。酒を。正式な離婚を。ソファーを。煙草を。茶を。言葉巧みに。座布団を客に。しきりに。とりなし顔に。熱心に。愛想よく。口を極めて。しつこく。やいやいうるさく。良かれと思って。腕の良い医者を=萩原梁。是非とも夕食を食べてゆけと三浦朱)。▼勧められる(大学院進学を。一再ならず入会することを)。教授の勧めに従って就職する。渡りに舟とばかり勧めに従う。▼勧奨する(学生を。栽培を。出品を。退職を)。▼総浪しい、うする(立候補を。しきりに。再三再四。たびたび。何度も)。▼推奨する(成長株を。早寝早起きを。両親が読書などの静的な趣味を"有川)。▼勧告する(降伏を。辞職を。処分を。中止を。政府に)。避難勧告を出す。否応松沢なしの強引な勧誘安岡。勧誘する(加入を。寄付を。客を。消費者を。知り合いを)。 **そそる** そそる(新たな恋心を。異国情緒を。男の欲望を。旅行気分を。関心を大いに。噂がいやが上にも人気を。客の購買意欲を。物悲しい気持ちを)。▼そそり立てる(哀感を。思いを。情欲を。人を)。 **つられる【釣られる】** ▼釣られる(甘い言葉に。俸禄の好餌に。羊頭狗肉にいこうの広告に)。おためごかしの誘い文句につられる"西木。甘い砂糖菓子に釣られる愚かな小娘藤本。釣られて(あくびをする。笑い出す)。広告の文面に釣られて来る。つい釣られて走りだす。高値に釣られて売却を希望する=松岡。釣り込まれる(面白さに。巧みな手管に)。 <463> # 誘う・引き込む **つれだす【連れ出す】** ▼辿れ出す(女を。娘を。言葉巧みに。寂しい場所に。有無も言わさずに。なだめすかして)。▼外に連れ出す(会場の。店の)。 **ひかれる【惹かれる】** ▼惹かれる(強く心を。色恋の道に。言葉の魅力に。頼もしい男に。激しい愛欲に)。▶心惹かれる(美しいものに。野心に。魅力のあるものに)。ほだされる(親切に。つい情に。熱心さに)。一魅せられる(優雅な姿に。得体の知れぬ芳香に出村。ぽっちゃりとしたふくよかな体に小池)。 **ひきこまれる【引き込まれる】** ▼引き込まれる(思わず話に。絶望の淵に。疲労の底に。相手の無邪気な調子に。いつの間にかお喋りに。眠りにとろとろと)。知らず識しらずのうちに話に惹きこまれる"有吉。引き込まれるように話を聞く。悲と現づっの境に引き入れられる。▼引きずり込まれる(混迷の中に。地獄まで。ずるずると。ずるずると地獄まで。無理やりに部屋の中へ。心地よい興奮の世界に!佐藤隆)。引っ張り込まれる(寂しい場所に。静寂の中に。じわじわと)。 **ひきこむ【引き込む】** ▼引き込む(読者を話に。こっちのベースに)。引き入れる(仲間に。男を部屋に。味方に。作品の世界に読者を)。▼引きずり込む(悪の道に。自分のベースに。作者の構築した世界へと)。語らう(一味徒党を。一味を。一揆を。不平の徒を)。▼くわえ込む(金持ちの玉を。厄介者を)。とんだ邪魔物をくわえこむ!安部。▼買収する(業者を。警官を。選挙民を)。暗がりに引っ張り込む。巻き込む(トラックがオートバイを。相手をこちらのベースに。日本中をセンセーショナルな渦の中に)。 **ひきつけられる【惹き付けられる】** ▼惹きつけられる(女に心を。円満な人柄に。知らず知らず)。心を奪われる(景色に。寂しさに。不思議さに)。魅了される(面白さに。圧倒的なスピードに。爽やかな語り口に。宝石の美しさに)。 **ひきつける【惹き付ける】** ファンの興味を惹きつける。人を惹きつける魅力を持つ高木。▼魅了する(観客を。聴衆を。天の旋律のように心を"中河)。 **みりょく【魅力】** ▼魅力(抗らうことのできない。心がおどるような"白井)。女としての魅力に欠ける。宝石の魅力にとりつかれる。足元にも寄れない大人の女の魅力に嫉妬を覚える森瑙。魅力の(あふれる作品。ある表現。厳とになる)。言い知れぬ魅力を覚える。自分の肉体の魅力を武器にする。何とも言えぬ魅力を感じる。溢れんばかりの魅力を周囲に発散する"貫井。底の知れない深い魅力を満たたえた眼谷崎。血が逆流して肉が痙察せいを起こすほど大冒険小説の魅力を感じさせる計画=獵子。目病み女に風邪ひき男"日野。魅力ある(職場。女性。人物)。垂涎叶心の魅力ある言葉。▼魅力的(讐たとえようもないほど谷川。巨額な報酬はのどから手が出るほど=塩野。ひきしまった横顔がとても"五木)。魅力的な観光資源。可愛らしい魅力的な女。情熱を込めた魅力的な目。敵役を魅力的に描く=川崎。男好きのする(顔立ち。タイブ。美人。まくれ上がったような唇"つか)。男にとって抵抗しがたい蠱惑にゃ。片笑くぼに笑ってみせた顔が目に痛いくらい蠱惑な表情"吉川。目に蠱惑の炎がゆらめく=山田尾。蠱惑的な(脚の線。微笑。眼差し)。一度見たら忘れることのできないような旅惑的な美貌!獅子。 **みわく【魅惑】** 女の若さが持たせる眩まぶしいような魅惑が匂い立つ『大佛。甘美な魅惑が引き浪の後に残る潮鳴りの響きのように女こころを衝,つ=岡本。魅惑する(男を。民族を)。魅惑的な(言葉。ポーズ)。目が魅惑的な媚こびを漂わせる。アナウンサーの口調がたとえようもなく魅惑的に聞こえる=阿久。 **ゆうわく【誘惑】** 誘惑(悪魔じみた。堪こらえがたいほどの強烈な南条。誰にしても避けがたい強い=江戸川)。心身へ若く甘い誘惑が水のごとく浸り込む"岡本。蜜を慕う蟻ぁぁのように誘惑が群がる荒巻。誘惑に(身をまかせる。勝てそうもない。平然として耐える。満ちた問いかけ。負ける弱さを持つ=丹羽)。押さえがたい誘惑に駆られる。不意の誘惑に苦しむ。やすやすと異性の誘惑に陥る。教え子の誘惑に乗りかける=光原。美酒の誘惑に身をまかせて存分に酔う三好述。誘惑の(言葉を退ける。手から逃れる。手に落ちる。手を伸ばす。魔手を伸ばす。餌がぶら下がる=山岡、毒が胸に滲しみ込む"大佛)。女生徒の誘惑の罠わなにはまってあたら人生を棒にふった教師の醜聞はよく聞く話"飯田。赤蜜のような誘惑の言葉をしりぞける=石坂。誘惑をぎりぎりのところで回避する。ありとあらゆる誘惑を試みる。しつこい誘惑を受ける。男の誘惑から賢く身をかわす。男の誘惑に引っかかる。▼誘惑する(女の子を。人妻を。機会あることに)。▼誘惑される(胃袋が。火に)。誘惑的な(欺瞞心ま。肉体)。 **よびだす【呼び出す】** ▼呼び出す(死者の霊を。映像を画面に。電話口に。ディスブレーにメモリーを。人目につかない公園に。埋もれていた古い記憶を"川端)。呼び出しがかかる。呼び出しに応じる。いい加減な呼び出しには応じない。呼び出しの電話をかける。呼び出しを(受ける。かける)。呼びつける(業者を。部下を。ボーイを。相手の都合などおかまいなしに)。遠くまでお呼び立てする。召喚状を送達する。証人を召喚する。▼呼び出される(怪しい男に。裁判所に)。裁判所に召喚される。警察に呼ばれる。 **よびみず【呼び水】** エラーが呼び水となって試合に負ける。呼び水を注す。事故の誘い水。誘い水を向ける。 <464> # 寂しい・侘しい **かんじゃく【閑寂】** 山の閑寂が心をひきしほる。閑寂な山中。修道院の閑寂な雰囲気。湖が冷雨に煙ってさびしいほど閑寂な風景"石川。幽玄閑寂を重んじる。 **こじ【孤児】** 誰一人よるべのない孤児。孤児に等しい生い立ち。孤児の救済に力を尽くす。捨て子を実の子として育てる。みなし子同様の身の上。みなし子の少女を引き取る。 **こどく【孤独】** ▼孤独(卵の殻で自分を包んでいるようなひ弱な=福永。暁の白々とした森瑙。一日一日の生の中に溺れつつ押し流されて行くような哀れっぽい=福永。己れの肉感が暮色の中にとろけ果ててでも行くような頼みがたい=樒。さらさらと野の中に小川のように流れていて沈澱物などはどこにもない明るい=石川。独り坂道を馳けおりた少年の日のように"高橋和。療養地の身を噛むような"梶井)。孤独が(心を包む。深まる。胸にしみる)。気の付かないうちに孤独が胸をひたし胸の中に沈澱をつくる"石川。自ら好んで自分の廻りに夢想と孤独との壁を置く=福永。孤独な(思いに陥る。生活をかこつ。闘いを続ける。晩年を過ごす。道を進む。影を身に着ける。放浪の中に一生を送る=中島多)。陰性の孤独な性格。寂しい孤独な人。報いの少ない孤独な闘い。豊饒うしな空想に孤独な心を満たす=円地。孤独に(耐える。すっかり慣れる。なったとしても自分を欺いて空しく待っているよりはよっぽどまし=福永)。孤独の(膜を漏らす。月日を過ごす。陰影をにじませる。寂しさが心にしみ広がる。世界に追い込まれる。闇に突き放される。楽しみに充実して酔う~長与)。自分の回りに孤独の壁を置くと故郷に帰る=陳。身一つを頼みにする。一人ぼっち(広い世界に。群衆の中の)。一人ぼっちで酒を飲む。ボートに乗って山の中の湖を一人ぼっちで漕いでいるような気が一瞬する深く澄んだ瞳"丸谷。邪樫忙な風を浴びたような淋しい孤独の川に流される=林美。孤独をひしひしと感じる。索漠たる孤独を感じる。しんとした部屋で波と風の音を開いていると孤独を痛いように覚える=加賀。笑いに痛烈な孤独を宿す光洒。形影相弔う。唯一人で曠野にうの深い雪に埋もれているような心持ち=島崎。たった一人見も知らぬ野末に立っているような思い"有局。ぽつんと広い平原の真ん中に取り残されたような気持ち=井上靖。幻を求めて満たされない渇き=安部。満貝電車の中で味わう傍若無人な孤独感荻野。孤独感が(ひしひしと押し寄せてくる。耐えがたいほどに襲うに山田太)。身を切るような孤独感が胸を締めつける横山。孤独感に胸を噛まれる。絶望的な孤独感にとらわれる。▼孤独感に襲われる(名状しがたい。得体の知れない)。癒しようのない孤独地獄に突き落とされる"島田。孤独地獄の闇に閉ざされる。孤影佾然乳いうと故郷に帰る=陳。 **さびしい【寂しい】** ▼寂しい(どうしていいか分からないほど。シーンとするくらい=獅子)。寂しい(人生を送る。日々が続く。心持ちに涙ぐむ。場所にひっぱりこまれる。微笑を浮かべる)。寂然として虫の声のみが淋しい菊池。海鳥が寂しい声で鳴く。暗く寂しい山道。頼りなげな寂しい表情。干からびた寂しい笑い声。ふっと寂しい笑顔を見せる。異邦人のような淋しい心持ち。有島。自分だけが取り残されたような寂しい気分獅子。身辺に寂しい影がただよう石坂。人気かとのない寂しい道を歩く=高見順。夫婦だけの寂しい通夜"勝目。夜間はばったりと交通が絶える寂しい個所森村。夕凪砂約の海みたいに穏やかで寂しい目=辺見。空が淋しいほどに薄青い三浦綫。だまされたような形で急に家から放りだされ心細く悔しくさびしかった三浦し。寂しく(切ない思い。吹いて過ぎる風の音)。ぽつんと寂しく放り出される。夜が寒く寂しく更けて行く。寂しくて話し相手がほしい。寂しくないと言えば嘘になる。火が消えたように淋しくなる=二葉亭。一人寂しく(立っている。亡くなる。思いあきらめる)。身にしみ渡る寂しみ。寂しみが骨の髄まで微する。寂しみを胸に包む。▼気持ち(古機場にいるようなさみしい“阿川弘。森の中の井戸の中にでも落ちこんだように淋しい=林美)。二十代の半ばなのに人生を引退したような心境"小林信。胸の中をふっと風が通りすぎたような気がする=藤沢。心寂しい思い。さみしい発式。さみしいけど美しい夜景志茂田。 **さびしさ【寂しさ】** 淋しさ(糸のように細く引いたかすかな=野間。灯りの消えたような連城。故郷から離れているような"円地。初老を迎える不安と=瀬戸内。歯の抜けたような高橋和。限の前にあった華やかなまぼろしが一度に奪い去られるような介菊池。ラジオの音楽がぶつりと切れてしまったような=大庭)。一寂しさ(自分のからだの一部がごそっと空洞になるような島尾。白紙のようなはかない=有局。ふと心を掠かすめる老境の=里見。胸の底から突き上げてくる耐えがたい=山手)。▼さびしさ(空寂閑々とした曠野にうにひとり在るような耐えがたい"阿川弘。世界が空っぽになったような宮本百)。寂しさが(心を浸す。胸に巣食う。全身ににじみ出る。睫毛甦っの長さの中に宿る=阿刀田)。せっかく迎えた暖かい春からまた冬に逆戻りして行くような味気ないさびしさが胸に沁しみる=石川。一抹の寂しさが胸に残る。ひしひしと寂しさが身に迫る。雨の降る明け方のような寂しさが身のまわりを取り囲む井川。糸がぶつんと切れたような寂しさが胸に通せまる=有鳥。すっぽかされたような淋しさが湧く佐多。身を裂くような寂しさが襲ってくる=菊池。胸の中を寂しさが木枯らしのように吹き抜けていく=篠田。大平原に放り出されたのと同じようにさびしさがこみあげてくる=星。寂しさと空しさが同居しているような表情束野。 <465> # 寂しい・侘しい **さびしそう【寂しそう】** 寂しそうな(駅に下りる。顔をして笑う)。ぼそぼそと寂しそうな声が響く。寂しそうに(溜め息をする。目を伏せる。笑う。ぼつねんと一人机に座る)。後ろ姿が寂しそうに見える。とぼりとぼり草履を引きずって寂しそうに帰っていく鈴木三。寂しげな(影が漂う男の姿。微笑が口辺に漂う。目を宙に据える)。茶色く乾いたさびしげな田んほを横目に川のほうへ下りていく三浦し。淋しげな翳かげのある美貌!南条。寂しげに笑う。黙って寂しげにうつむく。さみしげに笑う。 **せきぜん【寂然】** 寂然と(趺坐ふきする。眠りに入る。相対して座する。虫の声のみが寂しい。人煙を離れた山路於=獅子)。天地は寂然と静か。寂然とした(本堂。山寺)。 **せきりょう【寂寥】** 寂寥が心を包む。言葉に日頃の寂寥がにじむ。サッと淋しい時雨に打たれたような思いがけぬ寂寥が来る槌。頼りない寂寥に呑まれる"複。じっと坐ったままではいられないような寂寥の念が真っ暗に胸中に拡がる有局。オフィスが年々寂寝を増す=岡本。地底に身の沈んでゆくような寂寥感当局。寂寥感が(魂を底まで凍らせる=井上靖。ひしひしと我が身の内に泌しみわたる!佐多)。体が地底に沈みこむような寂寥感に襲われる=高橋初。 **てんがいこどく【天涯孤独】** 天涯孤独の(みじめな思い。身を嘆く)。絶海の孤島の天涯孤独の生活!佐山。身寄りが一人もない。天涯によるべなき孤身をあわれむ=海音寺。▼身の上(天涯孤独の。天にも地にもただ一人の)。無無縁仏を荼毘だびに付す。 **ひとりね【独り寝】** 独り寝の(気安さ。寒さ)。空間いを(かこつ。守る)。孤岡にげをかこつ。 **ものさびしい【物寂しい」** 心の中のストーブの火が消されたようにもの淋しい“新田。物寂しい陰鬱な光景。荒涼とした物寂しい風景。人けもない物寂しい原"福水。物寂しさが心の中に渦巻く。歓楽の後の物淋しさとでもいうような心持ちが胸を支配する谷崎。目がくらみそうな物寂しさに襲われる三田。陰々と(静まり返る。深山の気がこもる)。ほえ声が除々と聞こえてくる。うら寂しい(影の薄い存在。心持ち。神社の境内)。寂閑々とした広野。空空寂の観を増す。蕭殺しとした墨色の空。蕭殺の気をはらむ。蕭然れいったる(雨の音。枯れ野。冬の原野)。寂寞感に雄が突風のように襲う~舟橋。日がな一日寂寞に閉ざされる。落莫くたる(生活。廃屋。廃墟)。晩秋の落莫たる愁い。人家寧々にたる寒村。寥々と広がる荒野。荒野のような荒繆に行ったる心"隆。窪くぼんだ砂漠のように雨に垂れこめられた浜が荒窓とひろがる遠藤。侘ゃびしさと焦燥が荒家のうちに込みあげる。河の両岸の柳の老樹は黄ばみ水際の蘆もしは枯れて蕭条しいうたる冬の眺め=井上靖。萧条たる十一月の浜辺。蕭糸とした(秋風。孤独を噛む。寂しさ)。蕭々しうと鳴り続ける笛の響き。雨が蕭々と降る。木の葉や草の葉が旅々と鳴る。瀬音が蕭々と聞こえている。松林が蕭々と鳴りわたる=山本周。北国の蕭々とした冬景色がまざまざと限に見えるようへ長部。 **よるべない【寄る辺ない】** 寄るべない(孤身を哀れむ。旅の身。風情を全身に漂わせる)。誰ひとり寄るべのない老人。身寄りがないために心細い思いをする。頼るべき身寄りがない。 **わびしい【侘しい】** 侘しい(秋の夕暮れ。たそがれの雨。思いが深くなる。暮らしを悲しく思う。冬の陽を浴びる)。幻灯の中の人物のように鮮やかであって侘しい辻井。何というわびしい部屋であることか。じめじめした薄ら寒いわびしい雨"小松太。茶室情緒の侘しい琴唄。独身男の侘しい下宿。ひとり暮らしの侘しい境遇。汽船の流す屑を追いながらどこまでも追いかける海豚妙。のような侘しい存在"伊藤奖。門灯が玄関先をわびしく照らす“石坂。侘しく枯れはてた小さな庭萩原朔。裸電球が侘しくついた廊下。▼侘しくなる(つくづく。ふっと)。雨の宿りを侘しがる。▼侘しさ(閑寂といってもいいほどの得体の知れぬ核。強大な腕力でなぐりつけられてしまった後のようなあてどのない"檀)。言い知れない侘しさが胸の中で広がる=内海。更け行く秋の侘しさが身に染みる心地佐藤愛。うずくまりたいようなわびしさを感じる三浦裁。冬空に派手な幟120日がはためいているような侘しさを覚える!今日。侘しさを友としているような人!島崎。戸外に夏なお寒き木枯らしの音を聞くよう。開高。心に木枯らしが吹く荻野。索漠と味気ない現代光原。索涙とした(孤独を感じる。失意におちる。思いにとらえられる。気分に襲われる)。 <466> # さり気ない・何気ない **えんきょく【婉曲】** 婉山な口実でやんわり逃げる。婉曲に(意地悪する。好意を示す。断る)。感情や主張を婉曲に表現する。迷惑な気持ちを婉曲に示す。 **げんがい【言外】** 言外に(先を促す。明らかな不快が感じ取れる。漂っている意味合い)。気持ちが言外にあふれ出ている。ほっとした気分を言外に漂わせる。言外に込められている(ニュアンスが。別の意味が)。 **さりげない【さり気ない】** さりげない(態度を装う。ユーモアを交える)。日常のさりげない一挙一動。長い空白の時間があるのに何日かぶりで会ったようなさりげない言い方“西木。さりげなく(嘘をつく。言葉を挟む。視線を外す。質問をかわす。そばに寄る。水を向ける。相手の様子を観察する。その場を離れる。部屋の中を見まわす。話を核心からずらしていく=荻野)。笑いながらさりげなく牽制する。いちばん言いたかったことをさりげなく口にする=西木。壁に溶け込むようにさりげなく立っている=ねじめ。 **そぞろ【漫ろ】** そぞろ(哀れを催す。同情の念の胸に迫りくるを覚える=太宰)。そぞろな感激の思いに満たされる。そぞろに不思議な悲哀を覚える=有島。うたた(懐旧の情に堪えない。感慨に堪えない。今昔の感に堪えない)。転た旅情の心細さを増す伊藤左。 **だれからともなく【誰からともなく】** 誰からともなく(歌い始める。話が出る。笑い声がこぼれる)。どちらからともなく(挨拶する。目をそらす)。 **とおまわし【遠回し】** 遠まわしに(嫌みを言う。探りを入れる。食事に誘う。皮肉を述べる。いやがらせをする。不満をほのめかす。言っても通じない奥田)。暗に(金を要求する。先を促す。ほのめかす。報いを求める)。 **それとなく** それとなく(意見をする。観察する。気をつける。様子を見る。顔色をうかがう。探りを入れてみ真綿で首を絞めるよう。将を射んと欲する者は先ず馬を射よ。外邪を埋めてから質問を繰り出す。オブラートに包んだ(言い方。言葉。表現)。 **どこからともなく** どこからともなく(いい香りが漂ってくる。美しい音色が聞こえる。笛の調べが流れてくる。現れてどこへともなく消える=開高)。小鳥の声がどこからともなく聞こえる=中河。何処とこからともなく気軽な黄蝶が飛んでくる!志賀。 **なにげない【何気ない】** 何気ない(会話を交わす。調子で尋ねる。ふりを装う。世用話を交わす。肌を装って話しかける。様子で監視をする)。うっかりすると聞き流すほどに何気ない口調の皮肉"有川。不快を押し包んだ何気ない顔「志賀。何気なく(鏡を覗のそく。口を出た言葉。声をかける。外を見る。手にとる。目で追う)。何気なさそうに振る郷う。さあらぬ(体で尋ねる。体を装う。ふうに言う)。何心なく(雨の響きに耳を傾ける。立ち止まって振り返る。ぽかんと見入る)。何の気なしに(足をとめる。尋ねる。見る。戻ろうとする)。何の気もなく(振り返る。ふと口に出る言葉)。何気なしに(顔をあげる。遠くのほうを眺める)。見るとはなしに(見入る。目をやる)。見るともなく(視線を向ける。目で追う。本のページをめくる)。見ろともなしにぼんやりとテレビを眺める=鷺沢。 **なんとなく【何となく】** 何となく(居心地が悪い。気がひける。想像がつく、場違いな感じ。いやな予感がする。浮き浮きした気分。帰る気がしない。声をかけにくい。好きになれそうにない。そわそわして落ち着かない。問が抜けて見える。むっとした気持ちになる)。何となしに(身が震える。夢心地になる。頼りがいがありそう。ほのぼのとしてくる)。思いなしか(明るく答える。ひどく沈んでいる。頬がこけて見える。態度が丁寧に感じられる『小林信)。誰言うともなく決まる。誰にともなく言う。どこやら(寂しげな笑顔。父に似ている。物柔らかな姿)。なぜか(心が落ち着く。涙が出る。不愉快な気持ち)。何かしら(幸福感に満たされる。とがめだてが感じられる。人の心をとらえる)。何がなし(明るい期待を持つ。得心がいかない。情けなく思われる。ほっとした思い)。何がなしに悲しい思いに打たれる"島崎。何ということなしに一緒に歩き出す。何ということもなく微笑をもらす。そこはかとない(好意を感じる。風情がある。恐怖に襲われる。詩情を漂わせる。品が感じられる)。春の気配がそこはかとなく漂う。どことなく(明るい印象。居心地が悪い。大人びた感じ。古風な感じ。弾んだ声。荒涼とした夜景。腰が据わっていない。自由な空気がある。そぐわない着こなし。娘らしさが残る。よそよそしい口調でしゃべる。陰鬱な雰囲気がつきまとっている藤田。狸しじみた髭ぃげむしゃの顔”中)。何やら(いかめしい肩書。意味ありげに笑う。心細そうな顔つき。こそばゆげな含み笑い。楽しそうに話し合う。つかみところがない。難しそうに聞こえる。予言めいた不気味な言葉)。何だか(気が進まない。気に食わない。ばつが悪そう。おかしな気分になる。狐につままれたよう。不気味なものを感じる)。 **ふと** ふと(足を止める。顔を上げる。小耳に挟む。手が止まる。目にとまる。気付くと見慣れた街角に来ている。言葉が頭に浮かぶ。寂しそうな顔をする。を見る目をする。よみがえった記憶。心を掠かすめる老境の寂しさ=里見)。夜中にふと目が覚める。悪戯かじみた考えがふと頭をよぎる=黒井。 **わけもなく【訳もなく」** わけもなく(心がなえる。腹が立つ。胸が騒く。涙があふれ出る。感傷的な気分に取りつかれる=高井)。理由もなく(当たり散らす。脅える。癇癪けんしを起こす。興奮する)。 <467> # 去る・離れる **あいだ【間】** しばらくの間黙りこむ。葉の間からこぼれ落ちる切の光=村上春。間に入って口を利く。気まずいものが二人の間に流れる=山本有。村落が低い丘陵の間に点在する。藤沢。山の間を割って流れる川。▼あわい(夢と現実の。たそがれが夜に移る)。雲のあわいから陽が出る。眩まぶしい陽光が木々のあわいから差し込む大岡。過去と現在のあわいに立ちつくす。 **かんかく【間隔】** 間隔が大幅に縮まる。試合の間隔があく。建物と建物の間隔がゆったりしている。等しい間隔で植える。一寸刻みの間隔で雨粒が落ちてくる"高樹。問隔を詰めて並ぶ。正確な間隔をおいて交互に消えては光る=武田泰。▼問隔を置く(不規則な。規則正しい。等しい。短い)。一定の間隔を置いて並べる。▼まだ間がある(夜明けには。夜には)。若葉にはまだ少し問がある。じんわりと間を詰める。スパンが(長い。短い)。五六年のスパンで見る。スパンを長く取る。名優のような間合いで顔をあげる"小林官。意味深長な間合いをとる。車が間合いを計ったように門の前に停まる=高井。じりじりと間合いを(せばめる。詰める)。▼間を置く(一言ごとに。一拍。規則正しく。しばらく)。問を置いて(答える。ノックする)。 **きょり【距離】** ▼距離(近からず遠からずの。考えごとをするには手頃な=佐々木。考えをまとめるには丁度頃合いな=高橋治)。距離が飛躍的に延びる。だいぶ距離がある。なかなか距離が縮まらない。彼我の距離がどんどん開いていく。二人の間の距離が広がる。両者の距離が狭まる。▼距離が縮まる(双方の。彼我の。見る見るうちに)。距離を歩数で記憶する=陳。男との間離を縮める。徐々に後続との距離を広げる。じわじわと距離を詰める。少しずつ距離を延ばしていく。他人と距離を置いてつきあう。遠い距離を厭いとわない。・距離を置く(付き合いに。保守派と)。ほどよい距離を保つ。一定の距離を保って追尾を続ける。長い距離を(歩く。走る)。距離感が狂う。友人との距離感に悩む女子中学生のような思考回路に陥る=三浦し。距離感を失う。遠近感が出る。遠近を測る。 **きりはなす【切り離す】** ▼切り離す(家庭と仕事を。精神と肉体を。二つのものを。ばらばらに)。家臣の一団が紐帯さいを断たれ個々ばらばらに切り離される=本庄。ばらばらに雌反させられた組織高橋和。裁つ(型紙を。布地を。布の耳を。服地を。鋏ぶさで)。 **けいえん【敬遠】** 敬遠のフォアボール。▼敬遠する(うるさ型を。先生を。打者を。暴君を)。敬して遠ざける。▼うとまれる(母親に。人から)。▼うとむ(他人を。子供のすることを)。 **ここう【孤高】** 孤高に正義を体現する。孤高の(作家。精神。美)。自衿に詰の孤高を固守する太宰。超然たる態度。超然とした独往的な生活法"中村真。何世紀も辞書編集部に棲息してきたみたいに超然として見える三浦し。世間の動きから超然としている。 **こりつ【孤立】** 強力なる側面からの援護を失って孤立を深めるし永井路。孤立する(国際的に。社会の中で。世間から。ぽつんと。救いがたいほどに。一群の仔羊のように遠藤)。孤立した(戦いを続ける。立場。一つの丘)。同調する者は一人もいない。孤立感を深める。名状しがたい孤立感を覚える。孤立無援で(戦う。立ち往生する)。孤立無援の悲運に陥る。四面楚歌もんの(立場になる。状況に追い込まれる)。 **さる【去る】** 去る(頭上の敵機が。平和な時が。身の危険が。掲示板の前を。子供が親元を。大臣の椅子を。両親のもとを。空のかなたに。影のように。この土地を。かなりの距離を走る。次第に距離を縮める。徐々に後続との距離を広げる。じわじわと距離を詰める。少しずつ距離を延ばしていく。他人と距離を置いてつきあう。遠い距離を厭いとわない。▼去るのを待つ(嵐が。息を殺して痛みが。建物にこもって吹雪が)。▼時代が去る(一つの。食うや食わずの)。▼鳴らして去る(題跡かを。ばたばた草履を=井上ひ)。▼世を去る(父母が。病で。一流の学者が立て続けに=村上元)。▼去っていく(足早に廊下を。背を向けて。後ろも振り返らずに。人の波にまぎれて。恐ろしさが引き潮のように=遠藤。丁寧に会釈をして=山本間。はっとするような言葉を残して高橋三。闇に溶けるように=乃南。夢がすげなく見る見る高見町)。去っていく背中を見送る。とうの昔にこの世を去っている。不本意な形で去らなければならない藤田。飛び去る(頭の上を鳥が。瞬く間に歳月が)。逃げ去る(一目散に。いずこかへ)。後にする(病院を。部屋を。足早に取調室を。住み慣れた我が家を)。去らない(考えが頭を。匂いが鼻先を)。立ち去らずにぐずぐずしている。都をなかなか立ち去り得ない。立ち去りがたい愛着を訴える。 **じしゅてき【自主的】** 自主的な(外交。候補を立てる。取り組み。運動が巻き起こる)。自主的に(運営する。判断する)。自主独立の精神。主体的な(思考を続ける。判断)。自主性に(乏しい。任せる)。▼自主性を重んじる(子供の。生徒の)。 **たいじょう【退場】** ▼退場する(すごすこと。みんなの拍手に送られて。レッドカードで。未納げもなく駆足で=横光)。レフェリーの出したレッドカード。レッドカードを突きつける。 <468> # 去る・離れる **たいせき【退席】** ▼退席する(会議中に。途中で。重役が気を利かせて早く=海音寺)。席を外す(茶を入れかえるふうにさりげなく三浦綫。目立たないようにそっと=石坂)。中座を(とがめる。詫びる)。中座する(会合を。食事を。所用で)。中座しようとする者をたしなめる=司馬。 **たちさる【立ち去る】** ▼立ち去る(何も言わずに。頭を下げて。影のように。踵を返して。痕跡を消して。潮時を見て。鼻で笑って。闇に紛れて。連れをうながして足早に。肩を揺すりながら。頭を垂れてしおしおと。どこへともなく。ヒールを鳴らして。二人が肩を並べて。目的を果たして。男が熊のようにのっそりと=大庭。そそくさと逃げるように!高橋知。ばたばたと走るような足どりで=海音寺)。全員が立ち去るのを見送る。▼その場を立ち去る(素っ気なく。悪いものを見たような気がして慌てて=平岩)。残して立ち去る(足音を。捨て台詞べりを。丁重な悔やみの言葉を=江戸川)。立ち去っていく後ろ姿を凝視する。足早に歩き去る。▼歩み去る(大股に。背を見せて。悠々たる足どりでのっしのっしと=山本周)。辞去する(会社を。会談の場を。師の許もとを。社長宅を)。 **たちのく【立ち退く】** 立ち退く(家を。住みかを。砦を。テントを。領内を)。早晚退去する運命にある。『退去する(官邸を。任国を。小股歩きにせかせかと)。国外退去処分を受ける。退去要求を(受け入れる。無視する)。 **はずれる【外れる】** ▼外れる(駅を、林を。町を。港を。村を)。▼外離れる(船が港を。電車がプラットフォームを)。 **とおざかる【遠ざかる】** 「遠ざかる(後をも見ずに。声が背後に。車の赤い尾灯が。すっと周囲の音が。地上の騒がしさが徐々に。見る見る後ろに。決定的な破綻から。馬蹄以ての音が受々妙っと。船が影をにじませて。黒い影が滑るように=福水。声が風の途切れるように切れ!遠藤。まわりの世界が望遠鏡を逆にしたように村上龍)。遠ざかって行く(ベタンペタンとゴム草履の音が!佐藤愛。思い切りのいい態度で大佛)。▼遠ざかっていく(一歩一歩。ぐんぐんと。だんだん。どんどん。足音が林の中を。後も見ずに道を。通りを急ぎ足で。ゆっくりとした歩調で。花を踏むようにそっと=逃城)。久しく都会風の料理から遠ざかっている=立原。日一日と親から遠ざかってゆく三浦失。話しているうちに螺旋状にゃんに最初の核心から話が遠のいていく干刈。▼遠のく(客の足が。財政再建が。目標達成が。声が次第に。解決から一歩。すうっと意識が。波の音がだんだんに。とらえようとすると逃げ水のごとく=村松)。 **とおざける【遠ざける】** ▼遠ざける(多忙を理由に。視線をすっと。膳を膝から。世俗の交わりを。世の中の雑然とした動きから身を藤田)。遠のける(怒りを。信仰を。屏風びにを。眼差しを。古いノートをしきっみたいに心を=岡田)。 **どくりつ【独立】** 独立を(実現する。宣言する)。▼独立する(国が。経済的に。会社を辞めて。暖簾分はけを受けて)。独立した一個の作品。誇り高い独立した人間。独立して会社を興す。独立運動が(高揚する。盛んになる)。独立国家から植民地に転落する。独立不胸もの男。独立民主の日本を打ち立てる。分離独立をめざす。▼一匹狼(政界の。俳壇の。武芸の)。髪の毛が一本立ちになる。一本立ちする(子供が。事業が。技術者として。一人前の技術を身につけて)。自活の道を(考える。講じる)。▼自活する(親元を離れて。アルバイトをして。親から独立して。卒業して一刻も早く)。自立への道を探る。▼自立する(経済的に。精神的に)。自立心が乏しい。自立心に欠ける。自立心を育てる。夜道の一人歩き。データが一人歩きを始める。一人歩きする(謳うたい文句が。作品が。数字が。間違った印象が)。独り立ちできると太鼓判を押す。独り立ちする(赤ん坊が。子供が。親から)。 **はしりさる【走り去る】** 「走り去る(願を返して一散に。速度をゆるめずに。あわてふためいて。くるっと向きを変えて。車がスピードを上げて。砂利を蹴立てて。パトカーが猛スピードで。一陣のように篠田。急行列車のような速度で遠く手の届かぬところへ野則。恐怖で引きつった顔で鈴木四。小さな明かりが流星のように福永)。走り去る車に手を振る。 **はなす【離す】** 離す(柱から身を。二人の仲を。受話器から耳を。コーヒーカップを唇から。受話器を耳から。突き放すように体を"原田康。弾かれたように身体を=小池)。▼放す(水に茄子なすを。釣り上げた魚を)。足を離す(アクセルから。ブレーキから)。▼手を離す(肩から。体から。吊り革から。ドアノブから。ハンドルから。ローブから)。▼目を離す(新聞から。図版から。双眼鏡から。テレビの画面から)。肌身離さずに持ち歩く。目を離さずに見つめる。▼引き離す(二人を。無理に。力ずくで。話題を厄介な場所から"黒井)。▼隔離する(親子を。地域一帯を。保菌者を。世間から)。▼手放す(家を。土地を。店を)。手放すのが(惜しい。つらい)。気体と液体の分離が起こる。分離する(肉体と削神を。一人一人を。歩道と車道を)。▼離さない(地から足を。頑として。金輪際。しがみついて。つかんだら。手につかんで。しっかと抱えて。主導権を握って、読者を引きつけて)。▼捕らえて離さない(鼓膜を。読者の心を)。▼目を離さない(画面から。テレビから)。▼手放さない(優位を。片時も)。▼目が離せない(片時も。画面から。光景から)。 **はなつ【放つ】** 放つ(甘美な匂いを。羞恥しいが炎を。後ずえた体臭を。宙にバンチを。無遠慮な音を。窓から小便を。目が妖光を。隠密を四方に。目を窓外に。燻ぃぶし銀の魅力を。強烈なオーラを。強烈烈なセックスアビールを。空に向けて銃を。月が眩まぶしい光輝を。どかんとかんと空砲を。とどめの一発を。ぼんやりと微光を。眼差しを遠くに。殺気を全身から。ピストルを空に向かって。弓を引きしぼって勢いよく。両の拳を突きあげて言葉にならない大声を三浦し)。異彩を放つ小説家。生彩を放つ人物。▼香りを放つ(典雅な。沈丁花北以防が芳烈な=石川)。瞳が輝きを放つ。香気を放つ(かすかな。高い)。光沢を放つ(美しい。鈍い。欲ぬぬの)。瞳が精悍な光芒にを放つ=山田風。▼声を放つ(感嘆の。愁嘆の。鋭い)。▼虚空に放つ(キックを。バンチを)。▼光を放つ(瞳が不敵な。提灯ちょっが淡い。強い。鈍い。ぴかぴか。目が炯々がたる)。火を放つ(城に。屋敷に)。矢を放つ(続けざまに。社会に向けて。非難の)。声を放って(泣き立てる。笑う)。刺客を放って殺す。毒のある言葉の矢を放ち合う森瑞。解き放つ(馬を。心を)。 <469> # 去る・離れる **はなればなれ【離れ離れ】** 家族が離れ離れに暮す。一家が離散する。離散の家族を捜す。別れ別れに暮らす。▼別れ別れになる(一家が。母子が。やむなく)。 **はなれる【離れる】** ▼離れる(育児の手が。駅を電車が。親の手元を。カウンターを。勝手に列を。作者の手を。矢が弦を。両親のもとを。首が胴体から。故郷を遠く。手からボールが。もつれあっていた影が。生まれ育った土地を。フェリーボートが桟橋を。舟がするすると岸を。船がゆっくりと岸壁を。できるだけ遠くに。手の届かぬ距離に。足早にその場から。カメラの前から。都会の喧騒汁认から。回れ右してデスクから。参勤交代によって江戸を=舟橋。お化けみたいにすっっと"永井路。影のように音もなく=北)。支配を離れる(中央政府の。本家の)。▼その場を離れる(小走りで。さり気なく。逃げるように)。▼そばを離れる(井戸の。火の。ベッドの)。▼場を離れる(研究の。生産の)。離れた(ところに置く。場所から一望する)。人煙を離れた山道。少し年が離れた女友達。年の離れた夫婦。人里離れた山奥。扶持ちに離れた浪人。故郷から遠く離れた東京。少し離れて座る。子供が順に離れていく。桟橋から離れていく船。▼離れて考える(色恋を。利害を)。浮き世離れした生活。骨離れのいい(魚。チキン)。予測と結果がかけ離れる。飛島のように飛び離れる。▼遊離する(魂が肉体を。国民から。民意から)。▼現実から遊離する(意識が。論議が)。国民と政府が離間する。▼離反する(人心が。民心が)。乖離がい(観念と肉体との。理論と実態との)。乖離する(理想と現実が。自己評価と他人の評価が。設計思想と運転現場の実態とが=柳田)。人心から乖離した悪政。現実と自分が乖離してしまったような離脱感角田。▼はぐれる(気持ちが。本隊を。一行に。親に。仕事に。連れに。仲間から)。▼離れている(年が親子ほど。ぽつんと一人。年齢がひとまわり)。▼開きがある(年齢に。能力に。天と地の)。現場からの離脱をはかる。▼離脱する(会派を。作戦海面を。飛線を。戦列を。名利の世界を)。 **へだたり【隔たり】** 簡単には埋められないほど遥かな隔たり“原田完。あまりにも隔たりがあり過ぎる。期待と現実の隔たりが大きすぎる。二人の間に千里万里の隔たりが出来たように二葉亭。いくら締めようと腕もがいても距へだたりが無限に拡がるばかり。黒井。▼隔たりがある(見解に。お互いの性格に)。 **へだてる【隔てる】** 隔てる(壁一枚を。主従の境を。生と死を。道路一つ。道一本。二メートルの距離を)。▶隔たっている(見解が。性格が。時が。前世の出来事のように遠く=森村)。川を隔てた対岸。衝立っごしを隔てた隣。遠く壁を隔てた感じ。通りを隔てた家。道を隔てた向かいのビル。山一つ隔てた反対側。水道を隔てて半島の端が迫る。庭を隔てて道と向かい合う。襖を隔てて声がする。すぐ耳もとで発せられながら壁一つ隔てたような遠い声―連城。▼疎隠する(気持ちが。教師と学生を)。 **ほうしゃ【放射】** ▼放射する(気迫が。活気を。熱を。光を。魅力を。優しさを。四方に)。放射状に(柱が立ち並ぶ。光が広がる。ひびが走る。石畳を敷きつめる)。大通りが中心から放射状に延びる。太陽が光の屑くずを放射状に振り扱まく高樹。 **ぽつんと** ぽつんとひとつテーブルが置かれる=眉村。外灯が軒端から突き出て道の上にぽつんと浮かぶ野問。顔をそむけるようにしてぽつんと返事をする=阿部。構いつけぬ身なりの老婆がぽつんと座っている=古井。畑の真ん中にぽつんと一軒だけ建てられた家=庄野。一人ぽつんと島のように離れている=小林多。畑の真ん中にぽつんぽつんと立っている柾葺緑ときの農家「伊藤爽。ぽつりと独り言みたいに言う。鷺沢。豆粒を拾うようにポツリポツリ読む"小林多。ぽつりぽつりと(言葉を選びながら話す=中沢。断片的に思い出す=中島み)。街道脇に散在する民家の灯りがぽつりぽつりと見える―池井戸。街灯が夕暮れの中にボツリポツリと灯る=村上飛。 **まちはずれ【町外れ】** ▼町外れ(静かな。寂しい)。町はずれの濠りに臨んだささやかな家志賀。町外れを流れる川。村外れの(一軒家。神社)。場末の(酒場。飲み屋にいるような錯覚に囚とらわれる=海堂)。場末を転々とする。 **りごう【離合】** 政党の離合がめまぐるしい。人の世の離合のはかなさ=辻井。離合を繰り返す。▼離合集散する(政治的党派が。利益によって)。離合集散は世の習い。雲集霧散する。 <470> # 騒ぐ・ざわめく **おおさわぎ【大騒ぎ】** ▼大騒ぎ(驚天動地の。てんてこ舞いの。てんやわんやの。家が潰っぶれるほどの藤沢。世間がひっくり返るような舟橋。蜂の巣をつついたような=筒井)。噂が噂を呼んで大騒ぎになる=加賀。大騒ぎする(くだらない事件に。つまらないことで)。鼎効なが沸くよう。えらい騒ぎになる。大山鳴動して鼠姑ず一匹。提灯らに、行列までしかねまじい空騒ぎを演じる今日。上を下への大騒動。傍若無人の馬鹿騒ぎ。宴会が乱痴気騒ぎになる。過剰演出のお祭り騒ぎ。お祭り騒ぎに血道をあげる。烏合の衆のお祭り騒ぎにすぎない。お祭り騒ぎの(空虚さ。前触れの静けさ=安岡)。▼どんちゃん騒ぎを繰り広げる(飲めや歌えの。連日連夜)。▼どんちゃん騒ぎをする(陽気に。酒を飲んで。夜っびて)。オモチャ箱をひっくり返したようなドンチャン騒ぎ=坂口。 **がやがや** 声ががやがya聞こえる。がやがやと(雑談に移る。騒ぐ。勝手な話が弾む)。陽気にわいわいがやがやと話し合う。人ががやがやする。 **クラクション** クラクションが(たて続けに鳴り響く。かすれて錆びついたような音を出す=泉受。悲鳴のように鳴る=黒岩)。けたたましくクラクションが鳴る。耳をつんざくようなクラクションの連続小池。クラクションを派手に鳴らす。電車の警笛が鳴る。鋭い警笛があたりの空気をふるわせる=高橋和。いきなりの警笛に仰天する。蒼田を小刻みに鳴らし続ける。けたたましくホーンを鳴らす。 **けたたましい** けたたましい(音楽が鳴る。鐘の響き。汽笛の声。声で叫ぶ。騒音を立てる。バイクの音。ロックの響き。笑い声。サイレンの響き。爆発音がとどろく)。犬がけたたましく吠える。馬がけたたましくいななく。上気した声でけたたましく笑う。電話のベルがけたたましく鳴り響く。ホイッスルをけたたましく鳴らす。鶏の声がけたたましく耳の底へ響く=長塚。けたたましく鳴る(時計のベルが。ブザーが)。 **けんそう【喧騒】** 蜂の巣をつついたような喧騒なかにし。包囲した例ときの声のような喧噪汁礼岡本。喧騒がびたりと止む。疲れた心には都会の喧騒がそぐわない荻野。耳の奥にさっきまでの喧噪が残っている鈴木光。祭りの喧騒から逃れる。朝市の喧騒で賑わう。喧噪といってよいほどの活気にあふれる=塩野。店内が声高な喧騒に包まれる。喧騒の坩堝にっの底にいる=横山。喧騒の巷を泳ぎ回る藤田。都会の喧騒を離れる。議論が囂々にジとして喧噪する萩原咧。市の開かれる祭りの当日のような喧噪ぶり~塩野。割れ返るような拍手に包まれる。歓声で割れ返るようなコンサート会場。 **ごうおん【轟音】** ▼轟音(旧」もをゆすぶるようなプロベラの=阿川弘。鼓膜が破れるほどの"なかにし。精神の落ち着きを根こそぎ奪う―奥泉。大気を震撼処んさせる=綾辻。地の底深く藤進していくかのような絶望的な響きの=石坂)。森音が耳を襲う。電車の源音が二人の会話をさえぎる!高木。耳が裂けるような森音が大理石の床と石壁に反響する=泉俊。▼淼音が響く(耳をつんざく。トンネルのなかに嵐が吹き抜けるような=宇野利)。森音に負けじと絶叫する=横山。強烈な森音に包まれる。声が轟音にかき消される。バイクが遜音を撒き散らす。轟音を立てて機関車が通過する。愉転機が森音を立てて回りだす。 **ざつおん【雑音】** アルミの鍋蓋を重ねるような雑音永井龍。雑音が(多くて聞きにくい。耳に飛び込んでくる)。不可解な雑音が入る。ラジオの雑音が耳立つ。騒がしい雑音に包まれる。取るに足らない雑音にすぎない。公衆電話が線香花火のような雑音をずっと鳴らし続ける=小川。 **さわがしい【騒がしい】** ▼騒がしい(烏切らが林の上に。鼠ゆずの天井を渡る音が=田山)。騒がしい音と声が打たれた頬の火照りにひりつくように響く萩原悲。子供が騒がしい声を挙げる。ばたばた騒がしい音がする。風ががたんがたんと騒がしくあたりを叩く"芝木。互いに呼び交わす声が騒がしく起こる。カラスが騒がしく飛びまわる三浦絵。▼騒がしくなる(不意に玄関が。小鳥のさえずりが。あたりがにわかに。周囲が賑やかに)。大勢の人の声が天井に反響して耳を圧する『なかにし。きゃっと叫び声が起こる。物騒がしい(時代。場内)。きゃっきゃっと(嬌声を上げる。甲高く明るい笑い声)。きゃっと(奇声をあげる。叫んで倒れる)。砂嵐のような雑音"小川。けたたましい音が耳朶じだを打つ。▼姦封ししい(モーターの音が耳をつんざくばかりに有吉。群れている水鳥のように藤田)。女三人寄ればかしましい=源氏。かしましい鐘の音。かしましく雑談を始める。かまびすしい(蛙砂ぇの声。女子の嬌声。名声を担う。評判を立てられる)。かまびすしい(怒号が。悲鳴が。邸内は森閑としてセミの声だけが"山本有)。▼耳朵しだを打つ(潮風が。強い声が。陽気な歌声が)。▼耳につく(渓流の響きが。ざわめきが。鳥のさえずりが。音がやかましく)。▼音が耳について離れない(風の。木枯らしの。流れの)。▼耳を聾ぅぅする(豪雨の音が。断末魔の叫びが宮部)。耳を盟するような炎の叫び=山本周。 **さわぎ【騒ぎ】** ▼騒ぎ(株式暴落のような深刻な"山崎。梁はりに巣食った鼠和げも落ちそうな芥川。救急車が来るような!宫部。出征兵士を送るような"阿久。戦場か火事場へでも行ったような芥川。ちょっとした炊き出し現場のような"飯田。鶏小舎に初に聴いたが入りこんだような阿久。杯盤をひっくり返すような=舟橋)。 <471> # 騒ぐ・ざわめく 騒ぎが(一応おさまる。下火になる。派手に続く。だんだんにひどくなる。ひとまず過ぎる。無秩序に拡大する。野火のように広がる=栗本)。思いがけない騒ぎが持ち上がる。しばらく騒ぎがやまない。すったもんだの騒ぎが始まる。必要以上に騒ぎが大きくなる。無用の騒ぎが起こるのを防ぐ。▼騒ぎになる(祭りのような。城中がひっくり返るような舟橋。火のついたような=船山)。騒ぎの(余波が収まる。ごたこたに乗じる)。一連の騒ぎの火付け役。騒ぎを(煽ぁぉりに煽る。聞きつけて駆けつける。尻目に姿を消す。遠巻きに眺める)。腹いせに騒ぎを起こす。虫の騒ぎを抑え込む。世間の騒ぎを尻目に悠然と構えている=高村応。気が狂ったみたいな騒ぎぶり宮部。 **さわぎたつ【騒ぎ立つ】** ▼騒ぎ立つ(波が無数に三角形に。神経がざわざわと。波が沖の風に白く。ばたばたと心があやしく小林多)。騒ぎ立つ胸をなだめる。▶騒ぎ立てる(大げさに。遠巻きにして。幼児のように。ヒステリックに。卑劣な陰謀だと。わけも分からず)。海が鼠色ゆずぃに騒立様もつ。立ち騒ぐ胸の内の波立ちを鎮める。物々しく立ち騒ぐ風と波。 **さわぐ【騒ぐ】** ▼騒ぐ(かすかに心が。風が来て草が。嫉妬が胸に。血眼になって。血道をあげて。でかい声で。麺はぇが群がって。胸が怪しく、わいわい元気に。空元気を出して。葉がいっとき揺れて。胸がざわざわと。目の色を変えて。夜も構わずどたどた。一瞬何かを期待するように胸が有川。胸に不安の波が=伊藤左。快ぉきのような感情が海のように落合。遭難した者が救助隊を見つけたときのように=山田詠)。騒ぐ心を押える。風波が騒ぐ海。がやがやと騒ぐ聴衆のような雲や波の授乱に心;"有局。焙烙狙いで煎られる豆のように騒ぐのみで実効のある戦ができない司馬。▼騒ぐのは禁物(へたに。むやみに)。▼風に騒ぐ(木立が。葉が)。血が騒ぐ(怪しく。お転婆の。狩人の。昔の。体が熱っぽくなって)。▼わいわい騒ぐ(口笛を吹いて。友達を集めて)。▼騒ぎだす(眠っていた血が。気が違ったように。小禽にとたちが夢からさめたように遠藤)。マスコミに騒がれる。▼聞こえる(さざめきが。外の騒ぎが祭りに興じる見物人たちのどよめきのように藤本)。夜通し浮かれ騒ぐ。事件が世間を騒がす。▼騒がせる(風が雨戸を。不安が胸を。わくわくと胸を。光の粒子が夕圏を=落合)。▼騒ぎ回る(陽気に。興奮して)。▼立ち騒ぐ(海面に白波が。鍋の油が)。おいおい声をあげて泣き騒ぐ。口々に罵いのり騒ぐ。揺れ騒ぐ(空気が。心が)。 **ざわざわ** ざわざわっと林がゆれるようにざわめきが走る=飯田。ざわざわと(うごめく群衆。私語を始める。鍋の中で沸騰する灰汁ぁく。白い波が材木にかみつく=山本有。人が群がって落ち着かない街"高井)。足音がざわざわと立ちこめる。風がざわざわと木の枝を揺する。風に笹がさわさわと揺れる。心がざわざわと波立つ。▼ざわざわする(周囲が。胸の奥が)。畑にざわざわした秋風が渡る。夕方のざわざわした街。 **ざわめく**** ざわめく(部屋の空気が。重なり合った葉並が。思いがけない一幕に。つむじ風に襲われたように一座が"本庄。飛び立つ鳥が羽ばたくように河面の雪が消えるように煙が武田爽。男どもが浮き足立って風に吹かれる草のように『福永。身体中の血が総毛立つように藤沢。話し声が潮騒乱ゅのように=日野。人々が葦ぁしの葉のように光瀬)。閻の底でざわめく波の音。さわっと空気が(動く。揺れ騒ぐ)。家の中がひとしきりざわめく。宿に着いた修学旅行の生徒のようにひとしきりザワめく=小林多。夜の魔物たちがざわめきはじめる=大原。▼ざわめき(なんとなくうっとうしい圧しつぶされたような=坂口。春先の夕暮れ時特有の郷愁をはらんだ=森瑞。喧封かしいほどにはならない可愛らしい小鳥の"円地。湯の中の屁、のような飯田)。ざわめきが(部屋じゅうに満ちる。耳について離れない。一瞬氷の世界に閉ざされたように凍りついて静まり返る=高橋三。尾を引いて残る=高樹)。期せずして非難のざわめきが湧き起こる。車内にざわめきが起こる。ぴたっと周囲のざわめきが止まる。人々の楽しげなざわめきが流れてくる。ホームのざわめきが耳に流れ込んでくる。風と木のざわめきが鳴り響く綾辻。道を行く人々の単調なざわめきが海の底にいるかのように伝わってくる=柴田翔。ざわめきが聞こえる(木々の葉の。街の)。動きだけのざわめきで充たされた奇妙な沈黙柴田翔。異様なざわめきに満ちる。光と音楽とざわめきの洪水を掻がき分けて表へ出る=原田宗。葉のざわめきを消すように女の子の高い声が聞こえる=原田康。▼ざわめき立つ(樹海が。雑木林が。血が)。秋風が木の葉をさわさわと揺すぶる。枯れ草がさわさわと揺れる。波がさわさわと広がる。▼さわさわと鳴る(葉という葉が。風が吹いて土手の草が)。▼ざわつく(胸の中が。血が妖しく。小藪にゃが怪しげに。教室が鳥籠みたいに=岡田)。ざわついた気配が枝を揺らす風のように伝わってくる=伊坂。悲汚れてざわついた飲み屋。 **そうおん【騒音】** 騒音(激しい雨足が水の面をたたくような光瀬。話し声も満足に聞き取れないほどの"中沢)。騒音が(耳に響く。渓谷全体を揺るがす。窓から流れ込んでくる)。街頭の騒音が春の野の蜂のうなりのように遠くかすんで耳をこころよくくすぐる宇野利。こめかみのあたりから騒音が湧き上がってくるような耳鳴り“林京。騒音に眉をしかめる。返事が騒音にかき消される。戦場のような騒音の広間"加賀。耳障りな音が鼓膜を引っ掻かく連城。 <472> # 騒ぐ・ざわめく **そうぜん【騒然】** 物情騒然たるありさま。身の回りが騒然としてくる。天下が騒然と沸き立つ=山本周。騒然とする(議場が。世の中が。大戦の勃発で世情が"玉村)。▼騒然となる(館内が。キャンバスが。満場が)。 **そうぞうしい【騒騒しい】** 騒々しい(音が広がる。感じの花。酒宴の席。陽気な男たち。声が入り乱れる。音が耳いっぱいに広がる=岸田。怒鳴り声が聞こえる"野間)。▼騒々しい(追い込まれたばかりの豚小舎ぶ吹のように賑やかに=徳永。侃々諤々みんかんの論議で"志茂田)。立てこんだ騒々しいバー。やたら騒々しい太った女=小池。騒々しく演じたをかむ。枯れ葉が騒々しく降ってくる。子供たちが騒々しく駆け回る。鳥が騒々しく鳴き立てる。寝入りばなを騒々しく叩き起こされる。やけに騒々しくしゃべる。鮮やかなのに騒々しくない花の色"大佛。▼騒々しくなる(周囲が一段と。蜂の巣をつついたみたいに辻真)。▼騒々しさ(妙に落ち着かない。おのおのの赤子を蛙砂犬のような腹に抱えて見せ合うっときの女達の=川端。子供たちがてんでんばらばらにおしゃべりしている鳥尾。虫が鳴いているような=安部)。騒々しさで街が満ちる。店が騒々しさで活気づく。街が暴動一歩手前のような騒々しさと緊張感で満ちる泉優。 **そうどう【騒動】** 湧き立つような騒動宮沢。騒動が(起こる。持ち上がる)。騒動の(渦中にいる。どさくさに紛れる)。一騒動(起こす。持ち上がる)。擾乱に心が起こる。耳も破れんばかりの騒援にうし栗本。騒乱が(起こる。沈静へと向かい始める)。 **どよめく** どよめく(一座が。会場が。観衆が。館内が。教室が。蜂の巣でも突いたようにわっと大勢の空気がㄓ吉川。一年中の笑いを一時に吐き出したかと思うほどの声を放って止めどもなく=長塚)。夜の空に瀰漫心まする都会の巨大などよめき=宫本百。どよめきが(びたりと止む。ひときわ大きくなる。波紋のように広がる三田)。会場からどよめきが上がる。人のどよめきが聞こえる。磯に砕けた波の深い吐息のようなどよめきが磯全体に淡なる三島。▼どよめきが起こる(原様な。小さな。一座に)。どよめき立つ男たちを頭領が制する=柴田郷。どよめきと拍手が交錯する。声がどよめきにかき消される。どよめきの波があたりをゆるがす栗本。見物の席からどよめきの声があがる。時ならぬ欲呼の声が、打ち上げ花火のように、春の潮のどよめきのように、起こる=阿久。 **なりものいり【鳴り物入り】** 鳴り物入りで(宣伝する。登場する。入団する。始まった番組)。じゃんじゃんと鳴り物入りで仕事が舞い込む"井上ひ。 **にぎやか【賑やか】** ▼賑やか(顔ぶれが。皿数が。人通りが。祭の夜のように=山本周)。毎日が賑やかで退屈しない。賑やかな(声が飛び交う。談笑の声。団居ほどの場。冷やかしが飛んでくる)。屈託なげに賑やかな声。商店の賑やかな灯火。町の賑やかなさざめき。人がごった返しているにぎやかな町藤沢。賑やかに(飾り立てた店。酒を飲む。笑い声を立てる)。足音も賑やかに二階から下りてくる。人が賑やかに行き通う。ひとしきり賑やかにしゃべりまくる。炉がにぎやかに燃える=本庄。▼賑やかになる(がやがやと。座敷がわっと。わいわいと。鳥のさえずりが。お酒がまわって。ういういしい可愛子ちゃんもやってきて、お座敷はぱっと一時に華が咲いたように=胡桃沢)。猥雑かなほどに底抜けに明るいにぎやかさ=島尾。広い洋間が人いきれするほどの賑やかさ『立原。昔のように賑やかさを取り戻す。賑々にぎしく人が歩いている。ユーモラスに賑々しく生きる。賑わしい大通り。賑わしく談話する。▼賑わす(写真が紙面を。新聞紙上を。大々的にマスコミを)。 **ばくおん【爆音】** ▼爆音(耳を圧する。キーンという澄んだ。耳の破れるような=獅子)。爆音が(空気を揺すぶる。鼓膜を揺すぶる。大地を揺るがす。びりびりと響く。ぶるんぶるんと響く)。ドドーンと爆音がする。飛行機の爆音が心の中の孤独なものと共鳴してびりびりと頭ふるえている福永。飛行機の爆音が蜜蜂の羽音のように単調な唸うなり大岡。ジェット機が爆音を立てて飛び去る。 **ばくはつおん【爆発音】** 腹に響く爆発音。あたりを揺るがして爆発音が響く辻井。重い爆発音が海面を走ってくる西木。すさまじい爆発音が大地から跳ね上がる=船戸。ズシンという重い爆発音が響き渡る=西木。爆発音をとどろかせる。 **やかましい【喧しい】** 「やかましい(油螺ぶらが。工場の中が。鳥の鳴き声が。人の口が。野良猫どもの陸言こいが)。居所としで暴れる豚みたいに喧封かしい=小島。やかましい指図を受ける。周囲がやかましい作裂音でぶはで埋まる。ガアガアと喧しい家鴨ふぃの声"檀。やかましく話題にする。あまりやかましく言わない。大勢で太鼓をやかましく打ち鳴らす。騒ぐ声がやかましく聞こえる。鳥たちがやかましく鳴き立てる。ベルがやかましく鳴る。風がガラス戸をやかましく鳴らす宮本輝。雀けずが喧しく百噸託もりをする=田山。トラックが喧しくクラクションを鳴らす藤本。▼耳につく(時計の音がやかましく。鳴き声がうるさく)。子供たちががやがやうるさい。鳥たちが耳にうるさいほどさえずり合う“景山。犬がうるさく吠える。囂々ごうたる非難を浴びる。群集が囂々と騒ぐ。喧々囂々けんけんたる(野次が飛ぶ。論議。抗議の声が上がる)。喧々囂々と騒がしい。 <473> # 叱る・責める **あらさがし【粗探し】** 他人のあら探しをする。言葉尻を(捕まえてとやかく言う。捕らえてからかう)。言葉谷とがめをするいやな女。相手の話の揚げ足取りをする。人の揚げ足を取って喜ぶ。片言隻語かんぶんをとらえて揚げ足を取る。▼探す(あらを。欠点を)。 **いいがかり【言いがかり】** ▼言いがかり(下劣な。不当な)。言いがかりとしか思えない要求を突きつける『篠田。つい言いがかりに乗ってしまう。▼言いがかりをつけられる(妙な。理不尽な。身に覚えのない=石坂)。変な言いがかりはやめろ。たちの悪い酔っ払いにからまれる。何のかんのといちゃもんをつける。▼絡まれる(暴走族に。よた者に)。無理難題を吹っかける。▼因縁をつける(恐ろしい剣幕で今日。昔の武芸者が腕前を試すためにわざと嘴当旅ゃてをするように=小島)。因縁をつけに威嚇的に近づく=玉村。因縁をつけられる(酔漢に。ならず者に。暴力団に)。けちをつける(些細なことに。やり方に。どうのこうのと)。▼難癖をつける(躍起になって。強請ゆずまがいの。何とかかんとか)。 **いさめる【諫める】** ▼諫める(上様の横道を。娘が親を。無謀さを。口を極めて。懇々と。死をもって。袖を控えて。老臣が皇太子を=あさの)。非を諫める(兄が父の。主人の)。恨み言のような諫めの言葉深沢。死をもって詠止はんする。▼諫言粉从する(主君を。一命を賭けて殿に。身命をなげうつ覚悟で)。面を冒して(諫言する。進言する)。 **いじめられる【苛められる】** 上役にいじめられる。いじめに遭う。運命にいたぶられる。痛めつけられる(疲れに。冬の風に)。上司にいびられる。虐待を受ける。虐げられた民衆。被虐的な快感を味わう。嫁いびりに耐える。姑しゅうの嫁いびりにあう。▼さいなまれる(自己嫌悪に。嫉妬の念に。不安に。良心の呵責妙しに。言いようのない絶望に胸を=福永)。意識にさいなまれる(罪の。劣等の)。 **いじめる【苛める】** 「いじめる(上官が新兵を。弱い者を。これでもかこれでもかと)。搦め手妙からちくちく苛ぃじめる=円地。他人をいじめることに快感を覚える=あさの。あんまりいじめると可哀そう。一人をいじめる(大勢で。寄ってたかって)。いじめに対して強い憤りを覚える=貫井。正面からいじめに立ち向かう。いじめを苦に自殺する。自分を自分でいじめ抜く。猫が鼠袖情をいたぶる。蜥蜴忙かや守宮いもを追い詰めるようになぶりいたぶる=伊集院。▼痛めつける(貧乏人を。神経をじわじわと)。いびる(姑しゅうが嫁を。弱い者を)。加虐的な(快楽。凶暴な成待。性向)。呵責欲しが胸をさいなむ。サディスティックな喜びを覚える=篠田。サディズムの要素を含んだ愛"中村真。嗜虐的しいな(感情。性の倒錯)。自虐的な(楽しみ。発言。快感にひきずられる)。積年の虐待に耐えかねる。虐待する(子供を。囚人を。捕虜を。性的に)。虐げる(弟子を。人間を。娘を)。肉親でも奴隷のように虐げて使ってしまう親譲りのエゴイズム=岡本。 **いましめる【戒める】** ▼戒める(軽挙妄動を。公私混同を。楽観論を。懇々と)。不正を戒める警句。苦言が相次ぐ。苦言を呈する。▼訓戒する(子女を。生徒を)。老人じみた訓戒の口調。訓戒を(与える。垂れる)。警世の(鐘。士。書)。覚悟を秘めた自戒。十分自戒する。懲戒処分にする。懲戒免職になる。懲戒を求める。 **いやがらせ【嫌がらせ】** ▼嫌がらせ(悪質な。かなり意識的な。一種の遠慮とそれを裏返しにした安岡。気に食わない相手を不意打ちで攻撃するのは単なる有川)。嫌がらせが度を越えている。力の及ばなかったあらゆる可能性の因子が羽虫のように翼をつけて頭の中にいやがらせをしに飛んでくる=島尾。嫌がらせをする(遠まわしに。露骨に)。緩慢な動作が嫌がらせのように眼に映る言行。セクハラを(受ける。訴える。容認しない)。 **おいやる【追いやる】** ▼追いやる(苦痛の淵に。青年を自殺に。部屋の隅に。中小企業を倒産に。破滅の瀬戸際に)。▼追いやられる(崖っぷちに。苛酷な状況に。防戦一方に。自滅寸前にまで)。 **おしおき【お仕置き】** きついお仕置きを受ける。▼おおしおき仕置きする(死ぬほど。たっぷり)。線香の火を押し当てる=高樹。▼折檻(手荒な。厳しい)。少々の折檻にはへこたれない。▼折檻する(子供を。気を失うまで。蔵に押し込めて)。体罰(過酷な。ひどい)。体韵を(受ける。禁止する。加える。やめる)。 **かしゃく【呵責】** 地獄の底につきつめてゆくような町責が胸を噛む=林美。呵責に責められる。呵責を酒で滔晦忙らする。消え入りたいほどの呵責を胸に受ける"久米。良心の呵責に(襲われる。悩まされる)。自分で自分を責める。我と我が身を責めさいなむ。自己何責に正面から向き合う。哀かなしい自己呵責を心の中で反芻認する=中局災。 **きゅうだん【糾弾】** よもや糾弾の最先鋒に立つことになろうとはその時夢想もできなかった内橋。▶糾弾する(越権を。テロを。独善を。不当を。手厳しく)。糾弾する声が沸騰する=浅川。放言を糾弾する声が方々から湧き上がる。旧体制を糾弾しようと気負い立つ辻井。隙あらば糾弾しようとする。 **くるしめる【苦しめる】** ▼苦しめる(自分で自分を。刺すような言葉で夢枕)。苦しめられる(頑固な咳せきに。激烈な派態心に。一日休めば大罪を犯したような罪の意識に高橋和。いわれもない嫉妬に=志賀。落ち着かない心もちに=芥川)。淫欲の妄想に苦しめられる不眠の夜な夜な長与。 <474> # 叱る・責める 心を切りさいなむ。 **ごうもん【拷問】** ▼拷問(残虐な。厳しい。残忍きわまる。むこたらしい。情け容赦のない。人格を無視した心理的なり高橋和)。拷問に(耐え抜く。耐えかねて転向する。よって死に瀕する。かけられているようにいらいらする=泉優)。ひどい拷問に遭う。凄す。まじい拷問を受ける。▼拷問する(志士を。容疑者を)。とぎれがちで夢ばかり見る拷問のような眠り森環。 **こごと【小言】** 小うるさい小言。小言を言われたのを根に持つ三浦町。散々小言を並べる。姑しかに小言を言われる。廢言うものように小言を言い続ける=佐藤巻。▼小言を言う(忌々しそうに。がみがみ。くどくどと。ずけずけ。びしびし子供に。箸の上げ下げにまで。だらだらと愚痴っぽい志賀)。眼から火が出る叱言にこを喰う今日。頭のてっぺんから足の先まで小言をくう“中。皆から小言幸兵衛と綽名だされているくらい口八釜が詰ゃしい老人=永井荷。小うるさく小言幸兵衛のごとく注意する=北。剣突を食わせる。 **こらしめる【懲らしめる】** ▼懲らしめる(悪を。不始末を。よた者を。悪いやつらを)。お灸をすえる。痛棒を(与える。食らわせる。加える)。とっちめる(嘘つきを。こっぴどく。さんざん)。死刑は下劣な見せしめにすぎない藤本。見せしめとして廊下に立たせる。見せしめのために罰する。市中を引き回す。 **しかられる【叱られる】** ▼叱られる(頭ごなしに。一言のもとに。母に。理不尽に。こっぴどく。しょっちゅう。ひどく。骨身にこたえるほど灰谷)。てっきり叱られるものと覚悟を決める。叱られて(ふて寝する。膨れっ面をする)。雷が落ちる。こってりとしぼられる。こっぴどく絞られる。油を絞られる(ぎゅうぎゅう。さんざん。たっぷり)。お目玉を(食う。頂戴だい、うする)。叱責が飛んでくる。▼叱責される(険しい目で。上司から)。烈火のごとき叱責にさらされる=阿刀田。きびしい叱責を受ける。こっぴどくどやされる。 **しかりつける【叱り付ける】** ▼叱りつける(居丈高に人を。将校が新兵を。頭ごなしに。高圧的に。頭から。色をなして。語気強く。こっぴどく。主人が召し使いを。ヒステリックに。ためらっている自分の気持ちを"北原。傍はたの者が驚くほど声高に山崎。腰が抜けるほど=坂口。つまらぬ取るに足らぬことをいちいち取り上げて池波。びっくりするような犬大声で"向田)。▼声で叱りつける(大きな。機嫌の悪い)。叱りつけるように言い放つ=二葉亭。きつく言いつける 。鋭い一喝が飛ぶ。一喝を浴びせる。居丈高な一喝を食らわす。▼一喝する(頭から。凄すごみの利いた声で "篠田。底光りのする眼を怒らして=国木田。額に青筋を立てて三浦し)。 **しかる【叱る】** ▼叱る(迂閥っかな娘を。子供を。うるしかるさそうに。色をなして。きつく。厳しく。口やかましく。血相を変えて。親身になって。ねちねち。びしびしと。無礼を目で。目をむいて。本気で心配して涙ながらに"飯田。投げ捨てるような眼で荻萩原爽。幼稚園の子供を並ばせる先生のように=田辺)。一概に叱れもしない。お叱りは覚悟の上。お叱りを受ける。心に傷を残さない程度の叱り方乃南。雷を落とす。自分の気持ちに鞭打ちつ。増長を鞭打ぶんする。叱るように強い調子で言う=灰谷。▼叱り飛ばす(女房を。息子を。ぴしびし)。厳しく試資材託する。堕落した心の状態を叱しっする。叱声が飛ぶ。叱正を(仰ぐ。受ける)。がみがみ(叱る。どなりつける)。頭からガミガミ怒鳴りつける=中島災。叱咤しっが飛ぶ。硝煙と血潮の中で兵隊を叱咤する鬼将軍のような声=椎名域。叱咤する(頭)こなしに。ひるみがちな心を。弱気になる自分を。殴りかからんばかりに"つか)。叱咤するような鋭い医師の声の福永。 **じせき【自責】** 自責の念が(湧き起こる。表情にありありと見える=なかにし)。自責の念に(さいなまれる。耐えかねる。胸を締めつけられる)。胸郭が強烈な自責の念に圧搾される=貫井。夜な夜な悔恨と自責の念に駆られる谷崎。自責の念をいまだに引きずっている=横山。世評を盲信した愚かさに自責を感じる=山本周。自資する(罪を。背徳を)。自責の念など爪の垢あかほども浮かびはしない=里見。 **しっせき【叱責】** 叱責が頭上に激しく鳴る萩原奕。無言の叱責が千貫の重さで頭上へのしかかる=山本周。叱責の声が起こる。強い叱責のまなざしで児にらみつける"江戸川。▼叱責する(努力不足を。部下の失敗を。不倫の愛情を。手厳しく。激しい言葉で)。 **せいさい【制裁】** 制裁(社会的な。厳しい)。制裁の効果が現れる。制裁を(受ける。加える)。焼きを入れる。制裁的な課税。制裁的に冷遇する。懲罰にかける。懲罰する(議員を。罪人を)。厳酷に懲罰して仮借するところがない=長与。▼鉄槌を下す(がつんと。正義の)。▼リンチ(凄惨な。不法な。無法な)。集団リンチを受ける。 **せいばつ【征伐】** ▼征伐する(無漢どもを。逆賊を)。賊の一味をことごとく討ち取る。鎧袖一触かしら簡単に打ち滅ぼす。大兵力を率いて遠征する。征討軍が進発する。反逆者を征討する。▼成敗する(不義者を。一刀両断に)。▼掃討する(悪を。敵兵を)。▼誅汚する(悪人を。奸賊みいを。逆賊を。君側の奸かんを)。▼誅伐時00ぅする(奸賊を。反逆者を)。賊軍を討伐する。討伐隊を派遣する。▼討ち果たす(敵を。仇敵でいうを。ばっさり闇討ちに=舟橋)。▼退治する(鬼を。害虫を。怪物を。山賊を。悪者を)。 **せめられる【責められる】** ▼責められる(海悟の念に。後悔に。債鬼に。慚愧ぎんの念に。罪の意識に。やましさに。良心の呵責修しに)。管理責任を厳しく指弾される。▼追及される(警察に。野党から。組織の上層部から)。▼問われる(責任を。罪に)。僭越过~のそしりを覚悟で言う。▼そしりを受ける(軽率の。敗亡の。反革命の)。 <475> # 叱る・責める そしりを免れない(軽率の。朝令暮改の。不謹慎の。忘恩の。無責任との)。 **せめる【責める】** 責める(安易な考えを。裏切りを。遅い帰りを。後悔が身を。職務怠慢を。冒漬はらの行為を。優柔不断を。執拗に。仮借なく。厳しく。ちくちく。強い口調で。ねちねちと。監督不行き届きを。かさにかかったように半村)。あながち責めるわけにもいかない。責めさいなむ(心を。背信を)。自虐に等しいと思えるほど自分自身を責め苛にぃむ=高村光。苦痛がブランコのように息を抜きながら問断なく責めたててくる=林笑。責め立てる(水牢に入れて。甲斐性ゅぶしのなさを。失敗した当事者を)。ぎゅうぎゅうの目に遭わす。犯人をぎりぎりと締め上げる。 **だんがい【弾劾】** 弾劾する(変節の生涯を。徹底的に。手厳しく)。弾劾の火の手をあげる=村上元。▼筆誅ひっつぅする(俗論を。破廉恥漠を)。筆誅を(下す。加える)。 **たしなめる** ▼たしなめる(穏やかな声で。厳しく。切り口上で。低い声で。びしりと。やんわり。不謹慎な態度を。理不尽な振る舞いを。ずけずけした言葉を叱りつける烈はげしさで=円地。我知らず尖った声で"篠田)。▼者をたしなめる(肩肘張って生きる=竹西。中座しようとする"司馬)。優しくたしなめるような目"大佛。たしなめるように一瞥する=山崎。 **ちゅうこく【忠告】** 真心のこもった親切な忠告!佐山。忠告が(胸に響く。心に引っかかって離れない=綾辻)。忠告に耳を(貸さない。傾ける)。忠告を(考慮に入れる。馬耳東風と聞き流す。嫉妬か口惜くゃしまぎれの放言のように聞き流す"里見)。言わずもがなの忠告を繰り返す。▼忠告する(見かねて。老婆心で。はらはらしながら。まじめくさった顔で。よしたほうがいいと)。翻意するように切言する。再三の切言も効果がない。忠言に(従う。耳を貸す暇とがない寺田)。忠言は耳に逆らう。 **ついきゅう【追及】** 追及が日に日に激しくなる。追及に迫力が感じられない。汚職議員の追及に明け暮れる。追及の(矛先が鋭い。メスを加える。手が行く先々へついてくる。手をゆるめない)。司直の追及をかわす。▼追及する(金の流れを。刑事責任を。背後関係を。徹底的に。意地悪く。得たり賢しと。厳しく。根掘り葉掘り。むきになって。いろいろな角度から)。舌鋒う鋭く追及する。もうそれ以上追及しない。 **つるしあげる【吊るし上げる】** ▼吊るし上げる(責任者を。罪人を)。▼吊るし上げ(陰湿な。執拗な。とステリックな)。吊るし上げに遭う。吊るし上げを食う)。 **とがめる【咎める】** ▼とがめる(曖昧な態度を。無断入場を。自転車の二人乗りを。不注意を厳しく。不謹慎な言葉の響きに気が=光原。よこしまな行いを野坂)。良心にとがめるものがある。あからさまに咎める視線を気がつかなかったように無視する"有川。おとがめを被る。お上のおとがめを受ける。聞きとがめる(言い違えた言葉を。不用意な発言を)。変にとがめ立てされてもつまらない。▼とがめ立てする(無礼を。いちいち)。▼とがめ立てる(爪の長さを。険しい声で。失礼な振る舞いを)。とがめを甘んじて受ける。公儀のとがめを受ける。眼差しにとげがある=赤川。目角を立てる。目くじらを立てる。とがめるような(開き方。口調。眼差し。きびしい目つき=堀)。咎めるような視線が降りかかる=なかにし。とがめるように袖をひく=檀。聞きとがめてきっとした顔をする。 **なじる【詰る】** ▼なじる(愛情の不足を。相手の非を。恋人の変心を。ふがいなさを。無節操を。険しい語気で。強い口調で。ねちねちした調子で)。なじる言葉をいくつか吐く"高橋治。互いの旧悪をなじりあう辺見。なじるような一野心を投げかける=原田宗。詰るような目で問いかける連城。なじるように鋭い語気で間う柴田銀。▼難記する(落ち度を。責任者を)。 **ひなん【非難】** 非難が(一身に集まる。針のように突き刺さる=伊藤整)。世の非難が集中する。甘んじて世の非難に耐える。国際的な非難にさらされる。非難の(目付きで児にらむ。言葉を投げつける。集中攻撃を受ける。火の手があがる。集中砲火を浴びる藤本。矢が向けられる"飯田)。表情に非難の色が浮かぶ。骨に食い込むような非難の声に宮部。非難の声が(殺到する。高まる)。非難を(一身に受ける。含んだ語勢。最小限で食い止める)。あからさまに非難をこめた限差し。こうこうたる非難を受ける。世論のごうごうたる非難を浴びる=中野炎。非難する(越権行為を。核実験を。主権侵害を。人身攻撃を。やり方を暗に。口を極めて。声の限り。心の隅で。面と向かって。乱暴な扱い方を。陰にこもった調子で。非礼な言葉を使って。導火線に火がついたように激しい口調で斎藤栄)。▼非難される(腰抜け武士と。世論から)。遺憾の意を表する。白い目で見る。非難するような(口調。鋭い目)。声に非難するような響きがある藤沢。非難合戦に明け暮れる。非難がましい(口を利く。啖声。調子で責める。目で見る)。非難攻撃に耐える。▼指弥する(頽廃はいを。罪を。不見識を。徹底的に。厳しく)。世間の風当たりが(強い。弱くなる)。▼駁ばくする(功名心を。退廃の風潮を)。世間のバッシングを受ける。非を(責める。鳴らす)。相手の非を言い立てる。マスコミの槍玉炊もにあがる。▼論難する(舌鋒時、鋭く。根拠のない主張を。ものやわらかな表現で)。論難の(口火をつける。対象にする)。気の毒に思いこそすれ非難できない。非難する気持ちを失う。むげに非難することはできない。 <476> # 茂る・芽生える **あし【萃】** 岸に密生しているアシが若竹の色のように晴れ晴れとした緑に輝く=山本有。遊ぁしがひょろひよろ生える=内田瓦。葦の葉のそよぎのような尺八楽荻原明。人々が葦の葉のようにざわめく=光源。葦のように弱い人間福永。沼辺の葦のように集まれば互いにざわざわと騒ぐだけの村人=長塚。蘆荻らにが人を隠すくらいに深く生い茂る=田山。 **いばら【茨】** 猛禽討らの爪に似た棘とげのあるいばらが生い茂る倉橋。茨に囲まれた危うい立場に立つ思い"石川。裸足で荆棘いはの道を歩む=石坂。秘密の重さが茨の棘のように心をちくりちくり刺す久米。乱世のいばら道を歩いてゆく=山岡。野イバラが茂みを作り白い五弁の花びらを慎ましく広げる三浦し。 **うきくさ【浮草】** どこの土にも根が着いていない浮草のような女“石川。世問に住みつく根を失って浮草のように流れる=梶井。思いのままにならぬ境遇に身を置いてうき草のように浮き沈みして行く身の上田山。浮草のように流れ漂うような暮らしぶり!半村。根なし草があてどなく大地を転がっていく船戸。 **うっそう【鬱蒼】** 鬱蒼たる暗い森。鬱蒼と葉を茂らせた木立。鬱然たる葉の重なりが熱気を遮る!高樹。山々に鬱然として緑の色が繁る=海音寺。 **えだ【枝】** ▼枝(枝垂れて地に届きそうな『高樹。細い手首のような=長野)。枝が(みりみりと折れる。長く地に道ょうとうに伸びる=宮部。激しく揺れながら符担うのように水面を撫でては起き上がろうとする"伊藤整。発条ばねのきいた鋼のようにしなう~長野。吹きつける細かな雨を吸ってだるそうに枝垂しだれる=長野。曲がりくねった百の手を天に差し出す=福永。横に傘のようにひろがる=藤沢)。林檎の枝が熟した果実でたわわになる=有息。大きな枝が人を招くようにゆらゆらと揺れる内田百。大きな樹の枝が頭に蔽おぉい被さるように空を巡る夏目。雲のない空に細かい枝がくっきりと黒く映る!高井。たっぷりと葉を茂らせた枝が重苦しい音をたてて風に揺れる=北原。細い枝がしなやかな庇の脚のように伸びる=長野。木の枝のしなっ音が人間の呼吸みたいに強弱となって繰り返される=富岡。木が手の指を空に向けて開いたように枝を張る=佐藤春。木という木が野放図に枝を伸ばし手をつないだり肩を組んでいるよう永井識。斜交州「いに杭を打ったような枝々長野。枝々からばらばらと枯れ葉が降る。木の枝が(ざわざわと鳴る。ひゅうひゅうと悲痛の響きを立てて泣く長塚)。大きな道から小路が枝のように伸びる=高井。 **かんぼく【灌木】** 灌木が地を這うように所々に群がる遠藤。低い灌木の茂み。風が起こると灌木の葉が銀灰色の裏をいっせいに見せるので数知れない小さな魚が激しく泳いでいるよう~大江。背の低い林がひとむら茂る。 **き【木】** 木(金のなる。真夏の太陽の下で日蔭を恵んでくれる内海。雪の大地に雄々しく屹立つしている=飯田)。木が(まばらに生える。雪折れの被害に遭う)。樹が狭い地面にひしめきあってふくれ上がったようにこんもりしている=大岡。木で鼻をくくるようなものの言い方=西木。巣箱を木に取り付ける。硬くて若い木の節のようなくるぶし!大江。むこうずねが木の節のようにふくれあがり黒いほど紫色になる"石森。立ち木のように佇立する=畑。倒木が通り道をふさいでいる。エゾマツみたいにいつでも上を向いて暮らす=石森。倒木を(取り除く。乗り越える)。【木木】すっかり葉を落とした木々。少年のように痩せた樹々丸谷。樹々が(一斉に新緑に包まれ溢れる日光を受けて欲びおののく宮本百。葉裏を微妙に輝かして揺れる=高橋和。昼の蒸し暑さに疲れはてたようにぐったりとしている=遠藤)。黄葉しかけた樹々が細密画のようにくっきりと見える=五木。時々遠藤。広場を囲ん樹々が身震いをして雨滴を落とすだ樹々が仄はのかな街灯の光を受けて寒々と立ち竦すくむ=福永。不揃いな樹々が気ままに梢を突き出し枝をねじる=日野。木々の(香りを風が運ぶ。あわいが不規則な光と影に充たされる=大岡)。樹々の(葉が夕風に爽やかな音を立てて鳴る=遠藤。緑が美しく色づく=軍司。岡がいっそう荒々しく息づく=日野)。雨が木々の梢を鳴らす"大岡。木々の間を縫って黙々と登って行く外村。一陣の風が木々を吹き渡る。樹々の葉が砂のように乾いた音をたてて鳴る遠藤。 **くき【茎】** するすると一木の茎が上に伸びるような立ち方=池田。ダリヤの茎が干からびた縄のように地の上でむすぼれる=横光。花の茎のように細いうなじ"浅田。地下茎が伸びる。 **くさ【草】** 水に浸されて銀のように光っている岸の草=長塚。草が(しっとりと夜露を含む。圧ぉさえられたようにいっせいに頭を風下に倒す=大岡)。風が来て草が騒ぐ。足元の草がしなやかな細い剣を泳がせる=高樹。風が吹くと庭の草が一面ささやくようにかさかさと揺れる=小川。くるぶしまでの柔らかい草が浅瀬のように広がる=村上春。ザザザッと野分のように草が鳴る=吉川。土手の草がさわさわと鳴る=小川。濃い緑一色の草の海が鈍く銀色に輝く=落合。草の褥ひとに身を横たえる=船戸。肩に当たる高い草を斬るように腕を振る=伊集院。噛み煙草でも噛むように草を噛む!遠藤。杖であたりの草を払って歩く三島。刈られた草のごとく悄然しいぅとする=長塚。死者の生なましく白く草のような額!大江。男どもが浮き足立って風に吹かれる草のようにざわめく=福永。春の草のように萌え出した元気"有島。青草が伸びる。 <477> # 茂る・芽生える 秋草にでもたとえたいようなおとなしくしとやかな美人"戸板。▼七草(秋の。春の)。草木が青々と芽を出す“田山。なびいたように草木がお辞儀をする芝木。窓辺の草木が柔らかな陽ざしに包まれて鮮やかな緑に輝<=吉木。日陰の草花のようにしおれきる=高橋三。夏草が(丈高く茂る。ぶざまに伸び繁る=山崎)。牧草が重たい露に濡れて頭を垂れる=福永。若草が(芽ぐむ。萌える)。桑畑の畝間には冬を越した噂が線香のような巡を擦もたげてその先に粉米に似た花を聚めている=長塚。道端に生えたぺんぺん草の実ほどもないはかないもの宇野千。こげ茶色に枯れたよもぎの葉が風にからからと乾いた音を立てる三浦綾。巡茶の羊歯しだが山の体毛のように下がる崖"伊集院。歯朶しだの葉が一本首をふるようにそよ風にゆらめく佐藤卷。流れに波打っている髪の毛のような水草・志賀。月がきらきらと水草の中に砕ける=鈴木三。 **けやき【欅】** 欅が青空へ思うさま繊細な枝を広げる"三島。梢の薄くなった欅が空を掃くように並ぶ大岡。高い欅が半ば落葉して細い網のような枝を空にすかしている=国木田。ケヤキの巨木のようにどんな風が吹こうとびくともしない白井。すっかり葉を落とした欅の大木が梢を投網於ぁのように寒空に拡げている=黒井。空に緑のレース模様を広げる欅の枝の若い葉落合。箒泪、うを逆にして空に冲ぃぃらせたような梢宮本百。 **こえだ【小枝】** 裁ち落とされた小枝の切り口の白さが細かな花を散らしたように映る=高井。柴を火にくべる。雪面に柴を敷いて寝床にする能熊谷。囲炉裏の粗朶だがバチバチと弾ける=加賀。粗朶の火が炎を立てる。庭染でだをぼちぼちと折ってくべる"長塚。白い粗梁のような口ひげ「向田。 **こけ【苔】** じめじめした苔が湿った綿の上を歩くような心持ちにさせる"志賀。肌に苔が生えてきそうな梅雨寒の午後"倉橋。古い苔が微妙な模様をつくり出す=日野。八つ手の樹の根本にうすく苔が繁茂し蒼ぁぉい毛艶も心のように光っている=高橋和。川底の石が苔ですべりやすい。苔の(鎧にっを纏ぇとう。緑が春陽に映える庭)。湿気を含んだ苔の匂い。かすかに苔のにおいのするじめじめとした空気の澱ょとみ三田。音が耳の中に入り込んで苔のように張りつく尾辻。倦意以が苔のように生える=瀬戸内。砂埃が黒い苔のように付着している上衣"野間。苔むした石碑。巨大な苔むした木が鬱蒼シっと茂る=開高。水苔の葉がさみどりに息づく=木山。 **こずえ【梢】** 巨人が大きな鉄砧きで刈りとったように短く切り揃えられた梢宮尾。梢が(日の光を振るい落とす中村真。笑いさざめくようにざわざわと鳴る"長塚)。濁った朝焼け空を樹々の梢がやたらにかきまわして騒ぐ=永井龍。あらゆる樹々の梢がそれぞれの新芽の色で朧弦にに彩られる=山本周。露ぁらわになった梢が細い線を空に彫り付けたように見える=高井。折れ曲がった細い梢が老人の指のようぃ長野。木々の梢が針のように光る=加賀。銀色の雨しぶきの中で樹々の梢が海草のように揺れ動く遠藤。とげとげしい梢が眼に痛く空を刺す芥川。防風林の梢が高く遠く海に浮く島のように見える!高井。葉がさやさやと梢で音を立てる=宮尾。月が森の梢にかかる。往来の樹木の梢に陽の高くなるまで氷柱ららの花がつく吉川。梢の網の目をくぐって日の光がキラキラと目を射る前部、徴かにの爪のような梢の先端「日野。花が枝先にほころび始める。風が吹いて枝先を揺らす。街路樹の枝先を柔らかな緑がくるむ=石田衣。 **こだち【木立】** ひとむらの木立。どこからも日の射し込んでこないくらい木立が密生する=堀。緑の木立と白砂の対照があざやか"立原。地平線のあたりに木立の群れが不規則な間隔を置いて紫色に近い影を落とす堀。木立を屏風びにのように廻した内側"松本。木立越しに海が見え隠れする道。 **このは【木の葉】** 木の葉が(高く大空に漂うて小鳥の群れの如く遠く飛び去る"国木田。散るように一円の人びとが散り散りになる"白洲)。暗鬱な色をたたえた木の葉が頭上になだれ落ちそうに繁茂する=本庄。戦味のく木の葉が灰のように白く見える=大佛。風に木の葉が散らされるように一族がばらばらになる=辻井。流れからはぐれた木の葉が同じところを回り続ける"重松。木の葉の一枚一枚が宝玉の一断面のように輝く=佐藤春。風に木の葉のざわつくようにささやき交わす「森心。木の葉を散らしたようにボートがいっぱい浮かんでいる=田辺。秋風が木の葉をさわさわ揺すぶっているのを耳にひやりと聞く=堀。秋風がさあっと木の葉を掃いて行く吉川。小魚たちが水流にまきこまれて木の葉を散らすように乱れる=光潮。さわさわと木の葉をかき乱しているふうな長ったらしい言葉=伊藤整。水に浮かんだ木の葉を魚に見立てる向田。蛾が木の葉のようにばらりと落ちる=川端。磯波のうねりに揺られて風の運ぶ木の葉のような舟犬佻。風に吹かれる木の葉のようにただふるえているだけの頼りない存在"石坂。カモメが強風に逆らって木の葉のように舞いながら飛ぶ"西木。大洪水の前には木の葉のように弱くはかない=辺見。はやてに吹かれた木の葉のようにからだを斜めにして逃げ出す宮沢。被弾した爆撃機が木の葉のようにひらひらと舞いながら落下する"西木。葬々20℃と上げくる秋の汐が廂いきのない屋根舟を木の葉のように軽くあおる=長与。一ひらの木の葉のように見る見る黒犬が空へ舞い上がる芥川。船が波に木の葉のようにもてあそばれる!白洲。船が外海の波浪に弄ばれて木の葉のように揺れ動く=井上靖。木の葉みたいにべしゃんこになる。 <478> **こぼく【古木】** 古木が大きな影を広げる。古木のようにな年月を超えて動かない存在"高井。老樹が鬱蒼いっと生い茂る。老木に空洞、ぅぅが出来る=日野。 **ざっそう【雑草】** 雑草が土手を緑に染め替える=山本一。庭が雑草で覆われる。ヘッドライトの光の先の方に雑草の茂みがドキッとするほど鮮やかな緑色に浮き出す=日野。雑草のような根強さ逞封くしさ=高見明。知恵の芽が真夏の雑草のような勢いで広がりはじめる壺井。雑草のように(たくましく育つ奥田。物思いが深まるばかり。白洲)。雑草荆棘いたが生い茂った山"国木田。下草に足を取られる。森の下生えを踏みしめる。 **しげみ【茂み】** 跨いだった獣の黒っぽく厚い毛のような公園の茂み=日野。茂みに身を隠す。ブッシュを漕いで行く。草むらが(ざわざわと揺れる。草いきれに蒸れる=真継。次々と穂先をひるがえして波を送る"野間)。草むらに露が光る。 **しげる【茂る】** 茂る(草が茂り放題に。葉が枝いっぱいに。菖蒲礼にの葉が黒ずんで猛だけしいばかりに"高井)。頭上高く繁る葉を見上げる三浦し。こんもりと茂った深緑の小山。▼生い茂る(子供の背丈ほどもある雑草がなかにし。樹が濃い影を水に映して亭々と=石坂)。植物が群生する。▼繁茂する(木の葉が。下草が)。群れ立つ(木々が。芒討すが。竹が)。 **じゅもく【樹木】** 樹木が(青い空を背景に涼しげに揺れる=高橋三。慾然と地をおおい晴れた日でも地面が黒く湿っている=司馬)。突然に樹木が倒れるように病に倒れる=辻井。鬱蒼とした樹木に囲まれた庭"徳水。白い肌がみずみずしい樹木のよう倉橋。闇よりも濃い樹木の闇"梶井。樹木のように意志のない存在"大江。暗い谷間の樹木のように黒くおたがいに閉ざしあって群がっている小さな集落大江。 **しゅろ【棕櫚】** 扇のような葉を持ったシュロ=小松太。棕櫚の強級にはうな葉がバサバサ鳴る=武田祭。馬のたてがみのざらざらした手ざわりが棕櫚の毛のように手にまといつく=野間。 **しらかば【白樺】** 白骨のように無気味に白く横たわっているシラカバの枯れ木"外村。白作の立ち木の幹が逆光線の中に燐光を放つように白く光っている大佛。赤みがかったぎらぎらした太陽が白樺の雑木林を踊るように照らす=林美。カンテラの油煙のような真っ黒な煙を立てて燃える白樺の樹皮志賀。 **すすき【芒】** 触れれば人の肌膚ぶだに血を見せるほどの硬い意地の悪い葉を持った芒"長塚。真っ白な穂先をなびかせた薄い=堀。すすきが(銀色の穂を光らせる井上靖。白い火のように揺れて光る。宮沢)。鹿の通った後のすすきが静かな湖の水脈ふぉのようにいつまでもぎらぎら光る宮沢。対岸のすすきが花のように一面に白く光っている=三浦綾。芒が馬の愛銃のように丘の頂上まで何にい上る=大岡。一雨ごとに芒がのびて武蔵野が夏めいてくる=吉川。すすきの穂が風に揺れるサラサラという音"村上态。芒の硬直な葉が空を刺そうとして立つ=長塚。槍ゃりの研ぎ澄まされた穂先がすすきの原のように白光を噴く光瀬。両腕がすすきの穂先のようにゆらゆらとそよぐ=高橋三。煙が渉の穂のようにたなびく“福永。茫々たるすすきの原。薄の穂が白銀汎らのように日影に光る"田山。すすきで切ったような細い眼"新田。芒で裂いたように口をぎっと閉じる=長塚。海の穂のようになよやかな姿!白洲。髪が黒色のどのように波うつ連城。蕭条ひょうたる幾災いくの枯れすすき芥川。尾花を幽霊と見る。萱がゃが一面に生え尾花の末が日に光る=国木田。萱で屋根を葺く。菅の穂が一面に咲き揃ってまぶしい銀色に揺れている=川端。 **ぞうきばやし【雑木林】** 雑木林が(黒い塊となって夕焼けの美しさを引き立てる=遠藤。こんもりとした雪で肌を鎧ょぅう三好京。乳のような恋濡ら付につつまれる藤沢)。葉を落とした雑木林が海底のサンゴのように湿った枝を広げる=村上春。風が雑木林から単調な重苦しい音を引きもぎる=堀。雑木林の中に細い道を見つける=あさの。遥か先に雑木林のくすんだ緑が紙屑いねを丸めたような形に小さく見える=村上雑木が若々しい葉を伸ばす幸田文。 **たいぼく【大木】** 大木(一抱えもある。天を摩すほどの宮尾)。大木が(倒れるように黙って体をもたせかける=向田。薬を振るって素裸の山神のごとき装い=泉鏡。メリメリとよじれて倒れる石森。ゆったりと高くくびえる丸谷)。▼木(根のしっかりと張った大きな=福永。黒い巨大な棒が空に向かって突き出ているふうに見える=水上)。すくすくと大木のように退玆くしくなる=有島。巨樹が堂々とそびえ立つ。巨樹の根が遠くまでうねり広がる。大樹がこんもりと葉を茂らせる。大樹の陰に身を寄せる。▼巨木(百歳の樹齢を経た。頂から斧ょので断ち割られたように幹の裂けた“日野。梢が雲を払うような荒巻)。巨木が(鬱蒼らっと天地を覆う本庄。亭々と天を指呼する=山岡)。杉や楠くずの巨木の前に立ったときのおのずと合掌してしまう神々しさ=高田。 **つた【鳶】** 苔こけむす石垣を道って枯れ残った小さな意った=泉鏡。煉瓦塀々がに蔦が変延过从している。びっしりと蔦が絡みついた壁三田。蔦の葉の一枚一枚が赤っぽい金色にきらめき鱗いっに包まれた爬虫北の胴のよう“日野。雨の音の奥の蔦のざわめきが放恣いな想像を誘う。日野。木高だっのからんだ四つ目垣=堀。 **つる【変】** 円柱に昼顔の蔓が絡まっている。山葡萄ぐまぶの変っるが傍若無人に這う。それからそれへとんこになる=飯田。知識が風に吹かれる木の葉みたいに集まってくる=白井。 <479> **は【葉】** 濃密な空気に喘ぁえぎ喘ぎ揺れているような葉=高樹。葉が(褐色に枯れ落ちる。日に日に枝を飾る。池に散って静かな波紋を描く本多除。これ以上繁る隙間もないというように密生する=中上。茂り緑の壁のようになる=あさの。装飾音符のように散る=辻井。ばらばらと雨のように降る=連城)。雨に光沢を得た樹の葉が灯りの下で数知れない魚鱗に心のような光を放つ=梶井。木々の葉がざわざわと揺れる=桐野。樹木が笑っているように聞こえる葉擦れの音=辻仁。木の葉が水に濡れたように色づく=宫木机。ちぎれた葉が鳥の巣でもこわしたように舞い上がる=阿部。ならの葉がそよ風にゆれて光のさざ波をきらめかせる"川端。変の葉が雨に濡れて緑の色を一層冴えさせる"主持。緑色の葉が水にひたされてひとしおに緑"佐藤巻。朴ほぉの葉で包んで蒸し焼きにする=さだ。屋根を椰子ゃしの葉で葺ふく』荒巻。葉に雨がぶつかり小石を屋根に散らしたような音があちこちから聞こえる遠藤。葉の緑に心をなごませる。風に吹かれて葉の一枚一枚がひるがえる=中沢。白い手の平が畑の豆の葉の裏返るように見える=内田百。梅雨時の桜の葉のうっとうしく重なったような懊鬱诂"円地。生い茂る葉を山刀で払いながら登る=池澤。踊り子のように葉を差し上げた若い椰子="大岡。木の枝がバラソルのように葉を広げている連城。着物も袴かも野分の風にあたった芭蕉の葉のように切り裂かれる=海音寺。皮膚が山に生えた樹木の葉のように光を受ける=中上。空いたスペースに観葉植物を置くような単なる話題の提供にすぎない三浦し。葉裏がところどころ銀に光る佐藤春。風が木々の葉裏を返すように戦慄が伝わる三島。月が数々の葉末を剣のように光らす大岡。葉っぱがばらりと一枚仪る"石森。新緑の薬群もが匂う。草の葉が(蕭々しいらと鳴る。指を拡げたように猛々しい展ぃぅがり方をする有吉)。顔色がなえた草の葉のように色褪ぃぅめる=光瀬。 **はおと【葉音】** 植え込みが葉音を立てる=高橋和。担いはおとだ竹が尻尾のように葉音を鳴らしながらついて来る"伊集院。樹木が囁きくような葉音をたてる=森環。竹の新葉の葉ずれが筋礼」のような音をたてる=水上。葉すれのざわめきに誘いこまれる高樹。葉ずれの音(さやさやと鳴るかすかな=山本周。ボブラのいかにも爽やかな=竹西。音楽のように鳴る梢の=中上)。 **はやし【林】** ▼林(油蟬物ぶらの声を湧き立たせている黒井。くっきりとした大名綱だいね~を描き出す佐藤谷。墓場のような煙突の"林美。短い頭髪のように揃って立っている=佐藤春)。林が(黒々とそびえる。さやさやと葉を鳴らす大庭。日ごとに生気を帯びて来る=堀)。風の吹く日には裏の林がざわざわ鳴って何だか海近くにでも住んでいるよう。田山。アカマツの林が額縁の絵のように見える三浦綫。林に遮られて海岸が見えない。川が林の向こう側に見え隠れする。軍勢が林の動くがごとく打ってかかる菊池。豊かにもち上がった緑の天鵞絨に旧のような林の横腹「佐藤脊。林の中がひっそりと小暗い。林の中に屋敷が建っている。山刀を手に林の中に入って行く=池澤。暗々とした林の中の道。朝靄らにが林の中を流れ出す。林を(黒く濡らす雨。渡る風の音が快い)。嵐のように林を突き抜ける"宮沢。北風が林を梳れる=石森。林のように立ち並んでいる何百という帆柱『井上靖。書架が林のように並ぶ!宮本瓦。花輪が告別式場の両側に蜿蜒んと林のように立て列っらねてある=大佛。樹林を風が吹き過ぎる。山から吹き下ろす風を防ぐために植えた屋敷林“三浦し。屋敷林が(神社みたいにこんもり繁っている三浦し。すっきりしたシルエットで空にのびている三浦し)。誘われるままに林間の小径を行く=中野美。木の間隠れに見える海。木の間を漏れる(鈍い月光。陽の光)。樹問に湖がきらめく。 **ほおずき【鬼灯・酸漿】** 唇が鬼灯をつぶしたような血の塊を含む=吉川。壁にぽっと鬼灯のような明かりがともっている=北村。真っ赤なほおずきのような夕陽が波を染めながら沈む宮尾。酸漿のように顔を赤くする獅子。 **ポプラ** 柔らかな刷毛はけのようなポブラー辻井。ボプラが猛だけしく空に突っ立っている=高井。ボプラの同じ幹から疑いの変が伸びて際限がなくなる獅子。出世の変をつかむ。足にからみついてくる草の蔓のように邪魔"石川。日蔭の細い夢みたいな手足"大庭。蔓草に記が木の幹にまといつこうとするような心=森殴。痩せこけた草のような女"高橋知。 **ね【根】** 根が(活着する。道楽の酒好き。平凡でおとなしい女。陽気で図々しい性格。老いた蛇の肌のように灰白色に乾いてささくれだってしぶとくうねっている=日野。人形のように育った朝鮮人参ににらせん!森岡)。巨樹の根が土から現れて太い真っ黒な血管のように遠くまでうねりひろがる三局。曲がりくねった根が半ば地面に埋まりながらうねる=日野。根は(小心な臆病者。至ってお人好し。優しい心の持ち主。悪い人間ではない)。巨悪の根を断つ。経済理論に根を置く。城壁の根を洗う濁流。地中に根をおろす。地域に根をおろして生きる。一つところに根を生やす。床に根を生やしたように動かない谷川。根っこに足をとられてひっくり返る=長崎。根っこは一つ。根っこを(引っこ抜く。掘り起こす)。木の根が(地面から浮き上がって大蛇のようにくねり地面を這ぃっている=池井戸。静脈のように小道に浮き上がっている三浦綾)。木の根に足をとられてよろめく。木の根のように不恰好に大きいザラザラした手=小林多。▼根を張る(地元に。大地に深く。こだわりが心に)。生活の不安が意想外なところに根を張っている=横光。根を地下に張り巡らす。 <480> **みどり【緑】** ▼緑(滴るばかりの濃い。息苦しいほどの山の=曽野。猛々労しいまでに生い茂った落合)。緑が(山肌を彩る。野山にあふれ返る。日増しに濃くなる)。柔らかな緑が風に揺れる。樹々の緑がみずみずしく水面に映る=梶井。木の緑が雨に溶けながら木の下の闇に溜まっていくよう倉橋。初夏の緑が目に呟まぶしい人間。裾野にひろがる緑が雨に濡れて冴え冴えとした色を見せる吉村。庭が緑に潤む。川筋が木々の緑に縁取られる。庭の緑に陽射しが降り注ぎくっきりと光る=小川。緑の(香りが快い。トンネルが続く)。模糊。ことして隠見する深みとの山々=中陽妥。豊傍らじな緑の地。一面の緑の沃野。濃い緑の針葉樹の森。街路樹がかすかに幼い緑の葉をつけはじめる=吉本。風が緑の斜面を波打たせる=石田充。樹々がいっせいに緑の芽を吹くに永井路。黒みを帯びはじめ涼しそうな緑の衝立いの蔭"梶井。強い陽ざしを受けて染めつくような緑の山襞様!山崎。ひしめき叢ちる樹木つづきの緑の海"本庄。窓から緑の風が踊り込む『高橋三夜の緑の匂いでむせかえるような公園吉本。山が深い緑を宿す「清水義。雪が緑を白く塗りこめる=倉橋。底に淀んだ冥くらさや重さの少しもない春の緑のようなけばけばしい新鮮さのある文章"円地。緑濃い(林。森)。緑したたる(渓谷。大地。山の姿が絵筆もおよびがたいほど纏綿んたる情緒にあふれている!白洲)。緑豊かな(大地。森)。緑化に力を入れる。国土を緑化する。 **め【芽】** 芽(柔毛にこのような繊砂にい軟らかいニラの檀。芽吹いてきた草々の勢いよい青い=石川)。芽がぐんぐん伸びる。新しい芽が伸び始める。小さい動揺の芽が生まれる。勇気の芽が顔をのぞかせる。才能の芽が自分の中で立ち枯れになる=吉行。芽が出ない(いつまでも。さっぱり)。芽の息吹きがそこここに感じられる=池波。草の芽の伸びる音さえ聞き取れそうにあたりは静か大佛。若草の芽も一晩のうちに伸びるような暖かい春の宵"島崎。災難の芽を早めに摘んでおく。若手の芽を摘む。せっかく伸びかけた運の芽を摘み取ってしまう。司馬。▼芽を出す(草木が。種が。すくすく)。▼芽を吹く(草木が。若葉が。柳が一斉に)。木の芽の匂いが立ちのぼる。明露が木の芽を濡らす。瑞々しい若芽。若葉が(吹き出す。放つ新鮮な旬い)。新芽が(きざす。芽ぶく)。木々に新芽が吹く。新芽の匂うような本能的なざわめき」佐多。手の柔らかさが木の葉の新芽のような肌触り、谷崎。ひこばえが群がり萌える。切り株からひこばえが芽吹く。稲の株から心細げに伸びる褒めにの海緑・藤沢。 **めばえる【芽生える】** ▼芽生える(心に恋が。老いることへの恐怖が。女に対する不信が。気持ちに弾みが。二人の間に愛が。ほのかな恋情が。野心が胸の中に。父に対する反発の気持ちが熊谷)。動揺が芽生え日ごとに少しずつふくらんでいく=飯田。芽生えた不快感をドライシェリーで押し流す=松浦。何の感情も芽生えてこない。▼芽生え(木々の。草花の。恋の)。かすかな希望が芽生えかける。新しい時代を生み出す胎動が始まる。発芽する(種が。地下茎が)。発芽率が(よい。悪い)。発芽を促す。双葉が出る。双葉から育てる。双葉のうちに摘み取る。芽ぐむ(木々が。草花が)。 **めぶく【芽吹く】** ▼芽吹く(街路樹が。木々が。草木が。独創性が。若葉が。新芽が土を割って)。芽立ちが(始まる。よい。例年より早い。悪い)。萌え出す(新芽が。青々とした若葉が)。▼萌え出る(命が。緑が)。青草が萌える。 **も【藻】** 流れに沿って川床の薬が髪の毛のように揺れる=高橋和。薬のようにそよいでやまぬ女の舌"三島。体が水底のかほそい一本の薬のようにゆらゆらと揺れる"小林久。上体が薬のようにゆらりゆらりと緩慢に動く=中村真。長い髪が薬のように顔を隠す森村。岩陰にしがみついて押し流されて行く海藻のような後悔!福水。野火の煙が海草のように揺れながらどこまでもどこまでも無限に高く延びる!大岡。馬の背の反動にざんぎり頭の髪の毛が波をくらった海藻のように浮き沈みする=本庄。黒い髪がシーツの上に海藻のように広がっている女=水倉。病気が常に海に浮かんだ海藻のように波打っている=小川。乱れた髪がべっとりと海藻のように汗の滲にじんだ額にへばりつく藤本。海の底で揺れている一本の海藻みたいに頼りない"宮本卯。流れ藻のように揺れながら立ち上がる小林久。袖も裾も海松布ぬものように裂き切れる=柴田側。畳を敷いたようにぎっしりと生える海草本多勝。飴色の海藻がつやつやと光る。水の底で海草にた緑の夏山"林京。五月の風に緑の葉が揺れる=北村。枝がざわざわと揺れる=庄野。薄緑色のポブラの若葉が可憐ふぇに微風にそよぐ=太宰。子どもたちが風に吹かれたボブラの葉のようにいっぺんにこちらを見る=石森。夏木立というと反射的に校庭のボブラの郷きとそよぎが思い出される=竹西。葉の一枚一枚が弦楽器の素早い音のように小止みなしに翻っている=庄野。ボブラ並木の幹が水っぽく白々と見える石森。 **みき【幹】** 人肌のように陽射しにぬめるすらりとした細い忤=真継。木の幹が白い大蛇のように伸びる=梅本。幹に変草いるがまといつく。幹の(陰に隠れる。片側に雪が吹きつけられ黒い幹肌がくっきりと鮮やか三浦談)。雨水が学を伝い落ちる。こつんと木の幹を叩く。真っ直ぐに幹を伸ばす。虫が木の幹を這い回る。木の肌のような小皺が寄る=開高。ふっくらと温かい木肌。木肌がささくれ立つ。木肌の裂ける細かい音。濡れた木肌の匂い。樹皮が凍てついて割れる。樹皮を剥がす。渋の強い表面が山葵みきおろしのような櫟氷の皮長塚。 <481> **もっこく【木斛】** 木斛が風を孕はらんで枝先を魚の尾のように動かす高樹。木斛の葉が陽を吸って艶を帯びて光っている=高并。 **もみ【縦】** 蝙蝠傘に託のように枝を広げた一本の樅の木=堀。ひときわ高く聳そびえ立つモミの巨木"日野。假松も火の林が鋸細にの歯のような猛々しい緑の稜線もいっを晴れ切った空にしんと描く“原田康。 **もり【森】** ▼森(昼なお小暗い。鬱蒼いうと茂っている常緑樹の。こんもりと茂った。海のように荒れくるい、また静まる厖大な大江。公園のような緑に包まれた典雅な=五木。木という木が銅色や金色、燃えるような朱色に染まる美しい秋の松谷。雑多な樹々を勝手に寄せ集めた"日野。杉や檜幻のなどが亭々と生い茂っている=山本周)。森が(新緑に彩られる。深くて見通しがあまり利かない三浦し)。眼前に黒々とした森が迫る。目の前に森が立ちはだかる。漆のごとく森が黒い泉鏡。広大な森が黒ぐろと浮かび上がる=飯田。人間の身勝手な欲望のために森が滅びる=飯田。豊かな森が延々と続く熊合。森から森へとさまよい続ける。薪を森から拾ってくる。森に(神秘的な空気が漂う。精霊が満ち満ちる)。森の(片隅で暮らす。中に永続性の高い森の文化・高田。木は森で迷子になる)。永続性の高い森の文化高田。の中に隠せ貫井。濡れたような森の緑にうっとりとする=辺見。広間の中が森の如く静まり返る豊田。獣が棲まない森はもはや森ではない。森閑として森は大いなる魔人のよう飯田。木ばかり見て森を見ない。深い森をさまよう。喪討しわれた森を取り返すには気の遠くなるような時が必要"飯田。千古斧鉞ふぇを知らない大森林が無限に続く蝦夷地、海音寺。逆巻く癖なぁのように梢や枝葉を空に振り乱して荒れ狂っている原始林"岡本。原始林に迷いこんで雨にあうのよりもっと不気味小林多。後悔がどこまでも尽きない原始林のように心の中に薄暗く生い茂る"福水。▼原生林(緑豊かな。人跡未踏の)。山林が手つかずに残る。山林に家畜を放牧する。森林を(大切にする。伐採する)。鬱蒼たる美林が年々見るも無残な赤土の禿山似封になってゆく。宮尾。保安林に指定する。密林に迷いこむ。密林を抜ける。鬱蒼と茂ったジャングル。ジャングルをさまよう。鬱蒼とした樹海。樹海が広がる。山麓の樹海が黒い海に見える=新田。樹海という呼び名がふさわしい一面の緑。高田。 **やなぎ【柳】** 柳が(風に吹きなびく。着物の袖のような枝を地面に届くほど垂らしてゆらゆらと風に揺れている梅木。韻を合わせるように揺れながら虚空を梳すく=高橋知。たおやかにしなう徳田)。青々とした柳が枝を垂れて池水に姿を映している風景は錦をさらしたように美しい白洲。河畔の柳が風にゆったりと揺れ動く。井上靖。柳に雪折れなし。▼柳に風と受け流す(攻撃を。無言の圧力を)。柳の下に泥鰌と礼はいな雨にさらされた柳のようにうちしおれる吉本。青柳の枝がなびくように必ず心のなごむ時節もくるにちがいない!白洲。毛皮が猫柳みたいにすべすべしている=大庭。 **やぶ【豚】** 両側から藪が覆いかぶさった道。真相は数の中。厳をつついて蛇を出す。小さい白い蝶がしめった翅で草藪の上を這うように飛ぶ。林炎。 **わかぎ【若木】** 若木がすくすくと育つ。人の背丈ほどの若木が等間隔に植えられる=高井。雪の重みにひしゃげた若木を起こす。あふるる日光のうちに伸び伸びと育つ若木のようなまっすぐな善良さ=長与。 **わかば【若葉】** 濃淡とりどりの若葉。若葉が(萌え立つ。萌え出る。新しい色彩を涨ひょらす=田山。ひときわ色よく冴える=竹西)。雨に洗われた桜若葉がほのかにかぐわしい=幸田文。若葉の(美しさに喚声をあげ薬群もに見惚れる)。むせかえるような若葉の匂い=山田風。むせるような若葉の匂いがあたりに満ちる=壺井。綿を吹くように木々が若葉をつける藤沢。浅緑に煙って見えるカラマツ林三浦哲。若緑が目にしみる。青葉が(日に照り映える。日に日に濃い色を見せてくる=徳田)。青葉の(影の透き通るような光を仰ぐ=国木田。繁りが鬱陶しいまでにこもる=竹西)。天をかぎる巨木が青葉の波濤沚とをつくる=本庄。風が青葉をそよがせる。空を隠すばかりの見事な新緑竹西。新緑が(さわやかに色づく。大地を覆い妖しい霧を吐く畑。華やかに森を彩る=加賀)。淡い新緑が粉にを噴いているように見える=林美。滴るばかりの新緑が萌え出す=国木田。柳の新緑がはっとするほど明るく映えて目にしみる=加賀。新緑に朝はが絡む。樹々が新緑に包まれる。野山が新緑に輝く。やわらかな新緑にからだこと染まってしまいそうな初夏竹西。からまれたような始末の悪さ=安岡。海藻のホンダワラみたいな髪の毛=阿久。岸に近い海面が春の海藻の丹にのいろに染まる=三島。海底の薬草のように意地悪くからむ萩原吻。考えが揺れ動く無数の薬草のようにゆらゆらとたゆたう“中局救。稚魚が育つ藻場。飴のように透き徹った風味最高の上ものの昆布山崎。深い海の潮を吸ったままのような艶々しい上質な昆布"山崎。昆布の地肌が蛙砂ぇの背中のようにきめが粗い=山崎。小千谷紬はげどの紺色が昆布のぬめりのように光る=伊集院。取り返しがつかないという気持ちだけが昆布巻にょきのように彼の全部を幾重にも包む"小林多。岩礁にこびりつく海苔のりをかき落とす丹。皿に盛られた飯が岩を敵う海苔のような緑と蜜柑色以幼んの徴かびを生やす武田奈。茶色のぬめぬめと厚いわかめ=川端。汚れたワカメのように汗でぬれた髪を垂らす=富岡。若布ゆかの肌のように艶っゃやかなうるおいを帯びた肌安部。 <482> # 静まる・宥める **あやす** あやす(赤ん坊を。子猫を。だだっ子を。孫を。男を手もなく。赤子を抱くように)。嬰児にぃをあやすような仕種しく主吉村。子供をあやすような言い方=中沢。 **あんせい【安静】** 安静に寝かせておく。体を安静にする。医師に安静を命じられる。絶対安静を必要とする。 **えんまん【円満】** 夫婦仲が至って円満。一家円満で過ごす。円満な(家庭を構築する。人柄に惹ぃきつけられる)。円満に(事が運ぶ。話し合いがつく。問題が解決する)。万事円満に終わる。まず円満に折り合ったためしはない。 **おだやか【穏やか】** ▼穏やか(表情が春の海のように"火坂。問が抜けたように=伊藤整)。海が油を流したようにおだやか=西木。夕凪砂約の海みたいに穏やかで寂しい目=辺見。穏やかな(風に吹かれる。好天が続く。慈顔の持ち主。寝息を立てる。目で見つめる。老境に向かう。笑みを浮かべる。口調で語りかける。声でたしなめる。夜風が梢に軽く騒ぐ)。おだやかな海面が金波銀波で埋めつくされている=西木。明るい穏やかな生活。風もない穏やかな一日。口元に穏やかな笑みが浮かぶ。自然の穏やかな懐にいだかれる。敵意を含まない穏やかな目。昨日の嵐が嘘のように穏やかな海上平有。穏やかに(声をかける。事を処理する。心が満たされる。年をとっていく。波立つ一面の海)。なるべく穏やかに話を進める。▼穏やかになる(風が。憑っき物が落ちたように明るく内海)。穏やかに話を(聞く。つける)。▼穏やかさ(人生を悟りきった。昼寝でもしたくなるような=高田)。顔から穏やかさが消える。顔に穏やかさが戻る。心が凪なぐ。心穏やかに過ごす。穏健な(考え方。思想。闘争方針)。温厚な人物。無運押しなやり方の出来ない温厚な人格"石川。親思いの温柔な性格。穏当な(手段。処置)。師の温容に接する。温良な(性格。人柄)。どこか大人びた静穏さ。静穏な日々を送る。マイルドな(香り。シャンブー。匂い)。まどかな人格。不穏当な(言動。処置)。言葉が穏当ではない。穏当を欠く。穏やかではない(言い方。文章)。虫も殺さぬ顔で人を欺く井上靖。悪党も徹底すると虫も殺さぬ好人物に見える柴田錬。虫も殺さぬような優しいことをいう(永井荷。 **おとなしい** おとなしい(表情からはうかがいしれないハングリーさ=泉受。見せかけの中にしっかりした自力と決断力を秘めている=石坂)。善良なおとなしい味。羊のようにおとなしい人たち『高橋源。おとなしいけど芯のしっかりした娘連城。おとなしく(酒を飲む。指示に従う。順番を待つ。控え目な女性。言うことを聞く)。馬のようにおとなしく立っている=阿部。このままおとなしく引っ込むとも思えない三好敵。天使のようにおとなしく条件に服従する"大佛。欲望をおとなしく眠らせる落合。虫のようにおとなしくしている=小林信。おとなしくて目立たない生徒。眠るようにおとなしくなる=有局。▼おとなしい(借りてきた猫みたいに辻兵。日向ぼっこの猫のように=黒岩)。猫の皮をかぶる。温順な(性分。人柄)。寡黙な性格。雪中を一歩一歩寡黙に歩む!熊谷。ときつくない趣味の服装を心がける。 **おんびん【穏便】** 穏便な(手段。方法)。穏便に(事を処理する。話をつける)。物事を穏便に進める。事を穏便に(収める。処理する)。 **おんわ【温和】** 声と言葉つきが相手の心をなでるように温和野間。温和な(腰の低い男。性格。人柄。感じのジェントルマン)。漂白されたように温和な表情"高橋和。一見穏和ないかにも人間味のある人"野間。羊のように温和に振る舞う豊田。 **こえがない【声がない】** ▼声なし(万籟以寂として。満場粛として)。ざわめき一つ起こらない。私語一つかわさない。寂として(ぶもない。何も聞こえない)。はるか前方の書記席でとり落とした鉛筆の音が傍聴席の隅までとどくほど寂としている=徳永。 **しじま【静寂】** ▼しじま(森閑と更けわたる夜の=山本周。針を落としても音が聞こえるのではないかと思えるほどの"あさの)。音が朝まだきのしじまを縫って響く。家の中にしじまを閉じこめるような重苦しい雨の降り方!有吉。神韻が千古の静寂を広げる=山岡。 **しずか【静か】** ▼静か(天地は寂然として。海が油を流したように「武者小路。お通夜のように今來。海面が鏡のように灰谷。草の芽の伸びる音さえ聞き取れそうにあたりは"大佛。湖面が小波結一つないほど=井上城。真空の中にいるように=林考。生気に満ちた音がすっかり掃き清められたように"小川。世間から隔絶されているように"石坂。ちょっと大きな声で喋心ると部屋中に響くのではないかというほど=泉優。冬眠中のリスのように三浦し。休日の病院が墓場のように加賀。腹がグーと鳴る音が部屋じゅうに響いたと思うほど山の夜は=山本有。風鈴のかすかな音さえ騒がしすぎるほど連城。積まれた材木が港に折り重なって睡ももる舟のように高樹。耳がなくなってしまったのかと勘違いするくらい=小川。屋敷が眠ったように=国木田)。さっきまでの町中の雑沓ぶつが嘘のような気がするほど静かで涼しい"丸谷。あたりは静かで世界中で目を覚ましているのは二人きりに思えるほど“五木。静かな(川の流れ。平安が訪れる。落ち着きが心に広がる)。気味悪いほど静かな口調。口数の少ない静かな少年。忍び寄る夜寒の静かな気配。深く静かな眠り。居るのか居ないのか分からぬくらいにいつも静かな男"志賀。海老えびが髭ひげを動かす音 <483> さえも聞こえそうなほど静かな店村上だ。くぐもるような静かな声三浦綾。真空地帯みたいに静かな路地=田辺。踏踏於ゃうように静かな跫音協し!大岡、湖のような静かな入り江高橋項。湯呑みに茶を注ぐ静かな音が茶の間に広がる=北原。▼静かな暮らし(張り合いのないくらいに堀。ひっそりとして人の出入りも稀まれなほど=山本周)。▼静かな夜(風のない。死んだように。耳が痛くなるほど"北原)。静かに(頭を下げる。顔を上げる。かぶりを振る。煙が立ち昇る。声をかける。沈黙した夜気。ドアを閉める。時が流れる。ノブをまわす。ベージを繰る。穂が揺らぐ。目を閉じる。口元をほころばせる)。臆していた気持ちが静かに消える。心が静かに澄んでいる。遠くから静かに見守る。扉を静かに閉める。ノクターンが静かに流れる。更けゆく秋を静かに眺める。家の中を静かに夕暮れが満たす人米。影のように静かに歩く"小川。雲ただ静かに屯於もする=幸田露。呼吸しているとは信じられないほど静かにしている=有吉。猫のように静かに部屋に入る=山田詠。風鈴がチリンチリンと静かに鳴る"永井荷。一人静かに(飲む。反省する)。ロビーが一瞬冷蔵庫と化し、そこにいる人たちを沈黙させる"島田。音を忍ばせて入っていく。霧が微かすかな音を立てる=井伏。微かな音さえ聞こえる谷村。新聞紙を細かく引き裂いて厚いカーペットの上にまいたほどの音"村上春。賑わいを外れた通り。粛々と行半を開始する。粛として人無きが如く子母沢。深沈と寝静まる。静粛に机に向かう。 **しずけさ【静けさ】** ▼静けさ(威圧するような荘重な徳永。救いようがないくらいに徹底的な"小川。蜂の大群がいっせいに巣を飛び立つ寸前のようなぶっそうな"飯田。井戸の底のような若竹。鼓膜が変になるような島尾。自分の部屋だけ残して周囲が消え失せたような=宮本百。砂の海の荒れ果てた=光瀬。波のまったくうずくまった獣のようにひっそりと渡辺。雪がすべての音を吸い込んで=篠田。礼拝がすんだあとの教会のように小川。あたりがひっそりと)。聞こえるほど静まり返る(心臓の鼓動が。蛍光灯の放電管がじりじりとたてる断続音がはっきりと=日野)。▼しんと静まり返る(会場が。家じゅうがこわいほど=日野。造り花の逆華にふる日の光の音さえ聞こえるくらい茶川。人気かとがまるでないかのように村松)。遠い喧噪に囲まれて静まりかえった林の中古井。逢魔が時姉らぎの静まり返った薄明"日野。風の音一つしない静まり返った部屋"谷川。一瞬頭の中がしんと静まり返って何も考えられなくなる=乃南。あたりが森閑と静まり返っている。湖水のような赤瀬川。ひそかに時を刻んでいる時限爆弾みたいな飯田。雪に吸いとられた音という音がそこらに潜んででもいるかのような飯田。雪の鳴るような=川端。夜の闇が附近いちめんに密集して垂れ下がって来ているような=横光)。静けさが(二人の町に舞い降りる。冷たい滴となって落ちそうな杉林"川端。ひょっと夢かと思うような渓たにの眺めになおさら夢のような感じを与える=梶井)。陰鬱な静けさが一枚の黒い大きな布のように降りてくる=森瑞。あたりに静けさが漂う。たそがれのような静けさに満ちる=光瀬。うつけた静けさの底を沢の音が滑っていく"古井。あらゆる物音を吸い取ってしまうような静けさのなかに激しいいのちが脈打っている森!高田。遡行灯以協の光の裡うちに美しい調度が春の夜にふさわしい艶なまめいた静けさを保つ菊池。さきほどのざわめきが嘘のように静けさを取り戻す=畑。神去山がふだんの静けさを取り戻し、稜線めいうに星をちりばめながら村と村人を守るようにたたずんでいる三浦し。坂を少し下ると水のにおいが強くなり川音が静けさをいっそう際立たせる=三浦し。周りの音を遮って静けさを封じ込める=城山。あたりが沈鬱な静かさに墜ちる=本庄。 **しずしず【静静】** 祭壇の前へしずしずと進む。隊伍をしずしずと押し出す。神主が歩くような風にしずしずと座敷を出て行く内田百。霧が山をしずしずと降りてくる"大佛。会葬の列が静々と通る。 **しずまる【静まる】** ▼静まる(さわついていた場内が。気味に"遠藤。堂内が一瞬水底のように『井上靖。墓がしずまる屋敷の内部がひっそりと。潮が引くように家じゅうが安岡。先ほどまでの興奮が嘘のように"山田詠。人影のない境内が森閑と=外村)。鎮まる(怒りが。戦勝の興奮が。胸の渦巻が。放态ぃぅにたかぶっていた気分が"日野)。▼しんと静まる(家中の音がやんで=高樹。針一本落としても聞こえるほど高田)。小波が浜辺で静かに砂に吸いこまれていくように不安も怯ぉびえも鎖まっていく遠藤。▼静かになる(さしも騒々しい宴席も完全に。さわついていた教室が少しずつ。あたりの音をすべて持ち去られたように高樹。地面の底に沈んでいくようにしんと石坂。店の氷が凍てついたように=五木)。▶寝静まる(家々が寒気の底に。すべての家が灯りを消して森村)。 **しずめる【静める】** 気を取り直したふうに呼吸をしずめる藤本。騒然とした空気を浄める。▼銀める(気の高まりを。心の錯乱を、転変の世を。怒りを何とか。泡立ち騒ぐ自分の心を森瑠)。▼気持ちを静める(高ぶった。逸ぃゃる)。▼心を静める(騒ぐ。波立つ)。鳴りを浄めて(繰聴する。酒塞ひいする)。▼取り鎮める(騒ぎを。騒動を)。いきり立つような心を押し静める=伊藤整。発言の火消しに追われる。 <484> **しめやか** しめやかな残り香が漂う。しめやかに(雨が降る。沈妖する。昔を語る)。葬儀がしめやかに営まれる。夕暮れがしめやかに匂っている坂道"立原。 **しんかん【森閑】** 建物が雑木林の中に森閑とうずくまる=福永。森閑として咳払い一つ聞こえない!内田百。部屋の温度ががくっと下がったかのように森閑とする=幸田文。森閑とした白一色の世界~永井路。声が森閑とした家の中に響く=獅子。山が暁暗のなかに森閑としている=中局。 **しんと** しんと(夜の底に沈む。静まった夜の沈黙の中。張りつめた空気。物音が途絶える)。頭の隅がしんと冷たくなる。家の中がしんと寝静まる。沈黙がしんと支配する。蛙砂ぇの声に家も身も埋めらるるように感じるほど夜がしんとしている=田山。しんとして何の気配もない"江戸川。部屋の中が気まずいほどしんとする=福永。髪の毛が落ちる音さえ聞こえそうなほどシンとする=内館。しんとした(閥が広がる。夜の寂寞時にの中)。しんとして(白けた座敷。人気冖とがない)。しいんと(静けさが鳴る。耳にしむ静寂)。笑いが途切れてしいんとなる。 **せいじゃく【静寂】** ▼静寂(逃げ場のない濃密な竹西。あたりにみなぎる夜の=石坂。肌のない重くよどんだ"日野。空気の音がジーンと地虫のように聞こえる藤本。声だけが空にふわふわ漂ったような本庄。シーンと耳に沁しむ耳が痛むような「加賀。咳音礼ひとつしない=阿佐田。深山にいるような「里見。咽喉のとを通る水音がこくこくと聞こえるほどの本庄。万物が死に絶えてしまったかのような恐るべき栗本)。静寂が(時々水音によって破られる。闇の底を埋めている。泉のように胸の中に溢れて来る=福永)。重苦しい静寂があたりに垂れ込める。雨滴が窓枠にしみこむ音まで聞こえそうなほどの静寂が重苦しくあたりを支配する=武田爽。空虚のような静寂が拡がる宮本百。山中のように静寂が深い神社柴田剣深い山気の静寂が冷え冷えと身肌に迫る。本庄。無気味な静寂がいまにも破裂しそうな気配をはらんで風船のようにふくれ上がる。宇野利。まどろむような静寂に包まれる=小池。静寂の松風の底に寺が眠る。しんしんと静寂の中に引っ張りこまれるような無人の気配島尾。瀬鳴りの音が静寂の天地に澄みかえる菊池。死のような静寂を漂わせる=光瀬。しんしんと山上の静寂を感じる獅子。 **せいひつ【静謐】** 冬の宵のしんしんとした空洞のような凍てた静謐之木。森林と湖沼に囲まれた静謐な城津本。ひきしまった冷たい静謐な気配"円地。森の奥の湖面のような静謐さ"海堂。豪雨の来る前触れの不気味な静謐さが漂う原田康。 **そっと** そっと(肩に手を置く。足音を忍ばせる。あたりを見まわす。小声でささやく)。嫉妬をそっと胸に収める。悲硝子对”の人形でも撫でるようにそっと撫でる=加賀。釜の蓋をおっかなびっくりのようにそっと開けてなかを覗のぞき込む高見順。もらった名刺を壊れやすい宝物のようにそっと握りしめる"内館。さわると壊れるものを扱うようにそっと手を触れる清水俊。本を爆弾でも持つようにそっと手に取る=加賀。物音を立てぬようにそっと寝室に入る"鷺沢。頼むからそっとしておいてくれ"山本周。舞台の上の黒子みたいにそうっと自分の部屋に戻る。尾辻。 **そろりと** そろりと(一歩さがる。唐紙を開ける。椅子から立ち上がる)。そろりそろりと(奥へ進む。階段を降りる。後退する。側そばへ寄る)。そろそろと(ドアへ近づく。前に進む)。 **ちんせい【沈静】** 悲暮の沈静な光芒にう。騒乱が沈静へと向かい始める。沈静する(逆上が。興奮が。躁状態が)。鎮静させる(インフレを。暴動を)。気持ちを鎮静させる(興奮した。浮き足立っている社員の"高橋和)。▼沈静化する(地価の上昇が。暴動が)。鎮静剤を(注射する。飲ませる)。 **ちんてい【鎮定】** ▼鎮定する(クーデターを。内乱を。反乱を。暴徒を)。▼銀撫誌んする(反乱を。暴動を。暴徒を)。 **なぐ【凪ぐ】** ▼凪ぐ(海がとろりと。海が鏡のようになぐ阿久)。凪いでいる(海が群青色に。海が青い畳を必いたように=山本岛)。風が死んだように凪ぎ帆が全く役に立たない=平岩。海面が妙に弾力を持った凪ぎ方をする"有局。心臓が凪なぎの海のように平静になる高橋和。とろりとした凪の海面栗本。油を流したような海面隆。波一つ立たない。波頭一つ見えない。油のようにないだ海石坂。海がニスを刷はいたように凪いで光る落合。 **なだめる【宥める】** ▼なだめる(暴れ馬を。憤る遺族を。騒ぎ立つ胸を。吠える犬を。いきり立つ男を。狂暴なふるまいを。狂乱した母親を。不平不満を持つ人々を)。なだめてもすかしても言うことをきかない。なだめすかして連れ帰る。▼なだめすかす(馬を。子供を。年長者を。混乱した頭をどうにか=小池)。宥めるような笑顔を向ける内田康。なだめるように(説き聞かせる。優しく言う)。▼すかしたりする(おどしたり。なだめたり)。 **にゅうわ【柔和】** 柔和な(長者の風格。外交辞令にだまされる=平気。笑いで武装する=野問)。異常さの中で暮らして暴動も起こさない柔和な国民性"大庭。焚き火が柔和な音を立てて燃える=大江。羊のように柔和な目有鳥。処女のような柔和な光を帯びた眼"山本网。人の好さそうな柔和な目内田康。眼鏡の奥の柔和な目が笑っている=高橋三。柔和に笑う。表情が柔和に崩れる。ルオーの絵のキリストのような柔和さ円地。 <485> # 静まる・宥める-159 **ひそひそ** 陰でひそひそ話題にする。ひそひそと(立ち話をする。耳打ちする)。声を殺してひそひそとさざめく。額を寄せ合ってひそひそと語り合う光瀬。夜霧がひそひそと青く流れる=開高。 **ひそやか【密やか】** ▼ひそやか(時間の流れから沈澱したみたいに=小川。すべての物が眠りに落ちたように=小川)。ひそやかな話し声が耳の奥に残る。壁越しに聞く人の呟やぶきのようにひそやかな水のせせらぎ=大岡。観客が多ければそのざわめきに埋もれてしまうようなひそやかな話し声"西木。ナメクジのようにひそやかな足取り飯田。夜霧がひそやかに青く流れる。雨がひそやかに降りけむる=池波。音がひそやかに夜の底を漂う。小川。秘めやかな(集まり。恋。幸福感)。繊細な指先がしのびやかな動きをする三島。忍びやかに(小雨が降る。すっっと視誌ずをあける)。しのびやかに通りゆく時雨の音"国木田。砂が忍びやかに流れ落ちる。猫のごとく忍びやかに追い慕う人米。 **ひっそり** 村中がひっそりと雨に叩かれているように静か=佐多。息をひそめてひっそりうずくまる。ひっそりと(思いに沈む。寂しい顔だち。時雨が降る。静かな山。花が蕾いにを開く。人影がない。身を横たえる。円を閉ざす。一礼して立ち去る。立つ小さな石塔。平凡な一生を送る。窓辺に身を寄せる。無名のまま死んでいく)。家にひっそりと閉じこもる。声も立てずひっそりと寄りそう。離れにひっそりと住みつく。影のようにひっそりと歩く=角田。世間の目に怯おびえながらひっそりと暮らす=横山。ひっそりとして物音一つしない。家じゅうがひっそりとなる。古風でひっそりした料理屋。緑の多いひっそりした通り。深夜のようにひっそりした風景"木山。人気かともなくひっそりしている。▼ひっそりとしている(忍者のように。部屋という部屋がことごとく谷崎。ぽたぽたとぽしょの落ちるのが耳につくほど=山手)。ひっそり閑と静まる。ひっそり閑とした境内。ひっそり閑とする(家の中が。室内が)。総ての光彩を消したような閑寂な風景"外村。閑静な(住宅街。町外れ。山里)。ひそと身動きもしない。ひそとして(声もない。静まって連なっている家々)。▼閑散としている(人影がなく。店の中がすっかり)。閑散とした気配を漂わせる。ひどく閑散とした道。閑散な眺めを呈する。 **へいおん【平穏】** 平穏がぬるま湯のようにぴったりと家そのものを包みこむ=瀬戸内。平穏な(生活が続く。旅が続く。日々を送る。気持ちで生きてゆく)。礼儀正しい平穏な家の雰囲気"大岡。平穏に(暮らす。澄みきった空気)。上辺だけ平穏に毎日が流れる。日々が変わりなく平穏に過ぎて行く赤川。快い平穏の日々。心の平穏を得る。朝夕を心にかかる雲もなくすがすがしく送る=幸田露。さざ波ひとつ立たない。とりあえず今日も我が家は平穏無事「重松。平穏無事な(暮らし。生涯を送る。生活。日々を送る)。平穏無事に(暮らす。続いてきたここ十五年)。 **へいてい【平定】** 平定にほぼ十年を費やす。▼平定する(関東を。全国を。賊を。天下を。反乱を)。つつがなく天下平定に成功する=多岐川。山賊の一味を平らげる。 **ほのぼの** ほのぼのと(明けゆく空。心が唆まる。期待が湧いてくる。血の色が頬に出る。頬を薄紅に染める)。何とはなしにほのぼのとしてくる。胸にほのぼのとしたものが流れ込んでくる。夜がほのぼのと明ける。頬にほのぼのと血の気が通ってくる=山手。ほのぼのとした(愛情を感じる。幸福な時間。子供っぽい感情)。心がほのぼのとした明るさを取り返す=福永。 **みずをうったよう【水を打ったよう】** 水を打ったようにシーンと静まりかえる内田爽。周囲の騒授そうじが水を打ったように静まる=井上靖。見ている人たちが水を打ったように声を呑む芥川。拍手していた騒ぎやどよめきが一度におさまって水を打ったようになる=内田瓦。水を打ったことき式場。 **むおん【無音】** 静かというにはおそろしすぎる底なしむおんの無音の世界~水井路。音という音が消える。ことりとも音を立てずに細くドアを開ける"小川。カサとも音をたてない=飯田。物音一つ聞こえない。物音ひとつしない地下の渉くらがりのなかで時間が死に絶えてしまったよう。村上春。物音を立てない(そよとも。ひそとも)。音もなく(風が流れる。粉雪が降る。すっと立ち上がる。背後から接近する)。黄ばんだ葉が音もなく舞いおりる。興奮が音もなく流れ去る。細かい雨が音もなく降りかかる。扉が音もなくてうっと開く。年月が音もなく過ぎる。冬が音もなく忍び寄ってくる。炎が音もなく燃える。餌食を狙う蜘蛛くものように音もなく小屋の外へ忍び寄る芥川。影が音もなく去る=光瀬。影のごとく音もなく動く!佐藤巻。自動車がフィルムの影のように音もなく走り去る=徳永。 **ものしずか【物静か】** 物静かで出しゃばらない人。物静かな(初老の婦人。落ち着きが漂う)。神寂詠みびているとでも申し上げたいくらい如何ぃかにももの静かなこ威光がある芥川。出しゃばろうとしないもの静かな性質大佛。古風な物静かな町。天真爛漫にんむんな母に対して物静かな父という対照的な組み合わせ=阿川佐。物静かに(箸を使う。晴れた日。優しく言う)。一日が何事もないかのように物静かに過ぎる堀。自然の幽寂が心にしみわたる。幽邃、いな(深山。雰囲気。測)。幽邃の気のたてこめた霊場・井上級。 **やわらぐ【和らぐ】** ▼和らぐ(自責の念が。表情が自然に。残暑が幾分)。和らぎに満ちる。▼和らげる(薬で痛みを。荒すさんだ空気を。鼻づまりを。息苦しい雰囲気を。きつくなりがちな印象を。しまいには府なだめるように言葉を=徳田)。 <486> # 親しむ・馴れ合う **あいぼう【相棒】** 相棒(信用できる。頼りになる)。仕事の相棒を探す。互いに欠くべからざるバートナ1。重要なパートナーと位置づける。 **いきつけ【行きつけ】** 行きつけの(喫茶店。スナック。店。漢方薬屋で買う。バーに連れていく)。かかりつけの(医者。病院)。 **いきとうごう【意気投合】** 両雄相見てたちまち意気投合する。意気投合して友人になる。気持ちが一致する。不思議に馬が合う。自然に仲よくなる。 **うちとける【打ち解ける」** ▼打ち解ける(親しく。すっかり。誰とでも。昔からの友達みたいに辻仁)。誰とでもすぐ打ち解ける性格。打ち解けた気分に浸る。心から打ち解けた顔になる。心底打ち解けて話す。隔てなく何でもしゃべれる。隔てのないつきあい。 **おさななじみ【幼馴染み】** 幼なじみと結婚する。幼なじみの二人を添わせる。幼なじみを懐かしむような気持ち柴田泌。懐かしい故郷の幼友達。 **きゅうゆう【旧友】** 二十年ぶりに旧友と再会したような懐かしさ=飯田。旧友に会ったように嬉しがる"赤川。思いがけなく街角で旧友に会ったような懐かしさ藤本。旧友を頼って上京する。旧知の友に似た親愛の感情を抱く宮本部。故郷の庭で遊ぶ古い友を偲しのぶような懐かしさ=大岡。昔なじみに会えた喜び。昔なじみを懐かしむ。同郷の古い友人に出会う。 **こうゆう【交友】** 広く交友がある。交友関係が広い。名士と交友関係があることを誇示する=高橋光。交友範囲が(狭い。広い)。人も羨むばかりの交友ぶり。かやかな友人関係。友人関係を克明に洗う。 **したしい【親しい】** 親しい(気持ちから出た言葉。人たちが集まる。交わりを続ける)。格別親しい間柄。何のこだわりもない親しい笑顔。肉親のような親しい存在三浦綫。身内同士みたいな親しい気分!佐藤愛。近しい間柄。親しき仲にも礼儀あり。親しく(口を利き合う。交際する。言葉を交わす。指導を仰ぐ。行き来する者がほとんどいない。つき合っていた男)。父子が親しく語り合う。▼親しくなる(お互いに。急速に。だんだん。たちまちのうちに)。親しげな(口を利く。笑いを浮かべる)。親しげに(声をかける。肩を抱いて紹介する。名前を口にする)。客と親しげに言葉を交わす。十年の知己のように親しげに肩を叩く高見町。思いがけない親しさに感動する。親しさの底に零点一の余剰が細い亀裂を走らせている連城。水魚の交わりに入る。お安くない(仲。二人)。気持ちを近しくする。別惑になる。別懇の間柄。▼懇意にしている人(年来。平生)。懇意の(田柄。仲)。懇意な人たちが寄り合う。昵悪じいな関係。かねて昵懇の間柄。芸者と呪怨になる。親しくない(さほど。それほど。たいして)。親しくない間柄。格別懇意な間柄とは思えない。安易に他人と親しくしない。 **したしむ【親しむ】** ▼親しむ(花鳥風月に。故郷の土に。古典文学に。自然に。少時より学に。書画骨董にうに。幼児の頃から蛇に)。▼親しまれる(世人に。大衆に)。親しみが(恋らぐ。深まる。増す)。声に親しみがこめられる。旅は道づれといったような親しみがわく=白洲。親しみに満ちた(態度。微笑)。親しみの(感情をいだく。こもった笑顔。度が増す)。安心したような親しみの表情"藤枝。親しみのある(声。態度)。親しみやすい(デザイン。人間。文章)。弟の兄に対するような親しみをこめる=長与。懇意な家の門口のような親しみを感じさせる絵野上。親しみを覚える(過ぎ去った時代に。ごく近い親類の話をきくような=有吉)。款を通じる。厚誼を結ぶ。交情を(温める。深める)。親睦の実が挙がる。親睦を(図る。深める)。楽しい親和の心が流れる=中河。▼親和力(異性への。社会との)。よしみを(通じる。結ぶ)。親近感が(洒く。恋愛感情に移っていく=円地)。赤の他人とは思えない。 **しんあい【親愛】** 親愛の(感情をいだく。情に満ちる。念を込める)。親愛感をいだく。▼頬ずりする(赤ん坊に。顔を引き寄せ)。 **しんみつ【親密】** 親密な(問柄。関係を保つ。感情を抱く。友達。仲。友好関係。空気がすっぽりと取り囲む)。親密に交際する。二人の仲が親密になる。親密の度が日ごとに進む。水も漏らさぬ仲。 **しんゆう【親友】** ▼親友(無二の。心を割って語り合う真実の"美濃部)。親友の間柄。肝胆相照らす(仲。友情で結ばれる=船山)。十年の知己のような気安さで話しかける!なかにし。胸襟を開いて十年の知己のようになる=舟橋。親交を(深める。結ぶ)。水魚の交わりを(結ぶ。もって相許す仲"山岡)。▼友(無二の。終生変わらぬ心の)。気心のしれあった莫逆ぶくじの友。二人が百年の知己の如く酒を飲む=立原。百年の知己を得る。刎頸以の(友。交わり)。 **そえん【疎遠】** 疎遠な(間柄。感情を打ち破る)。▼疎遠になる(親子の仲が。実家と)。蔭で噂し合うほどの疎遂さ=里見。 **どうりょう【同僚】** 同僚と(仲がよい。不仲になる)。気楽な同僚との雑談。同僚に(足を引っぱられる。よい感情を持たれる)。同僚の(噂話をする。協力を仰ぐ。嫉妬を買う。出世をそねむ。気持ちを付度だいする)。同僚や下の者に受けがいい。気心の知れた同僚同士。気心の知れたチームメイト。▼同輩(学校の。職場の)。同輩の受けがいい。以前朋輩だった好誼なしから使わないわけにはいかない志賀。朋輩に馴染みが薄い。朋輩のよしみ。 <487> # 親しむ・馴れ合う-160 **ともだち【友達】** 友達(気の合う。気の置けない。仲のよい。挨拶を交わす程度の。兄弟も及ばぬと言われるほどに仲がよい。海音寺。言葉も要らないような三浦彩。本当に心を打ち明けられるいい=連城)。友達が偶然訪ねてくる。理解し合える友達が欲しい。友達と(仲たがいする。飲み明かす。見込んで頼む。お喋心『りに熱中する。肩を並べて歩く。共同でアバートを借りる。盛んに議論する)。友達に(ばったり会う。迷惑をかける。愛想尽かしをされる。打ち明け話をする。なれそうな気がする。一年ぶりに再会したような物の言い方=伊集院)。お友達になりたいようなとても楽しそうな人=内海。十年来の友達にしか見せないような屈託のない笑顔に小池。▼友達になる(すんなりと。太陽と)。友達の(間を聞いてまわる。生き方に口を挟む)。友達の家に(遊びに行く。泊まる)。友達を(自宅に招いてパーティーをする。頼って上京する)。気心の知れた人。友達のようななれなれしい口をきく島崎。友達のように平静な心持ちで気安く向かいあう大佛。昔からの友達のように振る舞う。百年からの友達みたいになる=田辺。友達がいない(同世代の。友達らしい)。親を友達扱いする。友達がいがいない。気の置けない飲み友達。週末にガールフレンドとデートする。戦友の(死を悼む。霊を慰める)。すぐに仲よしになる。悪友(二十年来の。昔からの)。悪友とつきあう。悪友との腐れ縁。▼友(百里遠来の。昨日の敵は今日の)。友と(するに足る男。酒をくみかわす)。花鳥風月を友とする。道すがら友と語る。宅もびしさを友としているような人"島崎。友に恵まれる。友の死を痛惜する。類は友を呼ぶ。生涯の友を失った悲しみ。逝く友を鎖魂する。▼ボーイフレンド(親しい。単なる。仲のよい)。ボーイフレンドが三日にあげず訪ねてくる。 **なかがいい【仲がいい」** ▼仲がいい(同僚と。人並み優れて田山)。仲が円満に治まる。兄弟のように仲がよい=人米。家族ぐるみで仲が良い。結構仲が良かった同級生。仲良く(遊ぶ。男女が生きる。腕を組んで歩く。肩を並べて笑う。連れ立って出かける)。絶対に仲良くなりたくない。仲良く暮らす(夫婦が。平和に。兄弟。隣同士。皆で)。夫婦の間が琴瑟い相和する。諸民族が協和する。▼仲(気心の知れた。気を許しあえる。三日にあげず訪ね合う“向田)。いちばん仲のよい友達、隣近所と仲良くする。敵に宥和ぅする。融和を仲立ちする。▼和合する(一家が。男女が。夫婦が)。和する(みんなが。人と)。 **なじみ【馴染み】** ▼馴染み(店の古い。昔からの)。染みの(客がつく。店に向かう)。お馴染みがつく。心の置けぬ顔ぶれ。古馴染みと旧交を温める。すっかり顔なじみになる。顔なじみの(間柄。集まり。客店)。町内顔なじみの連中。常連が(集まる。顔を揃える)。常連として遇する。常連になる(会の。店の)。常連の(客。執筆者)。 **なれあう【馴れ合う】** 現実の醜悪さに馴れ合う。馴れ合った(甘さ。男女)。与野党の馴れ合い。愛に馴れ合いが生じる。馴れ合いのお芝居。緊張を欠いた馴れ合いのいかがわしさ=池澤。馴れ合うような口調。なあなあで(処理する。済ませる。話を決める)。 **ひとなつこい【人懐こい】** 人なつこい(小さな動物を想像させる女"原田宗。どところのあるおとなしそうな男大佛)。人懐こい笑顔で語りかける。控えめで人懐こい微笑。人なつっこい誰とでもすぐうち融とける性格連城。明るく人なつっこい性格"松浦。親友を発見したような人なつっこい眼差し”林美。にっこりと人なつこく微笑をうかべる=山手。人懐こく話にのってくる。瞳が黒く人なつこく光る菊池。酔っているのではないかと訝いるような人なつこさ=原田宗。懷く(赤ん坊が。子供が。父親に。動物が飼い主に)。人なれした(烏から。猿。雀けず。野良猫)。 **みずいらず【水入らず】** 水入らず(親子。家族。夫婦)。水入らずで話す。夫人と二人きりの水入らずの生活。ほっとした水入らずの気持ちにくつろぐ=機。 **むつまじい【睦まじい】** ▼睦まじい(夫婦の仲が。人並み以上に。人目にも)。二人の睦まじい姿。睦まじく(遊ぶ。過ごした長の歳月)。形影相伴う。仲睦公分まじい(恋人同士。夫婦)。親子三人仲睦まじく暮らす。あつあつの仲。あつあつムードにひたる。 **ゆうこう【友好】** 友好の(架け橋。愉を広げる)。友好を結ぶ。友好関係を(築く。保つ)。友好親善を図る。友好的な雰囲気を演出する。友好的に振る舞う。会談が友好的に進む。親善使節を礼遇する。 **ゆうじょう【友情】** ▼友情(唇歯の。終生変わらない。明くる日にはもう憎しみに変わっているような脆弱いじな阿部。余人には真似まぁのできない大いなる若竹)。お互いの友情が手から手へ織りわたされるかのようにあやとりでむつまじく遊ぶ=中。友情に(厚い男。水をさす。あふれた真塾しんな耳打ち“大庭)。友倩に免じて(大目に見る。許す)。友償の(こもった言葉。輪が広がる)。友情は魂の共鳴のようなもの福永。友情を(肝に銘じる。大切にする)。友誼、に厚い人。友誼を結ぶ。 **ゆうじん【友人】** 友人(気の合う。ごく親しい。心を許せる。日頃親しくしている。兄たりがたく弟たりがたしという=山口。天にも地にもたった一人の江戸川)。久しぶりに学生時代の友人と会う。友人との心おきないつき合い。生涯の友人にめぐり逢う。懐かしい友人に再会する。友人の(死を悼む。つてをたどる。家に転がりこむ。警告を無関心に聞き流す松浦。言葉が砂に水がしみこむように受け入れられる若竹)。友人らしい友人を持ったことがない。船出する友人を岸壁で見送る=奥田。 <488> **きめこむ【決め込む】**▼決め込む(ずぼらを。高みの見物を。だんまりを。どろんを。ねこばばを。ふて寝を。ほおかぶりを。我関せずを。知らぬ顔の半兵衛を。のんべんだらりを)。ふりを決め込む(知らぬ。見て見ぬ)。 **こうい【行為】**▼行為(ごく自然な。ヒューマニズムに・不正な行為で金を手にする。自分の行為を正当化する。禁禁祓りの不埒ららな行い奥泉。日頃の行いに気をつける。分に過ぎた行いは自他ともにはなはだ迷惑なもの里見。平素の行いを洗い上げる。夫婦の行いを恥ずかしがる"壺井。よこしまな行ないをとがめる「野坂。武士として恥ずべき所業。恥多い所業をして恬てんとしている。空き巣の仕業のように見せかける。 **しかねない**▼しかねない(折あらば仕返しを。心配のあまり卒倒を)。揉もみ手さえしかねないほどの低姿勢=佐々木。切羽詰れば何をやりだすか分からない。何をするか分からない(頭にくると。かっとすると)。それくらいの芸当はやりかねない。 **したくない**したくない(邪魔を。話を。おおっぴらに。警察沙汰に。二度と。無益な人殺しは)。気が乗らないことおびただしい。勉強に気が乗らない。哦争はやりたくない。やる気が(失せる。ない)。▼気乗りがしない(最初から。さっぱり)。気乗りのしない(返事。口調であしらう)。 **じっこう【実行】**百の議論より一つの実行。実行が伴わなければ絵に描いた餅。実行の(鬼と化す。決心がなかなかつかない)。抜本策の実行を急ぐ。思いついたら即実行をモットーにする"軍司。▼実行する(命令を。約束を。時を移さず。白昼に堂々と。思いつきをすぐに。当初の計画をそのまま。興奮にかられるままに性急に!佐山)。知っていても実行できない忌々しさ=阿木。言いっ放しに終わらせない。挙行する(祭典を。式典を)。挙行を延期する。▼具体化する(話が。計画を。手段を)。▼講じる(十分な対策を。善後策を。あらゆる手段を)。法の施行を厳格にする。熱慮断行する。葬儀が盛大に執り行われる。決行の(時が来る。日を決める)。決行する(襲撃を。弾圧を。秘密裏に。雨天でも)。▼実行に移す(アイデアを。改革案を。考えを。計画を。対策を。腹案を)。▼手を打つ(次々と必要な。有効な。矢継ぎ早に。打てるだけの。思いきった。陰で着々と。第二段の。抜かりなく)。不言実行で事に当たる。不言実行の人物。不言実行をモットーにする。有言実行に徹する。有言実行の人。 **じっし【実施】**実施が(遅れる。棚上げになる)。▼実施に移す(あらかじめ組んでいた計画を。プロジェクトを。可能なものから)。▼実施する(温暖化対策を。調査を。試験的に。段階的に。一日も早く。特別取り締まりを。ワークシェアリングを)。▼施行する(憲政を。法律を)。 **じっせん【実践】**実践に(歩み入る。参加する。踏みこむ)。▼実践に移す(持論を。哲学を。理論を)。理論と実践の(統一。開き)。▼実践する(教えを。思想を。方針を。民主主義を。身をもって。新しい生き方を。少数精鋭主義に徹した経営を=梶尾)。実践的な(政治思想。哲学。論理)。 **しでかす【仕出かす】**ろくなことをしでかさない。しでかす(過ちを。しくじりを。失敗を。とんだことを。馬鹿な真似はねを。不始末を。へまを。間違いを。考えられないような失策を。とてつもないことを。とんでもないミスを)。何をしでかすか分からない。▼やらかす(大失敗を。とんだ不手際を。とんでもない失敗を。無鉄砲なことを)。 **してもらう**上司にミスの尻拭いをしてもらう重松。してもらいたい(大いに。必ず。ぜひとも)。▼してもらえない(ついぞ。なかなか)。▼やってもらう(代筆を。追い追い)。 **しない**しない(筋の曲がったことは。無駄なことは一切)。▼しなくなる(女遊びを。出入りを)。懐手をして見ている。指一本動かさない。予防策を何一つ講じない。自粛する(宴会を。喫煙を。取引を)。不履行(債務の。職務の)。契約不履行で訴える。▼やらない(絶対に。意地でも。身の丈に合わないことは)。拱手いは、傍観の躍やぁ。拱手傍観より他にすべがない。手をこまぬいて(見ている。黙認する。形勢を傍観する。じっとしている。見過ごすわけにはいかない)。手をつかねて(待つ。見ている。遠くから眺めているしかない藤沢)。手を束っかねたまま空しく我が子の死を見送る堂尾。指をくわえて(黙って死んでいく。引っこむ手はない。引っ込んでいる)。このまま指を銜〈ゃえているわけにはいかない!長野。 **しゅだん【手段】**▼手段(姑息に、な。最後の)。▼手段に訴える(非合法的。平和的。ありとあらゆる)。姑息な手段を考え出す。狡猾にっな手段を思いつく。取って置きの手段を使う。他に手段を思いつかない。いかなる手段をもってしても取り戻す=山田風。考え抜いた挙げ句この手段を採る=江戸川。▼手段を講じる(異例の。思い切った。然るべき)。▼手段を用いる(あらん限りの。考え得るあらゆる)。あらゆる手段を(試みる。動員する)。目的と手段を(取り迎える。履き違える)。打つ手が限られる。もう打つ手がない。打つ手を間違える。▼方便(嘘も。国会を乗り切るための)。媒体(音を伝える。広告の。情報伝達の。通信の。コミュニケーションの)。▼手段を選ばない(勝つためには。出世のためには=佐高)。手段を選ばずに手に入れ # <489> # 実行する―161 **しゅほう【手法】** 金権政治の手法にまみれる。人気取りの手法に惑わされる。手法の違いを指摘する。新しい手法を生み出す。絵画の手法を小説に導入する。流行している手法を無視する。 **そこう【素行】** 素行が(修まる。乱れている。悪い)。日頃の素行に旧題がある。素行の悪いことでは定評がある=石川。素行調査を興信所に依頼する=高杉。落ち着きのない性行。性行ともに不良。身持ちが(堅い。悪い)。身持ちの(治まらない夫。正しい人生。悪い女)。身を固めて更生する。品行が(修まる。よい。悪い)。真面目で品行方正な学生。 **てだて【手立て】** 手立てがない(有効な。引き止める)。逢い引きの手立てを決める。ありとあらゆる手立てを講じる。回避する手立てを怠る。定年後の手立てを考える。陋劣らな手立てを使う。▼手立てを尽くす(あらゆる。最善の。知る限りの)。 **とりおこなう【執り行う】** ▼執り行う(儀式を。祭事を。セレモニーを。葬儀を。ミサを)。執行する(刑を。公務を。祭事を。法律を。令状を)。 **なすがまま** なすがままに生きていく。黙ってなすがままにされる。されるがままに人形のように従う貫井。敵の空襲にされるがままになる。するがままに(させておく。任せる)。▼身を任せる(気まぐれに。空想に。快い疲れに。流れのままに。魂のなすがままに)。情熱の烈はげしさに身をまかせる=瀬戸内。 **ふさくい【不作為】** 不作為の責任を問われる。本来やるべきことをやらない。やればできるのにやらない。 **ぶらぶら** ぶらぶら道草を食う。ぶらぶらと(遊んで暮らす。時間をつぶす。無為に過ごす。無為にその日その日を過ごす=志賀)。昼日中からぶらぶらと遊んでいる。仕事をせずぶらぶらする。定職を持たずにぶらぶらしている。 **ほうほう【方法】** ▼方法(簡単な。手っ取り早い)。対応の方法がつかめない。他に助かる方法がない。他に方法がいくらもある。とるべき方法はたった一つ。方法を(具体的に教える。自分なりに考案する。念入りに尋ねる)。穏やかな方法を講じる。確実な方法を選ぶ・固有の方法を捨てる。最善の方法を見いだす。セールスの方法を教える。助かる方法を必死で考える。逃げ出す方法を考える。蛇のような狡猾にっさで巧みな方法を駆使する=遠藤。方法を考え出す(安全な。独創的な)。方法を探す(何らかの。他の)。▼方法を取る(二者択一の。回りくどい)。人生の方方途に迷う。人生の方途を決める。辞めるほかに手はない。いつもの伝で行く。その伝で言えば。古い方式が残る。一括方式で処理する。財政再建の方途を踏問する。 **むい【無為】** 無為という贅沢だいな時間の過ごし方有吉。無為な(時間が流れる。日々を送る。日を過ごす)。荒すんだ無為な生活。無為に(時間を費やす。月日を送る。過ぎ去った歳月。して閑ぃぇをむさぼる=梱)。一時間が無為に過ぎる。おめおめと無為に生き長らえる。数日を無為に過ごす。だらだらした時間を過ごす。なすこともなく暮らす。ころころ(だらしもなく寝そべる。のんびりと日を送る)。一日ごろごろ寝そべったまま。一日家でごろごろしている。酔生夢死を地で行く。便々と(日を送る。腰を落ち着ける)。無駄飯を食う。無為徒食の(生活。輩か)。無為無策に(終わる。座っているだけ)。何ら手を打たない。なす術すべを知らない。何らの方策をも持ち合わせていない。無策のまま試合に臨む。 **やってみる** ▼やってみる(実際に。実地に。試しに。一か八か。いろいろ。思いきって、片っ端から。伸るか反るか。やれるだけは。だまされたと思って)。当たって砕けろ。駄目でもともと。実際にやってみないと分からない。してみせる(あかんべえを。さも知っているかのような顔を)。運試しをしてみる。 **やりかた【やり方】** ▼やり方(感迎無礼ふんばんな。杓子定規しゃれな。緻密で巧妙な。場当たり的な。乱暴な。頭のいい。裏の裏を行く。旧態依然たる。常軌を逸した。人の裏をかく。あまりに残酷な。腫れものに触るような。不合理きわまりない。あまりと云ぃえば手前勝手な心なしの谷崎)。やり方が(汚い。古風にすぎる。あまりにあこぎ)。彼一流のやり方で楽しむ。強引なやり方で手に入れる。やり方に(口を挟む。けちをつける。好感を持つ。腹が立つ。悪意が感じられる。いちいち文句をつける)。こういうやり方は性分に合わない。大人たちのやり方を見習う。丸い卵も切りようで四角、ものも言いようで角が立つ=鮎川。さるで水をすくうような遣り口"林京。あまりにも馬鹿にしたやり口。物はやりよう。やりようでなんとかなる。やり口が(気に入らない。実に陰険。癒しょに障る)。非人道的遣り口を警告する=鈴木四。質問の仕方がまずい。絶妙な仕方で処理する。操作の仕方を理解する。困難全立場を容易な立場につくりかえる巧みな手法"石川。仕様書を(書く。作る。読む)。▼手口(巧妙な。単純な)。手口が(違う。似通っている)。いつも同じ手口で成功するとはかぎらない=開高。詐欺師の手口に気づく。 ▼やりまくる(思う存分。心行くまで。やってやってやりまくる)。▼しつくす(贅沢三味ぎふを。秘術のありったけを)。▼し通し(緊張の。心配の。はらはらの。貧乏の。最後の最後まで意地悪の"重松)。▼限りを尽くす(横暴の。残虐の。贅沢だいの。遊蕩いうの)。 **りゅうぎ【流儀】** 無法は無茶で叩き潰っぶすのが図書りゅうぎ隊の流儀「有川。相手の流儀に乗せられる。同じ流派に属する。一二つの流派に分かれる。流派の(家元。元祖。宗家)。 <490> # 失望する・憂鬱 **あんうつ【暗鬱】** 暗鬱な(穴の底に滑り落ちた頭ではんやり考える奥泉。焦慮が誰の胸にも巣食っている=檀。緑の波が重畳とうねる洋上=中野美)。北国の暗な冬空を織っている針葉樹林のように一行一行が意志を秘めて立っている文章の長部。物想いに沈んでいるような暗鬱な眼を外に向ける高見町。 **あんたん【暗澄】** 暗澹たる(冬の日本海。思いに襲われる。絶望的な気持ち。日々を鉄だぃの河原の石積みのように積み重ねる=島田)。前途暗澹たる状態が続く。一家が破滅する足音を聞いたような気がして暗澹たる思いにとらわれる=小林久。死刑の宣告に似た暗澹たる気持ち=辻仁。坐っているのさえ堪らないほど暗澹たる不安に浸る=久米。ややもすれば暗澹とした逆境に身を屈めてしまいそう~山崎。 **いんうつ【陰歴】** 陰鬱な(家の雰囲気。面持ちで物思いにふける。雲が垂れこめる。冬の気配が近付く)。物寂しい陰鬱な光景。一日中降りみ降らずみの陰鬱な天気が続く"永井路。細かな雨が降っている陰鬱な日=藤田。陰鬱に曇っていた空が晴れる=海音寺。海が陰鬱に黒く広がる。 **うちのめされる【打ちのめされる】** ▼打ちのめされる(完全に。残酷な事実に。精神的に。激しく。怒りと悲しみに。大きなショックに。現実の希望のなさに。氷雪まじりの強風に新田。暴漢の群れに無理無体に=高見順。矢つきばやに開かされたあまりに重い話に灰谷。声を立てることさえできないほど"大江)。一敗地にまみれる。地べたに打ちのめされたように感じる=小島。孤独に打ち負かされる。▼叩きのめされようもない惨めな敗北感にたたきのめされる"石坂。▼ぶちのめされる(失敗に。貧困に)。負ける(ぼろくそに。めためたに)。二度と立ち上がれないほどやっつけられる=瀬戸内。こてんばんに(打ち負かされる。負ける。やられる)。 **うちひしがれる【打ちひしがれる】** 打ちひしがれる(失望に。激しい苦悩に心が佐山。誰にともぶつけようのない怒りと後悔に=水上。飛べないむくどりのように大庭)。深い悲しみに打ちひしがれる。さびしさに打ちひしがれそうな旅の日々三浦し。顔を伏せたきりで口も利けないような打ちひしがれた姿石川。打ち沈む(悲しみに。暗く。寂しく)。 **うつうつ【僕歴】** ウツウツたる受験勉強の日々。飯田。うつうつと鬱々と(気分が滅入る。絶望に沈む。日を送る)。鬱々として気持ちが弾まない。▼鬱々とする(気を。悩みに)。気が結ばれる。ど懐が解ける。ぐ懐を漏らす。気分が下がりすぎて鬱に落ちこむ"加賀。鬱のどん底にある。鬱を(散じる。晴らす。紛らす)。晴れ晴れしない(気持ちが。心が)。 **うっくつ【鬱屈】** 鬱屈に鬱用を重ねる。鬱屈の霧がふっと晴れる=横山。薙ぎ払われぬ鬱屈の気持ちがこもる=檀。積もり積もった鬱屈を一挙に吹き払う。鬱屈する(感情が。気持ちが)。鬱屈した(怒り。日々。情熱を発散させる。感情を美の世界に解放する"本多秋。気分が一度に爆発する=日野)。鬱屈して悩のい月日を過ごす長塚。鬱悶いいが(消える。迫る)。 **うっとうしい【鬱陶しい】** うっとうしい(気分が胸を満たす。雲が晴れてゆく)。▼うっとうしい(干渉が。曇った空が。母の優しさが。煩わしさが。殺したいほど。顔を合わせるのが。毎日まとわりつかれて。頭に刺さって抜けない棘とげのように人倉橋。重いものを背負って歩いているように=石坂)。積み重なった鬱陶しい気分を払い棄てる=檀。降ったり止んだりの鬱陶しい天気!黒井。じとじとと鬱陶しい雨が降り続く船山。うっとうしいほど(木の葉が茂る。たくさんある)。花がうっとうしく頭上に咲き群がっている伊藤整。寿命が縮まるような鬱陶しさ徳田。鬱陶しさが煙みたいに明るい部分を埋めてしまう(富岡。 **がっかり** がっかり溜め息をつく。がっかりする(当てが外れて。見かけ倒しで。みじめなほど。気の毒なくらい)。見るからにがっかりした様子。がっかりして(帰っていく。声を落とす)。ひとくがっかりして悲しい気持ち。気落ちした気分が胸に広がる。▼気落ちする(寂しくなって。めっきり)。気落ちのあまり老い込んでしまう。げっそりとした口調。失意が口辺に漂う。すこすこと(家を出ていく。尻尾を巻いて引き返す。その場を退散する)。負け犬のようにすごすごと帰る=三田。力がない(声に。言葉に)。しおおせずに本意なく帰ってくる。本意なげにしおれる。 **きおも【気重】** 気重な表情。心づかいがいくぶん気重きおもに感じられる=高橋凉。気が沈む。晴れない(一向に屈託が。気分が。気持ちが。愁眉が)。晴れやらぬ愛問妙け。▼気が重い(いささか。どうにも。いざ口を開くとなると=荻野)。心の底に大きな錨いかがぶら下げられる気がする安岡。傷のついた荷物を負っているような気分に陥る=黒井。とっても持ち重りのする荷物を両肩にのせられたように感じる=高橋治。 **きたいはずれ【期待外れ】** 全くの期待外れに終わる。期待外れの(感がある。答弁。感がなきにしもあらず)。期待が失望に変わる。膨らんだ期待がしぼんでいく"高村惑。期待感が雲散霧消する。期待と現実の隔たりが大きすぎる。期待に(反する。水を差す。背負い投げをくわされる=有鳥)。かすかな期待も消し飛んだ。 **きぬけ【気抜け】** 気抜けがしたようにぽつねんと坐る(敵に。無惨に。世間の軽薄な評判に=山本周)。言いすぉっている八谷崎。気抜けするほどあっさりと頷いらな失望感。度々期待を裏切る。待ち人来たらず。 <491> # 失望する・憂鬱—162 **きだるい【気だるい】** けだるい(陽射しが降り注ぐ。雨がぽつりぽつり降ってくる=岡本)。体の節々がけだるい。午後のけだるい空気。目にけだるい光が淀む"吉村。けだるく(ぼんやりと過ごす。毛布にくるまる)。全身の力が脱けたようにけだるくさびしい岩尾。手足がいつでも眠れるというほど気怠砂だく鉛のよう長野。けだるげな足取りで歩く。抑揚のないけだるげな声。人間を眺めあきたような気だるげな目有局。けだるさ(なまぬるい風呂につかっているような小松太。蒸し風呂に入り過ぎたような=中島災)。熱を病む人のようにけだるさが全身にひろがる=庄野。心地よいけだるさが全身に広がる三田。けだるいような幸福感"柴田翔。四月初めの気だるいような日射し藤沢。気解けたいような憂鬱な春森境。 **きょだつ【虚脱】** 虚脱から立ち直る。虚脱の海にいる"辺見。茫然むらとした虚脱の状態。虚脱したように力なく首を振る=笹沢。顔に虚脱したような安堵とんのいろが浮かぶ藤沢。▼虚脱感(淫蕩いにふけった朝のような加賀。力を使い果たすほどの努力がまったくの徒労だったという激しい"飯田)。虚脱感が全身に広がる。怒りと虚脱感とがない交ぜになる=さだ。暗く重い虚脱感に沈む。強い虚脱感にさいなまれる。 **くじける【挫ける】** ▼挫ける(学業の志が。気力が。決意が。高慢が。心が。士気が。信仰が。戦意が。もろくも腰が。勇気が)。心が折れる。毒気を抜かれる。はなはだしく気勢をそがれる。▼屈する(外圧に。時勢の圧力に。過酷な責め苦に)。▼沮喪行くする(意気が。士気が。精神が)。へこたれる(失敗して。途中で)。 **けんたい【倦怠】** 倦意が(意識に眠りのような幕を掛ける=夏目。苔こけのように生える=瀬戸内)。夫婦生活に倦怠が忍びこむ。疲労と倦怠が雪曇りの空のようなどんよりとした影を落とす芥川。慣らされた倦怠感に身を置く=松本。倦怠の色が全身を薄雲のようにつつむ光洒。ぐったりした倦怠の気分が漂う。底知れぬ倦怠の中に沈みこむ"江戸川。動くのも喋るのも考えることさえ物愛い倦怠感"黒岩。倦怠感が(襲ってくる。漂う。むっくり遂目を持ち上げる=有吉)。体を倦怠感が覆う。倦怠期にさしかかる。 **しつい【失意】** 失意が胸を重くする。失意から立ち直る。失意と心労のあまり気持ちがおかしくなる"阿刀田。悲痛と失意とに職やまきながらひとりとぼとぼと校門を出る久米。索漠とした失意におちる。失意の(淵に沈む。どん底に突き落とす。中で息を潜める)。失意のあまり愛人の後を追って死ぬ=光原。 **しつぼう【失望】** ▼失望(何にも癒されがたい。大きくふくらんだ風船をバチンと割ってしまったような"向田)。失望が憎悪に変わる。声に失望がにじむ。目に失望が宿る。甘美な失望がゆるい調子の音楽のように揺れつづける=中村真。期待の熱いかたまりが胸のなかで融とけ苦い失望がじくじく躰炒」をひたす大江。失望に(襲われる。沈みこむ)。深い失望に捉えられる。失望の(感は否めない。色が顔に染み出す“加賀)。露骨に失望の声を響かせる。表情を失望の色が覆う森村。失望を(隠さずに言う。通り越して悲しくなる=松岡)。多少の失望を覚える。▼失望する(現実に。前途に。多分に仲人口で結婚後"円地。身も世もないように菊池)。青い鳥、逃げた荻野。心が風船のように姿しにむ阿川弘。失望感が心の底に沈む。胸に苦い失望感が広がる=横山。 **しょげる** ▼しょげる(意気地なく。見てても気の毒なくらいすっかり遠藤)。それまではしゃいでいた気持ちがすうっと垂直に落下する=飯田。しょげ返って(家路につく。しぼむ)。蹴合わせに負けた鶏のようにしょげきる菊池。落胆して飯も食べたくないほどしょげこむ木山。はたで見ていてもかわいそうなほどの落ちこみよう=つか。立ち上がれないほど落ち込む村上龍。しょぼしょぼとしおたれた。「しおたれる(暑さに。悪口を言われて)。仕事でミスをしてしゅんとする。しゅんとなって聞いている。身投げをして危うく引きずりあげられたかのようにひどくしょぼたれる=里見。亡者が墓から出てきたばかりのようにしょんぼり土の上にションボリ坐すゃっている=坂口。しょんぼりと(肩をすぼめる。腰を下ろす。背を丸める。雨の中を歩いて去る"松本)。心が夜露に濡れたようにしょんぼりとなる"壺井。路上にしょんぼりと立ちつくす=伊藤怒。片翅以松がもがれたようにしょんぼりする萩原葉。痛々しいほどにしょんぼりしている=加賀。しおしおと後に従う。頭を垂れてしおしおと立ち去る。肩を落とす(失敗に。がっくりと。しょんぼりと。力なく。身も世もないといったふうに=向田)。暑さによどみがっくり肩を落とした木造の家並み=安部。肩を落として(うなだれる。力ない足取り。しょんほりとつぶやく。部屋を出て行く"三好能)。悄然此,と(たたずむ。出て行く。引き返す)。▼悄然とする(痛ましいほど。肩を落として。刈られた草のごとく“長塚。びしょ濡れの犬のごとく=武田祭)。 **ぜつぼう【絶望】** 絶望(心の奥底にひそむやりきれない=光瀬。人生に対する深い=阿木。臓腑に、を抜かれたような"大岡。身の置き場もないような森瑶)。絶望がひしひしと迫ってくる。鉛のような絶望が胸を圧す=国木田。激しい悪寒に似た絶望が全身を襲う中村貞、絶望が心を(冷たくする。だんだん蚕食する)。胸が不安と絶望で黒々と塗りつぶされる=小林久。絶望的なものが心を羽交ぃがい締めにする=井上焼。絶望と(恐怖におののく。悔しさで眼が呟くらむ森瑙。闘いつつ日を送る=池波)。底知れぬ絶望と懊悩!長与。脳裏に絶望という二文字が浮かぶ鈴木光。絶望に(屈辱の感じが混じる。打ちひしがれた陰気な眼つき=大庭。目の前が暗くなる栗本)。驚きというより絶望に近い。悲しみと絶望に耐える。言いようのない絶望に胸をさいなまれる=福水。しびれるような絶望に陥ぉちこむ檀。深い絶望に裏打ちされた言葉"貫井。眼の前が真っ暗になるほどの絶望に襲われる=杉本。絶望の(鐘が鳴り響く。沼にひたる。どん底に突き落とされる。淵にずるずると引き込まれる。あまり死にたくなる=赤瀬川。壁に突き当たったような声の落とし方新田)。顔を絶望の色で閉ざす。苦悩と絶望の日々を送る。底なしの絶望の闇。表情に絶望の色が現れる。悲しみと絶望の嵐が吹き抜けていく内館。声に絶望の深い谷がのぞく=隆。絶望を静かな締めへと変える=小池。断崖に直面したような絶望を感じる"山本周。心が絶望に(おちる。引き裂かれる)。胸に絶望が(居座る。宿る)。▼絶望する(愛の破局に。悩みの深さに。痩せた土地に。死人のごとく。措置の手ぬるさに"津本。女が人前で裸にされて凌辱いはらされる破目に陥ちたときのように大佛)。絶望しきる(へソの奥まで。言葉が喉から浮かび上がりえないほど無気力に『大江)。絶望して死を選ぶ。将来に絶望して自暴自棄になる。朝の日差しが墨色に見える黒井。暗黒に放り出された気分=伊坂。一瞬目の前に黒い幕が降ろされたように小林久。先に希望がない。希望の糸が断たれる=火坂。顔から希望の色が蒸発していく伊坂。希望を真っ向から叩きつぶされる=川端。希望を失う(前途に。生きる)。希望を失って雨の中を彷徨泊りする=山手。心が体の内の深いところにずり落ちる=野間。先のない暗い身の上。視界が真っ黒に塗りつぶされていくのを感じる"小林久。世界中が目を閉じ耳をふさぐ安部。前途は闇暗で一点の光明も認められない二葉亭。居場に北に向かう小羊のよう阿刀田。奈落の底へ落ち込むよう福氷。にわかに深淵んに落ちてさまよう思い=坂口。生きる望みがない。生きる望みを失う。一切の望みが消える。一縷いちの望みを絶たれる=笹沢。望みを捨てる。この世に望みを絶つ。灰色と黒の翳りのある暗澹たる天地がどこまでも続いているような風景を彷徨うする=藤本。目の先が真っ暗になっていくよう。有吉。目の前に黒い霞がかかったよう曽野。目の前を蒼褪絡ぉめた馬がのろのろと歩いて通り過ぎる!島尾。希望のない日々を送る。▼希望もない(この世に何の。 <492> # 絶絶 **ぜつぼうかん【絶望感】** ▼絶望感(大きな壁にぶち当たったような藤本。全身の力が抜けていくような"栗本)。絶望感が(胸をふさぐ。狂暴に駆りたてる。暗雲のように範囲を広げていく笹沢。黒ぐろと胸を塗りつぶす=小林久)。切羽詰まった絶望感が爆発的な殺意に変わる=笹沢。怒りが絶望感に変わる。ぞっとするような絶望感に全身を冒される"貫井。足許協しが崩れ落ちるような絶望感を味わう源氏。もはや絶望的と言わざるを得ない。絶的な(結果に終わる。吐息をつく。哀願を繰り返す。思いが胸を焦がす。声を張り上げて暴れる。孤独感に襲われる。寂寥せりに打たれる。立場に追い込まれる。微笑を浮かべた悲しそうな表情。瞳で周囲を見回す。苛立尬。たしさに落ちてゆく舟橋)。前途に絶望的なものが横たわる。暗流結んたる絶望的な気持ちに陥る菊池。座芥箱にこの中そのままの留置場が絶望的な気持ちを二乗にも三乗にも暗くする=小林多。進退に窮する絶望的な位置に立たされる高橋相。喉を振り絞る絶望的な声"山本周。胸に絶望的な想像が湧く勝目。絶望的な気分に(陥る。浸る)。絶望的になってがっくりする。事態がいよいよ絶望的になってくる=小松左。 **だつりょく【脱力」** 脱力感に襲われる。▼力が抜ける(体から徐々に。声から。ほっとして体中の)。体の力がすっっと抜ける。力が手足から抜けてしまってしびれたようにぐったりとなる鳥尾。へたへたと力が抜けて夜具の上に坐り込む今日。あやつり人形が人形師の手を離れたように身体中の力が抜けて行く"山田太。体中の力が抜けてゆくような安心感。原田爽。力が抜け落ちる(全身から。指の先から)。力の抜けて行くような小さい声=壺井。肩の力が抜け落ち体が床の上に溶けそう高樹。足の力が抜け落ちて骨のないタコの足のようになる萩原葉。 **ひょうしぬけ【拍子抜け】** おやおやと拍子抜けになる芝木。拍子抜けを通り越して腹が立つ=重松。あんまりあっさりしていて拍子抜けする。拍子抜けするほど(あっさりとうなずく。あっさり認める=小林久)。拍子抜けした(顔。気分。声)。 **ふさぎこむ【逃ぎ込む】** ▼ふさぎ込む(手のつけられないほど。割りきれない思いのまま。肉親に死なれたように森村)。ご結が(散らない。解けない。晴れる)。胸に鬱結した疑団が幾らもある=二葉亭。気鬱症に黙りこんでふさいでいる。胸を塞ふきがれるような事件竹西。不安が胸をふさぐ。ふさぎの虫が(動き出す。巣食う)。ふさぎの虫に取りつかれる。ふさぎの虫を追い払う。 **へなへな** 不意にへなへなっと気持ちが崩れる。へなへなと(力が抜ける。膝をつく。床に座り込む。椅子から崩れ落ちる。力尽きたように腰を下ろす)。足もとから疲労がどっと押し寄せてきてへなへなと腰を落とす=阿刀田。 <493> # 失望する・憂鬱—162 **むきりょく【無気力】** 無気力が部屋に淀む。無気力な(烏合の衆。生活を続ける。気持ちに鞭打沁ちつ)。その日その日を無気力な倦怠け以で送る。無気力に弾力なくぺこべこ凹む=幸田文。何をする気も起きない。原稿を読む意欲が湧かない=横山。生きる意欲を失う。気力が考える。気力が失せる(逆らう。盾突く。物を言う)。気力に欠ける。気力の(衰えが目立つ。つきたような笑い方)。▼首を振る(力なく。弱々しく)。▼覇気がない(声に。目に)。瞬気のない返事。張り合いが抜ける。張り合いのない(暮らし。話)。張り合いを(失う。なくす)。気持ちに張りがない。心の張りが失せる。商売に張りがなくなる。やる気のない職場。やる気をなくしてふて寝する。とかくやる気を失いがち。▼気力がない(親の勧めに抵抗する=阿川佐。心の支えがガタンと取り去られたように=加賀)。▶気力もない(口を利く。声を出す。答える。叱る。食べる。ものを考える)。▼気力を失う(生きていく。戦う。反論する)。反撥にする気力を失って呆けたような笑いで応じる高井。生きる気力をなくす。仕事に立ち向かう気力を失くす内館。 **めいる【滅入る】** 滅入る(どうしようもなく。物悲しいほどの寂しさに=長与)。気分が沈みかけた秋の日曜のように陰ったりめいったりする有鳥。身も心も滅入ってくる。地面に足が重くめりこむ思い三浦し。人の気持ちを滅入らせるような口数の少なさ藤沢。気持ちが滅入るような寒い日=軍司。気のめいるような雨の音=堀。ひどく荒涼として気のめいるような場所稲永。思い屈した心を慰める=井伏。思い屈する日々が続く。将来のことを考えると気鬱になる。気鬱の日には最適の仕事~林京。沈齢そのものの顔つき。沈鬱な空気が漂う。心が沈態になる。病人相手の辛気臭い仕事落合。茶目っ気や甘えのない辛気臭さ=辻井。 **めげる** めげる(気持ちが。暑さに。逆境に。困難な情勢に。寒さに。失敗に)。ともすればめげそうになる。雨にも風にもめげずにやって来る。逆境にめげずに努力する。めげない(長い籠城にも。いびつな家庭にも。困難な立場に立っても決して=山本周)。苦境にめげない勇猛心。なかなかめげない強さがある。 **ものうい【物愛い】** 物愛い(疲れの影。春の街)。蜜蜂の羽音のようにものうい福永。蠅はぇのものうい翅音に阿部。倦意以の物愛い気分。顔に物憂い翳かげが流れる=新田。音が物愛く響く。心身が物愛く麻痺まぃする。生きることが物愛くなるという風な力が抜けてしまうような虚さ=阿川弘。物憂げな(歌声が流れる。視線を海に投げる。表情を浮かべる)。雨が板屋根に単調でもの憂げな音を立てる=遠藤。どんよりとした物憂げな瞳。投げ出すようなひどく物憂げな声"小林久。物憂げに(窓の外を見る。ちらっと目を上げる)。のそりと物憂げに体を動かす。海がものうげに針のように光る=遠藤。悲しい歌を物憂げに口ずさむ柴田錬。感覚的にしびれるような物愛さ"有局。眠い小禽にとのふくれた羽毛のように朝のものうさの抜け切らない若い妻の表情永井能。 **やりきれない** やりきれない(悲しさが漂う。心の中の矛盾。不眠をかこつ。負い目が頭をもたげる。高樹。気まずい食い違いの感情大江)。▼やりきれない(疲しくて。退屈で)。何ともやりきれない気持ちでいっぱい。やりきれないほど体を持て余す。やり場のない腹立たしいやりきれなさが心を石のように重く硬くする=飯田。 **やるせない** やるせない(寂しい気分。憤懣転んと悲しみ。性欲を持て余す)。ふうっとやるせない息を吐く。やるせない思いが(胸を走る。煮えくりかえる)。やるせないほど不安。やるせのない(憤り。悲しさ。寂しさ)。やるせなく(乾いた倦怠け。胸にこたえる。味わう。感じる)。悲しみがやるせなく湧きたつ。身も細る思い。 **ゆううつ【憂鬱】** 憂鬱が少しずつ薄らいでゆく=佐藤老。一抹の憂鬱が顔面に漂う今死。不安と憂鬱が胸に澱ょとむ松浦。憂鬱な(日々を送る。思いにとらわれる。感傷に満たされる。気分が胸に広がる。苦悩を表情に見せる。影が頬のあたりに漂う野間)。焦慮と疲労とが堪えがたいほど彼女を憂鬱にする=南条。憂鬱になる(次第に。考えただけで。自分の犯した失策に。油の切れかかった暗いランブのように壺井)。憂鬱の(種が増える。腐蝕いしに耐える)。廿世紀がんの憂鬱を独りで背負っているみたいな顔小沼。浮かない顔をする。愛色に閉ざされる。身の置き所もないような憂鬱さ=瀬戸内。見るからに憂鬱そうな表情。憂懿そうに眉根を寄せる。目が憂諺そうにどんよりとしている。心が(いっこうに弾まない安部。真っ黒い泥濘砂砂につぶされる=松本)。ブルーな(一日。気分)。 **らくたん【落胆】** 孫悟空が億千万里を飛行したつもりでやはり仏の掌中にあったと同じ驚きと落胆「獅子。落胆が(大きい。はた目にもむごくてたまらないほど宮尾)。驚きと落胆が心を襲う。顔を落胆の色が覆う。隠しても隠しきれない落胆の色がある。朝野に落胆の声が広まる。目に落胆の色が濃くにじみ出る。落胆を通り越して感心する=光原。▼落胆する(己の無力さに。失敗に。掌中の珠たまを失ったように水井荷。その場にへたり込みそうなほど=原田宗。身を切るように菊池)。落胆する気力もない。落胆ぶりが殊の外甚だしい。がっくり首をうなだれる。心がくずおれる。肩の力が抜け落ちる。全身からがっくりと力が抜ける。意気消沈する(思わぬ大敗に。絶望と苛立心もちとで)。意気消沈して(うじうじする。うつむいて歩く)。幻滅に襲われる。幻滅の(悲哀に浸る。愉の中に沈みこむ)。苦い幻滅の底に落ち込む中局放。幻滅を味わう。 <494> # 死ぬ・殺す **あのよへいく【あの世へ行く】** あの世で静かに眠る。館を枕にあの世に旅立つ=住井。あの世の人となる。あの世へ魂を持ち去る。新しき鬼と化して消えて行く=武田泰。不帰の(客となる。人となる)。永遠に帰らぬ旅に出る"西木。十字を切って従容しいうと神の国〈急ぐ菊池。鬼籍に入る。鬼籍の人となる。母親は極楽浄土で偷たのしくやっている藤本。安らかに極楽浄土へ向かう。この世におさらばする。もはやこの世にいない。この世の人ではなくなる。この世を辞する。確かな足跡を大地に残しこの世を去る=石坂。魂醜にんとなってまた故山に遭うぃ子母沢。三途の川で待つ。三途柊んの川の(瀬踏み。渡し銭だという六文銭)。三途の川を渡る。死界に落ちる。祖父を死界に送る。地獄に落ちる。死出の旅に出る。人が昇天する。泉下に去る。次の世へ移る。永遠に手の届かないところへ行ってしまう火坂。天国にのぼる。天国へ旅立つ。天上へ上る。天に(去る。昇る)。魂が天に帰る。彼岸に旅立つ。死んだ妻を追い求めて冥界灬に下る鈴木光。冥土からのお迎えが来る。冥土に(行く。堕ちちる。旅立つ)。冥府に落ちる。魂が冥府に帰る。幽鬼となる。幽明(境を異にする。遥けくへだつ)。黄泉路にょへ旅立つ。黄泉はみの世界への入り口。世を去る(煙のごとく静かに=中局收。容態が急変して"村上元)。霊界に入る。草葉の陰から見守る。草葉の陰で(泣いている。さぞ嬉しかろう)。泉下でお祈りする。神に召される。天国に召される。天に召される。 **あんさつ【暗殺】** 暗殺が未遂に終わる。暗殺という暴挙に出る。暗殺する(指導者を。政治家を)。寝込みを襲われて暗殺される。刺客を放って殺す。殺人の技術を失った暗殺者は死んだ鼠砂ずよりも始末が悪い!藤本。要人を謀殺する。 **いきたえる【息絶える】** ▼息絶える(白目を剣いて。血塗れになって。眠っているような表情で"深沢)。すでに息がない。息の根が止まるように苦しい。▼息を引き取る(眠るように。家族に見守られて。枯れた花が落ちるようにあっけなく平岩)。静かに息を引き取る。すでに息を引き取って久しい篠田。 **いたい【道体】** 遺体が(火葬場に運ばれて茶見だがに付される。司法解剖に付される)。遺体に向かって頭を垂れる。遺体の(傍らに寄り添う。前で泣き明かす。身元が確認される)。遺体を(遺族に返す。棺桶跡がに移す。棺ごっに納める。霊安室に移す。解剖に提供する。寝所に安置する。ドライアイスで冷やす。ばらばらにして山奥に捨てる=村山)。北枕の床を作って遺体を寝かせる。遺体収容作業が始まる。遺体発見の報に接する。遺骸に手を合わせる。亡父の遺族にとりついて愁暎に沈む=舟橋。遺骸を墓地に葬る。 **うえじに【飢え死に」** 飢え死にを免れる。飢饉に。で飢え死にする。▼死ぬ(一家が飢えて。栄養失調で。骨と皮みたいになって=勝目)。食うものも食えずに死んでいく。餓死(同然に死ぬ。寸前まで追いこまれる)。餓死に直面する。餓死を免れる。飢饉で餓死する。餓死者が(大量に出る。路傍に絶えない)。 **うちころす【撃ち殺す】** ▼撃ち殺す(犬を。狼を。男を。熊を。鹿を)。獲物を射倒す。射止める(獲物を。獣を)。一発で敵を撃ち止める。一般市民を射殺する。 **おうし【横死】** 横死を遂げる。非楽に(死ぬ。斃たおれる)。非業の(最期を遂げる。死を遂げる)。事故で不慮の死を遂げる若竹。 **おうじょう【往生】** 安らかに往生する。遂げる(往生成仏を。極楽往生を。穏やかな往生を。ぼっくりと安楽往生を。眠るがごとき大往生を今日)。苦痛のない安楽往生。往生成仏を期する。▼大往生(頹齢の。家内の人たちを成談させたほど立派な=菊池)。 **かくし【客死】** 客死の報を聞く。出張先の韓国で客死を遂げる。旅先で客死する。異郷の鬼となる。異境に死ぬ。骨を異境の土に埋める。旅先で急死する。 **ぎゃくさつ【虐殺】** 虐殺に手を貸す。無ぶとこの民衆の虐殺に憤激する。言うにも忍びない無感心な仕方で一人残らず虐殺される荻原则。大量に虐殺する。▼殺し方(残虐な。冷酷な。むごたらしい)。残忍きわまる手段で殺す。 **きゅうし【急死】** 夫の急死に衝撃を受ける。急死の報を聞き茫灰自失にいざんする。父親が急死する。▼急逝する(心臓麻痺まぃで、任期満了直前に。母親が思いがけなく)。ばったり倒れてそれっきり。発糸はんが切れたみたいに死ぬ=川崎。欲情の犠牲になったかのようにあっけなく死ぬ"阿部。ある日ぼっくりと逝ってしきう。急逝の知らせを聞く。ほとんど即死の状態。他界する(にわかに。ぼっくりと)。四十歳の若さで順死する。急性肺炎にかかってあっという間に亡くなる=新田。 **きりころす【斬り殺す】** 一刀の下に斬り殺す。▼斬り伏せる(敵兵を。一刀の下に。あっという間に)。▼斬殺する(叮人を。浪士を)。 **ごくし【獄死】** 戦犯として捕まり獄死する。獄中で(憤死する。ひっそりと息を引き取る)。▼死ぬ(獄中に。刑務所で。牢で)。 **こじん【故人】** 故人に対する追慕の情。故人の(遺志をこじん継ぐ。霊を弔う。菩提心だを丁重に弔う)。父の遺志に従う。亡き(人を懐かしむ。夫の面影を偲しのぶ。母の思い出にひたる)。 **ころされる【殺される】** ▼殺される(口封じのためころされるに。なまじ手向かいすれば。暴徒の手によって。寄ってたかって。害虫のように無残に"大沢。すさまじい銃撃戦の末に=船戸。ほぼろ居くずのように安部)。人が殺される瞬間を目撃する"小林久。機銃掃射に会い犬の子のように死ぬ=中上。凶弾に倒れる。凶弾を胸に受ける。忻り刻まれて膾松まのようになる。刺客に襲われて斬死する。銃殺隊の前に立たされる。全身血達磨砂式のようになって絶息する"船山。血の復讐ふしを受ける。敵の刃にかかる。テロリストの凶手にかかる。毒刃にかかって倒れる。怨霊が私を取り殺そうとする。殺されるような羽目になる。名も知れぬ無頼ともに斬り殺される=池波。▼取り殺される(生き霊に。怨霊に。死霊に)。▼当たって死ぬ(弾に。流れ弾に)。戦争で命を落とす。理不尽に命を奪われる。▼撃たれて死ぬ(拳銃で胸を。ピストルで)。▼凶刃に倒れる(ならず者の。暴徒の)。凶刃の餌食となる。殺害される(妻が。武装勢力に。故なく)。▼惨殺される(肉親を。騒だまし討ちに遭って)。▼死ぬ(矢を受けて。口や鼻をふさがれて。血だらけになって。寝首を掻かれて。鈍器で頭蓋骨を割られて味。なますのように斬り刻まれて=多岐川)。死亡する(銃撃され。爆撃により)。凶徒の手にかかって最期を遂げる。敵の手にかかって死ぬ。人手にかかって亡きものにされる。広島において原爆のため没する。▼やられる(後ろからばっさりと袈裟けさがけに。全くぶざまにぐさりと)。通り魔に襲われ落空する。 <495> # 死ぬ・殺す―163 **ころしや【殺し屋】** 冷酷な殺し屋。殺し屋を(差し向ける。雇う)。殺し屋稼業から足を洗う。刺客を(差し向ける。放つ)。 **ころす【殺す】** 殺す(罪もない者を。一撃のもとに。事故を装って。冷酷な手口で。角を締めて牛を。無抵抗の住民を。過失致死に偽装して。自殺に見せかけて)。やむを得ず殺す羽目になる。殺すに忍びない。感情を殺した顔。声を殺してひそひそとさざめく。明け暮れ殺し合いが絶えない。人と人とが殺し合う。あの世に追いやる。あの世へ一緒に連れて行く"高橋克。あの世へ送る。一撃で引導を渡す熊熊合。▼奪う(一命を。人の命を)。永遠に眠らせる。体を蜂の巣にする。この世から消す。刺し違えて死ぬ。死の国に送り込む。証人を消す。生命を断つ。手を血に染める。ナイフで生命の灯を消す大敵。寝首を掻ぉく。一命を申し受ける。飼い主を噛み殺す。食い殺す(鼠砂を。蛇を)。他人を呪い殺す。▼樑き殺す(犬を。猫を)。虫を焼き殺す。人を殺ぁゃめる。息の根を(断つ。止める)。命を頂戴戍に、うする。一思いに命をとる。生命を奪い去る。▼口を封じる(永遠に。殺して)。▼殺害する(罪のない人を。計画的に)。噴霧器で殺虫剤を散布する。▶欲しぃする(王を。君王を)。地獄に(送る。直行させる)。▼仕留める(悪党を。狩人が獲物を、熊を。一発で。最初の一撃で)。▼血祭りにあげる(悪党を。敵を)。▼手にかける(店の者を。娘を。容赦なしに)。最後のとどめの刃。とどめを刺すように言う。とどめを刺す(ナイフで。眉間に一発撃ちこみ=大鮫)。亡き者にする。▼葬る(命を闇に。闇から闇へと生命を)。▼居にふる(半を。生命を)。人間を抹殺する。全軍を刃にかける。殺ゃる(親分を。人を)。▼殺傷する(市民を。民間人を。無事もこの人々を)。殺傷沙汰を嫌う。絞め殺す(ネクタイで。紐ひもで。両手で)。首を絞めて殺す。荘厳な場所を殺生どうしで冒徴にぐする山本周。無益な殺生を重ねる。生き物を殺生する。▼なぶり殺しにする(敵を。娘を)。なぶり殺しの目に遭わせる。 **さいご【最期】** 最期の力を絞って絶叫する=中島敦。苦しげに最期の息を吐き出す。人生の最期の瞬間。息子が最期を看取みとる。▼最期を遂げる(哀れな。悲惨な。あえない。壮烈なる。無念の。敵の手にかかって)。 **さしころす【刺し殺す】** ▼刺し殺す(短刀で。ナイフで。包丁で)。刺殺する(男を。女を)。突き殺す(一突きに。刀で。槍ゃりで)。 **さつい【殺意】** 殺意が(朝の海風のように胸を吹き抜ける三島。風船がしぼむようにどこかへ消え去る=景山)。むらむらと殺意がこみあげてくる。殺意にかりたてられる。殺意に変わる(怒りと憎悪が。切羽詰まった絶望感が爆発的な"笹沢)。怒りを殺意にまで凝固させるい光原。殺意の炎を双峰時に燃やす柴田剣。殺意を財布のように胸のボケットに隠す―鳥田。夫に殺意を抱く=池澤。殺したいような憎悪を感じる=阴高。殺してしまいたいほど憎む"黒墨有。 **さつじん【殺人】** ▼殺人(事故を装った。交通事故に見せかけた)。殺人の(疑いをかける。挙に出る。疑いで逮捕する。実行者に仕立てる)。殺人罪で起訴される。殺人容疑がかかる。▶惨劇(核兵器による。血なまぐさい。血塗られた。手のつけられない)。からみつくような舌で惨劇のしだいを物語る岸田。一家を惨殺する。唾棄すべき人殺し。人殺しの疑いをかけられる。人を殺して逐電する。人を殺す(世評が。金のために。逆上して。見境もなく。虫けらのように多岐川)。▼殺人事件(汚職にからむ。おぞましい。ミステリアスな。三角関係を巡る)。殺人事件の可能性が高い。まかり間違えば殺人事件の参考人として追及されかねない!内田恵。自殺を他殺に見せかける。他殺の疑いが濃厚になる。他殺を事故死と誤判する。 **し【死】** 死が(訪れる。唐突にやって来る。足から忍び寄ってくるかのようにしきりと足を寂しがる=川端。兇暴な力をふるいながら嵐のように通り去る=野問。はい上ってきているように膝から下が妙に冷たい!安部。やおら物憂げな腰を上げてそろそろと近寄ってくる!有島)。安寧に満ちた死が待ち受ける=奥泉。死と官能の快楽は隣りあわせに寝ている=中野美。死に(至る。至る病。赴く。連なる悪夢。向かう。向かって一歩一歩進む)。正面から死に向かい合う。従容と死に就く。すすんで死に応じる。死の(影が忍び寄る。淵に導かれる。門をくぐる。恐怖に苛ぃまれる。国に連れ去られる。報がもたらされる。涙が常に羽ばたいてやまない=福永。手に進んで身をまかせる斎藤栄)。昏々にんと死の眠りにつく=遠藤。腹立たしく絶望的に重苦しい死のイメージに圧倒される"大江。人は皆、死の影の谷を歩いている=福永。骨の髄からにじみ出てくるような死の恐怖が心を占める=勝目。死は一切を暴力的に断ち切ってしまう三好徹。だらだらとなしくずしで死へ向かう瀬戸内。死への首途砂とを待つ。死を(もって諫ぃさめる。恐れる心がきざす。見ること鴻毛に行のごとし。冷静に受け入れる。待つさわやかな気持ちに吉川)。座って死を待つ。ねじれた関係が死を引き起こす。人の死を間近に見る。不幸な死を遂げる。安らかに死を受け入れる。花が散るような死を望む=西木。死を迎える(自然な。生涯に悔いなくおだやか介瀬戸内)。死をも怖れないほどの境地へまで駆り立ててゆくふしぎな情熱三島。会議場が死のように凍りつく光派。組織が壊死する。死去の(悲報が届く。報に接する)。 <496> # し **しがい【死骸】** ▼死骸(魚のように無表情な"川端。綿屑や炊のようにころがる=阿部)。死骸が(累々と横たわる。土を捏ねて造った人形のようにころころ床の上にころがっている=芥川。柔らかい作りかけの粘土細工のように生々しい=長野)。何千という将兵の死骸が折り重なる=舟橋。累々たる死骸の山。黒焦げの死骸はどこにさわってもぽろぽろと毀こもれる灰の人形"川端。死骸を橋の下に投げ捨てる。蜘蛛くもの巣にぶらさがった蝶の死骸のように外形だけ保って血も実体も失う遠藤。屍乩跡となって横たわる。屍を八つ裂きにする。尻が重なり合って山をなす。屍と化す。屍の山を築く。累々屍の間を踏み分けてゆくような動乱の中の旅檀。その場に屍を晒さらす。死屍しし累々たる職場。 **しき【死期】** 死期が(迫る。近づく)。死期の近いことを(覚悟する。知る)。死期を(悟る。迎える)。死に時が近づく。死に時を(得る。間違える)。 **しご【死後】** 死後(八時間を経る。かなり時間がたつ。百年を記念する。もてはやされる)。死後に(期待をかける。汚名をこうむる)。醜名を死後に残す。没後四十年を記念する。 **じこし【事故死】** 不慮の事故死を遂げる。両親を事故で亡くす。不慮の事故で亡くなる。事故に遭って命を落とす。飛行機事故で死去する。事故で死人が出る。▶死ぬ(雷に打たれて。交通事故で。打ちどころが悪くて。雪崩に巻き込まれて。落盤に潰っょされて)。岩から足を滑らせて転落死する。爆発事故で落命する。 **じさつ「自殺】** 自殺(覚悟の上の。生活苦による)。自殺が未遂に終わる。自殺の(道を選ぶ。理由に心当たりがない)。▼自殺を図る(発作的に。入水北。焼身。前途を悲観して常盤)。▼自殺する(後を追って。遺書を残して。思い余って。株で失敗して。傷心のあまり。赤を使って。いじめに負けて。ショックのあまり。世をはかなんで)。▼苦に自殺する(借金を。不治の病を)。命を絶つ(自らの手で。首を括って自ら熊谷)。首吊りを図る。自裁を試みる。死ぬ(赤をあおって。舌を噛み切って自ら。梁はりに祀をかけて首を吊って"松本)。自分で自分の(命を絶つ。始末をつける)。自分で自分を裁く。自分の人生を絶つ。▼果てる(自裁して。手首を切って。猛火の中へ身を投じて=山岡)。自ら生命いのを縮める森村。自ら首をくくる。世をはかなんで死ぬ。連鎖自殺を食い止める。▼自決する(いさぎよく。責任を感じて)。舌の根を噛み切る。▼死を選ぶ(衝動的に。一思いに。深く。絶望して。自ら)。死んで詫びる。懐剣で自害をする。村上元。▼自害する(責めを負って。喉を小刀で突いて)。自害して果てる。責任を問われて自刃する白洲。自刃して見事な最期を遂げる船山。一と思いに自刃してこの世を去る=舟橋。 **ししゃ【死者】** かなりの死者が出るのは覚悟の上小林信。死者と生者が交感しあう。死者に(まつわる記憶。むちうつ行為)。死者の(名を騙かたる。思いを代弁する)。墓に眠る死者たち。北枕に寝せる。死屍ししに鞭打汀ちつ。両軍に多数の死傷者が出る。死ぬ者に思を施す。遠からず死人が出る。死人そのままにぐったりと両眼を閉じ観念する=池波。死人に口なしみたいな故人の回想『丸谷。死人の手がまだ冷え果てないままに生き物と明らかに違うゼラチンのような冷たさにしだれる=円地。死人のごとく絶望する=幸田露。ひどい窭ゃっれようで死人のような顔~高見明。死人のように(青ざめた顔。蒼ぁぉさめた老人)。顔が死人のように青ざめる=浅田。ぐったりと死人のようになる渡辺。夜が死人のように静まりかえる=志賀。煙草の吸い殻が死体のように積み重ねられる=林送。死体発見の報が入る。映画で見るゾンビのように目を開いているのに何も見ていない宮部。 **ししゅう【死臭】** うっすらと死臭が漂う。川岸に死臭が漂うほど死体がどんどん流れてくる本多豚。むかつくような死臭があたりを覆う~村上奈。強烈な死臭を漂わせる。吐き気を催させるほどの屍肉しにの腐臭"大庭。家の放つ死臭のようなものが鼻を打つ荻野。 **したい【死体】** 死体(白骨化した。目や鼻から一筋二したい筋血の流れている凄惨な"灰谷)。死体が(地面に転がっている。全身丸太のように硬直する=海音寺)。川に死体が揚がる。死体が横たわる(点々と。累々と)。死体に取りすがって泣く。死体の(始末に困る。処置に困る。解剖に同意する。腐爛ふらが激しい)。死体を(庭に埋める。川に投げ捨てる。車ごと海に沈める。ドライアイスで冷やす。秘密裡2012に処理する。茫蒸んと打ち眺める。見たショックで気絶する。前にして途方に暮れる横山)。筵ひしで死体を覆う。霊安室に死体を収容する。オフェリヤのように流れ泛うかんでいる姿が眼に浮かぶ檀。死体のように(動かない。静か)。 <497> # 死ぬ・殺す―163 **しなない【死なない】** そう簡単には死なない。死なずに帰る。死ぬ(決心がつかずぐずぐずする。つもりなど毛頭ない)。まだまだ死ぬわけにいかない。死ぬに死ねない。そうやすやす死ねるか。死の誘惑に負けない。致死量より控えめに飲む。▼死を免れる(奇跡的に。間一髪のところで)。このままでは死んでも死にきれない。死にきれずにひくひくと脚を動かす。死な。ゆめゆめむざむざと死ぬんじゃないぞ=飯田。ねば(元も子もない。何もかも終わり)。死んで花実が咲くものか。 **しにいそぐ【死に急ぐ】** 薬らしい楽ものまずに死に急ぐ=梶井。人生死に急ぐことはない。いたずらに死を急ぐ。死に急ぎは勇士のすべきことではない=山本周。 **しにがお【死に顔】** 「死に顔(褥礼とに包まれて眠る幼児のように安らかな=高橋和。人々を寄せつけないように整った辻井。開きかかった薔薇ばらのような笑みが唇の上に開きかかっている=佐藤系)。死に顔に(化粧を施す。白い布をかぶせる=柴田錬)。デスマスクを思わせる生気を失った顔「勝目。暗緑色で描かれた油絵の死面のように神経を引きつらせて振り向く"徳永。 **しにかた【死に方】** ろくな死に方はしない。死に方をする(可哀そうな。痛烈な。悲惨な。不幸な。惨めな。あっけない。みっともない。世に恥じぬ)。死にざま(無惨な。味気ない。見苦しい)。死にざまをきれいに飾る。 **しにがみ【死神】** 死神が(家の入り口に陣取る。手に持つ鎌のような細い月=なかにし)。死神に取りつかれる。 **しにぎわ【死に際】** 男は死に際と死に方で値打ちが決まる=藤本。死に際に残した言葉の意味を悟る=宮部。びくっと動いてから硬直して行く死に際の両足"川端。死に際をきれいにする。一期の時。死に臨む。死に花を咲かせる。死に水を取る。死ぬ間際。親の死に目に会えない。往生際をきれいにする。最後の最後まで迷惑と心配をかけどおし=重松。死の瀬戸際まで追いつめられる。死の間際にすべてを打ち明ける。散りぎわが深い。散りぎわを飾る。せっかくの散りきわを汚くする。末期にっの時が近づく。末期の水を(汲くむ。取る。飲む)。命終いようの(期にに臨む。ときが迫る)。いまわの際に聞かされる。今際かまのきわに妄想を描く=阿刀田。いまわの際の知らせ。 **しにしょうぞく【死装束】** 死装束に改める。死装束を着ける。着物を左前に着る。古い壁にビラが白々と死の装束に似て貼りついている―武田泰。経惟子さにらかを(着る。縫う)。死衣を纏ぇとう。 **しにそう【死にそう腹が減って死にそう。** 死にそうな悲鳴をあげる。犬が舌を出して死にそうに息を喘ぁえぐに大佛。今にも死にそうにすくみ上がる!佐山。今にも死にそうな(青白い顔。息をする)。息絶え絶えの状態。息も絶え絶えに体を横たえる。いつ死んでもおかしくない。今日明日の命。命が終わりに近い。糸巻の糸がだんだん減って行くように生命の糸を繰り出し今終わりに近づく壺井。今にも絶え入るかと思うばかり~山岡。お迎えを待つばかり。顔にありありと死相が浮く池波。棺桶跡がに片足突っ込んだ年寄り篠田。片足を棺桶に突っ込んでいる=鈴木光。墓に片足を突っ込む。最期が近くなる。▼死が迫っている(問近に。明日にも)。死期が近い。死期を前に控える。死相が現れる。死にかかる(池にはまって。くたくたで。事故に遭って)。▼死にかける(白石が大量に。災難にあって)。死に際しても従容しいぅとしている。死に直面する。間もなく死ぬ。危うく死ぬところだった。死ぬのは時間の問題。死ぬ日が近い。死の(一歩手前。瞬間が近づく。床に横たわる)。死の影がさす。迫りくる死を予感する。生か死かのはざまに置かれる。もはや命は旦夕炊込に迫っている今日。日一日と死相が濃くなる。もはや長くはないらしい。幽明の境にいる。余命いくばくもない。体が腐れ死にそうに疲れきる=船戸。気息充々ふぇたる(状態。姿)。無理な反撥水と自然な羞恥心しいらが混淆に永して仮死しているような肉体円地。仮死状態に陥る。瀕死いんの(重傷を負う。病人。病に陥る。苦しみにもがく)。スチームのバイブが源死の気管のように不規則に喘ぐ=日野。死に瀕して苦しむ。虫の息で生きている。師匠は虫の息で医者からも見放される=水上。虫の息の重病人。 **しにたい【死にたい】** 恥じて舌でも噛んで死にたい=倉橋。死にたいと口癖のように呟く=遠藤。死にたいほど恥ずかしい三房。絶望のあまり死にたくなる赤瀬川。死にたくなるほどの悔いを残す飯田。まだまだ死にたくない=小池。心底から死にたくないと思う。 **しにどころ【死に所】** 死に所を(得る。捜し歩く)。刑しにどころ務所に死に所を求める。死に場所を(捜し歩いている宿なし女のようにぶらぶらする=徳田。求めて山中を彷徨じょう熊谷)。自分の死に場所を決める。 **しぬ「死ぬ】** 死ぬ(気で頑張る。前に一目会いたい)。▼死ぬ(失意のうちに。不遇のうちに。諫ぃさめるように。に。恨みをのんで。家族を残して。怪我がもとで。煙に巻かれて。後事を託して。妻の腹の上で。長い貧乏暮らしのあげくに。暴れるだけ暴れて。息を詰まらして。おびただしい血を失って。この世に思いを残して。信ずるところに従って。妻に見守られながら。天寿をまっとうして。にっこり笑って。死ぬべきときには潔く新田。錦鯉ぶしきがつぎつぎに腹を返して三浦哲。ふっと糸が切れるように=井上ひ。本の山に埋もれて干刈。虫喰いの枯れ木が倒れるように水上。もういいわとも早過ぎるとも決めかねる微妙な年齢で=黒井。蝋燭そらの火の尽きるようにして司馬)。人門は遅かれ早かれ死ぬもの=高田。死して(名を残す。栄あり)。死なばもろとも。死ぬ死ぬっていう人に死んだためしはない佐藤愛。死んでいる(とうの昔に。雪を血に染めて藤木)。節に死する。「死ねる(安心して。後顧の憂いなく)。生きて戻ることはない。一巻の終わり。一生を閉じる。短い一生を終わる。▼いとまを告げる(世間に。永の)。艦と運命を共にする。永遠に口を閉ざす大藪。永遠の眠りにつく。お隠れになる。お迎えが来る。生涯の終幕がおりる。顔の上に白い布が掛けられる=福水。完全に事切れている。感電死する。▼消える(星が消えるように命が柴田翔。眼の光が永遠に灰谷。道のべの草の露と白洲)。火の消えるように死ぬ!今日。北枕に寝かせる。死んだ人を北枕にする。享年(八十歳。八十)。巨星墜ょつ。裏罫けの太い黒線が氏名の横に引かれる=林京。黒枠の写真。骨強的に収まる。この世から(去る。姿を消す)。今生の(別れを告げる。いとま乞いをする)。辞世の(句。和歌)。真実を告げる口を失うぃ半村。人生が完結する。人生にビリオドを打つ森村。人生の(終為しゅう。旅を終える。日没。終わりを迎える。収支決算がつく)。人生を終える。心臓が止まる。生が乾いた砂のようにすくい上げる手の指の間から流れ落ちる柴田翔。無限の静寂が来る。蘇生の見込みがない。灰となり座らに帰る福永。ついに眼を開かない。土に還る。永の別れを告げる。人間をやめる日を迎える"高村茂。墓の下に眠っている。この地で静かに眠る。墓場に行く。離れ小鳥の藻屑もくとなっていたずらに朽ち果てる!白洲。空しく墳墓の草となる。仏になる。骨を埋める(故山に。辺土に)。身に間違いがある。脈が(上がる。止まる)。無言の帰還。命数が尽きる。命脈が(絶たれる。尽きる)。生あるものは必ず滅する。死んだように(ぐっすり眠る。ぐったりと横たわる!池澤)。死んだような静寂に包まれる=立原。安楽死を選ぶ。一命を(失う。落とす)。命が(絶える。尽きる。失くなる。果てる)。一瞬にして五百二十人の命が散る=横山。命の火を消す。命を(失う。捨てる。散らす。なくす。全うする)。自分の命を粗末にする。▶永眠する(この地に。薬石効なく)。帰らぬ人となる。先代の藩主が発じる。寿命が(尽きる。最後の炎を燃やし尽くす"飯田)。永い生涯に終止符を打つ=里見。生涯の(終幕が降りる。幕を閉じる)。静かに枯るるがごとくひそかに平和に自己の生涯を終わる=阿川弘。七十八歳でその生涯を閉じる=山岡。▼生涯を終える(幸福な。満ち足りた)。逝去の報に接する。生命の(営みを終わる。炎が燃えつきる)。生を(終える。全うする)。▼絶命する(頭を削られて。もんどり打って。声をあげる間もなく熊谷)。朽ち木の倒れるような艶たぉれ方。枕を並べて斃れ伏す。▼他界する(心を残しながら。両親が相次いで)。爆死を遂げる。▼物故する(逆境のうちに。六十七歳を一期ごちとして)。▼崩御する(皇后が。天皇が)。もがき苦しんだ果ての悶死ん。命を落とす(交通事故で。レースで。流れ矢に当たって)。一瞬にして生命少のを落とす白洲。 <498> に巻かれて。後事を託して。妻の腹の上で。長い貧乏暮らしのあげくに。暴れるだけ暴れて。息を詰まらして。おびただしい血を失って。この世に思いを残して。信ずるところに従って。妻に見守られながら。天寿をまっとうして。にっこり笑って。死ぬべきときには潔く新田。錦鯉ぶしきがつぎつぎに腹を返して三浦哲。ふっと糸が切れるように=井上ひ。本の山に埋もれて干刈。虫喰いの枯れ木が倒れるように水上。もういいわとも早過ぎるとも決めかねる微妙な年齢で=黒井。蝋燭そらの火の尽きるようにして司馬)。人門は遅かれ早かれ死ぬもの=高田。死して(名を残す。栄あり)。死なばもろとも。死ぬ死ぬっていう人に死んだためしはない佐藤愛。死んでいる(とうの昔に。雪を血に染めて藤木)。節に死する。「死ねる(安心して。後顧の憂いなく)。生きて戻ることはない。一巻の終わり。一生を閉じる。短い一生を終わる。▼いとまを告げる(世間に。永の)。艦と運命を共にする。永遠に口を閉ざす大藪。永遠の眠りにつく。お隠れになる。お迎えが来る。生涯の終幕がおりる。顔の上に白い布が掛けられる=福水。完全に事切れている。感電死する。▼消える(星が消えるように命が柴田翔。眼の光が永遠に灰谷。道のべの草の露と白洲)。火の消えるように死ぬ!今日。北枕に寝かせる。死んだ人を北枕にする。享年(八十歳。八十)。巨星墜ょつ。裏罫けの太い黒線が氏名の横に引かれる=林京。黒枠の写真。骨強的に収まる。この世から(去る。姿を消す)。今生の(別れを告げる。いとま乞いをする)。辞世の(句。和歌)。真実を告げる口を失うぃ半村。人生が完結する。人生にビリオドを打つ森村。人生の(終為しゅう。旅を終える。日没。終わりを迎える。収支決算がつく)。人生を終える。心臓が止まる。生が乾いた砂のようにすくい上げる手の指の間から流れ落ちる柴田翔。無限の静寂が来る。蘇生の見込みがない。灰となり座らに帰る福永。ついに眼を開かない。土に還る。永の別れを告げる。人間をやめる日を迎える"高村茂。墓の下に眠っている。この地で静かに眠る。墓場に行く。離れ小鳥の藻屑もくとなっていたずらに朽ち果てる!白洲。空しく墳墓の草となる。仏になる。骨を埋める(故山に。辺土に)。身に間違いがある。脈が(上がる。止まる)。無言の帰還。命数が尽きる。命脈が(絶たれる。尽きる)。生あるものは必ず滅する。死んだように(ぐっすり眠る。ぐったりと横たわる!池澤)。死んだような静寂に包まれる=立原。安楽死を選ぶ。一命を(失う。落とす)。命が(絶える。尽きる。失くなる。果てる)。一瞬にして五百二十人の命が散る=横山。命の火を消す。命を(失う。捨てる。散らす。なくす。全うする)。自分の命を粗末にする。▶永眠する(この地に。薬石効なく)。帰らぬ人となる。先代の藩主が発じる。寿命が(尽きる。最後の炎を燃やし尽くす"飯田)。永い生涯に終止符を打つ=里見。生涯の(終幕が降りる。幕を閉じる)。静かに枯るるがごとくひそかに平和に自己の生涯を終わる=阿川弘。七十八歳でその生涯を閉じる=山岡。▼生涯を終える(幸福な。満ち足りた)。逝去の報に接する。生命の(営みを終わる。炎が燃えつきる)。生を(終える。全うする)。▼絶命する(頭を削られて。もんどり打って。声をあげる間もなく熊谷)。朽ち木の倒れるような艶たぉれ方。枕を並べて斃れ伏す。▼他界する(心を残しながら。両親が相次いで)。爆死を遂げる。▼物故する(逆境のうちに。六十七歳を一期ごちとして)。▼崩御する(皇后が。天皇が)。もがき苦しんだ果ての悶ん。命を落とす(交通事故で。レースで。流れ矢に当たって)。一瞬にして生命少のを落とす白洲。 **じゅんし【殉死】**▼殉死する(臣下が。主君に。亡君の後を慕い)。追い腹を切る。後を追って死ぬ。殉職した警官。ダムの建設中に殉職した人々を劍魂する=池井戸。殉職者を追悼する。栄光ある殉教を遂げる=遠藤。殉教者の血が流れる。▼殉じる(国家の急に。残酷な運命に。殿様の死に。理想と夢に。命を捨てて)。義に殉じる烈々たる壮志。節に殉じて忠死する。 **しょうどく【消毒】**▼消毒する(傷口を。調理場を。治療器具を。煮沸して)。臭がひんまがりそうに強烈な消毒具=中島み。殺菌する(加熱して。紫外線で。煮沸して。日光で。薬剤で)。虫干しする(衣類を。古書を)。滅菌する(ガーゼを。器具を)。 **しんじゅう【心中】**かりそめに恋にのぼせ上がり酒に酔ったような状態でやってしまうような甘ったれた心中大佛。心中に見せかけて殺す。娘を心中の道連れにする"宮部。心中をはかって未遂に終わる。三途学んの川を手に手をとって渡る=北原。橋の上から親子ともに投身したいような情けない気持ち=小島。一家心中を(はかる。しようとまで思い詰める=宮部)。無理心中する(思い余って。生活に困り)。無理心中を遂げる。情死を謀る。 **しんでいく【死んで行く」**死んでいく(たった一人で。無名のまま。誰にも知られずに。絶えず生まれては。ひっそりと消えるように"西木。幽鬼のようになって渡辺)。蠟燭そらの火が消えるように寂しく死んで行くに有吉。死んで行く人のように目をつぶる=大佛。 **すいし【水死】**水死する(溺れて。ボートから落ちて)。深みにはまって溺死する。溺死体が岸にあがる。水死体となって発見される。上衣が水死人のように半ば浮き半ば沈みつつ川に流れている=小島。肥ふとりすぎて水死人のように青くふくれた顔"安岡。土左衛門が上がる。 **せっぷく【切腹】**▼切腹する(いさぎよく。正しい作僕によって舟橋)。切腹して(お詫びしたい。責めを負う)。見事に切腹して果てる。やにわに軍刀を抜いて # 熟す・老いる <499> # 死ぬ・殺す―163 **せんし【戦死】** 戦死の知らせが届く。▼戦死を遂げる(壮烈な。悲壮な。名誉の)。将兵が戦死する。戦に死ぬ。合凧で斬り死にする。職場で(命を落とす。敵の矢玉に当たって死ぬ)。職場に散る。戦闘で多数が死傷する。討ち死にする気は毛頭ない。壮絶な討ち死にを遂げる。▼討ち死にする(城を枕に。武運つたなく。武遅めでたく)。 **たたきころす【叩き殺す」** ▼叩き殺す(ごきぶりを。蠅ぃぇを)。人間が虱礼。より無造作にたたき殺される=小林多。鈍器で滅多打ちにする。人を殴り殺す。撲殺する(棍棒で。鈍器で。バットで。ハンマーで)。 **だんまつま【断末魔】** 断末魔の(苦しみにもだえる。叫びが耳を驊ぅぅする宮部)。嵐のような断末魔の叫び"筒井。おびただしい断末魔の悲鳴が耳につきささる=真継。血みどろになって狂いまわる断末魔の光景"江戸川。面貌に断末魔の相を刻む!柴田級。断末魔のような意識のふマス=高橋和。 **どくさつ【毒殺】** ▼毒殺する(夫を。嵐ゆずを。ひそかに)。毒液を注射する。毒を一服盛る。 **なくなる【亡くなる】** ▼亡くなる(薬石効なく。交通事故で突然)。先月亡くなったばかり。亡くす(借しい男を。最愛の人を。早くに両親を。父を心臓発作で。両親を相次いで)。▼みまかる(女王が。老母が。眠るように。秋風よりもはかなく=福永)。 **のたれじに【野垂れ死に】** 野垂れ死にを覚悟する。行路死亡人が出る。放浪を続けて犬のように死ぬ大庭。行き倒れになる(路傍に。病気で)。行路病者のようなぶざまな最期水上。 **はんごろし【半殺し】** 生かさず殺さずの半殺し。半殺しにしてしまうほど叩きのめす。半殺しの目に遭う。生殺しの目に巡わせる。蛇の生殺しの状態。半死半生の(大事故に遭う。思いをしてたどり着く)。殴る蹴るで半死半生の目に遭わせる。ひどい熱病にかかって半死半生のめにあう。平岩。 **ひっさつ【必殺】** 必殺の攻撃法を編み出す。一射必殺のひっさつ射程距惟。必殺技を(繰り出す。警戒する。身につける)。 **びょうし【病死】** ▼病死する(功業半ばで。成功に至らないうちに。両親が相次いで)。▼世を去る(病気のために。病で)。逝く(風邪をこじらせてあっけなく。脳溢血27げかでぼっくり)。▼死ぬ(脳がんで。熱病で。脳出血であっけなく。病気にかかって。病魔に憑っかれて。ぼっくり心臓麻痺まぃで)。疾病で死亡する。▶亡くなる(長患いの末に。急病にかかって)。病気で(死ぬ。亡くなる)。病人が(息を引き取る。お陀仏がぶになる)。病を得て(急死する。逝く)。 **へんし【変死】** 変死を遂げる。次々と変死する。死を遂げる(奇怪な。不審な)。変死体が発見される。不自然な死に方をする。 **ミイラ** 訪れる者のない客問が埃にこを唯一の友として部屋のミイラと化している=荻野。ミイラの目玉のように干からびる=小川。ひからびたミイラのような老人赤川。ミイラのように老兵たちが穴掘りを始める=木山。 **みなげ【身投げ】** ▼身投げする(海に。川に。断崖から。ビルの屋上から)。入水北灬して果てる。飛び込んで自殺する(滝に。電車に)。▼死ぬ(海に飛び込んで。川に身を投げて。マンションの屋上からダイブして=横山)。橋の上から投身する。後追いの投身をする三好微。湖に身を沈める。身を投じる(荒海に。海に)。滝に身を投げて死ぬ。▼身を投げる(海に。湖水に。湖に。大川へ。船から)。 **みなごろし【皆殺し】** 一同皆殺しの憂き目にあう。▶皆殺しにする(一家を。家族を。逆らう者を)。一族が赤子に至るまで処刑される―あさの。一族悉ごとく除される隆。一兵たりとも生きては逃さない。▼殲滅する(残党を。敵を。犯罪組織を)。殺戮が繰り広げられる。殺戮から殺戮への流転を辿たどる=山岡。無差別に殺戮を繰り返す。無挙もこの民衆を殺戮する。 **もんし【悶死】** ▼悶死する(十字架上に。怒りのあまり。絶望の中で)。すさまじい形相で空をつかみのたうちまわって死ぬ"真継。顔をしかめて苦しそうに息絶える。死に顔が苦しそうな表情でこわばる。苦悶とともに絶命する。怒りのあまり憤死する。憤死せんばかりの険相。 **やけしぬ【焼け死ぬ】** 焼け死ぬ(手が。鶏が。人が。火事で。逃げ遅れて)。炎々たる猛火の中へ身を躍らせ亡き数に入っていった山岡。火に巻かれる。自ら火中に投じて果てていく=山岡。死ぬ(黒焦げになって。火だるまになって)。失火による焼死。▼焼死する(家畜が。人が。火災で。逃げ遅れて)。 **りんじゅう【臨終】** 朝露の消えるようなはかない臨終山本周。臨終に(円に合わない。際して遺言を口にする)。親の臨終に駆けつけるように気色ばむ"山崎。臨終の(時が迫る。床にある。看取ぃとりをする。瞬間までをきっちり見届ける。床に立ち会うような敬虔妙な表情安部)。臨終を迎える。 **わかじに【若死に】** 若死にが惜しまれてならない。若死にした友人の面影を記憶に蘇松ふらす=高井。亡くなる(若くして病で。あえなく二十二歳で)。寿命が短い。▼この世を去る(若くして。二十一歳の若さで)。短い生涯を閉じる。早世した(詩人。天才画家)。短命の首相が続く。年若くして死ぬ。あまりに早い死。あつけなく早死にする。二十歳で夭逝むらした天才。十一歳を一期ごぅとして夭折虹、うする。天才の夭折を惜しむ。若くして唐突に逝ってしまう。 <500> # 支配する・統治する **いせいしゃ【為政者】** ▼為政者(聡明な。独善的な)。為政者に盾を突く。鼎跡なの軽重を問われる立場に立つ。 **おう【王】** 王の(食事を毒味する。崩御を発表する)。歴代の王の墳墓。王を武力で追放する。随喜して王を迎える。王侯貴族になったような優雅な顔で待つ=平岩。王侯のような扱いを受ける"西木。喜劇の王様。楽々♪♪しい王子。白馬に乗った王子様。王女に生まれる。国王が退位する。国王に(謁見する。即位する。退位を迫る)。皇帝の座を追われる。新君王に即位する。帝位を(禅譲する。継ぐ)。有徳の者に帝位を譲る。王位に(即っく。直る)。王位を(奪う。継承する。禅譲する)。男に君臨する女王様。女王様のように悠然と現れる=源氏。夢の国の女王のごとく牡丹心たが咲く中。女の子が小さな女王のようにちやほやされる=円地。男性にかしずかれて奴隷を従えた女王のように振る舞う瀬戸内。 **おうこく【王国】** 王国(神の。自由の。野生の)。王国が崩壊する。王国を築く。王朝的な唯美精神。王朝を(興す。倒す)。王制が崩壊する。王制を(敷く。廃止する)。帝国が(没落する。滅びる。滅亡する)。強大な帝国が出現する。 **おさめる【治める】** ▼治める(家を。国を。民を。天下を)。自治的に運営する。大学の自治を(守る。擁護する)。▼統御する(全軍を。日本全体を)。 **ぎょうせい【行政】** 縦割り行政に陥る。行政の(怠慢を摘発する。行き過ぎを摘発する。態度を厳しい目で監視する=畑村)。政務を(漑る。分掌する)。 **くんしゅ【君主】** 君主(英邁玆いな。専横な。暴戾心の)。君主の座を継ぐ。君主を欲しぃする。名君と謳うたわれた人物。名君の誉れが高い。英明關達は2つな領主。一国の領主になる。領王の支配が及ぶ。 **けんりょく【権力】** 権力が目に見えるかたちで民の前に立ちはだかる=高田。強圧的な権力がヘドが出るほど嫌い!泉優。権力の(威を借りる。衣をまとう。座を争う。亡者。奸計以にあずかる)。武力による権力の獲得。権力の座に(就く。異常なまでの執着を示す)。権力を(笠に着る。 ほしいままにする)。全知全能の神の如き権力を与えられる=なかにし。秩序なるものの維持を至上命令と心得る権力側の思い入れ"玉村。権力志向に(陥る。乏しい)。権力者に(付き従う。へつらう)。みみっちい権力欲を持つ男小林信。公権力の介入を招く。国家権力を(解体する。掌握する。総動員する。奪取する)。▼権能(談会の。国会の)。天下の権を取る。国権の(発動たる戦争。最高機関たる国会)。実権を子供に譲る。軍事の実権を掌中に帰する。主権侵害を非難する。将軍の絶大な信任をバックに専権をほしいままにする。竹内。覇権を争う。掘る)。酒を争う。列強が渦を競う。強権で抑え込む。強権を振るう。横暴な強権政治。 **こくせい【国政】** 国政に(意を注ぐ。関与する。参与すこくせいる。容除於心する)。国政の重要課題として位置づける。国政を民主的に改革する。国政革新を合言葉にする。国の政治に携わる。国務に励む。国家の発給に参加する。内政に干渉する。他国の内政に不干渉。 **しはい【支配】** ▼支配(帝国主義の。独占資本の)。支配から(脱却する。抜け出す)。风民族の支配に抵抗する。支配の(くびきから解放される。埒外に置かれる)。異民族の支配を受ける。中央政府の支配を離れる。支配する(恐れが全身を。金がすべてを。少数が多数を。先入観が心を。沈黙が場内を。七つの海を。波の音が闇を。妄想が頭を。闇が夜を。律法が人々を。暴力的に。使命感が胸中を。澱ょとんだ空気が部屋を。諦めの感情が胸を!遠藤)。▼支配される(外的条件に。純粋な情欲に。法則に。深刻な無力感に。神秘的な気分に。無意識の願望に)。大国の言語支配を排する=佐高。支配権を(争う。獲得する。行使する)。支配者に面従腹背する。支配者の地位に就く。支配的な(意見。考え)。反対する意見が支配的になる。▼君臨する(夢の世界に。帝王として。強大な権力をもって)。従える(将軍が諸侯を。周囲の小さな組を)。制海権を(施保する。握る)。制空権を(確保する。失う)。強者が弱者を併吞、心する。一派を(暗黒街を。会社を。組合を)。牛耳を(執る。握る)。支配下に(置く。入る)。旗下に(集まる。列する)。占領下に置く。占領軍が駐屯する。手の内に収める。 **しゅしょう【首相】** 首相が(交代する。辞任する)。首相から圧力がかかる。首相に(ふさわしい人。清潔な人物を望む)。首相の(座に就く。椅子からおろされる。椅子を手に入れる)。一国の宰相。宰相の(権を執る。地位に上る)。内閣の首班に指名する。総理大臣を務める。総理の(座を争う。椅子にかじりつく)。 **しゅちょう【首長】** 地方自治体の首長。国家の元首。地元の名士然とした村長。次期町長を狙う。市長に陳情する。市長の椅子に座り続ける。市長選に(立候補する。名乗りをあげる)。知事に再送される。知事選に(打って出る。出馬する。名乗りをあげる)。 **せいきょく【政局】** 政局が(安定する。一挙に動く。混迷する)。政局に(翻弄される。臨機応変に対応する)。政局の行方が不透明になる。政情が(安定する。流動的で不安定)。政情不安が続く。 **せいけん【政権】** 国民の支持に裏打ちされた政権。政権が(安定する。交代する。風前の灯火に。。崩壊する。レームダック化する)。政権の正統性を国民に示す。政権の座から(追い落とす。転落する)。政権の座に(居座る。就く)。政権を(投げ出す。握る。かけた政治決戦。惰性で運営する)。新政権が(誕生する。船出する。発足する)。新政権の出方をうかがう。政権争いから無縁な態度。政権運営に(自信を持つ。もたつく)。政権交代を(訴える。果たす)。 <501> # 支配する・統治する―164 **せいじ【政治】** 政治(弱者に冷たい。弱者に優しい。党利党略で動きがちな。貧困で腐敗した)。政治というやつは逃げようとすればするほどからみついてくる蜘蛛くもの糸みたいなもの=安部。政治に(興味を持つ。首を突っ込む。熱を入れる)。政治の(舵取跡しりをする。潮流を変える。生臭い修羅場。腐敗を憤る。変革を求める。表舞台から去る。革新に身を挺てぃする。劣化が目に余る。実権を掌中に帰する=山岡)。暗がりの中からいきなり弾丸が飛んでくるのが政治の世界“船戸。伏魔殿のような百鬼夜行といったような政治の世界に生きる=勝目。大衆の共感なしに政治は成り立たない荒巻。行き詰まった政治を転換する。政治献金を受け取る。政治思想が対立する。政治生命を懸けた正念場。政治力が物を言う。高級料亭で密室政治をする。悪政がはびこる。悪政に(苦しむ。散々泣かされる)。院政を敷く。軍政を敷く。憲政の常道に従う。失政を(正す。非難する)。政体を一元化する。政敵を(倒す。閣内に取り込む)。善政を(炊く。施す)。大政を(奉還する。恐賛する)。暴政に(あえぐ。苦しむ。反抗する)。天下の政きい!に与妨げる。天下の政を執る。 **せいとう【政党】** 内部分裂で政党が自壊する。政党を旗揚げする。一党一派に偏する。会派に所属する。会派を(結成する。離脱する)。各党が政策で競い合う。挙党一致で政策を実行する。举党体制を構築する。小党に分かれる。新党の旗を掲げる。第一党の(座を争う。地位を占める)。小差で第一党を維持する。超党派で取り組む。超党派による外交。統一会派を組む。党議に(違反する。拘束される。従う)。党勢が衰える。党勢を拡大する。利益によって離合集散する政治的党派高橋和。党派に(属する。分かれる)。野党精神を持ち続ける。野党が攻勢を強める。野党としての責任を果たす。政権の座から野党に転落する。閉外に去る。与党が(勝利する。大敗する。総選挙で敗北する)。党の政治家に媚こびを売る。与野党が(主張をぶつけ合う。真っ向から対決する)。与野党で協議する。与野党の(駆け引き。泥仕合。馴れ合い。勢力が逆転する)。 **せいふ【政府】** 政府が(窮地に陥る。仕組んだ陰謀。腐敗する)。政府の(高官に出世する。暴圧に反抗する。要路にある人物。弱体を国民の前に曝さらけ出す=鈴木四)。臨時政府を樹立する。 **せいふく【征服】** ▼征服する(目指す峠を。勢いのおもむくままに。力でしゃにむに。全州を奔馬の速力で"山田美)。何物をも征服した勝利感。征服欲が燃え立つ。男の征服欲をかき立てるような女笹沢。制溺する(諸国を。世界を)。天下制渦をめざす。羽菜を成し遂げる。席巻する(市場を。世界を。全国を。全土を)。颯爽として文壇を席捲せいする人来。 **だいじん【大臣】** 死に体となった大臣。大臣の(椅子を得る。失言を問責する。スキャンダルのもみ消しに奔走する=篠田)。閣僚としての責務を果たす。閣僚を辞任に追い込む。 **だいとうりょう【大統領】** 大統領に(就任する。選出される)。レームダック化した大統領。 **てんかをとる【天下を取る】** 内乱に乗じて天下をとる"司馬。天下に覇をとなえる。名実共に天下の覇者となる。天下を手中に収める。一天四海を掌中に握る舟橋。四海を掌になにに収める=舟橋。 **てんのう【天皇】** 天皇が崩御する。天皇に(咫尺託せする。即位する。奉呈する)。天皇の(行幸を仰ぐ。股肱にこの臣)。天皇を(奉じる。翼賛する)。叡慮咲いを奉じる。官軍(勝てば。錦の御旗を押し立てた)。悠谷として玉座に着く。朝廷の(威を借る。意向を奉戴する)。朝廷を(尊示する。擁する)。勅語を賜わる。秘技を天覧に供する。帝以ゅもかくやと思わせる優雅な顔"山本一。 **とうち【統治】** ▼統治する(国土を。国家を。人民を。地方を)。統治下に置く。経略が軌道に乗る。▼経略する(国家を。地方を)。経綸い心の才が欠如する。天下国家の経論を論じる。▼しろしめす(国土を。この世を)。統べる(国を。軍を。百般の人事を)。治安の維持に当たる。皇帝の治世。治世が見違えるようによくなる。治政に功績をあげる。領内の治政に意を注ぐ。治績を(挙げる。残す)。中央集権の政治。中央集権型の支配体制。中央集権的な一律行政。統治能力を疑う。統治能力に疑問符がつく。鼎跡なの軽重を問う渡辺。 **どくさい【独裁】** 非民主的な独裁国家。独裁者が(陥どくさいする運命の罠わな。権力を振るう)。独裁政治を打倒する。独裁体制が(終焉しい、うする。崩壊する)。一人に権力が集中する。 **ないかく【内閣】** ▼内閣(挙国一致の。死に体となった)。内閣が(総辞職する。レームダック化する)。内閣を改造する。法案を閣議決定する。閣内の不協和音が伝えられる。組閣が難航する。入圏を果たす。 **ばくふ【幕府】** 幕府におもねる御用史家。幕府を倒す。公儀に取り入る。公儀の(ご法度はっを破る。答とがめを受ける)。将軍家の威光をかさに着る。 **ファシズム** ファシズムはファシズムの恰好をして現れない伊坂。暗いファシズムへの道の一里塚。久間。ファシズムを(食い止める。非難する)。ファッショ的思考に凝り固まった人物"鈴木四。ファッショ的な強権政治。ファッショへの傾向が日とともに甚だしくなる=美濃部。 <502> # 支払う・償う **あたまきん【頭金】**頭金を(入れる。払う)。退職金を頭金にする。内金を(入れる。払う)。手金を打つ。手付け金を(打つ。払う)。前金で払う。前金を(入れる。置く。払う)。 **おかね【お金】**お金が(底をつく。欲しい。雪だるま式にふえる=立原)。飛ぶようにお金がなくなる=角田。どんどこお金が入ってくる=清水災。お金で片をつける。手っ取り早くお金になる仕事。お金の(算段がつく。力に目覚める。使途をあれこれ手繰ってみる。使い方を見直す。続く限り逃亡する)。不自然なお金の動きがある。お金を(手に入れる。目の前に置く。少し持っている)。だいぶお金を儲もうける。お金を貯める(一生懸命。しこしこと。せっせと。こつこつと)。親指と人さし指でマルをつくる三浦哲。▼掛け金(共済の。生命保険の)。掛け金を払う。金一封を(贈る。もらう)。金券を換金する。金子のやりくりに窮する。相応の金子を包む。合品を(奪って逃げる。脅し取る)。浄財で政治資金を賄う。浄財を昌捨する。金(働いて得た。天から降ったような=山本周)。金が(敵跡たの世の中。金を生む。潤沢にある。うなるほどある。地場産業に落ちる。すべてを支配する)。いかにも金がなさそう。いくらか金がたまる。がっぽりと金が儲かる。財布に金が詰まっている。大切な金が消えていく。手持ちの金がわずか。何事も金が先に立つ。にわかに金が惜しくなる。万事金があっての世の中。べらぼうな金が要る。まとまった金が懐に入る。無尺蔵に金があるわけではない。予定通りに金が入ってこない。奥さんより金が大事。大藪。金で(解決のつく話。話をつける。つながっている仲。右にも左にも転ぶ男=梅本)。官界と金で結びつく。金に(絡む話。汚い連中。執着のない男。物を言わせる。対する感覚が麻痺する。恬淡にんとしている。結びついた縁起物)。当座の金に困ることはない。褒美の金に目がくらむ。人間関係を金に換算する"畑。金に飽かせて(建てた家。豪華な物をこしらえる)。金の(運用を任せる。心配をする。使い道に困る。奴隷。無心をする。面倒を見る。亡者。威光と利害打算がまかり通る。返し方を聞き損ねる。切れ目が縁の切れ目。心配は要らない。ためには何でもやる。調遂に走り回る。出所が疑われる。流れを追及する。誘惑に勝てない。ために操を捨てるような腐った女=山手)。名誉と金の両方を一挙に手に入れる瀬戸内。金は(魔物。鐚びた一文出さない)。宵越しの金は持たない。命を賭けるほどの金は貰っていない=隆。金は天下の(回り持ち。回りもの)。金を(出せとすこむ。女道楽に使い果たす。持って逃走する。溝に捨てるような馬鹿なまねき永井荷)。集めた金を隠匿する。色仕掛けで金をまきあげる。腕ずくで金を奪う。教育に金をかける。公平に金を分ける。できるだけ金を絞り取る。莫大な金を費やす。身の皮を剥ぐようにして金を借り歩く今粥。金を貸す(高利で。低金利で)。▼金を払う(大急ぎで。折を見て)。かなりの金が(手に入る。手もとに戻る)。地狱の沙汰も金次第。金では買えない喜びを得る=武者小降。金と引き替えに体を売る。金という奴は時として人を盲目にするものらしい池井戸。時は金なり。孤かった金に手をつける。金にもならないことに血道を上げる=高橋涼。なけなしの金をはたく。なにがしかの金を得る。▼金がかかる(子供に。あれやこれやで。ばかにならない)。建てたはいいが管理費だけがかさんでいる金食い虫篠田。懐が痛む。 **かへい【貨幣】**貨幣が流通する。貨幣と労働力を交換する。貨幣を(鍛造する。鋳造する)。円で支払う。円に換算する。外貨を(支払う。準備する)。ドルを円に両替する。▼通貨(安定した。単一の)。通貨の価値を下げる。通貨を(切り上げる。切り下げる。統一する)。通貨価値を安定させる。基軸通貨としてのドルの地位が揺らぐ。 **きんがく【金額】**金額(妥当な。思い出せないくらい途方もない!宮本旅。気が遠くなるような=丹羽。金輪際払えっこない笹沢)。具体的な金額を口にする。相当な金額を絞り取る。預金通帳に金額を記載する。相当な額に上る。額の折り合いがつく。額を二倍にする。想定していた額を超える。とんでもない額を要求される。額面と手取りの差。株価が額面を割る。あけすけに金高を口にする。月々定額を支払う。 **きんせん【金銭】**金銭に(執着する。恬淡に無欲)。話題が金銭に及ぶ。金銭をめぐる争い。多額の金銭を騙し取る。金銭感覚が狂う。金銭的な(援助。貸借関係。悩み)。金銭的に余裕がある。金ずくで(解決する。片をつける。事を済ませる)。 **げんきん【現金】**▼現金(小口の。まとまった額の)。現金三百万円を欺し取る。現金が入った封筒を差し出す。現金で支払う。現金な(男。人。欲望が臆面もなく涨以ぇっている城山)。現金の(授受を認める。持ち合わせがない)。現金を(書留で送る。銀行に預ける。手元に確保する)。かなりの額の現金を手に入れる。まとまった現金を手にする。キャッシュで支払う。現なまが飛び交う。現なまをちらつかす。 **こうか【硬貨】**じゃらじゃらと硬貨の触れ合う音。硬貨を(放り投げる。指ではじく。用意する。じゃらつかせる)。銅貨や銀貨をじゃらじゃらと音させる。コインを(手に取る。投げる)。ハンドバッグから小銭入れを取り出す。財布が小銭で膨れ上がる。小銭を(じゃらじゃらさせる。手のひらでカウンターの縁に集める光原)。自動販売機から小銭を盗む。ばら銭を勘定する。 <503> 金貨で支払う。大判小判がざくざくある。小判を噛んで純度を調べる。礼金百両の切り併を差し出す柴田錬。 **こうきん【公金】**公金に穴をあける。遊びの金につまってついつい公金に手をつける=池波。公金を(横領する。使い込む。飲み食いに流用する)。公金横領で懲戒免職となる。 **ざいげん【財源】**財源が不足する。十分な財源がある。財源の(裏付けが乏しい。確保に苦心する。不足を補填する)。 **さつ【札】**手の切れるような新しい札!永井龍。札がひらひらと宙に舞う。山羊ゃきの口に挟みこまれるように札がモグモグと指に握り取られる=武田飛。札で人の面を張りとばす。札に透かしを入れる。札を(一枚引き抜く。受け取る。数える。手渡す。鷲掴みれみにする。手に握りしめる。小さく畳んで胸の谷問に押し込む=井上ひ)。札をポケットに(ねじこむ。押し込む)。透かしの入ったお札。財布から札を(取り出す。抜き取る)。札びらで相手の頬を張り倒す軍司。札びらを(数える。切る)。紙幣が毛虫が喧嘩をしているような音を立ててポケットにおさまる=清水俊。封筒の中から紙幣が飛び出している=伊坂。紙幣を(致える。刷る。渡す)。折り目もつかないビンとした紙幣みたいな美人佐藤春。 **さつたば【札束】**札束で(人の横面を叩く。頬を叩くようなところのある人鷺沢)。札束を(金庫に収める。見て涎はだが出る)。気前よく派手に札束をきってみせる=山崎。金包みを(押し返す。差し出す)。 **ししゅつ【支出】**支出が収入と均衡する。支出を(抑える。三割カットする)。▼支出する(管理費を。公金を。事務所費を)。歳出にめりはりをつける。歳出を(洗い直す。カットする。削減する。増やす)。無駄な歳出を重ねる。 **しはらう【支払う】**▼支払う(慰謝料を。一定の金額を。違約金を。給料を。口止め料を。成功報酬を。賃金を。保証金を。利息を。おびただしい犠牲を。多額なバテント料を。クレジットカードで)。▼済ませる(宿賃の払いを。レジで支払いを)。支払いが(遅れる。延び延びになる)。金の支払いが相当な額に上る。支払い停止に追い込まれる。ローンの支払いに困る。質金の支払いを延ばす。▼後払いする(代金を。料金を)。後払いで決済する。▼追い銭(泥棒に。盗人に)。月賦で借金を返す。▼先払いする(料金を。半年分の購読料を)。先払いで荷物を送る。▼立て替える(金を。切符代を。宿賃を)。決済に支障が生じる。決済する(勘定を。債務を。手形を。月末に。現金で)。払う(品物の代金を。高い授業料を。余計に金を。高額な入会金を。労働に見合う額を。勘定をきれいに。奉公人に給金を=北原)。 **じひ【自費】**自費で(費用を払う。怖う。留学する)。給料を度外視した額の資料を自費で購入する三浦し。▶自費出版する(遺稿集を。句集を。詩集を)。自腹で(食べる。飲む)。自腹を切る。私役で(賄う。留学する)。私費を投じる。なげうつ)。▼自弁する(食費を。生活費を。日用品を。費用を)。身銭で酒を飲む。身銭を切る。体を売って身銭を稼ぐ熊谷。▼持ち出しになる(接待役が。費用が。個人の)。自前で(衣装を作る。賄う)。資金を自前で稼ぐ。旅費は自前とする。自前のビルを持つ。 **しゅっぴ【出費】**▼出費(必要な。むだな。不時の。ばかにならない。必要とあらばやむを得ぬ荒巻)。出費が(かさむ。少ない)。余計な出費が増える。でかい出費でにっちもさっちもいかない。ほんのわずかの出費で済む。収入が出費を上回る。物入りが多い。 **せいかつひ【生活費】**生活費に(事欠く。困る)。生活費を(アルバイトで稼ぐ。極端に切りつめる)。米塩の資。かつかつの米代にしかならない。明日の米代にも事欠く。食費がかさむ。食費を払う。食い扶持ぶらが(足りない。一人分減る)。食い扶持にあふれる者が続出する態合。食い扶持を稼ぐ。 **ぜに【銭】**銭の(使い途がない。使いようを心得ている)。宵越しの銭は持たぬ。銭を(払う。ふんだんに使う)。女に銭をかける。なけなしの銭を握らせる。なんでも銭になるご時世。 **ぜんがく【全額】**全額を支払う。借金の全額を返済する。入金後に全額を引き出す。満額支払う。満額回答に難色を示す。満額要求に応じる。 **たいきん【大金】**▼大金(うなるほどの。途方もない。生まれて一度も目にしたことのないほどの火坂。楽々と五年を暮らすことのできる=池波)。大金が転がり込む。大金で身をあがなわれる。大金に見向きもしない。大金を(自由にできる。手に入れる。讎もうける)。試合に大金を賭ける。服や宝石に大金を投じる。身分不相応の大金を所持する=江戸川。千金の(価値がある。値打ちがある)。一刻千金の値。黄金を貰う。大枚を(はたく。投じて手に入れる)。万金に値する一言。万金をもってしても換えがたい!陳。 **だいきん【代金】**代金が不足する。仕入れ代金に事欠く。持ち合わせが代金に足りない。代金の一部を返す。代金を(受け取る。きちんと払う。支払う。テーブルに置く)。お愛想を頼む。お代を(頂戴さい、する。割り勘にする)。会計(不明朗な。明朗な)。会計を監査する。レジで会計を済ませる。勘定を(支払う。頻む)。きれいに勘定を払う。早々に勘定を済ませる。 **だいしょう【代償】**代償があまりにも大きい。沈黙の代償を要求する。▼代償を支払う(高価な。はかない誇りのために大きな=阿部)。後になって悔いと自己嫌悪という惨めな代償を支払うくらいなら寂しさと向かい合っていたほうがいい落合。▼代償にする(孤独を。死を)。 <504> ただ働きが横行する。ただ働きを強いる。無給で働く。無給の(委員。役員)。 **チップ**チップを(受け取る。置く。出し惜しむ。はずむ。もらう。渡す)。係員にチップを握らせる。金を懐紙にくるんで放り出す。お捻ぃゃりが飛んでくる。お捻りを(包む。投げる)。何がしかを紙に包んで与える。御祝儀を(いただく。奮発する)。酒手をはずむ。祝儀をはずむ。総花を撒きく。心づけを紙にひねって盆に載せる=柴田錬。過分の心づけをもらう。使いの者に心づけを渡す。たっぷりとこころづけを入れた紙包み池波。 **つぐなう【償う」**▼償う(歯にて歯を。目にて目を。死をもって。生命にて生命を。血をもって血を)。▼罪を償う(生きて。犯した)。せめてもの償いをする。払う(賠償金を。いくばくかの慰藉料いしいを)。死しても償えぬ罪。▼罪をあがなう(命で。苦しみで)。あがなう(恥を。命をもって。死をもって)。損害賠償を要求する。▼弁償する(損害を。被害を。右から左へ耳を揃えて"二葉亭)。泣き寝入りせずに補償を求める。補償する(生産者価格を。損失を。滅失を)。補償コストが巨額に上る。 **つみほろぼし【罪滅ぼし】**罪滅ぼしの機会を与える。せめてもの罪滅ぼしをする。十字架を背負ったような暮らしをする=壺井。贖罪れいくにいそしむ。贖罪の気持ちが心の底にある。罪を(順がう。償う)。贖罪金を納めて赦免される=船山。 **てがた【手形】**手形が(落ちる。不渡りになる)。手形の(期限が切れる。決済日が迫る)。手形を(落とす。振り出す。割り引く)。不渡り手形を出す。不渡りをつかまされる。銀行が振り出した小切手。小切手が不渡りになる。小切手で代金を払う。小切手に裏書きする。小切手を振り出す。 **てすうりょう【手数料】**手数料が入る。手数料の大半を吸い取られる。手数料を(稼ぐ。払う。もらう)。口銭を取って仲介する。リベートを(受け取る。もらう。要求する)。 **てまちん【手問質】**雀けずの涙の手間賃貸。手間賃を(払う。相場よりはずむ)。高い手間賃を取る。工賃を(支払う。もらう)。 **のみしろ【飲み代】**飲み代をせびる。酒代で財を潰っぷす。酒手をねだる。飲む金に不自由しない。 **はらいこむ「払い込む】**▼払い込む(掛け金を。残額を。入会金を。保釈金を)。家賃を銀行の口座に振り込む。 **はらわない【払わない】**びた一文払わない。ない袖は振れない。一文も身銭を切らない。踏み倒す(勘定を。五百万円を。借金を。前借りの金を)。未払いの代金。給料が未払いのまま。未払い分を請求する。不払い(ギャラの。受信料の。賃金の。保険金の)。不払いが(相次ぐ。判明する)。 **ひよう【費用】**費用が(かかる。かさむ。膨らむ)。費用の(一部をカンバに仰ぐ。肩代わりをする)。費用を(捻出する。値段に上乗せする)。莫大な費用を投じる。費用対効果を検討する。掛かりがかさむ。金嵩妙故が張る。失費が(かさむ。増える)。実費で頒布する。実費を負担する。諸掛かりが(多い。少ない)。金銀の費えを惜しむ。湯治の費えを工面する=山本一。入費がかかる。経費がかさむ。月々の経費が存外かさばる。莫大な経費がかかる。費用を経費として認める。経費増が馬鹿にならない。安全に対するコスト。コストがべらぼうなものになる。コストを料金に上乗せする。コスト意識が働く。 **ぶんかつぼらい【分割払い】**分割払いで買う。支払いを二回に分ける。分割で払う。月試で(車を買う。テレビを買う)。 **ほけんりょう【保険料】**近年保険料は値上がりの一途をたどっている=有川。保険料を納める。控除する。滞納する。払う。引き上げる。引き下げる)。 **まえばらい【前払い】**▼前払いする(購読料を。料金を)。仮払いを精算する。プリペイドカードを創始する。前売り券を買う。前売りのチケット。仮払いする(経費を。旅費を)。 **むちんじょうしゃ【無賃乗車】**無賃乗車を谷とがめられる。キセル乗車に間違えられる。タクシーを乗り逃げする。 **むほうしゅう【無報酬】**無報酬で(手伝う。働く)。ほとんと無報酬に近いかたちで個人教授をする=高橋和。手弁当で(応援する。働く)。 **むりょう【無料】**無料で(相談に乗る。入場できる)。お茶を無料で振る舞う。▼無料にする(医療費を。貧富に関係なく)。無償の愛に生きる。ただで手に入る。ただのように値が下がる。ただほど高いものはない=大野罠。ただみたいな値段で手に入る。ただ同然で売りに出される。ただ同然の安さで借りる。 **ゆうりょう【有料】**有料で配達する。有料の(コンテンツ。駐車場)。有料道路を走る。有償で(交付する。提供する。払い下げる)。 **りょうきん【料金】**料金が(高い。半額になる。安い。据え置きになる)。料金を(支払う。払う。書いた紙が張ってある藤田)。法外な料金を取る。目の玉の飛び出るような料金を請求される"氷室。料金箱に運賃を入れる。別途送料を申し受ける。寺銭を集める。払う(借り賃を。木戸銭を。入場料を。宿代を)。 **わりかん【割り勘】**割り勘で(酒を飲む。食事をする)。割り勘にする(飲み代を。料金を)。頭数で勘定を測る。 <505> # 洒落る・気取る **あかぬける【垢抜ける】**垢抜けた(色気。容姿)。垢抜けてすっきりした服装。渋皮の剣もけた女。瀟洒したるバンガロー風の家。瀟洒な灯台風の建物倉橋。背広を蔵酒に着こなす。脱俗の境地に至る。洒脱な(雰囲気をまとう。都会人を気取る藤田)。東洋の隠者めいた洒脱さ=里見。 **あくしゅみ【悪趣味】**悪趣味もここに極まれり~買井。落魄的気分を愛する可笑ぉかしな趣味の高見町。趣味の悪い悪戯かけ。金ビカに飾りつけたあまり趣味のよくない応接問"石坂。自分の体を隠してそっと人の動きをのぞき見しているような悪い趣味!永井能。 **あじな【味な】**味な(ことを言う。真似ぇぇをする。幕切れを見せる)。縁は異なもの味なもの落語。乙な(味。年増)。しゃれた真似をする。 **あでやか【艶やか】**大輪の薔薇ばらのように艶ぁでやかぃあさの。あでやかな(世話女房ぶり。花嫁衣装をまとう)。どきりとするほど艶やかな表情熊谷。花のようにあでやかないでたち『白洲。夜があでやかに彩られる。白い皮膚の下に恋い紫色の血管が大理石の斑紋を想わせるようにほんのり透いて見える凄艶さいさ八谷崎。艶然たる装い。艶然と微笑組みを浮かべる。嬋娟せんたる(美女。容姿。なまめかしさがにおいこぼれる=山手)。濃艶な(厚化粧を施す。微笑を送る美女)。豊艶な女体。浮気女の豊艶な魔力。妖艶な(身振りで誘いかける。魅力をたたえる)。花の如く妖艶な娘。身のこなしに妖艶さが漂う山田周。 **いき【粋】**粋な(女の柳腰。倦えの料理屋)。ねじり鉢巻をした粋な姿。野暮は揉もまれて粋になる=九鬼。地味は粋の通り過ぎ=幸田文。伊達だてに着こなす。伊達を気取る。銀髪のダンディーな紳士。小粋な(縞柄机はの着物。造りのしもたや)。痩せぎすな三十七八の小意気な女徳田。手拭いを小粋に頂へのせる=北原。博多の帯を小粋に締める=柴田錬。スマートな情事を楽しむ三浦朱。背広をスマートに着こなす。 **いなかもの【田舎者】**田舎者(朴訥くな。野暮な。ほっと出の。西も東もわからない後藤)。ぽっと出の子供の身の上を気づかう~中。山出しの(男。娘)。 **いろか【色香】**熟れた色香が濃厚に漂っている熊谷。大輪の花のような色香を発する=光原。ひっそりと色香を含んだ風情"小沼。ふるいつきたいほどの色香を滋たたえた美しさ。柴田剣。女の色香に(おぼれる。惑わされる。迷う。身も魂も狂う)。 **いろけ【色気】**▼色気(風が吹くと消えてしまいそうないわば揮発性の三浦朱。ぞくっとするほどの源氏)。年増の色気が漂う。唇に初々しい色気がにじむ船山。慎ましやかな色気がにじみ出る=曽野。妖しげな色気に欲情を覚える=熊谷。みずみずしい色気にみちみちた女池波。男心を誘う色気をたたえている"藤沢。凄艶な色気を身にまとっている女・藤沢。色気のない返事。およそ色気というものからは程遠い平野。色気より食い気。 **いろっぽい【色っぽい】**見るからに色っぽい女。小股の切れ上がった色っぽい芸妓ぎぃ=瀬戸内。ハスキーな色っぽい声=生島。レズめいた色っぽい組み合わせ"半村。色っぽく挑発的な姿態。酒の酔いが手伝って色っぽくしなだれる=舟橋。鼻の脇に集まっている小さな雀斑がが妙に仇っぽい=小林久。あだな姿の洗い髪。色めいた(咬。話)。些細な動作に艶えんが現れるい大岡。艶を競う。官能的な(女の寝顔。快感に襲われる。心地よさに包まれる)。艶っゃめいた話。▼艶めく(女が。目が)。なまめいた(美しさ。女。ポーズ。目)。女のなまめいた笑い声。悩ましい(姿態。ネグリジェ姿。雰囲気。ムード)。グラマーな(女性。容姿)。セクシーな(女性。ドレス。雰囲気。ボーズ)。艶っぽい(ウインク。声。しぐさ。話)。艶っぽく笑う。肉感的な(桃色の煩。長い両腕をむき出しにした太った女谷崎。ぽってりとした唇大庭)。タイトスカートの肉感的な動き=高橋机。男を悩殺するボーズ。悩殺する(水着姿で。妖艶な姿で)。あらゆる男性を悩殺した傾城山田風。 **ウインク**ウインクを(送る。投げかける)。何べんもウインクを繰り返す。▼ウインクする(悪戯れっぽく。愛嬌たっぷりに佐藤愛)。片目をつぶってみせる。 **エロチック**エロチックな衝動に駆られる。エロチックに響く言葉。エロチシズムの濃厚な官能小説「権田。エロティックな想像力をかきたてられる=森玩。 **おしゃれ【お洒落】**おしゃれな印象を与える街。おしゃれに気を使う。シックな(色合い。ドレス。雰囲気)。ファッショナブルな(街。店)。めかし込む(きれいに。美しく)。めかし込んで出かける。▼おめかしする(念入りに。ここぞとばかりに。デートのときは決まって)。おめかしして出かける。 **かどう【華道】**華道の(家元。師匠)。華道をたしなむ。一輪挿しに花を飾る。壺っぽに花を投げ入れる=瀬戸内。花を生ける(花瓶に。水盤に)。生け花を(たしなむ。ぞう。 **きどる【気取る】**▼気取る(芸術家を。正義の味方を。いっぱしの悪党を。いっばしの文学青年を。背伸びして大人の女を東野)。気取った(表現。身なり)。くわえ煙草の気取ったボーズ=原田康。いっぱしの大物気取り。気取りが態度にありありと見える。息持ちのならない気取り屋。しゃなりしゃなりと歩いてくる足音"山手。気障きさで柔弱そうな見せかけ。気障な(大見得を切る。女たらし。台詞を吐く。能書きを言う)。 **きょうせい【嬌声】**▼嬌声(女たちの派手な。玉を転がすような舟橋。悲鳴のような女の=黒岩。卑猥な感情のこもった阿久)。女子高校生たちの嬌声が車内に響く。きゃあという嬌声がわき起こる=山口。嬌声といいたいほどの艶っぽい声=獅子。嬌声をあげる(歓喜の。わざとらしく。きゃっきゃっと。黄色というには少々トウの立った=阿久)。 <506> # 洒落る・気取る **きょえいしん【虚栄心】**▼虚栄心(とどまるところを知らない。醜い欲望を隠そうとする藤枝)。虚栄心がねじ曲がる。競争のように一種の虚栄心で本を読む"臼井。人の虚栄心に訴える。虚栄心の強い女。虚栄心を(くすぐる。刺激する)。宝石は女の虚栄心を満足させる裸の王様の糸のない着物のようなもの大庭。娘の涙に女の虚栄心を見る=大岡。良心の苦痛を生温い湯に溶かして虚栄心を刺戦しげし何となく満足する"藤枝。虚栄心を満足させる(けちな。密かな)。 **きょしょく【虚飾】**▼虚飾(世間的な。文学的な)。虚飾をきれいさっぱりと拭い去る。勃々たる傲慢な虚栄横光。虚栄に満ちた社会。虚栄の夢を追う。 **げいじゅつ【芸術】**芸術に情熱を傾ける。頑固に自分の芸術に固執する=松本。芸術作品と芸術家の人格を同一視する=富岡。芸術作品を味わう。芸術性を高く評価する。芸術的な(気分があふれる。情熱に取りつかれる)。技芸初に入る。技芸の(腕を磨く。妙を味わう)。学問技芸を身につける。名優の至芸に酔う。至芸の腕をふるう。美術に心を傾ける。 **げいじゅつか【芸術家】**芸術家として大成する。言い方に芸術家の片鱗いんが感じられる三好意。自ら芸術家をもって任じる。世界に通用するアーティスト。芸域が(広い。深い)。文人墨客は2忙んが(訪れる。逗留行する)。文人墨客とのつきあいがある。 **さどう【茶道】**茶道の(家元。宗匠。流派)。茶釜を火にかける。茶の湯の(心得がある。素養がある。道は奥が深い。侘び)。茶の湯を(たしなむ。習う)。茶を点だてる。点茶を(味わう。献じる)。 **しとやか【淑やか】**令嬢か何かのように淑しとやか高見町。たいへんしとやかでおとなしい女性石坂。しとやかな(落ち着いた女ち。しなを作る。身のこなし。物腰)。しとやかに(お辞儀をする。立ち上がる。頬を染める。視線を受け流す)。婉然似たる(貴婦人。淑女)。たおやかな妻のおもかげ。女らしいたおやかな後ろ変。人形がたおやかな風情を示す。細面のたおやかな娘。優艶な(美しさ。舞い)。窈窕はらったる(女性の淡い影。美人。淑女は君子の好求=円地)。 **しゃれ【洒落】**洒落が(通じる。わかる)。洒落に(釣り込まれる。ならない)。出来の悪い駄洒落。駄洒落でまぜっかえす。駄洒落を(飛ばす。連発する)。 **しゃれる【洒落る】**しゃれた(構えの料理屋。恋の手しゃれる管。装丁の本。タッチで書く。会話がふんだんに出てくる)。気転の利いたしゃれた一行。洒落たブティックがぽつりぽつりと建っている藤田。▼しゃれている(部屋の内装が。ちょっと見は)。春雨じゃ濡れて行こうとしゃれてみる三浦穹。洒落っ気が出る。洒落っ気を起こす。しゃれ込む(高みの見物と。花見と。お手並み拝見と)。ハイカラな(衣装。髪型。洋服を着る)。 **しゅくじょ【淑女】**豊麗な淑女。▼レディー(したたかな。とり澄ました)。レディーを先にする。レディーファーストを盾に取る="玉村。 **じょさいない【如才ない】**如才ない笑顔を振りまく。如才なく(抜け目ない男。話に相槌を打つ。席を立ち上座をゆずる=真継)。説明にそつがない。そつのない挨拶。万事にそつのない男。手落ちがない。万事手抜かりがない。万事に抜け目なく立ち回る。てきぱきと要領よく事を処理する。 **しんし【紳士】**恰幅跡のいい中年の紳士。イギリス風紳士の風貌をした校長先生内橋。紳士的に行動する。人品賤ぃゃしからぬ老紳士。 **すましがお【澄まし顔】**すまし顔で写真におさまる。ちょんと唇をとがらせて澄まし顔をする宮部。澄ました顔で言ってのける。つんと澄ました顔つき。取り澄ました顔。 **せんれん【洗練】**洗練された(着こなし。校風。趣味。都会の雰囲気。表現)。社交的に洗練された感覚を身につける=中村真。都会的に洗練される。 **そぼく【素朴】**素朴で伝統的な信仰。素朴な(疑問をそぼく口にする。人間の生地がむき出しになる=石坂)。純真素朴な青年。白木造りの素朴な祠に。風景や建物を柔らかく包みこむような素朴な視線!連城。麦焦がしのように素朴な女石坂。余分なものを何も隠し持っていない素朴な微笑み小川。簡潔素朴を学ぶ。質朴な青年。牧歌的な(自然。生活。風景)。時には清澄な牧歌の趣を呈する"岸田。 **そや【粗野】**民子は田舎風ではあったが決して粗野ではない=伊藤左。祭日の粗野な賑わい。何という粗野な興ざめた芸だろう。都会化されきれない粗野な態度"円地。蛮カラの気風。蛮カラを気取る。 **つうじん【通人」**酸いも甘いも噛みわけた通人。通人にも見まがうような遊びぶり。通人めいた口を利く。世の中の酸いも甘いも心得る=福永。通を喋々ちいと振りかざす。粋人のなれの果てと云いいたい枯れた手腕を発揮する=横光。枠人を気取る。 **とりすます【取り澄ます】**お姫さまみたいに取りすます。円地。上辺は上品に取り澄ます。取り澄ました(美しさ。口調。女優)。高慢ちきに取り澄ました態度。取り澄ましてお高く止まっている。こに澄ました高級店。つんとして肩をそびやかす。つんと澄ました(挨拶。おしゃれさん)。▼澄まし込む(他人行儀な態度で。京人形のように大佛)。路傍の人のようにむうっとそっけなく澄ましこむ谷崎。 **なまめかしい【艶めかしい】**肌に血の色が乗ってなまめかしい多岐川。なまめかしい長祐祥姿依材机ば。 <507> # 洒落る・気取る 肉欲をそそる艶かしい姿態―熊谷。漆黒の闇の中で恋人の手が見えない相手の輪郭を確かめるような艶かしい動作人用。女盛りのような艶めかしい眼差し芝木。なまめかしく(体をくねらせる。腰を回転させる)。女の声がなまめかしく耳を襲う泉侈。容姿にこはれるような艶めかしさがある"外村。肉体が若く艶冶悦んに輝いている=舟橋。コケティッシュな(笑顔。女。笑い声)。 **はっぽうびじん【八方美人】**要領のいい八方美人。八方美人で誠実味にかける。全方位外交。 **びたい【媚態】**食事のように日々の必要に過ぎずそれ自身何の意味もない媚態"大岡。濃厚な媚態で接する。からだが狡猾にっな猫のように妖しい媚態で動き出す"大庭。目では流阿冷心うが媚惑の普通の表現!九鬼。あられもない媚態を見せる。女性が媚態を呈する。慎ましやかな卵態を示す。男と見れば矯態を示す。 **びゃく【媚薬】**媚薬の効果が現れる。媚薬を使う。淫薬を(使う。もられる)。 **ふうが【風雅】**風雅な(趣。生活を淡む)。風雅の(里として有名になる。たしなみが深い)。心を風雅の世界に遊ばせる。雅趣に富んだ庭。雅趣のある白い衣。閑雅な(举措助作。庭。ひとときを過ごす)。軽い閑雅な味。文雅な(趣味。生活)。 **ふうりゅう【風流】**風流な(遊び。会話を楽しむ。人士。茶会。庭)。風流の(生活に徹する。道に凝る)。風流韻事にふける。数奇を(凝らす。尽くす)。風月の才に富む。花鳥風月に託して思いを述べる。花鳥風月を詠む。雪見ができる露天風呂。雪見としゃれこむ。雪見の宴。 **ぶこつ【無骨】**無骨な顔が微笑組『む"加賀。角張った無符な指。無管に出来上がった体。無骨一点張りの男。手織りのごつい木綿の着物=島尾。こつこつ骨ばった指。ごつごつした(梅の枝。骨ばった四肢)。固い感じのごつごつした体井上药。朴訥な(印象の人物。口調)。朴訥に礼を述べる。 **ぶんか【文化】**文化(民族に固有な。幽玄深奥な。軟な良識に富む。祖先が作り上げた。伝統の異なる他国の。永続性の高い森の=高田。市民的精神に裏打ちされた吉田)。様々な文化が入り混じる。文化の(源流が残る。先端を走る。創造が衰える。深層を形成する。伝統に身を置く)。日本が世界に誇りうる文化の伝統。失った文化を取り戻す。自国の文化を海外に宣伝する。古い文化を保持する。当時の文化を支えた強大なパトロン『高橋克。低い文化水準に甘んじる。文化水準を高める。文化的な(行事。雰囲気)。敵を文化的に去勢する萩原朔。民度が(高い。低い)。 **ぶんかざい【文化財】**歴史的な文化財。文化財を(保恋する。収蔵する。拝観する)。重要文化財に指定する。無形文化財。内界の財貨。 **ぶんめい【文明】**高度に発達した文明。付け焼き刃の文明に陶酔する=寺田。無責任な文明に毒された安易さ=大庭。文明の(淵源に近い。発祥の地。揺籃いいの地)。古代文明の遺跡。むやみに物質文明ばかりが発達する=瀬戸内。文明開化の波に洗われる。文明開化を賛美する。 **みやびやか【雅やか】**雅やかな(言葉づかい。筆の運び。振る舞い)。昔の絵巻から抜け出してきたようにみやびやかな風俗芥川。男たちまでが化粧仮髪切っを附けていた夢のように雅やかな時代"大佛。雅な遊びをしているような気持ちに酔う。有吉。管弦詩歌の遊楽を事とする。詩歌管技の道に長じる。女性の典雅さのなかから突然火花のような激情が飛び出して来る言葉伊藤整。典雅な(香りを放つ。趣味)。公園のような緑に包まれた典雅な森"五木。高雅で馥郁ふくとして爽やかにも物寂びた匂い=岡本。高雅な(味わい。趣。香り。雰囲気)。常人の及ばぬ高雅な心持ち。 **やせい【野性】**野性に(返る。満ちた目)。野性的で強烈な匂い。野性的な(人。奔放さ)。野性味たっぷりの生き方。 **やばん【野蛮】**野蛮な攻撃にさらされる。江戸時代の野蛮な遺風水井荷。心に潜む野蛮な衝動=景山。コッブを投げつけるみたいな野蛮な真似まぁ高井。野蛮なくらいたけだけしい勇気"田辺。卑劣極まりない蛮行。蛮行に怒りを募らせる。 **やぼ【野暮】**野暮な(答えを口にする。役割を割り当てられる。用事で出かける)。懲りずに野暮な問いを繰り返す。風流を解さぬ野暮な方に白洲。ぞべろぞべろとした絹物を帯も羽織も野暮に着込む。有吉。野暮ったい疑問が頭をもたげる『池澤。素人のように野暮ったい格好=山本周、垢抜けない考え。あく抜けしない(顔。表装)。言葉も態度も洗い上がっていない人有吉。ちっとも粋じゃない。ださい(男。女。服装)。艶消しな(ことを言う。話)。無粋な(質問。放言)。不風流な人ていの男。没趣味な(日常生活。人)。気の利かない(さばけない男。野暮な人間)。ぼんやりした注意のとどかない男“石川。もさっとした男。泥臭い(田舎者。政治家)。結局は自分のことしか考えられない自分が泥鰌と北のように泥くさい島尾。 **ゆうが【優雅】**優雅で(しなやかな歩き方。裕福そうな女性)。十八世紀頃の貴婦人の概念が薔薇色45のサングラスをかけて今に甦好みったと言いたいほど優雅で上品な夫人倉橋。優雅な(笑みで応える。仕草で立ち上がる。立ち居振る舞いがよく似合う女。手つきでお茶を一服する藤沢)。のんびりとした感情を持ってうねっている優雅な曲線の丘佐藤巻。帝ひかもかくやと思わせる優雅な顔・山本一。優雅に(頭を下げる。手を振る。海外旅行をする。独身生活を楽しむ)。なよなよと優雅に体を揺らす。悠揚迫らざる優雅さ。 <508> # 熟す・老いる **いちにんまえ【一人前】**子供を一人前に育て上げる。娘が一人前になったことを家じゅうでお祝いする"丹羽。一人前になる(努力して。やっと)。一人前の(跡取りに育つ。営業マンに成長する。大人として扱う。技術を身につける。社会人に育てる)。息子が一人前の働き手となる。立派な一人前の男に成長する。いっばしの(組頭に出世する。グルメを気取る。事業家面をする。職人のようにいう)。教養ありげないっばしの紳士。社会人として(巣立つ。羽ばたく。必要な素養を身につける)。少しばかり手入れをすれば物になりそう徳田。将来物になりそうな逸材。 **うれすぎる【熟れ過ぎる】**熟れすぎたみかんのように鮮やかなオレンジ色のワンピース=内田奈。顔が熟れすぎたトマトみたいな色になる=飯田。爛熟んじの(気配が漂う。頂点にさしかかる)。春が嫻熟の色をなす菊池。爛熟期に達する。 **えんじゅく【円熟】**円熟の(域に達する。境地に立つ)。円熟した(女らしさ。態度。年齢が聡明さに暖かさを添える=中村真)。まだまだ完成された円熟さには遠い"山岡。円熟味が(加わる。出てくる)。熟年の(女性。世代。男性。夫婦)。人柄のよく練れた男。人間が練れてくる。老成した顔立ち。ひどく老成した雰囲気。若いに似合わず老成した物言いをする=内田康。 **おいる【老いる】**『老いる(秋が。冬が。森が。一気に。確実に。豊かに。美しく。ゆっくりと。長く地の上を領していた冬が有島。魂が脱けたように甚だしく"有吉)。老いた(体。母。身をかこつ)。▼老いていく(いつともなく。少しずつ。なすこともなく)。老いては子に従え。老いてますます(元気。旺さかんな助平爺けけい)。老いが(顔にしみついている。口元に刻まれる。しずかに足下を濡らす―辻井)。文字に老いが感じられる。老いが体を(蝕ごしむ。どんどん剥き出しにしていく=黒井)。老いの(足音に怯ぉぃえる。繰り言。道をたどる。目に涙をたたえる。一徹ともいうような頑固さ=船山)。日毎に老いの傾斜を転げ落ちる藤本。半身不随の老いを泣く"二葉亭。お年を召す。人生の終わりにさしかかる。使い古した機械のような身体円地。齢にゃ傾く、いたずらに筋張っているばかりの老いかけた体多岐川。老い込む(すっかり。めっきり)。まだ老い込むには早い。気落ちのあまり老い込んでしまう。老いさらばえた男。老いさらばえて死ぬ。気の毒なほど老いさらばえる。井上靖。すっかり老いぼれる。年老いた(夫婦。身。両親)。徐々に年老いる。▼達する(相当な年齢に。老年に)。▼迎える(生涯の秋を。晩年を)。▼老化する(組織が。肉体が)。老境が深まる。老境に(入る。向かう)。若いころはさほど気にもかけなかったことが老境に入ると身も世もないほどに心を責めて来ることがある藤沢。静かに老境を味わう。老残の日を過ごす。老残の身を(さらす。持て余す)。老酬を(隠す。さらす)。老来いよいよ壮健。 **おじいさん【お爺さん】**▼おじいさん(気さくな。小柄な。孤独な。正直な。無愛想な。偏屈な)。昔話のお爺さんのように腰を曲げて立っている内海。じいさまが目をショボショボさせて笑う=飯田。▼爺さん(頑固な。相当に偏屈な。老翁いな。食えない。背の低い朴訥くな感じの=小沼)。老爺が一心に思いつめる。老爺、を(いたわる。演じる)。 **おじさん【小父さん】**おじさん(親切な。顔見知りの)。▼おっさん(人のいい。じじむさいタヌキのような=開高。平凡を絵に描いたような辻爽)。親父(因業ごいな。食えない。油断のならない)。元気のいい親父さん。とんだ狸親父。 **おとな【大人】**大の大人が夢中になる。大人になるといろいろと悩みが増える=池井戸。いつもよりずっと大人に見える。性格が大人になっても変わらない。段々と大人になっていく。ひたすら大人になりたい一心。ブリンを型から抜くようにストンと大人になれそう落合。大人になる(一足早く。邺せんが殻を脱ぐように藤沢)。大人の(男の臭気がこもる。女の匂いを漂わす。仲間入りをする。話を盗み聞きする。分別に汚されていない。魅力を振りまく。目でものを見る。男にあるまじき退行願望に身をまかせる=山田太)。背伸びして大人の女を気取る=東野。どろどろとした大人の世界!高橋二。子供から大人への架け橋。大人をからかうもんじゃない。大人顔負けの図体。大人げのない話。成年に達する。成年を越す。 **おばあさん【お婆さん】**▼お婆さん(脚と骨盤が神社の鳥居のような“干刈。デッブリ体格のよい堂々たる=坂口)。▼おばあさん(元気な。上品な。人込みの中に静かに溶けてしまいそうな地味な"小川。まだ白皇もなく腰もしゃんとした大柄な=壺井)。三途の川の鬼婆のような女。海千山千のばあさん=石坂。甲羅が生えた婆さん!篠田。ちっとも葵さん臭くない。頭の弱い婆さんの世迷い言いまぃ!高見湾童女のようなあどけない微笑を浮かべる老女"阿部。▼老婦人(快活な。白髪の。端麗な谷貌の品のよい芝木。幼女のような可愛らしい内海)。老女(人の善い。薄化粧をした上品な"吉行)。小さな老女が置物のようにちんまりと坐すゃりこむ落合。曰ぃゃくありげな美しい老女の佇炊たまい=有吉。▼老婆(動く眼だけが生きていることを証明しているしなびた黒石。背の低い痩せた白髪頭の猿のような芥川)。老婆が前ここみの姿勢で歩み寄る=高橋知。老婆を(いたわる。世話する)。ほの暗い中で明かりにくまどられた女の顔が老婆を思わせる=勝目。重荷を背負わされた老婆のように顔を皺寄しゃせる"高橋和。乳房が老婆のように萎しょんで<509> いる=高樹。八十の老婆のように腰が重い荻野。 **おばさん【小母さん】**▼おばさん(親切な。世話好きな。話好きな。口さがない。人のいい。おっかなくて煙ったい=つか)。気のいいおばちゃん。 **おんなざかり【女盛り】**▼女盛り(三十五歳の。脂の乗りきった)。女ざかりの凝脂がみなぎりわたっているえりあし=池波。女盛りの豊満な肉体「源氏。頬に浮い残した女盛りの潤いのある光沢久米。女らしさが花開く年齢"水倉。女盛りのような艶なまめかしい眼差し芝木。色は年増にとどめを刺す。落語。年増の色気が漂う。小股の切れあがった年増の女房"加太。ぐんと年を食って甲羅にコケとぺんぺん草の生えたような大年増田辺。 **かじつ【果実】**果実(もぎたての。たわわに実った)。甘い果実の香り。熟れた果実の重々しい香気が噴煙のように湧き起こる=武田泰。禁断の果実の味を味わうぃ堀。果実のようなふくらみを持った風"村上春。崩れかけた果実のような肉体"小林信。熟しかけた果実のように新鮮な娘―南条。熱帯植物の果実のようにねっとりした肌円地。 **かれい【加齢】**加齢が要因となる病気。加齢を意識する。加齢臭を気にする。煙草臭い箇ぼえたような老人臭向田。いたずらに馬齢を(重ねる。加える)。年をとる(いたずらに。だんだん。淡々と。しみこんだ汚れを汚れとして気づかないままにおめおめと=飯田)。歳を取ると涙腺が弱くなる=さだ。年をとるとだんだん頑固になる。誕生日が来ると一つ歳を取る高杉。清純が少し齢としを取ったという感じの小柄な女性山口。年をとったら一人旅が大儀になる"石坂。穏やかに年をとっていく。年はとっても腕はたしか。重ねる(年齢を。年齢を。除にゃを)。人生の年輪を刻む。断髪の化粧気のない女学生が年を取ったような人"ちの顔柴田翔。気のよさそうな運転手=日野)。物静かな初老の婦人。▼初老の男(気難しい。人のよさそうな)。初老を迎える不安と淋しさ=瀬戸内。髪にちらほら白いものが目立ちはじめる年輩!半村。孫がいても不思議ではない年齢。眼尻に深い皴しゃを折り込んだ顔黒井。 **かんれき【還暦】**還暦を(祝う。岡近に控える。迎える)。船にも六十を過ぎる。六十の坂を越える。本卦帆んがえりで子供にかえる。本卦がえりを祝う。 **くるみ【胡桃】**胡桃がカスタネットのような冴えた音を立ててぶつかる=向田。胡桃を(磨く。割る)。 **けつじつ【結実】**見事な結実を見せる。▼結実する(稲の花が。思いが。指導が。努力が。長年の夢が)。実を結ぶ(考えが。研究が。思想が。修業が。努力が。恋愛が。長い修業期間が"小池)。 **こうねんき【更年期】**更年期を迎える。更年期障害が(治まる。快方に向かう)。更年期障害に悩む。体に変調の来るデリケートな年頃=曽野。 **このみ【木の実】**禁断の木の実。南北に長く木の実を海上に浮かべたような島塩野。瞳が椎しぃの実のように褐色の鋭い光をおびる"大江。大きな体格でどんぐりのように肥ふとっている=深沢。 **じゅくす【熟す】**熟す(計画が。戦いの機が。テーマが)。手にした途端、蜜を滴らすほど熟した果実"長野。にくにくしいまでに大きく熟した乳房"吉行、真っ赤に熟した柿の実=川端。熟れた春の匂い。果物が熟れる。微かびに包まれて熟成したおいしいチーズのような男"山田詠。▼熟成する(機運が。酒が。チーズが。ワインが)。半熟の(柿。バナナ)。▼黄熟する(稲が。梅の実が。バナナが)。麦が黄熟して刈り取られる=田山。一望黄色く熟した稲田"外村。黄色に熟れた実。黄色く熟した田=田山。 **しょろう【初老】**初老に(近い婦人。手の届く年)。初老の(域にさしかかる。きざしが根元に刻まれた女たち。 **せいじゅく【成熟**成熟する(体が。性が。精神が。健康そうに。性的に。肉体が十分に。伸び伸びと)。成熟した肉体を持て余す。すっかり成熟した美しい女性"加賀。とめどもなく甘い蜜をしたたらせる成熟したからだ=大庭。括くびれるところと脈、ふくらむところがはっきりとした体つき=高樹。 **ちゅうねん【中年】**風貌に中年の気配が漂う。思慮も分別も定まった年輩=海音寺。年はぼつぼつ五十に近い。五十の坂に手の届く年齢になる。不惑を越えた年頃。水商売の垢ぁかを身体一杯につけた、くたびれきった中年女=黒岩。出世欲の権化のような壮者ぞろい柴田翎。 **ちゅうねんおとこ【中年男】**▼中年男(小柄で貧相な。助平付けな。恰幅跡のいい。分別盛りの。見るからにうだつの上がらない。内田卷)。中年男の(狡猾こうな物言い。好色な気持ちの乱れ=山田太)。ひとりで世間を生き抜いてきた中年男の陰気な迫力"日野。五十がらみの(年齢に似もやらぬ少年詩人のごとき気分屋坂口。老成した男のような頼もしさ坂口)。年配の白髪頭の男。 **ちゅうねんおんな【中年女】**中年の(女の色香があふれる。女性のような部厚い脂肪の層=畑)。こぎれいな中年の女性。品のいい中年の婦人。まるまると太った中年の女。滴るような中年の女の美しさ=石坂。五十年配の女性。問いつめられた夫が四十を過ぎた女のように居直る=大庭。品のよさそうな年配の女性。海堂。虚ろな目つきで中年女みたいにこめかみを揉。む宮本輝。小太りの中年女性。 <509> **おんなざかり【女盛り】** ▼女盛り(三十五歳の。脂の乗りきった)。女ざかりの凝脂がみなぎりわたっているえりあし=池波。女盛りの豊満な肉体「源氏。頬に浮い残した女盛りの潤いのある光沢久米。女らしさが花開く年齢"水倉。女盛りのような艶なまめかしい眼差し芝木。色は年増にとどめを刺す。落語。年増の色気が漂う。小股の切れあがった年増の女房"加太。ぐんと年を食って甲羅にコケとぺんぺん草の生えたような大年増田辺。 **かじつ【果実】** 果実(もぎたての。たわわに実った)。甘い果実の香り。熟れた果実の重々しい香気が噴煙のように湧き起こる=武田泰。禁断の果実の味を味わうぃ堀。果実のようなふくらみを持った風"村上春。崩れかけた果実のような肉体"小林信。熟しかけた果実のように新鮮な娘―南条。熱帯植物の果実のようにねっとりした肌円地。 **かれい【加齢】** 加齢が要因となる病気。加齢を意識する。加齢臭を気にする。煙草臭い箇ぼえたような老人臭向田。いたずらに馬齢を(重ねる。加える)。年をとる(いたずらに。だんだん。淡々と。しみこんだ汚れを汚れとして気づかないままにおめおめと=飯田)。歳を取ると涙腺が弱くなる=さだ。年をとるとだんだん頑固になる。誕生日が来ると一つ歳を取る高杉。清純が少し齢としを取ったという感じの小柄な女性山口。年をとったら一人旅が大儀になる"石坂。穏やかに年をとっていく。年はとっても腕はたしか。重ねる(年齢を。年齢を。除にゃを)。人生の年輪を刻む。断髪の化粧気のない女学生が年を取ったような人"ちの顔柴田翔。気のよさそうな運転手=日野)。物静かな初老の婦人。▼初老の男(気難しい。人のよさそうな)。 **せいじゅく【成熟】** 成熟する(体が。性が。精神が。健康そうに。性的に。肉体が十分に。伸び伸びと)。成熟した肉体を持て余す。すっかり成熟した美しい女性"加賀。とめどもなく甘い蜜をしたたらせる成熟したからだ=大庭。括くびれるところと脈、ふくらむところがはっきりとした体つき=高樹。 **ちゅうねん【中年】** 風貌に中年の気配が漂う。思慮も分別も定まった年輩=海音寺。年はぼつぼつ五十に近い。五十の坂に手の届く年齢になる。不惑を越えた年頃。水商売の垢ぁかを身体一杯につけた、くたびれきった中年女=黒岩。出世欲の権化のような壮者ぞろい柴田翎。 **ちゅうねんおとこ【中年男】** ▼中年男(小柄で貧相な。助平付けな。恰幅跡のいい。分別盛りの。見るからにうだつの上がらない。内田卷)。中年男の(狡猾にうな物言い。好色な気持ちの乱れ=山田太)。ひとりで世間を生き抜いてきた中年男の陰気な迫力"日野。五十がらみの(年齢に似もやらぬ少年詩人のごとき気分屋坂口。老成した男のような頼もしさ坂口)。年配の白髪頭の男。 **ちゅうねんおんな【中年女】** 中年の(女の色香があふれる。女性のような部厚い脂肪の層=畑)。こぎれいな中年の女性。品のいい中年の婦人。まるまると太った中年の女。滴るような中年の女の美しさ=石坂。五十年配の女性。問いつめられた夫が四十を過ぎた女のように居直る=大庭。品のよさそうな年配の女性。海堂。虚ろな目つきで中年女みたいにこめかみを揉。む宮本輝。小太りの中年女性。千刈。急に十年も年をとったように巻ける=中局年。齢を積む。無為に重ねた年齢を呪う。横山。寄る年波で行動が控えめになる。寄る年波に(抗しがたい。歩みも重い老人)。寄る年波には勝てない。 **かんれき【還暦】** 還暦を(祝う。岡近に控える。迎える)。船にも六十を過ぎる。六十の坂を越える。本卦帆んがえりで子供にかえる。本卦がえりを祝う。 **くるみ【胡桃】** 胡桃がカスタネットのような冴えた音を立ててぶつかる=向田。胡桃を(磨く。割る)。 **けつじつ【結実】** 見事な結実を見せる。▼結実する(稲の花が。思いが。指導が。努力が。長年の夢が)。実を結ぶ(考えが。研究が。思想が。修業が。努力が。恋愛が。長い修業期間が"小池)。 **こうねんき【更年期】** 更年期を迎える。更年期障害が(治まる。快方に向かう)。更年期障害に悩む。体に変調の来るデリケートな年頃=曽野。 **このみ【木の実】** 禁断の木の実。南北に長く木の実を海上に浮かべたような島塩野。瞳が椎しぃの実のように褐色の鋭い光をおびる"大江。大きな体格でどんぐりのように肥ふとっている=深沢。 **じゅくす【熟す】** 熟す(計画が。戦いの機が。テーマが)。手にした途端、蜜を滴らすほど熟した果実"長野。にくにくしいまでに大きく熟した乳房"吉行、真っ赤に熟した柿の実=川端。熟れた春の匂い。果物が熟れる。微かびに包まれて熟成したおいしいチーズのような男"山田詠。▼熟成する(機運が。酒が。チーズが。ワインが)。半熟の(柿。バナナ)。▼黄熟する(稲が。梅の実が。バナナが)。麦が黄熟して刈り取られる=田山。一望黄色く熟した稲田"外村。黄色に熟れた実。黄色く熟した田=田山。 **しょろう【初老】** 初老に(近い婦人。手の届く年)。初老の(域にさしかかる。きざしが根元に刻まれた女たち)。初老を迎える不安と淋しさ=瀬戸内。髪にちらほら白いものが目立ちはじめる年輩!半村。孫がいても不思議ではない年齢。眼尻に深い皴しゃを折り込んだ皺寄しゃせる"高橋和。乳房が老婆のように萎しょんでいる=高樹。八十の老婆のように腰が重い荻野。 **おばさん【小母さん】** ▼おばさん(親切な。世話好きな。話好きな。口さがない。人のいい。おっかなくて煙ったい=つか)。気のいいおばちゃん。 <510> # 熟す・老いる **としがいもなく【年甲斐もなく】**年甲斐もなく(女におぼれる。顔を赤らめる。恋をする。嫉妬する。気で惚れる。むきになる。胸がときめく。しどろもどろになる。菲やかな彩りの夢を見る。胸の高鳴りを覚える。つまらないことから喧嘩州んをする=海音寺)。いい年をして(恥をさらす。親の脛すねをかじる。子供っぽい声になる)。いい年こいてでれでれする。 **としより【年寄り】**▼年寄り(狡猾にっな。隠居した。植研跡れに片足突っ込んだ「篠田。小さな猿のような"遠藤)。年寄りから金を巻き上げる。年寄りに(優しくする。知り合いが多い)。頑固な年寄りに詳々にゅんと言い聞かせるように言う貫井。年寄りの(繰り言。取り越し苦労。冷や水。世迷い言に注い。一途な思いこみ。たわごとと片づけられる篠田)。土蔵の側面の壁が褪色して汚れた年寄りの肌のよう後藤。年寄りは目がさめるのが早い。▼お年寄り(壮健な。陽気で愉快な。一人暮らしの。耳遠い。身寄りのない)。お年寄りから金をだまし取る。お年寄りの深い知恵。髪も白さを増すばかりのような年頃!島崎。隠居して公園のベンチに佇炊たむ年寄りみたいに漠然と物思いに恥、ふける"原田宗。年寄りくさい猜疑心に心がが目尻の絞しゃににじみ出る―武田奈。ひどく年寄りくさく見える。年寄りじみた(歩き方。隠遁いいの生活。考え。暗い笑い。ため息。笑い)。やれやれと年寄りじみた呟きを漏らす"原田宗。老いらくの恋。老いらくを逢う。未だに翌鑠くしとして働けるくらいに元気。敬老の(気持ちを表す。念を示す)。願齢にいの大往生。願齢を感じる。年取った(犬。獣。人。両親)。かなりの高齢、高齢に達する。高齢化が(進む。止まらない)。高齢期を迎える。高齢者が(増える。生きづらい社会)。高齢者に声かけをする。高齢者の生活の安定を図る。高齢者を(介助する。大事にする。邪魔者扱いする。ないがしろにする)。老齢から来る衰えは争われない"井上靖。老齢に(及ぶ。達する)。 **ながいき【長生き】**長生きの秘訣。▼長生きする(うんと。せいぜい)。▼長生きさせる(親を。人を)。長い生を送る。長い寿命を保つ。迎える(九十歳で卒寿を。九十九歳で白寿を。七十歳で古希を。七十七歳で喜寿を。八十歳で傘寿を。八十八歳で米寿を)。延年を寿にとぐ。長命な(家系。人)。天寿と言ってもよい年齢で他界する=高樹。▼長らえる(命を。寿を。生を)。不老不死の(妙乗。霊薬)。仙人が飲んだという不老不死の酒。長寿を祝う。ことほぐ)。長寿延命の酒。不老長寿の(仙薬。秘薬)。 **ねんきん【年金】**年金が下りる。年金から天引きする。年金で細々食いつなぐ。年金に頼る。年金を受給する。頼りにする)。 **ねんれい【年齢】**年齢が(親子ほどに違う。かなり離れている。接近して見える。気持ちにブレーキをかける辿城)。年齢と経験を併せて考える。ある程度の年齢に達する。相当の年齢に達している。年齢の壁を乗り越える。年齢の差を(突きつける。見せつける。忘れる)。年齢はさまで違わない!柴田泌。年齢も職業もまちまち。年齢よりずっと若く見える。実際の年齢より幼く見られる。年齢を(数えで言う。満で数える)。満で年齢を数える。年齢に似合わぬ分別くさい顔で言う~北原。年齢的にそろそろ限界「近藤。年がさほど違わない。親子ほども年が違う。少し年が離れた女友達。年が離れている(一回り近く。孫ほども)。親娘ほど齢としが離れている当行。齢に似合わない化粧"安岡。年に似合わぬ(化粧。贅沢だいを言う)。取り回しが年に似ず巧み。年の(若い美人。頭三十代半ばの男。せいか忘れっぽくなる)。誰でも年の不安には勝てない。年の差を(気にする。忘れる)。親ほど年の違う男。年の離れた夫婦。年の割に世慣れていない。似たような年回りの二人。年よりも(老けた暗い顔。大人びて見える。遥かに若づくり)。年を一発で当てる。母親の死んだ年を越える。年を数える(数えで。満で)。年歯はんわずかに十七歳今更。齢にも五十を数える。百年の齢を持つ生き物。数えで二十歳ぶたになる。数え年七十七歳。 **はたらきざかり【働き盛り】**▼働き盛り(ぎらぎらと脂が乗った=赤瀬川。来年四十歳を迎えようという"里見)。働き盛りの(年齢。人)。働き盛りを(過ぎる。迎える)。脂の乗りきった年齢。分別盛りの(落ち着き。四十男。年齢)。三十五歳という分別盛りの人間"山岡。実業家として脂ののる壮年期"有吉。壮年期を迎える。 **ばんじゅく【晚熟】**晚熟な(画家。品種)。晩生诂くな娘。遅咲きの人。大器晩成型の人。 **ばんねん【晩年】**晩年に歩み入る。晩年の月日を送る。晩年を送る(幸福な。静かな。のどかに。抜け殻のような不幸な=消原)。▼晩年を過ごす(孤独な。不過な。悠々自適の)。人生の(終末。落日。仕上げ期を迎える=山岡。黄昏炊にどきにおけるささやかな幸福の一齣=人間)。この里を終焉しゅぅの地に選ぶ"山岡。晩節を(傷つける。汚す。全うする)。 **ふける【老ける】**▼老ける(めっきり。目に見えて)。老けて見える(十も二十も。年の割には。年よりずっと)。老けて見える質た。老け役を得意とする俳優。生え際に白いものが出ている。▼老け込む(母親が急に。ずいぶん。すっかり。めっきり)。三十三歳とは見えないほど老けこむ"有吉。老け込んだ顔。 **み【実】**蛇苺ひごぃのような赤い小粒の実=大岡。実が(鈴なりに生る。きれいに色づく。たっぷりと汁気を含む)。ナナカマドの実がふさふさと赤く実る。紙切れのような実が浮かんでいる塩っぽい味噌汁=小林多。英ミゃから弾ぜた実が緊雪はらのように落ちて来る佐藤春。真弓の小枝に真紅に近い朱色の鈴のような実がついている落合。雪見窓からみえる南天の赤い小粒の実が、かえって寒さを強調するように感じ<511> られる=高橋和。花が実になる。花も実もある男。実をたわわに実らせる。小さく赤っぽい杏ちんの実のような未発育なセクス=大江。 **みじゅく【未熟】**未熟で甲羅を経ていない=小沼。未熟な(意見。運転。演技。学生。テクニック。労働者。果物をせっかちにもぎとる。女の青くさい愛情"石坂。目にはありがちな誤謬に佐藤春)。もとより未熟の結果。技術の未熟を嘲嘱される。経験が浅い。貧弱な経験しか持たない。アマチュア並みの未熟さ=高橋二。己の腕の未熟さに舌打ちする=熊谷。未熟さを(糊塗する。悟る)。自分の未熟さを棚に上げて怒る。若輩のくせに生意気だ)。熟していない生硬な表現。若い成熟していない体。まだひよっこにすぎない。へなちょこな(腕前。男。体)。若造(生意気な。ほんの十八九の)。青臭い(考え。子供っぽさ。若造。あこがれに過ぎない。議論が鼻につく)。概念の青臭い殻が実生活の錯綜さ氷の中に脱ぎ棄てられる=中島敦。年相応の青臭さを感じる。▼青二才(未熟な。嘴の黄色い。尻の青い。配属されたばかりでまだ二十歳の"宮部)。青二才の(書生談義。分際で師の批評などおこがましい=中島敦)。青二才をむざむざ威張らせる手はない!本庄。ほんの駆け出し。駆け出し記者が一端の口をきく。駆け出しの(ぺいべい。若造みたいに迷う#日野)。医者になってまだ日が浅い藤沢。幼稚で単純な知識。幼稚な(ありふれた話。情熱に駆られる)。玩具のように幼稚な機械"山崎。 **みならい【見習い】**見習いの(運転手。社員)。見習い期間を終える。インターンの学生。インターンを経験する。試用期間(会社の。企業の)。試用期間が終わる。いっぱしの口を利くが半人前。半人前の(料理。くせに大きな口を利く)。まだ半人前の腕。 **みのる【実る】**▼実る(恋が。作物が。修業が。猛練習が。豊かに穀物が。膨らみが胸に。稲が黄色く。たわわに果実が。稲穂が黄金色に)。女の生命は音もなく熟し音もなく除みのる石川。たわわに実る(果実が。夏蜜柑忪いんが枝も)。豊かな実り。実り多い話し合い。実りが多い。百果のみのりに恵まれる=阿川弘。実り豊かな(雨。大地)。穀物の実りをもたらす。毎年たわわに見事な花をつける。平年並みの出来。生りが(いい。よくない。悪い)。▼生る(きゅうりが。果物が)。 **もうろく【耄碌】**耄碌した(頭。老人)。耄碌して使い物にならない。老人の意像ぶりに苦笑する。よぼよぼと歩く。よぼぼぼの老人。 **よせい【余生】**余生を(ゆっくり楽しむ。自分の楽しみのために使う山本昌)。余生を送る(安楽な。のんびりと)。老い先が(知れる。短い)。先の長くない老人。先の短い命。老後が(安心できる。不安)。老後に備える。老後をひっそり暮らす。▼老後を送る(気楽な。静かな。悠々自適の)。老後資金を(蓄える。貯める)。 **ろうがん【老眼】**細かい字がぼやけて見える=内海。老眼鏡をかける。老眼鏡がなければ脚をこわばらせた虫のようにぼけてしまう細かい字=大庭。 **ろうじん【老人】**老人(頑固一徹の。腰の曲がった。滋味のある。背の曲がった貧弱な。壮者をしのぐ元気な。ほら吹きの風変わりな。足元の覚求ない。白髪のまじった。なかなか肝の据わった。貧しげな身なりの。見るからに田舎風の。昔語りに生きる。同室の患者たちとも口をきかない偏屈そうな内海。いかにもよく年をとったという感じの“石坂。体中の水気がなくなってボキンと音がしそうに枯れている=向田。乾燥した果物のような滅しゃだらけの=伊坂。記憶に自信を喪失している=辻匹。少年のように活気に溢れた"本庄。過ぎた日だけが記憶に残ってその考えに沈んでいる=本庄。透き通るばかりに真っ白い髪の=小川。ひからびたミイラのような赤川。光るような白髪の見るからに海千山千の風貌を備えた=原田宗)。老人とは思えぬ(すばしこさ。身のこなし)。とても老人には見えない。老人の(扱いに慣れる。域に入る。気配を身につける。繰り言のような言葉。有鳥。骨ばった細い腕佐多)。しわがいっそう深くなり、椰子ゃしの殻に刻みこんだ古い奇怪な面のようになる老人の薄笑い“日野。人生に倦;み疲れた老人の愚痴"佐藤春。孫を相手に冗談を言っているような楽しげな老人の声内海。柔らかいもみ皮のような老人の手=林美。若かりし日がちらちらと木漏れ日のように老人の顔に降りかかる"有吉。老人を(介護する。食い物にする。大事にする)。老人くさい(ものぐさ。のろのろした人間"野問)。枯れ木のような老人夫婦"本庄。老人ホームに(入所する。入る。余生を預ける)。老い先の短い人!志賀。老い先短い身。お年を召した人大原。ものわかりのいい老人のような顔つきで大きくうなずく"三田。老人のように(嗄れ。れた声。のろのろと料理をいじる=武田百)。声が老人のように嗄れる=横山。すねた老人のようにうずくまる=畑。背を老人のように丸く曲げる"椎名綾。土地の古老を訪ね歩く。古老に(聞く。尋ねる)。少年のようなはにかみを浮かべた老獣医"高橋三。老年に足を踏み入れる。老年の夫婦が住む。肉体に老年の不幸を籠める。一生の秋深い晩のような老年の域に入る=大佛。▼好々爺に粉(平凡な。酒好きの。悠々自適の)。好々爺といった印象を与える。好々爺らしい陽気さ。 **ろうすい【老衰】**枯れ木の折れるように老衰で死ぬ"吉川。老衰で自然死する。老衰の翳かけがにじみ出る。老病の床に就く。老病を理由に引退する。 **ろうたい【老体】**老体ながら翌鑠砂くしとしている。老体をひっさげる。老軀ろうに硬打ちつ。老軀をさらす。老骨に鞭打って働く。老骨の意固地。 <511> # し **ろうがん【老眼】** 細かい字がぼやけて見える=内海。老眼鏡をかける。老眼鏡がなければ脚をこわばらせた虫のようにぼけてしまう細かい字=大庭。 **ろうじん【老人】** 老人(頑固一徹の。腰の曲がった。滋味のある。背の曲がった貧弱な。壮者をしのぐ元気な。ほら吹きの風変わりな。足元の覚束ない。白髪のまじった。なかなか肝の据わった。貧しげな身なりの。見るからに田舎風の。昔語りに生きる。同室の患者たちとも口をきかない偏屈そうな=内海。いかにもよく年をとったという感じの=石坂。体中の水気がなくなってボキンと音がしそうに枯れている=向田。乾燥した果物のような滅しゃだらけの=伊坂。記憶に自信を喪失している=辻。少年のように活気に溢れた=本庄。過ぎた日だけが記憶に残ってその考えに沈んでいる=本庄。透き通るばかりに真っ白い髪の=小川。ひからびたミイラのような=赤川。光るような白髪の=高井。皮膚が干からびて鳥の足を思わせる=日野。見るからに海千山千の風貌を備えた=原田)。老人とは思えぬ(すばしこさ。身のこなし)。とても老人には見えない。老人の(扱いに慣れる。域に入る。気配を身につける。繰り言のような言葉=有吉。骨ばった細い腕=佐多)。しわがいっそう深くなり、椰子の殻に刻みこんだ古い奇怪な面のようになる老人の薄笑い=日野。人生に倦み疲れた老人の愚痴=佐藤春。孫を相手に冗談を言っているような楽しげな老人の声=内海。柔らかいもみ皮のような老人の手=林芙。若かりし日がちらちらと木漏れ日のように老人の顔に降りかかる=有吉。老人を(介護する。食い物にする。大事にする)。老人くさい(ものぐさ。のろのろした人間=野間)。枯れ木のような老人夫婦=本庄。老人ホームに(入所する。入る。余生を預ける)。老い先の短い人=志賀。老い先短い身。お年を召した人=大原。ものわかりのいい老人のような顔つきで大きくうなずく=三田。老人のように(嗄れた声。のろのろと料理をいじる=武田)。声が老人のように嗄れる=横山。すねた老人のようにうずくまる=畑。背を老人のように丸く曲げる=椎名。土地の古老を訪ね歩く。古老に(聞く。尋ねる)。少年のようなはにかみを浮かべた老獣医=高橋三。老年に足を踏み入れる。老年の夫婦が住む。肉体に老年の不幸を籠める。一生の秋深い晩のような老年の域に入る=大佛。▼好々爺(平凡な。酒好きの。悠々自適の)。好々爺といった印象を与える。好々爺らしい陽気さ。 **ろうすい【老衰】** 枯れ木の折れるように老衰で死ぬ=吉川。老衰で自然死する。老衰の翳がにじみ出る。老病の床に就く。老病を理由に引退する。 **ろうたい【老体】** 老体ながら矍鑠としている。老体をひっさげる。老軀に鞭打ちつ。老軀をさらす。老骨に鞭打って働く。老骨の意固地。 **みのる【実る】** ▼実る(恋が。作物が。修業が。猛練習が。豊かに穀物が。膨らみが胸に。稲が黄色く。たわわに果実が。稲穂が黄金色に)。女の生命は音もなく熟し音もなくみのる=石川。たわわに実る(果実が。夏蜜柑が枝も)。豊かな実り。実り多い話し合い。実りが多い。百果のみのりに恵まれる=阿川弘。実り豊かな(雨。大地)。穀物の実りをもたらす。毎年たわわに見事な花をつける。平年並みの出来。生りが(いい。よくない。悪い)。▼生る(きゅうりが。果物が)。 **もうろく【耄碌】** 耄碌した(頭。老人)。耄碌して使い物にならない。老人の意地汚さに苦笑する。よぼよぼと歩く。よぼよぼの老人。 **よせい【余生】** 余生を(ゆっくり楽しむ。自分の楽しみのために使う=山本)。余生を送る(安楽な。のんびりと)。老い先が(知れる。短い)。先の長くない老人。先の短い命。老後が(安心できる。不安)。老後に備える。老後をひっそり暮らす。▼老後を送る(気楽な。静かな。悠々自適の)。老後資金を(蓄える。貯める)。 熟す・老いる-167 い小粒の実が、かえって寒さを強調するように感じられる=高橋和。花が実になる。花も実もある男。実をたわわに実らせる。小さく赤っぽい杏の実のような未発育なセクス=大江。 **みじゅく【未熟】** 未熟で甲羅を経ていない=小沼。未熟な(意見。運転。演技。学生。テクニック。労働者。果物をせっかちにもぎとる。女の青くさい愛情=石坂。目にはありがちな誤謬=佐藤春)。もとより未熟の結果。技術の未熟を嘲られる。経験が浅い。貧弱な経験しか持たない。アマチュア並みの未熟さ=高橋三。己の腕の未熟さに舌打ちする=熊谷。未熟さを(糊塗する。悟る)。自分の未熟さを棚に上げて怒る。若輩(のくせに生意気だ)。熟していない生硬な表現。若い成熟していない体。まだひよっこにすぎない。へなちょこな(腕前。男。体)。若造(生意気な。ほんの十八九の)。青臭い(考え。子供っぽさ。若造。あこがれに過ぎない。議論が鼻につく)。概念の青臭い殻が実生活の錯綜の中に脱ぎ棄てられる=中島敦。年相応の青臭さを感じる。▼青二才(未熟な。嘴の黄色い。尻の青い。配属されたばかりでまだ二十歳の=宮部)。青二才の(書生談義。分際で師の批評などおこがましい=中島敦)。青二才をむざむざ威張らせる手はない=本庄。ほんの駆け出し。駆け出し記者が一端の口をきく。駆け出しの(ぺいぺい。若造みたいに迷う=日野)。医者になってまだ日が浅い=藤沢。幼稚で単純な知識。幼稚な(ありふれた話。情熱に駆られる)。玩具のように幼稚な機械=山崎。 **みならい【見習い】** 見習いの(運転手。社員)。見習い期間を終える。インターンの学生。インターンを経験する。試用期間(会社の。企業の)。試用期間が終わる。いっぱしの口を利くが半人前。半人前の(料理。くせに大きな口を利く)。まだ半人前の腕。 <512> # 調べる・確かめる **あじみ【味見】**料理を味見する。女たちの味見をする『汁を小皿に入れて味を見る。毒味する(殿様の食事を。料理を)。 **アリバイ**アリバイが(崩れる。成立する)。完璧なアリバイがある。アリバイの(有無を確かめる。偽証を頼まれる)。アリバイを声高に主張する。確かなアリバイを作る。鉄壁のアリバイを崩す。アリバイ工作を頼む。 **うらづける【裏付ける】**理論が観測によって裏付けられる。裏付ける(学問的に。推理の正しさを"志茂田)。情報を裏付ける確実な証拠。裏付けが(取れる。必要)。財源の裏付けが乏しい。▼裏付けがある(言葉に事実の。実感のたしかな)。裏付けたるやあやふやきわまるもの=阿部。たいした裏付けもない。細部については今後の裏付け捜査にまたなければならない内田康。新しい世界観に裏打ちされた行為池澤。具体的な数字で裏打ちされた主張!浅川。深い絶望に裏打ちされた言葉=貫井。▼裏打ちされる(豊富な学織に。郗密な取材に)。 **かくにん【確認】**確認に手間取る。確認の電話を入れる。了承の確認を取る。猟犬のような目になってくといほど確認を繰り返す=内田味。▼確認する(安全を。戸締まりを。火の元を。宿の空きを。念のために。自分の目で。スケジュールを。当日の段取りを。覗のぞき窓から顔を。木人かどうかを。カードを一枚ずつ。文字を一つずつ。予約名簿で名前を"重松)。確認する勇気がない。一つずつ丁寧に確認していく。▼再確認する(位置づけを。原則を。予約を。法則の普遍性を)。身元確認を急ぐ。認証を(受ける。取得する。取り消す)。認証する(ユーザーを。利用者を)。 **かだい【課題】**課題(喫緊の。緊急を要する)。課題が浮き彫りになる。新しい課題が次々に出てくる。課題の図書を選ぶ。課題を(解決する。先送りにする)。 **ききかえす【聞き返す】**▼開き返す(反射的に。思わず。声を低くして。目を剣もいて。子供が物怖ものじせずに。居丈高になって。昂然に心とした態度で。事務的な口調で。素っ頓狂な声で)。 **ききこみ【聞き込み】**事実が聞き込みで明らかになる。鋭意開き込みに当たる。近所の開き込みに回る。現場一帯の聞き込みを徹底する。足を棒にして開き込みをつづける南条。一帯の家をしらみつぶしに回って聞き込みを重ねる=勝目。地道な開きこみ捜査。 **ききだす【聞き出す】**▼聞き出す(家の事情を。真相の一端を。名前を。巧みに。詳しく。根掘り葉掘り。本人から直接。無理やり。さり気なく気持ちを。様子をそれとなく)。激拗に聞き出そうとする。 **ききただす【聞き質す】**▼開きただす(事訳を。人柄を。病気の種類を。風評を。容感を。それとなく)。開きただす勇気を持たない。 **きく【訳く】**▼訊く(恐る恐る。声を潜めて。何食わぬ顔で。おどおどした声で。詰問するように重ねて。、心配そうな顔で。高飛車な調子で。半ば冗談めかして。なじるような語気で。ねっとりと絡みつくように。不機嫌そうな声で。他の用にかこつけて。面白くなさそうにしかめ面をして=内田成。谷とがめるような冷たい声で=福水。物怖託のじしない澄んだ声で=原田宗)。▼口調で訊く(乱暴な。冷静な。さり気ない)。 **きゅうめい【究明】**きちんとした究明がなされない。事件の究明が先決。▼究明する(死因を。事故の原因を。真相を。本性を。科学的に。徹底的に)。▼追究する(原因を。真実を。事故の本質を科学的に)。 **ぎんみ【吟味】**すべての要素を吟味比較する。吟味に吟味を重ねる。▼吟味する(十分に事情を。細部にわたって。実現のための方途を速やかに=光瀬)。 **けんきゅう【研究】**研究が(完成に近づく。軌道に乗る。広範囲に及ぶ。一区切りつく。飛躍的に進む。実を結ぶ。一段落を告げる。大詰めにさしかかる)。研究に(一生を捧げる。研究を重ねる。従事する。精を出す。熱中する。没頭する。余念がない。新風を吹きこむ)。財産を研究に使う。物真似も160では研究にならない。研究の(王道を行く。第一線に立つ)。暇を見ては研究を進める。▼研究を続ける(こつこつと。大学で)。▼研究する(具体的方策を。じっくり。心血を注いで)。▼基礎研究(地味な。息の長い)。基礎研究が応用へと発展する。基礎研究に光を当てる。基礎研究の(発展を望む。重要性を肝に銘じる)。研究開発に取り組む。助手として研究室に残る。綿密な学問的研究書。研究心(旺盛な。たゆまぬ)。研究成果を(公刊する。発表する)。未開拓の研究分野。研究論文をまとめる。▼探究する(科学を。語義を。語源を)。方法論に間違いがある。明確な方法論を構築する。 **けんさ【検査】**検査が(細部に渡る。長時間かかる)。検査の結果が出る。人間ドックで検査を受ける。検査する(安全性を。患者の便を。血液を。水質を。毒物の有無を。尿を。脳波を)。検査項目をチェックする。抜き打ちの所持品検査。無差別扣出の抜き取り検査。会計を監査する。輸入食品の検疫を強化する。一つひとつ手に取って検品する。ボディーチェックを受ける。▼臨検する(漁船を。船舶を)。税務署の査察が入る。査察する(現地を。工場を。施設を。実地に)。 **けんしょう【検証】**▼検証する(一連の経緯を。効果を。科学的に。客観的に。丹念に。一つひとつ)。事件を徹底検証する。死体を検視する。検視で死因を特定する。検分する(車内を。進み具合を。土地を持ち山を)。実地検分に出かける。 <513> # 調べる・確かめる **こころみる【試みる】**▼試みる(新しい企てを。懸命な演出を。最後の抵抗を。何度も説得を。領域の拡大を。遊び半分に見合いを。既成概念の突破を。ささやかな反抗を。すかさず反撃を。徹底した家捜しを。空しい自己弁護を。病からの脱却を。慎重に言葉を選びながら質問を=和久)。傷ついた翼でもっともっと翔けようとしている為のように自分の生を最後まで試みようとしている=堀。試みが(失敗に終わる。成功する。徒労に終わる)。試みを実行に移す。千変万化んがんの試みを次々と行う。多彩な試みを続ける。空しい武みをいくたびか繰り返す。運試しに(宝くじを買う。おみくじを引く)。小手調べに(軽く走る。練習問題を解いてみる)。本選挙への前哨戦。三途烂んの川の瀬踏み。瀬踏みする(先方の意向を。敵の出方を)。 **さぐる【探る】**▼探る(財布の小銭を。事件の真相を。打開の方向を。敵の弱点を、遠い記憶を。あるべき世界像を。執念深く疑点を。ドアに耳を押しつけて中の様子を。目を皿にしてあちこちを。もそもそとポケットを。行動を細大もらさず。バッグの底をこそこそと。ボケットをもぞもぞ)。道を探る(生き延びる。解決の。取るべき)。痛い腹を探られる。▼探りを入れる(慎重に。遠回しに。密かに。それとなく)。探るような目を向ける=和久。一歩一歩探るような歩き方"新田。腹の探り合い。▼探り合う(お互いの腹を。互いの心中を)。探り出す(恐分子を。原因を。人の秘密を)。心の隅々を探り回す。▼手探る(所在を。存在を)。▼かき探る(暗い中を。袋の中を)。そろそろと小当たりに当たってみる。▼探りまわる(家じゅうを。屋敷内を)。▼打診する(意中を。客の意向を。条件を)。探知する(魚群を。密かに内情を。レーダーで)。行動を密かに内偵する。極秘裏に内偵を進める。まさぐる(記憶を。ポケットを)。▼模索する(可能性を。さまざまな形式を)。 **しきんせき【試金石】**試金石(真価を占う。覚悟のほどを測る。姿勢が問われる)。ここが我慢のしどころ。ここぞという時。▼正念場(意志と知恵が問われる。指導力が試される。政治生命を懸けた)。ここが正念場だと必死で気を取り直すに井上ひ。岡いが正念場を迎える。 **しけん【試験】**試験が(終わる。目前に迫る)。試験に(受かる。落ちる。見事バスする)。一夜漬けで試験に臨む。お情けで試験にバスする。難しい試験に合格する。試験の(結果が出る。日が近く。ために猛勉強する)。試験は水物。試験をうまく切り抜ける。抜き打ちで試験をする。▼試験する(行動能力を。人物を)。期末試験が近づく。資格試験をクリアする。試験官が残り時間を宣言する。試験的に(実施する。導入する)。卒業試験が目の前に押し迫ってくる。卒業試験をレボートに切り替える。入社試験に(合格する。失敗する)。筆記試験を受ける。無試験で(入学する。入社する)。検定に合格する。検定を受ける。テストの(結果に一喜一憂する。点を取りすぎないようセーブする"光原)。▼テストする(性能を。忍耐心を)。 **じしょ【辞書】**辞書と首っぴきで本を読む。日本の近代的辞書の嚆矢にぅとされる「言海」。辞書は必ずしも万能ではない。辞書を座右に置く。頻繁に辞書を引く。太古から未来へと綿々とつながるひとの魂を乗せ豊穣なる言葉の大海をゆく舟三浦し。持ち重りがする分厚い字引き。百科事典を参照する。 **じっけん【実験】**実験が成功する。実験でデータを得る。地道に実験を繰り返す。ダミー人形を使って実験する"畑村。実験台に使う。実験的な(試み。作品。方法)。▼シミュレーションする(コストを。事業計画を。コンピューターで)。被験者を(集める。確保する)。 **しつもん【質問】**▼質問(核心に触れる。突拍子もない。的を射た。重箱の隅をつつくような。たいして意味のない。妙に絡みつくような=内田康)。質問が(核心に迫る。的を射ている。すらすらと口から出る。ひとつに溶け合い濁った印象となって頭の奥に沈澱する=中村真)。質問に(直接答えない。耳を貸す。うまく答えられない。正面から答える。とっさに答えられない)。いきなりの質問にたじろぐ。いちいち丁寧に質問に答える。最後の質問に移る。より突っ込んだ質問に入る。好奇心からの小うるさい質問にあう!宇野利。質問の(角度を変える。矛先を収める。矢を放つ。意図が分からない)。のらりくらりと質問の矛先を避ける原田宗。質仰を(喉元で必死に抑える。挟まずに耳を傾ける。矢継ぎ早に浴びせる)。幾つもの質問を重ねる。思いがけない質問を受ける。顔を見るや否や質問を浴びせかける。次々に質問をぶつける。とっさに質問を切り替える。似たり寄ったりの質問を繰り返す。のらりくらりと質問をかわす。無神経な質問を恥じる。同じ質問をテーブレコーダーを再生するように繰り返す西木。鳥が何をついばむような調子で質問を続ける=落合。矢で射るように質問を投げかけてくる=伊坂。余計な質問をしない。▼質問を発する(大胆不敵な。矢継ぎ早に。驚くべき。問の抜けた)。▼悪い質問(底意地の。どろどろと渦巻くような気色の"鷺沢)。▼質問する(意を決して。しつこく。埒らちもないことを。おずおずした声で。興味津々にいいふといった顔つきで=西木)。▼質問をする(的外れな。突っ込んだ。いきなりすこい)。質問したいことが山のようにある。口調で質問する(事務的な。冷酷な)。質問らしい質問もしない。質問事項を(書きとめる。メモする)。質問攻めにあって往生する。恐間を(口にする。発する)。質疑が始まる。質疑にすらすらと応答する。質疑応答に入る。 **じゅけん【受験】**受験の準備に忙しい。受験を周近に控える。受験する(高校を。大学を。腕試しに。滑り止めに)。受験戦争を勝ち抜く。熱熱を入れて受験勉強する。受験勉強に(明け暮れる。打ち込む。熱を入れる。本腰を入れる)。ウツウツたる受験勉強の日々飯田。大学受験に失敗する。滑り止めで受けた大学。1試にからむ不正事件。入試を間近に控える。入学試験に(落ちる。合格する)。 <514> # 調べる・確かめる **しゅざい【取材】**取材が一歩進む。取材に(精力を傾ける。何日もかける)。多くの記者が取材に駆けずり回る。報道陣がひきもきらず取材に来る。取材の目的を説明する。地道な取材を続ける。電話で取材を済ませる。取材する(手間暇かけて。事件の修羅場を。夜討ち朝駆けで)。▼取材した作品(郷土の生活に。歴史に)。各地を取材して歩く。取材源が明らかになる。取材源を(秘匿する。守る)。取材攻勢をかける。伝説に材をとる。 **しょうげん【証言】**証言が事実と合致する。あらゆる証言が一致する。嘘の証言がばれる。証言に(関心が集まる。信憑性礼も心がある。耳を傾ける)。証言を得て捜査本部が雀躍礼にくする=松本。虚偽の証言をする。▼証言する(アリバイを。組織の腐敗を。正直に。率直に。詳しく。三人の社員が口をそろえて=小林久)。証言台に立つ。 **しょうこ【証拠】**▼証拠(決め手になる。何よりの。論より。よく食べるのは健康な。信憑性の乏しい)。確実な証拠があがる。観測から証拠が得られる。暗躍を裏づける証拠がつかめる=津本。職意を具体的な証拠で見せる荒巻。証拠により合理的に推理する。動かぬ証拠を突きつける。謀反応の証拠を握られる。証拠をつかむ(決定的な。はっきりとした)。押収する(証拠の品を。証拠物件を)。証拠隠滅の恐れあり。証拠不十分で起訴猶予になる。証拠物件を分析する。物的証拠を(得る。つかむ)。▼証は、(異心なき。身の潔白の)。生きた証をこの世に残す。確証が一つもない。確証を得る。動かぬ確証を握る。証左を(得る。つかむ)。証書を(交付する。作成する)。証文を(受け取る。書く。思書する。もらう。渡す)。物証が(そろっている。乏しい)。波瀾似らの多い生涯の極印が据わっている=有局。脱落者の極印を打たれる。極印を押される(裏切り者の。下品の)。 **しょうにん【証人】**証人が出廷する。新たに有力な証人が名乗り出る=和久。証人に(立てる。先入観を植えつける)。証人を(喚問する。審問する。尋問する)。生き証人(震災の。戦後史の)。証人席に(座る。立つ)。 **しょうめい【証明】**一歩一歩証明を進める。証明する(アリバイを。存在を。正しさを。身の潔白を。無実を。科学的に。論理的に。疑う余地なく。理論の正しさを観測で。歴史的事実が冷酷に藤枝)。証明書を(発行する。もらう)。身分証明書を(提示する。内ボケットにしまう)。▼証ぁぁす(忠誠を。身の潔白を)。確証する(考えを。鑑定を。証言を。分析を。やり方を)。鑑札を取り出して見せる。証拠立てる(関連を。つながりを。犯意を)。▼証する(関心の強さを。事実を。犯行を)。傍証を(固める。並べる)。事実を明証する。具体的に例証する。例証をあげる。論証する(具体例で。資料を用いて)。実証を積み重ねる。実証する(因果関係を。予測の正しさを)。実証的な(学問。研究)。▼立証する(アリバイを。可能性を。正当性を。無罪を。有罪を。学問的に。論理的に)。 **しらべなおす【調べ直す】**▼調べ直す(慎重に。ファイルをしらみつぶしに)。捜査のやり直しを求める。再度チェックする。▼再吟味する(実験結果を。問題点を)。再捜査に(着手する。乗り出す)。▼再調査する(事件の経過を。事故原因を)。▼再点検する(捜査過程を綿密に。見落としがないように)。 **しらべる【調べる】**▼調べる(胞分ばの中身を。古い習俗を。念のために。かなり詳しく。手をつくして。車のナンバーから持ち主を。当夜の足取りを。異常なほど熱心に。一枚一枚念入りに。近所を軒並みに。しらみつぶしに。家の中を隈くまなく。帳簿を洗いざらい)。調べが進む。一応の調べがつく。官憲の調べを受ける。私立探偵を雇う。現地へ下調べに行く。事前に下調べをする。調べ物に時間を費やす。調べ上げる(組織の実態を。流通経路を。徹底的に。すっかり。とことんまで)。調べ回る(こっそり。躍起になって)。当たる(別の人間を。確実な情報源を。事件現場の周辺をしらみつぶしに。付近の家を片っ端から)。問題点を洗い出す。改める(財布の中身を。死体を)。アンケートを実施する。気象観測に従事する。閲けする(書類を。全軍を)。検札に回る。▼精査する(功卵を。事情を。内容を)。全員を点呼する。▼踏査する(現地を。実地に)。予定通り実地踏査を済ませて帰る。▼メーターを検針する(水道の。電気の)。先生の行動バターンや食べ物の好みを入念にリサーチする三浦し。検閲がこれから先も断固として拒否される世の中であることを祈る=有川。検閲の網にひっかかる。踏み絵に足をかける。踏み絵を強いる。かつての祖国と現在の祖国のどちらを選ぶかという踏み絵的な調査=西木。 **しれん【試練】**試練に(耐える。立ち向かう。直面する)。新たな試練の始まり。幾多の試練を経る。総選挙の洗礼を受ける。▼荒行(百日の。冬の)。荒行に挑む。▼行(断食の。無言の)。行が明ける。行に励む。生命を擦り減らす苦行。苦行に身を挺てぃする。難行苦行の末(悟りを開く。計画を達成する)。難行苦行はもうこりごり宮尾。難行に耐える。 **しんぎ【真偽】**真偽のほどは分からない。真偽のほどを確かめる。真偽はともかく妙に説得力がある=氷室。真偽をチェックする。噂の真偽を本人に確かめる。話の真偽を判別する術すべがない。虚実が激しく交差する。虚実を(尽くして戦う。取り混ぜた物語)。 <515> 虚と実がないまぜになる。真贋玑んの区別をつけにくい。事の真否は不明。 **しんさ【審査】**審査が遅々として進まない。審査を受ける。審査する(学位論文を。計画を。実績を)。資格乖査をバスする。オーディションにバスする。オーディションを片っ端から受けまくる。 **じんもん【尋問】**意地の悪い誘導的な訊問し从美濃部。繰り返し執拗な尋問を受ける。▼尋問する(不審な人物を。容疑者を)。不審尋問を受ける。警察の事情聴取に応じる。重要参考人として事情聴取を受ける。参考人を審問する。 **すいか【誰何】**誰何する(見張りが。出入りする人を。誰彼の区別なく)。名前を質ただす。 **スパイ**、敵対する組織から送りこまれたスバイ三浦し。スパイが敵国に潜行する。スパイの容疑をかけられる。スパイ容疑でつかまる。隠密を四方に放つ。敵国の間諜以礼ちが忠臣を装って入り込む=栗本。間諜を(送りこむ。放つ)。工作貝を送り込む。外交官の身分を隠れ蓑ぁのにして諜報活動を行う睐。敵の回し者と見破る。密偵を(送り込む。放つ)。 **せんさく【詮索】**それ以上の詮索をしない。詮索する(他人の生活を。不正の有無を。行動を一つひとつ。理由をあれこれと。根掘り葉掘りしつこく=中島み)。ひとの私生活を小うるさく穿盤せんする=加賀。詮索げな目でじろじろと見る。穿ぅがった(推測。見方)。さしたる詮議ぞんだてもせずに雇い入れる=真継。詮議だてをするように児にらむ=村松。 **そうさ【捜査】**警察の威信をかけた徹底的なシラミつぶしの捜査=飯田。捜査が(行き詰まる。大詰めにくる。失敗に終わる。着々と進む。難航する。袋小路に入る。空振りに終わる)。捜査で手柄を立てる。捜査に(当たる。協力する。着手する。熱が入る)。警察が捜査に入る。事件の捜査に加わる。本格的な捜査に乗り出す。捜査の(網にかかる。采配を振る。手を逃れる。任に就く。方向を誤る。盲点をつく。対象に浮かび上がる。原点に立ち返って地を這ょうような捜査を行う。志茂田)。身辺に捜査の手が及ぶ。捜査の手が(身辺に及ぶ。伸びる)。捜査する(事件を。犯罪を。極秘に。慎重に。徹底的に)。強制捜査に(乗り出す。踏み切る)。強制捜査のメスが入る。捜査員が聞き込みに回る。大量の捜査員が動員される。捜査員に身柄を引き渡す。捜査過程を克明に追っていく。水も漏らさぬ捜査陣。捜査陣の動向をいち早く察知する。容疑者が捜査線上に浮かぶ。捜査態勢を敷く。捜査当局の隠微な動きを嗅ぎつける。捜査網をくぐり抜ける。下手人の探索に躍起となる。▼手入れ(大がかりな。警察の)。賭場に手入れがある。 **たしかめる【確かめる】**▼確かめる(意思の有無を。正確な時刻を。手紙の宛名を。臭いの正体を。部屋の番号を。窓から天気を。自分の目で。作品の仕上がり具合を。根掘り葉掘りその日の行動を。記憶を一つひとつ。間違いがないか。見落としがないか。それとなく相手の人相風体を=阿刀田)。記憶にある幼時から現在にいたるまでの道程を逐一たしかめる=立原。何度確かめても安心できないというように念を押す小川。心配で確かめに来る。何気なく互いの感情を確かめ合う。高橋和。生まれた年の干支を尋ねる。念を押すように言う。話の裏を取る。身分証明書の提示を求める。一たん口を噤っくみ反応を確かめるように周りを見廻す高井。一歩一歩を確かめるようなあやふやな足取り“加賀。確かめるように反問する。一足一足確かめるように歩く。▼跡づける(意味を。動きを。過程を。関係を。詳細に事実を)。改める(紙幣の裏表を。絵図を一枚一枚)。信憑性の低い情報の裏取りを命じられる=横山。証言の裏を取る。首実検に立ち会う。▼首実検をする(殺人犯の。容疑者の)。 **たずねる【尋ねる】**▼尋ねる(親類の有無を。風呂の加減を。欲しいものを。怒ったように。言葉鋭く。語尾を上げて。さあらぬ体で。巡査のように。根掘り葉掘り。前置きもなく。家までの道順を。事の成り行きを。子供の成長ぶりを。捜査の進展の具合を。ねんごろに健康を。最も気になる点を。挨拶もそこそこに。からかい半分に。ずかずかと会釈なしに。通りすがりの人に。なんの気なしに。方法を念入りに。頃合いを見てさりげなく。しどろもどろになって。畳みかけるように。ちょっと間をおいてから。内心びくつきながら。逸はゃる胸を抑えて。人を食ったように。不審そうな表情で。待ちかねたように。身を乗り出して。目を覗のぞきこんで。面と向かってはっきりと。理由をしつこく。事のついでといった口調で清水俊。答とがめるような声音で『福永。念を押すように=綾辻)。うかがうような眼をしてたずねる土村。機嫌を取るように訳せずねる=黒井。顔で尋ねる(気遣わしげな。真剣な)。口調で尋ねる(横柄な。改まった。何気ない。揶揄ゃっする。確かめるような。優しさのあふれた)。声で尋ねる(気弱な。殊更に明るい。優しい。消え入るばかりの。そっとするような静かな=曽野)。▶調子で尋ねる(高圧的な。何気ない)。尋ねたい(気持ちを飲み込む。ことが山ほどある)。何から尋ねていいか判らない。尋ねようとした声が自分でも驚くほど刺々に労しい連城。わかりきっていることをわざとらしく訳ね返す=黒井。▼お伺いを立てる(上司に。神仏に)。▼喚問する(国会に。法廷に)。▼諮問する(再建の方途を。審議会に)。聴閉会を開く。物問いたげに見つめる。自問自答の末に得た答え。自問自答を繰り返す。自分の胸に問い続ける。 **だめおし【駄目押し】**だめ押しの(一点。ホームラン)。明日の会合に来るようだめ押しする。百尺竿頭いかんしが一歩を進める=円地。ダメを押すように(間う。言葉をおっかぶせる=人間)。他言は無用と釘をさす三浦失。連絡を取らないように釘を刺す。釘を刺しておく(今のうちから。もう一言)。鉄砲は絶対に行き届く)。探偵社に調査を依頼する=笹沢。▼調査する(詳細に。慎重に。徹底的に。念入りに。抜き打ちで。漏れなく。沿道をしらみつぶしに)。実態調査に乗り出す。 <516> **ためす【試す】**試す(新しい療法を。味方か否かを。練習の成果を。稽古を実地に。人間の可能性を。ありとあらゆる贅沢だいを=阿刀田。のるか反るか、最後の運を徳田)。▼試してみる(失敗を覚悟のうえで。とっかえひっかえ)。試してみる価値がある。試してみるのも一興。試される(外交力が。指導力が。責任感が。創造力が。存在意義が。勇気が。グローバル度が)。試しに一つ作ってみる。どこか人を試すような挑戦的な気配"五木。試すように相手の顔を覗のぞく。腕試しに模擬試験を受ける。試運転(機械の。新車の。電車の)。いろいろ試行錯誤する。あれこれ試行錯誤を重ねる。試行を繰り返す。▼試用する(サービスを。新薬を。ソフトウエアを)。力試しの(問題。練習試合。つもりで受験する)。▼トライする(難問に。心機一転今までとまったく違ったことに=畑村)。 **チエック**厳重なチェックを受ける。入念にチェックを繰り返す。▼チェックする(進捗しいう状況を。メールを。厳重に。丹念に。厳しく。商品の売れ行きを。税金の使い方を。正しいかどうかを。出入りの人物を。細かいところまで)。チェック機能を果たす。 **ちょうさ【調査】**調査が(核心に迫る。まとまる。行き届く)。探偵社に調査を依頼する=笹沢。▼調査する(詳細に。慎重に。徹底的に。念入りに。抜き打ちで。漏れなく。沿道をしらみつぶしに)。実態調査に乗り出す。身辺調査に時間をかける。調査結果をノートにまとめる。調査隊を派遣する。▼調査中(鋭意。目下)。内部調査を終了する。▼探検する(極地を。世界各地を)。探査する(月面を。資源を。プライバシーを)。 **てらしあわせる【照らし合わせる】**▼照らし合わせる(原文と訳文を。生活体験に。過去の発言と)。鑑みる(過去の例に。経験に。現状に。諸般の情勢に。先例に)。前例に徴する。客と名簿を突き合わせる。引き合わせる(原文と翻訳を。積み荷量と品種を)。伝票と商品を読み合わせる。書類と積み荷の照合を終える。照合する(指紋を。データを。写しを原本と)。 **てんけん【点検】**点検をしっかりと行う。▼点検する(戸締まりを。服装を。持ち物を。具合を子細に。資料を子組らしく。チェックリストに従って。一つ一つの部品を慎重に"小川)。 **とい【問い】**▼問い(際限のないほど無数の隆。能ずがりつくような=山本周)。問いが(喉元まで出てくる。矢継ぎ早に飛びだす。期せずして皮肉になる=獅子。岩の肌に打ち込まれるのみのように心に突き刺さる"柴田翔)。問いに(答えを出す。正直に答える。肯定も否定もしない。答えようとしない。まともに答えない。対する答えを頭の中で組み立てる=貫井)。今もって問いに答えられない。唐突な問いに狼狽いする。ぽつりぽつりと問いに答える。予想外の問いに面食らう。皮肉な沈黙で問いに酬もくいる"大佛。▼問いにとまどう(意外な。思いがけない)。いずれの問いにも答えることができない。問いを(心に去来させる。心の内深く持ち続ける)。恐る恐る問いを発する。懲りずに野暮な問いを繰り返す。問いかけが心に浮かぶ。問いかけにぎくりとさせられる。股間に答える。 **といあわせる【問い合わせる】**▼問い合わせる(警察に。念のために。電話で)。問い合わせが(相次ぐ。殺到する。日に日に増える。日を追って増える)。メールで問い合わせがある。問い合わせに答える。問い合わせの電話がかかってくる。▼開き合わせる(出発の時間を。都合を)。▼照会する(経歴を。身元を)。海外から引き合いがある。 **といかえす【問い返す】**▼問い返す(疑り深そうに。おうむ返しに。切り口上で。気色ばんで。夢中になって。いぶかしそうに。質問に答えず逆に。敵愾心にいがをあらわにして。自分の言ったことが谷とがめられたかのように生真面目に=黒井。眉一筋動かさずに=高木。感情を押し殺した声で三好後)。▼問い直す(功罪を謙虚に。念を押すように。腑に落ちない顔で)。▼反問する(けげんそうに。いぶかしそうに。うさんくさそうに=中河)。 **といかける【問いかける】**▼問いかける(居丈高に。自分自身に。熱心に。正面切って。胸の中で、さりげない声で。詰なじるような目で=連城)。立ち入った問いかけをする。言う(かまをかけるように。口占氷はを引いてでも見るように徳田)。 **といただす【問い質す】**▼問いただす(事の次第を。事件の真相を。疑問を覚えて。気色ばんで。しつこく。根掘り葉掘り。誠意のあるかなきかを。断固とした口調で。百の言葉を煮詰めたような重さをこめて安部)。今更問いただすべき筋合のものでもない=本店。問いただしたいことが山ほどある。▼斜問する(悪鬼の所業を。犯行の動機を。使い込みの件を)。検問所を設ける。警察の検問に引っかかる。査問委員会を開く。査問にかける。▼質す(噂の真偽を。可能不可能を。疑問を。話の食い違いを。刺々しい口調で)。警備員に万引きを見とがめられる。ぶざまに脱ぎ捨てた靴を見とがめる。 **といつめる【問い詰める】**▼問い詰める(厳しい口調で。声を強めて。語気鋭く。納得するまで。根掘り葉 # 心配する・ほっとする <517> **にんじゃ【忍者】** 忍者のように(高だかと跳ぶ。ひっそりとしている=宮部)。大腿部の奥の方まで忍者のように忍びこんだらしい蚊の食いあと=木山。 **パスポート** バスボートの提示を求める。バスボートを(発給する。見せる)。旅券の(交付を受ける。申請をする)。旅券を(発給する。発行する)。 **ぶんせき【分析】** 微に入り細をうがった分析。データぶんせきの分析を行う。奥行きの深い分析を展開する=柳田。分析する(過去の事例を。事故原因を。資本主義を。発展の過程を。文明の本質を。理論的に。細部に至るまで克明に。いろいろな角度から。ミスを引き起こした誘因を=柳田)。▼解析する(主因を。膨大なデータをコンピューターで)。経済の動向を析出する。 **みきわめる【見極める】** ▼見極める(国際情勢を。才能を。正体を。真実か嘘かを。全体像を。流離興亡を。行く末をしっかりと。同類であるか否かを永井龍。忻り合いを目を据えて=村上元)。見極めが(うまい。つく。難しい。悪い)。見極めをつける。▼同定する(生物の種を。成分を)。 **みさだめる【見定める】** ▼見定める(健康状態を。事態の進行を。次の変化を。人の動きを。顔をはっきり。一挙手一投足を。歴史の行く手を)。定かに見定めもできない。状況の見定めがつく。 **みとどける【見届ける】** ▼見届ける(一部始終を。息子の結婚を。落着の様子を。最後まで。検査から返還までを。歴史的な一瞬を。この目でしっかり。正体をはっきりと。臨終の瞬間までをきっちり)。見届けたいと思う一心。しっかりと目を据えて見る。 **みなおす【見直す】** ▼見直す(根本的に。全面的に。抜本的に。新しい目で。改めて。一から。根底から。一度も。縦割り行政の弊害を)。見直しが(終わる。俎上にのぼる。始まる。本格化する)。根本的な見直しが必要。見直しを(進める。俎上に載せる)。掘り)。問い詰められて返事に困る。喉から絞り出すような声で詰問する=長塚。▼糾明する(汚職を。罪状を。責任を。横領金の使途を)。▼詰問する(陰険な口調で。喧嘩州んっぽい調子で)。サービスの悪さを詰問される。詰問するような鋭い言葉"吉川。詰問するようにげしく問いつめる三島。さながら学位審査のための口頭試問を思わせるほどの詰問調内橋。 **とう【問う】** ▼問う(神の存在を。人間の怪重を。質をうるさく。鋭い語気で。根掘り葉掘り。事の正邪善悪研究の結果を世に。努めて物静かに。帽子をとって感悪いんに=国木田)。問うに落ちず語るに落ちる。改めて問うまでもない。▼信を問う(国民に。明野に。有権者に)。有権者の信を仰ぐ。センスの良し悪しを問わず。▼問わない(勝ち負けを。規模の大小を)。物問いたげな(視線を投げる。目で見守る)。 **とりしらべる【取り調べる】** ▼取り調べる(罪状を。被疑者を。任意同行して)。取り調べが(終わる。一区切りつく)。情理を尽くした取り調べに定評がある刑事=横山。取り調べのあらましを報告する。警察で取り調べを受ける。本格的な取り調べを開始する。取調室に連れて行く。一も二もなく取調室の空気に恐れをなしてしま~~江戸川。足早に取調室を後にする。 **とわれる【問われる】** ▼問われる(出処進退が。存在理由が。刑事責任を。偽証罪に。契約違反に。公人としての自覚が。ブロとしての資格を)。責任を問われる恐れが十分にある。問われるままに答える。間われで名乗るもおこがましいが。 **なんもん【難問】** どこから手をつけていいかわからないような難問久米。難問が(山積する。はだかる。待ち構える。横たわる)。目の前の難問が一つ片づく。難問と(格闘する。取り組む)。雞門に(悪戦苦闘する。頭をひねる。突き当たる)。難問を(突きつける。解く。見事に処理する)。難問題が前途に横たわる。 **もんだい【問題】** ▼問題(このうえなく複雑な=石田。いかにも処置のつかない!大佛。同棲に至るのは時間の小林信)。問題が(明るみに出る。多岐にわたる。ほぼ片づく。暗礁に乗り上げる。一気に解決する。うるさくこじれる。立ち消えになる。宙ぶらりんになる。広がりを見せる)。試験の問題が漏れる。派生的に問題が生じる。毛糸がほつれるように次から次へと問題が現れる=阿佐田。分からない問題が黒い鳥のように覆いかぶさって身体をつつき廻す=鳥尾。▼問題がある(素行に。内容的に。受け入れ態勢に)。問題から解放される。さして問題とするに足りない。問題に(解答を与える。鋭く切り込む。するに足らない微小なもの=井上靖)。現実の問題に立ち返る。問題の(解決に当たる。核心に触れる。根が深い)。特に問題は見当たらない。問題を(うやむやに葬る。単純化させて考える。突きつめて考える。深く掘り下げる。分析的にとらえる)。幾多の問題を抱える。形式的な枝葉の問題をうるさくいじくりまわす“石坂。▼問題にする(結果の成否を。社会的影響を)。▼問題ではない(謝ってすむ。勝ち負けは。さしたる。怪々に断すべき。他人の口出しすべき。取り返しのつく)。問題はないと一蹴する。▼大問題(教育上の由々しい。世間を揺るがす。想像を絶する人生上の)。問題意識を持つ。問題解明に取り組む。▼問題視する(資質を。暴言を)。問題点が浮き彫りになる。問題点にメスを入れる。問題発言の波紋が広がる。クイズに(挑む。熱中する)。出題する(クイズを。なぞなぞを。各分野から三問ずつ)。例題を(出す。解く)。 **もんどう【問答】** 問答が(白熱する。立ち消えになる)。問答の矛を収める。問答を交わす。一問一答に熱が入る。一問一答を(試みる。続ける)。 <518> # 知られる・名乗る **あくめい【悪名】**悪名を身に負いながら生を長らえる。悪名が(高まる。鳴りとどろく)。悪名を(一身に負う。天下に鳴らす)。後世に悪名を残す。悪名高い(悪行で。ギャングとして。ほら吹きとして)。悪名高い大親分。 **あだな【純名】**キュービーさんのあだ名そっくりの笑顔・林京。あだ名で呼ぶ。あだ名をつける。年地殺しの仇名効だを持つ佐野。皆から小言幸兵衛と綽名されているくらい口八釜がちゃしい=永井荷。愛称で呼ぶ。ホテルの神様という異名を奉られる井上ひ。ニックネームをつける。おかげさまで要ぃらん二つ名がつきました肴川。 **うきな【浮き名】**浮き名が立つ。浮き名を流す。浮き名を立てる(派手な。一世一代の)。知る人ぞ知る艶岡。艶聞が絶えない。艶名を(謳うたわれる。馳せる)。嬌名を(謳われる。馳せる)。 **かぞえられる【数えられる】**▼数えられる(五指に。五指のうちに。白眉に。いわば名士の一人に。候補者の筆頭に。代表作の一つに。文筆家の端くれに。江戸三大道場の一つに=津本)。指に数えられる盛んな場所幸田文。一二と指を屈する強いチーム。 **かめい【仮名】**仮名(筆者が勝手につけた。便宜的に付けた)。名前を仮名にする。匿名で(金を送る。投書する)。匿名に隠れ言いたい放題。匿名の通報で事件が発覚する。 **かめい【家名】**家名が(汚れる。立つ)。先祖代々の家名に傷をつける。家名の断絶を申しつける火坂。家名を(あげる。汚す。再興する。継ぐ。復活する日を待ちかねる=池波)。 **ぎめい【偽名】**偽名がばれる。偽名でアパートを借りる。いくつかの偽名を使い分ける。宿泊者名簿を偽名にする=泉受。嘘の名前を教える。▼偽称する(国籍を。職業を)。仏称を見破る。変名で旅館に泊まる。 **しられる【知られる】**▼知られる(美貌をもって。消息がおぼろげながら=田山)。世に知られる学者。名の知られた画家。広く知られた事実。この在で名の知られた屋敷"若竹。世間に名を知られている。知られた学者(世界に名を。世に)。警察の知るところとなる。世人の耳に洩もれる。名が隅々まで行き渡る。人の耳目に触れる。面が割れる。▼表沙汰になる(不祥事が。不正行為が。粉飾決算が。スキャンダルが)。知名度が(高い。急カーブを描いて上昇する"五木)。世に名が聞こえる。演劇界で鳴らした女優。新橋で鳴らした芸者。名をほしいままにする(天下無敵の。天才の。名編集者の。名門企業の。新鋭な科学評論家の)。▼耳に入る(教授の。警察の。マスコミ筋の)。 **しれわたる【知れ渡る】**▼知れ渡る(遠国近国に。奇行が全校に。名が世界に。噂が隣近所に。あっという間に。騒動が江戸じゅうに。内外にあまねく。一夜のうちに城下の隅々まで=本庄)。広く人口に膾炙いいする。隠れもない(事実。武士の鑑砂が。舞の名手)。周知の事実。 **せいめい【姓名】**姓名を書き入れる。旧姓に戻る。他姓を名乗る。フルネームで署名する。フルネームを(書き入れる。読み上げる)。名字を呼ぶ。 **なだかい【名高い】**名高い(名医として。米の産地として)。漆器で名高い町。名が雷のごとく敵味方双方のうちに鳴り響く=山田美。高名が全国に知れ渡る。世界的に高名な学者。この地方の特産。特産品を売る。名が(とみに高まる。海外にもとどろく。世界にとどろく。天下にとどろく)。少年時代から俊才の名が高い=山本周。文武に名を得た名将。天下に名をとどろかせる。全国に名を鳴り響かせる。土地の名産。名産の品。名声が一世に高い。 **なづける【名付ける】**長男を太郎と名づける。名前を決める。▼ネーミンク(軽薄な。卓抜な)。銘打つ(極上品と。産地直送と)。命名を依頼する。 **なのりでる【名乗り出る】**▼名乗り出る(警察に。自発的に。証拠の品を手に。新たに有力な証人が「和久)。警察署に自首して出る。▼自首する(罪を認めて。犯行後)。出頭する(容疑者が。警察に。裁判所に。定められた日時に)。 **なのる【名乗る】**▼名乗る(旧姓を。自分の名を。姓名を。ブロを。本名を)。問われて名乗るもおこがましいが。口に出して名乗り合う。▼名乗りを上げる(口々に。市長選に。知事選に)。▼自称する(神の子を。啓蒙家かもを。すれっからしを)。名前を(明かす。告げる)。 **なまえ【名前】**何となく懐かしい感じのする名前"五木。名前が(胸に浮かぶ。ずらりと並べて書いてある)。顔と名前が一致する。犯人の名前が判明する。容疑者として名前が挙がる。リストに名前が載る。交渉を持った女たちの名前が蝙蝠にらのように部屋を飛びまわる=辻井。名前に(開き覚えがある。敬称をつけて呼ぶ。心当たりがない)。送り主の名前に思い当たるところがない。かつての栄光の名前にこだわる。名前にははやりすたりがある。名前の(一字を貰う。由来を説明する)。名前を(大いに売り出す。記憶にとどめる。手帳に書きとめる)。慰慰霊碑に名前を刻む。遠慮がちに名前を呼ぶ。思い出すままに名前をあげる。巨匠たちの名前を片っ端から言う。紺の襟に白く名前を染め抜く。新聞に名前を書き立てられる。すんなりと名前を呼べない。背後から名前を呼ばれる。人の名前を勝手に使う。一人一人の名前をしっかり覚える。芳名録に名前を記す。マスコミに名前を売る。名簿から名前を削る。料理屋の名前を聞き出す。出かかった名前<519> を懸命に喉元へ押し返す高杉。不気味な毒虫の名前を耳にしたごとく眉が痙攣心する=野上。▼名前を書く(ずらりと。でたらめの)。▼名前をつける(こけ威しの。紛らわしい)。▼手帳に控える(住所氏名を。名前と住所を)。学名をつける。曲名を告げる。氏名が容疑者リストに上がる。氏名を明らかにする。社名にこだわる。結婚によって姓が変わる。題名をつける。具体的な地名を挙げる。由緒ある町名を保存する。通称で通す。名が心に浮かぶ。名に箔をつける。春とは名のみの寒さ。名は体を表す。懸命に名を呼ぶ。名を呼ぶさえ汚らわしい。病名を告げる。法名をつける。名跡を継ぐ。名義を書き換える。名称をつける。銘を刻む。 **ペンネーム**ペンネームで小説を書く。ペンネームを使う。▼ベンネームにする(出身地を。祖国の名を)。芸名を(使う。屋号にする)。 **ほんみょう【本名】**本名がばれる。本名で登録する。実名で報道する。実名を(公表する。伏せる)。具体的に実名を挙げる。本当の名前を名乗る。 **むめい【無名】**無名に近い作家。無銘の(絵。刀。書)。無名の(新人。天才詩人)。道端の霜の消えることく世に無名の死に終わる=山手。無名のまま(一生を暮らす。死んでいく)。知る人ぞ知る。名声とは無縁な生活。草莽、無名の者。知名度が(ゼロに等しい。低い。全くない)。低い知名度に甘んじる。名無しの権兵衛。名前も知らない(雑草。花)。名も知れない大学。名もない(家の出身。草花。庶民。労働者)。名もなく(消えていく。朽ち果てる)。マイナーな(行楽地。作家。存在)。 **めいせい【名声】**▼名声(世界的な。輝かしい。噴々さくたる。不朽の)。名声が(大いに上がる。津々浦々にまで鳴り響く=高橋克)。かりそめの名声に囲まれる。男は名声にもろいもの太宰。店の名声に一も二もなく恐れ入る=開高。名声を(売り物にする。確固たるものにする。遠くまで広める。ほしいままにする。世にとどろかす)。世界的名声を博する。相当の名声を得る。夫の名声を容赦なく利用する=中村呉、命よりも名を惜しむ。功なり名を遂げる。名を(後世に残す。不滅にする)。▼名を残す(永遠に。歴史に)。文名が(徐々に上がる。高い)。文名愦々たる大家。▼誉れが高い(秀才の。武勇の。文武の)。名聞に(こだわる。とらわれる)。勇名が(とどろく。鳴り響く)。令名が高い。▼名をなす(天下に。暗黒街で。社会の中軸に入って)。 **やごう【屋号】**屋号で呼ぶ。屋号を(書き入れる。染め抜いた前垂れ)。商標を登録する。店名が心に引っかかる。▼商号(著名な。知名度のある)。商号を(登記する。変更する)。 **ゆうめい【有名】**誰ひとり知らぬ人はいないほど有名鈴木四。有名な(冒頭の一節。一節を引用する。言葉を思い出す)。秋の紅葉で有名な渓谷。江戸でも有名な老舗。かの有名な大スター。誰でも知っている有名な話。歴史上有名な裁判。ガイドブックにはかならず減っている有名な店!宮部。巧妙に客に酒を奢ぉこらせることで有名な女=山口。▼有名な男(口やかましさで。女のように嫉妬深いので=山本周)。有名になる(全国的に。つとに。一躍。風雅の里として)。顔が売れている。業界でも五本の指に入る会社。五本の指に数えられる。改めて紹介するまでもない。誰ひとり知らぬ人はいない。指折りの人物。一夜にして有名人となる。束の間の有名人に変身する。有名人をインタビューする。今や時の人。▼聞こえが高い(酒豪の。美人の)。音に聞こえた(大剛の勇士。盗賊。名家)。あたりでも聞こえた店。剛直の士として聞こえた存在。世に聞こえた剣客。辣腕で聞こえた人物。世間では誰知らぬ者もない!舟橋。著名な(学者。作家。探検家)。天下に名を喧伝する。名うての(女たらし。詐欺師)。剣を取っては名うての名手。名が(後世に伝わる。いやが上にも高くなる。押しも押されもせぬものになる。近隣に聞こえる。しばしば新聞に登場する。全国に浸透する)。名が知られる(世界に。世間に。人々に)。世界中に名が知られた大企業。名代の(うどん屋。まんじゅう。店)。名だたる材木の産地。業界に名だたる大企業。天下に名だたる医者。名のある大学を出る。名の聞こえた作家。名の知れた(存在。盗賊。店の主人)。歴史に名前が残る。剣客として名前を知られる。歴史に名を(刻む。伝える)。県外にまで名をとどろかす。詩人として名をなす。中央の詩壇に名を示す。広く世間に名を知らしめる。▼名をあげる(天下に。学間の道で)。名をとどめる(後世に。歴史に)。快男児として天下に響いている。名物にうまいものなし。上州名物の空っ風。槍々で天下に雷名をとどろかす=山岡。一世を風靡したテレビドラマ。かつて一世を風靡したシャンソン歌手=小池。▼隠れもない(名が天下に。世に)。▼名が売れる(世間に。芸者として)。名が売れている会社。吉原でちょっと名を売ったほどの遊び人藤沢。学会で名が通っている。名の通った(大き父社。出版社。店)。かなり名の通ったホテル。名の通っているレストラン。名にし負う(外国の都。急流の鳴門。名将)。▼名を馳せる(画壇に。日本中に)。▼馳せる(声名を。盛名を。文名を。勇名を。高名を天下に)。ブランドをありがたがる。ブランド物を下品に着こなす海堂。▼呼び声が高い(つとに天才の。次期社長として)。 **よびな【呼び名】**まさにうってつけの呼び名。平生呼び慣わされている。誰言うとなく呼び慣わす。▼称号(博士の。名誉教授の)。称てを与える。さまざまな事業を総称する。▼呼び捨てにする(下級生を。馴れ馴れしく。人もなげに誰彼の名を)。「さん「つけにする価値ない者と心に決めたように呼び捨てる宮木す。 <519> # 知られる・名乗る―169 前を削る。料理屋の名前を聞き出す。出かかった名前を懸命に喉元へ押し返す高杉。不気味な毒虫の名前を耳にしたごとく眉が痙攣心する=野上。▼名前を書く(ずらりと。でたらめの)。▼名前をつける(こけ威しの。紛らわしい)。▼手帳に控える(住所氏名を。名前と住所を)。学名をつける。曲名を告げる。氏名が容疑者リストに上がる。氏名を明らかにする。社名にこだわる。結婚によって姓が変わる。題名をつける。具体的な地名を挙げる。由緒ある町名を保存する。通称で通す。名が心に浮かぶ。名に箔をつける。春とは名のみの寒さ。名は体を表す。懸命に名を呼ぶ。名を呼ぶさえ汚らわしい。病名を告げる。法名をつける。名跡を継ぐ。名義を書き換える。名称をつける。銘を刻む。ペンネーム ペンネームで小説を書く。ペンネームを使う。▼ベンネームにする(出身地を。祖国の名を)。芸名を(使う。屋号にする)。 **ほんみょう**【本名】本名がばれる。本名で登録する。実名で報道する。実名を(公表する。伏せる)。具体的に実名を挙げる。本当の名前を名乗る。 **むめい**【無名】無名に近い作家。無銘の(絵。刀。書)。無名の(新人。天才詩人)。道端の霜の消えることく世に無名の死に終わる=山手。無名のまま(一生を暮らす。死んでいく)。知る人ぞ知る。名声とは無縁な生活。草莽、無名の者。知名度が(ゼロに等しい。低い。全くない)。低い知名度に甘んじる。名無しの権兵衛。名前も知らない(雑草。花)。名も知れない大学。名もない(家の出身。草花。庶民。労働者)。名もなく(消えていく。朽ち果てる)。マイナーな(行楽地。作家。存在)。 **めいせい**【名声】▼名声(世界的な。輝かしい。噴々さくたる。不朽の)。名声が(大いに上がる。津々浦々にまで鳴り響く=高橋克)。かりそめの名声に囲まれる。男は名声にもろいもの太宰。店の名声に一も二もなく取っては名うての名手。名が(後世に伝わる。いやにする。遠くまで広める。ほしいままにする。世にとどろかす)。世界的名声を博する。相当の名声を得る。夫の名声を容赦なく利用する=中村呉、命よりも名を惜しむ。功なり名を遂げる。名を(後世に残す。不滅にする)。▼名を残す(永遠に。歴史に)。文名が(徐々に上がる。高い)。文名愦々たる大家。▼誉れが高い(秀才の。武勇の。文武の)。名聞に(こだわる。とらわれる)。勇名が(とどろく。鳴り響く)。令名が高い。▼名をなす(天下に。暗黒街で。社会の中軸に入って)。 **やごう**【屋号】屋号で呼ぶ。屋号を(書き入れる。染め抜いた前垂れ)。商標を登録する。店名が心に引っかかる。▼商号(著名な。知名度のある)。商号を(登記する。変更する)。 **ゆうめい**【有名】誰ひとり知らぬ人はいないほど有名鈴木四。有名な(冒頭の一節。一節を引用する。言葉を思い出す)。秋の紅葉で有名な渓谷。江戸でも有名な老舗。かの有名な大スター。誰でも知っている有名な話。歴史上有名な裁判。ガイドブックにはかならず減っている有名な店!宮部。巧妙に客に酒を奢ぉこらせることで有名な女=山口。▼有名な男(口やかましさで。女のように嫉妬深いので=山本周)。有名になる(全国的に。つとに。一躍。風雅の里として)。顔が売れている。業界でも五本の指に入る会社。五本の指に数えられる。改めて紹介するまでもない。誰ひとり知らぬ人はいない。指折りの人物。一夜にして有名人となる。束の間の有名人に変身する。有名人をインタビューする。今や時の人。▼聞こえが高い(酒豪の。美人の)。音に聞こえた(大剛の勇士。盗賊。名家)。あたりでも聞こえた店。剛直の士として聞こえた存在。世に聞こえた剣客。辣腕で聞こえた人物。世間では誰知らぬ者もない!舟橋。誰もが名前を知っている。知名のピアニスト。著名な(学者。作家。探検家)。天下に名を喧伝する。名うての(女たらし。詐欺師)。剣をを取っては名うての名手。名が(後世に伝わる。いやが上にも高くなる。押しも押されもせぬものになる。近隣に聞こえる。しばしば新聞に登場する。全国に浸透する)。名が知られる(世界に。世間に。人々に)。世界中に名が知られた大企業。名代の(うどん屋。まんじゅう。店)。名だたる材木の産地。業界に名だたる大企業。天下に名だたる医者。名のある大学を出る。名の聞こえた作家。名の知れた(存在。盗賊。店の主人)。歴史に名前が残る。剣客として名前を知られる。歴史に名を(刻む。伝える)。県外にまで名をとどろかす。詩人として名をなす。中央の詩壇に名を示す。広く世間に名を知らしめる。▼名をあげる(天下に。学間の道で)。名をとどめる(後世に。歴史に)。快男児として天下に響いている。名物にうまいものなし。上州名物の空っ風。槍々で天下に雷名をとどろかす=山岡。一世を風靡したテレビドラマ。かつて一世を風靡したシャンソン歌手=小池。▼隠れもない(名が天下に。世に)。▼名が売れる(世間に。芸者として)。名が売れている会社。吉原でちょっと名を売ったほどの遊び人藤沢。学会で名が通っている。名の通った(大会社。出版社。店)。かなり名の通ったホテル。名の通っているレストラン。名にし負う(外国の都。急流の鳴門。名将)。▼名を馳せる(画壇に。日本中に)。▼馳せる(声名を。盛名を。文名を。勇名を。高名を天下に)。ブランドをありがたがる。ブランド物を下品に着こなす海堂。▼呼び声が高い(つとに天才の。次期社長として)。 **よびな**【呼び名】まさにうってつけの呼び名。平生呼び慣わされている。誰言うとなく呼び慣わす。▼称号(博士の。名誉教授の)。称てを与える。さまざまな事業を総称する。▼呼び捨てにする(下級生を。馴れ馴れしく。人もなげに誰彼の名を)。「さん「つけにする価値ない者と心に決めたように呼び捨てる宮木す。 <520> # 知る・分かる **うとい【疎い】**▼疎い(裏の事情に。世事に。世間の動向にはとんと。大胆なだけに隅には連城)。現実に疎い理想主義。法律に疎い者をだます。中上。 **えとく【会得】**会得する(奥義を。こつを。要領を)。新たな手法を自得する。自得する才能に長けている。▼体得する(極意を。秘技を)。自然に体得した知恵 **おもいしらせる【思い知らせる】**▼思い知らせる(痛みを。悲しみを。組織の弱体を。論理的整合癖を=中村兵)。目に物を見せてくれる。 **おもいしる【思い知る】**▼思い知る(過酷な現実を。傷の深さを。心魂に徹して。骨の髄まで。骨身にしみて)。▼思い知らされる(痛いほど。嫌というほど。現実のしたたかさを。権力の強大さを。自分の愚かさを。いかに甘い考えだったか。どんなに無作法であったかをはっきりと森瑙)。 **おもわず【思わず】**思わず(声を荒らげる。絶句する。身を乗り出す。笑みがこぼれる)。思わず知らず(頬がゆるむ。驚きの色が現れる)。覚えず(苦笑が浮かぶ。うめき声を発する。驚きの声を上げる)。不覚にも(腰を抜かす。涙が止まらない)。 **かいめい【解明】**全力をあげて事件の解明にあたる"小林久。解明のメスを加える。解明への一歩を踏み出す。ずるずると事実の解明を延ばす。▼解明する(裏金の流れを。事故原因を。人間の怪物たる所以だを今※)。事件解明の糸口が分かる=高橋克。 **かがく【科学】**科学と(宗教の境界。技術を結合させる)。科学に興味を持つ。科学の(メスを入れる。効用と限界を肝に銘じる。方法を習得する。芽を移し植える)。時空を科学の対象として研究する=佐藤険。科学への夢を育む。科学的精神を普及する。科学的な(検討を加える。根拠のない精神論)。科学技術(最先端の。日進月歩の)。科学技術が(高度化する。発達する)。科学技術の粋を傾ける。地球規模の課題に科学技術を役立てる。 **ききおぼえ【聞き覚え】**▼聞き覚えがある(声に。名前に)。イントロに聞き覚えがある昔の曲。聞き覚えのある(名前、笑い声)。▼開き知っている(名前をかねてから。いやというほどに有吉)。手に取るごとく開き知る=山田美。耳学問で覚える。 **ききかじる【聞きかじる】**▼聞きかじる(噂を。いつどこでともなしに)。聞きかじった知識を振り回す。聞きかじりに話を聞く。聞きかじりの評判を鵜呑のみに信じこむ安岡。一知半解の(知識しかない。徒)。ちょっといい話を小耳に挟む"辺見。かねてから小耳に挟んで聞いている。生かじりに知る。生かじりの知識。 **ぎもんふ【疑問符】**疑問符が(金銭登録機のドル符号のようにひっきりなしに浮かんでは消える=宇野利。貼りついたような顔!角田)。頭のなかで疑問符が乱舞する"小林久。疑問符で頭の中を一杯にする=山田労。頭の上にクエスチョンマークが飛び交う=内田脊。頭の中に疑問符が"貫井)。 **きゅうち【旧知】**旧知と再会する。旧知の(周柄。客を迎える。友に似た親愛の感情を抱く宮本郷。人のような親しみのこもった表情でお辞儀をする=内海)。以前からの知り合いだったように自然なうちとけ方"大佛。昨日や今日の付き合いではない。何年も前からの知り合いのように気さくな口調=高橋三。古くからの知り合い。旧知のような(親しみのある声三浦愛。身近さで話を進める="網淵)。長い間の知り合いのように親し気に片手を上げて合図する=日野。 **くろうしらず【苦労知らず】**苦労知らずで育つ。苦労知らずを恥じる。浮き世の苦労を知らない。何の苦労も(知らずに育つ。いらない結構な身分野別)。何不自由なく育てられる。何一つ不自由のない生活。 **けいけん【経験】**▼経験(世代に共通の。つらい切ない。並々でない非凡な。人生の素晴らしい)。経験が(物を言う。トラウマとして残る)。相当経験がある。似たような台詞沁りは過去にも何度か言われた経験がある=有川。経験に(即して発言する。支えられた言葉の重み竹西)。前回の経験に懲りる。経験に裏打ちされた(勘。適切な判断を下す佐野)。経験の(豊富な女。蜜を貯える。不足に起因する事故。苦い汁をたっぷりと味わう荻野)。経験豊かな(教師。弁護士)。経験を引き合いに出す。淡々と経験を語る。なまじの経験を鼻にかける。豊富な経験を生かす。▼経験する(海外の生活を。身をもって。活字に飢えた思いを。最上のオルガスムスを。したたかな船酔いを。眠れずに明かす夜を。華やかな半生を。人に言えない苦しみを。命に関わるような失敗を"畑村。組織の萌芽期から発展期を"畑村)。劫こうを経る。馬には乗ってみろ、人には添ってみろ=北原。▼経験済み(とうの昔に。幾度となく)。経験済みの事柄。経験的に知っている。経験に乏しい。金をもらえたことに味をしめてなお。せびり取ろうとする=城山。味をしめる。実情をつぶさに見聞する。見聞を広める。後天的な(感覚。性格)。千軍万馬の(政治家。古武士といった頼もしさ=徳永)。亀の甲より年の功。年功を積む。外国の事情を見聞きする。▼場数を踏む(事件事故の。戦場の)。充分に場数を踏んだビジネスマンのように落ち着いた態度"松浦、百戦錬磨の(選手。古強者。猛者もさ。勇士)。 **けんとうがつかない【見当がつかない】**見当がつかない(皆目。さっぱり。誰が誰だか。全く。まるで。目下のところ。とどこをどう走ったのか)。 **こころえる【心得る」**▼心得る(自分の務めを。論争の仕方を)。卓絶した演技構想を心得た真の名優吉<521> 川。心得ている(調査のつぼを。扱い方をよく。引き下がる潮時を。万事抜け目なく=加賀)。いかにも男を心得ているといった感じの女"松本。心得顔に会釈する。 **ことのしだい【事の次第】**事の次第がわかる。事の次第を(問いただす。報告する。かいつまんで話す)。仕儀と相成る(致し方ない。かくの如き)。恋愛関係に没頭する仕儀とは相成る今束。▼仕儀になる(困った。取り返しのつかない)。 **じじょう【事情】**事情が(複雑に絡む。たちまち一変する)。意外な事情が判明する。外国の事情に明るい。土地の事情に詳しい。事情もへったくれもない藤沢。事情を簡単に説明する。うすうす事情を察する。正直に事情を打ち明ける。諸般の事情を考え合わせる。▼事情を話す(洗いざらい。かいつまんで)。事情聴取を受ける。社内事情に疎い。日ぃゃくありげな(男。目配せを返す)。曰く言いがたい存在感。曰く因縁のある品。曰く付きの(作品。物件)。勝手知ったる(他人の家。縄張りの内)。勝手を知った手慣れた物腰。事の由を誰も知らない。訳合いを問いただす。訳ありの(人事異動。仲)。由ありげな女。 **しっている【知っている」「**知っている(商売のこつを。とっくの昔に。薄々。ずっと前から。隅から恥まで。身にしみて。理屈は百も。例を山ほど。自分の力の限界を。存在をおぼろげに。げっぷが出るほど。知りすぎるほど。政局の裏表を詳しく、読みたい本を取り上げられる痛みを=有川。己の弱さを骨の髄まで=熊谷)。知っている人がたくさんいる。よく知っている(誰よりも。本人が一番。本の内容を諳くらんじるほどに嵩橋兄。掌を指すように多岐川)。この耳に筒抜け。眼をつむっても歩いて行ける。我が家の庭を行くようなもの"平岩。知っているような錯覚に駆られる。生き字引(業界の。職場の)。何から何までお見通し。既知の事柄。旧聞に属する情報。▼熟知する(現場を。実力を)。人のよく知るところ。当時の事情に精通している。川の状態に精通している老船頭士月。人間の裏表に精通する。▼通映する(西洋思想に。典礼式事に。数ヵ国の言葉に)。見知り越しの(問柄。仲)。ちゃんと耳に入っている。分かっている(お互いに気心が。こちらの行動が相手に)。訳知り顔に得々と話す。訳知り顔の解説は片腹痛い。 **じゅくれん【熟練】**熟練の域に達する。熟練を要する危険な作業。熟練する(作業に。綿密な観察に)。熟練した(技術。包丁さばき。手の動きが眼に快い!高井。バイロットがあらかた戦死してしまっている=西木)。熟練者を(そろえる。ぼう)。スマートな手際。自分の手際を得意がる。練達の(演者。士)。巧妙この上ない手練。手練の(腕前。早業)。見事な手練を示す。数々の修羅場をくぐり抜けてきた手練してだの男たち=隆。 **じょうきょう【状況】**とても希望など持てない状況"泉優。状況がリアルに想像できる。前後の状況から判断する。状況を正確に把握する。自分の置かれた状況を理解する。状況証拠による認定。▼コンディション(最悪の。絶好の)。抜き差しのならない状態。近況を手短に話す。お互いの近況を話しあって楽しく過ごす三浦し。 **しょうたいふめい【正体不明】**正体不明なものへの本能的な恐怖"飯田。正体不明の人物。正体の不明な病気。分からない(氏素性も。正体が依然として)。得体の知れない(焦燥感。人物が徘徊する。心地よさが忍び寄ってくる"三田)。 **しょうち【承知】**言っても無駄だと承知で言う。危険を承知で出かける。捕まるのを承知で姿を見せる。下手を承知で挑戦する。花柳界は馬鹿を承知で馬鹿話を続けるところ=有吉。刑事責任を追及されることを百も承知で犯行に及ぶ。万事承知と言いたげな笑顔。いずれ発見されることは承知の上。危険を承知の上で冒険する。不利を承知の上で引き受ける。からくりは先刻ご承知。承知している(万事事情を。窓はかねがね。百も)。 **しらずしらず【知らず知らず】**知らず知らず(打算的になる。嗚咽が漏れる。夢中になる。口許がちに笑いがこみあげてくる=高橋克)。名誉心が知らずに働く。知らないうちに興奮する。知らぬうちにうとうとする。心が冥々のうちに通う。 **しらない【知らない】**知らない(土地を訪ねる。街をさまよう。顔が一気に増える。場所に踏みこむ)。▼知らない(口の利き方を。正確な住所を。狭い世界しか。まるで礼儀作法を。行き着く先に何があるか。好き嫌いが言えるほど)。言葉を知らない幼児。知らないうちが花。人の気も知らないで。何も知らずに眠っている。時のたつのを知らずに話に耽ふける徳田。疲れを知らぬ元気な足取り。身のほどを知らぬ好奇心を持つ。怖れを知らぬ不抜の信念加藤。知らぬが(花。仏)。現状では知らぬ存ぜぬで押し通せる状況が成立している有川。知らぬ存ぜぬと白を切る。飽くまで知らぬ存ぜぬと言い張る。知らぬは(亭主ばかりなり。本人ばかりなり)。井の中の蛙扮ぁ。知っている顔が見当たらない。知る(術すべもない。由もない)。今や知る者も少ない。もとより知るところではない。知識が遠い。どうなろうと知ったことではない。知識が白紙に近い。当局の関知するところではない。聞き覚えのない声。お釈迦様とかでもご存じあるまい。全く身に覚えがない。身に覚えのない(濡れ衣沁心。嫌疑をかけられる。言いがかりをつけられる=石坂)。全く知らない土地。全くあずかり知らぬこと=佐伯。▼知らない(一向に。一切。皆目。寡聞にして。少しも。誰一人。ちっとも。座らりほども。ついぞ。露いささかも。露ほども。てんで。何一つ。夢にも)。そんなこととは <521> # 知る・分かる-170 の仕方を)。卓絶した演技構想を心得た真の名優吉川。心得ている(調査のつぼを。扱い方をよく。引き下がる潮時を。万事抜け目なく=加賀)。いかにも男を心得ているといった感じの女"松本。心得顔に会釈する。 **ことのしだい**【事の次第】事の次第がわかる。事の次第を(問いただす。報告する。かいつまんで話す)。仕儀と相成る(致し方ない。かくの如き)。恋愛関係に没頭する仕儀とは相成る今束。▼仕儀になる(困った。取り返しのつかない)。 **じじょう**【事情】事情が(複雑に絡む。たちまち一変する)。意外な事情が判明する。外国の事情に明るい。土地の事情に詳しい。事情もへったくれもない藤沢。事情を簡単に説明する。うすうす事情を察する。正直に事情を打ち明ける。諸般の事情を考え合わせる。▼事情を話す(洗いざらい。かいつまんで)。事情聴取を受ける。社内事情に疎い。日ぃゃくありげな(男。目配せを返す)。曰く言いがたい存在感。曰く因縁のある品。曰く付きの(作品。物件)。勝手知ったる(他人の家。縄張りの内)。勝手を知った手慣れた物腰。事の由を誰も知らない。訳合いを問いただす。訳ありの(人事異動。仲)。由ありげな女。 **しっている**【知っている】「知っている(商売のこつを。とっくの昔に。薄々。ずっと前から。隅から恥まで。身にしみて。理屈は百も。例を山ほど。自分の力の限界を。存在をおぼろげに。げっぷが出るほど。知りすぎるほど。政局の裏表を詳しく、読みたい本を取り上げられる痛みを=有川。己の弱さを骨の髄まで=熊谷)。知っている人がたくさんいる。よく知っている(誰よりも。本人が一番。本の内容を諳くらんじるほどに嵩橋兄。掌を指すように多岐川)。この耳に筒抜け。眼をつむっても歩いて行ける。我が家の庭を行くようなもの"平岩。知っているような錯覚に駆られる。生き字引(業界の。職場の)。何から何までお見通し。既知の事柄。旧聞に属する情報。▼熟知する(現場を。実力を)。人のよく知るところ。当時の事情に精通している。川の状態に精通している老船頭士月。人間の裏表に精通する。▼通映する(西洋思想に。典礼式事に。数ヵ国の言葉に)。見知り越しの(問柄。仲)。ちゃんと耳に入っている。分かっている(お互いに気心が。こちらの行動が相手に)。訳知り顔に得々と話す。訳知り顔の解説は片腹痛い。 **じゅくれん**【熟練】熟練の域に達する。熟練を要する危険な作業。熟練する(作業に。綿密な観察に)。熟練した(技術。包丁さばき。手の動きが眼に快い!高井。バイロットがあらかた戦死してしまっている=西木)。熟練者を(そろえる。ぼう)。スマートな手際。自分の手際を得意がる。練達の(演者。士)。巧妙この上ない手練。手練の(腕前。早業)。見事な手練を示す。数々の修羅場をくぐり抜けてきた手練してだの男たち=隆。 **じょうきょう**【状況】とても希望など持てない状況"泉優。状況がリアルに想像できる。前後の状況から判断する。状況を正確に把握する。自分の置かれた状況を理解する。状況証拠による認定。▼コンディション(最悪の。絶好の)。抜き差しのならない状態。近況を手短に話す。お互いの近況を話しあって楽しく過ごす三浦し。 **しょうたいふめい**【正体不明】正体不明なものへの本能的な恐怖"飯田。正体不明の人物。正体の不明な病気。分からない(氏素性も。正体が依然として)。得体の知れない(焦燥感。人物が徘徊する。心地よさが忍び寄ってくる"三田)。 **しょうち**【承知】言っても無駄だと承知で言う。危険を承知で出かける。捕まるのを承知で姿を見せる。下手を承知で挑戦する。花柳界は馬鹿を承知で馬鹿話を続けるところ=有吉。刑事責任を追及されることを百も承知で犯行に及ぶ。万事承知と言いたげな笑顔。いずれ発見されることは承知の上。危険を承知の上で冒険する。不利を承知の上で引き受ける。からくりは先刻ご承知。承知している(万事事情を。窓はかねがね。百も)。 **しらずしらず**【知らず知らず】知らず知らず(打算的になる。嗚咽が漏れる。夢中になる。口許がちに笑いがこみあげてくる=高橋克)。名誉心が知らずに働く。知らないうちに興奮する。知らぬうちにうとうとする。心が冥々のうちに通う。 **しらない**【知らない】知らない(土地を訪ねる。街をさまよう。顔が一気に増える。場所に踏みこむ)。▼知らない(口の利き方を。正確な住所を。狭い世界しか。まるで礼儀作法を。行き着く先に何があるか。好き嫌いが言えるほど)。言葉を知らない幼児。知らないうちが花。人の気も知らないで。何も知らずに眠っている。時のたつのを知らずに話に耽ふける徳田。疲れを知らぬ元気な足取り。身のほどを知らぬ好奇心を持つ。怖れを知らぬ不抜の信念加藤。知らぬが(花。仏)。現状では知らぬ存ぜぬで押し通せる状況が成立している有川。知らぬ存ぜぬと白を切る。飽くまで知らぬ存ぜぬと言い張る。知らぬは(亭主ばかりなり。本人ばかりなり)。井の中の蛙扮ぁ。知っている顔が見当たらない。知る(術すべもない。由もない)。今や知る者も少ない。もとより知るところではない。知識が遠い。どうなろうと知ったことではない。知識が白紙に近い。当局の関知するところではない。聞き覚えのない声。お釈迦様とかでもご存じあるまい。全く身に覚えがない。身に覚えのない(濡れ衣沁心。嫌疑をかけられる。言いがかりをつけられる=石坂)。全く知らない土地。全くあずかり知らぬこと=佐伯。▼知らない(一向に。一切。皆目。寡聞にして。少しも。誰一人。ちっとも。座らりほども。ついぞ。露いささかも。露ほども。てんで。何一つ。夢にも)。そんなこととは <522> # し 露知らず!永井荷。 **しりあい【知り合い】** 知り合いに声をかける。単なる知り合いに過ぎない。知り合いの(家に身を寄せる。会社を紹介する)。知り合いのような錯覚を起こす。顔見知りによる犯行。かねて顔見知りの間柄。知った顔触れが集まる。どれも知った顔ばかり。見覚えのある顔に出会う。個人的な面識がある。隣人(善良な。厄介な)。知人の(問で評判となる。筋をあちこちに持っている)。知人の家に(止宿する。身を寄せる)。知人の家をめぐり歩く。 **しりあう【知り合う】** ▼知り合う(仕事を通じて。同僚の紹介で。ふとしたことで)。最近知り合ったばかり。知り合って(日が浅い。かれこれ十年になる)。ひょんなことで知り合いになる。見知る(顔を。姿を)。 **しりたがる【知りたがる】** ▼知りたがる(真相を。正確な時間を。理由を。細かな動きを一つひとつ)。知りたい一心で通いつめる。▼聞きたがる(話の次を。人の不幸を。根掘り葉掘り)。 **しりつくす【知り尽くす】** ▼知り尽くす(酸いも甘いも。隅から隅まで。底の底まで。何から何まで。世間の裏の裏まで。世の中の裏も表も)。女の手練手管を知り抜いている。骨にしみるほど知り抜く!有島。知悉しする(欠点を。内情を。細部に至るまで。詳細にわたって)。 **しる【知る】** ▼知る(お酒の味を。女の歓びを。事件の真相を。出生の秘密を。人生の妙諦を。他人の痛みを。力の限界を。茶の心を。苦い現実を。風の便りに。消息を細かに。骨身に徹して。身をもって。一を聞いて士を。隠された生活を。孤独の恐ろしさを。自分の置かれている立場を。上手じれほど上手を。つぶさに事情を。胸騒ぎが事実だったことを。内容を具体的に。日取りを事前に。生まれて初めて)。知る人ぞ知る艶の願いを知り合う。知らずにいたらよかったのに。うかがい知る(中の様子を。モチーフを)。▼覚える(酒の味を。選挙の面白さを)。巷ちょの風聞に聞き及ぶ。体の仕組みに通院する。▼察知する(世論の方向を。不穏な動きを。危険を事前に。ただならぬ状況を。死の気配を一瞬のうちに=篠田)。知覚が(鋭い。鈍麻する)。▶知覚する(正体を。性質を)。 **しれる【知れる】** ▼知れる(遠目にも母だとすぐ。行しれる状が薄々郷里へ芝木)。▼知れている(収入は高が。互いに気心が。寒いといっても)。言葉の端々から性格の一端が窺らかい知れる鈴木光。動作の端々に本を大事にしていることが窺えて感じがいい有川。▼うかがわれる(言葉の端々に自信のほどが。悟りを開いた人間の潔さが"山田詠)。発する言葉から真撃し、な姿勢が窺われる=阿川佐。この一事を以もってしても知ることができる=舟橋。 **じんせきみとう【人跡未踏】** 人跡未踏の(原生林。地。秘境。なかにひどい風に揉まれているような孤独な淋しさ=林美)。未踏の領域に足を踏み入れる=中野美。未踏の地に(足跡をしるす。足を踏み入れるような不安が募る=藤田)。 **せけんしらず【世間知らず】** ▼世間知らず(小娘のように。肩肘怒らせて突っかかってくる職人気質の"五木)。世間知らずな箱入り娘。世間知らずにも程がある。世間知らずの学究肌の人間。不愉快さを作りだすようなへまを演じる世間知らずの自分に対する自己嫌悪"中村真。良家のお嬢さんがそのまま結婚して弁護士の妻におさまった感じのする世間知らずの女"小池。世故に暗い。右も左も分からない少年。井の中の蛙粉も大海を知らず。生まれついての(お嬢様。お殿様)。温室育ちの(子供。爽。ぽんぽん)。 **そこしれない【底知れない】** 底知れない(実力の持ち主。広がりを見せる。心の痴醸叫心におびえる=林美)。嫉妬が底知れない色を見せる=古井。底知れぬ(絶望と懊悩ゅう。深い穴。恐ろしさを感じる。倦怠けんの中に沈みこむ"江戸川。奈落の淵ょちへ落ちて行く。白洲)。混迷と悲哀とが足許はしに底知れぬ大きな口を開ける=徳永。腹の底が知れない。底の知れない(哀感。人物。馬鹿。図太さが感じられる。深い魅力を満たたえた眼人合崎)。 **そよう【素養】** 絵の素養が深い。▼素養がある(音楽の。学問の。茶の湯の)。諸道に心得が深い。心得がある(ある程度。剣の。茶の湯の)。▼たしなみ(女としての。武士の)。たしなみがある(学問の。武芸の。遊芸の)。 **たいけん【体験】** ▼体験(少年期の不幸な。生々しい臨場的。魂をとろかすような甘美な=中村真)。体験が風化する。人間としての普通の体験が欠落している=辻井。恐怖の体験を語る。性的な体験を積み重ねていく。戦争という苛酷な体験を経る=高橋和。▼体験する(原爆の悲惨を。歴史的な変化を)。▼身をもって体験する(薄情さを。不思議を)。体験上知っている。体験談を(集める。書く)。▼追体験する(作家の感覚を。当時の状況を。歴史を)。鮮烈な幼時体験。 **だんていできない【断定できない】** ▼断定できない(うかつに。にわかに)。いいとも悪いとも言いかねる。あながち嘘だと決めつけるわけにもいかない=原田宗。▼言えない(一概には。あながち迷信とも。まんざら経験がないとは)。決めつけられない(一概に。軽々しく)。容易に断定を下しがたい。簡単には論断できない。 **ちしき【知識】** 高校生でも知っているほどの常識的な知識・渡辺。知識が(現実に役立つ。頭の中に詰まっている。自分でも情けないと思うほど欠如している"三田)。紙に水が浸みこむように外からの知識がごく自然に頭の中に浸みこむ!水井路。並々ならぬ知識と教養を持つ。法律の知識に長だける。知識の(水準を高める。種を蒔まき散らす。地平線を広げる。不十分さに気づく)。砂地に水が染みこむように新しい知識を吸収する=曽野。持てる知識を総動員して問いかけに応えようとする三浦し。和漢洋のほぼ均衡を得た教養。相当な教養を身につける。後学のために知っておく。新しい知見に富む。新しい知見を得る。知の世界が広がる。知力にすぐれる。あらん限りの知力を働かせる。自分のノウハウが生かせる仕事。経営のノウハウを持つ。深く幅の広い蘊蓄らん。男女の道についての蘊蓄を知りたがる=隆。延々と蘊蓄を聞かす。滔々とうと蘊蓄を傾ける。▼造詣が深い(音楽に。絵画に。学問に。野球に)。俳諧に深い造詣を持つ。 <523> **ちしきじん【知識人】** ▼知識人(洒脱な。進歩的な。錚々たる)。教養ありげないっばしの紳士。教養人(学識抜群の。上品さを身につけた)。ちゃんとした教養のある人間。文雅な教委のある人。文化人(進歩的な。酔狂な。当代一流の)。青白きインテリ。インテリを(気取る。装う)。インテリ風を吹かす。▼有識者(各界の。各分野の)。有識者からのヒアリング。 **ちせい【知性】** ▼知性(透徹した。正邪善悪を批判する)。知性が内面からにじみ出る。瞳に深い知性が宿る。並外れた知性と勇気の持ち主"常盤。知性に(あふれる。欠ける)。知性の(かけらもない。透徹を欠く)。何となく知性を欠いた顔つき。 **てにとるよう【手に取るよう】** 手に取るように(考えが読める。想像できる。よく見える)。相手の心のありようが手にとるようにわかるッ永井路。策動の様子が手に取るように分かる=津木。妻の心境が手に取るように理解できる"貫井。 **ともかく** ともかく(お医者に行かなくては。眠らなければいけない)。▼ともかく(真偽のほどは。文章の巧拙は)。いざ知らず(赤の他人なら。ほかの人なら)。何はともあれ(無事でよかった。連絡だけはしておこう)。 **ないじょう【内情】** 内情が漏れ伝わる。他人の家の内情に口を挿はさむ=熊谷。内情は今や火の車。内情をつぶさに見聞する。密かに内情を探知する。内懐を見透かす。政治の裏話を話す。楽屋裏を覗のぞく。▼内実(怪しげな。お寒い)。内実を暴露する。 **なぞ【謎】** ▼謎(不可解な。永遠の。歴史にありがちな。今にしてもなお解けない。日常生活にぽっかりと顔を出す―佐野)。謎が(渦を巻く。謎を呼ぶ。ますます深まる)。新たな謎が生まれる。すっかり謎が解ける。謎となって今日に及ぶ。正体が謎に包まれる。謎の(人物。ベールに包まれる)。長年の謎の一端が晴れる。謎のような微笑を唇に漂わせる=堀。別離に臨んで謎のような言葉を餞別せんにする=山本周。謎だらけの迷路の真っ只中公がに置かれる後藤。 **なぞとき【謎解き】** 謎解きの爽快さに酔う。謎解きする(名探偵が。からくりを。事件を。トリックを)。▼謎を解く(事件の。密室殺人の)。 **なるほど** なるほどと(感心する。首肯点頭する。得できる話。思うよようなヒント)。いかさま得心が行く。道理で忙しいわけだ。 **にんしき【認識】** 思弁的な認識。認識の不十分さに気づく。認識する(事の重大性を。違いを明確に)。▼再認識する(自於災害の恐ろしさを。チームのエースであることを)。認識不足も甚だしい。自覚する(意気地なさを。罪の意識を)。 **ねんれいふしょう【年齢不詳】** 年齢は不詳。正確な年齢は不明。年齢の(見当がつかない。ほどはしかとは分からない)。年齢を判断しかねるような不思議な風采!阿刀田。 **はかりしれない【計り知れない】** ▼計り知れない(人の運は。衝撃の大きさは)。他人の深淵んははかり知れない=山田太。「どれだけ役に立ったが測り知れない火坂。計り知れない(被害が及ぶ。効果を発揮する)。因縁が計り知れないほど深い"有吉。計り知れないほどの(不辛を味わう。苦しみをなめつくす)。端倪たんすべからざる(活躍ぶり。人物。力量)。 **パズル** バズル(人生は複雑な。迷宮のような)。バズルが解ける。ばらばらにちらばっていたパズルの断片が一つの図柄を構成していくような感じ=小池。音が終わりのないバズルのように組み合わさる=辻仁。ガラス片を寄せ集めた窓ガラスがバズルのようにはまる=林京。ぴったりとバズルのようにはめ込む=尾辻。 **はつみみ【初耳】** 初耳の話。知っていながら初耳を装う。一度も聞いた覚えがない。言葉が耳に新しい。聞いたためしがない。今までに聞いたことがない。初めて(知る話。耳に入る)。初めて開く(名前。話)。初めて耳にする(言葉。情報。病名)。 **はんだんできない【判断できない】** すぐには判断できない。冗談なのか本気なのか判断がつきかねる。正常な判断ができない。判断がつかない(とっさに。どうしていいか)。判断に(余る。苦しむ。困る。悩む)。言うべきかどうか判断に迷う。判断のしようがない。判断ミスが目立つ。自分の判断力に自信が持てない。判断力を(奪われる。欠く)。総合的な判断力を失う。痛みと恐怖が冷静な判断力を奪うぃあさの。判断を軽々しく下せない。善し悪しの判断をつけられない。正しい判断をする余裕をなくす“村上元。にわかに判じがたい。分別に余って当惑する。明断を欠く。 **ふあんない【不案内】** ▼不案内(諸事に。法律に。全くといっていいくらい)。不案内な場所に紛れ込む。地理の不案内な場所。勝手不案内の土地。土地不案内の街。山奥育ちで右も左もわからない。 **ふめい【不明】** 不明(一切の事情が。勝敗の帰超込すは。真偽のほどは。生死のほどは。その後の消息は)。輪郭の不明な寂しさ。原因不明の高熱が続く。 <524> **ベテラン** ベテランだと自任する。ベテランと新人の共演。ベテランの(エンジニア。セールスマン。選手。ドライバー)。昨日今日の駆け出しではない。老練な(医師。記者。船長)。 **まわりくどい【回りくどい】** 回りくどい(言い回し。説明。手数をふむ。表現。文章。方法を取る。言い方に苛立心らつ)。前置きが長い。持って回った(考え方。表現。ものの言い方。警句を口にする=矢作)。持ってまわった言い訳。 **みえすく【見え透く】** 見えすいた(お追従いいし。おべんちゃら。気休め。ごますり)。呉服屋の番頭のように見え透いた愛想笑いで揉もみ手をする=里見、ぬけぬけと見えすいたお世辞を言う石坂。見え透いた嘘を平気で言う二葉亭。▼見え見え(悪意が。意図が。魂胆が)。下心見え見えのおだて。 **みけいけん【未経験】** 経験が皆無に等しい。経験がない(実戦の。渡渉の。夫以外の誰とも付き合った"乃南)。▼経験したことがない(一度も。未だ。かつて。ついぞ)。物心ついて以来一度もない。未経験者も可。 **みしらぬ【見知らぬ】** 見知らぬ(場所に出る。男がやって来る。人に声をかけられる)。遠い見知らぬ土地。なじみのない人。見ず知らずの(間柄。男。女)。見も知らない老人。見も知らぬ(赤の他人。遠い存在。通りがかりの男)。突然見も知らぬ人間の来訪を受ける「綾辻。見も知りもせぬ路傍の人に与えるような冷酷な驕慢な光を瞳から射出ぃだす有局。 **みち【未知】** 未知の(世界に光を当てる。分野に挑戦する。ベールに包まれる)。▼未知数(実力は。どこまで機能するかは)。未知数の値を求める。 **めんしきがない【面識がない】** 直接の面識がない。一面識も(ない男。持たない)。一度も顔を合わせていない。全く見覚えのない顔。 # し **ものしり【物知り】** 物知り顔に(語り聞かせる。時事を解説する)。該博な(学識。教養。知識)。学識が深い。ひとかどの学識がある。豊富な学訛に裏打ちされる。広範な学説の持ち主。▼学殖(該博な。豊かな)。知恵袋の役割を担う。博学な人。博学の士。博学をもって鳴る。博識な人。博覧強記の人物。 **ものわかり【物分かり】** 妙に物分かりがよすぎる。教育のある物わかりのよい女宮本直。物分かりのいい(父親。女房)。ものわかりのよさそうな人物を演じる松浦。物解初りのよさそうな顔をして相談に乗る=島田。さばけた(気性。性格)。 **ゆくえふめい【行方不明】** 突然行方不明になる。行方不明の娘を捜す。行方不明者が生還する。行方不明者を捜索する。足どりがさっぱりつかめない藤沢。行方が知れない(いまだに。皆目)。行方が皆目分からない。杳ょうとして(消息を絶つ。行方知れず)。神かくしにあったように消息が知れない"林京。神隠しにでもあった人のような気の抜けた顔つき=里見。 **ようりょうをえない【要領を得ない】** 要領を得ない(答え。電話。話にとまどう。返事)。要領を得ない(手順が。さっぱり。まるきり。話が謎のようで一向=田山)。要領の悪い話し振りに苛々灬らする=高橋和。しどろもどろの不得要領"太宰。不得要領ですごすご帰ってくる。不得要領な表情で首をかしげる。 **よみとく【読み解く】** ▼読み解く(暗号を。情報を。資料を。データを。難解な文章を)。▼解説する(暗号を。崩し字を。古文書を)。解読に全力をあげる。 **りかい【理解】** 理性と感性を総動員した全身的な理解竹西。深い理解に到達する。理解の(ある母親。程度が浅い。範囲に収まる)。辞書に魅入られた人々は、どうも西岡の理解の範囲から外れる三浦し。十全なる理解を得る。▼理解する(事の次第を。話の筋道を。歴史の流れを。一瞬のうちに。意味を正確に。基本的な問題点を。自然界を支配する真理を=佐藤勝)。▼理解できる(事の重大さが。おぼろげに。何となく。心持ちは十分に)。目から鱗いらの落ちた思い=北原。真の理解者を求める。読解する(古典を。長文を)。▼読みこなす(外国語を。原書を。難解な論文を)。▼了祭する(苦境を、衷情を)。▼のみこめる(事の重大さが。贈り物の意味が。事の成り行きが)。事情がのみこめる(大体の。ようやく)。▼理解できない(言葉の意味が。さっぱり。全く。まるで。急変した状況が=高井)。解に苦しむ。理解の(しようがない。及ぶところではない)。理解の外にある事柄!隆。理解を絶する話。言わんとすることが充分にのみこめない。よくのみこめない(関係が。理由が)。 **わからない【分からない】** ▼分からない(依然消息が。とんと理屈が。全く原因が。意味がまるで。しかと正体は。実力のほどは。どこの誰だか。理由が皆目。相手のねらいが。からきし言葉が。自分の置かれている立場が。説明されないと重大さが。初めての家だから勝手が。はっきりとした事情が。頭にくると何をするか。一寸先のことは。一体何が起きたのか。居るのか居ないのか。嘘だか本当だか。陰で何をやっているか。聞こえたかどうか。切羽詰まれば何をやりだすか。どう対処していいか。どこへ飛んで行くのか。どこをどう歩いたのか。とっさに何と答えてよいか。どれがどれやら一向。何が幸いするか。何が何やらさっぱり。何が何だかよく。何と答えていいのか。何のことやらさっぱり。一度間違えた珠算のようにどこから手をつけてよいか=木山。鶏と卵の関係と同じでどちらが先か=平野。人間先のことは誰にも木山。物のはずみでどうなるか=小島)。頑是ない子供みたいに何もわからない戸板。▼判ぉからない(どういう料簡いっか!小沼。どこから弾が飛んでくるか=泉優)。どうしていいか分からないほど嬉しい!有吉。▼分からなくなる(いよいよ人生が。考えれば考えるほど。順序が錯雑して)。いかなる因果か知らないが。馬の耳に念仏。神のみぞ知る。冗談とも本気ともつかない言い方!高樹。真実は藪ゃぶの中。善悪の見定めがつかない。どういう風の吹き回しか。答案用紙を前に頭を抱える。分かり兼ねる(意図が。意味が。理由が)。一体何を考えているのだろう。一体全体どういうことになるのだろうか。まるきり意味がとれない。内部を窺らかい知ることができない。意味をとっさに解しかねる。何とも解せない。永遠に真実は知り得ない。とうてい知ることができない。今日に至るもなお知る由がない人灭。知る由もない(神ならぬ身の。どこまで本当なのか)。何を言い出すか知れたものじゃない。▼知れない(ろくに気心が。いつ果てるとも。海のものとも山のものとも)。気心の知れない人。どうしていいか(途方に暮れる。分からずにまこつく)。測りかねる(相手の真意を。言葉の意味を。質問の意図を)。作者不詳の作品。身元不詳の死体。システムの中身がブラックボックス化する。甲乙を弁じかねる。実力を見極めるのが難しい。▼未詳(生没年は。損害の程度は)。無理解な言いがかり。▼予断を許さない(勝敗の。病状は。実際に何が起こるかは)。どこの馬の骨か分からない。氏素性が分からない人。どこの誰とも知らない男。▼首をひねる(誰もが。怪訝けげそうに。自信なさげに)。しきりに首をひねる。 <525> **わかりにくい【分かりにくい】** 分かりにくい(説明。文章。文字)。意味の分かりにくい言葉。分かりにくいこと(おびただしい。はなはだしい)。灯台下暗し。専門用語がやたらに多い文章。読みこなすのに骨が折れる本。容易に理解がつかない。理解に骨折る。禅問答みたいなやり方ではぐらかす宫本駅。わかったようなわからないような禅問答みたいな言い方曽野。 **わかりやすい【分かりやすい】** 誰にもわかりやすい小説。会社はどうしてもわかりやすい目先の利益を追求しがち三浦し。分かりやすい啓蒙的沿い託な文章。できるだけ分かりやすく説明する。俗耳に入りやすい。簡単明瞭な(答え。説明)。簡明な(比喩ひゅを用いる。表現)。簡明に用件を告げる。達意の(文章。名文)。平明な(語り口。言葉を重ねる。文章)。根のひろがりと深さが大規模になればなるほど上澄みのような平明な表現が求められる=竹西。理解が容易。理解しやすい観念。平易な(表現。文章)。平易に解き明かす。理論の核心を平易に説く。平易に分かりやすく(解説する。説明する)。見やすい(道理。利害の打算)。▶見やすい(先が。筆跡が)。 **わかる【分かる】** 子供にでも分かる理屈。分かる(事の重大さが。意味がようやく。おぼろげながらどんな人円か。気持ちが痛いほどよく。苦労が身にしみて。結果が間もなく。事件の全貌が大体。事情がうすうす。世界の動きが居ながらにして荒巻。年を取ったということがしみじみ永井龍)。わかる(心配が全くの杞憂であったことが"曽野。思っていることが鏡に映すように阿刀田。リトマス試験紙がビンクから青に変わるようにはっきりと落合)。はた目にもわかるほど動揺する"三好祕。話の分かる(男。女)。物の分かった人。最近やっと分かってきたばかり。男の正体が段々分かってくる=舟橋。物事が少しずつ分かり始める。まんざら分からないでもない。互いに気持ちが分かり合う。分かりが(いい。早い)。頭の中の霧が晴れて行くよう"小沼。原因の一端を垣間見た思い=横山。察しがつく。すっと膜が一枚剣げ落ちたような気分=日野。ストンと胸の底に何かが落ちたようにやっぱりそうだったかと思う“干刈。おのずから判断される。百聞は一見に如しかず。目が開かれるよう。目から(鱗が落ちる思い=中島敦。膜が刻げ落ちたよう“船山)。面が割れる。▶頭に入る(すっと。すらすら)。▼解する(雲雨の情を。人情を。よい意味に)。酸いも甘いも噛み分けた顔つき。慎重に相手の言葉を噛み分ける。一見して識別できる。底の知れた嘘をつく。▼直覚する(事情を。不慮の死を)。直覚的な洞察。マニュアル通りのありきたりの解き方谷村。▼解く(数学の問題を。禅の公案を。バブルを。方程式を)。▼解ける(疑問が。推理の糸が。方程式がきれいに)。▼判明する(新しい事実が。身元が。苦労の末。驚くべきことが。行方がひょんなことから)。 **わきまえる【弁える】** ▼弁える(エチケットを。道理を、場所柄を。物の仕組みを。最低限のルールを)。してよいこととしてならぬこととの区別を弁える=福永。若いながら礼儀をわきまえた男藤沢。かっとすると前後の弁えなく半狂乱になる=永井荷。弁別する(善悪を。理非を)。 **わけがわからない【訳が分からない】** 頭が混乱してわけが分からない。わけが分からずうろたえる。まるで蜂の巣をつっついたようで、なにがなんだかわけがわからなくなる=宮沢。わけの分からない(寝言を言う。憤りを持て余す。恐怖がこみあげる)。狐に化かされたようなわけのわからない話=平岩。わけの分からぬ(道に踏み迷う。叫び声をあげる)。わけも分からず騒ぎ立てる。頭の中が混線する。狐につままれたような思い。きょとんとした顔。酔っ払いの寝言-北村。混迷の度合いを深める。一寸先も見通せない混迷のさなか。理由の知れない怒りにとりつかれる。説明されてもちんぷんかんぷんで分からない。ちんぷんかんぷんな(言葉。話)。とんちんかんな(受け答え。返事。見出しをつける)。とんちんかんなことを尋ねる。 <526> # 白い・黒い **あおぐろい【青黒い】** こめかみに青黒い血管が浮く。頭の上に拡がる青黒い夜の色"高井。淡い影のような青黒いシミ藤枝。ビルが蒼黒区祐い光の中で墓石のように寒々としている=加賀。青黒く(広がった夜空。淀んだ水。うねっている水面。血管が浮き出す)。傍目似たにもすぐ判るくらいの疲労と憔悴しいに顔全体を青黒くくすませる!鷺沢。顔が青黒くむくむ。 **あかぐろい【赤黒い】** 赤黒い(錆びが浮く。つやのある顔。鉄骨が剣もき出しにそびえ立つ『日野)。首筋が赤黒く怒張する。血が赤黒く凝固する。殴られた跡が赤黒く残る。憤怒が赤黒く顔に燃えている=加賀。赤銅色とに日焼けする。五体が赤銅色に輝く。筋骨たくましい赤銅色のからだ真継。赤銅色をした遅むくしい男"中急救。 **あさぐろい【浅黒い】** 肌の色が浅黒い。どこか鬱積したように不機嫌な浅黒い顔三島。日焼けがしみついたような浅黒いいかつい顔"飯田。色の浅黒い筋肉質タイブの男性筒井。浅黒く日焼けする。顔の色が艶を消したような浅黒さ=中局災。 **あんこく【暗黒】** 暗黒(海のように底知れぬ=光瀬。自負心の強いインテリゲンチャが宿業として背負わなければならない精神の高橋和)。暗黒が顔をのぞかせる。暗黒であったこの世がどうやら東雲20の空ほどには明るくなる二葉亭。暗黒な前途を照らす光明のように森殿。海がすっかり暗黒に閉ざされる"辻井。陽はすでに山稜に隠れて濃紫の空が急速に暗黒に変わりつつある=奥泉。暗黒の空が白くなるほどの稲妻夢も現実もしどけなく暗黒の中に消える=獅子。 **いろぐろ【色黒】** 色黒く首筋逞しく肩幅も広い!永井荷。色黒で気が強く強欲そうな顔!宮本輝。色黒の地肌をさらけ出す荻野。 **いろじろ【色白】** 色白で(面長な顔。派手な顔立ち。眉の濃いなかなかの美丈夫=山本周)。色白な品のいい目鼻立ち。色白の(顔をほんのり赤くする。ふっくらとした顔。ぽっちゃりした顔つき)。白皙氷の(美丈夫。額にはらりと黒愛を散らすぃ有吉)。白面の貴公子。 **ぎんいろ【銀色】** 雨が街灯で銀色に光り輝く=池井戸。萱かゃの穂が一面に咲き揃って呟まぶしい銀色に揺れている=川端。小魚の群れが銀色にぎらっと光る=池澤。▼銀色に染める(髪を。夜光虫が波を)。▼銀色に光る(湖水が。魚のからだが)。銀色の隣う。をきらめかせる。空に銀色の月が光る。愴ゃりが銀色の穂のように輝く光瀬。毛のような細い白銀色礼以びの針井伏。 **くま【隈】** 目の縁に青黒い隈が濃く浮き出す池波。▼隈ができる(うっすらと目の下に。目のまわりに黒い)。目の下に青い隈を生む。下瞼乱欲まに紫色の隈を置く高樹。 **くろ【黒】** じっと見続けているとめまいがしそうなほど深く清らかな黒色"小川。地面が乾ききって呟まぶしいほどの白色で小石の黒だけが宝石のように光を放っている=伊集院。黒と白の市松模様の壁。海は黒と見まがうほどの濃い藍「辻井。海の色が濃緑色から黒に変わる。白地に黒の紋所を置く。白と黒を反転させる。黒一色に身をかためる。目が黒くてくりくりしている。墨色鮮やかに記す。海が薄い墨色に凪なぐ。墨色の乱雲が空を走る。黒ずくめの修道女。上から下まで黒ずくめの格好宮部。 **くろい【黒い】** 黒い(噂が起こる。疑惑が胸の中に湧く。口を開けた洞穴。煙が一帯に立ちこめる。幅幅にいりが飛び交う。制服姿の高校生。不安が胸に湧きあがってくる黒弓。夜が深々と続く高樹)。▼黒い(コーヒーが墨の汁のように=野間。光が届かぬ海底の水が死んだように=畑。瞳が大きくて濡れたように大佛)。ばっちりした大きな黒い瞳。ぼつんと一つ黒い人影。目裏に黒い影が浮かぶ。目に見えない黒い渦に呑み込まれる。私の目が黒いうちは勝手なことは許さない。あら鉄がぁみたいな黒いたくましい体吉川。音もなく滑ってゆく黒い船日野。心に一点の黒い影が落ちる=横山。西瓜竹ぃの種子みたいな黒い小さな目に向田。夜空を背景にして黒い影となって立っている=なかにし。黒く(陽に焼ける。波うつ豊かな髪をうなじのところでまとめる=塩野)。肌が削り節のように黒く光る=伊集院。山が黒く浮き上がる。夜の海が黒くうずくまる。▼黒くなる(日焼けして。変色して)。家々が薄黒く宵隅のなかに沈む=本庄。ずず黒く冴えない顔色。銅色に光る川。湖はほとんど暮れて水面が鉄色に光る"石川。鋼色の大空。今にも頭を包みそうに近く避せまっている鋼色の沈黙した大空有島。 **くろぐろ【黒黒】** 黒々と(輝く目。茂った杉の森。葉を茂らせる。広がった野良。豊かな髪。大きく書きつける。鋤すき返された土。陛すねに毛を生やす。点在している森。盛り上がった樹の茂み。磨き上げられた冬の空倉橋)。影が黒々と落ちる。髪が指に黒々と巻きつく。山頂が黒々と見える。島が黒々と水平線を隠す。建物が黒々と突っ立つ。塔が黒々とそびえ立つ。葉が黒々と道に張り出す。林が黒々とそびえる。眉毛が鮮やかに黒々と太い。広大な森が黒ぐろと浮かび上がる=飯田。五月闇が黒々と閉ざす=獅子。器も黒々と筆太に書いた高札=山本周。低い山並みが黒々と横たわっている=なかにし。睫毛だっが黒々と濡れる=林黒々とした(穴が口を開く。海が広がる。巨大な森。雄渾いらな屋根。夜の波。影が壁にゆらゆらと映る。"飯田。逆光線で暗黒の幕をかけたような建物の中からボンと抜け出たように白っぽい姿が現れる"阿久。見出しが瞳孔を射る)。くろぐろとした山が空の正面に立ちふさがる=梶井。トンネルが黒々とした口を開けている=佐伯。黒黒々の看板をかける。 <527> # 白い・黒い―171 **くろっぼい【黒っぽい】** 黒っぽい(鼠色ゆずみのズボン。木綿の着物。影が音もなくゆっくりと動く=日野。コートが薄暗がりにとけて白い顔だけが夢の世界の人物のように浮いている=高橋和)。小さな虫のような黒つぼいしみ旧野。 **くろびかり【黒光り】** 囲炉裏のすすで高い天井の梁はりが黒光りになる。黒光りのする大黒柱がひときわ目立つ=熊谷。黒光りする(拳銃。小山が理不尽にもむくむくと動いているかのような熊「飯田)。濡れそぼって黒光りする馬。西瓜忖ぃの種みたいに小さいが黒光りする目!向田。通りが雨に濡れて黒光りする。顧なぁしたように黒光りしている瀬=藤沢。土間の土が固く黒光りしている"石森。縦雨初めが裸木を貧寒と黒光りさせる=加賀。黒光りに古びた玄関の板敷き。 **くろずむ【黒ずむ】** くろずみかかった桃色の花弁が破れた大輪朝顔の押し花のような血痕"宮本百。▼黒ずむ(板が手垢がぁで。畳が陽に焼けて。鼠色ゆずのボロシャツの背が汗で宮本部)。暮れるに先立って黒ずむ杉林。黒ずんだ(緑の生け垣。雲の堆積のあいだに夕日の一点が紅に沈む三鳥。土の上に鶯ささが綿を一つまみ投げたように森岡。波濤沢とが意外な速さで湾の中へ流れ込んでくる=福永。古い家々が立ち並ぶ=本庄)。くろずんだ手や足をヘチマの垢すりであっきになってこする=阿部。古びて黒ずんだ朱塗りの門。爽きゃやかな初秋の空が急に薄気味の悪い台風を予兆する黒ずんだ雲に覆われる=中村真。潮風に荒びた皮膚が黒ずんだ欲に塩さながらの粉をふいている=加賀。姿しぇんだように黒ずんだ肌鶯沢。根松赴火の黒ずんだ緑の森"原田康。波濤のかなたに黒ずんだ波の穂が果てしもなく連なる"有局。冷え冷えと硬く黒ずんだ玄関の戸"日野。ひからびて黒ずんだ枯れ木のような肉体坂口。目のまわりの黒ずんだ暈かごを見やる=堀。凍ったような層の厚い霧もゃが行く手の道路を蚴くぅずんだ灰色に暈す。野上。空に残照があって黒ずんだ牡丹色以於んに雲を染めている=山本周。小さな椎茸しかのように黒ずんだ耳=水上。遠い林の黒ずんだ枯れ枝の交錯が解読不能の石碑の文字のように白っぽい空に刻み込まれる=日野。木々の緑が黒ずんで見える落合。遠目に黒ずんでかたまり合って見える建物"島尾。葉のしぼんだ鶏頭の大きな花軸の頂が干からびかけた獣の舌のようにねじれ黒ずんで並ぶ=日野。口惜しさが代々積み上げられ堆肥のように黝ずんできている"有吉。山が黒みがかったみどり色を呈する三浦紗。黒みを帯びはじめた緑の夏山=林京。見上げる天頂の雲が黒む。 **しっこく【漆黒】** 洞穴組の入り口が墨を塗ったような漆黒奥泉。夜の漆黒が深さを増す=北村。漆黒の(空に輝く星の群れ。天蓋於所以の中央に銀河が鮮やかな筋を描く奥泉。闇に閉ざされる=篠田。夜空に大輪の花が開く=隆)。艶々しい漆黒の口髭〆。顔の白さえうかがうことのできない漆黒の中"阿刀田。北アルブス連峰が漆黒の壁を空へ盛り上げている=笹沢。飛行機が漆黒の夜空に吸いこまれる=西木。無数の雨の線が漆黒の中空に突然現れ短い旅をしては足元のアスファルトで怒ったようにはじけている=北村。 **じゅんばく【純白】** 雪が純白に敷きつめられる。純白の(手袋をはめる。スーツに身を包む)。一点の染みもない純白のテーブルクロス=森。 **しらじら【白白】** しらじらと(明ける黎明心。すべらかな肉づきのよい肩石川)。明かりがしらじらと輝く。月がしらじらと照らす。夜目にもしらじらと見える梅の花、夜がしらじらと明ける。窓の隙間から白々とした光が射し込んでくる=北原。白々と広がる雪景色。夏の陽に白々と輝いているビル。湯気が白々と高く立ち上る。岸の桜が白じろと水に影を映す“三浦綫。広場が霜をおいたように一面に光り白々と見える"石森。 **しらむ【白む】** 雲がほんのり白む。▼白くなる(頭の中が。夜の底が。髪が一夜にして。道が雪でうっすらと。顔色が見る見るうちに灰のように『福永。顔が紙のように=福永)。▼白化する(珊瑚ごんが。接着剤が)。 **しろ【白】** ▼白(波が上げる飛沫しょは曇った朝景色の中の鮮やかな三島。ミルクのように柔らかい=北村)。緑と白が対照的。白一色に染めあげる。視界が白一色に変わる。見渡す限り白一色の世界。 **しろい【白い】** ▼白い顔(紙のように。ローソクのよよっな萩原來)。白い(雨の慕。しなやかな手。胸をはだける。目で見られる。山百合の花。雪肌の持ち主。顔がビンク色に染まる。首を愛らしく曲げる。雲がゆっくりと流れる。花がほろほろと散る。歯を見せて笑う。むちむちした肌。牙のような波の歯をむきだしている冷たい海遠藤。蒸気が夜目にも鮮やかに見える"なかにし)。▼白い(朝毎の霜が。鴉≫らの炎ふんが。透きとおるように皮膚が"日野。唇が粉にをふいたように吉村。漆喰いしいが目にしみるほど『池井戸。砂が呟まぶしいくらい!岡本。肌が透きとおるように真継。日ざかりの夏の陽がかっと"田辺。額際がいじらしいほど弱々しく極。皮膚の色がチョークのように大佛。雪を欺くがごとく落語)。空に皓々にらと白い月が浮かんでいる。ほっそりとした白い指。輝くような白い頭髪"原田康。粉を吹いたように白い顔面の森。すすきが白い火のように揺れて光る=宮沢。濁った白い欲情を感じると言行。花のように白い肌有吉。漂白されたように妙に薄く白い皮膚=高橋和。まぶしいほどの白い裸体・桐野。眼に痛いほど白い卓布テロル"久米。蠟ろうのように白い手=横山。荒れ狂う吹雪。靄もゃが広がる。町々を埋めた雪)。東の空が白く燃えユラリユラリと揺れはじめる=宮沢。眩しいばかりに白く研ぎ澄ました女体!今日。稲光が白くひらめく。卯の花が白くほのめく。海面が白く泡立つ。波頭が白くめくれる。波が白く騒ぎ立つ。眼鏡が白く曇る。湯気が白く立つ。蕎麦くばの花が薄親を曳き渡したように白く見える=伊藤左。抜けるように色が白く肌がこまやかな娘「山崎。水が白くしぶきながら流れる=中上。緑の野に白く点在する石灰岩斎藤栄。見渡す限りに白く閉ざされた氷原三浦綫。山のすぐ下を川が闇に白く流れている三浦し。浴衣の白地が夜目にも鮮やか。白みが(勝った灰色。勝っている目)。雪のような素足。戦細工だのようなうす白い顔"野間。ほうっと薄白い明かりが浮かぶ。水溜まりが薄白く光る。煙が薄白く寒い風に靡なびく"徳田。白茶けた(顔。敷石)。石灰色の薄いうろこ雲がおびただしくひろがる=原田康。雪白の(肌。卓布20を掛けた食卓二葉亭)。窓から射しこむ淡い月光に裸体が象牙色に染まる=森環。象牙色の肌。白亜のマンションがそびえ立つ。白嶝々がヅの雪原。白紙と形容してもいいほどの顔色"高橋治。白紙にサッと黒刷毛は粉をはいたような表情の変化"獅子。頭の中が白紙になる“平亏。煩悩を解脱けだしてシミひとつない白紙の脳裏荻野。白紙のようなはかない寂しさ"有島。生白い顔。血の色がまだらに浮いた生白い肌。 <528> **しろさ【白さ】** ▼肌の白さ(雪を欺く。陶器の冷たさを連想させるような「永井龍)。▼白さ(類くびが颯ろうのように半透明の"日野。歯が微かすかながら青味が感じられるほどの透き通るような=高見順)。まだ光を含まない繊月が透きとおるような白さで浮いている"永井路。まばゆいばかりの白さで手をふれるのがこわいよう永井路。雪の白さと塁を対比する。部屋の灯りを吸って雪の流れが光のような眩まぶしい白さに変わっていく連城。気に濁ったような暮れなずんだ空が白さを残して広がる連城。 **しろっぽい【白っぽい】** 白っぽい(タイル張りのマンションが真珠色にきらめく=日野。綿くずが埃児このようにつもる。野間)。土が乾ききって灰色がかって白っぽい=日野。明るくそのくせ硬そうな白っぽいコンクリートの肌"原田康。褪ぁせたような白っぽい夕方の空気の中を人々が忙しそうに往き来する志賀外海が陽光にきらめいて白っぽい河のように見える"福永。雲の切れ問から覗いた白っぽい半月が道端の水たまりにかすかに揺れている落合。下駄の底に吸いつきそうな砂埃け吐はの白っぽい道・島尾。スプレ1で吹きつけたかのように白っぽい水滴がつく清水太陽が白っぽい煙のふちを金色に彩る"本庄。町に白っぽい夕の光が漂いはじめる藤沢。柔らかく粉のように白っぽい朝の陽射し=大江。白っぽく(乾いた厚い唇。浮き出した染み)。沖が白っぽくかすむ。街路が白っぽく乾く。運河の水面が白っぽく輝きさざ波が立つ=池田。木の葉が裏返って白っぽく見える寺田。黎明幼いの光が山脈を白っぽく染める!遠藤。庭が一面水しぶきで白っぽく見えるほどの土砂降り"小川。春の光が白っぽく散る=井上階。日を受けて山の際が白っぽく粉をまいたように見える=中上。晒さらしたように鼻の先まで白っぽくなる!安部。 **すみ【墨】** 墨で真っ黒に塗りつぶす。昏くれかかった灰色の雲が墨の滲にじみのような濃淡を去来させている=松本。眉に墨を引く。烏賊ぃかが墨を吐く。鍋の墨を落とす。筆にたっぷり塁をふくませる。妙に透明な空に墨をぶちまけたような雲がちぎれて散っている=高橋和。月のない墨を流したような深更柴田錬。墨のような(重い空。黒雲が一面にあたりをとざすい芥川)。暁ぁけ方の白い光のもとで海面が墨のような黒い潮をぶつけ合う~井上靖。墨のように煙突から煙を吐く有島。墨を流したような(暗圏。真っ暗閻)。鍋墨を塗ったような真っ暗な室内が古い写真の印画に似て朦朧と浮かぶ!獅子。暗闇が吹雪にとけて不透明な視界が黒汁色に塗りたくられる=本庄。墨汁のような一面の煙室生。墨汁のようにこみあげてくる悔恨といらだたしさ=梶井。墨痕滴るように書く。子母沢。墨痕あざやかにのびのびと書かれた文字本庄。墨痕鮮やかに一文を記す=さだ。 **どすぐろい【どす黒い】** どす黒い(雨雲がもくもくと沸き起こる=井上靖。疑念が鎌首をもたげる"小林久。ものが腹の底でとぐろを巻く=村山)。どすぐろい鉛のような重い気持ち芝木。女の唇がどす黒い赤色に塗られ灰色の沼の表面に金魚が下腹を出して浮いているよう池田。煤ずっを溶かしたようなどす黒い空気芥川。敵の没落を確信するどす黒い知慧ちぇ武田巻。ユリの雌蕊しのようにどす黒い赤い色"池田。後悔で顔がすっかりどす黒くなる"森瑙。どす黒く血を滲にじませる。怨嗟説んに顔色をどす黒く染める。 **にびいろ【鈍色】** 鈍色にどっしりと落ち着きをもって光っているささやかな藁葺きの屋根"佐藤春。山の連なりが鈍色に霞む。河の水が鈍色に澱ょとんで見える今日。曇天の午後の光線が鈍色に肩の上に落ちる=武田泰。▼鈍色に光る(池の水が。川面が)。鈍色の土用波に揉まれる。秋の午後の白い日ざしが空にみなぎり鈍色の海原がまぶしくかがやく。真継。折り重なった鈍色の雲のかなたに夕日の影は跡形もなく消えうせる"有鳥。冬の厚い雲間を通し鈍色の陽がすすけた屋根屋根を照らす=黒墨有。薄墨のにじんだような雲夏目。山の姿が淡墨で刷はいたように霧につつまれる徳田。薄墨を刷いたように僅かばかりしか残っていない髭ひげ芥川。薄異色にくれなずんだ峰々。低い空に恋足色の暮色がただよう藤沢。 **にゅうはくしょく【乳白色】** 景色が乳白色にもやる。海霧とりで川もお花畑も乳白色に漬かる=加賀。停泊灯が霧雨ににじんだ朝の最初の光に乳白色に潤む"三島。乳白色の朝方の冷たい空気が小屋にしのびこむ!遠藤。濃い乳白色の霧。ゆらゆらと乳白色のほこりが舞い上がる=畑。遠い山々が雪が煙ると見えるような柔らかい乳色に包まれる"川端。乳色の需もゃが風に追い払われる=遠藤。濃い霧が乳色の層をつくる=本庄。乳色の霧が(渦を巻く。流れる)。 <529> # 白い・黒い-171 **ねずみいろ【鼠色】** 海が鼠色に霞む。川が風色に淀む。ハンカチが鼠色に汚れる。シーツが鼠色に染まる=高橋三。不確かなような鼠色に徐々に侵され出す山々=堀。鼠色の暮色が漂う。鮮やかな碧ぁぉい空が鼠色の雲の中から見える=田山。暗い鼠色の重そうな水=本庄。迫ってくるような濃厚な鼠色の雲"長塚。外が薄鼠色に暮れる。心もち海鼠色に色ずんだ限のくま=水上。梅雨に入ってじめじめと源鼠色に煙る日が続く"永井路。くすんだ紫の海の上を幾糸もの銀鼠色の波紋が走る=大庭。灰鼠色の(どんよりと重く垂れた山本版、冬空のように嶮けもしい夕雲"室生)。 **はいいろ【灰色】** 灰色に(曇った川の水。近い薄い緑。乾いた漠々たる風景=中局数)。空一面が灰色にかき曇る。墓石が薄い灰色に鎮まる。雨で海も町もすべて灰色に濡れる遠藤。霧のように灰色に立ちこめた雪の空大佛。雲がけわしい灰色に光る宮沢。目が灰色に近いような深い茶色鷺沢。灰色の(雲がびっしりと張りつめる。空が低く垂れ下がる。世界が現実の世界に取って代わる谷川)。高波の灰色の海にのりだしていく。街が灰色のぶもゃの中に沈む。無機質な灰色の壁。胸の中で灰色の空気が膨らむ。青味をおびた灰色の眼"塩野。頭の中で灰色の役が渦巻きはじめる"小林久。一面灰色の焰却のの屋根瓦=岡木。重い灰色の雲の脚が海の上に垂れ下がる=島崎。凍りついた雲が灰色の層をなして低く垂れる"福永。死人の眼のように濁った灰色の雲=徳水。生温かい糊のりのような空気が頭に浸透してきて灰色の靄をかける=中島戦。冬の午後の淋しい灰色の光が斜めに差す=倉橋。夕暮れがかって模糊もことした灰色の幕に包まれる=本庄。灰色を帯びた疑いが脳裏をかすめる=阿刀田。頭の奥に灰色の(霧が渦巻く。冷え冷えとした荒野がゆっくりと拡がる=五木)。▼近い灰色(思に。白に)。灰色がかった青い瞳。水が月光を映して無いぶし銀に光る=大岡。錆色にびがかったグレー。グレーで統一された店。今にも雪になりそうなどんより重いグレーの空吉本。山肌を洗った雨水が川に流れ込み海を茶色とグレーのまだらに変える=村上春。鉛色の(空がいまにも泣き出しそう。雲に覆われた北国の空火坂。空の下に同じような色をして拡がっている海=遠藤)。水路が鉛色によどんでいる。川の水が鉛色にくすんで見える=山本有。雲が鉛色に重く垂れ込める=火坂。肌がみるみる輝きを失って鉛色に変じる=日野。朱色に鉛色を混ぜ合わせた赤々しい河面=中沢。 **ひょうはく【漂白】** ▼漂白する(黄ばみを。布を。ふきんを)。漂白剤に浸ける。自分の影に漂白剤をかけてただでさえ薄い印象をさらに薄めようと努力しているような男荻野。▼脱色する(布を。むだ毛を。髪の毛を茶色に)。 **ほのじろい【ほの白い】** ほの白い(水平線の彼方。桜が枝を広げている)。日の出前のあえかにほの白い雪明かりの世界「飯田。霧がたっぷりと月光を含み羽二重雄ぶのようにほの白く光っている=山手。暗闇の底にほの白く泡立っている渦。萩の花がほの白く咲きこぼれる。雪がほの白く積もる。 **まっくろ【真っ黒】** ▼真っ黒(鍋底のように。土いじりをした後のように爪の先が"原田宗。影絵の人形みたいに"山口。墨をなすりつけたように=中島み)。ぬれたようにまっ黒な上着!宮沢。真っ黒な影が落ちる。星のない真っ黒な夜空。鍋墨を塗ったような真っ黒な室内が古い写真の印画に似て朦朧と浮かぶ=獅子。真っ黒に(蠅はぇがたかる。日焼けした顔)。文字どおりまっ黒になって働く=灰谷。▼真っ黒にする(顔を煤すって。顔を煤煙ぶぶで)。▼真っ黒になる(石炭みたいに。両手が油で)。真っ黒い(煙があがる。広大な夜)。水羊癸ふが心のような真っ黒い川内田発真っ黒く焼け落ちた残骸。家々が宵闇の中に真っ黒く沈む。墨で真っ黒く塗りつぶす。 **まっしろ【真っ白】** 吐く息が真っ白。珊瑚さんの屑〈ィでできた渚の砂が余りにも真っ白で眼に痛い"中島救。真っ白な(花が咲く。しぶきを上げる。二の腕が見える。匂うばかりの柔肌"中野美。穂先をなびかせた薄堀。マリンスノーがあたりに浮遊する=辻井)。紙のように真っ白な顔の高橋源。象牙のように真っ白なきれいな歯並み=佐山。チョークのように真っ白な髪清水鸟。真っ白に燃えつきた灰になる。川の流れが真っ白に翻る。唇が真っ白に乾く。湖が真っ白に凍結する。電灯に照らされて桜が真っ白に闇の中から浮き出す伊藤整。すすきが真っ白に光って波をたてる=宮沢。脆弱ぜいじなうすい皮膚が真っ白に冴える谷崎。目が痛いほど真っ白にむらなく漉き上がった紙"宮尾。▼真っ白になる(顔面が。あたりが霜で。恐怖のあまり髪の毛が。緊張して頭の中が。精神的なショックで頭が"畑村。頭の中が広々とした雪の草原のように=小川)。真白い(入道雲。富士の峰)。真っ白い羊のような顔!向田。洗濯糊せん吹のきいた真っ白いカバー。 **むさいしょく【無彩色】** モノクロ写真のような無彩色の固くて冷徹な感じ干刈。色彩の欠けた光景。白黒のぶち。強風のため砂と雪が白黒のまだらもようを描いている浜"西木。モノクロームの部屋に色彩が戻る落合。 <530> # 心配する・ほっとする **あやぶむ【危ぶむ】** ▼危ぶむ(実現を。将来を。骨抜きになるのを。大損をするのではないかと=平岩)。危ぶまれる(完工が。先行きが。実現が。将来が。生存が。舌禍が。存続が。行く末が)。 **あんうん【暗雲】** 暗雲が(地球上を覆う。頭上にのしかかる。空に垂れ込める)。未来に暗雲が漂う。ラブストーリーに暗雲がたちこめる気配荻野。一条の光とても見出せない暗雲のただ中里見。先のない暗い身の上のことが暗雲のように頭上にかぶさってくる萩原。絶望感が暗雲のように範囲を広げていく=笹沢。疑惑が頭の中に暗雲みたいに広がる笹沢。 **あんじる【案じる】** 案じる(先行きを。手術の結果を。父の病気を。身の上を。行く末を)。▼身を案じる(夫の。可愛い女房の。仲間の。娘の)。寝言に名を呼ぶくらい糸じている=山本周。この先が案じられる。 **あんしん【安心】** 安心が(先に立つ。手伝う。増す)。安心する(無事な姿に。すっかり。ほんの少し。高い塀に守られて。重荷をおろしたように=丸谷。上等な毛布ですっぽり包まれたように=小川。全身の力が抜けたように松本。無事な顔を見れば=山本虎)。ほっと一安心する。安心させる(市民を。少女を。先生を。父を。母を)。半ば安心し半は困惑する。かねがね安心しきっている。安心した表情になる。幾分か安心した面持ち。心底安心した顔になる。安心して(腰を据える気になる。それぞれの場所に落ち着く)。社員が安心して働く。居心地の良い陽溜まりを見つけた鳥のような心境=高樹。砂漠にオアシスを見る思い。大船に乗った気でいる=多岐川。長い間の辛苦艱難んひんかが皮のむけたように自分を離れた心地がする=国木田。毛の先ほどの危惧心もない=伊藤左。ほっとした気配が浮かび上がる。大木の際に立っているよう森岡。平和に至る道を見つけたような心持ち。宮本育。ほっとひとつ息を吐く島崎。枕を高くして眠れる。安心感(体中の力が抜けてゆくような=原田康。待っていたものが予定通りにきてくれたような高橋治)。安心感が(胸に芽生える。胸いっぱいに広がる)。悠揚とした安心感が生まれる。▼一安心(ここまで来れば。やれやれこれで)。備えあれば憂いなし。恐れが(消える。去る)。発覚の恐れがない。後順の愛いなく(死ねる。仕事に逍進はいできる)。少しも心配しない。何の心配もなく暮らす。不安が(解消する。消え失せる)。▼不安もない(いささかの。迷いも。健康に関して何の)。不安を完全に拭い去る。 **あんぜん【安全】** 安全で穏やかな世界。安全な(距離を保つ。人生を歩む。高みに昇る。地を求める。所に隠れる。道を進む。場所に移動する)。一刻も早く安全な場所に運ぶ新田。最大値が安全な範囲内に留まる=畑村。安全に(気を配る。国外に逃がす。対するコスト。上陸できる場所がある)。安全を(確認する。確保する。図る)。子々孫々の安全を期する。空の安全を守る。当面の安全を維持する。身の安全を保つ。リスクがほぼゼロに近い。安全圏に逃れる。原発の安全性を論じる。安全装置を(取り付ける。外す)。有効な安全対策を導き出す。安全弁の役を担う。安康の生活に浸る。危機が去る。危険性が消失する。危険はない(差し迫って。別段)。セーフティーネットの(拡充を図る。ほころびが顕在化する)。 **あんど【安堵】** 心に安培が広がる。危っいところをすり抜けてきたような安培がひろがる=古井。限もくらむような安培が身内に広がる=森境。安堵で気が和らぐ。分明な自分の影を見失わなかったとでもいうような類い稀な安堵で一杯檀。安堵に胸を撫で下ろす。窮地を脱した安堵に憩う。深い安堵に満たされる。後悔が次第に安堵にかわる。水上。安堵の(息をつく。色を浮かべる。空気が漂う。情が湧く。吐息をつく。気持ちを覚える。溜め息を漏らす。涙がこみ上げてくる。胸をなでおろしたように大きく息をつく萩原來)。温かい湯のように安堵の感情が湧きあがってくる=大江。しびれるほどの安堵の中に浸る!島尾。目に安堵の色が現れる。▼安堵の色が浮かぶ(表情に。面上に)。顔に虚脱したような安堵のいろが浮かぶ"藤沢。瞳に安堵の色をにじませる=永井路。ほっとするような全喜ばしい安堵の情が胸を浸す。藤枝。ほっと安堵のため息をつく。安堵の表情を(浮かべる。見せる)。全身の毛穴から疲労が浸み出すような安堵を覚える辻井。安堵する(一件落着して。やれやれと)。安堵して静かな眠りにつく。胸のうちに安堵の思いが広がる=なかにし。空一面の黒い雲の中から一筋の光が射しこむような気持ち「佐高。胸の中の重苦しさが減る。安堵感(解き放たれたという。不安から逃れられた)。安堵感が(心に広がる。胸にあふれる)。溶けるような安場感の中へ落ち込んで行く=柴田翔。深い安堵感を覚える。ひとつの仕事が終わったという安堵を感じる=辻井。領地安堵を保証する。 **あんのん【安穏】** 安穏な(生活を送る。老後を送る)。順調安穏な人生コース右吉。安穏に(夢を見続ける。世を送る)。神仏に安穏を祈る。身の安穏を図る。 **うれい【憂い】** 晩秋の落莫氏くとした愁い!鳥尾。愛いうれが現実になる。声音に憂いがみなぎる。心に少しの憂いがあるときは月の前を横ぎる薄雲ほどの微かすかな陰翳かげが美しい顔にかかる=中島敦。要いに満ちた表情。深い憂いに閉ざされる。愁いの雲がいつの間にか押し払われる=岡本。表情に憂いの影がない。顔の表情に愛いの影が閃120ちく野間。憂いを帯びた声。含んだ美女)。後顧の憂いをなくす。胸に憂いをいだく。満足と憂いを織り混ぜた顔「大庭。双峰に深い憂愁がある。都会の憂愁が漂う。灼ゃけるような憂愁と倦怠けんとに湧き立つ三島。顔に憂愁の影がある。名状しがたい憂愁の感情が起こる。憂愁を湛たたえた清らかな眼差しが細く輝きを帯びる=横光。 <531> **いれこむ【入れ込む】**入れ込んでいる(芝居に。熱っぽく。すっかり)。血道をあげる(女に。芝居に)。 **うれえる【憂える】**▼憂える(危機的状況を。財政の疲弊を。病気再発を)。▼愛う(国を。我が身を)。憂うべき(事態を招く。風潮。問題)。同憂の(士。者が集う)。重大な事態になったと憂慮する雰囲気に包まれる=柳田。憂慮に堪えない。▼憂慮する(山林の乱伐を。政情不安を。従業員の流出を)。憂慮すべき事態。 **きがかり【気がかり】**気がかりが(残る。増える。日増しに増幅して胸のしこりとなる=森村)。気がかりで仕方ない。気がかりな(言葉。出来事。ものが胸の奥に残って落ち着かない内海)。気がかりの種を打ち消す。喉にひっかかって離れない骨のような存在"塩野。▼気が気でない(時の移るのが。盗まれはせぬかと)。内心気が気ではない。気遣わしげな(表情で尋ねる。顔をこしらえる)。気遣わしげに(顔を曇らす。咳払いをする。覗のぞきこむ。眉をしかめる)。 **きがらくになる【気が楽になる】**▼気が楽になる(肩の荷がおりたように。胸につかえていたものを吐き出して)。肩の荷が(下りた気分。下りたように吐息をもらす=和久)。肩の荷を(おろしたような表情=森村。一つおろしたような気分源氏)。 **きぐ【危惧】**危惧が(当たる。心をかすめる。的中する)。危惧の念を(いだく。覚える)。危惧を一笑に付する。危惧をいだく(事の成り行きに。経営方針に一抹の)。危惧する(手術を。舌禍を)。胸の奥底に抱いている危懼さく光瀬。 **きにかかる【気にかかる】**▼気にかかる(安否が。世間体が。妙に。心の隅で。ちょっと。何かと。言われたことが。つまらぬことが。寝ても覚めても)。気にかかることが山積している。気にかける(家族を。時間を。信用を。他人の服装を。一つ事を。身なりを)。願慮する(因縁を。上役の機嫌を。結果を)。周囲に願慮するところなく行動する。 **きにする【気にする】**▼気にする(加齢臭を。時間を。社会的体面を。他人の視線を。肉体的欠陥を。肌の荒れを。呼び鈴の音を。必要以上に。いちいち。視線を絶えず。目に角立てて。ウエストのサイズを。スカートの裾を)。▼耳を気にする(周囲の。他人の)。▼目を気にする(周囲の。世岡の。他人の)。▼気に止める(顔の青さを。言葉の裏を。ちょっとしたことを)。心を労する(財産に。世俗的な名誉に=中野孝)。▼気に病む(些細なことを。評判を。太り過ぎを。物事を。内心。つまらないことを)。▼念頭に置く(刑罰を。・主題を。間問題の所在を)。▼念頭に入れる(事情を。社会的秩序を。状況を)。 **きになる【気になる】**▼気になる(相手の存在が。視線が。他人の思惑が。人の目が。娘の行動が。妙に。すごく。ちょっと。何となく。小さなささくれが。とうでもいいことが。どことなく沈んだ様子が。目先の利益ばかりが三浦し)。気になる存在。最も気になる点を尋ねる。気になって仕方がない。前から気になっている。つねづね頭のどこかに棘とげが刺さっているような感じ=山本周。終始念頭から離れない。のどに刺さった魚の小骨のような存在=飯田。喉に物がひっかかっているよう。中沢。道徳臭が鼻につく。欠陥が目につく。▼耳につく(潮騒乱以が。時計の音が。泣き声が。人の声が。物音が。伝聞的な言葉遣いが。藪鶯心村の笹鳴きが"山手)。 **きのどく【気の毒】**見れば目の毒、開けば気の毒。気の毒でとても見ていられない。気の毒な苦しみよう。気の毒といえば気の毒な話。すっかり落ちぶれて気の毒なくらい。食欲が衰え傍目似たにも気の遂なほど肉が落ちる=山本品。見てても気の毒なくらいすっかりしょげる=遠藤。気の毒なくらいがっかりする。気の毒に思いこそすれ非難できない。心からお気の毒だと思う。お気の毒に堪えない。▼気の毒がる(冤罪以を。離婚を)。儀礼的に気の毒そうな顔をする。気の毒そうに(声をひそめる。目を伏せる。肩をすくめてみせる)。裸の王様。気の毒なほど(狼狽的心する。老いさらばえる=井上靖)。 **きゆう【杞憂】**心配が全くの杞憂であったことがわかる=曽野。懸念は杞憂に過ぎない。不安が杞憂に過ぎないことを願う。▼杞憂に終わる(危惧が。懸念が。心配が)。とりとめのない杞憂を口にする=檀。来年のことが今から心配でたまらない!舟橋。▼思い過ごし(過敏な。不吉な)。▼取り越し苦労(余計な。年寄りの。とんだ)。取り越し苦労は益がない。取り越し苦労をしても始まらない。 **きをもむ【気をもむ】**▼気をもむ(遅い帰りに。しきりに。あれこれ。さんざん。内心。何かと。何やかやと。一人で)。 **くったく【屈託】**屈託が(にじみ出る。全身にまつわりつく)。一向に屈託が晴れない。不機嫌の背後に屈託が潜む菊池。▼屈託がある(心に。胸に)。日頃絶えず胸の底に往来している屈託に暮れる=永井荷。屈託の色を見せる。いつになく屈託のありそうな表情戸板。胸に屈託を抱える。気持ちが屈託する。屈託ありげに黙っている。 **くったくがない【屈託がない】**潑剰いつとして屈託がない。屈託がなく楽しそう。屈託なく(明るい声。はしゃいで大笑いする)。生き生きとした屈託なげな表情。屈託なげに(遊ぶ。くつろぐ。笑う)。屈託のない笑顔。雲問から再び太陽が顔を出したような感じで晴ればれと温かく屈託のない微笑=森環。何の屈託もない(顔。身の上)。何の屈託もなく(笑う。おなかいっぱい食べる)。 # 住む <532> **けねん【懸念】** 懸念が(頭をもたげる。現実になる。募る。払拭いいしできない。ぎっくり胸にこたえる=長塚)。懸念を(口にする。露ほども見せない!安部)。深い懸念をいだく。懸念する(業務の支障を。経験の短さを。捜査の難航を。安手な感じを。日本人への迫害を)。▼懸念される(悪影響が。景気後退が。混乱が。资本不足が。不況が)。 **こころぐるしい【心苦しい】** ▼心苦しい(すこぶる。そこまでしてもらっては。我がままを言っているようで)。心苦しく(思う。考える。感じる)。心苦しくて仕方がない。心苦しさが先に立つ。心苦しさを(覚える。解消する。感じる)。心苦しそうに言う。申し訳なさそう(いくぶん。かなり)。申し訳なさそうな(顔。表情で言う。目で小さくうなずく)。目に申し訳なさそうな光を浮かべる。いかにも申し訳なさそうに項垂れる=加賀。 **しょうこう【小康】** 小康が夫婦の上に落ちる。小康を得る。▼小康を保つ(騒ぎが。病状が)。ほっと一息つく小康状態。小康状態が続く。小康状態を保つ。 **しんつう【心痛】** 心痛で痩せ細る。心痛のあまり病気になる。心痛する(心ひそかに。安否を気遣って。夜も眠れないほど=坂口)。胸が(痛くなるほど疲労を滲にじませた顔落合。ツンと痛く息苦しくなる=高橋三)。ひそかに胸を痛める。悪事でも働いたように心が痛い=有島。苦痛が心に刺さる。恥ずかしく思う念が焼くような痛さで心の隅にこたえる=伊藤整。心に鈍い痛みがよぎる。心の痛みが癒される。触れることを避けている思い出が焼き饅ここを当てられたような痛みを心に与える遠藤。切り傷に風が触れるような痛みを心に感じる=円地。皮をむかれた白兎も診ぅのように心がいたむ木山。心の奥に(痛みが走る。うずきが残る)。 **しんぱい【心配】** 身の安全が心配。心配が(先に立つ。胸に浮かぶ。次々と湧いてくる)。心配で(おろおろする。確かめに来る。たまらない。一睡もできない。居ても立ってもいられない。仕事が手につかない。枕を高くして眠れない。夜も眠られない)。▼心配になる(さすがに。いささか。他人事ごとながら)。しょっちゅう心配ばかりかけている。いろいろ心配をかけて済まない。先の心配をしていても仕方ない。先走って心配をするだけ損。母親の心配をよそに。両親に心配をかける。最後の最後まで迷惑と心配をかけどおし重松。▼心配する(最悪の場合を。万一の場合を。身の振り方を。間に合うかどうかを。身が細るまでに)。寄るとさわると心配し合う。今更心配しても始まらない。▼事態を心配する(最悪の。不慮の)。▼心配させる(妻子を。両親を。さんざん)。心配される(貸し渋りが。品薄が)。心の中の拭き切れぬ影が雨雲のようにひろがる=石川。気がもめる。身を削る思い。胸がつふれぞう。胸の内で不安を膨らませる。飯も喉を通らぬありさま。心配していないといえば嘘になる。疲れきったように愛い顔で沈殿する=大江。眉を寄せて憂い顔をする。▼思いやられる(暮らしぶりが。これから先が。将来が。前途が。身の上が。行く末が)。▼思いわずらう(明日を。くよくよと。あれやこれやと。とりとめもなく)。気苦労が(多い。絶えない)。気苦労で夜も眠れない。気に病む。愁眉を開くには程遠い状況。そばで聞いていてはらはらする。だれかに盗まれるのではないかとびくびくする=阿刀田。万一火事になっては大変だとひゃひゃする芥川。いっときとして心の休まることがない。気の休まる暇がない。気持ちの休まるときがない。憂色が(濃い。全村に満ちる)。顔に憂色が(消えない。漂う)。心配性で小心な性格。知らず識らずのうちに心配性になる。物事を(深刻に考える。悪い方にばかり考える)。苦労性な一面がある。苦労性を剣もき出しにしたような話し振り“黒井。内憂外患こもごも至る。内憂外患が一度にかぶさってくる。内憂外患に悩まされる。 **しんぱいごと【心配事】** 心配事が一つ減る。絶えず新しい心配事が生まれる。心配事を(打ち明ける。持ちこむ。胸の中に抱え込む)。▼心配の種(栄養不足が。この上ない)。心配の種が(消し飛ぶ。尽きない)。後々心配の種が残る。物悲しい気持ちで胸がふさがれる。胸も怨ふさがるような記事で満たされた毎日の新聞"島崎。 **しんぱいそう【心配そう】** 心配そうな(顔で訊く。目でそっと見る)。顔に心配そうな影がさす。兎約誌の眼のようなおじけづいた心配そうな眼"小局。心配そうに(顔を覗のぞき込む。口を挟む。尋ねる。眉をひそめる。顔色をうかがう。眉間に皺しゃを寄せる=福氷)。目がしょぼしょぼと心配げにまたたく。 <533> # 心配する・ほっとする―172 **しんぱいない【心配ない】** ▼心配はない(気づかれる。ばれる。さしあたって暮らしに)。格別心配することはない。取り立てて心配することもない。心配は(万々ない。無用)。いささかも心配はいらない。思い過ごしに過ぎない。▼及ばない(案ずるには。懸念には。心配には)。・後顧の憂いがない。案じるほどのことはない。案ずるより生むが易ゃすし。 **つつがない【恙ない】** つつがない(家庭を営む。人生を歩む)。つつがなく(帰国する。結婚式が終了する。任務を終了する。天下平定に成功する=多岐川)。家族がつつがなく暮らす。式がつつがなく進行する。諸事万端つつがなく運ぶ。大役をつつがなく済ませる。旅をつつがなく終える。跡目相続がつつがなく済む藤沢。何事もなく(一日が過ぎる。月日が経つ。歩調をすすめる)。間一髪のところで何事もなく済む。 **どうよう【動揺】** 一座にざわざわと動揺が起こる。心の動揺がおさまらない。心理的動揺が大きい。船体の動揺が体に伝わる。胸に動揺が渦巻く。突然あらぬほうへ飛んだ話題に動揺が上書きされる"有川。目の奥にかすかな動揺が走る"火坂。表情に動揺の色が浮かぶ。不意を襲われたように微かすかに動揺の色を示す犬佛。露ほどの動揺も見せない。動揺を隠し切れずに視線をうろうろさせる=原田宗。心の動揺を見透かされる。内心の動揺を隠しきれない。胸のうちの動揺を抑えるかのごとくひどくゆっくりとした動き=高橋三。▼動揺する(決意が。車体が。人心が。突然の質問に。唯物論と観念論の間を"森宏。過去と現在のはざまで=火坂。飲んでいるコーヒーの味も分からないほど=原田宗)。動揺しているように視線が定まらない泉俊。激しく動揺する(心の中が。嵐のように)。心が(騒ぐ。風に弄ばれる小舟のように揺れ動く=海音寺)。心臓が激しく鳴る。▼揺れる(瞳の色が。胸があやしく)。気持ちがぐらつく。心の揺れが収まりそうにない。 **はらはら** はらはらと気がおちつかない。はらはらする(今か今かと。触れれば壊れそうで)。はらはらしながら夜を明かす。はらはらして見守る。「はらはらするような格好で駆けだす。手に汗握る(好試合。物語)。手に汗を握って(試合を見る。見つめる)。 **ひかん【悲観】** 悲観が国を覆う。悲観に満ちた報告。悲観のどん底に落ちる。悲観する(将来を。前途を。人間を)。悲観するには(当たらない。及ばない)。病気を悲観して自殺する。悲観的傾向を帯びる。悲観的な(意見を述べる。考えが頭をよぎる)。人生に悲観的になる。考えが暗いほうへ落ちがち。悪いほうに思いつめる。物事を悪いほうに考える。 **ふあん【不安】** ▼不安(自分を失いそうな三浦米。目に見えないものに圧しつぶされそうな安岡。相手の消息が不明になって耳鳴りが起きるほど"有吉。いつ落ちてくるかも知れない雪崩の下にいるような伊藤整。思いがけぬ変動の波にさらわれてゆくような頼みがたい。解決に近づいている扉を逆に封鎖されてゆくようなもどかしい=檀。暗い穴へ追い込まれるような円地。見当のつかない恥辱の大海に乗り出してしまった鳥尾。彫きで神経を洗われる夏目。世界が黒々と塗りつぶされていくような小林久。自分一人だけが取り残されたような"小林久。捨身の生活のどん底にひそむ寂しい!有良。絶えず物に追いかけられているような佐藤奏。誰かを絶えず裏切っているような安岡。息子が掌~50から逃げていってしまうような辻井。濃霧に塞ふさがれた森の中へ踏み込むような一種の=長塚。脈搏はいくがカタンと止まって身体が冷たくなるような=安岡。八幡の藪知いょらずを歩きまわるような出口のない=円地)。不安が(焦りに変わる。恐怖に変わる。心にきざす。頭から去らない。瞬時に伝染する。日に日に高じる。むくむくと頭をもたげる。胸の中で膨らむ。吐き気のように胃の奥からこみあげてくる!森嘱。胸を思ぐろとした夜の波のように冷たく噛む=小林久)。記憶のどこかに焦げつくような不安が残る"光瀬。呼吸の苦しくなるような不安が胸を締めつける=福永。心に濃い不安が翳かげを落とす=光瀬。こめかみの痛くなるような不安が人々の顔にみなぎる=本庄。とんでもない失敗をやりそうな不安が頭をかすめる=丹羽。浪のように不安が揺れる=梶井。漠とした不安が遠い雲のように浮かぶ=黒井。未踏の地に足を踏み入れるような不安が募る=藤田。胸に暗雲のような不安がよぎる=海堂。胸に黒い不安がもくもくと湧く=胡桃沢。胸をしめつけられるような切迫した不安が襲う森琉。黙っていることが不安だとでもいうようにしゃべり続ける=城山。落ち着きの悪い不安な夢"鳥尾。感情が低回してゆく不安な日々芝木。消化になれない堅い団子が胃に滞うているような不安な胸を抱く夏目。不安に胸が張り裂けそうになる=真継。足元がおぼつかない不安に襲われる=村松。疑いが疑いを呼びどうしようもない不安に責められる=原田康。坐っているのさえ堪らないほど暗澹たる不安に浸る人米。怒游记とのような不安におびえる=石川。瞳が不安に揺れる=横山。万が一まちがいが起きたらと不安になる三浦し。不安の海で溺れかける=横山。言い残した言葉が胸のうちで大きな不安のタマゴを孵化ふかさせる=笹沢。心が不安の黒雲におおわれる=佐山。胸が不安の霧に閉ざされる=小林久。不安を収めるための器を心の中に用意する=重松。ありありと不安を顔に出す。自分の将来に不安を感じる=島尾。安心感がぐらつく。下手な自転車乗りのようにともかく走り続けていないと安心できない!安部。何度確かめても安心できないというように念を押す小川。「負け」という字がチラつく「向田。愁眉が晴れない。羅針盤のない船で霧の海を走るよう内橋。不安が広がる。胸中に掴掘っかみどころのない不安が広がる=熊谷。捉っかまえどころのない不安が一瞬一瞬体の底からひろがっていく高樹。孵化した不安が大きく姿を広げる笹沢。得体の知れない不安が胸にひろがる=藤沢。胸に暗い雲が広がる"東野。 <534> **ふあんかん【不安感】** ▼不安感(足もとの危ういような=鷺沢。どこへ飛んで行くのかわからない!高橋治。眼もくらむような石川)。不安感が(心に巣食う。一挙に爆発する。胸を覆い尽くす)。なにか忘れ物をしているような不安感が胸に来る=高橋治。名状しがたい不安感にとらわれる=高橋和。尖とがった岩の上に片足で立たされているような気分黒井。路のない森に迷い込んだような心地=国木田。目隠しで迷路を進むような心持ち三浦し。目が覚めれば何もかも姻けむになってしまうのではないかというような心持ち永井荷。 **ふあんそう【不安そう】** 不安そうな(暗い口調。目を向ける。表情が濃くにじみ出る)。不安そうに(眉をひそめる。あたりを見回す。後ろを振り返る)。不安げに(眉を寄せる。小首をかしげる。目を何度もしばたたく)。尋ねる声がびっくりするくらい不安気になっている=有川。不安丸出しでおどおどやって来る。 **ぶじ【無事】** 無事(決着がつく。脱出を果たす。逃亡に成功する。引き継ぎが終わる。目的地にたどり着く)。何はともあれ無事でよかった。無事な毎日を送る。無事に(虎口を脱する。大任を果たす。家に戻ってくる。家まで送り届ける。済むとは思えない。両親のもとに帰る)。子供を無事に育て上げる。手術が無事に終わる。納骨が無事に済む。前途の無事を祈る。互いに手を取って無事を喜ぶ。幸い命に別状はない。辛うじて事なきを得る。事なく長年の歳月が過ぎる。事件が事なく収まる。息災に暮らす。息災を願う。大過なく(一生を過ごす。役を務める)。定年まで大過なく勤めあげる。任期を大過なく終える。大事に至らずにすむ。破綻なく人生を過ごす。複雑なプロットを破綻なくまとめる構成の巧みさ三輪。今のところ被害はない。 **へいあん【平安】** 平安が訪れる。平安な(暮らし。時代。生活が続く。睡眠を奪われる)。円周をめぐるような平安な生活=開高。平安に(生きる。暮らす。寝入る)。気持ちが平安になる。平安を保つ(心の。生活の)。心の平安を(祈る。守る)。平安楽に過ごす。 **へいわ【平和】** 泉水の水面もこれほどに鎮まったことはないのではないかと思われるほど心の中がおそろしく平和"有吉。平和がいっぱいの朝。世上にふたたび平和がおとずれる!日洲。二人の間に冷たい平和が続く辻井。平和な(家族の団欒ぶん。気分に浸る。時が去る。日常を楽しむ。日々が訪れる。風景が広がる。世界が到来する。凪などの期間が続く。空気の膜が張りつめる=中村真。眠ったような日々=阿部)。おだやかで平和な毎日=飯田。観光写真でも撮っているような平和な風景"泉受。午後の日だまりのように平和な日々村上春。平和に生涯を終わる。世界が平和になる。仲良く平和に暮らす。見せかけの平和に酔いしれる。人生を楽に平和に渡っていく=田山。平和の建設に逃進に心する。平和は力では保てない"辺見。平和へ通ずる道を発見する=山岡。平和への(渴望。志向)。平和を(闘いとる。これ以上かき乱したくない三浦綾)。家庭の平和を乱す女。世の中に平和をもたらす。平和運動を(支援する。唱導する)。政権の平和的移喚。平和的解決に力を尽くす。平和的な話し合い。平和的に生存する。事態を平和的に解決する。戦火が(消える。絶える)。太平の(夢から覚める。夢に慣れる。世が続く)。太平の夢を(むさぼる。破る)。国が泰平を取り戻す。 **ほっとする** 口にしにくいことを言わずに済んだのでほっとする=山本周。心なしほっとする気持ちになる。ほっと安堵はんの息をつく。ほっとした空気が流れる。声音にほっとした響きがある。ほっとして(笑顔を見せる。肩の力を抜く。体じゅうの力が抜ける。すっかり安心する)。暗夜に灯火を得た思い=坂口。肩が抜けたように感じる=夏目。肩の凝りがほぐれたような気持ち=海音寺。▼気がする(重荷が下りたような“人米。目の前が少し明るくなったような=北原)。口笛を吹く気になる=佐野。はりつめていた緊張が一度にほぐれる=水井路。ほっとしたように(汗を拭う。顔を崩す)。安培に胸が満たされる―熊仓。今まで背負っていた重荷がさらりと一時におりる=中。愁いの眉を開く。寿命が延びる思い"畑。やれ助かったと思う。やれやれと(顔を見合わせる。つぶやきを漏らす)。事下山の報を聞き愁眉を開く、やれやれと愁眉を開く思い=舟橋。愁眉を開いたような(頌。気持ち)。▼胸をなで下ろす(密かに。お役御免だと。人知れず。ほっと。やれやれと)。恐ろしい悲劇が一歩遠退いた時の如くに胸を撫で卸す夏目。 **むなさわぎ【胸騒ぎ】** 頬の赤らむような胸騒ぎ=川端。胸騒ぎが事実だったことを知る。さわさわという胸騒ぎが収まらない!熊谷。▼胸騒ぎがする(にわかに。妙に)。▼胸騒ぎを覚える(凪様な。激しい。さわつくような谷村。なぜともわからない!勝目)。静かな水面に石を投げ込んだような気分・佐藤多。はげしいそよぎが胸に来る=檀。不意打ちを喰ったように胸がさわぐ藤沢。わけもなく胸が騒ぐ。かすかに胸が騒ぐのを感じる。 <535> # 過ぎる・過ごす―173 **いきさつ** 出会いから結婚に至るいきさつ。事件のいきさつが明るみに出る。思いがけぬいきさつで手に入れた金。いきさつを詳しく語って聞かせる。かいつまんでいきさつを説明する。手短にいきさつを話す。行く立てを(書き込む。話す)。事の次第を話す。事の。敵討ちの次第を申し述べる。経締を(かいつまんで話す。つまびらかにする)。今までの経緯を説明する。これまでの経緯を思い返す。質問されるままに経絆を話す。手短に経緯を語る。人には語れぬ苦しい経絆を辿たとる=柴田錬。 **いちねん【一年】** 一年(悲喜こもごもの。長いような短いような三浦絵)。起稿して一年で脱稿する。一年の歳月が過ぎる。一年を通じて数えるほどしかない。季節がひとまわりする。一周忌の(法事。法要)。結成一周年を祝う。年鑑を読む。年に(一度の行事。一度か二度あるかないか。一回しか会えない)。 **いままで【今まで】** 今まで(あまり見たことがない。幾たびとなくあったこと)。今までとは(大変な違い。別人のように冷たく言う)。今までに類のないほどの接戦。とんと今までに聞いたことがない。今までの(苦労が水の泡。経過を詳しく話す。労苦に何ほどか報いる三鳥)。今の今まで(頭に浮かばずにいた。そう思いこんでいた)。関係が今までどおりに進行する。今日に至るまで。今日まで(生きた甲斐がぃがない。知らずに過ぎる)。今日の今日まで予想だにしなかった。今日までの出来事をかいつまんで話す。古来何人もなしえなかったこと"新田。古来からすぐれた人材を輩出する=吉川。古来の記録に残る。丽来い。(今日まで足かけ十九年。記憶に封印して触れない人倉橋)。 **おおむかし【大昔】** 大昔に(栄えた恐竜。できた山)。大昔の出来事。悠遠の古いぶ。原始の(面影が残る。生活ぶりを経験する)。千古の昔。蒼古ご、ぅの昔。古代の貴重な建築。古代的な形式を残す。古代文明の遺跡。太古の(遺物。昔。名残のような光景。眠りから覚める)。 **かくせいのかん【隔世の感】** 隔世の感が(漂浮う。強い。するエピソード。なきにしもあらず)。隔世の感に堪えない。隔世の感を(覚える。強くする)。今昔の感がある。今昔の感に堪えない。 **かこ【過去】** 過去(現在未来を結ぶ。最高の水準に到達する。最低の水準に落ち込む)。▼過去(遠い遥かな。呼んでも帰らぬ。コツコツ積み上げてきた貴重な島田。鏡面のように静かになっている=連城)。過去が(影を引きずる。一度によみがえる)。誤った過去が烙印のように人生に焼きついて離れない=結城。浄化された過去が戻ってくる=辻井。高く吊るした大石を切って落としたように過去が大きな暗い悲しみとなって胸を打つ有島。過去から(逃げられない。逃れる)。毅然とした態度でビシャリと過去と決別する"永倉。過去と現在のはざまで動揺する火坂。過去に(愛着を失う。生きる男。傷を持つ。背を向ける。区切りをつける。対する懐旧の念、束の間の思いをはせる)。記憶が過去にさかのぼる。現在を過去に重ねる。心も体も過去にしばられる。遠い過去に沈んでいる古傷・斎藤栄。過去になど目もくれない。過去の(栄華の思い出。教訓を生かす。扉を開く。例に鑑みる。悪夢を思い出す。誤りに目をつぶる。忌まわしい記憶。記録が参考になる。言葉がよみがえる。ことはきれいさっぱりと忘れる。事例を分析する。世界に逃げこむ。恥をさらけ出す。話に触れたくない。場面が後から後からと浮かんでくる。怨霊与认』に取りつかれたような異常な気配"高橋和。出来事が時間の裂け目に陥ぉち込んで消え去る=吉行。亡霊を背負って彷徨す分する=船山)。混沌にふとした過去の闇。努力が過去の話となる。沈んだ色合いに塗られた過去の心の風景"原田康。内部に堆積している過去の影=中村真。過去の記憶(遠い。生々しい)。▼過去のものとなる(事件が。今や全く)。消えかかる過去は夢同様に価の乏しい幻影に過ぎない=夏目。昔のままの通りを歩くと生まれる前の過去へ入って行くように丸谷。過去への(決別が必要。道を閉ざす)。過去を(水に流す。現在に重ねてみる。丸ごと引き受ける。ふりかえってみるようなつもりで稿を進める三好達。夢のように思いめぐらす佐藤谷)。後ろめたい過去を背負う。鏡が過去を映し出す。淡々と過去を振り返る。掌~60から零こぼれ出すほどの過去を一筋一筋と摘み上げては歩いて来た道を想い出す高樹。ないものねだりをするように自分の過去を否定することだけにやっきとなる=石坂。失ってしまった華やかな時間をいとおしむ永倉、セビア色の写真。時計が凄すごい速さで逆廻りしたように感じる=高橋治。何もかも遠方におさまりよく遠のいてしまう三好達。▼前のこと(一昔も。今を去ること三十余年も)。以前とさほど変わりがない。以前とは(立場ががらりと変わる。まるで違う感じ)。今を去ること七年前。来し方行く末を考える。来し方を振り返る。苦労の多かった来し方を語る。過ぎし日の(思い出。記録。夢)。前代の遺物。だいぶ前に一度見たことがある。過去の人になる。世間からとっくに忘れられた存在"西木。 **かつて【嘗て】** かつて(兄事した人物。過ごした国。住んでいた町。結婚したことがある。一世を風靡否;したシャンソン歌手小池)。かつての(栄光の名前。活気を失う。軽挙を悔やむ。懐かしい日々。矜持行いを喪失する。クラスメートに出会う。出来事に思いをはせる)。かつてほどのインパクトを持たない玉村。 **かてい【過程】** ▼過程をたどる(一路没落の。変容の)。技術の脈絡が単線化する=畑村。近代日本の成り立ち。宇宙の成り立ちを知りたい。別れに至るブロセス。ブロセスを(管理する。詳細に詰めておく)。 <536> **きのう【昨日】** 昨日が琥珀にはの中に閉じこめられたハエのように時の流れの中で結晶になる=清水俊。昨日から緊張のしづめ。昨日とは打って変わった(充実した気分。上天気)。今日も昨日に変わらぬ天気。日に増して(強い風が吹く。多くの人々が集まる)。昨日のことのように覚えている。つい昨日の出来事のよう。昨日や今日の思いつきでもなさそう。 **けいか【経過】** 手術後の経過が良好に推移する。経過を(記録に取る。事細かに書く。順を追って話す)。詳しく経過を記載する。私見を交えずに経過を話す。経過する(死後数時円が。数日が。長い時間が。三年の星霜を。発展段階を)。月が経ち年が重なる村上元。経過措置を取る。▼経路をたどる(自然な。複雑な)。岡けっする(三十余年を。長い年月を)。時系列で分析する。年代順に並べる。進化の道筋をたどる。成功への道筋を学ぶ。抵抗運動の歴程をたどる。 **けいれき【経歴】** 経歴が物を言う。経歴に簡単に触れる。さまざまな経歴を持つ人々が集まる。立派な閲歴を持つ。幾多の輝かしい戦歴。▼前歴がある(複雑な。いかがわしい)。輝かしい前歴に傷がつく。前歴を胸打ちわって語り聞かせる。略歴を(紹介する。記す)。▼キャリア(教師としての。俳優としての)。キャリアを(積む。持つ)。殺人の前科を持つ。前科一犯を背負う。明らかに前科者だとわかるような男。前科者と白い目で見られる。履歴に傷がつく。履歴を書き込む。履歴書を(書く。添える。同封する)。 **こくいっこく【刻一刻】** 刻一刻(風が強さを増す。病状が悪化する)。刻一刻と(完成が近づく。状況が変化する)。権力の恐ろしさを時々刻々実感する。戦闘の日が時々刻々近づきつつある。時々刻々に流れて行く現実の動き。刻々舞いこんでくる情報。刻々と(明るけて行く空。色を濃くしてゆく夕焼け!行)。危険が刻々と迫る。恐怖が刻々と募る。戦況が刻々と変わる。刻々の変化に見とれる。 **こよみ【暦】** 暦の上に春が立つ。暦をめくるように季節で貌かぉを変える庭木や下草向田。年号を西暦に換算する。カレンダーに印を付ける。年号が改まる。日めくりをとばすように記憶を走らせる=高樹。家全体が日めくり暦のような感じ干刈。 **さいげつ【歳月】** 夢のように過ぎた十年の歳月永井。歳月人を待たず。月が去り月が来る。歳月が(すべてを解決する。またたく円に飛び去る)。かなりの歳月が経つ。長い歳月が流れ去る。▼歳月が過ぎる(夢の間に。十年の)。歳月の(重みを感じる。皺しゃで渋くなってしまったような一組の夫婦島尾)。何百年という長い歳月の風雪に耐える!白井。歳月は押しとどめようがない。歳月を経た美しい傷みが湖漫びました部屋 松本。星移り月変わって項。光陰矢の如し。一寸の光陰怪んずべからず。春秋を(数える。繰り返す)。茫々思うと長い春秋を生きる。三百年という星霜は短いようで長い豊田。星霜を(重ねる。経過する。経る)。 **さくや【昨夜】** 昨夜の(記憶がよみがえる。夢の中で見たようななまなましい気分。日野)。昨夜は一睡もできなかった。先夜の風で木が倒れている。夜来の雨が昼過ぎに上がる。 **じかん【時間】** ▼時間(日曜日の午後の街じゅうがゆったりしたような"石川。胸が潰れるほど長い=遠藤)。時間が(あっという間に経つ。重い鎖をひきずるようにして経過する=小林久。止まったような世界乃南)。思案する時間が欲しい。自分の時間が持てる。楽しくて時間が経つのを忘れる。瞬時の火花のかわりに油のような時間が流れる"立原。貴重な時間が血のように流出する=森村。実際には数秒足らずの時間が長い時に流出する=森村。実際には数秒足らずの時間が長い時間が音を立てて流れつづけたように感じられる=小林久。自分の中の時間と時計の示す時間がずれる荻野。物音ひとつしない地下の薄くらがりのなかで時間が死に絶えてしまったよう村上巻。▼時間がかかる(思い出すのに。準備に。手直しに)。ほとんどまばたきするほどの時間だったが、停止したフィルムの場面の中にいるような気がする"灰谷。ぎりぎりの時間に帰ってくる。毎日決まって同じ時間にやってくる。約束の時間に遅れる。哲学者カントの如く時間に正確"井上ひ。時間の(河を遡行沢にする。波に呑まれる。感覚がなくなる。経つのが遅く感じられる)。解決は時間の問題。ずっと昔に死んでしまった時間の断片=村上春。時円はあり余るほどたっぷりある=驚沢。時間を巻き戻すことは不可能!熊谷。いたずらに時間を費やす。いつもの倍以上の時間をかける。しばらく時間を置く。無為な時間を過ごす。時間感覚が完全に狂ってしまう三浦し。時間切れで引き分けに終わる。時間的に余裕ができる。帰らねばならぬ時刻が近づく。いつもの時刻に起き出す。約束の時刻に来ない。終電の時刻をとうに回る。日食や月食の起こる時刻を予言する。非議に多くの時日を要する=津本。時の車が回る。のらりくらりと時間稼ぎをする。とっさに頭に浮かんだ単語をつなげて時間を稼ぐ海堂。 **じき【時期】** 時期が(悪い。くれば当然公表する)。帰国の時期が延びる。ものには時期がある。多感な時期に母親が死ぬ。力が頂点の時期に決行する。最も円熟した時期の作品。ほぼ時期を同じくする。時期区分を試みる。 **じこう【時効】** 時効が成立する。良心に時効があってはいけない三浦。事件が時効となる。失恋を時効にかける。時効の進行を停止させる。事件が時効を迎える。 **じせい【時勢】** 時勢が(緊迫化する。来れば逃さない)。時勢に対する敏感さ。時勢には勝てない。時勢の(波に乗る。推移を静観する。成り行きを的確に把握する。変転に際してうろたえ騒ぐ=津本)。 <537> # 過ぎる・過ごす―173 **じだい【時代】** 時代が(大きく変わろうとしている。音を立てて動く)。一つの時代が確実に去る。時代から葬り去られる。時代とともに移り変わる。時代に(一時期を画する。ささやかな杭を立てる=林京)。新たな時代に突入する。時代の(風を読む。先駆けとなる。先端を行く。相違を感じる。風潮に染まる。迷子になる。渦巻きに巻きこまれる。風向きが変わる。困難から抜け出す。先触れを読み取る。状況を考慮に入れる。匂いを漂わせる。革新の先頭に立つ=高橋知。妖雲を切り開く"舟橋)。考え方に時代のずれを感じる。背負った時代の傷を笑い飛ばすようなしたたかさ=阿久。誰しもの心を揺り動かさずにはおかないような時代の焦燥島崎。乗り越えていく時代の響きを頭上にひらめくように聞く=本庄。時代はどんどんかわって行く半村。時代を(超えた普遍性。象徴する言葉。背負って生きる)。困難な時代を乗り切る。次の時代を招来する。繁栄の時代を迎える。若い時代を空しく過ごす。時代感覚に乏しい。時代状況を的確に認識する。時代背景を抜きにしては語れない。時代閉塞を切りひらく。時代の流れに(抗秘らいがたい。逆らう。身をさらす。さおさして勢力をますます強化する=美濃部)。時代の流れの(なかで忘れ去られていく。すさまじさに自失する=本庄)。大きな時代の流れの中で溺れかける=阿久。時代の流れは人間の力では押しとどめることができない瀬戸内。時代の流れを見る目が欠けている=内田康。時代の滔々にうたる流れ。きらびやかな時代の極彩色の激流のただ中を泳ぎ渡る=篠田。時代の波に(押し流される。抗しきれない。もてあそばれる。乗ってあっという間に高いところへ駆け登る=半村。呑まれて消えていく"中村真)。荒い時代の波の中に没する内橋。時代の波を全身でかぶる。時の流れの中で朽ち果てて行く。もはや止めることはできない時代的趨勢せい!高橋源。時の流れに(抗う。身を任せる)。今昔をユーモラスに風刺する。歴史の(流れに逆らう。流れを理解する)。 **じゅうらい【従来】** 従来気づかれなかったこと。従来にないユニークさ。従来の姿勢を堅持する。従来より(優れた技術。踏み込んだ発言)。旧来の(形にとらわれない。しきたりを墨守する。体制を維持する。発想を転換する)。在来種が減る。在来の手法。 **じゅんじゅんに【順順に】** 順々に本数を減らす。夢が一つひとつ順々に実現していく。順次話を進める。逐次(検討を進める。実行に移す)。 **じりゅう【時流】** 時流に(おもねる。迎合する。抗する。投じた言辞を弄する)。時流の先頭に立つ。時流を超越する。時流に遅れる。時代から取り残されているような陰鬱さを滅たたえた家筒井。時代においてきぼりを食う。うっかりすると時代に取り残される。時代の変化に(取り残される。ついていけない)。バスに乗り遅れる。時流に乗る。時代の(流れに乗る。バスに乗り遅れまいとする=綱淵)。時代の潮流に(棹さぁさす。乗る)。時流に乗って仕事が伸びる。時流便乗ともとられかねない奇策!浅川。 **すぎる【過ぎる】** ▼過ぎる(半年以上が。無言の時が。むなしく日が。泰が三限を。到着の時間を。花の見頃を。約束の時刻を。夢見る頃を。風がうなって。日々が流れて。毎日が忙しく。あっという間に五日が。子供に手のかかる時期が。ちょうど一時間が。何事もなく一日が。何やかやしているうちに数年が。のろのろと時間が。不安に満ちた夜が。夢見心地の日々が。一時間が無為に。頭の奥をかすめて。毎日が際立った変化もなく。楽しい時間は矢のように=石田衣。月日が飛ぶように『有吉。月日が流れるように=奥平)。▼過ぎるのを待つ(嵐が。時間が)。過ぎた(昔を懐かしむ。日々を振り返る)。盛りを過ぎた花。▼過ぎて行く(授業が上の空で柴田翔。毎日が矢のように=塩野)。過ぎていく(日々が平穏に。日々が無駄に。時間が刻々と。時間が遅々と。時がけだるく。サイレンを鳴らして救急車が。和やかに時間が。一日一日が単調に。二人の間が平和に。時間がゆっくりと。毎日がふわりふわりと。季節があっという間に村)。とんどん過ぎていく(時間が。月日が)。時の過ぎ行くままに過ぎて行くのを待つ人米。過ぎている(予定の時間が。還暦をとうに。二十代も半ばを。見張りを始めてからすでに四日が=池波)。▼とっくに過ぎている(予定日が。期限は)。▼駆け過ぎる(魔の影が。目の前を)。矢が肩をかすめ過ぎる。過ぎ去った(時代に親しみを覚える。青春時代に思いをはせる。年月を胸に浮かべる。ことどもが次々と眼の前に浮かぶ=福永。日々のとりとめのない思い出=堀。昔の夢の跡をたどる=森岡。若さを懐かしむ三好級。学生時代を追憶するような遠い目をする『有吉)。夢の間に半年ばかり過ぎ去ってしまう江戸川。▼過ぎ去る(死の苦しみが。矢のように。あっという間に月日が)。▼通り過ぎる(顔を背けて。行列が粛々と。かなりのスピードで)。幾か月かが流れ過ぎる。オートバイが脇を走り過ぎる。閃き過ぎる(影が。考えが)。風が緩やかに吹き過ぎる。▼行き過ぎる(寺の門前を。駅を一つ)。 **すごす【過ごす】** ▼過ごす(楽しい夜を。平穏な日常を。無為に日を。物静かな宵を。一夜を共に。時間を無駄に。人生を順境に。数日を無為に。一晩を寝ずに。一日を茫然怒らと。一生独身で。自分の部屋で。終日素っ裸で。毎日を楽しく。ゆっくり家で。落ち着かない日々を。高校卒業までの十八年間を。自然に抱かれて幾時間を。嫉妬と苦悩の一夜を。多忙な明け暮れを。びくびくしながら毎日を。雄大な静寂の中で一日を。さしたる仕事をせずに。ビアガーデンで一頻いとり賑やかに。毎日をまじめに。世の中を無事に。一日の大半を眠って。一年の大半を別荘で。祈るような気持ちで。休日を何となくだらだらと。終日黙りこくつて。長い夜を二人きりで。何の障りもなく。発病の恐怖に怯ぉぃえながら。毎日を面白おかしく。毎日をのんびりと。毎日をめそめそと。枕元に付ききりで。三日間をゆったりと。一時空しい放心状態を芝木。らじらしい一時間を"阿部。一日しのぎに酒に溺れて林美。眠ったような農村の風物のなかで津本。店を閉めるまでの時間をいそいそと=獅子)。▼時間を過ごす(退屈な。至福の)。週末を過ごす(家で。田舎で)。▶月日を過ごす(平穏な。鬱屈して瀬乃のい)。▼時を過ごす(休息と歓楽に。無駄話に。昔話を語り合って)。▶聞き過ごす(何の気なしに。うっかりと。上の空で)。旅館街を通り過ごす。うっかり寝過ごす。酒を飲み過ごす。一駅乗り過ごす。▼見過ごす(うっかり。何気なく)。やり過ごす(幾つか駅を。退屈な生活を)。▼説み過ごす(大事な記事を。気にもとめずに)。 <538> **すでに【既に】** すでに(この世にない。お知らせした通り。戦いは始まっている)。時すでに遅し。後悔したときはもう既に後の祭り“山田味。はや(遠い昔のこと。半年過ぎる)。指折り数えてはや幾日。もうこの世にいない。 **ぜんさく【前作】** 前作から五年経つ。前作に引き続き担当する。前作の(スタッフが再結集する。二番煎じにすぎない)。前作を超える出来。旧作を(改作する。書き直す。加筆訂正する)。 **ぜんねん【前年】** 前年の怠けが崇たたる。前年度の水準を確保する。前年並みを維持する。前年比で(減少に転じる。増加に転じる)。去年から持ち越しの論争。去年と様子が違う。去年の落ち葉が堆肥のように腐っている山の尾根=吉川。先年来の好景気。ごつんこつんと頭をたたかれたような先年来の労苦=本庄。 **ぜんや【前夜】** 明日は出発という前夜。前夜から今朝にかけて。前夜の(幻に酔う。悪業をつくづく後悔する。興奮がよみがえる。興奮をそのまま引き継ぐ。出来事を思い返す)。婚礼前夜の心持ちを思い出す。 **たつ【経つ】** ▼経つ(かなりの時問が。頼んでからだいぶ日数が。デビューして数年が。何事もなく月日が。あれからもう一年。かれこれ二十年以上。卒業して十年以上)。瞬く間に日が経っていく。▼経っている(かなり時間が。かなり年月が)。▼経っていない(さして時は。さほど年数は。たいして時間が)。長い時間が過ぎる。 **つきひ【月日】** 月日(年々歳々の果てもない!本庄。夢のように過ぎ去った短い=宇野十)。月日が平穏に経過する。三年の月日が流れる。長い月日が経つ。月日と共に悲しみが弱まってゆく=竹西。月日に関守はない落語。月日の経つのは早いもの。月日を安穏に過ごす。孤独の月日を過ごす。ともに暮らした月日を思い出す。▼月日を送る(無為に。困苦勤勉の雛型はそのもののごとき。幸田露)。月が重なり年が重なる=森吗。 **てじゅん【手順】** 手順が(逆になる。狂う。よい。悪い)。次の手順に進む。一つひとつ手順を踏む。すべてが危なげなく手順通りに運ぶ"高井。手順通りに進める。手順よく運ぶ。工程が(一律化する。停滞する)。工程の一部を省略する。幾つもの工程をたどる。製造工程を合理化する。段取りが悪い。段取りを打ち合わせる。仕事の段取りをつける。当日の段取りを確認する。注文通りに段取りよくいく。近々退院の運びとなるだろう。めでたく発足の運びとなる。無理な足の運びをする。 **てつづき【手続き】** 手続きが(終わる。済む。始まる。面倒)。様々な手続きに追われる。手続きを(円滑に進める。終える。簡略化する。忠実に守る)。然るべき手続きを踏む。正式の手続きを踏まない。チェックインの手続きを済ませる。入院の手続きを取る。論理的な手続きを無視する。 **とうじ【当時】** 当時知らぬ者のない有徳の町人。当時の(有様を物語る。事情に精通している。状況を彷彿細りさせる。模様をあますことなく伝える。様子を再現する)。往時と少しも変わっていない。往時の活気を取り戻す。往年の(面影はない。夢を追う)。当代の実相を今に生き生きと伝える。 **とうに【疾うに】** とうに勝負はついている。ねたはとうに尽きている。とうに過ぎている(返済期限が。七十歳を。一時間は)。とうの昔に(終わっている。偽物とばれている)。とっくに(気がついている。底が割れている)。とっくの昔に決着がついている。 **とき【時】** 時が(来たら言う。味方になる。無情に流れる。逆戻りしたように感じる。刻々に過ぎていく。忽然心んとして過ぎる。経つのを知らずに話にふける。経てば経つほど身に沁しみて感じる。万事を解決してくれる。巡って春になる。ゆるやかに流れる。足音を忍ばせ指を唇に当てて静かに過ぎていく。清水俊)。長閑とにダラダラと時が流れて行く=中島敦。緩やかな水の流れのように時が体を通り抜けていく=村上飛。時の(勢いに乗る。勢いには勝てない。経つのを知らずにいる)。重おもしく莫大畑にな時の堆積を支えた家具大江。ほんの一分の間にしても時の歩みと云うものが驚くほど遅々として無限に長く感ぜられる谷崎。時を(つくる鶏の声。経て生き長らえる)。置時計がせっせと時を刻む。事務的な用件に時を費やす。談合に時を消す。内臓に時を取られる。ほぼ時を同じくして生まれる。ぼんやりと時を送る。時を過ごす(いたずらに。おしゃべりに)。時計が秒を刻む。若い時分に戻ったよう。▼時分に訪ねてくる(思い出した。忘れた)。食事の済む時分を見計らう。 <539> # 過ぎる・過ごすー173 **とけい【時計】** 時計が(合っている。遅れる。狂う。進む。止まる。地虫の鳴くような耳障りな音を立てる"高井)。静かな家の脈搏ぬぐくのように時計が分秒を刻む音がする佐藤巻。時計がチクタクと(時を刻む。秒を刻む)。時計の(アラームで目を覚ます。針が遅々として進まない"貫井。針のように正確に生きる=椎名域)。寸秒の狂いもない時計の正確さ藤本。矢のように進む時計の針を気にしながら帰途につく=木山。時計を見ながらやきもきする。▼時計を見る(おもむろに。ちらちらと)。大時計が鐘のようにのんびりとした十二時を打つ=石森。▼置き時計(机の上の。床の間の)。置き時計が時を刻む。柱時計が(時を打つ。ほんぽんと鳴る)。目覚まし時計が鳴る。目覚まし時計を(セットする。卓上に置く)。タイマーの針を進める。タイマーを(かける。セットする)。腕時計に目を(落とす。走らせる)。腕時計を(腕にはめる。ちらりと見る。覗のぞき込む)。時計を腕に巻きつける。腕時計から目を上げる。ストップウォッチでタイムを計る。ストップウォッチを(押す。握る)。砂時計の(砂がさらさらと流れる。砂のように一生が流れる=キーン。無慈悲なしたたりのように心をしめつける音=烏尾)。雨が小屋の屋根を規則正しい砂時計がこぼれるように降る=遠藤。砂時計をひっくり返す。 **とし【年】** ▼年(行く年来る。史上他に類のない)。年が経つにつれて。いつもの年より暑い。今年はいい年だった。年度内に予算を消化する。年度末の総決算。年とともに意気地がなくなる。記憶力が年とともに低下する。年を追うごとに(数が増える。華美になる)。図書館の利用者数が年を追って増加する=有川。 **にちじ【日時】** 定められた日時に出頭する。日時の指定を受ける。相当な日時をかけて完成する。日食や月食の起こる日時を予報する。約束の日時を守る。年月日まで克明に思い出す。真夜中を過ぎて日付が変わる=山本」。 **ねんげつ【年月】** ▼年月(穏やかな老年が後ろに児ぃいている竹西。気の遠くなるような長い=光瀬)。年月が(心の最良の薬。音もなく過ぎる。急流のように流れて行く=壺井)。慣れるまでに長い年月がかかる。退屈きわまりない年月を過ごす。 **ひさしぶり【久しぶり】** 久しぶりで家族が笑っている顔を見た=さだ。久しぶりに(お目にかかる。顔を見せる。故郷へ帰る)。気分が久しぶりに浮き立つ。久しぶりの再会を喜ぶ。久開始;を叙する。近来にない心の余裕を感じる。近頃にない上機嫌。久方ぶりに(暇を見つける。胸の踊るような思い)。久々で親の元へ帰る。久々に大粒の雨が降る。 **ひところ【一頃】** ひところ(はやっていたスタイル。すたれていた行事が最近復活した=飯田)。一頃の(勢いがない。作風と違う)。一時はどうなるかと思った。 **へる【経る】** ▼経る(幾多の曲折を。幾多の苦難を。幾つかの職を。一連の手順を。紆余曲折らせを。改訂の手を。技術的検討を。様々な職業を。試行錯誤を。後八時問を。十年の歳月を。人生の年輪を。選挙の審判を。多彩な職歴を。時の試練を。内戦の時期を。発展段階を。幾度かの春秋を。この世の辛酸を。卒業後二十年を。通算十六ラウンドを)。 **むかし【昔】** かびの生えたような昔のこと=長崎。遠いむかし昔に思いをはせる。遠い昔の(出来事。物語。夢をしのぶ)。昔(はやった歌。見た風景。付き合っていた男)。▼昔(言いつたえにもないほどの遥かな=本庄。カビの生えたような『村上限。遠い微かすかな穴の奥底のような=佐藤春)。昔から(言い伝えられている。言い古されてきた話。相場が決まっている。詩歌に興味がない=伊坂)。言い伝えが昔からある。とうの昔から知っている。昔からの(言い伝え。言い習わし。悪い癖。決まりごとを踏襲する。友達のように振る舞う)。辛うじて昔からの自然が生きながらえている森村。昔と(まるで違う。ちっとも変わっていない)。三百年昔にさかのぼる。昔の(面影が残る。職場に戻る。話を蒸し返す。例にならう。悪事をほじくり出す。恨みを根に持つ。思い出をたぐりよせる。記憶が再現される。恋人の死に涙する。たたずまいが残っている町。つきあいに甘える。同級生に出会う。苦い思い出がよみがえる。人のひそみにならう。恋を胸に秘めて生きる"海堂。雰囲気の残る下町"石田衣)。ずいぶん昔の話。すべてが昔のまま。楽しかった昔の記憶。つい昔の癖が出る。不意に昔のことを思い出す。悲しかった日々が昔の博覧会の絵はがきのように浮かんでくる=阿部。遠い昔の微かな記憶"中村真。突如としてこわれたラジオが鳴り出すみたいに何十年も昔のことをことこまかにしゃべり出すぃ阿部。なり振りかまわずに昔の男にすがりつこうとする藤田。昔のままの通りを歩く。昔を(知る人の間での語り草。想い出したような懐旧的な情懐に沈む"菊池)。羽振りのよかった昔を鼻にかける。」色の変わった畳の色が古い柱と映り合って昔を物語るように寂び果てる夏目。古い時代にさかのぼる。古い時代の(色褪ふっせた記憶。一角が消えて行く)。生まれる前の話。遠い日。時計の針が二十年前に戻ったよう。昔日の(威厳を失う。面影を失う。勢いを盛り返す)。もはや昔日の面影をとどめない。一昔前とは事情が違う。昔気質の刑事。昔懐かしい風景へのノスタルジー。昔流儀のやり方。▼昔から(天地開闢ごびの。悠久の)。古の(道。都)。古いぶを担ぎ出して今を貶けなす=中島敦。中世に栄えた港。中世の城のような建物。 **ややあって** ややあって(一言言う。落ち着きを取り戻す。おもおもしく答える=池波)。ややあってから聞き返す。しばらくして戻ってくる。やや経ってから顔をあげる。 <540> # 優れる・劣る **いつざい【逸材】** ▼逸材(埋もれた。得がたい。滅多に現れない)。逸材を(育てる。张出する)。恋中のうちの錐さり。異才の持ち主。多くの異才を輩出する。異能ぶりを発揮する。英才教育を(受ける。施す)。奇才(天下の。不世出の)。鬼才の(監督。作家)。奇才を発揮する。襞足に、を(伸ばす。展のべる)。才人として聞こえた人物。▼天分に恵まれる(豊かな。稀代の)。持ち前の天分を存分に働かせる。多士済々たる知識人。多士済々の(顔ぶれ。講師陣。武将)。 **うできき【腕利き】** 腕利きの(刑事。職人)。▼切れ者(会社随一の。学内きっての。業界きっての)。経営の才腕に長だける。才腕を縦横に振るう。▼やり手(海干山千の。業界一の。なかなかの)。すご腕の(経営者。刑事。実業家)。すご腕をふるう。敏腕な(事業家。社会部記者。弁護士)。敏腕をふるう。辣腕で聞こえた人物。辣腕の(外交家。弁護士)。▼辣腕をふるう(縦横に。政権保持に)。 **うでまえ【腕前】** 本職顔負けの腕前。腕前が(上がる。落ちる。数段上)。腕前に(敬服する。自信がある)。自分の腕前に鼻を高くする。冴えきった腕前に驚嘆する=池波。料理の腕前はなかなかのもの。自分の腕前を棚にあげて言う。▼腕前を持つ(超一級の。天下一品の)。昔取った杵柄忡。腕一本で(食って行ける。下層から這い上がる)。料理屋を腕一本で切り回してくる三段。腕が(世間に認められる。めきめき上達する)。数段腕が上がる。腕がある(たいした。なかなか)。医者としての腕が優れている。剣の腕が立つ。腕に(技術を持つ。自信がある。磨きをかける)。腕に覚えの(ある面々。本職)。いささか腕に覚えのある分野脈絡が単線化する=畑村)。噂どおりの技術の持ち主。技術を(売り物にする。高く評価する。身につける。次から次へとためらうふうもなく披露する=高橋三)。新しい技術を生み出す。科学と技術を結合させる。高度な技術を要する。最新の技術を導入する。技術改良が進む。技術革新が進む。技術革新を牽引する機関車の役割を果たす内橋。単なる技術的な問題に過ぎない。新たな技術分野に進出する。内橋。己の腕の未熟さに舌打ちする集合。腕のいい(医者。カメラマン。大工。漁師。料理人)。何十年もの経験を積んだ腕のいい熟練工浅川。右に出る者がいないほど腕のいい職人熊合。腕のたしかな画家。腕の立つ(大工。武士)。日頃の腕の見せ所。腕はさほど落ちていない。私の腕も捨てたものではない船戸。腕を買われる(射撃の。料理の)。▼腕をふるう(シェフが。至芸の。調理の)。腕をふるう場が広がる。腕を持つ(優れた。裁縫や料理に並々ならぬ外村)。 **おとらない【劣らない】** 名だたる舶来の品にも劣らない内橋。いずれ劣らず雄源ぶらな姿。いずれ劣らぬ(美少年ばかり。美人ばかり)。国際的に見劣りがしない。顔負け(大人も。専門家も。ブロも)。大人顔負けの図体。玄人顔負けの技量。▼人後に落ちない(真剣さでは。読習量においては。人を思いやる気持ちでは。女に手の早い点では=舟橋。美人という点なら=獅子)。他に比して遜色ない出来栄え。貴婦人として遜色ない鮮やかな出処進退有吉。大家の作品と比べても遜色がない。花の精と比べても遜色がない美しさ=舟橋。まだまだ若い者には引けを取らない!高橋克。ひけを取らない(一歩も。技術では。知名度では。悪知恵では。武勇にかけては人に)。 **おとる【劣る】** ▼劣る(運が。性能が。品性が。けだものにも。能力が数段)。犬畜生にも劣る輩が熊谷。一等いつもを愉する。拙劣な(演技。文章)。指揮が拙劣を極める。▼見劣りがする(貫禄の点では大分。とみにみすぼらしく)。劣位を優位に転換する。コンクリートの劣化が静かに進行する=辺見。劣化する(強度が。品質が)。 **ぎじゅつ【技術】** 世界に冠たる技術。技術が他国に流出する。新たな技術が確立する。技術に(習熟する。暦きをかける)。技術の(向上に努める。粋をつくす。流れを読む。世界を一変させる発明。普遍化をめざす。 **きのう【機能】** 機能が(麻痺まぃする。元に戻る)。機能を(充分に果たす。存分に引き出す)。新しい機能を付加する。機能する(仕組みが。システムが。文民統制が。メカニズムが)。無駄のない機能美。新機能を(試す。付加した建材)。一枚のカードに多機能を集約する。パフォーマンスを向上させる。 **きょうりょう【狭量】** 狭量で他人に厳しい人。狭量な愛国主義。自分の狭量さを恥じる。器量に乏しい。度量が(狭い。小さい)。偏狭な(経験主義者。性格。ナショナリズム)。器の小さい人間。貧乏は人間の器を小さくする=貫井。 **きりょう【器量】** ▼器量(非凡な。十人並み以上にすぐれた=山手)。器量に見合ったささやかな幸せを手に入れる=篠田。器量の大きな人物。どんと器量の大きいところを見せる。▼器量を具えぇえる(不世出の英雄たる!舟橋。本家の頭領にふさわしい=村上元)。並ぶもののない大将の器に成長する。器の大きな人間。雅量に富む。度量が(大きい。広い)。度量の広さに驚く。清濁併せ呑む。▼大器(未完の。無冠の)。末は大器になる。大器の片鱗いいを感じさせる。 **げい【芸】** 芸が(細かい。荒すさむ。遺憾なく発揮される。いよいよ冴える。身を助ける不仕合わせ=永井荷)。芸は身を助く。芸を(磨く。身につける。みっしり仕込む)。師匠の芸を自分のものにする。大した芸事も身につけていない=林美。長唄はいうに及ばず端唄、小唄なんでもござれの芸達者"有吉。芸道一筋の名手。一道に長じる。 <541> # 優れる・劣る-174 **けってん【欠点】** 欠点が(鼻につく。目につく)。どんな人間にも弱点や欠点がある"佐高。人間の欠点は一局部の現象に惑わされて大筋を見失ってしまうこと"三好談。欠点を(あげつらう。逆手に取る)。具体的に欠点を指摘する。自分の欠点を直す。互いの欠点を補い合う。あらが(見える。目立つ)。あらを(探す。拾う)。▼うらみがある(手遅れの。結論を急ぎすぎた。物語的な要素に欠ける)。瑕疵がしの多い作品。色の白いは七難隠す。▼多少の難点がある(計画に。論理に)。短所に(つけこむ。目をつぶる)。長所と短所を裏返しに見る。デメリットを補う。▼難がある(思考能力に。性格に。コントロールに)。▼難点(高価なのが。食べづらいのが)。▼難と言えば難(固すぎるのが。融通が利かないのが)。思いがけないところからぼろが出る。▼玉に瑕ぇず(早口なのが。飽きっぽいのが。少しおっちょこちょいなのが。やることは的確で早いが短気なのが)。毒舌が玉に瑕だが何しろ美人なので男性隊員に人気がある=有川。欠点がない。難のつけようがない。非の打ち所もない。 **さいき【才気】** 縦横の才気が感じられる。眉や目の問に才気があふれる=森岡。才気と活力に満ちる。才気に富む。才気にあふれた(会話。スピーディーな応酬)。頭の切れる才気走った(男。女)。才気煥発にいかな(青年。表情と態度)。才気縦横の人物。才気走った(交渉。小ずるさ)。世慣れて才走った言葉。 **さいち【才知】** 他にたちまさる才知。目から帰へ抜ける才智=半村。才知縦横の人物。英知に富む。眼光に叡智纭ぃの輝きがある。英知を(集める。備える)。人類の叡智を注ぎ込む。小才が利きすぎて軽い感じがする。小才の利く男。小才を弄する。 **さいのう【才能】** 新しい才能を(発掘する。世に送り出す)。才能(何でもやってのける多方面な。汲くめども尽きない)。才能が(異彩を放つ。花開く大舞台)。才能に対する過信。思いがけない才能の発見。才能の芽が(自分の中で立ち枯れになるㄓ吉行。伸びぬうちに涸れてしまへ~松本)。▼才能の持ち主(羨ましい。抜きんでた)。優れた才能はいつでもどこにいても遅かれ早かれ認められずに終わることはない=塩野。才能を(鼻にかける。遺憾なく発揮する。公正に評価する。高く評価される。可能性の極限まで押し拡げる=瀬戸内)。ある種の才能を持って生まれる。自分の才能を信じる。並々ならぬ才能を感じさせる。めきめき才能を伸ばす。豊かな才能を思う存分発揮する=今用。才能を発揮する(縦横無尽に。自由奔放に)。自分の才能に(自負がある。見切りをつける)。一芸に秀でる。幼いときから学才にめぐまれる=山本周。而才に恵まれる。少時より面才をあらわす。賢と不才を識別する。互いの賢を尊敬しあう。経営の才がある。天性の才が自然発生的に流露する=瀬戸内。政治的才幹のある人。風月の才に富む。才分を(あらわす。発揮する)。▶才力(ちっぽけな。優れた)。おのれの才を頼む。知能が(高い。発達する。低い)。知能の(程度が知れる。発達が遅れる)。天賦の才に恵まれる。▼才覚(利発な。商人としての。身すぎ世すきの)。才覚が(きく。働く)。才覚を(伸ばす。働かせる)。自分の才覚を信じる。まわりの人たちにはばかられるほど才弾ける=有。日増しに美しく才弾けていく。 **さいのうがない【才能がない】** 取り立ててこれという才能もない。これという才能のひらめきも見えない人物"石坂。才能に乏しい。すじがよくない。画才がない。才が欠けている。経綸心の才が欠如する。才気に欠ける。少しも才気走ったところがない。とりたてて能がない。能力が根本的に欠けている。実務能力が皆無に等しい。能力に欠ける。能力は零点に近い。非才を棚に上げる。器ではない(エースの。棟梁とうの)。無能な(大酒食らい。男。官僚。貴族)。精神主義は多くは無能な者の隠れ蓑ぃのであることが多い=司馬。無能ぶりが露呈する。 **じつりょく【実力】** 実力が遺憾なく発揮される。実力で勝利をつかむ。自分の実力に自信を持つ。実力の(ある歌手。差は一目瞭然。ほどは分からない)。人気も実力のうち。実力は未知数。実力を(行使する。高く評価する。発揮する)。能ある鷹たかは爪を隠す。実力本位の人選。地力に勝る。地力を(発揮する。見せつける)。日常生活で鍛えた底力が花を開く赤瀬川。底力の違いが出る。底力のある(エンジン音。声)。 **しゅぎょく【珠玉】** 珠玉の(作品。随筆。短編)。ゲンゲとタンボボと単にょがバラリと撒き散らされた珠玉のようにはげしく輝き合う核。気位が高く手の届かない高貴な珠玉のように近寄りがたい!福永。浜に打ち上げられた陶器やガラスの破片がまんまるく珠玉のように研がれている"宮尾。犯難いん汝はんを玉にす。 **しゅっしょく【出色】** とりわけ最初の二行は出色三好途。出色の(小説。出来)。一時代に冠絶した代表作。冠絶する(天下に。世界に類なく)。警抜な(着眼点。文章)。傑出した(作品。実力。名人)。超絶した技巧。作品中の白眉。白眉のできばえ。一頭地を抜いて優秀な社員。技倆が一頭地を抜いている=船山。 **しゅわん【手腕】** 商売の手腕がある。手腕の鮮やかさに驚く。手腕を(縦横にふるう。余すところなく発揮する)。大いに手腕を発揮してもらいたい。・非凡な手腕を持った作家。目覚ましい手腕を示す。粋人のなれの果てと云ぃいたい枯れた手腕を発揮する横光。部長昇進早々手腕を認められる=浅川。老練な外交手腕の持ち主。優れた経営手腕がものをいう。 **すぐれる【優れる】** 法律の知識に優れる。優れた完 <542> # す **たさい【多才】** 多才な(男。創作ぶり)。多芸多才な(作家。役者)。多芸多能な紳士。多芸は無芸。多能な(機械。人材)。 **てなみ【手並み】** ▼手並み(鮮やかな。見事な。凡手ならぬ)。料理の手並みがよい。痛いところに的確に釘を打ち込んでいく手並みが見事,有川。見事な水練の手並みを見せる=村上元。お手並み拝見としゃれ込む。お手並みを拝見する。 **てんさい【天才】** ▼天才(早熟な。世にも稀ぇぇな。不世出の。いきなり傑作をひっさげて闇の中からぬっと登場する=池澤)。天才にありがちな目負心"松本。天才の(片鱗いんを見せる。呼び声が高い。素質を持った人間。名をほしいままにする)。天才を(開花させる。発揮する)。努力が天才を生む。俗物精神というものは貪婪んに天才を嚥下がんしてしまう今来。天才的な(科学者。指導力を買う。視野の広さ。美意識に恵まれる。ひらめきがある)。美人画に天才的な才能を示す高低克。天才ぶりを示すエビソード=内橋。舞師界の麒麟児にいといわれる。天賦の(才能。素質)。十で神童、十五で才子、二十歳過ぎればただの人里見。かつての神童の片鱗をちらと覗のぞかせる=煉。 **のうりょく【能力】** 魔王にふさわしい特異な能力大原。能力が(側わる。低下する)。能力に(応じた教育。疑問をいだく。ふさわしい職)。外交的能力に恵まれる。一人一人の能力に合った教え方。不思議な能力に目覚める。自分の能力に疑いをもつ司馬。能力の有無を確かめる。驚異的能力の持ち主。能力の限界を(越える。鮮明に浮かび上がらせる=柳田)。能力を(身につける。フルに駆使する)。自分の能力を過信する。従来の能力を上回る性能。特殊な能力を持つ。非凡な能力を授かる。臨機応変の能力を獲得する。能力を発揮する(最大限に。それなりに)。運動能力が高い。運動能力に恵まれない。潜在能力を限界まで引き出す。適応能力を育てる。 成度を示した作品。手腕を認められる。人材を輩出する)。格段に優れた人物。後世に残る優れた詩文。飛び抜けて優れた人。武勇に優れた男。弁舌に優れた理論家。まれに見る優れた教育家。ユーモアに優れた作家。揺るぎない優れた性能。▼優れている(運動神経が。段違いに腕が。飛び抜けて。並外れて。バランス感覚に)。栴檀さんは双葉より芳し。掃き溜めに鶴。尤ゅうなるものの一人。一日の長を(あらわす。認める)。心憎い工夫。なかなか心憎い趣向。何とも心憎い名人芳心憎いほどの巧みさ。心憎いまでの配慮。五指に数えられる。日本で五指に入る会社。技芸神に入る。不胸ふきの才。不世出の(英雄。ビアニスト)。▼妙(言い得て。技芸の。技巧の。造化の。対照の。取り合わせの。コントラストの)。校内で一二を争う成績。当代一二を争う文化人。町で一二を争う商店。業界で一二を争う実績をあげる=五木。日本でも一二を争う名監督『伊集院。優秀な技術者が粒揃い。粒揃いの(選手。美人)。粒選りの(人材。選手。みかん。メンバー。りんこ)。優越感が(芽生える。宿る)。優越感にひたる。優越感を覚える。かすかな優越感を育む。 **ずぬける【図抜ける】** 図抜けた(巨淡。体格)。図抜けて(強い。人がよく素直。利発な娘)。戦績が桁外れに頭抜けている=坂口。ずば抜けた才能。ずば抜けて(成績がいい。物覚えがよい)。飛び抜けて背が高い。成績が飛び抜けて優秀。 **せいのう【性能】** 性能が優れている。性能をテストする。優れた性能を持つ。満足に性能を発揮できない。無比の性能を謳うたう。高性能の(機械。新兵器)。 **たくせつ【卓説】** 卓説を(述べる。拝聴する)。なかなかの卓見。卓見に(富んだ論文。満ちた論文)。 **たくばつ【卓抜】** 卓抜な(腕をふるう。才能。着想。ネーミング。アイデアが生まれる)。語り口の卓抜な巧妙さ。卓抜した技量。信長の人物を見る目は卓抜した鋭さを持っている"山岡。卓越した(才能。人物。創造力。能力を有する)。卓絶した(見識。文章)。古今に卓絶した名品。 **ばつぐん【抜群】** 抜群に(面白い会話。学校の成績がいい)。頭が抜群に切れる。とにかく色彩感覚が抜群にいい。抜群の(アイデア。腕を発揮する。記憶力を発揮する)。智略抜群の人士。学識抜群の教養人。群を抜いて(大きい工場。面白い。成績がいい。音楽的な才能に恵まれている)。群を抜いている(功績が。存在感が)。確実な学問で衆に抜きん出る。抜きん出た才能。抜きん出て頭角を現す。人に抜きん出て出世する。 **ひいでる【秀でる】** ▼秀でる(学問に。文筆に。文武両道に。峰が高く空に)。視力に秀でた目。眉目の秀でた顔立ち。武勇に秀でた侍。▼俊英(数学の。若き)。俊英の監督。俊英を誇る教育。俊秀を選んで修行させる。幾多の俊秀を輩出する。門下に俊秀を集める。 **ひとなみいじょう【人並み以上】** 人並み以上に(正義感が強い。コンブレックスをいだく)。人並み以上の(腕を持つ。見識がある。財産を持つ)。体力に人並み以上の自信を持つ。人並み優れた手腕。人並みに劣らぬ気。人並みより(美しい。大きい)。人並み外れた(大声でわめく。学識。体力。美貌)。なりふり構わず人並み外れた働きをする。人並み外れて背が高い。絶世の(美女。美人とうたわれた女林炎)。並ではない(怖がりよう。強さ)。並の(腕ではない。神経ではない。強さではない。想像力の持ち主ではない)。サは並のものではない。並よりはずっといい暮らし。 **ひぼん【非凡】** 非凡な手腕を発揮する。並々でない非凡な経験。常人には考え及ばない方法。常人の及ばぬ(高雅な心持ち。激しい勉学を続ける"真継)。常人よりはるかに速く走る。ただ者ではない(あの身軽さは。あの鋭い眼光は)。常の人とは考え方が違う。凡 <543> 優れる・劣る-174 愚の者には及びもつかない。短編小説に凡手ならぬ手並みを発揮する。凡手のよくするところではない。凡人とはちょいと違う。凡人には(思いつかない考え。及びもつかない。想像もできない)。凡慮の(はかるところにあらず。及ぶところではない)。 **まさる【勝る】** 胸の煙は瓦焼く窟みまにまさる=九鬼。数の上で勝る。死に勝る苦痛。何にも勝る切り札。勝るとも劣らない成績をおさめる=津本。実力において立ち勝る。大兵力で相手を圧倒する。▼上手(一枚も二枚も。相手のほうが二三枚)。役者が一枚(上。上手)。▼優越する(军事的に。経済的に)。 **やすっぽい【安っぽい】** 安っぽい(成傷にひたる。同情なんか不愉快=高井)。いかにも安っぽい飾りつけ。今にもスプリングが飛び出してきそうな安っぽいソファ=貫井。さして立派な物ではない。さほど高価に思えない。神去神社の古い社は装飾もなくはっきり言ってしょぼい三浦し。万事が安手に出来上がっている。安物の瀬戸物市でも見向きもされない程度の壺っぱ高橋治。見るからに安物じみている。 **ゆうい【優位】** 優位な立場に立つ。攻撃に優位な位置をしめる。優位に立つ(絶対的な。心理的に。相手より。市場で)。心理的な優位を確保する。働く者の優位を主張する。優位性を発揮する。 **ゆうしゅう【優秀】** 優秀な(人材が集まる。成績を収める。店員が揃う。技術者が集まる。作品を顕彰する。少壮学者を天下に求める)。正義感あふれる優秀な記者。学業優秀な生徒。成績優秀な優等生。優良な(成績。婴品。素質。品費)。出来がいい。秀逸な(解決策。作品。人物。長編。表現力)。秀抜な(アイデア。成績。文句が頭に浮かぶ)。 **ゆうのう【有能】** 有能な(医者。重役として重きをなす。人物がひしめく。新人を発見育成する"河盛。独身女性には世間の風当たりが強い"和久)。部下に有能な人材が集中する"辻真。有能の士を麾下きかに集める=山田風。野に遺賢あり。才能に(長だけている。富む。秀でる。恵まれる)。 **ゆうれつ【優劣】** 生産条件の優劣が死活を決定する"石田統。どちらとも優劣がつけがたい豊田。優劣を(比べる。比較する)。彼我の優劣を見極める。甲乙を(つけ難い技術。弁じかねる)。高下を競う。圧倒的に優勢。優勢が(物を言う。揺らぐ)。優勢に転じる。高気圧が優勢になる。優勢を占める。劣勢(圧倒的な。数の上で)。劣勢は覆うべくもない。劣勢を盛り返す。一気に劣勢を挽回する。 **ゆびおり【指折り】** 指折りの(高額所得者。作曲家。資産家。商人。良港)。京でも指折りの高級な茶屋。世界で指折りの工業国。指に数えられる盛んな場所幸田文。京でも屈指の商人の一人。「京でも屈指の商人の一人。日本で屈指の大企業。この辺りでは有数の旧家。日本有数の工業地帯。 **よしあし【善し悪し】** ▼善し悪し(芸の。事の。センスの。あまり早く着くのも)。質に善し悪しがある。旅館は女将はかの器で善し悪しが決まるのが常藤田。音楽の良し悪しが分からない。素質のよしあしで進み具合が極度に違ってくる=人用。環境の善し悪しに依って生きる気持ちが左右される=山本周。良し悪しの判断基準がない。絵の良し悪しを見抜く目を持っている=北原。笛の良し悪しを聞き分ける=福永。可否を(判断する。論じる)。功罪相半ばする。功罪を比較する。原子力は平和利用と核兵器の諸刃の剣。状況によりけり。▼良否(事の。婴品の。品質の)。一長一短を併せ持つ。一利一害のある計画。是か非かの結論を出す。いずれが是か非かは断定できない。良きにつけ悪しきにつけ(いろいろな出来事があった。親の名が引き合いに出される。人の運命は決まっている。類は友を呼ぶもの)。 **りきりょう【力量】** 力量が(問われる。不足している)。政権を担う力量がない。力量に疑いを感じる。力量の限界を知らされる。各人が各人の力量の限りを尽くして岡う隆。力量を(改めて痛感させられる。遺憾なく発揮する。見せつけられる。遺憾なく発露する=中野孝)。高らかに力量を誇示する。恐るべき力量を目の当たりに見る池波。 **れっとうかん【劣等感】** 内奥に潜む劣等感。劣等感が(洗っても落ちない汚点のように心の壁にしみつく=山本周。心の大きな部分を占拠する=舟橋)。感情の底に劣等感が沈んでいる=小林久。胸に劣等感が巣くっている藤田。得体の知れぬ劣等感に苛にぃまれる"三島。劣等感の(とりこになる。裏返しの無神経な図々しさ=奥野)。コンプレックスが火がついたようにあからさまになる=曽野。意識の底にコンプレックスがわだかまる。容貌へのコンプレックスが薄れる。コンプレックスを(人並み以上にいだく。遠慮なしに突かれて僻ぃがむ"有川)。ひがみ心が起きる。ひがみっぽい中年男"五木。ひがみに似た諦め!幸田文。こわばった笑いの隙間からひび割れた僻み根性がのぞく高樹。僻み根性もいい加減にしろ=横山。いささか引け目がある。立ち遅れたような引け目がぬぐえない=三浦綫。引け目を感じて生きる。 **わざ【技】** 技が小気味よく決まる。技に磨きがかかる。技の冴えを見せる。技を身につける。過激な技を競い合う。相撲の技を磨く。華麗な技を次々と展開する"荻野。あっと驚くような大技。さしたる学歴も技能もない。技能が(劣る。向上する。優れている)。技法(最新の。独自の)。技量の(上達が鈍い。差があり過ぎる)。保身の術がしみつく。怪しげな術を使う。スキルを(暦く。身につける)。細工する術す。に習熟する。専門技能を身につける。手臓を(覚える。身につける)。テクニックのすべてを傾けて協力する。華麗なテクニックを使う。高度なテクニックを駆使する。 <544> # 少し・僅か **いくばく** いくばくかの(影響を与えないわけではない。感傷が胸をよぎる)。将来に対するいくばくかの不安。いくばくの距離もない。時はいくばくも隔たっていない。残りいくばくもない人生。 **いったん【一旦】** 一旦(有事の際に。緩急あるとき。事ある場合。引き受けた以上は節義を変えない萩原明)。いったん(こうと決めたら後へひかない。笑いだすと止まらなくなる。その場を引き揚げる=勝目)。一明(事ある場合。有事の際)。ひとたび(回転を始めるとかなか止まらない。政権を握るや途端に開国を決める=網淵。踏み切ってしまえば後は同じ黒井)。 **かすか【微か】** 口もとにかすかな微笑が浮かぶ。胸にかすかな波立ちがある。板の間へ一本の針が落ちたかすかな音=幸田露。いつかの夢のように遠いかすかな記憶=本庄。動くとすぐに消えてしまいそうなかすかな満足感"尾辻。遠い昔の徴かすかな記憶"中村兵。よほど注意しないと見落とすくらい微かな血痕=和久。かすかながら不安が走る。かすかに(声が聞こえる。心が騒ぐ。潮の香がする。ほほえみながら言葉を継ぐ西木)。風鈴が折々思い出したようにかすかに鳴る=森吗。まあと微かに声をあげる"山本周。かそかな(風。物音。生命のぬくもりを慕う檀)。かそけき(音。女の姿。風)。 **かみひとえ【紙一重】** ▼紙一重(生きるも死ぬも。若さとバカさは=飯田)。紙一重距へだてたような妙な心の触れ合い=岡本。一撃を紙一重で免れる。匕首はがを紙一重でかわす藤沢。斬りつけられわずかに刃先を紙-重で遁のがれる=柴田線。紙一重の隙もなくじかに血肉へ触れる=山本周。二人の心が紙一枚の隙もなく結びつく=山本周。間一髪(セーフになる。手遅れになる)。間一髪で(円に合う。大事を免れたことにいまさらのように気づいて体をふるわせる=高見浩)。問一髪のところで死を免れる。 **けほど【毛ほど】** 毛ほどの(動揺も見せない=村松。ごまかしも見逃さない!佐藤愛。叛逆はんきの気配も窟らかえない=水井路)。気に兎ぅの毛の先で突いたほどの乱れが出る=山本周。ほんの毛筋ほど離れた気配永井除。淫らな感情は毛筋ほどもない藤沢。毛の末ほども同情のない心"有島。毛の先ほどの危惧心もない"伊藤左。倦うみ屈した様子を毛ひとすじほども見せないゃ水井路。 **こだし【小出し】** 小出しに使う。反応を窺らかいながら小出しにしゃべる=幸田文▼切り売りする(才能を。土地を。布を)。 **ささい【些細】** 些細な(欠点をあげつらう。問題に気を奪われる。喧嘩妙んはしょっちゅうやっている!鷹沢。失敗を大げさに取り上げる=畑村。一言で人を傷つける!大沢)。どんなささいなサインも見逃さない"重松。些細なことから喧嘩が始まる。些細なことで家族に当たり散らす。些細なことに(こだわる。目くじら立てる)。些細なことを気に病む。些細に見える事柄があれよあれよと思う間に衝撃的な規模にまで発展してしまう柳田。 **さほど** さほど(遠からぬ所。年が違わない。興味が湧かない。珍しいことではない)。さほどの困難を感じない。さしたる(問題ではない。注意を払わない。理由も根拠もない)。さして(気にとめない。不自由は感じない)。さのみ怖れもしない。 **さんさんごご【三三五五】** 三々五々(散歩に出て行く。連れ立って歩く。人が集まってくる。子供たちが校庭に飛び出してくる=貫井)。群衆が三々五々散り始める。参列者が三々五々帰っていく。 **しだいに【次第に】** 次第に(興奮がおさまってくる。視界がよくなる。衰退の一途をたどる。麻痺まぃが進行する)。足音が次第に遠ざかる。一日一日と次第に去ってゆく冬、疑惑が次第に嫌悪に変わる。声が次第に怒りを帯びてくる。空が次第に色を変えていく。次第次第に深みにはまっていく。漸次(改革を進める。解消に向かう)。漸を追って進む。段々と気になり始める。段々に(言うことがわかるようになる。興奮がさめていく)。 **しばし** しばし(沈黙が流れる。わが眼を疑う。呆然と立ちつくす。物思いにふける。抱擁したまま時を過ごす白洲)。いっとき(沈黙が流れる。爽やかな空気が流れる。人々の話題になる)。頬をいっとき上気させる。一時空しい放心状態を過ごす芝木。暫時(休憩する。踏踏ちいいっする)。しばらくの間(口論が続く。黙りこむ。藤躇する)。心が須臾叭。もたゆむことはない。少時の猶予を乞う。少時も忘れることができない。 **じんわり** じんわり心に染み込む声。静かな予感が身体の中にじんわりと浸透する歳沢。じわじわと獲物を追い詰める。未練と執着がじわりじわりと浸してくる芝木。じわりと一歩前に出る。あたたかみがじわりと触れてくる。 **すこし【少し】** 少し(時間が欲しい。離れた場所。気味が悪くなる。照れたような顔)。足元が少しふらふらする。体に少し熱がある。言葉に少し関西訛なまりがある。近頃少しどうかしている。定刻に少し間がある。少しだけ声がかすれる。少しの(異存もない。狂いもない。覚悟もできていない)。言葉に少しのよどみもない。少しは(骨がある。名を知られた学者)。少しばかり不安になる。少しく(穏当を欠く。未練が残る。酔いを帯びる)。月に一二回関係を持つ。ほんの一二の例でしかない。一二歩脇に寄る。じわりと一歩前に進み出る。星が一つ二つまたたく。一つ二つす <545> 少し・僅か―175 る(世間話を。拍手を)。耳掻ふぁきで一杯分くらいの善行"井上ひ。目薬程度飲む。いくらか(元気を取り戻す。救われたような気持ち)。いささか(理解に苦しむ。とまどいを感じる)。いささかの感謝の念もいだかない。一分の(狂いもない。隙も見せずに身構える"有島)。一杯の(コッブ酒。水)。一歩後ろに下がる。足を一歩踏み出す。考えを一歩進める。一歩二歩(後退する。近づく)。ちと(頼みがある。いたずらが過ぎる。不審に思われる点がある)。ちょっぴり(興味がある。瞳に涙をためる)。何がしかの(時間がすぎる。謝礼を受け取る)。何かしら(役に立つ。利得を得る。因縁めいたものを感ぜずにはいられない三好徹)。十の二三も実行できない。一膝にじり寄る。思わず一膝詰め寄る。二口三口飲む。二言三言(愛想を言う。言い足す。声をかける)。二つ三つ若い。幾分(おどけたように言う。気遣わしそうな視線。声を震わせつつ答える。救われた気持ち)。幾分か安心した面持ち。幾分なりとも気分が違う。小幅な(改編、値動き。値下げ。補正)。足を小幅に開く。価格引き上げが小幅にとどまる。若干(気後れがする。とぎもを抜かれる。見るべきものがある)。若干の誇張がある。少々(胃にもたれる。待ちを願う。どすをきかせた声)。値が少々張る。 髪が少々まざる。 **すこしずつ【少しずつ】** 少しずつ(仕事に慣れる。滞が深まる。冷静さを取り戻す)。何かが少しずつ変わりつつある。物事が少しずつ分かり始める。蟻ぁりの歩みのようにほんの少しずつ動かす=梶井。茶碗のへりを舐めるように少しずつ飲む=安岡。なめくじのように少しずつ行く=深沢。鼠わずが引くみたいに少しずつ持ち出す“木山。いくらかずつ(回復する。近づく)。心持ちが一段一段とせり上がる。一段ずつ階段を(降りる。のぼる)。一寸刻みに(体をさする。よじ登る)。一歩ずつ破綻に近づく。足音が一歩また一歩近づいてくる。徐々に(速度を上げる。スピードを落とす)。一口ずつゆっくりかじる。一人また一人と減っていく。薄紙を剥ぐように(晴れてくる。少しずつわかりはじめる=中)。闇が薄紙を剣ぐようにわずかずつ白み始める菊池。体がじりじり衰える。切り立った崖っぷちをじりじり歩く。じりじりと(後ろにさがる。間隔を詰める)。一歩ずつじりじりと進む。価格がじりじりと上がり続ける。圧力計の針がじりじりと上がっていく―柳田。だらだらとなしくすしで死〈向かう瀬戸内。なし崩しで範囲を拡大する。なし崩し的に基準が緩和される。なし崩しに(事が進む。方針転換する)。みすみす自分をなし崩しに駄目にしていく=丹羽。 **すこしでも【少しでも】** 負担を少しでも軽減する。いくばくかでも期日を短縮させる。一歩でも人の先に出ようとする。たといわずかでも貯金する。 **それなりに** それなりに(説得力がある。形になっていそれなりる。筋が通っている。存在理由がある)。結構(居心地がいい。繁盛している店。見た目にはまあまあ。まあまあの(成功を収める。出来)。まずまずうまくやっている。まずまずの(収入がある。成績)。 **それほど** それほど(苦にもならない。親しくない間柄。深くは考えない。問題とは感じない。酔ってはいない)。あまり(気が進まない。深く考えない。目立たぬ存在。物事にこだわらない)。さまで(気が進まない。寒く感じない。広からぬ店。とっぴとは言えない。努力を要すまい)。そうそう(うまく行くものではない。長くは続かない)。そう(簡単に決められない。時間はかからない。やすやすと応じるはずがない)。そんなに(さらにはいない。深い意味はない。飲んでは身体に毒=黒岩)。大した(怪我ではない。儲もうけにならない)。大して(気にとめない。関心がなさそう。時間はかからない。見栄えがしない)。ろくな(答えが返ってこない。食事にありつけない)。どうせろくな根性ではない。 **だんだん** だんだん(お膳立てが調ってくる。終わりに近づく。機嫌がよくなる。興奮が冷めて行く)。話がだんだん難しくなる。波の音がだんだんに遠のく。時が経つにつれしだいに打ち解けるようになる火坂。時とともに確信が崩れる。時につれて移り変わる。追い追い真意が分かってくる。家の者も追い追い帰ってくる。日が経つに従って追い追い数を増す。追いおいと少しずつ紹介する。 **ちびりちびり** 酒を飲む。お金をちちびりちびりびりちびり使う。借りた金をちびりちびり返す。ちびちび(貯金をする。ビールをすする)。ウイスキーをちびちびなめる。 **ちゃくちゃく【着着】** 着々と(完成に向かう。工作をちゃくちゃく進める。成果をあげる。基盤をつくり上げる。計画を実行に移す。布石が打たれて行く)。一歩一歩(確実に目標へ近づきつつある。確かめるように歩く)。歩一歩と成功に近づく。 **ちょこんと** ちょこんと(頭を下げる。頂を出している山。首を引っ込める)。ちょこなんとうずくまる。手首をちょんと前に出す。胸をちょんとつつく。 **ちょっと** ちょっと(込み入った話。表沙汰にはできない。困ったように微苦笑する。耳を貸してもらいたい)。ちょいと(顔を出す。鎌をかける。面倒なことになる)。ちょこっと(食べる。読む)。半歩(後ろに下がる。遅れて続く)。人を半歩退ぃかせる危険な感じ=原田宗。並みの芸人とは一味違う。一味も二味も違う。一口(茶をすする。お義理に食べる)。汁を一口飲む。最後の一口を口に含む。一呼吸(遅れる。入れて立ちあがる。おいてから答える。早く立ちあがる)。一つまみ(入れる。投げる)。 ちょっとした(異変が起きる。覚悟がちょっとした <546> す 必要。こつが要る。邸宅を構える。油断が大敵。論争が起きる。思いつきにすぎない)。ちょいとした気まぐれ。ささやかな(平穏が訪れる。幸せを憎みしめる=重松)。思い出にささやかな彩りを与える=連城。夢をささやかに実現させる。ふとした(出来心。お慰みの気持ち。話がとんとん拍子に発展する)。 **ちらりと** ちらりと(一瞥心をくれる。腕時計を見る。顔が見える。姿を現す。流し目で見る。微笑を返す。一目見る。本音を漏らす。横目で見る。上目遣いで見る。笑みを覗のぞかせる。客席に目を流す。妄想が頭の中をかすめる。冷ややかな目を投げる=古井)。ちらっと(意地悪な笑顔を見せる。苦笑を漂わせる。当惑の色が動く)。目の端でちらっと見る。 **ついつい** ついつい(口を滑らせる。目と鼻の先。あれこれ言いたくなる。帰るのが面倒になる。手が出てしまう。その気になってベラペラしゃべる=大原)。ぐずぐずしているうちについ日がたってしまう。海音寺。ついつい(意地になる。癖が出る。おっくうになる。誘惑に駆られる)。 **ひとまわり【一回り】** おなかが一回り膨らむ。胸が一回りたくましくなる。体が一回り(大きくなる。小さくなったように見える)。 **ひましに【日増しに】** 日増しに(勢いを増す。春の気配が濃くなる=日野)。軍勢が日増しに増える。蕾にが日増しに膨らむ。日が経つに従って数が増加する。日が経つにつれてよさが分かってくる=鎌田。日に日に(青葉が濃い色を見せてくる。元気がなくなる。自信に満ちてくる)。 **ほのか【仄か】** ほのかな(愛着を覚える。思いを寄せる。体温が感じられる。微笑を浮かべる)。ほのかに(化粧が匂う。紅潮した顔。水を含んだ蕾に。夜空が光る。漁いさり火の影が見える。血の色が透けて見える。恥じらいを覚える。笑いを含んだ顔)。梅の香りがほのかに漂ってくる。磨りガラスを透して見るようにほのかに見える佐藤春。 **ほんの** ほんの(ささいな過ち。十秒足らず。少ししかない。一言指摘する。ちょっぴり塩を落とす。とるに足らない存在。ちょっとした気まぐれ!佐藤巻。申し訳のように書いてよこす=堀)。 **ほんのり** ほんのり(顔を赤らめる。血の色が上る)。頬をほんのり上気させる。ほんのりと(青みを映す。白く見える。ぬくみを保つ。花の香が漂う。微笑が浮かぶ。ほてった顔。明るさを残した空。横顔がビンク色に色づく)。口調にほんのりと辛みを利かせる。空がほんのりと赤く染まる。匂いがほんのりと流れる。目の縁がほんのりと桜色になる。笑うと皮膚がほんのりと輝く。ほんのりした甘い香り。 **まんにひとつ【万に一つ】** 万に一つ手違いがあっては千秋の恨事』子母沢。万に一つの(可能性もない。望みをかける)。万に一つも間違いはない。 **もうすこし【もう少し】** もう少し(話を聞きたい。辛抱すれば日本に帰れる鈴木光)。もう少しで事故を起こすところ。あと(一二分で着く。一歩を残す状態)。余すところあと二日。約束の時間まであとわずかしかない。離婚まであと一歩というところまで来る!笹沢。あと一息で頂上。あと一息の(距離。ところで足踏みする)。あと一歩のところで優勝を逃す。今一歩踏み込みを厳しくする。今しばらく時間がかかる。いま少し様子を見る。今ひと息というところ。もう一押しで交渉がまとまる。もう一歩(前に出る。立ち入って考える)。論議をもう一歩進める。もう一歩というところで突き放される。もうしばらく(座っている。眠っていたい)。もうちょっとの辛抱。もう一息の辛抱。やや(きつい顔立ち。不安そうな顔。見劣りがする。あって口を開く。自嘲めいた口調。たってから顔をあげる)。声をやや強めて言う。心なしほっとする気持ちになる。心なしか(青ざめて見える。明るい声に感じる。声が弾んでいる。波が荒くなったよう)。心持ち(顔を赤らめる。声をひそめる。目を細める。が下りになる)。 **わずか【僅か】** わずか(十分足らず。数日で片付く。二わずか三分前。二百メートル足らずの距離)。わずかしか知らない。わずかな(希望をつなぐ。票差で勝つ。動きも見落とすまいとする。金も出し惜しむ)。ごくごくわずかな分量。蚊の涙ほどのわずかなこと!宇野干。感じられないほどのわずかな差菊池。わずかに(風が出る。残った数名)。体がわずかに震える。半年をわずかに越す期刊。わずかの(差で敗れる。間隙にくさびを打ちこむ"高橋和)。薬もらしべ一本ほどの好意"宮本百。有りや無しやのお金。あるかなきかの(風が助く。水の流れ)。一抹の(不安を感じる。寂しさを覚える)。心に一抹の悲しみがある。一掬いいの(同情もない。涙。水)。言葉に一片の真実がある。僅々(三人を数えるのみ。二日を残すのみ)。申込者は僅々二名にすぎない。迷惑を僅少にとどめる。軽微な(罪。負担)。五分の隙もない。些々ささたる問題を大げさに言い立てる。些少礼金額。些少の変更を加える。被害はさほどでもない。秋毫こぷぅの(恨みもない。やましさもない)。少量で効果がある。す毫ごルも(疑わない。遠慮がない。疑いのない事実。変わったところがない)。寸分変わらぬ姿。寸分の(変わりもない。狂いもない。相違もない)。千に一つの機会。ただ一軒だけ開いている店。ただ一点に集中する。たった(一夜の出来心。一発でやられる。いつべん会ったきり)。爪の垢ぁかほどの過失もない=新田。なけなしの(財布をはたく。つぎこんで買う飯田)。微々たる(収入。変化。利ざやを除く)。耳かきですくうほどの微量=吉村。微量ながら検出される。万分の一の成果しか上がらない芝木。万分の一も言い尽くせない。 <547> # 進む・淀む **あくじゅんかん【悪循環】** 軍拡競争の悪循環が破滅の道に誘う。果てしない悪循環が続く。悪循環に歯止めをかける。雇用悪化と景気悪化の悪循環に陥る。悪循環の出口が見えない。いかんともしがたい悪循環のなかで右往左往する=服部。負の(連鎖が深刻化する。連鎖を断ち切る)。 **あしぶみ【足踏み】** 足踏みを始める。雪駄だっの皮が破れるほどやけに足踏みをする=中。▼足踏みする(心の内で。その場で。床の上で。あと一息のところで。桜前線が関西の手前で矢作)。話の輪に入れそうで入れずに入り口で足ぶみする=岡田。視線に足踏みするように強い感情がこもる。宮本百。 **いきづまる【行き詰まる】** ▼行き詰まる(自転車操業が。捜査が。アイデアに。資金繰りに。返済資金に)。行き詰まりに(陥る。直面する)。行き詰まりを(切り開く。打破する)。壁にぶつかる。難問に行き当たる。▼立ち行かない(暮らしが。生活が)。▼頭打ちになる(売り上げが。支持率が。需要が。人口が。成績が)。デッドロックに陥る。▼デッドロックに乗り上げる(会談が。交渉が)。デッドロックを打開する。手詰まりに陥る。▼手詰まりになる(経営が。八方)。手詰まりの状態を打開する。手詰まり感を示す。 **いきどまり【行き止まり】** 道路が行き止まりになる。行き止まりの路地。道の突き当たりに寺がある。▶突き当たりの部屋(二階の。廊下の)。突き当たりを(左に曲がる。右に曲がる)。▼どん詰まり(入り江の。道の)、二人のどん詰まりが見えてくる。どん詰まりに落ちこむ。関係がどん詰まりに来る。経営がどん詰まりになる。袋小路に(追いこまれる。突き当たる。入る。迷いこむ)。袋小路を切り抜ける。 **おしすすめる【推し進める】** ▼推し進める(改革を。歴史の歯車を。積極的に。ひた押しに)。しゃにむに兵を押し進める豊田。▼押し進む(流れの中を。ゆきつくところまで)。▼煮詰める(議論を。冷静を冷酷にまで藤本)。推進する(改革を。計画を、地産地消をラディカルな革命を)。政策の強力な推進者。ひた押しに峠道を登っていく。大軍をもってひた押しに攻める。砂浜をひた押しに這い寄る霧「武田泰。 行列が粛々として行進を起こす―海音寺。行進する(表通りを。威風堂々と。隊列をなして。手を組んで。優勝旗を先頭に。士官から号令されたみたいに歩調を合わせて。ブラカードを掲げて)。市中をデモ行進する。中心街がデモ隊で埋まる。デモ隊列の中に身を置く。▼パレード(お祭りの。優勝の)。パレードが続く。バレードに(加わる。参加する)。 **こうちゃく【膠着】** 膠着する(交渉が。事態が。捜査が)。戦況が膠着状態に陥る。▼膠着状態になる(会代が。戦線が)。膠着状態を一気に打ち破る。 **こうりつよく【効率よく】** 効率よく(進める。放熱熱する。利益を上げる)。効率的な生産第一主義。効率的に(実施する。集荷する。利用する)。仕事のやり方がてきぱきと能率的"石坂。能率的な(方法。やり方)。 **ことがはこぶ【事が運ぶ】** ▼事が運ぶ(計画通りに。円滑に。能率的に。望みどおりに。首尾よく。すんなり。自分の思うとおりに)。▼運ぶ(事が思いどおりに。事が望みどおりに)。意外な事の運びに心をはずませる=山崎。▼事を運ぶ(一気に。穏便に。強引に。公明正大に。迅速に。てきぱきと)。 **からまわり【空回り】** 口が勝手に空回りを始める谷村。空回りする(改革が。議論が。思考が。情熱が)。▼アイドリングさせる(モーターを。車のエンジンを)。思考が空転を重ねる。空転する(エンジンが。兼談が。思考が同じ疑問のまわりを)。 **ぐずぐず【愚図愚図】** ぐずぐず三時間ねばる。いつまでもぐずぐず言う。ぐすぐすと(時間をかける。ベッドの中にとどまる。腰を落ち着ける=古井)。できるだけ時間を引き延ばすかのようにぐずぐずと支度を手伝う小川。ぐずぐずな暮らし方。ぐずぐずする(鏡の前で。床のうちで。時間ぎりぎりまで家で)。ぐずぐずしている(暇はない。うちに日がたってしまう)。ぐずぐずしている(立ち去らずに。話しにくそうに)。ぐずぐずしていると(時間に遅れる。日が暮れる)。ぐずぐずしてはいられない。ぐずつく(行動が。審議が。天気が)。自分の行動を決めかねる。 **ぐずる【愚図る】** ▼ぐずる(赤ん坊が眠くて。行くのはいやだと)。不良にぐずられる。駄々をこねる。今さらぐだぐだ言ってもしようがない!内館。ぐだぐだと物事を引きずる。下らない話をぐだぐだする。赤ん坊がむずかる。むずかる子供のように地だんだを踏む有房。 **じゅうけつ【充血】** 目が真っ赤に充血する。充血した目をしょぼつかせる。うす赤く充血した目。鬱血する(足が。傷口が。内臓が。皮膚が)。 **じゅうたい【渋滞】** 道路の渋滞で車が数珠光。つなぎじゅうたいになる。渋滞を見越して早めに出発する。渋滞する(仕事が。事務の運びが)。交通渋滞が(解消する。殺和する。ひどくなる)。交通渋滞に巻き込まれる。 **じゅんちょう【順調】** 稲の生育が例年にもまして順調。ひとり暮らしで孤独であまり順調とはいえない人生"眉村。順調な(発展を遂げる。道をたどる。出世街道を歩む)。まずは順調な滑り出し。順調に(発育を続ける。売り上げを伸ばす。スタートしたかに見える)。おおむね順調に推移する。生活が順調に流れて **こうしん【行進】** 一糸乱れぬ行進。行進が手間取る。一行進の速度が著しく減する。無気力な行進を続ける。 <548> す いく。物事が順調に運ぶ。結婚して十年、満帆といえないまでも順調にやってきた連城。順調に進む(縁談が。撮影が。仕事が。意外なくらい。予定どおり。ブログラムどおり)。▼順調になる(金回りが。商売が)。話がとんとん拍子でまとまる。とんとん拍子に事が運ぶ。快調な(足取りで突っ走る。エンジン音を響かせる。スタートを切る)。快調に(速度を上げる。行きすぎて困るくらい仕事が実に気持ちよく進む"中島救)。▼軌道に乗る(景気が。商売が。生産が。復興が。連係工作が。授業が曲がりなりにも。作業が本格的に西木)。好調な(売れ行き。出足)。好調に(事が進む。推移する)。会社の業績が絶好調。 **じゅんぷうまんばん【順風満帆】** 順風満帆で得意の絶頂にある。すべて順風満帆というわけにはいかない。順風満帆の(歩みを続ける。社運。出世。人生。船出ぶりを耳にする)。順風を得た船のよう。 **しんか【進化】** 進化が停止する。進化の(系譜を描く。過程を図示する)。進化は逆戻りができない=日高。独自に進化する。ダーウィンの進化論に源を発する現代の進化論日高。 **しんこう【進行】** 進行が気になる。話の進行から外れがち。仕事の進行に差し障る。病気がかなり進行している。▼進行する(地球温暖化が。着々と準備が。グローバル化が。何の不自然もなく会話が。関係がまた今まで通りに。とんとん拍子に。助走から踏み切りへと。二つの計画が時間差を持って)。事態の進行を(見定める。ひたすら見守る)。目下公判が進行中。 **しんちょく【進捗】** ▼進捗する(工事が。準備が。予定通りに)。進捗状況を(チェックする。報告する)。報告する)。進度(工事の。授業の。発達の)。進度が(遅い。速い)。 **しんてん【進展】** 目まぐるしい事件の進展。進展に興味を感じる。進展の(跡をたどる。度合いを聞く)。事態の進展を待つ。▼進展する(核軍縮が。二人の仲が。関係が順調に。作業が急速に。研究と教育が両々相まって。事態が次の段階へと)。 **しんぼ【進歩】** ▼進歩(目覚ましい。歴然たる)。進歩が(遅い。鈍る。早い。目覚ましい)。生活に進歩がない。進歩を鼻にかける。生活に文明的進歩を加える。なお一段の進歩をなす。長足の進歩を(示す。遂げる。見せる)。▼進歩する(医療技術が。性能が。加速度的に。急速に。飛躍的に。一日一日と。漸をもって。着々と)。進歩的な(学者。考えの女性。教師。知識人。母親。労働者。ジャーナリスト)。著しい進境を示す。先進国に(追いつく。伍にする)。先進性に富む。先進的な思想。先進の技術。脱皮する(因習から。古い考えから)。 **しんろ【進路】** ▼進路(卒業後の。台風の)。進路が(決まる。分岐する)。進路を考える。決める。左に取る。南に向けて走る)。船が進路を変える。進路を北に(転じる。取る)。進路を東に(取る。振る)。進展に方向を与える。進む方向。融通が利かないバカに余計な方向づけしないでください!有川。方向づける(一生を。将来を。制度を。闘争を)。 **すすまない【進まない】** ▼進まない(あまり気が。真相究明が。仕事が一向に。ちっとも前へ。翻訳が一行も。思うように話が。さっぱり物事が。なかなか工事が。掛け声だけでなかなか。経済再建が思うにまかせず。談判がはかばかしく。取り調べがうまく。何か重いものを引きずっているように足が前に三田。灰色の雲が厚く垂れこめた真冬の空さながら『大渡海」編築訟ん作業は終盤にいたってもじりじりとしか三浦し)。▼事が進まない(思惑通りに。そうは簡単に)。遅々として進まない(解決が。作業が。修復が。歩みは)。一歩も前に進めない。交渉に進展が見られない。目立った進展がない。▼進展しない(はかばかしく、話し合いが一向に)。進展しない状況に苦慮する。進展い。大きな進展を見ていない。▼進歩しない(さっぱり。遅々として)。遅々として進捗しない。暗礁に乗り上げる(会談が。合併が。交渉が。審議が。新技術の導入が。犯人の絞り込みが=池井戸)。いつ果てるとも知れない一進一退が続く。一進一退で光が見えない。成績が一進一退を繰り返す。戦況が一進一退を続ける。病状が一進一退を重ねる。▼座礁する(計画が。浅瀬に。船が岩礁に)。船が暗礁に乗り上げる。会議が難航に難航を続ける。難航の末にようやく成立する。工事が難航を極める。▼難航する(交渉が。審議が。選考が。捜査が。調整が。クレーム処理が)。 **すすむ【進む】** ▼進む(新たな開発が。技術改良が。全身の衰弱が。足が軽やかに。季節が急速に。先に。枢要な地位に。好きな道に。次の手順に。病気が徐々に。崩壊がさらに。病が相当に。廊下を奥に。意気を持って。奥へ奥へと。同じペースで。北を目指して。噂がっを並べて。交渉がうまく。下へ下へと。島々を縫って。取材が一歩。段階を追って。筆が遠慮なく。列がゆっくり。路地の奥まで。露出が一段と。なし崩しに事が。悪夢の真っ只中欲がに。インフレが日毎に。打ち合わせが順調に。会話が滑らかに。議事が和やかに。研究が飛躍的に。交渉がスムーズに。全力を尽くしてしゃにむに。その道ひと筋に。話が打ち合わせ通りに。前へ前へと闇雲に。森の中を一直線に。予期しない方向に。客の間を縫って奥へ。ぐんぐんビッチを上げて。祭壇の前へしずしずと。少しずつ手探りで。ずんずんと先へ。通路に沿うように。疲れた足取りで。袴封かをつかんで一膝。船が水をけたてて。未来へ向かって。目標をめがけて。闇から闇を縫うようにして。ロープをたぐって前へ。よろめくようにして前に=柴田測。一歩一歩たしかめるように半村。体が大きな力に引きずられるように先へ先へと=田山。空を踏むように"山田風。工事が枯れ葉を焼く火のように菊池。鹿 <549> 進む・淀む―176 が風のように菅沢。敷石を一つ置きに跨またいでねじめ。渓たにの斜面を下へ下へと滑り落ちるように"奥泉。潮流にさからうように吉村。常に未来の曙光これを求めて熊坂。麓をなぞるように=伊坂。降り積んだ雪の中を漕こぐように『真継。右に左に蛇行しながら=貫井。夢を望みに変えて宮本加。夜の闇をかきわけるようにして=景山)。進む道を間違える。進むべき道を定める。▼円滑に進む(捜査が。話が)。▼切って進む(先頭を。電車が風を。船が波を)。▼先に進む(話が。ずんずんと。へっぴり腰で)。▼沿って進む(海岸線に。崖に。川に。シナリオに)。着々と進む(計画が。工事が。捜査が。体制づくりが)。▼とんとん拍子に進む(結婚話が。事が)。▼流れに沿って進む(時代の。人の)。▼道を進む(安全な。各自の。線路沿いの)。一心不乱に進み続ける。刑場に曳ぃかれる者のごとく身を進めて行く=司馬。死の手に進んで身をまかせる斎藤栄。他人のやりたがらない仕事を進んで引き受ける=眉村。進んでいく(薄暗い廊下を。先へ先へと。店の奥へと。時代はどんどん。ひたすら前へ前へと)。あっけにとられるようなベースで事態が進んで行く松浦。科学が相当に進んでいる。進みが(遅い。速い)。時間の進み方がやけに早い。船の進み方が遅くなる。一歩一歩漸進的に接近する。▼勝ち進む(決勝戦まで。破竹の勢いで)。床を道はい進む。▼掘り進む(地下を。地底へ)。読み進む(小説を。手紙を。日記を)。どんどん先に行く。さっさと先へ行く。のろのろと車を徐行させる。徐行する(濃霧の中を。交差点で)。ずんずん先へ(歩いてゆく。行く)。漸進的な改革。分けていく(人込みを。人波を。藪ゃぶを。雪を)。躍進を(測する。遂げる。誇る)。選挙で躍進する。 **すすめる【進める】** ▼進める(強硬に変革を。近代化政策を。強引に事業を。強引に物事を。更に一歩を。示談交渉を。集中と選択を。慎重に調べを。慎重に歩を。身辺捜査を。淡々と筆を。着々と計画を。明快に論を。話を具体的に。話を先に。物事を穏便に。告白を先へ。準備を着々と。一歩一歩証明を。いろいろな観点から研究を。押し気味に戦を。おずおずと足を。思いの赴くままにベンを。加減乗除の演算を。しっかりと歩みを。社会主義建設を。能率よく仕事を。盆を押しのけて膝を。見合いの手筈だはを。ゆっくりと歩を。国民の理解の下に。あくまでも話し合いで。のろのろと遥うように車を三浦総。覚束ない馬の歩みをとぼとぼと芥川)。準備を進める(極秘裡にに。祭りの)。話を進める(肝心の点に。途切れがちに。どんどん。なるべく穏やかに)。▼前に進める(足を。話を)。一気に駒を進めていく。作業がスムーズに進められる。▼進ませる(馬を。車を。時円を。自転車を。膝を。船を)。一歩も先へ進めない。・論文を読み進める。▼拍車をかける(馬に。増加の傾向に。風化現象に)。 **スムーズ** 一連の動きが川の流れのようにスムーズ"奥田。スムーズな(書き味。展開。動作。流れ)。スムーズに(車が流れる。事が運ぶ。仕事が進む)。家事がスムーズに運ぶ。世の中がスムーズに動く。スムーズに行く(業務遂行が。引き継ぎが)。言葉がスムーズに(鼓膜に届く。頭に入ってこない)。 **すらすら** すらすらと(頭に入る。口にできる。言葉が出る。筆が進む。弁舌が動く。歌を一首したためる。質疑に応答する。問いに解答を与える。道順を説明する)。・間違いなくすらすらと答える。コンピューターのようにすらすらと数字を出す泉役。手紙の文句を読むような調子ですらすらと述べる=横光。我ながら面白いほどすらすらと運ぶ"里見。すらすらと淀みなく(答える。話す)。▼すらすら口から出る(お愛想が。質問が)。すらすらっと言葉が口をついて出る。 **すんなり** すんなり(友達になる。名前を呼べない。話し合いがつく)。案外すんなり決まる。すんなりと謎が解ける。驚くほどすんなりと受理される。計画通りに事がすんなりと運ぶ。無理なく(自然な組み合わせ。読んで楽しめる)。 **ぜんしん【前進】** 前進と後退を繰り返す。じりじりと前進を始める。黙々と前進を続ける。青の洞門を掘り進むがごとくこつこつと前進をつづける=水倉。前進する(核廃棄へ。事態が一歩。破竹の勢いで。競争相手を押しのけて。森の中を前かがみになって。事件が解決に向けて大きく=松岡。地面に腹道にらいになって木と木の間を縫うように泉俊)。▼前進させる(運動を。改革を。議論を。車を。福祉を)。先に立って(進む。ずんずんと行く)。 **たいのう【滞納】** ▼滞納する(月謝を。税金を。保険料を。家賃を)。滞納者が増える。滞納者を減らす。納めない(月謝を。税金を)。▼未納(会費が。月謝が。税金が。保険料が)。延滞する(税金を。家賃を)。延滞金を(請求する。払う)。延滞利子がつく。 **たちおうじょう【立ち往生】** 立ち往生を余儀なくされる。立ち往生する(計画が。政権が。道の真ん中に。演壇の上で。孤立無援で)。往生する(金策のめどが立たなくて。質問攻めにあって)。 **たどる【辿る】** ▼たどる(記憶の糸を。変容の過程を。記憶を丁寧に。流れを冷静に。幾つもの工程を。心觉えの道筋を。とぼとぼと山路を。年々増加の傾向を。病状が悪化の一路を。ほぼ同じ経過を。ゆったりと安らかに航路を。地図上の道を指で。話し合いが平行線を松岡。犯罪が狂暴化の一途を=高見浩)。人には語れぬ苦しい経緯を辿たとる=柴田剣。▼跡をたどる(忠実に。苦心の。進化の。変化の。変遷の。夢の)。▼一路をたどる(衰退の。発展の)。▼一途をたどる(悪化の。拡大の。抗争が激化の。衰退の。増加の。没落の。隆盛の)。▼運命をたどる(数奇な。同じ)。▼記憶をたど <550> す る(怪しげな。断片的な)。▼コースをたどる(お決まりの。破滅への)。▼道をたどる(順調に昇進の。衰退の。注意深く。内部抗争で自滅の藤本)。記憶をたどり返す。記憶を正確になぞる。 **たなあげ【棚上げ】** ▼棚上げにする(画定を。談論を。計画実施を。決議案を。報告書を。見直しを)。▼棚に上げる(責任を。無思慮を。自分の粗相は。自分の不勉強を。自分の無力無能を)。自分の悪いことは棚にあげていて一言も詫びようとしない"山手。自分の未熟さを棚に上げて怒る。問題を棚上げにして歩み寄る。 **たらいまわし【盥回し】** ▼たらい回し(救急車の。政権の)。▼たらい回しにされる(親戚の家を。あちこちの施設を。幾つかの病院を)。▼たらい回しにする(患者を。苦情を)。 **ちょうしいい【調子いい】** 出だしはすこぶる調子いい。ばかに調子がいい。調子がいいったらありゃしない。段々調子がよくなる。調子のいい(女。お追従いふしが口から飛び出す=貫井。べんちゃらを並べたてる”山崎)。調子は(上々。絶好調)。調子よく(事を済ます。引き受ける。ぺらぺらとしゃべる)。車が調子よく走る。▼脂が乗る(仕事に。役者として)。実業家として脂が乗る壮年期。脂の乗りきった(女盛り。活躍。年齢。充実した仕事ぶり)。画作に脂が乗りかける。 **ちょくしん【直進】** 直進させる(車を。自転車を)。▶直進する(交差点を。道路を)。真っ直ぐに進む。 **つきすすむ【突き進む】** ▼突き進む(船が波間を。・▶突き進む(船が波間を。傍若無人に。怒りに燃えて。本営めざして。脇目も振らず。敵の本陣めざして、後ろに長く曠野に、の一本道のような跡を残して船が"小林多。破滅に向けてまっしぐらに森忌)。向かって突き進む(尾根に。目標に)。平然として自分たちだけの道を突き進んでいく今来。猛進する(ゴールに向かって、目的に向かってて)。ダッシュで(駅まで走る。駆け抜ける。店に駆け込む)。▼ダッシュする(小気味よく。猛然と。ものすごい勢いで)。猪突猛進の気概に満ちる。目的に向かって猪突猛進する。猪突して全滅する。猪突の勇。猪いいのように走りだす=壺井。▼▶邁進は心する(研究に。仕事に。手を携えて。目的に向かって)。理想に向かって勇往邁進する。勇往邁進ひたすら前進あるのみ。 **つたう【伝う】** ▼伝う(汗が背筋を。枝から枝を。煙が軒下を。水が壁を。汗が体中をだらだら=桐野)。岩肌を伝う水。丘の稜線めに、うを伝う小道。▼涙が伝う(頰に。目尻に)。足場を伝って降りる。手すりを伝って進む。涙が頬を伝って流れる。ローブを伝って崖を上る。反動が柄を伝って掌に50から腕まで痺しびれるよ山本。 **ていたい【停滞】** ▼停滞する(景気が。事務処理が。人事が。生産が。流れが。梅雨前線が。社貝のモラールが。仕掛かった部材が工場内に=浅川)。車が渋滞してかたつむりより早くは動けない!宇野利。景気は停滞色が強い。 **ていめい【低迷】** 景気の低迷が長期化する。▼低迷する(支持率が。生産が。人気が。万年下位に。後進国の状態に。平均値以下の感情や知性水準に高橋和)。低迷期を(脱する。迎える)。低迷状態から浮上する。 **どうどうめぐり【堂堂巡り】** 堂々巡りがどこまでどうどうめぐりも続く。堂々巡りの議論を交わす。いたずらに堂々めぐりをしてあたら体力を消耗する飯田。堂々巡りする(疑問が。話が。論議が。同じ場所を。核心の周囲を。檻ぉ』の中で。ぐるぐると。的外れのところを)。堂々巡りする思いを持て余す。まわり灯籠りのようにいくつかの思索ばかり堂々めぐりして果てがない"円地。鐘が鳴るか撞木しいが鳴るかの問題"田辺。鶏が先か卵が先か。いたちごっこ(警察と違反者の。抗生物質と耐性菌の。賃上げと物価上昇の)。いたちごっこが(繰り返される。続く)。いたちごっこの状態に焦る!鷺沢。水かけ論に終始する。空しい水かけ論になるのが関の山。水掛け論に決着を求めるのは無理"横山。 **とっしん【突進】** 突進する(がむしゃらに。無無鉄砲に。号令一下。猛牛のように。武器を抱えてしゃにむに。一直線に破滅の中へ。すさまじいうなり声を放って。蛮勇を奮ってただ闇雲に「奥泉。ビーチバラソルの間を縫って波打ち際に"眉村。一路破滅の淵へと=美濃部。お尻に火がついたように「池田。獣のようなおめきをあげて半村。自分の思いを無理に振り切るようにして灰谷。岡ときの声をあげて三田。フットボールのブロッカーのような猛烈な勢いで清水俊)。▼勢いで突進する(猛烈な。恐ろしい)。▼向かって突進する(敵に。目標に)。 **とどこおりなく【滞りなく】** 滞りなく(取引が済む。ひた押しに流れる)。とどこおりなく身支度が済む"林美。儀式が滞りなく済む。式が滞りなく進む。葬式を滞りなく済ませる。滞りなく終わる(会が。式が。葬儀が)。遅滞なく取り組む。 **とどこおる【滞る】** 滞る(活動が。金払いが。仕事が。事務が。審議が。道路の流れが。部屋代が。返済が。家賃が。ギャラの支払いが)。胸の滞りが解ける。▼渋る(売れ行きが。筆が。うまい言葉が捜せなくてペンが斎藤栄)。滞留する(煙が。仕事が。審査が。熱が)。思考の停頓が訪れる。▼停頓する(作業が。仕事が。生活が)。▼運ばない(思う通りには。そうスムーズには)。暇取る(支度に。準備に)。 **はかどる【捗る】** はかどる(交渉が。筆が。勉強が。仕事が順調に。ぐんぐん。すらすらと)。はかがいく。はかがいかない。はかどらない(取り調べが。工事が一向に。思いのほか荷造りが。思うように調査が。救 <551> 進む・淀む―176 出が遅々として)。 **はったつ【発達】** 知能の発達が遅れる。自然の発達に任せる。発達する(科学技術が。河岸段丘が。合理的精神が。資本主義が)。高度に発達した物質文明。草味終らの時代を脱する。▼未発達(交通機関が。制度が)。未発達の(体。胸)。原始的な様相をとどめる。 **はってん【発展】** 発展が急速に進む。発展に力を尽くす。日本の発展に貢献する。発展の跡を振り返る。発展への志向性が感じられない藤原。著しい発展を見る。学問の発展を待つ。基礎研究の発展を望む。・基礎研究の発展を望む。町の発展を当て込む。豊かな発展を妨げる。▼発展する(意外な騒ぎに。大きな事件に。関係が順調に。国際問題に。産業が急速に。質的に。社会問題に。特別な関係に。浮気が離婚問題に。大規模な交戦に。超一流の大会社に。怒りが暴動にまで。驚くべき速度で。処分問題にまで。致命的な事故へと。事態が思いがけない方向に=小林久。組織の未来を揺るがすような大間題に=海堂。死傷者を出す乱闘にまで=平岩)。大きく発展する余地がない。物語の主題を発展させる。恋物語に発展しそうな予感。最近急速に発展した会社。発展的に(解消する。物事を見る)。日進月歩で発展する。日進月歩の(科学技術。世の中)。 **ひとりずもう【一人相撲】** ひとりよがりの一人相撲。発展性のない一人相撲に終わる=小林多。一人相撲を取る。一人芝居に(終わる。熱中する)。 **ふしん【不振】** 不振が尾を引く。チームの不振が続く。不振から脱出する。事業が不振になる。挑戦が不振に終わる。不振の兆しが現れる。スランプが続く。スランブから(脱出する。抜け出す)。スランプに陥る。一刻も早くスランブを脱しようとして焦る=小林久。 **ふちょう【不調】** 不調に(あえぐ。苦しむ)。体の不調に悩む。心身の不調に悩まされる。談判が不調になる。突発的な不調に陥る。▼不調に終わる(縁組みが。協議が。交渉が。仲介が。調停が)。体の不調を訴える。不順な天候。生理的なリズムの不順に悩む。体の変調に気づく。目攸く息子の変調を見て取る"貫井。変調を来たす(体に。頭脳に)。 **べんぴ【便秘】** 便秘が(治る。ひどい。貫通したかのようべんぴにさっぱりする=北)。便秘に悩む。渋る腹を押さえる。通じが(よくなる。悪い)。便通がない。便通に恐常はない。便通を良くする。 **ほりゅう【保留】** ▼保留する(回答を。態度を。諾否の返事を。判断を)。電話を保留にする。勝負を預かる。答えはお預け。昇進がお預けになる。お預けを(食う。食わせる)。▼未定(今後の開催は。試験の期日は。く先は)。宙ぶらりんな気持ち。問題が宙ぶらりんになる。宙ぶらりんの状態から抜け出す。▼留保する(回答を。許可を。判断を。返事を)。進退の自由を留保しておく。 **まっしぐら** 常勝街道をまっしぐら。まっしぐらに(砂丘を越える。どこまでも飛んで行く。敵の中へ飛びこんで行く=山本円)。死へとまっしぐらに向かう。門を目指してまっしぐらに駆ける。真っ黒な大牛が街道をまっしぐらに狂奔してくる=杉本。▼藤進する(出世街道を。常勝街道を。エリートコースを。目標に向かって)。 **もたつく** もたつく(エンジンが。会話が。工事が。対応が。調整が。政権運営に)。もたつきが解消する。もたつきに悩む。もたもた(階段を上る。言葉を濁す)。もたもたした(行動。試合)。もたもたして帰りそびれる。 **ゆうよ【猶予】** ▼猶予がある(時間的に。しばらく時間の)。いささかの猶予もならない。猶予を与える。一日の猶予を乞う。猶予する(執行を。処刑を。選択を。取り締まりを。返還を)。 **よどみない【淀みない】** 淀みない(エンジン音。ピアノの音)。リハーサルを何度もやったようによどみない声泉優。淀みなく(指図する。しゃべる。進む。澄み渡った青空。なだらかな口調)。さながら広島の河川のように澱ょとみなく饒舌牝2ぅが流れ出す。有吉。口から知識が淀みなく流れ出る。淀みのない(一連の動作。話し方。調子で喋こ『りつづける"石坂)。憎いほど落ちついて澱みのない口上=獅子。用意していたような淀みのない口調=鷺沢。▼淀みもない(言葉に少しの。声にいささかの)。少しの淀みもなく言う。立て板に水とまくし立てる。立て板に水のように滔々とうと話す辻井。登板に水を流す如く挨拶をする=獅子。滔々たる(談論。世)。滔々と(議論をする。述べ立てる。しゃべりまくる)。水が滔々と流れる。流暢に(日本語を話す。英語をしゃべる。フランス語を操る)。道筋の景色や史跡に関して流暢すぎるほどの説明をする"高橋治。 **よどむ【淀む】** ▼淀む(空気が冷たく。無気力が部屋に。流れがおんもりと”中。琵琶びゃの咽むせぶような糸の音につれて謡う声が沈んで濁って=国木田)。夜明けの薄明かりがよどむ"本庄。▼澱ょとむ(疲労が全身に。腐敗臭が町に。光が白く。胸に一抹の不可解さが林关。時がたつにつれて言葉がますます重く心に三島。苦々しさが胸の底に=貫井。不安と憂鬱が胸に"松浦。臭いがうっすらと=黒井。二人の胸に同じように言葉になりそうでなりきらないものが重く=連城)。重苦しい淀んだ空気が漂う。黒く淀んだ運河。澱んでいる(投げやりな生活の雰囲気が=加賀。こころなしかあたりの空気が酔うように重く=阿刀田)。滝壺時に淀んでいる水。かすかに苔こぃのにおいのするじめじめとした空気の澱み三田。眠りの澱みから鈍く覚めきれない頭"中沢。淀みに(広がる水の岭。浮かぶうたかた)。澱みのように道に溜まったまま動かない生徒達"黒井。▼言いよどむ(言葉を探して。おしまいの部分を)。水がゆったりと流れ淀む。 <552> # 捨てる・拾う **ありつく** ありつく(うまいものに。思わぬ獲物に。山海の珍味に。まともな職に)。▼ありつけない(ろくな食事に。三度の飯にも。まっとうな仕事口に)。 **いちかばちか【一か八か】** 一か八かやってみる。一か八かの(大博打を打つ。危険を冒す。出たとこ勝負。賭けに乗り出す。山師的なやり方)。 **かけ【賭け】** 試みる価値のある賭け豊田。賭けが(裏目に出る。見事に成功する。もたらす束の間の興奮を楽しむ"辻井)。賭けに(勝つ。負ける)。賭けの要素が大きすぎる。出たとこ勝負で何が出るか賭けをしてみたくなる干刈。乾坤一擲」に託の賭けをする。階けみたいな気分で恩を売る=大庭。一六勝負に出る。 **かける【賭ける】** 賭ける(派手に金を。復讐しに一生を。一発勝負に。ギャンブルに運を。勝負に自分の死を。三度目の正直に。何万分の一かの確率に。わずかな可能性に。一級ぶちの望みに人生を"笹沢。最後のチャンスに自分の生命の火を=瀬戸内)。▼懸ける(仕事に命を。賞金を)。女が男に賭けるなんていうのはまるで競馬か競輪の賭けみたいなもの=田辺。命に懸けて成し遂げる。自分の一切を賚にぃにして投げてみる=岡本。死を堵として勅書を届ける"津本。賭して戦う(一命を。身命を。生死を)。職を賭す信念。伸るか反るかやってみる。伸るか反るかの瀬戸際。 **かみくず【紙屑】** 紙屑が(勝手気ままに散乱する。風に舞い踊る)。足元から紙屑が吹き上がる。紙屑の山を築く。紙屑を(火中に投じる。丸める。焚き火にさしいれる)。紙屑のようにぽーんと捨てる=子母沢。朝顔が汚れた紙屑のように枯れている獅子。風に逐おわれた紙屑のように路地から転がり出す=徳永。脱ぎ捨てた服を紙屑のように足で絞しゃくちゃに蹴飛ばす八谷崎。丸めて捨てた紙屑のように屈まる=里見。▶紙屑のように捨てる(女を。古女房を)。 **ギャンブル** ギャンブルで勝ち逃げする。ギャンブルに(入れ込む。おぼれる。狂う。手を出す。夢中になる)。ギャンブルの麻薬に片足をつっこむ"大原。ギャンブルは胴元が儲もうかるようにできている=石田衣。文無しになるまでギャンブルを続ける。ギャンブルのごとき奇策に手を貸す=横山。競輪に凝る。 **けいば【競馬】** 競馬で(大穴を当てる。大金をする。一山当てる。負ける)。競馬に(勝つ。のぼせる。のめりこむ。夢中になる)。馬券が(当たる。外れる)。 **ごみ【茶】** ごみが床に散らばる。うずたかくごみが積まれる。机の上にこみが散乱する。ゴミが徹菌紅いのようにこちゃごちゃと集団をなす=高見町。ごみの山に埋もれる。むっとするこみのにおい。暴れ水がごみの山を庭に残す=山本一。水面にこみや油が浮いている"重松。こみを(漁ぁさる鳥から。ボイ捨てする。埋め立て地に運ぶ。くず籠に押しこむ)。こみ一つなく掃き清める。こみ袋を両手に下げる。生ごみを肥料に変える。ごみのように(小さな街ネタ。つまらない人間=大野逆)。頭が海の中にかくれ波にもまれた黒いこみのようにぽっかりと姿を見せる!遠藤。机の上から叩き落とされるゴミのように扱われる=宮部。罪咎もない女房を座芥ちりゃのように捨てる!宇野干。零落して巷さまに芥のように沈澱する=国木田。切り屑を(散らかす。掃き寄せる)。人町の屑くずみたいに取り扱われる=岸田。自分の境遇が大川の満潮時分に棒杭のあたりに漂う座ぅぅあくたのように思える今日。がらくたが雑然と散らばっている。がらくたの山を崩す。積み上げられたがらくたの山。 **ごみばこ【芥箱】** ごみ箱に投げ捨てる。ごみ箱に捨てる(叩きつけるように。チラシを丸めて)。ごみ箱を空にする。くず籠が見る見るうちに一杯になる。こみ溜めに投げこむ。よその掃き溜めを食い荒らす。 **すてさる【捨て去る】** ▼捨て去る(古きものを。学んだものを。類似したものを)。不要とあらば弊履いぃのごとく捨てさる=真継。女を古草履のように楽て去る=武田発。捨て去るに忍びない。▼捨象する(事実を。実人生を。神性を)。▼放挪いする(学業を。義務を。研究生活を。仕事を。喩を)。没却する(自己を。身を)。 **すてる【捨てる】** ▼捨てる(甘い考えを。過去の習慣を。枯れた花を、好悪の情を。世俗の社会を。母が父を。悪い料筒を。命を無駄に。煙草を灰皿に。惜しげもなく。写真を破いて。手紙を裂いて。メモを破って。槍ゃりをからりと。現世への執着を。恵まれた身分を。考えを頭の中から。安んじて命をも。厄介な荷物みたいに。遺体をばらばらにして山奥に=村山。素晴らしい時間をガムの包み紙のように簡単に"灰谷。古いハンケチのように無維作に徳永。女をほろ屑くずのように岩川)。死体に重しをつけて海に棄てる=隆。捨てる神あれば拾う神あり。捨てるにしのびない。捨てるのが惜しい。捨てて願みる者がない。▼捨てて生きる(自分を。世を)。一命を捨ててかかる。夜中にこっそり捨てに行く。唯々として命を捨てようとしている。捨てられる(母が父に。ティッシュペーパーのように男に永倉。鼻紙のごとく無造作に"山手)。犬のように棄てられる=芥川。迷妄を捨て切る。▼捨て所(命の。心の憂さの)。こみの捨て場がない。捨て場に困る。捨て場を(得る。探す)。▼言い捨てる(邪険に。乱暴に)。女の姿を背後に打ち捨てて歩み去る。何もかも打ち捨てて逃げ出したい。▼打ち捨てる(お金を。虚栄心を。事業を)。▼かなぐり捨てる(遠慮を。仮而を。着物を。けちな心を。ブライドを)。断って捨てる(一刀の下に。真っ二つに)。▼切り捨て(小数点以下は。端数は。百円未満は)。端数を切り捨てる。裂き <553> 捨てる・拾う―-177 捨てる(歌稿を。原稿を。巻紙を)。服をベッドの脇に脱ぎ捨てる。たばこを弾き捨てる。積み重なった鬱陶しい気分を払い捨てる=梗。▼ぼい捨てする(空き缶を。たばこを)。焼き捨てる(カードを。手紙を。い書類を)。▼破り捨てる(手紙を。外れ馬券を)。道棄する(川に死体を。トランクを。死体を山中に)。一擲ごいする(従来の発想を。穏和なやり方を)。割愛する(名を。末尾を)。▼都合で割愛せざるをえない(時間の。紙幅の)。棄権する(採決を。選挙を。投票を。試合を途中で)。条約の廃棄を宣言する。廃棄する(核兵器を。前提を。特権を。封建的所有を)。反古ぇこにする(誓言を。前約を。密約を)。約束をあっさり反故にごにされる=横山。反古同然の証文。捨てない(夢を未だに。生国への思いを)。こだわりを捨てない頑固さ。▼捨て切れない(可能性が。一纓ぶもの望みを。不安を。この期にになっても未練を=福水)。 **ちり【塵】** 部屋一面に浮い座がかぶさり光に浮き上がる=黒密。舞い上がった廃が静かに落ちてきて積もるように秩序が戻る=森瑶。硝子戸が座にまみれて灰色に汚く汚れている=田山。低俗な生活の駆にまみれた言葉"大庭。▼座にまみれる(髪が。都会の)。怒った自然の前には人間は廃ひとひらにも及ばない有局。塵も積もれば山となる。座や埃児にが溜たまる。應を(掃き集める。払う)。人を庭のように掃き出す内田炎。座灰就以が山をなす。座埃にまみれる。座一つ落ちていないほど綺麗な部屋"今東。庭が座一つなく掃き清められている=円地。粉塵ぃんが(漂う。飛散する)。うっすらと油っぽい粉磨が付着する高見浩。 **つかいすてる【使い捨てる】** 使い捨てる(無造作に。とっかえひっかえ。人間を物のように)。▼使い捨てにする(従業員を。労働者を)。使い捨ての(紙コップ。かみそり。ライター)。 **とば【賭場】** 賭場に(顔を出す。通う。誘う。出入りする。手入れがある。入る。深入りする)。一再ならず賭場に出かける。博打場が心を覗のぞき込む。 **なげすてる【投げ捨てる】** ▼投げ捨てる(深く未練を。筋の面白さを。死体を川に。棒を足元に。ぽいと。からりとペンを。これまでの歴史を。宗教的な外衣を。吸い差しのたばこを、忌々しげにごみ箱に。「忌々しげにごみ箱に。死骸を橋の下に)。▼投げ捨て(空き缶の。こみの。たばこの)。投げ捨てるような眼で叱る萩原災。畑の菜をうっちゃる。投薬する(こみを。死体を。廃棄物を)。自らの命をなげうつ。身命をなげうつ覚悟で諫言かんする。放り捨てる(こみを。木片を)。 **はいしゅつ【排出】** ▼排出する(余分な水を。老廃物を。温室効果ガスを)。排出量が増える。排出量を(抑える。削減する)。排気ガスを撒き散らす。 **はいひん【廃品】** 廃品を(回収する。再生利用する)。廃品回収を手伝う。▼スクラッブにする(金属を。車を)。工場の廃液。廃水に汚れた川。廃水を(処理する。垂れ流す)。廃物を(活用する。利用する)。ぼんこつになるまで乗る。ぽんこつの自動車。体内に老廃物がたまる。体内の老廃物を取り除く。 **はきすてる【吐き捨てる】** ▼吐き捨てる(腹立たしそうに言葉を。舌に貼りついた魚の小骨を"重松)。冷たく吐き捨てる声に返す言葉もない=有川。苦々しげに吐き捨てるような口調=梶尾。伝法な口調で吐き捨てるように言う船山。 **ばくち【博打】** 博打で(身代を損なう。身を持ち崩す。すってんてんになる)。女や博打で散財する。酒と博打で勝手放題に暮らす池波。博奕鉱くとはきっぱり縁を切った藤沢。博奕に(溺れて仕事がおろそかになる藤沢。負けて山のような借金をこしらえる=井上ひ)。博打に(金をつぎこむ。手を出す。負ける。夢中になる。うつつを抜かす)。金を博打につぎ込む。取った金を右から左へとみんな博奕に使ってしまう永井荷。博奕の面白みが骨まで染みる=藤沢。感打を道楽にする。大博打(一か八かの。起死回生の。乾坤一挪に私の。伸るか反るかの)。危険を承知の大博打を打つ。賭け事がとりわけ好き。賭け事で(荒稼ぎする。財産を失う。一文なしになる。すってんてんになる)。賭け事と喧嘩がんに明け暮れる毎日=鈴木光。赌け事に(おぼれる。手を染める)。賭け事の魅力にとりつかれる。賭け事はもうこりごり。賭博で(勝ちに勝つ。すってんてんになる)。賭博に(うつつを抜かす。身上を入れ揚げる)。賭博行為で逮捕される。 **ひろう【拾う】** ▼拾う(危ない命を。手ごろな石を。マイクが声を。不名誉な病気を)。一段ずつ拾うように梯子段雄んこを上がる二葉亭。拾い物を交番に届ける。いい拾い物をしたと思い込む。▼拾い上げる(石を。貝殻を。こみを。写真を。瓶を。封筒を。ボールを。かがんで。ガラスの破片を。足許しに散らばった紙片を=柴田鋏)。そのへんから拾い集めたありあわせの材料でつくられた粗末な小屋=高田。▼拾い集める(枯れた枝を。捨てたものを。ガラスの破片を。陶器のかけらを。小さな記事を丹念に藤本)。 **ふっきる【吹っ切る】** ▼吹っ切る(不吉な予感を。迷いを。未練を)。吹っ切れる(悩みが。迷いが。わだかまりが)。 **ふりすてる【振り捨てる】** ▼振り捨てる(行きがかりを。荷物を。望みを。妄想を必死になって)。涙をふるって馬謖しを斬る=山田美。 **ほうき【放棄】** ▼放棄する(義務を。仕事を。社会的責任を。宝の山を。武力の行使を。努力を途中で)。レースをリタイアする。 **ほうりだす【放り出す】** ▼放り出す(大気圏の外に。無責任に。事に紛れて。原稿をテーブルに。手当たり次第に)。仕事をおっぼり出す。ほっぽり出す(仕事を。商売を。いい加減に)。 <554> # 済ませる・果たす **かなう【叶う】** ▼叶う(ようよう日頃の思いが。願望が想像を絶する形で横山)。夢を一つずつ叶えていく。叶える(自分の夢を。望みどおりに)。 **かんこう【敢行】** 砲火を冒して前線に出る。▼冒す(手痛いミスを。身の危険を。リスクを。命を懸けて大事を=福永)。敢行する(奇襲を。正面突破を、長期ストを)。 **けっか【結果】** ▼結果(愚かな迷信が生んだ。厳正なる抽選の)。結果が(思わしくない。芳しくない。気になる。すぐに現れる。ふるわない。よろしくない。はかばかしくない。間もなくわかる)。喜ばしい結果で終わる=塩野。どんな結果でも敢然と受け入れる。語るに落ちる結果となる。結果に(飽き足りない。満足する。多少なりとも反映される)。思いがけない結果に茫掘らとする。残念な結果に終わる。▼結果になる(かえって悪い。自分にとっては不都合な)。結果の成否を問題にしない。原因と結果を取り違える。検査の結果を伝える。努力は結果を裏切らない。皮肉な結果を生む。予期し得ない結果を招く。悪い結果をもたらす。首尾が(判明する。悪い)。 **こうせき【功績】** 功績(史上空前の。比類のない。有形無形の)。功績が群を抜いている。何一つ際立った功績がない。並々ならぬ功績を立てる。犯人の検挙に功績をあげる。勲功が月の前の蛍火よりもまだ弱い"菊池。巨歩を(印する。残す)。功業半ばで病死する。長年にわたる功労に報いる。長年の功労を顕彰する。功労者を慰労する。 **こうみょう【功名】** 目先の功名にこだわる。怪我の功名を生む。抜け駆けの功名を急ぐ。真っ先に功名を挙げる。見事に功名を立てる。功名心が(先に働く。判断を狂わせる)。人一倍功名心がある。功名心に駆られる。 **こぎつける【漕ぎ着ける】** ▼漕ぎつける(開催に。合意に。条約調印に。卒業の運びに。一年がかりで竣工んに。首尾よく完成に。ようやく発表に。計画が実現まで。どうやらこうやら)。 **じつげん【実現】** 実現に一役買う。計画が実現に漕ぎつける。長年の夢想が実現に近づく。実現の(運びとなる。ための方途を速やかに吟味する=光瀬)。実現する(年来の夢を。計画がうまく。労働時間の短縮が。民主的な社会を。あまりにもあっけなく)。政権交代が実現した暁には。夢が一つひとつ実現していく。功成り名遂げた暁には。戦勝の晩には恩賞を取らせる。祈りが叶えられる。▼天に届く(祈りが。心根が)。 **じょうじゅ【成就】** 愛の成就を寿にとぐ。成就する(円満に仕事が。約束が。大業を。覇業を。一日も早く大願を。望みがことごとく。強いて実現を焦りもしなかった夢が三島)。功を奏する(工作が。抱き込みが。提案が)。 **しんきろく【新記録】** 新記録が生まれる。新記録を しんきろく打ち立てる。世界新記録を樹立する。記録を更新する。塗り替える)。コースレコードを叩き出す。 **すませる【済ませる】** ▼済ませる(応急処置を。簡単に昼食を。電話で取材を。宿貫の払いを。レジで会計を。約束を年内に。家事を一通り。朝と昼を兼ねた食事を。家の戸締まりを。さっさと勘定を。チェックインの手続きを。部屋で着替えを。朝ご飯を控え目に。買い物を早めに。仕事をあらかた。食事をそそくさと。葬式を滞りなく。悪い冗談と笑って。部屋代をとどこおりなく佐多)。取り敢えず手怪な葬式をすませる=里見。▼済ます(一日の仕事を。早めに夕飯を。事を穏便に。さっと後片付けを。身支度を早々に)。足す(小用を。トイレで用を)。用を弁じる。 **すむ【済む】** ▼済む(祝言の式が。無事接収が。名刺の交換が。納骨が無事に。用件が簡単に。損害が軽く。電話一本で。最後の仕上げが。めでたく祝言が。危ない目に遭わずに。今日一日が平穏に。大事に至らずに。卑怯者1062にならずに。見答㎜とめられずに。儀式が滞りなく。泣きを見ないで。ほんのわずかの出費で)。あらかたの下拵しこえは済んでいる。 **せいか【成果】** 今日一番の成果。成果が(現前する。出る)。思ったより成果がありそう。画期的な成果が期待できる。着々と成果があがる。目先の成果にこだわ。成果を(心待ちにする。目の当たりにする)。交渉る。成果を(心待ちにする。が成果をおさめる。満足そうに仕事の成果を眺める。成果を上げる(大きな。素晴らしい。事業が首尾よく。誰にも誇りうる)。三国同盟の実を上げる。 **せきにん【責任】** 次世代に対する責任。責任が(曖昧になる。明らかになる。置き去りにされる。重く心を圧さえている)。責任がある(一半の。何がしかの)。責任が及ぶ(上の人間に。トッブに)。個人の責任に。自分の責任において行動する。当事者の責任にゆだねる。責任の(一端を担う。一半を背負う。重さに押しつぶされる。所在をはっきりさせる。苦しさに胸がつぶれる思い=坂口)。何の責任も感じない。もとより何の責任もない。責任を(明らかにする。欠く言動。充分に果たす。双肩に担う。転嫁する。不問に付す。感じて懊悩。うする。取って辞職する。問われる恐れがある。果たした喜びが油然と湧き起こる=武田泰)。言った言葉の責任を取る。違約の責任を問う。応分に責任を果たす。重大な責任を負わされる。スタッフに責任を被せる。戦争の責任を痛感する。誰も責任をとろうとしない。トッブに責任を負わせる。抜き差しならない責任を負う。不作為の責任を問われる。諸将が失策の責任をかぶるのを恐れて消極戦法に終始する塩野。自分のことばに責任 <555> 済ませる・果たす―178 を持つ男の潔癖さ=武田炎。▼責任を押しつける(会長一人に。人に)。責任を感じる(いくばくかの。強く)。▶責任を持つ(回答に。自分で自分に。自分の言動に。最後まで。意見にあくまでも)。責任を持って(行動する。明言する)。一人前の男が肩に担うべきもの三島。刑事責任を(追及する。問う)。責任感が(欠如する。弱い。きれいにすっぽかされる=石坂)。責任感の(かけらもない。強い男)。責任者が雲隠れする。責任者に判断を一任する。責任者の(首が飛ぶ。地位に就く)。現場の責任者の意見を支持する=海堂。原因究明と責任追及は分けて考えるべき。責任能力を(否定する。認める)。全責任を(負う。かぶる。とる)。責めを(担う。果たす。引き受ける)。一身に責めを負う。詰め腹を切らされる。▼文資(記事の。論文の)。文責が明らかではない。文責を明確にする。▼問責する(関係者を。大臣の失言を)。▼語調で問責する(秋霜のような。強い)。重責にあえぐ。重責を(担う。引き受ける)。 **たいやく【大役】** 一世一代の大役。大役を果たして喜ぶ。一命を賭けて大役を果たす。思いがけない大役を与えられる=藤原。無事に大任を果たす。 **たっせい【達成】** 達成の喜びを味わう。▼達成する(体業を。革命を。完全試合を。所期の目的を。ノルマを。億に近い売り上げを)。年来の悲願が達成される。達成感が胸にある。達成感で鼻息を荒くする。▼ものにする(契約を。選手権を)。 **ついに【遂に】** ついに(相手を根負けさせる。怒り狂って立ち上がる。癇痕跡いしを破裂させる。今日まで鳴かず飛ばず。来るときが来た。こんな姿になり果てる。しびれを切らす。精根尽きて逝く。手放さざるを得ない。突破口が開ける。果たせずに終わる)。長の夢がついに実現に近づく。事ここにいたる。とうとう(怒りを募らせる。来るべきものが来たと思う。決心するに至る。自白に追い込む。辛抱できなくなる)。 **たてたてがら【手柄】** 手柄に(傷をつける。鼻高々)。手柄を鼻にかける。せっかくの手柄を立て損なう。ひとかどの手柄を立てる。部下の手柄を横取りする。宣伝広告部に行ったらせいぜい華々しく手柄を立ててやる三浦し。自分の手柄みたいな顔をして言う。大手柄に鼻高々。大手柄をあげる。手柄話に花が咲く。勇敢なる偉勲を奏した兵士。先人の偉功をたたえる。冒険が奇功を奏する。金星を射止める。勲功を立てる。殊勲の星を挙げる。※々しい戦功を上げる。一番榆公帖の大功をあげる。数々の武敷に輝く。武勲を大きく書き立てた新聞記事"江戸川。武功を立てる。 **とうせん【当選】** 当選はほぼ確実。当選する(委員長に。無競争で)。次点の人を繰り上げる。当選圏内に入る。▼再選される(市長に。知事に。無投票で)。 **とげる【遂げる】** ▼遂げる(著しい変化を。功なり名を。質的な変貌を。所期の目的を。復讐心しの望みを。不慮の死を。無残な最期を。呆気はっない終末を。分類作業が進展を。ぼっくりと往生を。眠るがごとき大往生を今日)。▼進歩を遂げる(一層の。長足の)。発展を遂げる(急激な。順調な)。▼遂行する(職務を忠実に。闘争を厳然として)。後ろ髪をひかれるような未遂行の心残り島尾。 **なしとげる【成し遂げる】** ▼なしとげる(作業を。:術革命を。世紀の発見を。復興を。立派に仕事を。にかけて。初出場初優勝を)。▼しとげる(工作を。仕命技の財産を。すっかり金を)。▼履行する(公約を。債務を。弁済を。約束を忠実に)。 **はたす【果たす】** ▼果たす(依頼の件を。重要な役割を。政権交代を。千歳の恨みを。武士の面目を。立派に用を。司令塔の機能を。念願の初当選を。義務をそそくさと。引き締め役を申し分なく。約束をようやく。神様と人間の仲介を"氷室。首尾よく夜這ょばいをたことは最後まで)。熊谷)。首尾よく任務を果たせる。▼使い果たす(大方の財産を。一つ会社を。孝行息子の役を。武人としての節を)。有終の美をとどめる。仕事に有終の美を飾る。 **やりぬく【やり抜く】** ▼やり抜く(研究を。仕事を。実験を。手術を血反吐と、を吐きながら苦しい練習を"飯田)。▼やりきる(できることはすべて。目標に達するまで)。▼やり通す(決めたことは。一度やると決め▼役回り(滑稽な。得な。迷惑な)。自分の役回りに気づく。嫌な役回りを押しつけられる。そつなく自分の役回りを演じる=北村。両者の橋渡しの役回りを担う阿川佐。 **やくめ【役目】** 役目が終わる。▼役目に就く(重要な。権威ある)。役目を無事に果たす。重い役目を仰せつかる。大事な役目を担う。厄介な役目を押しつける。役目を果たす(自分の。代弁者の)。▼役目を引き受ける(嫌な。使者の)。役柄を(演じる。数こなす)。それぞれの役柄を受け持つ。▼役どころ(重要な。おいしい。難しい)。役どころを忠実に演じる。 **やくわり【役割】** 極めて重大な役割。役割が重みを増す。役割を(正確に理解する。大過なく果たす)。重要な役割を務める。各人がそれぞれ自分の役割をきっちりこなす=畑村。役割を果たす(決定的な。窓口の。駆け込み寺的な)。役割分担を決める。一翼を(占める。担う)。重い役に就く。いい役に抜擢される。役の演技に失敗する。大過なく役を務める。似合わない役を必死でこなす。進んで危険な役をかって出る=安部。 **やりとげる【やり遂げる】** ▼やりとげる(大任を。難事業を。死に物狂いで。あきらめずに最後まで。しんねりむっつり坂口)。与えられた仕事を堅実にやり遂げる佐野。仕事をやり終える。目的を完遂する。首尾よくしおおせる。▼全うする(結婚生活を。任務を。大事業を)。▼目的を達する(首尾よく。所期の。当初の)。本望を達する。 <556> # 住む **アパート** アパート(木造の小さな。2DKの小ぢんまりした=結城。原っぱのほとりにへばりつくように建っている=落合。マッチ箱を積み上げたような向田)。アパートから会社に通う。ほとんどアバートに帰らない。真っ直ぐにアパートに帰る。友人のアバートに転がり込む。アパートの一室に住む。会社の近くにアバートを借りる。友達と共同でアパートを借りる。古いアパートをマンションに建て替える。独身の気楽なアパート住まい。古い煉瓦造りのアバートメント=船戸。 **あばらや【あばら家】** ▼あばら家(板を張り合わせてかろうじて風を塞ふさいでいるような=内田巻。忏端がくずれ朽ち腐った藁屋根や165にむっくりと意合はが生えているような、佐藤春。筆舌に尽くしがたい氷室)。村落の茅屋分位が落ち葉をもたげて出た茸ののよう。長塚。みすぼらしいあばら家に住む。いまにも崩れそうな古い家「日野。あばら家同様に柱はゆがみ畳はぼろぼろ=島尾。粗末な家の造り。湖岸の苦屋たまに身を忍ばせる。バラックで雨露をしのぐ内橋。留守番小屋か倉庫の建て直しとも見紛うほどの二十坪そこそこの古家"里見。茅屋狙いはふるやのもりの騒ぎ=飯田。気息奄々にだんだたる姿をさらしているぼろ家。陋屋らいに住む。陋屋を興して城を築く気構えで生きる有吉。一望の赤茶けた焼け跡にバラックが立ち並ぶ=日野。バラックの小屋みたいな小さい低い家=川端。急ごしらえのバラックを建てる。 **いえ【家】** ▼家(住み心地のよさそうな。木の香りに満ちた。瀟酒しいっな佇炊たまいの。古びた薬茸やらき屋根の。和風の小ざっぱりとした。ちまちまとしたベンションのようなカラフルな"小池。箱を転がしたような隔ての障子さえ無い小さな=長塚。お伽噺にばの挿絵のような一風変わった様式の八谷崎。蝦築がまがつくばったよう徳永。気の弱い子供たちに生活の自立心を持たせるための教場のような=尾辻。波の音が座敷に響いてくるほど海に近い=瀬戸内。氷室のように湿っぽく暗く冷たい=山本周。まわりの自然によく調和した古びた庄野。港に紡もゃった無数の廻船のようにぎっしりと建てこんだ=梶井。娘がいなくなって灯の消えたような遠藤。山の麓に寄り合うように固まっている数軒の大岡)。家が(午後の空気の中に静まり返る=黒井。腰が挫くじけたように崩れる=辻井。潰っょれるほどの大騒ぎ・藤沢)。帰る家がない。火事で家が焼ける。小さな家がちまちまと立て込んだ一画。ぼつりぽつりと家が建っている。帯のように一筋の道を挟んで左右に家が並ぶ=山本周。一歩も家から出ない。時間ぎりぎりまで家でぐずぐずする。ゆっくり家で過ごす。家に(いたためしがない。ちょうど居合わせる)。足早に家に向かう。新しい家にすんなりとけこむ。兄の家にやっかいになる。一刻も早く家に帰りたい。一戸建ての家に住む。弟分の家に居候する。仕事を家に持ち帰る。そっと裏口から家に入る。ひっそりと家に閉じこもる。人の家に勝手に上がる。家に育つ(裕福な。貧しい)。家の(裏手に回る。奥を盗み見る。商売を継ぐ。名に泥を塗る。近辺をうろつきまわる。空気が重苦しい。暮らしを支える。ぐるりをとり巻く。事情を聞き出す)。小走りに家の外に出て行く。人の家の事情に立ち入る。由緒ある家の生まれ。家まで走って帰る。家を(背負って立つ。抵当に入れる。留守にする)。小心翼々と家を守る。一晩家を空ける。振り仰ぐようにして家を眺める。家を飛び出す(ぶいと。燕らばのように軽々と=川端)。親類の家に(預ける。寄寓くする)。女は三界に家なし。いい家うちの御曹司注んぞ。文人の旧居が多い所。▼家を出る(あわただしく。いそいそと。ふらりと。いつもより早く。逃げるがごとく=太宰。踵いかの庭ちりを払わんばかりにそこそこ家を出る=有島)。結婚のために家を出て行く。すこすこと家を出ていく。家を(出しなに言う。出がけにこみを出す)。 **いえいえ【家家】** ▼家々(海辺に立ち並んだ。路地に囲まれた。斜面に鳥の群れのようにとまっている=大江)。家々が(ぎっしりと並んでいる。谷沿いに延びる。宵闇の中に沈む。くすんだ色でごちゃごちゃと建つ=中沢。互いに肩を寄せ合う住宅地=内海)。黒ずんだ古い家々が立ち並ぶ=本庄。細い坂路於分の両側に家々が覆いかぶさるように並ぶ遠藤。 **いえじゅう【家中】** 潮が引くように家じゅうが静まる"安岡。家中ににおいがこもる。香りが家中に満ちあふれる。声が家中に響く。家全体が木管楽器となって悲しげな曲を奏でる=加賀。煤ずずけた傘を伏せたような家の中=水上。家の中が(散らかる。丸見え。きれいに片付く。雑샷どしている。ひっそり閑とする)。家の中に木の香りを含んだ圏がひっそり住みつく"黒井。一日中じっと家の中にいる。家の中を上手に取り仕切る。窓から家の中を覗のぞきこむ。 **いおり【庵】** ▼庵(粗末な。和尚が住む。草葺ぶきの)。いおり庵が森の中にひっそりと建つ。茅葺きの庵がひっそりとわだかまる=柴田鍵。庵を結ぶ。山の麓に庵室いを建てる。粗末な草庵。草庵に暮らす。草庵を営む。山の麓に草庵ぶらを結ぶ。吹けば飛ぶような草小屋。 **いっけんや【一軒家】** ▼一軒家(野中の。吹きさらしの。村外れの。山の中の。原野にぽつんと建った。小ぢんまりした古い)。一軒だけぽつんとある人家。 **いなか【田舎】** 草深い田舎。田舎から一歩も出ない。田舎で(おとなしくおさまっている。のんびりと暮らす)。田舎の(家を引き揚げる。風習にとまどう)。の <557> 住む-179 んびりと田舎の休暇を楽しんでいるような精神状態"泉後。わざわざ不便な田舎へ引っ込む"夏目。田舎臭い雰囲気。都会から転居して田舎暮らしを始める池井戸。田舎びた風景。こぢんまりとした田舎町。静かな片田舎。片田舎に住む。こんな片田舎に埋もれるよりは広い世界に出るのがいいことは判もかっている"宮尾。片田舎の寺の住持。夫婦辿れ立って在所に引っ込む=山本一。竜骨車にたよる里「菊池。村里を通り抜ける。ひなびた町の家並み。田舎のひなびた温泉。寒村のひなびた食堂。藁葺々。き屋根のひなびた東屋"火坂。邵ひなびた村の温泉宿"藤田。やや色褪かっせたような鄙びた色合い吉行。 **いま【居問】** 居間が闇に落ちる。居間から玄関にとって返す。居間と(応接間を兼ねる。客間を兼用する)。居間にテーブルを据えつける。ぼつんと居間に座っている。うろうろと居用を歩き回る。台所と居間をばたばたと往復する=重松。夕日が射し込んでリビングがオレンジ色に染まる=重松。派手な音がリビングに鳴り響く=貫井。キッチンとリビングを忙しく往復する=貫井。食堂とリビングをぶち抜いた部屋篠田。広いリビングルーム。寝室からリビングに出る。 **かおく【家屋】** 日本の開放的な家屋。地震で家屋が甚大な被害を受ける。▼家屋が流失する(洪水で。津波で)。鉄砲水が家屋を流す。▼木造家屋(切り妻屋根の。城郭のように古い堅牢な艶光りのする島尾)。母屋と離れをつなぐ。鴨居跡もに(頭をぶつける。羽子板を飾る)。必居につまずく。敷居を一足またぐ。二階家(落ち着いたたたずまいの。大きな箱のような藤枝。古色蒼然だしせんとした木造の=佐藤愛)。雌れに(客を案内する。住む)。木造の家に住む。スレート葺ぶきの木造平屋。 **きゅうでん【宮殿】** ▼宮殿(宏壮な。壮麗な。ファンタスティックな夢の萩原例)。神体のない空虚な宮殿のような空いかめしい興なさ=有島。空の宮殿のように白く巨大な入道雲"遠藤。王宮に(住む。招かれる)。 **げしゅく【下宿】** 怖い付きの下宿。下宿を引き払う。転々と下宿を変わる。他人の家に下宿する。下宿人を置く。六畳一間の貸問。貸問で生活する。貸間に住む。二階を間借りする。間借り生活をする。 **こうきょ【皇居】** 皇居を(参拝する。遥拝する)。宮城を(参拝する。遥拝する)。宮廷に出仕する。 **こべつ【戸別】** 戸別に(回収する。調査する。徴収する)。各家庭を戸別に訪問する。一帯を戸別訪問する。一軒一軒(訪ねて回る。しらみつぶしに捜す)。 **しつない【室内】** 得体の知れぬ雑品がごたごたと置かれた室内"加賀。汚が(渉闇に包まれる。ぼうっと明るむ。乱雑をきわめている)。生牡蠣終結の肉を見るようなすべてが薄青く薄白い半透明さの室内がひっそりと静まり返る永井龍。室内に(四入らんにする。沈黙が満ちる。音もなく忍び入る。銃声がとどろく。隙間風が吹き込んでくる)。おずおずと室内に入ってくる。声が室内に響き渡る。湿気が室内にむっとこもる。涼しい夜気が室内に流れこむ。気まずい沈黙が室内に沈む"小林久。室内の空気がよどむ。室内を(適温にする。きれいに整頓する)。ぐるりと室内を見回す。沈黙が室内を支配する。音が室内に(充満する。虚しく反響する)。屋内に閉じこもる。屋内をくまなく探る。館内に音楽を流す。 **じゅうたく【住宅】** 住宅が(密集する。あちこちに建つ。こちゃごちゃ並ぶ。びっしり建っている)。住宅をリフォームする。付近の住宅をしらみつぶしにあたる。高層住宅がそびえ立つ。古くからの集落と新興住宅がせめぎマへ“横山。分譲住宅を購入する。宅地造成が進む。宅地を(造成する。分譲する)。マンモス団地が出現する。ちらほらと民家が散らばる。▼住宅地に戦闘機が墜落する。街(閑静な。のどかに明るい午後の=原田康)。古い住宅街を歩く。住宅地(交通至便な。閑静な古い)。 **じゅうみん【住民】** 住民がことごとく逃亡する。住民に過大な負担を押しつける。住民の(拒否に遭う。理解を得る)。地元の住民を集める。地元住民が一致団結する。住民訴訟を起こす。住民同士が助け合う。騒々しいアバートの住居者。近隣の住人を巻き込む。住人同士が互いに没交渉・佐野。 **しゅくしゃ【宿舎】** 宿舎に戻る。いくつかの宿舎に分宿する。いとも殺風景な男ばかりの寄宿舎今日。寄宿舎生活を送る。従業員宿舎に泊まる。公舎に住む。首相を公邸に訪ねる。社宅に住む。飯場から飯場へと渡り歩く。飯場を仮設する。兵舎で暮らす。兵舎に入る。寮生活に慣れる。寮に入る。寮を出る。 **じんか【人家】** 人家が(軒を連ねる。ちらほら見える。平原に散らばる。ぽつぽつと散在する)。沿道に人家が立ち並ぶ。進むにつれて人家がまばらになる。ちらほらと人家が見える。一ところに人家が固まっている。人家の灯り一つ見えない真っ暗闇"なかにし。 **すくう【巣食う】** ▼巣食う(ふさぎの虫が。胸に病が。寂しさが胸に。虫が材木に。考えが頭の中に)。巣くう(心の奥に恐怖心が"景山。魔性が胸の中に東野)。心に巣食う(不安感が。投げやりな気持ちが)。いまだに日本に巣食っている古い価値観を破壊する=童門。 **すまい【住まい】** 日に日に新しい住まいができてゆく。住まいを兼ねた店。仮住まい(急場しのぎの。リフォーム中の)。倉庫を仮住まいにする。居住性が(高い。低い。よい。悪い)。住居が(手殃。ばらばらと点在する)。似たような住居が並ぶ。住居に違法侵入する。転々と住居を答える。新居に(移る。落ち着く。引っ越す)。住み心地が(いい。悪い)。住み心地のよい家。 **すみつく【住み着く】** ▼住み着く(人が。島に。町に。森に。家を買って。ずるずると)。土着する(地方に。一村に)。▼居つく(猫が。よそ者が。為に。町に。村に。ずるずると)。 **すむ【住む】** ▼住む(心に鬼が。新しい家に。田舎に。同じ町内に。錯覚の中に。島に。団地に。都会に。橋の下に。ばらばらに。村に。目と鼻の先に。森の中に。立派な家に。小屋を建てて。たった一人で。軒を並べて。閑静な屋敷町に。高級マンションに。しゃれた別荘に。だだっ広い屋敷に。小さな田舎町に。かれこれ二年近く。世界に散らばって、人間が密集して。高資さと卑しさとが隣り合わせに=阿川弘)。かつて住んだ町。長年住んだ土地。▼住まわせる(家族を。兄弟を。妻をのびやかに)。▼住み家(終っぃの。自分にふさわしい)。住み込みの家政婦として働く。旅館で住み込みの仲居として働く。住みやすそうな(アパート。家)。なかなか住みよい土地。▼移り住む(他の市町村に。手頃な貸し家を見つけて)。▼住まう(小屋に。土地に。部屋に)。長年住み慣れた故郷を離れる。父祖の代から住み慣れた土地。住み古した家。海外に居住する。居を(営む。定める)。郊外に居を構える。地方に居を移す。在留を許可する。外国人と日本人が雑居する。さまざまな店が雑居するビル。雑居ビルのテナント。外国に定住する。▼入居する(空き家に。新しい家に。老人ホームに。ビルにテナントが)。安住の地にたどりつける。安住の地を(見つける。求める)。永住の地を求める。永住する(海外に。外国に)。 **たいしつ【退室】** 退室を許可する。▼退室する(社長室を。職員室を。会議中に。教室から。試験途中で。試験途中で。部屋から。堅苦しい礼を残して)。 **ちゃのま【茶の間】** 茶の円がしんと静まり返る。茶の間から書斎に移る。茶の町に上がる。湯呑みに茶を注ぐ静かな音が茶の間に広がる=北原。茶の間の空気が凍りついたように静かになる=ねじめ。茶の間を出て行く。毒気が茶の間を満たす筒井。 **ていたく【邸宅】** ▼邸宅(閑静で広壮な。古ぼけた陰気ていたくな。御殿のような宏壮な椎名話)。▼邸宅に住む(広大な。ヨーロッパの城のような=小林久)。立派な邸宅を構える。和洋折衷の邸宅を新築する。▼大邸宅(きらびやかな。お城のような。豪習に何を極めた)。ブール付ききの豪邸。豪邸に住む。豪邸を構える。邸内が不気味に静まり返る。邸内をくまなく掃除する。 **でんえん【田園】** 水田が広がる田園。田園が斜めに切る雨にかき消される"大岡。桜色の木々が田園の小道を賑わせる=藤田。穏やかな田園風景が続く。のどかな田岡風景が目の前に広がる藤田。 **どうきょ【同居】** 同居に耐えられない。▼同居する(家族が。恋人が。息子夫婦と)。警戒心とつくりわらいの同居した顔!藤本。▼屋根の下に暮らす(同じ。一つの)。起队きがを共にする。同室に起居する。起居を共にする。両親と一つ家で暮らす。一つ家に(暮らす。住む。寝起きする)。一つ部屋に寝起きする。同棲に至るのは時間の問題"小林辰。同棲を解消して別れて生活する鈴木光。ままことみたいな同棲をする=鷺沢。同棲生活に入る。一つ屋根の下で寝起きを共にする。一つ屋根の下に(暮らす。住む。生活する)。 **ながや【長屋】** 六畳二間の狭苦しい長屋=高橋克。板屋根の長屋が並ぶ。長屋に(住まいを移す。住む)。長屋の裏手に住む。荒れた長屋の板屋根を打つ蕭然しい、うたる雨の音=海音寺。長屋中が大騒ぎになる。貧しい裏店同ら住まい船山。 **にゅうしつ【入室】** 入室を(許可する。禁じる。とがめにゅうしする。許す)。部屋に一歩入る。部屋に入ってくる(おどおどと。のそりと。学生たちがどやどやと三浦袋)。 **べっきょ【別居】** 冷静な底気味悪い態度で別居を主張する!有局。▼別居する(両親が。息子夫婦と)。私と嫁を別居させる堀。別居暮らしを耐え忍ぶ。 **べっそう【別荘】** 別荘が立ち並ぶ。一年の大半を別荘で過ごす。別荘に(滞在する。引きこもる)。軽井沢の別荘に暑を避ける。仕事用の別宅。家と別宅を行ったり来たりする。 **へや【部屋】** 部屋(贅ぜぃを尽くして造られた。日当たりのいい。万年床が敷かれた。がらんとして不気味なほど静かな原田康。コンパクトにまとまった住みやすそうな=小川。書院風の造りの古めかしい荘重な"松本。油しみた襟元を思い出させるような薄ぎたない有陽。お城のような眩まぶしい輝きのある=落合。午後の暑さが畳まで這ぃうような高井。歳月を経た美しい傷みが瀰漫心ました"松本。訊問室にい。か留置場のようにただ真っ白な壁が四方を囲んでいる=泉受。まぶしいばかりに白く明るい!佐藤巻。蒸し風呂のような=原田宗)。部屋が(きれいに片づく。しんと静まり返る。なかなか暖まらない。もぬけの殻になる。息苦しいほど狭く感じられる=古井)。あいにく部屋がない。部屋から(一歩も出ない。部屋へさまよい歩く。部屋を探しまわる)。部屋に(鍵をかける。壁掛けを飾る。煙が籠もる。そうっと戻る。沈黙が流れる。ゆとりがある。暑さが押し寄せる。コーヒーの匂いが満ちる。笑い声がみなぎる)。朝日が部屋に射しこむ。重苦しい空気が部屋に淀む。勝手に他人の部屋に上がり込む。軽い足取りで自分の部屋に向かう。声が部屋に響き渡る。ただならぬ空気が部屋に満ちる。部屋に明かりが(あふれる。つく)。部屋に香りが(充満する。流れる)。部屋の(片隅に佇숫たむ。外に運び出す。扉を開ける。前にたたずむ。奥に引きずり込む。処を内からかける。汚さを一顧だにしない。隅で小さくなっている。隅に紹ぼこりがたまる。真ん中で仁王立ちになる)。ぐるりと部屋の内を見回す。部屋の空気を(入れ替える。敏感に感じ取る)。部屋のドアを(開ける。叩 <558> **すむ【住む】** ▼住む(心に鬼が。新しい家に。田舎に。同じ町内に。錯覚の中に。島に。団地に。都会に。橋の下に。ばらばらに。村に。目と鼻の先に。森の中に。立派な家に。小屋を建てて。たった一人で。軒を並べて。閑静な屋敷町に。高級マンションに。しゃれた別荘に。だだっ広い屋敷に。小さな田舎町に。かれこれ二年近く。世界に散らばって、人間が密集して。高貧さと卑しさとが隣り合わせに=阿川弘)。かつて住んだ町。長年住んだ土地。▼住まわせる(家族を。兄弟を。妻をのびやかに)。▼住み家(終っぃの。自分にふさわしい)。住み込みの家政婦として働く。旅館で住み込みの仲居として働く。住みやすそうな(アパート。家)。なかなか住みよい土地。▼移り住む(他の市町村に。手頃な貸し家を見つけて)。▼住まう(小屋に。土地に。部屋に)。長年住み慣れた故郷を離れる。父祖の代から住み慣れた土地。住み古した家。海外に居住する。居を(営む。定める)。郊外に居を構える。地方に居を移す。在留を許可する。外国人と日本人が雑居する。さまざまな店が雑居するビル。雑居ビルのテナント。外国に定住する。▼入居する(空き家に。新しい家に。老人ホームに。ビルにテナントが)。安住の地にたどりつける。安住の地を(見つける。求める)。永住の地を求める。永住する(海外に。外国に)。 **たいしつ【退室】** 退室を許可する。▼退室する(社長室を。職員室を。会議中に。教室から。試験途中で。部屋から。堅苦しい礼を残して)。 **ちゃのま【茶の間】** 茶の円がしんと静まり返る。茶の間から書斎に移る。茶の町に上がる。湯呑みに茶を注ぐ静かな音が茶の間に広がる=北原。茶の間の空気が凍りついたように静かになる=ねじめ。茶の間を出て行く。毒気が茶の間を満たす筒井。 **でいり【出入り】** 出入りが(激しい。頻繁な)。 でいりする【出入りする】** 医者が出入りする。 でかける【出掛ける】** ▼出掛ける(買い物に。散歩に。気軽に。連れだって)。 でむかえる【出迎える】** ▼出迎える(客を。一行を。玄関で)。 とまる【泊まる】** ▼泊まる(ホテルに。旅館に。友達の家に。ただで)。 はいかい【徘徊】** 夜の巷を徘徊する。 はいる【入る】** 部屋に入る。 ひきあげる【引き揚げる】** ▼引き揚げる(自分の部屋に。早々に。すごすごと)。 ひっこす【引っ越す】** ▼引っ越す(アパートに。田舎に。郊外に。夜逃げ同然に)。 へんれき【遍歴】** 全国を遍歴する。 ほうもん【訪問】** 訪問を(受ける。歓迎する)。 まいこむ【舞い込む】** 転がり込む。 まねく【招く】** 客を招く。 むかえる【迎える】** 客を迎える。 もどる【戻る】** ▼戻る(自分の部屋に。急いで。まっすぐ)。 やど【宿】** 宿を(とる。探す)。 よる【寄る】** ▼寄る(実家に。知人宅に。気軽に)。 らくえん【楽園】** この世の楽園。 るす【留守】** 留守を(預かる。頼む)。 わがや【我が家】** 我が家に帰る。 あんない【案内】** 部屋に案内する。 いえ【家】** 家を(空ける。建てる)。 いきき【行き来】** 親戚の家を(行き来する。する)。 いばしょ【居場所】** 居場所が(ない。なくなる)。 いる【居る】** 居留守を使う。 うろつく** うろつく(盛り場を。あてもなく)。 かいもの【買い物】** 買い物に出かける。 かえる【帰る】** ▼帰る(自分の部屋に。家路につく。まっすぐ家に)。 かよう【通う】** 学校に通う。 かんげい【歓迎】** 歓迎会を開く。 きせい【帰省】** 故郷に帰省する。 きてん【帰店】** 会社に帰店する。 きゅうか【休暇】** 休暇をとる。 きょうじゅう【居住】** 居住区。 きょてん【拠点】** 活動の拠点。 げしゅく【下宿】** 下宿住まい。 げんかん【玄関】** 玄関で(客を迎える。立ち話をする)。 こうがい【郊外】** 郊外に住む。 こもりきり** 部屋にこもりきり。 ざいたく【在宅】** 在宅勤務。 さんぽ【散歩】** 散歩に出かける。 じゅうきょ【住居】** 住居を構える。 しゅくはく【宿泊】** 旅館に宿泊する。 しゅっちょう【出張】** 海外に出張する。 すまい【住まい】** 住まいを構える。 せいかつ【生活】** 生活の拠点を移す。 そうくつ【巣窟】** 悪の巣窟。 たいざい【滞在】** 海外に滞在する。 たずねる【訪ねる】** 旧友を訪ねる。 たちよる【立ち寄る】** 喫茶店に立ち寄る。 たび【旅】** 旅に(出る。出る)。 だんらん** 家族団らん。 ちんたい【賃貸】** アパートを賃貸する。 つうきん【通勤】** 会社に通勤する。 つとめる【勤める】** 会社に勤める。 でいり【出入り】** 出入り業者。 でかける【出掛ける】** 旅行に出かける。 とうげ【峠】** 峠を越す。 とじこもる【閉じこもる】** 部屋に閉じこもる。 とまりこむ【泊まり込む】** 会社に泊まり込む。 にゅうきょ【入居】** 新居に入居する。 ねどこ【寝床】** 寝床に入る。 はいかん【拝観】** 寺院を拝観する。 ひきこもる【引きこもる】** 部屋に引きこもる。 ふろう【浮浪】** 浮浪者。 ほうろう【放浪】** 全国を放浪する。 ほんだ【本拠】** 本拠を移す。 まち【町】** 町に出る。 みおくる【見送る】** 玄関で見送る。 りょこう【旅行】** 旅行に出かける。 よめを別居させる堀。別居暮らしを耐え忍ぶ。 **べっそう【別荘】** 別荘が立ち並ぶ。一年の大半を別荘で過ごす。別荘に(滞在する。引きこもる)。軽井沢の別荘に暑を避ける。仕事用の別宅。家と別宅を行ったり来たりする。 **やしき【邸宅】** ▼邸宅(閑静で広壮な。古ぼけた陰気な。御殿のような宏壮な椎名話)。▼邸宅に住む(広大な。ヨーロッパの城のような=小林久)。立派な邸宅を構える。和洋折衷の邸宅を新築する。▼大邸宅(きらびやかな。お城のような。豪習に何を極めた)。ブール付きの豪邸。豪邸に住む。豪邸を構える。邸内が不気味に静まり返る。邸内をくまなく掃除する。 **でんえん【田園】** 水田が広がる田園。田園が斜めに切る雨にかき消される"大岡。桜色の木々が田園の小道を賑わせる=藤田。穏やかな田園風景が続く。のどかな田岡風景が目の前に広がる藤田。 **どうきょ【同居】** 同居に耐えられない。▼同居する(家族が。恋人が。息子夫婦と)。警戒心とつくりわらいの同居した顔!藤本。▼屋根の下に暮らす(同じ。一つの)。起队きがを共にする。同室に起居する。起居を共にする。両親と一つ家で暮らす。一つ家に(暮らす。住む。寝起きする)。一つ部屋に寝起きする。同棲に至るのは時間の問題"小林辰。同棲を解消して別れて生活する鈴木光。ままことみたいな同棲をする=鷺沢。同棲生活に入る。一つ屋根の下で寝起きを共にする。一つ屋根の下に(暮らす。住む。生活する)。 **ながや【長屋】** 六畳二間の狭苦しい長屋=高橋克。板屋根の長屋が並ぶ。長屋に(住まいを移す。住む)。長屋の裏手に住む。荒れた長屋の板屋根を打つ蕭然しい、うたる雨の音=海音寺。長屋中が大騒ぎになる。貧しい裏店同ら住まい船山。 **にゅうしつ【入室】** 入室を(許可する。禁じる。とがめる。許す)。部屋に一歩入る。部屋に入ってくる(おどおどと。のそりと。学生たちがどやどやと三浦袋)。 **べっきょ【別居】** 冷静な底気味悪い態度で別居を主張する!有局。▼別居する(両親が。息子夫婦と)。私の中学入学を機に両親は別居した桐野。気ぶっせいな娠ぐ静まり返る)。土着する(地方に。森に。家を買って。ずるずると)。土着する(地方に。一村に)。▼居つく(猫が。よそ者が。為に。町に。村に。ずるずる)。 **へや【部屋】** 部屋(贅ぜぃを尽くして造られた。日当たりのいい。万年床が敷かれた。がらんとして不気味なほど静かな原田康。コンパクトにまとまった住みやすそうな=小川。書院風の造りの古めかしい荘重な"松本。油しみた襟元を思い出させるような薄ぎたない有陽。お城のような眩まぶしい輝きのある=落合。午後の暑さが畳まで這ぃうような高井。歳月を経た美しい傷みが瀰漫心ました"松本。訊問室にい。か留置場のようにただ真っ白な壁が四方を囲んでいる=泉受。まぶしいばかりに白く明るい!佐藤巻。蒸し風呂のような=原田宗)。部屋が(きれいに片づく。しんと静まり返る。なかなか暖まらない。もぬけの殻になる。息苦しいほど狭く感じられる=古井)。あいにく部屋がない。部屋から(一歩も出ない。部屋へさまよい歩く。部屋を探しまわる)。部屋に(鍵をかける。壁掛けを飾る。煙が籠もる。そうっと戻る。沈黙が流れる。ゆとりがある。暑さが押し寄せる。コーヒーの匂いが満ちる。笑い声がみなぎる)。朝日が部屋に射しこむ。重苦しい空気が部屋に淀む。勝手に他人の部屋に上がり込む。軽い足取りで自分の部屋に向かう。声が部屋に響き渡る。ただならぬ空気が部屋に満ちる。部屋に明かりが(あふれる。つく)。部屋に香りが(充満する。流れる)。部屋の(片隅に佇숫たむ。外に運び出す。扉を開ける。前にたたずむ。奥に引きずり込む。処を内からかける。汚さを一顧だにしない。隅で小さくなっている。隅に紹ぼこりがたまる。真ん中で仁王立ちになる)。ぐるりと部屋の内を見回す。部屋の空気を(入れ替える。敏感に感じ取る)。部屋のドアを(開ける。叩く)。 <559> **へや【部屋】**部屋を(くまなく探す。畳んで出直す。きちんと掃除する。物色された形跡がない。圧するように立ちはだかる=高見浩)。足早に部屋を横切る。風が部屋を吹き抜ける。双方の部屋を行ったり来たりする。光が部屋を満たす。ホテルに部屋をとる。重い沈黙が狭い部屋を支配する=東野。北向きの悲暗い小部屋。一部屋ずつをあてがう。部屋全体に俺『えたような臭いが籠こもる=森村。屋根裏部屋に住む。光線が一室にみなぎり渡る。キャビンを慌ただしく出て行く。個室に(移る。入る)。庇いきのように張り出したサンルーム=日野。房に入る。房を出る。▼問(開かずの。離れの)。次の間へ下がる。一LDKのこぢんまりとした間取り“落合。▼部屋を出る(一足先に。急いで。こっそり。憤然とその場を立ち。逃げる人のようにあたふたと有島)。部屋を(一歩外に出る。ころげるように出る。出がけにつぶやく出て行きしなにどやしつける)。」部屋を出て行く(急ぎ足で。どやどやと。のっそりと。ぶいと。捨て台詞を残して。ぶつくさ言いながら。逃げるように)。部屋からそっと出て行く。のっそりと部屋から出てくる。風のように部屋から飛び出して行く=西木。脱兎だっのことく部屋から飛び出す高見浩。フラフラとさまようように部屋を逃げでる=坂口。▼部屋を飛び出していく(あわただしく。勇み立って)。部屋を飛び出す(我先に。逃げるように)。 **へやじゅう【部屋中】**匂いが部屋中に(充満する。広がる)。部屋中に(響きわたる声。ざわめきが満ちる。悩ましいムードが立ちこめる。熱熱気がみなぎる)。部屋中をくまなく探しまわる。きょろきょろ部屋中を見回す。部屋いっぱいに(匂いが広がる。緊張が張り詰める)。部屋の中が(水浸しになる。むんむんする。蒸し風呂のように暑い。人いきれてむんむんする=福永。真昼のように明るくなる=光洒)。部屋の中に(音が響き渡る飛び込む。冷気が滑りこんでくる。日光と色彩が充満する=開高)。▼部屋の中に入ってくる(光が。人が)。部屋の中を(さっと見渡す。行ったり来たりする。ぐるりと見回す。じろじろ物色する)。ぐるぐる部屋の中を歩きまわる。 **マンション**▼マンション(高台にある。どっしりした造りの)。マンションが建ち並ぶ。マンションに(住む。引っ越す)。マンションの(一室を借りて住む。売れ行きがかんばしくない)。マンションを(訪れる。買う。借りる。購入する。処分する。建てる。手に入れる)。いつもより早めにマンションを出る。目の前にそびえ立つマンションを見上げる。 **みんか【民家】**民家(素朴な。ごく普通の。山のそばにうずくまる)。民家が(旧を並べる。ちらほらと散らばる)。茅葺紗々きの民家が点在する。民家を移築する。作業場に改造する)。小粋な造りのしもた屋。しもた屋風の木造二階家。住家二棟が全焼する。商家が軒を連ねる。商家の総領に生まれる。▼農家(藁葺6きの。静かにたたずむ)。びっしりと町家が建ち並ぶ。町家という歴史的遺産を活用する。 **やしき【屋敷】**▼屋敷(寄せ棟造りの豪壮な。冠木門幼ぶきのある古い。巨大な要塞のような=東野。この在で名の知られた若竹。岡取りが旅館のように入り組んでいる=阿部。雪の真ん中に亡霊のように立つ=日野)。屋敷が(荒れたままになる。深い木立に囲まれる)。大名の屋敷が塀を連ねる。林の中に屋敷が建っている。夜空に火の粉をまき散らして屋敷が崩れ落ちる=小松左。屋敷から(姿を消す。一歩も外へ出ない)。人生の大半を屋敷から一歩も出ないで過ごすあさの。屋敷で登居もい生活を送る。屋敷に(足を踏み入れる。腰を落ち着ける)。屋敷の(内部がひっそりと静まる。中に人の気配がない。中を限くまなく探し回る。内から見張りの眼が四方へ光っている=池波。周りを十重二十重さはに取り囲む"火坂)。行列が屋敷の門を出て行く。大きな屋敷の塀が長々と続く=武田百。屋敷を人手に渡す。賊が屋敷を襲う。不承不承屋収を明け渡す。人手に渡った屋敷を買い戻す篠田。叫び声が屋敷じゅうに響き渡る。晴れやかな声が屋敷じゅうにあふれる。家屋敷を(売り払う。抵当に入れる)。日本一怖いお化け屋敷"篠田。大名屋敷へ奉公に上がる。黒板塀の武家屋敷が江戸の面影をそのままに残して建ち並んでいる=高橋克。館が木立に埋もれる。館に足を踏み入れる。館を枕にあの世に旅立つ住井。▼洋館(現代建築の。戦前の造りの。古めかしい)。洋館に居を移す。 **やまぐに【山国】**山国に蟄居詰めする。山国の深さを思わせるような朝雲に徳田。山や谷がせめぎ合う。質素取実を尊ぶ農民風の山国気風"萩原朔。山陰に斑雪岐ぶらの残っている冬枯れたままの山国らしい景色"堀。▼山里(閑静な。人煙まれな。静寂な)。山里の明け暮れは僧坊のように静かな宅もびしい暮らし=山本周。夕立が山里を洗う。 **わがや【我が家】**我が家(狭いながらも楽しい篠田。懐かしい匂いのする=熊谷)。我が家に(帰る。たどりつく。戻る)。先祖代々我が家に伝わる名刀。とりあえず今日も我が家は平穏無事=重松。住み慣れた我が家を後にする。そっと我が家を脱け出す。持ち家に住む。持ち家を手放す。マイホームの巣作りに熱中する。一戸建てのマイホームを手に入れる。自室に(こもる。入る。引き揚げる。戻る)。自宅と会社の間を往復する。自宅に電話を入れる。会社から自宅に戻る。仕事を自宅に持ち帰る。汗牛充棟の書斎。書斎に(閉じこもる。入る)。 **わびずまい【侘び住まい】**▼侘び住まい(安アパートの。山奥の。浮き世を離れた)。しいて浮き世を離れた侘び住まいを送る辻井。人里離れた庵いぉに暮らす。小人閑居して不善をなす。閑居の地を見つける。 # 楽しむ <560> # 鋭い・鈍い **えいびん【鋭敏】**鋭敏な(感受性。神避。色感が存分に窺らかわれる絵"有局)。打算の感覚のきわめて鋭敏な持ち主=司馬。▼鋭敏になる(感覚が。耳が)。ジャーナリストのような鋭敏放さで情況を報告する=中村為。 **かびん【過敏】**過敏な(思い過ごし。反応)。病的に過敏な想像力"日野。過敏に物音にいらだつ。神経が過放に働く。臭いに過敏になる。神経過敏な人。 **かんじない【感じない】**▼感じない(何にも疑問を。眠気を。疲れは一向。露ほども。何らの矛盾も。良心のやましさを。たいした災難とは。蚊に刺されたほどにも内田康)。▼感じられない(声に満足感が。真剣さが。いい加減さなど微座ふじも。いささかの衰えも。発展への志向性が藤原)。痛くもかゆくもない。 **きっさき 【切っ先】**切っ先が(空を切る。月の光を浴びて光る)。ぶすっと切っ先が突き立つ。切っ先から身を逸らす。刺すような冷気が衣類の織りめから千本の鋭い切っ先となって肌につき刺さる=本庄。切っ先を(天に向ける。右に左にかわすぃ杉本)。剣の切っ先を胸元に突きつける。喉に切っ先を突きつける。剣先を喉に探する。太刀先鋭く(攻める。追及する)。刃先が(きらりと光る。肉に食い込む。喉を刺し貫く)。刃先を紙一重で逃れる。 **きば【牙】**夜目にも白く見える波濤沿との牙=有島。波の牙が岡歇的仇討に仄白以30く闇の中に出没する"福永。犬が鋭い牙を見せて唸ったる。みずからを守る牙を磨く!真継。白い牙のような波の歯をむきだしている冷たい海遠藤。▼牙をむく(激流が。虎が。波が白い。むき出しの暴力が=黒岩)。▼牙をむき出す(澱ぉりのごとく沈潜させられていた不潔さが意識の表面におどり出てきて=筒井。 剣の切っ先のような鋭い"子母沢)。冬の風が夜の街で白い牙をむく黒還有。いつ牙を剣。かないともかぎらない!浅川。女の年齢が牙をむき出して主に挑みかかる=筒井。利害の溝をはさんで牙をむき合う対立に神経をすりへらす高橋和。 **さっき「殺気】**殺気が(ひたひたと身を包んでくる。風のように包む=武田泰)。全身に殺気がみなぎる。から殺気が消える。目に殺気がこもる。大きく膣ふぃいた双降時に犯しがたい殺気が閃いらく=山本川。の中に氷のような殺気が走るい光瀬。部屋いっぱいはりさけるように殺気が満ちる=坂口。物に憑っかれたような殺気が感じられる動き"吉村。両眼に青白い殺気が浮いて出る=池波。獣の殺気に感じたように緊張して姿勢を正す=尾辻。あたりが殺気の坩堝っに変る=山岡。目に青い殺気の炎が燃える=山田風。殺気を(全身から放つ。肌に感じる)。声が殺気を帯びて響く、ただならぬ殺気を感じる。殺気立つ(一座の空気が。声が。目が異様に)。殺気立った気配が部屋の中に鋭角的に満ちる=貫井。血塗られた刀を下げた素浪人を思わせるほどの殺気走った表情高橋こ。 **シャープ** バットの振りがシャーブ。シャープな頭脳。彫りの深いシャープな横顔斎藤栄。理知的でシャープな紳士小川。窓灯りが海に反射して小さな波頭をシャープに見せる=泉優。 **するどい【鋭い】**鋭い(痛みが走る。一撃を見娜う。一瞥心をくれる。観察力を持つ。腰の切れ。視線を投げる。叱声が飛ぶ。注視の目を向ける。針のまなざしを向ける=長野。老刑事のような目で見つめる。藤田)。▶鋭い(追及の矛先が。猛然と襲いかかる刃風が池淡。錐きりで刺すように"石坂)。勘の鋭い女。頭の働きの鋭い男。思わず鋭い声になる。切れ込みの深い鋭い目。現状への鋭い批判。細かで鋭い神経の持ち主。眼鏡の奥の鋭い目。金属板を打ち合わせたときに似た鋭い音響黒井。軍部批判の鋭い筆鋒美濃部。刑事のように鋭い眼で睨にらみすくえる=高橋和。削くいだように鋭い鼻先「加賀。鷹たかみたいに鋭い目=東野。怒鳴るような鋭い声=本庄。人間への鋭い心理的洞察=中局。針のように鋭い神経「有島。玉を砕くような鋭い音菊池。びしっと鋭い鞭もちの音がする。網を引き裂くような鋭い響き=光瀬。タイヤが鋭い仉きしみ音を立てる=小池。▼鋭い言葉(詰問するような吉川。叩き切るような黒岩)。▼鋭い目(剃刀のような。猛禽類心のような=横山)。人の弱点を鋭くえぐる。声が無人の街路に鋭くこだまする=開高。刺し透すほとに鋭く見詰める菊池。動物的な勘の鋭さ=小林久。鋒明の鋭さ宛然収んたる利刃"山田美。表情から鋭さが消える。ソブラノが固まった空気を突き抜けるような鋭さで伝わってくる=壺井。語気の鋭さに相手がひるむ。視線の鋭さに思わず後ずさりする。神経の鋭さに舌を巻く。声が鋭さを帯びる。目がひときわ鋭さを増す。▼ナイフのように鋭い(まなざしが。暁の湖 | 岸の微風が=開高)。眼光鋭い瘦身の男小松左。鋭角なシルエット。建物が空を鋭角に区切る。鋭利な(刃物。眼光が顔全体を支配する)。繊細で鋭利な分析。犀利峠いな(切れ味。筆致)。犀利俊抜な頭脳の持ち主。犀利無比ともいうべき観察の目=岸田。闘争が先鋭な様相を見せる。続々と先鋭な新人が出てくる=松本。先鋭化する(成情が。思想が)。 **せんたん【先端】**手足の先端が冷たい。悪欲がの先端が岩の隙間に食い込む―熊谷。半島の先端に位置する。担架の先端を持つ。流行の先端を行く。▼最先端(突堤の。流行の)。最先端の技術。学界の先端的な主題を選んで研究する。▼石突き(雨傘の。茸のの。ステッキの。槍ゃりの)。太平洋にせりだしている半島の突端。砂州の突端にある鳥豊田。端と端とをつなぎ合わせる。ソファーの端に腰かける。血が末端の神経 <561> にまで行き渡る。機構の末端まで統制が及ぶ。 **ぞうげ【象牙】**象牙の塔にこもる。きゃしゃな象牙のような指人合崎。なめらかな象牙のような肌清水俊。象牙のように真っ白なきれいな歯並み=佐山。針一突きの間違いもなく手間の極致を尽くして彫り出した象牙細工のような姿態"岡本。象牙彫りのような鼻野上。 **てつじょうもう【鉄条網】**鉄条網を張りめぐらす。有刺鉄線で鉄条網を作る。もつれた鉄条網のような髪型"村上春。有刺鉄線の柵。警官の制服の垣が有刺鉄線のようにひきしめられとげとげしくなる=武田飛。有刺鉄線を張りめぐらす。金網に有刺鉄線を巻く。 **とがらせる【尖らせる】**▼とがらせる(思わず声を。周囲に神経を。円錐形以肌に。不本意そうに唇を。キツネのように口を=山本有)。▼唇を尖らせる(不服そうに。不満そうに)。▼口を尖らせる(伏し目がちに。不服そうに。怒りの表情で。鯛たぃのように。抗議するように佐野)。尖らす(兎らどのように口を大佛。針のように心を"有吉)。甘えたように口をとがらす内田春。▼鋭くする(角度を。形相を。攻撃を。目の光を)。 **とがる【尖る】**▼尖る(先が針のように=北村。その場の空気が一瞬刃物のように村松)。▼とがる(胸の先が。先が細く。表情が険しく。乳首がきゅっと。顔が般若面のように鋭く=高橋和)。尖った口で焼酎をちびりと飲む=横山。顎の尖った顔。口が尖った狐面。鋭く尖った麦の穂先。猛々しく尖った神経。恰好よくとがった白い鼻"伊藤発。自分の耳が猫の耳のようにとがってびんとするような気がする梅本。風音が尖って聞こえる"佐伯。鉾にこの先のようにとがっている山頂藤沢。▼とんがらせる(唇を。口を)。尖ったような乾いた髪の匂い=黒井。▼鋭くなる(語調が。感覚が日毎に。目がきらきらと詰問的に=伊藤疹。鼻が犬のように菊池。目が刃のように高橋三)。尖った声(突っかかるような。鳥のように先だけ室生)。尖る(声が怒りで。声が甲高く)。声がとんがる。アイスピックのような声"北村。 **どんかん【鈍感】**鈍感(神経が丸太ん棒のように白井。神経が豚のように=白井)。言葉について鈍感な人間、輝きのない鈍感な海武田泰。ひとが苦しんでいるのを見て平気でいられるほど鈍感じゃない三田。相手の反応に気づかない鈍感さ=中村。自分の鈍感さに呆ぁされる。 **なまる【鈍る】**▼なまる(腕が。刀が。体が。包丁が)。切れ味が(鈍い。悪い)。なまくらな(鋏加だ。刃物。包丁)。刃がこぼれてなまくらになる。 **にぶい【鈍い】**鈍い(疼、うずきを感じる。重い音。切れ味の包丁。艶のない声。明かりが浮かぶ。衝撃を後頭部に受ける。爆音が聞こえる)。何事につけて反応が鈍い。回転の鈍い頭。金属がぶつかる鈍い音。後頭部を鈍い痛みが走る。蚊がブーンと鈍い音をして飛ぶ今日。鎌の銀色の刃が鈍い光を放つ=池井戸。ぐしゃっとぃう鈍い音があたりに響き渡る=若竹。蜂の群れのようなブーンという鈍い電気音"村上春。冬の陽が鈍い陽射しを投げかける=徳永。呆にうけたような鈍い目を浮かす高樹。盆の窪くにあたりに鈍い痛みがある"重松。鈍く銀色に輝く。街灯が路上を鈍く照らす。像が鈍く金色に光る。光を鈍く反射する。街じゅうがわーんと鈍く鳴りよどむ=九谷。頭がずきんずきんと鈍くうずく〃小林多。心の暗い片隅が鈍く疼く黒井。鈍く光る(人形の目が。レールが。屋根が陽射しを反射して)。遅鈍な(意識。頭脳。対応)。▼鈍化する(成長が。荷動きが。伸びが)。鈍重な立ち居振る舞い。鈍重になる(体が。思考が)。 **にぶる【鈍る】**▼鈍る(足の運びが。頭の働きが。手先の感覚が。人の出足が。周囲への注意力が。解剖刀メスのような日頃の批判力が鉛のように=有島)。鈍くなる(頭の回転が。歩みが。動きが。感性が。記憶力が。味覚が)。鈍らせる(意欲を。決心を)。鈍磨した感覚を研ぎ直すあさの。鈍麻する(感覚が。感情が。好奇心が。責任感が。知覚が)。 **びんかん 【敏感】**敏感(周囲の不正に。世間の風聞に。人の気持ちに。刺激に対して。消費者の反応に。政治的な動向に。人一倍毀誉褒貶いに。世の中の動きに。驚くほどファッションに=森瑜。鼻が宿なし犬のように永井龍)。敏感な好奇心を働かす。言葉に敏感な反応を示す。極端に言葉に敏感な人"大野遥。少女のように敏感な魂"有島。敏感に人となりを見て取る。アンテナが敏感に反応する。感情を敏感に読み取る。気持ちの動きを敏感に察する。靴音を敏感に聞きつける。気配を敏感に感じ取る。声の意地悪さを敏感に意識する。額に煙り出す片影のような渡しもさえも敏感に見逃さない=横光。敏感に嗅ぎ取る(体臭を。微妙な亀裂を)。口調の変化を敏感に嗅ぎとる=開高。敏感になる(嗅覚が。天気に。値段に。必要以上に。季節の移り変わりに=安岡。耳が兎約との耳のように=島尾。眼も耳も鼠始を待ち構える猫のように=阿部)。 **まひ【麻痺】**▼麻痺する(立て続けの衝撃に成屑が。不快さと恐怖感に全身が。思考力が完全に。心身がものうく。興奮が乗じて恐怖心が"横山)。麻痺した心に悪夢のような恐怖がふくれ上がる=光瀬。頭の芯に鈍い麻痺したような感覚が残る=五木。生き生きした表情を欠いた麻痺した顔・倉橋。右半身が麻痺して動かない。感覚が麻痺する(金に対する。時間の)。耳が麻痺するような強烈な音響が襲いかかる“三田。半身が(利かない。不自由になる)。半身不随で寝たきりになる。不随になる(下半身が。首から下が。全身が)。 **むかんかく【無感覚】**▼無感覚になる(手足が。痛みに。寒さに。刺激に)。深い眠りのような無感覚の中に落ち込んでいくなかにし。声なき声への不感症。 <562> # 座る・しゃがむ **あぐら【胡座】** ▼あぐらをかく(先入観が。運命の上に。横柄に。気楽に。畳の上に。他人の好意に。床に。でんと。どっかりと。カーベットの上に)。馴れあいと惰性と怠惰にあぐらをかいている世の夫婦の愛"瀬戸内。あぐらを(かいた鼻。かいて座る)。隠蔽の上に胡坐をかいて何事もなかったかのように暮らす高橋知。どっしりと男らしい縦丈な胡坐を組む=有局。結跏趺坐ぶやか。寂然と趺坐する。 **いす【椅子】** 粗末な木の椅子。椅子が(ぎいっときしむ。めりっとひしゃげる)。メリメリと音を立ててイスが壊れる=灰谷。椅子から(腰を上げる。身を起こす。半身を乗り出す。床に転げ落ちる)。思わず椅子から腰を浮かせる。尻を椅子から浮かす。椅子から立ち上がる(荒々しく、音を立てて。蹴るように。弾みをつけて。ゆっくりと。ゆらりと。よろよろと)。椅子から立ちあがる(とびあがるように"五木。飛び跳ねるみたいにして"阿刀田)。古い椅子と机を廃棄処分に。椅子に(尻を据える。深く腰かける。ふんぞり返る。浅く腰をかける。腰を落ち着ける。ちょこんと腰かける。深々と腰を下ろす。倒れるようにして座る"宮本部)。総理の椅子にかじりつく。脱力して椅子にもたれかかる。ぐらつく椅子に腰かけているように心もとない!高樹。ぐったり椅子に体を投げ出す。椅子に腰を下ろす(浅く。どかっと。深々と。股を広げて)。椅子に座る(かしこまって。ちょこんと。両手を揃えて)。椅子の(脚をがたがた言わせる。背もたれに体を預ける)。椅子の背に(頭をもたせる。体をあずける。もたれかかる)。椅子を(がたがた鳴らす。きしきし鳴らす。きしませて立ち上がる。くるりと回転させる。せる。蹴って立ち上がる。荒々しく鳴らして立ち上がる=小林久。持ち上げドアに叩きつける三好後)。金で代議士の椅子を買う。役員の椅子を配分する。椅子を棒に振る(重役の。大臣の)。社長の椅子にしがみつく。社長の椅子を継ぐ。安楽椅子に深々と身を沈める原田高橋和。スプリングの利いた大きな回転椅子味。回転椅子がきいきいと音を立てる。マシュマロのような丸椅子三浦朵。丸椅子に腰を下ろす。スツールに(腰かける。腰を下ろす。座る)。壁を背もたれがわりにする。座席の背もたれを倒す。 **いずまい【居住まい】** 居住まいが崩れる。居住まいを(つくろう。直す)。居住まいを正して(頭を下げる。座る。次の言葉を待つ・熊谷)。 **うずくまる【跨る】** ▼踊る(やり場のない怒りが思いの底に=小林久。置物のようにじっとして菊池)。▼うずくまる(冷たい空気が。竈跡まの前に。灌木吵んの陰に。木の根元に。茂みの背後に。広場が岡に。部屋の片隅に。夜の海が黒く。腹を押さえてその場に。息をひそめてひっそり。草むらに潜んで。声を殺してじっと。獣のようにぐったり“大江。仔猫のような頼りない姿で萩原爽。死んだ小鳥みたいに=大庭。すねた老人のように=畑。建物が雑木林の中に森閑と=福水。途方に暮れて闇のなかへ"梶井)。抱えてうずくまる(頭を。膝を)。▼つくばう(蝦薬がきが。地面に。庭先に)。地面に婚踞ぶんしている老い松の根。 **かみざ【上座】** 席の上座。上座に(腰を据える。座る。着く)。如才なく席を立ち上座をゆずる=真継。▼背にして座る(床の間を。床柱を)。 **きゃくせき【客席】** 客席が(埋まっていくのを待っていたかのように場内アナウンスが声をはりあげる"西木。拍手と喚声に呑み込まれる=内橋)。客席から(大きな拍手が鳴り響く。歓声と拍手が起きる)。さり気なく客席に目を転じる。ちらっと客席に目を流す井上ひ。客席の興奮が高まる。入りの薄い観客席。観客席から拍手が起こる。客席後方の壁に突き刺さるような鋭く透る掛けぶ=井上ひ。見物の席からどよめきの声があがる。桟敷を(買いきる。こしらえる)。 **くるまざ【車座】** 車座に座る。炭火鉢を囲んで車座になる集合。車座になって(酒を飲む。座り込む)。临になって座る。日なたに団居として語り合う。 **こしかける【腰掛ける】** ▼腰掛ける(おずおずと椅子に=安岡。ソファーにゆったりと泉俊)。▼腰かける(河原の石に。ベッドの縁に。ベンチに。窓際に。上がりかまちに。椅子にくったりと=丹羽。きちんとつましく正面を向いて"有島)。▼縁台に腰かける(毛艶もらを敷いた。浴衣を着て)。腰掛けに(腰を下ろす。尻を落ち着ける)。腰かけのつもりで手伝う向田。茶店の縁台に座る。店先に縁台を出す。床几礼から腰をあげる。床儿に腰をおろす。全員が着席する。起立と着席を繰り返す。 **こしをおろす【腰を下ろす】** ▼腰をおろす(椅子に。地面に。ソファーに。大儀そうに。路傍の石に。浅く。歩き疲れて。恐る恐る。がっくり。ぎこちなく。ぐったりと。しょんぼり。素早く。そそくさと。力なく。どしりと。どすんと。どっかと。どっかりと。のっそりと。深く。深々と。ふわりと。べたんと。べったりと。悠々と。ゆっくりと。ゆったり。遠慮がちに隅に。どっこいしょと。やっこらしょと)。道傍の木蔭に腰を下ろす="大岡。 **ざしき【座敷】** うすぼんやりと行灯んのともった座败。座敷がわっと賑やかになる。中庭を挟んで別の座敷が見える。座敷から庭を眺める。座敷に(上がる。顔を出す。座る。通す。布団を敷く。つかつかと入っていく。一人つくねんとする)。風が座敷に流れ込む。嫌な座敷にも笑顔で出なければならない=高橋克。座敷の緑先の庭地に白く雨脚がしぶく檀。視感いごしに隣の座敷の様子をうかがう。ずかずかと大股に座敷を出て行く。のっそり座敷を出る。奥の座敷で酒を飲む。奥の座敷に案内する。座敷じゅうを(歩きまわる。道はいまわる)。▼面した座厥(裏庭に。中庭に)。川に面した奥座疚。床の間に(置物を据える。掛け恤をかける)。和室を洋間にリフォームする。床の問付きの和室。和室の醸し出す落ち着いた雰囲気。 <563> **ざせき【座席】** 座席が(空く。埋まる。ふさがる)。座席に(体を沈める。釘付けになる。身を沈める)。座席の背もたれに体をあずける。シートに腰をおろす。体をシートに横たえる。シートに身を(埋める。沈める)。シートの背にもたれて目を閉じる。シートを(倒して眠る。わずかに倒す)。リアシートに深々と座る。リアシートを振り返る。後部座席にふんぞり返る。後部座席を覗のぞきこむ。 **しゃがむ** しゃがむ(爪先立ちに。肝の下に。墓の前に。便器に。道端に。疲れたようにその場に=福水。尻の先が地面に触れそうなほど深く三浦哲。叩かれた犬のように遠藤)。同じところに蝦築がぇのようにしゃがんでいる=木庄。しゃがみこむ(地面に。その場に。暖炉の前に。庭の片隅に。ぐったりと。膝を折って。へたへたと。石につまずいたみたいに道に木山。沈黙の輪の中に=畑)。▼かがまる(腰が。地面に。道端に)。木の陰にここむ。ここんで(歩く。縫い物をする)。▼かがむ(中腰に。道端に)。機敏にかがんで拾い上げる。かがみこむ(足元に。地面に。その場に。焚き火に。火鉢に。炉の前に)。 **しり【尻】** ▼尻(ぐっと後ろに張り出した見事な"小松が。お月さまのようなお『水肩。堂々と張った女の"日野)。頭隠して尻隠さず。尻がむず痒がゅいような居心地の悪さ=大原。艶やかで丸いお尻がベッドの上で若鮎劫詠のように何度もはねる=池田。紅を塗ったように尻が真っ赤な猿"子母沢。尻から後ろへ倒れる。尻に(紙おむつをあてる。火がついたみたいにそこらを走り回る=飯田。帆をかけて逃げ出す―熊合)。亭主を尻に敷く。女房の尻に敷かれっぱなし。尻の(青い青二才。軽いち。下にバスタオルを敷く。据わりがすこぶる悪い)。座布団を尻の下に敷く。ゴム砲まりのような尻の円み!水井術。見事に見透かされていたことに尻の座りが悪くなる=有川。尻を(あらわにする。軽く蹴る。清潔にする。丸出しにする。浮かせて身を乗り出す。きゅっと持ち上げる。小刻みに揺らす。力任せにつねり上げる。どっかり据える。叩いて激励する。ぼんぼんと軽く叩く。はたいて立ち上がる。支点に体を前後に揺らす三浦し。割りそうな危険状感今延)。重い尻を上げる。女の尻を鷲ゃしづかみにする。でっかい尻をでんと乗せる。トッブの座にどっかり尻を据える。ふっつり言葉の尻を切る。ぼんと尻を打つ。丸い尻を突き出す。道にべたりと尻をつく。いやになったらブイと尻を割る=中上。泣き叫ぶ手に余る子供を抱き上げるように尻を持ち上げる=小島。尻を動かす(もじもじと。もぞもぞと)。▼尻を落す(座布団に。地べたに)。たくましい尻をばーんとたたく=向田。▼お尻(形のよい。白く丸い)。お尻が(大きい。小さい。どてっと落ちている。腫れ上がるくらい叩く=貫井)。お尻に(蹴りを入れる。触る。火がついたように突進する=池田)。お尻のあたりに手をやって撫でまわす“石坂。お尻をくっと持ち上げる。尻っぺたがむずむずする。尻っぺたに噛みつく。尻っぺたをひっぱたく。事実上尻抜けの規定。肛門にいから奨ふんをする。肛門に座薬を挿入する。ヒップが(大きい。小さい)。ヒッブを小刻みにくねらせる。小さなヒップを恰好よく突きだす=半村。 **すわらせる【座らせる】** ▼座らせる(力ずくで席に。床の上に。腕を取って無理やり)。▼引き据える(縄つきを。上がり框跡まに。お白州に。その場に)。 **すわりこむ【座り込む】** ▼座り込む(地面にじかに。腰が砕けて。呆然として。身を固くして。通路に大勢の人が。ぐったりとソファーに。どすんと地べたに。べたりと地面に。ぐったり力を抜いて。膝を抱くように。床に尻餅をついて。崩れるように椅子に東野。貼りついたように上がり框がまに=山崎。腰が抜けてへたへたと=小松左)。根が生えたように冷たい板の間へ坐すゃりこむ芝木。坐り込む(呆にうけたように。緊張が解けてへたへたと畳の上に倒れるように人今日)。床に坐りこむ(崩れるように。放心したように小池)。放心状態で座り込んでいる。 **くずおれる** (床に。へなへなと。へたへたとその場に。枯れ木の上に生えていた茸にのみたいにぽろりと其処でこに大庭。朽木のように大地に=山田思)。足元に縋すがるようにくす折れる萩原爽。 **すわる【座る】** 座る(花壇の縁に。壁を背に。草の上に。隣のシートに。ぺたんと床に。壁にもたれて。少し離れて。机に向かって。半円になって。膝を抱えて。前を向いて。隣のテーブルに家族連れが。母の傍らに子供が。一面のレンゲの花の中に。思い思いの場所に。カウンターの隅に。観客席の最後列に。玄関の上がり框跡まに。食卓を挟んで正面に。隅のテーブルに。馬車の御者台に。斜交加すいの位置に。深々とソファーに。二人が背中合わせに。ぺたんと板の間に。べったりと畳に。闇と明かりの間に。足を投げ出して。板炊きにぺたっと。入り口に背を向けて。カウンターに隣り合って、顔に鷲鼻は乳がでんと。きっちり膝を揃えて。静かに裕じゅをさばいて。しゃんと胸を張って。大の男が向き合って。膝と膝とを接して。火鉢の前にどっかりと。布団の上にべたりと。寄り添うように。先生の前にいるというふうに窮屈そうに=伊藤路。体を沈めるように藤本。疲れきったようにべったり!!長崎。両膝をかためるようにして宮本百)。坐すカ <564> (針の筵ひしに。甘ったれるようなしなをして志賀。お互いの脇腹が触れ合うほど近くへ"大江。くたびれ込んだようにへたへたと=福永。腰の高いスツールへふわりと浮きあがるように=半村。ソファーにふんぞりかえるように坂口。畳にへばりつくように"水上。疲れきって崩れるように=住井)。座る場所を空ける。椅子に座る(だらしなく。とさっと。部長の)。▼崩して座る(脚を。膝を)。▼席に座る(空いた。管理官の。自分の)。▼ソファーに座る(乱暴に。倒れ込むように)。▼前に座る(一番。机の。テレビの。バソコンの。仏壇の)。向かい合って座る(食卓に。テーブルを挟んで)。日がな一日座ったまま。忙しそうに立ったり座ったりする。▼座っている(椅子に端然と。無念無想で。テーブルに客が。興がなさそうにそばに。ぽつんと居間に。身じろぎもせずに。空腹と疲れで茫然邨いと。所在なげにぽつんと。棺沦っの前にぼつねんと。一人つくねんと。陳列棚の置物のように道路に向かってじっと池田。根が生えたように=中。ばあちゃんはしわくちゃの饅頭味礼じみたいに茶の間にちんまりと三浦し。日ねもすぼんやり膝を抱えて=古井)。坐っている(石のように。全神経を耳に集めているかのようにじっと床の上に"外村。気抜けがしたようにぽつねんと八谷崎。力が抜けてしまったように辻井。縫いつけられたように=円地)。たった独り影法師のように坐り絞ける=阿刀田。市長の椅子に座り続ける。どっしりと落ち着いた座り方。一日じゅう座りきりで客の相手をする。座り心地が(いい。悪い)。座り心地のよさそうな椅子。座り続けが腰に響く。椅子に落ち着く。席を立とうとしない。五分と落ち着いて座っていられない。坐り胼胝だこが豆のように堅い"島崎。縁側に腰をかける。座して死を待つ。▼座す(枕頭もんに。墓前に)。寂然と相対して座する。だらしなく膝を崩す。石仏のように疲然と趺坐ぃだする"中。身を沈める(椅子に。ソファーに)。 **せいざ【正座】** 正座を崩さぬまま食事を終える三浦し。正座する(窮屈そうに。畳の上に。きちんと。華麗な紋付袴姿で。部屋の真ん中にぴたりと。高樹)。正座してかしこまる。床に正座して頭を下げる。前に正座する(遺影の。鏡の。座卓の)。膝を正して座る。▶端座する(座敷の片隅に。炉端に。黙然として部屋に。小机を前にして)。端座したまま瞑想にふける。まるで作り物のように端座し続ける『永井路。 **せき【席】** 席が(空く。埋まる。乱れる。隣り合わせになる)。自分の席から動かない。席に(連なる名士。つくなりすぐに言う。いたたまれぬまでに赤面する!菊池)。一礼してから席につく。所定の席に座る。席の温まる暇もないほど飛び廻る=山崎。席を(蹴って立ち上がる。一つずつ詰める)。誰も席を立たない。隣に席を作って招く。飛び上がるように席を立つ『永井荷。ほとんど席を暖めているだけの課長赤川。▼席を立つ(急いで。さっと。そっと。たまりかねて。ばらばらと。ぶいと。憤然と。礼を述べて)。席を外す(気を利かせて。茶を入れかえるふうにさりげなく三浦溅。目立たないようにそっと=石坂)。座が(陽気で和やか。一瞬静まり返る)。パーティの座が乱れる。沈み込んでいた座がにわかに盛り上がる"西木。座の空気が白けきって重い。座も割れさけんばかりの大喝采坂口。座を(蹴って立ち上がる。白けさすような気づまり水上)。弾かれたように座を立つ水井路。 **ソファー** ソファー(豪華な革張りの。尻が埋まるような柔らかい=小池)。ソファーから(腰を上げる。立ち上がる。身を起こす)。悠然とソファーで足を組む。ソファーに(浅く腰かける。腰を落す。深く腰かける。身を横たえる。倒れ込むように寝転ぶ。どかっと身を沈める。深く身を沈める)。どしんとソファーにひっくりかえる。どっかとソファーに身を投げる。ふんわりとソファーに腰を沈める。▼ソファーに腰を下ろす(深々と。ふんわりと)。▼ソファーに座る(どかっと。ゆったりと)。ソファーの背もたれに寄りかかる。腰が抜けたかのようにすとんとソファに座る=宮部。ソファに張りついたように坐すゃりつづける=勝目。偉そうにソファにふんぞり返る=貫井。今にもスプリングが飛び出してきそうな安っぽいソファ=貫井。 **たてひざ【立て膝】** 立て膝で酒を飲む。立て膝をつく。片膝立ちをする。片膝を立てて座る。 **とくとうせき【特等席】** 特等席に座る。特等席を用意する。最上位の椅子を占める=井上靖。最上の席に案内する。どっかりと地面へ腰を落す。上等な椅子にどっかりと体をうずめる。トッブの座にどっかりと尻を据える。椅子にどっかと(腰を下ろす。尻を据える)。どっかと包みを置く。 **ひざまずく【跪く】** ▼ひざまずく(足元に。地面に。その場に。床に。恭しく。恐る恐る。ナイトのように瀬戸内)。ひざまずいて(祈る。拝む)。▼跪拝(金への。権力への)。▼跪拝する(金に。神仏に)。列強の武力に拝跪いする"司馬。 **ベンチ** ベンチから(腰を上げる。立ち上がる)。駅のベンチで休む。傷心のあまりベンチでうなだれている=なかにし。ベンチに(腰を下ろす。座って休む。新聞を敷いて寝る)。ホームのベンチに腰かける。長椅子に(腰を下ろす。座る。寝そべる。横たわる)。長椅子を置き並べる。 **まっせき【末席】** 末席で小さくなっている=東野。末席に控える。選考委員の末席に連なる。末席をけがす。下座に(座る。就く)。末座に(連なる。控える)。 **よこずわり【横座り】** だらしなく足をずらし横坐北がりになる=中上。膝を横座りに崩す。ぺたんと横座りに座る。横座りになる(女のように。ぺたりと)。 <565> # 生息する **いたち【塾】** 鼬が石を叩くような声をして鳴く=内田瓦。鶏小舎に髄が入りこんだような騒ぎ=阿久。いたちの最後っ屁べ。イタチのように何度も振り返って確かめてから入る徳水。少女が絞ずるい胸のようについて来る=大江。 **いのしし【猪】** 猪が田畑を荒らす。恐れを知らぬ猪のようにどのホールもピンめがけて打つ=高橋三。手傷を負った猪のように一直線に荒れて行く者局。猪武者(向こう見ずな。無鉄砲な)。主人の波十郎が、野猪やらが荒れ狂うように家鳴りさせて家の中を走り回る藤沢。 **うさぎ【兎】** 兎が(草を食べるように歯の先で煎餅を小刻みに喲む"石坂。跳ねるように踊る=石坂)。うさきが戯れるように左右の手がまりの上にぴょんぴょんとおどる=中。清らかな白波に月光がきらめき月の中のうさぎが波用を走るかのように見える白洲。角波の頂が白いしぶきを飛ばして無数の兎が大平原を飛び上がっているよう。小林多。豆粒のような、おが屑くずを固めたような小さなウサギのふん"石森。の耳のように背後にそり上がった牡丹色のシクラメンの花びら=円地。耳が兎の耳のように敏感になる"島尾。ウサギは警戒心が強くてすばしっこい三浦し。沖では激怒した湖が波がしらに白いウサギを飛ばしながら走っている―開高。長い耳をひくひく動かす石坂。兎の眼のようなおじけづいた心配そうな眼小烏。兎の眼のように触るとこわれそうな眼"泉優。一重瞼む結ぶの兎のような目=佐多。ウサギのように両肘を小脇にあてて手首をちょんと前に出す壺井。ぴょんぴょんとウサギのように無邪気にはねる=椎名誠。叢以学を跳ね出す兎のように躍り上がる=海音寺。サラダをがつがつと兎のように喰う井上ひ。レタスを兎のようにかかえて食べる=大庭。原病なウサギみたいに震えている姉小池。兎みたいに前歯がびょこんと大きい宮本麺。ぐったりして野兎の眼のような充血して力ない眼"大江。野うさぎのように物かげに隠れようとする。室生。野兎のようにびょんと跳びあがって向きを変える=熊谷。 **お【尾】** 海老の尾が反り返る。彗星甘いの尾が空にかかる。尾を(びんと上げて歩く。巻いて逃げ出す)。感情の尾を断ち切る。肌たこが尾をはためかせる。犬が尾をぴんぴん振る=原田康。お玉杓子が尾をひらひらと動かしながら泳いでいる=長塚。鵞鳥が汚のように尾をはげしく振る=椎名域。轟々こうたる瀬のたぎりが白蛇の尾を引いて川下の圏へ消える=梶井。焼夷弾い粒が雨のように火の尾を曳いて降りそそぐ=阿川弘。ちぎれんばかり尾を振って飛びかかる犬さながらの姿"里見。電灯が尾を曳ぃくようにすつと消える人米。流れ星が尾を曳いて消える=中島湾。尾を引く(事件が意外な。白い光が長い)。甘々しく余韻の尾をひいた音"藤枝。犬が得意そうに尾を振る。木斛いいが風を孕はらんで枝先を魚の尾のように動かす高樹。 **おおかみ【狼】** 子羊の群れに飢えた狼がまぎれこむような危険な状況飯田。狼の遠吠えのような声が喉の奥からひっきりなしにしぼり出される=小池。赤頭巾の狼の声のような嗄礼《れた声萩原菊。尾を長くひく狼の遠吠え"真継。飢えた狼よりも恐ろしい表情”飯田。狼のような人。狼のように(がつがつ喰う。激しい気性の女梅本)。飢え疲れた旅人の後をつける曠野にうの狼のように執念深く追ってくる=中島敦。毛を逆立てた狼のようにけだものじみた少年灰谷。羊の群れにはまりこんだ狼のように目うつりがする安部。野盗たちが狼のように襲いかかる!舟橋。 **かい【貝】** 貝が(舌を縮める。ふたを閉じる)。岩肌に貝が張り付く。干した貝が水にほとびる。貝の身のように中からそっと覗のぞいているむっくりとした限の玉谷崎。帯を貝の口に結ぶ。無人のように静まり返ったコンクリートの箱の中に各戸のドアが貝の蓋のように閉じられている。森村。口を貝のごとく閉ざして何も言わない=胡桃沢。貝のような形のいい顎がふくふくと動く=中。ひっそりとした貝のような生活"三田。具のように(明るい色をしている臉ぼぶ大佛。うずくまり終日同じ姿勢で動かない=加賀)。唇を貝のように固く結ぶ獅子。旅行用トランクが貝のようにバックリと口をあけている=阿刀田。蜆貝肌にぃのような目の縁に涙をためる落合。オバールを嵌めこんだような蝶貝宮本瓦。浅蜊さがものに触れたように男がふっと口を閉じる内田瓦・頬が桜貝のように淋しく淡く紅をさす感。泥の中の田螺にじみたいな眼"大庭。鲍もの身のように体じゅうを引き締めて固くなる谷崎。あわび貝の形をした大きな耳"野間。 **かき【牡蠣】** 草履みたいに大きいカキ=加賀。カキの貝かき殻のように段々のついたたるんだ目蓋様=小林多。心の底に行くまでに牡蠣の殻のような醜い殻をいくつもつけている男梅本。地面に牡蠣のようにへばりつく島尾。集落が海べりに牡蠣のようにしがみついている=遠藤。アメリカ人は同国人の前じゃ牡蠣みたいな殻をかぶるだけさ。大庭。生牡蠣の肉を見るようなすべてが遂青く薄白い半透明さの室内がひっそりと峥まり返る!永井龍。 **カンガルー** のように(腹を膨らす。手をカンガルー胸もとに垂れる=阿刀田)。 **きつね【狐】** 狐がお姫様に化ける谷崎。憑っいていた狐が落ちたように自分のしてきたことが阿呆ぁほらしくなる=大佛。狐に(つかれたようにとめどもなくおしゃべりがはじまる太宰。憑かれたように物語を書き続ける=阿刀田。つままれたようにボカンとする谷崎。似て尖とがった口と細い目=日野)。眼が釣り上がって狐に似た顔に直行。夢ではないか狐につままれたのではないかと、われと我が身の嬉しさを疑う!永井荷。狐に化かされたようなわけのわからない話平岩。首に狐の襟巻を巻く。吊りあがった両の目が血走って玩具屋で買ってきた狐のお面のような顔に見える=井伏。 <566> 蛇とキツネをミックスしたように陰険なところがある母娘!志茂田。陰気な狐を思い出させる瘦身藤本。きつい眼をした狐のような女阿部。小賢がさしいキツネのような顔「小池。顔の中央が突き出た狐のような顔外村。狐のように細い鼻筋の小さな顔・城山。白い小石の道を狐のように飛んで帰る=川端。穽ゃなにかかった狐のように牙ばかりむき出してまだ未練らしく喘ぎながら身悶炊もえする芥川。みたいに抜け目がない=田中。口がとがった狐面。顔が白狐面を連想させる=城山。狐狸こりの類いがでるほど辺部ひんなところ=新田。一筋縄ではゆかない狐狸の類=山岡。狐狸のような狡智に、司馬。狐狸妖怪にたぶらかされる。 **くま【熊】** 熊(黒光りする小山が理不尽にもむくむくと動いているかのような=飯田。狭い檻ぉりのなかで物俗礼のげにだが物悲しい執拗さで堂々廻りしている=高見題)。奥山に熊が人立ちして針を噴くような雪"泉鏡。身体が熊が立ち上がったほどに大きく見える=高橋三。熊のぬいぐるみを持ってくる。不器用な熊の仔のように足をばたばたやる"大江。巻き狩りで熊を追う。熊のようながむしゃらな身の動かし方で厳やぶをくぐる=新田。大きな熊のような掌~650 藤本。髪ひげぼうぼうの熊のような山男中島敦。熊のように(おそろしいほど毛深い 永井荷。凄すごい勢いで飛びつく=梅本)。男が熊のようにのっそりと立ち去る=大庭。檻の中の熊のように往ったり来たりする石坂。悔しくても傷ついた熊のように唸りなるほかはない"狐て獅子。部屋の中をぐるぐる熊のように歩き廻る=井上ひ。熊みたいな図体をしている熊谷。着物を何枚も重ねて着て熊みたいにもこもこ膨れる=高井。 **けもの【獣】** 傷ついた小さな獣が命がけで反撃しているかのような姿内館。獣のほえるようなわめき声"野問。得体の知れない獣の叫び!大江。雲の影が斜面の上に落ちるとその部分だけ獣の肌のようにくすんだ滑らかさに変わる=中村真。ストーブが獣のうなり声みたいにウーウーと鳴る=石森。沿いでゆく眺ぅの音が獣の子の乳をもとめる声のよう~中。獣を追って山に入る。追いつめられた獣のように自分の傷痕を沓なめながら走る福永。できるだけ身をちちめ小さい獣たちのように暗い光の下で黙りこくる大江。獣のような(いびきをかく。おめきをあげて突進する"半村。身のこなしで外へ走り出る古井)。獲物を見つけた獣のような光を放つ目=梅本。追いつめられた獣のような哀れっぽい表情真継。陥穽切以にかかった獣のような焦燥からしさを感じる=有島。トラックが獣のような底深い唸ったりをあげて出発を待っている"五木。病気の獣のような目清水俊。闇の中で獣のような限が狂暴に光る=黒岩。獣のように(跫音しを忍ばせながら離れていく=遠藤。聞き耳を立ててじっと見張っている=野問。猛々しく身構える=伊藤整。むさぼり食べる!遠藤)。脂汗を流しながら獣のように吠える=小川。痛みを耐える獣のように叩ぅめき声を出す=中上。射られた獣のように倒れる=横光。崩れた土砂が生まれたての獣のように濡れた肌を光らせる古井。若者の体が獣のようにしなやか丸谷。傷ついた獣のように走る=光瀬。生命の奥に深くじっとおとなしく獣のようにひそんでいる苦しみ=野間。血を味わった獣のように愛を味わう。有島。手をつかねたまま獣のように出てゆく後ろ姿人米。捕らえられたばかりの獣のように憎悪の牙を向ける=真継。眠りと目覚めとのあいだで獣のように怯ぉびえる=丸谷。墓がうずくまった獣のようにひっそりと静まりかえる渡辺。古びた寮の建物が夜の色に包まれて暗く年取った大きな獣のように陰気臭い佐藤愛。膨大な危機が獣のように暗い頭をすりよせてくる!大江。眼が森に住む獣のように底から燃え上がってくる精力をたたえる=大江。罠もなにかかった獣のように身もだえする=武田発。大きくて臆病な獣みたいに潤んだ目でおそるおそる近づいてくる"古井。感觉のどこかが獣みたいに冴えてくる吉本。背を獣みたいにもっさりまるめる=古井。獣のように道はいつくばってよたよたする=阿川弘。狂ったけだものみたいな男勝目。巨獣の吼えることくこうこうと哮たけって吹きあたる風の音=授与。獣じみた叫び声をあげる。呼吸が獣じみてくる。血走った目が獣めいた光を放つ=山本周。獣性を帯びた食欲。残忍な感性を発揮する。獣的な唸り声をあげる。性行為に没入すると肉食獣のよようにふるまう女小林食。四つ足で歩く。 **ゴリラ** 長い両腕をゴリラのようにひろげる=安岡。胸をゴリラのようにどんどんと叩く=開高。 **さい【犀】** 頭に鈍重な犀の大脳でも詰まっているようで思考の筋道がぼんやりしている倉橋。廊下にいる屋みたいに人目につく三輪。 **さる【猿】** 紅を塗ったように尻が真っ赤な猿"子母沢。人間から猿に転落したような格下げ後藤。ラッキョウの皮を剣もいていく猿の気分荻野。鐘を控木しで敲たたくべき権能がないのに人並みに鳴らしてみる猿の如き己れを深く嫌忌する夏目。猿のような(顔をした嬰児にい。口つきでりんごをかじる=住井。痩せ方をしている老人"林美)。背の低い痩せた白髪頭の猿のような老婆井川。小さな狼のような年寄り。遠藤。ひひという狼のような笑い=大庭。痩せてひねこびた猿のような少年・中島救。 <567> 猿のように(赤い顔をする。歯を測き出す)。顔を猿のようにくしゃくしゃにして泣き声で叫ぶ志茂田。木から落ちた猿のようにすごすごと家へ帰る=中。するすると獄のように梯子ぶしをのぼって行く=小岛。若い男が手錠で巡査に猿のように引っ張られていく=安岡。毛が三本足りぬ猿みたいな男=柴田錬。猿みたいに毛深い=石川。猩々しょりのように溶ひげを生やす=長与。猿ぼしのように(木を駆け登る。走り抜ける。身をかがめる。相手の船に乗り移る=平岩。素早く飛び上がる=福永。するすると石垣を登る=祁永。船の上に飛び乗る“有島。別の木へ飛び移る=柴田錬)。あっという間に屋根へ飛び上がり屋根伝いに逃げたときの速さは袋のよう池波。巨樹へ音もなく猿のようにかけのぼる柴田剣。船の中に猿のように飛び込んで行く。有局。 **さんご【珊瑚】** 珊瑚が白化する。赤い珊瑚の髪飾り。葉を落とした雑木林が海底のサンゴのように湿った枝を広げる=村上春。珊瑚礁がぐるりと島を取り巻く"池澤。珊瑚礁を越えて外洋に出る。真っ白な花珊瑚の暦くずがサラサラと軽く崩れる=中局質。じゃれている小動物のように見える三鳥。 **しか【鹿】** シカが波のように走る=開高。鹿が驚いて一度に竿をぉのように立ちあがる=宮沢。水晶の笛のような鹿の声"宮沢。細い枝がしなやかな鹿の脚のように伸びる=長野。鹿のようにはしっこい目つき=大佛。愛らしい小鹿の眼みたいに聴だっが長い=大庭。ものおじをする仔鹿のような表情=山本周。小鹿のような体のお嬢さん=川端。若い雌鹿のような野性の塊石坂。牝鹿じのようにしなやかな少女の身体菊池。 **しょうどうぶつ【小動物】** 排泄性でする小動物のような屈辱的な姿勢大江。小動物のように穴から這い出す“司馬。怯ぉびえた小動物のように裏門の中へ消える森。怯えて震える小動物のように狭苦しい場所に押し込められる=小川。乳房が打ちかかる平手に敏捷しな小動物のように耳を澄ます藤本。女の下半身が冬ごもりの半ば眠っている小動物のように緩慢に動く三島。外を吹き荒れる突風に首を縮こめ決して巣から顔を出さない穴熊みたいに注意深く日常をやりすごす鷺沢。ビーバーみたいに前歯を出す=岡田。 **す【菓】** 雛鳥が巣から落ちる。鳥が巣に帰る。蜂が巣を作る。蜘蛛くもが巣を張る。※情が鳥の去ったあとの巣のように消えやらず残る=高見順。髪が鳥の巣のように絡まる=山田詠。金髪を鳥の巣のように盛り上がらせた大女西木。島の巣みたいな高いところに逃げこんで世間をこわごわのぞく=日野。小動物が巣穴から外界を窺いがう伊坂。巣穴に向かうアリの行列。マイホームの巣作りに熱中する。ささやかな巣作りの楽しさを満喫する=曽野。巣箱を木に取り付ける。烏からがねぐらに急ぐ。鳥がねぐらに帰る。疲れた鳥が婚幼くを求めるようにてくてくと歩いて町へ入って行く=田山。 **せいそく【生息】** 生息に好適な場所。▼生息する(海に。温帯に。岩礁に。草原に。森に)。生存競争にうちかって子孫を残す=畑。 **ぞう【象】** 笑顔になると象か鯨のようにかわゆい目"加賀。象の足みたいなズボン下=瀬戸内。距跡がが象の足のようにむくみ上がる梱。象は鼻が長い。モンブランの巨山がまぶしい陽の光にさらされながら白い巨象のようにそびえる=遠藤。象のごとくのったりとした大国武田奈。象のような(岩が突っ立つ。小さい目)。サーカスのゾウのような悲しげな目宮部。大きな象のような形の丘。宮沢。柔和な象のような目=加賀。神経が象のように太い=貫井。電話が死を予感した象のように何度か狂おしく鳴き叫ぶ=村上卷。眼が象のように細くてやさしい島尾。象みたいな男が子供みたいに両手で胸を押さえる=加賀。 **たぬき【狸】** とんだ狸親父。狐と狸の化かし合い。取らぬ狸の皮算用。腹の中で、また儲もうけたるゼェと取らぬ狸の皮算用をする"山崎。丸い限が黒い隈くまの中で狸の眼を想わせる"大庭。じじむさいタヌキのようなおっさん開高。狸のような丸顔、藤本。目の周囲を狸のように思く塗る高橋三。背中がカチカチ山の狸さながらに火ぶくれを起こす平有。 **ちくしょう【畜生】** 畜生のあさましさ。犬畜生より劣る。畜生道に落ちる。鬼畜のような残忍さ。骨肉相食はいむ鬼畜のような習わし佐山。 **どうぶつ【動物】** 人間とは誤りを犯しやすい動物-柳田。動物の吼える声のような野太い叫び=本庄。植え込みが臆病な動物の群れのようにざわめく=宮部。〈ゃらの中にもぐって動物の仔のように睡ゃもる!大江。動物はすべての栄養を植物に仰いでいる―池澤。不思議な動物を見るようにしげしげと眺める"小局。襲われた動物のような悲鳴をあげて体を丸める=高樹。助物のように(ゴミ捨て場を漁る=村上龍。光る眼で見つめる遠藤)。檻ぉぅの中の動物のように行きつ戻りつする芝木。小型トラックが動物のようにぬっと姿を見せる=泉係。快く疲れ切って動物のように眠る=日野。草食動物のような穏やかな顔「落合。動物的なむき出しの卑しさ=阿川弘。生への動物的な烈はげしい衝動萩原町。直感が動物的に鋭い。丸太ん棒みたいな体のアザラシ=本多俊。イソギンチャクが柔らかな触手を潮の流れの中でゆらめかせている=景山。羚羊は桃のようにすらりとした裸身“隆。腰が巨大なせいうちのくびれた臀部ぶんのように盛り上がる大庭。酒擦が転げ落ちるように回転しながら逃げていくトド"本多勝。 **とら【虎】** 飢えた虎が獲物を求めるように戦う井上「虎の(威を借る高慢な物言い『海堂。尾を踏み毒蛇の口を脱する白洲)。一度生き血の味をしめた虎の子のような渴欲"有島。 <568> 帝都の中央に放たれた虎のように危険!徳永。無表情な顔を豹変心心;させ牙をむいた虎のように歯を出して薄く笑う泉優。林中の虎のようにじっと見据える久米。 **ねずみ【鼠】** ロンドンの免税店に積み上げられたカシミヤのセーターのような色をした鼠「村上春。鼠が(圧盛な繁殖を繰り返す。ちゅうちゅうと鳴く。天井を駆け回る。併を引くように徐々に転がしたり引きずったりして運ぶ三島)。敵を袋の鼠にする。磯を黒々と澄うほどの鼠の大群吉村。多年の怨敵が変中のうちの鼠のごとく目前に置かれる=菊池。逃げまどう鼠の群れみたいに思考があらぬかたに散乱する奥泉。屋根裏の廊下を鼠の如くチョコチョコと往ったり来たりする、谷崎。梁はりに巣食った鼠も落ちそうな騒ぎ"芥川。鼠をもてあそぶ猫。蛇が息を飲み込む。手中にいった鼠をもてあそぶ猫の眼で見る=黒岩。とぶ鼠のようにおずおずとした眼付き=徳永。ネズミのようなあたりを窺らがう目をして話す=椎名誠。鼠のようなすばやさで船内へもぐり込む=柴田魄。追いつめられた鼠のような顔をする=高橋治。暗く貧相な追いつめられた鼠のような顔つき森環。来る日も来る日もびくびくしながら隣近所へ目を配って鼠のような一生を送る三島。吹雪きこんだものが砂と一緒に鼠のようなかたまりになる=室生。鼠のように(小さな眼。前歯を動かす。せわしなく走り回る=阿部。何かあればいつでも逃げ出せるような姿遠藤)。逃げ場をさがすネズミのように地下室の中をウロウロする=北。ネズミのようにちょこまか走りまわっている軽自動車"五木。枝豆を一つずつ摘んで鼠のように端から悩かじる高樹。車のライトが鼠のように桟橋から失せる"伊集院。野鼠のような小さい眼柴田湖。野鼠のように(怯おびえている女の子高橋三。山の中に隠れる=遠藤)。窮鼠、猫を噛む反逆!高橋和。窮鼠が猫に飛びかかるように身がまえる"黒岩。独楽鼠だちが回し車を回す。こまねずみのように身軽く歩き回る=壶井。二つの足先が追い合うこまねずみのようにくるめく=中。コマネズミのようにくるくる身体を動かす"椎名観。二十日鼠や砂がひがな一日小さな車を廻すように一つの言葉が頭の中で音を立てて廻る=向田。頭の中がハツカネズミの回転車のようにせわしなく動く高街。朝から晩まで二十日鼠のようにからだを動かしている=島尾。考えが頭の中で二十日鼠のようにはげしく働く有局。針鼠のように(硬い髪。夥がしい矢が全身に突き立つ=隆)。心がハリネズミのように警戒の棘とげを張る=阿刀田。 **はまぐり【蛤】** 蛤がばくっぱくっと口を開ける=田辺。影弁慶とか、そと蛤のうち蜆貝肌屹んとか言われる気の弱さ=里見。蛤みたいに口を閉めて何も言わない!田島。 **ひょう【豹】** 約が風の中を駆け抜けるように走る=内田瓦普段は子羊よりも大人しい男が約に変身する=荻野。木洩にもれ日が地肌を約の皮のように美しくする"堀。約を思わせる身のこなしで客席から舞台へ飛び上がる森同。女豹のようなスピードで走る=大蔵。豹のように(挑戦的なろ。なめらかに身を起こす有鳥)。 **むささび【砥鼠】** 頭上からむささびのように襲撃する=山田风。飛鼠のように身軽に城を脱けて出る森吗。ゆらぎ遠のく蠟燭らの灯の後ろからむささびのごとく躍り出す池波。 **もうじゅう【猛獣】** 檻ぉりに入れられた猛獣の如く部屋の中をウロウロする谷崎。猛獣を生け捕りにする。猛獣のような(女たちの声。気勢に圧ぉされてあっけに取られる谷崎)。猛獣のように唸うぇり喚わめく数十の輪転機徳永。家の中を猛獣のように歩き廻る=灭。波の山が獲物に襲いかかる猛獣のように思いきり背伸びをする“有局。 **もぐら【土竜】** もぐらが天日にさらされたように体が衰弱する=石坂。土竜の掘った塚が老人の皮膚に盛り上がる血管のように電光形を描いて地面に盛り上がっている=岸田。モグラ叩きのモグラみたいに顔が出たり引っこんだりする"小林官。 **やじゅう【野獣】** 野獣に似た本能。野獣の(本性をあらわす。嗅覚をもって追い迫ってくる=池波)。狂った野獣のような形相=黒岩。野獣のように暗く光る目。 **ライオン** 百獣の王ライオン。赤茶けて色褪ぶっせたてがみを使い古し擦り減った歯ブラシのように短く立てて歩いている動物。吉行。鉄のライオンのような機関車"尾辻。檻ぉ♪の中のライオンのように家のなかでむかっ腹をたてる=小松太。傷ついた孤独な獅子-武者小路。獅子の咆哮汨らのような砲声がとどろく=津本。頑強な額の上に獅子の窓のような白髪が乱れ逆立っている三局。斃たぁれた親を喰い尽くして力を貯える獅子の子のように力強く勇ましく人生に乗り出す"有局。獅子のように子供を崖からつきおとす「高橋知。兎きを倒す獅子のように情け容赦なく全力でおそいかかる=飯田。打ちひしがれた獅子のように腹道う横光。 **らくだ【駱駝】** 駱駝に乗って広い沙漠を行くような頼りない空虚な思い=林美。ラクダの涎はだのようにチョロチョロと水が流れるだけのシャワー=高橋三。駱駝のように壁に凭もたれて眠りこける!遠藤。 **りす【栗鼠】** 目が生まれたてのリスの子供のように潤に満ちた生命感"大江。おびえた小リスのように駆ける灰谷。美人というよりは仔犬か栗鼠のような感じの娘原田康。リスのように危険を感じさせない男=清水俊。子どもがすばしこいリスのように走りまわる"飯田。栗鼠のように小首をかしげる"司馬。栗鼠みたいに跳ねまわる女の子=中。 <569> # 背負う・受け持つ **いかりがた【怒り肩】** 衣紋掛似沁けを連想させるいかり肩蔭田。怒り肩に腕を組む。怒り肩みたいなブラウスが流行はゃる=山口。怒り気味の肩。広い肩が寺院の屋根のように怒る=三島。 **うけもつ【受け持つ】** ▼受け持つ(仕事を。役割を。それぞれの役柄を)。受け持ちの(患者。区域。生徒)。仕事の受け持ちを決める。所轄の(警察署、裁判所。税務署)。▼所管する(消防を。法令を)。省庁が所管する機関。役を完璧に演じる。おじさんの役を演ゃる。地で役をこなす。若妻の役をしんみりと演じる。▼あたる(警護の任に。交渉に。事後処理に。捜査に。消防車が消火に。付近一帯の警戒に。先生たちが一丸となって生徒指導に=飯田)。全員が規律正しく一つのことに当たる=浅川。▼解明にあたる(真相の。全力をあげて事件の=小林久)。担任の(教師。生徒)。担任する(学級を。クラスを。講義を)。初めて担任したクラスの生徒。 **おぶう【負ぶう】** ▼負ぶう(赤ん坊を。子供を。乳飲み子を。妻を。孫を。娘を。背に)。背中に負ぶさる。おぶさるように肩につかまる=福永。▼おんぶする(赤ん坊を。弟を。子供を)。 **かた【肩】** ▼肩(肉の薄い。若者の逞捻くしい。がっしりした骨太の。たおやかな女の。女の弾力ある丸い藤枝。しらじらとすべらかな肉づきのよい=石川)。肩が(激しく波打つ。丸みを帯びる。雨でびっしょり濡れる。緊張でわななく。一回り逞しくなる。剣もき出しになる。左右に揺れる。ゆさゆさと揺れる。海岸線のようになだらかに左右へ下る三島)。瘧ゆこが取れたように一時に肩が軽くなる谷崎、リズムに合わせて肩が動く=船戸。可笑ぉかしくていつまでもくすくすく笑うと肩が揺れる=原田宗。肩から(哀愁がにじみ出てくる。さげたショルダーバッグ)。ボシェットを肩から斜めがけにする=江國。肩で(あえぎながら言う。ドアを押し開ける。息をしながらあえぎあえぎ歩く=掘。風を切って歩く=畑村。つっかかるように向かって行く=小林多)。長い髪が肩で踊る。肩と肩とが触れ合う。肩に(痛みが走る。力が入る。蝶がとまる。疲労感がのしかかる。袋をしょいあげる)。腕を肩に回す。髪を解いて肩に散らす。組み打ちでも始めるように肩にどんと飛びつく"石森。自分に迫る運命を男らしく肩に担い上げる=有島。バラソルを子供の鉄砲のように軽く肩に担ぐ=川端。▼肩にかかる(雨が。重みが。生活が。雪が)。▼肩にかける(胞分はを。コートを。ショールを。バスタオルを)。▼肩に羽織る(コートを。バスタオルを。カーディガンを)。肩の(重荷がおりる。骨が折れる。雪を払い落とす。ラインが崩れる。盛り上がったいかつい身体つき藤沢)。髪を肩の上にふわりと広げる。ふっと肩の力を抜く。衣紋竹なもんを背負っているように肩の張ったコート=獅子。張りのないゆるい女のような肩の線"野間。円々と膨らんだ丘のような肩の肉谷崎。肩まで水に浸かる。髪を肩まで伸ばす。肩を(どんと突く。揺すって笑う。大きく波打たせて泣く。並べるようにして歩道を歩く"小林久)。球が肩をかすめる。家々が互いに肩を寄せ合う住宅地内海。ゴム毬ま♪を押し潰したようなぐすっという音とともに肩を波打たせる=里見。峠が突き挙げた拳固ぶんのように肩を張って構えている=伊集院。年老いた夫婦のように肩を寄せ合って過ごす村上春。両手を後ろに組んでいやいやをするように肩を振る三浦朵。▼肩を抱く(親しげに。荒々しく。やさしく。いとおしそうに。花火に事寄せて人に気づかれぬように曽野)。▼肩を叩く(親しげに。軽く。とんとん。馴れ馴れしく。ほんと)。肩が凝る。肩が板のように凝る!永井荷。固くなっていた肩の凝りがすーっととけたような言い方=長崎。肩のこらない気楽な読み物。肩の凝らないバーティー。肩が震える。鋭敏な馬の皮膚のようにだちだちと震える肩!有島。肩が(鳴咽まに震える。細かく震える。かすかに震える。寒そうに震える。激しい怒りに頭ふるえる=川端)。板のように張った肩がぶるぶる慄ふるえる=円地。よっぽど驚いたように肩をぶるっと震わせる=佐野。肩を震わせて(泣く。笑う)。▼肩を震わせる(嗚咽に。小刻みに。寒そうに。激しく。ひくひく)。肩を震わせてのクスクス笑いが蔓延する"筒井。▼肩で息をする(ぜいぜいと。はあはあと。大仕事でもしたようにふうふうと灰谷)。肩で(荒い息をする。犬きく息をする。苦しげに息をする。切なそうに息をする。せわしく息をする。刻むように息をする=川端)。▼肩に食い込む(紐いもが。ローブが)。指先が肩の肉に食いこんで痛いくらいの摑っかまり方=岡本。ずしっと肩に食いこむような生理的な圧迫感"瀬戸内。▼肩をすくめる(寒そうに。力なく。恥ずかしそうに。いかにも疲れたという風に=泉優。悪戯れ汰を見つけられた子どものように落合)。照れたように肩を竦すくめてくすっと笑う連城。肩をすくめて笑う。身も世もないように肩をすくめてうつむいている藤沢。肩の骨も砕けるかと思うほど抱きすくめられる=梅本。▼肩をすぼめる(寒そうに。しょんぼりと。呆ぁされたというふうに庄野。相手をからかうように遠藤。穴にでも入りたそうに項垂れて"加賀)。肩をすぼめてうつむく。同意を促すように肩をすぼめてみせる=辻仁。▼肩をそびやかす(反抗的に。決然と。ぬっと)。自分自身をもぎ取るように決然と肩をそびやかして歩き出す有局。肩をそびやかすような軒昂ぶんとした気力“松本。うるさいほど肩の数を傘にぃやかしている高層建築岡本。肩をつかむ(乱暴に。荒々しく。むずと)。 <570> **かたごし【肩越し】** 肩越しに(声をかける。後ろを振り返る)。後ろから肩越しにのぞき込む。前の人の肩越しに爪先立つようにして見る=ねじめ。肩越しにそっと振り返る。 **かたさき【肩先】** 痩せて尖った肩先。肩先が(細かく震える。小刻みに震える。ぴくりと震える)。剣が肩先に食い込む。酔いを肩先にあらわす。肩先をぼんと叩く。矢が肩先をかする。肩口に(一刀を見舞う。浅い傷を受ける)。肩口を(つかむ。突く)。 **かたはば【肩幅】** 足を肩幅に開く。足を肩幅に広げて立つ。肩幅の広いがっちりした体格。厳訟ものごとく肩幅の広い武士火坂。肩幅を心持ち狭める。 **かつぐ【担ぐ】** ▼担ぐ(駕籠かごの先棒を。奥こしの膝泣がを。スキーの板を。多少は縁起を。天秤棒にを。荷物を肩に。柳行李ご沁区を背に。荷物を振り分けに。いかがわしい催しの片棒を篠田。腕の下に肩を入れて藤沢)。銃のように鋭くゃをかつぐ=大江。肩に担ぐ(竿さぁを。銃を)。肩に担いで運ぶ。荷物を肩に振り分ける。▼引っ担ぐ(枝を。袂にもの先を。箱を)。かく(駕籠を。奥を)。▼肩車する(子どもを。息子を)。天秤棒を(肩に当てる。担う)。振り分けの荷物を肩にかける。 **せ【背】** 真っ直ぐな板のような背=野問。背が(ぐんと伸びる。冷たく汗ばむ。弓なりに反る。しゃきっと伸びている。曲がるほどの荷物を背負う。本庄)。背から水を浴びたように慄然とする=山本周。馬の背からひらりと飛び下りる。海老えびのように背と腰を内側に折る藤本。背に(戦慄が走る。汗がべっとりとにじみ出る。冷や汗が流れる。腹は代えられない政治的取引"網淵)。壁を背に並ぶ。子を背に負う。椅子の背に体をあずける。気配を背に感じる。声を背に戸外へ去る。城門を背に立つ。ソファーの背に頭をもたせかける。長い黒髪を背に滑らす。日の光が背に熱い。峰を背に南に用いた谷あい。揶揄ゃの声を背に浴びる。悪魔の背に乗っているようにいつ振り落とされるかわからない=椎名戯。▼背に受ける(追い風を。光を。夕日を)。背の(曲がった貧弱な老人。少し丸まっただちょうみたいな歩き方合村。すらりとした瘦削忙な姿=田山。届かないような天袋篠田)。ばさりと背の荷をおろす。背を(軽く叩く。一心にさすりつづける。寒そうにすぼめる。しゃんと立てる。大胆にカットしたドレス。波打たせて咳き込む。こづかれるように押される=山崎。焼くような借金=梶井)。汗が背を伝う。かすかな戦慄が背を走る。壁に背をもたせる。ぐいっと背をそらす。叫びが背を突き刺す。鋭い声に背を撃たれる。ドアに背を預ける。母と子が親子の鏡餅のような丸い背を並べて出ていく連城。船が凄封じい勢いで波の背を滑り下る=有房。背を伸ばす(ぐいと高く。姿勢よく。しゃんと。びんと)。背を曲げる(丸く。すっぽんのように林美)。背を丸める(寒そうに。雨に濡れてしょげたように=佐多)。背を獣みたいにもっさりまるめる古井。▼背を向ける(怒ったように。距たびを返して。くるりと)。人々に背を向けて歩き出す。すねたように背を向けて寝る三浦綫。入り口に背を向けて座る。▼背をもたせかける(シートに。大樹の幹に)。女の背のような優美な丘の側面"大岡。▼背が高い(飛び抜けて。人並み外れて。ひょろっと)。背が高くがっしりした体つき。背の高い堂々たる男。すらりと背の高い女性。背の低い(木々の茂み。南天の木。貧弱な体つき。磯きなれ松が疎まばらに並ぶ=石坂)。小学生のように背の低い男!安岡。低い(身長が。背丈が。身の丈が)。小柄な脩好。 **せおいこむ【背負い込む】** ▼背負い込む(居候を。多額の借金を。荷物を。厄介事を。禍切峠の神を。悪い娘を。容易ならない重荷を。一人で何もかも。とんでもない者を=山本周)。▼しょいこむ(重い疲労を。肩に重荷を。困難な問題を。とんだ者を。変なものを。疫病神を。よけいな苦労を)。 **せおう【背負う】** ▼背負う(一家の経済を。窮屈な生涯を。三方に丘を。時代の傷を。背中に海を。千鈞の重みを。多額の借財を。不幸な境遇を。世の中の柵がを。重そうなリュックを。精神的な重荷を。ねんねこで赤ん坊を。ハンディキャップを。否定的な条件を。不幸な巡り合わせを。野菜を入れた籠を。山のような借金を。世の中の歪がみを一身に。薬箱を風呂敷に包んで。一生償っても償いきれない罪を"畑村。肩に子供の泣き声を=連城。ろばみたいに沢山の荷物を=三輪。己れの罪の重量を肩に「高橋和)。▼過去を背負う(複雑な。不幸な。後ろめたい。重い。暗い)。背後に山を背負った家。怪我人を背負って運ぶ。宿命を背負って生きる。過去の亡霊を背負って彷徨する=船山。借金を背負って夜逃げする=藤田。荷箱を背負って商いに出る=船山。背負って立つ(明日の日本を。家を。会社を。幸福を。不幸を)。背負わされる(とんだ重荷を。否応なしに重い荷を。とんだ厄介者を。無実の殺人罪を。必要以上に重い荷を火坂)。▼担ぎ上げる(荷物を。リュックを。肩に。軽々と。よっこらしょと)。▼しょう(苦労を。荷物を。リュックを。信頼を背中に)。リュックを背にする。 **せなか【背中】** ▼背中(青白い深海魚のような"五木。やや痩せて筋肉質の一枚皮を剣もいた白菜のような"藤枝)。入れ墨を背中一面に咲かせる"辺見。背中が(汗をかく。かゆい。じっとりと汗ばむ。人込みに消える。あえぐように波を打つ=勝目。赤剣はかけに剥けているような痛々しさ=半村。汗で鉄のように光る遠藤。ぞくぞくするほど温度の低い空気に堪える=夏目。ベッドに貼りついたように起き上がりがたい宮本百)。 <571> 起き上がれないほど背中が痛い"小林信。おばあちゃんの背中が紙のように薄くて狭い=落合。肩で呼吸をしているように痩せた背中が息の度に大きく揺れる今日。見ているだけで背中が痒かゅくなってくるような言葉を連ねた看板「小池。背中から鋭い視線を投げつける。地面に背中から落ちる。荷物を背中から降ろす。髪が背中で波打つ。声を背中で聞く。言葉を背中で受け止める。両腕が背中で交差する。視線を背中ではね返すように歩く内館。背中に(汗がにじむ。痛みが広がる。刺青れはをする。腕を回す。悪寒が走る。風を受ける。激痛が走る。声がかかる。声をかける。戦慄が走る。爪をたてる。波を打たせる。冷や汗が出る。追い風を吹かせる。重みがのしかかる。言葉を投げかける。寂しさを感じる。ざぶりと湯をかける。そくっと寒気がする。陽を背負って立つ。板が張りついたようぃつか。孤独な憎悪がわだかまる=奥泉)。髪の毛をゆったりと背中に垂らす。クッションを背中に当てる。声が背中に聞こえる。視線が背中に刺さる。視線を背中に受ける。手裏剣が背中に突き刺さる。怒声を背中に聞く。マフラーを背中に流す。静けさが重さに変わって背中に降り積もる"重松。背中に視線を(意識する。感じて振り向く)。背中に背負う(明かりを。海を。信頼を。欄干を)。背中に手を(置く。回す)。背中の(後ろに隠れる。荷物をゆすり上げる)。背中を(大胆にあける。どやしつける。どんと突く。風が吹き抜ける。壁にぴったりとつける。戦慄が駆け抜ける。扉にもたせかける。海老えびのように曲げる=栗本。気味の悪い冷や汗がすっっと走る"久米)。いたわるように背中をなでさする。かたくなに背中を見せている。くるりと背中を向けて歩き出す。声が背中を追っかけてくる。去っていく背中を見送る。すねて背中を向ける。鋭い痛みが背中を走る。刃物で背中を刺される。ほんと背中を叩く。雀けずが眠ってでもいるかのように背中を丸くする=岸田。太陽の光が背中をじりじりと焼くあさの。棒のように背中を立てる=勝目。▼背中を押す(乱暴に。そっと)。猫のように背中をまるめる=阿部。海老のように背中を丸める=原田宗。汗が背中を(伝う。流れる)。壁に背中を(預ける。打ちつける。もたせかける)。 **たんとう【担当】** ▼担当する(営業部門を。研究開発を。事件を。事務局を。捜査を。部品の設計を)。担当者が顔を揃える。たまたま担当者が休暇を取っている=伊坂。担当者から事情を開く。担当者の処分で一件落着とする=柳田。 **とうばん【当番】** 掃除当番を決める。お鉢が回ってくる。自分の番が回って来る。▼輪番でする(炊事を。掃除を。当番を)。▼ローテーション(投手の。イレギュラーな)。人事異動のローテーションが早い。ローテーションから外される。ローテーションを組む。 **なでがた【撫で肩】** ▼撫で肩(しなやかな。女の子のような)。肩上げの似合いそうな撫で肩でお下げ髪の少女落合。撫で肩の女性。 **にないて【担い手】** ▼担い手(一家の。時代の。政権の。文化の)。担い手が(増える。減る)。高度成長の担い手たちを描く。 **になう【担う】** ▼担う(運命を。期待を。国の経済を。計画の一拠を。責任の一端を。大事な役目を。次の時代を。中心だる地位を。両者の橋渡しの役回りを阿川作)。次代を担う若手。 **ふたん【負担】** 負担が(重い。かかる。軽い。増える。減る)。各自の負担が大きくなる。生活の負担に押しつぶされる。負担を軽くする。軽減する)。住民に過大な負担を押しつける。受益者に負担を求める。人に負担を強いる。負担をかける(精神的な。関節に。気持ちに。経済上の)。国民に負担を(仰ぐ。転嫁する)。所得に応じて負担する(実費を。費用を。保険料を。料理代を。所得に応じて)。親の期待が負担となる。期待が重荷になる。負荷が(大きい。かかる。小さい)。やりきれない負い目が頭をもたげる!高樹。繊細な子供はおそらく母の苦労を負い目と感じるだろう池澤。一生かかっても返しきれない負い目を感じながら生きる=貫井。 **ぶんたん【分担】** 分担を細かく決める。仕事の分担を話し合う。分担する(育児を。家事を。作業を。仕事を。職場を。責任を。役割を。平等に)。それぞれに異なる役割を分担させる=畑村。分掌する(業務を。事務を。職務を。政務を)。分かち持つ(幻想を。責任を。知識を。秘密を)。分け持つ(資務を。荷物を。負担の半分を。喜びを)。仕事を手分けする。手分けして(あたりを探す。仕事をする。調べる)。逃げてきた者たちを手分けして引き取る=藤沢。 **みこし【御輿】** 御興を担ぐ。神奥にが(大きく揺れる。練り歩く)。体が御興のように揉もまれる=獅子。 **もちば【持ち場】** 持ち場に戻る。各々の持ち場につく。それぞれの持ち場につく。メンバーが持ち場に散る。持ち場を(死守して戦う。離れる)。閑ぃぇな部署に移る。もとの部署に帰る。本人の適性に応じた部署に配属する"有川。人事捉動で他の部署へ行く。 **もちまわり【持ち回り】** 持ち回りで(執筆する。事務局を担当する)。会場を持ち回りにする。持ち回りの(議長。優勝旗)。回り持ちで(委員になる。議長を務める)。▼回り持ちにする(幹事を。当番を)。 **りょうかた【両肩】** 両肩ががっくりと落ちる。両肩から籠を下げる。両肩に手を置く。長い髪を両肩に割る。荷物を両肩にのせる。両肩の力が抜ける。ほっと両肩の力を抜く。両肩を張って意気込む。突然両肩を鷲掴みれみにされる=東野。双肩に(しょって立つ。町の将来がかかっている=篠田)。双肩にかかる(将来が。責任が)。双肩に担う(責任を。未来を)。 <572> # 説明する・納得する **いいきかせる【言い聞かせる】** ▼言い聞かせる(自分の胸に。手短に。我と我が心に。一生懸命。厳しく。綽々比んと。力をこめて。注意をよく。熱っぽく。繰り返し自分に)。常々息子に言い聞かせている。言って聞かせる(親切に。とっくり。やさしく。教え諭すように。噛んで含めるように)。▼言い含める(親が子に。子細に。しっかりと)。 **いいのがれる【言い逃れる】** ▼言い逃れる(からくも。嘘八百を並べて何とか=中野美)。われながらうまい言いぬけがすらすら口をついて出る=杉本。うまく言い抜ける。言い逃れ(苦し紛れの。責任回避の)。下手な言い逃れは許さない。もはや言い逃れは不可能と観念する夏樹。起死回生の言い逃れを考える。苦しい言い逃れをする。近辞にん(責任回避の。切迫した事態を緩和するための=津本)。逃げ口上(強引な。でたらめな)。のらりくらりと(追及をかわす。矛先を避ける)。理由をつけてのらりくらりとかわす三浦し。 **いいまかす【言い負かす】** ▼言い負かす(理屈で相手を。論敵を。亭主を議論で)。相手の論を完膚なきまでに叩き潰っぷす奥泉。一言の下に喝破する。論敵を説破する=中局致。理屈でやりこめる。▼論破する(一端を。反対意見を。論客と渡り合って)。 **いいわけ【言い訳】** 言い訳(お粗末な。無責任な。一時しのぎの。聞き苦しい。その場逃れの。わざとらしい。持ってまわった)。言い訳が(空疎に響く。立つ)。うまい言い訳が思いつかない。いい加減な言い訳でその場をしのぐ。借金の言い訳にべこべこする。欺瞞まと言い訳に満ちた暮らし『大庭。言い訳にしか聞こえない。言い訳のストックが山のようにある歩枕。言い訳を(考える。いくつか並べる)。汗をかく思いで言い訳をする芝木。言い訳する(切なそうに。あれこれ。あわてて。くだくだと。しどろもどろに。消え入りそうな声で。口ごもりながら)。既に敗れたいくさを振り返るように言う=高樹。見苦しい舞台をお目にかける岩板。幾分エクスキューズを含んだ愚痴落合。弁疏ぶんする(御託を並べて。事実をあげて。必死になって)。釈明に追われる。釈明の(機会を与える。余地がない)。▼釈明する(真意を。失言だと。不意の旅立ちを)。▼申し訳にする(忙しさを。心を)。 **いいわけがましい【言い訳がましい】** 言い訳がましい(挨拶。文章)。言い訳がましく頭をかく。言葉が言い訳がましく響く。言い訳めいた(言辞の羅列。説明)。弁解がましい(口調。電話)。妙に自己分析的な弁解がましい気分安部。弁解がましく(言う。聞こえる)。 **おがみたおす【拝み倒す】** ▼拝み倒す(拝んで拝んで。三拝九拝して。両手を合わせて)。拝み倒して(金を貸してもらう。仕事を引き受けさせる)。ごり押しして承知させる。 **かいしゃく【解釈】** ▼解釈(一番妥当な。虫のいい。あまりに身勝手な。何でも同一の結論が出てくるような便利な『中村真)。言葉の解釈に違いがある。解釈の変更を余儀なくされる。自分の解釈を人に押しつける。解釈を加える(勝手な。積極的に思い切った志賀)。解釈する(希望的に。狄養に。厳密に。広義に。合理的に。善意に。想像に頼って。物事を現実主義的に。自分に都合よく)。▼解釈できる(いかようにも。どうとでも)。▼解釈ができる(二通りの。両様の)。 **かいせつ【解説】** 思いつくままに二三解説を加える。詳しい解説を試みる。何ら解説を必要としない。解説する(学説の梗概だいを。作品を。理論の初歩を。体系的に。平易に。面白おかしく。したり顔で。わかりやすく。噛んで含めるように)。解説記事を書く。野球解説者を務める。絵解きを(書く。聞かせる)。事件の絵解きをする。概説する(学説を。天文学を。日本史を。論文を)。▼解題(古文書の。文献の)。ひとくさり講釈がある。講釈を(聞く。ぶつ)。ああだこうだと講釈を垂れる。▼敷衍ふぇする(言い分を。原理を。事実を。文言を)。▼キャプション(イラストの。写真の)。キャプションを(書く。付ける)。 **くどく【口説く】** くどく(女を。執拗に。臆面もなく。折にふれて。とりすがって。必死になって。口を酸っぱくして)。クライアントを説得するような熱意で女性を口説く“永倉。くどき落す(王を。娘を)。▼面い寄る(女性に。しつこく)。▼言い寄られる(嫌な客に。年上の女から)。▼かきくどく(涙まじりに。愚痴っぽく。三拜九拝して。思いがけぬ激しさで。はり裂けるばかりの胸を強いておさえて詳々にゅんと山田美)。 **こうべん【抗弁】** いくらでも抗弁の余地がある。一言の抗弁をする余地も与えない=村上元。抗弁する(尋問に。弱々しげに。いきり立って。口を尖らせて。むきになって。頬を紅潮させて。真っ赤になって)。 **せっとく【説得】** 説得が功を奏する。説得に(応じる。失敗する。説得を重ねる。努める)。執拗な説得についに折れる。懸命の説得にも応じない。何度も説得を試みる。噛んで含めるような説得を鋭ける=筒井。説得する(妻を。両親を。穏やかに。強引に。うまい口車で。懇々と。時間をかけて。情熱を傾けて。理を説いて。論理を追って。一日も早く再婚するように。思いつく限りの言葉を尽くして藤田。巧みな身振りと味のきいた言葉とで山本周。「悪いことは言わない」と)。説得工作に乗り出す。説得工作を展開する。話に説得性がある。説得性に(欠ける。富む)。説得力が薄れる。説得力がある(言葉に。それなりに。論理に。不思議なほど。真偽はともかく妙に『氷室)。説得力に(欠ける。乏しい。富む)。供述が説得力に満ちている。説得力のある話し方。説得力を持つ説明。 <573> ▼説得力を持たせる(記事に。話に)。説き回る(八方を。人々を)。 **せつめい【説明】** 説明(合理的な。筋の通らない。通り一遍の。筒にして要を得た。やたら言い訳めいた。わかったようなわからぬような。速射砲のような=椎名)。説明が(抽象的に流れる。なんとなく不自然。質問の壺っょに落ち込んでくる=横光。じれったくなるほど詳細にわたる内田康)。補足的な説明が必哭。説明と現状が食い違う。説明に(説明を重ねる。そつがない。耳を傾ける。ほころびが目立つ)。これ以上の説明は蛇足"松岡。説明を(くどくどしいほど並べる。待つまでもない)。医師から説明を受ける。会社側に説明を求める。行動に論理的な説明をつける。更に説明を付け足す。終始笑顔で説明を終える。バネルの説明を読む。いささか気色ばんで説明をはじめる"坂口。技術的な説明をさらっと言ってのける=浅川。目で頷ちょいてから状況の説明を開始する=有川。説明を加える(丁寧な。少し)。説明する(懇々と特徴を。事故の内容を。丁寧に立場を。懇切丁寧に。事情を手短に。じかに会って。順を追って。手に取って。得意になって。理由を詳しく。実例をあげて。資料を使って。筋道を立てて。今までの経緯を。事の成り行きを。事件のあらましを。率直に取材の目的を。だいたいのところを。手短にいきさつを。現実の問題を例に。頭をかきながら。委曲を尽くして。教え諭すように。落ち着き払った声で。簡単な図を描いて。口を酸っぱくして。辛抱強く繰り返し。細かい数字をあげて。警たとえ話を使って。できるだけ簡単にわかりやすく。微に入り細を穿うがち。身ぶり手ぶりを交えて。再現フィルムふうに状況を"志茂田。ぎこちない言葉でもどかしそうに古井。噛んで含めるように三局事を分けて宥なだめるように=佐藤巻。第三者にもよくわかるように一々筋を立てて=堀)。理由を説明する折を失う。説明すると長くなるので省く。▼順序立てて説明する(推理を。自分の見聞したことを)。▼事情を説明する(詳細な。簡単に。手短に。誠意を込めて)。口調で説明する(得意げな。淡々とした。難しい。勿体もいぶった。吐き捨てるような)。一通り説明する(経絆を。事情を)。▼かいつまんで説明する(得た情報を。提案の内容を)。説明書と首っ引きで奮戦する。説明責任を果たす。放棄する)。▼説き明かす(心話を。テーマを。秘密を。わけを)。説き起こす(手順を。由来を。遠因から。第一歩から)。 **せつめいできない【説明できない】** ▼説明できない(まともに。うまく。とても)。言いがたい優しさを感じる。一種言いがたい独特の雰囲気。曰ぃゃく言いがたい存在感。言い開きができない。説明がつかない(動機の。どうにも)。説明がつかないくらいひどい!永倉。 **せつめいできる【説明できる】** ▼説明できる(気楽に。容易に)。説明がきちんとつく。すっかり説明がつく。言い開きが立つ。 **そのとおり【その通り】** 言われてみれば確かにその通り。御説ごもっとも。得たりとばかり追い討ちをかける。我が意を得たというように饒舌戦うになる藤本。わが意を得たりとばかり(うなずく。膝を打つ。微笑む)。 **ちゅうしゃく【注釈】** 注釈を(加える。施す)。もったいぶった注釈をつける=加藤。但し書きを(つける。付記する)。欄外の注。▼注解する(テキストを。文学作品を)。詳細な注解を施す。▼注記する(出典を。情報源を。男女の別を。欄外に)。補注を(書き込む。つける)。備考を(追加する。つける)。備考欄を作る。 **とききかせる【説き聞かせる】** ▼説き聞かせる(心得を。生者必滅の道を。噛んで含めるように。なだめるように)。▼講話(明晰、判明な。短い)。研究を講話する。講話を聴く。 **ときふせる【説き伏せる】** ▼説き伏せる(奥さんを。父親を。母親を。口巧者にに。強引に。むりやりに。理詰めで)。脱きつける(和尚を。願問団を)。 **とく【説く】** ▼説く(飲酒の害を。修学心得を。世の無常を。理非曲直を。所論を熱心に。熱心な口調で。わかりやすく。善因善果の因果応報を。仲間の大切さを。熱っぽく必要性を。迷信の恐ろしさを。世の中の道理を。ありがたい教えを日夜。噛んで含めるように。子細にわたって。学間を実践の道に当てはめて"舟橋。塾のみで穿ぅがつように鋭く=中野孝)。村々を説いてまわる。説き得て余すところがない。游々比从と説くような口調"井上靖。 **なきおとし【泣き落とし】** 泣き落としにかかる。泣き落としの手に出る。泣き落とし戦術に出る。泣いてくどく。泣きの一手で(訴える。迫る)。 **なっとくさせる【納得させる】** ▼納得させる(脅したりなだめたりして。自分を無理矢理。一にも二にも無理押しで=山崎)。十人が十人を首肯せしめるに足る論理。▼因果を含める(移したりすかしたりして。しばらくの辛抱だと源氏)。 **なっとくする【納得する】** ▼納得する(不承不承に。気持ちよく。心の底から。しぶしぶ。すんなりと。あり得る話だと。すっと水をのみ下すように高橋治)。皆が納得するまで話し合う。納得して引き下がるのも何だか癒しょに障る有川。納得せざるを得ない。大筋において納得できる。納得行くまで調べる。いちいち納得が行く。納得顔で小刻みにうなずく。納得ずくで別れる。納得の行く(答え。説明。理由)。相対ずくで事を決める。▼うなずける(一読して意味が。真意がはっきり)。合点が行く(おおよそ。すべて)。了承する(計画を。主張を)。相手の了承を取りつける。▼割り切れる(すかっと。なんとか)。聞き分けが良い。▼すとんと落ちる(腹に。胸に)。すとんと腑に落ちる。 <574> ▼得心が行く(説明に。話に)。得心の行くまで話し合う。得心した顔で腰を上げる。とっくりと得心の行くように何万回でもくり返す“子母沢。 **なっとくできない【納得できない】** すんなりと納得できない。納得が得られない。納得が行かない(いまだに。皆冒。どうしても)。納得しない(いっかな。どれだけ言葉を尽くしても)。簡単に納得するわけにいかない。答えに納得のいかない様子。とうてい得心のいくものではない。納得の行かない回答。何やら片付かない顔をする。合点が行かぬような願。▼気がすまない(行ってみなければ。何か言わないと。なにごともきちっとしないでは"高橋治)。自分で触ってみないと気が済まない鷹沢。聞き分けがつかない。狐につままれたような気分=和久。どうにも得心がいかない。得心のいかぬ表情。釈然としない(顔をする。ものが残る)。どこか釈然としないものが胸の中に沈澱する=佐藤愛。▼腑に落ちない(説明が。とんと。何とも。もう一つ。相手の言っていることが)。腑に落ちない顔で問い直す。供述に腑に落ちない点がある。どうも腑に落ちないという顔つき笹沢。 **べんかい【弁解】** ▼弁解(聞き苦しい。言い訳にならない)。弁解の(余地がない。言葉が口をついて出る。材料は山とある)。▼弁解する(過失をしきりに。必死に。無邪気に。顔を赤らめて。くどくどと。訥々に?と。むきになって。纓々るる)。弁解しても無駄。いくら弁解しても相手にしない。至らぬ点は了されよ。弁解するような(言葉を付け加える=石坂。照れ笑いを浮かべる=奥泉)。弁解するように口を開く。誰にともなく弁解するように呟つぶく藤枝。答えが弁解のような空々しい響きになる=連城。弁解じみた言い方。言い繕う(母親の前を。いい加減に。あれこれ。なんとなく不快な予感に包まれる=宮本郷)。▼かどがある(不審か)。▼陳弁する(忙しかった旨。詳しく。縷々)。弁明に努める。いっさい弁明に耳を貸さない。弁明の(機会を与える。しようがない。余地を与えない)。何と弁明してよいか途方に暮れる"丹羽。申し開きが(立つ。できない)。申し開きのしようがない。▼申し開きする(悪びれずに。正々堂々と)。弁解しない。何一つ弁解しようとしない。一言の弁解もしない。攻軍の将、兵を語らず。今さら何を言っても弁解になるだけ=高橋克。一言の弁明もしない。一言の申し開きもしない。 **やっぱり** やっぱり(気になる。やめようと思う)。やはり(落ち着かない。黙ったまま)。さてこそ心配したとおりになった。さすが詐欺師だけのことはある=貫井。さすがに(目が高い。胸に迫るものがある)。 **やりこめる** ▼やりこめる(爺じぃさんを。先生を。大の男を。ずけずけと。遠慮会釈なく相手を)。あべこべにやりこめられる。▼やり返す(負けずに。すかさず。二三言。平然と。にやにやしながら)。言い込める(相手を。母親を)。一本(取られる。やられたという感じ)。へこます(頑固爺ぱいにを。高慢を)。 **りゆう【理由】** 理由(合理的な。個人的な。積極的な。やむを得ないもっともな。とるに足りない)。理由が(判然としない。皆目わからない。十二分に揃っている。明確に示されない。よく飲みこめない)。いろんな理由が重なる。さっぱり理由が分からない。理由がある(れっきとした。疑うに足る十分な)。落ち度を理由にする。風邪を理由に欠勤する。多忙を理由に電話を切る。理由のいかんによっては考えないでもない。理由を(しつこく訊ねる。それとなく告げる。話せば長くなる)。思いつく理由をいくつか挙げる。突飛な来訪の理由を説明する=原田応。理由をあれこれと(詮索する。並べ立てる)。一身上の理由で(会社を辞める。学校をやめる)。理由のない(恐怖が襲う。敵意を感じる。辱めを受ける。怒りが胸にこみあげる。謀反応』の)。職権乱用のかどで告訴する。事訳を(聞きただす。言って辞退する)。盗人にも三分の理故あって(欠席する。職を辞す。身を引く)。わけがすらりと呑みこめる。いろいろと込み入ったわけがある。わけを(説明する。尋ねる。話す)。古典的名作と称される所以だ三好途。人間の怪物たる所以を解明する=今來。名人の名人たる所以を明らかにする=中局敦。もっともらしい理由をつける。何だかんだ理由を付けてはリストラを進めようとする=東野。何やかや理由をつけて断る。何かと理由をつけては外出する。 **りゆうがない【理由がない】** 理由らしい理由がない。他人から恨まれる理由は毛頭ない。法に触れる理由は衮こうもない。理由はない(さしたる。もとより拒む)。世の中には理由もない悪意が山とある=村上孫。子供のように理由もなく怯ぉでえる=中村真。何ら悲しむべき理由を持たない。いわれのない迫害を受ける。いわれはない(怒られる。辞職する)。訳もなく赤面する。 **すじあいではない** (今さら聞ける。反対する。文句をつける。よそ者が口出しすべき)。本来ならこんなことを頼める筋合ではない西木。文句を言う筋合いなどない。今更問いただすべき筋合のものでもない!本庄。筋合いはない(支払う。とがめられる。個人的な態度がどうあろうが文句を言われる=有川)。▼言われる筋合いはない(文句を。あれこれ。とやかく)。自分の身心の底からにじみだしてくる故のない不安檀。故なき差別を受ける。故なく(秘密を漏らす。戦闘に巻き込まれる)。故の知れない焦燥感に臍はその緒を悩む=尬。 **りょうかい【了解】** 事前に了解がついている。了解する(暗黙のうちに。以心伝心的に。存外あっさりと申し出を"西木)。親指を上げる。▼了とする(相手の意向を。申し出を。苦しい立場は)。 <575> # 育つ・育てる **いくじ【育児】** 育児に(追われる。携わる。てんやわんや)。育児の手が離れる。夫婦で育児を分担する。 **うまれそだつ【生まれ育つ】** ▼生まれ育つ(田舎町に。東京の下町に。都会に。何の苦労もなく)。生まれて育った土地。生まれ育った(環境に反逆する=中村真。町で一生を終える=重松)。生まれ育った土地を(恋うる。雌れる)。育ててくれた土地を後にする。 **おいたち【生い立ち】** ▼生い立ち(幸福な。不幸な。ユニークな。孤児に等しい。貧しい)。生い立ちの記。子供の生い立ちのさまを書き留める。淡々と自分の生い立ちを語る。お里が知れる。 **おじょうさん【お嬢さん】** ▼お嬢さん(立派な家の。良家で育った。顔立ちは綺麗だがお人形みたいでちっとも面白味がない野上。小鹿のような体の=川端)。華奢になお嬢さんタイブの女性"池井戸。どこぞの大店炒岱のお嬢さんとも見紛処ょうほどの品が感じられる高橋克。わがままなお嬢さんの気まぐれに過ぎない結城。お嬢さんをもらい受ける。いつまでもお嬢様気分が抜けない=海堂。いかにもお嬢様という雰囲気の女の子”あさの。▼令嬢(高慢そうな。財閥の。大家の。富豪の。莫大郎以な持参金付きの)。令嬢か何かのように涙しとやか高見明。 **おとなびる【大人びる】** 大人びた(口を利く。笑みを浮かべる。感想を口にする。話しぶりを面白がって聞く。つもりの言葉遣いは背伸びで履いたゲタが高すぎてやや滑稽有川)。どことなく大人びた感じ。ひどく大人びた表情。年よりも大人びて見える。同世代の子に比べれば遥かに大人びている。いつの間にか大人っぽくなる。おしゃまな(女の子。子)。おませな(女の子。子)。こましゃくれた(女の子。子供)。ひねこびた(影の多い性格。少年)。妙にひねこびた女の子豊田。ひねた顔の子供。 **ませた** (女の子。口を利く。子供)。年よりもませた顔をしている。早熟な(子供。才能。天才)。早熟の花を開かせる。自信満々たる早熟の天才児今来。 **きょうり【郷里】** 母の郷里で暮らす。郷里に(帰る。とどまる。残した恋人。残る。戻る。おとなしく引っ込む)。郷里の(土を踏む。家に久しぶりに立ち寄る)。行状が薄々郷里へ知れる芝木。郷里を(後にする。離れる)。同郷の(よしみ。古い友人に出会う。者を身びいきする。先輩を頼って大阪に来る=姫野)。 **くろうにん【苦労人】** 苦労人(一代で叩き上げた。酸いも甘いもかみわける=深沢)。年の割には老けて見える苦労人の顔!向田。苦労人らしい温かさ。苦労人らしく我慢強くて気配りのきく性格"小池。 **こそだて【子育て】** 子育てに追われる。子育ては十人十色。子育てを(終わる。中心に物事を考える)。 **こもり【子守り】** 孫の子守りに追われる。子守りを手伝う。船が子守歌ほどに揺れる=小林多。子守歌を歌って聞かせる。乳母車を押す。子もり歌でも歌ってやりたいようなせつない気持ち=長崎。言葉が子守歌のように耳に響く=連城。▼お守りする(赤ん坊を。墓を)。赤ん坊のお守りをする。子の守りをする。 **じっか【実家】** 実家と疎遠になる。実家に(帰る。顔を出す。身を寄せる。戻る。嫁を戻す)。母の実家に引き取られる。マンションから実家に移る。娘を妻の実家に預ける。こらえかねて実家に逃げ帰る藤沢。実家の(姓を冒す。農業を継ぐ。没落に心を痛める。問題に口出しする)。子供を辿れて実家へ帰ってしまう=北原。生家が人手に渡る。生家の稼業を継ぐ。 **おやもと** (通う。仕送りを受ける)。子供を親元に届ける。親元を(離れる。出る)。大学を卒業し親元を離れる。社会人として。母親の羽の下から)。親元を離れて自活する。子供が親元を去る。育った家を出ていく。 **すねかじり【脛齧り】** すねかじりの分際で贅沢だいを言うな。親のすねかじりで暮らす。のらりくらりすね齧りで暮らす=林关。親のすねをかじる。 **おやばなれ** ができない。子供が親離れしない。 **ひも** 金持ちの女のつばめに納まる=横山。親がかりの(気楽な身。結婚式)。いつまでも親がかりを続ける。ヒモが一番よく似合う男藤田。やくざなひも同然に徒食する"船山。ひも同然の暮らし。 **せいじん【成人】** 成人に達する。成人を祝う。成人する(息子が。娘が)。成人式を迎える。弱冠(十八歳で栄誉を手中にする。二十歳で優勝する)。二十歳旅たになる(数えで。満で)。二十歳を(過ぎる。出る)。二十歳そこそこの(青二才。娘。若者)。 **せいちょう【成長】** 成長が(遅い。鈍化する。速い。見込まれる。目覚ましい)。成長を遂げる。気長に成長を見守る。人間的な成長を促す。息子の成長を楽しみに働く。成長する(新しい産業が。経済が。仕事の規模が。一大勢力に。一流の版元に。心身共に。如右肩上がりに。息子が立派に。雪だるま式に。感情が遅くしく。すくすく。明るく健やかに。荒波を乗り越えて、苦悩に洗われて。春先の筒吹けのような勢いでずんずん島崎)。▼成長させる(作物を。思想を)。成長して今日に至る。一人前の(男に成長する。営業マンに成長する)。▼急成長する(業績が。経済が。国力が。市場が)。高成長を達成する。成長著しい(新会社。新興スーバー)。高度成長期を迎える。アメーバのようなすさまじい成長ぶり~小川。成長率が(落ち込む。加速する。上昇する。低下する)。成長力を(失う。高める)。蛇が脱皮する。 **ちょうじる【長じる】** に従って父親に似てくる。長じて(財産を築く。一児の父となる)。長するにおよんで並ぶもののない大将の器となる=白洲。 **すだつ【楽兰】** ▼巣立つ(子供が。生徒が。雛ひなが。およんで並ぶもののない大将の器となる=白洲)。 <576> # そ **せわ**【世話】物言いが世話にくだけている=多岐川。身のまわり一切の世話を見る。さわやかな風のように世話をしつづける=飯田。▼世話を焼く(余計な。まめまめしく。気を細かく配って"伊藤整)。何くれとなく身の回りの世話をやく村松。世話する(いいお得意を。就職先を)。▼世話をする(親兄弟の。かいがいしく酒肴し、沙の後藤)。世話好きな人のいいおばさん"阿刀田。根が世話好きのお節介焼き荻野。▼かまう(身のまわりを。我が子を)。▼面倒を見る(親兄弟の。かいがいしく。子分の。親身になって。何くれとなく。親代わりになって。最初から最後まで。愚痴一つこぼさずに一切の三浦哲)。陰になり日向になり面倒をみる藤原。面倒見の良さを発揮して何もかも仕切ってくれる若竹。 **そだち**【育ち】育ち(氏より。深窓の)。育ちが(違う。早い。よさそう。悪い)。野菜の育ちが豊か。育ちの(悪い人用。よいお坊っちゃん)。品のある育ちのいいぼんぼん。育ちのよさそうな(娘。おっとりした感じ。礼儀正しい青年落合)。 **そだちざかり**【育ち盛り】育ちざかりですぐに服が窮屈になってしまう年頃=内田春。育ち盛りの子供。育ち盛りは食べ盛り。食べ盛りの(男の子。子供。中学生)。伸び盛りの(子供。息子)。 **そだつ**【育つ】▼知らずに育つ(何の苦労も。苦労のかけらも)。育つ(仲間意識が。元気に。立派な木に。甘やかされて。何不自由なく。寝る子は。一人前の跡取りに。感受性の豊かな子供に。空想が勝手次第に。元気で明るい子に。すくすくと丈夫に。素直でいい子に。にぎやかな家庭に。娘が可愛らしい盛りに。恵まれた環境に。我がまま勝手な人間に。悪ぶらずにまっすぐに。荒海の音を聞きながら。親はなくても子は。伸び伸びと明るく。母の温もりに包まれて。みんなに可愛がられて。出来事の背後のからくりを見る眼が"真継。親を親とも思わず我が俺や球一杯に=永井荷。病気一つせず健やかに落合。幾人ものきょうだいたちとせまい家の中で毎日戦争のように=日野。経済的に恵まれた環境で鷺沢。贅沢ごな暮らしに首までどっぷりつかって"五木。世間にもめったに例のないような家庭の不遇な条件の中で萩原来。父の苦労を目の当たりにして内橋。山の音を子守歌として開いて尾)。家に育つ(裕福な。代々教師の)。▼すくすくと育つ(娘が。若木が)。▼見て育つ(父親の背中を。父親の顔色ばかりを)。よく育つ(稲が。丸々と)。身も心ものびのびと育った明るい美しいお嬢さん=柴田残。もやしみたいに育った連中とは出来が違う小林信。地元で育った逸材。成育が(遅れる。早い)。徐々に成育する。植物の生育に役立つ。順調な成育を示す。育ち上がる(甘え放題に。一人前に)。▼生い立つ(草むらが。高貴な家に。たくましく)。山の頂に生い立つ木。痩せこけて発育が悪い休。順調な発育を妨げる。順調に発育を続ける。体が発育する。 **そだてあげる**【育て上げる】育て上げる(スターを。女手一つで子供を。子供を一人前に。白く燃えあがるような想念を=伊藤整)。▼立派に育て上げる(二人の子供を。娘を)。 **そだてられる**【育てられる】▼育てられる(乳母に。厳格に。祖父母に。養父母に。気位高く。何不自由なく。礼儀正しく。子供が乳児院で)。母の愛育を受ける。育まれる(自然に。順境に)。 **そだてる**【育てる】「育てる(赤ん坊を。いい牛を。研究の芽を。心に恋を。心の安らぎを。植物を。素直な心を。選択の能力を。確かな目を。地方文化を。雄ひなを。二人の子を。人間を豊かに。我が子同様に。親身になって。音楽的センスを。苦労して子供を。ユニークな発想を。和平への意思を。一人前の社会人に。息子を事業の後継者に。生まれた子を可愛がって。娘を甘やかして。豊かな愛情を枯らすことなく=石川)。長い年月をかけて木を育てる林業三浦し。一実の子として育てる(捨て子を。貰い子を)。引き取って育てる(子供を。孫を。手もとに)。立派に育てる(子供を。跡継ぎとして)。育ての親。生みの思より育ての恩。▼生み育てる(子供を。人間を。文明を)。守り育てる(幼子を。我が子を)。大切に育てる。大切に育む。▼育つ(世間の波風を避けて。何一つ不自由なく)。育てられる(過保護に。猫可愛がりに。蝶よ花よと。御曹子ぉんとして大事に)。深窓に育った女性。育てる(娘を大事に。愛情を注いで。丹精して。腫れ物を扱うように岩尾。息子をクロチクを育てるようにかわいがって=水上)。箱入り娘として育てられる。大事に守り育てる。▼慈しみ育てる(愛の心を。赤ちゃんを。生き物を。子供を。作物を。植物を。動物を。我が子のように菊池)。温室育ちの(子供。妻)。乳母日傘は炊部で(大きくなる。育てられる。何の苦労も知らずに育つ=船山)。深窓の(名花。令嬢)。慎み深い深窓の婦人のように上叩有鳥。手塩にかけた(一人娘。我が子)。手塩にかけて(育てる。磨き上げた車。面倒を見る)。▼箱入り娘(世間知らずな。大店出体の。楚々そそとした黒い瞳の初心うな常盤)。 **たたきあげる**【叩き上げる】▼叩き上げる(小僧から。職人から。丁稚がっから。土台から。裸一貫から)。現場で叩き上げてきた人間。叩き上げの(刑事。社長。暇人。政治家)。子飼いの(社員。弟子。番頭)。 **ちくび**【乳首】天に突き刺さるように並んでいる杉林の梢の鋭さを感じさせる小さな乳首土吉行。乳首が(堅く張る。きゅっと尖る。丸見え。さむざむと樹豆のように萎縮する檀。のぞくほど胸が乱れている=柴田鍬)。乳首に(軽く歯を当てる。むしゃぶりつく。錠剤にあるような割れ目が入っている=小林信)。乳首の形がくっきりと見えるくらい薄いシャツ村。 <577> 赤子の舌が乳首を包む"あさの。女の乳首を弄ぶような触り方原田宗。赤黒い少女の乳首のようないぼ=椎名観。 **ちち【乳】** 乳が(出る。止まる。張る。はかばかしく出ない。欲しくて泣き叫ぶ)。乳の出が悪い。乳を(与える。搾る。吸う。飲む。含ませる)。白煙がゆっくりと乳を流すように草原を道はって行く"加賀。お母さんのお乳。お乳を恋しがる。雑木林が乳のような薄術らけにつつまれる藤沢。乳のように白い汁真継。乳臭い(赤ん坊。香り)。母乳で赤ん坊を育てる。 **ちばなれ【乳離れ】** 乳離れが(遅い。早い)。乳離れする(赤ん坊が。符神的に)。離乳食を与える。赤ん坊が離乳する。離乳に忙しい時期。 **ちぶさ【乳房】** ▼乳房(豊満な白い。桃色に膨らんだ牛の。お互いにはにかんでいるかのように心もち顔を背け合った一双の固い小さな三島。だらしなく垂れ下がった大きな=志賀。紅い小さな花の蕾を思わせる=舟橋。痛々しいほど柔らかく優しい黒井。しなびた革袋のような祖母の落合。死んだ蛸たこのような=川端。手のひらにすっぽりおさまる三田。にくにくしいまでに大きく熟した吉行。鳩のようにふくらんだ丸い石川。干しぶどうをつけたような二つの小林多。むっちりと碗状にふくれ上がっている=水上)。乳房が(露ぁらわになる。大きく尖っている。半球形をしている。ばんぱんに張り切る。ぽってり大きい。丸く盛り上がる。剣もき出しになる。打ちかかる平手にじゃれている小動物のように見える三島。皿のように薄い=梶山。大地震のときの豆腐屋の店先のコンニャクのように震える=井上ひ。老婆のように萎しょんでいる=高樹)。小さい胸に小さい乳房が白い盃のように貧しく膨らんでいる=川端。豊かな乳房が弾けるようにこぼれる谷村。乳房が手のひらに(余る。すっぽりおさまる)。乳房からお乳が进旧にり出る。ふっくり軟らかい乳房に顔を埋める=円地。乳房の(間へ顔が埋め込まれてしまう。池波。芯が微熱を持ったように疼うずく=落合。芯にチチッと痛みが走るに似たせつなさ恋しさに灼『きたてられる=杉本)。白い桃の実のような乳房のふくらみ=円地。併のように柔らかな乳房の感触"伊集院。綿のような乳房の手応え"山田太。乳房を(愛撫する。鷲摘みれみにする。赤ちゃんに含ませる。むき出しにする)。しなびた乳房を垂らす。両の乳房をあらわにする。絞るように乳房を揉みしだく!勝目。乳房がちぎれて口の中に転がり落ちてきそうなほどひたすらに乳房を吸うに原田彩。乳房を両手で(包み込む。揉む)。大きい二つの乳房が素焼きの碗を伏せたようにきっちり並ぶ=円地。二つの乳房の間の深い美しい谷から温かい情熱の湯が滾々にんと湧き流れているよう。石川。乳牛みたいな胸を揺する"阿久。ふくらみがまろやかな重みとなって胸に実る=黒井。河には無限の乳房のような水源がある=岡本。無防備な人格をそのまま肉体に翻訳した感じの少々うつむき加減の愛僑嬌のあるおっぱい荻野。▼胸の膨らみ(控え目な。柔らかな)。胸の膨らみが弾み揺れる。豊かな胸乳託なが(あらわになる。丸出しになる)。▼おっぱい(豊満な。お母さんの)。おっぱいの感触を楽しむ。おっぱいを(ぎゅっと握る。ぽろんと出す)。▼おっぱいを吸う(赤ちゃんがお母さんの。ちゅうちゅうと)。 **つちかう【培う】** 培う(愛を。活力を。技術を。禁断の夢を。人脈を。精神を。力を。人気を。友情を。夢を)。▼養う(勤労の風を。十分に英気を。力を。人を見る目を。思いやる気持ちを。冷静な判断力を)。気を遂う(浩然の。勇壮活発の)。 **はぐくむ【育む】** ▼育む(愛を。想像力を。地域文化を。夢を。科学への関心を。追憶を心の奥で)。 **ふよう【扶養】** 扶養する(家族を。姿を。両親を)。扶養家族を抱える。▼養う(家族を。妻子を。妻と子供を。両親の老後を)。 **ふるさと【故郷】** 故郷に(残した親兄弟に会いたい。帰ったような心の安らぎを覚える=高橋知)。大学を卒業して故郷に呼び戻される=篠田。故郷へ向かって旅立つ。家族と一緒に故郷へ引き揚げる三好後。故郷への熱い思い。故郷が恋しい。故郷から(遠く離れた束京。離れているような淋しさ=円地)。遠い故郷に暮らす年老いた両親「重松。故郷の(愛すべき風景。味が恋しい。言葉を使う。話に花を咲かせる)。おーいと呼んでみたいような懐かしいふるさとの山住井。故郷の山を(思い出す。懐かしむ)。久しぶりに故郷へ帰る。故郷を(捨てる。飛び出す。失った人間には帰るべきところがない三好位)。懐かしい故郷の(幼友達。訛なまりに耳を打たれる佐藤春)。孤影悄然乳はっと故郷に帰る=陳。郷関を出る(志を立てて。青雲の志を抱いて)。国元に手紙を送る。学業をなげうって国元に帰る。国元を出奔する。故山に帰る。骨を故山に埋める。里が恋しくなる。里に帰る。妻子を里に返す。父母の墳墓の地を去る。生まれ故郷の町に(帰ってくる。腰を据える)。生まれ故郷を(後にする。訪ねる)。遠く生まれ故郷を望む。生まれ故郷に帰る。懐かしい生まれ故郷にたどりつく。郷土に伝わる芸能。郷土の(恩人。史跡。物産。ありがたみを忘れる。生活に取材した作品。ために一仕事する)。郷土色豊かな風俗行事。 **やしないそだてる【養い育てる】** 養い育てる(家畜を。子供を。作物を。植物を。娘を)。 **かんよう【涵養】** する(思想を。水源を。地下水を。地方的特性を。夢を)。 **いくせい【育成】** する(業界を。後進を。作物を。指導者を。人材を。新人を。体力を。担い手を。将来の監督候補を)。子供の養育に打ちこむ。発育の恩を押しつける。養育する(学生を。子供を。乳児を)。専門家の養成に力を入れる。養成する(医師を。官吏を。教員を。職人を。選手を。俳優を。パイロットを。オペレーターを)。 <578> # 備わる・兼ね備える **あわせもつ【併せ持つ】** ▼併せ持つ(一長一短を。期待と危惧を。長所と短所を。硬軟。美しさと明るさを。繊細さと不器用さを。ダイナミックさと細心の注意深さを。力強さと敏捷びしさを。強さと優しさを。広い視野と大いなる勇気を=海堂)。クールでありながら優しさも持ち合わせている葵。粘り強い性格と同時に決断力も持ち合わせる!東野。 **うまれつき【生まれつき】** 生まれつき(内気な性分。怒りっぽい。声量が塁品。多情な女。身に備わっている)。生まれつきの負けず嫌い。▼生まれつく(明るい性格に。可愛らしい顔立ちに。気の弱い性分に。不幸の星の下に)。生まれながらに(人生に憂愁を持つ。薄幸を背負って生きているように見える女"荻原来)。持って生まれた(運。才能。性分。階級意識は拭うべくもない"村上元)。基本的人権の享有。 **せいらい【生来】** (気の弱い人。慎重な男。おとなしく意気地なし。勝負事が大嫌い。ずぼらなところがある)。 **せんてんてき【先天的】** な(才能。素質。非凡さ)。天成の音楽家。 **せいとく【生得】** の勘の鋭さ。生得のものを(粗末にする。大切にする)。 **おとなしそう** おとなしそうなふりをする。性格のおとなしそうな無口な娘"阿刀田。猫をかぶる。どこから声を出してんのかと疑うような猫かぶり声有川。 **かねそなえる【兼ね備える】** ▼兼ね備える(趣味と実益を。知力と勇気を。美と聡明さを。いくつかの要素を。美しさと気品を。海の美と山の美を。都会的なセンスと野性味を。不気味さと痛々しさを。ロマンとリアリティーを)。攻守走を兼ね備えた選手。行動性と社交性とを兼ねそなえた人間"野間。強観にいっそうな筋肉質の体でそのうえ敏捷性がしい」も兼ね備えうな筋肉質の体でそのうえ敏捷性がしい」も兼ね備えいる。 **けんび【兼備】** する(技術と才覚を。安全性と利便性を。気品とお色気を)。知勇兼備の名将。 **かねる【兼ねる】** 兼ねる(趣味と実益を。大は小を。取引と遊びを。居間と応接間を。研究所と学校を。主人公と狂言回しを。新年会と復帰祝いを)。応援を兼ねて観戦する。買い物を兼ねて出かける。 **けんよう【兼用】** する(居間と食堂を。自宅と事務所を)。晴雨兼用の傘。海外と国内両用。裏表両用のシャツ。遂近両用の眼鏡。水陸両用のバス。 **きしつ【気質】** ▼気質(奔放な荒い。一体に男勝りの。戦争と闘争を好む残忍な=辺見)。善良な気質がじかに現れる。忍従という気質が身にしみつく。ものに拘泥しないさっくりした気質が人に好かれる"有吉。さつくばらんな豪傑らしい気質の人物"子母沢。 **きしょう【気性】** ▼気性(さっぱりした。一本気そうな若々しい。ものに順着しない。高く持して枉ょげぬ強い=山本周。竹を割ったような"海音寺)。気性が激しい女。進取の気性が時代の歩調としっかり手を取り合う人間。一途な気性の女性。閼達がつな気性の人。狼のように激しい気性の女"梅本。 **きだて【気立て】** の(優しい人。よさそうな娘。いい嫁さんが見つかる)。見目よく気立てのよい子。 **き【気】** のいい(おかみさん。人物)。心安立ての気のいい女。いかにも気のよさそうな顔。 **こころばえ【心ばえ】** のよい人。 **きっぷ【気っ風】** 川育ちのおきゃんな気っ風に?が頭をもたげる=船山。気っ風の粋な女。気っ風のいい(兄貴。姉御)。 **たち** (あまり深く考えない。思い込みが激しい。人見知りをしない。物事に感じやすい。物事にこだわらない)。病的なまでに臆病な質たち!奥泉。 **きふう【気風】** クラブの気風が肌に合う。尚武の気風が強い。▼国柄(陽気な。繁文縟礼以んぶんじの)。国民性(おおらかな。好戦的な。柔和な)。家中の士風が乱れる。 **人気【人気記ん】** の荒い土地柄。 **はだあい【肌合い】** ▼肌合い(滑らかな。青年らしい)。肌合の冷たい人。 **こんじょう【根性】** ちっぽけな卑しい根性"坂口。汚れた根性に魂を乗っ取られる=高橋三。軽薄な根性を露骨に出す。ひねくれた根性を叩き直す。小姑的にこうな根性をつのらせる"阿川弘。最大級の根性を振り絞って意識を保とうとする三浦し。不屈の根性を遺憾なく発揮する柴田剣。サラリーマン根性が染み付く。卑屈や原病や奴隷根性などの滑稽な着物を着せられる椎名成。・ガッツがない。ガッツのある若者。持って生まれた性根が顔を出す"山岡。性根の(腐った人。据わった気の強い女)。性根を据えてかかる。腐った性根を叩き直す。 **どしょうね【土性骨】** がある。土性骨を(叩き直す。見せる)。 **ししつ【資質】** 資質が(開花する。欠落する。問われる)。大物の資質が泣こうというもの"村松。各自の異なる資質が芸術上の高みへ飛翔する=森環。資質に(欠ける。疑問符がつく。秀でる。恵まれる)。明敏な資質の持ち主。資質を(問題視する。フルに発揮する)。己の資質を卑下する。優れた資質を生かす。父親の資質をそのまま受け継ぐ。豊かな資質を持った作家。 **しせい【資性】** (愚鈍な。高潔な)。資性に恵まれる。天性の麗質。 **そしつ【素質】** 十年に一度出るか出ないといってよいほどの素質"井上ひ。磨けばダイヤモンドになるくらい質は十分ある宗田。素質を(十分に伸ばす。身に備える)。天才の素質を持った人間。優良な素質を保つ。 **じんかく【人格】** 英雄という常人よりひとまわり大きな人格―池澤。人格ががたがたに崩れる。ハンドルを握ると人格が変わる。人格に難がある。人格の崩壊を起こす。変わった人格の持ち主。人格も風貌も立派な男。人格を持った個人。人をそらさない円満な人格を備える!有吉。聖人君子のような人格者萩原测。 **せいかく【性格】** ▼性格(決めたことはやり迎す。さっせいかくぱりとした明るい。神経的に激しやすいコントロールの利かない病的な大庭。一筋に熱中しているような真正直な=石川。 <579> 気の弱いおどおどとした"遠藤。黒白をはっきりさせなければ気の済まない"辻井。猜疑心に心の強い冷たい=船山。ひねこびた影の多い=石川)。性格が(がらりと変わる。躍如としている文章)。ひとりひとり性格が違う。性格に問題あり。お互いの性格に隔たりがある。性格の違いがぶつかりあう。実際的な性格の女。言葉の端々から性格の一端が窺がい知れる=鈴木光。▼キャラクター(個性的な。二枚目半的な。アニメの。漫画の)。▼性分(頼まれると厭ぃゃと言えない束。なんでも徹底しないと気が済まない=高橋克)。聞きたがり知りたがる性情に駆られる"長塚。性情の(おもむくままに行為する。弱さを巧みに突く)。骨の髄まで冷酷な性情の持ち主柴田能。眠っていた性情を目覚めさせる。 **せいしつ【性質】** ▼性質(持って生まれた。出しゃばろうとしないもの静かな=大佛)。明朗な性質の人。悲しい人間の性だが。愚かな性を恥じる。質的な(変化。変貌を遂げる)。質的に(差がない。発展する)。質と量の双方が充実している。商売が性礼“に合う。変わった性状の持ち主。▼属性(基本的な。物質の)。 **せいしんりょく【精神力】** ▼精神力(強い。不退転の)。精神力が横溢ゅうする。精神力に圧倒される。並外れた福神力の持ち主。強健な意力。意力に満ちた言葉。意力を(傾ける。宿す)。 **そうび【装備】** 装備があまりにも貧弱。近代的装備に改良する。装備の点検を始める。装備を解く。▼装備する(エンジンを。クッションを。多機能を。兵器を。ボートを)。重装備に耐える体力。重装備を固める。 **そなわる【備わる】** ▼備わる(威厳が。貫禄が。機能が。能力が。物事を見る限識が)。▼備える(健全な常識を。社会人の目を。特異な能力を。一見鈍重な外貌を。炯々いたる眼光を。高度な実用性を。合理的な判断力を。下膨れの福相を。バランス感覚を)。▼風格を備える(大物らしい。堂々たる)。なかなかのセックスアビールを備えている。▼完備する(換気装置を。防音装置を。冷吸房を)。家具の完備した部屋。設備の完備した調理場。▼具例する(政治的才能を。明瞭単純簡潔の三条件を)。▼具有する(ニュアンスを。両性を)。 **たいしつ【体質】** ▼体質(外需頼みの。旧態依然とした。万人に一人という珍しい“杉本)。体質が変わる。体質改善を図る。 **てんせい【天性】** 天性の(冴えを見せる。敏捷んしな動き。ものに磨きをかける。才が自然発生的に流露する=瀬戸内)。生まれつきの性分。天の与えた賜物に味。 **てんぴん【天稟】** 感受性という天稟穴从。天稟の直觉力。剣士としての天稟を示す。天与の才能。 **ねっから【根っから】** 根っから(賭け事が好き。無邪気な女の子)。根っからの(酒好き。すけべ。善人。読書好き。駆け引き好きの性格"小池)。 **ひとがら【人柄】** ▼人柄(裏表のない。飾りのない。包容力の大きな。真面目で温和な)。人柄が(魅力に富む。鮮烈に浮かび上がる。滲にじみ出た面白さ)。がらりと人柄が変わる。話しぶりに人柄が出る。人柄から好もしい印象を受ける。人柄に(陰影ができる。崩れが目立ってくる)。人柄を伝える挿話。 **ほねがら【骨柄】** のいやしからぬ男。人間としての骨柄をつくる。 **ひととなり【人となり】** を知るには持ってこいの機会。▼品性(高潔な。さもしく浅ましい)。品性が劣る。品性の卑しい人。品性を高める。 **ひんしつ【品質】** ▼品質(優良な。劣悪な)。高品質の(音声。画像。婴品)。品質管理を徹底する。品質本位の商品。 **クオリティ** 作品のクオリティが上がる。 **ほんしつ【本質】** 本質が(姿を現す。遺憾なく発揮される)。本質から目をそらす。見かけと本質は違う。本質を(鋭くとらえる。見抜く眼力。的確にイメージ化する)。現象と本質を区別する。事故の本質を科学的に追究する。存在と本質を同一化する。物事の本質を見抜く。とかく人はひとつの視点に固執して判断を誤り物事の本質を見損なう。竹西。知識の中から抽出されたエッセンス=畑村。 **じがね【地金】** はめったに変わらない。 **ほんしょう【本性】** 本性を(さらけ出す。むき出しにする=村上元)。隠された本性を暴き出す。▼本性を現す(色魔の。野獣の)。 **ほんのう【本能】** 音楽に血がリズムとなって踊る若さの本能=黒石。久しく忘却していた本能がもくもくと頭をもたげる=木山。人には逃げるものを追うという狐犬のような本能がある=飯田。一流兵法者のいわば霊感的な本能ともいえる神経の冴え柴田剣。本能に忠実に生きる。思い嵐のような意識と本能の動き=野間。闘争本能に火がつく飯田。本能的といってもいいような畏怖!内田康。新芽の匂うような本能的なざわめき=佐多。本能的に危険を感じとる。偽善を本能的に憎む。神経が本能的に働く。 **ほんらい【本来】** 本来あるべき姿。本来なら筋の通らない話。本来の(力を取り戻す。役割を果たす。仕事に専念する)。 **がんらい【元来】** (臆病な女。他人に任せる仕事ではない。突っ張り型の男)。 **そもそも** 道に迷ったのがいけない。そもそもの初めから話す。 **どだい** (無理な話。約束などしていない)。 **ほんねん【本然】** 魂の本然に帰る。本然の若さが喘ぎ合う。 **ほんちょうし【本調子】** を(出し始める。取り戻す)。 **もともと** (口致が少ない男。勉強は嫌いではない!内田恭)。元々景気があまりよくない=中上。 **ほんりょう【本領】** 本領を発揮する。 **とくしつ【特質】** を的確に言い当てる。地域の特性を生かす。 **もちあじ【持ち味】** 余人をもって代えがたい持ち味浅川。本来の持ち味が出る。 **もちまえ【持ち前】** 持ち前の(明るさ。美しさ。技術。気性。才能。大音声。度胸のよさ。甘えるような口調。利かん気が頭をもたげてくる。天分を存分に働かせる。粘りを発揮する。好奇心がむくむくと湧き上がってくる綾辻)。 <580> # 大切にする重んじる **いちだいじ【一大事】** ▼一大事(お家の。由々しき。我が身の上の。国の浮沈にかかわる。人生を左右する。万一他に漏れたら)。一大事を聞いて参上する。 **おもんじる【重んじる】** ▼重んじる(格式を。公私の別を。信義を。体面を。量より質を。礼儀を。空理より実際を。誇りと名誉を何よりも)。権勢に重んじられる。▼重きをなす(有能な重役として。大使の片腕として船山)。世に尊重される。人権の尊重をうたう。▶尊重する(相手の立場を。少数意見を。それぞれの文化を。個人の自由を最大限に"海堂)。 **かくしん【核心】** さりげなく話を核心からずらしていく荻野。話しているうちに螺旋状らせ礼に最初の核心から話が遠のいていく=干刈。核心に(近づく。触れる質問をぶつける)。質問が核心に踏み込む。いきなり問題の核心にふれて来るような調子できり出す=島尾。核心の周囲を堂々巡りする=円地。 **せいこう【正鵠】** ずばりと核心を突く直言。正鵠ごいを(射た評。得た批評)。判断が正鵠を得ている。 **かなめ【要】** 要(扇の。守備の。投打の。物語の展開の)。要は(センスの問題。中身の問題)。筒にして要を得た注。一国の為政の枢機に参与する。枢要な(政務につく。地位を占める)。 **かんじん【肝心】** ▼肝心(あきらめが。最初が。人問我慢が。引け際が)。肝心な点だけをしゃべる。少しも肝心な問題に触れない。肝心な問題を(脇に置く。忘れる)。肝心の(話がおじゃんになる。問題をごまかして逃げる)。 **かんじんかなめ【肝心要】** な(ことを忘れる。時にいない)。▼肝要(あきらめが。注意が。用心が。対策にはスピードが)。む。押さえた話しぶり。的確に把握する)。ピタリと心のツボに触れる=永倉。企てが巧く壷っぃにはまる。説明が質問の壷に落ち込んでくる=横光。商売の壺を外さない。調査の壺を心得ている。話の壺を押さえる。 **きゅうしょ【急所】** 拳を急所に打ち込む。ずばりと急きゅうしょ所に矢を射込む。急所をきっちり押さえる。首の急所を打ち据える。言葉が急所を貫く。当て身を食らわす。腹に当て身を叩きこむ。 **こうけい【肯綮】** にいに(値する。当たる)。読みがずばり的中する。 **ずばり** と(結論を話す。一言で評する。痛いところを祈っいてくる)。 **すんてつ【寸鉄】** 人を(殺す。刺す)。ついにここぞという急所をつかむ!有島。首根っこを取って押さえる。 **ここいちばん【ここ一番】** ここ一番とばかりに力を発揮する。ここ一番になると力む。聚禅に一番(全力を尽くす。この難局に対処する)。ここぞとばかり(膝を進める。大砲をぶっ放す)。ここぞとばかり(おめかしする。切ってかかる)。 **こつ** こつが(のみこめる。わかる)。ちょっとしたこつが要る。経営のこつを盗む。商売のこつを知っている。料理のこつを学ぶ。 **こっぽう【骨法】** (脅しの。短編小説における伝統的な)。骨法を心得る。 **ひけつ【秘訣】** (健康の。合格の。成功の。長生きの)。を隠匿する。 **じゅうようせい【重要性】** (基礎研究の。国際協調の)。 **いちぎてき【一義的】** な(責任。問題)。一義的に理解する。第一義的な(義務。効果。目的)。第一義的に責任を持つ。 **じゅうだいじ【重大事】** (一刻を争う。人命に関わる。天下の安危に関わる。一族の命運を賭けた豊田)。人生の重大事に直面する。 **しゅじんこう【主人公】** 痩せても枯れても一家の主人公二葉亭。主人公と狂言回しを兼ねる。実在の人物を主人公にする。女性を主人公に据える。主人公の(運命に一喜一憂する。周囲に魅力的な脇役を配する重松)。 **ヒロイン** 主(救いの。話題の)。鮮やかな筆致で描き出されるヒロイン。悲劇のヒロインを演じたがる=角田。 **しゅりゅう【主流】** 主流を占める。時々の主流を渡り歩く。傍流から本流に入る。主流派を形成する。 **じょうきょう【上京】** ▼上京する(一家をあげて。笑。を背負って。地方から。友人を頼って。喜び勇んで。大学進学を機に。家出同様の形で。青雲の志を抱いて)。母が突然上京してくる。一度も上京したことがない。 **しょうてん【焦点】** 話の焦点がぼける。目の焦点が合っていない。記憶の焦点に浮かぶ。ぼんやりと焦点の藤本。焦点を(失ったような空虚な定まらない視線眼差し堀。整えるようにばちばちまばたきをする"石森)。レンズの焦点を合わせる。▼焦点を失う(視線が。呆にうけた眼が血走って=山崎)。 **ピント** がぼけた写真。写真のビントがぐっと合ってくるようにはっきり見えてくる"阿川弘。とんでもなくビントの外れた記者=横山。 **じゅうし【重視】** ▼重視する(国際協調を。森林の侧きを。休むよりも内容を)。意見を重く見る。重要視する(エネルギーを。購買力を。史的意義を)。経済成長に力点を置く。▼重きを置く(勝負に。人道に。もっぱら観測に)。 **じゅうてん【重点】** を自然エネルギーに移す。聞き込み捜査に重点を置く。重点課題を絞り込む。重点的に(研究する。攻撃する。配分する)。 **じゅうよう【重要】** 重要な(意味を持つ。役割を果たす。案件を話し合う。ボストを占める)。どうしても外せない重要な用事。取り消しの利かない重要な事柄。 **しんずい【真髄】** 真髄(官能的な美の。東洋美術の)。短編小説の神髄に触れる。エキスを抽出する。科学技術の粋を集める。▼精髄(茶道の。仏教の。文化の)。 **だいこくばしら【大黒柱】** 黒光りのする大黒柱がひときわ目立つ=悲合。大黒柱そのものの頼もしい姿。一家の大黒柱となって働く。 <581> 大黒柱のように頼りにされる。 **だいじ【大事】** ▼大事(命の次に。命より。一家の浮沈に関わる。奥さんより金が"大藪)。弾みで大事が出来いっする。大事な(ことがおろそかになる。心棒が外れている。問題をなおざりにする)。ここ一番という大事なところ。二つとない大事な命。結婚記念日という夫婦にとっては大事な夜進城。大事に至らぬうちに消し止める。大事の(前の小事。上にも大事をとる)。大事をとって入院する。命を懸けて大事を冒す福永。しくじったら大事になる。取り返しのつかない大事になるところ。放っておくと大事になりかねない。 **さいゆうせん【最優先】** させるべき事項。▼大事件(驚天動地の。世紀の。歴史に残るほどの。思わず跳ね上がるほどの"本庄)。大事件を号外で知らせる。 **だいじにする【大事にする】** ▼大事にする(親を。限りある命を。家族を。自分の意志を。女を女王のように武者小路。腫れ物を扱うように"立原)。大事そうに(しっかり握る。紙片を折りたたむ。包みを胸に抱える)。御曹子沾ん『として大事に育てられる。 **ごしょうだいじ【後生大事】** に覚えている。箪笥抃んの底に後生大事にしまいこむ古井。 **たいせつ【大切】** 大切(何事も潮時が。日毎のたゆみない作業が。引き際がもっとも)。大切な(客を迎える。人に死なれる。資料を紛失する)。人生の大切な青春時代。医師として大切な何かが欠けている=海堂。大切なもの(かけがえのない。虎の子のように)。大切に(長期保存する。胸の中にしまい込む)。金を大切に使う。ケーキを生まれたての赤ん坊のように大切に扱う=小川。大切にする(命を。上流の山村を。友情を。偶然手にした幸運を。日々の暮らしを。息子との思い出を。手に据えるように夫を森へ。ふたりのあいだに生まれた末の男の子を目の中に入れても痛くないほど深沢)。なくて叶わぬ存在。大切そうに(抱く。渡す)。 **かけがえのない** (貴重な体験。存在。味方。幸福にたどりつく)。ただ一人のかけがえのない女。 **ちんちょう【珍重】** する(外国の品を。骨董にこを。在来の物を)。 **ちゅうおう【中央】** 中央で名をなす。中央に直結した政治。部屋の中央に置く。ほぼ中央に位置する。的の中央を射た質問宮部。中央進出を(果たす。夢見る)。 **ちゅうけん【中堅】** ▼中堅(会社の。チームの)。中堅の地位に就く。都内の中堅どころの私大に入る。中堅ところを出向させる。▼中核(思想の。社会の)。中核に据える。真実の中核をあばく。 **ちゅうしん【中心】** 中心たる地位を担う。中心に当たる位置。子育てを中心に物事を考える。視野の中心に浮かび上がる。生活の中心に仕事を置く。柱を中心にぐるぐる回る。人間はいつも自分を中心に生きる山本周。人間を中心に据えた議論『柳田。螺旋形ちんを描いて次第に中心に近づく=日野。▼中心にいる(グルーブの。混雑の渦の)。中心の座を占める。中心点に到達する。体の中心部がジーンとしびれる。市の中心部から少し外れている。学問の淵藪认。淵藪の地に集う学徒。熱狂の渦の核になる。同盟関係を基軸とする。時用を忱とする変化。距跡かを卿にして回る。 **しゅじく【主軸】** (政策の。反対運動の)。教育を主柱とする施策。一家の主柱を失う。敵の主力を分断する。▼枢軸(悪の。業界の)。枢軸の一角が崩れる。 **センター** に位置する。立て役者(一座の。交渉の。チーム優勝の)。▼中軸を担う(産業の。打線の。投打の)。 **ちゅうすう【中枢】** ▼中枢(活動の。産業の。社会の。神経の。政権の)。各国の首脳が一堂に会する。首脳会談が開かれる。 **ほんまる【本丸】** 一進の改革の本丸。城の本丸が焼失する。本丸に砲弾を集中する。敵の本丸に乗り込む。本営めざして突き進む。本営を(襲う。攻める)。本陣(宿場の。敵の)。本陣に(切り込む。立てこもる)。 **まんなか【真ん中】** 真ん中が(膨らむ。四、こんだまな板。大きく盛り上がる)。髪を真ん中で分ける。部屋の真ん中に取り残される。的の真ん中に命中する。道の真ん中に突っ立つ。輸の真ん中に入る。的の真ん中を射抜く。的のど真ん中に当たる。 **どうなか【胴中】** を射抜く。 **みやこ【都】** 都(住めば。花の。荒れ寂びた古い。天みやこ下に並ぶもののない繁昌出认とを極めた芥川)。繁華な都に住む。都の空が恋しい。都は各種の人が流れ流れて集まってくる底のない大沼国木田。都を(なかなか立ち去り得ない。落ちて西海に放浪する=白洲)。観光ブームで古都が俗化する。首都を遷す。京から(奥州へ下る。西海へ下る。東国へ下る)。京へ上る。諸国の軍勢が上洛する。満都の(喝采を浴びる。注目を浴びる)。 **やまば【山場】** 試合の最大の山場。▼山場にさしかかる(話が。見直しが)。山場を迎える。話の山場を終える。 **むなつきはっちょう【胸突き八丁】** 交渉が胸突き八丁にさしかかる。 **ようち【要地】** ▼要地(交通の。戦略の。防衛上の)。咽喉を扼ゃくする。交通の街に当たる町。交通の要衝に位置する。敵の要衝を攻撃する。要所に警官を配置する。要所姿所をガードマンが警備する。交通の要路に当たる。 **ようてん【要点】** 話が要点にふれる。要点を(頭に入れようてんる。手短に話す。かいつまんで紹介する。箇条書きにする)。▼限目(改革の。計画の。論文の)。 **しゅい【主意】** がはっきりしない。立法の主意を汲くむ。国際交流に主眼を置く。▼大綱(国家組織の。条約の。政策の)。▼要諦(外交の。教師としての。政治の)。 **ようりょう【要領】** が飲み込める。仕事の要領を覚える。質問の要領を捕らえそこねる。話が要領を得ている。▼骨子(計画の。法案の。論文の)。物語の骨子を要約する。▼ポイント(重要な。話の。生と死を分かつ)。大事なポイントを語る。 <582> # 絶えない・途切れない **いちにちじゅう**【一日中】一日中(機嫌がいい。元気がない。飽きずに繰り返す。じっと家の中にいる。側きづめに働く)。雪が一日中降り続く。丸一日山中を駆け回る。朝早くから夕暮れまで懸命に働く=北原。朝から晩まで(忙しい。実験室に閉じこもる。ずっと働きづめ)。終日(重い雲が空を覆う。語ってあきない。酒瓶を離さない。黙りこくって過ごす。病人のそばを離れない)。雨が終日降り続く。ひねもす(雨が降り続く。蟬せみが鳴きやまない。部屋の隅でじっとしている)。日ねもすぼんやり膝を抱えて座っている古井。いつもいつも(一緒に遊ぶ。たいてい留守。一歩さがった所にいる。何くれとなく助言する。身ぎれいにしている)。いつもより(ずっと少女っぽく見える。念入りに化粧をする。早めに会社を出る)。▼思い出す(朝に晩に。事に触れて)。今日に限ったことではない。何かにつけて(話題になる。白い目で見られる。対抗心を燃やす。細かな配りを見せる=佐藤愛)。寝ても起きても夢の中にあるよう。寝ても覚めても(気にかかる。忘れない)。二言目には(金の話をする。「今の若い者は」と言う。古いと言われる=高井)。毎度のこととて誰も驚かない。遅刻するのは毎度のこと。夢にも現づにも忘れられない。始終(青い顔をしている。気づかわしげな顔をする。口癖のように言っている。不平が絶えない)。常住(気をつける。心にかかっている。青年らしい闘志を失わない=岡本)。常住坐臥粉机生命の危険にさらされ通し=船山。剣士は常住坐臥死と隣り合わせに生きる=隆。常に心の備えを持つ。しょっちゅう(家を明ける。顔を出す。世話になる。心配ばかりかけている)。寄るとさわると(心配し合う。話の種になる。悪口ばかり言っている)。あっちこっちで寄ると触ると評判になる!永井荷。 **いまだに**【未だに】未だに(解決がつかない。記憶に残っている。納得がいかない。深い恨みを抱いている。古い言い伝えを守る。迷いが吹っ切れない。行方が知れない)。今でも(時々思い出す。ありありと覚えている。なお愛し続けている)。今なお(色あせない。根強い力を持っている)。今に至るも(理由はわかっていない。是認する気になれない柴田羽)。今もって(帰ってこない。問いに答えられない。忘れることが出来ない)。今もなお(心に残っている。忘れることができない)。いまもなお耳になつかしい余韻を残している=中。今日に至るも見つかっていない。 **かたはしから**【片端から】片っ端から(声をかける。電話を入れる。破いて捨てる)。知っている歌を片っ端から歌う。出てくる料理を片っ端から平らげる。付近の家を片っ端から当たる。片端から(本を読む。の中へ放り込む)。端から(ぐるりと回っていく。順番に見ていく。一つひとつ整理する)。リストにある名を端から読み上げる。 **かんだんない**【間断ない】周断ない(響き。砲撃)。問断なき空襲にさらされる。間断なく(刺激を与える。射撃を加える)。雨が間断なく降りそそぐ。風のうなり声が間断なく続く。苦痛が問断なく責めたててくる。言葉が口から間断なく滑り出る"宫本邮。血が鼓動に合わせて間断なく噴き出る宮本輝。 **ことごとに**【事毎に】事ごとに(執拗に争う。面倒を見る)。事あるごとに(意見を発表する。頑張れというのが口癖。泥仕合を繰り返す)。その都度(支払う。知らせる)。 **しろくじちゅう**【四六時中】四六時中(家にいる。あちこちを駆けまわる。生活をともにする。そばで見張っている。突っ立っている。デスクにへばりついている)。二六時中(居室にいる。勉学に励む。炎熱に焼かれる。しゃべり続けている。出ずっぱりになる。耳について離れない音)。 **たえず**【絶えず】絶えず(頭を働かせる。圧力を加える。注意を配る。行方を気遣う。連絡を取る。新しい心配事が生起する。客が出入りする。ぐらぐらと揺れる。消息を聞きたがる。はらはらして生きている。微笑を浮かべる)。感病そうに絶えずきょときょとする。霧が絶えず流れる。視線を絶えず気にする。不安が絶えずつきまとう。絶えざる(不安が胸を重くする。刻苦によって仕上げた能力"中島敦)。寝てもさめても忘れることができない=武者小路。工事が夜も日も分かたず続けられる。不断に努力を払う。槌の音が不断に響く。不断の(危険にさらされる。業火に皮肉を焼かれる。努力による成功)。人類を不断の生存競争に駆る。間がなすきがな繰り返しひとつことを語り合って飽くことを知らない=中。間がな隙がないろいろなことを言?伊藤左。夜となく昼となく(仕事をする。姿を現す。相談する。眠りほうける。警戒を怠らない)。昼となく夜となく(働く。みみっちい稼ぎをする=小鳥)。 **たえない**【絶えない】▼絶えない(生傷が。人々の往来が。笑い声が。次から次と。年百年中。年がら年中人が。夫婦の間に風波が)。綿々と絶えない愛執。人偷乱れて戦禍の絶える暇もとが無い萩原朔。生傷の絶える暇がない。香華の絶えたことがない。絶えることなく(書きつがれる。続く)。脈々と続いてきた伝統。寂しい思いが脈々と胸に上る。細々たる恨みを留める。綿々と(尽きない流れ。綴っっった文章。伝統を受け継いでくる)。思いを綿々と綴る。 **たえまない**【絶え間ない】絶え間ない(雨の音を聞く。流れ)。絶え間なく(注意を払う。自動車が往き交う。波が寄せては返している)。音が絶え間なく響く。風が絶え間なく吹きつける。クラクションが絶え用 <583> **たやさない【絶やさない】**▼絶やさない(顔に微笑を。四季の花を。終始笑顔を。線香を。常に火を。伝統の灯を)。柔らかい微笑組みを絶やさない女性=泉受。 **つぎからつぎ【次から次】**次から次と矢継ぎ早に質問を発する。次から次に(新しいことをする。いろんな問題が湧いて出る。弔問客が訪れる)。次から次へと(相手を変える。注文をつける。矢を放つ。アイデアを話し出す。疑念に取りつかれる。命令が出される。落ち着きなく煙草を吸う椎名麟)。客が次から次へと入ってくる。とりとめのないことを次から次へと話す。妄想が次から次へと湧き上がってくる。予想外の出来事が次から次へと起こる。▼暇を与えない(取り繕う。反撃の)。▼暇も与えない(相手に息つく。判断の)。雨後のタケノコのように増えてくる"玉村。雨後の竹の子のように大学が乱立する藤本。 **つぎつぎ【次次】**不快な相念が次々と水泡のように意識の上にのぼってくる遠藤。次々と鳩が空中に飛び出す。償景が次々と脳裏に現れては消える。料理皿が次々と運ばれてくる。取りかえ引きかえ幾種類もの布やブラシを次々と繰り出す=安岡。次々に(新しい発見が続く。考えをめぐらす。立ち上がって発言する)。グラスを次々に重ねる。ころりころりと次々に死んでいく。乗客が次々に降りる。見舞い客が次々にやって来る。転々と(居所をかえる。移り住む。仕事をかえる)。ばったばったと斬りまくる。並み居る敵をばったばったとなぎ倒す。 **つねに【常に】**常に(最善を尽くす。第一線に立つ。体を清潔に保つ。行動をともにする。父親と比較される。ドップに近い成績を保持する)。一刻たりとも(忘れたことがない。脳裡120ぅから離れたことがない有吉)。一刻も(離れていられない。忘れてはならない)。一時も(頭から離れない。じっとしていられない)。陰に陽に(教えを受ける。生活を脅かす)。片時も(頭を去らない。手を休めない。目が離せない。そばから離さない)。寸刻もじっとしていない。常々(公言している。口癖のように言っている。好意を持っている)。 **とぎれない【途切れない】**潮騒礼味が途切れなく響く。話がフランス刺繍虬礼の一針一針のように細かく途切れなく連なって行く小川。五月雨式にいびに(解散する。攻撃する。ストが続く)。原稿の出の早い面から五月雨式に降版していく=横山。嫋々にいたる(鐘の音。余韻を残す)。むせび泣くような女の声が嫋々と流れてくる=山田思。波がたゆみなく鳴り続ける。時用が連綿と途絶えることなく続く鷺沢。毎日途絶えることなく細い雨が降る=遠藤。 **ねんじゅう【年中】**年中(家にいない。傷をこしらえている。愚痴をこぼしている)。一年じゅう(遊んでいる。寝て暮らす。忙しく飛びまわる)。季節を問わず一年中流通する=赤瀬川。年がら年中(働きづめ。家に閉じこもっている。飛び回っている。弱音ばかり吐く)。年百年中苦労が絶えない。 **のべつ**のべつ(ぶつぶつ言う。喧嘩州んばかりしている)。鼓や太鼓の音がのべつ聞こえる。電話がのべつ鳴り響く。二十四時間のべつ幕なし。のべつ幕なしに(言いづめ。悪たれ口を利く。しゃべり続ける)。明け暮れ殺し合いが絶えない。明けても暮れても(仕事以外ない。熱中する。テレビばかり見ている。死ぬことばかり考えている=島尾)。行住坐臥時約(頭から離れない。同じズボンをはき続ける。感謝の念を忘れない)。常時(身につける。びくびく脅えている。百人ほどの従業員を抱える)。常時不断に咲き香る花。 **ひがないちにち【日がな一日】**日がな一日(祈り続ける。座ったまま、釣りをする。読書にふける。ぶらぶらしている。部屋に閉じこもる)。ひがな一日日溜まりの中でうつらうつらしている『有吉。二十日鼠組や秘がひがな一日小さな車を廻すように一つの言葉が頭の中で音を立てて廻る=向田。 **ひっきりなし**に(電話が鳴る。客がつめかける。騒々しい音が聞こえる。人が出入りする)。弔問客がひっきりなしに訪れる。人々がひっきりなしに行き交う。じゃあそろそろと言われるのが怖いといった風にひっきりなしにしゃべる=向田。トラックや乗用車がひっきりなしに走っている=辻井。休む間もない。後から後から人が詰めかける。波が後から後から押し寄せては砕ける。涙が後から後から頬を伝って流れる。人波が後から後から押し寄せる。一台また一台と(車が続く。対向車とすれ違う)。芋づる式に(捕まえる。事実が明らかになる)。入れ替わり立ち替わり(挨拶に来る。祝いに来る。客が来る。見舞いに来る)。客が入れ替わり立ち替わり滞在する。仕事の切れ間がない。区切りなく仕事が続く。途切れずに続く。途切れることなく会話する。切れ目なく(車が流れている。しゃべり続ける。脈絡のないことを考える)。切れ目なしに続く人の列。流れが切れ目なしに続く。引きも切らない(行き交う人が。患者が。招きが。流言蜚語はごげが。行列が街道を)。見学者が引きも切らず訪れる。見物客が引きも切らずやって来る。引きも切らずに来る(仕事が。弔問客が)。 **やつぎばや【矢継ぎ早】**矢継ぎ早に(石を投げる。いろいろ言う。三児を得る。指示を出す。冗談を飛ばす。対策を打つ。言葉をぶつける。質問を浴びせる。用事を言いつける)。順逆の態度を考えるひまもないほど、ことが矢つぎばやに起こる=本庄。事件が矢継ぎ早に起こる。 <584> # 耐える・堪える **おしころす**【押し殺す】▼押し殺す(喜怒哀楽を。声の震えを。苦痛を懸命に。声を低く。感情のたかぶりを。たかぶった気分を。蓄積した疲労を)。感情を押し殺した声で問い返す三好徹。極度に感情を押し殺した泥の底から湧くような声高井。押し殺した声が夜をかすかに震わせる=船戸。押し殺した声で(既にさく。詰め寄る)。押し殺した店に恋すこみがある。押し殺したような受け答えが続く藤枝。 **おもいあまる**【思い余る】思い余ったふうな目を宙へ向ける=古井。思い余って(意見をする。訴える。海に飛びこむ。相談する)。思い余っての(自殺。心中。犯行)。思案の末に思いあまったような声を出す=福水。 **がまん**【我慢】胸に一本棒を呑みこむような我慢壺井。人間我慢が肝心。我慢に我慢を重ねる。我慢は体に悪い。▼我慢する(足のしびれを。虫を殺して。苦しくなってくる息を。不自由な状態を。不愉快な思いを。いい加減のところで。やっとの思いで。気が遠くなるほどの苦しさを=新田。汗のべたつきを一先ず"島尾)。我慢して一緒にいる。今日のところは我慢して付き合う。怒りを押し包む。堪忍袋を抑える。拳がわなわなと震える=東野。膝に爪を立てる=横山。滑稽なくらい強情な痩せ我慢"中局救。瘦せ我慢に痩せ我慢を重ねる。虫を殺して三拜九拝する”子母沢。じっと虫を殺して逆らわないでいる。隠忍に隠忍を重ねる。隠忍の日々を送る。隠忍して機会をうかがう。再起を期して隠忍自重する。隠忍自重の生活を送る。 **がまんできない**【我慢できない】▼我慢できない(一日だって。一刻も。三日と。もうこれ以上は)。とうてい我慢できないほど吐きたくなる=幸田义。腹に力を入れて我慢しても我慢しきれないほど痛い=志賀。我慢なく見境もないことをする。我慢に限界が来る。我慢にも限りがある。我慢の限界を越える。我慢のならない(異臭。人間。侮辱)。我慢を切らしたように叫ぶ=山本周。▼切れる(堪忍袋の緒が。辛抱が)。来る(我慢が限度に。忍耐の限界に)。しびれを切らす。とうとう辛抱できなくなる。軽淡を黙って忍ぶ法はない。ならない(堪忍が。とうてい我慢が)。忍耐が爆発点に近づく。忍耐力を失う。がまんを切らしたように嗚咽。ぇし出す=杉本。こらえ性のない男。鼻持ちならない(エリート官僚。生意気な女)。奇を街でもう鼻持ちならぬ恰好沙小沼。横暴を腹に据えかねる。腹に据えかねる不愉快事。よほど腹に据えかねたららしい。相当腹に据えかねている。矢も盾もたまらず(会いたくなる。来てしまう。旅に出る。飛んでいく。・逃げ出したくなる)。矢も楯もたまらず会いに行きたい福永。思い立つと矢も楯もたまらなくなる。 **かみころす**【噛み殺す】▼噛み殺す(あくびを。驚きの声を。必死に怒りを。むしゃくしゃした気分を。叫び声を口の中で。ひとりでに込み上げてくる笑いを"三浦哲)。笑いを噛み殺すのに骨が折れる=舟橋。噛み殺せない嗚咽ぇが喉から漏れる=有川。あくびを噛みつぶす。 **こらえきれない**【堪えきれない】軀紛らの底からこみ上げてきた笑いをこらえきれない村松。こらえきれずに(咳せきが出る。どなりだす。吹き出す)。笑いをこらえきれずにウッキッキッと息を洩もらす驚沢。堪えきれぬ(憎悪が身の内に燃え上がる=久米。不快が顔を硬こぁばらす久米)。こらえがたい(強烈な誘惑。哀かなしみがせりあげる。頭痛が襲ってくる)。ふるさとにあこがれるように堪えがたい希望石川。こらえかねて泣き出す。 **こらえる**【堪える】こらえる(ぐっと怒りを。体を震わせて。二枚腰で。痛ましい思いを。襲ってくる睡魔を。こみ上げてくる吐き気を。のどまで出かかった声を。二日酔いのむかつきを。胸に湧いてきた言葉を。泣くまいと必死に。笑い出すのを懸命に。怒鳴りつけたいのを必死で。思わず吹き出しそうになるのを村松。子供のように座布団の端を口で噛みながら号泣を=中村真。フグのように両頬をふくらませて吐くのを"西木。夜ごとに襲ってくる無気味な頭痛を"阿刀田。こみあげてくる怒りをかろうじて安部。土俵際に押し込まれた力士のように弓なりになって”後藤。涙が出そうになるのを辛うじて=大庭)。危うく噴笑するのを堪える=獅子。こらえた情が一時に激発する。唇をへの字にして泣くのをこらえている=内液。 **しのぐ**【凌ぐ】▼しのぐ(急場を。敵の猛襲を。軒先で夜露を。いい加減な言い訳でその場を。辛うして飢えを。テントに入って雨を)。壮者をしのぐ元気。凌駕する(競争校を。従来の作を。意気が剣も火も)。 **しのびない**【忍びない】▼忍びない(筆にするに。黙って見ているに。本当のことを告げるに。迷惑をかけるに。怯ぉぃえきった少女をひとり残して去るのは"日野)。見るに忍びないように目を逸らせる。忍びがたい侮辱を浴びせられる。 **しんぼう**【辛抱】辛抱(ほんのわずかの間の。もうちょっとの)。これまでの辛抱が水の泡になる。何事にも辛抱が肝心。しばらくの辛抱だと因果を含める=源氏。辛抱に辛抱を重ねる。辛抱には限界がある。ここが辛抱のしどころ。▼辛抱する(自我を殺し。つらいところを。いたわしいほどよく。石に醤かじりついても山本月。ここ一二か月のことだと思って=二葉亭。何を言われても石になったつもりで瀬戸内)。忍耐強く辛抱しぬく。石の上にも三年。 **しんぼうづよい**【辛抱強い】辛抱強い努力を続ける。虫のような辛抱強い動きを繰り返す藤沢。辛抱強く <585> # **(仕事をやる。黙って聞く。同じことを尋ねる。機会の到来を待つ。見張りを続ける)。繰り返し辛抱強く説明する。降り続ける雨がどんな清掃業者よりも辛抱強く丁寧に窓ガラスを洗っている=宮部。我慢強い(性格。人)。教科書やテストという名の紙をだまって食べつづけるがまん強い羊たち『飯田。我慢強くじっと歯を食いしばる=芥川。苦労人らしく我慢強くて気配りのきく性格!小池。 **たえしのぶ【耐え忍ぶ】**▼耐え忍ぶ(寒気を。苦痛を。屈辱を。酷暑を)。惨憺にいたる日々をたえ忍ぶ=中局敦。屈辱的な折衝を堪え忍ぶ坂口。忍従の(生活。日々。気質が身にしみつく)。忍苦に(耐える。忍苦を重ねる)。忍苦の(一生を送る。生活を送る。冬が去る)。 **たえられない【耐えられない】**▼耐えられない(一線の仕事に。おかしさに。緊張に。激変に。修羅場に。正視に。他人との共同生活に。長く続く沈黙に。不術生なことに)。不安と恐怖に耐えきれない。耐えきれなくなって泣き出す。耐えられないような不安に襲われる=小池。耐えがたい(圧迫を感じる。苦痛を味わう。のどの渇き。恥を忍ぶ。過去がよみがえる。空虚感が心に巣食う。嫉妬に苦しめられる)。帰郷の情耐えがたいものがある。苦悩が耐えがたいものとなる。醜女にの深情けは耐えがたい重荷!遠藤。胸の底から突き上げてくる耐えがたい寂しさ=山手。耐えがたいほど暗い記憶=福永。岬せぃの声が暑さをさらに堪え難くする"宮本百。▼耐えかねる(空腹に。苦悩の重みに。自責の念に。死の恐怖に。胸の痛みに。病や苦難に。良心の呵責しに。抗炀らいがたい寂しさに。重苦しい空気に。絶え間のない労働に。突き上げてくる激情に。胸の息苦しさに)。悲しみに耐えかねて泣く。痛さに耐えかねてぼろぼろと涙を流す深沢。練習の苦しさに耐えかねて合宿を逃げ出す人米。 **たえる【耐える】**▼耐える(苛酷な労働に。環境の変化に。気分の悪さに。苦痛と屈辱に。凍える寒さに。心の動揺に。残酷な刑に。時代の風霜に。時代の変遷に。人生の風波に。静寂の重さに。高い温度に。冷たい目に。乏しい食事に。長らく苦境に。むこい境遇に。連日の激務に。衝動に辛くも。浮き世の波風に。重苦しい沈黙に。悲しみと絶望に。辛うじて内心の激情に。厳しい取り調べに。唇を噛んで必死に。この世の荒波に。資金の乏しさに。長い退屈な時間に。ひたすら痛みに。不自由がちな生活に。まだ五六年は使用に。いかなる困難にも。勝ち気な頑張りで。どんな荒仕事にも。どんな苦しい愛にでも。激しいショックに辛うじて。やっとの思いで。顔をうつ向けたままむせび泣きに水上。濁流で身を支える人のように二本の脚で地を踏みしめ背後から押し寄せる力に奥泉。無情な世間の迫害に"石川。胸を突き刺す言葉に高橋和)。十分に読むに耐える作品。▶苦痛に耐える(肉体的な。輪廻転生いいの無限の真継)。▼苦しみに耐える(地獄の。脂汗を流すほどの=福水)。悲しみにじっと耐える。シベリア送りにあったロシア人の罪人のように吹雪にジッと耐える水倉。▼トレーニングに耐える(苛酷な。つらい)。手きびしい攻撃の矢先にもまともに耐えて立っている=堀。十分鑑賞に耐え得る。耐え抜く(極限状況を。苦痛を。拷問にいに。寄せ手の勢いに)。感に堪えたようにうなずく。堅忍不抜の精神。▼こらえ忍ぶ(苦痛を。恋の思いを)。▼忍ぶ(あらぬ誹謗辺はを。窮屈な思いを。多少の不便を。耐えがたき侮辱を)。恥を忍んで告白する。歯を食いしばる(痛みに。なににくそと)。歯を食いしばって(嗚咽مٰぇする。我慢する。頑張り通す。こらえる。無念がる。練習する。泣くまいとする。笑いを必死で抑える=井上ひ)。必死に歯を食いしばって官能の疼うずきに堪える=柴田鈍。 **たまらない【堪らない】**たまらない(悲しみに襲われで。のどが渇いて。子供が欲しくて。自分が恥ずかしくて。本が読みたくて。無性に会いたくて。闇雲に知りたくて。世の中が面白くて)。たまらないほど(恐ろしい。胸がいっぱいになる)。たまらないほどの虚脱感が襲う。たまらなく(腰が痛い。不安になる。うまそうな匂い)。一人でいるのがたまらなく心細い。にわかに心細くてたまらなくなる。そんなばかなことがあってたまるかといった表情井上靖。みすみす罠わなに飲はまってたまるものか谷崎。 **たまりかねる【堪り兼ねる】**▼たまりかねる(風の冷たさに。かゆさに。悔しさに。切なさに。暴言に。あまりの搾取に)。たまりかねて(口を出す。愚問を発する。叱りつける。席を立つ。話をそらす。割って入る)。とうとうたまりかねて口をきる。たまりかねたように(尋ねる。噴き出す。笑い声を漏らす)。 **にんたい【忍耐】**軛びにかかった悦牛ひじのような従順な忍耐有島。忍耐で世を渡る。時の流れに打ち勝つ忍耐と努力光瀬。忍耐心を(必要とする。振り絞る)。押しつけがましい話を終しまいまで忍耐づよく聴く有吉。長い厳冬を牛のように忍耐強く辛抱しぬく"有局。忍耐力に欠ける。忍耐力を養う。 **ふんばる【踏ん張る】**▼踏ん張る(ぐいっと足を。腰を落として。両足を広げて)。足を踏ん張って抵抗する。両足を踏ん張って立つ。踏ん張りが利かない。今が踏ん張りどころ。もう一踏ん張りが欲しい。 **もちこたえられない【持ち堪えられない】**とうとう持ちこたえられなくなる。▼持たない(体が。座が。問が。身が)。持久力がない。ひとたまりもなく(宛跡を脱ぐ。敗走する。負ける)。希望が一たまりもなく雲夢のように吹き飛ばされる=岡本。 **もちこたえる【持ち堪える】**▼持ちこたえる(退勢を。重圧に。自助努力で)。敵の攻撃を支える。持久戦に持ち込む。持久力がある。 <586> # 倒れる・滑る **うちたおす**【打ち倒す」▼打ち倒す(男を。政府を。敵を。封建制を。横なぐりに)。群がる敵を撃ち倒す安岡。打倒する(君王制を。搾取者を。支配を。資本家を。資本主義を。宿敵を。征服者を。政府を。ブルジョアジーを)。 **ころがす**【転がす】▼転がす(ころっと岩を。様々に想念を。酒を舌の上で。相手の足元を狙ってボールを。ころりと徳利を。ころんころんと体を。ボールペンをデスクに。足を引っかけて。考えを頭の中で。口の中で水をころころと。じゃが芋をころんと。ドラム缶をごろころ。夏みかんを手の中で)。土地を転がして一儲けする高橋源。▼転ばす(岩を。笑い声を)。夕立に珠を転ばす蓮の葉永井荷。ボールを蹴転がす。 **ころがる**【転がる】▼転がる(ころりと瓶が。畳の上を。布団の上を。体が草むらに。体が床の上に。ごろりと横に。妙な具合に。ころころと斜面を銀杏いちの落ち葉が肌に。突き飛ばされて地面に。焼酎の瓶がごろころ。ボールがころころと。身体が毬ょ♪のように=徳永。地べたに意気地なく惨ょじめったらしく高見崩。想像が悪い方向へと若竹。不平の言葉が抜き差しならない反逆の塊として=本庄)。少年がボロくずのようにころがる=灰谷。ころころと転がる子犬のような女の子=小池。鞠まりのように転がる猫"長崎。▼転々と転がる(球が。路面を)。床に転がる(拳銃が。みかんが。カエルのように灰谷)。紙切れのように転がったまま=松谷。草の上でイモ虫みたいにゴロゴロ転がって過ごす 佐藤秀。▼転がっていく(人情話がテンボよく。寒そうな音を立てて鋪道泥とを缶が=佐藤愛。根なし草があてどなく大地を"船戸。人影が黒い塊のように山門をくぐり坂を=長崎。話が妙な方向へ横山)。▶転がっている(ころころ石が。一攫千金やんめんの機会が。机にボールペンが。チャンスが至るところに。頭をばっくり割られた死体が"若竹。吐き出されたチューインガムのように床の上に=池田。浮浪者が筵砂しの上に芋虫のように山崎。色あせた提灯にうが力なく=遠藤)。▼死体が転がっている(黒焦げの。累々と)。とどこにでも転がっている物語。いったん転がってしまうとなかなか元には戻らない村松。転がりだす(大きな石が坂道をごろんと。小石がばらばらと)。▼転がり始める(時代が。人生が)。結婚生活が下り坂を一気に転がり落ちていく森瑞。感極まった涙がはらはらと頬を転がり落ちる宮本瓦。空き瓶が転げる。転がるような勢いで階段を駆け降りる光原。そそくさと転がるようにして階段を下りて行く"中島敦。転げるように外へ逃げ出す芥川。話が面白い方向に転がらない!京野。寝転がる(ころころと。べッドに仰向けに)。 **ころげまわる**【転げ回る】▼転げまわる(悪夢の中を。群衆の間を。地獄を。芝生を。地面を。草原を。土間を。部屋を。雪の上を。うめきながら床を。叫び声をあげながら。無我夢中で床を"重松。大変な腹痛で苦しんでいるみたいに=木多唇)。ころころと団子のように転げ廻る=内田瓦。まるで火の玉のように体の中を悲しさが転げまわり走り狂っている=坂口。ころころと床を転がりまわる。 **ころぶ**【転ぶ】▼蹴つまずいて転ぶ(石に。草の根に)。転ぶ(足がもつれて。のめって。氷上で滑って。石につまずいて。すってんころりと。雪に足をとられて。どろどろの沼の中に足をさらわれて萩原爽。ぬかるみに足をすべらせて=長崎)。どっちに転ぶか分からない。転び転び駆ける。足を草の根に引っかけて転びそうになる栗本。転んだ拍子に腰に痛みを感じる。転んで(頭を打つ。捻挫する)。転んでもただでは起きない。どっちに転んだところで変わりない。どっちに転んでも(損はない。たいした差はない)。転ぶように(逃げて行く。走る)。石につまずいてこける。 **しりもちをつく**【尻餅をつく】▼尻餅をつく(地べたに。地面に。その場に。ぶざまに。道の上に。べたんと。思い切り突き飛ばされて派手に=有川)。あまりの重さによろよろしてしりもちをつく宮尾。尻餅をつく形で座りこむ三浦し。尻餅をついて倒れる。床に尻併をついて座り込む。危うく尻餅をつきそうになる。尻餅でも揚っいたようにぐたりと腰を落とす島崎。 **スキー** スキーが外れて流れる。顔がスキーに行った人のように思い大岡。スキーの板を担ぐ。スキー場が(オーブンする。冬の賑わいを見せる=篠田)。冬はスキー場の書き入れ時。霧の中にスキーヤーが影のように渉黒く泛;かぶ大佛。ビンディングが(靴から外れる。靴にはまる。うまく靴にかからない)。▼ゲレンデ(広大な。初心者向きの)。ゲレンデで雪焼けする。長いゲレンデを持つスキー場。強い日光がゲレンデを銀盤のように光らせ嬢ぁりのように動いているスキーヤーの群れを浮き上がらせる。大佛。降雪でシュプールが消える。シュブールを描いて雪の斜面を滑り降りる。スキーヤーがシュプールを描く。 **すべりおちる**【滑り落ちる】▼滑り落ちる(雪が屋根を。扇が手から。体がソファーから。雨粒が一列に繋っながってガラス窓の表面を"井上ひ。雨が水鳥の羽を滑るように重なり合う葉の上を=長野。睫毛だから涙がキラリと極)。座から滑り落ちる(アイドルの。政権の)。▼滑り落ちていく(雪崩が山肌を。飲みこむと喉もとにあえかな冷たさを残して氷のかけらが落合)。渓たにの斜面を下へ下へと滑り落ちるように進む!奥泉。ずるりと襦袢此心を滑り落とす。丘から風が滑り下りてくる。滑落する(がれ場を。凍った <587> 岩肌を。雪渓を。尾根から。稜線切心から)。岩壁を滑って落ちる。 **すべりこむ【滑り込む】**▼滑りこんでくる(頭に思いがけない思念が!小林久。冷気が部屋の中に落合)。眼に蓋をするように石垣が視野一杯に滑りこんで来る武田泰。外から寒気が滑り込んでくる。列車がホームの時計に合わせるような正確さで辷すべりこんでくる=壺井。一語一語を慎重に吐息の中に滑り込ませてゆく=小川。▼身を滑りこませる(助手席に。蛇のよっに)。正に滑り込みセーフというタイミング!赤川。 **すべる【滑る】**滑る(凍った道が。甘い味が舌を。が腰を。スケートで氷上を。ボートが水面を。危なっかしい腰つきで。地面がぬるぬると。ドライバーの先がつるりと。風がなだらかな緑の斜面を=村上春。道路が雪でつるつると=石森。話題があらゆる分野をかすめて=中村真)。滑る足元に気を配る。さらさらと肌を滑る湯。海上を滑るがごとく行く舟"林京。雪のなかを滑ったり転んだりする=常盤。▼滑って行く(考えが不浸透性の心の表面を=堀。白帆が懶%のそうに深い碧ほどの上を=田山)。▼滑っていく(舟が水面を。活字の上を目が。うつけた静けさの底を沢の音が“古井、凪はいで鏡のような海を船が"辺見。見覚えのある夜道を車が静かに=若竹)。琴爪に火が糸のうえをさらさらころころとすべってゆく=中。音もなく滑ってゆく黒い船"日野。滑り出す(舟が川面を。音もなく。すうつと)。目を眩まぶしく感じたように視線を滑らす大佛。▼滑らせる(足を。うっかり口を。肩に黒髪を。はしたない言葉を口に)。油のような滑りのよいやさしさ=三島。滑りをよくする。しゅるしゅるという滑るような水音"大岡。滑るように(前に進み出る。岩を駆け降りる=伊集院)。黒い影が滑るように遠ざかる=福永。新幹線が闇の中を滑るように走り去る藤田。船が滑るように橋の下を曲がって行く=中局災。真っすぐに足を伸ばして滑るように歩く辻井。滑り止め(タイヤの。床の)。凯きく気はなかったのにつるりと問いが口から滑り出る"有川。ぬかって滑りやすい道。苔こけで滑りやすい石畳路が紆余曲折らせた」して続く=中島敦。横滑りする(タイヤが。妄想が)。滑走する(海而を。空中を。氷の上を。スキーヤーがゲレンデを。水の面とすれすれに)。円が横にスライドする。車がスリップする。スリップに気をつける。 **そり【橘】**橘で(滑り降りる。運ぶ)。橘に(乗る。魚や干物を積み込む。炭俵を満載する)。遥か向こうに馬梳きがちらほらと動いている=有局。 **たおす【倒す】**▼倒す(体を。自転車を。背もたれを。牌を。幕府を。一人が一人を。瓶を。面前の敵を。上体を前に。一挙に両巨頭を。シートをわずかに。首尾よく一撃で。立ちどころに三人)。上半身を倒し加減にする。獲物を射倒す。押し倒す(相手を。女を。仰向けに。体を畳の上に。その場に。ベッドに)。木を切り倒す。▼蹴倒す(椅子を。桶ぉけを)。突き倒す(男の子を。女を。柱を)。戸を蹴り倒す。一発で殴り倒す。▼投げ倒す(地面に。床に。ばったばったと)。一引き倒す(地面に。力まかせに。鷲掴功礼みにして)。▼吹き倒す(風が草を。強風が樹木を)。足払いを(かける。食う)。ひとたまりもなく突き伏せられる。突き伏せる(背中を。武者を)。▼転倒させる(足払いで相手を。相手を足がらみにかけて=池波)。対戦相手をマットに沈める。 **たおれる【倒れる】**▼倒れる(強風で木が。うつ伏せに。がくっと前に。凶徒の手に。大の字なりに。どうと地面に。前のめりに。志半ばにして。こてんと。仕事中に突然。樹木が風で。尻から後ろへ。心身の疲労で。絶叫をあげて。血を吐いて。土煙を立てて。つまずいて。脳梗塞10うにで。前にのめって。よろめいて。ばたんと仰向けに。ふらふらと道端に。へとへとになって仰向きに。もろともに地上に。口から泡を吹いて。地面を血に染めて。血まみれになって。ばったりと床の上へ。ぶざまな格好で。もんどり打って。ひらひらと紙が落ちるように声も立てずに身体が黒岩。ブックエンドを不意にはずした書籍のように家々が=獅子。朽ち木のように自然に"司馬。スローモーションで豚がのけぞるようにドタンと背中から床に=永倉。つんのめって蛙跡ぇのように地べたに=小島。頭から突っ込むようにして=勝目。射られた獣のように=横光。踊り終わってガックリと打ち伏すように!向田。折り重なったように半月。姫が玉の鎖がばらばらになって飛び散ったように=井上戴。すっと立ち上がりそのまま棒になって"北村。精も根も使いはたしあおむけに棒のように=飯田。大木がメリメリとよじれて"石森、地を這ょう根に足を取られてもんどり打つように=伊集院。ばったりと死んだように奥平。バネ仕掛けの玩具のネズミがひっくりかえるみたいにドタッと開高。人影が地に吸い込まれるように藤本)。▼失って倒れる(気を。体のバランスを)。後ろに倒れる(ばたんと。尻餅をつくように=泉優)。起こして倒れる(貧血を。眩暈まを)。▼どうと倒れる(大地に。地べたへ)。発作で倒れる(狭心症の。脳溢血のげぶの)。病に倒れる(妻が。母が)。ばったり倒れたなり人事不省になる!永井荷。▼倒れている(死者のごとく。人が棒のように"大佛)。いつ倒れても不思議ではない。岩のかげから出た瞬間風に叩かれたというふうな倒れ方=新田。からだがぐらりとかたむいてくずれるように地面に落ちる=灰谷。崩れるように(ぶっ倒れる。身を横たえる。床に倒れる)。声もなく崩れ倒れる。▼倒れかかる(波のうねりが。ふらふらと胸に。投げるように長椅子に有局)。▼倒れ込む(ふらふらと床に。べったりと地面に。ベッドにうつ伏せに。もんどり打って。ゴールを切るなり転げるように地面に有川)。 <588> # **たおれこむ【倒れ込む】**棒を倒すように胸の中めがけて倒れこむ古井。倒れ込むように眠る=高井。▼倒れ伏す(地面に。その場に。ベッドに。雪の上に。地響きを打って。のめりこむように)。▼伏し倒れる(地響きを打って。血みどろになって)。ぶっ倒れる(仰向けに。うつ伏せに。地面に。床の上に。疲れて。ソファに木偶でくのように=高見浩)。▼昏倒に认する(ぶん殴られてみじめに。後頭部を殴られて)。働きすぎてダウンする。▼倒壊する(家屋が。権力が。ビルが地震で)。地面に伸びる。 **つまずく【躓く】**▼つまずく(石に。敷居に。ぶっつけから。ちょっとしたことに)。無器用な道を選んで買くじ水井路。足元をおろそかにすると颐くおそれがある藤沢。もくろみが第一歩で躓いたかたちになる"永井路。つまずいて(体が泳ぐ。転ぶ)。出張った石の頭につまずいてよろける=横光。つまずきながら不器用に言う。悲痛と失意とに躓きながらひとりとほとほと校門を出る"久米。不用に躓きながら言う円地。▶蹴つまずく(石に。椅子に。岩に。草の根に)。順風満帆につまずきが出る"かんべ。人の運は一度傾けば事毎につまずきが起こってくる=舟橋。ちょっと躓きでもしたかのように砂埃け吸にを払う永井龍。つまずきの始まり。石につまずいたみたいに道にしゃがみこむ=木山。つまずいたようにたたらを踏んで止まる=村松。ふっと蹬やまいたように箸を置いて静かに立ちあがる=古井。厳つまずいて転ぶ。たくさんの極を蹴つまずきそうなほど並べる=安岡。 **なぎたおす【薙ぎ倒す】**▼薙ぎ倒す(津波が村落を。太刀を振り回して敵を=郤永)。なぎ倒す(草を。並み居る敵を。両足を。当たるを幸い。悪人をばったばったと=氷室)。木々を難なぎ倒さんばかりの勢いで風と雨が吹き荒れる=篠田。薙ぎ倒されて座席に転がるほど揺られる=宮尾、樹木を薙ぎ倒すような音辻井。 **なめらか【滑らか】**唇が美しい蛭ぃるの愉のように滑らか=川端。滑らかで耳に快い声。滑らかな(張りのあるバリトン。舌から言葉がまろびでる=中。流るるような声"田山。人形のような顔「岡本)。傷一つない滑らかな梢さゃ。白く光る滑らかな丘。歌っているように滑らかな声辻井。蛇のように滑らかな長い頸くび"景山。山々が大和絵風な滑らかな起伏を作る"外村。滑らかに(体を動かす。交際が進む。艶のある皮膚。張った肌)。厳菜託いんのようになめらかに身をくねらせる=筒井。口が滑らかに動く。血液がなめらかに血管の中を循環する=有房。酒が舌を滑らかにする=山田泳。鈴を鳴らすように滑らかに云う“久米。舟が滑らかに波の上を進む"福永。▼滑らかになる(舌の動きが。船の走りが。声が次第に。肌が白く)。陶器のように滑らかそうな肌東野。茹で卵をむいたような顔。狭い村では建前と噂話が生活の潤滑剤三浦し。たっぷり潤滑油を注“す。すべすべした(岩。美しい肌。壁。肌)。百日紅の枝がすべすべして赤ん坊の肌のよう福水。すべすべしている(湯上がりの肌が。ビロードのように)。滑っこい(唇舌。肌。肉体がまつわりつく)。ぬめぬめ滑っこい。つるつる顔をなでる。真っ青なつるつるした空。つるつるに頭がはげる=田中。頭をつるつるに剃る。ゆで卵をむいたようなつるつるの顔り高見町。円滑に(事を運ぶ。手続きを進める)。▶円滑にする(頭脳の働きを。人間関係を)。▼円滑になる(流れが。コミュニケーションが)。 **ぬるぬる**全体にぬるぬるした感じの女!丸谷。ぬるぬるとした青い水草が一面に絡む佐藤春。ぬるぬるする(石が水垢ふやで。手が汗で)。恥じらいと苛立ちからちの入りまじった奇妙にぬるぬるする感情=黒井。ヌルヌルとしたゼラチンのような感触景山。髭黑のないぬるぬるしたような顔本庄。ぬめっとした色の白い小太りの男"椎名誠。ぬめるような目の光"宮本輝。ぬらぬらした馬の鼻息。蛇のようにぬらぬらの土"小松太。唇がぬめぬめと脂で光る。茶色のぬめぬめとした厚いわかめ=川端。巨大ななめくじの這ぃったあとのようにヌメヌメとしている壁村上春。ぬめぬめした感触。肌がぬめりと光る。ぬめりのある生き物。ぬめりをねとねと帯びる。小千谷剤はごの紺色が昆布のぬめりのように光る=伊集院。 **ひっくりかえる【引っ繰り返る】**▼ひっくり返る(仰向けに。ぶざまに。ごろりと。すってんころりと。人形のようにもろく後ろに=石坂。根っこに足をとられて"長崎。腹を強く殴られてゴキブリのように"小林信。服のまま室の真ん中にどしんと音を立てて=伊藤整)。▶ひっくりかえる(どしんとソファに田辺。棒杭低いでも倒れるように簡単に=椎名誠)。危うく後ろにひっくり返るところ若竹。口では何とか抜かすくせに腹の底ではひっくり返るほど嬉しい今灭。天地がひっくり返るほど意外な話"火坂。ひっくり返らんばかりにのけぞる=田辺。世間がひっくり返るような天騒ぎ=舟橋。天地がひっくり返るような苦しみ"石坂。天地のひっくり返るような声で絶叫する=子母沢。体が仰向けにでんぐり返る。もんどり打って(川に飛び込む。転げ落ちる。絶命する。水中に身を没する)。▼転倒する(仰向けざまに。足を滑らせて。足を払われて。バランスを失って、もんどりを打って)。地面に浮き出た木の根に顕わまいてぶざまに顚倒に礼する=高橋知。 **よこだおし【横倒し】**横倒しに(転ぶ。倒れる。吹き落とす)。横倒しになる(オートバイが。トラックが。地べたに丸太ん棒のように"泉俊。はじけ飛ぶように"泉優)。横倒しにする(オートバイを。生木を)。他愛なく横倒れになる。仕事が終わって丸太ん棒のように棚の中に横倒れに倒れる=小林多。▼横転する(自動車が。電車が。バイクが。もんどり打って)。 <589> # 高い・低い **いわやま【岩山】**岩山(巍峨ぶがたる。荒涼とした枯れた灌木跡んまじりの=北)。岩山に夕焼けが照り映える。荒々しい岩山を間近に望む。ダイナマイトで岩山を砕く。白い鋼鉄の固さで空に突き出ている岩峰=新田。奇怪な形をした岩峰がそびえ立ち朝日に照らされて炎のように赤く輝いている=西木。 **うえ【上】**上になり下になりの取っ組み合い"里見。上には上がある。炎が上へ下へと渦巻く。上を(下への大騒ぎ。見上げる。知らないような拡張を続ける=佐多)。さらに上を行く。もう一つ上のステージに上がる。上級の(学校。クラス)。上方を見上げる。真上から垂垂直に落ちてくる。震源の真上にあたる。 **おね【尾根】**尾根が(婉々えんと這ょう。あかね色に染まる)。尾根から滑落する。尾根に向かって突き進む。尾根の陰に消える。風が尾根を渡っていく。尾根方向からなだれをうって乳白色の霧が下りてくる三浦し。尾根道が長々と横たわる。ナイフの刃のような岩稜=新田。峻瞼にんな山稜。陽が山秋に隠れる。黒々とした山稜にんに囲まれた湖夏樹。 **かい【下位】**成績が下位にある。万年下位に低迷する。下から数えたほうが早い。順位が低い。順位が最下位になる。下級の(官僚。裁判所。将校。兵士)。位階もない下級の官人豊田。社会の下層。下層から道はい上がる。下層に突き落とされる。社会の底辺から這い上がろうとする。低い地位に甘んじる。 **かいか【階下】**階下からどかどかと駆け上ってくる。足音が階下に消える。▼階下に下りていく(のろのろと。先を争うようにして)。階下の物音に注意する。階段を踏み鳴らして階下へ降りていく若存。 **かいじょう【階上】**階上から下りる。階上に上がる。階上階下を隈くまなく探しまわる。最上階に住む。最上階の部屋。エレベーターで最上階まで上がる。 **こうか【高価】**ラッコの毛皮は宝石みたいに高価=本多。材料が高価で手に入らない。高価な(毛皮のコート。古い壺っは。衣装を身につける。革のジャンバー。切符をふいにする。書画骨董にうに凝る。代償を支払うはめに陥る)。外国製の高価な音広。見るからに高価な花束。目のつぶれそうに高価な土産物を持参する=阿久。なるべく高価に売りつける。金額が張る。ちょっとやそっとの金では買えない"加賀。目の飛び出るほどの法外な値段"徳田。高い値段で売りつける。値段が高い。▼高い値段(飛び切り。目の玉が飛び出すほどに高橋三)。値段がべらぼうな高さ。値の高さにひるむ。値の張る品物。たいした金目の物がない。金目の物を(売り払う。強奪する。物色する。持ち去る)。金目のものを洗いざらい掠かすめ取る=福水。 **こうげん【高原】**▼高原(開豁妙な。坦々たる)。見晴らしの良い高原に出る。高原の冷たい空気がひたひたと押し寄せるように満ちあふれる=小池。高地に順化する。 **こうそうけんちく【高層建築】**堂々たる高層建築。高層(住宅がそびえ立つ。ホテルが建ち並ぶ。マンションが建つ)。都心の高層ビル群が見える。▼超高層ビル(天を摩する。副都心の)。超高層ビルが(そそり立つ。そびえ立つ)。二十階を優に越すビル。 **さいてい【最低】**妥協できる最低の線"篠田。人間として最低の部類に入る"さだ。最低記録を更新する。政治家としての最低限の資質。景気が底入れする。相場が底打ちする。底値を(更新する。つける)。景気が底ばいで推移する。株価が鍋底を経て上昇に転じる。 **さんちゅう【山中】**山中で道に迷う。山中に死体を遣棄する。人跡もまれな山中に潜む。道なき山中をさまよい歩く。追っ手に怯ぉぃえながら山中を彷徨うする=遠藤。山中深く分け入る。山の中で一人で暮らす。叫び声が山の中に響き渡る。山の中のひっそりとした温泉宿三浦綾。どちらを向いても山ばかり。 **さんちょう【山頂】**鉾にこの先のようにとがっている山頂"藤沢。山頂が(初雪で薄化粧する。雲の産んだ鬼子のように空中に現れ出る』有島)。雲海に浮かぶ山々の山頂が小島のように黒ぐろと見える=飯田。山頂から海を望む。山頂に(薄雲がゆるく流れる。向かって出発する)。真っ白い鶏冠忙誌のような山鎖でん"堀。山の頂上。山の(頂に立つ。頂を見上げる)。内側に闇を含んだように緑の濃い山の頂高井。暮れかけて山の頂が淳曰い空に影となってみえる=高井。 **さんぷく【山腹】**山腹に(桜の花が白い。花が咲き乱れる)。山腹を切り開いた緩やかな自動車道路"三島。道が山腹を縫う。ローカル線が沢沿いの山腹を走る"三浦し。▼中腹(丘の。崖の。山の)。 **さんみゃく【山脈】**▼山脈(重畳する。島の背骨のようにある=塩野)。山脈が(青空に幽かすかに爪でつけたような線を引く堀。嫉しものよった毛布のように拡がる遠藤。紫がかった暗い色を長々となする=芥川)。山脈に源を発した川。山脈の稜線もにうが静かに横たわる。連旦以认する山脈の峰々。遠く山脈を見る。至高の(極み。目標。陶酔のうちに最期を迎える=倉橋)。世界に冠たる(技術。技術国家)。 **こうてい【高低】**墓が高低に並んでいる。音の高低を判然と聴き分ける"九鬼。高低様々な声が一斉に和する加賀。三百メートルほどの高低差を一気に登る。 **さいこう【最高】**最高の(域に達する。栄誉を受ける。至福の時。地位を極める。人を選ぶ。位置を確保する)。人間として最高の立派さ。望み得る最高の水準。文学の極北の観念。最良の(状態を保つ。方法を検討する)。主題が山脈のように高く連なる=中村真。 <590> # **さんよう【山容】**山容が闇の中に溶け込む。くっきりと山谷を見せる。荒々しい山谷をむきだしにする。高橋克。山の姿が額縁に収めたように型が極まる=高井。▼山の姿(気化した色素のように透明で消え失せそうな有局。鋼鉄のように寒く硬い=有忌)。 **した【下】**一段下に見るような態度。一歩下に見下す。当落線上よりやや下にある。下へ下へとかいくぐる。転げ落ちるように下へ降りる"円地。上を下への大騒動。丘の直下に広がる景色。赤道直下の国。遥か真下に糸のような細さに見える渓流"中房彩。 **したっぱ【下っ端】**いちばん下っ端とおぼしい若い男"篠田。十把一叱らはからげの下っ端にすぎない。べいべい(駆け出しの。下っ端の)。吹けば飛ぶような軽輩小者。小物は相手にしない。逮捕されたのは雑魚ばかり。 **じょうい【上位】**上位に(食い込む。入る)。人気投票で上位にランクインする。上位の椅子を占める。上位を占める。ベストセラーの上位を占める。べストテン(今週の。打撃の。人気の)。ベストテンを選ぶ。 **たかい【高い】**高い(圧力をかける。香りが漂う。空を飛ぶ。評価を得る。お金を出して買う。山がそびえたつ。所から見下ろすときの眩暈=梶井)。▼高い(頭の位置が。栄養価が。温度が。格が。確率が。気温が。技術水準が。教育水準が。血圧が。志が。思想の次元が。質が。湿度が。純度が。使用頻度が。生活水準が。程度が。的中率が。天井が。波が。人気が。値が。ハードルが。評価が。不評の声が。ブライドが。偏差値が。身分が。目が。家賃が。より完成度が。料金が。レベルが。法外に。頭ひとつ分。木々が鬱蒼と。ひときわ。地獄耳として評判が。社会的な地位が。天才の呼び声が。馬鹿馬鹿しく地価が。ベッドの回転率が。少年時代から俊才の名が=山本周。夙っとに淫奔みんの噂が=中島敦。控えおろう、頭が"飯田。目がくらむほど=田辺。目ん玉が飛び出るほど"貫井)。一段高い見識。香り高い花。一本調子の高い声で言う。格式の高いホテル。完成度の高い作品。気品の高い豪奢にらな趣。こんもりした丈の高い生け垣。信頼性の高い供述。ただより高いものはない。致死性の高い農薬。論理性が高い文章。弾んだような高い声=中上。一番高い声(柵かんに障るほど。喉が裂けるほど=石田衣)。高い声を上げて笑う。鳥の巣みたいな高いところに逃げこんで世間をこわこわのぞく=日野。▼可能性が高い(殺人事件の。無駄足の)。気位の高い(男、女)。高く(澄んだ音。そびえる塔。突き出た山。評価する。そびえ立つ樅もんの巨木。低く目まぐるしく飛ぶ)。水色に澄んだ秋の空が気が遠くなるほど高く晴れ上がる"石坂。維持費が高くつく。帯を高く締める。火山が高くそそり立つ。鐘が高く空に響く。汽笛を高く鳴らす。首を高くもたげる。梢が高く遠く見える。才能を高く買う。舌先三寸で高く売りつける。上空高く舞い散る。心臓が高くとどろく。空に高くあげる。月が高く上がる。天高く遥かに仰ぎ見る。筋が高く通る。一声高く悲鳴を上げる。服の裾が潮風に高く吹き上がる。ベルが高く鳴る。頬骨が高く張り出す。ボールが高く弾む。目よりも高く持ち上げる。急に三段階くらい声を高くして言う鶯沢。▼高くする(価格を法外に。火のつくように泣き声を=梶井)。高くて(手が届かない。まずい店)。▼高くなる(生活程度が。胸の動悸が。足音が次第に。声がだんだん。声が一言ごとに。価格がおそろしく。名がいやが上にも)。声が一段と高くなる。高めに値をつける。天まで届くような。目がくらみそうな高さ。目の玉がでんぐり返るほどの会費"胡桃沢。ほら吹きとして悪名高い。ひょろ高い(塔。ビル)。高等な(技術。戦術。テクニック)。高度な(批評眼を持つ。技術を集約してつくる)。天を摩してそびえる杉の美林。万丈の(気を吐く。山)。 **たかさ【高さ】**高さ(すぐ手の届きそうな徳永。岩たかさにうしろ手を突いて胸まで反らないと目の届かぬ=川端。ちょっと覗のぞいただけでたちまち眩暈まを感じるほどの"中島敦)。就職率の高さが評判となる。ニメートルほどの高さから跳びこむ。目の高さに手をかざす。背丈ほどの高さに積み上げる=壺井。塔か望楼のような高さの部屋"日野。周りに同じ高さの建物がない。顔の高さまで持ち上げる。かなりの高さまで登る。雑草が腰ほどの高さまで生い茂る。手のひらを目の高さまで上げる。両腕を耳の高さまで持っていく。レベルの高さを目の当たりにする。雲雀ひばが飛行機と高さを競って空で鳴く“阿川弘。高度四千メートルで飛ぶ。高度と危険度が上がれば上がるほど燃えるタイブ三浦し。飛行機が高度を下げる。▼高度を上げる(飛行機が。次第に)。丈が伸びる。丈の(すらりとした小粋な人物。高い草で覆われる。低い雑草が生える。短い海浜の植物)。 **たかだい【高台】**▼高台(海を見下ろす。見晴らしの良い)。高台から眺望する。高台に建つマンション。二つの高台に挟まれた谷問。▼小高い丘(海を望む。市街地を見下ろす)。小高い丘の上に立つ。山の手の住宅街。 **たかだか【高高】**高々と(宙に飛ぶ。枝を空にさし上げた木。声を上げて笑う)。腕が高々と上がる。炎が高々と立ち昇る。右手を高々と突き上げる。夜空が高々と冴える。▼高々と掲げる(旗を。帆船がマストを)。 **たかどまり【高止まり】**▼高止まりする(株価が。金利が。相場が。率が)。 **たかね【高値】**思った以上の高値がつく。品不足の高値が生じる。かなりの高値で取引される。高値に釣られて売却を希望する=松岡。言い値が法外に高い。高額で買い取る。▼吹っかける(法外な料金を。閤値を。足元を見て高く)。 **たかね【高嶺】**高欲(アルブスの。富士の)。高嶺に <591> (咲く花。降る雪)。高嶺の花のような女篠田。標高二千メートルを超える山。 **たけだかい【丈高い】**丈高く草が伸びる。雑草が丈高く生い茂る。▼丈高く茂る(すすきが。夏草が)。手入れの行き届いた丈高の生け垣。丈が高い。 **ちょうしん【長身】**▼長身(均整のとれた。雲をつくような。百九十センチを超える)。長身の(痩せた女。大股な足の運び。体を心持ち折り曲げる)。すらりとした長身の体。六尺を越えた長身の人物。長身を少し前屈姓烷みにした歩き方に永井龍。長身瘦軀に、うの男。▼背が高い(すらりと。ひょろりと)。上背のある痩せた女。人並み外れた身長。鴨居灬もに届きそう背丈。背丈の高い立派な体格。▼高い(身長が。背丈が)。すらりと背の高い女性。背がひょろ高い。身の丈が高い。 **ていち【低地】**低地(じめじめした。槌っちでたたいていちたような平坦な"加賀。落ち葉の吹きだまる日蔭の"柴田錬)。海抜ゼロメートル地帯。低湿な(地域。沼地。谷地)。 **ていちんぎん【低賃金】**絶望的な低賃金。低賃金で働かせる。低賃金に据え置く。低賃金の非正規労働者。云われなくとも確かに安月給取りの永井龍。サラリ1が安い。悲給に甘んじる。薄給の身。給料が安い。 **てっぺん【天辺】**頭のてっぺんが禿はげる。てっべんから転げ落ちる。てっぺんまでのぼりつめる。屋上から落ちて死ぬ。デバートの屋上から飛び降り自殺を計る笹沢。マンションの屋上からダイブして死ぬ=横山。屋上を冷たい風が吹き抜ける。 **でんあつ【電圧】**電圧が(上がる。高い。低い)。電圧を(上げる。かける。下げる)。ボルテージが(上がる。高い。低い)。ボルテージを(上げる。下げる)。 **どんぞこ【どん底】**血を凍らす恐怖のどん底"石坂。どん底から(浮かび上がる。道はい上がる。身を起こす。こみあげて来るような悲痛な念がとめどもなく波立って来る徳田)。貧困のどん底で生活する。人間不信のどん底にある。悲愁のどん底に喘ぁえぐ。食うだけがやっとのようなドン底暮らし-阿部。底の底まで(知りつくす。腐敗している)。心の底の底まで見抜く。最下位から抜け出す。最下位という不成績。最下位に(甘んじる。転落する)。 **にかい【二階】**二階からおりてくる(のっそり。足音もにぎやかに)。二階の窓から顔を出す。元気よく二階へ上がる。風が二階を吹き抜ける。二階建ての(家。バス)。 **ねぎる【値切る】**▼値切る(工賃を。賃金を。店で品物を。料金を)。したたかに値切り倒す。内田康。値段を負けさせる。値引きさせて買う。 **ひくい【低い】**低い(家並みが続く。叩うぃきを漏らす。木が生い茂る。トーンの声。土手が続く。消え入りそうな声。知名度に甘んじる)。▼低い(一段敷地が。温度が。確率が。可能性が。気温が。血圧が。腰が。信憑性しいが。生活水準が。丈が。程度が。天井が。鼻が。身分が。優先順位が。レベルが。相対的に。一段。大学の進学率が。声が聞き取りにくいほど"北原)。次元が低い話。一オクターブ低い調子で話す。丘が何かの塚と見まがうほどの低い隆起となって終わる"藤沢。潮騒乱が湧き上がるように聞こえてくる床の低い部屋"円地。背中がぞくぞくするほど温度の低い空気に堪える=夏目。甚だ次元の低い自分に都合のいい考え方三浦綫。低いが(よく通る声。力のこもった声)。聞こえるか聞こえないほどの低い声=日野。獣の叩くような低い声をあげる=田島。水の低きにつくがことく自然に進んでくる=庄野。水は低きに流れる。低く(頭を下げる。沈んだ声。呟くような声。長くいきむ。控え目な声。太い錆び声。がっしりと地上に腰を据える。被さってくる枝。叫び声をあげる。地上をかすめて飛ぶ。どすを利かせて言う。耳元にささやくバンドがファンファーレを高らかに奏する戸川。音吐朗々と読むに堪える文章人之夏。 <592> 風が渡ってゆくような声=船山)。頭の上にのしかかってくるような低く厚い雲日野。雷に打たれたように低く頭を垂れる=光瀬。怒鳴り声が低く地を道はうように追ってくる=小池。光を孕はらんだ部厚い雲が低く垂れる三島。冬が低く地を這って沈む"長塚。家々が低くうずくまる。刀を低く構える。声が低くこもって響く。声を低く押し殺す。重心を低く安定させる。頭上に低くのしかかる。喉の奥で低く笑う。冬空が低く曇る。ぼそっと低く言う。宵が地を低く覆う。小石を投げたら届きそうなくらい空が低く見える=田中。声が耳に低くこだまをつづける=勝目。声を低くして聞き返す。腰を低くして言う。低くする(頭を。姿勢を、身を、声を一段)。声が一段と低くなる。理解の次元が低すぎる。声を低めて一人ごつ。しくしくと声を低めて泣く。インコースの低めに投げこむ。外角低めのストライク。低める(股激んに腰を。価値を。姿勢を。背を。声を殊更)。▼声を低める(恥じらうように。あたりをはばかるように=火坂)。さほど標高もなさそうな山=篠田。低く呟くように答える。 **ふじさん【富士山】**綿帽子をかぶった富士山。富士山が悠然たる佇怜たまいを見せる=村松。頭に火山礫妙さんの錆色にびを戴いたいた厳めしい姿で富士が窓一面にかぶさって来る=大岡。富士の中腹に群がる雲が黄金色に染まる=国木田。真白い富士の峰。優美な円錐形以炊けの山。両肩が見事な曲線を描いている霊峰村松。空気の希薄な富士山頂。 **やすい【安い】**安い(品に押される。原材料を求めて走りまわる。品物が海外から入ってくる)。安い(値段が。思いの外に家賃が。値がお話にならないくらい"吉川)。うまくて安い店。タダ同然の安い家賃・西木。破格に安い月謝で生徒を集める=内海。いい物を安く(作って提供する。売って何が悪い=中野率)。安かろう悪かろう。身の安きをむさぼる。安く(買い叩く。陰ってもらう。仕入れて高く売る。見積もっても五千万円は下らない宗田)。市価より三割安く買える。安くて手頃な貸家。ただのような値段。安からぬ思いを淋しい笑いにまぎらす永井荷。びた一文負けられない。・安くする(値段を。労質を)。負ける(衣裳代を。宿泊料を。家賃を)。安物買いの銭失い。そこらの安物とは違う。割安で購入できる。まとめて買うと割安になる。割安感が出てくる。 **ふもと【麓】**波濤壮とのように起伏した嫉しもの多い山の麓田山。山の麓が海に迫る。施から一歩ずつ足固めをしていく=中村貞。腕に点在する家並み。麓の町に下る。麓をなぞるように進む"伊坂。道路が山の麓を走る。山麓に広がる町。村落が山麓に並ぶ。山麓を流れる川。山裾がほとんど切り立って見えるほどの急角度で谷へ向かって雪崩れ込んでいる=高井。山裾に(いだかれた湖。居を構える。沿って曲がる道清水羨)。山裾の川が杉の梢から流れ出るように見える=川端。山の中腹から山裾まで段々畑が続く。川が山裾を蛇行する。 **やすね【安値】**▼安値(他店よりも。破格の)。安値で(売る。競り落とす)。安値に吊られて買う。最安値を記録する。安い(値段で売る。値で売買される)。バカみたいに値が安い=開高。できるだけ安価で買い取る。低価格で泊まれる宿。低廉な価格。廉価で販売する。二束三文で(売り払う。譲り受ける)。二束三文に買い叩かれる。二束三文の(値で買う。値打ちしかない)。 **やま【山】**山(切り削ったような急峻な"井上靖。椀を伏せたような小さな真継。牛が寝ているように奥深く豊かな形をしている=中河。鬱蒼と茂る樹々が人間の近づくのを拒否しているような辻井。丘のようなまるいこんもりした水上。なだらかに裾のひろがっている太宰。屏風を立てたような太く。日を受けて風に色が変わる=中上。屋根屋根の上にぽっかり島のように浮かんだ安岡)。山高きが故に貴に、うからずっ太宰。山が(深い緑を宿す。幾重にも重なる。悲想色の雲に覆われる。うっすらと雪を被る。なだらかに谷へ落ちこむ。緑に膨れた頂を重ねる。青い空にぎざぎざの稜線もに、うを描く=村山。霞の帯を締める落語。暁暗のなかに森閑としている=中鳥。切り立つようにして聳くぃえる高井。黒い輪郭を星空に刻む=福永。泰然とした貫禄を備えている"伊坂。乳いろの霞の中にとけこむ水上。宝石のようにあおくつやつや光る=住井。幽霊のようにボンヤリと見える=獅子)正面に雲を頂いた山が望める。資料の山が崩れる。谷川の両岸に山が迫る。獣の形をした山が巨ぉぉきな顎を海峡に浸して潮を飲む内田頁。小高い丘のような山が黒く空に浮く=中上。空を剥くざって山が蒼々納球と聳える菊池。道も谷も見分かちがたいほど山が荒れる=水上。山の上に山が重なり秋の日の水のごとく澄んだ空気に映じて紫色に染まる=国木田。山から(流れ出て海へ注ぐ川、窓も々が道はい降りる)。焼きあがった炭を山から下ろす。山そのものが色絵錦の陶器のような秋吉川。街が瓦礫訪れの山となる。野菜が山と積まれる。山菜採りに山に入 **みね【峰】**▼峰(海に向かって開いた奥深い谷の真ん中をめがけて牛がのさばりでたような格好をしている"中。垣のように水平線をぐるりと取り巻いて立ち騰のほってはいつか潰える雲の=岡本。若い生姜し松の根ほどの雲の=岡本)。峰が(にょきにょき突っ立つ。高く空に秀でる=井伏)。夕陽があたって真っ白な峰が薔薇色に染まる遠藤。峰に初雪がかかる。雲の峰に目を奪われる。嶺ょもに雪のひだが畳まれる=本庄。峰の蔭が紫に沈む"大岡。鋭峰を(征服する。望む)。 **やすあがり【安上がり】**安上がりな(男。女。生活をする)。費用がかからない。服装代があまりかからないですむ。土地を格安で手に入れる。 <593> る。四方を山に囲まれる。書類の山に埋もれる。書物の山に分け入る=江戸川。道沿いの流れの向こうに裾をひいている山に濃い青嵐が煙ってみえる徳田。▼山になる(灰皿が吸い殻の。デスクの上が書類の=池井戸)。山の(土を客土する。恵みが村を救う。生活を捨てて下界に下りてくる=辺見。黛色別に霞み渡っている眺め=円地)。清冽せかな山の水。爽やかな山の削。新緑の香りを含んだ山の空気。太陽が山の陰に沈む。日を背にした山の側面が煙ったように紫色をしている志賀。夕焼けの空に山の影が黒く浮かびあがる"三浦し。理性や平地での常識では測りきれない山の不思議三派し。山は胡見ると神々しく見える=向田。東北の山は概してなだらかな女性的な姿であるから抱き包み込む優しさがある奥泉。夕靄の中、山は蒼黒ぶらく女のふくらんだ胸のような形で拡がっている=遠藤。藪ゃぶを掻き分け山へ分け入る=池井戸。山ほどある仕事をこなす!水倉。悩みが山ほどある三浦絵。山をかけたのが偶然当たる。後ろに山を背負う家。大きな山を当てる。故郷の山を懐かしむ。本の山を前にして考えこむ。意気たるや山をも呑まんばかり“美濃部。里のほうに下りていく夕閤の背を追うように山を下りる落合。残雪の肌に新緑の萌える山を歩く=川端。大切な山を大切に使ってゆく高田。積み上げられた仕事の山をおそろしいスピードで片付けていく=村上春。山一つ越えた村。山のように(沈黙を守る。積もったこみ。堆炒好く幸福を積んでくる!佐昨春)。メシを山のようにこんもりと盛りあげる=高見順。山塊がたおやかな稜線を描く熊谷。四囲を山岳に四まれる。山影がうっすらと浮き上がっている。 **やまあい【山間】**▼山間(あたりに人の気配もない=川端。夢のような美しい"阿川弘)。山間に月が出る。景色か山間にかかって狭められる=高橋和。山間の(村に生まれる。水の美しい場所で暮らしたい!火坂。明媚な風光に魅される=山岡)。山間を抜ける道。山岡深く入った村。山かいの村。山かいを流れる川。 **やまなみ【山並み】**幾重にも連なる緑の山並み=辺見。山並みが青くかすむ。遠くに青い山並みが見える。緑濃い山並みが続く。青黒い山並みが空に向けてくっきりと立ち並ぶ=村上返。低い山並みが黒々と横たわっている=なかにし。山並みを遠する。山々(幾重にも重なり合って周囲を取り巻いている=海音寺。不確かなような鼠色ゆげぇに徐々に侵され出す堀。模制もことして隠見する深みとの"中局多)。山々が(重畳と重なる。遠く幻のようにかすむ"光瀬。蠑螈い。の背のように黒い志賀。海のうねりのように波を果てしなくたたんでいる=松本。重なり合って次第に逆く春霞のなかに溶けこむ阿川弘。徴がずかな月の光を含んでいる空気の中に肌弦にに浮いて見える菊池。雲をかぶって髪を振り乱した女のように覗のぞきかかる=大岡。鋭い剣のような姿を見せる=遠藤。厚さがありそうないぶした黒で星空の裾に重みを垂れる=川端。大和絵風な滑らかな起伏を作る"外村)。木のない湿原が尻ひろがりに遠く退いた先に山々が重なる大岡。低い山々がやわらかな陽を浴びて黒く静座する=真継。山々に銃声がこだまする。声が山々に谺にだする。山々の(木々に新芽が吹く。頂が夕暮れになると赤々と染まり濃い紫紺の影が翔けるように谷間に落ちる=福永。黒い影が園よりもずっしりと黒 い吉本)。雄大で美しい山々の姿に心を打たれる“白井。近場の山々を歩く。雲が低く垂れて山々を包む村上元。山並みが屏風30粒のように住宅地をかこう!永井能。山々が屏風のように立ち並ぶ・井上靖。 **やまはだ【山肌】**▼山肌(水紋のように闇が濃淡を描いてひろがる!高橋和。見た眼にむくむくした=鳥尾)。山肌に積もった雪。根雪が山肌にはりつく。薄く雪の積もった山肌はどこもかしこも杉の木で覆いつくされている三浦し。浴澄石の流れが山肌をずたずたに切り裂く、夕陽が赤々と山肌を焼く福永。強い陽ざしを受けて染めつくような緑の山襞过"山崎。山線を縫うように走る=高橋克。山々が澄みきった空気の底にくっきりと髪を重ねている合崎。山裾の嬰々にむら消えの根雪が見える=水上。 **ゆかした【床下】**床下から這い出す。床下に(金を隠す。もぐりこむ)。縁の下で地虫が鳴く。緑の下に(隠れる。もぐりこむ)。縁の下の(たけのこ。力持ち。舞)。 **りょうせん【稜線】**遠くに見える山のなだらかな校親が春霞の中に揺らいでいる=南木。町並みの向こうの山の稜線がくすんだ色の雲に隠される=高井。稜線から(滑落する。月が現れる)。飛雪が稜線に沿って舞っている。稜線の緑が空の青にじんわりにじむ=辺見。山の形が闇に溶けて稜線の影も浮き出ていない!高井。稜線を伝う小道。県境の稜線を越える。山桂が鋭い稜線もにらを停止した波のように屹立させながら何重にも連なる藤本。山際に星が輝く。山の端はに夕焼けが広がり始める。雲が山の端に消え失せる。太陽が山の端に隠れる。夕日が山の端に沈む。朝日が山の端に顔を覗のきかせる=高橋三。月が山の端を離れる。 **れんざん【連山】**▼巡山(層々たる。後々たる。奨のように波打つ峰をひろげる藤沢)。連山が(障壁のように空を斜めに区切る―藤沢。波濤証とのように連なりわたる=田山)。巡山の湧き出たごとく海原にかかる大瀑布のごとく横にのびた巨大な渦巻く雲"阿川弘。巡なっている山々(城壁のように蜿蜒びと新田。鋸細にの歯のように=中河)。▼連なる(高峰が。山々の頂が。山が幾つも。明け方の白さを増した空を背景に山が滲にじむようになだらかに高井)。白煙のごとく悠々と連なった山々伊集院。戦々ががたる連峰。糸を引くがごとき連峰が夢よりも淡い=国木田。 <594> # 出す **エネルギー** 宇宙を満たしている真空のエネルギー=佐藤勝。エネルギーが(一挙に解放される。ふつふつとたぎる)。体中にエネルギーがあふれている。肉体にエネルギーが充満する。怒りをエネルギーに変える。異常と言えるほどのエネルギーに満ちた美野間。国民的なエネルギーの高揚。エネルギーを(持て余し気味。仕事に集中する)。生きるエネルギーを取り戻す。エンジンがかかって始動する機械のようなエネルギ1を周囲に播きちらす荻原突。過剰なエネルギーをひたすら削り取る落合、溜まりに溜まっているエネルギーを一挙に吐き出す=日野。自然エネルギーを利用する。▼原動力(発展の。平和運動の。優勝の)。 **かきだす**【掻き出す】▼がさがさと木の葉を掻き出す。濡れ鼠わずの体で水をかき出す三局。火掻かき棒で灰を落とす。▼掻い出す(土を。泥水を)。 **げんしりょく**【原子力】原子力を利用する。原子炉が営業運転に入る。原発が(稼働する。老朽化する)。原発の安全性を論じる。原発を耐震補強する。原発事故が起こる。原発反対集会を開く。 **こぶ**【瘤】瘤が(できる。引っ込む)。胸にわだかまる瘤が潰れたような気がする=高樹。頭にこぶを作る。たんこぶをつくる(頭に。額に)。手足のふしぶしに瘤のような筋肉が盛り上がる=山本周。無数の瘤のような波"重松。主義主張がコブのように自分の気ままな行動をしばりつけているような窮屈さ=小林多。患部全体が瘤のように腫れあがる=井伏。二つの盛り上が瘤のようにうずくまる=大岡。淋巴腺も心がが瘤のように腫れ上がる=高井。▼いぼ(丸い。赤黒い少女の乳首のような=椎名感)。熟したキイチゴのように大きな疣いは小松木。いぼができる。いぼをこしらえる。 **しみだす**【染み出す】▼しみ出す(バルブから水が。不安と悔恨が胸に)。失望の色が顔に染み出す=加賀。じくじくと水のしみだす軟弱な地盤"加賀。しみ出してくる(疲れがじわじわと。眠気が体の深いところから若竹)。顔に喜びがかくしきれずに滲にじみ出す安岡。 **しゅつりょく**【出力】出力を(上げる。抑える)。出力する(データを。テキストを)。▼アウトブットする(アイデアを。情報を。インブットしたものを。コンビューターから)。 **しゅんぱつりょく**【瞬発力】瞬発力が大きい。瞬発力に欠ける。彼我の瞬発力の差は歴然としている=貫井。瞬発力を発揮する。 **しょうべん**【小便】番茶みたいに濁った小便吉川。小便を(失禁する。垂れ流す。漏らしそうなくらい緊張する=なかにし)。緊張のあまり小便をちびる。犬が片足を上げる。小便臭いことばかり言う。シャーッと勢いよくおしっこが出る=極。床がおしっこで汚れる。小水を失禁する。小用に(立つ。かこつけて息抜きする)。道端で放尿する。尿が濁る。尿を(検査する。漏らす)。尿意を(催す。覚えて目を覚ます)。寝小便を(して叱られる。して世界地図を描く。して布団を濡らしてしまっ=佐高)。ちょっとやそっとじゃ治らないかなり頑固な夜尿症戊問。 **ぜんりょく**【全力】全力で(責任を負う。敵をやっつける。路地に駆けこむ)。馬を全力で走らせる。再発防止に全力で取り組む。全力を(あげて指導に当たる。傾けて書き下ろす。使い果たすまで敢然と打ちかかる。尽くして折術に当たる)。混乱回避に全力を注ぐ・犯人逮捕に全力をあげる。危機打開に全力を尽くす。ありったけの力を絞る。力一杯叩きつける。目いっぱい力をこめる。総力を結集する。両肌を脱いで(世話に当たる。人助けする)。火事場の馬鹿力。馬鹿力に圧倒される。馬鹿力を(出す。発揮する)。馬鹿力を振り絞って暴れる。 **だいしょうべん**【大小便】大小便を(垂れ流す。漏らす)。自然の欲求に迫られる。老廃物を排泄邨かする。排泄介助する。朝の礼拝堂に炭尿ふ礼にの気が流れてきたよりももっと興ざめなこと=獅子。炎尿を(垂れ流す。漏らす)。便意を(覚える。催す)。用便に立つ。用便を(済ます。足す)。 **だいべん**【大便】大便を(ちびる。催す)。カラカラにかわいた鼠幼げのしっぽほどの淡、そ小林多。糞が手に触れたときのような恐怖を味わう「丸谷。炎に銀蠅えがぶんぶんむらがる=木山。豆粒のような、おが屑くずを固めたような小さなウサギのふん"石森。牛馬のぴょんがこびりつく。嵐の数が点々と散っている。鴉切らの糞が点々と白くこびりつく芥川。肛門にから炎をする。鶏の姿を塗りかためたような絵今來。便に血が混じる。 **ださない**【出さない】▼出さない(落ちこぼれを。決して口に。気ぶりにも。危ないと見て手を。なかなか尻尾を。怒りや憎しみを顔に。びた一文たりとも)。声も出さないで見とれる。口に出さないと気が済まない。▼こぼさない(一滴も涙を。涙一つ)。一言も言葉を発しない。▼出し惜しむ(力を。チッブを。わずかな金も。わずかな寄付も)。▼出ししぶる(お金を。情報を)。 **だされる**【出される】▼出される(暇を。売りに。何かと言えば引き合いに倉橋。心ならずも家から=瀬戸内)。▼押し出される(市民生活の埒外崎に。ところてん式に)。差し出された手を握り返す。ガスが大気中に放出される。 **だしすぎる**【出し過ぎる】感情を表に出しすぎたのを恥じるように苦笑する=遠藤。▼出しすぎる(薬を。口を。指示を。スビードを)。乱発する(空手形を。 <595> **だし【出し】**出しにする(だしに使う鰹節を。表形状を)。 **だしっぽなし【出しっ放し】**荷物が出しっぱなしになっている。▼出しっ放しにする(書類を。水を。湯を)。▼出放題(お湯が。水が。湯気が)。口から出放題の雑言を吐く=舟橋。 **だす【出す】**▼出す(煙突から煙を。大きな声を。恐ろしい力を。会社に辞表を。海面に頭を。草木が芽を。蜘蛛くもが糸を。細かな注文を。数秒で答えを、破格の条件を。ぶくぶく泡を。懐から財布を。ぺろっと舌を。法外なお金を。炎が舌を。役所に届けを。山から木を。予算が足を。製品を市場に。息子を修業に。娘を嫁に。膿ぅぃを切開して。惜しげもなく。首をぬと。舌をぺろりと。籠からいくつかの品を。胞分はから文庫本を。唇がちゅっという音を。警察に捜索願を。ケースから双眼鏡を。相当数の犠牲者を。その場しのぎの適当な数字を。てきぱきと指示を。ドアから若い女が顔を。パレットに絵の具を。ハンドバッグから鼻紙を。ポケットからハンカチを。ぼろりと大粒の涙を。ぽろんとおっぱいを。右の指でVサインを。冷蔵庫からビールを。感情をあからさまに表情に。心の中を言葉に。新聞紙をちり紙交換に。水彩絵の具をバレットに。スキャンダルを表面に。命令をやたらに。若い者を使いに。顔をびょこんと。車を駐車場から。引き潮を見計らって船を沖合へ。料理をあてがいぶちで)。▼売りに出す(家玉を。店を)。▼顔に出す(失望を。不快感を。狼狽いを。ありありと不安を。好奇心満々をむきつけに。間の悪さを露骨に)。口に出す(意見をはっきり。言ってはならないことを無慈悲に"野上。思っていることを遠慮なくずばりりと=村山)。▶補を出す(商いに。内臓に。野菜づくりに)。▼手出す(博奕誠くに。人の女房に。店の女に。横合いから。投機的な仕事に)。引き合いに出す(親を。預言者の言葉を)。▼出し合う(合図を。意見を。金を。声を。資金を。知恵を)。思い出を記憶の底からあぶり出す。問題点を洗い出す。質草を請け出す。打ち出す(過激な方針を。苦肉の策を。目玉として。はっきりと腰窓の立場を)。▼押し出す(喉に絡む声を。問題を前面に。自分を強く。つかえながら言葉を。ゆっくりと舟を)。模様を織り出す。応援に駆り出す。井戸から地下水を汲み出す。おびただしい人数を繰り出す。吸い出す(隈を、痰たんを)。種を一粒ずつ丹念にすくい出す。定紋を染め出す。コースレコードを叩き出す。▼つつき出す(座布団の綿を。肉を)。煎じ薬を煮出す。縁側からこみを掃き出す。弾き出す(正確な数字を。ボールを)。荷物を外に引きずり出す。約束手形を振り出す。鼻炎に私をほじくり出す。綿の塊を揉もみ出す。屁、をこく。▼輩出する(人材が。強い力士が。幾多の俊秀を。逸材を)。▼出しきる(全力を。持てる力を)。▼出しつくす(エネルギーを。一つ残らず。百バーセント)。出せない(うかつに口を。恥ずかしくてみんなの前に顔が)。緊張のために声を出すこともできない三田。 **ちから【力】**力(心を蕩とぅかすような不思議な=徳田。上げ潮のように腹のどん底からむらむらと湧き出してくる新しい"有局。突進するラガーのように恋封さじ三浦哲。虎を素手で殴り殺すほどの"中野美。烈風がまともに吹きつけるように強い=多岐川)。山を抜き、気は世を遂う。力が(没義道もに強い。五体に満ちてくる。名実共に充実する)。隠された力が姿を現す。体じゅうから力が萎えてゆく。衝撃的な力が発生する。やたらに力が強い。油に足をとられるように力が徒に働く三島。体の奥から不思議に静かな力が湧いてくる=日野。暗い力がひたひたと滴るように溜まる『古井。張りつめていた気持ちが風船でもしぼむみたいに力がぬける=水上。戻ってきた力が全部光の粒に変わって身体中を駆け廻るかのよう黒井。力が溢れる(いかなるものにも屈しない不敵な"山本周、口もとから顎に意志的な"大佛)。目に視線を吸い込んでしまっとうな力がある=北原。肩に入り過ぎる。力でひたすら押さえ込む。風の力で横倒しになる。自分の力で人生を切り開く。強い力で抱き寄せる。満身の力で槌を打ち振る。平和は力では保てない=辺見。力に物を言わせる。及ばずながら力になる。巨大で冷酷な力に押しひしがれる。集団の力に頼る。納得させる力に欠ける。品質を見分ける力に乏しい。筋肉の一筋一筋が弾けそうなほどの力に満ちる=原田宗。誘い合い同調し合って押し寄せてくるような目に見えない力に取り囲まれる竹西。力の(及ぶ限り働く、限りを尽くす。限界を知る。開きがある。ありったけで暴れ回る。みなぎった張りつめた体。差をまざまざと見せつけられる近藤)。たいして力の差はない。力を(合わせて戦う。天下に誇示する。もって力を制する)。人に力を貸す。善なるものの追求に力を致す。驚くべき力を秘める。体から力を奪い去る。急速に力を伸ばす。強大な力を行使する。声が徐々に力を失う。言葉に力を取り戻す。三人で力を合わせる。習慣が力を及ぼす。絶大な力を背後に持つ。たいした力を持っていない。人間に生きる力を与える。人間の力を超えた存在。呪われた力を封じる。文明の力を買いかぶる。自らの力を持て余す。民衆の間に根強い力を持つ。めきめき力をつける。持て余した力を浪費する。躍り上がるほどの力を内に感じる=長与。口元に力を溜めてゆっくりと頷く高樹。信じられぬほどの力を発する=村松。強く惹ぃきつける力を躰からじゅうから体臭のように発散する=大江。年齢というものの力を歴然と見せる"山田太。踏ん張った四肢が地に生えたように力を漲らせる=獅子。ほっとしたように肩の力を抜く"長崎。弓をひきしぼるように力をためる=飯田。両足がくなくなと力をなくす"幸田文。寝食を忘れ懸命の力を尽くす。菊池。力を尽 <596> # **だす【出す】**くして生き抜く。力を発揮する(ここ一番という時に。測り知れない団結の=白井)。声に力が(入らない。入る。みなぎる)。外からの力に(屈する。耐える)。重力に抗して静止する=九鬼。▼力がこもる(言葉に。持つ手に。受話器を握る手に痛いほど人合村)。言い方に断々乎従しだとした力が籠にもっている=井上ひ。瞳を引き寄せずにおかないような力のこもった声!永井路。むりやり景気をつけているような力のこもらない声=三田。力のこもった(傑作。強い声)。下腹にぐいと力を入れる。力を入れて教える。肩に力を入れて構える。ぐいと力を入れて引っ張る。語気に力を入れて話す。特別に力を入れて描く。力の入れどころに困る。▼力をこめる(臍下丹田ひふたに。腹に。一言一言に。あらん限りの。ハンドルを持つ手に)。力をこめて(言い聞かせる。頷く。握りしめる)。双腕に力を込めて抱きしめる=池波。腕に力をこめて殴りつける。力をこめて言う(一語一語に。ビールの缶を握りつぶすほど=景山)。▼力を振り絞る(あらん限りの。最後の。精一杯。全身の。残っている。必死の。満身の。持てる)。力を振り絞って追走する。渾身にんの力を振り絞ってしがみつく荻野。▼気力を振り絞る(最後の。残された)。全力を振り絞る。 **つきだす【突き出す】**▼突き出す(顎を。頭を。腕を。親指を。樹々が梢を。切っ先を。ぐいと顎を。ぐいと肘を。唇を。拳を。湖面に桟橋を。下唇を。尻を。ぬっと右手を。人差し指を。マイクを。無言で原稿を。胸を。豊かな胸を。警察に。榆ゃりをさっと。手を真っ直ぐ前方へ)。小さなヒップを恰好い?よく突きだす半村。▼前に突き出す(腕を。首を。両手を)。腹を突き出して豪傑笑いする。繰り出す(ジャブを。榆を。アッパーカットを)。 **でんき【電気】**電気が(ばっと点っく。走ったかのようにびりっと肌が震える=伊坂)。部屋の電気が消える。全身に電気が走ったみたいにびくりとする=乃南。脳天からつま先へかけて骨の髄を電気が駆けぬけるような衝撃「飯田。電気に(感電する。打たれるような身ぶるいが全身を通り過ぎる=島崎。かかったように顔や上半身が硬直する=阿川弘)。弱い電気に触れたようにしびれる=小林多。電気に打たれたように(立ち上がる。ピストルが手から落ちる芥川)。電気に触れたようにビクンと足をふるわせる=大原。体にビクリと電気に触れたような衝撃が走る景山。じりじりと電気の音が空気を震わせる=伊坂。半日立ち尽くした脚が動かそうとすると電気をかけられたように痺しびれている=有島。キスを電気のように痺れて受ける=檀。静電気が指を刺す。停電で電車が止まる。電気的な刺激が走る。電力不足を招く。電力事情が悪い。電力を供給する。発電機がうなりを上げる。発電機の運転に支障をきたす。蒸気で発電機のタービンを回す。一万キロワットを発電する。ブラグを電源に差し込む。無造作に電源のスイッチを切る。電源をオンにする。強制的に電源を切る。テレビの電源を入れる。バソコンの電源を落とす。 **でんりゅう【電流】**全身を電流が走るくらいに好みの条件がそろっている男と知り合う笹沢。背中に電流に触れたような震えが走る=高橋三。電流を通じたようにビリビリと全身を震わせる"有吉。脳天から全身をビーンと電流のようなものが走る=笹沢。思いが電流のように身内を貫く=北村。体の奥に武者ぶるいのような戦慄が泥流のように駆け抜ける“五木。観念が電流のように身体の中をつきぬける=石坂。舌の先から奥まで電流のように痺しびれが伝わる荻野。腹の中を電流のように走り抜けるような嫌な音"長崎。一放電する(空気中に。青白く)。淵電が原因の火災。漏電を知らせる警報。ショートの火花が散る。▼ショートする(電気が。真っ青な閃光氷を発して=光瀬)。ブレーカーが下りる。ブレーカーを(上げる。飛ばす。元に戻す)。ヒューズが(切れる。飛ぶ)。 **とびだす【飛び出す】**飛び出す(ずどんと弾が。後ろも見ずに。大喧嘩は妨げの末に。車の前に。言葉が勝手に。泡を食って。威勢よく。宇宙空間へ。血相変えて。元気よく。先を争って。集団の中から。低い姿勢で。草むらから小動物が。自分でも思いがけない台詞が。ひょこっと土地言葉が。叫ぶが早いか小屋を。問いが矢継ぎ早に。ひどい言葉が頻繁に。いの中央に。慌てて小屋から。カメラをつかんで。着の身着のままで。濁った声が喉から。噴水から水が勢いよく。脱兎だっのことく外に"つか。ハンドルを切りそこねて反対車線に"永倉。ジェットエンジンでもついているような勢いで=田中。みんなの口からいろいろな言葉が探せ』を切って鷺沢。夜鷹にぇみたいにさっさと荻原発)。眼球が飛び出すほど限を見開く『有吉。目の玉が飛び出すほどに高い値段高橋。家を飛び出す〈出奔同然に。口論のあげく。朝食抜きで。後先も考えずに)。勢いで飛び出す(ものすごい。玄関をぶち破らんばかりの赤川)。▼口から飛び出す(とっさに受け答えが。言葉が熱っぽく=伊藤整)。▼言葉が飛び出す(出し抜けに口から。憑っかれたように=井上靖)。▼外へ飛び出す(ちょろちょろと女の子が。足袋はだしのまま)。▼部屋を飛び出す(我先に。勇み立って)。飛び出して行く(風のように部屋から西木。鉄砲玉のように=池波)。飛び出していく(威勢のいい返事を残して。途端に顔色を変えて)。ふいとどこかへ飛びだしていく人谷崎。飛び出してくる(取るものも取りあえず。半変式ひらに記憶が=伊坂。三々五々子供たちが校庭に=貫井)。逃げるように(外へ飛び出す。日本を飛び出す=松浦)。口から反抗的な言葉が飛び出る。目ん玉が飛び出るくらい苦しい炭谷。 **とりだす【取り出す】**▼取り出す(帯から袱紗話くを。鞄がばから書類を。財布から金を。一枚の事務用箋を。内ポケットから封筒を。懐中から書状を。鞄からノートを。ごそごそと紙袋を。じゃらじゃら鍵を。棚から中華鍋を。違い棚から手文庫を。定期入れから写真を。筆箱から鉛筆を。ボケットから煙草を。ボケットからハンカチを。ボケットから名刺入れを。冷蔵庫からビールを。冷蔵庫から麦茶を。煙草ケースから一本。フィルムをカメラから。マッチをハンドバッグから。ビルケースから薬を=篠田)。▼一枚取り出す(ティッシュを。便箋を)。容易に取り出すことができる。▶財布を取り出す(引き出しから。懐から)。▼つかみ出す(札を。胸の中の苦痛を)。▼つまみ出す(煙草を。実を)。 **ぬうつと**ぬうっと顔を突き出す。暖簾のれの間から頭がぬうっと出る。にゅうっと(首を突き出す。庭先に突っ立つ)。ぬっと手を差し出す。太い枝がぬっと伸びている。 **のりだす【乗り出す】**▼乗り出す(ぐいと膝を。胸から上を。事態収拾に。船が大洋に。未知の海に。手すりからぐっと体を。警察が強制捜査に。立ち入り検査に。本格的な捜査に。枠組みづくりに。上半身を窓から。見るに見かねて)。▼身を乗り出す(テーブルに。ぐいっと。尻を浮かせて。船緑心忙から。窓から。じれったくなり)。思わず身を乗り出して見とれる。 **はけぐち【捌け口】**はけ口が(見当たらない。見つかる)。はけ口のないもやもやした気持ち。癇療砂んしのはけ口を探す。憤懣払いにはけ口を与える。許されさる恋のはけ口を異性に向ける=森村。▼はけ口を求める(春画に欲望の。青春の。狂おしい欲情の)。 **はっする【発する】**▼発する(法的な効力が。海が光輝を、感動的な声を。乱暴に怒りを。怨恨一時に。うーんど唸りもり声を。おもむろに言葉を。消化しきれないくらいの注文を。ピッピッど鋭い音を。傍若無人な高声。目が異様な光を。矢継ぎ早に質問を。藪ゃぶから棒に大音声以以沾んを。愚にもつかぬ問いを高見造)。直接的な希求に端を発した行動。 **はみだす【食み出す】**▼はみ出す(肉が。綿が。範囲を。輪郭を。枠を。外に。会場から。通則から。範疇味礼ちから。升目から。輪郭から。クッションからスポンジが。家庭という枠から)。外側にはみ出る。 **パワー**パワーが風船がしぼむようになくなる宗田。バワーの差で一気に引き離す。バワーを(上げる。発揮する。持て余し気味)。近づくと感電しそうなバワーを感じる女の子=岡田。あくまでバワーゲームに固執する=泉後。 **ひねりだす【捻り出す」**▼ひねり出す(学費を。奇策を。財源を。時間を。知恵を。適当な名前を。予算を。旅費を)。▼捻出する(裏金を。財源を。資金を。予定の額を)。 **ふきだす【吹き出す】**▼吹き出す(炎の舌先が。疲れが一気に。汗が額から。口の中のものを)。笑いを小さい気泡のように濡れた唇からふき出す大江。噴き出す(勢いよく水が。真っ赤な血が。猛烈な怒りが。抑えに抑えていた憎悪が。男の喉元からかん高い狂気の声が=池井戸。気持ちのわだかまりが一気に=三田)。▶汗が吹き出す(満身にどっと。首筋にじっとりと黒井)。鯨が潮を吹く。大砲が火を噴く。ガスが突出する。噴射する(スプレーを。ロケットエンジンを)。 **ふりしぼる【振り絞る】**勇気を振り絞る。喉を振り絞る絶望的な声=山本用。声を振り絞る(悲痛な。に物狂いの。必死の)。声を振り絞って叫ぶ。腹の底から力を絞り出す。声を絞り出す(喉から。腹の底から怒りの熊谷)。絞り出すような声を出して泣く。 **ぶんぴつ【分泌】**▼分泌する(胃液を。酵素を。唾液を)。酸が増した胃液のように苦い思いが分泌される=野上。一つ一つの動作の継ぎ目や隙間から生温かい性感が増した胃液のように苦い思いが分泌される=野上。一つ一つの動作の継ぎ目や隙間から生温かい性感が増した胃液のように苦い思いが分泌される=野上。一つ一つの動作の継ぎ目や隙間から生温かい性感が増した胃液のように苦い思いが分泌される=野上。一つ一つの動作の継ぎ目や隙間から生温かい性感が増した胃液のように苦い思いが分泌される=野上。一つ一つの動作の継ぎ目や隙間から生温かい性感が増した胃液のように苦い思いが分泌される=野上。一つ一つの動作の継ぎ目や隙間から生温かい性感が増した胃液のように苦い思いが分泌される=野上。一つ一つの動作の継ぎ目や隙間から生温かい性感が増した胃液のように苦い思いが分泌される=野上。一つ一つの動作の継ぎ目や隙間から生温かい性感が分泌物のように滲にじみ出る=吉行。ホルモンを(発散する。服用する。分泌する)。 **ベランダ**物干しを兼ねたベランダ。ベランダから笑い声が降ってくる。ベランダに(出る。陽射しがあふれている)。陽射しが弾けてバルコニーが王冠のように光る=小川。バルコニーに(出る。立って手を振る)。 **べんじょ【便所】**水洗の便所。便所に立つ。便所の臭いがほのかに漂う。便器に(しゃがむ。水を流す)。公衆便所(清潔な。不潔な)。お手洗いに立つ。お手洗いの場所を尋ねる。厕砂もに立つ。厕の匂いが漂う。御不浄を(借りる。使う)。水洗で流す。洗面所で手と顔を洗う。水音が洗面所に響く。手水らたに立つ。手洗いを借りる。トイレットペーパーをずるずる引っばる=高樹。はばかりに立つ。トイレ(清潔な。汚い)。トイレが水洗になる。トイレで用を足す。急いでトイレに駆け込む。夫婦が代わる代わるにトイレに立つ。 **ほうしゃのう【放射能】**色も臭いもない放射能。大量の放射能がばらまかれる。放射能で汚染される。放射能に国境はない。放射能漏れという事態を惹ぃき起こす「柳田。放射性物質が(外部に漏れる。大気中に放出される。地下水を汚染する=辺見)。放射線が外部に漏れる。放射線から防護する。放射線に被爆する。原爆による放射線被害。エックス線に被曝する。 **ほうしゅつ【放出】**▼放出する(栄養分を。エネルギーを。熱を。体外に。ガスを排気口から。感情が滝のように。カッコよくありたいという悲願を全身から電流のように荻野)。 **みみかき【耳掻き】**耳かきで(耳垢詠詠を取る。耳を掃除する)。膝枕で耳垢を取ってもらう。綿棒で(耳垢を取る。耳かきをする)。 **りょりょく【膂力】**軽々と片手で女一人を持ち上げるりょりょく膂力加賀。膂力が全身にみなぎる。なみはずれて膂力が強い。膂力に優れている。 <597> を。鞄がばから書類を。財布から金を。一枚の事務用箋を。内ポケットから封筒を。懐中から書状を。鞄からノートを。ごそごそと紙袋を。じゃらじゃら鍵を。棚から中華鍋を。違い棚から手文庫を。定期入れから写真を。筆箱から鉛筆を。ボケットから煙草を。ボケットからハンカチを。ボケットから名刺入れを。冷蔵庫からビールを。冷蔵庫から麦茶を。煙草ケースから一本。フィルムをカメラから。マッチをハンドバッグから。ビルケースから薬を=篠田)。▼一枚取り出す(テイッシュを。便箋を)。容易に取り出すことができる。▶財布を取り出す(引き出しから。懐から)。▼つかみ出す(札を。胸の中の苦痛を)。▼つまみ出す(煙草を。実を)。 **ぬうつと** ぬうっと顔を突き出す。暖簾のれの間から頭がぬうっと出る。にゅうっと(首を突き出す。庭先に突っ立つ)。ぬっと手を差し出す。太い枝がぬっと伸びている。 **のりだす【乗り出す】**▼乗り出す(ぐいと膝を。胸から上を。事態収拾に。船が大洋に。未知の海に。手すりからぐっと体を。警察が強制捜査に。立ち入り検査に。本格的な捜査に。枠組みづくりに。上半身を窓から。見るに見かねて)。▼身を乗り出す(テーブルに。ぐいっと。尻を浮かせて。船緑心忙から。窓から。じれったくなり)。思わず身を乗り出して見とれる。 **はけぐち【捌け口】**はけ口が(見当たらない。見つかる)。はけ口のないもやもやした気持ち。癇療砂んしのはけ口を探す。憤懣払いにはけ口を与える。許されさる恋のはけ口を異性に向ける=森村。▼はけ口を求める(春画に欲望の。青春の。狂おしい欲情の)。 **はっする【発する】**▼発する(法的な効力が。海が光輝を、感動的な声を。乱暴に怒りを。怨恨一時に。うーんど唸りもり声を。おもむろに言葉を。消化しきれないくらいの注文を。ピッピッと鋭い音を。傍若無人に高声を。目が異様な光を。矢継ぎ早に質問を。藪ゃぶから棒に大音声以以沾んを。愚にもつかぬ問いを高見造)。直接的な希求に端を発した行動。 **はみだす【食み出す】**▼はみ出す(肉が。綿が。範囲を。輪郭を。枠を。外に。会場から。通則から。範疇味礼ちから。升目から。輪郭から。クッションからスポンジが。家庭という枠から)。外側にはみ出る。 **パワー** パワーが風船がしぼむようになくなる宗田。バワーの差で一気に引き離す。バワーを(上げる。発揮する。持て余し気味)。近づくと感電しそうなバワーを感じる女の子=岡田。あくまでバワーゲームに固執する=泉後。 **ひねりだす【捻り出す」**▼ひねり出す(学費を。奇策を。財源を。時間を。知恵を。適当な名前を。予算を。旅費を)。▼捻出する(裏金を。財源を。資金を。予定の額を)。 **ふきだす【吹き出す】**▼吹き出す(炎の舌先が。疲れが一気に。汗が額から。口の中のものを)。笑いを小さい気泡のように濡れた唇からふき出す大江。噴き出す(勢いよく水が。真っ赤な血が。猛烈な怒りが。抑えに抑えていた憎悪が。男の喉元からかん高い狂気の声が=池井戸。気持ちのわだかまりが一気に=三田)。▶汗が吹き出す(満身にどっと。首筋にじっとりと黒井)。鯨が潮を吹く。大砲が火を噴く。ガスが突出する。噴射する(スプレーを。ロケットエンジンを)。 **ふりしぼる【振り絞る】**勇気を振り絞る。喉を振り絞る絶望的な声=山本用。声を振り絞る(悲痛な。に物狂いの。必死の)。声を振り絞って叫ぶ。腹の底から力を絞り出す。声を絞り出す(喉から。腹の底から怒りの熊谷)。絞り出すような声を出して泣く。 **ぶんぴつ【分泌】**▼分泌する(胃液を。酵素を。唾液を)。酸が増した胃液のように苦い思いが分泌される=野上。一つ一つの動作の継ぎ目や隙間から生温かい性感が出す―192分泌物のように滲にじみ出る=吉行。ホルモンを(発散する。服用する。分泌する)。 **ベランダ** 物干しを兼ねたベランダ。ベランダから笑い声が降ってくる。ベランダに(出る。陽射しがあふれている)。陽射しが弾けてバルコニーが王冠のように光る=小川。バルコニーに(出る。立って手を振る)。 **べんじょ【便所】**水洗の便所。便所に立つ。便所の臭いがほのかに漂う。便器に(しゃがむ。水を流す)。公衆便所(清潔な。不潔な)。お手洗いに立つ。お手洗いの場所を尋ねる。厕砂もに立つ。厕の匂いが漂う。御不浄を(借りる。使う)。水洗で流す。洗面所で手と顔を洗う。水音が洗面所に響く。手水らたに立つ。手洗いを借りる。トイレットペーパーをずるずる引っばる=高樹。はばかりに立つ。トイレ(清潔な。汚い)。トイレが水洗になる。トイレで用を足す。急いでトイレに駆け込む。夫婦が代わる代わるにトイレに立つ。 **ほうしゃのう【放射能】**色も臭いもない放射能。大量の放射能がばらまかれる。放射能で汚染される。放射能に国境はない。放射能漏れという事態を惹ぃき起こす「柳田。放射性物質が(外部に漏れる。大気中に放出される。地下水を汚染する=辺見)。放射線が外部に漏れる。放射線から防護する。放射線に被爆する。原爆による放射線被害。エックス線に被曝する。 **ほうしゅつ【放出】**▼放出する(栄養分を。エネルギーを。熱を。体外に。ガスを排気口から。感情が滝のように。カッコよくありたいという悲願を全身から電流のように荻野)。 **みみかき【耳掻き】**耳かきで(耳垢詠詠を取る。耳を掃除する)。膝枕で耳垢を取ってもらう。綿棒で(耳垢を取る。耳かきをする)。 **りょりょく【膂力】**軽々と片手で女一人を持ち上げる膂力加賀。膂力が全身にみなぎる。なみはずれて膂力が強い。膂力に優れている。 <598> # 助ける・救う **いのちびろい**【命拾い】せっかくの命拾いもぬか喜びになりかねない=佐山。かつて経験したこともないような絶望的な窮地から命拾いをする=佐山。命拾いする(奇跡的に。危ないところで)。危うく死を免れる。一歩間違えば今頃は葬式だった。死の淵から戻る。一命を拾う。危うく一命を取りとめる。命からがら(逃げのびる。大陸から引き揚げる)。幸い命だけは取りとめる。僥倖ぶいうを得て命長らえる。危ない命を(助かる。拾う)。からくも命をつなぐ。すんでに命を落とすところ。九死に一生を拾う。激戦で九死に一生を得る。万死に一生を得る。 **えんじょ**【援助】援助が増える。とても援助など望むべくもない。援助の手を差し伸べる。援助を(断る。にべもなくはねつける)。親の援助を期待する。援助を受ける(経済的な。有形無形の)。▼援助する(運営を。学資を。学生団体を。活動を。資金を。経済的に。物心ともに)。援助チームが出動する。食料援助を開始する。助成する(国が。企業を)。▼助長する(成長を。長所を。天性を)。支援の輪が広がる。▼支援する(再建を。社会復帰を。新興国を。中小企業を。被災者を)。力添えに感謝する。力添えを(仰ぐ。お願いする)。友人の事業に力添えをする。てこ入れに(乗り出す。躍起になる)。▼てこ入れする(景気を。子会社に。資金面で)。 **かたん**【加担】▼加担する(悪事に。陰謀に。権力に。戦争に。たくらみに。切り崩し工作に。集団の暴走に知らず知らずに)。手を貸す(虐殺に。事態悪化に。破壊に。無差別殺戮に)。▼幇助にらする(違反行為を。殺人を。自殺を)。 **かつろ**【活路】活路が(ひらける。見つかる)。活路を(得る。切り開く。開く。見出したように顔を晴れ晴れさせる=有島)。閉塞状況に活路を見いだす。死地に活路を見いだす意気込みで出発する人間。有力商社との提携に活路を見出す=内橋。窮すれば通ず。生活の血路が明るく前方にひらける=石川。血路を切り開く。死に物狂いで血路を求める。未来への血路を開く。 **きゅうえん**【救援】救援に(おもむく。駆けつける)。救援の手が遅れる。援軍が(来ない。到着する)。援軍の派遣を要請する。援軍を(続々と繰り出す。率いて戻ってくる)。若い衆が助けに来る。友軍が来援する。来援を(請う。求める)。助けが一向に来ない。 **きゅうきゅうしゃ**【救急車】救急車が(駆けつける。出動する。到着する。来るまでの二十分あまりが異様に長く感じられる三浦綾。来るような騒ぎ=宮部)。けたたましくサイレンを鳴らして救急車が過ぎる"三浦綾。救急車で病院に運ばれる。救急車のサイレンが(遠くに消え去る。音の紙テープでも引いていくように細長くいつまでも聞こえている=椎名誠)。救急車を(待つ。呼ぶ)。 **きゅうさい**【救済】救済に(あたる。乗り出す)。孤児の救済に力を尽くす。救済の(手が届く。手を差しのべる。望みも見込みもまったくない=佐山)。救済する(飢えた者を。患者を。失業者を。人類を。難民を。被害者を。経営難の会社を)。諧人救済の(大願を起こす。大業を為す)。 **きゅうじょ**【救助】救助に駆けつける。不眠不休で救助にあたる。荒天のなかを救助に向かう=梶井。▼救助する(人命を。難民を。被災者を)。海難救助にあたる。救助活動に追われる。「人命救助の表彰を受ける。救護する(怪我人を。被災者を。負傷者を)。 **きゅうせいしゅ**【救世主】救世主が現れる。救世主として期待される。名声が救世主のごとく人民の耳にしみている=山田美。救世主のようにたてまつられる。 **くちぞえ**【口添え】友人の口添えで就職する。社長に口添えする。側でばから口を添える。社長からのじきじきのお声がかり。教授のお声がかりで新しい研究に着手する。 **こもん**【顧問】顧問に(就任する。名を連ねる)。学長を願問にいただく。顧問弁護士を置く。アドバイザーに(就任する。相談する)。信頼のできる相談相手。相談相手ができたような充足感萩原袋。相談相手に恵まれる。▼ブレーン(首相の。大統領の)。 **じょげん**【助言】▽▼助言(有益な。当を得た)。助言が役に立つ。家族や友達の助言に背中を押される=阿川佐。助言を素直に受け入れる。何やかやと助言を与える。助言する(老婆心ながら。いつも何くれとなく)。▼アドバイス(的確な。適切な)。いいアドバイスが得られる。教えてくれたアドバイスの一つ一つが耳の奥で回るオルゴールみたいに繰り返し登場する谷村。あれこれとアドバイスする。 **じょしゅ**【助手】助手では役不足。助手を務める。連れていく。募集する)。アシスタントを務める。募集する)。なくてはならぬ片腕。大使の片腕として重きをなす。船山。 **すくいだす**【救い出す】▼救い出す(赤ちゃんを。主人を)。窮地から自らを救い出すことだけで頭がいっぱい=黒井。▼助け出す(赤ん坊を。容を。捕虜を。命を惜して)。救出が遅々としてはかどらない。救出に乗り出す。人質を無事に救出する。救出作戦が失敗する。 **すくう**【救う】救う(命を。お家の危急を。おぼれる子を。危難を。窮地を。急場を。暗いムードを。焦眉の急を。祖国の危機を。経済的な破綻を。身命を捨てて人を。山の恵みが村を。ジョークが沈みそうになっていた空気を京野。ともすれば陥りやすい単調の弊から三好達)。不辛を救う(身の。世の)。せめてもの <599> # **すくい【救い】**救い。救いの(女神。神が声をかけてくれる)。救いの手を(差し伸べる。待つ)。救いを求める声が聞こえる。▶救いを求める(宗教に。心の。切羽詰まった表情で=鈴木光)。救いを求めるような(顔を向ける。視線を注ぐ。目を向ける)。救い上げる(友達を。人を)。困窮者を救恤にゅうする。救恤を嘆願する。▼済度する(衆生しいじを。諸人を)。 **すくわれる【救われる】**▼救われる(信仰に。苦思げから。混乱から。信する者は。悪い魂から。ハッピーエンドで)。どんなに救われた気がしたか知れない。一脈救われたような気持ちになる。▼救助される(奇跡的に。無事)。▼助けられる(敵失に。危ないところを)。 **すけだち【助太刀】**助太刀に駆けつける。助太刀を(頼む。連れてくる)。加勢してもらえれば百人力。へたに加勢するなんて言うとどやされる=半村。味方の加券を得る。友達に助勢する。助勢を(買って出る。頼む)。一臂ぃっの助力。助力が(入り用になる。必要になる)。助っ人に行く。助っ人を(買って出る。頼む。求める)。 **たすかる【助かる】**助かる(方法を考える。望みが少しはある)。助かる(奇跡的に。運よく。かろうじて。危ないところを。甲斐がいもない命を。すんでのところで。危機一髪のところで。宇野利)。ほかに助かる方法がない。どんなに助かるか知れない。助かる道を(探す。模索する)。危ない目に遭わずに済む。救命胴衣を身につける。地獄で仏に会ったような心地火坂。地獄で仏の喜びよう。地獄で仏を見る思い島田。▶助からない(どうせ。とても)。もう助からないかもしれない。助かる見込みは万に一つもない。泣こうが喚ぁぁこうが誰も助けに来てくれない=丹羽。 **たすける【助ける】**助ける(家の生計を。子供を。生命を。父を。独立運動を。友の敵討ちを。母を。陰に陽に。命をおかして。手を差し伸べて。脇の下に手を入れて起き上がるのを貫井)。捨てる神あれば助ける神"里見。芸は身を助く。弱きを助け強きをくじく。何のために助けたのかわからない佐藤愛。▼助けてもらう(親に。困った時に)。片肌を脱ぐ。窮鳥懐に入れば猟師も殺さず。▼助け起こす(子分を。少女を)。困っている者に助けの手がさしのべられる=平気。助けを(借りて起き上がる。求めるみたいな目をする"古井)。▼助けを求める(親に。周囲に)。助けを呼ぶ(大声で。急流に立ち往生して藤沢)。一臂ぃっの労を惜しまない。駆け込み寺的な役割を果たす。見るに見かねて助け船を出す。見るに見かねて手を貸す。▼手を差し伸べる(再建に。支援の)。義に感じて一肌脱ぐ。一肌も二肌も脱ぐ。フォローが功を奏する。新人の仕事をフォローする。▶扶助する(生活を、相互に)。扶助を(受ける。もらう)。国外から脱出を幇助らする。を軸弱いする。輔弼の臣。横から助け船を出す。け舟を出すように言う。内海。力を貸す(普及に。一臂の。恵まれない人々に水井路)。力を貸してくれれば百人力。▼手を借りる(警察の。専門家の。ブロの)。わざわざ機械の手を借りるほどのこともない安部。どうやら警察の手を借りなくて済みそう三浦哲。介護者の手を借りなければ食事もままならない鈴木光。人助けに(貢献する。心を砕く。役立つ)。而肌を脱いで人助けする。 **てつだう【手伝う】**▼手伝う(家業を。家事を。着替えを。作業を。商売を。掃除を。引っ越しを。店の仕事を。近所の女のひとたちが台所に集まってご飯の準備を三浦し。できるだけ時間を引き延ばすかのようにぐずぐずと支度を"小川。腰かけのつもりで向田)。店の手伝いが忙しい。手伝いに(行く。駆けつける)。手伝いの(人々が引き上げる。割り振りを話し合う)。手伝いを(お願いする。引き受ける)。及ばずながら手伝いをさせてもらう。家事の手伝いを頼む。引っ越しの一助政助の人の手伝いを頼まれる。漫然と家の手伝いをする。あなたがお手伝いさん(通いの。住み込みの)。お手伝いさんを(募集する。雇う)。手助けする(攻撃を。仕事を)。たいした手助けにならない。調査の手助けをする。▼手を貸す(犯罪に。進んで。有名になるのに)。 **てんゆう【天佑】**天佑により一命を助かる。天佑を祈るほかになんのすべもない=山本門。天のたすけ!と勇気百倍"太宰。神風が吹く。天は自ら助くる者を助く。天を味方につける。天佑神助しんを享ける。 **ほさ【補佐】**補佐する(会話の進展を。議長を。君主を。首相を。大臣を。統治者を)。補佐役に(徹する。回る)。参謀を務める。帷幄いぁに参じる幕僚"井上菜。 **みかた【味方】**味方(正義の。頼もしい)。味方か否かを試す。味方が(押し気味。駆けつける。総崩れになる。敗走する。欲しい。負ける)。味方に引き入れようと躍起になる。運命を味方にする。敵に回せば面倒だが味方にすればずいぶんと心強い男"舟橋。▼味方につける(国民を。マスコミを。民意を)。味方になる(時が。心から)。味方の褒め切りに遭う。浮き足立った味方のふがいなさ白洲。味方は敵に倍する。敵も味方もごちゃごちゃになって戦う山本周。味方を勝利に導く。百万の味方を得た思い。唯一の味方を失う。敵を欺跡だくにはまず味方を欺かねばならない!塩野。▼肩を持つ(暗に。しきりと。友達の。孫の)。友軍が駆けつける。友党に(学ぶ。甘い態度をとる)。味方する(運命が。天が。一揆に)。与くみする(悪事に。正義に。多数派に。派閥に。反逆に。世の風潮に)。どちらの派にも与しない。 **もりたてる【守り立てる】**▼もり立てる(家業を。基礎研究を。景気を。事業を。先輩を。人気を)。朝廷を擁する。▼擁立する(同郷人を。市長候補に)。 <600> # 戦う・攻める **いくさ【戦】**戦が膠着にいち状態に入る。腹が減っては戦ができぬ。焙烙覗けで煎られる豆のように騒ぐのみで実効のある戦ができない"司馬。戦に駆り出される。全然勝ち味のない戦はすべきものではない=山岡、無益な喉をする。古武士を思わせるいさぎよい喰ぶり半村。内戦で無政府状態が続く。内戦の時期を経る。人馬入り乱れての白兵戦。白兵戦を繰り広げる。彼我入り乱れて見分けのつかない状態"井上靖。 **かいせん【開戦】**開戦に踏みきる。戦が起こる。交喰状態に入る。宣蔵を布告する。戦争が(端を開く。始まる。勃発する)。大戦が勃発する。突入する(戦時に。戦争に。大戦に)。▼始まる(陇が。合戦が)。▼開く(戦火を。両軍が戦端を)。藪ゃぶから棒に戦争を始める=白井。火蓋を切る(動乱が。総攻撃の)。火蓋を切らんと待ち構える。火蓋が切られる(合戦の。攻防の。戦いの)。戦争の火ぶたが切って落とされる=西木。 **かっせん【合戦】**合戦の(修羅場。論功行賞)。合戦さながらの大乱闘、宣伝合戦を繰り広げる。感情むき出しの中傷合哦。泥沼のような特売合戦。弔い合戦に取って返す。弔い合戦を決意する。各社の報道合戦が熾烈これを極める。誘致合戦が激しくなる。 **くうしゅう【空襲】**B29が八十機揃ってきて一どきに天地をひっくりかえすような売襲-檀。都市が空襲で焼かれる。空襲のサイレンが深夜の空に不気味に鳴り響く=林美、ばらばら小型爆弾を投下する。空襲警報が鳴る。越境して空爆する。爆撃の回数が日増しに多くなる=西木。都市を無差別に爆撃する。爆撃機が爆弾を投下する。雨のように爆弾を降らす。 **ぐんかん【軍艦】**軍艦が沖合いに錨いかを下ろす。白わす波を蹴って航行する艦隊。艦隊が(海上に展開する。洋上を雁行ぶんする)。艦艇が小さく小さく玩具のように海上に置かれてある=武田泰。駆逐艦が奨をおさめた灰色の水鳥のように浮かぶ小林多。護衛艦を派遣する。戦艦が就役する。敵の戦艦を撃沈する。空母から飛び立つ戦闘機。ヘリコプターが空母から飛び立つ。上から見ると海の上の航空母艦なんて校庭の真ん中の石ころぐらいに見える=北村。 **ぐんぜい【軍勢】**軍勢が(進撃を起こす。潮のごとくに進む=子母沢。雲霞がんのごとく城をめがけて殺到する!柴田死。林の動くがごとく打ってかかる菊池。っと岡ときをつくりながら怒海火とのごとく押し出す"山本別)。諸国の軍勢が続々上洛する。ひとたび崩れた軍勢はもろい=栗木。手兵を率いる。大兵力で相手を圧倒する。手勢を(率いる。引き連れる)。応戦するには兵力が足りない。寄せ手の(勢いに耐え抜く。挟繋が功を奏する)。 **ぐんたい【軍隊】**軍隊から脱走する。軍隊を(統帥する。率いる)。軍が山野に展開する。軍事裁判にかける。国連平和維持活動に名を借りた軍事行動。軍団を(率いる。編成する)。軍の(威を盾にする。微用を免れる)。軍部が台頭する。軍部ににらまれる。軍務に励む。戦闘に次ぐ戦闘で小隊が散り散りになる=船戸。全軍一丸となって当たる。全軍の(指揮をとる。士気に悪影響を及ぼす)。部隊が(集結する。展開する)。兵馬の権を握る。本隊が怒諦氾とと化してなだれこむ"栗本。本隊を(指揮する。率いる)。 **ぐんび【軍備】**軍備を(拡大する。強化する)。軍事費が増える。再軍備に着手する。急速に日本が軍国化する。国防を全うする。戦時に備える。喰備を整える。ひそかに戦備を急ぐ。戦費を調達する。莫大な戦費を使う。軍拡競争の悪循環が破滅の道に誘う。 **けっせん【決戦】**天下分け目の決戦。正面から決戦を挑む。最終決戦に備える。横網同士の一戦。乾坤一擲の合戦。勝負の決め所。天下分け目の(合候。関ヶ原の戦い。戦い)。決勝戦で(勝つ。負ける)。決勝戦に進出する。天下分け目の天王山。天王山の戦い。天王山を制する。交渉が天王山を迎える。 **こうぐん【行軍】**無謀で無茶苦茶な行軍。▼行軍を続ける(豪雨を冒して。粛々と雨中の。徒歩の)。▼行軍する(小道を。夜川に)。銃の林が移動する。 **こうげき【攻撃】**砂糖に蜂蜜をかけたような甘い攻撃高千穂。攻撃が(激しさを増す。猛烈を極める)。いわれなき攻撃が絶えることなく続く"西木。攻撃に(身をさらす。備える姿勢をとる。優位な位置をしめる)。攻撃の(機会を窺らかう。橋頭堡に」を築く。口火を切る。態勢が整う。火蓋を切る。・矢面に立つ。火の手を上げる)。嵩かさにかかって攻撃の手を緩めない。攻撃は最大の防御。攻撃を柳に風と受け流す―武田飛。凄すさまじい勢いの攻撃を浴びせてくる。防御より攻撃を優先する。真正面から攻撃をしかける。▼攻撃する(五月雨式だいぶに。仮借なく。先手を打って、早いテンポで、痛みの芯が脳を北村)。鉾はこを向ける。攻撃側に身を置く。敵に攻撃材料を与える。攻撃的な物言いで自説を押し通そうとする=横山。全身の細胞の一つ一つが燃え上がるような攻撃的な気持ち。吉行。必殺の攻撃法を編み出す。攻撃本能に火をつける。封じられた攻撃欲が内部に渦巻き今や爆発寸前简并。個人攻撃に終始する。集中攻撃に(さらされる。耐える)。集中攻撃を受ける。総攻撃の(命令が下る。火蓋が切られる)。敵襲に(遭う。備える)。▼打ちかかる(拳を振り上げて相手に。全力を使い果たすまで敢然と)。打ってかかる(軍勢が。林の動くが如く)。▼強襲する(敵の牙城を。打球がビッチャーを)。集中砲火を浴びる。遁走も礼する敵を追撃する。追撃の手を緩めない。奇襲に成功する。奇襲攻撃をかける。奇襲戦 <601> 法を使う。敵をめがけて突撃する。突撃隊形を取る。突撃隊を(出撃させる。編成する)。突撃らっばが鳴り渡る。波状攻撃をかける。怒濤汇との波状攻撃を受ける。手を替え品を替え波状攻撃する"瀬戸内。 **こうしゅ【攻守】**攻守所を変える。攻守に(わたって活躍する。わたる好ブレー)。攻守を(交代する。チェンジする)。攻守同盟を結ぶ。 **しとう【死闘】**死闘の修羅場になる。骨肉相食む死闘を繰り返す。凄すきまじい死闘を繰り広げる。凄絶な死闘を展開する。白刃を冒して死闘する。 **しゅつげき【出撃】**出撃準備が終わる。出撃命令が下る。戦地に旅立つ。出征兵士を(見送る。送るような騒ぎ=阿久)。出陣が両三日後に迫る。出陣するとなれば生還を期し難い。▼出陣する(兵馬をそろえて。五百の手勢をひきいて=真継)。出陣学徒を戦場に送る。 **しんげき【進撃】**怒濤氷との進撃に押しまくられる"半村。敵の進撃を阻む。粛々として軍勢が進撃を起こす柴田錬。▼進撃する(気負い立って。疾風のごとく)。快進撃が止まらない。快進撃を続ける。急進撃(電撃的な。疾風迅雷の。怒濤の)。破竹の進撃ぶり。▶進軍する(嬢ぁりが一列になって。勝利に向かって)。進軍らっぱが鳴り響く。 **せめこむ【攻め込む】**▼攻め込む(二手に分かれて。数にものをいわせて=飯田)。かくなる上は攻めこむ以外にない=坂口。▼攻め入る(敵の領土に。勝ちに乗じて)。▼攻めかける(搦からめ手から。吶喊して)。▼攻め上る(京へ。都へ)。▼攻め寄せる(敵の軍勢が。ひしひしと。関ときの声をあげて)。首尾よく目指す屋敷に討ち入る。猛然と大刀を打ち込む。 **せめにくい【攻めにくい】**▼攻めあぐむ(城を。鉄壁の守備に)。堅塁を(攻略する。攻めあぐむ。誇る)。鉄壁の(陣を誇る。防備に固められる)。▼鉄壁の構え(金城。堅城)。難攻不落の(堅城。要塞)。 **せめる【攻める】**▼攻める(強者が弱者を。大胆に狙って。太刀先鋭く。大軍をもってひた押しに)。胸のすくような猛烈な攻め=井上靖。理詰めな攻め口。攻め口に兵を向ける。攻め手に事欠かない。濠を埋めて搦からめ手からの攻めに転じる藤沢。兵强攻めめで敵を降伏させる。城を攻め落とす。城を包囲してひと揉みとばかり攻め立てる=山本周。寒気がひしひしと攻めつける。▼攻め取る(国を。城を)。屋敷を焼き打ちする。焼き打ちをかける。陣を鶴裂に展開する。扇形の陣形を作る。総攻撃の陣形を取る。アタックが成功する。アタックをかける。目標にアタックする。攻勢に転じる。ここぞとばかりに攻勢に出る。攻勢の足固めをする。次の攻勢のための布石。野党が攻勢を強める。攻勢的な論戦。攻略に手間取る。▼攻略する(城砦むいうを。城を。他国を。難敵を)。 **せんきょう【戦況】**戦況が(膠着にいちする。好転する。悪化の一途をたどる。一進一退を続ける。大詰めを迎える。刻々と変化する。最終局面に入る)。不利な況に置かれる。戦局が(膠着する。好転する。敗色に傾く。日増しに不利になる)。戦局を有利に導く。 **せんしゃ【戦車】**敵の喰車が押し寄せてくる。戦車のキャタビラーの音が聞こえる。兜虫跡にとのように見える装甲目動車高橋和。装甲車が魔王のように居座る半村。 **せんじょう【戦場】**▼戦場(修羅場の。砲煙弾雨の。雨のごとくに弾の降ってくる=安岡。兵隊達が身体を投げ出して鰹跡っの乾し場のように倒れて行く今日)。戦場で(槍々』を合わせる。権力の恣意にさらされ戈妙んの間に相見劫砂える=山田美。あたり一帯が修羅の巻と化す船山。戦禍に荒廃した町。戦乱の巻。争闘の巷。弾雨乱刃の巷。鉄砲玉の下をくぐる=子母沢。兵火の巷。砲煙弾雨の中をくぐる。砲煙のみなぎる野。砲火の港と化す=母沢。敵の砲火をおかして前進する。街じゅうに弾痕がびっしりとこびりつく。戦場のような騒音の広間"加賀。会議室が戦場のような雰囲気となる。戦場のように騒々しい騒ぎ=南条。▼古戦場(鬼哭啾々だにしたる。草生した)。全土が戦場化する。死屍ししの横たわる塹壕ご认。順壕を掘る。血と汗の匂いが立ち込める戦陣。身を喰座にんの渦中に投じる。戦線を(拡大する。縮める。展開する。離脱する)。荒涼たる戦野。骨を飛野にさらす。 **せんそう【戦争】**愚にもつかぬ戦争。戦争が(一生を台なしにする。日増しに苛烈さを加える。集団的な狂気を氾濫证从させる=大江)。戦争で(死ぬ。父親を亡くす)。戦争というものは人間の生命をまったくごみのように無視して成立する=福永。戦争という(異常な時代。苛酷な体験を経る=高橋和)。戦争とは個人にとってはただの災難にすぎない!なかにし。戦争に勝ちも負けもない。庶民が戦争に駆り出される=舟橋。戦争の(恐怖を訴える。惨苦をなめる。恐ろしさを実感する。渦中に巻きこまれる。傷痕を深く残す。記憶を次代に伝える=池澤)。恐るべき戦争の実態。戦争は(それ自体が巨大な狂気"隆。世界人類を根こそぎ駄目にする=林美)。戦争を国策の道具とする。戦争のような忙しさ"山田味。幾人ものきょうだいたちと狭い家の中で毎日戦争のように育つ=日野。戦争責任を(問う。韜晦忙らする)。戦争前夜の物情騒然たる頃。戦争体験を語り継ぐ。全面戦争に突入する。貿易戦争が熾烈しぇになる。事変が勃発する。銃火を交える。雨飛する銃火をものともせず。戦雲が(急を告げる。れ込める)。赫々効いたる戦果をあげる。目ぼしい戦果 <602> がない。戦火が広がる。砲火の焦土。戦禍を(食い止める。被る)。戦火を交える。戦機の燃するのを待つ。戦機をうかがう。戦後の混乱がおさまる。敗色濃い戦時下内橋。戦前戦後の時代をくぐり抜ける。戦線が膠着にうち状態になる。戦犯として処罰される。戦犯を裁く。戦乱が打ち続く。戦乱に(疲れる。巻きこまれる)。戦乱の(世に生まれる。巷にをくぐりぬける)。争乱が絶えない。総国争乱の世。未曽有の大戦に遭遇する。大戦の勃発で世情が騒然とする"玉村。二度の大戦を経る。天下に大乱が起きる。大乱を鎮める。動乱が起こる。天下動乱の狼火の場をあげる=柴田錬。家が兵火に焼かれる。兵火を交える。乱が起こる。始まる)。和戦(両様の構え。二段構えの備え)。戦災で(烏有行ゅに帰する。財産を亡失する。街並みが変わる)。戦災に遭う。戦災を被る。 **せんとう【戦闘】**戦闘が(終わる。激化する。惨烈を極める)。戦闘で多数が死傷する。熾烈な戦闘を繰り返す。子供騙だ記もしの戦闘をしかける=島尾。勇猛果敢に戦闘する。派手な戦闘シーン。戦闘態勢に入る。戦闘的な(構えを見せる。労働組合。論客)。戦闘配置に就く。▼激闘(四時間に及ぶ。死力を尽くした)。 **せんとうき【戦闘機】**戦闘機が(急発進する。編隊を・組む。空母から飛び立つ。機首を持ち上げて高々と空に郷い上がる!なかにし)。 **たいぐん【大軍】**なだれを打って寄せてくる敵の大軍井上菜。潮の引くように大軍が去って行く=塩野。大軍でひた押しに攻める。敵の大軍が怒濤とのように迫りつつある井上靖。敵の大軍にもろくも敗れる。 **たたかい【戦い】**▼戦い(国を挙げての。孤立無援の。強者に挑んだせつない=武田奈)。戦いが(不利になる。正念場を迎える)。戦いにあえなく敗れる。自衛の戦いに立ち上がる。背水の陣で戦いに臨む。無慈悲な戦いの場が待っている。孤独な闘いの中に身を置く=井上靖。過ぎた喰いの日々をひとつひとつ振り返る=半村。敗色濃厚な戦いの血路を開く=西木。戦いはまだまだ続く。戦いを(挑んでひけはとらない。押し気味に進める)。敢然として戦いを挑む。激烈な戦いを繰り広げる。有利に戦いを進める。みだりに戦いをいど んではならない灰谷。割れた硝子屑げ物のように鋭い波と風に向かって死の戦いを戦う―小林多。戦いを続ける(凄絶な。血みどろの)。好戦的な(言辞を弄する。様子にたじろぐ)。戦列に(加わる。伍にする。復帰する)。戦列を離れる。離脱する)。 **たたかう【戦う**戦う(意思がない。術すべを知らない。以外に道は残されていない豊田)。▼戦う(国を相手に。真実のために。武器を手に。誇りを胸に。銃を持って。正義を掲げて。先頭に立って。全力を挙げて。力を合わせて。自由と祖国のために。生きた心地もなく恐怖と。心を一つにして。こみ上げてくる嘔吐感姉とと。生命を投げ出して。持ち場を死守して。飢えた虎が獲物を求めるように井上戒。・軍兵がことごとく奮い立って火水になれと菊池。死力を尽くして運命と=武者小路。両軍が火花を散らして今乗)。喰っべく身構える。一生懸命戦って死ぬ。堂々と戦って勝つ。喰い済んで日が暮れて。血の雨が降る。交える(干戈妙んを。剣を。砲火を。矛を。侍どもと一戦を)。▼戦いぶり(壮絶きわまる。余裕神々しくの)。すさまじい戦いぶりは悪鬼とも羅利2せとも云ぃいようがない=山本周。勇猛な戦いぶりを繰り広げる=栗本。戦い抜く(勇敢に。国家の存亡をかけて。最後の一兵まで)。相打つ(双璧が。竜虎が)。一戦に及ぶ。皇国の興廃この一戦にあり。一戦を辞さぬ気構え。応戦する(刀を抜いて。獅子奮迅の勢いで)。干戈の止む時がない=中鳥災。激戦で九死に一生を得る。連日の激戦に疲れはてる。ゲリラ戦を展開する。大規模な交戦に発展する。交戦の最初の一発を常に受けることを甘んじている岩川。全力を挙げて抗戦する。抗戰の意思を固める。徹底抗戦の構え。評定が主戦にかたむく。主戦論が台頭する。戦績が桁外れに頭抜けている坂口。戦績を残す(不名誉な。輝かしい数々の)。各地を転成する。壮絶なバトルを繰り広げる=佐藤多。奮戦する(死に物狂いになって。説明書と首っ引きで。大軍を向こうにまわして)。防戦一方に追いやられる。防戦に努める。必死の防戦を繰り広げる。状況に即応した用兵。用兵に(巧み。長たける)。歴戦の(猛者。勇士)。連戦の疲れが出る。さしもの連戦連敗もやっと終わりを告げる=開高。▼参戦する(軍勢を率いて。重要な戦闘にことごとく)。実戦に役に立つ人材、実戦の経験に乏しい。さながら実戦のような空気がびりびりするほど漂う今乘。 **てきぐん【敵軍】**敵軍が間近に迫る。敵軍を(蹴散らす。迎え撃つ)。敵方に(通じる。寝返る。走る)。敵勢がなだれを打って押し寄せてくる。潮の寄せるがごとく逆らうすべもない敵勢の進撃半村。敵勢を敗走させる。敵兵が上陸してくる。敵兵のただ中へ割って入る。敵兵を斬り伏せる。外敵から(身を守る。弱い者を守る)。外敵の(攻撃を避ける。侵入に備える。侵入を防ぐ)。 **てきじん【敵陣】**敵陣に(楔を打ち込む。攻め入る。攻め込む。突っ込む)。一文字に敵陣に殺到する。敵陣の(一角を突く。背後を突く)。敵陣を(強襲する。探る。突破する)。敵陣深く入りこむ。 **てきち【敵地】**敵地に(足を踏み入れたような険しさ本庄。乗りこんで来たように緊張する石川)。敵地の奥深く潜入する。敵国に(内通する。スパイが潜行する)。仮想敵国を頭に描く。敵前に上陸する。敵中に身を置く。長く敵中にとどまる危険。敵中を強行突破する。 **てきみかた 【敵味方】**名が敵味方双方のうちに鳴り響く。敵味方に分かれる。敵味方を(区別する。見分ける)。敵とも味方とも(決めかねる。つかない)。 <603> 響く。敵味方に分かれる。敵味方を(区別する。見分ける)。敵とも味方とも(決めかねる。つかない)。 **てっき【敵機】**敵機が(飛来する。来襲する)。頭上の敵機が去る。敵機の編隊が頭上に迫る。敵機を撃墜する。追撃する。レーダーが捕らえる)。 **なぐりこむ【殴り込む】** ▼殴りこむ(組事務所に。敵のアジトに。隣の集落に仲用を引き連れて藤田)。一殴りこんでくる(吹雪が。やくざが)。殴りこみをかけると息まく。なぐりこむような勢いで訪ねる=司馬。 **はさみうち【挟み撃ち】**挟み撃ちに遭う。上と下から挟み撃ちにされる。敵を挟み撃ちにする。寄せ手の挟撃が見事に功を奏する。▼挟撃する(左右から。前後から。橋の両側から)。腹背に敵を受ける。 **はへい【派兵】**戦地に派兵する。海外派兵に反対する。軍団を派遣する。出兵する(海外に。人道支援を名分に)。 **ぶき【武器】**武器が(手に入る。ほしくてうずうずしている)。良識を武器にする。優しさに勝る武器はない=阿木。武器を(海中に投じる。捨てる。携える。手に入れる)。いかめしい武器を手にする。強力な武器を持つ。武器を身に(帯びる。つける)。火器を使用する。剣戟炉とを(取る。弄ぶ)。戦況をいっきに転換できるほどの威力を持つ兵器西木。敵の兵器をぶんどる。非人道的な兵器を違法とする。▼得物にする(刀を。鎌を。棒を)。得物を(手に持つ。物色する。振り上げる)。▼新兵器(驚くべき。高性能の)。新兵器によって合戦の様相が一変する!舟橋。新兵器を開発する。 **ぶし 【武士】**吐き捨てるような一言をのこした武士がさっと闇にのまれる=池波。武士に(取り立てる。二霄はない)。武士の(鑑砂が。情け。道を全うする。一分が立たない)。一騎当千の若い武士の一団"井上靖。武士は(相身互い。食わねど高楊枝"舟橋)。古武士の面影を見る思い。▼騎士(円卓の。装甲の)。騎士が身につける鎧はぁ。りゅうとした服装の武家。武家階級が台頭する。武家の商法。気位高い武家の末裔。厳格な武家の躾にっ。武人のような太い眉井上靖。武者修行に出かける。武者ぶり(天晴れな。勇ましい。雄々しい。頼もしい)。▼侍(冗談口一つ利かない隙厳な村上元。豪傑を絵に描いたような=村上元)。侍の身分が露ぁらわになる。格式が面倒な侍の家。侍を捨てる。侍どもを見返してやりたい一心船山。 **ぶしょう【武将】**▼武将(一微短慮の。知勇兼備の。鎧はっをまとった。勇武をもって鳴る。迎撃戦になると妙に強さを見せる=井上靖)。武将として最後の花を咲かせる。きら星のごとく居並んだ武将たち。白洲。諸将が(続々と寝返る。恭順を申し出る)。 **ぶそう【武装】**▼武装する(理論的に。きつい表情で。自動小銃で。柔和な笑いで。寸分の隙もなく)。兵士を武装解除する。武装集団が村々を襲う。武装勢力に(殺害される。誘拐される。拉致らもされる)。武装蜂起に参加する。武装蜂起を企てる。甲冑ゅうちに身を固める。甲冑を身にまとう。立派な甲冑を帯する。兜いぶを(かぶる。着ける)。物々しい具足を着ける。軍装に身を固める。装甲をまとう。 **ぶりょく「武力】**武力で威嚇する。王を武力で追放する。武力に(訴える。物を言わせる。よる権力の獲得)。列強の武力に拝跪汕ぃする=司馬。武力を(行使する。背景とした階級社会"吉田)。戦力が(互角。弱体化する)。戦力の増強を図る。貴重な戦力を失う。 **へいたい【兵隊】**兵隊が銃を振り回し人々を追い払う。ばたばたと大勢の兵隊が死ぬ。兵隊に(駆り出す。とられる)。無理やり兵隊にされる。兵(精鋭すぐった。全身火の玉と化した=塩野)。兵が(関とをつくって突っ込む。吶喊忙して攻めかける)。兵たちが一様に奮い立つ。少数の兵で大軍に立ち向かう。兵を二手に戦う・攻める―-194分ける。いったん兵を引く。しゃにむに兵を押し進める豊田。将軍に鼓舞された兵隊みたいに意気込む"安岡。両軍の兵士が激突する。兵士を(慰問する。鼓舞激励する)。開戦間もなく応召する。忠勇なる国家の干城江戸川。精強で鳴る騎兵。軍兵が奮い立つ。軍兵を配置する。将兵が岡の声を上げる。無益に将兵を殺す。新兵を(教育する。訓練する)。▼戦士(果敢な。屈強な。独立運動の)。兵員の消耗が大きい。兵員を(削減する。増強する。補充する)。歩兵が(行進する。突撃する)。軍人(頑迷な。勇猛な。筋金入りの)。軍人の横暴に反発する。軍人のような身体つきの人=高井。謁見式に臨んだ軍人のように無表情に言う。内館。 **ほこさき【矛先】**意気込みの鋒先をくじかれる=高橋利。質問の矛先を収める。鋭い矛先をかわす。手際よく相手の矛先をそらす。批判の矛先を向ける。怒りの矛先を政府に向ける=船戸。敵の鋭鋒をくじく。鋒謎行の鋭さ宛然収んたる利刃!山田美。 **むかえうつ【迎え撃つ】**▼迎え撃つ(追っ手を。大軍を。敵の一団を。敵の軍勢を。盗賊の集団を。武器を持って)。敵を迎え撃つような昂たかぶり野坂。返り討ちに遭う。▼迎撃する(敵軍を。ミサイルを)。迎撃態勢を敷く。カウンターを(打ち込む。食う)。 **もうこう【猛攻】**猛攻に(屈する。耐える)。猛射に抗する。猛射を浴びせる。敵陣を猛襲する。猛襲を(受ける。加える)。敵の猛襲をしのぐ。猛爆に(さらされる。耐える)。 **よろい 【鎧】**心の鎧が外れる=海堂。全身を鎧で包む。分厚い鎧に覆われる。鎧を(身にまとう。着せられたように固くなる=井上ひ)。槍ゃりが鎧を縫う。鉛の鎧を着たように全身が重い束野。鎧を着る(年齢的な。心に。女の)。十二年前の過去から自分を護ぼもろうとしている鎧のような頑いたなさ=連城。眼の中に固い鎧のようなものがおりている=森環。鎧兜紡いに身を固める。 <604> **いちげき【一撃】**一撃が空振りに終わる。一撃の下に倒す。一撃を紙一重で免れる。後頭部に一撃を加える。心臓に一撃を受ける。痛烈な一撃を食らう。頬に一撃を与える。▼一撃を浴びせる(袈裟けきがけに。難なぎの)。最初の一撃で仕留める。最初の一撃をかわす。スパナで頭を一撃する。一打ちに倒す。 **うちこむ【打ち込む】**▼打ち込む(杭を。釘を。拳を急所に。コンクリートのバイルを。バチンコの玉を。外野スタンドの中段に)。仕事や趣味に熱心に打ちこむ三浦し。スマッシュを(打つ。決める)。 **うちすえる【打ち据える】**▼打ち据える(首の急所を。頬を平手で。容赦なく願もちで。力まかせに肩を)。打ち据えるようなものの言い方=椎名賊。▼打ち叩く(壁を。膝を)。 **うたれる【打たれる】**▼打たれる(雨に頬を。哀愁の念に。畏敬の念に。異様の感に。奇異の感に。言葉の威厳に。新鮮な驚きに。冷たい雨に。深い感動に。不吉な予感に。優しい心に。鞭もちで。強いショックに。熱心さと率直さに。名状しがたい恐怖に。不安にドシンと胸を=長与。何がなしに悲しい思いに島崎)。心を打たれる(美しい交友に。素直な熱心さに)。痛打を(浴びる。食らう)。上位打線に乱打される。 **うつ【打つ】**▼打つ(震柚らが庇いきを。嬉しげに手を。液体が波を。固い音が耳を。碁会所で碁を。転んで頭を。昆布に酢を。次の一手を。波が岩肌を。爆風が全身を。柱時計が時を。はたと膝を。びしりと心を。美味に舌鼓を。不景気が底を。ほんと尻を。胸が動悸を。胸が早鐘を。脈が不整に。鉦かぁを静々と。風がふわっと面を。関係にビリオドを。きれいに掃いて水を。細かい雪が面上を。したたかに腰を。スーパーのレジを。早々に手付け金を。冷たい空気が頬を。手の込んだ芝居を。土砂降りの雨が窓を。何度も寝返りを。ハイヒールの娅跡かで床を。柱時計が八時を。ばんばんと柏手を。非難されないように先手を。ぽんぽんヒットを。必要な手を速やかに。打つべき手をすべて。瓦を桜がばらばら。脛すぁを物差しでぴしりと。鹿威にししがすこんと石を娘合。心臓が早鐘のように"乃南)。▶相槌を打つ(話に。うんうんと。取りあえず適当に)。・敵を討つ(死者の。亡夫の)。▼耳朵じだを打つ(叫び声が。潮風が)。▶終止符を打つ(一日の散策に。人岡的な惑いに)。▼鼻を打つ(異様な臭いが。死臭が。臭気が)。胸を打つ(哀かなしみが。花の白さが。観客の。言葉が強く。読者の)。打って一丸となる。鉄は熱いうちに打て。▼打たせる(刀に反りを。背中に波を)。蕎麦にはの打ち方を教える。打ち気にはやる。打ち気をそらす。手を打ち合わせて喜ぶ。あらゆる手を打ちつくす。釘を打ちつける。風雨が肌を無残に打ちまくる=石川。▼強打する(頭を。顔面を。腰を。背中を。好球を痛打する。狙い打ちする(カーブを。好球を)。ストレートを)。狙い打つ(右拠を。左拠を。センターを)。乱打する(警鐘を。めったやたらに)。乱打戦で打ち負ける。太鼓を連打する。打てない(何の手も。手を打ちたくても。驚きのあまりあいづちも=西木)。打親が(低調を極める。沈黙を強いられる)。あくびの出る貧打戦!赤瀬川。 **くぎ【釘】**音が出るところに尖とがった釘が一本一本打ちこまれていくような靴音"尾辻。数本の釘が深海魚の歯のように突き出す藤本。釘でも投げつけられるように大粒の砂がばらばらと落ちてくる=山本有。釘を踏んだようにぎょっと竦すくむ吉川。一本釘をさされたような顔戸板。心に釘を打ちこむような痛み"加賀、釘のように(痩せている。尖った留め金の先"三浦哲)。煙が折れ釘のように直角に折れ曲がる="大岡。 **げんこつ【拳骨】**拳骨が飛んでくる。ぼかっと浴骨がくる。額のあたりをこつんと拳骨で小突く八谷崎、拳骨の雨を降らせる。頭に一発ゲンコツを見舞う飯田。握り拳を(固める。開く。振りまわす)。拳固でミットを叩く。どんと拳固ぶんでテーブルを叩く。 **こぶし【拳】**蝸牛は吹くのような赤ん坊の拳=横光。膝にこぶし置いた挙がわなわなと震える。ごつい拳が顎に飛んでくる宮本邨。浴で(汗を拭う。涙を拭く。ガラスをこつこつと叩く。テーブルを叩く)。拳に息を吐きかける。タオルを姿に巻きつける。拳を(口にあてがう。固め座卓を叩く。力まかせに叩きつける。天井に向かって突き上げる。横っ面に叩きつける。痛いほど握り締める=横山。空に打ち振って喚ゃぁく=長与。振り上げたままの姿勢で固まる=熊谷)。続けざまに拳を振り下ろす。膝の上でぐっと拳を握る。振り上げた拳をおろす。右の拳を腰の横に添える。眉間に拳を押し当てる。鳩尾扱説へ拳を突き入れる。怒りに堪えぬが如く拳を握って自分の腿ももを叩く永井荷。自分でも制しようのない怒気に拳を震わせる=山本同。憤慨に堪えぬように固めた拳を膝がしらへ当てる長塚。両手のコブシをぎゅうっと握りしめる古井。 **しない【竹刀】**竹刀を(打ち合う。正眼に構える。中段に構える。振るう)。竹光を腰にさす。木刀と木刀が噛み合う音がひびきわたる=池波。白虎隊のように木刀をついて泣く後藤。真正面から理屈の木刀を揮ふるって先方の害毒の真剣と切り結ぶような不利なことをする=幸田露。木剣が夏々妙っと鳴る。 **だきゅう【打球】**打球が(顔面を直撃する。グラブをかすめる。フラッと郷い上がる)。打球に回転がかかる。打球を後逸する。▼ショット(豪快な。切れ味の悪い)。 **だげき【打撃】**心理的打撃が大きい。致命的な打撃が襲う。壊滅的な打撃から立ち直る。頭と心を打ち割る叩く・打つ <605> 打撃に堪える野問。打撃を最小限に抑える。打撃の上にも打撃を加える。精神に救いがたい打撃を与える=森村。打撃を受ける(壊滅的な。手ひどい)。大打撃を受ける。痛撃する(家計を。脳天を)。 **だしゃ【打者】**三振前の馬鹿当たり。四球を選ぶ。安打を放つ。▼三振(空振りの。見送りの)。打席に立つ。打線が(沈黙する。爆発する)。長打が出る。正しいバッティングを身につける。バントの構えをする。内野を抜くヒットを打つ。ファウルを何本も続ける。凡打に終わる。打ち気満々のバッター。バッターが打席に入る。バッターボックスに立つ。 **たたかれる【叩かれる】**▼叩かれる(陰口を。寒風に顔を。ほんと肩を。不意に棒で。完膚なきまでに。柴答もちで息もつけなくなるほど背中を"古井。闇を引き裂くような風に=山本周)。叩かれたら叩き返す。肩を軽くぶたれる。マスコミにぼこぼこにされる=横山。 **たたく【叩く】**▼叩く(雨粒が傘を。雨が屋根を。陰口を。挙で胸を。散々願いちで尻を。布団の裾を。部屋のドアを。雪と風が窓を。肩を親しげに。戸を静かに。腕をびしりと。肩を思い切り。肩をそっと。ガラスを指で。あれやこれやと無駄口を。口々に憎まれ口を。こんこんと金属を。札束で人の横面を。波がボートの横腹を。ばしんと首筋を。バソコンのキーボードを。ばたばたと畳を。包丁でまないたを。めずらしく軽口を。紙面で徹底的に。顔をびしゃびしゃと。手のひらでばんと。戸を力いっぱい。吹き降りが屋根を激しく。棒でびたびたと。オールがバシャッと水を=長崎。お尻が皿れ上がるくらい=貫井。テーブルを指でとんと"小沼。裸馬の腹をぴちゃぴちゃと平手で=遠藤。指先で膝をパタバタと=村上巻)。▼頭を叩く(こつんと。こつんと。びしゃんと)。軽く叩く(頭をこつこつと。尻をぼんぼんと。指でとんとんと)。▼キーを叩く(軽いタッチで。手慣れた調子で)。▼口を叩く(勝手な。聞いたふうな。臆面ない。分かったような)。▼こつこつ叩く(かかとで床を。壁を。ガラスを。ドアを。窓を。靴の先で甲板を)。▼鼓膜を叩く(唸うなり声が。大声が)。▼手を叩く(ばちばちと。ばんばんと。ほんと。子供みたいに嬉しそうに"さだ)。▼とんと叩く(肩を。机を)。どんどん叩く(雨戸を。ドアを)。▼とんとんと叩く(首筋を。机を。戸を軽く)。ばたばた叩く(平手で頭を。ボケットを)。ばんばんと叩く(肩を。ズボンを。畳の上を。手のひらを。手を。ポケットを)。「あ、そうそう」と膝を叩く"里見。▼びしゃびしゃ叩く(波が舷側じんを。平手で頬を)。▼ぴしゃりと叩く(肩を。尻を。膝を。額を。頬を)。揃えた指先で軽く額を叩く。▼びたびたと叩く(頭を。肩を。腿もを。両手で順を。手のひらで)。▼ぺたぺた叩く(首筋を。平手で)。頬を叩く(札束で。びしゃんと)。ほんと叩く(おでこを。肩を。テーブルを。膝を)。ぼんぼんと叩く(お腹を。肩を。鞄ばを)。ためらいがちなそれでいて切羽詰まったような叩き方。小池。お互いに肩を叩き合う。▼叩きつける(必殺の一刀を。拳を首筋に。拳を横面に。渾身に从の力を込めて。雨が痛いほに"飯田)。ぼんぼんと砂を平手で叩き均す。▼叩きまくる(そこらじゅうを。手当たり次第に)。▼打ち合わせる(コッブを。棒を。両手を)。▼はたき付ける(煙管を。小麦粉を)。はたく(ぽんと煙管を。札束でほっぺたを)。小憎らしい顔を引っ叩きたくなる=東野。▶ひっぱたく(尻を。頬っぺたを。横っ面を。頭を平手で)。ぶつ(尻を。げんこつで)。 **なぐられる【殴られる】**火ばしの曲がるほど頭を殴られる=川端。殴られたいのかとすこむ。殴られてのけぞる。頬が掌に50のかたちに熱くなる=荻野。目に黒いあざをつくる常盤。目の前がバッとまっ赤になり無数の星がきらめく飯田。目の前にあまたの星が散る=内田疹。横っ面を張られる。ぶん殴られて昏倒に況する。食らう(往復びんたを。顔面にパンチを。こつんとげんこつを。ストレートの一撃を)。先制バンチをかまされる。肘打ちを食らう。袋叩きに迴う。 **なぐりたおす【殴り倒す】**▼殴り倒す(一発で。素手で)。大男を一撃で地べたへ換じくり倒す古井。▶張り倒す(頬を。向こうっ面を。札びらで)。 **なぐりつける【殴り付ける】**▼殴りつける(雨が道路を。腕に力をこめて。酔いにまかせて。雨がビシャビシャとムチのように顔を"大原。背骨が微座ふじになるほど=内田百)。腰が立たなくなるほどなくりつける"小林多。殴りつけたい衝動に耐えるのに苦労する"山口。殴りかからんばかりに叱咤に。する"つか。殴りかからんばかりの勢いで突進する=高橋和。▼殴りかかる(いきなり。横合いから。誰彼かまわずに)。 **なぐる【殴る】**▼殴る(頭を棒で。鉄砲の台尻で。頬を思いきり。馬乗りになって。感情にまかせて。竹刀でこんこん。頬をびしゃりと。ぼこぼこになるまで。後頭部がつぶれたスイカみたいになるまで。村上龍)。顔がはれあがるほどなくる=野問。殴る蹴るの乱闘を演じる。頭を殴る(拳骨で。ぼかっと。ぽかぽかと)。▼頬を殴る(びしゃびしゃ。平手で)。殴りたいほど腹が立つ。銃床で顔面を殴り続ける。▼殴られる(気を失うほど。人相が変わるほど。歯が折れるくらい。けだものでも殴るように棒で=川端。耳が腫れあがるほど"中上)。殴り合いのけんかをする。併をつくような音がして妙に痛いなぐり方"阿川弘。そばにいる人も手が出せないほどの凄まじい殴りよう~五木。がっと頬骨が鳴る=幸田文。手が頬に鳴る。平手打ちが飛ぶ。頬が高く鳴る。ぶん殴られてみじめに昏倒に礼する。▼ぶん殴る(棒で頭を。頭を滅茶苦茶に=向田)。殴打する(顔面を。したたかに。バットで。棒で)。食らわす(痛い棒を。拳固ぶんを。二つ三つ続けざまに拳を)。美しい花弁で打たれてでもいるように少しも痛みと叩く・打つ―195感じない <606> もぅに打たれる=高井。びしっと鋭い鞭の音がする。稲妻みたいに光る長い鞭の線!大庭。鞭を(ひゅうひゅうと振り回す。入れられた馬さながらに走り出す=伊坂。地面に打ち鳴らして歩く=かんべ)。馬にびしりと観をくれる。甘言と鞭を使い分ける。刑罰の鞭を振るう。尻に鞭を振り下ろす。死骸に向かって鞭を加える=山田美。自分の怯懦込だに鞭を入れる=小林久。待神の傷痕の自覚が孤独に鞭を当てる=福永。びしりと鞭で(叩く。打つように言う=光原)。背中から腰にかけての鞭のような強似にいっでしなやかな線森境。鞭のようにきびしい声で怒鳴る=野坂。一条の針金が鞭のように閃がらく三島。きびしく注がれている眼を禊のようにびししと感じる"高見町。視線が面上にびしりと鞭のようにおちる=本庄。綱の端を願のように鳴らす三浦質。人の言葉が悪のように腹立たしい=横光。ローブが猛獣使いの鞭のように鳴る丸谷。心に答しもを感じる志賀。 **むちうつ【鞭打つ】** ▼鞭打つ(呵責しが心を。水が舷松陰を。蹴馬うじの尻を。疲れた体に。回らぬ舌に。老骨に。無気力な気持ちに。これでもかこれでもかと自分に小島)。綺麗な花を罪もないのに妄みだりに鞭むちうつと同じような不快"夏目。馬を便打って走らせる。老体に鞭打って働く。老化した体に鞭打って猛訓練を続ける"沢木。罵声に鞭打たれる。管打ちつような力のこもった低い郊"高井。激しい言葉が答打つように投げつけられる有吉。仮借なく我がまま増長を鞭打だんする。 **めったうち【滅多打ち】** 滅多打ちに刀を振り下ろす。頭を鈍器でめった打ちにする。めちゃくちゃに(叩く。殴る。ぶん殴る)。 いうもののない打郷らら井上靖。▼打郷する(激しく。めったやたらに)。頸動脈とうを手刀で強打して昏匪にいさせる=大藪。手刀を首に振り下ろす。首筋に手刀を食らう。首に手刀を叩きこむ。鉄拳制裁を加える。鉄拳を振るう。妻に手をあげる。▼とやしつける(尻を。背中を。胸を拳で)。背中をどやす。張り手を顔面に浴びせる。▼張り飛ばす(側頭部を。頬を。向こうっ面を。横っ面を)。肋骨、いつをヒットする。▼見舞う(肩口に一撃を。頭にげんこつを)。横なぐりに打ち倒す。腕を横なぐりに振る。左右の連打が決まる。ボディーブローを連打する。連打を浴びせる。 **ノック** ▼ノックの音(手のひらでただどんどんと無邪気な"三浦哲。指先だけであたしというふうな"肌れた三浦哲)。ノックの音が(執拗に鳴りつづける。すると反射的に立ち上がる)。ノックの音で目を覚ます。ノックもそこそこにドアを押し開ける!笹沢。▼ノックする(扉を静かに。おずおずとドアを。規則正しく間をおいて)。あたりをはばかるような遠慮っぽいドアの叩き方向田。 **バット** バットが(球を弾き返す。ほとんどかすりもしない。真芯で球を叩く。よく振れている)。バットの振りがシャープ。バットを(大振りする。短く持つ。びゅんびゅん振り回す)。 **パンチ** バンチが(顔面に炸裂にくする。虚しく空を切る)。面白いようにパンチが決まる。体にバンチがめり込む。軽いバンチの応酬。バンチを(あごに受ける。顔面に食らう)。言葉のバンチを食らわせる。サンドバッグにバンチをめり込ませる。力を込めてバンチを振るう。宙にパンチを放つ。アッパーカットを食らわせる。アッバーをヒットさせる。左右のワンツーが顔面を襲う。ストレートが顔面に炸裂する。ストレートを放つ。ボディブローのように後からじわっと効いてくる。ジャブが顔面を襲う。ジャブを(打つ。放つ)。顔面に機関銃のようなジャブを浴びる=船戸。鋭いジャブのように飛んでくる言葉を避けそこなう~森瑙。フックが(腹にめりこむ。顔面に炸裂する。額に飛んでくる。頬をヒットする)。フックを鳩尾跡於に浴びせる。フックを顔面に(叩き込む。見郷う)。 **ハンマー** 一句一句をハンマーで棒杭を打つようにたたき込む徳永。ハンマーのようなモリモリした両腕=開高。手をハンマーのように振り廻す~林京。金槌か何かでガンと頭を打たれたような気がする=田山。金槌で(泳げない。釘を打つ)。鉄槌ていで脳天を一撃する。言葉がとほうもない重さと固さを持った鉄槌となって脳天をぶちのめす=西木。のっけに敗北を言い当てられてガンと鉄槌を食ったようにしょげた首を垂れる=吉川。▼槌っちを振るう(石工が。刀鍛冶妙になが。一心不乱に)。槌を持つ手に力をこめる。黙々として槌を振るい続ける。 **びょう【鋲】** 鋲がゆるむ。紙を打ち込む。紙切れを画鋲で留める。メモを画鋲でドアに留める。 **ひょうしぎ【拍子木】** かちかちと拍子木が鳴る。夜回りの拍子木が聞こえる。拍子木を叩いて火の用心の巡回をする"沢木。柝ぃが鳴って藤があく。ちょーんと柝が鳴る。かちかちと柝をうつ音。 **ひらてうち【平手打ち】** 平手打ちの音が響き渡る。平手打ちを頬に飛ばす。頬に平手打ちを(食わせる。飛ばす)。頬を平手打ちする。頬を平手で(打つ。はたく)。ピシリビシリと音高く響くほどほっぺたを平手で殴る=石坂。平手で顔をびしゃりと打つ。平手で横面をはたく。びんたをびしゃっと食らわす。順にびんたを張る。 **むち【鞭】** 厳しい愛の鞭。鞭が(鋭い音を立てて空気を切る=大変。りゅうりゅうと風を切る芥川)。言葉の鞭がビシリと打つ=高見明。願で宙を切るような鋭い一汽笛=武田奏。竹の鞭でびしびし叩く。裸体が血の川でおおわれるまで鞭で打たれる=塩野。声が厳しい鞭に一変する=山岡。語尾が鋭い硬に変わる=山岡。声の答 <607> # しょうしんしょうめい【正真正銘】 **正真正銘**まぎれもない事実。**正真正銘**の(実話。ダイヤモンド)。正札付きに今日から始める"久米。正札付きの悪党。▼折り紙つき(成績優秀の。身持ちの堅いことは"井上ひ)。折り紙付ぎの(悪党。専門家。名医。立派な人物)。折り紙つきの口やかましい教官"内海。出所がしっかりしている折紙つき=田山。 # しょうたい【正体】 幽霊の**正体**見たり枯れ尾花"遠藤。**正体**が一向につかめない。違和感の**正体**がわかる。**正体**を(秘密にする。白日の下にさらして見せる。はっきりと見届ける。ひた隠しに隠す)。次第に**正体**を現してくる。酔って**正体**をなくす。人間の**正体**をまざまざとつきつける“白井。 # せいかく【正確】 哲学者カントの如く時間に**正確**"井上ひ。**正確**な(位置がわかる。射撃を期する。診断を下す。判断を下す。意味を説明する。記憶をたぐりだす。時刻を確かめる。数字をはじき出す。ところは分からない。ポイントを捉える。資料が手もとに揃っていない」皆川)。現実の**正確**な認識を誤る。部屋の**正確**な見取図。印刷のように**正確**な生活・野上。ドラムが途切れることなく**正確**なビートを刻み続ける"辻仁。驚くほど**正確**に予測する。かなり**正確**に覚えている。欠陥を**正確**に突く。現状を**正確**にとらえる。事実を**正確**に記録する。情報を**正確**に伝える。人の気持ちを**正確**に見抜く。雰囲気が**正確**に伝わる。民意を**正確**に反映する。役割を**正確**に理解する。機械でする仕事のように必ず**正確**に行くとは断言できない志賀。時計の針のように**正確**に生きる=椎名綱。▼**正確**に把握する(事態を。仄ほのめかす意味を=貫井)。理解の**正確**さに驚く。精度が高い。ビンボイントに人の気持ちを逆撫にかでするのが巧いぇい有川。 # せいぎ【正義】 砂糖菓子のようなまやかしの道徳的**正義**"中野美。応報の**正義**が貫徹される。勝者の**正義**がまかり通る=火坂。**正義**の(ために戦う。鉄槌を下す。味方。怒りが爆発する)。**正義**を(掲げて喰う。余っする)。孤高に**正義**を体現する。節を曲げないで**正義**を貫く。社会**正義**を確立する。**正義**感あふれる優秀な記者。清廉な**正義**漢タイプの政治家。**正義**感に裏打ちされた闘志。**正義**漢にふさわしい行動。人一倍**正義**感の強い好青年=山岡。 # せいしき【正式】 **正式**な(認可が下りる。契約書を交わす)。**正式**に(辞表を出す。辞令が下りる。離婚が成立する)。意を決して結婚を**正式**に申しこむ=半村。**正式**の手続きを踏まない。**正式**発表を待つ。フォーマルな(会合。服装)。本式に練習を始める。雪が木式に降ってくる。本式の訓練を受ける。 # せいとう【正当】 **正当**な(権利の行使。罰を受ける。評価を下す)。職務上の**正当**な行為。意味を**正当**に解する。力を**正当**に評価する。**正当**性が明らかになる。一**正当**化する(越境攻撃を。自分の行為を。侵略を。伝向を)。▼**正当**付ける(己れを。逃走を)。▼合理化する(曖昧な態度を。侵略を)。 # せいとう【正統】 **正統**の(史書。帝王)。政権の**正統**性を国民に示す。オーソドックスな(考え。方法。ドラマを構成する=阿佐田)。伝統にのっとったオーソドックスな食べ方"玉村。 # ぜせい【是正】 **是正**に取り組む。▼**是正する**(誤った考えを。地域的格差を。不均衡を。行き過ぎを。作業能率の低落を)。▼矯正する(吃音詰んを。近視を。欠点を。歯列を。性格的欠陥を。訛なまりを。歯並びを。非行を。弊風を。悪い癖を)。 # せいき【正規】 **正規**な学問を修める。**正規**の手順を踏む。大人が**正規**の手順を守るのは自分の主張に裏付けを作るため"有川。▼レギュラー(クラブの。チームの)。レギュラーから外される。レギュラーに取って代わる。レギュラーの座をつかむ。 <608> **ただしい【正しい】**正しい(位置を示す。行動をとる。一筋の道に導く。道を踏み外す。考えを心に植えつける。しきたりに従う。情報を得ようとする。判断に基づく信念=白井)。▼正しい(善悪の判断が。それなりに。論理的に。ある意味で)。筋目の正しい家柄。道徳にのっとった正しい人生。まっすぐな規矩くの正しい道。身持ちの正しい人生を送る。唯一正しい方法。由緒正しい家柄。自分の言うことは絶対正しいという自信に満ちた言い方"長崎。正論は正しいだが正論を武器にする奴は正しくない=有川。正しいかどうかは神のみぞ知る=北。正しいかどうかをチェックする。自分の見る目が正しいと思い込む"高橋克。正しい判断を(下す。する余裕をなくす"村上元)。正しく(的を貫く。生きたことを喜ぶ)。消く正しく生きる。現実の本質を正しくとらえる。言葉を正しく使う。事実を正しく伝える。事態に正しく対処する。話を正しく開き取る。文章を正しく読み取る。無法な行動を正しく見せかける。世の中の声を正しく反映する。▼正しくする(威儀を。冠を。儀礼を。心のあり方を。姿勢を。礼儀を)。正しく理解する(事故の真因を。情報を)。予見の正しさが証明される。運動の正しさを事実で示す。説の正しさを立証する。予測の正しさを実証する。推理の正しさを裏付ける志茂田。必ずしも誤りではない。折り目正しく挨拶する。冴えた足音が規則正しく雑否の中で響く古井。しっとりと落ち着いて行儀正しい女"山手。全員が規律正しく一つのことに当たる=浅川。順序正しく修業をする=田山。真正の(相続人。勇者)。正は必ず邪に勝つ。、 **ただす【正す】**▼正す(誤りを。襟元を。髪の乱れを。羽織袴は始動に身を。間違いを。ゆがみを。根本から。きちんと姿勢を)。▼成儀を正す(礼装に。モーニングや紋付きに)。端然と威儀を正して筆をとる今日。居住まいを正して(頭を下げる。切り出す。次の言葉を待つ熊谷)。襟を正して恭しく迎える森的。姿勢を正して言い直す高樹。膝を正して座る。 **ていせい【訂正】**数値の訂正をひんぱんに繰り返す=吉村。訂正する(言い間違いを。記録を。賃金体系を根本的に)。毫こうも訂正するつもりはない。ばかばかしくて訂正する気にもなれない=篠田。誤解はなるべく早く訂正しておくにしくはない=加賀。訂正記事を載せる。▼更正する(申告を。登記事項を)。▼手直しする(原稿を。部屋を)。小手先の手直しでごまかす。 **てきせい【適正】**適正な(価格設定。空気圧を保つ。資源配分。ジャッジを下す)。適正化する(取り調べを。量刑を)。適量が分からない。適量の(飲酒。目安)。適量を(超す。知る)。 **てきせつ【適切】**適切な(答えを出す。策を講じる。処暇をとる。措置を怠る。言葉で表現する)。表現したい内容を適切に伝える。本心を適切に表現する言葉が見つからない=宮本輝。然るべき(手段を講じる。手順を踏む。手続きを取る。人を中に立てる。方法で発表する)。適宜な処置。適材適所に人員を配置する。きわめが甘かったために適材適所の原則を踏みはずしてしまう三浦し。向き向きに応じて適所に振り分ける。風力発電の適地。適当な(間隔をおく。言葉が思いつかない。話題が思いつかない)。他に適当な者が見当たらない。不適切な(扱い。人選。発言。例)。節度を欠く。適切を欠く表現。不適正な譲渡をチェックする。不適当な処置。教材には不適当な本。飲用には不適な水。寒冷地に不適な作物。掲載に不適な写真。食用に不適な穀物。 **てきど【適度】**適度な辛さが疲れた体を気持ちよく刺激する=辺見。適度に(気だるい疲労。抑制がきく)。阿決。ゅを適度に混ぜて述べる=松本。手を抜くべきところでは適度に抜く奥泉。どんな人にも平等に適度に微笑みかける"小川。適度の温度に保つ。節度に富んだ生活。節度のある態度。どこか人を踏みこませない節度を保つ三浦絵。簡潔で節度ある文体。ほどほどに(きれいな部屋。豪華な内装の店内)。酒をほどほどにしか飲まない。ほどほどの規模にとどめる。 **どうぎ【道義】**道義が地に落ちる。道義を(重んじる。守る。無視した混乱が尾を曳いている=山岡)。道義上の責任。道義心が強い。道義的な責任。道義的に許されない。義に(感じて一肌脱ぐ。殉じる烈々たる壮志)。信義に厚い。信義を(重んじる。守る)。節義を(重んじる。全うする)。一旦引き受けた以上は節義を変えない萩原则。大義親を滅す。大義に(生きる。殉じる)。私情を捨てて大義につく。天下の大義に従う。大義の道をまもって死ぬ。 **どうとく【道徳】**道徳が(退廃する。根を張る)。既存の道徳に挑戦する。常識と道徳にがんじがらめになる永井路。欲情はしばしば道徳の仮面をかぶる=大岡、道徳を(重んじる。信じる)。古い道徳を押しのける。道徳観を身につける。道徳臭が鼻につく。道徳的な秩序を誇示する。公徳心を(育む。養う)。公徳を守る。徳義が備わる。 。徳義が備わる。徳義に篤い人。徳義を守る。徳性の高い人。徳性を養う。人道に(重きを置く。適う)。人道をわきまえる。人道主義に徹する。人道的な(考え方。見地)。モラルが(高い。低い。人を一層美しくする=中河)。過去を今のモラルで切って捨てる=さだ。モラルをもって行動する。権力にとって都合のいい方向にモラルを誘導する"玉村。倫理(実践的な。人間が勝手に創り出した"円地)。倫理の崩壊を招く。倫理的な(規範。判断。不快感。問題)。 **どうり 【道理】**太刀打ちできる道理がない。道理に(合う。適う)。物の道理のわかった応対ぶり池波。道理をわきまえる。世の中の道理を説く。▼一理ある(言い分に。言うことに。主張に)。▼理に吐(盛者必衰ひょうじょの。諸行無常の。人の世の)。▼哲理(高遠な。 <609> とうてい(常識では考えられない。能力はないとあきらめる。一筋縄では行かない。許せることではない)。到底受け入れることのできない無理難題"火坂。何とも(愛くるしい顔。後味が悪い。いやな気持ち。奇妙な取り合わせ)。なんともはや表現に苦しむほど愉たのしい北。何ともはや情けない話。ほとほと(愛想をつかす。動きが取れない。どうしていいか分からない)。まるで(話が通じない。比較にならない大きな差。通が利かない)。まるきり(記憶がない。逆になる。とは言えない。興味がなくなる)。まるきりの(嘘っぱち。素人。でたらめ)。 **まっとう【真っ当】** まっとうな(生活を送る。正論を吐く。人間。道を歩む)。まっとうに(生きる。働く。理解する)。まともな(仕事がない。人生を送る。文章を書く。道を歩む。食事をとらない)。 **りょうしん【良心】** 良心が(汚れる。鋭い。とがめる。鈍い。麻痺まぃする。許さない。胸奥で燃えさかる。義憤の後ろに避難する芥川。心臓に微かびのようにこびりつく!連城)。眠っていた良心が目をさます。良心に(背く。反する。こだわりを感じる。従って行動する。谷とがめるものがある。恥じるところがない。一点のやましさも起こらない黒岩。時効があってはいけない三浦絵)。良心の(鏡が終る。かけらもない。声に従う。やましさを感じない。苦痛を生温い湯に溶かして虚栄心を刺戟しいし何となく満足する=藤枝。責めとも後悔ともつかぬ気持ちがにがりのように残る水上)。事実をも良心をも豚かない。さして良心が痛まない。一片の良心もない。良心が痛む。良心が疼うずく。小さな棘とげが胸に刺さる!向田。良心に痛みを覚える。良心の痛みを多少とも和らげる。良心の呵責効しに(襲われる。悩まされる)。良心の呵責を(受ける。感じる)。 かどうかしらない。断れるかどうか自信がない。断言できるだろうか)。腹の底から(愛しいと思う。楽しそうに笑う。憎らしいと思う。ソーッと恐怖感がこみあげてくる―清水災)。真に(信頼すべき人。優れた作品。偉大というのほかない。裁き得るものだけが真に許し得る三浦袋)。まことに(情けない代物。お恥ずかしい話。ぶしつけながらお願いの儀がある=辺見)。景観まことに雄大。 **ふこうせい【不公正】** 不公正な取引。公正さを欠く城定。アンフェアな(扱いを受ける。行為。手段。判定)。確かにフェアプレーじゃない三浦綾。 **ほんかくてき【本格的】** 本格的な(攻勢が予測される。シーズンが始まる。対策に乗り出す。取り調べを開始する)。本格的に練習を始める。本格的になる(暑さが。吹雪が)。本格化する(活動が。金融危機が。景気後退が。グローバル戦略が)。 **ほんとう【本当】** 本当か嘘かを見分ける。嘘と本当がこちゃごちゃになる。てっきり本当だと思う。どこまで本当なのか知る由もない。本当になる(噂が。懸念が)。本当の(名前を名乗る。気持ちが分かる。自分をさらけ出す。姿へと立ち返る)。嘘みたいな本当の話。本当のことを(打ち明ける。告げるに忍びない)。冗談でもなければ嘘でもない。どうやら本当らしい。偽らざる(告白。心境を語る。本音)。真の(元凶を探る。贅沢だいを楽しむ。意味を理解する。恐ろしさを知る。理解者を求める)。掛け値なしにうまい。掛け値なしの(傑作。正直な話。値段。一騎討ちの勝負=岡本)。 **ほんどう【本道】** 本道(教育の。勝負の。人生の)。本道に立ち返る。本道を踏み外す。学者としての本道を歩む。正道から外れる。正道を歩む。 **ほんとうに【本当に】** 本当に(運がいい。悔しそうな顔。腹が立つ。心持ちのよい朝。申し訳ない気持ちになる)。いったい(どこまで本気なのか。何様だと思ってるんだ。何を考えているのだろう)。一体全体(どうしたことか。何を言っているのか)。実に(堂々たる貫禄。ばかげた話。よく似合う)。真実うれしくてならない。果たして(勝てる **ほんばん【本番】** ▼本番(これからが。待ったなしの)。肝心の本番に調子が出ない。本番を明日に控える。ぶっつけ本番で試合に臨む=高橋三。本番前の肩慣らし。本舞台に(上がる。立つ)。本舞台を(心待ちにする。踏む)。 **ほんもの【本物】** 本物が手に入る。偽物か本物かを見分ける。てっきり本物だと思う。本物と見分けがつかない。本物に似せて作る。本物の(手応えがある。味を心得ている)。お互いの間に本物の愛情を生み出す。本物そっくりのレブリカ。腐っても鯛たい。新しいことが本物のような錯覚白井。 **まさに【正に】** まさに(運命的な出会い。互角というべき戦い。美少女と呼ぶにふさわしい)。船がまさに沈没寸前。まさしく(耳寄りな話。この一点にかかっている。容易ならぬこと)。 **まったく【全く】** 全く(意味が分からない。うらやましい限り。お気の毒なことだ。見当がつかない。ちんぷんかんぶん。疲れを感じない。問題はないと一蹴する)。全くの(お手上げ。偶然。まぐれ当たり)。全くもって(不可解な現象。妙な因縁。迷惑千万)。一向に(苦にならない。心が弾まない。差し支えない。実感が湧かない)。いやはや(大変な願ぎ。驚いたのなんの。お話になりません)。およそ(対照的な二人。無責任な放言可愛げのない顔。金持ちらしくない風態藤枝)。皆目(手がかりはつかめない。納得がいかない。わけが分からない)。ずぶの(初心者。素人。新人)。全然(印象が違う。話にならない。言うことを聞かない)。 <610> # 漂う・彷徨う # あてどのない【当てどのない】 **当てどのない**(彷徨『行を続ける。放浪の旅)。蛸壺にを沈めるようなあてどもないこと長塚。▼ぶらぶら歩く(**当てどもなく**。何という目的もなく)。当てのない(空想。望み)。当てもなく(幻影を追う。終日歩き回る。山を逃げ隠れしながら歩く)。当てもなしにあたりをふらつく。何という当てもなしに出かける。羅針盤のない船も同じ。目的もなく通りをぶらぶらする。路討を芥川)。徘徊する(巷さまに浪人が。畑一魅魍圏以ぅが。得体の知れない人物が。猛獣が檻おりの中を)。ふらふらと当てもなくぶらつく。目的もなくぶらぶらする。街から街を浮浪し続ける。 # いきあたりばったり【行き当たりばったり】 **行き当たりばったり**で(たどり着く。書き進めていく)。**行き当たりばったり**に(空き巣に入る。書いた企画書。その日を送る)。**行き当たりばったり**の旅。後は野となれ山となれ。運を天に任せる。先のことは空吹く風に任せる。どちらになるかは成り行き次第。成り行きにまかせるより他しようがない!庄野。なるようになれと自棄ゃけの気持ちを抱く萩原溅。流れのまにまに浮いたり沈んだりする。風のまにまに流されて辿たどりつく=大庭。刹那ぜっの快楽に身をゆだねる!清水彩。一か八かの出たとこ勝負。出たとこ勝負で(交渉に臨む。何が出るか賭けをしてみたくなる"干刈)。 # うろうろ 家の**中を**用もなく**うろうろ**と歩き回る。狼狽して**うろうろ**と走りまわる。▼**うろうろ**する(あっちこっちを。あわてふためいて。空き巣狙いみたいに谷崎。とたんに意気地がなくなって古井。葉末にかかった尺取り虫のように=本庄)。艦ぉりに入れられた猛獣の如く部屋の中を**ウロウロ**する谷崎。 # うろつく **うろつく**(怪しい男が。野良猫が。家のまわりを。百位前後を。港から港を。空しい思いで。あてもなく街を。飼い主のない尨犬心以のように朱雀大 # くうちゅう【空中】 **空中**から査察する。風が**空中**で鳴り渡る。**空中**に(音色が広がる。火花が飛ぶ。浮遊する感覚。身を躍らせる)。**空中**に浮く(体が。ぽっかりと)。**空中**をふわふわと漂う。ジグザグに**空中**を舞い飛ぶ。**空中**高く巻き上げる。 # くらげ【水母】 **くらげ**が(海面を流れる。ふわふわと海を漂う)。**くらげ**に刺される。ぶよぶよの**水母**のような無力感福永。**クラゲ**のようにただよいついた半透明のビニール袋"阿部。恨んでいた心が**クラゲ**のように軟化する=獅子。**海月**火ちみたいにふわふわと動く無数の女の顔!吉川。びりびりびりびりびりびりと揺られる**海月**みたいに慄ふるえ続ける=横光。花火が星**水母**乳くほどのさやけさに光っては消える"梶井。 # さまよいあるく【さ迷い歩く」 **さ迷い歩く**(道なき山中を。行くあてもなく街路を"三田。とこという当てもなく町から町へと"江戸川。ふらふらと部屋から部屋へ漂うように=筒井)。夜の街に**さ迷い**出る。うろつき歩く(家のまわりを。埃にこっぽい盛り場を「柴田別)。国中のあちこちを流れ歩く。 # さまよう【彷徨う】 ▼**彷徨う**(死に場所を求めて山中を熊合。生と死の谷岡を藤本。午後の光の中を煙がエクトブラズムのようにゆっくりと=村上春)。▼さまよう(視線が宙を。深い森を。夢現ぅの間を。夢の世界を。亡霊のように。うろうろと原野を。かれこれ一時間近くも。あてどもなくふらふらと野を"山田風。何かを求めるようにあちらこちら!白洲)。五里霧中を**さまよう**思い=太宰。▼淵を**さまよう**(絶望の。眠りの)。▶街を**さまよう**(あてもなく。知らない)。のたうちまわるように生涯**さまよい**つづける=日井。足の向くまま森から森へと**さ迷い**つづける=堀。魂が浮かばれずにふらふら**さ迷って**いる若竹。▼**さまよわせる**(宙に喩を。居心地悪そうに視線を足許話しに貫井)。どこという目的もなく歩く。見知らぬ土地を流れる。灯をもとめる峨のごとく**さまよい**寄る=里見。▼うろつきまわる(あちこちを。村の中を)。船が波問を漂泊する。漂泊に明け暮れた生涯"中野孝。漂泊の旅をする。島々の間を漂浪する。長い漂浪の旅から帰る。当てどない彷徨いいを続ける。▼**彷徨する**(生死の境を。希望を失って。追っ手に怯ぉぃえながら山中を=遠藤。憤怒と諦念との間を=福水。一昼夜を混濁した湯気のような昏迷にいの裡うちに「徳水。夢とうつつの間をぼんやり木庄)。 # ただよう【漂う】 ▼**漂う**(暮れ際の靄もゃが。人生の哀欲が。鼠色ゆげぇの暮色が。春の息吹が。微笑に気品が。夜道に静寂が。音が夜の底を。水の表層を。夢現ぅの間を。匂いが鼻先に。髪の油が甘く。湯気が白く。あたりに静けさが。ぐったりした倦意以の気分が。どことなく純朴な感じが。控えめな色香が。眼差しに暗い色が。目に和やかさが。物言いに胡散臭いざんさが。物言いに清潔感が。木の葉のように空を。香りがゆるやかに。華やかさが身辺に。酒のにおいがぶんぶん。水蒸気がゆっくり。残り香がふんわりと。そこはかとなくものの哀れが荻野。表情に陶然として酔うさまが"有吉。表情に抜け目のない計算が=原田彩。はかない霧のように空を=小川。一抹の憂鬱が顔面に死。黄金色の暮色が消えやらぬままに=田島。風船玉のように風のまにまに=石坂。冬らしくなった日差しが頼りなげに=堀。ゆるやかな情欲の波間に"藤本。深くなった乳色の総が木立に絡まるように"原田店。不満が常に胸の中をもやもやと=佐野。夜明けの闇が冷たく=本庄)。**ただよう**(身辺に寂しい影が"石坂。鼻を曲げるばかりの臭気が!柴田剣。一抹の不安感が心の片隅に=柴田錬。花の香があたりに濃く=平岩)。風に**漂う**落ち葉。木の香りの**漂う**家に住む。作品に**漂う**情緒。▼あたりに**漂う**(異臭が。芳香が。投げやりな雰囲気が荻野)。▼香りが**漂う**(ほんのりと。かすかにシャンブーの)。空気が**漂う**(陰気な。沈鬱な。安堵めんの。かび臭い。気まずい。絶望の。重苦しい淀んだ。部屋の中にうそ寒い=江戸川)。▼気配が**漂う**(周りに陰気な。背後で人の)。▼口辺に**漂う**(寂しげな微笑が。苦々しい笑いが)。▼臭気が**漂う**(かすかに。湿っほい)。▼匂いが**漂う**(部屋にいい。夕餉物ぅの。言葉に強がりの。どこか作り事めいた"貫井。ほのかに金木犀に机の=丹羽)。微笑が**漂う**(顔にかすかな。口元に冷ややかな)。▼雰囲気が**漂う**(怪しげな。清潔な。切迫した。品のいい)。▼ムードが**漂う**(意味深な。上品で豪華な)。▼気配が**漂い**出す(夏の。夕暮れの)。香りが宙に**漂い**出る。▼**漂い**はじめる(辺りに冷気が。道に夕闇が)。**漂って**いる(顔に皮肉な笑いが。道にほのかな光が。恋の気配が身辺に)。ほっとした気分を言外に**漂わせる**。▼**漂い**流れる(香気が部屋に。ゆらゆらと。明け方の白い光が)。映画でも見ているような浮遊感が心地良い!高樹。▼浮遊する(ふわふわと。切れ切れの思いが頭の中を=光原。真っ白なマリンスノーがあたりに=辻井)。▼立ち迷う(煙草の煙が。靄が)。暁闇の庭から蚊が**立ち迷って**来る三島。 <611> が心の片隅に=柴田錬。花の香があたりに濃く=平岩)。一風に漂う落ち葉。木の香りの漂う家に住む。作品に漂う情緒。▼あたりに漂う(異臭が。芳香が。投げやりな雰囲気が荻野)。▼香りが漂う(ほんのりと。かすかにシャンブーの)。空気が漂う(陰気な。沈鬱な。安堵めんの。かび臭い。気まずい。絶望の。重苦しい淀んだ。部屋の中にうそ寒い=江戸川)。▼気配が漂う(周りに陰気な。背後で人の)。▼口辺に漂う(寂しげな微笑が。苦々しい笑いが)。▼臭気が漂う(かすかに。湿っほい)。▼匂いが漂う(部屋にいい。夕餉物ぅの。言葉に強がりの。どこか作り事めいた"貫井。ほのかに金木犀に机の=丹羽)。微笑が漂う(顔にかすかな。口元に冷ややかな)。▼雰囲気が漂う(怪しげな。清潔な。切迫した。品のいい)。▼ムードが漂う(意味深な。上品で豪華な)。▼気配が漂い出す(夏の。夕暮れの)。香りが宙に漂い出る。▼漂いはじめる(辺りに冷気が。道に夕闇が)。漂っている(顔に皮肉な笑いが。道にほのかな光が。恋の気配が身辺に)。ほっとした気分を言外に漂わせる。▼漂い流れる(香気が部屋に。ゆらゆらと。明け方の白い光が)。映画でも見ているような浮遊感が心地良い!高樹。▼浮遊する(ふわふわと。切れ切れの思いが頭の中を=光原。真っ白なマリンスノーがあたりに=辻井)。▼立ち迷う(煙草の煙が。靄が)。暁闇の庭から蚊が立ち迷って来る三島。 **たなびく【棚引く】**▼棚引く(山腹に靄もゃが静かに=外村。洋々の二字が前途に=夏目)。▼たなびく(煙が空に。煙のように濃いもやが厚く=光瀬)。空にたなびく横。春霞たなびく空。一面に震のたなびいた海。街路の先にたなびいている朝霧に目を凝らす内海。 **たゆたう** たゆたう(霧が。水が。小船が波問に。落ち葉が池の面に。深い疲労が緩やかに。日暮れどきの明るみが海の上を=本庄。白い蝶がはらはらと池波)。心の中でたゆたう旅心。▼光がたゆたう(寂光の静かな。畳の上に)。日頃胸のうちにたゆたっているものを口に出す=高井。 **ちゅう【宙】**宙で(ぶつかり合う。足をばたつかせる)。宙に(垂れた網。ゆらゆらと浮く。浮き上がるような不快感!多岐川)。手を宙に振る。うつろな眼差しを宙に据える。首が高く宙に飛ぶ。ゴム風船を宙に放す。視線を宙にさまよわせる。視点を宙に結ぶ。煙草の煙が宙に漂う。提灯らにうが宙に躍る。ふわりと宙に舞い上がる。目を宙に遊ばせる。足が宙に浮くような気分村松。エネルギーが虚し々しく宙にさまよい出る"沢木。髪が宙に浮くように逆立つ=福永。体が一瞬宙に浮いたほどの勢いでふっ飛ばされる=景山。放心したような眼を宙に投げる=勝目。▼宙に浮かす(視線を。目を。まさぐるように手を渡辺)。宙に浮く(計画が。魂が。体がふわりと)。▼宙に泳がせる(視線を。戸惑ったような眼を直行)。▼宙に迷う(愛が。考え方が)。宙の一点を見据える。高く宙へ飛ばされる。宙を(滑ってなめらかに着地する。翔かけるように街道を急いで行く=吉川。見るような眼つきでビアノに聴き惚れる=林美)。目が宙を泳ぐ。拳が虚しく宙を切る。ぼんやりと宙を見つめる。小暗い青葉の宙を裂くようにして音が消えていく=竹西。鋭い太刀風が宙を切って響く福永。ビーターバンのように宙を飛ぶ=石森。宙を飛ぶようにして(駆けつける。走る)。月が中天高く澄み渡る。月が中天に(輝く。かかる)。中天に満月が浮かぶ。太陽が中天にある。 **なびく【靡く】**▼なびく(煙が空に。煙がふわふわと。光の穂が風に吹かれて消えそうに佐藤春)。海の表に立ち昇る水蒸気がところどころ煙のように旅をびく"福永。風になびく(笹原が。洗濯物が。長い髪が。煙がけだるそうに=中沢)。 **ひょうりゅう【漂流】**当てどない漂流を始める。船が潮に揺られながら漂流を続ける。▼漂流する(船が太平洋を。筏いかに乗って海を)。船が波にもまれながら漂う有島。群衆の中で漂流物のように浮いたり沈んだりして見える女性“堀。流れのままに身をまかせた漂流物のように暮らす中村真。洋上を漂い流れる。 **ふろうしゃ【浮浪者】**浮浪者のような暮らしをしながら戮を転々とする三田。浮浪者のように髪も髭ひげも伸びる=遠藤。浮浪者みたいに泥やほこりにまみれ地べたを這ぃう運命"島田。ボームレスが港さまにあふれる。ホームレスの増大を防ぐ。 **ほうろう【放浪】**放浪家をなさないという質たもに生まれつく"梶井。あてどない放浪の旅に出る。孤独な放浪の中に一生を送る=中島敦。▼放浪する(日本各地を。行き当たりばったりに。山中を餓鬼のように今日。野良猫みたいに"江國)。さすらいの旅に出る。他郷にさすらう。流離艱苦はんの生活を強いる。流雌興亡を見極める。流浪の旅に出る。縁を離れて流浪の身となる=高橋克。流浪生活を送る。 **むゆうびょうしゃ【夢遊病者】**夢遊病者のごとくさまよう村松。夢遊病者のような(深夜の行動。足取りでふらふらと歩く"小林久)。夢遊病者のようにうつろな瞳=辻仁。ほとんど夢遊病者のように車内に入る=中河。屋根の端まで来て急に目が覚めた夢遊病者のように立ちすくむ=日野。 **めいそう【迷走】**▼迷走(政策をめぐる。目を覆うばかりの)。末期政権の迷走は世の常。▼迷走する(政治が。方針が。本筋を見失って)。海図を失った船のよう。 **ろうにん【浪人】**ぼろぼろの編み笠をかぶった見るからに汚らしい小さな体軀にぃの浪人池波。狂犬のことき浪人が押し寄せる人束。一生を浪人で終わる。浪人して大学に入る。自由な浪人暮らしをひとり愉たのしむ=柴田純。浪人同様の暮らしに入る。得体の知れない浪人者。 <612> **うちたてる【打ち立てる】**金字塔を打ち立てる。戦場規律の確立につとめる。▼確立する(新たな技術が。制度が。太陽の支配が。生活の安定を)。▼樹立する(権威を。国交を。世界新記録を)。 **おしたてる【押し立てる】**押し立てる(大義名分を。錦の御旗を。優勝旗を。土俵際まで)。▼おっ立てる(親指を。小指を)。 **がけ【崖】**▼崖(切り開いたばかりのなまなましい川端。湾を囲んでそそり立つ三好京)。崖が(海へ向かって落ち込む"柴田翔。屏風のようにそそり立つ西木)。花崗岩質妙にうがの白い崖が灼ゃけるように目にまぶしい光瀬。火山灰層の崖が名工の刻んだ天然の屏風"石森。棚のように崖が突き出す=杉本。崖から(突き落とす。飛び下りる)。崖に(沿って進む。宙吊りになる。左右から挟み込まれる。行く手を阻まれる)。崖の(下を覗のぞきこむ。底をめがけてまろび落ちる"有島)。見晴らしのいい崖の上に出る。海を見下ろす崖の縁に立つ=西木。崖のように勾配の急な路みち=島崎。崖下を(通る。覗く)。 **がんぺき【岩壁】**気が遠くなりそうな険しい岩壁萩原業。岩壁が(垂直にそそり立つ景観。突兀っとそば立つ"島尾。屏風が話のようにめぐる=中)。岩壁の(一角に身を隠す。表面にガラスのように亀裂が入る~西木)。 **さかだつ【逆立つ】**逆立つ(全身の毛が。愛が怒りに。髪が頭上に。髪が恐怖で)。▼逆立てる(柳眉を。骸にのような白髪を三島。猫が首筋の毛を=村山)。 **すいちょく【垂直】** 亀裂が垂直に走る。地面に垂直に穿うがたれた穴。ほとんど垂直に見える壁。直角に(交差する小道。腰を折る。左に折れる。曲がる)。 **ぜっぺき【絶壁】**垂直に近い絶壁が海から生えている綾辻。マストより高い灰色の絶壁になって波が押し寄せる=曽野。目もくらむような絶壁にへばりつく加賀。絶壁の頂に独り立つ。絶壁のようにそびえる巨大な物体光瀬。川を圧して聳くびえ立つ蜓々たる大絶壁菊池。切り立った断崖絶壁。断脈絶壁の縁際まで追い詰められる=村上龍。 **そそりたつ【そそり立つ】**▼そそり立つ(塔が目の前に。巨大な積乱雲が。大仏殿が天空に。陰茎が天井を向いて熊谷)。威圧的にそそり立つ岩壁。高くそそり立つ城壁。夕焼け空を背景にそそり立つ建物"篠田。 **そびえたつ【そびえ立つ】**」▼そびえ立つ(沖に夏雲が。峻険な山が。屹然長いと。岩がちの丘陵が。白亜のマンジョンが。入道雲が真白く、堂塔伽藍がらが誕々さぎとして空に"山田風)。やぐらが青空に穴をあけるかのように聳くびえ立つ=山本」。くっきりとそびえ立つ富士山。直線にそびえ立つ城壁。 **そびえる【聳える】**▼そびえる(天守閣が。山が正面に。拠岘きがとして。巨樹が蔚然彩いと。切り立った岩壁が。建物が黒々と夜空に。巨木がにょきっと一本)。威圧的にそびえるビル。天を摩してそびえる杉の美林。尖塔せんが居心地わるそうにそびえている"五木。傲然と肩をそびやかす。心々ががたる(山並み。山間を住処付ぃとする=栗本)。楼閣が巍峨として蒼空にうに突起する。そばだつ(塔が。山が)。樹木が亭々と生い茂る。幾重にも突兀とした山々。▼屹立20する(煙突が。男根が。石柱が天に向かって=梶尾)。雪の大地に雄々しく屹立している木"飯田。 **たたずまい【佇まい】**たたずまい(活気に乏しい。古風な街の。風情のある。ひっそりとした。ヨーロッパ風の)。曰ぃゃくありげな美しい老女の佇炊ぇまい"有吉。瀟洒なたたずまいの家。 **たたずむ【佇む】**▼佇む(石段の頂に衛兵のように"三島。波に置き去られた海藻か漂着物のように=内海)。たたずむ(街路樹の陰に。橋の上に。部屋の前に。しばしその場に)。狐につままれた風にあっけらかんと佇むばかり=里見。道端にたたずんで待つ。▼佇立する(煙突が。怒号に居すくんでその場に=本庄)。 **たちば【立場】**立場が(一貫して変わらない。困難なものになる。微妙に変化する)。手ひどく自分の立場が戯画化される=島尾。是々非々の立場で対応する。相手の立場に立ってものを考える。四面楚歌礼祕んの立場になる。傍観者の立場に徹する。消費者の立場に立って対策を講じる=畑村。▼立場に追い込まれる(絶望的な。面倒な)。▼立場に追いやる(反逆者の。追いつめられた)。▼立場に立たされる(微妙な。不利な。困った)。▼立場に立つ(指導的な。優位な)。立場を忘れて聞き惚れる。苦しい立場をそれとなく漏らす。自分の置かれている立場を知る。社会的な立場を失う。どっちつかずの立場をとる。はっきりと護窓の立場を打ち出す。旗幟さしを(明らかにする。鮮明にする)。自由なスタンスで発言する。立ち位置を決める。自分のポジションを見つける。有利なポジションを占める。立場がない。なくなる(立場が。立つ瀬が)。立場をつぶすような問題。管理人としての立つ瀬がない。 **たつ【う】**▼立つ(一陣の風が。海に土用波が。解決のめどが。声に険が。心にさざ波が。白羽の矢が。双方の顔が。小さな虹が。野に陽炎分がが。ばあっと埃児にが。肌に栗ぁもが。悪い噂が。恋暗い土間に。円熟の境地に。同じ土倓に。人生の門出に。絶望の淵に。対等の位置に。読者の見地に。広い視野に。山の頂に。有利な立場に。義によって。自分の足で。砂煙がばっと。波頭が白く。文筆をもって。物にすがって。両足を開いて。海原に三角波が。こめかみに青筋が。とんでもない風評が。ぶくぶくと泡が。相手より優位に。精密な計算の基礎に。立て札があちこちに。鳥瞰的な視点に。調味料を取りに。のっそりと戸口に。ベッドの傍らに。近々と向き合って、日本を背負って。まなじりを決して。美しく装って人の前に。雪まみれの姿で軒下に=船山。女達が石ころのようにこちんと"有局。暗がりに影のように"大佛。まっさおな顔をして物におじたようにつつましく有局、寄り添うように林真)。腕の立つ武士。▼上に立つ(石段の。仮説の。基本原則の。人の。平衡の)。▼側に立つ(市民の。秩序の。被告人の)。▼岐路に立つ(運命の。人生の)。▼先に立つ(驚きが。恐怖が。不安が。馬鹿らしいという気持ちが"戸川)。▼背にして立つ(壁を。ドアを。窓を)。頂点に立つ(大組織の。ピラミッドの)。曲がり角に立つ(人生の。文明史の新たな安部)。▼道が立つ(姑しゅうの。嫁の)。▼湯気が立つ(ぼうっと白い。ぽっぽっと)。身じろぎもせず立ちつづける。忙しそうに立ったり座ったりする。▼立っている(杭のように。凍りついたように暗いドアの前に"墨有。石段の頂上に縛いまめられたように凝然と三島。樹がこちらを見おろすように"島崎。一言も出さないで石像のように=国木田。もぬけのように泉鏡)。▼立たされる(窮地に。苦境に。剣が峰に。困難な場に。存亡の危機に。土壇場に)。手を取って立たせる。客が総立ちで拍手する。爪立てんばかりに総立ちになる。するすると一本の茎が上に伸びるような立ち方"池田。下車駅まで立ちっ放し。立ちっ放しで足が疲れる。長時間立ちっ放しで働く。▼立ち詰めで働く(朝から。一日中)。起立と着席を繰り返す。乱立する(小党が。スーバーが。立候補者が)。乱立模様を呈する。▼立たない(生活の方針が。武士の一分が。見通しが。予定が。誰も席を。さざ波一つ。完成の見込みが。まるきり見当が。死んだ人々に申し訳が=隆)。めどが立たない(増資の。退院の。返済の)。立たず(後悔先に。あちら立てればこちらが)。 <613> **たてる【立てる】**立てる(親の顔を。雄鶏が鶏冠を。解決のめどを。川がさざ波を。健康な寝息を。小石が影を。コートの襟を。周囲に波風を。樹木が葉音を。上司に伺いを。白羽の矢を。鍋が湯気を。肉に歯を。肌に爪を。話に耳を。火が炎を。額に嫉しもを。評価の基準を。身の証はかを。狐で生計を。情報を役に。体をしゃんと。尻尾をぴんと。当てずっぽうな見積もりを。口に人差し指を。こめかみに青筋を。しかるべき人を。自転車のスタンドを。白い波しぶきを。立ち入り禁止の立て札を。デザインで身を。並々ならぬ功績を。ばたばたと窓が音を。絵をイーゼルに。好きな男のために操を渡辺。マウスのクリック音をカチカチと=平野)。悪い評判を立てられる。梯子しを壁に立てかける。屏風を立て回す。卵の白身を泡立てる。▼差し立てる(梢を。旅を)。ナイフをテーブルに突き立てる。ぴんと耳を突っ立てる。足を爪立てる。波立てる(皺を。胸を)。▼舞い立てる(落ち葉を。埃にこを)。襟をそばだてる。▼立てない(立つに。腰がぬけて)。声を立てずに(泣く。喉の奥で笑う。ひっそりと寄りそう)。足音を立てずに歩く。 **だんがい【断崖】** ▼断崖(地平線に近く紫にかすんだ"島尾。吹雪の間から真黒に天までそそり立つ省局。弓なりに連なる=加賀)。海沿いに断崖が連なる。切り立った断崖が続く。断崖から身投げする。断崖に打ち寄せる波。家庭が断崖に向かってずり落ちようとしている=小林久。海に臨んだ断崖の道。▼切り立った崖(垂直に。まっすぐに。今にも崩れて落ちてきそうな"加賀)。 **ちょくりつ【直立】**ベニスが直立する。直立させる(体を。指揮刀を。上半身を)。直立不動の腰を深々と折って老師に挨拶する=武田奈。辛うじて直立不動の姿勢を保つ。直立不動の姿勢で挙手の礼をする。気をつけの姿勢をとる。 **つったつ【突っ立つ】**▼突っ立つ(まっすぐに。道の真ん中に。峰がにょきにょき。木偶でくのように道傍に藤本。梅の新しい枝が直立して長く高く天を刺し貫こうとする榆ゃぁのように佐藤春。棒をのんだように『和久)。過去も未来も持たない人のようにつくねんと突っ立ったまま小半時立ち尽くす有局。突っ立っている(木像のように。しばらく黙って。手持ち無沙汰のまま。身じろぎもせず。足に根が生えたように清水。今までてきばき動いていた人間が急に人形に変わったようにぼんやり黒岩。押しても引いてもびくとも動かず大磐石のように=福永。驚きに打たれて凝結したように芝木。びっくりしたような顔をして大佛。夜明けのガス灯みたいにぼーっと"野間)。挙杭にらのようにつっ立っている=小林多。突き立つ(空に煙突が。大波が壁のように=隆)。 **でんちゅう【電柱】**電柱の陰で立ち小便をする。滑るようにして電柱を降りる宗田。電柱のように(細い人。不動の姿勢をとる!徳永)。電信柱の陰に隠れる。 **におうだち【仁王立ち】**仁王立ちに(突っ立つ。すっくと立ち上がる)。仁王立ちになってとなる。仁王立ちになる(目の前に。部屋の真ん中で。広場の真ん中に柴本)。降る雨の中に仁王立ちする。 **はしら【柱】**柱(漆のようにビカビカに拭き込んである獅子。台座からすらりと立ち上がっている=黒井)。コンクリートの柱が端から端まで街路樹のようにびっしりと続く人間。柱の陰から様子を窺らかう。円柱のごとき腕"中局救。列車の窓を流れて行く景色が電柱で句読を打ちながら目の前で閉じたり開いたりする有島、淡い光を放つように地味な色に磨き上げたた床柱=梅本。 **ぼうだち【棒立ち】**▼棒立ちになる(馬が。息をのんぼうだちで。びっくりして。嘘ではないかと眼を疑うように"萩原飛。はたと当惑したように芝木)。 <614> **ありがたい【有り難い】**▼ありがたい(涙が出るほど。涙がにじんでくるほど若竹。日照りの果ての慈雨を迎えたように=司馬。厚意が胸が苦しくなるくらい鷺沢)。ありがたい懇意を受ける。しみじみとありがたい気持ちになる。気を使ってくれるのは重々有り難いが永井能。気持ちだけありがたく受け取る。好意をありがたく受ける。厚意をありがたく感じる。御託宣をありがたく承る。▼ありがたがる(社用の遊びを。ブランドを。名門企業の名を)。ありがたさが(骨髄に徹する。胸にしみる)。君恩の有り難さに感泣する=今日。健康のありがたみ。前の女房のありがたみが分かる。郷土のありがたみを忘れる。お礼の言いようもない=北原。地獄で仏に会ったような心地火坂。忝か欲しいほどの目の慰め=竹西。願ってもない(機会。幸せ。チャンス。話が転がり込んでくる)。冥利に尽きる(小説家。亭主。料理人)。 **いそいそ**いそいそと(外出の支度を始める。着物を着替える。御馳走を皿に盛る。酒の支度に台所へ去る。写真をとりだす。世活女房の役を務める。土産物を用意する)。店を閉めるまでの時間をいそいそと過ごす獅子。我にもなくいそいそする。 **うきうき【浮き浮き】**休を浮き浮き動かす。浮き浮きと(足早に帰途につく。楽しそうに語り合う。 弾むメロディー。着飾って買い物に歩く艺木。転げるように声を立てて笑う(檀)。うきうきと腹の底からせり上がるような思いを足どりに見せて走る=壺井。浮き浮きする(気持ちが。心が。そわそわ)。浮き浮きした(甘い感覚。顔でもてなす)。何となく浮き浮きした気分。華やいだ浮き浮きした空気。浮き浮きして颅の皮膚までしっとりと輝き出すよう大佛。遠足を前にした小学生のよう若竹。声が無邪気に浮つく。 **うちょうてん【有頂天】**有頂天とでも言いたいほどな快感"佐藤春。有頂天に(のぼせ上がる。はしゃぐ)。有頂天になる(褒められて。社長賞を貰って。好き勝手をして、妙案にすっかり。異性を愛するというこのすばらしさに"つか。バッグを抛ほうり投げたいくらい=田辺)。天にも昇る気分。 **うれしい【嬉しい】**うれしい(誤算。悲鳴をあげる。思いをかみしめる。気持ちでいっぱい)。嬉しい(涙が出るほど。わーっと叫ぶほどに"佐藤愛。居ても立ってもいられないほど永井荷。口では何とか抜かすくせに腹の底ではひっくり返るほど今灭。心がどぎまぎするほど=椎名統。心をとろかすように!菊池。腰が抜けるほど=北。じっとしていられないくらい宫本部。全身がぐにゃりとしてきそうなほど鶯沢。大黒さんが来たように"長与。どうしていいか分からないほど有吉。涙がこぼれるほど=海音寺。胸が熱くなるほど舟橋。胸がわくわくするほど菊池。胸を打って吠えたいくらい人ラ巫。われを忘れるほど=山本忠)。うれしい(雀躍にくするほど。度を失うほど。親切が身にしみて。鬼の首でもとったように=武者小路。体が天に飛んでしまっくらい"宮沢。班のメンバーに認めてもらえたみたいで三浦し。目頭が熱くなるほど森堀。目尻が下がってくるほど=壺井)。これ以上嬉しいことがないみたいにほくほく顔で食べる内海。死ぬほど嬉しい言葉『高橋克。社員としてこんな嬉しいことはない高杉。どんなにうれしいと思うかしれやしない。うれしいにつけ腹が立つにつけ“子母沢。認められたことがこれほど嬉しいのが悔しい肴川。気遣いをうれしく思う内館。嬉しくて(体じゅうに灯がともったような思い=船山。たまらないような面持ち内海。涙が止まらない三好流)。うれしくて(体がほてる。我を忘れる。後先も分からぬようになる。笑いが止まらない。天にも昇る気持ち=高見浩)。胸が展ひらいていくように嬉しくなる=佐多。いかつい顔が赤んぼうみたいにクシャクシャになる=飯田。躍りだしたくなる気分。口笛を吹きたいような気持ち。灰谷。心が(いやが上にも弾まずにはいられない!舟橋。芯から浮き立つような経験宫部)。心の中で手をたたきたいような気持ち灰谷。こみ上げてくる嬉しさで居ても立ってもいられない獅子。やったと叫びたい気分井上ひ。やったやったと手を叩きたい"高樹。天にも昇る心地。飛び上がりたい気持ち(内心。ぴょんびょん)。飛び跳ねたい気分。鼻歌でも歌いたいような気持ち。久しぶりの満塁ホームランという気分=永倉。胸の(奥が白湯さぃでも飲んだようにあったかくなる=向田。中がぐっと広がった気がする“あさの。中でたくさんの小鳥が一度に鳴く=灰谷。中に温かな水が入り込んでくるよう谷村)。悪い気持ちはしない。欣快にたえない。欣快の至り。ほくほくと機嫌がいい。連日の大入り満員でほくほくする。売れ行きがよくてほくほく顔になる。 **うれしさ【嬉しさ】**▼嬉しさ(下腹のむず痒がゅくなるほどの二葉亭。飛び上がらんばかりの里見。咽喉のとへつきあげてくるような=水上)。絶えて久しい対面のうれしさ芥川。口のしまりができないほどうれしさがあふれてくる=長崎。嬉しさが腹の底からこみ上げてきたような笑い=船戸。ぞくぞくするような嬉しさが湧く!佐藤春。じんわりとうれしさが込み上げてくる=ねじめ。胸の底から嬉しさがこみ上げてくる菊池。うれしさで耳たぶが熱くなる。嬉しさで火のように熱くなり体のどこでもマッチを摺すったらバッと火がつくんじゃないかと思うほど=田辺。うれしさで胸が(いっぱい。躍る。苦しい)。うれしさと恥じらいの入り混じった笑顔!内館。顔がうれしさに輝楽しむ・喜ぶ <615> く。胸がうれしさに弾む。あまりの嬉しさに帰り道を間違えるほど内田飛。嬉しさの蓋が明く二葉亭。ふさけた調子でうれしさをごまかす。▼嬉しさを感じる(恋人に見詰められたような菊池。警たとえようもない福永)。 **うれしそう【嬉しそう】**顔面筋肉全体をユタユタとゆるめて嬉しそうに女と握手する=武田楽。うれしそうな(笑みを浮かべる。顔といったらない=飯田)。心底うれしそうな顔をする。にこにことうれしそうな颜色。無邪気にうれしそうな顔になる=海音寺。顔が嬉しそうな笑いで崩れる=山口。世の中にこれ以上嬉しそうな表情はあるまいと思われるほどばっと顔を輝かす=河野。嬉しそうに(飛んだり跳ねたりする『藤原。弾むように歩く=内海)。うれしそうに(犬が吠える。声がうわずる。声を弾ませる。にっこり笑う。瞳が輝く。表情を崩す。目を輝かす。晴れ晴れと叫ぶ。微笑してうなずく。笑い声を立てる。キラキラと眼を光らせる=椎名誠。何度もうなずく村松)。精一杯うれしそうにしゃべる。子供みたいに嬉しそうに手を叩く=さだ。珍しいオモチャを貰った子供みたいにうれしがる=田辺。うれしげな足取りでついて来る。頬にうれしげな笑いをのぼせる。うれしげに(手を打つ。目を細める。声をあげて叫ぶ)。顔を見合わせうれしげにうなずき合う池波。この世の憂さも哀れも知らぬげに明るい声で嬉しげに言う。梅本。細かい波が嬉しげにざわめいている笙野。顔に喜色がみなぎる。声に喜色が混じる。面上に喜色が湧き上がる。少年らしい無邪気の喜色に溢れる"幸田露。喜色満面で礼を述べる。喜色を満面に浮かべる。 **おおよろこび【大喜び】**朗報に大喜びする。叩いて大喜びする(手を。膝を)。内心でガッツポーズを取る。心の中で手を打つ。喜びというにはあまりに大きい喜びが欲声をあげ足を踏みならして全身をかけめぐる感じ山本周。雀躍にょりせんばかりに喜色をあらわす池波。欣喜雀躍唸んにする(栄転の内示を受け。合格の報を聞き。こんな幸運があろうかと)。▼快哉診を叫ぶ(心中。胸の内で。よくやったと)。快哉の叫びをあげる。狂喜に近い興奮を重ねる。狂喜の叫びをあげる。▼狂喜する(勝利に。国をあげて。思いつきに密かに。有頂天になって魂の底から=佐山)。狂喜乱舞して大騒ぎになる。 **かんき 【歓喜】**▼歓喜(魂が遊離したような不思議な真継。息が小刻みになるような藤枝。思わず知らず頬が弛。むほどの"阿刀田。夢中になって叫び出したいような燃え上がる魂の=福永)。歓喜が(体の奥から堰をきを切った激流のように押し寄せてくる飯田。怒海とのように打ちつける=福永)。痛い歓喜が頭の天辺にいから入って来て五寸釘のように頭蓋を貰いて脳底に達する=大岡。かすかな歓喜が匂いのある霧のように全身に浸み込む=野上。五体を引き裂いてあふれ出ようとする潮のような歓喜がこみあげる真継。心の底から湧きいずる歓喜に泣く菊池。歓喜の(涙を流す。叫び声をあげる)。きゃあきゃあと歓喜の声をあげる。恍惚にうたる歓喜の情を味わう。狂したかと思われるような歓喜の泣き笑い=菊池。恍惚に近い歓喜の状態"大岡。琥珀色にぶくに光るたまゆらの歓喜の思い"飯田。死の舞踏のような歓喜の身悶感もえ佐藤春。肉体の血を燃やす歓喜の絶頂石坂。欲喜を顔いっぱいに表す。生命に絶大な歓喜を感じる。抑えても抑えても湧き上がる歓喜をどうしようもない"松本。歓喜を覚える(小児的な。五体がしびれるほどの柴田錬)。法悦に打ち震える。法悦の瞬間を持続させる。 **かんこ【歓呼】**欲呼で迎える。欲呼に応える。欲呼の(嵐。声を送る)。時ならぬ欲呼の声が打ち上げ花火のように起こる=阿久。どっと欲呼の声があがる。 **かんせい【歓声】**歓声が(広場にこだまする。空中をこだましながら揺れ動くように耳に届く。泉受。なだれのように高まる=高橋三)。船上に歓声が湧く。津波のような歓声が襲ってくる=宮本輝。ファンの間から欲声が上がる=篠田。歓声があがる(群衆から。時ならぬ。わあっと高らかな)。劇場が拍手と歓声にどよめく。陽気な歓声を浴びる。▼歓声をあげる(子供じみた。ブールで。子供たちが黄色い。絶叫するような"海音寺)。歓声をあげて迎える。聴衆がいっせいに欲声を上げる=伊坂。花にむらがる夏の蜂のようにワアーッと欲声を挙げる=中島致。どっと歓声が(あがる。起こる)。子供の歓声のような軽く明るい声=中沢。 **きえつ【喜悦】**顔に喜悦がみなぎる。光のような充溢うした喜悦が身裡ふぅからふきこぼれる=檀。喜悦の情が込み上げる。溢れるよう全景悦の表情が湧く"檀。おさえようもない喜悦の色が浮かび上がる=杉本。こみあげる喜悦の情にからだが小刻みにふるえる=真継。思わず内心の喜悦を声に出す久米。 **きき【嬉嬉】**時ならぬ仕事を興がっている子供のような感々ききとした趣三島。子供のような嬉々とした表情"内海。嬉々として(会話を続ける。杯をすすめる。馬車に乗る。部屋のドアを開ける)。よく予習してきた生徒のように嬉々として答える=池澤。息子が嬉々としてボールを持って庭へ飛んでくる=小島。 **たのしい【楽しい】**楽しい(顔が熱くなるくらい=中村真。考えただけでもぞくぞくするほど=小池。声をあげて笑い出したいほど"有吉。胸がわくわくするほど柴田翔。滅多に出さないシッボを掘っかまえるのは=有川)。楽しい(思い出。思いにふける。家庭を築く。会話を繰り広げる。気分に水をさされる。夢に浸り続ける。時間はあっという叩に過ぎてしまう。東野。親和の心が流れる=中河。想像がむらがり起こる=武者小路)。愉たのしい(舌をベロリと出したいくらい"楽しむ・喜ぶ-199 <616> **たのしい【楽しい】**楽しい(極楽のような。天国へでも行くように)。楽しい(想像をたくましくする。空想にふける)。楽しい(集まり。催し)。楽しい(会話。話題)。楽しい(予感に胸が躍る。気分になる)。楽しい(雰囲気に包まれる。酒を飲む)。楽しい(思い出にひたる。経験をする)。楽しい(冗談を言う。週末を過ごす)。声が楽しそうに弾む。楽しそうに(笑う。ささやく。口笛を吹く。身を乗り出す)。楽しげな(声で話す。表情を浮かべる)。この上なく楽しげ。世にも楽しげ。なんとも楽しげな気分=源氏。なんともはや表現に苦しむほど北)。後味の楽しい感銘。すごく楽しい雰囲気。彼女との楽しいひと時を空想する鈴木光。ずっと昔に通りすぎてきた童話のように楽しい時代"石川。狭いながらも楽しい我が家篠田。単調ではあるが平穏で楽しい毎日!星。脊の夜のような楽しい気持ち=梶井。他の誰も興味を抱くはずはないが自分は楽しくて仕方がないといった口調で語る落合。楽しかった(日を振り返る。昔の記憶)。声が楽しく踊る。心が楽しく弾む。人生を楽しくエンジョイする。旅を楽しく締めくくる。毎日を楽しく過ごす。みんなと楽しく話をする。楽しくする(心を。座を。食卓の上を)。楽しくて時間の経つのを忘れる=畑。毎日が楽しくて仕方がない。浮き浮きと楽しくなる。世にも楽しげな声を立てて笑う。辻兵。明るい幻想でも抱いているように楽しげに見える大佛。楽しげに笑い声をあげる。▼愉しさ(心の戦味のくような=原田康。胸のすくような自信に充ちた小芝木)。生きていることの愉しさが胸を締めつける=福水。楽しさが心や体にしみこむ。愉しさがひたひたと心の裡うちに湧いてくる=原田康。楽しさに胸を膨らませる。楽しさを(心に描く。全身で感じる)。楽しそうな顔につい騙だまされてしまう内海。楽しそうに(酒を飲む。世話をやく。目を輝かせる。声をあげて笑う)。生き生きと楽しそうにしゃべる。腹の底から楽しそうに笑う。蜜月ハネムの旅へでも出かけるように愉しそうに汽車に乗りこむ堀。夢のような楽しい(空想。時間を過ごす)。心楽しい日々を送る。酒を心楽しく飲む。 **たのしむ【楽しむ】**▼楽しむ(朝の散策を。恋の冒険を。酒の席を。風流な会話を。松風の音を。祭りの情緒を。仕事を心底。憩いのひとときを。怪い付き合いを。記憶のぬくもりを。香ばしい匂いを。言葉のキャッチボールを。知らない土地の風景を。とりとめもない長話を。二人だけの秘密を。買い物の時間を心底から。額に入れて眺めて。勝手に想像して。彼一流のやり方で。快い疲れをゆったりと。自分の庭をのんびり。桃源平和の夢を萩原明。ゆっくり寛くっぎながら景色を内田康。自由な生活を屈託なく石坂。猫が鼠ずをもてあそぶようにいじめて=星)。のんびりと清貧をたのしむ=池波。楽しむ気持ちが芽生える。桜花を楽しむ男女が出盛っている。人生を楽しむ達人。時間を楽しむ(怠惰な。あわただしい)。焦じらされているのを愉たのしんでいる趣"吉行。▼楽しませる(女の子を。家族を。観客を。口腹を。心を。舌を。読者を。鳥の声が耳を。目を)。▼楽しみ(これから先が。この上もない。何よりの。今夜のニュースが)。生きる楽しみが湧いてくる。楽しみでぞくぞくする。将来が楽しみな新人。特別に楽しみな日。先の楽しみにとっておく。鴛鴦认の楽しみに耽溺ひ託する舟橋。孤独の楽しみに充実して酔う。長与。楽しみにする(子供の成長を。再会の日を。次回を。正月を。続編を。お目にかかる日を。帰ってくる日を)。余生を自分の楽しみのために使う山本島。楽しみを(今後につなげる。邪魔しては悪い)。取りあえずの楽しみを見いだす。楽しめる(存分に。結構。無理なく。より一層)。欲を尽くす。晩酌をたしなむ。▼エンジョイする(休暇を。人生を。生活を)。うまくいったらお慰み。法楽(口の。舌の)。天上の愉楽。現世の愉楽に生きる。レクリエーションを(楽しむ。健康維持に活用する)。悦楽(官能の。現世の)。悦楽に(満ちた生活。酔いしれる)。悦楽のとりこになる。ひたすらに現世の悦楽を追う。無上の悦楽を味わう。 **だんらん【団欒】**絵に描いた餅のような家庭の団梁"瀬戸内。団欒が修羅場と化す。家族の団欒を思い浮かべる。楽しく団奨する。人々が行楽に一家団でする。明るい一家団槃図を目にする。家族団欒の日。家族そろって夕食を食べる。楽しい団居にどのひと時。にぎやかな団居の場。 **はしゃぐ**はしゃぐ(陽気に。大声で。お祭のように。さも嬉しそうにきゃっきゃっと。自分でもおかしいほど。遊びの気分に浮き立って=高樹。遠足に行く子供のように=中村真。気がついて顔を赤らめたくらい=大佛。子供のように無邪気になって軍司。ままごとに熱中している女の子のように三田)。はしゃいだ(気分が続く。声をあげる。気持ちが急速に冷める)。はじゃいできゃっきゃっと叫ぶ。生き生きとはしゃいでおしゃべりする。屈託なくはしゃいで大笑いする。声がどことなくはしゃいでいる。ひとりでに体がはしゃいでしまい生きて動いていることが面白くて嬉しくてたまらない向田。はしゃぎたい気分。大はしゃぎで庭を駆けまわる。祝いの酒を買うほどのはしゃぎ方=住井。運動選手が遠征旅行に出掛けるときみたいなハシャギ方安岡。はしゃぎ方に一種の熱狂的な不安がこもる三島。子供たちのはしゃぎ声が聞こえる。はしゃぎ回る(浮き浮きして。きゃっきゃっと子供が)。勝ち戦からでも帰るようにはしゃぎまわるい水井路。 **めでたい**めでたい(宮中での。所長の。大臣の)。めでたく(夫婦になる。幕を閉じる。婚礼の日を迎える。発足の運びとなる。伴侶を見つける)。万事めでたく解決する。八方めでたし。晴れて本戦に出場する。慶賀にたえない。慶賀の至り。世にもめでたい。門出のめでたい杯。▼覚 **よろこばしい【喜ばしい】**喜ばしい(安堵もんの情。結果で終わる。報に接する。知らせを受ける。成り行きではない)。思うだに喜ばしい話。まことに喜ばしい限り。ほっとするような喜ばしい安堵の情が胸を浸す藤枝。御同座にたえない。御同慶の至り。 **よろこび【喜び】**喜び(魚が水に過ったような。有鳥。埋もれたものを発掘する探検家のようなひそかな興奮に満ち満ちた=山本周)。喜びを(満面に表す。隠さない。顔に表す。かみしめる)。喜びの(あまり跳び上がる。声をあげる。涙を流す)。喜びを分かち合う。喜びに(満ちた顔。胸を躍らせる。胸が震える。胸が一杯になる)。喜びに(輝く笑顔。胸を弾ませる)。喜びの色が顔に広がる=藤本。喜びが爆発する。喜びが込み上げる。喜びが全身にみなぎる。喜びに満ちた(生活を送る。表情を浮かべる)。喜色満面。喜色を隠しきれない。顔にありありと喜びの色を浮かべる=津本。喜びが湧き上がる。こみ上げる喜びを隠せない。喜びを爆発させる。喜びをともにする。喜びを分かち合う。喜びが湧き起こる。 # 頼む・任せる <617> # 楽しむ・喜ぶ-199 かな誇りと瀬戸内、共犯者になったような暗い藤沢。しゃぼん玉みたいに次の瞬間には消し飛んでしまう森環。職を失った悲しさを忘れさせるほどの=川端。腹の底からこみあげるような本庄。身も心もとろけるような本庄)。腹の底にしみるような悲しいよろこび=川端。▼欲び(肌を温め合うにも似た静かな=高井。身内が疼、うずくような大きな=山本円。靈除を灼きつくすような苦痛に近い=立原。眼くるめくような官能の柴田翔)。喜びが(枯れないで生きている。胸のうちに膨れ上がる。ひたひたと寄せてくる"高田)。声に慰藉ごしのよろこびがにじみ出る三島。生きる喜びが湧く。顔に喜びがかくしきれずに滲にじみ出す!安岡。悲しみと喜びが見境もなく紛乱する"本庄。体の中で喜びが踊りはねる=長崎。きつい顔に激しい喜びが哀れなほどあからさまに浮かぶ=北村。子供のような無邪気な喜びが露ぁらわに生き生きと顔に出る=野間。責任を果たした喜びが油然と湧き起こる武田爽。尽きない泉のように悦いぅびが湧き上がってくる=大佛。欣はちびが連城の璧たまを獲るよりも勝る菊池。喜びで胸がいっぱいになる。出産の瞬間に大きな喜びで女の全身が押し包まれる=有吉。むくむくとこみあげてくる喜びと誇りに気も狂いそう"大江。喜びに(胸が躍る。我を忘れて声高く叫ぶ!佐山)。征服の欲びに燃える眼の色"有坂。官能の喜びに溺れる。最上の喜びに燃える。深い喜びに達する。思いがけぬ喜びに出逢ったようににこにこする"授与。淋しい喜びに全身を浸す武田飛。潮のような喜びに浸される=真継。天にも昇ったような喜びに包まれる岩板。泣きたくなるような喜びにかられる小池。肉の歓びに無私になる=立原。二人きりの秘密を共有しているような喜びに胸が頭ぃぇえる=中村真。夢のような喜びに酔う杉本。体が喜びに震える。かっと熱くなるような喜びにふるえる=本庄。はげしい喜びに身っちがふるえる小局。喜びの(声を上げる。絶頂にいる。あまり言葉が出ない。涙があふれてくる)。人間らしい喜びのある生活。場内が喜びの渦で沸き立つ石森。野車な喜びの色が満而に動く=国木田。顔から喜びの色が消える。顔に押さえ切れない喜びの色が浮かび上がる藤沢。喜びを(たたえた眼差し。相手に向かって投げるように並べ立てる有吉。隠しきれないといった歓迎ぶり安部)。二人だけの生活に蝉しびれるような欲はぁびを抱く=宮本点。率直に喜びをあらわす。内心の喜びを押し殺す。生きていることの喜びを痛切に感じる=高橋知。毫光にのさすような喜びを額にたたえる=森嶋。好きな女の子と喜びを分かち合う貫井。退屈な日課の中に悦びを見出す大佛。吹きこぼれるような悦びを抑えることができない=獅子。晴れがましい喜びを味わう三局。墓場をあばいて屍体いたを嗜欲しむ変質者のような残忍なよろこびを味わうぃ梶井。金では買えない喜びを得る=武者小路。サディスティックな喜びを覚える=篠田。喜びを感じる(青い海の陽炎ががが身上に燃えているような=川端。飛び上がりたいほどの『佐野)。胸の底がどんと拡がるような欲びを感じる"黒井。満面に喜びの笑みを洪たたえる"辻井。雪の上に獲物の足跡を見つけた思い城山。喜びが溢れる。喜びが(顔いっぱいにあふれる。心に満ちあふれる)。目的を達した喜びが肩にあふれる=松本。頬に血の気がさすほど喜びをあふれさせる"石坂。希望を遂した歓びに溢れる=山本局。喜びにあふれた祝いの席。 **よろこぶ**【喜ぶ】喜ぶ(大学裳格を。他人の不幸を。若手の台頭を。躍り上がって。顔を崩して。草葉の陰で。声を上げて。手を叩いて。涙を浮かべて。目尻を下げて。目を輝かせて。目を皺しゃにして。目を細くして。うまくいって無邪気に。小躍りせんばかりに。飛び上がるほどに。有頂天になって。初心っょな少年のように。思わず手を打って。顔をくしゃくしゃにして。肩を叩き合って。全身をわくわくさせて。大役を果たして。手を取り合って。びょんぴょん飛び跳ねて。我がことのように。子供っぽく大げさに"大佛。鬼の首でも取ったように佐野。走り幅跳びの選手くらいにとびあがって北。よだれをたらして池波)。民みな鼓腹して悦ぶ萩原町。喜ぶ顔が見えてくるよう。さぞかし喜ぶことでしょう。さぞかし喜ぶに違いない。喜びより(地獄に仏の。手放しの。難破した人が汽船を見つけたような長崎。筆にも言葉にもつくせないほどの=松谷)。喜んで話を受ける。いつになく大げさな身振りで喜んでみせる内館。▼喜ばせる(お母さんを。関係者を。観光客を)。喜び合う(幸逃を。再会を。成功を。無事を。手を打って)。顔に喜色が動く。喜びが顔にみなぎる。子供のように手を叩いて言?北原。喜び勇んで(腕を振るう。馳せ参じる。外国へ出かける)。樹々が一斉に新緑に包まれ溢れる日光を受けて欲びおののく宮本百。思いがけない再会に驚喜する。欣然だんとして(答える。任に赴く)。小躍りしたい気持ち。うれしそうに小躍りする。雀躍ぐくして家にとって返す。証言を得て捜査本部が雀躍する=松本。随喜して王を迎える。随喜の涙を流す。相好をくずして顔いっぱいで笑う。本庄。子供のように頬をほころばす水上。仕事の区切りに満悦する。満悦な笑みをたたえる。至極満悦の体。愉悦が頭をもたげる。愉悦に満ちた楽園。無上の愉悦を覚える。悦に入る(一同。一人で)。悦に入ったように微笑む村松。だらしなく相好を崩す。相好を崩して(豪快に笑う。喜ぶ)。我知らず相好が崩れる。 **ろうほう**【朗報】願ってもない朗報。朗報が届く。朗報に接する。うれしい知らせ。嬉しい手紙が来る。ニュース(ハッピーな。明るい。うれしい。心の弾む)。喜ばしい(知らせ。報)。 <618> **あいがん【哀願】**▼哀願がこもる(声に。目に)。母親にまつわりつく幼児のように哀願の声が続く遠藤。目に涙をためて哀願する。哀願する犬のような表情獅子。へりくだった哀願するような申し入れ"阿部。がらんばかりにして泣訴する。▼啖願する(減刑を。釈放を。復縁を)。泣きついて頼む。▼泣きつかれる(子供に。母親に)。金に困って泣きつく。泣きを入れる。哀訴が強談判に変わる=内海。声が哀訴に震える。哀訴の(声が泣き声となる。響きのこもった声)。 **あまえる【甘える】**甘える(親切な言葉に。年上の女に。年下の男に。母親に。子供のように。少女のように。見境もなく。居心地のよさに。長年の御厚情に。子猫が親猫にじゃれるようにおとうさんに灰谷。動物のように=高樹。人のよさにつけ込んで松浦。小粋な我が儘も球をぶつけて"高樹)。甘えた鼻にかかる声で言へ=山本周。ねだるように甘えた声。小娘のような甘えた鼻声=円地。人の情けに甘えて暮らす。甘えが人一倍強い。押しつけがましい甘えに満ちる"三島。女だからという甘えは微塵ふじもない=森項。言葉の裏に甘えを読み取る。甘ったれた(生き方。猫なで声)。小学校の生徒のような甘ったれた声谷崎。甘えたような潤んだ目=小川。上眼使いの甘えているような表情=円地。甘えるように口をとがらす。甘え放題に育ち上がる。他愛なく甘えかかるようなだまされかた芝木。甘えかかるようなしどけなさ=円地。鼻にかかったしなだれ声。おんぶにだっこ。 **いぞん【依存】**過度な依存を改める。▼依存する(資源を海外に。安価な労働力に。経営者の個人的才腕に)。貿易に依存する国。▼依存する社会(電子装置に。コンピューターに)。依存関係に陥る。 **いのちごい【命乞い】**命乞いに走りまわる。手を突かんばかりに命乞いをする=山本周。四つん這ばいになって命乞いする。助命を(嘆願する。申し出る)。 **いらい【依頼】**世間に知られたくない内密の依頼柴田剣。依頼を(電話口で断る。二つ返事で引き受ける)。依頼する(原稿執筆を。素行調査を興信所に高杉)。人選を役員会に委託する。国民の信託による国政。談案を委員会に付託する。国民の負託にこたえる。 **おねがい【お願い】**後生一生のお願い。以後お見知り置きのほどお願い申し上げる=津本。折り入ってお願いがある。まことにぶしつけながらお願いの儀がある=辺見。▼お願いする(踊りの相手を。協力を。仲人を。伏して)。承知でお願いする(無理を。失礼は百も)。泣血百拝してお願い申し上げる次第。船山。願い上げる(お目通りを。御指導を。御足労の程を)。▼願います(お手柔らかに。他言無用に。ひらにご容赦を。くれぐれも内証に)。 **がいちゅう【外注】**外注の業者。仕事の一部を外注する。請け負いに出す。下請けに出す。▼特注する(家具を。記念品を。実験器具を)。 **がんかけ【願掛け】**願掛けのお百度参り。神仏に願掛けする。願をかける(神様に。観音様に)。神仏に誓願する。 **がんぼう【願望】**願望が(つむぎだす世界。消えることのない青い炎となって内心に燃え続ける。船山)。思惑と願望が入り乱れる。嫉妬が妻への焼けつくような性的願望にまで高まる=筒井。願望を胸にいだく。願手する(恋の実現を。合格を。当選を)。年上の女性に保護されたいというベビー願望北村。 **くれぐれも**くれぐれも(お体をお大事に。秘密にするよう頼む。しっかり保管しておいてくれ!宮部)。何とぞ(哀れみを垂れたまえ。力添えをたまわりたい。よろしくお願いします)。何分ご最頂いぃに願います。何分にもどうぞよろしく。 **こう【乞う】**▼乞う(哀れみを。案内を。一日の猶予を。一夜の宿りを。助けを。直接教えを。許しを)。伝っご期待。陸続と教えを乞いに来る。 **こんがん【懇願】**懇願を荒々しく拒絶する。▼懇願する(七重の膝を八重に折って。頭を畳にすりつけて"井伏。脅迫じみた言葉も織りまぜて笹沢。地面に膝をついて古井)。 **せわになる【世話になる】**▼世話になる(親兄弟に。警察の。しょっちゅう。並々ならぬ。何度となく。ひとかたならぬ)。長年世話になった職場。日常的に世話になっている。一身上のことでお世話になる。友人のアパートに転がり込む。袖にすがる。一宿一飯の恩義にあずかる張合。身を寄せる(実家に。親戚に。知人の家に。つてを頼って)。厄介になる(警察の。言葉に甘えて)。家に厄介になる(兄の。親戚の)。やくざの一家に草鞋らを脱ぐ=濾合。誰の世話にもならない。 **たくす【託す】**▼託す(運を天に。手紙を飛脚に。書画骨董にいつの世界に身を。未来への希望を。草花や小鳥の噂だえりに気持ちを"辻井。深沈とした心境を案山子以ゅに"司馬)。秘密を託すに足る人物。▼望みを託す(後世に。行く末に。前途に明るい。万に一つの)。▶夢を託す(新婚生活に。生涯の)。花鳥風月に託した思い。心境を詩に託して語る三好欲。ぎりぎりの判断を託される。 **たのまれる【頼まれる】**▼順まれる(荷物の保管を。是が非でもと。個人的な用事を)。頼まれると厭ぃやと言えない性分人灭。執筆の依頼が来る。あちこちから依頼が舞い込む。言付かる(手紙を。伝言を)。 **たのみこむ【頼み込む】**▼頼み込む(正直一途に。頭を下げて。頭をすりつけるようにして。是非置いてくれと)。語尾に「ね」を幾つも架かさねる二葉亭。後生 # 頼む・任せる <619> **たよる【頼る】**▼頼る(親類のつてを。外来の思想に。集団の力に。動物的な勘に。一から十まで。あらゆる手受にっを)。誰一人頼る者がない。ほかに頼るところがない。最後に頼るべきものは自分の力以外にない"飯田。頼るべき身寄りがない。薬に頼らざるを得ない。いざというとき頼れる人。頼りがいのある(兄貴。人)。道路標識を頼りに走る。わずかな情報を頼りに行方を探す。昔から姉さんみたいに頼りにしている従姉ごと連城。頼りに歩く(道しるべを。提灯らいうの明かりを宮部)。▼頼りにする(勘を。父を。年金を。星明かりを。娘を。ローブを。何かにつけて。言わず語らずのうちに)。頼りになる相棒。人に頼らず生きる。誰にも頼らない独立独歩の暮らし=中野孝。負ぶさる(先輩に。父親に。母に。本社に)。企業に寄生する総会屋。寄生する(親に。植物に。動物に)。 **てんか【転嫁】**▼転嫁する(犠牲を国民に。原料価格の高騰を小売価格に。仕入れ価格上昇分を販売価格に。収益悪化を労働条件悪化に)。勝利の因を他に嫁する。責任をなすり合う。人に罪をなすりつける。 **ねがい【願い】**▼願い(ささやかな。たっての。火のような。事故防止への真摯しんな。臨終のきわの悲痛な)。願いが(水泡に帰する。胸に去来する)。切ない願いが心にくすぶる。彼女を失いたくないという切ない願いが湧く=中河。一発逆転の願いを込める。国民の願いを顧みない。大それた願いをいだく。短冊に願いを書く。奥さんの願いを仕方なく聞き入れる=内海。女たちの願い事が期せずして一致する"佐藤春。流れ星に願い事を唱える三浦哲。▼大願(諸人救済の。諸人済度の)。素質が活ぃかされる日を念願する。念願の(家を買う。初当選を果たす)。▼願いが叶う(結局。やすやすと)。願いが(神に通じる。実現する。届く)。願ったり叶ったり。だるまの目を入れる。願い事が叶う。願望が想像を絶する形で叶う横山。宿願が叶う。さして手間ひまかけずに宿願を遂げる=里見。誓願が成就する。大願が叶う。一日も早く大願を成就する。大願成就を目の前にする。念願が叶う。念願を果たす。悲願が叶い感無量。年来の悲願が達成される。本願を(遂げる。果たす)。 **ねがいでる【願い出る】**▼願い出る(帰国を。休暇を。許可を。拝謁を)。▼出願する(大学に入学を。特許を)。幕閣に対しほとんど悲鳴といっていい請願がとどく司馬。▼請願する(談会に。市に。政府に。当局に)。 **ねがう【願う】**▼願う(家内安全を。幸福を。静谧な死を。大臣の椅子を。人の幸いを。平和を。身の安穏を。立身出世を。胸の内で切に。神に祈り。手を合わせて。ひたすら娘の幸せを。死者の魂の安らかならんことを=隆)。▼生活を願う(快適な。平穏な)。夢に見ることを願って寝る前に必死で姿を思い描く高樹。ひたすら夏が去ってくれることを願うしかない宮本虾。▼選ぶかう(愛読を。慈悲を)。従わくは(雨を降らせたまえ。我に力を与えたきこ)。 **ひとまかせ【人任せ】**▼人任せにする(仕事を。選択を。店を)。丸投げする(仕事を。判断を。外部に。国が自治体に)。 **まかせる【任せる】**▼任せる(差配の一切を。読者の想像に。舟の漂うに。子供のお守りを。あふれ出る涙を流れるに。各自の自由裁量に。稽古場を弟子に。雑草のはびこるに。自然の成り行きに。おしゃべりの主役を娘たちに=重松)。▼まかせる(湧き上がる喜びに身を=武者小路。落ち葉を散り敷くに『竹西)。自らの道を選ぶに委せる=野間。仕事を任せる気が失せる。▼身を任せる(巡に。男に。睡魔に。時の流れに。放縦無頼の風に=大岡)。一度仕事を任せたら相手を信頼してとことん任せきる=胡桃沢。足に任せて歩を運ぶ。口に任せて生意気を言う。力に任せて羽目板をはがす。酔いに任せて言いたいことを言う。任せておけと(引き受ける。胸を叩く)。面倒な仕事を任される。娘のことはすべて妻に任せきり~吉村。下駄を預ける。委嘱する(研究を。専門委員を。アドバイザーを。肖像画の作成を)。▼一任する(採決を議長に。交渉を執行部に)。委任する(権限を。全権を)。▼手に委ねる(専門家の。病院の)。 **ゆだねる【委ねる】**▼委ねる(座卓に体を。後事を友人に。読者の判断に。事件を警察の手に。自分の運命を他人に)。身を自然の生々流転のままにゆだねる=阿川弘。▼身を委ねる(巨大な流れに。司直に。刹那の快楽に。成り行きに。本能の蠢動しいんに)。 <620> # 食べる **あげもの【揚げ物】** 揚げ物を盛り合わせる。揚げる(コロッケを。天ぷらを。海老をフライに)。からっと揚がる(天ぷらが。フライが)。から揚げが山のように積まれる。フライドチキンをかじる。 **うどん** うどん(しこしこした。吹いて食べるような熱い=幸田文。指のようになめらかな太い極)。うどんがゆで上がる。もし自殺するときはうどんで首を吊りたいくらい、うどんが好き"田辺。うどんを打つ。地粉でうどんを作る。おかめを(食べる。注文する)。素麺そうめんに心をゆでる。ソーメンをチュルチュルとすするようなあっさりと軽やかな情事=胡桃沢。 **えいよう【栄養】** 栄養が(偏る。足りない。行き渡る)。栄養に富む。栄養のバランスを考える。点滴で血管から栄養を注入する。栄養価が(劣る。高い。低い)。栄養失調で(衰弱する。亡くなる)。バランスのいい栄養食。栄養分が(欠如する。不足する)。栄養満点の果物。滋養に富んだ食べ物。ビタミンが(足りない。豊富)。ビタミンの(過剰摂取による病気。欠乏による病気)。 **おおぐい【大食い】** 大食い(やせの。貧弱な身体に似合わぬ=藤枝)。人の倍ぐらい食べる。異常に大食らい。大飯を食らう。饅頭を大食する。大食ぶりを発揮する。無芸大食の人。 **おかず** ご飯のおかず。おかずを(皿に盛る。盛り分ける)。お菜を(こしらえる。つまむ)。手作りの惣菜。惣菜を買って済ませる。 **おかゆ【お粥】** 熱々のお粥。お粥が炊ける。お粥の湯をすする。お粥を茶碗によそう。粥かゆがうまそうな匂いを漂わせる。粥を(口へ運ぶ。炊く。煮る)。一心不乱に粥をすすりこむ。一椀の清浄な粥を懐かしむ=荻野。芋粥がふつふつと煮える。茶粥の残りをあたためる。七草粥を食べる。重湯を(すする。食べる)。雑炊を(かきこむ。すする)。 **かし【菓子】** 菓子のように包みくるめた優しさ=松本清張。美しい菓子のように育てられている小さい女の子"川端。お菓子みたいにカラフルなバッケージ=小川。砂糖菓子のようなまやかしの道徳的正義"中野美。ネトネトしたあんみつみたいな話"田辺。お汁粉に白玉を入れる。お汁粉を食べる。茶菓の接待を受ける。客に茶菓を勧める。ドラ焼きを叩きつけたような小さな帽子=獅子文六。薄荷糖はっかとうのような白さのTシャツ"北村。餡あんのきめを細かくする。小豆で餡を作る。二枚の皮で餡を挟んだどら焼き。歯にくっつく餡を舌の先でこそげとる=篠田。デコレーションケーキのように丸く華やかな花壇=小池。ふわふわにとろけそうな苺のショートケーキ=小川。透明なゼリーのような弱々しい美しさが女らしい情緒に溢れている=大庭。溶けだしたゼリーのような柔軟さ=長野。海が青いゼリーのように凪ないでいる=落合。吐き出されたチューインガムのように床の上に転がっている=池田。ガムでも噛むように口をゆっくり動かす=三浦。マシュマロのような丸椅子=三浦。マシュマロのように弾力性のある全身がかもしだす雰囲気に魅力がある女性"小林信。雪のようなふっっくりした饅頭=獅子文六。ふっくらした大きな饅頭を並べたような柔らかい丘の起伏=大佛。 **カレー** ▼カレー(飛びきり辛い。香辛料をふんだんに使った。こってりとした辛味の。食べると顔がじんじんして汗が吹き出してくるほど辛い=平岩)。カレーにローリエを入れる。ゆうべのカレーの残りを食べる=重松。カレーライスらしい褐色の匂い=連城。 **かんてん【寒天】** 曇天の日は時間が寒天のなかで溶解してしまったよう=池田。寒天を(水に戻す。ナイフで紙みたいに薄く切る=長崎)。寒天様の紅綿のような凝血がぼろぼろと湧き出す=井伏。 **くいあらす【食い荒らす】** ▼食い荒らす(掃き溜めを。フライドチキンを)。食い散らす(菓子を。魚を。汚く)。スナック菓子を食べ散らかす。弁当を食べ散らす。 **くう【食う】** ▼食う(追い立てを。蚕が桑の葉を。肩透かしを。果物を。魚を。だいぶ時間を。とばっちりを。波のあおりを。不意打ちを。弁当を。巻き添えを。待ちぼうけを。道草を。門前払いを。一人黙々と。まんまと一杯。置いてけぼりを。うまいものをたらふく。思う存分飲みかつ。ごぼうをきんぴらにして。夕方までに帰らないとお目玉を"円地。息もつかせず美味そうに=田辺。むさぼるように思うさま"玉村)。サラダをがつがつと兎のように喰う=井上ひ。食うために働く。その日の食うものにも困る生活。がつがつ食うだけの暮らし。食うに食えない。取りあえず食うには困らない。食うや食わずの時代が去る。肉しし食った報い。少し年を食ったメンバー。人を食った言い方。食って寝るだけの生活。泡を食って走りだす。道具類をぼつぼつ売って喰って行く=岡本。腕一本で食って行ける。▼食われる(客を。蚊に。だにに。蚤のみに)。鳩が豆鉄砲を食ったような顔=三浦し。その手は食わない。口の中に菜があるのにまた入れる足し食い=辺見。立ち食いする(うどんを。すしを)。動物が共食いする。食い荒らす(芋を。農作物を)。むさぼり食う(肉を。委細構わず。がつがつと飯を。人目もかまわずに。死体に群がって。むしゃむしゃと)。餓鬼のように食う=今日。食うか食われるか二つに一つ。生きるか死ぬか、食うかわれるかという修羅場=戸板。食うか食われるかの(争い。真剣勝負。戦国の世。大闘争)。▼食はむ(牛が草を。肉を。羊が牧草を)。 **ごちそう【御馳走】** 食べきれないほどのご馳走。 <621> # 食べる-201 が並ぶ。せっかくのご馳走もろくにのどを通らない。ろくなご馳走も食わせない。ご馳走を(きれいに平らげる。腹いっぱい食べる)。豪華なディナー。フルコースの料理。奮発してフルコースを食べる。 **ごはん**【御飯】炊き立ての熱いご飯。ご飯を(大盛りにする。茶碗に盛る。海苔のりで巻く。よそう。かき込むように食べる。口の中に押し込む。土品に口に運ぶ。電気釜からお櫃ぃっに移す。ふっくらと炊き上げる。もぐもぐと噛む)。炊けたご飯を飯櫃叽に移す。電気釜でご飯を炊く。たきたてのご飯をハフハフといって頬張る=開高。ご飯をお茶漬けにする。うまそうにさらさらとお茶漬けを流す芝木。さらさらと茶漬けをかきこむ。あたふたと飯。しをかき込む。飯を(腹いっぱいに詰め込む。もそもそとかきこむ)。がつがつ飯を食う。早々に飯を済ませる。炊き上がった飯をほぐす。ばくばくと飯を頬張る。見る見る飯を平らげる。▼飯をかきこむ(忙しく。犬のように)。▼飯を食べる(一つ釜の。味噌汁で)。粘り気のない麦の勝ったぼろぼろな飯"長塚。飯がビカビカと銀光を放つ=獅子。のみこんだ飯が喉でつかえるほど情がせきあげてくる=宫本百。無理につめこんだ飯が胃の中に石のように固まる=新田。メシのタネに困らない=和久。動悸が昂たかぶって飯も喉へ通らない=久米。丼飯を(かきこむ。食う)。飯粒が(シャツにこびりつく。一粒一粒ぼろぼろに固くなる=有局)。飯粒を(こそげ落とす。糊のりにする)。ご飯粒一つ残っていない。口の端についたご飯粒をとる。飯粒一つ残らず平らげる。 **こめ**【米】味のない粘った糊の』のような米大庭。米が(凶作になる。不作になる。豊作になる。残り少なくなる)。米の(飯を食べる。産地として名高い)。米を(釜に仕掛ける。しらげる。炊く。瀑布汕くのようにざっと落下させる=太宰)。しょきじょきと音を立てて米をとぐ=壺井。眼鏡の奥の米粒のような目=岡田。米粒を拾う。米橙にが(空になる。底をつく)。生米を(かじる。噛む)。小豆ともち米で赤飯を炊く。もち米を(炊く。とぐ)。白玉を(食べる。お汁粉に入れる)。精米所の機械の音がどっどっとだるげに聞こえてくる"太宰。膝ぃかの山を踏むようにふかふかの地面"日野。虫がスカをまきちらしたようにたかる"木多勝。しめった草の根から湧きだす糠のようなブヨ=本庄。籾を(脱穀する。掲っく)。さらさらと籾もふがさわやかな音を立てる=佐多。籾殻を(吹き飛ばす。ふるい分ける)。 **こんにゃく**【蒟蒻】背骨が蒟蒻かなんかに化したと思われるみたいにぐったりと坐る"高見町。朝から真夜中までからだがコンニャクのようになるほど駆けずり回る=小林多。手ざわりが蒟蒻よりざらついている"井伏。 **さじ**【匙】匙で(かき回す。蜂蜜をすくって食べる)。スーブを一匙に口に入れる。生クリームを一匙なめる。最後の一匙をきれいになめる。茶碗にしゃもじでご飯をよそう。箆へらで一すくいずつ土をすくう岡本。スプーンで(ご飯を食べる。コーヒーをかきまぜる)。口もとに運びかけたスプーンを皿に戻す。こみあげてくる涙を押しとどめるように休みなくスブーンを口に運ぶ=小川。 **さら**【皿】皿が(あらかた空になる。かちかちと触れ合う)。前菜の皿が出る。テーブルに皿が並ぶ。汚れた皿が散乱する。皿に(大盛りにする。山盛りにする。ラップをかける)。傍らの皿にフォークを伸ばす。▼皿に盛る(餃子は峠を。魚を。肉を)。皿の(料理をきれいに食べる。絵が窯から取り出したばかりのように花も葉の色も鮮やかに見える=大佛)。毒を食らわば皿まで。食卓に皿を並べる。汚れた皿を洗う。洗った皿を水切り籠に入れる。テーブルのお皿を片付ける。料理を皿に移す。目を皿にして見開く。陶器の皿のような心"小林多。乳房が皿のように浮い=梶山。大皿に盛り合わせる。料理を大皿に盛る。大皿をテーブルに置く。小皿に(取り分ける。盛り分ける)。汁を小皿に入れて味を見る。麻婆豆腐に試しを小皿に分ける。皿一杯に料理を盛る。小鉢に取り分ける。小鉢をとんと置く。汚れた小鉢を洗う。バットに(入れる。置く)。 **シチュー** ローリエをシチューの風味付けに使う。シチューを(あたためる。すする。食べる)。ことこととシチューを煮込む。見よう見真似協までシチューを作る。 **ジャム**ジャム(舌が焼けるようなできたての小川。鍋の底で怯ぉびえるように微かずかに震えている=小川)。手のひらがママレードみたいにぐしゃぐしゃに潰っぶれる村上巻。 **しょくご**【食後】薬を食後に服用する。食後の腹ごなしょくごしじみた余興"里見、悠々と食後のコーヒーを飲む。テザートを食べる。 **しょくじ**【食事】食事が(喉に通らない。遅々として進まない)。食事に(招待する。出かける)。家族が食事に揃う。贅沢さいな食事に慣れる。食事の(誘いを断る。支度を手伝う。準備にかかる。席に着く。世話をする。用意が整う。用意を整える。礼を言う。配膳に大わらわ)。食事を(早めに切り上げる。部屋に運ばせる)。簡単に食事を終える。枕元に食事を置く。まともな食事を口にしていない。黙々と食事を続ける。一刻を惜しむかのように食事をかき込む=内館。▼食事を済ませる(さっさと先に。そそくさと。有り合わせの物で)。満足な食事をとっていない。▼食事をとる(軽い。規則正しく)。▼食事をする(一緒に。顔つなぎに。和やかに。ゆっくりと。ぺちゃべちゃ音を立てて)。あたたかいご飯と味噌汁があればそれで十分=石田衣。食前酒を飲む。ナイフとフォークをテーブルの上に並べる。ナプキンを(首から下げる。膝に炊く)。食事のように日々の必要に過ぎずそれ自身何の意味もない媚態でた大岡。食事作法を学ぶ。食事代を割り勘 <622> # しょくりょう【食料】 **食料**が底をつく。**食料**に恵まれる。**食料**の確保に走り回る。難民に**食料**を配給する。**食糧**を海外に依存する。**食探**難に見舞われる。深刻な**食糧**難に陥る。 # しょっき【食器】 **食器**がテーブルに並ぶ。流しに汚れた**しょっき**が散乱する。**食器**のかちゃかちゃ触れ合う音。**食器**を(流しに運ぶ。テーブルの中央に押しやる)。空いた**食器**を下げる。**食器**類を厨房はふうに運ぶ。食べさしの**食器**類を片付ける。重箱に詰める。重箱を重ねる。丼に(入れる。盛る。口をつけてスープを飲む)。 # すし【寿司】 **寿司**を(口に放り込む。食べる。つまむ)。ちらし**寿司**を皿に取り分ける。熟なれ鮨(鲇ぁゅの。鲋ふなの)。 # しょくじどき【食事時】 **食事時**を逸する。時分時だと気がつく。時分ときに混雑する大衆的な店灰谷。時分時には早い。時分時を外れる。飯時にさしかかる。飯時を外す。 # しょくたく【食卓】 ▼**食卓**(清潔で食欲をそそるように飾られた=中沢。花に囲まれたような遠藤)。**食卓**が(きれいに片付いている。暗い鏡のように光る=日野)。**食卓**に(欠かせない素材。向かい合って座る。なごやかな笑いが流れる=森聡)。好物が**食卓**に並ぶ。餐ざいの**食卓**につく。いくら待っても**食卓**に姿を見せない=熊谷。**食卓**に並べる(グラスを。皿を)。豪勢な**食卓**を囲む。 # しょくつう【食通】 **食通**が礼賛する味。**食通**として知られる。**食通**を(もって鳴る。納得させる評価)。いっぱしグルメを気取る。 # しょくよく【食欲】 獣性を帯びた**食欲**。**食欲**が(元に復する。一向に衰えない。ふわりふわりと身体の中を動く=中沢)。旺盛な**食欲**を見せる。健啖川んな**食欲**を見せる。食い意地が(汚い。張っている)。色気より食い気。口腹の欲を満たす。口腹を楽しませる。 # しょくよくふしん【食欲不振】 夏負けで**食欲不振**に陥る。**食欲不振**を訴える。食欲が(失せる。減退する。衰え傍目にも気の毒なほど肉が落ちる=山本昌)。そうそうは食欲が起こらない。食欲がない(夏ばてで。胸が詰まったようでほとんど壺井)。悲嘆のために次第に食欲がなくなる=中河。食欲を(失う。なくす)。食が細い。食が進まない。 # すのもの【酢の物】 ▼**酢の物**(なまこの。若布の)。なますのように斬り刻まれて死ぬ=多岐川。腧抜きを食べる。羹はのに懲りて喰を吹く。 # ぜん【膳】 酒肴こいの**膳**が運ばれてくる。古典的な**膳**が粛然と並ぶ=野上。**膳**に(銚子を添える。茶碗や小皿を伏せて並べる)。ことりと杯を店に置く。料理の**膳**に就く。夕餉物ぅの**膳**の給仕をする。お**膳**を据える。据え**膳**の箸を取る。本**膳**四つ椀を誂誌っえる。 # せんべい【煎餅】 **せんべい**をバリバリ割って食べる=石森。**煎餅**をばりばり噛み砕く。兎約が草を食べるように歯の先で**煎餅**を小刻みに噛む"石坂。薄べったい**煎餅**みたいな座蒲団墓灭。柿の種をぼりぼりと悩む。 # ソーセージ **ソーセージ**が数珠北。つなぎになってびっしりぶら下がっている"立原。**ソーセージ**のように弾力のある膝永井脱。一度茹でて姿しにんだ**ソーセージ**を想わせる皮膚"大庭。腸詰めのようにだらしなく窓にしがみつく=加賀。 # そば【蕎麦】 **そば**の(打ち方を教える。つなぎに小麦粉を使う)。細く強い秋雨がしとしとと**蕎麦**の花を洗う=長塚。**そば**を胃に収める。つるつる**そば**をすする。誇麦猪口にぶちに**蕎麦**湯を注ぐ"阿川佐。**蕎麦**の花が薄絹を曳き渡したように白く見える=伊藤左。**蕎麦**のように細っこいウナギの子=北。盛りを食べる。 # たいらげる【平らげる】 ▼**平らげる**(食事を健啖に。旺盛な食欲で。むしゃむしゃ料理を。機内食をきれいに。ステーキを見る間に。ご馳走をべろりと。出る皿をことごとく。飯粒一つ残さず。料理をあらかた。飢えきった痩せ犬が不時の食にありついたかのようにがつがつとたちまちの問に=志賀。皿を舐めたように獅子)。 # たべおえる【食べ終える】 食事を**食べ終える**。▼置く(箸を。ナイフとフォークを)。ナブキンで口元を拭う。飲み食いが終わる。息もつかずに食い終える。 # たべかた【食べ方】 **食べ方**(作法にかなった。ぐずぐずしているとみんな食っちゃうぞといった少木)。見ているほうまで嬉しくなってしまうような**食べ**つぶり内海。 # たべさせる【食べさせる】 ▼**食べさせる**(家族を。口移して。滋養のあるものを)。▼鐙う(粥かゅを。内臓の稼きで自分の口を)。 # たべすぎる【食べ過ぎる】 **食べ過ぎ**て(腹をこわす。胸焼けがする。おなかがはちきれそう)。**食べ過ぎ**は体によくない。**食べ過ぎ**を慎む。飽食する毎日。長年の飽食に慣れる。胸焼けが治まる。胸焼けを起こす。 # たべそこなう【食べ損なう】 ▼**食べ損なう**(昼飯を。料理を。おいしいものを)。▼食いっぱぐれる(食事を。昼飯を)。 # たべない【食べない】 ▼**食べない**(あんまり。ほとんど)。少しは**食べ**ないと体に毒だ。落胆して飯も**食べ**たくないほどしょげこむ=木山。▼**食べて**いない(食事も満足に。昼飯もろくに。ろくに物も。ここ数日はろくなものを)。朝から何も(**食べて**いない。口にしていない)。食事を(拒絶する。断つ。抜く)。食べ物に指も触れない。頑として**食べ**ようとしない。ほとんど箸をつけずに残す。誰も箸をつけようとしない。絶食する(検査の前に。二日間)。ダイエットして体重を減らす。ダイエットに挑戦する。断食が明ける。修行のため断食する。断食の行。▼手をつけない(弁当に。料理に)。飲まず食わずで走る。一日飲まず食わずで過ごす。ほとんど飲まず食わずで山中を駆け回る=旅合。 <623> # 食べる **たべにくい【食べにくい】** 食べにくい(おいしいけど。固くて)。骨っぽくて食べにくい魚。食べづらい(最後の一つが。見つめられると)。 **たべのこす【食べ残す】** ▼食べ残す(食事を。料理を)。料理の食べ残し。残飯を漁あさる。▼飲み残す(お茶を。コーヒーを。酒を)。爪で歯についた食べかすをほじる=奥田。 **たべもの【食べ物】** のどが鳴るほどうまい食べ物"住井。食べ物が(満足に喉を通らない。胃袋までたどり着く=辺見)。食べ物に不自由する。十分な食べ物に恵まれる。飢えた犬のように食べ物に飛びつく=阿久。食べ物の(夢を見る。恨みは恐ろしい。話に目がくらむ)。食べ物を胃の中に詰め込む。美味そうな食べ物を煮炊きするにおいが溢れる=森村。豪勢なオードブルを楽しむ。歌詞がまるでお子様ランチのように=中島み。佳肴かこうに(舌鼓を打つ。陶酔する)。佳肴を(味わう。楽しむ)。生活の糧を海に求める。日々の糧に感謝する。食い物に(ありつく。困る)。食卓に山海の珍味が並ぶ。▼食品(アルカリ性の。酸性の)。食物連鎖が(成立する。断ち切られる)。食用に(供する。適する)。兵糧ひょうろうが尽きる。兵糧を貯たくわえる。糧食が(尽きる。乏しくなる)。兵馬の糧食を賄う。 **たべやすい【食べやすい】** ▼食べやすい(箸のほうが。骨なしで。やわらかくて)。食べやすい大きさに切る。 **たべられない【食べられない】** おちおち物も食べられない。口に入らない。食に適さない。断じて食べてはならない。食べる気力もない。落ち着いて食べる暇もない。食べるに値しない。▼喉を通らない(食事が。緊張のあまり飯が=古井)。飯が喉へ通らない=谷崎。 **たべられる【食べられる】** ▼食べられる(それなりに。安心して。幾らでも。いくつでも好きなだけ)。一年じゅう食べられる重主な野菜=飯田。▼食える(肉が。飯が。野菜が)。 **たべる【食べる】** ▼食べる(牛が草を。刺身を。サラダを。手料理を。ご飯を炊いて。魚を焼いて。丼に盛って。腹が減ったら。たらふくおいしいものを。野菜の煮込みを。傍目もふらずに。頭からばくりと。胃を気づかってそろそろ。キャベツをばりばり。上品な手つきで。食事を養ってもらって。ソースをかけて。ぼくっと一口で。ものすごい勢いで。一心不乱というのはこのことかと思うほどただひたすらに=三浦朱。まずい料理を文句も言わずに=筒井。飢えた犬のようにがつがつ=長崎。お腹が破れるほど=太宰。競争するようにして夢中で=三浦哲。これ以上嬉しいことがないみたいにほくほく顔で=内海。出された料理を残さず=山本一。ぴちゃぴちゃと舌を鳴らしながら=有吉。ぺろっとのみこむように=長崎。みんながはらはらするほどよく=三浦。むしゃむしゃ馬みたいに=小川。雪の中に二週間も飲まず食わずにいた貪欲な狼のようにがつがつと=佐山。レタスを兎のようにかかえて=大庭)。食べるために必死になって生きる。食べるに事欠かない生活。▼食べたがる(冷たいものを。肉を)。甘い物が食べたくなる。遠くからわざわざ食べに来る。しぶしぶ食べ始める。食べ始めると止まらない。食べごろの柿。食べでのある料理。軽く腹に何か入れておく=横山。乾いたパン片を胃の腑に落とす"藤本。むしゃむしゃ口を動かす。食べつけない外国の料理。魚を食べあさる。食べ歩く(うまいものを。あちこち)。▼かじる(クッキーを。パンを。一口ずつゆっくり)。▼口に入れる(ソーセージを。ビフテキを。料理を。葡萄ぶどうをひと粒)。▼口にする(果物を。ケーキを。パンを)。▼口に運ぶ(スプーンを。黙々と料理を。ナイフとフォークを使って肉を一切れ=古井)。▼口に放り込む(クラッカーを。羊羹ようかんを。キャンディーを。肉を美味しそうに。桜海老さくらえびをぽいと)。料理に口をつける。試食する(商品を。新品を。食品売り場で)。米を主食にする。常食とする(芋を。米を。パンを)。食する(菓子を。魚を。生肉を)。食生活(貧しい。洗練された豊かな。バランスの取れた)。▼生食する(貝類を。魚を。野菜を)。▼つまむ(酒の肴さかなに。料理をゆっくりと)。ばくつく(ドーナツを。握り飯を。サンドイッチを)。ひと言も物を言わずに箸を動かす=梶井。フォークを握る手に力を込める。捕食する(昆虫を。魚を)。丸かじりする(芋を。果物を。りんごを)。▼召し上がる(ご飯を。メロンを)。夜食に箸をつける。夜食を作る。いい加減食べ飽きる。食べ飽きるほど食べ続ける。美食に飽満する。食べ飽きない程度に食べる。食が進む。不時の食にありつく。食は生と死に直結する。食を細々とつなぐ。箸をつける(ご馳走に。食べ物に。料理に)。腹ごしらえを済ます。腹ごしらえをする(ちゃんと。焼き肉で)。 **だんご【団子】** 花より団子。消化になれない堅い団子が胃に滞っているような不安な胸を抱く=夏目。油分の乏しい毛が団子のように=高樹。ころころと団子のように転げ廻る=内田百。昆布が団子のように固まる=山崎。包帯を団子のように巻き直す=藤枝。お団子みたいにまるまるとした荷物=三浦。 **たんぱくしつ【蛋白質】** たんぱく質が焼ける臭い。たんぱく質に標識をつける。たんぱく質をアミノ酸に分解する。ゼラチンのようなずるずるとした感触が身体を包む"中沢。 **チーズ** 黴かびに包まれて熟成したおいしいチーズ。 <624> # ちゅうしょく【昼食】 **昼食に招待する。** **昼食を共にする。** **お昼の支度をして待つ。** **お昼を一緒にする。** **お昼をご馳走ちそうになる。** **午餐会ごさんかいに招く。** **午餐をもてなす。** **午食を供する。** **午食を摂る。** **昼御飯を食べる。** **昼飯どきにさしかかる。** **昼飯につき合う。** **昼飯をご馳走する。** **遅い昼飯を食べる。** **早めの昼飯を済ませる。** **ランチを食べる。** **ランチを注文する。** **昼餉ひるげの膳に向かう。** **昼餉を喫する。** **昼餉をしたためる。** # ちょうしょく【朝食】 **朝食もそこそこに旅館を出る。** **朝食を急いで済ませる。** **朝食をテーブルに運ぶ。** **朝食をかき込むようにして食べる。** **簡単な朝食を摂る。** **朝食抜きで家を飛び出す。** **朝御飯の支度をする。** **朝ご飯を控え目に済ませる。** **朝飯もそこそこに出かける。** **朝飯を食べる。** **朝餉あさげの膳に(つく。** **朝餉に向かう。** # チョコレート **銀紙に包まれたチョコレート。** **頂点のキュッと尖ったチョコレート。** **チョコレートが胃に重くぶらさがる。** **チョコレートが舌の上にほろ苦い甘さを拡げる。** **チョコレートのしみが銃撃戦のあとの血痕のように一面にしみこむ。** **幼い子供のようにチョコレートを頬張る。** # つけもの【漬物】 **漬物がおいしくつかる。** **漬物が自然の飴色につかる。** **野菜の一夜漬け。** **おしんこを食べる。** **前歯でおしんこをかむ。** **たくあんをかじる。** **たくあんをぼりぼり食べる。** **糠ぬかみそに漬ける。** # つまみぐい【摘み食い】 **公金のつまみ食いがばれる。** **ご馳走を摘み食いする。** **食べ物を摘み食いする。** **台所で摘み食いする。** **面白いところだけを摘み食いする。** **ご馳走ちそうを盗み食いする。** **砂糖を盗み食いする。** **料理を盗み食いする。** # つつむ **鍋を囲む。** **すき焼きの鍋を囲む。** **白味噌仕立ての鍋を囲む。** **寄せ鍋を囲む。** **寄せ鍋を食べる。** **寄せ鍋をつつく。** # にぎりめし【握り飯】 **梅干しの入った握り飯。** **握り飯を経木に包む。** **握り飯を頬張る。** **握り飯をむさぼるように食う。** **握り飯をもそもそと食べる。** **おにぎりを海苔のりで巻く。** # にく【肉】 **肉がじゅうじゅう焼ける。** **肉がじゅくじゅく煮える。** **肉がゴムのように硬い。** **肉に焼き色をつける。** **刃先が肉に食い込む。** **肉の塊にかぶりつく。** **肉の焦げる異臭が鼻をつく。** **肉の焼ける香ばしい匂い。** **肉の塊が焼ける濃厚な匂いがたちこめる。** **肉を串に刺す。** **肉を塩漬けにする。** **肉を主食にする。** **肉をあぶる香ばしい匂い。** **フォークで肉を突き刺す。** **よくかまずに肉を飲み込む。** **冷蔵庫から肉を取り出す。** **シャリシャリと音を立てて肉を噛み砕く。** **肉塊を切り分ける。** **肉質がいい。** **肉質が悪い。** **肉食を好む。** **口の中で肉汁が広がる。** **肉片を口に運ぶ。** **肉片を引きちぎる。** **ステーキを食べる。** **ステーキを焼く。** **鶏肉を炒める。** **鶏肉を中に刺す。** **生肉を食べる。** **たまにはビフテキを食いたい。** **豚肉を食べる。** **ベーコンを焼く。** **焼き肉を平らげる。** **焼き肉を食べる。** **焼き肉を頬張る。** # にもの【煮物】 **イカと大根の煮物。** **大根と油揚げの煮物。** **煮物の味見をする。** **煮物をあたためる。** **煮物を口に入れる。** **煮返す。** **箸でつつく。** # 【答】 **箸が止まる。** **箸が転んでもおかしい年頃。** **箸の上げ下ろしにまで口を挟む。** **箸の上げ下げにまで小言を言う。** **二本の箸の先端が自分のからだの部分のように違和感なく精妙にはたらく。** **箸より重いものは持ったことがない。** **箸を箸箱にしまう。** **箸を不器用に持つ。** **箸を操って上手に挟む。** **鍋の中に箸を突っこむ。** **大年増だが肉置きのよい、ちょいと箸をつけたくなるような女。** **ふっと追いやるように箸を置いて静かに立ちあがる。** **機械のように箸を動かす。** **気ぜわしく箸を動かす。** **腕に箸をつける。** **形ばかり箸をつける。** **鳥の嘴を想わせる塗り箸の先。** **だらしない箸遣い。** **箸袋から割り箸を取り出す。** **割り箸をぱっちんと割る。** # パスタ **パスタがゆで上がる。** **パスタを固ゆでにする。** **スパゲティがゆで上がる。** **スパゲティを固ゆでにする。** **マカロニにソースを絡ませる。** **マカロニをマヨネーズで和あえる。** # バター **バターの塊が汗をかいてしっとり潤む。** **パンにバターをたっぷりと塗る。** **溶かしバターによく似た色合いの陽射しが降り注ぐ。** # ハム **鮮やかな断面にうす桃色の肉を見せる骨つきハム。** **小肥りに肥って体も頬っぺたもロースハムのような叔父。** # パン **パンがほっこりとうまそうに焼きあがる。** **ふくらし粉を入れたパンがふくれてくるように怒りがふくれあがる。** **焼いた固いパンの耳を太陽をでも呑み込むようにまぶしく呑み込む。** **人はパンのみに生くるにあらず。** **パンを肉汁に浸す。** **パンを牛乳で飲み下す。** **古いパンを霰あられに刻む。** **アンパンみたいな雲がふわふわ浮く。** **パン生地を寝かせておく。** **サンドイッチを食べる。** **サンドイッチを頬張る。** **トーストが焼き上がる。** **ジャムをトーストに塗る。** **ショーウインドーに映るひょろ長い影が台所の壁に立てかけてある固くなったフランスパンそっくり。** **フランスパンを剣のように振り回す。** **フランスパンのように茶色く固くこわばった男。** # べんとう【弁当】 **折り詰めの弁当。** **弁当を使う。** **弁当をうまそうに頬張る。** **弁当を腰にくくりつける。** **豪華な弁当をしつらえる。** **仕出し弁当を予約する。** **弁当包みをほどく。** **弁当箱を絶妙にしまう。** **折り詰めの料理。** # ほおばる【頬張る】 **おにぎりを頬張る。** **ケーキを頬張る。** <625> # 食べる **ゆうしょく【夕食】** 夕食に間に合うように帰る。夕食を外で済ませる。家族と一緒に夕食を食べる。夕食前の一杯を飲む。晩御飯をこしらえる。晩餐に招待する。儀式張った晩餐会。晩飯を食べる。夕飯の食卓を整える。夕餉ゆうげの(食卓を囲む。膳に向かう。支度に取りかかる)。町のあちこちに夕餉の灯りがともりはじめる=高橋和。家族と夕餉を共にする。 **ようかん【羊羹】** 羊羹に包丁を入れる。栗羊羹のほっこりした紫=武田泰淳。羊羹を(黒文字で切る。旨そうに頬張る。二本ぺろりと食べる=瀬戸内)。よどんだ水が羊羹を流したようにぴったりと動かない=林美。水羊羹のような真っ黒い川=内田。 **りょうり【料理】** 念入りに調えた手料理。テーブルに手料理が並ぶ。手料理でもてなす。▼料理(酢味噌を使った。丹精こめてつくった。真心がこもった。まずまずの味の。はなはだ高価な珍奇な"中野美。味つけや調味料が過不足なく按配あんばいされていて美味しい=円地。自然の幸をふんだんに用いた"加賀。手のこんだ芸術品のような=阿部)。料理が(胃に重い。口に合う。運ばれてくる。全くの苦手。あらかた出尽くす。そこそこにおいしい)。せっかくのうまい料理が冷めてしまう。所狭しと料理が並べられている。ろくな料理が出ない。男ながらに料理が上手"萩原。ぴりぴりするくらい辛い南方の料理が大好物"平岩。久しく都会風の料理から遠ざかっている=立原。料理に(口うるさい。舌鼓を打つ。専心する。堪能する。手を出す。手をつける。箸を伸ばす。文句をつける。並々ならぬ腕を持つ)。酒と料理にうち興じる。料理の(味付けが濃い。心得がある。こつを学ぶ。追加を頼む。豪華さが際立っている。注文をてきぱきとする。作り方を写真入りで載せる=阿川佐)。料理も会話も上の空。料理を(味わう。胃袋に収める。皿に取る。腹に収める。あてがいぶちで出す。一から勉強する。器に盛りつける。選んで注文する。きれいに平らげる。皿に取り分ける。次々に運んできてテーブルに並べる=三浦し。つまらなそうに箸でつつく=北原)。おいしい料理を楽しむ。豪勢な料理をたらふく食べる。せっかくの料理を無駄にする。手際よく料理を用意する。箸で料理をつつく。弁当箱に料理を詰める。銘々料理を注文する。有り合わせの材料で料理を拵える=辻仁。事あるごとに母の料理を持ち上げる=光原。▼料理を並べる(心づくしの。テーブルの上に)。テーブルに料理を(運ぶ。並べる)。スパイスが抜けた料理のように物足りない生活=小池。手のこんだきらびやかな工芸品のようなお節料理"小川。手作りの(味。ケーキ。料理)。日本料理は目で食う。日本料理をご馳走する。必要以上に脂こい洋食"有吉。ヘルシーな和食。 **レストラン** レストラン(気の利いた。木立に囲まれた小さな。ちょいちょい寄る。ホテル最上階の。目玉が飛び出しそうに高い=江國)。レストランで(会食する。外食する。食事をする)。レストランのテーブルにつく。レストランを待ち合わせの場所に選ぶ=伊集院。夜景の綺麗なスカイレストラン=海堂。カフェテリアでウエイトレスとして働く。食堂で食べる。食堂の匂いに捕まる。スナックに立ち寄る。一見豪華そうな中華料理店。料理屋の(主人に納まる。おかみさんが板につく=梅本)。料理屋を(接待に使う。腕一本で切り回してくる=三島)。料亭(高級な。由緒ある。知名の士の集まる。味のよさで名を知られた=山本一)。料亭から仕出しを取り寄せる。料亭で食事をとる。高級料亭で密室政治をする。料亭を会合場所にする。 **わたあめ【綿飴】** 綿あめができあがる様子は魔法みたいだ=三浦し。耳の中が綿飴でいっぱいになるような声"松浦。つややかで豊かな綿菓子のような髪=山田詠。真っ白い綿菓子のような雲"飯田。透明な覆いのなかでおじさんがまわす割り箸に雲がまとわりついていく=三浦し。 <626> # あずかる【預かる】 **患者の生命を預かる。** **原稿を預かる。** **台所を預かる。** **手紙を預かる。** **仲間の金を預かる。** **店を預かる。** **留守を預かる。** **忘れ物を預かる。** # あずける【預ける】 **壁に背中を預ける。** **言葉に耳を預ける。** **全身の体重を預ける。** **流れに身を預ける。** **部屋の合鍵を預ける。** **体を壁に預ける。** **金を銀行に預ける。** **老母を施設に預ける。** **椅子の背に頭を預ける。** **近所の人に家の鍵を預ける。** **座席の背もたれに体を預ける。** **デスクに両肘を預ける。** **赤ん坊を乳児院に預ける。** **コートを仲居に預ける。** **子供を保育園に預ける。** **一人息子を取引先に預ける。** **キーをフロントに預ける。** **お金を銀行に預け入れる。** # いけ【池】 **樹々の深い陰が抱くように覆っている池。** **林の底に沈んだ感じの小さな暗い池。** **銀を焼き溶かして満たたえたように光る池。** **陽の加減で水銀のように縁だけ盛り上がって光る池。** **池で金魚を飼う。** **池でバチャンと魚が跳ねる。** **池にどぶんと落ちる。** **池の水に星の光が落ちる。** **池の水面が錆びた銀色にかげる。** **波の輪が池の面に広がる。** **風が池の面をかすめていく。** **池をたくみに配置したゴルフコース。** **池を隔てて大声で叫ぶ。** **池を渡ってくる風が冷たい。** **満々と水を湛たたえた泉水。** **泉水の鹿威しししおどしが乾いた音を立てる。** # うっせき【鬱積】 **郷愁的感情が鬱積する。** **疲労が鬱積する。** **不平不満が鬱積する。** **憤懣ふんまんが心中に鬱積する。** **千万無量の思いが胸に鬱積する。** **鬱積した重苦しさが薬品をかけたように消える。** **胸中にあるもやもやと鬱積したもの。** **鬱積していた澱よどみを洗い流す勢いで喋る。** # おり【澱】 **つかえていた澱が吐き出されるかのように鬱病から抜け出す。** **身のうちに鬱積した澱を取り去る。** **心の底に澱んでいる澱を吐き出す。** **堰を切ったように心の澱を吐きだす。** **澱のごとく溜たまった垢あかを洗い落とす。** **澱のごとく沈潜させられていた不潔さが意識の表面におどり出てきて牙をむき出す。** **興奮が澱のように残る。** **虚しさが澱のように胸の底にわだかまっている。** **屈辱が身体に澱のようにたまる。** # かいおき【買い置き】 **買い置きが底をつく。** **ジュース類の買い置きがない。** **食料を買い置きする。** **食料を買い溜めする。** **石油を買い溜めする。** **たばこを買い溜めする。** # こすい【湖水】 **満々と湛たたえられた湖水。** **鏡のようにしずもる湖水。** **古画のなかの聖母の青衣のような色をした明けがたの湖水。** **湖水が銀のように空を映して光る。** **湖水が孔雀石くじゃくいしの色に何糸もの美しい縞しまになる。** **湖水が波一つ立たないほどしんとしている。** **林を透かして湖水が隠見する。** **深い湖水が淡緑色に輝く。** **湖水に身を投げる。** **湖水に色とりどりの夜景が映る。** **波のまったくない湖水のような静けさ。** **鏡に映った林が湖水のように深くすんだ冷ややかさ。** # こめん【湖面】 **影を曳く舟もない単調な湖面。** **湖面が小波さざなみだ一つないほど静か。** **沼の湖面が季節によって様々に色を変える。** **湖面に帆影が浮かぶ。** **月が湖面に浮いている。** **風が湖面を渡る。** **氷の張った湖面を滑る。** **森の奥の湖面のような静謐せいひつさ。** **川が大きな迂回うかいをつくって湖面のようにひろがる。** **鏡の中に黄昏たそがれの色が沈み、暮れた湖面のように紫色の靄もやがたち迷う。** # たくわえる【蓄える】 **体に脂肪を蓄える。** **体力を蓄える。** **知識を蓄える。** **鼻の下に髭ひげを蓄える。** **金を蓄える。** **たちまち蓄えが尽きてしまう。** # たまる【溜まる】 **口に唾が溜まる。** **腹に水が溜まる。** **読みたい本が溜まる。** **澱おりが底に溜まる。** **力が十分に溜まる。** **タンク内にガスが溜まる。** **パチンコ台の受け皿に玉が溜まる。** **フラストレーションが溜まる。** **部屋の隅に埃ほこりが溜まる。** **ポストに郵便物が溜まる。** **本来やらなければいけない仕事が溜まる。** **洗濯物が山ほど溜まる。** # ためいけ【溜め池】 **灌漑用かんがいようの溜め池。** **溜め池が満水になる。** **大きい溜池が蒼々満々そうそうまんまんと水を湛たたえている。** **貯水池が満水になる。** **貯水池の水がコバルトに濁って平ら。** # ためる【溜める】 **水汲み場で手桶ておけに水を溜める。** **汗を髪の生え際に溜める。** **強い輝きを目に溜める。** **目に涙をいっぱい溜める。** **習作を書き溜める。** **過去の好決算で巨額の内部留保を確保する。** **体に疲労が蓄積する。** **心に憎悪が蓄積する。** **経験的知識を蓄積する。** **人生の知恵を蓄積する。** **ストレスを蓄積する。** <627> # 溜まる・蓄える **たる【樽】** 樽の(鏡を抜く。栓を抜く)。樽のような腹を揺すぶる=川端。酒樽が転げ落ちるように回転しながら逃げていくトド=本多勝。鏡を抜いた四斗樽。 **タンク** タンクが(空っぽになる。満水になる)。タンクに海水を満たす。タンクを満タンにする。頭の上にびっくりするほど巨大なガスタンクが青白い照明をあびて気球のように浮かんでいる=阿部。水をタンク車で運ぶ。燃料タンクに引火する。ドラム缶に(重油を入れる。木っ端を入れて火をつけ暖を取る=三浦し)。ドラム缶をころころ転がす。 **ちょきん【貯金】** 汗水が凝り固まって出来たような貯金"有吉。貯金が(一銭もない。増える。残り少なくなる)。貯金する(せっせと。たといわずかでも。爪に火をともすようにして=竹内)。糸を紡ぐようにせっせと銭を貯める"山崎。郵便貯金の通帳を肌身放さずお守りのようにしている=永井荷。▼金を貯める(アルバイトで。こつこつ。死に物狂いで)。▼貯めた金(爪に火をとぼして=梅本。爪に火をともすようにして"西木)。資産を蓄財する。蓄財に(精を出す。励む)。貯蓄に励む。所得を貯蓄に回す。預金通帳に金額を記載する。通帳の残高を眺める。へそくりを(貯める。隠す)。預金に手をつける。ボーナスを預金に回す。 **ちんでん【沈殿】** 気の付かないうちに孤独が胸をひたし胸の中に沈澱をつくる=石川。▼沈殿する(重い疲れが。胸底に重苦しい泥の塊が"藤本。質問がひとつに溶け合い濁った印象となって頭の奥に=中村真。どこか釈然としないものが胸の中に=佐藤愛。不快な気持ちが胸に=高橋三。零落して巷ちまたに埃芥あくたのように=国木田)。心の奥底に沈澱している記憶=光瀬。沈殿物が底に溜まる。沈殿物を濾こし取る。 **つけ【付け】** つけが(きく。増える)。強気すぎる経営の付けが廻ってくる=高井。▼つけがたまる(長年の。飲み食いの)。つけで買う。つけを後世に残す。 **つみたてる【積み立てる】** ▼積み立てる(学資を。結婚資金を。毎月一定額を)。積立金を(取り崩す。流用する)。 **でんち【電池】** 電池が(切れかける。出火する)。電池を(直列につなぐ。並列につなぐ)。乾電池を交換する。電池切れを起こしたみたいに止まる=谷川。バッテリーが上がる。バッテリーに充電する。 **ぬま【沼】** ▼沼(性的な妄想の。いつの頃からあったとも知れない古い"阿部。水源地のように山の上に水の溜めてある=佐多)。沼が(死んだように蒼あおい水をたたえる=佐多。ところどころ闇の夜の星に光る=田山)。わたしのまわりだけ陽射しがよじれ暗がりの沼ほど青く淵を湛たたえた=谷川。浅い眠りの淵をさまように=森。澱よどんだ淵のような=半村。表情が沼のように蒼あおざめて沈んで行く=石川。深い湖を思わせる瞳=伊坂。深い湖のような憂いに満ちた=小川。眠りの沼から這い上がる=小林信。沼に燃える鬼火。底なしの沼に落ち込む。思いの沼に沈む=北村。沼の(なかから這い上がって来たような陰気な女"池田。なかを自由に泳ぎ回る亀のよう=三好。深みのような恐ろしい所=梅本)。夜は暗く霧は重くはてのない沼のよう"国木田。沼を干拓する。深く冷たい沼をさまようように静かに眠る"小川。沼に沈むように(車輪をとられて動けなくなる=黒井。ゆっくり見えなくなる"小川)。深い底なし沼のような自己嫌悪に陥る=赤川。澱よどんだ沼のような脳味噌に光と新鮮な酸素を送る=島田。闇が沼のように横たわる=長野。沼地に足を取られる。思考の沼地に足を踏み入れる=内橋。 **ふち【淵】** 淵に淀んでいる水。死の淵に飛び込む。限りの淵に落ち込む。深い苦悩の淵に立つ。悲しみの淵に身を潜めている"飯田。自分から青い淵に身投げするような危うい心境"石川。ずるずると疲労の淵に引きずり込まれる=中沢。深い淵に吸い寄せられるような危険を感じる目=三浦。目醒めざめと眠りの泥の淵に沈む=長野。一路破滅の淵へ突進する。気味の悪い淵が広がっているような気分=海音寺。 **みずうみ【湖】** ▼湖(山裾にいだかれた。浅い真珠貝に水を盛ったような気品はあるがはかない感じの=太宰。黒々とした山稜さんりょうに囲まれた"夏樹)。湖が(静寂なたたずまいを見せる。太陽に輝きながら眼下に広々と横たわる=横光。酷薄な女の眼のように冷たそうに青く光る"原田。まっ平らで空の色を映しているように真っ青=長崎)。緑の梢を透かして青い湖が悠々と拡がっている=林美。湖にさざ波が広がっていく。湖のほとりに宿を取る。小舟を操って湖へ出る。森が小さな湖を囲む。机に涙の湖を作る=佐野。静かな眼差し=三浦。入り江になっているせいか岸辺が湖のような静かさでぬらぬらと光る=永井路。澄みきった北方の湖のような大理石=開高。湖のように静かな海=泉。砂の広場が白い湖のように輝く=光瀬。凪いだ海面が湖のように静か=壺井。長い睫毛の森の蔭に湖のように湛たたえられた黒い瞳=福永。遠い雪国の湖のように冷え冷えと澄んだ深い悲しみの色をたたえた大きな目=日野。船が湖岸に着船する。湖畔に立つホテル。 **みずたまり【水溜まり】** 夜目にも白く水たまりが光る=谷崎。道のあちこちに水溜まりができる。水たまりに叩きつけるように言い放つ=島田。夢想が砂を混えたか細い流れのように水たまりの形で止まり澱よどむ"岸田。水溜まりを(ばちゃばちゃと駆け抜ける。ひょいとまたぐ)。窪くぼみの水溜め。目が欲しげな顔の中に澱んだ二つの水たまりのよう=中沢。溶け残った雪が水たまりのようにところどころに白く光る=村上春。湾が蒼あおい水たまりのように見える=福水。 <628> **あんもく【暗黙】** 暗黙の(了解ができる。ルール。間に一脈を通じる)。きまりを暗黙の了解として守る。暗黙のうちに合意が成立する。契約を暗黙のうちに結ぶ=岸田國士。それぞれの分野に重要な暗黙知が存在する=畑村洋太郎。暗黙裡の了解を得る。黙契が(成立する。存在する)。黙契を(交わす。守る)。 **いうな【言うな】** 決して誰にも言うな。余計なことは言うなと釘を刺される=有川浩。日光を見ずして結構と言うなかれ。言っていいことと悪いことがある。縁起でもないこと言わないでよ=有川浩。口に指を押しあてて目くばせする=井上ひさし。いっさい口外してはならない。やたらに口外すべきことではない。黙っていろとでも言うように目配せする=篠田節子。 ▼言わせない(嘘も文句を。違うとは)。一言も口を挟ませない。他言無用と念を押す。このことは一切他言無用のこと。決して他言してはならない。他言は無用。黙れ。言うな(贅沢を。文句を。つべこべ)。がたがた騒ぐんじゃねえ。唇に指を立てる。しかし口も利くさ=夏目漱石。しっと制する。四の五の言わず黙って協力しろ=篠田節子。ぬかすな(いい加減なことを。利いたふうな口を)。馬鹿も休み休み言え。申すな(偽りを。生意気を)。問答無用。指を口に当てる。若造が何を言う。 **おしだまる【押し黙る】** ▼押し黙る(強情に。石のように。岩のように。牛のように。貝のように。権化のように。むっつりと)。硬い表情で押し黙っている。 **くちをつぐむ【口を噤む】** ▼口をつぐむ(かたくなに。不意に。一切。牡蠣のように。堅く。固く秘して。気圧されて。途中で。ぴたりと。仏頂面で。むっと。黙然と。言いさしてふと。びっくりしたように。驚きの声をあげかけてあわてて=山岡荘八。言葉をのみこむように=三田誠広。唇をわずかに動かしてなにか言いかけたが考え直したように=小林久三。独りで話すのに疲れたように=高井有一)。話すことの整理に手間取っているようにしばらく口を噤む=三浦哲郎。口をつぐんでしゃべらない。口を閉ざす(一切。頑として。過去については)。口を閉ざして(語らない。答えない。意見を漏らさない)。 ▼口を閉ざす(かたくなに。無愛想に。貝のように。牡蠣みたいに。質問の。がんこなまでに)。 ▼口を閉じる(はっとしたように。論告を終えた検事よろしく満足げに=笹沢左保。浅蜊がものに触れたように男がふっと=内田百閒)。 **ぜっく【絶句】** 絶句する(唖然として。息をのんで。思わず。受話器を握ったまま。胸を詰まらせて。「え?」と言ったまま=小林久三)。どう言っていいかわからない。 ▼二の句が継げない(あまりの唐突さに。あっけにとられて。あまりの意外さに=壺井栄。まともに切り返されて=高井有一)。おどろきのあまり二の句がつげない=池波正太郎。二の句が継げずに立ち竦すくむ=谷崎潤一郎。呆れ果てて二の句をつぐことさえ忘れる=芥川龍之介。 **だまっている【黙っている】** ▼黙っている(石像のように。闇のように。うるさそうに顔をそむけて、固い表情をして。かたくなな老人のように。何も言わずにただ。むっと怒ったように。海も陸も死んだように=遠藤周作。化石したように=大佛次郎。感激を表現することを惜しむように=新田次郎。暗闇の一部のように=藤沢周平。息子が剛情な小娘のように=川端康成。天地が裂けても=芥川龍之介。父も母も水漬いているように=幸田文。むっとしたようにいつまでも=椎名麟三。目を閉じて石仏の如く=二葉亭四迷)。丸太のように黙っている女=連城三紀彦。うんともすんとも言わない。 ▼口外しない(秘密を絶対に。誰にも)。黙して語らない。 ▼黙している(屈託ありげに。ゆったりと)。みんなが打ち合わせたように黙する。黙秘を貫く。 ▼黙秘する(容疑者が。事件について)。黙秘権を(奪う。行使する)。 **だまらせる【黙らせる】** ▼黙らせる(女房を。古狐を。古狸を。みんなを。冷やかしていた連中を)。厳重な箝口令がしかれる。 ▼口止めをする(固く。事件の)。念のため口止めする。口止め料が担当者に渡る。口止め料を払う。金を渡して口を封じる=池波正太郎。沈黙の代償を要求する。口封じに(殺す。買収する)。 ▼口封じをする(脅して。金で)。猿ぐつわを(噛ませる。外す。はめる)。タオルで猿ぐわをされる。 **だまりこむ【黙り込む】** ▼黙り込む(考えことでもするかのように=堀辰雄。口をへの字にして=貫井徳郎。少ししゃべりすぎたのを恥じるように=柴田翔)。 ▼黙りこむ(カキのように。固い表情で。下唇を噛んで。考え込むように。語勢に気圧されて。しばし言葉を失って。神経質に眉根を寄せて。不機嫌な顔つきで。歯のない老人みたいに口をすぼめて陰気に=阿部知二。腕をくんで=坂口安吾。苦々しげに唇をゆがめ=加賀乙彦。夢を見るように=三田誠広)。物思いに沈んだような黙り込み方=大佛次郎。黙りこくる(不機嫌に。無表情に。物思わしげに。気まずく。むっつりと。腹立たしそうに。膝に顎を埋めて。憮然とした顔で。答えに詰まったように=篠田節子。言葉を忘れてしまった人のように=小林多喜二。静けさに身を委ねるように=内館牧子。できるだけ身をちぢめ小さい獣たちのように暗い光の下で=大江健三郎)。黙りこくって(駅まで歩く。食事を済ませる)。敵同士のようにお互いにだまりこくって働く=小林多喜二。 **だまる【黙る】** ▼黙る(剣幕に押されて。次の言葉をさがしあぐねたように=村松友視)。黙ったまま(眺め続ける。向かい合う。無愛想につったっている=野間宏)。黙って(話を聞き続ける。見過ごすことができない)。しばしの間黙って歩く。黙ってしまう(いざとなると。すっかり気をのまれて。余計なことを口にしたというように=吉村昭)。 # 黙る-203 <629> **ちんもく【沈黙】** 沈黙(動きだけのざわめきで充たされた奇妙な=柴田翔。音が一瞬にして死に絶えたとしか言いようのないほどの突然の不気味な=飯田龍太。温かそうに広くゆったりと黙している春の海のような=連城三紀彦。石のような不動の=有島武郎。薄気味悪いほどの長い=宮本輝。音をたてるのが怖いほどの=飯田龍太。ちっとやそっとでは破れそうもない=森敦。遠く深いところに妙な喧噪を押し込めた底の深い=宮部みゆき。どんな言葉よりも豊饒な緊迫した鋭い=飯田龍太。話の口の切りようのない=高井有一。水のように懐かしい=北村薫)。沈黙が(重苦しく強固に壁のように続く=清水俊夫。風のように流れ込んでくる=小川国夫。天と地とに漲り満ちる=有島武郎)。一種殺伐とした沈黙が漂う。周囲に沈黙が立ちこめる。不穏な沈黙が訪れる。部屋の中に重苦しい沈黙が張りつめる。短い沈黙がやってくる。威圧感のある沈黙が室内に満ちる=原田宗典。息詰まるような沈黙が室内を支配する=黒岩重吾。完璧な沈黙が重い霧のように地表に淀む=村上春樹。気まずい沈黙が二人の間に挟まる=鈴木光司。湿ったような沈黙がひろがる=椎名誠。白け渡った沈黙が試験場内をしんと支配する=久米正雄。電話から緊張した沈黙が伝わってくる=泉鏡花。二人の間に沈黙がわだかまる=小林久三。もの憂い沈黙が幅をえがいてひろがって行く=大江健三郎。沈黙が落ちてくる(幕のように。凍りつくような=大原富枝)。息づまるようなひやりと緊迫した沈黙が続く=日野啓三。 ▼沈黙が流れる(座に重い。肩を押さえつけるような=三好徹)。ボッカリ穴があいたような気詰まりな沈黙が残る=佐藤愛。沈黙がのしかかる(がらんと廃墟のような=山手樹一郎。夏の午後の蒸し暑い=三島由紀夫)。皮肉な沈黙で問いに酬いる=大佛次郎。沈黙に(いたたまれずに外に出る=篠田節子。刺が生えてくる=荻野アンナ)。長く続く沈黙に耐えられない。不機嫌な沈黙に立てこもる。透明な樹脂のような分厚い沈黙に閉じこめられる=宮部みゆき。生唾をのむような沈黙に堕ちる=本庄陸男、沈黙に包まれる(重苦しい。死の世界のように永遠の=光瀬龍)。沈黙の(重さに耐え切れない。檻に閉じこもる=荻野アンナ。壁が閉じられた貝の固さを持っている=開高健。殻に閉じこもる=豊田穣。中にしゃがみこむ=畑正憲)。深い沈黙の底に沈み込む=佐藤愛。ベルトコンベヤーが沈黙の帯のようにしんと静止する=小川洋子。沈黙を破って話し始める。辺りを支配する沈黙を切り裂くようにシャッターの音だけが立て続けに響き渡る=原田宗典。沈黙を守る(頑強に。終始。むっつりと。山のように)。表面張力のように辛うじて保たれていた重苦しい沈黙を破る=外村繁。重い沈黙が(のしかかる。狭い部屋を支配する=東野圭吾)。 ▼張りつめた沈黙(いまにも雷鳴がとどろいて破られそうな=清水俊夫。静けさそのものとでもいうような澄み切って=日野啓三)。沈黙する(思わせぶりに。気まずそうに。石のように。青銅の彫像のように=石坂洋次郎。地上の全てのものが首をすくめるように闇のなかで=村上春樹。疲れきったように憂い顔で=大江健三郎。毒気を抜かれたように=内館牧子。話すのをためらうように=千刈匡一。蛙が冬眠したみたいに=今東光)。 **むくち【無口】** お通夜の最中のように無口=小川洋子。無口で(控え目な母親。朴訥な男)。怒ったように無口で出て行く。無口な(おとなしい娘。おとなしい青年。男らしく黙ったまま死んでいく=連城三紀彦)。小柄で無口な少年。だいたいが無口な人。無骨で無口な夫が錆びた蝶番をこじ開けるようにして言う=千刈匡一。ふだんは無口な父親が不思議なほどよくしゃべる=重松清。 ▼無口な男(一見英国紳士風の=五木寛之。ふだん笑顔など見せることもない=藤沢周平)。いつもの無口に戻る。無口になる(急に。別人のように。めっきり)。 **むごん【無言】** 無言だけが姑への唯一の抵抗=連城三紀彦。無言で(話の先を促す。こくりとうなずく。ぽんやり時間を過ごす)。涙一つ見せずに無言で耐える。本を無言で読みふける。ブツンと切れたように無言になる=内田康夫。無言の(圧迫を加える。時が流れる。プレッシャーをかける。意思表示がオーラのように立ちのぼる=姫野カオルコ。声が見えない矢のように体のそこここに突き刺さる=飯田龍太。問いに耐えかねたように口をきる=浅川巧)。一瞬の間のような長い長い刻のような無言の間=梅本鶏子。唇を固く結んで無言の反抗を見せる=連城三紀彦。二人の間に無言の火花が散る=白洲正子。雪が無言のうちに街を呑みこむ=常盤新平。無言のまま(対座する。向かい合う)。しばらく無言のまま眺め入る=水上勉。 ▼無言のままでいる(しばし。終始。長いこと)。 # 躊躇う・迷う <630> **いたばさみ【板挟み】** ▼板挟み(妻と母親との。上司と部下との)。板挟みになり四苦八苦する。板挟みになる(金と女の。義理と人情との間に。急進派と慎重派の=火坂雅志)。 **うじうじ** うじうじと(文句をつける。いじけた生き方)。いろいろなことをうじうじと苦にする。意気消沈してうじうじする。うじうじするのが大嫌い。うじうじした宙ぶらりんな生活。せっかくもらった大切な宝物を捨ててしまったような妙にうじうじした気持ち=加賀乙彦。思い切り悪くうじうじして待つ。 **かんがえあぐねる【考えあぐねる】** ▼考えあぐねる(幸か不幸かを。くよくよと。四五日。とつおいつ)。考えあぐねた末の言葉。決定的な案を考えあぐむ。多岐亡羊。亡羊の嘆。 **きめかねる【決めかねる】** ▼決めかねる(心を。いずれとも。渡すかどうか。買うとも買わないとも。どれにしようか。敵とも味方とも=安部公房)。海の物とも山の物とも付かない。 **こんめい【混迷】** 今までの自分が自分でなくなったような昏迷=中島梓。混迷が深まる。混迷から脱出する。混迷と悲哀とが足許に底知れぬ大きな口を開ける=徳田秋声。混迷に終止符が打たれる。思想の混迷に陥る。混迷の(度を加える。波に弄ばれる)。顔に混迷の色が窺える。議論が混迷を深める。混迷する(経済情勢が。思想的に。政治的に)。昏迷する世界に一石を投じる=人間。 **しゅんじゅん【逡巡】** 表情にかすかな逡巡の色を読みとる=斎藤栄。しばらく逡巡を繰り返す。言おうか言うまいかしばらく逡巡する。いたずらに遅疑逡巡して悔いを千載にのこす=木山捷平。遅疑逡巡する(決定を。対応を。いたずらに)。 **しりごみ【尻込み】** 踏み切ろうとしては決心がつかずに尻ごみを繰り返す=黒井千次。子供のような真剣な表情を浮かべ踏み切ろうとしては決心がつかずに尻込みを繰り返す=黒井千次。 ▼尻込みする(この期になってまだ。何やかやと理由を並べて)。歯向かいようのない巨大なものの前にしりごみする=佐多稲子。 **ためらい【躊躇い】** ためらいが尾を引く。ためらいの気持ちが付きまとう。言い渋りがちにためらいを見せる。ためらいがちに(口を開く。答える。質問する。室内に足を踏み入れる)。おどおどとためらいがちに話す。ドアがためらいがちに開く=小川洋子。悪い返事を恐れるかのようにためらいがちに言う。=石坂洋次郎。ためらいがちの拍手が起こる。ためらい気味に答える。 **ためらう【躊躇う】** ▼ためらう(一瞬返事を。言い出したものかどうかと。声をかけたものかどうか。ちょっぴり首をかしげ)。ためらう気配が伝わる。ためらうのは無理もない。この期に臨んでまだためらっている。ためらわれる(口に出すのが。あからさまに言うのが)。どうにも決心が着きかねる。決断がつかない。決断に迷う。ためらうように(口ごもる。一言ずつ話す)。戸口のところでためらうように立ち止まる=古井由吉。往生際が悪い。思い切り悪く(体を離す。いつまでも残しておく。ぐずぐずしている。ちょっと手を出しただけ)。決断力が弱い。 ▼渋る(応諾を。決断を。答えを)。遅疑するような心持ちが閃く。 ▼はばかられる(口にするさえ。頼みに行くのが。あまり激しい追及は)。せっかくのやる気を削ぐのは憚られる=三浦しをん。右顧左眄する人の多い世の中。 ▼右顧左眄する(いたずらに。どうしていいか分からず)。 ▼二の足を踏む(結婚に。出兵に。導入に。捕縛に。参加することに)。二の足を踏んで話がまとまらない。 ▼踏ん切りがつかない(結婚に。いつまでも。なかなか)。踏ん切りが(悪い。つかないでぐずぐずする)。 **ちまよう【血迷う】** 怒りに血迷う。何を血迷ったか。血迷って(手形を乱発する。慣れない株に手を出す)。 ▼のぼせ上がる(女に。恐怖に。恋に。かっと。あとさきも見えぬほど=海音寺潮五郎)。 **ちゅうちょ【躊躇】** 躊躇を(語尾に漂わせる。表情に浮かべる)。多少の躊躇を感じる。 ▼躊躇する(口にするのを。未練たらしく。行動に踏みきるのを。しばらくの間=どぎまぎ。不意を食らって。意味深長に返事を=宮本輝。相手の思惑を測って=久米正雄)。躊躇している時間はない。 **とうわく【当惑】** 顔にちらっと当惑の色が動く。目に当惑の色が浮かぶ。不動金縛りに遭ったごとく微動だに叶わぬ当惑を覚える=柴田錬三郎。当惑する(話の接ぎ穂に。いささか。分別に余って。ほとほと。火のように胸を焼く懊悩にすっかり=大江健三郎)。あからさまに当惑した表情を見せる。顔に当惑した気配が浮かぶ。当惑して口ごもる。当惑しながら答える。はたと当惑したように棒立ちになる=芝木好子。 **とまどう【戸惑う】** ▼戸惑う(意外な問いに。奇妙な感覚に。突然の涙に。皮肉な運命に。一瞬。何のことかと。思いがけない話の発展に。使い慣れぬ言葉に。唐突な話題の転換に。要領を得ない話に。いったいどこの世界の話かと。言葉を捜しあぐねて。唐突に言われて、何から話したらいいものか。何と呼んでいいか。当てにしている以上の小遣いを貰った子供のように=中村真一郎)。とまどい(怯えにも似た。かすかな風が池の面をかすめていったほどの=永井路子)。声と口調に戸惑いが含まれている。目の色に笑みと戸惑いが混じりあう=連城三紀彦。戸惑いがちに話す。戸惑い気味に答える。戸惑いの表情を見せる。顔に戸惑いの色が浮かぶ。目の前に厄介なパズルを突きつけられたように=斎藤栄。 # 躊躇う・迷う-204 <631> **まいご【迷子】** 想念の中で迷子になりそうになる=村松友視。迷子になる(時代の。森の中で。遊園地で)。迷子の少年のようなまなざし=森瑤子。途中で道が分からなくなる。頼りなげな道に迷った子供のような表情=中村真一郎。迷子のような心細さ=中村真一郎。言葉たちが途方に暮れた迷子のようにじっとうずくまったまま=小川洋子。懐疑と弁明の間を迷児のように行き戻りする=高橋和巳。雲をつかむような迷子さがし=戸板康二。 **まごつく** まごつく(新しい経験に。場内の空気に。処置に。手順に。不意打ちに。少し。一方ならず。どうしていいか分からずに。すぐに答えられなくて。ソースをかけた靴を皿に入れて目の前に置かれたように=安岡章太郎)。相手がまごつくほど鋭いまじろぎもしない眼で見つめる=海音寺潮五郎。 ▼質問にまごつく(ぶしつけな。むきつけな)。まごついた目で見る。何とも言いようのないほどまごついた顔つき=安岡章太郎。まごまごしていると(遅れてしまう。バスが出てしまう)。 **まどう【惑う】** ▼惑う(女に。闇に。どっちの道を行くか)。人間的な惑いに終止符を打つ。 ▼思い惑う(運命を。真意を。あれこれと)。 ▼惑乱する(頭が。人心が)。 **まよい【迷い】** 子ゆえの闇という迷い。迷いが(顔に浮かぶ。心に忍び入る)。いまだに迷いがふっきれない。心に迷いが生じる。一時の気の迷いに負ける。声が迷いに揺れる。深い迷いの霧に閉ざされる=島崎藤村。迷いの心が多分に残っている。顔に迷いの表情が現れる。気の迷いを動作にあらわす。一時の気迷い。あれかこれかと気迷いする。あれこれ菜の上をさまよう迷い箸=辺見庸。迷妄に(落ちこむ。心を動かされる)。 **まよいこむ【迷い込む】** ▼迷いこむ(うかつに。暗い路地に。心の病に。知らずに。深い森に。間違って。とりとめのない生涯に。別次元の世界に。解決できない矛盾の中に=石田衣良)。乳白色の霧の中に迷い込む=安部公房。 ▼迷路に迷いこむ(知らない。信じられない)。八幡の藪知らずに迷い込んだようでどうにも自分の気持ちの収拾がつかなくなる=円地文子。 **まよう【迷う】** ▼迷う(一家が路頭に。色香に。心が迷いに。取捨選択に。何を買うか。言うべきかどうか判断に。次に言うべき言葉に。帰るか帰るまいか。口に出すべきかどうか。決心がつかないで。どれにしようかと。何と答えたものか。入ろうか入るまいかと。返事をすべきかどうか。分かれ道に立って。駆け出しの若造みたいに=日野啓三。突然な申し出にどう答えていいか=菊池寛)。霧中に迷う心持ち=山田美妙。さんざん迷った(あげくたどり着く。末に出した結論)。さんざん迷って選ぶ。 ▼迷い出る(霧の中から。ふらふらと)。正直言って迷っている。いずれとも言いかねる。心が惑い乱れる。財布と相談する。煙草の煙が立ち迷う。暁闇の庭から蚊が立ち迷って来る=三島由紀夫。蛾が燭台のまわりで飛び迷う=山本周五郎。冷たい朝風が吹き迷う。 ▼踏み迷う(悪の道に。恋の闇路に。森に)。自分自身の力を信じていいのか疑わねばならぬのかの二筋道に迷いぬく=有吉佐和子。迷える(小羊。魂を救済する)。悩しかゆしの立場。悪夢の中にさまよい込む。恋の道に踏み惑う。妖婦に惑わされる。ただただ思案に暮れる。死のうか生きようか思案にくれているといったような情けない姿=山手樹一郎。とつおいつの思案に日を暮らす=山田美妙。 ▼とつおいつする(考えを。世間的な常識に)。頭から冷水をぶっ掛けて迷夢を覚ましてやりたい=獅子文六。迷いの夢から醒めたような思い=源氏鶏太。 **まよわない【迷わない】** さほど迷わない。迷わずに(決める。答える。出席する。ついて来る。的確に仕事をする)。目当ての工場を迷わずに探し当てる。四十にして惑わず。迷いがない(選択に。何度も訪れている人のように足取りに=加賀乙彦)。迷いに区切りをつける。迷いの色が払拭される。顔から迷いの表情が消える。決然と上げた顔にもう迷いの色はない=荻野アンナ。迷いのない足取り。迷いは全くない。迷いも見せずに応じる。何の迷いもなく次々に指示を下す。一分の迷いもない。迷いを吹っ切る。迷う心配はない。迷妄を(一笑に付す。断つ。脱する)。 **めいろ【迷路】** 迷路に(入りこむ。踏み込む。歩み入ったように思いあぐむ=円地文子)。誤解の迷路に陥る。人を迷路に誘い込む。出口のない迷路にさまよいこむ=小林久三。とりとめのない思考の迷路にまよいこむ=安部公房。謎だらけの迷路の真っ只中に縦に置かれる=後藤明生。秘密の地下道が迷路のごとくめぐらされる=村上春樹。思いが暗い迷路を行きつ戻りつする=勝目梓。果てしもなく回想の迷路を辿って歩く=有島武郎、目隠しで迷路を進むような心持ち=三浦しをん。内部の廊下が迷路のよう=小林信彦、迷路のような(事件。廊下)。難解な迷路のような思考に吸いこまれていきそう=鷺沢萠。迷路のように(複雑な街。通路が四通八達し入り組み合う=吉村昭)。責任の所在が迷路のように入り組んでいる=林京子。道が迷路のように枝分かれする=藤沢周平。道が迷路のように曲がりくねる=島尾敏雄。 ▼迷路のように入り組む(路地が。急な丘が錯綜し谷が=大岡昇平)。迷路じみた廊下。迷路状に街路が入り組む。八幡の藪知らずを歩きまわるような出口のない不安=円地文子。人間性の迷宮の入り口に導く=中野翠。迷宮のような(パズル。路地に入り込む=池田満寿夫)。事件が迷宮入りする。 **めうつり【目移り】** 目移りが(激しい。して決めかねる)。羊の群れにはまりこんだ狼のように目うつりがする=安部公房。 ▼目移りする(あれこれ。次々と)。 **ゆうじゅうふだん【優柔不断】** ▼優柔不断(政治的に。結局実行しえない)。優柔不断な(及び腰。性格)。なんて優柔不断なんだといらだつ=池澤夏樹。優柔不断を(詫びる。絵に描いたような男=松岡圭祐)。決断に時間がかかる。賛成も反対もできかねる。 # たやすい・難しい-205 <632> # あっけない【呆気ない】 **あっけなくかたがつく。** **あっけなく尻尾を出す。** **勝負があっけなく終わる。** **会社がもろくも倒産する。** **家庭がもろくも破壊される。** **野望がもろくも潰ついえる。** **夢がもろくも崩れ去る。** **あえない最期を遂げる。** **あえなく空振りに終わる。** **二十二歳であえなく亡くなる。** **あえなく予選落ちをする。** # あっさり **あっさり決着がつく。** **あっさり手を引く。** **あっさり話を打ち切る。** **あっさり負けを認める。** **あっけないほどあっさり仲直りする。** **拍子抜けするほどあっさり認める。** **やけにあっさりと諦める。** **犬でも飼うことを決めるみたいにあっさりと再婚を決める。** **気抜けするほどあっさりと頷うなずく。** **あっさりした言い方。** **淡泊なもの。** **物にこだわらないあっさりした性質。** **未練げなくさらりと捨てる。** **淡泊な挨拶。** **淡泊な性格。** **水のように淡泊な町。** **何のてらいもなく話す。** **平淡な歌風。** **平淡な声。** **平淡な話。** **事実を淡々と述べる。** **度胆どぎもを抜かれるような内容を淡々と口にする。** **意外な重大事を淡々と言ってのける。** **日々が淡々と流れる。** **少しも気負ったところのないたんたんとした口調。** **淡々として他人ひとことのように話す。** **恬淡てんたんに振る舞う。** **自分が主張した説さえ恬淡と捨てる。** **恬淡とした口調。** # あやうく【危うく】 **危うく起訴を免れる。** **危うく命をとりとめる。** **危うく海に転げ落ちかける。** **危うく押しつぶされそうになる。** **危うく気を失うところ。** **危うく声をあげそうになる。** **危うく新聞沙汰になりかける。** **危うく秘密がばれそうになる。** **危うく踏みとどまって構えを立て直す。** **危うく忘れるところだった。** **危うく言いかけてこらえる。** **危うくよろめきながら踏みとどまる。** **危ういところをすり抜けてくる。** **風の強い闇夜に一本の竿でバランスをとりながら綱渡りをしているような危うい関係。** **あわや殴り合いになるところ。** **あわやフェンスに激突という寸前。** **あわやというところで衝突が回避される。** **すんでに命を落とすところ。** **すんでのところで思いとどまる。** **すんでのところで助かる。** **すんでのところで道に迷いそうになる。** # おいそれと **おいそれと言い出せない。** **おいそれと帰すまい。** **おいそれと見つからない。** **おいそれといい仕事が見つかるわけもない。** **おいそれと応じるわけにはいかない。** **おいそれと思いのかまになるとは思えない。** **おいそれと賛成する者もいない。** **おいそれと職場を捨てられない。** **おいそれと姿を見せるわけがない。** **おいそれと文句をつけにくい。** **おいそれとやってはくれまい。** # かろうじて【辛うじて】 **辛うじて一撃をかわす。** **辛うじて体を支える。** **辛うじて激情を抑える。** **辛うじて難を逃れる。** **辛うじて名誉を保つ。** **辛うじて面目がたつ。** **辛うじて露命をつなぐ。** **辛うじて生きているだけ。** **辛うじて命をながらえる。** **辛うじて気持ちの収まりがつく。** **辛うじて気力で持っている。** **辛うじて反撃の態勢を整える。** **辛うじて冷静さを取り戻す。** **辛うじて押さえていたものが崩れそうになる。** **堰せきを切って溢れそうになる内心の激情を辛うじて抑える。** **首の皮一枚で記者生命を繋つなぐ原稿。** **やっとの思いで言う。** **やっとの思いで耐える。** **からくも言い逃れる。** **からくも命をつなぐ。** **からくも生をつなぐ。** **からくも危機を脱出する。** **一歩手前でからくも踏みとどまる。** **衝動にからくも堪える。** **細々と商売を続ける。** **細々と命脈を保つ。** **細々と露命をつなぐ。** **年金に頼って細々と生活する。** # かんたん【簡単】 **簡単な挨拶を交わす。** **簡単な仕事。** **簡単な食事をとる。** **簡単な方法。** **簡単な作り方を説明する。** **簡単な見合いだけで結婚する。** **簡単な理論的表現に要約する。** **手のかからない簡単な料理。** **分かってみれば簡単なこと。** **簡単な注意を与える。** **簡単な注意を受ける。** **簡単に区別がつく。** **簡単にけりがつく。** **簡単に答えが出る。** **簡単に事が進む。** **簡単に筋を紹介する。** **簡単に手に入る。** **簡単に謎が解ける。** **簡単に一件落着としては困る。** **簡単に納得するわけにいかない。** **簡単に持ち上げることができる。** **簡単に弱音は吐かない。** # たやすい **赤子の手をひねるよりもたやすい。** **ひよっこの頭くびを絞めるよりたやすい。** **たやすく手に入る。** **たやすく殺されてなるものか。** **たやすく死ぬはずはない。** **考えたよりたやすくできる。** **交渉が思いの外たやすく進む。** **井戸に石を投げ込むよりもたやすく艦隊を撃沈することができる。** **お茶の子さいさい。** **朝飯前の仕事。** **河童かっぱの屁へ。** **何の難しい問題もない。** **懐の雛鳥をねじころすよう。** **三つ子でもできる作業。** <633> # てがる【手軽】 **庶民の手軽な遊び場。** **取り敢あえず手軽な葬式をすませる。** **手軽に買える。** **手軽に知りたがる。** **手軽にできる。** **手軽に読みこなせない。** **救急車が手軽に呼べる時代。** **お手軽な作品。** **一時しのぎのお手軽なやり方。** **お手軽価格で買える。** **秘書代わりに手軽に使う。** **ちょっくらちょいと手軽く行く。** **軽便な手段。** **軽便な手続。** **軽便な道具。** **軽便なレストラン。** # てすう【手数】 **思いの外に手数がかかる。** **警察官をてかずをわずらわす。** **御老体をてかずをわずらわす。** **先生をてかずをわずらわす。** # てっとりばやい【手っ取り早い】 **手っ取り早い結論を選ぶ。** **手っ取り早い手段。** **手っ取り早い方法。** **直接聞いたほうが手っ取り早い。** **手っ取り早くお金になる。** **手っ取り早く事を運ぶ。** **手っ取り早く話を済ませる。** **手っ取り早く勝ちをおさめる。** # てま【手間】 **片づけに手間がかかる。** **よけいな手間が省ける。** **手間のかかる仕事。** **作るのに手間のかかる昔風な田舎料理。** **手間を惜しまない。** **手間を惜しむ。** **手間を取らせる。** **手間を省く。** **お化粧に手間をかける。** **運び出す手間を考える。** **よけいな手間を取らされる。** **さして手間ひまかけずに宿願を遂げる。** **手間暇かけて取材する。** **手間隙をかける。** # てまどる【手間取る】 **意外に手間取る。** **事故処理に手間取る。** **だいぶ手間取る。** **思わぬ乱入者に手間取る。** **探すのにかなり手間取る。** **そう手間取るとも思えない。** **話すことの整理に手間取っているようにしばらく口を噤つぐむ。** **案外時間がかかる。** **思ったより時間がかかる。** **ずいぶんと時間がかかる。** # どうにか **どうにか生きていける。** **どうにか危地を脱する。** **どうにか目鼻がつく。** **どうにか持ちこたえる。** **どうにか持ち直す。** **どうにか生活が形になる。** **どうにかこうにか出来上がる。** **どうにかこうにか気力を奮い立たせる。** **どうにかこうにか耐えることができる。** **男の手一つでどうにかこうにか子供たちを大きくする。** # なんかん【難関】 **難関が立ちはだかる。** **難関に挑む。** **難関に直面する。** **難関にぶつかる。** **難関に逢着ほうちゃくする。** # なんだい【難題】 **難題が起きる。** **難題が山積する。** **難題が山ほどある。** **難題に挑む。** **難題に直面する。** **難題に手を焼く。** **難題に取り組む。** **突然の難題に目を白黒させる。** **禿頭かとうを捕まえるような手の着けどころのない難題に悩まされる。** **難題を解決する。** **難題を抱える。** **難題を先送りする。** **難題を吹きかける。** **難題を持ちかける。** **難題を持ち出して人を困らせる。** **無理難題を吹っかける。** **得意先の要求する無理難題を愛想笑いでいなす。** # なんど【難度】 **演奏の難度。** **入試の難度。** **技の難度。** **難度が高い。** **難度が低い。** **難度を上げる。** **難度を下げる。** **難易度が違う。** **難易に応じて人数を加減する。** **難易の度合い。** **仕事によって難易の差がある。** **難易を見極める。** # なんとか【何とか】 **何とか格好がつく。** **何とか切り抜ける。** **何とか口を割らせる。** **何とか無事に済む。** **何とか平衡を保つ。** **何とか物になりそう。** **何とか命をとりとめる。** **何とかうまくごまかす。** **暮らしていくだけで精いっぱい。** **何とかその場をとりつくろう。** **どもらずに歌い終わる。** **何とかかんとか目的地にたどり着く。** **何とかして成功させたい。** **何とかして思い出そうとする。** **何とかして機械を動かしたい。** **何とかして広い眺望を求める。** **何とかして逃げまわろうと腐心する。** # まんまと **まんまと裏をかかれる。** **まんまとにしてやられる。** **まんまと図に当たる。** **まんまと罠わなにはまる。** **まんまと一杯食わされる。** **まんまと術中にはまりこむ。** **まんまと脱獄に成功する。** **まんまと金を手に入れて逃走する。** **狙いがまんまと的中する。** **罠にまんまと引っかかる。** **うまうまと嘘をつく。** **うまうまと追い出されたりしない。** **うまうまと人をぺてんにかける。** **うまうまと罠にかけられる。** **相手にうまうまと乗せられる。** **首切りをうまうまとやってのける。** # むざむざ **むざむざ自決させたくない。** **むざむざ死ぬわけにはいかない。** **むざむざ取られるのは業腹。** **むざむざ逃がしてしまう。** **むざむざ敵の自由に踏みにじられる。** **むざむざ負けてしまうわけにはいかない。** **娘をむざむざ他の手に渡してしまう。** **むざむざと引き下がるわけにはいかない。** **ゆめゆめむざむざと死ぬんじゃないぞ。** # むじゅん【矛盾】 **やりきれない心の中の矛盾。** **自分の歯で自分の歯に噛みつこうとしているような矛盾。** **矛盾が明らかになる。** **矛盾が顕在化する。** **矛盾が内在する。** <634> # むり【無理】 **物理的に無理。** **会うのはちょっと無理。** **水掛け論に決着を求めるのは無理。** **無理が重なる。** **無理がきく。** **無理が通らない。** **無理が通れば道理が引っ込む。** **どこかに無理がある。** **昔のように無理が利かなくなる。** **少々の無理でも引き受けてしまう。** **無理な仕事をさせる。** **無理なものは無理。** **無理な注文に困却する。** **身を挺ていして無理な要求をさえぎる。** **無理に作った笑顔。** **無理に怒りを押しころした口調。** # やすやす【易易】 **やすやすと誘いに乗る。** **やすやすと手に入る。** **やすやすと願いが叶う。** **やすやすと罠わなにかかる。** **やすやすと相手の攻撃をかわす。** **やすやすと頭を下げるだろうか。** **やすやすと死を受け入れてしまう。** **やすやすと推理を組み立てる。** **やすやすと入り込むことができる。** **やすやすと罠に引っかかる。** **いともやすやすとあしらわれる。** **いともやすやすと異性の誘惑に陥る。** **手もなく騙される。** **手もなくつぶれる。** **手もなく引っかかる。** **楽々と五年を暮らすことのできる大金。** **力仕事を楽々とこなす。** # やっと **やっと一人前になる。** **やっと決心がつく。** **やっと我に返る。** **やっと息がつけるようになる。** **やっと重い腰を上げる。** **やっと独り立ちできると思っていた矢先。** **やっと無罪を勝ち取れる。** **拝むようにしてやっと追い返す。** **最近やっと分かってきたばかり。** **しばらくしてやっと気づく。** **やっとの思いで口にした言葉。** **やっとの思いでたどり着く。** **やっとの思いで潜むりこむ。** **やっとのことで思いとどまる。** **やっとのことで喀血かっけつが止まる。** **やっとのことで暮らしを立てる。** **かつかつ時間に間に合う。** **かつかつ十二時に職場に戻る。** **かつかつの暮らしを強いられる。** **かつがつ食うだけの暮らし。** **かつがつ身過ぎができる。** **どうやらこうやら一段落する。** **どうやらこうやら卒業する。** **どうやらこうやらここまで漕ぎつけた。** # ようやく【漸く】 **ようやく顔を上げる。** **ようやく気づく。** **ようやく口を開く。** **ようやく腰を上げる。** **ようやく一息つく。** **ようやく人心地がつく。** **ようやく落ち着きを取り戻す。** **ようやく事情が飲み込める。** **ようやく手がかりをつかむ。** **ようやくもらえた小さな役。** **関係がようやく好転する。** **ようやく気を取り直す。** **ようやく子供を寝かしつける。** <635> **あいまい【曖昧】** 霧のように輪郭があいまい=三島由紀夫。権限が曖昧で拡大解釈の余地が広い=有川浩。曖昧な(相槌を打つ。言葉を拝する。方針を捨てる。供述を繰り返す。答えでごまかす。態度に終始する。ままに話を打ち切る)。口元に曖昧な笑いを浮かべる。答えに窮したように曖昧な言葉をかける=藤本義一。戸惑うような曖昧な微笑み=原田康子。春霞のように曖昧な考え=獅子文六。曖昧に(首を傾げる。返事をぼかす。記憶が霞んでいる。頷いて取り敢えず舟に乗っておく=有川浩)。はぐらかすように曖昧に聞き返す=黒井千次。曖昧に答える(ええまあと。焦らすように)。夢がぼんやりと薄暮の中に溶ける山の風景のように曖昧になる=中上健次。疑問が曖昧の淵へと沈む=村松友視。 ▼曖昧にする(結論を。責任を。違いを)。分かるような分からないような頷きをする=高見順。よいとも悪いとも言わない。曖昧模糊とした言い方。 ▼曖昧模糊としている(事件の核心が。論点が)。 ▼濁す(言葉尻を。返事を)。のらりくらりと言を左右にする。言を左右にして(賛成しようとしない。はっきりした返事をしない=佐野洋)。 ▼言葉を濁す(曖昧に。言いさして。ちょっとねと。歯切れ悪く)。複雑な表情で語尾を濁す。諾否が曖昧。否とも諾ともとれる返事。肯定とも否定ともつかない。問いに肯定も否定もしない。否定とも肯定ともつかずゆるく首を振る=城山三郎。玉虫色の(政治的妥協。調停案)。勝手な解釈ができる玉虫色の内容。 **うやむや** このままうやむやにしておけない。事件をうやむやに終わらせる。問題をうやむやに葬り去る。はっきりしたけりがつかないままうやむやに終止する。 ▼うやむやになる(交渉が。処置が。いつの間にか)。不祥事をうやむやにはできない。事をうやむやのうちに葬る。 **おぼつかない【覚束ない】** 覚束ない(足取りで歩く。ステップを踏む)。 ▼覚束ない(足元が。味方の勝利が。成否のほどは。仕事が間に合うかどうか。成功するか否か。できるかどうか。見渡す限りの焼け跡で距離の感覚がもどかしいばかりに=檀一雄)。本復の覚束ない病を抱える。宵の口の覚束ない光。雲を掴むがごとき覚束ない捜索=菊池寛。とぎれがちな覚束ない祈り=佐山哲郎。満足に成長するかどうか覚束ない虚弱児=辻井喬。夢のような覚束ない計画=岡本かの子。覚束なく杖をついて歩く。時間の観念が覚束なくなる。おぼつかなさ(天の青、海の青のなかを、かもめのようにゆらゆらしているような=宮尾登美子。夢のなかの幻を探るような=中上健次)。闇の中を探り歩くような覚束なさ=円地文子。 **およびごし【及び腰】** 及び腰(優柔不断な。おっかなびっくりの)。及び腰で間に割って入る。及び腰になる(精査に。討論に)。腰の引けた行動。諸将が失策の責任をかぶるのを恐れて消極戦法に終始する=塩野七生。 **かならずしも【必ずしも】** 必ずしも(満足できない。あてにならない。理解したわけではない)。あながち(根拠のないことではない。作り話とも思えない。無理とはいえない。打算のためばかりではない=大岡昇平)。まんざら(嘘でもないらしい。でたらめとも言えない。悪い気もしない)。 **こころぼそい【心細い】** 心細い(その日暮らし。身となる)。心細い(行く末が。一人では)。末の見こみのない心細い仕事。はなはだ心細い思い。身寄りがないために心細い思いをする。環境が変わると心細いもの=灰谷健次郎。目を覆われたようで心細い霧の中=長塚節。赤子のように心細くなる=北杜夫。心細くて何かに祈らずにはいられない=三浦哲郎。雨に打たれた小犬のように心細げ=高橋三千綱。判決でも待つような心細げな顔つき=三田誠広。声が心細げに揺れる。 ▼心細さ(迷子のような。沁み入る異境の果ての=横光利一)。心細さで泣き出したい思い。砂漠の中にぽつんと立たされたような心細さと空虚感が心を襲う=遠藤周作。言いようのない心細さに襲われる。心細さの遣る瀬がない。茨に囲まれた危うい立場に立つ思い=石川達三。薄暗い藪や坂のある路が細々と一すじ断続している思い=芥川龍之介。一人遠くに来た心持ち=夏目漱石。ぽつんと広い平原の真ん中に取り残されたような気持ち=井上靖。 **こころもとない【心許ない】** 心許ない(足どり。危機管理。細い手すり)。心もとない(一緒になれるかどうか。ぐらつく椅子に腰かけているように=高樹のぶ子)。夢の繰り返しのような気がしてこころもとない=中沢けい。置き去りにされているような心許ない気分=内田康夫。身体の一部が抜け落ちて行くような心許ない気持ち=黒井千次。子供を一人歩きさせているような心許ない感じ=谷崎潤一郎。夢から醒めたばかりの人間がなかば夢中をさまよっているような心もとない風情=阿刀田高。地図の上を指先が心許なくたどる=武田泰淳。心許なげな言い方。 **こんきょがない【根拠がない】** ▼根拠がない(疑うべき。さしたる。全く)。根拠のない(噂。中傷。思いこみにとらわれる。自信にあふれる。でたらめな情報にたぶらかされる=小林久三)。客観的根拠のない妄想。根拠もなく楽観視する。反駁の根拠を持たない。相手の話を嘘だと突き崩すだけの根拠が見つからないのがなんともくやしい=永井路子。何の根拠もない妄説に騙される=中村真一郎。謂われのない恨みを買う。いわなき攻撃が絶えることなく続く=西木正明。謂れもない迫害を受ける。根も葉もない(あてこすり。風聞。夢想。流言にすぎない。噂がばら撒かれる=横山秀夫)。 **しまりない【締まりない】** ▼締まりがない(顔に。肉に。腰から下が妙にぶくぶくしていて=佐多稲子)。肉がつきすぎてしまりがない顔=丸谷才一。締まりのない(口元。笑い声)。子供みたいなしまりのない声=古井由吉。情けなくなるほど間のぬけたしまりのない顔付き=永井路子。寝ぼけたような締まりのない笑顔=徳田秋声。口のしまりができないほどうれしさがあふれてくる=長崎源之助。たがを外す。でれでれする(いい年こいて。何かにつけて)。男と女がでれでれとふざける。間延びした(声でなだめにかかる。返事が聞こえる)。テープの回転速度を間違えたような間のびした声=赤川次郎。拍子抜けするほど間延びした表情。 **しょうこがない【証拠がない】** ▼証拠がない(明白な。確たる。何一つ)。証拠が不足している。確かな証拠がつかめない。証拠に信憑性が乏しい。決定的な証拠に欠ける。確固たる物的証拠に欠ける。 **たどたどしい** たどたどしい(英語。日本語。話し方。足音が遠ざかる)。 ▼たどたどしい(歩行が。手元がいかにも)。鍛えられていないたどたどしい心=円地文子。たどたどしく(書かれた文字。説明する。発音する)。片言の英語を話す。おぼつかない片言をしゃべる。 **たよりない【頼りない】** 頼りない(危うげな娘。寂寥に呑まれる=檀一雄)。頼りない(坊やみたいで。受け答えがひどく。動きのひとつひとつが地面から足が五ミリほど浮き上がった状態で行われているように=中沢けい。海の底で揺れている一本の海藻みたいに=宮本輝。不安を覚えるほど=黒井千次)。線が細くて頼りない気がする。風に吹かれる木の葉のようにただふるえているだけの頼りない存在=石坂洋次郎。がらんとした夜気のみが拡がっているような頼りない気分=黒井千次。ぐにゃりとした頼りない手応え=黒井千次。雲をつかむように頼りない話=高見浩。子供みたいな頼りない女=筒井康隆。自分の影がうすく消えて行ってしまうような頼りない気持ち。=島尾敏雄。自分を一枚の紙のように軽くて頼りないものに感じる=藤沢周平。蝉の抜け殻のようにふわっとして頼りない態度=庄野潤三。店内に漂っている煙の流れと同じくらい薄く頼りない夢の中の時間の壁=宮部みゆき。ひょろひょろと頼りない字=田辺聖子。夢の中で物を食べている人みたいに頼りない感じを与える女性=庄野潤三。頼りない気持ち(足元の地面が消えてなくなったような=佐藤多恵子。海の底をさぐるように漠然とした=本庄陸男。波間にフカフカ浮いているような、けれどもどこかさっぱりした=佐藤愛)。頼りないこと(おびただしい。はなはだしい)。闇にかすかに明滅する蛍火のように頼りなくかほそい=小林久三。骨なしで頼りにならない。頼りなげな(寂しい表情。姿をさらす。あわいかすかな火=飯田龍太)。嬰児のように頼りなげな表情=真継伸彦。少々頼りなげな感じのする大男。訴えるような頼りなげな眼差し=三浦綾子。蜉蝣のように頼りなげな後ろ姿=北原武夫。頼りなげに自分の足に眼を落とす。=黒井千次。 ▼頼りなさ(関節がばらばらにはずれていってしまいそうな=檀一雄。空井戸の深い底にでも落ちこんだような手がかりのない=円地文子。体の中をすかすかと風が吹き抜けていくような=渡辺淳一。高熱と断食が何日か続いたような=笹沢左保。心にぽっかり穴があいたような=平岩弓枝。つかみどころなくぼやけてゆく記憶の=川端康成。流れ行く雲水のような=白洲正子)。知らない土地にたった一人で投げ出されたような頼り無さ=黒井千次。大海に浮漂う一枚の紙きれのよう=高橋たか子。濁流に漂う芥子粒のよう=大庭みな子。頼む木陰に雨漏る心地=獅子文六。頼むに足らぬ人物。頼りがいがない。羅針盤のない船で霧の海を走るよう=内橋克人。凛々しさのかけらもない。 **ちゅうしょうてき【抽象的】** 抽象的な(言い回し。概念。スローガン)。抽象的に図案化する。観念的な(談論)。 **ちゅうとはんぱ【中途半端】** 中途半端で落ち着かぬ会話を交わす。中途半端な(ものの言い方。態度に終始する)。改革が中途半端に終わる。二つの気持ちの間で中途半端に揺れる=連城三紀彦。帯に短し襷に長し=壺井栄。なまじ(逢ったら別れがつらい。成功すると後が大変。断ったらかえって不自然=佐野洋)。なまじっかな(解説を加えないほうがいい。過去なら知らないほうがいい=飯田譲治)。なまじの怪談よりよっぽど怖い=宮部みゆき。半端な(気持ちでできることではない。時間に物を食う)。なまなかな(分別を嘲る。感情など一切受けつけぬ強さ=高井有一。日本人以上に日本を愛している=船山馨)。生半可なことで命に関わるようなヘマは踏まない=古川薫。なまなかの人間にできることではない。生半可な(仕事ではない。気持ちでは務まらない)。新知識を生半可に使用する=豊田穣。 **どっちつかず** どっちつかずの(気持ち。態度。立場をとる。返事をする)。どちらともつかぬ曖昧な意見。中途半端な心持ち。あやふやな(記憶。情報が流れる。知識。返事)。あやふやに(答える。語尾を濁して言う=鈴木光司)。安全思想があやふやになる。どっちつかずのあやふやな態度。 **とらえどころがない【捕らえどころがない】** とらえどころがない(飄々として。茫漠として。漠然としていて。風のように気まぐれで=石坂洋次郎)。一見とらえどころのない不可思議な魅力。空漠としたとらえどころのない虚しさ=萩原朔太郎。春霞のようにとらえどころのない悲哀=萩原葉子。風に吹かれるように飄々と生きる=さだまさし。雲をつかむような(壮大な夢。夢物語)。 ▼つかみどころがない(曖昧で。雲みたいに。茫洋として。光線の当て方によって次々に色彩を変えていく多面体の鉱石のように=小林久三)。つかみどころのない(質問。頼りなげな男。ものの考え方)。ぼんやりしたつかみどころのない表情。 **とりとめない【取り止めない】** とりとめなく(本のページをめくる。愉快に雑談する)。記憶がとりとめなくほんやりする。夢のようでとりとめがない=中上健次。とりとめのない(会話を交わす。考えにふける。昔語りを聞く。杞憂を口にする=檀一雄)。とりとめもない(夢想にふける。愚痴をこぼし合う。やりとりを交わす)。世間の評判は取り止めもないもの=山本有三。とりとめもなく(思い出が心に浮かぶ。気分が拡散していく=荻野アンナ)。雑談をとりとめもなく続ける。不眠のためにとりとめもなくなった思考力=堀辰雄。先も後もないような話=中勘助。漫然と(雑誌を読む。日を過ごす。座って紅茶をすすっている)。 **にえきらない【煮え切らない】** 煮えきらない(言い方。考え。返事。笑いを浮かべる)。くどくどと煮えきらない話が続く。煮えきらない態度に(業を煮やす。腹が立つ)。因循な気分。臆病な因循な態度。生煮えの(議論。政策。返事)。 **はぎれがわるい【歯切れが悪い】** いくら噛んでもゴムのように歯切れが悪い=阿刀田高。何か悪いことでもしているような歯切れの悪さ=阿久悠。いつもの歯切れのよさが影を潜める。歯切れの悪い(対応。話し方。弁明)。ねちねちと歯切れの悪い舌足らずのような言い方=石川達三。喉元を締めて押し出した声を口の中でしゃぶってから外に洩らすような歯切れの悪い喋りかた=松浦理英子。歯切れ悪く答える。奥歯に物がはさまったような態度=小林久三。奥歯に物の(挟まったような言い方=火坂雅志。挟まったように=諫早める=吉川英治)。 **ばくぜん【漠然】** 漠然たる(圧迫を感じる。希望が胸に生じる。頼りない気持ち)。漠然と(頭の中で想像する。昔のことを思い出す。胸騒ぎを覚える。物思いにふける。横目を流した=つかみ所のない表情=本庄陸男)。疲れた頭で漠然と考える。夢のような漠然とした印象=志賀直哉。漠然とした(大きな影。憧れを呼び起こす。つかみどころのなさ。不安に駆られる)。曖昧な漠然とした気分。危険が近づきつつあると云う漠然とした予感=志賀直哉。雲をつかむような手がかり=森村誠一。漠と(感じ取れる。広がる視野)。漠とした(不安にとらわれる。実体のない物語=小池真耶)。印象が記憶の中で漠として煙っている。 **ふがいな【不甲斐ない】** 不甲斐ない(男。教師を見限る。亭主。涙を流す)。決めた心が不甲斐なくもよろめく。浮き足立った味方のふがいなさ=白洲正子。不甲斐なさで涙が出そう。大切な友達をむざむざ他人の手へ渡した自分の弱気と腑甲斐なさとが恨めしい=谷崎潤一郎。自分自身のふがいなさに腹が立つ=阿川佐和子。不甲斐なさを(嘆く。恥じる)。 **ふたしか【不確か】** 不確かな(知識。伝聞。情報に飛びつく)。 ▼不確かになる(意識が。記憶が)。必ずしも明らかではない。曖昧なアリバイ。海の物とも山の物とも知れない。何一つ確実なものはない。確たる根拠に欠ける。証言内容に微妙な違いが生じる=柳田国男。正確な(年齢は不明。住所を知らない。見通しがつけられない)。確かな(根拠はない。手応えがない)。言われてみれば確かにおかしい。 ▼明確でない(勘所が。立ち位置が)。明確に答えることができない。理由が明確に示されない。分からない(しかと正体は。不確実にしか。とんと確かなことは)。 ▼一定しない(区々として。諸説があって)。しかとは思い出せない。 ▼しかとは分からない(年齢のほどは。どうなることか)。不実な(情報。未来)。不確定な(時代。表現)。不確定の(噂。情報)。不確定要素が多い。不明確(根拠が。中身が。因果関係の論証が)。不明確な返答。 ▼未確認(安全性が。安否が。身元が)。未確認の情報。 **はっきりしない** はっきりしない(言い方。ぐずぐずした夫=萩原葉子)。 ▼はっきりしない(記憶が。空想と現実の境が。臓腑の工合が袋をかぶっているように=林芙美子)。晴れるとも降るともつかないはっきりしない空模様=長崎源之助。前後の脈絡がはっきりとしない。視界がいま一つハッキリとしない=辻仁成。はっきり説明がつかない。はっきりと決めたわけではない。磨りガラスの向こうを見るようにもう一つはっきりとわからない=阿刀田高。真相ははっきりとは分からない。靄がかかっているような感じではっきりとはわからない=千刈匡一。必ずしも明らかなわけではない。はっきりした(兆候がない。区別がつかない)。漠たる予感にすぎない。人生の漠たる哀愁。判然たる答えが出ない。判然としない(理由が。論理が。全容は)。定かではない(記憶が。行方が。よりどころが。事情は。真相は)。定かに(記憶はない。見定めもできない)。行きかう人の顔も定かに見えない=柴田翔。ぼんやりとかすんでいて定かには見えない=平岩弓枝。鵺のような人間=丹羽文雄。偽の生活をぬけ出す=円地文子。 **ひよりみしゅぎ【日和見主義】** 日和見主義を(押し通す。批判する)。日和見のくせに小賢しいとこがうざい=有川浩。勝ち馬に乗る。勝ち馬を志向する。 **へっぴりごし【へっぴり腰】** 狂犬を遠巻きにして紐をかけるときのへっぴり腰=大庭みな子。へっぴり腰で(構える。先に進む。対処する。立ち向かう)。足場の悪い斜面での作業がこわくてたまらずへっぴり腰でしか縄を引けない=三浦しをん。 **ろくに【碌に】** ろくに(家にいない。調べもしない。本を読まない。新聞も読まない。話を聞いていない。用もないのに電話する。挨拶もできないなんて情けない=森瑤子)。仕事がろくに手につかない。日頃ろくに顔も合わせていない。ろくすっぽ(聞きもしない。話ができない。返事もしない。仕事もできない。整備ができていない)。質問にろくすっぽ答えない。ろくろく(話も聞かない。耳も貸さない。物も食べない。仕事も手につかない。部屋の掃除もしていない)。値段もろくろく聞かずに買ってしまう。夜もろくろく眠れない。 # だらしない・うっかり <636> # しょうこがない【証拠がない】 **明白な証拠がない。** **確たる証拠がない。** **何一つ証拠がない。** **証拠が不足している。** **確かな証拠がつかめない。** **証拠に信憑性しんぴょうせいが乏しい。** **決定的な証拠に欠ける。** **確固たる物的証拠に欠ける。** # たどたどしい **たどたどしい英語。** **たどたどしい日本語。** **たどたどしい話し方。** **たどたどしい足音が遠ざかる。** # たよりない【頼りない】 **危うげな娘。** **寂寥せきりょうに呑まれる。** **坊やみたいで頼りない。** **受け答えがひどく頼りない。** **動きのひとつひとつが地面から足が五ミリほど浮き上がった状態で行われているように頼りない。** **海の底で揺れている一本の海藻みたいに頼りない。** **不安を覚えるほど頼りない。** **線が細くて頼りない気がする。** **風に吹かれる木の葉のようにただふるえているだけの頼りない存在。** **がらんとした夜気のみが拡がっているような頼りない気分。** **ぐにゃりとした頼りない手応え。** **雲をつかむように頼りない話。** **子供みたいな頼りない女。** **自分の影がうすく消えて行ってしまうような頼りない気持ち。** **自分を一枚の紙のように軽くて頼りないものに感じる。** **蟬せみの抜け殻のようにふわっとして頼りない態度。** **店内に漂っている煙の流れと同じくらい薄く頼りない夢の中の時間の壁。** **ひょろひょろと頼りない字。** **夢の中で物を食べている人みたいに頼りない感じを与える女性。** **頼りない気持ち。** # ちゅうとはんぱ【中途半端】 **中途半端で落ち着かぬ会話を交わす。** **中途半端なものの言い方。** **中途半端な態度に終始する。** **改革が中途半端に終わる。** **二つの気持ちの間で中途半端に揺れる。** **帯に短し襷たすきに長し。** **なまじ逢ったら別れがつらい。** **なまじ成功すると後が大変。** **なまじ断ったらかえって不自然。** **なまじっかな解説を加えないほうがいい。** **なまじっかな過去なら知らないほうがいい。** **なまじの怪談よりよっぽど怖い。** **半端な気持ちでできることではない。** **半端な時間に物を食う。** **なまなかな分別を嘲あざける。** **なまなかな感情など一切受けつけぬ強さ。** **日本人以上に日本を愛している。** **生半可なまはんかなことで命に関わるようなヘマは踏まない。** **なまなかの人間にできることではない。** **生半可な仕事ではない。** **生半可な気持ちでは務まらない。** **新知識を生半可に使用する。** # どっちつかず **とっちつかずの気持ち。** **とっちつかずの態度。** **とっちつかずの立場をとる。** **とっちつかずの返事をする。** **どちらともつかぬ曖昧な意見。** **二股膏薬ふたまたごうやくな心持ち。** **あやふやな記憶。** **あやふやな情報が流れる。** **あやふやな知識。** **あやふやな返事。** **あやふやに答える。** **あやふやに語尾を濁して言う。** **安全思想があやふやになる。** **どっちつかずのあやふやな態度。** # とらえどころがない【捕らえどころがない】 **図々しい。** # とりとめない【取り止めない】 **本のページをめくる。** **愉快に雑談する。** # にえきらない【煮え切らない】 **煮えきらない言い方。** **煮えきらない考え。** **煮えきらない返事。** **煮えきらない笑いを浮かべる。** **くどくどと煮えきらない話が続く。** **煮えきらない態度に業を煮やす。** **煮えきらない態度に腹が立つ。** **因循な気分。** **臆病な因循な態度。** **生煮えの議論。** **生煮えの政策。** **生煮えの返事。** # はぎれがわるい【歯切れが悪い】 **いくら噛んでもゴムのように歯切れが悪い。** **何か悪いことでもしているような歯切れの悪さ。** **いつもの歯切れのよさが影を潜める。** **歯切れの悪い対応。** **歯切れの悪い話し方。** **歯切れの悪い声明。** **ねちねちと歯切れの悪い舌足らずのような言い方。** **喉元を締めて押し出した声を口の中でしゃぶってから外に洩らすような歯切れの悪い喋しゃべりかた。** **歯切れ悪く答える。** **奥歯に物がはさまったような態度。** **奥歯に物の挟まったような言い方。** **奥歯に物の挟まったように諫いさめる。** # ばくぜん【漠然】 **漠然たる圧迫を感じる。** **漠然たる希望が胸に生じる。** **漠然たる頼りない気持ち。** **漠然と頭の中で想像する。** **漠然と昔のことを思い出す。** **漠然と胸騒ぎを覚える。** **漠然と物思いにふける。** **漠然と横目を流した。** **つかみ所のない表情。** **疲れた頭で漠然と考える。** **夢のような漠然とした印象。** **漠然とした大きな影。** **漠然とした憧れを呼び起こす。** **漠然としたつかみどころのなさ。** **漠然とした不安に駆られる。** **喫味な漠然とした予感。** **雲をつかむような手がかり。** **漠とした感じ取れる。** **漠と広がる視野。** **漠とした不安にとらわれる。** **漠とした実体のない物語。** **印象が記憶の中で漠として煙っている。** # ひよりみしゅぎ【日和見主義】 **日和見主義を押し通す。** **日和見主義を批判する。** **日和見ひよりみのくせに小賢こざかしいとこがうざい。** **勝ち馬に乗る。** **勝ち馬を志向する。** # ふがいない【不甲斐ない】 **不甲斐ない男。** **不甲斐ない教師を見限る。** **不甲斐ない亭主。** **不甲斐ない涙を流す。** **決めた心が不甲斐なくもよろめく。** **浮き足立った味方のふがいなさ。** **不甲斐なさで涙が出そう。** **大切な友達をむざむざ他人の手へ渡した自分の弱気と腑甲斐ふがいなさとが恨めしい。** **自分自身のふがいなさに腹が立つ。** **不甲斐なさを嘆く。** **不甲斐なさを恥じる。** # ふたしか【不確か】 **不確かな知識。** **不確かな伝聞。** **不確かな情報に飛びつく。** # へっぴりごし【へっぴり腰】 **狂犬を遠巻きにして細をかけるときのへっぴり腰。** **へっぴり腰で構える。** **へっぴり腰で先に進む。** **へっぴり腰で対処する。** **へっぴり腰で立ち向かう。** **足場の悪い斜面での作業がこわくてたまらずへっぴり腰でしか縄を引けない。** # ろくに【碌に】 **ろくに家にいない。** **ろくに調べもしない。** **ろくに本を読まない。** **ろくに新聞も読まない。** **ろくに話を聞いていない。** **ろくでもないのに電話する。** **ろくに挨拶もできないなんて情けない。** **仕事がろくに手につかない。** **日頃ろくに顔も合わせていない。** **ろくすっぽ聞きもしない。** **ろくすっぽ話ができない。** **ろくすっぽ返事もしない。** **ろくすっぽ仕事もできない。** **ろくすっぽ整備ができていない。** **質問にろくすっぽ答えない。** **ろくろく話も聞かない。** **ろくろく耳も貸さない。** **ろくろく物も食べない。** **ろくろく仕事も手につかない。** **ろくろく部屋の掃除もしていない。** **値段もろくろく聞かずに買ってしまう。** **夜もろくろく眠れない。** <637> # あわてもの【慌て者】 **相当な慌て者。** **大変な慌て者。** **おっちょこちょいな性格。** **おっちょこちょいな人。** **粗忽そこつな性格。** **粗忽な人。** # あんい【安易】 **安易な妥協を排する。** **安易な方向へ流れる。** **安易な方法を選ぶ。** **安易な解雇に警鐘を鳴らす。** **安易な快楽におぼれる。** **その場の勢いで安易な応答をする。** **通念への安易なもたれかかり。** **告白で万事解決という安易な性急さに駆られる。** **無責任な文明に毒された安易さ。** **安直な方法。** **安直な方向に人の思考がなだれ落ちる。** # うかつ【迂闊】 **間違いに気づかなかったのは迂闊。** **うかつな返事は危険。** **うかつな真似まねはできない。** **迂闊な場所には案内できない。** **迂闊といえば迂闊な話。** **うかつに口が利けない。** **うかつに手が出せない。** **うかつに山の中へ迷い込む。** **うかつに引き受けなければよかったと後悔する。** **うかつにも気がつかない。** **うかつにも程がある。** **うかつさをほろ苦い思いで噛みしめる。** # うっかり **うっかり鍵を落とす。** **うっかり口が利けない。** **うっかり口を滑らせる。** **うっかり手を出せない。** **うっかり通り過ぎそうになる。** **うっかりするとひどい目に遭う。** **うっかりすると肝心なところを見失う。** **うっかりして書き落とす。** **うっかりして墓穴を掘る。** **ついうっかりして忘れてしまう。** **うかうか歩いていると怪我をする。** **うかうか相談もできない。** **うかうか深入りするとえらいことになる。** **誘われてうかうかついて行く。** **うかうかと計略の落とし穴に近づく。** **うかうかとその日その日の夢を見て暮らす。** **うかうかと判を押してしまう。** **うかうかしている間に年を取る。** **うかうかしていると命取りになる。** # おそまつ【お粗末】 **お粗末極まりない。** **お粗末な言い訳。** **お粗末な代物。** **お粗末な対応。** **お粗末な話。** **出来損ないの作品。** **芝居のよう。** **食べ物。** # かるがるしい【軽軽しい】 **軽々しい行動に出る。** **軽々しい浮き名を立てる。** **軽々しい発言を差し控える。** **軽々しく口を利けない。** **軽々しく喋々ちょうちょうすべき事柄ではない。** **軽々しく手を出すべきではない。** **軽々しく判断を下せない。** **薄汚れた言葉を軽々しく口にする。** **何にでも軽がるしく感動してしまうきっこの男。** **小才が利きすぎて軽い感じがする。** **上っ調子な笑い声。** **どことなく上っ調子な男。** # かるはずみ【軽はずみ】 **細心に育て上げてきたものを自分の軽はずみから一瞬に打ち壊してしまいでもしたように悔いる。** **軽はずみな行為を悔いる。** **軽はずみな発言を撤回する。** **うっかり軽はずみな真似まねはできない。** # けいそつ【軽率】 **軽率に名前を口にすることを控える。** **軽率に言を発して身をさいなむに至る。** **扱いが粗雑で軽率に流れる。** **軽率のそしりを免れない。** **後先考えない軽率さ。** **尻軽な人。** **そそっかしい口を利く。** **そそっかしい人。** **ほいほい申し出に乗る。** **誘われればほいほい出かけていく。** **頼まれるままにほいほい金を貸す。** **しどけない寝巻き。** **起き抜けのしどけない格好。** **衿元もとりのしどけないだらしのない女。** **襦袢じゅばん一枚のしどけない姿。** **しどけなく腰紐にしを締める。** **しどけなく手足を投げ出して横たわる。** **女がしどけなく寝転んでいる。** **髪がしどけなくほぐれる。** **和服のえりをしどけなく合わせた胸許。** # そまつ【粗末】 **粗末な一閑張りの机。** **粗末な草ぶきの門。** **粗末な板葺きの掘っ立て小屋。** **粗末な製品を乱造する。** **粗末な取り扱いを受ける。** **洗いざらしの粗末な着物。** **着古した粗末な下着。** **土間を改造した粗末な部屋。** **そこらに転がっているような粗末な女。** **古びた木箱のような粗末な汽車。** # だらしない **だらしないことに耐えられない。** **だらしない若者。** **女関係がだらしない。** **下半身がだらしない。** **着こなしがどことなくだらしない。** **酒飲みのだらしない叔父さん。** **女にだらしがない。** **だらしがないにも程がある。** **だらしなく椅子に座る。** **だらしなく膝を崩す。** **だらしなく紐ひもを結ぶ。** **だらしなく大いびきをかく。** **だらしなく男に引っかかる。** **だらしなく下駄を引きずる。** **だらしなく服を脱ぎ捨てる。** **足をだらしなく畳の上に投げだす。** **家の中がだらしなく散らかる。** **誰にでもだらしなくついてくる犬。** **ネクタイをだらしなく締める。** **服をだらしなく着崩す。** **胸元がだらしなく開く。** **まぐろのようにだらしなく床にのびている。** **酒が入るとだらしなくなる。** **だらしなく頬をゆるめて思い出し笑いをもらす。** **だらしのない男。** **だらしのない生活。** **だらしのない寝顔。** **だらしのなさを笑う。** **自堕落な女。** **自堕落な日々から抜け出す。** **安易で自堕落な生活。** # だらり **だらりと刀を下げる。** **だらりと舌を垂れる。** **だらりと手を垂らす。** **だらりと床に伸びている。** **帯をだらりと締める。** **尻尾をだらりと下げる。** **木刀をだらりとひっさげる。** **両腕がだらりと下に伸びる。** **飼い猫のようにだらりとした生活。** <638> **あわてもの【慌て者】** ▼あわて者(相当な。大変な)。おっちょこちょいな(性格。人)。粗忽な(性格。人)。 **あんい【安易】** 安易な(妥協を排する。方向へ流れる。方法を選ぶ。解雇に警鐘を鳴らす。快楽におぼれる)。その場の勢いで安易な応答をする。通念への安易なもたれかかり。告白で万事解決という安易な性急さに駆られる=武田泰淳。無責任な文明に毒された安易さ=大庭みな子。安直な(方法。方向に人の思考がなだれ落ちる)。 **うかつ【迂闊】** 間違いに気づかなかったのは迂闊=立原正秋。うかつな(返事は危険。真似はできない)。迂闊な場所には案内できない=源氏鶏太。迂闊といえば迂闊な話=今東光。うかつに(口が利けない。手が出せない。山の中へ迷い込む。引き受けなければよかったと後悔する=千刈匡一)。うかつにも(気がつかない。程がある)。うかつさをほろ苦い思いで噛みしめる=西木正明。 **うっかり** うっかり(鍵を落とす。口が利けない。口を滑らせる。手を出せない。通り過ぎそうになる)。うっかりすると(ひどい目に遭う。肝心なところを見失う=白井喬二)。うっかりして(書き落とす。墓穴を掘る)。ついうっかりして忘れてしまう。うかうか(歩いていると怪我をする。相談もできない。深入りするとえらいことになる=円地文子)。誘われてうかうかついて行く。うかうかと(計略の落とし穴に近づく。その日その日の夢を見て暮らす。判を押してしまう)。うかうかしている間に年を取る。うかうかしていると命取りになる。 **おそまつ【お粗末】** お粗末極まりない。お粗末な(言い訳。代物。対応。話)。出来損ないの(作品。芝居のよう。食べ物)。 **かるがるしい【軽軽しい】** 軽々しい(行動に出る。浮名を立てる。発言を差し控える)。軽々しく(口を利けない。喋々すべき事柄ではない。手を出すべきではない。判断を下せない)。薄汚れた言葉を軽々しく口にする=高井有一。何にでも軽がるしく感動してしまうきっこの男=飯田龍太。小才が利きすぎて軽い感じがする。上っ調子な笑い声。どことなく上っ調子な男。軽々に(決められない。断ずべき問題ではない)。 **かるはずみ【軽はずみ】** 細心に育て上げてきたものを自分の軽はずみから一瞬に打ち壊してしまいでもしたように悔いる=堀辰雄。軽はずみな(行為を悔いる。発言を撤回する)。うっかり軽はずみな真似はできない。 ▼乗りやすい(おだてに。お調子に)。上滑りな(行動。知識)。軽挙を(戒める。悔やむ。慎む)。無考えに(捨ててしまう。何でも引き受ける)。 ▼尻馬に乗る(衆の。人の)。尻馬に乗ってわあわあ騒ぐ。久しぶりに羽目を外す。少し調子に乗りすぎる。つい度を過ごす。 **けいそつ【軽率】** 軽率に(名前を口にすることを控える。言を発して身をさいなむに至る=坂口安吾)。扱いが粗雑で軽率に流れる=川端康成。軽率のそしりを免れない。後先考えない軽率さ。尻軽な人。そそっかしい(口を利く。人)。ほいほい申し出に乗る。誘われればほいほい出かけていく。頼まれるままにほいほい金を貸す。 **しどけない** しどけない寝巻き姿。起き抜けのしどけない格好。衿元のしどけないだらしのない女=向田邦子。襦袢一枚のしどけない姿=渡辺淳一。しどけなく(腰紐を締める。手足を投げ出して横たわる)。女がしどけなく寝転んでいる。髪がしどけなくほぐれる。和服のえりをしどけなく合わせた胸許=石坂洋次郎。 **そまつ【粗末】** 粗末な(一閑張りの机。草ぶきの門。板葺きの掘っ立て小屋。製品を乱造する。取り扱いを受ける)。洗いざらしの粗末な着物。着古した粗末な浴衣。土間を改造した粗末な部屋。そこらに転がっているような粗末な女=今東光。古びた木箱のような粗末な汽車=有吉佐和子。 ▼粗末な小屋(バラック建ての。そのへんから拾い集めたありあわせの材料でつくられた=高田宏)。患者の命を粗末にしない。客扱いが粗末になる。 ▼粗末に扱う(命を。女を。金を)。粗末にする(生得のものを。亭主を。年寄りを)。 **だらしない** だらしない(ことに耐えられない。だらめな若者)。だらしない(女関係が。下半身が。着こなしがどことなく)。酒飲みのだらしない叔父さん=太宰治。女にだらしがない。だらしないにも程がある。だらしなく(椅子に座る。膝を崩す。紐を結ぶ。大いびきをかく。男に引っかかる。下駄を引きずる。服を脱ぎ捨てる)。足をだらしなく畳の上に投げだす。家の中がだらしなく散らかる。誰にでもだらしなくついてくる犬。ネクタイをだらしなく締める。服をだらしなく着崩す。胸元がだらしなく開く。まぐろのようにだらしなく床にのびている=江國香織、酒が入るとだらしなくなる。だらしなく頬をゆるめて思い出し笑いをもらす=荻野アンナ。だらしのない(男。生活。寝顔)。だらしのなさを笑う。自堕落な(女。日々から抜け出す)。安易で自堕落な生活。 ▼めろめろになる(恋人に。孫に。酒を飲んで)。のんべんだらりと(暮らす。過ごす)。のんべんだらりを決め込む。夢の中の情感に似た放恣で甘美な思い=日野啓三。放恣な(性情を矯める。生を過ごす)。雨の音の奥の蔦のざわめきが放恣な想像を誘う=日野啓三。ともすると放恣な生活におびき出される=徳田秋声。放恣にたかぶっていた気分が鎮まる=日野啓三。 ▼ルーズ(仕事が。お金に。時間に)。ルーズでいい加減な女=芝木好子。ルーズな(考え方。関係。仕事ぶり。性格)。生活がルーズになる。 **だらりと** だらりと(刀を下げる。舌を垂れる。手を垂らす。床に伸びている)。帯をだらりと締める。尻尾をだらりと下げる。木刀をだらりとひっさげる。両腕がだらりと下に伸びる。飼い猫のようにだらりと# だらしない・うっかり-207 <639> **どらむすこ【どら息子】** ▼どら息子(オーナーの。金持ちの。資産家の。社長の。代議士の)。蕩児が我が家に帰る。 **のこのこ** のこのこ(屈辱を受けに出てくる。出かけるのは危険極まりない=なかにし礼)。危険なところへのこのこと顔を出す=阿刀田高、新参者がのこのこと出て行く=畑村洋太郎。 ▼のこのこと出てくる(警戒せずに。誘いに)。 **のほほん** のほほんと(酒を飲む。太平楽とする。緩やかに時間が過ぎる=葵優)。平然とのほほんと突っ立っている。苦難から逃れてのほほんとしている=西木正明。のほほんとした結婚生活を送る=鷺沢萠。 **ぶざま【無様】** ぶざまな(失敗をやらかす。泣き顔を見せる)。見るもぶざまなこわがりよう。裏返ったカエルのようなぶざまな格好=鈴木光司。みじめで無様な人生=小林信彦。足をぶさまに投げ出す。通すべき筋を引っ込め無様に頭を下げる=横山秀夫。 **ふようい【不用意】** 不用意な(言葉を悔いる。発言を聞きとがめる)。不用意に(禁忌を破る。漏らした一語。決定的な言辞を吐く)。口から不用意に漏れる言葉。 **みぐるしい【見苦しい】** 見苦しい(字を書く。ところをお見せしてすみません。振る舞いを慎む。舞台をお目にかける=戸板康二)。寝不足ですっかり見苦しくなった顔=高樹のぶ子。見苦しくも敗走する。陋劣な(手立てを使う。心事を抑え隠す)。貪婪な陋劣な情欲の持ち主=有吉佐和子。前代未聞の醜態。醜態を世間にさらす。骨肉相食む醜態をさらして天下の笑い者になる=真継伸彦。泥酔して醜態をさらす。 **みさかいなく【見境ない】** 誰彼の見境なく暴力を振るう=浅田次郎。見境がつかない。 ▼見境がない(怒ると。勝負になると。惚れると。欲しいとなると)。我慢なく見境もないことをする。見境もなくセックスをしまくる=島田雅彦。相手の見境もなく話しかける。前後の見境もなくものを言う。悲しみと喜びが見境もなく紛乱する=本庄陸男。誰彼構わず話しかける。不見転を恥じる。 ▼目がくらむ(金に。嫉妬に。欲に。悔しさで)。 **みっともない** みっともない(騒ぎになる。台詞を吐く)。中華料理のコックが思いきり息を吹き込んだペキンダックみたいにみっともない恰好=小林信彦。二目と見られないほどみっともない姿=松谷みよ子。みっともないほど(一心に走る。狼狽した調子で答える=有川浩)。みっともなく(命乞いをする。髪が伸びる)。全くなんというざまだ。見られたざまではない。ていたらく(足がしびれて立てないという。尾羽打ち枯らした。俎板に公に載せられた鯉の=藤本義一)。目もあてられない体たらく=有吉佐和子。 **みのほどしらず【身の程知らず】** 傲慢な身の程知らず。身のほど知らずに(思い上がる。あんまり大きい獲物を狙いすぎる=大庭みな子)。身のほども知らずに外国艦船に発砲するような無知さ加減に腹を立てる=渡辺淳一。身の程を知らぬ好奇心を持つ。身のほどをわきまえぬ(思い上がり。愚行。際限のない欲望=小松左京)。 **むこうみず【向こう見ず】** 穴から出てきたばかりのほどに向こう見ず=島尾敏雄。向こう見ずな(猪武者。戦争をしかける)。向こうみずに反抗したい拗ねた気持ち=石川達三。風車に向かっていくドン・キホーテのよう=荻野アンナ、命知らずの(暴れん坊。猛者)。軽挙妄動に走る。軽挙妄動を慎む。破滅を求めて蛮勇をふるう=飯田龍太。蛮勇を奮って(がむしゃらに実行する=浅川巧。ただ闇雲に突進する=奥泉光)。匹夫の勇にはやる。素人の怖いもの知らず。なんでも怖いもの知らずでやってのける。欲ぼけして怖いもの知らずになる。無鉄砲な(猪武者。勇気が生まれる)。無鉄砲に突進する。 **むさくるしい【むさ苦しい】** むさくるしい(男所帯。顔。小屋。中年男。服装。部屋。風采)。むさくるしく髪を伸ばす。雑草がむさ苦しく生い茂る=高井有一。じじむさい身なりを気にかける。爺むさく見える。むさい(部屋。路地)。髪の毛が伸び過ぎてむさい襟首。 **むふんべつ【無分別】** 無分別な(行為。行動。打算)。無分別に金を浪費する。分別が(足りない。つかない)。分別に欠けたわがままを恥じる=笹沢左保。分別のつかない子供。分別を失う。思慮分別に欠ける。後先なしに叫ぶ。後先見ずに(道を渡る。威勢のいいことを言いたがる)。後先見ずの不見転。 ▼妄動(欲情の。得体の知れない)。若気の(過ち。至り)。善悪のわきまえがない。前後のわきまえもなく半狂乱になる。 **むぼう【無謀】** 無謀で無茶苦茶な行軍。無謀な(行動を慎む。運転をとがめる。行為が現実的な実を結ぶとは考えられない=高橋和巳)。聞くに耐えない無謀な企み=藤沢周平。暴虎馮河の血気に任せていわれなく押し進むほどの無謀の者=山田風太郎。素手で闘うことの無謀さを思い知らされる=柴田錬三郎。天に向かって唾する。何の目算もない。わざわざ暴風圏内に飛び込むようなもの=舟橋聖一。闇夜を灯りなしで歩くよう=畑村洋太郎。神風に頼る。神風をあてにする。取り返しのつかない暴走。無計画で衝動的な行動。無思慮な(行動。口出しを後悔する)。無思慮を(自省する。棚に上げる)。無茶な(命令を出す。闇値をふっかける。わがままを言う)。藪から棒に無茶なことを言う。 **われしらず【我知らず】** 我知らず(相好が崩れる。涙が頬を伝う。頬がゆるむ。胸が躍る。足どりが陽気に浮かれてくる。叫び声をあげる。大胆な振る舞いをする。ため息を漏らす。わなわな震え出す)。吾知れず気焰に風を添える=伊藤左千夫。我知らず声が(荒くなる。弾む)。我ともなく感傷的になる。我ともなしに涙がぼろぼろ落ちる。我にもあらず(ぞっとさせられる。強い口調で拒否する=辻井喬)。我にもなく(うろたえる。胸が高鳴る。狼狽を覚える)。 # 垂れる・滴る <640> **あさつゆ【朝露】** 朝露が木の芽を濡らす。しんめりした朝露で濡らしが濡れる=山崎豊子。朝露に(濡れた無数の葉が光る。しっとりとしているような通り=徳田秋声)。雑草が朝露に濡れている。 **いってき【一滴】** 一滴の(涙すら流さない。涙も浮かんでこない)。一滴の水も(口にしていない。漏らすまいとする)。涙といっしょに感情も最後の一滴まで流れ出す=連城三紀彦。一滴も(飲まない。涙をこぼさない。残さず飲み干す)。汗が一滴も出ない。酒を一滴も口にしない。アルコールを一滴も受け付けないという下戸=東野圭吾。水が一滴一滴滴る。涙が乾いて谷川の水の一滴になる=有馬頼義。目から一雫の涙が流れ落ちる=北杜夫。 **しずく【滴】** ▼滴(大きな。小さな。雨の。氷柱の。葉末の。水の)。絵に描いたような涙の雫=向田邦子。滴が(輝く。滴り落ちる。飛ぶ。窓を伝う。きらきらと飛び散る。ばらばらと落ちる)。髪の先に汗のしずくが下がっている=石田衣良。雫がボタボタ一列に垂れる=尾辻克彦。頭髪から流れ落ちる雫が頬を伝う=船戸与一。石畳にばらばらと滴が走る。頬に涙の滴が伝わる。ぼつぼつと雨の滴が落ちてくる。 ▼滴が落ちる(一滴。ぽとりぽとりと)。 ▼滴が垂れる(しとりしとり。ぽたぽたと。ぽたりぽたりと)。雨の細かな滴で外套が光る=常盤新平。ひと雨あったかのようにしずくに濡れる=半村良。滴の音がぽたりぽたりと聞こえる。下半身から滴の滝を流しながら木の根につかまって川からはいあがる=本庄陸男。滴を(切る。こぼす。払う。吹き落とす。拭く)。真珠のような滴を振るい落とす。家々の軒先の氷柱が糸を引くように雫を落とす=原田康子。夕日が明るく射してきて葉末の滴を金剛石のように輝かせる=里見弴。水が光りながら滴をたらす=中上健次。ぼたぼたと滴を垂らす。柳の細枝を伝う春雨の雫のようなはかなさ=竹西寛子。小さな灯が雫のようにちらりちらりと光る=内田魯庵。フロントガラスに水玉が流れる。花や葉が水玉で濡れて輝く=大佛次郎。涙が水玉になって光る。木漏れ日が水玉模様を描く=西木正明。 **したたる【滴る】** ▼滴る(点々と血が。一滴一滴。血が点々と。蛇口から水滴が。一条の水が銀の糸のように=菊池寛)。血の滴る肉。滴々と石から滴る水の音。水も滴る良い男。 ▼汗が滴る(額から。ぽたぽたと)。びしゃびしゃ落ちる滴り。 ▼滴り落ちる(朝露が。髪から水が。赤い血が一筋。汗が額から。血がぽたぽた。点々と。涙がはらはらと)。 ▼汗が滴り落ちる(体中から。こめかみから)。滴りが(垂れる。飛び散る)。滴りを垂らす。砂時計の寡黙なしたたりのように心をしめつける音=島尾敏雄。したたるような(新緑の香り。父親の慈愛の眼で娘の方を見やる=岡本かの子)。水の滴るような風情がある美女=子母澤寛。緑したたる(渓谷。大地)。真っ赤な血を滴らす。 ▼滴らせる(墨を。額から汗を。水を。墨を点々と。民の上に甘露の恩恵を=山田美妙)。雪の上に点々と血をしたたらせる=飯田龍太。滴々と涙が落ちる。点滴、石をうがつ。ひっそりした農家の軒先に雪消の点滴が間断なく落ちている=大佛次郎。 **すいてき【水滴】** ▼水滴(小さな。透明な。細かい。流れ落ちて糸を引く=森瑤子)。水滴が(飛び散る。壁を伝い落ちる。規則正しく落ちる。グラスに張りつく。びっしりと付着する。ぼたりと落ちる。丸く盛り上がる。ダイヤモンドのように光っては水に消える=林京子。張りのある皮膚にはじかれる=山田太一)。油に弾かれた水滴がきらきら光る。ガラスに水滴が浮かぶ。窓ガラスに水滴が飛ぶ。水滴を(吸い取る。振り払う)。スプレーで水滴を吹きつける。 **すだれ【簾】** 目の粗い簾。簾が(垂れ下がる。畳に影を落とす)。雪の白いすだれが幾重にも垂れ下がって視界を鎖とざす=加賀乙彦。扉を(上げる。垂らす。吊り外す。巻き上げる)。奥の簾を下ろす。雨がすだれのようにたれこめる=島尾敏雄。冷たい汗がすだれのように顔にながれる=吉川英治。簾越しに風が入ってくる。駕籠の垂れをおろす。ビロードのとばり。とばりを(押し開ける。通して眺める)。霧が湖の上に帳のように広がっていく=福永武彦。 **たらす【垂らす】** ▼垂らす(糸を。お下げ髪を。顔から脂汗を。舌を。醤油を。布を。房を。ぽたぽた涙を。よだれを。髪を額に。髪を前に。汗をだらだら。汗をぽたぽた。力なく。ぶらんと。水を数滴。ゆったりと。しなびた乳房を。だらしなく水引付を。窓からロープを。髪の毛をゆったりと背中に。液をたらたらと。髪をわさわさと。艶やかな黒髪を長く。ふっさりと髪を肩へ。両手をだらりと)。膿のような鼻汁をたらす=小林多喜二。 ▼肩に垂らす(髪を。髪の毛をふさふさと=田辺聖子)。汗水垂らして(稼ぐ。働く)。汗を垂らして歩く。蝋涙を垂らして燃える蝋燭=大佛次郎。 **たらたら** たらたら(お世辞。お追従。不満。未練。文句)。汗をたらたら流す。口元からたらたらよだれが垂れる。汗たらたらで述べる。不平たらたらで生きる。たらたらと(垂れる。脂汗が流れ落ちる。鼻血が流れ出る)。血がたらたらと出る。 **たれさがる【垂れ下がる】** ▼垂れ下がる(ゆったりと。町の向こうに靄が。片腕がだらんと。灰色の空が低く。重い灰色の雲の脚が海の上に=島崎藤村。青い小さい栗のイガがボンボンのように=田辺聖子。肉が襞のように=松浦寿輝。紐の一端がだらりと=辻邦生)。垂れ下げる(ナプキンを。紐を。筵を。ローブを)。 ▼枝垂れる(枝が。柳が)。豪華な黄色い花をつけ山吹が重そうに枝垂れている=三浦しをん。 **たれまく【垂れ幕】** 垂れ幕が(下がる。激しい風に# 近い・遠い-210 <641> # 垂れる・滴る-208 おられる)。垂れ幕を(下げる。垂らす。吊るす)。「団交勝利」の垂れ幕を掲げ祝賀の宴を張る=加賀。揚げ幕を(開ける。上げる)。緞帳とんちが重たくおりる。緞帳の裾を踏む。緞帳を上げ下げする。ビロードの緞帳を垂らしたような濃密な閥=篠田。星一つない鉛色の緞帳を張り巡らせたような空が広がる=篠田。眠りが黒い巨大な殺帳のように下りてくる森照。 **たれる**【垂れる】▼垂れる(稲穂が。稲の穂首が。笹の根が。犬が尾を。教訓を。訓示を。説教を。自ら俺を。恵みを。髪がばさりと。雲が低く。舌をだらりと。が蛇口から。だらだらと。梢からぼたぼたと滴が。生遥かけに釣り糸を。しょんぼりと肩を。縷々うるとしてみて教えを。髪がしなやかに。頭ががっくりと。大粒の涙がぼたりと。滴がぼたりぽたりと。節道の並木がなえたようにゲンナリと枝を"石坂。白酒が銚子の口から棒みたいに=中。帆が萎え凋に眩んだように"外村。乱れた髪の毛ことに伝い落ちるかと思うように汗が玉をなして=長塚)。▼項いなを垂れる(憐ぁもれみを乞うかのごとく谷崎。後悔したように谷崎)。頭心,を垂れる(愁然として。深々と。遺体に向かって。返す言葉もなく。しゅんとなって)。だらんと垂れる(手が。両手を)。雛壇がはから緋毛氈やん、うが垂れて広がる。垂れてくる(するすると糸が。強い茎の花のようにびんと上がっていた頭がだんだん=円地)。ほたぼたと滴が垂れ落ちる。▼垂れかかる(枝が。髪が肩に。ぼさぼさの髪が額へ)。頬に垂れかかる髪の毛。 **ちゅうづり**【宙吊り】▼宙吊りになる(疑惑が。計画が。崖に。ザイルで。パラシュートが木に引っかかって。マンションの十階から。蜘蛛くもの巣にかかった虫のように=平野)。 **のれん**【暖簾】暖簾が(色褪かっせる。風に鳴る)。のれんが風にせわしなくはためく=西木。染め上がったばかりの真新しい暖簾が清々汁がしい=山崎。暖簾に腕を突っしり露がつく。木の葉の露がバラバラと落ちる=中島救。竹の芽からふき出たような露が黄金より奇麗に光る梅本。花や葉に露がちろりとたまる=中。露が光る(草むらに。芋の葉にキラキラと=田山。星でも落ちたようにきらきら=壺井)。露で濡れそぼった草むら。野末の露と消える。露に濡れて開く朝顔の花。しとどの露になって夜が明ける。▼露に濡れる(芝が。牧草が)。露の玉が輝く。朝の日に葉末の露の干るように目を覚ます=福永。露を置いた草を踏んで近づく。一夜の露を凌しのぐ。草の葉が露を持つ。朽ち葉が露を含む。花びらに露を浮かべる。大きな眼に露を潜たたえて恨めしそうに呪にらむ谷崎。ガラスに霧が貼りついて露を結ぶ"藤本。順に涙の玉が稲葉をすべる露のようにボロリと滾転にんして下る=幸田露。人生は朝露のことし=横光。露深い芒すの中。 **つるす**【吊るす】▼吊るす(籠を。高く。高々と。双眼鏡を首から。シャンデリアを天井から)。首から胸に吊るしたカメラ。胸に吊るした十字架。▼吊る(蚊帳ぁゃを。腰に短剣を。棚を。風鈴を。胸に勲章を。提灯ちらを軒先に。フックに引っかけて)。 **のれん**【暖簾】暖簾が(色褪かっせる。風に鳴る)。のれんが風にせわしなくはためく=西木。染め上がったばかりの真新しい暖簾が清々しい=山崎。暖簾に腕を押し。暖簾の前を離れる。古い暖簾の店。暖簾を(かける。守る。かきわけて中に入る。分けて店に入っていく)。風が暖簾を翻して吹き過ぎる。風が屋台の暖扉をばたばたと鳴らす=高見町。心斎橋随一の古い暖簾を誇る=山崎。軒先に干し柿が暖簾のように下がっている=篠田。威勢よく玉暖簾をかき分けて中へ入っていくねじめ。暖簾分协けを受けて独立する。 **ぶらさがる**【ぶら下がる】▼ぶら下がる(股間に一物が。木製の看板が。誘惑の餌が。宙ぶらりんに。吊り革に。ローブに。天井から。ぶらぶら。ぶらんと。上からだらりと)。▼ぶらさがる(子どもみたいに父の腕に岡田。汗が紙からまぶたに流れ落ち真珠のように=中上。蜘蛛くもが毬まぁのようになって岸田。チョコレートが胃に重く=中沢。微被はっきれが満を氷柱つらにしたまま棒鱈からのように徳永。ミノ虫さながら杉本)。張り渡したローブにおしめのようにブラ下がる=小林多。札が入り口にぶら下がっている。懸垂する(逆手で。順手で。鉄棒で)。懸垂を繰り返す。 **ぶらさげる**【ぶら下げる】▼ぶら下げる(買い物籠を。靴を。魚を。提灯切いうを。手拭いを。袋を。風呂敷包みを。絶妙にを片手に。鉈なたを腰に。軽々と。首からカメラを。鞄を首からたすきに。狩猟の獲物を自慢げに。片手をだらりと。頭陀袋ごぶ』を首から。切れた下駄の鼻緒を捨て猫のように『新田)。▼吊り下げる(糸を。重りを。鉄板を。半鐘を。フィルムを。ルスターを。ランブを。手当たり次第に)。 **よだれ**【涎】よだれが(落ちる。流れる)。口からよだれが垂れる。札束を見て涎が出る=辻真。よだれが出るほどうまい。涎が出るほど欲しい“阿久。涎が出るほどの高級車船戸。よだれを垂らさんばかりの顔つき大変。垂れかけたよだれを殴ずりこむ"大藪。ちゅるんとよだれを吸い上げる=灰谷。涎を流さんばかりの表情長与。お預けされた犬みたいに涎を垂らし唾をのみ込む萩原惑。▼よだれを流す(一筋。口からだらだらと)。ラクダの涎のようにチョロチョロと水が流れるだけのシャワー=高橋三。地蔵さんの胸に真新しい赤いよだれかけがひらひらする=山崎。 **よつゆ**【夜露】夜露が(雨の後のよう。糸を曳いぃいて土のなかに消える=長野。真珠のように光る=森認)。ぼとりと夜露が落ちる。植え込みに夜露がしっとりと下りる。夜露に(足元を湿らせる。しっとりと潤う)。服が夜露にびっしょり濡れる。心が夜露に濡れたようにしょんぼりとなる=壺井。軒先で夜露をしのぐ。枝が夜露を含んで冷たい=長野。夜露を含む(草が。地に)。 <642> # 小さい・大きい **おおがかり**【大掛かり】大がかりな(闘争が起こる。捜査態勢を敷く)。相当大がかりな照明設備。背後に大がかりな組織がある。大仕掛けな(設備。トリック)。大々的に製作発表記者会見をする。新聞が大々的に報じる。 **おおがた**【大型】大型の(財政出動。台風。トラック)。顔の造り全体が大振り。大ぶりで華がある美人尚田。花がいささか大振りに過ぎる=黒井。大規模な(区画整理が行われる。発掘を計画する)。超弩級もうとの(戦艦。台風)。 **おおがら**【大柄】大柄でみにくくない程度に肥ふとっている女=原田康。大柄な(太り気味の体。からだのおばあさんにくっついていると、健は赤ん坊のように小さく見えた=壺井)。大柄な体(ずどんとした。百八十センチ近い)。がっしりした大柄の男。 **おおきい**【大きい】▼大きい(極めて得るところが。たりはあまりにも。蛙幼ぇのように口が徳永)。並外れて体が大きい。道具立ての大きい顔。大きな(影響を与える。感銘を受ける。犠牲を払う。期待をいだく。時代の流れ。足跡を残す。転機が来る。役割を果たす。口をあけて笑う。声では言えない。ダメージを受ける。流れに合流する。雷鳴がとどろく)。一生かかっても論じきれないような大きな対象「竹西。一枚板の大きなテーブル。苦労しないで大きな利益をあげる。つぶらな大きな瞳。びっくりするほど大きな音。突拍子もない大きな声で笑う大庭。レスラーみたいに大きな人吉行。破ゃれ鐘のような大きな声=舟橋。大きく(双を広げる。伸びをする)。肩で大きく息をする。社会が大きく変わる。風船が大きく膨らむ。夢が大きく広がる。大きくする(ラジオの音を。空想を育んで)。両腕に余るほど大きくなった猫内海。大きくなる(次第に音量が。一回り体が。雨音が徐々に。願いが刻々に。声がいきなり。愉が段々。風の音が心持ち。どよめきがひわ。小さな縦張にびが目立つくらいに堀。妄想がガリバーみたいに=尾辻)。あまりにもリスクが大きすぎる。▼大(可能性が。示唆するところが。資するところすこぶる)。大なる普遍性をるつ。声を大にして(主張する。反対する)。大の大人。大は小を兼ねる。大いなる(疑問。成果。損失)。大きめに(作った服。縫い上げた台布巾)。大手の(企業。メーカー)。税額を大幅に上げる。大判の(写真。ノート)。嵩かさばる(荷物が。月々の経費が存外)。かさむ(思わぬ失毀が。借金が。費用が)。ジャンボなサイズ。丈余の(仁王像。積雪に降りこめられる今更)。絶大な(敬意を払う。信頼を得る。威力を発揮する)。小さからぬ(感動。ショック。不正)。でかい(顔をする。口をたたく)。でかい(肝っ玉が。図体が)。新開が事件をでかでかと報じる。特大の(サイズ。ホームラン)。どでかい風穴を開ける。馬鹿でかい声。▼肥大する(心臓が。悲しさが胸の中で)。一抱えほどある(石。大木)。やせてスカートがぶかぶかになる。ぶかかの帽子。 **おおきさ**【大きさ】大きさが(そろっている。ちぐはぐ)。大きさに比して意外に軽い。食べやすい大きさに切る。抜けた穴の大きさを思う。サイズが(合う。小型になる)。サイズの割に持ち重りがする。 **きぼ**【規模】今までの経験には無かったほどの大きい規模"中局火。規模がひとまわり大きくなる。全国的な規模で起こる。規模の(大きいレース。小さな企業。大小を問わない)。スケールが(小さい。違う)。スケールの大きい(作品を書く。人間)。 **きょたい**【巨体】▼巨体(大鹿のような。でっぷりと太った。牡牛のように肩のいかった=筒井)。巨体に似合わぬ可愛らしい声。のっそりと巨体を起こす。小山のようような体。ガリバーのように君臨する=島尾。堂々とした巨軀心」。雲つくような巨人阿久。巨人の眼のように輝いて動く数個の光源が並ぶ!大岡。巨人のような恐ろしい存在"中村真。 **きょだい**【巨大】巨大な(岩盤が行く手を阻む=横山。建屋群が黒絵のように浮かび上がる=柳田。入道雲が真白くそびえ立つ=景山)。空にそそりたつ巨大なド1ム。山の巨大な影が谷を覆う。高井。途方もない大きさ。世階数七千を数えるマンモス団地。山なす(大波。怒濤沱と)。山のような五百重いもの大波"有島。 **こがら**【小柄】小柄だががっちりした体つき」勝目。小柄で華奢いな体。毛のふさふさした小柄な犬。こま塩頭の小柄な男。文学少女風の小柄な女。ほっそりした小柄な体。地味な小男。小作りな(男。おばさん)。小兵が大物を食う番狂わせ。小兵の力士。 **こぢんまり**【小ぢんまり】目鼻が小ちんまりとまとまる大岡。一LDKのこちんまりとした間取り落合。十坪ほどのスペースしかないこぢんまりとした土産物屋・宮部。小ぢんまりした商売をしている店。カウンターの前に八人並べば満員という小ぢんまりした店内海。ちんまりまとまった顔立ち。円地。作り物のようにちんまりおさまりかえる!水井路。受け口のちんまりした低。家がちんまりと緑にもぐって建っている=中島み。ばあちゃんはしわくちゃの饅頭みたいに茶の間にちんまりと座っている三浦し。小体にてな(商売を始める。ホテル。木造の教会)。コンパクトにまとまった住みやすそうな部屋"小川。ささやかな(家を建てる。祝言を挙げる)。間口の狭いささやかな店。ちまちまと(字を書く。小さく固まる)。家がちまちまと建て込む。ちまちまとした(鼻。目)。 **こぶり**【小振り】小ぶりで素朴な観音像。目鼻だちが全て小振りで可愛らしい泉優。小型の(犬。トラッ <643> # 小さい・大きい-209 **さいしょう【最小】** 最小の(値を求める。努力で最大の効果を得る)。▼最小限に抑える(損害を。打撃を)。最小限に食い止める(痛手を。被害を)。▼最小限にとどめる(失点を。損害を)。 **さいだい【最大】** ▼最大にする(音量を。ボリュームを)。最大級の賛辞を連ねる。考えうる限り最大級の皮肉を投げる=有川。最大値が安全な範囲内に留まる=畑村。史上最大の悲劇。人生最大の危機。最上級の敬意を払う。 **そうだい【壮大】** 壮大な(ストーリーをつくりあげる。景色にうっとりとする=村松)。雲をつかむような壮大な夢=村松。遠大な(計画。理想)。雄大な(景色。スケール。富士山)。 **だいしょう【大小】** 大小とり混ぜる。海を大小様々な船が行き来する=綾辻。大小の船が入り江に錨いかをおろしている=柴田錬。大小さまざまな(岩のひしめく河原。店が軒を連ねる)。 **ちいさい【小さい】** ▼小さい(当たり外れが。けつの穴が。桁違いに。驚くほど。無視できるくらい。ホームベースの上に置いた夏みかんを外野から見るくらいに=村上春。手が子供のように=水上。目に入りそうなくらい=中)。正直な気の小さい男。憶えがないほど小さい頃=高井。野鼠のような小さい眼=柴田錬。針の先ほどの小さい理由=石坂。瞬きをしている間に見失ってしまうほど小さい光=長野。小さいなりに充実した中身。小さな(割に重い。明かり取りの窓。声で耳打ちする。ことにこだわらない性格。変化も見逃さない。感動を胸に育てる=大江。体面だけにかかずらう=三島)。あっと小さな声をあげる。特急も止まらない小さな駅。一息で呑みこめそうな小さな卵。ほの小さな芽でしかない。あるかなきかを判定するこさえ困難なほどのかすかな小さな声=野間。茅かやを葺いた小さな寺=福永。聞き取れないような小さな声=佐藤多。ごみのように小さな街=ネタ=横山。取るに足らないような小さな存在=佐藤明。人形よりも小さな生まれたばかりの嬰児=萩原葉。針の落ちるようなほんの小さな音=尾辻。木製の吹けば飛ぶほど小さな玩具の人形=井伏。ふふっと小さく笑う。港を出離れて木の葉のように小さくなった船=有島。叱られたみたいに小さくなって頷く=内海。小さくなる(炎が徐々に。部屋の隅で。後ろ姿がどんどん。声が密室の中を反響するように繰り返しながら次第に=日野。人物が豆粒のように=高井。雁が遥か向こうに去って蚤のみのように=高見順)。▼小さく見える(高い空を飛ぶ鳶とびが胡麻粒ほどに=中島敦。小さな人形を遠くに置いたくらいに=井伏。人々が娘ぁぁほどに=幸田露)。縮小する(上げ幅が。融資残高が)。鯨のように小っちゃい眼=徳永。粟粒みたいな汗が体中に噴き出る=宮本輝。さして大きくない。大きさ(米粒ほどの。手のひらに載るくらいの。親指の爪ほどの=長塚。電子顕微鏡でかろうじて捉えられるほどの大きさの粒子=島田)。消し炭に蛍のような火をおこす=山田美。壁に大豆ほどの穴が開いている=池波。雨ふりこめる灰色の街道の遠くから豆粒のような行列がこちらに向かってくる=遠藤。豆粒より小さな星=角田。問題を過小視する。過小に(評価する。見積もる)。機械力を過小評価する。細微な(虫。粒子)。絞る(音量を。火を)。縮図(現代社会の。人生の)。小規模な(工場。噴火)。小を養いて、もって大を失う。暗幕に開いた針の穴くらいの微小な点=長野。問題にするに足らない微小なもの=井上靖。零細な(企業。農民)。▼矮小化する(議論を。物事を)。矮小な(木。テーマ)。芥子粒でもさがすように丹念に見つめる=宮部。数字が若い。大海の一滴。爪の垢ほどのこともない=壺井。ケシ粒ほどにしか見えぬ遠い敵=半村。ミスはケシ粒ほどもない=志茂田。芥子粒ほどに見える遠くの舟=真継。 **ちっぽけ** ちっぽけな(卑しい根性。こざかしい気質。才能に未練を残す)。取るにたらないちっぽけな吹き出物=森瑤。ちっぽけなりにも身上ができる。矮小な(一文筆家。孤島。存在)。 **つぶ【粒】** お喋りの中ににごく小さな優越感の粒が含まれている=原田糸。光が眩しい粒になって輝く=城山。粒の揃ったつやのある綺麗な歯列=谷崎。割合に粒の大きい軽やかな雪片=有島。砂浜で煤の粒を探すような作業=中島み。葡萄を一粒口に入れる。薬を毎日一粒ずつのむ。黒く濡れた大粒な瞳。大粒の(雨がぼつぼつ落ちだす。ぼた雪が一面に落ちてくる=日野)。親指の先ほどもある大粒の真珠=あさの。額に大粒の汗を浮かべながら蒼ざめた腕に鳥肌をたたせる=逃城。山椒は小粒でもびりりと辛い。さらさらした小粒な硬い雪=原田康。額に小粒な汗を噴き出させる=宮本輝。あるかないかの小粒の雨=佐藤愛。無数の光の粒子が弾け踊る=篠田。闇の粒子が怯えるように宙でぶつかり合う=小川。ザラついた粒子の粗い冬=名=阿久。嘘の微粒子が瀰漫する=倉橋。陽ざしの中で埃の微粒子が虹色に舞い立つ=三島。 **びせいぶつ【微生物】** 透明なシャーレの培養基の中に微生物が精巧な斑点模様を描き出す=小川。顕微鏡で微生物を視察する。アメーバのように増殖を続ける人間の塊が一斉に動き出す=荻野。墓地が繁殖するアミーバのように拡がってゆく=高樹。においがアメーバみたいにどろっと広がる=小川。湖の中のプランクトンの浮遊のような行程=池田。何なに食われるミジンコのような存在=高橋三。 <644> # 近い・遠い **あしもと【足元】** 足元が(危ない暗さ。覚束ない)。酩酊して足元が定まらない。足許から鳥の立つように急いで帰途に就く=田山。幸福が足元から崩れる。冷気が足元から這いはい上がってくる。足元で(風が舞う。落ち葉がかさこそと鳴る。廊下がかすかにきしむ)。足元に(犬が座る。危機が迫る。気をつける。唾を吐く。荷物を下ろす。目を落とす。ひたひたと湖が寄せる。ボールが転がってくる。縋るようにくず折れる=萩原葉)。夕暮れの気配が足許に漂い始める=日野。陽射しが足元にさす。足許にも寄れないほどうまい=深沢。足元にも及ばない。足もとを見つめるような姿勢で一々うなずく=永井龍。立ちどまると足もとをさらわれそうな速い流れ=藤沢。足元を見てかなり吹っかける。政権の足元を揺るがす。危なげな足元をかろうじて支える杖=原田宗。老いがしずかに足下を濡らす=辻井。脚下に(広がる風景。見下ろす谷間)。 **あたり【辺り】** あたりが(静かになる。とっぷり暮れる。ひっそりと静まり返る。めっきり秋めく)。ばっとあたりが明るくなる。あたりを(霧がひたす。霧もやが包み込む。雪が白くする。はばからない甲高い声で怒鳴る=三田)。威風あたりを圧する。新緑があたりを鮮やかにする。洩れる陽があたりを斑だらに染める=高樹。▼あたりを覆う(夕闇が。音が絶え間なく)。あたり構わず泣き立てる。あたりはばからずに(泣く。笑う)。あたり一面に(いい匂いが漂う。落ち葉がつもっている。立ち込めている煙。彼岸花が群生する)。あたり一面が白い雨の帳に閉ざされる。 **えんざん【遠山】** ▼遠山(翠色けいし悦ぶべき。突兀と秋空を割く=中島敦)。遠山にかかる白雲。かげろうが立って遠い山が波打って見える=林京。遠い山々が雪が煙ると見えるような柔らかい乳色に包まれる=川端。遠くの山が霧に隠れる。ほの暗さのためにまだ西日が雪に照る遠くの山々がすすっっと近づいて来たように=川端。遠くの山々の輪郭が刻んだようにクッキリと浮いて見える=石坂。遠景にきりたった山が重なってそびえる=石森。山が遠くに霞む。 **おき【沖】** 沖から(吹き来る浜風。寄せる海嘯の叫び声=三島)。流氷が沖から風で吹き寄せられる。沖に(白帆が見える。浮かぶ小さな島。夏雲がそびえ立つ)。船が沖に出る。波のまにまに沖へ消えて行く。引き潮に乗って沖へ出る。沖へ沖へと漕ぎ出す。岩礁が沖まで突き出る。沖合が靄もやにかすむ。沖合から打ちよせる波。沖合に(錨いかをおろす。浮かぶ鳥。船が停泊する。漁船の灯が点々と見える)。沖合遥かを進む。 **おくち【奥地】** 森林地帯の奥地に分け入る。縫うように奥地へ入りこんで行く=今日。内陸深く入り込む。▼秘境(人跡稀まれな。人跡未踏の)。世界の秘境をカメラに収める。連袂して山間の僻地に立て籠こもる=横光。 **かなた【彼方】** ▼彼方(時間の。セピア色の歴史の。ほの白い水平線の。見極められぬ遥か)。彼方に(重畳する山々。富士山が霞んで見える=干刈)。水平線が闇の彼方に溶け込んでいる。地平線の彼方にほんやり目を向ける。船が海の彼方にすっかり消え去る。闇の彼方に目を投じる。旅客機が雲の彼方に消える。過去を忘却の彼方に置き忘れる=壺井。海の彼方からやって来る。海の彼方に憧れる。かなたこなたを走りまわる。遥か(上空を飛ぶ。遠くまで広がる未来)。遥かな(一点を見通す。高みから見下ろす)。 **がんぜん【眼前】** 姿が眼前から消える。眼前に(死を見つめる。田園風景が広がる)。海が眼前に開ける。顔が眼前に浮かぶ。姿が眼前に彷彿ほうふつとする。大海が眼前に広がる。目標が眼前にある。まざまざと眼前で見せつけられる。眼前咫尺の間を見つめる。 **きんじょ【近所】** 近所で開業している医師。近所に(噂が広まる。泥棒が入る。鼻が高い。店がオープンする)。近所にまで響くような声。近所の(人が集まる。目がある。あちこちに小さな沼がある。よしみで相談に来る。女のひとたちが台所に集まってご飯の準備を手伝う=三浦し)。向こう三軒両隣。近所合壁に聞こえる声で喧嘩する=川端。近所づきあいが希薄化する。隣近所から文句が出る。隣近所と仲よくする。隣近所に(知れ渡る。迷惑をかける)。隣近所をまわって歩く。四隣を(蚕食する。侵略する)。近場の山々を歩く。近間にある店。近隣の(人望を集める。家々を一軒一軒訪ねる。村々を歩き回る)。 **きんだい【近代】** ▼近代化する(経営を。設備を)。近代化政策を進める。近代的な(視角を具える。装いをもった漁港)。急速に近代的な国家をつくりあげる=加藤。マニュファクチュアを近代的な大工業に変える=石田茂。 **くものうえ【雲の上】** 雲の上に(坐っている人みたいな浮かない顔=大庭。持ち上げられたような心地良さ=高樹)。雲の上の偉い人。遥か雲の上の存在。雲の上を(歩いているようにふわふわする=阿木。歩くように足もとが定まらない=石川)。 **こうがい【郊外】** 郊外に(居を構える。住む。引っ越す)。車が郊外にさしかかる。都心から郊外に向かう。市街から外れた場所。近郷近在から人が集まる。近郷一の名家。近郊から見物客がおしよせる。 **さいきん【最近】** 最近(お目にかかっていない。とみに忘れっぽくなった。耳にした出来事)。現今の(世相。流行)。直近の(国政選挙。世論調査)。さっきから気になっている。さっきと風向きが違う。さっきの話題に戻る。さっきまでの騒ぎが嘘のように静か=日野。今しがた(入った情報。言われたことが気にかかる)。つい今しがた帰ったばかり。最前から探し求めている。最前の席に戻る。つい先ほど耳にしたばかり。先ほどまでの興奮が嘘のように静まる=山田詠。たったいま(知った事実。別れたばかり)。先刻から気がついている。先刻とはうって変わった上機嫌。 <645> # 近い・遠い―210 **しんぺん【身辺】** 身辺が(騒がしい。多忙になる)。にわかに身辺が慌ただしくなる。身辺に(秋風が立つ。女っ気がない。渦巻いている不安、影のように付きまとう=津本。妖気めいたものが立ちこめる=有吉)。身辺の(些末な事件。整理にかかる。世話をする。警護を引き受ける)。▼気配が身辺に漂う(恋の。充実した)。身辺捜査を進める。座右に(置く。積まれた本)。座右の書。生活環境を整える。現実に即した身近な問題。存在を身近に感じる。よくないことが身近に起きる予感=斎藤栄。身のまわりが騒然としてくる。身のまわりに(危険が迫る。闇がひしめく)。あわただしい身のまわりの世話を(みる。焼く)。身のまわりを(片づける。整える)。 **すんぜん【寸前】** あわやフェンスに激突という寸前。大事故になる寸前に食い止める。爆発寸前の怒り。一歩手前(枯死の。わっと泣き出す)。狂気の一歩手前で踏みとどまる。甲子園出場の一歩手前まで行く。泥沼の一足手前で踏みとどまる。有害な食品の輸入を水際で食い止める。本格的な夏を迎える直前。帰港を直前に控える。いよいよの間際になってあわてだす。死ぬ間際になって知らされる。開演時間間際に入場する。発車間際に電車に乗る。 **せんり【千里】** 千里の(道も一歩から。波濤を乗り越える)。好事門を出でず、悪事千里を行く。悪事千里を走る。一望千里という広さ。万里の(海を越える。波濤を乗り越える)。雲煙万里の彼方。 **そば【傍】** そばから(口を挟む。離さない)。そばで聞いていてはらはらする。四六時中そばで見張っている。そばに(じっと立っている。つきっきりで介抱する)。さりげなくそばに座る。すぐそばに爆弾が落ちる。そばまで(近寄る。持ってくる)。会社の危急存亡の際。崖の際からまっさかさまに落ちる。海の際を波しぶきを浴びて走る。近辺を(警戒する。うろつきまわる)。はたから見たら馬鹿馬鹿しくもあろう。はたで(聞いていてもほれぼれする話し方。見るほど不幸ではない)。はたの(目を気にする。迷惑も考えない)。傍らから口を添える。傍らに(歩み寄る。寄り添う)。 **ちかい【近い】** ▼近い(夕暮れが。夜明けが。動きが完璧に。地理的に。能力は零点に。ほぼ理想に。手の届くほど。割と町から。そろそろ終わりが。嘘よりはむしろ真実に。驚きというより絶望に。かれこれ正午に。そろそろ十年に。ほとんど奇跡に。ほとんど無名に。泳いで渡れるほど。天の川の明るさが見る人をすくいあげそうに=川端)。近いうちに別れることになるだろう。日が近い(出発の。退官の)。息の匂いがするほど近く顔を寄せる=獅子。近くで(声がする。よく見る)。驚いた声が近くで聞こえる。耳もとの近くでささやく。▼近くなったり遠くなったりする(音が。声が)。近くなる(小便が。臨月が。戦争が終わりに)。近くに民家はない。うるさくつきまとう小蝿みたいにいつも近くにいる=高樹。近くに見える(星が。山が)。近くの家に運ぶ。遠くの親類より近くの他人。たまたま近くを通る。思わず頬を掌で包みたくなしるような近さ=小川。春の近さを思わせる陽のぬくみ。オートバイが鼻先をかすめるような近さを走り過ぎる=日野。近めに投げる。近めのカーブ。近々と(顔を寄せる。身を擦り寄せる。向き合って立つ)。山際が近々と迫っている=海浜。目的地までほど近い。職場にほど近いマンション。歩いて五分ほどのところ。一衣帯水の(間。地)。距離(あとひと息の。ほんの数歩の。歩いて十分足らずの。家から歩いて行ける。スープが冷めない。ほんの目と鼻の。手が届くか届かないかぐらいの=中沢。鼻を突き合わせるくらいの=熊谷。ものの一分とかからない=中上)。さして距離はない。住宅に近接した工場。手に取れるような至近距離。至近距離から撃つ。二人が至近で睨み合う。指呼の間にある。政権を指呼の間に望む。敵が咫尺の間に迫る=舟橋。咫尺を隔てて向き合う。接近している(実力が。年齢が)。そう遠くない(過去のある日。うちに実現する)。大して遠くはない。小石を投げたら届きそうなくらい空が低く見える=田中。手を伸ばせばつかめそうな近さの星=石森。手を伸ばせば届きそうな距離なのに逆さに見た望遠鏡の風景のように遥か遠く感じられる=原田宗。さほど遠からぬ所。何ほどの距離でもない。▼離れていない(家からそう。さほど。道路から二メートルと)。▼明日に控える(入学式を。本番を)。▼控える(秋に結婚を。真夏を目前に。厄年を翌年に。期限を翌々日に。入学式を数日後に。見合いを二日後に)。いくらも隔たっていない。紙一重を隔てる。ほど遠からぬ町。目の届くところに置く。すぐ(そこの家。近くを通る。目の前に座る。そばまで近寄る。耳もとで聞こえる)。駅から歩いて一息の場所。 **ちかごろ【近頃】** 近頃(例のないこと。売り出し中の若手。さっぱり噂を聞かない。老いが目立ってきた父=柴田翔。めっきりと名を高めてくる=高橋克)。近時地震が多発する。近年例がない。近年にない寒さ。比較的近年に入ってのこと。近来(まれな大雪。まれに見る好成績)。この頃(元気がない。ようやく落ち着く)。このところ(音沙汰がない。急に春めいてきた。体調を崩している)。昨今の(国際事情。世相。風潮)。 **てぢか【手近】** 手近な(ところに遊園地がある。物で間に合わせる。ところで不満を解消しようとするほど自尊心は低くない=松浦)。手近に(置く。慰めを求める)。諸行無常の理を手近に示された心地=谷崎。卑近な例を挙げる。金銭や離婚に絡む卑近なトラブル。最寄りの(駅。警察署。店)。 <646> # 近い・遠い **てもと【手元】** 手元が(狂う。たどたどしい。留守になる)。手元からバッグが床に落ちる。手元に(感触が伝わる。目を落とす。いくらも残らない。現金を確保する)。光を手元に当てる。▼手元に引き寄せる(ビール瓶を。メモ用紙を)。手元の(カップを持ち上げる。書類を一瞥する。資料に目を落とす)。親の手元を離れる。 **とおい【遠い】** 遠い(考えにふける。眠りの淵。遥かな過去。眼差しになる。見知らぬ土地。道のりを来る。海の彼方の水平線。記憶の中からたぐり寄せる。親戚にあたる老人。日々を振り返る。昔のように思える)。▶遠い(あるべき姿には。気が遠くなるくらい=安部。まだまだ完成された円熟さには=山岡)。いまだ遠い距離に在る。イメージから一番遠いタイプ。幼い頃の遠い夢を辿る。声が遠い記憶の中にある。そう遠い話ではない。ふと遠い目になる。目の届かない遠い所。霞がかかるほどに遠い存在=村松。ケシ粒ほどにしか見えぬ遠い敵=半村。自分の手の届かぬ遠いところの人=福永。過ぎ去った学生時代を追憶するような遠い目をする=有吉。息子が次第に遠い存在になっていく=藤田。目もくらむほどに遠い道=藤沢。遠い世界(かつて住んでいた。雲上のことのごとく=村松)。遠く(足を運ぶ。視界が効く。遥かな時代。響く砲声。風雲を望む)。青空が高く遠く見える。汽笛がボーボーと遠く聞こえる。声が遠く近くに聞こえる。ざわめきを遠く聞く。飛行機が遠く飛び去る。貧困の解消には遠く及ばない。平野が遠く見渡せる。町の響きが遠く伝わってくる。双眼鏡を逆にのぞいたようにはるかに遠く感じる=阿川弘。▼遠くなる(再挙の機会が。声がだんだん。耳が少し。景色がぼうっと霧の中のように=宮沢)。幾山河を隔てる。かなり離れた距離。どんなに急いでも丸二日はかかる道程。気の遠くなるような隔たり。はるばる遠方からやって来る。わざわざ遠方から取り寄せる。手の届かないようなところに行ってしまう=堀。はるばる遠い国から来る。遠路はるばる訪れる。前途三千里の思い。まだまだ先は長い。道はまだ遠い。国民の求めるものとはほど遠い。貫禄だとか威厳とかに程遠い=池波。決着とはほど遠い状況。精鋭とはほど遠い一隊。間遠な工事の音が聞こえる。間遠に(ともる街灯。立っている七八軒の家)。▼間遠になる(付き合いが。訪問が)。 **とおく【遠く】** 目がかすんで遠くが見えない。遠くから(子供たちを見守る。斜めに射す冬の日)。声が遠くから聞こえてくる。遥か遠くから寄せてくるうねり。わざわざ遠くから出て来る。遠くからでも目につく。遠くで(雷が鳴る。梵鐘が鳴る)。遠くに(見える山々。目を転じる。明かりがきらめく)。・姿が遠くに見える。どんどん遠くに行く。遠くへ飄~として去る。痛みが遠くへ去る。うかうかと遠くへ来てしまう。刻一刻と遠くへ去りつつある。できるだけ遠くへ押しやる。遥か遠くへと行ってしまう。目を遠くへ遊ばせる。遠くまで(足を延ばす。展望が開ける。名声を広める。見通しの利く街路)。評判が遠くまで及ぶ。遠くを見るような目つき。額に手をかざして遠くを見る。放心気味に遠くを眺める。声が遠くて聞き取りにくい。いずことも知れぬ遠方。 **となり【隣】** ▼隣(一軒置いた。壁一重の)。隣から手が伸びてくる。隣で寝息を立てる。隣の(家と仲が悪い。シートに座る。車両に移る。部屋に住む。領分を侵す。空席が気になる。新聞を覗きこむ。席で聞き耳を立てる。話が否応なしに聞こえてくる。若者に話しかける)。隣同士仲よく暮らす。隣町から転入する。隣町に引っ越す。隣町まで足を延ばす。▼一枚隔てる(障子。襖)。足音を残して隣室に消える。物音が隣室に筒抜けになる。隣室への類焼を食い止める。隣席が空いている。隣席をちらりと眺める。空き地を隔てた隣家。飛び火して隣家が焼ける。木が隣家の壁沿いに立ち並ぶ。 **となりあう【隣り合う】** 隣り合う(国。村)。隣り合った者同士。席が隣り合っている。隣り合わせる(危険と。たまたま)。隣り合わせに(座る。並ぶ)。▼隣り合わせに住む(悲惨と。高貴さと卑しさとが=阿川弘)。席が隣り合わせになる。▼接する(国境を。境を。膝を)。隣接する(二つの村が。市街地に)。駅舎に隣接したバスターミナル。校舎に隣接した図書館。隣接分野に進出する。 **のきさき【軒先】** 軒先が花に埋まる。軒先で雨宿りする。軒先にさがった提灯が見える。西日が軒先に差し込む。軒下で雨宿りする。軒下に(駆け込む。提灯を吊るす)。家の軒下に入る。軒端が川面に映る。軒端から上る朝の煙。軒端に柿を干す。豪雨が軒端に吹きつける。 **ひざもと【膝元】** ▼膝元(親の。将軍の)。膝元に置いて監視する。茶を膝元に差し出す。茶碗を膝元の茶台に置く=火坂。殿様のお膝元。将軍お膝元の江戸で剣名をあげんとする野心満々=池波。膝下に(駆けつける。参ずる)。 **へんぴ【辺鄙】** 辺鄙な(寒村。島。山の中。所で一人住まいする=西木)。狐狸の類いがでるほど辺鄙なところ=新田。人里離れた(孤島。山中。奥深い渓谷の底)。僻遠の地に流れてくる。けた外れに僻遠の地。辺境の地。辺鄙な寒村。辺鄙の地。辺地に移り住む。辺土に骨を埋める。生涯を辺土に送る。 **ほどなく【程なく】** ほどなく(準備が終わる。戦争が終わる。目を覚ます。風が冷たくなる。事実を突きとめる。事情が判明する。親密な間柄になる。頂点に昇り詰める)。いずれ(会ってみたほうがよい。貸しは返してもらう)。今に(好機が来る。あっと言わせてやる。痛い目に遭うぞ。真実が分かるだろう)。おっつけ(手に入る予定。来ることになっている)。追って(沙汰がある。連絡がいく)。近々に(お伺いします。退院する)。後日説明する。そのうち自然に止まるだろう。近いうちに行きたい。近く結婚する。近々(上京する予定。引っ越そうと思っている。船に乗ることになっている)。日ならずして(完成する予定。亡くなる。本復する)。もうすぐ(来る。空が白み始める)。やがて(日が暮れる。誰もいなくなる。発車の笛が鳴る)。いつか(起こりかねない。きっと報いがくる。どこかで会えたらいいね)。遠からず(完成する。救われるに違いない。返済できる見通しがある)。遠からずの別れを予感する。遠からずして起こる。 <647> **まぢか【間近】** 息がかかるほどの間近=飯田龍太。頬を煽るほどの間近から鳥が飛び立つ=里見弴。間近で睨み合う。呼ぶ声が間近で聞こえる。間近に(顔を寄せる。向かい合う。山を望む。女の呼吸を感じる)。結婚式が間近に迫る。膝がつき合うほど間近に座る。人の死を間近に見る。例が間近にある。間近に控える(還暦を。結婚式を。出産を。正月を。新学期を。卒業を。定年を。年越しの日を。入試を)。間近の空を弾丸がかすめていく。 ▼間近く聞こえる(声が。波の音が。せせらぎの音が)。 ▼間近い(帰国が。結婚が)。死期の間近い患者を目の前にする=笹沢左保。校了日が間近く迫る。山がいつもより間近く迫って見える。顔と顔が触れ合いそうに間近く微笑を交わす=石坂洋次郎。戦争勃発を目前に控える。 ▼目前に迫る(危機が。試験が)。 **まのあたり【目の当たり】** 光景が目の当たりに立ち上がってくる。昔のことを目の当たりに思い出す。目の当たりにする(現実を。圧倒的な強さを。命を弄ぶ社会を。死んでいく同胞を。レベルの高さを。凄まじいまでの気迫を=火坂雅志)。 ▼現前する(嵐が。成果が)。現前の(幸い。事実)。 **まもなく【間もなく】** 間もなく(日が落ちる。飯ができる。話を忘れてしまう)。雨は間もなくやむだろう。じきに(決着がつく。忘れてしまう)。もうじき(帰ってくる。夜が明ける。学校を卒業する)。 **めさき【目先】** 幻影が目先にちらつく。目先の(功名にこだわる。ことに目を奪われる。数値にこだわる)。会社どうしてもわかりやすい目先の利益を追求しがち=三浦しをん。 **めとはなのさき【目と鼻の先】** すぐ目と鼻の先。目と鼻の先に陣取っている。岸が目と鼻の先にある。ほんの目と鼻の先の近さ=原田康子。 **めのまえ【目の前】** 目の前が(霞む。晴れる。ぼうっとなる。真っ白になる)。眼の前が(真っ暗になるほどの絶望に襲われる=杉本苑子。見えなくなるほどの嚇怒に言葉を荒げる=中河与一)。バーッと眼の前が開けるような感じ=千刈匡一。ガーンという衝撃で目の前が真っ暗=田辺聖子。屈辱のため目の前が真っ暗になる=真継伸彦。絶望に目の前が暗くなる=栗本薫。目の前から姿を消す。あっという間に目の前から消える。目の前に(ある脅威。姿を現す。星が散る。目標がある。青々と広がる海、ありありと見えてくる。壁が立ちはだかる。現実の世界が広がる。短刀を突きつける。難問を突きつける。仁王立ちになる。ぬっと立っている。果てしなく広がる大海原。広い野が開ける。立ちはだかる現実の壁=篠田節子)。ありありと目の前に浮かんでくる。面影が目の前に彷彿する。顔が目の前に迫る。光景が目の前に展開する。衆人の目の前にさらす。勝利が目の前にぶら下がる。風景が目の前に浮かび上がってくる。冬が目の前にやって来る。まざまざと目の前に見せつけられる。水が目の前に一面に広がる。若き日の姿が目の前に浮かび上がる。甘い言葉が目の前にちらつく。目の前に広がるとてつもない暗闇=畑正憲。目の前の(霧がはれる。おやつを横取りされる。ことを考えるだけで精一杯。仕事を片づける。状況を冷静に見つめる。敵を全力でやっつける。光景にしばし呆然となる=乃南アサ)。 ▼目の前にする(幸せな結婚を。大願成就を)。前にする(異常な事態を。取材相手を)。雪の峰々をまなかいに見る=田辺聖子。 **めんぜん【面前】** 公衆の面前で恥をかかされる。海が面前に開ける。強敵が面前に現れる。面前の敵を倒す。真ん前に見える。真ん前を向く。人前で(素顔をさらす。堂々と抱き合って歩く。なぶり者にされる。女房を持ち上げる。ほめられて照れ臭い。無防備に涙を流し続ける=さだまさし)。臆面もなく人前で化粧する。人前ではしおらしく装う。とても人前に出られるような顔ではない。 **もくぜん【目前】** ▼目前に控える(完成を。出航を。卒業式を。オリンピックを)。動かぬ証拠を目前に突きつける。大願成就を目前に置く。目前の(災禍に驚く。利害が相反する)。目前を人影が横切る。 ▼目前にする(還暦を。上陸を。大学卒業を。本望の達成を)。 **わき【脇】** 脇から(口を挟む。眺める。割り込む)。脇にぴったりつく。鞄を脇に置く。グラスを脇に押しやる。調味料を脇に並べる。テーブルの脇に立つ。ハンドバッグを脇に挟む。脇の甘さを思い知らされる。耳の脇を掻く。きまり悪げに脇を向く。鼻の脇をこする。小脇に抱える(お盆を。鞄を。杖を)。槍を小脇に(かいこむ。抱える)。両肘を小脇にあてる。 # 違う <648> **いつにない** いつにない(気楽さを感じる。緊張を強いられる。親しさで話しかける)。顔にいつにない怒気がこもる。いつになく(会話が弾む。機嫌がいい。元気がない。強引に誘う。心が浮き立つ。沈んだ声。顔色を変えてやって来る。かしこまって応える。きっぱりと言う。厳しい目で睨む。気持ちが晴れやか。声が冷たく響く。深刻な表情を浮かべる。素気ない言い方。強い口調で言う。丁寧に会釈する。のんびりした表情。真面目な口調になる。弱々しく見える。屈託のありそうな表情=戸板康二)。様子がいつになくおかしい。いつもと(語調が違う。どこか違う。雰囲気が違う)。いつもになく(冷淡。声をあげて笑う)。いつの筆法にもなく腰を据える。例年にも増して寒さが厳しい。 **いわかん【違和感】** 体が幾つかの部分に分断されてしまったような違和感=村上春樹。違和感が(消える。心の中に動く。ぬぐえない。広がる。胸の中に巣食う)。股間に熱い棒でも突き込まれたような違和感がある=渡辺淳一。戸惑いに似た違和感が先に立つ=黒井千次。胸にざらっとした違和感が残る=谷村志穂。違和感に(こだわる。とらわれる。目をつぶる)。違和感の(正体がわかる。正体を突き詰めて考える=貫井徳郎)。割り切れない違和感をいだく。別世界に踏み込んだような気分=星新一。どこか違う世界にまぎれ込んでしまったようと=吉行淳之介。 **おおちがい【大違い】** ▼大違い(上と下では。誰かさんとは。理想と現実は。ちょっとの違いが。聞くと見るとは)。歴然たる違い。猫と鼠ほどの差=宗田理。日と星ほどの相違がある=福永武彦。兄妹が雪と炭ほど性質が違う=獅子文六。雪と墨ほどの違い=宇野千代。雲泥の(相違を来たす。違い)。見聞きすることと現実との間には雲泥の差がある=熊谷達也。穢土と浄土ほどの差=舟橋聖一。雲と土の差がある。聞いて極楽、見て地獄。天国と地獄の差が著しい。段違いに(危険。強い。腕が優れている)。理解の程度が段違いに深い。天地雲壌の相違=萩原朔太郎。天地雲泥の(差。相違)。生温い生活とは天と地ほども異なる世界=鈴木光司。天と地ほどに違う。天と地ほどの開きがある=篠田節子。同日の(談ではない。比ではない。論ではない)。格段に(優れた人物。若く見える)。職場全体のムードが格段によくなる。発言力が格段に大きくなる。格段の(差。違い)。格段の差で勝負にならない=坂口安吾。 ▼比べ物にならない(以前とは。てんで)。比べ物にならないほど(多い。大きい)。まるで月とすっぽん、比べもならぬ差がある=柴田錬三郎。月とすっぽんのような違い=木山捷平。 **かくさ【格差】** 格差が(大きい。固定する。深刻化する。小さい。一向に解消されない)。貧富の格差が広がる。貧富の格差がもたらされる。格差を解消する。地域格差が(残る。広がる)。地域的格差を是正する。 **かけはなれる【掛け離れる】** ▼かけ離れる(予測と結果が。大きく。原点から。実力と。数字が実際と。理念と。市井の暮らしと)。現実とかけ離れた考え。日常とかけ離れた異様な場所。予想とかけ離れた事実。かけ離れている(願望と現実が。あまりに。記事と現実とがひどく=藤原伊織)。 ▼懸絶する(衆寡の勢いが。両者の実力が)。社会から隔絶される。世間から隔絶されたがごとき貧窮の暮らし=富岡多恵子。世間から隔絶されているように静か=石坂洋次郎。越えがたい懸隔が横たわる。想像もつかないほどの懸隔が生じる。両者の主張には著しい懸隔がある=津本陽。精神的風土の懸隔に橋を架ける=中村真一郎。 **ギャップ** ギャップ(世代間の。夢と現実の。理想と現実との。客の求める物と提供しようとするサービスとの=篠田節子)。ギャップが(大きい。小さい)。理論と観測のギャップを埋める。 **くいちがい【食い違い】** ▼食い違い(大きな。小さな。感情の。言葉と事実との)。食い違いが(起こる。一貫する)。事実や時間に食い違いのないように順序を追って話す=永井龍男。事ごとに意見の食い違いを生じる。話の食い違いを質す。夢と現実とをくっつけたようにどこかで少しずつ食い違いを生じる=堀辰雄。感情の行き違いが続く。言葉の行き違いから口論になる。行動に一貫性がない。論理の一貫性に欠ける。言動に一貫性を欠く。首尾一貫しない(筋。人間)。世代間の断絶。齟齬が生じる。小さな齟齬が大きな失策に連なる=高橋和巳。取るに足らない齟齬が日々積み重なりストレスになる=阿川佐和子。 ▼齟齬がある(大きな。感情の。両者の間に言葉の=北杜夫)。政策に齟齬を来たす。万事が齟齬して思うようにならぬ焦燥は地団駄を踏むばかり=二葉亭四迷。 **くいちがう【食い違う】** ▼食い違う(意見が。意思が。主張が。説明と現状が。歯車が。二人の話が。証言が事実と。双方の気持ちが。それぞれの発表が=柳田邦男)。歯車が食い違ったようなとどこおり=小島信夫。双方の気持ちががくりと喰いちがったようなちぐはぐな思い=本庄陸男。 ▼入れ違う(記憶が。場所が)。事実と(異なる。相違する)。 **けたちがい【桁違い】** 人間の格が桁違い。桁違いに(多い。大きい。少ない。小さい。速い)。桁違いの(力。値)。桁が一桁違う。 **さ【差】** 差があっという間に詰まる。干満の差が激しい。技術の差が歴然と現れる。ずいぶんと差がつく。出来上がりに微妙な差が生じる。貧富の差が拡大する。わずかの差が詰められない。花びらに微妙な濃淡の差がある=飯田龍太。ぐいぐい差をつけていく。差がありすぎる(性格に。あまりにも)。彼我の差は歴然としている=なかにし礼。差異が生じる。収支の差額。点差が(つく。開く)。 **さがない【差がない】** ▼差がない(認識に。兵力に)。いずれがアヤメ、カキツバタ=小沢昭一。ほとんど差異がない。 ▼大差がない(あまり。想像していたのとそう=鷺沢萠)。五十歩百歩というところで大差はない。甲乙つけがたい(技術。魅力)。たがいに甲乙つけがたい成果をあげる=塩野七生。両者の勢力にはにわかに優劣をつけ難い=後藤明生。どちらとも優劣がつけがたい=豊田穣。 **しょうさ【小差】** 小差で(可決する。勝つ。辛勝する。否決される。負ける。敗れる)。 ▼差(一足違いの。ほんの少しの。感じられないほどのわずかな=菊池寛)。一瞬の差で難を逃れる。間髪の差で成功させる。タッチの差で逃す。一票の差に泣く。 ▼一枚の差(紙。皮膜)。一点差で(辛勝する。惜敗する。逃げきる)。猛追にあって一点差となる。一点差を死守する。僅差で(勝つ。辛勝する。涙をのむ。負ける)。鼻先一つで勝つ。鼻の差で(勝つ。逃げきる)。 **たいさ【大差】** 大差で(勝つ。負ける。楽勝する)。大差をつけて(勝つ。ゴールする)。圧倒的な体軀の差。初版とのいちじるしい差異。差異が大きい。考え方に大きな差が生じる。ぶっちぎりのトップ。プロレスラーと子供ぐらいの差がある=小林信彦。プロとアマの実力の差を見せつけられる=高橋三郎。ダブルスコアで(快勝する。勝つ。負ける)。 **ちがい【違い】** ▼違い(根本的な。予測と実際の。親子ほどの年の)。違いが(表面化する。目立つ。浮き彫りになる。歴然としている)。性格の違いがぶつかりあう。一目で違いがわかる。証言内容に微妙な違いが生じる=柳田邦男。違いがある(明らかに。思惑に。言葉の解釈に)。違いの大きさに気づく。誤差が(多い。生じる。少ない)。統計の誤差の範囲内。二人の間に越えがたい認識の相違がある。事実と相違する。相違点を(明らかにする。探す)。開きが(大きい。小さい)。 ▼開きがある(年齢に。能力に。力の)。隔てが(取れる。なくなる)。隔てをおかずに話ができる。いくつかの異同がある。種々の異同を生じる。 ▼異同を調べる(字句の。テキストの。両者の)。ずれが生じる。 ▼ずれがある(わずかな。話に。多少)。考え方に時代のずれを感じる。 **ちがう【違う】** ▼違う(頭のできが。極端に印象が。口と腹が。住む世界が。話の筋が。母とは考えが。全くタイプが。味が微妙に。厳密に言えば。一味も二味も。予想とは大分。幾分なりとも気分が。いつもとどこかが。美しさの次元が。考え方の尺度が。万事につけ考え方が。日頃の鍛え方が。一昔前とは事情が。目の付けどころが。事実は一部報道と大いに。年齢が親子ほどに。生まれも育ちも。事前の予想とは。前回とは顔ぶれも大きく。調子がまるっきり。凡人とはちょいと。見かけと本質は。様子が日ごろと)。 ▼いつもと違う(顔の印象が。語調が)。 ▼勝手が違う(いつもと。ちょっと。万事)。まるで違う(昔とは。想像していたのとは)。様子が違う(去年と。どうも話の)。わけが違う(その辺のちんぴらとは。ただの商売人とは)。心証がずいぶん違ってくる。お世辞にも(いい男とは言えない。達筆とは呼べぬ字)。うまいとはお世辞にも言えない。鯉の中の鯰。 ▼違いすぎる(腕が。年齢が。身分が。力量が。あまりにも)。両者はイコールではない。年々歳々人同じからず。 ▼同じではない(必ずしも。決して)。根本的に性格を異にする。以前の比ではない。作家論の体をなさない。体をしていない(経済政策の。公園の。作品の)。 ▼話が違う(だいぶ。まるで。それとこれとは)。それとこれとは話が別。そうとわかれば話は別。人違いかと疑う。ひょっとしたら人違いかもしれない。人違いの可能性がある。 ▼違わない(一言一句も。さして。さほど。たいして。何ほども。年齢はさまで。ほとんど。どこからどこまで寸分も=佐藤春夫。どっちへ転んでもそう=高井有一)。一寸分違わぬものを作る。予想と寸分違わぬ声。 ▼相違もない(寸分の。みじんの)。評判に違わず美人ぞろい。噂に違わぬ人物。 ▼違いがない(さしたる。目立った)。たいした違いはない。年齢の開きがない。 **なにあたいしない【名に値しない】** ▼名に値しない(愛の。教育者の。政治の)。夫の名に値しない夫=大岡昇平。名が泣く(国家の。探偵の。一番槍と言われた)。 ▼風上にも置けない(知識人の。人間の。武士の)。男の風上にも置けないいやらしい存在=石坂洋次郎。侍の風上にも置けぬ犬畜生と罵る=村上元三。 **ばちがい【場違い】** 三ツ星レストランで福神漬を要求するぐらい場違い=松岡正剛。いかにも場違いで芝居じみている=加賀乙彦。場違いな(感想を抱く。冗談を言う。返答をする。笑いを漏らす。場所にいるぎこちなさ)。何となく場違いな感じ。ひどく場違いな所に紛れ込む。場違いなほど明るい声。 **はんする【反する】** 反する(神の意志に。期待に。公序良俗に。世間の常識に。文民統制に。方針に。常識に百八十度=内橋克人)。事実に反する記事。東洋的な和の精神に反する考え方=丸谷才一。 ▼精神に反する(憲法の。男女平等の)。 ▼相反する(目前の利害が。真っ向から)。二つの相反する感情が妖しく交錯する=外村繁。 **べつ【別】** 別な(景色が見えてくる。コップとすり替える。次元へ移し入れる。手立てを講じる。場所に移動する。方向から論じる)。別の(意味に取る。角度から見る。人生を生きる。力が働く。道をたどる。容器に移す。話題に移る。企画にとりかかる。言葉に置き換える)。次元が別の話。別口に乗り換える。 **らくさ【落差】** 落差(気が遠くなるほどの。図らずも露呈される気持ちの)。落差が(大きい。小さい)。いい時とそうでない時の落差が激しい=村山由佳。桁違いと言ってもいいほどの落差がある=船山馨。落差をはっきりと見せつける。 <649> # 近付く・迫る **ちかづく【近付く】** ▼近づく(死の瞬間が。深刻な危機が。退社時間が。足早に。小走りに。建物の玄関に。船が岸に。名人芸の域に。問題が解決に。恋愛が破綻に。一歩一歩。陰鬱な冬の気配が。帰らねばならぬ時刻が。原稿の締め切りが。刻一刻と完成が。ひそやかな足音が。いくらかずつ回復期に。演技力が完璧に。科学的な客観性に。出産日が目の前に。準備段階が終了に。つかつかとカウンターに。忍耐が爆発点に。足音が四方八方から。あるべき姿に一歩。重たげな足取りで。距離がぐいぐいと。露を置いた草を踏んで。ゆっくりと背後から。因縁をつけに威嚇的に=玉村。追いつくりと背後から。因縁をつけに威嚇的に=玉村。追いつがるように=山田太。影のようにゆっくりと=中沢。磁石に引かれるように=隆。他人の目をはばかるように=藤本。二隻の船がお互いを糸で引き合っているように=泉。ぶつかるくらい=本多。眼にもとまらぬ速さで=真継)。▼音が近づく(サイレンの。シャリンシャリンと鈴の"石森)。▼終わりに近づく(戦争が。春休みが)。▼従って近づく(木立の間を。通行人の間を。闇を)。▼日が近づく(試験の。出立の。約束の)。近づいていく(一歩一歩。じわじわと。すうっと。するすると。だんだん。ふらふらと。ゆっくりと。用心しながら。よろよろと。そろりそろりと。ぬき足さし足で。次第に最終の姿に=内橋)。近づいてくる(怪しい気配が。山上から雲が。ぐんぐん。こっそり。じわじわと。すっっと。するすると。そろそろと。のっそりと。ひょこひょこ。ぶらぶら。ゆっくりと。ゆるゆると。よろよろと。先頭集団の尻尾が。パトカーのサイレンが。ひたひたと足音が。過去から現在のほうに。靴音が小走りに。荒々しい足取りで。一歩また一歩と。そろりそろりと。さらさらと衣擦れの音が=小松左。オートバイが宙を飛ぶようにぐいぐい=日野)。▼近づきつつある(時々刻々。確実に目標へ一歩一歩"五木)。距離を縮める。▼接近してくる(地響きが。まっしぐらに。恐ろしい速さで。変わらぬ足取りで)。▼そばに来る(ゆっくりと。ひょこひょこと)。そばへ寄ってくる(静かに。つかつかと。馴れ馴れしく。のっそりと)。▼歩み寄る(足早に。大股に。つかつかと。物怖ものじもせず。ゆっくりと。しなやかな身のこなしで。老婆が前かがみの姿勢で=高橋和)。足取りで歩み寄る(優雅な。覚束ない)。死地への一歩の歩み寄り。▼すり寄る(権力に。猫が主人に)。相手にすり寄っていく。猫なで声ですり寄ってくる。さがひしひしと身に。出発が十日後に。夏祭りが数日後に。山が谷川の両岸に。足音がすぐそこまで。時間がいつの間にか。夜目にも真っ白な帆が=隆。尋常ではない気迫で=干刈。雪崩のような勢いで=三田)。▼明日に迫る(期限が。出発の日が)。▼核心に迫る(質問が。調査が)。▼眼前に迫る(期日が。ぐうっと)。▼心に迫る(言葉が痛烈に。読む者の)。▼刻々と迫る(死神が。締め切り時間が)。▼時間が迫る(開会の。約束の)。時刻が迫る(船の出る。約束の)。▼胸に迫る(切実な思いが。涙ぐむような愛おしさが"有吉。やさしさがひしひしと=川端)。▼目前に迫る(試験が。出航が。深刻な事態が。切実な問題が。戦争が。定年が)。夕闇が迫る(窓の外に。あたりに刻々と=白洲)。山が間近く迫って見える。迫っている(海岸近くまで山が。鼻先に隣家の壁が)。▼迫ってくる(濃い夕暮れが。灼熱しゃくねつの溶岩が。夜の静けさが。言葉が胸に。じりじりと。怒濤どとうのように。ひたひたと。冬が見る見る。話が真実として。盛り上がるように敵が=山手。豆粒大であったものが見る見る大きく=城山)。▼迫り来る(危機が。敵が。同情の念が胸に)。勢いに乗って追い迫る。自然への肉迫を表現した言葉。軍勢数万がひしとつめかける。▼間近に迫る(期限切れが。ゴールが。死が。選挙が。敵軍が。火が。山が。予定日が)。 **ちかづける【近付ける】** ▼近づける(画面に目を。窓に顔を。質問を核心に。船を磯に。犬が地面に鼻を。提灯ちょうちんの明かりを。バーナーの炎を。タンブラーを口元に)。▼口を近づける(マイクに。耳元に)。▼接近させる(気持ちを。距離を。二人を。娘を)。▼すり寄せる(椅子を。肩を。頬を。身を。顔を胸に。ホステスに体を)。▼近寄せる(頭を。顔を。友達を。耳を。身を。目を)。 **ちかよりがたい【近寄り難い】** 近寄りがたい(気位。表情。雰囲気を持った人物)。尊大で近寄りがたい人。敵の近接を防ぐ。接近するタイミングが難しい。そう簡単に接近できない。近付き難い(雰囲気。端麗な顔をした女)。強力な磁波で巡られたようで近づきがたい=高樹。悲劇に耐えているような近づきがたい気配=山田太。近づけない(見物人を。他人を。それ以上は。危なくて二度と)。▼近寄せない(男を。敵を一歩も)。前以上に近寄りにくくなる。おいそれと近寄れない。取っ付きにくい(感じ。話。人)。▼寄せつけない(ライバルを。そばに)。人を寄せつけないような淋し気な表情=辻井。▼寄れない(そばに。近くに)。足元にも寄れない大人の女の魅力に嫉妬を覚える=森。 **ちかよる【近寄る】** ▼近寄る(すぐ傍そばまで。そろそろと。つかつかと。事もなげにするすると。抜き足差し足で)。膝をつきつけるように近よる=本庄。揉み手をして近寄っていく。▼近寄ってくる(死が。次第に。ぐいぐい。じりじりと。優しい素振りをして。まとわりかかるように=大佛。死がやおら物憂げな腰を上げてそろそろと=有吉。スイッチをひねられた電気人形のようにするすると=武田泰淳)。無防備で近寄れる気安さ。▼いさり寄る(音もなく。膝で。我知らず)。手探りに奥へ進み寄る。▼寄っていく(馴れ馴れしく。人懐こく。物見高く。人見知りせずに)。▼寄ってくる(すっと。そろそろと。つかつか。どやどや。ふらふらと。わっと。走るような大股で=壺井)。 **つめよる【詰め寄る】** ▼詰め寄る(居丈高に。思わず一膝。気色ばんで。血相を変えて。語気鋭く。胸倉をつかまんばかりに。押し殺した声で。つかみかからんばかりの態度で。詰問するような口調で=五木)。悠然とした足取りで詰め寄ってくる=熊谷。 **どたんじょう【土壇場】** ▼土壇場(今や首くくりという=坂口。死ぬか生きるかという=山本周。伸のるか反るかの=舟橋)。土壇場で(気が変わる。力を発揮する。勇気が挫くじける。譲歩を迫られる)。土壇場に(来ておじけづく。なって逃げ出す)。最後の土壇場で(打っちゃる。裏切る)。 **なまなましい【生生しい】** 生々しい(記憶が未だに。去年の凶作の記憶も=熊谷)。八年前のことが昨日のことのように記憶になまなましい=源氏。昨夜の夢の中で見たようななまなましい気分"日野。生々しい臨場的体験。切り開いたばかりのなまなましい崖=川端。歴史のなまなましい傷痕"五木。生々しく(鮮やかな色。記憶に残る。心に焼きつく。ショッキングな映像)。記憶が脳裏に生々しくよみがえる。傷が生々しく口を開いている=森。▼生々しく残っている(感触が。聞いた言葉が耳に)。べたついた情緒的ななまなましさ=中野。若やいだ円味と潤いと生々しさが陽炎かげろうのように立ち騰のぼる=岡本。 **のっぴきならない** のっぴきならない(運命の相剋そうこく。憎悪を抱く。用で休む。ジレンマに陥る。ことが起こって身の破滅になる=田山。身の危険を感じる=飯田)。悪い予感がのっぴきならない明瞭な形になる=丹羽。思想と現実とののっぴきならぬ苦悶=横光。抜き差しならない責任を負う。抜き差しならぬ(危地に陥る。人生の問題。ところまで追いつめられる)。 **はくしん【迫真】** 迫真の演技。かつての忌まわしい噂が迫真性をもってよみがえる=陳。迫真的な描写。強烈な現実への迫真力。迫真力に(欠ける演技。満ちた演技)。描写が迫真力に満ちている。真に迫る場面を撮る。真に迫った(演技。表情)。 **はくりょく【迫力】** ひとりで世間を生き抜いてきた中年男の陰気な迫力“日野。のっぴきならない迫力がみなぎる。まわりを怯おびえさせるぐらいの迫力がほしい=内海。見ていると気分が悪くなるという人もいるほど迫力がある。=宮尾。寒気のするほど恐ろしい迫力で圧倒する=深沢。迫力に気圧けおされる。今一つ迫力に欠ける。異様な迫力に満ちている。顔が拡大されて畳一畳敷きほどあるような迫力を感じさせる=獅子。迫力ある脅しにたじろぐ。次第に高まりゆく緊迫感。緊迫感が日一日と募ってくる。日に日に緊迫感を増す。 **ひじょうじたい【非常事態】** 非常事態が起こる。非常事態に備える。非常事態を宣言する。非常事態宣言を(解除する。出す。発令する)。一旦事ある場合。一朝事あるときに備える。有事に備える。▼有事の際(一旦。一朝)。戒厳令を(敷く。解く)。戒厳令下にある。 **ひんする【瀕する】** ▼瀕する(経済が破綻に。絶滅の危機に。拷問によって死に)。もはや命は旦夕たんせきに迫っている=今日。▼峠(ここ二三日が。今夜が)。危険が目前に迫る。 **まったなし【待ったなし】** ▼待ったなし(改革は。事態の解決は)。待ったなしの(課題。催促。所まで追いつめられる)。一刻の猶予もできない。もはや一刻の猶予も許されない=佐山。 **よせる【寄せる】** ▼寄せる(哀悼の言葉を。異性に好意を。壁に耳を。近々と顔を。ぴったり体を。耳元に唇を。恋慕の情を。車を路肩に。波が岸に。体をぴったり。算盤そろばんを横へ。ざぶりざぶりと波の音が。いとわしげに眉を。首筋にそっと唇を。結果に大きな期待を。不快げに眉根を。偏奇な同情心を。ひたひたと潮が足元に。封筒を振って中身を一方に)。▼思いを寄せる(ほのかな。密かに)。▼関心を寄せる(重大な。特別な)。皺しわを寄せる(鼻に。鼻の頭に。眉根に。目尻に。眉間にかすかに)。▼頬を寄せる(乳房に。妻の髪に。胸にびったりと)。▼身を寄せる(弟の家に。大樹の陰に。扉にびったりと)。▼額を寄せて(協議する。話し合う)。▼眉根を寄せて(考えこむ。にらむ。いぶかしげに言う)。眉の間に皺を寄せて考える。過分の文章を寄せてくれる。▼寄せてささやく(耳に唇を。耳に口を)。白い波頭が寄せては砕ける=浜。▼肩を寄せ合って(歩む。生きる)。▼寄せ返す(潮の音。いったん退いた人波が。人波がまた寄せ返す。寄せ来る。波の音)。▼寄せ来る(インフレ。敵軍。波)。 **よりつく【寄り付く】** ▼寄りつく(鳥が。親元に。そばに。ほら穴に。五円高で)。▼寄りつかない(客が。若者が。家に。そばに)。他の客が近寄ってこない。近寄る気が失せる。一寸も一分も近づこうとしない=菊池。 **よる【寄る】** ▼寄る(ばらばら人が。頬にえくぼが。一二歩脇に。火の近くに。窓辺に。何かのついでに。寄りかかるようにそばに。行きがけにちょっと。そろりそろりと側そばへ=二葉亭)。ちょいちょい寄るレストラン。皺しもが寄る(顔に。眉根に。眉間に。目尻に)。寄らば(切るぞ。大樹の陰)。気軽に寄れる店。 **リアル** リアルな描写を心がける。リアルに(思い浮かべる。描写する。事態を整理してみる)。状況がリアルに想像できる。絵に立体感を出す。立体的に表現する。瑞々みずみずしい臨場感にあふれる。申し分ない臨場感を出す。写実的な(絵。描法を基調にする=松本)。写実的に(描く。書く)。 <650> # 近付く・迫る **いよいよ** いよいよ(出番が来た。明日は出発という日。開演という問際。披露宴の日となる。満願の日が来る)。いざ休むとなると大変。いざと(心を決める。なったら脅してでも原稿をもぎ取る三浦し)。いざという時に(困る。頼れる人。役に立つ。太刀打ちできない)。いざとなると(言い出せない。存外弱い。からきし意気地がない。なかなか決心がつかない。愕ぶとくべき実行力を発揮する=瀬戸内)。いざとなれば(辞職する覚悟。引き受ける。自給自足が可能)。 **おいこまれる**【追い込まれる】▼追い込まれる(極限状態に。経営破綻に。孤独の世界に。四面楚歌し、に。絶滅寸前に。操業停止に。ダウン寸前に。破滅の淵に。落城寸前に。餓死寸前まで。いたたまれない気持ちに。絶体絶命の境に)。▼追いこまれる(食うに困るほどの破綻に=開高。飼育を断念しなければならない立場に吉村)。▼状況に追い込まれる(不利な。そうせざるを得ない)。▼立場に追い込まれる(不利な。苦しい。孤軍奮闘の)。 **おいつめられる**【追い詰められる】▼追い詰められる(もはや逃げ場がないまでに=熊谷。断崖絶壁の緑際まで=村上龍)。▼追いつめられる(異常な状況に。極限状況に。精神的に。無惨な立場に。死の間際まで。孤立無援の窮地に。ぎりぎりの土壇場へ。死の瀬戸際まで。山猫のように穴の奥に"野間。やむにやまれぬところまで有栖川)。追いつめられた(うっとうしい気持ち。獣のような哀れっぽい表情。真継。小動物のように目を光らせる三島。鼠如ずのような暗く貧相な顔つき『森聡)。やみくもに逃げまどう追いつめられた鶏のように暗い土蔵の中へ駈けこむ。大江。猟師に追い詰められた兎約ものように渓川炊がの岸の草原にしゃがんでいる徳田。追いつめられた獣のように自分の傷痕を嘗めながら走る!福永。 **おうて**【王手】王手がかかる。王手を(かける。かわす)。リーチがかかる。リーチをかける。 **おりしも**【折しも】折しも(雨が降り出す。風が出てくる。開催中の市議会)。折も折誰の目にもこちら側の負け越しがはっきりしはじめた時期だった矢作。あわや最期と思われたそのとき。折から(吹いてきた風。降り出した雨)。火が折からの列嵐にみるみる燃え拡がる=山本周。警戒を強めていた矢先に殺される=多岐川。あと一二分で着くという矢先の事故。▼矢先の出来事(出かけようとした。みんなで話し合っていた)。 **がけっぷち**【今縁】細い崖っぷちに立たされたようなさしせまった声高樹。崖っ縁に追い詰める。崖っ緑の危機に立たされる。切り立った崖っ縁をじりじり歩く。折れ曲がった崖の縁、ぅが地球の傷口のように底深い口を開けている"有房。崖端に立つスリルを味わう泉俊。崖道を(歩く。通る)。 **かけよる**【駆け寄る】▼駆け寄る(小走りに。車めがけて。ばらばらと。馬のような勢いで藤沢。駒下駄を鳴らして=北原)。悲鳴を聞いて駆け寄ってくる。走り寄る(猛烈な勢いで、ばたばたと廊下を)。 **きゅうち**【窮地】窮地から(命拾いをする。救い出す)。窮地に(落ち込む。立つ)。危なく窮地に立たされそうになる。▼窮地に追い込まれる(経済的に。抜き差しならぬ)。▼窮地に陥る(絶体絶命の。雪隠詰かもめの)。▼窮地に陥れる(一族を、糊口にこを)。窮地を救う。脱した安堵、んに憩う)。一種の機転と飄逸いうさでつるりと窮地を切り抜ける"山崎。危地に(追いこむ。立つ)。危地を脱する。虎口を免れる。危うく虎口を逃れる。辛うじて虎口を脱する。死地に(追いやる。陷る。赴く。活路を見出す)。死地を(脱する。脱れ出る)。絶体絶命のピンチ。ビンチに陥る。ピンチを(切り抜ける。招く。クリンチで逃げる=船戸)。最大のピンチを脱する。 **きりきり** 終電にぎりぎりセーフだった。ぎりぎりぎりぎりで間に合う。締め切りぎりぎりに送られた原稿。前日ぎりぎりに約束を破棄する。ぎりぎりの(線で勝つ。線まで粘り抜く)。ぎりぎりまで(感情を抑える。待つ。様子を見る)。かつかつ暮らしを立てる。 **さしせまる**【差し迫る】差し迫る(期限が。危険がさしせまる身に)。差し迫った(危険を感じる。事情がある)。問い質ただす調子にひどくさしせまった雰囲気がある"井上ひ。差し迫って動きもならぬほどの貧窮室生。一刻の猶予も許されない。一時も無駄にできない。背に腹は代えられない。危険が迫る(身辺に。身近に。身に)。▼時が迫る(命終以は行の。臨終の)。危険が身に迫る。押し迫る(暮れが。戦局が。年の瀬が。年末が)。いったん緩急あればすぐに駆けつける。喫緊の(課題。要務)。きわどいところで助かる。一触即発のきわい発言。強制と信頼のきわどい分かれ目。寸刻の(躊躇いうも許さない。猶予も許さない)。秒読み段階に入る。退官が秒読みとなる。秒読みを始める。終局に向けて秒読みを開始する=島田。▼押し詰まる(期限が。情勢が。年が。年の瀬が)。暮れも押し詰まった日。迫られる(解決を。苦しい対応を。政治決断を。立ち退きを。年内の決着を。見直しを。新たな必要に。仕事を盾に関係を。全面的に再検討を。とっさの判断を。露悪的な気持ちにじりじり梶井)。▼逼迫する(一家の経済が。家計が。家庭の事情が。財政が。需給が。情勢が。生活が。戦況が)。 **しのびよる**【忍び寄る】▼忍び寄る(死の影が。冬の気配が。窓の外に夜が。魔の手が。目に狂気が。疲れが徐々に。猫がしなやかに。死がすぐそこまで。抜き足差し足で。背後へそうっと。猫のように音もなく"る)。 <651> **しんこく【深刻】** 世の果ての審判のように深刻=岡本太郎。深刻で重大な関係に立ち至る。深刻な(影を落とす。食糧難に陥る。頭痛の種。対立が生じる。打撃を与える。問題を抱える。意味を含んだ言葉。壁に突き当たる。悩みに行き当たる。難関に逢着する。反目を引き起こす)。いつになく深刻な表情を浮かべる。柄にもなく深刻な顔になる。敗戦で深刻な打撃を受ける。のんきに笑ってもいられぬ深刻な事態=戸板康二。深刻に眉根を寄せる。男の浮気に深刻に悩まされる=松浦理英子。 ▼深刻になる(金融危機が。矛盾が。不足が日々)。常に後手後手で問題をさらに深刻にする=佐高信。深刻化する(景気後退が。雇用情勢が。財源不足が。就職難が。負の連鎖が)。深刻さを(痛感する。増す)。深刻度を(深める。増す)。 **すれすれ** 当落すれすれでかろうじて当選する。壁をすれすれに通り過ぎる。体すれすれに走り過ぎる。発車すれすれに乗車する。法律違反すれすれの行為。路肩すれすれのところで止まる。容量の限度すれすれまで満たす。 **せっきん【接近】** ▼接近する(台風が。急速に。島に。標的に。舟が岸に。目標に。一歩一歩。注意深く。仲が著しく。ゆっくりと。音もなく背後から)。異常接近を警告する。踏みつぶすほどの勢いで急接近する=人間。 **せつじつ【切実】** 切実な(嘆きの声。後悔が湧き起こる。シンパシーを抱く。言葉が肺腑に響く=津本陽)。少しの装いもない切実な心がこもる=山本有三。夢をこわしたくないという切実な思い=岩橋邦枝。仲間がほしいと切実に思う。思いの切実さを嘲笑うようにしてするすると言葉が先滑りしてしまう=荻野アンナ。痛切に悔恨の念が残る。 ▼痛切に感じる(孤独を。生きていることの喜び=高橋和巳。身をえぐられるように=大佛次郎)。 **ぜったいぜつめい【絶体絶命】** 絶体絶命の(窮境を味わう。ピンチに陥る。ところにまで追いつめられる)。進退ここに谷まる。進退に窮する。進むも退くもならぬ谷あいにいる。喉元に短剣を突きつけられているよう=泉優。身を防ぐ盾一枚持たず灼熱の砂嵐の中に立たされている感じ=城山三郎。崖っぷちに立つ。命が崖っぷちにある。二進も三進も行かなくなる。 **せっぱく【切迫】** 息詰まるような切迫が胸を押す=久米正雄。切迫する(危険が。事態が。締め切りが。情勢が)。切迫した(事態が生じる。雰囲気が漂う。事態を緩和するための道筋=津本陽)。一刻も猶予ができない切迫した気持ち=松本清張。まといついてくる切迫した闇をふりきる=大江健三郎。容体を問うこともできないほど切迫した空気が漂う。=壺井栄。いつ戦火が頭上へふりかかるかもしれない切迫した事情=山本周五郎。溺れている人が岸を探すような切迫した表情=桐野夏生。日一日と切迫してくる。追いつめられているという切迫感=古井由吉。声が切迫さを増す。急な(仕事が入る。病気で死ぬ。病人が出る。用事ができる)。 ▼窮迫する(財政が。食糧が。生活が)。急を知らせる。焦眉の急を救う。事態が急を告げる。尻に火が(ついているみたいに追い立てられる=藤原緋沙子。ついて逃げ出す=飯田龍太)。 ▼急迫する(国際関係が。事情が。事態が。戦局が)。急迫した事態に対処する。 ▼緊迫する(語調が。戦局が。情勢が一挙に)。緊迫した(空気を肌身に感じる。やりとりが続く。静寂に包囲される=かんべむさし)。にわかに緊迫した雰囲気が広がる。息づまるようなひやりと緊迫した沈黙が続く=日野啓三。白刃渡りのような緊迫した精神=竹西寛子。息詰まる緊迫さで描く。緊迫ぶりがひしひしと伝わる。 **せっぱつまる【切羽詰まる】** せっぱ詰まった(息苦しさ。苦肉の策。最後の逃げ道。絶望感)。相手にすがろうとする切羽詰まった情念=有吉佐和子。ナイヤガラの滝に飛びこむような切羽つまった行為=北杜夫。言葉にせっぱ詰まった響きがある。体ごと引き寄せられるような切羽つまった感覚=永井荷風。せっぱ詰まって開き直る。食うに食えないせっぱ詰まっての仕業=壺井栄。急場の(金策。間に合わせ。役に立つ)。急場を(しのぐ。救う)。 **せとぎわ【瀬戸際】** ▼瀬戸際(生きるか死ぬかの。いつ崩れるか分からない。食うか食われるかの。せっぱ詰まった。のるかそるかの。死ぬこともかなわぬ命の=白洲正子)。一切が無になり虚にならねばならぬ瀬戸ぎわ=本庄陸男。瀬戸際に追い込まれる。生死の瀬戸際にはまり込んでいる人々の本能は恐ろしいほど敏捷な働きをする=有島武郎。何が何でも何とかしなければならない瀬戸際に追いつめられる=飯田龍太。土俵に首がかかる。剣が峰(勝負の。成否の)。剣が峰に立たされる。角番に(立つ。なる)。角番の大関。角番を脱出する。寸刻を争う危急。お家の危急を救う。財政の危急を切り抜ける。危急存亡の(際。秋ときを迎えた心境)。ここを先途と(叫び立てる。攻める。戦う)。土俵際に(押し込まれる。追いつめられる)。土俵際の二枚腰。土俵際まで踏み込んで事業を楽しむ。=有島武郎。 **せまる【迫る】** 迫る(開始の時が。急峻な岩場が。捜査の手が。周辺に外夷が。敵機の編隊が。背後に断崖が。発表の日が。身に危難が。山の冷気が。国王に退位を。執拗に決断を。鋭く反省を。足音が間近に。宇宙の起源に。クールに女に。死が確実に。事件の真相に。島が前方に。龍が海に。目と鼻の先に。圧倒的な力で。泣きの一手で。必死の形相で。山が両側から。秋が深くなり冬が。眼前に黒々とした森が。締め切りの期日が。建物の背後に山が。手形の決済日が。一方的な取引を。帰国があと数日に。ぐんぐんと前の馬に。決行が二日後に。左折する交差点が目前に。寂しさがひしひしと身に。出発が十日後に。夏祭りが数日後に。山が谷川の両岸に。足音がすぐそこまで。時間がいつの間にか。夜目にも真っ白な帆が=隆慶一郎。尋常ではない気迫で=千刈匡一。雪崩のような勢いで=三田誠広)。 ▼明日に迫る(期限が。出発の日が)。 ▼核心に迫る(質問が。調査が)。眼前に迫る(期日が。ぐうっと)。心に迫る(言葉が痛烈に。読む者の)。 ▼刻々と迫る(死神が。締め切り時間が)。 ▼時間が迫る(開会の。約束の)。 ▼時刻が迫る(船の出る。約束の)。 ▼胸に迫る(切実な思いが。涙ぐむような愛おしさが=有吉佐和子。やさしさがひしひしと=川端康成)。 ▼目前に迫る(試験が。出航が。深刻な事態が。切実な問題が。戦争が。定年が)。夕闇が迫る(窓の外に。あたりに刻々と=白洲正子)。山が間近く迫って見える。迫っている(海岸近くまで山が。鼻先に隣家の壁が)。 ▼迫ってくる(濃い夕暮れが。灼熱の熔岩が。夜の静けさが。言葉が胸に。じりじりと。怒濤のように。ひたひたと。冬が見る見る。話が真実として。盛り上がるように敵が=山手樹一郎。豆粒大であったものが見る見る大きく=城山三郎)。迫り来る(危機が。敵が。同情の念が胸に)。勢いに乗って追い迫る。自然への肉薄を表現した言葉。軍勢数万がひしとつめかける。間近に迫る(期限切れが。ゴールが。死が。選挙が。敵軍が。火が。山が。予定日が)。 **ちかづく【近付く】** ▼近づく(死の瞬間が。深刻な危機が。退社時間が。足早に。小走りに。建物の玄関に。船が岸に。名人芸の域に。問題が解決に。恋愛が破綻に。一歩一歩。陰鬱な冬の気配が。帰らねばならぬ時刻が。原稿の締め切りが。刻一刻と完成が。ひそやかな足音が。いくらかずつ回復期に。演技力が完璧に。科学的な客観性に。出産日が目の前に。準備段階が終了に。つかつかとカウンターに。忍耐が爆発点に。足音が四方八方から。あるべき姿に一歩。重たげな足取りで。距離がぐいぐいと。露を置いた草を踏んで。ゆっくりと背後から。因縁をつけに威嚇的に=玉村豊男。追いつくりと背後から。因縁をつけに威嚇的に=玉村豊男。追いつくすり寄るように=山田太一。影のようにゆっくりと=中沢けい。磁石に引かれるように=隆慶一郎。他人の目をはばかるように=藤本義一。二隻の船がお互いを糸で引き合っているように=泉優。ぶつかるくらい=本多孝好。眼にもとまらぬ速さで=真継伸彦)。 ▼音が近づく(サイレンの。シャリンシャリンと鈴の=石森延男)。終わりに近づく(戦争が。春休みが)。従って近づく(木立の間を。通行人の間を。闇を)。 ▼日が近づく(試験の。出立の。約束の)。近づいていく(一歩一歩。じわじわと。すうっと。するすると。だんだん。ふらふらと。ゆっくりと。用心しながら。よろよろと。そろりそろりと。ぬき足さし足で。次第に最終の姿に=内橋克人)。近づいてくる(怪しい気配が。山上から雲が。ぐんぐん。こっそり。じわじわと。すっっと。するすると。そろそろと。のっそりと。ひょこひょこ。ぶらぶら。ゆっくりと。ゆるゆると。よろよろと。先頭集団の尻尾が。パトカーのサイレンが。ひたひたと足音が。過去から現在のほうに。靴音が小走りに。荒々しい足取りで。一歩また一歩と。そろりそろりと。さらさらと衣擦れの音が=小松左京。オートバイが宙を飛ぶようにぐいぐい=日野啓三)。 ▼近づきつつある(時々刻々。確実に目標へ一歩一歩=五木寛之)。距離を縮める。 ▼接近してくる(地響きが。まっしぐらに。恐ろしい速さで。変わらぬ足取りで)。 ▼そばに来る(ゆっくりと。ひょこひょこと)。そばへ寄ってくる(静かに。つかつかと。馴れ馴れしく。のっそりと)。 ▼歩み寄る(足早に。大股に。つかつかと。物怖じもせず。ゆっくりと。しなやかな身のこなしで。老婆が前かがみの姿勢で=高橋和巳)。足取りで歩み寄る(優雅な。覚束ない)。死地への一歩の歩み寄り。すり寄る(権力に。猫が主人に)。相手にすり寄っていく。猫なで声ですり寄ってくる。 **ちかづける【近付ける】** ▼近づける(画面に目を。窓に顔を。質問を核心に。船を磯に。犬が地面に鼻を。提灯の明かりを。バーナーの炎を。タンブラーを口元に)。 ▼口を近づける(マイクに。耳元に)。 ▼接近させる(気持ちを。距離を。二人を。娘を)。すり寄せる(椅子を。肩を。頬を。身を。顔を胸に。ホステスに体を)。 ▼近寄せる(頭を。顔を。友達を。耳を。身を。目を)。 **ちかよりがたい【近寄り難い】** 近寄りがたい(気位。表情。雰囲気を持った人物)。尊大で近寄りがたい人。敵の近接を防ぐ。接近するタイミングが難しい。そう簡単に接近できない。近付き難い(雰囲気。端麗な顔をした女)。強力な磁場で巡られたようで近づきがたい=高樹のぶ子。悲劇に耐えているような近づきがたい気配=山田太一。近づけない(見物人を。他人を。それ以上は。危なくて二度と)。 ▼近寄せない(男を。敵を一歩も)。前以上に近寄りにくくなる。おいそれと近寄れない。取っ付きにくい(感じ。話。人)。寄せつけない(ライバルを。そばに)。人を寄せつけないような淋し気な表情=辻井喬。寄れない(そばに。近くに)。足元にも寄れない大人の女の魅力に嫉妬を覚える=森瑤子。 **ちかよる【近寄る】** ▼近寄る(すぐ傍まで、そろそろと。つかつかと。事もなげにするすると。抜き足差し足で)。膝をつきつけるように近よる=本庄陸男。揉み手をして近寄っていく。 ▼近寄ってくる(死が。次第に。ぐいぐい。じりじりと。優しい素振りをして。まとわりかかるように=大佛次郎。死がやおら物憂げな腰を上げてそろそろと=有吉佐和子。スイッチをひねられた電気人形のようにするすると=武田泰淳)。無防備で近寄れる気安さ。いさり寄る(音もなく。膝で。我知らず)。手探りに奥へ進み寄る。 ▼寄っていく(馴れ馴れしく。人懐こく。物見高く。人見知りせずに)。 ▼寄ってくる(すっと。そろそろと。つかつか。どやどや。ふらふらと。わっと。走るような大股で=壺井栄)。 <652> **つめよる【詰め寄る】** ▼詰め寄る(居丈高に。思わず一膝。気色ばんで。血相を変えて。語気鋭く、胸倉をつかまんばかりに。押し殺した声で。つかみかからんばかりの態度で。詰問するような口調で=五木)。悠然とした足取りで詰め寄ってくる=熊谷。 **どたんぼ【土壇場】** ▼土壇場(今や首くくりという坂口。死ぬか生きるかという山本周。伸のるか反るかの舟橋)。土壇場で(気が変わる。力を発揮する。勇気が挫くじける。譲歩を迫られる)。土壇場に(来ておじけづく。なって逃げ出す)。最後の土壇場で(打っちゃる。裏切る)。 **なまなましい【生生しい】** 生々しい(記憶が未だに。去年の凶作の記憶も=熊谷)。八年前のことが昨日のことのように記憶になまなましい=源氏。昨夜の夢の中で見たようななまなましい気分"日野。生々しい臨場的体験。切り開いたばかりのなまなましい崖川端。歴史のなまなましい傷痕"五木。生々しく(鮮やかな色。記憶に残る。心に焼きつく。ショッキングな映像)。記憶が脳裏に生々しくよみがえる。傷が生々しく口を開いている=森環。▼生々しく残っている(感触が。聞いた言葉が耳に)。べたついた情緒的ななまなましさ=中野米。若やいだ円味だ。と潤いと生々しさが陽炎砂がのように立ち騰のぼる=岡本。 **のっぴきならない** のっぴきならない(運命の相剋ごう。憎悪を抱く。用で休む。ジレンマに陥る。ことが起こって身の破滅になる=田山。身の危険を感じる飯田)。悪い予感がのっぴきならない明瞭な形になる=丹羽。思想と現実とののっぴきならぬ苦悶にも横光。抜き差しならない責任を負う。抜き差しならぬ(危地に陥る。人生の問題。ところまで追いつめられる)。 **はくしん【迫真】** 迫真の演技。かつての忌まわしい噂が迫真性をもってよみがえる=陳。迫真的な描写。強初にいうな現実への迫真力。迫真力に(欠ける演技。満ちた演技)。描写が迫真力に満ちている。真に迫る場面を撮る。真に迫った(演技。表情)。 **はくりょく【迫力】** ひとりで世間を生き抜いてきた中年男の陰気な迫力“日野。のっぴきならない迫力がみなぎる。まわりを怯ょびえさせるぐらいの迫力がほしい内海。見ていると気分が悪くなるという人もいるほど迫力がある。宮尾。寒気のするほど恐ろしい迫力で圧倒する=深沢。迫力に気圧ぃぉされる。今一つ迫力に欠ける。異様な迫力に満ちている。顔が拡大されて畳一畳敷きほどあるような迫力を感じさせる=獅子。迫力ある脅しにたじろぐ。次第に高まりゆく緊迫感。緊迫感が日一日と募ってくる。日に日に緊迫感を増す。 **ひじょうじたい【非常事態】** 非常事態が起こる。非常事態に備える。非常事態を宣言する。非常事態宣言を(解除する。出す。発令する)。一旦事ある場合。一朝事あるときに備える。有事に備える。▼有事の際(一旦。一朝)。戒厳令を(敷く。解く)。戒厳令下にある。 **ひんする【瀕する】** ▼瀕する(経済が破綻に。絶滅の危機に。拷問にらによって死に)。もはや命は旦旦夕礼に迫っている今日。▼峠(ここ二三日が。今夜が)。危険が目前に迫る。 **まったなし【待ったなし】** ▼待ったなし(改革は。事態の解決は)。待ったなしの(課題。催促。所まで追い詰められる)。一刻の猶予もできない。もはや一刻の猶予も許されない佐山。 **よせる【寄せる】** ▼寄せる(哀悼の言葉を。異性に好意を。壁に耳を。近々と顔を。びったり体を。耳元に唇を。恋慕の情を。車を路肩に。波が岸に。体をぴったり。算盤にらを横へ。ざぶりざぶりと波の音が。いとわしげに眉を。首筋にそっと唇を。結果に大きな期待を。不快げに眉根を。偏奇な同情心を。ひたひたと潮が足元に。封筒を振って中身を一方に)。▼思いを寄せる(ほのかな。密かに)。▼関心を寄せる(重大な。特別な)。絞しゃを寄せる(鼻に。鼻の頭に。眉根に。目尻に。眉問にかすかに)。▼頬を寄せる(乳房に。妻の髪に。胸にびったりと)。▼身を寄せる(弟の家に。大樹の陰に。扉にびったりと)。額を寄せて(協議する。話し合う)。眉根を寄せて(考えこむ。にらむ。いぶかしげに言う)。眉の間に皺を寄せて考える。過分の文章を寄せてくれる。▼寄せてささやく(耳に唇を。耳に口を)。白い波頭が寄せては砕ける浜。一待の声が。有力な情報が)。▼かき寄せる(小皿のねぎを。砂を)。掃き寄せる(落ち葉を。紙屑を)。寄せ合う(互いに身を。馴れ馴なれしく体を。ぴったりと肌を)。傷口を嘗めあうために身を寄せあう森。波の音)。いったん退。いた人波がまた寄せ返す。寄せ来る(インフレ。敵軍。波)。肩を寄せ合って(歩む。生きる)。寄せ返す(潮の音。 **よりつく【寄り付く】** ▼寄りつく(鳥が。親元に。そばに。ほら穴に。五円高で)。▼寄りつかない(客が。若者が。家に。そばに)。他の客が近寄ってこない。近寄る気が失せる。一寸も一分も近づこうとしない=菊池。 **よる【寄る】** ▼寄る(ばらばら人が。頬にえくぼが。一二歩脇に。火の近くに。窓辺に。何かのついでに。寄りかかるようにそばに。行きがけにちょっと。そろりそろりと側そばへ二葉亭)。ちょいちょい寄るレストラン。皺しもが寄る(顔に。眉根に。眉間に。目尻に)。寄らば(切るぞ。大樹の陰)。気軽に寄れる店。 **リアル** リアルな描写を心がける。リアルに(思い浮かべる。描写する。事態を整理してみる)。状況がリアルに想像できる。絵に立体感を出す。立体的に表現する。瑞々ふげしい臨場感にあふれる。申し分ない臨場感を出す。写実的な(絵。描法を基調にする=松本)。写実的に(描く。書く)。 <653> # 調理する・料理する **あじつける【味付ける】** ▼味つける(薄めに。濃いめに。甘辛く)。味つけが(淡泊。バラエティーに富んでいる)。揮発性の抒情でたっぷり味つけしたワルツ=開高。▼味つけする(失敗談を。肉を)。パスタをにんにくと唐辛子で炒め、塩で味付けする=伊坂。キッチンの煮物の味つけでも調べに行くときのようにゆっくりと冷静に部屋に行く=小池。料理の味付けを工夫する。味の付け方が上手。 **いためる【炒める】** ▼炒める(小麦粉を。肉を。ベーコンを。みじん切りを。野菜を。油で。バターで)。用意した食材を炒め合わせる。▼煎りつける(太陽が。夏の陽が。肉を。じりじりと)。炒り交ぜる(あられを。卵を)。煎る(銀杏を。胡麻を。椎の実を。大豆を。豆を。麦を)。 **うすぎり【薄切り】** トマトの薄切りをのせる。ハムの薄切りを巻く。▼薄切りにする(胡瓜を。パンを)。寒天をナイフで紙みたいに薄く切る=長崎。▼スライスする(魚を。パンを)。 **かま【釜】** 釜から湯を汲み出す。釜の下を焚きつける。焼けた釜の中のような耐えがたい熱気=宮本。釜を火にかける。電気釜でご飯を炊く。 **かまど【竈】** 黒い空を塗りつぶしてかまどの中のように四囲一面が焰の幕の中に張りめぐらされる=林芙。かまどに薪をくべる。竈の(煙がほのぼのと立ち昇る=徳田。底にしっとりと落ちついた灰=長塚)。竈の火がべろべろと燃え上がる=長塚。野はかまどのように熱く土さえ燃えそうな暑い日=室生。へっついに大鍋を載せる。 **こむぎこ【小麦粉】** 小麦粉を(水でこねる。蕎麦のつなぎに使う。まぶしたように精気の乏しい表情=高橋三)。地粉でうどんを作る。粉っぽい乾いたメリケン粉のような雪=室生。 **さとう【砂糖】** 砂糖に群がる蟻たちの町=池田。砂糖の洪水のような感傷性=中村真。匙からこぼれる粉砂糖のようにさらさらと形を変える=山田詠。砂糖のように甘ったるい甘味=九鬼。水を含んだ角砂糖のように崩壊する=倉橋。離婚した中年の人って蟻がたかる砂糖みたい=干刈。堅雪の表面がざらめのようにざらついている=石森。 **しお【塩】** 塩で身を清める。塩でも(なめたような苦い=石坂。撒かれかねないほど邪魔にされる=貫井)。塩の加減を工夫する。塩を吹いたように白っぽく浮き出したしみ=日野。敵に塩を送る。隠し味に塩を効かせる。水に漬けて塩を抜く。道路の小砂利が塩を撒いたように霜柱に凍てつく=徳永。塩のように乾いた細かい雪がビュウビュウ吹きつのる=小林多。甘塩の(一夜干し。鮭)。料理の材料をあらかじめ薄塩にしておく。悲塩の(一夜干し。梅干し)。塩蔵する(茸を。山菜を。野菜を)。塩蔵で保存する。塩漬けになっていた株をどうにか売り抜く。提出した企画が塩漬けにされる。塩漬けにする(魚を。肉を。野菜を)。風景を潮風の中の塩分のようなひりひりする悲哀が蝕む=三島。結晶する塩分のように純粋な成分ばかりがきらめく思い出=三島。 **スパイス** 皮肉のスパイスが効く=大原。スパイスの効いたソース。香辛料と下味が効いている=篠田。香辛料を利かせた料理。おろし生姜を添える。薬味の効いた食べ物。料理のときの塩胡椒にがきつめ=向田。多少のうしろめたさが胡椒のようにぴりっと利いて人生を形づくる=機尾。トウガラシを食べたサルのような顔=灰谷。唐辛子を噛みすぎたときのような嗄れ声を張り上げる=井上ひ。山葵のきいたのを口に含むと鼻の裏側をキュッとくすぐられる一種の快さに似た爽快感を与える=高見。山葵や山椒のような毒舌や諧謔=円地。 **だいどころ【台所】** 西欧風に殺伐とした台所=大岡。台所に(立つ。入って立ち働く)。台所の屑籠がごみのような匂いがする裏通り=原田宗。そそくさと台所を始める。台所仕事を受け持つ。よく使いこまれた台所用品。お勝手に(立つ。回る)。勝手口から(厨に入る。外に出る)。勝手道具を整える。厨に立つ。厨房に(入る。隣接した食堂)。食器類を厨房に運ぶ。料亭のような完備した調理場。流しで食器を洗う。流しに汚れた食器が散乱する。水が叩き合わされたように動きながらコンクリートの流しに落ちる=黒井。キッチン(建築雑誌のグラビアを切り抜いたような優美な=阿刀田。システムキッチンのショールームのようによそよそしく味気ない=小川)。キッチンとリビングを忙しく往復する=貫井。キッチンにこもって料理を作る。コーヒーの匂いがキッチンに充満する。スリッパをばたばた鳴らしてキッチンに入る=重松。 **たく【炊く】** ご飯を炊いて食べる。赤飯を炊いて祝う。炊ける(粥が。ご飯が)。▼炊き上げる(ご飯を。ふっくらと。煮物をやわらかく)。炊き込む(芋を。蛤を。きのこを入れて)。炊ぐ(黍を。米を。飯を)。飯盒で米を炊く。 **たれ【垂れ】** 酒と醤油を台にしたタレ。たれ(蒲焼きの。焼き肉の)。割り下で味つけをする。 **ちょうみりょう【調味料】** 調味料で味を調える。味噌(甘口の。辛口の)。味噌もくそも一緒にする。鰹節を(たっぷり掻く。すっすっと薄く削る)。醬油で(味つける。煮しめる)。醤油を丸く回す。酢で(和える。鯖をしめる)。舌ににじみ込むような酢の匂いが部屋一面にたちこめる=山崎。酢のような臭いが鼻をつく=山本有。昆布に酢を柔らかく霧のように打つ=山崎。 <654> **だいどころ【台所】** 西欧風に殺しっえられた台所大岡。台所に(立つ。入って立ち働く)。台所の屑籠がご「のような匂いがする裏通り。原田宗。そそくさと台所を始める。台所仕事を受け持つ。よく使いこまれた台所用品。お勝手に(立つ。回る)。勝手口から(厨に入る。外に出る)。勝手道具を整える。厨に立つ。厨房防沙ぅに(入る。隣接した食堂)。食器類を厨房に運ぶ。料亭のような完備した調理場。流しで食器を洗う。流しに汚れた食器が散乱する。水が継はれ合わされたように動きながらコンクリートの流しに落ちる=黒井。キッチン(建築雑誌のグラビアを切り抜いたような優美な=阿刀田。システムキッチンのショールームのようによそよそしく味気ない=小川)。キッチンとリビングを忙しく往復する=貫井。キッチンにこもって料理を作る。コーヒーの匂いがキッチンに充満する。スリッパをばたばた鳴らしてキッチンに入る=重松。 **たく【炊く】** ご飯を炊いて食べる。赤飯を炊いて祝う。炊ける(粥かゅが。ご飯が)。▼炊き上げる(ご飯を。ふっくらと。煮物をやわらかく)。炊き込む(芋を。蛤住を。きのこを入れて)。炊かしぐ(黍きびを。米を。飯を)。飯盒礼で米を炊く。 **たれ【垂れ】** 酒と醤油を台にしたタレ。たれ(蒲焼効ばきの。焼き肉の)。割り下で味つけをする。 **ちょうみりょう【調味料】** 調味料で味を調える。味噌(甘口の。辛口の)。味噌もくそも一緒にする。鰹節砂いぉを(たっぷり掻かく。すっすっと渉く削る)。醬油で(味つける。煮しめる)。隣池を丸く回す。酢で(和ぁえる。靖さばをしめる)。舌ににじみ込むような酢の匂いが部屋一面にたちこめる=山崎。酢のような臭いが鼻をつく=山本有。昆布に酢を柔らかく霧のように打つ=山崎。 **ちょうり【調理】** 調理の腕を振るう。▼調理する(魚を。肉を。野菜を。圧力釜で)。▼銀杏切心「りにする(大根を。人参にんを)。短冊形に刻む。切る(さくさく大根を。油揚げを三角に。豆腐を突きぃの目に。ねぎをざくりと)。▼小口切りにする(胡瓜を。ねぎを)。ざく切りにする(キャベツを。ねぎを。白菜を)。笹掻きにする(ごぼうを。人参を)。▼千切りにする(キャベヤを。にんじんを)。大根を千六本に刻む。▼そぎ切りする(刺身を。肉を)。▼短冊切りにする(大根を。にんじんを)。▼筒切りにする(ごぼうを。魚を。大根を。ねぎを)。▼ぶつ切りにする(魚を。肉を)。▼みじん切りにする(玉ねぎを。にんにくを)。乱切りにする(人参を。ねぎを)。輪切りにする(大根を。卵を。トマトを)。酢味噌で和ぁえる。▼裏漉ごらしする(餡ぁんを。グリーンビースを)。芥子醤油がられじて和える。菜箸を使い分ける。長い菜箸にいを器用に操る。魚を(さばく。三枚におろす)。豚肉をたこ糸で巻く。電子レンジで解凍する。冷凍食品を電子レンジでチンする。俎はぶの魚を料る。俎板の上へとんとんと夜丁を落とす=長塚。真ん中が回へこんだまな板"干刈。 **つけこむ【漬け込む】** ▼漬け込む(生薬を。野菜を)。よく漬け込んだたくあん。上手に漬けた漬物。 **なべ【鍋】** ▼鍋(コンロの上でことことと音を立てて湯気を吹く=原田康。ほうっと白く湯気が立つ=長塚)。鍋が(ぐつぐつと煮え立つ。ぐずぐずと濁った声を立てる=長塚。燃え盛る火の上でぐらぐら音を立てる=岸田)。鍋でもかぶったように頭が重い=新田。鍋に(油を回す。溶き卵を流しこむ)。鍋を火にかける。ガス台に鍋をかける。じくじく煮える鍋を囲む。磨き上げられた銅鍋のように肌艶がいい藤田。棚から中華鍋を取り出す。土鍋でぐつぐつ煮る。焙烙狙いで(あぶる。煎る)。鍋底が焦げ付く。鍋底のように真っ黒芥川。 <655> **にしめる【煮染める】** ▼煮しめる(芋を。肉を。野菜を)。醬油で煮しめた味。煮付ける(魚を。肉を。野菜を。甘辛く。砂糖でこってりと)。煮含める(芋を。大根を。たけのこを。豆を。弱火で)。 **にたき【煮炊き】** 煮炊きする(食べ物を。鍋で)。こんろで湯を沸かす。こんろの上で湯気を吹く鍋。アバートで自炊する。七輪に鉄瓶をかける。七愉の(上に土鍋を載せる。下をばたばたあおる)。▼ガスレンジにかける(鍋を。ボットを)。輪番で炊事をする。炊事する(家の中で。野外で)。 **にる【煮る】** 煮る(野菜を。気長に。柔らかく)。煮上がる(芋が。豆が。柔らかく)。雑炊が煮え立つ。煮える(スープが。ぐつぐつ。肉がしっかり。八分どおり)。煮返す(煮汁を。食べるたびに。一晩置いて)。煮崩れる直前で火を止める。煮込む(うどんを。肉を。野菜を。中火で。とろ火で。煮崩れるまで。ことこととシチューを)。煮出す(昆布を。煮干しを。番茶を)。煮立てる(汁を。スープを。湯を)。救詰まる(ジャムが。汁が)。煎じる(蚯蚓粉を。薬草を)。爪の垢ぁかを煎じて飲ませたい。薬湯を煎じて飲む。煎じ薬を煮出す。煮詰める(汁を。煎茶を。ソースを。話を)。半煮えの(芋。ご飯)。生煮えの(肉。野菜)。 **ひかげん【火加減】** 程合いの火加減。火加減を(強めにする。弱めにする)。火力が(強い。弱い。段々勢いを増す)。直火叱かで焼く(魚を。肉を)。中火で(炒める。焼く)。遠火で(手をあぶる。焼く。料理する)。強火で(炒める。煮る。焙ほぅじる。焼く)。とろ火で(煮る。焼く。ひっかき廻しながら根気よく煮つめる=山崎)。弱火で(炒める。焙じる。焼く)。 **ふかす【蒸かす】** ▼蒸かす(芋を。ご飯を。赤飯を。慢頭味礼しを。もち米を)。蒸籠せぃを火にかける。蒸気が上がる(さつま芋が。もち米が)。蒸す(蛤を。もち米を。焙烙沿いで)。蒸らす(紅茶を。コーヒーを。ご飯を。茶葉を)。 **ほうちょう【包丁】** ぎとぎとする包丁が口をとがらせた魚類めいている=北村。庖丁でまないたを叩くように右掌ひきのへりで何度もテエブルを叩く=武田炎。包丁にさらしを巻く。一心に包丁を動かす。ケーキに包丁を入れる。とんとんと包丁を使う。なぐさみに包丁を取る。出刃包丁を胸倉へ突きつける=梅木。▼包丁さばき(巧みな。熟練した。手慣れた)。牛刀を振りかざして襲いかかる=大藪。 **ゆでる【茹でる】** ▼ゅゆでる(蕎麦そばを。ラーメンを)。▼固ゆでにする(スバゲティを。パスタを)。麺がゆで上がる。うでる(うどんを。そうめんを。蕎麦を)。湯がく(たらの芽を。つくしを。ふきのとうを)。 **ゆどおし【湯通し】** 湯通しする(油揚げを。こんにゃくを。布を。若布を)。湯にくぐらせる。 **りょうりする【料理する】** ▼料理する(獲物を。田舎風においしく。あらかじめ手順を予習していたかのように手際よく小川)。料理の(手並みがよい。腕前はなかなかのもの)。料理の腕をふるう。▼料理をつくる(手早く。腕によりをかけて=藤本)。▼作り置きする(カレーを。シチューを)。▼料る(相手チームを。魚を)。 **りょうりにん【料理人】** 熟練した料理人が筒吹けの皮をむく手ざわ=杉本。料理人の腕がたしか。包丁の冴えを見せる。最高の素材を前にした料理人のような目つき=船戸。コックが腕をふるった料理。シェフが腕をふるった料理。包丁人の心が伝わる料理=梅本。板前として(名の通った男。身を立てる)。板前の才覚で足りない分を店売りの魚で補ったほど客が来る=梅本。腕のよい板前を雇い入れる。料理に取り憑っかれていると言っていいほどと板前修業に邁進にふしている三浦し。 <656> # 散る・散らばる **あちこち** 外壁があちこち変色する。ジャンバーがあちこち裂ける。体のあちこちがおかしくなる。あちこちから(野次が飛ぶ。笑いが起こる。火の手が上がる)。草原のあちこちで虫が鳴く。野良犬みたいにあちこちで寝る=灰谷。あちこちに(顔が利く。痛がんが転移する。声をかける。染みがつく。視線がさまよう。電話をかけまくる。花が咲いている。吹聴ぃふちしてまわる。飛び火する炎をひとつひとつ水で塗り消していく三浦し)。近所のあちこちに小さな沼がある。海原のあちこちに釣り船が散らばっている”村山。あちこちの(家をたずねまわる。施設をたらい回しにされる)。頬といわずおでこといわずそこらじゅうにキスしまくる=鷺沢。あちらこちらに(視線をさまよわせる。不義理ができる)。あっちへ(行ったりこっちに来たり。よろろ、こっちへよろよろ)。首と言わず足と言わず刺してくる。ここかしこに(情報網をはりめぐらせる。湯煙が立ち昇る)。夢がここかしこをさまよう。そこかしこがおぼろげに光る。そこかしこに(花が咲いている。雪が残っている)。そちこちにまばらに座る。暁を告げる鶏の声がそちこちに聞こえる。遠く近く朗らいの声が耳を騒がす=長塚。歌声が遠く近く聞こえる。くすくす笑う声が遠く近く行き交う有川。活気ある言葉をあっちこっちから浴びせかける=田山。あっちこっちと(周旋して歩く。ついで回る)。あっちこっちに(借金がある。飛び火する)。都内のあっちこっちを転々とする。そここここから(しのび笑いが漏れる。泣き声が起こる)。そこここで私語を交わす。そこここに異国情緒の跡を残す小松左。 **あのてこのて【あの手この手】** あの手この手で(偽装する。心理的な圧力をかける。やかましく言ってうる)。あの手この手を使って事態を収拾する。四十八手を心得る。手を替え品を替えて(勧奨する。説く。企てを推進する)。 **あれこれ** あれこれ(世話をやく。理由をつける。考えを巡らせる。くよくよ考える)。あれやこれや思いわずらう。それやこれや考える。 **いろいろ【色色】** いろいろ(骨を折る。苦慮したあげくの結論。不都合な結果がでる)。いろいろと(手を打つ。面倒を見る。思い悩んだ末結論に達する=中村真)。いろいろな(意味を込める。臆測が流れる。草花を植える。理由が重なる。思いがじわじわとあふれてくる。角度から検討する。職業を通り越す。方向に発展する。イメージが頭の中を駆け巡る=赤川)。いろいろの苦労が重なる。いろんな(問題を抱える。事柄を考えめぐらす。話を聞かせてもらう)。あれかこれかと(悩む。物色する。選択する余裕がない)。世評区々として定まらず。意見が区々に分かれる。学ぶ理由は十人十色。十人十色のやり方がある。身辺の諸事。諸事を(片づける。心得る)。▼諸相(死の。人生の)。諸般の(形勢を検討する。事情を考慮する)。人によって好き好きがある。心を干々に砕く。▼千々に乱れる(思いが。気持ちが)。とかくするうちに夏が過ぎ秋が過ぎる。とかくの(噂のある人物。風評のある男)。何とかかんとか(言って渋る。言われる。理由をつけて断る)。年度末は何のかんのと忙しい。ビンからキリまでそろっている。まちまち(意見が。年齢も職業も。評価は)。 **おもいおもい【思い思い】** 思い思いに(言葉を発する。席を取る。好きな料理を注文する)。思い思いの(格好で働く。考えにふける。方向に走る。ボーズをとる。姿勢で休憩をとる。方角へ散って行く。よそおいをこらす。武器を手に広場に参集する奥泉)。銘々思い思いの休息を取る=菊池。思い思いの場所に(座る。たたずむ)。適宜に帰宅する。 **かくち【各地】** 各地から(やってくる。避難民が集まる。よりすぐった精鋭山豊田)。各地に(爪痕を残す。評判が伝わる)。群雄が各地に蜂起し、うする。各地の言葉が入り交じる。各地を(遍歴する。旅行する。食いつめた渡り者。転々と放浪する)。全国各地で公演する。全国各地に(飛び火する。広がる)。全国各地を旅する。日本各地に(散らばる。分布する)。日本各地を巡回する。 **こじん【個人】** 人格を持った個人。一握りの会社や個人が潤うだけ軍司。個人の(責任に帰する。選択にゆだねる。尊厳を実現する。自由を最大限に尊重する=海堂)。個人を集団のうちに解消する。個人差が如実に出る。私人として行動する。 **さまざま【様様】** さまざまな(噂が流れる。援助を与える。困難に耐える。混乱に出会う。夢想が浮かぶ。意見に耳を傾ける。思い出がよみがえる。可能性を考える。感情が激しく揺れる。相談が持ち込まれる。要※がからまる)。さまざまに思いを巡らせる。長短さまざまな(作品。物語)。捨てる神あれば拾う神あり。各種の(品を詰め合わせる。手法を駆使する。翻訳を参照する)。有形無形に利益を得る。有形無形の(寄与。功績)。種々画策する。種々の(機械類。条件。民族)。種々様々な(姿。人間)。▼種々相(人間の。歴史の)。 **しぶき【飛沫】** ▼しぶき(絶壁に砕ける波の。暴風雨めいた狂った雨の"円地)。船が大きく揺れてしぶきが雨のように飛びこむ=山本有。劇はげしい心のしぶきが雨の音の中に溶け込む=林美。噴水の水しぶきがまぶしく輝く=小川。飛沫がそこら中に飛び散る。霧のような飛沫が散る辻井。冷たいしぶきが頬に降りかかる。波濤温とが烈しく渚の岩の群れにぶつかる度に沈鬱な響きと白々とした飛沫とをあげる=福水。波が上げる飛沫は曇った朝景色の中の鮮やかな白三島。滝がしぶきを散らす。怒濤火とがしぶきを立ててうち <657> かかる。波が砕けて白いしぶきとなって岩に這い上がる=三島。波がしぶきを上げて岩を打つ。波しぶきが顔にかかる。水しぶきを浴びる。荒々しく水しぶきを立てる。細かい霧のような水しぶてを立てる。馬が白い水しぶきをあげて駆ける=畑。水しぶきが玉のように光る。▼水しぶきが上がる(激しく。間断なく)。水しぶきが滝のように顔にかかる。水しぶきに木もれ日がきらきらと砕ける=三浦哲。水しぶきでずぶ濡れになる。水しぶきをあげて疾走する。 スプレー スプレーで水を吹きかける。スプレーを(吹きかける。뿜霧むする)。殺虫剤のスプレーを噴射する。ヘアスプレーの匂いが立ちこめる。 **さんざんばら【散々】** 散々(苦労する。叩きのめされる)。散々な(生活。皮肉)。 **さんぴ【賛否】** 賛否こもごも。賛否のほどは分からない。賛否両論が沸き起こる。賛否が分かれる。 **さまざま【様様】** さまざまな(品をとりそろえる。大きさの違う箱を)。多種多様な(用途に使える。商品)。諸事万端心にかける。千差万別の(生き方)。 **しりめつれつ【支離滅裂】** 支離滅裂な(話。主張)。支離滅裂で意味が通じない。話が支離滅裂になる。支離滅裂な行動。支離滅裂の論理。 **たよう【多様】** 多様な(見解。解釈)。意見が多様に分かれる。ライフスタイルが多様化する。多様性に富む。バラエティーに富む。 **ちりぢり【散り散り】** 散り散り(逃げていく。四方八方に)。散り散りになる(見物が。家族が)。 **ちらかす【散らかす】** 部屋に(おもちゃを散らかす。脱いだ服を散らかす)。テーブルに本を散らかす。悪文を紙面に散らかす=林。 **ちる【散る】** 散る(花が。クモの子を散らすように)。花と散る。潔く散る。あえなく散る。あっけなく散る。こうと散る桜。あえなく(玉と砕ける。露と消える)。 **ちりばめる【散り嵌める】** サファイアをちりばめた腕輪。ちりばめたように咲く。夜空に星をちりばめたよう。黒髪に銀粉をちりばめたよう。満天に星をちりばめたよう。 <658> # ち った人びとがばらばらに散って行く柴田翔。散っている(点々と人が。海上に漁ぃさり火が。紅梅の枝に紅の色が。血管の小枝が小さく線香花火のように=安部)。早春の陽が散っている寺の境内=井上靖。花が雨とともに散ってゆく。桜は散りぎわが美しい。花嵐に桜が舞う。木の葉が散るように一円の人びとが散り散りになる白洲。砕け散る(荒波が磯に。コッブが粉々に)。微笑がきらきらとこぼれ散る。▼地面に散り落ちる(花が。綿毛が)。▼散りかかる(花吹雪が。病薬比が。花びらがはらはらと)。散りこぼれる(萩の花片が。桜が風に。花びらがはらはらと)。散り敷く(月光が道に。桜の花びらが一面に)。桜の花びらが散り敷いた道。地上に散り吸いた落ち葉。落ち葉を散り敷くにまかせる=竹西。花がわびしく散り果てる"鈴木三。大慌てで逃げ散る。▼弾け散る(泡が。バブルが。火の粉が)。強い春の風に山桜が吹き散る火坂。▶舞い散る(小雪が。桜吹雪が。落ち葉が風に。枯れ葉がひらひらと。花吹雪となって。桜の花びらがはららと藤田)。光の細流が乱れ散る。 **てんざい【点在】** 点在する(杉の巨木が。幾つかの寒村が。茅葺きの民家が。まばらに人家が。住居がばらばらと。黒豆のように人の姿が=阿川弘。樹々が草原のいたるところに遠藤)。海に点在する小局。河畔に点在する小屋。三軒あるいは五軒とかたまって点在する農家のたたずまい藤沢。河原のところどころに島のように点在する高み"大岡。緑の野に白く点在する石灰岩"斎藤栄。月見草がはかない黄色を点在させている=大岡。平原に散在する家。人家がぼつぼつと散在する。幾つもの洞穴が散在している。 **てんてん【点点】** 点々と(連なる島。並んだ窓。海に漁いきり火が見える。灯る夕前吵;の明かり)。明かりが点々と瞬く。桜の花びらが点々と散っている。市街の灯が点々と連なって見える。小さな突起が点々とある。表面に点々と錆さびが浮く。船の明かりが点々ときらめいている。ボートが点々と浮かぶ。ボビーが点々と咲く。山百合の花が点々と白く浮き出す新田。海上に点々と(漁船が見える。浮かんだ小舟)。綿雲が白く点々とする=辺見。夕星が点々とする空。石の上を飛び飛びに伝う。雲が飛び飛びに浮かぶ。 **ところどころ** (歯が抜ける。はげ落ちところどころる。破損した屋根。まだらなむらができる内田百)。ところどころに(案内板が立つ。灌木必以が群がる。散在する。残骸が点在する。水たまりがある。雪が薄汚く残る)。言葉のところどころに嘘がまぶされる村松。ところどころを拾い読みする。 **とびちる【飛び散る】** 飛び散る(小さな種子が。血が扇形に。血が部屋に。血が点々と。灰が所構わず。ガラスの破片が。床の上にハンドバッグの中身が。かなり広い範囲に。しぶきがそこら中に。破片が四方八方に。滴がきらきらと。口を押さえたホースから水が伊坂。一連の不吉な言葉が脳裡20ぅに高橋和。生徒たちが風の前のほこりのようにばっと=山本有)。飛散する(粉磨い从が。雪が。ガラスの破片が。羽毛があたり一面に)。 **はっさん【発散】** ▼発散する(熱を。香りを体から。動物的な精気が。素朴な子供っぽさを。日ごろの鬱憤を。胸のもやもやを)。皮膚から淡く発散する体温。溜まりに溜まった情熱を発散させる佐藤愛。匂いを発散する(強烈なむせかえる。全身から生温かい"開高)。 **ばらばら** ばらばら落ちる(雨滴が。焼夷弾いたりが)。ばらばらで敵に当たる。ばらばらと(後を追う。貝を投げる。壁が崩れる。紙をはぐる。人が寄る。実を落とす。毛が抜け落ちる。紙片がめくれる。爆弾を投下する。楽爽いつきが落ちてくる。廊下に足音が起こる)。枝々から枯れ葉がばらばらと降る。髪の毛がばらばらと風に吹かれる。滴がばらばらと落ちる。頭の上に枝や葉がばらばらと降りかかる。行く手にばらばらと現れた人影。ばらばらな(服装。話題)。ばらばらに(腰をかける。四方へ走る。分解する。散らばった破片。離反させられた組織高橋和)。各自ばらばらに立ち上がる。家族がばらばらになって働く。髪型がばらばらに崩れる。兄弟がばらばらに散る。三人がばらばらに分かれる。死体をばらばらに切り刻む。歩き疲れて体がばらばらになってしまいそう。村上巻。イメージがバラバラに崩れる=大原。ばらばらになる(一族が。花弁が。体と心が。感情が。たがが外れて。ちぎれて。お互いの気持ちが)。ばらばらの記憶をつなぎ合わせる=田中。風が髪の毛をばらばらにする。▼ばらける(数が。髪が。集団が。メンバーが。列が)。大きなばらつきがある。ばらつく(髪が。対応が)。ばらりと(網を投げ出す。撒き散らされた珠玉。菊の花びらが二つ三つ落ちる=石川)。胸をつかんでバラリと落とす坂口。機体が空中分解する。雲がちぎれちぎれに飛ぶ。声がちぎれちぎれに耳に届く。語句がちぎれちぎれに脳に浸み込む。海面が一面に泡立って千切れ千切れに吹き飛ぶ光瀬。てんでんばらばらに(意見を言う。踊る。逃げる)。てんでんばらばらな方向を向く。 **ばらまく【ばら撒く】** ▼ばらまく(紅白の餅を。選挙で金を。裏金を政治家に。光をあたり一面に。金をばあっと気前よく星。爆弾を雨のように西木)。むずかしそうな言葉をばらまく割には根が軽薄な学者"倉橋。ビラが無数にばらまかれる。米粒をばらまくような音が屋根に響く。藤田。 **はんてん【斑点】** 斑点(黒子組〈のような。そばかすのような)。斑点がまばらに散らばる。障子いっぱいに無数に光線の斑点が泳ぎまわる=井伏。梢から辷すべり流れる日光の斑点に顔を染める=横光。徴かび <659> # 散る・散らばる-214 のような白い斑点のいっぱいある石敷三島。晴れ間からの光が水面に明るい斑点を作る=池田。 **ひとつひとつ【一つ一つ】** 一つひとつ(念入りに磨く。しかるべき手順を踏む。順番に確かめる。しらみつぶしに調べる。手に取って検する)。一つ一つ実例を並べていては際限がない=江戸川。記憶を一つひとつ確かめる。丹念に一つひとつ検討する。端から一つひとつ見て回る。夢が一つひとつ実現していく。一つひとつ丁寧に(並べる。拭く)。毛穴の一つ一つに寒さがしみこむ野坂。一つ一つの部品を慎重に点検する"小川。エピソードの一つひとつを書きつづる。檻ぉりの一つひとつを丹念に回って歩く。言葉尻の一つひとつをとらえる。服を一枚一枚脱ぐ。頁を一枚一枚読み進む。葉の一枚一枚が翻る。一枚一枚を丁寧に改める。糸を一本一本切る。釘を一本一本打ちこむ。指を一本一本しごく。草の一本一本がはっきり見える。逐一(詳しく語る。ノートに書き留める)。経過を逐一報告する。行動を逐一監視する。 **ひとりひとり【一人一人】** 一人一人(客を紹介する。性格が違う)。病人の一人一人に同情を寄せる。一人一人の名前を覚える。てんでに(立ってお辞儀をする。握り飯をかじる)。みんながてんでに勝手な真似まねをする。 **ふぞろい【不揃い】** 不揃い(形が。左右の長さが)。不揃いな(大きな文字。間隔。足音が追いかけてくる=高樹)。玉石混交の(クラス。作品。新入社員)。脈拍の不整が現れる。不整に散乱する違い灯=野上。品質にむらができる。むらがある(気分に。咲き方に。塗りに。分布に)。 **ふりかける【振り掛ける】** ▼振りかける(香水を。胡椒に礼を。粉を。塩を。唐辛子を。水を。雨あられと。オーデコロンを。砂糖をたっぷり。砂をぱらぱらっと)。 **ふりまく【振り撒く】** ▼振りまく(愛想を。あらぬ噂を。笑顔を。大人の魅力を。薔薇色以5の夢を。まんべんなく)。愛嬌をふりまく(巡っ葉加けな。こぼれるばかりの人形)。笑いと明るさと賑やかさが湧くようにこぼれるようにふりまかれる=海音寺。 **ほうぼう【方方】** 方々駆けずりまわって金をこしらえる=徳田。方々から来る。方々に(噂が広まる。影響が及ぶ。顔を出す。借りがある。電話をかける。迷惑をかける。引っかかりが出てくる)。方々の(国々から来る。町を回る)。▼方々を食われる(蚊に。蛋のぃに)。所々方々に根城がある。諸所を流浪する。諸方を(転々とする。めぐり歩く)。 **ほとばしりでる【迸り出る】** ほとばしり出る(喉から絶叫が。血が傷口から。暴言が口から。抑えに抑えていたものが。おできから膿ぅんが。口から激しい首葉が。不屈の力が五体から。水がものすごい勢いで。ありたけの暴言が激しきった無思慮な口から徳田)。泣くに泣けぬ溜め息が嗚咽ぇのように胸から进数にり出る=中河。肺腑ぶいからほとばしり出る叫び。奔出する(光が。水が)。情熱の奔出に任せる。 **ほとばしる【迸る】** ▼ほとばしる(一閃かいの光が。叫ほとばしるびが喉から。後から後から涙が。銃口から閃光ごんが。堰せきを切ったような感情が突然宮本观。溜まりに溜まり切っていた涙が弾かれたかのごとく=山田美。血が傷口から脈打つように=中野美)。水が滝のように进狙いる=大岡。熱血ほとばしる講演。淋漓りんとほとばしる鮮血。湧き上がりほとばしる闘志。水がほとばしる(蛇口から。冷たい。雪で嵩かさを増した)。一ほとばしらせる(恐怖の絶叫を。精一杯の声を)。 **まきちらす【撒き散らす】** ▼撒き散らす(弾けるような甲高い笑いを=船戸。不分明な呟ぶきを三島。安っぽい威厳を=伊坂。女の匂いをむんむんと船戸)。▼まき散らす(道に花を。陽気に笑顔を。あたりに火の粉を。煙草の吸い殻を。怒り狂い買雑言うゲロを=原田糸)。▼蒔きき散らす(笑いと噂と好奇の種を"佐藤巻。スピーカーが勢いのよい旋律を徳道沢との上に福水)。▼種をまき散らす(苦の。好奇の)。散布する(農薬を中から。薬剤を噴霧器で)。ぶちまける(ハンドバッグの中身を。マッチ箱から脚木を。胞跡ばの中身を外に)。放散する(液を。光を。幸福感があたりに)。 **まく【撒く】** ▼撒く(餌を。粉を。塩を。灯油を。花を。ビラを。遺灰を海に。花びらを道に。雲がばらばらと霰らを。スプリンクラーが水を。雑巾がけの水を庭に=北原)。 **まだら【斑】** 斑な鈍い光の濃淡。木洩、こもれ日の斑な模様が静かで優しい=丸谷。血の色がまだらに浮いた生白い肌。春の雪がまだらに残る道。木々の秋岡さから漏れる夕日の朱が横顔をまだらに彩る=原田彩。酔いが顔にまだらに出る=楨。斑に紅葉した小さな落ち葉内海。青黒い皮下出血が薄く斑に浮き出る=藤枝。外壁があちこち斑に煤けて変色する=黒井。木漏れ日が斑に落ちる=堀。解けかかった雪の間から草が斑に露出する藤枝。樹木が斑の影を落とす―藤田。濃淡のまだら模様。まだら模様を描く。松影がはだらに落ちている石段。春陽がはだらはだらに射しおろす。斑紋(体の。大理石の。葉の)。▼ぶち(白黒の。茶と白の)。ぶちの(犬。猫)。雪焼けがむらになる。木々の芽頃の疎林にすいて見える山々の異ひだにはあざやかに雪の斑が白い=吉川。斑のある大理石造りのマントルビース=松本。 **めいめい【銘銘】** 銘々別な顔を持つ。銘々が手を伸ばす。銘々に(勘定を払う。勝手な話をする)。銘々の持ち場につく。おのがじし(家路につく。進む道。思っ方向へ足を運ぶ)。各自の自由裁量に任せる。各々が(勝手に話す。責任を持つ。好きなようにくつろぐ)。各々の持ち場につく。 <660> # 使う・用いる **あくよう【悪用】** ▼悪用する(科学を。業界の慣行を。権利を。職旅を。他人の名刺を。地位を。知識を)。 **あてる【充てる】** ▼充てる(午前中の時間を仕事に。時間の余裕を観光に。賞金を住宅資金に。公明正大な金を選挙費用に三島)。▼充用する(生産のために機械を。募金を建設費に。翌年度の歳入を繰り上げて)。 **おうよう【応用】** 応用が多岐にわたる。基礎研究が応用へと発展する。▼応用する(経験を、原理を。法則を。日常生活に。臨床に)。 **かぐ【家具】** ▼家具(重おもしく莫大郊以な時の堆積を支えた=大江。生活のにおいのしみこんだ=日野)。新調の家具が部屋を飾る。家具と呼べるようなものは何もない=横山。住み手の愛情がしみこんだ光沢を放つ家具類"石坂。家財道具のほとんどを失う。什器北(家庭用の。事務用の。店舗用の)。新婚夫婦のにぎやかな調度"阿部。贅ぜぃを尽くした調度に囲まれる。▼調度品(豪華な。高級そうな)。 **かねくいむし【金食い虫】** 建てたはいいが管理費だけがかさんでいる金食い虫"篠田。社内で「金食い虫」と揶揄される三浦し。 **かねづかい【金遣い】** 金遣いが(荒い。細かい)。金使いの綺麗なバトロン肌の友人円地。金離れが(いい。きれい。悪い)。金払いが(いい。遅い。滞る。悪い)。 **くし【駆使】** ▼駆使する(該博な材料を。各種の手法『巧みな弁舌を。豊富な資料を。措辞を巧みに。能力をフルに。機略縦横の才を。さまざまな技法を。知る限りの手立てを。テクニックを縦横に。想像力を大胆に―赤瀬川)。得意の二枚舌を駆使してなんなくシラを切る=飯田。 **けんやく【倹約】** 倹約に努める。倹約を美徳に数える。コーヒー代を倹約する。財布の(口を閉める。紐ひもが堅い)。一文たりとも無駄な費用を出さない柴田鍵。切りつめる(コストを。生活費を最小限度に)。切りつめた暮らし。勤倹質素の(生活。美風)。勤儉力行を(重んじる。もって富をなす)。財政緊縮政策が行き詰まる。爪に火を(とぼして貯めた金梅本。ともすようにして貯めた金=西木)。 **こきつかう【扱き使う】** こき使う(思うさま男を。顎で。牛馬のように。さんざん。召し使いか何かのように太宰)。病身を虐使する。虐使に耐えきれず逃亡する。酷使する(従業員を。目を)。頭の中がからっぽになるまで体を酷使し汗をしぼり出す=飯田。 **こづかい【小遣い】** 自分の小遣いで買う。小遣いに(不自由する。ゆとりがある)。当分小遣いに不自由しない。小遣いをはたいて買う。小遣い稼ぎのアルバイト。小遣い銭いくばくかを拝借する。小遣い銭に事欠く。 **ざいりょう【材料】** ▼材料(ごくありふれた。飛び切り精選された)。まともな材料が残っていない。他の材料で代用する。材料をあれこれと選ぶ。原材料が(値上がりする。値下がりする)。原材料を(確保する。輸入する)。▼具(政争の。味噌汁の)。具がたっぷりの豚汁。おでんに欠かせない具材。原料を海外に依存する。最高級の材質。資材を(積む。運ぶ)。大量の資材を満載する。仕掛かった部材が工場内に停滞する=浅川。素材の幅が広がる。あれほどの素材はめったにお目にかかれない『船戸。各自が思い思いの素材を持ち寄る。多種多様の素材を使用する。悲劇的な素材を喜劇に変換する。新聞やテレビのねたにされる。小説のネタに困って悩む「清水義。ねたの信憑性が高まる。大スクーブのねたを握っている。 **さんざい【散財】** ▼散財する(女や博打で。旅行先で)。金の使い方が荒い。無茶苦茶な金の使い方。金を(散じる。粗末に扱う。右から左へ使い果たす)。無分別に金を浪費する。▼金を使いまくる(派手に。湯水のように)。金を使う(野放図に。惜しげもなく。見境もなく)。▼金をばらまく(気前よく。景気よく)。▼使ってしまう(あるだけ。少し儲けがあるとぱっぱっと派手にお金を灰谷。取った金を右から左へとみんな博奕誠くに=永井荷)。 **しきち【敷地】** 敷地に塀がめぐらされる。敷地の(外に出る。ゆったりした家)。敷地を贅沢だいに使う。地所を(買い入れる。手に入れる)。キャンパスで教えを乞う。キャンパスに学生があふれている。広大なキャンパスを持つ大学。 **しげん【資源】** 資源が(減少する。枯渇する。乏しい。偏在する。豊か)。資源に(制約がある。富む。恵まれる)。資源には限りがある。資源を海外に依存する。限られた資源を有効に生かす。資源リサイクルに取り組む。 **しご【死語】** 死語とされていた言葉が徐々に息を吹き返す=山田詠。半ば死語となる。過去の言葉が死語になる。人力車などと似たような距離に遠のいてしまった言葉=半村。廃語に等しい言葉。 **じつよう【実用】** 実用に(供する。適する。向く。結びついたデザイン)。実用化が(遅れる。待たれる。急テンポで進む)。研究の成果を実用化する。実用段階に入る。 **じょうじる【乗じる】** ▼乗じる(勢いに。一瞬の隙に。気延に。敵失に。騒ぎのごたごたに。もっけの幸いに)。混戦に乗じて敵の馬を奪う。混乱に乗じて逃亡を企てる。事変に乗じて天下を愛す。風雨に乗じて逃れ出る。虚に乗じて巧みに難関を切り抜ける『永井荷。内乱に乗じて天下をとる=司馬。夜陰に乗じて(唇を奪う。行動する。逃れる)。▼棹ょぉさす(時代の潮流に。時流に。流れに)。▼便乗する(計画に。時流に。ブームに)。 <661> # 使う・用いる―215 **しょうひ**【消費】消費が(落ち込む。回復する。拡大する。過熱する。低迷する。冷え込む。増える。減る)。▼消費する(エネルギーを。金を。時間を。資源を。気を。燃料を)。消費意欲を(促進する。そそる)。 **ぜいたく**【贅沢】『贅沢(一生に一度の。分に過ぎた)。贅沢な(美しい着物。装飾を施す。暮らしを改める)。広くはないが贅沢な造り。銀狐らしい贅沢な襟巻大佛。皇帝にも負けないくらい贅沢な暮らし芥川。無為という贅沢な時間の過ごし方"有吉。贅沢に整えられた室内。贅沢の(限りを尽くす。言える身分ではない)。そう悠長に贅沢も言ってられない二葉亭。贅沢を(言うと罰があたる。言えばきりがない)。収入不相応の贅沢をする。贅を凝らした城。贅沢きわまる生活。贅沢豪奢でふはくな雰囲気。贅沢三昧に明け暮れる。贅沢三昧の日を送る。▼おこる(口が。暮らしが)。驕習いこうな生活。験者をほしいままにする。豪勢な(構えの家。オードブルを楽しむ。料理をたらふく食べる)。豪勢に遊び暮らす。奢侈し、な生活。奢侈に(流れる。ふける)。賢ぜいを尽くした(衣裳。食膳)。贅を尽くして(建てた家。造られた部屋)。 **せつやく**【節約】節約に節約を(重ねる。加える)。▼節約する(経費を。コストを。時間を。資源を。手間を。電気代を。費用を。労力を)。冗費を省く。▼節減する(経費を。コストを。電力を)。節険を心がける。▼節する(飲酒を。経費を)。省エネに努める。省エネを(進める。図る)。省資源に努める。 **だいざい**【題材】▼題材(面白い。小説の。随筆の)。現代を題材に選ぶ。サラリーマン生活を題材にする。幾つかの作品に共通するモチーフ。モチーフが(通底する。様々に変奏される)。 **ついやす**【費やす】▼費やす(一日の大半を。多くの言巣を。修復に日を。千言万語を。探索に時間を。長い明日を。事務的な用件に時を。少なからぬ金額を。途方もない金を。二時間ほどを雑用に"三浦哲)。 **つかいかた**【使い方】人の使い方が上手い。使い方に熟達する。使い方を(教える。説明する。一通り教わる。練習する。一つ間違えるととんでもないことになる海堂)。機械の使い方を実演してみせる。▼使われ方(正しい。間違った)。税金の使われ方を明らかにする。用語の平易にしてこだわりのない暢達いうな使いぶり!三好達。▼使いよう(頭は。馬鹿と鉄仙は)。鉄の使いようを心得ている。使用法を(教わる。説明する)。▼用法(薬の。語句の)。 **つかいこなす**【使いこなす】▼使いこなす(多くの種類を。道具を。理屈を。器用に。自由自在に。上手に。コンビューターを。言葉を破綻なく)。誰にでも容易に使いこなせる。自家薬籠中のものにする。 **つかいこみ**【使い込み】使い込みが(発覚する。露見する)。使い込みに気づく。使い込みの件を斜問する。使い込みを認める。▼使い込む(月謝を。貯えを)。金を使い込む(会社の。店の)。公金を飲み食いに流用する。▼手をつける(会社の金に。公金に)。 **つかいにくい**【使いにくい】使いにくい(カメラ。携帯電話)。▼使いにくい(箸が。マウスが。部下として)。使い方に困る。使い勝手が悪い。 **つかいはたす**【使い果たす】▼使い果たす(大方の財産を。持ち時間を。金を瞬く間に。精も根も。遺産をあらかた。あたら才能と命を=瀬戸内)。遺産を湯水のようにつかい果たす=円地。▼使い尽くす(財産を。精力を。与えられた時間を)。▼食いつぶす(資産を。宝の山を。貯金を。資金をまたたく間に)。親から相続した財産を食い潰っぷす=鈴木光。▼使いきる(休暇を。体力を。補助金を。持ち時間を。とことん。レバートリーを。たちまちのうちに)。▼蕩尽に、いする(家産を。巨富を。財産を)。▼はたく(最後の金を。財布の底を。なけなしの金を。なけなしの蝦蔘口注を)。 **つかいふるし**【使い古し】使い古しの(機械。生地。ハンカチ)。使い古した機械のような身体“円地。兄の着古しを着て済ます。中古で間に合わせる。中古の(家具。車)。古着を染め直す。古手を着込む。▼お下がり(兄の。姉の)。お下がりの(服。ランドセル)。お下がりを着る。よれよれになった木綿のバジャマ=景山。よれよれの(着物。背広)。垢ぁぁじみたよれよれの布団。 **つかいみち**【使い道】使い道が(多い。限られている。少ない。広い)。銭の使い道がない。使い道のありそうな者を一本釣りする=浅川。使途を明らかにしない。裏金の使途を明かす。横領金の使途を糾明する。用途が(限られている。狭い。多様化する)。広範な用途がある。用途に応じて選ぶ。 **つかいやすい**【使いやすい】使いやすい(カメラ。キーボード。システム。台所。手帳)。抜群の使い勝手。事情を教えないまま使える弱腰の男は使うほうには使い勝手がいいコマ。有川。 **つかいわける**【使い分ける」▼使い分ける(公人と私人を。攻めと守りを。直線と曲線を。亭主と恋人を。本音と建前を。願ももと甘言を。いくつかの偽名を。硬低二つの姿勢を。サラダに合わせてドレッシングを。時と場合に応じて。凄すこみの利く声と邪気のない声を=城山。思慮深さと無邪気さを適切に"小川)。▼顔を使い分ける(表の顔と裏の。二つの)。 **つかう**【使う】▼使う(男に色目を。古風な表現を。莫大畑にな陇費を。言葉を杜撰ぶさに。物を粗末に。言葉を正しく。場所を広く。あの手この手を。柄にもない比喩ひゅを。仕入れたての知識を。取って置きの手段を。とんとんと包丁を。抜け目なく頭を。湯水のように金を。言葉をぞんざいに。銭をふんだんに。料理屋を接待に。お金をぱっぱと。びしびし遠慮会釈なく。在庫管理にパソコンを=川上。荘厳な葬送行進曲をBGMに=かんべ。あぶく銭を湯水のように=坂口。 <662> # つ 言葉を切れ味のよい刃物のように"円地)。使うだけ使うとそれこそ弊履のように閑職に廻す向田。使う(かなりの。なけなしの)。言葉を使う(丁寧な。乱暴な。故郷の。訛なまりの抜けない)。手を使う(少々強引な。あくどい。あらゆる。汚い。小賢妃をしい)。有効に使う(休暇を。時間を)。おだてて人を使おうったってそうは行かない"五木。▼使わせる(産湯を。湯灌灬ゅを。湯を)。▼遣い手(かなりの。名の知れた剣の)。値段以上の使いでを感じる。使い慣れた(道具。パソコン。万年筆)。使い慣れない表現。財産を消却する。▼行使する(強大な力を。権限を。実力を。自由を。黙秘権を。権利を正当に)。使用が(困難になる。盛んになる)。まだ五六年は使用に耐える。使用する(大量の火薬を。より有効に。従前の通り)。使用頻度が高い。▼使われる(実弾が。偽札が。普通に。女に頭で。さんさん。日々。逆宣伝の材料に)。使い込まれた柄は手になじむ。よく使い込まれた台所用品。・利用される(重宝に。体よく)。▼使わない(無駄な金を。お座なりにしか。同じ言葉を二度。厚かましいくらいに神経を=大佛)。使われた形跡がない。宝の持ち腐れ。二度と使いたくない。余計な金は一文だって使う必要はない。寝かせておく(資本を。土地を)。これまで一度も利用したことがない。 **つかえる【使える】** ▼使える(両手が。誰はばからず大っぴらに。交際費がたっぷりと)。使える限りの手を使う。自由に使えるお金がある。▼使えない(上手な言薬が。実質的に)。使い方が分からない。何の使い道もない。使い物になりそうもない。とても使い物にならない。使いようがない。ねじが馬鹿になる。 **どうぐ【道具】** 道具が雑然と散らばる。役に立つ道具が欲しい。ままごと遊びの道具を買い与える。嫁入り道具を揃える。人を道具のようにあつかう司馬。小道具を取りそろえる。道具一式が揃っている。奈良か平安の昔のことのようななんとも古めかしい道具立て阿部。道具立てがそそう。顔の道具立てが整っている。道具立ての大きい顔。道具類をぼつぼつ売って喰って行く=岡本。▼アイテム(主要な。人気の)。細々した日用品。日用品をそろえる。日用雑貨を商う。 **ばってき【抜擢】** 異例の抜擢を受ける。▼抜擢する(大学教授に。これと思う人材を)。▼抜擢される(エースに。主演に。人事異動で係長に。テレビドラマの主役に)。誰もが言葉をなくす驚愕始にうの抜擢人事=横山。登用する(官吏を。若手を。気鋭の新聞記者を。最も適した人材を)。 **ふりむける【振り向ける】** ▼振り向ける(予算を福祉に。労力を他に。心のありったけを。落えを雇用維持に)。▼転用する(予算を。農地を宅地に。他の目的に)。▼流用する(会社の金を。在庫品を従来の説を。積立金を。補助金を)。 **むだづかい【無駄遣い】** 無駄遣いを(チェックする。やめる)。▼無駄遣いする(エネルギーを。国費を。資源を。電気を)。無為に時間を費やす。無駄な(歳出を重ねる。時間を費やす)。無獄に(時間を浪費する。力を使い果たす)。エネルギーを無駄に費やす。歳月を空しく費やす。馬鹿馬鹿しい時間の冗費にいらいらする=壺井。▼使いまくる(金を。腰を)。▼徒費する(金を。財産を)。滋賀(エネルギーの。お金の。水の)。濫費を(抑える。慎む)。ロスが出る。▼ロスする(時間を。タイムを)。空費する(才能を。予算を。いたずらに時間を。せっかく与えられた自由を内輪の揉め事で"石坂)。無駄金が(多い。出る。減る)。無駄金になる。 **もちいる【用いる】** ▼用いる(奇襲戦法を。権謀術数を。非常手段を、部下の提案を。意識的に。効果的に。象徴的に。比喩的で妙に。うっかり。一般教育に意を。考え得るあらゆる手段を。詩をブロバガンダに。手ぁたり次第に。いずれも区別なく)。▼訴える(非常手段に。武力に。暴力に。非合法的手段に)。共用する(道路を。庭を。部品を。部屋を)。麻薬の常用者。睡眠薬を常用する。機文字を多用する。▼発動する(強権を。拒否権を。公権力を)。災害救助法の発動を求める。併用する(いくつかの方法を。ハンドバッグと風呂敷を)。▼乱用する(外国語を。権威を。戦権を。手あたり次第に)。▼起用する(新人を。ブロを。閣僚に。先発に。代打に。通訳に)。リサイクルする(空き瓶を。建材を。古紙を。資源を。電池を。廃材を)。▼更生する(古い衣服を。古着を)。古紙を(回収する。再生利用する)。▼再利用する(食用油を。タイヤを。段ボールを。廃材を。原料として。コンクリートを)。 **りよう【利用】** 利用する(価値がある。に足る力を持つ)。利用する(一瞬の機会を。親父のコネを。偶然の一致を。公共施設を。交通機関を。自然の恵みを。社員食堂を。常套手段いまだにうを。前人の業績を。水の力を。政治的に。機を逃さず。これ幸いと。渡りに舟と。不特定多数の人が。余すところなく。勢力争いをうまく。安い労働力として。利用できるものは何でも。夫の名声を容赦なく=中村貞)。▼利用できる(自由に随時)。たまの休みを利用して訪れる。地位を利用して私腹を肥やす。廃材を有効利用する。▼活用する(専門的知識を。最大限に。有効に)。父を踏み台にして世に出ようと画策する=山岡。▼ユーザー(潜在的な。標準的な)。新たなユーザーを開拓する。利用者が(増える。減る)。▼利する(巨体を。軍事力を。現職の強さを。好機を。地勢を。騎馬の機動力を豊田)。 **ろうひ【浪費】** 浪費する(エネルギーを。金を。貴重な時間を。青春を。必要以上に。無分別に。持て余した力を)。財布の紐。もが緩む。化粧と痩せることと新しく服や靴を誂えることにしか興味のない低能で下劣で信じがたく浪費家の女"小池。 <663> # 掴む・握る―216 **え【柄】** 柄が(抜ける。がたがたに動く)。受け取った傘の滑らかな柄が生き物のような体温を秘めている"黒井。使いこまれた柄は艶があって手になじむ=高田。柄を(すげる。つかむ。握り締める)。痺しびれが柄を通して伝わってくる。はたきの柄を握る。ボンブの柄を押し下げる。刀の柄に手を(かける。伸ばす)。 **えりくび【襟首】** 髪の毛が伸び過ぎて襟首がむさい。唇が衿首から耳へと道はってくる=北原。風が襟首に冷たい。霧のような雨がひやひやと襟首に入る=国木田。襟首を(ぐいとつかむ。鷲捌劣れみにする。つかまれた子供より他愛ない=小林多)。▼襟首をつかまれる(悪魔に。背後から)。襟髪にしがみつく。襟髪を(捕まえる。つかむ)。 **おやゆび【親指】** 拇指必吟が蛇の鎌首のように突っ立つ=本庄。親指で涙を拭う。撃鉄を親指で起こす。親指と人差し指でゴムを摘っまむ。オーケーのサインのように親指と人さし指で円を作ってみせる=笹沢。指の親指にぼやぼやと生えている毛=辻井。親指の(先ほどもある大粒の真珠"あさの。根元が蟹かにのはさみの肉のように隆起する"河野)。薄い氷の上を歩いているように足の親指のつけ根にそっと力を入れる"清水俊。 **かたて【片手】** 指先が何かを掴っかみかけているような心もち内側に曲がった片手"日野。片手で(肩を叩く。扇子をあおぐ。涙を拭う。仏を拝む。目を押さえる)。海岸をスケッチブック片手に歩きまわる=江戸川。コーヒーを片手に歩いてくる=松岡。▼片手に持つ(カメラを。銃を)。片手の指を折りながら早口に数を数える=開高。片手を(口にあてがう。大きく振り上げる。だらりとぶらさげる。一二三度ひらひらさせる。ひらひらと泳がせる。眼庇さびにして見る。頭の後ろにあててしなをつくる=林真。鉈なたのように振り下ろす谷川)。頬に片手をあてがう。ボケットに片手を突っ込む。壇上の演説者のごとく片手を高々と挙げる―武田発。長い間の知り合いのように親し気に片手を上げて合図する=日野。拍手に応えて片手をあげる。 **キャッチ** 情報のキャッチが遅れる。▼キャッチする(救難信号を。情報を事前に。いち早く動きを。事故の第一報を。横っ飛びでボールを)。 **くすりゆび【薬指】** 指輪を薬指から外す。中指と薬指とが弾丸の破片のために根元からもぎとられて指が影絵の狐娘っのように三本しかない=野間。指輪を左手の薬指に欲はめている。左の薬指にダイヤモンドが光る萩原薬。 **こゆび【小指】** 毛虫に撫でられているような感触の張りついた左手の小指"宮本輝。小指が次第にうっすらと糸に包まれて繭のようになる三浦愛。右手の小指がコッブから白魚のようにはね上がる新田。二人の小指が無邪気にからみあう壺井。桜のやにを小指に白く巻いて遊ぶ=三浦爹。小指の腹で涙を拭う。小指を(びんとはねた気取った手つきで盃を口へ運ぶ=船山。やさしく折り曲げて怅らかい毀びんの後れ毛をかき上げる=有島)。 **すで【素手】** 素手で(魚を捕る。闘うことの無謀さを思い知らされる=柴田鍵)。虎を素手で殴り殺すほどの力"中野美。振り向きざま犯人の繰り出す刃物を素手で掘っかもうとする=小林久。 **つかむ【掴む】** ▼掴む(潰してしまうのかと思うほど乱暴に鳥を"長野。痺しびれるほどの力で手頭吹くをぎゅっと=長与)。▼つかむ(腕のつけ根を。運命の糸を。巨万の富を。コートの袖を。再挙の機を。事件の真相を。事件の全貌を。事実関係を。全体の流れを。ナイフの柄を。濡れ手に栗ぁぁを。人の心を。復讐しの機会を。ほぼ本筋を。むずと襟首を。むずと手首を。むんずと腕を。両の乳房を。論文の主旨を。髪を乱暴に。事実を正確に。状況を的確に。肩を力一杯。状況を一瞥いで。砂を一つかみ。膝をぎゅっと。いち早く情報を。スクーブのねたを。手がむなしく空を。はっきりとした証拠を。勘所をしっかりと。首筋をむんずとばかり。幸福を自らの手で。情報をいちはやく。凧たこが風に少しも逆らわず風を上手に"灰谷。溺れかかった人は薬もらでも=久米)。▼肩をつかむ(ぐいっと。むずと)。恐ろしいものを逃れた子供が母親に組りつくみたいに肩を掴む"川端。ぐいとつかむ(腕を。肩を)。▼つかまされる(食わせ物を。にせ札を。不渡りを。まがいものを)。▼つかませる(金を。小金を。袖の下を。賄賂を)。▼つかまれる(後悔に胸を。利き腕の手首を)。花束を大掴みにする。▼つかみ上げる(石を、海草を。硬貨を。子猫を。ちり紙を。胸ぐらを)。▼つかみ締める(太刀を。袴邽かを。ぎゅっと)。つかみ取る(受話器を。球を。ネックレスを)。手づかみで食べる。手づかみにする(魚を。帽子を)。▼一つかみにする(髪の毛を。花を)。髪の毛を引っつかんで引きずり回す。吊り革に(つかまる。ぶら下がる)。疲れた体を吊り革に委ねる。鷲もしづかみにして引き倒す。▶鷲づかみにする(女の尻を。札を。太刀を。乳房を。帽子を)。秘密の暗さ重さが胸を鷲掴みれみにする=森瑙。 **つかめる【掴める】** ▼掴める(おぼろに話の中心点が"伊藤発。何らかのヒントを=東野)。▼つかめる(尻尾が。真相が。チャンスが。かろうじて。はっきりと輪郭が。何かの拍子できっかけが奥田)。労せずして確実な利潤をつかむことができる=山本周。手を伸ばせばつかめそうな豪華な星空五木。▼つかめない(相手の真意が。確かな証拠が。言い出すタイミングが。今もって足取りが。起き上がるきっかけが。なかなか尻尾 <664> # つ が。問題解決の糸口が。実態がなかなか。手応えがとんと)。杳ょっとして手がかり一つ掴めない船山。▼一向につかめない(正体が。手がかりが)。▼つかみそこねる(きっかけを。チャンスを)。時間の流れがつかみにくい。手がかりもつかめない(少しの。何の)。 **つねる【抓る】** ▼抓る(腿ももをしたたかに"胡桃沢。血がにじむほど=胡桃沢)。▼つねる(尻の肉を。頬を)。わが身をつねって人の痛さを知る=山田渕。つねり上げる(手の甲を。尻を力任せに)。 **つまむ【摘む】** ▼つまむ(レタスを一枚。たるんだ頬の肉を。中指と人差し指で碁石を。首筋を猫でも扱うふうに谷村。濡れた袖口を神経質に=武田奈。鍵を二本の指で濡れ雑巾みたいに『尾辻)。▼指先でつまむ(芝を。無精髭ぶんを)。▼指でつまむ(耳たぶを。ひどくきたならしいものを持つみたいに=阿部)。▼つまみ上げる(布の端を。ピンセットで、髪の毛を小粋に)。糸くずを摘み上げるように不快の種を摘み上げる=森環。 **つめ【爪】** ▼爪(真っ赤に塗った長い。マニキュアなしの短い。精巧なガラス細工のように頼りない赤ん坊の=角田。妖怪の刃のような鋭い=中島敦)。爪が(皮膚に食い入る。深癖に切りそろえられている高橋涼。掌7060に突き刺さりそうなほど強く拳を固める=東野)。桜色の爪がきれいに並んだ手。爪で(歯についた食べかすをほじる=奥田。引っ掻かいたぐらいの疵きず=新田)。畳の目を爪で引っかく。瓶を爪ではじく。山脈が青空に幽かすかに爪でつけたような線を引く堀。舌についた紙を爪で剝ぎ落とす“重松。老人の爪と同様に粘り気がなく艶を失う。幸田文。爪に(マニキュアを塗る。やすりをかける。火をとぼして貯めた金梅本)。鷲ゃしの爪に挟まれたみたいに両腕に抱えこまれる=田辺。爪の(短い太い指。問に黒い汚れが溜まる=桐野。色が見事な桜色で白い半月形がくっきりと見えている=高橋治)。土いじりをした後のように爪の先が真っ黒。原田宗。爪の垢ぁかほども信用していない"清水俊。癇性认し佛。牛の血のように染めている女なほど短く剪きる林美)。いらいらと爪を噛む。能ある鷹たかは爪を隠す。自分の心に爪を立ててもがき苦しむ="山田詠。琴の爪を仕舞うほどの小さい石鹸箱"林京。敵意の爪をむき出しにする!連城。▼爪を立てる(猫が。髪に。背中に。肌に)。蟹かにの爪のような梢の先端「日野。生爪がはがれる。 **て【手】** ▼手(忙いて骨ばった小さな森環。油紙みたいにがさがさした=小川。蟹かにの鋏凪さのようにかじかんだ=小林多。木の根のように不恰好に大きいザラザラした小林多。氷のように冷たい=あさの。ひとしお洗いぬいたようないい色つやの梅本。木材を磨くやすりのような清水俊。柔らかいもみ皮のような老人の"林笑)。手が(勝手に動く。空を切る。小刻みに震える。だらりと垂れる。止めどもなく震える。ぶるぶる震える。ぽってりと柔らかい。わなわな震える。雨に当たったように冷たい高井。痛いほど冷える=長塚。絹ハンカチのように頼りないほど柔らかい=林美。甲を下に掌~60を上に腕ぶこびかけた花びらのように柔らかに握られる谷崎。透けるように白い渡辺。火のように熱い=内田百。幼児のように柔らか=光瀬)。動いていた手がびたりと止まる。折よく手があいている。言葉より先に手が出る。子供から手が離れる。とても手が出ない。白い手が水で濡らしたように色鮮やかに見える=大佛。憑。かれたように手が器用に動く=水上。日常仕馴しゃれているかのようについ手が動く"永井路。バラバラと寄せ木のように手がほどける=檀。吹き下ろし舞い上がる風の手がシートを叩く“干刈。手をせっせと動かす。▼手の動き(不自然な。優美な。素早い)。▼手が伸びる(とっさに。背後に。反射的に。すうっと。スカウトの。にゅっと)。手から(鍵が落ちる。筆が落ちる)。人の手から手へと渡される。手と手を取り合う。手に(職をつける。力が入る。入るかぎり集める)。ペンを手に持つ。掌てに唾して鋭くもをふりかぶる=本庄。▼手にかかる(水が。練途の演者の)。手に取って(眺める。見る)。手の動きが止まる。手を(打ってはやしたてる。するりと抜ける。つかんで離さない。取るようにして案内する。バンバンと鳴らす。メガホンにする。休めてぼんやりする。・別れる。高々と差し上げる。挙げろと言われたような不様な恰好跡っで手を上に挙げる高見息)。穴の中に手を突っ込む。あわてて手を引っ込める。ぎゅっと手を握る。三角巾で手を吊る。焚たき火に手をかざす。容易に手を離そうとしない。カンガルーのように手を胸もとに垂れる=阿刀田。寒さに手を海老えびのように赤くへし曲げる"有局。死んだ人みたいに胸の上で手を組む倉橋。狡ず。そうな眼を光らせ手を蠅ぃえのようにこする=遠藤。▼手を当てる(肩に。口に)。▼手を入れる(袋の中に。ポケットに)。手をかける(刀に。肩に)。手を組んで(考える。行進する。仕事をする)。手に手を携える。手を携えて逃進に心する。二人手を携えて行く。手を叩く(景気よく。ばちばちと。バンバンと)。▼手をつく(しとやかに。恭しく。ばたばたと)。恋人同士のように手をつなぐ向田。仲よく手をつないで歩く。▼手を離す(汚いものでも放り捨てる感じで高樹。電気にでもふれたように遠藤)。腰に手を(あてがう。当てる)。手に手に(かごを持つ。小旗を持つ。武器を取る)。手に手をとって(駆け落ちする。逃げる)。手の切れるような(新札。冷たく美味い水=村上奏。ぱーんと張った包装紙で包む=山崎)。手が届く(痒かゅいところに。五十に。政権に。目標に。救済の)。無理をすれば手が届きそう。手を伸ばせば届きそうな(位置。峰)。▼手が届かない(メダルに。値 <665> # 掴む・握る―216 段が高くて。場所が高くて。河の向こう岸のように目には見えていても決して=光派)。手の届かない(距離に離れる。高貴な珠玉。所に逃れる)。手も届かぬような愛者に、な生活林美。▼手を振る(爪先立って。犬を追うように=中上。記憶の中から恐ろしい思い出を追い払うように=遠藤)。手を(邪険に振り払う。じゃれるように軽く振る=松浦。ひらひらと振って追い払うような仕種しくをする=森瑶)。言葉がその辺にまだ漂っているのを押しやるように手を宙に振る=伊藤整。「シッシッ」とでもいうように手を鼻先で振る=階沢。旗のように手を大きく振る=高樹。手を振って(制止する。別れる)。 **てくび【手首】** 氷のように冷えきった手首=海音寺。しっとりと垂れている袂にもの重みにも得堪えたえぬほどにしなしなと細い手頭吹く谷崎。手首が(今にも折れそうに細い=貫井。枯れ木のようにかさかさ=原田康。宙の闇を飛び歩くような気味悪さ=島尾)。手首に(数珠光。をかける。縄が食い込む。静かな脈が打っている。輪ゴムをはめる)。手首を乱暴に引き寄せる。左右の手首を交差させる。細い手首のような枝!長野。スナップを利かせて投げる。 **てすり【手摺り】** 手すりから身を乗り出す。芝居の桟敷のように手すりから見下ろす谷崎。手すりに(よりかかる。体をもたれさせる)。階段の手すりに手をかける。手すりを(乗り越える。頼りに階段を上る)。軽業が紀の女みたよに手すりを飛び越す宇野千。高欄から飛び下りる。車が欄干にぶつかる。橋の欄干にもたれる。 **てのこう【手の甲】** 手の甲があかぎれを起こして痛々しいくらいにひび割れている熊谷。手の甲で(額の汗を拭う。目頭を拭く。こんこんとガラスを叩く)。口に手の甲を当てて笑う。 **てのひら【学】** ▼掌(荒れてがさがさした男のような大きな固い"壺井。大きな熊のような藤木。身体の内側が全部そこに集まっているような湿った黒井。渋紙をもみつぶしたようなお婆さんの=川端)。白い透けるような手のひら=梅木。掌が(ねちこちと汗ばむ"佐藤巻。水に浸けたように汗に濡れる=高井)。手のひらが(汗でじっとり濡れる。じっとりと汗ばむ。グローブのように厚い=椎名誠)。白い手の平が畑の豆の葉の裏返るように見える=内田瓦。手のひらで(顔に風を送る。顔をこする。口を覆う)。額を手のひらで撫なであげる。首筋をべたべたと掌で叩く鷺沢。掌で尻をバーンと叩く=鷺沢。▼手のひらでぬぐう(涙を。鼻水を)。手のひらに(息を吐きかける。げんこつを打ち合わせる。ぬくもりが伝わる。載せてとみこうみする。ぺっと唾をつける。まめをこしらえる)。錠剤を手のひらに受ける。掌に乗るほどの仔猫三局。ひんやりとした感触が掌に伝わる=中沢。手の平に乗るような小さな漫画。内田卷。吸いつくような紫の感触日野。手のひらを(上に向ける。額に当てる。ばんと打ち鳴らす。ばんばんと叩く。ひらひらと動かす。目の高さまで上げる。返すように態度が変わる戸川)。てのひらを波のうねりのように動かす星。ぱっと手のひらを広げる。掌を腹の前で仏像のように組む"辻井。壊れ物でも扱うように丁寧に掌を動かす〃小川。太刀魚於結のひれのように掌をひらひらさせる=武田爽。タッグマッチの二人のブロレスラーのように掌を合わせてタッチする=干刈。見るに堪えぬ女の秘暎が掌をひるがえすようにおちついて来る=本庄。自分の掌を見るようにはっきりと分かる=本庄。手の内に丸め込む。平手で(頭をばたばた叩く。砂をぼんぼんと叩き均す。びしゃびしゃ頬を叩く。ぺたぺたと叩く)。背中を平手でぴちゃぴちゃ叩く。鼻の両側を平手ではたはたと軽く叩く。ぴしゃりと平手で打つ。額を平手でぺんぺん叩く。頬に平手を張る。 **とって【取っ手】** ドアの取っ手に手をかける。取っ手を(ガチャガチャさせる。やみくもに引く)。大釜の把手ひっを両手で持つ=福永。腕を花瓶の把っ手に。のような恰好いうに曲げる=佐藤奈。カチリとノブが動く音がする。ドアのノブが静かに回転する。ドアのノブに手をかける。がちゃがちゃとノブを回す。▶引き手(ドアの。戸の)。 **にぎる【握る】** 握る(動かぬ確証を。最後の勝利を。財布の紐ぃもを。順手で鉄棒を。ナイフの柄を。話の主導権を。不正の事実を。包丁を逆手に。手を軽く。カラオケのマイクを。ぎゅっとこぶしを。生殺与奪どぶさっの権を。金をがっちりと。手首をしっかりと。爪の先が窓の敷居に食い込むほどにきつく野間)。ハンドルを握る手に力がこもる。秘密の一端を握る人物。▼鍵を握る(会社の浮沈の。事件の)。▼しっかり握る(手を。何ものにも換えがたい武器のように=有島)。▼握っている(成功するかどうかの鍵を。大スクーブのねたを)。袖の下を握らせる。弱みを握られる。▶握り合う(手と手を。何年ぶりかで再び手を)。差し出された手を握り返す。写真の束を握り込む。握り締める(拳を痛いほど。膝に置いた手を=熊谷)。握りしめる(手に拳銃を。登山ナイフを。ほうきの柄を。札を手に。力いっぱい。手を固く。手をきつく。ボールを強く。手にした手紙を。びんと張ったローブを。手のひらをぎゅっと。たまった胸苦しさを財布のように安岡。爪が手のひらに食い込むほど強く=重松。両手のコブシをぎゅうっと古井)。▼握り取る(金を。実権を)。▼握り直す(鎌を。ハンドルを。ボールペンを。マイクを)。両手を握り合わせる。握力が(強い。弱い)。順手で(懸垂する。つかむ)。▼掌握する(完全に全権を。国家権力を。人事権を。人心を。全体の動きを。天下を。部下を)。巧みな人心掌握術。 **はあく【把握】** 把握に適した方法論。▼把握する(一瞬で状況を。言葉の意味を。事件の輪郭を。事態の全貌を。全体像を。全体の流れを。放射能漏れを。勘所を的確に。受け持ち患者の容態を)。▼正確に把握する(現実を。事態を。状況を)。 <666> # つ **ひだりて【左手】** 左手で団扇がちを使う北原。鉛筆を左手で使う。左手にぐいと刀をひきそばめる。受話器を左手に持ち替える=高杉。 **ひとさしゅび【人差し指】** 殊更に細さが際立つ人差し指=高橋冷。人差し指が(引き金にかかる。材木に巣喰って肥え太った鉄砲虫のように見える=本庄)。人さし指と中指の間に石をはさんですっと伸びるような碁石の置きかた落合。人差し指の腹でそっと撫でる。人差し指を(真っ直ぐに伸ばして鼻の前に突きつける吉行。蠟燭らいのようにびんと立てる=有栖川)。右手の人差し指を胸に突きつける。考え込むように人差し指を頬にあてる=原田康。 **ぼう【降】** 黒い巨大な棒が空に向かって突き出ているふうに見える木=水上。棒で(頭をぶん殴る。突く。殴る。ばたばたと叩く。叩かれたようにびくっとする"池澤)。水が丸い一本の棒となって音もなく蛇口から流れ落ちる=黒井。棒に(つなぐ。巻きつく)。ローブを棒に巻きつける。すっと立ち上がりそのまま棒になって倒れる=北村。棒の(先でつつく。先がためらうように揺れる若竹。先に蛇が巻きついている!宮部)。針ほどのことを棒ほどに言う壺井。棒を(得物にする。梃子でこにする。ぼきりと折る。足元に投げ捨てきつく握りしめる。ばたんと落とす。倒すように胸の中めがけて倒れこむ古井。呑んだみたいに突っ立つ=高井。呑んだように軀がこわばる=大佛。呑んだように真っ直ぐに体をしゃちほこばらせる=高橋治)。手に棒を持つ。背中に棒を入れたような歩き方に池田。太い氷の棒を飲み込んだかのように胸が冷たく痛い"原田家。胸に一本棒を呑みこむような我慢の壺井。足を棒にして歩き回る=梶山。女らしさのとほしい棒のような胴体三田。棒のように(背中を立てる。立ちつくす。手足を固くする高樹)。足が棒のように疲れる今日。足や頸くびが棒のように長い女=野間。一同が棒のように立ち上がる=長与。腕をだらりと棒のように下げる=伊集院。軀份。が棒のように固い!安岡。体を棒のようにコチンコチンにさせる=胡桃沢。精も根も使いはたしあおむけに棒のように倒れる=飯田。手首が棒のように細い=伊坂。身を棒のように堅くする"阿刀田。両足を棒のように投げ出す小池。棒のようになる(足腰が冷えて。疲れ切って足が藤沢。体が緊張しすぎて=小島)。白酒が銚子の口から棒みたいに垂れる=中。新聞紙を棒みたいに巻く小林信。こん棒で殴る。こん棒を握る。ぶんぶんとこん棒を振り回す。マッチ棒のような細い棒吉村。棒切れのようにやせ衰えた手脚後惨。脚を棒切れのように振りながら歩く内田瓦。棒切れを(拾い上げる。振り回す。高く差し上げる)。▼串に刺す(おでんを。肉を)。鲇ぁゅを竹の申へ刺す。串をソースに浸す。鉄筋が錆びる。鉄筋を(筋交いに渡す。溶接する)。鉄棒を(逆手で握る。順手で握る)。鉄棒で懸垂する。鉄棒にぶら下がる。炎で鉄棒の先端を炙ぁぶる大。 **みぎて【右手】** 右手が意志とは別に動く。右手で頬杖をつく。筆を右手に握る。右手の(しぼりを利かせる。へりでテーブルを叩く)。右手を(さっと高くあげる。左の胸にあてる)。 **ゆび【指】** ▼指(いかにも働き者らしい節くれ立った無骨な西木。朝顔の茎のように細いしっとりした=開高。芋虫のような太い貫井。美しい水際の白い花みたいな~村上龍。枯れ枝のような、佐藤系。きゃしゃな象牙のような人合崎。魚のように冷たい高樹。白魚のような細うて白い二葉亭。すっかり肉が削でげ落ち痩せ牛蒡に『みたいになった奥泉。淡を打つようにしなう。日野。縄のようにからみついた=武田発。野良仕事で節くれだった熊合。陽に当たったことのない内臓のように生白い黒井。ボキリと折れそうなほど細い=高橋三)。指が(かすかに震える。しなやかに反る。尺取り虫のようにかがんだり伸びたりする=佐藤巻。鍵盤の上を走る=高橋治。脱色したように白い=高樹。ちぎれるほど痛い司馬。抜けそうに痛む=加賀)。インクで指が汚れる。小さい指がきれいに並ぶ。長い指が反りかえる。肌理まぁの細かい長い指が白魚のように美しい萩原爽。寒さのために指が思うように動かない=中沢。小さい指が奇麗に並んで、姉妹たちが肩を並べ合っているように可憐!=中河。働きぬいたために指が成長を邪魔されたかのように先がちびてしまって株っちょになる=壺井。細くて冷たい指が鲇ぁゅのように跳ねる荻野。指で(字をなぞる。丸を作る。ちょんとつつく。ビースサインを送る。ひげをこねくる。額をビンと弾く歳沢)。頭を指でこづく。グラスの縁を指でなぞる。煙草を二本の指で挟む。地図上の道を指でたどる。額にかかる髪を指でかきあげる。メモ帳の姓名を指で追う。テーブルをいらだたしげに指で叩く。とんとんと指で軽く叩く。指に(力をこめる。血豆ができる。棘とげが刺さる。指輪が光る)。糸を指に巻きつける。五本の指に入るベストセラー作家東野。指の(関節をばきぽき鳴らす。ささくれを噛む)。折れ曲がった細い梢が老人の指のよう長野。手足の指の痛むような冷たさ吉川。女の指は犬の尻尾のように正直"阿刀田。指を(一本立てる。器用に動かす。櫛代がしわりにする。口に押し当てる。ばちんと鳴らす。鼻の穴に突っ込む。引き金にかける。立てて顔の前でワイパーのように振る=小池)。おなかをすかして指をくわえる。操作盤に指を走らせる。細いうなじに指を道はわせる。臉だぶの上から指を押し当てる。木が手の指を空に向けて開いたよう <667> # 掴む・振る―216 に枝を張る=佐藤春。草の葉が指を拡げたように猛々しい展ぃっがり方をする=有吉。手につまんだものをぶっかけるみたいにパッと指を開く=高見順。両手の指を熊手のようにして髪をかきあげる=小林多。両方の手の指を壺っはの口のように一所に集める有局。指一本触れることができない。体に指一本触らせない。手に印を結ぶ。指のようになめらかな太いうどん樹。しもやけにふくれた足指"大江。一指も触れることができない。指紋を(採取する。照合する。残す)。 **ゆびさき【指先】** ▼指先(ショバンコンクールにでも出場した方が似合いそうなほど繊細な=景山。桜の花弁を貼りつけたような淡い色の"高樹。すんなりとした白い和久。われながらびっくりするほど冷たい"壺井)。指先が(かすかに震える。ジーンと痺しびれる。痙攣山心するように頭、ふるえる=筒井。こわばるほど緊張する=原田宗)。男の指先が爬虫類沿いの蛇行のように肌の上を這う“丹羽。繊細な指先がしのびやかな動きをする三島。指先から(きりきりと冷え込む。力が引いて行く。伝わるぬくもりに酔いしれる)。指先で(涙を拭う。綿をちぎる。髪をかき上げる。こめかみを押さえる。膝をバタバタと叩く村上糸)。髪を指先で整える。表面を指先でこする。眼鏡を指先で押し上げる。モデルガンを指先でくるくる回す=西木。指先に(煙草を挟む。細心の注意をこめる。神経を集中させる)。視線が指先に集中する。女の腰に手をまわししっかりと抱きしめるように指先に力をこめる犬庭。指先の感覚がなくなる。指先を鉤形粉さに曲げる。絢ょうように二本の指先を重ねる=里見。指の先がちくりと痛む。地平線の上へ指の尖だきを並べたようなアルプス連山=岡本。▼つまぐる(数珠牝を。念珠を。矢を)。手先が(細かに動く。わなわな震える)。手先の自由を失う。手先を(せわしく働かす。ぶるぶる震わす)。小手をかざして遠くを見る。 **りょうて【両手】** 両手が(自由に使える。氷のごとく冷たい=南条)。黙ったまま両手がちぎれるほど全身を振って抗議の身ぶりを示す黒井。砂が両手からこぼれ落ちていくかのように記憶が少しずつ失われる=小池。両手で(頭を抱える。水をすくう。顔を覆って泣きだす。肩を抱き寄せる。こめかみを押さえる。鼻と口を押さえる。ぽんぽんと相手の肩を叩く。メガホンをつくる。くるむようにしてそっと扱う畑。ばってんを作る佐藤多。頬をヒタヒタと叩く=檀)。愛おしむように両手で撫なでる。顔を両手で挟む。拳銃を両手で構える。ジョッキを両手で包むように持つ。範かごを葬式の写真を両手で抱えるようにして持つ谷村。靴を両手で捧げてうやうやしく額にいただく=川端。コーヒーカップを湯呑み茶碗のように両手で包みこむ連城。小娘のように顔を両手で隠す堀。サイドボードの上の時計や花瓶を両手でなぎ払う重松。錯乱したふうに両手で頭を押さえて激しく振る藤本。寒そうに両手で体を抱いて立っている=石田衣。少女が甘えるように腕を両手で抱きこんでぶらさがる=高橋和。茶碗を拝むように両手で持つ"円地。眠っていた目を両手でこしこしこする谷村。両手でふさぐ(口を。耳を)。両手で頬を(包む。びたびた叩く)。両手に(息を吹きかける。持ちきれないほどの食料品を買いこむ三田)。落ちる水を両手に受けて飲むなかにし。両手に提げる(こみ袋を。荷物を)。両手の指では足りないほどの職を転々とする=落合。両手を(合わせて拝む。叩いて喜ぶ。ばちばち叩く。膝に置く。前に突き出す。ロープで縛る。腰に当てる。口に当ててとなる。揃えて椅子に座る。上にぐっと伸ばしてあくびをする"松谷。打ち合わせて子供のように喜ぶ=中村兵。顔面に当てて顔を洗うように上下にこする=尾辻。唇に喇叭。のようにあてて呼ぶ=林美。差し出し掌~60を見せて降参の態「常盤。すっぽりどてらの奥へしまい込む=永井龍。背中の後ろで縛られる!大遊。蠅はぇでも逐ょうように動かして辞退の意を示す「芥川)。軽く両手を打ち鳴らす。揃えた膝の上へ両手を乗せる。仏壇に両手を合わせる。肩の力を抜いて両手をだらりと下げる=景山。ゼスチャアたっぷりの弁士のように両手を打ち振る笹沢。助けを求めるように両手を差し伸ばす森境。膝に両手を突っ張るようにして大儀そうに立ち上がる三浦悦。ボケットに深々と両手を入れる=黒井。幽霊のように両手を招くぶる檀。両手を後ろ手に縛り上げる。両手を蠅のようにこすり合わせる=小池。嬉しそうに両手をこすり合わせる=海堂。両手いっぱいに荷物を抱える。うさぎが戯れるように左右の手がまりの上にぴょんぴょんとどる=中。爪先立ちながら思いきり両手を上げる。万歳を叫ぶように両手を挙げる獅子。観念したように両手をあげて言う。椎名候。両手を突き上げて大きく伸びをする。祈るように胸の前で両手を組む=東野。胸に両手を打ち合わせるように組む三河。両手を(胸の前で組む。頭の後ろに組む。後ろに組んでいやいやをするように肩を振る三浦朱)。両手を後ろ手に組んで立つ。組んだ両手を胸に当てる。両手をつく(畳に。やや開き加減に)。両手をついて(頭を下げる。謝る。お礼を言う。土下座する。道はいつくばる。丁寧にお辞儀をする)。敷居際に両手をつき挨拶をする=村上元。犬でも招くように両手を広げる"松浦。自分の裏に一同をかばう如く大きな両手を拡げる=長与。おさな子みたいに両手をひろげて落ちてくる雪を受ける"石森。驚きの声を両手を広げて鷹揚に鎮める=阿人。両手を(一杯に広げる。大きく広げる。水平に広げる。仰々しく広げる。万歳の形に広げる。ありったけ広げてみせる=泉優。翼のようにひろげる"佐藤春。八の字に広げて肩をすくめる=落合)。諸手を広げて立ちはだかる。 <668> # 疲れる **あるきつかれる【歩き疲れる】** 足が鉛の靴を履いているよう萩原菜。▼足を引きずる(疲れた。棒のようになった=小池)。靴を引きずって歩きたくなるほど足がだるくなる=丹羽。地にへばりついて離れようとしない足の重さ=飯田。足が棒のように疲れる=今日。 **くたくた** 身体が濡れ雑巾のようにクタクタ=高橋三。くたくたで死にかかる。くたくたにくたびれきる。体がくたくたに疲れる。くたくたになって(帰ってゆく。ぼろきれのようになる=松谷)。雑巾切れのようにクタクタになって帰る=小林多。▼くたくたになる(ガウンが。紙が。心も体も。身も心も。立ちずくめの仕事で。毎晩遅くまで働いて)。 **くたびれる** ▼くたびれる(体が相当に。明から仕事のやりどおしで)。少しくたびれたコート。年相応に雰囲気がくたびれている"重松。くたびれ果てた服をまとう。くたびれ果てて眠りこむ。▼くたびれ果てる(貧乏暮らしに。すっかり。どうしようもなく)。茹でられたタコさながらにくたびれはてる北。くたびれたように海が黙る=遠藤。両方の膝節がぐらぐらするほどに疲くたぶれる!水井筒。 **ぐったり** ぐったり(気を失っている。力を抜いて座りこむ)。死んだようにぐったり寝転ぶ=山崎。ぐったりと(肩を落とす。身を横たえる。椅子に腰かける。体中から力が抜ける。座席に腰かける。シートに寄りかかる。正体もなく眠りこけている。全身の力を抜く。ソファーに座り込む。疲れて眠りこむ。ベッドに横たわる)。壁にぐったりと寄りかかる。底疲れのした体をぐったりと横たえる。死んだようにぐったりとべッドに横たわる柴田錬。憑依沿いの去った巫者ぶしのように身も心もぐったりとくずおれる=中島敦。ぐったりする(疲れが出て。全身の力が抜けて。寝床から起き上がれないほどの心労で"塩野)。重病人のようにベッドでぐったりとする=小川。海風ごまのようにぐったりとなる。ぐったりした倦怠けいの気分。ぐったりして(気を失う。返事もしない)。 **しんろう【心労】** 心労が多い。心労で(倒れる。入院を余儀なくされる)。貧窮の心労で衰えてゆく両親"阿部、心労と感労礼礼が全身にかさぶたのようにかぶさる=開高。心労にやつれきる。顔に心労の色がくっきりと刻まれている=小林久。 **だるい** だるい(印象を残す映画。倦怠けんが忍び込む。孤独に襲われる)。▼だるい(何となく体が。足がむくんで歩くのが。千切れてばらばらになるかと思うほど手足が徳永)。手足がだるくほてる。口がだるくなるほど指摘する=松本。ナイフでどこかを刺してまぎらせたいと思うほどのだるさ=山田太。だるさが執拗につきまとってはなれない=新田。体のだるさが渉れる。だるそうに煙草をくわえる。山鳩や郭公以?がだるそうに啼なく=原田店。かったるい真夏の眠気。かったるそうに腰をあげる。 **つかれ【疲れ】** ▼疲れ(神経までもずたずたに切り刻む藤木本。牢獄を出たばかりのようなみすぼらしい=川端)。疲れが(顔ににじむ。完全に取れる。全身を襲う。一度に襲ってくる。一気に吹き出す。体中に吹き出てくる。体の隅々までしみわたる。徐々に忍び寄る。じわじわと染み出してくる。しんしんと湧き広がる。全身に沈んで行く。出てうとうとする。とっと押し寄せてくる。巨大な波のように押し寄せる=村上奏。じくじく水を吸う海綿のように僕の内部でふくらむ=大江)。洪水のように疲れが妹怂らの中に流れこむ"大江。体に疲れが残る。旅の疲れが一度に出る。連日の激務の疲れが出る。重い疲れが沈殿する柴田現。数日来の心身の疲れが酔いを誘い出す「城山。生活の疲れが心に重い=石川。一日の疲れで瞼にょが重い!梅本。旅の疲れと心労が重なる。汗と涙と疲れとがとろけるように五体に流れる今日。疲れに(身をまかせる。負けてつい眠ってしまう。有川)。心地よい疲れに身を浸す藤田。疲れの吹き飛ぶ思い。疲れを(知らぬように出漁する。帯びたような力なげな手つき=堀)。ふーっと疲れを吐き出すように息をする徳水。熱い湯につかって疲れをほぐす。一日の汗と疲れを洗い流す。快い疲れをゆったりと楽しむ。さほど疲れを覚えない。深い疲れを味わう。情事の疲れを全身によどませる=瀬戸内。疲れを覚える(にわかに。とっと。骨の髄に染み込むような重い=貫井)。▼疲れを感じる(何とはなしに。軽い。どろりとした。ぐったりと全身に。三日も徹夜をつづけたあとのような=飯田)。気疲れが出る。残業疲れをあからさまに宿している脂の浮いた頑宮本駅。疲れ目に効く(食べ物。つぼ)。 **つかれきる【疲れ切る】** ▼疲れきる(身も心も。現実に追い回されて。言葉も出ないほど。躰炒。をのばすことが困難なほど大江。すべてを語り終えてさながら大熊との死闘のあとのように"飯田。倒れて眠りたいほど"大江。部屋が冷えきっているのに石油ストーブに火をつけるのが億劫なほど=加賀)。疲れきった(悄然もに、うたる姿。五体を銘々の家路に運ぶ。有島)。暗く疲れきった表情をたたえる。疲れきって崩れるように坐すゃる=住井。疲れ切って死んだ人のように眠る=佐藤春。 **つかれはてる【疲れ果てる】** 疲れはてた体を静養する。疲れはてたような蒼ぁもく萎しなびた顔壷井。樹々が昼の蒸し暑さに疲れはてたようにぐったりとしている=遠藤。疲れはてたように生活を清算する"瀬戸内。疲れ果てたように眼を閉じる=森場。糸が疲れはてて擦り切れる。疲れはてる(連日の激戦に。ぐっ <669> # 疲れる-217 たりと。心の髄まで。肉体も心も。綿のように。口も利けないほど。さまざまな地獄の責め苦に芥川。都会での生活に「鈴木光。さながら合戦をやらかした後とのことく=北。手足の感覚がなくなるほど=安部)。 **つかれる【疲れる】** ▼疲れる(座労礼礼に。長途の旅路に。闘病生活に。仕事と家事で。身も心も。体がぼろぼろに。感情のやりとりに。数日来の心労に。調子を合わせるのに。体が重くぐったりと。間が持てずいささか。立っていられないほど体が“日野。いちいち相槌を打つのに=小池。関節がばらばらになってしまいそうなほど=山本周。口を開くのも嫌なほど鎌田。骨身の砕けるほど=山本周。目もあいていられないほど川端)。頭の疲れる雑読の書。神経の疲れる作業。疲れた(体に鞭打ちつ。心身を癒す。目を休める。頭で漠然と考える)。椅子へ土袋のように疲れた体を投げる=開高。・疲れて(ぐったりと眠りこむ。どんよりとした目。ふらふらになる)。ひどく疲れて今にもからだが二つに折れそう。宮沢。あごが出て限がくらむ藤沢。腕が丸太のように硬くなる=飯田。過労で倒れる。気骨が折れる。口を利く気力もない。さんざふざけちらして綿のようになった身永井荷。数年ぶりで海底から道はい出したとたん激流に揉まれてしまったナマコの気分で丸まって横たわる荻野。背中に板が張りついたよう~つか。ぬれた綿のように重くぐったりとした林炒;"長野。ブールでさんざん水浴びした後みたいに軀中以略がが重たい三浦写。疲れたような青白い頬"海音寺。疲れたように(ものを言わない。その場にしゃがむ=福水。ゆっくりと歩く"伊藤整)。ほんやり疲れたように突っ立っている『本庄。疲れた様子もない。疲れは一向感じない。口も利けないほど飢え疲れる=徳田。▼倦;み疲れる(暑熱に。人生に)。▼くたばる(強行軍で。働きづめで)。▼ばてる(暑さで、力仕事で。疲弊する(頭が。体が。生活に)。 **ひろう【疲労】** ▼疲労(一晩中うねる大波に揉まれていたような心身の宮本百。濃い霧に包まれた山奥の小さい湖水のような少し気が遠くなるような静けさを持った=志賀。手足が麻痺し腰骨の砕けるような深い吉村。朦朧と目の中まで霞んでいる瀬戸内)。疲労が(顔を隈取にょる。刻一刻と募る。心を曇らせる。一挙にどっと出る。重なって苛立ぶらつ。体全体にしみこむ。体を駆けめぐる。全身を包み込む。皮肩の下に澱ょとむ。足元から立ち昇る森恥。くっきりと陰影を宿した煩!徳永。しっとりと肩の上におおいかぶさる鷹沢。雪曇りの空のようなどんよりとした影を落とす芥川)。体に疲労が蓄積する。空腹に疲労が重なる。目に見えて疲労が現れる。足もとから疲労がドッと押し寄せて来てヘナヘナと緑先に腰を落とす阿刀田。腰に重い疲労が積もる=黒井。全身の毛穴から疲労が浸み出すような安堵、んを覚える辻井。深い疲労が海のように全身をおしつつむ=光瀬。疲労が全身に(あふれ出す。にじみ出る。澱む)。疲労がどっと(押しよせる。全身を襲う)。軽微な疲労から誘われる淡い清らな夢に入る=幸田露。ひどい疲労から小石のように眠りに落ちる=堀。感張と疲労でやつれ果てる。疲労と(安堵が一度に襲ってくる。」 疲労と(安塔が一度に襲ってくる。寝不足が重なる)。眼の裏に薄い膜でも張ったみたいに疲労と興奮が粘りつく=阿刀田。神経が極度の疲労に陥る。数日の間歩き続けていたようなひどい疲労にあえぐ光瀬。疲労の(ために倒れる。底にひきこまれる。度合いが激しい)。目のまわりに疲労の色がしみつく。ずるずると疲労の淵に引きずり込まれる=中沢。疲労を(感じさせるぶ。ひしひし感じる)。蓄積した疲労を押し殺す。肉体的な疲労を伴わぬ快楽。重い砂袋の疲労を引きずる藤木。▼疲労を覚える(頭がくらくらするほどの=乃南。がくんと膝が折れるほどの芝木。乾ひからびた茸いののような=北)。顔に疲労の色が(濃くしみつく。かなり濃く出てくる=新田)。生理的に疲労する。精も根も涸かれ果てた疲労しきった色を浮かべる谷崎。金属疲労が発生する。疲労困憊いらいにして家にたどりつく。▼疲労困処する(心身ともに。符神的に。肉体的に。久々の肉体労働で=阿川佐)。疲労困憊の極に達する。 **ひろうかん【疲労感】** 疲労感(一日中駆けずり廻って仕事をしたあとのような烈はげしい"宮本輝。骨の悩までしみわたるような"小池。めまいを誘い出すような=伊藤整)。疲労感が(全身に広がる。体を重く覆ってくる=篠田)。鉛の板のような疲労感が肩にのしかかる=五木。交接を終わった蛇鄉試味の前肢にを身がまえたような疲労感と殺気"武田奈。身体がどっしりとした疲労感に浸される谷村。疲労感を覚える(体中沢の血を失ったような“森流。首筋から肩のあたりに鉛のように重い=小林久)。 **へたばる** くたばる(強行軍で。重労働で。猛暑で。悶絶もんせんばかりに)。〈たばって座り込む。へたる(足腰が。暑さに)。〈ばる(暑さで。重労働で。徹夜続きで。猛練習で。仕事がたくさんあって)。 **へたりこむ【へたり込む】** へたり込む(くずおれるようにソファーに。ずるずると床の上に。腰が抜けたようにうしろ足から=向田)。膝から力が抜けていく。その場にへたり込みそうなほど落胆する=原田宗。へたへたと(その場にくすおれる。崩れ落ちて地面に膝をつく藤沢)。その場にへたへたとしゃがみこむ。くたびれ込んだようにへたへたと坐すゃる=福永。腰が抜けてへたへたと座りこむ"小松左。 **へとへと** へとへとに(くたびれる。なって仰向きに倒れる。なるまで自分をいじめる)。体がへとへとに疲れる。へとへとになる(神経が。すっかり。精根尽き仕事で。長時間労働で)。過重な労働によって疲弊し果てて)。体も心も極限までヘトヘトになる"北。 <670> # 突く・刺す **きり【錐】** 錐で氷をサクサクと割る落合。ぎゅっと錐でもむようにお腹が痛む有島。足の芯を錐でキリキリ刺し貫くような痛み=加賀。胸が錐で突かれるように痛い=松浦。錐で穴を(開ける。穿、ぅがつ)。錐の先で紙を通すように辛らつきわまりない目=火坂。鋭いキリを刺しこまれるみたいなひどい痛み"大庭。錐をもむように地に爪立つ!永井龍。憎悪の念が心へ錐を穿ってさらに釘をもって確然礼っと打ちつけられる=長塚。冬の夜が錐のような箱を挟んでからりと明け渡る=夏目。暗い天井に錐のようにつき刺さる言葉をなげる=水上。全身に声がぎりぎりと銹きびた錐のように刺し込んでくる!有吉。ドリルで穴を開ける。頭蓋骨をドリルで開けるほどの大手術"高橋三。 **ごづく【小突く】** ▼小突く(指でおでこを。こつんと頭を。肘で脇腹を。肩を背後から。顔のあたりをこつんと拳骨山で谷崎)。やめろと言うように脇腹をこづく泉愛。▼こづきまわす(邪険に。乱暴に。荒々しく。小面憎く。寄ってたかって)。どづく(けつを。腰を。胸倉をつかんで)。 **ささる【刺さる】** ▼刺さる(視線が背中に。ささくれが指に。注射針が皮膚に。ナイフが脇腹に。言葉がとげになって。一言が胸に鋭く。顔面に深々とナイフが"景山。耳に近所の人の無責任な会話が針のように。戸川)。心に刺さる(後悔の念が。尖とがった台詞のが。針を含んだ言葉が)。▼胸に刺さる(悲しさが。悔しさが。言葉が)。論評は手厳しいが言い方はあっけらかんとしていて赤がないので刺さらない有川。 **さしつらぬく【刺し貫く】** ▼刺し貫く(首筋を。一言が胸を。胸を剣で)。陽光が眼底を射し貫く。声がきんきんと刺し貫くように響いてくる=曽野。喉を刺し貫く(刃先が。短剣で)。体を刺し貫くようなおののき三浦綾。刺し通す(すねを。頬を。眉間を。針を布に)。 **さす【刺す】** ▼刺す(梢が空を。寸鉄人を。静電気が指を。ぶつりと錐ょっを。針を針山に。火箸を灰に。鲇ぁゅを竹の串へ。蜂が尾の針で、潮風が冷たく皮膚を。肩口をナイフで。ソーセージをフォークで。きなくさい臭いが鼻孔を三好微。極端な処分を行ってはならぬと釘を藤沢。言葉が針のように耳を獅子。無数の針のように寒気が肌を"加賀。痛いところをずばりと"徳永。痛いところをちくりちくりと=舟橋。欠陥をぐさりと"野間。侮蔑の笑い声が針のように遠藤)。心を刺す(後悔が苦く。言葉がナイフのように鋭く)。とどめを刺す(江戸の火事といえば明暦の大火に網淵。眉間に一発撃ちこみぃ大藪)。医術はオランダに止めを刺す菊池。肌を刺す(熱気が。冷気が。風が冷たく。照り返す陽射しが)。鼻を刺す(死臭が。便所の臭気が)。針を刺す(針山に。ぶつりと。遠くのほうからちくりちくり)。▼畑を刺す(熱嵐が。北西の風が)。▼耳を刺す(音が。言葉が)。▼胸を刺す(言葉が。悲惨な姿が)。刺し違えて(死ぬ。重傷を負う)。敵と刺し違える。刺される(刃物で背中を。蚊に。くらげに。蜂に。ナイフで。本塁で。余計なことは言うなと釘を!有川)。胸を刺されるような嫉妬!森岡。刺すような(鋭い視線。言葉で苦しめる夢枕)。肌を刺すような寒気!篠田。人を刺すような限つき=野間。骨を刺すような氷雨"子母沢。身を刺すような冷たさ熊谷。刺すように冷たい風。寄せてはかえす白波が目を刺すように美しい宮尾。▼刺し込む(ナイフを。畳へきゅっと針を)。 **つきいれる【突き入れる】** 突き入れる(頭を。桶ぉけを。顔を。剣を。短刀を。手を。船を。鳩尾以沢へ姿を。指を。横腹へ刀を)。 **つきささる【突き刺さる】** 突き刺さる(険しい視線が。背中に矢が。胸にナイフが。匕首はいが腹に。言葉が胸に。絶叫が耳に。針が腕に。文字が瞳に。文字が目に。心の底深く。手裏剣が背中に。投げたナイフが体すれすれに。言葉の一つ一つがナイフのように心に"束野。包丁がトンと床に=奥田。言葉が脳味噌に深く"井上ひ。手裏剣が壁にぶすりと=柴田剣)。突き刺さるような眼差し。鼻に突き刺さるようなにおい。心臓にぐさりと突き刺さるようなひと言。内田康。 **つきさす【突き刺す】** 突き刺す(叫びが耳を。視線が背を。冷気が肌を。苦しい思いが心を。背中にナイフを。フォークで肉を。オールを水面に。ベルの音が心臓を"池田)。きーんと肌を突き刺す冷気"本庄。▼胸を突き刺す(言葉が。眼が千万の言葉にまさる鋭さでぐざと"山本周)。言葉の調子が榆ゃりの穂先のような鋭さで胸許らいを深く突き刺して来る=井上靖。突き刺すような(目で見返す。視線を浴びせる=原田康)。耳に突き刺すような響き=井伏。▼突き立つ(胸に矢が。刃先が胸に深々と。矢が体へふつふつと=山本周)。突き通す(板壁を。体を。ずむかりと五寸釘を)。▼突き抜く(高股にいを。胸板を。胸を)。刃物でめった刺しにされる。突き立てる(首にナイフを。匕首のかを胸に。刀を地に。胸に人差し指を。ぐさりと小刀を畳に。ナイフを力まかせに。ナイフをテーブルに)。 **つく【突く】** ▼突く(一瞬の油断を。懐剣で喉を。契約書に判を。ステッキを。畳に両手を。机に頬杖を。敵の意表を。怒髪冠を。どんと背中を。法律の不備を。肩を力任せに。欠陥を正確に。薙刀感を杖に。肩をどんと。烦を指で。本質を鋭く。一番弱いところを。ずばりと核心を。最も痛いところを。性情の弱さを巧みに。その場にくすれ落ちるようにして床に両膝を"勝目)。絶望が胸を衝く=近藤。▼天を突く(意気。怒 <671> # 突く・刺す―218 髪)。▼鼻を突く(悪臭が。匂いが強く。臭いがぶんと。強い香水の香りが)。生臭い臭いが鼻を祈っく=船戸。・膝を突く(地面に。大地に。がっくりとその場に)。意表を突いた(攻撃をかける。巧妙なやり方。質問)。事実の的を突いたしゃべり方。杖を突いて歩く。手を突いて詫びる。三つ指を突いてお辞儀をする。両手を突いてお礼を言う。河原に膝をついて懇願する高橋克。指摘が見事に図星を衝いている=有川。▼突いてくる(何とも言えない悲しみが胸を。眼のくらむような白い光が眼を=遠藤。さわられたくないところをグサリと向田)。▼胸を突かれる(どんと。はっと)。痛いところを突かれる。突きが小刻みに鋭くなる。突きを(入れる。まともに食らう)。雲突くような大男。▼突きかかる(短刀で。ナイフで。器のみで。包丁で。槍ゃりで。血迷ったように裁ち鉄試結ばで=藤本)。▼一突きする(肩口を。短刀で脇腹を。胸をどんと)。ほんの一突きで崩れる。一突きに突き殺す。心臓を一突きにする。 **つつく** つつく(頭を。肩を。重箱の隅を。ちょんと胸を。箸で料理を。頬を。つんつんと。肘で。棒の先で。脇腹を指で。ちょんちょん尻を)。▼つっつく(おかずを。サラダを。銃口で胸を。膝を。頬っぺたを)。▼つつき合う(腕を。肩を。体を。互いを)。針でつついたようなえくぼ赤川。▼つつきまわす(体を。正体を)。▼つつきまわる(壁を。柱を)。歯に挟まったするめをせせる。 **つっこむ【突っ込む】** 「突っ込む(薪をかまどに。喊声がいをあげて。開ときをつくって。ポケットに片手を。枕カバーに枕を。イヤホンを耳に。スブーンを口の中に。引き出しに無造作に。両手をズボンのポケットに。体を叩きつけるように。無理なスピードでコーナーに泉設)。かじかんだ手を懐につっこむ=小林多。▼足を突っ込む(運動靴に。スリッパに)。▼頭を突っ込む(事件に。政治運動に)。▼首を突っ込む(事件に。選挙に。厄介事に。余計な話題に。渦の中へ。気になる事件に片端から)。▼手を突っ込む(胞分はに。髪に。口の中に。袋に。ボケットに。ぐいっと)。ついつい首を突っこみたくなる=池波。かなり突っ込んだ質問。より突っ込んだ討議。一歩突っ込んで聞く。深く突っ込んで考える。突き込む(頭を。斧ぉのを。くちばしを。大刀を。手を。〈さきを)。無心の一手とでもいえそうな突っ込み。突っ込みが足りない。突っ込みを(入れる。かわす)。 **とげ【轉】** 鋼鉄の針のように鋭く硬いトゲ=開高。とげが抜ける。口調にとげが感じられる。指にとげが刺さる。棘が心の襞ぃだに刺さる=小林久。口振りに棘が埋まっている=黒井。言葉の端に棘が突き出ているよう藤田。さっぱりときれいに棘が抜け去ったような気持ち=山本成。澄んだ空から降ってくる日の光に小さな熱の棘が豊かに含まれている=黒井。沈黙に刺とげが生えてくる荻野。喉に棘が刺さったようにあわてる=石坂。光の中に棘があって剣山で素肌を刺すような暑さ=林京。皮肉な棘が含まれているような語調"小林久。とげがある(言い方に。しゃべり方に。きれいな花には)。とげでちくちくと痛い。肉の中に刺さった抜くことのできない棘であるかのように憎む=椎名。指先に細い刺でもあるようにいらいらする=円地。快かった風が冷たい冬の刺に変わる―連城。悩みの棘を柔らかく包み込む―連城。肌にトゲを刺されたようなたまらない嫉妬を感じる=林美。声が刺を含んで響く長塚。舌の刺を唾で嘗めて研ぐような喋り方=連城。足が鋭い棘を踏んだかのように突然停まる黒井。いささか棘を含んだ笑いを口の端に泛うかべる=高井。母の一語一語が私の気持ちに棘を植える"高井。視線に棘をてんこ盛りにする=村山。手ごわい棘を持つ野いばらの変っ。藤沢。言葉にとげが(ある。混じる)。とげとげした(感情。声)。海上に無数の棘のような白浪が立つ=森瑞。ガラスが棘のような破片となって突き刺さる=河野。頭に刺さって抜けない棘のようにうっとうしい倉橋。警笛の鋭い叫びが抜けそうで抜けない棘のように疼ぅぅき闇を貫く=長野。言葉が一語一語耳を刺とげのように刺す遠藤。背鳍せびが刺のように立つ=加賀。秘密の重さが茨の棘のように心をちくりちくり刺す人米。▼棘のように突き刺さる(冷たい空気が。謎が心に)。七本の小柄にっが茨の棘みたいに白く立つ。吉川。 **ひじ【肘】** けが(あらわになる。痛む。顔面を直撃する。脇腹に食い入る)。肘まで腕まくりをする。けを(枕に寝転ぶ。テーブルに預ける)。机に肘をつく。ぐいと肘を突き出す。けしかけるように肘をつつく。つかまれた肘を振り払う。片ひじを(突っ張る。張る)。双眼鏡を両肘で固定する。両肘を(小脇にあてる。張る。ついて体重を上体にかける)。デスクに両肘を預ける。 **やり【槍】** 長槍の穂先をびたりと向ける。俺が(鎧にっを縫う。胸元を狙っている。銀色の穂のように輝く光瀬)。太刀や槍がきらきらと閃いらく。横腹を槍が貫く。雨が降ろうが槍が降ろうが眉一つ動かさない「池田。槍で天下に雷名をとどろかす“山岡。体が槍に貫かれる。槍の(筋がいい。腕を見込まれる)。俺の穂先が(きらりと光る。月光をうつしてきらきらと光る=山本周)。槍の研ぎ澄まされた穂先がすすきの原のように白光を噴く=光瀬。天にとどく槍の穂先のような塔群"光瀬。逆茂木に跡が槍の穂先のように麓をねめつける=真継。鋭い槍の穂先のように目の光が体内に突き入る=多岐川。槍を(縦横に振るう。からりと捨てる。小脇にかいこむ。さっと突き出す。長押にげの上に掛ける。びたりと構える。振り回して威嚇する。りゅうりゅうとしごく落語)。相手嫌わず槍を交える。大身誌ぉの槍を引っさげる。手に手に槍を構える。一団の武士が槍を連ねて突入する=山田思。 <672> # 着く・届く **いきとどく【行き届く】** ▼行き届く(掃除の手が。いたわりの心が)。行き届いた処置に感謝する。神経の行き届いた仕事ぶり。▼行き届いている(隅々まできちんと整理が。隅々まで細かい神経が)。手入れの行き届いた芝生のように刈りこまれた言葉=開高。隅々まで細かい神経が行き届いている=丹羽。いでたちに神経をゆきとどかせる柴田純。痒かゅいところに手が届く=氷室。至れり尽くせりの(歓待ぶり。気の配り方。心遣い。サービス)。 **いきわたる【行き渡る】** ▼行き渡る(酸素が体中に。勢力が全国に。力が体の隅々まで。血が末端の神経にまで。アルコールが体内に=姫野。思想が人々の心に=渡辺)。明けがたの白い光が広間のすみずみにまで行きわたる=塩野。店の隅々にまで神経を行き渡らせる=瀬戸内。遍在する(空気のように。ありとあらゆる空間に)。森や野原に遍在する神。 **いたる【至る】** ▼至る(意外な結末に。重きをなすに。実現の運びに。深刻な事態に。万感こもごも。ついには死をまねくに)。平和に至る道。▼至るまで(子々孫々に。一人一人に)。▼境地に至る(達観の。脱俗の。不壞ふぇ不動の)。▼今日に至る(死滅せずに。成長して)。やむなきに至る(釈放するの。脱藩の)。▼至らない(未だ発見に。幸い大事に。なかなか解決に。日の目を見るに。実行するまでには)。立ち至る(経営破綻に。最悪の事態に。深刻で重大な関係に。刀を抜かねばならぬ羽目に=村上元)。謝罪に身を責める羽目に立ち到る=綱滑。 **およばない【及ばない】** ▼及ばない(力が。是非に。足元にも。心配には。遠く。どうしてもその先に考えが。来てもらうには。真似まぁをするには)。自分に被害が及ばない方法を選ぶ。人為の及ばない自然の流れ。過ぎたるはなお及ばざるが如し。▼及ぶところではない(常人の。豪胆さは余人の)。▼及ぶ範囲を越えている(人知の。努力の)。思いの及ぶべくもない後代竹西。 **およぶ【及ぶ】** ▼及ぶ(市街化の波が。身に危険が。領主の支配が。影響が全体に。数が数万人に。作業が深夜に。支配が長年に。背広を着用に。相当の人数に。ついに白状に。上の人間に責任が。関係者に迷惑が。身辺に捜査の手が。互いの身の上話に話が。計り知れない被害が。ありがたく頂戴ちに、うに。髪振り乱して刃物三昧に。死人が三千人に。種類が約二百種類に。全長はざっと四キロメートルに。話し合いが延々一時間に。はらはらと落涙に。被害が広範囲に。紋服に改めて伺候に。勤務が深夜まで。やむにやまれぬ思いで犯行に=横山)。▼今日に及ぶ(精進して。謎となって)。振る舞いに及ぶ(手荒な。信じがたい。よからぬ)。 **ゴール** ゴールめがけて駆ける。ついにゴールに到達する。▼ゴールに飛び込む(真っ先に。トッブで)。ゴールまで残り一キロを切る。ゴールを切るなり転げるように地面に倒れ込む。有川。ゴールする(一番早く。大差をつけて)。ゴールゲートに飛び込む。ゴール直前で三人をごぼう抜きする。 **ゴールイン** ▼ゴールインする(ボールが。一位で。一着で。とん尻で。横一線で。十年来の恋人と。天下晴れて結婚に=和久)。ボールがゴールに入る。ボールをゴールに押し込む。シュートを見事に決める。 **しゃてい【射程】** 射程に(収める。入る)。獲物を射程に捕らえる。射程外に(出る。逃れる)。一射必殺の射程距離。射程距離が(長い。短い)。射程距離に入る。 **じゅしん【受信】** ▼受信する(衛星放送を。データを。電波を。メールを。アンテナで)。受信料を支払う。 **たっする【達する】** ▼達する(怒りが沸点に。剣の奥義に。子供が学齢に。就学年齢に。月が中天に。定足数に。疲労が限界に。深い喜びに。飽和状態に。無我の境に。矛盾が極致に。離俗の心境に。ある程度の年齢に。ぎりぎりの限界点に。三千人の多きに。世界最高の水準に。総人数が三百人に。ナイフが心臓に。焼けつくような日差しが体の芯にまで=横山)。▼域に達する(円熟の。玄人らの。最高の。諦観の)。▼境地に達する(諦めの。悟りの)。▼極限に達する(混乱が。心中のパニックが貫井)。▼極に達する(恐怖の。緊張の。多忙の)。▼結論に達する(都合のいい。一つの。より高い)。▼最高潮に達する(感動が。興奮が)。▼頂点に達する(怒りが。驚きが。憎しみが。腹立ちが。両派の対立が)。達している(相当の年齢に。一応使える水準に肴川。表現技巧が老練の域に高橋英)。望みは容易に達せられない。希望がほとなく達せられる。 **たどりつく【辿り着く】** ▼辿りつく(記憶の糸口に。風のまにまに流されて大庭。汽車にゴトゴトと掘られて有吉)。▼たどり着く(安住の地に。異国の地に。事件の真相に。崖の頂上へ。かけがえのない幸福に。探しあぐねた末に。どうにか逃げのびて村に。懐かしい生まれ故郷に。無事に目的地に。行き当たりばったりで。さんざん迷ったあげく。ふらふらと力なく。やっとの思いで。紆余曲折い心~の末にようやく吉野)。たどりつく(疲労困憊いらいにして倒れるように家に藤沢。椅子や道具類の中を泳ぐようにして高橋三。半死半生という体たらくで=平岩)。泥酔して自宅に辿り着く篠田。さんざうろついた揚げ句の果てに辿りついた家"佐藤春。日のあるうちにたどりつけない。行き着くところまで押し進む。 **ちゃくち【着地】** 着地に失敗する。▼着地する(鮮やかに。軽やかに。ふわりと。空中で二回転して)。着地点を決める。 <673> # 着く・届く―219 **ちゃくりく【着陸】** ▼着陸する(空港に。グラウンドに。月面に。飛行場に。バラシュートが。ヘリコブタに。飛行機が滑走路に)。ジェット機が着陸態勢に入る。飛行機が何度も離着陸を繰り返す=柳田。着水する(水上機が。飛行艇が。上手に水面に)。鮮やかな着水をやってのける。▼不時着する(飛行機が。海に。川に。校庭に。水面に。道路に。畑に。ヘリコプターが)。 **つく【着く】** ▼着く(一緒に食卓に。現地に。湖水の畔旧とに。食事の席に。船が桟橋に。船が港に。ボートが岸に。目的の場所に。荷物を積んだトラックが。一同がテーブルに。信用がしっかり地に。いつもより遅く。あっけないような早さで目的地に=山口。寒い路みちを日の暮れ暮れに潮社、ぅく家に=田山)。帰路に就く(そそくさと。複雑な思いを胸に=束野)。▼就く(家路に。重い役に。課長の椅子に。帰途に。権力の座に。護衛の任に。仕事が緒に。自分の部署に。重要な役目に。将軍職に。職業に。戦闘配置に。とっと床に。寝ずの番に。眠りに。もとの仕事に。支配者の地位に。重職のポストに。従谷として死に。それぞれの持ち場に。兵士が機関銃座に。悠谷として玉座に。宿病しかのために病床に=堀)。糸で引かれるように迷わず一年前の場所にすんなり着くことが出来た=北村。地に着いた努力。たったいま着いたところ。大地に足が着いている。▼就ける(いい先生に。せがれを仕事に)。▼泳ぎ着く(沖から海岸に。向こう岸に)。弾丸のように走り着く“川端。終着駅に降り立つ。電車の終点で降りる。王位に直る。▼未着(小包が。請求書が。会員証の。メールの)。未着の(商品。トラブル)。いまだに到着しない。 **とうたつ【到達】** ▼到達する(最高の水準に。最後の段階に。正確な結論に。魂の深奥部に。一つの学理に。深い理解に。科学的な合理精神に。それぞれの段階に。たくまずして真実に。理想的な社会に)。人間には到達することのできない境地荻野。一つの到達点を示す作品。前人未到の(業績。記録。領域)。 **とうちゃく【到着】** 到着を(告げる。待つ)。到着する(月に人類が。一時間以内に。現場に。事務所に。病院に。少々遅れて、ほどなくバトカーが。エレベーターが一階に。聖火がスタジアムに。電車がホームに。無事に目的地に。ほどなく現場に。江戸から早飛脚が“村上元)。一日も早く到着することを願う。到着するまで小一時間かかる。今しがた到着したところ。一刻も早く到着したい。先に到着して相手を待ち受ける。佐々木小次郎のように先に到着して待つ富岡。車内アナウンスが次の到着駅を告げる=伊坂。先着百名で締め切る。駅から真っ直ぐにホテルへ乗りつける。 **とどかない【届かない】** 手の届かない(高嶺故かの花。値段。夢。遠くへ行ってしまう)。永遠に手の届かないところへ行ってしまう火坂。決して手の届かない空が広がっている=伊坂。▼届かない(手紙が。過半数に。訓示が部下の耳に。言葉が誰の心にも)。人目の届かない遠いところ。目の届かない場所。▼手が届かない(法の。夜空の星のように柴田剣)。しょせん届かぬ夢。背の届かないような天袋"篠田。今さら悔やんでも追いつかない。変化のスピードになかなか追いつけない。半ばにも達しない。 **とどく【届く】** ▼届く(案内状が。魚河岸に魚が。思いが。招待状が。書状が。見舞いの品が。メールが。メッセージが。六十に手が。足が塁に。言葉が鼓膜に。曙光こが谷底に。読む人の心に。声が耳奥まで。耳に心地よく。脅迫めいた手紙が。道の反対側から大きな声が。香水の匂いが鼻に。鳴き声が切れ切れに。波の音がかすかに。レボートが手元に。音が耳の奥深くまで。便りがぽつぽつ。言葉が素直に胸に=沢木。言葉が胸に真っ直ぐ=伊集院)。自分の目の届くところに置く。知らせが届く(入選の。思いもかけない)。耳に届く(陰謀が。噂が。嘆願が。仲間の)。手を伸ばせば届きそうな位置。月〈まで届きそうな悲鳴をあげる吉川。▼届かせる(足を。手を。目を)。死の報がもたらされる。 **ながれつく【流れ着く】** 流れ着く(難破して島に。夜逃げ同然で)。流木が海岸に漂い着く。▼漂着する(船が無人島に。希望なき零落の海から希望なき安心の島へと=国木田)。波に置き去られた海藻か漂着物のように佇忱たむ!内海。 **はきゅう【波及】** 事件が意外な波及をする。波及する(影響が全国に。問題が全体に。夫婦間のごたごたが周囲に"宮本百。不況の影が小さな飲み屋にまで旅田)。 **ふゆきとどき【不行き届き】** 不行き届きな点はお詫びします。不行き届きを泣いて謝る。監督不行き届きを責める。検査の不行き届きを率直に認める。至らなさを(痛感する。恥じる。反省する)。至らぬ(点を注意される。ところを指摘される)。ふつつかな(身。娘。世話の焼きよう)。ふつつかを詫びる。▼不徹底(調査が。連絡が)。不徹底な処置。 **まいこむ【舞い込む】** ▼舞い込む(一陣の風が。・い話が。脅迫状が。幸運が。時に蛾が。福の神が。よんなところから答えが。花びらがひらひらと)。風のように舞い込んできた女"石川。 **よこす【寄越す】** ▼よこす(代わりの者を。代理の女性を。電話を。頻繁に手紙を。返事を。連絡を。分け前を。便りを頻々と。挑戦的とも言える視線を"伊坂。またぞろ反論じみた便りを三好京)。憐れみをこめた視線を寄越す三浦し。▼投げてよこす(ボールを。ぼつんと言葉を)。▼送ってくる(突如大軍を。意味ありげな目線を)。▼よこさない(電話の一本も。返事一つ)。待てど暮らせど送ってこない。 <674> # 付く・粘る **くっつく** くっつく(後ろに亡霊が。体にぴたっと。変な後ろめたさが。濡れた着物が素肌に。べったりとそばに。接着剤でも塗ったようにビタリと柱に尾辻。ピンク色がぼっちり“佐藤春。唇と唇が溶接したようにしっかりと井上ひ)。最後尾にくっついて走る。びったりとくっついて離れない。べたべたとくっついて歩く。くっついている(黒い蝶ネクタイの上に神経質な顔がネジでとめたみたいにぴったりと安部。背後霊のように"岡田)。金魚のフンみたいにくつついてゆく人問。くっつきそうになる(膝と膝が。上下のまぶたが)。濡れた髪が額に引っつく。▼固着させる(舵かじを。注意を。釣り糸を)。業務に密着した内容。生活に密着した情報。▼癒着する(関節が。政官業が。暴力団と警察とが)。子宮に癒着した胎盤。 **くっつける** くっつける(顔を。唇を。鼻先を。鼻を。膝を。頬を。夢と現実を。花粉を服に。体をびったりと)。引っつける(髪を。隙間を)。圧着する(シート。端子を)。体を密着させる。接着剤でくっつける。▶接着する(欠けた部分を。ガラスを。革を。切断部分を。ブラスチックを)。 **コールタール** コールタールを塗り重ねる。耳がどろどろに溶けたコールタールを流し込まれたようにぐつたりする=小川。コールタールのような海面"泉受。暗い水面がコールタールのように固く揺れる=向田。額から黒い脂汗がコールタールのように流れる=木山。タールのように粘つく疑念の海に放り出される"荻野。 **こびりつく** こびりつく(ズボンに泥が。声が耳の奥に。血が皮膚に。頭に固定観念が。何百年来の習慣が。飯粒がシャツに。牛馬の爽ふんが固く。後頭部に眠気が松本。切々たる訴えが耳朶しだに=山田風)。血が黒味を帯びてこびり着く志賀。▼こびりついている(足音が耳に。言葉が未だに頭に)。 **すいつく「吸い付く】** ▼吸いつく(磁石に。乳房に。蛭ひるが肌に。隙間なく。鉄片がコイルに。目が向こう岸の懸涯に)。▼吸いつけられる(海の色に。目が新聞に)。磁石で吸いつける。吸いつくような傘~150の感触=日野。吸着する(不純物が。においを。姪が皮膚に)。吸盤のような掌「日野。唇を奪うとゼラチン質を思わせる柔らかい肉が吸盤のように吸いついてくる荻野。口を吸盤のようにとがらせてところてんをツルツルと吸い込む!高見明。 **つかない【付かない】** ▼つかない(足が地に。運転資金のやりくりが。考えにまとまりが。気持ちの整理が。下の者に示しが。なかなか踏ん切りが。本物と見分けが。もう取り返しが。別れるきっかけが。解決がいまだに。海の物とも山の物とも。嗚咽ぇとも怒号とも。敵とも味方とも。真面目とも冗談とも。まったく想像も)。▼手につかない(心配で仕事が。勉強が)。つかぬことをうかがいますが。冗談とも本気ともつかぬことを言う高橋和。▼つきかねる(冗談なのか本気なのか判断が。どうにも決心が)。 **つけがたい【付け難い】** ▼つけがたい(今後の展開は予想を。にわかに優劣を)。始末を付けかねる。つけづらい(タイトルを。文句を。悪い点を)。つけにくい(クレームを、けちを。真贋ル似の区別を。めりはりを)。 **つけね【付け根】** 舌の付け根が強張る。眉の付け根がぴりぴりする。指の付け根が痛む。腕の付け根をつかむ。恐の付け根をかき分ける。穂の付け根を噛み切る。女の太股の付け根を呪のぞく=桐野。鼻のつけ根がつんとなる悲しさ=落合。鼻の付け根をもむ。耳の付け根が引きつる。耳の付け根まで真っ赤になる。木の根方で寝る。木の根方に落ち葉が吹き寄せられる。根元が二股に分かれる。木の根元にうずくまる。堆肥を根元に郷すきこむ。 **つける【付ける】** つける(一気に勝負を。馬に鞍くらを。固い蕾を。金で話を。家名に傷を。木々が若葉を。酒の棚を。仕事にけりを。商品に値を。手に職を。派手に踊りを。眉に唾を。刀を正眼に。世論を味方に。髪にゆるやかなウエーブを。ギターで伴奏を。公私のけじめを。コーヒーに口を。自分の才能に見切りを。よけいな説明を。車をパーキングに)。▼着ける(着物に袴封かを。制服を。地に足を。物々しい具足を)。身につける(衣服を。能力を。宝石を)。勘の鋭さを身に付ける=桐野。板を打ちつける。縛りつける(柱に体を。ローブの一端を)。安全装置を取りつける。縫いつける(名札を。ボタンを)。棒にローブを巻きつける。釣り糸を結わえつける。 **つく【付く】** ▼つく(隊に尾鰭냐ぃが。金の工面が。家名に傷が。きれいに話が。先の見込みが。砂糖に嬢ぉりが。仕事のけりが。身辺の整理が。大体想像が。高い値が。話に落ちが。話に区切りが。話の片が。べとりと血が。真っ先に目に。うすうす察しが。およその見当が。隠してもすぐに足が。ようやく人心地が。おそろしく高いものに。脂がべっとりと。肉がむっちりと。グラスの肌にびっしりと露が“日野)。▼ついている(事前に了解が。すでに決着が。点々と血が。悪い紐ひもが。泥が点々と。筋肉がしっかり。すっかり調べは)。 **ともなう【伴う】** ▼伴う(収集に困難が。リスクが)。伴わない(実感が。欲が出ても実力が)。相伴う(名実が。形影)。生涯に随伴した親友。▼随伴する(悲しみを。苦しみを。悩みを)。▼つきもの(業界に内紛は。摘出手術に痛みは。ブロボーズには花が=光原)。住居に付属した庭園。職務に付随する権益。入学に付随する費用。万倍の多忙が付随する=山田美。契約に付随し <675> # 付く・粘る―220 て定める約款。 **にかわ【膠】** ニカワでくっつけたみたいにじっとしている=田辺。頭髪が膠で固めたように皮膚にへばりつく"大岡。膠を(溶く。塗る。湯煎する。流したような堀河=岡本)。重苦しい空気が大会議場をにかわのように貼りつけて私語一つ聞こえない光瀬。膠状にゅゆの時間に閉じこめられたような不安な沈黙と静止"三局。 **ねちねち** ねちねち文句を言う。毛虫みたいにねちねち言?灰谷。ねちねちと(小言を漏らす。皮肉を言う。昔のことを蒸し返す。絡むように言う落合)。ねちねちした(態度で絡む。調子でなじる)。相手の胸にからみついて引きずりまわすようなねちねちした口調=木庄。弱虫のやるネチネチした攻撃法人今日。 **ねぼつく【粘つく】** 口の中が粘つく。水飴のように粘つく声=松浦。口の中で妙にべちゃりと唾液がねばついているような話し方!椎名誠。粘つくような視線。無頼漢を見るように嫌悪と怪渓がねとついた眼"黒岩。粘液がこびりつく。粘液を拭き取る。 **ねぼっこい【粘っこい】** 粘っこい(疑念が残る。剣に手を焼く。目を輝かす。視線にからめ取られる。感じの声が鼓膜にからみつく〃小林久)。どろどろと粘っこいしつこさ。目が粘っこい光を宿す。ガムでも噛みながら喋ん『っているような異様に粘っこい声=横山。粘っこく糸をひく口調=藤本。目が粘っこく底光りする。粘い湿気がよどむ。アスファルトのような妙にめとめとした粘っこさ=石森。小さい目が粘っこく光る。 **ねばりつく【粘り着く】** 風が熱い水飴のようにねっとりと肌にねばりつく光瀬。目つきにねばりつく妖しさがある。鼻に粘りつくような甘ったるい芳香=獅子。眼の底に粘りつくような強い光が現れる=吉行。粘着力が(強い。弱い)。うるさい感情の粘着力に負ける=石川。 **ねばる【粘る】** 粘る(納豆の糸が。ぐずぐず三時雨。最後の最後まで。店が終わるまで)。ねばねばする(汗が。葉が)。やにのように粘りがある非「小松太。とろろ汁のような粘りの強い液体「原田宗。粘りのある(話し方。文章)。持ち前の粘りを発揮する。絡まるような粘るような甘い調子の声!中村鳥。水が粘るように黒く重い。日野。粘るような(口調。濃い間)。病後の疲労が粘るような汗を分泌させる=長塚。粘り気のない(思考力。ぼろぼろな飯)。粘り気のある(感触。瞳)。視線が粘り気を帯びる。空気がねばねばと皮膚にまといつく。粘り抜く(執拗に。ぎりぎりまで。とことん。試合を捨てずに。伝手から伝手を求めて"山崎)。しんねりと(目をつぶる。首を横に向ける)。しんねりむっつり(飲む。やりとげる)。とろみのある(汁。スーブ)。 **のり【糊】** ベッドへ糊で貼ったように臥山る=幸田文糊のよくきいたこわごわの着物"野間。封筒の糊の部分をなめる。こわごわと音のするほど糊の利いた白衣"幸田文。味のない粘った糊のような米=大庭。空気が濃く重くドロリと液体化して生温かい糊のようにねばねばと皮膚にまといつく"中島敦。濡れた金物がべたべたと御のように指先に粘りつく“有島。閉ざした暗い視界が瞼だぶの中で糊状の園を形づくる"野問。糊付けする(シャツを。洗濯物を。手紙に)。接着剤が白化する。接着剤で貼り付ける。接着剤の付きがいい。どこかがおかしいという感覚が透明な接着剤のようにしつこく粘りつく=阿刀田。 **はりつく【張り付く】** ▼張りつく(背筋に恐怖が。雲が青空に。根雪が山肌に。ぴたりと横に。頭に眠気と酔いが。顔に薄ら笑いが。後ろめたいものが背中に。気配が体のまわりに。水滴がグラスに。Tシャツが体に。網膜の裏に残像として)。ヤモリのように壁にはりつく塩野。▼額に張りつく(前髪が。髪がべったりと)。視線が天井に張りついて離れない。▼張りついている(壁に守宮炉もが。笑みが顔に。灰色の染みがべったり)。不快な幻影が執拗に脳裏にはりついている=中村真。結婚と離婚とが背中合わせに貼りついている述城。張りつかせる(刑事を。頬に翳かげを)。曖昧な笑いを顔に貼りつかせる!鷺沢。 **ふちゃく【付着】** ▼付着する(衣類に芝生が。べっとり血痕が。血痕がナイフに。水滴がびっしりと。うっすらと油っぽい粉塵が=高見造。ねばねばしたものがべったりと井上ひ。霧氷がいたるところにべたべたと=新田)。ガラスに点々と付着した雨滴“日野。べたべたと指紋が付着している。 **べたつく** べたつく女の声が肌に藩しみ込む=黒井。べたついた(人間関係。情緒的ななまなましさ=中野美)。指がべたべたする。濡れてべたべたになる。汗でべとつく。べたつくような暑さ=新田。 **べとべと** べとべとまつわりつく着物。べとべとに唾をつける。頬をべとべとにする。べとべとになる(足が。体じゅう。寝汗で)。手がべとべとする。べとべとした異性関係。 **へばりつく【へばり付く】** ▼へばりつく(石のように地面に=武田爽。むっとした表情が胸に三浦愛。壁に守宫ぺものように=川端。壁へ蜘蛛くものように幸田文。全身飴のごとく床へ岸田)。へばりついている(四六時中。年がら年中。吐き出されたチューインガムのようにかさかさになって床に=池田)。海辺にへばりついている平らな家並み。 **よこづけ【横付け】** バスが玄関に横付けにされる。波止場に横付けにされた船。岸壁に横付けにされている船。▼横付けになる(桟橋に船が。トラックが倉庫へ)。船がどしんと岸に着く。▼着圧する(フェリーが。船が。流氷が。ボートで)。▼接岸する(船が。ボートが)。岸に近く舟を寄せる。 <676> # 憑く・呪う **あくりょう【悪霊】** 臭気に人を絶息させるだけの悪霊が躍る=有吉。様子を一目見るなり悪霊が取り付いていると見抜く=高橋克。悪霊から遠ざかろうとでもしているように後ろの方へいざりよる=萩原業。悪霊に取り憑っかれているようなすさまじさ=中島敦。悪霊を(慰める。祈禱いとで追い払う)。生き霊に取り殺される。怨霊が宿る。怨霊に取り殺される。過去の怨霊球认りに取りつかれたような異常な気配"高橋和。怨霊を退散させる。死霊に(取り殺される。取りつかれる)。病入にとりついている死霊を追い出す椎名成。 **うらめしい【恨めしい】** 恨めしい(心が募る。目をする)。大切な友達をむざむざ他人の手へ渡した自分の弱気と腑甲斐心がなさとが恨めしい谷崎。貧乏を恨めしく思う。呼び止める声が恨めしげになる=古井。沈んだ恨めしそうな目でにらむ"有島。恨めしそうな顔。恨めしそうに非難する。 **かみがかり【神懸かり】** 神懸かりに入る。神懸かりの(度がひとくなる。話をでっち上げる)。神懸かりを(軽蔑する。体験する)。神がかりのように夢中になって筆を運ぶ=有島。 **じゅもん【呪文】** 意味のわからない呪文。呪文が効を奏する。呪文でもとなえるようにぶつぶつ言う~石森。呪文に似た単語を短刀でも閃0らかすように口走る"武田奏。呪文を(高らかに唱える。唱えるように呟?く荻野)。▼呪文を唱える(口の中で。馬鹿の一つ覚えのように池田)。同じ呟きを呪文のごとく喉の奥で繰り返す“村松。堅牢な扉を開ける呪文のような言葉原田宗。呪文のように(毎日やかましく言い立てる"田辺。耳元で言い続ける谷川)。言葉が呪文のように浮かび上がる世水倉。欲しい欲しいと呪文のように繰り返す!鷺沢。真言を(誦しゅする。唱える)。 **たたる【祟る】** 怨霊がたたる。活動歴がたたってどこにも就職できない=西木。蝦猿がまが娘に崇たたって取り付く高橋克。▼たたられる(悪霊に。雨に。狐に)。一祟り(怨霊の。狐娘っの。天狗の。百鬼夜行の)。崇りが(ある。恐ろしい)。後の祟りが怖い。触らぬ神に祟りなし。弱り目に祟り目。 **つかれる【憑かれる】** ▼憑かれる(悪霊に。狐に。狂的な迷信に。魅力に。物の怪%10%に)。過去の亡霊にとり憑かれる=船山。誇大妄想狂的な思考に取り憑っかれる鈴木吗。▼取りつかれる(生き霊に。病魔に。物の怪に)。奇怪なデーモンに取り憑かれたように中村鳥。一魅入られる(悪魔に。鮮烈な動作に。不巡に。魔道に)。 **つきもの【憑き物】** 憑き物が落ちたみたいに熱が冷める=乃南。木の葉を食う虫が大瓜に振るわれて落ちるように憑き物がすぐさま落ちる=芥川。憑き物でもおちたようなサバサバした気持ち。安岡。憑き物が落ちたように(丈夫になる。明るく穏やかになる=内海)。憑っかれたものがどさっどさっと音立てて肩から落ちたというような顔。本庄。憑かれたように恋文を書く=有吉。夢魔に憑かれたようにして奇怪な手記を書く"中村真。物に憑かれたようにまくし立てしゃべりつづける=飯田。 **つく【憑く】** ▼憑く(悪魔が。怨霊が。体に神が。狐が。憑き物が。天狗にんが。魔物が。物の怪%が。霊が)。不可抗力な魔力のようなものがとりつく瀬戸内。死霊が取り憑く。熱に憑かれたような眼"黒岩。憑かれたように(飽かず咳やぶく。物語を書き続ける。一気にしゃべる=北村)。何かに憑かれたように熱っぽく話す陝。物に憑かれたように聡く賢くなる森吗。憑依沿いが去る。悪霊が憑依する。▼乗り移る(悪魔が。生き霊が。憎しみが。不安が。霊が。精霊が踊り手に)。 **のろう【呪う】** ▼呪う(身の不運を。鼻持ちならない匂いを。理不尽な運命を。無為に重ねた年齢を横山)。呪うべき存在。人を呪わば穴二つ。呪われた(宿命を背負う。力を封じる)。▼呪われる(悪魔に。運命に)。呪いが自分の身に降りかかってくる。呪いの言葉を浴びせかける。丑三ぶしつ詣ょぃりに似た呪いの所業"高見用。心の呪いの火があかあかともえさかる火葬場の火のよう筒井。呪いをかけられたように動かなくなる"井上ひ。▼呪いをかける(強力な。千年の)。呪わしい(運命。出来事)。臍に、を噛むような呪わしさ本庄。木の幹に築人形とらんを打ちつける高田。わら人形に五寸釘を打ちこむ"飯田。地の底の呪いのように低いつぶやきを続ける!島尾、心が呪詛も。に満ちる。ありとあらゆる呪詛の言葉を吐き続ける豊田。呪縛が解ける。呪縛から(解き放たれる。逃れようと身もだえする)。呪縛にかかる。血の呪縛の淵、ふちから見上げる=竹西。 **はらう【祓う】** ▼祓う(悪魔を。悪霊を。災厄を。不吉な予感を。身の穢けがれを。厄を)。▼お祓い(お宮参りの。七五三の)。お祓いを受ける。厄払いのお祓い。神社で厄払いをしてもらう。厄年に厄払いする。 **ぼうれい【亡霊】** 亡霊が姿を現す。父親の亡霊が前に立ち塞ふさがる。心の奥に先斐の亡霊が潜み蟠她封る"徳田。真っ昼間に亡霊でも見たかのように不審げに見回す人間。過去の亡霊に取り巻かれる。流れる霧の中で別荘の建物が西洋の亡霊の家のように不気味=笹沢。過去の亡霊を背負って彷徨いらする=船山。亡霊のように(青ざめる。さまよう。重さを感じさせない動き=高橋魂。目の前にふっと浮かび出る=佐藤多)。十五年前の想い出が亡霊のように悩ます中村真。灰色の霧の幕のなかから黒い波が幾千の亡霊のように襲ってくる=加賀。雪の真ん中に亡霊のように立つ屋 <677> # 憑く・呪う―221 **ま【魔】** 言葉の蔭に魔がおどる極。魔に(懣っかれる。捕らえられる。とり憑かれる)。魔の(手に落ちる。色をただよわせたような吉村松)。恐ろしい魔の支配する夢=夏目。お伽噺にさに出てくる魔の城のような煉瓦炊んの建物徳永。夜の世界の不安と寂寥せ洽!と戦慄と魅力とが魔の如く襲う長与。 **まじない** まじない(効き目のある。あがらないための)。どんなまじないも薬も効き目がない=池澤。九字を切る。呪力が復活する。 **ましょう【魔性】** 魔性が(心のうちに潜む。胸の中に巣くう=東野)。薄気味の悪い魔性が垣間見える"有吉。魔性の女。猫は魔性のもの"松谷、冒頂いらの魔性の声が湧き上がる=檀。 **まほう【魔法】** 魔法が解ける。魔法にかけられたように雪が降り続く小川。魔法の(絨毯に乗る。袋みたいに次々とあらゆる品物が姿を現す~小川)。落ち葉を焚たく細い煙が魔法の縄のようにまっすぐに空に立ちのぼる=村上卷。手が魔法の杖のように動く=大原。魔法をかけられたように身動きできない=山田泌。何の悪意もない言葉が呪文のように魔法を解く=福永。魔術でも見たように驚く渡辺。魔術に(翻弄される。打たれたように呆じっけている=檀。かかったように女店員の拡げたコートに手を通す=曽野)。言葉の魔術にかかる。 **まほうつかい【魔法使い】** 魔法使いの(馬車が現れたような早さでタクシーが来る=萩原発。前に引き出されたようにじっとしている=中沢)。扉が魔法使いの手で開かれるように音もなく開く“原田康。 **まもの【魔物】** 魔物(女は。金は。数字という誤解を招きやすい現代の=柳田)。心に魔物が住む。闇に魔物が潜む。車が魔物がついたようなスピードで走る=獅子。魔物に苦しめられる。異様な魔物の拠が行く手を掠かすめてゆくような心地"槌。夜の魔物たちがさわめきはじめる=大原。海外出兵熱を魔物のように怖れる=坂口。からみあい、こだましあって、それ自体が魔物のように声が闇の中をうねる=飯田。考えたこともない言葉が魔物のように口をついて出る=円地。妖魔のごとく蛮勇を遅くしゅうする=山田美。 **まりょく【魔力】** ▼魔力(文字の霊の媚薬のごとき奸猾な中島敦。吸いつくような肌の=日野)。魔力が一段と妖しさを増す内橋。暗闇には人の心をはばたかす魔力がある"畑。魔力に(とりつかれる。酔う)。霊威に打たれる。霊威を畏怖する。霊力が(衰える。働く)。天狗にんの神通力。神通力を(失う。得る。なくす)。 **もうじゃ【亡者】** ▼亡者(餓鬼道に落とされた"かんべ。魂を売り渡した金の飯田)。亡者が墓から出てきたばかりのように土の上にションボリ坐ぅぉっている=坂口。暗い水の中を亡者の行列のように歩く今日。地獄の亡者の笑い声のようにしわがれた気味の悪い声=菊池。蟻地獄ぶことの砂丘の傾斜をずるずるすべり落ちながらあがいている亡者さながらの人間臭さ島尾。もはや夢というもののない亡者のような執念=坂口。青鬼赤鬼の中に取り巻かれた亡者のように一かたまりに固まる=小林多。三途拦んの川の上で宙づりになった亡者みたいな顔柴田翔。 **もののけ【物の怪】** 物の怪が取り憑っく。怪しい物の怪が憑く=白洲。物の怪でも恐いたような怖い目=杉本。ものの怪に憑かれたかのように一晩じゅう踊りあかす=畑。物の怪に憑かれたように独り言を洩らす吉川。朽ち葉が露を含み、物のけの眼のようにあやしげな光を発する=島尾。 **ゆうき【幽鬼】** 地底からきこえる幽鬼の声のようではないやさしい声"阿久。見違えるように痩せて幽鬼のよう辻井。地獄への旅から生還した幽鬼のような顔-沢木。幽鬼のように(蒼ぉぉさめる。頬がそげ髪も油気を失ってそそけ立つ=勝目)。ふらりふらりと幽 **ゆうれい【幽霊】** 夜な夜な幽霊が出没する。顔面が真っ青で幽霊が飛び込んできたのではないかと思ったほど=木山。玄関のたたきが幽霊がたたずんだように水でぐっしょり濡れる=田辺。見知らぬ幽霊がもうもうとした闇の中に我が物顔に遜らごく暗闇の墓地=尾辻。幽霊でも見たかのように顔が醜く歪ゅがむ"五木。幽霊でも見たように立ちすくむ佐山。枯れ尾花を幽霊と錯覚する。幽霊よりも影のうすい姿"小林多。幽霊を見ているような呆にうけた表情熊谷。過去の幽霊を思わせるがらんとした部屋宇野利。両手を胸の前で垂れる。全身が青ざめた幽霊のような気分になって家を抜け出る高橋三。幽霊のように(影が薄い。すうっと身体を前に進ませる!高見町。ぼんやりと見える丸谷。両手を揺すぶる=檀)。霧のなかから突然幽霊のように現れる=常盤。山が幽霊のようにボンヤリと見える=獅子。幽霊みたいにべったりと濡れた髪を顔へひっつけさせたまま歩く=横光。重なった二人の影が日傘と合わさって幽霊傘のように一本足を出している=伊集院。生き霊が背後霊となって崇たたる荻野。亡霊が後ろにくっついている。背後霊のようにくっついている=岡田。 **れい【霊】** ▼霊(故人の。死者の。戦没者の)。霊が監視しているような圧迫感"瀬戸内。霊に乗り移られたように遺稿を整理する"瀬戸内。犠牲者の霊に祈る。奸諾みんな文字の霊の復讐し=中島敦。霊を(供養する。弔う)。戦友の霊を慰める。祖先の霊を祭る。人の霊を誘い入れるように啼きしきるこおろぎの声に耳を澄ます佐藤春。霊前に(献花する。報告する)。霊前に花を供える。たむける)。心霊の存在を信じる。御霊玖た(先祖の。戦没者の)。御霊を(安置する。祭る)。 <678> # 尽くす・努める **あくせく【齷齪】** あくせく一生を暮らす。あくせくと世事に心を煩わしで過ごす=中島敦。▼あくせくする(金策に。名利の世界に。働き蜂になって)。▼汲々ゅうとする(金儲けわけに。出世と保身に。あらを探すのに。数を揃えることに。末梢的技術の練習にのみ萩原朔)。守ることに汲々とする(生活を。利権を)。 **あせだく【汗だく】** 汗だくで(かけまわる。ふうふう言う。駆けこんでくる)。荷物を汗だくで運び出す。汗まみれになって働く。汗みずくになって奮闘する。汗みどろになって働く。全身を汗みとろにする。流汗淋滴りいらみとして奮闘する。緊張のあまり流汗淋漓として口も利けない。 **いっしょうけんめい【一生懸命】** 一生懸命(自転車を漕ぐ。眠気と闘う。思い出そうとする。労働に従事する)。土を一生懸命掘り返す。一生懸命に(腕を磨く。走る。勉強する)。手足を一生懸命に動かして暴れる内田百。人間は夫々それに一生懸命に生きている=中村真。演説のように一所懸命な言いかた=深沢。犬がよくやる走り方のように一所懸命に駆け出しては後ろを見る=岸田。ない知恵をしぼる。しゃかりきに(仕事をする。ボールを追う)。仕事に精が出る。▼全力投球する(改革に。会社のために。与えられた任務に)。指導に全力をあげる。▼熱熱を入れる(仕事に。手習いに)。文章を書くことに骨身を削る。身を(粉にして働く。骨灰にして働く)。心血を注いで(教え込む。描きあげる。研究する。草案を起草する。一つの作品を書き上げる=東野)。刀鍛冶妙にたが心血を注いで鍛えた刀宫部。魂を注いで描く。寝食を忘れて(必死になる。勉学する。没頭する。懸命の力を尽くす)。寝食も忘れ て昼も夜も働く。▼力こぶを入れる(一生懸命に。教育の充実に)。力瘤;跡。を入れて議論する!水井荷。自分の生まれた土地にはひそかに力こぶを入れているもの太宰。不眠不休で救助にあたる。作業が不眠不休で行われる。不眠不休の看病を続ける。身を入れる(仕事に。商売に。スポーツに。話に。勉強に)。 **いのちがけ【命懸け】** 命懸けで(恋をする。仕事をする。戦う。働く。漁に出る)。命懸けの(訓練。開争)。命を的にして闘う沢木。エイリアンの群れにとびこむような心境飯田。死を覚悟する。身命を賭する。もとより生還は期していない。戦場に放りこまれたような心境に追いこまれる=柳田。万死を恐れない。儀性的な(愛。英雄心。行為)。食うか食われるかという修羅場"戸板。史跡”の忍絡を切った心でいる=山本周。死を賭として虎穴に潜入する=船山。決死の(一戦を試みる。覚悟で恐る恐る近寄る=子母沢)。顔に決死の色が浮かぶ。決死的大冒険に乗り出す三島。 **おもいきり【思い切り】** 思いきり(背伸びをする。ドアを蹴る。羽根をのばす。大きな声でとなる)。思い切りのいい態度で遠ざかって行く大佛。果断な施策を講じる。果断に陋習うしを粉砕する。力まかせに(ぐいぐい押しつける。ドアを押し開く。ナイフを突き立てる)。どんと(体をぶつける。壁に突き当たる。器量の大きいところを見せる)。テーブルをどんと叩く。 **おもうぞんぶん【思う存分】** 思う存分(荒れ狂う。涙を流す。飲みかつ食う。羽根を伸ばす。才能を発揮する)。手も足も思う存分にのばす佐藤奏。思うさま(男をこき使う。羽をのばす。いじめて腹いせをする。自由に振る娜う。泣きたいだけ泣く)。むさぼるように思うさま食う“玉村。▼たくましくする(臆測を。陰口を。勝手な放談を。空想を。想像を。妄想を)。私心をたくましゅうする。妖魔のごとく蛮勇を退くしゅうする=山田美。 **かつやく【活躍】** ▼活躍(超人的な。大車輪の)。一層の活躍が期待される。息子の活躍が嬉しくてたまらない=さだ。活躍の(場を封じる。場が与えられる。さまが手にとるように紙面に現れる=横光)。▼活躍する(若い諸君が。グローバルに。世間に出て。第一線で。大学狭しと。晴れの舞台で。攻守にわたって)。▼活躍ぶり(獅子奮迅の。端倪炊以すべからざる)。▼大活躍(機略縦横の。縦横無尽の。八面六臂弘法∞んの)。全世界を股にかけて暴れまわる。世界を股にかけて飛び歩く=軍司。雄飛する(海外に。広大な大陸に。七つの海に。作家として文壇に)。 **がんばる【頑張る】** ▼頑張る(死に物狂いで。指して。生まれ変わったつもりで。最後まで踏みとどまって。なにくそと思って。歯をくいしばって。みんな一丸となって)。文句一つ言わずに精一杯がんばる鈴木光。信念を持って頑張り続ける。一徹な何かに反抗するような頑張り宮本百。地方の者は頑張りが違う松本。意地を剣もき出しにして頑張り通す高井。最後の最後まで頑張り抜く。後家の頑張りをやる=林鳥。各目が奮励努力する。奮励の心が湧く。 **くじけない【挫けない】** 屈せざる精神を持つ。ところがどっこい健闘している。不死身の男。不撓ふとこな意志。不抜の信念。坚忍不抜の精神。七転び八起きでついに合格する。七転び八起きの精神で捲土重来礼にを期する。不屈な心。不屈の(闘志。力が五体から进思いり出る。根性を遺憾なく発揮する!柴田剣)。不挠不屈ふとうの精神。▼へこたれない(これくらいでは。これしきのことで。少々の折檻べいには)。ヘ)たれずにがんばる。最後までへこたれずにやる。 **くしん【苦心】** 血の出るような苦心豊田。大変な苦心がこもった貴重な教科書"永井路。苦心の(跡が見える。かいがない。労をねぎらう。揚げ句ようやく完成する。末に考え出した作戦)。苦心を重ねる(苦心に。 <679> # 尽くす・努める **くろう【苦労】** 苦労(死ぬような。血のにじむような=胡桃沢)。苦労がまざまざと思い出される。せっかくの苦労が水の泡になる。年がら年中苦労が絶えない。安易な想像を寄せつけないほどの苦労がある熊谷。顔に浮き世の苦労が陰鬱に刻まれる=梶井。苦労に慣れっこになる。苦労の(末判明する。種が多い。色なども微座ふじもない。多かった来し方を語る。かいあってきれいに仕上がる。絶えた日がない)。人には語れない苦労の挙げ句。苦労は(いかばかりであろうか。並のものではない)。何事にも苦労はつきまとう。何の苦労もなしに理解する。苦労をいっぱい背負い込む。あの頃の苦労を思うと夢のよう。言うに言われない苦労をする。よけいな苦労をしょいこむ。父の苦労を目の当たりにして育つ=内橋。夜もおちおち寝られないほど苦労をさせられる谷崎。▼苦労を重ねる(苦労に。数々の)。乏しい話題を探すのに苦労しながらお茶を吸ぅぅる=高井。▼苦労する(慣れぬ土地で。笑うのをこらえるのに。浮気な亭主を持つと=筒井)。苦労して手に入れる。肩の荷が重い。苦心惨擦感してやっとの思いで手に入れる。険阻艱難い処にょを経る。▶苦労ではない(並大抵の。一通りの)。▼一苦労する(家を見つけるのに。車の泥を洗い落とすのに)。部下の労に報いる。労を(多とする。丁重にねぎらう)。借金であっぷあっぷする。苦心惨憺の末ついに出来上がる。苦の種をまき散らす。険難な世を渡る。険難の人生を歩む。長い辛酸のあげくに念願を果たす。人生の辛酸を知った顔。つぶさに辛酸をなめる。辛労が報われる。子供のためにはどんな辛労もいとわない。スケジュールの調整に泣かされる。▼難儀する(説得するのに。雪深い峠で)。難儀な仕事。難産の末に成立した法律。▼難渋する(仕事が。読み解くのに)。母に孝養をつくしながら粒々辛苦する。粒々辛苦の末、一流の学者になる。これまでの粒々辛苦も水の泡に帰する。労多い仕事に従う。苦慮の一策。苦慮する(人選に。対策に。進展しない状況に)。いろいろと苦慮したあげくの結論。血反吐も、を吐く思いで言葉をやっと口にする=高橋三。血反吐を吐きながら苦しい練習をやり抜く=飯田。▼労苦(言語に絶する。多年にわたる。血の滲にじみ出るような"山崎)。労苦が徒労に帰する。労苦を共にする。労力が大幅に減る。時間と労力をかける。通常の倍の労力を要する。 **けんしん【献身】** ▼献身する(革命運動に。難民救済に。本気で社会運動に)。献身的な(愛。看護。協力。奉仕)。無類の献身的な親孝行。献身的に(男に尽くす。活動する)。 **けんとう【健闘】** 健闘が光る。健闘を祈る。たたえる。健闘する(選手が。チームが。声援に応えて)。 **けんめい【懸命】** 懸命に(痛みに耐える。助けを求める。逃げ道を探す。熱弁を振るう。気を張り続ける)。頭の中で言葉を懸命に探す。声を懸命に張り上げる。涙を懸命にこらえる。何とか説得しようと懸命になる。理論を懸命に組み立てる。濡れ衣泌泌を晴らそうと懸命に語る=丸谷。懸命の(看病を続ける。努力を傾ける)。ここを先途と懸命の指揮をとる"筒井。寝食を忘れ懸命の力を尽くす菊池。 **こらす【凝らす】** ▼凝らす(様々な意匠を。じっと目を。詮議に詮議を。創意工夫を。闇に瞳を。いろいろの技巧を。さまざまに工夫を。羽織袋に趣向を)。春がにわかに装いをこらす永井路。息を凝らして待ち続ける。 **こんき【根気】** 粘り強い根気。根気が(衰える。尽ぎる。続かない)。案外根気がない。思ったより根気がある。途方もない根気が要る。根気に敬意を表する。根気のいる仕事に辟易款給する=土局。気が遠くなるほど根気のいる仕事=内橋。根のいる仕事。考える気も根も尽き果てる。根よく(通いつめる。繰り返す)。根を詰めて働く。精根を(込める。尽くす)。 **こんまけ【根負け】** ▼根負けする(しつこさに。熱心さにとうとう)。根負けして折れて出る。児にらみ合いに根負けして目を逸らす長野。ついに相手を根負けさせる。 **しにものぐるい【死に物狂い】** 死に物狂いで(金を貯める。斬って出る。血路を求める。逃げ道を探す。仕事をやり遂げる)。死に物狂いになって奮戦する。悶絶もするまぎわの喉からのような死にものぐるいの悲鳴が起こる!大江。死に物狂いの抵抗を続ける。 **じゅうおう【縦横】** 風が縦横に吹きまくる。自動車の群れが縦横に行き交う。手腕を縦横に振るう。地下壕が縦横に走る。適切な表現を縦横に駆使する。広い道場を燕のはのごとく縦横に飛びまわり門人を翻弄する―池波。縦横の才気が感じられる。機略縦横の策。才気縦横の人物。縦横無尽に才能を発揮する。 **しょうじん【精進】** 精進の勇を振るう。晴れ晴れした精進の心。言葉の鍛錬に精進を重ねる。▼精進する(学問に。研究に。修行に。俳諧に。仏道に。和歌の道に。今後とも一層。一生一品の製作に)。精進潔斎して(試合に臨む。仏像を彫る)。 **じんりょく【尽力】** ▼尽力する(運営に。教育に。計画実施に。勝利に。発展に)。▼力を尽くす(解決に。協約の改定に。発展に。病人の治療に。一臂いっの)。▼尽瘁北以する(音楽の普及に。国事に。職務に。和平に)。主人のためには水火も辞せぬという奉公ぶり"村上元。身を粉にする。 <680> # つ **せいいっぱい**【精一杯】精一杯(虚勢を張る。大人びたもの言い。声を振り絞って叫ぶ。持ち上げたつもり)。▶精一杯(自分一人逃げるのが。住んで食べるだけが。毎日を生きるのに)。女として精いっぱいに生きる丹羽。精一杯の(お世辞を言う。皮肉を言う。夢を描き出す。笑みを浮かべる)。考えるだけで精一杯(自分のことを。目の前のことを)。力いっぱい(抱きしめる。舟を漕ぐ。ぐいぐい揺する)。力一杯叩いてやりたいほど憎らしい“新田。力いっぱいの大声で泣く。 **せいだす**【精出す】▼精出す(学問に。家事に。剣術に。商売に。縫い物に。勉強に)。▼精を出す(女漁りに。開墾に。家事に。研究に。仕事に。社業に。商売に。蓄財に。本業に。野菜づくりに。練習に。怪我人の看護に。ボランティアに。以前にも増して勉強に"乃南)。精を出して働く。▼精励する(仕事に。職務に。勉学に)。たしなむ(生け花を。書を。詩を。茶の湯を。俳諧を)。 **せっせと** せっせと(稼ぐ。金を貯める。勉強する。脇目もふらずに働く)。置時計がせっせと時を刻む。女の許もとへせっせと通う。原稿をせっせと書く。茶屋にせっせと通いつめる。手をせっせと動かす。 **たいあたり**【体当たり】体当たりで(戸を打ち破る。ぶつかっていく)。体当たりの演技。体当たりを食わさせる。ドアに体当たりを試みる。体当たりする(果敢に。必死に。男めがけて。戸に肩から)。▼ぶちかます(大言壮語を。啖呵炊んを。立ち合いで。バーンと一発)。 **つくす**【尽くす」▼尽くす(男と情を。技術の粋を。警備の任を。十分に討議を。主人に忠義を。天下の能事を。父母に孝養を。学界の発展に。献身的に。心を言葉に。世の中に。意中を十分。奴隷のように。骨身惜しまず。あらゆる手段を。ありとあらゆる方法を。いのことごとくを。最善の手立てを。精緻さの極みを。与野党で審議を。骨身を惜しまずに。町医者として患者に。与えられた仕事にベストを=重松)。▼限りを尽くす(言葉の。親切の。道楽の。暴虐の)。▼手を尽くす(必死になって。尽くせるだけの)。万策を尽くして事に当たる。人事を尽くして天命を待つ渡辺。話すべきことはすべて言い尽くす。使い尽くす(財産を。精力を)。能事(終われり。足れり)。 **つとめる**【努める】▼努める(技術の向上に。国際協調に。債権の回収に。失地回復に。状況の整理に。精神の高揚に。切磋琢磨さつきに。陳弁大いに。不安の解消に。記憶の洗い直しに。職場規律の確立に。遅れないように。平静になろうと。役を演じようとひたすら。冷静に事態を把握しようと。サービスにこれねじめ。誠意をもって要求に応えようと竹内)。いそしむ(家事に。金儲け沪けに。研究に。仕事に。読書に。嬉々ききとして絵本作りに飯田。山奥に住んで民芸に水上)。励行する(うがいを。校則を。手洗いを。歯磨きを。早起きを。マッサージを)。 **ていしん**【挺身】▼挺身する(革命に。組合運動に。倒幕運動に。青少年の育成に)。身を挺して危機を乗り切る。政治の革新に身を挺てぃする。 **できるだけ**【出来るだけ】できるだけ(美しく装う。穏やかに話す。金を絞り取る。簡潔に伝える。正確に書く。身を慎む。詳しく説明する。目立たないように生きる。姿勢を低く保つ有川)。できるだけの(努力をする。保護をする)。できる限り(協力する。避ける。抑えた声で言う)。能ぁたう限りうまく立ちまわる。及ばずながら(力になる。努力する。手伝いをさせてもらう)。声の限りをつくして叫び立てる。可能な限り(自分を貫く。間隔をつめて並ぶ)。極力(平静を装う。無用な通信を控える。冷静に言葉を探す)。力の及ぶ限り(進みたい。働く)。できうる限り正確に書き残す。努めて(穏やかに言う。平静を装う。冷静に言う。明るく振る舞う。にこやかに答える)。 **どくだんじょう**【独壇場】職人の独壇場。独壇場を演じる。思うままに振る舞う。今日の試合は四番打者の一人舞台だった。一人舞台の大活躍。 **どりょく**【努力】努力(大げさに言えば英雄的な“中村典。小さな砂を積み上げるような迂遠いぇな山岡。血を流すほどの激しい持続的な「飯田。血の滲にじむような浅川。綱渡りのような梶井)。努力が(限界に遂する。足りない。天才を生む。実を結ぶ。報酬として返ってくる)。たゆみない努力が成功の原動力。努力に冷水を浴びせる。情熱と努力に頭が下がる。努力の(かいがある。崇高さを説く。何たるかを言語をもって悟らしむる=九鬼)。たゆまぬ努力の結果。今までの努力のすべてが水泡に帰す=高橋知。努力の跡が(見える。見られない)。努力は結果を逃切らない。努力を(払うに値する。無心に続ける。途中で放棄する。人知れず重ねる)。あらゆる努力を払う。最善の努力を尽くす。森林保護に努力を注ぐ。たいした努力を必要としない。非常な努力を示す。日々の努力を積み重ねる。布教に努力を傾ける。獅子奮迅、阿修羅のような努力を必要とする=星。かわいくなるためなら努力を厭いとわぬ姿勢に感動する三浦し。虫けらのように鈍い努力を続ける石坂。▼努力を惜しまない(地道な。いつ何時でも)。▼努力を重ねる(努力に。涙ぐましい。人知れず)。努力する(懸命に。合意形成に。事態収拾に。間に立って。精根を傾けて。少しでも不幸を忘れようと。全存在を傾けて。一言も聞き漏らすまいと。目的に向かって。いたずらにヒマな時間を作らないように必死で吉本。うまずたゆまずこつこつと"石坂。誤字を減らすよう星。寝食を忘れるほど森。人々が金儲いわけにいそしむように夢中で佐藤春)。努力をする(最大限の。血のにじむ)。努力して(一人前になる。平静を装う)。格別努力しているわけではない。結晶(汗と努力の。血と汗の)。才能 <681> # 尽くす・努める のありったけを注ぐ。死して後やむ。自分の腕のありったけを注ぎこむ高橋克。心魂を傾ける。努力ではない(尋常な。なまなかの。並大抵の)。今後の努力いかんにかかる。努力家(真面目な。目立たない)。取りまとめに汗をかく。人知れず汗を流す。営々と (餌を運ぶ蟻ぁり。蓄積してきた財産を失う)。田畑を営々と耕す。縁の下の力持ちの地味な仕事。刻苦精励する。これを刻苦して磨く。刻苦勉励して首席を勝ち得る。力を入れる(開発に。教育に)。▼注力する(景気回復に。研究開発に)。▼奮闘する(子育てに。実現のために)。政務に力行する。苦学力行の士。勤倹力行を重んじる。意を注ぐ(計画に。国政に。領内の治政に)。切磋琢磨さいきの功を積む。切磋琢磨して学問に励む。手を尽くす(看護に。八方。考えうる限りの)。手を尽くして(介抱する。調べる)。 **なりふりかまわず【なりふり構わず】** なりふり構わず(朝から晩まで働く。といった生き方)。なり振りかまわずに昔の男にすがりつこうとする藤田。なりふり構わぬ強引さ。人目の有無など気にしない。委細かまわずむさぼり食う。人目もかまわず泣き崩れる。見栄も(飾りもない。虚飾もない。体裁もない)。見栄も外聞も(ない。捨て切った身の投げ出し方。井上靖)。恥も外聞もない(無責任ぶり。といったかたちで逃げにかかる=池波)。恥も外聞もなく(嘘をつく。わめきたてる)。恥も外聞も忘れて(取り乱す。泣く)。 **なるべく** なるべく(手短に話す。落ち着こうと努める。接触を持つまいとする。そっとしておきたい)。なるたけ(無理をしない。早く用件を済ませる。人目にわからないようにする。安いものを頼む)。 **はげむ【励む】** ▼励む(主君に忠を。競って漁に。訓練に。芸の道に。熱心に稽古に。ものづくりに。老後の備えに。営々として忠勤を。一生懸命練習に。せっせと仕事に。せっせと内職に。トレーニングに。真面目に勉強に。一日も休みなく。稽古に精出して)。なにょりの励みになる。いっそうの勉励を期待する。▼勉励する(学業に。職務に)。勤勉な(学生。国民。生活。勤め人)。勤勉に(生きる。働く)。 **ひっし【必死】** ▼必死(授業についていくのに。新しい仕事に慣れようと)。必死で(神に祈る。知恵を絞る。涙をこらえる。逃げる。身をもがく。行方を捜す。あれこれ考えぬく。命綱にしがみつく。苛立心。ちを抑える)。怒鳴りつけたいのを必死でこらえる。ここが正念場だと必死で気を取り直す“井上ひ。バケツで水を汲み出すように必死で働く=高橋。必死な(努力が続く。思いで追いすがる)。別れてくれと迫る必死な目=連城。必死に(算盤にを弾く。怒りを噛み殺す。思考をめぐらす。何かを訴えようとしている目。歯を食いしばって官能の疼ぅぅきに堪える=柴田錬)。痛みを必死に耐える。壊れそうな心と必死に闘う。ちいさな幸せを必死に守る。泣くのを必死にこらえる。ベダルを必死に漕ぐ。目を血走らせて必死に駆ける。屈辱を栄光に転じる手段を必死になって求める!丸谷。城円を背にして必死に防戦する=船山。必死になって(口説く。探す。叫ぶ。知恵をしぼる。働く。否定する。その場を逃れようとする。ハンドルを切る)。変化に必死になってついて行こうとする=氷室。必死になる(打ち消しに。火消しに。悲しみに堪えようと。言葉を聞き逃すまいと。人に負けまいと。馬鹿は馬鹿なりに=かんべ)。必死の(力を振り絞る。努力を続ける。色を喩に浮かべる。声を張り上げる。防戦を繰り広げる)。考えあぐねた末の言葉を必死の思いで言う=水上。道ならぬしかし懸命な必死の恋」菊池。目の奥に断崖絶壁を背にしているような必死の光が宿る"東野。必死の形相で(迫る。ハンドルにかじりつく=つち。最後の力をこめて叫ぶ。薬もらをもつかむ気持ち。死に身になって働く。捨て身で事に当たる。捨て身の払い腰を仕掛ける。死力を尽くした激闘。死力を尽くして(運命と戦う。戦い抜く)。 **ふしん【腐心】** ▼腐心する(後継者をつくることに。自分の地位を保つことに。つじつま合わせに。ひたすら善根を積むことに。なんとかして逃げようと。開発資金の調途に内橋。気の利いた表現に"大野透)。 **ほねおる【骨折る】** 骨折る(一件の始末に。再建に。女の関心を引こうと)。骨折ったかいがない。骨折りに謝意を表する。骨を折る(こまかすのに。知識の普及に。さんざん。ずいぶん)。一汗流す。労をとる(及ばずながら。犬馬の。仲介の。媒的の)。粉骨砕身社業に打ち込む。粉骨砕身の(労をとる。覚悟でがんばる)。祖国のために粉骨砕身する。骨が折れる(えらく。かなり。ちょっと。途方もなく。話を聞き取るのに。毎月の遣り繰りに谷崎。笑いを噛み殺すのに舟橋)。準備に骨を折る。気骨が折れる。骨の折れる仕事。読み進むのにちょっと骨の折れる大作常盤。骨身を惜しまず尽くす。せっせと骨身を惜しまず働く有島。骨惜しみせずに(尽力する。働く)。苦労をいとわない。犬馬の忠誠を尽くす。 **ほんそう【奔走】** 奔走が(功を奏する。実を結ぶ)。▼奔走する(金策に。国事に。事業の拡張に。事後の処理に。出発の準備に。職探しに。農民を救うために。多くの人々を集めようと)。先日来しきりに奔走している=獅子。櫛風沐雨しいぷぅの(伝統。半生)。東奔西走の毎日。奔命に(疲れる。寧日なし)。 **まめ** まめな人。まめに(足を運ぶ。往き来する。仕事をする。手入れする。働く。勉強する)。まめやかに立ち働く。小まめに(顔を出す。体を動かす。休息を入れる。世話を焼く。掃除をする。手紙を書く)。手まめな人。手まめに(手紙を書く。働く)。まめまめしい働きぶり。まめまめしく(看病する。世話を焼く。立ち働く。働く。母に仕える。夫の世話をする)。 <682> # 作る **いる【鋳る】** 鋳る(釜を。釣り鐘を。銅像を)。▼鋳造する(鐘を。貨幣を。小判を。青銅の像を)。 **うみだす【生み出す】** ▼生み出す(新たな生命を。危機的状況を。転換の妙を。ヒット商品を。有利な情勢を。お互いの間に本物の愛情を。自分なりの判断を。世に先駆けて何かを)。▼所産(偶然の。努力の。長年の研究の)。 **オリジナル** オリジナルな論文。オリジナルの曲を編曲する。▼原画(ボスターの。漫画の)。原形を止めないほど荒らされる=内田康。未だに原形をとどめている。原作の持ち味を生かす。原作を(映画化する。テレビ化する)。原状回復を図る。原状に復する。原文と訳文を照らし合わせる。原文に(修正を施す。忠実な翻刻)。原本(契約書の。戸籍の)。 **かたちづくる【形作る】** ▼形作る(社会を。集団を。心象風景を。複雑な音響を)。言葉が形作られる。形成する(人民戦線を。多数派を。天然の突堤を。ネットワークを)。 **かもす【醸す】** ▼醸す(倦怠け以を。酒を。不安を。物談を。雰囲気を。紛議を。笑いを。作品に人情話の味を。何とも言えないおかしさを。絶え間ない焦燥を心中に『久米)。味わいを醸し出す(独特の。深い)。▼気分を醸し出す(打ち解けた。場にそぐわしい)。雰囲気を醸し出す(頼もしげな。和やかな)。▼醸し出す(様な熱気を。現代の息吹を。妖しいエネルギーを)。▼醸成する(信頼を。不穏な空気を)。 **ぎじゅつしゃ【技術者】** 技術者が不足する。優秀な技術者が集まる。異なる分野の技術者が一堂に会する"畑村。技術者として一本立ちする。技師を招聘しいする。展へ)。▼エンジニア(腕のいい。ベテランの)。 **くみたてる【組み立てる】** 組み立てる(試合の流れを。模型飛行機を。理論を懸命に。今日の行動予定を。野外ステージを)。組み立てがうまく行かない。家庭の組み立てががらがらと崩れる。▼組む(緊急予算を。戦闘機が編隊を)。▼編成する(一個師団を。チームを。予算を)。 **こうげいひん【工芸品】** ▼工芸品(きらびやかな。級な)。伝統工芸を尊重する。▼彫金する(文字を。模様を)。山奥に住んで民芸にいそしむ=水上。エロティックな匂いのする民芸品叩小林億。▼象眼する(宝石を。金で)。灰色に曇った空の中に象嵌らしたような雪の浅間山が見える=堀。張り子の虎のように首を突き出す=獅子。女の児がコロリと張り子の人形でも倒すように軽く転がる"志賀。叩くと胸が軽い張り子の ような音を立てる=横光。 **こうじょう【工場】** ▼工場(オートメーション化された。新装なったばかりの)。工場が操業を短縮する。工場に働きに行く。煙突の林立する工場風景。疲労した河馬かばのように横たわった大工場徳永。町工場注もこが軒を連ねる。 **こうせい【構成】** ▼構成(均整のとれた。散漫で雑然とした)。論文としての構成が堅平"司馬。長編の結構を備える。文章の結構を考える。起承転結がはっきりしている話。起承転結の妙を備えた物語構成の巧みさ。 **こしらえる【拵える】** ▼拵える(有り合わせの材料で料理を=辻仁。手毬にまの大きさの愉を指で高橋克)。こしらえる(詰問の種を。庭に蔵を。よそに女を。平仄むこうの合ったお話を)。▼こさえる(ご馳走らくを。時間を。抜き書きを)。作為の(跡がある。働く余地がある)。 **さいく【細工】** ▼細工(手の込んだ。上品な奥床しい)。惚れ惚阻ぇれとするほど細工が美しい。鮮やかな細工に見惚みとれる。小賢心だしい細工の限りを尽くす。細工はりゅうりゅう仕上げをご覧ぅぅじろ外村。特殊な細工を施す。細工する(木を。鹿の角を)。赤みを帯びて切り紙細工のような端正な桐りの若葉=円地。顔が切り子細工のように怪しくきらめく今日。小細工を(弄する。あまり好まない)。下手な小細工をする。針一突きの間違いもなく手間の極致を尽くして彫り出した象牙細工のような浴態”岡本。男が針金細工のようにふらふらと頼りなく奥へ消える=加賀。バネじかけで動くブリキ細工のオモチャのようにギクシャクと羽を動かす鳥本多勝。蠟和工以けぎのようにただ美しいだけの男徳田。▼加工する(鋼材を。材木を。魚を)。こちょこちょと小手先でごまかす。小手先の(細工を弄する。数合わせに走る)。 **さくしゃ【作者】** 作者が巧みに登場人物を動かす=常盤。作者と登場人物を同一視する。作者の(ブロフィール。思うつぼにはまる。表記法を尊重する。作り上げた宇宙に入って遊ぶ=田辺)。筆勢に作者の熱がこもる。作者自身の生き方が投影された作品。作者自身をモデルにする。作り手の苦労には想像が及ばない。 **さくせい【作成】** 論文の作成に手間取る。執筆要領の作成に取りかかる三浦し。▼作製する(合鍵を。地図を。標本を。レブリカを。バンフレットを)。作成する(書類を。報告書を。名簿を。ホームベージを。綿密なスケジュール表を。密書を奪い取ったのを奇貨として偽書を=山田美)。 **さくひん【作品】** ▼作品(瑕疵がしの多い。完成度の高い。個性的ないい。時代の息吹を濃く伝える。十分に読むに耐える。相当に始末の悪い。特別に印象深い。深い共振を呼び起こす。名作として世に残る。メロドラマ的要素が強い。やや古風な因縁話めいた。しみじみと可笑ぉかしい明るさを湛たたえた=中村明)。作品が世に出る。過去の作品と向かい合う。作品に(ユー <683> # 作る-223 モアが漂漂う。新しい傾向が目立ちはじめる三浦米)。幾つかの作品に共通するモチーフ。▼作品に反映する(生き方が。考え方が)。作品の(幅を広げる。クオリティが上がる。仕上がり具合を確かめる。質を落とさない。世界を構築する。出来を心配する)。作品をさほど多くは残していない瀬戸内。自分が気に入った作品を推す。優れた作品を世に送る。スケールの大きい作品を書く。素晴らしい作品を後世に残す。単行本として刊行された作品を文庫化する=高千穂。▼作品を発表する(意欲的に。次々と)。作品全体に流れるテーマ。作品中の白眉。▼作(会心の。出色の。入魂の。畢生めいの。鉄骨2この。惨憺从たる苦心の)。 **さんぎょう【産業】** 産業が(興隆する。衰退する。急速に発展する)。新しい産業が成長する。国内産業が空洞化する。産業構造の転換を迫られる。地場産業を振興する。観光と地場産業を結びつける=篠田。 **さんち【産地】** ▼産地(伝統的な。名だたる)。産地から直送する。産地を偽装する。原産地を表示する。木場仕込みの味。 **さんぶつ【産物】** ▼産物(人生は妥協の。人間の知恵の。産物を物々交換する。生産物が流通する。生産物を供給する。副産物(経済成長の。研究の)。各地の物産。海の幸を(口に運ぶ。満載する)。海産物を直送する。山菜や茸いのといった山の幸。山の幸に恵まれる。失われゆく山の幸の本物の味を懐かしむ"辺見。 **しくみ【仕組み】** 仕組みが効果を発揮する。社会の仕組みを変える。物の仕組みをわきまえる。話の絞ぁゃが呑みこめない。事件の紗を解明する。心理の綾を探る。文の成り立ち。メカニズムが機能する。からくりがだいたい分かる。からくりの(底が存外浅い。糸が驚くほどの明瞭さで露ぁらわれる八谷崎)。構造が複雑に入り組む。構造に欠陥がある。社会の構造を改変する。構造的な変化が起こる。 **システム** ヒューマンエラーを織り込んだシステム"畑村。システムが機能不全に陥る。システムに誤作動が生じる。システムの(中身がブラックボックス化する。改変を余儀なくされる=畑村)。システムへの信頼感が揺らぐ。新しいシステムを取り入れる。コンピューターのシステムを作動させる。徹底的にシステムを変革する。 **したてる【仕立てる】** ▼仕立てる(船を。反物を着物に。少年を一人前に。成功諏忙なにを小説に。素人を一人前のママに=半村)。▼仕立て上げる(夫を道化に。女房を闘士に)。 **しょくにん【職人】** 職人(腕のいい。年季が入った。苣気質の)。職人から叩き上げる。職人に弟子入りする。職人の技が生産技術と結合する=吉田。いっばしの職人のようにいう。職人気質に徹する。職人気質の男。職人芸を披露する。石工が(石を刻む。槌を振るう)。腕のよい大工。大工が建具をいじるように楽に戸を外す吉川。腕に職のある大工や左官=平有。 **じんこう【人工】** 自然と人工とが調和した美しい光景・加賀。人の手が加わる。人工的に孵化ぃかさせる。人為的な(災害。ミス)。 **すく【滩く】** ▼洮く(楮ごうを。障子紙を。海苔のを。和紙を)。紙を裂する。 **せいさん【生産】** 計画的な生産。生産が(頭打ちになる。順調に拡大する)。流れ作業で生産する。失敗が拡大再生産される。労働力を再生産する。生産手段を(集積する。资本に転化する)。生産性を飛躍的に向上させる。効率的な生産第一主義。生産台数が順調に伸びる。生産能率が上がる。生産様式を(変革する。保持する)。生産量がビーク時の三分の一にまで落ち込む"畑村。生産力が発展する。生産力に乏しい不毛の地篠田。▼減産する(冷害で大豆が。鉄鋼を)。▼産出する(原油を。石炭を)。産出高が(減少する。増える)。産する(石油を。良質のバターを)。増産する(穀物を。米を)。量産が軌道に乗る。自動車を量産する。国産の(車。ロケット)。地産地消による国産品の消登拡大。国産品を愛用する。 **せいぞう【製造】** ▼製造する(化学燃料を。菓子を。機械を。部品を)。製造部門を担当する。工業が発達する。工業製品を量産する。茶を製する。鉱物から裂する顔料。▼精製する(ガソリンを。砂糖を)。メーカーから商品を仕入れる。日本一のメーカーにのしあがる。ものづくりに励む。ものづくりを(基本に据える。大事にする)。一生一品の製作に精進する。寝食を忘れて製作に従事する。▼製作する(映画を。新聞を。密な画面を忠実に追って内橋)。製作して即売する。特製の(胞ば。靴。ケーキ)。注文品を特製する。 **せいど【制度】** 小選挙区制は死票が数多く出る制度"佐高。制度が(岐路に立つ。追い追い確立する)。制度の網の目が完成する。新しい制度を導入する。古い制度を温存する。警察が制度疲労を起こす佐々木。体制を揺るがす危険な存在"村松。体制づくりが着々と進む。体制転覆を企てる。 **せっち【設置】** ▼設置する(委員会を。大型機械を。査本部を)。常設する(委員会を。相談室を)。常設の展示場。常置する(委員会を。相談所を)。新設する(駅を。サイトを。ボイラーを)。▼設営する(会場を。テントを)。簡易トイレを特設する。特設の(ステージ。舞台)。▼しつらえる(壁に棚を。豪華な弁当を。祭壇を。水中に籠を。洋風に部屋を)。西欧風にしつらえた台所。茶室風にしつらえた待ち合い所。 **せってい【設定】** 似たような設定になりがち。設定の妙が歴然とわかる。▼設定する(細かく課題を。枠組みを)。▼セッティングする(会議を。飲み会を)。 **せつりつ【設立】** 設立する(会社を。学校を。病院を。法人を。労働組合を)。大学を新設する。創設する <684> # 作る (学校を。基金を。研究所を。制度を)。会社を創立する。 **そうさく【創作】** 創作に(意欲を燃やす。打ち込む。従事する。没頭する)。創作の(泉が枯れる。筆を絶つ)。当意即妙の創作の才。▼創作する(音楽を。劇を。詩を。物語を)。創作意欲が湧く。創作意欲をかき立てる。創作活動を続ける。多才な創作ぶり。旺盛な創作力。創作力が衰える。 **そうぞう【創造】** 物語の創造の出発点。新たな創造の種を生み出す畑村。▼創造する(生きた歴史を。価値を。文化を。平和を。未来を)。新しい表現方法の創造者。創造性に(欠ける。富む)。創造性を養う。創造的な(意見。計画)。創造力(豊かな。卓越した)。創造力が枯渇する。創造力を(刺激する。伸ばす)。 **たいけい【体系】** 学間を体系化する。▼体系立てる(学問を。理論を)。体系的な(政策。理論)。実験を組織的におこなう。 **つくりかた【作り方】** カレーのつくり方を教える=重松。簡単な作り方を説明する。料理の作り方を写真入りで載せる=阿川佐。▼製法(新しい。従来の。秘伝の)。製法を秘密にする。 **つくりだす【作り出す】** ▼作り出す(新しい時代を。新しい物質を。生きる喜びを。新型の機械を。小気味よいリズムを。自分自身でチャンスを。世界にないものを)。▼創出する(雇用を。アイデンティティーを)。 **つくりばなし【作り話】** ▼作り話(いかにもありそうな。全くでたらめの誇大な=瀬戸内。歯の浮くような=石森)。とても作り話とは思えない。作り話にうまく引っかかる。適当な作り話を考える。下手な作り話のような偶然の連続安部。もっともらしい作り事を言う三島。 **つくる【作る】** ▼作る(扇形の陣形を。工面して金を。事件の発端を。自前で衣装を。生活の基盤を。石膏ごうの型を。外に女を。確かな土台を。適当に口実を。長い列を。庭に花壇を。蜂が巣を。話の流れを。話す機会を。眉の間に疲しもを。目の下に隈くまを。山々が起伏を。雪が深い職劫だを。隷属が恨みを。ローブで輪を。明かりが光の筋を。頭の中でストーリーを。あちこちに借金を。いくつかのサンブルを。悪戯六法っぽい表情を。片頬に大きな笑くぼを。軍勢がわっと岡ときを。精一杯悲しい顔を。生活のリズムを。早急に計画書を。たくさんの個体が集まって群体を。確かなアリバイを。段ボールで小さな覆いを。ちゃんとした家庭を。仲間との間に溝を。投げた石が水面に波紋を。人間としての骨柄を。人差し指と親指で丸を。不安がゆっくりと渦を。見よう見真似るまでシチューを。寛容な笑顔を無理に。精魂かたむけて。若い衆を集めて組を熊合)。勝ち誇ったような微笑をつくる"遠藤。▼造る(家を。船を)。▼笑顔を作る(悪戯っぽい。ほっとして)。▼種を作る(心配の。悪口の)。試しに一つ作ってみる。精子が精果で作られる。勝手に作り上げた幻影。感性が創り上げた偉大な財産大野透。作り上げる(心血を注いで。お似合いの夫婦を。近代的な国家を。周到に架空の人格を=佐々木)。▼つくり上げる(緻密にして堅牢な陣容を"村松。なけなしの想像力を働かせて物語を!高橋源。イマージュを自分勝手に堀)。▼開設する(口座を。ショールームを)。試作する(機械を。自動車を。小説を)。自作の(句。詩)。・造立する(伽藍がらを。寺院を。石塔を。大仏を。仏像を)。即裂の(椅子。棚。料理)。調査隊を組織する。開裂する(火器を。着物を。式服を。食事を。報告書を)。詩を賦する。▼密造する(覚せい剤を。酒を。どぶろくを。麻薬を)。▼結成する(会派を。会を。グルーブを。バンドを)。▼建造する(クルーザーを。タンカーを。ドームを。船を。新たなグローバル社会を)。造成する(グラウンドを。工場用地を)。宅地造成が進む。草地造成をした丘。▼設ける(お礼の一席を。協談の場を。別れの席を。何のかのと口実を)。▼ものする(エッセイを。傑作を。詩を。著作を。論文を)。 **てづくり【手作り】** 手作りの(温かみ。服。マスコット)。職人が手作りする。手打ちの(うどん。蕎麦マは)。手製の(ケーキ。料理)。手彫りの(印鑑。熊)。 **はっこう【発酵】** ▼発酵する(気まずさが。仲が恋に)。ぶどうを発酵させる。自然に発酵してきた感情。▼発酵してくる(感動が。作品が)。▼醸造する(酒を。醬油を。ビールを。味噌を)。 **はつめい【発明】** 発明(俊大な。画期的な。空前絶後の。技術の世界を一変させる。世人をあっといわせる)。発明に(鎬乳のを削る。没頭する)。必要は発明の(父。母)。▼発明する(装置を。方式を。文字を)。発明家の名に値する。特許権を得る。特許を(獲得する。申請する)。 **ばんぐみ【番組】** 番組が次のコーナーに移る。一秒も休みなく番組を流す。新しい番組を秋から立ち上げる=さだ。レギュラー番組を持つ。盛りだくさんなプログラム。 **フィクション** フィクション(純然たる。まことしやかな)。フィクションが現実とオーバーラッブする=柳田。現実とフィクションをごっちゃにする八谷川。架空の事件をでっち上げる。白々しい架空の物語。イメージを仮構する。根も葉もない虚構"高田。現実と虚構が入り交じる。虚構と事実が交錯する。虚構の世界にはまり込む。史実と虚構を巧みに操る。 **へいせつ【併設】** ▼併設する(カフェにギャラリーを。中学校に小学校を)。料理教室を併設するレストラン。大学に付属する病院。▼併置する(小学校と中学校を。病院に看護学校を。二つのブロットを)。 **らんぞう【乱造】** ▼乱造する(粗悪品を。粗末な製品を。質の低い作品を)。乱作する(小説を。低俗な番組を。ドラマを)。 <685> # 伝わる・知らせる **あいず【合図】** 狐の終わりを知らせる合図-熊谷。そろそろ合図があってもいいころ。目顔で合図を送る。▼合図をする(片手を上げて。手を振って)。親指を上に向ける。女同士の合図めいた目の動き=高樹。合言葉を言う。キューを出す。号砲が(鳴る。響く)。呼び子を(鳴らす。吹く)。オーケーのサイン。不安がチカチカとサインを送っている=阿刀田。指でピースサインを送る。シグナルが濡もゃのような量がきを帯びる水井郎。ちかちかとシグナルが点滅を始める。シグナルを送る。信号が(変わるのを待つ。青に変わり車が再び走り始める若竹)。信号を出し合っているみたいに喋しゃらなくてもちゃんと意志が通じ合う小川。ちかちかと信号を送る。交差点で信号待ちをする。蜂火いろの火花が怪火のように遥かの空にぱっと咲いてはすぐ散って行く=有島。戦いののろしを上げる。 **あんごう【暗号】** 野球選手のサインのように船と本社との間にしかわからない暗号“曽野。暗号を解説する。胸の奥で大切な暗号をつぶやくように言葉を繰り返す=小川。夫婦だけにしかわからない暗号のような愛の言葉原田康。データが自動的に暗号化される。▼隠語(警察の。新聞記者の。やくざの)。符丁で(話す。呼ぶ)。 **いいつたえる【言い伝える】** 「言い伝える(長く。広く)。昔から言い伝えられている。▼言い伝え(先祖からの。古い。昔からの)。言い伝えが昔からある。言いつたえにもないほどの遥かな昔=本庄。▼語り継がれる(歴代の部員に。代々。口から口へ親から子へと)。戦争体験を後世に語り継ぐ。▼語り伝えられる(親から子に。話が尾ヒレをつけて=畑)。▼語り伝える(失われた人々の暮らしを。面白おかしく話を)。語り部が記憶している説話。伝承する(技能を。ノウハウを。物語を。母から子へ)。昔ながらの伝承を語る。 **いいならわす【言い習わす】** ▼言い習わす(「暑さ寒さも彼岸まで」と。劣等感をコンプレックスと)。その土地で言い習わしている言い方。古くから言い習わしてきた。言い習わし(風土に合った。昔からの)。 **いいふらす【言い触らす】** ▼言いふらす(あらぬことを。嘘八百を。大げさに。針小棒大に。誰彼かまわず。ありもしないことを。埒らぁもないことを。噂をあちこちに。想像を交えて他人に京野)。▼言い散らす(勝手な噂を。冗談を。悪口を。あることないことを)。▼言い回る(近所に。親戚中に。あることないことを)。親類じゅうに触れ太鼓を回す。触れて(歩く。回る)。▼触れまわる(近所に。親類じゅうに。世間に。あることないこと)。図らずも自らの不明を世間に喧伝する結果になる=高橋克。▼喧伝する(名を天下に。いろいろ面白そうに)。▼喧伝される(名が世間に。美談風に)。▼吹聴ぃふぅする(修法の効を。来る人ことに。世間に。自慢めかして。鼻高々と。臆面もなく馬鹿話を。誇大に我が腕を。得意げに知識を。手柄を得意げに)。得々と吹聴して回る。吹聴するほどのことでもない。 **いいわたす【言い渡す】** ▼言い渡す(遠島の刑を。解雇を。破門を。罷免心を。無罪判決を)。無罪判決が下される。▼下す(裁きを。おごそかに託宣を)。申し渡す(禁止を。荘重な口調で)。▼下す(重大な決定を。即座に決断を、内密に指示を。自ら手を。現実的な判断を。びしびしと命令を)。▼宣告する(首切りを。死刑を。有罪を)。一年足らずの余命を宣告される。 **いんさつ【印刷】** 印刷を望む声が強い。▼印刷する(案内書を。新聞を。ビラを)。ガリ版を切る。刷りがきれいに仕上がる。刷り込む(推薦文を。電話首ㄎを。記憶に)。刷り物を配布する。本を増刷する。報告書を謄写する。プリンターをパソコンに接続する。山のようなブリントをもらう。刷る(浮世絵を。紙幣を。新聞を。年賀状を。オフセットで。活版で)。猛獣のように唸うなり喚もゃく数十の輪転機"徳永。印刷所の輪転機が稼働する。 **インターネット** インターネットが(定着する。普及する)。インターネットで検索する。インターネットに(接続する。サイトを立ち上げる)。インターネットのブラウザを立ち上げる。インターネットを通じて通信販売する。▼ダウンロードする(アイコンを。データを。アブリケーションを。ソフトウエアを)。相互にリンクする。リンクを張る。雑誌をリンクさせたウェブサイト。ウェブサイトからログアウトする。ウェブサイトにアクセスする。ホームページに(アクセスする。アップする)。 **うわさ** 噂噂(ためにする。親戚の間を漂っている。取るに足らない。何の根拠もない。もっぱらの世問の。顔をしかめたくなる=伊坂。無資任な悪意に満ちた=山本周)。噂が(陰湿に広まる。近所に広まる。自然と消える。下火になる。世上に流れる。町内に広まる。耳に届く。あっという間に広がる。風に乗って伝わってくる。学校中に広がる。口コミで広まる。国々を吹き通る。世間を駆けまわる。立ち消えになる。本人の耳に入る。まことしやかに伝えられる。巷間加心にささやかれる。世論という超個人的なものになってインフルエンザ的な猛威をふるう。安部。おもしろおかしく人の口に伝わっていく灰谷。人々の口の端はにのぼる=池井戸。微風のように耳に入ってくる"今東)。あれこれ噂が飛び交う。いろいろな噂が乱れ飛ぶ。陰で様々な噂がささやかれる。黒い噂が起こる。世間の噂が耳に入る。倒産の噂が流れる。とかくの噂が多い人物。耳に妙な噂が飛び込んでくる。よからぬ噂がついて回る。ロマンチックな噂が絶えない。▼噂 <686> # 伝わる・知らせる が高い(夙っとに淫奔の。名医という)。▼噂が立つ(不穏な。つまらない)。▼噂が広まる(嫌な。手の打ちようもないほど=北原)。街の惨状を噂で開く。物騒な噂で市中はもちきり船山。噂に尾鰭はぃがつく。不吉な噂に包まれた人物。風の噂に開く。かねて噂に聞いている。噂にたがわぬ(難コース。美人)。▼噂に上る(世上の。巷さまの)。略の(火種を作る。真偽を確かめる。ほとぼりが冷める)。逃れがたい噂の陥穽切以有吉。噂の種にされるのが落ち。傍焼体がき半分の噂の種になる高井。噂の種を(振りまく。まき散らす)。噂は(かねがね承知している。しょせん噂でしかない!辻兵)。一度広まった噂はなかなか消えない。噂を(小耳に挟む。すれば影がさす)。あまりいい噂を聞かない。怪しげな噂をささやき交わす。言下に噂を否定する。隅でこそこそ噂をしあう。迷惑な噂を立てられる。良くない噂を耳にする。噂が噂を呼んで大騒ぎになる"加賀。世問の噂を敵にまわす“三島。腹立ちまぎれに無責任な噂を流す小林久。噂を立てる(あられもない。面白おかしく)。人の噂も七十五日。人の心を開き流す。妙な噂が立つ。妙な噂を聞きこむ。ちょっとのことでも尾鰭をつけて噂する=南条。▼噂をする(からかい半分に。鬼の首でも取ったように人の"中上)。陰で噂し合う。陰でひそひそ話題にする。人の口の端にかかる=飯田。世上の沙汰に上る。人の口には戸を立てられない。世間の人の口はうるさいもの。流言飛語が(伝わる。飛び交う)。まことしやかな流説。風の便りに聞く。風の便りを耳にする。▼口にのぼる(世上の。興味本位に他人の浅川)。▼人の口にのぼる(啄が。名が)。▼口の端にのぼる(噂が。近所の。世人の)。ゴシップが跋扈ぶっする。芸能人のゴシップに詳しい。ゴシップの種になる。流言が(広まる。類々と飛ぶ)。流言飛語に惑わされる。 **うわさばなし【噂話】** ▼噂話(無責任な。好奇心に満ちた)。噂話が胸の中にしこる。狭い村では建前と略話が生活の潤滑剤・三浦し。噂話に花を咲かせる。下情に通じたうわさ話を披露する藤沢。醜聞の噂話を消してまわる=開高。▼噂話をする(滔々はらと。へらへらと)。 **おつげ【お告げ】** ▼お告げ(神の。夢の)。お告げを待つ。神託を求める。神の託宣がある。夢枕に現れる。立つ)。霊夢を賜わる。 **きじ【記事】** 記事が(新聞に載る。週刊誌をにぎわす)。とやかく言うほどの記事ではない。記事と現実とがひどくかけ離れている藤原。記事に(責任を持つ。説得力を持たせる)。警察の発表を記事にする。記事の(扱いが小さくなる。見出しが躍っている)。記事を最後まで読む。埋め草的な記事を削る。数日前に読んだ記事を思い出す。小さな記事を丹念に拾い集める藤本。ちょうちん持ち的な記事を書く=西木。三面記事的なありふれた事件。武勲を大きく書きたてた新聞記事の江戸川。新聞記事を切り抜く。自衛隊と県をヨイショする提灯記事の横山。 **きしゃかいけん【記者会見】** 急遽給記者会見が開かれる。記者会見の席上で説明する。記者会見をテレビで中継放送する。マイクの束の前に座る。 **くちづたえ【口伝え】** 口伝えに教える。奥義を口伝えに授ける。不文律のまま口伝えに生きている掟诂き渡辺。口移しで教える。口コミで(噂が広まる。評判になる)。口伝水もてに広まる。口伝ての噂。口伝でで教える。口伝を受ける。人づてに(聞いた話。頼む)。 **こうこく【広告】** 広告で客を釣る。タウン誌に広告を載せる。テレビで大々的に広告を展開する=重松。広告を出す(雑誌に。新聞に)。祭礼かと見まがうばかり賑やかに飾り立てた店の前の広告塔島崎。ネオン広告が燦々さんと輝く。 **コミュニケーション** コミュニケーションが(円滑になる。滞る。成り立つ。うまくいかない)。コミュニケーションの媒体。コミュニケーションを図る。他人とコミュニケーションを持つ。意思疎通が悪い。意思の疎通が(スムーズ。よい。悪い)。意思の疎通を図る。日本語で意思を疎通する。 **しゅっぱん【出版】** 出版が無期延期になる。出版に値する作品とは思えない。本の出版を思い立つ。▼出版する(時集を。本を。・単行本の形で)。際物の出版物。▼上梓氾いする(自伝を。本を。論文集を)。上梓するなり各紙誌で取り上げられる奥田。 **じゅわき【受話器】** 受話器から(声がこぼれる。耳を離す)。声が受話器から流れてくる。受話器に(手を伸ばす。耳を当てる)。受話器の(底に絶ずがるような声を響かせる!連城。向こうに深々と頭を下げる=篠田)。受話器を(耳から離す。通して聞こえる声。耳に押し当てる。抱くようにしてひっそりと話をする=内海)。網でバシャンと掬すくうみたいに受話器を取り上げる尾辻。飛びつくようにして受話器をとる=司馬。受話器を置く(がしゃんと。叩きつけるように筒井。まだ話していたい気持ちに軽くビリオドを打つように落合。まるで重い錨いがでも置くように=森瑙)。 **しょうかい【紹介】** 周辺的な事柄の紹介にとどめる。紹介の労をとる。紹介する(簡単に筋を。別の機会に。折に触れて。答を一人一人。歌にまつわる思い出を。欧米社会に禅を。自国の芸術を外国に。一人ずつ順番に。広く世界各国に。追い追いと少しずつ。親しげに肩を抱いて。話の概略をかいつまんで)。簡単に自己紹介をする。紹介記事を書く。紹介状を(手に訪ねる。書いて持たせる)。顔つなぎに(会に出席する。食事をする)。新入社員の顔見せ。添え状を持ってやって来る。作者のプロフィールを書く。 **しょうそく【消息】** 消息が杏ょぅとして知れない。ぶっつりと消息が絶える。神かくしにあったように消 <687> # 伝わる・知らせる 息が知れない林京。とんと消息が分からずじまいになる瀬戸内。その後の消息は不明。消息を折々漏れ聞く。家族の消息を聞き出す。船が消息を絶つ。いろいろな人物の消息をおもしろおかしく披露する!奥泉。安否が気になる。安否を(気遣う。訊たずねる)。 **じょうほう【情報】** 情報が(外部に漏れる。決定的に不足している。続々と入ってくる。満足に入手できない)。いい加減な情報がまことしやかに流れる。他社に情報が漏れる。未知の情報が手に入る。有力な情報が寄せられる。▼情報が飛び交う(さまざまな。断片的な。もっともらしい)。情報が流れる(あやふやな。警察に)。情報の(裏をとる。キャッチが遅れる。数は増したが役立つものは皆無といっていい=高見浩。洪水の中に埋没する=柳田)。情報を(小耳に挟む。正確に伝える。役に立てる。頭に叩きこんでおく。頭の中で整理する。一片も持っていない。緊密に交換する。事前にキャッチする。上層部に上げる。早く正確に入手する)。新しい情報を数多く仕入れる。いち早く情報をつかむ。意図的に情報をリークする。色仕掛けで情報を得る。重要な情報をもたらす。都合の悪い情報を隠蔽する。独自の情報を握る。偽の情報を流して敵を欺く。労せずして情報を手に入れる。▼情報を集める(積極的に。細大漏らさず。できるだけ)。個人情報を握っている。情報過多の世の中。情報源を(秘匿する。明示する)。情報公開の必要性が叫ばれて久しい。情報交換を密にする。情報収集にあたる。情報収集力に長けている。コンピューターにより情報処理が容易になる。情報提供者として貴重な存在。地獄耳といわれる情報網。データベースからデータを取り出す。 **しらせる【知らせる】** ▼知らせる(危険な現状を。注意事項を。半鐘で火事を。一刻も早く。声をあげて。緊急事態発生を。目を覚ますころを見計らって三島)。優秀さを全校生徒に知らしめる=葵。▼お知らせ(お気の毒な。スポンサーからの)。知らせが何か裏切られたような脈されたような空虚な風になって吹き貫く=高樹。追っつけ知らせが行くだろう。事件の知らせが入る。逡巡しゅんを横からはねとばしてしまうような知らせがとびこんで来る黒井。不意の知らせに驚く。わざわざ知らせに行く。知らせを聞いて駆けつける。官報に掲載する。檄を飛ばす。▼開示する(カルテを。結果を。事実を。情報を。秘密を)。既報の(事件。文献)。▼公告する(貸借対照表を。入札を)。投票日を公示する(参院選の。総選挙の)。地価を公示する。公布する(憲法を。法律を)。投票日を告示する。指示を周知させる。周知徹底を図る。事故の様子を就報する。▼布告する(宣祇を。戦争を。法律を)。触れ書きの回状がまわされる。触れを(出す。回す)。・報じる(事件発生を。柱時計が時を。犯人逮捕を。不慮の死を。新聞が大々的に)。火災報知のベル。アナウンスが(場内に流れる。流れる)。搭乗案内のアナウンスが聞こえる。車内アナウンスが次の到着駅を告げる=伊坂。▼触れ太鼓(相撲の。祭りの)。触れ太鼓が(練り歩く。回る)。▼耳に入れる(噂を。評判を。社長の)。一応耳に入れておいたほうがいい。 **しんわ【神話】** 神話が現代によみがえる。神話に泥を浴びせる。残忍な古い北欧神話の神のごとき顔をする=北。神話を民衆に押しつける。無謬びの神話を持つ独裁者。微臭いがい神話を信奉する=海堂。文字通り成長神話を地でいくような立志伝中の人物"小林久。神話中の英雄のような人物"海音寺。人生が神話的色彩にいろどられる=村上春。 **せんでん【宣伝】** 官宣伝が行き渡る。宣伝合戦を繰り広げる。大々的な宣伝活動。▼鼓吹する(思想を。主張を)。訴求力のあるコマーシャル。コマーシャルをテレビで流す。ダイレクトメールを出す。顧客にダイレクトメールを発送する。森林の大切さをピーアールする。新製品のキャンペーンが成功する。キャンペーンを(繰り広げる。張る)。 **そくほう【速報】** 開票結果を速報する。結果を早急に知らせる。速報値を(下方修正する。上方修正する)。事態の概要を急報する。急報に接する。第一報を(送る。放送電波に乗せる)。早馬を(立てる。飛ばす)。飛報が届く。 **たより【便り】** 便りが(頻繁に来る。ぼつぼつ届く)。便りのないのは(良い便り。無事に暮らしている証拠谷崎)。何の便りもない。便りが途絶える。ばったり音沙汰がなくなる。音沙汰がない(いまだに。しばらく。待てど暮らせど)。何の音沙汰もない。音信が絶える。音信不通になる。手紙を書いても梨のつぶて"有吉。 **ちゅうけい【中継】** ▼中継する(コンサートを。送球を。無線連絡を。サッカーの試合を)。テレビで全国に中継される。実況中継を続ける。中継局を設置する。夜な夜なナイトゲームのテレビ中継にかじりついている赤瀬川。 **つうしん【通信】** 活発な通信のやりとり。無用な通信を極力控える。無線の交信に耳を澄ませる。交信を傍受する。▼送信する(画像を。インターネットで)。▼配信する(記事を。コンテンツを。ニュースを)。無線が混信する。無線で(交信する。逃絡を取る)。無電を(打つ。傍受する)。無線機がカタカタと音を立てる=西木。発信する(救難信号を。情報を。メッセージを。国内外に。世界的スクープを。証言をマスメディアに。全世界に向けて)。 **つうち【通知】** ▼通知する(関係者に。事前に。本人に)。はっきりした病名を告知する。▼通告する(契約破棄を。国交断絶を。警察に)。▼通遂する(公文書を。出入り禁止を)。通達を出す。到着を告げ知らせる。早春を告げ知らせるような大雪=梶井。事故発生の通報 <688> # 伝わる・知らせる を受ける。▼通報する(学校に。警察に。役所に)。 **つげる【告げる】** ▼告げる(会議の終了を。季節の到来を。客の来訪を。計画の中止を。承知した旨を。春の訪れを。本当のことを。来訪の目的を。一日も早く。アナウンスが電車の到着を。おおよその見当を。心置きなくおさらばを。仕事が一段落を。思ったままを手短に。住所を運転手に。真実をありのままに。落ち着いた声で。俄慄すべき真実を淡々とした口調で辻真)。暁を告げる鶏の声。夏の終わりを告げる風。▼終わりを告げる(饗宴が。蜜月時代の)。▼急を告げる(事態が。戦雲。風雲)。▼事実を告げる(意外な。ありのままの)。▼時を告げる(鐘楼が。鶏が)。▼別れを告げる(最後の。しばしの。手を振って)。▼宣布する(国民に。内外に)。訴える(お腹が空腹を。体の不調を。苦痛を。食欲不振を。悩みを。激しい頭痛を。不安を。腹痛を。不平を。体が眠たいと。大げさに痛みを。何となく割り切れない気持ちを。切実に寂しいと)。 **つたえる【伝える】** ▼伝える(一脈の真実を。肌が秋を。緊急情報を。検査の結果を。真実の姿を。正確に言行を。戦争の記憶を。先方に事情を。祖先の血を。藩主の意向を。密かな思いを。部屋の番号を。昔の面影を。親から子に。指示を的確に。裕音を他人に。用件を手短に。口から口へと。要望を言葉で。風がほのかに木の香りを。感謝の気持ちを。休暇を取る旨を。工事の進捗しんちぶりを。電話で手短に用件を。びくびく心臓の鼓動を。言葉を機械的に。できるだけ正確に。何かの話のついでに。感触をまざまざと。気持ちを態度で。原爆をありのまま。当時の模様をあままことなく。取るものも取りあえず。活をかいつまんで。身振り手振りで。事実を事実として後世に=船山)。一人でも多くの人に伝えたい。一生懸命に伝えようとする。伝えられる(容態の急変を。人から人へと。批評精神が脈々として今日まで今束)。▼回覧する(資料を。文案を)。回覧板を回す。手話で話す。伝遂する(情報を。命令を)。▼意思を伝達する(言語で。ジェスチャーで)。伝令を出す。 **つたわる【伝わる】** ▼伝わる(異様な気が。壁を水滴が。感謝の思いが。空気の振動が。心の震えが。手元に魚信が。頬に涙の滴が。汗が肌を。水が石の円を。悪評が耳に。感触が手元に。振動が体に。尾鰭は、がついて。口から口へ。受話器に人のざわめきが。尋常でない気配が。涙がとめどもなく頬を。気持ちが倣感に。ニュースが社内に。まことしやかに人々に。口から耳へ、耳から口へと。世間に醜聞として、突飛な逸話がいろいろ。人の手から手へ。湿った土の感触が手のひらに!あさの。遂い汽笛がおぼろげに三島。ひんやりとした感触が掌K650に=中沢)。古くから伝わる伝説。耳に伝わる甘いささやきの声。指に伝わるほのかな体温。▼背筋を伝わる(衝撃が。肌寒さが)。▼ひしひしと伝わる(気の配りが。緊迫ぶりが)。住民の間にパニックの波が伝わっていく=柳田。▼伝わってくる(地面の振動が。じわりと熱が。街の賑わいが。響きが股々と。渓流のかすかな水音が。ほこほこと温かさが。模様よろしからずの報が。イメージが強烈に。親子の人情がひしひしと。悲しみが惻々そくと。手に取るように。手にざらりとした感触が"若竹。女の肌のぬくもりがじかに戸川。ズッシリとした重みがてのひらに!大原。手紙から飾り気のない温かさがしみじみ=石森)。苦労が手に取るように伝わってく る飼育日記"畑。一子相伝の(味。家宝)。家伝の(調合。秘宝。妙薬。名刀。霊薬)。母から子へと伝承する。伝導する(電気を。熱を)。伝播にんする(文化が。民衆の間に)。仏教が伝来する。伝わらない(真意が。杳ょうとして消息が)。好事円をいでず。 **つつぬけ【筒抜け】** 声が筒抜けに聞こえる。筒抜けになる(事前に情報が。内緒話が。物音が隣室に。こちらの行動が相手に)。壁に耳あり障子に目あり舟橋。漏れ伝わる(真相の一部が。中 **てがみ【手紙】** ▼手紙(鉛筆でぞんざいに書いた=堀。丹念に墨を唐ずりおろして一字一字考えて書いたような!有島。、如実に心の動きを物語る=永井路。やんわりとした断りの“黒井)。脅迫めいた手紙が届く。近頃手紙が来ない。手紙が入っている(封筒に。郵便受けに)。手紙に(封をする。筆を走らせる。目を走らせる)。要件を手紙にしたためる。手紙の(宛名を確かめる。内容に興奮する)。手紙を(ずたずたに引き裂く。机の上に投げ出す。何回もくりかえし読む。バッグの底に忍ばせる。胸のポケットにしまう。遠い過去をいじるように指先でさわる=大庭)。思い出したように手紙をやりとりする。手にした手紙を握りしめる。二度三度と手紙を読み返す。頻繁に手紙をよこす。惚から一通の手紙を取り出す。掌~60の上で手紙を重さを量るように揺らしてみる=柴田湖。巻紙に毛筆で認ためられた手紙をひろげる=石坂。末期の思いで書いた悲しい手紙を受け取る=中河。エアメールを(受け取る。送る)。私信を送る。他人の私信を盗み見る。手書をしたためる。書簡を(往復する。持参する)。書状のやり取りをする。懐中から恋状を取り出す。手早く書状をしたためる。親書を(送る。携える)。信書を開封する。屋敷に投げ文がある。封書から便箋を引き出す。ハンドバッグから封書を取り出す。密書を奪い取ったのを奇貨として偽書を作成する=山田美。郵便受けに葉書が入っている。葉書を状差しに戻す。絵はがきでも見るような美しさ=高橋克。 **でんこん【伝言】** 伝言を(頼む。食卓の上に置く。フロントに預ける)。伝言する(友人に。ホテルのフロントに)。言伝てを頼む。メッセージが(伝わる。届く)。メッセージを(受け取る。送る。書き込む。書く。添え署名する。残す)。 <689> # 伝わる・知らせる **でんせつ【伝説】** 伝説に材をとる。伝説の(域を出ない。名女優)。すべての伝説の場所とは結局失望の場所=遠藤。噂が伝説のように残る藤沢。伝説上の人物。伝説的な(英雄。名人。話が残っている)。都市伝説に囲まれる。 **でんわ【電話】** 電話が(やっと通じる。話し中で通じない。狂ったように鳴り続ける=原田余。死を予感した象のように何度か狂おしく鳴き叫ぶ=村上春)。いつ果てるともなく電話が続く。問い合わせの電話が殺到する。唐突に電話が鳴り響く。▼電話がかかってくる(脅迫じみた。催促の。何度となく。ひっきりなしに)。▼電話が鳴る(不安をかき立てるように、筒井。夜の空気を切り裂くように黒井)。電話から沈黙が伝わってくる。電話で(相談を受ける。連絡を取る)。電話に(手を伸ばす。出てメモを取る。向かって平身低頭する荻野)。十円玉を電話に押し込む。てきぱきと電話に出る。電話の(声が耳にまとわりつく。子機を取り上げる。ベルが鳴り響く。向こうに思いを巡らせる。やり取りを録音する。呼び出し音が鳴る。音が這うように響く合村)。笑顔が眼の前に見えるような電話の声!庄野。あちこち電話をかけまくる。お詫びかたがた電話をする。断りの電話を入れる。たまにしか電話を寄こさない。何度も電話をかけて来る。電話をかける(警察に。心当たりに。こっそり。しつこく)。▼電話を切る(一方的に。邪険に。乱暴に。がちゃんと。せかせかと。そそくさと。逃げるように。礼を言って。叩きつけるように。問答無用と言わんばか りに浅川。急でき立てるように内海。放心したように半村)。▼電話する(会社に。学校に。自宅に。友人に。片っ端から。しょっちゅう。たびたび)。電話口に(出る。呼び出す)。電話帳に各肌を載せない。電話帳を(繰る。めくる)。電話番号を(教える。調べる)。電話番ㄎを手帳に(書きとめる。控える)。回線が(混雑する。バンクする)。着信メロディが鳴る。通話記録を調べる。酸欠の金魚のように口を動かして通話のふりをする荻野。テレホンカードを財布にしまう。ファックスを送る。呼び出し音を耳にする。携帯電話を(耳に当てる。ポケットに収める)。携帯電話が圏外にある。携帯電話の着信音が鳴る。電報が届く。電報を(受け取る。打つ。送る)。▼電話が切れる(唐突に。ことりと)。電話が(ふいに死ぬ。ふっつりと絶える)。 **とりざた【取り沙汰】** 取り沙汰が人々の間で交わされる。▼取り沙汰される(可能性が。経営不安が。世上に。手口が猟奇的なことから犯人の異常性が"有川。巷間於心にいろいろと=井上靖)。二人の関係を取り沙汰する。 **とりつぐ【取り次ぐ】** ▼取り次ぐ(意向を。電話を。名刺を。来客を。来訪者の名を。支配人に。主人に)。奥へ取り次ぎに行く。取り次ぎきを頼む。 **ニュース** 人類のあらゆる弱点を肉ひき器でねっとりと吐き出すようなニュース=林考。ニュースが(あっという間に広がる。市民の間に広まる。世界中を駆け抜ける)。今夜のニュースが楽しみ。ショッキングな二ュースが流れる。たちまちニュースが波及する。ニュースに(耳を傾ける。町じゅうが湧く。目を釘付けにする)。突然のニュースに天を仰ぐ。悪いニュースに接する。重要なニュースを落とす。臨時ニュースを開く。テレビが臨時ニュースを流す。ラジオが臨時ニュースを告げる。 **はっぴょう【発表】** 課題曲が発表になる。待ちに待った発表の日が来る。発表を明後日まで延ばす。発表する(王の崩御を。次々と作品を。両社の合併を。論文を雑誌に。意見を遠慮なく)。折にふれて発表した諸論文。正式発表を待つ。公式の場でお披露目、する。盛大にお披露目をする。▼公表する(事件の真相を。調査結果を。陰謀を世に。広く世間に)。▼発布する(憲法を。法律を)。未発表の(写真。小説。書簡。論文)。前人未発の説。 **ひろまる【広まる】** ▼広まる(町に噂が。尾鰭はぃがついて。間違った考えが。たちまち全世界に。話が日本人たちの間に。たちまちのうちに学年中に“平野。評判がたちまち火のようにぃ永井荷)。波紋のひろがるように隅々までひろまってゆく=山本周。 **ひろめる【広める】** ▼広める(新しい考えを。知識を世に。名を世界に。名声を遠くまで)。有権者に名前を浸透させる。▼言い広める(社会に。世岡に)。私利私欲による売名行為。売名の徒の不埒誌。な造物”。 **ふうぶん【風聞】** 巷間に伝えるところの風聞。風聞が(耳に入る。まことしやかに伝わってくる)。いろいろな風閉が周囲を霞のように取り巻く“有局。世間の風聞に敏感。 **ふきゅう【普及】** さらなる普及が予見される。普及に力を尽くす。知識の普及に骨を折る。普及する(携帯電話が。下水道が。テレビが。全国の家庭に。自然エネルギーを)。 **ほうこく【報告】** 報告が次々に送られてくる。惨たる報告に言葉もない。報告を(丹念に読む。一通り聴く)。二つの報告を比較する。顔色も動かさずに報告を開く多岐川。報告かたがた夕食を一緒にする=向田。▼報告する(ありのままを。事の次第を。進捗しんも状況を。病気の件を。紛失した旨を。明るい口調で。一刻も早く。胸を張って。悪戦苦闘の姿を。事の始終を手短に。経過をいちいち。細部にわたって。誇らしげに大声で。みずみずしい筆で)。調査報告をまとめる。復命書を提出する。復する(上官に。上司に)。注進に及ぶ。臣下の注進に応える。▼注進する(社長に。首相に。殿様に)。報告書を(書く。提出する)。報告書が店たなざらしになる。報告書に目を通す。白書が問題提起する。白書を公表する。レポートが手元に届 <690> # 伝わる・知らせる く。レボートにざっと目を通す。試験をレボートに切り替える。事件をレポートする。 **ほうそう【放送】** ▼放送する(音楽を主体にした番組を。ニュース特集を)。声が電波になって夜空を飛んでいく=重松。番組をオンエアする。スタジオでインタビューする。スタジオに(入る。向かって右手でキューサインを投げる落合)。視聴率至上主義に毒されたテレビ局=篠田。 **ほうどう【報道】** 事実は一部報道と大いに違う。報道には裏付け取材が欠かせない。報道の自由を貫く。報道する(公判の模様を。新聞が事件を。実名で。各紙が大々的に)。各社の報道合戦が熾烈を極める。報道管制の下に置く。報道管制を敷く。報道陣が(殺到する。ひきもきらず取材に来る)。外電が入る。特派員を常駐させる。万成感胸を打つルボルタージュ。ルポルタージュを(書く。まとめる)。 **マスコミ** マスコミが大きく取り上げる。マスコミに(顔を出す。騒がれる。情報が漏れる。踊らされた一時的な現象・浅川)。マスコミの(餌食になる。注目を集める。槍玉学もにあがる)。軽薄なマスコミのおだてに乗る=小林信。マスコミを賑わせる。マスコミ対策に余念がない。商業主義に毒されたマスメディア。マスメディアを味方につける。ジャーナリズムが管好跡の餌食として飛びつく瀬戸内。ジャーナリズムの良心を発揮する。権力を監視するジャーナリズムの役割。 **またぎき【又聞き】** 又開きを鵜呑ぅのみにする。人の話を又聞きする。▼聞き伝える(慈悲の心を。人の意見を)。伝え聞く(哀れな最期を。一部始終を)。姉の口から洩れ聞く。洩れ聞くところによれば。不確かな伝聞、伝聞の形で書く。伝開する(噂を。激甚な被害地の状況を)。伝閉的な言葉遣いが耳につく。 **むかしばなし【昔話】** 昔話に(時をつぶす。花を咲かせる)。昔話を(語り合って時を過ごす。聞いているみたいに古めかしい話壺井)。懐かしげに昔話をする。昔語りをよまいごとのようにぼそぼそと語って開かせる檀。民話が書物の地層に化石化する=奥泉。失われゆく民話を惜しむ。 **メール** 携帯にメールが入る。頻繁にメールが来る。メールで(送稿する。連絡する。問い合わせがある)。メールの(アドレス。チェックをする。着信に気づかない。着信を知らせる)。迷惑メールの振り分け。メールをチェックする。不要なメールをふるい落とす。▶メールを送る(携帯電話で。バソコンから)。 **めくばせ【目配せ】** 二千ガウスの磁気を帯びた強力な目配せ・荻野。目配せが女から女へ小波のように伝わる=古井。目配せで制する。仲のいい中学生同士のようにお互いに目くばせをしながら面白そうに笑う五木。意向を確かめるように目配せを送る=加賀。▼目配せする(仲間たちに。したり顔で。それとなく。黙っていろとでも言うように=篠田)。目に物言わせる。目顔で知らせる。目で合図する。目ひき袖ひき軽蔑の笑いをもらす。目交ぜて(合図する。知らせる)。 **もうしおくる【申し送る】** ▼申し送る(懸案事項を。口頭で。文書で)。申し送りの(事項。文書)。前任者からの申し送りを聞く。 **もうしこむ【申し込む】** ▼申し込む(会見を。結婚を。抗議を。交際を。塾の講習を。取材を。正式に借金を。デートを。面会を。インタビューを)。次々に試合を申し込まれる=石坂。果たしてその日のうちに参加申し込みがあった篠田。申し込みが(ちょくちょくある。予想より遥かに多い)。申し込みを(受け入れる。断る。承諾する)。エントリーする(競技会に。コンクールに)。応募する(求人広告に。懸賞小説に。懸賞に。コンクールに)。オファーが来る。オファーを(受ける。受諾する)。願書を(出す。提出する)。 **もうしでる【申し出る】** ▼申し出る(お役御免を。帰順を。降伏を。紛失の件を。領地の返上を。個人的に。自発的に。恐る恐る。思いきって。礼儀正しく。名義書き換えを)。唐突な申し出に(驚く。狼狽的にする)。▼申し出(藪ゃぶから棒の。ほとんど有無を言わせぬ強要みたいな宮本輝)。申し出に応じる。突然な申し出にどう答えていいか迷う菊池。申し出を(拒否する。承諾する。承知する。一も二もなく受け入れる。頑強に拒み続ける。ことごとく断る)。行きがかり上申し出を断れない。冷静に申し出を受け入れる。存外あっさりと申し出を了解する"西木。▼志願する(随行を。弟子入りを。入隊を。人柱に)。志願者が殺到する。申告に漏れがある。税金の申告を済ます。税務署に所得を申告する。 **よこく【予告】** 予告を実行に移す。何の予告もなしに(帰ってくる。来る)。何の予告もなく突然に消える。▼予告する(開花を。出席を。破滅を。来訪を)。予報が(当たる。的中する。見事に外れる)。▼予報する(明日の天気を。月食が起こる日時を)。 **れんらく【連絡】** 連絡がすぐにつく、本庁から連絡が入る。連絡がある(事前に。始終)。連絡に日数がかかる。連絡の橋渡しを頼む。連絡を(緊密にする。心待ちにする。取って会う。ひたすら待つ)。受賞した旨の連絡をいただく八谷川。▼連絡を入れる(事前に。欠勤の)。▼連絡を受ける(学校から。部下から)。▼連絡を取る(家族に。関係者に。事前に。相互に。内密に。綿密に。あちこちへ。直接。あらかじめ電話で)。連絡する(会社に。自宅に。本部に。もよりの警察署に。結果がわかり次第直ちに=森村)。連絡先が分からない。連絡先を問い合わせる。連絡手段を探す。連絡方法を考える。今もって連絡がない。ぱったりと連絡が途絶える。連絡が(絶える。つかない。全くない。依然として取れない)。はたせるかななんの連絡もなかった永井路。忙しさにかまけて連絡をしない。 <691> # 続く・途切れる **あと【後】** 後が(つかえる。続かない)。無下にあしらうと後が怖い。後で埋め合わせをする。後に(悔いを残す。なって気づく)。順送りに後に回す。後になり先になりして歩く。後になればなるほど難しくなる。後の(寝覚めが悪い。崇たたりが恐ろしい)。一度押しきられると後は将棋倒し連城。ひとたび踏み切ってしまえば後は同じ黒井。後まで尾を引く。ずっと後まで覚えている。後を慕って死ぬ。後口が控えている。後事を(託す。委ねる)。徐々に後続との距離を広げる。後難測りがたし。後難を恐れて口をつぐむ。後年学者として名をあげることになる。後年になって架け替えられた橋。結果が後年に現れる。後発企業として参入する。後刻(再び訪れる。連絡する)。事後承認で済ませる。事後承諾を与える。事後の処理に奔走する。後ほど(お目にかかる。説明する。報告する)。電話した直後に外出する。前の車の直後を走る。事故直後の惨状を目の当たりにする。スタート直後の出来事。 **いちれん【一速】** 一連の(作業が終わる。手順を経る。経緯を検証する。実験を通じてわかったこと)。連続空き巣から発砲事件に至る一連の顛末に7=高村恋。シリーズの第三弾を執筆する。シリーズを想定して作られているお話。科学絵本のシリーズを刊行する。一続きの(庭。問題)。 **いつまでも** いつまでも(頭を離れない。悔いが残る。立ち去ろうとしない。手を振り続ける。待たせておけない)。照れ臭さがいつまでも尾を引く。むっとしたようにいつまでも黙っている=椎名感。いつまでたっても(帰ってこない。素顔を見せない)。子々孫々に至るまで。末長く(幸せに暮らす。お付き合いする)。無期限に保存する。期間を無期限にする。悠遠な時の流れ。悠久の(大義に生きる。昔から)。名が末代にとどろく。恥を末代にさらす。臆病者の汚名が末代まで消えずに残る=海音寺。世にかくれもない武士の鑑砂がとして末代までも賞賛される=白洲。 **えいえん【永遠】** 永遠に(変わらぬ愛。日の目を見ることがない。交わらざる平行線"九鬼)。真相は永遠に闇の中。名を永遠に残す。凝縮された一瞬は永遠に等しい若竹。永遠のありかたを静かに示しているように波の音が単調な反覆を繰り返す芝木。一瞬に永遠をこめようとする=竹西。 **えいきゅう【永久】** 永久に(機会を逃してしまう。歴史にとどめる。忘れることができない)。会う機会が水久に失われる。地上から永久に姿を消す。謎が永久に解けなくなる。半永久的な建造物。半水久的に駐留する。未来永劫以ぶ変わらない。永劫に消えることがなう。太古から尽未来際に私以らまで大きな河の流れが流れ通しているように雨が降る!幸田露。千古(不易の真理。不変の真理)。神韻が千古の静寂もじを広げる"山岡。とこしえに栄える。とこしえの乎和を夢見る。とわに幸あれと祈る。とわの愛を習う。万代に名を残す。作業が万代に伝わる。万代不易の書。 **えんえん【延延】** 話し合いが延々一時間に及ぶ。雨が延々と降り続く。それからそれへと(話が続く。手づるがついていく)。だらだらと(小言を言う。テレビを見る)。変わり映えのしないだらだらした毎日が過ぎていく三浦し。 **おわらない【終わらない】** ▼終わらない(終わりそうで。なかなか)。まだ終わったわけではない。一向に終わりそうにない。メビウスの帯の如く終わりのない関係=桐野。いっかな終わる様子を見せない。終わらせない(言いっ放しに。望みを空想に。単なる暴露ものに)。これで一件落着ではない。いつ果てるとも知れない長い列小松太。膠着にいちした戦いがいつ果てるとも知れない豊田。ぼんやりとした会話を果てるともなく続ける=有吉。▼未了(監査が。決裁が。準備が)。 **かんけつてき【問欠的】** 間欠的に(悪寒に襲われる。爆発の森音が心を発する。激しい疼うずきが走る)。波状で次々と侵入する。波状的に雨雲が押し寄せる=内田康。山霧が波状的に去来する。 **けいぞく【継続】** 継続する(活動を。支援を。実験を。生産を。長期にわたり)。毎回欠かさず出席する。関係を永続する。永続的な平和。恒久的な政策。恒久平和をもたらす。▼続投する(監督が。投手が)。▼遊行する(攻撃を。試合を。捜査を)。 **さいちゅう【最中】** ▼最中(大事な話の。精神的なりハビリテーションの)。お楽しみの最中を目撃する。一真っ最中(試験の。食事の。選挙戦の)。漁は今が真っ盛り。渦中に身を置く。危険な渦中に置かれる。事件の渦中に飛び込む。スキャンダルの渦中に巻き込まれる。戦乱の渦中にひきずりこまれる。騒動の渦中にいる。犯罪の渦中に投げ込まれる。身を戚座にんの渦中に投じる。さなか(折から梅雨の。大事な話の)。一さなかにある(決喰の。混迷の。バブルの。繁栄の。ブームの)。たけなわ(合戦はまさに。休暇が今は)。宴たけなわとなる。酒宴がたけなわになる。秋たけなわの十月。春たけなわの明まだき。 **じぞく【持続】** 長い持続に耐える。▼持続する(愛情が。根気が。情熱が。操作を。緊迫した心理を)。持続的な努力。持続的に発展する。▼長続きする(友情が。不思議に)。結婚生活を長続きさせるこつ。 **ずっと** (同じ姿勢を取り続ける。気にかけている。前から知っている)。朝から晩までずっと働きづめ。二三日ずつっと雨が続く。一貫して和やかなムードに包まれる。立場が一貫して変わらない。過去現在 <692> # つ **たえる【絶える】** 絶える(人の往来が。客がばたりと。手紙のやりとりが。ぱったり消息が。びたりと風音が。ぶつりと墓参の足が。仕送りがふっつり)。声が絶え絶えに漏れる。絶やす(家系を。灯油を。微笑を)。顔をしかめて苦しそうに息絶える。▼死に絶える(一族が。家畜が)。 **だんぜつ【断絶】** 断絶(親子の。世代間の)。断絶が深まる。家名の断絶を申しつける火坂。断絶する(交渉が。国交を)。 **ただなか【只中】** ▼ただ中(暗雲の。衆人環視の。熱祓の)。災難のただ中にまきこまれる。敵兵のただ中に割って入る。▼真っただ中(霊夢の。青春の。世界不況の)。敵兵の真っ只中に斬り込んでいく=舟橋。 **たたみかける【畳み掛ける】** ▼たたみかける(性急に。短兵急に。息を弾ませて。早口で)。たたみかけて質問する。たたみかけるように尋ねる。たたみ込むようなもの言い。たたみ込むように質問する。 **だんぞく【断続】** うめき声が断続する。ぼんぼんと軽く断続する音。断続して(眠りに落ちる。降りだした空)。音が断続していつまでもとエに残る。ブザーが断続して鳴る。断続的な爆発音。断続的に(委員会を開く。浅い眠りをくり返す。強い雨が降り続く)。泣き声が断続的に聞こえる。 **つぎ【次】** 次に言うべき言葉に迷う。命の次に大事なもの。次の(機会を待つ。仕事にかかる。時代を担う。一歩を踏み出す。ステッブに進む)。おもむろに次の台詞ざっを口にする。静かに次の言葉を待つ。事態が次の段階へと進展する。アナウンスが次の停車駅を伝える=伊坂。またぞろ次の男へ谷渡り~田島。大略次のような話。社長に次ぐ地位。次回を楽しみに待つ。次期社長と目される。次期に引き継ぐ。次期へ繰り越す。 **つづかない【続かない】** ▼続かない(あきれて後が。あとの言葉が。決して長くは。半年とは。ごまかしいつまでも「高橋克)。継続が不可能になる。持続力に欠ける。操業の続行が不可能な状態に陥る。存続が危ぶまれる。会社の存立が危うい。仕事をしても長続きしない。尻切れとんぼに(終わる。電話が切れる)。▼尻切れとんぼになる(話が。論文が)。 **つづき【続き】** 続きが聞きたい。前の続きの仕事にとりかかる。 <693> # 続く・途切れる **つづける【続ける】** ▼続ける(痛がるふりを。同じやり方を。結婚生活を。更に検査を。執筆活動を。順調に昇進を。なお考察を。日々の営みを。物価が上昇を。努力を無心に。いつまでも。ぐずぐず。稽古を毎日。こつこつと。根気よく。際限なく。毎年。遺体の収容作業を。紙飛行機がふわふわと旋回を。ぎりぎりの調整を。粛々と雨中の行軍を。上下に絶えず変動を。自律的に運動を。端然として凝視を。淡々としたプレーを。出たとこ勝負の暮らしを。無気力な生活を。闇雲に無駄な努力を。悠々とした飛翔を。うまずたゆまず。湿っぽい話を長々と。人の品定めをだらだらと。気の向くまま奔放な疾走を内橋。しょぼしょぼと商いを=ねじめ。それからそれへと話を=梅本。休むことを知らぬ活躍を=小松左)。足を棒にして聞き込みをつづける=南条。二十年来対立を続けている。▼歩き続ける(何も考えずに。一時間以上。ずぶ濡れのまま)。じっと一所に居続ける。延々としゃべり続ける。泣き続ける(ひとしきり。途切れることなく)。話し続ける(くどくど。夢中で)。待ち続ける(ひたすら。まんじりともしないで)。存続する(会社を。制度を)。▼連用する(睡眠薬を。堆肥を)。ぶっ続けで働く。二日間ぶっ続けで天気が荒れる。ぶっ続けに雨が降る。 **つらなる【連なる】** ▼連なる(朱の鳥居が。紅葉した山々が。丘陵が幾重にも。丘が幾つもの起伏となって一列に村上春。主題が雪をいただいた山脈のように高く"中村真。隊列が長蛇のごとく=半村。屋形船の提灯紡いうの列がひしめき合うように=吉村)。屏風のように連なる丘大岡。点々と連なる(篝火みが。光の塊が)。ひそとして静まって連なっている家々。山々の頂の連なりが霞む。連山が波濤沢とのように連なりわたる=田山。低い山から高い山への連亘はん。連亘した段丘。いくつかの丘が巡回する。連亘する山脈の峰々。 **ていきてき【定期的】** 定期的な(検査。収入。巡回。行き来が途絶える)。定期的に(集まる。運行する。餌を与える。協議する。集配する。病院に行く。開かれる講座。利用する。累増する。連絡を入れる)。船が定期的に入港する。定期不定期を問わず。定期に会合を開く。▼支払う(月々定額を。毎月の保険料を)。毎月一定額を積み立てる。定例の(記者会見。理事会)。定例化する(集まりを。会談を。協議を)。 **とぎれる【途切れる】** ▼途切れる(意識が。映像が。会話が。記憶が。車の流れが。涙で言葉が。思考が一旦。返事がふっと。議論がふっつり)。水が砂に沁しみ込むように話がとぎれる=森嶋、途切れがちに(聞こえる。話す)。▼途切れがちになる(意識が。会話が。ともすれば話題が)。途切れがちの声で答える。途切れ途切れに(言う。息をつく。叫ぶ。ささやく。鳴く)。話し声が途切れ途切れに聞こえる。息をつめるかのようにとぎれとぎれの言葉で言う野間。途切らす(音を。稿を。声を。言葉を。ぎこちなく話を)。ぶつ切れの(言葉。文章。しぐさで頭を下げる)。不定期に更新する。不定期の(運行。連載)。訥々と(言葉を繋ったげる。弁解する)。訥々とした(語り口。話しぶり)。 **とだえる【途絶える】** ▼途絶える(音信が。会話が。客足が。話が。人通りが。補給の道が。連絡が事実上。ぶっつりと足跡が。窓から入る風が。気配がばったり。送金がばったり。注文がふっつりと。波が引くようにふとすべての物音が荻野)。▼途絶えがちになる(行き来が。話が)。途絶する(交信が。交通が。輸出が。連絡が)。 **とめどない【止め処ない】** とめどない(興味を覚える。妄想に誘われる)。▼とめどがない(いったん走り出すと。しゃべり出すと)。とめどなく(涙があふれる。いろいろなことを考える)。連想がとめどなく広がる。舌がべらべらととめどなく廻る=幸田文。話がとめともなく長くなる。 **ねばりづよい【粘り強い】** 粘り強い(説得。働きぶり)。柔軟で粘り強い性格。粘り強く(考える。交渉を続ける。取り組む。公開を迫っていく)。根気強い男。根気強く(観察する。ねばる。待つ)。根気よく(毎日通院する。ゆっくり進む。自分の順番を待つ。何べんも繰り返す。見張りを続ける)。長く根気よく続ける地道な努力。根づよく意見をする。二枚腰で堪こらえる。二枚腰を(使って粘る。発揮する)。牛のように忍耐づよい=徳永。忍耐強い人。忍耐強く(辛抱しぬく。説得を続ける)。粘り腰で交渉に臨む。粘り腰を(発抓する。見せる)。 **ぶっとおし【ぶっ通し】** 夜半までぶっ通しに巡回する。昼夜ぶっ通しで(徳測する。練習する)。休まずに歩く。 **れんさ【連鎖】** 連鎖(死の。パニックの。不安の。負の。報復の。暴力の)。連鎖が(終わる。止まらない)。連鎖する(危機が。原因と結果が。不安心理が)。連鎖的に(事件が起きる。広がる)。連鎖反応が起こる。連鎖反応を警戒する。 **れんさい【連載】** 連彼が(終わる。打ち切りになる)。新聞で連載が始まる。連載を(開始する。中止する。続ける。始める。休む)。今回をもって連載を擱筆みくする。連載する(エッセイを。コラムを。新聞に小説を。続編を。続きものを。特集記事を。雑誌に。週刊誌に。不定期に)。連載小説を単行本にする。 **れんめん【連綿】** 連綿と(受け継がれる。血脈を伝える。引き継がれる。社会に生き続ける)。時間が連綿と途絶えることなく続く窓沢。連綿として存続する。▼連綿と続く(家系が。数百年。先祖から)。 <694> # 包む・囲む **かこむ【囲む】** 取り囲む(物々しく。ぐるりと。幾重にも)。取り巻く(大勢の報道陣が。華やかな雰囲気が)。取り囲まれる(やじ馬に。報道陣に)。ぐるりと取り巻く。 **かこい【囲い】** 囲いをする。囲いを(巡らす。設ける)。囲いを乗り越える。 **から【殻】** 殻を(破る。脱ぎ捨てる)。殻に閉じこもる。自分の殻に閉じこもりがち。 **かん【環】** 環太平洋諸国。環状になった道路。環状線を(回る。一周する)。 **くるむ【包む】** 何もかもをすっぽり包むような暗さ。ストールで顔を包む。ベールに(包まれる。顔を隠す)。ベールを(脱ぐ。はぐ)。何か謎めいたベールに包まれている=大岡。柔らかいオブラートのような言葉で包む。風呂敷で包む。風呂敷包みを抱える。 **けっかい【結界】** 結界を張る。 **こう【構】** 堅固な構え。構えを(解く。見せる)。 **へい【塀】** 塀を(巡らす。築く)。塀沿いの道。塀に囲まれた邸宅。塀の(内側。外側)。高い塀を乗り越える。塀の穴から覗く。塀の上を猫が歩く。 **まく【膜】** 膜が(張る。目に掛かる)。膜を(通す。作る)。粘膜を傷つける。網膜に焼きつく。 **かべ【壁】** 壁が(行く手を阻む。立ちはだかる)。壁を(築く。乗り越える。突き破る)。壁にぶつかる。四方の壁。周囲をコンクリートの壁に囲まれた部屋。遮音壁を設ける。 **がいかく【外郭】** 外郭団体。 **がいへき【外壁】** 外壁に蔦つたを這わせる。城の外壁。 **かこいこむ【囲い込む】** 客を囲い込む。顧客を囲い込む。 **かためる【固める】** 脇を固める。守りを固める。国境を固める。 **しょうへき【障壁】** 障壁が(立ちはだかる。待ち構える)。障壁を(築く。設ける。乗り越える。取り除く)。言葉の障壁。貿易の非関税障壁。 **せき【堰】** 堰を(作る。切る)。堰を切ったように(泣き出す。笑い出す。人がどっと押し寄せる)。ダムが堰を切って濁流を吐き出す。 <695> # 包む・囲む **くるまる【包まる】** 「くるまる(厚い外套ぶぶに。蓑虫いいのように夜具に藤沢)。ひとつ布団にくるまって寝る。くるむ(寝衣で体を。オブラートに。赤ん坊をねんねこに。裸の蕊しくを花弁で包むようにすっぽりと着物で"川端)。もの柔らかくくるむような微笑大佛。 **さく【柵】** 柵が厳重にこしらえてある。柵でまわりを囲む。周囲を柵で囲う。柵でもあってそれ以上は近づけないというように動かずにいっぱいに手をさしのべる=山田太。柵に(沿って歩く。もたれて一休みする)。柵の上に忍び返しがついている=貫井。心の中に柵を設けて真実を寄せつけまいとする。高見浩。生活が牧場の柵のように自分たちを取り巻く。宮本百。いかめしい鉄柵の塀。矢来を(組む。結ぶ)。 **しゅうい【周囲】** 周囲が(明るくなる。静まり返る。騒々しくなる。にぎやかになる)。周囲から白眼視される。周囲からの視線に包囲される。周囲に(漂漂う気配。迷惑をかける)。波紋が周囲に広がる。魅力を周囲に発散する。周囲に気を(配る。とられる)。周囲の(環境が変わる。空気が変わる。侮辱に堪える。不正に敏感。耳を気にする。目を意識する。者を苦しめる。景色にうっとりする。気配に耳をすます。状況に気がつく。同情の目にさらされる。人間を傷つける。人から嫌われる。風物に目もくれない。迷惑を顧みない)。すっと周囲の音が遠ざかる。周囲は漆黒の闇。周囲への思いやり。周囲を(明るくする。囲む。取り巻く。きょろきょろと見まわす。注意深く見まわす。不安げに見まわす)。おずおずと周囲を窺紛ゅう。ゆっくりと周囲を見まわす。周囲をぐるりと(見渡す。回る)。都市の外周が広がる。四囲に不安な気配が漂う。曙光こがゆっくりと四囲に広がる。朗々とした声が四囲を圧する。靴音が四周に反響する。四周を取り囲む。晩秋の宵闇が四周を冷たく浸す。四面を海に囲まれた孤島。▼外回り(家の。環状線の。コースの)。 **スカーフ** スカーフで顔を隠す。頭をスカーフで包む。長い髪をスカーフでまとめ上げる"綾辻。首にスカーフを巻く。肩掛けをとって立ち上がる。ショールですっぽり顔を隠す。ショールを肩にかける。 **ずがいこつ【頭蓋骨】** 頭蓋骨を(打ち砕く。骨折する)。鈍器で頭蓋骨を割られて死ぬ=味。頭骨を(収集する。並べる)。頭蓋に亀裂が入るかと思うように痛みが激しい。有吉。壁に窓用としてくり抜かれた空間にぼっかりと夜が浮かんで風化した満ひくのように中島み。▼髑髏(怪しげな。気味の悪い)。獨懐が暗いほら穴のような目でにらみつける=西木。 **そで【袖】** 袖(すり合うも他生の縁。振り合うも他生の縁=大野透)。袖が(裂き切れる。手にまつわる。肌をはらみ風船みたいに膨らむ三浦し)。袖で(目を拭く。額の汗をぬぐう)。袖に(まつわりついて離れない。絶すがらんばかりにして泣訴する=司馬)。袖を控えて諫ぃさめる。客の袖を引く。涙が袖を潤す。新しい服に袖を通す。つと袖を顔へ当てる。涙に濡れた目に袖を当てる。男が蝙蝠にらのように袖を拡げて格子に掘っかまる=川端。僧衣の袖を蝙蝠の羽のように翻す=大庭。通行人の袖を引かんばかりに署名を請う。里見。とがめるように袖をひく=檀。引き止める袖を振り切って旅に出る=山岡。柳が着物の袖のような枝を地面に届くほと垂らしてゆらゆらと風に揺れている=梅本。片袖を(着せかける。ちぎり取る。脱ぐ。引っ張る)。 **そでぐち【袖口】** 袖口が(てかてか光る。ほころぶ。ほつれる)。擦り切れた袖口が気になる。袖口で(目を押さえる。鼻の下をこする)。シャツの袖口を引く。カフスボタンをつける。カフスを止める。 **つつみがみ【包み紙】** 包み紙を百合の根を剥がすように一枚一枚むいて行く!有島。特大の包み紙を破くような雷鳴がとどろく"宮部。素晴らしい時間をガムの包み紙のように簡単に捨てる=灰谷。手の切れるようなばーんと張った包装紙で包む"山崎。包装紙を(ほどく。破り取る)。銀紙が風にはらはらと光る。銀紙に包まれたチョコレート。銀紙を(はがす。貼りつける)。チョコレートの銀紙をべりばり剣がす荻野。 **つつまれる【包まれる】** ▼包まれる(温かな笑いに。樹々が新緑に。紅蓮の炎に。濃い夕闇に。正体が謎に。大地が緑に。台所が遂閤に。中庸の美徳に。灰色の夕闇に。悲嘆の念に。人の好意に。火の海に。広田が怒号に。深い快美感に。深い海霧に。深い悲しみに。深い寂寂感で終り」に。部屋が静寂に。忘却の雲に。濛々たる煙に。愛にすっぽり。一種官能的な心地よさに。凍てつく大気に。異様な雰囲気に。重苦しい沈黙に。顔が白い湯気に。神々しいような薄光に。さわやかな香りに。全身がヘッドライトの輪に。谷間の村が日暮れ色に。時ならぬ賑わいに。鳥たちのさまざまな声に。人間的なあたたかさに。物恋しい心持ちに。別れがたく思う寂しさに。割れ返るような拍手に。あたりが間接照明にぼんやりと。島全体が濃い緑にすっぽりと。会場が異様な熱気に倉橋。街路が夏の明特有のすがすがしさに"原田病。ふっと潮が満ちてくるように微かすかな哀かなしみに北村。町がたそがれ色に藤沢。満場が爆笑の渦に佐高)。▼気分に包まれる(和やかな。不快な。不可解な。重苦しい。誇らしい)。▼霧雨に包まれる(朝の光が。雑木林が)。空気に包まれる(浮き浮きした。すがすがしい。騒然とした。和んだ。むっとする)。▼匂いに包まれる(管すえた。むせるような)。▼光に包まれる(朝の。町が気だるげな昼の)。▼闇に包まれる(あたりが。記憶が。姿が。街が。濃密な。漆黒の。深々とした)。夜の闇につつまれる=光瀬。建物がしっとりと木立に包まれて眠る=石森。霧に包まれて歩く。押し包まれる(無念の思いに。背後からの光芒にうに=高樹)。 <696> # つ の海が銀紙を貼りつけたように鈍い阿久。 **つつみこむ**【包み込む】▼包み込む(香りが体を。疲労が全身を。炎が人々を。胸の膨らみを。乳房を両手で。重苦しい空気が家を。慎重な手さばきで。タオルケットが肩から下をすっぽりと重松)。気持ちを柔らかく包みこむ=連城。▼包み込まれる(むっと気に。懐に)。▼内包する(意味を。矛盾を。滅亡を。脆もろさを)。民間信仰を包摂した宗教。▼包摂する(他の価値観を。自然美と芸術美を)。 **つつむ**【包む】▼包む(体を朝の光が。濃い闇が。快い緊張感が。全身を疲労が。町を渉い霧が。陽炎砂洲が花を。葉でご飯を。弁当を。胸に寂しみを。胸に慣感封んを。紙に。新聞紙に。布に。悪隅を皮肉で。全身を鎧よろって。湿った重い夜気が。薄明かりが野山を。豪快な気宇が町全体を。孤独と寂寥せたりが心を。濃やかな霧が市街を。春の柔らかさが風景を。手早く風呂敷に。体をワンピースで。全体をすっぽりと。布で体をすきまなく。陽光が小屋を暖かく、雨滴と見紛ぬまうばかりの大粒の霧が山を"畑。腹立ちを柔らかい綿のように連城)。辺りを包む(光が。幽玄な雰囲気が)。▼オブラートに包む(粉薬を。何重にも)。顔を包む(湯気が。布で)。体を包む(音が。風が。眠りが。ワンピースで)。暗い波が巨大な舌のような生暖かさでからだを包む=大庭。全身を包む(異様な気配が。空しさが。毛布で)。▼身を包む(寒気が。コートに。ジャケットに。白装束に。制服に。ドレスに。喪服に。純白のスーツに。流行のファッションに)。両手で包む(茶碗を。湯飲みを)。ちょっと腹の立つほど念の入った包み方有島。包みの結び目をほどく。包みを(どさりと置く。大事そうに胸に抱える三浦哲)。部屋の隅に包みを置く。包みきれぬ喜びの声。たっぷりとこころづけを入れた紙包み池波。紙包みを手に収める。押し返された紙包みを持て扱う。寒気が町を覆い包む。▼押し包む(町を恐裄が。疲労が全身を。空気がむっと)。簀巻すまきにされ蓑虫いいのような姿になる遠藤。包装する(絵を。進物用に美しく)。ラップを巻く。皿にラップをかける。▼包蔵する(危険を。原因を。罪悪を。自然美を。矛盾を。問題を)。 **とおまき**【遠巻き】遠巻きに(取り囲む。取り巻く。眺める。吠え立てる)。現場を遠巻きに巻く。遠巻きにして騒ぎ立てる。▼遠巻きにする(丘を。建物を。屋敷を)。 **とりかこむ**【取り囲む】▼取り囲む(前後左右を。二重三重に。ぐるりと周りを。四方から暴徒の群れを。幾重もの輪をつくって。周囲をぐるりと。親密なた気がすっぽりと)。取り囲む人垣の万雷の拍手桐野。十重二十重にはに取り囲む(屋敷の周りを。二本の傘を持った人妻の大群が駅の出口を"川端)。▼取り囲まれる(生徒たちに。人の群れに。複雑な装置に。野次馬に。大勢の見物人に)。 **とりまく**【取り巻く】▼取り巻く(十重二十重に。割れるような拍手が。寒気がひしひしと。ぐるりを幾重にも。水平線が水のヴォリュームを押し上げるように正しい円を画ぇがいて。大岡)。▼ぐるりと取り巻く(建物を。周りを)。▼取り巻かれる(四五人の男に。乳色の霧に。四方八方から。冷ややかな声に。新鮮で華やいだ雰囲気に=高橋三)。 **にづくり**【荷造り】荷造りがはかどらない。荷造りする(画架を。額縁を。箪笥抃んを。机を)。掛け礼を巻きつける。梱包に认された箱を(開ける。慎重に開ける)。「麻布と荒縄でしっかりと梱包する。 **ひふ**【皮膚】▼皮膚(渋紙のような。絹のようになめらかな真継。繊細で肌理さぁがこまかな小林信。一度茹でて蒸しにんだソーセージを想わせる=大庭。肌理が粗くて脂ぎっていて、いくらかぼこぼこしていて夏蜜柑いいんの皮を想わせる皮膚"大庭。化粧を落とすとムクんでナマリ色に見える安岡。少年らしい瑞々しさが消えた人間。白い陶器に薄紅を刷はいたような=川端。鳶色にぶのにこ毛に厳ぉぉわれた"本庄。浮曰されたように妙に渉く白い=高橋和)。皮膚が(青白くたるむ。赤剣かけになる。光沢を失う。てらてら光る。ぬらりと光る。ぼっと赤らむ。桃色に輝く夕日に染まる。かさかさに乾く。しっとりと輝く。ずるずる剣もける。ひくひくと震える。火ぶくれになる。ほんのりと輝く。赤くなるほど体をこする=村山。都き出すような柔らかい笑顔「大佛。疲れたゴムのように欲しゃばむ「林美。干からびて島の足を思わせる老人=日野。すっかり透明になりぼうっと内側から溶薇色ばらを帯びる=堀。山に生えた樹木の葉のように光を受ける=中上)。のどの皮膚がひくひく動く。危なっかしいほど皮膚が張っている美しい肉体「高橋和。小麦色の皮膚がびーんと張った丸顔・山崎。白く乾き鱗ごろのように皮膚がむけている足"大江。透きとおるように皮膚が白い=日野。脆弱でごじなうすい皮膚が真っ白に冴える谷崎。小麦色の皮膚が輝くように美しい少女大佛。皮膚から光沢が消える。皮膚で感じ取る。皮膚に(塩気が吹く。艶がない。張りがある。蛭ひるが吸着する。そばかすが浮く。水ぶくれができる)。風が汗ばんだ皮膚に心地よい。血が皮膚にこびりつく。真夏の熱気が釉薬ゆぐのように皮膚にまといつく=森现。皮膚の(色艶が悪い。感覚が失われる。下に静脈が青く浮いて見える。粋なぁしたような頑丈さ=吉行)。浅ぐろくて鞣革松物しを張りつめたような皮膚の照り“池波。冴えないずず黒い皮膚の色"島尾。寝汗のようにいやな汗が皮膚の毛穴から滲にじむよう。大佛。はちきれるような皮膚の弾み檀。浮き浮きして顔の皮膚までしっとりと輝き出すように大佛。皮膚を外気にさらす。寒さが皮膚を刺す。陽光が皮膚をちりちりと焼く高樹。 <697> # 包む・囲む **はだ【肌】** 顔の皮膚が(こわばる。巌骨ご砂。のように強ばる=徳田。しぶとく厚くなる吉行。防水された布のように相手の言葉を弾き返すぃ大佛)。大きな爬虫類沿いの皮膚のような不快な感じを与える言葉"伊藤略。巨大な爬虫類の皮膚のようなアスファルトの路面"日野。毛穴が(開く。ふさがる)。 **ふくさ【袱紗】** ▼袱紗に包む(鏡を。金を。祝儀を)。袱紗に包んだ金を渡す=池波。帯から袱紗を取り出す。袱紗包みを(託す。持つ。もらう)。 **ふち【縁】** 茶碗の縁が欠ける。ブールの縁に並ぶ。浴槽の縁に体を預ける。縁の欠けた(茶碗。どんぶり)。掛け布団の縁を折り込む。杯の縁をなめる。皿の縁をリズミカルに叩く。池の縁にたたずむ。池の縁を回る。火鉢の縁を(打つ。叩く。拭く)。茶碗のへりをなめる。テーブルのへりをつかむ。湖のへりを通る。 **ふちどる【縁取る】** ▼縁取る(運動場を。芝生を。裾を。ステージを。道を。輪郭を)。▼縁取り(花壇の。フリルの。文字の。レースの)。糸で縁取りする。黒い縁取りの写真。毛皮でトリミングしたコート。縁飾り(写真の。ビーズの。レースの)。縁飾りで囲む。縁飾りのあるブラウス。縁飾りを(編む。つける)。 **ふろしき【風呂敷】** 現代人の日常生活から風呂敷きが消える=竹西。上から風呂敷をかける。奥の部屋のまんなかに窓から鬱金らこの風呂敷きほどの日ざしがくっきりと落ちている三局。風呂敷包みを(抱える。胸に抱く)。ゆるい風呂敷包みをきつく締め直す三島。 **へい【塀】** 長い塀が切れる。路地沿いに塀が続く。大きな屋敷の塀が長々と続く―武田瓦。塀から庭に跳び降りる。土地を塀で囲む。塀に(遮られて見えない。挟まれた狭い道)。車が塀にぶつかる。高い塀に守られて安心する。塀の陰から人影が現れる。塀をひらりと飛び越える。ボールが勢いよく塀を越える。天地が黒い塀を四壁に立てたように静まり閉ざす=岡本。砦せのように堅固な石の塀をめぐらす=辺見。鳥みたいに塀を乗り越える=北村。破れの目立つ板坏。板塀をめぐらした家。昔ながらの杉板の黒塀の家灰谷。ぐるっと築地塀灬じを回す。胸ほどの高さの土塀。土塀が長々と続く。土塀をめぐらす。ブロック塀が庭を囲む。古風な煉瓦塀や以がが刑務所のように広い敷地にめぐらされる=高橋和。大路の左右に築地いいが並ぶ。フェンスがくるりと周りを囲む。フェンスに体をもたせかける。自転車をフェンスに立てかける。フェンスを乗り越える。金網のフェンスを張る。 **ほうい【包囲】** じりじりと包囲の輪を縮める藤沢。包囲する(敵を完全に。デモ隊が国会を。村落をぐるりと。雨が体を前後左右から谷崎)。緊迫した静寂に包囲される=かんべ。包囲網を(敷く。かいくぐって逃げる)。敵の包囲網を破る。敵軍の重囲を逃れる。 **まく【膜】** 牛乳に膜が張る。うっすら膜がかかったみたいに流れる天の川宮木銀。▼膜がかかる(目にどんよりと。顔に霧に似た薄い=黒井)。眼の裏に薄い膜でも張ったみたいに疲労と興奮が粘りつく=阿刀田。あたりが白い柔らかい膜に包まれたように明るくなる辻井。不透明な膜をとおしたような視線でぼんやりと見る=村上脊。半透明の膜のような原紙"尾辻。膜のように目玉にかぶさってくる岡吉行。丘を取り巻く静寂と微かすかな物音とが二人を薄い膜のようにくるむ"里买。水面を油が膜のように閉ざす長崎。一枚ずつうす膜がはがされるようにその場の様子が見えて来る=本庄。鼻の粘膜を細かく裂くような十六七の男の子の汗と身体のにおい=富岡。薄膜がかかる。段々に源膜のかかったような顔になる古井。半透明の皮膜に包まれる。 **まどわく【窓枠】** 窓枠が(がたがたと風に鳴る。かたかたと鳴る。がたがたにゆるむ)。窓枠に(足をかける。目張りを施す。雪がたまる。四角く切り取られた空落合)。犬が窓枠にちょこんと手をかける。風が窓枠を鳴らす。空っぽの窓枠をボール紙でふさぐく。炎が窓枠をなめる。サッシ(アルミの。はめ殺しの)。サッシを(取り付ける。はめる)。 **まわり【周り】** まわりが分からなくなるほど集中する。まわりに(声をかける。人が集まる。迷惑をかける)。まわりの(ざわめきが引く。風景に溶けこむ)。まわりをぐるぐる回る。暑さが顔のまわりを道ょう。胸跡もが船のまわりを飛び回る。まわりをぐるりと(収り囲む。見渡す)。家のぐるりをとり巻く。町のぐるりを一めぐりする。前後左右から包囲する。前後左右に体が揺れる。周辺を(隈くまなく捜索する。身ぎれいにしておく)。 **りんかく【輪郭】** ▼愉郷(くっきりした力強い=石坂。圭角州ごをなくしたまろやかな地図の=横光。少女のように影が豊かな顔の"大佛)。輪郭が(鮮明になる。ほぼやける)。事件の輪郭が明らかになる。はっきりと輪郭がつかめる。顔の輪郭がたがねで削ったように荒々しい=光瀬。遠くの山々の輪郭が刻んだようにクッキリと浮いて見える=石坂。▼輪郭が浮かび上がる(くっきりと。ぼんやりと)。輪郭からはみ出る。輪郭のくっきりした目鼻立ち。輪郭をくっきりと見せる。疑惑の輪郭をつかむ。事件の輪郭を把握する。全体の輪郭をなぞる。死火山の群れが駱駝杉(の瘤にょのような輪郭を描く"大岡。目も鼻も唇も細い願ぁこも哀かなしいほどくっきりと輪郭を保っている。古井。山が黒い輪郭を星空に刻む“福永。▼アウトライン(考え方の。計画の。事件の)。アウトラインを説明する。 **わく【枠】** 枠にとらわれずに書く。定型の枠に押し込める。枠を(遥かに越える。広げる)。感情に理屈の枠を張る夏目。大枠がほぼ固まる。やっと外枠ができただけの状態。枠組みを整える。 <698> # 繋がる・受け継ぐ **あとつぎ【跡継ぎ】** ▼跡継ぎ(家の。店の)。跡継ぎが生まれる。跡継ぎに(据える。立てる。直す)。妻の実家の跡継ぎに甘んじる=藤田。跡継ぎを決める。跡取り(家の。本家の)。大事な跡取り息子。心丈夫な跡取りができる。跡取りに据える。跡目を(立てる。継ぐ。譲る)。父の跡目を襲う。家督相続をめぐって争う。家督を(長男に譲る。依せがにゆずって隠居する"藤沢)。合法的な相続人。世継ぎが生まれる。世継ぎを産む。後釜が(決まる。見つかる)。後釜に(据える。座る)。陸続として後継者が現れる。義理の息子を後継者に据える。正当な後継者の地歩を固める。後継者をつくる。後継者争いの泥仕合をする。後継者難に悩む。 **いちぞく【一族】** 一族が(死に絶える。ばらばらになる)。一族で役員を固める。一族の(興亡。盛衰。努力を伸ばす。名折れ)。一族ことごとく罪に問われる。ウサギが一族郎党を引きつれ畑でディナーを摂る三浦し。容属汁んを擁護する。豪族を(討つ。従える)。一門栄達の瑞祥ぶぶし。一円が(興隆する。栄える。ことことぐ入水してはてる=白洲。血で血を洗う争い=山手)。一門の(名折れ。恥さらし)。本家に顔向けできない。本家の支配を離れる。地位が転倒した別家と本家の関係横光。 **いでん【遺伝】** 遺伝子が突然変異を起こす。遺伝子を(解析する。転写する。同定する)。親から遺伝子を受け継ぐ。遺伝する(親から子に。メンデルの法則に従って)。 **うけつぐ【受け継ぐ】** ▼受け継ぐ(悪しき風習を。先人の知恵を。伝統を。日本文化を。遺産を応分に。志を磨いて。学び続ける心を。父親の資質をそのまま。堂々たる軀幹にかを親から)。優しい温かい血を承ぅけ継ぐ=田山。▼受け継がれる(師から弟子へ。先祖代々。連綿と)。▼襲う(跡を。姓を。父の名を)。継承する(王位を。財産を。事業を。伝統を。路線を)。▼襲名する(三代目を。先代の名を)。承継する(義務を。権利を。事業を。資産を。訴訟を)。▼祖述する(師の学説を。先人の説を)。▼継ぐ(衣鉢かはを。先代の名跡を)。先祖伝来の田畑を守る。父祖伝来の土地。名跡を(襲う。襲名する)。▼譲り受ける(遺産を。土地を。店を)。▼踏襲する(形式を。スタイルを。政策を。前例を。昔からの決まりごとを。時代遅れの通念を荒巻)。 **おやこ【親子】** 親子(同然に暮らす。三人仲睦まじく暮らす。水入らずで暮らす=舟橋)。▼親子(うり二つの。実の。仲のいい。仲の悪い)。夕映えに向かい親子二人の影が坂を上っていく=城山。親子が(口喧嘩似妨げする。同居する。内輪もめをする)。子を真ん中に親子が川の字に眠る=平石。親子の(縁が薄い。緑を契りを結ぶ。縁源く生まれ合わせる。人情がひしひしと伝わってくる。関係がいつも緊張をはらんだ情愛のなかに秤にゃのように懸かっている=辻井)。義理の親子の縁を結ぶ。切っても切れぬ親子の絆"田辺。親娘ほど齢としが離れている=吉行。娃沙良の子は蛙。この親にしてこの子あり。母親と娘きりの家庭。母一人子一人の生活。濃密な親子関係。母子ともに元気。 **おやゆずり【親譲り】** 親譲りの(器用さ。財産。性格)。父親ゆずりの頑健な体格に恵まれる吉村。腕は父親ゆずりの器用さで細工物では誰にもひけをとらない『水上。親から気質を譲り受ける。 **きんみつ【緊密】** 緊密な(関係を持つ。連絡を取る。親しみを感じる)。夫婦よりも緊密な共同生活"中村真。緊密に(協力する。結びつく。連携する)。情報を緊密に交換する。関係が一段と緊密になる。緊密にする(結合を。連絡を。夫婦の結びつきを)。関係を緊密化する。 **くさり【鎖】** 人間の腕ほどの太さの鉄で編んだ鎖「塩野。鎖が(チャラチャラと鳴る。さらさらと揺れる=山田詠)。人々を鎖から解き放つ。鎖の音ががちゃがちゃと聞こえる=佐藤系。時間が重い鎖をひきずるようにして経過する"小林へ。クサリのように点々と黒くつながっている渚の岩山本有。鎖のように縫もっれたボロを引きずって歩く=室生。鉄鎖につなぐ。鉄鎖を断ち切る。チェーンを車に装着する。タイヤにチェーンをつける。ドアにチェーンをかける。 **けいとう【系統】** 同じ系統に属する。系統立てて(解説する。紹介する)。系統的に(説明する。把握する)。本を系統的に読む。個体発生は系統発生を繰り返す"安部。直系の(会社。弟子)。正統な系譜。系譜が異なる。一族の系僧が続く。同じ系譜に属する。▼系列(会社の。大学の。発展の)。系列に(属する。連なる)。▼流れを汲む(三条家の。原始的な信仰の玉行)。 **けつえん【血縁】** 血緑が濃い。血縁にあたる人。血縁を重んじる。血は(争えない。水よりも濃い)。父と息子の血の濃さを思う鈴木光。血のつながった(家族。兄弟。孫)。血のつながりが濃い。▼血族(父系の。傍系の。母系の)。血族結婚を忌む。血肉を分けた兄弟。血脈が絶える。連綿と血脈を伝える。 **こうにん【後任】** 後任を(選ぶ。推薦する)。後任候補と目される。後継に(指名する。有力視される)。後継の首相。 **こうはい【後輩】** 大学の後輩にあたる。後輩のめんどうを見る。下級生から慕われる。下級生に活を入れる。後学の指導に当たる。後生恐るべし。後生を育成する。後進に矩のを示す。後進に道を(用く。譲る)。後進を(指導する。育てる)。 <699> # 繋がる・受け継ぐ **しそん【子孫】** 直系の子孫。▼子孫を残す(交雑して。生存競争にうちかって=畑)。子々孫々に伝える。子々孫々の安全を期する。孫子の代まで(栄える。余沢が及ぶ)。末裔(源氏の。武家の。平家の)。 **しんせき【親戚】** 親戚が(集まる。多い。少ない)。頼る親戚がない。親戚から金をかき集める。親戚に(あたる老人。不幸がある。身を寄せる。顔出しができない)。親戚の家に(寄寓くする。厄介になる)。親戚の家を(頼る。転々とする。たらい回しにされる)。親戚や知人が次から次と訪れる。遠くの親戚より近くの他人。親戚を頼って村を出る。親戚じゅうに知れ渡る。親戚一同が集う。財界の大立者を親戚筋にひかえている=横光。 **しんるい【親類】** 親類から爪弾やほきにされる。親類に(触れまわる。迷惑がかかる)。親類の(家に居候する。助けを頼む。つてを頼る。よしみで頼む)。遠くの親類より近くの他人。▼いとこ(父方の。母方の)。いとこにあたる人。いとこを(妻にする。敵にまわす)。甥ぉぃにあたる男。甥を(育てる。引き取る)。叔父にあたる人物。叔父の家に寄食する。伯父を(慕う。学敬する。頼る)。二人の伯父を比べる。伯母を(惑う。頼る)。父親と叔母を交互に眺める。姪ぃぃにあたる女性。姪を(預かる。いとおしむ)。内々で(結婚式を済ませる。葬式を済ませる)。内愉だけのささやかな結婚式。発式を内愉で済ませる。ごく内愉の者だけが集まる。縁者が墓参に来る。縁続きにあたる。近親者に界を及ぼす。近親の者だけで葬儀を済ませる。親族(直系の。傍系の)。財産を親族が相続する。親族を代表して挨拶する。座敷に親類縁者が集まる。遠縁にあたる(家。人物)。身寄りを(捜し出す。頼る)。寄るべを頼る。類縁関係をたどる。▼身内(たった一人の。荷厄介な義理の)。身内に不幸がある。身内の(結束が強い。手蔓にっを使う)。身内を(亡くす。冷過する)。身内意識が強い。身内同士みたいな親しい気分、佐藤愛。 **すじょう【素性】** 素性が(いかがわしい。知れない。確か。正しい。割れる)。素性の知れない人間。素性を(明かす。打ち明ける。隠す)。▼身上調査する(慎重に。根掘り葉掘り)。 **せだい【世代】** ▼世代(団塊の。戦争をくぐり抜けてきた)。世代から世代へと(語り継がれる。読み継がれる)。世代に共通の経験。後の世代に委ねる。若い世代に煙たがられる。古い世代の人間。世代を超えて愛される。世代問に軋轢いいが生まれる。世代交代が進む。代が替わる。 **せつぞく【接続】** ▼接続する(ホースを。電話の回線に。インターネットに。コンピューターに。データベースに)。一日に千件のアクセスがある。▼アクセスする(ウェブサイトに。データベースに。ホームページに)。 **せんぞ【先祖】** 先祖からの言い伝え。先祖に(申し訳ない。合わす顔がない藤本)。勇士を先祖に持つ。先祖の(発祥の地。ひそみに倣う。墳墓を守る)。先祖を(粗末にする。大切にする)。ご先祖さまに顔向けできない=加賀。先祖代々(伝わってきた知恵。我が家に伝わる名刀)。先祖代々の家名に傷をつける。先祖伝来の(家宝。田畑。地。山林を売り払う仕儀となる若竹)。父祖伝来の地。父祖の代から住み慣れた土地。共通の父祖を持つ。祖先が作り上げた文化。祖先の(教えに従う。記憶をなぞる。血を伝える)。 **そうぞく【相続】** ▼相続する(跡目を。家を遺産を。家督を。財産を)。親から相続した財産を食い潰っぶす=鈴木光。家の跡を継ぐ。跡目相続がつつがなく済む藤沢。相続財産を分与する。 **そふぼ【祖父母】** 生後間もなく祖父母のもとに引き取られる=綱淵。祖父の(代からのなじみの店。名を引き合いに出す)。祖父を死界に送る。祖父のようにやさしくただよしよしと云ぃう坂口。翌鏢砂くしとした八十三歳の祖母"瀬戸内。普通の祖母が孫に見せるような舐めるような愛し方=円地。今更のように欲しゃの増えた祖母の手を見る"壺井。しなびた革袋のような祖母の乳房落合。祖母を(世話する。亡くす)。 **だいだい【代代】** 代々(受け継ぐ。語り継がれる。庄屋を務める。住み続ける。教師の家に育つ)。名を代々継ぐ。血族結婚が代々重なる。代々にわたって支配する。累代の墓。歴代の(王の墳場。皇帝。社長。首相。横綱)。 **ちすじ【血筋】** 血筋が(濃い。絶える。よい。悪い)。血筋につながる。由緒ある血筋の奥様。血筋は争えない。血筋を今に伝える。先祖の血筋を脈々として享;け継ぐ=柴田錬。氏素性を拠り所にする。系図を(さかのぼる。鼻にかける。広げる)。門閥の出。門閥を(重んじる。誇る)。▼生まれ(家柄の高い。柔弱凡庸の。身分の低い。雪国の。よき家門の。何不自由のない身分の)。やんことない生まれのお方。▼家系(長命な。有力な。由緒ある。官僚系エリートの)。家系が連綿と続く。家系を(絶やす。継ぐ)。▼血統(父系の。母系の)。血統が(絶える。ものを言う)。血統書付きの犬。 **ちちかた【父方】** 父方の(おじ。おば。家系。祖父母。遠縁に当たる)。父系の(社会。祖先)。 **ちょうつがい【蝶番】** 蝶番が壊れたかと思うほど大きくあけた口向田。蝶番を見逃しませて扉を開ける=高橋和。無骨で無口な夫が錆びた蝶番をこじ開けるようにして言う“干刈。錆びた蝶番がきしんで鳴る。 **つぎほ【接ぎ穂】** だからどうしたと言われれば話の接ぎ穂もない=辺見。次からつぎと話のつぎ穂を見つける立原。継ぎ穂を失った頼りない心持ち=大佛。妙に継ぎ穂をなくした空気が部屋にひろがる=大佛。話の接ぎ穂を(失う。探す。見失う。求める)。つぎ穂ない沈黙が生じる=宮本百。 <700> # 繋がる・受け継ぐ **つぐ【継ぐ】** ▼継ぐ(家の商売を。肩で息を。実家の農業を。社長の座を。正統な系譜を。父の遺志を。父の名跡を。母の姓を。火鉢に炭を。細い息を。息子が店を。旅館の仕事を。かすかにほほえみながら言葉を"西木)。継ぐべき言葉を知らない。骨を接ぐ。▼継がせる(跡目を。跡を。家を)。息をも継がずに(飲み干す。まくし立てる)。継げない(あとの言葉が。しばらく息が。二の矢が)。戦争体験を後世に語り継ぐ。乗り継ぐ(電車とバスを。列車を何本か)。▼世襲する(親の職業を。親の地位を。財産を)。次の走者にタッチする。 **つなぎあわせる【繋ぎ合わせる】** ▼つなぎ合わせる(端と端を。一片一片。割れたガラスを。きれぎれの話を大庭。ばらばらの記憶を=田中)。継ぎ合わせる(生地を。手拭いを。布切れを。割れ目を)。はきあわせる(二枚の板を。布切れを)。▼接合する(細胞が。板を。両面を)。継ぎはぎだらけの(ズボン。服)。継ぎはぎの文章。継ぎだらけの(仕事着。ズボン)。窓ガラスに継ぎが当たっている。継ぎの当たったズボン。書かれてある記述をパッチワークのようにつなぐ=玉村。バッチワーク的な対策。 **つながる【繋がる】** ▼つながる(回線が。首が。電話が。失敗が成功に。豊かな実りに。細い線で。さらなる好評に。母親と臍へその緒で。情報の断絶がトラブルに=畑村。露店がぎっちりとシラミの卵みたいに安岡)。とりとめもない連想の糸に繋ーながる=福永。一門全滅の悲劇につながる最初の機縁=舟橋。少年時代の思い出につながる品陳。血のつながる同胞もない心細い身=福永。昔の夢につながるささやかな道楽を始める=北。出陣が生命の危機に繋がることは子供でも知っている=舟橋。スキャンダルに繋がる火種=浅川。権でつながった集団。ぞろぞろつながって出てくる。つながっている(血が。足跡が点々と。腐れ縁で。目に見えない糸で)。▼つながれる(監獄に。鎖に。獄舎に。牢に。紐ぃもで)。男と女の肉のつながり火坂。つながりが(薄れる。殊の外濃い。できる。途絶えがちになる)。横のつながりが強い。不思議なつながりの糸。人のつながりをおろそかにする。明日につながるような明るい話"村上龍。一音一音が粘っこく繋がるような独得の喋りかた=松浦。数珠つなぎにされた捕處。三人の手首を数珠つなぎにする。▼車が数珠代つなぎになる(道路の渋滞で。三キロにわたって)。幅広い人脈。人脈がものをいう。人脈に事欠かない。人脈のネットワークが横断的になる荒巻。市民生活に直結する問題。▼直結する(本州と四国を。食は生と死に)。中央に直結した政治。連係にひびが入る。連係を(保つ。強める)。以心伝心的連繫中以ブレイに大原。連係プレーがうまく行く。 **つなぎとめる【繋ぎ止める】** ▼つなぎとめる(各部分を。過去を。顧客を。心を。信頼を。手足を。肉体を。牢獄に)。女の黒髪につなぎとめられる=平岩、子はかすがい。楔き(心をつなぐ。友情をつなぐ)。 **つなぎめ【繋ぎ目】** ▼つなぎ目(管の。バイブの。紐ぃもの。ローブの)。つなぎ目がゆるむ。つなぎ目を締める。▼目地(タイルの。煉瓦州んの。コンクリートブロックの)。目地をセメントで埋める。▼継ぎ目(板の。バイブの。レールの)。継ぎ目から水が漏れる。 **つなぐ【繋ぐ】** ▼つなぐ(母屋と離れを。岸にボートを。将来に希望を。前輪と後輪を。天と地を。点と点を。仲良く手を。二つの島を。棒杭らに小舟を。銘々の身を。犬を剣に。舟を岸に。厳重に鎖で。食を細々と。かすかな望みを。岸壁にクルーザーを。せっかちに言葉を。古い日本と新しい日本を。向こうとこっちとを。テレビを電源に。ホースを消火栓に。手をしっかりと。ボートをローブで。ほそぼそ露命を"杉本)。入り江の샨杭に小舟をつなぐように人の心をつなぐことはできない落合气。つないだ手をほどく。手をつないで歩く。船を船蔵につないでおく。溶接する(鉄筋を。バイブを)。▼連結する(貨車を。客車を。展望車を)。二両連結の電車。 **つなげる【繋げる】** つなげる(記憶を。声を。全体を。断片を。電線を。部屋を。指と指を。両方を。過去を現在に。巧みに。如才なく話題を。とつとつと言葉を。衆院選での勝利に。楽しみを今後に)。 **でんせん【電線】** 電線が(糸屑いたのように飛ぶ=山崎。夏の空を幾つものブロックに区切っている=落合。ヒューヒュー泣く=石森)。小鳥が電線に止まる。微細な電線の束がくもの巣のように内壁のあちこちに張りめぐらされる=光瀬。電線を巻いたコイル。風が電線を吹き鳴らす。コードを(つなぐ。伸ばす。巻き取る)。古い配線を取り替える。 **でんとう【伝統】** 伝統に泥を塗る。種々の伝統に束縛される。生活が伝統に満ちている。古い伝統に従う。歴史と伝統に生きる。伝統の灯を絶やさない。伝統を後世に伝える。長い伝統を持つ。郑々と伝統を受け継いでくる。伝統工芸を尊重する。伝統主義者(頑固な。牢乎いったる)。伝統的な(考え方、行事)。素朴で伝統的な信仰。伝統文化を振興する。 **なさぬなか【生さぬ仲】** 生さぬ仲の(親子。継母)。継子ほぇいじめをする。継まましい(仲。母)。意地悪な継母はは。継母と反りが合わない。 **にくしん【肉親】** 肉親に死なれたようにふさぎ込む"森村。肉親の暖かい心遣い。断ちがたい肉親の情。濃密な肉親の愛情。肉親への執着でがんじがらめになる。肉親を(語る。悲しませる。かばう。捨てる。亡くす。侮辱する。巻つ)。肉親のような断ち切りがたいきずな芝木。実の(兄も同然と考える。娘も及ばないほどの心の遣いよう。兄弟のように親しく行き来する=火坂。孫のように可愛がる=鷺沢)。貰い子を実の子として育てる。血肉を分けた(弟。親子。兄妹だいう。娘)。骨肉の(争い。恩を断ち切る。情。愛着に捕らえられる)。骨肉相食誌、む(醜態をさらす。内乱。死闘を繰り返す。血みどろの喰いを演じる小林久)。 **ははかた【母方】** 母方の(縁故。家系。親戚。親類。祖父母。遠縁に当たる)。母系の(社会。先祖。祖先)。 <701> # 繋がる・受け継ぐ **ひきつぐ【引き継ぐ】** ▼引き継ぐ(首相の座を。仕事を一通り。昔ながらの知恵を。前夜の興奮をそのまま。絶妙のタイミングで言葉を"内館)。引き継ぎが(無事に終わる。スムーズに行く)。事務の引き継ぎが済む。前任者から引き継ぎを受ける。バケツリレーで水を運ぶ。リレーのアンカーを務める。バトンを(受け取る。手渡す。引き継ぐ)。▼バトンを渡す(後任者に。次の走者に)。リレー競走のバトンみたいに目まぐるしく渡り歩く!太宰。▼バトンタッチする(仕事を。政権を。後任に。リレーで)。 **ひとりっこ【一人っ子】** 一人っ子で甘やかされて育つ。一人っ子を(甘やかす。可愛がる)。一人息子を(育てる。外に出す。亡くす)。なかなか一人息子を手放そうとしない!鈴木光。大事な可愛い一人娘。一人娘に甘い父親。先代に見込まれて一人娘の亭主となる=北原。大事な一粒種。一粒種の(息子。娘)。 **まご【孫】** 孫が生まれる。子から孫に伝える。孫の(お守りをする。成長を楽しむ。顔を見に立ち寄る)。孫ほども年が離れる。孫を(引き取って育てる。相手に冗談を言っているような楽しげな老人の声=内海)。悪戯小於な孫をなだめるような眼差し=遠藤。可愛い孫娘。 **みっせつ【密接】** 密接な(関わりを持つ。関連がある。巡緊以以を保つ。つながりを持つ)。密接に(結びつく。連絡を取る)。利害で密接に結ばれる。切っても切れない(仲。親子の絆。関係。仲)。密接不可分。切っても切り離せない。 **みもと【身元】** 身元が(判明する。分かる)。遺体の身元みもとが確認される。身元の(確認を急ぐ。特定を急ぐ。知れない娘を預かる。割り出しを急く)。身元を(明らかにする。隠す。突き止める)。死体の身元を割り出す。焼死体の身元を確認する。被害者の身元が(分からない。割れる)。 **みゃくらくない【脈絡ない】** 脈絡なくエピソードを連ねる。考えが脈絡なく浮かぶ。単語が脈絡なく並べられていくよう嘆しょり方藤本。言葉が脈絡なしに耳に響く。突然前後の脈絡なしに登場する。前後の脈絡がつかない。脈絡のつかないことを言う。脈絡のない(映像が続く。言葉。夢。思いが胸に浮かぶ)。しどろもどろに脈絡のない言葉を並べる=宮木郁。脈絡のないことを(口走る。だらだらしゃべる)。話題が脈絡のないままあちこちへ飛ぶとりとめのないお喋り=筒井。前後の脈絡がはっきりとしない。整合性が(とれない。ない。不十分)。整合性に欠ける。前後不統一な(話。文章)。文章のつながりが少しおかしい。相互のつながりを欠いている。文脈の破綻が随所に見られる=横山。 **むすこ【息子】** 息子(不肖の。自分の血を分けた。よちよち歩きを始めたばかりの。母親とつるんだようになって大きくなった阿部)。実の息子以上に可愛がる。息子が(中学に上がる。複雑な年頃を迎える。立派に成長する。掌に50から逃げていってしまうような不安"辻井。悪辣な小鬼のように眼をキラキラさせて母親に挑む=阿部。次第に遠い存在になっていく藤田。別の惑星からやってきた生き物のように思える"小林久)。立派な息子だと世問が賞賛する藤田。息子と生き別れになる。息子としての態度にもとる。息子に(甘い親。家庭教師をつける。常々息子に言い聞かせている。息子の(名を呼ぶ。犯行をかばう。教育に熱中する。結婚を見届ける。将来に大きな期待をいだく。成長を楽しみに働く。活躍が嬉しくてたまらない=さだ)。目放く息子の変調を見て取る"貫井。息子を(人質に出す。思いどおりの人間に育てる。事業の後継者に育てる。クロチクを育てるようにかわいがって育てる=水上)。帰ってきた息子を祝う。二人の息子を女手一つで育て上げる。息子自慢を始める。息子夫婦と(同居する。折り合いをつけて暮らす藤沢)。▼子息(社長の。良家の)。次男が分家する。せがれに家督を譲って隠居する。商売を倅せがに譲った楽隠居の身分!柴田剣。せがれを職に就ける。長男が(生まれる。都会に出てしまう)。長男に家督を譲る。長男を(頭に三人の子を儲もうける。連れて里帰りする)。商家の総領に生まれる。総領の(甚六。息子)。 **ようし【養子】** 養子に(入る。迎える)。他家に養子に出る。隣村から養子に来る。養子をもらう。他家から養子を迎える。傍流から養子をとる。他家から婿養子に入る。婿養子の(縁組が決まる。話が持ち上がる)。養子縁組を持ちかける。養家の(躾しっになじむ。父。母)。 **わがこ【我が子】** 我が子が可愛くてたまらない。会社を我が子に継がせる。わが子のことのように喜ぶ岩板。空しく我が子の死を見送る。母親がわが子を抱えるようなあたたかい伴奏"石森。わが子をなだめるようにしきりにとりなす=阿部。自分の腹を痛めた子。我が子のように(慈しみ育てる。いとしい)。わが子のように可愛がっている愛車=阿刀田。我が子同様に育てる。愛児の死に取り乱す。愛児を亡くして泣き暮らす。夭折した掌中の珠。掌中の珠を(失う。奪われる)。 **わかだんな【若旦那】** 若旦那(老舗の。大家の)。番頭や手代たちから若旦那ともてはやされる。北原。御曹司ぷんぞ(いい家の。社長の。名門の)。ぼんぼん(温室育ちの。出来の悪い。品のある育ちのいい)。若様のお出まし。若様を連れ出す。 <702> # 呟く・囁く **うわごと**【譫言】口からうわことが漏れる。うわ言に叫ぶ。喉を火と焼く譫言の発作"大江。うわ言を(聞く。しゃべる。つぶやく)。しきりにうわ言を言う。うわごとのように何度も咳やぶく=原田病。廢言うのように小言を言い続ける佐藤巻。譫言のように同じ言葉を繰り返す森所。春夢からさめやらぬていで譫言のように呟く=柴田錬。 **こごえ**【小声】子供をあやすときのような小声丸谷。小声で(悪態をつく。歌を口ずさむ。訊く。言葉を交わす。ささやく。尋ねる。話す。礼を言う。流行歌を口ずさむ)。隣の人に聞こえないよう小声で話し合う。あたりをはばかるような小声で言う藤沢。小声ながら腸を絞るような声で呼び懸ける=二葉亭。何を言っているのか聞き取れないような低い声でささやくり高見浩。細い声(絹糸のような。たえいるような島尾)。弱々しい声(ささやいているような=勝目。ほとんど聞き取れないほど=宗田)。あるかなきかの声で言う。江戸川。蚊の鳴くほどの声を出す“福永。声量を落として言う。遠いものでも追うような声で低く呟く=黒井。大きなからだを小さくして泣きそうな声であやまる=灰谷。歯の間をようやくに洩もれる声が悲しい響きを伝える=長塚。耳に唇をあてるほど近づけて言う~深沢。夜中に声を殺して話すさだ。宛然收ん嬢ぁりのささやくようにしか思われない声=山田美。蚊の鳴くような(声でつぶやく。弱々しい声)。カの鳴くような声でしゃべる灰谷。ささやくような(声でしゃべる。小声で答える)。あたりを憚ばかるようなかすかな声=阿刀田。秘密めかして声を小さくする。哀かなしみの湧出を妨げないように声を低め=江。声を潜めて(聞く。話す)。思わせぶりに声を潜めて言う。すみませんと小さく言う。声を落とす。声を落として訊く。ぐっと声を落として言う。小さな声で(言い添える。答える。しゃべる)。小さな声(聞こえるか聞こえないくらいの堀。口元からちょぽんとビンクの鼻へ抜けるような=中房み。ほとんど聞き取れないくらいの灰谷)。小さな声が呪文か念仏のように聞こえる=中沢。すぐ目の前に坐すもった人に答えるみたいに小さな声で返事をする=尾辻。さな声は聞きづらい。力の抜けて行くような小さい声=壺井。小さい声で呪文のようにつぶやく=円地。小さく消え入りそうな声。低い声で(そっと言う。たしなめる。耳打ちする。ぼそぼそと話す)。▼低い声(押し殺した。蚊のような。くぐもった。心持ち。しわがれた。底力のある。ねっとりした。ぼそぼそした。注意深く狡猾にっな。かすれたような。聞き取りにくい。こもった感じの。周囲をはばかるような。腹に響くような。喉の奥から絞り出したような「伊集院。答打ちつような力のこもった高井)。夢でも見ているように低い声で呟く祁永。低い声がひとりきりの部屋の中に情けないほど孤独に響く窓沢。唇から低い声が漏れる。無意識のうちに低い声が飛び出す。低い声音。 **ささやき**【囁き】自然の一隅にひそむ生命の囁きに耳を傾ける=岸田。▼ささやき(甘い愛の。小川の。風の。生命の)。針のように鋭い囁き=高樹。ささやきが(聞こえる。周囲に起こる。広がる。徐々に上ずってくる)。唇からささやきが漏れる。▼ささやきかける(言葉を。楽しみを)。ささやきを(小耳に挟む。耳にする。無視する)。甘いささやきを交わす。・せせらぎのささやきを聞く。森のささやきを再現する。囁き声が蘆ぁしの葉に渡る風のようにどこからともなく起こる芥川。低く唸うなる蜜蜂の羽音のように囁きが絶えることなく聞こえつづける=柴田翔。悪魔の囁きのような甘美さを持つ声外村。 **ささやく**【晒く】▼囁く(繰り返し祈りのように=中村真。接吻疑いでもしそうな熱烈さで=古井。耳に熱い息を吹き込むように佐多)。▼ささやく(耳元で悪魔が。愛を。低く耳元に。声を殺して。ひそひそ声で。耳元で甘く。耳元でそっと。こそこそと小声で。抱かんばかりに耳元で。何物かが心の底で。ねっとりした調子で)。声でささやく(柔らかな。愛らしい。甘ったるい。押し殺した)。▼言葉をささやく(愛撫の。甘い。励ましの。優しい)。寄せてささやく(耳に唇を。耳に口を)。▼ささやかれる(色恋沙汰が。陰口が。退潮が。不満の声が。噂が密かに。背後で)。噂が巷間にいに囁かれる=柴田錬。私語修だくように灯りが点ともる鈴木三。▼ささやき合う(人々が。愛を。陰口を。情報を。不安そうに。陰で。こそこそ)。ささやき交わす(怪しげな噂を。風に木の葉のざわつくように森思)。ひそひそ声で話を交わす。ひそひそとささやき合う。▼耳打ちする(こつを。善後策を。理由を。去り際に。声を潜めて。そっと。小さな声で。ひそひそと。一言)。 **しご**【私語】私語が(多い。がやがやと満ちる)。私語の輪が広がる。私語一つ(交わさない。聞こえない)。私語を慎む。退屈してざわざわ私語を始める。一言も私語を挟まない。私語を交わす(大っぴらに。そこここで)。 **つぶやき**【呟き】▼つぶやき(かすかな。含蓄のある。大地の。内心の。何気ない。頭も尻尾もない。まじりの。うっかりすると聞き漏らしてしまいそうな小さな"開高。魂を絞り出すような光原)。ボロッと唇からもれたようにつくろった呟き=高橋涼。つぶやきが(聞こえる。口から漏れる。出る。耳に届く。喉の奥に生じる)。うわ言のような呟きがもれる=浅川。かすかな静寂のつぶやきが湧き上がって部屋中にた <703> **つぶやく【呟く】** ▼呟く(一語一語押し出すように眉村。口に出す言葉で自分の考えを確かめるようにゆっくりと「連城。声にならない声で落合。呪文を唱えるように荻野。誰にともなく弁解するように藤枝。喉に貼りついた声を引き剥がすように=黒井。日がな千遍も阿呆福住のように=北。頬を桃色にほてらせ遊戯に熱中した子供のように=武田泰。胸に溜めていたものをそっと吹き出すように内海。床の下から鳴き出した虫のような憐ぁゃれな声で=横光)。▼つぶやく(恨めしげに。恐ろしげに。帰りぎわに。気味悪そうに。心細げに。寂しげに。残念そうに。自嘲ぎみに。絶望的に。苦々しげに。不得要領に。不満そうに。満足げに。祈るように。感慨をこめて。声を潜めて。小さな声で。低く。ほそぼそと。真顔になって。むにゃむにゃ。胸の中で。何かしら皮肉めいたことを。消え入りそうに。聞こえよがしに。さも興ありげに。心底不思議そうに。ため息まじりに。皮肉たっぷりに。幾度となく心の中で。肩を落としてしょんぼりと。口の中で小さく。そっぽを向いて。駄々をこねるように。誰に言うともなく。のべつ幕なしにぶつぶつと。ひとり合点のように。独り言のように。不可解そうにぽつんと。分別臭げに腕組みをして。ものうげな調子で。弱々しく目を伏せながら。打ちのめされたように石坂。うっとり酔うように胸の内で宮本輝。神がかりに入った巫女ぃこのごとく武田癸。自分に言い聞かせするようにポツリと阿刀田。ぶつぶつ口にこもるように樹。ほのかに割れるあぶくのように繰り返し野間。自らに言い聞かせるように=畑)。▼口の中でつぶやく(くそっと。何度も)。▼声でつぶやく(邪険な。沈痛な。うっとりした。か細い。冷めた。力のない。惚うけたような。弱々しい。感無量といった)。▼言葉をつふやく(謎めいた。思いのりの)。▼表情でつぶやく(沈んだ。苦い)。ぶつぶつつぶやく(小声で。何やら。わけのわからないことを灰谷)。泣くようにつぶやきつづける。つぶやきに似た口調。抑揚の決まらないボソボソした調子で言う。石坂。ほそぼそと話す。つぶやくような(小さな咳せき。細い声)。募がまのつぶやくような声で口ごもりながら云う芥川。つぶやくように答える。一歩一歩足をのせるたびに木の階段がつぶやくようにみしみし軋きしむ"小川。胸の奥で大切な暗号をつぶやくように言葉を繰り返す小川。含みのあるつぶやき声。▼ぶつぶつ言う(口の中で。小さな声で)。むにゃむにゃ答える。ぶつぶつ(独り言を言う。文句を言う)。呪文みたいにぶつぶつ言うさだ。ぶつぶつ不平を(言う。漏らす)。 **ないしょばなし【内緒話】** まわりに聞こえてしまう不手際な内証話"三島。内緒話が筒抜け。内緒話に割り込む。埒らちもない内緒話に時を費やす栗本。▼内緒話をする(こそこそ。ひそひそと)。 **ねごと【寝言】** 酔っ払いの寝言に一々取り合っていても始まらない=瀬戸内。まさに荒唐無稽、子どもの寝言ほどの価値もない"笹沢。寝言を(聞く。つぶやく)。▶寝言を言う(夢を見て。わけの分からない)。祈りを寝言のように呟く遠藤。 **ひそひそばなし【ひそひそ話】** 怪しいひそひそ話。淫靡ひんなひそひそ話に花を咲かせる萩原來。ひそひそ話を(始める。やめる)。額を寄せてひそひそ相談する=三浦哲。ひそひそと(会話を交わす。耳打ちする忍び声)。何やらひそひそと話しこむ。耳に口をつけて小声で言う。耳もとでコショコショと囁く驚沢。秘密を打ち明けるように声をひそめる落合。話をする(こそこそと。内緒で。ひそひそと)。密語を(交わす。ささやきあう)。三味線を忍び音で弾く。忍び音にすすりあげる。忍び音を(かみ殺す。漏らす)。 **ひとりごと【独り言】** 所嫌わず独り言が口をついて出る『辻真。独り言の癖をやめる。独り言を(口に出す。ささやく。続ける。つぶやく。やめる)。さも感に堪えたようにひとり言をいう佐藤巻。ぶつぶつ独り言を始める。独り言を言う(しみじみと。時折。ぶつくさと。ぽつりと。むにゃむにゃと。ぶつぶつと不平そうに田山)。聞こえよがしの独り言を漏らす。物の怪40に悪いかれたように独り言を洩らす"吉川。▼独りこちる(声を低めて。心の中で。胸の中で。我知らず)。気の抜けたように一人こちる=堀。声を低めて一人ごつ。日頃ひとりで考え続けてきたことがつい自然に口に出てしまったように独り言めいた口調で言う“日野。誰にともなく話をする。独り言のように(付け加える。ふわりと言う。ぽつりと言う)。▼独語する(ぶつぶつと。聞こえよがしに)。独語を心に刻みつける。苦しい胸のうちを独白する。独白を漏らす。 **ぼそぼそ** ぼそぼそ(愚痴をこぼす。しゃべる。話をする)。質問にぼそぼそ答える。小さな声でぼそぼそ話す。話し声がほそぼそ聞こえる。ぼそぼそと(言葉を交わす。相談を始める。寂しそうな声が響く)。ボソボソと低く響く話し声"久間。ぼそぼそと愚痴を(言う。こぽす)。陰気にほそぼそと(つぶやく。話す)。・ほそぼそと言う(口の中で。元気のない調子で=伊藤整)。ほそぼそした(口調。調子で言う)。はそっと(言う。声をかける。答える。尋ねる。低く言う)。ぼそっとした(口調。不器用な喋心『り方)。ぼそりと(声を発する。告げる。ひとこと言う。無愛想に答える)。 <704> # つまらない・面白い **あじけない【味気ない】** 味気ない実利的な問題。一人きりの味気ない食事。狐につままれたような味気ない死にざま=檀。索漠と味気ない現代"光原。胸がうつろになるような味気ない思い=石坂。頭の上に抓いているお天道様にんが一時に暗くなるような味気なさ菊池。砂を噛むような(味気なさ。索漠とした日常=森玲)。蠟ぅぅのごとく味気ない=中島必。蠍のような味のする毎日=遠藤。 **おどける** ユーモラスにおどける。おどけた(軽い芸風。仕草で肩をすくめる)。愛らしいおどけた微笑。おどけを口にする。ひょうきんな(男。声を出す。仕草)。ひょうきんに笑う。怖くて飛べないという役をひょうきんに演じる=つか。 **おもしろい【面白い】** 面白い(趣向を凝らす。人生を送る。経験をさせてもらう。変化に気がつく。話材に恵まれる)。▼面白い(それなりに。群を抜いて。けっこう。なかなか)。一風変わった面白い人物。期待にたがわず面白い人。とてつもなく面白いゲーム。抜群に面白い会話。面白いほど(すらすらと事が運ぶ。次から次に仕事が湧いて出る=今日)。面白くすらすらと読める作品。客を面白く遊ばせる。太鼓を面白く叩く。笛を面白く吹く。而白くて(時間の経つのがわからない。石も踊りだすほど=奥平)。仕事が面白くてやめられない。世の中が面白くてたまらない。面白くないと言えば嘘になる=眉村。話が面白くなる。面白げに声を立てて笑う。▼面白さ(息もつかせぬ。人柄がにじみ出た。吹き出すばかりの)。物語の面白さも一入い。面白そうに目を輝かす。にこにこしながら面白そうに見る。面白半分に(首を突っ込む。テストを受ける。事実を誇張する八谷崎)。面白みが(骨まで染みる。湧く)。話に面白みをつける。面白いように金を儲もうける。一興(粗相も時の。森を歩くのも。試してみるのも)。一興を催す。抱腹絶倒の喜劇。話に興が乗る。羽化登仙の感興。感興が(尽きない。湧く)。感興に(誘われる。ふける)。 **おもしろおかしい【面白おかしい】** 面白おかしい人生を送る。噂がおもしろおかしく人の口に伝わっていく灰谷。面白おかしく話して聞かせる。消息を面白おかしく披露する。お腹の皮がよじれる萩原则。笑いが止まらない。▼おかしい(死ぬほど。転げて笑いたいほど=獅子。腹の皮がよじれるほど高橋和)。腸がよじれるように可笑ぉぉしい!極。おかしくて(涙が出る。たまらないというように笑いだす干刈)。おかしくなって吹き出す。作品からにじみ出るしみじみとした可笑しさ"中村明。おかしさがお腹の底からこみ上げてくる=阿木。おかしさに耐えられず笑いだす。あまりのおかしさに抱腹絶倒する。笑うと妙なおかしみが風貌ににじむ船山。 **おもしろがる【面白がる】** ▼而白がる(新しい表現を。右往左往する敵を)。面白がって(げらげら笑う。付和雷同する)。大人びた話しぶりを面白がって閲く。おかしがる(冗談を。くそまじめさを)。箸がにげてもおかしがる年頃。興に乗じて滔々とうと弁し立てる=永井術。てんでに興に乗って話す。 **おもしろくない【面白くない】** 面白くない(顔をする。結果を生じる。思いがぶり返す)。▼面白くない(一向に。さっぱり。少しも。ちっとも。どれもこれも)。胸の中で面白くない気持ちがゆるやかに渦を巻きはじめる佐藤愛。面白くないこと(おびただしい。はなはだしい)。大して面白くもないドラマ。面白さに欠けるうらみがある。面白みが薄い。面白くなさそうに(開く。見る)。おかしくも何ともない。曲がなさすぎるほど凡庸、谷崎。おかしくもない冗談。 **おもむき【趣】** 焦じらされているのを愉たのしんでいる趣豆行。▼趣きがある(深山の。まさに百花斉放の佐野)。趣の(ある詩。深い山中)。幽遠な趣の庭。いささか趣を異にする。宿場の趣を残す町。古雅な趣を満たしている風景-横光。枯淡な東洋趣味。興趣が(尽きない。深い)。興趣に富む物語。興趣をいやがうえにも盛り上げる。枯淡な絵。枯淡の(風格。味)。寂のある(声。庭)。声に寂をきかす。情趣に(乏しい。富んだ庭)。風韻に富む作品。古い風格ある建築物。風格のある(文章。店構え)。庭に風趣を添える。そこはかとなくものの哀れが漂う荻野。▼野趣(荒削りな。素朴な)。野趣に(あふれる。富む。満ちる)。東洋的な侘び。侘びの境地。▼気韻(高潔な。楽りんとした。生き生きとした)。気韻が高い。風雅な趣。 **かくしげい【隠し芸】** ▼隠し芸(玄人にはだしの。珍無類の。ブロ顔負けの)。座興に隠し芸を披露する。座興に手品をする。食後の腹ごなしじみた余興里見。 **かるくち【軽口】** 怪口がペンの下から生まれ出る=中村貞。軽口に真顔で応じる。軽口を飛ばす。冗談まじりの軽口を利く。尻軽女のように軽口を言う~中上。▼軽口を叩く(上機嫌で、殊更に冗談めかして)。 **きち【機知】** ▼機知(軽快な。諷刺的ぃぶしな)。機知がきち(秀逸。ひらめく)。機知に富む。若々しい機智に溢れた話しぶり辻井。目先が利く。目端の利く男。▼ウイット(洒落した。当意即妙の)。ウイットにあふれた会話。エネブリにあふれた会話。エスブリの効いた話。気働きがきく。気働きのする優しい声を開きたい。当意即妙に(答える。話をまとめる)。当意即妙の創作の才。順智がきく。順智を働かせる。とっさの機転が利く。窮地を機転で切り抜ける。機転に富んだ男。機転の演技で切り抜ける。とっさに機転を利かせる。 **きび【機微】** 男女の機微に精通する。夫婦間の機微に触れる事柄=丹羽。人生の機微に触れる。愛憎の心理の機微を捉える。男女の機微を上手に処理する。人情の機微が分かる人。人情の機微に(うとい。通じている)。 <705> **きょうざめ【興醒め】** 吐はらの底がわかって興ざめ"山本周。朝の礼拝堂に淡尿は礼にの気が流れてきたよりももっと興ざめなこと獅子。白々しい興ざめな鈍さ。粗野な興ざめた芸。下手な歌に興ざめする。甚だしく感興をそがれる。興趣に欠ける。興趣をそぐ。一向に興の湧かない顔つき。興もなげに言う。酔おうとして酔えない苛立ならたしさに素然とする=円地。しらじらと興奮がさめる気がする『石川。長年の夢が一時しらじらと覚める。 **きょうみ【興味】** 話の続きに興味が湧いてくる。幼いころから言葉に興味があった三浦し。▼興味がある(犯人探しに。いささか。ちょっぴり)。個人的な興味に溺れる。自分自身の興味に没頭する。顔に興味の色を濃く塗る=森村。興味を刺激されて目を輝かせる。有川。いたく興味をそそられる。強く興味をひかれる。とみに興味を覚える。ファンの興味を惹ぃきつける。かねがね計り知れない興味を抱いている=辺見。興味を失う(学問に。現実に。仕事に)。興味を失ったような笑が湧く=吉丹。▼興味を持つ(行動に。セックスに。話に)。興ありげに高く笑う。興味ありげにあたりを見回す。興味本位に取り上げる。派手な人間模様を興味本位に書き立てる=中村明。 **きょうみがない【興味がない】** ▼興味がない(金に。仕事に。政治に)。興味がさほど湧かない。殊更興味がある訳ではない。興味なさそうににべもなく答える森環。全く興味の失せた表情。素っ気ないくらいに手も出さなければ興味も示さない=中沢。 **きょうみぶかい【興味深い】** 興味深い情報をつかむ。なかなか興味深い話。興味深げな視線が集まる。興味する無責任な野次馬のように興味津々にいいん=飯田。興味津々たる気分で熱心に耳を傾ける―奥泉。興味津々といった顔つきで質凹する=西木。興味は津々しんとして尽きない。 **くだらない【下らない】** くだらない(噂を立てる。薬に手を出す。話はやめろ。ごたくを並べる。事件に大騒ぎする。面子がにこだわる。悪ふざけの文句=高見阿部。人㎜)。酒の上のなんともくだらないやりとり生にくだらないことはない大佛。児戯に等しい下らぬもの=中野美。馬鹿話に夜を更かす。馬鹿話を吹聴ふふぁし合う。愚にもつかない(喧嘩树ん。口論。小説。代物)。 **ぐち【愚痴】** ▼愚痴(怒りと寂しさと悔しさがない交ぐちぜになった藤田。幾分エクスキューズを含んだ落合。人生に倦;み疲れた老人の佐藤泰)。愚痴が自慢に聞こえる芝木。愚痴とも詫びともつかぬことを言う。愚痴を(肴にかに酒を酌む。たらたらとしゃべる。並べ立てても仕方がない)。とりとめもない愚痴をこほし合う。飲み屋で愚痴を言う。▼愚痴をこぼす(家族を相手に。ひとしきり。胸の内で)。▼愚痴を話す(家庭の。仕事の)。ぐちぐち文句を言う。陰でぐちぐち言う。だらだらと愚痴っぽい小言を言う志賀。いつまでも愚痴っぽく繰り返す。両雄舌を揃えて愚痴る"二葉亭。死んだ子の歳としを数える。世が世であれば。めったに愚痴を言わない。愚痴をあまり口にしない。愚痴一つこぼさずに一切の面倒を見る=三浦灯。 **くりごと【繰り言】** とりとめもない繰り言が延々と続く。壁に向かっての繰り言に過ぎない"高井。繰り言をくどくどと並べる。延々と繰り言を並べ立てる。老人の繰り言のような言葉"有島。波のとどろきが酔っぱらいの繰り言のようにしつこい三島。他人の泣き言につきあっていられない=北原。泣き言を並べる。泣き言一つ言わない。▼世迷い雪にはぃ(恐にもつかない。頭の弱い婆さんの"高見浩)。・老人の世迷い雲のような呟き=斎藤栄。昔語りをよまいことのようにぼそぼそと語って聞かせる=檀。 **けっさく【傑作】** 傑作(ブロ中のブロをうならせた。相当に重量感のある「池澤)。傑作の名にふさわしい長編小説斎藤美。傑作を続々と発表する。秀作と駄作を見分ける。不朽の名作。後に名作と評される。」の(感を深くする。名に恥じない)。 **こうき【好奇】** 瞳が好奇に染まる。好奇の(視線が集まる。目を向ける。種を蒔きき散らす。眼差しを向ける。目が容赦なく注がれる。目にさらされる。色を宿した野次馬の視線-熊谷。視線を無遠慮に投げる=連城)。通行人の好奇の眼差しを独占する八谷川。 **こうきしん【好奇心】** 好奇心が(勝ちを占める。ますます募る。にわかに膨れあがる)。声音に好奇心がにじみ出る。持ち前の好奇心がむくむくと湧き上がってくる=綾辻。好奇心からの小うるさい質問にあう宇野利。好奇心でいっぱいになった少年のような表情をして質問する"五木。珍しい玩具を与えられた幼児のように好奇心とやさしい笑いを浮かべて見ている遠藤。理解しがたい物の正体をつきとめようとでもするような好奇心とおどろきの入りまじった眼つき=山本周。好奇心に(火を点っける。目鼻をつけたような存在。梶尾。眼を輝かせて耳をかたむける"開高)。悪戯かけっぽく好奇心にあふれた眼渡辺。恐怖が好奇心に拍車をかける=高橋和。社会科見学の小学生のように好奇心に満ちた足取り“原田宗。好奇心に満ちた(噂話。目が注がれる)。好奇心の塊のような女"加賀。熊を初めて目にした子狐のような恐れと好奇心の入り混じった顔!高橋三。好奇心を(大いにくすぐる。隠そうともしない。勉強に振りむける)。萎えかかった好奇心をよみがえらせる。怖いものを見たがる。何にでも鼻をつっこむ"飯田。好奇心丸出しの顔で訊く=東野。怖いもの見たさの感情。怖いもの見たさも手伝って座敷を覗のぞきに行く船山。学問に対する純粋な知的好奇心。知的好奇心から出発した研究。知的好奇心に導かれた成果。知的好奇心を満足させる。 <706> **こっけい【滑稽】** 滑稽(開いた口が永遠にふさがないほど木山。大人びたつもりの言葉遣いは背伸びで履いたゲタが高すぎてやや有川)。飢えた犬が固い骨を持てあます時のような滑稽で浅ましい口の恰好嵩見順。滑稽な荫当誌『てを演じる。話に滑稽な尾鰭はぃがつく。滑稽なくらいの緊張感をみなぎらせる内田森。切ないほど滑稽に見える。はた目には滑稽に滑稽を通り越して(情けない。悲惨)。滑稽なほど(丁寧な口調。本に書いてあるとおりを実践しようとする=内田春)。滑稽きわまる事態に陥る。片腹痛い(あれで真打ちとは。訳知り顔の解説は)。コミカルな(味を出す。演技。演出。台詞回り、冷し)。 **さっぷうけい【殺風景】** 殺風景な(男の仕事場。ことおびただしい。コンクリートの通路。窓のないコンクリートの棺桶封めのような部屋=泉優)。いとも殺風景な男ばかりの寄宿舎"今日。がらんとした殺風景な空き地篠田。恋のない殺風景な女=内館。コンクリートが剣もき出しになった殺風景な部屋"大蔵。何一つ道具のない殺風景なたたずまい=野坂。劇場の奈落のように裸の壁が裸の電球に照らされた殺風景な通路!獅子。 **じょうだん【冗談】** ▼冗談(露骨で卑猥な。たちの悪い。明るさを装った空虚な=筒井。人を馬鹿にした低劣な=貫井。正気では笑えないような=氷水倉)。真面目か冗談かわからぬ口調で話す。他意なく冗談が口をつく角田。冗談で気を紛らわせる。冗談とも本気ともつかぬ甘えた口振り“黒井。本気とも冗談ともつかない言葉。冗談にかこつけて話をかきまわす野間。客の冗談に声をあげて笑う。とても冗談には聞こえない。冗談にも望んではいない。言うに事欠いて冗談にもほどがある=浅田。冗談のつもりでうっかり口にする。冗談も(休み休み言え。いい加減にしろ)。冗談を(真に受ける。軽い笑いで打ち返す=武田泰)。下品な冗談を口にする。陽気な顔で冗談を返す。▼冗談を言う(場違いな。卑猥な。屈託なげに。陽気に)。冗談を飛ばし合う(気がねなく。罪のない)。柄にもない冗談を飛ばす。悪い冗談と笑って済ませる。悪い冗談としか思えない。冗談っぽく察しかめた顔の目に薄い笑みを含ませる=連城。冗談のように(笑って語る。言い紛らわせる=堀)。冗談口にいちいちたわいもなく笑いこける。冗談口を利く(軽い。気安く)。冗談半分に(からかう。呪にらみつける)。冗談まじりの軽口。冗談めいた口を利く。冗談めかした(言い方。答え)。半ば冗談めかして訊く。わざと冗談めかして言う。▶戯れ言ごい(根も葉もない。酔った上の)。戯言ご域に付き合ってはいられない=篠田。▼ギャグ(凍りつくような。地べたに穴掘って頂だけ埋めちゃいたいような荻野)。ギャグの連発でわざと笑わせる=重松。ジョークが(ゴム毬ょりのように飛び跳ねる=阿木。沈みそうになっていた空気を救う―東野)。誘いを断られたことをジョークに変える落合。ジョークを飛ばす。 **しらける【白ける】** ▼白ける(座が。声が微妙に)。」声が微妙に)。白けた(目で眺める。気配に覆われる)。しんとして白けた座敷。部屋に白けた空気が流れる。白けに白けて空気がアイヴォリーホワイトに近くなる=小林信。 **しらじらしい【白白しい】** 白々しい(嘘をつく。架空の物語。出まかせを言う)。しらじらしい一時間を過ごす!阿部。楽しい夢のさめたあとにも似たしらじらしい気持ち』石川。義務めいたどこか白々しい振る舞い=松本。そらっとぼけた白々しい会話が交わされる着川。 **たいしたことがない【大したことがない】** 騒ぎの割には大したことがない。大した代物ではない。それほど大した存在ではない。わざわざ見に行くほどのこともない。▼高が知れている(勝っても。結果は。寒いといっても)。▼物の数ではない(あの頃と比べれば今の苦しさなど。彼女の威圧感など=松浦)。物の数とも思わない。物の数に入らない。 **ださく【駄作】** どうしようもない駄作。傑作か駄作かという価値判断。駄作と酷評される。駄作以外の何物でもない。▼雑文(ばっとしない。片々たる)。完全な失敗作。▼駄文(空疎な。評価に値しない)。駄文を書き散らす。 **たわいない【他愛ない】** 他愛ない(子ども同士の喧嘩炒ん。世間話に興じる)。一枚の新聞紙が燃えてしまっのを見ているよりも他愛ない=小林多。嘘も方便という程度の他愛ない嘘!向田。五分後にはもう思い出せなかったほど他愛ないことで口論する=高見浩。土俵につんのめった相撲取りのように他愛ない姿=獅子。河童はっの屁、。一本の枯れ木のようにたわいなく倒れるり高価三。話に他愛なく引きこまれる。他愛のない(夢の話。いさかいが起こる。気まぐれな一言。冗談に笑い転げる)。オモチャのようなたわいもない関係"坂口。子供の時の他愛もない思い出平岩。酒に他愛もなく酔っ払う。 **つまらない** (意地を張る。噂が立つ。お世つまらない辞を言う。気を回す。男に引っかかる。女に引っかかる。ことに拘泥する。ミスを繰り返す)。名が言えないほどつまらない場所。深沢。世にもつまらない仕事今日。つまらぬ(嘘をつく。遠慮は無用。考えを起こす。風習に染まる。見栄を張る。疑いをかけられる。男になりさがる。繰り言に過ぎない。ことで角突き合う。ことにこせこせしない。つっぱりを捨てる。理屈のこじつけ合い)。くどくどとつまらぬ言い訳を言う。三文文士の範疇ちから一歩も抜けない程度のつまらん作家。今東。やりどころのないつまらなさ幸田文。つまらなそうな白けた表情。つまらなそうに足先の小石を蹴る=黒井。料理をつまらなそうに箸でつつく。北原。面白くもおかしくもない。童貞で無経験で恋の戯れにはなんのおもしろみもなさそうな男」有島。再読に堪えない。屁、に等しい。見るべきところがない。区々たる(一身を深くする。問題に過ぎない)。由ない長話。ろくでもない(男にだまされる。想像を膨らませる)。味もそっけもない(言い方。お説教風な言葉"石森)。無味乾燥な(学問。講義)。晦渋いんで無味乾燥な作品宫本炬。埒らちもない(押し問答。議論。空想。繰り言。長話。ことを言いふらす。想像を膨らませる。内緒話に時を費やす=栗本)。 <707> **とるにたらない【取るに足らない】** 馬鹿げた話で取るに足らない=山本周。取るに足らない雑音にすぎない。小さな取るに足らぬこと。取るに足りない悪事を犯す!大江。取るに足りぬ出来事に過ぎない!高井。九牛の一毛。さして重大とは思わない。さして重要なことではない。万倉の一粒。何ほどの物でもない。取るに足らないような小さな存在。佐藤瞬。瑣末まな(情報の氾濫。ことにかかずらう)。身辺の瑣末な事件。十把一絡じかぶ。げの(下っ端。駄作)。片々たる小事。日常の片々たる出来事。▼瑣事だし(ふだん何気なく見過ごしている。聞かでもがなの日常の"高橋知)。日常の瑣事にとりまぎれる。瑣事を(こまごまと語る。飽きもせず逐一書き記す=中村真)。吹けば飛ぶような(軽さ。草小屋。軽輩小者。軽薄才子)。木製の吹けば飛ぶほど小さな玩具の人形"井伏。 **とんきょう【頓狂】** 頓狂な驚きの声をあげる。思わず頓狂な声をあげる。物に驚いたような頓狂な顔"田山。▼頓狂な声(調子外れな。夢でも見ているような椎名龄)。頓狂な声で(怒鳴る。笑う)。頓狂に大きな声を出す。素っ頓狂な(ぶで聞き返す。叫び声をあげる)。調子外れな(歌。声)。 **ばかげる【馬鹿げる】** 馬鹿げた(妄想を信じる。ことをしでかす。想定として一笑に付する)。一見馬鹿げた妄想のような考え"墨有。節ふかがうようよ泳いでいるタンクの中へ飛び込むような馬鹿げた真似ぇね』田島。▼馬鹿げている(あまりに。大なり小なり)。おこの(沙汰。振る舞い)。狂態に近い偏執ぶり=山岡。痴態の限りを尽くす。思いきり狂態を演じる!半村。痴態の限りを尽くす。痴態を演じる。問の抜けた(顔。話。返事)。愚劣な(争い。冗談。姿をさらす)。愚劣さを(嘲笑する。非難する)。 **ばかばかしい【馬鹿馬鹿しい】** 馬鹿馬鹿しい(お祭りの喧噪汁认から逃れる=池田。時間の冗費にいらいらする=壺井)。真面目に議論するのもばかばかしい篠田。とても信じられない壮大なばかばかしい嘘!三島。本気で信じるには余りに馬鹿馬鹿しい話"長与。ばかばかしいと一笑に付す。相手をするのがばかばかしくなる。ばかばかしさに(あきれ返る。顔をしかめる)。あんまり(ばかばかしくて泣く気にもならない多岐川。馬鹿馬鹿しくて話にならない二葉亭)。滑稽な動作に噴飯する"獅子。噴飯物の(議論。迷信)。 **ばからしい【馬鹿らしい】** 馬鹿らしい(思いつき。冗談)。▼馬鹿らしい(想像するのも。腹を立てるのも)。こんな馬鹿らしい話はない。馬鹿らしくて(お話にならない。返事をする気にもなれない=安部)。我ながら我がしたことの馬鹿らしさに言うべき言葉を見出しえない二葉亭。笑止の(限り。きわみ。沙汰)。たわけた妄想。いまにして思えば馬鹿な話。そんな馬鹿な話があるか。馬鹿な話に(興じる。つき合う)。そんな馬鹿な話には応じられない。笑止千万の振る舞い。へそが茶を沸かす。 **ふぜい【風情】** 風情(色香を含んだ。面伏泌もせな切なげな。容易ならない悲痛な。粉々たる落花の。身も世もあらぬ。触れなば落ちんという舟橋。夢から醒めたばかりの人間がなかば夢中をさまよっているような心もとない"阿刀田)。風情がにじむ。ひとしお風情がある。深沈たる風情がにおいこぼれる=山手。風情のあるたたずまい。風にも折れそうな風情の女"今束。上品な風情を漂わせる。湯治場らしい風情を醸し出す。 **みょうみ【妙味】** 作風の妙味が増す。逆転劇の妙味を発揮する。緑の妙味を噛み締める=山本」。妙趣に富む。妙趣を(味わう。解する)。▼醍醐味だい(旅の。釣りの。読書の)。醍醐味を味わう。満喫する)。 **ユーモア** ▼ユーモア(巧まざる。品のよい。とぼけた味わいのある。爆笑を誘うような下品な=島田)。口調にユーモアがにじむ。真剣さがかえって滑稽を生むような話者の意に反したユーモアが漂漂う「浅川。ユーモアに満ちた一文。恨み言をユーモアにまぶす。干刈。ユーモアの(感覚が漂う。センスがある。分からぬ女)。やさしさがユーモアの裏ににじみ出る。ユーモアを(涎たたえた人。交えた筆致。交えながらしゃべる)。一拍ずれたユーモアを発信する"田辺。ユーモアあふれる小説。諧謔幼いきに富んだスビーチ。毒々しい語謔に満ちた言葉=貫井。くすぐりが万遍なくちりばめられている話。▼ユーモラス(話し方が。歩いている姿ユーモラスが)。ユーモラスで温かい人柄。ユーモラスな(台詞辿りがちりばめられる。トーンを帯びた声)。生き方をユーモラスに描く。 **わらいぼなし【笑い話】** 笑い話(手垢がぁのついた。突拍子もない。一見愛想のよい)。笑い話と見過ごすわけにいかない。後世の笑い話になる。よくある笑い話に他愛なく笑う。笑い話の種になる。笑い話にもならない(情けなくて。ばかばかしくて)。 <708> # 冷たい・凍る **いてつく【凍てつく】** 凍てつく大気に包まれる。冬の凍てつく深夜。凍てついた(道。大地の上に春がよみがえる=なかにし。雪の彫刻のような女主人!永井路)。空気までがばりばりとしそうな凍て=山本周。身も心も凍てつかせて吹きすさぶ吹雪の悲鳴が耳を引き裂く=真継。凍てる(外気が。道が。アスファルトが鉛筆で光らせたように=梶井)。口元が凍てついたように動かない=あさの。街が凍てついたように動きを止める"泉後。店の中が凍てついたように静かになる=五木。 **うすごおり【薄氷】** 田の面に張った薄氷。▼海水が張る(池に。雲母に。を浮かしたような=吉川)。薄氷の上を歩いているように危なっかしい=円地。薄い氷の上をそろそろと渡る。薄い水を踏むように歩みが慎重!黒井。薄い水のような気"中沢。顔が永遠の中に凍りついたように見え源ら水に似た羞恥礼がほんのりと浮かぶ福永。愛情が薄ら氷のようにきらきら美しい=円地。 **うすらさむい【薄ら寒い】** 薄ら寒い(風に吹かれる。初冬の夕風。廊下で身をすくませる。わびしい気持ち)。夏とはいえ山の冷気が薄ら寒い。あたりが薄ら寒い気配に取り囲まれる。背筋を薄ら寒いものが走る。春先の薄ら寒い雨の日。じめじめした薄ら寒いわびしい雨"小松太。空が薄ら寒く曇る。 **おかん【悪寒】** 悪寒(背筋をせり上がってくる生きる気力を奪うような=泉優。不意に水でも浴びせられたような=石坂)。悪寒が全身を駆けまわる。足元から悪寒が駆けのぼってくる=宮部。背筋に悪寒が走って心の中まで煮ぁぁざめる!有吉。水を流すような悪寒が背を走る=川端。悪寒が走る(体を。背中に。背筋にぞくりと)。振地ににかかったように悪寒で身震いがする佐山。からだじゅうの血が凍るような悪寒に襲われる=山本周。激しい悪寒に似た絶望が全身を袋う中村真。悪寒の(ために震えが止まらない。発作に襲われる)。肌に粟粒2汁が湧き出るのではないかと悪寒を覚えて身震いする=有吉。▼悪寒を覚える(背筋を蛇の肌で撫でられたような阿刀田。背中から冷水を浴びせられたような江戸川)。悪寒に襲われたように(身体を震わせる藤沢。わなわな慄ふるえ出す大佛)。悪寒のような小刻みな身ぶるいが絶えず足のほうから頭へと波動のように伝わる=有局。 **かんき【寒気】** ▼寒気(大地がこわばって骨まで千上がる=小松太。手足がちぎれるかと思うような島尾。肌を刺すような篠田)。寒気が(殊の外厳しい。骨身にしみる。町を覆い包む。足もとから上がってくる。一段と激しくなる。体の芯まで冷やす。ひしひしと攻めつける。星を磨き出すように冴える=川端。目に見えぬ無数の針を体じゅうところかまわず一時に突き立てる=飯田)。荒々しい風と寒気が襲いかかる。猛烈な寒気がやって来る。痛さを感じるほどの寒気がシンシンと体へ浸みる=獅子。足もとから激烈烈な寒気が吹きあげて鼻孔がじんじん痛む=大江。凍りつくような寒気が流れこむ=飯田。凍るような寒気が平野を覆う藤沢。戸の外から剃刀社協のような寒気がすべり込んでくる=小林多。夜の寒気に頬をさらす。毛布を染み透ってくる寒気に震える=加賀、寒気を肌身に感じる。寒冷の気が骨に徹する。肌に寒冷の気が染みとおる。 **こおり【氷】** ▼氷(ざらめ状の細かい。鏡のように磨かれた新田。硝子の固まりのような"北村)。水が裂けるように表情にゆっくりと亀裂が走る=高橋和。打ち砕かれた水が流れていく。いきなり氷が触れたようにひやりとする有吉。趾のあく音が水が寒夜にひび割れたように響きわたる志茂田。木々の枝を覆っていた氷が水品細工の森のように光り輝く加賀。グラスの中の氷がからりと音を立てて動く人合村。水に紙のごとき氷が閉じる=長塚。氷で(湿布する。冷やす)。身体全体がざらめ状の細かい氷で固められてしまったような感覚」為沢。水に亀裂が走る。年じゅう氷に閉ざされた極寒の地。水から水に変わる。氷の(割れ目に落ちこむ。詰まった部屋のように冷ややかにて静まり返る高橋三。針のように冷たく小指を刺し貫いた戦っうの一雫にし!連城。願もちのような風が吹きこむ=獅子)。アストラカンの毛皮帽の渦巻き毛に氷の玉ができて宝石をちりばめた王冠のよう加賀。飛び散る氷の息を飲むようなきらめき落合。抜けば玉散る氷の刃落語。咽喉のとを氷の塊が下って行くような恐怖!松浦。太い水の棒を飲み込んだかのように胸が冷たく痛い『原田光。水より冷たい風が吹く篠田。水を(素手でぶち割る。粉末にしたような霜が固まる=長塚)。錐ぇ♪で水をさくさく割る。グラスの中の氷をからから言わせる。声が氷を頬張ったように咽喉につかえる泉鏡。舌の先に氷を載せたような口調三島。船が氷をすべるように川を下って行く吉川。山も空も水を透すごとく澄み切る=泉鏡。グラスの水が(溶けていく。涼しげな音をたてる落合)。空気がかちんかちんとちちかんで高台をうずめている木立が氷の花のように澄む石森。水のような(戦慄が背中を這い上がる=江戸川。嘲笑が唇をかすめる=加賀)。からからに乾いた氷のような風が骨の髄までしみこむ"小松太。闇の中に氷のような殺気が走る=光瀬。心の底に氷のような冷たさがある三浦液。氷のように(冷酷な目。青く冷ややかなた干加賀。きらきら光りながら陽射しが窓ガラスを照らす小川。澄むくぼんだ眼真継)。ガラスが氷のように冷ややか=村上春。革のスリッパが水のように硬く冷たい=大佛。北から氷のように冷たい透きとおった風がゴーッと吹いてくる宮沢。黒い鉄の脚が黒い氷のように光る=中島み。月光の中に氷のようにきらめきつつ振り回される刀の光が言いようもないほどおそろしい=海音寺。心の尖ったところが春の陽に撫でられた氷のようにやさしく溶けて穏やかに平らかになる=北村。冷たい空気が氷のように肌にしみる!獅子。根雪が氷のように磐ぃゃになる=有鳥、人の善さそうな顔をして心は水のようにきつい=長与。氷のように冷たい(小川の水。強さ)。手足の先が氷のように冷たい=渡辺。氷のような冷たい風がびゅうびゅう吹き荒ぶ!芥川。氷のように冷ややかな(言葉。鉄の扉)。砕け散った細氷がキャラキャラとガラスを混ぜ合わすような音を立てる"加賀。氷雪に閉ざされる。着水する(樹木に。船体に)。ドライアイスが(気化する。昇華する)。氷の張った湖面を滑る。鏡のような蒼ぁぁい水が張りつめる=新田。夕闇が広がるにつれ空は氷が張ったようにしんとしてくる小川。飲みこむと喉もとにあえかな冷たさを残して氷のかけらが滑り落ちていく落合。空に氷のかけらのような星が光る=小川。思い出が透きとおった清らかな氷のかけらのように胸の底に沈んでいる=石坂。結氷の碎片が生きもののように波のうねりの間々にひょいひょい身体を見せて流れる=小林多。 <709> # 冷たい・凍る-230 **こおり【氷】** 黒い鉄の脚が黒い氷のように光る=中島み。月光の中に氷のようにきらめきつつ振り回される刀の光が言いようもないほどおそろしい=海音寺。心の尖ったところが春の陽に撫でられた氷のようにやさしく溶けて穏やかに平らかになる=北村。冷たい空気が氷のように肌にしみる!獅子。根雪が氷のように磐ぃゃになる=有鳥、人の善さそうな顔をして心は水のようにきい=長与。氷のように冷たい(小川の水。強さ)。手足の先が氷のように冷たい=渡辺。氷のような冷たい風がびゅうびゅう吹き荒ぶ!芥川。氷のように冷ややかな(言葉。鉄の扉)。砕け散った細氷がキャラキャラとガラスを混ぜ合わすような音を立てる"加賀。氷雪に閉ざされる。着水する(樹木に。船体に)。ドライアイスが(気化する。昇華する)。氷の張った湖面を滑る。鏡のような蒼ぁぁい水が張りつめる=新田。夕闇が広がるにつれ空は氷が張ったようにしんとしてくる小川。飲みこむと喉もとにあえかな冷たさを残して氷のかけらが滑り落ちていく落合。空に氷のかけらのような星が光る=小川。思い出が透きとおった清らかな氷のかけらのように胸の底に沈んでいる=石坂。結氷の碎片が生きもののように波のうねりの間々にひょいひょい身体を見せて流れる=小林多。 **こおりつく【凍りつく】** ▼凍りつく(お金の流れが。空気も地面もびりびり。心が憎悪や猜疑いに『真継。蛇にみこまれた小島のようにその場に=宇野利。頭の中が真空のように冷たく島尾。あたりの空気がすっかり安岡。会議場が死のように光瀬。教室の空気が一瞬にして飯田)。心臓が凍りつく思い=つか。凍りついた(顔で見上げる。大きな目で身じろぎもしないで見つめる=灰谷)。ざわめきが一瞬氷の世界に閉ざされたように凍りついて静まり返る=高橋三。凍りついたような(冷たい空間。無表情な顔)。凍りついたように(動きを止める。立ちすくむ。身動き一つしない裕水)。表情が凍りついたように動かない笹沢。茶の間の空気が凍りついたように静かになるねじめ。何もかもが寒さのために身動きできず風さえも空で凍りついてしまうような一日小川。凍りつくような(恐怖。寒い切。沈黙が落ちてくる=大原)。 **こおりみず【氷水】** ざくざく掻がいた氷水。氷水を飲む。かき氷をさくさく食べる。しゃりしゃりと音を立ててかき氷を作る。 **こおる【凍る】** ▼凍る(路面の雪が。ローブがばりばりに。水が硝子板のようにをしいたように宮沢)。目が怒りに氷る=坂口。ぎょっとして血の凍る思い=宇野利。▶かちかちに凍る(土が。表情が)。凍った花みたいに身が竦すくむ"吉川。雪のかんかんに凍った道。外の闇が水ったかと思うようにただしんとしている=長塚。水道管が凍って壊れる=原田康。▼凍ってしまう(恐怖で体が。感謝するように笑いかけたが微笑が途中で"福水)。骨の髄まで凍りそうな冬。血を凍らす恐怖のどん底=石坂。▼凍らせる(言葉を。姿勢を。心臓を。寂寥感で終り~が魂を。息を詰めて身を。悲しい心もちが心を芥川。冬の月が夜気を白刃のように=川端)。青く凍ったような空山手。お互いの視線が凍ったように止まる"泉後。からだじゅう凍ったように立ちすくむ宮沢。山の端はの月の光が氷っているよう“国木田。胸を凍らすような微笑"隆。心の芯まで凍るような冷たい声"田辺。身も凍るような寒さ。全身が凍るような感動を覚える"久間。総身の血が凍るような怖ろしさ=中島返。魂の凍るようなおののき『真継。血の凍るような思いで立ち尽くす“北。からからと音を立てるほど凍り果てた仕事着有島。▼凍しみている(道路が。雪が)。暗さが凍みる夜。凍土が(溶ける。融解する)。▼凍結する(道路が。湖が真っ白に)。時間がしばし凍結したかのような山間の谷戸『森村。頭脳が氷点下の泥沼のように凍結して一時活動を停止する=木山。白く凍結したような顔“新田。▼冷凍する(かちかちに。急速に)。冷凍食品を(解凍する。チンする)。冷凍保存する(魚を。食品を。精子を。肉を)。 **こかげ【木陰】** 爽やかな涼しい木陰。木陰で(涼む。安らう)。木陰に(腰を下ろす。身を潜める。飢えかつえた哀れな放浪者のように神社の境内に慕い寄る=徳田。点々と落ちこぼれている日の光の工合が寝不足の目にいいようもなくさわやか=堀)。日差しが木陰に無数の光の縦しょをつくる=小松左。木造の小さな建物が木陰の闇にうずくまる―武田桑。樹陰に憩う。緑陰で涼む。緑陰に想う。緑陰の中に絶えず蟬せぃの声がある=外村。緑陰を選んで歩く。 **こごえる【凍える】** ▼凍える(体が。心が。手足が。寒さに)。手も凍える明。恐怖で背筋が凍えるよう北。凍えるような川風にさらされる。かじかむ(手に息を吹きかける。手を火鉢にかざす)。寒さで指がかじかむ。▼かじかませる(手を。身を)。▼凍死する(冬山で。雪山で。路上で)。山に迷い込んで凍死しかける。 **さます【冷ます】** ▼冷ます(投機熱を。熱を。のぼせを。ほてりを。ほとぼりを。湯を。酔いを。天のしずくで暑さを小松太)。 **さむい【寒い】** ▼寒い(コートが必要なほど。ストーブがいるほど。圏だけれども蒼ぁぉい葉の色が着物の織り目に染みこむほどに夏目。歯の根も合わぬほど向田。骨に沁しみるくらい=北)。凍えるほどの寒い晩。背筋に寒いものを這わせる。ひゅうっと寒い風が吹く。滝の氷るような寒い時=川端。吹き曝さらしの寒いブラットフォームに立ちつくす"黒井。身を切るような寒い朝"なかにし。寒いといってもたかが知れている。寒い日(朝から曇った。笑いぞの降る。雪でも降りそうに。冬の到来を思わせる。真冬に舞い戻った。凍てつくような美濃部)。木枯らしがふきつける寒 <710> い冬山崎。寒い冬の(可。夜更け)。星が寒くまたたく。寒くて(ぶるぶる震える。骨の髄まで凍りそう)。▶寒くなる(心が。そっと背筋が。体がぞくぞくと。暗い冬が日毎に=鈴木三)。背筋が寒くなるような話高杉。さほど寒くはない。溜まった泥水に寒そうなさざ波が立つ=国木田。冬木立の間に駅が寒そうな姿を現す大佛。寒そうに(肩を震わせる。首をすくめる。背を丸める。雪の上に立つ。自分の両腕を抱え込む。ぶるぶる震える)。吐く息が白い。言葉が白い息になって凍りつく半刈。一日中火鉢にかじりつく。ガラス戸に湯気が結晶し美しい模様ができる=島尾。唇を紫にしてわくわく震える=宮沢。毛穴の一つ一つが総み上がっていくよう谷村。空気が静まり寒さの目が詰まってくる=黒井。歯が打ち合ってかちかちと鳴る=横光。鳴りだした歯が止まらない!熊仓。前をがちがちと鳴らす=林关。頬が凍りつきそう。頬っぺたが真っ赤。骨の髄まで凍る思い=中島返。寒常に(住む。生息する)。寒冷前線が(通過する。停滞する)。寒冷な(気候。地方)。四月初めの花冷えの日。うそ寒い(思い。笑い。コンクリートの道。寝巻き一枚の子供)。まだ雪も残っているうそ寒い季節。明暗の交じったうそ寒い光。部屋の中にうそ寒い空気が漂う?江戸川。 **さむけ【寒気】** 寒気がして背中がぞくぞくする。背中にぞくっと寒気がする。ぶるぶるっと寒気がくる。脊椎骨の接っき目接っき目に寒気がするほど感動する"岡本。寒気が走る(体に。肌に。神経という神経に=島田)。寒気のするほど恐ろしい迫力で圧倒する=深沢。ぞくっと寒気を覚える。▼寒気を感じる(肌に。全身が凍り付くほどの=東野)。来客の気配がぞっと全身にわたる寒気のような緊張を与える=伊藤整。恐ろしさにぞうっと寒気立つ。 **さむさ【寒さ】** 寒さ(近年にない猛烈な。春とは名のみの。頭の動きまでを止めてしまいそうな“村上奈。梅の花がちちこまるほどの曽野。風が冷たく身を切られるようなつか。体の芯が凍えるほどの有吉。身体の底までしみ通るような"中河。感覚を失った靴の爪先から道はいのぼってくる徳永。木桶だぉの中の水に氷が張り柄杓しを持ち上げると月を突き刺したように薄い水まで持ち上がってくるほどの“阿久。きりっと搾り上げたような「有機。思考まで凍結するほどの"加賀。鋭い刃物のような厳しい!なかにし。全身を締めつけるような『新田。火桶のぉが欲しいほどの芥川)。寒さが(体にはりつく。厳しさを増す。ひときわ募る。皮膚を刺す。骨に徹する。身にしみる。ゆるむ。一段と厳しくなる。骨のこまでしみ込む。空きっ腹にこたえる徳永。大地の底まで凍らせる。寺田)。朝夕の寒さがめっきり加わる。冬の寒さが例年になく厳しい。例年よりも寒さが早く訪れる。着物の上からゾクゾクと寒さが刺し込む小林多。障子の紙を透して寒さが浸み込んでくる=夏目。独り寝の寒さがしみじみこたえる谷崎。寒さがしんしんと(背骨まで徹る。身にしみ込む)。寒さで(鼻を赤くする。全身に鳥肌が立つ。手指の感覚がなくなる。耳がちぎれそうに痛む)。寒さなんて(何のその。へっちゃら)。寒さに(頬がそそけ立つ。わなわな震える)。凍える寒さに耐える。寒さの峠を越す。唇が寒さのため紫色になる。ひときわ寒さの厳しい日。寒さをしのぐ。防ぐ。ものともしない。 **さむざむ【寒寒】** 寒々と(うつむいて帰る。広がる灰色の空)。素足が寒々と見える。乳首が寒々と姿縮する。腕や頬のあたりが鳥肌立って寒ざむとする=石川。外灯が凍てついたように寒ざむと光る!小林へ。寒々とした(月光を浴びる。松籟しいうの音。風が吹き抜ける。半月が淡く照る"石川)。隙間風が決もれるような寒々とした感じ=渡辺。海と雪のみの寒々とした光景。だだっぴろい寒々とした部屋。裸の壁が寒々とした色に見える=大佛。寒々とした印象を(与える島。拭うことができない=辻真)。ほの白い寒々しい色。ひょろ長い木が寒々しく立っている三好克。廂いさの床板へ映るつやつやした外光がそのまま凍りつくかと思えるほど寒ざむしく見える=山本周。心の髄まで凍りつくような寒々しさ=今日。体の中を風が吹き抜ける思い=船山。全身を寒風に吹かれる思い=山田恩。寒々しさが足許はしから吹き上げてくる風のように心を襲う。井上靖。お寒い(内実。福祉。予算)。現状はお寒い限り。貧寒な(性根。ぼろ家)。 **さめる【冷める】** ▼冷める(一時の熱情が。百年の恋が。料理が。冷水をぶっかけられたようにはしゃいだ気持ちが急速に島尾)。波が引くように興奮がさめる=小林へ。しらじらと興奮がさめる気がする=石川。▼熱が冷める(凯旋騒がせぎの。受賞の。恋愛病の。憑っき物が落ちたみたいに=乃南)。ほとぼりが冷める(事件の。自然と)。冷めた(頭で考える。声で呟やぶく。目で評する。コーヒーを飲む)。熱しやすく冷めやすい質たち綾辻。夫婦の仲が冷め切る。▼冷めない(驚きが。顔のほてりが。昼の余熱が。余情が。熱が一向に)。スープの冷めない距離。興奮が冷めやらずそわそわしている。興奮の冷めやらぬ面持ち。 **しも【霜】** 霜が(白く凝る。地を覆う)。あたりが霜で真っ白になる。月光と満地の霜とで斜面が水に濡れたように中島乳霜に(打たれてちりりと枯れはてた草木本庄。美しく灼ゃけた桜の葉=梶井。焼けたようなかすかな光にしたような雲のない空寺有島)。体に寒さを覚える。ぞくりと氷が背中を伝うような寒さを感じる=伊坂。寒さしのぎにうどんをすする。寒波(猛烈な。厳しい)。緩みない寒波に襲われる。凛寒初んな風がしきりに髪を吹きなぶる=山本周。寒気凜冽いたる朝。凜冽という言葉がびったりする冬加賀。凜冽な寒気。肌を裂く酷寒。年中氷に閉ざされた極寒の地!西木。厳寒の(空の下。地)。極寒に耐える。 <711> **しもばしら【霜柱】** ▼霜柱(千万本の針のような本庄。踏むとぎしぎし抵抗してから不意にあっけなく崩れる=大江)。霜柱が立つ。霜柱でささくれ立った畑"加賀、道路の小砂利が塩を撒きいたように霜柱に凍ぃてつく徳永。ざくざく霜柱を踏む。 **しもやけ【霜焼け】** 霜焼けがかゆい。海老えびのように赤い手足がしもやけでまるまるとふくれている!壺井。手が霜焼けで赤くふくれる宮沢。霜焼けに彫れた指。冷えればしもやけはじりじりと凍ってきて重く刺すように痛む=幸田文。年中霜焼けしているような手永井龍。鼻緒ずれの痕がひどい霜焼けの痕のように残る=川端。手から顔まで霜焼けのしているような娘堀。軽い凍傷。凍傷にかかる。 **すずしい【涼しい】** 涼しい(秋の季節。顔で答える。鈴の音。建物の陰。気持ちのいい夜。場所を選んで坐る。夜気が室内に流れこむ)。涼しい(海からの風が。星な響きが耳に=福永。レストランの中が水のように田辺)。風の涼しい夜。清らかな涼しい声。窓から涼しい風が流れこむ。秋風のような涼しい空気が流れる=獅子。色白で目元の涼しい男!内田春。切れ長の目が涼しい美しい女性"戸板。金魚の袋がたぷたぷと涼しい音を立てる三浦し。取り澄ましたような涼しい顔"山手。涼しい風に(肌をさらす。吹かれる)。涼しく冴えた音。「応」と涼しく答える。柳が涼しくなびく。軟らかな風が涼しく吹く。涼しくて気持ちがいい。涼しくなる(体じゅうが。夜気が。暑気が薄れ)。鉢の中の金魚を見るように涼しげ三島。涼しげな顔で言い放つ。涼しげに(扇子を使う。風鈴が鳴る)。山の清水が小川をつくって涼しげに流れる=阿部。涼やかな(声。目の光)。目元の涼やかな(少女。美男子)。涼風吹き渡る秋晴れの空の下奥泉。一服の清涼剤。・清涼な朝の空気。戸外の爽涼に目を細める。爽涼そう「涼感あふれる風鈴の音。涼感のある色調。涼気の秋。涼感が(流れ込む。みなぎる)。涼味満点のドレス。涼味を(添える。満喫する)。冷涼な(風。晩秋)。高原の冷涼な空気。打ち水が涼感を誘う。店の前に打ち水をする。打ち水する(家の前の道に。玄関に。庭に)。 **すずむ【涼む】** ▼涼む(緑台で。川端で。庭に出て)。涼み舟を仕立てる。夕涼みを楽しむ。涼を(入れる。とる)。いっときの涼を求める。 **せいれつ【清冽】** 消冽な(泉が湧く。空気の流れの中に体を浸しているように爽さわやかな風が吹く外村。水が流れる小川"佐山)。谷川の清冽な流れ。今まで味わったことのない清冽な新鮮な興奮=遠峰。岩に激する清冽な流れが二筋に分かれる=獅子。雲の裂け目に消冽な星がまたたく=加賀。渓谷にほとばしる清冽な水のような勁っょく奔流する情緒=円地。神秘性を漂わせる清冽な湖水の色"笹沢。警たとえようもなく清て誇り高く咲く隆。冬の花のように白く清冽な冷たい香りに匂い立つ女性"円地。雪解けの清冽な水が土壌を洗う春奥泉。 **そこびえ【底冷え】** ▼底冷え(関節の痛みにひしひしとこたえる。骨にしみるような=日野)。朝から雪催いの底冷えが厳しい一日。冬の夜半の底冷えが身にこたえる。心が妙にしんと底冷えがしたように棘々がしく澄みきる!有局。暮れも押しつまった底冷えの日日野。曇った底冷えのする日が続く。 **つめたい【冷たい** 冷たい(扱いを受ける。一瞥心をくれる。心の持ち主。孤独な心。視線を感じる。外気が流れ込んでくる。風が吹きつける。微笑を浮かべる)。冷たい(鬼よりも血が。世間の目が。手足の先端が。外気が肌に。ほてった頬に霧が。氷みたいに体が石森。足が切れるように=畑。足の先が凍ったように=山本員、枝が夜露を含んで=長野。言葉が刃のように開高。手が蛙砂の腹のように=開高。胸が蛙のように=丸谷。限の中にある光が刺すように!水井路。両手が水のごとく南条)。女に冷たい男。きりりと喉に冷たい麦茶。背筋を冷たい汗が伝いおりる。陶器の冷たい肌ざわり。肌合の冷たい人。腹の底に何か冷たいものがよどむ。胸に冷たい風が吹く。目に冷たいものを感じる。雪混じりの冷たい風。石のように冷たい表情=平岩。突然手の恋を返すように冷たい人になる萩原薬。冷たいくらい怜悧れいな頭"山本周。▼冷たい声(氷のように。血も凍るような田辺)。ぞっとするほど冷たい(手が。限が)。▼ひんやりと冷たい(足が。心の中が。夜気が)。胸に冷たい不安が残る。冷たく(突き放すように言う高見度。身のひき緊しまる大気大佛)。心が冷たく萎縮する。頭のどこかが氷壁のように冷たく凝る光瀬。絶望が心を冷たくする。冷たくて指がしびれる。冷たくなる(おなかが。体が。全身が。影が。麻が肌に。ひんやりと。りんりんというかすか総身が。亡骸が。水よりもっと。海から吹く風が。ように胸に突き刺さる=長崎。氷柱のように垂れたろうそくの蠟ろう森恐。な白い裸の刀がぎらぎら光る=吉川。言葉がつららの奥さんが旦那さんに。態度が目に見えて。鳩尾松が氷のように有吉)。バケツの水がミシン針になって手の甲をちかちか刺す石森。▼氷のように冷たい(足が。空気が)。氷のような布団の冷たさが体の温みで暖まる=有島。冷温で(貯蔵する。保管する)。雪の冷温を利用する。瑪瑙泌ののような冷たい目"字野利。冷たい目で見据える。周囲の冷たい目に耐える。冷たい眼(嘲怯さるような。初めて会う人を見るような"萩原楽)。冷たい刺すような限。自分をも皮肉に眺める冷ややかな眼小林信。 <712> **つめたさ【冷たさ】** ▼冷たさ(下半身を縛り上げられたような不気味な=伊集院。どんな感情の色も持たぬ不毛な=大岡。薄いかみそりで頬をひとなでされたような鋭い=光瀬。全身が一度に凍るような新田。晴れた星の夜はちかちかと青光りしている酷もこいような=本庄。身を刺すような熊合。山肌を道はいのぽってきた若松の香気が肺を驚かすほどの"高樹)。冷たさが(五臓六腑約にしみわたる。肌に執拗にまつわりつく)。足の裏から大地の冷たさが伝わる。風の冷たさが肌身にしみる。金属の冷たさが手に伝わってくる。夜気の冷たさが薄れる。眼差しに冷たさが加わる=桐野。世用の冷たさに今更ながら驚く。濡れたような冷たさの目外村。硝子玉材のような冷たさを感じさせる言葉田辺。 **つらら【氷柱】** 往来の樹木の梢に陽の高くなるまで氷柱の花がつく吉川。つららが何本も何本もじゅずのようになってかかる=宮沢。凍てつく冷笑のつららが突き刺さる=鳥田。氷柱がきらきらと輝く。家々の忏先の氷柱が糸を引くように雫しずを落とす=原田康。軒端即合の小さい氷柱が可愛く光る=川端。襤褸ろきれが滴を氷柱にしたまま棒鱈がらのようにぶらさがる=徳永。軒のつららのしずくがせわしく滴る=石森。背筋に氷柱を当てられたよう伊坂。水柱のよう **はくがんし【白眼視】** ▼白眼視する(苦衷を当然の報いと。有害邪悪のものとして)。周囲から白眼視される。周囲のことに白眼を向ける=村上元。世間から白い目で見られる。冷たい目で見る。 **はださむい【肌寒い】** 肌寒い(雨の日。葉群いもの湿り。日が続く)。▼肌寒い(海からの風が。夜の潮風が。ひんやりと)。さらさらという夕の肌寒い風が障子の穴から忍び込む"長与。涼しいを通りこして肌寒い気温三浦し。肌寒いほどの夜気が酔った肌を快く刺成しげする藤沢。身を切るような肌寒さ。剃刀劫以の刃に似た肌寒さが背筋を伝わる徳水。肌寒さが身に沁しみる。 **ひえびえ【冷え冷え】** 三月なかばの冷えびえと曇り立った暮れ方堀。気分が冷え冷えとさめる。空気が冷え冷えと身にしむ。月が冷え冷えと照らす。星が冷え冷えと光る。夜気が冷え冷えと肌に触れる。一圏に冷え冷えとほの白く浮かぶ三島。冷え冷えと暗い(コンクリートの床が。影になった部分は夜の冷えをはらんで=日野)。冷え冷えとした秋の空気。山の冷え冷えとした空気が流れ込む。▼冷え冷えする(体が。心が。背中が)。 **ひえる【冷える】** ▼冷える(夫婦関係が。体の芯まで。空気がしんと。手が痛いほど。腹の底から。ぞくぞくと体が。投げつけられた恫喝に一瞬ぎくりと心が有川。手や足が大根のように=小林多)。冷えた(明るさが漂う。指先を温める。番茶をごくりと飲む)。よく冷えたグラスが汗をかく。冷えて襟元が寒い。鼻先に夜気が冷えて漂う。心が冷えて石のようになる=日野。冷えてくる(じわじわと。みるみる。足の先からしんしんと。周りの闇が暖かい布団の中に入り込んできて熱を奪ってゆくように足の指が=中沢)。冷えが体に障る。足元からコンクリートの冷えが道はい上がってくる=高樹。心の冷えは癒しようがない立原。氷のように冷えきった(気持ち。手首)。▼水のように冷える(体が。全身が)。氷のように冷え切った心有島。冷え上がる(心が。手が)。▼冷えきる(関係が。感情が。心が。仲が。体が芯まで。体がすっかり。骨の髄まで。情熱が水を浴びせられたように三浦朵。額が死人のように有局。二人の間が灰のように=石坂)。この冬一番の冷え込み。冷え込みの厳しい朝。▼冷え込む(家計が。景気が。消費が。夫婦の関係が。明け方急に。朝晩めっきり。きりきりと。しんしんと)。冷え込んだ(日。夜)。冷え渡る(体が。恐ろしさに血が)。寝冷えする(赤ん坊が。子供が。寝相が悪くて)。寝冷えして風邪をひく。 **ひかげ【日陰】** 薄暗い日陰。日陰でじっくり焼かす。日除に(生きる。育つ。入る)。暗い日蔭に入っていくような不安徳田。日陰の草花のようにしおれきる"高橋三。落ち葉の吹きだまる日蔭の低地!柴田剣。三十半ばまで部屋住みで過ごし年に三百俵をあたえられているだけの日蔭の存在"司馬。陽談にかの花で暮らす林兴。日陰を(選んで歩く。恵んでくれる木)。▼陰干しする(洗濯物を。濡れた靴を。薬草を)。山陰から今しも太陽が昇ったところ=なかにし。山陰に日が落ちる。日が当たらない場所。普段でも冷え冷えと薄暗い日の当たらぬ廊下=日野。 **ひやす【冷やす】** 冷やす(風で体を。肝を。上気した頬を。二三日頭を。胸を。汗まみれとなった体を風が。遺体をドライアイスで。冷蔵庫に入れてよく。レモン汁のさわやかな刺戦しげで肌を=川端。濡れるような寒気が体の芯まで大原)。▼冷却する(夫との仲が。気持ちが。高揚が。水蒸気を。過熱気味の期待を)。感情が月日の経過とともに冷却してゆく半月。一日か二日冷却期間を置く。 <713> **ひややか【冷ややか】** 女の口調や表情が大理石のように冷ややか―池田。冷ややかな(一瞥心を与える。観察に終始する。態度で一蹴する)。ひややかな敵意のある眼つき=森場。秋らしい冷ややかな風が吹く。口元に冷ややかな微笑が漂う。努めて冷ややかな顔を作る。目が冷ややかな光を帯びる。雨催はほいで風の冷ややかな宵山本周。軽蔑の混じった冷ややかな雰囲気池田。ぞっとするほど冷ややかな声三浦綾。ちらりと冷ややかな目を投げる=古井。冷ややかに(背を向ける。鼻で笑う)。頬を冷ややかにこわばらせる。白く冷ややかに草の葉に結んだ露"三好淺。蛇ののた打ち回るのを見やる蛇使いのようにあざ笑いながら冷ややかに見やる=有局。鏡に映った林が湖水のように深くすんだ冷ややかさ=川端。 **ひょうけつ【氷結】** 双眸時が氷結したように見開かれる=黒岩。氷結する(海面が。湖面が。水面が)。▼結氷する(海面が。湖水が)。水上で滑って転ぶ。スケートで氷上を滑る。 **ひょうげん【氷原】** 水原(見渡す限りに白く閉ざされた三浦裟。盛り上がった千差万別の形をした氷が目路めじの限り連なる=加賀)。風が氷原を巻く。白い布が雪原か氷原のよう川端。氷河が作る地形。水河に覆われる。氷河の割れ目に落ちこむ。 **ひんやり** 額がひんやり濡れる。ひんやりと湿った空気。尻がひんやりと冷える。手がひんやりと冷たい。肌が魚のようにヒンヤリとしている=石坂。ひんやりした(晩秋の空気。目で見据える。冷気が漂う。感触が手のひらに伝わる。風に秋の匂いがする=佐藤多)。ひやりと(湿っぽい空気。肌寒い空気が頬にあたる)。コンクリートの感触がひやりと迫ってくる。静寂が胸をひやりと撫でる=木庄。不安がひやりと冷たく胸を憎む"小林久。背筋がひやりとする。ひやりと冷たい(感触が伝わる。ものが背を走る)。 **れいき【冷気】** ▼冷気(きーんと肌を突き刺す本庄。霧のようにしみとおる冬の重い=吉本)。冷気が(骨身にこたえる。足元から背筋に抜けてブルブルと身体が震える=伊集院。かえって心地よく身体が引きしまるような思い=つか。部屋の中に滑りこんでくる落合)。秋の冷気が路地裏を吹き抜ける。足の裏から冷気が迄はい上ってくる。足元から冷気が道い上がってくる。辺りに冷気が漂いはじめる。戸外の冷気が首筋。谷底から冷気が吹き上げてくる。真冬のを撫でる。谷底から冷気が吹き上げてくる。朝の冷気が部屋に流れ込む。夜の冷気が部屋に入り込む。朝夕に秋の訪れを思わせるような冷気がしのび込む藤沢。雨上がりの粒だったような冷気が肌にしみる五木。体の深い部分に冷気が一筋流れこんできたような清々忖娜しさ=高樹。氷のような冷気が包む=光涵。快い冷気がさっと火のような頬をかすめる=堀。刺すような冷気が衣類の織りめから千本の鋭い切っ先となって肌につき刺さる=本庄。流し場の床に金属に触れたような冷気がたまる=中沢。葉のうらにそれとなく漂っている冷気が季節の秋を吐き出している=本庄。闇にぬりこめられた冷気が立ちこめる『阿久。冷気に頬が切られるようなかにし。肌に忍びよる冷気を感じる。凍てつくような冷気をはらんだ北西の風"阿久。冷たい空気が(うずくまる。流れ込む。肌にしみる。頬を打つ。廊下の底にたまる。棘とげのように突き刺さる谷村)。▼冷たい空気(きりきりと。高原の)。山から冷たい空気が流れ出てくる。空気が(冷たく冴える。冷え冷えとする。ひんやりと冷たい。厳しく冷ややかに澄む=曽野)。▼冷たい(黄昏炊にの空気が。空気が硝子ブラのように硬く=高井。空気がガラスのように"小林多。空気が凍えるように谷村。空気が刺すように=火坂)。 **れいすい【冷水】** 情熱に冷水三斗を浴びせる=舟橋。冷水を(浴びせられたごとく頬のたるみをひきしめる"武田発。浴びせられたようなショック高橋三)。努力に冷水を浴びせる。背中に冷水をかけられたようにぞっとする太宰。全身に冷水を浴びたようにゾッとする=北。涙で胍れあがったまぶたに冷たい氷のような水が心地よい=小池。グラスを持つ手までが透きとおってしまいそうなほどの澄んだ冷たい水村上春。冷たい水が歯にしみる=光原。弛緩しゅした神経が冷たい水を浴びたように引き締まる=山本周。霧に畑る湧水池の水の剃刀动以のような冷たさ=長野。見るからに冷たそうな水。澄んだ空気が冷たい水のように張りつめる=黒井。年寄りの冷や水。冷や水をかける(個人消費に。設備投資に)。 **れいぜん【冷然】** 冷然と(言い放つ。聞き流す。言葉を返す。退ける。不承認を示す。見下す。落ち着き払って言う)。悲劇を冷然と観察する"石川。冷然として格木死灰にくの如くなる二葉亭。 **れいぞうこ【冷蔵庫】** 冷蔵庫から(肉を取り出す。缶ビールを出す)。ロビーが一瞬冷蔵庫と化しそこにいる人たちを沈黙させる=島田。冷蔵庫にストックする。食料を冷蔵庫にしまう。冷蔵庫の中みたいに寒い=若田衣。冷蔵庫のドアを(開ける。閉める)。冷蔵庫をばたばたと開け閉めする=角田。▼冷蔵する(魚を。食品を。肉を)。氷室のように湿っぽく暗く冷たい家「山本周。洞窟の中が氷室のようにひやりとする=島尾。 **れいぼう【冷房】** 肌が痛さを感じるほど強すぎる冷房落合。冷房が効きすぎる。焦げるように暑い戸外を忘れたような冷房の完備した旅館"有吉。冷房の効いた(車内。デパート)。エアコンが(効かない。効きすぎる)。エアコンの冷気にさらされる。物凄い音を出すくせに大して冷えないクーラー=北。クーラーが心地よく働いている。ほどよくクーラーが効く。寒いくらいにクーラーを利かせる内田春。ひんやりと心地よくクーラーをきかせる=中局み。 <714> # 詰める・閉ざす **おしこむ【押し込む】** ▼押し込む(薪を焚き口に。書状を懐へ。トランクを開けて荷物を。ポケットに札を。ご飯を口の中に。シャツの裾をジーンズに。収容人数いっぱいまで部屋に=篠田)。▼奥に押し込む(押し入れの。感情が理性を脳の=泉優)。▼口に押し込む(ケーキを。サンドイッチを)。牢屋に押し込まれる。▶押し入れる(腕を。拳銃を。指を)。ひき肉を指の腹で押しつめる。シャツをズボンにたくし込む。 **おり【檻】** 檻に閉じこめる。檻の中の動物。檻の中を(歩き回る。徘徊加灬する)。鳥籠に閉じこめる。巨大な鳥籠ようの入れ物"小川。 **かん【缶】** 缶の(蓋を開ける。ブルトッブを開ける)。空の缶を握りつぶす。ジュースの缶を放り投げる。あらゆる家庭というものは中身が缶詰の内容のように画一的"瀬戸内。缶切りで缶詰を開ける。楽屋に鰯い。の缶詰みたいにぎっしり詰まって寝る高見町。腐った缶詰みたいに持ち古す徳永。 **ぎっしり** ぎっしり(隙間なく並ぶ。人で埋まる。観客が詰めかける)。家々がぎっしり軒を並べる。商店がぎっしり軒を連ねる。書棚に本がぎっしり詰まっている。落書きで壁がぎっしり埋まる。記憶がぎっしりと頭の中に詰まっている"村上春。 **こめる【込める】** ▼込める(声に恨みを。銃に弾を。神仏に祈願を。万感の思いを。夕闇が草原を。精一杯の皮肉を。需もゃが野花の上を)。細心の注意を指先にこめる=奥泉。力を込める(語気に。四肢に。フォークを握る手に)。愛情を込めた目つき。親しみを込めた微笑。丹精を込めた家庭菜園。名人が精魂込めた作品。怒りを込めて語る。思いを目に込めて誘う。感慨を込めて呟いこぶく。然を込めて言う。 **すきがない【隙がない】** ▼隙がない(構えに。見るからに。打ち込む。つけ込む。入りこむ)。眼に隙のない利口さがあふれる=石川。他人のつけ入る隙はない高井。隙もない(五分の。蟻ぁ♪一匹這い出る。身のこなしに寸分の)。隙もなく備えを固める。虫が茎の表面を針の尖だきほどの隙もなく裏っっみ覆う佐藤春。二人の心が紙一枚の隙もなく結びつく=山本周。一分の隙もない(暮らし向き。文体。論理。ハンサムな男の子〃小川)。▼一分の隙もない(言動に。動作に)。一分の隙も見せずに身構える=有局。全く隙が見つからない。隙を与えずにひたひたと押す。反論の隙を与えない。つけ入る隙を(与えない。見せない)。 **せん【栓】** 栓がほんと抜ける。勢いよくシャンペンの栓が飛ぶ。涙腺の栓が抜けてしまったように涙が溢れ出る=加賀。栓をひねったように雨が落ちてくる=大岡。▼栓をする(両手で耳に。コルクで)。ガスの元栓を(閉める。開く)。コックを(閉める。ひねる。開く)。スロットルを(開ける。全開にする。閉じる)。通気バルブを(開ける。閉める)。弁が(閉じる。開く)。 **たちこめる【立ち込める】** ▼立ちこめる(雨催協珪いの闇が。川面に狄霧が。冬の気配が。湖に総もゃが。異臭が強烈に。煙が廊下に。ガスが濃く。疲れが重く。あたりに沈黙が。匂いが部屋の中に。人いきれがむっと。閥にぬりこめられた冷気が"阿久。危険が重苦しい空気のように福水。煙草の匂いが微かすかにこのように=福水)。緊張が森の樹々のようにびっしりたちこめる=大江。ラブストーリーに暗雲がたちこめる気配荻野。悪禽い付の立ちこめる川面。▼あたりに立ちこめる(臭気が。かぐわしい匂いが)。煙が立ちこめる(香の。煙草の)。▼匂いが立ちこめる(若葉の。ブーンと香ばしい=飯田)。▼臭いが立ちこめる(強烈な。生臭い)。灰色に立ちこめた雪の空。濃霧が谷間に立ちこめている=三好飛。▼立てこめる(霧が深く。煙たく息苦しくなるような言葉がもやもやと!本庄。白い煙草の煙が通風のよくない広間にもやのように"石坂)。 **ちっそく【窒息】** 精神的窒息から免れる。▼窒息する(煙にまかれて。痰たんを喉に詰まらせて)。窒息しかけて苦しむ。窒息しそうな(濃い静けさ。気分を解き放つ)。窒息状態に陥る。▼息が詰まる(家にいると。香水で)。息が盗っぇるほどぎゅうぎゅう圧ぉしつける=徳田。息が詰まるほどの臭気!有吉。酸欠の金魚のように口を動かして通話のふりをする荻野。酸欠状態を引き起こしかねない。 **つかえる【岡える】** つかえる(頭が出口に。不幸な思いが黒い石ころになって胸に壺井。ぐっと気持ちが胸へ=岡本)。▼喉につかえる(言葉が。ご飯が)。喉のあたりにつかえていたものがサイダーの栓を抜いたようにせりあがってくる落合。道路のつかえがなくなる。手当たり次第誰かに向かって喋しょらずにはいられないような胸の岡っかえ本庄。胸のつかえが(解ける。降りたように晴ればれしい気持ち今日)。すっと胸の岡えが下りる=藤田。胸のつかえを吐き出す。 **つまる【詰まる】** ▼詰まる(感慨無量で胸が。差があっという間に。不快の気が胸に。思わず返す言葉に=有川)。のどが詰まって声が出ない。▼詰まっている(倉に米が。胸に不平が。頭の中に知恵がたくさん)。胸を詰まらせる(うれしさに。容易ならぬ逼迫感いわばに今日)。▼詰まらせる(痛さに息を。うっと声を。涙声で言葉を。こんにゃくをのどに)。たじろいだように思考をつまらせる=大原。資金繰りに行き詰まる。▼目詰まりする(インクが。毛穴が。フィルターが)。目詰まりを起こす。 **つめる【詰める】** ▼詰める(じっと息を。車間距離を。着替えを絶に。桜海老を袋に。実包を弾倉に。炭を炭俵に。囲みをぐっと。席を一つずつ。じわじわと距離を。弁当箱に料理を。荷物を段ボール箱に)。息を詰めて次の言葉を待つ。問隔を詰めて並ぶ。詰めていく(ぐいぐいと間合いを。じりじりと間を)。わずかの差が詰められない。▼詰め合わせ(お菓子の。チョコレートの)。▼詰め合わせる(各種の品を。土産品を)。▼詰め込む(口いっぱいに。ご馳走访くをたらふく)。▼いっぱい詰め込む(体中に屈辱感を安岡。反撥はんを胸の裡、うちに=辻井)。▼装填でらする(弾倉に弾を。弾丸を鉄砲に)。弾の装填に手間がかかる。封入する(ガスを。写真を)。 <715> **とざす【閉ざす】** ▼閉ざす(油が水面を。過去への道を。霧が視界を。氷が海を。騒音から耳を。ばたんと扉を、闇が空間を。用心深く口を。心を暗く、顔を絶望の色で。戸口をびたりと)。▼鎖とさす(木戸を。錠を)。固く閉ざす(入り口の戸を。心を。円を)。口を閉ざして(答えない。何も言わない)。▼霧に閉ざされる(不安の。深い)。▼閉ざされる(抵抗の機会を。空が雲に。深い憂いに。耳が嵐に。視界が暗く。円がびたりと。社会変革への道を。海がすっかり暗黒に辻井)。外が濃い雨に鎖される=夏目。▼道が閉ざされる(再建の。社会復帰への。出世の)。▼圏に閉ざされる(家々が。視界が。漆黒の)。▼封鎖する(入り口を。海上を。国境を。道路を。預金を)。 **とじこめられる【閉じ込められる】** ▼閉じ込められる(嵐に。霧に。真相が閤に。激しい雷雨に。牢に。狭苦しい場所に。トンネルの中に)。▼押し込められる(牢に。狭苦しい場所に。だんだんと世間から埋もれて行かねばならないような境遇に=有島)。ホテルの一室に缶詰にされる。外から鍵をかけられる。降りこめられる(長雨に。半年を雪に)。 **とじこめる【閉じ込める】** ▼閉じ込める(車の中に。狭い部屋に)。疑惑を胸に閉じ込めておく。押し込める(倉庫の中に。仕置き部屋へ。忌々しい思いを頭の奥に伊坂)。チンパンジーを檻ぉぅに入れる。監禁する(人質を。身柄を。暴力的に取り押さえて)。社長を缶詰にする。ホテルで缶詰になる。自宅に軟禁する。▶封じ込める(真相を圏に。希望のない位置に)。幽閉の身。牢獄に幽閉する。幽閉生活が続く。 **ねじこむ【捩じ込む】** ▼ボケットにねじ込む(財布を。メモ用紙を)。ねじこむドライバーでねじ釘を締める。ドアに足をこじ入れる。 **はめこむ【朕め込む】** ▼はめ込む(バネルを。雨戸を敷居に。型に。凸の部分を凹に。ぴったりとバズルのように"尾辻)。門柱にはめ込んだ表札。富士が硝子ブラのように澄んだ空に嵌め込まれる『大岡。はめ殺しの(サッシ。窓)。 **はめる【朕める】** ▼はめる(法律的な枠を。指に琴爪心を。腕時計を腕に。思う壺っせに。人を罠もなに。足袋たびのこはぜを。ワイシャツのボタンを。結婚指輪を薬指に。ブラウスのホックをブチブチと三浦朱)。▼はめられる(がちゃりと手錠が。手かせ足かせを)。公式に当てはめる。腕に紺の手刺しを穿うがつ。 **びん【派】** ダンスのレッスンをうけている少女のようにかわいいサテンのリボンを結んだ小さな壜びん=清水俊。瓶が(空になる。割れる。ころころ転がる)。小さな瓶に詰め替える。ぎっしりと瓶を並べる。棚から瓶を取り出す。一升瓶を(傾ける。携える。まわし飲みする)。瓶詰めにする(酒を。オリーブの実を)。 **ふうじる【封じる】** 封じる(活躍の場を。抜け道を。発言を。組織的な動きを)。▼口を封じる(周囲の者の。無理やり。判ぉからずやの女の=中村真)。厳重に滅かんした機密文書。封印する(議論を。現金を)。記憶に封印をする。▼封親がらする(手紙を。郵便物を。シールで。糊で、蝦ぅうで)。封殺する(学問的活動を。可能性を。敵の進軍を)。▼封をする(厳重に。手紙に)。密封する(色気を。手紙を。瓶を)。 **ふさぐ【く】** ふさぐ(行く手を影が。穴を。傷口を。雑草が道を。受話器の口を。建物が空を。逃げ道を。雪が視野を。両手で耳を、鼻と口を手で。古株がボストを。一分の隙もないように入り口をぴったり茶川)。不快な吐き気が喉を塞ふさぐ=石坂。▼ふさがれる(昇進の道を。口をガムテーブで)。▼ふたぐ(鼻を。耳を。目を)。傷口がまだふさがっていない。ばからしさのあまり開いた口がふさがらない=開高。開いた口が永遠にふさがらないほど滑稽"木山。▼密閉する(瓶の口を。部屋を。容器を)。気密性が(高い。低い)。気密性を持った二重扉。▼目張りを施す(壁の隙間に。窓枠に)。▼目張りする(窓を。隙間に)。 **へいそく【閉塞】** 閉塞感が強まる。閉塞感を打ち破る。閉塞状況に(陥る。活路を見出す)。閉塞状況を打破する。時代閉塞を切りひらく。八方ふさがりで手の打ちようがない。 **むせる【脱せる】** むせる(のどが。煙に。脂粉の香に。げほげほと。青臭い草の香りに。埃児にっぽい空気に。野薔薇60ばの中へ顔でもつっこんだような強い匂いに吉川)。むせて咳ぇきこむ。むせっぽい粉薬。甘くむせっぽい匂い。むせぶ(霧に。煙に)。こみ上げてくる悲しみをむせるように鼻からもらす=志賀。むせ返る(暑気に。湯気に。客の熱気で)。鼻の奥に涙がたまってむせかえる=瀬戸内。むせかえるような(煙が立ち昇る。若葉の匂い)。むせ返るような男の体臭“新田。むせ返るように憎悪がこみあげて来る=宮本互。咽むせぶような(霧に包まれる。香水の匂い)。 **りゅうちじょう【留置場】** 座芥箱にふの中そのままの留置場が絶望的な気持ちを二乗にも二乗にも暗くする=小林多。留置場に(入れる。収監する。放り込む)。警察署に留め置く。警察に留置される。▼留置する(犯人を。容疑者を)。豚箱に(ぶちこむ。放り込む)。詐欺罪で豚箱に放り込まれる宗田。 <716> # 強い・弱い **いきおい【勢い】** ▼勢い(朝日の昇る。一瀉千里かいし。の。旭日昇天の。迅雷の。日の出の。奔馬のような。飛ぶ鳥を落とすような。日の没することなき感じの"塩野。山の動くがごとき菊池)。勢いがとどまるところを知らない。火の勢いが増す。勢いがある(言葉に有無を言わさぬ。原田宗。すべすべになった肌に湯を弾きとばすような=山口。陽気な話しっぷりに当たるべからざる有吉)。荒々しい勢いで闖入㎎氷にする。恐ろしい勢いで数を増す。驚くべき勢いで膨脹いうちを続ける。空前の勢いで増えつつある。懸河の勢いで攻める。酒の勢いで大きなことを言う。すごい勢いで走りだす。激しい勢いで燃え上がる。非常な勢いで体当たりを食らわせる。目覚ましい勢いで上達する。相手を圧倒する勢いで喋ん、りまくる"三田。藍を流したような濃い色の潮が奔流のような勢いで眼の前を流れている=島崎。いさと云ぃえば手こめにでもしかねない勢いで口々に罵いのり騒ぐ=芥川。鬱積していた澱ょとみを洗い流す勢いで喋る=高樹。噛みつかんばかりの勢いで叫ぶ三好微。玄関をぶち破らんばかりの勢いで飛び出す=赤川。弦の切れたような勢いで飛び出して来る=宮本百。言葉が一気につめよるような勢いで口から飛び出す"伊藤整。疾風のような勢いで駆ける=佐藤巻。脱兎だっの勢いで路地を駆け抜ける藤木。殴りかからんばかりの勢いで突進する=高橋和。雪崩のような勢いで迫る=三田。爆発したような勢いでセミが鳴きはじめる=小林久。びゅっと風の立つような勢いで後ろへ跳ぶ吉川。物を蹴散らす勢いで働きまわる古井。▼勢いで降る(雪が激しい。雨が小屋をつつみこんで宙へ押し上げるような=古井)。勢いに(圧倒される。押される。気を呑まれる。気圧けもされる。まかせてぶつかっていく。あなどるべからざるものがある=山手)。勢いのある業界。勢いをつけて水割りを飲む。勝ち喰に勢いを得る。言葉に勢いを添える。すぐに勢いを取り戻す。火に勢いを与える。日増しに勢いを増す。酒の勢いをかりて言いつのる=向田。押せ押せムードになる。ものすごい勢いで水が进眼にり出る。勢いよく(シャンパンの栓が飛ぶ。蒸気が吹き出る)。会話が勢いよく弾む。電話が勢いよく鳴り響く。弾みをつけて勢いよく起き上がる。火が勢いよく燃える。水が勢いよく噴き出す。シャーッと勢いよくおしっこが出る=檀。勢いよくドアを(閉める。開ける)。騎虎の勢いで出た言葉"高橋治。騎虎の勢いを食いとめる。獅子奮迅の(活躍ぶり。働き)。獅子奮迅の勢いで(応戦する。斬りまくる)。破竹の(進撃。勢いで諸方を奪略する"山田美)。破竹のごとく領土を侵蝕しいしする=横光。ぱっぱと(派手に使う。金や品物をくれる)。金をばっぱと使ってしまう。隠忍に隠忍を重ねてきた戦力が燎原のにぅの火と燃え上がる=山本同。闘争の炎が燎原の火となって燃え広がる=奥泉。燎原の火のように全国に拡まる=高橋知。野火のような勢いで全国に広がる=有局。 **いきおいあまる【勢い余る】** 勢い余って(つんのめる。椅子から落ちる。土俵の外へ飛び出す)。勢い余って近くの立木にぶつかる。 **いきおいがない【勢いがない】** ▼勢いがない(言葉に。ひところの)。風の勢いが収まる。時の勢いに勝てない。往年の勢いは望むべくもない。花の精気が抜きとられたようにぐったりと花弁が勢いを失う。有吉。威勢がとみに失せる。昔日の威勢がない。 **いきおいづく【勢い付く】** 敵のエラーで味方チームが勢いづく。勢いづいて(歩く。話し続ける)。勢いづかせる(武力勢力を。保護主義を)。勢いがついていた軀けらをかろうじて止める=北原。勢いづける(事業を。チームを)。火に油を注ぐ。堰せきをきって溢れだすように時の勢いに乗る=本庄。勢いに乗って追い迫る。火の燃えるような勢いに乗じて新館建て増しにかかる『泉鏡。調子づいてべらべらしゃべる。感情が激越に調子づく。▼弾みがつく(仕事に。生活に)。弾みがついて止まらない。初戦に大勝した余勢を駆って決勝まで進む。勝利の余勢を駆って勝ち進む。織田を攻略した後に余勢を駆って一挙に京へ軍兵を進める=舟橋。 **いしきょうこ【意志強固】** 意志強固な人間。鉄の意志の男。芯に冷たい鉄の棒みたいな意志を埋める=本庄。 **いせいよく【威勢よく】** 威勢よく(大声で言う。扉を閉める。返事をする。お湯を体にかける)。炎が威勢よく燃え上がる。浴びせかけるように威勢よく呼びかける"山崎。ばかに威勢がいい。威勢のいいかけ声。 **いりょく【威力】** 威力が地に堕ょちる。威力にものをいりょく言わせる。自然の威力を畏れる。戦況をいっきに転換できるほどの威力を持つ兵器『西木。威力を発揮する(絶大な。如何ぃかにしても現在の力では防ぐことができぬきうな野間)。 **きじょう【気丈】** 精一杯気丈な声を出す。目が気丈な凛りんと張った力で支えられる=高樹。気丈に(痛みに耐える。悲しみに耐える)。一人で気丈に商売をする。気丈すぎるものを感じさせるほど背筋をしゃきっと伸ばした女"高橋治。気を確かに持つ。気強く(言い返す。生きる)。気が強いしっかり者。 **きょうこ【強固】** 意志の強固な男。揺るぎのない強固きょうこな反抗。伝統を強固に形造る。同盟を強固にする。揺るがぬ(地位を持つ。礎の上に国を立て直す)。牢固たる伝統主義者。牢固として動かない。悪習慣が牢固として抜けなくなる。 <717> **きょうこう【強硬】** 強硬な(意見を吐く。態度をもって臨む)。強硬に(主張する。退職を迫る。反対を唱える。変革を進める)。強硬姿勢に固執する。強硬姿勢を改める。強硬手段に(訴える。出る。踏みきる)。強面こで鳴る雑誌佐高。多少強面で言う。 **きょうこく【強国】** 強国に隷従する。強国を相手にする。列強が渦を競う。世界の列強と伍にする。列強の武威に屈する。欧米列強を敵に回す。 **きょうじん【強靭】** 強靭な(意志を持つ。拠で羽ばたく。笑いの精神。現実への迫真力)。筋肉質で強へな体。内部に強靭なものを秘めている。どんな皮肉も受けつけないような強叔さ=福水。 **きょうちょう【強調】** ▼強調する(世代の違いを。道義的な面を。民族的意識を。ことさらに。さりげなく。人間的な立場を)。胸を強調するボーズを取る。アクセントを(置く。添える。つける)。他国に比べて特筆すべき実績。特筆大書した定価の文字。歴史に特筆大書すべき記録。 **きょうりょく【強力】** 強力な(コネがある。力が加わる。武器を持つ。味方を得る。中央集権型の支配体制)。政策の強力な推進者。疫病が強力な腕のひと殴りのように猛然と襲いかかる=大江。 **きょうれつ【強烈】** 強烈な(一撃を浴びる。個性の持ち主。森音にらに包まれる。サーチライトの光)。顔面に強烈なバンチを食らう。壮大で強烈な夕焼け。一命を奪うほど強烈な海水井罠。堪えがたいほどの強烈な誘惑"南条。鼻がひんまがりそうに強烈な消毒臭"中島み。強烈な印象を(与える。残す)。イメージが強烈に伝わってくる。 **したたか【強か】** したたか(雨に濡れる。酔っ払う。痛棒を食らわす)。腰をしたたか打つ。拳をしたたか横面に飛ばす。酒をしたたか飲む。迫害をしたたか受ける。頬をしたたか殴る。水たまりの泥をしたたか浴びせる。鞭もぅでしたたか打ちつける。したたかな(交渉相手。身のこなし)。計算のしたたかな女。したたかに(生きる。酒を飲む。衝撃を受ける。足のすねを打ちつける。打ち据えられたようなショック=庄野)。人生体験の苦さをしたたかに味わう。胸板をしたたかに突き抜く。現実のしたたかさを思い知らされる。 **じゃくしゃ【弱者】** 弱者に(対して寛容。冷たい政治。優しい政治。対するセーフティーネット)。弱者を(介意しない政治。社会的に支える)。弱者が勝つ。弱者が強者に勝つ。柔よく剛を制する。 **じゃくてん【弱点】** 弱点が一目でわかる。弱点につけ入る。美点と弱点の相克にあえぐ山岡。どんな人間にも弱点や欠点がある佐高。弱点を(的確に見抜く。余すところなく暴露する。意地悪く言い当てる。ずばりと指摘する。つかんだと思ったのは完全な誤算開高)。小賢にぎしげに相手の弱点をつく。相手の弱点をじんわり刺し貫くような皮肉っぽい口調。宮本銀。自分の弱点を(知る。見抜かれていたことにぎょっとする=有川)。女性問題がアキレス腱になる。チームのウイークポイント。内かぶとを見透かされ見溢ふくられるのではないかと警戒するようなみみっちさ=田辺。内兜ぶちゃを見抜かれる=村上元。からめ手から(攻める。取り入る)。搦め手がいいからちくちく苛ぃじめる=円地。濠に♪を埋めて搦め手からの攻めに転じる藤沢。娘を射るのには先ずその母を射よ=武者小路。泣き所(金のないのが。機動力に欠けるのが)。アキレスの泣き所はアキレス腱。弁慶の泣き所は向こうずね。惚にれた弱み。弱みが明るみに出ることを恐れる。弱みにつけこんでひとをなぶる三浦し。かりそめにも弱みを見せてはならない。よほどの弱みを握られているのかと勘繰られる佐高。人の足下を見る。 **しょうきょくてき【消極的】** 消極的な(考え。性格。態度。抵抗)。異論を唱えないという消極的な形で賛同する=横山。消極的に反抗する。話しぶりが消極的になる。腰が引ける。物事に積極的ではない。ぜんぜん乗り気ではない。吉野紙を破るほどの押しもない!伊藤左。消極姿勢に終始する。▼気乗り渉(結婚に。話に)。内向的な(おとなしい男。性格)。いやなことが続いてネガティブになる。▼事なかれ主義(官僚の。役人の)。事なかれ主義の外交方針。 **すじがねいり【筋金入り】** 筋金入りの(軍人。警官。闘士。反骨待神を持っている=佐高)。体に心棒が入る。考えに筋金が入っている。▼筋金が通る(体に。一本)。 **せいい【勢威】** 努威が(衰える。強大となる。日増しに高まる)。日本中に勢威を振るう。威勢をひけらかす。徳川の威勢を天下に示す“長与。飛ぶ鳥を落とす威勢を誇る!柴田剣。加賀百万石の威勢をかさに着る=村上元。軍の威勢を笠に着る。 **ぜいじゃく【脆弱】** 化粧の顔が荒い風波にもまれるように脆弱檀。脆弱な(架空の夢。神経を叩きなおす)。場当たりの脆弱な方針。明くる日にはもう憎しみに変わっているような脆弱な友倩"阿部。現代社会の脆弱な側面をあぶり出す―柳田。近代社会が抱え込んでいる脆弱性=黒田。 **せいりょく【勢力】** 大勢を左右し得るほどの勢力=美濃部。努力が(大きく膨らむ。拮抗する。伯仲する。下り坂をたどる。真っ二つに割れる。全国に行き渡る=松本)。勢力の(拡大を図る。消長が激しい。バランスに配慮する)。隠然たる勢力を振るう。強大な労力を持つ。新興の勢力を張る。勢力争いに明け暮れる。労力争いを繰り広げる。努力増大に余念がない。対立努力の緩衝地帯。 **たいとう【台頭】** 台頭が(著しい。目につく)。▼台頭する(機運が。軍部が。主戦論が。新興勢力が。若手が)。新たに台頭してくる階級。勢力が日一日と増大する。勢力を着々と拡大していく。 <718> **たいりょく【体力】** ▼体力(旺盛な。強健な。強靭にはっな。健康な。人並み外れた)。体力が(落ちる。衰える。限界に達する。尽きる。戻る。徐々に回復する)。若い体力が最後に物を言?福永。体力に(自信がない。恵まれる。人並み以上の自信を持つ)。人間の体力には限りがある=隆。体力の(衰えが目立つ。消耗が激しい。不足を気力で補う)。頑強な体力の持ち主。体力を温存する。いたずらに体力を消耗する。静養して体力を回復する。並外れたスタミナ。スタミナが(切れる。つく。ない)。 **ちからがない【力がない】** 悲しいかな我らには力がない。力の(ない声で呟やぶく。なさを悟る)。だいぶ力のなくなった声。どんよりとした力のない目。力ない声で言う。力なく(頭を下げる。椅子に座る。頭を振る。目を閉じる。よたよたと歩く)。声が力なく消えていく。うなだれた首を力なく振るS志賀。足の下が崩れ落ちてゆくような力なさ"中。 **ちからぶそく【力不足】** 迫力不足が否めない。能力不足を露呈する。力が及ばない。▼足りない(瞬発力が。力が。筆力が。応戦するには兵力が)。身の丈に合わない大役=海堂。 **つよい【強い】** 強い(一撃を加える。印象を残す。因縁が働く。影響を受ける。絆で結ばれる。疑問をいだく。衝撃を受ける。態度に出る。足さばきで歩く。異臭が立ち込める。女の体臭が匂う。香りが鼻をつく。風が吹き荒れる。気力が表情にあふれる。視線を殊更に感じる。ショックに打たれる。ストレスを感じる。絶望に襲われる。ライトに目を射られる)。強い(改竄の疑いが。片意地で我が。敬愛の念が。尚武の気風が。だいぶ風が。場違いの感が。反日感情が。未来志向が。現地の事情に。麻雀にハジに滅法。生きている公算が。印刷を望む声が。インフレの恐れが。景気は停滞色が。照りつける日射しが。批判の風当たりが。横のつながりが。予想以上に批判が。力が想像以上に。警戒心が殊の外。不快感が一段と。鋒錢照りがすこぶる。負けん気が人一倍。視線が痛いほど黒岩)。香りの強い花。我の強い人間。黒目の強い瞳。険が強い目。 「険が強い目。腰の強い声。個性の強い子。芯の強い女。雪に強い車。いつになく強い口調で言う。齢償が強い語調。有無を言わさぬ強い口調。陰日向の強い男。感受性の強い人間。涧かんの強い子ども。癇癖冷えの強い人物。気の強い姐ねぇさん。恐怖に強い体質。虚栄心の強い女。儀礼色の強い会談。金銭欲の強い女。決意に満ちた強い声。好奇心の強い男。潮気まじりの強い風が吹きこむ。刺激の強い毎日。しなやかで芯が強い女性。芝居気の強い男。正義感の強い男。責任感の強い男。全編を強いリアリティで支える。ちちれて腰の強い麺。突きつめた強い表情。南国の強い太陽。鼻っ柱の強い人。人一倍強い関心をもつ。雪まじりの強い風。揺らぐことのない強い決意。根性骨の強い正直な人たち"有局。嫉妬心の強い男=椎名観。強いの強くないの。腕つぶしが強いのだけがとりえ。強く(印象に残る。かぶりを振る。心を惹かれる。責任を感じる。読者に訴える。興味をそそられる。引きつけて寄り倒す)。愛に強く打たれる。意識を強く持ち続ける。疑いを強くいだく。風が強く吹き抜ける。体中をごしごしと強くこする。記憶が強く心に残る。気持ちが強く動く。ぎゅうっと強く握る。唇を強く噛みしめる。言下に強く反駁皿いする。香水が強く匂う。心に強く訴える。言葉を強く胸に受け止める。自分を強く押し出す。種族維持の本能が強く働く。新鮮な磯の香を強く放つ。心臓が強く鼓動する。陽が強く照りつける。不安に強く襲われる。真夏の太陽が強く照る。強く記憶に(刻まれる。残っている)。雨勢が叩きつけるように強くなる=池波。言葉が強く(胸を打つ。胸に響く)。強めに当たったボール。釣り糸を強めに引く。道場の小天狗と噂されるほどの腕前"船山。屈強な(大男。戦士。体格の男。若者)。剛の者。冷房を最強にする。精強で鳴る騎兵。精強な(一隊。軍勢。部隊)。精強を誇る。大剛の勇士。大王に匹敵する強大な力=豊田。帝国が強大になる。権力の強大さを思い知らされる。 **つよさ【強さ】** ▼強さ(何かが乗り移ったような。見かけによらない芯の。押しつけがましい己惚れの"石川。なまなかな感情など一切受けつけぬ高井。真っ直ぐに立ってはいられないほどの風の新田)。したたかといえるほどの挑しょう勁っょさ=竹西。これ以上何一つ奪われることのないぎりぎりの服っょさ=福永。強さが底に潜む。気の強さが消えうせる。陽の強さがめまいを誘う。見かけによらぬ芯の強さが根深く養われる!水井前。語気の強さに驚く。悲劇を目をそらさずに見つめているだけの強さをもつ"石川。強さを目のあたりに見る。風が強さを増す。絆の強さを感じる。台風並みの強さを持つ低気圧。▼強み(素人の。他の追随を許さぬ)。強みを(生かす。持つ)。強弱のリズムをつける。音の強弱を調節する。強度が劣化する。強度の神経衰弱に陥る。強度を(測る。増す)。 **つよすぎる【強過ぎる】** ▼強すぎる(空想癖が。言葉が。刺激が。ショックが。先入観が。振り方が。冷房が。いくら何でも)。 **つよそう【強そう】** 見るからに強そう。自尊心の強そうな気難しい老人"井上靖。やせてはいるが芯の強そうな体つき=石坂。いかにも気が強そうなタイプ。意志の強そうな眉。我の強そうな顔立ち。気の強そうな女。ウツボよりもスッポンよりも強そうな謝"畑。ちっとも強そうに見えない。 **つよまる【強まる】** ▼強まる(雨脚が。内向き志向が。風当たりが。肌が。対決色が。搾取が急激に。いっそう。ますます。陰々とした気配が。感傷的な悲しみが。相互依存関係が。ブレッシャーが。火勢がいよいよ)。 <719> **つよめる【強める】** ▼強める(一段と語気を。確信を。警戒を。殊更に語調を。自信を。衰退の度を。精神的結束を。景気が後退色を)。声を強めて問いつめる。一強めにする(圧力を。火加減を。コントラストを)。エンジンを強力にする。深くする(親愛を。交わりを)。▼深める(秋の寂寥せ』を、学問への目を。勝利の念を)。強化に本腰を入れる。強化する(競争力を。警備態勢を。国際連携を。取り締まりを。文民統制を)。▼助長する(隠蔽体質を。貸し渋りを。混乱を。怠惰な精神を。誤った考え方を。点在する木々が寂しさを=貫井)。増強を図る。▼増強する(軍側を。資本を。スタッフを。戦力を。体力を。輸送力を)。戦力増強にはやる。防衛力増強に専念する。▼強くする(圧力を。印象を。口調を。声を。心の絆を。心を。立場を。火を。刺激を徐々に)。▼拍車をかける(女嫌いに。権威の失墜に。自力更生に。熱意に。野心に。疲れが腹立ちに)。心に悪の拍車を加える。 **にげごし【逃げ腰】** 逃げ腰で遂目に検分する。逃げ腰になって哀願する。心がくるりと後ろ向きになり逃げ腰になる=高樹。藪蛇べびにならないようにという逃げ腰の姿勢大野透。悪事が露見して浮き腰になる。 **ねづよい【根強い】** 根強い(人気を保つ。ファンを持つ。個人ユーザーを確保する)。▼根強い(消極論が。反対論が。不信感が)。今なお根強い力を持っている。因習の根強い田舎。根強く(生きる。残る)。 **はぶり【羽振り】** にわかに羽振りがよくなる。羽振りがよく世を渡る。無知が幅を利かす。旧地主がいまだに幅を利かせている=浅川。 **ひよわ【ひ弱】** ひ弱な(感じのする若者。精神を巧妙に誤魔化す藤田)。卵の殻で自分を包んでいるようなひ弱な孤独"福永。何かにすがりつかずにはいられないひ弱な女三田。ひ弱くかほそい魂。リーダーのひ弱さが論議を呼ぶ。肌が白くひ弱そうな体つき=吉村。気の弱そうな優男。満足に成長するかどうか覚束忙ない虚弱児"辻井。柔弱な少年。とるに足らぬ柔弱者。渉志弱行だから成果も上がらない。薄志弱行の人。意志薄弱な(怠け者。人間)。薄弱な意志。やわな(体。神経)。厳弱いじな(子供。性格)。病弱な(子供。体質。斐)。病弱の身が健康になる。 **ひんじゃく【貧弱】** 装備があまりにも貧弱。貧弱な(経験しか持たない。胃袋が驚き恐れて縮み上がる"安岡。身体に似合わぬ大食い藤枝)。背の低い貧弱な体つき。なきに等しい貧弱な政策。ちんけな(質問。ブライド)。 **ひんそう【貧相】** 貧相な印象を免れない。小柄で貧相な中年男。ヤセ気味のひどく貧相な雰囲気の男!永倉。花が貧相に咲く。どう見ても貫禄に乏しい。 **ほきょう【補強】** ▼補強する(接着面を。頑丈に。しっかりと。筋交いで。鉄板で)。布で裏打ちする。筋交いをかう(戸に。窓に)。 **みすぼらしい【見すぼらしい】** 見すぼらしい(あばら家。いでたち。身なり)。みすぼらしい(男に慈悲をかける=泉優。負け犬根性が染みつく。船戸)。貧弱な見すぼらしい生活。とみにみすぼらしく見劣りがする。背と尻が肉をそぎ落としたようにみすぼらしく見える=中沢。うらぶれた(格好。雰囲気。ホテル。身なり。料理屋)。ただのうらぶれたサラリーマン=小池。コスモスの残りの花がうらぶれて倒れている庭石川。ちゃちな(家。考え。機械。根性。代物)。廊下を走ればアバート全体が揺れて棚の鍋まで音を立てるちゃちな造り落合。落ちぶれて見る影もない。見る影もなく痩せ衰える。花が見る影もなく枯れていく辻真。見る影もないほど堕落する。▼身をやつす(乞食に。娼妓礼に。山伏の姿に。賤ぃゃしい身なりに。大名屋敷〈出入りする植木職に"舟橋)。僧形に姿をやつす。 **むてき【無敵】** 無敵の(アイドル。美人)。無敵を誇る。天上にも天下にも敵する者がない。敵なし(天下に。連戦逃勝で向かうところ)。最強の(軍団。敵。メンバ1)。世の中に怖いものはない。天下無敵と豪語する。天下無敵の名をほしいままにする。 **むりょく【無力】** ▼無力(想像していたよりはるかに"森理。羽をもがれた冬の蠅はぇのように=村上春)。足も鋏ふさも無くした盤かにのような無力な人=梅本。油が尽きてだんだん細くなっていく灯火を見ているようなはかない無力な気持ち"海音寺。便々として為すところなき無力さ=横光。己の無力さに落胆する。自分の無力さに腹を立てる。理想の抱負のと威張ってみた所で所詮れい己は牛にふみつぶされる道傍の虫けらの如きものに過ぎなかったのだ=中島敦。狼の群れの中に放り出された小羊戸板。陸ぉかに上がった河童盼。。ガラガラ蛇に見込まれた小鳥のように逃げることもできないですくむ"有鳥。翼をもがれた鳥のよう。波に吠える犬みたいなもの=山本有。鲋ぶなに食われるミジンコのような存在"高橋三。蛇に見込まれた蛙み同然藤本。濁流に漂う葉もらしべのように大庭。覚もしに狙われた雀好。蟷螂の斧ぉのに等しい外村。負け犬の遠吠え。非力な人間。非力をしみじみ咲く。今更のように自分の非力を悟る。 **むりょくかん【無力感】** ぶよぶよの水母火。のような無力感"福永。無力感が(心にあふれる。全身を覆う。芽生える。胸中を去来する)。無力感で目の前が暗くなる。無力感に駆られていらだつ。深刻な無力感に支配される。惨めな無力感に苦しむ。物悲しい無力感に襲われる。底なしの無力感を感じる。浸してくる無力感を小気味いいまでに蹴散らしてくれる!高樹。 <720> **めめしい【女女しい】** 女々しい弱点を露骨に現す。意気地なく快楽に溺れるというような女々しい遣り方"田島。つくづく自分という者が厭ぃゃになるような見栄も外聞もない女々しい悲鳴=武田飛。胸をかきむしられるような女々しい気持ちに中島敦。やくざな生活に流されながら過去を恨むような女々しい男=黒岩。女々しく(後悔する。泣き言を言う)。 **よわい【弱い】** 弱い(心に負ける。者をいじめる。秋の陽を浴びる。女を責め立てる。ところにつけこむ。冬型の気圧配置。笑いを浮かべる。犬ほどよくほえる"飯田。くせにやたら飲みたがる=福氷)。▼弱い(暴力にはからきし。お話にならないほど『赤瀬川。口ほどにもなく=山崎)。体の弱い子。火事に弱い江戸の町。神経の弱い善良な人間。人間は弱い存在。とどこか弱い生地が顔に出ている=山手。弱い立場を(思いやる。情けなく思う)。▼弱い人間(萃ぁしのように。自制のきかない)。気の弱い(男。おどおどとした性格・遠藤)。弱きを助け強きをくじく。冬の陽が弱くあたりに散る"井上靖。自分の弱さにっち克つ"藤枝。自分の弱さを恥じる。己の弱さを吐露する。人の弱さを照らし出す。戦って見せぬ間が花"山田美。さほど強くない。力弱く笑いかける。冬の陽が力弱く照らす。弱小な(メーカ1。隣国を併合する)。根拠ははなはだ薄弱。微弱な(電波。毒)。劣弱な(構造。体格)。 **よわき【弱気】** ▼弱気(いつもに似気ない。ろくにものも言えないほど=伊藤修)。大切な友達をむざむざ他人の手へ渡した自分の弱気と腑甲斐心がなさとが恨めしい谷崎。弱気な(言動。人。表情)。弱気になる自分を叱咤しっする。つい弱気になって白状する。不意な弱気に襲われる。弱気になる(ちょっと。ひどく)。一不意に弱気の風に吹かれる。顔に弱気の皴しゃが広がる島尾。病気で気が弱くなっている。気が弱そうな男。生来気の弱い人。影弁慶とかそと蛤のうち蜆貝処にんとか言われる気の弱さ=里見。ひたすら逃げ出そうとする消極的な気分でいっぱい=安部。軟弱な(性格。態度。外交を非難する)。弱腰で(交渉する。事に当たる)。気弱な(気持ちに陥る。声で質たずねる。笑いを浮かべる)。目が合うと視線を逸らす気弱な連中=原田宗。気弱に(首を振る。目線を泳がせながら話す谷村)。どう始末をつけていいかわからないというふうに気弱に言う“阿久。気弱い微笑を浮かべる。自分に罪があるかのような気弱い心"石川。泣く一歩手前のような何だか哀願するような気弱いまたたき佐多。目が気弱く光る。気弱げな(笑顔を見せる。表情を眼のまわりに集める=黒井)。気弱そうな微笑が口許(ちに浮かぶ=中村貞。気弱そうに目をまたたく。引っ込み思案で気が弱く甘ったれ高井。引っ込み思案な(内気な男。子)。照れ屋で引っ込み思案な性格"かんべ。引っ込み思案のおっかながりや。障病で引っ込み思案の男。 **よわね【弱音】** ▼弱音を吐く(珍しく。落ち目になって)。弱音を吐いてめそめそ甘ったれる。簡単に弱音を吐かない。▼音をあげる(在庫の山に。たった一日で。途中で何度も)。 **よわまる【弱まる】** ▼弱まる(雨脚が。力が。風が急速に。日射しがひところにくらべると幾分!藤沢)。煙のように弱まった意識=木庄。月日と共に悲しみが弱まってゆく!竹西。▼弱体化する(戦力が。組織が。派閥が。防御態勢が)。▼劣弱になる(競争力が。効果が)。ブームがようやく下火に向かう。下火になる(噂が。学生運動が。火事が。議論が。騒ぎが。人気が。炎が。流行が)。▼弱くなる(風が。気が。段々語気が。陽が。目が。陽が次第に。だんだん。世間の風当たりが。めっきり足腰が。重力は距離の二乗に比例して)。 **よわめる【弱める】** ▼弱める(勢いを。声を。風波が力よわめるを)。ガスを弱くする。▼弱めにする(圧力を。火加減を。光を。コントラストを)。 **よわよわしい【弱弱しい】** 弱々しい(印象を与える。声で呟やぶく。冬の日射しが風に流される=小川)。おどおどと落ち着かない弱々しい態度"石川。女の肌のすべすべと蠟石や討のように弱々しい感覚檀。消えそうな弱々しい光。だらだらした弱々しい気持ち。目に弱々しい色が浮かぶ。どこか弱々しい三月の光干刈。光のない弱々しい一瞥心を投げる=森店。弱々しい声(病人のような。ささやいているような=勝目)。弱々しく(薄暗い明かり。首を振る。手を握り返す。目を伏せながら呟く)。風に吹かれて花が花冠を垂れるように弱々しく頷かなく=福永。心が弱々しく崩れて行く。弱々しげに抗弁する。他人の気づかぬうちに傷つくような弱々しさ=中村真。弱々とした秋の日。善良が溢れている弱々とした笑顔幸田文。あえかな(小島の命。芳香)。この世には存在しえぬほど美しくあえかな夢の驚異。あえかに浮かぶ夜桜。うらなりの瓢箪に、のような顔斎藤栄。か弱い(女性。病人)。かよわく病気がちな女"島崎。弱体な組織力を露ぁらわにする。政府の弱体を国民の前に爆さらけ出す鈴木四。文弱な(青年。息子を案じる)。文弱の徒。 **よわる【弱る】** ▼弱る(足腰が。気力が。心臓が)。めよわるっきり弱る(体が。視力が)。▼弱っていく(次第に。少しずつ。日一日と)。弱りを(覚える。感じる)。屈辱的な敗戦を喫して弱りきる=阿久。▼弱り果てる(恐縮と困惑で。痛々しいまでに)。精神的に相当参っている。参る(神経が。ストレスで)。舗道の並木がなをえたようにゲンナリと枝を垂れる=石坂。あまりの混みようにげんなりする。げんなりした口調で言う。げんなりして意気沮喪汗そする。 <721> # 釣り合う・当て嵌まる **あいしょう【相性】** 相性が(いい。悪い)。相性を占う。合い口が(いい。悪い)。 **あう【合う】** ▼合う(三人の予定が。十分勘定が。大休計算が。ぴたりと息が。商売が性に。どうかした拍子に顔が。話のつじつまが。ぴったり条件が。みんなの呼吸が。人任せが性分に。目と目が偶然に。学校の空気がしっくり)。話が合う(妙に。思いがけず)。スーツがぴったりフィットする。符合する(記憶が現実と。投書の内容と事実が)。 **あたいする【値する】** ▼値する(検討に。脱走は死に。注目に。努力を払うに。発明家の名に。問責決議に。もう一度見直すに)。愛するに値する男。会うに値する相手。生きるに値する世の中。研究に値する主題。出版に値する作品とは思えない。尊敬に値する人。嘲笑に値する人間。ノーベル賞に値する大発見。万金に値する一言。三日が三年にも値するほどの日。資格が十分ある。値打ちが十分ある。 **あたまでっかち【頭でっかち】** 頭でっかちの(学生。議論。空論家。能書きたれ)。実行が伴わない。空念仏を繰り返す。口先ばかり達者。口舌光、うの徒。 **あてはまる【当て嵌まる】** ▼当てはまる(原則に。条件に。法則がきちんと。数多くの疑問に答えがしっくりと=鈴木光)。該当する(基準に。条件に)。適かなう(神の御心に。大義名分に。天の冥加に。挙止進退が礼に)。理に適っている。希望に添う。相当する(給料分に。収入に)。 **あてはめる【当て朕める】** ▼当てはめる(漢字を。言葉を。規格に。公式に)。学問を実践の道に当てはめて説く舟橋。準用する(規則を。規定を。法律を)。▼適合させる(計画を。物差しを)。▼適用する(学説を。理論を。杓子定規いれに。ルールを厳格に)。我が身に引き当てて考える。 **あわない【合わない】** ▼合わない(うまが。どこか肌に。問尺に。まずくて口に。恐ろしくて歯の根が。あまりにも現場の実態に。言うことが理屈に。着物の柄が好みに)。反りの合わない夫婦。度の合わない眼鏡。平仄恐いうの合わない空想。身の丈に合わないことはやらない。理屈に合わないことを言う。歯の根も合わぬほど寒い=向田。水と油のような関係。当てはまらない(どの類型にも。条件に一つとして)。▼一致しない(行が。双方の記憶が。必ずしも)。容易に一致を見ない。 **いっち【一致】** お互いの利害の一致の上に陰謀をめぐいっちらす共謀者=石川。▼一致する(顔と名前が。全員の意見が。両者の利害が。理論と観測が。大筋において。期せずして。詳細にわたり。番号がびたりと。二人の話が符節を合わせたように。気持ちの需給曲線がピッタリ!連城。風景が過去の記憶と=藤本)。衆目の一致するところ。▼一致させる(言行を。認識を)。一致協力して対策を講じる。一致団結して行動する。一致点が見つからない。一致点を見出す。官民一致で事に当たる。全員一致で賛成する。全会一致で(可決する。採択する。承認する)。禅剣一致の妙諦を悟る=子母沢。決議が満場一致で採択される。偶然とは言え妙な暗合。暗合する(事実が奇妙に。四は不吉にも死と)。▼投合する(気が。輿論はぅに)。符節が合う。神人冥合の境地。偶然の一致(奇妙な。恐るべき。子供欺だ。しみたいな後藤)。 **うってつけ【打ってつけ】** 事を起こすにはうってつけの機会。この任務にうってつけの人。情報集めにうってつけの人物。寝るのにうってつけの場所。まさにっってつけの呼び名。よく晴れ渡った運動会にうってつけの日和=鈴木光。若手のお披露目ひろにはうってつけの芝居=高橋克。散策に打ってつけの川沿いの場所谷川。究竟くいつもの隠れ家。縒ょりを戻す究覚の時節到来!舟橋。好個の逃げ場。 **おあつらえむき【お誂え向き】** 微妙な呼吸がほとんど偶然と見えるくらいおあつらえむき三好述。ネギを背負ったカモ。機会がお誂らっえむきに出来上がる。お誂え向きの条件。水中に入るにはお誂え向きの暑熱舟橋。鴨かもが葱ゃぶをしょってくる。注文して作らせたように帽子がぴったり合う今日。 **かっこう【恰好】** 暇つぶしには恰好な慰み物。身を潜ませるのに恰好な地。話題として恰好な種。恰好な場所(密談に。身を隠すのに)。恰好の(一対を形成する。クリスマスプレゼント)。仲間たちの格好の肴にかにされる有川。ファシズムはファシズムの恰好をして現れない=伊坂。 **がっち【合致】** 合致する(行動が方針に。国益に。趣旨に。目的に。びったりと。現場の状況が証言と)。待に合致する答え。要求に合致する回答。 **きっちり** きっちり(責任を取る。話をつける)。急所をきっちり押さえる。戸をきっちり閉める。きっちりと(約束を守る。思考が整序を保つ。膝をそろえて座る)。寸法がきっちりと合う。時間きっちりに現れる。 **きんこう【均衡】** 和漢洋のほぼ均衡を得た教奨。▼均衡を保つ(危うい。辛うじて)。▼均衡する(供給と需要が。力の支配が)。▼兼ね合い(千に一つの。予算との。両者の)。平衡の上に立つ。左右の平衡を保つ。 **ごうい【合意】** 合意が(空文化する。成立する)。甘い合意で妥協を図る。合意を得ないままの見切り発車。合意する(与野党が。停戦に。大筋で。条件付きで。法案修正で)。合意した覚えはない。▼コンセンサス(国民的な。住民の)。 **こうてき【好適】** スポーツに好適な季節。▼好適な場 <722> # つ **こうせい【公正】** 公平な裁定を下す。公平に弁明を与える。金を公平に分ける。どの派の意見も公平に聴く。物事を公平に理解する。どの子もえこひいきしない。公平無私な態度。公明な態度。公明に行動する。全く私心というもののない清らかな人=子母沢。是々非々の(態度を貫く。中正な信条)。是を是とし非を非とする。無私の(愛。奉仕精神)。誰にも分け隔てなく優しい。分け隔てのない好意を示す。分け隔てしないで可愛がる。 **ごかく【互角】** ▼互角(形勢が。実力が)。互角に(勝負する。渡り合う)。相手と互角に闘う。ほぼ互角の力で争う。実力が伯仲する。にわかに優劣をつけ難い。塁を摩す。おっつかっつだ(二人の実力は。二人とも料理の腕は)。おっつかっつの成績。五分に(口を利く。渡り合う)。どっこいどっこいの(腕前。勝負。成績)。大手の会社と肩を並べる。師匠と肩を並べるほどの腕を持つ宮尾。▼拮抗する(勢力が。力が。与野党が)。▶伯仲する(勢力が。力が。彼我の戦力が)。双方負けず劣らずやり合う。二人とも負けず劣らず勉強する。双方とも負けず劣らずの強情。 **ごぶごぶ【五分五分】** ▼五分五-分(勝ち目は。可能性は。損得含めて。成功の見込みは)。五分五分に立ち向かう。五分と五分で釣り合う。半々で話がつく。意見が半々に分かれる。彼我の戦力が伯仲している。相半ばする(毀誉褒貶さにが。得失が。功罪。信疑)。愛憎相半ばする感情。 **しっくりしない** しっくりしないしこりを残す。しっくりした感情が湧かない。しっくりしなかった理由が氷解する宮本瓦、肌がしっくり合わない。夫婦仲がしっくり行かない。何となくしっくり来ない。反りが合わない(上司と。継母蛙蛙と)。性が合わない。噛み合わない(会話が。話が。お互いの歯車がしっくりと=中村真)。噛み合わないやりとり。感覚的に悩み合わない表現"大野透。 **しゅびいっかん【首尾一貫】** 学説を首尾一貫させる。首尾一貫した(筋。態度)。首尾が一貫する。首尾の整った見事な作品。首尾一貫性を欠く。 **せいごうせい【整合性】** これまでの主張と整合性がとれる。炎性に配慮する。整合性のとれた政策。論理的整合を保つ。▼整合させる(ロジックを。断片的な真実をうまく組み合わせきちっと"小林久)。整合的な関係を保つ。 **そうおう【相応】** 身分に相応な遊び。相応に(月謝を払う。骨を折る)。相応の(金が出る。評価を受ける。礼をする。美人に生まれつく)。▼相応する(時候に。分に)。それ相応に絡み合った関係。それ相応の(謝礼が出る。対価を払う。収穫を期待する)。年月相応に年をとる。応分に責任を果たす。 **たいとう【対等】** 対等な(気分で向かい合う。人間に対する目で見る)。対等に(扱う。口を利く)。対等の(関係。立場)。家族に準じた扱い。「駅馬車」と並び称される西部劇の名作。黒澤明と並び称される映画界の巨匠。東大と並び称される大学。北斎と並び称される浮世絵師。同等に(扱う。評価する)。同等の(条件。地位)。 **だとう【妥当】** 妥当な(解釈。金額)。妥当性がある。推測の妥当性を検討する。 **ちぐはぐ** ちぐはぐ(言うこととすることが。考えていることと行うことが)。田舎卿士が精いっぱいお洒落し、したようにチグハグ!富岡。すべてがちぐはぐで噛み合っていない。ちぐはぐな色のものを身につける。 **ちょうど** ちょうど(家に居合わせる。一時間が過ぎる。外出から帰ってきたところ)。大きさがちょうど同じ。かっきり二時間だけ眠る。正午かっきりに現れる。毎朝六時きっかりに起床する。時あたかも春爛漫もんの頃。 **ちょうわ【調和】** 調和がとれる。素朴ななかに渋い調和がある絵「高村光。調和のある幸福な家庭。ほどよい調和を保つ。▼調和する(肉体と精神が。見事に。矛盾なく)。夜と調和するほど黒味の勝った外套以沙夏目、古い叙述と新しい立場を調和させる。まわりの自然に調和した古びた家。天の配剤。調和的に共存する。諧調を保つ。▼ハーモニー(色彩の。空と海との)。 **つじつま【辻褄】** ▼つじつまが合う(何もかも。いろいろな点で)。▼つじつまが合わない(記憶の。話の)。つじつまを無理に合わせる。辻襟を縫い合わせる"干刈。つじつま合わせに腐心する。組織ぐるみでつじつま合わせに走る。つじつま合わせの財源対策。あまりに平仄ひこうが合いすぎる。平仄の合ったお話をこしらえる。 **つりあう【釣り合う】** ▼釣り合う(家格が。年齢的に)。見事な釣り合いを保つ。左右対称にする。シンメトリカルな秩序正しいフランス風庭園"柴田翔。対称に配置する。信頼と期待の重みが平衡を得た秤吐かのようになる三島。価値に見合った金を払う。二人の女の顔に弥次郎兵衛のようなどっちに傾くでもない視線を細かに揺らす―連城。均整がとれて美しい。均整のとれた構成。すらりと均整のとれた長身。贅肉ぼいのない均斉のとれた体つき=五木。プロポーションが(いい。悪い)。美しいプロポーションを維持する。完璧なブロボーションを保つ。 **つりあわない【釣り合わない】** 釣り合いが崩れる。釣り合わぬは不緑のもと。▼不釣り合い(支出と収入が。ブラウスとスカートが)。紳士がこの部屋に不釣り合いであること、紙皿に盛りつけた本物のアといった趣荻野。心の均衡が破られる。感情の均衡が完全に破れた声=田辺。心持ちが均衡を失う。同点の均衡を破る。体が重心を失ってよろめく。自然界の対称性が破れる。提灯に、うに釣り鐘の例え。うまくバランスが取れない。心のバランスが狂う。上下のバランスが悪い。絶妙なバランスが崩れる。平均台の上でも歩いているようなバランスの悪い感覚辻仁。バランスを失って倒れる。▼バランスを崩す(心が。精神的に)。美女と野獣。▼不均衡(富の。貿易の)。分には不相応な上等な酒。身分不相応の大金を所持する"江戸川。体の平衡が崩れる。精神の平衡を失う。平衡感覚が狂う。見合う相手がいない。仕事と適性がミスマッチを起こす。提灯に釣り鐘というか、焼芋に古伊万里の皿というか、てんで調和を失っている=獅子。アンバランス(精神と肉体が。輸入と輸出が)。手と脚が奇妙なほど長いアンバランスな体つきに少年のような哀感が漂う小林久。 <723> # 釣り合う・当て嵌まる―233 **ふちょうわ【不調和】** 不調和な化粧。てんで調和を失っている。釣り合いが破れる。諧調を(壊す。破る)。 **ふきょうわおん【不協和音】** ガアガア島からの鳴くような不協和音"木山。閣内の不協和音が伝えられる。日米円に不協和音が生じる。一 「日米開に不協和音が生じる。声が不協和音のように耳底に残る=加賀。 **ぴったり** ぴったり(息を合わせる。くっついて離れない。くる言葉を探す。寄り添って歩く)。体にぴったりつくスカート。ぴったり合う(数が。条件が。気持ちに)。制限速度びったりで通過する。ぴったりと(雨戸が閉めてある。隙間なく吸い付く)。後にびったりとついて走る。条件的にびったりと当てはまる。襖転ずをびったりと閉める。足に靴がぴったりとおさまる=落合。時間ぴったりに来る。話し合いの雰囲気にぴったりの場所笹沢。上着をびっちり身にまとう。足にびっちりとはまった足袋たび人合崎。服をびっちりと身につける。 **はまりやく【朕まり役】** ▼はまり役(一番の。ぴったりの)。これ以上のはまり役はない。適任(監督に。コーチに。首相に)。 **にあわない【似合わない】** 似合わない役を必死でこなす。若いに似合わず口も八丁、手も八丁石坂。体に似合わぬ可愛らしい声。小さな身体に似合わぬ度胸の持ち主"西木。鬼にお茶を立てさせるようなもの"石坂。いつもに似気ない弱気な態度。子供に似気ないふてぶてしさ。紳士に不似合いな振る舞い。年頃の男の子には不似合いな行動。柄にもない殺し文句を残す。柄にもなく(優しく言う。深刻な顔になる。精神的な愛に生きる)。▼そぐわない(実態に。物事の道理に。疲れた心には都会の喧騒サルが荻野)。どことなくそぐわない着こなし。 **てごろ【手頃】** 手頃な(宿を紹介する。丸太をバット代わりにわりにして打つ=北村)。息抜きのできる手頃なお店。頃合いの空き家を見つける。ちょうど頃合いの場所。ハンディーな(カメラ。ケース。サイズ。辞書)。持ち歩くのに手頃な大きさ。程合いの(刪。火加減。熱さまで冷める)。程合いを(知る。見計らう)。 **ひきわける【引き分ける】** 引き分ける(激戦を。試合を。相手チームと。無得点で)。両者引き分けとする。勝っていた試合を引き分けにされる。負けていた試合を引き分けに持ち込む。▼引き分けに終わる(三対三の。時間切れで)。勝負がつかない。星を分ける。相打ちで勝負なし。両者相打ちとなる。痛み分けに終わる(勝負が。論争が。一勝一敗の)。勝負が千日手に終わる。 **もってこい** 遊びにはもってこいの仲間。退屈しのぎにもってこいの本。勉強するにはもってこいの場所。観光コースの起点としてはもってこいの位置"斎藤栄。切り崩しにもってこいの材料=高橋克。時間をつぶすのにもってこいの所宗田。人となりを知るにはもってこいの機会「飯田。心を鎮めるには持ってこいの場所藤田。 **【向き不向き】** ▼向き不向き(仕事の。むきふむき職業の)。人によって向き不向きがある。人によって向き向きがある。向き向きに応じて(仕事を選ぶ。適所に振り分ける)。 **バランス** 努力のバランスに配慮する。内部抗争のバランスに乗っかる。バランスのいい栄養食。微妙なバランスの上に立つ。バランスの取れた(食生活。判所)。栄養のバランスを考える。全体とのバランスを考え合わせる。力関係のバランスを図る。ほどよいバランスを保つ。バランス感覚に優れている。アといった趣荻野。心の均衡が破られる。感情の均衡が完全に破れた声=田辺。心持ちが均衡を失う。同点の均衡を破る。体が重心を失ってよろめく。自然界の対称性が破れる。提灯に、うに釣り鐘の例え。うまくバランスが取れない。心のバランスが狂う。上下のバランスが悪い。絶妙なバランスが崩れる。平均台の上でも歩いているようなバランスの悪い感覚辻仁。バランスを失って倒れる。▼バランスを崩す(心が。精神的に)。美女と野獣。▼不均衡(富の。貿易の)。分には不相応な上等な酒。身分不相応の大金を所持する"江戸川。体の平衡が崩れる。精神の平衡を失う。平衡感覚が狂う。見合う相手がいない。仕事と適性がミスマッチを起こす。提灯に釣り鐘というか、焼芋に古伊万里の皿というか、てんで調和を失っている=獅子。アンバランス(精神と肉体が。輸入と輸出が)。手と脚が奇妙なほど長いアンバランスな体つきに少年のような哀感が漂う小林久。 **なじめない【馴染めない】** ▼なじめない(家風に。環境に。語感的に。贅沢だいに。いつまで経っても。疎開先の生活に=辺見)。まだ新しい環境に馴染なじめない重松。 **てきおう【適応】** 適応が早い。▼適応する(環境に。寒地に。時代に。社会に。日本の気候に。変化に)。適応性に(優れる。富む)。社会への適応性をつける。適応力を養う。家庭に順応して生きていく。▼順応する(新しい環境に。新しい時代に)。▼順化する(環境に。寒冷に。高地に。光に)。 **てきごう【適合】** 適合する(環境に。状況に。ルールに。条件にことごとく)。甘んじて適合するように身を処する=阿川弘。家庭生活に適合しない性格の人間。 **てきする【適する】** 適する(食用に。住むのに。飲み水に)。才能に適した道。生存と繁殖に最も適した環境。・農耕に適した土地。適否を(検討する。問う。判断する。判定する)。適性がある。適性に見合った人事異動。適性を考慮した配置。日光浴に最適の日和。気鬱の日には最適の仕事林京。最適解を求める。 <724> # 出掛ける・旅立つ **がいしゅつ【外出】** ちょうど外出から帰ってきたところ。めったに外出しない。▼外出する(母親に無断で。仕事に事寄せて。何かと口実をつくっては。何かと理由をつけては)。外出の(支度を始める。許しを得る。身支度を整える)。いそいそと外出の支度にかかる"高杉。 **かんこう【観光】** 観光と地場産業を結びつける=篠田。観光による村おこしが軌道に乗る=篠田。時間の余裕を観光に充てる。ガイド付きで観光する。観光資源(魅力的な。看板となる)。人々が行楽に一家団欒する。物見遊山に出かける。神様をだしに使って物見遊山をする=加太。▼レジャー(大衆的な。手軽な)。レジャーの人出が増える。レジャーを(楽しむ。満喫する)。▼遊覧する(景勝地を。バスで。船で)。遊覧船で湖を一周する。 **かんこうきゃく【観光客】** 観光客の(流れを眺める。一団が目の前を通り過ぎる)。観光客を誘致する。大勢の行楽客で賑わう。行楽客を当て込む。 **かんこうち【観光地】** 名所旧跡に事欠かない観光地"藤木。観光地としてアミューズメントを揃える!篠田。白砂青松の景勝地。▼行楽地(爽快な。絶好の)。史跡を(訪ねる。探勝する)。天下の名勝。名勝の地。名所旧蹟、うに恵まれた古い町"竹西。名所旧跡をそぞろ歩きする。 **しゅっちょう【出張】** 出張と称して旅行に行く。▼出張する(海外に。公務で。社用で。商用で)。捜査員が出張ってくる。 **しゅっぱつ【出発】** 出発が二時間後に迫る。出発に際して荷物を点検する。出発の(用意が終わる。準備に取りかかる。日が明日に迫る)。モロからの出発を決意する=内橋。出発する(朝早く。夜陰に紛れて。日の出とともに。まだ暗いうちに。悪天候をついて。雨がやみしだい。誤った前提から。豪雨をおかして。山頂に向かって。上陸すると時を移さず)。自己破産からの再出発。裸で再出発する。再出発のスタートが無事にできる。人生の再出発をする。▼門出を祝う(新しい。晴れの)。出庫を待つ電車。朝早く出立する。出立の(刻限が迫る。日を延ばす)。▼進発する(征討軍が。城下を。必殺の気構えで)。車をスタートさせる。横一線でスタートする。壮途に(就く。上る)。壮途を祝す。▼発つ(明朝早々に。あたふたと宿を)。雄途に(就く。のぼる)。雄途を祝う。途につく(遠征の。凱旋の。帰郷の。帰国の。帰任の)。発車にはまだ少し時間がある。発車のベルが(鳴り響く。鳴り渡る)。発車する(バスが。電車が駅を)。発車時刻が迫る。車が発進する。▼発進させる(攻撃隊を。ダンプカーを。おもむろに車を)。▼急発進する(車が。戦闘機が)。 **たび【旅】** ▼旅(行方定めぬ。明るく和やかな。行き当たりばったりの。一生を凝縮したような=中野孝。知る人も少ない異郷の=島崎。累々屍乱跡の間を踏み分けてゆくような動乱の中の=檀)。平穏な旅が続く。旅から(帰る。旅の渡り鳥。旅への生涯を送る)。旅から旅を(経めぐる。先生顔で渡りあるく"幸田露)。旅にロマンを求める。人生を旅になぞらえる。旅の(垢を落とす。風に吹かれる。空の町。恥はかき捨て。不安が消える。道連れになる。気分が膨らんでくる。疲れが吹き飛ぶ。疲れと心労が重なる。無聊をなぐさめる)。居ながらにして旅の気分を味わう。これというアクシデントもなく旅の予定を消化する=平岩。とかく旅の心は落ち着かない"島崎。旅の疲れを癒す。休める)。旅は道づれといったような親しみがわく!白洲。旅を楽しく締めくくる。かわいい子には旅をさせろ。行く手の茫洋ぶりたる旅を飢渇する=檀。▼旅を続ける(気楽に。慌ただしい。放浪の)。遠方からはるばる旅してくる。旅する(知らない国を。村や町を。あてもなくぶらぶら)。▼旅をする(勝手気ままに。はるばる。漂泊の。町から町へと。村から村へと)。各地を旅してまわる。旅を共にする。格別急ぐ旅ではない。▼旅に出る(雲水の。さすらいの。修業の。諸国行脚の。諸国跋渉の。伝道の。仲間と。飄然と。ふらっと。放浪の。曽祖父にいさんの足跡をたどる"若竹。引き止める袖を振り切って"山岡)。 **たびじたく【旅支度】** 旅支度を(こしらえる。整える)。匂うような旅衣裳の縫いの彩糸がきらめく"室生。見映えのしない旅支度。旅装を(解く。整える)。 **たびだつ【旅立つ】** ▼旅立つ(異境に。宇宙に。心やすらかに。巡礼に。諸国行脚に。青春遍歴に。戦地に。地方巡業に。冥土に。天国へ。遠い国へ。故郷へ向かって。無計画な長途の冒険旅行に=檀)。第二の人生へ旅立っていく。旅立ちの(準備をする。用意を整える)。旅立てる(安心して。心おきなく)。盃をあげて旅を壮んにする=中島敦。旅路に上る。旅に(赴く。出発する。立つ)。旅に上る(巡錫の。巡業の)。当てどもなく部隊が放浪の旅にのぼる=今日。遠い旅に鹿島立つ。 **たびびと【旅人】** 旅人が国から国へ渡り歩く。異国の旅人を迎える。旅人のような心で今まで通りのごくあたりまえな生活を続ける"島崎。信じられない世界に迷い込んだ旅人のように突っ立っている=藤本。遠くへ行く淋しい旅人のように秋の雨が通り過ぎる=佐藤春。落胆した旅人のように寝そべる=高橋和。旅人特有のきらきら高揚した瞳"吉本。旅客を(乗せる。運ぶ)。旅行者が足止め状態になる。旅行者の味覚にぴた「郷土料理」=竹西。 **つれだつ【連れ立つ】** 連れ立って(買い物に出かける。パーティーに出席する)。仲間と連れ立って歩き回る。 <725> ▶連れ立って歩く(三々五々。何人か)。▼連れ立って出かける(二人が。父と。友人と)。三人打ち揃って出て行く。仲間とつるんで飲みに行く。毎日のようにつるんで遊び回る=高橋克。 **つれていく【連れて行く】** ▼連れて行く(犬を。医者に。強制的に。警察に。子供を遊びに。病院に。子供を遊園地に。近くの美容院に。有無を言わさず)。 **でがけ【出掛け】** 出がけに(声をかけられる。電話がかかってくる。ふっと気が変わる)。部屋を出がけに注意をされる。出かかる(教室を。部屋を)。出しなに(足を滑らせる。ばったりぞう)。家を出しなに尋ねる。出て行きしなに(言う。転ぶ)。出鼻に(不意の客が来る。呼び止められる)。▼振り返る(円を出しなに。玄関を出がけに)。 **でかける【出掛ける】** ▼出かける(あてもなしに。新婚旅行に。退屈しのぎに。托鉢の行脚に。雨間を見て。雨を押して。嵐をついて。普段着のまま。吹雪をついて。めかしこんで。喜び勇んで。気が向いたときに。気分転換に公園に。せわしなく買い物に。外へ気晴らしに。夜な夜な秘密の会合に。足ごしらえをして。口実をつくって。暴風雨をついて。みんなでぞろぞろと。わりない用事で)。▼遊びに出かける(いそいそ。家族連れで)。▼飲みに出かける(時々。毎晩のように"酒をねじめ)。ついぞ出かけたためしがない。▼出かけていく(しぶしぶ雨の中を。月明かりの中を。気の向くままに。取るものもとりあえず)。出かけてくる(遠方から。のこのこ。山奥まで)。遠くまで足を延ばす。足を延ばして奥の村まで行く。▼繰り出す(二次会に。花見に。人々が行楽に。盛り場へ。前線へ)。▼出歩く(外を。勝手気ままに。取材に。ちょくちょく)。安心して夜出歩ける。▼出向く(挨拶に。現地に。もらい下げに。こちらから。最寄りの派出所へ)。 **とおで【遠出】** 遠出を(思い立つ。嫌う)。遠出をする(休日に。早起きして)。遠い旅に出たようなさびしい気になる=有島。▼遠征する(海外に。全国各地に)。 **ドライブ** ドライブに(誘う。出かける)。気晴らしにドライブに行く。ドライブする(湖畔を。山の麓を。海岸沿いの村を)。ドライブがてらの行楽。自動車で遠乗りする。遠乗りを楽しむ。 **ハイキング** ハイキングに毛の生えたような山歩き"横山。初歩のハイキングコース。森の中をハイキングする。遠足に出かける。日帰りのピクニック。ピクニックに行く気分で墓参りをする"辻井。 **はっちゃく【発着】** ヘリコプターが砂煙を巻き上げて発着を繰り返す=辺見。▼発着する(バスが。飛行機が。ボートが。列車が)。発着案内の電光掲示板。 **はなみ【花見】** 花見に出かける。花見の(趣向で盛り上がる。どんちゃん騒ぎ)。お供を連れて花見をする。桜花を楽しむ男女が出盛っている。花には見頃がある。夜桜が岡に浮かび上がる。夜桜に誘われて人が集まる。夜桜を(静かに眺める。ライトアップする)。 **ひとりたび【一人旅】** ▼一人旅(心任せの。骨休めの気ままな)。年をとったら一人旅が大儀になる=石坂。一人旅の自由をたのしむ。一人で旅をする。 **ふなで【船出】** 重い課題を背負っての船出。船出の(時間が近づく。日を待つ)。船出を明日に控える。多難な船出を迎える。新政権が船出する。纜を(切る。解く)。銅鑼どらが鳴る。船が(錨いかりを上げる。解纜する。出港する。帆を揚げる。港を出て行く。アンカーを上げる)。舫もやい綱を解く。舟の舫いを解く。順風満帆の船出ぶりを耳にする。▼出港する(艦艇が。母港を)。出港する艦隊を見送る。▼出帆する(船が。港を)。出航が目前に迫る。出航を(見合わせる。一日延ばしにする)。時化しけをおかして出航する。 **みちづれ【道連れ】** ▼道連れ(気の置けない。旅は)。娘を心中の道連れにする"宮部。よき道連れを得る。帯同する(妻子を。秘書を)。表に連れを待たせてある。▶同道する(学生を。エキスパートを)。妻を同伴する。 **みてあるく【見て歩く】** ▼見て歩く(家の中を。学校を。村じゅうを。ショーウインドーを)。▼眺め歩く(町を。焼け跡を。無遠慮に)。▼見歩く(寺を。町を)。自然を探勝する。探勝の(旅を楽しむ。地)。古寺を探訪する。探訪に出る。 **りょこう【旅行】** 旅行から帰ってくる。旅行に出たい渇望が募る。日帰りで旅行に行く。ぶらりと旅行に出かける。両親を旅行に連れていく。旅行の(計画を立てる。途中に立ち寄る)。暑を避けて旅行へ出かける"三島。旅行する(夫と。家族で。夜の静寂と空気の中を=庄野)。日本中を旅行して回る。夜行バスに乗る。優雅に海外旅行をする。旅先から(帰る。手紙を出す)。苦難の旅路を続ける。長かった旅路を振り返る。旅慣れた足つき。旅慣れるにつれて荷物が少なくなる。旅寝の(床に就く。宿り。夢の枕に姿を現す)。旅寝を重ねる。旅行用品をスーツケースに詰める。旅行日程を組む。外遊から帰る。外遊の途に上る。ツアーに参加する。ゆるゆると道中する。道中の無事を祈願する。▼漫遊する(欧米を。諸国を。世界を)。とりとめのない漫遊の旅。諸国遊歴の旅に出る。五泊六日の旅程。長旅の(疲れが出る。疲れを癒す)。長途の旅に出る。 **りょじょう【旅情】** 旅情が心の深いところにしみ渡る=平岩。たた旅情の心細さを増す=伊藤左。旅情を(かき立てる。そそる)。旅愁を(誘う。慰める。深める)。旅心が(やまない。湧く)。旅心を(いざなう。誘う。そそる)。 **りょひ【旅費】** 旅費に困る。旅費を(こしらえる。ひねり出す)。十分な旅費を与える。足代がかかる。足代を(払う。渡す)。運賃を(精算する。払う。引き上げる)。交通費を(請求する。払う)。船賃を多めに渡す。 <726> # 出来ない・出来る **あいいれない【相容れない】** 水と油のように相容れない。氷炭相容れない仲。火と水のよう。両雄並び立たず。夫婦の性格の不一致。話し合いが平行線に終わる。双方の主張が平行線をたどる。優しさとテキバキは往々にして両立しにくい"小沢。 **あぶはちとらず【虻蜂取らず】** 結局は虻蜂取らずに終わる。あちら立てればこちらが立たず。二兎を追うものは一兎をも得ず。両天秤をかけて失敗する。 **エラー** 痛恨のエラー。エラーが呼び水となって試合に負ける。敵のエラーで味方チームが勢いづく。エラーを連発して自滅する。守備でエラーする。ヒューマンエラーを織り込んだシステム"畑村。敵失で(出塁する。得点する)。敵失に(乗じる。助けられる。より一点を加える)。 **かなわない【叶わない】** 叶わぬ(非望。恋とあきらめる)。かなわぬ恋に身を焦がす"玉村。決して叶えられない。所詮は高嶺の花。棒ほど望んで針ほど適う"石坂。報われない恋。 **かのう【可能】** ▼可能(自給自足が。自由な飛翔が。持ち運びが。技術的に)。可能不可能を質す。可能な対策を総動員する。連続的な供給が可能になる。▼可能にする(生産を。追体験を。変革を。ビジネス展開を)。あながち無理とは言えない。実現可能な形をとる。実行可能な結論。必ずしも不可能ではない。復帰可能な状況。▼可(どちらでも。分売も。自薦他薦いずれも)。 **かんせい【完成】** たゆみない麻酔薬の研究が始めてから十余年を経てようやく完成に近づく"有吉。▼完成に漕ぎつける(苦心の末。首尾よく)。一通りの完成を見る。▼完成する(九分どおり。相当な日時をかけて)。完成させるか放棄するかの関頭に立つ。より完成度が高い。希有な完成度に達する。優れた完成度を示した作品。 **ごうかく【合格】** 合格の報を聞き欣喜雀躍する。合格はまず間違いない。合格する(検査に。試験に。テストに)。合格するために猛勉強する。合格して鼻高々になる。合格すれば儲け物。合格圏内に入る。合格点をもらう。合格発表を待つ。受かる(高校に。試験に。大学に)。及第点をとる。試験をクリアする。合否のボーダーライン。合否を(決める。判定する)。▼パスする(審査を。検査に。試験に。オーディションに)。 **こしくだけ【腰砕け】** 腰砕けに終わる。腰砕けになる(改革が。計画が。女の涙で。よたよたと)。かけ声倒れに(終わる。ならないことを望む)。かけ声倒れの恐れがある。言いっ放しで終わる。 **ざせつ【挫折】** 取り返しのつかない挫折。挫折から立ち直る。中途半端な挫折の仕方が後ろめたい"伊藤整。挫折を知らないでここまで来る=奥田。抵抗と挫折を繰り返す。▼挫折する(計画が途中で。壮図むなしく。子供じみた夢が)。挫折感に打ちしおれる。主人公の挫折感に心情的に共感する"五木。大きな辞書を新たに編纂するときは大小さまざまの蹉跌があるものです"三浦し。計画が蹉跌する。行動に蹉跌を生じる。▼頓挫する(改革が。計画が。修業が)。 **しあげ【仕上げ】** 仕上げに(忙殺される。余念がない)。最後の仕上げにかかる。仕上げの(段階に入る。一のみに全神経を集中させる彫り師のように論文の細部の仕上げに身を打ち込む!柴田)。細工は流流仕上げを御覧じろ"外村。最後の仕上げが(済む。残っている)。▼仕上がり(順調な。不満足な。見事な。パーフェクトな)。人生の仕上げ期を迎える=山岡。我ながらよい仕上がりだと思う。"阿刀田。最後の詰めが甘い。詰めの(作業を急ぐ。段階に入る)。満足できる出来上がり。 **しあげる【仕上げる】** ▼仕上げる(一年以内で。突貫工事で。細部にわたって。馬力をかけて予定の仕事を"源氏)。練り上げる(企画を。プランを。計画を綿密に)。あらかじめ慎重に練りあげた作戦行動"椎名誠。時間をかけて練り上げた計画。"安部。 **しくじる** ▼しくじる(試験を。得意先を。結婚に。酒で)。しくじりをしでかす。とんだしくじりをする。大魚を逸する。味噌をつける。急いては事をし損じる。へまを踏む。 **しつげん【失言】** 失言(無神経な。由々しき)。失言に気がつく。失言を(埋め合わせる。ごまかす。弥縫する。不問に付す)。慌てて失言を繕う。舌禍が危ぶまれる。舌禍に見舞われる。 **じつげんしない【実現しない】** ▼実現しない(絶対に。なかなか)。夢が容易に実現しそうにない。実現が(危ぶまれる。遠のく)。通常では実現が困難。実現させるのは至難の業。実現の可能性が薄い。企画が水に流される。砂上の楼閣。思案が夢に終わる。百年河清を俟つ。とうてい実現不可能。 **しっさく【失策】** 失策(悔やんでも悔やみきれない=幸田文。致命的と思われるような=庄野)。失策の責任を取って退任する。考えられないような失策をしでかす。途方もない失策を犯す。取り返しのつかぬ大失策。 **しったい【失態】** 失態(不面目な。次元の低い)。あまりの失態に仰天する。大失態が明るみに出る。大失態をやらかす。 **しっぱい【失敗】** 満座の中での痛烈な失敗。失敗が(起こる予兆。徐々に減る。身にしみる。拡大再生産される。成功につながる。色濃く胸中に残る"太宰)。人間の動くところには必ず失敗が起こる=畑村。失敗から(立ち直る。身を守る。目を背ける)。他人の失敗から学ぶ。一度の失敗で臆病になる。一度や二度の失敗でへこたれるな。失敗とうまくつきあう。失敗に(肩を落とす。懲りる。気をくじかれる)。いつぞやの失敗にこりる。策が失敗に帰する。▼失敗に終わる(計画が。試みが。散々な)。失敗の(教訓を生かす。原因を究明する)。失敗は成功の母。失敗を(未然に防ぐ。覚悟のうえで試してみる。肯定的に捉える。たびたび繰り返す。次の仕事に生かす。前向きにとらえる。真っ正面から受け止める。目こぼししてもらう)。思いもよらぬ失敗を誘発する。失敗らしい失敗を経験したことがない。人の失敗を笑ってはいけない。目先の失敗を恐れない。冷静に失敗を見つめ直す。些細な失敗を大げさに取り上げる=畑村。取り返しのつかない失敗を犯す!宮本。日々新たな失敗を発明する"光原。普段から失敗を自由に語れる雰囲気をつくっておく=畑村。幼稚園にいきたての子どものようにかわいい失敗をする=灰谷。数々の失敗を克服する。過去の失敗を一つひとつ克服する=畑村。失敗する(クーデターが。早合点して。女に迷って事業に。目論見が見事に。投資の時期を間違えて=畑村)。失敗した当事者を責め立てる。試験に失敗してやけになる。何回失敗しても諦めない。大失敗をやらかす。"河童。猿の川流れ。空振りに終わる。策士策におぼれる。作戦が一頓挫を喫する。猿も木から落ちる。上手の手から水が漏れる。前車の轍を踏む。とんだご愛嬌。一口物に頬を焼く。下手へたを踏む。▼過つ(解釈を。道を)。勇み足の(発言。結果に少なからず傷つく=氷室)。▼おじゃんになる(肝心の話が。計画が)。一つも成功しない。前回の二の舞を(演じる。踏む)。どじを踏んで捕まる。生兵法は大怪我の元。▼不成功に終わる(実験が。登頂が。見合いが)。とんだ不調法をしでかす。不発に終わる(企画が。ストが)。▼足をすくわれる(嫉妬に。思いもかけぬ障害物に"内橋)。つまらないことで足をすくわれるのも馬鹿馬鹿しい=開高。女の深情けに足をすくわれ溺れきる=瀬戸内。邪念に足元をすくわれる。あくとい駆け引きに足元をすくわれるような失敗"山崎。▼不覚(一期いちごの。一生の。一世一代の)。生涯の不覚と恥じる。思わぬ不覚をとる。 **しゅんこう【竣工】** 一年がかりで竣工に漕ぎつける。竣工する(校舎が。鉄道が。ビルが)。▼完工する(ダムが。鉄道が。道路が。ビルが)。▼落成する(校舎が。建物が。ビルが。仏殿が)。 **せいこう【成功】** 成功間違いなし。前途の成功がありありと見える。成功に(自信を得る。力を尽くす。至らないうちに病死する)。心が思いがけない成功に燃え立つ。事業を成功に導く。成功の(確率を高める。美酒に酔う)。たゆみない努力が成功の原動力。杜撰ずさんな計画では成功はおぼつかない"奥泉。成功への(道筋を学ぶ。ステップを確実に上昇する=鷺沢)。成功を誇らしげに伝える。計画が成功を収める。成功する(公算がある。こと請け合い。条件が揃う)。成功する(大口の取引が。裏面工作が。卵からの飼育が。イメージの転換に。首尾よく討ち入りに。まんまと脱出に。身元の割り出しに。ロケットの打ち上げに。作戦が。説得が。対策が。妙案が)。▼大成功(計画は。実験は)。大成功に(終わる。沸き立つ)。大成功だと自画自賛する。前古未曽有の大成功を収める=幸田露。 **せいひ【成否】** 成否に関わる問題。成否の(剣が峰。程はおぼつかない)。成否は(五分五分。努力しだい)。事の成否は神のみぞかかっている。結果の成否を問題にしない。 **せいりつ【成立】** 成立する(アリバイが。契約が。婚約が。時効が。示談が。商談が。取引が。離婚が。和解が。難航の末にようやく)。現状では知らぬ存ぜぬで押し通せる状況が成立している=有川。和議が成る。成り立つ(アリバイが。一本の筋道が。経営が。商売が。推理が。大義名分が。関係が自然に。事業として)。 **できあがる【出来上がる】** ▼出来上がる(気に入った曲が。機会がお誂むきに。習慣がいつとはなしに。苦心の末にあらかた。日に日に少しずつ)。お互いの間に親密な絆ができあがる=伊坂。九分どおりまで出来上がった製品。万が一にもし損じはない。新校舎がお目見得する。▼仕上がる(最後の一枚が。工事がきちんと)。事業を大成させる。 **できそこない【出来損ない】** 不出来な(作品。成績。息子。娘)。 **できない【出来ない】** ▼できない(結局何も。ろくな働きも。しばらく身動きが。誰一人手出しが。とっさに返事が。腹が減っては戦が。まともな送球が。一秒たりとも無駄に。あだやおろそかには。あながち否定は。いつまでたっても。どうすることも。並大抵の苦労では。微調整がうまく。無理に止め立ても。もう引き返すことは。ろくすっぽ話も。体面に縛られて思うように"岩川。提灯持ちのような真似は=高橋克)。無下に無愛想なあしらいも出来ない"高井。一睡もできない夜を過ごす。到底できない相談。打ち破ることのできない障壁がそびえたつ=野間。できていない(心の準備が。躾が。ろくすっぽ整備が)。そう誰にでもできることではない。できるかどうか疑わしい。できかねる(賛成も反対も。ちょっと)。昔のように無理が利かなくなる=貫井。言えた義理ではない(文句を。人様のことをあれこれ!若竹)。会えた義理ではない。▼騒ぎではない(原稿どころの。学校に行くところの)。▼しかねる(返事が。決心を。即断を)。▼しようがない(説明の。どうにも。判断の)。▼務まらない(そんな大役は。生半可な気持ちでは)。よくなし得る所ではない。いまだ何事をもなし得ない。不可能に近い。完成の見込みが立たない。 **できばえ【出来栄え】** ▼出来栄え(染めの職人が満足顔で肯いた=有吉。非の打ちどころのない=火坂)。▶できばえ(愕然とするところがない。我ながら見とれるほどの見事な=江戸川)。出来栄えが(よい。段々に気に入らないものになる=志賀)。出来栄えに満足する。素晴らしい出来栄えに酔う。▼出来(最高の。水準以上の。うっとりするほどの。天才の名をはずかしめない)。作品の出来を心配する。上出来の部類に属する。 **できる【出来る】** できる(命の洗濯が。火急の用事が。心の準備が。時間に余裕が。周囲に人垣が。長い行列が。品質にむらが。目の下に隈が。借りが一つ。あちらこちらに細かい不義理が。壁に灰色のしみが。気持ちよく仕事が。しっかりとした絆が。自由に行き来が。どうとでも言い訳が。隔てをおかずに話が。満足の行く走りが。道のあちこちに水溜まりが。世の中を見る目が。笑うと頬に小さな笑くぼが。考えたよりたやすく。勉強がそこそこ)。できるところから取り組む。自分のできる範囲。▼できている(覚悟はとうに。実にうまく。根っから病弱に。人間がお目出度く。物語として極めて上手に=キーン)。いつの間にかできてしまう。あまりにもできすぎた話。できすぎている(お膳立てが。偶然にしては。話がうまく)。期待以上の水準で仕事を片づける=眉村。頭の出来が違う。大層出来がよい。▼妨げない(再任を。重任を)。十分に四番打者が務まる。無理のない範囲。▼よくする(漢詩漢文を。弓術を、書画を。詩を。和歌を)。やればできるのにやらない。精神一到何事かならざらん。 **ともだおれ【共倒れ】** ▼共倒れになる(数社が。同業者が)。共倒れを避ける。共食いに走る。共食いを避ける。 **とりかえしがつかない【取り返しがつかない】** ▶取り返しがつかない(すでに。もう。いくら後悔しても=大野透)。取り返しのつかない(失敗を招く。破局への道。ミスを犯す。大事になるところ。ダメージを受ける)。いかに悔やんでも取り返しのつかない事態。急がないと取り返しのつかないことになる。取り返しのつかぬ悲劇を生む。覆水盆に返らず。死児の齢を数える。死んだ子の歳を数える。 **はたせない【果たせない】** ▼果たせない(十が一をも。なかなか約束を。目的がなかなか)。しおおせずに帰ってくる。成功の見込みがない。達成が(おぼつかない。難しい)。達成は絶望的。ミイラ取りがミイラになる"若竹。反乱が未発に終わる。▼未遂に終わる(クーデターが。計画が。強盗が)。 **ふごうかく【不合格】** ▼不合格になる(試験で。入試で)。試験に落ちる。受験にこける。一人も合格者がいない。不合格者を出さないための苦肉の策。惜しくも入選を逃す。二度のフライングで失格となる。失格する(反則をして。予選で。ルール違反で)。 **ふせいりつ【不成立】** ▼不成立に終わる(交渉が。大会が)。成立が(おぼつかない。困難視される)。▼成り立たない(暮らしが。論理的に)。成り立つ見込みがない。計画がお陀仏になる。法案が審議未了で廃案になる。 **ふちゅうい【不注意】** 不注意から事故を起こす。不注意で茶碗を欠いてしまう。不注意に起因する事故。不注意を厳しくとがめる。 **へま** 生半可なことで命に関わるようなヘマは踏まない=有川。とんでもないへまをやらかす。へまをする(とんだ。とんでもない)。どじな話。ぽかミスをしてしまう。とんでもないぽかをする。粗相も時の一興。自分の粗相を棚に上げる。とんだ粗相をする。知らずに粗相する。 **ふてぎわ【不手際】** 不手際(係の。政府の)。まわりに聞こえてしまり不手際な内証話"三島。不手際にけじめをつける。とんだ不手際をやらかす。 **まにあわない【間に合わない】** ▼間に合わない(母親の臨終に。約束の時間に。今さら後悔しても。はした金ではとても)。遅きに失する。焼け石に水。 **みおとし【見落とし】** 校正者の見落とし。見落としが(ないか確かめる。ないように再点検する)。多少の見落としは仕方がない。見落としを防ぐ。見逃しを(なくす。防ぐ)。注意したが目こぼしがあった。 **みかんせい【未完成】** 道徳的に未完成な人間"高橋和。未完成に終わる。未完に終わる。未完の(作品。大作)。 **やってのける** ▼やってのける(奇跡の復興を。大胆な行為を。着実に仕事を。離れ業を。見事な転身を。芝居を上手に。ものの見事に。いとも軽々と。鮮やかな着水を。あらゆる工作を。狂暴な振る舞いを。綱渡りの芸当を。とんでもないことを。荒仕事を苦もなく。機に応じてすばやく。しらっとした顔で。何から何まで一人きりで。冒険を首尾よく)。▼やりこなす(長い仕事を。いろいろな役を)。 **やりそこなう【やり損なう】** 計算をやりそこなう。やりそこなって後悔する。何度やりそこなってもあきらめない。▼やりそこねる(改革を。配線を。ダウンロードを)。金を手にしそこねる。心中をしそこなう。▼かけそびれる(声を。電話を)。 <727> # 出来ない・出来る **しゅんこう【竣工】** 一年がかりで竣工に漕ぎつける。竣工する(校舎が。鉄道が。ビルが)。▼完工する(ダムが。鉄道が。道路が。ビルが)。▼落成する(校舎が。建物が。ビルが。仏殿が)。 **せいこう【成功】** 成功間違いなし。前途の成功がありありと見える。成功に(自信を得る。力を尽くす。至らないうちに病死する)。心が思いがけない成功に燃え立つ。事業を成功に導く。成功の(確率を高める。美酒に酔う)。たゆみない努力が成功の原動力。杜撰けだな計画では成功はおぼつかない奥泉。成功への(道筋を学ぶ。ステッブを確実に上昇する=鷺沢)。成功を誇らしげに伝える。計画が成功を収める。成功する(公算がある。こと請け合い。条件が揃う)。成功する(大口の取引が。裏面工作が。卵からの飼育が。イメージの転換に。首尾よく討ち入りに。まんまと脱出に。身元の割り出しに。ロケットの打ち上げに。作戦が。説得が。対策が。妙案が)。▼大成功(計画は。実験は)。大成功に(終わる。沸き立つ)。大成功だと自画自賛する。前古未曽有の大成功を収める=幸田露。十中八九成功するだろう。何としても成功させたい。果たして成功し得るや否や。成功した勢いを駆る。成功して(いい気になる。得意がる)。体よく成功しようと希望する。▼見事に成功する(賭けが。計画が)。過たずに餌を捕らえる。功成り名遂げる=東野。成算があるように大きくうなずく。成功者(ささやかな。名の通った)。成功者を嫉視する。成功譚せいにを小説に仕立てる。成功報酬を(支払う。たっぷりと頂戴さいっする)。功を奏する(采配が。作戦が)。 **せいひ【成否】** 成否に関わる問題。成否の(剣が峰。程はおぼつかない)。成否は(五分五分。努力しだい)。事の成否は逆にかかっている。結果の成否を問題にしない。 **せいりつ【成立】** 成立する(アリバイが。契約が。婚約が。時効が。示談が。商談が。取引が。離婚が。和解が。難航の末にようやく)。現状では知らぬ存ぜぬで押し通せる状況が成立している=有川。和議が成る。成り立つ(アリバイが。一本の筋道が。経営が。商売が。推理が。大義名分が。関係が自然に。事業として)。 **できあがる【出来上がる】** ▼出来上がる(気に入った曲が。機会がお誂ふっえむきに。習慣がいつとはなしに。苦心の末にあらかた。日に日に少しずつ)。お互いの間に親密な絆ができあがる=伊坂。九分どおりまで出来上がった製品。万が一にもし損じはない。新校舎がお目見得する。▼仕上がる(最後の一枚が。工事がきちんと)。事業を大成させる。 **できそこない【出来損ない】** 不出来な(作品。成績。息子。娘)。 **できない【出来ない】** ▼できない(結局何も。ろくな働きも。しばらく身動きが。誰一人手出しが。とっさに返事が。腹が減っては戦が。まともな送球が。一秒たりとも無駄に。あだやおろそかには。あながち否定は。いつまでたっても。どうすることも。並大抵の苦労では。微調整がうまく。無理に止め立ても。もう引き返すことは。ろくすっぽ話も。体面に縛られて思うように岩川。提灯持ちいいちのような真似ぇぇは=高橋克)。無下に無愛想なあしらいも出来ない高井。一睡もできない夜を過ごす。到底できない相談。打ち破ることのできない障壁がそびえたつ=野間。できていない(心の準備が。躾しっが。ろくすっぽ整備が)。そう誰にでもできることではない。できるかどうか疑わしい。できかねる(賛成も反対も。ちょっと)。昔のように無理が利かなくなる=貫井。言えた義理ではない(文句を。人様のことをあれこれ!若竹)。会えた義理ではない。▼騒ぎではない(原稿どころの。学校に行くところの)。▼しかねる(返事が。決心を。即断を)。▼しようがない(説明の。どうにも。判断の)。▼務まらない(そんな大役は。生半可な気持ちでは)。よくなし得る所ではない。いまだ何事をもなし得ない。不可能に近い。完成の見込みが立たない。 **できばえ【出来栄え】** ▼出来栄え(染めの職人が満足顔で肯だいた=有吉。非の打ちどころのない=火坂)。▶できばえ(問然するところがない。我ながら見とれるほどの見事な=江戸川)。出来栄えが(よい。段々に気に入らないものになる=志賀)。出来栄えに満足する。素晴らしい出来栄えに酔う。▼出来(最高の。水準以上の。うっとりするほどの。天才の名をはずかしめない)。作品の出来を心配する。上出来の部類に属する。 <728> # 出来ない・出来る **できる【出来る】** 「できる(命の洗濯が。火急の用事が。心の準備が。時間に余裕が。周囲に人垣が。長い行列が。品質にむらが。目の下に隈くまが。借りが一つ。あちらこちらに細かい不義理が。壁に灰色のしみが。気持ちよく仕事が。しっかりとした絆が。自由に行き来が。どうとでも言い訳が。隔てをおかずに話が。満足の行く走りが。道のあちこちに水溜まりが。世の中を見る目が。笑うと頬に小さな笑くぼが。考えたよりたやすく。勉強がそこそこ)。できるところから取り組む。自分のできる範囲。▼できている(觉悟はとうに。実にうまく。根っから障病に。人間がお目出度く。物語として極めて上手に=キーン)。いつの間にかできてしまう。あまりにもできすぎた話。できすぎている(お膳立てが。偶然にしては。話がうまく)。期待以上の水準で仕事を片づける=眉村。頭の出来が違う。大層出来がよい。▼妨げない(再任を。重任を)。十分に四番打者が務まる。無理のない範囲。▼よくする(漢詩漢文を。弓術を、書画を。詩を。和歌を)。やればできるのにやらない。精神一到何事かならざらん。 **ともだおれ【共倒れ】** ▼共倒れになる(数社が。同業者が)。共倒れを避ける。共食いに走る。共食いを避ける。 **とりかえしがつかない【取り返しがつかない】** ▶取り返しがつかない(すでに。もう。いくら後悔しても=大野透)。取り返しのつかない(失敗を招く。破局への道。ミスを犯す。大事になるところ。ダメージを受ける)。いかに悔やんでも取り返しのつかない事態。急がないと取り返しのつかないことになる。取り返しのつかぬ悲劇を生む。覆水盆に返らず。死児の齢いっを数える。死んだ子の歳としを数える。 **はたせない【果たせない】** ▼果たせない(十が一をも。なかなか約束を。目的がなかなか)。しおおせずに帰ってくる。成功の見込みがない。達成が(おぼつかない。難しい)。達成は絶望的。ミイラ取りがミイラになる若竹。反乱が未発に終わる。▼未遂に終わる(クーデターが。計画が。強盗が)。 **ふごうかく【不合格】** ▼不合格になる(試験で。入試で)。試験に落ちる。受験にこける。一人も合格者がいない。不合格者を出さないための苦肉の策。惜しくも入選を逃す。二度のフライングで失格となる。失格する(反則をして。予選で。ルール違反で)。 **ふせいりつ【不成立】** ▼不成立に終わる(交渉が。大会が)。成立が(おぼつかない。困難視される)。▼成り立たない(暮らしが。論理的に)。成り立つ見込みがない。計画がお陀仏がぶになる。法案が審議未了で廃案になる。 **ふちゅうい【不注意】** 不注意から事故を起こす。不注意で茶碗を欠いてしまう。不注意に起因する事故。不注意を厳しくとがめる。へまをしない=有川。とんでもない〈まをやらかす。へまをする(とんだ。とんでもない)。どじな話。ぼかミスをしてしまう。とんでもないぼかをする。粗相も時の一興。自分の粗相を棚に上げる。とんだ粗相をする。知らずに粗相する。不手際(係の。政府の)。まわりに聞こえてしまり不手際な内証話"三島。不手際にけじめをつける。とんだ不手際をやらかす。 **まにあわない【間に合わない】** ▼間に合わない(母親の臨終に。約束の時間に。今さら後悔しても。はした金ではとても)。遅きに失する。焼け石に水。 **みおとし【見落とし】** 校正者の見落とし。見落としが(ないか確かめる。ないように再点検する)。多少の見落としは仕方がない。見落としを防ぐ。見逃しを(なくす。防ぐ)。注意したが目こぼしがあった。 **みかんせい【未完成】** 道徳的に未完成な人周高橋和。未完成に終わる。未完に終わる。未完の(作品。大作)。 **やってのける** ▼やってのける(奇跡の復興を。大胆な行為を。着実に仕事を。離れ業を。見事な転身を。芝居を上手に。ものの見事に。いとも軽々と。鮮やかな着水を。あらゆる工作を。狂暴な振る舞いを。綱渡りの芸当を。とんでもないことを。荒仕事を苦もなく。機に応じてすばやく。しらっとした顔で。何から何まで一人きりで。冒険を首尾よく)。▼やりこなす(長い仕事を。いろいろな役を)。 **やりそこなう【やり損なう】** 計算をやりそこなう。やりそこなって後悔する。何度やりそこなってもあきらめない。▼やりそこねる(改革を。配線を。ダウンロードを)。金を手にしそこねる。心中をしそこなう。▼かけそびれる(声を。電話を)。 <729> # 手強い・力強い **いさましい【勇ましい】** 勇ましい(雄叫性たび。武者ぶり)。勇ましく人生に乗り出す。胸を張って勇ましく歩く。▼勇ましさ(一身の利害を度外視して行動する"円地。骨がみりみり音を立てるほどの小島)。豪気な(性格。人)。比類なき豪勇の士。豪勇をもって鳴り響く。壮烈な(攻撃。最期を遂げる。強さに満ちる。力をみなぎらせる全身)。忠男な兵士。忠勇無双の戦闘精神。記憶に残る勇姿。勇姿に声援を送る。 **いさみはだ【勇み肌】** 勇み肌の(男。若者)。ねじり鉢巻をしたいなせな若衆。男気のある人。男気を見せる。義俠心が起こる。淡灰心にんに(駆られる。富む)。義心に駆られる。義心を汲くむ。心意気に魅ぃかれる。心意気を見せる。任俠心に富む男。任俠的な志気。侠気に富む。俠気のある男。俠気を発揮する。母親は酒も飲む、博奕ぶくも好きという鉄火な女池波。鉄火肌のお姐ぇぇさん。伝法认な(しゃべり方。口調で吐き捨てるように言う船山)。 **えいゆう【英雄】** みんなのために自分の生命を棄てる真の英雄池澤。英雄色を好む。不世出の英雄たる器量を具に『える=舟橋。英雄という常人よりひとまわり大きな人格「池澤。ユーカラの中の英雄の再現のような風貌"海音寺。英雄を美化して描く。神話中の英雄のような人物=海音寺。職場で英雄扱いされる。大げさに言えば英雄的な努力"中村真。おのれを犠牲にして他を救う英雄的な人々=中野美。各地に群雄が割拠する。▼ヒーロー(国際的な。社会的な。スクリーンの)。ヒロイズムに(駆られる。浸る)。ヒロイックな悲愴感心に、ぅに満ちる。 **おおしい【雄雄しい】** 雄々しい武者ぶり。強く雄々しい子に育つ。雄々しく闘う。若者が雄々しく彫像のように立つ三島。人生の風波に雄々しく耐える=岸田。雄偉な(体格。容貌)。富士山の雄姿を遠出する。 **かかん【果敢】** 果敢な体当たりを試みる。未来を望んで過去を顧みない果敢な態度"加藤。果敢に(戦いを挑む。新しいことにチャレンジし続ける=畑村)。 **かちき【勝ち気】** 勝ち気で(潔癖な性格。我がままな女。とこか寂しげなくせに勝ち気な美しい女平岩)。勝ち気にまかせて言いたい放題を言う?平岩。勝ち気を支えている柱が揺れる藤本。向こう意気の(荒い男。強い男)。▼負けず嫌い(根が。生まれつきの。人一倍)。負けず嫌いな(話しっぷり。気持ちを呼びさましす)。負けん気が(人一倍強い。むらむらと湧いてくる)。目にひたむきな情熱と頑固さと負けん気が閤の中の犬の眼光みたいにぎらつく=宮本輝。負けん気の強い物言い。 **がっしり** がっしり腕組みをする。がっしりと(たくましい男。土台を築く。四つに組む。構成された内容の本。低く腰を据える)。体をがっしりと受け止める。がっしりした(骨太の肩。館を構える)。大柄でがっしりした体格の男。がしっと(受け止める。組みとめる)。力強い腕でがしっと抱き上げる。 **がんじょう【頑丈】** ▼頑丈(雪崩が来てもびくともしないほど=泉鏡。ビルの足場みたいに"住井)。頑丈な岩山の洞窟。ステーキの山を登りバターソースの海を渡る頑丈な胃袋荻野。頑丈な引き締まった体つき。肩幅の広い頑丈な体つき。風邪などひきそうもない頑丈な身体つき。藤沢。頑丈に出来ている機械。厚いビニールで頑丈にくるんだ包み。頑丈一点張りのコンクリートのかたまり“畑。岩のように頑丈そのものに見える体倉橋。論文としての構成が堅牢=司馬。鉄筋コンクリート造りの堅牢な家。緻密にして堅牢な陣容をつくり上げる=村松。土台を堅牢に保つ。 **きこつ【気骨】** 気骨に(欠ける。富む)。気骨のあるまっすぐな性格。気骨校々101たる(慷慨家に粉が。人物)。▼硬骨漢(一本気の。熱血あふれる)。稀まれに見る硬骨の士。なかなか骨っ節がある。骨のある人物。 **きょうごう【強豪】** 強豪と対戦する。並み居る強豪を倒す。強豪同士が対決する。強者が弱者を併吞する。強者に挑んだせつない戦い武田秀。強者の旅を優先する。古豪と対戦する。 **きょうてき【強敵】** 強敵が面前に現れる。強敵との一大決戦。強敵にたじたじとなる。音然と強敵に立ち向かう。強敵を相手に(善応する。奮戦する)。 **ごうき【剛毅】** 剛毅な(気性。人)。精神の剛毅に打たごうきれる。剛直一徹な性格。誠実で剛直な人物。剛直に闘争を指揮する。剛直の士として聞こえた存在。 **ごうたん【豪胆】** 小心と剛胆が一人格のなかに複雑に絢ないまざる=司馬。物に動じぬ豪胆な人間奥泉。さながら火を吹くばかり意気きわめて凄封、まじかった剛胆な男児"山田美。豪胆さについて常日頃見栄を競う。豪胆さは余人の及ぶところではない。肝が(大きい。太い)。肝っ玉が(大きい。据わる。でかい)。肝っ玉の太い機略のすぐれた人物"子母沢。胆斗讼んの如し。胆ももが据わる。胆力が(大きい。据わった人)。肝の据わった人間。なかなか肝の据わった老人。肝のすわったような感情を押し殺したような声=飯田。 **こころづよい【心強い】** 心強い(仲間。味方)。グルーブの中に医者がいるというのは万一病人が出たときには心強い"平岩。敵に回せば面倒だが味方にすればずいぶんと心強い男"舟橋。心強く思う。鬼に金棒。一緒にいてくれれば心丈夫。心丈夫な跡取りができる。大丈夫だと胸を張ってみせる。大丈夫だよと力づけるように呟く=福永。百人力だ(加勢してもらえれば。力を貸してくれれば)。万人力を得た思い。 <730> # 手強い・力強い **さっそう【颯爽】** 颯爽たる町火消しの姿"網淵。颯爽と(身を翻す。往来を闊歩みっする)。新作をひっさげてさっそうと登場する。胸を張って颯爽と歩く。大股に颯爽と通りへ出ていく=佐藤愛。新品の背広を颯爽とまとう内橋。目の前を颯爽とツバメが過ぎる=伊坂。颯爽とした(生活態度を心がける。若者ぶりに目をみはる=なかにし)。颯爽として歴史の中央舞台に登場する=山田風。 **しぶとい** しぶとい(沈黙を守る。抵抗を続ける。下痢に悩まされる=池波)。しぶとく(生き延びる。口を割らない)。情感がしぶとく未練げにくすぶる。顔の皮戚がしぶとく厚くなる=吉行。雑草のようにしぶとく生きる島尾。 **せいかん【精悍】** 精悍な(脂ぎった表情。光が目から放たれる。苦み走ったいい男常盤)。瞳が精悍な光芒にらを放つ。いかにも闘志のかたまりといった日焼けした精悍な青年加賀。ドーベルマンみたいに精悍な男辻鸟。見るからに楷博そうな男。 **だいたん【大胆】** 大胆で勇気がある。大胆な(意見を述べる。行為をやってのける)。思い切った大胆な企画。子供や夫を棄てて他の男と駆け落ちできるほどの大胆な女"連城。短刀でひと突きするような大胆な物の言い方=中村真。沈着で大胆な行動の数々リ高橋源。大胆に(狙って攻める。結婚を申し込む。図案化された花模様の着物。論点を飛躍させる。自分の小心を認める!有烏)。瀬踏みをしておいてから大胆になる。想像力を大胆に駆使する=赤瀬川。▼気持ち(清水の舞台から飛びおりるような木山。高い崖から飛び下りるような石坂)。人の度胆にょを抜くような大胆さ=永井路。大胆さが影を潜める。大胆さに舌を巻く。毅然とした気品と大胆さを感じさせる=中河。大胆不敵な(行動。質周を発する。挑戦。犯行)。怪盗ルパンか怪人二十面相かというくらい大胆不敵に盗みをはたらく=宮本熊。思い切った(行動に出る。手段を講じる。手を打つ)。積極的に思い切った解釈を加える志賀。放胆で気ままな男。世を世とも思わない放胆な真似をする。興味に乗じて放胆に騒ぐ。 **たくましい【逞しい】** 「たくましい(骨組みが。炭かものように)。たくましい尻をばーんとたたく向田。がっしりとたくましい男の手。筋肉質のたくましい体つき。商魂たくましい店主。見るからにたくましい堂々たる男"山手。赤銅色礼いくとをした遅くしい男中島敦。夏草がたくましく生い茂る。世の中をたくましく渡る。雑草のようにたくましく育つ奥田。貧しいけれどたくましくおおらかに生きる=飯田。逞しく肉のついた煺もも『大江。▼一回りたくましくなる(肩が。胸が)。たくましくなる(もりもり。見違えるほどに)。すくすくと大木のように逞しくなる有局。あらわな首筋にたくましさが漂う。呆ぁきれ返るほどの頑健さを保ち続ける=里見。父親ゆずりの頑健な体格に恵まれる吉村。剛健な(気性。リアリズム)。質実剛健を旨とする。雑草のような根強さ逞しさ"高見所。壮健な(お年寄り。老人)。 **たのもしい【頼もしい】** 頼もしい(剛の者。父親のような男三浦米)。頼もしい(生い先が。行く末が)。頼もしくも優しげな夫の声。頼もしげな(重い言葉つき。雰囲気を醸し出す)。頼もしさ(五十がらみの老成した男のような“坂口。千軍万馬の古武士といった徳水)。頼もしさがひしひしと感じられる人。母親のような頼もしさで男の子を優しくいたわる=内海。火焰ふぇの中に仁王立ちになっている線まとい持ちみたいな姿死。百万の味方を得たも同然笹沢。 **ちからづよい【力強い】** 力強い(歩みを続ける。印象を残す)。声音が力強い響きを持つ。やけに力強い声で言い放つ。生まれて初めて大地を踏むような力強い感動で歩を運ぶ=山本点。快い力の充実をあおるように渓流が力強い音を立てて流れ下って行く=中村真。単純な力強い構成を持った風景・梶井。力強く(言い放つ。言葉を結ぶ。ビートを刻む。足を踏みおろす)。肩を力強く抱きしめる。簡潔に力強く描く。ぐいぐい力強く押す。はいと力強く答える。力強く響く(声が。言葉が。エンジンの音が)。言葉つきに腰を据えて遮二無二押してくるような力強さがこもる=勝目。ダイナミックな(運動。議論。スポーツ)。雄勁、いな(待祀。筆致。文章)。精神に雄勁な魂が息づいている三好京。雄渾らな(志。筆つき)。いずれ劣らず雄渾な姿。力感が(みなぎる。身内に充実する)。力感のあふれる作品。パワフルな(エンジン。吸引力。モーター)。バワフルに生きる。 **ちからもち【力持ち】** ▼力持ち(気は優しくて。日本一の)。緑の下の力持ちの地味な仕事。怪力(恐るべき。すさまじい)。怪力を(発揮する。振り絞る。目のあたりに見る)。 **てごわい【手強い】** 手ごわい(人物。底力を持つ。抵抗を続ける。敵)。あまりの手ごわさに気力も萎える。一筋縄で行く(女ではない。客ではない)。難敵が立ちはだかる。思わぬ雑敵が現れる。▼大敵(恐るべき。恐ろしい。油断は)。背後に大敵が控えている。人生は一筋縄ではいかない!鈴木光。一筋縄では行かない悪党。一筋縄では行かぬ(したたか者。人物)。一筋縄では(元に戻せないような複雑なねじくれ具合=藤田。ゆかない狐狸この類い=山岡)。 **どきょう【度胸】** 腕はくろがね男は度胸"福永。度胸が据わった人物。セールスの度胸がつく。度胸たるや満点。度胸のなさを見破る。持ち前の度胸のよさ。を食った度胸のいい男!舟橋。小さな身体に似合わぬ度胸の持ち主西木。面と向かって文句を言えるほどの度胸も思い切りもない椎名級。度胸を(決める。据える)。くそ度胸が(ある。つく)。おたおたしないだ <731> # 手強い・力強い-235 **ゆうもう【勇猛】** 美勇猛な戦いぶりを繰り広げる=栗木。勇猛の心を溶い起こす。精進勇猛の気を試すべき難行菊池。勇猛果敢な(働きぶり。武士)。勇猛果敢に戦闘する。苦境にめげない勇猛心。不退転の勇猛心が燃えさかる。勇猛ぶりを発揮する。 **りょうゆう【両雄】** 両雄(相対峙いたする。相見玆いえる。並び立つ。相対してにらみ合う。相見てたちまち意気投合する)。二枚看板で試合に臨む。双璧(政界の。門下の)。双璧と謳うたわれる。双撃をなす。竜虎両名を宿敵状態に追い込む。竜虎が(相打つ。並び立つ)。竜虎と称される二人。竜虎の(争い。戦い)。 **りりしい【楽楽しい】** 四肢がのびやかに発達したりりしい感じの若者=志茂田。凛々しい甲冑に身を固める。ハンサムで凛々しい男。そこらを澄み透らせるような凛々しい声=憾。凛々しく(指揮をとる。引き締まった声)。血色の良い頬が素朴な凛々しさをたたえている=檀。凜冽いんたる開拓の意志。つよい仮借のない凛冽な表情山本周。 **【凛と】** 凛と(張った背中。胸を張る。大きく目を見張る)。凛とした(美しい肖。気品が漂う。口調で言う。力が全身に張りつめる。響きを持った声。雰囲気を漂わせる)。犯しがたい凛とした顔。深雑な凛とした人格。胸のすく凛とした態度=山本周。みずからの道を凜として進む。横顔が凜として気品を湛たたえている。立ち姿が凛としている。楽々たる勇気が湧く。いる。立ち姿が楽としている。リンリンと四方にとどろく声=山本周。楽乎いんたる意気。楽平とした姿。凛然たる態度。無造作な構えの中に秋霜を思わせる凜然たる一脈のすごさがほとばしる=山手。凜然と(言い放つ。答える)。 **わんりょく【腕力】** 腕力が(強い。ものを言う)。腕力で(ねじ伏せる。あからさまに屈服させる)。腕力に訴える。腕力を振るう。腕っ節の強い男。喧嘩の腕っ節を買われる。筋力が衰える。筋力をつける。 **ふてき【不敵】** けのクソ度胸ができる飯田。途方もないくらいの巻度胸に氷を持っている柴田剣。不敵な(態度に腹を立てる。笑いを頬に刻む)。口元に不敵な笑みを浮かべる。瞳が不敵な光を放つ。限の底に不敵な猛々しい光が閃く=福永。放胆不敵な実践力に舌を巻く=柴田錬。 **ぶゆう【武勇】** 武勇で鳴る名門の当主。武勇に(すぐれた男。秀でた侍。かけてはおさおsa人に引けは取らない=福永)。武勇の誉れが高い。武勇をもって鳴る名鬥。縦横無尽の武勇を振るう。武勇伝を開かされる。武張ったことを好む。勇武をもって鳴る(港風。武将)。 **もさ【猛者】** ▼猛者(命知らずの。百戦錬磨の。歴代の)。猛者ぞろいの部隊。猛者ぶりを発揮する。千軍万馬の古強者。百戦錬磨の古強者。政界の古強者。歴戦の兵。一騎当千の(強者。古強者。勇士。若い武士の一団=井上靖)。一人千騎に当たる志士たち子母沢。 **ゆうかん【勇敢】** 勇敢な母親を畏敬の目で見る。捕り物の際の勇敢な働きぶりには同僚たちも一目置いている=池波。勇敢なる偉勲を奏した兵士。勇敢に戦う。武装蜂起に勇敢に参加する。新しい生活へ勇敢に進み出る=柴田翔。 **ゆうき【勇気】** ▼勇気(汚濁に立ち向かっていく。何物をも恐れない。冷や汗が出るくらいの三浦朱。野蛮なくらいたけだけしい=田辺)。勇気百倍する。勇気が(四肢にみなぎる。なかなか出ない)。土壇場で勇気が挫ける。やりおおせる勇気が出る。いざとなれば恐ろしくて勇気が萎える奥泉。一人だけ生き残っておめおめ帰る勇気が出ない!宮部。▼勇気が要る(言ってやった方が良いと信じながらも口にするには高橋治。相手が露ほども疑ってみないことを話すのには途方もない=高橋治)。▼勇気がない(口に出す。実行する。追及する。振り返る。主人に立ち向かう)。生きる勇気が湧く。みなぎるような勇気が腹の底から湧いてくる=本庄。新しい勇気が泉のように湧き動く海音寺。勇気と無線は背中合わせ"村山。憧れるひとの家まで出かけて行く勇気と行動力高樹。勇気に満ちる。優れた判断力と勇気に頭を下げる=畑村。昂然と胸を張り千万人と難いえも我れ往かんの勇気にあふれる=加藤。勇気の芽が顔をのぞかせる。勇気を(持って闘いつづける。振り絞って行動に移す"三浦し。ふるいたたせるように髪を揺すって微笑する森瑠)。明日への勇気をもらう。あらん限りの勇気を振り絞る。かなりの勇気を要する。たちまち勇気をとり直す。やけくその勇気を絞り出す。恐喝者に敢然と立ち向かう勇気を持ち合わせる貫井。広い視野と大いなる勇気を併せ持つ=海堂。勇気を出して(告発する。断みとどまる)。勇猛果敢のかたまりのような男=西木。勇気ある(決断。告発。発言)。勇気凛然やんとして出場する菊池。勇気凛々たる口調。▼勇にはやる(血気の。猪突もの)。▼勇を振るう(ありったけの。精進の。掉尾ぞうの。必死の。不退転の。暴虎馮河北うにひの)。勇を鼓して(デートに誘う。引き返す。暗い内部に向かって呼びかける)。勇気を奮い起こす。 **ゆうしゃ【勇者】** 勇者(凜々しい。気の狂いそうなつらさや悲しみに耐え抜いてそれに打ち勝って生きるのが=飯田)。▼志士(在野草莽にらの。殉国の)。▶勇士(百戦錬磨の。歴戦の。音に聞こえた大剛の井上站)。いかな勇士でも勝てない。死に急ぎは勇士のすべきことではない=山本周。 **ゆうそう【勇壮】** 勇壮な(踊り。行進曲。吠え声)。勇壮活発の気を送う。勇壮活発を誇る。勇壮剛健の兵士。無内容な勇壮さや剛健さを強調する萩原朔。深遠で力強い勇壮美。壮絶な(最期を遂げる。討ち死にを遂げる。死闘を展開する。バトルを繰り広げる=佐藤多)。壮絶きわまる闘いぶりを展開する。 <732> # 出しゃばる・慎む **えんりょ【遠慮】** 遠慮が(かえって悪い。心の底にわだかまる)。つい遠慮が出る。小さな遠慮が知らず知らずのうちにたまる=藤沢。遠慮のために筆が渋る。りに遠慮しいしい(食べる。話す)。▼遠慮する(公の場を。深夜の電話を。柄にもなく)。遠慮して声をかけない。遠慮しながら口を利く。伏し目がちに遠慮しながらぽつぽつと口を利く八谷崎。遠慮がちな(若い娘の声。厳をひそかに向ける)。遠慮がちに(口を挟む。声をかける。尋ねる。隅に腰を下ろす。ドアをノックする)。戸を遠慮がちに半分ほど開ける。どもどしながら遠慮がちに言う。遠慮気味に(言う。訊く)。あたりをはばかるような遠慮っぽいドアの叩き方=向田。 **えんりょなく【遠慮なく】** 遠慮なく(御祝儀を頂く。師に反問する。ずけずけと口を利く。突き通ってくる寒風)。注っがれるままに遠慮なく飲む。思っていることを遠慮なくずばりと口に出す”村山。遠慮なしに手を出す。誰に遠慮する必要もない。遠慮せずにとんどん食べる。遠慮には及ばない。遠慮のない(議論を交わす。質問。やりとり。悪口を叩く。言葉をぶつける)。のそのそと遠慮もなく大股で入りこんでくる=有鳥。遠慮や気兼ねはいっさい無用=笹沢。気兼ねは無用。人目もはばからず声を張り上げる。太陽が巡るもののない蒼空にはばかりなく上る=夏目。はばかる色なく言上する。思を改めるにはばかることはない"佐山。天下にはばかるところがない。誰はばかるところなく高声に語り合う。つかつかと(歩み寄る。入ってくる)。忌憚たなく(意見を交わす。調べ上げる。批評する)。忌憚のないところをお聞かせ願いたい荻て語りあう。酒を飲む。仕事に専念する)。節度もなく手ばなしで子供の自慢をする=田辺。子供のように手放しで泣く=大佛。手放しの(歓迎ぶり。喜びよう)。 **おくゆかしい【奥床しい】** 奥ゆかしい(気品。言葉づかい。人柄)。にぶく光って美しさが遠くからやってくるような奥ゆかしい感じの首飾り"灰谷。上品な奥ゆかしい細工。何という心憎い書き出し。 **おせっかい【お節介】** 好意と悪意とが半々にまじったおせっかい=原田康。おせっかいな(同情を寄せる。一言を付け加える)。非難のこもったおせっかいな視線を背中のあたりに感じる=宮本輝。ホテルのおせっかいなボーイのごとく説明する"野坂。おせっかいに腹が立つ。おせっかいを(迷惑がる。焼く)。他人の話に余計な口を出す内海。▼お世話(大きな。余計な。いらぬ)。賢さかしらに親代わりを買って出る。 **おめおめ** 今更おめおめ頭を下げられない。なんら成すところなくおめおめ帰国する"里見。一人だけ生き残っておめおめ帰る勇気が出ない高部。おめおめと(手をこまねいているはずがない。帰ることは業腹"なかにし)。今更のめのめと帰れない。四十面をさげてのめのめと詫もびられもせぬ!永井荷。身の恥をのめのめと明るみに曝さらされる芥川。 **おんしらず【恩知らず】** 恩知らずとののしる。恩知らずな振る舞い。恩知らずの泥棒猫『船山。犬猫にも劣る。禽獣嶋礼じに等しい存在豊田。獅子身中の虫。犬畜生にも劣る輩が熊谷。人面獣心の(悪魔。暴行犯。輩。連就殺人鬼)。人非人であることを恥じる。人間とは思えない人非人ぶりに中上。忘恩の(徒。そしりを免れない)。恩を仇ぁだで返す。恩を仇で返した人非人萩原案。恩を仇で報いる。親切を仇で返す。庇いきを貸して母屋を取られる。 **かいにゅう【介入】** 度を過ぎた介入は困る。政府関係が。談員が。警察が。権力が。政府が。第三者が。他人が。紛争に。他人の家庭の問題に)。何にでも鼻をつっこむ=飯田。 **かざらない【飾らない】** 飾らない素直な感想。ざっくばらんな飾らない人。できるだけ飾らない言葉で話す。素直で飾らない性格の持ち主=松岡。飾り気のない(女性。態度。部屋。装い。さっぱりとした風景小川)。飾りなく答える。飾りのない(真実。人柄。正直な書きぶりが胸を打つ=山本岛)。言葉に虚飾がない。見栄も扉飾もない。何一つ装飾がない。何の装飾もない平滑な扉。なんの装飾もない単調な構成"光涵。座ちりほども身なりをつくろわない!水井術。繕わない人の好さ。無邪気なつくろわぬ気品『太宰。気取らない(話し方。人柄)。気取りのない(自然さ。率直さ)。野人的に気どりげなく歩く佐多。 **かんしょう【干渉】** 親の干渉を嫌う。他人の領域に余計な干渉をしない公村。▶干渉する(他人の生活に。内政に。夫婦の問題に。両親が子供に。うるさく。とやかく。私生活にまで立ち至って)。皿付ふちを(受ける。加える)。 **きがね【気兼ね】** 近所に気兼ねがある。何かと気兼ねが多い。気兼ねする(周囲に。世間に。母親に。まわりに。あれこれ)。誰に気兼ねすることもない。左右に気兼ねして歩く。若い人に気兼ねして生きる。気を兼ねて言う。 **くちだし【口出し】** 下手な口出しは禁物。▼口出しする(実家の問題に。ひとの恋愛に。つべこべ)。自分の仕事に口出しされたくない。他人の口出しすべき問題ではない。▼仕事に口出しする(国が地方の。人の)。経営にくちばしを入れる。途中でくちばしを挟まれる。口を入れる(余計な。横合いから)。口を入れて妨害する。▼口を出す(たまりかねて。横合いから。老婆心から)。▼口を挟む(友達の生き方に。たまりかねて老人の介入を頑い欲に退ける鈴木吗)。▼介入する(外国)。 <733> # 出しゃばろ・慎む―237 **しっそ【質素】** 質素な生活を旨とする。気取りのない質素な靴。飾り気のない質素なベッド=小川。山家らしい質素な食事!堀。葬式を質素に行う。勤儉質素の美風を守る水井肌。 **しつれい【失礼】** 失礼な物の言い方。失礼にも程がある。失礼は百も承知でお願いする=高杉。失礼を詫びる。失礼千万な仕打ち。一足先に失礼する。一言の挨拶もない。礼儀に(欠ける。反する)。礼儀を(欠く。失する)。著しく礼に欠ける。ろくに礼の言葉も述べない。礼を失する。失敬な(言い分。言葉)。非礼な(言動。態度)。不敬な(言動。態度)。不敬を働く。無礼さに腹が立つ。無礼な(行為に及ぶ。扱いを黙認する今日)。無礼をかえりみず言わせてもらう。先日の無礼を詫びる。腹熟無礼しょんな(言葉つき。調子に閉口する。役人風の対応をする=篠田。やり方を詫びる高井)。殴戀無礼をきわめ感じが悪い態度!美濃部。不謹慎な(言い方。話。態度をたしなめる)。不謹慎のそしりを免れない。礼儀知らずな(人。申し出)。 **しょうこりもなく【性懲りもなく】** 性懲りもなく(悪事を重ねる。罪を繰り返す。下らぬ発明に凝る。あれこれ思い煩う三好京。脱走の試みを繰り返す大江)。懲りずに繰り返す。 **ずうずうしい【図図しい】** 図々しい(人は嫌い。振る舞いに及ぶ)。根が陽気で図々しい性格。無神経で図々しい物言い。無作法に図々しい商人の面構え木庄。図々しいにも程がある。いけ図々しい話題のそらせ方。図々しさ(あっけらかんとした。押しつけがましい。劣等感の裏返しの無神経な=奥野)。▼厚い(面の皮が。而皮が)。遠慮ということを知らない奴!永井態。平然と嘘がつける強心臓。心臓に毛が生える。強い(押しが。心臓が)。盗人猛々しい。野太く生きる。ちゃっかりした女。見かけによらずちゃっかりしている。分厚い面の皮を被る。厚かましい(自己宣伝。頼み)。あつかましいくせに憎めない男"田辺。軽薄とも思える厚かましさ"加賀。厚かましさが気に食わない。臆面のない嘘をつく。臆面もなく(娘を口説く。馬鹿話を吹聴し合う。悲鳴をあげて逃げる)。当たり前のことを臆面もなく言う(井上ひ。図太い神経の持ち主。誰も怖いものはないように図太く振る舞う。黒岩。思わず赤面するようなことを平然と言ってのける神経の図太さ"大原。底の知れない図太さが感じられる。ぬけぬけと(嘘が出る。たわごとを続ける。見えすいたお世辞を言う“石坂)。▼ぬけぬけと言う(思ってもいないことを。馬鹿にしたことを)。人を食ったようなふてぶてしい顔つき=井上萌。ふてぶてしいまでの押しつけがましさ。ふてぶてしく薄ら笑いを浮かべる=南条。▼ふてぶてしさ(自信とも挑戦ともとれる永井路。刑事に向かってふんと鼻先に冷笑を浮かべるような南条)。虫のいい(言い分。考え。空想を描く)。虫がよすぎる。 **ちょうはつ【挑発】** 挑発に(耐える。乗る)。▼挑発する(好奇心を。反乱を。野党を)。挑発的な台詞を投げかける。色っぽく挑発的な姿態。 **つつしむ【慎む】** ▼慎む(口を。軽挙妄動を。軽々な発言を。軽率な即断を。公私混同を。言葉を。声高な会話を。道楽放蕩らを。暴飲暴食を。身を。無謀な行動を。喪に服して。見苦しい振る舞いを。余計な口出しは)。慎みを(欠いた女。忘れた浅ましい声)。衷心から源惧する。自重を(勧める。忠告する。求める)。くれぐれも自重して行動してください。内田康。 **つつましい【慎ましい】** 慎ましい(結婚式。上品な女。笑い声を立てる)。つつましい幸せなんかクソ食らえ"大庭。慎ましくお祈りする。小さな花が慎ましく咲く。控えめに慎ましく生きる。慎ましやかな(媚態を示す。嫁)。まことに慎ましやかな夫婦。慎ましやかに(振る舞う。のどかな日をおくる=中)。粗食に耐える。 たように。取り成すように。見るに見かねて)。相手の勇み足を牽制断以するように口をはさむ村松。他人の家の内情に口を挿む熊谷。▼容喙いする(国政に。人事に。政治むきのことに)。横から口を挟む。差し出口を(きく。挟む)。▼差し出口をする(よけいな。いらぬ)。ちょっかいをかける。ちんぴらにちょっかいを出される=内田奏。女にちょっかいを出す。なるべく横槍にが入らないように布石も打ってきた三浦し。横槍をくれる。現場に横槍を入れる。一旦決めたのを横槍を入れて止めさせる="高井。 **けんきょ【謙虚】** 謙虚に(反省する。耳を傾ける)。現実に対して謙虚になる。▼謙虚に受け止める(警鐘を。批判の声を)。謙虚を傲慢にらにすり替える!竹西。遠慮深く(尋ねる。ほほえむ)。遠慮深そうに答える。 **けんそん【謙遜】** 謙遜な(言葉。態度)。謙遜は愛を拒む防波堤の有吉。▼顧みず(浅学非才を。身の不才を)。心ばかりの品。▼卑下する(己の資質を。実家を。自分を)。卑見を申し述べる。非才の身。常凡非才の人間。微力ながら全力を尽くす覚倍。微力を顧みず。不才の身を顧みず。謙譲の(精神。美徳)。蕪辞ぶじを(連ねる。呈する)。へりくだった気持ちで仕える。商人らしくへりくだって言う。どことなくへりくだった態度。 **さしでがましい【差し出がましい】** 差し出がましい(口を利く。指図。質問。振る舞い)。心へ差し出がましく押し入る。口幅ったい(言い方。ことを言う)。おこがましい(質問ですが。言い方)。問われて名乗るもおこがましい。 **さしひかえる【差し控える】** 差し控える(公表を。断定を。軽々しい発言を。それ以上言うことを)。▼節制する(酒を。標早を。欲望を)。▼手控える(貸し出しを。競争を。採用を)。▼控える(酒を極力。軽率に名前を口にすることを。余計な口出しを)。 <734> # **はじしらず【恥知らず】** 弟子の論文を横からかっさらうような恥知らずな真似ぇぇ!高橋克。恥知らずの女狐"船山。どの面下げて言えた義理か。厚顔無恥な非道な生活。鉄面皮な男。鉄而皮にもほどがある。破廉恥淡に成り下がる。とんでもない破廉恥な行為。 **はばかる【仰る】** ▼はばかる(本人の前を。世問への聞こえを)。世をはばかる身。▼耳をはばかる(師匠の。周りの)。あたりをはばかるように声を低める=火坂。辺りを憚るような目付き檀。人目をはばかるような話。周囲を憚るように声をひそめる夏樹。他人の目をはばかるように近づく藤本。はばからない(公言して。断言して。非難して)。 **ひかえめ【控えめ】** 控えめな(色香が漂う。静かな態。胸の膨らみ。縞柄紙注のネクタイ)。曇りのない、けれど控えめな微笑を返してくる三浦し。控えめに(口を挟む。親切を示す)。コロンが控えめに匂う。慎ましく控えめにしている。低い声音で控えめに笑う。いささかも驕ぉごり高ぶったところのない人物"池波。内輪に見積もる。自分の功を誇らない。 **ぶえんりょ【無遠慮】** 無遠慮な(品のなさ。視線にさらされる。目つきでしげしげと見る。笑い声を上げる)。強くて不遠慮な愛情のあらわし方太宰。朝の無遠慮な明るさ=黒井。廊下を駆ける無遠慮な子供の足音永井龍。無遠慮に(大声で喚ぁぁき散らす。嘲笑を浴びせかける。対手ぃぃを呑んだ口調。室生。女の腰に触れる=篠田)。好奇の視線を無遠慮に投げる=連城。煙草の烟けもを無遠慮に先生の顔へ吹きかける久米。遠慮もなく大口をあけて笑う。あたり構わぬ(大声。高笑い)。あたりはばからず(泣く。甲高い声でとなる)。ずかずかと(土足のまま踏みこむ。部屋に入ってくる)。狎れて礼を失する。ぶしつけな目で見つめる。ぶしつけに(じろりと眺める。ぬっと手を伸ばす)。 **ぶさほう【不作法】** 不作法な振る舞いが目立つ。エチケットに反する。作法も何もあったものではない。女性の年齢を問う。まるで礼儀作法を知らない。口は悪いわ礼儀は知らないわ若竹。悪い(マナーが。立聞きは喧嘩州んよりも行儀が落合)。不行儀な立ち居振る舞い。不行儀に伸びた庭木の枝。 **ぼうじゃくぶじん【傍若無人】** 傍若無人な(音を響かせる。振る郷い)。傍若無人に(いびきをかく。高声を発する。無頓着にふるまう)。山葡萄やまぶの蔓っるが傍若無人に道ょう。修羅場みたいに傍若無人に殴り合う横光。傍若無人の(馬鹿騒ぎ。やりたい放題)。目に余る傍若無人の言動。目くるめくような傍若無人の明るさ=武田泰。傍らに人なきがごとし。 **むしんけい【無神経】** 無神経な(口を利く。言葉を嫌むしんけいう。質問を恥じる)。がさつな無神経な言い方。無祁経なくらい押しが強い南条。無神経に同じお世辞を繰り返す。無神経さが(無性に腹立たしい。無闇と痛しょに障る)。厚かましいくらいに神経を使わない=大佛。神経が荒組でできている人"田辺。神経が丸太ん棒のように鈍感白井。神経をやすりですりおとしたかのようにひとの心をかまわない=野間。ずけずけと相手の胸の中に下駄履きのまま入りこんでしまっようなたち=永井路。惨めな暮らしを全く恥じない無神経さ=大庭。 **わがものがお【我が物顔】** 我が物顔で店に居座る。我が物顔に(わいわい騒ぐ。颯爽とロビーを横切る)。薔薇ばらの花がわがもの顔に乱れ咲く佐藤系。海を我が物顔に泳ぎまわる。強権を我が物顔に使う連中は大嫌い=泉災。軍隊が装甲車と機関銃で我が物顔に街を支配する=泉俊。 **わりこむ【割り込む】** 割り込む(隙がない。余地がない)。割り込む(行列に。話に。無理矢理に。列に。二人の間のやり取りに第三者が"池井戸)。はた迷惑な割り込み乗車。 える。粗衣粗食に甘んじる。つましい一生を送る。ささやかなつましい幸福"石坂。ままごとのようなつましい日々阿刀田。つましく(生きる。暮らす)。 **ていしせい【低姿勢】** 様もみ手さえしかねないほどの低姿勢佐々木。低姿勢で(応対する。臨む)。えらく低姿勢な男。低姿勢になって謝罪する。お互いが下手に出て相手を気遣う。妹分らしく下手に出る。下手に出た物言い。 **でしゃばる【出しゃばる】** 出しゃばった(態度。真似まねをする)。出しゃばって目障り。差し出たことをする。越権を非難する。ついしゃしゃり出る。あまりしゃしゃり出るものではない。情感ぜひな(言い方。振る舞い)。僭越のそしりを覚悟で言う。出過ぎた(行為。忠告。真似。料筒)。 **なまいき【生意気】** 生意気(新米のくせに。先輩に対する口の利き方がねじめ)。若輩のくせに生意気だ。生意気な(議論を交わす。口の利き方)。へんに老成ぶってなまいきな青年"田辺。大人を大人とも思わない生意気な口振り貫井。小利巧で生意気な顔をした女の子=遠藤。鼻持ちならない生意気な女=新田。鼻の先で生意気そうにせせら笑う谷崎。小生意気な口を利く。あどけなさと小生意気なところが混じった丸顔"佐藤愛。小生意気に帽子のつばを反らす徳永。利いたふうな口を(叩く。抜かす)。知ったかぶりを(並べたてる。振りまわす)。知った風なことを言う。はばかりながら短歌にはちょっとうるさい。半可通もいいところ。半可通を振りまわす。しゃらくさい(ことを言う。まねをする)。しゃらくさくて気に入らない。 **なれなれしい【馴れ馴れしい】** 友達のようななれなれしい口をきく=島崎。妙に馴れ馴れしい粘っこい笑顔「加賀。なれなれしく(肩を叩く。呼び捨てにする)。犬がなれなれしく鼻をこすりつける=大江。馴れ馴れしく握手の手をさしのべる"西木。 <735> # 照らす・照る-238 ## 照らす・照る **うすび【恋日】** けぶったような源日=里見。※日が差すような微笑を洩もらす人倉橋。曇った空から薄日がこぼれる。灰色の空からかすかに遯日が差す。濃い雲間から時折薄日が射すように少しずつ話が頭に入ってくる=飯田。初冬の午後の渉日が舗道の濡れた石を弱々しく照らす井上ひ。薄日の中に銀の粉を撒くような複雨ふかが散っている=船山。海が海日を受けて針のように光る=遠藤。睡眠が時雨空の薄日のようにときどきやってきては消えてゆく=梶井。 **かいちゅうでんとう【懐中電灯】** 犬の頭のように大きい懐中電灯=大江。洞窟では小さな懐中電灯でもシャンデリアのように明るい=畑。懐中電灯の明かりが飛びたった鳥のように急に松の幹から梢へ翔がける"三島。山頂を目指す懐中電灯の細長い列が点々とゆれながらつづく=飯田。闇の中に懐中電灯の光が大きく輪を描く=高木。懐中電灯を手にする。 **ごこう【後光】** 後光が射すように親切"渡辺。後光を(背負う。放つ)。青じろい雲がまるい環ゃになって後光のようにかかっている"宮沢。円光が差す。円光を負う。光背に包まれる。万波の光背を負う。山から光背のように夕日がさす=石田交。 **しょうめい【照明】** ほの暗い酒場の照明。照明が(輝ぐ。入る。舞台にあたる。まばゆくともる。研ぎ澄まされたように輝く。黒井。弾けているようにくっきりと見える=小川)。煌々にうとついていた照明が消える。場内の照明が落ちる。天井から美しい淡青色の照明が滝のように降ってくる=光瀬。真昼のような照明に輝く光瀬。眩まぶしいくらいの照明に照らされる"プ。▼ライトアップする(時計台を。夜桜を)。 **たいよう【太陽】** ▼太陽(うららかな二月の。かんかん照りの。煮えたぎって音を立てているような真っ赤な大きな永井恋。真鍮认;の喇叭。の響きのように鳴り渡る熱浩の三島)。太陽が(ぎらぎら光る。首筋を焼く。中天にある。雲の裏側に消える。雲問から顔を出す。刻々と高さを増す。じりじりと背中をあぶる。地平線に現れる。天空でぎらつく。ぽかぽかと暖める。一日中大地を灼ゃき尽くす=城山。翳かげつたように暗い色が顔に流れる=徳永。遮るもののない蒼空球にはばかりなく上る夏目。さんさんと光を浴びせかける=宇но利。その反映を赤い煙霧が漂うように直下の水に落とす三房。にょっきり顔を出し南国の強烈な真昼がうずうずして起き上がる=島尾。真っ赤な円形の炎になって地平の果てに沈もうとしている"城山)。初夏の太陽が背を焼く。真夏の太陽がじりじりと照りつける。厚い雲の向こうに太陽が白い盆のように浮く=高井。インクのしみのような太陽がわずかばかりの薄明を地上に投げる『福水。家屋の影から出て舗装路に立つと太陽が両手を一杯に広げている"原田宗。雲を割った太陽が眩まぶしいほどの光をさんさんと射かける=山本周。血痕のような太陽が雲に洗われて今にも消え入りそう~加賀。砂感じの中に真昼の太陽が黄色くぼっと滲にじむ=船戸。初春の太陽が薄ぼけた靄もゃをかぶって天心にある久米。線香花火の火玉みたいな真紅の太陽が海岸丘陵に落ちていく=奥泉。空で太陽が笑う灰谷、白熱の太陽がさんさんと降り注ぐ高田。焼けるような太陽が砂浜に映えている=加賀。お日さんが西へ沈むのと同じくらいに当たり前のこと=富岡。太陽が水平線に(没する。現れる)。▼太陽が照りつける(かっと。ぎらぎらと)。太陽が光の屑くずを放射状に振り撒く高樹。輝かしい太陽が光の箭ゃを投げかけてよこす島尾。旅人のコートを脱がせるのは北風ではなく太陽だ有川。夏の太陽で体がゆだるように本多瞬。太陽と友達にでもなったように晴れ晴れとした顔"徳永。太陽に(雲がかかる。祝福された野面)。裸体を太陽にさらす。太陽にさえ突っかかっていきそうなようすで反抗的に胸を反らす幸田文。太陽の形が雲ににじむ。ぼかぼかとした太陽の光に浴する。空がすっかり白い雲でふさがり太陽も大きな銀の盤のようにくもって光っている宮沢。まぶしいばかりの太陽を浴びる。体の奥の方が太陽を呑み込んだみたいに熱くなる=大原。焼いた固いバンの耳を太陽をでも嚥のみ込むようにまぶしく嚥のみ込む三島。夏の太陽のような烈はげしい恋"菊池。お天道様に私もの(下を歩く。罰が当たる)。かんかんとお天道さまの照っている歩道今乐。天日が燦爛んと光を放つ。天日で(乾かす。干し上げる)。オレンジ色の太陽が輝く。太陽がぎらぎら輝く。太陽が(きらきら輝く。空高く輝く。大きな空の宝石のように橙だいや緑やかがやきの粉を散らす。宮沢)。七月の太陽が融とけた水銀のように輝く安部。欲望を公然と認めて生きることは夏の海に輝く太陽のように明るい=柴田湖。 **つき【月】** ▼月(赤く汚れたいびつな-井伏。手が届きそうに鮮やかな=泉鏡。雲のかげからうすく光を投げている=伊藤路。雲の濃淡に従って光の増したり減じたりする=森陽。金色の油をといたような=林美。死神が手に持つ鎌のような細い"なかにし。水に船を浮かべて眺める!竹西)。月冴えて風清く。月が(湖面に浮いている。周期的に満ち欠けする。満ちたり欠けたりする。青い水のなかの刃のように澄み出る=川端。厚い雲の向こうにひそんで真珠色の光沢を雲の遠い縁に与える=大江。いまにも雲にのみこまれてしまいそう長崎。海に落ちて水面に揺れて輝く“伊集院。海の上を滑りながら潮風に揺らぐ=伊集院。オレンジのよう <736> # **つきあかり【月明かり】** 一面の朧ぉはろな月明かり=福永。月明かりが障子に映る。雲間からうっすらと月明かりがのぞく水倉。雲間から差しこむ細い月明かりが海の一部を銀色に染める落合。障子に青白い月明かりが落ちる!火坂。月明かりで(明るい夜。影がくつきりと地面に印される)。薄い雲を通した月明かりて森全体が陽炎分がのようにぼうっと青白く浮かぶ集合。雲間から射し込む細い月明かりに海の一部が金色に解き砕けた波頭が白く泡立つ=游合。 **つきのひかり【月の光」** ▼月の光(さやかな。やわらかな。皓々こうとした。透き通った。星影が霞むほど鮮やかな伊集院。のどかに照りわたる古井。水のように広がる=山田風)。月の光が(濡れた光を投げかける。思いがけない明るさでさしこむ!半村。川面にちらちらと動いて編み針のように入り交じる=岸田。鉱物質の硬さで樹木や敷石へ降りそそぐ=大江。静かにたゆたい落ちる久米。熱のない光線を入江の両岸に隈なる=林美)。顔を月の光が照らし出す。はらはらと月の光が射す。窓から月の光が差し込む。雨戸の節穴から凄すごいほど透き通った月の光がさし入る北村。清い月の光が抱擁するように満身に照りかかる=中。林の梢に砕けた月の光が薄暗い水に落ちてきらめく国木田。山の端はの月の光が水っているよう。国木田。冷えた大気が月の光にいよいよ冷たさを増すかのように輝きながら降りてくる=野間。月の光を(杯に酌む。背に受ける)。切っ先が月の光を浴びて光る。道沿いの細い水が月の光を砕きながら流れる=佐藤春。月の光のようにくまなく過去のことを告白する=白洲。朧ははに松の枝を通して射し込む月光"福水。月光が(地上を照らす。波にきらめく。道に散り敷く。皓々とあたりを照らす。こうこうと音を立てて野の上の家を青い光の底に沈ませる=川端。細流となって流れ落ちる=日野。マグネシュウムのように煌いらく長野)。どんよりと鉛色の月光が射す。和やかな月光があふれる。晩秋の月光が白々と流れる。青白い月光が夢のようにその辺の風物を包む志賀。微かずかな月光が城下の街を思絵のように浮かばせる菊池。窓からもれる銀色の月光が室内を水底のように浮き上がらせる=光瀬。淡い月光に包まれた冷たい夜。青白い月光に染まった透明な水の世界中島多。荒い浪が月光に砕けながらどうどうと打ち寄せる=梶井。涙が月光に白く光る=船戸。屋根が月光に濡れる三高。月光を受けて木の葉が銀色に輝いている三浦し。▼月光を浴びる(ひっそりと。月の光に重さを感じるほどに満身に光瀬)。月影が(梢を漏れる。さやかな夜。顔を照らし出す。朧に畳の上に射し込む=福水)。梢をもれる月影が物悲しい!白洲。しんしんと凍りつくような月能が空にはりつくような夜明け吉本。見上げる空に月影が浸みわたって暗い青が底知れず深い=真継。く振り濺そそぐ島尾。まばゆいほど硝子を光らせるにいとレモンの明るい灯明がともる=川端。真珠のようにひんやりと白く小さい光吉本。お月さまのようなお尻永倉。眼が冴え冴えと霜夜の月のように冴え切ってしまう福水。月食が起こる日時を予報する。月面を(撮影する。探査する)。女の肉体から妖艶な雰囲気が月暈んのようにほのめき出る=岡本。月がかかる(梢に。空に。宵の空に。天心に十六夜の)。皓々にらとして中天にかかる月。月が東の空にかかる。西の空に黄色い月がぼんやり懸かってふれている内田百瓦。皓々と白い月が照る=栗本。月が(さやかに照る。白々と照らす。水面を照らす。皓々と庭を照らす白洲。水平線を離れて銀色の光がちらちら揺れながら海を照らしている=村山)。白い月が山の端にかかり苔こけむした千年杉の樹皮をやわらかく照らす三浦し。まん丸の大きな月が出て夜の山道を行く俺たちを守るように照らす三浦し。に黄色い!大佛。暈がさをかぶりあしたの雨を知らせる=三島。川面に映り揺れている=辺見。きらきらと水草の中に砕ける=鈴木三。白くほっかりと陰翳かげを投げる=長塚。うらうらと靡いた霞の中にまるで爪の痕かと思うほどかすかに白く浮かんでいる芥川。渡船場の船縁にキラキラと美しく砕ける=田山。涙の残る目の中に二つになって揺れる"伊集院。花の色を微かすかに映してこの世のものとは思えぬ底光りのするような絢爛けんさ=曽野。紐もで繋ったがれたように太陽の後を追って沈む=大岡。真綿袋の間をゆっくり歩いていく=石森。稜線やいうから覗のぞき込むように現れる=大岡)。沖合の空に月が輝く。雲が切れて空に月が顔を出す。雲が流れて月が戻る。空に銀色の月が光る。赤味を帯びた月が雲のほころびから腹をのぞかせる!安部。女の耳の凹凸もはっきり形をつくるほど月が明るい=川端。風が雲を払い月が木の葉の影を窓に映す三浦し。鎌の形をした下弦の月が中空に舞台のバックのように釘付けになっている徳永。雲間から覗いた細い月が仄ほのかに青い二つの長い影を小路にょに落としている落合。耿々こうと月が冴えわたる=里見。冴えた丸い月が浮かぶ!半村。淡すごい速さで乱れ飛ぶ真っ黒な雲の切れ目から尖とがつた月がのぞく=日野。澄み切った月が暗く濁った燭しの火に打ち勝って座敷が一面に青みがかった光を浴びる!森殿。光の薄い月が微かな明るさを投げる円地。寝てしまうには惜しいほど月が綺麗"林美。月が雲に(隠れる。遮られる)。月が中天に達する。月が出る(山間がに。量をかぶった)。月が西に(傾く。沈む)。ゆらゆらと月がのぼる。月のない闇夜。鶏卵の黄味が赤みがかったような月の色"庄野。月の明るい(海。夜)。池に写る月を二尺の金鱗んの魚に見せる微風"川端。美しい月を愛ぁでながらの一夜の余興篠田。卒塔婆の前に十三夜の月を積み重ねたようにる <737> # 照らす・照る-238 **つきよ【月夜】** ▼月夜(玲瓏幼いたる。空が晴れて水のような=田山。提灯坊にらも要らないほどの『村上元。夜目にも腕なにげには人の顔が見分けられるほどの芥川)。月夜の明るさに似た寂しい生き生きした心もち芥川。頭の中が月夜の世界のようにひっそりと明るい=石坂。冷たく華やかな冬の月夜の眺め=石坂。寒々とした月光を浴びる。月に思き我が影を踏んで家路を辿たどる=二葉亭。すさまじく月の冴えた夜海音寺。萩の花がほの白く咲きこぼれる渉月夜菊池。腕月夜の中で濡れ濡れと静まり返る=隆。夜風に月影が湖面で揺れる『船戸。月影に剣の刃を閃ゆらかせる=福永。木の間を洩もる月影に秋が近いことを感じさせる=白洲。月影のさやかに照らす町二葉亭。川面いゃに月影のきらめく夏の夜真継。飛行船が淡い月影のように空を行くに吉本。水に映る月影のように捉えどころがない心獅子。 **てりかえす【照り返す】** ▼照り返す(海が夕日を。ガラスが光を。帆が日差しを。水溜まりに陽が。陽のあたる瓦屋根が油を流したように「高樹)。照り返す陽射しが肌を刺す。▼陽を照り返す(雪が。海が朝の)。鏡の上を歩いているような舗道の照照り返し=中村真。り返しが目に痛い。アスファルトの照り返しがきつい。舗装からの照り返しが熱気を強める=大変。照り返しで道が白く光る。顔が炎の照り返しで真っ赤になる辻身。紅蓮の炎の照り返しで水面が真っ赤に染まる=高千穂。舗道の照り返しで頭がくらくらする=ねじめ。朝日の照り返しに眼がチクチクとしみるような石だたみの道"長与。照り返しの眩まぶしさに目を細める=熊谷。雪の照り返しを受ける。照り返る(陽を浴びて。壁に電灯の光が。苦悩に満ちた意志がはげしい苦しい光を放つかのように苦悩に満ちた心に強烈に野間。潮に焼けた顔が銅色に=山本一)。コンクリートの床に初夏の光が眩しいほど照りかえる=小林多。川面から照り返る初日が目を貫く高村茂。反照する(朝日が湖面に。残雪が日光に)。 **てりつける【照り付ける】** ▼太陽が照りつける(梅雨明けのぎらぎらした=木山。連日のように暑い夏の吉村)。▼照りつける(暑い陽光が。かっと西日が。かっと夏の夕日が。真夏の陽射しが。太陽が真上から。太陽が高樹。灼ゃけつくような陽が山崎。太陽がぎらぎらとアスファルトに=船戸。暑い日がカンカン=椎名隣)。かんかん日の照りつける真夏。燦々と照りつける太陽の下。じりじり照りつける強い日差し。じりじり照りつける(太陽が。日の光が)。容赦なく照りつける(太陽が。日光が車の屋根に=高見湾)。 **てる【照る】** ▼照る(太陽が頭上に。陽がかんかん。焼けつくように日が。かっとした太陽光線が飢道に。七月の陽がぎらぎらと。初冬の陽光がやわらかく。陽が朝からきらきらと。赤熱した円盤のように愉郭のはっきりした太陽が"石坂。薄い灰色の中から鮮やかな青い空が見えて光線が涨ひたるように青葉に=田山。十月小春の日の光がのどかに=国木田。夏の陽がかんかんと子母沢。夕暮れの光があかあかと遠藤)。森閑として春の陽射しが照っている藤沢。▼照り映える(紅葉が。残映が雲に。若葉が日に。朝日が美しく。夕焼けが赤々と)。▼照り渡る(真昼の陽が。日の光がばっと。夕日が画ぇのように=田山)。午後の日が気だるく照りわたる藤沢。日照が日増しに長くなる。日時間が(長い。短い)。 **にっこう【日光」** 山に振りそそぐ秋の日光そのもののように花が光る=川端。日光が(燦々さんと降る。梢からすべり流れる。さざ波に乱反射する。窓いっぱいに射しこむ。関々ぜんと窓を射る=梶井。腫れただれたように目に泌しみ込む=徳田)。朝の日光が斜めに射す。じりじりと日光が照りつける。美しい午前の日光が葉をこぼれる=梶井。枝々を洩もれる午後の日光が道に網目に影を落とす石川。オレンジの混じった弱い日光がさっと船を漁師を染める=梶井。しっとりと落ち付いた空気を透して、日光が妙に肌膚へ揉。み込むように吸かでかつ暑い=長塚。波問に輝く日光が霧の中で五彩の光に反射する"外村。顔や肩へ木の間からチラチラと射すいっぱいな日光の歴咲く吉 **てらす【照らす】** ▼照らす(青い月が。月明かりが。提灯防いで足元を。月が浜辺を。陽が川面を。足元を明るく。やわらかな陽が。懐中電灯で室内を。強烈な光芒ぼうが道路を。ばっとあたりを。光がスクリーンを。ヘッドライトが闇を。日光がうららかに。朝日が屋根瓦を斜めから。あたりを限くまなく。裸電球がはんやり。横顔の鼻筋をすっきりと。赤みがかったぎらぎらした太陽が白樺の雑木林を踊るように林美。月が海を皓々こと=伊集院。光が足元を弱々しく小川。門灯が玄関先をわびしく“石坂)。街灯がぼうと照らす舗道。▼町を照らす(うららかな日が。潤んだような晩春の光が藤沢)。▼照らし出す(暗黒の奥を。日差しが庭を。赤々とした火が顔を。稲妻があたりを。世間のありようを。まばゆい光が室内を。頭から爪先まで。あたりをぼんやりと。さまざまな角度から。輪郭をおぼろげに=船戸。日の光が雪の峰をまぶしく火坂)。何カ所かに焚たかれた篝火が人々の笑い声を照らしだす三浦し。照射する(X線を。紫外線を。レーザーを)。▼照らされる(煌々と火に。かすかな名前かりに。ほのかな明かりに。真夏のような日差しに。街路灯にぼんやりと。顔の輪郭がくっきりと)。▶陽に照らされる(かっと。ぽかぽかと)。▼照らし出される(顔が炎に。庭が月光に。舞台が煌々と。ちろちろと瞬くろうそくの焰掘のに“江戸川)。光を当てる(心に。闇に。見せまいとする部分に容赦ない=黒井)。照明を当てる。光を手元に当てる。 <738> # **にっしょく【日食】** 日食が起こる。日食の時間を予言する。日食を観測する。黒い陰が事件の根にあるものを日蝕にしのように覆っている=勝目。 **はんげつ【半月】** 雲の切れ間から覗のぞいた白っぽい半月が道端の水たまりにかすかに揺れている落合。寒々とした半月が淡く照る"石川。半欠けの月。爪の色が見事な桜色で白い半月形がくっきりと見えている高橋冶。 **ひ【陽】** 釣瓶落としの秋の陽。陽が(かっと照る。強烈に照る。ぎらぎら輝く。空に居据わる。高く昇る。西に回る。ぱっと照る。窓に反映する。山陰に落ちる。山の際に移る。あかあかと照る。きらきらと輝く。さんさんと降る。次第に弱くなる。じりじりと照る。ひとしきり照る。ほかほかと当たる。まともに当たる。まぶしく暖かい。柔らかに落ちる。赤く海を染めて沈む岩。霞んだように衰えはじめる=黒井。だいぶ傾いて岩という岩が赤斑に影を刻む=福永)。街路に陽が降り注ぐ。雲の隙間から陽が漏れる。空に陽がある限り働く。長い髪に春の陽が光る。窓から斜めに陽がさしてくる。早春の陽が散っている寺の境内井上靖。春の陽が西の方に傾きかける。冬の厚い雲間を透し鈍色にびの陽がすすけた屋根屋根を照らす=黒岩。日が暖かに春をあぶる芥川。たっぷりと日が差し込んで明るい。暑苦しいような日が差し込む=徳田。午後のやや傾いた日が湖面に淡い明るみを流す=石川。雲のあわいからくるめくような陽が出る=宇野千。雲を引き裂いて日が昇る=山本足。高速フィルムを見るように急速に陽が傾く“松浦。じりじりと陽が照りつけるテニスコート=吉本。空一杯の雲がわずかばかり割れて陽がさす水上。庭いっぱいに暖かい陽が溢れる=山本周。野の果てに日が沈んでゆく三島。満面に燃える血の色をみなぎらせて大きなまるい陽が浮かぶ真継。陽がうららかに(輝く。照る)。陽が雲に(呑まれる。潜り込む)。▼陽が射す(雲岡から。ほかぼかと)。窓から真夏の強い陽が射し込む"さだ。陽に(かざして見る。さらされ風に枯れる。すかすようにして見る)。布団を陽に当てる。カンナの花が日に燃える三島。国旗がヒラヒラと日に光る=田山。七月の陽にあぶられた虚っっろな野が拡がる=大岡。蜥蜴忙かが日に光ってちょろちょろする=田山。▼陽に輝く(刀榆そうが。きらきらと。発灬らが降りそそぐ)。陽に焼けた褐色の肌。陽に焼けて色褪せる。陽の当たらない場所で生きる。机の上に白い陽のかけらがとびはねている=高樹。滲にじむような日の色がひろがる=大佛。昼間の日のほとぼりがまだらに道に残る=梶井。まだ日の高いうちに帰宅する=重松。わずかに空に残る日の色が薄い桃色に靄もゃを染める藤沢。雲が陽を遮る。背中に陽を背負って立つ。春のように麗うららかな陽を縁側一杯に受ける=海音寺。▼陽を浴びる(海が。梢が。裾野が。墓石が。山々が。さわやかに。全身に。うらうらとしたあたたかい本庄)。お日様が燃える宝石のように東の空にかかる。宮沢。 **ひざし【日差し】** 小春日和のちょっとけだるい日差し灰谷。四月初めの気だるいような日射し藤沢。秋らしい柔らかな澄んだ陽ざし=志賀。夕方の淡く滲にじむような秋の長い陽差し=小池。陽射し(灼ゃけつくような真夏の山崎。柔らかく粉のように白っぽい朝の=大江)。陽射しが(頭上に降りそそぐ。弾けてバルコニーが王冠のように光る=小川。牧草の湿気と香りをあたりに振り撒く泉侈。嶮ぼぶを射るように強い=篠田)。日射しが(ひところにくらべると幾分弱まる藤沢。無数の光の粒になって散乱する藤沢。柔らかく睡気出しを催させる=福永)。日差しが(ガラスの破片に反射してきらきらと眩まぶしく炊く=小池。木陰に無数の光の縞しまをつくる=小松左)。日ざしが(アスファルトの粗い面ではね返されて散乱する=日 **ひかげ【日影】** 日光をふんだんに浴びる。強力な日光を白くはね返す砂利道。芝生が日光をふんだんに吸う。空明かりが残っている。高い窓からルーベンスの絵のようにさしこむ日の光村上巻。石にしみるような陽の光高井。陽の光が(微細な粒になってほろほろと散ってきるような木洩こもれ陽"曽野。眼に鋭い刃のように突き刺さる=遠藤)。日の光が(目に突き刺さる。数知れず枝をさしかわしている低い灌木跡んの隙間をようやくのことで潜り抜ける=堀。黄いろく夕づく芥川。細かな埃児にのように音もなく大気の中を降る=村上糸。茂った枝の重なりに遮られる=かんべ。しぼむように心に影がさしこむ藤沢。投げつけるように枯木に等しい薔薇はらの枝に降りそそぐ、佐藤春)。川面に日の光が戯れる=光原。新緑を透した日の光が洪水のように一室に深めたり渡る=田山。夏の初めの白墨の粉のような日の光がちらちらちらちらと降る久米。横に射し掛かる日の光が凄い雲をやや和らげて天驚欲に旧のような滑らかな感じを与える=長塚。木の間を洩れる陽の光が池の水面に描かれる模様のように痙攣的けい試に揺れている=中村真。日の光に透かして見る。日の光を全身に浴びる。やわらかい日の光を浴びる。飴のごとく滑らかな日の光を受ける芥川。波が日の光を細かくくだき交錯する光と影を乗せて動く藤沢。直射日光を(浴びる。避ける)。灼ゃけるような直射日光。直射日光が背中を鞭打法もつ。真夏の直射日光が籬垣純に照りつける斎藤栄。日影が爽やかに畳へ射し込む人米。暑い日影がキラキラと校庭に照りつける=田山。うらうらと照る日影が人の心も筋も融けそうに生あたたか=国木田。曇空から時々思い出したように薄い日影が射す田山。名残の日影がやや赤ばんで射している=鈴木三。禿げた頭を薄い日影がてらてら照らす=田山。穂が日影に光る。きらきらした日影にきらめく庭"久米。 <739> # 照らす・照る-238 **ヘッドライト** ヘッドライトが(家の壁を削ぐ。地蔵堂の前を掃いて去る=新田。木々の間を縫って届いては消える=船戸。地獄の業火のように目の前で燃えさかる"小池。農家の横腹を燃やす「加賀。闇に陥ぉち込むように消える藤本)。戸外の闇を切り裂くようにして車のヘッドライトが近づく=西木。自動車のヘッドライトが僕の身体を洗うように次々に走り抜ける=福永。ヘッドライトの明かりに照らしつけられる霧雨が銀色の粒子を反射させて視界を塞ぐ=池井戸。全身がヘッドライトの輸に包まれる。車がヘッドライトの洪水となって迫ってくる=丹羽。車のヘッドライトが(鮮やかな光の川となって街から街へと流れる村上巻。皓々と周囲の闇を照らし出すぃ小池)。 **まんげつ【満月】** 満月が(下界を照らす。夜空に懸かる。中空に浮かび上がる。密雲を破って現れる。地上に光を注ぐあさの)。中天に満月が浮かぶ。満月に手を合わせる。満月の光が川向こうを仄ほのかに明かるませる=福永。顔を満月の光が照らし出す。座敷に満月の光が射しこむ。弓を満月のごとくに引き絞ってひょうと放つ="中島敦。春霞のかかった満月のようなおぼろに白い顔「宮部。満月のように円く白い顔獅子。竿さぁが満月のようにしなる火坂。陽の光が直視できるほど弱く紅い満月のように見える三島。ほぼまんまるな月。 **みかづき【三日月】** ▼三日月(鎌のごとく澄んだ"阿川弘。ほそぼそと霞を破っている芥川)。三日月が夜空に無表情に貼りついている=村松。山の背に三日月がかかっている。中天に爪痕のような月がかかっている!宮部。・眉は遠山の三日月眉毛落誇。 **めいげつ【名月】** 中秋の名月。中秋の月が申し分のない明るさで柳く=山本周。空に洗ったような月がのぼる良夜藤沢。澄みきった名月のような心境"山岡。 **ようこう【陽光」** ジリジリと音が聞こえるような午後の陽光=阿久。陽光が(ブラインドの隙間から射し込む。窓から射し込む。痛いほど眼底を射し貫く光瀬)。海面に明るい陽光が反射する。燦々さんと陽光が降り注ぐ。樹々の梢から陽光が縮しょをなして流れ込んでくる福水。初冬の午後の陽光がやわらかく照る"井上ひ。昼下がりの陽光が数枚の光の刃となって降ってくる高樹。分厚い雲の問から陽光が幾筋も降り注ぐ若竹。眩まぶしい陽光が木々のあわいから差し込む大岡。陽光に輝く夏の海。まばゆい夏の陽光につつまれる士村。陽光の輝きに白壁が美しく映える。強烈な陽光の下を歩く。目をそむけたいようなまぶしい陽光の五月の街へよろよろと足を踏み出す=山田太。陽光を跳ね返して艶やかに光る髪篠田。沖の雲の切れ目から赤味を帯びた太陽光線が細い光の筋になって海面に突き刺さる=西木。太陽の光がさんさんと降りそそぐ=高橋和。太陽の光を十分に吸い込んだ牧草の匂い=吉行。 **ライト** ライトが(ふっつりと消える。ぼうっと霞んだ幕のように拡がって近づいてくる=常盤)。看板のライトが派手に明滅している。車のライトが鼠ゆずのように桟橋から失せる"伊集院。ライトで鍵穴を照らす。ライトに目がくらむ。影がライトに浮かぶ。強いライトに目を射られる。ライトの中に前の車がはっきりと浮かび上がる三浦綾。まぶしそうにライトをよける。ベンライトで鍵穴を照らす=篠田。ライトが(天空に交差する。一二三本黒い丘のむこうからのび、だるそうにしかし素早く空を紙なめる=武田百)。サアチライトが乱調子に空へ光の筋を引く=林芙。サーチライトの強烈な光が夜空を切り裂く大原。 『津本)。朝の陽射しが(窓から射し込む。淡い水のように村をひたす―大江)。春の日差しめいた顔がにわかに怖い顔に変わる=倉橋。古ぼけた写真のなかに残っていたひなたのような弱陽好=梶井。野。土塀の肌にすっとしみこむ『日野)。秋の日射しが並木の上に踊るように輝く=高橋利。草地から跳ね返る日ざしがかすかに陽炎分泌のようにゆらめく=日野。秋の午後の白い日ざしが空にみなぎり鈍色にびの海原がまぶしくかがやく=真継。奥の部屋のまんなかに窓から鬱金にこの風呂敷きほどの日ざしがくっきりと落ちている三局。強い日差しが錐、』で揉もみ込むように照りつける=火坂。溶かしバターによく似た色合いの陽射しが降り注ぐ。宮部。夏が最後の力を振り絞ったかのような強い日差しが朝から照りつける=横山。冬らしくなった日差しが頼りなげに漂う=堀。暑い日射しが怒りをよけいに煽ぁぁり立てる藤沢。傾いた日射しがなだれこむようにさしこみ目も開けられないほどの光が溢れる藤沢。傾きかけた日射しが首筋を痛いほど焼く=中村真。夕暮れの日射しがはなやかな色を帯びる藤沢。差し込む陽射しが明るさを増す。残暑の陽射しが強い。落葉した銀杏いの枝の間から淡い冬の陽射しが漏れる=小林久。氷のようにきらきら光りながら陽射しが窓ガラスを照らす小川。七月の陽射しで路面が焼け燗ただれているように見える=伊坂。日差しに暖められて立ちのぼる陽炎柴田翔。静かな春の陽射しにうらうらとする=佐多。眩しい日差しに目を細める。落合。強い陽射しに炙ぁぶられる=桐野。眩しい日差しの溢れる庭黒井。鳥や花が春の陽ざしの中に酔う三好達。陽射しのぬくもりが風に流される"小川。立春にふさわしく陽が高くなるにつれて和んだ日射しをたっぷり見せる"河野。長い髪が背後の窓からの陽射しを踊るように弾く=原田宗。匂うような陽射しを浴びる=池田。陽射しを腕や顔にたっぷりと吸いこむ。冬の陽が時稀にに雲を覗のぞかして鈍い陽射しを投げかける徳永。柔らかな初秋の陽射しを浴びて歩いてゆく"さだ。明るい陽射しが(降りそそぐ。庭木の緑を浮き立たせる <740> # 出る **ころげでる**【転げ出る】布団の横に転がり出る。言葉が口から転げ出る。滑らかな舌から言葉がまろびでる=中。夢中で雨の中へまろび出る=船山。 **しゅつどう**【出動】▼出動する(救急車が。軍隊が。警察が。財政が。消防車が。除雪車が。白バイが。警備に。反乱鎮圧に)。いつでも出動できるようにしておく。出動命令が下る。正式に出動要請がある。 **すすみでる**【進み出る】▼進み出る(新しい生活に。一歩前に。恭しく。恐る恐る。しずしずと。一二三歩。マイクの前へ。円陣の真ん中に)。一気に駒を進めていく。中原へ駒を進める。つかつかと(前へ出る。間合いをせばめる)。▼打って出る(国政に。勝負に。新事業に。知事選に。反攻に。決定的な戦いに)。▼進出する(新しい事業に。海外に。決勝戦に。植物が陸上に。政界に。新たな技術分野に)。 **せき**【咳】▼咳(つぶやくような小さな小川。胸の臓器を全部押し上げて出してしまおうとしているかのような"梶井)。咳が(部屋に反響する。次々に畳みかけるように咽喉のとを襲う~高井)。こらえきれずに咳が出る。なかなか咳が止まらない。咳にむせる。咳の(音一つもない。発作に見舞われる)。痰たんがのどにからまったような切ない咳の音』向田。軽い咳を一つする。夜っぴて咳をし続ける。▼咳をする(苦しそうに。こんこん。むせぶように。わざとらしい。こほんごほんと)。息をひきつけるようなせき入る音野間。▶空咳をする(こほんと。わざと)。咳音机动ひとつしない静寂=阿佐田。くしゃみが出る。くしゃみをする(続けざまに。派手に)。 **せきこむ**【咳き込む】▼咳き込む(口を覆って。こんこんと。背を波打たせて)。ぐすぐすと苦しげにせきこむ=石坂。喘息でん患者のように咳きこむ大変。激しく咳き込む(ごほごほと。喘息の発作で)。むせて咳き込む(煙に。涙に)。▼咳き入る(苦しそうに。貧乏臭く)。 **せきばらい**【咳払い】乙う気取ったような咳払い宮本頁。森閑として咳払い一つ聞こえない!内田百。こほりと咳払いが聞こえる。▼咳払いする(不機嫌そうに。えへんと。こほんと)。軽く咳払いして先を促す。 **つきでる**【突き出る】海に突き出た岩場。空に突き出た尾根。ひときわ高く突き出た山。▼突き出る(怒りが。管が。腹が。頬骨が。梢が空に。岩礁が沖まで)。岩が海中に突出する。 **つつさき**【筒先】▼筒先(銃の。大砲の。ホースの)。筒先を空に向ける。▼吸い口(煙管の。煙草の。電気掃除機の)。火皿と吸い口をつなげる。ノズルが詰まる。ポンプのノズルに手をかける=篠田。ノズルを給油口にあてがう。 **で**【出】▼出(旧家の。月の)。水の出が激しくなる。出がいい(ガスの。乳の。炎の)。舞台への出を待つ。出が悪い(乳の。水の)。 **でいり**【出入り】時ならぬ出入りがある。人の出入りでいりが激しくなる。出入りする人を誰何がぃする。自由に出入りできる。出入り禁止を(食らう。解く)。出入り差し止めにする。 **でかかる**【出かかる】お決まりの台詞ざりが喉まで出かかる。喉まで出かかった言葉を(噛み殺す。こらえる)。口まで出かかった声を抑える。出かかった言葉を(とっさに飲み込む。喉の奥に押し戻す)。 **でたりはいったりする**【出たり入ったりする】▼出たり入ったりする(玄関を。座敷を。トンネルを。え室を。屏風がぶのかげを)。出し入れが面倒。出し入れに不便する。▼出し入れする(がま口を。筆を)。 **でっぱる**【出っ張る】▼出っ張る(頭が。おでこが。おなかが。腹が。木の枝が通りに)。出っ張りが(大きい。小さい)。海にせり出した岬。腹がせり出す。小さな突起が点々とある。突起で表面が覆われている。張り出す(枝が。高気圧が。半局が。頬骨が。家の軒から庇いきを)。秀でる(額が。眉が)。 **でていく**【出て行く】▼出て行く(静かに病室を。船が港を。一願もせずに。入れ違いに。客を尻目に。朝需訪心をついて。いそいそと。置手紙をして。先を争って。ついと立って。広い天地へ。ぶいと表へ。憤然として。回れ右をして。そそくさと玄関を。足音を忍ばせて。足早に公園から。追い立てを食らって。着の身着のままで。小走りに裏口から。邪険に押しまくって。捨て台詞を残して。取るものも取りあえず。逃げ出すように。荷物をまとめて。のそのそと廊下へ。パドリングで沖へ。ふいと風のように。ふてくされた素振りで。ぶらりとどこかへ。乱暴に部屋から。身をおどらせるようにして外に=野間)。▼部屋を出て行く(慌ただしく。急ぎ足で。どやどやと。のっそりと。礼をして。ぶつくさ言いながら)。手をつかねたまま獣のように出てゆく後ろ姿久米。列車がホームを滑り出てゆく。早く出て行けといわんばかりの口調。始終出て行けがしにあしらわれる。とっとと消え失せろ。扉の外を顎で指す。 **でてくる**【出て来る】▼出てくる(最近腹が。少し風が。次々と疑惑が。表情に張りが。復活の気運が。若き新鋭が。何も持たずに。一段と奥行きが。いろいろと差し障りが。顔に疲労の色が。書くものに艶が。気持ちに負い目が。仕事にリズムが。じわっと効果が。態度に落ち着きが。体力的に衰えが。通用口からぞろぞろ人が。方々に引っかかりが。しゃれた会話がふんだんに。小児性が表面に。勉強する気が猛烈に。誘いにのこのこと。問いが喉元まで。のっそりと部屋か <741> # 出る-239 **でない【出ない】** ▼出ない(ろくな料理が。声が自由に。あきれて声も。汗が一滴も。ぐうの音も。いくら考えても結論が。依然として人気が。いつまでも芽が。訊きくだけの勇気が。少女趣味の範囲を。家から一歩も外へ。結論がなかなか。部屋から一歩も)。▼域を出ない(結論が予測の。想像の。あくまで仮説の。ほとんど推測の)。▼声が出ない(驚きのあまり。しばし。喉が強張って)。答えが出ない(すぐには。どんなに考えても)。▼域を出ていない(思いつきの。推理の)。▼出てこない(肝腎の話が。答えが一向に。誰も。とっさに言葉が。ぐっと詰まってセリフが"戸板。話の糸口が思うように=有島)。▼出にくい(効果が。尿が)。▼出られない(出るに。みっともなくて客の前に)。欠場する(選手が故障で試合を。やむにやまれぬ事情で)。 **でいり【出入り】** ▼出入りする(大勢の人が。ひっきりなしに人が。胡散臭いさんい少年たちが店に内海)。よれよれのくたびれた老朽ビルに人びとが舟虫のように出入りしている=開高。 **でまわる【出回る】** ▼出回る(怪文書が。商品が。模造品が。類似品が。広範囲に。市中に。世の中に広く)。家庭に出回っている電化製品。▼出盛る(土筆いくが。みかんが。柿が秋に)。 **でる【出る】** ▼出る(勝ちの目が。辛からさにこくが。気から病が。声に弾みが。事故で死人が。前菜の皿が。肌に艶が。ぶくぶく泡が。やっと大学を。感情が表情に。記事が新聞に。効果がすぐに。答えが瞬時に。咳せきが連続的に。蛇足が口に。強い態度に。手荒い手段に。熱が突発的に。広い通りに。店の裏側に。顔がぬっと。一足遅れて。一足早く。一千万円の実損が。思わず身震いが。考えただけでもへどが。執行猶予の判決が。背中に冷や汗が。次々に新しい検証結果が。にょきっと竹の子が。喉を突き上げるように声が。ほろほろと涙が。本部長のお墨付きが。やりおおせる勇気が。笑うと顔に優しい表情が。生まれ故郷の町を。親戚を頼って村を。青雲の志を抱いて郷関を。次の電車が隣の駅を。インターチェンジで一般道に。大通りまで小走りに。思い切った行動に。怪しからぬ振る舞いに。小路から表通りに。個人差が如実に。作品が世の。食料品を買い出しに。多数の死者が一時に。反応が真正直に。久しぶりにふらりと遊びに。ひたすら下手に。ぶらりと散歩に。闇から明るみに。良かれと思ってしたことが裏目に。汗がびっしょり。裏口からこっそり。映画に端役として。おもむろにベッドから。話が誰からともなく、疲労が一挙にどっと。本心がそのまま言葉になって。ろくに洗いもしないで風呂を=長塚。我ながら年寄り臭い言葉が口から「篠田)。出る間際になって言う。右に出る者はいない。私の出る幕ではない。▼家を出る(少し早めに。両親と喧嘩かんして)。▼顔に出る(戸惑いが。酔いが)。言おうとすると涙が先に出る。▼外に出る(勝手口から。玄関から。制止を開かず。沈黙にいたたまれずに『篠田)。外へ出る(女の手を引いて。サンダルをつっかけて)。▶出そうになる(あくびが。ふっと涙が)。モグラ叩きのモグラみたいに顔が出たり引っこんだりする=小林伺。出ていきしなに言う。▼出ている(表情に焦燥が。下心が顔に。腹が少し。かねて手術の話が。虹がうっすらと)。▼出てしまう(つい手が。長男が都会に)。恐る恐る攻撃に出てみる。ぼつぼつ参加者が出始める。追っつけ結論が出るだろう。表情に影が浮いて出る。心の中に考えが浮かび出る。▼生まれ出る(生命が。技術は修練から)。一躍首位に躍り出る。根負けして折れて出る。門を駆け出る。▼買って出る(ガイド役を。嫌われ者を)。穴をくぐり出る。限界を越え出る。思わず本音がこぼれ出る。夜の街にさまよい出る。▼忍び出る(そっと庭に。闇にまぎれて)。ついしゃしゃり出る。凯く気はなかったのにつるりと問いが口から滑り出る=有川。香りが宙に漂い出る。▼立ち出る(緑側を。水車小屋を)。自分でも驚くような言葉が唇をついて出る=高見造。思わず激しい言葉が口をついて出る=阿木。確実な学問で衆に抜きん出る。うらめしやと化けて出る。挨拶にまかり出る。ふらふらと迷い出る。赤い肉がむき出る。思いつきが頭の片隅に湧いて出る。▼チェックアウトする(ホテルを。旅館を)。 **ふきでる【噴き出る】** ▼噴き出る(血が勢いよく。ホースから水が。経済構造の歪ゅがみが一挙に)。▼間断なく噴き出る(蒸気が。血が鼓動に合わせて=宮本輝)。吹き出る(額に玉の汗が。薬缶にゃから勢いよく白い蒸気が!森琉)。ぶつぶつと吹き出る(にきびが。いぼが)。▼噴出する(大量の煙が。全身から闘志が。積もり積もった反感が。バーナーから炎が。切り口からおびただしい血を。ボンブのように吐瀉物紀〜。が"三田。いい知れぬ不安が体の奥から=小林久。血がシャワーのように=栗本)。 **ほくろ【黒子】** ほくろを指で押さえる。黒子のような(斑点。青い小さい入れ墨「徳田)。黒子のようにぽっつりふくれる=小島。顔にそばかすがある。頬のあたりにそばかすが浮き出る。 **みさき【岬】** ▼岬(湾と湾の間に突き出た。水平線を狙みさきって海面に突き出している遠くの光った=横光)。岬が(灌木唸いに覆われる。湾内に突出している)。岬に砕ける波。ボートが岬に沿って走ってゆく。岬の突端を回る。海が岬の端はなを浸す。船が岬の鼻を過ぎる。岬のように平野に突き出した山塊"大岡。耳のように張り出した半島"大岡。半島の先端に位置する。洋にせりだしている半島の突端。 ら。募蛙ひががのさのさど。見送りに外まで。言葉が次々と機械が旋回するように=司馬。大選手が水滸伝讨心にの豪傑のように雲のように"大佛。不思議と言葉がすらすら=高井)。 <742> # 溶ける・固まる ## 溶ける・固まる **あぶら【脂】** ▼脂(顔一面に刷毛はけではいたようにへばりついている=宮本輝。冷えたロウのような三浦朱)。脂が(べっとりと付く。のったような肌藤沢)。顔に脂がぎらぎら浮く。鼻に脂がにじむ。頬にうっすら脂が浮かんでいる。毛皮から脂が溶けて流れじゅうじゅう音を立てて燃える=大江。脂がぎらぎらと浮いた(汗。額)。こってりと脂が乗る。脂の乗ったマグ口。脂で(べとべとする。唇がぬめぬめと光る。てかてかに固まる)。額が脂でてらてらと光る。脂に塩気がしみわたる。食欲をそそる脂のにおいが部屋の中にたちこめる三三田。脂の浮いた(顔。頬)。顔が脂で(ぎらぎらする。てらてら光る)。脂気をなくしたそそけ髪=向田。顔が脂っ気なく荒れる。はんなりとした脂身。脂身が多い肉。油脂を原料とする食品。脂ぎった顔が光る。精悍她心な脂ぎった表情。てらてら脂ぎった顔。脂切った精気でかがやくように見える顔藤沢。 **えきたい【液体】** とろろ汁のような粘りの強い液体原田完。液体がこぼこぼ音を立てる。がぼがほと液体が腹の中へ波を打って流れ込んで行く吉川。どろどろの液体が湧き出すように流れ出す志賀。温ぬるいむず痒がゅい虫のように生きている液体が噴き出す"吉川。気体と液体の分離が起こる。こぼこぼと液体の動く侘ぁびしい音=椀。羽音がしなやかな液体のように耳の奥の小さな管にまで染みとおる=小川。柔らかい優しい笑いが暖かい液体のように流れ出る“野間。 **かたこり【肩凝り】** 肩凝りに(苦しむ。悩む)。肩凝りを治す。肩の凝りが(おりる。解きほぐれる。とける。治る)。固くなっていた肩の凝りがすーっととけたような言い方"長崎。肩の凝りのおりたような声=川端。肩の凝りをほぐす。▼こりこりする(腕が。肩が)。 **かたまり【現】** 喉もとに熱いかたまりがせりあがってくる落合。いろいろな形をした雲の塊が日光にあふれてぎらぎらする空を動いてゆく=中。光が雲の細い隙間から一かたまりに流れ进曲にる佐藤巻。吹雪きこんだものが砂と一緒に良ゆずのようなかたまりになる=室生。草が一かたまりになって密生する。鉄の塊のような車西村。胸に火の塊のようなものがこみ上げる"宮本百。汚れた綿の塊のような薄白いふわふわしたもの内田瓦。団塊の世代。肉をブロックで売る。固体が(液体になる。溶ける)。 **かたまる【固まる】** ▼固まる(大枠がほぼ。一つに群れて。丸くなって。体がこちこちに。ばりばりと音がしそうに。青鬼赤鬼の中に取り巻かれた亡者のように一かたまりに"小林多。新政府の基礎が日毎に=本庄。拳を振り上げたままの姿勢で熊谷。さしもの柴崎も肝を冷やしたようで息を飲んで=有川)。相手の声が石に固まって口の中に押しこまれる!連城。家がごちゃごちゃと固まって建つ。イメージがいまだに固まっていない。花が固まって咲く。▼固まっている(一団の人が。ペンを片手に。一ところに人家が。仕事のことが頭の隅の方でまずそうなおでんのように=尾辻)。丘の蔭に押しひしがれたようにかたまっている小屋のような貧しい人家"日野。次第に気持ちが固まってくる。 **かためる【固める】** ▼固める(一族で役員を。厳重な警備を。厳重に周囲を。抗心の意思を。山中に根城を。辞職の意を。生活の足元を。防戦の備えを。休日を月末に。髪を整髪料で。内閣を自派で。配役を新人で。十重二十重に関所を。髪の毛をボマードで。クリーンアップを左打者で。経営庫を同族で。地位をがっちりと。カメのように身を=飯田)。▼決意を固める(不退転の一の。留学の。断乎ぶんとして初志を貫徹する=美濃部)。▼ほぞを固める(観念の。決心の)。嘘で固めた話。建設用地の地固め。▼突き固める(基礎を。土を。土台を)。▼塗り固める(入り口を。壁を。瓦を。内部を。漆喰で)。▼踏み固める(草を。土を。道を。雪を)。 **ギプス** 足のギブスが取れる。ギブスに覆われた足。左足を右へ左へ回そうとしたがギブスの中のように動かない=伊集院。ギブスをはめる。顔からすっと血の気が引いて石膏ざの顔のように表情が消える=日野。石膏を(固める。流し込む)。 **ぎょうけつ【凝結】** ▼凝結する(思いが。蒸気が急速に。一つところに。神経が凍てついたように徳永)。驚きに打たれて凝結したように突っ立っている芝木。静寂と寒気が身をつつみ時間も空気も凝結したよう加賀。▼結ばれる(霜が。露の玉が)。▼凝固する(血が赤黒く。周囲の空気が突然に=中村真)。▼凝固させる(びくりと身を。表情を)。 **けっしょう【結晶】** ▼結晶(愛の。汗と努力の。苦心の。人知の。血と汗の)。結晶が剣がれやすい脆もぅい岩質奥泉。悲しみが透きとおる結晶にかたまったようなきらきらしさ=円地。▼結する(塩分が。湯気が。欲望が。思いが言葉に)。窓ガラスに結品する氷紋が美しい三浦綾。美しい涙の玉をそうっとこのまま結晶させたい合崎。 **こうちょこ【硬直】** 全身の硬直がとける。泥遊びの快感で硬直がほぐれる=開高。▼硬直する(体が極度に。表情がにわかに。いいようのない恐怖に襲われて瞬周冷凍にかかったように全身が浅川、電気にかかったように顔や上半身が。阿川弘。顔が面のように=遠蔭。体が板のように"岡本。体全体が金縛りにあったように小林久。死体が全身丸太のように"海音寺)。体を硬直させ微動だにしない。硬直した心をときほぐす。足が硬直して動かない。 **こり【凝り】** 胸に固まっていた重たい凝りがほぐれて <743> # 溶ける・固まる-240 ゆく=円地。凝りを感じて首を回す。 **凝る** (首筋が。全身の筋肉が。肩や背中がばんばんに。頭のどこかが氷壁のように冷たく光瀬。脹脛は氷。が石のようにぃ山本周)。筋肉がかたく張る。 **こりかたまる【凝り固まる】** ▼凝り固まる(恨みが。嫉妬心が。執念が。宗教に。所有欲に。小さな我執に。憎しみに。被害者意識に。復讐しの一念に)。白く凝り固まった心が日とともに透きとおる=本庄。汗水が凝り固まって出来たような貯金"有鳥。凝り固まったような微笑久米。 **こわばる【強張る】** ▼強張る(顔中の筋肉が。緊張で手足が。笑う口元が。表情が急に。顔が緊張で。顔がさっと。屈辱感と怒りに表情が。しゃべり方が四角く“村山。頬が木枯らしに叩かれて冷たく“船山)。▼こわばる(棒を呑んだように軀が"大佛。首筋の肉が棒のように=小林多。両頬が板のように。安部)。顔に表情がなく花崗岩粉にぅのように硬ばる―清水食。辺りの光をすべて拒絶でもするようなこわばった表情=檀。お神楽のお面のようにこわばったご面相"小沢。笑いが頰にこわばった枠をつくって残る=伊藤菜。こわばった笑いを口もとに浮かべる後藤。顔をこわばらせる(緊張に。頭から水をかけられたように急に=長崎)。▼こわばらせる(悪事を答とがめられたように躰炒らを内海。痙攣心をおこしたように体を三浦米)。ぼっと火照ったようなこわばりが額から顔いっぱいに拡がる=黒井。身に眼には見えないこわばりの波が走る=黒井。皮膚の内がわに厚い層がこわばり始めたような冷たくよそよそしい顔「大江。 **しこり【病】** 焦りとも不満とも言いがたい妙なしこり三浦綾。首筋から背中に重いしこりが広がる。胸のしこりが解ける。胸の中にしこりが残る。心の中にずっうずくまっていたしこりが少しずつほぐれて行く宮尾。悲しさが暗いしこりと化す=萩原來。別れ際がすっきりしないと感情的なしこりを引きずる泉優。苛立ぶらちがしこりのように胸に残る=近藤。▼しこる(肩が。筋肉が。恨みが胸の中に)。 **しぼう【脂肪】** 白く濁った張りのない脂肪"小川。お腹の脂肪がたるむ。腹部に脂肪が集中する。脂肪に馬鹿にされているよう“阿木。筋肉が一つ一つ肌の上から数えられるほど脂肪の少ない人=森殿。中年の女性のような部厚い脂肪の層=畑。体に脂肪を蓄える。背の低い脂肪太りの女!森瑞。 **とかす【溶かす】** 溶かす(氷を。胸のしこりを。香りをぬくもりで)。▼溶かし込む(異文化を。砂糖を。味喰を)。溶き入れる(卵を。マスタードを。味噌を)。溶く(絵の具を。芥子ぃらを。小麦粉を。味噌を)。▼凍する(冷凍食品を。電子レンジで。冷蔵庫内で)。 **とけあう【溶け合う】** ▼溶け合う(二人の呼吸が一つに。お互いの心がしっくりと)。空と海とが霞むように溶け合う一線が何ひとつ遮るもののないゆるやかな弧"竹西。しどけなさと威厳とが溶け合ったしぐさ。不安と期待が溶け合った複雑な心境。溶け合って完全に一つになる。塔が背後の森と溶け合って立つ。空と水が溶け合って白っぽく澱ぃとむ=武田奏。仕事と楽しみとが渾然むんと一体になる。光が渾然と混じり合う。さまざまなジャンルが渾然一体となって共存する。憎しみと渾然一体となった愛=森现。青空が紺碧心礼の海と渾然一体となる。 **とけこむ【溶け込む】** ▼溶け込む(顔が暗闇に。光が青空に。山が霞に。丘陵の先が薄暗がりに。山容が圏の中に)。土地の生活に融け込む=獅子。暗闇の中に溶け込んでしまったかのように誰の眼にもとまらない"福永。快適さと美しさが融合されたデザイン。▼融合する(金属が。形式と内容が)。 **とける【溶ける】** ▼溶ける(氷が。雪が。山頂が薄明に。天地が灼熱いくに。光が海面に。空がうるんだ青に。の花の色が夕闇に。街が夕霧の中に。甘さが舌の上で。雪片が顔に乗っては。併がくたくたと。怒りが悲しみに=円地)。空に溶ける(水平線が。夕映えが)。闇に溶ける(声が。姿が。風景が。山の形が。雪が)。めくるめく炎の抱挑で体が蜜のように溶けて流れていく=阿刀田。こわばった筋肉がやわらかく溶けてゆく=吉行。体が溶けそうなほどいい気持ち三輪。溶けていくような陶酔感"高橋三。溶けるような安堵感她从どの中へ落ち込んで行く柴田翔。溶けるように(消えてしまう。優しい口調)。闇に溶けるように去っていく=乃南。楽しげに仲間に溶け入る。溶け入るように眠くなる。草が解けかかった雪の間から斑はだに露出する藤枝。▼融解する(氷が。食塩が。凍土が。氷河が)。溶解する(鉄が。氷河が。紙屑を。バルブを)。曇天の日は時間が寒天のなかで溶解してしまったよう池田。 **とろける【蕩ける】** とろける(身も心も。声が甘ったるく。どろっとした甘酸っぱさが口の中で=船戸)。口の中でとろけるうまさ。口の中へ入れると甘くとろける食べ物。とろけそうな(甘い笑顔。幸福感が包む)。考えただけでもとろけそうな気分。 **ひょうざん【氷山】** 氷山に船がぶつかる。氷山の(一角にすぎない。腹を船がかすめる)。水而下の氷山のような膨大な改良,高橋和。氷山のように頭だけ出して池に沈めてある石三浦哲。 **りゅうひょう【流氷】** 波の加減で噴水のようにしぶきをあげる流水=加賀。流水が(着する。小山のように盛り上がっている三浦綾。歯ぎしりして騒ぐ=加賀。不規則に重なり合いびっしりと沖のほうまでつづいている三浦綾)。岸近くに押し寄せられた流氷が薄緑色を帯びている三浦綾。氷が海を閉ざす。洗剤のあぶくのかたまりが流氷のようにひしめき流れてくる三浦哲。 <744> # 唱える・訴える-241 **いいぶん【言い分】** 言い分(おかしな。自分勝手な。もっともな。虫のいい)。言い分が(立つ。通る。たっぷりとある)。言い分に(一理ある。納得する)。むきになって自分の言い分に拘泥する=高井。言い分を(認めざるを得ない。無条件に受け入れる。胸に収めて黙っている)。而人の言い分を聞く。しぶしぶ学校の言い分を通す三島。▼言い条(不思議な。考えつめた果ての)。言い糸を(聞く。立てる)。▼御託を並べる(こ大層な。好き勝手な。あれこれ。くだらない)。 **うたう【謳う】** ▼謳う(観光立国を。薬の効用を。人権尊重を。平和の実現を。我が世の春を。憲法に戦争放楽を。紛争の平和解決を)。▼謳い上げる(基本的自由を。宣伝文句を。人間の権利を)。 **うったえる【訴える】** ▼訴える(思いの丈を。核廃絶を。戦争の恐怖を。平和の噂さを。身の潔日を。無実を。目が悲しさを。公の機関に。上司に。涙ながらに。必死に。人の虚栄心に。願かたりの罪で。声を大にして。心に強く。思慕を切々と。人権蹂躙心で。泣きの一手で。悲痛な表情で。名参毀損にくで。大げさに窮状を。客商売の労苦を。立ち去りがたい愛着を。真剣な目をして。誰にともなく泣いて。手振りを交えて。泣きそうな目で。堰せきを切ったかの如く東野)。▶声で訴える(引き気味の。泣きだしそうな)。痛切に訴えたいものを心の底に秘める!白洲。弱々しい未練いっぱいの訴え=梶井。訴えが胸に届く。切々たる訴えが耳朶しだにこびりつく=山田風。訴えに真剣に耳を傾ける。離婚の訴えを起こす。訴えるような(口ぶり。頼りなげな眼差し三浦綾)。疑わしげに訴えるような上目づかいをやめようとしない安部。訴えかける(願望に。心に。目に。意識の深いところに。大々的にテレビで)。直接胸の内に訴えかける言葉。真剣に訴えかけるような目つき=宮部。訴え出る(お上に。役所に。要路に)。誰一人として訴え出る者はいない。▶直訴する(会長に。社長に)。直訴に及ぶ。俺のよさを地道にアピールする作戦を実行中三浦し。民衆にアピールする力が乏しい荻原明。▼アピールする(自分の存在を。政策の違いを。大衆の感性に。民衆の心に。人間としての厚みを。生活苦を当局に)。告訴に踏みきる。告訴を(起こす。取り下げる)。告訴する(学校側を。万引きを。職権乱用のかどで。損害賠償を求めて)。告発する(痴漢を。横流しを。警察に。脱税容疑で。勇気を出して。詐欺にかけた男を)。内部告発で偽装が明るみに出る。不正をあばく。不正を暴露する。▼訴求する(商品の魅力を。性能を。安さを)。訴求力のあるコマーシャル。 **うよく【右翼】** 右提的な(素質。人々)。政党の右派。右派の論客。右派を形成する。 **こうぎ【抗議】** 強い抗議が続く。抗議に耳を(貸さない。傾ける)。抗議の(渦に包まれる。電話が殺到する)。あちこちから抗議の声があがる。黙ったまま両手がちぎれるほど全身を振って抗議の身ぶりを示す=黒井。人々が悲鳴に近い抗議の声をあげる=半村。この期にに及んでの抗議は論外"伊坂。条約を盾にとって粘り強い抗議を持ちこむ本庄。無言の抗議を理解する=桐野。抗議する(強硬に。厳重に。領海侵入に。冷静に。顔を赤くして。肩を怒らせて。口を尖らせて。声を感ゅらして。精一杯。つつましく。粘り強く。「武力をもって。弱々しく。ブーイングして判定しく。武力をもって。弱々しく。てに。口角泡を飛ばして)。抗議するように口を尖らせる=佐野。北の国ではどの樹も細く薄くはかない葉を抗議のように空へ向けて差し伸べる=中局み。抗議文を(突きつける。手渡す)。学校にねじ込む。▼物申す(市長に。首相に。知事に。お役所へ。一言)。 **さよく【左翼】** 左翼的な思想。共産主義思想を宣伝する=森安。共産主義を標榜する。政党の左派に属する。左派の論客。革新的な政治思想。社会主義建設を進める。社会主義の道を歩む。科学的社会主義を(発展させる。普及する)。 **じせつ【自説】** 自脱に固執する。自説を攻撃的にまくし立てる。権柄以ずくで自況を貫く鈴木三。攻撃的な物言いで自説を押し通そうとする=横山。▼自説をまげない(かたくなに。頑として)。管見を述べる。私見を交えずに経過を話す。自分の主義主張を通す。持論が顔を出す。持論を(実践に移す。展開する。滔々とうと述べる)。 **キャッチフレーズ** キャッチフレーズを考える。夢やロマンといった謳い文句で売り出す。どぎつい謳ったい文句を表紙に縦横に印刷した女性週刊誌"高井。ブロボーズの殺し文句が浮かぶ。殺し文句に弱い。 **けんかい【見解】** 見解が(一致する。違う。分かれる。真っ二つに割れる)。様々な見解が乱れ飛ぶ。見解に隔たりがある。見解の相違。格別これといった見解もない。専門家の見解を聞く。採決に先立ってのコメント。コメントに一理ある。所信を(述べる。表明する。披瀝ぇする)。信じるところを表明する。 **けんさく【献策】** 献策を受け入れる。販売促進について社長に献策する。建策が水泡に帰す。政府に建議する。建議を提出する。計画をトップに建言する。建言を(容れる。採用する)。建白書を提出する。政府に建白する。 **しそう【思想】** 思想が(世界を動かす。実を結ぶ。豊かになる。根底から変わる)。思想に培われた精神。自分の思想に忠実な人。着色した思想に身をゆだねる=武田爽。思想の種を蒔きき散らす。思想をコペルニクス的に転回する 萩原朔。思想的弱さを露呈する=熊 <745> # 唱える・訴える-241 坂。惨憺たる思想的貧困。思想的な窒息状態に陥る。イデオロギーが対立する。思潮(現代の。デモクラシーの)。かく鮮やかに新しい思潮に触れ得るのを感謝する=田山。 **しゅちょう【主張】** ▼主張(大上段に振りかぶった。筋の通った常識的な高井。具体的な数字で裏打ちされた=浅川)。双方の主張が平行線をたどる。これまでの主張と紫怪がとれる。大人が正規の手順を守るのは自分の主張に裏付けを作るため有川。両者の主張の調整に苦心する=船山。頑固に自分の主張を譲らない。感情や主張を婉曲にいきに表現する。ひとかどの主張を持つ。▼主張する(アリバイを。穏便な解決を。個人の尊厳を。身の潔白を。無罪を。有罪を。声を大にして。自信を持って。口角泡を飛ばして。一夫一婦の夫婦の道を=舟橋。会議で意見をはっきり三浦し)。主張するごが明確。▼権利を主張する(当然の。自らの)。▼力説する(心をこめて。唾を飛ばして。真剣な口振りで。熱っぽい調子で)。▼自己主張(浅い次元での。蚊の羽音くらいにしかならない!高田)。自分の主張を(貫く。通す。引っ込める)。▼自己主張する(隠然と。はっきり)。自分の意志を主張する。 **じょうぶん【条文】** 法の糸文に則る。条文を解釈する。法律の条文を暗記する。条項(会則の。法律の)。糸項が死文化する。条項を(改正する。廃止する)。 **せつ【説】** ▼説(あやふやな。型破りな。有力な。うさん臭い。見当違いの)。説が分かれる。諸々の説がある。説の正しさを立証する。説を(紹介する。立てる。唱える)。先人の説を祖述する。荒唐無稽な説をぶち上げる=横山。一説によると。一説を立てる。学説の当否を論究する。新たな学説を異端視する。諸説紛々としている。諸説が(入り乱れる。あって一定しない)。所説に(異を唱える。従う)。創見あふれる新説。単なる新説に終わってしまう。新説を(立てる。唱える)。学界の通説、通説を(疑う。ひっくり返す)。▼定説(学界の。歴史にまつわる)。定説をくつがえそうという意図を持っていない=加藤。まだ定説を見ていない。 **せんげん【宣言】** ▼宣言する(国交断絶を。条約の廃棄を。絶対恭順を。梅雨入りを。徹底抗戦を。非常事態を。一方的に離脱を。提案が採択された旨を。沈痛な面持ちで敗北を=赤瀬川。交渉の余地のない口調で有川)。緊急事態宣言を発令する。独立宣言を布告する。声明する(残留を。信念を。脱退を。非転向を)。声明文を読み上げる。▼宣する(アウトを。開会を。開廷を。休憩を。勝利を。絶交を。タイムを。流会を)。マニフェストに明記する。マニフェストを(作成する。まとめる。有権者に知らせる)。 **ていあん【提案】** ▼提案(理に適った。降って湧いたような)。提案が(功を奏する。すんなり受け入れられる)。提案に(異議を唱える。異存はない。応じる。賛成する。従う。同意する。反対する)。提案を(受け入れる。にべもなく却下する)。言下に提案を断る。▼提案する(議会の休会を。計画の中止を。方法を。具体的な施策を。取締役全員の退陣を)。▼発案する(企画を)。母の発案で家族旅行をする。筋の通った提言。提言を(発表する。まとめる。政策に反映させる)。▼提言する(再発防止策を。大所高所から)。 **ていき【提起】** ▼提起する(課題を。疑問を。公訴を。訴訟を。任務を。新しい経済の姿を)。提議する(法改正を。予算案を。立法化を)。 **となえる【唱える】** ▼唱える(異議を。祈りの言葉を。異論を。お経を。上官に異を。慎重論を。世界平和を。説を強硬に。ありがたいお題目を。異口同音に反対を。過疎からの脱皮を。罵言雑言沿うにに不服を。批判的な見解を。何事かを一心不乱に。一心不乱に神呪しんを杉本。赫々妙にとして世界に酒を=萩原朔。流れる星に願い事を三浦賀。鬥人が分かれて派を"池波)。呪文のようなものを声高にとなえる=平有。▼念仏を唱える(長たらしく。ぶつぶつと)。▼万歳を唱える(高らかに。誰からともなく=なかにし)。呪文でもとなえるようにぶつぶつ言う。石森。▼主唱する(憲法擁護を。市民運動を。自然保護運動を)。▼唱道する(核軍縮を。統一戰線を。復古主義を。平和主義を)。▼提唱する(学説を。革命路線を。人道主義の文学を)。▼首唱する(軍縮を。新説を。日本が原水爆禁止を)。進化論の首唱者。▼唱和する(祈りを。スローガンを。読経に。大声で)。万歳を三唱する。 **はたらきかける【働きかける】** ▼働きかける(カムバックを。周囲に。積極的に。能動的に。根気よく)。外交的な働きかけ。働きかけを(促す。強める)。触手を伸ばす。モーションをかける。担当者にアブローチする。工作が(軌道に乗る。功を奏する。失敗に終わる)。陰で工作する。工作を着々と進める。▼持ちかける(相談事を。巧みに。愛想よく。いろいろ難題を)。 **ひょうご【標語】** ▼標語(交通安全の。読書週間の)。標語を(掲げる。募る)。▼モットーにする(初心に帰れを。思いついたら即実行を『軍司)。▼スローガン(抽象的な。威勢のいい。とってつけたような)。「社貢献」をスローガンに掲げる。精一杯の声をふりしぼってスローガンを叫ぶ"三田。 **ひょうめい【表明】** ▼表明する(愛着の情を。引退を。決意を。闘いの継続を。反対を公然と)。意思を表明する(反対の。はっきりと自分の)。▼意を表明する(感謝の。恭順の)。▼表白する(自己の思想を。思想の根幹を)。 **もんだいていき【問題提起】** ▼問題提起(唐突な。鋭い)。考え方を問題提起する。過熱した世論や報道に一石を投じる=有川。命題を(掲げる。提起する)。議題が俎上にのぼる。問題を(提起する。提出する)。 <746> # 飛ぶ・弾む-241 **いっちゃく【一躍】** 一躍(有名になる。クローズアップされる。スターダムにのしあがる。天下に名を成す)。一挙に(勝敗を決する。信用を落とす。事情が好転する)。すべてが一挙に壊れる。一足飛びに大将になる。冬枯れから一足飛びに春になった部屋梶井。 **うちあげる【打ち上げる】** ▼打ち上げる(フライを。ぼんぼん花火を。夜空に向けて昭明弾を)。▼打ち上げられる(海藻が砂浜に。難破船の破片が海岸に)。「難破船の破片が海岸に)。フェスティバルが打ち上げ花火に終わる=篠田。 **おどりあがる【躍り上がる】** ▼躍り上がる(びょんぴょん。竿立だぉちになって)。児童にどのように躍り上がって欣は、ぶ菊池。躍り上がりたい気分。飛鳥のように跳躍する。身を躍らせる(空中に。火中へ。橋の欄干から。飛鳥のように)。 **おどる【躍る】** ▼躍る(体の全筋肉が。提灯ちに、が風に。大見出しが紙面に。体の中でびちびち血が長崎、船が不安定なビッチングに藤本)。言葉の座に魔がおどる=檀。心臓が焼き玉エンジンのように躍りはじめる=阿久。心躍るほどの期待をする。動感に(あふれる。欠ける。満ちる)。自由な躍動の気に欠ける。▼躍動する(心が。血が。大腿部の筋肉が。ふところの中の紙幣が水から上がったばかりの魚のようにイキイキと=安岡)。史上の人物が現実の人物のごとくに躍動するような文章"中局。 **か【蚊】** 蚊が(血を吸う。渦を巻いてうなりを立ててる=柴田剣。止まったほどにも気にしない!柴田翔。ブーンと鈍い音をして飛ぶ今日。わんわん云ぃって群がってくる谷崎)。耳元でうるさく蚊が唸っなる。夕暮れには蚊が忏に音を立てるほど集まってくる=田山。蚊に(食くわれる。刺されたほどにも感じない!内田康)。夢現)のようないらいらしい心を責め苛鈴ぃむように耳につく蚊の唸り声徳田。蚊の鳴くような(細い声。弱々しい声)。蚊をびしゃりと叩きつぶす。しくしく蚊のように泣く泉鏡。ボートが広い海の上に蚊のように小さくところどころに浮いている"大佛。心の底を棒ふらのような微小な疑問が閃06き過ぎる=宮本百。蚊取り線香に火をつける。蚊取り線香を焚たく。糸の先にゆわえた蚊トンボのように自在にたぐり寄せる「高樹。風や雪を蚊とんぼほどにも思わない海音寺。蚊柱が立つ。蚊遣りのにおいが籠もった座败。蚊遣りを(いぶす。焚く)。縞しまの股引%。きをはいた敵蚊やぶ!永井荷。 **が【蛾】** ▼峨(はたはたと舞いよってきた小さな山本周。褐色の厚ぼったい翅はねをふるわせる=中)。蛾が(明かりの周りを回る。ひらひらと舞う。木の葉のようにばらりと落ちる=川端。ばさりと音を立てて落ちる=堀)。巨大な峨が金粉をまきちらした後のように見える街"村上巻。娘の(巨大な群集が光をめぐっているように花が翅を広げて灯に透かされる"伊藤整。触角のような眉が高い額に迫っている=岡本)。一枚の朽ち葉みたいになった蛾の死骸"掘。地図がとてつもなく大きな峨の翅のように見える“福永。灯をもとめる岷のごとくさまよい寄る"里見。娘が檜皮色いだの小さい羽毛のような触角を突き出す=川端。秋口の蛾のようにうら淋しげにひっそりと立っている"大庭。季節はずれの娘のようにふらふらと吸いよせられる荻野。 **くうこう【空港】** 空港に着く。空の玄関口。坦々たる飛行場が遠くまで広がる。滑走路が眼下に迫る。飛行場の滑走路を思わせるほど広く平坦な路面"日野。飛行機が滑走路に(進入する。着陸する)。飛行機の滑走路のように空漠としてトリトメがない心持ち。安岡。 **こうもり【蝙蝠】** 夕方に飛び交う蝙蝠。蝙蝠が(軒低く飛ぶ。ひらひら舞う。垂れ下がって冬眠する)。コウモリの群れが魔法のジュウタンのように上空を渡る=本多勝。死んだ蝙蝠の翼のように黒いショオルを長々と垂れる=川端。闇の洞窟でコウモリのような暮らし方をする"大庭。黒い旗が闇の中で大きな蝙蝠のように羽ばたく徳永。交渉を持った女たちの名前が蝙蝠のように部屋を飛びまわる"辻井。男が蝙蝠のように袖を拡げて格子に掘っかまる=川端。長い靨すねを包んだズボンが蝙蝠のように踊る=福永。本が表紙を開いて夏の夕方に飛び交う蝙蝠のようにひらひらと宙へ舞い上がる井川。蝙蝠みたいに夜になるとあっちこっちへ行く梅本。 **そらとぶえんばん【空飛ぶ円盤】** 空飛ぶ円盤が飛び去る。空飛ぶ円盤に連れ込まれる。UFOが(上空から降りてくる。中空に静止する"かんべ)。UFOに連れ去られる。 **だんりょく【弾力】** 弾力がなくなってかさかさになる。ゴムまりのように弾力と丸みのある体高杉。弾力に(富む。満ちる)。撥はね返るように弾力のある若い女の身体=黒岩。体中の筋肉が弾力を失って伸びきったゴムのような感じになる=高村慈。弾力性に富む。マシュマロのように弾力性のある全身がかもしだす雰囲気に魅力がある女性=小林信。心が弾力性を失ったように固くなったみたいな重さを増す笹沢。弾力的に運用する。 **ちょう【蝶】** ▼蝶(花の香に酔う。秋の蝶という感じにしか受け取れない翅はぁも薄い力弱い!犬佛。芝居の雪に似た!水井能。翅をひろげた色とりどりの宮本輝)。蝶が(春風に舞う。ひらひらと飛ぶ。小さいゴムマリをはずますように嬉しそうにまた無闇とせっかちに飛び廻る志賀)。花を慕って蝶が飛ぶ。咲き乱れた牡丹心たの花に今も昔の夢に酔うかのように漫羽 <747> # 飛ぶ・弾む-242 の蝶が舞う“中。小さい白い蝶がしめった翅で草氷の上を這うように飛ぶ=林美。遠くから見ると白い蝶がたわむれているように見える軽やかな身のこなし=灰谷。蝶の羽搏はばきのように軽やかで可憐な愛撫"松浦。蜘蛛くもの巣にぶらさがった蝶の死骸のように外形だけ保って血も実体も失う遠藤。言葉がきざなうらぶれた老いた蝶の翅のようにひるがえる「大庭。桜吹雪がおびただしい数の蝶の乱舞に思える=飯田。詩語の一つ一つが蝶の拠を彩る鱗粉从のように配列されている三好達。地面に花びらが蝶の死骸のように散り広がっている=藤田。レストランのボーイが白い蝶の飛ぶように動きまわる=安岡。踏切の白い信号旗が汚れた蝶の羽根のようにひらひらひらめく椎名銭。花にたわむれる蝶は粉雪のように軽い"白洲。蝶々が(花に止まる。翅をはためかす)。花に蝶々が戯れる。蝶々の翅のような大きい襟"太宰。白い蝶々のような帆かけ船庄野。蝶々のように飛びあがり飛びくだるお手玉"中。着物の上前の裾が蝶々のようにハタハタと跳ね上がる八谷崎。三尺帯の結び目が蝶々のように華やかっ木山。体が蝶のようにくるくると回転する"遠藤。小さな白いエブロンをかけて蝶のように人々の間を往ったり来たりする今乗。とりとめもない考えをそこいらに飛んでいる黄色い蝶のようにさまよわせる=堀。肌寒い季節の中を薄倖の蝶のように悲しげに過ごす=阿久。春に浮かれる蝶のようにひらひらと町を歩く阿久。何処とこからともなく気軽な黄蝶が飛んでくる志賀。飛蝶のように軽がると舞い続ける=白洲。 **つばさ【翼】** 異様な魔物の沢が行く手を掠かすめてゆくような心地檀。死の翼が常に羽ばたいてやまない"福永。想像の姿が伸びる=藤田。鳥が翼を休める。鷗妙が水浴びをするみたいに細かく翼を震い動かす!阿部。▼翼を広げる(鳥の群れが。妄想の。孵化ふかした不安が大きく=笹沢)。翼を広げて空へ飛び立つ。大きな鳥が沢を羽ばたかせたようにズボンが空中に舞い上がる福永。想念が素早い小天使の拠のような軽やかさで意識をかすめ飛び去って行く!柴田翔。翼のように波打つ峰をひろげる連山藤沢。マストをかすめる鳥の翼のように大きな影が心を通り過ぎる"遠藤。屋根を退のように拡げたサナトリウムの建物"堀。山に鳥の翼のように影を落とす雲の流れ!遠藤。両手を翼のようにひろげる佐藤春。 **とばす【飛ばす】** ▼飛ばす(泡立った唾を。口汚い野次を。野卑な冗談を。刀を宙に。きびきびと指示を。できない学生を。ばちゃばちゃとはねを。ぴしゃっとしぶきを。びゅんびゅん車を。分からない所を。平手打ちを頬に。相当のスピードで)。声が風に飛ばされる。ともすれば突風に飛ばされそうになる。冗談を飛ばし合う。唾を飛ばすほどの語気で怒鳴る=三島。稿を書き飛ばす。▼蹴飛ばす(石ころを。椅子を)。蹴り飛ばす(戸を。猫を)。▼すっ飛ばす(車を。高速道路を)。邪険に突き飛ばす。▼投げ飛ばす(手裏剣を。棒を)。吐き飛ばす(痰呼吸比を。水を)。▼吹き飛ばす(いやな予感を。灰を)。ぶっ飛ばす(オートバイを。ホームランを。スポーツカーを)。一行読み飛ばす。笑い飛ばす(杞憂いを。ばかげた話を)。消防車から放水が始まる。燃え盛る家に放水する。 **とびあがる【飛び上がる】** ▼飛び上がる(ばっと。ふわりと。鳥が羽音を立てて。弩必死にはじかれたように芥川。身体が紙片試協のように=小林多。煮え湯を浴びた猫のように宮部。バネ人形のように座席の上で高橋知。約10~を思わせる身のこなしで客席から舞台へ森場。猿ほしのように素早く"福永。水鳥が一斉に羽ばたきをして"舟橋)。触れるとヤケドしたみたいにとびあがる=田辺。全身のばねを利かせて跳びあがる"石田衣。▼跳び上がる(ばねじかけのおもちゃのようにびょんと石森。ばねじかけの人形のように"あさの)。飛び上がるほど(あわてる。痛い。冷たい)。飛び上がって喜ぶ。恐怖のあまり跳び上がらんばかり倉橋。飛び上がりたいほど嬉しい。飛び上がるように起きる。飛揚する(心が。魂が)。▼ジャンプする(思いきり。空中高く。ヘッドスライディングのように=泉優)。ジャンプして(飛び越える。ボールに飛びつく)。 **とびおりる【飛び降りる】** ▼飛び降りる(馬からばっと。屋上から。荷台からひらりと。ベッドからびょんと)。とんとんと石段を片足で跳びおりる=高橋相。ひらりと猫のように飛び下りる=川端。清水の舞台から飛び降りるよう。 **とびかう【飛び交う】** ▼飛び交う(談場に怒号が。賑やかな声が。水鳥が海面を。声高な話し声が。さまざまな情報が。頭の上にクエスチョンマークが内田奈。頭の中に疑問符が=貫井。頭の中に黒い蝙蝠にけが無数に島尾。アキアカネがうるさいくらい灰谷)。飛びかう(考えが頭の中をちらちらと=柴田刑。甲論乙駁にうめん、意見がつぶてのように飯田)。 **とびこえる【飛び越える】** ▼飛び越える(国家の枠を。塀をひらりと)。▼飛び越す(柵を。手すりを。隣を。ひらりと。ひょいひょいと)。▼躍り越える(谷間を。峠を。薪の山を。ひらりと垣根を)。▼踊り越す(柵を。波が防波堤を。塀を)。 **とびさる【飛び去る】** ▼飛び去る(頭の上を鳥が。飛行機が遠く。瞬く間に歳月が。川面すれすれに。時に山鳩があわただしく“国木田。鳥がけたたましい鳴き声を残して"外村)。飛び去ってはまた舞い降りてくる。弾丸のように川烏分わがが飛び抜ける"梶井。 **とびたつ【飛び立つ】** ▼飛び立つ(次から次へと。鳩がぱっと。翼を広げて空に。鳩の群れが一斉に。ヘリコブターが空母から)。灰の中からフェニックスが翔とび立つ=開高。鳥が飛び立つ(木から。黒雲のように。羽ばたきの音を立てて)。ばたばたと飛び立つ(雉子きしが。白鳥が)。空港を離陸する(飛行機が。定刻どおりに)。▼発艦する(ヘリコプターが。戦闘機が空母から)。▼離着陸する(空港を。空母を)。ジェット機が滑走路を離陸する。 **とびつく【飛び付く】** ▼飛びつく(餌に。極端な結論に。ドアに。いきなり。隙を見て。ぴょんと。一も二もなく話に。不確かな情報に。誘いに双手をあげて。飢えた犬のように食べ物に阿久。熊のように凄すごい勢いで=梅本。組み打ちでも始めるように肩にどんと=石森。ジャーナリズムが恰好跡”の餌食として瀬戸内)。飛びついて無我夢中に抱えこむ吉川。顔をくしゃくしゃにして飛びついてくる落合。飛びつかんばかりの勢いで言う。宮部。タックルをかける。タックルする(足に。体に。猛然と)。 **とびのく【飛び退く】** ▼飛び退く(水にひらめく光のことく=海音寺。身をかわすように吉川)。飛びのく(致歩の距離を。びっくりして)。飛烏のように飛びさがる光瀬。飛びすさる(反射的に。一足後ろに。後へ後へと)。 **とびはねる【飛び跳ねる】** ▼飛び跳ねる(ぴょんぴょん。元気いっぱい子供たちが。言葉が景気よく)。釣り橋の鉄材が蛛手くもになって上を下へと飛びはねる=有局。心臓が飛び跳ねる思い=貫井。跳びはねる(声が苦しげに。バッタのように藤沢)。机の上に白い陽のかけらがとびはねている高樹。心の中ではいたずらっ気が跳びはねている=有吉。一歩ごとに飛び跳ねるような足どりで歩く古井。 **とびまわる【飛び回る】** ▼飛びまわる(寒風の中を。風に乗って。蠅はぇが唸うなって。頭の中で様々な考えが。娘が電灯の周りを。一日かけてあちこち。カラスが騒がしく三浦綾)。蝶が無閣とせっかちに飛び廻る志賀。蚤のがびょんぴょん跳びまわる"筒井。跳び回る(庭を。マットの上を。はしゃいで)。 **とぶ【跳ぶ】** ▼跳ぶ(兎約がびょんと。片足でぴょんぴょんと。忍者のように高だかと=飯田。飛烏のように横へ=柴田錬)。 **とぶ【飛ぶ】** 飛ぶ(鳥跡を濁さず。鳥を落とす勢い)。一飛ぶ(いろんな噂が。風で帽子が。厳しい叱責が。鋭い一喝が。揶揄ゃゅの声が。高い空を。遠い道のりを。ふわふわ空を。高々と宙に。弧を描いて。闇を縫って。勢いよくシャンペンの栓が。会場のあちこちから野次が。様々に臆測したデマが。海鳥が波の上を。ずいぶんの距離を。地上すれすれを。海面すれすれに。・があらぬ方に。細かい木屑が辺りに。地面すれすれに。話があちこちに。屋根すれすれに。虻ぁぶが羽音を立てて。枝から枝へ絞ほしの如く。上昇気流に乗って高いところまで。話が途方もないほうへ。ピーターバンのように宙を"石森)。▼間を飛ぶ(枝と枝の。星の)。かすめて飛ぶ(低く地上を。屋根を)。▼声が飛ぶ(厳しい。鋭い)。▼ひらひらと飛ぶ(嬢が。紙が)。ぶんぶん飛ぶ(蜜蜂が。虫が)。帽子が風で飛びそうになる。飛び続ける(力の限り。旅客機が巡航速度で)。飛んで火に入る夏の虫。娘が燭台処にくのまわりで飛び迷う山本周。機首を南にとる。飛ぶような大股で歩く=佐藤愛。飛ぶように売れる=高橋克。▼ちぎれ飛ぶ(ボタンが。雲が風に)。▼吹き飛ぶ(疲れが。不安が)。あっという間に金が吹っ飛ぶ。雪が空を舞い飛ぶ。▼乱れ飛ぶ(興奮した罵声が。さまざまな噂が)。翔かける(大空を。空を。宙を)。ジェット機が高度一万メートルを巡航する。滞空時間が長い。飛距離が(出ない。出る)。飛距離の長いホームラン。飛行に快適な日和。飛行する(大空を。高空を。低空を)。 **とんでいく【飛んで行く】** 飛んでいく(あらぬ方向に。風に吹かれて。煙がちぎれて。車窓越しに景色が。待ってましたとばかりに。鼻先をかすめて。放物線を描いて。矢も盾もたまらず)。手元を離れた糸先が蜂のように飛んで行く=伊集院。 **とんでくる【飛んで来る】** 飛んでくる(火の粉が。フックが額に。雨あられと。泡を食って。息せき切って。押っ取り力で。どこからともなく)。声が飛んでくる(威勢のいい。右から左から)。雨飛する銃火をもものともせず。弾丸の雨飛する中を進む。▼飛来する(ジェット機が轟々ごうと。矢が障子を破って)。敵機の飛来を愛戒する。 **とんぼ【蜻蛉】** 金色の稲穂が垂れる田んぼのうえを赤いトンボが群れ飛んでいる三浦し。水色の翅はねをきらめかせたとんぼの群れ"石坂。煙草の煙が糸トンボのようにすき間に吸い込まれる=伊集院。蜻蛉のように首を廻す。吉川。やんまが一匹止まって羽を山形に垂れて動かずにいる=森喝。赤蜻蛉仙跡とが燧石から打ち出される火花のように赤い印象を目に残して乱れあう有島。朱ザヤのような照りのある小がらの赤トンボ=山本有。赤とんぼが(秋を染める。すいっと飛ぶ。群れをなして飛ぶ)。艦載機が赤とんぼの群れのように頭上をかすめる=阿久。 **はえ【蠅】** 動きのにぶいまぬけな冬のハエ飯田。蠅が(天井にとまる。頭のまわりをうるさく飛び回る。黒い雪のように降り積もる=大江。眠たげな羽音をたてて飛ぶ遠藤)。真っ黒に蠅がたかる。ひしめく畑が逃終結が渡るように揺れて動く!大岡。畑のものうい羽音。冬の蠅の腹が紙継にょりのようにやせ細る=梶井。鉛色に光る蠅の腹部"高樹。ハエを追い払うような手つきでだめだめという仕草をする=西木。蝋をはたき落とすような仕草でつかんだ相手の腕をふり払う宮部。自分の頭の蠅を追え。殺虫剤を浴びて狂い死にする蠅のような苦しみよう倉橋。処のように(集まっている群集・遠藤。どこでも入りこむ“石坂)。さまざまの布切れが嘔吐はうにたかる蠅のようにあちこちに散乱している高橋知。男の視線がむさくるしい蠅のように女のまわりをぶんぶん飛びまわる=阿部。狡ずるそうな眼を光らせ手を蠅のようにこする=遠藤。羽をもがれた冬の蠅のように無力“村上卷。両手を蠅のようにこすり合わせる"小池。男は女を漁ぁきる蝠みたいなもの=石坂。うるさくつきまとう小蠅みたいにいつも近くにいる=高樹。焚くそに銀蠅がぶんぶんむらがる=木山。ひとつなぎに剥きあげた果物の皮を蠅取り紙のように垂らす逃城。独り身ということが蠅取り紙のように気持ちを貼りつける=連城。虻が窓際でゆるく円を描く。背に食いついている虻ぁぶを追い払う馬のように身体をヤケに振る=小林多。暗い気持ちが馬虻のようにしつこくからだにまつわって離れない!小林多。蛆うじがぼとぼと落ちる。男やもめに蛆がわく。区切られた寝床にゴロゴロしている人間が蛆虫のようにうごめいて見える=小林多。 **はおと【羽音】** 地底から風のように舞い上がってくる蝙蝠にけたちの凄すごい羽音=田辺。羽音がしなやかな液体のように耳の奥の小さな管にまで染みとおる=小川。蚊の羽音くらいにしかならない自己主張の島田。羽音を立てる(烏が。蠅はぇが眠たげな。心が自由に)。軽のワンボックスカーが蜜蜂の羽音のような音をたてながら走ってくる=西木。言葉がぶんぶん飛ぶ虹あぶの羽音のように近くなったり遠ざかったりする"久間。昆虫の羽音のように鈍い扇風機の音!大佛。低く唸ったる蜜蜂の羽音のように噺にききが絶えることなく聞こえつづける柴田翔。 **はじきとばす【弾き飛ばす】** ▼弾き飛ばす(吸い殻を。木片を。問題を。湯を。唾をぺっぺっと。声をゴムバンドのように空中に清水俊)。▼弾き捨てる(ガムを。錠剤を。たばこを。鼻くそを指先で)。 **はじく【弾く】** ▼弾く(パチンコの玉を。カードをばらばらと。名刺を指の先で。抜き身の刀がまぶしく陽を津本。指で額をビンと鷺沢)。▼算盤を弾く(必死に。細かく)。▼指で弾く(グラスを。写真を)。弾かれたように(お辞儀をする。立ち上がる)。はじかれたように(後ろを振り向く藤沢。ばっと起きなおって座る=石森)。全員が弾かれたように顔をあげる!奥泉。 **はじける【弾ける】** ▼弾ける(声が虚空に。顔に満足げな笑みが。わっと笑い声が。たががびしっと。何かが頭の中で。ばちんと音を立てて。笑いが再び咽喉のとに野上。闘争本能がばちんと=船戸)。燦爛笑んと弾ける午後の光。はち切れそうな水着がびんと弾けでしまいそう谷崎。はじけたように笑い出す灰谷。みずみずしいはじけるような生命の輝き=飯田。子どもたちが弾けるように歌う『灰谷。はずんだバネのように弾け上がる"小林多。弾け飛ぶ(ガラスが。削さゃが。ボタンが)。はじけ飛ぶように横倒しになる泉後。▼はぜる(ばちばちと火が。何かが体の中で)。 **はずむ【弾む】** ▼弾む(期待に胸が。我知らず声が。声が明るく。幸先がよいと心が。豊かな胸も肩も匂うばかりに=山手。体がゴム鞠まりのように藤本。心がゴムまりのように=壺井)。心が踊るようにはずむ福永。よく弾む胸。うきうきと弾むメロディー。勢いよく弾む(会話が。球が)。弾んだ声で答える。声がいまにも歌いだしそうに弾んでいる=灰谷。気分がひとりでに弾んでくる。うれしそうに声を弾ませて言う。問いに息を弾ませて答える。▼弾ませる(期待に胸を。はあはあ息を)。はちきれるような皮膚の弾み檀。気持ちに弾みが芽生える。表情に気の弾みが宿る。弾みをつけて椅子から立ち上がる。心が弾みを覚える。弾むような(身のこなし。足取りで出て行く=高井)。弾むように歩く(嬉しそうに。爪先立ちして)。会話が一向に弾まない。▼バウンドする(車体が。ボールが)。 **はち【蜂】** ぶんぶん大きな羽音を立てて蜂が飛びまわる眼蓋付高見原。刺されたようなはげしさで子供が泣き出す=杉本)。蜂の(唸、うぉりのような飛行機の爆音大岡。群れのようなブーンという鈍い電気音"村上春)。街頭の騒音が春の野の蜂のうなりのように遠くかすんで耳をこころよくくすぐる!宇野利。低い蜂の唸るような活気の無い声=田山。あれこれの話題の上を飛びまわる蜂のような快活さの中で食事が進む倉橋。蜂のように胴体のくびれた形のいいズボン姿の女"中村真。巣から分かれる蜂のようにいずれ子供は離れて行く島崎。花にむらがる夏の蜂のようにワアーッと歓声を挙げる=中島坂。蜜に群がる蜂のようにたくさんの男のファンがいる娘"石坂。蜂の巣でも突いたようにわっと大勢の空気がどよめく=吉川。蜂の巣を(つついたみたいに騒々しくなる=辻真。伏せたようなこんもりとした小さな島"大庭)。敵の陣営が蜂の巣をつついたように混乱している=井上靖。蜂の巣をつついたような(大騒ぎ。喧騒础认)。先の尖った挙で蜂の巣みたいな穴をあける=宮本畑。銃弾を蜂の巣のように浴びる藤本。蜂の巣状に銃弾が撃ちこまれている=辺見。菜の花の蜜の緑っぽい匂いが蜜蜂の巣箱の辺りに馥郁心くと香り立つ『有吉。蜜蜂が群がりぶんぶん唸り声を立てる=掘。琥珀色に沿くをした蜜蜂の群れが壊れたラヂエタアのように気怠けだい羽音をたてて飛び交う長野。 **ばった** ばったがぴょんぴょん跳ねる。後肢誌にをもぎ取られて地面に腹道似。っているバッタに似た形をした貨物船直行。バッタのように(なった手。頭を下げ続ける=山崎。ひっきりなしにお辞儀をする=大庭)。イナゴの大群が通り過ぎた跡のごとく食物という食物が喰いつくされて青草一本残されぬ有り様奥泉。ブーイングが百万のイナゴの大群の羽ばたきのように藤弘とく=宮部。イナゴみたいにあちこちを飛び歩く富岡。両膝をあげていなこのように床を蹴る=山岡。蜂にでも(整されたみたいな腫れぼったい <748> # **とびまわる【飛び回る】** ▼飛びまわる(寒風の中を。風に乗って。蠅はぇが唸うなって。頭の中で様々な考えが。娘が電灯の周りを。一日かけてあちこち。カラスが騒がしく三浦綾)。蝶が無閣とせっかちに飛び廻る志賀。蚤のがびょんぴょん跳びまわる"筒井。 **とぶ【跳ぶ】** ▼跳ぶ(兎約がびょんと。片足でぴょんびょんと。忍者のように高だかと=飯田。飛烏のように横へ=柴田錬)。 **とぶ【飛ぶ】** 飛ぶ(鳥跡を濁さず。鳥を落とす勢い)。一飛ぶ(いろんな噂が。風で帽子が。厳しい叱責が。鋭い一喝が。揶揄ゃゅの声が。高い空を。遠い道のりを。ふわふわ空を。高々と宙に。弧を描いて。闇を縫って。勢いよくシャンペンの栓が。会場のあちこちから野次が。様々に臆測したデマが。海鳥が波の上を。ずいぶんの距離を。地上すれすれを。海面すれすれに。・があらぬ方に。細かい木屑が辺りに。地面すれすれに。話があちこちに。屋根すれすれに。虻ぁぶが羽音を立てて。枝から枝へ絞ほしの如く。上昇気流に乗って高いところまで。話が途方もないほうへ。ピーターバンのように宙を"石森)。▼間を飛ぶ(枝と枝の。星の)。かすめて飛ぶ(低く地上を。屋根を)。▼声が飛ぶ(厳しい。鋭い)。▼ひらひらと飛ぶ(嬢が。紙が)。ぶんぶん飛ぶ(蜜蜂が。虫が)。帽子が風で飛びそうになる。飛び続ける(力の限り。旅客機が巡航速度で)。飛んで火に入る夏の虫。娘が燭台処にくのまわりで飛び迷う山本周。機首を南にとる。飛ぶような大股で歩く=佐藤愛。飛ぶように売れる=高橋克。▼ちぎれ飛ぶ(ボタンが。雲が風に)。▼吹き飛ぶ(疲れが。不安が)。あっという間に金が吹っ飛ぶ。雪が空を舞い飛ぶ。▼乱れ飛ぶ(興奮した罵声が。さまざまな噂が)。翔がける(大空を。空を。宙を)。ジェット機が高度一万メートルを巡航する。滞空時間が長い。飛距離が(出ない。出る)。飛距離の長いホームラン。飛行に快適な日和。飛行する(大空を。高空を。低空を)。 **とんでいく「飛んで行く」「** 飛んでいく(あらぬ方向に。風に吹かれて。煙がちぎれて。車窓越しに景色が。待ってましたとばかりに。鼻先をかすめて。放物線を描いて。矢も盾もたまらず)。手元を離れた糸先が蜂のように飛んで行く=伊集院。 **とんでくる【飛んで来る】** 飛んでくる(火の粉が。フックが額に。雨あられと。泡を食って。息せき切って。押っ取り力で。どこからともなく)。声が飛んでくる(威勢のいい。右から左から)。雨飛する銃火をもものともせず。弾丸の雨飛する中を進む。▼飛来する(ジェット機が轟々ごうと。矢が障子を破って)。敵機の飛来を愛戒する。 **とんぼ【蜻蛉】** 金色の稲穂が垂れる田んぼのうえを赤いトンボが群れ飛んでいる三浦し。水色の翅はねをきらめかせたとんぼの群れ"石坂。煙草の煙が糸トンボのようにすき間に吸い込まれる=伊集院。蜻蛉のように首を廻す。吉川。やんまが一匹止まって羽を山形に垂れて動かずにいる=森喝。赤蜻蛉仙跡とが燧石から打ち出される火花のように赤い印象を目に残して乱れあう有島。朱ザヤのような照りのある小がらの赤トンボ=山本有。赤とんぼが(秋を染める。すいっと飛ぶ。群れをなして飛ぶ)。艦載機が赤とんぼの群れのように頭上をかすめる=阿久。 **はえ【蠅】** 動きのにぶいまぬけな冬のハエ飯田。蠅が(天井にとまる。頭のまわりをうるさく飛び回る。黒い雪のように降り積もる=大江。眠たげな羽音をたてて飛ぶ遠藤)。真っ黒に蠅がたかる。ひしめく畑が逃終結が渡るように揺れて動く!大岡。畑のものうい羽音。冬の蠅の腹が紙継にょりのようにやせ細る=梶井。鉛色に光る蠅の腹部"高樹。ハエを追い払うような手つきでだめだめという仕草をする=西木。蝋をはたき落とすような仕草でつかんだ相手の腕をふり払う宮部。自分の頭の蠅を追え。殺虫剤を浴びて狂い死にする蠅のような苦しみよう倉橋。処のように(集まっている群集・遠藤。どこでも入りこむ“石坂)。さまざまの布切れが嘔吐はうにたかる蠅のようにあちこ羽ばたきの音を立てて)。ばたばたと飛び立つ(雉子きしが。白鳥が)。空港を離陸する(飛行機が。定刻どおりに)。▼発艦する(ヘリコプターが。戦闘機が空母から)。▼離着陸する(空港を。空母を)。ジェット機が滑走路を離陸する。 **とびつく【飛び付く】** ▼飛びつく(餌に。極端な結論に。ドアに。いきなり。隙を見て。ぴょんと。一も二もなく話に。不確かな情報に。誘いに双手をあげて。飢えた犬のように食べ物に阿久。熊のように凄すごい勢いで=梅本。組み打ちでも始めるように肩にどんと=石森。ジャーナリズムが恰好跡”の餌食として瀬戸内)。飛びついて無我夢中に抱えこむ吉川。顔をくしゃくしゃにして飛びついてくる落合。飛びつかんばかりの勢いで言う。宮部。タックルをかける。タックルする(足に。体に。猛然と)。 **とびのく【飛び退く】** ▼飛び退く(水にひらめく光のことく=海音寺。身をかわすように吉川)。飛びのく(致歩の距離を。びっくりして)。飛烏のように飛びさがる光瀬。飛びすさる(反射的に。一足後ろに。後へ後へと)。 **とびはねる【飛び跳ねる】** ▼飛び跳ねる(ぴょんぴょん。元気いっぱい子供たちが。言葉が景気よく)。釣り橋の鉄材が蛛手くもになって上を下へと飛びはねる=有局。心臓が飛び跳ねる思い=貫井。跳びはねる(声が苦しげに。バッタのように藤沢)。机の上に白い陽のかけらがとびはねている高樹。心の中ではいたずらっ気が跳びはねている=有吉。一歩ごとに飛び跳ねるような足どりで歩く古井。 **とびまわる【飛び回る】** ▼飛びまわる(寒風の中を。風に乗って。蠅はぇが唸うなって。頭の中で様々な考えが。娘が電灯の周りを。一日かけてあちこち。カラスが騒がしく三浦綾)。蝶が無閣とせっかちに飛び廻る志賀。蚤のがびょんぴょん跳びまわる"筒井。 **とびはねる【飛び跳ねる】** 飛び回る(庭を。マットの上を。はしゃいで)。 <749> # 飛ぶ・弾む―242 ち散乱している高橋知。男の視線がむさくるしい蠅のように女のまわりをぶんぶん飛びまわる=阿部。狡ずるそうな眼を光らせ手を蠅のようにこする=遠藤。羽をもがれた冬の蠅のように無力“村上卷。両手を蠅のようにこすり合わせる"小池。男は女を漁ぁきる蝠みたいなもの=石坂。うるさくつきまとう小蠅みたいにいつも近くにいる=高樹。焚くそに銀蠅がぶんぶんむらがる=木山。ひとつなぎに剥きあげた果物の皮を蠅取り紙のように垂らす逃城。独り身ということが蠅取り紙のように気持ちを貼りつける=連城。虻が窓際でゆるく円を描く。背に食いついている虻ぁぶを追い払う馬のように身体をヤケに振る=小林多。暗い気持ちが馬虻のようにしつこくからだにまつわって離れない!小林多。蛆うじがぼとぼと落ちる。男やもめに蛆がわく。区切られた寝床にゴロゴロしている人間が蛆虫のようにうごめいて見える=小林多。 **はおと【羽音】** 地底から風のように舞い上がってくる蝙蝠にけたちの凄すごい羽音=田辺。羽音がしなやかな液体のように耳の奥の小さな管にまで染みとおる=小川。蚊の羽音くらいにしかならない自己主張の島田。羽音を立てる(烏が。蠅はぇが眠たげな。心が自由に)。軽のワンボックスカーが蜜蜂の羽音のような音をたてながら走ってくる=西木。言葉がぶんぶん飛ぶ虹あぶの羽音のように近くなったり遠ざかったりする"久間。昆虫の羽音のように鈍い扇風機の音!大佛。低く唸ったる蜜蜂の羽音のように噺にききが絶えることなく聞こえつづける柴田翔。 **はじきとばす【弾き飛ばす】** ▼弾き飛ばす(吸い殻を。木片を。問題を。湯を。唾をぺっぺっと。声をゴムバンドのように空中に清水俊)。▼弾き捨てる(ガムを。錠剤を。たばこを。鼻くそを指先で)。 **はじく【弾く】** ▼弾く(パチンコの玉を。カードをばらばらと。名刺を指の先で。抜き身の刀がまぶしく陽を津本。指で額をビンと鷺沢)。▼算盤を弾く(必死に。細かく)。▼指で弾く(グラスを。写真を)。弾かれたように(お辞儀をする。立ち上がる)。はじかれたように(後ろを振り向く藤沢。ばっと起きなおって座る=石森)。全員が弾かれたように顔をあげる!奥泉。 **はじける【弾ける】** ▼弾ける(声が虚空に。顔に満足げな笑みが。わっと笑い声が。たががびしっと。何かが頭の中で。ばちんと音を立てて。笑いが再び咽喉のとに野上。闘争本能がばちんと=船戸)。燦爛笑んと弾ける午後の光。はち切れそうな水着がびんと弾けでしまいそう谷崎。はじけたように笑い出す灰谷。みずみずしいはじけるような生命の輝き=飯田。子どもたちが弾けるように歌う『灰谷。はずんだバネのように弾け上がる"小林多。弾け飛ぶ(ガラスが。削さゃが。ボタンが)。はじけ飛ぶように横倒しになる泉後。▼はぜる(ばちばちと火が。何かが体の中で)。 **はずむ【弾む】** ▼弾む(期待に胸が。我知らず声が。声が明るく。幸先がよいと心が。豊かな胸も肩も匂うばかりに=山手。体がゴム鞠まりのように藤本。心がゴムまりのように=壺井)。心が踊るようにはずむ福永。よく弾む胸。うきうきと弾むロディー。勢いよく弾む(会話が。球が)。弾んだ声で答える。声がいまにも歌いだしそうに弾んでいる=灰谷。気分がひとりでに弾んでくる。うれしそうに声を弾ませて言う。問いに息を弾ませて答える。▼弾ませる(期待に胸を。はあはあ息を)。はちきれるような皮膚の弾み檀。気持ちに弾みが芽生える。表情に気の弾みが宿る。弾みをつけて椅子から立ち上がる。心が弾みを覚える。弾むような(身のこなし。足取りで出て行く=高井)。弾むように歩く(嬉しそうに。爪先立ちして)。会話が一向に弾まない。▼バウンドする(車体が。ボールが)。 **はち【蜂】** ぶんぶん大きな羽音を立てて蜂が飛びまわ眼蓋付高見原。刺されたようなはげしさで子供が泣き出す=杉本)。蜂の(唸、うぉりのような飛行機の爆音大岡。群れのようなブーンという鈍い電気音"村上春)。街頭の騒音が春の野の蜂のうなりのように遠くかすんで耳をこころよくくすぐる!宇野利。低い蜂の唸るような活気の無い声=田山。あれこれの話題の上を飛びまわる蜂のような快活さの中で食事が進む倉橋。蜂のように胴体のくびれた形のいいズボン姿の女"中村真。巣から分かれる蜂のようにいずれ子供は離れて行く島崎。花にむらがる夏の蜂のようにワアーッと歓声を挙げる=中島坂。蜜に群がる蜂のようにたくさんの男のファンがいる娘"石坂。蜂の巣でも突いたようにわっと大勢の空気がどよめく=吉川。蜂の巣を(つついたみたいに騒々しくなる=辻真。伏せたようなこんもりとした小さな島"大庭)。敵の陣営が蜂の巣をつついたように混乱している=井上靖。蜂の巣をつついたような(大騒ぎ。喧騒础认)。先の尖った挙で蜂の巣みたいな穴をあける=宮本畑。銃弾を蜂の巣のように浴びる藤本。蜂の巣状に銃弾が撃ちこまれている=辺見。菜の花の蜜の緑っぽい匂いが蜜蜂の巣箱の辺りに馥郁心くと香り立つ『有吉。蜜蜂が群がりぶんぶん唸り声を立てる=掘。琥珀色に沿くをした蜜蜂の群れが壊れたラヂエタアのように気怠けだい羽音をたてて飛び交う長野。ばったばったがぴょんぴょん跳ねる。後肢誌にをもぎ取られて地面に腹道似。っているバッタに似た形をした貨物船直行。バッタのように(なった手。頭を下げ続ける=山崎。ひっきりなしにお辞儀をする=大庭)。イナゴの大群が通り過ぎた跡のごとく食物という食物が喰いつくされて青草一本残されぬ有り様奥泉。ブーイングが百万のイナゴの大群の羽ばたきのように藤弘とく=宮部。イナゴみたいにあちこちを飛び歩く富岡。両膝をあげていなこのように床を蹴る=山岡。蜂にでも(整されたみたいな腫れぼったい <750> # 飛ぶ・弾む-242 る=川端。 **はね【羽】** セロファン紙でこしらえたようなつやつやした虫の薄い羽"石森。気持ちに羽が生えてどっかへ飛び出しそう~壺井。羽根が生えたように売れる!斎藤栄。娘の翅はねが薄紙のようにひらひらと揺れる=川端。鳥の羽根に似た細長い複葉"丸谷。蝶の羽を赤く染めたようなシクラメンの花びら=高橋和。西の空に赤い鳥の羽を一面にまき散らしたような夕焼け雲大庭。思い切り羽根をのばす心地"内海。邺せぁの羽根をまとったような薄着三浦哲。風車が塔の上で羽根を休める=横光。烏が羽を広げる。軀づらの底に点のごとき疑惑が生じしだいに大きく羽を広げていく村松。見透かされまいとして大きく羽をひろげた物言いをする向田。つややかな羽のようなドレス"佐藤愛。昆虫の薄い羽根のような雪"原田康。灰と化したばかりの紙片が千切れた黒蝶の羽のように舞い上がる武田爽。ふわりと飛んでいってしまう羽みたいに軽い。大庭。 **はねあがる【跳ね上がる】** ▼跳ね上がる(計器の針が。価格が一気に。雹10~が庭一面に。小指がびんと。費用がぐんと。一挙に二倍にも。心拍致がいきなり。裾がはたはたと)。焼けた鉄板を踏んづけたようにハネ上がる=小林多。泥のはね上がる鈍い音大岡。跳ね上がった行動。左右にぴんと跳ね上がった愛!高樹。調子よく跳ね上がった空元気だけの言葉"小林多。ビンと八の字の跳ね上がったカイゼル髭ひげの椎名。▼急騰する(株価が。相場が。物価が)。▼高騰する(原油価格が。市況が。相場が)。▼騰貴する(地価が。土地が。物価が)。▼反騰する(円が。株価が。ドルが)。暴騰する(株が。物価が)。 **はねあげる【跳ね上げる】** ▼跳ね上げる(泥水を。尻尾をぴんと。びちゃびちゃ泥を。右足を頭の先まで)。▼弾き上げる(ボールを。指先を)。 **はねおきる【跳ね起きる】** ▼跳ね起きる(寝床をがばと。布団から。ベッドから。びくんと反射的に。弾かれたように=二葉亭)。電気にかかったようにはね起きる=庄野。▼飛び起きる(がばっと。ベッドから。はっと気づいて。ばね仕掛けの人形のように池波)。 **はねかえる【跳ね返る】** ▼跳ね返る(屋根に雨が。声が天井に。ばちゃばちゃと水が。陽が波打つ水に。バネのように体が"獅子。手毬にょが小石に当たって=北原)。 **はねとばす【撥ね飛ばす】** はね飛ばす(雨滴を。様々な妨害を。木刀を。じゃばじゃばと泥水を)。人開を煎り豆のようにハネ飛ばす」小林多。ばっと鳥のようにはね飛ぶ」柴田残。▼刎はね飛ばす(腕を。首を)。 **はねる【跳ねる】** ▼跳ねる(兎が。駕籠がこの垂れを。ガラスに明かりが。ばちゃんと池で魚が。片足でぴょんぴょんと。魚がびちびちっと。ゴムまりのように心が=明高。ウサギのようにぴょんと=山本有。寝床の上を海老ぇでのように=梶井)。▼はねる(粗朵くだがばちぼちと。声が突然舟板に飛び上がった魚のように柴田羽)。嬉しそうに飛んだり跳ねたりする藤原。髪の毛が縦横無尽に跳ねまくっている三浦し。▼跳ねまわる(家の中を。座敷を。リング上を。うれしそうに。そこいらじゅうを)。 **はねる【撥ねる】** ▼はねる(布団を。蓑みのを。水がばしゃばしゃ)。波の一片一片が光を撥ねる海林京。・はねかかる(泥水が服に。フロントガラスに水が)。・はねかける(泥を。水を。服に。自動車が歩行者に泥水を)。▼はね散らす(唾を。泥水を)。 **はばたく【羽ばたく】** ▼羽ばたく(自由に。世界に。重々しく。強級にいうな拠で。社会人として。ばたばたと。ふんわりと。ゆったりと。鳥がゆるやかに。大空へ向かって)。鳥の羽ばたきが聞こえる。淡を一打ちする。拠をあおる。鼓災にょの風を感じる。 **はむし【羽虫】** 粉のような羽虫"本庄。羽虫が(うるさく飛び交う。宮本輝。不意に羽虫でも飛び込んだように眼がしばしばっとする岸田。羽虫の羽ばたきに似た鈍い音藤本。苛立心。った重い声がぶんぶんいう羽虫のざわめきのように降りそそぐ=大江。耳鳴りみたいな羽虫の音を聴きながら葦原曲礼を抜ける"奥泉。力の及ばなかったあらゆる可能性の因子が羽虫のように拠をつけて頭の中にいやがらせをしに飛んでくる=鳥尾。 **パラシュート** パラシュートで降下する。傘がパラシュウトのように風を孕はらむ=宮本頁。落下傘がゆらゆらと風に流される=かんべ。真っ青な空におとぎ話の花のように落下傘があやしく美しく揺れる=長崎。落下傘を背負って飛び降りる。落下傘候補として立候補する。 **ひこうき【飛行機】** 飛行機が(隊落する。怪々と舞い上がる。空港に進入する。上昇下降を繰り返す。旋回して向きを変える。空へ舞い上がる。翼を傾けて向きを変える。乱気流に巻き込まれる。組針ほどの機体を光らせて一万メートルの高空を飛ぶ=林京。水平飛行に入る=重松。するすると滑走をはじめる=阿川弘。何度も離着陸を繰り返す=柳田)。空気を破るような音で飛行機が樹の梢をかすめて去る"大岡。飛行機に(乗る。数えるくらいしか乗ったことがない鷺沢)。飛行機の(拠に塗った銀の色が水銀のようにこぼれそうに鮮やかに翻る"大佛。ガラス窓の中に緑色のフランスの田園風景が幻のように浮かび上がる=森玲)。帰りの飛行機の予約をする。墜落した飛行機のことでもちきり。青い空にくっきりと見える飛行機のシルエットを見つめる『池澤。ブルンブルンと飛行機の唸うなり声が聞こえる=植。ブンブンど唸るような飛行機の爆音!大岡。飛行機の爆音が(聞こえる。心の中の孤独なものと共鳴してびりびりと頭ふるえている=福永)。 <751> # 飛ぶ・弾む―242 **ひこうき【飛行機】** 飛行機を(降りる。操縦する。チャーターする)。敵の飛行機を撃墜する。やむなく飛行機を使う。大空を郷う巨大な鳥"小池。飛行中に乱気流に遭う。綿のような雲の野原を見下ろす鷲沢。機内に茶内する。空路帰途に就く。グライダーが(滑空する。飛び続ける)。航空機が飛び交う。シートベルト着用サインが消える。大型爆撃機が風ゆのように拠を伸ばして空を渡る大岡。被弾した爆撃機が木の葉のようにひらひらと舞いながら落下する=西木。飛行船が(爆発炎上する。淡い月影のように空を行く=吉本)。ブロベラ機に搭乗する。旅客機に搭乗する。旅客機が就航する。紙飛行機が(風に乗って舞い上がる。ふわふわと旋回を続ける)。紙飛行機を飛ばす。こまかい錫すずの破片を浮かべたように日にきらめく爆撃機の機影阿部。青い空の向こうに機影が消えていく。レーダーから機影が消える。レーダーが機影を捕らえる。絹針のような機影を光らせて敵機が飛んで行く=林京。乱気流で機体が揺れる。建てつけの悪い家が風で揺れるように機体のあちこちがみしみしと音を立てる"小池。流線型の機体を設計する。▼ジェット機(飛行場に翼を休めている。青空に白い綿のような尾を引いている"高見浩)。ジェット機が(着陸姿勢に入る。爆音を立てて飛び去る)。ジェット機に乗る。 **ひしょう【飛翔】** 来たるべき飛翔に備える。飛翔する(空中を。上空を。イデアの世界に魂が福永。円を描いてゆるやかに=水上)。想像力を飛翔させる。飛び翔かける(雲の問を。空を。さまざまのイメージがゆるやかに=丸谷)。 **ひばな【火花】** オレンジ色の火花が垂直に上る=篠田。滝のような火花が咲きに咲く=光源。烽火いろの火花が怪火のように遥かの空にばっと咲いてはすぐ散って行く”有島。目から火花が出るほどの痛み桐野。怒りと悲しみが目のくらむようなすさまじい火花となって散る『光瀬。兇暴な憎しみが青い火花になって眼のさきにちらつく林芳。ばちっと火花を飛ばす。結婚ーの二字が鼠花火曲付のように複雑な火花を飛ばして廻転する『獅子。線香花火のようにしきりに火花を飛ばす趣のある詩三好達。両軍が火花を散らして戦うくう束。火花を散らす(線香花火が。魂と魂が。雨より急な。感情の。舌戦で。ばちばちと。反発と共感がぼくの内で"飯田)。火花を散らすような憎悪黒岩。冷たい眼の底に時々ひらめく火花のような光山本周。女性の典雅さのなかから突然火花のような激情が飛び出して来る言葉"伊藤整。二人の眼と眼が結び合って酸素熔接の火花のようなものを飛ばす獅子。火花のように自分を燃やす=伊藤整。火花が散る(限底に。視線に。胸の中に。頭の中に一瞬。ショートの。二人の間に無言の"白洲)。蒼ぁぁさめた顔の中で青い火花が散ったかに見える"有吉。顔に火花が散るような動物的な美しさがひらめく=石坂。 **ひやく【飛躍】** 詭弁的にどんな飛躍を犯す萩原朔。ひゃく飛躍する(考えが。行動が。心が。話が。論理が。暗中に。社会に。世界に)。一足飛びに飛躍した表現をとる=丹羽。 **ヘリコプター** ヘリコプターが(降りてくる。上昇する。旋回する。墜落する。離陸する。砂煙を巻き上げて発着を繰り返す=辺見)。ヘリコプターで資材を運ぶ。空からヘリコプターで監視する。ヘリコプターのローターが巻き起こす風が周囲の砂を竜巻のように吹き上げる景山。要貝の輸送にヘリコプターを使う。上空をヘリが飛び回る。 **まいあがる【舞い上がる】** ▼舞い上がる(雪の煙が。軽やかに。音もなく宙へ。風のように。心が空高く。乾いた埃归こっぽい風が。ふわりと体が宙に。心が鳥になって。土煙がもうもうと。黒雲のように小鳥たちが"飯田。戦闘機が機首を持ち上げて高々と空に=なかにし。風船がゆらゆらと空中に=美濃部。吹雪が渦を巻き宙に三浦酸。身体がはじかれたように=西村。砂が足元から軽い煙霧のように=光涵。ちぎれた葉が鳥の巣でもこわしたように"阿部。鳥の群れが一斉に大空へ=山田思。熱気を孕はらんだ煙が渦をなして=福永)。▼舞いあがる(斜光のなかを埃が煙のように=里見。雪がまるで粉のようにけむりのように"宮沢)。もれてくる光が舞い上がる埃を照らす=小川。空へ舞い上がる(一ひらの木の葉のように見る見る黒犬が=芥川。湯気の柱が遂々然や処として釜の口から晴れ立った朝の芥川)。舞い上がりそうなほど嬉しい倉橋。 **まいあげる【舞い上げる】** 空中に舞い上げられる。▶舞い上げる(土煙を。葉を。埃児にを。雪を)。舞い立てる(落ち葉を。砂感じを。埃を)。巻き上げる(凧が雪を。埃を。空中高く)。 **まいおりる【舞い降りる】** ▼舞い降りる(霧が静かに。窓の外に静かな夜が!小川。桜の花びらが小さな蝶のように地面に=小川)。▼雪が舞い降りる(窓の外に。空から)。鷺ださが雪の降るようにぎゃあぎゃあ叫びながらいっぱいに郷いおりてくる宮沢。舞い落ちる(灰がゆっくり。小雪が絶え間なく。花びらがひとひら。葉が次々に美しい悲しい線を描いてひらりと地上に"小松太)。 **ロケット** ロケットの(一段目が落下する。打ち上げに成功する)。ロケットを打ち上げる。ロケットのように傾いたまま気持ちよく飛ぶ"石森。ロケットエンジンを噴射する。ミサイルを配備する。巡航ミサイルを発射する。宇宙船で地球を発つ。宇宙船に乗り込んでしまったような不安な気分"尾辻。人工衛星が地球を回る。人工衛星を(打ち上げる。軌道に乗せる。積んだロケット)。 <752> # 泊まる・留まる-240 **あしどめ【足止め】** 足止めを食う。関係者全員を足止めする。旅行客が足止めされる。事故で足止め状態になる。禁止する(通行を。渡航を)。夜間の外出を禁じる。禁足を(食う。命じる)。 **いかり【錨】** 錨が錨穴に大きな黒い鉄いろの蟹かにのようにとりつく三島。重い錨でも置くように受話器を置く森。大小の船が入り江に錨をおろしている"柴田剣。大きな鉄の鎧のように硬い心三島。アンカーをおろす。 **いそうろう【居候】** 居候三杯目にはそっと出し。居候の分際で文句を言うな。親類の家に居候している。居候のような惨めな気持ち=河野。兄夫婦の家に寄窝ほぐする。叔父の家に寄食する。 **おもいとどまる【思い止まる】** ▼思いとどまる(計画を。死を。退学を。無謀な移住を。離婚を。かろうじて。ぎりぎりのところで。すんでのところで。やっとのことで)。間一髪のところで行動を思い止まる"小局。▼踏みとどまる(従前の状態に。勇気を出して。依然として元の場所に。危ないところで。一歩手前で辛くも。狂気の一歩手前で)。 **キャンプ** キャンプに行く。キャンプを設営する。キャンプする(海岸で。山で)。キャンブファイアーが燃え上がる。キャンブファイアーを囲んで歌う。野営する(砂漠に。山中に。川岸で)。テントを張って野宿する。青天井の下で寝る。 **さんばし【桟橋】** 水すれすれにつき出た桟橋。桟橋に船が横づけになる。湖を一巡した船が桟橋に戻る。船が桟橋を離れる。波止場に(停泊している船。横付けされた船)。フェリー発着場に向かう。埠頭ふとに波が打ち寄せる。埠頭まで迎えに行く。船着き場に接岸する。対岸の船着き場を望み見る。 **しゅくば【宿場】** 宿場に(泊まる。草鞋を脱ぐ)。宿場の(趣を残す町。・本陣。家々が街道沿いに延びている=村上元)。宿場町(にぎやかな。平穏な。荒れ寂びた)。宿場町で一夜を過ごす。 **しゅくはく【宿泊】** 宿泊の予約を入れる。宿泊する(団体が。ペンションに。ホテルに。旅館に)。宿に投じる。宿泊カードに記入する。 **すえおく【据え置く】** ▼据え置く(価格を。金利を。料金を。労働者を低賃金に)。据え置かれる(賃金の支払いが。ボストがそのまま)。▼据え置きになる(定価が。料金が)。原級に留め置く。 **たいざい【滞在】** 滞在が数日にわたる。思いのほか滞在が長びく=里見。▼滞在する(為に。ホテルに。村に。一か所に長く。しばらく。何日か。客が入れ替わり立ち替わり)。逗留叱行」が長びく。▼逗留する(客が。文人墨客が。宿に。旅館に)。知り合いの家に身を寄せる。▼常駐する(守備兵が。職員が。特派員が)。 **ちゅうしゃ【駐車】** 駐車の場所を確保する。▼駐車する(正寄せに。縦列に。広場の隅に。門の前に)。駐車違反を取り締まる。駐車場が(混雑する。がらんとしている。ほぼ満杯になる)。駐車場に車を(入れる。置く。停める)。地下駐車場に降りる。駐車場の整理にあたる。車がカーポートに納まっている。 **ちゅうとん【駐屯】** ▼駐屯する(軍隊が。占領軍が。部隊が)。▼駐留する(他国の軍隊が。兵士が)。 **ていちゃく【定着】** ▼定着する(あだ名が。外来語が。評価が。地域社会に。新しい観念が社会的に=大野晋)。定着させる(新入社員を。感動を言葉に)。妊娠したという事実がじわじわと胸の底に定着していく=鈴木光。根づく(多様な試みが。伝統が。民主主義が。記憶の中に。日本の地に。民族性に深く、科学が文化として)。▼根をおろす(民主主義が。地域に。土地に。現実に深々と)。 **ていはく【停泊】** ▼停泊する(波止場に。港に。湾内に)。沖合に停泊する(貨物船が。船が)。縦を投げる。錨いかをおろす(沖合に。港に)。▼係留する(船を埠頭ぶとに。ボートを桟橋に)。▼投錨とうぃする(船が沖合に。船が港に。貨物船が湾内に)。▼入港する(外国船が。船が定期的に)。小舟を岸辺にもやう。渡し船がもやってある。筋い杭もいぃに舟をつなぐ。もゃい綱が船の寝息のように帆ミしる=梶井。 **テント** テントが(風でばたつく。ばさばさと揺れる)。テントに入って雨を変しのぐ。テントを張る。畳んで引き揚げる)。天幕を張る。 **とどまる【留まる】** ▼とどまる(学問の世界に。故郷の村に。弾が体内に。抽象的表現に。半分以下に。平凡な記録に。崖っぷちで。惜しくも二位に。伝統的な手法に。自らの持ち場に。愛がブラトニックな段階に"玉村)。魂がこの世に留まる=宮部。じっと一所に居続ける。会社に居残って残業する。学校に居残って勉強する。▼入りびたりになる(女の家に。飲み屋に)。▼残留する(海外に。基地に。体内に)。留任する(委員長を。現在の心に)。単なる描写にとどまらない。とどまることなく順調に動き続ける。とどまるところを知らない(気炎。虚栄心)。▼とどまるところを知らない(原油の高騰が。談論風発して)。 **とどめる【留める】** ▼とどめる(無残な爪痕を。歴史に名を。一事を記すに。一定限度内に。狭い枠内に。名前を記憶に。原始的な様相を。綿々たる恨みを。一二の例を引くに。一般的事実を指摘するに。周辺的な事柄の紹介に。通り一遍の応対に。ひとまずは腹の中で毒づくに=有川)。声を記憶の隅に留める横山。▼跡をとどめる(苦渋の。失恋の。衝突の。抵抗の)。▼面影をとどめる(往年の。昔の。幼少の)。▼最小限にとどめる(被害を。影響を)。 <753> # 泊まる・留まる-243 **とまる【泊まる】** ▼泊まる(従業員宿舎に。旅籠はたに。ホテルに。民宿に。宿屋に。旅館に。いちばんいい部屋に。カプセルホテルに)。最高級の豪華な部屋に泊まる贅沢だいを許される=笹沢。友人の家を泊まって歩く。低価格で泊まれる宿。泊まりの予定をキャンセルする。泊める(客を。旅の人を。家に)。泊まりがけで温泉に行く。泊まりがけで遊びに来る)。泊まり歩く(ホテルを。旅館を。友達の家を転々と永井胞)。泊まり込む(会社に。研究室に。炭焼き小屋に。友達の家に。何日も)。寝泊まりする(叔父の家に。同じ部屋に。離れに。安宿に)。▼一泊する(温泉に。ホテルに)。外泊許可をもらう。▼外泊する(親に内緒で。母親の葬式にかこつけて)。▼止宿する(知人の家に。ホテルに。山寺に)。▼投宿する(温泉に。ベンションに。ホテルに。民宿に。旅館に)。いくつかの宿舎に分宿する。宿帳に書き込む。宿賃を払う。旅寝の宿り。合宿に参加する。合宿する(寺に。ホテルで)。▼定宿(出張時の。文人墨客の)。定宿にしている(ホテル。旅館)。 **ながい【長居】** 客の長居に苛立からつ。あまり長居はできない。▼長居は無用(こんな所に。これ以上の)。とんだ長居をしてしまう。長っ尻ができる店。長っ尻の客 **ひきとめる【引き止める】** 引き止める(素振りを見せる。手立てを考える)。引き止める(容を。旅立ちを。読者を。無理に。腕をつかんで。言葉を尽くして。遣らずの雨だと)。引きとめに(応じる。心が揺らぐ)。引きとめを(拒む。振り切って辞める)。辞職希望者を慰留する。再三慰留に努める。外国船を抑留する。▼抑留される(外国に。戦後シベリアに)。三年間の抑留生活を送る。決して引き止めない。去る者は追わず。引き止める筋合いではない。 **ホテル** ホテル(屋上のビヤガーデン。最上階のレストラン)。▼ホテル(古い由緒ある。渓谷沿いに並ぶ。伝統と格式を誇る。木造二階建ての小体にでな小林信。灯りのともったきらびやかに眩岐はい!北。鮮やかな服を着て跳び回る少女のような明るさと新鮮さがある!高橋三。あたりの風景をこわさずに林の中に隠れるように建てられている『泉優。ウィッチがたくん棲すんでいそうな中世の古城のような=原田康。湖畔に緑を背負って立つおとぎの城のような介中村明。古風なたたずまいの高橋治)。ホテルが満室になる。ホテルに(部屋をとる。籠城以らしして小説を書く)。女とホテルにしけこむ。ホテルの一室に缶詰にされる。味気ないホテルの夜。中世以来の石造りの暗いホテルは博物館に寝泊まりしているような気分にさせる=中島み。無理やりにホテルへ連れこむ。着替えもそこそこにホテルを出る。高層ホテルが建ち並ぶ。ホテル代を支払う。フロントから電話が入る。フロントで鍵をもらう。伝言をフロントに預ける。 **みなと【港】** ▼港(船が停泊する。とこといって変わりばえのしない=高樹)。港が(あまたの艦船で埋めつくされる。祭りの翌朝の田舎町のように空っぽになる"西木)。港に(船を泊める。程近い集落。舫もゃった船。面した最上階の部屋。湖漫にまする沈んだ頭音从三島)。船舶が港に出入りする。▼港に入る(船が。ヨットが)。港の(夜景を見渡す。沖合に投鉱とうびする)。水鳥が港の上を舞う。港を見下ろす丘。船が港に(着く。停泊する)。海の玄関口。解はしが港内を走りまわ。古い歴史の残る美しい港町。貿易上の要港。帰港する(漁船が。護衛艦が)。▼良港(天然の。指折りの)。▼漁港(近代的な装いをもった。自然に抱かれているような優しさのある灰谷)。大小の漁船が水も見えないばかりにもやっている港-宮尾。漁船が港にたむろする。母港(艦船の。漁船の。軍艦の)。家庭は疲れて帰ってきたとき安らげる母港のような存在"五木。 **みんしゅく【民宿】** 民宿を営む。民宿に毛の生えたような(旅館。ロッジ)。ペンションに泊まる。ちまちましたベンションのようなカラフルな家「小池。 **やきん【夜勤】** 夜勤のローテーション。夜勤明けの朝。宿直に当たる。▼当直する(学校に。病院に)。当直勤務につく。 **やど【宿】** 希望通りの宿が取れる。宿に(帰る。着く。泊まる。荷物を残して消え失せる若竹)。三々五々宿に散っていく。宿の(主人を呼ぶ。名を口にする。浴衣に着替える)。逆旅げ、の宿の寝覚め菊池。湖の畔児とに宿を取る。一夜の宿を(乞い求める。提供する)。安宿で寝泊まりする。安宿を渡り歩く。モーテルに泊まる。 **やまごや【山小屋】** 山小屋で休憩する。山小屋に(泊まる。避難する)。山小屋を(経営する。根拠地にする。建てる)。ちょっと洒落した山小屋ふうの建物"和久。簡素な山小屋風の建物三浦哲。 **りょかん【旅館】** 旅館(古い格式ある。観光地に建つ大きな。玄関のたたずまいからは想像できぬ奥行きの深い古風な=高橋和。人里離れた奥深い渓谷の底にしっかりへばりついた執拗な貝殻のかたまりのような=島尾)。旅館で住み込みの仲居として働く。谷あいに旅館の屋根が見える。旅館は女将祐がの器で善し悪しが決まるのが常藤田。玄関口に宿泊客の名前が出ている。間取りが旅館のように入り組んでいる屋敷"阿部。芝居の書き割りでも見るみたいに花やかな旅館街"水上。あちらこちらの旅籠たを転々と泊まりあるく"柴田錬。旅部屋を鳥からのように覗き込む"泉鏡。宿屋の明かりが見える。 <754> # 灯る-244 **あかり【明かり】** 硫黄のほのおのようなくらいぽんやりしたあかり=宮沢。不整に散乱する遠い灯=野上。時期外れの蛍のような頼りない灯り有吉。明かりが(雨ににじむ。窓に並ぶ。夜を彩る。きらきらと輝く。つけっ放しになっている。一つずつ消え始める。掘り割りの水に映る)。遠くの灯りが星のようにまたたいている=梶井。波止場に碇泊している船の灯りが花のようにきらめいて見える=円地。外灯の明かりが路面を照らす。看板に明かりが入る。高層ビルの窓の明かりが雨に煙る。自動車の明かりが流れて行く。月の明かりが部屋に射し込む。灯台の明かりが海面に映える。庭に部屋の明かりが落ちる。明け方のしらじらした明かりがさしこむ徳水。カーテン越しの明かりがぼんやり洩。れる"黒井。シグナルライトのような小さな明かりが窓からぼんやりと洩れている=景山。店街の明かりがあちこちで弾けている=角田。水面に映った明かりが緩やかな風の起こしたさざ波に揺れる=南木。町々に灯りが星屑のように散らばる=二葉亭。胸の灯りが一瞬はじけるように強く熾ぉこり立つ落合。村が夜色に包まれて閤の底に点々と灯りがきらめいて見える藤沢。灯りが海面に映って十字なりに伸びたり縮んだりする=島尾。小さな灯が楽しずのようにちらりちらりと光る内田瓦。木立の中のオレンジ色の灯りが人の吐く息の湿り気がゆらめき上っているようににじむ=干刈。▼明かりが消える(一瞬にして。次々と)。▼明かりがともる(心の奥に。煌々にと。燦爛んと)。躰の内側から灯がともったような温かな表情落合。心のずっと奥にぼかっと灯がともる"石森。小屋に灯がともるように音楽が始まる"五木。壁にぽっと鬼灯のような明かりがともっている=北村。ぽっと小さな豆電球に灯りがともるように気がつく=島尾。▼明かりが漏れる(木立越しに。窓から)。家から幸福そうな灯が漏れている=獅子。ほのかな明かりに照らされる。灯りに誘われて飛んでくる虫や娘!落合。灯りの消えたような淋しさ=連城。明るい強い飢きの街の灯がきらめいて灯りの海"田辺。明かりを頼りに進む。手燭にしに明かりを移す。心のなかに一点の明かりを点じる=山本有。スイッチを切るように頭の中から全ての灯りを消しさる"村上春。眼が灯りのように瞬く円地。窓明かりが海に反射する。窓明かりを(川面に映す。頼りにメモを書く)。一面の腕ぉばろな月明かり=福永。▼花明かり(幻想的な。ほのかな)。貧者の一灯。消灯時間を過ぎる。頭のスタンドをともす。枕元のスタンドを消す。まばゆいスボットライトを浴びる。灯火が(寒さのためびいんびいんと音を立てて毀こゃれそうに瞬く=川端。不吉な人魂心記のように浮かび出る=栗本。燐の燃えるように怪しい光を放って明滅する=国木田)。記憶が灯火の消える時のように束の間生き生きと燃え上がる=川端。灯籠に火を入れる。 **あんどん【行灯】** 行灯が灯影归かを落とす。船宿の行灯がぽつんぽつんと明るくともる=梅本。行灯に(火を入れる。明かりを入れる)。行灯の(かすかな光。明かりを手燭にしに移す。灯をふっと吹き消す。油をびちゃびちゃとなめる=阿久)。ほのかに息づいている行灯の消えいるような灯影山本有。 **がいとう【外灯】** ▼外灯(庭園の。軒先の。門柱の)。ガス灯がぼっとにじんでいる。低灯がともる酒場。軒灯の下に突っ立つ。怪しげな軒灯の出ている料理屋=田山。ドアの上に小さな門灯がともる!高村流。白い誘蛇灯に引きずりこまれていくような不安連城。 **がいとう【街灯】** 尚遠に灯る街灯。街灯が(淡い光を投げかける。道路の両側に並ぶ。ぼうっと照らす舗道。光の輪を路地に落とす=武田発。夕暮れの中にボツリポツリと灯る=村上春)。ぽつんと街灯がついた小道。水に映った街灯が白く揺れる。街灯の(乏しい暗い道。光が闇に溶ける"黒井)。霧に街灯の光がにじむ。青白い光を点々と並べる街灯の列"黒井。街路灯を頼りに歩く。 **うすあかり【薄明かり】** ▼薄明かり(逢魔が時姉さの。たそがれの。夜明けとも夕暮れともつかない菊池)。薄明かりが(野山を包む。ぼんやりと射し込む)。薄明かりでおぼろに見える。 **しょくだい【燭台】** 座敷に燭台がともる。燭台に灯をともす。燭台の(明かりを細くする。灯を掻き立てる)。燭台の火が(ゆらめく、ゆらゆらとはためく。呟まぶしく目に射し込む佐藤春)。 **ちょうちん【提灯】** 提灯が(淡い光を放つ。風に揺れている。人魂みたいに宙へ躍る=吉川)。風が来て提灯が揺れる。お祭りの提灯が肝に繋ったがって下がっている=鈴木三。提灯で足元を照らす。鼻から提灯でいきたなく寝込む!高田。提灯に火を入れる。提灯の(火が消える。竿だぁを持ち上げる。光が恋ぼんやりと明るい)。屋形船の提灯の列がひしめき合うように連なる星月。提灯の明かりを(頼りに歩く。吹き消す)。提灯も要らないほどの月夜"村上元。提灯を(帯に挿す。掲げて歩く。取り落とすほど吃驚ごっする=内田百)。低下に提灯を吊るす。店先に提灯を下げる。白い尻が夜道を照らす提灯のように揺れる=井上ひ。提灯行列までしかねまじい空騒ぎを演じる今日。 **テールランプ** 自動車のテールランブが闇に長く尾を引く。赤い後尾灯テリルがしだいに遠ざかる=飯田。遠のいていく赤いテールランプを目で追う桐野。ブレーキランプが赤く光る。 **でんとう【電灯】** 電灯が(穏やかな光を放つ。尾を曳くようにすうと消える=久米。幻影のように黄色い光を放つ=高橋和。百合の花がしぼむように消える"有島)。幾つもの電灯が骤雨儿沙のように浴びせかける絢爛45=梶井。ばっと電灯がつく。▼電灯がともる(点々と。ぽつんと)。電灯に虫が集まる。電灯の(球を付け替える。光が横顔を照らし出す)。壁に電灯の光が照り返る。戸の隙間から電灯の光が漏れる。不夜城のようにあかあかと電灯のついたデバート=原田康。煌々にジと電灯をつけたショーウィンドー。たくさんの豆電灯が千の蛍でも集まったようについている=宫沢。電球の柔らかな光。涙を頬にへばりつかせたまま白熱灯のような笑顔を見せる=鷺沢。裸電球が(ぼんやり照らす。ぶらさがった殺風景な部屋"永倉)。豆電球に明かりがともる。イルミネーションがせわしなく点滅を繰り返す“船戸。クリスマスのイルミネーションに輝く街。池の水面に装飾電灯にルミネを夢のように映す“久米。蛍光灯が(ガラスに反射する。じりじりと鳴る)。蛍光灯の青白い光に照らされる。蛾が蛍光灯の周囲を飛び回る。▼シャンデリア(装飾過多に思える。吹き抜けの天井に吊り下がる。夕顔の花のような照り色の=岡本)。シャンデリアが(燦然と輝く。煌々と室内を照らす=井上ひ)。電圧が二倍に上がったかと思うほどシャンデリアが閃0らき輝く=開高。耳飾りをシャンデリアのようにゆらめかせる=大庭。 **とうだい【灯台】** 灯台下暗しとはよく言ったもの。が灯台に導かれる。灯台のオレンジの灯が心臓の鼓動のように確かな点滅を繰り返す“村上春。霧の夜に輝く灯台の灯のように心を照らし出す=宇野利。暗い海の奥に光を放つ一点の星のような青い美しい灯台の光"島崎。遠く灯台の灯が暗闇を上下に二分割するように右から左へ流れる=泉優。灯台を目印にする。 **ともしび【灯火】** 運命は風中の灯火=舟橋。風にゆらめくほどの弱い命の灯檀。暗夜の灯火と頼む芥川。城の運命が風前の灯になる=童門。目つきが遠いともし火のように冷たい=川端。石榴ぶくの花が灯火のように咲く=川端。燭しょに火をともす。 **ともす【灯す】** 仏壇に灯明をともす。▼光を灯す(暗い世に。熱帯魚が妖しい緋の=阿刀田)。火をともす(キャンドルに。ぽっと心に。マッチを擦って)。ろうそくをとほす。信仰の火を灯し続ける=遠ぐ、明かりを点じる。灯心を明るくする。 **ともる【灯る】** ▼ともる(黄色い炎が。明かりがきらびやかに。車内に明かりが煌々にらと)。幾十の嫌がらがあかあかと灯る=長与。▼明かりがともる(窓に。窓に煌々と)。私語だきくように灯りが点ともる=鈴木さまざまな考えがばっぱっぱっと頭の中で点って消える有吉。▼ともり始める(薄閣に灯が。家々に明かりが)。電気がばっとつく。看板の明かりをつける。ネオンサインが点灯を始める。 **ネオン** どぎつい赤いネオン。ネオンが林立する繁華街。雨でネオンが煙る。赤いネオンが金魚のようにゆらめく三島。河にかかった仕掛け花火のようにネオンが大きく美しく輝く高見順。酒場のネオンが貼り絵のように浮いている=畑。熾烈しぇなネオンの光を受け火事の余焰はえを浴びているよう岡本。人の出盛りネオンの輝きざかりという頃おい=田辺。蒸し暑い夜気にネオンの極彩色がうるさい"連城。盛り場の扇情的なネオンサイン。酒場のネオンサインが招くように明滅する=常盤。双眸時うがネオンサインのようにぴかぴか輝きだす。井上ひ。 **ひ【灯】** 灯が消えるように死ぬ=山田風。幸せで体じゅうに灯がともったような思い=船山。ばあっと灯がともったように女が美しくなる=丹羽。娘がいなくなって灯の消えたような家"遠藤。希望の灯をともす。 **ほかげ【灯影】** ▼灯影(都会の夜の華やかな。夜の街の映る。窓からこぼれ出す)。川に灯影が落ちる。次から次へと灯影が暗闇の中を走り過ぎる=福永。ぼやけた対岸に灯影がちらつく=本庄。水たまりに赤い灯影が斜めにチカチカとふるえている=石坂。灯影にゆらぐ暗澹んとした顔「本庄。真昼のような明るい火影の中井上靖。玄関に灯影一つ洩。れていない!徳田。窓という窓からこぼれ出す―佐藤春)。灯影が(障子に **ぼんぼり【雪洞】** 雪洞がほの暗く点ともる。雛飾忉抡りがぼんぼりに照らし出される=篠田。雪洞にろうそくを灯す。雪洞の灯りがゆらゆらと流れ落ちる=鈴木三。小さなぼんぼりのようなレンゲソウの花があちこちにぼっぽっと咲いている=灰谷。 **まちのひ【街の灯】** 電車の窓の外の流星のように流れ去って行く街の灯=福永。町の灯が(くたびれたように輝く。壺井。海の底のお宫の景色のようにともる"宮沢)。街の灯が(点々と連なって見える。濡れたように美しい“伊藤整。赤いインクでもこぼしたように点々とにじんで見える=石坂。夜光虫のように密集している=小林久)。ぽつりぽつりと街の灯がともる。眼下の街の灯がきらめいて美しい=田辺。無数のきらめく星のように街の灯が流れる=大庭。街が赤や青の灯をちりばめる=小沼。宝石箱の中身をばらまいたような街の灯りの志茂田。蒼ぁぁざめた光の中に町の灯りが力なくともり始める=大庭。街明かりがどよめきながら映る久米。 **ランプ** ランブに火を入れる。ランブの(渉ぼんやりした明かり。芯を小さくする。光がほうっと照らす。光で顔が陰影を作る。ぼうと立つ油煙。炎がぽっぽっと小止みなく揺れる=佐藤谷)。細い洋灯の灯が夜の中に沈んで行きそうな静かな晩"夏目。ランプをふっと吹き消す。油の切れかかった暗いランブのように憂ぐになる=壺井。カンテラの油煙のような真っ黒な煙を立てて燃える白樺の皮志賀。油煙がぼうっと騰ぁがるカンテラの光"長塚。 <755> # 灯る-244 **ともしび【灯火】** 運命は風中の灯火=舟橋。風にゆらめくほどの弱い命の灯檀。暗夜の灯火と頼む芥川。城の運命が風前の灯になる=童門。目つきが遠いともし火のように冷たい=川端。石榴ぶくの花が灯火のように咲く=川端。燭しょに火をともす。 **ともす【灯す】** 仏壇に灯明をともす。▼光を灯す(暗い世に。熱帯魚が妖しい緋の=阿刀田)。火をともす(キャンドルに。ぽっと心に。マッチを擦って)。ろうそくをとほす。信仰の火を灯し続ける=遠ぐ、明かりを点じる。灯心を明るくする。 **ともる【灯る】** ▼ともる(黄色い炎が。明かりがきらびやかに。車内に明かりが煌々きらと)。幾十の嫌がらがあかあかと灯る=長与。▼明かりがともる(窓に。窓に煌々と)。私語だきくように灯りが点ともる=鈴木さまざまな考えがばっぱっぱっと頭の中で点って消える有吉。▼ともり始める(薄閣に灯が。家々に明かりが)。電気がばっとつく。看板の明かりをつける。ネオンサインが点灯を始める。 **ネオン** どぎつい赤いネオン。ネオンが林立する繁華街。雨でネオンが煙る。赤いネオンが金魚のようにゆらめく三島。河にかかった仕掛け花火のようにネオンが大きく美しく輝く高見順。酒場のネオンが貼り絵のように浮いている=畑。熾烈しぇなネオンの光を受け火事の余焰はえを浴びているよう岡本。人の出盛りネオンの輝きざかりという頃おい=田辺。蒸し暑い夜気にネオンの極彩色がうるさい"連城。盛り場の扇情的なネオンサイン。酒場のネオンサインが招くように明滅する=常盤。双眸時うがネオンサインのようにぴかぴか輝きだす。井上ひ。 **ひ【灯】** 灯が消えるように死ぬ=山田風。幸せで体じゅうに灯がともったような思い=船山。ばあっと灯がともったように女が美しくなる=丹羽。娘がいなくなって灯の消えたような家"遠藤。希望の灯をともす。 **ほかげ【灯影】** ▼灯影(都会の夜の華やかな。夜の街の映る。窓からこぼれ出す)。川に灯影が落ちる。次から次へと灯影が暗闇の中を走り過ぎる=福永。ぼやけた対岸に灯影がちらつく=本庄。水たまりに赤い灯影が斜めにチカチカとふるえている=石坂。灯影にゆらぐ暗澹んとした顔「本庄。真昼のような明るい火影の中井上靖。玄関に灯影一つ洩。れていない!徳田。 **ぼんぼり【雪洞】** 雪洞がほの暗く点ともる。雛飾忉抡りがぼんぼりに照らし出される=篠田。雪洞にろうそくを灯す。雪洞の灯りがゆらゆらと流れ落ちる=鈴木三。小さなぼんぼりのようなレンゲソウの花があちこちにぼっぽっと咲いている=灰谷。 **まちのひ【街の灯】** 電車の窓の外の流星のように流れ去って行く街の灯=福永。町の灯が(くたびれたように輝く。壺井。海の底のお宫の景色のようにともる"宮沢)。街の灯が(点々と連なって見える。濡れたように美しい“伊藤整。赤いインクでもこぼしたように点々とにじんで見える=石坂。夜光虫のように密集している=小林久)。ぽつりぽつりと街の灯がともる。眼下の街の灯がきらめいて美しい=田辺。無数のきらめく星のように街の灯が流れる=大庭。街が赤や青の灯をちりばめる=小沼。宝石箱の中身をばらまいたような街の灯りの志茂田。蒼ぁぁざめた光の中に町の灯りが力なくともり始める=大庭。街明かりがどよめきながら映る久米。 **ランプ** ランブに火を入れる。ランブの(渉ぼんやりした明かり。芯を小さくする。光がほうっと照らす。光で顔が陰影を作る。ぼうと立つ油煙。炎がぽっぽっと小止みなく揺れる=佐藤谷)。細い洋灯の灯が夜の中に沈んで行きそうな静かな晩"夏目。ランプをふっと吹き消す。油の切れかかった暗いランブのように憂ぐになる=壺井。カンテラの油煙のような真っ黒な煙を立てて燃える白樺の皮志賀。油煙がぼうっと騰ぁがるカンテラの光"長塚。 くようにすうと消える=久米。幻影のように黄色い光を放つ=高橋和。百合の花がしぼむように消える"有島)。幾つもの電灯が骤雨儿沙のように浴びせかける絢爛45=梶井。ばっと電灯がつく。▼電灯がともる(点々と。ぽつんと)。電灯に虫が集まる。電灯の(球を付け替える。光が横顔を照らし出す)。壁に電灯の光が照り返る。戸の隙間から電灯の光が漏れる。不夜城のようにあかあかと電灯のついたデバート=原田康。煌々にジと電灯をつけたショーウィンドー。たくさんの豆電灯が千の蛍でも集まったようについている=宫沢。電球の柔らかな光。涙を頬にへばりつかせたまま白熱灯のような笑顔を見せる=鷺沢。裸電球が(ぼんやり照らす。ぶらさがった殺風景な部屋"永倉)。豆電球に明かりがともる。イルミネーションがせわしなく点滅を繰り返す“船戸。クリスマスのイルミネーションに輝く街。池の水面に装飾電灯にルミネを夢のように映す“久米。蛍光灯が(ガラスに反射する。じりじりと鳴る)。蛍光灯の青白い光に照らされる。蛾が蛍光灯の周囲を飛び回る。▼シャンデリア(装飾過多に思える。吹き抜けの天井に吊り下がる。夕顔の花のような照り色の=岡本)。シャンデリアが(燦然と輝く。煌々と室内を照らす=井上ひ)。電圧が二倍に上がったかと思うほどシャンデリアが閃0らき輝く=開高。耳飾りをシャンデリアのようにゆらめかせる=大庭。 **とうだい【灯台** 灯台下暗しとはよく言ったもの。が灯台に導かれる。灯台のオレンジの灯が心臓の鼓動のように確かな点滅を繰り返す“村上春。霧の夜に輝く灯台の灯のように心を照らし出す=宇野利。暗い海の奥に光を放つ一点の星のような青い美しい灯台の光"島崎。遠く灯台の灯が暗闇を上下に二分割するように右から左へ流れる=泉優。灯台を目印にする。 **ひかげ【灯影】** 窓という窓からこぼれ出す―佐藤春)。灯影が(障子に <756> # 取り替える・切り替える ## 取り替える・切り替える **いれかえる【入れ替える】** ▼入れ替える(お茶の葉を。気持ちを。空気を。軽薄な性根を。左右を。フィルムを)。入れ替え(客の。空気の。職員の。大臣の)。委員の入れ替えを強行する。▼入れ直す(ガラスを。気合を。腰を)。新陳代謝が(高まる。よい。悪い)。流行語は新陳代謝が激しい。 **いれかわる【入れ替わる】** ▼入れ替わる(客が。左右が。上下が。立場が。部屋の空気が。場所を。加害者と被害者が。愛憎がめまぐるしく辻井。紅潮した顔に暗い辱め面と少女のようなあどけなさが目まぐるしく古井)。入れ替わりに(席を立つ。入ってくる)。主客処にこを易える。入れ替わりのように立ち上がる=向田。入れ違いに(帰ってくる。出ていく)。後になり先になりして歩く。 **おうしゅう【応酬】** ▼応酬(軽いバンチの。口汚い言葉の)。野次の応酬が始まる。両者の間に激しい応酬が続く。浮き世の応酬に疲れた皺を額に畳む=幸田露。▼応酬する(遠慮なく。手こわく)。▼応酬をする(反語で皮肉な。親しい)。 **おきかえる【置き換える】** ▼置き換える(苦難を喜びに。数字を文字に。家庭教育を社会教育に。感受性という天稟んを言葉に宮本輝。奇妙な日ごと日ごとを物語に=堀。登場人物を知っている誰かに"小川)。 **かえがたい【代え難い】** 「代えがたい(一をもって他に。人一人の命は何物にも)。余人をもって代えがたい持ち味=浅川。万金をもってしても換えがたい!陳。大学の自治は何物にも換えがたい大切な宝美濃部。何物にも替えがたい貴重なもの松本。何物にも代えがたい(宝物。喜び)。 **かえる【替える】** ▼替える(おむつを。銃把の弾倉を。転々と仕事を。転々と住居を。羽織の裏を。職人を入れて畳を。どきっとしたように顔色を)。心を入れ替える。植え替える(株を。木を)。▼書き換える(記録を。データを)。▼着替える(外出着に。作業服に)。着せ替える(下着を。寝巻きを)。鞍替えする(仕事を。別の会社に。別の仕事に。実入りのいい客に。役人から政治家へ)。▼立て替える(金を。切符代を)。建て替える(家を。校舎を)。荷物をはしけに積み替える。脱ぎ替える(外出着を。洋服を)。▼塗り替える(看板を。記録を)。▼乗り換える(別の車に。IRから私鉄に)。バンツを穿き替える。靴を履き替える。張り替える(障子を。絆創膏がいを)。衣替え(服の。店の内外の)。出先機関を統合して新機関に衣替えする。衣替えの季節。 **かわり【代わり】** 代わりに(説明する。詫びる)。母親の代わりに手紙を書く。代わりの(品。者をよこす)。▶代弁する(意見を。気持ちを。死者の思いを。死んだ人たちの魂の声を=有吉)。代役を(こなす。立てる。務める)。師匠の名代で出席する。父の名代で参列する。▼代用する(応接間を。機械を。他の材料で)。代用品を使う。代理で出席する。代理を務める。よこす)。弁護士を代理人に立てる。代理人を務める。 **かわる【替わる】** ▼替わる(代が。担任が。下宿を。相席を。話し手が次々。熱中する対象がくるくると)。相手の立場に成り代わって考える。一同に成り代わって挨拶する。羽毛が抜け替わる。勢力図が塗り替わる。生え替わる(羽毛が。歯が)。▼代行する(運転を。職務を。政務を。役割を)。 **かわるがわる【代わる代わる】** 代わる代わる舞台に出る。近所の人が代わる代わる覗きに来る。夫婦が代わる代わる訪ねてくる。二人の顔を代わる代わる見つめる。代わり番こに歌ったり話をする。顔と人形とを代わり番こに眺める。二人で代わり番こに行ったを代わり番こに眺める。二人で代わり番こに行った **かんきん【換金】** ▼換金する(当たり馬券を。金券を。小切手を。商品券を)。▼金に換える(当たり馬券を。小切手を)。▼現金化する(小切手を。預金を)。▼現金に換える(小為替を。小切手を。債券を)。 **きりかえる【切り替える】** ▼切り替える(話題を。渋面を笑顔に。テレビのチャンネルを。とっさに質問を。自動操縦を手動に。卒業試験をレポートに。運命の方向を出逢いを軸として瀬戸内)。切り替え(契約の。ポイントの)。感情の切り替えができない。切り替えが早い(頭の。気持ちの)。▼切り替わる(画面が。時代の精神が。心のスイッチが。旧制から新詞に。ドラマがコマーシャルに)。▼シフトする(ギアをローに。ギアをトップに。生産拠点を海外に。単独行動主義から国際協調に)。ギアをチェンジする。 **くみかえる【組み替える】** ▼組み替える(足を。予算を)。組み直す(足を。人生設計を。膝を)。▼改組する(機構を。研究所を。大学を)。▼改編する(組織を。番組を。部隊を)。短編を長編の一部に再構成する。 **こうかん【交換】** 交換する(意見を。結婚指輪を。情報を。名刺を。貨幣と労働力を)。交換条件を(出す。持ち出す)。産物を物々交換する。物々交換で手に入れる。換気する(部屋を。窓を開けて)。▼取り交わす(覚え書きを。契約書を。約束を。結納を。親しげな挨拶を)。会話を取り交わす(無意味な。当たり障りのない)。 **こうご【交互】** 腕時計と時刻表を交互に見やる。希望と落胆を交互にもたらす。妻と娘の顔を交互に見る。二人の顔を交互ににらみつける。二人の名を交互に呼ぶ。二人を交互に見比べる。顔に希望と恐怖の色が交互に浮かぶ!高見浩。申し訳なさとほっとした気分 <757> # 取り替える・切り替える―245 **こうたい【交代】** 交代が速やかに行われる。風呂場に男女が交代で入る=篠田。慌ただしい新旧交替の悲喜劇が巻き起こる内橋。交代する(学長が。首相が。新旧が。政権が。世代が。選手が。トップが。持ち手が。運転を。攻守を。順番に先頭を。付き添いを。歩哨を。レース中にドライバーが)。新旧交代の時則。政権交代が実現する。シフトに組み入れる。シフトを(組む。敷く)。手のひらを合わせてタッチする。▼チエンジする(攻守を。コートを)。 **こうてつ【更迭】** ▼更迭する(閣僚を。監督を。司令官を。大臣を。トップを。業績不振で担当者を)。事実上の更迭人事。更迭人事が成功する=舟橋。 **こもごも【交交】** こもごもすべてを語り明かす。警戒心と好奇心とにこもごも襲われる。窓に光と影とがこもごも動く。而人がこもごも語る。同情と憂慮と交々混じり合った真摯しんな面持ち根。恐怖とうれしさがこもごもに湧いてくる。愛憎こもごもの追憶。万感こもごもの思い。悲喜こもごもの知らせ。内憂外患こもごも(至る。来たる)。 **スイッチ** スイッチがバチンと切り替わるようにあっさりと眠りに落ちる=小川。スイッチに手を伸ばす乃南。▼オフにする(ハンドルを。ラジオを)。▼オンにする(電源を。ブレーカーを)。▼スイッチを入れる(マイクの。セルフタイマーの)。スイッチを(オンにする。かちりと入れる。入れられたように不意に目覚める"加賀)。光景がスイッチを入れたテレビ画面のように鮮やかに浮かんでくる=佐藤愛。ラジオのスイッチを切る。スイッチを(オフにする。切るように頭の中から全ての灯りを消しさる=村上奏。バチンと乱暴に切る=小川)。ばちりとスイッチをひねる。電源スイッチを切られたように舞台の上の男女が動きを止める"西木。 **だいだ【代打】** 代打に(起用する。立つ。出る)。代打の切り札的存在。代打を送る。ピンチヒッターで(会議に出る。出演する。打席に立つ)。ピンチヒッターを(送る。出す)。 **だいひつ【代筆】** 艶書の代筆を生業とする"隆。▼代筆する(恋文を。手紙を。ラブレターを)。▼代作する(弔辞を。論文を)。代作を(依頼する。下請けに出す)。 **とってかわる【取って代わる】** ▼取って代わる(ほかの集団が。希望が絶望に。他の人間に。支配者の地位に。トランジスターが真空管に内橋。灰色の世界が現実の世界に谷川)。甘美な感情がうしろめたさに取ってかわる三浦彩。いつもなら飛び出す怪口が恨みがましい言葉にとって変わる落合。新人に取って代わられる。 **ひきかえる【引き換える】** 当たり券を景品と引き換える。内気な兄に引き換え活発な弟。おとなしい姉に引き換え妹はお転婆だ。子供と引きかえにするほど価値ある男=瀬戸内。命を引き換えにする。当選くじと引き換えに賞金を受け取る。金と引き換えに(男と寝る。体を売る)。 **みがわり【身代わり】** 身代わりに(立つ。立てる)。身代わりの役を務める。ダミー人形を使って実験する=畑村。綿密に仕立てられた替え玉県藤本。替え玉で受験する。替え玉に気がつかない。替え玉を(仕立てる。頼む。務める)。 **もちかえる【持ち替える】** ▼持ち替える(受話器を。スコッブを。包みを。ベンを。剃刀孙以を逆手に。右手の杖を左手に)。持つ手を替える。▼持ち直す(銃を。包みを。棒を)。 **とりかえる【取り替える】** ▼取り替える(おむつを。着物を。シーツを。下着を。寝薬はっを。水を。タイヤを新品に。看護婦が餡子汤んでも入れるように次から次へと手際よく胸のガーゼを=阿刀田)。あれこれ取り替えて着る。かけ替える(絵を。カーテンを。額を。掛け軸を。看板を)。▼首をすげ替える(監督の。大臣の。人形の)。下駄の鼻緒をすげ替える。総入れ替えする(委員を。スタッフを。取締役を。役員を)。▼付け替える(鍵を。電灯の球を。ドアを。馬具を。ボタンを)。▼振り替える(休日を。资金を。授業を。今日のコンサートを一週間後に)。▼両替する(円をドルに。一万円札を千円札に)。▼互換性(ソフトウエアの。テキスト形式の)。互換性が(ある。ない)。▼差し替える(花瓶の花を。記事を。写真を。正しいものと)。差し替え(委員の。サンブルの。メンバーの)。差し替えが利く。すり替える(愛と金を。分別と諦めを。問題を。論理を。過ちを恋に。謙虚を傲慢にらに。涙を笑いに。偽物と。別のコップと)。とっかえひっかえ若い衆のを交互に感じる=重松。交互に眺める(夫妻の顔を。名刺と顔を)。 **やりとり【遣り取り】** ▼やり取り(丁々発止の。仲用やりとりどうしの気ままな。思い出すのも恥ずかしい。華やかな言葉の。微妙にこじれた。抑揚をつけた甲高い。唾を飛ばし合うような=貫井)。酒の上のなんともくだらないやりとり"阿部。活発な通信のやり取りが始まる。生々しいやり取りが耳に飛び込んでくる。ひとしきり挨拶のやり取りがある。年賀状のやりとりがある程度のつきあい=笹沢。ボールのやり取りに夢中になる。今しがたのやり取りを思い返す。他愛のないやり取りを聞き流す。電話のやり取りを盗聴する。とりとめもないやり取りを交わす。二人のやり取りを耳に挟む。不毛なやり取りを打ち切る。二人のやり取りに(耳を澄ます。割って入る)。▼やり取りする(金品を。杯を。冗談を。情報を。思い出したように手紙を)。命をやり取りする戦争。▼やり取りをする(客ときわとい。書状の)。▼授受する(金銭を。金品を)。▼文通する(英文で。外国人と。点字で。メールで)。 <758> # 取り仕切る・取り締まる おやぶん【親分】親分の(顔に泥を塗る。貫禄に乏しい。言いなりになる。覚えがめでたい)。子分として親分を支える。職人の親方。親方の(下で修業する。ところに弟子入りする。命令で働く徒弟)。▼親玉(悪党の。ギャングの。事件の)。親分子分の契りを結ぶ。権限を振りかざして親分肌を吹かせる。親分肌の男。御大自ら指揮をとる。▼巨魁だい(盗賊の。犯罪組織の。密輸団の)。▼巨頭(近代文学の。財界の。実業界の。政界の。列国の)。組長の座。組長を継ぐ。▼首領(悪党の。一味の。盗賊の)。▼総帥(一円の。グルーブの。軍の。財閥の)。▼頭目(山脈の。盗賊の)。どよめき立つ男たちを頭領が制する=柴田剣。本家の頭領にふさわしい器量を具くなえる=村上元。ボスに取り入る。▼領袖いう(財界の。政党の。派閥の)。 **かいちょう【会長】** 会長に(就任する。祭り上げられる)。会長の(地位を追われる。座から引きずり下ろす=佐高)。会長職を退く羽目に陥る。総裁に(選ばれる。担ぎ出す)。委員長に就任する。委員長の座を射止める。委員長を(互選する。サポートする。辞任する)。理事長に推挙する。理事長を(選ぶ。務める)。 **かおやく【顔役】** 顔役(暗黒街の。業界の。組合の。盛り場の。地元の。土地の。町の)。闇を支配する顔役にのし上がる藤沢。村の主だった者。実力者(財界切っての。島で三本の指に入る夢枕)。 **かんかつ【管轄】** 管軸を一元化する。▼管轄する(安全管理を。国の東部を)。管轄下に置く。管堂する(事務を。入事を)。主管する(契約を。事務を。例規を)。・直轄する(国が。社長が。政府が。本部が。理事長が)。 **かんぶ【幹部】** ▼幹部(会社の。組の)。幹部が顔を揃える。上席の(研究員。検事)。お偉方(会社の。政界の)。お偉方に(こびる。へつらう)。上層部(会社の。組織の)。上層部の横槍ににが入る。 **かんり【管理】** 管理が行き届く。管理に遺漏がない。管理する(生産手段を。古い資料を。財産を厳重に。単品ことに。ウェブサイトを)。政府の管理下に入る。管理権を掌握する。身動きできないように組み込まれた管理社会大庭。管理体制に欠陥がある。管理人に(挨拶をする。見とがめられる)。経営を組合の自主管理にゆだねる=加賀。杜撰げな合品質管理。 **かんりしょく【管理職】** 管理職を務める。絵に描いたような中間管理職池井戸。院長に昇格する。いずれ院長の座が回ってくる。▼園長(植物園の。動物園の。保育園の。幼稚園の)。学長に(選ばれる。就任する)。ほとんど席を吸めているだけの課長「赤川。局長に昇任する。校長のボストを得る。署長の職に就く。店長を(買って出る。務める)。部長に昇進する。 **かんりょう【官僚】** 鼻持ちならないエリート官僚。官僚が天下りする。官僚の事なかれ主義。官僚は無謬吒びではない。官僚主義の弊害。官僚的な(言い回し。尊大さ)。官吏の判で押したように几帳面にめんで平穏な生活"有吉。稀まれに見る清廉な能吏。 **ぎちょう【議長】** 議長に選出される。議長の許しを得て発言する。議長を(解任する。互還する)。回り持ちで議長を務める。▼座長(審議会の。分科会の)。座長が私案を出す。司会を務める。 **コントロール** 絶妙のコントロール。コントロールが(良い。きく。定まらない。悪い)。コントロールに難がある。▼コントロールする(感情を。自分を。生活を、量を。意志の力で)。▼勤ぅくする(衆を。兵を)。成感情と行動がどうにもちぐはぐになりうまく制御できない三浦し。制御する(怒りを。感情を。行動を。暴走を。膨大な情報を。欲望を。ロボットを。コンビューターでシステムを。核反応が過度に進まないように"柳田)。▼統制(一枚方的な。一糸乱れぬ)。組織の末端にまで統制が及ぶ。統制のとれた集団行動。 **しはいにん【支配人】** ▼支配人(劇場の。ホテルの)。支配人が挨拶に顔を出す。万年番頭と陰口を言われる=村上元。番頭に(徹しきる。取り立てる)。有能なマネジャー。マネジャーに採用する。マネジャーを雇う。 **しゃちょう【社長】** 社長が(決裁する。辞任する)。社長と喧嘩州んして辞める。社長に(就任する。見切りをつける)。遠からず社長になる。順当に社長に伸のし上がる=山口。社長の(意見に逆らう。受けがいい。鶴の一声。娘に取り入る。椅子にしがみつく。椅子を棒に振る。覚えがめでたい。気持ちが従業員に伝わる。座への最短距離にいる。体面にかかわる。地位を追われる。ボストを射落とす。右腕として活躍する)。社長の座を(退く。狙う)。一礼して社長室を出る。社長賞を貰って有頂天になる。社長ぶりが板につく。 **じゅうやく【重役】** 重役の(椅子を棒に振る。席を一族で固める)。重役への坦々たる道が始まる=城山。取引先の重役を怒らせる。重役の一人に名を連ねる。理事に名を連ねる。理事を務める。取締役に(就任する。昇進する)。取締役の椅士を下りる。 **しゅじん【主人】** ▼主人(商売に熱心な。一刻者で評判の。名の知れた店の)。主人が(姿を見せる。召し使いを叱りつける)。主人に(仕える。立ち向かう勇気がない)。猫が主人にすり寄る。料理屋の主人に納まる。主人の(意に従う。非を誅いきめる。手足になって働く。いない暢気30んな柄吉行)。宿の主人を呼ぶ。一にも二にも主人を大事にする=福永。主人風を吹かす。飲み屋のおやじで一生を終わる=沢木。家長として奉る。裕福な姿宅しいうの旦那。商魂たくましい店主。▼当主(旧家の。武勇で鳴る名門の)。▼主场。(一国一城の。小さいながらも一城の"本庄)。おしもおされ <759> # 取り仕切る・取り締まる―246 すような声で喋る"大庭。長老支配の弊害。 **とうきょく【当局】** 当局が目こぼしをする。当局から目の仇跡ょにされる。当局からの通達。生活苦を当局にアビールする。当局の関知するところではない。公安当局に監視される。その筋からの指導。その筋に祈える。その筋のお達し。 **とのさま【殿様】** 殿様に(注進する。仕える)。殿様の(お膝下。死に殉じる。脱たぁを宿す。筋湯」を争う。覚えがめでたい。食事を滋味する)。殿によしなに申し上げる。主君が家来を連れて出かける。臣下として主君に仕える。主君のご乱心で家中が騒然となる。 **とりしきる【取り仕切る】** ▼取り仕切る(喜寿の祝宴を。葬儀万端を。業務を一手に。家の中を上手に。金の出入りを一切。母に代わって家事一切を"永井荷)。店を実質的に仕切る。▼宰領する(会社を。団体旅行を。荷物を)。兵耜01ぅの率領にあたる。差配する(アパートを。職人を)。差配の一切を任せる。本店の差配を受け持つ。▼主宰する(会を。教室を。劇団を。研究所を。サロンを)。▼盟主(アジアの。城内の。業界の)。盟主をもって任じる。行政事務を司る。を司る天使のような恐ろしい美しさ=光原。 **とりしまる【取り締まる】** ▼取り締まる(違法駐車を。犯罪を。風紀を。暴力行為を。密漁者を。無免許を)。▼取り締まり(警察の。交通違反の)。取り締まりが厳重を極める。取り締まりの(徹底を図る。網をかいくぐる)。萌消する(反対派を。不平分子を)。綱紀を粛正する。▼統制する(言論を。行動を。思想を。厳格な秩序で)。 **ふくまでん【伏魔殿】** ▼伏魔殿(大奥という。政界の)。伏魔殿のような(組織。百鬼夜行といったような政治の世界に生きる=勝目)。 **めいし【名士】** ▼名士(各界の。地元の。朝野の)。名士」が一堂に会する。名士の一人に数えられる。各界の名士を集める。各界の著名人。▼お歴々(財界の。政界の)。お歴々が顔をそろえる。ずらりとお歴々が並ぶ。 **もとじめ【元締め】** 元締め(興行の。やくざの)。博打の胴元。全国から木山に集まる。本庁から連絡が入る。本部に連絡する。 **やくいん【役員】** 役員を(選任する。増員する。総入れ答えする)。新役員が顔合わせをする。人選を役員会に委託する。委員に就任する。回り持ちで委員になる。委員を務める。任命する)。執行部の三役。三役を選出する。選考委員の末席に連なる。 **やくしょ【役所】** 役所から民間へ転職する。役所と業者のもたれ合い。役所に(かけ合う。出仕する。届けを出す)。役所の(縦割り組織。窓口のような情のない口振り貫井)。▼お役所(上から目線の。手続きの多い)。お役所仕事を排する。役場に(出かける。届け出る)。官がのさばる。認可官庁への露骨な接待"西村。官と民が共同する。関係省庁が連携する。省庁の縄張り争い。庁舎が老朽化する。庁舎を建て替える。 **やくにん【役人】** 役人が(天下りする。不正を働く。目くじらを立てて取り締まる)。役人に賄賂を贈る。役人の事なかれ主義。強欲な役人の食いものになる。お上に(訴え出る。対して不服を抱く)。お上の(風を吹かせる。御用を務める。おとがめを受ける)。お上を笠に着る。 **ゆうりょくしゃ【有力者】** 有力者(在野の。市の)。有力者の承認を取りつける。有力者を一堂に集める。社長に財界の有力者を望む。町の有力者たちを招く。 **ようしょく【要職】** ▼要喊(会社の。政権の)。ときの大蔵大臣という顕官中の顕官"船山。数々の顕職を歴任する。顕要の職にある。▼高官(政府の。要路の)。要人の警護に当たる。要路に訴えて出る。為政の要路にある人。政府の要路にある人物。もせぬ一家のあるじ=本店。主にふさわしい威容を備える。れっきとしたお店たなのおかみさん。料理屋のおかみさんが板につく梅本。目に下男が美しい女主人を見るような卑しい憧れの色が浮かぶ!倉橋。恰幅跡いのいいマスター。マスターに声をかける。 **せいじか【政治家】** 『政治家(名望のある。老獪いきわまりない。国民から広く信頼を集めている=柳田)。政治家がバーティーで金を集める。政治家としての(最低限の資質。生命を絶たれる)。政治家に裏金をばらまく。政治家の言葉の重みが今ほど失われている時はない!佐高。他人の実行力のまわりをウロウロして利益にありつこうとする二流三流の政治家のあいまいさ=武田爽。棋士が将棋に殉ずるごとく政治家はわが政策に殉ずべきもの=坂口。政治家肌の人卓越した政客に成長する。世襲のような代議士。 **たいしょう【大将】** お山の大将。大将からじきじきに命令を受ける。大将同士の一騎打ち。将軍に鼓舞された兵隊。 **たいちょう【隊長】** 隊長とおぼしき男。隊長に就任する。隊長の威厳を保つ。司令官が戦死する。司令官を(解任する。更迭する)。軍の司令官を務める。司令塔が破綻する。司令塔に足る機能を備える。司令塔の役割を果たす。▼キャプテン(運動部の。チームの。飛行機の。船の)。キャブテンを務める。 **だいひょう【代表】** ▽▼代表する(国民の意思を。同志の意見を)。戦後を代表する作家の一人。派閥を代表する人物。代表者が(集まる。協議する)。幸福の典型のような家庭。キャリアの典型みたいな人物。代表作(一時代に冠絶した。全作品中第一に推すべき『三好遂)。代表作と目される作品。代表作の一つに数えられる。典型的な(浮気男の末路。小市民。新興住宅地。例。都市近郊型の農村)。 **ちょうろう【長老】** ▼長老(政界の。村の)。長老の発声で乾杯する。長老たちがふがふがとゴム管をつぶ <760> # 取る あみ【網】網でバシャンと掬すくうみたいに受話器を取り上げる"尾辻。魚が網にかかる。悪知恵の網にひっかかる=小島。猜疑いの網に引っかかる!あさの。網を水から揚げる。蜘蛛くもの網を払う。警戒の網をくぐる。警察が網を張って待つ。広く網をかぶせる。想像の網を広げる。蜘蛛が巣をはるように鬱屈と粘る分泌物が網を拡げる=黒井。高い標汁ゃが半ば落葉して細い網のような枝を空にすかしている=国木田。代赭いいの濃淡の巨大な網のような汚水三島。金網のフェンス。金網をがたがたと揺する。さで網で雑魚をすくう“田山。ネットで覆う。ネットを(かぶせる。張る)。投網を打つように縄を投げる藤沢。雲が投網を投げたように散っている=伊集院。声が投網のようにかぶさる=加賀。すっかり葉を落とした欅の大木が梢を投網のように寒空に拡げている=黒井。 **いけどり【生け捕り】** ▼生け捕りにする(動物を。犯人を。猛獣を。労せずして)。 **いさりび【漁り火」** 漁り火が沖に点々と散っている。沖に漁り火がちらちらと揺れる。遠く漁り火が煌きらめく暗い海原=高橋和。遠く望まれる漁り火が暗い水の上に燃えるのが美しい島崎。漁火が星をこぼしたように明滅する=瀬戸内。沖の漁り火が鮮やかにまたたく。吹きすさぶ風にげに明滅することく漁り火が微かすかにまたたく=長与。ほのかに漁り火の影が見える。漁り火のような明かりを目印に歩いていく=飯田。 **えもの【獲物】** 獲物めがけて飛びかかる。獲物が(網にかかる。罠ゃなにかかる。あまり期待できない。罠に飛び込んでくる)。思わぬ獲物に胸を高鳴らせる。これという獲物に目星をつける。獲物を(射程に捕らえ、る。じわじわと追い詰める。前に舌なめずりをする。求めて夜の街を渉猟する。狙う猫のように丸くなる"伊集院。見つけた猫のような丸い目で見る=横山。巡っての諍いさいが起きる=熊谷)。一匹の獲物を奪い合う。大きな獲物を逃す。身のほど知らずにあんまり大きい獲物を狙いすぎる=大庭。山の神様から獲物を授かる集合。 **かる【狩る】** 狩る(猪いいのを。兎らきを。熊を。野犬を)。▶狩り出す(熊を。鹿を。犯人を。密偵を)。▼狩り立てる(獣を。動物を)。 **ぎょかく【漁獲】** 漁獲が(増える。減る)。漁獲に恵まれる。漁漁獲量が急カーブで減る。水揚げする(魚介類を。河岸に。港に)。大漁の旗を翻翻んとひるがえす。魚を大量に水揚げする。例年にない豊漁。 **ぎょぎょう【漁業】** 漁業が苦境に追い込まれる。漁業で生計を立てる。漁業に従事する。海の幸に頼って暮らしを立てる。漁業権を獲得する。 **ぎょせん【漁船】** 湾内から外洋に散らばった無数の漁船三島。漁船の放つ篝火みみが一面に海上を彩る=吉村。沖合に漁船の灯が点々と見える。朝もやをついて港を出て行く漁船の心地よい響き=阿久。 **さかなつり【魚釣り】** 魚釣りに(出かける。夢中になる)。魚釣りを楽しむ。浮きがびくんと下がる。魚影が濃い。砂浜に竿ともを立てる。鍋たいの口から針を外す。▼釣り上げる(大物を。魚を)。釣り糸をたぐり寄せる。釣りに行って大物を上げる。暇を見てはせっせと釣りに行く。釣れる(飽きない程度に。而白いほどによく)。針に餌を付ける。魚が針にかかる。引きが(強い。弱い)。魚籠に魚を入れる。ルアーを力一杯に飛ばす。手元に魚信が伝わる。竿先が魚信に特有の跳ねるような動きに変わる瞬間を息を殺して待つ"奥泉。竿先に視線を据えて魚信を待つ。魚のあたりが来る。違い。途絶える)。釣り竿が(しなう。たわむ)。マストが釣竿のようにたわんでビュウビュウ鳴く=小林多。釣る(站ぁぁを。渓流で岩魚いもを。鯉を。跪はゃを。鲋ふたを。鳟ますを。砂浜から投げ釣りで)。 **しゅりょう【狩猟】** 狩猟に出かける。狩猟を(解禁する。制限する)。晴れ間を見て猟に出る。狐のいろはを伝授する。狩りの(角笛の音。魅力に取り恐っかれる)。熊を巻き狩りで獲とる。密猟を(監視する。取り締まる)。猟期を(短縮する。延ばす)。 **ぜいきん【税金】** 税金の(申告を済ます。使い方をチェックする。無駄遣いをやめる)。税金を(納める。食い物にする)。▼課税する(所得に。土地に)。源泉課税を差し引く。不正に課税を免れる。関税を(引き上げ、引き下げる)。高率の関税を要求する。血税の無る。引き下げる)。駄遣い。血税を食い物にする。減税を(実施する。見送る)。重税に苦しむ。重税を課せられる。税額を段階的に上げる。税源が偏在する。税源を移譲する。税込みの(価格。値段)。税収が(減少する。増加する。伸び悩む)。税収の伸びが期待できない。税制を改革する。税で年金を賄う。税の還付を受ける。税負担が重くなる。税率を(維持する。引き上げる)。増税隠しを非難する。増税に(反対する。踏み切る)。脱税容疑で告発する。非課税の適用を受ける。過酷な年貢に耐えかねる。苛酷な年貢の取り立てに苦しむ平岩。領民の膏血にっをしぼる。公的資金で(銀行を甘やかす。不良債権を穴埋めする)。不良資産買い取りに公的資金を使う。国費で留学する。国費を無駄遣いする。年貢の取り立てが厳しい。 **とらえる【捕らえる】** ▼捕らえる(飛んできた球をダッシュして。逃走しようとする者を=柴田錬)。とらえる(恐怖が心を。言葉尻を。現状を正確に。心理を微細に。特徴を的確に。本質を鋭く。決定的な瞬間を。問題を分析的に。現実の本質を正しく。原水爆を凶器と。好奇心をひしと。しっかりと自分の目で。大事な <761> # 取る-247 急所をしっかり)。何ともいえぬ憂愁が彼を捉える"今日。とらえられる(あらぬ想像に。甘美な気分に。骨肉の愛着に。深い失望に。複雑な感慨に。かたくなな克己心に。体が熱っぽくなる興奮に。理不尽な怒りに)。▼とらえ方(本質を突いた。的を射た。ピントのずれた)。意味をとらえそこなう。とらえそこねる(ボールを。本質を)。魚を手取りにする。捕捉する(趣旨を。内容を)。いち早く目標物を捕捉し破壊する。風のように捕捉しがたい心持ち=佐藤春。 **とりあげる【取り上げる】** ▼取り上げる(興味本位に。社会的な問題を。歴史上の人物を。マスコミが大きく)。上梓汇いするなり各紙誌で取り上げられる奥田。▼俎上に氷に載せる(問題を。規則の見直しを)。メディアの俎上に上る。 **とりこ【虎】** 男をとりこにする妖婦。▼とりこになる(愛執の。罪悪感の。情熱の。花の。魅力の)。身もとろけるようなやさしさの虜になる三鳥。▼とりこにする(一目見ただけで人の心を。あやしげな蜘蛛くもの糸で=阿部)。捕虜になった(兵士を責める。様子を嘲笑する)。虜囚の恥辱をこうむる豆田。 **とる【取る】** ▼取る(足がリズムを。馬の巻がっを。言質がんを。自宅で休養を。先方の了解を。高い手間賃を。熱心にメモを。悩殺ボーズを。袴封』の股立もちを。一人相撲を。法外な料金を。了承の確認を。あちこちへ連絡を。ある程度の成績を。しかるべき手続きを。自分の行動の責任を。たっぷり時間を。直立不動の姿勢を。テストで零点を。名を捨てて実を。何らかの手段を。二者択一の方法を。のんびり休暇を。フリーザーの霜を。無責任な行動を。国際的な賞を何度か。不動産を担保として。宿賃をがっちり。何かにつけて反抗的な態度を鈴木光。水を飲もうと柄杓10しを宮部)。▼摂とる(食事を。水分を。昼食を。朝食を。夕食を)。執る(現場の指揮を。宰相の権を。師弟の礼を。大学で教鞭心いうを。天下の政ぼらを。筆を。ベンを)。形を取る(考えが一定の。疑惑がはっきりした。とりあえず仮納品という伊坂)。▼構えをとる(隙のない。二段三段の。盤石の。和戦両様の)。▼取って食う(子を。人を)。▼取りに行く(荷物を、物置に鍬くぁを)。責任を取らされる。▼取らせる(口述筆記を。責任を。褒美を。よけいな手間を)。▼連絡を取り合う(密かに。頻繁に)。手と手を取り合う。取り崩す(ストックを。貯金を。積立金を。内部留保を)。採取する(砂金を。サンブルを。指紋を)。 **とれない【取れない】** ▼取れない(採算が。予約が満足に。ろくな賞も。うまくバランスが。思うように動きが。からっきし統制が。どうにも身動きが。思うように汚れが。連絡が依然として)。狐が空振りに終わる。ボールを受け損ねる。ボールを受け損じる。取りそこなう(休暇を。ゴロを。賞を。フライを)。▼取りそこねる(ゴロを。賞を。フライを。ボールを)。重大な意味を束っかの問取り損ねる=森村。取りっぱぐれる(可能性がある。リスクがある)。▼取りっばぐれる(貸した金を。家賃を)。後逸する(ゴロを。打球を)。派手にトンネルする。 **とれる【取れる】** ▼取れる(足のギブスが。十分に採算が。喉の渇きが。胸のつかえが。休暇が偶然に。疲れが完全に。希望通りの宿が。精神のバランスが。表情から硬さが)。額面通りに取れる話ではない。抜ける(草が他愛なく。栓がすぽっと。歯がぼろっと)。▼もげる(取っ手が。人形の腕が。ボタンが)。 **ひとじち【人質】** 人質が足手まといになる=勝目。感情を人質にとる。子供を人質にする。妻子を人質に差し出す。人質の命が危ない。人質を(解放する。救出する。飛還する)。 **らんかく【乱獲】** 乱獲のため減少のきざしが見える。▶乱獲する(海産物を。野生動物を)。取り放題に獲物を収る。 **りょう【漁】** 漁が(解禁になる。最盛期に入る)。命懸けで漁に出る。漁の技を仕込む。▼漁をする(川で。近海で)。話もりを舟に積む。休漁を強いるほどの嵐が島を襲う三島。時化しけで休漁を余儀なくされる。疲れを知らぬように出漁する。新たな漁法を(編み出す。考案する)。漁期を(短縮する。迎える)。漁場から漁場へと移動する。漁けたる(蟹かにを。鮭さけを)。息せき切って延縄をたくし上げる。密漁を(監視する。取り締まる)。やなで鲇ぁゅを捕る。 **りょうけん【猟犬】** 猟犬が兎を追う。猟犬のような目になってくどいほど確認を繰り返す=内田康。暗い雨の夕闇につつまれた町すじを猟犬のような眼つきで見まわす―池波。人には逃げるものを追うという猟犬のような本能がある=飯田。忠実で鼻のいい狐犬さながらグラウンドを駆ける=奥泉。 **りょうし【漁師】** ▼漁師(腕のいい。老いてもなお毎日海へ出ないではおさまらぬという宮尾)。漁師としての矜持沿いが許さない吉村。海底の地形を隅々まで諳んじている海は漁師にとって自分たちの庭のようなもの三島。さながら漁師のたまり場のような荒っぽい造りの店内田康。漁師は朝が早い。漁師たちが絞ぁゃを織るように雪の解けた砂浜を行き違って目まぐるしい活気を見せる!有局。 **りょうし【猟師】** 腕が立つ猟師。狐師が獲物を捕まえたときのような満足と喜び!高見愿。猟師に追い詰められた兎。窮烏懐に入れば猟師も殺さず。狐で生計を立てる―熊合。狐に生活がかかっている。猟を生業とする。獲物を追う猟師のように一散に後を追う菊池。狐とそれを追う猟師のように降る雪の中を二人が雁行け认する=大佛。狩人の血が騒ぐ。大きな獲物を追って山野を駆ける狩人のような使感"五木。狩人が獲物を仕留める。 <762> # ない・なくなる あとかたもない【跡形もない】跡形もなく(崩れて消える。消滅する)。自己嫌悪が跡形もなく去る。情念が跡形もなく消える。一瞬のうちに跡形もなくなる。 **ありえない【あり得ない】** ▼あり得ない(絶対に。百パーセント)。現実にあり得ないこと。▼あるもんか(そんな馬鹿な話が。意地もへったくれも)。煎り豆に花が咲く。 **いちどもない【一度もない】** ▼一度もない(未だかつて。今まで。ただの。ついぞ。これまで絶えて)。一度も口にしたことがない。古今東西を通じてかつてなかったこと。ただの一回もない。▼見たことがない(一度も。いまだかつて)。▼耳にしたことがない(一度として。未だ曽かって)。 **うちけす【打ち消す】** ▼打ち消す(悪い印象を。強い口調で。にべもなく。忌まわしい考えを。気がかりの種を。うろたえたように急いで"山本周。胸に湧いた疑惑を激しく頭を振って=勝目)。互いに打ち消し合う。打ち消しに躍起になる。頭から打ち消しにかかる。 **すこしもない【少しもない】** 少しも力が入らない。▼少しもない(暗い影が。動揺など)。一文も分け前が入らない。ちらとも記憶に浮かばない。自責の念など爪の垢ぁかほども浮かびはしない=里見。兎の毛で突いたほどの異変をも現さない"里見。毛の(先ほどもない。末ほどもない)。倦;み屈した様子を毛ひとすじほども見せない=永井路。毛ほどの(ごまかしも見逃さない!佐藤愛。叛逆にんぎの気配も窺かがえない=永井路)。兎の毛ほども後ろめたい気持ちがしない 獅子。毛筋ほどの疑惑も持たない=新田。淫らな感情は毛筋ほどもない藤沢。懸念を露ほども見せない安部。▼ありもしない(全く。丸きり)。いささかの(疑いもない。悔いもない)。いささかも不服はない。一切手がかりがない。気兼ねは一切無用。一片の(感動だにない。真実もない)。部屋から一歩たりとも出ていない。一歩も(後へ引かない。譲らない)。かけらほどの関心もない。からきし(役に立たない。要領を得ない。意気地がない)。亳こうも(気がつかない。異なる点がない)。磨もない(訂正するつもりは。恥じるところは)。さっぱり(芽が出ない。意味がわからない。ものにならない)。▼さらさらない(詮索する気は。悔恨の気持ちは。もとより見に行く気など)。絶えて(体験したことのない感情。笑いなど見せたことがない)。ちっとも(気が晴れない。納得がいかない)。ちらとも姿を見せない。座ぅ♪ほども(疑問に思わない松本。身なりをつくろわない!永井荷。余念のない凝固した精神=松本)。座っばほどの尊敬の念も持っていない=南条。爪の垢ほどの過失もない=新田。つゆ考えたことはない。そんなこととは露知らず=永井荷。つゆいささかも疑わない。露ほどの魅力もない。てんで(仕事がはかどらない。問題にならない)。どこにも(隙がない。見当たらない)。とんと(覚えがない。意味が分からない)。ない(関げきとして声が。まるで縁が。一毫いの嘘も。一刻の猶予も。音沙汰が全く。ほとんど手応えが。妙なプライドなどこれっぽっちも。恐れることは微座ふじも=大佛)。根っから(分からない。信用していない)。一かけらの哀れみもない。一かけらもない(優雅さが。反省など)。ほとんどない(感情の起伏が。入りこむ余地は)。成算など万に一つもない。みじんの濁りも見えぬ瞳。ののしるつもりは毛頭ない。毛頭ない(行く気など。勉強をする気など)。ゆめさら(楽なことではない。忘れてはならない)。 **ゼロ** ゼロ(差し引き。値打ちは)。ゼロからやり直す。新たなものをゼロから生み出す=畑村。ゼロに近い(確率は。実績は)。ゼロに等しい(知名度が。チャンスは。手がかりは。収穫はほとんど)。ゼロの状態から出発する。ゲージの針がゼロの近くを揺れ動く。収穫はなかったに等しい。絶無に(近い。等しい)。▼ないに等しい(あるが。対処法なんて。ほとんど)。無から有を生じる。無得点に終わる。相手チームを無得点に抑える。一切を無に還元する。零点の答案を突きつける。試験で零点をとる。▼皆無(業績が。チャンスは。被害は)。▼皆無に等しい(確率が。経験が)。 **そうさい【相殺】** ▼相殺する(貸し借りを。累積赤字を減資で)。実績が失敗で相殺される。功罪相償う。 **ない【無い】** ▼ない(勝ち目が。声に張りが。心当たりが。さして効果が。てんで信用が。人の気配が。用らしい用が。既にこの世に。足の踏み場も。後にも先にも。否も応も。神も仏も。知る由も。生命に別条は。前後の見境も。誰も知る者は。取りつく鳥も。望むべくも。身も世も。見る影も。面目次第も。相変わらず進歩が。挙げたらきりが。傷は大したことが。ころつきと選ぶところが。たやすく死ぬはずが。手の打ちようが。とりたてて話ことが。寝ているより他に何もすることが。久しく聞いたことが。他に適当な人が。もはや手の尽くしようが。やきもちを妬ゃくしか能が。この女性を措ぉいて他に。思い残すことは。より現れるは。さしたる違いは。正気の沙汰では。世界中のどこにも。大した距離では。大して役に立ちそうも。とうてい及ぶところでは。何らびくびくする理由は。別に変わったことも。まさかもへったくれも。もう話すことは。ろくろく話す人も。針で突いたほどの苦しみも菊池)。一向に覚えがない。▼こともない(格別驚くほどの。別段とりたてて言うほどの)。なきに等しい。ありゃしない(馬鹿馬鹿しいったら。みっともないったら)。▼なさすぎる(考えが。曲が。芸が)。発見の恐れはなさそう。いかにも自信のなさそうな <763> # ない・なくなる-248 **なかったことにする** 話はなかったことにしてくれの一点張り。これまでのいきさつを抜きにする。水に流す(過去の過ちを。昔のことをすっばりと。これまでの行きがかりを=舟橋。先ほどのいざこざを白洲)。 **なくなる【無くなる】** ▼なくなる(帰る場所が。顔に血の気が。体に芯が。後顧の憂いが。商売に張りが。立つ瀬が。売却の望みが。暇らしい暇が。胸の痛みが。免疫の力が。強請ゆずのねたが。酔って正体が。嫁の貰い手が。利用価値が。笑うと目が。年とともに。日に日に。またたく間に。影も形も。もはや何も。あっという間に在庫が。内と外の境目が。拡張する余地が。ぐんにゃりと手ごたえが。行動に落ち着きが。ばったり音沙汰が。依頼がばったり。仕事が根こそぎ。借金がきれいさっぱり。人家がほとんど。世の中から消えて。飛ぶようにお金が"角田。悲嘆のために次第に食欲が=中河)。▼感覚がなくなる(寒さで手指の。時間の)。なくなっている(とうの昔に。いつの間にかに)。燃料が切れる。▼嘘のようになくなる(匂いが。熱が)。▼隠滅する(証拠を。犯行を)。証拠隠滅の恐れあり。疑いを散じる。▼種切れになる(言葉が。話が。話題が)。元の形をとどめていない。▼抜ける(あてられた毒気が。風船から空気が。床板がぼっかりと)。一掃する(疑いが。容疑が)。▼払底する(食料が。人材が。砲弾が)。▼滅失する(火災で家屋が。記録が。古文書が)。罪障が滅する。▼流失する(洪水で橋が。津波で家屋が)。▼底をつく(お金が。買い置きが。研究費が。米が。在庫が。食料が。想像力が。貯金が。手持ちが)。 **なにもない【何もない】** ▼何もない(遮るものが。事新しいことは。さしさわることは)。何もないがらんとした室内。兄弟も何もない全くの身一つ。根拠も何もない空虚な話。なまなかに何もないのがうれしい。何にも取り柄がない。何も遮るものがない。影も形もない。木の葉一枚落ちていない。▼一つもない(確証が。明るい記憶は)。ないないづくしの(耐乏生活。生活を余儀なくされる)。何一つ成就したものがない。巡るものが何一つない。何の(気配も感じられない。手づるも持たない)。まるでない(意気込んだところが。後ろ暗い気持ちは)。 **にどとない【二度とない】** 二度と(過ちを繰り返さない。浮かび上がることはない。顔を見たくない。手出しをしない。日の目を見ることができない)。もう二度と(したくない。生きて会えないだろう)。こんなチャンスは二度と来ない。 **ばってん【罰点】** 罰点を(つける。もらう)。両手でばってんを作る=佐藤多。▼ばつ印(大きな。小さい)。ばつ印をつける。 **ひてい【否定】** 首を振って否定の意を示す。▼否定する(軍国主義を。言下に噂を。古い権威を。一言の下に。頑強に。即座に。頭から。あっさりと。きっぱりと。必死になって。真っ向から。意見を頭ごなしに。起訴事実を全面的に。断固とした調子で。筋道をたててぴしゃりと宮部。電撃のように否と強く=中河。反射的に首を振って大佛)。敢えて否定する気はない。顔の前で(掌を横に振る。手を横に振る)。九九を間違えた小学生をたしなめる教師のような顔で首を振る=宮部。人差し指を立てて振る。▼振る(指を左右に。黙って首を横に藤田)。断じて否。答えはノー。国民からノーを突きつけられる。不承知の旨を伝える。不承知を表明する。▼かぶりを振る(小さく。強く。激しく。ぶるぶると。無言で。意地にでもなったように=壺井)。 **ひていてき【否定的】** 否定的な(考え。見解。条件を背負う。データ。意見が交わされる)。否定的に(陥りがち。ならざるを得ない)。ネガティブな(言い方。思考。評価。印象を持たれる)。ネガティブに考える。 **ふかのう【不可能】** ▼不可能(物理的に。疑問を解決することはさしあたって南条。時間を巻き戻すことは熊谷)。抜け出すことは不可能に近い。▼不可能になる(継続が。作戦遂行が)。不可能を可能にして見せる魔法。可能性が全くない。可能性は(ゼロに等しい。万に一つもない)。可能性は限りなくゼロに近い。可能性もない(百万分の一の。万に一つの)。木によりて魚を求める。豆腐の角に頭をぶっつけて死ぬ。▼不能になる(回収が。性的に)。再起不能の致命傷を負う=笹沢。空中楼閣。 **まるぼうず【丸坊主】** 丸坊主になってお詫びする。山が丸坊主になる。丸坊主にする(頭を。木を)。 **むいみ【無意味】** 嵐の前の一片の紙切れにすぎないような無意味・高橋和。無意味な(堂々巡り。意地の張り合い。嘆声を何度か繰り返す。むごたらしい殺人)。一見無意味に見える動作。意味のない(行動。世間話。返事をする。つまらない言葉。笑いを浮かべる)。たいして意味のない質問。取り立てて深い意味はない。意味もなく(いばりくさる。うなずき合う。狼狽する。こむずかしい話を連発する。微笑を浮かべる)。何の意味もない。どれほどの意味があるだろうか。さしたる意味を持たない。議論のための議論をする=佐野。言葉が脈絡を失う。無意義な(一日。生活)。ナンセンスな(考え。提案。話。表現)。 **わけではない** わけではない(別に計算した。格別努力している。必ずしも理解した。さしたる当てがある。さして広いという。そうそう出くわす。まだ本決まりになった)。わけでもない(格別酔っていた。たいして金がある。取り立てて珍しいという)。 <764> # 長い・短い **いちじてき【一時的】** 一時的な(錯乱状態に陥る。成功に過ぎない。熱に浮かされる)。マスコミに踊らされた一時的な現象・浅川。かりそめに結ばれる。かりそめの名声に囲まれる。暫定的な(選挙管理内閣。措置)。臨時的な措置。際物きわもの商品。際物を(売り出す。出版する)。 **しゅんかん【瞬間】** ▼瞬間(あわや衝突という。いままさに枝を離れようとする。夢としか思えないような酔ったような幸福な中村貞)。偉大な勝利の瞬間が訪れる。人生の最期の瞬間が近づく。死の瞬間に直面する。瞬間的に(危険を感じる。状況を見極める)。 **すんたらず【寸足らず】** ▼寸足らず(袖が。丈が。長さが)。寸足らずの(服。浴衣)。丈が短い。寸詰まりの(ズボン。服。浴衣)。ちんちくりんの(着物。ズボン)。つんつるてんになる(セーターが。浴衣が)。つんつるてんの(着物。ジーパン。ズボン)。 **たんきかん【短期間】** 短期間に(状況が激変する。すっかり親しくなる)。短期間の(集中レッスン。滞在)。ローマは一日にして成らず=横山。短期の(講習。仕事。留学)。短期決戦で(片をつける。雌雄を決する。一気に勝負を決める)。短時日で実現する。短時日になしうるものではない。短い期間に驚異的な治績を挙げる=中島敦。一朝一夕でなしうるものではない。一朝一夕に(会得できるものではない。なったものではない)。制度改革は一朝一夕には進まない。 **たんじかん【短時間】** 短時間で(片づける。電話を切る)。短時間のうちに(仕上げる。効率よく進める)。三つ数える間。一朝にして(崩れ去る。権威を失う。海の藻屑と化す)。寸刻をぬすんで訪れる。寸時もまどろむ。寸時の休みもない。寸時もそばを離れない。寸秒を争う(応急措置。事態)。分秒を(争う。惜しむ)。ほんの短い間。到着するまで小一時間かかる。小一時間もかからない。小一時間ほどで聴取が終わる。 **ちょうき【長期】** 長期にわたって(人気を維持し続ける。綿密に工作する)。長期にわたる(スト。調査)。長期にわたる(欠席が。十数年という)。長期の(歳月にわたる。保存に耐える。展望に立脚した計画)。中長期の展望を示す。▼長期化する(裁判が。停滞が。不況が)。長期間(入院する。放置する)。長期間にわたって家を空ける。長期戦に(持ち込む。もつれ込む)。長期戦を(覚悟する。戦い抜く)。長期的な(課題。視点。見通し)。十年(苦節。雌伏)。十年一昔。知り合ってかれこれ十年になる。十年の(歳月が流れる。歳月を費やす)。長丁場の(工事。仕事)。 **ちょうじかん【長時間】** 長時間(汽車に揺られる。じっとしたままでいる)。長時間にわたり密談する。長時間の作業に疲れる。長時間勤務が常態化する。長時間労働を強いる。長い時間が経過する。数時間にわたって激論をかわす。▼長い時間(気の遠くなるような。無限とも思える=向田)。長い時間瞑目もくしている。 **つかのま【束の間】** 束の間(緊張が解ける。言葉を失う)。ほっと安心したのも束の間。束の間でしゃぼんだまみたいな幸福な思い森瑤子。喜びは束の間にすぎない。束の間の(休息をとる。興奮を楽しむ。安らぎを得る)。一刻千金の値。春宵一刻を惜しむ。いっときの(涼を求める。激情に流される)。一時を過ごす。 **ながい【長い】** 長い(春秋を生きる。戦乱が終わる。沈黙が続く。恐怖から解き放たれる。スカートを引きずる。トンネルを抜ける。ものには巻かれろ。修業期間が実を結ぶ"小池)。三百年という星霜は短いようで長い豊田。すらりと伸びた長い脚。どうせそう長い命ではない。春の長い日が暮れる。めっぽう長い歴史を持つ。足や頸が棒のように長い女=野間。一瞬の間のような長い長い刻のような無言の間"梅本。いつ果てるとも知れない長い列"小松左。馬みたいに長い顔「吉川。途方もなく長い刑期を課せられる=辺見。胸が潰れるほど長い時間!遠藤。長い髪を(後ろで束ねる。ばっさりと切る)。長いこと(辛抱強く待つ。黙って考え込む)。▼長い目(切れの。睫毛の)。長く(語り草になる。記憶に残る)。一か所に長く滞在する。芸術は長く人生は短い。興奮が長く尾を引く。夕日が影を長く尖らせる。業界の水を長く飲んでくる辻真先。三分が三十分にも一時間にも及ぶほどに長く感じる=子母沢。窒息しそうに長く感じられる道"島尾。長く感じられる(途方もなく。一分が一時間のように遠藤)。首を長くして待つ。▼長くする(髪を。頭髪を。鼻の下を)。長くてせいぜい三年。長くなる(彗せい星の光芒が。前置きが。日脚が次第に。理由を話せば。日が一日ごとに)。そう長くは続かない。▼長すぎる(化粧が。支度が。話が)。長の(歳月。年月)。寝つかれない長の夜を明かす。長めに作る。髪を長めに刈る。長めの風呂に入る。ガウンみたいな長めの上着荻原浩。総延長が地球何回りかになる=内橋。長蛇の列ができる。鉄道が長蛇のごとく野を走る=小林多。入場を待っている人たちの長蛇の列戸川。長大な(叙事詩。橋。戦線が展開する)。横長の(鞄。看板。机。封筒)。息長いご愛顧を賜わる。息長く(愛用する。続く)。息の長い(基礎研究。仕事。商品。文章)。縦長の(看板。短冊。封筒)。 **ながさ【長さ】** ▼長さ(適当な。桁外れの)。長さが(等しい。不揃い)。同じ長さに切りそろえる。ほどよい長さに切る。尺が(長い。短い)。寸法がきっちりと合う。寸法を(とる。測る)。全長はざっと四キロメートルに及ぶ。▼長短(距離の。時間の。物語の)。 **ながたらしい【長たらしい】** 長たらしい(講釈。数式。紋切り型の祝辞)。ざわざわと木の葉をかき乱しているふうな長ったらしい言葉=伊藤整。冗長な(話。文章。報告書)。話が冗長に流れる。言い回しが冗漫でわずらわしい。冗漫な(作文。文章)。 <765> # い・短い-249 **ながなが【長長】** 長々やる気は毛頭ない。長々と(お説教をする。話を聞かせる。脚を前に投げ出す。悔やみの言葉を述べる。罵りの言葉を吐く)。演説口調で長々としゃべる。地面に長ながと寝そべる=大江。長々しい(肩書。注釈を加える)。来賓の長々しい祝辞。 **ながねん【長年】** 長年(抱えていた悩みが解決する。住み慣れた土地。培ってきたスタイル。連れ添った夫婦)。支配が長年に及ぶ。長年にわたって(愛用する。勤め上げる)。長年にわたる(海外生活。刻苦勉励のかいあって念願がかなう)。長年の(習慣を捨てる。風雪に耐える。夢がかなう。努力が無駄になる=中村真)。事なく長年の歳月が過ぎる。気の遠くなるような長い年月光瀬。慣れるまでに長い年月がかかる。長い年月の間に徐々に成長する。幾星霜を(重ねる。経過する。経る)。積年の(恨みを晴らす。夢を果たす。虐待に耐えかねる)。悔いを千載に残す。千歳の恨みを果たす。万に一つ手違いがあっては千秋の恨事"子母沢。千年の(呪いをかける。契りを祝う長寿延命の酒)。年来(承知していたこと。懇意にしている間柄の森岡)。年来の(計画を実行に移す。望みが果たされる)。数えきれないほどの春夏秋冬木庄。時間が蛇腹のように深いひだをつくって幾重にもたたみこまれている"安部。めまいがするほどに永い、手繰りきれない白い帯のように永い年月三島。多年にわたって練習してきた賜物。多年にわたる(流離の生活。労苦に報いる)。多年の(宿望。蓄積が一気に花を開く)。 **ながびく【長引く】** ▼長引く(会議が予想外に。じれったいほど)。思いのほか滞在が長びく=里見。苦しみを無用に長引かせる熊谷。いたずらに時間を遷延する。急性の症状が慢性に移行する。慢性的な(経営難。赤字に頭を悩ます。人手不足の状態)。 **ながらく【長らく】** 長らく(お目にかかっていない。世話になったお礼。胸に押し留めている。連絡を取っていない)。遠く故郷を離れ長らく異国にさまよう。長い間(人が住んでいない。悩まされつづけた怨恨から解放される=白洲)。ずいぶん長い間悩む。ずっと長い間考え続けていたこと。長きにわたる付き合い。二十年の長きにわたる裁判。 **ひさしい【久しい】** 久しい(絶滅してから。見慣れてすでに。すでに亡くなって。名を聞かなくなってから)。五十余年の久しい間。絶えて久しい対面の嬉しさ芥川。久しきにわたって観察する。久しく(お目にかからない。音信が途絶える。聞いたことがない)。久しからず(おごる平家は。驕れるものは)。 **ひゃくねん【百年】** 他人の足を踏むぶんには百年踏んでいても痛くはない柴田翔。百年からの友達みたいになる=田辺。百年に一度しか出ない人人今東。百年の(計を失う。寿を祝う。仇敵に会えるがごとくに詰め寄る=坂口。恋も一瞬にさめる=池田。知己に対するような親切な態度。井上ひ。溜飲が一度におりた気がする=永井龍)。人を造るに百年の大計を以てす有吉。百年も昔からそうしていたようにひっそりかんと静まっている=芥川。百年以上の長きにわたって。百年河清を俟つ。ここで会ったが百年目。世紀に一度の(金融危機。スケール)。世紀の(変わり目。対決が実現する。発見を成し遂げる)。 **ひょろながい【ひょろ長い】** ひょろ長い(腕を伸ばす。並木の影。木が寒々しく立っている三好京)。背のひょろ長い男。痩せたひょろ長い体つき。ひょろひょろした梢。痩せっぽちのひょろひょろした青年。矢竹が二三本ひょろひょろと生える"永井荷。ひょろひょろと背が伸びる。ひょろりと(背が高い。細長い男。痩せている)。手足がひょろりと細長い。 **ほそながい【細長い】** ▼細長い(縦に。横に)。細長い流線型の魚。鰻の寝床みたいに細長い店辻真先。梯子ぶしのような細長い枠」夏目。白魚のくねったように細長く湾曲している町の姿言尾。家々が細長く谷沿いに延びる。紙を細長く切る。茎が細長く伸びる。縦に細長く裁断する。ビルディングが細長く立つ。 **みじかい【短い】** 短い(春の夜。驚きの声が漏れる。時間を最大限に有効に過ごす。眠りから覚める)。短い(髪が。予定より一日。持ち時間があまりに。恋愛という感情は命が"石川。すべての平和と幸福とは短い人生の中にあって最も=佐藤春)。先の短い命。老い先の短い身。三十に届かない短い一生。マニキュアなしの短い爪。乱暴な短い言葉を発する。一分かそこらの短い闘い=鈴木光。身体にてんで合わない変に短いオーバー=高見順。蟬の命ほどもない短い間宇野千代。誰にも愛されない短い一生が不憫でならない林美。ほんのまばたきほどの短いつきあい=飯田。ほとんどまばたきするほどの時間だったが停止したフィルムの場面の中にいるような気がする=灰谷。ごく短い(距離。時間)。短く(相槌を打つ。溜め息をつく。はいと答える)。髪の毛を短く刈り上げる。経過を短く話す。問われることに短く答える。バットを短く持つ。短くする(裾を。爪を。髪を男のように=中村真)。▼短くなる(間隔が。所要時間が。日脚が。ろうそくが燃えて)。▼短めに切る(髪を。布を。紐を)。短めの(コート。スカート)。実際には数秒足らずの時間が長い時が音を立てて流れつづけたように感じられる小林久三。長くない(命が。先が。余命が)。長いような短いような一年三浦綾子。社長の座への最短距離にいる。最短の(経路を結ぶ。コース)。行程をショートカットする。髪をショートカットにする。短小な(体。渓流。ベニス)。ちびた鉛筆。 <766> # 眺める・見回す **いちぼう【一望】** 一望(際涯のない高原。黄色く熟した稲田"外村)。海が一面にキラキラと小波立てている檀。街と海が一望に見下ろせる。一望のもとに眺められる。▼一望する(対岸の岬を。丘の上に立って眼下に広がる町を"有栖川)。▼一望できる(集落全体が。フェンス越しに街が)。一望千里に続くものはない=国木田。一望千里の(広さ。草原を吹き抜ける朔風朔人間)。 **がいかん【概観】** ▼概観する(音韻の変遷を。事件を。歴史を)。縦覧する(資料を。選挙人名簿を)。▼通覧する(現代思想を。参考文献を)。▼目を通す(記事に。資料に。一応。ひととおり)。 **けしき【景色】** ▼景色(稜線が丸みを帯びた女性的な笹沢。絵に描いたような明るい"眉村。切り取ってとっておきたいような森村。この世のものとも思えぬ美しい"なかにし。転変常なきこの世の"白洲。肌を粟立ったせる荒廃の"貫井。ペンキ塗り立てみたいなフィリピンの"今日)。景色が(映画のフィルムのように浮かんでくる=林真理子。山間が峠にかかって狭められる=高橋和。青い海と空を背景に構成された景色が息をのむほどに明るく美しい"石坂。燦然と絵巻のように景色が展開する宮尾。邪魔な物が消えて景色がすっきりする。高井。長閑な景色が春風のように吹き込んでくる芥川。発端と大団円とがしっくりと照応できる物語のように景色が少しの無理もなくまとまっている佐藤春。夕暮れの景色がにわかに鮮やかに発色しはじめる=尾辻。壮大な景色にうっとりとする=村松。天守閣から眺める景色は天下一品"舟橋。ゆっくり寛ぎながら景色を楽しむ=内田康夫。景観(太平洋の広大な。一面に広がる水田の)。峠を上りきると大きな景観がひらける舟橋。思いもかけない素晴らしい景観に打たれる=新田。 **こうけい【光景】** ▼光景(この世ならぬ不気味な"高橋源。いとも華やかな観兵式の"今東光。ぞっとするくらい美しい吉本。血みどろになって狂いまわる断末魔の"江戸川)。光景が(ありありと胸の底に灼きつく宮尾。いつまでも残像のように目に灼きついて離れようとしない大原)。記憶のなかから光景が激しい光を浴びせられたように浮きあがってくる=中村真。心の上に切ないほどはっきりと光景が焼きつけられる芥川。見るに耐えないような光景が展開される=黒岩。異様な光景に接して興奮する。目の前の光景にしばし呆然となる=乃南。生き地獄の光景を呈する。いかにも見世物めいた醜悪な情景"加賀。情景が(脳裏に現れては消える。まざまざと目に浮かんでくる)。子供の頃の様々な情景がよみがえる=千刈。すさまじい情景を限りに後ずさりする=吉村。 **そうかん【壮観】** ▼壮観な眺め(渓谷の。山脈の)。壮観に見とれる。天下の奇観。石灰岩が露出した奇勝。絶景(天下の。聞きしにまさる)。▼大観(四方はるか。落日の)。 **ちょうぼう【眺望】** 雪原のように輝く雲海の眺望三浦綾子。眺望のよい部屋。▼眺望する(海を。町を。山頂から。上空から。高台から)。▼眺め(石灰岩層が露出した裸山の荒々しい!高橋和。冷たく華やかな冬の月夜の"石坂)。見晴らしのきく高み竹西。見晴らしのいい(崖の上に出る。高原に出る)。 **てんぼう【展望】** 将来の展望が見えない。凡庸な海の展望が広がる=檀。長期の展望に立脚した計画。今後に向けての展望を語り合う。▼展望する(近未来を。将来の日本を。全体を。中長期を。山々を)。展望台(峠の。湿原を一望に見晴らせる)。展望台から(眺望する。街を見下ろす)。 **ながめる【眺める】** ▼眺める(姿見で全身を。冷静に推移を。移り行く世相を。暮れなずむ山の景色を。漠然とした瞳であらぬ一角を。振り仰ぐようにして家を。放心気味に遠くを。ぼんやりと空を。物憂げな眼差しであたりを。物語全局を鳥瞰的にながむ。頭のてっぺんから爪先まで。あっけにとられたように。いろいろな角度から。顔を穴のあくほど。軽侮の目をもって。小手をかざして。手のひらに載せてためつすがめつ。納得のいくまで。寝姿を遠くから。値踏みするように。ひどく真面目くさって。不躾にじろりと。身を縮めてこわごわ。珍しげにじろじろ。夕霧の向こうにきらめく漁火の瞬く夜の海を重松。眼下に広がる然とした緑の波を三浦しをん。車窓に流れる夜景を"小林久三。額をじっと見つめそれからゆっくりとズームレンズが引くように顔全体身体全体を原田宗典。窓から暮れてゆく都心の風景を=内館。呆気にとられた顔でけげんそうに『椎名誠。脚線美を眩しげに=和久。子供のように無邪気に!遠藤。相手の心変わりをむなしく=竹西。田舎娘のようにきょろきょろ"黒岩。異様なものにぶつかったように放心した顔で=遠藤。永久に成功しないことでも祈るような冷酷な眼で芥川。雷の鳴る空を苛々と"北原。怪しい陶酔感を以て井上靖。狐につままれたような表情でぼかんと井上ひさし。子煩悩な父親のように目を細くして三浦哲郎。写真を眼に入れるように"川端。半ば敵意を含んだような半ば軽蔑したような胡散臭いな眼つきで探るように谷崎。分厚いガラスが溶けそうになるほどいつまでもいつまでも安岡。不思議な動物を見るようにしげしげと"小局。ほれぼれとわれを忘れたように=山本周。夢のようにぼんやり芥川。夢見る如きまなざしをして=国木田)。▼顔を交互に眺める(夫妻の。名刺と)。時間が経つのも忘れて眺め続ける=松岡。 <767> # 眺める・見回す―250 **うちながめる【打ち眺める】** 打ち眺める(表情を。様子を。流行を)。 **ながめいる【眺め入る】** 眺め入る(肖像画に。恍惚こうと。茫然と。夢心地で。いつまでも飽かず。うっとりとして。野草の写真に倦かずに=大岡。溶々として流れ去る大河に=田山。しばらく無言のまま=水上)。視線の通過した痕が残りそうなほどネチネチと時間をかけて全身をながめ回す=宮部。 **かんしょう【観照】** 観照する(宇宙を。自然を。人生を)。 **かんぼう【観望】** 観望する(形勢を。情勢を。風景を)。遥かな空へ視線を投げる。目陰をかざして見る。闇の彼方に目を投じる。 **のぞみみる【望み見る】** ▼望み見る(水平線を。対岸を。遠い風景を)。遠景に視線を投げかける。遠景を望む。遠望がきく。▼遠望する(山並みを。山を)。遠くの風景が滲み出るように眼に入る=福永。額に手をかざして遠くを見る。遠見がきく。遠見に黒々と点在している森。見やる(遠く山脈を。坂の上から湾を)。片手を眉庇にして見る。目を遠くに転じる。遠目に黒ずんで見える建物。遠目にも母だとすぐ知れる。夜目遠目笠のうち。 **パノラマ** パノラマが広がる。彼方に広がる都会のパノラマの隅々にまで響き渡るような大声=原田家。くろぐろとした杉林がパノラマのようにめぐって行く手を深い闇で包む=梶井。覗けそうでいて覗けなかった大人の裏側の世界がいちどきにパノラマのように展開される安岡。はるか眼の下に鉄道線路と駅の周囲に密集する町の灯がパノラマのように見える半刈。一大パノラマの様相を帯びた絶景がひらける村松。書き割りのパノラマ絵を見ているみたいな光景水上。 **ふうけい【風景】** ▼風景(切れ味のよい刃物のような男性的な“宮尾。飾り気のないさっぱりとした=小川。少年時代の孤独な魂の藤本)。風景が(過去の記憶と一致する=藤本。時の歯に吸い込まれて風化する"島尾)。扇を廻すように風景が移って行く=大岡。ビデオの早送りを見ているように風景が変わっていく"中島みゆき。日々刻々と風景が変わりつつある=千刈。飛行機のガラス窓の中に緑色のフランスの田園風景が幻のように浮かび上がる=森瑤子。レンブラントの素描めいた風景が散らばる"梶井。生まれたての風景とでもたとえたいような海や緑「宮尾。海の見える風景に引き寄せられる=佐高。まわりの風景にしっくりと溶けこむ村上春樹。風景の顔色が見る見る変わっていく=梶井。周囲の風物に目もくれない。 **ぼうえんきょう【望遠鏡】** 望遠鏡で(遠くを見る。星を観察する)。手を伸ばせば届きそうな距離なのに逆さに見た望遠鏡の風景のように遥か遠く感じられる"原田飛。まわりの世界が望遠鏡を逆さにしたように遠ざかる=村上龍。まるめた卒業証書を望遠鏡のように使って眺める=大岡。遠くから双眼鏡でのんびり眺める=村上泰。双眼鏡に目を押し当てる。双眼鏡を(首に下げる。両腕でがっちりと支持する)。 **ぼうかん【傍観】** 傍観は許されない。傍観をいさぎよしとしない。▼傍観する(いたずらに。何の気なしに。腕をこまねいて)。傍観的な(姿勢。態度)。座視するだけで行動しない。高みの見物としゃれこむ。高みの見物を決め込む。手をつかねて遠くから眺めているしかない藤沢。ただただ手をつかねて放置する。何もせずに手をこまぬいている。手をこまねいて見過ごすわけにはいかない。 **みはらす【見晴らす】** ▼見晴らす(海を。平野を)。見晴らせる(水平線が。地平が)。港が見晴らせる高台。見晴るかす(野面の彼方。広い原野)。見晴るかす限り水また水。 **みまわす【見回す】** ▼見回す(きょときょとあたりを。きょろきょろと室内を。ぐるりと聴衆を。頭から足の先まで。あたりをぐるっと。感慨深げな眼差しで。室内を何気なく。部屋の中をひとわたり。部屋をぐるりと。値踏みするように室内を東野。あたりをぬすむように見回す。聞き手の顔を一人一人"江戸川)。これが最後というように改めてゆっくりと見まわす"日野。▼見廻す(落ち着きなくキョロキョロ辺りを"南条。同意を求めるように周囲を藤枝。事務所の中を落ち着きなく宮本輝。物に襲われたようにあたりをきょろきょろと=国木田)。▼あたりを見回す(おずおずと。ぎょっとして。それとなく。この世の裏側に無理やり連れてこられた囚人のように"加賀。はっと目がさめたように=有島)。陸の上へ上がった泥亀のように臆病らしくあたりを見廻す=徳田。前後左右に視線を走らせる。▼眺めまわす(素早く一座を。部屋の中を。頭のてっぺんから爪先まで。あたりをぐるりと。一同の顔をゆっくり。上から下までじろりと。虚ろな目で家の中をなかにし)。 **みやる【見遣る】** ▼見やる(砂漠の彼方を。腕時計と時刻表を交互に。周囲をぐるりと。助けを求めるように。店先をちらりと。すれ違う人々が気味悪そうに"池波。腹だたしげな目で=宮本輝)。▼眺めやる(車窓から外を。眼を細くして。見るともなしに。哀惜のこもった眼差しで。他人事ごとのように。不審げにじろじろと。初めて見るような眼つきで妹の姿を=山本周。珍しい生き物を見ているように=丹羽)。 **みわたす【見渡す】** ▼見渡す(四方の景色を。島全体を。日本じゅうを。広い世間を。満天の星を。港の夜景を。廊下の左右を。頭から足まで。周囲を素早く。端から端まで。オフィスの中を。壁に並んだメニューを。ガラス越しに店内を。ぐるっと部屋を。じろりと一座を。あたりをきょろきょろ。部屋の中をさっと。周りをぐるりと)。▼見渡せる(一望のうちに。町が眼下に。町が一目に。遠くまで。テラスから大海原が)。本棚の左端から右へ視線を動かす。▼眺め渡す(聴衆の顔を。広い眺望を)。 <770> # な 水質を浄化する。からから天気で断水の恐れがある。 **すいりゅう【水流】** 水流が(岩に砕ける。ゆるい渦を巻く)。黒い水流が星明かりに見える。水流をせき止める。水の流れが星影を浮かべる。流水が岸を浸食する。 **すいりょう【水量】** 水量が(少ない。増える。減る)。水量の豊かな川。かなり水量のある流れ。水嵩がぐっと増える。川がたっぷりと水嵩を増す。水位が(上がる。下がる。高い。低い)。警戒水位を超える。 **せ【瀬】** 瀬がしっぽのように細くなって下流の闇のなかへ消えてゆく=梶井。川がどうどうと瀬になる。滔々とたる瀬のたぎりが白蛇の尾を引いて川下の闇へ消える=梶井。瀬を揺るがす河鹿の声。早瀬のように流れが早い川水上。川瀬の音が高い。 **せせらぎ** 壁越しに聞く人の呟きのようにひそやかな水のせせらぎ=大岡。小川のせせらぎがどこか遠くから響いてくるように眠たげ=山本周。せせらぎのささやきを聞く。雨の降る音に似たせせらぎの音が涼しい風とともに頬に当たる=伊集院。音を立てる(しゃらしゃら川瀬の岡本。小さな流れがさらさらと三浦綾子)。石の多い川の音が円い甘さで聞こえる"川端。雪解け水の激しい川音。耳を聾するように川鳴りの音がとどろく=本庄。沢音が甲高く冴える。川の瀬音が耳に入る。暗い川に瀬音が蕭々しいと聞こえている=吉村。瀬鳴りの音が静寂の天地に澄みかえる菊池。谷音が天の旋律のように心を魅了する"中河。谷の音が(遠くなる。耳につく)。風に呼び起こされたようにそれまで聞こえなかった流れの音が高く響いて耳に入ってくる。高井。流れの音に耳を傾ける。深々たる水の音を聞きつける。 **そっこう【側溝】** ▼側溝(線路脇の。道路の)。側溝から水があふれる。側溝に脱輪する。側溝を掘る。どぶから水があふれる。どぶに金を捨てるよう。どぶの底に積もったへどろ。排水溝を清掃する。厚すぎるほどのコンクリートで両岸を固められた味気ない排水路!三浦哲郎。排水路を掘削する。 **たいが【大河】** 大河(汪洋とした。滔々と流れ去る。悠々たる)。溶々として流れ去る大河に眺め入る田山。大通りが大河のように横たわる!森瑤子。 **たき【滝】** 滝(男の膝に取りついて美女が泣いて身を震わすような泉鏡花。向かいの岩場から幾本かの水が糸を下ろすように降りる=伊集院)。滝が(しぶきを散らす。どうどうと地響きを打たせて山彦を呼んでどうといて流れる=泉鏡花)。滝に(打たれて水垢離をする。身を投げて死ぬ。かかった谷水のようにとどまり難い力をもってどこまでも落ちて行く=石川)。ナイヤガラの滝に飛びこむような切羽つまった行為北杜夫。滝の(音が耳近く聞こえる。水音が大きく響く。落ちる音が戦国の騎馬隊のごとく響く=高橋三千綱)。瀬々こうたる滝の音。睡気をも誘うような滝のリズミカルな音高橋たか子。汗が滝よりひどく流れる=宮沢。滝を覆すような大雨!泉鏡花。はげしい吹き降りで窓ガラスが滝を流したようになる=阿川弘之。滝の如く水が降り注ぐ=山田風太郎。七色のテーブが岸壁に滝のように流れる=篠田。滝のような火花が咲きに咲く光瀬。さしかける傘から滝のような水が流れ落ちる=曽野。小さな滝のような流れ―小林信彦。深滝のような雨がいきなりどうどうと降り出す「芥川。滝のように流れ落ちる土砂古井。あふるるばかりの光が滝のように迸り出る"長与。雨が車体を烈しく叩き滝のようにだれ落ちる=円地。雨が沛然と滝のように降る"井上靖。海水が滝のように流れ込んでくる井上靖。壁いっぱいにいろいろの布を滝のように垂らす安岡。髪が滝のように首筋に流れる。宇野利理。蟬の声が滝のように天地にあふれる=光瀬。雑木林から滝のように蟬の声が聞こえる=遠藤。天井から美しい淡青色の照明が滝のように降ってくる光瀬。火の瀑布がほとばしり流れる=山田稔。米を瀑布のようにざっと落下させる=太宰。石灰石の石段が夜の微光をのこらず集め巨きな荘厳な瀑布のように白く懸かる=三島。海原にかかる大瀑布のごとく横にのびた巨大な渦巻く雲"阿川弘之。飛瀑に虹がかかる。 **たきつぼ【滝壺】** 真っ白に泡立ち騒いでいる滝壺。滝壺が紺碧に沈んで見える=新田。谷底に滝壺が深そうな青い色でとぐろを巻いている太宰。滝壺に落下した水が純白な水煙を巻き上げる=井伏。まっさかさまに滝壺に飛び込む。巨大な滝壺の中にでもいるような物凄いノイズ音のシャワー=辻仁成。 **だくりゅう【濁流】** 濁流が(岸を噛む。橋を呑み込む。平野を呑む)。両軍の兵が剣と槍をひらめかして濁流のあい寄るように衝突する=山本周。川が濁流を滔々とみなぎらせる。気持ちが堰を切った濁流のようにどっと一点へ集注する=山本周。 **たにがわ【谷川】** ▼谷川(玉を解いて流したように美しい泉鏡花。気味の悪いほど青く渕を湛えた=海音寺。黒いころころした岩の間を気が狂ったように駛く流れている=海音寺。玉の簾を百千に砕いたような"泉鏡花)。谷川が暗碧に白布を織って矢を射るように里へ出る=泉鏡花。潺々として谷川が流れる。谷川の(清冽な流れ。音が穏やかに聞こえる。流れるように絹糸が動いて行く=外村)。山が谷川の両岸に迫る。細い谷川の水が雪のなかに止まっているように見える=川端。谷川みたいに清らかな感じの人三浦朱門。沢にざぶざぶと分け入る。 **たれながす【垂れ流す】** ▼垂れ流す(赤字を。おしっこを。おしゃべりを。汚水を。情報を。大小便を。悲涙を。放射能を。くだらない作品を!有栖川)。始末をしないでそのまま流す。 **ちかすい【地下水】** 地下水が(伏流する。湧く)。地下水の滝のように金が音を立てて流れる=獅子。地下水を汲み出す。放射性物質が地下水を汚染する辺見。地下の深い水脈から水を吸い上げる=高樹。水脈にぶつかる。水脈を掘り当てる。 <771> # 流れる・流す-251 **ちょうりゅう【潮流】** 潮流に(押し流される。乗る。さからうように進む=当月)。政治の潮流を変える。潮の流れが(速い。大河のようにのんびりと移動する泉三郎)。潮の流れに乗る。潮の流れのまにまに浮きつ沈みつ没し去る=佐藤春。潮の流れをひそめた海。 **とい【樋】** 樋から雨滴が滝のように落ちる=田山。樋を伝う雨音が激しくなる。雨どいを伝って水滴がこぼれる音が響く。伊坂。谷から筧で水を引く。水晶のように美しい筧の水溜め=梶井。ささやくような筧の水音=山本周。 **ながす【流す】** 流す(浮き名を。浮き世の垢を。石鹸の泡を。旅の疲れを。風呂で背中を。音楽を館内に。さらりと水に。汗をだらだら。おびただしい鮮血を。口からだらだらとよだれを。質入れした着物を。テレビが臨時ニュースを。テレビにコマーシャルを。とめどなく汗を。前髪を右から左へ。雨が窓の汚れを佐藤多。ちらっと客席に目を"井上ひ。腹立ちまぎれに無責任な噂を"小林久三。マフラーを軽く首に巻きつけハラリと背中に"阿久)。▼血を流す(痛ましく。おびただしい。胸から)。▼涙を流す(感傷的な。甘美な。感動の。心の中で血の。はらはらと。不甲斐ない。悔しそうにぼろぼろ。ぼろりと大粒の)。水を流す(立て板に。バイブに。便器に。さあっと)。楽なほうへと人は流されやすい。流される(洪水で橋が。雲が風に。いっときの激情に。中途半端な知識に)。流し合う(背中を。涙を)。一滴の涙すら流さない。入浴して旅の汗を洗い流す池波。忠告を馬耳東風と聞き流す。浴衣をぞろりと着流す。髪を肩に解き流す。 **水に流す** (過去の過ちを。先ほどのいざこざを!白洲)。 **ながれ【流れ】** 時代の滔々たる流れ。流れが(円滑になる。淀みなく進む。二筋に分かれる。おんもりと淀む=中略)。金と物の流れが止まる。雲の流れが早くなる。試合の流れが変わる。時間の流れがつかみにくい。泡立つ流れが新緑の木々の間に見え隠れする=石田衣良。ぞろぞろと群衆の流れが続く=五木。流れに(抗う発言。合わせて歩く。沿って歩く。波打っている水草。まかせて生きていく)。巨大な流れに身をゆだねる。世間の流れに逆らう。強い流れに呑み込まれる。人々の流れに逆らって歩く。流れの(方向になびく。方向を変える。ゆるやかな川。末を打ち見やる)。流れのままに流される。流れを(冷静にたどる。見る目が欠けている。よどませている人だかり。北原)。仕事の流れを図解する。審理の流れを止める。全体の流れをつかむ。話の流れを作る。世の中の流れを変える。感傷の流れを塞き止める=高樹。光の細流が乱れ散る。原野の底を洗う清流。清流が細々と流れる。 **ながれおちる【流れ落ちる】** ▼流れ落ちる(崖から水が。汗が背中を。水が斜面を。光が窓から。雲のはざまから光芒が。涙がとめどなく。汗の粒が筋を引いて夢枕。月光が細流となって=日野。雪洞の灯りがゆらゆらと鈴木三重吉)。▼流れ下る(水が山腹を。川が蜿蜒と)。涙がひとりでに流れて落ちる。 **ながれこむ【流れ込む】** ▼流れ込む(雨水が川に。風が座敷に。匂いが鼻に。秋の涼しい空気が。疲れが体の中に)。在所を追われた民が糸をひくように流れこむ真継。大海に流れ込む川。流れ込んでくる(風が窓から。胸にほのぼのとしたものが。梢から陽光が縞をなして。避難民が陸続として。沈黙が風のように"小川)。梅の香りが窓から流れこんでくる=あさの。▶耳に流れ込んでくる(言葉が。潮騒の声が)。流れ入る(川が海に。窓から明るい光が。明かりが部屋へ)。海水が流入する。 **ながれさる【流れ去る】** ▼流れ去る(いくつもの季節が。興奮が音もなく。毎日が平凡に穏やかに=小池)。流れ過ぎる(幾か月かが。声が頭の中を)。 **ながれでる【流れ出る】** ▼流れ出る(さあざあ水が。水が樋から。水が激しく。蛇口からお湯が。たらたらと鼻血が。物悲しい気分が。液体がどろりと。口から知識が淀みなく。涙がほろほろと。胸にあるものを訴えるように言葉が="高井。思考という思考がだらしなく=島田)。流出が(急増する。止まる。減る)。流出する(情報が。技術が海外に)。 **ながれる【流れる】** ▼流れる(様々な憶測が。空に雲が。長い歳月が。霧が川面を。血が血管を。髪が首筋に。情報が外に。表現が安易に。足が二三歩。安易な方向へ。血が一筋。星が一つ。蛍がすうっと。楽な生き方へ。頭の中をいろいろな考えが。アナウンスの声が。上辺だけ平穏に毎日が。おびただしい血が。顔に安心の色が。気まずい空気が。香ばしいコーヒーの匂いが。心にすがすがしい思いが。背筋に冷や汗が。バイオリンの調べが。フロントガラスに水玉が。まことしやかな噂が。夜気の中を潮の香りが。流行歌のメロディが。見知らぬ土地を。コーヒーの香りが部屋に。ビアノの音が客たちの間に。声がスピーカーから。時間がゆったりと。葬送行進曲が低く。月の明かりが冷たく。涙がはらはらと。頬に涙が伝わり。夕風が一筋さっと。流星が線を引いて。肩を押さえつけるような沈黙が三好徹。駅前の繁華街を河のように人が小林久三。滝のように汗が“住井。面の上にあるかなきかの笑いが山岡。事態が期待したものとは正反対の方向に"篠田。笛の音がゆるやかに=辻井。汗が玉をつくって=宇野千代。女っぽい臭いが身体から=中沢。煙が海上を這うように=吉村。煙草の灰青色の煙が耳もとにうっすらとからみつくように小林久三。血が糸を引いたように小林久三。手持ち無沙汰の時間がどろりと海堂。祭り囃子がうねりながら小川。 <772> # な **ほうりゅう【放流】** ▼放流する(鮎を。鮭を。稚魚を。川に。湖に)。ダムを放水する。 **ホース** 口を押さえたホースから水が飛び散る=伊坂。ホースで水をまく。ホースを消火栓につなぐ。水の中からホースを一気に引き上げるとまるできらめく透明の線を水の中からつかみ出したよう。北村。太いゴムホースが大蛇のようにずるずる地面を引きずられる=円地。ゴムホースをつなぐ。 **ポンプ** ポンプで水を吸い上げる。ポンプのノズルに手をかける=篠田。ポンプの柄を(漕ぐ。握る)。ポンプのように吐瀉物が噴出する"三田。 **ほんりゅう【奔流】** ▼奔流(凄まじいほどの情熱の瀬戸内。広場に渦巻く自動車の野上)。奔流が渦巻く。川の奔流が瀬々こうとうねる。道の上を車の奔流が埋める。言葉の奔流に襲われる。創造的衝動が奔流のごとく溢れ出る=中村真。ざわめきが奔流する。 **まみず【真水】** 絞り立ての晒木綿のような生きの水"岡本。海水から真水を作る。海水を淡水化する。 **みず【水】** ▼水(暗い鼠色で重そうな=本庄。手を三十秒とつけていられないほど冷たく清らかな飯田。水道の栓から迸り出る=高崎。手の切れるような冷たく美味い=村上龍)。水が(蒸気に変わる。泥で茶に濁る。たぽたぽと揺れ動く。堰の口からどどんどどんと地響きを打たせて転がり落ちる=中略。濁りに濁り公衆便所に生じた黴の色になる=山口)。ひたひたと水が浸す。きれいな水がガラスよりも水素よりもすきとおる宮沢。穴のあいた軍靴の底から水が蛭のようにジワジワと這い上る=伊集院。下水の穴へコボコボと水が落ちてゆく中沢。こんこんと水がわき出るような豊かさを人間は持ちたい=白井。崖の下の一つの穴から吹き出すように水が湧く大岡。それまで多くいた人たちが前後して水が退くように去って行く高井。水が噴き出る(ホースから。スプリンクラーから)。水から水に変わる。熱い湯を水でうめる。ざぶざぶと水で洗う。立て板に水とまくし立てる。二人の気持ちが水と火のように懸けはなれる=本庄。ぐっしょりと水に濡れる。酸素が水素と化合して水になる。都会の水に合わない。月光と満地の霜とで斜面が水に濡れたよう。中島。とろりと淀んだようになまぬるい水に浸る=日野。水に飛び込む(ざぶんと。どぶんと。ばちゃんと。ぽしゃんと)。水の(恵みを天に祈る。躍るような運動は生き物のよう。大岡。低きにつくがごとく自然に進んでくる=庄野)。静まった水の清らかさが心を平らにする三島。鍾乳洞のような神秘的な水の音楽が聞こえる!笙野。心身へ若く甘い誘惑が水のごとく浸り込む"岡本。宗教が水の浸み入るように拡がっていく遠藤。水の出が悪い。見晴るかす限り水また水。水も漏らさぬといったような情を見せる=永井荷風。水を(天水に頼る。けたてて進む船。浴びせられたような恐怖に襲われる!水上尚。浴びたように汗をかく倉橋。かきわけるように重たく手をさし出す三島)。大きく水をあけられる。きれいに掃いて水を打つ。頭から水をかぶって濡れ鼠になる三段。さんざ道楽の水を潜る=里見。溶けた泥が煙のごとく水を濁らす=長塚。とどまるところを知らない気炎に少し水をさすような口調藤沢。沼が水を湛える。水の如き夜気が身に沁みて肌のそぞろに寒さを覚える=二葉亭。君子の交わりは水のごとし=田辺。水のような(クセのない男。蒼い夜の色が木立際に這い拡がる徳田)。梢の黒い影に囲まれた水のような名月三島。空が晴れて水のような月夜=田山。水のように(濃くこめた霧。拡がる夕霧。淡い心のわびしさ=石川。柔らかい布の地質、谷崎)。朝の陽射しが淡い水のように村をひたす大江。思いが水のように胸に拡がる=川端。感慨無量なものが水のように胸を浸してくる=山手。 <773> # 流れる・流す-251 くる=山手。喜悦と羞恥礼却の感動が少女の面の上に水のように明瞭に波立つ"檀。気持ちが水のようにさめる藤沢。静けさが淀んだ水のように満ちる=小川。黄昏炊にが水のように窓に沁みだすころ=開高。漠然とした不安な予感が水のように満ちてくる=松本。光と影が水のようにゆれ走る=原田康。群衆が水円へ吸い込まれる水みたいになだれこむ"小島。見ている人たちが水を打ったように声を呑む芥川。首のまわりに水をかけられたようにひやりとする=梅本。裸体がしとどの汗に濡れ、水をかけられたよう黒写。火に水を注いだようにシュンとなる戸板。水の滴る(良い男。風情がある美女)。一条の水が銀の糸のように滴る菊池。滴々と石からしたたる水の音がする=阿川弘。水もしたたるばかりの夢二ばりの美人林美。水時計の水のようにぼたりぼたりと落ち濺そそぐ=佐藤旅。水が澄む。グラスを持つ手までが透きとおってしまいそうなほどの澄んだ冷たい水"村上春。峻烈机,で翳かげりのない水"開高。澄んだ水のようなまなざし高樹。澄んだ水のように美しい人住井。水のように澄みきった秋の空伊藤左。クリクリした黒い瞳が水のように澄んでいる=獅子。▼水が流れる(音を立てずに。音を立てて。巨石を縫って。ちょろちょろと)。流れ出て来た水が解きほぐした絹糸の束のようにつやつやしくなよやかに揺れながら流れる=佐藤森。水が流れることく自然にまかせる=村松。旅人が自分の来た方をふりかえって佇炊たむのに似てゆったりと流れ淀む水・佐藤巻。水ただ緩やかに流れる。幸田露。水が(滔々にうと流れる。勢いよく流れる。ちょろちょろと流れる。ゆったりと流れ淀む。ゆらゆらと流れ去る。丸い一本の棒となって音もなく蛇口から流れ落ちる=黒井。矢のように流れる=内田瓦。縫はれ合わされたように動きながらコンクリートの流しに落ちる"黒井)。水が白くしぶきながら流れる=中上。道沿いの細い水が月の光を砕きながら流れる佐藤春。きれいに水に流す。淙々そりと流れる水の音。すぐ足もとを土手をかみながら流れ去る水の速さは見ていると吸いこまれそう~飯田。言葉を水の流れのように聞く島尾。緩やかな水の流れのように時が体を通り抜けていく"村上春。水は低きに流れる。清水の深々と流れ行くのにも似た響きが、あるいは高くあるいは低く笛から溢ぁふれ出る=福水。指のなかを水が流れるままにまかせるようにイマージュや言葉を流れるにまかせる=開高。水ようにはかなく流れ去る水子壺井。ひどく冷たい風が水のように流れる=開高。流れる水のように少しも無理がない=本庄。走り過ぎて行く列車の明るい窓が目の前を水のように流れ去る=大佛。水を流すような悪寒が背を走る=川端。水が光る。薔薇ばらの中からきらきら光りながら蛇のように抜けだしてくる水佐藤森。水が(月光を映して燻いぶし銀に光る=大岡。光りながら滴をたらす=中上)。浅く走っていく水がぴくぴくする痙攣妙心の発作のように光る。佐藤券。光が水に反射する。月が澄んで着味ふぉがかった水のような光を放つ=国木田。水のように広がる月の光"山田嵐。水を飲む。水を(こくごく飲む。両手にすくって飲む。渇いた犬のように飲む"有吉)。落ちる水を両手に受けて飲むなかにし。酔い醒めの水をガブガブ飲む=獅子。水の如く茶の如く日常坐臥酒を飲み続ける=今日。 **みずおと【水音】** ▼水音(藤こうと鳴る川の。舟底を叩く。しゅるじゅるという滑るような大岡。ビチャリビチャリと紙はめるような渚の=中島敦)。水音が(洗面所に響く。絶えず耳を打つ。ぴちゃぴちゃ鳴る。追い立てるように忙しく音を立てる=伊集院)。川の水音が絶え間なく聞こえる。滝の水音がやけに大きく響く。ばしゃっと水音がする。犬の鳴き声の切れ目に疎水の水音が秘事のように響く高橋和。静寂が時々水音によって破られる。闇に溶けていく水音に耳を澄ます奥泉。ぼちゃぼちゃと水音を立てる。すさまじい水音を立てる滝"井伏。ごほこほと云う音を立てて湯が流れおちる徳田。ビチャビチャと水を換はね返す音"中局救。水がタプタプと音をたてて揺れる=中上。音を立てて流れる(水道の水がタラタラ三浦米。水がサラサラと=石坂)。水の音が響く(さらさらと。ちょろちょろと)。水の音をじゃぶじゃぶと立てる。水の響きがちろちろと耳に近く聞こえる=長塚。 **みちしお【満ち潮】** 満ち潮に舟を出す。ひたひたと潮が満ちてくるように音もなく声もなく気がついたらそこにいる=向田。犇々40℃と上げくる秋の汐が廂いきのない屋根舟を木の葉のように軽くあおる=長与。潮の寄せるがごとく逆らうすべもない敵勢の進撃半村。悲壮な感慨が胸に潮扮しのごとく湧きあふれる=海音寺。霊感が潮のように寄せる=福水。湖のように八方から人が流れこむ=中河。怒りが遠くから潮のように迫ってくる=中村典。上げ汐に打ち上げられたような古下駄永井荷。 **りゅうけつ【流血】** 流血の(事態を避ける。闘争が眼前に起こる)。凄絶な流血の場面。無駄な流血を回避する。川の水を鮮血に染める=舟橋。血が嫌というほど流される。血煙が上がる。あたりを血と死臭で満たす。血の雨を降らす宗田。血の河を流し骨の山を築く=山田美。流された血を呪う。日本人どうしが血を流しあう。無挙もこの庶民の血を流したくない=舟橋。▼血を流す(幾多の人民の。無用な闘争で)。血を流すほどの争い岩尾。ドラキュラも貧血を起こしそうなおどろおどろしい大流血荻野。流血沙汰が起こる。 **りゅうつう【流通】** 流通が複雑化する。商品の流通を止める。流通する(貨幣が。生産物が)。世界に流通する思想。世間に流通する尺度。流通機構を改善する。物流に影響が出る。物流を効率化する。 <774> # 鳴く・囀る **かなかな** カナカナが(さえずってでもいるようによく通る声戸板。止まったように見える黄色い水着大佛)。女たちがカナリアのように華やかにさえずり交わす!中島みゆき。 **かえる【蛙】** 蛙がいかに自分の声が遠くかつ遥かに響くかを今ほこるもののごとく力を極めて鳴く=長塚。げえっという蛙が潰れたような声を出す熊谷。蛙の声に家も身も埋めらるるように感じるほど夜がしんとしている=田山。顎の下の肉がぶくぶくとふくれたさまは蛙の顎のよう梅本。いくら反対しても蛙の面に水壺井。きろきろきろきろと風船玉を擦り合わせるような蛙の声が錯雑して聞こえる=長塚。昆布の地肌が蛙の背中のようにきめが粗い=山崎。潮騒のような遠い蛙の声がまたたく星を頼りなく揺すぶる。夕霧のおぼろな田では蛙の声がしきり山本周。蛇が蛙を呑む。蛙のように(口が大きい。不気味に動く咽喉=大庭)。カエルのように床に転手が蛙の腹のように冷たい=開高。解剖台の上の蛙のようにびくびくと股をふるわせる=高橋和。下腹が蛙のようにふくれ上がる=野坂。つんのめって蛙のように地べたに倒れる=小局。蛇に見すくめられた蛙のように立ちすくむ柴田翔。一挙手一投足を蛙みたいなふくれっつらで監視する"加賀。食用蛙が牛の遠吠えみたいに啼く=田辺。喉が雨蛙が鳴くときのようにふくらむ=徳永。あまガエルのようにぴょんぴょんはねおりる=山本有。口が雨蛙のようにぽっかりと開く"船戸。五線譜に書かれたおたまじゃくしが読める。蝌蚪の尻尾のように入り江のどん詰まりが急に細くなる島尾。おたまじゃくしは蛙の子。巨大な脱色したお玉杓子のような鮟鱇=北杜夫。人波が水たまりのおたまじゃくしの群れのように後から後から押して来ては揺れ動く=徳永。井の中の蛙が大海を知らないみたいな小さい妙な高慢太宰。ころころころころと啼く蛙の声=徳田。 <775> # 鳴く・囀る-252 **さえずる【囀る】** ▼さえずる(鳥がびいびい。いろいろな鳴き声で鳥が)。餌を求める雛たちの生命力にあふれたさえずり“宮本輝。豊かな樹々の香りと野鳥のさえずりを風が運ぶ"村上春樹。鳥たちが耳にうるさいほどさえずり合う景山。 **さぎ【鷺】** 鷺が雪の降るようにぎゃあぎゃあ叫びながらいっぱいに舞いおりてくる"宮沢。黒ずんだ土の上に鷺が綿を一つまみ投げたように森村。苦虫を噛みつぶしたようなサギのような顔つき」開高。雪に白鷺。 **すずめ【雀】** 雀が(チュンチュンと鳴く。チャチャと鳴きしきる=田山。眠ってでもいるかのように背中を丸くする=岸田。喧しく百ももだりをする=田山)。ちっちっと雀が鳴き立てる=林真理子。東の空が明るくなって雀が啼き出す小沼。やっと羽毛が生えそろったばかりのすずめの赤ん坊"飯田。月給が雀の涙のように寡い!高橋和。電線の雀みたいにブールの縁に並ぶ"富岡。群雀がのれの身を羽で打ちつつ舞い狂う池波。 **せみ【蝉】** 蝉が(一日中べったりと鳴く高樹。うつけたような声で鳴きしきる=古井。今年の最後の歌を鳴きしきる=石坂。驟雨の落ちるようにしげく啼く原田康。俗界の執念を奏でるように鳴きさかる=辻井。単調な眠そうな声で鳴く=国木田。光った空気を裂くように鳴きはじめる遠藤)。爆発したような勢いでセミが鳴きはじめる=小林久三。ジッジジッジと蝉が鳴く。蟬の命ほどもない短い間!宇野千代。頭上から蟬の声が降ってくる。雨音のような蝉の声を聞く高樹。雑木林から滝のように蝉の声が聞こえる=遠藤。天そのものが鳴ってでもいるような蝉の声!光瀬。蝉の声が(幾つも重なり波打っている=中上。滝に負けないぐらい降り注ぐ三浦しをん。腹にしみいるようなはげしさで降りそそぐ』阿久)。夏山から滲しみ出すように蟬の声が送られてくる=大佛。岬から蝉の声が湧いて水にこだまする大岡。邸内は森閑としてセミの声だけがかまびすしい=山本有。午後の光を殻いっぱいに含んだように飴色というより金色に輝いて見える蟬の抜け殻「連城。木の上にセミのようにしがみついている=山本有。叩かれた蟬のように不意に泣き出す横光。秋蟬の声がしおらしく聞こえる=幸田露伴。耳をつんざくような蝉時雨に洗われる=田辺。林の中で喘ぐように初蟬の声が聞こえる=遠藤。松蝉の声がくすぐったいほど鼓膜に軽く響く=長塚。鼻のつまったようなみんみん蝉の声=長塚。油蝉が(ジージー鳴く。一匹二匹ではなく何十かの音を重複させて絶え間がない高樹。たぎるように鳴く裏庭大岡。集団で鳴く声が一きわ高く聞こえ耳鳴りのよう阿久)。一匹の油蝉が眠りを誘うような声で鳴く遠藤。油蟬の声を湧き立たせている林"黒井。燃えつけるような油蟬の声=長塚。電車の音の合間を埋めるように油蝉の鳴き声がすさまじい!高樹。蝉の抜け殻に似たむなしい形骸と化す=真継。蝉の抜け殻のような透き通った顔連城。蟬の抜け殻のようにふわっとして頼りない態度庄野。蝉の羽根をまとったような薄着三浦哲郎。薄い蟬の羽のようなイブニングドレス藤本。蝉の羽のように薄い布円地。蝉の羽根のように軽い=山田風太郎。ひぐらしが(かなかなと鳴く。寄せる波音のように交互に鳴きかわす藤沢)。波が駆けすぎるように林にひぐらしが鳴く=高橋和。ひぐらしの鳴く声が悲しげに聞こえる=山本周。ひぐらしの声が潮騒のように聞こえる=火坂。あたりの山や森からヒグラシの声がわきあがるように聞こえる=長崎。近くの森から蠣の声が追いかけるように聞こえる志賀。 **つばめ【燕】** ツバメが(鮮やかに反転し視界から消えるあさの。さっと横切っていく=鈴木光)。燕が矢のように疾り出て眼前を横切る―池波。夏に先駆けて燕がやってくる。燕の巣へ人間を入れたように窮屈そう岡本。広い道場を燕のごとく縦横に飛びまわり円陣を翻弄する=池波。金持ちの女のつばめに納まる=横山。燕のように(軽々と家を飛び出す「川端。かろやかに舞う中野翠。夢幻界を駆け上がりくぐりぬける"有島)。車の渦の中を燕のようにすいすいとかきわけながら大胆な運転で走る"五木。少女が燕のように首をかしげる=川端。船が青空を流れる燕のように早い=川端。ランデヴウの男女が燕のように閃いてすれ違う岡本。 **つる【鶴】** 鶴が翼を広げた形を思わせる鶴翼陣・荒巻。社長の鶴の一声。鶴は千年、亀は万年。鶴のように細い体を震わせて笑う三浦しをん。首が鶴のように細い=有栖川。鶴みたいな感じに痩せている笹沢。鶴みたいに首を伸ばして見上げる=連城。 **とび【鳶】** 鳶が(鷹を生む。ゆっくり輪を描いて舞う)。木の先に止まった鳶が白い空を背景にして剣製の置物のように見える=水上。山の頂から鳶が墜ちるように速い勢いで流れて行く=伊集院。何かないかなと探ってるとんびのような目"壺井。眼に鳶のような光が走る=水上。本来は番など回ってきそうにない連中に鳶に油揚げをさらわれるように持っていかれる胡桃沢。 <776> に首を伸ばして見上げる=連城。 **とび【恋】** 鳶が(鷹たかを生む。ゆっくり輪を描いて舞う)。木の先に止まった鳶が白い空を背景にして剣製の置物のように見える=水上。山の頂から鳶が墜ぉちるように速い勢いで流れて行く=伊集院。何かないかなと探ってるとんびのような目"壺井。眼に鳶のような光が走る=水上。本来は番など回ってきそうにない連中に鳶たんに油揚げをさらわれるように持っていかれる胡桃沢。 **とり【鳥】** 波のうねりに乗って羽を休めている烏=吉村。立つ鳥後を濁さず。烏が(羽音を立てて飛び上がる。唄を歌っているのが湧き出る泉のように聞こえてくる遠藤。狭い空間を矢のように飛び交う大岡。地をかすめるようにして飛んでいく=北原。止まり木の上をちらりちらりと動く=夏目)。クックッと鳥が鳴くような笑い声を立てる=五木。黒雲のように鳥が飛び立つ佐山。死にかけた鳥が叫んでいるみたいな笑い方=日野。雑木林を抜ける小径にょの上を鳥が走るように横切る=村上春。ボンボンと竹筒を打つような声を立てて一羽の鳥が空に翔がけ上る=伊集院。水の上を白い鳥が行きつ戻りつ魚を漁ぁさる=中。鳥の(声が耳を楽しませる。群れが一斉に大空へ舞い上がる"山田風)。赤児の泣き声のような鳥の声が耳に飛び込んでくる=伊集院。足が鳥の肢ぁしのように筋張る=大江。足もとから鳥の立つようなあわただしさ=壺井。眼が鳥の眼のように飛び出している"大岡。屋根にとまっていた鳥の群れがはじけるように八方へ飛び散って行く=阿川弘。笑いが鳥の啼き声のように窓の外の夕暮れに突き刺さる柴田湖。凶悪犯の昏くらい影が速い鳥のごとく人々の頭上を過る=奥泉。斜面に鳥の群れのようにとまっている家々―大江。鳥は鳴けども涙流さず。鳥も(通わぬ離れ小島。鳴かずば撃たれまい)。飛ぶ鳥をも落とす勢い。無数の衣装が通路の両脇に電線にとまる鳥たちのように群れをなす柴田翔。ウイッと鳥のような声を出してハンカチの中に汚物を吐き出す。伊集院。瀕死いんの鳥のような病人の異様な目つき=堀。鳥のように(先だけ尖とがった声室生。目だけがけわしい=安部)。青い衚子丸の服を鳥のように着込む人米。木々の間を群れとなって移ろう鳥のように空気がゆっくりと流れる=村上発。木の洞ぅぅの中に入って行く鳥のように飛び乗る!幸田文。梢から梢へ鳥のように飛び移る身軽さを身につける=飯田。言葉が羽搏せばく鳥のようにいたずらにあちこちと見苦しく飛び廻る=伊藤整。さっとマントをひるがえして階段を黒い鳥のように駆けあがる"阿部。偵察機が獲物を追う鳥のように小さな円を描いて旋回する大岡。出口を探す鳥のように狭い室内の三方の壁に突き当たる=大岡。羽をむしりとられた鳥のように情けない=長野。分からない問題が黒い鳥のように覆いかぶさって身体をつつき廻す島尾。鳥みたいに塀を乗り越える=北村。飛鳥のように身を躍らせる=山本川。可愛い雷烏みたいに肥ふとる=田島。頭上を鳥影がかすめる。信天翁は唄うが雪が降ったように集まっている=菊池。耳の先っぽが空気でも注入したように膨らんで鳴らずの卵ほどに大きくなる=三浦質。鵲の鋭い叫びが聞こえる=辺見。女どもが鵠のようにべちゃくちゃさえずる=中村白。鵞鳥がちが恵比寿様の冠みたいな頭をのしあげてがわがわ追ってくる=中。ゲレンデで鴨がものようによちよち治る"大佛。極彩色の孔雀(化の雄鳥肌が蓑みののような尾をさげる=中。夜鷹いたが堅い木を打ち合わすような烈はげしい響きを立てて鳴く志賀。 **なきごえ【鳴き声】** ▼鳴き声(明るい朝の光と空の広さとが分かるような鶏の佐多。荒海に逆巻く波濤沿との怒号のような蛙砂の鳥尾。欲望をむきだしたしつこく甘えかかるような胸跡もの=阿部)。真っ青な空から鳥の鳴き声が聞こえる。鳥の鳴き声で目を覚ます。恋猫の鳴き声に苛立からつ=北原。鳥からの鳴き声に似た悲鳴をあげる=宮本輝。痩せ猫の哀れげな啼たき声=武田泰。 **なく【鳴く】** ▼鳴く(庭先で虫が。牛がモーと。豚がブーブー。緬羊以认がのどかに。犬がワンワンと。小さい犬がきゃんきゃん。猫が甘えた声で。猫がニャアニャア。嵐ゆずがちゅうちゅうと。ひよこがびよびよ。守宮やもがきちきち。聴いたが石を叩くような声をして内田百。オオルリがヒュールヒュールルーリーリーと丸っこい声で=高田。山鳩がホーホーと=横光。山鳩がほろほろと石坂)。山鳩や邦公跡がだるそうに啼く“原田康。知らない家に繋っょがれたわが身の不幸を嘆くような悲しげな犬の鳴き声佐野。鳴き交わす(鳥が。甲高く。ひとしきり)。▼鳴きしきる(秋の虫が。雀吋ずが。蟬せんが)。▼鳴き立てる(犬が。地虫が。雀が。騒々しく。鳥たちがやかましく)。烏が機銃掃射のように鳴きまくる"村上春。馬がひひんと(いななく。鳴く)。蝉がすだく。虫がすだく(秋の。草むらで)。 **にわとり【鶏】** 鶏が(コケコッコと鳴く。鳴いて夜が明ける。夜明けを告げる)。鶏の(尻尾のような生え揃わぬ頭の毛野間。臓物の心臓のような口紅獅子。炎ふんを塗りかためたような絵人今東)。凍てた土へ響くような鶏の声が疳走曲いって聞こえる=長塚。時をつくる鶏の声=井伏。足の甲はいつか肉が落ち鶏の足のように干からびて水に濡れにくい=大岡。松葉菊の花弁のように尖とがった鶏の舌『高樹。鶏を焼く時のような香ばしい匂い島尾。厳合わせに負けた鶏のようにしょげきる!菊池。やみくもに逃げまどう追いつめられた鶏のように暗い土蔵の中へ脈けこむ!大江。一番鶏とが鳴き渡る。朝風に乗って遠く小さく断続的な叫びを伝えてくる鶏鳴"三島。軍鶏し、のように <777> # うれしなき **うれしなき** 【嬉し泣き】うれし泣きの涙は袖をしほるばかり。白洲。優勝して嬉し泣きする。嬉し涙が目の中いっぱいに広がる。声が嬉し涙に乱れる。嬉し涙をほろほろこぼす。▼感泣する(恩師の温情に。破格の取り扱いに)。感涙肝に銘ず。感涙にむせぶ。 # おおつぶのなみだ **おおつぶのなみだ** 【大粒の涙】大粒の涙が(一つ落ちる。止めどなくあふれる。ぼろぼろと落ちる)。目から大粒の涙が滴り落ちる。両目から大粒の涙があふれ出る。思わず知らず大粒の涙がこぼれ落ちる鈴木光。目から飛滕いぶのように大粒の涙がぽたぽた音を立てて落ちる=連城。バラバラ大粒の涙が落ちる谷崎。ぼとぼと大粒の涙を落とす。▼大粒の涙をこぼす(ほろほろと。お天気雨のように=向田)。目に大粒の涙が膨れ上がる。大粒の真珠のような涙戸板。 # おとこなき **おとこなき** 【男泣き】▼男泣きに泣く(感きわまって。さめざめと)。男泣きの涙にむせぶ。笑いこけているように聞こえる奇妙な声を立てて男泣きをする"阿部。友人の急逝に男泣きする。 # ごうきゅう **ごうきゅう** 【号泣】気が狂ったのかと思われるような号泣!高見町。悲鳴とも号泣ともつかぬ声"遠藤。悲鳴が号泣に変わる。子供のように座布団の端を口で悩みながら号泣をこらえる=中村真。手放しで号泣を始める=光原。▼号泣する(声をあげて。わっと顔をおおい。襤褸はぁのように俯伏らっして柴田鍊)。天を仰いで号泣したいような頑是ない激情"外村。おいおいと泣き声を高める。全身に悲しみを満ち溢れさせて大泣きする=海堂。泣血百拝してお願い申し上げる次第「船山。血涙を絞る。心の中で血の涙を流す踐。わあっと大声を上げて泣きだす。わんわん声を上げて| 泣く。血を吐くような短いとぎれとぎれの慟哭ごら"飯田。慟哭に近い痛惜の念。慟哭の声がそこここから起こる。▼慟哭する(声を張り上げて。身をもむようにして平岩)。高笑いが慟哭のように響く森場。 # さめざめ **さめざめ** さめざめと(泣き崩れる。泣き伏す)。一人さめざめと泣き続ける。涙をさめざめと湛たたえる"谷崎。さめざめとした声で嗚咽を漏らす。 # しのびなく **しのびなく** 【忍び泣く」声が漏れないように忍び泣く。忍び泣きする(看板の陰で。布団の中で)。病室から忍び泣きの声が漏れてくる三好微。▼泣く(声を出さずに。声を忍ばせて。声を呑んで。声を潜めて。声を押し殺して)。忍び音にすすり上げる。 # すすりなく **すすりなく** 【啜り泣く】▼すすり泣く(さも悲しげに。肩を震わせて。声を殺して。両手で顔をおおって)。すすり泣く声が(きれぎれに聞こえる=杉本。しめやかに聞こえる=江戸川)。すすり泣きが(室内に満ちる。暗い空気をふるわせる=大江)。あちこちからすすり泣きが聞こえる。すすり泣きに語尾を溶け込ませる。しくしくと啜り泣きをする。タイヤが道路にすすり泣きのような音をたてる清水俊。すすり泣きのような女の声平行。雨の傘に落ちる音が遠くの海を渡っていく女たちの啜り泣きのように耳に届く=高橋三。厳欲に」がはたと停まる。厳欲の感動が波立つ。しくしく(鼻を鳴らす。声を低めて泣く。蚊のように泣く=泉鏡)。半ば而当てにしくしく泣いて見せる=鈴木三。 # そらなみだ **そらなみだ** 【空涙】空涙に(怒る。だまされる)。空涙を流す。泣き真似ょぉが上手。 # なかせる **なかせる** 【泣かせる】泣かせる話。好きなだけ泣かせておく。気の済むまで泣かせてやる。多くの女性の紅涙をしぼる。開くも涙の愛情物語。聞く者の涙を誘う。涙を誘うもの悲しい話。 # なかない **なかない** 【泣かない】危うく熱くなりかけた瞼は| 頬を抑える人米。こらえる(辛うじて涙を。泣くまいと必死に)。涙が出そうになるのを辛うじてこらえる大庭。涙一つ見せない。一滴の涙も浮かんでこない。ナメクジが溶けるように目を # なきがお **なきがお** 【泣き顔】すなきがおほめて泣き顔になる=坂口。ぶざまな泣き顔を見せる。泣きっ面に蜂。口許にちがひきつって泣き顔のように見える=日野。涙で(顔じゅうがぐしょ濡れになる。濡れそぼった顔)。顔が涙でぐしゃぐしゃに濡れる=黒墨有。いまにほえ面をかくなよ"かんべ。うかうか話に乗ってあとで吠え面をかく=里見。 # なきくずれる **なきくずれる** 【泣き崩れる】▼泣き崩れる(声をあげて。正体もなく。場所柄もなく。身をよじって。地も張りも失せて。人目もかまわず)。 # なきくらす **なきくらす** 【泣き暮らす】▼泣き暮らす(あまりの悲しさに。愛児を亡くして。妻に先立たれて)。泣き明かす(親に死なれて。失恋して。三日三晩)。 # なきごえ **なきごえ** 【泣き声】▼泣き声(うううっという締めつけるような中沢。消えいるばかりの=北。梢をかすめる風の=加賀。騒ぎ疲れて道の左右もわからなくなったただ哀しいただ寄る辺ない混じり気のない子供の古井。ずっと胸につかえていたものがやっと取れた産声のような=内田泰。波のように寄せてくる"小川。火がついたような=梶井。細く鋭い針がすっと身体をつらぬいてゆくような=中沢。身も世もないような介藤沢。幼稚園中に響き渡るような太い谷村。夜の静寂を破る―連城)。泣き声が(ぴたりと止む。そこここに起こる。耳に残っている。頭の芯に突き通る=中沢)。初々しい赤ん坊の泣き声が聞こえる。唐突に甲走った泣き声がおこる。牛のうめき声のような泣き声が気疎いく聞こえる有局。こわれた笛のような泣き声が断続的に聞こえる柴田翔。裂くような泣き声がそこここから起こる=円地。言葉が泣き声で乱れる。泣き声に(近い悲鳴。ひゅうひゅうと笛のような音が混じる=東野)。声が濡れた泣き声に崩れる=黒井。 <778> # 泣く・涙ぐむ **うれしなき【嬉し泣き】** うれし泣きの涙は袖をしぼるばかり。白洲。優勝して嬉し泣きする。嬉し涙が目の中いっぱいに広がる。声が嬉し涙に乱れる。嬉し涙をほろほろこぼす。▼感泣する(恩師の温情に。破格の取り扱いに)。感涙肝に銘ず。感涙にむせぶ。 **おおつぶのなみだ【大粒の涙】** 大粒の涙が(一つ落ちる。止めどなくあふれる。ぼろぼろと落ちる)。目から大粒の涙が滴り落ちる。両目から大粒の涙があふれ出る。思わず知らず大粒の涙がこぼれ落ちる鈴木光。目から緋のように大粒の涙がぽたぽた音を立てて落ちる=連城。バラバラ大粒の涙が落ちる谷崎。ぼとぼと大粒の涙を落とす。▼大粒の涙をこぼす(ほろほろと。お天気雨のように=向田)。目に大粒の涙が膨れ上がる。大粒の真珠のような涙戸板。 **おとこなき【男泣き】** ▼男泣きに泣く(感きわまって。さめざめと)。男泣きの涙にむせぶ。笑いこけているように聞こえる奇妙な声を立てて男泣きをする"阿部。友人の急逝に男泣きする。 **ごうきゅう【号泣】** 気が狂ったのかと思われるような号泣!高見順。悲鳴とも号泣ともつかぬ声"遠藤。悲鳴が号泣に変わる。子供のように座布団の端を口で銜えながら号泣をこらえる=中村真。手放しで号泣を始める=光原。▼号泣する(声をあげて。わっと顔をおおい。襤褸のように俯伏して柴田鍊)。天を仰いで号泣したいような頑是ない激情"外村。おいおいと泣き声を高める。全身に悲しみを満ち溢れさせて大泣きする=海堂。泣血百拝してお願い申し上げる次第「船山。血涙を絞る。心の中で血の涙を流す。わあっと大声を上げて泣きだす。わんわん声を上げて泣く。血を吐くような短いとぎれとぎれの慟哭"飯田。慟哭に近い痛惜の念。慟哭の声がそこここから起こる。▼慟哭する(声を張り上げて。身をもむようにして平岩)。高笑いが慟哭のように響く森村。 **さめざめ** さめざめと(泣き崩れる。泣き伏す)。一人さめざめと泣き続ける。涙をさめざめと湛える"谷崎。さめざめとした声で嗚咽を漏らす。 **しのびなく【忍び泣く」** 声が漏れないように忍び泣く。忍び泣きする(看板の陰で。布団の中で)。病室から忍び泣きの声が漏れてくる三好徹。▼泣く(声を出さずに。声を忍ばせて。声を呑んで。声を潜めて。声を押し殺して)。忍び音にすすり上げる。 **すすりなく【啜り泣く】** ▼すすり泣く(さも悲しげに。肩を震わせて。声を殺して。両手で顔をおおって)。すすり泣く声が(きれぎれに聞こえる=杉本。しめやかに聞こえる=江戸川)。すすり泣きが(室内に満ちる。暗い空気をふるわせる=大江)。あちこちからすすり泣きが聞こえる。すすり泣きに語尾を溶け込ませる。しくしくと啜り泣きをする。タイヤが道路にすすり泣きのような音をたてる清水一行。すすり泣きのような女の声。雨の傘に落ちる音が遠くの海を渡っていく女たちの啜り泣きのように耳に届く=高橋三千綱。慟哭がはたと停まる。慟哭の感動が波立つ。しくしく(鼻を鳴らす。声を低めて泣く。蚊のように泣く=泉鏡花)。半ば当てにしくしく泣いて見せる=鈴木三重吉。 **そらなみだ【空涙】** 空涙に(怒る。だまされる)。空涙を流す。泣き真似が上手。 **なかせる【泣かせる】** 泣かせる話。好きなだけ泣かせておく。気の済むまで泣かせてやる。多くの女性の紅涙をしぼる。聞くも涙の愛情物語。聞く者の涙を誘う。涙を誘うもの悲しい話。 **なかない【泣かない】** 危うく熱くなりかけた瞼は涙を抑える人米。こらえる(辛うじて涙を。泣くまいと必死に)。涙が出そうになるのを辛うじてこらえる大庭。涙一つ見せない。一滴の涙も浮かんでこない。 **なきがお【泣き顔】** ナメクジが溶けるように目をほめて泣き顔になる=坂口。ぶざまな泣き顔を見せる。泣きっ面に蜂。口許にちがひきつって泣き顔のように見える=日野。涙で(顔じゅうがぐしょ濡れになる。濡れそぼった顔)。顔が涙でぐしゃぐしゃに濡れる=黒岩。いまにほえ面をかくなよ"かんべ。うかうか話に乗ってあとで吠え面をかく=里見。 **なきくずれる【泣き崩れる】** ▼泣き崩れる(声をあげて。正体もなく。場所柄もなく。身をよじって。地も張りも失せて。人目もかまわず)。 **なきくらす【泣き暮らす】** ▼泣き暮らす(あまりの悲しさに。愛児を亡くして。妻に先立たれて)。泣き明かす(親に死なれて。失恋して。三日三晩)。 **なきごえ【泣き声】** ▼泣き声(うううっという締めつけるような中沢。消えいるばかりの=北。梢をかすめる風の=加賀。騒ぎ疲れて道の左右もわからなくなったただ哀しいただ寄る辺ない混じり気のない子供の古井。ずっと胸につかえていたものがやっと取れた産声のような=内田康夫。波のように寄せてくる"小川。火がついたような=梶井。細く鋭い針がすっと身体をつらぬいてゆくような=中沢。身も世もないような=佐藤愛子。幼稚園中に響き渡るような太い谷村。夜の静寂を破る―連城)。泣き声が(ぴたりと止む。そこここに起こる。耳に残っている。頭の芯に突き通る=中沢)。初々しい赤ん坊の泣き声が聞こえる。唐突に甲走った泣き声がおこる。牛のうめき声のような泣き声が気疎く聞こえる有吉。こわれた笛のような泣き声が断続的に聞こえる柴田翔。裂くような泣き声がそこここから起こる=円地。言葉が泣き声で乱れる。泣き声に(近い悲鳴。ひゅうひゅうと笛のような音が混じる=東野)。声が濡れた泣き声に崩れる=黒井。 <779> # 泣く・涙ぐむ-253 **なきさけぶ【泣き叫ぶ】** ▼泣き叫ぶ(声を限りに。子供のように。ありったけの声で。顔を真っ赤にして。身をもがいて悲しげに=山手。喉がちぎれるのではと思うような声で=東野。火がついたように=隆慶一郎)。 **なきじゃくる【泣きじゃくる】** 泣きじゃくる(うれし泣きに。悔しそうに。肩を震わせて。畳に伏せて。母にすがって。悲痛な声で。身をもんで。子供のように声を立てて向田)。肩を震わせてしゃくりあげる。しゃくり上げて泣く。息を引いてしゃくり上げる。よよと泣き崩れる。 **なきすがる【泣きすがる】** ▼泣きすがる(遺体に。お母さんに。別れないでと)。泣く(膝にすがって。おとうさんの胸にすがって赤ん坊のように灰谷)。死骸に取りすがって泣き入る。亡骸にとりすがり泣き伏す。 **なきたい【泣きたい】** 心細さに泣きたい気持ち。声をたてて泣きたいような淋しさに落ちる=林京子。泣きたくなる(情けなくて。いまいましさに)。泣きたいくらい哀しくなる=遠藤。泣きたいほど感動する。泣きたいようなみじめな思い=曽野。泣きたくなるような喜びにかられる=小池。 **なきだす【泣き出す】** ▼泣き出す(意気地なく。感きわまって。途方に暮れて。手放しでぽろぽろと。恥も外聞もなく。わあっと声を上げて。蜂にでも刺されたようなはげしさで子供が杉本。叩かれた蟬のように不意に=横光。肩を震わせてわっと火坂。子供のように激しく小池。堪えていた涙の堰を切って声を立てて=有吉。急に気が弛んだのか、堰を切ったように三浦哲郎。装飾音をつけて島田。張りつめた風船が割れるように娘が声をあげて高樹。火がついたように若竹。引き裂くような大きな声をして内田百閒。火のつくような大声で=円地)。袂で顔を覆って泣きだす=山本周。いきなり両手で顔をおさえる井伏。泣き出したいような衝動を感じる"大岡。 **なきつづける【泣き続ける】** ▼泣き続ける(ひとしきり。ソファーに突っ伏して。途切れることなく)。泣きつづける(小娘のようにたわいもなく有吉。よくもそんなに泣けるものだと呆れるほど椎名誠)。泣いて泣いて(泣きぬく。眼がつぶれそう。中河)。泣けて泣けて仕方がない。涙がいつまでも止まらずに流れる。拭っても拭っても涙が止まらない。拭いても拭いても涙があふれてくる。涙に袖の乾くひまもない。泣き通す(一晩じゅう。夜っぴて。顔が腫れ上がるくらい瀬戸内)。いつまでも泣きやまない。 **なきのなみだ【泣きの涙】** 泣きの涙で(泣き暮らす。泣きの涙で日を暮らす)。妻子眷属と泣きの涙で水盃をして別れる今日。泣きの涙に暮れる。 **なきべそ【泣きべそ】** 泣きべそを(かいた餓鬼大将みたいな顔"五木。かくほど狼狽する=本庄)。声が湿っぽくなる。半べその顔になる。泣きそうな(声でつぶやく。目で訴える)。いまにも泣き出しそうに張りつめた表情"日野。ほろりと泣きそうになる。泣き出しそうに唇を歪める。泣く一歩手前。危うく涙をこぼしそうになる。半泣きで答える。恥ずかしさと痛みで半泣きになる三浦しをん。半泣きの声をあげる。べそをかくように笑う中上。今にもべそをかきそうにちぢこまる=中略。 **なきわめく【泣き喚く】** ▼泣きわめく(ありったけの声で。顔をぐしゃぐしゃにして。きゃあきゃあと。嫉妬に我を忘れ池波。半狂乱のようになって=村上元三)。声をあげて泣きわめきたいほどの哀しみ"大江。 **なきわらう【泣き笑い】** 狂したかと思われるような歓喜の泣き笑い菊池。痙攣に似た泣き笑いが顔に浮かぶ=篠田。泣き笑いに顔を崩す。顔が泣き笑いに歪む。青白い顔に痙攣するように泣き笑いの表情が浮かんだり消えたりする。藤沢。臆病そうな泣き笑いの表情"中村真。悪戯小僧のように顔じゅうをくしゃくしゃさせて泣き笑いをする"今日。泣き笑いのようなしゃを口に漂わす=宮本百合子。頬を泣き笑いのようにゆるめる古井。 **なく【泣く】** 泣く(立派な提言が。一票の差に。無実の罪に。切なげな声で。断腸の思いで。一番槍と言われた名が。文化国家の看板が。一円を笑うものは一円に。悶えに悶えてさんざんに。赤ん坊がおぎゃあと。哀れっぽい声で。エプロンを顔にあてて。肩を波打たせながら。悲しみにたえかねて。きゅっと頬を歪めて。畳に突っ伏して。枕に顔を押しつけて。目頭を押さえて。半身不随の老いを二葉亭。いろいろと思い出すと不意に耐えられなくなるといったふうに大庭。心の底から湧きいずる歓喜に=菊池。喉も裂け血を吐くばかりに泣きに=坂口。相手の涙に感染したように=中上。赤子が火のついたように荻野。いったんせきを切ったら止まらなくなったみたいに涙をぼろぼろこぼして長崎。肩から背まで波を打たせ声をあげて“石川。感激のあまり手を取り合って大庭。木の枝がひゅうひゅうと悲痛の響きを立てて=長塚。獣のような声を出して“千刈。小刻みに肩を震わせて=福永。子供のように手放しで大佛。こらえていた感情がほどけてほとばしるように=壺井。絞り出すような声で藤本。背中の子供が足を踏ん張るようにしてアーンアーンと声高く=椎名誠。台所の板の間にくらいつくようにして肩をふるわして『有吉。 <780> # な **なくなく【泣く泣く】** 泣く泣く(家に帰る。帰ってくる。日を送る。命令に従う。別れる。野辺の送りを済ませる。不利な条件をのむ)。泣き泣き(訴える。帰る。別れる。自分の過去を話す)。 **なけない【泣けない】** 泣くに泣けない。泣く(気にもなれない。気も起きない寂しさ)。泣こうにも涙が出てこない。 **なみだ【涙】** 涙(死んだ人を悼む。滂沱と頬を伝う。熱帯の雨に似ている=山田詠美)。口が曲がりそうなほどしょっぱいなみだ=長崎。涙が(一筋頬を伝う。頬を濡らす。せぐり上げてくる。両の目に盛り上がる。幾筋も糸をひいて頬を伝わり落ちる=森瑤子。月光に白く光る=船戸。溢れるまでは眼を焼くほどに熱く頬を伝わる時は総毛立つほど冷たい!水上勉。玉となって転げ落ちそうな目=宇野利理。つき上げるように湧いてくる=海音寺。深い心の底からわいてきて堰き止めるすべがない=中略)。とめどもなく涙がせきあげる。泣きすぎて涙が涸れる。目尻に涙が溜まる。一条の涙が糸を引く藤木。糸が切れて離れた首飾りの玉のように涙が散らばる=大佛。すぐにも涙がほとばしそうな恨みつき菊池。長い睫毛の蔭に涙が宿る大佛。激しい感情で却って閉塞されていた涙が急に蓋が取れたように溢れだす=野上。頬に涙がはらはらと伝い落ちる=なかにし。目頭に涙が水玉になって光る=三浦哲郎。目が出目に見えるほど丸く涙がふくれ上がる"田辺。汲んでもつきない井戸のように涙が目にあふれる阿久。鼻の奥がつんとして涙がこみ上げてくる"隆慶一郎。一瞬涙が込み上げるくらい感動する内田康夫。涙で(枕を濡らす。娘の瞳と睫毛とが黒曜石のように結晶する=岡本)。瞳が涙できらきらと光る=東野。頬が涙で輝くように洗われる=野間。▼涙で潤む(声が。目が)。再会の涙にかき暮れる。目がにじんでくる涙に曇る。女の涙に男はうろたえる=水上。涙にくれる(谷をさまよう。にじんだ目をしょぼしょぼさせる)。視線を涙の光で研いで突き刺してくる―連城。机に涙の湖を作る=佐野。頬に涙の玉が稲妻をすべる露のようにポロリと滾転して下る=幸田露伴。円々と盛り上がった涙の玉。眼鏡の奥が涙の洪水になる=辺見。美しい涙の玉をそうっとこのまま結晶させたいような谷崎。声がたゆたゆとして涙ばかり湧く=大佛。滂沱たる涙を止めようがない。まぶたに涙をにじませる。こみあげてくる涙を押しとどめるように休みなくスプーンを口に運ぶ小川。つらい思いを万斛の涙をもって示す=山田風太郎。▼涙を落とす(雨のように。ほんの一二滴ながらもらい泣きのように=高橋和)。目に涙をためて哀願する。涙を呑んで一旦休戦することに決定する徳永。涙をふるって(馬謖を斬る。別れる)。まつげに涙を宿す大原。睫毛に涙を潤ませる。眼が涙で(何も見えない。ぐしゃぐしゃになる=山本周)。目が涙で霞む。絹糸の涙のような雨が頬を濡らす=池田。アイスクリームの溶けたクリームが涙のようにアスファルトに落ちる"北村。落涙はなはだしきがために読み続けるに堪えられない司馬。双眸にうから涙があふれる。小さなドブから水が溢れるようにジワジワビショビショと涙が溢れる"向田。涙が両眼から噴き出すように溢れる=辻井。温かい血のような涙が眼にあふれる=中上。自分でもあきれるほどに次から次へと涙があふれだす“三田。目の縁にせき止めていた涙があふれ出す中沢。涙があふれそうになる(懐かしさに。急に感情が昂ぶって)。涙を淡々と睫毛の縁まで溢れさせる!谷崎。頬に滂沱と涙があふれ落ちる。▼涙がこぼれる(悔しくて。とめどなく。不覚にも。ほろほろと。ほろりと。ぽとりぽとりと。胸が締めつけられて。目からほろほろと。目からぼろぼろ)。目から涙がおもしろいようにこぼれる=灰谷。胸が迫って涙がこぼれだす。 <781> # 泣く・涙ぐむ-253 涙を澎湃と流す。涙を流して(悔しがる。喜ぶ。笑い転げる)。▼涙をぬぐう(紙ナプキンで。手のひらで。指先で)。衣の袖で溢れる涙をそっと拭う福永。手で乱暴に涙を拭く。 **なみだぐむ【涙ぐむ】** ▼涙ぐむ(顔をゆがめて。感動のあまり。寂しい心持ちに。ぐすりと鼻をすすりあげて熊谷。言葉を知らない幼児のようにやきもきして大江。懐かしさに思わず"柴田錬三郎。胸を締めつけられるような悲しみにじわじわと=里見)。涙ぐんで喜ぶ。▼目頭が熱くなる(不意に。柄にもなく。じいんと)。眼球をぶよぶよとうるませる。安岡。不意に視界がにじむ。湿ったまぶたが重そうに上下する=高樹。危なく泣き出しそうになる。涙が出そう(感動して。情けなさで。悔しさと恥ずかしさで=村上龍)。涙が出そうなほど(感動する。愛おしく感じられる=五木)。涙目になって逃げようとする。涙目のまま鼻水をすすり上げる。思わず涙をこぼしてしまう。つうーんと鼻の奥が熱くなる=林真理子。鼻の奥にかすかな痛みが走る内海。瞼が熱を帯びる。熱いものが胸を突きあげて目蓋の裏が熱っぽく灼ける藤本。そっと目頭をおさえる。目から(涙がこぼれそうになる。熱いものが吹きこぼれそうになる=人間)。目に涙の薄い膜が張る藤本。眼の裏が熱くなる藤沢。眼の中に露が潤む!幸田露伴。涙ぐみたいような懐かしさ阿久。▼涙がにじむ(瞳に。目頭に。目に)。 **なみだごえ【涙声】** ▼涙声(悲しそうな。悔しそうな)。涙声で(訴える。激励する。鼻を詰まらせる)。涙ながらに(胸に誓う。許しを請う。別れを告げる。身の潔白を訴える。心からの懺悔をする=中略)。声が涙交じりになる。 **なみだもろい【涙もろい】** 涙もろい(質。人)。泣き虫先生のあだ名を返上してもいいほどとても元気長崎。感傷的な(涙を流す。思いに駆られる)。物悲しい感傷的な気持ち。▼感傷的になる(少女みたいに。知らず知らず)。涙腺の(しまりがゆるい=田辺。栓が抜けてしまったように涙が溢れ出る=加賀)。歳を取ると涙腺が弱くなる=さだ。女の涙腺は蛇口と同じ宮部。 **ねつるい【熱涙】** 熱涙がほろほろと頬を伝わる二葉亭。涙を浮かべる。熱い涙が(頬を伝う。とめどなく流れる=有島。ほろほろとあふれ出る=有吉)。感極まった涙がはらはらと頬を転がり落ちる=宮本百合子。感極まって涙を流す。 **むせびなく【むせび泣く】** ひとしきりむせび泣きが起こる。顔をうつ向けたままむせび泣きに耐える水上。▼涙にむせぶ(歓喜の。感激の)。▼泣きむせぶ(さめざめと。手も足も出ずに)。むせぶ(暗涙に。切歯扼腕に。落涙に。心が水々しい果汁をなめるがように感極まって横光)。少女の心の孤独さがむせび泣きのように伝わってくる絵"日野。むせび泣くような女の声が嫋々と流れてくる=山田風太郎。嗚咽が(堰を切って出る=松本。喉の奥で渦巻く=小池)。噛み殺すような嗚咽が聞こえる=本庄。知らず知らず嗚咽が漏れる。声が嗚咽に変わる。嗚咽に肩を震わせる。激しい嗚咽に身を震わせる。懸命に嗚咽をおさえて平静に話そうとする=田辺。嗚咽する声があっちこっちから起こる。▼嗚咽する(声を殺して。激しい悲しみに。歯を食いしばって。ハンカチを顔にあてて。声を出すまいと堪えながら=山崎)。嗚咽したいようなむなしい感動が波立ってくる=。がまんを切らしたように嗚咽し出す杉本。泣くに泣けぬ溜め息が嗚咽のように胸から迸り出る=中河。 **めそめそ** めそめそ(甘ったれる。泣く。毎日を過ごす。文句をつける)。子供がめそめそする。めそめそした声。 <782> # 慰める・褒める **いたわる【労る】** ▼いたわる(老いた父を。怖いものにさわるように=武者小路)。兄のように優しく労る萩原朔太郎。優しくいたわる(妻を。母親のような頼もしさで男の子を!内海)。いたわりの(言葉をかける。言葉が疲れを解きほぐすように染み込んでくる"高樹)。いたわりをこめた(愛情の眼差し。笑み)。背中をいたわるようになでさする。穏やかにいたわるように話しかける=田島。▼ねぎらう(客を。家来を。職員を。日頃の労を。あたたかな言葉で=城山)。ねぎらいの(声をかける。言葉を贈る)。 **おうえん【応援】** 応援に駆けつける。格下の班の応援に回されたことに忸怩たる思いがある=横山。応援の声を送る。応援する(労働争議を。陰ながら。弁当で。暖かく見守って=鈴木光。事務所が総力をあげて"小林久三)。応援かたがた見に行く。応援団が(つめかける。エキサイトする)。エールを(送る。交換する)。陰ながら(心配する。成功を祈る)。▼肩入れする(地元出身者に。特定の候補者に。ひいきのチームに)。後援する(コンサートを。集会を。団体を)。一生懸命後押しをする。▼後押しする(荷車を。平和的解決を。才能のある者を)。▼肩を入れる(特別に。熱心に)。大層な肩の入れよう。観客の声援が湧き上がる。声援に応えて健闘する。熱狂的な声援を受ける。声援を送る(好意的な。惜しみない)。▼バックアップする(経済界が。学生を。教師を。計画を。味方を)。 **かっさい【喝采】** 喝采の(拍手が鳴る。声が嵐のように起こる=田山)。惜しげもない喝采を送る。喝采を浴びる(盛大な。満都の)。▼喝采を博する(アイデアが。江湖の)。やんやの喝采を(浴びる。惜しまない)。喝采する(見物人が。客がやんやと)。座も割れんばかりの大喝采坂口。観客がやんやの大喝采を送る。 **くんしょう【勲章】** 事件の第一発見者という勲章がピンで心臓にとめつけられる宮部。勲章を(受章する。授章する。授与する。胸に吊る。もらう)。文化勲章を受章する。叙勲の栄に浴する。褒章を(受ける。授与する)。 **しょうれい【奨励】** ▼奨励する(学問を。芸術を。スポーツを。貯蓄を。勉強を。家来たちに文武を=村上元三)。奨学金を(借りる。貸与する。もらう)。優秀な学生に奨学金を出す南木。 **げきれい【激励】** ▼激励する(闘争を。友達を。尻を叩いて)。鼓舞激励する(己れを。兵士を)。▼叱咤激励する(自分を。社員を。声をからして部下を筒井)。督励する(家士を。部下を。村の者を)。 **さんじ【賛辞】** 歯の浮くような賛辞。讃辞を(額面どおり受け取る=中村真。催促するように言う~有吉)。最大級の賛辞を連ねる。鼻高々として客の讃辞を期待する萩原葉子。▼褒め言葉(大仰な。陳腐な)。仰山な賞め言葉を並べる=野上。褒め言葉を惜しまない。大げさな褒め言葉を口にする。 **しょう【賞】** 賞を(手中にする。手に入れる)。国際的な賞を何度か取る。授賞式を開催する。賞金を(贈呈する。頂戴する)。賞品が当たる。賞品の包みを受け取る。懸賞に(当たる。応募する)。受賞の(栄に浴する。連絡を受ける)。▼受賞する(芸術院賞を。新人賞を。特別賞を。ノーベル賞を)。受賞第一作を書く。入選の知らせが届く。▼入選する(応募作品が。一席に。コンクールに。特選に)。選に入る。 **しょうさん【賞賛】** 賞賛の(声が湧き上がる。言葉を期待する。眼差しを向ける)。賞賛を(浴びる。惜しまない)。小説が江湖の賞賛を博する=今東光。賞賛する(才能を。実力を。手腕を。筆力を。勇気を。立派な息子だと世間が藤田)。▼極めて賞賛する(口を。筆を)。大向こうに喝采される。大向こうをうならせる。 **しょうじょう【賞状】** 賞状を(贈る。額に入れる。手渡す。もらう)。感状を(授ける。賜わる)。人命救助の褒状。褒状を授与する。もらう)。 **ちからづける【力づける】** 力づける(弟を。母を)。大丈夫だよと力づけるように呟く=福永。活気づける(国を。産業を)。死中に活をつかむ。▼活を入れる(下級生に。筋肉に。仕事に)。選手を元気づける。▼勇気づける(国民を。支持者を。自分を。母親を)。 **なぐさめる【慰める】** ▼慰める(望郷の思いを。失恋した友人を。神経の苛立ちを。言葉を尽くして。思い屈した心を"井伏。子供をあやすように笑って芥川)。心を慰める(傷ついた。不安に満ちた)。▼霊を慰める(死者の。戦没者の)。心がこの上もなくなぐさめられる=阿川弘之。呪術に似た安直ななぐさめ真継。慰めに満ちた詩句。声が慰めに満ちる。慰めの(言葉をかける。言葉が浮かばない。言葉一つ思いつかない)。力みかえった慰めの言葉がピエロの台詞のように気味悪くおかしい=石川。慰めを手近に求める。一抹の慰めを得る。透明な優しい慰めをこめた祝福"曽野。この世の終わりってわけじゃない!赤川。花の匂いが人を慰めるように甘い=福永。慰め顔に言う。慰め役を引き受ける。心が慰む(海を眺めていると。絵を見ていると)。▼慰め合う(老いを。お互いを。不幸を)。慰安会を開く。慰安旅行に出かける。声に慰藉のよろこびがにじみ出る三島。互いに限りない慰藉を注ぎ合う。慰撫する(人心を。妻を)。慰霊祭を営む。慰霊する(犠牲者を。死者を。戦死者を)。▼慰労する(功労者を。職員を。役員を)。慰労の言葉をかける。感傷的なつまらない自慰行為。慰問に行く。慰問を口実にして訪問する。▼慰問する(患者を。兵士を)。 **はくしゅ【拍手】** ▼拍手(嵐のような。期待をはらんだ潮騒のような海堂。取り囲む人垣の万雷の拍野。割れんばかりの=角田)。 <783> # 慰める・褒める-254 客が一斉に拍手喝采を送る=石坂。拍手が(いつまでも続く。しばらく鳴りやまない)。客席から拍手が巻き起こる。どっと拍手が湧き起こる。どよめきと拍手が交錯する。激しい拍手が尾を引く。まばらな拍手が起きる。割れるような拍手が取り巻く。さざ波のような拍手が耳に響く高橋えり子。怒濤のような叫びと拍手が場内を揺るがす徳永。爆発するような拍手が湧く=高樹。▼拍手が起こる(盛んな。客席から。ためらいがちに。ひときわ盛んに。満員の公会堂が震えるような=向田)。津波のような拍手と大歓声が起こる=高橋三千綱。拍手に応えて片手をあげる。みんなの拍手に送られて退場する。拍手の(響きが耳に届く。嵐が巻き起こる=住井)。ぱちぱちと拍手の音が聞こえる。万雷の拍手を浴びる。皆の温かい拍手を受ける渡辺。耳の端で万雷の拍手を聞いたように面食らう獅子。▼拍手を送る(聴衆が。熱狂的な。演説に。大雨のような。惜しみなく。独創的な研究者に)。拍手を送りたくなるほどあきれて感心する=村上龍。万雷の拍手に迎えられる。ひときわ大きく拍手する。▼拍手喝采(百雷のような。やんやの)。拍手喝采を浴びる。受ける)。 **はげます【励ます】** ▼励ます(萎える心を。落ち込んだ心を。ひたすら一心に自分で自分を伊藤左千夫)。声を励まして言う。声をかけあい励ましあう。励ましに元気づけられる。励ましの言葉をかける。これしきのことでへこたれるな。ねじを巻く。御指導御鞭撻をお願いいたします。スタッフに発破をかける。 **ひょうしょう【表彰】** ▼表彰する(親孝行者を。勤続二十五年を)。人命救助で表彰される。表彰状を(授与する。もらう)。顕彰する(遺徳を。事跡を。長年の功労を。優秀な作品を)。 **ほうび【褒美】** よく任務をほうびした褒美"獅子。褒美に(あずかる。ありつく)。大手柄となった暁には褒美に箱根に連れて行く=高橋克彦。褒美の(金を何にする。品をもらう。金に目がくらむ)。褒美を(与える。取らせる。もらう)。身に余るような褒美を受ける茶川。恩賞にあずかる。戦勝の暁には恩賞を取らせる。お使いの駄賃。駄賃を(与える。もらう。渡す)。報償金が出る。報償費を支払う。論功行賞(合戦の。選挙の)。論功行賞により栄転する。論功行賞の人事。 **ほじょ【補助】** ▼補助する(学費を。仕事を。生活費を。足りない分を)。補助金で農業を支える。補助金を(給付する。削る。もらう)。補助的な手段。 **ほめそやす【褒めそやす】** ほめそやす(作った姿を。口々に。口を極めて。衆口一致して)。嵐のような喝采。噴々たる(好評の嵐。名声)。采が鳴り響く人米。嘖々たる(好評の嵐。称揚する(家柄を。いさぎよさを。先祖の徳を。勇敢な行為を)。▼ほめ立てる(手柄を。勇気ある行動を)。 **ほめたたえる【褒め称える】** ▼ほめたたえる(美しさを。眼識を。慧眼を。功績を。徳を。努力を。魅力を)。美々しい言辞を駆使して褒めたたえる=中野翠。あらゆる言辞を駆使して女を褒め讃える"有吉。たたえる(鶯が新春を。孤軍奮闘を。故人の徳を。優れた業績を。清冽な生き方を)。敵ながらあっぱれと讃える=内橋。▼謳歌する(この世の春を。自由を。過去最高の業績を)。▼賛歌(愛の。青春の。光への)。賛美の(言を連ねる。瞳を向ける。目で見つめる)。▼賛美する(英雄を。救世主を。豪傑を。風景を。無批判に。露骨に。口を極めて)。 **ほめちぎる【褒めちぎる】** ▼ほめちぎる(無責任に。書評で。君ほどの秀才はいないと。この世で一番美しいと)。絶賛の言葉を並べる。▼絶賛する(相手投手を。美しさを。風味を。妙技を。口を極めて。評論家たちが挙って)。べた褒め(文句なしの。気持ち悪いくらいの)。べた褒めに褒める。べた褒めする(自分の息子を。仲間の作品を)。 **ほめる【褒める】** ▼褒める(着ている物を。優れた点を。太刀さばきを。口を極めて。精力的な仕事ぶりを。冷静沈着な処置を。各紙が筆を揃えて。仲間がこぞって。わざわざ口に出して。野面をうずめている紫雲英の美をしきりに"山岡。聞いているほうが恥ずかしくなるほど=山本一力。七分けなして三分=鮎川)。一同が覚えず声をあげてほめる=森村誠一。作品を褒める言葉を耳にする。褒められて気をよくする。筋が良いと褒められる。褒められるとくすぐったい。人にほめられるのが子供のようにうれしくてたまらない=坂口。褒められるのは悪い気がしない=松岡。過分のお褒めで痛み入ります。お褒めにあずかる。お褒めの言葉を(賜わる。頂戴する)。嫌みにならない程度の褒め方。褒めぶりがあまりにも大げさ。特筆に値する。互いの服装を褒め合う。口を極めて出来栄えを激賞する。賛嘆する(天才を。肌の輝きを)。賛嘆の言葉が漏れる。瞳に賛嘆の色が浮かぶ。▼賞する(奇才を。殊勲を。善人を。働きを。風景を)。▼賞美する(紅葉を。働きを。花を)。▼嘆賞する(風景を。若さを)。嘆賞の声をあげる。称賛する(熱心を。技を)。礼賛する(清潔さを。緑を。過大に。情緒的に)。 **みまい【見舞い】** 見舞いに(駆けつける。かこつけて会いに行く)。誰一人見舞いに来る者がいない。みんなが一度にどっと見舞いにやってきたので病室は豆が爆ぜたようなあんばいになる!灰谷。▼見舞いに行く(病院に。手があき次第)。▼見舞いに来る(折にふれて。毎日のように。入れ替わり立ち替わり)。見舞いの品が届く。お見舞いかたがた先日のお詫びまで。お見舞いに(行く。伺う)。お見舞いの花を買う。見舞金を贈る。▼見舞う(患者を。病院を。病室を。足繁く病室の先生を三浦しをん)。見舞いかたがた顔を出す。見舞いのいい客が来る。 <784> # な # 投げる **いし【石】** 氷山のように頭だけ出して池に沈めてある石三浦哲。石が(生き物のように唸うょりながら転がり落ちる=川端。動いて斜面を転げ出したように動き出すと停めることができない"大佛。木洩こもれ日に生きもののようにちらちらと影を映す梅本)。ごろごろ石が転がっている。庭園風に石が配置されている。世間の批難の的となり無数の石が投げつけられる"瀬戸内。喉の石が飛礫ごぶとなって口から飛び出したような大声=連城。心を石で厳ぉぉう。石に(仏像を刻する。器かじりついても辛抱する=山本周)。何を言われても石になったつもりで辛抱する=瀬戸内。身が石に化するかと思うほど恥じ入る=海音寺。石の(雨を降らせる。上を飛び飛びに伝う。つぶてが降りそそぐ)。磊々65灬たる石の原"井上靖。面白くて石も踊りだすほど奥平。石持て大学を追われる=矢作。石を(たたんだような肩=山本周。投げうつよりも冷酷な仕打ち三浦勢。投げつけたいほど目障り“新田。引き上げるみたいに重い宗田)。空き缶の中で石を転がすような虚含み笑い=山本周。固い石を打ち当てたような声獅子。小心で温順そうな顔の裏に頑け欲な石を抱いている―連城。ばちばちと手を打つ音が静かな辺りに響き返って日中に石を割る音のように聞こえる内田百。頭が石のように(重たい。堅い)。鳶とびが羽ばたきもせずに中空から石のごとくに落ちてくる=中島敦。石のような(固い表情をして黙っている"小林多。沈黙を押し通す谷崎。憎しみが眼にある=野上)。生来の陰性をいよいよ冷たく石のようなものに研ぎ澄ます"有吉。濡れた石のような目=高樹。石のように(かたいバン。閉ざした心。張った乳房。無智な僧侶。うなだれたまましばらく立とうとしない=山手。空虚で冷たくなった胸"山本周。地面にへばりつく武田祭)。凍みて石のように固い空模様。室生。海の底に石のように沈められる遠藤。体が石のように固くなる=村上春。心が冷えて石のようになる=日野。坂道を転げる石のようにどうしようもない力でひきずってゆく=山本周。病人が暗がりの中で灰色の石のように横たわっている=遠藤。険住ぶが乾いた石のように感じられる=勝目。無理につめこんだ飯が胃の中で石のように固まる=新田。黙念と石のように転がって隅のほうに屯於もする=室生。わたしの裡うちに悲しみが石のように沈んでいる=原田康。カリンの実が石みたいで歯がたたない=中。石みたいに頑固"小林多。指図を拒否する吐はらが石よりも堅くかたまる=坂口。流れに磨かれた玉石のような額”石田衣。石田代。砂礫もがざらざらとこぼれ落ちる。 **こくようせき【黒曜石】** 黒曜石のような眼を一杯に見開く"黒墨石。鳶色以25の目の中に黒曜石のような瞳が輝く内田爽。黒曜石のように黒い太陽が輝く大岡。涙で娘の瞳と睫毛だっとが黒曜石のように結晶する=岡本。 **たま【球】** 球が(勢いよく弾む。転々と転がる)。球の(勢いを殺す。伸びがいい。行方を目で追う)。飛んできた球をダッシュして捕らえる。内角に球を集める。投げた球を打ち返す。バットが真芯で球を叩く。すぼんと球がおさまる(グローブに。ミットに)。 **ちょっきゅう【直球】** ▼直球(威力のある。すっぽ抜けたような)。直球で(勝負する。真っ向勝負を挑む)。ストレートを投げる。狙い打ちする)。 **つぶて【飛礫】** つぶてがひゅっと風を切って飛んでくる。顔面へつぶてが見事に当たる。音のつぶてが耳に畑集礼する=野上。甲論乙駁於うめん、意見がつぶてのように飛びかう~飯田。便所の落書きに見られるような猥褻やかなコトバをつぶてのように投げつける"阿部。飛礫のようについと一羽の十姉妹にきっが飛び去る宮本瓦。目から飛礫のように大粒の涙がぼたぼた音を立てて落ちる"連城。相手の行為が石飛礫でも投げられたように胸に応える"連城。小鳥たちが石つぶての雨のように襲いかかる=飯田。 **とうきゅう【投球】** 投球が棒調子になる。投球の緩急がうまい。ゆっくりと投球の動作に入る。魂を込めた投球を見せる。緩急自在のピッチング。変化球がすっは抜ける。変化球に(幻惑される。磨きをかける)。 **とうしゅ【投手】** 投手(球威のある。リリーフの)。投手が(降板する。登板する)。投手をノックアウトする。胸のすくような快速球~赤瀬川。完全試合を(達成する。逃す)。リリーフで好投する。三者三振に取って取る。三者凡退の好投を見せる。打者を三振に切っ **いしころ【石ころ】** 不幸な思いが黒い石ころになって胸につかえる壷井。女達が石ころのようにこちんと立つ有局。駆けだすと壊れた魂がブリキの箱のなかの石ころのようにがらがらと音を立てそう中村真。振り返る人を石ころのように無視する=高橋和。累々たる石塊いれの山が積まれる=中島敦。 **キャッチボール** 他愛のない言葉のキャッチボールが続く落合。キャッチボールをして遊ぶ。お辞儀のキャッチボールを繰り返す=梶尾。肩慣らしにキャッチボールする。返球が胸元に来る。ボールを投げ合う。終わりのないキャッチボールのような会話を楽しむ落合。キャッチボールみたいにあっちへ行ったりこっちへ来たりする子供"阿部。人間の会話とはボール投げのようなもの=加賀。 **こいし【小石】** 小石が飛んできて頬に当たる。路傍の小石でも見るように冷たい眼光!多岐川。小石を誇くような水の音"伊集院。ほんと小石を蹴る。丸い小石のように明確さという鋭い角がすり減らされる"石坂。 <785> # 投げる-255 **なげつける【投げ付ける】** ▼投げつける(きつい一瞥を。険のある視線を。手当たり次第に物を。はっしと小刀を。露骨に疑いの眼差しを。薪をひょいひょいと)。▼言葉を投げつける(卑猥な。刺々しい。非難の。揶揄の)。▼叩きつける(罵詈雑言を。壁に。力任せに床に。間抜けさ加減に嘲笑を。やり場のない怒りを。感情をまっすぐに。蛙を潰すように地面に=山本周)。言葉を叩きつける(激しい呪詛の。やけくそのような)。▼放り付ける(小石を。長襦袢を)。不条理な世相に非難の石を投じつ"有島。 **なげとばす【投げ飛ばす】** ▼投げ飛ばす(小犬を。手裏剣を。棒を。煉瓦を。男どもを小気味よく)。うっちゃる(土俵際で。最後の土壇場で)。男を地面にはたき付ける。 **なげられる【投げられる】** ▼投げ込まれる(奈落の底に。変動の渦中に。ざぶんと水中に)。投げ出される(体が路上に。もんどりうって)。群衆から石を投げつけられる。ものの見事に投げ飛ばされる。背負い投げを食わされたような奇妙な気持ち。向田。期待に背負い投げをくわされる!有吉。スボリと背負い投げを喰わされたみたいにきれいに欺される谷崎。凍てた地面に骨が割れるほど叩きつけられる=真継。 **なげる【投げる】** ▼投げる(賽銭を。月が白く影を。ナイフを。光が影法師を。不安げな瞳を。雪玉を。笑いを。目を足元に。目を宙に。目を遠くに。衣をふわりと。あらぬ方へ目を。軽侮の眼差しを。どっかとソファーに身を。励ますように声を。山なりのカーブを。夕日が海に光を。目をあらぬほうに。木の棒を遠くへ。座蒲団をぽんと。スナップを利かせて。スピードを殺して。魂を込めて一球一球。棘のある言葉をひょいと。椅子へ土袋のように疲れた体を=開高。光の薄い月が微かな明るさを=円地。不貞腐れたような一瞥を"中島敦)。▼視線を投げる(窓辺に。ちらと)。ボールを投げる(きつい。山なりの)。モーションを振りかぶる。▼投げ合う(悪態を。小石を)。▼放り投げる(思いきりよく。空中高く。力いっぱい。どさっと座布団を。手にしたシャツを床に。ネクタイをソファーに)。華麗な足さばきでボールに追いつきファーストに矢のような送球をする=高橋源一郎。▼投じる(武器を海中に。大勢の捜査員を。孤独な戦いに身を。服や宝石に大金を。投票用紙を箱に)。▼放る(山なりの球を。勢いよく。ぽいと。手あたり次第に)。川で水切りをして遊ぶ。山なりの送球。一塁へ送球する。 **なげわたす【投げ渡す】** ▼投げ渡す(紙幣を。ぽんと)。投げ与える(餌を。お金を)。▼投げやる(衣装を。金を。新聞を。汚らわしいもののように菊池)。 **ボール** ボールを投げ返す。ボールが(大きく逸れる。ゴールに入る。塀に当たる。塀を越える。足下に転がってくる。グラブに吸い込まれる。空に舞い上がる。まともに投げられない)。ジャンプしてボールに飛びつく。ボールの行方を追う。ボールを(壁に当てる。手でこねる。投げてよこす。低めに集める。拾いに走る。胸に抱える。ゴールに押し込む。強く握りしめる。手のひらに載せる。打ち返すようにつっかかる"岡田。追うような勢いで駆けていく=内海)。転がってきたボールをすくい上げる。山なりのボールを返す。横っ飛びでボールをキャッチする。心がボールのように弾みを持ってひとりでに上のほうに飛び上がる=山本有三。投げ返されたボールのように病院から再び中隊に戻ってくる=大岡。ゴムボールをぽんぽんと地面につく。サッカーボールを蹴る。どんな話でもテニスボールのように打って返す=開高。包みをラグビーボールのように外套の小脇に抱える三浦哲郎。好球を(痛打する。狙い打ちする。見逃す)。白球が(転がる。空に舞い上がる)。三振の山を築く快投ぶり~阿久。四球で自滅する。四球を与える。リリーフで登板する。白球が風を切って捕手のミットに切り込んでいく=伊集院。先発としてマウンドに上がる。ミットめがけて思いきり投げこむ。ロージンバッグを軽くはたく。ビッチャー(エース級の。即戦力になる)。ビッチャーが登板する。ピッチャーを交代する。打球がビッチャーを強襲する。 **なげあげる【投げ上げる】** ▼投げ上げる(石を。手網を。みかんを)。放り上げる(空中に。一段高いところに)。ボールをトスする。トスで先攻を決める。 **なげおとす【投げ落とす】** ▼投げ落とす(死体を。ナイフを。地面に。丘が三角の頂上から両足をふんばったように二つの小尾根を左右に"大岡)。投げ下ろす(視線を。親を)。ばらばらと爆弾を投下する。 **なげかける【投げかける】** ▼投げかける(椅子に身を。鋭い一瞥を。背中に言葉を。意味ありげな視線を。不審の眼差しを。冬の陽が鈍い陽射しを徳永)。▼光を投げかける(問題に。月が濡れた。闇に向かって)。▼一石を投じる(政界に。論壇に。昏迷する世界に人間)。劇中の人物に自己を投射する。 **なげだす【投げ出す】** ▼投げ出す(愛に全身を。仕事を。政権を。ぱらりと駒を。楽な形で足を。鉛筆を机に。両足を前に。物事を途中で。教授のポストを。デスクの上にペンを。恋愛のために命を。だらしなく足を畳の上に。ランドセルを玄関に。足を伸び伸びと。壁にぶち当たって。書類を机の上にどさりと)。足を投げ出す(芝生に。床に)。▼体を投げ出す(大地に。ぐったり椅子に)。身を投げ出す(砂上に。地面に)。投げ出したような捨て鉢な調子で言う徳田。体を投げ出すように横たえる=安岡。箸を投げ出すように置く=佐藤愛子。▼放り出す(駒を将棋盤に。投げるように。熱い汗を手渡されたように隆慶一郎)。ミットに球がスボンとおさまる。ミットを構えてとる。 <786> **あいぶ【愛撫】** ▼愛撫(一本一本の髪の毛をいとおしむような丁寧な=加賀。蝶の羽搏雄はきのように軽やかで可憐ふぇな=松浦。ねっとりと執拗をきわめている=池波。リラックスした歯切れのいい=松浦)。軟らかい愛撫で女の肉体に話しかける=円地。狂乱のごとき愛撫に没入する=池波。愛撫に身を(任せる。委ねる)。▼愛撫する(髪を。乳房を。悲を。いとおしげに。激しく。やさしく。気楽なお喋りで心を"中村真)。 **いじりまわす【弄り回す】** ▼いじりまわす(ペンダントを。マッチ箱を。ネクタイの結び目を。子供が玩具をもてあそぶように女の恥部を=渡辺)。▼いじくりまわす(枝葉の問題を。好き勝手に。うるさく)。 **いじる【弄る】** いじる(髪を。他人の脚本を)。手紙を遠い過去をいじるように指先でさわる=大庭。きたない手でいじくる。いらう(おっぱいを。乳房を、ちんちんを)。▼吹きなぶる(風が裾を。凜寒初从な風がしきりに髪を"山木別)。▼まさぐる(女の胸を。髪を。妻の豊潤な体を)。 **うなじ【項】** 花の茎のように細いうなじ=浅田。一茎の花のように群集の中に目立っている項谷崎。少女のうなじが鳩の背のようにしなやかにまるつこく動く=大江。うなじに(唇を這わせる。汗の玉が浮かんでいる)。後悔したように項を垂れる=谷崎。 **かきむしる【掻き毟る】** ▼かきむしる(頭を。髪の毛を。蠱惑的に泣くに心を。畳を。痛憤が胸を。頭髪を。想像が胸の芯を。髪をめちゃめちゃに宮本省)。ぼりぼり腹のまわりを掻きかきむしる宮本郷。かきむしられる(心が。胸が。嫉妬で。不安で)。 **かく【掻く】** かく(かゆい所を。鼻の脇を。火鉢の灰を。耳の穴を指で。頭のてっぺんを。お尻のまわりを。愛がんに手をあてて後れ毛を。頭を照れ隠しに。顎をぼりぼりと。鰹節紛いぉをたっぷり。首筋をぼりぼり)。▼頭をかく(所在なげに。かりかりと。こしこしと。困って。ぽりぽりと。ぽりぽりと。もしゃもしゃ)。畳の目を爪で引っかく。がりがりと引っかくような音。 **かゆい【痒い】** ▼かゆい(足が。頭が。毛の根が。背中が。へそが。目が)。痛いというより痒かゅいほどの浅い傷高樹。痒いところへ手がとどくように気を使う徳田。かゆがる(あせもを。じんましんを。発疹を)。かゆさに(たまりかねる。身もだえする)。かゆみが(薄らぐ。消える)。かゆみを(覚える。止める)。むずむずする(足が。お尻が。顔が。体が。首が。鼻が)。 **かわ【革】** 革がきしぎしと鳴る。革の(しなやかな鞭もうジャンバー)。白いなめし革のような肌が凄絶なほどしなやか黒岩。浅くろくて鞣革しを張りつめたような皮膚の照り“池波。▼酢なぁす(皮を。毛皮を)。本革の(シート。ソファー。バッグ。ブーツ)。 **くすぐったい** (気分。立場)。くすぐったい(足の裏が。尻が。ほめられると。息が首筋にかかって)。くすぐったそうに微笑を浮かべる。吊り上がった目をくすぐったそうにまたたかせる=北村。胸がくすぐったいような気がする。全身にくすぐったいような感覚が走る藤沢。こそばゆい(思い。気分に襲われる)。▼こそばゆくなる(尻が。背中が)。▼くすぐる(風が肌を。風が頬を。虚栄心くすぐるを。好奇心を。自導心を。へその穴を。笑い声で耳を。こちょこちょ。自信を快く。潮の香りが鼻を。ちょっと男心を)。記憶をくすぐる匂いが漂ってくる=藤田。▶匂いが鼻をくすぐる(甘い。髪の)。 **くびすじ【首筋】** 首筋(触って力を入れると折れてしまいそうな=中上。少女らしい硬い線を持った細い光瀬)。梨の花のような仄青い頸筋(=海音寺。篠田。銅線でもはめこまれたように硬く突っ張る=小林久)。じりじりした太陽の光のため首筋が痛いほど"村松。首筋に(汗がにじむ。キスをする。唇を這わせる。熱い息がかかる。そっと唇を寄せる。うっすらと汗が浮かぶ!藤田)。髪が首筋に流れる。首筋の(汗を拭う。肉が棒のようにこわばる=小林多)。顔が首筋のあたりまで真っ赤になる藤沢。首筋を(峰打ちにする。むんずとばかりつかむ。猫でも扱うふうにつまむ八谷村。ぺたぺたと掌に50で叩く=鷹沢)。戸外の冷気が首筋を撫でる。女ざかりの凝脂がみなぎりわたっているえりあし池波。領脚ぶいをすっきりと見せて奥様風にたくしあげた髪、武田発。首筋が(ぴくりと症欒心する。透き通るように白い=林美)。 **けば【毛羽】** けばが立つ。けばを取る。畳のけばをむしる。けば立つ(衣服が。紙が。絨毯にいうが。畳が)。毛足の長い絨毯。毛玉の出た古いセーター。毛玉をつまみ取る。そそけた(昼。毛布)。 **こすりつける【擦り付ける】** ▼こすりつける(ガラスに額を。煙草の火を灰皿に。マッチをしゅっと)。▼すり込む(クリームを。香水を。レモンの汁を。肌にローションを)。バターを分厚くなすりつける。 **こする【擦る】** こする(距以ゅが地面を。寝ぼけ眼を。鼻の脇を。頭をこしこし。表面を指先で。ガラス窓の曇りを。きいきいとガラスを。車のボディーを。袖口で鼻の下を。指の腹で鼻の頭を。顔を手のひらで。体中をごしごしと強く。発火しそうなほど激しく手ぬぐいで体を"三浦し。皮膚が赤くなるほど体を=村山)。顔をこする(手のひらで。両手で)。▼ごしごしこする(顔を。鼻の下を)。▼目をこする(眠たそうに。幻觉かと。しょぼついた。疲れた。両手で)。目をこすりこすり寝所から出て来る。広まぶしい目をこすりこすり見る。こすり上げる(鼻を。頬っぺたを。横腹を)。葉と葉がこすれ合う。こすれる(葉が。物が)。▼こす <787> # 怠ける・飽きる <788> **あきっぽい【飽きっぽい】** 飽きっぽい(性格。人)。飽きっぽい軽薄な性質。三日と勤めが続かない。三日坊主に終わる。 **あきない【飽きない】** ▼飽きない(終日語って。何度見ても)。悪っかれたように飽かず呟く。飽かずに何度となく眺め返す。飽きがこない。飽きもせず瑣事さしを逐一書き記す。飽きもせずに見物をする。飽きることなく(幾度も繰り返す。いつまでも見つめている)。毎日飽きることなく同じ質問を発する"開高。幾度見ても倦、ぁきることのない山のたたずまい“有島。飽くことなく手を入れる。飽くことのない挑戦。飽くことを知らない。毎日がにぎやかで退屈しない。退屈することなく暮らす。いつまでも見飽きない。 **あきる【飽きる】** ▼飽きる(牛飲馬食に。単調な仕事に。単調な船旅に。ほとほと)。▼飽き飽きする(陰気な天候に。単調な生活に。卑俗さに。派閥問の人事抗争に)。いい加減食べ飽きる。風景を見飽きる。秋風が立つ。▼倦ぅむ(長い冬に。船に。勉強に)。仕事に屈託する。いたずらに屈託の日々を送る。同じ食事が続いて食傷する。その手の話は食傷気味。 **うまずたゆまず【倦まず撓まず】** うまずたゆまずこつこつと努力する=石坂。黙々と何度も倦まずたゆまず繰り返す開高。倦まず眺めている。たゆまずに修練を積む。たゆまぬ努力の結果。 **うるさい【煩い】** うるさい(思いをする。詮求をする。目がまつわりついて離れない)。▼うるさい(近所の口が。約束の時刻に。世間が何かと。何やかや言われるのが。蒸し暑い夜気にネオンの極彩色が"連城。古女房みたいにいちいち=貫井)。世間の人の口はうるさいもの。服装についてうるさいことを言う。うるさく注文をつける。あれこれとうるさく言う。枝葉の問題をうるさくいじくりまわす。畑はぇが頭のまわりをうるさく飛び回る。勉強しろとうるさく言われる。やいやいうるさく勧める。▼うるさがる(雑音を。視線を)。うるさそうに(苦い顔をする。顔をそむけて黙っている)。小うるさくやきもちをやく。ぶよが小うるさく襲ってくる。ひとの私生活を小うるさく穿磐せんする"加賀。視線を小うるさそうに払いのける。 **うんざり** うんざりするほど(繰り返す。時間がある。時間をくう。長い)。うんざりするほどの小言を覚悟する=山本周。▼うんざりする(恩着せがましい言葉に。性格のあくの強さに。政治家のまやかしに。何度も聞かされ。性も骨も抜けて"中。神経質な言い草に少し『池井戸)。うんざりした(気分を隠さずに言う。表情で天を仰ぐ)。うんざりして(舌打ちする。溜め息をつく)。またかとあきれる。うんざりしたような表情で天を仰ぐ西木。 **おこたる【怠る】** ▼怠る(傷の手当てを。義務を。人材養成を。注意を。手入れを。適切な損世を。日頃の鍛錬を。リスク管理を。救命胴衣の着用を。慢心して練習を)。おさおさ注意を怠るな。準備おさおさ怠りない。▼怠らない(周到な配慮を。不断の用心を。上品な気配りを。校了明けでどんなに疲れて帰宅しても肌の手入れは三浦し)。 **おっくう【億劫】** ▼億劫(書き直すのは。口を利くのも。やりきれない虚無感と疲労感にものを言うのも!黒岩)。義務を負わされたような億劫な気持ち=柴田翔。億劫になる(出かけるのが。人に会うのが。正面きって説明するのが)。▼億劫がる(外出するのを。考えることを)。億劫さが先に立つ。いかにも億劫そうに引き受ける。さも億劫そうに答える。 **ききあきる【聞き飽きる】** ▼開き飽きる(お説教を。一方破れの構え。つくづく。同じような話で)。お世辞はもう聞き飽きた阿川佐。耳にタコができるほど聞かされる=阿久。 **くちやかましい【口喧しい】** 口やかましい母親。折り紙つきの口やかましい教官内海。皆から小言幸兵衛と綽名効だされているくらい口八釜が封ゃしい老人"永井荷。口やかましく叱る。口に絆創膏沿いを貼ってあげたい!池澤。口さがない(おばさん。浮き世から逃れる)。世間というものは口さがないもの=池波。うるさ型の(味。課長)。うるさ型を敬遠する。何か一言言わないと気が済まない。口うるさく(指図する。注意する。注文を出す)。 **じかんつぶし【時間潰し】** 時間潰しにあてのない散歩をする"大佛。のんびりと時間つぶしを続ける。暇つぶしにバチンコをやる。暇つぶしには格好の慰み物。暇つぶしの雑談電話。 **しょざいない【所在ない】** 所在ない時間を持て余す。所在なく(無駄話をする。髪の毛をもてあそぶ)。ごろごろと所在なく暮らす。所在なげに(頭を掻かく。外を見る。煙草をふかす。たむろする)。ブールサイドに腰を下ろし所在なげに水を蹴る若竹。 **すき【隙】** 心に隙がある。隙につけこむ。心の隙に入りこむ。ちょっと目を離した隙に姿が見えなくなる三浦し。隙のない身のこなし。隙をついて逃げる。心に油断が生じる隙を狙う。抜け目なく隙をうかがう。人のいない隙を見計らう。わずかな隙を見つけて逃げ出す。相手に付け入れられる隙を与える=高木。相手に名乗る隙を与えず一方的にまくし立てる=有川。付け入る隙を断たれて軽く舌打ちする"有川。隙を見て(襲いかかる。金を奪う)。一瞬の隙に乗じる。一瞬の隙を突かれる。隙あらば(侵そうとする。糾弾しようとする)。隙さえあれば逃げようとする。隙だらけなあどけなさ。隙だらけの格好。隙間だらけの論理。八 <789> **たいぎ【大儀】** 神経を使う仕事が大儀藤原。体が大儀でならない。大儀になる(歩くのが。起き上がることが。わずらわしいことが。年をとったら一人旅が石坂)。大儀そうに(立ち上がる。買い物籠かごをぶら下げる。どっこいしょと腰を下ろす。むっくりと起きる。軀怂らを揺さぶりながらやってくる三浦哲)。太った体を大儀そうに持て扱う。 **たいくつ【退屈】** 退屈で(間が持たない。やりきれない。人恋しい思いが湧き上がってくる=原田系)。毎日が退屈でたまらない。退屈な(話を長々聞かされる。日々が延々と続く。日課の中に悦いっぴびを見出す大佛)。飽き飽きする時間を消しかねるような意屈な日「徳田。長い退屈な時間に耐える。長っ尻で話題のない退屈な客今来。身の置きどころのない退屈に辟易終する!有吉。退屈を(まぎらす。持て余す)。さしもの退屈をすっかり忘れ果てる=江戸川。▶退屈する(単調な暮らしに。毎日ベッドに寝たきりの生活に=開高。あくびが出るほど"常盤)。退屈きわまりない年月を過ごす。退屈そうな目を向ける。退屈そうに(雑誌を読む。早をふかす)。退屈まぎれに(考え出した遊戯。身の上話をする)。▼倦ぅみ疲れる(暑熱に。人生に。戦乱に)。旅のつれづれに手紙を書く。陣中の徒然に踊り戯れる=舟橋。病床のつれづれを慰める。手持ち無沙汰に感じられるくらいの無聊ぶり檀。無聊な(時間。日々)。無聊に(苦しむ。悩む)。深い無聊の底に沈む。無聊を(こつ。慰める。まぎらす)。日々の無聊を持て余す。 **たいくつしのぎ【退屈凌ぎ】** 退屈しのぎに(声をかける。テレビを見る。話を聞く。もってこいの本)。退屈しのぎの材料が増える。 **たいだ【怠惰】** 刻苦を厭ぃとう怠惰。怠惰な(学生。気分。生活。精神。うえにも怠惰に暮らす=北)。怠惰に(酒を飲む。うたた寝をする)。怠惰のそしりを受ける。怠慢以外の何物でもない。怠慢を責める。行政の怠慢を摘発する。 **だれる** だれる(気分が。生活が)。だれた(集まり。歩きぶり)。▼中だるみになる(会議が。景気が。試合が)。だらける(気持ちが。試合が。人が変わったように)。だらけた(空気。生活態度)。 **てもちぶさた【手持ち無沙汰】** 手持ち無沙汰な顔で聞く。手持ち無沙汰に(新聞を広げる。空を見上げる)。手持ち無沙汰の(時間がどろりと流れる=海堂。指を鼻の穴にやる=高見町)。腰の浮き立つような手持ち無沙汰の気持ち=古井。 **なまけもの【怠け者】** ▼怠け者(根が。呑気めんな。元来の)。怠け者の節句働き。なまくらな男。ぐうたらな(自分勝手な夫。精神。態度。人間)。ぐうたらにその日その日を暮らす。ずぼらな(男。性格。生活)。生来ずぼらなところがある。ずぼらを決め込む。 **なまける【怠ける】** ▼怠ける(仕事を。掃除を。勉強を。怠け放題に。だらだらと。骨惜しみして)。前年の怠けがたたる。ろくに働かない。懈怠けたが生じる。懈怠に身を任せた限り。▼ごろつく(界限が心を。盛り場を)。ずるけて学校へ行かない。掃除当番をずるける。ずる休みする(会社を。学校を)。幸せな惰眠をむさぼり続ける若竹。のらくらと遊びほうける。のらくらの癖がつく。不勉強がたたる。不勉強の報いがてきめんにくる。懶惰15んな(人生。生活)。懶惰に蝕跎しまれる。立ち寄り先で油を売る。ついつい油を売ってしまう。▼サボる(会社を。学校を。稽古を。仕事を。授業を。掃除当番を)。▼サボタージュする(事業を。仕事を)。サボタージュに入る。 **ぶしょう【不精】** 不精な(格好。人)。いざこざの面倒を嫌う無精な性格"武田爽。一ところにかじりつきたがる不精な考え岡本。年をとると不精になる。不精をきめ込む。不精たらしく蒲団の中で足袋たびをとる=林美。いかにも不精ったらしい身の起こし方"里見。横のものを縦にもしない藤原。横のものを縦にもしない谷崎。横着な(男。頼み)。横着に知らんふりを通す。図々しく横着千万。老人くさいものぐさな気質"林美。毎日のおきまり仕事にうんざりしてどうでもいいような物ぐさな態度になる=小林多。 **めんどうくさい【面倒臭い】** 面倒くさい話し合いをしなければならない!隆。一日二日と伸ばすうちに面倒くさくなる。▼面倒くさがる(家事を。炊事を)。面倒くさそうな(ふりをする。返事)。面倒くさそうに(うなずく。答える。手を振って去る)。七面倒臭い(詮索は二の次。手続き)。煩瑣…んな(注釈。礼のための礼)。煩瑣なことおびただしい。つい帰るのが面倒になる。何となく気がすすまない。 **わずらわしい【煩わしい】** ▼わずらわしい(疑り深い妻が。言い回しが冗漫で)。わずらわしい作業に顔をしかめる。漢字のわずらわしい使用を避ける。一々数え立てるのも煩わしいくらい多い芥川。あくせくと世事に心を煩わして過ごす中島災。わずらわしげな表情があらわに浮かぶ。前髪をわずらわしげに掻き上げる。市井の煩わしさを忌ぃとう檀。俗塵じんに(巻き込まれる。まみれる)。煩多な(計算。方法)。複雑で煩多な作業。煩に堪えがたい。うざったい(男、試験。仕事)。前髪がうざったい。うざったいったらありゃしない。日和見はなくせに小賢がざしいとこがうざい有川。繁雑な(事務。手続き)。繁雑に(陥る。過ぎる)。繁文縟礼いんじんじの国柄。煩多な手続き。▼手続き(煩瑣記んな。ややこしい)。規則がやかましい。礼式がこまごまとして煩わしい。知られないほうが煩わしくないに決まっている=原田底。俗塵をきれいさっぱりと拭い去る"玉村。わずらわしさから(解放される。脱する)。わずらわしさとは無縁なのんきな立場"飯田。 # 波打つ・うねる <790> **うねうね** うねうね曲がりくねった坂。うねうねと長く並ぶ。山腹をうねうねと歩く。太い眉がうねうねと動く。バスがうねうねと曲がって登って行く松本。脇道がうねうねと木立の中に消えていく!宮部。 **うねり** 白く泡立つ波のうねり“今日。うねりが屏肌びぶだおしに倒れかかる"有房。波のうねりが大きくなる。絶えず寄せてくるうねりが石垣を洗う藤枝。丈高のうねりが岸の近くでひときわはげしく盛り上がる島尾。小舟がうねりに持ち上げられる=高樹。海が荒いうねりを見せ始める。山々が海のうねりのように波を果てしなくたたんでいる=松本。夜の街の空気が海のうねりのように肌に庥ひる=黒井。 **うねる** ▼うねる(川水がゆるやかに。道が雑木林に沿って。ゆるく湾曲しながら。体の奥に重い潮流のようなものが"小林久。声が波のように草地を"辺見。石段に群がった人の波がさながら竜のように"阿久。石段が大蛇站ぅのように=里見。下半身が蛇のように池田。川が長蛇のごとく"太宰。灰色の海が重々しく=武田奈。灰色の雪が煽ぁぉれる情念のように渦を巻いて=愈。曲がりくねった根が半ば地面に埋まりながら"日野。道が縫うように=中。ゆるやかな人の流れがたえまなく森瑙)。果てしなくうねる波。暗鬱な緑の波が重畳とうねる洋上"中野美。波がうねって起伏する。切り抜き文字を貼った湖のせいで紙が大時化ははのときの海面のように高く低くうねっている井上ひ。▶波のようにうねらせる(鹿がからだを。寝台の上で腹を横光)。▼うねらせる(波が寄せてくるような工合いぁに胸を谷崎。蛇かなにかみたいに体を=阿刀田)。海が大うねりにうねり返る。情感が浪のようにうねり立つ=円地。背中に一うねり波を打たせる。道が植え込みの中を一うねりする。 **えくぼ【笑くぼ】** 針でつついたようなえくぼ赤川。顔や肩へ木の岡がらチラチラと射すいっぱいな日光の僭吉川。頬にえくぼが浮かぶ。張りきった肩や腰に何者かを迎えようとする笑窪咲くに似た小さな肉のくぼみがある=石川。ところどころの関節にえくぼの出来ているまろやかな肉づき谷崎。片頬に大きな笑くぼを作る。笑うと頬に深い笑くぼのできる優しい顔立ちの少女三浦綾。片えくぼに笑ってみせる。梢をくぐってくる光が笑っている女のえくぼのような斑点を障子の上に踊らせる=安岡。赤児が初めて笑い出す暦のような消えやすい笑い=横光。 **おか【丘】** ▼丘(禿鷹雄州の頭のように見える真っ黒な=長与。磯波のようにまくれ返った頂上を並べた低い『大岡。岩肌をむきだしにした小高い=安部。馬の背中のような三島。大きな象のような形の菅沢。のんびりとした感情を持ってうねっている優雅な曲線の"佐藤泰、屏風のように連なる=大岡)。丘が(緩やかに起伏する。幾つもの起伏となって一列に連なる村上春。紺碧に私の空に女の脇腹のような線をひとしおきわくっきりと浮き出させる=佐藤春。三角の頂上から両足をふんばったように二つの小尾根を左右に投げ落とす大岡。眠りについた巨大な猫のように時の日だまりの中にうずくまる=村上在)。いくつかの丘が連亘山认する。小高い丘が続く。木のよく繁った丘が岬のように出っ張り裾から低い林を磯のように湿原の上に延ばす大岡。丘と谷が錯綜ご氷する。丘に沿って走る道路。丘の(頂上に出る。裾に沿って細い道がうねる。夢幻的な緑を形づくる雑草大岡。群れが薄化粧した女のように白く霞んで静まり返る=大岡)。海を見下ろす丘の上。ふっくらした大きな饅頭味ひじを並べたような柔らかい丘の起伏“大佛。星空の広がりの底をなだらかに起伏した丘の後線やはぅが黒く道はうねっていた=浅川。円々と膨らんだ丘のような肩の肉谷崎。肩が丘のように盛り上がる谷崎。 **きふく【起伏】** ▼起伏(畝のような。激しい感情の)。感傍の起伏が少ない。こんもりと起伏がある。山々の美しい起伏が展開する。ほとんどあるかないかのわずかな起伏が平原に掃いたような陰翳以を曳く光瀬。ほとんど起伏が認められない胸三田。起伏に富んだ地形。生活が起伏に富む。起伏の多い人生。感情の起伏の激しい女性=森環。半生の起伏を回想する。複雑な起伏を持つ斜面。山々が起伏を作る。感情の起伏を(あらわに示す。押さえる)。草原が砂丘のようにゆるやかに起伏する大岡。 **きゅうりょう【丘陵】** ▼丘陵(川に臨んだ。見晴るかす平原の中に島のように一つ取り残されている=井上統。波のように起伏している=井上靖)。丘陵が海岸線に迫る。多くの丘陵が起伏する。道が丘陵にさしかかる。丘陵の(麓に広がる町。裾に展開する住宅地)。あてもなく立ち騒いでいたらしく見える三角波が段々と丘陵のようなうねりに変わる=有局。樹木に乏しい丘陵性の山々が連なる=中島敦。▼丘陵地(雑木の生い茂る。日当たりのいい)。 **くびれる【括れる】** ▼くびれる(足首が。真ん中が。胴体がSの字のように深く八谷崎)。括くびれるところと脹らむところがはっきりとした体つき"高樹。くびれたウエスト。二重にくびれた顎。蜂のような胴のくびれ姫野。 **くぼむ【窪む】** ▼くぼむ(目が深く。熱のために目が幾らか=村上春)。小さいくぼみがほりつけたようにはっきりと並んでいる噛み跡=壺井。壁の窪くぼみに身を隠す。くぼめる(下腹を。鳩尾松沢を)。目を骸骨ぶかのように落ち寇ませる=古井。目と頬が深く落ち窪む。金壺眼妙兹いにが炯々州心と光る。▶陥没する(骨 <791> が。とかんと校庭が)。窪地から道はい上がる。へこむ(おなかが。土が。腹が。真ん中が)。無気力に弾力なくべこべこ凹む幸田文。 **さきゅう【砂丘】** ▼砂丘(巨大な水鳥の上嘴汇いのように細長い尾根筋のふくらみ上がった=島尾。触れればこわれそうな白い=本庄。ゆったりとした起伏に富んだ、鈴木光)。砂丘がだらだらと下り坂になる人谷崎。砂丘の肌紋。白くまぶしい砂丘の起伏。海岸を目指して砂丘を駆け降りる鈴木光。 **でこぼこ【凸凹】** でこぼこの(多い傾斜地。激しい道)。太古に澄石でも流れこんだようなブツブツと気孔の多い一面の岩が凸凹する=檀。凹凸の入り組んだ地形。ぼこぼこ(泡立つ。音がする。水が出る)。顔がはこぼこ砸れる。ぼこぼこになるまで殴る。 **なだらか** なだらかな(丘の上に立つ。カーブを描く。起伏が続く。丘陵地帯。山を切り開いた農道)。勾配のなだらかな山。目の前に広がるなだらかな坂道。舟を押しているなだらかな波が心を落ち着ける三島。なだらかに波打っている一帯の山つづき=本庄。気持ちがなだらかに進む。山がなだらかに連なる。 **なみうつ【波打つ】** ▼波打つ(豊かな胸が。耳の端がざわざわと。心臓がいまにも破裂しそうに林美。大きなくしゃみをする前のようにひくひくと"倉橋。言葉にならぬ暗い感銘がゆっくりと『柴田羽。白い体が蛇のように=山田風。母豚の巨大な腹が嵐の海のように飯田。腹が獣を入れた袋のように=横光。腹部がゆったり呼吸をするように=島尾。緑色の小さな麦の穂が小波ぶのように=飯田。胸が今恋文を渡したばかりのように=中村真)。ひたひたと無限に波打つ広い海原"真継。大きく波打つ(たてがみが。セーターの胸が)。▼ゆるやかに波打つ(海面が。髪が)。高く低く波打って流れる。風が緑の斜面を波打たせる=石田衣。顎の下から咽喉のとにかけて余った厚い皮がゆったりと垂れ下がり波打つようにだぶつく=直行。▼波を打つ(ゆるやかに。背中が大きく。風のあおりで板屋根が。起伏が幾重にも)。やわらかい豊かな匂やかな胸が波をうつ=山木本周。風の音が波を打って聞こえる=新田。全身に波を打つような苦疖室生。波を打つようにしなう指"日野。髪が波を打つように動く夏目。 **なみおと【波音】** 波音が(ざぶんと起こる。途切れ途切れに聞こえる。天地を揺さぶるように響く火坂)。磯に砕ける波音が耳にとどろく真継。海が風の渡るに似たざわめきで波音を高くたてている艺木。闇の底でざわめいている波の音。岸を打つ波の音が聞こえる。波のとどろきが酔っぱらいの繰り言のようにしつこい三島。淋しい波音のような声の響き"吉本。ひぐらしが寄せる波音のように交互に鳴きかわす藤沢。波のうねりの音が風に混じって聞こえる。波の音(浜を噛む。ぼちゃぼちゃと舷側がんをたたく。家ごと揺さぶられるようにはげしい極。暗い太鼓のような遠藤)。波の音が(おだやかな夜の海の寝息のように聞こえる=本庄。ザブリと家ごと嚥のみにかかるよう梗。琵琶歌びゆのように長閑㎞と=高橋和)。ざぶりざぶりと波の音が寄せる。ひたひたと波の音がする。永遠のありかたを静かに示しているように波の音が単調な反覆を繰り返す芝木。水際協で砕ける波の音が揺り籠のようにやさしい落合。 **のやま【野山】** 野山が色彩に満ちる。野山に緑があふれ返る。野山のうら枯れた晩秋の景色。野山を(縦横に駆けめぐる。自由に闊歩跡っする天然の悦いっび!奥泉)。山野に(軍が展開する。点々と咲く花)。銃声砲煙が山野に満ちる。 **はらん【波乱】** 波乱に(富んだ生活。満ちた生涯)。波乱の多い生涯。風雲児の波乱の運命。波瀾万丈はいらんの(人生。物語)。波乱曲折に満ちた物語。波乱含みの様相。一波乱ありそうな(雲行き。気配)。 **ふしくれだつ【節くれ立つ】** 節くれ立った(枝。木。手)。いかにも働き者らしい節くれ立った無骨な指"西木。 **へそ【臍】** ▼臍(白い腹に穿、がたれた深々とした黒い井。欲望がひっそりと埋まっているかのような縦に長い形のよい黒井)。騰がやわらかな表情を浮かべる小林信。女の臍のあたりがウミウシのようにぶよぶよしている=阿部。臍を出して眠りこける。 **ゆるやか【緩やか】** ▼緩やか(土地の起伏が。道の勾配が)。緩やかな(カーブ。階段をのぼる。風が吹く。起伏が続く。空気の流れ。弧を描く。時間の流れ。の歩み。速度で動き出した列車。上りと下りが交互にやってくる。歩調に合わせる。山並みの陰を走る)。なまめきがゆるやかな物腰にまつわりつく古井。髪に緩やかなウエーブをつける。斜面を緩やかな速度でずり落ちる。田畑が緩やかな起伏となって続く。流れの緩やかな水面。山腹を切り開いた緩やかな自動車道路三島。緩やかに(うねる丘。花冠が開く。蛇行する川。歩を進める。窓が開く。カーブした長い浜)。ゆるやかに傾斜する道を振り返らず歩いていく=1浦し。鐘の音が家々の眠りを揺り動かすようにゆるやかに響いてくる=壺井。香りが鼻先を緩やかに漂う。口元が緩やかに微笑む。車が緩やかに岸を回る。皺しもが緩やかに波を打つ。前奏が緩やかに響く。艇が緩やかに滑り出す。鳥が緩やかに羽ばたく。西日が緩やかに射す。柱時計が緩やかに八時を打つ。深い疲労が緩やかにたゆたう。船が緩やかに川を下る。帽子を緩やかに大きく打ち振る。さまざまのイメージがゆるやかに飛び翔かける=丸谷。緩やかに流れる(時間が。時が。豊かな水が)。▼緩やかになる(呼吸が。心持ちが)。道が緩やかに(蛇行している。起伏しながら村の中に入っていく=篠田)。勾配はさほどきつくない。だらだらな傾斜。なるくなる(勾配が。道が)。 # 波立つ <792> **あらうみ【荒海】** 港を荒海から守る。荒海に(逆巻く波濤似と。身を投じる)。人生の荒海に乗り出す。荒海の音を聞きながら育つ。海が(荒れ狂う。荒いうねりを見せ始める。大うねりにうねり返る)。海が怒りの表情を示す=阿刀田。時化しぃの海に転落する。 **あらなみ【荒波】** 荒波が(磯に砕け散る。肌を無感応さに打ちまくる=石川)。関係に荒波が立つ。荒波で船が転拶する。荒波と闘う。この世の荒波に耐える。荒波の音が背中を洗う。辺見。利尻富士が日本海の荒波の上に悠然と裾をひろげて立つ三浦綾。海が荒波を立てる。オイルショックの荒波をかぶる。世の荒波がひとしお荒く襲いかかる=高見順。世の荒波に揉み砕かれる=今日。荒い波が立つ。荒い浪が月光に砕けながらどうどうと打ち寄せる=梶井。荒い浪なみのようにたけっている情熱"円地。激浪が岩を噛む。泡立つ激浪がまるでじゃま物へでも食ってかかるように舷側ぜんへぶつかってくる=山手。山のような激浪が抵抗するすべも力も許さぬ敵のような猛威をみせて背後にせまる=佐山。激浪に翻弄されるような感覚を抱く=宮尾。海面が泡立つ激浪に覆われる。旗が激浪に揉まるる浮標ィのように激しく揺れる=徳永。 **あわだつ【泡立つ】** 泡立つ(白波が湾の中に鉄砲水のように流れ込んで失せる=荒巻。流れが新緑の木々の問に見え隠れする=石田衣)。泡立つ(砕けた波頭が白く。海一面がちぶちぶと"大庭。浜を悩む波が白く遠藤。メタンガスがぶくぶくと=日野)。真っ赤に泡立つ火の海が煮えたぎっている地獄のカマ吉本。心の中が疑惑や不安や恐れや不満などで泡立っている=山手。談笑の泡立ちが活発倉橋。真っ白に泡立ち騒いでいる滝壺の海音寺。泡立ち騒ぐ自分の心を鎮める森環。 **いそ【磯】** 尖とがった岩だらけの磯。磯が波しぶきに洗われる。磯に(荒波が砕け散る。砕ける波音が耳にとどろく=真継)。磯の(香を流した海風。香りを含んだ生暖かい風が吹き込んでくる=篠田)。木のよく繁った丘が岬のように出っ張り裾から低い林を磯のように湿原の上に延ばす―大岡。磯に砕けた波の深い吐息のようなどよめきが磯全体に漲ひなる三島。 **いりえ【入り江】** ▼入り江(岩が天然の防波堤となっいりえ【入り江】た小さな=加賀。長靴のように細長い=島尾。深い翠色ふりをたたえた火坂)。入り江が(深く入りこむ。湾入する。玻璃はりのように澄み渡る"火坂。二折れ三折れしながら陸地に切れ込む"火坂。日の光を受けて刻一刻とその表情を変える=阿刀田)。入り江に石のように放りこまれる"遠藤。船を入り江に進める。蝌蚪体にほじの尻尾のように入り江のどん詰まりが急に組くなる=島尾。波が入り江をかき乱す。静かな入り江(湖のような。とんろりと油を張ったように=阿刀田)。▶湾入する(海が。岸が。大きく。深く)。 **うちうみ【内海】** 連結に浮かんだ油の汚点がひとりで伸び縮みしながらひろがって行くものうい内海=福永。内海が一枚の鏡のように光る=福永。内海の静かな水が広がる。菜の花の黄色の帯の向こうに青い布をハラリと広げたようなのどかな瀬戸内海がある阿久。紺岩色にんがのゼリーを流し込んだ大きな器のような地中海泉優。 **うなばら【海原】** ▼海原(一面雑草の。遠く漁ぃきり火が煌きらめく暗い!高橋和。ひたひたと無限に波打つ広い真継。陽光に照らされて光る=火坂)。海原が(眼前に広がる。鈍色に0に光る。青くゆったりとふくらんでいる"阿川弘)。海原に三角波が立つ。海原のあちこちに釣り船が散らばっている=村山。船が海原を走る。ヨットが海原を疾走する。青海原の斬新な目に沁しみいるような色合いに満喫する=北。大海原(蒼茫ぼうたる。どこまでも青い)。▼広がる大海原(無際限に。目の前に果てしなく)。大海原が視野いっぱいに広がる。テラスから大海原が見渡せる。 **うみ【海】** ▼海(荒れ狂う炎の。果てしない泥の。輝きのない鈍感な―武田炎。明るい強い輝きの街の灯がきらめいて灯りの田辺。鏡のようにまぶしく眼を射るおだやかな午後の真継。霧の中に沈んでいく濃い藤色の犬庭。たったいま地上に誕生したかのようにみずみずしくきらびやかに躍動する。宮に。天を焦がす審火の"真継。眠たげな甘さを含んだ四月の落合。日差しの加減で微妙に色を変える落合。ひしめき殺沁らる樹木つづきの緑の"本庄。フ糊のりを溶かしたようにトロッとしている=小林多)。海が(一面に煙る。鼠色ゆずょに霞む。コバルトブルーに染まる。さわざわと波立つ。油を流したように静か=武者小路。ガラスの粉をまき散らしたようにきらめく“阿久。暮れ方の紫紺の水平線を長く曳っく=大佛。波一つ立たず錫ゃずの板を貼り詰めたように鎮まっている=高井。冷えて重々しい金属のような波に揺れ動く=加賀。ゆるやかな鈍い響きを単調に繰り返す=椎名感)。眼前に海が開ける。砕けた水を混ぜ合わす海がすさまじい歯札にぎりを繰り返す=加賀。くたびれたように海が黙る!遠藤。灰色の海が重々しくうねる=武田変。羊水のような海が暗く騒ぐ気配を見せる倉橋。海から汽笛が聞こえる。遠い海から故郷に帰る。海で船が遭難する。不安の海で溺れかける=横山。あたりが一面火の海と化す。白洲。海に(囲まれた島国。せり出した岬。土用波が立つ。程近い町)。崖が海に向かって落ち込む。川が海に流れ入る。砂浜が海に突き出す。世界の海に散って行く。まっさかさまに海に落ちる。 <793> # 波立つ―259 が輝く=村山。目が痛くなるほど海がきらきらと輝いている=辺見。海が一面に輝いて煌いらきのために霞んでいるように見える"辻井。海が光る。海が(脂の付いた灰色の金属のようにぼっと光る=笙野。ニスを刷はいたように凪いで光る落合。笑いながら光る!有島)。陽を受けた海が針をまき散らしたようにキラキラと光る=遠藤。夜の海が油を刷いたように鈍く光り黒い板に似ている=吉行。▼海(かすかに光っている霞んだ湖のように静かな大庭。朝日を受けて銀を流したように光る=大佛。波の一片一片が光を撥ねる=林京)。湖水のように静かな海の水が光り輝いて地平に盛り上がってくる"大佛。海が広がる。海(冬の暗鬱な雲の下に拡がっている動くろい=松本。茫漠旧いと広がる砂の光派)。海が(エメラルド色に広がる。果てしなく広がる。鉛色をして静かに広がる―清水袋)。粘つこいような春の海が薄緑にひろがる=本庄。冬の曇空の下の海がどこまでも広がる鉛色の円盤のよう。北村。血の海が広がる。広く深い言葉の海に力を合わせて漕ぎだしていく三浦し。▼拡がっている海(縹渺いうと無辺際に菊池。鉛色の空の下に同じような色をして遠藤)。温かそうに広くゆったりと黙している春の海のような沈黙連城。暗い海のように拡がる夜の闇柴田翔。 **うみなり 【海鳴り】**▼海鳴りがおなかの底に響く。かすかな海鳴りに耳を澄ませる。声が海鳴りにかき消される。海鳴りの音が耳について眠れない占尾。海鳴りのような拍手=あさの。口々に叫んでいた言葉が一つに合して海鳴りのような叫びに変わる=光瀬。が海鳴りのように(重く激しく響き渡る!あさの。遂くで聞こえる=長野)。 **おおなみ【大波】**▼山のような五百重ぶぉの大波"有局。大波が(打ち寄せ打ち返す。壁のように突き立つ=隆)。一晩中うねる大波に揉まれていたような心身の疲労宮本直。大波を受ける。ゼネストが大波を打ち上げてようやく鎮まる=横光。船が大波に(翻弄される。もまれる)。強い緊迫感が大きな波となってこみ上げる"山田太。大波のように枝を揺すぶる志賀。恐怖が大波のように襲ってくる=光源。列嵐が街路を大波のように吹き過ぎる=光瀬。狂瀾合いのような生活に身を任せる"有島。屏風10紀を立てたようになって襲いかかる高波"竹西。高波が(押し寄せる。襲いかかる。崩れる。立つ)。高波にのみ込まれる。高波の灰色の海にのりだして行く。無二無三に乱れ立ち騒ぐ波濤泣と=有島。波濤が(押し寄せて砕け散る。四方で崩れたような音辻井。烈しく渚の岩の群れにぶつかる度に沈鬱な響きと白々とした飛沫礼”とをあげる=福水)。波恋の問に没し去る。船が波濤の頂に持って行かれる。とめどない悲哀をぶちまけているような問断のない波濤の進退檀。船が何回も波濤の山の上に上り波濤の谷へ落ち込む=井上靖。夜目にも白く見える波濤の牙有鳥。万里の波溶を越える。 **がいかい【外海】**▼外海が陽光にきらめいて白っぽい河のように見える=福永。外海に(出る。乗り出す)。広大な外海に面する。外海の濃藍色とは全然違って堡礁ァー内の水は乳に溶かした翡翠心す=中島敦。船が外海の波浪に弄ばれて木の葉のように揺れ動く井上適。海洋に乗り出す。外洋に乗り出す。粗末な舟で果敢に外洋に出る。外洋へと押し流される。公海の原則。公海を(通航する。自由に航行する)。絶海の孤島に流れ着く。鳥も通わぬ絶海の小島。 **かいがん【海岸】**▼夕暮れ迫る海岸。海岸が砕ける渋に覆われる。波で海岸が浸食される。海岸に(面した町。沿って北上する)。波が海岸に打ち寄せる。海岸を(歩く。散歩する。目指して砂丘を駆け降りる=鈴木光)。海岸沿いの町。海岸沿いを走る。海岸伝いに歩く。 <794> 磯伝いに歩く。海沿いに(断崖が連なる。延びた街道)。海沿いの狭隘終いうな土地。海沿いを走る。海辺(月光に冴えかえる。潮のどよもす仄暗に150い=真継)。海辺に家々が軒を並べる。のどかに静まった海辺の村。散歩する)。▼海岸線(単調な。複雑な)。海岸線が(入り組む。湾曲する)。海岸線に(松が点綴以する。沿いながら南下する)。丘陵が海岸線に迫る。海岸線に沿って(進む。並ぶ外灯と街明かり)。海岸線をドライブする。 **かいきょう【海峡】** 海峡が春の日差しの中で凪なさに沈む藤本。海峡を(越える。隔てる。渡る)。水道を隔てて半島の端が迫る。瀬戸を(漕ぎ抜く。抜ける)。 **かいじょう【海上】** ▼海上(昨日の嵐が嘘のように穏やかな平行。涼しい風のすいすい流れる=幸田露)。海上が(冷たい銀色に照り輝く隆。油でも流したようにとろりとしている=平岩)。海上で波にもまれる。海上に(浮かび上がる。白波が立ち騒ぐ。点々と島が見える。大小の汽船が折り重なって浮かぶ=石坂)。艦隊が海上に展開する。小舟を海上に走らせる。ブイを海上に浮かべる。海上を封鎖する。威風堂々と海上を行く艦隊。海上警備の任に就く。明けきらぬ海の上がねずみ色にかすむ意井。茫洋とした海の上に五六日を暮らす=本庄。もやが重たく海の上にかぶさる"山本有。霧が海の上を這いまわる。洋上を漂う小舟。 **かいめん【海面】** ▼海面(コールタールのような泉優。とろりとした凪なぎの=栗本)。海面が(朝日に染まる。朝日に光る。騒ぎ波立つ。夕陽に染まる。徐々に盛り上がる。陽射しをきらきらと反射している。ゆるやかに波打つ。油を流したように動かない=塩野。一面に泡立って千切れ千切れに吹き飛ぶ光瀬。鏡のように静か灰谷。完全に結氷して陸地のよう辻仁)。暁ぁけ方の白い光のもとで海面が墨のような黒い潮をぶつけ合う。井上靖。おだやかな海面が金波銀波で埋めつくされている"西木。陽がさすと海面がうすい緑色に透けて彩感しい金色の粉が浮いて見える=高樹。鋼鉄を水で溶かしたような海面が竹立った波を挙げて岸を目がけて終日攻めよせる=有段。凪いだ海面が湖のように静か壺井。海面に(頭を出す。顔を出す。姿を現す。水上機が着水する。灯台のあかりが映える。陽光が反射する)。鏡を海面に出す。夕陽の光線の矢が海面に注ぐ。夜の色が海面に落ちてくる。海面は散りちりの淡い波の乱射=檀。海面すれすれに飛ぶ。作戦海面を離脱する。 **きし【岸】** 岸が波に洗われる。岸から(離れていく船。きし船が遠ざかる)。岸に(向かって泳ぐ。押し寄せられた流水。岩礁が散らばる。ボードをつなぐ。沿って帰曲とんきしている防波堤長与。びちゃびちゃと川波が騒ぐ=本庄)。溺死体が岸にあがる。波が岸に寄せる。堀の水がちゃぷちゃぷと岸を洗う。船が岸に(近づく。着く)。岸壁から小舟に飛び乗る。船出する友人を岸壁で見送る=奥田。岸壁に(打ち寄せては返す波の音。船が横付けになる。船を接岸させる)。船がゆつくりと岸壁を離れる。入り江になっているせいか岸辺が湖のような静かさでぬらぬらと光る=永井路。岸辺に(あがる。降り立つ。波が砕ける。生えた葦ぁし。舟を寄せる。もやった舟。怒濤北とが打ち寄せる)。川の岸辺に出る。波が岸辺を洗う。沿岸に津波が押し寄せる。沿岸を(航行する。南下する。封鎖する。北上する)。水辺に(思う。たたずむ)。水辺を(歩く。散歩する)。 **さかまく【逆巻く】** ▼逆巻く(荒波が。急流が。激浪が。怒濤忙とが。白煙が濠々と)。怒濤逆巻く海。荒海に逆巻く波隣との怒号のような蛙砂ぇの鳴き声鳥尾。激しい変革の怒濤の逆巻く時代!辻井。 **さざなみ【小波】** さざ波が星を呼び出すように海が一面に角立つ=岡本。水面をさざ波が走る。小波が微かすかな息を立てているだけの小さな浜曽野。顔に愛嬌の連結が浮く獅子。ひしめく蠅はえが漣が渡るように揺れて動く=大岡。▼さざ波が立つ(心に。水面に。目尻に)。池に総緬破りのような小波が立つ"高見唄。川の流れの表面が海風になぶられて錆色にびの鱗のような小波を立てている。高樹。水面がガラスの粉をまいたように光って小波をたてている=水上。夕風が吹いてきて水面に時々こまかい小波を走らせる=庄野。一陣の風が池の表に迎を立てて吹き過ぎる=福氷。▼さざ波立つ(海が。水面が)。さざ波一つないほど湖面が静か。さざ波のような(ざわめきが起きる飯田。拍手が耳に響く=高橋克)。顔にさざなみのような陰が走る=多岐川。涎のような白雲が太陽をかすめて棚引く菊池。さざなみのように起こっては消える微笑梶井。声がさざ波のようにひろがる=椎名誠。表情が止まった空白の上をさざ波のように微笑みが広がる荻野。黒い髪が漣のように揺れる=福永。目配せが女から女へ小波のように伝わる=古井。 **さんかくなみ【三角波】** 湖面が一面の三角波に覆われる。三角波の頂が白いしぶきを飛ばして無数の兎ジが大平原を飛び上がっているよう―小林多。波が風呂敷きをつまみあげたように無数に三角形に騒ぎ立つ=小林多。菱波ひんをたてて青黒い湖水が水煙をあげる=林美差。 **しらなみ【白波】** 白波が(青い空の下で踊っている。海上に立ち騒ぐ)。寄せてはかえす白波が目を刺すように美しい宮尾。海上に無数の棘とげのような白浪が立つ=森段。泡のような白波が立つ。白洲。白波に月光がきらめく。海に多くの白い波が蹴るように進んでいる三島。小さな波が水際を弄んでいるらしく長い線が白刃のように光っては消える=国木田。千匹の餃ょかのように白い歯をむいてくる波"小林多。波の(牙が問歇的ひめに仄白330く闇の中に出没する福永。鬣べが白くくねって走っている=檀)。白い波のように長く拡がっている雲"野間。白兎礼めの群れが海で跳ね飛び飛沫を上げる矢作。 <795> **すいめん【水面】** 水面(まどかに豊かに見える。鏡のように光っている=森殿。闇にほのかに光る=阿部)。水面が(きらきら光る。凪ょぐ。波打つ。きらきらと輝く。高い秋空を映す。縮緬鉄らいを立てる。とろりと静かになる。もこっと膨れあがる)。暗い水面がコールタールのように固く揺れる=向田。湖はほとんど暮れて水面が鉄色に光る=石川。水面から(顔を出す。もやもやと湯気が上る)。水面に(空の色が映る。月が映る。波が躍る。樹々の緑が瑞々ひげしく映る。ざばっと顔を出す。ぽっかりと顔を出す。きらきらと朝日が映る=山本周。ごみや油が浮いている=重松)。頭が水面に消えていく。泡が水面に浮かんでくる。太陽が水面にきらきら輝く。水面を(風が走る。かすめて水鳥が飛ぶ)。ばしゃばしゃと水面を蹴立てる。羽虫の群れが水の上すれすれに舞う。水の上に(浮かぶ。白い雲が低く散っていく=鈴木三)。声が水の上に広がる。声が水の上を渡ってゆく。夜の色が水の上に道い広がる。雨が水面に(音を立てる。丸い波紋を落とす)。水鏡がきらきら輝く。水鏡に映して見る。顔を水鏡に映す。水の面に星が影を落とす。風が水の面を滑る。激しい雨足が水の面を叩く。舟が水の面を滑って行く。 **すなはま【砂浜】** 砂浜が(弓なりに続く。雨に潘れて黒みをます=武田祭)。白い砂浜が広がる。砂浜に人影が見当たらない。ボートが島の砂浜に乗り上げる。満ち潮に乗って砂浜に打ち上げられる。焼けるような太陽が砂浜に映えている=加賀。砂浜へボートを引き上げる。砂浜をおだやかな波が舐める=加賀。波が砂浜を(洗う。なぶる)。荒れた海の砂浜のように人気ゆとなく荒涼としている村の道"大江。白砂青松の景勝地。白砂と緑の木立の対照が鮮やか。白砂の岸に囲まれた緑の島荒巻。 **たいかい【大海】** 洋々たる大海が眼前に広がる。大海に(浮かぶ島。流れこむ川)。見当のつかない恥辱の大海に乗り出してしまった不安島尾。人波の大海の中へ漕ぎ出す谷崎。生臭い魚の香りが部屋中に籠にもり荒い大海を生々しく連想させる"有島。群青色にはろばろと続いている大洋菊池。大洋に魚を追う。船が大洋に乗り出す。大洋を(航海する。漂流する)。 **つなみ【津波】** 津波が沿岸の各地を襲う。敗戦の荒廃が時代の津波として押し寄せる=阿久。炎の津波に呑まれる=川端。沖から寄せる海暗い』の叫び声三島。津波のような(回想にあえぎ苦しむ=本庄。拍手と大歓声が起こる=高橋三)。海嘯のような早さとすさまじさで火の手が押し寄せて来る=里見。煙が津波のように寄せる=室生。子どもの日の興奮が体いっぱいに津波のようにおし寄せる=飯田。活気を帯びた雑踏の音が津波のように寄せてくる=森端。大津波が日本列島を襲う。麺とぃからあふれた雨水が虫から見れば大津波のように音たててこぼれ落ちる=宮本郷。 **どとう【怒濤】** 怒濤が砕ける。岸辺に山のような怒濤が打ち寄せる佐山。海が山なす怒濤となって頭上に崩れ落ちる=佐山。船が怒濤にもてあそばれる。怒濤の(波状攻撃を受ける。勢いをとどめることができない=柴田純。進撃に押しまくられる=半村)。時世が怒濤の勢いで動く。低下を揺るがすほどの怒濤の声が聞こえる=檀。どっと押し寄せて来る言葉の怒濤をくぐりぬけけろっとしている=本庄。疾風怒濤のごとき接待太宰。軍勢がわっと関ときをつくりながら怒濤のごとく押し出す=山本周。軍勢が怒濤のごとく襲いかかる=柴田跳。怒濤のような(勢いで流入する中国文化豊田。叫びと拍手が場内を揺るがす」徳永。悲泣の心が募る=幀。不安におびえる=石川)。喊声以と砲声とが怒濤のような響きとなって聞こえてくる"海音寺。怒濤のように逆巻くバーマ=獅子。歓喜が怒濤のように打ちつける=都永。心の中が怒濤のように荒れる=小局。建物の焼け落ちる藤ときと物のはぜ飛ぶつんざくような響きが怒濤のように揉もみ返す!山本周。敵の大軍が怒濤のように迫りつつある=井上峭。澄石が怒濤のように天高く噴き上げる!光瀬。 **なぎさ【渚】** 長い渚が白く弧を描く。渚に(水と光が踊る。波が白くくねりながら寄せる)。長く続くなぎさの、割れた陶器の傷口のような白光瀬。ビチャリビチャリと舐めるような渚の水音"中島敦。白雪の渚をねぶる海が鮮やかな黒さで沈んでいく―大庭。渚がきが白く光る。波が汀を洗う。舟が汀を離れる。水際で(砕ける波の音。上陸を阻止する)。水際に降りて行く。波が水際をなめる。波打ち際(石の多い荒涼とした。ドドーンと波が押し寄せる=松谷)。波打ち際が白く見える。波が波打ち際で砕けて砂に広がる=重松。波打ち際に一面霧がかかる。波打ち際を歩く。 **なみ【波】** ▼波(身をくねらして婚她送っている真っ暗な三島。小さな彫刻刀で丹念に刻まれたような灰色の北村。無数の癇こぶのような重松)。波が(同心円状に広がる。防波堤を乗り越える。ゆううつなほど同じ調べを繰り返すぃ山本有。夏の陽を反射して鏡を撒まいたように輝き揺れる=船山。日の光を細かくくだき交錯する光と影を乗せて動く―藤沢。ぷちぷち音を立てて砂地にしみこむ村山。暴力団のように暴れ込んでくる=小林多。野馬のように暴れる=有島)。感情の波が大きく揺れる。巨大な波が先端から崩れてゆく。景気の波が上向く。私語の波が消える。光の波が川面を走る。青鈍色は水の単調な波が浜を噛む!遠藤。大きめの波が沖からぐんぐん盛り上がって近づいてくる=村山。体の奥から笑い出したいような熱い波が持ち上がってくる=高樹。暗い波が巨大な舌のような生暖かさでからだを包む"大庭。細かい波が嬉しげにさわめいている笙野。表情に弱い感情の波が立つ=高橋和。ボートの舳先ときに蹴立てられた波が岸に届きたぷたぷと音を立てる=池澤。胸にさざめきだっている波がおさまらない司馬。思いがけぬ変動の波にさらわれる。気持ちが波になって伝わる。歴史の波に没する。仕事が波に乗って進行する"五木。時代の波に乗ってあっという間に高いところへ駆け登る!半村。時代の波に呑まれて消えていく=中村真。島が今にも波に呑まれそうに浮いている"加賀。窓から射しこむ浪の反射が秋の雲のようにちらちらする=木庄。波のまにまに漂う。波濤沢とのかなたに黒ずんだ波の穂が果てしもなく連なる=有島、波を(切って進む船。枕に寝そべる)。国際競争の波を真っ向からかぶる。車体が大きく波を打って止まる。船が波を蹴って進む。ひどい戦争の波をくぐり抜ける林关。不況の波に抗しきれない。不況の波をものともしない。雑然たる声が波のごとく沈んでまた起こる=長塚。波のように(起伏している丘陵=井上。切れ目なく喋る=小川)。逆巻く濤なぁのように梢や枝葉を空に振り乱して荒れ狂っている原始林=岡本。青い麦が波のようにゆらぐ壺井。馬の背中が波のように並ぶ!吉川。電車の音が波のように高く荒々しく盛り上がって聞こえてくる=石坂。光が波のように揺れる"伊集院。浪のように不安が揺れる=梶井。藍碧の海波を蹴立てる。笑いの波動が起こる。船が波浪に弄ばれる。波が襲う。ザアーンと波が岩を洗うように襲う~伊集院。恐竜のような波また波が氷と雪の鎧はろに装われた岩に嬰いかかる=加賀。灰色の巨大な壁と化した波が船上に襲いかかる=鈴木光。波の山が獲物に襲いかかる猛獣のように思いきり背伸びをする"有島。頭ふるえが波のように襲ってくる藤本。波が砕ける。波が(磯に砕ける。岸辺に砕ける。月光に砕ける。絶壁に砕ける。カッが海坊主の頭みたいにまるくもりあがってはさっと砕けてしぶきを飛ばす中。岩をも砕く波の勢いでいろいろな思考がめまぐるしく脳の中を駆けめぐる"鷺沢。波が叩く。波がべちゃべちゃと船べりを叩く伊集院。岸壁に波がチャプチャプぶつかる=石坂。波がちゃぷちゃぷボートの横腹をたたく長崎。静かな波のぽちゃぽちゃと舷側がんをたたく音"梶井。波が引くように(興奮がさめる。すべての物音が途絶える荻野)。動悸の激しかった心臓が波がひくように楽になる=干刈。汚いものを一面に浮かべた真っ黒な波が退ぃくように一団が去って行く高見町。意識が波が引くように遠くなる=辻井。兇暴な衝動が波のように引いていく三浦朵。波が寄せるように入れかわり立ちかわりいろいろの人がやってくる!安岡。波が(沖のほうから押し寄せてくる。どうどうと打ち寄せる。ぴちゃぴちゃと寄せる。埠頭ぶとに打ち寄せる。砂を呑みながらざぶりざぶりと岸に寄せる=檀)。波が押し寄せる(白い牙をむく。マストより高い灰色の絶壁になって曽野)。打ち寄せる波が足跡を洗い流す。ひたひたと波が寄せる。空の表情を映したような鉛色の波が鈍重な見かけに似合わず足早に押し寄せてくる=北村。断崖の裾で押し寄せる波がゆっくりと宙に舞う福永。灰色のもやの中からわき出してくるように同じ色の波があとからあとから押し寄せては砕ける=山本有。低い波が時をおいてはざぶーんざぶーんと打ち寄せる=中。船端も破れんばかりしたたかに波が打ち寄せる=白洲。打ち寄せる波の間断ない響きが耳に馴れる=本庄。荒磯に打ち寄せる波と同じに無意味な繰り返し菊池。寄せては返す波のような救着と絶望福永。思い出がはしけに打ち寄せる波のようにやって来ては去っていく=村上春。濃い霧が波のように斜面を下り瞬く向に集落まで押し寄せていく=三浦し。陶酔が波のように次つぎと打ち寄せる藤沢。何度も波のように繰り返して押し寄せてくる耳許好いの声に悩まされる=中村彦。波のように押し寄せる(疲れが巨大な。真紅の炎があとからあとから寄せる=光瀬。パトカーのサイレンの音が四方八方から湧き上がって=小林久)。空腹の大波小波が押し寄せてくる荻野。キリと白い線になって見える谷崎。道を堰かれた波 <796> # な キリと白い線になって見える谷崎。道を堰かれた波が海坊主の頭みたいにまるくもりあがってはさっと砕けてしぶきを飛ばす中。岩をも砕く波の勢いでいろいろな思考がめまぐるしく脳の中を駆けめぐる"鷺沢。波が叩く。波がべちゃべちゃと船べりを叩く伊集院。岸壁に波がチャプチャプぶつかる=石坂。波がちゃぷちゃぷボートの横腹をたたく長崎。静かな波のぽちゃぽちゃと舷側がんをたたく音"梶井。波が引くように(興奮がさめる。すべての物音が途絶える荻野)。動悸の激しかった心臓が波がひくように楽になる=干刈。汚いものを一面に浮かべた真っ黒な波が退ぃくように一団が去って行く高見町。意識が波が引くように遠くなる=辻井。兇暴な衝動が波のように引いていく三浦朵。波が寄せるように入れかわり立ちかわりいろいろの人がやってくる!安岡。波が(沖のほうから押し寄せてくる。どうどうと打ち寄せる。ぴちゃぴちゃと寄せる。埠頭ぶとに打ち寄せる。砂を呑みながらざぶりざぶりと岸に寄せる=檀)。波が押し寄せる(白い牙をむく。マストより高い灰色の絶壁になって曽野)。打ち寄せる波が足跡を洗い流す。ひたひたと波が寄せる。空の表情を映したような鉛色の波が鈍重な見かけに似合わず足早に押し寄せてくる=北村。断崖の裾で押し寄せる波がゆっくりと宙に舞う福永。灰色のもやの中からわき出してくるように同じ色の波があとからあとから押し寄せては砕ける=山本有。低い波が時をおいてはざぶーんざぶんと打ち寄せる=中。船端も破れんばかりしたたかに波が打ち寄せる=白洲。打ち寄せる波の間断ない響きが耳に馴れる=本庄。荒磯に打ち寄せる波と同じに無意味な繰り返し菊池。寄せては返す波のような救着と絶望福永。思い出がはしけに打ち寄せる波のようにやって来ては去っていく=村上春。濃い霧が波のように斜面を下り瞬く向に集落まで押し寄せていく三浦し。陶酔が波のように次つぎと打ち寄せる藤沢。何度も波のように繰り返して押し寄せてくる耳許好いの声に悩まされる=中村彦。波のように押し寄せる(疲れが巨大な。真紅の炎があとからあとから寄せる=光瀬。パトカーのサイレンの音が四方八方から湧き上がって=小林久)。空腹の大波小波が押し寄せてくる荻野。 **なみがしら 【波頭】**▼奔馬のような波頭,有島。波頭が(白くめくれて見える。船の舳先はで砕ける。吹きつける風に反りを打ってどうと崩れこむ"有島)。真っ白な波頭が左右に開く。雲間から射し込む細い月明かりに海の一部が金色に輝き砕けた波頭が白く泡立つ落合。暗い沖合から白い波頭が幾重にも折り重なって浜辺に押し寄せてくる=西木。たけり狂う白い波頭が煙のように吹き千切れる=光瀬。波が砕け散って波頭が白い城壁のよう。西木。沖では激怒した潮が波がしらに白いウサギを飛ばしながら走っている=開高。海がいたるところ白い波頭にささくれ立つ三島。ボートが山のような波の波頭に乗り上がる佐山。さわさわさわさわと彼がしらのあわつぶが美しい音楽を残して消えていく灰谷。波頭を分けて進む。旭光が波頭を赤く染める。海が沖の方まで白い波頭を見せて暗灰色の重そうな空がその上を覆っている=辻井。光が海面に並んでいる小さい波頭を一斉に淡く照らし出す。吉行。白い波頭を均すように風の脚が移って行く。大岡。窓灯せりが海に反射して小さな波頭をシャープに見せる=泉多。波の上で水鳥が羽を休める。舟が波の上を進む。 **なみかぜ【波風】**▼夫婦の仲に波風が立つ。波風に(耐える。身をさらす。もまれる)。心の波風に気づく。波風のないごく穏やかな家庭鈴木光。波風を立てずに暮らす。周囲に波風を立てる。世間の波風を避けて育つ。無用な波風を避ける。時代の風浪が寄せてくる。 <797> 舟が風浪にもてあそばれる。風浪を真横から受けて転覆する。家庭に風波が起こる。家庭に風波の絶え間もない。風波が(幾分おさまる。願ぐ海。力を弱める)。風波に(耐える。もまれる)。船が風波の難に遭う。霧雨がいらだちやすい風波をしずめる=武田終。 **なみしぶき【波しぶき】** 波しぶきが(かかる。飛び散る)。コンクリートの壁に砕けた波しぶきが雨のように降ってくる=加賀。波しぶきのかかる海岸道を縫って走る宮尾。海の際を波しぶきを浴びて走る。白い波しぶきを立てる。風が撒ききちらしている波の飛沫ひょが逆巻く霧になって視界を覆う三局。波打ち際が砕ける波の飛沫で一面霧がかかったよう西木。 **なみだつ【波立つ】** 波立つ(心を鎮める。思いが胸に広がっていく)。波立つ(気持ちが。水面が。呼吸が激しく。胸が不安で。心がざわざわと。薄暗い海面が潮風に連城。心が失望とも不快ともつかぬ感情に辻井。甘美な肉体の幻覚が心の中にうずくように帧。白い猫が海いっぱいにかけまわっているみたいに海一面が白く=松谷。無数の経験や生活が互いにぶつかりあいながら=安部)。ざわざわと波立つ気配がある。白く波立つ湖面。ゆらゆらと波立つ海。顔に皺しゃを波立たせて笑う』松本。不安が胸を嫉妬のように騒がせ波立たせる=藤枝。波が(泡立つ。立つ)。胸にかすかな波立ちがある。感情の波立ちを巻き込む。胸の内の波立ちを鎮める。波立てる(皺を。胸を)。胸に波騒ぐものがある。一面波が淡立やしつ=岡本。 **なみのり【波乗り】** 波乗りに失敗した水泳者のように前のめりに列の奥へもぐらされる武田爽。海で波乗りをして遊ぶ。男と女のあれこれなんて波乗りみたいなもので一度いい波を逃したら次の波が来るのは半年後か二年後か落合。サーフィンに取りつかれる。サーフボードを横抱きに抱える。 **なみま【波問】** 波間に(姿を没する。ゆらうゆらと漂う。フカ浮いているような、けれどもどこかさっぱりした頼りない気持ち』佐藤愛)。声が波間に吸いこまれる。白帆が波間に浮かぶ。船が波間に揺れる。暖かい波問にたゆたうような静かで優しい眠り。小池。教会が夥感しい菜の花に囲まれ黄色い波間に浮かんでいるよう高樹。舟が揺れるたびに灯影怕》が波間に沈んだり浮いたりする=福水。ゆるやかな情欲の波用に漂う藤本。波間に沈む(舟が。ぶくぶくと)。波間を浮きつ沈みつする。透かすように波間を見る。船が波問を漂泊する。飛魚の群れが銀色に光りながら波間をはねる遠藤。波の(問から顔を出す。間に隠れたり見えたりする)。 **はま【浜】** 浜(家族で遊ぶには絶好の。強風のため砂と雪が白黒のまだらもようを描いている=西木)。浜が(にぎたっ。ひっそり閑としている)。浜に(網が広々と干してある。並行して走る道路)。船がいたずらに浜にさらされる=柴田錬。帆掛け舟が海から浜に寄りつつある=山本一。 **はまべ【浜辺】** 波海沿とが無限にうねる浜辺真継。浜辺で水遊びをする。浜辺に(勢いよく押し寄せる波。打ち寄せては返す波。ひれ伏して泣きくずれる)。波が単調なリズムで浜辺に打ち寄せている=石坂。浜辺を(歩く。行ったり来たりする)。さくさく浜辺を走る。郷輝く日光が霧の中で五彩の光に反射する=外村。「波が浜辺を(洗う。噛む)。海浜の月が浜辺を照らす。松が風にげに鳴る。根の長い海浜の植物。美しい海浜を守る。 **はもん【波紋】** 波紋が(周囲へ広がる。拡がってゆくように硬い顔が溶けてゆく上行)。周囲に微笑みの波紋が広がる。胸に波紋が起きる。くすんだ紫の海の上を幾糸もの銀鼠色だ以法の波紋が走る=大庭。波紋が水面に(起こる。広がる)。波紋のひろがるように隅々までひろまってゆく=山本周。鯉にぃが雨の波紋の中を泳ぎ回る横光。雨が細かい波紋をたてて降り注ぐ村上春。雨が水面に和やかな円い波紋を落とす!小林多。和船の船の跡がゆるい波紋をえがく=福永。笑い声が石を投げ波紋を広げる=連城。波紋を作る(投げた石が水面に。酒の滴が猪口ちょに垂れ小さな=藤田)。波紋のような音のない微笑を浮かべる=本庄。物体の表面に波紋のようなしわが現れる=光瀬。光が波紋のように揺れる=光瀬。・すすり泣きの声が波紋のように広がって行く=山本有。どよめきが波紋のように広がる三田。一つの破綻が波紋のように拡がってゆく芝木。笑いが波紋のようにひろがる池波。波形が(現れる。変化する)。風が砂浜に固く根を生やした変草の間を波形の紋をこしらえて吹き通る=島尾。 **みお【澪】** 船尾からは喪の花束を打ち振るように真っ白い滞が絶えず生まれては死んでいく=福永。船が白い水尾ぁぁを立てて動きだす=曽野。浮き寝鳥が一羽細い水尾をひいて枯れ添ぁしの中から川面へすべり出す池波。かいつぶりが白い水尾を曳く檀。船が真っ直ぐに浮を引いて沖合に出て行く=福永。船の蹴立てる波しぶきが後ろの海面に帯のような白い道を残す村山。鹿の通った後のすすきが静かな湖の水脈ふぉのようにいつまでもぎらぎら光る。宮沢。航跡を残す。青い海の上を白い穂先を見せ真っ白な航跡を曳ぃいて船がはしる=阿川弘。 **わん【湾】** 対岸に植えられている柳の木がはっきり見えるような狭い湾中沢。湾が(深く切れ込む。蒼ぉぉい水たまりのように見える=福永)。湾に無人島が浮かぶ。広い湾の奥まった所。湾を(隔てた対岸。囲んでそそり立つ崖三好京)。船で湾を横切る。湾口に点在する局。湾頭が一望できる。湾頭を(制圧する。望む。ひとまたぎする)。湾内に(散らばる漁船。停泊する。入る。岬が突出している)。貨物船が湾内に投錨とうびする。 # 舐める・咥える <798> **あめ【飴】** 飴でからめられたような車の群れ鷺沢。飴と(찟じちの政策をとる。鞭を使い分ける)。飴のごとく滑らかな日の光を受ける芥川。全身飴のごとく床へへばりつく岸田。水槽が飴のように曲がる=林炎。子供たちが飴売りを追いかける=北原。飴玉にチョコレートコーティングしてしゃぶっているような顔"荻野。飴玉を(しゃぶる。なめる。含んだような声!鳥尾)。金太郎飴的などこにでもある無難なツアー=篠田。耳の中が綿飴でいっぱいになるような声"松浦。キャラメルを口に入れる。ぐちゃぐちゃに溶けたキャラメルを口移しされたような不愉快な気持ち山本有。キャンディーを口に放り込む。 **くち【口】** 生意気な口を叩く。バワーシャベルを思わせる口=本多勝。口が(心に逆らう。耳まで裂ける。からからに渇く。自然にほぐれていく。次第に重くなる。勝手に空回りを始める谷村。腐っても言わない福永。裂けてもいうまいと心にきめる高橋冶。酸っぱくなるほど細かく説明する谷崎。曲がりそうなほどしょっぱいなみだ=長崎。烈々と火を吐く=中局级)。恐ろしく口が悪い。お嫁の口がある。近所の口がうるさい。満足に口が回らない。口がすべる(思わず。つい)。口から(吐息が漏れる。よだれを流す。泡を飛ばしてしゃべる。口へ語り継がれる。出まかせに嘘をつく)。絶叫が口からほとばしる。反抗的な言葉が口から飛び出る。水がボンブの口から流れ出す。アフンと口から溜め息が出る=武田百。口だけの礼を言う。口で言うほどやさしくない。舌足らずな口で話しかける。口では(言い表せない感情。言いつくせない大きな打撃)。口と腹とは違う。口に(出して言う。出す勇気がない。煙草をくわえる。慣れて使ってきた言葉。任せて生意気を言う。言いつくせない多事な一年。宮本百)。言いかけた言葉が口に粘りつく。計画を口に上せる。言葉が口に出かかる。錠剤を口に放り込む。手を口にあてがう。名が人の口にのぼる。何の気もなくふと口に出る言葉。マウスビースを口に入れる。料理が口に合う。顔の半分が口になってしまうような笑い方へ沢。▼口に当てる(コッブを。・袂にもを。手を。ハンカチを)。口には(言えない苦しみ。言われぬ恐ろしさ)。人の口には戸を立てられない。口に含む(氷を。すすき水を。性器を。乳首を)。口の(うまい男。先まで出かかっている言葉。出しようがない。まわりに笑いの線を刻む=石坂)。▼口の利き方(慇懃無礼んぼんな。他人行儀な。生意気な。乱暴な。馴れ馴れしい。もったいぶった)。口は禍幼心の門。口ほどにうまくない。目は口ほどにものを言う。口も八丁手も八丁。口より手が早い。口を(固く引き結ぶ。きゅっと結ぶ。揃えて言う。入れて妨害する。利く気がしない。しぶしぶ閉じる。酸ずくして口説く。出したくてむずむずしている。尽くして説明する。尖とがらせて抗議する。口を開く(大きく。びたりと閉じる。不機嫌そうに結ぶ。不満げに閉じる。への字に曲げる。真一文字に結ぶ。曲げてののしる。三角にゆがめて背伸びするように無遠慮に大きく笑う~小林多。すぼめるようにして謝る歳沢。ぬぐって知らんふりをする"石坂)。うっかり口を滑らす。くしゅくしゅと口をすすぐ。他人の口を借りて伝わる。不満そうに口を尖らせる。見かねて口をさしはさむ。無理やり口を割らせる。甘えたように口をとがらす"内田卷。重大機密を教えてやるというように耳元に口を寄せる"西木。貝のように固く口を閉ざして黙り込む=向田。がまのような口をした男!高橋印。頑として口を割ろうとしない=高見造。おちょぼ口の女のてきて空気を吸っているときのように口だけバクバク動いて見える=小林多。口を(せわしなく動かす。むしゃむしゃ動かす。もぐもぐ動かす)。ガムでも噛むように口をゆっくり動かす三浦哲。▼口を開ける(アーンと。あんぐりと。うっとりと。だらしなく。力なく。はあはあと。トンネルが暗い)。空洞のような口をあける=遠藤。蝶番からが壊れたかと思うほど大きくあけた口=向田。赤ん坊みたいに大きな口をあけて泣く"阿部。親鳥の餌を待つ雛ひなのように口をポカンとあけている=阿久。呆けたようにキョトンと口を半開きにする=小林多。ぽっかりと口を開けたままの顔が空間に凍りついたようになる=池波。旅行用トランクが貝のようにバックリと口をあけている=阿刀田。犬のように口を開いてあえぐ大江。浮赤い喉の筋肉がのぞかれるほど大きく口を開いて笑う石坂。開いた口を魚のようにとがらせる!安岡。口が雨蛙涵注がのようにぽっかりと開く"船戸。呆気汾っに取られて口が半開きになる"乃南。焰口灬,が足もとの地面が左右に割れたような大きな口をひらく三島。・口を開く(大きく、吸入器に向かったようにボカンと谷崎)。 **くちばし【嘴】** 黒い貝殻のような嘴向田。くちばしでつつく。嘴の黄色い青二才藤本。経営にくちばしを入れる。他人のことにくちばしを突っ込む。途中でくちばしを挟まれる。鳥の嘴を想わせる塗り箸の先=高樹。嘴のように突き出た水抑は外村。小鳥の嘴のようにつんと尖とがつた鼻光原。小鳥が餌をついばむ。 **くちびる【唇】** ▼唇(美しい蛭ぃるの輪のように伸び縮みがなめらかな奈川端。色の悪いまぐろの刺身のような「林美。男好きのするまくれ上がったような=つか。驚くほど柔らかな感触の=鎌田。キスされるためにできているみたいな田中。恐怖になかば開いた=大江。少し受け口な愛くるしい=中。小さいけれどもぼってりとしている宮本拠。強く触れれば破れてしまいそうな幼児の竹西。ドラ焼きのような獅子。肉感的なぼってりとした=大庭。花のように美しい=海音寺。姪が身を縮めているように妙になまなましい=日野。刃のような薄い"加賀。両端が口の中にくわえ込まれているような=野間)。形の整った赤い唇唇が(湿り気を失う。紫色に変わる。かさかさに荒れる。花いてひび割れる。ちゅっという音を出す。ぬめぬめと輝く、濡れてつやつやと光る。ひくひく痙・妙心する。ひび割れて痛い。ぼっと膨らんでいる。わずかにほころぶ。谷首から耳へと這はってくる=北原。鍛えぬかれた陸上選手の太股誌記のようにたくましく動く=小川。子供のように薄い=高橋和。ゴムのように色を失う小池。粉にをふいたように白い半吉村。濡れた爬虫類沿いの脇腹のように光る=大庭。花びらをくっつけたようにつやつやとする=石森。緋牡丹いの蕾にはみを置いたよう“山本川。全く水気を失って白くささくれ立つ=高井)。だらしなく唇があく。言いたくて唇がひくひくと催促している=ねじめ。唇から(叫びが漏れる。寝息が漏れる。微笑が広がる。前歯がのぞく。言葉がこぼれる)。コーヒーカップを唇から離す。チェリーのような唇で笑う~岡田。唇と唇が溶接したようにしっかりとくっつく=井上ひ。唇に(血の気がない。淡く血がにじむ。茶碗をあてがう。嘲侮の影が走る。微笑を漂わせる。ルージュを引く。妖しい笑いが浮かぶ=深沢)。熱い果実のような唇にディーブなキスをする=五木。唇の(端に泡が浮かぶ。両端に不敵な笑みが浮かぶ=井上ひ)。恐怖のために唇の色まで失う壺井。唇の端に下卑げびた笑いを浮かべる=火坂。唇の端をきゅっと持ち上げて微笑む!海堂。唇を(手の甲で拭う。半開きにする。なめて湿らせる。耳に寄せてささやく。壁土のように固くさせる=岸田。蛤たこのように突き出す"小林多。一つの線にして黙り続ける=野見せる―連城)。緊張したように唇をしっかり結ぶ"小川。憂国の士のように唇をへの字に結んで首を振る=上。への字にして泣くのをこらえている=内海)。言葉が唇をついて出る。小さく唇を開く。不機嫌そうに唇をすぼめる。前歯で唇をしこく、紫色の唇をわなわなさせる。荒々しく女の唇を吸う~源氏。胃の腑ぃから立ち昇ってくるにおいに蓋をするように堅く唇を閉じる"吉行。荒々しく唇を奪う赤川。唇を押しつける(頬に。胸の蕾に)。▼唇を噛む(いらいらと。困ったように。無念の。くやしさに耐えるように=高橋和)。悔しそうに唇を噛みしめる。▼唇を鳴らす(ちゅうちゅう。ぶるると)。▼唇を寄せる(首筋に。耳元に)。薄い唇が血を塗ったように光る藤木。唇寒い気持ち。まくれ上がったような可愛い上唇="五木。上唇が酸いものを入れられた子供の口のように心持ちまくれ上がる"大岡。下唇を(軽く噛む。噛んで黙りこむ)。不満そうに下唇を突き出す。▼赤い唇(血のように。ぽってりと)。▼唇(濡れたような真っ赤な「阿久。乾いてひび割れたようなみかん色の=原田康。爛ただれたように朱い吉川。腐敗した肉のように黒く紅い=野問。曼珠沙華はん忙ゅの花のような色合いの宮部。輪郭からはみ出るほどに真紅に塗られた土豆行)。唇が苺いものように紅くなる=有鳥。唇に口紅を塗る。唇の(赤みが薄い。色が鮮やか)。唇が厚い。▼唇(厚い籃子汰らのような。伊坂。熟れた否ゅんのような肉厚のぼってりした落合。白っぽく乾いた厚い"五木。まくれ上がったような厚い下卑た"南条)。半開きの分厚い唇にそそられる=山田味。唇が震える。唇が(悔しそうに震える。わなわなと震える)。怒りにふるえる唇を血が出そうなほど悩みしめる"景山。急に口がきけなくなったように唇がわなわなする!大佛。▼唇を震わせる(怒りに。小さく。ひくひく。ぶるぶる)。唇を結ぶ。唇を(への字に結ぶ。一文字に結んで押し黙る。真一文字に結ぶ。貝のように固く結ぶ!獅子。固く結んで無言の反抗を見せる=連宮本。固く引きむすんだ唇が金属の細い線になったかのように見える"小林久。▼唇を歪ゅがめる(はにかんだように=小池。自らを啖笑し礼するように絞辻)。▼唇をゆがめる(張笑いで。泣き出しそうに。いかにも口惜〈ゃしそうに"林貞。意を決するように"富岡)。唇を思い切りゆがめて唾をはく=小林多。いやらしそうに唇を大げさにゆがめる=石坂。苦々しげに唇をゆがめ黙りこむ"加賀。上唇の端が肉欲を表すもののようにがすかにゆがむ野問。唇がにんまりと歪む鷺沢。 **くちもと【口元】** 口元が(苦悶心もに歪ゅがむ。引き締まる。びくっと動く。かすかにほころぶ。小刻みに震える。ひくひく痙檗山心する。ひとりでにほころびる)。笑う口元が強張る。あぎとのくくれた愛くるしい口許徳永。口元から(延はだが垂れる。白い歯並みがのぞく。ほほえみが消える)。口元に(唾を浮かべる。薄笑いが浮かぶ。笑みを浮かべる。凍った微笑を漂わせる。手の甲を当てる。微笑を浮かべる。笑いを浮かべる。かすかな冷笑が宿る=荒巻)。老いが口元に刻まれる。茶碗を口元に運ぶ。ビールの泡を口元につける。笑うと口許にやさぐれの臭いが立ち昇る藤田。口元の笑みを絶やさない。口元まで言葉が出て来る。口元を(引き締める。細めて笑う。紙ナプキンで拭う。両手で押さえる)。口もとを般若はんのように裂いてにんまりと笑う“真継。手が無意識に口元を這はう。皮肉っぽく口元を歪める。指先で口元を拭う。歯痛にでも襲われたかのように口元を歪めて考えこむ宮部。口元を覆う(袂にもで。ハンカチで。両手で)。口元をにっとほころばせる。謹厳な口元をほころばせる。口元を緩める(かすかに。楽しげに。にやりと)。口角泡を飛ばして主張する。口角に泡までためてしゃべる。笑いを口角に浮かべる。口の端から一筋の血が流れる。口の端に(困惑の色が浮かぶ。笑いを浮かべる)。 <799> **くわえる【咥える】** ▼くわえる(ストローを。乳首を。バイブを。マッチの軸を。煙管の吸い口を)。椅子に反り返って悠然と煙草を咥〈ゃえる"石川。口にくわえる(煙草を。葉巻を)。骨をくわえて入ってきたよその犬に訊たずねるような訊きき方"阿部。指をくわえて(見ている。引っ込む手はない)。▼横ぐわえにする(鉛筆を。ベニスを)。 **こうちゅう【口中】** 口中に(苦みが残る。肉片を放りこむ)。口中をうがいする。真っ赤な瓜う」を割いたような可愛い口腔に行谷崎。▼口いっぱいに広がる(甘い香りが。金物臭さが)。口の中が(えぐい。じゃりじゃりする。粘ついて気持ちが悪い)。サハラ砂漠のように口の中がカラカラ=井上ひ。口の中で(もこもご言う。唾液が粘ついている。水をころころと転がす)。口の中に(唾がたまる。スプーンを突っ込む)。口の中のものを(飲み下す。吐き出す)。 **した【舌】** 薬のようにそよいでやまぬ女の舌三島。舌が(味覚を失う。痺しびれてしゃべることができない。こわばって気軽に話しかけられない=島尾。鳥の舌のように舌苔べいで茶褐色になる=幸田文。とろけるおいしさ=辺見。ぺらぺらととめどなく廻る=幸田文。もつれるほど興奮する=辺見。焼けるようなできたてのジャム=小川)。味に舌が慣れる。興奮のあまり舌がもつれる。心と裏腹に舌が動く。舌で(唇を湿らせる。性器をなめる。口の周りをなめる。ぺろりとなめる)。粗い舌でザラッとどこかを舐められたような不快さ=安岡。舌に(味わいが残る。しみ入る甘み。びりりとくる。にじみ込むような酢の匂いが部屋一面にたちこめる=山崎)。味が舌に広がる。声が舌にうまく戒らない。ねっとりと舌に絡みつくほどのうまみ=拠。女神の柔らかい舌に似た風倉橋。舌の(動きが滑らかになる。付け根が強張る。廻らないような甘たるい口のきき方!永井荷)。あること無いこと舌の廻るかぎり悪口を云う永井荷。舌の回転が(鈍る。早い)。舌を(出して笑う。噛みそうな言葉。噛んで自殺する。滑らかに動かす。もつれさせて言う。塩気でびりびり焼く=重松。ペロリと出したいくらい愉たのしい=源氏)。犬がだらしなく舌を垂らしている。貝が舌を縮める。大蛇が舌をちろちろ出す。大胆さに舌を巻く。ぺろりと赤い舌を見せる。犬のように舌を出しハアハアあえぐ畑。酒が舌を滑らかにする=山田詠。不意に舌を奪われたように口がきけなくなる=隆。舌を出す(腹の中で。べろべろと)。▼舌を鳴らす(不満そうに。タンと。ちぇっと。ちっと)。舌を鳴らすほどおいしい"開高。ぴちゃぴちゃと舌を鳴らしながら食べる=有吉。焰川のの赤い舌がべろべろと長く立つ=長塚。窓から悪戯心於をしているように赤い舌が覗いたり隠れたりする=辻井。焚き捨てた芥火さくがまだ焰の舌を吐いている=芥川。野火が焰の舌を見せて盛んに立ち騰のぼる=大岡。先が二つに割れ絶え間なくめろめろ動く炎のような蛇の舌=畑。舌のように扁平以な魚界佐多。葉の凋しにんだ勉頭の大きな花軸の頂が干からびかけた獣の舌のようにねじれ黒ずんで並ぶ"日野。蛇の舌の如くべろべろと焰が吐き出される=長塚。めらめらと蛇の舌のような火が出てくる=飯田。炎の舌先が吹き出す。舌先に苦みが残る。舌先を歯裏に押しつける。▼舌先を覗のぞかせる(悪戯っぽく。犬のように)。ひくひく動く鋭敏な舌の先"大江。舌の先から言葉をつむぎ出す。歯を舌の先でなめる。歯にくっつく餡ぁんを舌の先でこそげとる=篠田。 **なめる【舐める】** ▼紙なめる(砂浜をおだやかな波が"加賀、懊悩転々の苦しみを=室生)。▼なめる(天井を火が。風が頬を。視線が体を。ちびちび酒を。茶碗のへりを。波が岸壁を。苦い経験を。敗北の苦汁を。炎が壁を。べろっと舌で。アイスクリームを。つぶさに辛苦を。封筒の糊のりの部分を。ウイスキーを少しずつ。上唇をぺろりと。牛乳をべちゃべちゃと。唇を舌の先でちらちらと。杯をちびりちびり。生クリームを一匙)。▼唇をなめる(得意げに。舌の先で。べろりと。ゆっくりと)。苦しみをなめる(この上もない。死ぬほどの)。無率もこの者が塗炭の苦しみを嘗める=福永。辛酸をなめる(つぶさに。興亡の)。▼ぺろべろなめる(飴を。牛乳を。ミルクを)。なめてみる(恐る恐る指で。一なめ)。塗炭の苦しみをなめさせられる。互いの傷をなめ合う。なめずる(唇を。鼻を)。▶なめつくす(浮き世の垢ぁぁを。苦しみを。辛酸を。火が室内を。都市の大半を炎が。最後の一滴まで)。なめ取る(汁を。はちみつを。舌で。指ににじんだ血を)。なめまわさんばかりに可愛がる。なめまわす(口の周りを。鼻の頭を。全身を目で。ライトが煉瓦炊ん置き場を。唇をぺろぺろと)。飴を口に含む。なめるように(酒を啜すぅる。じろじろ見る。きれいに平らげる)。ウイスキーの水割りを舐めるように飲む=半村。口のはたを舌なめずりする。▼一なめする(ジャムを。ビールを。唇を舌で。▼しゃぶる(おっぱいを。蟹かにの脚を。指を。骨の髄まで)。 **みずあめ【水飴】** 水は青いのに船が水を裂けば水は白い水飴になって両舷りに、にそばだつ=幸田文。水飴のように粘つく声"松浦。風が熱い水飴のようにねっとりと肌にねばりつく光洒。火が暖かい光を放って水飴のように悵らかく接しないながら燃える=有局。 **ようじ【楊枝】** 重箱の隅を楊枝でせせるほどの正鵠ようじごいを期した清算事務"里見。楊枝で歯を(せせる。つつく)。楊枝を(口にくわえる。突き刺す)。武士は食わねど高楊枝=舟橋。爪楊枝を(くわえる。使う)。 <800> # な べる)。口の端を(きゅっと引く。吊り上げる。引き締める。歪める)。口辺に(薄笑いが漂う。薄笑いを浮かべる。微笑を浮かべる。ほくそ笑みを刷はく)。嘲笑を口辺に浮かべる。口辺に微笑を絶やさない。 **くわえる【咥える】**▼くわえる(ストローを。乳首を。バイブを。マッチの軸を。煙管の吸い口を)。椅子に反り返って悠然と煙草を咥〈ゃえる"石川。口にくわえる(煙草を。葉巻を)。骨をくわえて入ってきたよその犬に訊たずねるような訊きき方"阿部。指をくわえて(見ている。引っ込む手はない)。▼横ぐわえにする(鉛筆を。ベニスを)。 **こうちゅう【口中】**▼口中に(苦みが残る。肉片を放りこむ)。口中をうがいする。真っ赤な瓜う」を割いたような可愛い口腔に行谷崎。▼口いっぱいに広がる(甘い香りが。金物臭さが)。口の中が(えぐい。じゃりじゃりする。粘ついて気持ちが悪い)。サハラ砂漠のように口の中がカラカラ=井上ひ。口の中で(もこもご言う。唾液が粘ついている。水をころころと転がす)。口の中に(唾がたまる。スプーンを突っ込む)。口の中のものを(飲み下す。吐き出す)。 **した【舌】**▼薬のようにそよいでやまぬ女の舌三島。舌が(味覚を失う。痺しびれてしゃべることができない。こわばって気軽に話しかけられない=島尾。鳥の舌のように舌苔べいで茶褐色になる=幸田文。とろけるおいしさ=辺見。ぺらぺらととめどなく廻る=幸田文。もつれるほど興奮する=辺見。焼けるようなできたてのジャム=小川)。味に舌が慣れる。興奮のあまり舌がもつれる。心と裏腹に舌が動く。舌で(唇を湿らせる。性器をなめる。口の周りをなめる。ぺろりとなめる)。粗い舌でザラッとどこかを舐められたような不愉快さ=安岡。舌に(味わいが残る。しみ入る甘み。びりりとくる。にじみ込むような酢の匂いが部屋一面にたちこめる=山崎)。味が舌に広がる。声が舌にうまく戒らない。ねっとりと舌に絡みつくほどのうまみ=拠。女神の柔らかい舌に似た風倉橋。舌の(動きが滑らかになる。付け根が強張る。廻らないような甘たるい口のきき方!永井荷)。あること無いこと舌の廻るかぎり悪口を云う永井荷。舌の回転が(鈍る。早い)。舌を(出して笑う。噛みそうな言葉。噛んで自殺する。滑らかに動かす。もつれさせて言う。塩気でびりびり焼く=重松。ペロリと出したいくらい愉たのしい=源氏)。犬がだらしなく舌を垂らしている。貝が舌を縮める。大蛇が舌をちろちろ出す。大胆さに舌を巻く。ぺろりと赤い舌を見せる。犬のように舌を出しハアハアあえぐ畑。酒が舌を滑らかにする=山田詠。不意に舌を奪われたように口がきけなくなる=隆。舌を出す(腹の中で。べろべろと)。▼舌を鳴らす(不満そうに。タンと。ちぇっと。ちっと)。舌を鳴らすほどおいしい"開高。ぴちゃぴちゃと舌を鳴らしながら食べる=有吉。焰川のの赤い舌がべろべろと長く立つ=長塚。窓から悪戯心於をしているように赤い舌が覗いたり隠れたりする=辻井。焚き捨てた芥火さくがまだ焰の舌を吐いている=芥川。野火が焰の舌を見せて盛んに立ち騰のぼる=大岡。先が二つに割れ絶え間なくめろめろ動く炎のような蛇の舌=畑。舌のように扁平以な魚界佐多。葉の凋しにんだ勉頭の大きな花軸の頂が干からびかけた獣の舌のようにねじれ黒ずんで並ぶ"日野。蛇の舌の如くべろべろと焰が吐き出される=長塚。めらめらと蛇の舌のような火が出てくる=飯田。炎の舌先が吹き出す。舌先に苦みが残る。舌先を歯裏に押しつける。▼舌先を覗のぞかせる(悪戯っぽく。犬のように)。ひくひく動く鋭敏な舌の先"大江。舌の先から言葉をつむぎ出す。歯を舌の先でなめる。歯にくっつく餡ぁんを舌の先でこそげとる=篠田。 **なめる【紙める】**▼紙なめる(砂浜をおだやかな波が"わねど高楊枝=舟橋。爪楊枝を(くわえる。使う)。加賀、懊悩転々の苦しみを=室生)。▼なめる(天井を火が。風が頬を。視線が体を。ちびちび酒を。茶碗のへりを。波が岸壁を。苦い経験を。敗北の苦汁を。炎が壁を。べろっと舌で。アイスクリームを。つぶさに辛苦を。封筒の糊のりの部分を。ウイスキーを少しずつ。上唇をぺろりと。牛乳をべちゃべちゃと。唇を舌の先でちらちらと。杯をちびりちびり。生クリームを一匙)。▼唇をなめる(得意げに。舌の先で。べろりと。ゆっくりと)。苦しみをなめる(この上もない。死ぬほどの)。無率もこの者が塗炭の苦しみを嘗める=福永。辛酸をなめる(つぶさに。興亡の)。▼ぺろぺろなめる(飴を。牛乳を。ミルクを)。なめてみる(恐る恐る指で。一なめ)。塗炭の苦しみをなめさせられる。互いの傷をなめ合う。なめずる(唇を。鼻を)。▶なめつくす(浮き世の垢ぁぁを。苦しみを。辛酸を。火が室内を。都市の大半を炎が。最後の一滴まで)。なめ取る(汁を。はちみつを。舌で。指ににじんだ血を)。なめまわさんばかりに可愛がる。なめまわす(口の周りを。鼻の頭を。全身を目で。ライトが煉瓦炊ん置き場を。唇をぺろぺろと)。飴を口に含む。なめるように(酒を啜すぅる。じろじろ見る。きれいに平らげる)。ウイスキーの水割りを舐めるように飲む=半村。口のはたを舌なめずりする。▼一なめする(ジャムを。ビールを。唇を舌で。▼しゃぶる(おっぱいを。蟹かにの脚を。指を。骨の髄まで)。 **みずあめ【水飴】**▼水は青いのに船が水を裂けば水は白い水飴になって両舷りに、にそばだつ=幸田文。水飴のように粘つく声"松浦。風が熱い水飴のようにねっとりと肌にねばりつく光洒。火が暖かい光を放って水飴のように怅らかく接しないながら燃える=有局。 **ようじ【楊枝】**▼重箱の隅を楊枝でせせるほどの正鵠ようじごいを期した清算事務"里見。楊枝で歯を(せせる。つつく)。楊枝を(口にくわえる。突き刺す)。武士は食わぬ高楊枝=舟橋。 <801> **いえなみ【家並み】** ▼家並み(歴史的な。奥行きの深い。那ひなびた町の。銃に点在する。暑さによどみがつくり肩を落とした木造の安部)。家並みが途切れる。低い家並みが続く。家並みに光が舞いおりる=畑。 **いちれつ【一列】** 長く一列になって座りこむ。雫しずがボタボタ一列に垂れる=尾辻。▼並ぶ(一列縦隊に。一線上に。縦一列に。行儀よく一列に。斑点が一続きに)。電池を直列につなぐ。 **いっつい【一対】** 一対の(鈴姉。イヤリング。靴。手袋)。左右一対の神経系。恰好跡の一対を形成する。一双の(足袋。乳房。手袋)。対になって建つ。対をなして並ぶ。つがいの(小鳥動物)。▼一組(左右対称の。上下対称の)。ベアの(セーター。服。指輪)。 **おきもの【置物】** 置物を床の間に据える。床の間の置物のような美人森馬。小さな老女が置物のようにちんまりと坐すゃりこむ=落合。釣り糸を垂れている人の姿が置物のように動かない三浦綾。熱に疲れたからだが据えられた置物のように重い志賀。犬が前足を立てたまま青銅で作った置物のようにじっと座っている=石森。募がきが置物のように正面を向いて坐っている=高井。人も荷車も乾いた静物のように銀灰色に焼け、水ひとつない風景の中で真夏の光を容赦なく受ける=伊集院。静物を(描く。写生する)。仄明胡初るさが顔を静物のように彫る徳永。 **おく【置く】** ▼置く(鎌倉に幕府を。十分な間隔を。将棋盤に駒を。少し時間を。全幅の信頼を。駐車場に車を。机の上に鞄ばを。東京に本社を。生え際に霜を。砲を脇に。紙袋を床に。煙草を灰皿に。手を肩に。当人を前に。瓶を手元に。店を担保に。目立つ場所に。小鉢をとんと。腹に一物。足元にバッグを。一日か二日冷却期間を。経済理論に根を。白地に黒の紋所を。生活の中心に仕事を。デスクの上に名刺を。どさりと重い物を。ベッドの横に椅子を。部屋の隅に包みを。もっぱら観測に重きを。要害の地に守備兵を。ロビーの隅に荷物を。一般読者を念頭に。家族を安穏な地位に。グラスをカウンターに。コップをちゃぶ台に。自分の目の届くところに。写真をテーブルの真ん中に。出席簿を教卓に。生活の基調を働くことに。チッブを多めに。とこへでも手当たり次第に。開いた本をうつ伏せに。身を涙濠いの間に。受話器をがしゃんと。本を数冊重ねて。乱暴な手でどすんと。地道な開きこみ捜査に重点を=勝目。叩きつけるように受話器を"筒井)。この人を措ぉいて他にない。愛読措く能ぁたわざるもの。▼足元に置く(荷物を。武器を)。傍らに置く(酒瓶を。聖書を)。▼距離を置く(一歩。他者との関係に)。▼状況に身を置く(危険な。安定を欠いた)。▼テーブルに置く(グラスを。皿を。マグカップを)。テーブルの上に置く(紙包みを。封筒を)。手を置く(そっと肩に。膝に)。▼問を置く(一瞬の。一拍の。しばらく)。▼身を置く(企業社会に。芸者の世界に。敵中に。慣らされた倦怠けんに『松本)。▼置いて行く(鍵を。車を。荷物を)。どこにも身の置き場がない。▼置ける(信用が。信頼が)。気の置けない会話を楽しむ。信用の置けない男。▼置かれる(過酷な環境に。危険な状態に。苦しい立場に。不利な状況に。所狭しと。十年一日の如く同位置に。名状しがたい酩酊感のなかに=井上靖)。周囲から一目置かれる存在。 **カウンター** カウンターに(お銚子を置く。書類を置く。手を突く。並んで飲む。隣り合って座る)。小銭を手のひらでカウンターの縁に集める=光原。 **ぎょうれつ【行列】** 現実という奴は前へ進んでいるかいないか分からないような長蛇の行列"斎藤栄。行列が(と進む。街道を引きも切らない。こちらに向かってくる。ぞろぞろ動きだす。道を練って行く。屋敷の円を出て行く。粛々として行進を起こす=海音寺。できるほど繁盛する=西木)。長い行列が続く。行列の(後ろに並ぶ。殿肌肌に付く。先頭に立つ)。ソロソロと真っ黒な行列をつくっている嬢ぁ♪!安岡。瞼だぶの裏を幼い日の姿が次から次へと行列をつくって通って行く=黒井。食を求めて行列する。借り手が蟻の行列みたいに集まる=川端。大名行列のようにノロノロ練って歩く=獅子。隊伍の先頭を切って山を登る=小島。隊伍を(整える。しずしずと押し出す)。隊列から離れる。隊列の中に身を置く。隊列をなして(行進する。整然と歩く)。食券を手に列をなす。整然と列をなして進む。ぞろぞろと列をなして歩く。 **こうず【構図】** 構図(対立の。もたれ合いの。絵になりそうな。極度に不安定な)。構図に少しの緩みもない。構図を(描く。工夫する。整える)。事件の構図を見抜く。▼トリミングする(画像を。写真を)。 **じゅんい【順位】** 相対的に順位が上がる。テストの順位が落ちる。順位を上げることにむきになる有川。順位予想がほぼ完全に的中する。総合順位を決める。位階が(上がる。昇進する)。番付がものを言う相撲界。会社の序列。序列が(上。下。整う)。序列にうるさい。席次が(上がる。下がる)。席次を(争う。決める)。何事にも席次を重んじる日本人"宮部。ランキングに一喜一憂する。ランキングの一位になる。ランキングを(決める。発表する)。 **じゅんじょ【順序】** 順序が(あべこべ。逆転する。逆さになる。後先無茶苦茶になる)。物には順序がある。順序を(踏む。間違える)。話す順序を考える。事実や時間に食い違いのないように順序を追って話す永井訛。順序よく(説明する。並ぶ)。自分の見聞したことを順序立てて説明する。物事を順序立てて話す。淡々と事実を順序立てて説明する。 # 並ぶ・置く <802> 字の筆順を覚える。物の順逆が分からない阿呆泌は"胡桃沢。順逆を取り違える。▼式次第(挙式の。葬儀の。披露宴の)。順逆の態度を考えるひまもないほど、ことが矢つきばやに起こる=本庄。 **じゅんばん【順番】** 順番が(後先になる。一番先になる。狂う。回ってくる)。順番に(一人ずつ自分の名前を言う。ゆっくり思い返す)。順番を(決める。並べ替える)。辛抱強く順番を待つ。話す順番を整理する。順番通り勤務につく。順番待ちの列。順に(繰り上げる。繰り下げる)。子供を順に送り出す。順を踏む。順を追って(思い出す。説明する。話の顛末を述べる)。席順を決める。早出を代わる。早春を受け持つ。 **すえる【据える】** ▼据える(椅子に腰を。視線を一点に。尻をどっかり。空き地に薬火隊を。三脚にカメラを。女性を主人公に)。性根を据えてかかる。引き据える(上がり框がまに。その場に)。安置する(遺体を。位牌を。仏を。本尊を。御霊話たを)。 **そなえつける【備え付ける】** ▼備え付ける(テーブルを。テレビを。ビアノを。ベッドを)。備え付けの(家具。食器棚)。近代的設備が整う。最新式の設備を誇る。備品(会社の。学校の)。 **そろう【揃う】** ▼揃う(生け垣の頭が。お膳立てが。証拠が。全員の顔が。必要なものが。メンバーが。有利な事情が。家族が食事に。三拍子。ほぼ全員。いつもの顔ぶれが。華々しい面々が。データがすべて)。糸件が揃う(成功する。よい。悪い)。▼揃っている(書架に本が。ビンからキリまで。猫板の上に茶道具が"山本周)。▼勢揃いする(一家が。全員が)。▼生え揃う(羽毛が。歯が)。足並みが(揃う。乱れる)。足並みを揃えて行進する。全員が足並みを揃えて行動する。 **そろえる【揃える】** ▼揃える(注文の頭数を。一定の長さに。靴を脱いで。各界のオビニオンリーダーを。貴重なデータを。提出する書類を。テーブルの上でとんとんと紙を。新鮮な商品を豊富に。両手をきちんと膝の上に。観光地としてアミューズメントを=篠田)。▶顔を揃える(常連が。チーム全員が)。スリッパを揃えて出す。膝をきちんと揃えて座る。稲が穂を揃えはじめる。多めに材料を買い揃える。刈り揃える(枝を。庭木を)。▼切り揃える(同じ長さに。髭のげをきれいに。髪を肩で)。爪が潔癖に切りそろえられている"高橋治。▼取り揃える(品数を。証拠書類を。心尽くしの品を)。▼脱ぎ揃える(靴を。スリッバを)。 **だい【台】** 箱を台にする。カステラを台にしたケーキ。台の上に載せる。台座からすらりと立ち上がっている柱=黒井。▼踏み台にする(空き様を。椅子を。切り株を)。短刀を三方に載せて運んでくる奥田。 **たちならぶ【立ち並ぶ】** ▼立ち並ぶ(筵張叱りの芝居小屋が『村上元。青黒い山並みが空に向けてくっきりと『村上春)。建ち並ぶ(いろんな店が。谷沿いに点々と家々が。倉庫が軒を連ねて。居丈高なビルディングが=田島。ありとあらゆる店が乱杭歯いくのようには大原)。家々が寄りそうようにして立ち並ぶ通り"辻仁。林のように立ち並んだ帆柱。屏風のように立ち並んだ並木。逃ねる(大小さまざまな店が軒を。大名の屋敷が塀を)。煙突の林立する工場風景。▼林立する(高層ビルが。のぼりが。鬱蒼らったる巨木が。クーザーのマストが月明かりに映えて白く泉俊)。 **つくえ【机】** 粗末な一閑張りの机。机に(突っ伏す。超杖をつく。顔を押しつけるようにして眠る=大鮫)。木箱を机にする。机に向かう(一日中。夜もすがら)。机の(中を整理する。引き出しを開ける)。机の上に地図を広げる。書類を机の上にとさりと投げ出す。机の上の書類を片づける。机の前に(座る。立つ)。机を(どんと叩く。並べて聴講する。挟んで対座する)。机上に図面を広げる。書を机上に閉じる。四六時中デスクにへばりついている。デスクの(前に立つ。上にベンを投げ出す。引き出しを開ける。上が書類の山になる=池井戸)。デスクを挟んで向き合う。 **つらねる【連ねる】** ▼連ねる(賛美の言を。難解な字句を。美辞麗句を。二台の自動車を。忏並みに看板を。エピソードをいくつも脈絡なく池澤)。▼名を連ねる(経営陣に。「名簿に。連判状に)。 **テーブル** 雪白の卓布を掛けた食卓リ"二葉亭。テーブルが(八割方埋まる。ぼつんと一つ置かれる。花を開いたように並ぶ三浦綾)。カフェテラスのテーブルが客で鈴なり池田。テーブルに(食器が並ぶ。地図を広げる。花を飾る。料理を運ぶ。沿ってぐるりと一周する。手をつき頭を下げる。ナイフやフォークを並べる)。沈黙がテーブルに流れる。隣のテーブルに家族連れが座る。鍋をテーブルに運ぶ。レストランのテーブルにつく。交渉のテーブルに引っ張り出す西木。テーブルに置く(大皿を。コップを。代金を。箸を)。テーブルに並べる(料理を。コーヒーカップを)。テーブルの(向こうから口を挟む。上を台布巾で拭く=川上)。テーブルの上に(コッブを置く。書類を広げる。料理を並べる)。テーブルを(挟んで向かい合って座る。ロの字に並べる)。三人でテーブルを囲む。ほんとテーブルを叩いて立ち上がる。テーブルを指でとんと叩く“小泻。とんと拳固いんでテーブルを叩く。いまいましげにテーブルを軽く叩く=開高。土をテーブルのように平らにする=小松太。テーブル越しに向き合う。テーブル席に座る。円卓を囲む。座卓に手をついて立ち上がる。座早の前に正座する。食膳に(座る。つく)。茶碗を卓袱台いょへ叩きつけるように置く=筒井。ちゃぶ台を引っくり返す。 **でそろう【出揃う** ▼出揃う(意見が。各紙の予想が。材料が。商品が。データが。穂が。料理が)。▼出尽くす(意見が。質問が。料理があらかた)。 **とりつける【取り付ける】** 安全装置を取りつける。 # 並ぶ・置く <803> ▶打ちとめる(看板を。札を)。テーブルを居間に据えつける。装着する(車にタイヤを。信管を弾頭に。バソコンにソフトを)。 **ならべたてる【並べ立てる】** ▼並べ立てる(嘘八百を。ありったけの文句を。ありふれた形容を。延々と繰り言を。堰せきを切ったように恨み言を"篠田。言い訳めいたことをあれこれと=小川)。並べ上げる(営品目を。質問項目を。証拠を)。ちらっと見ただけで息をのむような事実が淡々と列記してある=飯田。列記する(主なものを。ミスの数々を)。▼羅列(言い訳めいた言辞の。無機質な言葉の)。▼羅列する(課題を。対処策を。問題を。怪しげな数字を)。列挙する(禁止事項を。政策の数々を。目標地点を具体的に)。 **ならべる【並べる】** ▼並べる(一緒に机を。散々小言を。絶賛の言葉を。鳥が翼を。二頭の馬を。麻雀にハッの牌。」を。いろは順に。五十音順に。ずらりと棚に。縦一列に。横一列に。料理を食卓に。あほくさい与太を。口達者に理屈を。こ大層な御託を。べたべたとお世辞を。ぼそぼそ愚痴を。一つひとつ丁寧に。湯飲みを盆の上に。説明をくどくどしいほど。仰山な賞必言葉を野上。家庭内外の雑事を事細かに永井能)。▼軒を並べる(店が道路に沿って。昔からの店がびっしりと)。二人が肩を並べて立ち去る。枕を並べて主君に殉じる。淀みなく数字を並べてみせる。遺体が累々と並べられる。人家が窮屈そうに軒を並べ合う徳田。木を植え並べる。▼置き並べる(座布団を。長椅子を。一列に。等間隔に)。▼押し並べる(厚板を。紙幣を。盾を)。▼書き並べる(くどくどと。知っている単語を)。掛け並べる(洗濯物を。万国旗を)。▼敷き並べる(座布団を。畳を)。▼立て並べる(柱を。埴輪加にを。屏風を)。▼配列する(順不同に。年代順に)。並列する(二つの叙述が。部材を等間隔に)。電池を並列につなぐ。 **ならぶ【並ぶ】** ▼並ぶ(行儀よく靴が。雑然と鉢が。酒造の酒倉が。上気した顔が。棚に洋酒が。小さな文字が。表紙に題字が。一直線に。壁を背に。雑誌が店頭に。人家が疎まばらに。整然と初に。村落が山麓に。二列横隊に。店が駅前に。板屋根の長屋が。客待ちのタクシーが。食卓に山海の珍味が。死んだ人たちの土饅頭に注礼が。ずらりとお歴々が。タクシー乗り場に人が。食べきれないほどのご馳走らくが。机に電卓や本が。テーブルに手料理が。通りの両側に隙間なく商店が。どっきりするような文句が。風俗店の入ったビルが。ベランダに洗濯物が。道を挟んで左右に家が。商品が売り場に。小さい指がきれいに。一列に行儀よく。規則正しい問隔で、細かい文字がびっしりと。無数の衣装が重なり合い。ウキが定規で引いたみたいに一線上に=開高。電線の雀がずみたいにブールの緑に富岡。梢の薄くなった櫻じゃが空を掃くように大岡。何十人もの人が蛇のようにうねうねと長く=原田康。二人の息子が狛犬に雌のように森画)。並んで腰をおろす。家族三人で並んで歩く。市に出された殲馬ろばのように一列に並ばされる=遠慮。▼並び立つ(竜虎が。両雄)。青空に並び立つビル群。世界に並び立つ大学。審査員が左右に居並ぶ。▼櫛比吼。する(店舗が。土産物屋が)。櫛比する家並み。縦列に駐車する。▶列する(旗下に。公式の席に。重役の座に。葬儀に)。整列の号令をかける。▼整列する(二列に人波が。一列に。玄関の両側に。校庭に。壇上に。家々のコンクリート土台が定規でそろえたように=高田)。所狭しと(物が置かれる。観客がひしめく。松の枝が入り組んでいる)。▼所狭しと並ぶ(屋台が。料理が卓の上に)。並み居る(お歴々。強豪を倒す。紳士淑女。敵をばったばったとなぎ倒す。人々があっけにとられる)。小さな造船所、倉庫などが目白押しに並んでいる灰谷。バーや飲み屋が目白押しに並んでいる通り藤原。 **はいち【配置】** ▼配置(適材適所の。適性を考慮した)。配置が雑然としている。▼配置する(警官を要所に。木や草花を巧みに。碁盤の目のように)。▼配する(前景に田画欧んを。辻々に兵を)。▼配備する(ガードマンを。軍隊を。ミサイルを)。 **まちなみ【町並み】** ▼町並み(川に沿った。雑然とした。整然たる。古めかしい。夕闇が迫る。こちゃこちゃした。何の変哲もない。穏やかな光に包まれた=高橋克。端から端まで歩いても二十分はかからない細長い!高橋克)。▼街並み(蒼茫咲りとした膨大な森村。果てしなく広がる都会の"原田宗。ぼんやりと青い空気の底に沈む淡くかすんだ=吉本)。町並みが(入り組む。切れる)。戦災で町並みが変わる。 **まつりあげる【祭り上げる】** 雲の上に祭り上げる。祭り上げられる(名誉会長に。話題の中心に。スターのような存在に)。家長として忝る。 **よこいっせん【横一線】** 横一線で(ゴールする。スタートする。競り合う)。横一線の激戦になる。▼並ぶ(一列横隊に。横一列に。横一線に)。横並びで(歩く。値上げする)。高さを横並びにそろえる。 **りょうりつ【両立】** ▼両立させる(育児と仕事を。仕事と家庭を。実益と快楽を。二つの立場を)。▼並立する(二つの組織が。対等の関係で)。 **れつ【列】** 列(規則正しい屋根の。入場を待っている人たちの長蛇の"戸川)。列が(横に広がる。ゆっくり動き始める)。機械の列が整然と並ぶ。解きほぐされたように列が崩れはじめる=円地。列の(後ろにつく。先頭に立って歩く)。並木が影くろぐろと生ける人の列のよう岡本。列を作って待つ。勝手に列を離れる。寒暖計の目盛りのように乗客がホームに幾つかの列を作る=永井能。小学生が遠足に出かけるように従順に列を整える=宮本輝。後列に席を取る。後列の左から三番目。前列に席を取る。前列の右から二番目。 <804> # 鳴る・響く **あしおと**【足音】▼足音(しゃなりしゃなりと歩いてくる=山手。大地を踏みしだく重く鈍い=飯田。木製の人形が歩いているような"原田康。廊下を走ってくるあわただしい=山本周)。踐踏於ゅうように静かな発音話し!大岡。足音が(階下に消える。ばったり止む。間近に迫る。妙に耳につく。遠くに消え去る。びろうどの上をでも踏むように軽くしとしとと地面に落ちる谷崎)。後ろから足音がついてくる。こつこつと足音が響く。ひたひたと足音がする。ぺたぺたと裸足の足音が聞こえる。廊下にばらばらと足音が起こる。湖水に降る雨の音のように魂に道行く人々の足音が降り注ぐ=川端。どこからともなく濁った足音が起きる"佐多。乱軍のような跫音が沸き立つ=本庄。老いの足音に怯ぉぃえる=瀬戸内。ひっそりとした足音にこもる憎しみ"古井。足音のざわめきが静かさの底にひろがる=古井。足音を(残して隣室に消える。殺して階段を降りる=佐藤多)。駒下駄の足音をからころとさせる。背後に人の足音を開く。騒々しい足音を階段に響かせて駆け下りる=原田家。猫のように足音を忍ばせる日。どたどたと足音を立てる。とんとんという躍るような足音をたてて帰ってくる=野間。としんとしんと足音を響かせる。ばたばたと足音を響かせて駆けこんでくる=松浦。日和下駄の音を刻んで歩いて行く鈴木三。 **おと**【音】▼音(がしゃんと物の壊れる。がたっと椅子がぶつかる。がりがりと引っかくような。ばたばたと廊下を走る。べたべた走りまわる。ぼこぼこというこもった。地面の底から聞こえてくるようないやな=長崎。一本の糸のように漂っている辻仁。髪が逆立つほど哀かなしく重い=中島み。鋼のような硬い澄んだ光潮。歯札にぎりのような空調の"小川。腹に響くようなにぶくはじける=泉俊)。音が(単調に響く。地を低く個ょう。耳に粘り着く。遠く近く聞こえてくる。ふっと途絶える。暗がりの底に拡がる=黒井。爆発したように一瞬部屋中に広がる=中上。耳の中に入り込んで苔のように張りつく尾辻)。かさかさと紙の音が立つ。ベースの音が体の芯に突き刺さる。ざわざわという音が平らな煙みたいに目の高さを漂う村上春。音がやむ(不意に。はたと。ふっと)。かすかな音に反応する。音の(シャワーを浴びる倉橋。つぶてが耳に蝟集心礼する=野上。響きがすっかり錆びついている"中島み)。押しつけられるような重たい音の落下=辻仁。甘美な音の波に揺られる=中村真。遠くの音を風が運ぶ。音を立てて(扉を閉める。炎が燃え上がる)。音を立てる(液体がこぼこは。風が悲鳴のような篠田。窓がバタバタと鷺沢)。鈍い音が(闇を裂く。わあんと広がる)。音高く手帳を閉じる。ばちぼちと音高く焚たき火がはぜる。がさがさ木の葉をかき出す。がさごそ引き出しの中をかき回す。がたごと電車に揺られる。がたびし雨戸を開ける。がたんと(格子戸が鳴る。雨戸にぶつかる)。がちゃがちゃ食器が音を立てる。かちゃかちゃと(さじを使う。食器がふれあう)。サーベルをがちゃつかせる。こそこそ(身を動かす。風呂敷包みを開ける)。▼大きな音(びっくりするほど。渓じゅうに響きわたるような"堀)。がちゃんと大きな音を響かせる。▼小さな音(コンコンと金属を叩くような"黒井。針の落ちるようなほんの慮辻。虫が当たったほどの高樹)。▼音(松ぼっくりが落ちた程度の。泡の弾けるような淡い=小川)。ひそやかな音が忍びこむ。綿で包んだような音がかすかにする=梶井。 **おんりょう**【音量】音量を(最大にする。下げる。絞る。小さくする。調節する。いっぱいに上げる)。マイクの音量を確かめる。テレビのボリュームを上げる。 **かつかつ**【夏夏】夏々と音をたてて矢が突き刺さる"真継。石が夏々と崖へ当たる。石を蹴る馬蹄ての音が夏々として曠野にぅの静けさを破る芥川。凍いついた道を夏々と踏んでゆく馬のひづめ吉川。夏々と鳴る(靴の音が。木剣が)。 **かね**【鉦】ちーんと鉦が鳴る。▼鉦の音(清らかな。銀かねを流すような=内田百)。鉦や太鼓で捜す。鉦を(静々と打つ。かんかんと叩く)。鉦太鼓ではやす。 **かね**【鐘】鐘が高らかに鳴り渡る。▼鐘が鳴る(お寺の。ゴーンと。始業の。日暮れの。カランカランと)。教会の鐘がカンカンとけたたましい音で鳴る=塩野。鐘の(残響が消える。割れるような声で笑う。安岡)。撞木しいで鐘を叩く。大時計が鐘のようにのんびりとした十二時を打つ=石森。がらんがらんと大鐘が鳴る。鐘楼が時を告げる。梵鐘ぶんしを打ち鳴らす。釣り鐘を(打つ。つき鳴らす)。梵鐘が遠くで鳴る。▼鐘の音(明澄な。娲々にいたる。剛廃りゅうたる。叫ぶように中空にあがる焱いししい=大岡)。鐘の音が(こだまする。股々灬んと響く。尾を引く。冴え渡る。こうこうと響く。しんしんと響き渡る。家々の眠りを揺り動かすようにゆるやかに響いてくる=壺井)。暁を告げる鐘の音が湖水の上をさわやかに流れる=白洲。入相がいの鐘の音が湖の上に長い余韻を残して消えてゆく=白洲。胸がまるで早鐘をつくように掘っている井川。早鐘みたいな胸の動悸=宇野干。早鐘のような音が体の内に湧く=高樹。早鐘のように鼓動が打ち始める=近藤。心臓が早鐘のように激しく打つ"乃南。半鐘がジャンと鳴る。頭の中で半鐘ががんがん鳴るように自分の声が恐怖の叫びをあげている南条。火事を知らせる半鐘さながらに頭の中ががんがんする宮部。頭の芯がずきんと半鐘のように鳴る=林关。胸の警戒信号が半鐘よりも高く鳴り響く宇野利。 <805> **かみなり**【雷】送り梅雨の激しい雷"伊集院。嵩が(頭上でとどろく。落ちても放しはしない"辺見。お堂がびりびりと頭ふぇえるほどの音を立てる=藤沢)。山の雷がずしんずしんと腹に応える三浦哲。爆笑がおこって雷が鳴りひびくときのように伝わって行く小島。枕元で雷が落ちたくらいの爆音小川。▼雷が鳴る(ころころと。空を真二つに裂いたかと思われるほどの音を立てて藤沢)。雷に(打たれて死ぬ。あった原始人みたいに立ちすくむ“大庭。打たれたような呆気坊っにとられた不可思議な顔・椎名誠)。雷の(とどろきが地震のようにはげしく家を揺るがせる=山本有。鳴る空を苛々と眺める=北原)。夏が自殺するのように荒々しい雷の足音"川端。雷に打たれたように(色を易ぉえる。低く頭を垂れる=光瀬。目を大きく開く“村上龍)。雷のごとき鼾声がいを立てて熟庭する=中島敦。雷のような(激しい怒りの声に打たれる"有房。咆哮うがとどろく=筒井)。山の雷のような大声で叫ぶ!清水俊。声が雷のように階の上から響く芥川。太鼓の音を聞いても気絶するほどの雷嫌い=川端。空気をびりびりふるわすほどの雷声が鳴りひびく"杉本。百雷一時に落ちるような恐怖に襲われる=獅子。百雷の一時に落ちるような音を立ててうがいする=田辺。雷火で塔が焼失する。雷神が降臨する。雷神の走る姿を目にする=村上元。迅雷の勢いで荒れまわる。迅雷烈風の雄弁を遊する。考えが霹靂松誌のように打つ!庄野。遠雷がごろごろ鳴り出す。空を遠雷のような唸うなりを伴った砲声が渡る=大岡。いつの間にか去って微かなかに遠雷のように聞こえる嵐の音=長与。未知の世界の印象が遠雷のように遠く森ひどいてきてまた消え去る三島。遠い空で雷が鳴る。雷の遠鳴り。雷雨が唐突におさまる藤沢。雷雨に見舞われる。激しい雷雨に閉じ込められる。雷を伴った激しい雨。雷鳴が(空を引き裂く。闇を震わせる。手でつかめそうなくらい近くに聞こえる"小川。腹にある力を根こそぎさらって行くような威嚇的な音藤沢)。諏然心たる雷鳴が鳴り響く。凄すにまじい雷鳴が起こる。に雷鳴が走る。空気を打ち叩くような重い光がつづけざまにはためき雷鳴がとどろいて頭上を右に走り左に走る=藤沢。特大の包み紙を破くような雷鳴がとどろく宮部。耳をつんざくほど大きな雷鳴が赤く芥川。家鳴りするほどの雷鳴が屋根の上を駆け抜けて行く藤沢。太鼓を打って雷鳴に和する。耳を盛ぅうさんばかりの雷鳴のとどろき=常盤。雷鳴を伴う送り梅雨の襲来人倉橋。落雷による(火災。機器の誤作動。鉄道の運休。電話の不通)。落雷で停電する。割れ鐘のような声が落雷の直撃のように脳天をおそう飯田。 **きしむ**【軋む】▼きしむ(椅子のばねが。歩くたびにきしむ床板が。恐れと不安で胸が。ぎしぎしとドアが。さくさくと雪が。錆びた鉄の鎖が。椅子がぎしりと。がゆるみでもするようにギイギイと船が小林多。の間が歩くたびにミシミシと武田泰。関節が錆びたようにぎこちなく=加賀)。きしぎしきしむエレベーター。扉が重くきしんで開く。▼音をきしませる(タイヤの。小舟がぎいきいと檎ちの平岩)。急激なブレーキのきしみ。タイヤがきしみ声をあげる。油の切れた自転車が耳障りな乳みを立てる=高井。▼きしる(椅子が。戸が。のこぎりが。肪もゃい綱が。廊下が。電車が線路を)。▼音をきしらせる(タイヤの。ブレーキの)。▼きしらせる(ぎりぎりと歯を。みしみし階段を)。戸がきしりながらあく。きしるような声で叫ぶ。みしみし廊下を踏みながらやってくる。みしみし音を立てる(桟が。建てつけの悪い家が)。 **きてき**【汽笛】▼汽笛(牛の啼き声のような小林多。海底の牛が啼くような鈍い「武田奏。鞭もぅで宙を切るような鋭い=武田泰)。汽笛が(長く尾を引く。構内に響き渡る。乳色の朝飯誌にを縫うようにして長々と響きわたる人間。遠くボーボーと聞こえる=梗。耳に鋭く突き刺さる=藤本)。周欠的に汽笛が鳴り響く。開け放した窓からしばしば汽笛が夢魔のように入ってくる三島。音のあいまいな霧がひろがるように遠い汽笛がおぼろげに伝わってくる三島。瀕死いんの野獣の悲鳴のような汽笛が聞こえる=高橋和。汽笛を鳴り響かせる。汽笛を鳴らす(ボーッと鋭く、機関車が悲鳴に似た=辺見)。霧笛が(群れをはぐれた仔牛のような鋭い悲鳴を上げる"村上春。私自身の叫びのように分厚い霧の彼方へ呼び掛ける=加賀)。 **くつおと**【靴音】▼靴音(音が出るところに尖とがつた釘が一本一本打ちこまれていくような=尾辻。スチール机の固さを音にしたような"中沢)。靴音が(廊下に響く。こつこつと響く。小走りに近づいてくる。ドームにこだまする。重たく沈んだようなあたりの空気を細かくほぐしていくよう壺井。夜の闇を歩く獣のようにひたひたと低い音で鳴る=中上)。階段に靴音が物愛く反響する。どたどたと靴音が響く。背後に靴音が迫ってくる。ゴム底の靴音が吸いつくような音をたてながら近づいてくる『安部。粘りつくようなズックの靴音をひきずりながら立ち去る安部。こつこつと靴の音を立ててついて来る=伊藤爽。雨音の底を嘗めるようにサンダルの音が近づいてくる=連城。 **ごうごう**【轟々】話し声が聞き取れないほど淼々いう音が起こる=徳田。藤々こうたる滝の音。轟々と(電車が入ってくる。音をたてて風が町を吹き渡っていく=隆。天地も崩れる物音が暴れ回る=獅子)。木が淼々としなって揺れる。ジェット機が森々と飛来する。ストーブが蔵々と音を立てて燃える。大きな機械が蔵々と音を立てて動く=池澤。 **こだま**【谺】こだまが谷間を渡る。呼び声に空しい谺しか戻ってこない=円地。▼こだまする(蛙砂流の合唱が。万歳の声が。声が渓谷に。音が周囲の建物に。人々の声が会議場に。声が無人の街路に鋭く=開高)。 <806> 言葉が耳の底でエコーがかかったような響きで谺する"小林久。よかったですねという声が耳の奥でこだましている=飯田。谺のように他の声が応じる=本庄。二人の声が木霊にだのように重なる=福永。エコーを(かける。利かせる)。山彦が返ってくる。山彦と会話しているようなむなしさを感じる谷川。自分の山彦に怯おびえる=佐藤春。滝がどうどうと地響きを打たせて山彦を呼んで淼たといて流れる=泉鏡。 **サイレン** 家族の死を告げる妖精の泣き声のような長く尾をひくパトカーのサイレン=田中。サイレンが(鳴り渡る。夜の闇をつんざく。街中を震わさんばかりに響く=泉優)。救急車のサイレンが遠くに消え去る。バトカーのサイレンが赤くとがったような音をあげてあたりの闇を切り裂く椎名誠。空襲のサイレンが鳴り響く。▼サイレンの音(犬の鳴くような伊集院。消防自動車のけたたましい=石坂)。サイレンの音が(山々にしみこんで消える=西木。鋭く空気を切り裂くように響く三好徹)。けたたましいサイレンの音が耳をつんざく。遠くでサイレンの音が聞こえる。闇を裂くようにサイレンの音が響く=伊集院。サイレンを鳴らしながら車が走り去る。パトカーのサイレンの音が獲物を追いつめていく努子の掛け声のように響く=小林久。サイレンのような太いたくましい響きがあたりの空気をビリビリさせる=石森。日本中のパトカーが集まってきたのではと思われるほどの凄すさまじいサイレン音が夜空にこだまする!奥泉。 **しおさい**【潮騒】潮騒が(途切れなく響く。海の健康な寝息のように規則正しく寧ゃずらかに聞こえる三島海妖の単調な誘惑の歌のようになまめかしく撫でるように聞こえてくる=有局。湧き上がるように閉こえてくる床の低い部屋"円地)。潮騒が耳に(心地良い。つく)。声が潮騒にかき消される。遠い潮騒に耳を傾ける。潮騒を聞きながら海に抱かれて眠る宮尾。潮騒のような(鯨波ときが起こる。遠い蛙砂ぇの声がまたたく星を頼りなく揺すぶる=檀)。期待をはらんだ潮騒のような拍手=海堂。伝書鳩の群れが潮騒のような羽音をさせて頭の上を飛びすぎる。石坂。潮騒のように車の音が風に乗ってくる=日野。相手の声が遠い潮騒のように耳から引いて行く佐藤愛。聞こえよがしに言う声を潮騒のように聞く!永井路。話し声が潮騒のようにざわめく=日野。耳の底で潮騒のように鳴り響いている蟬せんの声光瀬。▼潮騒のように聞こえる(吹雪の音が。ひぐらしの声が火坂)。 **じなり**【地鳴り】傘をうつ雨の音が遠くの地鳴りのよう。宮本輝。森然にいたる地鳴りをあげる。地鳴りのようなオートバイの音が近づく。内海。肝がつぶれる地鳴りのような声=飯田。声が地鳴りのように耳の奥に響く小林久。何万という虫の声が地鳴りのように湧き起こる草原や林村上卷。山鳴りがだんだん激しくなる。山鳴りの音を耳にする。 **じひびき**【地響き】▼地響き(藤然だんたる。建物がじひびゆれかしぐような"林美)。深い所からわくような地響きが寝ている背中に伝わってくる=石坂。地響きを伴う鈍い音。森然たる地響きを立てて蒸気機関車が通り過ぎる=小沼。どうと地響きを打たせてのけざまに倒れる菊池。水が堰せきの口からどどんとどんと地響きを打たせて転がり落ちる=中。▼地響きを立てる(高射砲の音が。ごうごうと。ドドドドッと)。ベースの音が地響きのような震動になって身体の芯につきささる三田。森々たる山鳴り。 **じゅうせい**【銃声】闇を切り裂くような銃声!景山。銃声が(燕然にらと家室内を圧する。出し抜けに起こる。雨音のように無造作に響く=有川。室内にはねかえるようにとどろく=宇野利。山々にこだまして消える=石川)。散発的な銃声が聞こえる。山問於心に銃声が谺ただする。思ったより軽くはじけるような銃声が響く泉級。銃が花火のような音を立てて射ち出される=高井。鋭い銃声が(一発とどろく。部屋じゅうに鳴り響く=江戸川)。バーンと鉄砲の音がする。続けざまにビストルの音が響く。砲音が遠雷のごとく山々に響き渡る=津本。雷のように淼々ごと森とき渡る砲声"津本。砲声が段々と鳴り響く津本。獅子の咆哮ぶりのような砲声がとどろく=津本。 **すず**【鈴】帆らいの鳴くような音のする鈴」中。鈴が(ちりんちりんと音を立てる"東野。ツァリンツァリンと鳴る=宮沢)。馬の鈴がしゃんしゃんと鳴る。シャリンシャリンと鈴の音が近づく=石森。チロリロリンと鈴の音鷺沢。静かな夜空に鈴の音が違く近く響き合っ福水。鈴を(チリンチリンと鳴らす。鳴らして侍女を呼ぶ!山本周)。かすかに鈴をふるわすような声=真継。ガランガランと苛立からつように鈴を振る=阿刀田。目は鈴を張ったような黒目がち」落語。鈴を鳴らすように滑らかに云う人米。銀の鈴を鳴らすような接吻小松太。走らせばひなびた鈴のような音を立てる杼宮尾。真弓の小枝に真紅に近い朱色の鈴のような実がついている落合。目を鈴のように大きく張る=有局。▼鈴の音(消・え入るような淋しい冴えた有鳥。漂浪の人が遥かに故郷の空を望んだときのようななつかしい感じを与えるり有島)。鈴の音のような澄んだ音。栗本。 **スピーカー** スピーカーの声が路上に流れる。スピーカーが(涔いのよい旋律を鋪道との上に蒔ょき散らすい福永。匹きしむような声で歌をうたう小林信)。スピーカーから音楽が流れる。コーランの祈りがスピーカーから街中に流れる=辺見。声がスピーカーから(聞こえる。流れてくる)。お囃子はゃの音が拡声器から流れてくる=ねじめ。手をメガホンにして怒鳴る。メガホンを首から下げる。両手でメガホンをつくる。 <807> # 鳴る・響く **だいおんきょう**【大音響】耳も魂も野らうするような大音響"山田风。ロックの大音響が響き渡る。喊声めいと砲声と銃声とが怒濤だとのような響きとなって聞こえてくる=海音寺。鼓膜を破りそうなほど恐ろしい響き=辻仁。耳が麻痺ょぃするような強烈な音響が襲いかかる三田。森然にいたる音響とともに天井が落下する。耳をつんざく淼音にら。耳をつんざくような(音の洪水。どえらい響き。鋭い音響が神経をわななかす有局。蝉時雨でふしに洗われる=田辺)。▼耳をつんざく(悲鳴が。ガラスの砕ける音が=原田糸)。 **チャイム** チャイムがピンポンと鳴る。来客を告げるチャイムが聞こえる。▼チャイムが鳴る(玄関の。終業の)。チャイムのように笑う。大原。ドアチャイムがせわしげに鳴る。玄関の呼び鈴が鳴る。呼び鈴を(押す。鳴らす)。 **とどろく**【轟く】▼とどろく(名が世界に。喊声切以が広場中に。太鼓の音が段々灬んと。耳を娶っうするように川鳴りの音が=本庄)。リンリンと四方にとどろく声=山本周。天下を轟かすスキャンダル=胡桃沢。▶とどろかせる(期待に胸を。天下に名を。世に名声を)。地をゆるがすような馬蹄てのとどろきが聞こえる=司馬。建物の焼け落ちる轟きと物のはぜ飛ぶつんざくような響きが怒濤のように揉もみ返す=山本周。藤くような大声=福氷。▼とどろき渡る(雷鳴が。喊声が天地に)。森然ぜいと(ダイナマイトが爆発する。大砲をとどろかせる)。列車が森公然と通り過ぎる。 **ならす**【鳴らす】▼鳴らす(ちんと鉦かねを。扇をばちっと。鐘をゴーンと。汽笛をボーと。唇をぶるると。喉をごくりと。喉をぜいぜい。鉄砧きをバチバチ。歯をツウと。蓋をかたかた。床をどんどんと。指をばちんと。かちかちと茶碗を。きゅきゅっと革靴を。ぐうっと空き腹を。木枯らしが林を。こつこつとステッキを。ぽろんとギターを。犬が鼻をくんくん。馬が鼻をぶるっと。鍵をちゃらちゃら。鐘をカンカンと。紙鉄砲をバンと。唇をちゅうちゅう。口笛をヒューと。口笛をビュッと。靴のかかとをこつこつと。サンダルをびたびたと。自転車のベルをけたたましく。爪先を床にトントン。猫がのどをころころ。鋏をちょきちょき。歯をシーシーと。笛をビリビリビリッと。鞭もちをひゅうっと。床をハイヒールのかかとでこつこつ。指の関節をぼきぼきと。宿命という言葉が頭の中で警報を=鷺沢。トラックがけたたましくクラクションを=原田康。猫がぐるるると喉を荻野。が窓をばたばた=堀。革靴をきゅきゅっと武田祭。幽をがちがちと“林美)。▼がたがた鳴らす(椅子を。奥歯を)。▼かちかちと鳴らす(茶碗を。歯を)。▼舌を鳴らす(不満そうに。タンと。ちえっと)。▼剪定鋏せんべいを鳴らす(ちょきんと。ばちんばちんと)。鼻を鳴らす(くんくん。ふんと)。▼指を鳴らす(ばちんと。ぼきぼき)。風がマストを鳴らして吹いて行く。靴を鳴らして歩く。喉を鳴らして水を飲む。肉欲の牙を鳴らして集まってくる男たち=有島。いらだたしげに床を鳴らし続ける。打ち鳴らす(軽く両手を。警鐘を。鋭い風が窓を。半鐘を。大勢で大談をやかましく。手のひらをばんと)。かき鳴らす(ギターを。三味線を)。ぎりぎりと歯を噛み鳴らす。弾き鳴らす(ギターを。琴を)。吹き鳴らす(風が空を。管楽器を)。 **なりひびく**【鳴り響く】▼鳴り響く(サイレンが。進軍らっぱが。絶望の鐘が。陶酔の紋が。発車のベルが。雷がごろごろ。豪勇をもって。声が頭の中で。館内に非常ベルが。汽笛がおどろに。音楽ががんがん。大音響のように。風と木のざわめきが"綾辻。太鼓の音が単調に=福永。名が雷のごとく敵味方双方のうちに"山田美)。▼音が鳴り響く(プロペラの。耳をつんざくような谷村)。けたたましく鳴り響く(サイレンが。電話のベルが)。▼声が鳴り響く(甲高い。破れ鐘仲址のような小島)。遠鳴りが耳の底を通るように川端。天をどよもして勝岡ひ社の声があがる=山本周。鳴り渡る(錘が。汽笛が。号砲が。太鼓が。発車のベルが。風が空中で。声が木枯らしの如く=山田風)。松林が蕭々しいいと鳴りわたる=山本周。 **なる**【鳴る】▼鳴る(夏々妙っと木剣が。がんがん鐘が。きいんと耳が。凄封さじく雷が。発車のベルが。不意に電話が。鐘がこおんと。剛勇をもって。声が耳元で。砂がさくりと。喉がごくりと。喉がごろごろ。喉がぜいぜい。喉がひくっと。葉が蕭々しいと。腹がぐうっと。胸がきゅんと。がさがさと紙が。かさかさと枯れ葉が。風に窓ガラスが。がちっとコップが。じゃんと半鐘が。ちょーんと柝が。ちりんちりんと鈴が。ファンファーレが。窓枠が震動しガラスが。海浜の松が用にげに。銃声が立て続けに。ビストルが続けざまに。ひっきりなしに。足元で落ち葉がかさかさと。板張りの橋がみしみし。ウインチがガラガラと。奥歯ががちがちと。おなかがぐうぐうと。風がひゅうひゅう。汽笛がボーボーと。草がざわざわと。靴がキュウキュウと。蛍光灯がじりじりと。氷がびりびりんと。木枯らしがごうごうと。笹がさらさらと。汁がたぶたぶと。心臓がどきどきと。竹やぶがザザザッと。ドアがバタンと。戸がきぎいぎいと。搬旗がりがばさばさっと。暖簾のもがばたばた。ファックスがかたかた。ブザーが断続して。節々がこきこき。ぶらんこがきいきい。骨がぼきぼきと。松林が風に激しく。霧笛がボーッと。雪がきゅきゅっと。廊下が歩く度ぎしぎしと。恐怖の去らぬ胸の慄、ふぅえでがくがくと歯が!佐多。ザザザッと野分のように草が吉川。ドロドロと妖しい太鼓が"深沢。はじけるようにトランベットが柴田翔。天狗風に炊くが森々にらと空に=獅子。赤城おろしが吹き渡って寺の裏の森が潮封しのように=田山。打ちふった杖がぴゅっとするどく=光瀬。奥歯がカスタネットのように奥田。 <808> 風がひょうひょうと巨大な笛のように=日野。空襲のサイレンが追いかけるようにせわしく極。心の中で乾いたものがカサカサー安岡。梢が笑いさざめくように長塚。梢の悲鳴が渦巻く白い闇の奥で甲高く=日野。叱責が頭上に激しく"萩原葉。心臓がエイトビートで"小林信。ストーブの上でやかんがしゅんしゅん小川。蟬せんの声が海のように光瀬。太鼓が迫るように押し潰っょした音で幸田文。タンバリンが人の神経を逆撫にかでするようにチリチリと=森環。田んぼでずいぶん穂を重くした稲がさらさら“三浦し。銅壺とうで沸いている湯がチンチンと=阿部。時計のベルがけたたましく林美。のどが笛のようにビイビイ=灰谷。鋏祉の音がちょきちょき“夏目。不安に胸がときどきと=石川。真竹の厳ゃぶがさやさやと宮本百。胸が早鍮のように萩原葉)。帯が鳴る(きしきし。きゅっと)。▼かすかに鳴る(木の葉が。鈴が)。▼風に鳴る(葉扇が翌々と。ガラス戸がカタカタと。窓枠ががたがたと。茶褐色に枯れたくぬぎの葉がかさかさと井上靖)。▼きしきし鳴る(博多の帯が。骨が)。▼きしぎし鳴る(床が。歪ゅがんだ戸が)。▼ころころと鳴る(雷が。下腹が)。▼ちゃらちゃら鳴る(鍵が。鎖が)。言葉が胸に余韻となって鳴っている=加賀。携帯電話が鳴り出す。ノックの音が執拗に鳴りつづける。胸の中で早鐘が鳴り始める。鳴りが(いい。悪い)。朝から電話が鳴りづめの有り様。拍手がしばらく鳴りやまない。太鼓を鳴りとどろかせる。▼鳴りやむ(汽笛が。サイレンが)。悪名が鳴りとどろく。勇武をもって鳴る港風。博学をもって鳴る。 **はんきょう**【反響】反響が(大きい。起こる。返ってくる。小さい)。思いがけない大きな反響がある。反響に(気をよくする。力を得る)。反響を開いて歩く。物凄い反響を起こす。▼反響を呼ぶ(社会的な。国際的に)。▼反響する(坑内に音が。足音が天井に。靴音が階段に。咳せるが部屋に。声が耳の奥で。笑い声がコンクリートの壁に。わめき声がわんわんと。哄笑こうしがからからと部屋の中に梗。想いがオーケストラのフォルテシモの演奏のように僕の内部で=福水)。 **ひびかせる**【響かせる】▼響かせる(風が松籟しいを。森音だけを。露骨に失望の声を。乾いた音をからからと。シュプレヒコールを高々と。滝の音を淙々そうと。蹄必っの音を夏々つと。いらだたしく靴の鋲びょを床に加賀)。鉦鼓しいの音を響かせる。 **ひびき**【響き】響き(万丈の炎の。空に吸い込まれていくような笛の音の爽やかな高価。どんな陰気な顔も綻にばせてしまう太平な"小島。笛よりももっと細くかすかな「松谷。胸の中にしっとりと落ちていく静かな黒井。淋しい波音のような声の吉本。底のほうで鳴っているような重い海の=原田戚。腸址らにしみ通るような気味の悪い=福氷。フォークソングのように胸に語りかけるような親しい=浅川。耳に突き刺すような=井伏。胸を押しつぶすようなシュプレヒコールの三田)。梢をゆるがす風のひびき三島。響きが空気をびりびりさせる。声の響きが耳底に残る。語調に悲しみに近い響きがこめられる。言葉にぞんざいな響きが出る。言葉に冷笑の響きが漂う。滝の響きが聞こえる。ロックの響きが店内に満ちる。風がガラス窓を叩く冬を感じさせる冷たい響きが深夜の病棟に音のない余韻を残して流れる=里密有。言葉の硬い響きが少女の歯に噛み切られた青草のように鋭く匂う柴田翔。発動機の響きがびりびりとあたりの空を鳴動させる"大佛。魅惑的な響きがラジオから流れる阿久。胸に春のような響きが残る人米。りんりんというかすかな響きが耳に涼しい=福永。▼響きがある(言葉に親身な。声に焦燥の。語調にニヒルな。笑い声に卑猥いゃな。口調にせっぱつまった。言葉に底意地の悪い。声音にほっとした。問い方や返事の受け方に意地悪な有吉。声に一種独特の人を威圧するような"五木。声に非難するような藤沢。痰たんのからんだような声に苦痛を堪こらえているような=高井)。響きがこもる(声に不安げな。声に楽しくてならないような志茂田)。町の響きが遠く伝わってくる。きが混じる(声に不安げな。声に不審な)。声が低く冷たい響きに満ちている。不謹慎な言葉の響きに気がとがめる=光原。聞き心地のよい柔らかな響きの声。どことなく物悲しい響きの曲。音をたてて流れている輝いた水みたいなきらびやかな響きのある言葉"大庭。空疎な響きを与える言葉。声が悲痛な響きを帯びる。声に不穏な響きを感じる。遠い汽車の響きを閉く。ハイカラな響きを耳に伝える。陽気な響きを帯びた声。足音が何ともけだるそうな投げやりな響きをもって移動する=曽野。甘い響きを持った女の岁少枕。海がゆるやかな鈍い響きを単調に繰り返す椎名崎。金銭への執着が児もしむような響きをたてる心"野間。乗り越えていく時代の響きを頭上にひらめくように開く=本庄。▼響きを立てる(潮が岩に激したけだけしい三島。鈴の音が冴えたり有島)。▼響きを伝える(波の音がながく遠くざわりざわりとしぶくような本庄。歯の間をようやくに洩。れる声が悲しい"長塚)。響きを持った声(凛りんとした。ぎくりとするような重い=新田)。扉をあける音が氷でも砕ける響きのように聞こえる=小林多。響きのない乾いた声。音響(金属板を打ち合わせたときに似た鋭い黒井。空気中に放電してゆく低い唸ったり声に似た言行)。 **ひびきわたる**【響き渡る】▼響き渡る(女の悲鳴が。歓喜の歌声が。激しい気合が。声が山の中に。声が凜りんと。一番潟の声がさわやかに。音がスピーカーから。あたりをとよもすようにエンジン音が=高井。王の登場を告げるらっぱの音が高らかに=あさの。ぐしゃうという鈍い音があたりに若竹。靴の音がやけに空ろに森瑙。ソプラノが夕凪砂の海に谷崎。 <809> ドラムの音が部屋じゅうに=船戸。バイブオルガンが朗らかに=加賀。待ってましたの掛け声が小屋中に=高橋克。汽笛の尖とがった響きが灰色に曇った水の上にけたたましく“田山。声が獣の咆哮のように重く激しく=あさの。声が怒号のように吉本。太鼓の音が明るく澄んだ空へ=栗本。平手打ちの音がロビーのドーム全体がシンバルになったかのように=島田)。▼音が響き渡る(発破の。ガラスの割れる。家鳴りのような=宇野利)。喚呪いたる(合唱が起こる。ホルンの響き。らっぱの音色)。咧悦と(冴え渡る響き。笛を吹き鳴らす福永)。咲々はらたる(歌声。トランペットの音。喇叭的っの音が起こる!柴田外)。 **ひびく**【響く】▼響く(鳥からの鳴き声が。裂帛聞いの気合が。音が辺りに。音がお腹に。音が谷間に。声が家中に。声が応接問に。声が車の中に。声が部屋に。言葉が幼げに。言葉が空虚に。言葉が陳腐に。忠告が胸に。声が冴えて。声が頭上から。声が朗々と。言葉が力強く。砲声が股々んと。耳にがんがん。耳に快く。声に投げやりなものが。ぶるんぶるんと爆音が。闇の中に声だけが。威勢のいい声が店内に。音が脳天にやけに。音がひっきりなしに。口ぶりが嫌味に。声が薄暗がりの中に。声がモニター越しに。言葉が耳のうちに。花火の音が夜空に。ピストルの音が耳に。諍妙だいの声が家の中で。エンジン音が心地よく。音が絶え間なく。音が途方もなく高く。声が低くこもって。声が耳にがんがんと。声が耳に心地よく。声が玲鹿放ふとして。言葉が胸に強く。バーンと乾いた音が=奥田。ウォーッというトキの声が満開の桜を散らさんばかりに阿久。ガラスの砕ける音が夜の底に=原田糸。声が森閑とした家の中に=獅子。言葉が心の深みに=野間。話し声や笑い声が朗らかに=円地。ヒステリックな声が会場に=篠田。音吐が梁はりの座もりも動くほどによく司馬。管楽器の音が途方もなく甲高く"石坂。甲走った声が脳天までぴんと徳田。高速道路を絶え間なく走る自動車の音が渓川掀旅のようにとうどうと三浦愛。声がいつになく冷たく浅川。言葉が心にずしんと赤瀬川。騒がしい音と声が打たれた頬の火照りにひりつくように萩原爽。水車の音がコットンコットンと佐藤春。鋭い太刀風が宙を切って"福永。滝の落ちる音が戦国の騎馬隊のごとく=高橋。小さな震える声が静かな部屋にしみとおるように"泉優。咳やぶいた声がひとりきりの店の中にシンと"鷺沢。電話の音が遣はうように村。どくどくと脈が耳の中で=近藤)。スリッバの音が滲しみこむようにひびく高橋和。心に響く言葉。がんがん響く大声。ごとんごとんと響く水車の音が単調に聞こえる=徳田。▼響く声(車いっぱいに。凛りんと。鼓膜にびんびん中沢)。虚っっろに響く(音が。言葉が)。音が響く(頭にがんがん。けたたましい。槌の。流れの)。▼声が響く(元気な。尊大な。甲高い。野太い。ひび割れた。朗々とした。わあんど人の。スビーカーから。がらんとした広土間に!幸田露)。▼腹に響く(衝撃が。じいんと)。▶びんびん響く(叫び声が頭に。耳に)。▼胸に響く(力強く人々の。読む者の)。▼笑い声が響く(豪快な。気味の悪い)。▼響いてくる(声が耳底から。怒鳴る声が筒抜けに。小川のせせらぎが遠くから)。胸にひびくような言葉"石川。地の底から響くような声"五木。腸加5に響くような鋭い声=山岡。▼響き返る(足音が静かなあたりに。手を打つ音ががらんとした部屋に)。雷鳴がとよむ。 **ふうりん**【風鈴】風鈴が(思い出したように鳴る=渡辺。チリンチリンと静かに鳴る=永井荷)。ガラスの風鈴が澄んだ音を忙し気に立てる藤枝。▼風鈴が鳴る(涼しげに。りんりんとせわしく=梅本)。風鈴の(音色音を聞く笹沢。風鈴みたいに笑って寝転ぶ=岡田。城)。グラスを回転させて氷片が立てる風鈴のような **ふみならす**【踏み鳴らす】▼踏み鳴らす(どしんと床を。ばたばた足を。片足をとんと。床をかつかつと。床をどんどんと)。▼踏みとどろかせる(足音を。橋板を)。とたどたと床板を踏み鳴らす音が近づいてくる=熊仓 **ベル** ベルが鳴る(リリリンと。空気を引き裂くように電話の高橋和)。ベルが気短にチリンチリンと鳴る=二葉亭。ベルの音で目を覚ます。けたたましいベルの音が鳴り響く。背後から自転車のベルの音が聞こえる。執拗にベルの音が耳に粘り着いて眠りを妨げる=山田詠。電話のベルの最後の一音が夜の闇に吸い込まれる=村上春。火災報知のベルのように野太く一本調子の声=田島。ブザーを(押す。鳴らす)。 **みみなり**【耳鳴り】▼耳鳴り(こめかみのあたりから騒音が湧き上がってくるような=林京。耳の中で虫が鳴いているような三浦綾)。耳鳴りが(少しずつ渉れて行く。淋しがり屋の猫のように決してそばを離れない=小川)。相手の消息が不明になって耳鳴りが起きるほど不安。有吉。耳の奥で声が耳鳴りのごとく響く中沢。油蟬らぶらが集団で鳴く声が一きわ高く聞こえ耳鳴りのよう阿久。雨の音が耳鳴りのように絶え間なく頭の奥で響く。小川。声が耳鳴りのように響く=横山。耳鳴りみたいな羽虫の音を聴きながら葦原はしを抜ける!奥泉。幻聴が聞こえる。幻聴に悩まされる。じいんと耳の底に音が聞こえる。▼耳が鳴る(がんがん。わんわん)。耳がきいんと鳴る。 **ものおと**【物音】物音がごうっと響く。遠くの物音がかすかに聞こえる。とすんと物音がする。大風の海のような凄すさまじい物音が河原の石さえ走らせそうにどっと沸き返る=芥川。物音にびくっとした様子でを聞く。かすかな音さえ騒がしすぎるほど静か=連振り返る=柴田翔。鼠砂ずほどの物音を立てる=島尾。 # 匂う・嗅ぐ <810> # 20 慣れる・鍛える **あくしゅう【悪習】**▼悪習が身につく。悪習に(染まる。ふける)。悪習を(改める。根絶やしにする)。悪習慣が(つく。抜けない。身につく)。悪風に染まる。悪弊がはびこる。悪弊に染まる。悪弊を(改める。一掃する)。社会の病根を探る。▼弊習(旧来の。積年の。男隊女卑の)。弊習を(一掃する。やめる)。弊風を(一掃する。改革する。根絶する)。果断に陋習うしを粉砕する。旧来の陋習を打ち破る。悪い習慣をやめさせる。 **いんしゅう【因習】**▼古い因習に身動きならぬほど縛られる=川端。因習の(垢るかにまみれる。根強い田舎)。因襲が根深く心に根を張る=佐藤森。因習的な(事大主義。旧態依然の結婚=瀬戸内)。 **かたならし【肩慣らし】**▼肩慣らし(試合の前の。本番前の)。肩慣らしにキャッチボールをする。肩慣らしの軽いキャッチボール。ブルペンで肩慣らしをする。グラウンドで肩慣らしをする。試合の前の足慣らし。足慣らしの散歩。ウォーミングアップを(終える。済ませる)。 **ききなれない 【聞き慣れない】**▼聞き慣れない(声。言葉。単語。名前。訛なまり。メロディ)。なじみのない地名。耳遂い(言葉。表現)。耳慣れない(声。言葉。単語。名前。バーツ名。名称)。 **ききなれる【聞き慣れる】**▼開き慣れた(声。言葉。名前。訛なまり)。朝な夕なに聞き慣れる。名前に聞き覚えがある。聞き覚えのある声。 **きたえる【鍛える】**▼鍛える(足腰を。男を見る目を。肉体を。実戦で)。刀鍛冶が心血を注いで鍛えた刀官部。日常生活で鍛えた底力が花を開く=赤瀬川、鍛えられる(人を見る目が。艱難いに。骨の髄まで。心が鋼鉄のように小林多)。日頃の鍛え方が違う。鍛えられていないたどたどしい心円地。▼鍛え上げる(精神を。チームを。度胸を。技を。心身ともに。名刀に。筋骨と度胸とを鉄のように有鳥)。なまった足腰を鍛え直す。▼叩き直す(愚か者を。腐った性根を。ひねくれた根性を)。人格の陶冶。▼陶冶とぅする(青年を。人間性を)。焼きを入れた網。 **くせ【癖】**▼癖が身につく。つい昔の癖が出る。いつまでくせも子供の時の癖が抜けない=中村真。▼癖がつく(変な。髪に。買い食いの)。癖になったら困る。ついつい癖になる。癖になるといけない。癖のある(男。女。文章。投げたような笑い方大佛)。依然として独り言の癖をやめない。なくて七癖。知らず知らず昔の性癖を現す。歪ゃがんだ性癖を持つ。 **くんれん【訓練】**▼何事も訓練が必要。訓練に励む。厳しい訓練に打ち込む。昼夜を分かたず訓練に没頭する=坂口。十分に訓練を受ける。日頃から訓練をしておく。▼訓練する(使い方を。兵隊を。労働者を。実地に)。老化した体に鞭打沁ちって猛訓練を続ける=沢木。演習(大規模な。軍隊の)。演習が終わる。調教する(犬を。馬を。猛獣を)。特訓に(耐える。次ぐ特訓)。特訓を受ける。選手を特訓する。 **しきたり【仕来たり】**▼しきたりに(従う。しばられる)。古いしきたりに執着する。しきたりの枠をはめる。しきたりを(墨守する。守る。破る。ないがしろにする)。業界のしきたりを身につける。郷に入りては郷に従え。家風に(合う。従う)。堅苦しい家風に反発する。旧習に囚とらわれない斬新で個性的な発想浅川。旧習を墨守する。旧套いからを(脱する。守る。破る)。昔ながらの良風が次々と絶えていく。良風美俗を(害する。誇る)。江戸時代の野蛮な遺風水井荷。前代の遺風から脱却する。遺風を(継ぐ。守る)。慣習が土台から崩される熊合。慣習にがんじがらめに縛られる。故郷の慣習に従う。慣習法を成文化する。▼慣例(社会の。古い)。慣例に従う。慣例を(守る。無視する)。故実に(明るい。かなう)。田舎の風習にとまどう。その国の風習に従う。風習の起源は非常に古い。風習やしきたりに通じている。 **しゅうかん【習慣】**▼身にしみついた習慣。習慣が(力を及ぼす。定着する。根を張る。身につく。いつとはなしに出来上がる)。何百年来の習慣がこびりつく。礼儀正しい日頃の習慣が水のように興奮のあとを浸す"本庄。習慣に(従って生きる。慣れる。反する)。いつもの習慣に戻る。島の習慣に親しむ。平穏と倦怠と日常的な習慣の中に埋没する=瀬戸内。考える習慣を身につける。長年の習慣を捨てる。頑迷に昔からの習慣を守る=井伏。習慣的な(生き方に反願いする。絆から解き放たれる=有局)。習い性となる。散歩を日課にする。毎日規則正しい日課を続ける。長いサラリーマンの生活の中でいつのまにか身につけた習性"小林久。習性が身につく。習性を持つ。 **しゅぎょう 【修業】**▼修業が足りない。修業に(励む。身が入る)。息子を修業に出す。魚屋の商売の合間を縫ってラーメン修業に精を出す「ねじめ。料理に取り憑っかれていると言っていいほど板前修業に逃進している三浦し。まるでレールが敷かれていたように鮨屋に修業に入る=伊集院。修業の旅に出る。修業を積む。始める)。修業する(学間を。航海術を。料理を)。一朝一夕でなしうる修業ではない。 **しゅぎょう【修行】**▼人間は棺沿っを覆うまでが修行"山本周。修行に(明け暮れる。肝胆を砕く)。修行のため断食する。諸国の道場を回り歩いて修行をしてくる池波。修行を積む(一心不乱に。寺で。武芸の)。仏法を修行する。座禅を組む。修行一筋の日々に入る。仏道修行を志す。▼修める(仏法を。道を、身を)。朝晩仏壇に向かってお勤めをする。祈りの行に参加する。 <812> **あくしゅう**【悪臭】名状しがたい凄すさまじい悪臭"柴田錬。悪臭が(漂う。立ちこめる。満ちる。家中に充満する)。身内から憎悪とも厭悪がんともつかぬ悪臭が噴き出す本庄。悪臭が鼻を(襲う。つく)。悪臭に(悩まされる。鼻を覆う)。たまらない悪臭に吐き気を催すかんべ。悪臭を放つ。魚の腐ったような臭気!遠藤。刺激性の臭気が鼻を祈っく“新田。部屋全体に管すえたような臭いが籠こもる森村。悪臭芬々ぶんたる腐った海老えび獅子。▼臭い(嫌な。魚の生ぐさい。胸がむかつく。食べ物のすえた。鼻を突くような)。 **いしゅう**【異臭】▼異臭(かび臭い。我慢のならない)。異臭が(あたりに漂う。鼻を襲う。強烈に立ちこめる)。手袋に異臭が染みつく。鼻腔びこに異臭がまとわりつく。ローソクを吹き消したあとのしぶったいような異臭がだんだん薄らいで行く=山本有。焦げつくような異臭が鼻を突く=山本有。 **かおり**【香り】香り(さわやかな。ふくよかな。匂やかな肌の。馥郁いくたる。甘ったるい花の。こっそり忍び寄るようなしめやかな谷崎。ゴマ油のゆたかで芳烈な=開高。夜の森のふくれあがる豊かな大江。したたるような新緑の=本多聊。中国茶の息苦しいくらいにきつい小川。どことなく雨上がりの植物園を連想させるしっとりした=小川。人の心を誘いこむようないい三好達。古い忍従と知性の結晶が徐々に崩壊していくときの嘆息のような=高橋和。胸一杯に吸い込みたくなるようなすがすがしい"小川)。香炉に焚いた名香の薫り“三島。梅の香かぁをぬくもりで溶かしたような白粉おいの香。泉鏡。香りが(体を包みこむ。鼻先を漂う。ほのかに漂う。一段と濃くなる。鼻の先をかすめる。部屋じゅうにみなぎる。ゆるやかに漂う。狭い空間いっぱいに広がる若竹。需もゃのように揺らめきながら闇の中を立ち上る=小川)。夜気のなかを微かすかな潮の香が流れる藤枝。梅の花のかすかな香りが流れてくる。おいしげな香りが部屋を郷う。湖の香りがぶんと鼻をくすぐる。強い香りが鼻をつく。濃厚な香りが立ちのぼる。ふわっと香りが立つ。ほんのりと湯の香りが通う。緑の香りが快い。湯上がりの香りが残る。甘々しい香りが蜜のように濃くたちこめる藤枝。甘ったるい香りが泌しみこんだような声鷺沢。悔恨の仄日のかな薫りがただよ?~福永。澄んだ海の色を連想させる男性化粧品の香りがうっすら漂うに小川。鼻翼をくすぐる若葉の香りが満ちる宮本高。ほんのりとした甘い香りが夜気に混じる=黒井。香りが漂ってくる(風に乗って。どこからともなく)。香りで部屋を満たす。香りと味が口じゅうに広がる。脂粉の香りに包まれる。あたりの空気が噎むせるほど高雅な香りに満ちる=山本周。冬の花のように白く清冽な冷たい香りに匂い立つ女性"円地。木の香りの漂う家に住む。新鮮な香りのぶんぶんする野菜の有吉。味も香りも申し分ない。香りを(うっとりと嗅ぐ。ゆっくりと吸い込む)。風がほのかに木の香りを伝える。空気が木々の芳しい香りを運んでくる。デミタスのコーヒーカップの中でエスプレッソが濃厚な香りを放つ=森瑞。自暴自薬のような香りを麻炒らから発散する「泉受。森の冷たい夜気の青い香りを吸いこむ"開高。湯上がりのような香りをほのかにひろげる"古井。湯ぼてりの残っている肌の香平岩。強い海の香が襲ってくる。脂粉の香に迷う。花の香に酔う蝶小松太。潮の香を含んだ風。香り高い(花。文学)。色の白い山百合の花のようにやさしく香り高い感じの女性"石川。 **かおる**【香る】▼香る(樟脳いうが。花が。若葉が。晏油の匂いがかすかに)。風薫る初夏。菊花蒸る佳日。ほのかに土の匂いが香り立つ=池井戸。 **かぐ**【嗅ぐ】▼嗅ぐ(地面を。体臭を。ミントの香りを。犬の仔のようにくんくんと顔を寄せて=福永)。▼嗅がされる(おならを。麻酔剤を)。鼻薬を嗅がせる。鼻面を嗅ぎ合う。しきりに鼻先を動かす。鼻をくんくんさせる。嗅ぎまわる(子供の部屋を。情報を。身辺を。くんくん。よく利く鼻で)。イヌのようにそこらをかぎまわる=畑。盛りのついた雌犬みたいに男の周囲を嗅ぎ回る=森玩。 **きゅうかく**【嗅覚】▼嗅觉(鋭敏な。正常な。鋭い)。嗅覚が敏感になる。独特な嗅覚が働く。嗅覚に訴える。嗅覚を(奪う。刺激する。とらえる)。野獣の嗅觉をもって追い迫ってくる池波。 **くさい**【臭い】臭い(息を我慢する。演技。台詞。仲。ものに益)。屁、がたまらないほど臭い=真継。臭みが鼻を突く。臭みのある演技。きな臭い(状況。におい。場所。話)。生臭い(魚の臭い。臭気を放つ。話。浜風。世界に放り込む。臭いが立ちこめる)。 **こう**【香】香の煙が立ちこめる。香を(聞く。くゆらせる。捧げ持つ。焚たく。立てる。絶やさない)。伽羅哈。の香を衣裳に焚きこめる柴田練。乾し草のような甘い匂いの香を焚く人間。香をたきしめる(衣に。白装束に)。香煙が(静かに立つ。縷々るると立つ。立ちのぼる祭壇)。記憶の香煙が立ちのぼる=開高。伽羅と香箱を仏前に供える。名香を聞かせる。 **こうすい**【香水】甘い香りの香水。香水が強く匂う。香水の(香りが漂う。きつい香り。匂いで息が詰まる。匂いをぶんぶんさせる)。甘ったるいような香水のかおり堀。白粉ぶいくさい強烈な香水の匂いが刺すように鼻孔を祈っく"有吉。愛は白くても伊達者らしい香水のとめきが歩きながら手もとに動く"大佛。胸の悪くなるような香水の匂いが残る林美。香水の匂いが(濃い。 <813> 鼻に届く。鼻腔びこを刺激する=乃南)。いい香水の匂いが鼻をくすぐる=庄野。香水や汗ばんだ女の肌の匂いで頭がくらくらする=阿部。香水を(すり込む。つける。振りかける。しゅっしゅっとまく)。香油を(注ぎかける。振りかける)。▼香料の匂い(きつい。蒸れて匂い立った)。ほのかに香料を匂わせる。刺激的な香料をふんだんに使う光瀬。オーデコロンが(香る。匂う)。オーデコロンを(こすりつける。振りかける)。コロンが控えめに匂う。 **こうばしい**【香ばしい】香ばしい(風味。味噌。匂いに誘われる。匂いを漂わせる)。台所からクッキーの焼ける香ばしい匂いが流れてくる三浦哲。生命を与えられたように香ばしいコーヒー=村上春。香ばしい匂い(コーヒーの。茶の。肉をあぶる。乾し草の。鶏を焼く時のような=島尾)。香ばしい匂いが(漂う。立ちのぼる。食欲を刺激する)。ブーンと香ばしい匂いが立ちこめる=飯田。芳しい(お茶。香り。匂い)。 **こばな**【小島】小鼻が(神経的に震える。せわしげに彫らみ縮む。びくびくと震える)。小鼻に(皺しゃを寄せる。汗をにじませる)。小鼻を膨らませて文句を言う。自慢げに小鼻をうこめかす。得意そうに小鼻を開いてみせる。端正な泉拠と写。鼻翼に汗が光る。鼻翼をくすぐる若葉の香り。得意げに鼻翼を動かす。 **しゅうき**【臭気】臭気(嘔吐感祕いとと頭痛を併発させずにはおかないような強烈な筒井。息が詰まるほどの"有吉)。臭気が(鼻につく。鼻を打つ。あたりに立ちこめる。一段と濃くなる。つんと鼻を突く)。大人の男の臭気がこもる。ぶーんと異様な臭気がする。便所の臭気が鼻を刺す。風に温泉地独特の臭気が混じる綾辻。鼻がもげそうな臭気が立ち上る栗本。かすかに臭気が漂う。鼻を曲げるばかりの臭気がただよう柴田鍵。臭気に(息を詰まらせる。人を絶息させ感じ取る。臭気芬々ぶんたる演技。 **たいしゅう**【体臭】▼体臭(あからさまに汗の臭いと判ぉからない程度の女の高樹。オレンジとチーズを交ぜたような女らしい=胡桃沢。枯れ葉のむれたような子供の島尾。畳の匂いのような島尾。日なたで蒸れる薬もらのような甘いが鼻へむんとくる子供特有の=開高。乾し草のように香ばしい=岡本。山の瘴気礼記か何か特別な植物の髄液を思わせるような高樹)。体臭が(かすかに匂う。濃くたちこめる。鼻先をかすめる。むんと鼻をつく。棘とげになって鼻腔にを刺す=安部)。甘い体臭が鼻をつく。政治的な体臭が周囲に発散する。強い女の体臭が匂う。冷たい香水と温かそうな体臭の入り混じったにおい!安岡。体臭を放感に嗅ぎ取る。笸すえた体臭を放つ。塀や門に老人の体臭を思わせる盛りを過ぎた生活の緩慢と懐旧がある竹西。強く惹ぃきつける力を虾炒らじゅうから体臭のように発散する=大江。口臭が(気になる。鼻先に漂う)。汗臭い(嫌な臭いが漂う。シャツの匂いに鼻を曲げる=伊集院)。垢ぁぁじみた汗臭い衣服。汗臭くてかなわない。吐き気を催すような汗臭さ=山崎。汗臭さがぶんと鼻をつく。汗臭さに(顔をしかめる。閉口する)。腋臭如きが(強い。臭う。ひどい)。怪い腋臭がある。腋臭に悩む。腋臭の強い女。 **におい**【匂い】▼匂い(香水と腋臭やきとが交じった甘酸っぱいようなほのかな谷崎。橘咲誌の花よりも涼しい微妙な=芥川。雨上がりの川原のような小川。しぼり立ての牛乳にレモンの花を一房投げ入れたような若い娘の体の"岡本。湿った落ち葉をむりやり焚たきつけたような"村上春。麝香しか何かのように重苦しい芥川。少女のみずみずしい肌の福永。陽にむれた枯れ草に似た刺すような=真継。南の果物の馥郁たる=三島。やわらかに頬をなでる甘い=住井)。匂いが(着物に染み込む。つんと鼻に来る。鼻腔10にをくすぐる。ゆっくりと渦を巻いている。風に乗って通り過ぎる=山口。むうっと鼻を襲う~伊藤整)。潮の吹きだまりのような磯のにおいが家の周囲にもたれこむ。いい匂いがぼうっと立つ。髪の匂いが鼻をくすぐる。芸術的匂いが高い。消臭剤の匂いが鼻先をかすめる。濃厚な匂いがあたりに充満する。若葉の匂いがあたりに満ちる。行為に罪の匂いが付きまとう福永。少し尖とがったような髪の臭いが顔を包む"黒井。土の匂いが黒い地面から冷え冷えと湧いてくる=佐藤春。人間の醜悪な匂いがむんむんする=黒黒岩。ぬれた朽ち葉の匂いが鼻を打つ"石川。花の匂いが人を慰めるように甘い=福永。闇のなかから街の匂いが押し寄せてくる=向田。百合の匂いがどこからか忍んでくる吉川。臭いが(一段と濃くなる。風とともに寄せてくる。うっすらと澱ょとむ=黒井。鼻の先にまとわりついて離れない=中沢)。ペンキの臭いが鼻につく。いい匂いと嫌な臭いが混じり合う桐野。嫌な臭いが鼻腔をつく夏樹。異様な臭いが鼻を打つ。甘い匂いに酔う。むせるような匂いに包まれる。垢ぁかと脂の臭いにまみれる。腐った肉の臭いに辟易する。倦意削以の匂いのある少女。つんと湿った匂いの夕方。エロティックな匂いのする民苔甲小林信。懐かしい匂いのする我が家-熊谷。犬が日向くさいにおいを放つ=田辺。髪の匂いを懐かしむ。木の匂いを胸いっぱいに吸いこむ。潮の匂いを乗せた風。秘密の匂いを振り撤まく。水の匂いを含んで吹き渡る風。安らぎの匂いを身にまとう。翻訳的な匂いを多分に持つ文章=岩淵。臭いを(始終気にする。鼻が記憶する)。吸い殻がいやな臭いを立てる。▼匂いを発散する(強烈なむせるだけの悪霊が躍る=有吉)。かすかな臭気も敏感にかえる。全身から生温かい開高)。▼匂いをぶんぶん臭い(鼻を刺す灰燼いいの。むっとみなぎる汚物の。頭が痛くなるようなきつい=阿部)。鼻の粘膜を細かく裂くような十六七の男の子の汗と身体のにおい"富岡。 <814> # 匂う・嗅ぐ んさせる。女の匂いをむんむんと撒き散らす=船戸。匂いがする(計画的な。言葉に偽りの。ぷーんといい。むんと雑草の)。臭いがする(少し汗の。ぶんと焦げつく)。肌が新鮮な匂いのように白くて滑らか=川端。鼻がひんまがりそうに強烈な消毒臭中島み。強い匂い(馴染なじみのない。頭蓋の裏側がじんと痺しびれるような人間)。野薔薇60ばの中へ顔でもつっこんだような強い匂いにむせる吉川。匂いがだんだん強くなる。匂いが籠にもる。匂いが部屋の中にむうっと籠もる谷崎。息苦しいほど雑多なにおいがまじり合ってこもっている=日野。甘い香りと汗の匂いとが醸酵したように籠もる谷崎。臭いが家中にこもる。おいしそうな匂いを家中にこもらせる。臭いが染みつく。臭いが(肌に染みつく。服地に染みつく。部屋に染みつく)。煙草の臭いが染みつく。生活の匂いが染みつく。▼匂いが漂う(血の。部屋にいい。味噌汁の。夕方の。林檎こんの甘い。硫黄の壁もせるような濃い=原田感。どこか作り事めいた=貫井)。匂いが(静かに漂う。鼻先に漂う。ぶんぶん漂う)。インクと紙とカビとがまじった本独特の匂いがただよう。内海。にんにくの匂いが細かな霧のように辺りを漂う村上卷。便所の臭いがほのかに漂う。▼匂いが漂ってくる(かすかに。ぶんといい)。大人の女の匂いを漂わす。匂いを漂わせる(時代の。粥かゅがうまそうな)。匂いが立ちこめる。食欲をそそる脂のにおいが部屋の中にたちこめる三田。匂いがむっと立ちこめる。秋の夕方の匂いが濃くあたりに立ちこめる=里見。煙草の匂いが微かすかに香のように立ちこめる=福永。強烈な臭いが立ちこめる。夜の匂いが立ち上る。甘く優しい匂いが夢のように立ちのぼる=小川。木の芽の匂いがむんむん立ちのぼる=大江。臭いがじわじわと立ちのぼる。匂いが流れる。女っぽい臭いが身体から流れる=中沢。匂いがほんのりと流れる。廊下を夕食の匂いが流れる。くすぐったいような匂いが鼻先へ流れて来る=中沢。どこからか臭いが流れてくる。匂いが広がる。匂いが(店内に広がる。部屋中に広がる)。においがアメーバみたいにどろっと広がる小川。血の匂いが広がる。▼匂いを嗅ぐ(果物の豊かな。季節の。鼻先で。くんくんと動物のように“小池)。匂いを嗅ぎつける。不正の匂いを嗅ぎ当てる。匂いを嗅ぎ取る(盗みの。悲劇の)。 **におう**【匂う▼匂う(薄く化粧が。新緑の葉群もが。ぶんと線香が。髪がかすかに。声にいたわりが。しっとりした湿気で山が佐多。むっとする土の香りが本庄。鼻に突き刺さるように=水上)。猫の类ふんが臭う。犯しがたく匂う気品!瀬戸内。匂うばかりの(美しさ。女らしさ。柔肌)。▼匂い立つ(女の生活が。草のいきれが。得も言われぬ優美さが。気品が体全体から。白味噌が焦げて)。においたつようにあでやかに笑う檀。匂うような(笑みを浮かべる=室生。陽射しを浴びる=池田)。ふっくらと匂うような若さ川端。高貴で端正で匂うように美しい=倉橋。花が咲き匂う。においこぼれる(深沈たる風情が山手。嬋娟せんたるなまめかしさが=山手)。俗具芬々ふんたる僧侶。俗具芬々の野心の渦"山岡。芬々たる体臭をまき散らす。男臭芬々という男くさい男田辺。 **のこりが**【残り香】▼残り香(かすかな。しめやかな。ほのかな。線香の)。残り香が(漂う。ふんわりと漂う)。立ち去った人の残り香を慕う。花の残り香を楽しむ。移り香が(する。漂う)。移り香を持って帰る。 **はな**【係】鼻(形のよい。あぐらをかいた。つんと上を向いた。指でつまんだような小さな向田。恰好ひつよくとがった白い=伊藤整。小鳥の呪いのようにすんと尖とがった。光原。食虫類のような長い大岡。象牙彫りのような「野上。肉の薄い透きとおるような谷崎。立派な建築物のように秀でた八谷崎)。鼻が(利く。てかてか光る。低い。あぐらをかいている。じんじんと痛む。ひくひくと動く。犬のように鋭くなる菊池。折れそうなほどの寒風"高橋三。石榴のように赤く裂ける=真継。つまったような声=米山)。近所に鼻が高い。白い恋ねぎのように長い上品な原が顔を柔和にひきのばしている=円地。鼻から(荒く息を吐く。血が流れる)。声を鼻から抜く。鼻で(笑われるのが落ち。笑うためにできているかのごとく鼻孔が大きく横に拡がっている=筒井。笑うように相手の意見を一蹴する=辻仁)。ふふんと鼻であしらうような受け答えをする=乃南。鼻であしらう(弁明を。馬鹿にしたように)。鼻で笑う(冷ややかに。ふんと。自嘲するように)。鼻と口を手で塞ふさぐ。鼻に(脂が滲にじむ。なじんだ臭い。抜ける声。汗の玉を光らせる。逃しわを寄せて笑う。詰まるような笑い声。かかった声で笑う。かかったような甘ったるい声の持ち主和久。抜くようなつぶれた声=黒井)。美しさを鼻にかけるような女性藤沢。仄ほのかな草いきれが鼻に通う徳田。幼稚園の女の先生が褒めているような操にすったい鼻にかかった声藤本。甘えた鼻にかかる声で言っ"山本周。幾分鼻にかかったうるおいのある声三浦綾。鼻につく(いい子ぶりが。思い上がりが。金臭さが。欠点が。生臭さが。胸くそ悪いほど)。鼻の(格好がいい。つけ根をもむ。脇を掻かく。通りが良くなる。皮が可愛く剣もける落合。ツンと高い取りすました感じの顔「高見欣)。目と鼻の先に陣取っている。鼻は団子鼻に近い。掛け布団を鼻まで引き上げる。目も鼻も小さな顔立ち三浦綾。鼻を(くんくん言わせる。衝っくような悪臭。つんと上に向ける。ひくひくと動かす。窓ガラスに押しつける)。悪臭が鼻をつき上げる。いまいましそうに鼻をこする。片手で鼻を選う。ぐすぐす鼻をすすりあげる。潮の香りが鼻をくすぐる。涙 <815> # 匂う・嗅ぐ 声で鼻を詰まらせる。船が岬の鼻を過ぎる。喜びに鼻を膨らませる。冷気に鼻を赤くする。犬がなれなれしく鼻をこすりつける=大江。犬みたいに鼻をひくひくさせる=野間。うまそうな匂いが鼻をかすめる!遠藤。なつかしい潮の匂いに鼻を刺激される=村松。湖が鼻をかんでるみたいにして笑う林美。めだかみたいに鼻を並べて飲む=中。▼糸を打つ(香りが。死臭が。強い臭いが。腐臭が。強く。ぷうんと)。鼻を刺す(死臭が。鉄の焼ける乾いた空気が)。鼻をすする(くすんと。ずるずると)。鼻をつままれても分からないような(暗闇。真の岡)。鼻を衝く(生臭い臭いが。むれるような暑熱の中に腐肉の匂いが今日。白粉がいにの匂いが異様に今日。線香のにおいがぷんと福永)。身をつく(かび臭さが。硝煙の。匂いが強く。薬品の。馥郁いくとした香りが。機械油の臭いがぷんと。むっとするような若い汗の匂いが黒岩)。女のむせるような匂いが鼻をつく水上。▼鼻を鳴らす(神経質に。嘲笑混じりに。嘲焼きるように。馬がぶるっと。ぐすぐす。ぐすっと。くすんと。くんくんと。しくしくと。ずるずると。ふんふんと。つまらなそうに高杉。わが意を得たというふうに=泉後。拗ねるようにくすんと佐多。ふんと馬鹿にしたように=五木)。豚のように鼻をならす小林多。鼻を鳴らして笑う。締め出しを食った犬みたいに鼻を鳴らしている風=岸田。 **はなさき**【鼻先】削ぐいだように鋭い鼻先加賀。外先で(くすんと笑う。手を振り回す。ドアが閉まる。ドアを閉じる。ふっと笑う。荒々しくあざ笑う。戸を閉たてられる。ぴしゃんと閉める。笑って受け流す)。▼燥先で笑う(軽く。馬鹿にしたように=泉優)。鼻先に(抜き身を突きつける。雪が舞い落ちる。指を突きつける。隣家の壁が迫っている。冷笑を浮かべる)。暖かい空気が鼻先に流れてくる。眼鏡を鼻先にずらす。事実をまざまざと鼻先へ突き付けられる谷崎。香りが鼻先を緩やかに漂う。大刀が鼻先をかすめる。匂いが鼻先を去らない。鼻先をかすめて(通る。飛んでいく)。ふんと鼻先で(あしらう。せせら笑う)。鼻っ面を殴りつけるように怒鳴る!小林多。鼻の先を赤くする。眼鏡が鼻の先にずり落ちる。鼻の先で扉が閉められる。鼻の先に(汗を浮かべる。突きつける。あばたがちょぼちょぼある)。臭いが鼻の先にこびりつく。結構な口が鼻の先にぶら下がっている=二葉亭。鼻面を上に向ける。牛の鼻面を撫でる。車が曲がり角のガードレールに鼻面を突き立てる=松浦。 **はなすじ**【原筋】鼻筋が(細く尖る。すっきりしている。高く通っている)。色白で鼻筋が通った美男子=山口。鼻筋に嫉しもが刻まれる。鼻筋の通った(顔立ち。美人)。鼻すじの通った目もとの涼しいきりっとした男前の若者=杉本。細面の頬紅組ゞくつんと鼻筋の通った美少年=里見。横顔の鼻筋をすっきりと照らす。 **はなづまり**【鼻詰まり】鼻づまりに効く薬。鼻づまりを(解消する。治す。和らげる)。 **はなのあたま**【鼻の頭】鼻の頭が(かゆい。すりむける)。鼻の頭に(汗をかく。玉の汗が米粒のようにのっている=角田)。「迷惑」という字が刻み込まれているような絞しゃを鼻の頭に寄せる=佐藤愛。老眼鏡を鼻の頭の方にずらす藤田。眼鏡なしでは鼻の頭も見ることもできない近視の目をしばたたく=宮部。鼻の頭を(赤くする。なめまわす。引っかく)。人差し指で鼻の頭をなでる。指の腹で鼻の頭をこする。 **はなのあな**【鼻の穴】鼻の穴が天井を向いている。鼻の穴に(指を突っ込む。ちり紙を詰める)。手持ち無沙汰の指を鼻の穴にやる=高見順。鼻の穴を(大きくする。くすぐる。黒くする。広げる。ふさぐ。ほじくる。膨らませて怒る)。嬉しげに鼻の穴を膨らませる。だだっ児のように鼻の孔ぁ♪を膨らがす八谷崎、。鼻孔が(広がる。膨らむ)。寒気で鼻孔がじんじん痛む。鼻孔にみなぎる汚物の臭い。香りが鼻孔にあふれる。生臭い空気が鼻孔に流れこむ。香りが気孔をくすぐる。期待に鼻孔を膨らませる。 **はなのおく**【鼻の奥】鼻の奥が(悲しさで熱くなる。つんとして涙がこみ上げてくる=隆。ほんのり痛むようなペンキのにおい=小川)。悔しさと哀がぁしさで鼻の奥が熱くなって瞼はぶが濡れる!奥泉。鼻の奥に(かすかな痛みが走る"内海。涙がたまってむせかえる=瀬戸内)。青春の日々のことが鼻の奥に淡い揮発性の匂いを残してかすめ去って行く=吉行。鼻の奥の髪ひだを鳴らしながら急き込んでしゃべる=黒井。 **ほうこう**【芳香】▼芳香(淡い甘さの澱粉質にんぶの匂いに松脂にいと聞花を混ぜたような独幣的な=岡本。気だるい眠りを誘う。長野。鼻に粘りつくような甘ったるい=獅子)。芳香が(充満する。漂う)。芳香に包まれる。得体の知れぬ芳香に魅せられる=吉村。橘の花が折からの日ざしにむされて芳香を伝える三好達。馥郁いくたる(梅花の匂い。花の香り)。馥郁と匂いを撒き散らす。芳烈な柚子ゅずの匂い。沈丁花比认性が考烈な香りを放つ石川。若葉がかぐわしい。かぐわしい匂いがあたりに立ちこめる。得も言われぬかぐわしい香り。全身からかぐわしい匂いが立つ。讐だとえようもなくかぐわしい匂いに包まれる=山本周。▼香気(芳醇明しな。かぐわしい)。天に匂う。漂い流れる。口中いっぱいにあふれる。室内に満ち満ちる。重たさを感じるほど密に匂う=山本周)。熟れた果実の重々しい香気が噴煙のように湧き起こる―武田炎。高い香気を放つ。 # 逃げる・避ける <816> **あとずさる**【後退る】▼後ずさる(じりじり。ひるんだように)。気押されたように一二歩後退やる小林久。誰かの目を恐れてでもいるようにおどおどとあとじさりする=三田。相手の剣幕に辟易して後じさりする=加賀。後ずさりする(気味悪いものにでも出会ったように「高樹。叩かれた犬のような眼をして"遠藤)。すさまじい情景を眼にして後退りする=吉村。うじうじと後ずさりする陰湿な性格花岡。一足後ろに飛びすさる。後退りするような姿勢で身構える=日野。▼身を引く(驚いたように。すっと。たじたじとして。気圧けぉされたように内田康)。眉間に鋭い刃でも突き立てられたかのように一歩身を退く南条。 **いえで**【家出】親の反対を押し切って家出する=氷室。妻が子供を連れて家を出て行く。▼家を出る(駆け落ち同然に。誰にも行き先を告げずに)。家出同然に上京する。家出娘を親元に送り帰す。▼失踪しっする(置き手紙を残して。仕事をすべてすっぽかして)。母親が蒸発した父子家庭。経営難を苦に父親が蒸発する。 **いちもくさん**【一目散】一目散に(家へ帰る。丘を下りる。自転車を走らせる)。▼一目散に逃げる(後ろも見ずに。恐ろしさに気でも狂ったように佐山。取るものも取りあえず奥平)。一散に坂道を駆け下りる。 **うけながす**【受け流す」▼受け流す(いい加減に。瓢箪鲶い公封状に。軽く。さらりと。泰灰肖若と。やんわりと。しとやかに人々の物好きらしい視線を有島。毒を含んだ言葉をさり気なく三浦紗)。▼柳に風と受け流す(攻撃を。無言の圧力を)。▼笑って受け流す(軽く。鼻先で)。 **かけおち**【駆け落ち】▼駆け落ちする(愛人と。思い詰めて。手に手をとって。家族の反対を押し切って"半村)。駆け落ち同様に東京へ出てくる。色模様の道行き。手に手を取って道行きをする。 **かわす**【躱す】▼かわす(最初の一撃を。尾行の目を。さり気なく質問を。一撃を間一髪で。闘牛士のように体を"加賀。匕首165ぶを紙一重で=藤沢。質問をぬらりくらりと三好後。理由をつけてのらりくらりと三浦し)。身を投げるようにして躱す―池波。身をかわす(するりと。非難から。誘惑から)。追い込みをかわして勝つ。いなす(誘いを適当に。穏やかな声で。相手の意気込みをからかうように黒井。得意先の要求する無理難題を愛想笑いで=重松)。▼身を翻す(仰向けさまに。敏捷いんしに。さっと。くるりくるりと)。 **こうたい**【後退】後退の余儀なきに至る。前進と後退を繰り返す。▼後退する(じりじりと。ずるずると。あっけなく敗れて。薄気味悪そうに一歩二歩=源氏。すうっと波がひくように三田)。発射と同時に遊底が後退して空薬莢跡やっを蹴り出す大敵。頭髪が額からかなり後退している=大変。景気が後退局面に入る。車をバックさせる。 **さけられない**【避けられない】▼避けられない(悪さけられない影響が。倒産が。方向転換が)。避けがたい(運命。宿命)。誰にしても避けがたい強い誘惑"江戸川。避けて通れぬ関門。蹴りを受け損ねる。▼受け損じる(打ち手を。太刀を。矢を)。不可避(影響は。激突は。倒産は。見直しは)。不可避なリスク。 **さける**【避ける】▼避ける(詳しい説明を。死の危険を。俗世の煩いを。軒先で雨を。無用な摩擦を。明確な答えを。目立つ服装を。面倒な仕事を。よく使う手を。危険を慎重に。後ろ向きの話を。失礼な言い方を。自動車の多い道を。他者に深く立ち入るのを。直接的な表現を。マスコミの取材を。無分別な行動を。話題にすることを。口にするのを意識的に。いろいろな口実で。顔をそむけて吹きつける砂埃を"山本周。まともに視線を合わせることを=庄野。自らに火の手が及ぶのを佐高)。▼事態を避ける(最悪の。流血の)。▼身を避ける(庭の木陰に。危険から。現実の汚濁から)・世間を避けて暮らす。人目を避けて帰ってくる。避けて通る(曖昧な部分を。問題を)。▼回避する(危険を。最悪の事態を。誘惑をぎりぎりのところで)。▼忌避する(苦しさを。而会を)。▼どく(横に。脇に)。一未然に回避する(危機を。死を)。水たまりを慎重によけて歩く。よける(矢を。眩まぶしそうにライトを。水しぶきから身を。道の端に寄って)。 **しりぞく**【退く】退く(雪崩を打って。湖面から朝霧が。話し合いの場から。海老えびのように後へ後へ"池澤。指導者の地位から=常盤。闘争の第一線から=瀬戸内。殴られでもしたようにのけぞりながら一歩荻野。何事もなかったように自若として=森町)。辞する(教授の許を。師の許を)。つと座を立って退出する。手を引く(運動から。活動から)。 **せきにんのがれ**【責任逃れ】運という言葉が責任逃れに聞こえる=重松。責任逃れの(遁辞にん。弥縫策。免罪符)。責任回避の(気持ちが作用する。逃げ道を発見する)。責任から(逃げる。目を背ける)。責任を(曖昧にする。回避する。うやむやにする)。責任を逃れようとするずるい考え永井荷。蜥蜴忙かの尻尾切りに走る。責任逃れ以外の何物でもない=畑村。 **たいきゃく**【退却】退却する(色を失って。海霧に乗じて。算を乱して。すこすこ。卑怯いにも)。ずるずると退却しつづける=池澤。▼撤収する(部隊が。飯場を。兵を)。撤退する(球団経営から。市場から。潮の退くように。他国の領内から)。外国軍部隊が全面撤退する。軍隊が占領地から撤兵する。いったん兵を引く。 **だつごこく**【脱獄】まんまと脱獄に成功する。脱獄を(計画する。 <817> 図る)。刑務所から脱走する。獄窓を逃げ出る。獄を(抜け出す。破る)。▼破る(鉄格子を。牢獄を)。牢屋を抜ける。宇を(抜ける。破って逃げる)。 **だっしゅつ**【脱出】まんまと脱出に成功する。脱出のさい足手まといになる。日常からの脱出を図る。無事脱出を果たす。脱出する(修羅の巷ちまを。金融危機から。苦境から。混迷から。死ぬ思いで。非常口から。しめし合わせて学校を。深い吹き溜まりから。討手の目をくらまして=山岡)。脱出したいという強烈な願望が一切を圧倒する=佐山。何とかして脱出したいともがく。一刻も早く脱出しなければならない!陳。変な追っ手が迫ってこれない場所に脱出できる=辻井。事故機から緊急脱出する。ほうほうの体で逃げ出る。▶逃れ出る(死地を。かろうじて。風雨に乗じて)。 **だっする**【脱する】▼脱する(危機を。危地を。危篤状態を。窮地を。素人の域を。草味於今の時代を。敵軍の重囲を。敵の魔手を。毒蛇の口を。紋切り型を。親の庇護から。古い刷絆にぃから。辛うじて虎口を。最大のピンチを。理不尽な束縛を。アルコール依存症から。危機的状況から。人間関係のわずらわしさから)。過疎からの脱皮を図る。 **だっそう**【脱走】性懲りもなく脱走の試みを繰り返す=大江。▼脱走する(刑務所を。部隊を。流刑地を。機を見て。軍隊から。収容所から。闇にまぎれて。毒気の充満した茶の岡を筒井。追い打ちをかける隙もないほどの驚くべき素早さで"筒井。座敷牢を破って=池波)。 **とうそう**【逃走】身をひるがえし逃走にかかる池波。逃走する(侵入の痕跡をくまなく消して南条。雑踏の垣をぶち破って脱兎だっのごとく藤本。まんまと金を手に入れて=貫井)。犯人にあっさり逃走される。逃走経路を発見する。遁走社认する敵を追撃する。▼道走する(一目散に。追い詰められた軍隊が。酒で盛り潰して。自分の過去から)。 **とうぼう**【逃亡】逃亡という道を選ぶ。逃亡に(失敗する。成功する)。逃亡する(月の光の中を。安全圏に。国外に。海外へ。お金の続く限り。慮使に耐えきれず。住民がことごとく。取るものもとりあえず)。逃亡者を(受け入れる。かくまう。探索する。引き渡す)。逃亡生活に身を投じる。もとより遁走者北んが引き返すはずがない!武田秀。 **にげかえる**【逃げ帰る】▼逃げ帰る(一目散に。青くなって。一刻も早く。命からがら。こっそり。尻尾を巻いて。無我夢中で。欲も得もなく。こけつまろびつ。ちりちりばらばらになって。ほうほうの体で。見て見ぬふりをして。こらえかねて実家に藤沢。悪夢が配。めたような心持ちで=菊池)。▼逃げ戻る(自分の部屋に。ほうほうの体で)。 **にげこむ**【逃げ込む】▼逃げこむ(安全圏に。過去の世界に。自分の部屋に。山奥に。からくも。残党が山中へ。周章狼狽しらいして。円の中へ。命からがら船に。窮屈な狭苦しい所に)。 **にげさる**【逃げ去る】▼逃げ去る(一目散に。散り散りに。いずこかへ。あたふたと海のかなたへ。あわてふためいて。蜘蛛くもの子を散らすように火坂)。▼退散する(敵が。ならず者が。恐れをなして。すこすごとその場を。目的を遂げ悠々と)。 **にげだす**【逃げ出す】逃げ出す(機会を窺衿ゅう。方法を考える。チャンスが来る。わけには行かない)。一逃げ出す(早々に都を。一目散に。国外に。青くなって。あわをくって。命からがら。裏口から。顔色を変えて。風を食らって。こっそり。算を乱して。尻尾を巻いて。収容所から。隙を衝っいて。すこすこと。先頭を切って。どたばたと。びっくりして。狼狽のあまり。挨拶もそこそこに。一番肝心なときに。ものも言わずに。赤ん坊を置いて。あわてふためいて。恐怖にかられて。形勢不利と見て。けつをまくって。こけつまろびつ。土壇場になって。何食わぬ顔をして。何もかも放り出して。ほうほうの体で。わずかなすきを見つけて。蜘蛛くもの子を散らすように人が"なかにし。尻に火がついて飯田。尻に帆をかけて熊谷。はやてに吹かれた木の葉のようにからだを斜めにして宮沢)。▼逃げだす(異様な悲鳴をあげて"隆。思い思いの方向へばらばらと=山本周)。▼外へ逃げ出す(風のように。転げるように)。▼見て逃げ出す(時機を。隙を)。一刻も早く逃げ出したい。矢も楯もたまらずカバンをほうり投げて逃げだしたくなる=北。何もかも打ち捨てて逃げ出したくなる。逃げ出すように一散に家路を急ぐ。 **にげのびる**【逃げ延びる】▼逃げのびる(命からがら。着の身着のままで。刑事の目をかすめて)。逃げ失せる(ひるむ隙に。雲を霞と。疾風ぃゃの如く。追っ手を蹴散らし。やっとの思いで)。逃げおおせたと思いきや敵が背後に迫っていた。逃げおおせるチャンスは十分にある。逃げきる(一点差で。鼻の差で)。落ち延びる(京を。城を。暗さに乗じて。いずこへともなく)。惨僚に似たる敗軍をひきいて落ちのびる“真継。 **にげまどう**【逃げ惑う】▼逃げ惑う(あちこちを。かくも無残に。やみくもに。おろおろと。悲鳴を上げて。右往左往しながら。黒煙にいぶされて。真っ青になって。聴衆が悲鳴をあげて筒井)。逃げまどうウサギやリスがすぐ横を走り抜けていく三浦し。逃げ遅れて焼け死ぬ。逃げ遅れる(大勢の人が。火事で)。もう少しで逃げ遅れるところだった。 **にげまわる**【逃げ回る】▼逃げ回る(命大事に。自由自在に。息せき切って。ちょこまか。よろよろと。路地から路地を。爆音におどおどして)。▼逃げまわる(諸国を転々と。尻尾を股間に巻き込み必死に=真継。こおろぎがびょんびょん=佐藤春。こけつまろびつ小松左)。勘定をしこたま溜めて逃げ廻る"高見明丽。 <818> # 逃げる・避ける で自由自在に逃げ回ることはできない=国木田。逃げまわっていることにうんざりする森尻。何とかして逃げまわろうと腐心する=高橋和。 **にげみち**【逃げ道】せっぱ詰まった最後の逃げ道。幾らでも逃げ道がある。逃げ道を(確保する。あれこれ考える)。相手に逃げ道を作ってあげる。奇跡的に逃げ道を見つける=林、。手間取れば逃げ道を失う恐れが出てくる=高橋克。逃げ道を探す(懸命に。死に物狂いで)。逃げ場がない(受け入れるよりほかに。差し込む陽から=高井)。逃げ場を失って右往左往する"船山。抜け穴を(ふさぐ。見つける)。▼抜け道(ずる賢い。不透明な資金の)。 **にげられない**【逃げられない」「逃げられない(逃げるに。過去から。籠の鳥同様。捕まえられて)。断たれる(退路を。逃げ道を)。もはや逃げ場がないまでに追い詰められる―熊谷。どこにも逃げ場がない。逃げ道が見つからない。逃げようにも動きが取れない。痰中のうちの鼠袖ず。多年の怨敵が褒中の鼠のごとく目前に置かれる=菊池。逃れがたい絆。逃れようのない(決定的な絶望。過去を持ち出される=氷室)。逃れられないと覚悟をする。逃れる術すべはない。袋の鼠も同然。まず逃げおおせるとは思えない。俎上に汇の魚。俎信越の鯉。組の上の魚のように話の種にきさまれる=梅本。蟻地獄りしに陥ぉちたみたいにもがけばもがくほど深みにはまりこむ!永井路。蟻地獄の砂丘の傾斜をずるずるすべり落ちながらあがいている亡者にさながらの人間臭さ=島尾。蟻地獄のような摺鉢状にぶちの穴大岡。 **にげられる**【逃げられる】▼逃げられる(獲物に。奥さんに。女に。女房に。体よく。遊ばれてあげくの果てに。危機一髪と云うところでスルリと八谷崎)。長蛇を逸する。犯人に逃走される。▼取り逃がす(獲物を。果報を。機会を。幸運を。犯人を。重大な転換の契機を)。 **にげる**【逃げる】逃げる(気になる。算段をする。以外の何ができようか)。▼逃げる(後ろも見ずに。疾風の如くに。ひるむ隙に。森の奥に。命からがら。腕をほといて。火事に乗じて。風を食らって。金を奪って。言葉を濁して。尻尾を巻いて。借金を残して。隙をついて。地の果てまで。適当な嘘で。仲間を殺して。雪崩を打って。這ょうように。悲鳴をあげて。町を捨てて。湖を泳いで。身をかわして、身を忍んで。闇を縫って。売られた喧嘩州んを。作り話のなかに。犯行現場からできるだけ遠くに。夢中になって逃げに。家に火をつけて。犬がキャンキャン鳴きながら。女とのごたこたから。着の身着のままで。首をすくめてこそこそ。自分勝手な弁解ばかり並べて。すたこらさっさと。手を取り合って。取るものも取りあえず。斜め横にすいと。野良犬のように。のらりくらりと。包囲網をかいくぐって。ほうほうの体で。真っ青になって。身をくねらせて。ものすごい勢いで。夜陰にまぎれて。厄介な現実から。面倒なことになる前に小池。鬼にでも会ったように素っ飛んで奥平。こま鼠袖ずのように=檀。坂を転び落ちるように=安岡。四方八方へ蜘蛛くもの子を散らすように栗本。脱兎びらのごとく階段を駆けあがって鷺沢。脱兎のような身の速さで=横光。手に手をとって藤沢)。ばたばたと逃げる足音。逃げるが勝ち。三十六計逃げるに如しかず。自分一人逃げるのが精一杯。▼連れて逃げる(妹を。家来を。子分を。手下を。人質を)。走って逃げる(一目散に。ひた走りに)。逃げていく(幸せが。後ろも見ずに。すこすこと。手のひらから。先を争うようにして)。逃げてくる(命からがら。夜っびて)。逃げようとする(隙さえあれば。涙目になって)。逃げに回る。▶逃げにかかる(身を返して。身を諭して。恥も外聞もないといったかたちで池波)。逃げの(手を打つ。一手を押し通す)。逃げを打つ(機柄に。巧みに。ぬらりくらりと。道理のないところへ道理をつけて谷崎)。退路を開く。旗を巻いて帰る=海音寺。逃げるように(座を立つ。外へ飛び出す。店を後にする。そそくさと立ち去る。その場を離れる。二階へ行ってしまう。こそこそと外へ出る=永井荷。日本を飛び出す=松浦。部屋を出て行く光原)。逃げ隠れして暮らす。逃げ隠れする者を追い詰める。今さら逃げ隠れしない。逃げ支度にかかる。逃げ支度を始める。逃げ支度をする(とりあえず。早くも)。▶逃げおりる(石段を。山を)。逃げ散る(大慌てで。恐ろしい勢いで四方八方に)。算を乱して潰走动沁する。出奔同然に家を飛び出す。▼出奔する(国元を。故郷を。館を。借財を残して)。いい口実ができたとばかりに尻に帆をかける=安部。高飛びする(犯人が。海外に。外国に。国外に)。知らぬ他国へ走る。逐電したまま行方が知れない。逐電する(金塊を奪って。人を殺して。形勢不利と見て)。敵に後ろを見せる。敵に背を向ける。あがりを持ってとろんする。逃避する(国外に。現実から。過酷な生活から)。現実逃避に走る。苦しい逃避行。われながらホレボレするような逃げ足"飯田。逃げ足が恐ろしく素早い奥泉。呆れるほど逃げ足が速い熊谷。 **ぬけだす**【抜け出す】▼抜け出す(肉体から魂が。狄い島国を。密かに城を。悪の道から。経営不振から。混乱状態から。最下位から。スランブから。耐乏生活から。人の輪から。こっそりと家を。するりとベッドを。そっと我が家を。危ない目を冒して。内向き志向から。自堕落な日々から。スルリと体をくねらせて。不安の連鎖から)。家を抜け出す口実を考える。状態から抜け出す(不安定な。宙ぶらりんの)。きっと地獄から抜けだせる=芥川。▼足を洗う(悪の道から。やくさの世界から。頽廃は心した生活から松浦)。 **ぬけだせない**【抜け出せない】▼抜け出せない(悪癖からいまだに。滅入った気分からなかなか。どろどろした日常の沼から瀬戸内)。 <819> # 逃げる・避ける 抜け出すことは不可能に近い。深い泥沼に突き落として抜け出せなくする三輪。抜け出すことのできない深みに落ち込む。浮かぶ瀬がない。泥沼に(落ちる。はまる)。 **ぬけでる**【抜け出る】▼抜け出る(家を。殻を。砦でを。絵から。苦界から。興奮から。ベッドから。小暗い杉の林を。内緒でこそっと。受け身の殻から=高橋和)。病からの脱却を試みる。▼脱却する(赤字から。恐怖から。軛びから。支配から。日常性から。不況から。受け身の姿勢から。借金依存体質から。前代の遺風から。無責任なイメージから)。 **のがす**【逃す】逃す(大きな獲物を。惜しい機会を。タッチの差で。せっかくのチャンスを。チャンスをみすみす。天来の福音をむざむざ)。この機を逃す手はない。逃がした魚は大きい。▼逃がす(機会を。チャンスを)。▼聞き逃す(情報を。話を)。▼機会を逸する(千戚一週の。またとない)。再三のチャンスを逸する。 **のがれる**【逃れる】嘘八百を並べて何とか言い逃れる=中野美。逃れる(危うく虎口を。束縛を容易に。苦痛から。死の不安から。身を翻して。夜陰に乗じて。誘惑の手から。きびしい探索を。調査の網の目を。取りあえず難を。手の届かぬ所に。運の悪い成り行きから。重苦しい雰囲気から。着の身着のままで。口さがない浮き世から。日常の諸事万端から。やっとの思いで。敵の鈍重さを嘲笑姉ぼうかのように悠々と罠もなを奥泉。あたふたとしてその場から一散に菊池。無駄な言葉の遊戯から=伊藤整)。逃れる方法を工夫する。▼手を逃れる(司直の。捜査の)。逃れたい一念に駆られる。苦しみから一刻も早く逃れたい一心東野。山の奥へ奥へと逃れて行く。呪縛から逃れようと身もだえする。逃れようとする(現実から。寒さから)。 **はいそう**【敗走】酸鼻をきわめた騒乱泥濘ていの敗走"山手。禁門の変が長州勢の敗走に終わる=船山。▼敗走する(算を乱して。見苦しくも。我先にと。ひとたまりもなく。蜘蛛くもの子を散らしたように四方に"井上靖)。 **ひきあげる**【引き揚げる】▼引き揚げる(田舎の家を。自分の部屋に。意気揚々と。手伝いの人々が。ほうほうの体で。いったんその場を勝目。テレヴィの番組が終わったのをしおに高井。家族と一緒に故郷〈三好役。長居は無用とさっさと=奥平。別荘にきている連中は二百十日の前に大抵。今日)。一発くらわしてサッと引きあげる=飯田。空手で引き揚げることを余儀なくされる"阿部。捨て台詞を残して引きあげていく=池波。引き揚げ船が機雷に触れる事故に遭う~金井。みこしの上げ時。 **ひきさがる**【引き下がる】引き下がる(頭をかいて。意気地なく。おとなしく。おめおめ。言葉もなく。すこすこと。涙をのんで)。納得して引き下がるのも何だか癒しょに隊る=有川。引き下がるよりほかない。花道を六方を踏んで引き退きがってゆく=網淵。引き下がらない(一向に。簡単には)。言い出したら最後(絶対に後に引かない。テコでも退ぃかない阿部)。引かない(一歩も。頑として、隠れがなかなか)。むざむざと引き下がるわけにはいかない。 **ひじょうぐち**【非常口】 非常口(飛行機の。病院の。ビルの)。非常口を確認する。非常階段(傾斜が急な。雨ざらしの)。非常階段の踊り場に出る。非常階段を降りる。 **ひなん**【避難】▼避難する(外国に。一家を挙げて。安全な土地を求めて。火事に気づいて。着の身着のまま続と避難してくる。避難勧告を出す。あやふやな情報に基づく避難勧告を鵜呑ぅのみにする=柳田。▼避難訓練(火事の。災害の。地震の)。全館に避難指示が出る。避難者の群れが陸統と流れていく寺田。避難所(安全な。一時的な)。避難所生活を始める。体育館を避難所にあてる。避難場所を見つける。避難民が陸続として流れ込んでくる。各地から避難民が集まる。避難命令が出る。退避する(防空壕に。安全な場所へ。危険区域から。沈む船から。山火事をいち早く察知した野良泉物品のように八谷川)。防空壕にもぐる。防空壕を掘る。国境を越えて難民が押し寄せる。大量の难民が着の身着のままで国境を越える=辺見。難民に食料を配給する。難民の数があっという間に膨れ上がる。難民救済に献身する。難民生活を強いられる。 **ぼうめい**【亡命】▼亡命する(外国に。国外に。他国に)。四方に奔竄泡从した亡命者"山田美。亡命生活を(送る。余儀なくされる)。亡命政府を樹立する。亡命落魄くの身。 **まぬがれる**【免れる】▼免れる(危うく転落を。運命の答しもを、風の直撃を。間一髪衝突を。奇跡的に死を。最悪の事態を。剽窃心いうの罪を、辛うじて延焼を。辛うじて逮捕を。辛うじて飢えから。精神的窒息から。都会的脆弱ぜいしさから)。そしりを免れない(過剰防衛の。軽薄の。卑怯いの)。▼免れない(作り物の感を。貧相な印象を。ひと騒動は。いささか不目然を。一抹の寂しさを)。免罪符を(買う。もらう)。 **みすみす** みすみす(大損をする。機会を逃す。損をする。現金を奪われる。見殺しにはしない)。功績をみすみす棒に振る。儲もうけ物をみすみすふいにする。 **よにげ**【夜逃げ】背負いきれぬほどの借財を負って夜逃げをする=阿部。夜逃げする(一家で。食いつめて。借金を背負って藤田。不義理な借金を残して三好徹)。夜逃げ同然で流れ着く。 # 濁る・澄む <820> **いっぽんぎ**【一本気】一度気が曲がるともとへ戻らぬ一本気=梅本。子供のような快活な無邪気な一本気な心=有島。一本気の硬骨漠。一本気そうな若々しい気性。竹を割ったような性格。昔気質忙炒乳の(職人。律儀な父親)。 **ガラス** ガラス(透明な。不透明な。青みがかった。艶消しの。分厚い。一面に汗をかいたような水蒸気で曇った=森玩)。ガラスが(光を照り返す。硬質な音を立ててゆっくりと割れる=林京。氷のように冷ややか村上巻)。息でガラスが曇る。ガラスで跳ね返った陽射しが視界をふさぐ=小川。扉のガラスに影が映る。硝子ブラの(表に思い切り疵;をつけるような無気味な歯ぎしり“小林多。固まりのような氷"北村)。ガラスの(割れる音が響き渡る。細かいカケラのように雪が顔や手に突き刺さる=小林多)。海が厚い硝子の切断部のような色合い=中島災。曇った硝子の表面がみるみる澄明になっていくみたいに疑問が解ける=松本。手の甲でこんこんとガラスを叩く。顔が悪いガラスを通して見るようにゆがむ=掘。水烏がきいきいとガラスをこするような啼き声を立てる=大庭。自分をとり巻く若さという硝子のようなもの=伊藤野。透きとおった硝子のような鋭い美しい処女の感筏"石川。硝子のように(透明な大気。冷たく明るい空大佛)。空気が硝子のように硬く冷たい=高井。ガラスのように透明にすきとおる=安部。素足がガラスのように冷えて池。水が硝子板げだっをしいたように凍る=宮沢。ガラスケースを(組み立てる。覗のぞく)。磨すりガラスの向こうに人影が映る=篠田。磨りガラスの向こうを見るようにもう一つはっきりとわからない=阿刀田。擦りガラスを透して見るようにほのかに見える=佐藤巻。色彩が乱舞するステンドグラス辻真。ステンドグラスのはまっている窓。玻璃はりのような冷たく澄んだ海火坂。澄みきってなめらかな玻璃のような青空"加賀。玻璃のように光る涙がこぼれ落ちる!永井隆。入り江が玻璃のように澄み渡る火坂。瑠璃も玻璃も照らせば光る。ガラスの破片が(散乱する。飛び散る。枯れ葉のように散り溜まる=河野。蛍光灯の光を受けて砕けた宝石のように光る=小林久)。日差しがガラスの破片に反射する。ガラスの破片を拾い上げる。ガラスが棘とげのような破片となって突き刺さる=河野。笑い声やおしゃべりがガラスの破片のようにきらきらと飛び散る=長崎。 **ガラスごし**【ガラス越し】ガラス越しに(室内を覗のぞく。庭を眺める)。硝子がっ越しに八月の陽差しが背中や首筋を刺すようにぶつかってくる=伊集院。 **ガラスざいく**【ガラス細工】ガラス細工のような透明な恐怖を覚える=阿刀田。精巧なガラス細工のように頼りない赤ん坊の爪"角田。繊細な硝子細工のようにひどく脆もうくて危険な微笑三島。顔が切り子細工のように怪しくきらめく今日。 **きっすい**【生粋】生粋の江戸っ子。ちゃきちゃきの(江戸っ子。東京人)。生え抜きの(外交官。教授。社員。選手)。 **きよい**【清い】清い(間柄。交際。心持ち。魂。流れ)。清き一票。清く(正しく生きる。澄んだ山の空気)。水が清く澄む。心が清く洗われる。身を清くする。ことばに嘘のかげりがない池波。瞳に陰りがない。陰りのない言葉つき。峻烈しんで翳かげりのない水開高。清潔な穢けがれのない身体萩原爽。汚れを知らぬ(少女。生気)。すれてない上品な娘。声が清明に澄む。清明の気がみなぎる。無垢もくな(青年。魂。娘)。清浄な(心がこもる。白木の箸)。無垢な清浄な幸福感。真珠のような清浄な胸菊池。清浄無垢の喜び。 **きよめる**【清める】水垢離ひげで身を清める。▼掃き清める(寝殿を。店先を)。▼拭き清める(縁側を。体を)。カタルシスを(得る。達成する)。深斎に励む。精進潔斎を守る。塩花を(置く。盛り上げる)。▼浄化する(空気を。心の汚れを。水質を。魂を、煩悩を)。水垢離で豊穣祈願する。滝に打たれて水垢離をする。湯灌ょを使わせる。自浄能力が(欠如する。低い)。自浄能力を(失う。発揮する)。禊泌その効能を及ぼす。暇を(受ける。済ませる)。川で禊をする。 **きよらか**【清らか】清らかで穏やかな幸福感に包まれて陶然となる=中村貞。清らかな(鉦かねの音。幸福感に酔う。心の持ち主。生き方に憧れる)。谷川みたいに清らかな感じの人三浦秒。手を三十秒とつけていられないほど冷たく清らかな水=飯田。春が来たような清らかなコーラス=伊集院。全く私心というもののない清らかな人子母沢。百合の花にも似た清らかな美しさ"石坂。身を清らかに保つ。恋人同士が甘く清らかに戯れる"石坂。静まった水の清らかさが心を平らかにする三島。心清らかな人々。汚れない処女地。自身の心には一つの鞭もちも加えずにさながら汚れなき小羊のように祝福を与える=宮本亘。汚れのない目で見つめる。楚々そゃと(歩く。立つ)。楚々とした(女性。美人。立ち居振る舞い)。清純な(乙女心。心のときめき)。無邪気な坊ちゃん坊ちゃんした清純な生涯三好達。杉材の木目のように清楚でぃでキリッとした美人小沢。清楚な(一輪の花。趣のまさった女性。感じがする美少女大藪。若さが匂うように美しい=瀬戸内)。さっぱりした清楚な服装。地味で清楚な装い。透き通る=小川。青ガラスのように澄みきった空小 <821> # 濁る・澄む **あらいきよめる**【洗い清める】▼洗い清める(汚れを。血を)。魂が洗い清められる。斎戒沐浴、くする。清流に沐浴する。 **きれい**【綺麗】▼綺麗(輝くように。畑中曰くなっている棉に朝日がさしているとまぶしいように伊藤左)。笑うと白い歯がきれい。きれいな(着物を着る。交際を続ける。花を咲かせる。空気を胸いっぱい吸う)。色白できれいな皮膚。羨ましいほどきれいな声。潤いを持ったきれいな目。澄んだきれいな瞳。針目のきれいな継ぎあて。澄んできれいな死に顔大佛。掃き清めたように綺麗な石畳=内田百。塵;一つ落ちていないほど綺麗な部屋へフ束。雪のように肌の綺麗な赤ちゃん太宰。きれいな夜(星が。月の)。きれいに(諦めをつける。足を抜く。洗う。解決をつける。片をつける。掃除する。水に流す。身を退ぃく。髪を結い上げる。刈り込まれたツツジ。マニキュアした爪)。頭がきれいに禿はげ上がる。体を隈くまなくきれいに拭く。字をきれいに書く。部屋がきれいに片づいている。庭の木々が洗ったようにきれいになる=住井。髪をきれいに(染める。梳とかす)。▼きれいにする(往生ぎわを。借金を。庭を。肌を)。きれいことだけでは世の中渡っていけない。きれいごとでは(済まない。通らない)。きれいごとを言う。木の葉一枚落ちていない。ごみ一つなく片付く。埃児にひとつ見当たらない=泉優。染み一つない(白紙。肌)。一点の染みもない。身ぎれいな(生活。人)。周辺を身ぎれいにしておく。 **けがす**【汚す】『汚す(家名を。聖なる母のイメージを)。学問を冒瀆じにする行為。冒頭の魔性の声が湧き上がる=栖。▼冒演する(神を。死者を。人凹の尊厳を。荘厳な場所を殺生で=山本周)。冒瀆じみた不正行為。 **けがれる**【汚れる】汚れる(刀が。家名が。名が。良心が)。汚れた(女。金。体を清める。心)。罪に汚れた姿。聞くも耳の汚れ。汚れを清める。身に汚れを受ける。塩を振りかけて死者の穢けがれを払う北原。心の不浄な(金。体。感じをいだく)。身の不浄を恥じる。 **けっぱく**【深白】潔白な心持ち。身の潔白を証明する。涙ながらに身の潔白を訴える。▼証かを立てる(異心なき。潔白の)。人様から識にしりを受けるようなことをした覚えはない=高橋和。何の非もない。いくらたたいても埃旧にのひとつも出ない"小池。全く身に覚えがない。消浄潔白な生活。他人に後ろ指一つさされない。一身を清くする。俯仰天地に愧はじるところはない船山。 **けっぺき**【潔癖】潔難な人物。勝ち気で潔癖な性格。潔癖さ(痛い局部にメスを当てないではいられない"野上。自分のことばに責任を持つ男の武田奈)。少女時代の潔癖心が高じて異性を拒否するようになる"丹羽。崇高と見えるまでに極端な潔癖屋"有局。 **こぎれい**【小綺麗】小ぎれいな(家に住む。店。身なり。こちんまりした茶碗)。小ぎれいに(暮らす。化粧をする。片づけられた店内)。▼小ぎれいにする(頭を。着物を)。こざっぱり髪をまとめる。室内がこざっぱり片づいている"夏樹。こざっぱりした(身なり。和風の建物。水色の開襟シャツ)。 **じゅんすい**【純粋】純粋な(学問的動機。敬愛の情。怒じゅんすいに駆られる)。純粋に情熱に動かされて行動する。青年らしい純粋さと感傷癖"中村真。生一本な(気持ち。人間)。至純な愛。至誠至純の魂。純一無雑な気持ち。純化する(関係を。魂を)。純な(思いこみ。気持ち。心。人。童心を傷つける)。ブラトニックな(心。恋愛)。愛がブラトニックな段階にとどまる"玉村。純潔な(心。聖女。青年)。若々しい音楽的な純潔さ。混じり気のない(酒。賞賛。蜂蜜)。まじり気のない感動が眼の中に光る=中村真。 **しんせい**【神聖】神聖な(儀式。場所)。軍事費を聖域化する。聖域に踏み込む。聖地を(巡歴する。異教徒の攻撃から防衛する=塩野。霊峰に登る。霊峰を仰ぐ。んばかり「美濃部。見るも汚らわしそうに尋ねる。不浄な(金。体。感じをいだく)。身の不浄を恥じる。れを落とす。汚らわしい(顔を見るのも。口にするのも。名を呼ぶさえ)。口をきくのも汚らわしいと言わ聖なる(使徒。母のイメージ)。聖墓を異教徒の攻撃から守る戦い)。 **すきとおる**【透き通る】▼透き通る(体が。声が。水が。頬が青白く)。紗し、のように透き徹る衣谷崎。透きとおるくらいに郷娟だんたる美女"太宰。透き徹るほど白い皮膚"伊藤左。透き通った(明るい声。秋の風)。透き通るように呟まぶしい竹林の新緑が風にさらさらと波を立てる=伊集院。すき透るような蒼ぁおみを帯びた空本庄。野鳥がすきとおるような声で鳴く=村上春。青く透ける空。透けるような白い素肌。シースルーのブラウス。あられもないシースルーの服。 **すみきる**【澄み切る】澄みきった名月のような心境すみきる=山岡。切なくなるほど澄み切った眼高橋前。▼澄みきっている(海が。気持ちが。空が。大気が。瞳が。陽光が)。空がきりっと秋晴れに澄み上がる=黒井。清澄な(楽の音。空気。心)。澄明な(秋の陽。音楽が満ちる。文体)。 **すむ**【澄む】澄む(目の色が。心が水色に。空が紺青に。夜気が冷たく。空気が厳しく冷ややかに=曽野)。▼青く澄む(空が。水が)。澄んだ(よく通る声。潮の色がまぶたに残る)。真清水のような澄んだ水が渚を静かに洗う三浦裟。青く澄んだ月。美しく澄んだ瞳。高く澄んだ秋空。深く澄んだ眼差し。細くて澄んだ笑い声。鈴の音のような澄んだ音"栗木。仙女のような澄んだ眼つき=大庭。卒業写真に似た澄んだ雰囲気"石田充。よく澄んだ愛らしい虫の音"平有。沢は上流に行くにつれどんどん澄んでいく三浦し。澄んでいる(心が静かに。クリクリした黒い瞳が水のように"獅子)。水のように澄む(空気が。空が)。銀を流すような鉦かねの音内田百。▼澄み返る(音が。心が)。悲しいほど澄み通る声=川端。▼澄み渡る(青空が。音が。気持ちが。空気が。月が。水が。空が紺碧心に)。濁 <822> # 濁る・澄む りのない(可憐な少女。目で見つめる)。上澄みを(汲くみ取る。すくい取る)。沈澱物が底に沈んだ上澄みのような灰色の雲辻井。 **せいけつ**【清潔】肌が洗い立てのように清潔・川端。清潔という強迫観念にとりつかれる"開高。清潔な(石鹸だんの匂い。ふきん。雰囲気が漂う。白衣を身につけ殺菌されたように清潔な喋りかた松浦。病室のように清潔な部屋=開高。琺瑯引汨らっきみたいに清潔な女の子=田辺。磨き立てたみたいに清潔な感じ庄野。清潔に明るく笑う。家の内を清潔に保つ。体が清潔に匂う。清潔感が漂う(物言いに。装いに)。衛生状態がいい。衛生的な(調理場。包装)。 **せいれん**【清廉】清廉な正義漢タイブの政治家。男女間のことに清廉な道徳家。稀まれに見る清廉な能吏。賄賂とか買い占めなどとはおよそ縁が遠い=船山。清廉潔白な人物。清廉高潔な君子。清扉剛直な半生。高潔な(心。人格。貞節。品性)。志操高潔な武士。廉潔の(人。振る舞い)。 **つみがない**【罪がない】全く罪がない。罪のなさそうな瞳。生まれてくる子に罪はない。無率もこの(市民に暴力を振るう。人々を殺傷する。者が塗炭の苦しみを嘗なめる=福永)。何の罪科幻悩のない無無挙の者を殺す大沢。 **すどおし**【素通し】素通しの(外交。水槽。政治。ドア)。家の中が素通しになる。素通しの(ガラス。窓)。 **にごる**【濁る】▼濁る(空気が。水が。白目が黄色く。目が充血して。川の水が茶色く。目がどんよりと。流れの色が泥のように石坂。胸の中が泥水をかきまわしたように"石坂)。濁った(世の中。音が耳にさらりと触る。声が喉から飛び出す)。褐色に濁った流れ。思く濁った雲が重たく垂れこめる。どんよりと漂う濁った空気。熱っぽく濁った目。白く濁った張りのない脂肪、小川。灰色に濁った(海。空)。泥が水を濁らせる。濁りが(濃くなる。澄む。よどむ)。水の濁りがとれる。濁りを(涎こし取る。濾過ぅかする)。雨の後のささ濁り。川がささ濁りになる。透明度が(極端に悪い。下がる。低い)。現実の汚濁から身を避ける。汚濁に(満ちた人生。立ち向かっていく勇気)。汚濁する(河川が。水質が)。▼混濁する(意識が。水が)。深緑に混濁した汚れた川。▼白濁する(液が。尿が。水が。魚の受精で海が)。需。ゃに閉ざされた白濁した世界石坂。半透明な磨りガラス。半透明の(紙。膜。水)。 **ぬれぎぬ**【濡れ衣】身に覚えのない濡れ衣。濡れ衣をぬれぎぬ晴らそうと懸命に語る=丸谷。万引きの濡れ衣を公衆の面前で着せられるのは感受性の強い年頃には耐え難い屈辱"有川。殺人犯の汚名を着せられる。卵を着せられる(殺人の。無実の)。冤罪紋以が晴れる。冤罪を(気の毒がる。晴らす)。無実の(殺人罪を背負わされる。罪で投獄される。人用が死刑に追い込まれる)。無実の罪に泣く。 **とうめい**【透明】水のように透明高村光。水は透明で日に照らされた川底の石が青く光っている=三浦し。透明な(秋の日差し。悲しみが漂う。冷たい雪解け水)。明け方の透明な明るみ。ガラスよりも冷たく透明な空気"大佛。透明にすけて見える。気持ちが透明に澄んでいく。渓流の中で静かに泳ぐ小魚を見るような透明感=高橋三。透明感の漂う表情。くすみのない透明感のある肌。冬特有の透明感のある朝。透明感を増した九月の日盛りの陽落合。取引の透明さが求められる。透明度の高いきれいな水。無色透明な液体。ガラス張りの(外交。水槽。政治。ドア)。家の中が素通しになる。素通しの(ガラス。窓)。三浦移。不透明に濁る。▼不透明になる(政局の行方が。展望が。長引く不況に先行きが)。 **ふじゅん**【不純】不純な(印象を与える。関係)。動機に不純なところがある。不純物が(吸着する。混入する)。夾雑物っぷうきを取り除く。 **ふとうめい**【不透明】不透明な(視界。資金の抜け道。政治状況。不可解さが氷水解する)。体に不透明な澱ょとみを抱えこむ"島田。心がにこっている不透明な人間 **まどガラス**【窓ガラス】一点の曇りもない大きな窓ガラス内館。窓ガラスが(風に鳴る。きらりと光る。粉々に砕ける。湯気で曇る。びりびり震える)。デパートの窓ガラスが夕陽を受けて黄金の鱗うぅを連ねたように光っている=城山。窓ガラスに(水滴が飛ぶ。夕陽が映る。顔を押しつける。そっと額を押しつけて外を眺める三浦し)。窓ガラスの(曇りを拭く。湯気を拭き取る)。窓ガラスを鏡にする。雨が窓ガラスを洗う。風が窓ガラスを揺する。水滴が窓ガラスを流れおちる。陽射しが窓ガラスを照らす。ガラス窓が(ばたばた鳴る。物凄い音とともに砕け散る=石川)。雨がさあざあガラス窓に打ちつける。ガラス窓の曇りをこする。雨がガラス窓を潤す。風がガラス窓を叩く。 **むじつ**【無実】無実を訴える。主張する。証明する)。青天白日の身になる。無罪が確定する。無罪の可能性が強い。無罪を(主張する。立証する)。無罪判決が出る。無罪判決を勝ち取る。晴れて無罪放免となる。 **ろう**【蠟】氷柱5つものように垂れたろうそくの戦!森心。厳で(型を作る。封滅がらする)。蠍のごとく味気ない"中島多。戦を(垂らす。採る。塗る。引く)。白鐵のように着ぁぁさめた顔「真継。顔が白蝦のように透き通っている=隆。冷えたロウのような脂三浦朱。まっ白な蠍のような露宮沢。蝋のように(白い手。色白で艶やかな肌!有吉)。顔が蝋のように青白い=阿部。蠍細工のようなうす白い顔野間。蠟細工のようにただ美しいだけの男、徳田。しなやかな腕が蠟石みたいに見える=中。血の気のなくなった蝋人形のような顔=黒玉石。薔薇色に彩った蝋人形のような頬円地。僕たちは蝋人形のように静止した宮部。ワックスを(かける。革に塗る。床に塗る)。コーティングがワックスをはじく。 # 滲む・染みる <823> **あぶらあせ**【脂汗】脂汗がにじみ続けるような苦痛"日野。じわじわと脂汗がにじみ出る。背中に脂汗が流れる。たらたらと脂汗が流れ落ちる。肌着がぐっしょりするほど全身に脂汗が吹き出る=杉本。額から黒い脂汗がコールタールのように流れる=木山。顔にじっとり脂汗がにじむ。全身がべっとりする脂汗でぬれる=飯田。脂汗を流しながら獣のように吠える=小川。恐怖の脂汗を滴らせる。手のひらに脂汗をにじませる。真っ青な顔に脂汗を浮かべる。 **しみこむ**【染み込む】▼しみ込む(土に雨が。誘惑の毒が。波が砂に。においが服に。紙の繊維に墨が)。母親の心づかいが胸にしみこむ三田。悲しみがとっぷり身に滲しみこむ=円地。じんわりと心に染み込む声"宮部。香水の匂いがしみ込んだ布きれ。血肉にしみ込んだ信仰。しみこんでくる(冷えきった体に湯の温かみが藤田。若葉の青っぽい匂いが体に“あさの。ジリジリと寒気が骨まで=小林多)。▼しみ込ませる(布に薬剤を。お題目を頭に。教養を生活に)。中まで味がしみ込んでいない。▼しみ入る(虫の声が地に。寂しさがひときわ心の底に。街のにぎわいが店の中に。紅葉の色が目に)。心に深くしみ入る歌。舌にしみ入る甘み。胸にしみ入る美しさ。 **しみとおる**【染み通る】▼しみ通る(ウイスキーが胃の腑ぃに。声が耳から胸底まで)。音色が心の中に沁しみ通る=福永。寒い汐風が皮膚を刺すように沁み透る=徳田。骨の髄までしみ通るほどの寂しさ。浸透する(寒気が体に。名が全国に。考えが人々の間に)。ショックがじわじわと浸透していく。有権者に名前を浸透させる。 **しみる**【染みる】「しみる(酒の味が陽加さに。忠告が胆ももに。緑が目に快く。秋の風が心に冷たく。扉寥☆氷」とした深夜の気配が=梶井。冷たい水が歯に=光原。孤独が胸に。人の親切が身に)。相手の言葉の優しさが胸に痛いほど染みる=遠藤。しんしんと体にしみる寒気。魂にしみる哀感。言葉が心地よく心に沁しみる=あさの。▼肌にしみる(海からの肌が。冷たい空気が氷のように=獅子)。▼目にしみる(鮮やかな緑が。シャンブーが。空の青さが。玉ねぎが。平和という文字が!林京)。骨身にしみて知っている。しみていく(水が紙に。アルコールが体に。祈りが胸の中に)。寂しさが心にしみ広がる。▼身にしむ(寒さが。懐かしさが)。 **しみわたる**【染み渡る】▼しみ渡る(疼痛とうが満身に。体の隅々まで疲れが。五臓六腑約に酒が。よくのった脂に塩気が。冷や酒がはらわたに。旅情が心の深いところに平岩)。寂寂感沁ゃん!がひしひしと我が身の内に沁しみわたる!佐多。 **にじみでる**【滲み出る】▼滲み出る(障子窓に黄ばんだ灯りが"本庄。頬に冷え冷えとした笑みが=船戸)。にじみ出る(体から威厳が。声にゆとりが。声に喜びが。瞳に涙が。後ろ影に苦悶心もが。顔に若やいだ興奮が。全身に寂しさが。目に悲しみの色が。疲労が体じゅうに。知性が内面から)。▼色気がにじみ出る(慎ましやかな。身振り手振りに)。▼濃くにじみ出る(不安そうな表情が。目に落胆の色が)。「いいかげんに書きました」という気配がにじみでている稿三浦し。▶にじみ出てくる(哀愁が肩から。美が内側から)。血の滲にじみ出るような労苦=山崎。▼溶出する(廃棄物から金属が。ブラスチックから化学物質が)。 **にじむ**【滲む】▼にじむ(口調に冷笑が。声に悔しさが。語勢に憤怒が。言葉に諦念が。後悔が心に。口の脇に微かすかな笑みが。口調にユーモアが。言葉に日頃の寂寥せりが。肌にうっすらと汗の玉が。額の生え際に汗が。ホールに薄闇が。目にうっすらと涙が。明かりが霧雨に。軽い失望が声に。困惑の色が表情に。無念さが言葉に。血がうっすらと。涙が瞼注にじっとり。一字一字に恨みの気持ちが=遠藤。唇に初々しい色気が"船山。仕草に男心をそそる色っぽさが=船山。汗がじっとりと手のひらに"重松。笑うと妙なおかしみが風貌に=船山。木立の中のオレンジ色の灯りが人の吐く息の湿り気がゆらめき上っているように干刈)。▼色がにじむ(顔に困惑の。顔に不安の)。ガス灯がぽっとにじんでいる。酔いのにじんでいる目。涙がにじんでくるほどありがたい!若竹。整理されるのを待つ膨大な言葉の気配が夜の廊下ににじむよう三浦し。滲むような(微笑が口元に漂う。本庄。日の色がひろがる。大佛)。涙をにじませる(瞼に。うっすらと目に)。美しさをにじませた空の色。苦悩をにじませた表情。目が笑いの気配をにじませている三浦し。にじませる(顔に悲壮感を。どす黒く血を。額に汗を。気持ちを声に。かすかな笑みを瞳の中に。毛のあたりに強い覚悟を"江國)。痛恨の感情を声に滲ませる"大佛。 **ねあせ**【寝汗】寝汗でぐっしょりと濡れる。体じゅう寝汗でべとべと。寝汗をかく(ぐっしょり。じっとりと。びっしょり)。寝汗のようにいやな汗が皮膚の毛穴から滲にじむよう大佛。 **ひやあせ**【冷や汗】腋もきの下を気味悪く流れ伝ってくる冷や汗、梶井。体じゅうに冷や汗が湧く。額に冷や汗がにじむ。背中を気味の悪い冷や汗がすっっと走る久米。冷や汗が出るくらいの勇気三浦失。はっとして冷や汗の出る思い。冷や汗を流して苦しむ。過去の秘密な旧悪をあばかれた人のことく背に冷や汗を催す萩原朔。冷や汗をかく(うっすらと。ぐっしょり。びっしょり)。 <824> # 似ている・等しい **ありのまま【有りのまま】** 気持ちをありのままに書き綴る。生前の姿をありのままに記録する。有り体に(言う。答える)。すべてをあるがままに受けいれる。あるがままの世界に生きる。あけすけに(金高を口にする。じろじろと眺め下ろす)。 **いくどうおん【異口同音】** 異口同音に(賛意を表する。反対を唱える)。四人が異口同音に軽い叫びをもらす。口を揃えて(忠告する。褒める)。三人の社員が口をそろえて証言する小林久。 **いちように【一様に】** 一様に(驚きの声をあげる。興奮を面に現す)。全体に一様に広がる。仲間たちが一様に顔を曇らせる。聞いた者は一様に目を剥く 高橋三。等しなみに(驚きに打たれる。同じ方をむいて座った観客)。訪れた人が等しなみにもつ感想。むらなく(ペンキを塗る。漉き上がった紙)。 **うりふたつ【瓜二つ】** 鼻と耳の形が瓜二つ高橋克。瓜二つと言っていいぐらい似通っている。瓜二つの(親子。兄弟)。姉と瓜二つの妹。別れた女房と瓜二つの女。生き写し(死んだ母親に。父親に)。宛然として真に迫る。▼酷似する(筆跡が。二つの文章が。二人の人相が)。環境が相似する。そっくり(背格好が。実物)。キューピーさんのあだ名そっくりの笑顔 林京。 **おそろい【お揃い】** 姉とお揃いの服。揃いの浴衣を着る。全巻揃いの百科事典。道具一式が揃っている。セットを注文する。三つ組みの杯。 **おなじ【同じ】** 同じ(運命を辿る。課に籍をおく。姿勢を続ける。言葉を何度も繰り返す。所を堂々巡りする。道を行ったり来たりする。屋根の下に暮らす。顔ぶれで変わり映えがしない 灰谷)。踏み切ってしまえば後は同じ。いつも同じ所でつまずく。奇しくも同じ日。鏡のように相手と同じ表情になる=丸谷。二度ならず三度までも同じ方法を繰り返す―池田。耳にタコができるほど同じ言葉を繰り返す獅子。時が水泡の中を動くように同じことの繰り返し藤枝。執念深く何度も同じことを繰り返す芥川。レベルを同じにする。人を牛馬と同一に見る。同一の目的で集まってくる。理性と直感とが同一の認識に到達する=中村真。同じくする(意見を。志を。席を。ほぼ時期を)。根を同じくする問題。時を同じくして生まれる。軌を一にする。寸分も違わない。塁を摩す。▼同一視する(作者と登場人物を。芸術作品と芸術家の人格を富岡)。同一歩調をとる。イコールで結ぶ。ごろつきと選ぶところがない。忙しいのはお互いさま。同い年の(いとこ。夫婦)。いささかも変わりがない。この前と寸分違わぬ恰好。十年前と寸分違わぬ光景。同格で並ぶ。同格に扱う。▼同化する(異質な文化を。土地に)。等間隔に(植える。並べる)。同根の(事件。問題)。同日に論じる。同姓の人に会う。一対一の同点。同点で首位を分け合う。同率で首位に並ぶ。同列に(扱う。考える。論じる)。▼平準化する(仕事量を。質を)。勘当も同然の扱い。玄関払い同然の返事をもらう。家出同然に上京する。我が子同然に可愛がる。 **おひなさま【お雛様】** おひな様のような夫婦=中。安いお雛様みたいな顔した女の子向田。眉をおとし古い内裏雛のような顔立ちのもの静かな人里見。雛飾りがぼんぼりに照らし出される=篠田。雛壇から緋毛氈が垂れて広がる。桃の花で雛壇の両端を飾る。雛人形のように可愛らしい顔立ち=北原。 **かくいつ【画一】** ▼画一化する(思考が。規格を)。あらゆる家庭というものは中身が缶詰の内容のように画一的=瀬戸内。美人なるものは顔立ちが画一的というか平均的 小沢。非個性的な画一的な人間。一律のやり方を押しつける。作業を一律化する。 **がくめんどおり【額面通り】** 蔵辞を額面どおり受け取る=中村真。言葉を額面通りに受け取れない。字句通りに受け取る。▼名に値する(愛の。大人という)。文化の名にふさわしい。文字通り(家の外へ一歩も出ない。休む暇もなく働く)。文字通りの泥沼の状態。 **きょうつう【共通】** 共通の(価値観を持つ。目標を掲げる)。二人の共通の知人。▼共通する(パターンが。両者に。洋の東西で)。大事故すべてに共通する図式 柳田。二人の経歴に共通点がある。一脈通じるところがある。暗黙の間に一脈を通じる。小異を捨てて大同につく。▼通底する(テーマが。モチーフが)。 **さながら** さながら(絵のよう。郷里へ帰ったような気持ち)。幽霊さながらに見える。合戦さながらの大乱闘。あたかも(夢の如し。絵に描いた餅のような代物)。まるで(場違いな感じ。性格が変わったよう。一人を見るよう。見えない糸で操られているかのよう 柳田)。朝と夜とでは気分がまるで違う。 **そのまま** そのままじっとしている。▼そのままにしておく(疑問を。しばらく)。そのままの状態を保つ。一語に尽きる(荘重の。優しさの。我がままの)。写しに教える。即物的に過ぎて物足りない 姫野。ひそかな思いをそっとしておく。凍結する(プロセスが。議論を)。生の感情がむき出しになる。▼地で行く(歌の文句を。酔生夢死を)。生々流転を地で行く人生 辺見。漫才を地で行ったよう全話高見順。ただでは済まない。今度帰ってきたらただでは置かない。 **そのもの** ▼そのもの(至って平静。まるでふぬけ)。作品そのものが端的に語る。善良そのものといった人物。そのものずばりを指摘する。▼言いようがない(運命としか。不運と言うより他に)。▼以外の何物でもない(軽薄さ。責任逃れ。怠慢。開き直り。焼け太り)。行かせたこと自体が間違っている。存在自体が許せない。 <825> # 似ている・等しい 素の(声を聴く。自分をさらす)。他でもない(自分。その人)。外ならない(一つの現れに。精一杯の抵抗に。ひとえに国民のために)。▼旨とする(質実剛健を。質素な生活を。即断即決を)。▼一語に尽きる(末路は悲惨の。優しいの)。 **たとえようがない【譬えようがない】** 譬えようのない(美しさ。喜び)。譬えようもない(恐ろしさ。幸福感。単調な作業)。何ともたとえようもない快い味。譬えようもなく(美しい風景。かぐわしい匂いに包まれる=山本周)。何に譬えることもできない。 **たとえる【譬える】** ▼譬える(女性を花に。人生をドラマに。戦後の女の強さを靴下に"瀬戸内)。たとえる(命を鴻毛の軽きに 辻。身勝手な理想を醜女の深情けに遠藤)。一生を四季に喩える=国木田。提灯を釣り鐘に。譬え話を使って説明する。譬えを(引く。持ち出す)。小説に託した寓意。最後の勝利を寓意する。▼寓話が、(観念を擬人化した。動物を主人公にした)。 **とうしんだい【等身大】** 等身大に引き伸ばす。等身大の(思想。写真)。原寸大の(写真。ポスター。模型)。実物大の(写真。レプリカ)。身の丈に合った生き方。 **どうるい【同類】** 同類であるか否かを見極める=永井。同性愛者がたちまち同類を嗅ぎ分けてゆくように同類を嗅ぎ当てる=吉行。蛇の道は蛇。穴のむじな(同じ。一つ)。この種の事件。同質の(事柄。問題)。同種の(誤り。商品。事故が次々と起こる)。 **としそうおう【年相応】** 年相応に(振る舞う。雰囲気がくたびれている=重松)。年相応の(銀髪。青臭さを感じる。皴が目立ち始める連城)。年月相応に年をとる。年齢相応に情熱が薄まる。年齢的に釣り合う。年齢にふさわしい(行動様式。子どもっぽい表情)。 **とりもなおさず【取りも直さず】** 失敗は取りも直さず成功のもと。人口問題は取りも直さず食糧問題である。親切は取りも直さず自分のためになる。教えることはすなわち学ぶこと。出陣の宣告はすなわち死につながる=舟橋。 **なぞらえる** なぞらえる(夫との関係を源氏物語に 辻井。男女の仲を四季の移りゆきに=大野晋。自分をヒトラーに=丸谷。蛍の光を曳光弾に=野坂)。鳥の鳴き声を人の声に擬する。▼見立てる(雲を動物に。木の葉を魚に。自分を悲劇の主人公に=今水)。 **にあう【似合う】** ▼似合う(長い髪が。驚くほどよく。和服がよく。平凡なサラリーマンの暮らしが。振り袖がぴったりと)。笑顔が似合う優しい顔つき。古めかしい言葉が似合う女。蘭の花が似合う人。似合いの(男を見つける。カップル。夫婦)。さまになる。好一対の(カップル。組み合わせ。コンビ。夫婦)。▼板につく(教師ぶりが。社長ぶりが)。 **にせる【似せる】** 筆跡を似せて書く。本物に似せて作る。葉の形に擬態する。▼模する(姿を。鳴き声を)。 **にたりよったり【似たり寄ったり】** どれもこれも似たり寄ったり。似たり寄ったりの(質問。反応)。どんぐりの背比べ。目くそ鼻くそを笑う。どの意見も五十歩百歩というところで大差はない。差はない(たいして力の。どっちに転んでもたいした)。大差ない。どの町も旅行者の目には大差なく映る。どの意見も大同小異の見解。素人に毛の生えたようなプロ。ハイキングに毛の生えたような山歩き=横山。民宿に毛の生えたような旅館"井上ひ。物置に毛の生えたような小さな建物若竹。屋台に毛が生えた程度の店。赤ん坊に毛の生えた程度の子供"小池。コンピューター占いに毛の生えた程度のたわいもないこと=村上龍。 **にている【似ている】** 似ている(一見。驚くほど。どことなく。非常によく。ぎょっとするほど)。▼似通っている(重なる経験が。体質が。手口が。雰囲気が)。悲鳴に似た叫び声。赤ん坊に似た甘い体臭"中村真。ガラス玉に似た目"吉行。郷愁に似た哀感大岡。戦慄にも似た興奮を覚える=なかにし。似た者(同士。夫婦)。自分に似た者を選ぶ。似たような(住居が並ぶ。年回りの二人。設定になりがち。台詞は過去にも何度か言われた経験がある=有川)。他人の空似。雲の色にまがいそうな連山。花かとまがう身をさらす中野美。女にまがうほどの美少年=佐々吞。紛らわしい名前をつける。制服と紛らわしい服装。紛らわしくて区別がつかない。雪にまどう白い肌。霞か煙かとまどう淡いかすかな雲 竹西。地震に類した天変地異。秘密に類した用件。詐欺に類する行為。類似のテーマを発見する。類似した(事件。商号)。類似品が出回る。 **にてもにつかぬ【似ても似つかぬ】** 似ても似つかぬ代物。モデルとは似ても似つかぬ別人。悪い夢とは似ても似つかないすがすがしい。鋭い目とは似ても似つかない柔和な光西木。まるきり似ていない。似もつかない(顔立ち。別人)。 **にんぎょう【人形】** 顔が汚れ鼻が欠けするうちに人形がオバケのように気味悪くなる"島崎。木製の人形が歩いているような足音=原田康。人形の首をすげ替える。ちぎれた腕や足が人形の部分のように草の中に転がっている=大岡。人形を見るように品よく整った顔立ち。大佛。床の上に人形を置くように子供を坐らせる=高井。一日中陽らしい光にあたらぬため蒼黒くむくんだ顔が意志のない人形のよう遠藤。人形のように(おっとりした表情"石坂。黙って突っ立っている=椎名。無反応のまま時間が過ぎるのを待つ=内田春)。死骸が土を捏ねて造った人形のようにごろごろ床の上にころがっている芥川。つくりつけの人形のように盤面にへばりついて身動きができない武田爽。根が人形のように育った朝鮮人参。腹話術の人形のように笑う~中上。毀れた人形みたいに両眼をボッカリあける"安岡。 <826> # 似ている・等しい バネ仕掛けの人形みたいに飛び起きる!鷺沢。お人形さんみたいにきれい。停留所に並んでいる人々が紙人形のように平たく見える"黒井。鎧武者たちが紙人形のように宙に舞い散る=多岐川。首振り人形のように頷き交わす 井上ひ。色が白くてゴム人形のように丸々肥っている永井荷。身体が空気の抜けたゴム人形のように膝から崩れ落ちる"西木。ゴム製の西洋人形のようにフワフワと軟らかそうな肉体=武田。プラスチック人形を連想させる額"横山。フランス人形のように整った顔大。こけしを並べる。轆轤でこけしを作る。ずっと昔捨て去った薄汚れた縫いぐるみの玩具をみるようななつかしさ=大庭。熊のぬいぐるみを持ってくる。動きまわるぬいぐるみのような子豚"飯田。水浸しになったぬいぐるみのようにぐったりと倒れている小人=高橋三。 **ひとしい【等しい】** この世の地獄に等しい所。なきに等しい貧弱な政策。予備校に等しい進学名門校。児戯に等しい下らぬもの=中野。全面降伏の宣言に等しい悲痛な叫び三田。針地獄に等しい生活村上元。等しく苦しみを分かち合う。古今識者の等しく言うところ。三人で等しく分ける。読む者の等しく感じるところ。内外の圧力が等しくなる。まんべんなく均一にまざる。内容を均質にする。均等に(配分する。分割する)。等質の(作品。集団)。米と水を等量に入れる。ナポレオンに比肩する人物。神に匹敵する予言者。一対一の比率。 **ひゆ【比喩】** ▼比喩(奇警な。巧みな。平凡な。含蓄に富む。使い古された。多分に文学的な)。比喩に満ちたやりとり。柄にもない比喩を使う。簡明な比喩を用いる。比喩的な言い回し。比喩的に(形容する。使う)。 **びょうどう【平等】** 富の配分が平等になる。どんな人にも平等に微笑みかける=小川。平等の分与を取り分ける。天は人の上に人をつくらず。平等主義を徹底する。 **ふさわしい【相応しい】** 収入にふさわしい生活。首相にふさわしい人。性格と能力にふさわしい職。葬式にふさわしい沈痛な顔。壮大な十字軍運動の最後の幕を引くにふさわしい熾烈な攻防戦=塩野。樹海という呼び名がふさわしい一面の緑高田。大道場の主にふさわしい威容をそなえる池波。儀式に似つかわしい格好。正月に似つかわしい服装。 **ぶんそうおう【分相応】** 分相応なところを見つける。分相応の(贈り物。暮らし。生活)。とかには甲羅に似せて穴を掘る=山岡。 **ぶんふそうおう【分不相応】** 分不相応の(贈り物。暮らし。役割)。身分不相応な(銭を隠し持つ。法螺を吹く)。身分不相応に贅沢だ。過分な自信を持つ。過分の(お褒めをいただく。心づけをもらう。文章を寄せてくれる)。収入不相応の贅沢をする。雑魚と交じり(の。雑魚だ)。身に余る(贈り物。お言葉。果報。光栄)。身に余るような褒美を受ける。 **ほんにん【本人】** まぎれもない当の本人。本人が一番よく知っている。本人かどうかを確認する。本人からじかに聞く。本人に面と向かって言う。本人の(同意を得る。前をはばかる。口から直接聞く)。自分自身の(身体の重みが柳のように歩みに抗う三田。ふがいなさに腹が立つ=阿川佐)。自分自身を笑うような皮肉な微笑中村貞。当人の(考えに任せる。心がけ次第)。身柄を(預ける。確保する。拘束する。地検に移す。警察に引き渡す)。身柄引き渡しを(断る。要請する)。 **まね【真似】** なめた真似をする。▼真似する(が人間の声を。万事につけて西洋流を)。口真似がうまい。人の口真似をする。祝言の真似事をする。ばかな真似はやめろ。ろくな真似をしない。あくどい真似を決してしない 池波。真似をするには及ばない。ちょっとやそっとでは真似ができない。誰にも真似できない。真似はできない(軽はずみな。不様な。下手な)。勝手放題な真似はさせない。他の追随を許さない。 **まねる【真似る】** 鳥の鳴き声を真似る。人真似のうまい鹦鹉。物真似で笑わせる。物真似では研究にならない。あやかる(偉い人に。天恵に。ブームに)。亜流が派生する。亜流に(すぎない。とどまる)。古人の糟粕をなめる。それらしく振る舞う。無意識に以前の行動をなぞる。▼模倣する(製品を。文体を)。かたどる(王家の紋章を。魚を。動物を。花を。雪の結晶を)。愛も心も言葉によって象られ暗い海から浮かびあがってくる三浦し。▼倣う(師の歩みに。昔の例に)。▼ひそみに倣う(ご先祖の。先人の。昔の人の)。右に倣えをする。見よう見真似で(脚本を書く。脈の取り方を覚える)。仕事を見よう見真似で覚える。見よう見真似の手つき。 **もけい【模型】** 町が遠くに模型のように光る=加賀。箱庭のような競馬場!常盤。箱庭のようにこまかく美しい自然大佛。箱庭細工のようにこぢんまりと整理のゆきとどいた論理をつくる=開高。従来のモデルが崩れる。▼モデルにする(作者自身を。生母を)。型式(機械の。自動車の。飛行機の)。原型に復する。原型を定める。 **わがみ【我が身】** 我が身に(好都合な予想。照らして考える。引き比べて考える)。我が身の不幸を嘆く。我が身を鞭打たれるような辛さ=山岡。我が身のように案じる。父の衰弱が我が身のようにこたえる萩原。我が身可愛さが先に立つ。一身にかかわる問題。重責を一身に引き受ける。不運を一身に背負う。一身に集める(信頼を。尊敬を。寵愛を)。一身の保全を図る。一身を犠牲にする。 <827> # 縫う・織る **あむ【編む】** ▼編む(髪を。靴下を。マフラーを。旅行日程を)。藁で編んだ草履。せわしく編み棒を動かす。編み目が(粗い。細かい)。編み物の手を休める。月の光が川面にちらちらと動いて編み針のように入り交じる岸田。編み上げる(セーターを。マフラーを。三つ編みを)。手編みの(セーター。マフラー)。 **いと【糸】** 縫りの強い糸。納豆の糸が粘る。心に張り巡らされた緊張の糸が緩む"阿刀田。血の糸がしたたかい糸で結ばれた間柄・村松。粘性の糸でからめ取るような視線"中沢。目に見えぬ糸で操られているような人生三浦綾。雨が白い糸となって対岸の景色を消す 中沢。見えない糸に引っ張られるように階段を上って行く=島尾。心の糸に触れる=九鬼。糸の(緊張が強まる。よじれを直す)。もつれた糸のほぐれ目が見つかる。糸を(たぐるように思い出す永井龍。紡ぐようにせっせと銭を貯める=山崎)。ぴんと糸を張る。運命の糸をみごとにさばく=星。記憶の糸を手繰る=眉村。想像の糸を引き伸ばす=陳。向かいの岩場から幾本かの水が糸を下ろすように降りる滝=伊集院。糸をほどく(絡まった。ほつれた)。幻滅と絶望との果てに最後に縋り付いたただ一筋の糸中島。心が一筋の糸のごとくに痩せるばかり坂口。心が麻糸のように乱れもつれる=円地。硬い糸のような針金をねじった荷札の束"尾辻。粘りつく糸のような鼻にかかるくぐもった声"日野。一筋二筋糸のような虫の声=永井荷。一本の糸のように漂っている音=辻仁。紫煙が一筋の糸のように流れる=泉。もつれた糸のように複雑に絡みあう枝"長野。糸玉をくるくると糸がプツンと切れそう 向田。糸がぷつんと切れたような寂しさが胸に返る=有吉。ふっと糸が切れるように死ぬ=井上ひ。降り続いていた雨が糸の切れたようにふっと止む=長野。連絡が糸の切れたように断たれる=遠藤。糸のように細く(刻んだ大根"長崎。引いたかすかな淋しさ=野間)。やせ細り糸のようになって死ぬ=中上。白っぽく糸のように細い葉日野。目が糸のように細くなる=東野。紅い糸のような細い血の筋円地。糸のような細い雨が斜に降り懸る=田山。蛍が水面を漂う細い糸のような光の筋を曳き解きほぐれつしながら漂う。長野。大きな眼を糸ほども細くしてじっと敵陣のほうを見守る=山本。叫ぶ声が細い糸になって朝の空気の中を伝わってくる=黒井。流れ落ちて糸を引く水滴!森。闇のなかを斜交いに雨が糸をひく=中村真。粘っこく糸をひく口調藤本。血が糸を引いて流れ落ちる=船戸。血が糸を引いたように流れる"小林久。糸のふわふわに引いた納豆。涙がはらはらと崩れて光の糸を曳きながら流れる=谷崎。流星が長い光の糸を曳いて虚空をななめに墜ちていく=光瀬。三隻の船がお互いを糸で引き合っているように近づく泉。竿にてぐすを結ぶ。流れてくる息がてぐすのように欲望を引き寄せる=山田詠。 **いとくず【糸屑】** 白い糸屑がささくれだつ。糸くずを摘み上げるように不快の種を摘み上げる=森。糸屑を毛毬のようにまるめる=室生。電線が糸屑のように飛ぶ"山崎。透明に近い体内に糸くずほどの骨が透けて見える小さな魚"落合。仄かに笑いを含んだ目尻に糸屑ほどの皺を刻む落合。 **おりなす【織りなす】** 命が織りなすドラマ。運命の織りなす不思議な模様。季節を織りなす花園。さまざまな登場人物が織りなす物語。光と影が織りなす光景。明暗織りなされた人生。 **おる【織る】** ▼織る(とんから機を。色鮮やかな糸で美しい布を=あさの。自分一人で勝手な夢を円地。梭のように休みのない思いで心に悪い布を!佐藤泰。身勝手な理屈を冷えた心のなかで=中村真)。機を織る音がリズミカルに響く。窓の外は雨ともみじで霧が山を織っている“泉鏡。巧みに織られた布。イメージを織りあげる。心理のあやを随所に織り込む"阿刀田。織り出す(陰影を。地紋を。種々の文様を。模様を)。織るような忙しさに足を動かす 佐藤春。カラカラと音を立てながら休みもせずに機織りを続ける有吉。▼織りまぜる(虚構の話を。追憶と空想を。満足と憂いを)。苦しみと喜びの糸を交互に織り交ぜる!内橋。走らせばひなびた鈴のような音を立てる杼=宮尾。杼を(くぐらせる。走らせる)。船が梭のように波を切り破る=有島。 **きぬ【絹】** 絹の(滑らかな光沢。肌触り。)。柔らかい絹の褥にくるまっているような安らぎ=高橋知。絹を(裂くような声を張り上げる=山田。引き裂くような鋭い響き=光源)。絹のような滑らかな内腿が羽布団のごとく男の腰骨から脾腹にまつわる"永井。香をたきこめた絹のような女性の柔肌真。絹のようになめらかな皮膚真継。初夏の空が青く澄んで絹のように光る=阿部。絹地のように薄く柔らかな葉連城。絹物がつつとすべり落ちる。澄みきった空が生絹のようなちぎれ雲を高く浮かべる落合。縮緬の皺が春の陽を吸って細かい皺を浮き上がらせる=円地。浅く走っていく水が縮緬の皺のように繊細に光る=佐藤春。脂色の振袖が春の陽ざしを縮緬のしぼにきらめかせる=円地。繻子のような(美しい下腹。女の胴)。 **きぬいと【絹糸】** 谷川の流れるように絹糸が動いて行く=外村。流れ出て来た水が解きほぐした絹糸の束のようにつやつやしくなよやかに揺れながら流れる=佐藤春。 <828> # 縫う・織る 絹糸を(つむぐ。解きほぐす。草木染めにする)。極細の赤い絹糸を貼りつけたような切り傷"高樹。真正直な純白の絹糸をピンと張りつめたような心の持ち主永井路。繭から糸を取る。絹糸のような(春雨が降る。細い声)。湿った絹糸のような優しい声獅子。光った絹糸みたいな長い真っ黒な髪の女大庭。生糸を(精練する。染める。練る)。 **けいと【毛糸】** 血が水面に毛糸を浮かべたように線になって走る=水上。細い煙が風のない空に毛糸のように上る=小林多。カシミヤのセーター。真っ白なカシミヤのワンピース。上質のカシミヤのような手触り。髪の毛が羊毛のように縮れている佐山。羊毛を(刈り取る。精練する)。 **ししゅう【刺繍】** 華美な刺繍を施す。ハンカチに刺繍する。胸に会社の名前が刺繍してある=あさの。アブラムシがバラの枝をぎっしり目のつんだ刺繍のように覆う小松太。刈り込んだ芝生に紅白の夏花が刺繍のように盛り上がっている=岡本。縫い取り(名前の。花の。イニシャル入りの)。 **しゃ【紗】** 大きな紗でうたかと思うように薄い陰翳が世間を包む=長塚。紗のベール。空がうっすらと紗をかけたように白く濁る=泉。紗のように透き微る衣崎。綾織の羅をまとう。の煙が光を透して羅のように柿の枝にまつわる=佐藤森。虹色の光の糸を集め記憶の薄絹を織る!大庭。 **しんちょう【新調】** 新調の服に腕を通す。▼新調する(外套を。靴を。モーニングを。洋服を)。仕立ておろしのようにぴんと着附ける=有吉。新鮮で歯切れのいい仕立ておろしの洋服のようにさっぱりとした後味のたのしい感第三好達。おろしたてのそろいの浴衣を着て夏祭りに臨む三浦し。 **つむぐ【紡ぐ】** ▼紡ぐ(糸を。思い出を。言葉を。不平を。平和を。羊毛を。夢を)。▼紡ぎ出す(糸を。印象を。幻想を。言葉を。繭を。物語を。イメージを無限に)。体の奥から一筋の糸を慎重に紡ぎだす感じで口を開く高樹。願望が紡ぎ出す世界。む(麻を。糸を。)。運命の糸車が回転する=清原。糸車を繰る。糸繰り車が軽やかな音を立てて回る=藤田。糸繰り車を回す。 **にしき【錦】** 紅葉を錦と疑う。心に錦を着る。東京で一旗揚げて故郷に錦を飾る―熊合。落葉樹が錦をまとう倉橋。綺羅を極めたあでやかな衣合崎。大した綺羅を着飾ったわけでもない夏目。 **ぬいあわせる【縫い合わせる】** ▼縫い合わせる(傷口を。辻褄を。布を。皮膚を)。▼総合する(傷口を。裂け目を。皮膚を)。 **ぬいつける【縫い付ける】** ▼縫いつける(イニシャルを。襟に芯を。傷口を。名札を。布を。ボタンを。見返しを。ワッペンを)。▼まつる(袖口を。布の端を)。裾をまつる(スカートの。ズボンの)。 **ぬいばり【縫い針】** 縫い針に糸を通す。飛行機が組針ほどの機体を光らせて一万メートルの高空を飛ぶ"林京。畳針のように鋭い視線を投げる=宮部。縫い針のような雨が降り落ちる『宮部。待ち針みたいに小さな魚が群れになって泳いでいる=小川。 **ぬう【縫う】** ▼縫う(着物を。花嫁衣装を。忙中閑を。薄い日射しが曇り空を三好京)。街並みを縫うように高架道路が走る!泉。木々の間を縫って登って行く。巨石を縫って水が流れる。しじまを縫って響く叫び声。テーブルを縫って駆けまわる。淡暮を縫って漕ぐ。蛍が闇を縫って飛ぶ。ビーチパラソルの間を縫って波打ち際に突進する=眉村。村人たちの絶叫や悲鳴が風雨を縫って交錯する=杉本。▼縫って歩く(樹々の間を。雑踏の中を。人込みを)。縫って進む(植え込みを。山腹を。島々を)。▼縫って走る(木立を。山間部を。路地から路地を)。声が心に縫い込まれる。糸の縫い目。縫い物に精出す。縫い物の手を休める。汽笛が乳色の朝筋を縫うようにして長々と響きわたる=人間。島じゅうを縫うように駆けまわる=菊池。陽の光を縫うようにただよう霧"原田。山を縫うように走る高橋克。▼縫うように歩く(人垣を。マンションの間を重松)。▼仕立て直す(留め袖を。服の丈を。古い着物を)。▼縫い上がる(刺繍が。服が)。▼縫い上げる(着物を。晴れ着を。単衣を。洋服を)。縫い直す(衣服を。形見を。襦袢にを。浴衣を)。▼縫い込む(糸を。一針)。思い出を心の襞の中に縫いこんでおく瀬戸内。縫い取る(名前を。花を。模様を。輪郭を)。仮縫いする(背広を。ウエディングドレスを)。くける(襟を。裾を。)。裁縫で細々と生計を立てる。仕立てのよい服を身につける。仕立物をして生計を立てる。▼手縫いする(革を。雑巾を)。手縫いの(シャツ。服)。黙々と縫い物をする。黙々と針仕事を続ける。▼針を運ぶ(一心に。せっせと)。▼かがる(網の破れを。糸で裾を。衣類の穴を)。縁かがりをしたナプキン。縁かがりをする(縫い代に。糸で。ミシンで。レースで)。ミシンがカタカタカタと音を立てる向田。銃弾がミシンで縫うように座席を撃ち抜いていくなかにし。 **ぬの【布】** ▼布(地質がしっかりと丈夫な=長塚。麻よりも更に手ごわい感じの外村。驚くほど薄くて昆虫の羽みたいな。内田。蟬の羽のように薄い=円地)。布が(ひらひらなびく。翻ってはたはたと鳴る)。白い布が雪原か氷原のよう川端。干した布が吹き流しのように翻る高井。布で体をすきまなく包む。水のように柔らかい布の地質人谷崎。布を(頭からかぶる。糸のように引き裂く=子母沢)。一枚の布を織り上げるようにしてきた二人の結婚生活鷺沢。女が布をゆっくり振っているように霞が揺れる"辻井。壁いっぱいにいろいろの布を滝のように垂らす。安岡。菜の花の黄色の帯の向こうに青い布をハラリと広げたようなのどかな瀬戸内海がある"阿久。 <829> # 縫う・織る 濡れた布を叩くような頬打ちの音"大岡。春の野を飾って黄色な布を覆うたような菜の花"長塚。雪が降り続き森も林も白い布をかぶせたように長崎。月が黒い布のような雲に巻きこまれる!梅本。布のように幾重にも重なって漏れる斜光伊集院。陰鬱な静けさが一枚の黒い大きな布のように降りてくる=森。顔の皮膚が防水された布のように相手の言葉を弾き返す大佛。夜の湾が一枚の銀色の布のように横たわる=森。自分が焼けただれた布のようにボロボロになっているのを感じる=阿部。布切れを(継ぎ合わせる。縫い合わせる。はぎあわせる)。▼布地(織り目の粗い。織り目の細かい。ぼてっとした厚手の)。布地に宝石を縫いつけたドレス=あさの。布目を入れた陶器。透けるような地の長いローブ=日野。裏地を(あてる。つける)。粗い生地(布目の。目の)。高価な生地を買い求める。洋服の生地を買う。きちんと重ねた小切れを札でも数えるように手早くめくって行く=川端。三角巾で腕を吊る。三角巾をかぶる。青い繻子の服を烏のように着込む"久米。脂汗がのように光る=宇野。端切れで作った小さな財布=山本周。雪渓が白布を流したよう。新田。谷川が暗碧に白布を織って矢を射るように里へ出る=泉鏡。服地が染みになる。地に臭いがしみつく。▼織物(平坦な。金銀五彩のけばけばしい=円地。脳がつむぎだす言葉の倉橋)。一点の染みもない純白のテーブルクロス=森。眼に痛いほど白い卓布。人米。テーブルクロスを敷く。フリルをあしらったレース。レースの(カーテン越しに窓の外を見やる。ついたテーブルクロス。切れっ端みたいな雲"干刈。フリルがついた花模様のブラウス大)。落葉樹の古木がレースのような影をひろげる=曽野。青い糸で編んだレース模様のような字。 **はり【針】** 先の尖った細い針。板の間へ一本の針が落ちたかすかな音=幸田。針で(血豆をつぶす。突いたほどの苦しみもない“菊池)。星が黒い天幕に針で穴を開けたように輝く泉。針でも踏みつけたようにぎょっとする=有房。針の先で突く。時計の針の一刻み。桑畑が黄葉の少しばかりを残した針のよう水上。地獄の針の山を歩くように足が竦む川端。鋭い針のまなざしを向ける"長野。暗幕に開いた針の穴くらいの微小な点"長野。針の穴を通すような緻密な視線!長野。針の先ほどの小さい理由"石坂。針を(持つ手を休める。含んだ辛辣な言葉"海音寺)。手ばしこく針を動かす。唐松林が金の針をきらめかす「加賀。言葉の中に針を隠す」有吉。陽を受けた海が針をまき散らしたようにキラキラと光る=遠藤。計器の針が(振り切れる。ひっくり返りそうに震える=五木)。針さしのように膨れ上がった赤い蒲団=宮本百。針のような(神経を立てる。松の葉)。杉が針のような雪の梢を見せて空にきりたつ=水上。鋭くとがった針のような麦の穂先"飯田。千万本の針のような霜柱"本庄。つめたい針のような雪の粉"宮沢。の底から針のような光がのぞく=池波。針のように(心を尖らす。鋭い囁き。光る細い目。細い雨)。鋼鉄の針のように鋭く硬いトゲ=開高。先が針のように尖る=北村。神経を針のように尖らせる=獅子。針のように突き刺さる(非難が。ささくれだつ情念が真継)。針のように光る(木々の梢が。海が薄日を受けて遠藤)。針一本落としても(聞こえるほどしんと静まる=高田。なにか崩れそうな七月の正午前=川端)。頭のてっぺんが針の山のように突っ立っている髪形=伊集院。ピンで(髪をとめる。昆虫をとめる)。▼針を刺す(悔しさが胸に。針山に。ぷつりと。ちくりちくりと)。針が(皮膚に刺さる。腕に突き刺さる)。針でぷすぷす突き刺す。が尾の針で刺す。針で(ちくちく刺すようなしゃべりかた清水俊。突き刺すようににらみすえる=高橋和)。冷たい言葉が針の雨のように胸を突き刺す萩原葉。人の声や雑音がびんびんと頭を針のように刺戟する=有吉。氷の針のように冷たく小指を刺し貫いたの一雫やにし連城。周囲の眼に針のように突き刺される真継。水面に突き刺さった銀の針のように釣り糸がぴくりとも動かない=村上。嵐が鋭く冷えた針のように心を刺す泉。言葉が針のように耳を刺す獅子。無数の針のように寒気が肌を刺す加賀。針を(刺されたように驚く=川端。刺すように厳重に取り調べる=子母沢)。襟元に凍った針を刺されるようにぞくぞくと身ぶるいする=有吉。太い針をぷすりと突き刺されたような衝撃の石坂。バケツの水がミシン針になって手の甲をちかちか刺す石森。 **ビロード【天鵞絨】** 子豚はびろうどのおもちゃが生きで動いているよう壺井。天鵞絨のようなすべすべとした誘いを受ける=林美。霜に焦げた天鵞絨のような肩を丸々と出している山芥川。豊かにもち上がった緑の天鵞絨のような林の横腹!佐藤春。ビロードの布に唇を触れたようなビールの泡"北村。ビロードのような(石竹の花。薔薇が咲き誇る=檀)。横に射し掛かる日の光が雲をやや和らげて天鵞絨のような滑らかな感じを与える=長塚。ビロードのように柔らかいいい声=森。紫のビロードをはりつめた夜空城山。うねる黒びそうどのような河水本庄。 **もめん【木綿】** 木綿の(絣の着物。ジーパン。下着。シャツ)。よれよれになった木綿のパジャマ=景山。風が吹き出して河の天地が晒木綿の滝津瀬のように白濁する=岡本。立ての晒木綿のような生の水―岡本。さらしの布をきつく巻きつける。包丁にさらしを巻く。 <830> # 脱ぐ・貼る **あぶらがみ【油紙】** 油紙に火がついたように際限もなくしゃべる谷崎。油紙みたいにがさがさした手"小川。バリバリと油紙を破くような激しい雨音=長野。 **うすがみ【薄紙】** 薄紙を剥ぐように少しずつわかりはじめる=中。病が紙を剥ぐように恢復に向かう柴田錬。浮い紙(ぺらぺらの。花びらのような深沢)。翅が薄紙のようにひらひらと揺れる=川端。 **かみ【紙】** 紙(透かしの入った。目が痛いほど真っ白にむらなく漉き上がった宮高尾)。紙が(黄色に変色する。朽ち葉色に変色する。文字で埋まっていく。カサカサと音を立てる=尾辻)。乾いた紙がばりばりと燃える=福永。ひらひらと紙が落ちるように声も立てずに身体が倒れる=黒岩。紙とペンを拝借する。紙に(折り目をつける。水が浸みこむように外からの知識がごく自然に頭の中に浸みこむ!永井路)。適度に疲れた身体に酔いがまわってゆき、紙に水が浸みてゆくように堅いところをうるおす=伊藤整。紙の(上に筆を走らせる。繊維にが染み込む。端を手のひらで押さえる。山に埋まるようにして仕事をする)。炎が紙の上を這う。声変わりの最中の紙の破けるような声"獅子。図書館みたいにがくさい紙のにおい三浦し。古びた紙の臭いが鼻をつく若竹。水に紙のごとき氷が閉じる=長塚。目にやわらかな黄味を帯びた紙は夏の夜のごとき圏色の文字をくっきりと浮かびあがらせる三浦し。紙を(細かくちぎる。筒状に丸める。びりっと破る。細長く切る。くしゃくしゃに丸める。ばらばらとめくる。びりびりと引き裂く。丸めてごみ箱へ捨てる。四つ折りにする。棒のように捲く松本)。丈夫な紙を。テーブルの上でとんとんと紙を揃える。一枚紙を剥がすように快くなる=長塚。たちの真白い小花が柔らかい紙を散らしたように咲く高樹。紙を広げる(折り畳んだ。丸めた)。顔が紙のように白く無表情"阿刀田。血の気が失せて顔が紙のように青ざめる=鳥尾。紙のように(光のない顔。薄いコウモリの皮膚"畑。顔を皴くちゃにして笑う遠慮。自分の身体が軽い=伊藤整)。おばあちゃんの背中が紙のように薄くて狭い落合。焦げた紙のように汚れた茶色"光瀬。自分を一枚の紙のように軽くて頼りないものに感じる=藤沢。大根を紙のように薄く切る=向田。肌の色が使い古した紙のように黄色く濁る=高井。真綿を紙のように薄く伸した綿帽子。有吉。寒天をナイフで紙みたいに薄く切る=長崎。シャッターが古びた厚紙のようにそりかえる=光瀬。紙一枚の隙間を残す。紙鉄砲をバンと鳴らす。型紙に沿って布を裁つ。画用紙を小脇に抱えこむ。木材チップをパルプにする。半紙に墨書する。半紙を綴じた帳面。巻紙に毛筆で認められた手紙をひろげる=石坂。巻紙を片手で持ったままさらさらと書く鈴木三。ちぎれたテープが風に舞う。七色のテープが岸壁に滝のように流れる=篠田。 **かみきれ【紙切れ】** 紙切れがひらひら落ちてくる。ひらひらと白い紙切れがはためく。嵐の前の一片の紙切れにすぎないような無意味"高橋和。紙切れを画鋲で留める。ポケットから一枚の紙切れを取り出す。紙切れのような実が浮かんでいる塩っぽい味噌汁小林多。身体が紙片のように飛び上がる"小林多。シールで封をする。シールをはがす。 **かみざいく【紙細工】** 屋台骨が火の中へ紙細工のようにヒラヒラと呑まれて消える=山崎。赤みを帯びて切り紙細工のような端正な桐の若柒円地。夕焼けのほとぼりに映えた宵空が切り紙細工のような屋根の黒さをくっきり浮き出している=永井龍。 **くる【繰る】** 繰る(記録を。書類を。帳面を。電話帳を。戸袋の雨戸を。ばらばらと紙を。古いアルバムを。綴じ込みを一枚ずつ)。▼ページを繰る(ばらっと。本の。漫然と。気ぜわしげに次々と)。▼はぐる(紙を。布を。ページを)。 **しぶがみ【渋紙】** 渋紙の上に砂利を撒いたような声。渋紙をもみつぶしたようなお婆さんの掌=川端。渋紙のように日に焼けた顔壺井。手足が渋紙色になる。 **しへん【紙片】** ずたずたに裂かれた紙片。紙片が(一枚はらりと落ちる。乾いてかさかさ鳴る)。白い紙片が風に吹かれて路上を転がって行くような後ろ姿=黒岩。小さな紙片がひらひらと花びらが舞い込むように落ちてくる!柴田錬。灰と化したばかりの紙片が千切れた黒蝶の羽のように舞い上がる=武田。紙片に鉛筆を走らせる。紙片を(画鋲でとめる。小さく畳む)。ポケットから紙片を取り出す。足許に散らばった紙片を拾い上げる=柴田錬。腹立たしげに紙片をビリビリとひっちゃぶく=北。紙片のような知識大佛。 **たんざく【短冊】** 短冊に願いを書く。さらさらと短冊に書き流す。短冊を笹の枝に下げる。内懐から一枚の短冊を取り出す。 **ぬぎすてる【脱ぎ捨てる】** ▼脱ぎ捨てる(着ている物を。鎧っているものを。乱暴にサンダルを。履き物を乱雑に。服をベッドの脇に。ワンピースを足元に)。服を脱ぎ捨てる(無造作に。そそくさと。手早く)。脱ぎ散らかす(シャツを。ズボンを。服を)。 **ぬぐ【脱ぐ】** ▼脱ぐ(衣服を。上着を。オーバーを。外套を。学生服を。片肌を。を。着物を。下を。下駄を。コートを。サンダルを。仕事着を。下着を。シャツを。ジャンパーを。スニーカーを。ズボンを。セーターを。セーラー服を。背広を。草履を。靴を)。 <831> # 脱ぐ・貼る 手袋を。白衣を。パジャマを。肌を。パンティを。服を。ヘルメットを。帽子を。喪服を。ワイシャツを。草鞋を。ワンピースを。殻をすぽっと。秘密のベールを。皮でもむくようにセーターやスラックスをべろべろといっぺんに"石森。ジーパンを踏みしだくように落合。スーツをボタンもひきちぎるほどの勢いで=胡桃沢)。靴を脱ぐ(玄関で。三和土で)。脱いだものを(片づける。畳む)。ためらいもなく脱いでいく。やおら服を脱ぎだす。▼脱げる(靴が。靴下が。ハイヒールが。帽子が)。脱がせる(上着を。着物を。靴を。ズボンを。服を)。▼脱ぎ落とす(殻を。着物を。スリッパを)。脱ぎ去る(衣を。手袋を。服を)。脱ぎ揃える(上履きを。靴を。スリッパを。草履を)。 **はがす【剥がす】** ▼剥がす(かさぶたを。紙を。仮面を。窓の目張りを。百合の根を。一枚一枚丁寧に。チョコレートの銀紙をべりべり荻野)。▼剥き取る(皮を。着物を。服を。身についた幸福を。乱暴にブラジャーを)。皮を剥ぐ(頭の。偽善の。杉の)。▼剥ぐ(掛け布団を。仮面を。着物を。皮を一枚ずつ)。引き剥ぐ(袋を。布団を。筵を。べりべりと皮を)。引きむく(牙を。双眸を。目玉を)。▼ひんむく(正体を。目玉を)。▼引き剥がす(トタン板を。絆創膏を。ポスターを。床板を。ラベルを。テーブル掛けを。体をベッドから)。しっかりと握りしめている指を一本ずつ引きはがす=勝目。幻想を容赦なく引っ剥がす"佐高。化けの皮を(剥ぐ。ひんむく)。 **はがれる【剥がれる】** ▼剥がれる(かさぶたが。漆喰が。生爪が。化けの皮が。ポスターが。めっきが。雲母が薄く。一枚ずつ薄皮が。コーティングが。山賊に襲われ身ぐるみ=倉橋。窓際の闇が部屋の灯りに淡く=連城)。声が耳の底にこびりついてなかなかはがれない鷺沢。剥離する(網膜が。胎盤が子宮から)。 **はげおちる【剥げ落ちる】** ▼剥げ落ちる(壁が。古い幻想が。無残に化粧が。ところどころ)。ぼろぼろに化粧が。 **はげる【剥げる】** 剥げる(化粧が。塗装が。ニスが。塗りが。化けの皮が。ペンキが。塗料があちこち。よそいきのメッキが=田辺。白粉がばかばかに。空想の彩色があっけなく佐多)。 **はだか【裸】** 脱いで裸になる(着物を。服を全部)。すっぽんぽんの裸。裸で(いるところを見られる。ベッドに横になる)。衆人環視の中で裸にされる。人前で裸にでもされたように耳たぶまで赤くなる=山手。裸に(なっての付き合い。なって一から出直す篠田)。裸になる(思いきりよく。上半身)。裸になった落葉樹。裸の(魂をさらす。胸を隠す。男と女がからみあう)。醜くたるんだ裸の腹。裸を見られたような居心地の悪さ落合。▼裸にする(女を。下半身を。全身を。身ぐるみ)。下帯一つになる。霞もとわぬ姿。裸同然で追い出す。裸同然のみじめな格好。一糸まとわぬ(姿。裸形を横たえる)。ヌード写真を眺める。真っ裸で(泳ぐ。寝る)。真っ裸の(男。女性)。身に一物も帯びない。身に一糸も(つけない。まとっていない)。何一つ身につけていない。女の白いぶくぶくした裸形。素っ裸の(赤ん坊。再出発。つきあい)。素っ裸で歩きまわる。終日素っ裸で過ごす。全裸の(写真。女性)。全裸で寝る。惜しげもなく全裸になる。丸裸で(遊ぶ。泳ぐ)。丸裸にする(女を。組織を)。山が丸裸になる。羚羊のようにすらりとした裸身隆。ネグリジェを通して裸身が透けて見える=笹沢。夜目にも白く裸身が浮かび上がる=笹沢。若い女の裸身を両腕に抱きしめる"小松左。まぶしいほどの白い裸体桐野。裸体を(太陽にさらす。見られた女のように固くなって立ちすくむ有島)。裸体が汗に濡れる。窓から射しこむ淡い月光に裸体が象牙色に染まる=森環。 **はだける** はだける(襟元が。着物の前が。胸元が。胸が。浴衣の襟が。浴衣の裾が。襟を。シャツの前を。白い胸を。乳房を。胸元を)。裾がはだかる。 **はだぬぎ【肌脱ぎ】** 肌脱ぎになって汗をぬぐう。肩を肌脱ぎにする。▼片肌脱ぎにする(着物を。浴衣を)。両肌脱ぎになる。 **はりつける【貼り付ける】** ▼貼りつける(レッテルを。接着剤で。ひきつった笑いを頬に落合)。張りつける(不満を顔中に。湿布薬をべたべたと=内田春)。▶べたべたと貼りつける(お札を。写真を)。頬に得意気な微笑が貼りついている三浦し。顔から血の気が引いて白い笑いを貼りつけたようになる=坂口。貼付する(印紙を。切手を。シールを。証紙を。ステッカーを。ラベルを)。 **はる【貼る】** ▼貼る(紙を。切手を。膏薬を。シールを。ステッカーを。絆創膏を。ポスターを。ラベルを。レッテルを。地図を壁に。名札をドアに。子紙を休裁よく)。流行作家というレッテルを貼られる=石坂。張り出す(壁にビラを。壁新聞を掲示板に)。切り張りする(障子を。新聞記事を。データを)。張り合わせる(板を。獣皮を。破れ目を。鉄板とアルミ板を)。 **ポスター** ポスターか何かで見た記憶がある。ポスターが(功を奏する。所狭しと貼ってある。麗々しく貼られる)。ポスターを(掲示板に貼る。筒状に丸める。電柱に貼りつける)。貼り紙が雨露に打たれて変色する。 **むく** むく(かっと目を。殻を。牙を。白目を。歯を。林檎の皮を)。聞いた者は一様に目を剥く=高橋三。目玉をぎょろりとむいてにらむ。一皮むけば人間は誰も同じ。▼むける(足の皮が。甘皮が。渋皮が。赤むけに。皮がべろりと。皮膚がずるずる)。 **わし【和紙】** 和紙に恩書する。和紙を(すく。綴じる)。▼原料とした紙(を。三椏を)。 <832> # 拭う・片付ける **かたづく【片付く】** 片付く(焼け跡の始末が。部屋がさっぱりと。思いがけなく早く面倒な仕事が=日野)。葬式とそれに続くごたごたが一応片づく=大岡。▼きれいに片付く(洗い物が。家の中が。見違えるくらい)。きれいに片づいている(食卓が。部屋が)。室内がこざっぱり片づいている"夏樹。どこもかしこも乱れひとつない、ひとつ狂えば精神の釣り合いが破れそうな片づき方古井。 **かたづける【片付ける】** ▼片付ける(急いで用件を。身辺の諸事を。机の中を。脱いだものを。一刀両断に。事件を早急に。過去の話と。手早く。ざっと家の中を。食べさしの食器類を。机の上の書類を。テーブルのお皿を。てきぱきと洗い物を。目の前の仕事を。家事をてきぱきと。汚れものをきれいに鷺沢。鎧袖一触一合戦で舟橋。隅から隅まできちんと"有島)。▼片づける(やっきになって部屋を"古井。貧しさを運命論で=大庭)。▼仕事を片づける(ひとまず店の。期待以上の水準で=眉村)。▼片付けていく(機械的に仕事を。問題を一つひとつ)。荷物の片付けが一段落する。片付けに手間がかかる。ごたごたした片付けに疲れる。夕食の片付けを済ませる。▼取り片付ける(座敷を。戸棚の上を)。▼片寄せる(心を。縫い物を。屏風を)。▼始末する(荷物を。脱ぎ捨てた着物を)。 **ぞうきん【雑巾】** 雑巾で水拭きをする。▼雑巾で拭く(縁側を。床を)。雑巾を(ぎゅっと絞る。縫う)。金盥に雑巾を浸ける。ひき蛙が跳ねるような恰好で雑巾をかける=連城。ゾウキン切れのように疲れきる=小林多。着衣がビリビリに引き千切られ雑巾のように散らばる=内田康。座席にボロ雑巾のような身を横たえる荻野。濡れ雑巾で(拭く。顔を拭かれたような気色の悪さ=永倉)。いきなり濡れ雑巾で拭かれたように感情を汚す外村。濡れたぞうきんのようにちっとも燃え上がらない=山本有。濡れ雑巾のように二本の指でつまむ。身体が濡れ雑巾のようにクタクター=高橋三。赤くかじかんだ手で濡れ雑巾を絞る"夏目。モップで(水拭きをする。床を磨く)。モップを(かける。絞る)。 **ちりがみ【塵紙】** ちり紙を(散らかす。丸める)。袂からちり紙を出す。鼻の穴にちり紙を詰める。懐紙に包む。懐紙を取り出す。ティッシュ一箱を空にする。ティッシュで(口を拭く。鼻をかむ)。ティッシュを一枚取り出す。ティッシュペーパーのように男に捨てられる!永倉。鼻紙で鼻をかむ。鼻紙より無造作に労働者を使い捨てる=小林多。ハンドバッグから鼻紙を出す。鼻紙のごとく無造作に捨てられる=山手。 **ていれ【手入れ】** 手入れが(悪い。思うにまかせない。行き届いて艶のある髪=小川)。手入れに心を労する。手入れの行き届いた(生け垣。芝生。中年の淑女)。手入れを怠る。手入れする(家を。釣り竿を。庭を。こまめに。日頃まめに)。▼手入れをする(丹念に。刀剣の。庭の)。曇り一つないよう徹底的に手入れされている小川。ケアを(怠る。きちんとする)。 **てぬぐい【手拭い】** ▼手拭い(土のような汗と埃で染まった=長塚。煮染めたようななえなえの泉鏡)。手拭いがひらひら舞う。手拭いで(額の汗を拭く。頬かむりをする。向こう鉢巻をする)。発火しそうなほど激しく手ぬぐいで体をこする"三浦し。手拭いを(首に巻く。鉢巻きにする。あねさんかぶりにかぶる=林京。小粋に頭へのせる=北原)。手ぬぐいを縫い合わせたような着物 武田。頭から手拭いをかぶる。腰に手拭いをぶら下げる。袂に。から手拭いを出す。襟をかけ髪に姉さまかぶりに手拭いをかけて甲斐甲斐しく身支度をする萩原葉。濡れ手拭いを隙間なく貼りつけられたような冷たさを感じる=阿久。 **なぐ【薙ぐ】** 薙ぐ(風が。刀が。足を。出鼻を。脇差を抜きざま胴を柴田)。風が梢をなぐ。銃弾が風にあおられるように頭の上を薙いで通る=大岡。▼なぎ払う(空間を。草を。白髪を。サイドボードの上の時計や花瓶を両手で"重松)。 **そうじ【掃除】** 掃除が(終わる。行き届く)。掃除に(とりかかる。骨が折れる)。掃除の手が行き届く=貫井。ろくろく部屋の掃除もしていない。毎朝掃除を欠かさない。黙々と掃除を続ける。▼掃除する(墓を。部屋を。耳掻きで耳を。床を。こまめに。念入りに。あわただしく。かいがいしく。店内を隈なく)。まるで年末の大掃除かと思うくらい徹底的に汚れを取り埃を払う宮本輝。家じゅうを大掃除する。掃除機を(かける。使う)。掃除当番を(決める。さぼる)。▼清掃する(側溝を、道路を。排水溝を。床を)。はたきで埃をはたく。ばたばたとはたきをかける。 **タオル** タオルで(汗を拭く。体を拭く)。不意に濡れたタオルで背をなでられたような気味悪いものを感じさせる女灰谷。▼タオルで拭く(濡れた髪を。濡れた手を)。タオルを(固く絞る。首に巻く。姿に巻きつける。しぼるようにギュッと手を内側にしぼる飯田)。額に汗止めのタオルを巻く。ひたすらタオルを噛みしめて痛みに耐えぬく=開高。お絞り(熱い。冷たい)。お絞りで(顔を拭う。手を拭く)。お絞りを(配る。広げる。丸める)。 **ぬぐう【拭う】** ▼拭う(傷の周囲を。手の甲で唇を。丹念に。汗をで、汗を手拭いで。荒っぽく。顔を手で。軽く。目尻をそっと。唇についたビールの泡を。手拭いで口のまわりを。手の甲で鼻血を。あふれる涙を手のひらで。口元を紙ナプキンで。手をエプロンで)。苦痛が拭うがごとく消える=田山。▼汗を拭う(顔の。首筋の。で。タオルで。額に浮いた。ほっとしたように)。▼顔を拭う(ハンカチで。濡れたタオルで)。▼口元を拭う(ナプキンで。指先で)。▼口を拭う(ハンカチで。瓶の)。▼手の甲で拭う(唇を。額の汗を)。▼涙を拭う(乱暴に。親指で。紙ナプキンで。拳で。小指の腹で。袖口で。ハンカチで。指先で)。▼額の汗を拭う(ぐいぐいと。手の甲で)。▼額を拭う(タオルで。ハンカチで)。口を拭って知らぬ顔をする。口に唾が溢れるのを耐えようとでもするような大仰な唇の拭い方=高橋和。刀に拭いをかける。▼押し拭う(顔を。涙を)。 <833> # 拭う・片付ける **ぬぐえない【拭えない】** ▼拭えない(違和感が。疑念が。不透明感が。よそ者の感じが)。立ち遅れたような引け目がぬぐえない三浦。拭えない心の傷を負う。▼拭いきれない(一抹の不安が。どこかちぐはぐな印象を=池井戸)。一生拭いきれない汚点。拭っても拭いきれない激しい妬み心三浦。容易に拭い去りがたい疑念。 **はく【掃く】** ▼掃く(風が落ち葉を。店の前を。ほうきで玄関を)。掃き集める(落ち葉を。枯れ葉を。ちり取りにこみを)。▼掃き掃除する(玄関を。庭を。部屋を。床を)。▼掃き出す(、ふんをで。縁側からごみを。人を座りのように=内田糸)。▼掃き寄せる(落ち葉を。紙屑を。木屑を。こみを)。▼一掃きする(風が屋根を。視線が周囲を)。服装を眼の一掃きで見て取る=岡本。■掃き落とす(毛虫を。ちりを。雪を。こみを庭に。刷毛で。ほうきで)。▼掃き清める(寝殿を。庭を。部屋を。店先を。こみ一つなく)。▼掃き清められている(家の前がきれいに。庭が座一つなく=円地)。 **バスタオル** バスタオルで体を拭く。濡れた頭をバスタオルで拭く。バスタオルに快い香りがうっすらとひそむ"黒井。バスタオルを(腰に巻きつける。胸から下に巻く)。尻の下にバスタオルを敷く。 **はらう【払う】** ▼払う(多くの犠牲を。木の枝を。細心の注意を。重大な関心を。袂で涙を。佩刀の。を。不快な後味を。服の埃を。を勢いよく。心にかかる闇を。最大限の努力を。ジーンズのお尻を。とことんまで疑念を。ばたばたと上着を。蓑の肩に積もった雪を。耳にかかる髪を。ズボンの裾をおおまかに。背広の埃を丹念に。脇腹を横殴りに。肩にかかる黒髪をはらりと。木屑をばっばと。長い髪を肩の後ろへ。カッターを突き出してくる腕を反射で有川)。▶砂を払う(手で。ズボンについた)。ふりかかった火の粉は払わねばならない=本庄。打ち払う(懸念を。斬り込んできた刀を)。▼追い払う(風が雲を。不愉快な気分を)。蠅を追っ払う。かき払う(紙屑を。蜘蛛の巣を)。▼取っ払う(カーテンを。壁を)。を取り払う。▼払い落とす(白墨の粉を。髪にかかった雪を。書類綴りの埃を)。 **ハンカチ** 遠く振る母のハンカチが目に残って去らない阿部。ハンカチで(顔を覆う。手を拭く。額の汗を拭く。目を押さえる。首筋の汗を拭く)。使い古したハンカチでもてるように無雅作に扱う徳永。鈴をそっとハンカチに包むような親切さ=吉本。ハンカチを(顔にあてて嗚咽する。丁寧に折りたたむ。丸めて握りしめる)。▼ハンカチを当てる(目頭に。口に蓋をするように=伊集院)。▼ハンカチを取り出す(バッグから。遺影を前にして=姫野)。ハンカチーフをハンドバッグから取り出す。ペラペラしたハンカチみたいなモモンガリ本多。汗押さえで額を拭う。汗拭きを(折りたたむ。伸ばす)。 **ふきとる【拭き取る】** ▼拭き取る(口紅を。クリームを。ソースを。涙を。汚れを。血をきれいに)。こすり落とす(焦げた部分を。こしこし)。▼こすり取る(垢を。口紅を。汚れを)。▼拭い取る(口紅を。曇りを。砂糖を。墨を。手のひらの汗を。記憶を心から綺麗に有島)。胸の中のわだかまりが拭い取られる=笹沢。 **ふきん【布巾】** 清潔なふきん。ふきんを(洗う。漂白する)。薄手でやや大きめに縫い上げた台布巾、竹西。テーブルの上を台布巾で拭く=川上。 **ふく【拭く】** ▼拭く(こぼした酒を。雑巾で床を。タオルで髪を。タオルで手を。額の雨粒を。壁をこしこし。涙を袖口で。熱いタオルで顔を。甲斐甲斐しくテーブルを。拳で乱暴に涙を。タオルで無造作に足を。手の甲で額の汗を。手の甲で目頭を。体を隈なくきれいに。口をナプキンで。額の汗をハンカチで)。▼曇りを拭く(眼鏡の。レンズの)。▼手を拭く(エプロンで。前垂れで)。▼空拭きする(カウンターを。乾いた雑巾で。布で)。床を(拭き込む。拭き掃除する)。▼拭き落とす(埃を。窓の曇りを。汚れを。落書きを)。▶拭き清める(縁側を。体を)。拭き込む(ガラスを。廊下を)。びかびかに拭き込んだ柱。▼拭き掃除する(縁側を。教室を。机を。廊下を)。▼水拭きする(雑巾で。濡らした布で。モップで)。 **ふりはらう【振り払う】** ▼振り払う(重い気分を。火の粉を。余計な思いを。つかまれたひじを。やましい気持ちを。手をけがらわしいもののように阿部)。手を振り払う(差し出された。肩に置かれていた)。すがろうとした手を振り払ってしまったかのような居心地の悪さがこみ上げる=有川。▼押し払う(邪念を。不安を。奇妙な雰囲気を)。 **ほうき【箒】** 箒でざざっと掃く。ほうきの目が見えるほど奇麗に掃除が行きとどいた境内=山本有。規則正しい清々しい箒の音=幸田文。すっかり葉の落ちてしまった木が箒のように小松太。しっぽが箒のような犬宮沢。使い古した箸のような眉三島。枝が激しく揺れながら箒のように水面を撫でては起き上がろうとする"伊藤整。庭箸のような外套を着た軽薄な若者-遠藤。地面にきれいに箒目が付けてある=内海。箒木目も鮮やかに雪が掃かれる=中。 <834> # 盗む・奪う **うばいあう【奪い合う】** ▼奪い合う(最後の一個を。母親の愛情を。我勝ちに空席を)。争奪戦に(勝利する。敗れる)。▼取り合う(女を。カードを。客を。場所を)。▼取り合い(席の。点の。予算の)。 **うばう【奪う】** ▼奪う(荒々しく唇を。お株を。女の体を。行動の自由を。財産を。処女を。隙を見て金を。政治的生命を。抵抗力を。武器を。見る者の目を。横から話を。力ずくで。根こそぎ。ものの弾みで人の命を)。行きがけの駄賃に奪っていく。奪い去る(体から力を。幸福を。心を)。▼奪い取る(乱暴に。力ずくで。卑劣な手段で。子供からおもちゃを)。▼かすめ取る(金を。チャンスを)。金目のものを洗いざらい掠め取る=福永。かっさらう(金を。を)。さらう(会話を風が。全校の話題を。浮動票を。優勝を)。金を絞り上げる。収奪する(財産を。自然から。植民地から。領民から)。尻の毛まで(むしられる。むしりとる)。▼接収する(アパートを。家を。ビルを)。▼奪取する(王位を。権力を。三振を。主導権を)。身ぐるみ剥がす。ハンドバッグを引ったくる。ふんだくる(金を。財布を。身代金を)。▼分捕る(食料を。敵の兵器を。予算を)。▼領土を併呑する(他国の。敵の)。▶巻き上げる(有り金を。財布を。年寄りから金を)。資本の暴虐な強奪を制限する=服部。▼強奪する(金目の物を。品を)。戦利品の分配をする。戦利品のように両手いっぱいに土産物を抱える=篠田。▼剥奪する(議席を、権利を。資格を。地位を。名誉を)。民家を襲って掠奪暴行を働く。▼掠奪する(金銭を。土地を。船を。娘を。めぼしいものを)。 **うばわれる【奪われる】** ▼奪われる(愛する人を。男に体を。体の自由を。主導権を。掌中の珠を。土一を。変化に目を。息子を獄中に。身も魂も。雨に打たれて視界を。思い入れに気持ちを。些細な問題に気を。昇進昇級のチャンスを。花に全身全霊を"中野孝。なけなしの想像力を一片残らず=開高)。さらわれる(在り金を。浮き足を。競争相手に足元を)。▼吸い上げられる(税金を。利益を)。言うべき台詞を根こそぎ取られてしまう。▼取られる(ぐいと腕を。調整に時間を。ハンドルを。金ををしこたま。見事に一本)。ひったくりに遭う。▼ぶったくられる(お金を。バッグを。バーで)。虎の子を巻き上げられる。 **えじき【餌食】** ▼餌食になる(狼の。好色の。暴力団の。マスコミの)。凶刃の餌食となる。善男善女を遠慮なく餌食にする藤原。▼かかる(悪人の爪牙に。毒牙に)。いいカモにされる。酔っ払いをカモにする。カモをくわえ込む。▼好餌となる(悪徳商人の。悪漠の。口さがない連中の)。残虐な悪巧みにひっかかる。強欲な役人の食い物になる。女を喰い物にする人でなし野郎=藤沢。▼食い物にする(血税を。福祉を。老人を。貧乏人の稼ぎを)。 **おどしとる【脅し取る】** ▼脅し取る(お金を。機密文書を。品を。財産を)。恐喝を(企てる。働く)。金を巻き上げようと恐喝する。 **ごうとう【強盗】** 強盗が押し入る。強盗に見せかけるための偽装高村。泥棒が居直って犯行に及ぶ。みかじめのように租税をとりたてる"半村。押し込みの片棒を担ぐ。盗人どもの押し込みを防ぐ。 **さくしゅ【搾取】** あまりの搾取にたまりかねる。苛酷な搾取にあえぐ。非人間的な搾取に堪えかねる。不当な搾取に対抗する=豊田。▼搾取する(国民を。弱小民族を。奴隷を。労働者を。あこぎに)。 **さしおさえる【差し押さえる】** ▼差し押さえる(工場を。財産を。担保の株券を)。差し押さえを(受ける。免れる)。▼押収する(証拠の品を。書類を。帳簿を。密輸品を)。強制執行する(裁判の判決を。差し押さえを)。 **しぶつか【私物化】** 私物化を許さない。私物化する(会社のものを。公用車を。組織を)。私情によって公事を曲げる=船山。私する(公金を。政を)。 **しぼりとる【絞り取る】** ▼絞り取る(汗を。税金を。血を。容赦なく金を。絞れるだけ)。剰余価値を直接に労働者からしぼりとる=服部。 **する【掏る】** 財布を掏る。▼掏られる(護摩の灰に。胡麻の蠅に)。懐から財布を抜く。▼掏り取る(金を。財布を。懐中から紙入れを)。酔客を狙ったすり。すりの現場を見つかる。 **だましとる【騙し取る】** だまし取る(証文を。多額の金銭を。保険金を。子供だましのような詐術で次ぎ次ぎに権益を=海音寺)。資本家たちは抜け目なく機会をとらえて労働者からだまし取ろうとする=服部。土地や財産をだまし取られる。▼詐取する(株券を。出資金を。大金を)。 **ちゃくふく【着服】** ▼着服する(裏金を。公金を。他人の財産を。拾い物を。課長の椅子を利用して会社の金を小林久)。入れる(自分の懐に。自分のポケットに)。横領がばれる。横領する(会社の金を。財産を。戦利品を)。公金横領で懲戒免職となる。猫ばばを決め込む。猫ばばする(拾った財布を。儲けを)。 **とうさく【盗作】** 盗作がばれるのを恐れる。盗作で訴えられる。盗用する(アイデアを。デザインを。論文を)。他人の作品を剽窃する。 **とうぞく【盗賊】** 盗賊(悪逆無道の。音にきこえた。名の知れた)。盗賊が(横行する。押し入る)。盗賊に襲われる。盗賊の(一味に加わる。巨魁。首領。巣窟。根城)。盗賊を(捕まえる。召し捕る)。野盗たちが狼のように襲いかかる!舟橋。海賊が(横行する。出没する)。 <835> # 盗む・奪う 海賊に怯える恐怖の船旅・竹西。海賊の攻撃に手を焼く。海賊のように(片目を閉じたまま鼻で笑う宮部。髭もじゃの鬼がわら顔"中島み)。山賊の(一党に加わる。一味を平らげる)。穴ぐらの中で酒盛りをしている山賊みたいにたけだけしい顔つき大庭。賊が(押し入る。屋敷を襲う。乱入する。外部から侵入する)。賊の一味をことごとく討ち取る。賊の本拠を(襲う。突きとめる)。賊を(繩でからめる。欺く策略が成功する)。 **とうひん【盗品】** 盗品でも処分するような早業。盗品を(隠す。質入れする。処分する)。品がいろいろ出て来る。 **とうへき【盗癖】** 盗癖に苦しむ。盗癖のある人。盗癖を持つ。手癖が悪い。 **とりたてる【取り立てる】** ▼取り立てる(税金を。法外の利子を。厳しく上納金を。貸したお金をびしびし)。年貢の取り立てがはなはだ厳しい。借金の取り立てに足を運ぶ。貸しを催促する。▼徴収する(会費を。差額を。租税を。料金を)。▼追徴する(制裁金を。脱税分を)。 **どろぼう【泥棒】** 泥棒が(押し込む。忍び込む。侵入する)。近所に泥棒が入る。泥棒から足を洗う。すわ泥棒と色めきたつ。人を見たら泥棒と思え。泥棒に追い銭。泥棒の一味を一網打尽にする。嘘つきは泥棒の始まり。泥棒を(捕まえる。働く)。泥棒みたいな忍び足で編集部を出る=三浦し。▼大泥棒(伝説の。名代の。言わずと知れた)。▼怪盗(伝説的な。希代の。神出鬼没の)。窃盗グループを摘発する。窃盗で前科一犯になる。ひったくりで逮捕される。物取りに狙われる。物取りの(仕業。犯行)。夜盗の群れに襲われる。空き巣が出没する。空き巣の(常習犯。仕業のように見せかける)。空き巣を(逮捕する。働く)。どろぼう猫でも追い払うように追い返す森。泥棒ネコのようにこっそり螺旋階段をのぼる』開高。泥棒猫のように足音を盗んで歩く=江戸川。裏口から入って来るなんて泥棒猫みたいな真似しないで頂戴さうよ円地。泥棒猫みたいに人の旦那を好きになる三浦綾。盗人が入る。盗人にも三分の理。盗人の末路など知れたもの高橋克。盗人を(退治する。引っ捕らえる)。四方八方かき分けて盗人を追う。盗人に追い銭。 **ぬすまれる【盗まれる】** バイクを盗まれる。盗まれはせぬかと気が気でない。空き巣に入られる。強盗に襲われる。財布を掏られる。窃盗被害に遭う。盗難に遭う。泥棒に(してやられる。入られる)。上がりを持ってドロンされる=有吉。▼乗り逃げされる(自転車を。バイクを)。物取りに(遭う。入られる)。 **ぬすむ【盗む】** 盗む(金目の物を。唇から接吻を。車を。経営のこつを。財布を。サインを。暇を。自動販売機から小銭を)。盗みがばれる。盗みに(かかる。手を染める。入る)。盗みの(疑いをかけられる。かどで逮捕する。手引きをさせる)。▼盗みを働く(大胆不敵に。発作的に。けちくさい)。懐を狙う。盗むように(顔をうかがう。あたりを見まわす)。▼盗み出す(絵を。鏡を。金を。財宝を。秘密を。店の品を。遺言状を)。▼盗み取る(金入れを。絶妙にを。芸を。女性の心理を)。▼かっぱらう(大金を。ハンドバッグを。手当たり次第に)。▼くすねる(飴を。金を。小銭を。肉を)。失敬する(金を。鞄を。ダイヤモンドを)。先人が考案した手を失敬して自に用いる=鮎川。▼ちょろまかす(小銭を。店の品を)。▼盗る(金を。人の物を)。ばくる(財布を。手形を)。外国の音楽を微妙にパクって作る日本的ポップス辻仁。 **のっとる【乗っ取る】** ▼乗っ取る(看板を。銀行を。財産を。城を。船舶を。本家を。餓鬼大将の位置を)。乗っ取りを(企てる。たくらむ)。汚れた根性に魂を乗っ取られる高橋三。庇を貸して母屋を取られる。 **ぼっしゅう【没収】** ▼没収する(財産を。宅地を。鉄砲を。免許証を。領地を)。田んぼを借金のかたに取り上げる熊谷。召し上げる(所領を。田畑を。役を)。 **まんびき【万引き】** 万引きに手を染める。万引きの(常習犯になる。衝動に駆られる)。万引きを警備員に見咎められる。商品を万引きする。 **もちにげ【持ち逃げ】** ▼持ち逃げする(上がりを。奪った金を。収益金を。旅費を)。金を持ったまま姿をくらます=池井戸。金を持って逐電する。集めたお金を持ってどろんする。 **ゆうかい【誘拐】** ▼誘拐する(女の子を。子供を。良家の子女を。身代金目当てに)。誘拐して身代金を要求する。子供をさらう。▼連れ去る(赤ん坊を。家族を。子供を)。よその子を盗み出す。身代金を(手に入れる。まんまと手にする)。拉致する(娘を。無理やりに。暴力をもって)。▼誘拐される(テロリストに。武装勢力に。変な人に)。我が子をさらわれる。娘をむざむざ賊の手に渡してしまう。▼拉致される(武装勢力に。不当に)。 **ゆすりとる【強請り取る】** ▼ゆすり取る(金品を。広告費を)。強請のねたがなくなる。卑劣な強請をはたらく。ゆする(会社を。社長を。金になると踏んで)。美人局に(かかる。ひっかかる)。 **よこどり【横取り】** 身代を横取りでもされそうな苛立ち。壺井。横取りする(獲物を。金を。人の恋人を。部下の手柄を。横合いから出てちょろりと"有吉)。せっかくのかもを横取りされたのは業腹"山手。目の前のおやつを横取りされる。横から油揚げをさらう。本来は番など回ってきそうにない連中にに油揚げをさらわれるように持っていかれる=胡桃沢。ひょいと横合いから取りあげられる。脇から奪い取る。▼ピンはねする(上がりを。上前を。給料の一割を。労働者の賃金を)。儲けの上前をはねる。 <836> # 塗る・染める **いろ【色】** 色があせるのを待つばかりの満開の花"石坂。虹のように色が重なり合って見える=松谷。色の(褪せた暖簾。配列を工夫する)。眼のさめるような色の振り袖"野坂。色を自由に使いこなす。明るい色を塗る。晴れやかな色を顔に浮かべる=有島。万朶の花と花が色を競う―柴田錬。色目の分からな布。▼カラー(学校の。独自の)。カラーが違う。カラーを出す。五彩の光。五色のたんざく。地色を(生かす。塗りつぶす。見せる)。色素が沈着する。着色した(食品。思想に身をゆだねる=武田)。着色料入りのジュースを飲んだんだと思うほど唇が紫色三浦し。▼発色する(鮮やかに。期待どおりに)。▼原色(鮮やかな。けばけばしい。どぎつい。目も覚めるような)。原色の毒々しい造花 原田康。強烈な原色の赤。 **いろあい【色合い】** ▼色合い(光が全部吸い込まれて夢のような=尾辻。無色透明な板ガラスを何枚も重ねたような深く沈んだ谷崎)。色合いが微妙に変化する。沈んだ色合いに塗られた過去の心の風景"原田康。日の出間際の微妙な色合いの空熊谷。自伝的な色合いを持った小説。時に即興の色合いをおびる!岸田。 **いろづく【色付く】** ▼色づく(実が赤く。山桜がぽっと。新緑が爽やかに。横顔がほんのりとピンク色に"飯田。樹木の葉が水に濡れたように宮本輝。白衣が煮しめたように=武田)。障子が赤く色づくほど庭で火が燃える=水上。色づきかけた稲田が一面に見える。 **いろどり【彩り】** 彩り(花の鮮やかな。染めあげたような羽毛の"河野)。彩りが豊かになる。年甲斐もない華やかな彩りの夢を見る=藤沢。彩りを与える(生活に。思い出にささやかな=連城)。山々が曙光にこれを浴び雪を浴びて赤青の七彩に移ってゆくさまは驚くほど檀。目の中に虹が架け渡されているように七彩の霧が渦巻く瀬戸内。 **いろとりどり【色とりどり】** 色とりどりに(塗られたボート。飾り立てられた大きなクリスマスツリー"加賀)。服装が色とりどりに華やか。色とりどりの(花が咲く。きらびやかな衣裳"阿木。ファッションに身をかためた学生たち三田)。カラフルな(カクテル。パッケージ。パステルカラー)。 **いろどる【彩る】** 彩る(看板が通りを。花々が春を。緑が山肌を。焚き火が点々と高原を"獅子。葉鶏頭の真紅が庭を"立原。夕照が海面を華やかに月。悲しいほどの美しさで=阿久)。▼彩られる(山麓が秋色に。森が新緑に。海が華やかな金糸に。生活が優雅と変容に。ふくよかな夢に。顔が夕日に赤く)。空想の彩色があっけなく剥げる佐多。淡い彩色を施す。見事な彩色を施された部屋"三好達。 **かべつち【壁土】** 壁土が崩れ落ちる。壁土を(こねる。塗る)。漆喰が(はげる。目にしみるほど白い=池井戸)。漆喰で塗り固める。漆喰を塗る。 **こうよう【紅葉】** 山は紅葉が真っ盛り。秋の紅葉が散るように腰元どもが去って行く=山手。ちりめんのふとんを敷いたように紅葉が広がる=西木。秋の紅葉で有名な渓谷。紅葉に達しない前のあいまいな褪色の風景 新田。全山紅葉に彩られる。紅葉にはまだ早い。紅葉の銹色で日毎に暗くなっていた山が初雪であざやかに生きかえる=川端。山頂に紅葉の気配がある。染まりそうな黄や燃えるような赤の紅葉の林曽野。▼紅葉(古寺に映える。玄関がぱっと明るむように色あざやかなくれないの川端)。ヌルデや漆が際立って紅葉する。紅葉が(茜色に染まる。満山を彩る。見頃となる)。紅葉狩りに行く。花だ紅葉だと浮かれ立つ。窓の外は雨ともみじで霧が山を織っている=泉鏡。 **ごくさいしき【極彩色】** おしどりの鮮やかな極彩色宮尾。幼年時代の思い出がネオンの極彩色にかき消される=連城。切腹の光景の酷さを極彩色に想像しつつ戦慄する"司馬。極彩色の(美しい鸚鵡。絵。孔雀の雄)。 **しきかん【色感】** ▼色感(暖かい。冷たい)。色感が(鋭い。悪い)。鋭敏な色感が存分にうかがわれる。色覚が(正常。変化する)。色彩感覚が(欠如する。抜群にいい)。 **しきさい【色彩】** ▼色彩(目も覚やな。変化に乏しい。目のさめるような)。色彩が乱舞するステンドグラス辻。宣伝的な色彩が濃い。おそろしく派手な色彩が氾濫している"五木。華やかな色彩が童話風に輝く菓子屋=武田。色彩に富んだ衣服。色彩の薄い極めて通俗の人間"夏目。鮮やかな色彩の世界が広がる。宗教的な色彩を帯びた秘密結社。花壇の花が日増しに伸びて色彩を増す谷崎。色彩豊かな夢。言葉の魅力に惹かれると、かつて灰色だった世界が色彩豊かな花園へと変貌する=小沼。 **しきちょう【色調】** ▼色調(鮮やかな。地味な。柔らかな。明るい。落ち着いた。くすんだ。暗い。涼感のある)。自分の好きな色調で室内を統一する。微妙な色調の変化。 <837> # 塗る・染める ブラックユーモアの色調を帯びた作品 阿刀田。まばゆい照明に降り積もった雪が様々なトーンの青色の影を刻みつけて白く輝く"篠田。物憂げなトーンを醸す目=島田。 **そまる【染まる】** 染まる(海が濃藍色に。顔が薔薇色に。空が深い青に。都会の空気に。瞳が好奇に。空が赤々と。気持ちが懐かしさに。雲がオレンジ色に。空の色が薄紫色に。町が夕暮れの色に。弛緩した空気に人知れず。空が青い光に柔らかく。松が淡雪に白く)。▼赤く染まる(目の周囲が。障子が西陽に。血で)。朱に染まる(顔が。肌が)。▼血に染まる(白装束が。肌が)。▼ピンク色に染まる(白い顔が。頬が)。ほうっと染まる(顔が。頬が)。▼真っ赤に染まる(頬が。顔が不意に)。▼染みつく(手袋に異臭が。保身の術が。臭いが肌に。臭いが部屋に。目のまわりに疲労の色が)。顔に諦めの表情がしみつく吉寿。 **そめる【染める】** ▼染める(家の紋を。髪の毛を。疑問が胸を。血が屏風を。万引きに手を。夕日が彼を。髪を茶色に。頬を紅に。胸を暗い色に。床を血に。髪を明るく。月がほの明るく車窓を。ぼっと目の下を。夕陽が赤々と空を。鮮やかな原色に。火炎が建物を真っ赤に。髪をきれいに栗色に。爪を赤くきれいに。まぶたをピンク色に。オレンジの混じった弱い日光がさっと船を漁師を=梶井)。▼赤く染める(を。旭光が波頭を。目の縁を。落暉が顔を)。羞恥で全身を赧かく染める吉行。▼顔を染める(初心に。ぱっと)。▼桜色に染める(爪を。肌をぼっと)。頬を染める(羞恥の色に。恥ずかしさに。ほんのりと)。堅牢な染めが(よい。悪い)。標本を染色する。染色を業とする。草や木を使った染物。言葉が体の隅々まで染め上げていく=高樹。▼染め上げる(不安を色濃いものに。耳まで真っ赤に)。定紋を染め出す。染め模様を。屋号を。紺の襟に白く名を)。染め分ける(人物を。紅白に)。友禅のようにあでやかな美人"小沢。 **とりょう【塗料】** 塗料があちこち剥げる。塗料を(塗り重ねる。塗りたくる。塗る)。渋を(塗る。引く)。ニスが(濡れ色になる。剥げる)。ニスを塗る。 **ぬられる【塗られる】** 顔に泥を塗られる。▼色に塗られる(敗残の。表情が不安の)。▼塗りこめられる(対立一色に。野も川も白一色に=海音寺)。夜の闇に塗り込められる!重松。海も壁も黒一色に塗りつぶされる。所々塗抹された粗雑な文字“横光。 **ぬりかえる【塗り替える】** ▼塗り替える(看板を。記録を。部屋を。防腐剤を。壁を白く)。政治地図が急速に塗り替えられる=鈴木四。▼塗り替わる(勢力図が。一色に)。塗り直す(白粉を。外壁を)。 **ぬりつける【塗り付ける】** 塗りつける(絵の具を。培地に細菌を。バターを。たっぷりと石鹸を。ポマードをべったり)。患部に薬液を塗布する。 **ぬりつぶす【塗り潰す】** ▼塗りつぶす(顔を白く。墨で黒く。ペンキで。背景をくまなく。絶望感が黒ぐろと胸を小林久。一日をまったき不幸で=柴田翔)。胸が不安と絶望で黒々と塗りつぶされる=小林久。塗りこめる(絵の具を。コンクリートを)。 **ぬる【塗る】** 塗る(家の名に泥を。オイルを。罪の上に罪を。矢に毒を。顔を真っ黒に。唾を傷口に。ペンキを壁に。厚くコンクリートを。顔にドーランを。パンにバターを。ジャムをトーストに。白粉をべたべた。クリームを弾く)。塗りが(落ちる。杜撰だ。剥げる。よい)。塗りにむらがある。古風な塗りの手鏡。塗り重ねる(絵の具を。ペンキを。コールタールを)。・塗りこむ(クリームを。化粧品を。軟膏を。パテを。べたべたと膏薬を)。▼塗りたくる(ジャムを。を。色とりどりの絵の具を。クリームをべったりと)。 **はけ【刷毛】** 刷毛で(なすったような白い雲の筋が浮かぶ石坂。引いたような雲が空高く乾いている=石田)。さっと刷毛でソースを塗る。幾重にも横に刷毛で掃いたような遊雲のを夕陽が赤く燗ただれさせる=福永。顔一面に刷毛ではいたようにへばりついている脂宮本輝。浅間山の煙が刷毛ではいたように夕焼けの空に靡く=田山。すっと刷毛ではいたように辺りの色が変わる=北村。柔らかな刷毛のようなポプラー辻井。一刷毛ほどの血の色もない。水刷毛でさっと撫でたようにおぼろに霞んで見えない山本周。 **ブラシ** ブラシで試験管を洗う。髪をブラシで掻き上げる。黒いブラシで地を掃くように夜が忍び寄る"宇野。▼ブラシをかける(犬に。上着に)。 **ペンキ** ペンキが(乾く。剥げる)。ペンキの(色がよどむ。臭いが鼻につく)。鼻の奥がほんのり痛むようなペンキのにおい=小川。赤と青のペンキを塗ったような潮招き=中島敦。▼ペンキを塗る(壁に。看板に)。壁板を白ペンキで塗りつぶす。ペンキ塗り立てみたいなフィリピンの景色"。 **まみれる【塗れる】** ▼まみれる(頭から埃に。甲虫が花粉に。髪がに。石鹸の泡に。屈辱感に体中が。垢と脂の臭いに。べったりと血に)。感傷にまみれた心。油にまみれて働く。血にまみれて転がる。まぶす(餅にきな粉を。ドーナツに砂糖を。マカロニにサラダ油を。ほぐした干物を丹念に=景山)。言葉のところどころに嘘がまぶされる=村松。 <838> # 濡れる・乾く **うるおう【潤う】** 潤う(台所が。懐が。土が雨で。不意の収入で。肌がしっとりと)。頬にシップをあてたように迫ってくるめるい!高橋和。気持ちに潤いが持てる。干した貝が水にほとびるように両方の目に潤いが出る=森。潤いに(満ちた生活。あふれた豊かな感情)。心が潤いに満たされる。黒く潤いのある瞳。涙にしめった女らしい潤いの滲むような空山本周。潤いのある(暮らし。白い肌。のびやかな歌声)。声が瞬時に潤いをなくしたように。れる貫井。▶潤いを与える(女の命に。生活に)。潤いを帯びた音色。目が潤いを帯びる。▼潤す(川が大地を。好景気が町を。涙が袖を。乾いた喉をビールで)。台地を潤す灌漑施設。田畑を潤す恵みの雨。 **うるむ【潤む】** ▼潤む(星の光が。影が水の表に。庭が緑に。緑が雨に。唇が赤く。しっとりと。目がきらきらと輝いて見えるほど三浦哲)。▼涙に潤む(視界が。目が)。潤んだ虹彩の美しさ。涙で潤んだ泣き声が響く。目に潤んだ光があふれる。▼潤んだ瞳(挑発的な。感激に)。▼潤んだ目(情熱に。熱で)。目に潤みを満たたえる。▼目を潤ませる(快楽の期待に。感激に)。度重なる悲運に眼をうるませる=吉村。 **かさかさ** かさかさ乾燥した肌。枯れ葉が風にかさかさ鳴る。庭の草がかさかさ揺れる。かさかさ音を立てる(落ち葉が。紙が。熊笹が)。花束にかぶせられたセロハンがカサカサ音を立てる歳沢。かさかさに乾いた(手。薬草)。のどがかさかさする。かさつく(顔が。心が。肌が。皮膚が)。脂気のない(。頭髪)。荒れてがさがさした手のひら。がさがさに乾いた声。 **かれる【涸れる】** ▼涸れる(井戸が。温泉が。悲哀の泉が。泣きすぎて涙が)。涸れた川。才能の芽が伸びぬうちに涸れてしまう。松本。▼涸らす(アイデアを。泉を。井戸を。才能を。知恵を)。枯渇する(源泉が。才能が。資金が。資源が。想像力が。創造力が。水が)。 **かわかす【乾かす】** ▼乾かす(日陰で着物を。服を天日で。日陰でじっくり)。髪を乾かす(ドライヤーで。べちゃべちゃの)。ドライヤーをかける。 **かわく【乾く】** ▼乾く(涙が。皮膚が。唇が真っ白に。からからに空気が。緊張のあまり口が。土がからからに。肌がかさかさに。表情が化石のように藤木。雪が粉のように=加賀)。乾いた(ぞうきんで空拭きする。血がこびりつく)。灰色に乾いた漠々たる風景"中。雨が乾いた路上を濡らし始める。甲高い乾いた笑い声。赤茶けてばさばさに乾いた髪石坂。乾いた音を立てる(からんと。泉水の鹿威しが=山本一)。バーンと乾いた音が響く奥田。乾いた風がさらさらと吹き過ぎる。響きのない乾いた声。唇が白く乾いてひび割れる。▼乾いている(顔が白い粉でも吹きそうに"黒井。畑が冬枯れでばさばさに=石川)。口の乾かぬうちにこの始末では困る=高見順。道が白く乾ききる"高井。潤いのない(くすんだ匂い。だみ声。ばさばさした目)。生乾きの(シャツ。セメント。木材)。ばさつく(髪が。パンが。飯が。麺が)。干る(池が。談論が。潮が。露が)。▼干上がる(顎が。川が。潮が。田が。かちかちに。からからに)。 **かんそう【乾燥】** ▼乾燥する(空気が。肌が。皮膚が。漆を。骨を。かさかさに。からからに。昆布が白い塩をふいて"山崎)。かさかさと乾燥した肌膚だ長塚。土が乾燥してかちかちになる。布の乾いていく日向臭さを感じさせる乾燥機。原田宗。湿気が少ない。湿り気のない風が入る。 **ぐしょぐしょ** ぐしょぐしょになる(顔が。ハンカチが。涙で)。顔がぐしゃぐしゃに濡れる。顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃになる。ぐしょ濡れになる(雨で。涙で顔じゅうが)。ぐっしょり汗をかく。ぐっしょり濡れる(雨に。水に。汗で)。 **さばく【砂漠】** ▼砂漠(炎熱の。広漠たる。灼熱の。焦熱の。砂嵐が吹き荒れる。不気味な倦怠の瀬戸内)。砂漠が(荒涼と広がる。茫々と広がる)。頭も体も麻痺してしまった人間が堆積した無知の砂漠が広がる=島田。不覚の涙が白粉の砂漠に肉色の流れをつくる=武田奏。砂漠の荒涼たる光景。荒廃した砂漠のごとき空虚感"中村。乾涸びた砂漠ののような陰鬱さ=加賀。駱駝に乗って広い沙漠を行くような頼りない空虚な思い=林。黄褐色の砂の海光瀬。草も木もない広々とした沙漠のような地面尾辻。くぼんだ砂漠のように雨に垂れこめられた浜が荒寥とひろがる遠藤。サハラ砂漠のように口の中がカラカラ=井上ひ。 **しっけ【湿気】** 湿気が(多い。こもる。漂う。まとわりつく)。濃い粘い湿気が澱む=田辺。座敷に湿気が澱んでねっとりと暑い=高井。地面からも屋根からも春の記憶を新たにすべき湿気がむらむらと立ち上る"夏目。暑さと湿気で気が狂いそうになる=大。しっとりした湿気で山が匂う佐多。湿気と陰気が生活の底に主調低音のように持続している=大岡。湿気を(含んだ重い風。ふくんだ空気のせいで山が近くに見える=住井)。空気が湿気をたっぷり含む。 **しつげん【湿原】** 広大な湿原が広がる。湿原をうねり流れる川。足がもぐり込むような湿地高井。雪解けの水が一冬の廃埃に染まって泥炭地の湧き水のような色でどぶどぶと漂う有。踏めば沈むような泥炭土本庄。▼谷地(狭隘な。広大な)。谷地眼が点在する。谷地眼に落ちる。 **しっとり** しっとりと(露に濡れる。畑地が潤う。思い出が胸をあたためる。肌に吸いつくような艶)。雨がしっとりとやさしく降る。 <839> # 濡れる・乾く 夜露でしっとりとした重みを持った洗濯物藤本。しっとりした光沢がある生地。雨がしとしと降り続く。しとしとと(落ちる水の音。土が濡れる)。足音がしとしとと地面に落ちる。 **じっとり** じっとりと(湿った嫌な笑い声。手のひらに脂汗がにじみ出る。涙がまぶたににじむ)。霧をじっとりと含んでいる風。額にじっとりと脂汗がにじむ。泥水が靴の中へじとじととしみこむ。 **じめじめ** じめじめ(雨が降る。泣く)。じめじめと湿った笑い。▼じめじめする(気持ちが。地面が)。じめじめした梅雨が降る。陰気なじめじめした家。 **しめっぽい【湿っぽい】** 湿っぽい(川辺の夜風。臭気が漂う。匂いがこもっている)。湿っぽい(明かりが。洗濯物が)。話が妙にしめっぽくなる=高橋治。ともすれば湿っぽくなる気持ちを引き立てる=林美。 **しめりけ【湿り気】** 風に春の朝のうそ寒い湿りけが残る=福永。人の吐く息の湿り気がゆらめき上る。畑地がしっとりした湿り気にうるおう柴田翔。湿り気を帯びる(夜気が。庭が水を打ったように久米)。風が湿り気を帯びて重くなる。木の肌が湿った空気の中で汗ばんだように湿りを帯びる倉橋。湯から上がったときみたいな湿りを目の周りに持った女宮本。大地が暖かい湿りを発散する。ねっとりと湿りを含んだ声。 **しめる【湿る】** ▼湿る(空気がじっとりと。瞳がしっとりと。机の表面が汗ばんだように古井。湯気で鼻の穴がしっとり=村山)。▼汗で湿る(シャツが。手のひらが)。湿った(土の感触が手のひらに伝わるあさの。闇があたりを覆う。村上)。雪に湿った闇。じっとりと湿った手。夜気に湿った草原。夜露に湿った砂。湿っている(地面が黒く。肌がうっすらと)。湿ったような沈黙がひろがる=椎名。▼しける(昆布が。せんべいが。海苔が)。湿潤な(気候。風土)。 **すなあらし【砂嵐】** 放送終了後のテレビの砂嵐。砂嵐が幕のように車の前を巡る=城山。砂嵐で目も口も開けていられない=なかにし。砂嵐にまきこまれたようにかすんで見えなくなる=日野。砂漠が砂嵐を巻く。乾いた土の埃が雲のように起こる。大佛。砂嵐のような雑音小川。 **ずぶぬれ【ずぶ濡れ】** ずぶ濡れになって歩きまわる。ズボンをずぶ濡れにする。冷たい雨にずぶ濡れになってわびしく情けなさそうに立っている=高見明。ずぶ濡れになる(全身が。頭から。欲望と屈辱とに我が身が=黒井)。海から上がった人のように濡れねずみ田辺。濡れ鼠になる(夕立にあって。頭から水をかぶって三島)。濡れ鼠の体で水をかき出す三島。 **ぬらす【濡らす】** ▼濡らす(雨が庇を。霧が木の芽を。波が足元を。涙で頬を。水が床を。秋の細雨が市街を。雨が見る見るうちに舗道を)。骨の髄までも濡らす雨。寝小便をして布団を濡らしてしまう佐高。眠りの海がひたひたと足首を濡らしはじめる小川。▶湿す(霧雨が空気を。唇を舌で。刀の目釘を充分に)。▼湿らせる(水分で喉を。夜露に足元を。唇を茶で)。 **ぬれる【濡れる】** ▼濡れる(屋根が月光に。足がずくずくに。衣服がじとじとに。汗でべっとりと。衣服がぐっしょりと。細かい雨にじっとりと。手のひらが汗でじっとり。悔しさと哀しさで鼻の奥が熱くなって瞼が奥泉。頭から爪先までぐっしょり雨に=村上春。顔が涙でぐしゃぐしゃに=黒石。掌が水に浸けたように汗に=高井。ひと雨あったかのようにしずくに半村)。頬が他愛なく涙でぬれる=原田康。▼汗で濡れる(全身がべっとりと。水を浴びたように全身が"荒巻)。ぐっしょり濡れる(頬が涙で。玄関のたたきが幽霊がたたずんだように水で=田辺)。▼びっしょり濡れる(服が夜露に。肩が雨で)。濡れた(頭をバスタオルで拭く。ズボンが脚にまとわりつく。道が黒々と光る)。前掛けで濡れた手を拭く。キシキシと濡れた砂を踏みしめていく光輝。濡れてつやつやと光っている唇。シャツがびっしょり濡れて肌に貼りつく。露に濡れて開く朝顔の花。薬が水玉で濡れて炊く。びしょびしょ濡れて歩く。▼濡れている(雑草が朝露に。玄関先が打ち水で。肌が魚のように丸谷)。雨と霧と汗で作業着も髪も重く濡れはじめる三浦し。雨に濡れそぼつ。露で濡れそぼった草むら。涙で濡れそぼった顔。雨に蓑が濡れそぼれる"高井。濡れたようにしっとりした笑顔"山田詠。目が濡れたように光る=光原。▼そぼ濡れる(雨に。時雨に)。悲しみに泣き濡れる。びしょ濡れになる(体じゅうが。シャツが。汗で。頭から。雨で)。満身汗に濡る。着物が濡る。汗がしとどに流れる。汗もしとどに駆け付ける。露にしとどに濡れる。窓ガラスにしとどに伝わってくる豪雨。シャツが汗のためにしとどになる三。 **ほす【干す】** 干す(洗濯物を。茶碗の酒を。沼の水を。布団を。洗ったタオルを。ぐいっとグラスを)。コップの水を飲み干す。▼干し上げる(池の水を。昆布を天日で)。満艦飾の物干し場。日干しにする(梅を。布団を)。日干しの(烏賊。魚。煉瓦)。お茶漬けを塩辛と干物で調える芝木。ほぐした干物を丹念にまぶす=景山。▼一夜干し(甘塩の。薄塩の)。鰯の丸干し。 **みずけ【水気】** 体中の水気がなくなってポキンと音がしそうに枯れている老人向田。水気を(含んで光る土。含んだ重たい雪原田康)。体を振るって水気を切る。たぷたぷと水気を含んだ重い袋"北村。水分が(蒸発する。抜ける。不足する)。脱水症状になるのではないかと思うほど泣く“阿久。水物をとりすぎておなかをこわす。もすや靴足袋にしとしと水分が湿る=徳田。空気が水分に飽和して重く淀む=中島牧。水分の補給に努める。水分を(摂る。補給する)。 <840> # 熱中する・浸る **いっしんに【一心に】** 一心に(研究にうちこむ。精神を集中する。テレビに見入る)。心を込めて一心に念じる。頭の中で一心に一つの考えを追い続ける=結城。辞書と首っ引きで本を読む。数字と首っ引きで予算を立てる。マニュアルと首っ引きで作業する。 **いっしんふらん【一心不乱】** 一心不乱な読経の声が聞こえる=古井。一心不乱に(鏡を見ている。粥をすする。写真を撮る。修行を積む。槌を振るう。笛を吹く。安穏を神仏に祈る。仕事の中に魂を打ち込む=有吉)。浮き彫りを一心不乱に刻む。勉強を一心不乱にする。一心不乱のていでお祈りをあげる=井伏。 **いれあげる【入れ揚げる】** ▼入れあげる(賭博に身上を。夢中になって。女に貯金のすべてを)。相当な入れこみよう。入れこみようと来たらただことではない。▼入れこむ(女に。ギャンブルに。恋人に)。 **かかりきり【掛かり切り】** ▼かかりきり(子供に手が。研究に。仕事に。食事の世話に)。▼手一杯(育児に。今のところ。仕事で。自分のことで。宿題で)。 **きょうじる【興じる】** ▼興じる(おしゃべりに。ゲームに。ダンスに。他愛ない世間話に。遊びに夢中になって。悪かれたように漁に『白洲)。▼打ち興じる(酒と料理に。雑談に。世間話に。呑気に芝居見物に)。 **きょうしん【狂信】** 狂信を蛇のごとく怖れる=獅子。ファシズムを狂信する。狂信的な(言。信念。確信の焰でひとみをぎらぎらさせる島尾)。 **きをとられる【気を取られる】** ▼気を取られる(美しさに。数ばかりに。声に。入院騒ぎに。一つのことに)。喧噪に気を奪われる。注意を奪われる。心を奪われる(美しさに。恋に。花に。笛に。娘に。目前に広がる光景に。少女の悲しげな表情になかにし)。魂を奪われる(絵に。刀に。想像に)。 **くるおしい【狂おしい】** 悪魔に乗り移られてでもいるように狂おしい!檀。狂おしい欲情が燃え上がる。恐怖に魂がはり裂けんとする狂おしい境地真継。狂おしく(唇を求める。雪が渦巻く)。女の妖艶な眼が男の心をとろりとさせるほど狂おしくつきささってくる=水上。 **せんねん【専念】** 専念する(作家生活に。本来の仕事に。心置きなく。ひたすら仏道に)。枕もとにつききりで湯薬の世話に専心する=舟橋。脇目も振らずに(前進を続ける。突き進む。)。やみくもにわき目もふらずに進む=杉本。 **ちまなこ【血眼】** 血眼で探して歩く。血眼になって(行方を探す。新しいものを追いかける)。▼血眼になる(買い物に。犯人捜しに。仕事探しで)。 **ねっしん【熱心】** 熱心な(口調で説く。思想の遵奉者。言葉に動かされる)。おざなりではない熱心な読み方。芸事に熱心な土地柄。子供の教育に熱心な母親。てらわずに熱心な口調で語る。熱心に(稽古をつける。新聞を読む。相談に乗る。話に聞き入る。メモを額を寄せて話しこむ)。専門家の間で熱心に読まれる。誰よりも熱心に聞く。話に熱心に耳を傾ける。如来様を熱心に信心する=高橋克。我を忘れるほど熱心に読み耽る=田山。教育熱心な先生。研究熱心な学者。尋常一様ではない熱心さ。子供のような熱心さで遊戯に耽る=佐藤春。熱心さに(心を打たれる。ほだされる。とうとう根負けする)。鋭意(交渉中。捜査する。努力する)。孜々として書き続ける。知識の吸入に孜々とする。口上に一段と熱が入る。森村。我が意を得たりとばかりに熱のこもった口調になる!内田康。熱意が(抑えがたく募る。判然と湧いてくる。胸の中で燃える)。生死を賭した熱意が歴然とする。熱意をもって説明する。熱に浮かされたような(喋りぶり。手つきで手順をめくる三輪。病気っぽい元気さ=大原)。熱に浮かされたように(歩きつづける。想いを打ち明ける=福永)。眼が熱に浮かされたようにねばく光る=里見有。熱に浮かされたごとく早口にしゃべる谷崎。▼余念がない(稽古に。化粧に。準備に。細部の仕上げに)。男漁りに余念のない女立原。 **ねっちゅう【熱中】** ▼熱中する(過激な思想に。下らない女に。子供が玩具に。富の蓄積に。秘密の儀式に。子供のように。前後を忘れて。友達とお喋りに。娘たちの品定めに。明けても暮れても。見ていて気味が悪くなるほど内田。身も心も投げだして=遠藤)。熱中する対象がくるくると替わる。凝り性でなにかに熱中しだすと止まらない癖の持ち主灰谷。鹿を追う者は山を見ず。▼憂き身をやつす(化粧に。恋に。道楽に。文学に。水商売に)。▼傾倒する(仕事に全力を。文学に)。凝る(日曜大工に。変な宗教に。星の観察に)。▼心酔する(革命思想に。西洋文明に。ロマンチックな教養に)。学問を専一にする。才能を専一に磨く。血道をあげる(お祭り騒ぎに。女に。学生演劇に。稽古事に。兵器の開発に)。▼身を投じる(革命運動に。宗教に)。▼打ち込む(仕事に全力を。厳しい訓練に。子供の養育に。仕事一筋に。真に職務に。全力を挙げて学生運動に。全身全霊をかけて)。打ち込みよう(尋常ではない。並々ならぬ。女らしい可憐な)。身を打ち込んで仕事にかかる。白熱の死闘を繰り広げる。白熱する(議論が。が)。白熱した好試合。 **ねつれつ【熱烈】** 熱烈な(愛を捧げる。歓迎を受ける。恋に落ちる。支持を受ける。崇拝の的。議論が戦わされる。恋文を書き送る。ラブレターを書く)。 **ひたむき** ひたむきな(仕事への執念。野望を燃やす。高調子で責め立てる"川端。慕情を放射する=池波)。一途なひたむきな恋。ひたむきに(耐えて生きる。音楽に聴き入る。 <841> # 熱中する・浸る 魂のあり方をつきつめる『永井路)。病的なまでのひたむきさに溢れている鈴木光。 **ひたる【浸る】** 浸る(熱々ムードに。安穏な生活に。美しい想念に。自己陶酔に。深い眠りに。空しい哀感に。物語の世界に。安い感傷に。優越感に。美しい思い出に。甘美な香りのする記憶に。滴らんばかりの緑に。自分だけの時間に。しんみりと悲しみに。たっぷりと余韻に。とっぷりと浴槽に。ぬるま湯にどっぷり。あたたかいやすらぎと幸福感に=山本周)。ひたる(恍惚としたような満足感に"阿久。青年期のなつかしい感情に=山田太。切々と一身の思い出に「真継。なまぬるい自己憐憫に=池澤)。▼思いに浸る(幸福な。甘い。暗澹たる。屈折した)。▼感情に浸る(ほろ苦い。喜びの)。▼気分に浸る(豪華な。幸せな。絶望的な。沈鬱な。平和な。二人だけの。ほっとした。センチメンタルな)。楽しい夢に浸り続ける。アブノーマルな世界に浸りきる。眠りの名残の中へ浸り込む。 **ふける【耽る】** ふける(勝手な考えに。気軽な雑談に。揣摩臆測に。酒池肉林に。楽しい思いに。沈思黙考に。読書三昧に。風流韻事に。放蕩三昧に。よもやま話に。利害の打算に。悪い遊びに。腕を組んで思案に。心置きなく閑談に。際限のない話に。しばし思い出に。ただれるような淫欲に。止めどもなく感慨に。のべつまくなしに麻雀にハジに。不毛な自己憐憫に小林久)。空想にふける(捨て鉢な。漠然とした)。夢想にふける(あれこれと。とりとめもない)。▼物思いにふける(何ということなしに。陰鬱な面持ちで)。暑さを身に感じる間もないほど考え耽る=佐藤春。考え込みながら斧の音に聞き入る=井伏。一心に読みふける。▼耽溺する(星の世界に。魔界の美に。鴛鴦の楽しみに!舟橋)。耽溺した生活に陥る。 **ふねっしん【不熱心】** ▼不熱心(研究に。商売に。勉強に)。環境問題に不熱心な国。熱意の乏しさにいら立つ。熱心さが足りない。あまり仕事に熱心ではない。格別熱心というわけではない。熱心を欠く。熱のこもらないお座なりの演説=福永。 **ぼっとう【没頭】** ▼没頭する(研究に。作業に。事業拡張に。仕事に。自分の考えに。当面の生活に。花の栽培に。寝食を忘れて。官能的な快楽に。事業の面白さに。貰いたての妻に。昼夜を分かたず訓練に=坂口)。恋愛関係に没頭する仕儀とは相成る今東。沈潜する(研究に。文学の世界に)。 **むが【無我】** 無我の(境地に遊ぶ。境に没入する)。没我的な心境。没我の(境地。境に入る)。無念無想で(座っている。立ちつくす)。無念無想の境地に浸る。心頭を滅却すれば火もまた涼し。 **むがむちゅう【無我夢中】** 無我夢中で(後を追う。逃げ帰る。走り続ける。船を漕ぐ。シャッターを切る)。無我夢中に暴れまわる。あまりの幸福に無我夢中になる!今。飛びついて無我夢中に抱えこむ"吉川。無我夢中の時を過ごす。 **むちゅう【夢中】** ぺちゃくちゃと話に夢中。夢中で(手を振る。刀を振りまわす。坂道を下って行く)。競争するようにして夢中で食べる三浦。火が燃えるように激しく夢中で愛しあう。大佛。夢中にさせるだけの魅力を持つ。半ば夢中に足を運ぶ。若い娘にいかれる。▼うつつを抜かす(井戸端会議に。女に。株に。恋に。たわ言に。博奕に。麻雀やパチンコに。密会に)。 **むちゅうになる【夢中になる】** ▼夢中になる(遊びに。おしゃべりに。観戦に。ギャンブルに。自分の考えに。他愛ない話に。一人の女に。野球に。コレクションに)。夢中になって(筆を運ぶ。読みふける)。夢中になったら見境がない。血相さえ変わるかと思うほど夢中になって勝負を争う芥川。何かに夢中になると音が耳に入らない。何もかも忘れてしばらく眺める")。 **めいそう【瞑想】** 瞑想に(沈む。ふける)。▼瞑想する(静かに。じっと)。瞑想的な気分。端座黙想する。黙想にふける。長い黙想の中から立ち上がる。 **もっぱら【専ら】** もっぱら(女道楽にふける。快楽のみを旨とする)。もっぱらの世間の噂。一意学問に精進する。成否は一にかかってわれわれの双肩にかかっている。問題は一にかかって実践するかどうかにある。ひとえに(子供の成長を楽しみにする。直感力と判断に委ねられる)。平に(謝る。詫びる。ご容赦を願います)。 **ものおもい【物思い】** 雑草のように物思いが深まるものおもいばかり白洲。物思いから(覚める。我に返る)。物思いに沈んだ人などと似通ったような厳粛ともいうべき真面目さ=佐藤春。いたずらな物思いに似て何ものをも産まない=伊藤整。物想いに沈んでいるような暗鬱な眼を外に向ける=高見。▼物思いにふける(当てとのない。沈んだ表情で。しばし。漠然と。ぼんやりと。寝られぬままに枕を抱いて=白洲)。物思わしげに(横顔がかげる。しばらく黙っている)。物思いに沈んだような(声。黙り込み方)。 **われをわすれる【我を忘れる】** ▼我を忘れる(遊びに。悲しさに)。我を忘れるほど没頭する=貫井。嫉妬に我を忘れ泣きわめく池波。我を忘れたように怒鳴りつける=福永。我を忘れて(怒り狂う。興奮する。すがり付く。見とれる)。うれしさと懐かしさに我を忘れて立ち上がり大声で叫ぶ=井上ひ。われを忘れて声を放って泣き立てる=山田。ほれぼれと我を忘れて眺める。喜びに我を忘れて声高く叫ぶ!佐山。茫然と我を忘れている。国木田。我を失っているように階段を駆け降り店にいる連中のことなど目に入らない歳沢。正体もなく(泣き崩れる。限る。酔いつぶれる)。忘我の(境地に入る。中に沈淪する)。女との密会に忘我の時を持つ=船山。 <842> # 眠る・寝る **あんみん【安眠】** すやすやと安眠する。かつて得たことのない安らかな眠りにおちる=塩野。高枕で(限る。寝る)。安らかに寝入る。▼眠りにつく(心安らかに。安心して)。安らいだ表情で眠る。安心して眠れる。枕を高くして眠る。安らかに熟睡する。ものの五分もすれば高いびきが聞こえてくる"向田。羅漢の雑魚寝だこのように高になった寄り子部屋"吉川。高いびきをかいて寝入っている。床に入るが早いかもう高をかいている=高見。 **いねむり【居眠り】** コックリコックリ居眠りをする"赤川。▼居眠りを始める(気持ちよさそうに。こくりこくりと)。▼居眠りする(いつの間にか。柱に寄りかかって)。頭がこくりこくりと船を漕こいている―熊合。の消えて行くように目を閉じる"井伏。鼻から提灯、疲れた身体にわずかに一睡を偸む!長塚。のんびり鼻提灯をこさえながら電話番をする荻野。 **いびき【鼾】** 呆れるほどに大きいいびき三浦哲。が高くなり低くなり調子の悪い笛のよう遠藤。いびきをかいて眠りつづける。高らかにいびきをかいて眠ってしまう。をかく(雷のような。万象に疲れた人のように夏目)。いびきをかく(傍若無人に。があがあと。ぐうぐうと。ぐうすか。獣のような。こうこう)。のような蛇の呼吸音吉村。 **うたたね【転た寝】** うたたねから揺り起こされたように急にもぞもぞと動きだす本庄。怠惰にうたた寝をする。未来の夢を孕んだ仮睡"直行。うつらうつらと仮に落ちる。ふっと引き入れられるように仮睡に陥る=有島。車中で仮眠を取る。 **うつらうつら** うつらうつら(時が経つ。眠りを催す。一日を過ごす)。ひがな一日日溜まりの中でうつらうつらしている=有吉。うつらうつらと(船を漕ぐ。夢を見る)。うつらうつらに夢の中を渡り歩く=中沢。うつらうつらする(壁にもたれて。冬みたいに。眠くなって)。疲れたようにウツラウツラする=徳永。うつらうつらしかかってははっと目を覚ます。 **きぜつ【気絶】** ▼気絶する(一撃で。意識が混濁して。死体を見たショックで)。気絶するほど愕く南条。気絶して(倒れる。大の字に伸びている)。意識が(なくなる。次第に希薄になっていく。、徐々に薄れていく。すっと頭の中から消えていく。途切れがちになる)。急激に意識が遠のく。意識が畑のものように消失する=菊池。意識をなくす。昏々として意識を失って行く“石川。正体不明になる。正体をなくす。眼の前が見る見る真っ暗になる=有島。一度に疲れが出て前後不覚に寝こむ=小島。前後不覚になるほど(酒を飲む。酔う)。▼気が遠くなる(心配のあまり。ふうっと)。意識が遠くなる。痛みで気が遠くなりかける。意識が薄れる。気を失うまで折檻する。気を失って倒れる。気を失うほど殴られる。息苦しさと汗と恍惚のために気を失わんばかり三島。失神する(一時的に。白目を剥いて)。悦びのあまり失神しそう~大原。失神しそうになるほど喜ぶ!庄野。音もなく床に崩れ落ちる=畑。写真機のシャッターがおりるように急に闇になる=向田。卒倒する(その場に。ショックのあまり。貧血を起こして)。危うく卒倒しかける。悲劇的な顔でもしようものなら心配のあまり卒倒しかねない。内田。卒倒しそうなほどショックを受ける小林久。目をまわすような派手な着物"徳田。雷に目をまわして倒れる。悶絶の悲鳴を上げる。▼悶絶する(白目を剥き出して。喉元を押さえて。ひねくりかえって)。悶絶せんばかりにくたばる。今にも悶絶せんばかりに泣き狂う。 **こんすい【昏睡】** 深い昏睡が襲ってくる。昏睡から覚める。泥のような昏睡におちこむ=開高。病人が干のように平たくなって昏睡している=吉川。頸動脈を手刀で強打して昏睡させる=大。昏睡状態に陥る。意識不明に陥る。ばったり倒れたなり人事不省になる=永井荷。人事不省になって病院に担ぎこまれる=椎名。 **さいみんじゅつ【催眠術】** 催眠術から目覚める。催眠術をかける。催眠術に(かかったかのように従順小川。かかったみたいに部屋の中に引き込まれる=宗田。かかったように目を宙に据えてじっと考え込む=内田康)。 **しんしつ【寝室】** 朝の光が暗い寝室に射しこむように考えが胸を打つ。宇野利。女を寝室に引き入れる=あさの。物音を立てぬようにそっと寝室に入る。蛍光灯の輝く寝室の窓が闇の空間に浮かび出ている=夏樹、夫婦が寝室へ引き取る。目をこすりこすり寝所から出て来る。遺体を所に安置する。寝所を守って夜っぴて警戒する=福永。寝物語にあれこれと語る。の営みを勤め上げる。閨房の喘ぎを連想させるような声"源氏。陶房の(瑣事を語る。言のような声人)。 **すいみん【睡眠】** 寝たか寝ないかわからないような睡眠"梶井。睡眠が時雨空の日のようにときどきやってきては消えてゆく=梶井。十分な睡眠と休養をとる。たっぷりと睡眠をとる。生活が睡眠のようによく眠る=坂口。睡眠薬自殺を遂げる。睡眠薬を(常用する。飲む。連用する)。眠り薬を用いる。深い熟睡に陥る。快い熟睡を貪る。ぐっすり熟睡する。 **そいね【添い寝】** 若い異性に添い寝をさせる=丹羽。添い寝する(赤ん坊に。子供に。母に)。赤ん坊に添え乳する。 **たぬきねいり【狸寝入り】** 狸寝入りをする。狸を決めこむ。 <843> # 眠る・寝る 寝たふりを装う。かりそめに目を閉じて眠ったふりをする舟橋。空寝を決め込む。 **ねいき【寝息】** 寝息(規則正しい健康な。ひそやかに息づく木のかすかな=飯田。安らかに天使的な大江。気持ちよさそうな軽い"三田)。寝息が耳に心地よく忍び込んでくる高橋元から規則正しい寝息が漏れる。▼寝息が聞こえる(かすかな。安らかな)。穏やかな寝息を立てて眠る。嘘のように安らかな寝息をたてる=安岡。海が乳色の霧の中で静かな寝息を立てている=大庭。膝をかかえるように丸くなって軽い寝息をたてている安部。寝息を立てる(あどけなく。すうっと。すやすやと。心地よさそうな。気持ちよさそうに)。潮騒が海の健康な寝息のように規則正しくやかに聞こえる三島。波の音がおだやかな夜の海の寝息のように聞こえる本庄。綱が船の寝息のようにしる=梶井。 **ねいりばな【寝入り端】** 寝入りばなを(襲われる。騒々しく叩き起こされる)。寝入りばなを起こされて(そのまま飛び出てきたらしいしどけない姿=高見。不機嫌きわまりない=浅川)。寝しなに(客が来る。紅茶を飲む。酒を飲む。電話がかかってくる)。寝ついた端を叩き起こす。寝端を襲う。 **ねいる【寝入る】** 寝入る(草も木も。ぐっすり。昏々と。正体もなく。すやすやと。たわいもなく。泥のように。身体をぐたぐたに崩して=横光)。いびきをかいて泥のように寝入っている=北。寝込みを襲われて暗殺される。働いて帰ってくるとバタンキューと寝こむ。いつとはなしに寝ついてしまう。 **ねがえり【寝返り】** ▼寝返りを打つ(くるりと。ごろりと。何度も。ひっきりなしに。夜中に息苦しそうに=石坂)。いかにも大儀らしく寝返りする佐藤春。臥床でと寝返りをする=池波。寝床でとする。愛と憎しみの輾転反側"宮本百。爆転反側しながら考え続ける。ベッドで輾転反側する。 **ねがお【寝顔】** 寝顔(官能的な女の。安堵感が漂う安らかな。子供同然に無心な連城。あっけらかんとした=南木。暗がりの中にほの白く浮いている堀)。寝顔が少年のように安らか森。無防備な寝顔が幼児のようにあどけない三浦綾。寝顔に見入る。少女の寝顔のごとき平和な微笑"中村貞。寝顔を見守る。安らかな寝顔を見せて昏々に眠る有吉。 **ねかしつける【寝かしつける】** ▼寝かしつける(子供を。乳児を)。寝かす(赤ん坊を。こわれものにてもさわるようにして="壺井)。子供を早く寝かせる。 **ねころぶ【寝転ぶ】** 寝転ぶ(ソファーに倒れ込むように。畳の上に大の字に“福水。死んだようにくったり山崎)。座敷に倒れるように寝ころぶ川端。誰彼なしに寝転ぶ女。▼畳の上にころりと寝ころがって天井を見る"丸谷。昼間から家の中で寝転がっている=池澤。寝転がる(床に大の字に。ころころと。ベッドに仰向けに)。 **ねしずまる【寝静まる】** ▼寝静まる(深々と。家々が寒気の底に。家の中がしんと。すべての家が灯りを消して森村。館が木立に埋もれてひっそりと井上靖)。人の寝静まった深夜。人々が寝静まった(頃。町)。 **ねぞう【寝相】** 寝相が(悪くて寝冷えする。むちゃくちゃに悪い。吉本。悪いから朝には暴行でも受けたような乱れた姿になってしまう。北村)。寝癖が悪い。強盗にでも辱められたようなあられもない寝ざま永井荷。寝姿(無邪気な幼児の。何かの健康法の指示に従っているような清潔な"中村真)。寝違えて(首が回らない。首から肩にかけて激痛が走る)。 **ねそべる【寝そべる】** 寝そべる(女の膝を枕に。畳に長々と。砂浜に仰向けに。ころころだらしもなく。だらしのない格好で。無為のままベッドで。ベッドの上にながながと"五木。路の真ん中に悠々と=福永。した旅人のように"高橋和)。犬が気だるげに地面に寝そべっている=永井。 **ねたきり【寝たきり】** 一日じゅうベッドの中に寝たきりでいる。寝たきりになる(脳梗塞で。半身不随で)。寝たきりの父親を抱える。ほとんど寝たきりの状態。毎日ベッドに寝たきりの生活に退屈する=開高。長い間寝たまま。 **ねどこ【寝床】** 寝床から(起きる。這い出す)。寝床に(腹這いになる。もぐりこむ。横になる)。雪面に柴を敷いて寝床にする=熊谷。床を(上げる。取る。並べる)。転々と寝場所を変える。ハンモックに寝る。ハンモックを吊る。万年床が敷かれた部屋。万年床にもぐりこむ。 **ねぶそく【寝不足】** 寝不足で(ほんやりした頭。まぶたが重たい。すっかり見苦しくなった顔。高樹)。寝不足の(荒れた肌。頭のようにぼんやりしている早朝の空気"安岡。女のように無愛想な顔「高樹)。光が寝不足の目にまぶしい。寝不足のはれぼったい青い隈をもった顔「小林多。寝不足気味な感じの腫れぼったい上まぶた"西木。睡眠が(足りない。充分に取れない)。睡眠不足がたたって頭が二日酔いのように重い=小林久。一目で睡眠不足とわかる腫れぼったい目をしょぼつかせる=つか。睡眠不足に悩まされる。睡眠不足のせいでいつももやのかかったような頭鷹沢。 **ねぼう【寝坊】** 寝坊をきめ込む。悠々と寝坊をする。のんきに寝坊する。宵っ張りの朝寝坊。朝寝坊して学校に遅刻する。朝寝坊にはもってこいの部屋!獅子。 **ねぼける【寝ぼける】** 寝惚け面で目をぱちくりする"外村。寝ぼけまなこで(歩き回る。あわてふためく)。茫然として半ば夢から醒めたような寝ぼけ眼を瞬く=国木田。寝ぼけたような締まりのない笑顔徳田。眠りの澱から鈍く覚めきれない頭中沢。 <844> # ね **ねむい【眠い】** 眠い目をこする。眠くなってうつらうつらとする。眠くなる(うとうとと。吸い込まれそうに)。縛りつけられて動きが取れないような眠さ=新田。眠そうな(声で答える。魯鈍らとな顔。目をしょぼしょぼさせる)。どろんと眠そうな目。眠そうに(瞬きを繰り返す。目をしばたたく)。眠たい脳味噌はナチュラルなハイ歳沢。体が眠たいと訴える。小川のせせらぎがどこか遠くから響いてくるように眠たげ山本周。眠たげな船の明かり。薄野呂か何ぞのような眠たげな顔徳田。蠅にぇが眠たげな羽音をたてて飛ぶ"遠藤。眠たそうに目をこする。一刻も早くベッドに横になりたい北。今にも瞼炷ょが落ちそう若存。上下の瞼がくっつきそう赤川。昼間の疲れが瞼にたまる三浦哲。上と下の瞼が磁気を帯びたように両方から近づく岸田。おびただしい疲労が瞼を重くする=阿刀田。瞼をとろんと閉じかける=赤川。鋸にがざっくんざっくんと眠いような音を立てる=本庄。眠たくな るような(遅いテンポ。静けさ)。睡魔が襲ってくる。睡魔との闘いを余儀なくされる。瞼が重くなった目をかろうじて開いている"梅本。とろんとまぶたが重くなる。じっとしていると目蓋住ょが重くなるような日和"山本周。 **ねむけ【眠気】** 眠気が(襲ってくる。体をだるくさせる。こもっている頭。少しも起こらない。すっかり吹き飛ぶ。頭の中をのったりと道はいずりはじめる=船戸。甘く降りてくる古井。体の深いところからしみ出してくる若竹)。一遍に眠気が覚める。体に眠気が走る。気持ちのよい眠気が忍び寄ってくる。後頭部に眠気がこびりつく=松本。脳の中にも外にも眠気がベタベタと貼り付いている=内田康。腹の底の方にいた眠気が消化逆目をよじ登るように頭の中まで伝わる=中沢。まぶたの裏がしびれるような眠気がやってくる=あさの。声の底にまだ睡気がたゆたっている=高井。泣きつかれのあとに似た不愉快な睡気も有島。眠気がさす(うつらうつら。うとうと)。一生懸命眠気と闘う。とろんと呼気の残ったぐ連城。酔いと睡気の澱ょとんだ目高井。眠気を(誘われるほど単調な回転の音=石坂。催すような使い日高樹)。睡気を誘うような滝のリズミカルな音"高橋和。日射しが柔らかく睡気を催させる=福永。ひっそりと睡気を誘うあたりの空気に呼び声が歯ごたえなく吸われるよう武田発。かったるい真夏の眠気をぶっ飛ばす中島み。川がゆるゆると眠気を誘うように流れる=宮部。快い疲労が睡気を誘い出す。加賀。酔いが眠気を誘い出す。 **ねむらない【眠らない】** 夜通し眠らない。限らずに頑張る。▼眠らずに明かす(一夜を。一晩を)。一夜を明かす(眠れぬ。悶々もんの)。ほとんど一睡もしていない。一睡もしないで(働く。読み通す)。一睡もせず朝を迎える。睡眠時間を削る。一晩じゅう寝ずに待つ。一晩寝ずに考える。一晩を寝ずに過ごす。寝ずの番をして見張る。夜通し寝ずの番をしている。寝ていない(満足に。ろくすっぼ)。眠る問もなく働き通し。寝もやらずじっと考え込んでいる=福永。寝もやらずに黙念と静座する。寝もやらぬ冴えた目。ロビーで夜を明かす。まんじりともしない(羽まで。夜が明けるまで)。まんじりともしないで一夜を明かす。一晩中まんじりともしないで考える。まんじりともせず(朝を待つ。夜を明かす)。 **ねむり【眠り】** ▼眠り(暖かい波間にたゆたうような静かで優しい=小池。地獄の底でさまようような息苦しい泉優。死のような深い森境。吸房がききすぎた歯医者の待合室のような余村上存。とぎれがちで必ばかり見る拷間にらのような森環。とろけるような満ち足りた飯田。とろとろと浅い悪夢のような森場。泥に沈むような長野。粘液の中に軀炒。を浸しているような行)。眠りが(穏やかにやって来る。間欠一的にやって来る。次第に朝後のように消えていく三浦朱。黒い巨大な殺帳と礼ちのように下りてくる=森稲)。甘い眠りが身体を包む=中沢。波のような眠りが煲水上。醒めぎわの夢をもう少しもう少しとねだるような眠り方永井龍。ふわっと体が浮くような眠りに身をまかせる!高橋滾。眠りに吸いこまれていく。心地よい眠りに誘われる。深い眠りにひたる。切れ切れの眠りにまみれて朝を迎える=曽野。泥のような眠りに押し流される藤沢。昏々にふと深い眠りに沈む。手足がぐったりと溶けて行くような眠りの中〈沈む柴田翔。平和な沼地の底に降りていくように眠りに沈んでいく=加賀。街が眠りの時刻の底に沈む原田康。眠りの闇に沈む=北村。目醒めざめと眠りの泥の淵に沈む=長野。▼眠りにつく(昏々と。虫の声を開きながら=高村派)。▼眠りに入る(いぎたない。寂然と)。眠りの(海に戻る。※膜のかかった目が笑いかける=古井)。やっと体が通るくらいのせせこましい睡ねもりの穴に落ちこむ。安部。とろとろ眠りの中に引きこまれる。あどけないほどに滑らかな眠りの訪れ"小川。▼眠りの淵をさまよう(浅い。どうしても手の届かない遠い小川)。泥のように眠りの淵に落ちる藤本。死んだようになって快い匪りを貪る!大佛。海綿が水を吸うようにじくじく睡りを吸収する大江。眠りを妨げぬようにと気を配る。断続的に浅い眠りをくり返す。一匹の油蟬ちびらが眠りを誘うような声で鳴く、遠藤。忘却の冷たい眠りを眠る=中村真。うつらうつらと眠りを催す。▼眠りに落ちる(快い。すっっと。とろとろっと。泥のような。ひどい疲労から小石のように堀。スイッチがバチンと切り替わるようにあっさりと=小川。前後不覚になって=小林久。何事も忘れたように=有島。母親に抱かれた子供のように前後を知らず深い=堀)。囚とらわれの身になった動物のように重苦しい眠りにおちる"小池。深い眠りに落 <845> # 眠る・寝る―276 引き入れられるように深い眠りに落ちて行く=高橋泊。すべての物が眠りに落ちたようにひそやか"小川。深い眠りのような無感覚の中に落ち込んでいく=なかにし。 **ねむりこける【眠りこける】**▼眠りこける(いぎたなく。ぐっすり。泥酔して。臍、えを出して。赤ん坊のように。いびきをかいて。足もとから崩れるように大原。駱駝くのように壁に凭もたれて=遠藤)。 **ねむりこむ【眠り込む】**▼眠りこむ(ぐっすり。くたびれ果てて。ぐったりと疲れて。健康な寝息を立てて。鉛の板のように重苦しく=岡本)。▼眠りほうける(昏々にふと。夜となく昼となく)。 **ねむる【眠る】**▼眠る(母の膝を枕に。明日に備えて。正体もなく。前後も知らず。とろとろと。気持ちよさそうに。さも心地よさそうに。うつらうつらと。掛け布団にくるまって。唇をぼんやり開けて。ぐっすりと朝まで。座席の背にもたれて。シートを倒して。すやすやと寝息をたてて。前後不覚になって。妻と抱き合って。何もかも忘れて。猫のように丸くなって。海老えびのように縮こまって=森環。すっと穴に落ちこんだように=日野。すやすやと赤ん坊のように室生。倒れ込むように=高井。建物がしっとりと木立に包まれて=石森。地の底へ引きこまれるように高樹。机に顔を押しつけるようにして大変。雄ぃぃのようにうずくまり抱かれたまま=長野。麻酔がかかったように"向田。むさぼるように=小池)。薬もらの中にもぐって動物の仔のように睡ぉもる=大江。倉庫に眠る商品。地底に眠る資源。墓に眠る死者たち。港に折り重なって眠る舟。ぐっすり眠る(死んだように。ゼンマイがすっかりほどけてしまった懐中時計のように三浦哲)。●静かに眠る(雲に砕銘を誌して"阿川弘。深く冷たい沼をさまようように=小川)。▼抱かれて眠る(お母さんに。潮騒乱心を聞きながら海に=宮尾)。▼枕にして眠る(川の流れを。波を)。▼よく眠る(豚のように。悪い奴ほど)。崩れるように眠くなる=石坂。眠っていた(血が騒ぎ出す。性情を目覚めさせる。良心が目をさます)。うとうとかいこのように眠っていた生活が鼓動を打ち始める“小川。眠っている(何も知らずに。長いこと。幸せそうな顔で。高らかにいびきをかいて。狭い庭が研ぎあげたような星空の下にしんと=山本周。眠り病に罹かかったみたいにこんこんと三浦哲)。眠っているところを叩き起こされたような顔つき高井。▼眠ってしまう(いつとはなしに。待ちくたびれて。試験勉強の時みたいに瞼はぶにつかえ棒をしても犬庭。十三の娘のように他愛なく“野上。疲れに負けてつい有川)。一分でも二分でも余計に眠りたい。喚き上げてくる欲望を手なずけておとなしく眠らせる落合。眠り続ける(心地よげに。昏々にふと。罪なく。死んだようになって海音寺。睡眠不足を一時に取り戻そうとするがごとくに=掘。透明なガラスのようになって=渡辺)。いつの間にか(眠ってしまう。不覚になる)。うとうとと夢路に入る=江戸川。快眠を得る。軽い寝息を立て始める。後頭部が鉛のようになってベッドに倒れこむ"小林信。すっすつ寝息を立てる。寝つきが(いい。悪い)。暗闇にひきずり込まれるように目を閉じる=村上脊。眠っているような(静かな通り。細い眼。無表情な顔)。眠るがごとく大往生をとげる白洲。疲れたので一眠りする。一眠りした後で机に向かう。一眠りして徹夜に備える。 **ねれない【眠れない】**▼眠れない(夜が続く。夜を明かす。夜を過ごす)。▼眠れない(変に興奮して。枕が変わると。目が冴えて。夜っびて。夜の目も。考え始めると夜も。神経がとがって)。夜も眠れないほど心痛する=坂口。夜も眠れないほどの感激"小松太。眠ろうとしても眠れずに苦しんだ挙げ句芝木。眠れぬままに(朝になる。筆を執る。明かす夜を経験する)。頭が冴えて睡眠の邪魔立てをする人日。安眠を妨害する。一睡もできずに(思い悩む。夜を明かす)。妨げる(就眠を。睡眠を。眠りを)。ざらざらとした夜が執拗にまとわりつく。ろくろく熟睡する暇むともない。心配で(一睡もできない。枕を高くして眠れない。夜も眠られない)。睡魔がやってくる気配がない藤本。寝そびれる(コーヒーを飲みすぎて。推理小説を読んでいて。隣室の音が気になって)。寝つくまでずいぶん時間がかかる。夜が明けるまで寝つけない。頭も眼も冴えて少しも眠気が起こらない=山本周。猛々しい風に眠りを遠ざけられる=竹西。先輩を差し置いて眠るわけにはいかない。▼寝られない(枕が変わると。夜っぴて)。夜もおちおち寝られないほど苦労をさせられる渋谷崎。眠ろうと思うとかえって目が冴える。眠れない晩が続く。蒸し暑く寝苦しい夜。寝苦しさに極伝にんとする。寝苦しそうに寝返りを打つ。▼寝つかれない(目が冴えて。そわそわしてなかなか)。寝つかれないで床上に恨転する人米。 **ねる【寝る】**▼寝る(子は育つ。態勢に入る)。▼寝る(前後不覚に。青天井の下で。体を縮めて。木の根方で。自分の部屋で。母に抱かれて。親子が川の字に。仰向けに長く伸びて。帰ってばたんと。金と引き換えに男と。体を寄せ合って。草むらに仰向けになって。煎餅布団にくるまって。ベンチに新聞を吸いて。足を蝦えびのように屈ががめて=田山。蚕のように棚の中に入って小林多。野良犬みたいにあちこちで灰谷。部屋の隅っこでひざこぞうを抱えて灰谷)。ベッドへ糊のりで貼ったように臥ゃる=幸田文。夜に遊ぶ場所もなくて暗くなったら寝るしかない三浦し。寝るにはまだ早い。いびきをかいて寝る(ガーガーと。ぐうぐう)。▼並べて寝る(枕を。夜具を)。嫌なことを一晩寝て忘れる。一晩寝て考える。年の暮れを寝て送る=田山。 <846> # ね ている(ところを刺す。人を起こす)。▼寝ている(いい心持ちに。牛が敷き藁ぁらに。死と官能の快楽は隣りあわせに=中野美。痺しびれる夢の水が体中にさーつと掛かったようにそのまま朝まで=笙野)。▼寝てしまう(倒れるように。酔いつぶれて。後片付けもそこそこに。布団をかぶって)。寝ても起きても夢の中にあるよう。寝なければ体に毒。せめて日曜くらいたっぷり朝寝したい 宮尾。朝寝をむさぼる。褥んとにつく。早い時間に就寝する。就寝前に火の元を占点検する。寝台に横になる。寝に入る。布団にくるまって寝に就く。大の字に手足をひろげて横になる高樹、床に入る。寝心地のいい(布団。ベッド)。寝支度を整える。枕に(頭を置く。つく)。▼ころ寝する(部屋に。ソファーで)。床につく(眠くなって。毎晩早く)。▼雑魚寝さにする(広岡に。皆と一緒に。ころころ)。狭い家で雑魚寝状態。 **ひるね【昼寝】**▼昼寝でもしたくなるような穏やかさ"高田。昼寝の最中に声をかけられた女みたいにどんより見つめる=古井。こたえられない昼寝の夢に入っていく=池波。昼寝を(楽しむ。むさぼる。揺すぶり起こされたときのように不機嫌に云う徳永)。▼昼寝をする(いい心持ちに。うとうと。とろとろと。心地よさそうに。青空の下でのんびりと=鎌田)。三毛猫が昼寝しているみたいな顔「北。本格的な夏を迎える直前の束の間の午睡を楽しむように海がおだやかな表情を見せる落合。 **ベッド**▼ベッドがでんと置いてある。ベッドから(起き上がる。体を起こす。ぴょんと飛び降りる)。体が鉛になってベッドから起き上がれない倉橋。ベッドにうつぶせに倒れこむ。女をベッドに押し倒す。さっさとベッドに潜り込む。裸でベッドに横になる。早めにベッドに入る。ベッドの(傍らに立つ。そばを離れる。縁に腰掛ける。上に起き上がる。横に椅子を置く)。ぐずぐずとベッドの中にとどまる。服をベッドの脇に脱ぎ捨てる。寝台がきいきい鳴る。寝台に(倒れ込む。もぐりこむ。ごろりとひっくり返る)。 **まくら 【枕】**▼枕が涙で濡れる。枕に頭を(落ち着ける。落とす)。枕に顔を(うずめる。押しつけて笑い続ける)。枕の位置を直す。枕を(抱いて泣く。並べて主君に殉じる)。▼枕にする(腕を。座布団を巻いて)。枕カバーに枕を突っ込む。畳に肘枕する。片腕を枕にごろりと寝そべる。肘を枕に寝転ぶ。両手を枕にして目を閉じる。 **まくらもと【枕元】**▼枕元で雷が落ちたくらいの爆音小川。枕元に(食事を置く。座る。立つ)。枕許ばくにっきっきりで湯薬の世話に専心する=舟橋。写真を枕元に飾る。屏風がいを枕元に立てて寝る。枕元の時計を見る。枕頭もんに(座する。立つ)。枕辺くに(座る。たたずむ。つききりになる)。 **ふとん【布団】**▼洗い立てのハンカチを重ねたように清潔布団"北村。針さしのように膨れ上がった赤い蒲団"宮本瓦。布団が敷きっぱなしになっている。干した蒲団が夕立で台無しになる=伊坂。布団に(くるまって寝につく。湯たんぽを入れる)。蓑虫いいのように蒲団にくるまる吉川。温かい布団にくるまる=水上。布団の(上にぺたりと座る。横に転がり出る)。朝明けの寝床の中でふとんのぬくもりに浸る=山本有。氷のような布団の冷たさが体の温みで吸まる=有島。薄い蒲団へ柏併協しゃにくるまる=吉川。布団を(延べる。日に当てる。押入れに片付ける。手でぼんぼんと叩く。目の下まで引き上げる)。頭からすっぽり蒲団をかぶる丸谷。てきぱきと布団を畳む。ふかふかの布団のように心地好い男水倉。掛け布団がふわりと広がる。掛け布団にくるまる。掛け布団を(頭からかぶる。はぎ取る)。ふうわりと羽根布団のように被せる。室生。寝具を(延べる。広げる)。床を延べる。寝袋に(くるまる。もぐりこむ)。気持ちのよい肌触りの夜具。蓑虫のように夜具にくるまる藤沢。夜具をはねのけて起き上がる。 **まどろむ【微睡む】**▼まどろむ(うつらうつら。とろとろと。いつとはなしに。さやさやと軽い寝息をたてて阿刀田。小さなお寺が降り注ぐ日射しを受けて福永。なにかひやりとしたものを酔いの芯に包みこんで=古井)。まどろみの中で夢を見る。まどろむような静寂に包まれる=小池。うとうと浅い眠りに入る。うとうとと(まどろむ。居眠りを始める)。▼うとうとする(浅い眠りで。疲れが出て。布団に入って)。うとうとしながら夢を見る。 **よこたえる【横たえる】**▼横たえる(長々と体を。身をベッドに。一糸まとわぬ裸形を。体をゆったりと。体を投げ出すように。安岡。疲れた身体をぐったりと"中島敦)。身を横たえる(畳の上に。ごろりと。草むらの上にゆったりと)。鮪往くを寝かせておく。花束をそっと寝かせる。横にする(体を。棒を。身を)。 **よこたわる【横たわる】**▼横たわる(棺桶材以の中に。畳の上に。死骸が累々と。間に満のこときものが。ベッドに患者が。難問題が前途に。尾根道が長々と。これ幸いと畳の上にだらしなく。山々がどっしりと。生きた屍乱跡のように『森環。ぐったりと死んだように"井上靖。浴槽の底へ溺死体のように=梶井。ベッドに倒れるように"有吉。丸太ん棒のように「徳永。身じろぎもせず板のように森環)。▼ごろりと横たわる(ベッドの上に。床に)。横たわっている(病人が暗がりの中で灰色の石のように遠藤。水から揚げられた魚のようにただ荒い息だけして=松浦)。▼横臥始する(ソファーに。畳の上に。ベッドに)。横になる(診察台に。布団に。疲れはてて。パジャマ姿でベッドに。ころりと手枕のまま。畳の上にころっと)。横になって休む。 <848> # しらみつぶし 【虱潰し】 **しらみつぶしに** (覗のぞいて歩く。歩いて探しまわる)。一軒一軒しらみつぶしに捜す。沿道をしらみつぶしに調査する。一つひとつしらみつぶしに調べる。ファイルをしらみつぶしに調べ直す。村々をしらみつぶしに当たる。足を棒にしてしらみつぶしに頼み歩く水上。警察の威信をかけた徹底的なシラミつぶしの捜査"飯田。集落内の家を一軒一軒訪ね歩く=熊仓。 **すっかり** すっかり(安心する。変わる。消える。気に入る。気をよくする。興奮する。心を奪われる。信用する。歳を取る。なつく。慣れる。のぼせ上がる。満足する。様子が変わる。分かる。忘れている。忘れる)。余すところなく(味わう。描ききる。伝える。利用する)。洗いざらい(喋る。ぶちまける。話して聞かせる)。一滴も残さずに飲み干す。出された料理を残さずに食べる。飯粒一つ残さずに平らげる。根こそぎなくなる。注意を根こそぎ奪う。問題点を根こそぎ洗い出す。悪の芽を根こそぎつみとる『石森。組み立ててきた推理が根こそぎ崩れる=小林久。 **すべて【全て】** すべて(覚悟の上。徒労に終わる。無駄に終わる。思いどおりになる。推測にすぎない)。データがすべて出そろう。すべてが(終わる。順調に進む。水泡に帰する。手順通り運ぶ。丸く収まる)。すべてに(優先する。神経がゆきとどく)。すべての(点で優れる。準備が完了する。道はローマに通じる)。すべてを(曖昧にする。手中に収める。捨てても悔いることがない=石坂)。悲しみのすべてを味わう。給料のすべてを酒に使う。才能のすべてを燃焼させる。神経のすべてを動員する。貯金のすべてを入れあげる。初めから終わりまで。有形無形を問わず。一家を挙げて上京する。国を挙げての大歓迎。いずれも(長続きしない。間違っている。申し分ない)。いちいち(疑ってかかる。気にする。口に出す。数字を挙げる。説明する)。全編に(あふれているユーモア。みなぎるスピード感)。山賊に襲われ身ぐるみ剥がれるリ倉橋。諸々の(ことを調べる。説がある)。 **すみずみ 【隅隅】** 隅々にまで(気を配る。目を光らせる)。隅々まで(明るく照らす。体が遂に冒される。念入りに調べる。光を投げかける。細かい神経が行き届いている=丹羽)。いたわりの心が隅々まで行き届く。語る言葉の隅々まで血が通う。声が隅々まで響き渡る。心の隅々まで見透かされてしまう。名が隅々まで行き渡る。庭の隅々まで隈くまなく探す。引き出しの隅々まで調べる。満足が心の隅々まで広がる。血管の隅々まで透けてしまいそうな明るさ=開高。心の襞ひだの隅々を見抜く。重箱の隅をつつく。隅から隅まで(調査して回る。頭に入っている。家を磨き上げる。きちんと片付ける"有島)。本を隅から隅まで読む。 **することなすこと** することなすこと(裏目に出る。ことごとく失敗する。すべてにむかつく。牛そっくりにスローモー=住井。のろのろとして鈍い=井伏)。やることなすことが(くまばかり。全く幼稚)。 **ぜんいん【全員】** 全員が(勢揃いする。一斉に駆け出す。声をそろえて笑う。出払ってしまう)。全員の気持ちを代弁して言う池井戸。全員を集める。総員五千人の組織。観客が総立ちになる。一人残らず(集まる。虐殺される。知っている。姿を消す)。 **ぜんたい【全体】** 全体に(関わる問題。波及する。目を通す)。全体をすっぽり殴う。部分から全体を類推する。全体像を(明らかにする。つかむ。把握する。丸ごとつかまえる)。全域をカバーする。全般に低下する。全般を見渡す。読者全般を指す。事件の全貌が明らかになる。模糊もことした霧のようなものが晴れてからくりが全貌をあらわす―藤沢。全面降伏を余儀なくされる。全面を(埋めつくす。覆う)。総体を(とらえる。見極める)。総量を規制する。総論から各論に進む。総論發成、各論反対。▼通観する(時勢を。生涯を。歴史を)。通算して二千回を超える。十五回対戦して通算成績は十二勝三敗。一般に(公開する。普及する)。一般の(観覧に供する。目に触れる)。全容が(明らかになる。浮かび上がる。判然としない)。全容解明にはほど遠い。現代史は近すぎて全体が見えない大きな絵のようなもの池澤。局部の現象に気をとられて大筋を見失う三好級。木を見て森を見ない。全体への視野を欠く。発覚したのは氷山の一角。 **ぜんぶ【全部】** 全部(ひっくるめる。網羅する)。あり金を全部はたく。急所を全部覚え込む。葉が全部落ちる。部屋が全部ふさがる。全部に目を通す。全部が全部賛成ではない。頭から(足の先まで。しっぽまで)。船が一般いう残らず港を出て行く隆。何から何まで。初めからしまいまで。一から十まで(信じる。説明する。頼る。任せる)。一片残らず奪われる。最初から最後まで面倒を見る。事の始終を報告する。全巻を(そろえる。通す)。全量を(買い取る。売却する)。そっくり(そのまま残す。昔のまま。あのころのままに残される)。部屋をそっくり占領する。端から端まで見てまわる。東京の端から端まで駆けまわる。一言残らず(暗記する。書きとめる)。一粒残さず(平らげる。拾う)。まるまる(一夏を過ごす。一週間を無駄にする。嘘とも思えない)。細大漏らさず(覚えている。逐一書き記す。行動を探る。情報を集める)。気がついたことを細大洩さいだらさず教える=西木。丸こと手に入れる。鳥をまるごと買い取る。一船分丸ごと買い取る。心を丸ごと吸い取ってしまっような女"日野。丸のまま飲む。五十万円を耳を揃えて返す。百万円耳を揃えて持ってくる。 **ぜんめんてき【全面的】** 全面的な(解決に至る。破滅を招く。批判を加える。協力の姿勢をみせる。後退を余儀なくされる)。全面的に(信じる。再検討を迫られる。主張を全面的に認める)。提案に全面的に賛成する。旧来の人間関係の秩序を全面的に破壊する!奥泉。仕事から全的な喜びを与えられる=椎名战。持てる才能を全的に発揮する。 **そうすう【総数】** ▼総数(参加者の。出席者の。人口の。入場者の)。総数を(数える。調べる)。▼総勢(チームの。敵の。味方の)。 **そうほう【双方】** 双方が(歩み寄る。肉薄し合う。互いに譲らない。負けず劣らずやりあう)。双方とも負けず劣らずの強情。双方に(自制を求める。受け入れ可能な解決策)。双方の(言い分を聞く。顔が立つ。距離が縮まる。思惑が一致する。主張紙を折半する。主張が膠着にいち状態になる)。 **だれでも【誰でも】** 誰でも(いい。知っている。一度は経験する)。経験のありなしを問わない。親疎の別なく与える。誰しも(過失に陥る。口にする言葉。想像がつく)。誰にでも(好かれる人間。なついてくる犬。容易に使いこなせる)。誰にでもある(自惚れは。知的好奇心は)。誰もが(気づく。振り返る美人)。誰もが一度は(通過する青春。夢見る晴れ舞台)。男女の別なく。▼問わず(古参新参を。職業の種類を。聖俗貴賤にせを。他薦自薦を。男女の別を。敵味方を。年齢を。有名無名を。老若男女を。老いと若きとを。組合員非組合員を。上級生下級生を。日本人であると否とを。身分地位の上下を。老若男女貴賤を)。能力のあるなしにかかわらず。▼別なく(上下の。老若の)。 **だれとでも【誰とでも】** 誰とでも(気安く口を利く。すぐ打ち解ける)。相手かまわず(組みつく。悪口を言う)。相手嫌わず槍ゃりを交える。相手におかまいなく口論する。親疎を問わず。誰彼かまわず殴りかかる。あることないことを誰彼かまわず吹聴ぃふもしてまわる=中上。誰彼かまわずに話しかける。誰彼なく(言葉を交わす。どなり散らす)。酔うと誰彼なくからむ。誰彼の見境なく当たり散らす。誰にでも調子よくつき合う。 **てあたりしだい【手当たり次第】** 手当たり次第雑誌を読み散らかす。手当たり次第に(乱暴を働く。名前を思い浮かべる。その辺をひっくり返す=高村虎。美女を我が物にする=舟橋)。触目のものを手あたり次第に題材にする!高村光。手に触れるものは何でも手あたり次第に絶すがりつく=本庄。心当たりのところへ手当たり次第に電話をする=井上ひ。当たるを幸い(斬りまくる。敵をなぎ払う)。秩序なく読みあさる。 **てとりあしとり【手取り足取り】** 手取り足取り面倒を見る。着物の着こなしから客あしらいまで手取り足取り教える藤田。手取り足取りで指導する。 **てんまつ【頭末】** 連続空き巣から発砲事件に至る一連の派末高村旅。顛末の大略を話す。顛末を詳細にわたって聞く。順序を追って話の顛末を詳細に述べる佐山。事の顛末を(教える。話して聞かせる)。 **ところかまわず【所構わず】** 所構わず(灰が飛び散る。豪快に放屁する)。寒気が目に見えぬ無数の針を体じゅうところかまわず一時に突き立てる=飯田。ところ構わず大声で部下に声をかける=小林久。所嫌わず(雑草が生い茂る。独り言が口をついて出る=辻炎)。体を所嫌わず踏む。自然が粉雪を所嫌わず叩きつける。吹き出物が所嫌わず出る。 **ないがい【内外】** 内外からの非難に孤立を深める。内外で(認知される。物議を醸す)。内外の(悪評を受ける。作家を読破する。事情に通じている)。家の内外の物音にびくつく。内外あわせて六百回以上公演される。 **なにからなにまで【何から何まで】** 何から何まで(まかせっきり。べらべらとしゃべる。仕組まれたようによく出来ている=坂口。知りつくしてしまったような顔をする=瀬戸内。息子のために生きているふうな顔をして世間を早脚で歩く=伊集院)。手を取り足を取りして教える。 **なにもかも** 何もかも(打ち明ける。うまく行く。終わる)。何もかもが(いっぺんにわかる。うやむやになる。ぶちこわしになる)。何もかもを犠牲にする。どれもこれも(つまらない。ありふれたものばかり)。いうことやること箍たがが外れちまった爺さん=北村。 **なんでも【何でも】** 何でも(器用にこなす。いいから浮かび上がりたい。思いどおりになる。ござれと書き飛ばす。怖い物知らずでやってのける。早め早めに済ませる。人の言うなりになる)。金のためには何でもやる。出されたものは何でも食べる。当節は何でも銭になるご時世。何が何でも怪しまれないようにする。保身のためなら何でもする。利用できるものは何でも利用する。何でもかんでも(反対する。持っていかれる危険がある)。見るもの聞くもの何でもかんでも腹が立つ。文章の巧拍は問わない。▼問わず(国産外国産を。種類のいかんを)。何なりと(遠慮なく言ってください。お申し付けください。御用命ください)。何にでも(首を突っ込む。反対する)。よろず(承ります。大人びる。自分から世の中を狭めてゆく性分檀)。 **のきなみ【軒並み】** 軒並み電車が遅れる。喫茶店やレストランが軒並み休み。入社試験に軒並み失敗する。軒並みに小売店がさびれる。 **のこさない【残さない】** ▼残さない(後に遺恨を。一片の骨も。何の痕跡も)。何物も残さず消え去る。出された料理を残さず食べる=山本一。捨て台詞べり一つ残さずにこそこそと立ち去る=中島救。残されていない(時間があまり。喰う以外に道は豊田)。余さない(一滴も。一つも)。余すところがない(説き得て。徹底的に毒舌して萩原朔)。 **のこらず【残らず】** いきさつを残らず打ち明ける。用 <849> # 残らずー277 主張を全面的に認める。提案に全面的に賛成する。旧来の人間関係の秩序を全面的に破壊する!奥泉。仕事から全的な喜びを与えられる=椎名战。持てる才能を全的に発揮する。 **そうすう【総数】**▼総数(参加者の。出席者の。人口の。入場者の)。総数を(数える。調べる)。▼総勢(チームの。敵の。味方の)。 **そうほう【双方】**▼双方が(歩み寄る。肉薄し合う。互いに譲らない。負けず劣らずやりあう)。双方とも負けず劣らずの強情。双方に(自制を求める。受け入れ可能な解決策)。双方の(言い分を聞く。顔が立つ。距離が縮まる。思惑が一致する。主張紙を折半する。主張が膠着にいち状態になる)。 **だれでも【誰でも】**▼誰でも(いい。知っている。一度は経験する)。経験のありなしを問わない。親疎の別なく与える。誰しも(過失に陥る。口にする言葉。想像がつく)。誰にでも(好かれる人間。なついてくる犬。容易に使いこなせる)。誰にでも ある(自惚れは。知的好奇心は)。誰もが(気づく。振り返る美人)。誰もが一度は(通過する青春。夢見る晴れ舞台)。男女の別なく。▼問わず(古参新参を。職業の種類を。聖俗貴賤にせを。他薦自薦を。男女の別を。敵味方を。年齢を。有名無名を。老若男女を。老いと若きとを。組合員非組合員を。上級生下級生を。日本人であると否とを。身分地位の上下を。老若男女貴賤を)。能力のあるなしにかかわらず。▼別なく(上下の。老若の)。 **だれとでも【誰とでも】**▼誰とでも(気安く口を利く。すぐ打ち解ける)。相手かまわず(組みつく。悪口を言う)。相手嫌わず槍ゃりを交える。相手におかまいなく口論する。親疎を問わず。誰彼かまわず殴りかかる。あることないことを誰彼かまわず吹聴ぃふもしてまわる=中上。誰彼かまわずに話しかける。誰彼なく(言葉を交わす。どなり散らす)。酔うと誰彼なくからむ。誰彼の見境なく当たり散らす。誰にでも調子よくつき合う。 **てあたりしだい【手当たり次第】**▼手当たり次第雑誌を読み散らかす。手当たり次第に(乱暴を働く。名前を思い浮かべる。その辺をひっくり返す=高村虎。美女を我が物にする=舟橋)。触目のものを手あたり次第に題材にする!高村光。手に触れるものは何でも手あたり次第に絶すがりつく=本庄。心当たりのところへ手当たり次第に電話をする=井上ひ。当たるを幸い(斬りまくる。敵をなぎ払う)。秩序なく読みあさる。 **てとりあしとり【手取り足取り】**▼手取り足取り面倒を見る。着物の着こなしから客あしらいまで手取り足取り教える藤田。手取り足取りで指導する。 **てんまつ【頭末】**▼連続空き巣から発砲事件に至る一連の派末高村旅。顛末の大略を話す。顛末を詳細にわたって聞く。順序を追って話の顛末を詳細に述べる佐山。事の顛末を(教える。話して聞かせる)。 **ところかまわず【所構わず】**▼所構わず(灰が飛び散る。豪快に放屁する)。寒気が目に見えぬ無数の針を体じゅうところかまわず一時に突き立てる=飯田。ところ構わず大声で部下に声をかける=小林久。所嫌わず(雑草が生い茂る。独り言が口をついて出る=辻炎)。体を所嫌わず踏む。自然が粉雪を所嫌わず叩きつける。吹き出物が所嫌わず出る。 **ないがい【内外】**▼内外からの非難に孤立を深める。内外で(認知される。物議を醸す)。内外の(悪評を受ける。作家を読破する。事情に通じている)。家の内外の物音にびくつく。内外あわせて六百回以上公演される。 **なにからなにまで【何から何まで】**▼何から何まで(まかせっきり。べらべらとしゃべる。仕組まれたようによく出来ている=坂口。知りつくしてしまったような顔をする=瀬戸内。息子のために生きているふうな顔をして世間を早脚で歩く=伊集院)。手を取り足を取りして教える。 **なにもかも**▼何もかも(打ち明ける。うまく行く。終わる)。何もかもが(いっぺんにわかる。うやむやになる。ぶちこわしになる)。何もかもを犠牲にする。どれもこれも(つまらない。ありふれたものばかり)。いうことやること箍たがが外れちまった爺さん=北村。 **なんでも【何でも】**▼何でも(器用にこなす。いいから浮かび上がりたい。思いどおりになる。ござれと書き飛ばす。怖い物知らずでやってのける。早め早めに済ませる。人の言うなりになる)。金のためには何でもやる。出されたものは何でも食べる。当節は何でも銭になるご時世。何が何でも怪しまれないようにする。保身のためなら何でもする。利用できるものは何でも利用する。何でもかんでも(反対する。持っていかれる危険がある)。見るもの聞くもの何でもかんでも腹が立つ。文章の巧拍は問わない。▼問わず(国産外国産を。種類のいかんを)。何なりと(遠慮なく言ってください。お申し付けください。御用命ください)。何にでも(首を突っ込む。反対する)。よろず(承ります。大人びる。自分から世の中を狭めてゆく性分檀)。 **のきなみ【軒並み】**▼軒並み電車が遅れる。喫茶店やレストランが軒並み休み。入社試験に軒並み失敗する。軒並みに小売店がさびれる。 **のこさない【残さない】**▼残さない(後に遺恨を。一片の骨も。何の痕跡も)。何物も残さず消え去る。出された料理を残さず食べる=山本一。捨て台詞べり一つ残さずにこそこそと立ち去る=中島救。残されていない(時間があまり。喰う以外に道は豊田)。余さない(一滴も。一つも)。余すところがない(説き得て。徹底的に毒舌して萩原朔)。 **のこらず【残らず】**▼いきさつを残らず打ち明ける。用の残りなく片づく。一言残らず覚えている。一つ残らず話す。 <850> # の ▼網羅する(東西の名著を。古今の文芸作品を。すべての特徴を)。 **のこらない【残らない】**▼残らない(手もとに。いくらも。何一つ。ぼやけた印象しか)。残っていない(直接の資料が。ご飯粒一つ。昔日の恨みは。全然。ちっとも。何も。半分しか。ほとんど。微塵ふじも。まともな材料が。これっぽっちしか。なんのわだかまりも。めぼしいものは)。元の形をとどめていない。面影をとどめない(往時の。昔日の)。感傷が影をとどめない。苦痛も悪癖も跡をとどめない顔つき=立原。塀が跡もとどめないくらい吹きとぶ=山本周。 **ばんじ【万事】**▼万事(快調に進む。休すと悟る。丸く収まる。好都合にできている。とことん徹底的にやる)。一事が万事この調子。万事に(おいて気が楽。気が回る。つけて便利。才覚がきかない)。一言で万事を察する。万端うまく運ぶ。打ち合わせが万端つく。準備が万端整う。万端にわたって世話をする。葬儀万端を取りしきる。 **ひととおり【一通り】**▼一通り(形が整う。かいつまんで話す。事情を説明する。話を聞き終える。料理を運び終わる)。後始末が一通り終わる。家事を一通り済ませる。使い方を一通り教わる。手紙に一通り目を通す。報告を一通り聴く。一通りの(儀式が終わる。ことを学ぶ。修業をこなす。手当てが済む。練習を積む)。一応の(格好がつく。段階に達する。礼儀を心得る。地位にまで上る)。ひとめぐり見回す。 **ひとわたり【一渡り】**▼一渡り(声をかける。あちこちと本棚を覗のぞいてみる。顔ぶれを見まわす。館内を案内する。部屋の中を見まわす)。もの堅い口調で一渡り話す。 **ほとんど【殆ど】**▼ほとんと(奇跡に近い。気づかない。ゼロに近い。無名に近い。役に立たない。確信に近い気持ち。寝たきりのまま)。淡々としてほとんど感情がこもっていない森境。顔の造作のほとんどが不細工池波。ほとんどの(時間を一緒に過ごす。選者が一致して推す)。生命力のほとんどを消耗する。言葉に余り力がない。おさおさ人に引けは取らない。準備はおさおさ怠りない。話が九分どおり決まる。九分どおりまで出来上がった製品。・ **まんべんなく【満遍なく】**▼釜全体にやんわりした火が満遍なくまわる=山崎。満遍なく(均一にまざる。平均に磨り減る)。下地を満遍なく塗り広げる。まんべんなく均一に立ちこめた霧長野。 **みもこころも【身も心も】**▼身も心も(いたって健康。軽くなる。捧げる。無挙しょうしつくす。疲れる。姿えはてる。楽になる。清浄無垢もくとなる。ぼろぼろになる。満ち足りている。洗い立てられるような浅緑凍るほどの不安と恐怖"宮本虾。とろけさの芽=竹西。凍るほどの不安と恐怖"宮本虾。す素敵な女永倉。とろけるような喜び=本庄。投げだして熱中する遠藤。ボロ屑くずのようになって寒々とした野っ原を前にうなだれる=高橋三)。夢うつつのような恋に身も心もひたりきる=石川。欲望が一気に溢れ出て身も心も打ち砕く渡辺。身も心もない恐ろしさ。心身ともに(鍛えられる。健康。衰弱する。気に満ちる。疲れる)。全身全霊を(あげて愛する。打ち込む。傾ける。かけて打ち込む)。身も魂も(売り払う。奪われる)。 **みんな【皆】**▼みんなが(一度に笑う。とっと笑う。一様に熱中する。心を一つにする。いっぺんに泣きだす。打ち合わせたように黙する。同じ言葉を口にする。てんでに口笛を吹く)。みんなが一斉に(色めき立つ。笑う)。みんなから(尊敬される。総すかんを食う)。みんなで(ぞろぞろと出かける。手分けしてさがす。寄ってたかって侮辱する)。みんなと(楽しく話をする。ゆっくり相談する)。みんなに(幸運を分ける。厄介をかける。可愛がられて育つ。酒をついでまわる)。みんなの(顔がそろう。意見が一致する。気持ちがまとまる。話の輪に入って行けない)。ちょうど皆出払っている。上は将軍から下は一兵卒に至るまで。老いも若きもこぞって。誰彼の区別なく友達。猫も杓子も。皆一様に(恐れる。驚く。感心する)。官民が協力する。自他ともに認めるところ。総がかりで(研究を進める。ビアノを動かす)。多くの人が総がかりで取り組む。朝野を挙げての歓迎。老若男女が心を一つにして喰う。老若男女の幸福そうな賑わい。一同(うち揃ってぞろぞろと歩く。ことごとく震え上がる)。一同が(悦に入る。混乱状態に陥る。テーブルに着く。はたと沈黙する。湧き立つようにざわめく)。一同に(別れを告げる。先んじて突進する)。一同を(席に着かせる。はったと呪にらみつける)。じろりと一同を見回す。芝居っ気たっぷりに一同を呪っめまわす村松。揃いも揃って(初心者ばかり。馬鹿ばかり。うつけ者ばかり)。誰も彼も(幸福になる。しかめ面をする)。誰も彼もが一斉に口走る。万人の(感動を呼ぶ。認める真理。耳目を聳動しいっする。目にさらされる。青春を捩ょり合わせる=檀)。社会に開かれた万人の大学。万人を感動させる傑作。 **りょうほう【両方】**▼両方の(議論は平行線。線を追う。肩を持ち上げる。見方を複合させる)。両方を(混同する。比峻検討する。併用する。結び付ける)。両々(相対峙いたする。相譲らない)。研究と教育が両々相俠もいって進展する。二つの力が両々相俟って大きな力となる。 **れいがいなく【例外なく」**▼少数の例外があるに過ぎない。例外ではあり得ない=源氏。一つとして例外はない。女性社長というと気の強い男勝りのやり手が多いわけでこの社長もご多分に漏れずそんな女だった池井戸。ご多分に洩もれない馬鹿げた話。高橋泊。 <851> がうらうらと靡いた彼の中にまるで爪の痕かと思うほどかすかに白く浮かんでいる=芥川。 **せいせき【成績】** 成績が(一進一退を繰り返す。二勝三敗と負け越す)。学校の成績だけで人間を測ってはならない佐高。成績を鼻にかける。そこそこの成績をかす。成績をとる(ある程度の。人並みの)。好成績を残す。校内で一二を争う成績。成績優秀な優等生。成績が(とび抜けて優秀。上り調子になる)。成績がいい(抜群に。学校の。群を抜いて。ずば抜けて)。クラスで一番の成績を収める。十番以内の成績を維持する。常にトップに近い成績を保持する。トップの成績をとる。成績を上げる(良好な。めきめきと。目覚ましい。社内でトップの)。子供の出来がよい。しっかり者の出来のいい姉。全科目に優がそろう。成績上位者の追い落としを狙う。不成績に(悩む。やきもきする)。最下位という不成績。成績が(面白くない。下がる一方。ぱっとしない。びりになる。悪い。思うように上がらない。尻すぼまりになる)。セールスの成績がじめつく。ずるずると成績を下げる。出来の悪い(学生。ぼんぼん。娘)。 **ぜいにく【贅肉】** 贅肉がなく全身がまるで願もちのよう辺見。贅肉がつく(体に。下腹に)。贅肉を払ったような簡潔な美しさ=山田太。肩や腕に余分な肉がつく。贅肉のような乎和"有吉。贅肉のない(均斉のとれた体つき=五木。引き締まった肉体小林信)。 **つみのこす【積み残す】** ▼積み残す(課題を。荷物を。問題を)。積み残しが出る。積み残しを(なくす。防ぐ)。 **つめあと【爪跡】** 爪跡を(各地に残す。刻む)。爪痕のばら桜になっている腕をさする=徳田。別御盤が野獣にえぐられたような無残な爪痕をとどめてひしゃげる浅川。ピッと爪で引っ掻いたくらいの細い溝尾辻。中天に爪痕のような月がかかっている宮部。月**とりのこされる【取り残される】** ▼取り残される(時代の変化に。世界の大勢に。丸腰で戦地に。うっかりすると時代に。疑心暗鬼の中に。暗闇の中に一人きり。国際的な流れから。茶の間にぽつんと。時世の移り変わりに高田。自分一人が荒涼とした夜の時間の中へ=梶井、めまぐるしい時代から=山崎)。取り残されたようなイラ立たしさ=安岡。自分だけが取り残されたような寂しい気分獅子。一人だけ取り残されているような寂しさに包まれる=佐藤愛。置いてきぼりにされたような寂しさを覚える合村。ほやほやしていると置いてきぼりにされる。置いてきぼりを食う。置いてけぼりを食う。無為の片隅に置き去りにされた淋しさ=武田飛。置き去りにされているような心許ににっない気分=内田康。▼置き去りにされる(安全が。責任が。一人)。置き去りにする(犬を。憂いを。女子供を。書類を。老人夫婦を。家財道具一切を)。 **なごり【名残】** 土間に冬の名残が居座る。にきびの名残がある畑。夜気の名残が冷たく流れこむ。名残の(雲が細く金色に染まっている。日影がやや赤ばんで射している=鈴木三)。空に夏の日の名残の色が消えかける藤沢。梅雨の名残の雨が降りしきる“林京。遥かの山の空はまだ夕焼けの名残の色がほのか川端。恋の名残の甘い感覚が残る"大佛。存在の名残もなく消え失せる。酔の名残を反芻认する。名残をとどめる(記憶の片隅に。濃厚に。青春の。細々と。名家の)。太古の名残のような光景。 **ぬけない【抜けない】** ▼抜けない(悪習慣が。お屠蘇と気分が。学生気分が。風邪が。訛たまりが。抜けそうで。後ろめたい気分が。夜更かしの習性が。いつまでもお嬢様気分が=海堂)。訛りの抜けない言葉を使う。昔の夢が抜けきらない。朝のものうさの抜けきらない表情。幼顔が抜けきらない娘。 **のこす【残す】** 残す(後に問題を。簡単な手紙を。唇に笑いを。後世に悪名を。心に疑問を。将来に禍根を。優れた業績を。後々悔いを。深い傷痕を。斑ぼだに雪を。目に涙の跡を。歴史に名前を。妻子を郷里に。喜びを詩に。煩いを後日に。鮮やかな印象を。色濃く封建制を。数多くの記録を。唇の端に微笑を。交雑して子孫を。心に引っかかりを。言葉がうつろな響きを。純朴な雰囲気を。将来に不安の種を。机の上にメモを。昔のあどけなさを。狩りの様子を旅行記に。素晴らしい作品を後世に。ほとんど箸をつけずに。微笑みの余韻を目元に。生涯を圧縮したような文章を=中野学。夕日が穏やかな暖かさを"石田衣)。残すところあと一年。まだあどけなさを残す顔立ち。後世に残すに足る作品。▼未練を残す(女に。この世に)。捨て台洞を残して(消える。出ていく)。淡い匂いを残してかすめ去る。香りのわずかな渦を残して立ち去る。鐘の音が長い余韻を残して消えてゆく。先の楽しみに残しておく。はっとするような言葉を残して去っていく高愆言。残している(夕闇が青みを。空気がまだ夏の熱気を。心の底に冒険心を=眉村)。残された(最後の機会。時間は少ない。点を検討する。期間が百日を切る)。残された時間を(精一杯生きる。指折り数える)。そっくりそのまま残されている。残される(一級いもの希望が。一縷の望みが。文献が。白紙のままに。手付かずで。一人。ぽつんと。最後のチャンスが。あのころのままに。事件が結局曖得るまま)。▼残されていない(もはや時間が。時間があまり)。食べ残す(食事を。料理を)。▼飲み残す(お茶を。コーヒーを。酒を)。もうやり残したことはない。やり残す(課題を。作業を。仕事を)。余す(一矢を。金を)。余すところあと二日。遺業を引き継ぐ。遺作を(展示する。図書館に寄贈する)。▼置き土産(前任者の。台風の。転任者の。冥土への)。満足げな高笑いを償土産に意気揚々と立ち去る=松浦。▼温存する(記憶を。切り札を。資金を。体力を。古い制度を。兵力を)。▼印す(痕跡を。雪渓に一歩を。第一歩を)。巨歩を印する。 **のこり【残り】** 残りいくばくもない人生。残りが少なくなる。残りの(人生を送る。湯量を示す。酒を一気に飲む。任期が二か月を切る)。ゆうべのカレーの残りを食べる=重松。残んの(月。血をほとばしらせる)。試験官が残り時間を宣言する。残り物には福がある。欠陥を補って余りある長所。余りが(生じる。出る)。・残滓はん(封建的な。旧制度の。苦い思い出の。前の時代の)。残務を(片づける。整理する)。残余の(財産。生)。剰余を(計算する。求める)。 **のこりび【残り火】** 残り火が(くすぶる。燃え上がる)。肉体の芯で快感の余韻が残り火になっている=笹沢。力尽きて敗れた者が命のかすかな残り火を燃やして歩いていく=飯田。老いかけた情熱が残り火のように燃える=松本。埋うずみ火をかき起こす。胸の埋み火をかき立てる。鼻を刺す灰雄いいのにおい。▼燃えさし(薪の。マッチの)。余炎(火事の。風に揺らぐ)。余熾はしが(くすぶる。さめきらない)。目が興奮の余燼できらきらしている=三浦哲。 **のこる【残る】** 残る(頭に痺しびれが。後味の悪さが。依然疑問が。一考の余地が。体に疲れが。香水の匂いが。心の高ぶりが。通帳に記録が。熱戦の余韻が。煩に微笑が。指先に感触が。感触が指先に。眼底に鮮明に。旋律が耳に。名前が記録に。匂いが鼻に。苦みが舌先に。一番最後まで。決死の覚悟で。名が死して。一人ぽつんと。疲労感が重く。後々心配の種が。おさまりの悪い空気が。かすかな痛みが。心の奥に払うずきが。終戦後の混乱が。中途半端な印象が。粘っこい疑念が。吹っ切れない感じが。ほのかな暖かみが。胸に冷たい不安が。胸に納得できないものが。胸の中にしこりが。目のまわりに酔いが。割り切れない感情が。音がいつまでも耳奥に。快感が鮮やかに。疑念が胸の底に。功績が文学史上に。声の響きが耳底に。コンテストの本選に。助手として研究室に。黄昏炊にがわずかに。長く後世の記憶に。ひそやかな話し声が耳の奥に。風景が瞼はょの裏に。やりとりが議事録に面影がありありと。記憶がまざまざと。記憶の中にうっすらと。潜在的な記憶として。組織ががっちりと。たそがれの光が消えやらず。苦々しい気分だけが漠然と。洗われたような浄福が“福永。胸にざらっとした違和感が谷村。姿が眼に貼りついたように原田康)。少女らしさの残るあどけない顔。印象に残る(笑顔が。シーンが)。思いが残る(釈然としない。胸に祈りにも似た)。▼記憶に残る(ありありと。かろうじて)。▼心に残る(エピソードが。無残さが。記憶が強く。ほのかな不満が)。残ったビールを一気に飲み干す。残っている(酒の酔いが。まだ仕事が。しっかり頭に。強く記憶に。泣き声が耳に。ローンがまだ。最後の仕上げが。後ろ姿が目に鮮やかに。記憶の中に鮮烈に。言葉が耳の底に。タンクに燃料が充分に。まざまざと網膜に。迷いの心が多分に。朝霧がほの青く。興奮がさめやらず。まだ半分以上も。耳の奥にさっきまでの喧噪社认が=鈴木光)。残っている力を振り絞る。どこか幼顔の残っている若々しい顔。昔のたたずまいが残っている町。▼明け残る(月が。星が)。環境にうまく適応して生き残る。会社に居残って残業する。学校に居残って勉強する。決勝に勝ち残る。耳許払いに消え残っている話し声。▼消え残る(憂いの影が。雪がまだらに)。空がわずかに暮れ残る。桜の梢に春日が漂い残る。散り残った(藤の匂いがかすかに漂ってくる。葉が一枚風にふるえてさながら戦地に翻る歴戦の旗のように小松太)。裸の木に散り残った葉が風に震える。最後の一葉が散り残る。かろうじて焼け残る。バブルの後遺症から立ち直る。被爆者が後遺症に苦しむ。▼残存する(面影が。資料が。別度が。成分が)。残党が山中へ逃げ込む。不朽の(名作。名声)。古今東西の不朽の典籍。怨念の影が摇曳はいする=源氏。 **ふめつ【不滅】** ▼不滅(永遠に。魂は)。名を不滅にする。不滅の(輝き。業績。名選手)。 **やきつく【焼き付く】** ▼焼きつく(生々しく心に。く人々の脳裏に)。焼きつけられる(表情が心に。の中へ永久に)。目に鮮やかな印象を焼きつける。強く焼きつくような焦慮を覚える=本庄。 **ゆいごん【遺言】** 遺言に従う。遺言を(書き残す。実行に移す。守って生きる)。末期にっの床で遺言する。遣言状を(開封する。書く)。 **よいん【余韻】** 竹の緑のように冴えた余韻竹西。余韻が(後を引く。すっかり失せる)。騒ぎの余韻が雨音に消える。エクスタシーの余韻がたっぷりと残っている笹沢。音楽の余韻が漂っているように空気が生吸かく重たい=福永。余韻に富む結び。たっぷりと余韻に浸る。夢の余韻に苦しむ"吉本。不必要に甘々しく余韻の尾をひいたような音の重なりと交叉に、藤枝。余韻を(耳に響かせる。振り払うように立ち上がる=有吉)。行問の余韻を味わう。勝利の余韻を楽しむ。・余韻を残す(響きが。声が入江の水の上にわーんと広がって=島尾)。余響が(消える。続く。残る)。余情のある俳句。金属的な冷たい残響。残響が漂い残る。鐘の残響が消える。残響を耳の奥底に引く。言葉が胸に残響する。 **わすれがたみ【忘れ形見】** ▼忘れ形見(愛妻の。恋人の。故人の。亡き娘の)。事故死した婚約者の忘れ形見として子供を一人で育てる=貫井。忘れ形見を宿す。遺児を(愛する。引き取る)。遺品の整理に手をつける。父の叩を整理する。形見を分ける。母の形見を仕立て直す。 <852> # のこす【残す】 **のこす【残す】** 残す(後に問題を。簡単な手紙を。唇に笑いを。後世に悪名を。心に疑問を。将来に禍根を。優れた業績を。後々悔いを。深い傷痕を。斑ぼだに雪を。目に涙の跡を。歴史に名前を。妻子を郷里に。喜びを詩に。煩いを後日に。鮮やかな印象を。色濃く封建制を。数多くの記録を。唇の端に微笑を。交雑して子孫を。心に引っかかりを。言葉がうつろな響きを。純朴な雰囲気を。将来に不安の種を。机の上にメモを。昔のあどけなさを。狩りの様子を旅行記に。素晴らしい作品を後世に。ほとんど箸をつけずに。微笑みの余韻を目元に。生涯を圧縮したような文章を=中野学。夕日が穏やかな暖かさを"石田衣)。残すところあと一年。まだあどけなさを残す顔立ち。後世に残すに足る作品。▼未練を残す(女に。この世に)。捨て台洞を残して(消える。出ていく)。淡い匂いを残してかすめ去る。香りのわずかな渦を残して立ち去る。鐘の音が長い余韻を残して消えてゆく。先の楽しみに残しておく。はっとするような言葉を残して去っていく高愆言。残している(夕闇が青みを。空気がまだ夏の熱気を。心の底に冒険心を=眉村)。残された(最後の機会。時間は少ない。点を検討する。期間が百日を切る)。残された時間を(精一杯生きる。指折り数える)。そっくりそのまま残されている。残される(一級いもの希望が。一縷の望みが。文献が。白紙のままに。手付かずで。一人。ぽつんと。最後のチャンスが。あのころのままに。事件が結局曖昧のまま)。▼残されていない(もはや時間が。時間があまり)。食べ残す(食事を。料理を)。▼飲み残す(お茶を。コーヒーを。酒を)。もうやり残したことはない。やり残す(課題を。作業を。仕事を)。余す(一矢を。金を)。余すところあと二日。遺業を引き継ぐ。遺作を(展示する。図書館に寄贈する)。▼置き土産(前任者の。台風の。る=中村貞)。毒を含んだ捨て台詞を残して席を立つ=船山。このままで済むと思うなよ。今度会ったら生かしておかない。いまにほえ面をかくなよ!かんべ。 **せいせき【成績】** 成績が(一進一退を繰り返す。二勝三敗と負け越す)。学校の成績だけで人間を測ってはならない佐高。成績を鼻にかける。そこそこの成績を残す。成績をとる(ある程度の。人並みの)。好成績を残す。校内で一二を争う成績。成績優秀な優等生。成績が(とび抜けて優秀。上り調子になる)。成績がいい(抜群に。学校の。群を抜いて。ずば抜けて)。クラスで一番の成績を収める。十番以内の成績を維持する。常にトップに近い成績を保持する。トップの成る。成績を上げる(良好な。めきめきと。目覚ましい。社内でトップの)。子供の出来がよい。しっかり者の出来のいい姉。全科目に優がそろう。成績上位者の追い落としを狙う。不成績に(悩む。やきもきする)。最下位という不成績。成績が(面白くない。下がる一方。ぱっとしない。びりになる。悪い。思うように上がらない。尻すぼまりになる)。セールスの成績がじめつく。ずるずると成績を下げる。出来の悪い(学生。ぼんぼん。娘)。 **ぜいにく【贅肉】** 贅肉がなく全身がまるで願もちのよう辺見。贅肉がつく(体に。下腹に)。贅肉を払ったような簡潔な美しさ=山田太。肩や腕に余分な肉がつく。贅肉のような乎和"有吉。贅肉のない(均斉のとれた体つき=五木。引き締まった肉体小林信)。 **つみのこす【積み残す】** ▼積み残す(課題を。荷物を。問題を)。積み残しが出る。積み残しを(なくす。防ぐ)。 **つめあと【爪跡】** 爪跡を(各地に残す。刻む)。爪痕のばら桜になっている腕をさする=徳田。別御盤が野獣にえぐられたような無残な爪痕をとどめてひしゃげる浅川。ピッと爪で引っ掻いたくらいの細い溝尾辻。中天に爪痕のような月がかかっている宮部。月がうらうらと靡いた彼の中にまるで爪の痕かと思うほどかすかに白く浮かんでいる=芥川。 **とりのこされる【取り残される】** ▼取り残される(時代の変化に。世界の大勢に。丸腰で戦地に。うっかりすると時代に。疑心暗鬼の中に。暗闇の中に一人きり。国際的な流れから。茶の間にぽつんと。時世の移り変わりに高田。自分一人が荒涼とした夜の時間の中へ=梶井、めまぐるしい時代から=山崎)。取り残されたようなイラ立たしさ=安岡。自分だけが取り残されたような寂しい気分獅子。一人だけ取り残されているような寂しさに包まれる=佐藤愛。置いてきぼりにされたような寂しさを覚える合村。ほやほやしていると置いてきぼりにされる。置いてきぼりを食う。置いてけぼりを食う。無為の片隅に置き去りにされた淋しさ=武田飛。置き去りにされているような心許ににっない気分=内田康。▼置き去りにされる(安全が。責任が。一人)。置き去りにする(犬を。憂いを。女子供を。書類を。老人夫婦を。家財道具一切を)。 **なごり【名残】** 土間に冬の名残が居座る。にきびの名残がある畑。夜気の名残が冷たく流れこむ。名残の(雲が細く金色に染まっている。日影がやや赤ばんで射している=鈴木三)。空に夏の日の名残の色が消えかける藤沢。梅雨の名残の雨が降りしきる“林京。遥かの山の空はまだ夕焼けの名残の色がほのか川端。の名残の甘い感覚が残る"大佛。存在の名残もなく消え失せる。酔の名残を反芻认する。名残をとどめる(記憶の片隅に。濃厚に。青春の。細々と。名家の)。太古の名残のような光景。 **ぬけない【抜けない】** ▼抜けない(悪習慣が。お屠蘇と気分が。学生気分が。風邪が。訛たまりが。抜けそうで。後ろめたい気分が。夜更かしの習性が。いつまでもお嬢様気分が=海堂)。訛りの抜けない言葉を使う。昔の夢が抜けきらない。朝のものうさの抜けきらない表情。幼顔が抜けきらない娘。 <853> # 残る・残す―278 転任者の。冥土への)。満足げな高笑いを償土産に意気揚々と立ち去る=松浦。▼温存する(記憶を。切り札を。資金を。体力を。古い制度を。兵力を)。▼印す(痕跡を。雪渓に一歩を。第一歩を)。巨歩を印する。 **のこり【残り】**▼残りいくばくもない人生。残りが少なくなる。残りの(人生を送る。湯量を示す。酒を一気に飲む。任期が二か月を切る)。ゆうべのカレーの残りを食べる=重松。残んの(月。血をほとばしらせる)。試験官が残り時間を宣言する。残り物には福がある。欠陥を補って余りある長所。余りが(生じる。出る)。・残滓はん(封建的な。旧制度の。苦い思い出の。前の時代の)。残務を(片づける。整理する)。残余の(財産。生)。剩余を(計算する。求める)。 **のこりび【残り火】**▼残り火が(くすぶる。燃え上がる)。肉体の芯で快感の余韻が残り火になっている=笹沢。力尽きて敗れた者が命のかすかな残り火を燃やして歩いていく=飯田。老いかけた情熱が残り火のように燃える=松本。埋うずみ火をかき起こす。胸の埋み火をかき立てる。鼻を刺す灰雄いいのにおい。▼燃えさし(薪の。マッチの)。余炎(火事の。風に揺らぐ)。余熾はしが(くすぶる。さめきらない)。目が興奮の余燼できらきらしている=三浦哲。 **のこる【残る】**▼残る(頭に痺しびれが。後味の悪さが。依然疑問が。一考の余地が。体に疲れが。香水の匂いが。心の高ぶりが。通帳に記録が。熱戦の余韻が。 。熱戦の余韻が。煩に微笑が。指先に感触が。感触が指先に。眼底に鮮明に。旋律が耳に。名前が記録に。匂いが鼻に。苦みが舌先に。一番最後まで。決死の覚悟で。名が死して。一人ぽつんと。疲労感が重く。後々心配の種が。おさまりの悪い空気が。かすかな痛みが。心の奥に払うずきが。終戦後の混乱が。中途半端な印象が。粘っこい疑念が。吹っ切れない感じが。ほのかな暖かみが。胸に冷たい不安が。胸に納得できないものが。胸の中にしこりが。目のまわりに酔いが。割り切れない感情が。音がいつまでも耳奥に。快感が鮮やかに。疑念が胸の底に。功績が文学史上に。声の響きが耳底に。コンテストの本選に。助手として研究室に。黄昏炊にがわずかに。長く後世の記憶に。ひそやかな話し声が耳の奥に。風景が瞼はょの裏に。やりとりが議事録に面影がありありと。記憶がまざまざと。記憶の中にうっすらと。潜在的な記憶として。組織ががっちりと。たそがれの光が消えやらず。苦々しい気分だけが漠然と。洗われたような浄福が“福永。胸にざらっとした違和感が谷村。姿が眼に貼りついたように原田康)。少女らしさの残るあどけない顔。印象に残る(笑顔が。シーンが)。思いが残る(釈然としない。胸に祈りにも似た)。▼記憶に残る(ありありと。かろうじて)。▼心に残る(エピソードが。無残さが。記憶が強く。ほのかな不満が)。残ったビールを一気に飲み干す。残っている(酒の酔いが。まだ仕事が。しっかり頭に。強く記憶に。泣き声が耳に。ローンがまだ。最後の仕上げが。後ろ姿が目に鮮やかに。記憶の中に鮮烈に。言葉が耳の底に。タンクに燃料が充分に。まざまざと網膜に。迷いの心が多分に。朝霧がほの青く。興奮がさめやらず。まだ半分以上も。耳の奥にさっきまでの喧噪社认が=鈴木光)。残っている力を振り絞る。どこか幼顔の残っている若々しい顔。昔のたたずまいが残っている町。▼明け残る(月が。星が)。環境にうまく適応して生き残る。会社に居残って残業する。学校に居残って勉強する。決勝に勝ち残る。耳許払いに消え残っている話し声。▼消え残る(憂いの影が。雪がまだらに)。空がわずかに暮れ残る。桜の梢に春日が漂い残る。散り残った(藤の匂いがかすかに漂ってくる。葉が一枚風にふるえてさながら戦地に翻る歴戦の旗のように小松太)。裸の木に散り残った葉が風に震える。最後の一葉が散り残る。かろうじて焼け残る。バブルの後遺症から立ち直る。被爆者が後遺症に苦しむ。▼残存する(面影が。資料が。別度が。成分が)。残党が山中へ逃げ込む。不朽の(名作。名声)。古今東西の不朽の典籍。怨念の影が摇曳はいする=源氏。 **ふめつ【不滅】**▼不滅(永遠に。魂は)。名を不滅にする。不滅の(輝き。業績。名選手)。 **やきつく【焼き付く】**▼焼きつく(生々しく心に。く人々の脳裏に)。焼きつけられる(表情が心に。の中へ永久に)。目に鮮やかな印象を焼きつける。きつくような焦慮を覚える=本庄。 **ゆいごん【遺言】**▼遺言に従う。遺言を(書き残す。実行に移す。守って生きる)。末期にっの床で遺言する。遣言状を(開封する。書く)。 **よいん【余韻】**▼竹の緑のように冴えた余韻竹西。余韻が(後を引く。すっかり失せる)。騒ぎの余韻が雨音に消える。エクスタシーの余韻がたっぷりと残っている笹沢。音楽の余韻が漂っているように空気が生吸かく重たい=福永。余韻に富む結び。たっぷりと余韻に浸る。夢の余韻に苦しむ"吉本。不必要に甘々しく余韻の尾をひいたような音の重なりと交叉に、藤枝。余韻を(耳に響かせる。振り払うように立ち上がる=有吉)。行問の余韻を味わう。勝利の余韻を楽しむ。・余韻を残す(響きが。声が入江の水の上にわーんと広がって=島尾)。余響が(消える。続く。残る)。余情のある俳句。金属的な冷たい残響。残響が漂い残る。鐘の残響が消える。残響を耳の奥底に引く。言葉が胸に残響する。 **わすれがたみ【忘れ形見】**▼忘れ形見(愛妻の。恋人の。故人の。亡き娘の)。事故死した婚約者の忘れ形見として子供を一人で育てる=貫井。忘れ形見を宿す。遺児を(愛する。引き取る)。遺品の整理に手をつける。父の叩を整理する。形見を分ける。母の形見を仕立て直す。 <854> # 279 望む・期待する **あてこむ【当て込む】**▼当て込む(多額の収入を。観光シーズンを。よそからの客を)。値上げを当て込んで土地を買い占める。 **あわよくば**▼あわよくば(という下心。金儲けわけをと考える。失脚させようという狙い。逃げ出そうという企み。優勝できるかもしれない。自派に引きこむ算段獅子。泊まってくるつもり“大岡)。 **おもわく【思惑】**▼思惑が(透けて見える。的中する。もの見事に外れる)。三者三様の思惑が絡み合う。双方の思惑が一致する。個人の思惑が入りこむ余地はない=高橋克。誘いの中に不穏な思惑が仕込まれている宮本旅。それぞれの思惑で勝手に行動する。思惑と願望が入り乱れる。相手の思惑を懼州ばって躊躇ちいい、うする久米。他人の思惑を気にしないで自分の生き方を貫く。阿刀田。必要以上に周囲の思惑を気にする"高樹。様々な思惑が(渦巻く。様々に絡み合っているのが政治の常有川)。思惑通りに事が進む。 **きたい【期待】**▼期待が(重荷になる。現実になる。さらに高まる。胸をくすぐる。心の片隅に浮かぶ。胸いっぱいに膨らむ。にわかに増殖しはじめる!倉橋)。将来に期待が持てる。ほのぼの期待が湧いてくる。心の中が期待でおののく。期待で胸が(躍る。膨らむ。震える)。期待と(恐れがないまじった緊張。危惧を併せ持つ。不安の入り混じった表情。緊張感が低い唸りのようなざわめきとなって会場全体をおしつつむ三田)。期待というものはいつも不安に満ちたもの安岡。期待に(声が震える。心が弾む。十分応える。弾む声。一える思い。満ちた声。胸を膨らませる)。表情が期待に彩られる。不安がおぼろげな期待に変わる。少女のように期待に声をはずませる=新田。胸がいつもふくらんでいるような期待に満ちた日々を送る=石坂。限を快楽の期待にうるませる=真継。期待に胸が(躍る。ときめく)。期待の眼差しを向ける。顔に期待の色がみなぎる。目に期待の色が宿る。期待の色が浮かぶ(表情に。頬に)。期待を(胸にいだく。寄せる)。一縷いちの期待をかける。未来に期待を持つ。邪いな期待を抱く。夜は時として黒い懐の中に明日の期待を秘める=阿刀田。期待する(いい結果を。親の援助を。寛大な裁きを。賞賛の言葉を。続稿を。温かい言い方を。偶然のめぐりあわせを。内心少しばかり)。期待するところ大。期待感が(募る。にじみ出る。ひしひしと押し寄せてくる)。取らぬ狸の皮算用。儲もうけの皮算用をする。行く手に光明を望む。心当てにして知らせを待つ。半信半疑ながら心当てにする=木山。事あれかしと(待つ。八方に目を配っている週刊誌『戸板)。若手のホーブ。将来は社のホーブと目される。何かを期待させる足音。さんざん期待を持たせて引きずり回す池田。気を持たせるような言い方。 **きたいされる【期待される】**▼期待される(一層の活躍が。救世主として)。人々の期待が集まる。期待の声が寄せられる。期待を一身に負う。背負う。衆望を一身に(集める。担う)。将来を嘱望されている青年。▼嘱望される(将来の大成を。前途を)。将来を嘱目される。▼待たれる(完成が。実用化が。出現が。春が)。将来を有望視される。 **きたいできない【期待できない】**▼期待できない(歩み寄りが。あまり多くは。一面の同情も。獲物があまり。ほとんど)。端はなから返事など期待してはいない。期待するだけ無駄。今後の見越しが立たない。見込みが薄い。どうにも返済の見込みが立たない。治る見込みが全くない。▼見込みがない(先行きに。回復する。出世の。将来の。百に一つも。復旧の)。助かる見込みは万に一つもない。 **きたいできる【期待できる】**▼期待できる(好結果が。相乗効果が。相当な効果が。画期的な成果が)。この分なら期待が持てる。顔が期待の色で明るくなる。助かる望みがある。▼望める(進展が。展開が)。▼見込まれる(成長が。増収が。農漁が)。見込みが(立つ。つく)。勝つ見込みがある。見どころがある。まだ脈がある。 **きぼう 【希望】**▼ふるさとにあこがれるように堪えがたい希石川。希望が(心にきざす。前途に郁く。胸に兆す。ほどなく達せられる。絶望に取って代わる=鈴木四。一たまりもなく雲夢のように吹き飛ばされる"岡本。皮膚を一面に熱くする大江)。新たな希望が湧く。かすかな希望がめばえかける。前途に希望が見える。漠然たる希望が胸に生じる。二人の希望が一致する。灼ゃけるような希望がただれるように苦しい=本庄。希望と不安が入り交じる。顔に希望と恐怖の色が交互に浮かぶ高見浩。希望なき零落の海から希望なき安心の島へと漂着する=国木田。希望に(添うような返事。燃えて新技術に取り組む)。声が希望に高まる。目が希望に輝く。希望に胸を(躍らせる。膨らませる)。希望の(灯をともす。念が胸にみなぎる。灯が光度を増し始める。光が瞳をきらめかせる。種が心に一粒まかれる=石森)。明るい希望の余韻。新たな希望の火が見える。表情に希望の色が射す。唯一の希望の星。眼に陽炎のような希望の色が燃える=福永。どれほど儚雄がい希望の楼閣といえども強い言葉と声に支えられれば砂上に建たぬものでもない奥泉。希望を(遂した欲はぁびに溢れる=山本周。与えてくれるかのような温かい湯が胸のうちに広がっていく笹沢)。最後まで希望を失わない。将来に希望をつなぐ。はかない希望を抱く。大空へ息を吐くように希望を持つ佐多。充分に希望を託し得る未来。坂口。本人の希望を入れる。 <855> # 望む・期待する-279 無視する)。円満な解決を希望する。自ら希望して参加する。ほんのり明かりがともる思い。闇に包まれた前途に一点の灯を見たような気持ちを覚える萩原菜。胸奥に明かりを並べる。眼の前の厚い壁が急に取り払われて空が明るくなったような気がする=石川。真っ暗な過去のドアがかすかにきしんで最初の曙光しいが射しこんでくる=宇野利。前途に明るい光がさす=石坂。一すじの華やいだ光がどこからともなく射し込んできた思い=井上靖。一条の光のようなものを感じる世永井路。前途に光を発見した思い=柴田錬。我も我もと希望者が殺到する。希望的親測を口にする。希通りに決まる。光明が未来に一入い於照りまさる=山田労。氷の牢獄の中で光明を待つような気持ち新田。前途に光明を見いだす。暗闇の中にかすかな光明を見た思い=西木。暗黒な前途を照らす光明のよう森殿。わずかな希望を見いだす。一縷ひもの希望が(残される。湧く)。一縷の希望に人生を賭ける。一縷の希望を(失わない。つなぐ)。 **しょうらいせい 【将来性】**▼将来性に着目する。将来性のある(確実な職業につく。優秀なつぼみに着目する=石坂)。将来性を買う。前途多望な若者。見どころのある(人物。俳優。立派な若者と見受ける=福永)。有為多望な青年。 **ぜひとも【是非とも】**▼ぜひとも(手に入れたい。話を聞きたい。協力してほしい。心得ていて欲しい。成功してもらわねばならない)。ぜひ(譲ってほしい。行ってみたいと言い張る。お目にかかりたい。忘れないで頂きたい)。ぜひにと頼まれる。たってお目にかかりたい。たっての願い。是が非でも(逢いたくてたまらない。勝たなければならない。勝利へ持って行く。説き伏せてしまおっと焦る。わからせてやる必要がある三島)。是が非でもと頼まれる。 **ださん【打算】**▼打算が心の底にある。やましい打算が打算がからまる=瀬戸内。孤独な老人の哀れな打算が働く椎名。矢のようにきらめきながら打算が走る"加賀。打算に(満ちた社会。いそがしい小ざかしい心"円地)。目前の打算に負ける。打算の(気持ちが働く。感覚のきわめて鋭敏な持ち主"司馬。ひとかけらをうちくだく瀬戸内)。あながち打算のためばかりではない=大岡。打算を夫婦生活の間に持ち込む犬岡。打算的で見栄坊な人物。打算抜きで行動する。計算ずくで物事を行う。計算ずくの発言。算用高い人。銭勘定しか頭にない。算盤すくで動く。算盤すくの暮らしが身につく。算盤高い人。胸のうちで算盤に心をせわしなくはじく柴田翔。勘定高い(男。女。商人)。勘定高くて始末に負えない。欲得すくで(結婚する。引き受ける)。欲得ずくの政略結婚。 **のぞみ【望み】**▼望みが(あっけなく消える。ことごとく成就する)。生きる望みが湧く。年来の望みが果たされる。若い日の望みが返ってくる。父親の望みと正反対の方向に生きる=篠田。本人の望みに任せる。夢が確固たる望みに転じる。夢を望みに変えて進む=宮本噸。望みの(額を払う。綱を託す)。まだ望みはなきにしも非ず。手術に望みを持つ。前途に望みを託す。たっての望みを断りきれない。あるいはという一縷いもの望みを抱く=久米。寝ても起きても祈りのように一つの望みを胸の奥深く大事にかき抱く有局。望みをかける(お家再興に。一縷の)。▼望みをつなぐ(将来に。一級の)。一縷の望みが絶たれる。一縷の望みを(捨てきれない。託す。・持つ)。宿望(多年の。年来の)。 **のぞむ【望む】**▼望む(新しい世界を。眼下に川筋を。現状維持を。故郷の空を。天の一角を。貿易の利を。優雅な生活を。山を遥かに。心の底から。一身の栄耀栄華ごうを。首相に清潔な人物を。遠く生まれ故郷を。物質的な豊かさを。娘の婿に部下を。血気の若者が遠く風雲を多岐川。春霞に煙る山々を"白洲)。そこまで望むのはもとより図々しい話"井上ひ。かねてから望んでいた仕事。望みうる最高の水準。待ち望む(万一の僥倖いを。子どものように騒いで志茂田)。高望みをする。▼熱望する(革命を。自由を。平和を)。志望する(学者を。芸術家を。公務員を。裁判官を。作家を)。第一志望の高校に合格する。たっての所望の品。▼所望する(歌を。お代わりを。勝負を。娘を。料理を)。要望に応える。個別の要望に応じる。患者の要望に誠意をもって対応する=海堂。協力を要望する。 **のぞめない【望めない】**▼望めない(大して出世は。もはや今生での再会は)。これ以上は望めないほど贅沢三味純心に明け暮れる"里見。先行きの希望がない。とても希望など持てない状況!泉俊。希望のなさ に打ちのめされる。希望のない(愛。恋)。▼望み(決して叶えられることのない。万に一つのはかない)。が(薄い。消える。絶える。潰っぃえる。遠のく。容易に達せられない)。出世の望みがほとんどない。もはや望みがない。日一日と望みから遠のく。望みのない恋。世に出る望みはない。▼望むべくもない(往年の勢いは。もとより。とても援助など)。望むべくもない希望。 **ぼうがい 【望外】**▼崇外の(運をつかむ。幸せ。成果。喜び)。もとより築外とするところ。思いのほか交渉がたやすく進む。具合は思いのいい。思いも寄らない収入。 **ほんもう【本望】**▼一緒に死ねるなら本望。定めて本望に相違はあるまい。本望を(達する。遂げる)。本懐(女の。男子の)。敵討ちの本懐を遂げる。首尾よく本懐を遂する。 **ゆうぼう【有望】**▼有望な買い手が見つかる。将来有望なホープ。前途有望な事業。有望選手が大勢いる。 <856> # 20 罵る・嘲笑う **あっこうぞうこん【悪口雑言】**▼耳もつぶれそうな声をかぎりの悪口雑言・田辺。悪口雑言に免疫がある。悪口雑言を(浴びせる。投げつける。吐く)。迂閥、つかに他人の悪口雑言を口にすべきではない!高杉。 **あてつける【当て付ける】**▼嫌味たっぷりに当てつける。当てつけられたのが瘕しょにさわる。新婚さんに当てつけられる。あからさまな当てつけ。口ぶりに当てつけが含まれている=山本周。当てつけに大きな咳せきをする。当てこすり(毒々しい。根も葉もない)。当てこすりが毒を増す。当てつけがましく(言う。振る舞う)。面当てがましいやり方。面当てがましくつらくあたる。而当てに皮肉を言う。半ば面当てにしくしく泣いて見せる=鈴木三。 **あくたいをつく【悪態をつく】**▼悪態をつく(ありったけの。大声で。小声で。際限もなく。ちきしょうと。胸の内で)。ありたけの悪態をついてののしる萩原爽。ありったけの悪態をついて罵る。悪態のつき放題。 **あざける【嘲る】**▼嘲る(原病を。下手くそさを。無知蒙味もいを。耄碌けぶりを。因循法儒、以北総んと。口汚く。鼻先で。他愛もない空想を。なまなかな分別を)。嘲りの(声をあげる。目で見る)。いい気味だと溜飲を下げる。それ見たことかと言わんばかりに言う。鼻を鳴らす(棚恊きるように。ふんと馬鹿にしたように五木)。嘲りが笛のように唇から逆皿にる=野上。自ら嘲るように目から口へかけて冷たい笑いが動く長塚。あざけるような薄笑いを浮かべる=城山。嘲るような驕慢うな表情=吉行。嘲るようににやにや笑う芥川。内心ざまあ見ろと思う。さまを見るがいい。 **あざわらう【嘲笑う】**▼あざ笑う(臆病さを。愚かさを。心の乱れを。趣味のなさを。鈍重さを。鼻先で荒々しく)。思いの切実さを嘲笑うようにしてするすると言葉が先滑りしてしまう荻野。顔で微笑みながら脛すねで嘲笑坊ぶっているすれっからしの女の両足川端。人を馬鹿にしたような薄笑い藤枝。物事すべてを小馬鹿にするような笑い!筒井。揶揄ゃゅするような笑い方。猫が鼠砂ずを捕る前みたいにもてあそぶような笑いを口元に浮かべる=長崎。嘲弄の笑いを見せる。馬鹿にして鼻であしらう。▼鼻で笑う(海賊のように片目を閉じたまま=宮部。馬鹿にしたように長崎)。ふふんと鼻の先で笑う。▼憫笑い认しする(世間知らずを。偏頗的んさを)。腹の底で冷醐する。冷嘲熱鷹をたくましくする。▼せせら笑う(唇をゆがめて。腹の中で。ふんと鼻先で。鼻の先で生意気そうに八谷崎)。 **あなどる【侮る】**▼侮る(夫を。金銭を。国民を。小国を。政府を。小勢と見て)。人々の侮りを買う。侮るような眼差しを投げる三島。ふんと侮るような冷笑をうかべる=山手。▼なみする(神の力を。恋を。神仏を)。軽侮がこもった呼びかけ。怪係の表情を露骨に示す。目に軽侮の色が動く=山手。軽侮の念を(あらわにする。むき出しにする)。軽侮の眼差しを(射つける。投げる)。女性の勘は侮れない。侮りがたい(効果を生む。人物)。勢いにあなどるべからざるものがある=山手。一寸の虫にも五分の魂。 **いやみ【嫌味】**▼嫌み以外の何物でもない。嫌みが大して気にならない。嫌味ともとられかねない言葉。いや味な通人気どりの男。ジロリと厭味ひゃな視線をなげかける谷崎。嫌みの一つも言いたくなる。いや味を一向に意に介さない=阿久。言わずもがなの嫌みを付け加える。散々嫌みを言われる。挨拶がわりに厭味を放つ=井上ひ。嫌みを言う(遠回しに。ちくちくと。ねっとりと。聞こえよがしに)。嫌みたっぷりな言葉。嫌味ったらしい馬鹿丁寧な挨拶。 **かげぐち【陰口】**▼陰口が(ささやかれる。耳に入る。回り回って本人の耳に入る)。▼陰目を言われる(こっそり。万年番頭と)。陰に回って悪口を言う。後ろ指をさして笑う。陰で後ろ指をさされる。 **からかう**▼からかう(女を野卑な言葉で。言葉尻をとらえて。卑猥な言葉を交えて。猫がひょいと手を出すように女を"林良)。大人をからかうもんじゃない。からかうには持ってこいの存在。人をからかうにも程がある。からかい気味に(言う。笑う)。からかいの言葉を浴びせる。軽いからかいの口調。からかい半分に(噂する。尋ねる)。相手の意気込みをからかうようにいなす黒井。相手をからかうように肩をすぼめる遠藤。からかうように相手の目をのぞき込む=村松。からかうような(甲高い声。薄笑いを浮かべる)。おちょくる(政治家を。人を。わざと的を外して)。妹をかきう。はやすような笑い声。嘲弄の的になる。鼠袖ずに対する猫の嘲弄のような陰湿な成嚇"松浦。嘲弄的な笑いを漏らす。嘲弄的に誇張して言う。猫が鼠をなぶる。小娘になぶられているような不快感常小林久。揶揄々の(底意ある。皮肉めいた)。揶揄する口調で尋ねる。揶揄に満ちた文章。揶揄の(声を背に浴びる。言葉を投げつける)。揶揄を含んだ話し方。赤面するような揶揄を聞かされる=佐藤森。▼揶揄する(臆病を。失策を。意地悪く)。社内で「金食い虫」と揶揄される三浦し。揶揄するような(薄笑い。眼差し)。殊更に揶揄するような文句徳永。視線にかすかに揶揄するような色合いが混じる=宮部。 **かろんじる【軽んじる】**▼軽んじる(教えを。神を。政策論争を。法律を)。命を軽んじる社会人命を怪く見る。怪んじるような目つきで見る『福水。軽視する(安全を。地味な作業を。生命を)。軽視される(不当に。ことさら)。 **けいべつ【軽淺】**▼軽蔑の(色を目に浮かべる。態度を露骨にあらわす。視線が執念深い鏃20℃を無数に突き刺す武田泰。 <857> # 罵る・嘲笑う―280 念が一時に心を凍らす徳田)。顔に怪淡の薄笑いが広がる。口調に軽蔑の響きがこもっている。呆ぁきれはてたような軽蔑の眼つき=太宰。眉と口のあたりにむごたらしい軽度の影がまざまざと浮かび上がる=有島。怪蔑を(心に蔵する。根に持つ。甘んじて受ける。黙って忍ぶ法はない)。半ば軽蔑を込めた言葉。皮肉な瞳に軽蔑を混ぜ合わせる=泉優。軽蔑する(腹の底から。さもしい心持ちを、俗臭芬々ぶんたる人を=中野孝。吐き気がするほど=壺井。虫酸化しが走るほど=藤原)。唾でも吐きかけてやりたくなる!鷺沢。さも軽蔑したように言う。にやにや怪及したように笑う横光。▼卑しむ(妥協を。不見伝ひげを)。卑しむように言い捨てる。「卑しめる(見下して。これでもかこれでもかと)。見下げ果てた卑劣な奴。見下げられたという感情が勃然と起こり、つい符号のような返事をする=島尾。▼見下げる(他人を。弱々しい態度を)。唾棄すべき人殺し。気取りや虚無主義は唾棄すべきものに映る=高橋和。最下等の唾棄すべき存在"大佛。 **けなす【貶す」**▼けなす(味を。他人を。日本を。くそみそに。ぼろくそに)。古いぶを担ぎ出して今を貶けなす=中局彩。一言の下に貶し去る菊池。▼腐す(人を。嫁振りを)。▼こきおろす(落ちざまを。警察の横暴を。作家を。仕ぐさを)。そしられる(親馬鹿と。財産目当ての結婚と)。無責任な母親を誹謗辺にする。 **さげすむ【蔑む】**▼さげすむ(図々しさを。手ひどい言葉で)。汚いものでも見るように蔑みが露ぁらわになる=船山。冷たい淡みの目を走らせる。淡むような目で見やる=宮本郎。さげすむように笑う。蔑むように舌打ちする=遠藤。▼おとしめる(中傷で死者を。対抗するグループを。必要以上に自分を)。 **ざんげん【讒言】**▼讒言に(遭う。よって失脚する)。設言を信じる。あらぬ讒言をする。事実を曲げて悪く言う。・歳臣に肌が世にはびこる。口を極めて譲誣ぶんする。▼誣告にする(警察に。幕府に)。誣告を疑う。 **しうち【仕打ち」**▼あまりにも心ない仕打ち。白洲。子供の時分に受けた仕打ちが心にうみただれる=徳田。ムシ歯の神経にじかにさわられるように不当な仕打ちが全身にこたえる=小林多。むこい仕打ちで終わる。姑しゅぅの仕打ちに泣く。不当な仕打ちに対する怒りが燃える。乱暴な仕打ちに驚く。冷たい仕打ちを意に介さない。▼仕打ちを受ける(散々な。ひどい)。 **じちょう【自嘲】**▼苦い自嘲が怒りのなかに混じる=小林久。自嘲に頬を歪ゅがめる。悲しみを自嘲に紛らす。自嘲の(笑みを漏らす。言葉が唇から漏れる)。言い捨てるような口調に焦燥と自嘲の影がある藤枝。なにげない物言いや仕草の中に投げ遣りな自嘲の匂いを嗅ぎ分ける落合。多少の自閉を含んだため息落合。自らを罵いのり閉防ぎる。自嘲気味に(言う。笑う)。半ば自閉めいた口調で言う。 **ちゃかす【茶化す】**▼茶化す(厳粛な一瞬を。心の傷を。政治を。訛なまりを。人の話を)。えらい御挨拶だ▼茶にする(現実を。世を)。▼まぜっ返す(人の話を。駄洒落が北で)。まぜっ返すように笑い出す。 **ちゅうしょう【中傷】**▼中傷の(手紙を書く。目的で流したデマ)。いわれのない中傷を身に被る。中傷する(人格を。人を)。中傷記事を書く。中傷文の一節が胸に毒針のように突き刺さる"高橋和。ためにする誹謗辺に中傷。文面が誹誘中傷で埋め尽くされる=横山。 **ちょうしょう【嘲笑】**▼人の心を冷え冷えとさせるような嘲笑!多岐川。嘲笑がひときわ大きくなる。目に明らかな嘲笑が現れる。氷のような嘲笑が唇をかすめる=加賀。歪がんだ嘲笑が刻みつけられでもしたように動かない=山本周。▼嘲笑が浮かぶ(唇に。口もとに)。嘲笑かと思われるほど歪んだ笑い=中村真。野卑な揶揄ゃ”と嘲笑とに満ちた文章・藤枝。嘲笑に値する人間、嘲笑の的になる。嘲笑を(根に持つ。無遠慮に浴びせかける。真正面から受け止める。まともに浴びる)。かすかな嘲笑を含んだ目つきで見る。唇に暗い嘲笑を浮かべる。辛辣な嘲笑を浴びせる。目の色が嘲笑をふくんでいる。皮肉な嘲笑を甘んじて受ける=九鬼。嘲笑する(卑しさを。臆病を。気取りを。愚劣さを。無意味さを。ばかばかしさを。捕虜となった様子を)。嗤笑し礼の声。嗤笑を買う。 **どくぜつ【毒舌】**▼毒舌が玉に瑕〝ずだが何しろ美人なので男性隊員に人気があるり有川。山葵ときや山椒礼しのような毒舌や諧謔砂いぎ=円地。毒舌を吐く。巧妙な毒舌を縦横にふるう。辛辣な皮肉を浴びせて毒舌する萩原明。 **どくづく【毒づく】**▼毒づく(いやがらせを。憎々しげに。心の中で。胸のうちで。腹立ちまぎれに。腹に据えかねたように井伏)。ひとまずは腹の中で毒づくにとどめる=有川。開くにたえない毒口を浴びせかける=里見。愛情の裏返しの悪たれ口。悪たれ口を(言う。叩く。つく)。 **なぶりもの【嬲り者】**▼なぶり者にされる(人前で。兵士の)。▼なぶり者にする(娘を。さんさん)。やくざのなぶり者になる。女性を玩具のようにもてあそぶ!丹羽。男が女性を玩弄する。女を慰み者にする。男たちの慰み者になる。見も知らない人様の慰み物になる=川端。 **ののしり【罵り】**▼罵りが心の底深く突き刺さる三浦紗。罵りの声を上げる。長々と罵りの言葉を吐く。罵りの言葉を(浴びせかける。つぶやく)。 **ののしる【罵る】**▼罵る(卑しい根性を。悪しさまに。くそみそに。青筋を立てて。恩知らずと。口汚く。口を極めて。人でなしと。卑劣なやり口を。無責任な提案を。怒りを露わにして。恐ろしい剣幕で。怨嗟んを込めて姑し100を"有吉。侍の風上にも置けぬ犬畜生と"村上元。 <858> # の 不俱戴天心ではの仇紗たででもあるように※に=江戸川)。ののしる(ツバを吐かんばかりに開高。開くに耐えない言葉で=黒岩)。言葉で罵る(侮辱的な。荒い)。▼罵られる(不当に。売国奴と)。犬に食われて死んでしまえ=井上ひ。くそでも食らえ吉川。豆腐の角に頭をぶつけて死んじまえ落語。どこに目がついているんだ=古井。罵るように口走る。激しい言葉で罵り返す。▼罵り騒ぐ(口々に。大勢で)。罵り騒ぐ声がひとしきり聞こえる。悪しざまに(言う。告げ口をする)。技術の未熟を嘲罵される。湖麗の的になる。赤いとも黒いともつかない嘲罵の笑い声=開高。他人の愚を痛隠する。罵言が(飛び交う。口をついて出る)。鉄火の罵醤ばに遭う中島敦。無遠慮に罵詈を浴びせかける。思いつく限りの罵冒険が洪水のように頭の中を流れて行く=飯田。あらゆる罵詈謡誘を書きつらねる今束。矢継ぎ早に麗冒讒謗を浴びせる芥川。罵詈雑言で(聞くに堪えないような。ありとあらゆる口から出まかせの大庭)。罵詈雑言の限りを尽くす。ありったけの罵詈雑言を浴びせる。怒り狂い罵言雑言をまき散らす=原田派。牛馬を駆るように罵詈雑言を吐きかける=阿刀田。漫罵を(吐き散らす。甘んじて受ける)。聞くに堪えぬ悪罵。悪隅の(限りを尽くす。言葉を吐く)。悪粥を浴びせる。ありとあらゆる悪隅を投げ合う。ぼろくそに(どなられる。負ける)。人前でボロクソにいわれ自殺したいくらい恥ずかしい=源氏。 **ばかにする【馬鹿にする】**▼肌抜けさを馬鹿にする。・馬鹿にしてかかる(頭から。端はなから)。人を馬鹿にした(話。やり口)。相手を信用しない。馬鹿にしたような(口ぶり。返事。目つき)。いかにもばかにしたような断り方=有局。人を馬鹿にしたような(顔つき。態度)。なめた(口を利く。態度をとる。真似まねをする)。人をなめた卑怯いいな振る舞い木山。ふざけたことを言う。台詞を並べる。真似をする)。人を愚弄するにも限度がある=山本周。▼愚弄する(国民を。主人を。寄ってたかって)。あっさりこけにされる。スポンサーをこけにする。人間をこけにする笑い。小馬鹿にする(客を。生徒を。選手を)。小馬鹿にされたような物悲しさ=壺井。相手に小馬鹿にされる。ひとを小馬鹿にしたような猫撫で声ですり寄って来る福永。人を小馬鹿にしたような(うすら笑い。口調。賢女ぶった顔。目)。人を子供だと思ってばかにするな"住井。馬鹿にするなといったような半分怒った語調"井上ひ。しまいには馬鹿にするなと怒り出す古井。馬鹿にすると承知しない。人を馬鹿にするにもほどがある。冗談はやめてもらいたい。冗談を言うのもほどほどにしてくれ。木山。ふざけるのも(大概にしろ。いい加減にしろ)。 **はじをかかせる【恥をかかせる】**▼年寄りに恥をかかせるものじゃない!高崎。衆人環視の中で上級者が下級者を殴る。騙かたり者の面の皮をひんむく=井上域。顔に泥を塗る(親の。亭主の)。旦那の顔に泥を塗るような真似まぁをする高橋兄。 **ばせい【罵声】**▼罵声が鼓膜を叩く。苛立松もった罵声が降りかかる。興奮した罵声が乱れ飛ぶ。罵声を平然と受け止める。勢いよく魔声を浴びせかける。顔じゅうを口にして罵声を放つ=獅子。激しい思いのり声が上がる。口々に罵り声を上げる。 **ばとう【罵倒】**▼口汚い罵倒の言葉が続く。心の中で嵐のような感倒を続ける筒井。口汚く罵倒する。▼罵倒する(未熟さを。無能力を。ぼろくそに。口を極めて。激しい口調で。酒の勢いを借りて=松本)。 **ひにく【皮肉】**▼皮肉(立ち直れなくなるほどの痛烈な小池。うっかりすると聞き流すほどに何気ない口調の=有川。人の肺腑結ぃをえぐるような新田)。皮肉が相手に通じない。言葉に皮肉が込められる。痛烈な悪隅を皮肉でつつむ"司馬。皮肉な(口ぶりで言う。結果を生む。目で眺める。笑いを頬に刻む)。顔に皮肉な笑いが漂っている。口元に皮肉な笑みが浮かぶ。言葉に皮肉な響きが含まれる。自嘲を含めた皮肉な語調。皮肉といえば皮肉な話。目に皮肉な光が走る。露骨に皮肉な調子で言う。反語で皮肉に応酬をする。問いが期せずして皮肉になる=獅子。皮肉の(スパイスが効く“大原。一つも浴びせてやりたい三好後)。皮肉を越えた言葉の暴力!白井。いくぶん皮肉を交えて書く。ずいぶん皮肉を言われる。考えうる限り最大級の皮肉を投げる=有川。やんわり皮肉をつけ加える!向田。皮肉を言う(ちくちくと。ちくりと。ねちねちと。柔らかい)。皮肉を込めて言う(思いきり。多少の)。皮肉たっぷりな口調。皮肉たっぷりに(つぶやく。話す)。皮肉っぽい(目で笑う。笑いを浮かべる)。頬に皮肉っぽい笑みが浮かぶ。皮肉交じりの言葉。皮肉めいた口調で言う。皮肉る(現状を。幸運を。地位を)。シニカルな懐疑の鬼"中村真。他人の善意をシニカルに見る。知的俗物をシニカルに眺める。世相を諷ょうした漫画。何て嫌みな笑い方。 **ひやかす【冷やかす】**▼冷やかす(奥さんを。叔父さんを。現実を。夜店を)。軽薄な処世に対する冷やかし。にぎやかな冷やかしが飛んでくる。冷やかしの(客。口笛が鳴る)。ぞろぞろとひやかしの人々が通る=田山。冷やかし半分に(言う。書く)。冷やかすように(訊く。笑う)。 **ふうし【風刺】**▼風刺を多分に含む文章。骨を刺すような諷刺は、有局。風刺する(愚かさを。官吏を。現代社会を。現代人を。世相を。俗物性を。偏見を。軽妙に。ユーモラスに。鋭く。インテリぶりを)。脳ふうする(現在の政争を。時局を)。▼戯画化する(人格を。立場を。思想の外来性を"加藤)。 **ぶじょく【侮辱】**▼侮辱(かつて受けたことのないよぶじょく【侮辱】かつて受けたことのないよ <859> # 罵る・嘲笑う―280 うな壺井。この世に二つとあるまじき=菊池)。捉えどころのない侮辱が脳裡ぅに翳ょげる=本庄。侮辱に(耐える。打ちひしがれる。小気味よく報いる)。これ以上の侮辱には耐えられない。一旦受けた侮辱は容易に消えがたい森町。この上ない侮辱を与える。忍びがたい侮辱を浴びせられる。耐えがたき侮辱を忍ぶ。露骨な侮辱を浴びせる。暗い侮辱を受けたような光が眼に浮かぶ!言行。▼侮辱する(大人を。国家を。敵を。遊び半分に。みんながよってたかって)。 **ぶべつ【侮蔑】** 憧憬と侮蔑が入り交じる。言動の端々に毎度がはっきりと読みとれる"大庭。侮蔑に満ちた目つき。侮蔑の(言準を吐きかける。笑い声が針のように刺す遠藤)。淫猥かいな侮蔑の言葉を投げる。顔に侮蔑の色が浮かぶ。声に侮蔑の念が込められる。仮蔑する(夫を。自国を)。侮蔑的な一瞥心を浴びせる。 **みくだす【見下す】** 『見下す(一歩下に。軽淡的に。冷然と。売れてないタレントを。ばかにしたように。さも莫迦ばかにしたように芥川)。見下した言いぐさ。上から目線。子供の使いをあしらうように対応される=伊坂。他人を自分より下に見る=貫井。他人を見下すような態度。▼見る(一段下に。目八分に)。 **みくびる【見縊る】** ▼見くびる(腕を。頭から。甘く。子供と)。あまり甘く見ると時に手酷にぃいしっぺ返しをくう森環。思ってなめてかかる(女と。日本人だと)。世の中をなめてかかる。なめてかかるとえらいめに遭う。▼高をくくる(そのうち止まるだろうと。まさかそんなことはあるまいと)。狡ずるく高を括くくる思い上がり円地。 **みっこく【密告】** ▼密告する(共犯者を。仲円を。警察に)。密告者に成り下がる。密告者の烙印を押す。▶言いつける(悪口を。先生に)。垂れ込みを装ったいたずら佐伯。垂れ込む(官意に。警察に)。告げ口する(悪しざまに。教官に。警察に。あることないこと。こちょこちょと)。 **めんば【面罵】** ▼面罵する(裏切りを。衆人の前で。人をからかうのもいい加減にしろと三好徹)。面罵しあうほどの殺伐な雰囲気"高橋和。面と向かって罵る。 **もてあそばれる【弄ばれる】** ▼もてあそばれる(感情を。婚前に体を。運命に。木の葉が風に。時代の波に。船が大波に。男たちの意のままに)。女に弄ばれる。鼻毛を読まれる。うまうま傾城妙心にもてあそばれてうれしがる=坂口。男の巧妙な翻弄に女体をゆだねる柴田剣。広い道場を燕のはのごとく縦横に飛びまわり門人を翻弄する=池波。錯綜した情況に翻弄されて右往左往する=辻井。翻弄される(言葉の魔術に。船が大波に。汚れはてた雪が陽と土の温気に本庄。船が荒波に木の葉のようにぃなかにし)。 **もてあそぶ【弄ぶ】** ▼弄ぶ(つまらなさそうに指先にもてあそぶ【弄ぶ】杯を三好達。悠々たる閑日月を舟橋。海が船を木の葉のように=井上靖。サラダをフォークの先で=乃南)。もてあそぶ(勝手な想念を。空理空論を。激越な言辞を。波が汀ふきを。缶コーヒーを手で。思うがままに自由自在に=江戸川)。女性を美しい玩具か何かのうに弄び苛さぃむ=菊池。口調に人を弄ぶようなものがある=中村真。▼手玉に取る(男を。客を)。▼おもちゃにする(愛を。妹を。女を。カメラを。人生を。数学を。スプーンを。娘を)。▼弄する(あれこれ策を。陰険な手段を。詭弁を。小細工を。軽薄なトリックを。悪魔的な言辞を=高橋和)。 **やじる【野次る】** 野次る(選手を。敵を。弁士を。ぶうぶう。わいわい)。▼半畳を入れる(下らない。なんやかやと。若い二人の相合傘に=山手)。半畳が飛ぶ。▼野次が飛ぶ(会場のあちこちから。怒号するような高橋和)。野次を飛ばす(口々に。言葉尻の一つ一つをとらえて口汚い三田)。喧々囂々たる野次。卑猥ゃな野次が浴びせかけられる。猛烈な野次が巻き起こる。野次と怒号が激しくなる。野次の応酬が始まる。哄笑にうしとヤジの飛び交う修羅場"飯田。 **れいしょう【冷笑】** 口調に冷笑がにじむ。口元にかすかな冷笑が宿る巻。▼冷笑が浮かぶ(唇に。口もとに)。冷笑する(苦々しそうに。ふんと鼻先で。古い皮袋に新しい酒を盛るようなものだと円地)。かすかな冷笑に似た奇妙な笑みが唇の端に浮かぶ小林久。冷笑の唇端に上るのを禁じえない二葉亭。凍てつく冷笑のつららが突き刺さる=島田。刑事に向かってふんと鼻先に冷笑を浮かべるようなふてぶてしさ=南糸。冷笑を浮かべる(唇の端に。口元に。鼻先に。見下すような。不貞腐れたような"外村)。やゝかな能面のようなぞっとする冷笑的な薄笑い"日野。事実を故意に犬儒的に眺めたりするような青年らしい焦燥感"中村長。 **わらいもの【笑い者】** さぞかし笑い者になっているに相違ない=阿部。笑い者になる(世間の。天下の。日本中の。町じゅうの)。ぶざまなさらし者になる。とんだ三枚目にさせられる。三枚目の線で通す。▼世間の物笑いになる。古今無類の物笑いの種になる。 **わるくち【悪口】** 神経にグサッと突き刺さるような悪口=石坂。悪口が本人の耳に入る。寄るとさわると悪口ばかり言っている。悪口を(ひとくさりしゃべる。言い立てて倦ぅむことを知らない=坂口。ふっつり言わなくなる=大岡)。行く先々で悪口を言って回る。上司の悪口を言い始める。人の悪口を言う資格はない。悪口を言う(意趣返しに。しっぺ返しに。相手かまわず。面と向かって。聞こえよがしに。あることないこと。手のひらを返すように。唾をとばすほどの激しい口調で嫁の=連城)。▼後ろ指をさされる(人に。人から)。▼雑言を(聞き捨てならない。聞くに堪えない)。口から出放題の雑言を吐く=舟橋。 <860> # 伸ばす・縮める アイロン アイロンのきいたワイシャツ。アイロンを当てる。ハンカチにアイロンをかける。アイロンかけに精を出す。皺にてを当てる。 **あっしゅく【圧縮】** ▼圧縮する(気体を。データを。コンパクトに。コンプレッサーで)。圧搾空気を送り込む。コンプレッサーを稼働させる。 **あとまわし【後回し】** ▼後回しにする(ご飯を。仕事を。判断を。勉強を。難しい問題を。面倒なことを)。いちばん後回しにされる。▼後手に回る(打つ手が。対策が)。二の次(しちめんどくさい詮索は。するかしないかは)。本業を二の次にして出歩く。▼二の次になる(安全が。肝心のことが)。 **いちもんじ【一文字】** 一文字に斬り下ろす。唇を一文字に結んで押し黙る。腹を一文字にかき切る。口をきりっと一文字に結ぶ=井上靖。真一文字に(線を引く。走る。矢が飛んでくる)。唇が真一文字に結ばれる。口を真一文字に閉じる。 **いっちょくせん【一直線】** 一直線に(幹が立ち並ぶ。目的地に進む。こちらに向かってくる)。ドアまで一直線に駆ける。日本海を一直線に北上する。三つがぴったり一直線に並ぶ。森の中を一直線に進む。ロープをビンと一直線に張る。線路が定規をあてたようにぐいと一直線にのびている=村上巻。狙いをつけるように一直線に見据える谷崎。船が一直線に陸地を目指して全速で走る=泉優。 **うちのばす【打ち延ばす】** ▼打ち延ばす(黄金を。金を薄く)。打ち延べる(地金を。鉄板を。金槌で)。圧延する(金属を。鋼板を。地金を。ブレスで)。 **えんき【延期】** 延期になる(工事が。試合が。出発が)。支払いの延期を頼む。延期する(打ち合わせを。举行を。結婚を。試合を。出港を)。返済延期に応じてもらう。延引する(開始が。完成が。返済が)。繰り下げる(出発を。日程を)。繰り延べる(式を。納期間を。例会を。来月に。来週に)。ブロポーズを一日延ばしに延ばす。一日延ばしにする(帰国を。出航を。ずるずると。病院へ行くのを)。▼順延する(運動会が。試合が。花火大会が。悪天候のため)。雨天順延となる。会期を日延べする。▼日延べになる(試合が。旅行が)。 **えんちょう【延長】** ▼延長する(会期を。時間を。鉄道を。道路を)。延長線上にある発言。延長戦に(次ぐ延長戦。入る。持ち込む。もつれ込む)。延長戦の末(惜敗する。競り勝つ)。 **ぎょうしゅく【凝縮】** ▼凝縮する(体験を。報告を)。凝縮された一瞬は永遠に等しい♪若竹。作者の思想が凝縮された小説。憧れと憧れとが照応してゆく凝縮した魔の一刻直行。ガスが凝縮して液体になる。 **くしゃくしゃ** くしゃくしゃと崩れる(顔が。表情が)。くしゃくしゃに(顔が崩れる。髪がもつれる。つぶす。顔をゆがめて泣く)。笑いで顔をくしゃくしゃにほころばせる=船戸。くしゃくしゃになる(髪が。シーツが)。くしゃくしゃに丸める(新聞を。メモを)。くしゃくしゃの(衣類。タオル)。顔をくしゃくしゃにして(涙をこぼす。喜ぶ。笑う)。眩まぶしそうに眼をくしゃくしゃさせる=円地。目がくしゃくしゃした内気な女の子「佐多。くちゃくちゃにもむ。くちゃくちゃになる(紙が。布が)。 **くりこす【繰り越す】** ▼繰り越す(次期へ。次年度へ。前年から。翌年へ)。繰越金(次年度への。前期からの)。 **けいれん【痙攣】** ▼痙攣が走る(後頭部に。こめかみに。全身に)。ガンと殴られて症攣でも起こしたよっにぐっとのけぞる=加賀。底知れない心の療璧におびえる=林美。背の肉がケイレンを起こすように痛む小林多。旅傘をおこしたように体をこわばらせる三浦朱。小刻みに痙傘を始める。眉根の所に電光のように起こる痙攣を小うるさく思う有局。▼痙攣する(体が激しく。色を失った唇が。險がびくびくと。息を引き取る病人のようにがくがくと大きく開いた口が徳永)。症継する手があがくようにあたりの空気を搔きまわす本庄。▼痙藥させる(苦痛に全身を。五体を激しく。頬をひくひく。こめかみをびくびく。顔を瘢癇病に祝ゅみのように=江戸川)。▼びくりと痙攣する(青筋が。首筋が)。顔が痙撃したように引きつる。手が癒燥したように震える"遠藤。癒傘のような薄笑いを浮かべる谷崎。しゃっくりが(出る。なかなか止まらない)。胃が引きつけを起こす。顔の筋肉をびりぴりさせる。 **ゴム** ゴムが(伸びる。きつく食い込む)。親指と人差し指でゴムを摘む。ゴムのように伸びた笑みを浮かべる小池。いくら噛んでもゴムのように歯切れが悪い"阿刀田。唇がゴムのように色を失う小池。る話のせいか驚きが伸びきったゴムのように緊張も実感もない!連城。肉がゴムのように硬い=辺見。皮膚が疲れたゴムのように絞しゃばむ=林美。土が凍り硬質ゴムのようにかたくなる司馬。白い両掌いいの指が組み合わされゴム製器具のようにしなつ武田発。声をゴムバンドのように空中に弾き飛ばす「清水俊。伸びすぎたゴム紐ぃものように意味がない連城。粗製ゴムのような死んだ色の膚はだ=小林多。輪ゴムで束ねる。手首に輪ゴムをはめる。 **さきおくり【先送り】** 先送りは許されない。▼先送りする(ずるずると。何年も)。課題を先送りにする。これ以上先送りできない。少しでも先に延ばしたい。不辛を先に延ばす。ずれ込む(発売が来月に。竣工しゅんが半年近く)。延ばし延ばしにする(決定を。着工を)。 <861> # 伸ばす・締める-281 荏苒んとして(今日に至る。時を移す。日を送る)。崔丹の境に落ち着いてはいられない夏目。督促が先延ばしになる。▼先延ばしする(解決を。結論を。いたずらに)。延び延びになる(会議が。支払いが。返事が)。▼持ち越す(結論を。問題を)。持ち越した喧嘩州んにけりをつける。余韻を持ち越したような効果。 **さしのべる【差し伸べる】** 空に高く枝を差し伸べる。▶差し伸ばす(網を。首を。手を)。▼手を差し伸べる(愛の。援助の。救いの。高みから。誘惑の。気まぐれのように馴れ馴れしく握手の手をさしのべる西木。困っている名に助けの手がさしのべられる平行)。 **しわ【皺】** 悲しみも怒りも読みとれぬほど黒く深い皺=武田炎。皺が(目立って多くなる。無数に刻み込まれた顔三好京)。しわがいっそう深くなって無数の濃い隈取にょりのようになる=日野。物体の表面に波紋のようなしわが現れる=光瀬。顔に苦痛を耐え忍ぶシワが鬼面のように盛り上がる『深沢。顔がほころぶと目尻に大小とり混ぜて五本の皺が寄る荻野。顔に暗く厳しい皺が刻まれている=辺見。顔に弱気の皺が広がる=島尾。眉間に絶えず神経質な皺が浮かんでは消える=古井。目尻に深い皺が刻まれそこから表情全体に温かさが広がっていく落合。目尻の皺がかなり増える藤田。▼皺が刻まれる(鼻筋に暗い。目尻に薄く)。▶皺が増える(年相応に顔に。年々)。顔が過労のため傷のような皺に荒らされる=開高。波濤沿とのように起伏した皺の多い山の麓"田山。笑っても眼じりに皺のよらない若い肌=黒石。丁寧に皺を伸ばす。眉の間に皺を寄せて考える。浮き世の応酬に疲れた皺を額に畳む=幸田露。顔に皺を波立たせて笑う松本。魚群が海面に大きく白い皺をひろげる=小林信。仄ほのかに笑いを含んだ目尻に糸屑ほどの皺を刻む=落合。細い目尻にやさしい娘を寄せて微笑む=円地。眉間に深い皺を寄せて考えこむ古井。▼皺を寄せる(小鼻に。眉間に刀傷ほどもある=鳥田)。▼皺だらけにする(顔を。頬を)。▼眉間に皺を寄せる(心配そうに。不満そうに)。▼しわばませる(皮膚を。目尻を)。しわばんだ手。しわめる(顔を。まぶしそうに目を)。脱ぎ捨てた服を紙屑のように足で皺くちゃに蹴飛ばす谷崎。紙のように顔を破くちゃにして笑う遠藤。小皺が寄る(目もとに。木の肌のような=開高)。顔に小皺が目立つ。目尻に小皺が隠せない。綺麗に小娘の寄った荒ずさんだ顔「徳田。鼻の頭に小皺を寄せる。眉間に深い縦皺が刻まれる=池井戸。縦皺は女を夜叉呼しのように見せる!森尻。眉間に縦皺を寄せる。気分を悪くしたように眉間に縦皺をつくる=泉優。眉間にかすかな縦皺を刻む"原田康。目尻に縮緬らりじわが寄る=ねじめ。水面が総緬皺を立てる。池に縮細皺のような小波が立つ『高見願。縮緬の皺が春の陽を吸って細かい皺を浮き上がらせる=円地。浅く走っていく水が縮緬の皺のように繊細に光る=佐藤谷。 **すくめる** ▼すくめる(体を。手足を)。肩をすくめる(呆ぁきれたように。悪戯か於っぽく。ぎくりと)。一風に身をすくめる(冷たい。吹きつけてくる)。▼首をすくめる(恐ろしそうに。悪戯っぽく。思わず。蝙蝠にらのように。飽き飽きだというように「加賀。処置なしといった体で奥田)。肩をすくめて(うなずく。苦笑する。小さく笑う。はいはいと言う)。▼肩をすくめてみせる(大げさに。気の赤そうに)。 **せすじ【背筋】** 背筋が(寒くなって体が震える。そっと寒くなる。寒くなる言葉を投げかける=阿久。ばねが入ったようにまっすぐに伸びる八谷村)。おそろしさに背筋が冷える=筒井。背筋から力が抜けていく。背筋に(痛みを覚える。痺しびれが走る。恐怖がはりつく。ぞくりと悪寒が走る。冷や汗が流れる)。名前を聞けば背筋に戦慄が走るくらいの大物"胡桃沢。背筋を流れるような冷たい不吉が感じられる=檀。戦慄が背筋を突き抜ける。不安で背筋をぞくぞくさせる。気丈すぎるものを感じさせるほど背筋をしゃきっと伸ばした女高橋涼。嫌悪がぞろぞろ背筋をはい上ってくる=鳥尾。目のくらむような恐怖が背筋を走る=船山。背筋を貫く(痛みが。感動が)。背筋を伸ばす(真っ直ぐに。きりっと。しゃんと。ぴんと)。背筋が寒くなるような(淋しさ。話)。 **せたけ【背丈】** すっと背丈が伸びたような誇りを感じる=本店。背丈が伸びる(ぐんぐん。すくすくと。ずんずん。めきめきと)。人の背丈ほどの若木が等間隔に植えられる"高井。背丈ほどもある萱かゃが生い茂った墓斎藤栄。夏草が背丈よりも高く生い茂る=住井。なりは大きいがまだ子供。身丈に合わないだぶだぶの背広。身の丈に合った生活。 **せのび【背伸び】** 背伸びを強いられる者の気負い=高樹。己の能力以上に背伸びをする。無理をして覚えてきましたという背伸びを感じる!向田。▼背伸びする(一生懸命に。思いきり。精一杯。爪先で。腕を振り上げて大きく)。人垣の間から背伸びして見る。いくら背伸びしても手が届かない。 **ちぢこまる【縮こまる】** ▼縮こまる(恐怖で手足が。心臓が。雨傘の下に。窮屈そうに。寒さに。きゅっと。部屋の片隅で。受け身の発想で。びくりと肩が跳ねてから!有川)。子猫みたいにちちこまる=岡田。縮こまって(生きる。座る)。海老えびのように縮こまって眠る=森成。▼萎縮する(気持ちが。社会全体が。取材源が。手足が。欲情が。恐怖で。心が冷たく)。▼萎縮させる(教員を。言論を。報道を)。 **ちぢまる【縮まる】** ▼縮まる(体が。間隔が。差が。彼我の距離が。票差が。身が。愉が。徐々に。きゅっと。少しずつ。互いの間隔がみるみる)。寿命が縮まる思い。なかなか距離が縮まらない。 **ちぢむ【縮む】** ▼縮む(命が。生地が。肝が。差が。背が。きゅっと。小さく。押しつぶされる寸前まで=内橋。体が毬ょ』のように=山本周)。▼縮む思い(寿命が。心臓が。恥ずかしさで身が)。身がちちむほど嫌壺井。感情が総かむ。総かむ手に息を吹きかける。▼縮み上がる(胃袋が。恐ろしさに。強盗に。寒さに。恐怖で。緊張で)。恐怖に心臓が縮みあがる=奥泉。膨張と収縮を繰り返す。▼収縮する(胃が。筋肉が。経済が。心臓が。瞳孔が)。 <862> # の **ちぢめる【縮める】** ▼縮める(着物の丈を。首を。次第に距離を。寿命を。賃金格差を。びくっと肩を。包囲網を。自らの命を。愉を。蒲団の下で亀の子みたいに手足を古井。からだをマリのように"小林多)。▼体を縮める(恥ずかしさで懸命に。空気の冷たさに思わず)。▼身を縮める(木枯らしに。反射的に)。つづめる(工程を。時間を。丈を。内容を。文章を)。生命いのを縮められるような苦しさ=徳田。▼縮かめる(手足を。盾のかげに身を小さく)。縮こめる(体を。首を。身を)。▼縮約する(長文を。データを)。▼短縮する(間隔を。漁期を。距離を。刑期を。工場が操業を。サイクルを。狐期を。労働時間を)。 **ちぢれる【縮れる】** 葉が縮緬のしわのようにちちれる=掘。麺が縮れる。軽く縮れた柔らかそうな髪。一縮らせる(髪の毛をソバージュに。髪をぼやぼやと)。▼つる(靴下の糸が。縫い糸が。縫い目が)。▼つれる(縫い糸が。縫い目が)。 **つまさきだつ【爪先立つ】** 綱渡りでもするように爪先立つ尾辻。爪先立って手を振る。爪先立ちして弾むように歩く=井上ひ。爪先立ちでそっと歩く。爪先立ちになって急な坂を押し合うように下りてゆく伊藤整。爪立って(覗のぞきこむ。見送る)。足を爪立てる。踵切かを床から離して立つ。 **のばす【伸ばす】** ▼伸ばす(一族の勢力を。思うさま羽を。思わず背筋を。急速に力を。商売の才覚を。着実の業績を。人差し指を。腕を一杯に。髪を無造作に。素質を十分に。長所をさらに。伸び放題に。髪を肩まで。写真を大きく。背筋をぴんと。思い切り四肢を。傍らの皿にフォークを。ぐんぐん背丈を。順調に売り上げを。にゅっと二の腕を。ひょろ長い腕を。真っ直ぐに幹を。むさくるしく髪を。めきめき才能を。髪の毛をもじゃもじゃと。ぐいっと背を高く。手足を湯の中でゆったりと。髪をお河童はっのように今日。髪を耳にかぶさるくらいまで=伊坂。すんなりした手足を伸び伸びと宇野利。曲がりかけた腰をひょいと"林真)。手も足も思う存分にのばす佐藤春。延ばす(会談の時間を。出立の日を。もう少し先に。島にいる日数を。弾がぐんぐん弾着を。賃金の支払いを。発表を明後日まで)。▼足を延ばす(ついでに。散歩の)。枝を伸ばす(大木が。古木が悠然と)。▼腰を伸ばす(屈めていた。しゃんと)。しゃんと伸ばす(背筋を。背骨を)。背を伸ばす(姿勢よく。しゃんと)。▼手足を伸ばす(伸び伸びと。ゆったりと)。▼手を伸ばす(下半身に。グラスに。ケーキに。拳銃に。酒瓶に。雑誌に。受話器に。資料に。スイッチに。乳房に。ノブに。封筒に。本に。無意識に。湯飲み茶碗に。恐る恐る。探索の。調査の。横から。コーヒーカップに。体の上に真っ直ぐ。テーブルの上の伝票に佐野)。長く伸ばす(髪を。もみあげを)。真っ直ぐに伸ばす(足を。腕を)。手を伸ばせば届きそうな(距離。すぐそば。峰)。少しでも売り上げを伸ばしたい。少しずつ距離を延ばしていく。▼延伸する(道路網が。鉄道を。道路を)。▶繰り延べる(綱を。ローブを)。能力を伸長する。黙々とストレッチングをこなす。寝押しする(スカートを。ズボンを。袴いかを。上手に。一晩)。伸す(うどんの玉を。生地を。渉く。繰った粉を薄く)。延べる(うなじを。吹足に、を。才能を。蒲団を)。びんとさせる(尻尾を。背中を)。背筋がびんとする。伸べるが(体を。首を。救いの手を。肘を。身を。両手を)。 **のびちぢみ【伸び縮み】** 小さくつぼんだ唇が美しい姫ひるの愉のように伸び縮みがなめらか=川端。伸び縮みする(触角が。頬の厳しもが。なめらかに。ひとりでに)。伸び縮みする軽合金製の梯子はし大藪。屈伸運動を繰り返す。▼屈仰する(足首を。両膝を)。ばしたり縮めたりする。影法師が伸びたり縮んだりする。指が尺取り虫のようにかがんだり伸びたりする!佐藤系。蛇腹のような(皺が首に走っている藤田。鉄製の放熱装ï"日野)。蛇腹のように伸びた長い階段落合。無限大から無限小へ一足飛びに伸縮する幻影佐藤春。心臓が伸縮を繰り返す。▼伸縮させる(両足を。両手を)。伸縮自在の(ゴム。翼。羽)。 **のびない【伸びない】** ▼伸びない(記録が。賃金が。思うように売り上げが)。伸び悩む(売り上げが。給与が。視聴率が。税収が。成績が)。 **のびほうだい【伸び放題】** 薔薇ばらが伸び放題で見のびほうだいる影もない。草が伸び放題になる。伸び放題に伸びる(生け垣が。夏草が)。髪が伸ばし放題で乱れている。生え放組(草が。雑草が。髭ぃけが)。 **のびる【伸びる】** ▼伸びる(想像の翼が。びんと触しゃが。不精髭ぶしれが。需要が大幅に。手が無意識に。夕陽が足元に。音が柔らかく。草が丈高く。手がにゅっと。時流に乗って仕事が。隙間を縫って糸が。梯子車はしこのアームが。放射状に大通りが。めきめき素質が。影が長く後ろに。花壇の花が日増しに。捜索の手が背後に。人気が天井知らずに。髪の毛が肩まで。背筋がしゃんと。夏草がぼうぼうと。細い首がすっと。指がなよなよと。燃えつきる寸前に炎の尾が藤本。足が花茎のように=川端。枝が長く地に這ょうように"宮部。叫び声が豆の木のつるのようにするすると=山田詠)。延びる(海上ルートが。帰国の時期が。寿命が。一日延ばしに。予定が二三日。距離が飛躍的に)。 <863> # 伸ばす・縮める-281 街道がゆるやかに先へ。裾野が左右に広々と。二本の線路が果てしもなく)。▼一直線に伸びる(道路が。ぐいっと。ほぼ)。ぐんぐん伸びる(背丈が。芽が)。すくすくと伸びる(子供が。樹木が。背丈が)。手が伸びる(捜査の。八方から)。真っ直ぐに伸びる(木が。背筋が)。▼真っ直ぐに延びる(鉄路が。広々とした道路が)。▼芽が伸びる(運の。若草の)。ジャングルのように四方八方に勝手に伸びた頭髪 井上ひ。なめらかにすんなりと伸びた手足=山本周。もやしのようにひょろひょろと伸びた薄赤い新芽壺井。伸びていく(日毎に背丈が。仕事が今後も順調に)。伸びている(脚がすらっと。背筋がびんと。すねがすらりと。背がしゃきっと)。延びている(広い道路が一直線に。ホースが長々と。町が海に沿って。道が先へ先へと。宿場の家々が街道沿いに『村上元)。一筋線を引いたように伸びている影三浦俊。伸びてくる(隣から手が。腕が横から)。新しい芽が伸び始める。伸びが目立つ。球の伸びがいい。▼伸びをする(猫が起上がって。両腕が抜けるほどに『永井荷)。▼大きく伸びをする(両手を突き上げて。寝心地のいいベッドへの未練を断ち切るように内館。眠りからさめた幼児のように"五木)。伸び上がって棚の上のものを取る。伸び上がる(竹が。一生懸命。菅いる『がすっくりと雪から)。▶伸長する(学力が。非常な勢いで)。伸張する(権利が。勢力が。国威を。ペニスがたくましく)。 **ばね【発条】** 椅子のばねがきしむ。発糸が切れたみたいに死ぬ=川崎。バネに撥ねられたように勢いよく起き上がる=黒墨有。縮んだばねは必ず元に戻ろうとする!内橋。ばねをかけたように力強く右手を振る"川端。全身のばねを利かせて跳びあがる"石田衣。▼ばねにする(試練を。全身を。膝の関節を。ピンチを)。しっぽがばねのように強い=長崎。快楽が発糸のように強観にいっにたわむ三島。▼バネのように屈伸する(四肢の筋肉がすばらしい光輝。全身をつかって安部)。スプリングがきしむ。スプリングの利いた大きな回転椅子原田康。ふらふらと両手をついてぜんまいが切れたようにがっくり一礼する=泉鏡。ぜんまいの切れた人形のように動かなくなる=東野。黒い渦巻きが時計のぜんまいみたいに脈をうつ=中。 **ばねじかけ【ばね仕掛け】** ばねじかけのおもちゃのようにびょんと跳び上がる"石森。ばね仕掛けの人形のように飛び起きる池波。バネ仕掛けの玩具のネズミがひっくりかえるみたいにドタッと倒れる=開高。体を横向きにしたとたんバネじかけの人形みたいにビュッと元に戻る=飯田。息を吸うことにバネ仕掛けのようにふくらんだりつぼんだりする胸三田。胸から咽喉のとへぐるぐるっと音を立ててこみ上げばたりと止まったぜんまい仕掛けのような捲まき上げる呼吸"円地。ゼンマイ仕掛けの玩具のように人間の動作や習慣が単純化される=大佛。ゼンマイ人形みたいにいつまでも頭を振りつづける=古井。壊れたゼンマイの人形に似た不安定な歩き方=岡田。 **ひきつる【引き攣る】** ▼引きつる(頬が緊張に。体がぴくっと。緊張感で背筋が。ひくひくと畑が)。恐怖に引きつる(顔が。目が嫌悪と)。引きつった(笑みを浮かべる。笑い声をあげる)。恐怖で引きつった顔で走り去る=鈴木四。口許以比がひきつって泣き顔のように見える=日野。喉の奥が引きつって声にならない『高橋二。顔を引きつらせる(苦しげに。恐怖で)。引きつらせる(苦痛に頬を。頬の肉を。顔面を蒼白いいに)。血の気のなくなった顔をひきつらせる=平写。引きつれる(腱が。背中が)。胃が引きつれ気味に痛む。ひきつるようなけたたましい笑い声=小局。痙きるような微笑を片頬に浮かばせる藤本。ひきつるように唇を震わす―海音寺。▼つる(足が。くるぶしの筋が)。▼つれる(足が。頬が)。火傷の(痕がつれる。痕で引きつった顔)。 **ひきのばす【引き伸ばす】** ▼引き伸ばす(写真を。想像の糸を。語尾を長く)。引き延ばす(刑の執行を。時間を。日程を。麺棒で導く。意図的にずるずると)。 **まっすぐ【真っ直ぐ】** 真っ直ぐ(意見を言う。顔を向ける。毅然と立つ。切り立った崖。自宅に帰る。正面を向く。背筋を伸ばす。天に向かう。通った鼻。歩を進める。視線を受けとめる)。相手の目を真っ直ぐ見つめて言う。腕を頭上に真っ直ぐ上げる。駅から真っ直ぐホテルへ乗りつける。煙が真っ直ぐ立ちのぼる。背筋が真っ直ぐ伸びる。前方を真っ直ぐ見る。手を真っ直ぐ前方へ突き出す。通りを真っ直ぐ歩く。道が真っ直ぐ林を貫く。言葉が胸に真っ直ぐ届く=伊集院。真っ直ぐな一本の道。定規で引いたように真っ直ぐな道路、東野。たじろぐほど真っ直ぐな視線"小池。真っ直ぐなること鉄道線路の如き道"国木田。道の上に一線を置いたようにしてまっすぐに歩く幸田文。顔を真っ直ぐに見据える。感情を真っ直ぐに叩きつける。道路が真っ直ぐに走っている。伸び伸びと真っ直ぐに生きる。話が真っ直ぐに進まない。忠実な召し使いのように真っ直ぐに立つ=小池。どんな困難にもまっすぐに立ち向かっていく窪川。棒を呑んだように真っ直ぐに体をしゃちほこばらせる高橋泊。真っ直ぐにする(上体を。背中を)。長いストレートな髪。ストレートに(受け取る。ぶつかっていく)。直線的な(考え方。発想。飛翔。ラインを取りながら急加速する大鮫)。直線的に(考える。衝動が働く)。 **わらいじわ【笑い皺】** 小鼻の下から唇の両端へ線をひいて八の字を描く笑い皴"水上。眼尻に笑いじわがたくさん出来る柔和な笑顔「西木。目尻に柔和な笑い皺を刻む。顔中の嬢を鼻の周りに集めるような笑い方高井。目尻に見える烏がらの足跡=伊集院。目尻にさざ波が立つ。 <864> # 飲む **おちゃ【お茶】** お茶が出がらしになる。中休みのお茶が入る。お茶の葉を入れ替える。お茶を一口飲む。急須でお茶をいれる。夏の暑さが熱いお茶を飲むような快感"飯田。優雅な手つきでお茶を一服する=藤沢。急須にお茶っ葉を入れる。海茶を(点だてる。振る郷う)。お源を(点てる。飲む)。紅茶にブランデーを入れる。紅茶を一口すする。渋茶をすする。浅緑の匂い立つ煎茶。猫板の上に茶道具が揃っている=山本虑。番茶みたいに濁った小便吉川。冷えた番茶をこくりと飲む。香ばしいほうじ茶。湯茶の接待をする。一杯の緑茶を慕う。茶を飲む(うまそうに。二三杯続けざまに。鼻の穴に水の抜けるほど“内田百)。茶の(心を知る。道に励む。もてなしを受ける)。茶は一期一会の精神の実現童門。ゆっくりと茶をすする。 **カップ** カップに(口をつける。湯を注ぐ)。カップを受け皿に戻す。コーヒーカップを湯呑み茶碗のように両手で包みこむ連城。ティーカッブを口元に運ぶ。がぶがぶがぶがぶ酒をあおる。▼がぶがぶ飲む(酒を。茶を)。がぶりと(茶を一飲みにする。ひとくちに飲み干す)。 **きっさてん【喫茶店】** 行きつけの喫茶店。喫茶店で時間を潰っぷす。峠の茶屋にさしかかる。 **ぎゅうにゅう【牛乳】** バンを牛乳で飲み下す。牛乳を(バックから直接飲む。人肌にあたためる。ぺちゃぺちゃとなめる)。牛乳のような色の寒い夕靄10"有島。海の上が少し墨汁を加えた牛乳のようにぼんやり暮れ残る"有局。コーヒーにミルクをたっぷりと注ぐ。ミルクの入った哺乳瓶に。ミルクのように柔らかい白北村。ミルクみたいな色の肌"田辺。 **くちあたり【口当たり】** まろやかな口当たり。口当たりが(やわらかい。悪い)。口当たりのいい(言葉。酒。ワイン)。口ざわりのいい飲み物。 **グラス** グラスが氷細工のように光を集める=高樹。冷えたグラスが汗をかく。グラスに残った口紅を気にする。▼グラスに注ぐ(ジュースを。ビールを。を)。グラスの(水を飲み干す。縁を指でなぞる)。んとグラスの触れ合う音が涼しげに響く=乃南。グラスを(食卓に並べる。一息にあける。テーブルに置く。回転させて水片が立てる風鈴のような音を聞く『笹沢)。乾杯のグラスをあげる。ぐいっとグラスを干す。美味うまそうにきゅうとグラスを空ける=林美。クリスタルグラスを打つような声"大原。タンブラーを(口元に近づける。テーブルに置く)。 **コーヒー** 生命を与えられたように香ばしいコーヒー"村上発コーヒーが濁った水たまりのように鈍い光を放つ=小林久。コーヒーで一服する。コーヒーに蜂蜜を入れる。コーヒーの(味に心を和ませる。香りが部屋に流れる)。コーヒーを(眠気覚ましのために飲む。ブラックで飲む)。悠々と食後のコーヒーを飲む。浅めに焙煎が心する。デミタスのコーヒーカッブの中でエスプレッソが濃厚な香りを放つ森境。 **コップ** コップで(酒を飲む。水を飲む)。コッブに(酒を注ぐ。ビールをつぐ。水を注ぐ。ジュースをつぐ。なみなみとつぐ)。水差しからコッブに注ぐ。コッブの(縁を指でなぞる。厚い底が水品のように冷たく光る佐藤春)。コップを(空にする。手に取る。おもむろに口に持っていく。投げつけるみたいな野蛮な真似まねり高井)。テーブルの上にコップを置く。紙コップを(こみ入れに投げ込む。トレイに載せる)。コッブー杯の水を添える。 **ジュース** ジュースの缶を放り投げる。ジュースを(一口飲む。瓶詰めにする。なみなみとつぐ)。不安と期待がミックスジュースみたいに溶けあった複雑な心境"飯田。果汁が生き物のように勢いよく飛び散る"小川。酸っぱい果汁の匂い。 **しる【汁】** 草の汁で汚れる。お玉杓子吹はしで汁をすくう。煮汁がしみ込む。味噌汁で飯を食べる。味噌汁の匂いが漂う。うまそうに味噌汁をすする。差は?を飲吸い口に柚子ゅずの皮を浮かべる。菜の花をあしらった吸い物三島。 **スーブ** スーブの味見をする。スープを(匙ミじですくう。一と息につうっと飲む三浦哲)。がらでスーブをとる。▼スープを飲む(丼に口をつけて。ぺちゃぺちゃと音を立てて。ただひたすら音を立てないように無念夢想で荻野)。黄色いスーブのような露もゃにおおわれる=北。コンソメスープが宝石のように透き通っている=高部。 **ちゃわん【茶碗】** 茶碗に(粥かぃをよそう。ご飯を盛る。湯を汲くみ入れる)。茶碗を(お盆に載せる。カチカチと鳴らす。手のひらで包む。手のひらにのせる。拝むように両手で持つ=円地。膝元の茶台に置く"火坂。持ち上げ底の糸切りの部分を仰いで見る=城山)。不注意で茶碗を欠いてしまう。茶碗を置く(音を立てずに。叩きつけるように)。茶碗みたいなつるつるした安穏な世界“三島。上等な茶器を揃える。椀の蓋を取る。椀を(伏せたような小さな山真継。伏せたように胸の左右に盛り上がった乳房"円地)。むっちりと腕状にふくれ上がっている乳房“水上。 **のど【喉】** 喉が(強張って声が出ない。裂けるほど高い声"石田衣。じりじりと焦げつくほど非常な苦悩を感じる=長塚)。のどが鳴るうまいご馳走っくにありつく"住井。ノドが焼けつくように渇く=坂口。からからに喉が渇く。咽喉が焼けつくようにただ銭が欲しい=山崎。蛙跡ぇのように不気味に動く咽喉のと大庭。▼喉が鳴る(こくりと。ぜいぜい。ビービー。ひくっと)。 <865> 喉が笛のように鳴る=光瀬。喉から(叫びがほとばしる。手が出るほど欲しい)。のどでも絞められたようにぴたりと泣きやむ"石森。喉に(からんだ痰たんを切る。ひりつくような痛みを感じる。固いものが詰まったように声が出ない"干刈)。言いかけた言葉を咽喉に押しもどす遠藤。言葉が喉につかえる。緊張して咽喉のからからするような切迫した気持ち“福水。喉の奥が引きつって声にならない=高砂二。喉の奥から。喉の奥でくっくっと笑う。嗚咽ぇつが喉の奥で渦巻く=小池。ヒッヒッヒッと喉の奥でいやらしく笑う“阿久。言葉が咽喉の奥にひっかかったようで出てこない!水倉。咽喉まで出かかった次の言葉を胸の奥におさめる=武田奈。喉も張り裂けそうにどなる=城山。喉を(頃からして叫ぶ。しめあげられたようなうめき声=勝目。のけぞらせて吠えるように笑う森形)。乾いた喉を水で潤す。緊張して何も喉を通らない。自慢の喉を披露する。剃刀动吸で咽喉を掻き切る=井上ひ。ころころと喉を転がすように笑う谷村。飲み下すようにゆっくり喉を動かす大岡。喉を鳴らす(くうくう。ごくんと。猫がころころ。ひゅうっと。風邪をひいたけちな小動物みたいにぜいぜい"安部。喉にひっかかっている小骨を吐き出そうとするように何度か干刈)。狭く咽喉のようになった往来"的本。喉笛も裂けそうな声。喉仏がゆっくりと上下する。気管あたりで言葉が押しくらまんじゅうしているよう梶尾。扁桃腺もんが腫れる。 **のどごし【喉越し】** ▼喉ごし(さわやかな。甘い)。喉ごしのいい(お酒。ビール)。飲み口のいい酒。 **のどもと【喉元】** 喉元に(痰たんがからまる。ナイフを突きつける)。笑いが喉元に込みあげる。喉元まで出かかった言葉を呑み下す。怒りが喉元まで込み上げてくる。喉元を押さえて悶絶もする。 **のまない【飲まない】** ふだん飲みつけない薬。飲む気が失せる。とても飲む気になれない。一滴の水も口にしていない。口が乾いてうまく唾を飲めない。飲用には不適な水。とても飲みきれない。喉にもお腹にも蓋が閉まってしまったようで飲みこめない落合。うまく飲み込めない。 **のまれる【呑まれる】** ▼呑まれる(早楽に気を。相手のまれるの気晩ははに。鋭い勢いに。月が雲の中に。混乱の渦の中に。山腹から上が薄い雲に!高樹)。谷間が真っ黒な闇にのまれる=梶井。 **のみこむ【飲み込む】** ▼飲み込む(雪崩が村を。ごくのみこむんと生唾を。よくかまずに肉を。つるりと一息に。出かかった言葉をとっさに。ぱくりと一口に)。▼呑み込む(大渦が船を。丸薬のように言葉を=徳永)。町を飲み込む(泥流が。雪が)。徐々にコツを呑み込んでいく。▶のみ込まれる(月が雲に。強い流れに。歴史の渦の中へ高橋源)。いつの間にかファシズムに飲み込まれる伊坂。燃えさかる炎に呑みこまれる=光瀬。▼飲み下す(こくりと生唾を。出かかった言葉を。水と一緒に錠剤を。苦笑いを胸の底に。後悔を酒とともに南木。口からこぼれそうになる言葉をかろうじて=村山)。 **のみみず【飲み水】** 飲み水が足りない。飲み水に(困のみみずる。逃する)。飲み水を(確保する。汲くむ)。水をがぶ飲みする。生水に気をつける。飲用に適する水。 **のむ【飲む】** 飲む(甘茶を。コーラを。ごくっと唾を。ココアを。サイダーを。白湯さゅを。睡眠薬を。ソーダ水を。王子酒を。湯冷ましを。息もつかずに。車座になって。ごくりと一口。続けて二杯。毎日欠かさず。決められた分量を。すすめられるままに。致死量より控えめに。生唾をごくんと。一息にぐいっと。ペットボトルに直接口をつけて。れんげですくって。豚のように音を立ててスーブを"玉村。ウィスキーを慮がんの口かららっば飲みに「清水俊。わずかに喉を湿す程度に内田康。喉をごくごく鳴らして=清水俊)。のむ(煙草を。弾薬を言われた通りにきちんきちんと=消水義)。毒液でも叩ぁぁるような仕ぐさで一気に飲みほす〃小林久。呑む(鶏が鲇ぁゅを。固唾みたを。津波が家屋を。取引条件を。波が舟を。懐に匕首はかを。蛇が蛙みえを。炎が家を。あっと叫んで声を。何回となく涙を。要求を全面的に。要請をあっさりと)。天下を呑む気概を持つ舟橋。息を呑む(苛酷さに。恐怖に)。相手を呑んでかかる。飲み干す(コップの水を。茶を一息に。立て続けに水を二杯ほど)。液体が胃袋に流れ込む。ぐびりと咽喉のとを通す!水井武。咽のとから胃にかけて温かい流れを覚える!高樹。水が飲みたい。飲みかけの(酒。ジュース。ビール)。毒を仰ぐ。甘酒をあがる。がぶ飲みする(お茶を。コーラを)。▼喫する(コーヒーを。茶を)。口に入れる(汁を。スーブを一匙給比)。▼口にする(コーヒーを。スーブを)。▼口に運ぶ(グラスを。紅茶を。コーヒーを。マグカッブを。湯飲みを)。口に含む(紅茶を。コーヒーを。水分を。番茶を。水を)。口に持っていく(グラスを。コッブを)。紙コップを口元で傾ける=横山。口元に運ぶ(カッブを。コーヒーを。水を)。口をつける(グラスに。コップに。飲み物に)。がぶりと一飲みにする。薬剤を服する。▼召し上がる(お茶を。コーヒーを)。▼盛られる(淫薬を。毒を)。▼飲ませる(馬に水を。おっぱいを。薬を。熱さましを。口移しに。無理やり)。含ませる(煎じ薬を。湯を)。 **ゆのみ【湯飲み】** 湯飲みに(お茶を注きす。酒をなみなみとついでやる)。湯飲みを(茶で満たす。手元に引き寄せる。流しに持っていく)。猪口ちょのように小さな湯呑み!向田。湯呑みをすすいだ湯を建水にあける!北原。茶碗の糸じりを見せるようにして湯呑みをあける壺井。両手の指先で湯飲み茶碗を支える。 <866> # 乗る **オートバイ** オートバイが(宙を飛ぶようにぐいぐい近づいてくる=日野。猛禽類に心に似た鋭い叫びを残して通り過ぎる=辻井)。オートバイに乗る。オートバイの後ろに乗せてもらう。地鳴りのようなオートバイの音が近づく=内海。オートバイを(乗りまわす。走らせる)。単車に乗る。単車を(駆る。転がす。走らせる)。バイクが矢のように走りだしもうちょっとで振り落とされるところだった三浦し。バイクの後ろに乗る。けたたましいバイクのエンジン音つか。 **かご【駕籠】** 一挺いちの駕籠が着く。駕籠の垂れを(おろす。はねる)。駕籠より一足先を走る。駕籠を(下りる。担ぐ。飛ばす)。▼担ぐ(駕籠の先棒を。処こしの懐込がを)。駕籠かきが肩を代わる。奥に乗る。奥の扉付だを下ろす。奥はを昇かく。 **きしゃ【汽車】** 汽車が目まぐるしいほどの快速力で走る=有良。頭の中を引っかきまわすような激しい音を立てて汽車が鉄橋を渡る"有鳥。二三日来の大雪で汽車が止まる=開高。一番の汽車に間に合う。ごとごとと汽車に揺られてたどりつく。汽車の(時間に少し問がある。響きが遠ざかるにつれて夜風のように聞こえる=川端)。 **きどう【軌道】** 仕事が軌道に乗る。▼軌道に乗せる(計画を。人工衛星を地球周回の)。軌道を元に戻す。同じ軌道をぐるぐる回る。人生の軌道を間違える。 **くるま【車】** 車が(何台も続く。パンクする。山道に入る。勢いよく発進する。ガードレールに激突する。郊外にさしかかる。左右にローリングする。静かに停止する。数珠つなぎになる。スピードを上げて走り去る。スムーズに流れる。狭い道にあふれる。ひっきりなしに通る。歩道に乗り上げる。目の前を通り過ぎる。猛スピードで走る。欄干にぶつかる。かなりのスピードで走り抜けていく=城山。跳ねるように乱暴に揺れる=勝目。ゆるやかな流れに吸い込まれるイカダのように右に寄って行く“干刈)。行き交う車がほとんどない。数えきれぬほどの車が往き来する。急ブレーキで車がスピンする。根っから車が好き。ゆるゆると車が動きだす。かなりの量の車が黒い河のように流れている"五木。鮫さぁが獲物をひと呑みするような派手な動きで車が走り出す藤本。車から(投げ出される。人が降りる)。死体を車ごと海に沈める。車で(駅まで送る。三十分の距離。迎えに来る)。通りが車で混み合う。車に(鍵をかける。はねられる。轢かれる。酔う。タイヤを装着する。乗って駆けつける)。走り去る車に手を振る。二つの車に分乗する。発作的に車に飛び込む。前の車に追突する。迎えの車に乗る。▼車に積む(トランクを。荷物を)。車の(速度を上げる。速力が落ちる。流れに乗る。前に飛び出す。巡仮席におさまる。運転に集中する。音が真昼の空気をかき乱す。風切り音で会話が聞き取りにくい。シートに身を沈める。進入を禁止する。スピードを落とす。ナンバーを書きとめる。窓ガラスを指先で叩く。列が光の河になって夜を流れる=吉本)。大粒の雨が車のフロントガラスを叩く。前方に車の尾灯が見える。理論と実践は車の両輪。飴でからめられたような車の群れ鷹沢。高速道路を走る車の音が河の流れのように聞こえる高井。潮騒しゅのように車の音が風に乗っててくる=日野。車の流れが(絶える。密になる)。車を(車庫に入れる。車寄せにつける。玄関に横付けにする。玄関前に停める。駐車場から出す。駐車場に入れる。道路の端に停める。びかびかに磨きあげる。フェリーに乗せる。道の左端に寄せる。ゆっくりと停止させる。路肩に寄せて停める。路上に放置する)。ガソリンスタンドに車を入れる。ガレージへ車を取りに行く。玄関に車を回す。先を行く車を見失う。駐車場の所定の位置に車を停める。ほかの車をけちらして走る。よってたかって車をめちゃくちゃに壊す。▼車を走らせる(あてもなく。威勢よく。指示通り)。車体が右に左に振り子のように揺れる=篠田。ぐらりと車体が傾く。大きすぎる車体を持て余す。 **じてんしゃ【自転車】** サイクリングに適した自転車。自転車が(バンクする。傍らをすり抜けていく)。ハンドルが鍵もっれ合うほどびっしりと自転車が並んでいる狭い歩道黒井。自転車で(通う道すがら。通学する)。自転車に飛び乗る。ひらりと自転車に乗る。自転車の(ペダルを漕ぐ。スタンドを立てる。荷台に箱を載せる。ブレーキを握る)。背後から自転車のベルの音が聞こえる。がに股のように膝を開いてゆっくり自転車のペダルを踏む三浦哲。ふらふらするほど自転車のスピードを落とす三浦哲。自転車を(一心に漕ぐ。フェンスに立てかける)。歩道を自転車を押しながら歩く。サイクリングに出かける。サドルから腰を浮かす。普段買い物に使っているママチャリ。 **じどうしゃ【自動車】** ▼自動車(旧式な。新型の。んこつの)。自動車が(ひっきりなしに通る。カブトムシの背中のように光った尻を見せながら泥水をはねあげて行く安岡)。七八台の自動車が数珠北。つながりになる。絶え間なく自動車が往き交う愉。ヘッドライトをつけた大きな闇が前へ前へ押し寄せてゆくかのように自動車が走る=梶井。緑の木々を切るように自動車が疾走する=川端。自動車の(行き来が激しい。多い道を避ける。音が大きな昆虫の羽音のように聞こえる=北村。タイヤが吸いつくように跡をひいた音"大佛。ヘッドライトが僕の身体を洗うように次々に走り抜ける=福永。群れが華やかな光の模様を描きながら縦横に行き交う石坂)。道路に自動車の群れが <867> # 乘ろ-283 洪水のようにあふれている=石坂。自動車を(運転する。走らせる。玄関に横づけにする)。ガレージから自動車を出す。高級な外車。外車に乗る。外車を買う。逆にいたが出るほどの高級車=船戸。シートベルトを(締める。装着する)。助手席に(座る。乗り込む)。新車に試乗する。新車のようにびかぴか光る。新車を買う。譲ってもらった中古車が気に入る。中古車を買う。乗用車が起き上がれない甲虫効いとのように腹を見せたまま放置される"干刈。乗用車から降りる。用車に乗る。乗用車を(運転する。道端に停める)。セダンが滑らかに走る。スポーツカーが疾走する。スポーツカーに夢中になる。スポーツカーを(運転する。乗り回す。走らせる)。 **しゃない【車内】** ▼車内(冷房の効いた。人いきれで蒸す)。車内が(混み合う。空いている)。車内に(緊張が走る。人影がない。明かりが煌々にうと灯る。動揺の波が起こる。熱気が立ちこめる。夜気が流れ込む)。臭いが車内に充満する。車内は(乗客がまばら。ほぼ満席の盛況)。車中で(仮眠する。歓談する)。 **じょうきゃく【乗客】** ▼乗客が(改札口に殺到する。次々と乗り込んでくる。ホームにあふれる)。バスが停まるたびに乗客が増える。乗客が降りる(次々に。ぞろぞろ。電車から。バスから)。大勢の乗客で身動きもならないほど。乗降客がまばら。 **じょうば【乗馬】** ▼乗馬に巧みな若い武士。乗馬の稽古をする。人馬入り乱れての白兵戦。多数の人馬の醸し出す騒然たる雰囲気"綱凋。馬術に(凝る。巧み。たける)。馬上から四方の景色を眺める。馬上の(人となる。人々を仰ぎ見る)。馬上豊かにまたがる。馬場を(一周する。駆ける)。脇を騎馬が駆け抜けていく。騎馬の機動力を利する豊田。疾風のごとき騎馬の一隊=井上靖。騎馬隊が一陣の風のように丘を駆け下る=山田風。 **タクシー** ▼タクシーが(停まる。走り去る)。客待ちのタクシーが並ぶ。流しのタクシーが行き過ぎる。・タクシーで自宅まで送る。タクシーに(手を上げる。乗り込む)。タクシーを(降りる。捕まえる。飛ばして帰る。拾う。待たせる。呼び止める)。客待ちの空車の列が続く。ハイヤーに乗る。ハイヤーを呼ぶ。 **でんしゃ【電車】** ▼電車(始発の。マッチ箱のように小さい=阿刀田)。電車が(駅に着く。駅を通過する。不通になる。ホームを出る。満員になる。風を切って走る。高架の上を走る。地響きをたてて通り過ぎる。鈴なりの超満員。物すごい音を立てて走り去る。家の軒先をかすめるようにして走る=重松。駅の固まった風景をもう一枚めくるように動きだす尾辻。霧の中から吐き出されるように姿を見せる=重松。霧の中に吸い込まれるように姿を消すに重松。どんどん風景をめくって走る=尾辻。歯の浮くような響きに線路をきしる=永井荷。細い紐ぃものようにするすると走っていく=村山。窓々の明かりをぶちまけるように左右に流しながら通り過ぎる=福水)。いつまでたっても電車が来ない。駅を電車が離れる。人身事故で電車が止まる。電車がホームに(進入する。滑りこむ。入ってくる)。電車から降りる。電車で通勤する。電車の(盛届が鳴る。終点で降りる。ドアが閉まる。中吊り広告がはたはたと揺れる。音が波のように高く荒々しく盛り上がって聞こえてくる"石坂。森音ぶらが二人の会話をさえぎる高木)。アナウンスが電車の到着を告げる。最寄りの電車の駅。吠えるような甲高い電車の音"石坂。空気が勢いよく漏れ出す音がして扉が開く"伊坂。満員になって出入り口が塞ふさがっている電車みたいに云いたいことが出てこない幸田文。回送電車が通過する。急行電車がホームを駆け抜けていく。今にも錆だびつきそうな物悲しい二両編成の郊外電車"村上奏。路面電車が走る。終電が二十分繰り上がる。終電に(乗り遅れる。間に合うように帰る)。新幹線が閲迎する。新幹線に乗る。 **とびのる【飛び乗る】** ▼飛び乗る(馬に。汽車に。車に。バスに。列正に。ひょいと。びょんと。発車間際の電車に。ひらりと自転車に。猿ぼしのように船の上に=有局。木の洞ぅぅの中に入って行く鳥のように幸田文)。 **のせる【乗せる】** ▼乗せる(額に氷蛮を。風に巧みに肌たこを。揃えた膝の上へ両手を。一千万円の大台に。会話を元の軌道に。客をマイクロバスに。軽快なリズムに。ストレッチャーに。バッグを膝の上に)。▼乗っける(冠を。帽子を。やかんを)。追い立てるように客を船に乗り込ませる"小松左。 **のりあわせる【乗り合わせる】** ▼乗り合わせる(同じ船に。電車に。バスに。エレベーターに)。相乗りする(自動車に。タクシーに)。▼便乗する(同僚の車に。船に)。同乗を(勧める。申し出る)。▼同乗する(タクシーに。三人が一台の車に)。 **のりいれる【乗り入れる】** ▼乗り入れる(地下鉄が。複数の路線が。空き地に車を。馬を。自動車を。浅瀬に。辺部へんな道に。路地に。国道へ)。 **のりおくれる【乗り遅れる】** ▼乗り遅れる(時代に。終電車に。ひと汽車。うかうかしていると。ぼやぼやしていると)。▼乗りそこねる(最終電車に。波に。バスに)。 **のりかえる【乗り換える】** ▼乗り換える(汽車を。馬に。馬を牛に。支線に。別口に。別の車に。JRから私鉄に)。乗り換えなしに目的地まで行ける。乗り換えに手間取る。乗り移る(艀忙しに。船に。ボートに)。乗り継ぐ(車を。地下鉄を。電車とバスを。電車を。飛行機を。列車を何本か)。 **のりくみいん【乗組員】** ▼乗組員(宇宙船の。飛行機の)。乗り組む(宇宙船に。定期便に。飛行機に)。乗 <868> 乗員(宇宙船の。車の。飛行機の。ヘリコプターの)。乗務につく。乗務を(終える。交代する)。▼車掌(電車の。バスの)。車掌が検札に来る。 **のりば【乗り場】** ▼乗り場(タクシーの。バスの。連絡船の)。我先に乗り場に駆けつける。地下鉄の乗り場へと向かう。乗り場案内の看板に目をやる。バスの停留所。▼入線する(電車が。発車五分前に)。入線の時刻になる。バスの発着所を目指す。 **のる【乗る】** ▼乗る(勢いに。宇宙船に。馬に。追い風に。香りが肌に。駕籠かごに。汽車に。急行に。口車に。車に。高速道路に。時代の潮流に。助手席に。尻馬に。時流に。親身に相談に。玉の輿こしに。地下鉄に。調子に。挑発に。電車に。猫が膝の上に。バイクに。艀しに。バスに。話に。飛行機に。ブームに。フェリーに。船に。ブランコに。ボートに。めきめき運に。マイクにノイズが。色と欲の誘いに。エスカレーターに。エレベーターに。おだてれば図に。作業がリズムに。シーソーの一端に。すいすい自転車に。すし詰めの列車に。店の経営が軌道に。誘いにうっかり。ぽんこつになるまで。太鼓の音に声がリズミカルに=辺見)。気軽に相談に乗ってくれる。何かと相談に乗ってやる。流れに乗る(潮の。人の)。▼波に乗る(時代の。流行の)。てんでに興に乗って話す。うっかりと面倒なことに乗りかかってしまう「佐藤巻。快適な乗り心地。乗り心地が悪い。柔らかな乗り心地の車。乗りづめ(車に。電車に。バスに。朝から晩まで。丸一日)。乗り物に(乗る。酔う)。▼打ち乗る(馬に。自転車に。バイクに)。かろうじて乗っかっている。▼乗っかる(背中に。ちょこんと。今にも転げ落ちそうな格好で)。乗りこなす(暴れ馬を。荒馬を。巧みに馬を)。颯爽そっと車を乗りまわす。車椅子に乗せる。車椅子を押す。買う前に試乗する。▼乗艦する(艦艇に。軍艦に。タラッブを上って)。▼乗車する(タクシーに。バスに)。▼乗船する(フェリーに。連絡船に)。搭乗券を手にして飛行機のほうへ歩きはじめる。飛行機に搭乗する。▶人となる(機上の。車上の。車中の。船上の)。機中の人になる。分乗する(タクシーに。二艘非その船に)。▼車に分乗する(数合の。複数の)。満員電車に揺られて学校へ行く。汽車にゴトゴトと揺られて辿たとどりつく!有吉。▼揺られる(駕籠に。電車に。バスに)。乗り込む(宇宙船に。先頭の車に。我先に客車に。先を争うようにして列車に。さっさと運転席に。せかせかと汽車に。がやがやと先を争って。ドアを蹴破るような勢いで光原)。乗り込んでくる(次々と乗客が。ぞろぞろ。とかどか。どやどやと。人がどっと)。ロープウエーで(山に登る。山を下りる)。ケーブルカーとローブウェイを乗り継いで頂上まで上がる。 **ばしゃ【馬車】** 馬車が(仉きしみながら揺れる。ガタタと荒っぽい音を立てて走る=石森)。馬車に(乗る。揺られる)。馬車の御者台に座る。車を馬が引く。硝子戸がけが終日辻馬車の扉のようにがたがたと慄ふるえている=横光。 **バス** バスが(信号で止まる。街角に消える。小揺るぎして動きだす。ターミナルを出発する。停留所に止まる。あえぐように坂を登ってくる=篠田。渓流を上下する巨大な噂ますのように往き来する=村上姿。速度を落とし悲鳴のような音を立てて険しい道を上る"伊集院。満員の乗客を詰め込んで発車する=石坂)。眼を細めて眺めるとバスが縞模様し注もの昆虫のよう伊集院。アスファルト道路にびったりと貼りつきくぐもった音を立てながらバスが斜面をかけのぼる"村上春。バスから降りる。生徒をバスで運ぶ。バスに(間に合う。酔って胸が悪くなる)。駅でバスに乗り換える。なかなか来ないバスに苛立からつ。時代のバスに乗り遅れまいとする=綱淵。バスの便が悪い。体をバスの揺れるにまかせる。バスを一台やり過ごす。大型バスを仕立ててやって来る。 **ふなのり【船乗り】** ▼船乗り(一人前の。ひとかどの)。船乗りに憧れる。板子一枚下に地獄がかいま見える“五木。水夫(年老いた。年若い)。頑固で老練な船長。船長を(務める。雇い入れる)。川の状態に精通している船頭。大漁か不漁かはすべて船頭の技量にかかっている鈴木光。船の乗組員。 **プラットホーム** 人気忙とのないブラットホーム。ブラットホームに降り立つ。ブラットホームを行き来する。線路を挟んだ向こう側のホーム。ホームが乗降客でごった返す。ホームで電車を待つ。駅のホームで落ち合う。ホームに(雪が吹き込む。乗客があふれる。電車が到着する。人が溜まり始める)。アナウンスの声がホームに響く。乗客がホームに降りる。乗客の波に押されるようにしてホームに出る=東野。 **またがる【跨がる】** ▼またがる(椅子に。馬の背に。オートバイに。悩くらに。自転車に。バイクに。ひらりと馬に)。▼打ちまたがる(馬に。自転車に。バイクに)。馬乗りになって(体重をかける。殴る)。 **れっしゃ【列車】** 緩やかな速度で動き出した列車。列車が(駅に到着する。不通になる。峠の勾配にさしかかる。トンネルに入る。トンネルを出る。ガタンと音を立てて動き出す伊集院。尻をぶっ叩かれた馬のようにあえぐに小局。すべるように動きだす=北。悲鳴をあげてカーブを廻る=小局。ホームの時計に合わせるような正確さで辷すべりこんでくる=壺井)。車内に入れないほど列車が混雑する=高橋和。列車がホームに入ってくる。列車から乗客がぞろぞろ降りてくる。丸一日列車に乗りづめ。乗る列車を岡迎える。庭の先を走っているように大きな音を立てて貨物列車が通り過ぎる=山本有。最終列車に間に合う。臨時列車が出る。客車を増結する。隣の車両に移る。車両を(増結する。連結する)。新型車両を投入する。特急に乗る。 <869> # 入る・食い込む **うち【内】** 内から辛うじて支えていたものが崩れる"黒井。部屋の鍵を内からかける。憎悪を内に秘める。やましい性分を内にひそめる=石坂。内なる(喜びを味わう。声に耳を傾ける)。内側から(鍵をかける。ドアをロックする。美がにじみ出てくる)。内面が白日の下にさらされる。内面的な葛藤。 **おかす【侵す】** 侵す(禁断の域を。良心の苦しみを)。人権を濫みだりに侵すことはできない=舟橋。選挙の地盤を食い合う。▼侵食する(領土を。不幸が心の片隅を"山田詠)。▼侵害する(人権を。他人の権利を。著作権を。ブライバシーを)。 **おしいる【押し入る】** ▼押し入る(足音が耳に。賊が部屋に。盗賊が屋敷に。出来心で。行き当たりばったりに)。我が物顔に押し入ってくる。乱入する(賊が屋敷に。調和した空気に異分子が)。 **くいこむ【食い込む】** ▼食い込む(肩に飽砂ばの帯が。紐ぃもが両肩に。ベルトが腹に。下駄の歯に雪が。恐ろしさが心に。ぐいぐいと鳩尾込於に。嘆きが深く心のなかに壺井。言葉が鋭い棘とげになって高樹。喉のとに黒い紐が毒蛇のように深く=斎藤栄)。握りこんだ爪先が手のひらに食いこむ安部。肉に食いこむほどくくりつけてある荒縄"長与。爪が手のひらに食い込むほど強く握りしめる『重松。じりじりと食い込むような悩みと迷い=石森。食い入る(太刀が身に。爪が皮膚に。現実の重みが心に)。食い入るように(手紙を読む。試算表を見つめる=池井戸)。肩に食い入るように重い。写真を食い入るように見つめる=重松。▼めり込む(体にバンチが。砂に車輪が。銃弾が壁に)。 **げんかん【玄関】** 大理石を敷きつめた玄関。不意に玄関が騒がしくなる。玄関から(外に出る。堂々と入る)。後ろ姿を玄関から見送る。玄関で呼び鈴を押す。玄関に(打ち水をする。顔を出す。ボーチがある。迎えに立つ。靴を脱ぎ捨てる。灯影胞が一つ洩もれていない徳田)。居間から玄関にとって返す。車を玄関に横付けにする。荷物を玄関に運びこむ。玄関の(明かりが灯る。式台に立つ。扉を開ける。三和土於たに下りる。チャイムが鳴る。両側に整列する)。玄関まで見送りに出る。わざわざ玄関まで出迎える。煉瓦败炊しきのアブローチが建物の玄関まで続く“阿川佐。玄関を出たり入ったりする。挨拶もそこそこに玄関を出る。関口にたたずむ。玄関先で話を始める。玄関先に盛り塩をする。玄関ホールに郵便受けが並ぶビル。正面玄関を入る。上がり框がまに腰かける。貼りついたように上がり框に座り込む=山崎。固く表戸を閉ざす。ホテルの車寄せに車が横付けされる。 **こくない【国内】** 国内が疲弊する。国内に戦雲が広まる。国内を旅する。国内市場を掘り崩す。国中が二つに割れる。内地の土を踏む。入国を(許可する。拒絶する。チェックする)。観光ビザで入国する。入国手続きを済ませる。 **さしこむ【射し込む】** 射し込む(窓から陽光が。座敷に満月の光が。朝日が部屋いっぱいに。月影が朧ちぃに畳の上に=福永)。かすかな一条の光がさしこむ安部。絨毯というに冬日がさやかに射しこむ=坂口。表情に得体の知れない陰りが差し込む=和久。ブラインドから差し込むぼんやりとした光"乃南。窓の隙間から白々とした光が射し込んでくる=北原。差し入る(月の光が。夕陽が)。▼射す(胸に暗い影が。うっすらと日が。どんよりと鉛色の月光が。表情に希望の色が。正午の日がうららかに)。 **しのびこむ【忍び込む】** ▼忍び込む(早朝の薄明が。胸に隙間風が。ひそやかな音が)。警戒の目をかすめて忍びこむ"大変。冷気が窓から忍び込んでくる藤本。忍び入る(冷たい空気が。迷いが心に。屋敷に。音もなく部屋に)。 **しんにゅう【侵入】** 外敵の侵入に備える。雨の侵入を防ぐ。敵の侵入を許さない。▼侵入する(外部の者が。窓から部屋に。奥地深く。賊が外部から。ホームベージにハッカーが。戦車群が雪崩を打って今日)。夕暮れがカーテンを破って侵入してくる池田。侵入者を警戒する。地上部隊が侵攻する。侵攻を開始する。▼侵犯する(領域を。領海を。領空を)。他国を攻め侵す。 **しんにゅう【進入】** ▼進入する(自動車が交差点に。電車がホームに。飛行機が滑走路に。集団がとやとやとロビーへ)。▼進み入る(円内に。つかつかと)。 **しんりゃく【侵略】** 異民族の侵略にさらされる。不当な侵略に対処する。侵略の非を詫びる。▼侵略する(四隣を。隣国を)。侵略意図を露ぁらわにする。挙兵して侵略者と戦う。絶望が心をだんだん蚕食する。 **じょうない【場内】** 場内が(爆笑に包まれる。喜びの渦で沸き立つ石森)。さわついていた場内が静まる。場内にアナウンスが流れる。拍手が場内を揺るがす。構内に汽笛が響き渡る。駅の構内に入る。 **たいない【体内】** 怒りと屈辱感で体内が火照る"小林久。体内に元気を吹きかける。酸素を体内に取り込む。肉体的欲望が体内に盛り上がる。血液が体内を循環する。身のうちが竦すくむような恥ずかしさ=岡本。興奮に身の内が震える。憎悪が身の内に燃え上がる。体の中で血が躍る。体の中に(幸福感が充満する。ガスがたまっているような不快感"乃南。小さな生命が宿る=藤本)。じわじわと怒りが体の中に広がっている=藤田。体の中を風が吹き抜けていく。衝動が体の中を走る。喜びが体の中を駆けめぐる。身内が緊張と興奮に引き締まる。瘧病はにみのように身内が震える=森殿。身内に力感が充実する。▼身内に湧き上がる(凶暴な力が。憎しみが)。 <870> 身裡ふうをつつみきれぬよろこびが匈い上ってゆく=檀。 **たちいる【立ち入る】** 「立ち入る(私生活に。線路内に。他人のブライバシーに。人の家の事情に)。立ち入る余地がない。立ち入った問いかけをする。部外者は立ち入り禁止。立ち入り調査を行う。 **つかる【浸かる】** 浸かる(どっぷりと信仰に。膝から腰まで泥に。自己憐憫吼んにどっぷりと。水溜まりに足がびしゃっと)。▼どっぷり浸かる(商売に。妄想に。海が太陽の光線に。抜き差しならない深みに首まで"熊谷)。水に浸かる(足が。腰まで)。 **とつにゅう【突入】** 突入する(新たな時代に。後半戦に。最終盤に。ストライキに。選挙戦に。戦争に。敵陣に。一団の武士が槍ゃ』を連ねて=山田風)。 **とびこむ【飛び込む】** ▼飛び込む(相手の懐に。事件の渦中に。助走をつけて。先を争って水に。好きな人の胸に。二メートルほどの高さから。水にほしゃんと。命を賭けて火の中に"有栖川。どぼんどほんと水中へ"本多勝)。▼飛びこむ(駈けるように家の中に"有吉。勇敢に学生運動に瀬戸内。突風のごとく部屋へ=池波)。徒手空拳で動乱のなかに跳びこむ=木庄。海に飛び込む(頭から。まっさかさまに)。▼ざぶんと飛び込む(海に。川に。水に)。船の中に猿ぼしのように飛び込んで行く=有島。蝶のように飛びこんできた女=水上。▼目に飛び込んでくる(鮮やかな色が。光景が。無惨な死体が)。▼飛び込んでくる(耳に妙な噂が。息せき切って。色を失って。髪を乱して。血相変えて。寒気が容赦なく。機会が向こうから。大きな活字が眼の中へ=山崎)。言葉ががんがんと耳にとびこんでくる=本庄。鳥の声が耳に飛び込んでくる。相手の眼が慕いよる子のように瞳の中へ飛びこんでくる=水上。▶躍り込む(西日がまぶしく部屋に。わめき声をあげて堂字の中に)。人生のダイビングを試みる=今水。▼身を投じる(海中に。火中に。激流の中に。政界に。一ジャーナリズムの世界に)。 **どろぬま【泥沼】** 泥沼から(抜け出す。足を抜け出せないでいる)。泥沼と化した戦争を終結させる。泥沼に足を足を取られたようにじわじわと深みへ足を引っ張り込まれる=梅本。人生の泥沼に足をとられる。ぐずぐずと愚劣の泥沼にはまりこんでしまう高橋和。果てのない報復合戦の泥沼に陥る=横山。泥沼の抗争が続く。現実という名の泥沼の低みに引きずりこむ!佐高。泥沼のような(闘争のすえに結局敗北する"高橋和。果てしない戦いに日々を送る=豊田)。良人公。の記憶をかみしめながら暮らした二ヶ月が泥沼のように息苦しい“石川。 **ないぶ【内部】** 人間を内部から破壊させる=桐野。人間の内部を照らし出す。部屋の内部をぐるっと見回す。内界から外界へ出る。そっと中を覗のぞきこむ。 **にゅうじょう【入場】** 入場を制限する。入場する(無断で。無料で。時叫差をつけて)。入場券を(買う。手に入れる)。大勢の入場者で会場がこたつく。入場者をチェックする。入館を(許可する。制限する)。▼入館する(映画館に。図書館に。博物館に。美術館に)。 **はいっていく【入って行く】** ▼入って行く(山刀を手に林の中に池澤。円を俯らっき加減にこつこつと二葉亭)。入っていく(幻想の世界に。山の谷あいに。音を忍ばせて。しぶきを上げて川に。ためらいがちに。暖簾をかき分けて店に。家の灯りに吸い込まれるように家に=干刈。道が緩やかに起伏しながら村の中に=篠田。軽快な足取りで自分の家へ三浦し)。 **はいってくる【入って来る】** ▼入ってくる(客が店に。ずいと座敷に。風がどうっと。唐紙を開けて。船が続々と。すっっと人影が。おずおずと室内に。出てゆくのと入れ違いに。客が次から次へと。荘重な足どりで。どたどたという勢いで。扉を押し開けて。安い品物が海外から。どんどこお金が!清水義。水のような冷気が=田辺。冬の弱々しい陽射しが斜めに=乃南。さわやかな風が踊りながら=眉村)。部屋に入ってくる(ずかずかと。のそりと。学生たちがどやどやと三浦俊)。耳に入ってくる(声が。話が。噂が微風のように今更)。 **はいらない【入らない】** ▼入らない(なかなか点が。膝に力が。練習に身が。迷惑のうちに。物の数にも。書かれてあることが頭に。言葉がまるで耳に)。話が頭に入ってこない。足を踏み入れた形跡がない。一歩も足を踏み入れたことがない。誰も足を踏み入れない。 **はいりこむ【入り込む】** ▼入り込む(心に隙間風が。窓から西日が。円陣の中に。古典の世界に。細い路地に。内陸深く。立ち入った議論に。他人の庭先に勝手に。不吉なものが胸に。夜の冷気が部屋に。ドアから素早く)。入り込む隙がない。弟は僕らの仲間の生活のなかへ水のように柔軟に入りこんだ大江。入り込む余地がない(感傷の。新参者の。他人の)。▼連れ込む(男を。女の子を。客を。狭い路地に。部屋に。物陰に。無理やりにホテルへ)。花見客が繰り込む。身を躍らせて転がりこむ。▼しけこむ(女とホテルに。女のところに)。▼脚入味礼にする(見知らぬ犬が。室内に荒々しく)。無遠慮な闖人者。不意の闖入者に驚く。▶のめりこむ(悪の道に。仕事に。推理小説に)。妄想の世界へのめりこんでいく。没入する(過激な運動に。快い妄想に。即興演奏に。本の世界に。無心に快楽に)。なだれこむ(群衆が広場に。敵が領内に。人々が入り口に)。他国者が大勢なだれこんでくる。乗り込む(単身惑の巣に。敵のアジトに。手下を連れて。命を捨てる覚悟で)。敵の牙城に乗り込んでいく。やくざを引き連れて乗り込んでくる。 <871> # 入る・食い込む **はいる【入る】** ▼入る(詳しい情報が。警察の手が。細かいひびが。商売に身が。大量の注文が。話に熱が。慌てて止めに。お寺の本堂に。学問の世界に。十指のうちに。姿が視野に。ずばり本論に。船団が湾に。全貌が視界に。建物の中に。テントの中に。土地が抵当に。橋の下の闇に。話が枝葉に。話が核心に。早く寝床に。部屋に勝手に。忘我の境地に。報告が次々に。昔話モードに。物語が佳境に。山間祈峠の道に。ヨットが港に。漁が最盛期に。老人の域に。穴にすぼっと。事件の知らせが。終日ふんだんに陽が。すうすう隙間風が。ストッキングに伝線が。税務署の査察が。飛び込みの客が。生バンドの演奏が。フロントから電話が。ボイラーに火が。いきなり本題に。いち早く守備固めに。一緒にお風呂に。鬱蒼とした樹海に。大通りから脇道に。遅ればせに話の渦に。思いきって店内に。勝手口から厨がりに。山菜採りに山に。仕上げの段階に。首尾よく希望の大学に。スリムな部類に。戦況が最終局面に。捜査が袋小路に。直ちに実験の準備に。月が最後の週に。電車がホームに。飛びこむように部屋に。熱烈な恋愛関係に。バッターが打席に。人影が目の隅に。人並みに学校に。ビルのエントランスに。ふらふらっと店に。本格的な梅雨に。悪口が本人の耳に。ざぶざぶと川の中へ。するりと隙間から。そっと裏曰から。部屋にずかずか。むじなみたいに穴に"司馬。イタチのように何度も振り返って確かめてから徳水)。力が入る(肩に。声に)。▼目に入る()みが。額から流れる汗が)。▼入っている(かなり気合が。髪に櫛目がしが。考えに筋金が。少し酒が。外壁にひび割れが。よくよく年季が。手紙が郵便受けに。教科書の隅から隅まで頭に=飯田)。別の世界に入ってしまう。是が非でも入りたい。客がぽつりぽつりと入り始める。入ろうか入るまいか迷う。入ろうにも出ようにも所在に窮する。誰でも自由に入れる。機会があれば一度入ってみたい。出口の方からこっそりとタダで動物園に入るような入り方尾辻。▼歩み入る(客間に。思想の実践に。晩年に。未知の時代に。迷路に)。室内にそっと滑り入る。乗り入れる(空き地に車を。辺部へんな道に)。▼門をくぐる(会社の。病院の。ふらふらとわが家の永井龍)。居酒屋の暖簾もをくぐる=横山。家の敷居をまたぐ。▼チェックインする(ホテルに。旅館に)。チェックインを済ませる。▼流し込まれる(生命力が。鋳型に)。▼入所する(保育園に。老人ホームに)。足を一歩部屋の中に踏み入れる。▼入れない(満員で。いったん)。 **いれない【入れない】** 迷いこんだら出られなくなりそうでうっかり中にも"小松太)。車の乗り入れを禁止する。厳重な関を設けて一歩も入らせない。腰をかがめなくては入れないような低い戸古井。 **はまる【朕まる】** ▼はまる(落とし穴に。穴にすぽっと。ビンディングが靴に。まんまと術中に。仕掛けた罠もなにまんまと。狙いにぴたりと。ガラス片を寄せ集めた窓ガラスがバズルのように=林京)。▼深みにはまる(焦れば焦るほど。難しい芸術論の)。もがけばもがくほど深みに嵌まる三好微。▼はまりこむ(足が穴に。困難な状況に。泥沼に。相手のペースに。こたこたした恋愛関係に。ずるずると深みに。空しい水かけ論に)。▼当てはまる(条件に。法則がきちんと)。挟まる(するめが歯に。気まずい沈黙が二人の間に"鈴木光)。 **ひっこむ【引っ込む】** ▼引っ込む(自分の部屋に。洞穴の中へ。カウンターの中に。ステージの袖に。郷里におとなしく。六方を踏んで花道を"深沢。夫婦連れ立って在所に=山本一)。このままおとなしく引っ込むとも思えない三好徹。 **ふみこむ【踏み込む】** ▼踏み込む(危険な地域に。想像の領分に。他人の庭に。洞窟の奥に。ブロの道に。更に一歩。知らない場所に。土足のままずかずか。踏み込んではいけない領域に=鈴木光。他人の心に土足で絞辻)。▼足を踏み込む(世の裏側に。一歩一歩ぬかるみに「向田)。隙を見て踏み込もうとする。従来より踏み込んだ発言。より踏み込んだ対応。関げるとした静寂の中に踏み込んだ感じ"本庄。ぬかるみに深く踏み込んでいく。踏み込みが(足りない。不十分)。踏み入る(心の闇に。ズボンの裾が濡れるのもかまわず川へ三浦し)。 **ふみわける【踏み分ける】** ▼踏み分ける(アクセルとブレーキを。二つのペダルを)。踏み分けていく(屍吼跡の間を。厳ゃぶを。雪道を)。 **まちなか【町中】** 町中を行ったり来たりする。目的もなく町中をぶらつく。市中が火の海となる。川が市中を流れる。ぶらぶらと市中を歩く。市内の中心部に位置する。市内を武者行列が練り歩く。中心街が(閑散とする。にぎわう)。 **もぐりこむ【潜り込む】** ▼潜り込む(寝床に。陽が雲に。布団の中に。ベッドの下に。客に化けて。さっさとベッドに。反対派の会合に)。鼠ずのようなすばやさで船内へもぐり込む=柴田餸。▼もぐりこませる(下肢を。全身を。指先を)。足がもくり込むような湿地高井。潜入する(異分子が。敵地の奥深く)。 **わけいる【分け入る】** 分け入る(奥地に。学問の道に。草の中に。暗闇の中に。木立の中に。未開の広野に。幻想の中へ。山中深く。森の奥へ。沢にざぶざぶと。山の中に徒歩で。落ち葉の積もった林の中へと="福永)。 **わってはいる【割って入る】** 割って入る(レフェリーが。つかみ合いに。二人の間に。二人の会話に。横から話に。岡へ。たまりかねて。まあまあと。敵兵のただ中へ)。割って入る余地がない。 <872> # 這う **あぶらむし【油虫】** アブラムシがバラの枝をぎっしり目のつんだ刺繍のように覆う小松太。油虫も滅亡してしまうほどの霖雨りんが惘ぁきれもしないで降り続く長塚。 **あり【嬢】** ▼蟻(営々として餌を運ぶ。黒いゴマ粒のような軀炒らの安岡)。蟻が(芋虫を運ぶ。蚯剣☆みの死骸に群がる。黒い長い一列になって進軍する=佐藤巻。粉つぶでも曳っくみたいにもたもたする=杉本。塔を造るような遅々たる行動!幸田露)。アリが餌を運ぶようにぞろぞろ子どもたちが坂をのぼってくる=長崎。蟻塚がうずたかく積もり蟻が吹き出すように溢れている=大岡。後ろ向きに雪の上を蟻が獲物を運ぶように蹣跚んとする=本庄。車や人の流れが巣をこわされた嬢がうろうろ走りまわっているよう=日野。群がった人が蟻が小さな穴に群がり入るように押し倒し押し返し入り口になだれ込む=山崎。娘の(澄はいい出る隙間もない布陣。一穴から大きな堤防が崩れる。甘きにつくごとく押し寄せる『里見。歩みのようにほんの少しずつ動かす=梶井。集団のごとく営々として勤労する=石坂。もぐりこむすきまもない堅固さ=塩野)。巣穴に向かう蟻の行列。砂糖に蟻が(たかる。つくように人が集まってくる"大佛)。刃物を懐にしまい込んだ者たちが赤蟻のように押し寄せてくる"高橋元、蜜に蟻、磁石に鉄のように引きつける荻野。ビルの五階の窓から見下ろすと通行人が蟻のよう福永。蟻のような異分子の潜入を防ぐ=松木。穴ごもりの機を逸した蟻のような人々の群れ"阿久。指先に押さえられた嬢のような情けない滑稽なあがき椎名崎。蟻のように(四方から集まってくる群衆=徳田。人がうごめく街路!宇野利。山肌を道いただ黙々と山奥を目指す水井路)。下界を見下ろすとアリのように小さく車が走っている=北。アリのように黒々と人がたかる=辺見。卑小な日常にめぐらされた堅牢な牆壁んこうの隙円から蟻のように追い出す=中野美。人の群れが黒蟻のように集まる"有鳥。うず高く蟻塚のように盛り上がった籾殻㎏以大岡。踏みつけられた蟻んこの巣のような大混乱に陥る=飯田。 **いもむし【芋虫】** 丘の上に芋虫が立ち上がったような巻雲がおびただしく並ぶ"大岡。眼の上に芋虫を半分に削いで貼りつけたような太い畝うぇがくねくねと動いて浮かび上がる=向田。芋虫のごとく身をよじる若竹。芋虫のような太い指=貫井。芋虫のように(丸くなる。クネクネと進む=北)。草の上でイモ虫みたいにゴロゴロ転がって過ごす佐藤愛。 **いもり【蝾螈】** いもりがはらわたをだしたような洋服"坂口。錆びた黒い水に蠑螈が赤い腹を見せている"田山。山々が蠑螈の背のように黒い"志賀。 **うつぶす【俯す】** 息も絶え絶えにっつぶす。崩れるようにうつ伏す“海音寺。うつぶせに(水に浮かぶ。ベッドに倒れこむ)。開いた本をうつ伏ぶに置く。地面にうつぶせになる。深い渓谷をのぞくような姿勢=梶井。伏してお願いする。▼伏す(うつぶせに。地面に)。▶身を伏せる(地べたに。地面に)。▼突っ伏す(血の海に。机に。テーブルに。床に)。のめるようにがくりと突つぶす=山本有。疾風にゃの過ぎるのを待つように耳を塞ふさいでつっ伏す=菊池。畳に突っ伏して泣く。 **かいこ【蚕】** 蚕が(糸を吐く、三眼を過ぎる)。蚕が桑の葉を(かじるようにして無味乾燥な参考書の頁を一枚一枚と読みすすむ=高橋知。食っているような音を立てて魂がすりへらされてゆく=林炎)。蚕を飼う。うとうとかいこのように眠っていた生活が鼓動を打ち始める=小川。蚕のように棚の中に入って寝る=小林多。蚕が繭を作る。繭から糸を取る。繭を(煮る。つくり始める前の蚕のように顔も手も皮膚が透きとおるように青白い=日野)。昆虫が蝶になって繭を食い破って飛び出ようとするのに似た青春の一時期=伊藤慈。繭の中の蚕のように人を包む雪"辻井。小指が次第にうっすらと糸に包まれて繭のようになる三浦彩。 **かげろう【蜉蝣】** 薄羽かげろうのかさなりあった翅はぁが油のような光彩を流す=梶井。蜉蝣のように(薄い背中。頼りなげな後ろ姿"北原)。 **かたつむり【蝸牛】** かたつむりがすっぽり殻の中に閉じこもったように手足をひっこめ丸くうつぶせになる=石森。蝸牛が背のびをしたように延びて海を抱え込んでいる函館の街"小林多。小さなかたつむりのような女の子の耳"向田。蝸牛のような赤ん坊の拳=横光。カタツムリのようにゆっくりじっくり歩く山本昌。 **かに【蟹】** ▼蟹(砂と見分けられない淡い影のような"中局敦。もぎたての果実のように新鮮な軽い味の=太宰)。蟹が(穴から出てくる。泡をふくように小さく唇をふるわせる=阿人)。カニがブクブク泡をふく=開高。蟹の(足をぼきぼきと折る。爪のような梢の先端「日野。遥はいつくばったような醜い岩山"大岡。鋏似さのようにかじかんだ手=小林多)。親指の根元が蟹のはさみの肉のように隆起する河野。手の先が蟹の身のようにビンク味を帯びている=北村。雌のカニは深く広大で起伏に富んだ味を持っている=開高。盤は甲縦に似せて穴を掘る=山岡。穴から出てきた蟹ほど向こう見ず島尾。蟹のように(横に歩く。白い泡の中を餌はう島崎。横向けになって足をかわす。壺井)。錨いかが錨穴に大きな黒い鉄いろの蟹のようにとりつく三島。手足を徴のようにかがめる=山本息。平家蟹のような(人の好い顔つきで笑う壺井。難しそうな顔をする=北村)。砂の亡霊のような小祭"中島敦。 **かぶとむし【甲虫】** 甲虫が花粉にまみれてずっぷりと蜜に酔う中。兜虫じとのように見える装甲自動車高橋和。乗用車が一台、起き上がれない甲虫のように腹を見せたまま放置される=干刈。自動車がカブトムシの背中のように光った尻を見せながら泥水をはねあげて行く安岡。 <873> # 這う **がま【蝦签】** 蝦墓がつくばったような家徳永。「むう1」という、ふんづけられたガマガエルの発するような叩ぅぁき声をたてる荻野。がまのような口をした男"高橋和。眼を募がきのように細くする=大岡。ひき蛙が、が跳ねるような恰好いいで雑巾をかける連城。蔡蛙込忌ががのさのさと出てくる。煙草入れが藻蛙の腹のようにふくらむ梅本。叩きつけられたヒキ蛙のように平べったくなる=獅子。 **かまきり【燃螂】** かまきりが前足を上げて身構える。麦薬かばのようなカマキリが老いさらばえた妹粉を引きずってのろのろと歩く=内海。長身に緑色の刃を振り立てたかまきりの殺気がみなぎる=武田爽。しゃなりしゃなりとかまきりみたいな姿で歩く水井路。蟷螂みたいな痩せた男=吉川。カマキリのように(細い腕。痩せた腕)。蟷螂みたいに頬のそげた顔・吉川。 **かめ【亀】** 老いたる頑強なカメとでもいった首を突きだす=開高。カメのように身を固める=飯田。亀のように蒲団から首だけだして飯を食ったり煙草を吸ったりする高橋和。引っくり返された亀のように四肢をばたつかせる=大藪。ビンボンの球そっくりの殻がぶよぶよで柔らかい海亀の卵=勝目。釣るし亀が泳ぐような格好をしてシャツを脱ごうとしてもがく二葉亭。亀の子のように(怯ぉぃえた顔。首を伸ばして待つ=梅本。ちょこんと首を引っこめる=山本有)。蒲団の下で亀の子みたいに手足を縮める"古井。すっぽんに悩みつかれる。すっぽんの血を飲む。まるで月とすっぽん、比べもならぬ差がある『柴田銚。すっぽんのように背を曲げる=林美。ウツボよりもスッポンよりも強そうな歯畑。 **カメレオン** カメレオンのように日常生活の表面の色を変える=大佛。情緒がカメレオンのように色を変える=梶井。カメレオンみたいにその時々によって考えを変える=石森。 **くも【蜘蛛】** クモが枝から枝へ糸を張る=高田。蜘蛛が巣をはるように鬱屈と粘る分泌物が網を拡げる=黒井。天井から蜘蛛が下がって来る。人間が蜘蛛の子のように暴風雨の海へ落ちて行く=平有。蜘蛛の子を散らしたように四方に敗走する=井上翊。四方八方へ蜘峠の子を散らすように逃げる=栗本。餌食を狙う蜘蛛のように音もなく小屋の外へ忍び寄る芥川。壁へ蜘蛛のようにへばりつく=幸田文。へへエと平グモのように平伏する“坂口。平蜘蛛い35のようになって謝る"舟橋。細い絹糸ほどの強度を持った蜘蛛の糸=清水産。白く輝いた蜘蛛の糸が弓形にふくらんで幾糸も幾糸も流れてゆく=梶井。事実が蜘蛛の糸のごとく絡み合っている"村松。五感を蜘蛛の糸のように張りめぐらせる=氷室。感情の紋が蜘蛛の糸ほどに細くなる幸田露。政治というやつは逃げようとすればするほどからみついてくる蜘蛛の糸みたいなもの安部。蜘蛛の巣が(顔に引っかかる。霧の粒を宿して空中に姿を現すぃ内海)。押入れの天井に蜘蛛の巣が張っている=江戸川。蜘蛛の巣に(顔をつっこんだような粘っこく不快な感じ!小林へ。かかったようにきりきり郷いを続ける=永井龍)。細かい雨がくもの巣のように覆いかぶさってくる=小川。微細な電線の束がくもの巣のように内壁のあちこちに張りめぐらされる=光瀬。見えない組織をクモの巣のようにのばす"小林多。縮れた長い髪が蜘蛛の巣のように揺れる=山田詠。観察されている気配が蜘蛛の巣状に顔に張りつく=島田。長たらしい数式と心電図みたいなグラフが脳味噌に蜘蛛の巣みたいに張っている=大庭。 **げじげじ【姉蜓】** げじげじのような眉。如蜓のように嫌われる=里見。 **けむし【毛虫】** 紙幣が毛虫が喧嘩をしているような音を立ててポケットにおさまる=清水俊。毛虫に撫でられているような感触の張りついた左手の小指=宫本郎。グロテスクな毛虫の名前を口にするように気味悪そうに発音する=小川。嫌いな毛虫を見るような目つき"永倉。毛虫のような眉がびくびくと動く本庄。山が毛虫のような色をした地図"大佛。毛虫のように(忌みきらう。嫌われる)。 **ごきぶり** 町のゴキブリみたいに町の底を旬はいまわって暮らす=田辺。ごきぶりを駆除する。腹を強く殴られてゴキブリのようにひっくり返る=小林信。酔つばらったごきぶりのようにのろのろと歩く=五木。ゴキブリのようにシーツにへばりつく=池田。 **こんちゅう【昆虫】** 驚くほど薄くて昆虫の羽みたいな布内田糸。自動車の音が大きな昆虫の羽音のように聞こえる北村。二十歳の自分の苛立心。たしさは標本に針で止められた昆虫のあがきに似ている=伊藤砦。微小な昆虫の翅はゃをむしり取ったような薄べったい種吉行。眼を細めて眺めるとバスが縞模様しぶもの昆虫のようぃ伊集院。女や老人たちが昆虫のように丘をはい上る=五木。方向感覚を失った昆虫のように死に向かってひたすらあがく阿刀田。 **さなぎ【蛹】** 蛹が蝶に変貌するように妻が変貌する"中村真。繭の中で眠っている蛹の生活のような半生石坂。さなぎのような陰茎が濡れたまま放り出されている=池田。姉のような期間を六畳一間の部屋で過ごす谷村。幼虫が(孵かえる。蛹に変わる。孵化ふかする)。 **じむし【地虫】** 地虫がジーンと鳴く。縁の下で地虫がじむしか細く鳴く=島尾。地虫の(長い順処『れた声が闇の中に聞こえる遠藤。鳴くようなスチームの音"日野)。時計が地虫の鳴くような耳障りな音を立てる=高井。どこの石垣の隅で鳴くとも知れないようなほそぼそとした地虫の声!島崎。空気の音がジーンと地虫のように聞こえる静叔藤本。 <874> # 這う **じめん【地面】** 糠ぬかの山を踏むようにふかふかの地面"日野。地面が足にふっくらとこたえる古井。湿ったウレタンマットのように一歩踏み出すことに地面が凹へこむ"島田。周囲がぐるぐると回転して地面が沈みこんで行くよう赤川。地面から(土の匂いが湧いてくる。熱気が立ちのぼる)。地面に(穴を掘る。尻餅をつく)。頭を地面にこすりつけて謝る。手から鍵がぼとりと地面に落ちる。花びらが地面に舞い降りる。ひらりと地面に降り立つ。よろめいて地面に手をつく。地面すれすれに飛ぶ。どすんと地べたに座り込む。霧が執拗に地表から離れない藤沢。 **しゃくとりむし【尺取り虫】** 尺取り虫のように音もなく声もなく気がついたらそこにいるといった生き方向田。からだを尺取り虫のようにして起き上がろうとする"小林多。指が尺取り虫のようにかがんだり伸びたりする=佐藤奈。※末にかかった尺取り虫のようにうろうろする=本庄。 **しらみ【虱】** しらみが(たかる。湧く)。露店がぎっしりとシラミの卵みたいにつながる。安岡。人間が虱より無造作にたたき殺される小林多。虱のようにへばりついている席を離れる=中。憎悪が虱のようにわく小林多。糸の縫い目に白い埃唄このように虱たちがじっとかくれている=遠藤。 **しろあり【白蟻】** 白蟻に食いつくされた館のように一突きで崩れる脆もっさ=瀬戸内。巨大な要塞が不吉な日嬢の塔のごとく夕暮れの淡い闇の中にくっきりとそびえ立つ=村上。 **だに** だにがたかる。だにに食われる。他人の弱みにつけこんでダニみたいに食らいつく宮本部。だにのようにしっかり食いつく島尾。びったりとくっついてダニのように離れない男藤沢。 **ち【地】** 地から湧くような虫の鳴き声高井。地に花が咲きあふれる。五体を地に投じる。残雪が地にはりつく。人影が地に倒れる。地を(叩く雨の音。ゆるがすような馬蹄てのとどろきが聞こえる"司馬)。二本の足で地を踏みしめる。焼けた烈風が地をなめて走る。喘ぁえぎ喘ぎ地を道はうように登る=宮尾。灌木が地を這うように所々に群がる=遠藤。捜査の原点に立ち返って地を這うような捜査を行う志茂田。怒鳴り声が低く地を這うように追ってくる=小池。鳥が地をかすめるようにして飛んでいく北原。 **とかげ【蜥蜴】** 縞しまのある尾をひいてぬらめき歩くとかげ蜥蜴"中。蜥蜴が日に光ってちょろちょろする=田山。蜥蜴のようなすばやい身こなし=藤沢。トカゲのように首をつん伸ばす“室生。蜥蜴のように怯ぉぃえた眼"遠藤。 **どくじゃ【毒蛇】** 毒蛇に噛まれる。毒蛇の口を脱する。毒蛇のように忌み恐れる―瀬戸内。ガラガラヘビが非常に薄い金属の板がいくつも触れ合って立てるような音を立てる=庄野。ハブが矢のように飛びかかってくる=畑。蝮にもだ蛇だと嫌われる男(水井路。首を蝮の鎌首のように斜めに持ち上げる=武田爽。 **なまこ【海鼠】** 海鼠さながらにグニャグニャ掘られる杉本。数年ぶりで海底から近い出したとたん激流に揉もまれてしまったナマコの気分で丸まって横たわる荻野。ナマコは巨大な海の胡瓜大庭。ニスを塗ったナマコのように顔がてらてらと光る=小池。海鼠のようにぐったりとなる泉鏡。 **なめくじ【蛞蝓】** なめくじが地面を御はうほどののろさ=小林多。ナメクジが溶けるように目をすぼめて泣き顔になる=坂口。汗が背中をなめくじになって滑り落ちる高橋知。巨大ななめくじの道はったあとのようにヌメヌメとしている壁村上春。なめくじのように少しずつ行く=深沢。塩をかけられたなめくじのように小さく姿しょむ村。日の当たらぬところでなめくじのように生きる渡辺。ナメクジのようにひそやかな足取り飯田。 **なんたいどうぶつ【軟体動物】** 壁に軟体動物が這はったような跡が残る=山田詠。緊張のなくなった体が骨のない軟体動物のようぃ日野。躰怂らを軟体動物のようにぐにゃぐにゃにする=大江。女の臍、そのあたりがウミウシのようにぶよぶよしている=阿部。 **にじりよる【踊り寄る】** 「にじり寄る(こっそりと。じわじわと。そばへ。膝で。一膝。甘えるような声色で阿川佐)。▼にじり寄せる(膝を。身を)。いざる(畳を。身を。後ろに。ひと膝。横へ。座っていた位置を)。ずる(畳の上を。後ろに)。膝をにじらせる。 **のみ【蚤】** 狡猾な赤茶色の背をまるめて飛びかかってくる蚤林育。蚤が(休じゅうをのそのそと這いまわる。潰されるような不断の危険に曝さらされる藤枝。ぴょんぴょん跳びまわる=筒井)。ノミが食ったようなけが長崎。蚤の(顔を調べるような眼でじっと見つめる=吉川。喰ったような跡!井上ひ)。肌をさした一匹の蚤ほどの記憶にも値しない獅子。雁が過か向こうに去って蚤のように小さくなる高見順。雲霞がんのことぐ群がって肌をモザイクのように飾りあげた蚤たち=林京。 **はいあがる【這い上がる】** ▼這い上がる(霧が斜面を。蟻地獄はいじから。窮乏状態から。自分の力で。とん底から。もそもそと)。▼這い上がってくる(のと元に言葉が。恐ろしい予感が背中を"江戸川)。底辺から這い上がろうとする。泥の中で這い上がろうともがく。 **はいつくばる【這いつくばる】** ▼這いつくばる(足元に。岩の上に。地べたに。地面に。畳に。ベッドの下に。床に。両手をついて)。這いつくばって謝る。便所に這いつくばって嘔吐出ぅする。獣のように追いつくばってよたよたする=阿川弘。大地に這いつくばって震える=海音寺。 **はいのぼる【這い上る】** ▼道いのぼる(戦慄が背筋を。蔦ったが壁を。濡らゃが山肌を。片手が腿ももの内側を=船山)。足もとから這いのほる不安を感じる=戸川。体を怒りが這いのぼっていく高樹。足の裏から冷気が這い上ってくる。▼伝いのほる(崖を。急斜面を。茎を。山腹を)。 **はいまわる【這い回る】** ▼這い回る(もそもそ虱れらが。のそのそと。畳の上を泳ぐように"住井)。▼底を這いまわる(暗闇の。町の)。▼道い寄る(砂浜を。畳の上を。声を頼りに。潮騒乱心が足元に)。蟹かにのように横這いをする=眉村。 **はちゅうるい【爬虫類】** 蔦ったの葉の一枚一枚が赤っぽい金色にきらめき鏻ごぅに包まれた爬虫類の胴のようぃ日野。大きな爬虫類の皮膚のような不快な感じを与える言葉"伊藤整。巨大な爬虫類の皮膚のようなアスファルトの路面"日野。唇が濡れた爬虫類の脇腹のように光る大庭。夜の河が古生代から奸智幼んを貯えた爬虫類の腹に似ている=武田奏。恐竜のような波また波が氷と雪の鎧はぅに装われた岩に襲いかかる=加賀。恐竜みたいにとうに絶滅してしまった飯田。竜が雲を呼ぶ。竜は天に昇る。石段に群がった人の波がさながら竜のようにうねる“阿久。 **はらばい【腹這い】** 腹ばいに寝そべる。腹ばいになって(水平に撃つ。前進する)。▼腹ばいになる(地面に。畳に。寝床に。布団の上に。ベッドに)。▼腹ばう(板の上に。地面に)。廊下の板の上にほのかに暮れの色がはらばう野間。打ちひしがれた獅子のように腹這う機光。四つん這いになって(命乞いする。急な坂を体の重心が狂って)。 **はう【這う】** ▼這う(バイブが壁を。炎が天井を。地面の上を炎が。渋すさまじい怒りが眉のあたりに"林美)。▶佃ょう(音が地を低く。焼け残りの草の根方を煙が水底に動く影のように低く"大岡)。地を這う根に足を取られて倒れる。部屋の中を這って歩く。▼這っていく(あえぎあえぎ。女の床へ。身軽に崖の上に。床の上を少しずつ。廊下をそろそろ)。▼這ってくる(暮色が野面を。暑気がゆったりと)。▼視線を這わせる(便箋に。値踏みするように全身に熊谷)。▼這わせる(案内板に目を。風が埃児にを。傷痕に指を。首筋に唇を。股間に手を)。地の底を這うような声三浦し。山から術もゃが這いおりてくる。塀の表面を這いおりる。濃い夕闇が土問へ這いこんでくる=池波。▼這い進む(床を。じりじりと。のそのそと)。▼這いずり回る(虫が。地而を。床を。血まみれになって)。地獄の底を這いずる。 **ひる【蛭】** 姪が(吸いつく。皮膚に吸着する。身を縮めているように妙になまなましい唇"日野)。唇が美しい姪の愉のように滑らか川端。蛭のように嫌う~三島。穴のあいた軍靴の底から水が姪のようにジワジワと道はい上る=伊集院。蛭みたいに生き血を吸い取らないと承知しないという輩分が今束。くねった蛭みたいによく吸いつく唇"大庭。 **ひれふす【ひれ伏す】** ▼ひれ伏す(足元に。地面に。神像の前に。その場に。地に)。神前にひれ伏して礼拝する。浜辺にひれ伏して泣きくずれる。平伏の礼をとる。平伏した頭上に聞く真継。 <875> # 通う―つ **はいつくばる【這いつくばる】** ▼這いつくばる(足元に。岩の上に。地べたに。地面に。畳に。ベッドの下に。床に。両手をついて)。這いつくばって謝る。便所に這いつくばって嘔吐出ぅする。獣のように追いつくばってよたよたする=阿川弘。大地に這いつくばって震える=海音寺。 **はいのぼる【這い上る】** ▼道いのぼる(戦慄が背筋を。蔦ったが壁を。濡らゃが山肌を。片手が腿ももの内側を=船山)。足もとから這いのほる不安を感じる=戸川。体を怒りが這いのぼっていく高樹。足の裏から冷気が這い上ってくる。▼伝いのほる(崖を。急斜面を。茎を。山腹を)。 **はう【這う】** ▼這う(バイブが壁を。炎が天井を。地面の上を炎が。渋すさまじい怒りが眉のあたりに"林美)。▶佃ょう(音が地を低く。焼け残りの草の根方を煙が水底に動く影のように低く"大岡)。地を這う根に足を取られて倒れる。部屋の中を這って歩く。▼這っていく(あえぎあえぎ。女の床へ。身軽に崖の上に。床の上を少しずつ。廊下をそろそろ)。▼這ってくる(暮色が野面を。暑気がゆったりと)。▼視線を這わせる(便箋に。値踏みするように全身に熊谷)。▼這わせる(案内板に目を。風が埃児にを。傷痕に指を。首筋に唇を。股間に手を)。地の底を這うような声三浦し。山から術もゃが這いおりてくる。塀の表面を這いおりる。濃い夕闇が土問へ這いこんでくる=池波。▼這い進む(床を。じりじりと。のそのそと)。▼這いずり回る(虫が。地而を。床を。血まみれになって)。地獄の底を這いずる。▼這い出す(穴から。隙間から。床下から。のろのろとベッドから)。蟻の這い出る隙もない。▼道い回る(もそもそ虱れらが。のそのそと。畳の上を泳ぐように"住井)。▼底を這いまわる(暗闇の。町の)。▼道い寄る(砂浜を。畳の上を。声を頼りに。潮騒乱心が足元に)。蟹かにのように横這いをする=眉村。 **はちゅうるい【爬虫類】** 蔦ったの葉の一枚一枚が赤っぽい金色にきらめき鏻ごぅに包まれた爬虫類の胴のようぃ日野。大きな爬虫類の皮膚のような不快な感じを与える言葉"伊藤整。巨大な爬虫類の皮膚のようなアスファルトの路面"日野。唇が濡れた爬虫類の脇腹のように光る大庭。夜の河が古生代から奸智幼んを貯えた爬虫類の腹に似ている=武田奏。恐竜のような波また波が氷と雪の鎧はぅに装われた岩に襲いかかる=加賀。恐竜みたいにとうに絶滅してしまった飯田。竜が雲を呼ぶ。竜は天に昇る。石段に群がった人の波がさながら竜のようにうねる“阿久。 **はらばい【腹這い】** 腹ばいに寝そべる。腹ばいになって(水平に撃つ。前進する)。▼腹ばいになる(地面に。畳に。寝床に。布団の上に。ベッドに)。▼腹ばう(板の上に。地面に)。廊下の板の上にほのかに暮れの色がはらばう野間。打ちひしがれた獅子のように腹這う機光。四つん這いになって(命乞いする。急な坂を登る。道い回る)。▼四つん這いになる(ベッドの上に。体の重心が狂って)。 **ひる【蛭】** 姪が(吸いつく。皮膚に吸着する。身を縮めているように妙になまなましい唇"日野)。唇が美しい姪の愉のように滑らか川端。蛭のように嫌う~三島。穴のあいた軍靴の底から水が姪のようにジワジワと道はい上る=伊集院。蛭みたいに生き血を吸い取らないと承知しないという輩分が今束。くねった蛭みたいによく吸いつく唇"大庭。 **ひれふす【ひれ伏す】** ▼ひれ伏す(足元に。地面に。神像の前に。その場に。地に)。神前にひれ伏して礼拝する。浜辺にひれ伏して泣きくずれる。平伏の礼をとる。▼平伏する(面を伏せて、両手をついて。地面に額を擦こずりつけるようにしてひたすら=福氷)。言葉を平伏した頭上に聞く真継。 **へび【蛇】** 片手では指のまわらぬくらい太い蛇!今日。蛇かなにかみたいに体をうねらせる阿刀田。蛇が(蛙を砂を飲みこむ。小鳥を呑む。とぐろを巻く。鎌首をもたげる。にょろにょろと這ぃう。矢のように宙を飛んでカラスを襲う三浦愛)。身体の中に蛇が一匹棲;んでいていらいらする神経の根に噛みついている島尾。棒の先に蛇が巻きついている=宮部。蛇に(人間の皮を着せたような男"小林多。みこまれた小鳥のようにその場に凍りつく=宇野利)。幼児の頃から蛇に親しむ。肝むびのような蛇の呼吸音当月。帯の解かれるときの蛇の威嚇のような鋭い音三島。拇指穴が蛇の鎌首のように突っ立つ=本庄。川が月の光に蛇の腹のように白々と光る=柴田翔。先が二つに割れ絶え間なくめろめろ動く炎のような蛇の舌"畑。背筋を蛇の肌で撫でられたような悪寒を覚える=阿刀田。ナイロンザイルが白い蛇の肌のように薄気味悪く光る"新田。根が老いた蛇の肌のように灰白色に乾いてささくれだってしぶとくうねっている=日野。機会あるごとに蛇は女を誘惑する"石川。足もとにずるずると横たわった蛇を見つけた刹那のごとくぞっとして退去すさる=長塚。手に蛇をつまんで投げ捨てたようないやな感触が残る藤沢。鉢巻きでもするように蛇を頭に巻く吉村。鬼か蛇かという意地悪婆さん=瀬戸内。鬼が棲むか蛇が棲むか。鬼が出るか蛇が出るか。ローブが海蛇のようにたぐり寄せられる"小林多。蛇のごとく嫉妬する"小林信。蛇のような(狡猾にっさで巧みな方法を駆使する遠藤。眼つきでわめく愚連隊"墨石)。巨大な蛇のような火"飯田。尻尾をくわえた蛇のようなこじつけめいた感じ、安部。瞳に蛇のような光をたたえる。 <876> # は な憎悪がこめられる=光瀬。蛇のように(執拗な男。底光りする眼。ぬらぬらの土。蜿蜒うねっている路=国木田。白いあらわな顗くが"三島。身を滑りこませる=大藪)。下半身が蛇のようにうねる=池田。白い体が蛇のように波打つ=山田思。白い蛇のようにびったりからまりあっている二つの体-胡桃沢。生命を与えられた蛇のようにきびきび動く綱「新田。たくましい腰が蛇のように柔らかにくねくね動く“加賀。血が蛇のように冷たい=永井路。冬眠からさめた蛇のようにのろのろ動きだす=立原。何十人もの人が蛇のようにうねっねと長く並ぶ=原田康。薔薇はらの中からきらきら光りながら蛇のように抜けだしてくる水佐藤巻。梁はりが蛇のようにうねっている高田。二つの眼が蛇のように動かず見つめる=長与。目が蛇のように妖しく光る=梶山。うわばみがにょろにょろと遠へ。鎌首を立てたような少し震える指"武田瓦。春の明るい外光を反射して橋が銀蛇さんのように光る=獅子。とぐろを巻いた青大将。青大将が鎌首を持ち上げる。 **みのむし【蓑虫】** ▼簀巻ずまきにされ蓑虫のような姿になる=遠藤。蓑虫のように蒲団にくるまる=吉川。ミノムシみたいに手当たり次第に物をまわりに引き寄せて自分を囲っている=日野。毛布と掛け布団に厳重にくるまって蓑虫みたいになって眠る=尾辻。ローブ一本で腰をヒノキに結びつけ蓑虫みたいにぶらさがったままおにぎりを食う三浦し。ミノ虫さながらぶらさがる=杉木。 **みみず【蚯蚓】** ▼みみずが(這ょう。干からびる。のたまったような字)。どぶに赤みみずが毛玉のように群がって繁殖する=林京、瞳に幾糸も糸蚯蚓北のような血管が浮き出る=岡本。こめかみから額に蚯蚓のように青筋をみなぎらす吉川。皮肉で薄情で蚯蚓みたいに冷たい若い男=田辺。 **むかで【百足】** ▼金属の止め鎹紛けが百足の足のように並んで光る=岡本。船縁心心から百足のように船の足が出る有鳥。 **むし【虫】** ▼身ぶるいのするほど嫌いな虫=山本周。虫が(ぶんぶん飛ぶ。目に飛び込む。いいにも程がある。を産みつける。鈍い羽音をさせる。茎の表面を針の尖さきほどの隙もなく譲っっみ覆うに佐藤春。当たったほどの小さな音高樹。暑苦しい鳴き声をあちこちの叢(係の中からあげる遠藤。ヌカをまきちらしたようにたかる=本多辱。はうようにそろそろと引き返す藤沢)。豆に虫がつく。空腹の虫がおさまる。樹液に虫が群がる。どこか虫が好かない。川の音をかき消すほど虫が大合唱三浦し。木の葉を食う虫が大肌に振るわれて落ちるように憑っき物がすぐさま落ちる=芥川。磁石の虫が掌に50でぶるぶる頭ふるえる!本庄。ロシャツの裏の胸をくすぐって幾匹もの汗の虫が気持ち悪く道はい下りる=黒井。虫が集まる(電灯に。花に)。▼虫がおさまらない(浮気の。胸の)。虫がすだく(秋の。草むらで)。▼虫が鳴く(庭先で。ひっきりなしに。草原のあちこちで)。虫がひっきりなしに鳴いている。虫が壁を這う。剃刀分以が銀色の虫が這うようにしてなだらかな肌を這い下る合崎。巨大な虫が道いずるようにずるずると木材が巡ばれて行く"本庄。目の前にこまかい虫でもうるさくちらちらしているように顔をしかめる=大佛。虫でも(踏み殺すように荒々しく爪先をくじらす=中村兴。見るような目つき谷川)。葉が虫に食われる。虫の(いい話。騒きを抑え込む)。こまかい虫の集まりのように町の灯が添うこく"岡本。虫も(殺さぬ優しい顔。殺せないような気弱なおどおどした男宮本郷)。虫を(殺して我慢する。追うようなゆっくりした首の振り方村上卷)。獅子身中の虫を駆除する。腹の中に笑う虫を飼う。体の中の悪い虫がうずく。娘に悪い虫がつく。人差し指が材木に巣喰って肥え太った鉄砲虫のように気ポ見える=本庄。一面に飛び散った血しぶきが着衣に点々とつき夏の虫がたかっているよう“灰谷。火に入る夏の虫のように憐ぁもれ本庄。よれよれのくたびれた老朽ビルに人びとが舟虫のように出入りしている=開高。ミズスマシのように水面を泳ぎ回る=獅子。虫のような辛抱強い動きを繰り返す藤沢。黒々と光る地底の虫のような恐怖"村上春。地を這う虫のような生き方高橋忘。虫のように(おとなしくしている!!小林信。のろのろと歩く藤沢)。季節の命じるままにはしゃいだりおびえたり虫のように生きている=阿久。暗い思念が全身を露出して胎ぃらから出た虫のように気味悪く這いまわる=伊藤蛇。数字が虫のように散乱している=獅子。小さな虫のような黒っぽいしみ=日野。夜霧がブラットフォームの灯りの周囲にこまかい虫のように動く=大佛。老眼鏡がなければ脚をこわばらせた虫のようにぼけてしまう細かい字=大庭。稚础さい子供の頼りない虫みたよな体宇野干。 **むしけら【虫けら】** ▼理想の抱負のと威張ってみた所で所詮れん己は牛にふみつぶされる道傍路結の虫けらの如きものに過ぎなかったのだ=中島敦。虫けらのように(負けまくる。土に這いつくばって仕事をする。有吉。鈍い努力を続ける=石坂)。あやふやな気持ちを虫けらのように押しつぶす伊藤整。庶民を虫けら扱いする。 **やもり【守宮】** ▼やもりが(きちきち鳴く。天窓にへばりつく)。壁にやもりが張りついている。年がら年中家にへばりついていてヤモリのよう荻野。やもりのような敏捷认しさ徳永。ヤモリのように(壁にはりつく、足音をぬすんで急な梯子以しを這うようにして上る芥川)。守宮のように壁にからだをくっつける=向田。守官みたいに郷台の下へへばりつく見物"川端。 <877> # 図る・狙う **あしがかり【足掛かり】** 解決への足がかりができる。足がかりを着々と作る。橋頭堡的(攻撃の。防御の)。橋頭堡を築く。取っつきが悪い。取っつきにつまずく。取っつきを探す。とっかかりが(できる。見つからない)。とっかかりを(探す。つける)。 **いと【意図】** 意図が(透けて見える。分からない。ありありと見える)。見せしめという意図が働く。訪問の意図を察知する。質問の意図を的確に言葉にまとめる=有川。定説をくつがえそうという意図を持っていない=加藤。意図する(改革を。交流を。人間の復権を。破壊を。社会の根本的改革を)。意図的に(情報をりークする。ずるずると引き延ばす)。侵略意図を露ぁらわにする。意向を(鮮明にする。確かめる。打診する)。不自然な作意を感じる。▼つもり(いずれ一緒になる。精一杯持ち上げた)。毫こうも訂正するつもりはない。 **いんぼう【陰謀】** 陰謀が(明るみに出る。渦巻く。発覚する。露見する)。陰謀でも企んでいるように始終暗い心をしている=有魔。陰謀に加担する。陰謀の手に乗せられる。▼陰謀をめぐらす(卑劣な。将軍の死を奇貨とし"司馬)。陰謀めいたものとはおおよそ縁遠い人柄安部。 **うかがう【窺う】** ▼窺う(政権の座を。天下の形勢を。逃げる隙を。あたりの気配を。おずおずと周囲を。全身を耳にして空を。復讐しのチャンスを。世に出る機会を。様子を油断なく。虎視眈々に絵と勝利の瞬間を=井上靖)。▶様子を窺う(上目遣いに。柱の陰から。窓から中の。物陰に潜んで。欲越討しに隣の座敷の。全神経を耳に集めてじっとあたりの"江戸川)。・顔色を窺う(上役の。部下の)。犯罪者が辺りを窺うような目つきさだ。おずおずとうかがい見る。 **うらこうさく【裏工作】** 裏工作が成功する。裏工作する(執拗に。こそこそ)。二段三段と手が回してある。手を回す(裏から。裏で)。隠れて謀に功をする。 **おもうつぼ【思う壺】** ▼思う壺(官僚の。敵の)。文学の魔の思うつぼ"竹西。思う壺とほくそ笑む。思う壷に(はまる。はめる)。出まかせが思う壺に的中する。 **おり【折】** 折につけて催促する。折を見て(相談に行く。事実関係をはっきりさせる)。久しく相見髟砂ゆる機ぉっがない『佐藤春。会う折がない。何かの折に思い出す。折あることに(思い返す。虚勢を張る。作品を紹介する)。折あらば一度見たい。折があれば話す。折に触れ取り出して眺める。折に触れて(嫌味を言う。お目にかかる。思い出される。姿を現す。見舞いにくる。短歌や俳句を作る。話をむしかえす)。 **かくさく【画策】** 画策が(水泡に帰す。破綻する)。主導権を握るための画策に忙殺される=開高。▼画策する(政治的に。裏で。陰へまわって。父を踏み台にして世に出ようと=山岡)。重役に寝業を仕掛ける=横山。暗躍を裏づける証拠がつかめる=津本。暗躍する(テロリストが。裏で。陰で)。暗中に飛躍する。 **きかい【機会】** ▼機会(残された最後の。神がしつらえたような偶然の"灿)。機会が(めったにない。あれば一度入ってみたい。向こうから飛び込んでくる)。真相を知る機会が永久に失われる藤沢。▼機会がない(折悪しく手合わせする。滅多に海を見る)。偶然の機会から交際が始まる。語り合う機会に恵まれない。何かの機会にふと思い出す。辛抱強く機会の到来を待つ。機会を(見て抜擢で記する。ことごとく潰っぶす)。事実を突きつける機会を窺紛ゅう。質問の機会を失う。しばしば会う機会を持つ。話す機会をつくる。みすみす機会を逃す。会話に入り込む機会を狙っていたような口の出し方=新田。めったにない機会を見逃す手はない=熊谷。▼機会を与える(釈明の。罪滅ぼしの。当事者に安心して失敗を語らせる=畑村)。▼機会をうかがっ(隠忍して。虎視忧々に礼にと。逃げ出す)。機会を狙う(しきりに。折あらばと。名前を売る。報復の)。再挙の機が訪れる。戦いの機が熟す。機会あることに(筆を執る。考え方を知らせる)。結婚を機に男漁誌とこりをやめる=熊合。密かに機の来るのをうかがう。機を(見て脱走する。見るに敏。逃さず利用する)。この機を逃す手はない。復讐しの様をうかがう。思わぬ機縁で就職する。決め所を円違える。 **きかく【企画】** 企画(新鮮な。野心的な。変わりばえのしない)。企画が(大当たりする。お蔵になる。塩漬けになる。不発に終わる。店たなざらしになる)。予想に反して企画が通る=東野。思いきった大胆な企画で一発勝負する=五木。一通り企画について話しつくす。企画の話を切り出す。新しい企画を立ち上げる。具体的な企画を立てる。企画する(イベントを。個展を。特集を。シンポジウムを)。企画書を作る。 **きさく【奇策】** 時流便乗ともとられかねない奇策=浅川。奇策が当たる。ギャンブルのことき奇策に手を貸す=横山。奇策縦横の人物。奇計を(案じる。思いつく)。巧みにこしらえた策謀。秘策が胸中にある。秘策を(明かす。繰る。めぐらす)。 **きっかけ【切っ掛け】** ほんのささいなきっかけ。言うきっかけが見つからない。起き上がるきっかけがつかめない。何かの拍子できっかけがつかめる=奥田。何かのきっかけで再び復活する佐野。動くきっかけを失う。事件をきっかけにする。反抗の口火になる。事件を契機にする。なれそめの時分を思い出す。父と母のなれそめを聞く。夫婦のなれそめを知る。 **くわだてる【企てる】** 企てる(暗殺を。駆け落ちを。逃亡を。反逆を。秘密工作を。武装蜂起を。謀反心を。隣国に侵入を)。企図する(圧殺を。実現を)。 <878> ▼もくろむ(陰謀を。完全犯罪を。財産目当ての結婚を。抜け駆けの功名を)。今度こそは全国制渦をと密かに目論くむ!奥泉。 **けいかく【計画】** 計画(城のように整然と頭にある"大佛。血が逆流して肉が疲察がいを起こすほど大冒険小説の魅力を感じさせる=獅子。夢のような覚束加ない=岡本)。計画が(お流れになる。腰砕けになる。こ破算になる。失敗に終わる。水泡に帰する。成功を収める。着々と進む。宙に浮く。水の泡になる。おじゃんになる。実現まで漕ぎつける。大成功に終わる。立ち消えになる。本決まりになる。予定通りに運ぶ)。二つの計画が時間差を持って進行する。計画に(穴がある。肝胆を砕く。狂いが生じる。一役買う。夢中になる。前向きな姿勢を示す)。自分の考えついた計画に酔う。進んで計画に参加する。計画の(玉雲行きが怪しくなる。変更を余儀なくされる)。計画を(軌道に乗せる。三期に区切る。実行に移す。着々と進める。白紙に戻す。一からやり直す。細部に至るまで完璧に組み立てる=絞辻)。当初の計画を変える。目を輝かせて計画を語る。▼計画する(イベントを。旅行を)。将来の計に従って行動する。一年の計は元旦にあり。百年の計を失う。実行する(練りに練った計画を。当初の計画をそのまま)。計画実施が棚上げになる。計画実施の中心になる。幾度となく作っては崩していた計画図=中村真。計画倒れに終わる。計画的な(行動。生産。犯行)。給料を計画的に使う。▼青写真(計画の。乎和のための)。青写真を(描く。具体化する)。企て(児戯に類した。大それた)。企てが(失敗に終わる。徒労に帰する。水の泡となる。巧く盛っぃにはまる)。計画通り順調に推移する。計画通りに事が運ぶ。作成が計画通りにいく。実際には計画通りにいかない。もくろみ通りに(実現する。進む)。新しいブランがいくつも浮かぶ。小説のブランを練る。綿密なブランを練り上げる。もう一度ブランを練り直す。厄介なプロジェクトが完了する。新しいブロジェクトを実施に移す。ブロジェクトチームを(結成する。立ち上げる)。夢よりもはかない目論見。(有島。目論見が見事に(失敗する。図に当たる)。計画が目論見通りに行く。 **けいりゃく【計略】** 計略(巧みな。ずる賢い)。計略が(失敗する。露顕する。ことごとく図に当たる)。計略に(乗せられる。はまる)。うかうか計略の落とし穴に近づく鳥尾。機略縦横の(才を駆使する。策。大活照)。方略を(練る。めぐらす)。 **げんきょう【元凶】** ▼元凶(悪の。危険の。大気汚染の。悲惨な現状をもたらした荒巻)。事件の首謀者を逮捕する。金融危機の震源地。 **こうき【好機】** 行き詰まりを打開する好機。好機逸すべからず。今が好機とばかりに攻めてくる有川。危機を好機に変える。ちょうどいい機会が到来する。またとない良い機会。絶好の機会に恵まれる。奇貨措ぁくべし。相場の暴落を奇貨として買い占めに走る。暴動を奇貨として人権抑圧を正当化する。この際だから本当のことを言おう。この時とばかりに(撃ちまくる。しゃべりまくる)。好機到来とばかりに大騒ぎされる。願ってもない好機が訪れる。千載一遇の機会にめぐり合う。山岡。時を得て猛然と暴れだす。 **こうそう【構想】** 構想が(浮かぶ。熟す。出来上がる。まとまる)。はっきりした構想が立たない。作品の構想が天啓の如く閃く“小松左。まだ構想の段階。構想する(長編小説を。国際協力のあり方を)。構想力(大きな。非凡な)。想を(得る。練る)。ビジョンに欠ける。ビジョンを持つ(将来の。独自の)。 **こくさく【国策】** 国策で作られた会社。国策に(沿った事業。よるおびただしい休耕田=赤瀬川)。国策の要素が強い事業。戦争を国策の道具とする。国事に(尽瘁北以する。奔走する)。中立を国是とする。 **こころざし【志】** 向学の志がまことに盛ん。事志と異なる。志を(抱いて上京する。磨いて受け継ぐ)。晩学の志を褒める。人の志を愛でる。志を高く(保つ。持つ)。笈。を背負って上京する"高橋知。志半ばにして倒れる。志操高潔な武士。堅固な志操を一変させ堕落する。海外発展の雄志をいだく。 **こんたん【魂胆】** ▼魂胆(虫のよい。がっぽりと稼ぎまくろうという。金をせしめようという。衰運を一気に盛り返そうという)。魂胆が(知れない。見え見え。読める)。何か魂胆がありそう。さもしい魂胆はない。 **さく【策】** ▼策(起死回生の。窮余の。最善の。羊頭狗肉はいとうの。不合格者を出さないための苦肉の)。己れの策に倒れて失脚する=中島叛。策の巧を得る。次善の策を思いつく。適切な策を講じる。万全の策を打つ。万端の策を立てる。密かに策を練る。陰に構えて策を巡らす横山。▼策を弄する(さまざまに。あらゆる)。一策(窮余の。苦慮の。苦しまぎれの)。一計を(案じる。講じる)。一策を(案じる。講じる)。 **さくせん【作戦】** 戦局に影響を及ぼすほどの重大な作戦荒巻。作戦が(功を奏する。図に当たる。成功する。奏功する)。作戦に(狂いが生じる。支障をきたす)。作成を有利に導く。特殊な作戦を探る。綿密な作戦を練る。作能を立てる(冷静な。慎重に)。救出作戦が失敗する。作戦会議を開く。 **さくどう【策動】** 策動が(挫折する。あずかって大いに力がある)。策動の様子が手に取るように分かる"津本。策動する(右翼団体が。品茶が)。策謀の手の内を未然に察する。 **さくりゃく【策略】** 城を欺く策略が成功する。策略をめぐらす。巧妙な策略を考え出す。腹黒く策略する。頭の中で奸計必以が駆けめぐる。権力の奸計に与祕ずる。腹黒い奸計を考える。好策劫いを(めぐらす。弄する)。虚々実々の駆け引き。見えすいた権謀術策が通る醜悪な世界。常盤。権謀術数に(たけた政略家。かけては一枚上手)。虚々実々の権謀術数を弄する。権謀の限りを尽くす。 <879> # 図る・狙う 欲得ずくの政略結婚。政略に明け暮れる。調略の手を打つ。敵を欺く謀略。敵の謀略にはまる。謀略を(巧む。めぐらす)。 **しおどき【潮時】** そろそろ引き上げる測時。何事も潮時が大切。湖時を見て立ち去る。引き下がる潮時を心得ている。物には潮時ってものがある。頃合いを(見てさりげなく尋ねる。見計らって話しかける)。巧みな見切りの頃合いを失わず立ち上がる=横光。声をかけられたのを潮に座を立つ。 **じき【時機】** 手を打つべき時機にさしかかる。時機の(到来を待つ。来るのを待つばかり。熟するのを待つ)。時機を見て逃げ出す。機運が(高まる。盛り上がる)。機宜を得た発言。外交の機宜を失する。時宜にかなった措置。時宜を得た判断。タイムリーな(企画。話題)。適時に(安打を打つ。供給する。処理する)。 **しくむ【仕組む】** ▼仕組む(いかさまを。悪戯かいを。お見合いを。八百長試合を。罠もなを)。巧妙に仕組まれた罠。何から何まで仕組まれたようによく出来ている=坂口。綿密に仕立てられた替え玉藤本。 **しこう【志向】** ▼志向する(革命を。学問を。寂滅の境地を。統一を。平和を、未来を)。権力志向に(陥る。乏しい)。高級志向が進む。自立志向を妨害する。 **したごころ【下心】** 下心見え見えのおだて。男が下心剣じき出しで近づいてくる=東野。下心が顔に出ている。▼下心がある(よこしまな。あわよくばという。何かの時には利用しようという)。ためにする(噂。話。誹謗中傷)。底意が完全に見透かされている。底意に満ちた卑怯な手段"今日。底意のある(言い方。笑顔。冷たい声)。底意ある揶揄ゃを加える。 **しゅし【趣旨】** 本来の趣旨から逸脱する。趣旨に賛同する。会の趣旨に反する。趣旨を書面にしたためて差し出す。本旨に反する。本旨を(説明する。見失う)。 **すじがき【筋書き】** ▼筋書き(月並みな。「芝居の。だいたいの。あたりさわりのない。考えていたとおりの。願望が生み出した)。筋書きが(狂う。毎回異なる。読める)。昔風に筋書きが進む。筋書き通りに(事が運ぶ。話が進む)。▼筋(小説の。童話の)。▼筋立て(手のこんだ。理路整然とした)。がらりと筋立てを変える。二転三転どんでん返しというスリリングなストーリー!竹内。ストーリーがうまく転がらない。ストーリーを何回も書き換える。頭の中でストーリーを作る。▼ブロット(シナリオの。小説の。長編の。捻ぃぁりの利いた)。複雑なブロットをこしらえる。 **せいさく【政策】** ▼政策(朝令暮改の。羊頭狗肉せいさくにうの。旧態依然とした。整合性のとれた)。政策が実を結ぶ。見るべき政策がない。各兄が政策で競い合う。政策に齟齬こを来たす。政策を(実行に移す。めぐる迷走)。革新的な政策を打ち出す。強力な政策を進める。政策転換を決断する。政策論争を深化させる。場当たり的でない考え抜かれた長期政策荒巻。施策(効果的な。行き当たりばったりの)。 **せいじてき【政治的】** 政治的(葛藤が続く。生命を聡う。野心を語る。暗闘が激しい渦を巻く。才能を具備する)。稀代の政治的人間。玉虫色の政治的妥結。人前で政治的野心を示す。政治的な(運動に携わる。才幹がある。色彩を帯びる。動向に敏感。判断を下す。グルーブに所属する。事柄に手を出す。体臭が周囲に発散する)。政治的な立場の(違い。微妙さを知る)。腹芸で取引する。腹芸の(闇取引。できない男は奥行きがない=さだ)。腹芸を使う。 **せっかく【折角】** せっかく(築いた地位を手放す。手に入れた大金を手放す。寝ついたところを起こされる。早く上京したかいがない。実り始めたものを摘み取す。努力が無駄になる。一日を棒に振る=岸田)。せっかくの(苦労が水の泡になる。好意が無になる。楽しみに水を差される。チャンスを逃す)。 **せっけい【設計】** 設計にとりかかる。▼設計する(家を。機械を)。人生設計を組み直す。設計思想と運転現場の実態とが乖離叻いする=柳田。設計図に沿って組み立てる。未来の設計図を描く。 **せんじゅつ【戦術】** 戦術が奏功する。泣き落とし戦術に出る。画期的な戦術を繰り出す。人海戦術で行く。戰術上の奇策。▼戦法(伝統的な。独創的な)。力ずくめの戦法が終わりを告げる。 **せんりゃく【戦略】** 戦略が見事に的中する。計算と戦略に基づいた作戦。戦略を(練る。見直す)。巧妙な外交戦略の賜物、経営戦略を立てる。戦略的な(タイミング。展開)。戦略的に重要な位置。 **そうと【壮図】** 壮図を(いだく。胸に描く)。壮図むなしく挫折する。壮大な(計画。構想)。国家百年の大計。人を造るに百年の大計を以てす=有吉。勇壮な構想。雄大な(計画。構想)。雄図をいだく。 **たいさく【対策】** 対策が(遅れる。壁にぶつかる。功を奏する。後手に回る)。何らかの対策が必要。対策に(苦慮する。着手する。本腰を入れる)。本格的な対策に乗り出す。対策を(軌道に乗せる。協議する。実行に移す。迅速に打ち出す。矢継ぎ早に打つ)。可能な対策を総動員する。状況と対策を明確に分ける。一に対策を講じなければならない篠田。とうの昔に対策を考えていてもよさそう寺田。▼対策を講じる(十分な。一致協力して)。▼対策を立てる(具体的な。早急に)。対策を練る(慎重に。早めに。今後の)。対策会議を開く。解決策が何一つ思い浮かばない。抜本的な解決策を提示する。具体的方策を研究する。善後策に手をつくす。善後策を検討する。講じる。相談する。練る。親切ごかしにしゃべり散らす"有島)。 **たいしょう【対象】** チェック対象から外す。減点の対象となる。対象の範囲が広がる。的確に対象を捉えて描く。▼対象にする(一般大衆を。高校生を。国内外を、部長クラスを)。▼容体化する(事物を。存在を)。▼的になる(噂の。崇拝の。世界の注目の。世論の攻撃の。嘲笑の。憎しみの。非難の)。 <880> # 図る・狙う **タイミング** ▼タイミング(微妙な。最悪の。絶好の)。タイミングが(合う。悪い)。▼タイミングがつかめない(言い出す。切り出す)。絶妙のタイミングで言葉を引き継ぐ内館。あまりのタイミングのよさに驚く。値引きのタイミングの見つけ方がうまい。言い出すタイミングを見計らう。家に戻るタイミングを見計らったかのように電話がかかってくる=小林久。タイミングよく口を挟む。 **たくらむ【企む】** 企む(悪事を。世界征服を。大増税を。復讐しを。困らせようと)。企みが白日の下にさらされる。心の中に企みが生まれる。泥沼の中からぬるりと頭を出す水の精のように企図は私が心の底から現れ出る=有房。企みに(一枚噛む。加担する)。腹に一物ある。▼一物を持つ(腹に。胸に)。▼巧む(悪行を。反逆を。謀反応はを)。 **チャンス** チャンス(今が最後の。願ってもない)。ついにチャンス到来と武者震いする=篠田。チャンスが訪れるのを待つ。言い出すチャンスがない。絶好のチャンスが巡ってくる。ようやくチャンスが到来する。チャンスは(一度しかない。ゼロに等しい)。こんなチャンスは二度とない。チャンスをみすみす逃す。虎視忧々にしとチャンスを狙う。自分自身でチャンスを作り出す。せっかくのチャンスをふいにする。千載一遇のチャンスを見逃さない。めったにないチャンスを確実にものにする。形勢を逆転させるチャンスを満を持して待つ『和久。▼チャンスを待つ(雌伏して。飲まず食わずで)。▼絶好のチャンス(恩を売る。お荷物を押しつける=海堂)。 **ちょうほんにん【張本人】** 張本人(いたずらの。唯一の座嘩州んの。事の起こりの。騒動の)。他人を情事ごろに深入りさせてしまう粋な仕掛け人竹西。火付け役(一連の騒ぎの。ごたごたの)。 **ついでに【序でに】** ついでに(足を延ばす。ちょっと調べる)。遊びにきたついでに話す。事のついでに言えば。散歩のついでに立ち寄る。得意回りのついでに寄る。何かの話のついでに伝える。話のついでに言っておく。もう一言ついでにつけ加える。もののついでに紹介する。ちなみに(言えば。申し上げると。うかがいますが)。行きがけの駄賃に奪っていく。 **つけこむ【付け込む】** ▼つけ込む(患者の心理に。気持ちの隙に。他人の不幸に。弱みに。相手の善良さに)。つけ込む隙を与えない。油断するとついつけこまれてしまう~丹羽。足元を見られる。つけ入る(隙を与えない。隙が見当たらない)。▼つけ入る(欲に巧みに。喜び事があるときには不幸が=曽野)。▼付け目(相手の弱点が。油断したところが)。財産が付け目の結婚。 **でかた【出方】** 出方を(探る。瀬際みする。待つ。見守る)。相手の出方をうかがう。▼出方次第(相手の。向こうの)。魚心あれば水心。 **はかりごと【謀】** 謀が外へ漏れる。謀に(陥る。乗せられる)。まんまと謀にはまる。談は密なるをもってよしとする=火坂。謀をめぐらす知恵がかれる=梅本。遠謀深慮に基づく人事配置。後図を策す。才略に(長たける。秀でる)。クーデターを策談する。卑しむべき策謀に反対する。みすみす策謀に陥る。深謀遠慮から出た善政。深謀遠慮をめぐらす。未来を見越しての深慮遠謀。湧くような智謀を持つ。知略に(優れる。富んだ作戦家)。知略抜群の人士。百計が尽きる。百計をめぐらす。術策に(陥る。おちこむ。はまる)。術策を(めぐらす。弄する)。 **はかる【図る】** ▼図る(意思の疎通を。局面の打開を。雇用の創出を。種族の永存を。衝撃の緩衝を。自力で解決を。生活の安定を。労力の拡大を。戦力の増強を。組織の安寧を。秩序の回復を。発想の転換を。福利の増進を。民心の一致を。クラスの和合を。巧妙に摘発逃れを。衝動的に自殺を。新規巻き直しを。取り締まりの徹底を。日常からの脱出を。品質の安定化を)。デバートの屋上から飛び降り自殺を計る=笹沢。▼便宜を図る(できる限りの。密航の)。▼保全を図る(一身の。地位の)。▼図れる(改善が。軽量化が。交流が。進展が。イメージアップが)。▼道を講じる(生き残る。自活の。打開の)。▼誂じる(万全の策を。実効ある措置を)。立て直しを策す。 **ねらう【狙う】** ▼狙う(一石二鳥を。経費の節減を。刺殺の機会を。親の敵と。折あらばと。監督のポストを。対話の切れ目を。月番の変わり目を)。相手の足元を狙ってボールを転がす。徹底的に命を狙ってくる。狙われる(命を。暴力団に。物取りに)。狙いが(裏目に出る。透けて見える)。相手の狙いが分からない。狙いに(狂いはない。ぴたりとはまる)。拳銃の狙いを定める。慎重に狙いをつけて射撃する。付け狙う(父の敵として。目の色を変えて)。▼付け狙われる(男に。敵に)。昭逃学を(合わせる。つける)。隙さえあれば侵略の手を伸ばそうと虎視眈々に欲たる桃・え"山本円。虎視忱々と(機会を狙う。目を光らせる)。次期エースの座を虎視忧々と狙う。 **ひょうし【拍子】** 落ちる拍子に釘か何かに触る。悩んだ拍子に腰を強く打つ。どうかした拍子に顔が合う。何かの拍子に(噂をする。思い出す。ばったり動かなくなる佐藤春)。ふとした拍子に(垣間見える。目を合わせる)。ふとした弾みでぐれ出す。 **ひょうてき【標的】** 標的に(一発も命中しない。砲弾を命中させる)。木を標的にして射つ。射撃の標的にする。テロの標的になる。的が射程距離に入る。的に命中する。 <881> # 図る・狙う 矢を的に当てる。狙った的に当たったためしがない!大庭。 **ぼうぎ「【謀議】** 謀議を(凝らす。めぐらす)。謀議する(暗殺を。犯罪の実行を)。密計を(凝らす。めぐらす)。密謀が露顕する。密謀を企てる。 **ほうしん【方針】** その場しのぎの無責任きわまる方針=津本。方針が二転三転する。生活の方針が立たない。はっきりした方針が出せない。方針に異を唱える。開拓の方針に身をささげる=本庄。方針の転換期に当たる。方針を(実行に移す。新たに決定する)。曖昧な方針を捨てる。過激な方針を打ち出す。▼方針を貫く(既定の。信賞必罰の)。基本方針をまとめる。方針上の混迷に終止符が打たれる柴田湖。方針転換を図る。政党の網領。路線が(定まる。破綻する)。路線の変更を始める。路線を軌道修正する。これまでの路線を引き継ぐ。安全化への指針。正確な指針を示す。苛烈な行動指針を振りかざす―奥泉。 **またのきかい【またの機会】** またの機会を待つ。いずれ(日を改めて決行する。また話をしましょう)。別の機会に(紹介する。譲る)。またの時にお願いする。▼他日に譲る(見学を。話を)。他日の(再挙を期する。捲土重来好礼にを期する)。他日を期して改善する。 **みはからう【見計らう】** ▼見計らう(雨間を。潮時を。時期を。帰ってくる頃を。食事の済む時分を。人のいない隙を。最も効果的なタイミングを)。▼時を見計らう(都合のいい。もう大丈夫だという)。頃合いを見計らって迎えに出る=阿部。目を覚ますころを見計らって知らせる三島。 **めあて【目当て】** 高い建物を目当てにして歩く。目当ての(家が見つかる。繋を見つけ出す)。お目当ての店は一旧きり。治療費の目安がつく。低い水準を目安に設定する。計画実行の目処ぁとが立つ"貫井。借金を返せるめどがつく。生活のめどが立つ。解決の目途が立たない 池井戸。めどが立っていない(仕事の。住まいの)。 **めざす【目指す】** ▼目指す(観光立国を。恒久平和を。財政再建を。失地回復を。政権交代を、世界の変革を。早期解決を。体質改善を。地位向上を。ひたすら上を。船が陸地を。分離独立を。新しい夜明けを)。志す(医者を。研究を。作家を。剣の道に)。所期の成果をあげる。所期の目的を(達成する。遂げる)。一気に頂点めがけて駆け上る。島をめがけて観光客が押し寄せる。 **もくてき【目的】** 目的が(判然としない。なかなか果たせない)。本来の目的から逸れる。目的と手段を取り違える。目的に向かって努力する。目的のためには手段を選ばない!高木。目的を(異にする。遂した喜び。一つに絞る。持って働く。果たして立ち去る)。生きる目的を手にする。首尾よく目的を達する。侵略の目的を腹に持つ。率直に取材の目的を説明する。営利を目的とする。出世を目的とする生き方。金儲けわけを目的にする。軍事目的に使用する。目的遂行を援助する。無目的な(人生。日々)。無目的に時を過ごす。何の目的もなしに歩く。 **もくひょう【目標】** ▼目標(確固とした生活の『筒井。心に漠然と抱いている=村松)。目標が目の前にある。目標に(手が届く。達するまでやりきる)。難しい目標にチャレンジする。目標に向かって(歩きはじめる。着々と近づく。突進する)。確実に目標へ一歩一歩近づきつつある=五木。明確な目標を持つ。▼目標にする(因習打破を。大きな木を)。目標達成が遠のく。▼ターゲットにした商品(高齢者を、若者を)。ターゲットを絞る。ノルマがきつい。ノルマから逃げる。ノルマを(課する。こなす。達成する。果たす。やりきる)。一日のノルマを決める。 **ようすみ【様子見】** 様子見が禍切となる。様子見に立ち寄る。様子見を(決め込む。継続する。続ける)。とりあえず様子見をする。ことさら騒ぎ立てない。投げた石の手応えを待つ=本庄。▼静観する(時勢の推移を。成り行きを。当分。当面)。 **りょうさく【良策】** ▼良策(国益を増す。政権浮揚につながる)。良策を(得る。考える。献じる)。上策を(選ぶ。講じる)。 **わざと【態と】** わざと(因縁をつける。反抗的に言う。無視する。大きく舌打ちをしてみせる。驚いたふりをする。気がつかないふりをする。そっけなく書く。冷たく言い放つ)。ことさら(あどけなく装う。声をはりあげて言う。丁寧な口調で言う。ときつい言葉をつかう。肌なまりを強調する。よそよそしい態度を取る)。丁寧な言葉遣いが空々しく取って付けたように永井荷。かなり意識的な嫌がらせ。意識的に(陽気に振る舞う。世間から存在を隠す“軍司)。口にするのを意識的に避ける。故意に(喧嘩州んを売る。困らせようとたくらむ。そ知らぬ顔をする。ぼかした言い方をする。事実と相違したことを書く極)。わざとらしい(感嘆の声。咳せきをする。こわばった微笑。馬鹿ていねいな言い方=西木)。わざとらしく(嬌声をあげる。溜め息をつく。大きくうなずく)。わかりきっていることをわざとらしく訊たずね返す黒井。わざとらしさ(劇的緊張を狙った人問。取り繕ったような松本)。取ってつけたような(微笑をつくる。高笑いをしてみせる)。とってつけたような大げさな感じ=大野惑。とってつけたようにやさしく話しかける=田島。 **わざわざ** わざわざ(外国から取り寄せる。説明することでもない。回り道して歩く)。遠方からわざわざやって来る。もとよりわざわざ言う必要もない。わざわざ遠くから(食べに来る。出て来る)。あえて(名前を秘する。冒険をする)。言いづらいことをあえて言う。無理を承知であえて頼む。 <882> # 吐く・吸う 息をする(イヌが舌を出して喘ぁえぐように荒い小林久。徹臭いごい家の中で人々が青い『有吉。走った動悸を数え上げるような"芝木。ふーっと疲れを吐き出すように=徳永)。小娘の息のようなふわふわした小さな虫佐藤春。雲が吐き出す息のように雪まじりの風が流れる=連城。息つくひまもなく第二撃を加える。夕方まで息つく暇もない。息も絶え絶えに(体を横たえる。叫ぶ)。息も継がずに(飲み干す。まくし立てる)。切れ切れの気息。人類の生きた気息に接する。呼気を(吐きかける。吹きかける)。▼息を吸う(深く。呼吸を忘れてでもいたように大きく=壺井。虫歯を冷やすように口をひん曲げて音たてて=梅本)。ふいこのように息を吸ったり吐いたりする=石森。息を吸い込む(胸に。大きく。思いきり。すっっと。気圧ぃぉされたように=笹沢。歯の間からしいしい=村山)。息を一つ大きく吸い込む。深々と一息吸いこむ。息をゆっくりと吸い込む。息を吐く(鼻からふっと。ゆっくりと静かに。肩を激しく上下させて荒い。嵐のように荒々しく光瀬。首筋にお灸後『みたいな熱い=田辺。投げ出すように強く"石坂。酒を飲み干しフーッと虹のような開高。胸いっぱいの感動を吐きだすように未明の空をふり仰いで大きく=山本周)。鯨のような長い呼吸い』を吐く獅子。伝令の馬のように白い息を吐きながらやって来る=安岡。大空へ息を吐くように希望を持つ=佐多。吐く息が(白い霧となる。頬に吹きかかる)。息を吐きかける(挙に。手のひらに。酒臭い)。息を吐き出す(安培はんの。ふうっと長い。胸に溜まった)。ふっと息を吐くような笑い声=長野。 **いきづかい【息遣い】** ▼息づかい(はあはあと荒い。喘息ざんの発作のような苦しげな"日野。沸騰したヤカンのような飯田。マラソン選手が決勝点へたどりつくような激しい=中村真)。息づかいも荒いほど急いで山道を来る=深沢。血眼のように呼吸ぃきづかいを荒くする!永井荷。喘息患者の息づかいのような電気ストーブの小さな音=丸谷。▼息をつく(あえぐように。せわしく。炎のような。安塔もんの胸をなでおろしたように大きく萩原薬)。 **おうと【嘔吐】** ▼喉までこみあげてくる嘔吐。嘔吐が喉に込み上げてくる。激しい嘔吐に悩まされる。便所に這いつくばって嘔吐する。身体にあるものを力の限り嘔吐している感じの叫び"黒井。げろを吐く。焦燥感が嘔吐のように繰り返し襲ってくる=阿刀田。嘔吐感が(胸一杯に広がる。胸を突き上げる)。こみ上げてくる嘔吐感と戦う。食べた物を(吐く。戻す)。▼吐瀉忙しする(胃の内容物を。苦い汁を。胸がむかついて)。吐瀉物が口からあふれる。吐き気がして食べた物をげえげえ戻す。 **かいめん【海綿】** ▼海綿が水を吸うようにじくじく睡ねもりを吸収する=大江。歌が海綿に吸われるように皆に覚えられてしまう小林多。さまざまな出来事の印象を汚れのない新しい海綿のような感覚で吸いとる=石坂。頭が乾いた海綿のように軽くカサカサする志賀、精神が水を吸う海綿のように豊かに潤う清水義。水をいっぱいに含んだ海綿のように心から感傷的におぼれる"小林多。スポンジがクッションからはみ出す。スポンジを絞ったように汗が出る=島田。眠り足りたスポンジのような頭脳=宮本百。 **きせる【煙管】** ▼煙管に煙草を詰める。煙管の雁首ばんのように突き出ている管"福永。煙管を煙管盆の緑に打ちつける。ほんと煙管をはたく。手にしていた煙管を落とすほど驚く。宮部。バイブに(手を伸ばす。火をつける)。バイブを歯形が残るほど噛みしめる=景山。 <883> # 吐く・吸う―287 目を半眼にして黙々とバイブをくゆらす高見淡。 **きんえん【禁煙】** ▼禁煙を決意する。禁煙すると口さみしい。喫煙を(禁じる。厳禁する)。煙草をやめる。 **くうき【空気】** ▼空気(圧ぉしつけるようにむっと澱ょとんでいた蒸し暑く濁った=大佛。滝から流れてくる濃い霧のようにひんやりと湿ったり高橋和。洞窟内のしんと沈んだ湿気のある=島尾。マッチをすれば燃え出しそうに乾ききった"石坂)。空気が(希恋になる。澄んで美しい。笑いに緩む。からからに乾く。がらりと変わる。じっとりと湿る。びりびりと震える。びんと引き締まる。ふっと柔らかくなる。凝縮するような緊張感"原田康。葛湯のように重たくなる=向田。濃く重くドロリと液体化して生温かい糊のようにねばねばと皮膚にまといつく=中島救。寒いというより痛い加賀。水分に飽和して重く淀む=中局以。チリチリするほど清潔で漩刺いつとしている=原田宗。にわかに濃密な肌触りで身を包む=黒井。深い水の底のように重々しく淀む=江戸川)。明るい空気が広がる。暖かい空気が頬をなでる。家の中の空気が少しずつ荒れてくる。いたって自由な空気がみなぎる。おさまりの悪い空気が残る。重苦しい空気が部屋を満たす。固くなった空気がほどける。座の空気が白けきる。和やかな空気が満ちる。なんだか家の空気がおかしい。場の空気が読めない。蒸し暑い空気が全身を押し包む。澱んだ空気が一掃される。世の中の空気が一変する。家の空気が鉛のように重苦しい内田祥。部屋の空気が湿気を吸ったように重たい鷺沢。凍りついたように寒く沈みきった空気が海のささやきのために鈍く震える=有段。時代の空気が変わりつつある海堂。室内の空気がすえたようによどむ=高見浩。周囲の空気が突然に凝固する=中村児。場内の空気が一瞬ひび割れたようになる=高橋三。荒ずきんだ空気が顔や体をこわばらせる=高樹。その場の空気が一瞬刃物のように尖とがる=村松。胸の中に灰色の空気が充満する!奥田。白けた空気が漂う。▼空気が立ちこめる(やわらかな。俺けえた)。▼空気が流れ込む(凍てついた。華やいだ)。空気が流れる(気づまりな。いっとき爽やかな)。空気に包まれる(すがすがしい。騒然とした)。空気の(変化に気づく。肌触りが柔らかい)。清冽べべな空気の流れの中に体を浸しているように爽きもややかな風が吹く外村。空気を(鋭く切って鳴る風。切断するように笑う~加賀)。気まずい空気を察する。サイレンが空気を震わせる。ささくれた空気を和らげる。タイヤに空気を入れる。胸いっぱい空気を吸い込む。氷のように硬く重い空気を全身で受け止めているかのようにゆっくり歩く=加賀。静かな夜の空気を破ってバチャーンと大地を打つ音が響く"山本有。空気を払いのける(重苦しい。湿っぽくなりそうな)。あたりの空気が(重みをもっていて四方から圧し縮まってくるような息苦しさ=山本周。静かに乾いたように明るい=川端。すっかり凍りつく=安岡)。一座の空気が(険悪になる。殺気立つ)。張りつめた空気が(ふっとゆるむ。すっと解けていく=鈴木光)。空気のような軽さと透明さで愛する人をつつむ"瀬戸内。空気のように廻りに不安が立ちこめる=福永。 **こきゅう【呼吸】** ▼胸から咽喉のとへぐるぐるっと音を立ててこみ上げばたりと止まったぜんまい仕掛けのような捲きき上げる呼吸円地、呼吸が(激しく波立つ。かすかに乱れる。次第に荒くなる。ゆるやかになる。苦しくなるほど風が吹きこんでくる=山口)。みんなの呼吸が合う。疾走する駿馬しと騎手のようにびったりと呼吸がかよいあう森玩。乱れていた呼吸がすうっとおさまる尘行。呼吸をやめたかのようにひそと身動きもしない=光瀬。阿吽の呼吸を探る。気を取り直したふうに呼吸をしずめる=藤本。切なそうに弱い呼吸を繰り返す。高橋三。深い呼吸を丹田のあたりに溜める"本庄。胸に手を置いて呼吸を整える=有栖川。呼吸する(鳃ぇらで。鼻を水面に出して。抱きかかえられて大きな胎児のように人間)。▼呼吸をする(はあはあと荒い。渦中に身をひそめて横光)。木の枝のしをう音が人間の呼吸みたいに強弱となうて繰り返される=富岡。かすれた笛のような呼吸音をたてて死ぬ"黒岩。呼吸機能が著しく低下する。呼吸困難に陥る。呼吸不全を起こす。▼深呼吸する(大きく。両腕を伸ばして)。深呼吸するように(ゆっくりと空気を吸って少しずつ吐く日野。ゆるやかに息を吐く〃小川)。ゆっくりと深呼吸をする。 **すいこまれる【吸い込まれる】** ▼吸い込まれる(小波だが砂に。水が土管に。液が音もなく畳に。影が薄暗い通路の奥に"赤瀬川。電話のベルの最後の一音が夜の闇に村上卷)。目が風景の中におもむろに吸いこまれる"古井。声が物語の最後の一行のように踊り場に吸い込まれていく"小川。人の話を首を傾かしげて吸い込まれるように聞く“干刈。電車が霧の中に吸い込まれるように姿を消す重松。門の中に吸いこまれるように消える=森端。岡の中に吸い込まれるように消える=福永。吸いこまれるように濁流の渦に転落する=杉本。吸われる(源明が野に。水が吸い取り紙に)。地に吸われているように重い歩調=高井。話が吸い取り紙に吸われるように皆の心に入りこむ"小林多。 **すいこむ【吸い込む】** ▼吸い込む(シーツが汗を。新鮮な空気を。煙草を深々と。草がたっぷりと雨を。木の匂いを胸いっぱいに。香りをゆっくりと。陽射しを腕や顔にたっぷりと)。バワフルな吸引力。▼吸収する(栄養を。驚くほどの速度で知識を=奥泉。葉が雨を肥料のように『有吉)。酸素を吸入する。 **すいとる【吸い取る】** ▼吸い取る(栄養分を。血を。水を)。手数料の大半を吸い取られる。▼吸い集める(ごみを。ほこりを)。吸い出す(膿うみを。痰たんを)。 <884> # は **すう【吸う】** ▼吸う(甘い汁を。生き血を。蚊が血を。煙管いせで煙草を。空気が湿気を。最後の一服を。碳石が鉄を。清冽せいな空気を。大地が慈雨を。蜂が密を。優しく唇を。カーテンが明かりを。たっぷり水分を。ちゅうちゅうおっぱいを。匂いを胸いっぱいに。空気を胸いっぱい。煙草を思2存分)。赤ん坊に乳首を吸わせる。含ませる(赤子に乳房を。乳首を。筆に墨を)。吸い上げる(甘い汁を。ポンプで水を。注射器に薬液を。ちゅるんとよだれを灰谷)。煙草を喫する。 **すする【啜る】** ▼唆すする(味噌汁をうまそうに古井。酒を紙なめるように谷崎)。▼すする(豪快にラーメンを。ずるずると蕎麦にを。つるつるとうどんを。ところてんをつるつると。ビールをちびちびと。ズズッと音を立てて紅茶を鷺沢。口をすぼめて麺をそっと=辺見)。ひと口すする(甘酒を。茶を)。すすっている(無言で茶を。漫然と座って紅茶を)。▼すすり上げる(鼻血を。鼻水を)。▼啜りこむ(垂れかけたよだれを"大変。コーヒーをずずっと荻野)。すすり込む(粥か』を。蕎麦を。ビールの泡を)。ひとすすりする(ウイスキーを。酒を。茶を)。 **たいき【大気】** 大気(硝子のように透明な大佛。雪の匂いを含んだ冷たい!熊谷)。大気が油のように重くよどむ=光瀬。驟雨しいに洗われたあとの草と水の匂いのする大気が澄みきる=奥泉。冷えた大気が月の光にいよいよ冷たさを増すかのように輝きながら降りてくる=野岡。森音にいが大気を震動させる。ガスが大気中に放出される。上空の気流が不安定に荒れる。冷たい気流が入り込む。酸素が体中に行き渡る。脳に新鮮な酸素を送る。 **たばこ【煙草】** 棄てた煙草が大地が憩いのひと時を楽しんでいるようにのんびりと煙を吐き続ける=連城。煙草から紫煙がゆらゆらたちのほる=宮部。吸いさしの煙草から出る煙の糸が静かに真っ直ぐに立ち上る『水井向。うまそうに煙をくゆらせる。紫煙が一筋の糸のように流れる=泉度。軽く吐き出した紫煙が白い霧のように天井へ立ち昇る斎藤栄。紫煙の行方を目で追う。紫色の煙草の煙。煙草の煙が(青くこもる。四方に広がる。部屋中に充満する。糸トンボのようにすき間に吸い込まれる=伊集院。苛立心。たしげに立ちのぼる=用井。薄い帯のようになって漂漂う。宮部。もうもうとたちこめる=大岡)。タバコの煙がゆらゆらとゆらめく=萩原発。青白い煙草の煙が陽射しの中で細かな粒のようにきらめく泉優。寂しさを煙草の煙に紛らす。煙草の煙を(空に向かって吐く。鼻の穴から吐き出す。ゆっくりと吐き出す)。ぶわーっと煙草の煙を吐く=田辺。うまそうに一服つける。最初の一服を深く吸いこむ。喫煙が健康に与える悪影響。吸い殻がいやな臭いを立てる。吸い殻で(いっぱいになった灰皿。灰皿の上を荒涼とした枯れ山のようにこんもりとさせる八谷村)。灰皿が吸い殻の山になる。を灰皿で揉み消す。煙草の吸い殻が(散乱する。死体のように積み重ねられる=林域。ヴェランダの床に汚点のように落ちている=堀)。吸いさしの煙草を(灰皿に押し潰っぷす。ぼいと投げ捨てる)。煙草の吸いさしをもみ消す。灰皿が吸い殻でうずたかくなる。葉巻を灰皿で揉み消す。灰皿に吸い殻をねじ込む。煙草の火を灰皿にこすりつける。バイブの灰を灰皿に落とす。灰皿を手元に引き寄せる。葉巻の(煙が水色に包む。煙をふうっと吐き出す)。悠然と葉巻の煙を吐く。葉巻を(口にくわえる。くゆらせる)・所在なく葉巻を吹かす。 **たん【痰】** 痰が(喉に引っかかる。からむような笑い=高樹)。喉に痰がからまる。痰のからんだしゃがれ声。痰を喉に詰まらせて窒息する。喉にからんだ痰を切る。痰がからんだような(咳払い。声でとぎれとぎれにいいさす=池波)。不愉快感が吐きかけられた痰のようにねばりついて離れない!高橋札。血痰が混じった咳をする。 <885> # つ **つば【唾】** 唾が口の中にたまる。口に唾が湧く。唾でも吐きつけるように言う~永井。唾を(ごくりと飲み込む。飛ばして力説する。べっべっとはじき飛ばす。飛ばし合うようなやり取り貫井。とばすほどの激しい口調で嫁の悪口を言う連城。吐きそうなけんまくで出て行く=岡田)。ツバを吐かんばかりにののしる=開高。泡立った唾を飛ばす。口元に唾を浮かべる。ごくんと唾を飲む。語尾に唾をすする音が混じる。地面に唾を吐きつける。手のひらにべっと唾をつける。吐いた唾を靴で踏みにじる。唾を吐く(地べたに。唇をゆがめて。ぺっと。ちゅっちゅっと)。さも穢らわしそうにぺっぺっと唾をはく=中。天に向かって唾する。天に唾する不逞の男=隆。口の中に生唾が溜まる。悪阻の時みたいに生唾が咽喉元まで上って来る=大庭。生唾をのむような沈黙に堕ちる=本庄。ごくりと生唾を飲み込む。思わずごくりと生唾を飲んだほどの代物=伊集院。 **といき【吐息】** 甘やかな吐息が頬にかかる。女の吐息が心臓の鼓動のように規則正しく伝わってくる=柴田。相手の心変わりをむなしくながめている作者の吐息が伝わってくるような歌=竹西。吐息が漏れる(思わず安堵の。ふうっと。ほっと深い)。こっそりとひきつめたような吐息が洩れる=槌。年老いた女の吐息に似た音をたてて走る車。大庭。やれやれというふうに吐息をする三浦。吐息をつく(かすかに。大きく。深い。深々と。ほっと。感心したように。驚嘆したように=水上)。吐息を漏らす(つらそうに。そっと。ほっとして。我知らず。あきらめたように)。馬の鼻息のような吐息を洩らす藤沢。吐息のようなつぶやきを洩らす=永井。磯に砕けた波の深い吐息のようなどよめきが磯全体に漲る三島。 **はい【肺】** 肺で呼吸する。空気を肺に吸い込む。冷気がひりひりと肺にしみる。肺の息を吐き尽くすように言う高樹。乱暴な生活のために肺を病む大岡。 **はきけ【吐き気】** 吐き気が(嘘のように消えていく。どうやらおさまる。するくらいいやな人間灰谷るほど軽蔑する=逆井)。思い出すだけで条件反射のように吐き気が出る内田康。不快な吐き気が喉を塞ぐ=石坂。猛烈な吐き気にさいなまれる。こみ上げてくる吐き気をこらえる。地震で地面が揺れるので海上で波にもまれた者のように吐き気をもよおす佐山。たまらない悪臭に吐き気を催すいかんべ。どうにも我慢できないほど吐きたくなる幸田文。胃から苦い液が上がってくる。こみ上げてくる(喉に苦い汁が。胃の中のものが。胃液が喉元まで)。荒々しい気分が嘔吐気のようにこみ上げてくる=日野。吐き気のようにこみあげてきた不愉快な想像を無理矢理に抑えつける遠藤。不安が吐き気のように胃の奥からこみあげてくる=森。むかつくような(死臭があたりを覆う村上春。ポマードのにおい!安部)。強烈な船酔いのさなかガソリンを鼻の先に嗅がされたようなむかつき=黒。 # は **はきちらす【吐き散らす】** 吐き散らす(ふてぶてしい捨て台詞を。ぺっぺっと唾を。シャワーがあちこち奔流のように滝のように湯を=北)。言葉を吐き散らす(口汚い罵りの。呪詛の。やみくもに景気のいい豊田)。吐き飛ばす(痰唾を。水を)。 **はく【吐く】** 吐く(悪口雑言を。烏賊が墨を。一矢を。煙突から煙を。奇警な言を。警抜な一言を。言々火を。正論を。溜め息を。痰を。血反吐を。毒舌を。苦い液を。ぴゅっと水を。暴言を。本音を。珍しく弱音を。乱暴な意見を。げえげえ。批評的な言辞を。乱暴な捨て台詞を。文学で身を立てようと虹のごとき気を=今。ポンプみたいに水を岸田。なじる言葉をいくつか。高橋治)。血を吐く思いで書く=奥田。意見を吐く(強硬な。反対の。真っ向から)。言葉を吐く(過激な。がさつな。むきつけな。手厳しい。時々優しい。呪いの。反論の。ぽつりと。心の中の泥のような=梅本)。唾を吐きかける(手に。男の顔へ。ぺっと)。体の内と外がめくれ返るほど吐きつづける=飯田。胃が飛び出すのではないかと思うまで吐き続ける=筒井。飲み込んだものを吐かせる。小間物店を出して一同に厄介をかける水井。吐くように言い捨てる。弱音を一度も吐かない。牛馬を駆るように罵詈雑言を吐きかける=阿刀田。言葉を吐きかける(呪いの。侮蔑の)。唾を地面に吐きつける。 **はきだす【吐き出す】** 吐き出す(鵜が鮎を。思いのたけを。正直に思いを。内部留保を。胸のつかえを。聞えよがしに声を。今まで貯め込んだ儲けを。口の中のものを。貯えのすべてを。むしゃくしゃした気持ちを。胸に溜まっていたものを。胸に引っかかった疑問を。胸の中のわだかまりを。唸りを断続的に。西瓜の種をぺっと。たばこの煙をふうっと。溜め息を鼻から。ウイッと鳥のような声を出しでハンカチの中に汚物を"伊集院。心の底に澱んでいる澱を藤田。溜まりに溜まっているエネルギーを一挙に=日野)。吐き出すように一言言う。吐き出すように言う(一気に。苦いものでも。苦りきって。喉にひっかかっているものを干刈)。 **へど【反吐】** ヘドが出そうなくらいいやらしい=富岡。反吐が出るほど不潔く醜い=筒井。思い出すだけでも反吐が出る=井上ひ。反吐の出るような流行語を連発して低級な笑いを振りまく番組『高橋治。酔ってへどを吐いた後の興ざめしたようなやつれた顔色後藤。一口含んだだけで反吐を催しそうな油っぽいステーキ高橋こ。酔って小間物屋を開くに至る。 <886> # は **はげしい・はなはだしい** **あまりに** あまりに(心ない仕打ち。あっけなく成功する。激しい変わりよう。人を見くびったやり方。隔たりがありすぎる)。結果はあまりに明白。事はあまりに重大。あまりのうまさに驚く。いくら何でも(ひどすぎる。言葉が強すぎる)。何ぼ何でもそう急にはできない。 **あらりょうじ【荒療治】** 荒療治(人事刷新の。人心の一新という)。荒療治を施す。危険な荒療治をする。大鉈を振るう(機構改革に。人事の刷新に。収支改善で)。 **いじょう【異常】** 装置に異常がある。異常な(行動。執念を燃やす)。地軸が狂ったような異常な天気飯田。笑いたいような憤りたいような異常な感情が湧き上がってくる人。異常な事態に(気づく。直面する)。異常の有無を知らせる。なんの異常も認められない。異常をきたす(心身に。精神に)。異常なほどの怖がりよう。未曾有の異常気象。異常気象が(続く。目立つ)。異常さが際立つ。異常事態が(起こる。出来する。発生する)。異常事態を(収拾する。乗り切る)。計器が異常値を示す。喜びが一様のものではない。狂的な迷信に恐っかれる。狂的に近い発作にとらわれる。正気の沙汰ではない。悲しみのあまり正気を失う=山本。正常域から外れる。正常域を飛び越す。正常さを欠く。精神が正常さを失う。とても正常とは思えない。どうかしている(頭が。ちょっと)。アブノーマルな(考え。感覚。趣味。世界に浸り切る)。常軌を逸した(可愛がりよう。言動。行動に走る。態度。振る舞い)。常軌を逸している(嫉妬の炎が。いささか)。ただことではない(形相。入念さ)。ただことではない(目つきが。様子が。入れこみようと来たら)。猟奇的な(興味をそそる。事件。趣味。犯罪。好奇心を掻きたてられる)。手口が猟奇的なことから犯人の異常性が取り沙汰される=有川。猟奇的に書き立てる。 **いちじるしい【著しい】** 著しい(効果をあげる。衰退を来たす。対照をなす。変化が起こる)。著しい(栄枯盛衰が。求心力低下が。公私混同が。地盤沈下が。作者の工夫の跡が)。両者の主張には著しい懸隔がある=津本。著しく(公正を欠く。迫力に欠ける。評判が悪い。目につく)。価値を著しく高める。呼吸機能が著しく低下する。成長著しい新興スーバー。需要が目に見えて(多くなる。減る)。経済状態が目に見えてよくなる。顕著な(傾向。特質。例)。顕著に(認められる。見られる)。顕著になる(減退が。対立が)。 **エスカレートする** エスカレートする(言い争いが。戦闘が。対抗意識が。要求が。マネーゲームが。口論がとめどもなく。小さな衝突が戦争にまで)。ひどくなる(物忘れが。雨がいよいよ)。えらいえらい(苦労をかける。剣幕でとなる。目に遭う。勢いでぺらぺらしゃべる。人と付き合ってしまった)。えらく評判がいい。どえらい失敗をやらかす。相場でどえらい穴をあける。耳をつんざくようなどえらい響き=長崎。成績がどえらく悪い。 **おおげさ【大袈裟】** 踊っているような大げさな身ぶり“石森。実際の感情以上に大げさな表情を作る=原田。大げさな褒め言葉を口にする。とってつけたような大げさな感じ=大野。大げさに(ため息をつく。包帯を巻く。驚くふりをする。肩をすくめてみせる。眼を大きくあけて驚いた様子をする=深沢)。永の別れのように大げさに涙を拭く壷井。他愛もないことに大げさに驚く。あることないことをうんと大げさにもったいつけて話す=飯田。言葉をいちいち大袈裟にとりすぎる=連城。大きく羽を広げた物言い。大口を叩く。大風呂敷を広げる。牛刀をもって鶏を裂く=井上ひ。針ほどのことを棒ほどに言う。盗井。オーバーに両腕を広げる。仰々しい作戦を立てる。仰々しく天を仰いでみせる。誇大に(書き立てる。我が腕を吹聴する)。話が誇大に伝わる。必要以上に誇大に伝える。事々しく説いて聞かせる真理。針小棒大に言いふらす。大仰な(驚きを見せる。言葉で礼を言う。身振りで声高に話す)。大仰に(頭を下げる。手を振る。泣いたり笑ったりする芝居)。口振りがつい大仰に走りがち。別れるとき大仰に泣き騒ぐ。 **おそるべき【恐るべき】** 恐るべき(偶然の一致。残虐行為。戦争の実態。犯罪組織。不況の前兆。無聊の毎日。スビードで歩みを続ける。力量を目の当たりに見る=池波)。万物が死に絶えてしまったかのような恐るべき静寂栗本。後生恐るべし。小学生であの腕前とは末恐ろしい。 **おびただしい【夥しい】** おびただしい(海鳥の群れ。血を吐く。毛に包まれた胸。失敗を繰り返す。人工の光が街を彩る。人数が繰り出す。疲労感に体を包まれる)。おびただしい(心細いこと。だらしのないこと。手持ち無沙汰なこと)。空におびただしい星が輝く。薄いうろこ雲がおびただしく広がる。 **かぎりない【限りない】** 限りない(愛着を持つ。幸福を感じる。怒りがこみあげる。可能性を信じて疑わない)。時空の限りない広がり。胸に限りなき哀愁が漲り渡る=田山。海が限りなく広がる。名状しがたい力が限りなく満ち溢れる=島崎。限りがない(人の欲には。例を挙げたら)。限りもない複雑さ。方図がない飲み方。自惚れに方図がなくなる。野放図な歳出の拡大が続く。野放図に(伸びた樹木。夫婦の性について喋る=富岡)。木という木が野放図に枝を伸ばし手をつないだり肩を組んでいるよう、永井龍。無制限な(拡大。捕獲。信用膨張をともなう産業の好況)。無制限に(使。認める)。 <887> # か **かげき【過激】** 過激な(行動に走る。言葉を吐く)。日に日に過激な思想に熱中していく=辻井。回を追うごとにより過激になっていく。要求が過激になる。 **かなり** かなり(印象が違う。頑固な夜尿症。酒を飲む。履きこんだ靴。ショックを受ける。突っ込んだ質問をする)。かなりの(額に上る。困難を伴う。歳月を要する。反響を呼ぶ。道のりを歩く)。いい加減(嫌気がさす。うんざりする。恥をさらす)。結構(いける味。面白い。役に立つ)。数段(腕が上がる。見劣りがする)。数等(格が高い。不都合な扱いを受ける)。よくよく(運の悪い子。悔しいとみえる)。 **きつい** きつい(訓練に耐える。香水の匂い。視線でにらむ。鞭を通す。一瞥を投げつける。木枯らしが吹く。言葉を投げつける。質問を浴びせる。縦皺が眉間に刻まれる。目を激しく光らせる)。きつい(辛みが。靴が。傾斜が。仕事が。ノルマが。練習が。スケジュールが。人の善さそうな顔をして心は氷のように=長与)。遠慮なくきついことを言う。怒気をはらんだきつい顔つき。頭が痛くなるようなきつい臭い=阿部。きつくなりがちな印象を和らげる。体をきつく抱きしめる。唇をきつく引き結ぶ。頬に硬いこぶができるほどきつく奥歯を噛みしめる=西木。きつくする(眉根を。目張りを)。きつくなる(口調が。声が。道路の勾配が)。きつく握りしめる(棒を。両手を)。ぎゅっと(雑巾を絞る。目をつぶる。固く握りしめる。口を一文字に結ぶ。強く締めつける)。 **きゅうげき【急激】** 急激な(病気の悪化。変化についていけない)。急激に湧く熱い感情。気持ちが急激に冷める。加速度的に(進歩する。数を増していく)。飛躍的な発展を遂げる。飛躍的に部数を伸ばす。生活が飛躍的に向上する。命中率が飛躍的に上がる。 # きょ **きょくたん【極端】** 極端から極端に走る。極端な(危機に陥る。行動をとる。誤解を受ける。思想の持ち主。結論に飛びつく。不眠症に悩まされる)。殊更に極端な例をあげる。極端に印象が違う。数が極端に少なくなる。評価が極端に下がる。極言する(駄作とまで。一切が自己責任だと)。極言すれば優勝はありえない。いささか極論かも知れない。 **きりがない** きりがない(贅沢を言えば。いちいち説明すれば。いつまでやっても。まわりを気にしていては。所有の欲望には=中野孝)。きりもなく(欠陥が発見される。舞い落ちる桜の花びら)。際限がない(欲を言えば。一々数え立てていれば芥川。一つ一つ実例を並べていては"江戸川)。原材料が際限なく値上がりする。想像が際限なく広がる。際限のないほど無数の問い=除。身のほどをわきまえぬ際限のない欲望小松。際限もなく(悪態をつく。繰り返す)。 **きわめて【極めて】** 極めて(重大な問題。古い時代。有能な男。ありふれたこと。寛大に取り扱う。事務的な事後処理。日常的な出来事)。極度に(財政が逼迫する。神経をとがらせる。引っ込み思案な女。物資が不足する)。想像力を極度に働かせる。極度の貧困にあえぐ。 # げ **げきか【激化】** 抗争が激化の一途をたどる=有川。激化する(競争が。戦闘が。対立が。テロが。内部抗争が)。 **げきてき【劇的】** 劇的な(感動を覚える。さよならホームラン)。心を締めつけられるような劇的な出会い曽野。自由化の波が劇的に高まる。劇的緊張を狙ったわざとらしさ=人間。映画になりそうなくらいドラマチック=小池。ドラマチックな(出会い。出来事)。 **げきれつ【激烈】** 激烈な(痛みが走る。言葉を吐く。寒気で鼻孔が痛む。疲労に苦しめられる。戦闘を繰り広げる。調子で演説する)。激烈を極める(怒りが。攻撃が)。弾圧が激烈となる。激甚災害に指定する。激甚な(打撃を与える。被害地の状況を伝える)。迫害が年毎に熾烈となる。熾烈な(ビジネス戦争。主導権争いを展開する。戦闘を繰り返す)。 # こ **こちょう【誇張】** 切羽つまった苦悶の表情に一抹混じる芝居がかった誇張古井。言葉に誇張がある。言葉が誇張のない率直な響きで耳に届く吉行。誇張する(面白半分に事実を谷崎。百万長者にでもなったかのように=壺井)。誇張して不正確に書く。現場の模様を誇張して話す。わざと誇張して言う。大袈裟な尾鰭をつけて伝わる。ちょっとのことでも尾鰭をつけて話する。南条。話に尾鰭がつく。 # さ **さんざん【散々】** さんざん(油を絞られる。恨み言を言う。苦労する。迷った挙げ句。迷惑をかける。嫌みを言われる。考えた末に出した結論。働かした挙げ句に追い出す=獅子)。さんざ(苦労をする。口汚くののしる。我がままを言う。悪いことをする)。さんざっぱら(聞かされる。待たせる)。 # し **しきりに【頻りに】** しきりに(声をかける。手洗いに立つ。耳を引っぱる。指で机を叩く。言い訳めいたことを言う。結婚をすすめる。貧乏ゆすりをする。弁解めいたことを言う)。しきりと(心配する。目をこする。ノートに書きつける)。しげしげと(足を運ぶ。観察する。見る。店へ出入りする。目の中を覗き込む)。顔をしげしげと眺める。とみに(威勢が失せる。空腹を覚える。饒舌になる)。最近とみにぼけてくる。 **じゅうだい【重大】** 事態は予想したよりも重大。重大な(過ちを犯す。岐路に立つ。支障が生じる。秘密を隠す。危機に直面する。責任を痛感する)。急を要する重大な話。極めて重大な問題を含む。他局に影響を及ぼすほどの重大な作 medie巻。事の重大さが(のみ込める。理解できる)。事の重大さに気づく。説明されないと重大さが分からない。事のあまりの重大さに言葉が出ない。事の重大さを認識する。言わずもがなのことをわざと重大そうに言う。筒井。重大事項を決定する。 <888> # じ **じんじょうではない【尋常ではない】** 怯え方が尋常ではない。尋常でない気配が伝わる。尋常な努力ではない。受けた苦痛は尋常一様ではない。尋常一様ではない熱心さ。尋常一様の(学者ではない。ものではない魅力)。痛手が尋常一様のものではない。普通の神経では考えつかないような残虐な遊び!森村。 **ずいぶん【随分】** ずいぶん(気が楽になる。苦労をかける。時間がかかる。乱暴な話。世の中も変わったもの)。ずいぶんと(うかつな話。手間がかかる。骨を折る。回り道をする。虫がいい。軽はずみな人間。失礼なことを言う。長い沈黙が続く)。ずいぶんな(言い方。癇癪持ち。安普請)。 # す **すごい【凄い】** すごい(勢いで飛びつく。剣幕で抗議する)。嵐の叫ぶような凄すごい声芥川。ペンキの白と赤を塗ったような凄い化粧獅子。空がすごいほどに青く澄む。すごく(気になる。時間がかかる。大事なこと。楽しい雰囲気。熱をあげる。満ち足りた気分)。すごさにたじたじとなる。ものすごいスピードで走る。三白眼の物凄い眼で睨む奥泉。ものすごく(おしゃべりな人。面白いパーティー。悲しそうな表情。プライドが高い)。状況がものすごく錯綜する。水がものすごく冷たい。 **すこぶる【頗る】** すこぶる(気に入る。都合がいい。評判が悪い。不謹慎な言葉。役に立つ。よく一致する。注目すべき特長)。すこぶる付きの(元気。美人)。 **すさまじい【凄まじい】** すさまじい(喊声が上がる。拷問を受ける。光が炸裂する。勢いで怒られる。大声でどなりつける。音を立てて雷がとどろく。火炎が噴き上がる。金切り声をあげる。虚々実々の権謀。殺気がみなぎる。死闘を繰り広げる。悲鳴が聞こえる。水音を立てる滝=井伏)。物価の値上がりがすさまじい。赤子がすさまじい声で泣く。雲がすさまじい勢いで押し走る。トラックがすさまじい勢いで追い越していく。口から火焔を吐くという凄じい勢い二葉亭。突進するラガーのように凄じい力三浦。山も覆りそうなほどのすさまじい雨村上。今にも掴みかかりそうな凄まじい気色を見せる芥川。しばらく見入ってしまうほどの凄まじい夕焼け=原田。病菌がすさまじく繁殖する。形相すさまじく児にらみつける柴田。火を吐き出すように凄まじく言う大佛。すさまじさ(時代の流れの。人間の業の。悪霊に取り憑かれているような中島。現代人の屈折した欲望の志茂田)。すさまじさに(圧倒される。息を呑む。辟易する)。年を追ってすさまじさを加える。凄絶な(戦いを続ける。流血の場面。歴史を秘める。美しさに満ちた夜景"原田)。凄絶になまめいて見える。 # そ **そうとう【相当】** 相当(時日を要する。手間がかかる。根に持つ。ひどく殴られる)。相当な(財力を蓄える。辛酸をなめる。打撃を受ける。反感を買う。努力を必要とする)。相当に(病勢が進む。複雑な人物。口やかましい男。ショックを受ける。高い評価を与える)。相当の(地位に昇る。教養を身につける。金額を絞り取る。日時をかけて完成する)。よほど(思い余っての行動。心細い思いをしたのだろう。慎重に考えなければならない。のどが渇いていたらしい)。 # た **たいげんそうご【大言壮語】** 大言壮語で虚勢を張る。酒を飲んで大言壮語する。大言壮語して(金品をかすめる。人を辟易させる)。うそぶく(一流の腕前だと。誰にも負けないと)。高言する(自分の力も考えずに。自分は天才だと)。豪語する(確信ありげに。天下無敵と。腕は誰にも負けないと。経済と外交が得意と)。 **だいぶ** だいぶ(数が減る。内容が変わる。日を置く。見劣りがする。酔いがまわる。前から知っている)。 **多分に** 多分に(曖昧さを残す。下心がある。皮肉が交じる)。多分にある(可能性が。危険性が)。 **たいへん【大変】** 大変失礼な言いぐさ。大変な(歓待を受ける。経済的負担。間違いを犯す。目に遭う。お荷物を背負いこむ。ショックを受ける。そぶりは露ほども見せない)。熱の入れようは大変なもの。言葉を迂闊に信じたら大変なことになる=結城。暮らしが大変になる。過大な(期待を持つ。費用を要する。役割を与える)。大の(医者嫌い。好物。仲良し。男をやり込める。大人が夢中になる)。なまなかでない(支出。努力)。筆舌に尽くしがたいほど変惨。筆舌の及ぶところではない。容易ならない(悲痛な風情。事態に直面する)。容易ならぬ緊迫感。教育上の由々しい大問題。由々しき一大事。油虫が由々しく繁殖する。 **たけだけしい【猛々しい】** 猛々しい(威力を振るう。うなり声を発する。欲望が消え去る)。猛々しい(獣のように。盗人)。若鷹のように猛々しい瞳永井。猛々しいまでに生い茂った夏草落合。日射しが真夏のように猛たけだけしく暑い藤沢。猛々しく尖がった神経。犬が猛々しく吠える。覆面の男が猛々しく襲いかかる。獰猛な(顔付き。自然。目を光らせる。野獣。怒りに駆られる)。見るからに獰猛な大きな肥えた犬"高見。 # ち **ちめいてき【致命的】** 致命的な(痛手を蒙る。結果を招く。欠陥がある。失敗を招く。障害が起こる。衝撃を受ける。設計ミス。打撃を受ける。敗北を喫する。ダメージを受ける。破局をもたらす)。頭の傷が致命傷となる。スキャンダルが致命傷になりかねない。壊滅的な(敗北に終わる。被害を受ける)。壊滅的な打撃から立ち直る。壊滅的な打撃を与える。破滅的な打撃を受ける。小さなミスが命取りになりかねない。命取りになる(一度の失敗が。病気が)。 <889> # つ **つうれつ【痛烈】** 痛烈な(反対に遭う。論陣を張る)。激しい痛烈な苦しみ。貧困に対する痛烈な憤怒。満座の中での痛烈な失敗。悪徳を痛烈にやっつける。言葉が痛烈に心に迫る。社会の不公平を痛烈に感じる。 # ど **どぎつい** どぎつい(色の口紅。化粧。原色。光の点滅。泥絵の具でけばけばしく塗り立てた見世物小屋の看板絵=円地)。アクの強いコメディアン=小林信。ごてごてと(飾りつける。着飾る。塗りたくる)。着るものにも顔のつくり方にも毒々しいような刺戟的な傾向が出てくる阿部。 **どくどくしい【毒毒しい】** 毒々しい(朱や青に塗る。諧謔に満ちた言葉=貫井)。朱色に鉛色を混ぜ合わせた毒々しい河面"中沢。明治頃の錦絵のような毒々しい色彩の図柄!今日。真っ黒い油煙をあげる赤々しいほどの赤い焰の本庄。 # と **とてつもない【途轍もない】** とてつもない(危険を冒す。声で一喝する。陰謀をめぐらす。恐怖がこみあげる。値を吹っかける)。とてつもなく(大きな音。エネルギーがいる。恐ろしいことが起こる)。とてもとても(いい気持ち。勝ち目はない。手が出ない。うまくできている。真似ができない。正気の沙汰とは思えない荻野)。気の毒でとても見ていられない。興奮してとても眠れそうにない。いささかも驚く。神経が異常に敏感になる。いたって(気が小さい。人のよい女。実直そうな若者)。いと安らかに眠る。いとも(あっさり答える。軽々とやってのける。たやすく通り抜ける。やすやすと答えを導く)。大きに(世話になる。当惑する。腹を立てる)。返す返すも(名残惜しい。あさましい限り。悔やまれてならない。無念な思いに打られる)。ごく(当たり前。自然な流れ)。ごくごく(親しい仲。普通の人間)。至極(いい気持ち。ご満悦の態。あっさりと答える。のんびりした格好)。てんでわけが違う。とびきり(上等の料理。高い旅館。下手な絵)。何層倍美しいか分からない。何層倍も恋しい。はなはだ(疑問に思う。都合がよい。迷惑な話。注目すべき現象)。ほとほと(嫌気がさす。感心する。困る)。大いに(力を発揮する。名を上げる。羽を伸ばす。興味をそそられる。誇らしく感じる)。死ぬほど(暑い。嬉しい言葉。おびえる。口惜しがる。深刻な話。恥ずかしい思いをする)。大層(人気がある。よく似ている。恥ずかしい思いをする。利口そうに見える)。大層な熱のあげよう。一方ならず(残念に思う。楽しみにする)。一方ならぬ(可愛がりよう。世話になる。便宜にあずかる)。 **とほうもない【途方もない】** 途方もない(大きな声。金の使い方。誇大な虚栄。夢を描き出す。空想の世界を広げる)。途方もないくらいの剛胆に氷を持っている=柴田剣。途方もないほど高い報酬をふっかける柴田剣。途方もなくぶざまなことをしでかす。 **とんでもない** とんでもない(恥を受ける。はめに陥る。目に遭う。恥をまき散らす。失敗をやらかす。障害にぶつかる。不幸に見舞われる。迷路に入ってしまう。罠が仕掛けられている)。逆上してとんでもない台詞を口走る=阿久。無償で人を労働させるというとんでもない考え"服部。とんでもなく(大きな波が立つ。ばかげたことをしでかす)。あられもない(噂を立てる。寝姿をさらす。媚態を見せる。シースルーの服)。突拍子もない(思いつき。甲高い声。行動に出る。大きな声で笑う“大庭)。とんだ(食わせ者。邪魔が入る。迷惑をかける。事件に巻き込まれる。とばっちりを食う)。法外な(金を要求する。利益を得る。費用を吹っかける)。大それた(野心をいだく。気持ちは毛頭起こらない)。大それたことを考える。人殺しなんで滅相もない。滅相もないことを口走る。滅相なことを言ってはいけない。もっての外(勝手に休むなんて。金で解決するなど)。もっての外の(あわてぶり。腹立ちよう。不心得者)。この期に及んでの抗議は論外"伊坂。論外の沙汰。沙汰の限り。 # な **なかなか** なかなか(頭のいい女。考えが鋭い。隅におけない。評判がいい。見所がある)。なかなかに(きつい仕事。切ない眺め。端正な顔)。なかなかの(美人。勇気が要る)。なかなかどうしてたいした男だ。 **なみなみならぬ【並々ならぬ】** 並々ならぬ(恨みがこもる。人間の執念)。並大抵ではない(悲しみが。情熱が。知的好奇心が)。並大抵の苦労ではない。心配は並々でない。並々でない好意をいだく。一通りではない(可愛がりよう。喜び)。嘆きが一通りではない。一通りの苦労ではない。 **なみはずれる【並外れる】** 並外れた才能の持ち主。並外れて(体が大きい。自尊心が強い。鋭い分析力。雄渾な書。膂力が強い)。頭脳が並外れて明晰。征服欲が並外れて大きい。武術が並外れてすぐれている。バカみたいに値が安い曲高。あまりと言えばあまりな仕打ち。あまりのせせこましさに呆れる=島田。あんまりだらしがなさ過ぎる。なんぼなんでもあんまり話がよすぎる。欲求が桁外れに強い。気が遠くなるような(金額。苦しさを覚える=宮本)。気の遠くなるような(恍惚感に。忍耐力)。春の午後の気の遠くなるようなのどかさ=阿刀田。度外れな人懐っこい性分。持って生まれた度外れな気位。度外れに大きな声。度外れな自己過信。 # は **はげしい【激しい】** 激しい(嵐が吹く。寒けが襲う。時代の動き。戦闘が始まる。タッチの絵。抵抗に会う。愛欲に惹かれる。感動が体を貫く。口調で罵倒する。目で睨みつける。狼狽を露わにした表情)。激しい(寒暖の差が。気性が。好き嫌いが。人の出入りが。暗闇の中でも白く見えるほど雨の勢いが。長野)。はげしい動悸で気分が悪くなる=灰谷。家ごと揺さぶられるようにはげしい波の音=檀。浮き沈みの激しい商売。運命の激しい逆転。思い込みが激しい質。顔に激しい悪意が浮かび上がる。感情移入の激しい体質。執拗で激しい吹雪。切ないような激しい呼吸。背中に激しい痛みが走る。凸凹の激しい道。横なぐりの激しい突風が吹く。両者の間に激しい応酬が鋭く、思わず激しい言葉が口をついて出る=阿木。教会の全聴衆を泣かせるほどの激しい説教「伊藤整。弛張の激しい風の息"寺田。心臓が軀の外へ飛びだしそうに激しい鼓動を打つに井上ひ。火のように激しい女=瀬戸内。身を焼かれるような烈しい悲しさ寂しさ=中島敦。身を焼くように烈しい恋菊池。胸いっぱいにあふれてくるはげしい情熱で山本周。ぶつ当たりせずにはいられないほど激しい怒り筒井。激しい感情の(揺れ。起伏)。激しく(首を横に振る。談論をたたかわす)。雨が地面を激しく叩く。体が激しく疲憊する。急に胸が激しく打ち始める。心が激しく乱れ動く。こほこほと激しく咳き込む。タイヤが激しくきしむ。火の粉が激しく落ちてくる。水が激しく流れ出る。胸が激しく波立つ。欲情が激しく燃え上がる。一倍烈しく憤怒する=永井荷。詰問するように激しく問い詰める三島。焔の帯が烈しく肌に舞い上がる=林。激しく渦巻く(風が。渓流が)。激しくなる(敵機の来襲が。胸の動悸が。野次と怒号が。督促が日毎に。風が一段と。雨と風が次第に。外の雨の音がにわかに。雪がたちまちのうちに。山鳴りがだんだん。リズムが狂ったように"向田)。矯激な文字を羅列する。激越な言辞をもてあそぶ。酷烈な(生存競争。世の中を生き抜く)。凄烈な死闘を繰り広げる。争いが凄烈を極める。丁々発止と渡り合う。丁々発止のやりとり。全身火の玉と化した兵の塩野。烈々たる(気迫。壮志)。烈々と燃え上がる炎。ハードな(仕事。授業内容。トレーニング。サスペンス小説。スケジュールに追いまくられる)。相当にハードなスケジュール。爆発的なブームを呼ぶ。劇場が爆発的な歓声と拍手にどよめく。率が爆発的に急上昇する。もりもり(食べる。たくましくなる。闘志が湧いてくる)。四囲にもりもりと波がむくれ上がる=小林多。 **はげしさ【激しさ】** 早口に叩きつけるような激しさ川端。うんと言わさずにはおかないというような激しさが顔に現れる=長崎。思いがけぬ激しさでかきくどく。叱りつける激しさでたしなめる。雨の激しさに身をすくめて黙りこむ。雨が一段と激しさを増す。惑乱ぶりが日増しに激しさを加える奥泉。 **はなはだしい【甚だしい】** 驚くほどの人が集まる。はなはだしい(侮辱を受ける。衰弱に落ちこむ)。はなはだしい(毀誉褒貶が。自己顕示欲が。溺愛ぶりが。思い上がりも。見当違いも。時代錯誤も。認識不足も)。戦争による荒廃が甚だしい。富者と貧者のはなはだしい懸隔。はなはだしく(意欲を失う。先例を尊ぶ国。悲観的な意見。危険をともなう。気勢をそがれる。精神が混乱する)。甚だしく邪魔っけだと感じる=江戸川。驚くほど(味が良い。大きな音。成長が早い。多額に上る。何も知らない。よく似合う。正確に予測する。巧みな話しぶり)。足が驚くほど冷たい。怖いくらい無愛想に言う。灰谷。怖いほど(幸せ。静かな。真剣)。甚大な(損害。ダメージを受ける)。極めて甚大な被害。はかり知れない甚大な影響。断然(数が多い。有利な状況。トップを占める)。遥かに(実力が下。レベルが上)。状況は予想していたよりも遥かに不利。常人より遥かに速く走る。想像を遥かにこえる。自分を遥かに越える存在"高樹。見かけより遥かにしっかりした人物藤原。べらぼうな暑さ。費用がべらぼうなものになる。ほどがある(強情にも。非常識にも。身びいきにも。虫がいいにも。だらしがないにも。馬鹿にするにも。人をからかうにも。亭主を嘗めるにも光原)。めっぽう(気が荒い。評判になる)。言葉つきがめっぽう優しい。仕事がめっぽう早い。舌先三寸でめっぽう高く売りつける。よくよくの(変わり種。頑固者)。恐ろしい(剣幕で罵る。力を出す。勢いで突進する。スピードで車を走らせる)。おそろしく(陰気な声。気前がいい。口が悪い。商売がうまい。腹を立てる。昔のこと。手間のかかる仕事)。恐ろしく迫力のある眼光で睨みすえる高橋和。逃げ足が恐ろしく素早い=奥泉。恐ろしいほど(美しい。寒々とする。符合する。意識がはっきりしている『海音寺)。恐ろしいほどの静寂が垂れこめる=日野。 **ひげんじつてき【非現実的】** 非現実的な(印象を与える。考え。物語)。机上のプランに過ぎない。の描き出した空中楼閣。砂上の楼閣。現実離れのした目標。現実離れした荒唐無稽なお話。あまりにも現実離れしている。 **ひじょう【非常】** 非常な(苦労を強いる。注意を払う。人気を博する。危険を覚悟する)。秘術をもってしても非常な催事。非常に(いい女。すぐれた文才。迫力がある。役に立つ。よく似ている)。 **ひじょうしき【非常識】** 非常識で自分勝手な人間。浮き世離れした生活。常識が(欠落する。通じる相手ではない)。世の常識から外れる。常識に(外れる。百八十度反する内)。一般常識に欠ける。世間の常識に(乏しい。反する)。非常識さを(咎める。恥じる)。 **ひといちばい【人一倍】** 人一倍(大きな体。臆病な人間。感受性が鋭い。一生懸命になる。行儀作法にやかましい。毀誉褒貶に敏感。貧苦をなめつくす。プライドが高い。負けん気が強い)。身だしなみに人一倍気を使う。人一倍強い(甘えが。思いが。欲望が)。人一倍の(我慢が必要。努力をする)。 **ひどく** ひどく(暑い日。機嫌が悪い。気取った声。自信を失う。信用を落とす。無愛想な口調。後口の悪い論争。思い詰めた表情。物分かりが良い。老成した雰囲気。憔悴して半病人になる=瀬戸内)。考え方がひどく古めかしい。ひどい(汗をかく。痛手を受ける。傷を負う。疲労を覚える。言い争いになる。大暴風雨に遭う)。ひどい(傷の痛みが。頭痛が。悪阻が)。あまりにひどい間違い。いたく(機嫌を損ねる。責任を感じる。話が合う。心を動かされる。自尊心を傷つけられる)。いやに(愛想がいい。あっさり言う。深刻な表情。丁寧な言葉)。ばかに(暑い日が続く。気に入る。条件がいい。人数が多い)。嫌というほど(思い知らせる。しぼり上げる。心魂に刻みつける)。鴨居に頭を嫌というほどぶつける。 <890> # は 八 しい商売。運命の激しい逆転。思い込みが激しい質たち。顔に激しい悪意が浮かび上がる。感情移入の激しい体質。執拗で激しい吹雪。切ないような激しい呼吸。背中に激しい痛みが走る。凸凹にこの激しい道。横なぐりの激しい突風が吹く。両者の間に激しい応酬が鋭く、思わず激しい言葉が口をついて出る=阿木。教会の全聴衆を泣かせるほどの激しい説教「伊藤整。弛張しらの激しい風の息"寺田。心臓が軀份らの外へ飛びだしそうに激しい鼓動を打つに井上ひ。火のように激しい女=瀬戸内。身を焼かれるような烈はげしい悲しさ寂しさ=中島敦。身を焼くように烈しい恋菊池。胸いっぱいにあふれてくるはげしい情熱で山本周。はつ当たりせずにはいられないほど激しい怒り筒井。激しい感情の(揺れ。起伏)。激しく(首を横に振る。談論をたたかわす)。雨が地面を激しく叩く。体が激しく痕祭せ心する。急に胸が激しく打ち始める。心が激しく乱れ動く。こほこほと激しく咳き込む。タイヤが激しくきしむ。火の粉が激しく落ちてくる。水が激しく流れ出る。胸が激しく波立つ。欲情が激しく燃え上がる。一倍烈しく憤怒する=永井荷。詰問するようにはげしく問いつめる三島。焰組のの帯が烈しく肌に舞い上がる=林美。▼激しく渦巻く(風が。渓流が)。▼激しくなる(敵機の来襲が。胸の動悸が。野次と怒号が。督促が日毎に。風が一段と。雨と風が次第に。外の雨の音がにわかに。雪がたちまちのうちに。山鳴りがだんだん。リズムが狂ったように"向田)。矯激さいな文字を羅列する。激越な言辞をもてあそぶ。酷烈な(生存競争。世の中を生き抜く)。凄烈な死闘を繰り広げる。争いが凄烈を極める。丁々発止と渡り合う。丁々発止のやりとり。全身火の玉と化した兵の塩野。烈々たる(気迫。壮志)。烈々と燃え上がる炎。ハードな(仕事。授業内容。トレーニング。サスペンス小説。スケジュールに追いまくられる)。相当にハードなスケジュール。爆発的なブームを呼ぶ。劇場が爆発的な歓声と拍手にどよめく。率が爆発的に急上昇する。もりもり(食べる。たくましくなる。闘志が湧いてくる)。四囲にもりもりと波がむくれ上がる=小林多。 **はげしさ 【激しさ】** 早口に叩きつけるような激しさ川端。うんと言わさずにはおかないというような激しさが顔に現れる=長崎。思いがけぬ激しさでかきくどく。叱りつける激しさでたしなめる。雨の激しさに身をすくめて黙りこむ。雨が一段と激しさを増す。惑乱ぶりが日増しに激しさを加える奥泉。 **はなはだしい【甚だしい】** 驚くほどの人が集まる。はなはだしい(侮辱を受ける。衰弱に落ちこむ)。はなはだしい(毀誉褒貶いが。自己顕示欲が。溺愛ぶりが。思い上がりも。見当違いも。時代錯誤も。認識不足も)。戦争による荒廃が甚だしい。富者と貧者の はなはだしい懸隔。はなはだしく(意欲を失う。先例を尊ぶ国。悲観的な意見。危険をともなう。気勢をそがれる。精神が混乱する)。甚だしく邪魔っけだと感じる=江戸川。驚くほど(味が良い。大きな音。成長が早い。多額に上る。何も知らない。よく似合う。正確に予測する。巧みな話しぶり)。足が驚くほど冷たい。怖いくらい無愛想に言う。灰谷。怖いほど(幸せ。 。怖いほど(幸せ。静かな局。真剣)。甚大な(損害。ダメージを受ける)。極めて甚大な被害。はかり知れない甚大な影響。断然(数が多い。有利な状況。トッブを占める)。遥かに(実力が下。レベルが上)。状況は予想していたよりも遥かに不利。常人より遥かに速く走る。想像を遥かにこえる。自分を遥かに越える存在"高樹。見かけより遥かにしっかりした人物藤原。べらぼうな暑さ。費用がべらぼうなものになる。▼ほどがある(強情にも。非常識にも。身びいきにも。虫がいいにも。だらしがないにも。馬鹿にするにも。人をからかうにも。亭主を嘗めるにも光原)。めっぽう(気が荒い。評判になる)。言葉つきがめっぽう優しい。仕事がめっぽう早い。舌先三寸でめっぽう高く売りつける。よくよくの(変わり種。頑固者)。恐ろしい(権暮で罵いのる。力を出す。勢いで突進する。スビードで車を走らせる)。おそろしく(陰気な声。気前がいい。口が悪い。商売がうまい。腹を立てる。昔のこと。手間のかかる仕事)。恐らしく迫力のある眼光で児にらみすえる高橋和。逃げ足が恐ろしく素早い=奥泉。恐ろしいほど(美しい。寒々とする。符合する。意識がはっきりしている『海音寺)。恐ろしいほどの静寂が垂れこめる=日野。 **ひげんじつてき【非現実的】** 非現実的な(印象を与える。考え。物語)。机上のブランに過ぎない。の描き出した空中楼閣。砂上の楼閣。現実離れのした目標。現実離れした荒唐無稽なお話。あまりにも現実離れしている。 **ひじょう【非常】** 非常な(苦労を強いる。注意を払う。人気を博する。危険を覚悟する)。秘術をもってしても非常な催事。非常に(いい女。すぐれた文才。迫力がある。役に立つ。よく似ている)。 **ひじょうしき【非常識】** 非常識で自分勝手な人間。浮き世離れした生活。常識が(欠落する。通じる相手ではない)。世の常識から外れる。常識に(外れる。百八十度反する内低)。一般常識に欠ける。世間の常識に(乏しい。反する)。非常識さを(咎とがめる。恥じる)。 **ひといちばい一人一倍】** 人一倍(大きな体。臆病な人間。感受性が鋭い。一生懸命になる。行儀作法にやかましい。毀誉褒貶い組に敏感。貧苦をなめつくす。ブライドが高い。負けん気が強い)。身だしなみに人一倍気を使う。▼人一倍強い(甘えが。思いが。欲望が)。人一倍の(我慢が必要。努力をする)。 **ひどく** ひどく(暑い日。機嫌が悪い。気取った声。自信を失う。信用を落とす。無愛想な口調。後口の悪い論争。思い詰めた表情。物分かりが良い。老成した雰 <891> # 激しい・甚だしい-288 囲気。憔悴しいらして半病人になる=瀬戸内)。考え方がひどく古めかしい。ひどい(汗をかく。痛手を受ける。傷を負う。疲労を覚える。言い争いになる。大梁風雨に遭う)。▼ひどい(傷の痛みが。頭痛が。悪阻っが)。あまりにひどい間違い。いたく(機嫌を損ねる。責任を感じる。話が合う。心を動かされる。自尊心を傷つけられる)。いやに(愛想がいい。あっさり言う。深刻な表情。丁寧な言葉)。ばかに(暑い日が続く。気に入る。条件がいい。人数が多い)。嫌というほど(思い知らせる。しぼり上げる。心魂に刻みつける)。鴨居もに頭を嫌というほどぶつける。 **ほら【法螺】** ほらが(過ぎる。途方もなく大きい)。ほらを吹く。ほら話に終始する。子供だましの大ほら。 **むちゃくちゃ【無茶苦茶】** 無茶苦茶(荒っぽい運転。親孝行をする)。無茶苦茶な(こじつけ。理屈)。師伝なしの無茶苦茶なひとり稽古"海音寺。人間の体力を無視した無茶苦茶な計画"新田。無茶苦茶に(記憶力がいい。腹が立つ。手足を振り回す)。寝相がむちゃくちゃに悪い!吉本。むやみやたらと(大声をあげる。刀を振り回して斬りつける)。酒の勢いでむやみやたらと気が大きくなる。めったやたらに(強い。叩きのめされる)。やたらめったら(忙しい。かっこいい。可愛い。気になる)。 **むやみに** むやみに(感傷的になる。言うべきことではない。ぶっ放すわけにもいかない)。仕事をむやみに押しつける。手足をむやみに振り回して暴れる。みだりに(約束できない。臆測すべきではない。他人に裸を見せる。発砲することは禁じられている)。他人のブライバシーをみだりに侵してほいけない=灰谷。無性に(嬉しい。喉が渇く。腹立たしい。声を聞いてみたくなる。一人になりたい)。やけに(緊張した顔。時間がかかる。目につく。大人びて見える。がぶがぶお茶ばかり飲む)。滝の水音がやけに大きく響く。やたらと(お節介を焼く。寂しげな街。欲をかく。愛想よく返事する。頭をべこべこ下げる。言い訳めいた説明。難しい漢字を並べる)。声がやたらと大きい。やたらに(口外すべきことではない。何回もうなずく)。 **めちゃくちゃ【滅茶苦茶】** めちゃくちゃな(暴れ方 。ストーリー。論理。わがままを言う)。めちゃくちゃに手足を振り回す。そこらじゅうをめちゃくちゃに歩き回る。メチャクチャにあばれまわって手がつけられない=本多陵。頭を滅茶苦茶にぶん殴る=向田。めちゃくちゃになる(足取りが。人生が)。味噌もくそもいっしょくた安岡。はちゃめちゃな(ストーリー。展開)。 **めちゃめちゃ** めちゃめちゃな(失敗に終わる。日々を送る)。顔がめちゃめちゃに焼けただれる。髪をめちゃめちゃにかきむしる"宮本百首。想像が鋭い爪の先で胸の芯を目茶目茶にかきむしる遠藤。めちゃめちゃになる(一生が。信用が。生活が)。めためたに負ける。心底惚れてめためたになる。 **もうい【猛威】** 自然の猛威が風土を支配する。猛成に歯止めをかける。▼猛威を振るう(嵐が。ウイルスが。台風が。デマが。伝染病が。迷信が。山火事が。インフルエンザが)。▼猛威をふるう(略が世論という超個人的なものになってインフルエンザ的な=安部。疫病が嵐のように=大江)。天然の暴威による災害。自然の暴威の前に崩れた家。▼暴威を振るう(自然が。台風が。吹雪が。インフルエンザが)。 **もうぜん【猛然】** 猛然たる食欲。猛然と(ダッシュする。闘志を燃やす。腹が立つ。活動を開始する。スビドを上げる)。頭が猛然と回転を始める。犬が猛然と吠える。刀を猛然と打ち下ろす。高射砲が猛然と火を噴く。衝動が猛然と起きる。 **もうれつ【猛烈】** 猛烈な(雨が降る。気合を発する。空腹を感じる。争奪の的。読書を続ける。反発を覚える。降りになる。怒りが噴き出す。勢いで回転する。風が吹き荒れる。嫉妬に襲われる。焦燥が突き上げる。頭突きを食らう。スピードで突っ走る。吐き気に苛従いまれる。吹雪が扱ってくる。砲火を浴びせかける)。近年にない猛烈な寒さ。猛烈な勢いで(突進する。まくしたてる)。猛烈に(悪口を言う。ファイトを燃やす)。 **やみくも【闇雲】** やみくもな(不安から解放される。欲望を懸命に抑える)。やみくもに(刀を振り回す。急流を渡る。腹が立つ。動くわけにはいかない。沖へ沖へと泳ぐ。手足をばたつかせる。手紙を書きたくなる。水の中で体をくねらせる。わき目もふらずに進む=杉本)。前へ前へとやみくもに進む。闇雲に発言権を得ようとあがくさだ。闇夜に鉄砲。 **やりすぎ【遣り過ぎ】** 小虫を殺すのに大砲をぶっ放やりすぎすようなやり過ぎ浅川。やり過ぎに注意する。やり過ぎは禁物。▼やり過ぎる(何を。ギャンブルを。ゲームを。水を)。捜査に行き過ぎがある。目にあまる行き過ぎが多い。鉄槌を鶏卵に打ちおろすような暴力すなわち蛮力=山田美。行き過ぎた秘密主義。馬鹿馬鹿しさが度を越す。嫌がらせが度を越えている。度を越したバッドジョーク=高橋和。▼度を越している(怒り方が。しつこさが)。 **よにも【世にも】** 世にも(哀れな姿。忌まわしい声。美しい花壇。悲しげな顔。幸せな夫婦。上品な笑顔。妙なる花園。不幸な運命。不思議な光景。珍しい光景。恐るべき犯罪組織。奇怪至極な事件の発端「里見)。 **れっか【烈火】** 希望が烈火と燃え立つ。烈火の怒りで叫ぶ。烈火のごとき叱責にさらされる=阿刀田。烈火のごとく怒る火坂。屈撓どうされぬ意気が烈火のごとく燃える=山田美。▼火の玉になる(一億。好奇心の)。火の玉のように心が燃え上がる=海音寺。はね起きるや火の玉のようにぶつかっていく=飯田。かんしゃくが起こって顔が火の玉みたいになる=中。 <892> # 禿げる・生やす **うぶげ【産毛】** 陽光にきらめく少女らしいうぶ毛=筒井。産毛がきらきらして綺麗!山田詠。▼産毛が金色に光る(細かい。頬に陽光がかすめ!阿久)。うぶ毛を朝日に光らせた白桃色の肌"筒井。産毛のように柔らかく短く織れて降る春雨"岡本。にこ毛が密生する。海の遠い水が瑠璃色いりにのして表面はにこ毛が密生しているように白っぽくさえ見える=岡本。鳶色以150のにこ毛に蔽ぉぉわれた皮膚・本庄。柔毛にこのような繊効い忻らかいニラの芽=拠。 **おくれげ【後れ毛】** 後れ毛がふわふわと揺れる=檀。頬に髪がんの後れ毛が一筋かかる。髪の後れ毛が一本一本きらきらと光る=福永。一本の後れ毛もないように髪を結い上げる=津本。一筋の後れ毛もなく今結いあげたばかりのように艶やかな丸髷註忆!有吉。袋に手をあてて後れ毛を掻かく。小指をやさしく折り曲げて軟らかい袋の後れ毛をかき上げる有局。 **おさげがみ【お下げ髪】** 三つ組みのお下げ髪。髪をお下げに(編む。結う)。髪を三つ編みにした少女、三つ編みを編み上げる。 **かみ【髪】** 髪(べたべたに脂ぎった。ほどけば夕立雲のように一杯にひろがる豊満な人合崎。娘の絹糸のような柔らかな=原田康。赤茶けてばさばさに焼いた石坂。頭にこびりついたような=黒井。領脚がいをすっきりと見せて奥様風にたくしあげた武田発。絹のような茶色の常盤。黒く艶があり一本一本に生命がたっぷりと及んでいるような山田太。触ると芯があってびっくりするほど硬い連城。スフィンクスの髪のような厚い切り口の=伊藤整。つややかで豊かな綿菓子のような=山田休。手入れが行き届いて艶のある=小川。溺死人のように額に引っかぶった宮本百。針金のように細い!清水食。針鼠指りものように硬い萩原爽。火が燃えているような宮沢。指の間からさらさらとこぼれて逃げてゆくような感じの大庭。陽光を跳ね返して艶やかに光る=篠田)。髪が(脂気を失う。肩まで伸びる。艶やかに輝く。額にかかる。耳を覆う。風をはらんで揺れる。肩の上に軽々と広がる。ふわりと広がる。緩やかにカールする。金色の渦を巻いてきらきらと慄ふるえる=横光。逆立つほど哀かなしく重い音中島み。さらさらと頬に触れる=福永。滝のように首筋に流れる。宇野利。宙に浮くように逆立つ=福永。解けてしまうほど体を振り廻す=川端。波を打つように動く夏目)。女の新しい髪が花弁をもぎ取って蕊しくだけになった芍薬しいくのよう川端。恐怖で髪が逆立つ勝目。梳ときながした髪が鏡のように輝く=宮部。やわらかな髪が雲のように横に流れる=石田ぐ。髪から毛筋立てが抜け落ちる=川端。髪に(櫛(くしを入れる。爪を立てる。手を突っ込む。寝癖がつく。カーラ1を巻きつける。天使の輪が浮かんでいる。リボンをつける)。花を髪に差す。妻の髪に頬を寄せる。髪の(光沢が失せる。寝癖を直す。乱れを直す。手入れが行き届く。根をひっつかむ)。光が髪の上で戯れる。肩まである髪のすそを女みたいな手つきで整える"宮本烦。髪は烏からの濡れ羽色=曽野。髪を(金髪に染める。栗色に染める。茶色に染める。肩の上にふわりと広げる。左右にときながす。ふわりと後ろに流す。整髪料で固める。ばっさりと切る。かきあげるしぐさがこの上なく色っぽい佐野。かきむしったように逆立てる=堀)。肌に髪をなびかせる。そよ風に髪をなぶらせる。ドライヤーで髪を悩かす。ムースで髪を整える。指先で髪をかき上げる。頭をかしげて肩にハラリとかかった髪をはらいのける=宮部。ばらりと額に落ちかかる髪を優雅な手つきでかきあげる=後摩。炎のような髪を振り立てて踊り狂う〜白洲。幽霊みたいにべったりと濡れた髪を顔へひっつけさせたまま歩く横光、汚れたワカメのように汗でぬれた髪を垂らす富岡。髪振り乱して(狂乱する。走る)。重い葉扇を髪のように垂れて暗い蔭を溜めている樹"大岡。脂気をなくしたそそけ髪!向田。片手できゅっとつまみ上げたようなひっつめ髪=川端。 **かみかざり【髪飾り】** 赤い珊瑚にんの髪飾り。髪飾りを髪に差す。頭上にティアラが燦然と輝いている。羽飾りを頭につける。かんざしの房がはらはらと乱れる"中。簪紛いを挿す。 **かみがた【髪形】** もつれた鉄条網のような髪型"村上巻。髪を(七三に分ける。肩で切りそろえる。短く刈り上げる。モヒカン刈りにする。すっきりとアッブにまとめる。おかっぱにする)。漆黒の髪をオールバックにする=今所。角刈りにする(髪を。頭をスポーツ選手のような=五木)。角刈りのやくざっぽい男。五分刈りにする(頭を。髪を。頭髪を)。ごま塩頭を短く刈る。月代を剃る。束髪のかもじを丸める。束ねる(総髪を茶筅もいに。髪を後ろで)。丸デ封(艶やかな。露の垂れそうな)。桃割れの根がゆるむ。▼結う(器を。丸髷に愛を。髪を小ぶりに。髪を島田に。髪を茶筅に。愛を日本髪に。髪を眼鏡に。髪を桃割れに。束髪に。粋な銀杏返心桃社しに。髪をひっつめて。契をうしろにまとめて揺まげのように“干刈)。▼虎刈りにする(頭を。頭髪を)。髪の毛を毬栗いがに刈る藤枝。ヘアスタイルに気を配る。ヘアスタイルを整える)。 **かみのけ【髪の毛】** ▼髪の毛(いつも耳までかかっている尨犬のような徳田。海藻のホンダワラみたいな阿久。牝鶏と肌の尻尾のような=野間)。髪の毛が(落ちる音さえ聞こえそうなほどシンとする=内館。縦横無尽に跳ねまくっている=三浦し。焼けつくようなしびれた思い=林美)。頭頂にぼやぼやと髪の毛が立つ。項らょに細い髪の毛が煙る=中沢。裸の肩へ髪の毛がさやさやと触れる=中沢。ばらばらになった髪の毛が蹴ゃらのように額に垂れる=小池。ボマードで無理に寝かせつけられた髪の毛がむくむくと起き上がる岸田。無造作に伸びたやわらかい髪の毛がウェーブをかけたように波打って耳のかげにひろがる"石森。やんわりとした髪の毛の撫ぇで心地。髪の毛まで凍ってしまいそうな寒さ=原田康。髪の毛を(くるくる巻く。遂々行とさせる。短く切る。鷲掴みれみにする。くしゃくしゃにさせる。ちりちりにする。ぴったりときれいに分ける。ポニーテールにまとめる。ポマードで固める。もじゃもじゃと伸ばす。ふさふさと肩に垂らす=田辺)。雨に濡れた髪の毛をタオルで拭く。風が髪の毛をばらばらにする。所在なく髪の毛をもてあそぶ。一本一本の髪の毛をいとおしむような丁寧な愛撫・加賀。水の中に髪の毛を落としたように血がサツと流れる=伊集院。髪の毛のようなひびがはいる"小林多。細い髪の毛のような雨がまっすぐに天から垂れてくる=倉橋。流れに沿って川床の薬が髪の毛のように揺れる=高橋知。頭の毛が(弾くなる。犬が寝た後の芝生みたい=黒井)。頭の地肌が透けて見える。髪の毛一本無駄にしない。頭の毛を剃る。見違えるほど毛艶がよくなる。総たにを(張り出す。膨らませる)。発毛を促す。毛髪が梳くしにからむ。 <893> # 禿げる・生やす-289 **かみのにおい【髪の匂い】** 髪から(清潔な匂いが漂う。少し焦げたような日向の匂いが立ち昇る=落合)。髪の油が甘く漂漂う。淡い髪の香りがそっと鼻を打つ人米。尖がったような乾いた髪の匂い=黒井。 **くし【櫛】** 櫛に毛髪が絡む。櫛の(歯のように生えている竹林に差しこむ陽が苔こけの生えた地面に雨のようにそそぐ=水上。歯を引くように次々と去る=多岐上に櫛の歯をひくことく襲いかかる突拍子もない出来事・野坂。櫛の歯が抜けるように記者が辞めていく横山。同志たちが次々と櫛の歯を挽くように死んでゆく"綱淵。歯の欠けた櫛のように軒並の電灯が減る徳永。櫛代わりに愛髪に指を入れる。弯。細い櫛の歯のように規則正しい雨倉橋。わが身の体毛が濃い。無駄毛に悩む。無駄毛を剃る。指に燃かにみたいにたくさん生えている毛佐藤春。▼毛むくじゃら(腕が。隠すが)。毛むくじゃらな(足。犬。男)。 **くろかみ【黒髪】** 黒髪(みどりの。ぬれぬれとした。扇のように広がる=福永。緑の牧場のうねりよりなお柔らかに波打つ三好達)。黒髪が海藻に似た輝きを見せる=獅子。肩に黒髪がこぼれかかる。女の黒髪につなぎとめられる=平石。肩にかかる黒髪をはらりと払う。肩に黒髪を滑らせる。長い黒髪を風に吹きなびかせる。豊かな里髪を竜宮の乙姫のように高く結う大庭。髪が黒色の芒討すのように波うつ連城。光った絹糸みたいな長い真っ黒な髪の女=大庭。黒い髪が(漣ぶのように揺れる=福水。シーツの上に海藻のように広がっている女に永倉)。髪が黒くつやつやと輝いている。黒々として豊かな髪。黒く波うつ豊かな愛をうなじのところでまとめる塩野。 **け【毛】** 足の親指にぼやぼやと生えている毛辻井。毛がばらばらと抜け落ちる。もじゃもじゃ毛が生える。白い毛が雪のように散る=本多惨。毛の根が痒かゅくなる。房々した毛のむく犬。毛の色艶が(いい。悪い)。総身の毛が(逆立つ。よだつ)。毛のような(細かい注意。細い白銀色比以ぶの針"井伏)。瞬い封った獣の黒っぽく厚い毛のような公園の茂み=日野。羊の毛のように白く靡なびく浅間の烟!も=田山。額にへばりつくように垂れている軟らかい巻き毛=阿刀田。毛並みがつやつやとしている。毛並みの美しい精悍な獣原田席。黒い毛色が漆を塗ったように美しい光沢の犬"内田百。 **けぶかい【毛深い】** ▼毛深い(猿みたいに。熊のように。おそろしいほど永井荷)。すねに黒々と毛を生やす。 **しらが【白髪】** 白髪がいぶし銀のように清々サ娜しく光る本庄。髪に一筋二筋の白髪が光る。少し白髪が目立つ。愛びんに白髪がまじっている。めっきり白髪が多くなる。顔の若さに悅くらべて白髪が多い公村。頑強な額の上に獅子の없絵のような白髪が乱れ逆立っている三島。ちらほら白髪が額にほつれる=岡本。白髪のまじった老人。髪の毛が真っ白になる。恐怖で頭髪が一夜のうちに真っ白となる柴田剣。胡麻塩色ぶに礼になった頭高橋治。頭に秋霜を置く。髪に白いものが交じる熊谷。髪に白いものが目立つ内海。透き通るばかりに真っ白い髪の老人=小川。頭髪が白く変わる。生え際にうっすら霜をおく"山崎。半白の髪。真っ白な髪を北斎の波模様のようにカールさせる=大庭。真っ白なさんばら髪をふり立てる!大庭。長い白髪のような雨高橋和。乱れた白髪のような秋の長雨"倉橋。白い亀の子タワシみたいな白髪頭!富岡。見事な銀髪を朝の陽光に輝かせる三好微。 **たてがみ【鬣】** たてがみが大きく波打つ。馬の骸がゆさゆさと揺れる佐多。波の骸が白くくねって走っている極。芒討すが馬の蜜のように丘の頂上まで衍はい上る=大岡。 **ちょうはつ【長髪】** 長髪をばっさり切り落とす。ばさばさの長い髪。長い髪が(風になびく。背後の窓からの陽射しを踊るように弾く=原田宗)。縮れた長い髪が蜘蛛くもの巣のように揺れる=山田詠。解いた長い髪が一瞬散るように踊って肩に流れる=高井。寝乱れた長い髪を揺らせる。髪を長く伸ばす。 **つの【角】** 林のようにツノが並ぶトナカイの群れ=本多勝。角がほろりと落ちる。角を(生やす。矯めて牛を殺す)。板のあい目や節穴から洩もれる光線が黒い闇の中に角のように伸びる=本庄。 **とうはつ【頭髪】** ▼頭髪(雨の葉みたいに乱れ動く油っ気のない=徳永。理髪店から先刻脱け出したばかりのように綺麗に分けた武田楽)。頭髪が(耳に覆いかぶさる。膠水かで固めたように皮膚にへばりつく大岡。額からかなり後退している=大藪)。チックで固めた頭髪に溝をつけるような櫛目がしを入れる阿久。頭髪を(鷲もしづかみにする。縄のように巻きつける!横光)。短い頭髪のように揃って立っている林佐藤森。 <894> # は **とかす【梳かす】** ▼梳かす(髪の毛を。髪を丹念に。髪を櫛くしで)。くしけずる(風が林を。髪を。白髪を)。櫛目がしの通った髪。髪に櫛目を入れる。梳ずく(櫛で髪を。毛を。たてがみを)。髪の毛を梳き上げる。前髪を手柿にくで掻かき上げる。▼ブラッシングする(犬を。馬の全身を。髪を。猫を。毛布を)。 **なでつける【撫で付ける】** ▼撫でつける(小賢にびを。縮れ毛を。白髪を。眉毛の先を。髪を後ろへ。愛を手で。髪をオールバックに)。 **パーマ** 怒濤北とのように逆巻くパーマ=獅子。髪にくるくるとパーマが当たっている。髪にパーマをかける。パーマをあてる(ちりちりに。長髪に軽く)。パーマネントをかけたような菊永井龍。 **はえぎわ【生え際】** 生え際が(薄茶色に霞む。富士形になった額)。髪の生え際が美しい。髪の生え際に汗をためる。額ぎわが薄くなる。額ぎわに汗が光る。 **はえる【生える】** ▼生える(足に根が。萱かゃが一面に。木がまばらに。草が威勢よく。丈の低い雑草が。厳ぁしがひょろひょろ。内田百。禿げた頭に薄毛がしみのように松本。矢竹が二三木ひょろひょろと永井荷)。▶ぼうぼうと生える(草が。芒討すが)。苔こけの生えた地面。まばらに生えた松の樹。すすきが一面に生えた草地"村上巻。生えている(木々が疎まばらに。雑早が青々と。草がばらばらと。垂直に近い絶壁が海から=綾辻)。岸に生えている草。山間地に生えている木。にょきにょき茸いのが頭を出す。蒔きかぬ種は生えぬ。▼生え揃う(羽毛が。芝が。歯が)。植物が自生する。▼生やす(一日じゅう札の前に根を。鼻の下にひげを。洗濯し忘れた体操着に茸を若竹)。生え替わる(羽毛が。毛が。角が。歯が)。抜け替わる(羽毛が。髪の毛が。角が。歯が)。 **はげる【禿げる】** まんまるに禿げる。▼禿頭がぁ(つるつるの。ぴかぴかの。湯気の立ちそうな)。頭の(毛が相当渉くなる。地が薄く透けて見える)。頭のてつぺんが(薄くなる。コンバスを回したようにまんまるに禿げてしまった親父=椎名戚)。髪が(だいぶ薄くなる。バーコードのマークのようにまばらな状態を呈する水倉)。髪の毛を失う。毛が一本もない。後頭部がたそがれる=池澤。てっぺんが(渉くなった頭。里芋になった頭!向田)。頭髪が寂しくなる。脱け毛を気にする。生え際が後退する。つやつや光った頭。禿げ上がった額(広く。頭頂部品~まで)。▼禿げ上がる(脳天の毛が。頭がきれいに。頭がつるつるに)。 **ひげ【髭】** ▼髭(いたずら描きをしたような細く短い"石坂。思を刷はいたように僅かばかりしか残っていない芥川)。青々とした髭の剃り跡。髭もそらぬ原人のようななりに清水淺。認を(きちんと剃る。きれいに切り揃える。八の字に生やす)。剃刀砂以で髭をあたる。威厳のある髭をびんと伸ばす奥泉。仔細らしく隠ぁこの下の探ぃげを握って何か考える夏目。髭をたくわえる(真っ白な。鼻下に短く刈り込んだ『永井龍)。海賊のように髭もじゃの鬼がわら顔「中局み。一口髭(艶々しい漆黒の。呼吸ぃきで霧のように少しぬれた=長塚)。▼口ひげ(白い粗染くだのような向田。握るにあまるほど豊富な亜麻色の=本庄)。ちょび髭を生やす。ビンと八の字の跳ね上がったカイゼル髭”椎名鯛。▼顎鬚に(真っ白な。まばらな)。黒紛子粉じの布切れの端をほどいてきれいに撫でつけ糊で唇の下に貼りつけたという感じの顎髭はに大庭。鬚ぼうぼうの熊のような山男"中局災。頬性。銀のような白い髯=田山。剃刀を当てない醤がぼうぼうとして痩せこけた頬を施ぉぉう菊池。銀々しいのように習を生やす長与。長もいうをなびかせる。自从をしこく。美程に雪をかぶる。 **ひっつめる【引っ詰める】** 髪を後ろに引っつめる。きりりと引っつめた髪。髪を引っつめに(縛る。結う)。髪を無造作に引っ詰めにする三浦町。 **びん【鬢】** 戦に花を挿す。餐のほつれをかき上げる。吹く風に愛の毛をそよがせる。小愛の筋が膨れる。もみあげを(測る。長く伸ばす)。 **ぶしょうひげ【無精髭】** 痩せた顔を無精髭が影のように覆う。森環。目やにのくっついた無精ひげの顔!向田。無精髭を(生やす。指先でつまむ)。午後五時半の髭が顔を薄暗くする=村上春。粉にをふいたように皮膚からぶつぷつ野ひげが吹きだしている。安部。のび掛かった営が頬の辺りで手を刺すようにざらざらする夏目。針金のような髭が一二ミリ生え出す=松浦。 **ボマード** 機械油のような金属的な色合いを曖昧に浮かべた半透明のボマード=黒井。掌K50にべたつくボマードの気味悪い感触"黒井。むかつくようなボマードのにおい!安部。ボマードをべったり塗りつける。 **まえがみ【前髪】** 前髪が(額にかかる。はらりと落ちる。さやさや吹く風にゆれる=吉本)。前髪を(そよ風になぶらせる。右から左へ流す。煩わしそうに掻かき上げる落合)。額の前髪を掻き上げる。風が前髪をばらばらと吹き上げる=中沢。 **まきげ【巻き毛】** カーラーで巻き毛にする。みっしりと頭をおおう短いカーリーヘアー落合。髪をカールする。髪にウエーブをつける。髪の毛が羊毛のように縮れている佐山。髪をソバージュに縮らせる。 <895> # 禿げる・生やす-289 **まゆ【眉】** ▼眉(煙ったような。使い古した締組ぅのような三島。武人のような太い"井上靖。舞台化粧と見まごうばかりに濃く引いた=宮本輝。細い月のように形のいい“大佛。楽天的な装飾をなしている太い武田泰)。弓形にきれいに整った眉『篠田。眼の上に芋虫を半分に削くいで貼りつけたような太い畝ぅぉがくねくねと動いて浮かび上がる=向田。眉が(びくびく動く。かすかに震える。ぴりりと上がる)。毛虫のような眉がびくびくと動く=本庄。不気味な赤虫の名前を耳にしたことく眉が痙攣いする=野上。太い眉が気むずかしい額を鋭く区切る=武田爽。眉に(塁を引く。怒りが露ぁらわになる藤田。浮かんだ苦悩の影大岡)。思い入った決心を眉に集める=有島。眉の(根に絞しゃが寄る。せまった黒い瞳)。面長な眉の秀でた青年三浦綫。眉を(八の字にしてにらむ。細く剃り上げる。縮めて舌打ちする夏目。ひらいて笑い顔になる=円地。への字にして笑う~曽野)。愁いの眉を開く。びりびりと眉を震わせる。ほっとしたように眉をひらく光瀬。眉をびくっと上げる。きっと眉を上げて呪にらむ。神経質に眉をびりりと上げる。たったそれだけ?というように片方の眉を高々と上げる=森瑙。・眉をしかめる(気遣わしげに。まぶしそうに。困ったように。眉間の肉がもりあがるほど=壺井)。思わず眉をしかめるほどみだらなイメージ=筒井。不機嫌に眉をしかめ口をへの字なりにする=山本周。眉をしかめて気味悪げに言う。始終不満そうに眉を察しかめている=佐多。眉を八の字にして(残念がる。イヤイヤをする荻野)。眉をひそめて(訊きき返す。悲しげな顔つきになる)。▼眉をひそめる(心配そうに。不愉快そうに。迷惑げに)。悲しそうに眉をひそめて言う。醜いものを見たように眉をひそめて叱る=有吉。不快そうに眉を寄せる。眉を寄せて憂い顔をする。焦げ茶色の噴水のような描き眉=獅子。眉尻を吊り上げる。姫君の柳眉が逆立った=山手。芸妓ぎぃが美しい柳眉をひそめる柴田錬。眉宇に(興奮を秘める。みなぎる決意。つよい意志があらわれる=山本周)。決意のほどを眉宇に示す。切迫した生気が眉宇に漂う~堀。怪訝げそうに眉宇をひそめる。 **まゆげ【眉毛】** 眉毛(もじゃもじゃした。四時四十分みたいな=高橋治)。眉毛が(びくんと動く。鮮やかに黒々と太い)。真っ白な眉毛が筆の穂のように長く垂れる"永井荷。眉頭が曇るほど眉毛が濃く男らしい顔だち=山崎。平然と眉毛も動かさずに坐っている芥川。眉毛を八の字にする。 **まゆね【眉根】** 眉根に陰りが宿る。眉根に深い鉄しもを(二本刻む。寄せる)。眉根を寄せて(考えこむ。快の色を見せる)。▼眉根を寄せる(いとわしげに。ぶかしげに。酸っぱそうに。不安げに。不快げに。不快そうに。苦々しく)。眉頭が濃い。 **まるがり【丸刈り】** ▼丸刈りにする(頭を。髪の毛を)。頭を丸める。頭にバリカンを当てる。大胆に坊主に刈り上げる。頭をくりくり坊主に刈る。虎刈りにそっくりなまだらのはげ山"高田。鬱蒼たる美林が年々見るも無残な赤土の禿山似封になってゆく宮尾。禿山の頂のように草がなくむき出しの赤土がてらてらと光る場所藤沢。▼坊主頭(くりくりの。つるつるの。丸刈りの)。坊主頭をぺろりと手のひらでなでる=宮部。 **みけん【眉間】** 眉間に(癇癖炒熱の影が走る。縦破にてが刻まれる。深い皺が刻まれる。不快の色を漂わせる。向こう傷を受ける。一発撃ちこみとどめを刺す大藪。絶えず神経質な皺が浮かんでは消える古井。はげしい目まいが突き刺さる=光瀬)。気分を悪くしたように眉間に縦皺をつくる=泉役。生真面目な靴職人のように眉間に皺を寄せて作業を続ける=原田宗。決闘を申し込む人の意気を眉間に閃い。かす獅子。眉間を狙って撃つ。眉の間に壊を寄せる。深い悲しみの色を眉の間にみなぎらす=有局。 **みだれがみ【乱れ髪】** 乱れ髪を(直す。払う)。▼髪(蓬々眼りと伸びた。蒼ぁぉざめた額にほつれた小さな渦を巻いている=堀)。髪が(おどろに乱れる。顔に乱れかかる。ざんばらに乱れる。ぼうぼうと乱れる。ぼさぼさに乱れる。風にほつれる。くしゃくしゃにもつれる。鳥の巣みたいにこんがらがっている合符。け物のように乱れる谷崎)。乱れた髪がべっとりと海藻のように汗の滲にじんだ額にへばりつく藤本。髪の(乱れを整える。ほつれを耳の後ろにまとめる。乱れが気になる)。髪の毛の乱れを気にしない。風に髪を乱す。髪がそそけ立つ。髪がんの毛がそそける。むさくるしい遂髪。蔓の一むらの茂みが夕暮れの空に遂髪のように乱れる=岡本。 **みっせい【密生】** ▼密生する(剛こもい毛が。睫毛だっが長く。一かたまりになって。どこからも日の射し込んでこないくらい木立が「掘。草が土の色が見えぬくらいに直行。葉がこれ以上繁る隙間もないというように=中上)。笹が密生した斜面。みっしりと密生した葉。巨大な海藻が畳を敷いたようにギッシリ生える"本多厥。草がむらがり生える。馥郁ふくと匂う茸のが今を限りと簇忙。り生える=本庄。 **むなげ【胸毛】** 白鳥の胸毛のように暖かい柔らかい夜着の感触菊池。額にかかる捲、き毛が鳩の胸毛のように柔らか=中島。タワシのようなこわい胸毛=加賀。 **もとどり【髻】** もとどりを(押し切る。結び束ねる)。元結で髪を束ねる。髪の元結を解く。 **わたげ【綿毛】** 綿毛が(風に飛ばされる。地面に散り落ちる。ふわふわと飛ぶ)。タンボボの綿毛が舞い上がる。綿毛のような白い小さな雲"福永。綿毛みたいにふわふわ!高樹。 <896> # 運ぶ **じさん【持参】** 持参する(紹介状を。手土産を。弁当を)。持参金を(つける。鼻にかける)。▼持ち寄る(意見を。ご馳走でを。各自が思い思いの素材を)。着物を持って行く。百万円耳を揃えて持ってくる。 **せんろ【線路】** 赤錆油がびた引き込み線の線路。線路が(単線になる。カーブを描いて走っている=江戸川。定規をあてたようにぐいと一直線にのびている=村上巻。前方に立ちはだかる山塊に押しやられるようにして海蝕崖はかい~の裾の波打ち際を進む=西木)。二本の線路が果てしもなく延びる。線路に包丁を入れたような切れ目が入っている=尾辻。線路の勾配が急になる。線路を挟んだ向こう側のホーム。霧が線路を濡らす。列車が線路を走る。線路沿いの道を歩く。真っ直ぐなること鉄道線路の如き道=国木田。鉄路が真っ直ぐに延びる。貨物専用の引き込み線。枕木を(交換する。敷く)。まるでレールが敷かれていたように修業に入る=伊集院。レールの上を走る。 **てつどう【鉄道】** 鉄道が開通する。鉄道を敷設する。鉄道模型に見入る。沿線の地域を活性化する。貨車で(米を積み出す。荷物を運ぶ)。貨車を連結する。貨物列車を運行する。踏切の悠翔機が鳴り出す。踏切を渡る。ローカル線が沢沿いの山腹を走る=三浦し。複数の路線が乗り入れる。四つの路線が交差する。 **でまえ【出前】** 今出る今出ると蕎麦屋にはの出前"有川。寿司屋に出前を注文する。出前する(寿司を。蕎麦くぃを。ビザを)。仕出しの弁当。仕出しを注文する。料亭から仕出しを取り寄せる。 **とどけでる【届け出る】** ▼届け出る(一件を。捜索願を。退会を。到着の旨を。警察に)。届け出が(増える。窓口で拒否される)。届け出を済ませる。届けを出す。 **とどける【届ける】** ▼届ける(金を。書類を。注文の品を。手紙を。弁当を。警察に。今日明日のうちに。死を賭として勅書を津本)。届けに行く。書類を届けに訪ねる。届け物を(持参する。持って行く)。お届けに上がる。送り届ける(家まで無事に。娘を家に)。弁当を差し入れる。 **トラック** 山のように荷物を積んだトラック!壺井。トラックが(材料を運んでくる。製品を満載して街へ出てゆく。倉庫へ横付けになる。ひっきりなしに通る。馬の尻尾のように跳ね上がりながら突進する=徳永。けたたましくクラクションを鳴らす=原田康、獣のような底深い唸うなりをあげて出発を待っている=五木。小刻みな揺れを繰り返して停まる=勝目)。荷物を積んだトラックが着く。疾走するトラックがドドドドッと地響きをたてる=石森。泥色の雪を跳ね飛ばしてトラックが通り過ぎる=篠田。トラックに品物を減せて売りに来る。トラックを(運転する。倉庫に横付けする)。西部劇の幌馬車隊のようにトラックを連ねる干刈、底力のある大型トラックのエンジン音=五木。砂利を満載したダンプカー。ダンブカーを(運転する。走らせる)。ライトバンがロデオの馬のようにしてお尻を跳ね上げながら走る=干刈。ライトバンを運転する。 **とりよせる【取り寄せる】** ▼取り寄せる(料理を。外国の珍奇な品物を。わざわざ遠方から。バンフレットをやたら=村上龍)。取り寄せる量が年々増える。 **トロッコ** トロッコがガスの圧力で眼の前を空のマッチ箱よりも軽くふっ飛んで行く=小林多。トロッコの軌道が霧に濡れて月に光る=大江。敷地にトロッコの軌道が蜘蛛くもの巣のように走る悲兮。 **にぐるま【荷車】** 荷車が砂埃けぬけを巻き上げて通り過ぎる=北原。往来を荷車がことごと通る=鈴木。荷車の輾きしる音ががたがた聞こえる=田山。大八車をがらがらと引く。ダンプカーに激突されるリヤカーみたいなもんで木っ端微塵にいぶになるだろう三浦し。リヤカーを(押す。引く)。 **にもつ【荷物】** 自分の力にあまる重い荷物"加賀。引っ越しの荷物が届く。荷物の(片付けが一段落する。積み込みを始める。山が造山活動のさなかのように右に左に蠢く=尾辻)。荷物を(足元に置く。網棚に減せる。車に積む。棚から降ろす。陸に揚げる。汗だくで巡び出す。置いたまま突然いなくなる。車の中に置きっぱなしにする。背中から降ろす。船倉に積み込む。段ボール箱に詰める。トランクに入れる。荷台に積み込む。まとめて出て行く。持って立ち上がる。よっこらしょと担ぎ上げる。乱雑に積み上げる。抱えてえっちらおっちら坂を上る谷川)。重い荷物を背負って生きる。トランクを開けて荷物を押し込む。振り分けの荷物を肩にかける。厄介な荷物を負わされる。背が曲がるほどの荷物を背負う本庄。手馴になれた荷物を扱うように死体を運び込む=原田駅。持ち重りのする荷物をかかえこんでしまったような妙な困惑永井路。荷が(重すぎる。勝ちすぎる。軽くなってせいせいする)。女手ひとりには少し荷が重い=山本周。重い荷を背負って歩く。車に揺られながら荷物のように帰る=横光。手荷物を(検査する。積み込む)。貨物を(積み込む。満載する)。小包が届く。小包を送る。▶荷揚げする(船から貨物を。クレーンで)。陸揚げする(荷物を。武器を)。書類と積み荷の照合を終える。積み荷を(陸揚げする。孵倣しで岸壁まで運ぶ=なかにし)。大量に積み荷する。 **のせる【載せる】** ▼載せる(上から石を。訂正記事を。手すりに腕を。グラスを盆に。酒肴しいをお膳に。俎上民汇に。棚の上に。砲身を砲架に。自転車の荷台に箱を。タウン誌に広告を。へつついに大鍋を。カップをトレイに。サングラスを頭に。とんカツを皿に。ボールを手のひらに。レコードをターンテーブルに。料理をカラー写真で)。電話帳に名前を載せない。 <897> # 選ぶ-290 **つみこむ【積み込む】** (銛もりを舟に。トラックに鉄骨を。山のように荷物を。サーフボードを車に)。搭載する(自動車にエンジンを。ミサイルに核弾頭を)。荷台に(範ふばをくくりつける。荷物を放りこむ)。▼減る(談話が新聞に。大見出しが一面に。新聞にでかでかと。朝刊に記事が大きく)。▼積み降ろす(荷物を。木材を)。荷物の積み降ろしに手間取る。道具の積み降ろしを手伝う。▼満載する(馬観に、に炭俵を。船が品物を山のように=井上靖)。人と物とをこぼれるように満載した軍船井上靖。 **はいたつ【配達】** ▼配達する(牛乳を。商品を。新聞を。手紙を。荷物を。弁当を。郵便を)。配達する日付けを指定する。▼宅配する(商品を。荷物を。ビザを。野菜を)。▼配送する(商品を。注文品を。荷物を)。 **はこびこむ【運び込む】** ▼運び込む(荷物を玄関に。せっせと。続々と。荷物をアバートに。やっとの思いで)。▼担ぎ込む(獲物を。木箱を)。病院へ担ぎ込まれた時にはもう虫の息"高木。▼担ぎ込まれる(救急車に。飯場で怪我をした人夫が"宮部)。▼担ぎ入れる(荷を。棺いっを)。▼運び入れる(資材を。食糧を。夜陰ひそかに)。作品を会場に搬入する。無事に搬入を終える。 **はこびだす【運び出す】** ▼運び出す(遺体を。家財道具を。材木を。死体を。土砂を。部屋の外に。手際よく。戸板に乗せて。運送屋が家から荷物を)。運び出す手間を考える。担ぎ出す(材木を。死体を。畳を)。・搬出する(遺体を。ごみを。資材を。荷物を。廃液を。会場から作品を)。 **はこぶ【運ぶ】** ▼巡ぶ(小まめに手を。自由に筆を。慎重に事を。解加しが荷を。夕暮れが闇を。熱刺を座敷に。事態を有利に。食器を流しに。荷物を舟に。物事が順調に。指を乳首に。馬に積んで。肩に担いで。仕事がうまく。盆に載せて。ころで重いものを。トラックで荷物を。ヘリコプターで資材を。よいしょよいしょと石を。事が目算通りに。朝食をテーブルに。買収がスムーズに。万事が好都合に。船で荷物を鳥に。物事が手順通りに。用件が上首尾に。遺体を火葬場へ。えっちらおっちらと。大勢が寄ってたかって。諸事万端つつがなく。進まぬ足をとぼとぼと。病人を背負って。水をタンク車で。一刻も早く安全な場所に新田)。・風が運ぶ(遠くの音を。花の香りを)。▼口に運ぶ(栗饅頭にのまんを。ご飯を上品に。杯を静かに)。死者を墓地まで運んでいく。料理を次々に運んできてテーブルに並べる三浦し。▼運んでくる(お茶を。コーヒーを。食事を。茶を。都会の風を。風が湿った夜気を。空気が木々の芳しい香りを。風が遠い昔の記憶を"小沼。冷たい風が香ばしい落ち葉のにおいを山から三浦し)。▼運ばれてくる(コーヒーが。ビールが。料理が。救急車で。雪が風に)。▶風に運ばれる(音が。声が)。もっこで(土を運ぶ。農作物を迎ぶ)。運び上げる(ソファーを。箱を。二階に。地下から荷物を)。▼移送する(患者を。容疑者を)。▼運送する(家具を。貨物を)。ころの上を転がす。ストレッチャーに乗せる。▼搬送する(患者を。死体を。負傷者を。医療機関へ。救急車で)。ポーターに荷物を持たせる。もっこを(編む。担ぐ)。食根を輸する。ワゴンを(押す。止める)。店の前にワゴンを出す。建築資材の運搬に協力する。▼運搬する(患者を。血液が酸素を。材料を。資材を。死体を。食糧を。積み荷を。荷物を。肥料を。武器を。トラックで)。担架で運ぶ。担架に乗せる。担架の持ち手が次々と交替する。担架を(担ぐ。巻き取る)。 **ふなに【船荷】** 船荷を(積む。水揚げする。陸に揚げる)。原油を積んだタンカー。船倉に荷物を積み込む。▼船積みする(貨物を。コンテナを。自動車を。巻で)。 **もちあるく【持ち歩く】** ▼持ち歩く(本を。後生大事に。ハンドバッグを)。持ち歩くのに手頃。▼入れて持ち歩く(ポケットに。家族の写真をバスケースに=重松)。持ちまわる(顔写真を。酒を。荷物を)。持って歩く(松明封かを。荷物を。肌身離さず)。 **もちこむ【持ち込む】** ▼持ち込む(苦情を。原稿を。世俗の空気を。厄介な話を。延長戦に。持久戦に。泥沼の争いに。こっそり。酒の場に仕事を。出版社に原稿を。昔ながらの友情を。負けていた試合を引き分けに。屋敷の中へ明るい空気を"村上元。打算を夫婦生活の間に=大岡)。さまざまな相談が持ち込まれる。 **もちさる【持ち去る】** ▼持ち去る(あの世へ魂を。金目のものを。写真を。全財産を。家投しして金を。遺品を勝手に)。あたりの音をすべて持ち去られたように静かになる高樹。▼運び去る(死体を。荷物を。あっという間に。どこへともなく)。 **もちだす【持ち出す】** ▼持ち出す(神の名を。金蘭の喩たとえを。交換条件を。トランクを。内部文書を。古い諺に絵を。別れ話を。お金を家から。こっそり。少しずつ。何から何まで。てきぱきと用件を)。へ持ち出す(帳場の。店の)。▼話題を持ち出す(唐突に露骨な。次々に新しい。古い)。逃れようのない過去を持ち出される=氷室。法律を担ぎ出す。 **ゆそう【輸送】** 輸送が円滑に進む。▼輸送する(貨物を。現金を。商品を。物資を。兵員を。鉄道で。トラックで。飛行機で。船で。空路をトレーラーで)。輸送費が(かかる。高くつく)。▼空輪する(軍事物資を。食料を。兵士を。郵便物を)。コンテナを(載せる。運ぶ)。 <898> # 始める・始まる **いえもと【家元】** ▼家元(華道の。茶道の。日本舞踊の。流派の)。宗家(武道の。流派の)。▼宗匠(茶道の。俳諧の)。 **いとぐち【糸口】** 問題解決の糸口がつかめない。事件解明の糸口が分かる=高橋克。話の糸口が思うように出てこない!有房。記憶の糸口に辿たどりつく”中村感。会話の糸口を見いだす。決断の糸口をつかむ。真相究明の糸口をたぐり寄せる。話の糸口を見つける。関係修復の糸口を掘っかめない=横山。危険な芋づるの糸口を断ち切る=森村。端緒となる事件。世界的な流行の端緒になる。もつれた糸のほぐれ目が見つかる。世にも奇怪至極な事件の発端"里見。発端と大団円とがしっくりと照応できる物語のように景色が少しの無理もなくまとまっている佐藤呑。株の大暴落に端を発した大不況。誤解に端を発した口論。端を開く。 **かいぎょう【開業】** ▼開業する(医院を。ホテルを。店を。料亭を)。オーブンする(営業所が。ホテルが)。営業所を開設する。▼出店する(スーバーが。チェーン店が)。店を出す。近所に店がオープンする。 **かいこういちばん【開口一番】** 開口一番(元気かと尋ねる。聴衆の心をつかむ。人を食ったような台詞辿りを吐く)。のっけに敗北を言い当てる。劈頭いに述べる。開会努頭に挨拶する。 **かいまく【開幕】** 開幕の(銅鑼とらの音。ベルが鳴る)。開幕を宣言する。開幕する(オーブン戦が。芝居が。大会が。オリンピックが)。開演のベルが鳴る。開会が目陡もしに迫る。開会時間が過ぎる。開会の辞を述べる。 **さいしょ【最初】** 最初が肝心。もう一度最初からやり直し。最初に(結論ありき。述べたとおり)。最初の(一輪がほころびる。一杯を飲み干す。一歩を踏み出す。出会いを思い出す)。得意先を一から開拓しなおす森村。裸になって一から出直す=篠田。一次試験を通過する。一次資料を参照する。▼書ぎ出し(暗示的な。心憎い)。書き出しと結びの対応。元祖を名乗る。巻頭言を(書く。読む)。巻頭に(掲げる。載せる)。原初の形態。初日があく。初日の幕が上がる。▼祖(医学の。近代美術の)。第一の関門を突破する。受賞第一作を書く。原稿の劈頭に書く。いの一番に(駆けつける。電話する。突入する。見つける)。当初から予算計上する。当初の(計画を変える。目的を達する。イメージが薄れる)。初めからやり直す。そもそもの初めから話す。初めの問題に立ち返る。冒頭から(緊迫する。混乱する)。冒頭に(書く。記す)。冒頭の(一句。一節)。 **しょうがつ【正月】** 正月が(二度来たような賑わい海音寺。雪を率いて注連飾れ怒りの都を白くする夏目)。正月の雑煮を祝う。屠蘇とえで正月を祝う。雁月労うが尽き新しい年を迎える=福永。おせち料理を食べる。お年玉をもらう。賀状の交換をする。門松を(飾る。立てる)。三が日を寝て暮らす。新年が明けて早々の或る日。年賀状の束を整理する。年頭にあたって抱負を語る。軒毎に松飾りが立ち並ぶ。若水で顔を洗う。松飾りも取れて間もないある日=船山。 **しょしんしゃ【初心者】** 初心者(ずぶの。全くの)。初心者に(教える。ありがちなはしゃぎ過ぎ)。急に水に飛び込んだ水泳の初心者みたいにどう手足を動かしたらいいのか分からない辻井。初学者のための(手引き。入門書)。初学者を対象とした講座。 **しょせん【初戦】** 初戦で負ける。初戦に大勝した余勢を駆って決勝まで進む。シリーズの初戦に勝つ。初陣で手柄を立てる。初陣を勝利で飾る。 **しょたいめん【初対面】** 初対面とは思えないほど話がはずむ=飯田。初対面の(挨拶を交わす。緊張がとける)。お初にお目にかかります。初めて(会う人。お目にかかる。顔を合わせる。見る顔)。 **じょばん【序盤】** ▼序盤(試合の。物語の。レースの)。序盤から独走する。緒戦で(勝利を確実にする。優勢のまま逃げ切る)。緒戦の優勢が後半に逆転する。事業の草創期。 **しょほ【初歩】** 初歩からこつこつと学習を重ねる=内橋。理論の初歩を解説する。ごく初歩のハイキングコース。初歩的な(技術。ミス)。アルファベットから習う。いろは(作法の。商売の)。いろはから勉強する。捜査のいろはを教わる。氷のいろはを伝授する。膝詰めで酒のいろはを叩き込みたい=有川。初級から始める。初級の(課程。クラス。コース)。 **スタート** 制度のスタートが半年後に迫る。スタートで立ち後れる。スタートの旗が振られる。▼スタートする(新婚生活が。輪番制が。論戦が)。▼スタートさせる(エンジンを。新規事業を)。人生の再スタートを切る。スタート地点に立つ。観光コースの起点としてはもってこいの位置斎藤栄。物語の創造の出発点。問題の出発点に戻る。 **たちあげる【立ち上げる】** 立ち上げる(新しい企画を。新事業を。バソコンを。労働組合を。新しいコーナーを。インターネットのブラウザを。ウェブサイトを。プロジェクトチームを。新しい番組を秋から"さだ)。立ち上げを(準備する。目前に控える)。 **ちゃくしゅ【着手】** ▼着手する(困難な課題に。ルール作りに。新しい辞書の編纂幺从に)。▼手をつける(改革に。仕事に。思い付きの商売に)。▼手を染める(改革に。覚醒剤取引に。都市開発に。不正に。ふしだらな商売に)。 **でだし【出だし】** 出だしでつまずく。出だしは順調。出足が(遅い。低調。悪い)。客の出足が早い。人の出足が鈍る。 <899> # 始める・始まる―291 **てはじめ【手始め】** 産業界を手始めに省エネを促進する。まず手始めにこの小説を読む。講演の皮切りに冗談を言う。余興の口切りに歌を歌う。口切りの仕事。 **とりかかる【取りかかる】** ▼取りかかる(家の改築に。帰国の支度に。書類の整理に。次の作業に。奮起して仕事に。ぼつぼつ身支度に。明日と言わず今日から。執筆要領の作成に三浦し)。のろくさと開店の準備にとりかかる総沢。▼用意に取りかかる(食事の。食後のコーヒーの船戸)。仕事に取り付く。 **はじまり【始まり】** ▼始まり(新たな試練の。嘘は泥棒の。楽しい一日の)。会うは別れの始め。草分け的な存在。グーテンベルクを嚆矢にぅとする活版印刷術。日本の近代的辞書のベ矢とされる一言海」。天地開闘幼いび以来の大事件。天地開闢より世界壊滅まで。近代工業の揺慈期はらら。文明の揺籃の地。 **はじまる【始まる】** ▼始まる(新しい生活が。忙しい一日が。建設工事が。新聞で連載が。第二の人生が。激しい戦闘が。悪い癖が。乱は言葉から。新しい時代を生み出す胎動が。遺体収容作業が。活発な通信のやりとりが。ごく自然に関係が。そろそろ手術が。第一ラウンドが。出し抜けに演奏が。取り壊し作業が。会話がぼつぼつ。重役への坦々たる道が=城山)。緩慢な精神の死がはじまる=阿部。▼日々が始まる(悪夢のような。夫婦の)。スタートを切る。▼入る(夏に。夏休みに。冬に。冬場に。冬休みに)。恐ろしい芝居の幕開きを待つように緊張ぎみ!笹沢。ドラマチックな幕開け。幕が上がる。幕が切って落とされる(芝居の。戦いの)。▼緒につく(仕事が。捜査が)。まだ緒についたばかり。火の手が上がる(恋の。非難の)。熱戦の火蓋が切られる。火蓋を切る(戦いが。攻撃の)。 **はじめて【初めて】** 初めて(描いた絵。目にする。耳にする外国語)。実物を見るのは初めて。初めての経験。これまでにない工夫。前例のない(不祥事。予算)。国始まって以来の絶望的父議"光瀬。歴史始まって以来の大変動=曰井。初の(試み。受賞)。今までにない斬新な学説。ついぞ今までにないこと。今までになく(深刻な表情。幸福そうな表情)。生まれて初めて(体験する。見る土地)。臍ヘミの緒を切ってから初めてのこと。生まれて初めての海外旅行。生まれてこの方化粧なんかしたことがない宮部。初体験が(遅い。早い)。初体験を告白する。生まれて初めての経験。初舞台(役者の。ブロ選手としての)。初郷台を踏む。 **はじめる【始める】** ▼始める(新しい生活を。社会で活躍を。装備の点検を。歯車が回転を。頭の中で計算を。おもむろに話を。くっくっと忍び笑いを。じりじり後ずさりを。てきぱきと仕分けを。荷物の積み込みを。ネオンサインが点灯を。ぶつぶつと独り言を。本格的に勉強を。真っ先に帰り支度を。やにわに議論寮での暮らしを。追い立てられるように身繕いを黒井。帰るや否や猛然と準備を"山田风。手放しで号泣を=光原)。いささか気色ばんで説明をはじめる=坂口。▼おっ始める(喧嘩州んを。騒ぎを)。事業を起工する。空港建設が起工まで漕ぎつける。▼口火を切る(攻撃の。論戦の。若い女教師に課題を報告する男子学生のように張り切って我がちに不潔話の"荻野)。始業まぎわに教室に滑り込む。始業の鐘が鳴る。創始する(新システムを。ユニークな芸術を)。好戦的な態度で誰にでも議論を吹きかける=乃南。吹っかける(議論を。喧嘩を)。開始のゴングが鳴る。会議の開始を宣言する。▼開始する(一斉攻撃を。粛々と行軍を。署名運動を。道路の共用を。秒読みを。目で領だないてから状況の説明を"有川)。試合開始の合図。 **はっそく【発足】** ▼発足する(システムが。新政権が)。菜を切り出すタイミングを失う。発足間もない時期。 **はつもの【初物】** ▼初物(果物の。野菜の)。初物を食べる。初想を(刈り取る。供える)。 **はなから【端から】** 端から(うまが合う。信じるわけにはいかない。馬鹿にしてかかる)。最初から(勘定に入れてない。わかっていたこと)。しょっぱなから(大乱戦となる。ミスをする)。頭から(疑ってかかる。信じ込む。認めようとしない)。初手から気安く話しかけてくる=有川。返事など先から期待していない。てんから(信じこむ。興味を持たない。ぴしゃりと断る)。のっけから(取り合わない。しくじってしまう)。初めから(相手にしない。決めてかかる)。ぶっつけからつまずく。劈頭にからく会議が紛糾する。 **ふみだす【踏み出す】** ▼踏み出す(第二の人生を。新しい生活に。未来への貴重な一歩を熊坂。自覚的に足を一歩三浦愛。仕方なしに足をゆっくり船戸)。▼足を踏み出す(一歩前に。こわごわ。広い世界へ)。▼一歩を踏み出す(新たな。解明への。綱渡りの)。最後の一歩が踏み出せない。▼踏みきる(強制捜査に。原発廃止に。衆院解散に)。武力倒幕に踏み切る=船山。 **まえおき【前置き】** 前置きが長い。くどい前置きはいらない。前置きもなく尋ねる。▼序曲(革命の。事件の。悲恋の)。序幕(革命の。悲劇の。復活の)。師に序を行う。本の序を読む。前文に謳うぇう。芝居の前口上。序文(本の。論文の)。序文に目を通す。序文を寄せる。▼プロローグ(オペラの。小説の。優勝への)。ブロローグを書く。 **みきりはっしゃ【見切り発車】** ▼見切り発車(課題を先送りした。合意を得ないままの)。談論を尽くさずに決める。二度のフライングで失格となる。フライングを犯す。水泳でフライングする。▼前に飛び出す(合図の。駆けっこでビストルが鳴る―連城)。 <900> # 走る・駆ける **かけおりる【駆け下りる】** ▼駆け下りる(一散に坂を。斜面を一気に。一目散に石段を。坂道を一走りに。あわてふためきながら。転げるように山路を佐藤春)。転がるような勢いで階段を駆け降りる=光原。まるで地団太を踏むような激しさで駈け降りる丸谷。山津波が谷を駆け下る。▼走り降りる(階段を。坂道を。土手を)。斜面を滑るように走りおりる"遠藤。▶走り下る(坂道を。斜面を)。 **かけこむ【駆け込む】** ▼駆け込む(犬が猟場に。警察に。交番に。全力で路地に。息を切らして。急いでトイレに。獣のようにまっしぐらに黒井)。宙を飛ぶようにして部屋に駆けこむ!有吉。▼駆け込んでくる(あわてふためいて。息を弾ませて。血相を変えて。警官が雪崩のようになかにし)。ばたばたと足音を響かせて駆けこんでくる=松浦。先を争うように部屋に所け込んでくる三浦哲。身を転じて木立の中へ走り込む。 **かけずりまわる【駆けずり回る】** ▼駆けずり回る(朝から真夜中までからだがコンニャクのようになるほど小林多。資金調達の道を求めて内橋)。駆けずりまわる(運動のために。朝から晩まで。一日じゅう金策に。イベント中止の後始末で重松)。足の裏が擦り切れるほど駆けずり廻る"井上ひ。 **かけだす【駆け出す】** ▼駆け出す(泡を食って。脱兎だっのごとく。血眼になって。夢中になって。風を食らったように。火がついたみたいに。前へのめるようにして。馬が繋っなぎを放たれた如くいっさんに佐藤巻)。駆けだす(尻尾に火がついたように馬が奥平。ぴょんと跳ねるように=住井)。背後から押されるように駆けだす=徳永。▼駆け出していく(我勝ちに出口のほうへ。待ってましたとばかりに往来へ内海)。 **かけぬける【駆け抜ける】** ▼駆け抜ける(風のように。脱兎だっの勢いで。全身に痛痒感っ州が。噂が瞬く間に町を。ニュースが世界中を。ばちゃばちゃと水たまりを。廊下をばたばたと足音が三好徹)。▼駆け抜けていく(脇を騎馬が。急行電車がホームを)。 **かけのぼる【駆け上る】** ▼駆けのぼる(階段を一気に。階段を一段飛ばしで)。巨樹へ音もなく猿ぼしのようにかけのぼる柴田剣。矢のように山上へ駆け登る"子母沢。空の高みへと翔がけのぼる。足元から悪寒が駆けのぼってくる=宮部。笑いが咽喉のとを駆け上がってくる=井上ひ。▼駆け上がる(斜面を。二段跳びで階段を。上り坂を一気に。階段を軽い足取りで"有川)。▶走りのぼる(階段を。坂を。斜面を)。 **かけまわる【駆け回る】** ▼駆け回る(血流が猛々炊けしく全身を=横山。ほとんど飲まず食わずで山中を"熊谷)。▼駆けまわる(全身を悪寒が。痛みが全身を。噂が世間を。金策に。転がるように。四六時中。日がな一日。大はしゃぎで庭を。ジャングルを闇雲に。精力的に取材に。子供たちが騒々しく。テーブルを縫って。島じゅうを縫うように菊池)。席の暖まる間もないほどの東奔西走"船山。▼東奔西走する(資金集めに。捜査酢が文字通り)。 **かけめぐる【駆け巡る】** ▼駆けめぐる(噂が町を。風が野面を。刺激が神経を。想像が脳裏を。疲労が体を。野山を縦横に。猛牛のように。頭の中を想像が。怒りが体の中を。馬に乗って山野を。反論が頭の中を。頭の中を様々な思考が!泉位)。▼全身を駆けめぐる(感激が。困惑が。羞恥しいが。病魔が)。▼馳はせめぐる(右に左に。心の隅から隅を)。 **かける【駆ける】** 駆ける(森音ぶらが山を。砂感じを巻いて。砂を蹴って。緊張感が全身を。ドアまで一直線に。目を血走らせて必死に。暴れ馬のように。ゴールめがけて。ぜいぜい息を切らして。廊下を踏み鳴らして。馬車馬のようにまっしぐらに=畑。麓を目指して山道を駆けに張合。未練な気持ちを振り切るように全速力で灰谷)。おびえた小リスのように駆ける灰谷。足の続く限り駆け続ける。あっちこっちへちょこちょこ駆けて歩く人谷崎。駆けていく(廊下をばたばたと。ボールを追うような勢いで=内海)。人々が後から後から駆けて行く河野。遠くからひたひたと小刻みに駆けてくる=泉錢。突風のように駆けて来る"池波。脇目も振らずに駆け去る。▼駆け通す(全行程を。敵中を。道を。夜中じゅう)。飛鳥のごとく既け寄る=吉川。馬場をトロットで一周する。駆け足で(階段を上る。秋が押し寄せてくる。過ぎ去った青春。夏がやってくる)。運動場を駆け足する。 **きょうそう【競走】** 競走でびりになる。競走に(勝つ。負ける)。絶えず体を震わし蹄。を蹴り立てて神経のかたまりのようにビリビリしている競走馬加賀。駆けっこが速い。駆けっこでびりになる。 **しっそう【疾走】** 気の向くまま奔放な疾走を続ける"内橋。疾走する(ヨットが海を。髪振り乱して。トラックが道路を。自動車が猛烈なスピードで。道路をまっしぐらに三輪)。▼快走する(車が。走者が。電車が。帆船が)。早駆けに駆ける。馬に早駆けを促す。最後まで力走する。 **ジョギング** 早朝のジョギングを欠かさない。▼ジョギングする(軽く。楽しく)。朝のランニングを日課にする。▼ランニングする(公園を。土手の上を)。 **そうしゃ【走者】** 周回遅れの走者。次の走者にバトンを渡す。走者を帰す。本塁で走者をブロックする。駿「足のランナー。ランナーが(快走する。生還する)。 **そうは【走破】** 全コースの走破をめざす。砂漠地帯を走破する。完走する(コースを。肉離れをおして)。 <901> # 走る・駆ける-292 **つっぱしる【突っ走る】** ▼突っ走る(全勝街道を。快調な足取りで。車がうなりをあげて。猛烈なスピードで。目的地めがけて、目標に向かって)。考えずに突っ走る(損得勘定を。後先も)。疾駆する(騎馬の一隊が。オートバイが風景の間を)。 **どくそう【独走】** ▼独走する(首位を。トップを。序盤から)。断然他を引き離す。独走態勢に入る。 **はしりかた【走り方】** ▼走り方(どたどたとした不恰好ぶっな重松。ほかの車をけちらすようなラフな"五木)。▼走りっぷり(軽快な。堂々たる)。走りっぷりが印象に残る。筆の走りが鈍る。満足の行く走りができる。 **はしりだす【走り出す】** ▼走り出す(後ろも見ずに。考える前に。泡を食って。叫ぶや否や。話を聞いた途端に。車がすごい勢いで。恐怖のあまり逸散に「獅子。鞭もちを入れられた馬さながらに=伊坂。助走をつけて砂場に飛び込む走り幅跳びの選手のように「小池)。脱兎びっのように場外に走り出る=徳永。信号が青に変わり車が再び走り始める若竹。 **はしりでる【走り出る】** ▼走り出る(舞台中央に。木陰から草地へ。裸足のまま三和土於たへ。奇声を上げながら霧の中へ三浦哲)。▼駆け出る(玄関を。部屋を。円を)。 **はしりぬける【走り抜ける】** ▼走り抜ける(胸中を屈辱が。木立の円を。息せき切って。不愉快さが胸の中を。きらめく稲妻のように。全身を痺しがれるような快感が!熊仓。街を風の一団が倉橋。遠くの空を稲妻が斜めに落合。烈はげしい憎しみが五体をつんさくように井上趙)。走り抜けざまに声を浴びせる。 **はしりまわる【走り回る】** ▼走り回る(子供たちがキャアキャア言って=椎名誠。鼠ゆずのようにせわしなく=阿部)。▼走りまわる(金の調達に。辻から辻へ。物顔で。選挙の裏方として。安い原材料を求めて。廊下を下をばたばた)。雪の中をきゃあきゃあ言いながら犬っころのように走り廻る=海音寺。戦場を馳駆ちくする。馳駆の労を厭いとわない。 **はしる【走る】** 走る(顔に驚きが。体に戦慄が。心に疑念が。腰に痛みが。水面を風が。全身に虫酸化しが。腹に激痛が。胸に予感が。目に恐裄が。風が千里を。激痛が全身を。戦慄が背筋を。助けを求めに。風のように。風を切って。先頭を切って。土埃いらをあげて。頭の片隅を疑惑が。顔に怯ぉびえの影が。高速道路を車が。ストッキングに伝線が。びしりと割れ目が。表情に一瞬狼狽ちらが。表情に喜びの色が。岬を望んで船が。胸をときめかせる快感が。目にとまどいの色が。海岸沿いの道路を。五月の緑の中を。道路が山の麓を。やるせない思いが胸を。アイドル歌手の追っかけに。雨の中を傘もささずに。極端から極端に。些細心。な理由で死に。光が壁を斜めに。広い道路を一直線に。ボールを拾いに。破れかぶれの悪事に。緊張がびりりと。車体を大きくローリングさせて。針路を南に向けて。ちょこちょこと気ぜわしく。つんのめるように。鼠姑ずがちょろちょろと。ばらばらに四方へ。船が滑るように。考えてみたこともない方向に思いが「高橋治。街並みを縫うように高架道路が泉受。、目の奥にかすかな動揺が"火坂。黒い夜が汽車とともに野上。恐い物にでも追われるように一散に谷崎。想像が一から千に芝木。鷹たかに追われた野兎のようにまっしぐらに宮部。みっともないほど一心に芝木。アヒルが走っているみたいに首ばかり前に出して高橋和。ウサギが葵火つものように開高。鬼に追われたように=宮部。華奢いな少女の脚とは信じられない速さで=日野。車の渦の中を燕めのようにすいすいとかきわけながら大胆な運転で=五木。シカが波のように=開高。周囲の砂がチラチラと崩れ流れて"中局救。処女のようにすまして椎名綱。急せき立てられるような思いでねじめ。全速力でととどっと清水後。宙を飛ぶようにして"隆。テーブルの間を縫うように内館。電車が家の忏先をかすめるようにして重松。・ハイウェイを飛ぶように阿部。女豹のようなスピードで大変。汽車が目まぐるしいほどの快速力で"有鳥)。▼走る音(ばたばたと廊下を。どたどたと子供の)。緊張が走る(顔に。全身に)。行動に走る(利己的な。常軌を逸した)。走っていく(船が沖へ。元来た方へ。後になり先になりして子供たちが三好京)。▼走っている(皮肩に引っかき傷が。トラックや乗用車がひっきりなしに辻井)。走ってくる(息を切らせて。足音もあわただしく。韋駄天走心燃いりに)。▼走り続ける(栄光に向かって。雲が絶え間なく。ノンストップで)。街の景色がタクシーの窓からトランプのカードを切るようにうしろへ飛んでいく向田。逃げるように走り去る。竜巻が空を走り過ぎる。こけつまろびつ逃げ帰る。炎にまかれてこけつまろびつ苦しむ。白洲。助走から踏み切りへと進行する。▼走行する(高速道路を。左側車線を)。▼伴走する(ランナーに。車で。自転車で)。並走する(ヨットが。ランナーが。真横に)。 **ひたはしる【ひた走る】** ひた走る(往還を。荒野を。田園を。道路を)。ひた走りに走って逃げる。ゴールまでひた走りに走る。 **ひとつばしり【ひとっ走り】** ひとっ走り(行ってくる。呼んでくる)。坂道をひとっ走りに駆け降りる。自動車でひとっ走りの距離。 **ぼうそう【暴走】** 暴走に(歯止めをかける。ブレーキをかける)。集団の暴走に知らず知らずに加担する。暴走の危険をはらむ。ブレーキがきかない。 **マラソン** マラソンで(完走する。伴走する)。マラソン甲斐甲斐炒灬しく酒席を。雄叫びをあげて。車が我が物顔で。マラソンの(折り返し地点。走者)。マラソンを走りきる。 <902> # 恥ずかしい・後ろめたい **うしろめたい【後ろめたい】** うしろめたい気分が抜けない。気持ちは毫こうもない。欲望の火が燃える=黒井。中途半端な挫折の仕方が後ろめたい=伊藤整。不貞を働いたようなうしろめたい気持ち"松浦。内心後ろめたい思い。兎うの毛ほども後ろめたい気持ちがしない御子。後ろめたさ隠すという行為の持つ避けがたい高樹。身体を締めつけられるような=石坂。うしろめたさが波状にわきあがってくる=島尾。置き忘れたような後ろめたさが胸の底に湧く高樹。隠し事をしている後ろめたさが募る=連城。多少のうしろめたさが胡椒に礼のようにぴりっと利いて人生を形づくる=島尾。後ろめたさが先に立つ。身に余る扱いを受けてしまったような後ろめたさにとりつかれる三田。身の置き場のないような後ろめたさにすくみ上がる=森環。後ろめたさにつきまとわれる。胸に一抹の後ろめたさを抱く東野。気がとがめる。盗品を匿かくして持っているような後ろぐらさ=円地。 **うちき【内気】** 内気な女の子。性格。おぼっこい坊ちゃん佐藤巻。上品な人の持つ慚羞峠认しを帯びる=佐藤春。生まれつき内気な性分。引っ込み思案な内気な男「丸谷。弟の内気さが一入いじらしい=外村。美しく内気そうな奥さん。外に出たら役に立たない内弁慶。シャイな男。性分。 **かおむけできない【顔向けできない】** 顔向けできない恩師に。家族に。ご先祖さまに。世間に。本家に。同菜に顔向けがならない。人様に顔向けができない。二度と。親戚に顔出しができない。世間へ。ご先祖に合わせる顔がない。仲間に。皆に。 **きまりわるい【決まり悪い】** きまり悪くなる勘違いと知って。息子の行儀が悪くて。一瞬「しまった」という顔になってきまり悪げな笑いを浮かべる1億沢。きまり悪げにわきを向く。鏡をきまり悪そうにおずおず唄のぞく芥川。きまり悪そうにコートの胸をおさえる=黒井。決まりが悪くてはにかむ。決まりの悪さをごまかす。子供がきまりを悪がったときのような顔をして苦笑する"大佛。問の悪そうな顔。表情。笑い方。ばつの悪い思い。ばつの悪さを押し隠す。ばつが悪そうに頭をかく。目を逸らせる。笑う。 **じこけんお【自己嫌悪】** 自己嫌悪不愉快さを作りだすようなへまを演じる世間知らずの自分に対する=中村貞。見失った自分を再び取り戻す瞬間の苦い"落合。自己嫌悪が二日酔いの吐き気のように胸にこみあげる!遠藤。自分はこんなに間抜けだっただろうかと自己嫌悪が襲う。有川。自己嫌悪で顔が歪がむ。後になって悔いと自己嫌悪という惨ぃじめな代償を支払うくらいなら寂しさと向かい合っていたほうがいい落合。激しい自己嫌悪に襲われる。収拾のつかない自己嫌悪に駆られる、本庄。ひとたび後悔しはじめるとかえって激しい自己嫌悪に見舞われる=黒井。病的な自己嫌悪に苛にぃまれる=中村真。深い底なし沼のような自己嫌悪に陥る赤川。自己嫌悪の重さに座り込みたくなる=光原。身体の捩ょじれるような自己嫌悪の情藤枝。喜びと自己嫌悪の混じった複雑な気持ち=高橋三。自己嫌悪を自己浄化に変換する後藤。自己嫌悪感で全身に鳥肌が立つ=姫野。 **しゅうち【羞恥】** 身の置きどころのない羞恥"円地。羞恥が全身を駆けめぐる。裏返しの怒りに変わる=安岡。身体の中を通過しているかのように眼を伏せて黙る=野間。顔が永遠の中に凍りついたように見え薄ら氷に似た養心がほんのりと浮かぶ福永。堪こらえきれぬ羞恥が女の身体をなまめかしく悶もだえさせる久米。羞恥で顔を赤らめる。異様な羞恥で全身がほてる=円地。羞恥と怒りで火のようになる三島。不安と悔恨とで胸の裡ぅちが掻かきむしられるよう菊池。憤怒で顔を真っ赤にする宮本坏。全身が羞恥と驚愕だにうの重石の下になる=有吉。夢から覚めたかのように何ともかとも言いようのない恐怖と羞恥とに襲われる=堀。自分の秘密を無理強いに奪い取られたもののように羞恥に身体をふるわせる=野間。溢恥の念に耳朵感まで真っ赤にする永井荷。残っている心の処置に困る=野間。言葉が自分の羞恥を蔽ぉぉいかくしてくれる楯でもあるかのように早口にしゃべる=海音寺。全身が火になるような遂羞恥を覚える有吉。激しい羞恥心に見舞われる。羞恥心も何もあらばこそ声を荒らげて喚ぁぁき続ける豊田。 **せきめん【赤面】** 今から考えても赤面の至り。赤面する岡抜けさ加減に我ながら。己れの無神経さに"飯田。席にいたたまれぬまでに菊池。満面血を吹かんばかりに=山田風。子供のように思わず耳許協ひまで有房。思い出すと赤面してしまう。阿木。赤面するような揶揄ゃゅを開かされる=佐藤系。思わず赤面するようなことを平然と言ってのける神経の図太さ大原。 **てれかくし【照れ隠し】** 照れ隠しに頭をかく。やたら髪をかきあげる―連城。頭をかいてごまかし笑いをする。笑って頭を掻かく"田山。照れ隠しのような笑いを浮かべる=荻野。照れ隠しのように煙草をくわえる小林久。 **てれくさい【照れ臭い】** 照れくさいさすがに。かなり。すごく。何となく。人前でほめられて。口に言い出しかねるほど『太宰。誇らしい気持ちが筒抜けにわかるようで"阿部。照れくさい思いが胸にからまる。照れくさくて赤面する。甘い照れくささが胸にこみあげる=阿刀田。見るからに照れくさそう。照れくさそうな笑を浮かべる。照れくさそうに顔を伏せる。 <903> # 恥ずかしい・後ろめたい にやにやしながら頭をかく長崎。鼻の下をこすって笑う鷺沢。はにかみ笑いを浮かべる=船戸。 **てれる【照れる】** 照れる自分で自分の変わり方に芝木。若さという言葉に=高井。激情のやり場がなくなって阿久。身も世もないぐらい"阿木。照れて頭をかく。顔を赤くする。照れくさそうに目をそらす"重松。照れの裏側には恥の感覚が潜んでいる"阿木。照れ屋で引っ込み思案な性格"かんべ。尻がくすぐつたくなるような言いぐさ藤本。弁解するような照れ笑いを浮かべる=奥泉。手をあげて打つ真似まぁをする=山本周。照れたような笑顔。声が漏れる。笑いを浮かべる=佐野。だまってオナラした人がするようなテレたような笑い!安岡。照れたように苦笑する。肩を竦、くめてくすっと笑う」連城。 **はじ【恥】** 恥親の恥は子の。末代までの。据え膳食わぬは男の佐野。後々まで恥が残る。恥で全身が火照る感じ。高見明。恥と怒りで体が震える=村上元。恥の上塗り。多い生涯を送る。感情が暗く疼ぅずくに古井。身体の内側の隅々までが屈辱に熱してくるような恥の感覚!柴田湖。恥を忍んで言う。末代にさらす。多くの人から自分の恥を見られでもしているように顔をかくす椎名詞。会社の恥を外へ吹聴ふふちして回る=杉本。身の恥をのめのめと明るみに曝さらされる=芥川。恥をかくえらい。思わぬ。満座の中で。恥を忍ぶ死ぬより辛い。縄目の。とんだ恥をかかされる。かく。命ながらえて恥多い所業をして恬てんとしている今束。汚名を世上に流す。白洲。面目をつぶす。外国人には見せたくない国辱的なもの"萩原吻。国辱に値する行為。名折れ一族の。江戸っ子の。会社の。名折れだといわんばかりの険しい表情藤本。不名誉な唸。戦績を残す。不名誉を雪辱する。自らの不名誉をうやむやのなかに葬る=中島敦。 **はじさらし【恥曝し】** 恥さらしい円の。一家の。とんだ。日本の。恥さらしな写真。恥をさらすい加減。自らの。天下に変節漠の"司馬。胴だまされたほうこそいい面の皮。これ以上生き恥をさらすに忍びない。面汚し一家の。会社の。学校の。日本の。末代の。 **はじない【恥じない】** 恥じない恬然れんとして。恬てんとして。一国の守護の名に=真継。子に恥じない人生を送る。名作の名に恥じない一編。惨ふみじめな暮らしを全く恥じない無神経さ=大庭。旅の恥はかき捨て。恥じるところがない良心に。いささかも。恥じるところはない省みて。毫こうも。恥ずかしげもなく言う。見せないなんの恥じらいも。恥じらいなと微座ふじもり宮本銀。 **はじらい【恥じらい】** 異境で母国人に出会うときにもよおすという自己嫌悪に似た恥じらい安岡。顔に恥じらいがかすめる。恥じらいと苛立心。ちの入りまじった奇妙にぬるぬるする感情=黒井。恥じらいに耳たぶが熱くなる。恥じらいの色を浮かべる。初々しい恥じらいのあふれる姿。うれしさと恥じらいの入り混じった笑顔=内館。自分の饒舌もつうに溢じらいの色を見せる=陳。顔全体に遂にじみ出してくる差はじらいの表情高樹。恥じらいを含んだ甘い声。微笑。含羞跡认しのかけらもない元気さ。若い女にありがちの嬌羞いはいう。両肩から女性の娇羞が溢れ出る"中村真。嬌羞を帯びた微笑。 **はじる【恥じる】** 恥じる己の迂闊っかさを。不甲斐がなさを。自らの不明を。柄にもない役を。自分の狭量さを。自分の情けなさを。はしたない振る舞いを。惨めな暮らしを。自分のとった行動を深く。今すぐ死んでしまいたいくらいに己れの愚鈍さを"飯田。顔から火が出るほど己れの不明さを"飯田。分別に欠けたわがままを笹沢。恥じることなく生きる。恬てんとして恥じる色もない。恥じて顔に血が昇る。舌でも噛んで死にたい"倉橋。恥ずべき卑劣な行為。恥じるような悲しい表情。笑いを顔に浮かべる=藤沢。感情を表に出しすぎたのを恥じるように苦笑する"遠藤。少ししゃべりすぎたのを恥じるように黙り込む柴田現。恥じ入る姑息にそな行為に。身が石に化するかと思うほど=海音寺。ただただ恥じ入るのみ。すまなさに慚愧ざんするほかない=杉本。慚愧に焼きたてられる思い。慚愧の念に堪えない。思いで胸が張り裂けそう。念が忽焉にいとして湧き起こる=中島。内心忸怩たる口吻にらを漏らす。物がある。 **はずかしい【恥ずかしい】** 恥ずかしい感じが胸にもよおす。恥ずかしい思いを抱く。言葉を浴びせられる。恥ずかしい死にたいほど。大人気ない態度が。穴にでも入りたいように菊池。顔から火が出るくらい二葉亭。消え入りたいほど幸田文。消えてなくなりたいほど『有吉。人前でボロクソにいわれ自殺したいくらい『源氏。身の置き所もないくらい瀬戸内。脇のあたりに汗を感じるほど=山本周。口にするのも恥ずかしい言葉。死ぬほど恥ずかしい思いをする。心中恥ずかしいものがある。人に聞かれて恥ずかしいこと。云ぃうも恥ずかしいいい加減な解決"本庄。かくも恥ずかしい目にあう。室生。恥ずかしい思い全身を焼かれるような南条。ひとの前で裸になるような灰谷。まことにお恥ずかしい話。奇妙に恥ずかしく身がひけるよう幸田文。自分の小ささを恥ずかしく思う奥田。恥ずかしくて身が裂けそう。身の置き所もない。皆の前に顔が出せない。目をそむけたくなる。まともに見るのが恥ずかしくてうつむく"原田完。恥ずかしくなる聞いているほうが。気負いこんだ気持ちが。恥ずかしくなるほど無知。恥ずかしげに目を伏せる。穴があったら入りたい心境。飛びこみたい態たらく=池波。身の縮む思い。思わず頬が赤く燃える=本庄。顔が赤らむような思いにとらえられる。 <904> # は **はずかしがる【恥ずかしがる】** ▼恥ずかしがる(心の狭さを。不勉強を。むやみに。やたらに。身をもんで)。恥じらって微笑する。うつむいて畳のケバをむしる岩坂。畳にのの字を書く。戸惑った恥じらうような笑い吉行。緑に僅ぁずかな紫がはじらうように加えてある色曽野。尻をもじもじさせる。もじもじしている(さっきから。しばらく)。 **はずかしさ【恥ずかしさ】** ▼恥ずかしさ(蔽ぉぉうものなき身の永井荷。壁に頭でもぶつけたくなるほどの松浦。体がかっと燃えるような"有吉)。恥ずかしさで(顔が火照る。体が震える。耳まで真っ赤になる。胸が張り裂けそう)。悔しさと恥ずかしさで唇を噛みしめる=池井戸。全身を恥ずかしさで染める“隆。蓋はずかしさで身が縮むように感じる=山本周。恥ずかしさと(痛みで半泣きになる三浦し。不安をかすかな笑みで薄める=小林信)。恥ずかしさに(心乱れる。体がすくむよう(藤沢)。顔をそむけたいような恥ずかしさに駆られる"五木。恥ずかしさのあまり口籠もる阿木。身のすくむような差すかしさ佐多。顔を正視できぬ気恥ずかしさ今日。 **はずかしそう【恥ずかしそう】** 恥ずかしそうに(小声で答える。頬を赤らめる。笑って下を向く。小沼)。居睡ぃゃりしたのを見付けられでもしたようにきょとんと恥ずかしそうにあたりを見廻す=有局。ふにゃっと恥ずかしそうに笑う。野間。裸でいるところを見られたように恥ずかしそうに笑う古井。さも恥ずかしげな身のこなし。声が恥ずかしげに翳かげる。 **はずかしめる【辱める】** 女性を辱める。名を辱める(家の。老舗の)。疼、うずくような差はずかしめ本庄。辱めの(言葉を浴びせかける。どん底までつき落とす)。理由のない辱めを受ける。汚辱に満ちた言葉。救いようのない汚辱の中へ突き落とす=山岡。凌辱いいけする(女を。少女を)。顔をつぶす(親兄弟の。父親の)。 **はにかむ** ▼はにかむ(赤くなって。気恥ずかしげに。物慣れない処女のように『有島。両掌りにで畑をおおようにして=源氏)。はにかんだ微笑を浮かべる。素朴な少女のようにはにかんで見せる=加賀。はにかみ持ちがまるでない。み(少年のような伸びやかな落合。甘くとろけるような灯りが小さくともったような"山田太)。含羞州水に顔が火照る。頬にはにかみの色を浮かべる。少女のようなはにかみを見せる=大佛。極度に慎み深くはにかみ屋。周が悪そうにはにかみ笑いをする。はにかむように(早口で言う。ほほえむ。瞼はぶを伏せる)。はにかんだような笑いを見せる=生局。 **ひとみしり【人見知り】** 人見知りが激しいたち。人見知りの強いはにかみ屋。人見知りをするタイプ。人見知りする子供のように黙りこくる小川。人見りしない陽気なたち。人見知りせずに寄ってくる。かとじしない(子供。態度)。 **めんぼくない【面目ない】** 面目ない(本当に。まことに)。面目ない気持ち。面目なく引き退る。なんとも面目なさそうな顔つき。面目なさそうに(うつむく。笑う)。面目が(つぶれる。丸つぶれになる)。世岡へ面目が立たない。面目次第もない。不面目な(結果に終わる。失態を演じる。失敗)。面伏油もせな(気がする。切なげな風情。風情)。▼形なし(先生も。天才も。ブロも)。不面目にも受験に失敗する。隠居の身ゆえ肩身が狭い!高橋克。肩身の狭い思いをする。 **やましい【疚しい】** やましい気持ちを振り払う。身にやましいことがある。日々何か悪事を働いているようなやましい気分"小島。やましさが心にわだかまる。やましさに身を責められる。やましさをカムフラージュするわざとらしさ=鳥田。後ろ暗い(過去を持つ。気持ちが濃くなる)。知られては困る後ろ暗いこと。脛すもに傷持つ身。脛の傷が痛む。叩けば埃旧にの出る体=柴田銀。やましくない。やましい(打算がない。ところは何もない)。少しも心にやましいところを持たない。何らやましいことはない。秋楽しこ加ぅのやましさもない。良心に一点のやましさも起こらない=黒墨有。やましさを抱かずに生きる。後ろ暗い気人人。 <905> # 働く・勤める **アルバイト** 小遣い稼ぎのアルバイト。アルバイトで(金を貯める。生計を立てる)。生活費をアルバイトで稼ぐ。アルバイトに精を出す。割のいいアルバイトを探す。アルバイト先を転々とする。楽して稼げるいいバイト。片手間にやる仕事。非常勤で勤める。非常勤の職。非正規雇用の労働条件を改善する。バートで(家計を支える。働く)。パートに出る。パートを雇う。 **おおしごと【大仕事】** 大仕事でもしたようにふうふうと肩で息をする灰谷。大仕事を終える。最後の大仕事を成し遂げるべく意欲に満ちて会社に戻る=三浦し。天下をアッといわすような大仕事をする=吉川。ひとが吃驚びりするような大仕事を仕出かす。里見。作業が万代に伝わる。偉業を達成する。なしとげる)。 **かぎょう【家業】** 家業が(忙しい。左前になる。振るわない)。家業に(精を出す。熱が入らない)。家業の盛運を祈る。家業を(手伝う。息子に任せる。そぞろおろそかにはしない!奥泉。継ぐことを余儀なくされる=高橋三)。 **かけもち【掛け持ち】** 掛け持ちで(教える。働く)。二つ掛け持ちする。兼米する(製造と販売を。僧侶と教師を)。▼兼務する(二つの部門を。いくつかの公務を。三つのボストを。理事と事務局長を。大学の教授と士官学校の教官を=山口)。▼二足の草鞋を履く(作家と俳優の。医者と作家という。銀行員と歌手の)。 **かじ【家事】** 家事がスムーズに運ぶ。家事から解放される。家事を(おろそかにする。てきぱきと片付ける。手際よくさばく)。家事一切を一人で切り盛りする"山手。母に代わって家事一切を取り仕切る永井荷。家事全般が苦手。内向きのことがおろそかになる。てきばきと家政を切り盛る。 **きゅうしょく【求職】** 求職を(受け付ける。申し込む)。再就職の口を探す。▼探す(缈め口を。働き口を。新しい就職口を。自力で再就-先を)。仕事探しで血眼になる。定臓を探す。適職を探す。 **きゅうじん【求人】** 求人が(多い。少ない)。求人広告を出す。新聞の求人柵と呪にらめっこする=井上ひ。急募する(アルバイトを。従業員を。バートを。八方手を尽くして)。 **ぎょうむ【業務】** 業務に(支障をきたす。携わる。密着した内容。差し支えが出る。支障が出るほど抗議の電話が殺到する"有川)。繁多な業務に忙殺される。平常心で業務に集中する。気持ちの乱れが業務にも加実に反映する有川。業務を(一手に取り仕切る。おろそかにする)。業務遂行がスムーズに行く。公務で出張する。公務の塾行を妨害する。公用で外出する。本務に専心する。用務で出かける。 **きんむ【勤務】** 勤務が深夜に及ぶ。順番通り勤務につく。勤務の時間が迫る。通常の勤務に(差し支える。耐えられない)。▼勤務する(会社に。大学に。病院に)。勤務時間が終わる。実直な勤務ぶり。就業のベルが鳴る。外回りの仕事。内勤が性に合っている。常勤で働く。常勤の(職員。役員)。 **くびきる【首切る】** ▼首切る(社員を。従業員を。臨時工を。労働者を)。首切りをうまうまとやってのける"小林多。▼首にする(一人前の男を。従業員を)。▼首になる(会社を。家庭教師を。店を)。▼解雇する(アルバイトを。社員を。従業員を。労働者を)。▼馘首する(社員を。労働者を)。▼雇い止め(期間労働者の。派遣の)。雇い止めで(失業する。失職する)。 **げんえき【現役】** 現役で大学に入る。一生現役でいたい。現役を引退する。退く。リタイアする)。現職にとどまる。現職の(教師。大臣)。 **こうむいん【公務員】** 公務員の(天下り。兼業を禁止する)。公務員を免臓になる。市役所に勤める。税金で飯を食う横山。官㎜に就く。官職を(辞する。退く)。然るべき官凧を与える。いかなる官職をも受けようとしない。公臓から追放する。公職に就く。公職を辞して下野する。公人としての自覚が問われる。 **さぎょう【作業】** 作業が(順調に進む。リズムに乗る。急速に進展する。最終段階を迎える。不眠不休で行われる。またたくまに終了する)。一連の作業が終わる。遅々として作業が進まない。作業から解放される。なかなかどうして楽な作業ではない。作業に(従事する。熱中する。没頭する)。追い込みの作業に振り回される。次の作業に取りかかる。作業の(手を休める。流れを監視する。能率ががた落ちする)。作業を分担する。一連の作業を終える。詰めの作業を急ぐ。日一日と苦しい作業を積み上げる。黙々と作業を続ける。▶作業する(熱心に。せっせと。夜昼ぶっ通しで)。作業手順を変更する。流れ作業で製品を作る。 **ざつよう【雑用】** 雑用に追いまくられる。二時間ほどを雑用に費やす三浦哲。雑事に取りまぎれる。日々の雑事に追われる。繁多な雑務に忙殺される。日常の雑務を詩的世界に採り入れる三好達。どうにもならない雑用雑事が次々と押し寄せる柴田湖。お使いを頼む。子分みたいに使いっ走りをやらされる=重松。使い走りの労を取る。使い走りを頼まれる。 **サラリーマン** 日頃のうさをはらすかのごとく大声で騒いでいるサラリーマン辻仁。家路を急ぐサラリーマンの群れ。仮面のようなサラリーマンの顔つき=小林久。三十年間にわたるサラリーマンの垢ぁかを洗い落とすに源氏。長いサラリーマンの生活の中でいつのまにか身につけた習性"小林久。サラリーマンより水商売のほうが向いている=井上ひ。サラリーマン根性が染み付く。サラリーマン生活から足を洗う。律義で気むずかしい初老のサラリーマン風の男倉橋。勤め先から家に帰る月給取りの生活のように疲れている両足川端。▼勤め人(勤勉な。卖な。真面目な。ごく普通の。ごく当たり前の)。 <906> # は **ざんぎょう【残業】** 連日残業に次ぐ残業が続く=開高。残業で帰宅が遅くなる。残業の明かりが輝いている。残業を早めに切り上げる。わざと仕事をつくり残業する=向田。残業疲れをあからさまに宿している脂の浮いた顔宮本郎。 **しごと【仕事】** ▼仕事(割に合わない。電話ですむほどいい加減な=泉優)。仕事が(板につく。急激に増す。少し暇になる。多岐にわたる。多忙になる。峠を越す。山ほどある。楽になる。大詰めを迎える。押せ押せになる。キャンセルになる。本格的に忙しくなる。山のようにたまる=村上春)。新しい仕事が待っている。急ぎの仕事が立て込む。気持ちよく仕事ができる。急な仕事が入る。大切な仕事が残っている。手を休める暇もないほど仕事がある=壺井。通りの悪い下水道のように仕事がドンドンつまって行く〃小林多。仕事が溜まる(本来やらなければいけない。息せききって働かなければ追いつかないくらい=山口)。仕事から解放される。仕事と(家事で疲れる。向き合う。介護を両立させる。私生活のけじめが古風なほどきっちりとしている=落合)。基礎医学を一生の仕事とする。毎日仕事との格闘が続く。仕事に(穴をあける。生きる男。命を賭ける。興味がない。精を出す。茶々を入れる。手をつける。拍車をかける。励みが出る。はりが出る。不満をいだく。ブラスになる。骨を折る。身が入らない。身を入れる。夢中になる。生き甲斐いを感じる。差し障りが出る。精力を集中する。ひと区切りつける。見切りをつける。種を蒔き、水をほどこす=阿川弘)。意欲的に仕事に取り組む。本来の仕事に戻る。ひた走りに行き着くことを考える他には何もない。てきぱきと能率的"石坂。仕事をこも考えないように仕事に没頭する=長与。仕事に全力を(傾倒する。尽くす)。仕事の(覚えが悪い。恐痴をなす(きちんと。黙々と)。▼仕事を進める(せっせと。どんどん)。仕事が進まない。仕事が(一向に進まない。思うにまかせない)。手不足で仕事が間に合わない。仕事の(能率が落ちる。遣り繰りがつかない)。電池が切れかけたように仕事のベースが落ちる=村上奏。仕事をする意欲が著しく減退する"三浦し。 **しごとがない【仕事がない】** ▼仕事がない(ましな。思わしい。何一つ。これというめぼしい)。仕事が根こそぎなくなる。仕事の口が目に見えて減る。目下浪々の身。 **しごとぶり【仕事ぶり】** ▼仕事ぶり(脂の乗った。手際のいい。無駄のない。神経の行き届いた)。仕事ぶりがのろのろと緩慢。仕事ぶりに不満をいだく。仕事のやり方がてきばきと能率的"石坂。 **したづみ【下積み】** 下積みが長い。下積みから身を起したづみこす。下積みで一生涯を終わる。暗い下積みの底であえぐ。市井の下積みの人間。生涯を下積みの役人として終わる。社会のどん底へ落ちてこの世の下積みになる谷崎。下積み生活を経験する。いつまでたっても出世しない。 **じむ【事務】** 事務の引き継ぎが済む。事務を執る。事務処理が停滞する。執務する(自宅で。役所で)。庶務を受け持つ。実務に詳しい。実務を誠実に果たす。実務家の口調になっててきばき喋る=開高。実務能力が皆無に等しい。 **じむしょ【事務所】** 事務所が総力をあげて応援する"小林久。事務所に(電話を入れる。来客がある)。事務所の中を落ち着きなく見廻す宮本郷。急いで事務所を出る。狭い倉庫みたいな事務室『村上則。オフィスに(顔を出す。腰を落ち着ける)。 **しゃいん【社員】** 社員に対する配慮が足らない会社。他の社員に悪影響を及ぼす。非人間的な研修を社員に押しつける=佐高。社員の(健康管理に気を配る。モラールが停滞する)。浮き足立っている社員の気持ちを鎮静させる=高橋和。二万人の社員を擁する大企業。会社員を(続ける。辞める)。使用人を屉う。職員に指示を与える。微かびが生えるとでも思ってるように職員の入れ替えをよくやる=岸田。従業員に当たり散らす。社長の気持ちが従業員に伝わる。従業員の信頼を得る。従業員を(募集する。解雇せずに不景気に何とか耐える=畑村)。常時百人ほどの従業員を抱える。 <907> # は **しゅうしょく【就職】** 就職が(決まる。内定する)。就職の(口を見つける。話を断る。見込みがない)。就職する(会社に。堅い職場に。緑故で。思わぬ機縁で。叔父の肝煎りで)。再就職が困難になる。再就似先を斡旋さいする。就職試験を受ける。就職難が深刻化する。就職難に直面する。まともな職にありつく。定職に就く。▼奉職する(校長を。県庁に。母校に)。就労の機会を拡大する。就労の場を(得る。提供する)。継続的に就労する。 **しゅうにん【就任】** ▼就任する(監督に。社長に。大臣に。大統領に)。就任して間もないある日。▼着任する(医師が。教授が。校長が)。 **じゅうろうどう【重労働】** 見ていても気の毒なくらい年中無休の重労働=曽野。重労働でへたばる。重労働を強いる。たっぷり一日重労働する。どんな荒仕事にも耐える。過酷な労働で痛めつけられた休。過酷な労働に耐える。過酷な労働を強いる。苦役に服する。苦役を課する。力仕事でばてる。力仕事を楽々とこなす。力業で(圧倒する。ねじふせる)。身に適した力業坊紛。にいそしむ三局。久々の肉体労働で疲労困憊心筋らにする"阿川佐。きつい労働と引き換えに報酬を手にする=内橋。 **しゅっきん【出勤】** ▼出勤する(早朝の道を。会社に。いつもより早く。朝は時計仕掛けのようにきちきちと阿部)。遅疑なく明日の朝も出勤するだろう。宮本瓦。勤めに出かける。出社時間を過ぎる。早朝に出社する。 **しょく【職】** ▼喰(性格と能力にふさわしい。それなりの実入りのある=宮部)。戦に忠実に生きる。手に職を持つ。いろいろな職を転々とする。都知事が職を辞する三島。 **しょくぎょう【職業】** 職業と家庭を両立させる。職業に(貴賤合せはない。従事する。身を入れる)。職業の分化が起こる。あまたある職業の一つ。職業を選ぶ。婉曲はんに職業を尋ねる。各種の職業を転々とする。さまざまな腕業を経る。父の職業を継ぐ。目まぐるしく職業をかえる=川端。職業意識に徹する。職業的な(緊張を覚える。微笑を浮かべる)。にっこりと職業的な笑顔を浮かべる。職業的に熟練した動作。今の稼業から足を洗う。生家の稼業を継ぐ。他の職種に転じる。さまざまな職種を遍歴する。正業に就く。正業を営む。定職を(得る。持たずにぶらぶらしている)。 **しょくば【職場】** ▼戦場(一生食いはぐれのない宮本紙。女の城のような「連城)。新しい職場が見つかる。職場でお友達作って仲良くってタイブ=有川。一日も『古巣の職場に戻る。職場を休まずに職場に通い続ける。古巣の職場に戻る。職場の士気の足を引っ張る。職場の雰囲気が(開放的。ぎすぎすする)。お父さんの職場を見学する。勤務時間にくいこむ職場大会を開く"高橋和。民家を作業場に改造する。家と仕事場を別々にする。 **しょくむ【職務】** 職務が複雑多岐にわたる。職務に(従事する。変念する。忠実な刑事。誇りを持つ)。臓務を果たす。与えられた職務を忠実にこなす。通常の職務を続ける。職務上の正当な行為。職務怠慢を責める。職業柄その分野には詳しい。最後まで職責を全うする。立派に職責を果たす。職分を(果たす。守る)。 **じんじいどう【人事異動】** ▼人事異動(大規模な。訳ありの。適性に見合った)。人事異動で(別の課に移る。係長に抜擢される。他の部署へ行く)。人事異動のローテーションが早い。横断的な人事異動を断行する。辞令が出る。▼辞令が下りる(正式に。転勤の)。▼人事(異例の。会社の。適材適所の。横滑りの。論功行賞の)。更迭人事が成功する"舟橋。人事権を(手中に収める。掌握する)。人事の刷新に大鉈を振るう。報復人事を受ける。役員の人事をめぐって激しく対立する三好微。地方支社に転勤する。転出する(系列会社に。支社に)。▼転任する(外国に。地方に)。配置転換を(強行する。撤回する)。▼配転する(支店に。別の業務に。他の職種に)。出向から帰任する。▼出向する(関連会社に。子会社に)。▼配属する(支社に。総務部に。本人の適性に応じた部署に"有川)。配属された者を戦力化する。配属先が決まる。 **せいぎょう【生業】** 業とする(医を。学問を。染色を。文筆を。貿易を)。父の業を継ぐ。▼手職にする(竹細工を。時計修理を)。 **そうぎょう【操業】** 二十四時間操業する。安全操業を心がける。操業短縮で帰休する。操業停止に追い込まれる。▼稼働する(大型設備が。工場が。印刷所の輪転機が。コンプレッサーが。二十四時間態勢で)。稼働率が(高い。低い)。フル稼働でも注文に追いつかない内橋。 **たちはたらく【立ち働く】** 立ち働く(忙しそうに。いそいそと。きびきびと。額に汗して。くるくるとこまめに。辛抱強くこまめに。男のように殺伐に=獅子。こまねずみのように=壺井。はねまわるようにして"池波)。 **つかえる【仕える】** ▼仕える(神に。献身的に。主人に。殿様に。侍女として。僕もとして。へりくだった気持ちで。一生を犠牲にして藩公に今日。気むずかしい姑しゅうに"司馬。自己一身の利益を投げ打ってい舟橋)。御仏に仕える世捨て人=山岡。すまじきものは宮仕え。宮仕えの身、官庁に仕官する。仕官の道を求める。▼出仕する(宮廷に。役所に)。 <908> # は **つとめさき【勤め先】** 勤め先を(心にかける。紹介する。世話する)。新たな仕事先を見つける。働き先を見つける。就職口がない(適当な。思わしい)。就職口を(世話する。見つける)。条件のいい就脱口を等旋あいする藤田。思わしい就職先がない。就職先を(決める。世話する)。新しい就職先を見つける。一度決まった就職先を蹴る。就労先を確保する。勤め口が見つかる。新しい勤め口が気に入る。勤め口を世話する。好条件の勤め口を見つけ出す。働き口を見つける。鉱山に働き口を求める。働き先が見つからない。 **つとめる【勤める】** ▼勤める(銀行に。出版社に。商社に。デバートに。病院に。放送局に。法律事務所に。店に。将軍の補佐役を。名のある会社に。一つの地域で長く。病気と折り合って)。▼務める(縦長を。クラス委員を。剣道師範を。歌師を。重要な役割を。大臣を。編集長を。役割を忠実に。宴会の幹事役を)。勤めの(行き帰りに立ち寄る。つらさをしみじみ覚える)。一日の勤めを終える。勤続二十五年を表彰する。▼勤続する(会社に。役所に)。官吏の職を奉じる。歴任する(各国大使を。局長や理事を。要戦を)。▼勤め上げる(大役を。二年の刑期を。岡ぉゃの営みを。年季を。定年まで。長年にわたって)。永年勤続者を(表衫する。報奨する)。 **てしごと【手仕事】** ▼手仕事(細かい。昔ながらの)。手仕事に日を過ごす。手作業で作る。手作業の(仕事。内喊)。 **ないしょく【内職】** 一山いくらみたいな内職永井則。せっせと内職に励む。メリヤス工場の仕事を内臓にして口を過ごす。佐多。内職の(手を休めない。稼ぎで自分の口を養う)。黙々と内職の手を動かす。夜の目も寝ずに内職する。内臓仕事をしながら細々と暮らす窪川。 **なりわい【生業】** 渡世の生業。▼生業とする(家具製造を。漁業を。大工を。物書きを狐を)。生菜を(営む。続ける)。 **にんむ【任務】** 任務に就く。忠実に取り組む)。死力を尽くして任務に当たる。特殊な任務に従事する。任務の重さに身が引き締まる。極秘の任務を帯びる。つがなく任務を終了する。手際よく任務を果たす。一倍複雑な任務を背負う。使命感が胸中を支配する。使命を果たす。歴史的使命を終える。編集の街に当たる。見張りの任に当たる。本分を(尽くす。守る)。要務(火急の。喫緊の)。要務を帯びる。務めを無事に果たす。自分の務めを心得る。▼務めを果たす(親の。かろうじて保護者の=中沢)。 **はたらかせる【働かせる】** ▼働かせる(勝手な想像を。鋭く神経を。想像力を。悪知恵を。無理に。長時間。低賃金で。働けるだけ)。鋭い推理力を働かす。全機能をフルに動かす。息子を働きに出す。人使いが荒い。不安定な働き方を強いられる。▼使役する(体を。牛馬を)。使役に駆り出す。牛や馬みたいに働かされる=なかにし。目的のない仕事をやらされるくらい人用にとって残酷なことはない!大佛。▼駆り出す(応援に。兵隊に。有権者を投票所へ)。▼駆り出される(勤労動員に。戦争に)。 **はたらかない【働かない】** うまく頭が働かない。仕事を(せずにぶらぶらする。まるっきりしない)。ろくな働きもできない。働く(意欲を失う。気になれない)。・機能不全に陥る(議会が。市場が。システムが。政治が。臓器が)。勤労意欲が減少する。勤労意欲の低下を招く。仕事もせずに遊び暮らす。仕事らしい仕事もしていない。まともに職につかず遊びほうける。 **はたらき【働き】** ▼働き(獅子奮迅の。八面六臂ちんの)。▼働きに出る(外に。一日も休暇をとらずに)。頭の働きの鋭い男。頭がまともな働きをしはじめる。頭脳の働きを円滑にする。一人で三人分の働きをこなす熊合。▼働きを見せる(社交的手腕が。黒子のような)。▼働きをする(本能が敏捷いしな。人の力の及ぶ限りの三島)。▼働きぶり(真面目な。陰日向のない)。共働きの(家庭。夫婦)。日雇いの仕事に出る。 **はたらきて【働き手】** 働き手が病に倒れる。息子が一人前の働き手となる。▼働き者(町内きっての。母親に似た)。人手が(かかる。足りない)。人手に(困る。頼る)。人手のかかる作業。 **はたらきとおす【働き通す】** ▼働き通す(真面目一方に。一日中。眠る間もなく。夜も昼もなく)。体を磨すり削るように働き徹す=山崎。▼働きづめ(年がら年中。早朝から深夜まで)。働きづめで何一つ道楽もない=浅田。一日じゅう働きづめに働く。 **はたらく【働く】** 働く(素振りを見せる。者の優位を主張する)。▼働く(奇妙な勘が。罪悪の意識が。資本の論理が。悪知恵が。空き巣を。強盗を。詐欺を。盗みを。不義を。不貞を。無礼を。頭が正常に。一生懸命に。一心不乱に。命を的に。がむしゃらに。功名心が先に。心が理性的に。十年近く共に。神経が過敏に。力が徒ぁだに。力が随所に。朝から晩まで。汗水垂らして。頭が鋭く。俗、まず挖たゅまず。かいがいしく。陰日なたなく。髪振り乱して。体の続く限り。体を壊すほど。子供を抱えて。先を読んで。残業も脈いとわず。車輪のように。精を出して。能率を上げて。額に汗して。必死になって、不眠不休で。まめまめしく。身を砕いて。身を粉にして。世の中に出て。夜を徹して。悪意ある連想が。いろいろな力が。現実的な勘定が。小狡にずいことに頭が。打算の気持ちが。見せしめという意図が。陰へ回って悪事を。民家を襲って掠奪秒べくや暴行を。意識が内向きに。一日の大半を仰々きづめに。食うものも食わずに。神経が本能的に。せっせと脇目もふらずに。世のため人のために。油まみれになって。忙しそうにくるくると。一命をなげうって。会社であくせく。カフェテリアでウエイトレスとして。元気に目的を持って。現金収入を求めて。心を入れ替えて。始終せわしそうにくるくる。主人の手足になって、種族維持の本能が強く。寝食を忘れて昼も夜も。住み込みの家政婦として。全力を尽くして。空に日がある限り。大黒柱となって。体制側の手先となって。なりふりかまわず。昼となく夜となく。ボランティアの一員として。老骨に便打沁ちって。願だまし討ちにしたくない心理が"泉後。汗みどろになって体を張って=山崎。動いているのか動いていないのか見判ふぁけもつかぬほどのろのろと=本庄。牛や馬のように壺井。確実な機械のように横光。金のためには一時の不自由さも忍んでいるという風に忙しく佐多。自分の体を切り刻むように『長崎。バケツで水を汲くみ出すように必死で高橋三。馬車馬みたいに高杉。考えが頭の中で二十日鼠ぶや砂のようにはげしく有局。水を得た魚っぉのように"北原。身にぼろを下げて機械のようになって=梶井。身を洗うように佐多。文字どおりまっ黒になって灰谷。連想の回路がすばやく佐野)。寝ずに働く(寝る間も。夜の目も)。▶よく働く(くるくると。こつこつと実直に)。きりきりとよく働く子。働いて帰ってくるとバタンキューと寝こむ。毎晩遅くまで働いてくたくたになる。不自然な物事には作為が働いている=有川。▼働きたい(人間らしく。一時間でもよけいに)。働きたいのに働けない苦しさ。仕事をひと手に渡すのを怖れるかのようにせかせかと働き続ける=藤枝。▼働ける(安心して。現役で。まだまだ)。頭脳が活動する。作用する(責任回避の気持ちが。不可思議な力が。言葉が麻薬のように=石坂)。 <909> # は **ほうこう【奉公】** 大名屋収へ奉公に上がる。奉公の(年季が明ける。年季を勤めあげる。辛さをなまなましく思い返す=山崎)。身を捨ててひとかとの奉公をする。屋敷に奉公する。丁稚奉公パンはに行く。徒弟奉公に上がる。奉公先を逃げ出す。主人のためには水火も辞せぬという奉公ぶり~村上元。滅私奉公の精神。 **ほんぎょう【本業】** 本業そっちのけで副業に精を出す。本業と副業が入れ替わる。本業に(精を出す。専念する)。本業を(二の次にして出歩く。離れて余技を楽しむ)。腕に覚えの本職。本職顔負けの腕前。 **やとう【雇う】** ▼雇う(アルバイトを。学生を。私立探偵を。労働者を)。▼働く(常雇いで。日雇いで)。雇い入れる(技術者を。職人を。船長を。店員を。番頭を。要員を。人柄のしっかりした者を。取りあえず大急ぎで。さしたる詮議さんだてもせずに"真継。劣悪な労働条件で=桐野)。口入屋を通じて雇われる=池波。召し抱える(家来を。武芸者を。浪人を。高禄で)。このまま飼い殺しにされたくない。▼飼い殺しにする(従業貝を。使用人を。選手を。一生)。雇用の創出を図る。▶雇用する(身障者を。新卒者を)。雇用維持に全力を尽くす。雇用情勢が(悪化する。好転する)。 **ようじ【用事】** どうしても外せない重要な用事。用事が済んだらさっさと戻れ=有川。急に用事ができる。さしたる用事がない。何かと用事が多い。▼用事で出かける(野暮な。わりない)。あれこれと用事を言いつける。個人的な用事を頼まれる。大切な用事を思い出す。適当な用事をでっちあげて断る。私用で(席を立つ。出かける)。所用で外出する。火急の用が出来ゅっする。用を足して真っ直ぐに帰ってくる=貫井。用足しに出かける。大事な用向きを済ませる。急用ができる。急用で席を離れる。急用のため行けない。用件が上首尾に運ぶ。これがお前の生きている現実なのだと言い立てるような勢いでいろいろな用件が取り囲む"辻井。早速用件に入る。用件を(済ませて帰る。手短に伝える)。急いで用件を片付ける。てきぱきと用件を持ち出す。 **リストラ** リストラで(失業する。離職する)。リストラという陰湿ないじめ。リストラの嵐が吹き荒れる。何だかんだ理由を付けてはリストラを進めようとする東野。希望退戯の募集がある。会社をお払い箱になる。人員整理の対象になる。人減らしが業界全体に広がる。会社が人減らしに転じる。 **ろうどう【労働】** 命をなげ出さんばかりの険しい一日の労働"有島。労働が(生みだす価値。仕立てのよい着物のように体と心にぴったりと合う三島)。残酷極まる労働で搾り抜かれる"小林多。労働に(耐えられない体。見合う額を払う)。過酷な労働に堪える。労働の(活力が湧き昇ってくる三島。強度の増大に見合うだけの賃金の引き上げ=服部)。労働を肩代わりする機械。人間らしい労働を実現する。無駄な労働を強いる。心地よい労働をした後のように頬にボッと血の気がさす「檀。闊達は2つに笑い声を立てて労働する。労働運動が(高揚する。低調)。価値は労働時間に正比例する=服部。労働時岡を(短縮する。減らす)。労働条件が悪化する。労働条件を改善する。勤労の風を養う。営々として勤労する。勤労意欲に燃える。 **ろうどうしゃ【労働者】** 出稼ぎの労働者。労働者が(立ち上がる。連帯する)。剰余価値を直接に労働者からしぼりとる=服部。労働者に犠牲をしわ寄せする。労働者を(搾取する。組織する。使い捨てにする。低賃金に据え置く。資本に釘づけにする=森宏)。賃金労働者を奴隷に転化する。労働者階級を(解放する。抑圧する)。勤労者を(組織する。団結させる)。▼工員(優秀な。工場の)。労働力が(余る。不足する)。体ていのいい労働力として使われる。安い労働力として利用する。 <910> # 罰する・捕まえる **いちもうだじん【一網打尽】** 一網打尽にする(悪党どもを。泥棒の一味を。暴力団を。網を張って。待ち構えて)。一網打尽の築を工夫する。 **けい【刑】** 刑が(確定する。軽くなる。決まる。執行される)。刑に処する。刑を(言い渡す。終える。科する。執行する。宣告する。取り消す)。罪人に刑を申し渡す。途方もなく長い刑期を課せられる=辺見。一族が赤子に至るまで処刑される"あさの。処刑を猶予する。量刑を(重くする。軽くする。決める)。 **けいかん【警官】** ▼警官(私服の。体軀にぃ堂々とした)。警官が(網を張って待つ。バトロールで通りかかる)。警官に暴行される。警官の(群れが包囲する。制服の垣が有刺鉄線のようにひきしめられとげとげしくなる=武田泰)。警警官を要所に配置する。警察手帳を見せる。警察官が大量に動員される。警棒を腰に下げる。私服が張り込む。律儀そうな巡査。生涯一巡査を貫く。官憲に垂れ込む。官憲の(圧制と闘う。調べを受ける。弾圧に会う。目を欺く)。▼刑事(見るからにタフな。放たれた猟犬のように手がかりを追う池井戸)。刑事が骨董品にのんでも鑑賞するように死体を一瞥心する=小池。刑事の言葉つきが表面は丁寧だが拒否を許さない強い響きを持つ佐野。犯人を追いつめる刑事のような口調"小林久。刑事のように鋭い眼で児にらみてえる=高橋和。 **けいさつ【警察】** 事件を警察内部でうやむやに処理する=高木。警察が(追いかける男。介入する。捜査に入る。摘発に動く。暴力団とつるむ。権力者の走狗にうになりさがる=常盤。制度疲労を起こす=佐々木)。警察に(訴える。追われる。顔が利く。自首して出る。情報が流れる。職を見つける。捜索願を出す。通報する。突き出す。連れて行く。電話をかける。密告する。身柄を引き渡す)。庶民の怒りが警察に向けられる。道路の使用許可を警察に申請する。匿名の電話が警察にもたらされる=横山。警察の(犬。世話になる。手を借りる。耳を意識する。目に触れる。威信をかけた徹底的な捜査。横暴に泣かされる。知るところとなる。取り調べを受ける。出動が大幅に遅れる=有川。腐敗ぶりを明るみに出す=柳田)。身辺に警察の手が及ぶ。ストーカー行為を働いて警察の厄介になる。警察を敵に回す。警察権を乱用する。警察沙汰に(したくない。巻きこまれる)。事件を警察沙汰にする。未成年の娘が警察沙汰になる。所轄の警察署。もよりの警察署に連絡する。警簽署の寒々しい廊下。警察力で排除する。交番で道を聞く。交番に(駆け込む。自首する)。拾い物を交番に届ける。交番のおまわりさんに道を尋ねる。白バイが出動する。白バイに追尾される。白バイの警員。パトカーが(先導する。猛スピードで走り去る)。ほどなくバトカーが到着する。バトカーに追尾される。パトカーの(赤色灯が光る。サイレンが鳴り響く)。バトカーを現場に急行させる。 **けいばつ【刑罰】** 刑罰が(重すぎる。軽い)。まかり間違って大きなミスでも犯そうものならどんな刑罰が待ちかまえているかわからない"阿刀田。刑罰の鞭ひちを振るう。橋が血なまぐさい地獄の焰詣のに焼かれた刑罰の鉄板のごとくおびやかす「武田祭。刑罰を受ける。容赦のない刑罰を加える。刑務所に送る。厳刑を言い渡す。禁錮刑を言い渡す。被告人を禁鋼に処する。禁鎖を科する。禁綁刑の判決を受ける。実刑判決を受ける。実刑が(確定する。相当と思量する)。実刑を(言い渡す。宣告する。免れる)。断罪の空気が法廷に充満する=横山。重大な裏切りと断罪する。懲役刑が確定する。懲役に(処する。服する)。懲役を(言い渡す。科する)。 **けいむしょ【刑務所】** 刑務所で暮らす。刑務所と娑婆とを往復する=井上ひ。刑務所に(入れる。送りこむ。収監する。入っているような恐ろしさを味わう萩原袋)。悪人を刑務所にぶちこむ。臭い飯を食う。獄裡にくの人となる。音を閉じ込めるために作った刑務所のような巨大なスタジオー辻仁。獄舎に(つながれる。閉じ込める)。獄窓に(つながれる。閉じ込める)。獄中生活を送る。息子を獄中に奪われる。獄に投げ込まれる。一も二もなく獄へ投げ込む。▼収監する(受刑者を。監獄に。豚箱に。留置場に)。受刑囚を(更生させる。釈放する)。▼投獄される(汚職で。殺人の疑いで。無実の罪で)。独房に(監禁する。ぶちこむ)。入獄する(監獄に。刑務所に。牢に)。入獄を恐れず国事に奔走する=網測。 **げんぽつ【厳罰】** 厳罰に処する。厳罰をもって臨む。ひき逃げを厳罰化する。厳罰化で刑期が長くなる。厳刑に処する。世界刑罰史上比類のない酷刑!柴田錬。酷刑に処する。重科に処する。 **しけい【死刑】** 死刑が確定する。死刑と断罪する。死刑に処せられるほど重い犯罪。死刑の(宣告を受ける。判決が下る。宣告に似た暗潮从たる気持ち=辻仁)。国による合法的な殺人=横山。十三階段をのぼる。処刑台にのぼる。露と消える(刑場の。絞首台の。断頭台の)。死刑宣告をするようないやな気分"五木。死刑台に送る。死罪という言葉にたじろぐ。死罪に処する。下手をすれば死罪にもなりかねない高橋克。死罪の裁きを受ける。いずれ死罪を免れまい。絞首台に(送る。上る)。獄門に送る。斬罪に処する。重罪人を処刑する。銃殺刑に処する。断罪に処する。断頭台に上る。罪万死に(値する。あたる)。苛酷な火あぶりの刑。八つ裂きの刑に処する。最も過酷な極刑。極刑に処する。極刑を(覚悟する。科する)。裁判所が極刑を選択する。 <911> # は **しまながし【島流し】** 烏流しの刑。遠烏の刑を言い渡す。遠い島に流される。流刑という古風な刑罰中島敦。流竄約いぅの(憂き目を見る。地)。流滴いたの(刑。地。罪。身)。流人の(島。地。身)。 **しゅうじん【囚人】** 囚人の暴動を鎮圧する。この世の裏側に無理やり連れてこられた囚人のようにあたりを見回す"加賀。囚徒を(護送する。見張る)。 **しゅつごく【出獄】** ▼出獄する(刑務所から。刑を終えて。減刑により)。刑期が満了になる。刑期を終える。つとめあげる)。獄の外に出る。受刑を終える。刑務所を出所する。出所の日を心待ちにする。▼出る(刑務所を。牢獄を)。 **たいほ【逮捕】** 逮捕に(こぎつける。踏みきる)。逮捕は時間の問題。▼逮捕する(空き巣を。お尋ね者を。首謀者を。犯人を。一網打尽に。現行犯で。詐欺の容疑で。盗みのかとで)。警察に引っ張られる。純に就く。犯人が(挙がる。捕まる)。犯人の首根っこを押さえる"辻真犯人を(挙げる。捕まえる)。誤認逮捕を謝罪する。逮捕者を出す。逮捕状を(請求する。取る。見せる)。逮捕令状を示す。犯人逮捕に全力をあげる。急転直下で犯人逮捕に至る。お縄に(かける。する)。検挙する(容疑者を。スピード違反を)。検挙を免れる。▼拘留する(警察に。殺人容疑で)。拘留を食う。捕繩を(かける。外す)。▼召し捕る(賊を。盗賊を。盗人を)。輪っばをかける。▼逮捕される(警察に。捜査当局に。詐欺容疑で。収賄したため。賭博行為で。放火の容疑で。覚醒剤の密売で。共同正犯の疑いで。連日のように政治家や官僚が佐高)。手が後ろに回る。手に手錠がかけられる。組付きになる。 **つかまえる【捕まえる】** ▼捕まえる(泥棒を。一匹残らず。片っ端から。猫をむんずと。挙動不審の男を。両手でしっかり。首根っこを力いっぱいぎゅっと小松太)。首に縄をかける。網を(打つ。掛ける)。漁船を拿捕だにする。▼取り押さえる(暴れ馬を。現行犯を。泥棒を。猛牛を。狼藉者もりを。寄ってたかって)。捕り方が橋を固める。捕り方に包囲される。捕り方の吹き鳴らす笛の音が響く!高橋克。鼠ゆずを捕る。泥棒をばくる。引っくくる(悪人を。下手人を。片っ端から)。▼引っ捕らえる(お尋ね者を。盗人を。人殺しを)。▶捕獲する(胸ふたを。魚を。袋を。敵の艦艇を飾ぽくを)。捕虫網を振るう。▼捕縛する(下手人を。犯人を)。捕縛に二の足を踏む。犯人の捕縛を厳命する。 **つかまる【捕まる】** ▼捕まる(追っ手に。強迫観念に。警察に。現行犯で。とじを踏んで。スピード違反で)。捕まるのはまっぴら。捕まるのを承知で出かける。遅かれ早かれ捕まってしまう。警察のやっかいになる。犯人が天の網にかかる三好徹。お縄を(受ける。頂感だいする)。蜘蛛くもの網に絡め取られる皆川。身柄を警察署に拘置される。おめおめ捕らえられる。捕り繩にかかる。縛ばくの縄にかかる。補導された生徒をもらい下げる。警察に補導される。恐喝未遂で挙げられる。▼捕まらない(簡単には。決して)。危うく捕まりそうになる。捕り方の手を逃れる。▼免れる(一網打尽を。縛いまめを。逮捕を)。 **てじょう【手錠】** がちゃりと手錠がはめられる。若い男が手錠で巡査に猿のように引っ張られていく安岡。後ろ手にひねって腕に手早く手錠をかける"有川。 **てんぼつ【天罰】** 義償に駆られて天跌てんちを加える。天に代わって罰を与える。天の神の裁きが下る。天罰が下る。天罰が(当たる。雪崩をなして身にふりかかる=高橋和)。悪業に天罰がてきめんにくだる佐山。天徴を受ける。天網恢々の疎にして漏らさず。 **ばち【罰】** 罰当ぶぅたりなことを言う。▼罰が当たる(お天道様の。神様の。不孝の。ご先祖を大事にしないと。今の境遇に文句を言ったら熊谷)。言うと罰が当たる(贅沢だいを。文句を)。花の下で死ねるなんて幸せすぎて罰が当たりそう隆。心配してくれても闘は当たらない。 **はつ【乳】** 罰を(深く受ける。一生負う。科す。減じる。甘んじて受ける)。神からの罰を恐れる。神様が罰を下す。重い罰を(与える。加える)。神の罰を(受ける。恐ろしがる)。重い十字架を背負うつか。どんな神罰も朕いとわない。神部を(受ける。恐れる)。さすが女同士だけあって思いつく罰ゲームがえげつない"有川。罰則が(重い。ない努力規定)。罰則を科す。ベナルティーを(科す。支払う。取られる)。単調で耐えがたい労役。労役に(就く。服する)。二年の労役を宣告される。謹慎を(意に介さない。命じる)。 **ばっきん【罰金】** 違反者を罰金に処する。罰金を(覚悟する。科する。取る。払う)。課徴金を納付する。 **はっする【罰する】** 罰する(悪人を。下手人を。脱走を。厳しく。容赦なく。不義不忠の謀反人はふんを津本)。科す(極刑を。禁錮を。刑罰を。制裁を。懲役を。罪を。罰金を。反則金を)。厳しい処罰が下る。相当重い処罰を受ける。処罰する(違反行為を。万引きを。厳しく)。 **ふくえき【服役】** 服役を終える。▼服役する(痛恨の思いで。実刑判決を受けて)。刑に服する。臭い飯を食う仲間"高村茂。 **ろう【牢】** 牢に(押しこめる。叩きこむ。つながれる。閉じこめる。入る)。座敷半のように狭い部屋"椎名域。牢屋に(入れる。入る。ぶちこむ)。牢屋の飯を食う。監獄に(収容する。叩きこまれる。つながれる。入る)。獄に(下る。つなぐ)。十年の歳月を冷たい獄屋で過ごす。地下牢に(閉じ込める。幽閉する)。幽囚の(生活を送る。身となる)。牢獄に(閉じこめる。つながれた囚人)。牢獄を出たばかりのようなみすぼらしい疲れ=川端。 <912> # 話し合う **いいあう【言い合う】** ▼言い合う(勝手なことを。冗談を。互いに恨みを。文句を。悪口を。一歩も引かずに)。▶言い合い(堂々めぐりの。激しい)。言い合いになるのが関の山。多少言い合いになる。 **いいあらそう【言い争う】** ▼言い争う(親子が。男女が。父と母が。声を荒らげて)。言い争う声を耳にする。言い争い(軽い。激しい)。言い争いが(起こる。始まる。エスカレートする)。ひどい言い争いになる。周囲の視線を集めるほどの言い争いに発展する=鈴木光。無用な言い争いを避ける。揚げ足の取り合い。 **いいかえす【言い返す】** ▼言い返す(高飛車に。反抗的に。控え目に。負けずに。一歩も譲らず。語気鋭く。すかさず。むきになって。むっとして。にこりともせずに。ひるむことなく)。ああ言えばこう言う。言葉を返す。売り言葉に買い言葉。冗談で切り返す。切り返すように答える。たまに一言二言ぐらい口返答をする=谷崎、口答えもできず黙って考えこむ。▼口答えする(子供が。気軽く。憎らしく)。 **うちあわせる【打ち合わせる】** ▼打ち合わせる(段取りを。事前に。念入りに。綿密に。あらかじめ)。打ち合わせ(具体的な。最終的な。綿密な)。打ち合わせが(順調に進む。万端つく)。かねて打ち合わせのとおり事を運ぶ。打ち合わせを済ませる。▼打ち合わせをする(手短に。あわただしく。遺漏ないように=大佛)。 **かいぎ【会議】** 会議が(延々と続く。厳粛に進む。横道に逸れる。荒れ模様になる。議事どおりに進行する。整然と進行する。中だるみになる。延び延びになる。予想外に長引く。予定より早く終わる)。大事な父議に遅れる。会議の(終了を告げる。開始を宣言する。席上で発言する。テーブルに着く)。会議を(招集する。民主的に運営する)。家族会議を開く。国際会議に出席する。捜査謡に陪席する。委員会の(開催を告げる。招集を要求する)。断続的に委員会を開く。議事が和やかに進む。議事に入る。議事録をまとめる。談事を(進める。妨害する)。会議室に集まる。束の間会議室に沈黙が屯於もする=森村。会議室を重苦しい沈黙が覆う篠田。議場が騒然とする。議場を閉鎖する。ミーティングルームに集合する。 **かいだん【会談】** 儀礼色の強い会談。会談が(決裂する。紛糾する。デッドロックに乗り上げる。友好的に行われる)。会談の概要を発表する。会談する(非公式に。要人と)。 **かけあう【掛け合う】** ▼掛け合う(役所に。政権譲り渡しを。賃上げで経営側と)。強談する(借用を。下手人の引き渡しを=子母沢)。強談に仲裁する。直談判に及ぶ。談判が(決裂する。不調になる。はかばかしく進まない)。▼談判する(押して。膝詰めで。膨れっ面をして)。▼強談判に必従する(校長に。役所に)。哀訴が強談判に変わる!内海。膝詰め談判に入る。 **かけひき【駆け引き】** ▼駆け引き(心理的な。虚々実々の。恋の。舞台裏の。与野党の)。駆け引きが(うまい。功を奏する。下手)。駆け引きに(強い。弱い。エネルギーを費やす)。子供っぽい駆け引きにたわいなくひっかかる『川端。売買の駆け引きに熱中する"三好後。駆け引きを(楽しむ。度外視する)。政治的に駆け引きする。四十八手の裏表に通じている。 **きょうぎ【協議】** 協議が(不調に終わる。物別れに終わる)。ごたごたと協議が起こる。協談の場を設ける。協議を定例化する。徹夜で協議を重ねる。▼協議する(各国の首脳が。善後策を。定期的に。額を寄せて。与野党で)。▼鳩首いう協議する(閣僚が。使節団の一行が)。鳩首協議すること数十分。国政を蹴する。合議制を敷く。合議によって決める。衆議が決まる。衆議に委ねる。評議する(裁判員が。議案を)。 **くってかかる【食ってかかる】** ▼食ってかかる(親に。警察官に。審判に。大声を出して。血相を変えて。険しい気色で。獰猛ような調子で。悪いとして。むきになって。居丈高になって。胸倉をつかんで。目を三角にして。声を荒らげて支社長に=丹羽)。食ってかかる勢いで口論になる。噛みつくような(言葉を吐く。調子で尋ねる)。食ってかかるように急せき込んで言う。噛みつきそうな(勢い。顔つき)。▼突っかかる(肩肘張って。喧嘩腰ごいかで。思い迫った声で)。ボールを打ち返すようにつっかかる=岡田。突っかかりたい気持ちを抑える。 **けんせい【牽制】** 牽制する(勇み足を。国際社会を。豪族たちの動静を。笑いながらさりげなく)。互いに牽制しあう。牽制するように児にらみつける=内海。 **こうしょう【交渉】** ▼交渉(肉体的な。一歩も引けない)。交渉が(打ち切りになる。スムーズに進む。成果をおさめる。デッドロックに乗り上げる。にっちもさっちもいかなくなる。胸突き八丁にさしかかる。物別れに終わる)。今後の交渉で詰める。交渉に(欠くことのできない人材。進展が見られない)。値段の交渉に入る。粘り腰で交渉に臨む。交渉の(糸が断たれる。席に就く。手がかりをつかむ。目鼻がつかない。余地のない口調で宣言する=有川)。交渉を(成功に導く。粘り強く続ける。弁護士に任せる)。外部との交渉を断つ。賃上げの交渉を始める。いろんな男と交渉を持つ"石坂。交渉する(外国と。担当者の頭越しに。あらゆるルートを探して)。交渉経過を報告する。示談交渉を進める。粘り強く対外交渉する。意思統一して団交に臨む。労使交渉が(決裂する。まとまる)。渡りをつける。数次にわたる折衝。折衝が物別れに終わる。屈辱的な折衝に堪え忍ぶ=坂口。ややこしい折衝を重ねる。渡り合う(互角に。五分に。対等に。現実と。一世界と。丁々発止と。堂々と)。 <913> # 話し合う **ごうろん【口論】** ▼口論(口汚い。つまらない。激しい。愚にもつかない)。口論が(しばらくの間続く。とめどなくエスカレートする。高じて白刃を交える始末とになる=村上元)。言葉の行き違いから口論になる。口論のあげく家を飛び出す。酔って口論をする。口論する(血相を変えて。相手におかまいなく。五分後にはもう思い出せなかったほど他愛ないことで高見浩)。▼口説(恨みの。騒々しい)。口争いが絶えない。口争いに終止符を打つ。口争いを続ける。▼口喧嘩从妨げ(猛烈な。たわいない)。口喧嘩が絶えない。▼口喧嘩する(親子が。夫婦が。つまらないことで)。 **そうだん【相談】** ▼相談(それはできない。豚意なき得心上の"伊藤左)。相談がまとまる。できない相談ではない。相談に(あずかる。親身に答える)。折を見て相談に行く。何かと相談に乗る。相談もへったくれもない。うかうか相談もできない。格別相談もしない。相談を(持ち込む。持ちかけるのは筋違い)。ひそひそと相談をする。ぼそぼそと相談を始める。▼相談する(善後策を。悩みを。身の振り方を。事前に。上司に。弁護士に。いろいろ。上の者と。折を見て。自分の体力と。額をあつめて。葬式の段取りを。額を寄せてひそひそ三浦哲)。折り入って相談したいことがある。斐に相談して決める。相談事を持ちかける。身の上相談を受ける。上司に語って検討する。示談が成立する。示談で解決する。事故を示談で済ます。示談の交渉をする。談合で摘発される。談合の調整をする。入札で談合する。 **とうろん【討論】** ▼討論(活発な。自由な。物足りない)。討論が熱を帯びる。石投げのようなけんか腰の討論が続く=小林多。討論で渡り合う。討論に及び腰。熱のこもった討論を交わす。激しい議論が闘わされる。激論を岡わせる。シンボジウムを(開催する。企画する。組む)。大いに意見を闘わす。十分に討議を尽くす。▼討議する(手段を。提案を。問題を。慎重に。熱心に。改正すべき条項の有無を鈴木四)。 **とりひき【取引】** 取引が(ご破算になる。順調に運ぶ。成立する。スムーズに行く)。大口の取引が成功する。取引に(応じる。裏金が介在する)。取引の(再開を望む。橋渡しをする。条件が有利になる。透明さが求められる)。一方的な取引を迫る。無事に取引を終える。・取引をする(強引な。汚い)。かなりの高値で取引される。闇取引(腹芸の。工事入札をめぐる)。労使の問に闇取引がある。 **はなしあう【話し合う】** 話し合う(用意がある。余地がない)。話し合う(仕事の分担を。重要な案件を。虚心坦懐に。声高に。楽しげに。いろいろと。胸襟を開いて。じっくり。額を寄せて。別席を設けて。面と向かって。ゆっくり。口角泡を飛ばして。得心のゆくまで。皆が納得するまで。なぜ負けたのかを徹底的に横山。離婚について具体的に南条。互いの胸のうちをぶちまけて宮尾)。▶遡って話し合う(心を。腹を)。お互いの近況を話しあって楽しく過ごす三浦し。話し合い(事務的な。一対一の。実り多い)。話し合いが(一時間に及ぶ。上首尾に運ぶ。平行線のまま。一向に進展しない。物別れに終わる)。円満に話し合いがつく。話し合いで問題を解決する。話し合いによる解決へ持っていく=和久。話し合いの(場から退く。用意がある。余地がない。余地を残す。雰囲気にぴったりの場所=笹沢)。面倒くさい話し合いをしなければならない!隆。語り合う(熱い胸の裡?」を。将来の夢を。膝を突き合わせて。額を寄せ合ってひそひそと"光瀬)。座談会を記事にする。対談を企画する。対談企画でベージを埋める=奥田。▼対話する(自然と。市民と。書物と)。▼談じる(芸術を。流行を。歴史を)。放談をたくましくする。ミーティングを早めに打ち切る。食事をとりながら用談する。用談にかこつけて廊下へ呼び出す!舟橋。▼親談する(首相と。先生と。父母と。保護者と)。懇談会を開く。 **はなしのたね【話の種】** 話の種が(切れる。尽きる。見つからない)。話の種に(事欠かない。ちょっと見ておく)。寄るとさわると話の種になる。近郷まで話の種になったほど大変な祝い菅尾。組に怂の上の魚のように話の種にきざまれる=梅本。話の種を(仕入れる。無尽蔵に持っている)。話が種切れになる。昔を知る人の間での語り草。語り草になるほど華やかな恋"瀬戸内。▼語り草になる(あとあとまで、後々の)。 **みつだん【密談】** 密談に(格好な場所。時を移す)。密談を(凝らす。盗み聞く。耳にする)。密談する(人払いして。長時間にわたり)。密談を凝らす。 **もうしあわせる【申し合わせる】** 利益の分配について申し合わせる。申し合わせたように(かたまって起こる。三人とも顔を上げる=原田定)。船乗り同士口裏を合わせ落水事故として祭る=鈴木光。口裏を合わせて偽りを申し立てているような態度古井。▼示し合わせる(お互いに。兄弟で。仲間と)。示し合わせて学校を脱出する。 **もうしいれる【申し入れる】** ▼申し入れる(強硬な抗議を。借金を。正式に結婚を。面会を。土壇場になって取り止めを安部)。▼申し入れ(一方的な果たし合い状をつきつけるような小房。へりくだった哀願するような阿部)。申し入れを(受け入れる。受けて立つ)。 **もうしたてる【申し立てる】** ▼申し立てる(アリバイを。自己破産を。猛然と不服を。離婚の調停を。間髪を入れず異議を。裁判官の忌避を。病気である旨を。つむじ曲がりの意見を"井上靖)。▼申し立てをする(猛然と異談の。離婚の)。 <914> # 話す・喋る **アナウンサー** アナウンサー(テレビの。ラジオの。ニュース番組の)。アナウンサーの口調がたとえようもなく魅惑的に聞こえる=阿久。ラジオから流れてくるアナウンサーの声にじっと耳を傾ける=船戸。 **うちあける【打ち明ける】** ▼打ち明ける(愛を。ありのままを。意中を。詳しい事情を。恋を。事の次第を。自分の立場を。思慕の情を。真相を。密かな苦岡くもを。本心を。悩みを正直に。こっそり悩みを。死の問際にすべてを。出来ない所以灬えを。恋愛の悩みを教師に=貫井)。妾腹いっの子に生まれた苦しみをあますところなくうちあける=池波。怒りや悲しみを洗いざらい打ちあける=筒井。打ち明ける気になれない。心の底を打ち明けて語る。腹の中を打ち明けて言う。明かす(偽らない心を。意のあるところを。切ない胸の内を)。意中の秘密をさらけ出す。心を開いて語り合う。▼話す(腹を割って。心を打ち測って)。胸の内を洗いざらい告白する。思いの丈を洗いざらいしゃべる。夜を徹して思いの丈を語り合う。じっと人の目を見つめ切々と誕々るると思いの丈を訴える荻野。▼口外する(秘密を。軍資金のありかを)。胸襟を開いて(語り合う。話をする)。▼吐露する(憧れを。己の弱さを。苦しさを。心中を。赤心を。内心を。懐かしさを。本心を。胸の内を一息に)。▼披瀝ぇする(意中を。決意を。研究の一端を。宗教観を。誠意を。複雑な心情を。思いつきの意見を勇み立って=河野)。▼ぶちまける(洗いざらい。知っていること全部を。平生のむしゃくしゃをひと思いに=中。話を堰せきを切ったように倉橋)。 **エピソード** ▼エビソード(小話のような簡潔な川崎。天才ぶりを示す→内橋)。エビソードの一つひとつを克明に書きつづる=飯田。エピソードを(語って聞かせる。いくつも脈絡なく連ねる―池澤)。挿話が説得性に富む。逸事が多い。逸事に富む。幾つかの小話を枕にふる=長部。正真正銘の実話。実話をもとに(した小説、作られた映画)。▼挿話(人柄を伝える。ほほえましい)。美談として伝えられる。美談風に喧伝可从される。戦争の秘話。思いがけない秘話を語る。含答に富んだ逸話。逸話が広く流布する。突飛な逸話がいろいろ伝わる。興味深い逸話を披露する。 **おしゃべり【お喋り】** ▼お喋り(お婆さんの会合みたいにべちゃくちゃこそこそときりのない岸田。話題が脈絡のないままあちこちへ飛ぶとりとめのない"筒井)。男のくせにおしゃべり。女たちのおしゃべりが小鳥のさえずりのよう堀。雪崩のようなおしゃべりがようやく跡切れる=落合。おしゃべりに(夢中になる。ブレーキがかからない=辻真)・他愛ないおしゃべりに付き合う。さえずるようなおしゃべりに底抜けに明るい感じがある藤沢。おしゃべりの声に耳を浸す重松。しっかりとおしゃべりの能かじにしがみつく!安部。不意におしゃべりをやめる。何事もなかったかのようにお喋りを続ける=小池。おしゃべりする(さんさん。はしゃいで。ぺちゃくちゃと)。口から先に生まれたよう。舌に油を引く。口軽な(男、女房)。口怪にしゃべる。話好きなおばさん。話好きの気さくな男。少々聞き苦しいほどの饒舌乳藤沢。徳舌にしゃべりまくる。元気のいい饶舌に荒削りな野趣がある三好送。▼饒舌になる(けたたましいほど"三田。酔いに煽ぁぉられて高井。我が意を得たというように藤本)。二六時中喋り続けている饒舌家。多弁で鳴る男。いつになく多弁になる。芸もなく仕事の話に多弁を競って飲む酒高井。 **がいこくご【外国語】** 会話に各種の外国語が乱れ飛ぶ。外国語に日本語を当てる。アルファベットで書く。英語をアルファベットから習う。各国語に次々に翻訳される。原語で読む。語学の(達人。天才)。横文字が(苦手。氾濫以从する)。 **かいわ【会話】** ▼会話(冗談とも本気ともつかず気楽に取り交わされる大人たちの“石坂。尻上がりの小気味よい上州女たちの高田。眼のくらむような知的でスピード感のある=筒井)。会話が(上の空になる。滑らかに進む。一向に弾まない。途切れることなくいつまでも続く。政治的な色彩を帯びてくる"大岡)。がやがやと勝手な今話が弾む。冗談だった会話が際どくなる。和やか話が続く。何の不自然もなく会話が進行する。果てしのない会話が花が咲いたような販わいを呈する萩原葉。会話にウイットがこもる。二人の会話に割って入る。会話の主導権を握る。長々と会話のやりとりをする。子供たちの会話は宝石のようにキラリと光る言葉をもったいないほど何気なく撒き散らす干刈。会話らしい会話を交わさない。無意味なる話を取り交わす。ゆったりと会話を続ける。終わりのないキャッチボールのような会話を楽しむ!落合。▼会話を交わす(とりとめのない。ぽつりぽつりと)。会話する(筆談で。途切れることなく)。談話が円滑に進む。無着色と云っていいほどに平淡な談話!夏目。談話する(楽しく。にぎわしく)。 **かたりきかせる【語り聞かせる】** ▼語り聞かせる(戦争体験を。前歴を。物知り顔に)。▼語って聞かせる(いきさつを。人生の教訓を。話を面白おかしく)。話して聞かせる(一部始終を。事の順末打水を。騒ぎのもようを。過ぎ去った昔を)。 **かたりて【語り手】** ▼語り手(ドラマの。物語の)。話し手が次々替わる。弁士を(務める。引き受ける)。 **かたる【語る】** ▼語る(いわく因縁を。決意のほどを。事の顛末を。生前の様子を。折にふれて、熱意をこもって。理路を立てて。偽らざる心境を。幼い頃の記憶を。義太夫の一段を。越し方行く末を。自分の言葉で自分の生を。体験した出来事を。大事なポイントを。淡々と自分の生い立ちを。努めて平静に事情を。問わず語りに村のあらましを。心理的な怖さをつぶさに。羨望时认を包み隠さずに。途切れ途切れに。歌うような調子で。興奮の覚めぬ顔で。親しみをこめて。実際に声に出して。芝居じみた声で。しみじみとした口調で。心配そうな顔つきで。身ぶり手ぶりを交えながら。夢見がちな表情で。格別感情もこめずに"三田。一語ずつ言葉を選ぶように=日野。さも重大な秘密を打ち明けるかのように宮本邮。冗談のように笑って三浦綫。夢物語を吹聴ぃふもして熱っぽく人周)。眼せさを切ったように語りだす。 <915> # 話す・喋る **かたるにおちる【語るに落ちる】** 問うに落ちず語るに落ちる。ぼろりと白状する。ふとした折に隠していた本音がぼろりと出る=奥泉。 **きょうじゅつ【供述】** 信頼性の高い供述。供述が(二転三転する。説得力に満ちている)。供述に(ぶれがない。腑に落ちない点がある)。供述の(裏をとる。任意性が争われる)。曖昧な供述を繰り返す。淡々とした口調で供述する。 **くちばしる【口走る】** ▼口走る(あらぬことを。過激な言辞を。呪詛礼。の言葉を。余計なことを。不用意に。発作的に。無意識に。言っても詮ないことを。心にもないことを。とんでもない台詞謎』を。熱っぽい憧憬を。わけの分からないことを)。 **くちぶり【口振り】** ▼口ぶり(自信に満ちた。余裕綽々しくの。半ば感心したような。含みがありげな=松本。重荷をおろしたような打ち解けた谷崎。弟をさとすような西木)。子供をなだめるような口振り山手。教えさとすような口ぶりで説明する。滑らかな口ぶりで話す。他人事ごとみたいな口ぶりで言う。口ぶりに優しさがこもる。口振りに棘とげが埋まっている=黒井。口吻(懐疑的な。自信ありげな。内心性怩にくたる。非難するような)。 **こくはく【告白】** ▼告白(偽らざる。初心っぶ恋の。衝撃の。赤裸々な私生活の。愛情をせがむ孤児のような田辺)。▼告白する(愛を。真率な口調で。恥を忍んで。熱い胸のたけを。恥ずかしいブライバシーを。最後の最後になって。罪を洗いざらい。みずから進んで。月の光のようにくまなく過去のことを!白洲)。 **ことば【言葉】** ▼言葉(馴染なじみのない。品のいい。悪意を感じさせる。一般的にはあまり使われない。真実味にあふれた。半ば軽蔑を込めた。情け容赦のない。万感の思いがこめられた。甘い蜜のような"田山。甘ったるいおもちゃみたいな小川。嘘いつわりのない真実の=森焉。硝子玉桜シュのような冷たさを感じさせる=田辺。聞いていて耳が落ちるくらい甘い=開高。へえそうだったのかという軽い舌打ち気味の藤本。胸にひびくような=石川)。氷のように冷ややかなことば―森風。言葉が(明瞭に聞き取れる。秋の野分のように心を吹いて過ぎる=柴田翔。火薬のように炸裂にくする=椎名観。楔沢だのようにしっかりと打ちこまれる=連城。心の片隅に魚の小骨のように残る=松本。子守歌のように耳に響く=連城。耳朶しだのうちに彫り付けられたように残っている菊池。苦いベンの先から走り出る=黒井。針のごとき鋭さをもって急所を貫く村松。耳に粘りついたまま容易に消えようとしない黒井)。過激な言葉が文面に躍る。適当な言葉が見つからない。反抗的な言葉が口から飛び出る。止めの言葉が胸にずっしりと応える=森忌。激しい言葉が答打ちつように投げつけられる"有吉。言葉が相手に(通じない。伝わる)。言葉が心に(しみる。深く刻まれる)。言葉が胸に(落ちる。手裏剣のように飛んでくる三浦哲)。言葉だけで実体が伴わない。くだけた言葉で言う。野卑な言葉でからかう。意味ありげな言葉ではぐらかされる=石川。言葉に(絞ぁゃをつける。勢いがある。気をつける。言霊だもが宿る。責任を持つ。実感がこもっている。皮肉が込められる)。言葉の(接ぎ穂を探す。魔術にかかる。意味を取り違える。癒しちがビシリと打つ=高見取)。美しい言葉の流れが光のように降ってくる=伊藤整。けばけばしい言葉の衣裳池澤。他愛のない言葉のキャッチボールが続く落合。毒と棘とげに満ちた言葉の投げ合い落合。脳がつむぎだす言葉の織物倉橋。春の雪解け水のように流れて行く言葉の流れ"小島。言葉の端々に(力を込めて言う。窺らかわれる気負い=高井)。言葉を切れ味のよい刃物のように使う。円地。愛の言葉を書き連ねる。お悔やみの言葉を言う。固唾かたを呑んで次の言葉を待つ=獅子。悩みつくような言葉を吐く=新田。口の先まで出かかっている言葉をそのまま凍らせる"堀。毒の針をふくんだような言葉を浴びせる=坂口。▼言葉を嫌う(こけおどしの。生煮えの)。言葉を進る(高飛車に。ぴしりと叩くように相手の=山本悶)。言葉が刺さる。神経に鋭く刺さる針を含んだ言葉!小林久、言葉が(鋭い針のように胸に痛く突き刺す遠藤。つららのように胸に突き刺さる=長崎。トゲのように深々と心に刺さる荻野)。暗い天井に錐ょぅのようにつき刺さる言葉をなげる=水上。 **ことばづかい【言葉遣い】** ▼言葉づかい(まだるっこいほど丁寧な"椎名誠。まるきり喧嘩腰ぶいかかと思われるくらいぶっきらぼうな=井伏。初めて会う人間に話すかのように改まった=野間)。言葉づかいに(気をつける。顺着しない。ぞんざいな人間)。しみじみした口跡。口跡がよく通る。語法を使い分ける。 **ことばつき【言葉付き】** ▼言葉つき(歯切れのいい。抑揚に乏しい。頼もしげな重い。文章を読んでいるようなぶっきらぼうな=勝目。感情を抑えようとする努力の現れた野間。真綿で針を包んだ=村上元)。言葉つきが(乱暴になる。険悪な響きを持つ)。 <916> # は **こわいろ【声色】** 甘えるような声色でにじり寄る=阿川佐。興味なさそうにあさっての方を向いてその実声色は探りを入れるような調子で訊く=原田家。声色を使い分ける。がらりと声色を変える。役者の声色をまねる。作り声で(甘える。話す)。物音を人間の声で模写する。・・・ **こわね【声音】** ▼声音(風下にいなかったらすぐそばでも聴こえないほど沈んだ塩野。聞いていると思わず微笑が浮かぶほど可愛らしい=福永。心の高ぶりと焦りを抑えきれない乱れた=光瀬)。声音が力強い響きを持つ。声音から心理の動きを悟る。谷とがめるような声音で尋ねる=福水。声音に(憂いがみなぎる。押しつけがましさが含まれる。好奇心がにじみ出る)。 **ざつだん【雑談】** 雑談に打ち興じる。雑談の輪に加わる。雑談をとりとめもなく続ける。かしましく雑談を始める。井戸端会議に(花が咲く。うつつをぬかす)。▶歓談する(車中で。友人と。夜遅くまで)。終日閑談する。心置きなく閑談にふける。閑談をして時を過ごす。四方山もの(噂話。話がはずむ)。四方山話にふける。あれこれの四方山話をする。他愛もない世間話で時間をつぶす。世間話に興じる。ひとしきり世間話に花を咲かせる。ほとんど世間話の域を出ない会話。一つ二つ世間話をする。 **ざんげ【懺悔】** 坩堝っの中の白金のように溶けがたいせつない懺悔がのこる=中。懺悔の(生活を送る。火に心をただらせる菊池)。涙ながらに心からの懺悔をする=中。▼懺悔する(悪業を。罪を。背徳を。神に。罪ほろぼしに。心の重荷を告白し)。死刑囚の懺悔のような全百鳥田。 **したたらず【舌足らず】** 舌足らずな(しゃべり方。"加賀)。説明。表現。口で話しかける)。不十分な表現。舌が(もつれる。うまく回らない)。 **しゃがれごえ【嗄れ声】** ▼しゃがれ声(痰たんのからんだ。蚊の鳴くような多岐川)。嗄れ声を天に打ち上げるように笑う。高樹。唐辛子を紙もめすぎたときのような嗄れ声を張り上げる=井上ひ。低いしゃがれ声(抑揚のない。竹林をわたる風のような耳を傾けずにはおれないような=飯田)。いがらっぽい大声で話しかける。がさついた声で叫ぶ。必死に声をからして制止する。▼嗄れた声(赤頭巾の狼の声のような萩原葉。夜鳥の鳴くような弁芥川)。▼しわがれた声(気味の悪い。やや甲高く。男のように太く藤沢)。喉に貼りついた声を引き剥がすように呟く黒井。喉に物が詰まったような声若竹。浪曲語りのように声がつぶれている=井伏。塩辛声(酒と煙草で潰れた篠田。潮でさびきった老船頭の幅の広い=有局。「肺腑をえぐるような=隆)。ハスキーな(色っぽい声。声で囁く。声で男のような喋り方をする女鎌田)。乾いたハスキーな声。臨終問際の浪曲師のような掠れ声永倉。かすれ声を(出す。漏らす)。かすれた声で笑う。かすれたような低い声。低くかすれたような細い声。かすれて張りのない声。かすれる(声が興奮に。ひゅうひゅう声が。声が無気味なほど=北)。 **しゃがれる【嗄れる】** 声が喉にひっついたようにしゃがれる外村。声が老人のように嗄れる=横山。愛れる(のどが。歌いすぎて声が)。声が嗄れるほど叫び続ける。声(蛙跡ぇがつぶれたような池田。声変わりの最中の紙の破けるような獅子。痰たんの絡んだようなざらざらの谷村。咽喉のとを使いつぶした旅芸人のようにつぶれた円地)。しゃべりすぎて声ががらがらになる。のどがからからに乾いたような声を出す高橋涼。低く太い錆び声。しわがれた低い声。声が瞬時に潤いをなくしたように嗄れる=貫井。 **しゃべりだす【喋り出す】** しゃべりだす(だしぬけに。すごい勢いで)。押さえられていた言葉が我れがちに群がり出たようにしゃべり出す伊藤整。しゃべりだしたらとめどがない。話し出す(いきなり。目を輝かせて)。話し出すと止まらない。話の口火を切る。話し始める(マイクを手に。沈黙を破って。ゆっくりと。ためらいがちに)。ぽつりぽつりと(話し始める。事情をしゃべりはじめる。身の上話を語り始める)。▼口を切る(最初に。一同の顔を見まわして。ためらいながら。とうとうたまりかねて。心に浮かんだ考えを追うように=本庄)。▼口を開く(おもむろに。おずおずと。思い切って。重々しく。ややあって。ようやく。ためらいがちに。沈黙の均衡を破って驚沢)。 **しゃべりつづける【喋り続ける】** ▼喋り続ける(明るく鮮やかな色を部屋中にぶちまけるように驚沢。意味のないことをくどくどと筒井)。▼喋りつづける(何かしゃべっていないと怖いみたいに次から次と"長崎。淀みのない調子で=石坂)。しゃべり続ける(息もつかずに。延々と。切れ目なく。長々と。果てしなく。ひっきりなしに。黙っていることが不安だとでもいうように=城山)。あとからあとからと言葉を次ぎ足してしゃべりつづける=佐藤巻。▼言い続ける(筧吵けの口から流れる水のように=村上元。呪文のように耳元で八谷川)。狐につかれたようにとめどもなくおしゃべりがはじまる太宰。言葉が口から間断なく滑り出る宮本輝。▼喋る(あひるのように問断なく=高樹。波のように切れ目なく“小川)。ぺちゃくちゃひっきりなしにしゃべる。しゃべってしゃべってしゃべりぬく。話し続ける(勢いづいて。くどくど。夢中で。恋っかれたように落合)。のべつ幕なしに話をする。 **しゃべりまくる【喋りまくる】** ▼喋りまくる(相手を圧倒する勢いで三田。陽気でたえず溢れるように"加賀)。▼しゃべりまくる(興奮気味に。いい気持ちで。脈絡のないことを。ひとしきり賑やかに。堰せきを切ったように)。▼泡を飛ばしてしゃべる(口から。口角)。▼一気にしゃべる(早口で。溜まっていた欲求不満をぶちまけるように内田晓。恐っかれたように=北村)。▼喋る(ディスクジョッキーみたいに早口に滑らかに=村上龍。暗誦场外ししたようにベラベラ"獅子。書いたものでも読むような一本調子で長ながと=高井。機関銃を撃ち合うように森項。軽薄と思えるほどによく=富岡。火がついたように平岩)。しゃべる(油紙に火がついたように際限もなく八谷崎。小鳥がさえずるようにはばかりなく“石坂。ついその気になってペラペラ=大原)。▶喋り立てる(口に油を塗って効能を=井上ひ。腹にたまっていたことを大声に"本庄)。しゃべり立てる(勝手なことを。調子に乗って。とりとめなく。たいそうな元気で)。▼しゃべり散らす(のろけ交じりに。馴れ馴れしい言葉で)。勝ち気にまかせて言いたい放題を言う。平岩。言いまくる(悪口を。一方的に。あることないこと)。 <917> # 話す・喋る **しゃべる【喋る】** ▼喋る(一日に何回もテープレコーダーのように同じことを"富岡。言葉を選びながら慎重に=小川。荒っぽい言葉遣いで感情をむきだしにして三田。嘘から真実へと階段を一段ずつ上りつめるようにゆっくりと連城。可愛い声でキャピキャビ葵。黄金の卵でも生んだみたいに喜んで=円地)。しゃべる(熱をこめて。抑揚をつけて。酔いも手伝って陽気に。あたりかまわず大声で。大仰な身ぶりで。声高にわめくように。舌をそよがせて。馴れ馴れしい声で。にこやかに朗々と。ぽつりぽつりとゆっくり。丸い目をくるくるさせて。やけに騒々しく。ユーモアを交えながら。よそよそしい口調で。留守の間のことをこまごまと。堰せきを切ったように胸の内にあるものを"あさの。噛んで含めるようにゆっくりと村上春。喧嘩妙んのような調子で島尾。自分でも驚くほど浮き浮きと=日野。吐き出すような語尾に力を入れて一つ一つ区切るようにはっきりと=野間)。二人の少女が一本の蝙蝠傘に今もに雨を忘れて頬を合わせんばかりにいそがしくしゃべり合う川端。成果を喋々詰りする。人生や芸術の問題を喋々と論じる。通を喋々と振りかざす。喋々喃々悩んと話を交わす。 **せりふ【台詞】** 胸のすくような台詞。科白(開き方次第では敗北宣言ともとれる=松浦。卑劣な脅迫用の=筒井。べたべたした餅みたいな今水)。台詞が(澱ょどみなく出る。芝居がかっている。はっきり聞き取れる)。ぐっと詰まってセリフが出てこない戸板。お決まりの台詞が喉まで出かかる。聞いた台詞がよみがえる。自分でも思いがけない台詞が飛び出す。ユーモラスな台詞がちりばめられる。尖とがった台詞が心に刺さる海堂。臭いセリフをくどくど繰り返す田中。一歩間違えばヘタなテキ屋の口上のような科白を吐く人間。台詞を覚えるのに四苦八苦する。言うべき台詞を取られてしまう。同じ台詞を繰り返す。型通りの台詞をしゃべる。気の利いた台詞を思いつく。・決めの台詞を言う。挑発的な台詞を投げかける。 『ふざけた台詞を並べる。偏見に満ちた台詞を並べ立てる。▶台詞を口にする(用意していた。おもむろに次の)。▼台詞を吐く(意味ありげな。気障とさな。強気な。やけっぱちな。毒のある。古臭い。みっともない)。名調子を台詞にする。下手へたな芝居の台詞のような口のきき方“大佛。芝居の台詞のように呟いやぶく小川。▶台詞回し(大時代な。コミカルな)。 **たんご【単語】** ▼単語(下品な。難解な。聞き慣れない。耳慣れない)。文脈から単語の意味を知る。ボキャブラリー(英語の。日本語の)。ボキャブラリーが(多い。少ない。貧困。豊富)。語彙ごぃが(貧弱。豊か)。 **だんしょう【談笑】** 明るい談笑が聞こえる。しばらく談笑が続く。談笑の名残を顔一杯にとどめる=野間。賑やかな談笑の声。▼談笑する(楽しそうに。和やかに)。 **とわずがたり【問わず語り】** 問わず語りに(打ち明ける。名を名乗る。本音を漏らす。身の上を語りだす。父親との楽しかった日々を話す藤本。余計なことまで洩もらす〃小林久)。問わず語りに自分の(夢を話す。生い立ちの貧しさを語る=三島)。 **ながばなし【長話】** ▼長話(らちもない。とりとめもない)。長話にふさわしいお膳立てがだんだんに調ってくる=高井。電話の長話を切り上げる。長広舌を振るう。下手の長談義。 **にほんご【日本語】** とかく情緒に流されがちの日本語=中村貞。日本語が(上手。うまく話せない)。日本語を(教える。たどたどしく話す)。怪しげな日本語をしゃべる。日本語訳をつける。標準語を身につける。 **はぎれよい【歯切れよい】** 歯切れのいい答弁。早口で歯切れのいい話し方。平生と変わりなく明るく歯切れのよい声=原田康。歯切れよく(整然と話を進める。挨拶をして笑いかける。佐藤愛)。啖呵炊んを切って追い返す。景気のいい啖呵を切る。気隊きだな啖呵を切ったことを後悔する=山本周。気の勝った男のようにハキハキ物を云ぃう人菊池。はきはきした(明るい声。口調で答える)。小気味がいいほど言葉がはきはきしている!白洲。並びない澄みとおった声ではきはきと順序よく話す中。 **はくじょう【白状】** ついに白状に及ぶ。▼白状する(正直に。あっさり。すらすらと。何もかも。きれいさっぱり)。今のうちに全部白状しておく。割る(口を。尻を)。自供する(犯行を。人殺しを。余罪を)。犯人を自供に追い込む。自白に疑いが生じる。一ら自白に転じる。公判途中で自白を翻す。▼自白する(認識不足を。犯行を。無知を。あっけないほど簡単に)。割へ簡単に泥を吐く。尋常一様の尋問で泥を吐くはずがない=柴田兔。 **はくじょうさせる【白状させる】** たとえどのような手段に訴えてでも白状させずにはおかない藤沢。白状を強いる。自白を(強要する。強いる。迫る)。口を割らせる。早くげろしてしまえ。▼吐かせる(居場所を。泥を)。 <918> # は 手段に訴えてでも白状させずにはおかない藤沢。白状を強いる。自白を(強要する。強いる。迫る)。口を割らせる。早くげろしてしまえ。▼吐かせる(居場所を。泥を)。 **はつおん【発音】** 発音が不明瞭で聞き取れない。つづりが発音に照応する。▼発音する(なめらかに。正しく。歌なまって。はっきり。一音一音慎重に。一語一語ゆっくりと。その言葉を特別大切なもののようにゆつくりに小川。ハクブツカンという言葉をもの珍しいフランス料理のメニューのようにたどたどしく=小川。一言一言を考えてから押しだすように『辻井)。母音を(重ねる。響かせる)。巻き舌で(話す。まくしたてる)。 **はっせい【発声】** 発声が(よくなる。悪い)。発育者の音頭で陀杯する。正式な発声法を習う。滑舌が(よい。悪い)。 **はなし 【話】** ▼話(聞くに堪えないみだらない永井荷。とりとめもない夢のような=後藤)。話が(佳境に入る。核心に入る。とんとん運ぶ。白紙に戻る。一区切りつく。腑に落ちない。横道にそれる。理に落ちる。うまくできすぎている。思わぬ方向に転じる。終わるまで黙って聞く。さっぱり分からない。尻切れとんぼになる。段々面白くなる。なかなか終わりそうにない。山場にさしかかる。吸い取り紙に吸われるように皆の心に入りこむ"小林多。右の耳から左の耳へと通り抜ける=鷺沢)。あちこちに話が飛ぶ。思いがけず話が合う。思うように話が進まない。折り入って話がある。きれいに話がつく。事ことに話が合わない。それとこれとは話が別。ひとしきり話がはずむ。二人の話が食い違う。話が続く(果てしもなく。それからそれへと)。話でしか聞いたことがない。あまりに重い話に打ちのめされる。うっとりと話に聞き入る。うまい話に食い付く。思いがけない話に返事もできない。かねがね話に開いている。積もる話に花を咲かせる。時のたつのを知らずに話に耽ふける=徳田。寛大な話のわかる父親。どうも話の様子が違う。話の続きをせがむ。ろくすっぽ話もできない。話を(したくてうずうずしている。手っ取り早く済ませる)。時の移るのを 知らず話を交わす=海音寺。あっさりと話を打ち切る。景気のいい話をぶち上げる。高飛車に話を中断させる。滅多に話をしない。女たちの話を音楽のように聞く=高橋湖。風の向きが急に変わったようにふっつりと話をやめる小島。枯れた井戸に石でも放り込むように実に様々な話を語る=村上春。話を進める(具体的に。遠まわしに)。とんとん拍子に話が(決まる。進む)。話半分くらいに聞いてちょうどいい貫井。話半分としてもたいしたもの。 **はなしおえる【話し終える】** ▼話し終える(全部を。静かに)。一通り話し終わる。話し終わって安心したような笑いの浮かび出た顔「野問。話に幕を引く。結ぶ(言葉を。話を)。 **はなしかける【話しかける】** ▼話しかける(気軽に。気さくに。親しげに。にこやかに。誰彼かまわず。猫なで声で。揉。み手をして。相手の見境もなく。哀れつぼい言葉で。臆することなく。頃合いを計って。はしゃいだ口ぶりで。ささやくように梅本。微妙な心理をほぐすようにさばさばと佐多。やさしく慰めるように常盤)。▼声で話しかける(大きな。優しい)。語りかける(心をこめて。穏やかな口調で。人懐こい笑顔で)。 **はなしかた【話し方】** 「話し方(はたで聞いていてもほれぼれするほど見事な戸板。甘えたようなすねたような水倉。口の中で妙にべちゃりと唾液がねばついているような椎名誠)。話し方がなんとなくユーモラスで春風胎湯にふとした感じ渡辺。話し方に(幼さの気色を窺いつつ語尾を呑み込むような話し方を身につける高井。たどたどしいほどゆっくりした話しぶり辻井。声を張らない話術を多年の間に身につけたといったひっそりとした話し振りに水井心。話しぶりがさっぱりしている。話しぶりに人柄が出る。要領の悪い話しぶりにいらだつ。口癖のように言う。死にたいと口癖のように呟く遠藤。口前がうまい。どんな人間嫌いをも包みこむような温かみが溢れている語り口=継淵。爽やかな語り口に魅了される。語り口のうまさが聞く人を捉えて放さない=綱淵。柔らか な語り口の文章。▼喋心『り方(殺菌されたように清潔な=松浦。一音一音が粘っこく繋ったがるような独特の松浦。舌の刺とげを唾で嘗めて研ぐような=連城。単語が脈絡なく並べられていくような藤本)。しゃべり方に(角がある。棘とげがある)。甘えた声ですがりつくような喋り方をする女鎌田。▼しゃべり方(傷口をぐりぐりとメスでこじあけてしまうような小林久。問の抜けたような干刈)。 **はなしごえ【話し声】** ▼話し声(観客が多ければそのざわめきに埋もれてしまうようなひそやかな=西木。ボソボソと低く響く人間。耳にひびいてくる雲雀0ぃのような三浦朱)。話し声が(はたとやむ。に響く。耳の奥に残る)。人声が(かすかに漏れる。にぎやかになる)。寂然として人声を聞かない。 **はなす【話す】** 話す(気力が失せる。順序を考える。気などさらさらない)。話す(政治の裏話を。淡々と経過を。手短に要点を。尾跡はぃをつけて。経過をざっと。筋道を立てて。質問されるままに経紙を。知る限りのことを。思いつくままに。連想の赴くままに。一連の出来事をかいつまんで。くどいほど何遍も繰り返して。現場の模様を誇張して。言楽を慎重に選んで。さも呆ぁもれだという口調で。知ったかぶりをして <919> # は **はなせない【話せない】** ▼話せない(いっぺんには。片言しか)。何一つ語ることができない。口が不自由。口にする勇気がない。満足に口もまわらない。世の中のあらゆる不幸に見舞われたように舌が硬ばり口をきくことができない岸田。言葉が急に固い木片にでもなったかのように咽喉のとにつっかかる=黒井。言葉にならない。しゃべる気が起こらない。舌が痺しびれてしゃべることができない。舌がこわばって気軽に話しかけられない=島尾。にわかに余分の舌が口中に生えてきたようで思うままに言葉を発することができない倉橋。娘に話せる筋合いの物ではない。呂律もが回らない。うかつにしゃべるわけに行かない。涙なしには語れない。うかつには切り出せない。しばらく声を失う。▼言葉がない(後を継ぐ。言うべき。語るべき。慰める。一言も。茫然として)。啞然として言葉もない。一言も口を(挟めない。利ぐことができない)。▼口が利けない(うかつに。あきれて。恐ろしくて。思うように。一言も。苛立心。ちと償感転んとで。声がのどにつまって。度胆を抜かれて。面食らってしばし藤田)。不意に舌を奪われたように口がきけなくなる"隆。怯ぉびえて口も利けなくなる。口も利けない(ろくに。驚きのあまり。思うように。呆然としたきり)。口を利く気力がなくなる。さすがに口に出せない。はっきりと口に出さない。口に出すのがためらわれる。口にするのが憚畑ばられる。▼口にできない(うかつに。驚いて何も。怖くて)。ぶすっとして口が重い。▼口を利かない(一言半句も。金輪際。しばらく。誰とも。誰一人として。二度と。一言も)。話さない(ろくに。誰にも)。いざとなると口が重くなる。ろくに口も利かない。▼語らない(多くを。一言も)。何か言いかけて口をつぐむ。▼しゃべらない(口が裂けても。何も。一言も。ほとんど)。口もろくに利けないありさま。 **はなせる【話せる】** ▼話せる(スムーズに。遂者に。すらすら)。話せる人。やがて笑って話せる日が来るのだろうさだ。▼口にできる(すんなりと。比較的すらすらと)。▼しゃべれる(日本語が。隔てなく何でも)。 **はやしたてる【囃し立てる】** 「はやし立てる(二人の仲を。口々に。手を打って。わいわい。待っていたとばかりに。足拍子にあわせて。やいのやいのと。子供たちが声を揃えて=新田)。 **べんぜつ【弁舌】** 弁舌(さわやかに説法をする。巧みに丸めこむ)。弁舌が(驚くほど達者。立つ)。すらすらと弁舌が動く。弁舌では当代一流の巧者。弁舌に優れる。た理論家。死力を尽くして弁舌を扱う“村上元。口舌が滑らかになる。口舌を尽くす。舌端(鋭く追及する。火を吐く大論戦)。舌端の切れる人。円滑自在な舌鋒吧。舌鋒鋭く(追及する。非難する。論難する)。 **ほうげん【方言】** 方言が消滅する。方言の分布を調べる。方言を(色濃く残す。しゃべる。話す)。お国言葉で気炎をあげる。お国言葉を丸出しにする。ひょこっと土地言葉が飛び出す。訛たまりが(強い。出る。取れる。なかなか抜けない。ひどくて聞き取れない)。多少の訛りがある。懐かしい故郷の訛りに耳を打たれる"佐藤春。訛る(言葉が。エをイと。質屋をヒチャと)。 **まくしたてる【まくし立てる】** ▼まくしたてる(すごい剣幕で。滔々といと。猛烈な勢いで。息をつく間もない早口で=加賀。押しかぶせるように遠藤。ボンボンと豆を弾くように『和久)。熱にうかされた人のようにまくし立てる=高見则。 **みのうえばなし【身の上話】** 身の上話に親しむ。感情的な身の上話に落ちて行く。互いの身の上話に話が及ぶ。身の上話をして聞かせる。退屈まぎれに身の上話をする。根掘り葉掘り身の上話を聞きたがる。力ない笑い声で長い身の上話を結ぶ=江戸川。ざっくばらんな打ち明け話。打ち明け話を(聞く。せがむ)。ぼつぽつと打ち明け話をする。とっておきの打ち明け話をするように芝居じみた声で語る=加賀。 **むだぐち【無駄口】** 無駄口が(多い。少ない)。無駄口むだぐちを交わす。利く。叩く。叩かないところが小而憎い)。無駄話に(時を過ごす。花を咲かせる)。無駄話をやめる。とやかく贅言忙心する。贅言を弄する。駄弁を(振るう。弄する)。 **むつごと【陸言】** 野良猫どもの睦言がやかましい。岡房酔いの睦言のような声人今日。男女の痴話が聞こえる。 <920> # 張る・緩む **あみのめ【網の目】** 制度の網の目が完成する。文章の網の目が粗い=高橋英。網の目から漏れる。人生の網の目の上を巧妙に歩く=中村貞。調査の網の目を逃れる。網の目のような感情のからみあい石川。枝々を洩もれる午後の日光が道に網目に影を落とす石川。道路が網目のようにひろがる安部。大小様々な企業の緊密なネットワーク荒巻。人脈のネットワークが横断的になる荒巻。 **かしこまる【畏まる】** 「かしこまる(正座して。借りてきた猫みたいに“木山。窮屈そうに膝を揃えて=村上元。神妙に頭を垂れて=室生。すべての責任が自分にあるかのように=新田)。いつになくかしこまって応える。改まった口調で切り出す。改まってお礼を言う。鞠躬如沿いに。として(進む。道を譲る。不動で直立している)。臨終の床に立ち合うような敬虔州心な表情安部。粛然と(頭を下げる。そびえている山の姿)。粛として襟を正す。 **かたほお【片頬】** にやりと片頬で笑う。片頬に(えくほを作る。苦笑をためる。意味ありげな笑いを浮かべる=陳。勝ち誇った笑みを浮かべる"有川。氷りついた笑みを浮かべる=佐藤春)。にっと片頬に笑みをたたえる。片頬を歪ゅがめて笑う。 **かんまん【緩慢】** のろのろと仕事ぶりが緩慢。緩慢でぎくしゃくした動作。澱ょとみに広がる水の輪のように緩慢で怠惰な時間が過ぎる=長野。緩慢な(死への道程。進退を繰り返す)。腰に鉛の重しでも巻きつけているかのような緩慢な動作!佐々木。緩慢に体を蝕むしむ。時間が緩慢に流れる。上体がゆらりゆらりと緩慢に動く。膝を緩慢に動かす。▼緩慢になる(うねりが。動作が。揺れが。動きが次第に)。 **きんちょう【緊張】** 緊張(自信に支えられた鋼のような=光瀬。四六時中張りきっていた弦のような極度の"高村光。全身いささかの隙もない遅くしい=中島中島激。胸の苦しくなるような「北村)。緊張が(一気に高まる。極限まで高まる。最高潮に達する。稲妻のように全身を貫く=飯田。森の樹々のようにびっしりたちこめる=大江)。宇宙がこの部屋ひとつになったような緊張が部屋いっぱいはりつめる=坂口。全身を電光のような緊張が貫く=池井戸。胸の奥にかすかな吸張が生まれる=夏樹。▼緊張が走る(全身に。部屋に)。緊張で(胃が痛くなる。心が高ぶる。手足が強張る。身を固くする。顔色が青白く変わる。胃袋がどうにかなる"阿部)。肩が緊張でわななく。極度の緊張で気が立っている。毎日の緊張で神経が張りつめる。眉が緊張でびくびくと震える。危険を伴うスポーツを愉のしんでいるような感張と期待原田康。緊張に(頬がひきつる。顔をこわばらせる。締め上げられて全身の筋肉が古革のようにこわばる女部)。狂いそうなほどの緊張にとらわれる=杉本。緊張の(極に達する。ために声を出すこともできない三田)。びんと張りつめた緊張の毎日。眼に恐怖に近いような吹張の色が浮かぶ柴田用。緊張のあまり(口が乾く。腹の具合がおかしくなる=火坂。飯が喉を通らない古井)。緊張の糸がぶつりと切れる村松。いつにない緊張を強いられる。来客の気配がぞっと全身にわたる寒気のような緊張を与える=伊原整。ちょうとつつけば爆発しかねないほど緊張を昂たかめている=松浦。遠くへ消えていくかすかな表情を記憶の中からたえずつかみなおそうとするような感張を強いる=古井。緊張する(全身の筋肉が。神経が異常に。飛び上がらんばかりに体が"山本昌、叩けばキンコン音がしそうなほどに"阿久。一言一句を聞き漏らすまいと藤本。こめかみが石化したように感じられるほど三浦し。小便を漏らしそうなくらいなかにし。敵地に乗りこんで来たように"石川。指先がこわばるほど=原田宗)。地雷が埋めてある草原に立ったように全身を緊張させる"小池。緊張した面持ちで待つ。緊張して(頭の中が真っ白になる。唇をしっかり結ぶ)。体が緊張して汗ばむ。声が緊張しで上ずっている=柳田。こちんこちんに緊張して表情が固くなる"石森。息を殺して次に何が起こるかを待つ船戸。全身これエチケットの塊といった風で固く構える石坂。気が張る。広間の空気が一瞬にして張りついたまま動かなくなる=塩野。鼓動が急に速くなる。こめかみに脈打っている自分の血管の音を開く“五木。心拍数が上がる。手が汗でねっとりする=阿佐田。手に汗がにじむ。こくっと生唾を呑む。咽喉のとがからからになって何か言おうとしても声が出なくなったような心持ち『永井荷。咽喉に詰まった鉛の棒でも吐き出すように顔全体をこわばらせて言う武田炎。神経がぴりぴりする。部屋の空気に電流が走る=荻野。腋ゃきの下から汗がだらだら流れる=国木田。わずかな響きにも耳をそば立てる"志賀。息詰まるような(沈黙。展開)。しゃちこばった(お辞儀。顔つき。心)。おかしいほどしゃちこばる。心の緊張が緩む。息苦しい緊張が吹き飛ぶ。少し緊張がほぐれる。全身の緊張が抜けてゆくのを感じる。ようやく初対面の緊張がとける=森恥。緊張が(安堵んに変わる。わずかに緩む。いくらか和らぐ。解けてへたへたと畳の上に倒れるように坐すゃり込む。今日)。緊張の(後に来る放心状態。面持ちがふと緩む。なくなった体が骨のない軟体動物のよう“日野)。心に張り巡らされた緊張の糸が緩む"高橋克。緊張した神経を緩める。心の緊張が解ける。緊張から解放される。 **きんちょうかん【緊張感】** 緊張感(足許しに刃物するなわとびに入るときのように"大原。教授の一が隠されているような=中沢。空気が凝縮するような=原田康)。緊張感が(全身を駆ける。漂う。体じゅうに広がる。廷内にみなぎる。なくなって気が抜ける)。快い緊張感が包む。表情に緊張感が浮かぶ。予期しない緊張感が襲ってくる。期待と緊張感が低い唸りのようなざわめきとなって会場全体をおしつつむ=三田。張りつめていた緊張感が微笑と共に消える=新田。不安と緊張感がじとっとおし寄せてくる=飯田。腹部に弓を張ったような緊張感がある萩原業。緊張感で(顔を歪ゅがめる。背筋がひきつる)。体が緊張感で破裂しそう城山。緊張感に全身を縛りつけられる。ソゾクゾクするような緊張感にひたる大原。束の間の緊張感に生きがいを感じる=椎名滅。緊張感をせめて鋼鉄からニューム管ぐらいに柔らかくする=阿久。不意に緊張感を覚える。汗ばむような緊張感をもたらす藤沢。一瞬たりとも気が抜けない緊張感を長時間続けていくことは不可能鎌田。 <921> # 張る・緩む **きんちょうぎみ【緊張気味】** 緊張気味に(頭を下げる。うなずく)。恐ろしい芝居の幕開きを待つように緊張きみ笹沢。 **ぐんしゅく【軍縮】** 軍縮を首唱する。軍側を(縮小する。撤廃する)。武力の行使を放棄する。核軍縮が進展する。核軍縮に消極的な態度を取る。軍縮交渉に臨む。核廃絶へ前進する。核廃絶を訴える。軍拡を阻む。軍事費を(削る。削減する)。非核化に努力する。非核化を(実現する。進める)。非核三原則を堅持する。 **しまる【締まる】** ローブがぎりぎりと締まる。身の締まる恐張を覚える。きりっと締まった(男ぶり。口元)。肉の締まった体つき。▼締まっている(体がよく。足首がきゅっと)。胸の奥にきゅっと締まるような感じが残る=加賀。今日は何かと締まらない一日らしかった有川。 **しめつける【締め付ける】** 身を切るような孤独感が胸を締めつける横山。渇きにも似た切なさが心を締め付ける篠田。二サイズばかり小さな帽子をかぶつたように何かが頭のまわりをしめつける嫌な気分村上春。胸がきゅんと切ない思いに締めつけられる。胸が締めつけられて(涙がこぼれる。息もできないほと)。胸が締めつけられる(愛しさで。懐かしさで)。▼胸を締めつけられる(悲壮な感慨に。不安に)。両腕にににんぬきをかける。万力に挟む。万力を締める。 **しめる【絞める】** ▼絞める(のどを。首をぐいぐい)。自分で自分の首を絞めるよう清水義。臓腑ぶぅがじわりと締め上げられる。血管が締めあげられるような不安小林久。締め合わせる(腿ももを。両膝を)。羽交はがい締めにする(体を後ろから。絶望的なものが心を井上靖)。 **ストレス** ストレスが(多い。少ない。溜まる)。精神的ストレスに拍車がかかる。抑圧されたストレスの発露。ストレスを(解消する。他者に向ける。発散する)。強いストレスを感じる。 **たが【縦】** たがが(外れてばらばらになる。ゆるみっぱなし)。体のたがが一本はずれて狂う。中上。心のタガがことりと外れる荻野。いうことやること箍が外れちまった爺さん=北村。桶ぉぃにたがをかける。 **たるむ【弛む】** ▼たるむ(頬の肉が。皮膚が青白く。目の下が幾重にも三浦絵。限の下が皿れぼったく=小林多)。瞼だぶの下がたるんできて黒い隈くぼがでる=水上。▼たるみ(腹の。頬の)。顔にたるみが見える。肌に艶も張りもない。肌が張りを失う。釣り糸がふける。 **つっぱる【突っ張る】** ▼突っ張る(肘を。両手を。棒を嚥のんだように体が"里見。笑ってばかりいたから顔の筋肉が"小池。首筋が銅線でもはめこまれたように硬く=小林へ。何を言ってもいやだよの一点張りで今東)。腹立ちが困惑におさえつけられ顎の下あたりで板のようにつっぱる安部。足をぐんと突っぱって反り返るようにして歩く=伊藤整。欲の皮を突っ張らせる=井上ひ。強力な突っ張りが炸裂にくする。強力な突っ張りをかませる。つまらない突っ張りを捨てる。 **はりがある【張りがある】** ▼張りがある(声に。話し方に。皮膚に)。張りのある美しい目=徳田。滑らかな張りのあるバリトン。水滴が張りのある皮膚にはじかれる=山田太。▼張りのある声(太い。よく通る)。きめの細かい張りのある肌が内側から明かりがともったように温かく輝く落合。声に張りが戻る。表情に張りが出てくる。声が生き生きと張りを持つ。 **はりつめる【張り詰める】** ▼張りつめる(神経が異常に。部屋の中に重苦しい沈黙が。精気があたりじゅうに。空気がびりびりと。灰色の雲がびっしりと。平和な空気の膜が=中村真)。張りつめた(気分が薄れる。心の糸が緩む。表情が崩れる。気持ちがはじけて消える。気持ちを解きほぐす。空気がふっと緩む)。どこかしら不自然に張りつめた空気"小池。張りつめていた(気持ちが緩む。弓弦》みが切れる。緊張がほぐれる。糸がプツンと切れそう「向田)。 **はりめぐらす【張り巡らす】** ▼張りめぐらす(紅白の慢慕いを。巧妙な罠もなを。至る所に。縦横に。根を地下に。広く。あらゆるアンテナを)。張りめぐらされる(鉄道網が。道が。偽装が幾重にも)。多くの抜け道を網の目のように張りめぐらせる=新田。幕を引き回す。▼引き渡す(網を。幕を。ローブを)。張り渡す(蜘蛛くもの巣を。丈夫な糸を。テープを。万国旗を。ローブを。梁はりを天井に。観測網を広く)。 **はる【張る】** ▼張る(足の筋が。池に源氷が。大履値が。深く根が。鶴翼に酢を。木が枝を。蜘蛛くもが巣を。警察が網を。札束で面を。祝賀の宴を。盛大な賀宴を。相場に命を。敵の向こうを。堂々と胸を。びんと糸を。船が帆を。門前雀羅しいを。吉原でお職を。水をたらいいに。乳首が堅く。細がびーんと。胸を堂々と。目を凛りんと。きりきりと心の弦が。ごつごつと角が。お風呂にお湯を。社会面のトップを。精一杯の虚勢を。太腿いがばんばんに。ローブをぴんと一直線に。鋼のように声が高樹)。▼意地を張る(つまらない。心配をかけまいと)。根を張る(習慣が。植物が。一つ土地に)。見栄を張る(初物食いに。つまらない)。水を張る(田に。たらいに。鍋に)。▼胸を張る(凛と。反り身になって)。肩肘張った言いぶり。食い意地の張った女。バーンと張った包装紙。庇いきの張った鳥田に結う。頬骨の張ったいかつい顔。堂々と張った女の尻=日野。根のしっかりと張った大きな木福水。ぴんと腰の張った酒=開高。見栄を張った金の使い方石坂。胸を張って(歩く。誇らしげに言う)。網を張って待つ。体を張って働く。骨盤が頑固に張っている。盛んな酒宴が張られる。つまらぬ意地の張り合い。張り替える(障子を。絆創膏が込沢を。セーフティーネットを)。張り切った細が切れる。張り切る(弦が。乳房が。ばんばんに)。張りまわす(注連縄を。綱を)。 <922> # は **ひきしまる【引き締まる】** ▼引き締まる(横顔が冷たく。表情がにわかに。空気がぴりっと)。さっぱりと肌が快く引き緊しまる芝木。きゅっと引き締まる(心臓が。全身の筋肉が)。ひきしまった冷たい静謐灬な気配"円地。晩夏の景色をつつむ引き締まった空気有局。無駄な肉は一片もなく痩せぎすにひき緊まった筋骨柴田剣。凛々しく引き締まった声。きりっと引き締まった理知的な容貌の三十男和久。紫肉に心のない引き締まった肉体「小林信。唇が引き締まって男惚れのするいい顔"有吉。筋肉が緊縮する。 **ひきしめる【引き締める】** ▼引き締める(ぐっと顎を。頬のたるみを。緩めた気を。顔をきゅっと。きりっと表情を。冷たい風が身を。顔面をきりりと)。部屋の空気をびりりとひきしめる=胡桃沢。鲍ヵの身のように体じゅうを引き締めて固くなる合時。金融の引き締めを続ける。たがを締める。要所学所を締める。自ら襟を正す。 **ひっぱる【引っ張る】** ▼引っ張る(家にガスを。糸を。腕を。髪の毛を。裾を。袖口を。他人の足を。手を。長々と語尾を。ネクタイを。紐ひもを。耳を。髪をつかんで。縄でくくって。ぐいっと力を入れて)。引っばる(髪を後ろからぐいっと=中沢。トイレットペーパーをずるずる=高樹)。▼引っ張って行く(蟻ぁりが娘を。強引に。廊下の隅に。無理やり)。▼引っ張り寄せる(座布団を。手を。ローブを)。否応松沢なしに眠りから引きずり出される=三好徹。▼引っ張り上げる(掛け布団を。靴下を。ズボンを。土俵に)。引っ張り出される(テレビに。名誉職に。無理やり)。引っ張り出す(話の糸目を。古い書類を。路地に縁台を。記憶の奥から。娘を外へ。交渉のテーブルに=西木)。陸路をトレーラーで愉送する。引きずり上げる(体を。ズボンを)。引きずり出す(荷物を外に。潜んでいる兵士を。押し入れから布団を"高村点)。▼牽引する(景気を。消費を。プームを。トレーラーハウスを)。魔術師の持つ不思議な牽引力=中野炎。牽引力を発揮する。 **ほお【頬】** ▼煩(土詠のように盛り上がった松本。芸者ふうな肌理なぁに月光が貝殻じみたつやを出す川端。艶の失せた殺、いだように薄い=円地。陶器のようにつやつやした光瀬。日に焼けて赤銅れいくのように光っている菊池。併のようにふっくらと白い=日野)。頬が(じんじん痛む。笑いでゆがむ。落ちるほどおいしい。げっそりとこける。ひくひくと痙蟹炒炒。喜びの表情で明るむ。症する。目に見えてやつれる。喜びの表情で明るむ。囃したようにひきつる=伊集院。木枯らしに叩かれて冷たく強張る=船山。粉にを吹いたように白い=高井。削ぐげたようにこける=渡辺。ふっくらと豊かにふくらむ=井上焼。焼けつくように痛む筒井。闇を貼りつけけたように暗く沈む=高橋三)。興奮で頬がぴくぴく動く。ひくひくと頬がひきつる。白玉のような頬が薄桃色に輝く=山本周。貰い笑いの頬が綻犯にびる=里見。幽鬼のように頬がそげ髪も油気を失ってそそけ立つ勝目。冷気に頬が切られるようなかにし。頬が涙で(ぐっしょり濡れる。炊くように洗われる=野間)。頬が緩む(幸せに。高びに。うれしくて。緊張していた)。頬から笑いが消える。頬に(微笑が浮かぶ。びんたを張る。笑いが残る。平手打ちがとぶ。びりびりと風がしみる。不安がにじみ出る。憐ぁぁれむような微笑が残る遠藤。期待の色が浮かぶ=内海。叩きつけるようなはげしい言葉・石川。血の気がさすほど喜びをあふれさせる=石坂)。鋭利な刃物でそぎ落としたかのような頬の線!塩野。蟷螂跡みたいに頬のそげた顔!吉川。頬を(涙で濡らす。指で突く。続けざまに殴る。びしゃりと叩く。ぴたぴたと平手打ちする。平手で打ち据える。膨らませて強弁する。泣き笑いのようにゆるめる古井。なぶって温かい風が流れる=浅田)。▼颊を膨らませる(不機嫌そうに。不満げに。ぷうっと)。にたっと頬を緩める。風が頬を撫でて通り過ぎる。上気した頬を冷やす。涼しい夜風が頬をなぶる。冷たい雪の粒が頬を打つ。手が優しく頬を滑る。苦々しげに頬を歪ゅがめる。びくっと頬を震わせる。ぴしゃりと頬をなぐる。無邪気に煩を炊かせる。胸に頬を埋める。夜気が頬を撫でていく。湯気が頬を包む。夜の寒気に頬をさらす。思いがけない涙がぼろぼろと頬を転げる壺井。札束で頬を叩くようなところのある人鷺沢。札びらで相手の頬を張り倒す軍司。叱られた子供のように頬を硬直させる=原田祭。呪縛から解けたように頬を崩し恥ずかしそうに笑うに原田病。冷たい雨が畑を刺す谷村。冷え冷えとした空気に頬を撫でられる=加賀。ブルドッグのような頬をした男藤田。ほころびそうになる頬をキュッとひきしめる=干刈。両手で頬をびたびたと叩く高樹。▼頬を伝う(一筋の涙が。頭髪から流れ落ちる雫こずが船戸)。涙がホロホロと頬を伝って流れる=田山。ふくらみが少女の類のような盛っ=灰谷。▼青白い頬(疲れたような。色褪せた花びらのように=海音寺)。頬が(蒼白眠いになる。血の気を失う。蠟ぅぅのような色)。頬から血の気が引く。頬に生気がない。頬が赤い。▼頰(美しく血の色を透かせた里見。子供のような紅い"手刈。薔薇色以35に彩った蝋人形怒ら氷んのような=円地。ひと刷毛はけさっと失をはいたように明るい薔薇色の人間)。頬が(桜色に上気する。寒さで赤くなる。微かすかに上気して雪中の薄紅梅を見るようにさびしい艶ぇんな姿"海音寺。桜貝のように淋しく淡く紅をさす=梗。頬紅をつけたように赤くなる三浦町。炎を映してオレンジ色のまだらになる=村山)。赤らんだ頬が輝きを帯びる。青白い頬が赤く染まる。頬に(紅葉を散らす。うっすらと赤みが戻る。さっと刷いたように血が昇る=高井。朱をしている憤怒"大佛。ほのぼのと血の気が通ってくる=山手)。頬の真っ赤な娘。頬を(かすかに赤らめる。真っ赤にして微笑組む。燃え上がるように上気させる=柴田翔)。興奮が頬を紅潮させる。心なしかほっと頬を赤らめる。健康な色の頬をなお林檎んのように紅くする=長与。頬を染める(成激に。羞恥礼の色に。子供っぽい尼さんが俗人の男どもの無遠慮な視線に痛々しいほど敏感に"阿部。酒にほんのりと“村松)。酔いが白い頬を薄桃色に染める!藤田。頬が火照る。熱病患者のようにほてった順徳田。頬が(恥ずかしさにほてる。破裂しそうにかっとほてる=幸田文。燃えるように熱くなる石坂。湯上がりのようにほてる=川端)。恥ずかしさで頬がかっかする。 <923> # 張る・緩む **ほおづえ【頬杖】** ▼頬杖をつく(デスクに。思案顔で。ぼんやりと。テーブルに。火鉢の縁に)。頬杖を(ついで考え込む。つきながら思案に耽ふける丸谷)。 **ほおにく【頬肉】** 頬肉がげっそりと落ちる。頬の筋肉がこわばる。頬の筋肉を震わせる。頬の肉が(渉く削げげる。げっそり落ちる。ひくひくと震える。ぶるんと揺れる。そいだように落ちる=森瑙)。頬の肉をびくびくとひきつらせる。たるんだ頬の肉をつまむ。 **ほおぼね【頬骨】** 大きく張り出した頬骨。頬骨が(高く張り出す。突き出る。尖っている。鳴る。張る。たつほどやつれる=山崎)。殴られて頬骨ががっと鳴る。顔の輪郭がアボリジニーの精霊の仮面のように頬と頬骨が盛り上がっている=笙野。やせて頬骨が飛び出た顔椎名战。おそろしく頬骨の張ったいかつい顔!山本周。頬桁限さを(打ち返す。張られる)。 **ほっぺた【頬っぺた】** ▼頬っぺた(林檎りんのような。くりくりと丸く引きしまった=壷井)。頬っぺたが(おたふく風邪のようにふくれる=辻井。落ちやしないかとおそれる=井上ひ。燃え上がるように撮ぁかくなる人谷崎)。ビシリビシリと音高く響くほどほっぺたを平手で殴る=石坂。頬っぺたを指の跡が残るほどひっぱたく=横光。札束で頬っぺたを叩く。大福餅みたいな煩っぺたをした女徳永。 ボルトで(固定する。留める)。ボルトを(締める。ねじ込む。ゆるめる)。ほんの少し捻子ぁじがゆるんでいるような女向田。関係のネジが錆びつく連城。どこかひとつの小さなねじが狂っただけ=山口。ねじの締めがゆるい。ねじを(締める。回す)。ねじ釘で(固定する。留める)。ねじ釘が(錆びる。ゆるむ)。ドライバーでねじ釘を締める。 **ゆるい【緩い】** 緩い(傾斜の道。陣痛が起こる。山肌を下る。S字状のカーブ。勾配のだらだら坂)。涙腺のしまりがゆるい=田辺。監視の目が緩い。口元にゆるい笑いがこびりつく=林真。張りのないゆるい女のような肩の線=野間。水流が緩い渦を巻く。谷を道はい上ってくる緩い風。鼻緒が緩い下駄。道なりに緩いカーブを曲がる。緩く(かぶりを振る。弧を描いている道)。彦とびが緩く舞う。団扇がちを緩く動かす。体を緩くくねらせる。霧が緩く移動する。左右に緩く揺する。山頂に海雲が緩く流れる。砂が緩く起伏する。船が殺く左右に動く。指先を緩く組む。▼緩めに締める(帯を。バンドを)。緩めに結ぶ(紐ひもを。ローブを)。 **ゆるむ【緩む】** ▼緩む(一座の空気が。顔の筋肉が。財布の紐ひもが。渋い顔貌が。探索の手が。伝来の絆が。場の雰囲気が。桃割れの根が。床の根太が。頭が酔いに。空気が笑いに。頬が心なしか。張りきった気が。張り詰めた気分が。張りつめた表情が。ふっと頬のあたりが。顔が満足そうに。張り詰めていた空気がふっと内館)。張りつめていた気が一時にゆるむ芝木。▼たがが緩む(心の。組織の)。心が心地よく緩んでいく。緩んでくる(ひとりでに口もとが。仏頂面だった顔が)。浮き浮きと頬の肉を緩ませる=船戸。頬にいつも笑っているような弛ゅるみが現れる=辻井。気の緩みが生まれる。構図に少しの緩みもない。ネクタイの緩みを直す。▼弛緩しがする(体が。緊張が。精神が。全身の筋肉が。場の空気が。武断的政治が)。 **ゆるめる【緩める】** ▼緩める(いくらか気を。腕の力を。監視の目を。厳しい表情を。攻撃の手を。財布の紐もを。得意げに頬を。頬の筋肉を。きつい目つきを。徐々にスピードを。にやりと口元を。ネクタイの結び目を)。▼口元を緩める(かすかに。楽しげに)。緩和する(交通地狱が。物資不足が。ショックを。刺激的な印象を)。▼総くする(呼吸を。調子を。歩を)。緩ませる(気を。紐を。表情を)。一瞬たりとも気を緩めない。足を緩めずに歩く。スピードも緩めずに走り去る。 **りょうほお【両頬】** 両頬が(げっそり落ちる。板のようにこわばる!安部)。両畑から首筋にかけてぼうっと桜色に輝く“山崎。両頬にえくぼが浮く。両頬を膨らませる。 <924> # 20晴れる・曇る **あまぐも 【雨雲】** いまにも雨が降りだしそうな厚はったい雨雲三田。雨雲が(垂れこめて今にも降りだしそう。陰鬱な影を投げる=徳田)。底光りのする雲母色にらの雨雲が縫い目なしにどんよりと重く空いっぱいにだかる!有島。どんよりと垂れこめた雨雲の下に墨絵のような風景が展ぃらける"外村。心の中の拭き切れぬ影が雨雲のようにひろがる=石川。 **うららか【麗らか】** うららかな(春の陽射し。暖かい陽を浴びる。日和に恵まれる)。春めいたうららかな天気が続く“海音寺。うらうらと(霞がなびく。春日が匂っている築士芥川)。陽炎砂羽がうらうらと立つ。空がうらうらとかすみわたる。うらうらとした春陽を浴びる=井上靖。うららの春霞の下。 **かいせい【快晴】** ▼快晴(アシカの生やしたヒゲまでが一本一本地面に影を置きそうな"永井能。一年を通じて何度というような永井龍。神様が贈ってくれたとしか思えないような=山口。まぶしいくらいに感じられる早春の=源氏)。初冬らしい暖かい快晴の日三島。 **くも【雲】** 雲(霞か煙かとまこう淡いかすかな=竹西。薄墨のにじんだような企夏目。死人の眼のように濁った灰色の徳永。手足をばたつかせて地団駄踏んでいる子供を連想させる=竹西。底部が確然たる一線をなしたお供え餅のような“大岡。西の空の土手のような=長塚。レースの切れっ端みたいな。干刈)。雲が(強い光の気配をふくむ=古井。投網にぁを投げたように散っている=伊集院。飛ぶように自由に生きる!高村光。鉛色に重く垂れ込める=火坂)。愁いの雲がいつの間にか押し払われる。岡本。渓谷の青い岩のような雲がに浮かぶ村上春。漠とした不安が遠い雲のように浮かぶ黒井。埒らちもない空想が空に浮かぶ白い雲のように去来する=福永。雲が覆う。心の中を雲が覆っ"江國。雲が太陽を覆い隠す。古綿のような雲がおおいかぶさる=堀。鉛色の雲に覆われた北国の空火坂。薄雲に覆われた青空が紗しょを透かしたように見える三浦綾。入道雲のむくむくした塊に覆われている地平線堀。富士山のてっぺんに冠みたいに雲がかかる=阿部。雲が幕のように空低く懸かる=有島。の根ほどの雲の峰」岡本。青く晴れ上がった空に雲の峰が湧く=隆。雲を(つかむように頼りない話"高見浩。に雲がたれこめる=飯田。晴れた空を皺しゃだらけのシーツのような雲が走る=倉橋。緑濃い山腹に乳液のように雲が垂れている―藤田。雲が切れて(急に日がさす。山々が姿を現す)。赤く焼けて長く横に引いた幾すじもの西の空の雲の波"野問。暮れなずむ空に花のような雲のひと切れがういている=水上。桜が咲き乱れ全山雲の林のように見える=白洲。若い生姜しい突くような大男=佐藤泰。引き裂いて日が昇る=山本周。踏むような不安な酔い=安岡)。疑問が雲のごとく湧きおこる=田辺。地平線に雲のごとく黄座に心が揚がる=中局救。考えが混沌に从として雲のごとくに動く"夏目。乾いた土の埃児にが雲のように起こる=大佛。想念が雲のように湧いてくる=佐藤愛。雲のような木目のある琴の胴"中。おびただしい小魚が雲のように群れ集まる=光瀬。情緒が空の雲のように姿を変える=梶井、煙草の煙が雲のようにこめる=小林多。満開の桜が低い雲のように咲き誇る=桐野。吉野の桜も遠くからながめれば雲のようにつかみどころがない”白洲。山国の深さを思わせるような朝雲"徳田。石灰色の薄いうろこ雲がおびただしくひろがる=原田康。砂煙がキノコ雲のようにせり上がる=光瀬。丘の上に芋虫が立ち上がったような巻雲がおびただしく並ぶ犬岡。チョークでさっと線を引いたような飛行機雲"重松。雲が浮かぶ。綿のかたまりのような雲がぼっかりと浮かぶ藤沢。古代の神々のように雲がいくつも海の上に泛ぅぁんでいる"三島。アンパンみたいな雲がふわふわ浮く“松谷。刷毛でなすったような白い雲の筋が浮かぶ空石坂。澄みきった空が生網いずのようなちぎれ雲を高く浮かべる落合。夕焼け空にくるくると小さな巻き毛雲が浮かぶ石森。様々な音が混じりあったやわらかなうなりが雲のように街の上一面をおおった山の景観世水井路。遠山にかかる白雲が散った桜の形見のように見える!白洲。海原にかかる大瀑布傑ぶばのごとく横にのびた巨大な渦巻く雲"阿川弘。雲が流れる。煙のように源白い雲が形もなく流れて星を舐ゃぶる内田百。砂のような雲が空をさらさらと流れる=堀。白い雲の帯が川のように流れている=石坂。山に鳥の翼のように影を落とす雲の流れ遠藤。曇った空に雨をふくんだ雲が船のようにゆっくり流れる遠藤。山頂に霧のような薄雲が緩く流れる=外村。どんよりと曇っていた空に大きな指を拡げたような黒雲がゆっくりと流れてくる=遠藤。白い雲が青空を撫でるように流れている=丹羽。青空に筋雲が流れる。美しい夕焼け雲が空を流れる=梶井。やわらかな髪が雲のように横に流れる=石田衣。風に流されるちぎれ雲のように軽い心持ち=梅本。 **くもま【雲問】** 雲間から(薄日が射す。月が覗のぞく。水色の空が顔を出す)。太陽が雲間から顔を出す。月が雲問に見え隠れする。猫の目のような雲の切れ目"林京。雲の切れ目から月が覗く。ほど薄い雲のかかった月"佐藤春。全山花の雲のかか **くもりぞら【曇り空】** ▼曇り空(雨が降り出しそうな。鉛を張ったような=岡本)。曇り空と海との境目がはっきりしない。曇り空に雲が暗澹はふと動く=梶井。月の回りを囲む=黒岩。周囲の山々をつつみこむよう薄い日射しが曇り空を縫う三好京。朝も夜もなく空 <925> が灰色に暗く沈む=小川。空が冷たいすりガラスに包まれたような曇りの日"小川。心の中は曇り後雨"灰谷。空に晴れ間が見えない。空は塗りつぶしたように灰色光瀬。晩春の運曇りの空の下。花曇りの空が林の上に眠っているように静か三浦綫。部屋が花曇りのように煙る=山崎。疲労が雪曇りの空のようなどんよりとした影を落とす芥川。降りそうなまま執拗に曇った空が鬱陶しい=山崎。灰汁ぁくを掻かき回したような夕立色の曇天室生。曇天の(午後の光線が鈍色がに肩の上に落ちる=武田奏。日は時間が寒天のなかで溶解してしまったように池田)。 **くもる【曇る】** ▼曇る(刀身が血に。瞳が悲しみに。ガラスが湯気で。眉のあたりがふっと。太陽が雲問に入ったように横顔が!森。窓ガラスがすすけたように"黒岩)。目がぼうっとかすんだようにくもる=五木。月も星もない曇った夜。頭の中がもやもやと曇ってくる。晴れていた空がにわかに曇りだす。どんよりと曇った妙になまあたたかい日の昼下がり=池波。灰色に曇った(川の水。空)。▼曇らせる(涙が瞳を。疲労が心を。雨が窓ガラスを。気遣わしげに顔を)。鏡に吐きかけた息の曇り。顔の上に焦立心。たしげな曇りがらわに表れる=野間。曇りのない目で物事を見る。曇りを拭く(窓ガラスの。眼鏡の)。曇り一つないよう徹底的に手入れされている=小川。かき曇る(一天にわかに。晴れ上がっていた空が俄にゃかに=有吉)。 **くろくも【黒雲】** 不安の黒雲が胸に湧き起こる=斎藤栄。幾百の高速船のように黒い雲が競走する加賀。月が黒い布のような雲に巻きこまれる=梅本。黒雲のように小鳥たちが舞い上がる『飯田。 **こうてんき 【好天気】** ▼好天気(台風一過の。すっかり晴れ上がった)。好天気を約束する夕焼け。上天気(雲のかけらもない。初夏を思わせる。秋日和と名のつくほどの"夏目。外は咬まぶしいほどの佐藤愛)。台風のあくる朝は嘘のような晴天阿佐田。台風一過の晴朗な朝。天気晴朗なれど波高し。 **てんき 【天気】** ▼天気(地軸が狂ったような異常な飯田。踊り出したいみたいにいい犬庭。降ったり止んだりの鬱陶しい黒井)。機嫌買いな天気が一日のうちに幾度となく顔をしかめる=有島。天気のいい日は家にくすぶっているのはもったいない!高田。窓から天気を確かめる。▼お天気(いかにも春らしい長閑とな。秋晴れのさわやかな=石坂)。気分が天気同様に湿っている藤沢。電光掲示板が明日の天気予報を流している重松。西高東低の冬型の気圧配置。高気圧が(発達する。張り出す)。低気圧が居座る。低気圧の通過を息を殺して待つ"鈴木光。猫の眼のように天候が変わる=軍司。うらうらと春を通り越して初夏のような陽気"高井。▼空模様(ぐずついた。泣きだしそうな。降り出しそうな。雪でも来そうな。はっきりしない)。▼日和(雲一つない素晴らしい。日光浴に最適の。うららかなほかほかした=獅子。風もなくおだやかな秋の"原田康。手許にもの水の音も浮き立つような有吉。眠くなるように温かく澱ょとんだ"石坂。ちぎれ雲の影が山の日向を後から後から忙しげに通り過ぎるような水井流)。 **にゅうどうぐも 【入道雲】** ▼入道雲(空の宮殿のように白く巨大な=遠藤。磨きたてたように輝く倉橋)。巨大な入道雲が真白くそびえ立つ=景山。午後の光にかがやいた湾の向こうに大きな入道雲が金色に縁取られながら湧いている遠藤。裾のぼやけた入道雲が水平線の上に静かにわだかままる=梶井。夏の終わりの入道雲にはやんちゃ坊主のあがきのようなおかしさがある=竹西。巨大な積乱雲がそそり立つ。雷雲が湧き上がる。 **はくうん【白雲】** 連結結のような白雲が棚引く菊池。白雲の風に漂い秋葉の風に飄拠るるが如くにぶらりぶらりとする!幸田露。▼白い雲(純白な陶器のようにつやを放つ=石坂。春の紺碧にしを斑まだにしている"吉川)。水平線にたたずむ雲が逆光を浴びて白いカーテンのように見える=福氷。 **はれる【晴れる】** 晴れる(空が上機嫌に。曇っていた空が。二人の間に絡みついていた需もゃみたいなものが村松。磨きたての窓のように空が"石田衣。の微粒物も止めないといったように恋すごいほど長塚。日を載せた空が次第に遠退いて行くかと思われるほどに好く夏目。物悲しいほど空が明るく=福永)。朗らかに晴れた青空。谷間を淡くひたしていた霧がすばやく晴れていく『大江。厚い雲がれて晴れ間が現れる。晴れ間を見て外出する。青い空がどこまでも続く=子母沢。空には一点の雲もない!津本。ベールのはしほどの雲もない空、佐藤泰。空が無類に澄み上がっている高橋凉。びっくりするくらい空のきれいな日内館。霧がいつまでも晴れない。空はあっばれな五月晴れ=飯田。▼晴れ渡る(空が日本晴れに。空が抜けるように。空が眼の中を染めるほど青くキラキラと=阿刀田)。快く晴れ上がった空の下で思う。さわやかに晴れ上がった初夏の朝。空は一片の雲もなく晴れ上がっている=西木。▶晴れ上がる(空が紺青に。一天からりと)。空が気が遠くなるほど隅から隅まで晴れあがる=椎名誠。くまなく晴れ渡った明るい日。残酷なほど明るく晴れ渡った朝曽野。雲一つない(秋晴れ。晴天。日本晴れ)。雲ひとつなく晴れわたった空柴田錬。空が雲一つなく冴え渡る山崎。底抜けの青空が広がる好天。穏やかな好天が続く。 **わたぐも【綿雲】** 山厳にんにまつわる綿雲=獅子。綿雲が白く点々とする=辺見。月が真綿雲の間をゆっくり歩いていく=石森。▼雲(真っ白い綿菓子のような=飯田。真綿を薄く引き延ばしたような"高井)。 <926> # 30 反対する・裏切る **いつき【一揆】** 各地で暴動や一揆が起こる。一揆に(加わる。味方する)。農民を一揆に駆り立てる。一揆の先頭に立つ。一揆をかたらって攻めてくる森。 **うらぎりもの【裏切り者】** 同朋うを敵に売る裏切者=池澤。裏切り者が尻尾を出す。裏切り者が密告するような口調連城。裏切り者の(空々しい涙。汚名を着せられる。烙印を押される。レッテルを貼られる)。獅子身中の虫を駆除する。天下に変節漠の恥をさらす司馬。 **うらぎる 【裏切る】** ▼裏切る(期待を。現実が理想を。好意を。主人を。信頼を。想像を。組織を。仲間を。予想を。愛の強い方が先に。最後の土壇場で)。平気で人を裏切る男。裏切りが骨身にこたえる。裏切りに(おびえつつ生きる。心中が煮えくり返る=舟橋)。夫の裏切りに気づく。一度裏切ればあとは転がるだけ。泉優。異心をいだく。返り忠して主人を攻め立てる。敵に内応する。▼内通する(敵国に。敵に。テロリストに)。寝返る(敵方に。あっさりと。諸将が続々と。仲間を捨てて警察に=高村派)。国民への背信行為。背信を(責める。憎む)。二心於にがなせる業の舟橋。体制に迎合して変節する。変節の生涯を弾劾する。裏切られる(期待が。予想が。ものの見事に。手ひどく。信頼していた人に。末を約束した男に。建前はしばしば実態によって―柳田。予言が意表外の現実によって内橋)。飼い犬に手を噛まれる。不忠の臣。不忠を働く。 **ぎゃくぞく 【逆賊】** 逆賊のそしりを受ける。暴虐な逆城の大将!佐藤春。逆賊を(征伐する。平らげる。深汚する)。逆臣の汚名を(着る。すすぐ)。逆臣を誅する。勝てば官軍、負ければ賊軍。賊軍を(討つ。討伐する)。 **さからう【逆らう】** 逆らう(気配を見せる。者を皆殺しにする)。逆らう(運命の波に。姑しゅうの言葉に。忠言は耳に。世の大勢に)。▼流れに逆らう(自然の。歴史の)。世間の流れに逆らって人と角突き合わす奥泉。絶対言うことをきかない。逆らえない。抗結らうことのできない魅力。抗するすべを持たない。抵抗しがたい感動がある。男にとって抵抗しがたい蠱惑にゃ。抵抗らしい抵抗もできない。敵しがたいことを看破する。猛攻に敵しかねる。なまじ手向かいすれば殺される。反対する(筋合いではない。理由が見つからない)。反対はできない(まともに。むげに)。 **さからわない【逆らわない】** 逆らわずに同意する。抗油もう素振りを見せない。失う(急激に反抗する意志を。反発する気力を)。▼失せる(盾突く気力が。抵抗する気が)。あえて逆らうこともない。抵抗しない(強いて。全く)。親の勧めに抵抗する気力がない"阿川佐。早々に抵抗を諦める。状況に反抗する気概ってもんが俺にはたりない三浦し。柳に風と受け流す落語。恭順の意を(示す。表する)。恭順を答う。吠えることを禁じられた番犬のように無抵抗“西木。無援抗な(性格。老人)。無抵抗に引っ張り回される。死んだように無抵抗になる森村。無抵抗の住民を殺す。 **しかえし【仕返し】** ▼仕返し(女性的な。子供じみた。底意地の悪い)。仕返しを恐れて泣き寝入りする。折あらば仕返しをしかねない。私怨を晴らす。仇討汤ちに執念を燃やす。首尾よく仇討ちを果たす。世間に仇討ちをする。意趣返しに悪口を言う。意趣を(返す。晴らす)。▼恨みを晴らす(金への。積もった)。恨みを晴らす機会を狙う。親の敵討ち。敵討ちの本懐を遂げる。友の敵討ちを助ける。しっぺ返しに悪口を言う。しっぺ返しを食わせる。手痛くしっぺ返しされる。腹いせに(一杯食わせる。騒ぎを起こす)。▼腹いせをする(思うさまいじめて。部下を殺された大沢)。報復の(連鎖を招く。快味にほくそえむ"杉本。執念が少しも衰えない=船山)。手ひとく報復を受ける。復する(敵に。テロに)。報復人事を受ける。 **そむく【背く】** ▼背く(神の教えに。孝行の道に。母親の期待に。仏の心に。命令に)。違える(義理を。約束を)。背反する(法の精神に。命令に)。▼背驰ぃする(周囲の期待に。著書の内容が大学教授としての資格に美濃部)。会の方針に背馳した行為。不平の言葉が抜き差しならない反逆の塊として転がる=木庄。▼反逆する(権威に。古い秩序に。生まれ育った環境に=中村真)。▼もとる(仁義に。人倫に。節義に。長幼の序に。道理に。礼法に。息子としての態度に)。 **ていこう【抵抗】** 無言だけが姑しゅうへの唯一の抵抗連城。抵抗が目に見えるように衰えてくる=源氏。抵抗にまさる忍従の強さ。頑強な抵抗に出会う。予想外の抵抗に遭う。案に相違の抵抗にぶつかる=今來。意外な抵抗を受ける。死に物狂いの抵抗を続ける。しぶとい抵抗をやめない。▼抵抗する(頑強に。日本の侵略に。全力をあげて。激しく。最後まで一歩も退ぃかずに。驚くほど強い力で執拗に!黒岩)。時代にささやかな杭を立てる=林京。抗らう(世間の大勢に。時の流れに。つき上げてくる焦燥の感覚に=山田太)。大勢の流れに抗う発言。無駄な抵抗。抵抗が無駄に終わる。盾突くだけ損。手向かいも空しく意のままにされる。蟷螂の斧ぉのに等しい=外付。蛇螂の斧を振るう。 **はむかう【刃向かう】** ▼刃向かう(嵐に。新勢力に。面と向かって)。▼手向かう(親に。権力に。主人に。上級生に)。抗する(圧側に。外圧に。時流に。敵に。風に向かって)。盾突く(為政者に。親に。上官に。上司の意向に。政府に。先生に。リーダーに)。 **はんげき 【反撃】** 起死回生の反撃が始まる。思いがけぬ反撃に出会ってたじろぐ。▼反撃に出る(体格を利して。負けじと)。反撃の(他勢を整える。暇を与えな <927> い。筆を振るう)。反撃を恐れず果敢に断行する。手痛い反撃を食らう。手厳しい反撃を加える。反撃を試みる(果敢な。すかさず)。反撃する(果敢に。散発的に。命がけで。粘り強く。必死になって)。窮見術加を噛む。矢を射返す。相手の目を射返すように児にらむ"村松。悪さを見咎似とめられて逆切れする"角田。世間の略に逆襲する。敵の逆襲に遭う。狙っていたかのように切り返す。逆ねじを食わせる。反攻に(打って出る。転じる)。▼巻き返す(武装勢力が。後半で。終盤で)。巻き返しが不発に終わる。巻き返しに(出る。転じる)。巻き返しを(狙う。許す)。 **はんこう【反抗】** 飼い犬が主人に尾を踏まれた時ギャッと鳴いて顔をしかめる程度の反抗"志賀。反抗が胸の中で悲しくいぶる=佐多。資本家に対する火のような反抗が起こる=小林多。反抗の度を強める。あからさまに反抗の意をこめる。ささやかな反抗を試みる。反抗する(かたくなに。軍人の横暴に。政府の暴圧に。父親に。既成の社会規範に。ヒステリックに)。向こうみずに反抗したい拗ねた気持ち。石川。憐憫を買いたくないという反抗心芥川。反抗心が(心に沸き返る。募る)。反抗的な(考えがきざす。気分が湧く)。むらむらと反抗的な意志が燃え立つ。何かにつけて反抗的な態度を取る=鈴木光。児鬱沙が生み出す反抗的な気分"有島。反抗的に聞こえる返事。反骨の気風。反骨精神を発揮する。筋金入りの反骨精神を持っている=佐高。反骨稜々たる人物。 **はんたい【反対】** 強い反対が予想される。反対に回る。反対の(動きが高まる。空気を察する。態度を示す。論陣を張る。意見を正面から打ち出す。意志を表明する)。核実験に反対の立場をとる。終始反対の立場を貫く。面と向かって反対の意見を述べる=赤瀬川。反対の声が(上がる。燃え上がる)。反対を公然と表明する。戦争反対を叫ぶ。親の反対を押し切って家出する "氷室。反対多数で否決する。反対運動が(尻つぼみに終わる。盛り上がりを見せる)。反対運動に(遭う。手を焼く)。反対闘争が始まる。反対派に譲歩する。反対派を(説得する。包み込む。非難する)。反対票を投じる。家族の反対を押し切って駆け落ちする=半村。周囲の反対を押し切って(会社を辞める。結婚する)。 **はんたいされる【反対される】** ▼反対される(痛烈に。両親に。がつんと)。反対されるとかえって意固地になる。関係者の反対に遭い断念する。猛反対に還う。猛反対される(家族に。世論に)。反発を買わずにいない。猛反発に遭う。猛反発を食らう。 **はんたいしない【反対しない】** 特に反対しない。異談がない。誰一人として異議を挟む者はいない。異存のあろうはずがない。提案に異存はない。異論を挟む余地がない。あえて異を唱えない。反対するのかと思うとさにあらず。反対する気になれない。 **はんたいする【反対する】** 反対する(海外派兵に。核兵器に。再軍備に。声を大にして。すごい剣幕で。卑しむべき策謀に。授業料値上げに。独占資本の支配に。いかなる体罰にも。重臣たちがこぞって。それ見たことかと鬼の首でもとったような勢いで=新田)。反対する分子を糾合する。猛反対して話を立ち消えにさせる。猛然と異議の申し立てをする。間髪を入れず異議を申し立てる。提案に異議を唱える。異存を唱える。異論が(相次ぐ。噴き出す)。意見に異論を唱える。異を立てる。首肯しがたい話。不承知を唱える。▶異を唱える(上官に。所説に。判断に。方針に。おずおずと。公然と。真っ向から)。一人だけ異を唱えて孤立する。▼難色を示す(意見に。計画に。出演に。条件に。満額回答に)。 **はんぱつ【反発】** 反発が(起こる。広がる。日増しに強まる)。反発と帰順を繰り返す。父に対する反発の気持ちが芽生える=熊合。反発を(覚える。感じる)。反撥出を胸の裡うちにいっぱい詰め込む辻井。反発する(世論が。、油が水を。親に。内心。堅苦しい家風に。現実社会の不合理に。正論だが辛辣な物言いにやみくもに有川)。心から思いがふきこぼれるほど反撥する=幸田文。自分でも予期しない反発心が湧く。猛反発が(起こる。全国に広がる)。 **はんらん【反乱】** 反乱が(激発する。未発に終わる)。反乱の機を窺いゅう。反乱を起こす。企てる。計画する。鎮める。俄い抜く。鎮圧する。平定する)。反乱軍を武力鎮圧する。造反が広がる。造反の挙に出る。不満分子が造反する。▼叛旗を翻す(政府に。朝廷に。幕府に)。謀反応はの(罪で捕らえる。かどで処罰される。証拠を握られる。動きが魔の手のごとく八方へひろがりつつある=山本周)。謀反を(起こす。企てる)。▼弓を引く(主に。政権に。天下に。幕府に。公儀に対し)。 **ふくしゅう【復讐】** 好誘かんな文字の霊の復讐"中島敦。復讐が執拗を極める。復讐という名の下に裁く"綾辻。復讐に(一生を熔ける。燃える)。うずくような一種の復讐に似た快感之木。復讐の(機会をつかむ。計画を練る。望みを遂げる。鉾先にを向ける。意志を行動に移す。一義を肝に銘じる。チャンスをうかがう。刃を研ぎ澄ます。好機至れりと狂喜する武田奈)。残酷な復讐の快感に酔う。むらむらと復讐の念が湧き上がる。虎視眈々に欲と復讐の時を待つ=宮本部。復讐の一念に(凝り固まる。取りつかれる)。復讐を心に誓う。見事に復讐を遂げる。復復する(陰惨な手段で。執念深く。残酷極まる運命に=武者小路)。猛然と復讐心が湧き起こる。一途な復讐心をいだく。生一本に復讐戦を意気込む山手。 **ぼうどう【暴動】** 暴動が(起こる。発生する)。暴動にぼうどう等しい小作争議。怒りが暴動にまで発展する。暴動を(起こす。銀圧する。つぶしにかかる)。 <928> # 光る・輝く **あまのがわ【天の川】** ▼天の川(うっすら膜がかかったみたいに流れる=宮本郎。遠く青白く流れているような=高崎)。天の川が(空に横たわる。白い帯になって光っている=辺見。二人の頭上を淡く流れている"獅子)。重湯を流したような天の河が黒い樹影と屋根の上に浮いている=獅子。紺青に认じの夜空を天の川が白くにじんで二つに割くきる=本庄。天の川の明るさが見る人をすくいあげそうに近い=川端。天の川銀河からアンドロメダ銀河までは二百三十万光年の距離がある佐藤勝。銀河がぼうとけむったような帯になる!宮沢。漆黒の天蓋の中央に銀河が鮮やかな筋を描いている奥泉。 **いなずま【稲妻】** 稲妻(暗黒の空が白くなるほどの=飯田。見交わす視線の三島)。稲妻が(空を走り抜ける。雲をジグザグに引き裂く=堀。遠い山脈をおおう雲の中で鈍い光となって息をつく。山田太。やにわに闇を二つに裂く芥川)。びかりと稲妻が光る。身体の中を稲妻が走ったような痛みが通り抜ける"辻井。ぎざぎざの刃のような稲妻が空を切り裂く=常盤。胸の中を正体の知れない不可解な暗い感情の稲妻が通り過ぎる=野岡。眼もくらむ稲妻が黒い空を裂いて凄すさまじい雷を落とす"有吉。威嚇するようにつぎつぎと稲妻がひらめく藤沢。フラッシュをたいたかのようにかすかに稲妻が閃20らく宫部。稲妻に打たれたかのような衝撃が体を貫く。松岡。隣家の木立と屋根が一瞬の稲妻に真昼のように浮かび上がる藤沢。稲妻の閃きのように言葉が頭の中で繰り返し聞こえる=山本周。稲妻のような予感にはっとする壺井。船妻のように(頭に閃くものを感じる=石坂。鋭く目を走らす有局。天啓が頭に閃く=長与。踏切に飛びこむ芥川)。一条の稲丟のように斜めに走る線森屆。心の中に大胆な決心が稲妻のように閃き渡る芥川。苦い思いが稲妻のように頭の中を走り抜ける=飯田。目が稲妻のように後ろ姿を斜めにかすめる=有鳥。緊張が稲妻のように全身を貫く=飯田。▼稲妻のように走る(悪い予感が。空恐ろしい気持ちが=福氷)。▼稲妻のように閃く(直感が。白刃が)。疑惑が稲妻のようにひらめく森尻。稲妻みたいに光る長い鞭もちの線大庭。稲光が走るように頭の深部がチカチカと痛む萩原葉。稲光のようにしきりと限をしかめる”吉川。不気味さが稲光のように素早く身体の中を走りぬける萩原来。胸に男の顔が遠い稲光のように明滅する=光瀬。電光のはやさで猛禽らが攻撃をしかける=杉本。アイデアが電光のことくひらめく荒巻。全身を電光のような突張が貫く=池井戸。恐ろしい答えがばっと電光のようにひらめく=柴田母。肉体を貫いて電光のように駆ける不安な戦慄に似た息苦しさ=伊藤整。眉根の所に電光のように起こる痙攣いを小うるさく思う有鳥。圏のなかの電光のように激しい歓喜と憤怒との明暗の交代"中村貞。 **かがやかせる【輝かせる】** ▼輝かせる(金の背文字を。ばっと顔を。無邪気に頬を。顔を明るく。兜はぶの前立て物を。目を悪戯心公っぽく、テラテラど額を安岡。見事な銀髪を朝の陽光に三好谈。瞳を童女のように=高橋三。竜が大きな目を爛々365んと=隆)。▼目を郷かす(面白そうに。生き生きと)。懐かしそうに嘘を輝かす。目を輝かせる(幸福そうに。興奮気味に。好奇の)。顔を輝かせて笑う。瞳を輝かせて話す。目を輝かせて計画を語る。▼煌らかせる(魚が鱗いっを。束の間の命を。光のさざ波を)。 **かがやき【輝き】** 若い時代が古葉にかわろうとするようなみずみずしい生命のかがやき=島崎。氷のように冷たい輝き火坂。女の輝きがすみずみまで充ち溢れる"立原。ひきしまった顔に娘のころの美しい輝きが宿っている内海。窓の冴えた輝きが煙るように仄ほのかに色を薄める"野間。輝きが色あせる。顔から輝きが失せる。瞳に輝きがよみがえる。目に少年の輝きが宿る。夏の終わりの入道雲には見つめていると涙のにじみそうな娜きがある=竹西。輝きが目に(飛びこむ。宿る)。輝きに満ちた広大な眺め。▼都きに満ちる(表情が。空が初冬の朝の拭き清めたような=佐多)。輝きを底に秘めている眼高橋治。双峰時うが輝きを持つ。強い郷きを目に溜める。瞳が輝きを失う。不気味な輝きを持った目。目が熱っぽい輝きを帯びる。胸苦しいほどの輝きを帯びた世界三浦し。輝きを放つ(喩が。落日を前にした光芒に初のように一瞬の渡辺)。▼輝きを増す(一段と。いっそう。ひときわ)。▼輝きを見せる(目に異様な。刃が冴えた美しい)。目が輝きを(取り戻す。放つ。増す)。 **かがやく【輝く】** 輝く(顔が喜びに。受賞の栄誉に。かがやく拠が銀色に。野山が新緑に。微笑が顔に。頬がばら色に。目が異様に。海が青く。表情がぱっと。目が炯々灬と。子供たちの顔が。華やかな色彩が。中天に半月が心細げに。陽がうららかに。目が妖しいまでに。明かりが白々と。瓦がてらてらと。シャンデリアが燦然ぐんと。タイルがぴかぴか。夏の日にまぶしく。皮肩がてらてら。目が勝ち誇るように。深い湖水が淡緑色に畑。見開く目が燃えるばかりに"山田美。海が燦々と注ぐ光に磨きたてられたように倉橋。体の中に灯がついたように表情が内側から"日野。河にかかった仕掛け花火のようにネオンが大きく美しく高見町。心の中にあたたかい光が残像みたいにそっと吉本。白く透き通った美しい肌が真冬の渓流のように冷たく高橋三。光が眩ょぶしい粒になって=城山。瞳が悪戯かはっぽく=城山。瞳が不思議な宝石のよう <929> に妖しく=和久。町の灯がくたびれたように「壺井。娘たちが青い光の中で天使のように"伊集院。目が炎のように光瀬。目も向けられないほど"有島)。栄光に輝く将来。若さに輝く美しい娘。窓という窓がていねいに磨き上げられて輝くよう内海。▼明るく輝く(顔がばっと。ひときわ)。▼希望に輝く(目が。明日に向かっての)。▼光が輝く(希望の。慈悲の)。▼星が輝く(空に夥はがしい。満天の)。▼輝いている(残業の明かりが。川面に月が砕け。頭上にティアラが燦ど)。びかぴか双眸ぼうが輝きだす。表情が急に輝き始める。川を一面の光の粒が覆う。輝くばかりの鮮やかさ=菊池。輝くような(美しい目。白い頭髪。若さ)。都き渡る(愛が。成光が。夏空が。光が)。▼照り榔く(雪が日の光に。日光が眩しく。海が夏の陽光に。海上が冷たい銀色に=隆)。▼光り輝く(あたりがまぶしいほどに。雪が限りない明るさで)。光り輝く美貌。電圧が二倍に上がったかと思うほどシャンデリアが閃206き輝く=開高。▼燃え輝く(色彩が。太陽が。真っ赤に。赤々と)。刻一刻と光輝を増す。月が眩しい光輝を放つ。海がモルフォ蝶のことき光輝を発する―北。燦爛皓んと(明かりがともる。弾ける午後の光)。銀紙が燦燗と照らし出される。▼映える(コンクリートの白さに陽射しが。川が美しく夕日に。灯台のあかりが海面に)。夕影に映える山々。 **がんこう【眼光】** ▼眼光(針のように細く光る=池波。路傍の小石でも見るように冷たい!多岐川)。眼光炯々いとして人を射ることし=津本。眼光が(炯々と輝く。鋭さを増す。鋭利な刃物を連想させる=横山)。鋭い眼光で見据える。激しい眼光で威圧する。恐ろしく迫力のある眼光で院にらみす亨える高橋和。眼光に叡智がぃの輝きがある。眼光の鋭い痩せた武士。射抜くような眼光の鋭さ=飯田。射るようないまいましげな眼光を浴びせかける"有局。眼光紙背に(徹する。透る)。眼光閃々せんとして四囲を射ること密林中の炬火峠のごとし=武田飛。限の中にある光が刺すように冷たい水井路。清水のように澄んでいる眼の光輝子。目の光が(険しくなる。熱を帯びる)。好奇心にあふれた目の光がよみがえる。 **きらきら** 目を光らせる。小魚が鱗をききらきららきらきらめかせる。細かい埃咀こがきらきら倻く。喩をきらきら輝かせる。噴水が遠くできらきら光っている。光が水に反射して顔がきらきら波のように揺れる=椎名鹹。雪がきらきら細かく光る=石森。▼きらきら輝く(陽光に水鏡が。日差しがまぶしく)。きらきらと(挑むような目。華やかな光。星が輝く。輝きがつのってゆく。しずくが落ちる。日が射しかける。瞳を輝かせて笑う。陽の照り返しを受ける。陽をうけて川が流れる。まぶしく光る秋の海"小松左)。海面が陽射しをきらきらと反射している。日の光がきらきらと目を射る。海が一酢にキラキラと小波立砥ぎなつている=桢。雲母のようにきらきらと光る午後の光"遠藤。瞳が涙できらきらと光る"東野。満天の星が朝の霜のひどさを思わせるようにきらきらと研ぎ澄ました光を放つ=山本周。目がきらきらと詰問的に鋭くなる伊藤整。▼きらきら光る(葉に露が。噴水が遠くで。油に弾かれた水滴が。海面が朝陽を受けて"西村)。▶きらきらと輝く(川面が。氷柱が。瞳が怒りで)。▼きらきらと光る(唇の間から白い歯が=福永。海の上で漁ぃさり火が水に=福水。青い灯が水に映ったように内田瓦。髪の後れ毛が一木一本=福永。銀貨が貝殻の裏のように内田亘)。雪が細かくきらきら(輝く。光る)。きらりと(涙が光る。激しい視線を向ける)。瞳にきらりと光が宿る。▼きらりと光る(双眸時うが。短刀が。白刃が月光を受けて"なかにし)。燦然悩んたる(光芒の落ちた海上。光明が満ち満ちる)。学界に燦然たる光彩を放つ。話の中心に燦然と立つ。歴史に燦然と輝く。魚が宝石に飾られているように燦然と光る=舟橋。顔に脂がぎらぎら浮く。陽がきらきら輝ぎらぎら顔に脂がぎらぎら浮く。陽がきらきら輝ぎらぎらく。皮膚に汗がぎらぎら光っている。ぎらぎら輝く(心が。脂の浮いた頬の皮膚が)。脂のぎらぎらと浮いた汁。七月の陽がぎらぎらと照る。目がぎらぎらと輝く。ぎらぎら光る(刀が。歯が。瞳が。槍ゃりの穂先が。海が太陽の光をはねかえして灰谷)。太陽がきらきら(輝く。光る)。目がぎらぎら(光る。燃える)。きらきらした(地質の衣装。目でにらみつける)。▼目をきらつかせる(飢えた。血走った)。熱っぽい眼をぎらつかせる水上。目に頑固さと負けん気がぎらつく。瞳が爛々らんと燃える。目が爛々と輝く。 **きらめく【煌く】** ▼煌く(月光がマグネシュウムのようきらめくに長野。玉の屑くずを散らしたように=国木田)。▶きらめく(樹間に湖が。夕映えが赤く。きらりと鋭い刃波が。人を寄せつけぬ威風が双眸うに。ビニールの袋が日ざしに。白っぽいタイル張りの新しいマンションが真珠色に=日野。青白い煙草の煙が陽射しの中で細かな粒のように"泉優、海がガラスの粉をまき散らしたように“阿久。顔が切り子細工のように怪しく今日。艶なまめかしい空気が忽然ぞんと匂いの散るようにこまかく“大佛。緑がかったアイシャドーが隣粉和从のように暗く=日野)。午後の光にきらめく湾が一望できる。夕日にきらめく海。▼きらめいて見える(点々と明かりが。星々がまばゆく。波止場に碇泊している船の灯りが花のように=円地)。飛び散る水の息を飲むようなきらめき落合。眼に熱いきらめきがある=黒岩。海のきらめきに眩惑がんされる。燦々さんたる陽光を身に浴びる内橋。燦々と早春の光が降りそそぐ。太陽が光を燦々と浴びせかける。西日が燦々と降り注ぐ。窓辺に燦々とあふれる朝日"小池。 **きんせい【金星】** 金星のふりまく明るみが夜をはがす"島尾。明けの明星が光る。宵の明星がぽつんと光っ <930> ている=江國。 **けいけい【炯炯】** 炯々たる(眼光を備える。目でじっと見る)。炯々と目を光らせる。金壺眼封放つはが炯々と光る。両目が炯々と光り輝く。炯々として強く凄すきまじい目。目つきが炯々として鋭い。 **こうこう【煌煌】** 煌々と(明るい部屋。照明をともす。火に照らされる)。明かりが煌々と照る。シャンデリアが室内を煌々と照らす。舞台が煌々と照らし出される。窓に煌々と明かりがともる。ランブが煌々と輝く。皓々にらと中天にかかる月。空に皓々と白い月が浮かんでいる。電灯が皓々と照る。月が海を皓々と照らす伊集院。月が皓々と庭を照らす!白洲。 **こうさい 【光彩】** 石油を流したような光彩が一面に浮いている=梶井。生涯を特異な光彩で縁取る人用。悲羽かげろうのかさなりあった翅ぃゃが油のような光彩を流す=梶井。総ての光彩を消したような閑寂な風景"外村。宝石がさまざまな光彩を放って燦心らく有吉。光彩陸離たる宝石。寄せる波に光彩陸離とした趣がある。光彩陸離の美しさに満ちる。 **こうせん【光線】** ▼光線(うっすらと雨の中にひそんでいるみたいな佐多。太陽の色も白いほどに冴えかえった泉鏡。チカッと白い針の飛ぶような吉川。何物をも燃やさずにはおかないような夏の堀)。光線が闇を切り裂く。午後の光線が肩の上に落ちる。美しい光線が張怒なるように林に射し渡る=田山。雲が切れて鈍い白金いろの光線が雲のはざまから落ちでいる=三島。頂上に並んだ樹の間から光線が縞しまをなして进いる=大岡。花が光線のように呟まぶしく開く=松本。紫外線で殺菌する。紫外線を(当てる。浴びる)。赤外線(写真を撮る。カメラで撮影する)。赤外線で暖める。レーザーを当てる。 **こうたく【光沢】** 頬に漂い残した女盛りの潤いのある光沢人米。光沢が褪ぁせる。髪の光沢が失せる。顔の皮膚から引くように光沢が消える=大佛。老樹の緑に髪のようなみずみずしい光沢がある=島崎。皮膚が一体に光沢を失う。▼光沢を帯びる(肌が。絹ののような。顔がつやつやとゼラチンの膜を張ったかのごとく谷崎。肌がひと皮むいたように藤沢)。光沢を放つ(美しい。鈍い。統ぬめの)。光沢のない(肌。皮膚)。 **こうぼう 【光芒】** 薄暮の沈静な光芒が雲のはざまから流れ落ちる三島。背後からの光芒に押し包まれる高樹。光が雲の細い隙間から一かたまりに流れ进狙いる佐藤泰。雑木林に夕暮れの光が淺筋か射しこむ。さしでる光の条ずじが海原の一面を赤ばんだ金色に染める=真継。光の束が黄金の矢のように一度に飛んでくる=宮沢。 **しゃこう【斜光】** 布のように幾重にも重なって漏れる斜光"伊集院。斜光の中を埃児にが舞う。光が雹沁、の欠片幼けのように壁を斜めに走る藤本。 **すいせい 【彗星】** 彗星が(接近する。空に現れる)。彗星の(尾が空にかかる。光芒に分が長くなる)。大彗星の尾が満天の星のあいだにぼんやりと凶々しくかかる藤枝。管星い、が空にかかる。 **せいざ【星座】** 星座を見つけるのも困難なほどたくさんの星が輝いている三浦し。オリオンの星座が今にも風に吹き飛ばされそうに中空に懸かっている福永。星座が凍りつくように満天に広がりきらめく瀬戸内。 **せんこう【閃光】** ▼閃光(ストロボの。原爆が落ちたきの光は桃色のかすみ網のような=林京。目のくらむような光瀬)。閃光が(目を射る。闇を裂く)。銃口から閃光がほとばしる。心を鋭い痛みに似た閃光が貰く=加賀。真っ青な閃光を発してショートする=光瀬。疑惑が閃光のように頭を掠かずめる菊池。ストロボが(光る。ひらめく)。フラッシュが(光り視界を真っ白に遮る=原田糸。ひっきりなしに焚たかれ花火のような盛大さ今日)。目の前でフラッシュをたかれたみたいにバッとあたりが白く光る=飯田。 **そこびかり【底光り】** 底光りのする(鮮やかな緑色。限を怒らして一喝する=国木田)。目が粘っこく底光りする。目が底光りする輝きを帯びる。冷たい限の底に時々ひらめく火花のような光"山本周。粘りつくような強い光を底に満たしている眼!吉行。臉娃ぶの底から針のような光がのぞく=池波。曇天の日の底光りのように背後で脅かされているつかのまの自由"島尾。底深い光を溜めた目。 **つや【艶】** 見る人の胸に焼きつくほどの情のこもった艶林炎。艶が失せる。声に艶が戻る。書くものに艶が出てくる。毛の艶がよくなる。表面の艶が薄れる。皮肩も髪の色も食いものの悪さをあらわすかのごとく艶がない"富岡。肌が幼児のように柔らかでつやがある=倉橋。声に何とも言えぬ艶がある。艶の失せた殺いだように薄い頬円地。艶のある(顔。髪。声。響き。皮膚。文章)。肌に艶も張りもない。艶を(失いかけた緑。帯びた皮膚。失ったボール紙のような顔色=高井)。唇が艶を帯びる。黒髪が艶を増す。肌が艶を(失う。見せる)。艶のない(顏色。髪)。鈍い艶のない声。嬌声といいたいほどの艶っぽい声=獅子。照りが出る。照りのある(布。肌。皮膚)。生き生きした張りのある色艶。色艶が(衰える。冴える)。顔の色艶がいい。▼色艶が悪い(毛の。皮膚の)。ひとしお洗いぬいたようないい色つやの手=梅本。ゆうべの大酔いなどけろりと忘れたような色艶のいい顔三浦哲。 **つやつや【艶艶】** つやつや(脂ぎった顔。みがきのかかった皮膚)。▼つやつや輝く(髪が。肌が)。濡れてつやつやと光っている唇。水気を含んでつやつやと光る赤土。肌の色がつやつやする。つやつやした(外光。毛並み。芝生。羽。瞳。烦)。風呂上がりのつやつやした顔。つやつやしい(美しい肌。颜色。黒髪。昆布)。 <931> # 光る・く-301 空がつやつやしい色を帯びる。娘の放散するつやつやしい肉体の張り。 **つややか【艶やか】** 琥珀色に沿くの頬が透き通るように艶やか=瀬戸内。艶やかな(黒髪を長く垂らす。情感がみなぎる。ミルクココア色の肌」落合)。皮膚に艶やかな光がある。頬に艶やかな血の色が上ってくる。白玉のように艶やかな煩!山本周。艶やかに磨きあげる。羽を艶やかに光らせる。熟れたイチゴが電灯の下でつややかに光る三浦綾。貝殻が艶やかに光る。におやかな肌の香り。早春がにおやかに訪れる。 **ながれぼし 【流れ星】** 流れ星が(一筋尾を引く。尾を曳いて消える=中局救)。流れ星に願い事を唱える三浦鸟。天上の戴冠式とも見える星の大群飛・梶井。星が(すいと流れる。一つ流れる。長い尾を引いて消えていく)。流れ星のように視線が通り過ぎる=小川。流れ星が長い光の糸を曳いて虚空をななめに墜ちていく=光瀬。流星が夜空を横切る。暗碧の蒼穹行きの一角から流星が飛ぶ=高橋和。闇の中を幾筋かの流星が線を引いて流れる"村上卷。自分が通ってきたあとには流星の尾のようにはかない跡が残ってるだけ=石坂。流星のように流れてきてすぐ消えた人犬佛。おそろしい悲鳴が流星のように走りふっと消える=光瀬。こんなに若く流星のように逝ってしまう飯田。小さな明かりが流星のように走り去る=福永。電車の窓の外の流星のように流れ去って行く街の灯=福永。火を吹いて流星のように直線に落ちていく戦闘機"阿川弘。 **ぬれいろ【濡れ色】** 湯上がりの濡れ色が殊に美しい"二葉亭。▼濡れ色になる(石材が。ニスが)。唇を油で濡れ濡れと光らせる。濡れ濡れとした(黒髪。月光を浴びる)。 **はっこう【白光】** 目のくらむような白光が閃>らく=小松左。白光の帯を奔らせる。強烈な白光を放つ。貧血したように目の中で白い光が点滅する』笙野。限のくらむような白い光が眼を突いてくる!遠藤。水銀灯が不自然なほど白い光を隅々にまで投げかける=村上発。日が落ちた後の白っぽい光がただよう町藤沢。 **ひからせる【光らせる】** ▼光らせる(目を炯々サいと。月を爛々45んと。朝の陽がきらりとガラスを。あぶらぎった額を。赤ら顔をてらてらと。きつい目を激しく。目玉をぎょろりと。目を野獣のように「清水俊)。勝ち気な目をくりくりと光らす。▼目を光らせる(周囲に。教師が監視の。ぎらぎらと。虎視眈々に欲と。隅々にまで。油断なく。ねめつけるように)。眼を光らせる(小意地の悪い。うれしそうにキラキラと=椎名誠)。 **ひかり【光】** ▼光(一縷ひぅの希望の。うららかな春の。キャンドルの柔らかい。バァーンとシンバルをたたいたような感じの=梶井。夢のような蒼ぁぁざめた鳥崎、燐りんの火のような青い美しい宮沢)。光が(街を彩る。目に戻る。世界を支配する。雨のように散り広がる=川上。風に動く楽末葉末に砕ける=国木田。髪の上で優しく戯れる=中村兵。粒立っているような明るさ落合。波のように揺れる=伊集院。波紋のように揺れる光瀬。蛍のような明滅を繰り返す谷川。目に痛いほどきらめく光瀬。湯のように流れこむ遠藤)。サーチライトの光が夜空を切り裂く。四方から光が注ぐ。寂光の静かな光がたゆたう。隅々まで光が行き渡る。直接に光が当たる。ブリズムを通った光が屈折する。目に悲しげな光がかすめる。目の奥に小さな光が生じる。目の中に挑発的な光が現れる。門灯のほのかな光が路上に落ちている。空の光が部屋の中に水のような光線を充たす三島。木々の梢、葉の一枚一枚にくっついた光がばらばらとこぼれ落ちる=中上。提灯坊いうの薄い光が辺りに流れる=内田瓦。西日の光が雲の裏ににじみ渡る=内田瓦。ぶすっと穴をあけたように一条の黄ばんだ光が関からく=本庄。眼に生き生きとした光が加わる『池波。目にけだるい光がよどむ吉村。桃色真珠をばらまいたような暖かい光が広がる=林京。湯上がりの肌に艶やかな光がある=佐野。水の上に明暗の交じったうそ寒い光が漂う中島敦。光が窓から(流れ入る。漏れる)。▼光が宿る(目に好色な。限に羨望民认の)。光と闇が混じり合う。悲しみを光と化す。光に(全身を預ける。乏しい部屋)。祝福の光に包まれる。目が狂暴な光に満ちる。光に目が慣れる。光の(細流が急に乱れてまわりに乱れ散る=日野。粒がガラスの破片のようにきらめいてびっしりと空気を埋めつくす“阿久。粒子が戯れるようにくるめく=日野)。赤や青の光の筋が交差する。澄んだ空気が冷たいが光の角々に鋭い力がある"黒井。道路が車のへッドライトで光の川のように見える=平亏。楽が揺れて光の斑点が地に滴る=高橋和。風景を分ける極端なほどの光の濃淡藤沢。窓からもれる灯が地面に太い光の縞しまを描く光瀬。水にひらめく光のごとく飛び退のく=海音寺。目を閉じた闇のなかに栗つぶほどの小さい光のつぶが舞い流れる=川端。光のない弱々しい眼石川。親の光は七光り。光を浴びて立ち尽くす。かすかな光を感じる。拠に光を躍らせる。憎々しげな光を目に宿して睨にらみ合う。柔和な光を帯びた目。真夏の光を容赦なく受ける。青葉の影の透き通るような光を仰ぐ=国木田。射るような鋭い光をひらめかせて見つめる=小林へ。暗い世に光を灯す。長与。生温かい風が光を揺らせる=村上脊。葉陰を漏れる光を斑ぼだに織り込んで水が流れる三島。瞳が知的な光を宿す=福永。▼光を当てる(暗部に。基礎研究に。未知の世界に)。▼光を帯びる(目が生き生きとした。目が猜疑ぎぃに満ちた)。▼光を投げかける(問題に。閣に向かって)。明るい光が(しんしんと音立てながら降る=本庄。眼に流れ込んでくる行)。強烈な光が目を射る。強烈な光の洪水。▼目の光(深い湖のような <932> "石坂。闇夜の中で見る獣のような八谷村)。暖かい想いが古い光のように心の中を今も彷徨にまいつづけている=村上春。美しい言葉の流れが光のように降ってくる=伊藤整。膣ふひいた眸子とから烈々たる気魄が光のように放射する=山本周。外光が目に焼きつく。・感光する(印画紙が。フィルムが)。▼光があふれる(目に真剣な。空に。花園に)。光があふれる部屋。眩まぶしいほど光があふれている。あふるるばかりの光が滝のように逆にり出る=長与。光が消える。光がすっと消える。目から激情の光が消える。光の穂が風に吹かれて消えそうになびく佐藤谷。頭上から光が射す。▼光(木の茂った葉の間から針の先で突くようにぼちりぼちりと洩もれて射す長塚。断りこむように射しこんでくる=日野)。光が差し込む(心に明るい。天窓から)。光が照らす。光が(海面に並んでいる小さい波頭を一斉に淡く照らし出す―吉行。もの哀がなしくらいあざやかに街を照らす"吉本)。街灯の光が淡く道路を照らす。電灯の光が薄明るく家の中を照らす。雲から洩れる鈍い光が行く手の山を照らす=大岡。慈悲が光のように十方を照らす真継。光を湛たたえる(秋の日が侘ゃびしい。曇った空が朝の湿った。濁った限に無気味な=長与)。冷たい光をたたえた瞳。理知的な光を湛えた黒い瞳。▼光を放つ(精神が。きらきらと。強い。目にしみるほどの強烈な堀。青年の強烈な精神が日々に=野間。体の中に燃えている怒りの心髄が射すくめるような安岡。限が隣のような福永)。獲物を見つけた獣のような光を放つ目!梅本。灯火が光を放って明滅する。 **ひかりのなか【光の中】** 光の中に全身をさらす。朝の光の中に虫たちが舞う。闇が光の中に溶ける。光の中を埃児にが舞い踊る=島尾。降りそそぐ光の中を走る。 **ひかる【光る】** 光る(額に汗の玉が。目に涙が。指にダイヤが。海原が鈍色にびに。葉が濃い緑に。瞳が金属的に。目が狡げぇそうに。顔が艶々と。芒対すが探れて。空がびかっと。沼がぼんやり。陽を浴びて。目がきらっと。目尻が涙で。闇に雨が白く。おちょぼ口に口紅が。雲の中に白い太陽が。目に悪戯れらしい笑いが。目が人懐こそうに。床がつるつるに。黒い瞳が人懐こく。背表紙がてらてら。爪がマニキュアで。火の玉がぼうっと明るく。皮膚がぬらりと。水溜まりが薄白く。夜目にも白く水たまりが谷崎。青白い花が燐光シルを帯びたように="日野。灯りが二つ三つ風にふるえてちらちらと内田百。浅く走っていく水がぴくぴくする痙攣い心の発作のように佐藤春。薄い唇が血を塗ったように藤本。海が鏡のように落合。海がものうげに針のように遠藤。海が笑いながら"有島。川の水が土手より遥かに低く岡の底にしらしらと薄く=長塚。瓦屋根が濡れた唇のように"島尾。唇が脂でぬめぬめと『向田。坂が滑石を塗ったように気味悪く=梶井。月が金色の油をといたように林美。ホタルイカが灼熱くした鉄の球のようにくっきり!畑。町が遠くに模型のように加賀。目がガラスみたいに=田中。目頭に涙が水玉になって三浦哲。眼が灯明の光を受けて隣りんのように福永。夜空が妖しい薄明かりにぼっと=日野)。鉛色に光る蠅はえ。細く光る眼光。明るい日差しに光る屋根。きらりと光る言葉。白く光る滑らかな丘。西日に光る遠い川。冷酷に光る目に射すくめられる。思い募ってゆくふうのキラキラ光る眼差し梗。黒飴色に光る天井=獅子。鋼鉄のようにぴかぴか光る舗装道路谷崎。玉虫のように鈍く光るコート=椎名誠。猫のようによく光る目=高橋三。闇にほのかに光る水面。阿部。陽光に照らされて光る海原火坂。▼鈍く光る(レールが。雪が闇の中で)。▶濡れたように光る(葉の面が。目が)。▼濡れて光る(葉が。切れ長の目尻が)。夜露に濡れて光る蜘蛛くもの巣。鋭く光った鳶口にび。水面がガラスの粉をまいたように光って小波悠旅をたてている=水上。光っている(芋の葉に露が。てかてか顔が。目が挑戦的に。対岸のどが一面に白く。肌がぬめぬめと。やかんがびかびか。鶏の羽が蛍光でも発するかのようにつややかに=畑。濃い眉の下から掘り出された二つの眼が玉のように=福永)。鏡のように光っている水面=森殿。光り出す(一斉に。徐々に)。光るような白髪の老人"高井。雪が眼を刺すようなまばゆい光り方をみせる=永井路。曳光弾なにが尾を引く。飯がビカビカと銀光を放つ=獅子。光点が(漂う。揺れ動く)。空のひとすじ明るいところが皮がむけてなまなましい肉がはみ出しているようにてらてらしている=山本有。額が脂でてらてらと光る。▼発光する(蛍が。青く。赤く)。 **びこう【微光】** 黄昏炊にの底に微光があり光の粒子が夕闇を騒がせている落合。星明かりのような微光が海の上にただよう椎名観。ぼんやりと微光を放つ。ごく微細なほんの徴がびのような光三島。夜空の品はのように微かすかだが鋭い冷たい光柴田剣。瞬きをしている間に見失ってしまうほど小さい光"長野。小さな光が幽かすかにぽつんと落ちている=掘。 **ほし【星星** (唯一の希望の。おびただしい数の。空ほしに鏤められた。豆粒より小さな"角田。人道の闇を照らす=山田美。空からすっっと落ちかかってくるような重く垂れた梅本。空は研ぎあげた螺鈿んでのような一面の山本周。手を伸ばせばつかめそうな近さの石森。ふり仰ぐ深い空の無数の壺井。夜空にはこぼれんばかりの満天の池井戸)。星が(冷たく瞬く。天に散らばる。降るような晩。ちらちら空から見下ろす。真っ暗な空に散る。まばらに見える。満天にきらめく。水面に影を落とす。夜明けの太陽の前に霞んでいく。深湖从の底に光る金剛石のように寒くまたたく=長与。ひとつひとつ数えられるほど目近い青さ= <933> # 光る・輝く-301 の空にまたたく吉本。降るがごとくに夜空を満たす"なかにし。無数の熟れた果物のように大きく美しい=加賀。虚もたしい速さで落ちつつあると思われるほどあざやかに浮き出ている=川端)。空に点々と星が散る。一面の星が眼に沁しみるよう。高井。悲しいほどに星が美しい=加賀。さえざえとした星が澄んだ空にあらわれる=梶井。手の届きそうな近くに星がある"平有。窓に溢れんばかりの星が豪華な宝石箱のよう加賀。限がまわって星が乱れとぶ=開高。▼星が輝く(まばゆく。凍りつくように)。▼星が光る(空にちかちかと。空に氷のかけらのような"小川。闇のさなかに油を塗ったような満天の"加賀)。星で方位が分かる。星に埋まった蒼穹ようきを仰ぐ。星の(うるんだ春夜。数を増やす。湧き出す夕空)。夜空に広がった無数の星の雫しずが静かに滴り落ちる=船戸。▼星の光(透明な硬い。糸で留めたような頼りない高樹。空に無数の眼のように輝いている=円地)。星ひとつ見えぬ暗さ=本庄。満天の星を見渡す。風が出て松の梢が夜空に星を動かす福永。屋根の上に上って星を見る=曽野。星をも吹き落としそうな野分がすさまじく林をわたる=国木田。空に星が(輝く。スクリーンの斑紋のように吹き流される=徳永)。満天に星がちりばめられる。満天の星がちかちかと瞬く=小池。暁の爽やかな薄明が星々のまどろみを消し去って行く福水。空に穿;がたれた無数の穴から星たちが残酷な目で降く倉橋。星でも落ちたようにきらきら露が光る=壺井。星の如く澄んで微塵ふじの濁りも見えぬ子供のそれのような綺麗な瞳=長与。暗い海の奥に光を放つ一点の星のような青い美しい灯台の光島崎。星のように煌きらめく宝石の数々!あさの。晨越しの星のように畠と畠の間に家が一軒二軒と残る=田山。丘の墓地から灯籠の灯が星のようにちろちろとして盆らしい静かなにぎやかさ壺井。地上の星のように松明がちらちらと揺れ動く=栗本。夜空の星のように手が届かない柴田剣。星ほどにも小さくなる"林天。星明かりが部屋に射しこむ。湖面が星明かりを鈍く反射する。星いっぱいの夜空。スターが綺羅星のごとく居並ぶ。将兵が綺様星のごとくに居並ぶ人項。白色矮星加以しいくのような年老いた父と母=尾辻。▼星の下に生まれる(幸運の。不幸の)。運命の星を持つ。痛い星を落とす。星一つの差。星が輝く。星がきらきらと輝く。たくさんの星が天空いっぱいに輝く=辺見。夜の闇に千の星が輝いたような微笑み大原。星が(満天に輝く。黒い天幕に針で穴を開けたように輝く泉優)。夜の空が晴れて星が凍りつくように輝く人米。山際に一つの星が瓦斯灯切れのように輝く=川端。きれいな目を星のように輝かせる=山手。狼星らいが青白い光芒に行を斜めに曳いて輝く=中島敦。爛々65と冬の夜の星が光る。今にも風で吹き落とされそうに星が危なっかしく空に光っている=山本有。夕空に星が一粒淡く光る三浦哲。無数の星の中にひときわ光芒をはなつ明星「清水義。星の光が(うるむ。まばらに光る。花とともに下界に乱れ散る=白洲)。星の光を寒い風が吹き散らすように見える晩円地。いろいろな光度と光彩でちりばめられた無数の星々=有局。星が瞬く。きらきらと星がまたたく。雲の隙間に過去の記憶のように星がまたたいては消える=加賀。空がすっかり暗くぬりつぶされて三つばかりの星がまたたきをはじめる=石森。頭上に星々が瞬く。遠くの灯りが星のようにまたたいている=梶井。星みたいにまたたく目=田中。恒星のまわりを惑星が回る。太陽系外の惑星を発見する。 **ほしかげ【星影】** 星影が(淡い。霞む。薄氷の張った田剛欧んの水に映りちらちらと明滅する=福永)。深く澄みわたった大気の底に銀梨地のような星影がちらちらする=徳田。星影さやかな夜。 **ほしくず【星屑】** 星屑が(きらめく。散らばる。またたく)。焰加のの金粉を撒いた夜空に星屑が灯台の灯のようにきらめいている=林美。町々に灯りが星屑のように散らばる二葉亭。 **ほたる【蛍】** 火箭ひゃのように早く真っ直ぐに飛ぶ蛍"大岡。蛍が(すうっと流れて行く。闇を縫って飛ぶ。水面を漂う細い糸のような光の筋を曳き、解きつほぐれつしながら漂う」長野)。暁の光の中に最後の光を霞のように融とけこませ蛍が死んでいく連城。たくさんの豆電灯が千の蛍でも集まったようについている!宮沢。蛍の光が星影に紛れこむ。おびただしい蛍の群れが花火のように吹きこんでくる=中村真。蛍ほどの赤い火吉川。光がふわふわ漂ったり静止したりしながら田んぼのあちこちに灯っている三浦し。蛍のような光では新聞もろくろく読めない!木山。時期外れの蛍のような頼りない灯り。有吉。蛍のように(小さな火が浮かんでは消える=連城。青くぺかべか光ったり消えたりする宮沢)。煙草の火がぽつんと蛍のように光る=高村惑。石垣の蛍みたいに金強妙妙に眼を光らせる=辻井。混乱した頭の中に蛍火のように残っているものをあせって取り上げる=大佛。鋭い眼が焚きたきの明かりを受けて蛍火のように障の色を明滅させる=福永。評判が月の前の蛍火のように見る影もなく消される菊池。闇にかすかに明滅する蛍火のように頼りなくかほそい!小林久。 **やこうちゅう【夜光虫】** 夜光虫が(青光りする海。美しく光る海。波を銀色に染める=福永)。波が寄せるたびに夜光虫が蒼白はゆく光る=福永。妖しくきらめく夜光虫の仄蓋加細い光=福永。小波にぶが揺れるにつれて夜光虫の群れがいっせいに並んで光り出す=日野。暗い一面の夜空が夜光虫のようにほのかに光る柴田翔。光栄が夜光虫のように群がり光る三島。街の灯が夜光虫のように密集している"小林久。 <934> # 引く・抜く **きかんしゃ【機関車】** ▼機関車(線路の上に重しのようにずしりと止まる=尾辻。鉄のライオンのような"尾辻)。機関車が(貨車を牽引する。嵐のように迅はゃく通り過ぎる=久米。悲鳴に似た汽笛を鳴らす=辺見)。淼音ぶらを立てて機関車が通過する。技術革新を牽引する機関車の役割を果たす内橋。機関車を動態保存する。病勢が機関車のように驀進にする=高村光。蒸気機関車を動かす。 **くじびき【籤引き】** くじ引きで(一等が当たる。決める)。碁盤目をあみだくじのように辿たとつていく=高村慈。おみくじを引く。くじで選ぶ。くじを引く(つまらない。不運の)。宝くじに当たる。福引きで賞品を当てる。抽選で三人を選ぶ。買い手を抽選で決めるほどの人気=篠田。抽選に(当たる。外れる)。厳正なる抽選の結果。 **さしひく【差し引く】** 差し引く(売り上げから費用を。給料から源泉課税を)。▼控除する(医療費を。保険料を。労働の量を)。▼天引きする(給料から保険料を。年金から税金を)。▼口座から引き落とす(公共料金を。家賃を)。クレジットカードで引き落とす。 **じしゃく 【磁石】** 磁石が(鉄を吸う。鉄片を吸い寄せる)。両限が磁石で吸いつけたように寄る阿久。磁石に(鉄片が吸いつけられるように後を追うに山田瓜。引かれるように近づく=隆。鉄のように引きつける=荻野)。神経が磁石に吸い寄せられた砂鉄のように一つの幻像の上に集注する=有島。磁石の虫が掌(50でぶるぶる頭ふるえる=本庄。野火の煙が回転する磁石の針のように揺れる=大岡。強力な磁波で遮られたようで近づきがたい高樹。二千がウスの磁気を帯びた強力な目配せ荻野。磁石のように人を引きつける荻野。上下の瞼が磁気を帯びたように両方から近づく=岸田。磁針が北を指す。 **しゃせん【斜線】** 美しい斜線が違い裾まで伸びている山の端は=川端。斜線を(入れる。引く)。斜めに線を引く。一条の稲妻のように斜めに走る線!森局。 **せん【線】** ▼線(曲がりくねった。妥協できる最低の篠せん田)。体の線が崩れる。三枚目の線で通す。線の細い少年。横顔の線の柔らかさが浮き彫りになる谷川。かなりいい線まで行く。怨恨の線も無視できない=貫井。床の上に指で線を引く。汗が一筋こめかみに線を引く=横山。硬質な線を描く頬の笙野。腰の線を目でなぞる=重松。子供が描いたような稚拙な線を持つ図像"井上靖。地平線の彼方で竜巻が細く黒い線を描きながら動いている"船戸。チョークでさっと線を引いたような飛行機雲"重松。裏罫げの太い黒線が氏名の横に引かれる=林京。白線を引く。傍線の部分を解釈する。随所に赤い傍線や感想や心覚えやがびっしり書き込まれている。みみず腫れのような盛り上がった一本の筋梅本。横線を(記入する。引く。渡す)。目や鼻や顎のラインが尖った鉛筆でなぞったようにくっきりと光の中に浮き出ている=小川。 **たぐりよせる 【手繰り寄せる】** ▼たぐり寄せる(縄を。真相究明の糸口を。するするとローブを。ぼんやりと古い記憶を藤沢)。周到に張り巡らされた糸にたぐり寄せられる=沢木。▼繰り寄せる(綱を。投網ぁを。ロープを)。▼たぐり上げる(網を。スカートを。縄を)。たぐり込む(網を。釣り糸を。縄を。ローブを)。 **たぐる【手繰る】** お金の使途をたぐる。▼糸をたぐるたぐる(思い出の。凧たこの)。因果の糸を手繰る=阿刀田。記憶をたぐりながら話す。▼たぐり出す(コードを。ザイルを。ローブを)。蚊帳かゃの端をたくし込む。 **ちょくせん【直線】** 直線と(曲線を使い分ける。直線が交差する)。直線にそびえ立つ城壁。第四コーナーを回って直線に入る。帯の下の背縫いが絹糸に錘心もをつけて垂らしたようにびんと一本の直線になっている!有吉。▼直線に延びる(通路が。細かい砂礫されを敷いた道が"高井)。直線コースを歩く。 **ぬきだす【抜き出す】** ▼抜き出す(煙草を一本。書物を本棚から。白扇を帯際から)。▼一枚抜き出す(札を。名刺を)。抜き取る(財布から札を。鍵を穴から。煙草を一本。本棚から本を一冊。陥きゃこと大刀を帯から=村上元)。太刀を抜き放つ。▼抽出する(エキスを。エッセンスを。結晶を。本質を。標本をアトランダムに)。無作為抽出の抜き取り検査。 **ぬく 【抜く】** ▼抜く(生き馬の目を。きれいに足を。魚の腸がらを。刺さった矢を。櫛の鏡を。適当に手を。伝家の宝刀を。ビールの栓を。ふっと気を。栓をぼんと。カメラからフィルムを。血管から注射器で血を。差し添えの短刀を。封筒から便箋を。ふにゃふにゃに魂を)。気を抜く暇もない。手を抜くつもりは毛頭ない。力を抜く(肩を揺すって。体から。ほっと両肩の。がっくりと全身の)。鏡を抜いた四斗樽。力を抜いたむだのない動き=飯田。人の目を抜いてこっそり外で出会う“二葉亭。存在感が群を抜いている。腰を抜かさんばかりに仰天する熊谷。▼抜かす(驚いて腰を。女の話にうつつを)。衣紋似もを抜き加減に着る。銃弾が腿う。を撃ち抜く。苗の混んでいるところをうろ抜く。猛烈なスピードで追い抜く。▼書き抜く(一節を。文章を)。スキャンダルをすっぱ抜く。胸板を突き抜く。抜き放つ(長剣を。ばっと)。肩を拳銃でぶち抜く。岩山を掘り抜く。揉もみ抜く(芯を。綿を)。 **ばっとう【抜刀】** ▼抜刀する(やにわに。ぎらりと)。抜刀して(斬りつける。対峙する)。一刀をすらりと鄲走いらせる。刀を抜く。抜き払う。抜いて斬り合う)。すらりと腰の刀を抜き放つ。脇差しを(抜き放つ。引 <935> き抜く)。 **ひきずる【引き摺る】** ▼引きずる(着物の裾を。悔しい思いを。昨夜の余韻を。縄をかけて。いい加減な生活を。後ろめたい気持ちを。落ち着かない気分を。長いスカートを。目に見えない糸を=尾辻。悪い方の脚を辛そうに=常盤。胸倉をつかんでずるずる=川端)。当時の恨みをいまだに引きずっている。引きずられる(相手の挙動に。利害関係に。当時の過熱した風潮に有川)。どうにもならない欲望にひきずられる"高橋知。▼引きずり回す(地べたを。畳の上を。縦横無尽に。髪の毛をひっつかんで)。 **ひきだす【引き出す】** ▼引き出す(誤った結論を。厩今まから馬を。貴重な教訓を。自由な発想を。有利な条件を。機能を存分に。女性を社会に。胞はの中から書類を。期待通りの台詞謎』を。器用に相手から本心を。入金後に全額を。潜んでいる能力を。スーツケースを押し入れの奥から)。話の引き出し方が上手い。糸を繰り出す。 **ひきつける【引き付ける】** ▼引きつける(関心を。能的に男を。国民の耳を。注意を。強烈な磁場で。ぐいぐいと。たまらないほど心を。読者の心を強く)。麻薬のように人の心をひきつける=村上森。強く引きつけて寄り倒す。読者を引きつけて離さない。回しの引き付けが強い。首相の求心力に陰りが出る。求心力のある人材。 **ひきぬく【引き抜く】** ▼引き抜く(ぐいっと剣を。櫛さゃから刀を。伝家の宝刀を。野の草を。雪から足を。一本残らず。茎をつかんで。札を一枚。大根を畑から。根こそぎ。本を本棚から。腕のいい職人を。ぎらりと大刀を。ネクタイを首から。針をゆっくりと)。魂を引き抜かれる。座りこんだ人たちをごぼう抜きにする。練馬の大根畑から引っこ抜いてきたような女"つか麻ぐ官。引っこ抜く(髪の毛を。雑草を。鼻毛を)。 **ひきよせる【引き寄せる】** 引き寄せる(手首を乱暴に。肩をそっと。無理やり。テーブルの上の塩入れや胡椒入にいれを引き寄せるみたいな遠慮会釈のない手つきで体を"田辺。長火鉢の前に座って煙草盆を"山本周。流れてくる息がてぐすのように欲望を"山田詠。左右から掌2090を当て軀炒らを挟みつけるようにして=吉行)。手元に引き寄せる(灰皿を。ベンを。メモ用紙を。湯飲みを)。我が身に引き寄せて考える。ぐいっと刀を引きそばめる。 **ひく【引く】** 引く(顔のむくみが。首筋の汗が。車を馬が。総身から血が。熱が。腫れが。批判の潮が。顔に一筋血を。ぐいっと紐ぃもを。ぐいと顎を。心に影を。自分で幕を。裾野が傾斜を。政権に弓を。世間の注目を。昔の例を。回想を脳裏に。右腕を後ろに。歴史を例に。波が寄せては。顔面からすっと血の気が。相手との間に一線を。うっすらと唇に紅を。シャツの袖口を。障子の陰に身を。親切こかしに気を。小さな子の手を。弾かれたように体を。ひときわ人の目を。カーテンを横に。辞書を引きづめに。釣り糸を強めに。取っ手をやみくもに。大八車をがらがらと。不幸の引き金を=原田宗)。▼惹く(興味を。好奇心を。同情を)。潔く身を退く。後を引く(一抹の憂鬱が。余韻が)。・糸を引く(納豆が。事ごとに裏で。涙がすっと)。・尾を引く(悪い後味が。流れ星が一筋。ためらう気持ちが)。線を引く(床に。チョークで)。波が引く(発作の。笑いの)。人の波が寄せたり引いたりする。引いていく(顔から微笑が。汗がすっと。顔から血の気が。波が打ち寄せては)。無数の人たちが汐しょのように引いて行く宮本輝。馬に荷を引かせる。とぼとぼと幽霊のように引かれて行く。安岡。▼引き合う(お互いを。手を。紐を)。一歩も引けない交渉。引くに引けない立場。背水の陣で戦いに臨む。背水の陣を敷く。いまさら引くわけにはいかない。このままでは引っ込みがつかない。今さら引っ込みもならない。不退転の(意志を貫く。決意を固める。勇猛心が燃えさかる)。 **ひっこめる【引っ込める】** ▼引っ込める(恐る恐る腕を。自分の主張を。一度出かけた答えを。のどまで出かかった声を。腕をそろそろと。手をおずおずと)。▼引っこめる(火にさわったみたいにあわてて手を"三愉。手を感電したように=五木)。▼手を引っ込める(思わず。伸ばしかけた。いったん伸ばした)。 **びんぼうくじ【貧乏くじ】** 貧乏くじを(背負い込む。引く)。損な役回りを(受け持つ。演じる。押しつけられる)。 **れい【例】** 世間にはいくらも例がある。例によって例のれいごとく笑う。有川。現実の問題を例に説明する。手っ取り早く冒頭のところを例にとろう。史上に例のない金字塔を打ち立てる。またぞろ例の相談を始める。例を山ほど知っている。一二の例を引くにとどめる。かつて例を見ないほど盛大。二三の例を話すにとどめる。卑近な例を挙げる。ほんの一例にすぎない。一例を挙げる。この一例を以てしても明らか。古今東西の民俗学的事実を引例する。論文の引例をそのまま孫引きする。いかに難しいかを示す好例。悪しき前例となる。前例のない作風。▼文例集(スピーチの。手紙の)。▼例示する(仕様書を。書式を。具体的に)。例文を掲げる。過去に実例がある。眼前の実例に圧倒される。実例は枚挙に追訟とがない!舟橋。実例をあげて説明する。ほんの二三の実例を申し上げるにとどめる=江戸川。何かと言えば引き合いに出される=倉橋。引き合いに出す(経験を。故事を。祖父の名を)。 **わりびく【割り引く】** 話を割り引いて聞く。自賛したい気持ちを割り引きする。大幅な値引きで投げ売りする。値引きをすれば儲もうけが減る。商品を値引きする。 <936> # 批評する・反省する **あくひょう【悪評】** 悪評が(広がる。耳に伝わる)。悪評の嵐がやまない。内外の悪評を受ける。世間の悪評を一身に集める火坂。冷評する(新作を。世間を)。 **かだいひょうか【過大評価】** ▼過大評価する(才能を。敵の力を。芸術家という人種を)。敵を過大に評価する。世人の買いかぶりを受ける。▼買いかぶる(実際以上に。不相応に)。 **こうひょう【好評】** 好評につき売り切れ。晴々さくたる好評の嵐。好評をもって迎えられる。公演が好評を得る。江湖の好評を博する。評論家たちが挙こぞって絶賛する。▼受けがいい(客の。上司からの。読者の。仲間の。同僚や下の者に)。客の受けは上々。大受けに受ける。客受けがすこぶる良い。客受けの(する演目。よい店)。衆口一致してほめそやす。上々の声価。声価が高まる。声望が高い。声名が(上がる。高まる)。盛名を(持続する。高からしめる。はせる。ほしいままにする)。声名をはせる。世評が高い。俗受けする作品。俗受けを狙う。世上に評判が高い。大変評判がよい。評判がいい(えらく。客の)。評判のいい先生。客の評判は上々。 **こくひょう【酷評】** ▼酷評される(史上最悪と。駄作と)。身も蓋もない講評。罵倒に近い批評。手厳しく批評する。辛辣な批評を下す。▼評価する(残酷に。悪く)。苛酷な評点。 **してん 【視点】** 視点が一点に釘付けになる。叙述の視点が混乱している。いろいろな視点から見る。違う視点から考える。鳥瞰的にうかな視点に立つ。一つの視点に固執する。自由で奔放な視点の移動。ぼんやりして視点の定まらない目。きょろきょろと視点を動かす。 **しなさだめ【品定め】** 人の品定めをだらだらと続ける。▼品定めする(魚を。出来栄えを。身なりを)。品物を見定めるような冷ややかさ=渡辺。品定めをするような瞳。品定めをするように上から下まで見つめる=伊集院。▼月旦(人物。文壇の)。月旦評を語る。▼品評する(品物を。何やかや賑やかに)。男の品評をしあう。見立てが(うまい。上手。つく)。娘の品定め。娘たちの品定めに熱中する。雨夜の品定めをする。 **じんぼう【人望】** 人望が厚い。人望がある(絶大な。地侍を動かす)。人望のある人物。人望を(集める。一身に集める)。あたりに聞こえた名句正家。名望のある(政治家。人)。土地の名望を一身に集める。 **ていひょう【定評】** ▼定評がある(手堅い経営で。小説作りのうまさには。素行の悪いことでは"石川)。▼定まる(声価が。世評が。評価が)。定評ある(手腕。品物)。極め付きの(美人。名作)。良心的な店ということで名が通っている=佐野。評価が安定する。評判が世問に広がる。地獄耳として評判が高い。評判となる(知人の間で。就職率の高さが)。 **にんき【人気】** 人気が(一層高まる。鰻登りぎりになる。天井知らずに伸びる)。今に至るまで人気が衰えない。▼人気がある(子供に。市民に。女子大生に。なかなか。毒舌が玉に瑕きずだが何しろ美人なので男性隊員に"有川)。生徒に人気がある先生。人気たるや素晴らしいものがある。人気に(躍らされる。神経を配る)。案に相違の人気に出くわす。人気も実力のうち。人気を(一身に集める。一層高いものにする)。圧倒的人気を博す。長期にわたって人気を維持し続ける。満都の人気をあおる。民衆から根強い人気を得る。人気を呼ぶ(いやましに。たちまち)。気受けがよい。役煮絵に描かれた人気役者"北原。人気随一の作家。人気投票で一位になる。選挙目当ての人気取り。人気取 **ねぶみ【値踏み】** 男を値踏みでもするような目つき「小林久。公平に値踏みをする。値踏みする(容を。家屋を三千万円と)。値踏みする目で睨ぁめ回す=辺見。値うみするように(室内を見回す。全身に視線を道はわせる―熊合)。 **はんせい 【反省】** 反省が(頭をよぎる。心に去来する)。反省の色を浮かべる。反省する(至らなさを。生活態度を。真祭しんに。素直に。一人静かに。深く、自分の浅はかさを。無節操な生活を。良心に手をあてて)。それとなく反省させる。胸に手を当てる。省みる(失礼を。不甲斐心がなさを。我が身を)。▼自省する(無思慮を。無知を。静かに。深く)。省察を(促す。強い る)。前非を(悔悟する。悔い改める)。前非を悔いて(謝る。真人間になる)。▼内省する(一日の行いを。自己を)。内省的な口調。▼猛省する(過ちを。不祥事を)。 **はんせいしない【反省しない】** 一度も反省しない。▼省みない(一笑に付して。恬てんとして)。いささかの改俊灬しの気持ちもない。反省する風もない。反省などひとかけらもない。反省の(声が聞こえない。素振りを見せない。様子が見られない)。顔に反省の色など微塵ふじもない=東野。一向に反省の色が見えない。反省を(投げ捨てる。反故にごにする)。自己の才能に対する無反省な過信=中島救。無反省に暮らす。 **ひはん【批判】** 世岡の批判が収まる。世論の批判が高まる。予想以上に批判が強い。批判に(背を向ける。耳を傾ける)。時々の批判に鋭鋒味いが顔を出す。美濃部。批判の(色合いが薄い。急先鋒うせに立つ。声が噴出する。矛先を向ける。矢面に立つ。風当たりが強い。視線にさらされる)。筆鋒う鋭く批判の矢を放つ。冷静な批判の目を向ける。抑揚を抑えた冷たい批売れっ子。売れっ子の(解説者作家。タレントの様に。 <937> # 批評する・反省する―303 判の現れている調子で言う~野問。批判を真正面から受け止める。社会的批判を受ける。痛烈な批判を試みる。内外の批判をかわす。一言二言鋭い批判を漏らす。関係外の方に批判を受ける訓ぃゃれはありません=有川。▼批判を加える(仮借なき。手厳しい)。批判する(貸し渋りを。修正主義を。守旧派を。植民地主義を。絶えず冷静に。実例を挙げて。かたくなな態度を。ひとりよがりを。独善ぶりを鋭く)。政府を批判する鋭い筆鋒。国家権力を批判する論調は目をつけられやすい=有川。戦争批判を掲げる。批判精神が(旺盛。欠如する)。批判的な(態度を取る。立場に立つ)。利権に批判的な人間。多少とも戦争に批判的な考えを持つ"加藤。批判的に見る目を持つ。解剖刀メスのような日頃の批判力が鉛のように鈍る=有局。あげつらう(些細心、な欠点を。身体的欠陥を。片言隻語を。論文の不備を)。鋭録を巧みに避ける。錄鍵取りがすこぶる強い。みだりに鋒鉄をあらわさない。 **ひひょう【批評】** ▼批評(正鴿ごごを射た。毒気を含んだ。頂門の一針ともいうべき)。青二才の分際で師の批評などおこがましい=中島敦。批評を(気にする。耳にする)。得々として批評を開陳する。批評する(忌憚たなく。厳しい論調で)。批評がましい意見。高度な批評眼を持つ。批評精神が脈々として今日まで伝えられる=今來。批評的な言辞を吐く。文明批評的な未来小説。堂に入った批評ぶり。正鵠を射た評。合評会に参加する。合評する(小説を。詩を)。衆評を眼中に置かない。書評が新聞に掲載される。寸評を書く。示唆に富んだ短評。評が耳に入る。毒のある評が交わされる。評言を事実で裏書きする。評語を(書く。記入する)。▼評する(作品を。小説を。冷めた目で。ずばり一言で)。評論が芸術一般に及ぶ。筆鋒ごう鋭く論評する。論評は手厳しいが言い方はあっけらかんとしている。論評は芸術の域にはいるかどうかも問題だ。 **ひょうか 【評価】** 評価が(なかなか確定しない。両極端に分かれる)。自己評価と他人の評価が乖離ゆぃする。歴史的な評価が定まる。後の評価に待つ。評価する(人の能力を。好意的に。財産を時価に。実際以上に。実力以上に。一歩前進と。実力を高く。不当に低く、実地に照らして)。▼評価される(水準の高さが。国際的に。才能を高く)。高く買う。伝統芸能の再評価。▼再評価する(作品を。資産を)。アセスメントが不十分。アセスメントを実施する。▼価値判断(客観的な。主観的な。傑作か駄作かという)。点がきつい。点を甘くする。評点がからい。 **ひょうじょう【評定】** 揺るぎのない評定。評定が(延々と続く。主戦にかたむく)。城中の評定が終わる。軍議を(凝らす。まとめる)。 **ひょうばん【評判】** 評判が(各地に伝わる。遠くまで及ぶ。たちまち火のように広まる=永井荷)。案外評判がいいらしい。評判に(違わず美形揃い。なるような本を一冊も書いたためしがない=山本周)。かねて評判に聞いている。世間の軽薄な評判に叩きのめされる"山本周。評判になる(またたく間に。もっぱらの。耳目の早い巷5ぼの。あっちこっちで寄ると触ると永井荷)。評判の(器量よし。小町娘。働き者)。村でも評判の仲のいい夫婦"曽野。世間の評判は取り止めもないもの=山本周。評判を(気に病む。耳に入れる。それとなく聞き回る)。後々の評判を考える。かねがね評判をうかがっている。安くてうまいという評判を聞きつける=北原。▼評判を立てられる(妙な。悪い)。毀誉褒貶さに相半ばする。毀誉褒貶を顧みずに事に当たる。世評のでたらめさに怒る。 **ひょうばん【下馬評】** 下馬評が高い。下馬評に上る。講評を述べる。講評する(作品を。論文を)。批評家に酷評される。時間という偉大な批評家に合格したすぐれた本白井。批評家の好餌となる。▼評者(個性豊かな。気鋭の)。 **ひょうばんどおり【評判通り】** 評判どおりの美人"筒井。看板に偽りなし。名に背かない。▼名に恥じない(一国の守護の。天才の。名作の)。天才の名をはずかしめない出来。 **ふうせつ【風説】** 事実と虚構が混濁した風脱。風説が(はびこる。広まる)。ありもしない風説に脅かされる。単なる風説にすぎない。風説を耳にする。 **ふうひょう【風評】** 風評が(伝わる。流れる。耳に入る)。とんでもない風評が立つ。風評の的になる。とかくの風評のある男。風評被害を受ける。巷説に、うに惑わされる。 **ふにんき【不人気】** 政治的に不人気。不人気に歯止めをかける。不人気をかこつ。人望がない。人望を失う。人気が(落ち目になる。急速に衰える。下火になる。下降線をたどる)。依然として人気が出ない。人気のない仕事。羽振りが悪い。 **ふひょう【不評】** 不評の声が高い。不評を(買う。招く)。受けが悪い。受けない(さっぱり。全然と言っていいほど)。受けを悪くする。傷がつく(評判に。店の名に)。客受けがよくない。声価が失墜する。声望が(なくなる。めっきり落ちる)。世評が(芳しくない。低い)。名前に泥を塗る。家の名を汚す。評判が(地に落ちる。あまり芳しくない。一度に下落する)。近所の評判がひどい。すこぶる評判が悪い。評判の悪い遊び人。評判は概ねよろしいとは言えない。▼よくない(受けが。評判が)。 **まえひょうばん【前評判】** 前評判が(芳しくない。高い)。前評判はあまりよくない。前評判通り売れる。▼触れ込み(資産家という。なかなかの美人だという丸谷)。前景気が盛り上がる。前景気をあおる。 **むひはん【無批判】** 無批判な(賛美。報道。模倣)。無批判に現状を肯定する。神々の啓示を無批判に受け入れる=光瀬。 <938> # 平べったい・均す **いた【板】** 柾目の板。板に英座こざを敷く。馴れると追い追い板につくようになる谷崎。▼板につく(仕事が。生活が)。板を横にずらす。真っ黒に塗った板をすぐ目の前に突きつけられたような闇"言行。真っ直ぐな板のような背"野間。水が板のような堅い感じを舟底にぶつけそのたびに舟が浮き上がる!幸田文。板のように張った肩がぶるぶる慄ふるえる=円地。肩が板のように凝る永井荷。体が板のように硬直する=岡本。こめかみが緊張して板のようになっている佐藤愛。畳が板のように緊しまって固い=横光。血が凍りついて板のようになる=子母沢。腹立ちが困惑におさえつけられ顎の下あたりで板のようにつっぱる安部。腹壁が板のように固くなる佐藤春。身じろぎもせず板のように横たわる=森別。厚板を(打ちつける。敷く)。板っぺらのようにすり減った下駄の裏山本有。薄板を(かぶせる。貼りつける)。▼腰板(壁の。障子の)。羽目板から屋根の庇いへ火が燃え移る。羽目板に後頭部を打ちつける。ベニヤ板を(打ちつける。張根る)。バネルの説明を読む。札が入り口にぶら下がっている。プレートをドアに貼り付ける。タイルがびかかぴか輝く。タイルの目地がかびる。路面にタイルを敷き詰める。タイル張りの浴室。 **いたのま【板の間】** 板の間に上がる。べたんと板の間に座る。黒光りに古びた玄関の板敷き。板敷きに(さこ寝する。ぺたっと座る。両手をつき頭を下げる)。垢あかで黒ずんだ板張り。フローリングの洋間。フローリングを美しく保つ。 **かんばん【甲板】** 甲板から海水が滝のように流れ落ちる=鈴木光。甲板に乗組員が鈴なりになる。甲板をモップで洗う。靴の先で甲板をこつこつと叩く。作業甲板が戦場の様相を呈する=鈴木光。デッキに(たたずむ。人影が見える)。 **げんや【原野】** 原野(車が進むのが分からぬくらい広い単調な"加賀。茫々として涯が見えない本庄)。茫漠にいたる原野が目の前にひらける三浦綾。目の極まる限り坦々とした原野が続く本庄。動物を原野に放つ。原野を吹き過ぎる風。うそうろと原野をさまよう。 **すいへい【水平】** 銃を水平に構える。手を水平に伸ばす。秤にかを水平に保つ。表面を水平にする。両手を大きく水平に広げる。腹ばいになって水平に撃つ=泉優。二人の愛の秤の重さが水平に保たれる"瀬戸内。徳利の酒をこぼさぬように盆を水平にして運ぶ=武田爽。飛行機が水平飛行に入る"重松。 **せいち【整地】** ▼整地する(校庭を。畑を。平らに。グラウンドをトンボで佐藤多)。均す(地面を。土地を)。 **そうげん【草原】** ▼草原(平坦な。広々とした。茫々ぶらとした。かすかに青みはじめた=山本周)。草原が(圏に沈む。ゆるやかに起伏する。遥か彼方の地平線まで広がる=なかにし)。草原を渡る風の音。白煙が草原を這っていく。一望千里の草原を吹き抜ける朔風"人間。どこまでも草の波が続くぃあさの。見えるものは草また草のひと色"本庄。茫々たる萱原助け。木陰から草地へ走り出る。すすきが一面に生えた草地"村上系。草地造成をした丘。 **だいち【大地】** 大地が(火山灰に埋れる。甘露の慈雨を吸って生き生きと輝く人問。ひっくり返るほど驚く今東)。陽照りで乾いた大地が雨を吸いこむように声が胸にヒタヒタとしみこむ"石坂。大地に(体を投げ出す。根を張る。膝をつく)。大地の恵みに感謝する。恐ろしく大きな大地の裂け割れるほどの声!内田瓦。洗う。広々と力強く大地を吸い込むような半球の空加賀。深く太くかすかに憂いを含んで地軸の底から湧き上がってくるかのように胸をうるおす声光輝。闇が地平を埋めつくす。地軸を揺るがす鳴動が湧く=藤本。バフバフと地軸を揺るがし踏みにじるような爆弾の落下音=梗。 **たいら【平ら】** 貯水池の水がコバルトに濁って平ら"大岡。低い平らな声。ゆるい丘の平らな頂上。敷布を平らに伸ばす。平らにする(表面を。土をテーブルののように小松太)。波が平らになる。吹雪が原野の面を磨いて一枚の鏡のようにまっ平らにする=本庄。地ならしする(荒れ地を。グラウンドを。土を)。平らかな寝息。心の尖ったところが春の陽に撫でられた氷のようにやさしく溶けて穏やかに平らかになる=北村。のっぺらぼうな土地。鏡のように平滑光洒。平潤な一歩一歩を刻む。平面的なのっぺらぼうの顔。 **てっぱん【鉄板】** 鉄板の扉ががっちりとしまっている。かーんかーんと鉄板を打つ音"佐多。焼けた鉄板を踏んづけたようにハネ上がる"小林多。靴の革が寒さに凍って鉄板のように堅く冷たい"有島。背中が鉄の板でもはめ込まれたように痛い高橋三。鋼板にめっきを施す。鋼板を(圧延する。成型する。プレスする)。新しく灼ぐいたばかりの青い鋼の板のようなた宮沢。雨が屋根のトタンを叩く。屋根にトタンを被せる。陽光に焼けたトタンのように熱い=篠田。トタン板を引きはがす。トタン葺きの家。汗で濡れた着物が凍ってブリキのようにかたくなる=本多勝。バネじかけで動くブリキ細工のオモチャのようにギクシャクと羽を動かす鳥本多像。ブリキ皿のような湖"長崎。 **ならす【均す】** ▼均す(不公平を。道を。表面を水平に。コートを平らに。足元の土を軽く)。白い波頭を均すように風の脚が移って行くに大岡。かき均す(砂を。田んぼを。土を)。ぽんぽんと砂を平手で叩き均す。▼踏み均す(グラウンドを。地面を。新雪を)。 <939> # 平べったい・均す-304 **のはら【野原】** 野原が今泣きやんだようにまぶしく笑うぃ宮沢。青くかすんだ野原の果て。飛行機の窓から綿のような雲の野原を見下ろす=鷺沢。廊下が春の野原のように暖か井上ひ。野に(咲く花。緑が萌える。低く雲がおりて目路めじを厳ぉぉう(本庄)。野が白一色に塗りこめられる。目の前に広い野が開ける。獣を野に帰す。虎を野に放つ。野はかまどのように熱く土さえ燃えそうな暑い日=室生。花が野を彩る。器もやが野を覆う。小川が野を走る。風が野を吹き抜ける。夕日が野を照らす。野末の(露と消える。ここかしこに煙が棚引く)。風が野而を駆けめぐる。暮色が野面を這ってくる。汽車が枯れた野面60っを走る=福永。静かな雨が野面を丘を樹を仄白250く煙らせる=佐藤卷。野中の(一軒家。一本道)。野辺(うららかな。冬枯れの荒涼とした)。野辺吹く風に誘われる。▼原(一面の茶ぁしの。磊々らいたる石の。時雨にそぼ濡れた芒討すの=福永)。雑草の原が広がる。なだらかな原っば。原っぱを風が吹き過ぎる。光が原っばを照らす。 **ひらべったい【平べったい】** ▼平べったい(底が。胸が心持ち。顔が富有柿のように丸く=山本有)。見映えのしない平べったい目鼻だちゃ向田。叩きつけられたヒキ蛙のように平べったくなる=獅子。のっぺりした(壁。平原。無表情。顔をつるんと撫でる=高杉)。頭が重戦車に轢ぃきつぶされたように平たいオオサンショウウオ=畑。停留所に並んでいる人々が紙人形のように平たく見える=黒井。バターナイフでてっぺんを平たく切り取ったような島若竹。病人が干し鳏げぇのように平たくなって昏睡に以している=吉川。舌のように扁平な魚佐多。 **へいきん【平均】** 平均を遥かに下回る。危ない山の背のような部分にやっと平均を保って立っている=伊藤整。平均値以下の感情や知性水準に低迷する=高橋和。美人なるものは顔立ちが画一的というか平均的"小沢。平均的な(学生。ユーザー)。 **へいたん【平坦】** 平坦な(丘陵が広がる。道が続く)。神去地区は山に囲まれた小さな集落で平坦な土地がほとんどない三浦し。ことさらに調子を抑えた平坦な声=宮部。槌でたたいたような平坦な低地=加賀。飛行場の滑走路を思わせるほど広く平坦な路面=日野。記憶が平坦に均される。平坦地が広がる。坦々たる飛行場が遠くまで広がる。坦々とした思い畑が拡がる。 **へいや【平野】** 平野が遠く見渡せる。海のような平野が広がる=開高。平野を(貫流して流れる川。吹き抜ける風に秋の気配がする=西木)。濁流が平野を飲む。炎が平野をなめる。大平原がどこまでも続く。平原に散らばる人家。風が平原を吹き抜ける。広漠たる平原を氷のような風が吹き過ぎる=光瀬。平地が(山を負う。扇形にひらいている)。川が平地にうねる。山から平地に下りてくる。盆地(すり鉢の底のような深沢。夏の陽射しを一杯に吸いこんだような明るい=檀)。周囲に山をめぐらした盆地そのものが冷たい藍色の大気を湛たたえた水槽のよう。大佛。盆地を貫流する川。 **ほそう【舗装】** 道路の舗装が切れる。舗装する(道路を。敷地を一面に。コンクリートで)。アスファルトが(陽炎砂沢に歪ゅがむ。鉛筆で光らせたように凍てて不相る=梶井)。舗装道路のアスファルトがゆるやかに波打つ=日野。楽影がアスファルトにくっきりと映る。日ざしがアスファルトの粗い面ではね返されて散乱する=日野。真夏の太陽がアスファルトをじりじりと熱する=林真。アスファルトで舗装する。アスファルトのような妙にめとめとした粘っこさ=石森。 **ぼん【盆】** 盆に載せて運ぶ。湯飲みを盆の上に並べる。盆を(小脇に抱える。押しのけて膝を進める)。小松の茂った山が盆を伏せたように煙る=水上。お盆に(急須を載せる。皿を載せる)。お盆を小脇にきっちり抱える。厚い雲の向こうに太陽が白い盆のように浮く=高井。落ちかかる日輪が肉桃色の盆のように空虚に丸い=岡本。ビンクの大きな丸盆のような顔"田辺。 **ゆか【床】** 鏡のように光って見える床=石坂。床が(つるつる滑る。抜ける。水浸しになる。ぎしぎしと鳴る。靴音を柔らかく吸い込む。振動でびりびりと震える。波打つように揺れる。地の底からずずつんと突き上げられる古井)。セメントの床が乾ききった砂地のように白々とざらつく=日野。床に(あぐらをかく。腰を下ろす。尻餅をつく。長々と伸びる。べたんと座る。目を落とす。ごみが散らばる。ごろりと横たわる。へなへなと座り込む。ワックスを塗る。べったり尻をついて木偶でくみたいに腑抜けてしまう古井)。くたんと床に倒れる。膝を折って床に崩れ落ちる。服がばさりと床に落ちる。ふらふらと床に膝を突く。放心したように床に坐りこむ"小池。床の根太ぁだが緩む。床の上に(くすおれる。ごろ寝する。ぶっ倒れる。ハンドバッグの中身が飛び散る)。体が床の上に転がる。ずるずると床の上にへたり込む。床の上を少しずつ道ぃっていく。床を(ずるずると這い進む。どんどん と踏み鳴らす)。ごろごろと床を転がりまわる。とんとん床を踏む。ハイヒールの踵いかでこつこつ床を鳴らす。黙々として床を磨く。モップで床を掃除する。顔の映るくらい床をビカビカに磨きあげる=開高。根が生えたように冷たい板の間へ坐すぉりこむ芝木。フロアが無人になる。フロアに(人が増えてくる。不自然な静けさが広がる)。一つのフロアを共有する。 **ゆかいた【床板】** 床板が(ぎしぎしと児きしむ。ぼっかりと抜ける)。磨きこんだ床板が鏡のように光っている=津本。▼床板がきしむ(歩くたびに。ぎしぎし)。床板も磨きぬかれて木肌の底から艶がにじみ出る=皆川。銃弾が床板を貫通する。どたどたと床板を踏み鳴らす音が近づいてくる集合。 <940> # 翻す・裏返す **あべこべ** あべこべ(裏表が。順序が。話が。左右)。あべこべにやりこめられる。問題と答えをあべこべに書く。話が後先になる。半ズボンを後ろ前に祭はく。▼後ろ前に着る(シャツを。セーターを)。帽子を前後ろにかぶる。セーターを前後ろに着る。 **うしろむき【後ろ向き】** 後ろ向きに(ひっくり返る。物を考える)。心がくるりと後ろ向きになり逃げ腰になる=高樹。後ろ向きの(思いが去来する。センチメンタルな姿勢)。改革に後ろ向きの姿勢をとる。後悔は後ろ向きの感情=柴田瑚。後ろざまに(倒れる。とんぼを切る)。刀を後ろざまに抜き打ちする。▼逆走する(高速道路を。一方通行の道を)。進行方向と逆向きになる。通常と逆向きに流れる。 **うら【裏】** 楽が見抜けない。何か裏がありそう。うまい話には必ず裏がある。裏で(圧力をかける。暗躍する。手を回す。いろいろ画策する)。動きを裏で操る。事ことに裏で糸を引く。裏の事情に(疎い。精通している)。裏の裏まで物事を読む。裏側から光を当てる。地球の裏側に当たる地点。店の裏側に出る。裏側を照らし出す。裏のない(楽しい人。正々堂々とした商売)。 **うらおもて【裏表】** 心に裏表ができる。世間の裏表に通じる。青春は醜さと美しさが一枚の着物の裏表になっているような惑いにみちる=伊藤整。政局の裏表を詳しく知っている。世の中の裏も表も知りつくす。物事には必ず表と裏がある。コインの表と裏の関係。表と裏を間違える。▼表裏一体(楽しみと毒が。懐かしさと恨みは)。生と死が表裏一体となる。行動に裏表がある。裏表のある人。陰日向の(ある人。強い男)。一事に臨んで表裏がある。言動に裏表がない。陰日向なく働く。表裏のない(誠実さ。人柄)。 **うらがえす【裏返す】** ▼裏返す(夢と現実を。笑いと恐怖を)。声を裏返して怒鳴る。ヨーデルみたいに声を裏返らせる=村上龍。▼裏返し(好意の。劣等感の)。くるっと気分が裏返しになる。▼裏返る(声が。言葉の語尾が。くるりと)。風に裏を返す葉。風が落ち葉を吹き返す。▼伏せる(お椀を。本を)。 **うらはら【裏腹】** 言うこととすることが裏腹。気持ちと裏腹なことを言ってしまう。胸の思いとは裏腹なことを口にする。心と裏腹に舌が動く。心とは裏腹に気安く引き受ける。言葉とは裏腹に表情が暗くなる。心境とは裏腹に澄み渡った空。台詞謎』の物騒さとは裏腹に淑女のような笑みを浮かべる=有川。 **うらめん【裏面】** ▼娶面(社会の。人生の。政界の)。生活の裏面に夢が潜む。政界の内幕に通じる。内幕を(告白する。暴露する)。舞台裏で暗躍する。舞台裏をすっぱ抜く。 **ぎゃく【逆】** 逆に動いているベルトの上を駆けているようでもどかしい=長崎。同じ道を逆に辿たどる。質問に答えず逆に問い返す。世俗の常識を逆に出る。双眼鏡を逆にのぞいたようにはるかに遠く感じる=阿川弘。天地が逆になったような驚き=梅本。逆になる(位置が。左右が。順序が。立場が。向きが。夜と昼が)。逆の(結果をもたらす。バターンを考える)。逆は必ずしも真ならず。逆もまた真なり。▼逆にする(原因と結果を。語順を。上下を。前後を。方向を)。来た道と反対側に走りだす。 **ぎゃくてん 【逆転】** 逆転また逆転のドラマ。敗勢に奮発して逆転を図る。▼逆転する(主客が。順序が。立場が。力関係が。夢と現づつが。非日常と日常が。与野党の勢力が)。物の見事に形勢を逆転させる=和久。九回の裏に逆転される。昼と夜が完全に逆転した不規則な生活が毎日続く=辻仁。一発逆転の可能性が強い。逆転劇の妙味を満喫させる。逆転劇を演じる。逆転勝利を収める。会心の逆転ホームラン。土壇場でうっちゃりを食う。土俵際でうっちゃる。ラストでどんでん返しが待っている。どんでん返しに場面が変わる。形勢がどんでん返しに一変する。どんでん返しの意外さに舌を巻かざるを得ない。どんでん返しを食う。 **くつがえす【覆す】** 覆す(決定を。固定観念を。資本主義を。定説を。前評判を。常識を見事に。土壇場になって)。根底から覆される(生活が。理想が)。▼覆る(政権が。天下の形勢が。判定が。根底から)。前車の覆るは後車の戒め。 **こつき 【国旗】** 国旗が(剛翻的としてひらめく。ヒラヒラと日に光る=田山)。日章旗が(はためく。翻る)。日の丸を掲揚する。 **こばた 【小旗】** 手に手に小旗を打ち振る。懸命にちぎれんばかりに小旗を振るる宮本虾。踏切の白い信号旗が汚れた蝶の羽根のようにひらひらひらめく=椎名。旗差し物を(背にする。翻す)。 **さかさ【逆さ】** 逆さに(吊るす。ぶら下げる)。順序が逆さになる。▼逆さに振る(一升瓶を。財布を)。逆さに振っても鼻血も出ない三好後。徳利を逆さにする。他意なく冗談が口をつく=角田。他意のない悪戯に。黒い池の面に倒影が映る。 **さかさま【逆様】** さかさまにぶら下げる。▼さかさまになる(夜と昼が。上下。裏表。左右)。▼さかさまにする(ひき出しを。瓶を)。逆進性の強い不公平な税制。さかしまにひっくり返る。さかしまにする(時を。方向を)。逆立ちした議論。主客転倒した(考え方、議論)。転倒する(立場が。順序が)。倒立した談論。思熟ふに反比例した尊大さ=野上。負の相関。▼倒錯する(原因と結果が。精神と肉体が)。倒錯した(愛情。心理に陥る)。倒錯的な趣味。まっさかさまに(海に落ちる。墜落する。転落する。飛び降りる。滝壺水時に飛 <941> # 翻す・裏返す-305 び込む)。地獄の底へまっさかさまに叩き落とす!杉本。崖の際から真っ逆様に突き落とす有局。 **さかて【逆手】** 欠点を逆手にして生きる。落ちぶれた境過を逆手にとってもてなしを強要する=藤沢。▼逆手に取る(不利な立場を。悪化した事態を。不可能という一点を)。不利な立場を逆用する。 **せいはんたい【正反対】** 結果は予想と正反対。勝ち気な気性とはおよそ正反対な弱虫さん"有吉。事態が期待したものとは正反対の方向に流れる=篠田。提灯坊にうに釣り鐘。天と地。氷炭相容れぬ間柄。雪と愛。常識に百八十度反する=内橋。百八十度の大転換。 **せなかあわせ【背中合わせ】** ▼背中合わせ(幸せと不幸は。悲観と楽観は。勇気と無謀は。利便性とリスクが)。背中合わせに寝る。二人が背中合わせに座る。故障と背中合わせの厳しいトレーニング。 **ちゅうがえり【宙返り】** 宙返りを打つ。飛行機が宙返りをする。とんぼ返りを打つ。とんぼを切る。 **てんぷく【転覆】** 船がかろうじて転覆を免れる。転覆する(体制が。電車が。船が。社会秩序を。政権を。風浪を真横から受けて)。船が裏返る。 **のぼり【幟】** 名前を染め抜いた幟。幟が(風にはためく。林立する。ばたばたと重たそうな音をたてる内田百)。冬空に派手な幟がはためいているような宅もびしさを覚える=今日。幟を(押し立てる。立てる)。旗幟きしが風に翻る。幟旗町雄りがばさばさと鳴る。旌旗せいが(風に翻る。林立する)。 **はた【旗】** 翻然とはためく旅。旅が(昭翻ひんと翻る。はたはたと風にはためく。ひらひらと風にはためく。激浪に揉。まるる浮標ィのように激しく揺れる=徳永。ばたばたと風に煽ぁぉられて音を立てる=有局。ものうげに暮色を揺する=芥川。愉快に蒼空ひらに翻る"宮本吉)。スタートの旗が振られる。黒い旗が闇の中でもなびくようにうねる=小林多。自由の旗の下に集まる。旅を(高々と掲げる。風にばたばた言わせる。帆柱にするすると掲げる)。勝利の旗を掲げる。大漁の旗を景気よく翮す。散り残った葉が一枚風にふるえてさながら戦地に翻る歴戦の旗のように小松太。旗のように手を大きく振る=高樹。風が強くて会話をぼろぼろになった旗のように吹きちぎる"曽野。花嫁が蒼ぁぁさめ臉娃ぶを閉じて濡れた旗のように倒れかける=川端。旗竿を(立てる。持つ)。満艦飾の万国旗。万国旗を(飾り付ける。張り渡す)。吹き流しが翻る。色とりどりの吹き流しをなびかせる。 **はんてん 【反転】** ▼反転する(株価が。地価が。船が。白と黒を。くるりと。百八十度)。▼反転させる(ぐるりと体を。日常の表と裏をくるりと)。反転攻勢に転じる。 **ひっくりかえす【引っ繰り返す】** ▼引っくり返す(価値観を。常識を。仰向けに。さかさまに。力まかせに。くるりと)。手当たり次第にその辺をひっくり返す高村派。脚を払って引っ繰り返してやりたい!宮本百。裏返ったものを表向きにする。▼でんぐり返す(体を。形勢を。日常生活を。目玉を。良識を)。 **ひるがえす【翻す】** ▼翻す(前言を。朝廷に叛旗ぶんを。不退転の勇を。公判途中で自白を。ばらばらとぺージを。無責任に意見を。何やかやと理由をつけて決意を=篠田。僧衣の袖を蝙蝠にらの羽のように大庭)。▼裾を翻す(着物の。スカートの)。身を翻して(逃げる。走り去る)。身を翻す(颯爽だらと。さっと)。風のように身をひるがえす』石川。草むらが次々と穂先をひるがえして波を送る=野問。風が暖簾のれを翻して吹き過ぎる。 **ひるがえる【翻る】** 鯉のぼりがばさばさ翻る。▼風に翻る(スカートが。ネクタイが。吹き流しが)。布が翻ってはたはたと鳴る。 **ほんまつてんとう【本末転倒】** 本末転倒の(考え。談論。事態を招く。やり方)。人間をいかに機械に合わせて使いこなすかといった本末転倒の論理-柳田。本末を転倒する。劫こうに勝って勝負に負ける。 **まくりあげる【捲り上げる】** ▼まくり上げる(スカートを。裾を控え目に。シャツの袖を)。▼裾をまくり上げる(着物の。ズボンの。ドレスの)。▼からげる(尻を。スカートを。袖を。複っきを)。▼裾をからげる(着物の。浴衣の)。着物の裾をたくし込む。▼まくし上げる(着物の裾を。ワイシャツの袖を)。▼めくり上げる(笠の前つばを。スカートを)。浴衣の裾をはしょる。尻からげして(駆け下りる。走っていく)。尻からげする(浴衣を。着物の裾をはしょって)。尻をはしょる。たくし上げる(髪の毛を。着物の袖を。スカートを。ズボンを。セーターを。ドレスの裾を。布を。裕じゅを。たすきで袖口を)。 **めくる【捲る】** ▼めくる(カードを。新聞を。スカートを。伝票を。表紙を。布団を。順々に。一枚ずつ。紙をがさがさ。紙をぺらぺら。退屈げに週刊誌を。見るともなく本のページを)。▼ばらばらとめくる(参考書を。書類を。帳簿を。ノートを)。▼めくり返す(記憶を。ベージを)。めくり取る(暦を。シートを。便箋を。毛布を)。▼まくる(腕を。尻を。スカートを。ズボンの裾を。手拭いの端を)。▼袖をまくる(服の。浴衣の)。 **めくれる【捲れる】** ▼めくれる(紙片が。スカートが。トタンが)。ふやけて白くなった垢ぁぁがこよりみたいに何本にもめくれて落ちる=阿部。どんよりと薄雲って海面に波のひだがめくれている=愈。両端が蕨らのように捲まくれた狭い板"長塚。▼めくれあがる(シーツがくしゃくしゃに。スカートが風に)。冷たい風が気持ちよく足もとからめくれあがってくる=安部。▼まくれ上がる(上唇が。川波が)。磯波のようにまくれ返った頂上を並べた低い丘大岡。▼まくれる(紙が。裾が)。唇が軽くめくり上がる=吉行。 <942> # 30 広い・狭い **うちゅう【宇宙】** 揺らぎから宇宙が生まれる佐藤険。宇宙に旅立つ。作者の作り上げた宇宙に入って遊ぶ"田辺。宇宙の(起源に迫る。旅を続ける。成り立ちを知りたい。霊気を感じ取る。進化の姿を描き出す佐藤勝)。深遠な宇宙の真理。宇宙へ突き抜けるような青空=飯田。宇宙を(満たす暗黒物質。満たしている真空のエネルギール佐藤勝)。宇宙空間へ飛び出す。整然たる宇宙的巡行、新たな宇宙論が花開く。天体の巡行のように必然的な成り行き"石坂。天体望遠鏡を覗のマく。天体を観測する。十九歳の迷いが生んだブラックホールのような罪の匂いのする恋におちる岩尾。 **おうぎがた【扇形】** 左の方の一角を要にして上に開いた扇形・佐藤森。扇形を描く。扇状に拡がった武蔵野を一望に収め得る展望台"大岡。流れ出た澄石流が山麓で扇状にひろがる高田。後方を山に囲まれた扇状地。会社の将来は末広がり。家運が末広がりに開ける。煙が末広がりに薄れて行く。 **かくだい 【拡大】** 領域の拡大を試みる。▼拡大する(金融危機が。地域格差が。貧富の差が。言論の自由を。就労の機会を。生産分野を。生産が順調に)。勢力を着々と拡大していく。顕微鏡で微生物を観察する。天眼鏡でのぞくと手の甲の皮膚に飛行機から見下ろす海面のように細かい三角波が立っている!向田。細かなところまでを虫眼鏡で観察するように見る八谷村。細かな部分まで拡大鏡を通じたように明瞭に浮かび上がる=宇野利。勢力拡大に熱中する。内需拡大をはやす。▼増幅する(怒りが。疑惑が。不公平感が。ゆがみが)。写真を引きのばす。 **かくちょう【拡張】** 事業の拡張に奔走する。上を知らないような拡張を続ける=佐多。▼拡張する(工場を。販売ルートを。販路を。面積を大幅に)。販売利益を販路拡張に注ぎこむ=城山。 **きゅうくつ 【窮屈】** ▼窮屈(向き合った客の膝と膝がふれあうほど!佐多。理由の分からない詰問でも受けているように宮本百)。窮屈で重苦しい時間を重ねる。窮屈な(籠の中。コルセットを外す。狭苦しい所に逃げこむ)。せせこましく窮屈な町。天井の低い窮屈な車。窮屈に身をかがめる。両膝を曲げて海老えびのように窮屈になる"夏目。主義主張がコブのように自分の気ままな行動をしばりつけているような窮屈さ=小林多。窮屈さに身の縮まるような思い伊藤発。・窮屈そう(傍目にはいかにも。燕つばの巣へ人間を入れたように=岡本)。ちょっと見ると窮屈そうな人。窮屈そうに(膝を折る。身を縮める。体をねじ曲げる。人家が軒を並べ合う)。先生の前にいるというふうに窮屈そうに座る=伊藤整。体全体が泥の中に押しこめられているように不自由"高橋和。あまりに狄すぎる。身動きもできないほど行動が束縛される=美濃部。やっと身動きができるくらいの狭い空間に押し込められる=畑。ぎゅうぎゅう詰めの電車。 **くうかん【空間】** ▼空間(凍りついたような冷たい"辻井。広場のようなぽっかりとした窓沢。二つの建物に挟まれた"辺見)。暗い空間が茫洋と広がる。空間という空間を埋めつくす。空虚な目を空間に投げる。静謐なん間に侵入する。空間の閉塞感に恐怖する。目を空間の一点に据える。薄暗い空間を沈黙が支配する"辻井。絶妙な仕方で空間を処理する=加藤。闇が空間を占領する=徳永。狭い空間に押し込められる。狭い空間をすり抜ける。 **くりひろげる【繰り広げる】** ▼繰り広げる(楽しい会話を。白熱の死闘を。キャンペーンを。連日連夜どんちゃん騒ぎを。波乱万丈の冒険を"人周)。繰り広げられる(凄惨な血闘が。さかんな論議が。数日にわたって熱戦が。血なまぐさい殺戮いが)。展開される(熱闘が。論戦が。生と死のドラマが)。 **こうえん【公園】** ▼公園(潮が引くように賑やかさの終わろうとしている夜の藤枝。人影疎まばらな冬の"吉行)。気分転換に公園に出かける。人目につかない公園に呼び出す。公園の樹木の枝が蔭を作る=大佛。緑地を確保する。 **こうだい 【広大】** 広大な(青空が広がる。活字の海。世界を旅する。邸宅に住む。未開の原野。大陸に雄飛する。土地を所有する)。太平洋の広大な景観。真っ黒い広大な夜。いつ果てるとも知れない広大な火の海山崎。海全体を充たすような広大な流水群"加賀。気宇が広大になる。広大無辺なる(宇宙。仏の慈悲)。天下の広大無辺なることを悟る。 **こうや【広野】** 広野を縦横に疾駆する。もがきのたうつごとく心は迷路をさまよい曠野をうろつく=坂口。石を蹴る馬蹄ばての音が戛々妙つとして曠野にぅの静けさを破る芥川。唯ただ一人で曠野の深い雪に埋もれているような心持ち鳥崎。空寂閑々とした曠野にひとり在るような耐えがたいさびしさ阿川弘。磯野のような人のいない沼地・萩原刻。 **すそ【裾】** 裾が(風に翻る。ひらひらと風に吹かれる)。びしょびしょの裾が脛ずぉにまといつく。着物の上前の裾が蝶々のようにハタハタと跳ね上がる、谷崎。据の乱れを直す。なだらかに裾のひろがっている山太宰。裾を(からげて走る。ばさばさと揺らす。控え目にまくり上げる。無造作にまくり上げる)。鮮やかに裾をさばく。着物の裾を引きずるような大儀な恰好ひつ椎名崎。裳裾もが(風に煽ぁぉられる。宙空で花開く。もつれる)。棲っょを(合わせる。からげる)。 **すその【裾野】** 裾野が(傾斜を引く。左右に広々と延びる。初夏の強い陽を浴びて燃えるように青い=大佛)。 <943> # 広い・狭い-306 裾野に広がる緑。美しい斜線が遠い裾まで伸びている山の蜷川端。山の裾を切り取るようにして路が細い帯のように捲ぼく佐多。 **すぼめる** すぼめる(傘を。唇を不機嫌そうに)。肩をすぼめる(しょんぼり。子どものように=山本有)。▼口をすぼめる(きゅっと。いたずらっ子のように奥田)。口をすぼめて(言う。笑う)。悲しそうに何をすほめてうつむく。すほむ(意気が。先が)。つぼむ(花が。胸が)。▼つはめる(傘を。肩を。唇を。バランルを)。膨らんだりつぼんだりする。 **せかい【世界】** ▼世界(正直者がバカを見ない=飯田。どろどろとした大人の高橋三)。世界が平和になる。明るい世界が開ける。▼世界が広がる(知の。目の前に現実の)。裏の世界から足を洗う。世界で指折りの工業国。まっとうな世界で生きる。メルヘンの世界で遊ぶ。世界に(冠たる文化。誇る成果。例を見ない貴重な資料)。空想の世界に生きる。幻想の世界に入っていく。自分の世界に没入する。知らない世界に迷いこむ。夢の世界に遊ぶ。イデアの世界に魂が飛翔する"福永。お伽草子忙にぞの中のお話の世界にまぎれこむ清水。惑溺の世界に沈殿する“松本。世界に名を(知られた学者。森とかせる)。自分以外の世界には一切合財かい無関心"壺井。世界の(変革を目指す。至る所に足を踏み入れる。変わりようを眺める。先頭を切って走る。大勢に取り残される。注目の的となる)。いながらに世界のことがわかる。世界はワンダーに満ちている=若竹。世界を股にかける。極道の世界を生き抜く。世界中(至るところに見られる。どこを探してもない)。世界中のあらゆる人種が集まる。このままでは日本は世界中の嫌われ者になる=中野孝。世界中を(旅して歩く。資金が流れ回る)。▼満ちた世界(不条理に。奇妙な静けさに光瀬)。世界規模で危機が連鎖する。全世界に向けて発信する。全世界のシェアの三割を担う。全世界を股にかけて暴れまわる。国内外に衝撃を与える。東西の名著を網羅する。七つの海に雄飛する。七つの海を股にかける。 **せかいてき【世界的】** 世界的な名声を博する。世界的に(有名な劇作家。事業を展開する)。グローバル化が進行する。グローバルな(視野に立つ。協力を促進する)。▼国際化する(経営が。生活が)。国際的な(金融危機。評価を得る。乎和運動。流れから取り残される。非難にさらされる)。国際的に(高い水準にある。広く名前を知られる)。国際的視野を欠く。 **せけん【世問】** 世岡が(何かとうるさい。風雲をはらんでくる。知ったら何を言われるかわかったものじゃない"小池)。世間から(一歩身を引く。楽隠居と言われる身分になる=かんべ)。世間と(折り合いが悪い。いうものは口さがないもの=池波)。世間に(ありふれた話。醜態をさらす。背を向ける。出て活躍する。名が売れる。恥をさらす。広く知れ渡る。不安を与える。顔出しができない。顔向けできない。ざらにある話ではない。とかくの噂がある。名の知れた会社。悪い印象を持たれる)。腕が世間に認められる。真相が世問にばれる。広く世間に紹介する。息子の恥を世間にさらす。尤もっもまだ世岡に発表したことはない=木山。▼世間に広がる(噂が。評判が)。世間の(噂が耳に入る。風に当たる。口がうるさい。注目をひく。物笑いの種。裏の裏まで知り尽くす。動向にはとんと疎い。バッシングを受ける。悪評を一身に集める火坂。噂を敵にまわす三島。男たちがほうっておくはずがない和久。騒ぎを尻目に悠然と構えている高村派。非難を一身に受ける=瀬戸内)。世間は(そう甘くない。狭いようで広い)。世間を(驚倒させる大事件。はばかって生んだ子)。事件が世間を騒がす。解放的なものの考え方が熱病のように世間を風靡唸うする=石坂。名が世間に(喧伝される。知られる)。俗世間というものはうるさいもの。俗世間を超越した高徳の士の面影-遠藤。世間の目が(厳しい。冷たい)。世間に(立ち向かう。平然と立ち向かえるだけの自信瀬戸内)。世間の目はそれほど甘くない。世間の目を(気にする。避ける。逃れる)。江湖の(喝采を博する。好評を得る)。世事に(疎い。心を煩わす。通じている。慣れた考え)。世情が騒然とする。日常瑣事忘しの世俗の雑談。俗耳を驚かす。俗世の垢ぁかにまみれる。人中に出ることを恥ずかしがる。俗事から超脱する。俗事に(追われる。恬淡さんとする)。 **せばまる【狭まる】** ▼狭まる(視野が。商品の販路が。道幅が。距離が一挙に。距離が徐々に)。狭くなる(視界が。道が。道幅が)。▼狄める(即隔を。視野を。範囲を。包囲の輪を。間合いを。肩幅を心持ち)。狄くする(スペースを。世界を。世間を)。 **せまい【狭い】** 狭い(家で雑魚寝状態。籠に押し込められる。世界しか知らない。世界に閉じこる。通路を通り抜ける。部屋に閉じ込める。土地に多くの人間がうごめく若竹)。狭い(川幅が。けつの穴が。道幅が。生え際の富士形になった額が!徳田。ちょっとひじを張ると隣の領分を侵しそうに三浦液)。肩身の狭い人生を送る。閉じられた狭い社会。塀に挟まれた狭い道。穴蔵のような狭い場所・武田爽。車がようやくすれちがうほどの狭い道路"山田太。座敷牢のように狭い部屋椎名蔵。狭くなる(行動範囲が。視野が急に。道がどんどん。心理的に視野が)。▼狭さ(舞台から客の顔が隅から隅まで明瞭に見分けられる=高見町。やっと人の行き違うだけの"長塚)。人ひとりが歩けるだけの幅。車一台がやっと走れるほどの道。自動車がかろうじてすれ違える程度の車道。タタキの土間が台所のマナイタほどの大きさしかない安岡。手のひらほどの大きさの庭小松太。寝袋を二つ並べるともういっぱいになる程度のちょこんとしたテント=飯田。 <944> # ひ あまり広くない。さほど広くない庭。広くもない通り。広さ(七人も人がはいれば少し窮屈なほどの黒井。八人掛けのテーブルと椅子だけで一杯になるくらい)。狭隘いうな(愛国心。谷地)。販路の狭小に悩む。手狭な(家。部屋)。せせこましい物の見方。芸もないせせこましい庭。せせこましく窮屈に暮らす。ビルがせせこましく並んだ一画。狭苦しい(息詰まりがしそうに。有島。足の踏み場もないほど安岡)。狭苦しい小屋の中。ごみごみと狭苦しく建てこむ。猫の額のような狭い庭=田山。猫の額ほどの土地。 **ぜんこく【全国】** 全国津々浦々に広がる。全国くまなく探し回る。全国に(支店を持つ。顔を知られたタレント。努力が行き渡る。名を鳴り響かせる。広く知ってもらう)。重要参考人として全国に手配する。全国を(講演して回る。旅して歩く。股にかける)。北は北海道から南は沖縄まで。全国行脚を続ける。全国規模に広がる。問題を一挙に全国区にする。全国制渦を目論くむ。全国的な関心を集める。全国的に有名になる。全土が戦場化する。全土を席巻する。日本中から人が集まる。日本中の笑いものになる。 **てんか【天下】** 天下が(騒然となる。大きく動きだす。大揺れに揺れる)。天下に(悪名高い。悪名を鳴らす。威勢を示す。高名を馳せる。号令をかける。力を誇示する。名がとどろく。怖いものはない。その名を瀬ひとかす。はばかるところがない。風雲を巻き起こす)。快男児として天下に響いている。優秀な学者を天下に求める。天下の(安危に関わる重大事。愚策と悪評しきり。形勢をうかがう。富を一身に集める)。一朝目覚めれば天下の人。金は天下の回りもの。天下を森かすスキャンダル"胡桃沢。天下国家を論じる。天下晴れて夫婦になる。満天下に(知れ渡る。恥をさらす)。満天下の話題をさらう。朝野に落胆の声が広まる。信を朝野に問う。朝野の名士が一堂に会する。 **てんち 【天地】** 天地取り違えたような環境の変化にとまどう“野坂。人間が天地自然と合一化する。天地が(逆になったような驚き=梅本。黒い塀を四壁に立てたように静まり閉ざす“岡本。ひっくり返ったような騒ぎ若竹。ひっくり返るほど意外な話『火坂。分からなくなるほどの白一色の世界辻仁)。喊声以が天地にとどろき渡る。蟬せぇの声が滝のように天地にあふれる=光瀬。自分の天地に羽を一杯に拡げる=長塚。広々とした天地に出たような恍然むけとした思いが身を浸す”海音寺。天地の(鼓動までさり気なく響かせているような句!竹西。ひっくり返るような声で絶叫する=子母沢)。天地は寂然として静か。天地も(頭動にする大きな変化。裂けよとばかりに叫ぶ=田島)。雨が寸分の隙間もなく天地を閉じ込める谷崎。巨木が鬱蒼らっと天地を覆う本庄。波音が天地を揺さぶるように響く火坂。目の前のものがすべて霧の中のようにかすみ天と地が転倒せんばかり「後藤。天と地がひっくり返ったみたいにおろおろする吉本。天にも地にも(掛けがえのない弟向田。頼りにするのは夫ひとり永井荷)。天も地も闇に包まれる。 **でんどう【伝道】** 伝道の旅に出る。キリスト教を伝道する。布教する(キリスト教を。仏教を)。 **にわ【庭】** 油蝉がたぎるように鳴く裏庭大岡。庭(巨人が激怒に任せて投げつけたような乱雑な佐藤春。暗緑の洞穴のように見える=萩原突。鬱蒼とした樹木に囲まれた=徳永。かまびすしい蟬せんの声も吸われて行くような柔らかく湿った高井。木漏れ陽が点々と彩る=立原。猫の額に礬たとえるほどしかない狭い島崎)。庭が(荒れ放題になる。霜枯れて見えるほどまだ春も浅い=島崎。水を打ったように湿り気を帯びる人米)。手入れの悪い廃園のような庭が梅雨空の下で重苦しい濃緑色の空気を澱ょとませている"中村真。庭から声が聞こえる。庭に(花を植える。うっすらと雪が積もる。月の光が差し込む。夏草が生い茂る)。桜の花びらが庭に散り敷く。そっと庭に忍び出る。濡れ縁から庭におりる。雑巾がけの水を庭に撒く=北原。庭の(木々が日々表情を変える。草花に水をやる。緑に陽射しが降り注ぐ)。庭へ打ち水をする。足早に庭を横切る。鹿威しししがすこんと石を打つ熊谷。店先から裏庭へ風が抜ける。シンメトリカルな秩序正しいフランス風庭園"柴田翔。庭内を一巡りする。中庭を挟んで別の座敷が見える。庭先に人影がさす。午後の陽射しが庭先にあふれている。他人の庭先に勝手に入り込む。席を立って庭先へ歩みを移す=山岡。 **はてしない【果てしない】** 果てしない悪循環が続く。単調な果てしないリズム。泥沼のような果てしない喰いに日々を送る豊田。行けども走れども果てしなき雪野原。果てしなく延びる道。果てしなく広がる(大海原が。原生林が)。違い果てしのない道のり。果てしない(大海原。大空)。全身の神経が果てしもなく張りつめる。話が果てしもなく枝葉に入る。限りなく山々が続く。平原を風が限りもなく吹き抜ける。一望際涯のない高原。際限のない広がり。思索が堂々めぐりして果てがない。果てのない空想を打ち切る。年々歳々の果てもない月日本庄。果てもなく広がる原。嵐が果てもなく吹きまくる。方図もなく深い井戸。無窮なる大自然。無窮に晴れ広がった空。相携えて無窮の天に帰る。言い尽くせぬ無窮の怨恨。無際限に広がる大海原。恐怖が無際限に広がる。 **はば【幅】** 年齢に幅がある。薔薇ばらの叢時の下から帯のような幅できらきらと日に輝きながら水が流れ出る佐藤春。幅のあるがっしりした体つき。やっと車をかわせるほどの幅の道路清水俊。トリックに幅を持たせる。▼幅を広げる(小説の。だんだんと)。亀裂が幅を広げる一方。道幅が広くなる。道幅いっぱいに広がる。道路を拡幅する。商売の間口を広げる。 <945> # ひ 広い・狭い-306 **はばひろい【幅広い】** 幅広い(関心を呼ぶ。視野を持つ。生活の知恵を持つ。人たちに知ってもらう。品目を取り扱う)。党派を超えた幅広い層。幅広く意見を求める。赤とんぼの大群が幅広く頭上を覆う。 **はびこる【蔓延る】** ▼はびこる(悪政が。汚職が。悪い虫が。浚臣さんが世に。総もゃが海面に。脚一面に腫れ物が。男尊女卑の風潮が。沈滞した空気が)。雑草のはびこるに任せる。▼猖獗れを極める(有害な習慣が。インフルエンザが)。▼蔓延过从する(厭隴気分が。病気が非常な勢いで。落涙の衝動が伝染病のように貫井)。煉瓦拼小以がに為ったが蔓延している。 **ひろい【広い】** 広い(視野に立つ。湾の奥まった所)。広い(業界に顔が。端が見えないほど。蠟燭そらの火がとどかぬほど奥が!宇野利)。顔の広い男。口の広い瓶。心の広い人。裾の広い山。横着に広い場を取る。恐ろしく広い部屋。かなり広い範囲に飛び散る。つばの広い夏帽子。とてつもなく広い庭。利根川の広い流れ。土間の広い旧家。深く幅の広い蘊蓄らん。まわりに広い柵をめぐらす。見はるかす広い原野。海のように広い川安岡。車が進むのが分からぬくらい広い単調な原野"加賀。はてもないほど広い湖『永井路。幅の広い(福々しい顔。舗装道路)。広く(網をかぶせる。支持を集める。知られた事実。門戸を開く。外国に宣伝する。世界各国に紹介する。世間に公表する。世間の注目を集める。禿はげあがった額。世にアピールする)。あらゆる世代の読者に広く愛される。眼界が広く開ける。観測網を広く張り渡す。世間に広く認知される。名を広く世間に知らしめる。場所を広く使う。世の中に広く出回る。谷合いの広く開けた畑地石坂。けっこうな広さ。一人で住むには広すぎる家。だだっ広い(囲炉裏の間。邸やしに住む)。飛行機の格納庫のようにだだっ広い場所=原田宗。天馬空を行くような開幣妙な世界に導く=中島河。ぱっと青海原に泳ぎ出たような開浴な場所島尾。▼広範囲に及ぶ(影響が。研究が)。広範な学識の持ち主。手広く商売をする。渺々うたる(海。空)。朝日が渺々たる波の彼方に昇る菊池。海はどこまでも渺々として蒼ぁぉい=平岩。渺茫うたる雪の原野。渺茫と涯はてしない暗闇の海"本庄。面積を取る。ワイドな(画面。事業展開)。 **ひろがる【広がる】** ▼広がる(顔に笑みが。体中に鳥肌が。口中に味が。心に安堵ちんが。頭上に青空が。対象の範囲が。貧富の格差が。胸に不安が。胸に満足感が。記憶が脳裏に。恍惚感に前にが体に。全体に一様に。谷間が足下に。田畑が一面に。匂いが店内に。憎しみが瞳に。笑いが顔中に。海が限りなく。廃墟が白々と。一面にお花畑が。影響力の及ぶ領域が。思いがけぬ方向へ事件が。顔に驚きの表情が。心の内に怒りが。心の中に優しさが。にわかに緊迫した雰囲気が。冷えた体にぬくもりが。二人の間の距離が。フロアに不自然な静けさが。ぽっと音をたてて炎が。胸に小さな疑いが。胸にもやもやが。山の上に星空が。땅があっという問に。枝が大きく横に。音が部屋じゅうに。心が伸びやかに。静寂があたりに。波の輪が池の面に。ユーザー層が社会全体に。夕焼けが窓の外に。洋々たる大海が眼前に。痛みが体の隅々まで。想像が果てもなく。地球上にあまねく。においがどろっと。火の手がみるみる。妄想がとてつもなく。海が鉛色をして静かに清水義。コートの裾がスカートのように"東野。贈収賄事件が政界全体へ"高村前。みかん畑がだだっ広く=中上)。▼ひろがる(足音のざわめきが静かさの底に=古井。会社での自分は終わりだという思いが綿に沁しみていく水のように身内に=山田太。足指が扇のように中河。月光に濡れる砂漠が茫々ぼうと"光瀬)。拡がる(うすい黄昏炊にの器もゃが幕を下ろすように坂道の灌木のあいだに=伊藤整。半透明の明るさが煙のように柴田翔)。自分の前に広がる世界。背後に広がる山々。窓の外に広がる風景。無限に広がる闇。目の前に広がるパノラマ。よどみに広がる水の愉。洪波洋々と広がる海人間。果てしなく広がる都会の街並み=原田糸。夕空が街の上に広がる。眼下に広がる(稲田。整然とした緑の波を眺める三浦し)。▼胸いっぱいに広がる(悲しさが。不安が)。胸に広がる(怖が。不快感が。気落ちした気分が。世怩じくたる思いが。不安がはっきりした影になって=村上元)。一広がっていく(波立つ思いが胸に。すさまじい勢いで。妄想が胸を噛み裂きながら船山)。ひろがっていく(捉っかまえどころのない不安が一瞬一瞬体の底から=高樹。麦畠の被害がゆるやかな雪崩のように下方へ下方へと=吉村)。すすり泣きの声が波紋のように広がって行く=山本有。▼広がっている(あたり一面に。街が眼下に)。火があっという間に広がってしまう。謀反応の動きが魔の手のごとく八方へひろがりつつある=山本周。広がりを見せる(事件が複雑な。騒ぎが予想外の)。考えの幅が広くなる。寂しさが心にしみ広がる。光が雨のように散り広がる=川上。延び広がる(じわじわと。少しずつ)。煙の末がぼかしたように広くひろがり渡る=田山。▼燃え広がる(山火事が。火が天井を伝って)。前途洋々たる(学生。若者)。雨雲が空一杯にはだかる。▼瀰漫にする(泰平ブームが。敗戦気分が。あたりに薄明の光が)。広く世界に分布する。洋々の二字が前途に棚引く=夏目。拡散する(意識が。音の波が。感情が。陶酔が)。とりとめもなく気分が拡散していく荻野。 **ひろげる【広げる】** ▼広げる(確実に版図を。仕事の範囲を。商売の手を。推理の愉を。はらりと布を。両腕を左右に。両手を水平に。筵死しをくるくる。熱い蒸しタオルを。折り畳んだ紙を。机の上に図面を。ばさばさと音を立てて朝刊を。ぱっと手のひらを。ライバルとの差を。手足を大の字に。軸物をくるくると。スカートをふわりと)。途方もない空想の世界をどんどんひろげる藤本。▼拡げる(羞恥しいの交じった笑いを顔に=野問。眼が感覚を扇のように=川端)。上に広げる(髪を肩の。本を机の。資料をテーブルの)。拠を広げる(可能性が。鳥が)。▼幅を広げる(作品の。選択の。人間の)。広げたページを閉じる。利尻富士が日本海の荒波の上に悠然と裾をひろげて立つ三浦疹。両手をありったけ広げてみせる=泉優。広くする(交際圏を。接触面を。範囲を。道幅を)。押し広げる(窓を。ぐいっと胸元を)。 **ひろさ【広さ】** ▼広さ(一望千里という。かれこれ五六十坪ほどの)。何でも受け入れる心の広さが必要!奥田。限りもない広さに広がる。十分泳ぎ廻れるほどの広さの湯槽=島尾。二百人の客を優に収容できる広さのラウンジ 高橋三。人間的な幅の広さを持つ。 **ひろびろ【広広】** 広々と(海が開ける。なだらかな田畑)。干拓地が広々と続いている。店内が広々と見渡せる。浜に網が広々と干してある。湖が太陽に輝きながら眼下に広々と横たわる=横光。広々とした明るい場所。天井が高く広々とした大部屋"塩野。見晴らしのいい広々したところ。汪洋占うたる(宇宙。大河)。広闊心な見晴らしに出る。人影のない広岡な景色。静で広壮な邸宅。築山と池のある広壮な中庭。広漠たる(荒れ野。砂の海)。広漠と広がる平原。広漠とした原野。漫々たる(原野。大海)。 **ぼうぼく【茫漠】** 茫漠たる(水界の広がり。恐怖の念に襲われる夏目。原野が目の前にひらける三浦綾)。茫漠と(続く広い川原。広がる砂の海)。茫漠とした取りとめのない感じ堀。所在のない空漠とした気分。空漠としてとりとめがない。空漠な哀惜が心の中に広がっていく。漠々たる虚空が広がる。茫乎沿うとした(目で見送る。表情をして見つめる)。茫々と(ながい春秋を生きる。夢現……ぅの間をさまよう)。 **ぼうぼう【茫茫】** 茫々たる(源すずの原。光の洪水)。ぼうぼうと艶のない髪林美。芋かゃが茫々と茂る。砂漠が茫々と広がる。目の前に茫々と広がる平原。 **ぼうよう【茫洋】** 茫洋と広がる青海原。見通しも利かない茫洋とした野山。茫洋として(見定めがたい。つかみどころがない)。 **みわたすかぎり【見渡す限り】** 見渡す限り(海と空だけ。白一色。花が咲き誇る。緑一色。家々がひしめいている)。見渡すかぎり花の雲に包まれる!白洲。見渡す限りの(芒討すの原。焼け野原と化す)。見渡すかぎりの海に散開する船"加賀。満目荒涼たる原野。満目蕭殺したる広野。満目の(紅葉。水田。雪)。 **むげん【無限】** いつ果てるともなき無限。無限とも思える長い時間,向田。無限に(続く時の流れ。話を広げる)。空が無限に深い。波濤温とが無限にうねる。夢が無限に膨らむ。無限の(悲しみを湛たたえる。彼方に遠ざかる)。白濁無限の波。言い尽くせぬ無限の感慨。無限ルーブに陥る。 **よ【世】** 物変わり星移る世檀。世が(末世に至る。世なら殿様なのに。変わって零落する)。戦乱の世が終わる。太平の世が続く。世に(稀まれな美しさ。隠れもない舞の名手。時めいている人)。研究の結果を世に問う。心ならず世に従う。後の世に伝える。名声を世にとどろかす。世の(関心を集める。脚光を浴びる。辛酸をなめる。荒波が襲いかかる。動きに超然としている。裏側に足を踏みこむ。親たちに警告する)。世のため人のために働く。世を(はばかる身。欺くための仮の姿。轟於とかすほどの権威)。太く短く世を送る。閑は世の中渡っていけない。世の中が(物騒になる。豊かになる。大きく揺れ動く。徐々に狂ってくる。すさまじい勢いで動く。昴然粉ふと春めき立つ。どんどん新しくなる。大きな怪獣に見える=灰谷)。つくづく世の中が嫌になる。世の中に(望みを失う。怖いものがない。平和をもたらす)。やりにくい世の中になる。世の中になる(便利な。暮らしがたい。せちがらい。油断のならない)。世の中の(動きに敏感。風にあたる。ために役に立ちたい。裏も表もわきまえつくす=池波。酸いも甘いも心得る=福永)。世の中は(広いようで狭い。まんざらでもない)。ずいぶん世の中も変わったもの。世の中を(甘く考える。茶化して笑う。なめてかかる。うまく渡っていく。おどおどと生きる。自分から狭めてゆく。たくましく渡る力を身につける。見る目が出来る)。▼ご時世(食品偽装が後を絶たない。なんでも銭になる)。時世が怒濤火との勢いで助く。娑婆の(風に吹かれる。空気に触れる)。人間く。娑婆吼~の(風に吹かれる。至る所青山あり。世上に(噂が流れる。名がとどろく。評判が高い。平和が訪れる)。がらりと世相が変わる。世相を諷うした漫画。浮き世に未練と執着が残る。浮き世の(愛さを忘れる。応酬に疲れる。風が当たる。義理を欠かす。波風に堪える。苦労を知らない。垢あかの染みていない人!今束。浪に翻弄されて木っ端のようにくたくたになる今日)。はかない浮き世の定め。人の世にありがちな成り行き。人の世の(哀れを感じる。変転はわからない。うつろいは飛花落葉のはかなさにひとしい『辻井。苦しみを自分一人が背負ったような大仰さ=本庄)。人の世は苦しみに満ちている=大庭。人の世を遠ざけるように眼を堅くつぶる夏目。 **るふ【流布】** 流布する(逸話が広く。もっともらしいるふ噂が)。現在流布されている作品。巷間於心に流布されている話。噂が世間に流布される=山岡。 <946> # ひ ぼうぼう【茫茫】▼茫々たる(源すずの原。光の洪水)。ぼうぼうと艶のない髪林美。芋かゃが茫々と茂る。砂漠が茫々と広がる。目の前に茫々と広がる平原。 **ぼうよう【茫洋】** ▼茫洋と広がる青海原。見通しも利かない茫洋とした野山。茫洋として(見定めがたい。つかみどころがない)。 **みわたすかぎり【見渡す限り】** ▼見渡す限り(海と空だけ。白一色。花が咲き誇る。緑一色。家々がひしめいている)。見渡すかぎり花の雲に包まれる!白洲。見渡す限りの(芒討すの原。焼け野原と化す)。見渡すかぎりの海に散開する船"加賀。満目荒涼たる原野。満目蕭殺したる広野。満目の(紅葉。水田。雪)。 **むげん【無限】** ▼いつ果てるともなき無限。無限とも思える長い時間,向田。無限に(続く時の流れ。話を広げる)。空が無限に深い。波濤温とが無限にうねる。夢が無限に膨らむ。無限の(悲しみを湛たたえる。彼方に遠ざかる)。白濁無限の波。言い尽くせぬ無限の感慨。無限ルーブに陥る。 **よ【世】** ▼物変わり星移る世檀。世が(末世に至る。世なら殿様なのに。変わって零落する)。戦乱の世が終わる。太平の世が続く。世に(稀まれな美しさ。隠れもない舞の名手。時めいている人)。研究の結果を世に問う。心ならず世に従う。後の世に伝える。名声を世にとどろかす。世の(関心を集める。脚光を浴びる。辛酸をなめる。荒波が襲いかかる。動きに超然としている。裏側に足を踏みこむ。親たちに警告する)。世のため人のために働く。世を(はばかる身。欺くための仮の姿。轟於とかすほどの権威)。太く短く世を送る。 **よのなか【世の中】** ▼世の中(変われば変わるもの。甘いものではない=熊谷)。▼世の中(レッテルが額の正面に刻印のようにベッタリ貼りつけられる神経過敏な武田癸。浅ましい鬼のような人間の多いぃ子母沢。泡沫のようなはかない=白洲)。きれいごとだけでは世の中渡っていけない。世の中が(物騒になる。豊かになる。大きく揺れ動く。徐々に狂ってくる。すさまじい勢いで動く。昴然粉ふと春めき立つ。どんどん新しくなる。大きな怪獣に見える=灰谷)。つくづく世の中が嫌になる。世の中に(望みを失う。怖いものがない。平和をもたらす)。やりにくい世の中になる。世の中になる(便利な。暮らしがたい。せちがらい。油断のならない)。世の中の(動きに敏感。風にあたる。ために役に立ちたい。裏も表もわきまえつくす=池波。酸いも甘いも心得る=福永)。世の中は(広いようで狭い。まんざらでもない)。ずいぶん世の中も変わったもの。世の中を(甘く考える。茶化して笑う。なめてかかる。うまく渡っていく。おどおどと生きる。自分から狭めてゆく。たくましく渡る力を身につける。見る目が出来る)。▼ご時世(食品偽装が後を絶たない。なんでも銭になる)。時世が怒濤火との勢いで動く。娑婆の(風に吹かれる。空気に触れる)。人間至る所青山あり。世上に(噂が流れる。名がとどろく。評判が高い。平和が訪れる)。がらりと世相が変わる。世相を諷うした漫画。浮き世に未練と執着が残る。浮き世の(愛さを忘れる。応酬に疲れる。風が当たる。義理を欠かす。波風に堪える。苦労を知らない。垢あかの染みていない人!今束。浪に翻弄されて木っ端のようにくたくたになる今日)。はかない浮き世の定め。人の世にありがちな成り行き。人の世の(哀れを感じる。変転はわからない。うつろいは飛花落葉のはかなさにひとしい『辻井。苦しみを自分一人が背負ったような大仰さ=本庄)。人の世は苦しみに満ちている=大庭。人の世を遠ざけるように眼を堅くつぶる夏目。 **るふ【流布】** ▼流布する(逸話が広く。もっともらしいるふうな噂が)。現在流布されている作品。巷間於心に流布されている話。噂が世間に流布される=山岡。 <947> # ふ 増える・減る-307 **いっそう【一層】** 一層声を張り上げる。悲しみを一層深くする。事態が一層恐くなる。腕に一層の力を入れる。より一層(楽しめる。勉強する)。より一層の(努力を望む。親しみを感じる)。なおさら(びっくりする。腹の虫がおさまらない。笑いを深くする)。なおさらに(憎悪が高まる。おかしさが込み上げてくる)。なおのこと(怪しい。うれしい。惜しくなる)。ひときわ(明るく照らし出す。威力を発揮する。おしゃれな印象を与える街。激しく吠え立てる)。無紋の星の中にひときわ光芒に分をはなつ明星"清水義。前にも増して(疑り深くなる。よく働く。よく体を動かす)。郷愁が前にも増して強くなる。よけい間違いが目立つ。事がよけいややこしくなる。下手に言い訳するとよけい疑われる。より(正確に言う。高みをめざす。深く理解する)。一段と(輝きを増す。鮮やかに見える)。風が一段と激しくなる。サービスにいちだんと磨きがかかる=源氏。ひとしお(愛着が深い。尊敬を深く持つ。辛そうに振る舞う)。世の荒波がひとしお荒く襲いかかる!高見取。弟の内気さが一入いいじらしい外村。一入の感情をこめた言葉。高井。以前に輪をかけた騒ぎになる。不機嫌が愉をかけて募る。 **いやがうえにも【いやが上にも】** いやが上にも(期待が高まる。不安が募る。反感をかきたてる)。気勢がいやが上にも上がる。幸福感をいやが上にも大きくする。雰囲気がいやが上にも盛り上がる。心がいやが上にも弾まずにはいられない=舟橋。 **うなぎのぼり【鰻登り】** 参加者がうなぎのぼりに増える。鰻登りに値が上がる=津本。▼うなぎのほりになる(件数が。視聴率が。物価が)。人気が鰻登りになる=津本。 **うわのせ【上乗せ】** 送金の上乗せを求める。礼の上乗せを約束する。上乗せする(費用を値段に。コストを料金に)。上積みする(保証金を。予算を)。割増金を要求する。割り増しを払う。 **おかわり【お代わり】** お代わりを(勧める。頼む。注文する。飲む)。▼お代わりする(お茶を。ご飯を。酒を。水割りを。訳なくぺろりと三皿ぐらい谷崎)。盃を重ねる。もう一杯。 **おぎなう【補う】** ▼補う(精神の欠落を。足りない面を。耳の悪さを。不十分なところを。体の不自由を心で。人員不足を労働強化で)。▼足しにする(家計の。急場の。小遣いの)。▼足しになる(家計の。何かの。腹の)。▼補完する(欠点を。弱点を。低収益を。不備を)。補欠で合格する。補欠に選ばれる。補欠の選手。 **おまけ** ありがたくないおまけ。おまけがつく。おまけする(少し。たくさん)。おまけして安くする。ちょっと色をつける。景品がつく。当たり券を景品と引き換える。下駄を履かせる。刺身のつまにすぎない。そえものが金魚の炎、ふんのように並ぶ=北。▼特典(会員の。予約の)。特典が付く。▼付録(雑誌の。別冊の)。付録がつく。解答編を別冊にする。 **きゅうぞう【急増】** ▼急増する(数が。加入者が。観光客が。需要が)。良算式はげみに増える。▼急伸する(売り上げが。円が。株価が。業績が。物価が)。激増する(失業者が。知らない顔が。犯罪が。戦地で傷病兵が)。急速に増大する。仕事が急激に増す。ちお **くわえる【加える】** ▼加える(新たな一章を。重い罰を。解明のメスを。勝手な解釈を。技術的改良を。混迷の度を。心理的圧力を。少し説明を。丹念に愛撫を。痛烈な一撃を。無言の圧迫を。冷気が重みを。弟子の数に。新しいジャンルを。思いつくままに二三解説を。解釈上の工夫を。科学的な検討を。出発準備が慌ただしさを。生活に文明的進歩を。戦争が苛烈さを。ちょこちょこっと手を。手ひどい打撃を。取り締まりに手心を。殴る蹴るの暴行を。部外者を練習に。メンバーの一員に。隠しちをびしりと一つ。双降時が怪しげな光を柴田側。惑乱ぶりが日増しに激しさを奥泉)。▼書き加える(注を。書き足りなかったことを)。▼加算する(経費を。利子を)。▼加重する(刑を。税を。責任を)。▼加味する(力に技を。利用者の意見を。日常の行動を成績に)。お湯を足す。▼継ぎ足す(言葉を。ろうそくを)。▼添加する(アルコールを。ビタミンCを。防腐剤を)。新しい機能をプラスする。 **げきげん【激減】** 激減を余儀なくされる。▼激減する(売れ行きが。外出が。出生率が。輸入が。不況で売り上げが。不景気がたたって入居希望の企業が若竹)。急減する(売り上げが。人口が。荷動きが)。急激に減少する。がたっと売り上げが減る。 **げんしゅう【減収】** 報酬が減収になる。減収を余儀なくされる。減収減益に見舞われる。決算が減益となる。歳入が減る。歳入不足が続く。収益が悪化する。収入が(がた減りする。減少する。減る)。 **さらに【更に】** さらに(一歩踏み込む。上を目指す。奥く進む)。空腹がさらに激しくなる。事態がさらに悪化する。赤ら顔が沸騰したようにさらに赤くなる=篠田。さらなる(危機を招く。支援を求める。飛躍を期待する)。かてて加えて。昨日にも増して(強い風が吹く。多くの人々が集まる)。誰にも増してうまく歌う。なお(詳しく書く。一段の進歩をなす)。雪よりなお白くなる。なおも(車を走らせる。旅を続ける。問いたげな表情)。前にも増して(疑い深くなる。奮い立つ)。もう一軒行く。もっと(安全な場所に移す。きちんと知りたい。悪い事態が訪れる)。 **すりへらす【磨り減らす」** ▼すり減らす(かかとを。靴の底を。元気を。寿命を)。神経をすり減らす仕事。 <948> # ふ ▼神経をすり減らす(仕事に。人円関係に。こりごりと)。▼消磨する(慢心が。精神を。体力を)。 **すりへる【磨り減る】** ▼すり減る(命が。かかとが。気力が。下駄が。神経が。タイヤが。魂が。歯ブラシが。満遍なく平均に)。角が摩滅した石。▼摩滅する(愛情が。純粋さが。タイヤが)。摩耗する(タイヤが。ブレーキが)。 **ぜんげん【漸減】** 漸減の傾向にある。▼漸減する(数が。苦痛が。負担が。輸出が。輸入が。兵力を)。徐々に減る(致が。人口が)。だんだん減っていく。▼逓減する(仕事量が。収穫が。人口が。増加率が)。 **ぞうしゅう【増収】** 増収が見込まれる。▼増える(一家の収入が。歳入が)。歳入不足を解消する。収益が急伸する。増益に転じる。増益をめざす。 **ぞうしょく【増殖】** アメーバのように増殖を続ける人間の塊が一斉に動き出すに荻野。▼増殖する(記憶が。個体が。細胞が。資本を。疑心が際限なく。車の残骸が細菌のように森村)。期待がにわかに増殖しはじめる!倉橋。 **そえる【添える】** ▼添える(心に勇みを。言葉に勢いを。膳に銚子を。庭に風趣を。舞台に彩りを。コッブ一杯の水を。右の拳を櫻の横に。野菜をたっぷりと。狂歌に即興の戯れ絵を=高橋克。吾知はぇらず気焰心ぇに風を=伊藤左)。期待に添えるよう頑張ります"乃南。▼手を添える(肩に。畑に)。催促がましく言い添える。二言三言い足す。念のために書き添える。申し添える(参考までに。念のために。一言)。▼持ち添える(片手を。茶碗を。包みを。徳利を)。添付する(仕様沓を。証明書を。リストを。領収書を)。 **ついか【追加】** 料理の追加を頼む。▼追加する(酒を。新機能を。デザートを。ビールを。メンバーを。アブリケーションを)。やらずもがなの追加点を与えてしまう。技能点を加点する。 **つぎたす【注ぎ足す】** ▼つぎ足す(ウイスキーを。紅茶を。コーヒーを。酒を。白湯きゅを。ビールを。水を)。湯飲みに茶を注ぎ足す“石田衣。差し水を入れる。差し水をする(花瓶に。熱湯に)。 **つけくわえる【付け加える】** ▼付け加える(新たな主張を。説明を。新たに。遠慮がちに。勝手に。憎々しげに。念のために。蛇足で。もう一言。新しいアイデアを。あれこれ憶測を。ちょっと嫌がらせを。最後にぽつりと。弁解するような言葉を=石坂。最後に一言決まったように"阿部。独り言のように南条)。やんわり皮肉をつけ加える=向田。▼付け足す(景品を。言葉を。更に説明を。データを)。新しい機能を付加する。付記する(内訳を。但し書きを。文末に注意条項を)。最後に付言しておきたい。 **ばいぞう【倍地】** ▼倍増する(怒りが。売り上げが。件数が。志願者の数が。支持率が。楽しさが。生産を。枠を)。二倍に(跳ね上がる。膨れ上がる)。二倍にする(額を。太さを。量を)。うれしさが二倍になる。他人に倍してせわしい。男に倍する働き。過年に倍する苛酷なトレーニング。人に倍する苦労をする。旧に(倍して著しく人の目に立つ。倍する可愛がりよう)。倍にする(お金を。レートを)。倍の値段で買い戻す。通常の倍の労力を要する。食費が倍に膨れ上がる。前年度の倍になる。▼倍加する(愛情が。興奮が。困難が。楽しみが。価値を。活動力を。年を追って)。 **はんげん【半減】** ▼半減する(驚きが。興味が。漁獲量が。所要日数が。敵の戦力が。価値が一挙に)。半減される(給料を。月給を)。半分以下に削減する。半分に(圧縮する。縮小する。減らす)。数が半分に減る。 **はんしょく【繁殖】** 執拗に繁殖を続ける。繁殖する(油虫が。黴菌いが。ブランクトンが。新しいビルが細菌のように鶯沢)。▼繁殖力(旺盛な。湿封くしい)。 **ふえる【増える】** 増える(会う機会が。上納金の額が。年相応に絞しもが。数がみるみる。猛烈な勢いで。追い追いに患者が。会話に思い出話が。暮らし向きに贅沢だいなことが。にわかに執筆量が。メディアへの露出が。雪だるま式に借金が。軍勢が日増しに。知らない顔が一気に。人口が爆発的に。問い合わせが日を追って。取り寄せる量が年々。やたらに知恵のない者が藤原。店が細胞分裂のように=辺見)。▼数が増える(年を追うごとに。見る見るうちに)。▼種が増える(苦労の。人に淡まれる)。▼増えていく(仕事が着実に。空前の勢いで)。金が動いて鼠算式はげみさにふえて行く立原。増えてくる(雨降り揚げ句の筍吹けのように島崎。雨後のタケノコのように=玉村)。▼多くなる(回数が。空席が。言葉の棘とげが。日毎に。みるみる)。▶増大する(加速度的に。不安が日に日に。輸送量が飛躍的に。勢力が日一日と)。▼増幅される(危険が。不信が。何倍にも)。雪だるま式に成長する。返済額が雪だるま式に倍加する高利"山崎。▼累加する(責任が。罪が。利益が)。▼累増する(赤字が。債務が)。件数の増減に一喜一憂する。▼漸増する(人口が。負担が。輸出が。輸入が)。量が少しずつ増えていく。前年比で増加に転じる。増加の一途をたどる。▼増加する(出生率が。排出量が。数が急激に。混雑が次第に)。微増する(金額が。生産量が。率が)。ほんの少し増える。 **ふやす【増やす」** ▼増やす(内部留保を。役職ボストを。需要を確実に。精度を一桁。量を少しずつ。少しずつ資金を。数を二倍三倍に)。▼多くする(仮名を。給料を)。禄を加増する。加増を受ける。▼増員する(スタッフを。役員を)。増額する(賃金を。年金を)。▼増加させる(資本を。種族を。富を)。▼増設する(支店を。図書館を。メモリーを)。増発する(国債を。電車を。バスを)。増量する(薬を。中身を一割)。積み増す(報酬を。補助金を)。▼水増しする(経費を。成績を)。 <949> # ふ **へらす【減らす】** ▼減らす(回数を。時間を。仕事量を。体重を。人数を。本数を。接触する機会を。マイナス材料を。ワーキングブアを)。軽減する(苦痛を。処分を。精神的消耗を。負担を)。減員を強行する。減額する(給料を。賃金を、手当を。年金を。役員報酬を)。減殺する(意欲を。興味を。能率を)。株式を消却して減資する。▼▶減じる(数を。罪一等を)。▼縮減する(債務残高を。費用を。負担金を。コストを一割)。少なくする(額を。ダメージを。被害を。不完全燃焼を)。人員をスリム化する。▼そぐ(勢いを。意欲を。興を)。▼低減する(負担を。摩耗を)。定員を減する。減点の対象となる。持ち点から減点する。ミスをして減点される。減点法で採点する。減量に挑戦する。減量する(こみを。体重を一キロ)。削減する(軍事費を。コストを。歳出を。排出量を。補助金を。余剰人員を)。 **へる【減る】** 減る(患者の数が。客が急激に。労力が大幅に。心配事が一つ。車の数が極端に。十名そこそこの人数に。回数がめっきり。漁獲量が急カーブで。潮が引いたように客が!高杉。靴の踵跡がの外側だけが癖の悪い人に使われた墨のように斜めに小林多)。目に見えて減る(客が。仕事が)。▼減っていく(得意先が目に見えて。一人また一人と。年ごとに門人の数が池波)。人波が湖の退ぃくように減ってゆく隆。がた減りする(売り上げが。生産が)。▼軽減する(被害が。負担が)。魅力がはなはだ滅殺される。▼減退する(意欲が。活力が。需要が。食欲が。精力が)。少なくなる(買い置きが。観光客が。持ち時問が。口数がめっきり。誰かがハーメルンの笛でも吹いたみたいに街を歩いてる子供の数が"北村)。▼費える(財産が。時間が。貯蓄が)。低減する(価格が。価値が。出生率が。人口が)。残り少なくなったビールを飲み干す。・残り少なくなる(在庫が。食料が。貯金が。夏休みも)。情熱の火が残り少なになる瀬戸内。微減する(志願者が。支持率が。生産量が)。▼目減りする(資産が。預金が。利益が。分け前が。賃金が物価上昇で)。減少に拍車をかける。前年比で減少に転じる。減少の一途をたどる。乱獲のため減少のきざしが見える。収穫の減少をきたす。需要の減少に(歯止めをかける。応じて供給が減る=服部)。▼減少する(勤労意欲が。耕作面積が。数が急速に。生産が年々。目に見えて)。売り上げが減少傾向にある。▼減らない(酒が。腹が)。口が減らない奴。いささかも減じない。 **ほきゅう【補給】** 水分の補給に努める。補給の道が途絶える。補給する(栄養を。ガソリンを。カルシウムを。食料を。人材を)。補給路を(確保する。断つ)。糧道を断たれる。 **ほじゅう【補充】** ▼補充する(インクを。欠具を。不足分を。兵員を。急場しのぎ的に兵力をなかにし)。▼補足する(言葉を。説明を。もう一例。ほそく【補足】話の接ぎ穂を受け取り~海堂)。補足的な説明が必要。 **ます【増す】** ▼増す(川の水窩絆が。秋風が冷気を。木々が緑を。黒髪が艶を。声が切迫さを。闇が深みを。客がとみに。危険がぐんと。一段と不況の厳しさが。朝の光が明るみを。海の色が群青の色を。風が一段と強さを。空気が爽やかさを。差し込む陽射しが明るさを。寒さが厳しさを。太陽が刻々と高さを。日を追って数を。目つきが鋭さを。頭の痛みが少しずつ。女っぽさがぐっと。返し難くなる借金のように心の負い目を=瀬戸内。次第に興奮の度を大阪。魔力が一段と妖しさを=内橋。夜の漆黒が深さを=北村)。勢いを増す(雨がさらに。火力が段々)。▼美しさを増す(憎いくらいに。花の色がひときわ=竹西)。▼輝きを増す(嘘が。美貌が。目が異様な)。▼度が増す(興奮の。親しみの。露出の)。▼度を増す(緊張の。困難の。親密の。不快の)。▼激しさを増す(風が。攻撃が。心臓の鼓動が。吹雪が。雨が一段と)。▼増していく(あたりが夜の気配を。後から後から数を。光が刻一刻と強さを。日毎に美しさを。日に日に緊迫感を)。▼増してくる(夕闇が濃さを。夜寒が次第に)。いや増す(いとしさが。寂しさが)。部屋を建て増す。ひどくなる(神がかりの度が。騒ぎがだんだんに)。 **ますます【益益】** ますます(確信を強める。上機嫌になる。気持ちが暗くなる。景気が悪くなる一方)。雨がますます強くなる。怒りがますます燃え盛る。多々ますます弁す。謎がますます深まる。以前に輪をかけてますますうるさく責め立てるようになる=ねじめ。夕焼けの色がますます濃くなる!内館。いやましに人恋しさが募る。いよいよ(盛んになる。詩情を感じる。頭が上がらなくなる)。 **よけい【余計】** 余計な(お節介を焼く。お世話。気を回す。口を利かない。心配をかける。詮索をする。波風を立てる。負担をかける。摩擦を避ける。手出しをするな。疑いを持たれる。口出しをしない。ごたごたに巻き込まれる。差し出口を控える。質問を後悔する。手間を取らせる。トラブルに悩まされる)。図に乗ってよけいなことを喋ん、る=船戸。余計に(金を払う。気を配る。稼がしてもらう鍍段)。一分でも二分でも余計に眠りたい。一人で余計に客をとる。寝てる子を起こすようなことを言う落語。▼一言を付け加える(お節介な。余計な。言わずもがなの)。言わずもがなの(注意をする。嫌みを付け加える。細部まで話してしまう。忠告を繰り返す。明々白々の事実を指摘する。冗談でその場を制塗する高橋和)。▼蛇足(これ以上のことを語るのは。これ以上の説明は=松岡)。蛇足が口に出る。蛇足ながら言い添える。なくもがなの(おまけ。サービス。助言。挿話。一言。感傷にすぎない)。 <950> # ふ 深い・浅い **あさい【浅い】** 浅い(呼吸を繰り返す。眠りでうとうとする。夢の続きを見る)。▼浅い(考えが。経験が。眠りが。読みが。理解の程度が。歴史が。傷は幸いにも。からくりの底が存外)。うとうと浅い眠りに入る。午後の浅い時刻。知恵の浅い凡夫。春まだ浅い山里。経験が浅いうちに苛酷な状況に投入して脱落させても事だ有川。▼まだ日が浅い(覚えて。上京後。離婚して)。浅かった縁を補う。浅く芽吹きはじめた灌木眇ん。椅子に浅く腰かける。椅子に浅く腰を下ろす。浅手の(皿。水盤)。浅めに(焙煎が心する。帽子をかぶる)。因縁浅からぬ寺。因縁浅からぬものがある。 **あさせ【浅瀬】** 川の浅瀬がキラキラと美しく関心ぅき渡る田山。鳥が浅瀬に舞い降りる。船が浅瀬に乗り上げる。浅瀬を(じゃぶじゃぶと歩く。見つけて川を渡る)。びちゃびちゃと浅瀬を踏む。負うた子に教えられて浅瀬を渡る=戸板。くるぶしまでの柔らかい草が浅瀬のように広がる村上春。 **あなぐら【穴蔵】** 穴蔵に潜む獣を引きずり出す海堂。地下五千尺の穴ぐらに転げ落ちて行くような暗くはてない心地木山。穴蔵のような(暗い喫茶店。部屋)。穴蔵のような狭い場所=武田奈。 **おく【奥】** 奥から声がかかる。受話器の奥から声が流れてくる。店の者が奥から飛び出してくる。奥に(声をかける。闇がわだかまる)。奥の(そのまた奥。深さが理解できる。部屋に通される)。足を延ばして奥の村まで行く。さっさと奥へ去る。山の奥へ奥へと逃れて行く。奥へ奥へと(進む。入って行く)。奥へ進む(つかつかと。そろりそろりと)。奥へ入っていく(ずんずん。どんどん)。路地の奥まで進む。奥まった(席に座る。小座敷に案内する)。入り江の奥まったところ。通りから奥まったところにある。 **おくふかい【奥深い】** 自然の奥深い謎。家の奥深く潜む。押し入れの奥深くしまい込む。洞窟の中を奥深くたどって行く。望みを胸の奥深くかきいだく。確信を心の奥深く養う菊池。心の奥深く眠っている欲望中村身。奥深くに位置する。疑惑が胸の奥深くに根を下ろす有栖川。心の奥深くに見え隠れする不安定な性格鈴木光。魂の奥深くに畳み込まれた記憶"久問。音が耳の奥深くまで届く。奥底の知れない沈黙。自信が奥底深く沈潜している"太宰。玄妙な味わい。千変万化时从がんの玄妙ぶり。深遠な(宇宙の真理。神の導き。思想)。内奥の輝きを感知する。秘奥を(会得する。伝授する)。幽遠な趣の庭。深奥な史的伝統。深奥部に到達する。深奥幽玄な文化。 **おくゆき「【奥行き】** 一段と奥行きが出てくる。入ってみると案外と中は奥行きがある。腹芸のできない男は奥行きがない=さだ。奥行きの(ある表現。ない乾いた風景・黒井)。玄関のたたずまいからは想像できぬ奥行きの深い古風な旅館=高橋和。間口はさして広くはないが奥行きの深い店=高井。奥行きの深い(人生諭。分析を展開する=柳田)。謎も思い入れも奥行きも感じられないつるんつるんの短編小説若竹。思いもよらない奥行きを見せる。懐が深い。 **きょうてい 【胸底】** 胸底から憤りが噴き上げてくる。胸底に(重苦しい塊が沈殿する。悲しみを秘める。潜在意識が潜む)。感動が胸底に染み渡る。胸奥に記憶を水くとどめる。心奥を(推し量る。呪のぞき見る)。胸の底から込み上げてくる(怒りが。うれしさが)。胸の底に(潜む嫉妬。思い出が沈んでいる。疑惑がわだかまる。重石はもが居座っている=重松)。満ち足りない思いが胸の底に淀む。言葉が深く胸の底に降りて行く三浦愛。胸の奥底にしまい込む。胸の底がどんと拡がるような歓びを感じる=黒井。胸の底から喜びがあふれ出る。悲しみがふつふつと胸の底から湧いてくる。本能的な嫌悪感が胸の底から突き上げてくる"中村真。胸の底で疑問が摇曳讧いする。風が胸の底を吹き抜ける=遠藤。わびしい思いが胸の底辺にとぐろを巻く=原田宗。 **けいこく【渓谷】** 秋の紅葉で有名な渓谷。深い渓谷が闇の中へ沈む。風が渓谷から吹き上げる。渓谷にほとばしる清冽な水のような勁っょく奔流する情緒円地。渓谷の(青い岩のような雲が月の回りを囲む"黒岩。扇子をひろげたような空に上弦の月が上る=水上)。深山の渓谷のように幽邃、いな雰囲気におおわれる=島尾。窓の外に広がる渓谷美。 **こころのおくそこ(心の奥底】** 心の奥底に(潜む絶望。野心を燃やす。言い知れぬ不安を感じる。埋もれ火が残る。記憶が沈澱する。沈めた記憶が疼ぅぅく=横山)。苦しみを心の奥底に抱える。心の奥底を覗のぞき見る。心の内奥に潜む劣等感。心の奥に(痛みが走る。しまい込む。潜む。明かりがともる。大切にとっておく=山田詠)。失卻感が心の底に沈む。心の底まで(脅えきる。言葉が届く。冷える)。骨欲にしみて承知している。骨髄に徹する(ありがたさが。遺恨)。心底を(見透かす。見抜く)。 **しんえん【深淵】** アンデスの峽谷にも似た深淵"中野美、深淵が底知れぬ闇を覗のぞかせる。暗い深淵が大口を開けて待っている。おそろしい深淵が底知れぬ闇をのぞかせる=宇野利。夢と現実との接っぎ目から深淵が覗く=中村明。男女の心の深淵に迫る。人の心の深淵に触れる。にわかに深淵に落ちてさまよう思い"坂口。死の深淵の魅力の前に飛慄する。福永。何人ひにも察知できない心の傷の深淵よりの呼び声に従う開高。人生の深淵を垣間見る。外見だけではうかがい得ない深淵を心のどこかに有する"黒岩。さりげないようでいてちらりと女の深淵をのぞかせたような答えかた=半村。 <951> # ふ **そこ【底】** 底が透けてみえる馬鹿な話"有吉。底の(浅い欲望。深い感)。芝居の底の浅さに気がつく有吉。すぐに見透かされてしまう底の浅さ=里見。底流に革命の要素が蔵される=舟橋。国民の底流にある政治不信。 **そこなし【底無し】** いくら金を注ぎこんでも底なし。底なしに(酒をあおる。純真で無邪気)。底なしの(絶望の閥。無力感を感じる。井戸みたいにまっさかさまに落ちてゆく穴常盤。空間へ落ち込んでいくようで気が遠くなる=笹沢。泥沼の一足手前でふみとどまる=坂口)。静かというにはおそろしすぎる底なしの無音の世界永井路。底のない(寂寥せたり。闇)。 **そこふかい【底深い】** 底深い(こくが出る。光を溜めた目。穴が心の中にぼっかり出来る=隆)。喉に引っかかった底深い声。忌まわしいものが底深く染みつく。音が耳の底深く残る。記憶の底深く埋もれていた名前藤沢。思いのりが心の底深く突き刺さる三浦窓。 **たに【谷】** 谷が(深く嵌入礼にする。闇の中に沈む)。声に絶望の深い谷がのぞく=隆。谷から這ょい上ってくるゆるい風。谷にかかる吊り橋。千仞どんの谷に落とされる。夜が谷の底のようになる『泉鏡。山がなだらかに谷へ落ちこむ。谷を(挟んだ向かい側。隔てた向かいの峰)。山の影が谷を覆う。渓じゅうに響きわたるような大きな音掘。峡谷の(底を流れる川。岩肌にしがみつく温泉宿=島田)。山あり谷ありの十年。谷いつばいに濃い霧が降りる。谷沿いに点々と家々が建ち並ぶ。 **たにそこ(谷底】** 谷底から冷気が吹き上げてくる。谷底に(向かって追い落とす。音を立てている渓流を見下ろすと目がくらむように小島)。曙光し江が谷底に届く。憤懣やるかたなく苛立っているような叫びが谷底に反響して駆けまわる=大江。谷底の川を見下ろす。足を滑らせ谷底へ落ちていく。眩暈灬まのするような高い所に立って深い谷底を見下ろすような心地"国木田。両側に山ひだがそそり立っている谷底のような所飯田。坐っていた座蒲団が谷底のように低まっている=水上。 **たにま【谷岡】** ▼谷円(脚下に見下ろす。二つの高台に挟まれた。昼でも小暗いほどに樹々の茂りあった永井路)。谷岡が足下に広がる。谷間に(霧が立ち込める。咲いている百合。立ちこめる乳色の靄もゃ)。音が谷円に響く。戦中戦後の谷間に生きる。山々の影が谷岡に落ちる。事態が険悪な谷間に向かって転落し始める"柳田。谷岡の村が日暮れ色に包まれる。三方を山に囲まれた谷間の温泉地"藤田。谷間を(流れる川。淡くひたしていた霧がすばやく晴れていく=大江)。風が谷間を吹き抜ける。雷雲に襲われた溪問ににのようにけわしく暗い影~武田奈。渓間を冷たく沈ませていく夕方"梶井。峰を背に南に開いた谷あい。山の谷あいに入っていく。煙のような雲が山々の映挝どを去来する"中局災。山懐に抱かれた小さな町。生か死かのはざまに置かれる。深いはさまに落ち込む。鋭い刃物で断ち割ったような深い峡間封有局。胸の谷間がくっきりと見える。胸の谷間に(顔を埋める。視線が向かう)。つい胸の谷間に目が行ってしまう。奥田。 **ちてい【地底】** 地底から道はいあがってくるようなラガラな声鷺沢。地底に(眠る資源。身の沈んでゆくような返家感ざり~"士丹)。地の底から(響くような声。にじみ出したかのように小さな影が浮いて出る=池波。湧いて出たかのように人が大勢いる=真継。わき起こるようなおそろしく陰気な声=飯田)。町が地の底からジーンと静まり返る=小林多。床が地の底からずっんと突き上げられる=古井。地の底深く澇進ぶしていくかのような絶望的な響きの轟音にい=石坂。地の底へ落ちてゆくような失落の思い=司馬。地の底を這うような声三浦し。 **とおあさ【遠浅】** 遠浅の海のような薄青い色合い谷村。浴槽から溢れ出る湯が遠浅の海を寄せてくる波のようにタイルの上を流れている=笹沢。潮干狩りの客で賑わう。魚が干潟に鱗ごうを並べて密集する。干渇を埋め立てでつぶす。 **ちか【地下】** 地下に(溜まっている熱水。潜って活動する)。根を地下に張り巡らす。地下活動を余儀なくされる。地下資源を掘る。地下水があふれ出す。地下水脈のようなネットワーク荒巻。地下駐車場に降りる。地下通路を歩く。地下深く埋もれる。地中に(埋める。眠る)。土中に隠す。土中深く埋める。 **ちかしつ【地下室】** 堅固なコンクリートの地下室。地下室が水浸しになる。地下室にでもいるような静かさ=島崎。逃げ場をさがすネズミのように地下室の中をウロウロする=北。 **ならく【奈落】** 奈落に向かって落下する。奈落の(底から浮かび上がる。底にまで失墜している信用を一挙に回復する。司馬。底へさらわれそうな恐怖椒)。心に奈落の闇がすさまじい勢いで広がっていく=飯田。底知れぬ奈落の淵ぃちへ落ちて行く白洲。地を割って奈落の底に下りていくような暗さを増す道倉橋。奈落へ突き落とされるような淋しさと焦燥とで心が風船のように姿しょむ"阿川弘。底なしの奈落へ陥ぉちこむような快美の感覚、水井路。劇場の奈落のように裸の壁が裸の電球に照らされた殺風景な通路獅子。 **ねぶかい【根深い】** 根深い(影響を受ける。腐敗体質。恐怖を胸に植えつける。自信をこめた声)。因襲が根深く心に根を張る=佐藤泰。過去の誤りが根深く巣食う山岡。 **はいふ【肺腑】** 肺腑から(ほとばしり出る叫び。搾り出すような苦しげな声を洩らす福永)。肺腑に潮の香 <952> # ふ **ふかい【深い】** 深い(藍色の波濤と。愛を捧げる。穴に落ちる。安培いんを覚える。印象を残す。因縁を感じる。関わりを持つ。関係に陥る。感謝の念。昏睡に陥る。絶望を感じる。溜め息をつく。嘆息を洩。らす。寵愛紡いうを受ける。吐息をつく。眠りに落ちる。根を張る。満足を味わう。無限の空。森に迷い込む。闇に包まれる。愛情に打たれる。憤りがわきあがる。悔恨に囚とらわれる。学殖に裏打ちされる。暗闇に閉ざされる。後悔に打ちのめされる。孤独の翳かげ。罪悪感に身が裂かれそうになる。静けさに満ちる。充足感に満たされる。杉木立に囲まれた街道。絶望の淵に落ちていく。不快の念を禁じ得ない。緑色に沈んだ水。雪を掻かき分ける)。▼深い(愛情が。愛着が。印象が。恨みが。憂いの色が。緑が。思いやりが。顔の彫りが。学識が。関係が。傷が。霧が。業が。罪が。根が。目尻の切れが。問題の根が。闇が。由緒が。雪が。欲が。諸芸道に心得が。風雅のたしなみが。風流人の面影が。ミステリに造詣が。理解の程度が段違いに。誠実であろうとするがゆえに悩みが内田爽。因縁が計り知れないほど"有吉。ショックがいまなお忘れがたいほど=山本周)。根の深い恨み。思いやりの深い人。女と深い関係になる。体の深いところが疼うずく。心に深い感動を与える。思慮の深い人物。取り立てて深い意味はない。人間の深い心情に根ざす。目が深い憂いに満ちる。屋敷が深い木立に囲まれる。よほど深い仲に違いない。雨降り揚げ句の深い泥濘砂砂島崎。一心同体の如く深い関係"子母沢。全てを呑みこんで陥没させたかのような道路に掘られた深い穴=鷺沢。深く(頭を下げる。哀れを催す。息を吸い込む。奥まった場所。心に刻む。腰を割る。溜め息をつく。根を下ろす。帽子をかぶる。入り江が入りこむ。心を揺すぶられる)。絆が深く結ばれる。クッションに深く背を埋める。現実を深く受け止める。シートに深く身を沈める。憎悪の念が深く胸に宿る。想念の中に深く沈浴する。それ以上深く尋ねない。帆を深くかぶせる。酔いが深くまわる。後悔の念が深く心に刺さるり島尾。底が深そうな川。思慮の深そうな黒い瞳清水俊。深手の(鍋。碗)。帽子を深めにかぶる。浅からぬつきあい。因縁浅からぬ関係。深甚な謝意を表する。深甚なる連関を有する。文化の深層を形成する。心の深部を揺さぶられる。千尋訪ぃの海。 **ふかさ【深さ】** 深さ(際限のない。底が知れない。底の見えない。一メートルあるかなきかの。腰までくらいの。腰まで雪に埋まる=新田。しゃがめばやっと肩が水中に隠れるほどの島尾)。罪の深さにおののく。悩みの深さに絶望する。懐の深さに舌を巻く。闇の深さに気づく。愛情の深さを知る。痛手の深さを感じる。深度(危機の。湖の)。深度を測る。深浅を測る。 **ふかぶか【深深】** 深々と(頭を垂れる。腰を沈める。溜め息をつく。椅子に腰かける。ナイフが刺さる。胸いっぱいに空気を吸い込む)。言葉が深々と胸を刺し貫く。座席の背もたれに深々と体をあずける。神妙に畳に手をつき深々とお辞儀をする=ねじめ。背中に矢が深々と突き刺さる=山田風。よくわかったというふうに深々とうなずく=有局。深々と頭を下げる(敷居際に手をついて"小松左。受話器の向こうに=篠田)。深々とした(視線を注ぐ。闇に包まれる)。 **ふかまる 【深まる】** 深まる(金融危機が。混乱の度が。事件の謎が。相互理解が。二人の仲が。より理解が。満がさらに。感動が一層。静かさが一段と)。恋愛が一歩一歩深まっていく。深まりゆく秋を感じる。深くする(眉間の皺しゃを。名作の感を。ますます疑いを)。深める(親密の度を。信頼関係を。関係を一層混迷の度合いを)。秋もたけた日。春たけた野。▼深化する(交遊が。思想が。人生観が。対立が)。深化させる(政策論争を。相互理解を)。深くなる(夜の間が。侘ゃびしい思いが。秋が日に日に。眠りが次第に。しんしんと。ひとしお。悲しみの目の色が。感情の食い違いが。降り出した雪が)。 **ふかみ【深み】** 浅瀬と深みが複雑に入り組んだ水域。深みにはまって溺死する。心持ちが胸の深みに残る。次第に深みにはまっていく。抜け出すことのできない深みに落ち込む。話が深みに進む。焦れば焦るほど深みに咲はまる=三好欲。男と女が深みにはまっていく鈴木光。言葉が心の深みに響く=野問。抜き差しならない深みに首までどっぷり浸かる熊合。深みのある(色。大きな目。声)。泥沼に足を取られたようにじわじわと深みへ足を引っ張り込まれる=梅本。もがきながらはい出られない深みへ落ちてゆく=梶井。深みを与える(ドラマに。表現に)。深間に落ちておぼれる。 **やまおく【山奥】** 人里離れた山奥。山奥で(緊張感に満ちて注意深く仕事をする三浦し。一人だけで暮らす=丹羽)。大雨で孤立した山奥の村。山奥くんだりまで出かけて来る。人里離れた山中。山の(奥深く分け入る。奥へ逃れて行く)。山また山に囲まれる。山また山のひだあいを縫う道。幽谷に迷う。幽邃やな深山。深山に(分け入る。いるような静寮里見)。こだまが深山に響く。深山の霊気を肌に感じる人間。陰々として深山の気が籠にもる=泉鏡。深山幽谷の静かな世界。山深い(溪流。大自然。村)。冬のあいだに山深い場所で死んだ獣のかすかな腐臭三浦し。山深く分け入る。 **ゆうげん【幽玄】** 幽玄な(尺八の調べ。雰囲気が辺りを包む)。幽玄極まりなきリリシズムの極致萩原明。幽玄味を帯びた作品。 <953> # ふ **あさかぜ【朝風】** きびしい朝風が頬をうつ三島。快い朝風が湖水の上を渡ってゆく白洲。冷たい朝風が吹き迷う。秋の気配を運ぶ冷たい朝の風倉橋。 **いちじんのかぜ【一陣の風】** 一陣の強い風がさっと吹いて来る=井上峭。一陣の風が巻き起こる。一陣また一陣と疾走する風!森用。一陣の風のごとくに視界から消え去る=池波。一陣の風のように走り去る!篠田。騎馬隊が一陣の風のように丘を駆け下る=山田瓜。 **おいかぜ 【追い風】** 追い風が吹き始める。追い風に乗る。背中に風を受ける。順風に帆を揚げる。順風を(得る。待つ)。 **かざおと【風音】** 風音が尖とがって聞こえる=佐伯。ぴたりと風音が絶える。▼風の音(物寂しい。悲鳴のような甲高い=日野)。風の音が(思いを遠くに誘う。心持ち大きくなる。笑い声のようにたえまなく鳴る=高橋和)。吹き込んでくる風の音がビッチ感の悪いリコーダーのようで耳につく辻仁。たまさかの風の音しか聞こえない静謐どでの中“三好京。風の音に耳を傾ける。歩く気配が風の音に紛れる。嵐の夜の風音のように頭のはるか上で荒れ狂う。大江。山風のこうこうという音。梢をかすめる風の泣き声"加賀。 **かぜ 【風】** 風(小波が立つ程度の。果実のようなふくらみを持った村上裕。引っかくような痛さを伴った辻仁)。風が(止むのを待つ。池の表にさざ波を立てる。枝をさわさわと揺らす。会話をさらっていく。髪をやわらかくなぶる。こうっと吠える。篠をざわざわとゆるがす。雪片を横ざまに舞い飛ばす。落ち葉をさらさらと弱い音を立てながら移す堀。ガラス戸をガタンガタンとたたく=石森。木の枝をざわざわゆすって通り過ぎる"松谷。くすぐるように背中をさする=山本有。絶えず颯々きつと響きを立てて耳もとを過ぎる=大岡。冷たい敷布のようにからだを包む!岸田。遠い昔の記憶を運んでくる=小沼。なだらかな緑の斜面を滑る=村上森。ひょうひょうとうなりをあげる…日野。ほつれ毛を弄。六ぶように襟元をくすぐる合村。真っ黒な雲を重たそうに引きずる=堀)。いつの間にか風が出てくる。すててうと風が入ってくる。足もとから突然風が巻き上がったようにどぎまぎする=円地。からからに乾いた氷のような風が骨の髄までしみこむ小松太。体の中を虚しい風が砂埃討にはをあげ音もなく通り過ぎる藤本。たむろしていた風が焚たき火に吸い寄せられたように庭の片隅から起ちはじめる武田癸。生温かい風が光を揺らせる=村上存。窓から緑の風が踊り込む"高橋三。湖をわたってくる風が汗のにじむ頬や項になにさわやかにしみる原田康。豊かな樹々の香りと野鳥のさえずりを風が運ぶ"村上漆。雲が吐き出す息のように雪まじりの風が流れる=連城。ひどく冷たい風が水のように流れる=開高。闇の中の透明な断層を滑るように風が音もなく流れる=村上巻。風が渡っていく(木々の梢を。麦畑を)。頬をなぶられる)。旗が風に翻る。カーテンが風に膨らむ。髪が風にほつれる。髪を風になびかせる。小舟が風にもてあそばれる。芒汀すの穂が風に割れる。外へ出て風に当たる。波が沖の肌に騒ぎ立つ。においが風に散る。花が風にそよぐ。花吹雪が風に舞う。布団を風に当てる。ほてった顔を風にさらす。炎の帯が風に舞い上がる。靄もゃが風に追い払われる。ろうそくの火が風に揺らぐ。陽射しのぬくもりが風に流される"小川。風にあおられる炎の舌。風に追われて舟が押し流される=福永。風に乗って歌が流れてくる。さわめく。雨もよいの風がひゅうひゅうと松を鳴らす=中。窓のきしみが風に乗って聞こえてくる。肌にはためく(搬送の日が。吸誰もが)。風の(通りが悪い。脈に触れる)。白い波頭を均すように風の脚が移って行く大岡。びゅっと風の立つような勢いで後ろへ跳ぶ"吉川。肌を望んで蜂起犯っする。お上の風を吹かす。魔物でもあるかのように風を恐れる夏目。鞭もぅがりゅうりゅうと風を切る芥川。肩で風を切るようにして歩く"池波。電車が風を切って走る。風を食らったように駆け出す。風を食らって逃げ出す。髪が風をはらむ。帆に風をいっぱいはらむ。風のように(軽い衣の裾。飛んで帰る。馬を飛ばしていく光瀬。どこかに行ってしまう永倉。ふらっと戻ってくる=石森。捕捉しがたい心持ち佐藤春。舞い込んできた女"石川。身をひるがえす=石川)。車のエンジン音が肌のように過ぎる=黒井。声が一筋の風のように響いてくる=小川。坂道を風のように一気に駆けのぼるジーブ=阿久。幼少年の期の記憶が軀からの中を風のように通り抜ける=吉行。▼風が冷たい(池を渡ってくる。山から吹きおろす)。風の冷たさにたまりかねる。冷たい風が川面を渡る。冷たい風から首の周囲を守るように肩をすぼめる森遥。冷たい風に(さらされる。身をすくめる)。風に(押されて歩く。向かって歩く。雪が混じる。頬を切るように=柴田羽)。体の中を冷たい風が吹き抜けていく。頬に冷たい風が当たる。まだ風の冷たい早春のある日。吹き込んでくる風の冷たさが骨に徹るように山本周。肌にまつわるような風の冷たさに深り行く秋を感じる=石川。吹き渡る風が冷たさを増す。風が肌を刺すように冷たい"西木。風が鳴る。風が(こうこうと鳴る。耳の裏を鳴って通る。絶え間なく笛のように鳴る=光瀬。さやさやと葉を鳴らす。三をがたがたと鳴らす。窓をばたばたと鳴らす。鉄橋をヒュウンヒュウンと面白そうに鳴らす=椎名)。締め出しを食った犬みたいに鼻を鳴らしている風=岸田。 <954> # ふ ブラインドを風が鳴らすような軽い言い方高樹。一風に鳴る(シートがはたたと。陣羽織がばたばた)。▶風が吹く(初夏の青い。秋らしい冷ややかな。心の中に荒れた。肌に快い潤いを帯びた=津本。ほわんと妙に膨脹らちしたような生ぬるい!椎名誠。森じゅうの木という木を吹きならし松谷)。どこを風が吹くかと落ち着き払う獅子。透き通った風がざあっと吹く宮沢。風が吹けば桶屋付けが儲もうかる。どんな風が吹こうとびくともしない。風の吹くように自由に生きる=高村光。風が(ひゅうひゅう吹く。びゅうびゅう吹く)。冷たい風が吹く(氷より。叩きつけるように=辺見)。風が吹いて(葉がさわさわと鳴る。川面に波を立てる=人米)。▼吹いてくる(池の面を洗うようにして涼しい風が獅子。風が後ろから追いかけるように内田百)。風が一吹きやって来る。一晩じゅう風が吹き荒れる。露を含んだ爽やかな風がさっと吹き入る=山本周。風が吹き込む(家の中に。心に。襟から)。呼吸が苦しくなるほど風が吹きこんでくる=山口。ふっと心に風が吹き込む寂しい気持ち=梅本。風が荒々しく草を吹き倒す池澤。風が横なぐりに吹きつける=本庄。真向かいから風が吹きつけてくる。粉雪を吹きつける風が膚を裁きるように山本周。色彩感のある風が吹きつけたような華やいだ気分!小林久。三日ばかり風が吹きどおし。・部屋に風が吹き通る。風が松明封の火を横さまに吹き流す。▼吹きなびかせる(風が草を。長い黒髪を風に)。柳が風に吹きなびく。▶吹き抜ける(風が胸の底を。風がアーケードの下を刺すように=高井。広大な平原を風が限りもなく本庄)。風が汀以言の潮騒乱とともに胸の中を吹き抜けて行く=島尾。新たな風が吹き始める。飄々2017と風が吹き寄せる。森々こうと音をたてて風が町を吹き渡っていく=隆。▼風に吹かれる(自由の。旅の。不意に弱気の。夕暮れの)。風に吹かれて落ち葉が走っていく。笹が風に吹かれてさらさらと鳴る=夏目。落ち葉が風に吹き立てられる。煙が風に吹き飛ばされる。枯れ草が風に吹き殴られる。肌に吹き寄せられた落ち葉。風が吹き抜けるような空腹を覚える=本庄。体の中をすかすかと風が吹き抜けていくような頼りなさ=渡辺。▼風に吹かせる(髪の毛を。順を)。 **かぜがない【風がない】** 歩くたびに舞い立った埃唄にが流れもせずにそのまま元の地面におちつくほど風がない=山本向。風が(息をひそめる。ばたりと止む)。風が死んだように凪ぎ、帆が全く役に立たない平岩。風がそよとも(動かない。吹かない)。一吹きの風も動かない。▼風もない(ひとゆれの。水のほとりに立ち枯れている逢いもの薬をゆするほどの『芥川)。風もないしっとりした晩。風もなく(穏やかな日和。静かな明。蒸し暑い夜。香煙が縷々るると立つ)。風鈴がそよとも鳴らない=田辺。無風の(水域。選挙区)。町長選は無風の公算が高い。 **かぜのて【風の手】** 吹き下ろし舞い上がる風の手がシートを叩く“干刈。足もとがよろけるほど疾風の手に突かれる=長塚。港の風が夜を含んで濡れた手のように肌にまとわりつく荻野。 **かわかぜ【川風】** 川風が(絶え間なしに吹き抜ける。目をさますような冷たさで吹きつける吉本)。ほてった頬に川風が快い。川風で涼みながら長湯する。凍えるような川風にさらされる。 **かんぷう【寒風】** ▼寒風(長い注射針のように遠慮なく突き通ってくる"加賀。鼻が折れそうなほどの高橋三)。寒風が(顔や首筋を刺す。呻ぅぁきをあげて渦巻く徳永)。寒風に顔を叩かれる。寒風をものともしない。薄い霜を渡る風がつらく肌を吹く夏目。風が氷のような冷たさを帯びる。篠田。風が鋭く冷えた針のように心を刺す。泉俊。寒い選以『まじりの風が荒れに荒れて終夜に話す町の上を哮ぃえ狂う国木田。吹きこむ(氷の鞭もちのような風が獅子。凍った風がびゅうと吉本)。窓の隙間から骨の髄を刺すような風が吹き込んで来る徳永。空気そのものをかっさらってしまいそうな激しい寒い風"有局。寒い風が冷たい刃を浴びせる=長塚。霜冷えのする寒い風が吹きつのる=林天。つめたい風が肩のあたりを刺すようにかむ=山本有。暮れ方の冷たい風が渡る。 **きょうふう【強風】** 強風が(うなりをあげて吹き抜けていく。横から吹きつける)。強風で木が倒れる。船が強風に翻弄される。氷雪まじりの強風に打ちのめされる=新田。強風のあおりを受ける。思わず外套がふの襟を立てて肩をすくめるような気難しい風が荒々しく吹きまくる"宮本瓦。巨獣の吼えることくこうごうと哮たけって吹きあたる風の音=長与。黄座万丈にいじればものすごい風が吹く向川弘。歳末大売出しの広告が吹きちぎられるほど風が強く吹く=高樹。猛々しい風に眠りを遠ざけられる=竹西。吹き落としそう(風が今にも梢から月を=国木田。風が赤い太陽を海に倉橋)。真っ直ぐ立って歩くのが危険なほど強い風が吹いている=新田。夜景もゆれるような風がごうごう吹く=吉本。大風で木が倒れる。屋根まで吹き飛ばしそうな突風"田辺。突風が(吹き上げて過ぎる。渦を巻いて通り抜ける=半村)。突風に飛ばされそうになる。突風のごとく部屋へ飛びこむ"池波。怒りが体を突風のように通り抜ける=遠藤。数年間の出来事が突風のように頭の中に吹き荒れる=高橋三。寂寞感付絵ばが突風のように襲う舟橋。暴風に遭って船が沈没する。いろいろな感情が暴風のように起こる。帆が暴風をはらませる。烈風が(街路を大波のように吹き過ぎる=光瀬。まともに吹きつけるように強い力多岐川)。烈風で屋根が吹き飛ばされる。 **こがらし【木枯らし】** 木枯らしが(枝を鳴らす。吹き荒れる。吹きすさぶ。暮れ残った空に鳴る。襟足を吹き抜けていく=海堂。ふきつける寒い冬山崎。真夜中の街路に紙屑いねを巻き上げる原田康)。曇った木枯らしが窓ガラスを震わせる"小川。用にいが林をドッと鳴らす=田山。木枯らしの音が耳につく。落ち葉の舞う木枯らしの町。暗夜を翔かける木枯らしの叫び"福永。声が木枯らしの如く鳴り渡る=山田風。体の内部に木枯らしのような風が吹き荒れる=瀬戸内。思いが木枯らしのように寒々と吹きすぎる=高橋和。胸の中を寂しさが木枯らしのように吹き抜けていく篠田。乾からびた声が霜に響くせいか凜々りんとして用のように一語ずつ聞く者の骨に応えるよう芥川。身を切るような朔風が吹く。西風が乾いた砂をさらさらと掃くようにして吹く=長塚。山蔵やほぉが(冴える。吹きすさぶ)。▼空っ風(上州の。肩を刺すような=高見順)。刺すような空っ風が吹きまくる=徳永。北風が(林を梳がれる。荒々しく吹きつける。びゅうびゅう吹く。剃刀动吸のように鋭く体から熱を奪っていく=石田衣)。身を切るような北風が田圓欧んを渡る=長塚。身を切るように冷たい北風が吹きつける=火坂。北風が吹く(剃刀で切りつけるようななかにし。肌を凍らせるような=村上元)。強い北風にあおられる。北から氷のように冷たい透きとおった風がゴーッと吹いてくる宮沢。西風が(吹き荒む。ごうっと打ちつける。吹いて吹いて吹きまくる)。空に激しい西風が立つ。顔も向けられないほど西風が烈はげしく吹き荒すさむ田山。折からの強い西風にあおられる。西風を岬の防風林が巡る。 <955> # ふ **しおかぜ【潮風】** 潮風が(心地よくうなじを撫でる。そよそよと快い。冷たく皮膚を刺す)。生暖かい湿った潮風が吹く。夜の潮風が肌寒い。潮風で傷んだ板壁。潮風に(鍛えた肌。吹き送られる船)。煙が潮風に白く漂う。薄暗い海面が潮風に波立つ―連城。お囃子襲はぐの音が潮風に乗って聞こえてくる=伊集院。潮風を胸いっぱいに吸いこむ。潮の匂いを乗せた風。風が潮の香りを含む。潮気まじりの強い風が吹き込む。浜風に身を震わせる。磯の香を流した海風。海風が快く体を撫でて過ぎる。崖の鼻をなめて行く海風のように野の風が首筋へ滑って行く=武田発。殺意が朝の海風のように胸を吹き抜ける三島。 **しっぷう【疾風】** 活躍が疾風のごとく放速をきわめる柴田側。疾風のごとき騎馬の一隊"井上靖。疾風のような勢いで駆ける!佐藤春。疾風怒濤との時代。疾風ゃが枯れ葉を吹き捲くかのような情勢山田美。疾風の去るようにどこやらに行ってしまう海音寺。疾風のごとく突如やって来る=鈴木光。疾風のように(飛びかかる。現れて疾風のように去って行く=阿久)。 **すきまかぜ 【隙間風】** 隙間風が(すうすう入ってくる。洩もれるような寒々とした感じ=渡辺)。すきま風がひゅーひゅーと室内に吹き込んでくる"辻仁。胸の中を隙間風が吹き渡る。▼隙間風が吹く(胸中に。心に。夫婦仲に)。隙間風のような(冷たい思い。寂しさが心を通る=宮本百)。声がひゅうひゅうと隙間風のようにかすれる=本庄。不安な予感が隙間風のように吹きこんでくる=日野。 **そよかぜ 【そよ風】** そよ風が(うなじをなでる。川面をすっと吹き抜ける。気持ちよく吹く)。さわやかなそよ風が肌に優しく触れる=塩野。月夜の峠でのそよ風が自由な羽ばたきへの誘いをひそめている=島尾。花弁がそよ風に揺らぐ。前髪を早春のそよ風になぶらせる=山本周。心地よいそよ風を受ける。葉が風にそよそよ揺れる。吹く風がそよそよ快い。そよ吹く風が忍ぶようにこずえを伝う国木田。そよめく(落ち葉が。葉が)。女神の柔らかい舌に似た風倉橋。 **たいふう【台風】** 台風が(暴威をふるう。続けざまに来襲する。過ぎてにわかに秋の色を深めた空野坂)。台風で大荒れの海。台風のあくる朝は嘘のような晴天"阿佐田。颱風絵沁の去ったあとの澄明な青空三島。台風一過の晴朗な朝。二百十日の激しい雨風に襲われる。熱帯性低気圧。星をも吹き落としそうな野分がすさまじく林をわたる=国木田。野分の風が(吹き荒れる。吹きすさぶ)。言葉が秋の野分のように心を吹いて過ぎる=柴田翔。 **つむじかぜ【つむじ風】** つむじ風に襲われたように一座がざわめく=本庄。つむじ風の吹きまくるように走り廻る海音寺。手の中から旋風船やじのように逃げていく小鳥森環。つむじ風のように脈けていく=池波。ひゅうと春の飄風が巻き起こる。心に物狂わしい飄風診沿うが起こる=菊池。旋風ごんが(通り過ぎる。吹きまくる。舞い上がる)。旋風を巻き起こす。話題が旋風のように捲き起こる=松本。 **ねっぷう【熱風】** 熱風が(渦巻く。頬を刺す)。油のよっな熱風が吹きぬける!光瓶。熱嵐で息がつまりそう。むっとするほど熱い風が吹きつけてくる=林关。 **びふう【微風】** 微風(爽やかな朝の。池に写る月を二尺の金鱗んの魚に見せる=川端)。微風が青畳の上をすべっている。あるかないかの微風が渡る。初夏の爽やかな微風が吹きめぐる。潮の香を含んだ微風が吹き入る=石坂。微風に(乗って梅の香が匂う山本周。乗って来る潮騒礼はが耳に心地良い=西木)。髪を微風になぶらせる。木の葉が微風におののく。若葉が微風にそよぐ。あるかないかの風が花房をかすかに揺する=永井路。時折風とも呼べないほどのかすかな外気の流れが入りこんで来る藤沢。 **ふかす【吹かす】** ▼吹かす(アクセルを。エンジンを。先輩風を。うまそうに煙草を。のどかにバイブを)。苛立心らたしさに煙草ばかりをふかす“中村真。吹かせる(臆病風を。上司風を。片意地に主人風を。肌をのどかな春風に)。 **ふきあれる【吹き荒れる】** ▼吹き荒れる(強風が。吹雪が。デマが市中を。風がびゅうぴゅうと。木々を厳なぎ倒さんばかりの勢いで風と雨が篠田)。▼嵐が吹き荒れる(狂暴な。一晩じゅう)。風が吹き荒れる(血なまぐさい。春特有の強い)。嵐が心の中で吹きすさむ。▶吹きまくる(激しい風が。嵐が果てもなく海上を)。・吹きすさぶ(寒風が。砂嵐が。吹雪が。嵐がこうこうと)。寒風吹きすさぶ荒野。▼風が吹きすさぶ(冷たい。反逆の)。吹き募る(嵐が。逆風が。砂嵐が。冷たい風が。暴風が。烈風が)。 <956> # ふ **ふきおろす【吹き下ろす】** 風が崖の上から吹き下ろす。さあっと寒い風が下ろしてくる。▼吹き降りる(冷たい風が。山から風の子が)。 **ふきこむ【吹き込む】** ▼吹き込む(窓から雪が。新たな生命を。風が砂埃けにはを。研究に新風を。消新な気風を。耳に息を。風が室内に。秋めいた涼風が。嵐の夜を境に一気に春が。自己分析に新しい視点を。悪いイメージを。新しい時代の息吹を人灭。隙間を見つけて風が家の中に=なかにし)。風が吹き込む(雨を含んだ。革新の。窓から)。吹き込んでくる(風がもろに。小鳥のさえずりが。さわやかな秋風が)。心の中に新しい風が吹きこんでくる=船戸。家に命が吹き込まれる。風が窓から吹き入る。吹き入れる(息を。息吹を)。風を吹き送る。生命の息吹を吹きつける。 **ふきさらす【吹きさらす】** 風が髪を吹きさらす。吹きさらす冬の夕風に覚えず身ぶるいする=永井荷。精神が苛烈な風に吹きさらしになる=中村真。吹きさらしの(一軒家。停留所)。吹き曝さらしの寒いブラットフォームに立ちつくす黒井。 **ふきつける【吹き付ける】** ▼吹きつける(雨が横殴りに。砂が痛いほど。暴風が海から。横風と一緒に雪が。風が土の香を運んでぃあさの。冷たい思いが心にぶさぶさと=井上靖)。どっと吹きつける激しい風。罪々ひひとして吹きつける粉雪。淡々と吹きつける土煙。・雨が吹きつける(びゅうびゅう。水門の水を一時に、切って落としたように=山本有)。風が吹きつける(さあっと。強い。びゅうっと寒い)。風が向こうから吹きつけてくる。 **ふきとばす【吹き飛ばす】** ▼吹き飛ばす(いやな予感を。感情の堰せきを。暗い霧を。灰を。無挙もこの市民を爆弾で=大沢)。▼吹き散らす(シャボン玉を。たんぼぼの綿帽子を)。▼吹き払う(鬱屈を。心の曇りを。濁った空気を。憂鬱を)。▼吹き飛ばされる(煙が。爆風に。雲があらかた。心の中のもやもやがきれいに"庄野)。声が風に吹きさらされる。声が風に吹き散らされる。空に星が吹き流される。▼吹き飛ぶ(感傷が。疲れが。ふきとぶ【吹き飛ぶ】不安が。跡形もなく。愉快だった気持ちが。眠気がすっかり)。一度に吹き飛ぶ(快楽が。陶酔が)。あっという間に金が吹っ飛ぶ。体が仰向けに吹っ飛んでいく船戸。 **ふきぬける【吹き抜ける】** ▼吹き抜ける(疎外感が秋の冷気が路地裏を。風が胸を。屋上を冷たい風が。ブロムナードを。涼しい風が部屋の中を。朝の涼しい木の間風が野上。心のどこかを空虚なものが蕭々いいいとして=阿川弘)。紅蓮にゃの炎がベランダを吹きぬける=高千穂。体の中をすかすかと風が吹き抜けていく。風が吹き過ぎる(街路を。心を。平原を)。吹き過ぎる(木枯らしが。清風が。烈風が。風が緩やかに。風が颯々さっと。雪風が荒涼として)。▼風が吹き通る(すうすう。清々忙しい青畳の上を)。吹き渡る(風が空を。虚空を物凄い風が)。斜面を吹き渡る風。 **ふく【吹く】** ▼吹く(勝手な熱を。壁が白く粉を。口から泡を。昆布が塩を。尺八を。煙草の煙を。利いたふうな口を。取者いにが伸びやかにらっぱを。けたたましくホイッスルを。トランペットを。ひとくさり笛を。酔って酒の香を。シャボン玉をぶーと口から。火吹き竹でふうふうと。横笛を心ゆくまで)。▼口笛を吹く(陽気に。ヒューと)。火を噴く(砲塔が。養恥礼いが顔で)。芽を吹く(若葉が。柳が一斉に。淡木みんが新しい)。吹いて食べるような熱いうどん幸田文。熱いご飯を吹いて食べる。味噌汁を吹いて冷ます。吹かれる(臆病風に。夜風に面らもを)。ほんの一吹きで燃え上がる炎を内にかくし持つ瀬戸内。フルートを上手に吹ける。息を吹きかける(かじかむ手に。耳たぶに。はあっと。ぶうっと。ふうふう)。 **まつかぜ【松風】** 松風の音を楽しむ。山中で聞く寂しまつかぜい松風の音。静寂の松風の底に寺が眠る。夜っびて松籟しい、が耳につく。松箔の音に耳を澄ます。寒々とした松籟の音。風が松籟を響かせる。 **よかぜ【夜風】** 夜風が幕のように角を曲がって彼らを押し包む伊藤整。汗ばんだ肌に夜風が心地よい。晩秋の夜風が頬に冷たい。思わず肩がすくむほど春寒の夜風が冷たい=壺井。夜風に桜の花びらが踊らされている=鷺沢。月光の足が梅雨晴れの夜風に揺れる=川端。声が夜風に乗って遠のきまた近づく=杉本。汽車の響きが遠ざかるにつれて夜風のように聞こえる=川端。夕風が(袂にも涼しく吹く。吹いてきて水面に時々こまかい小波時にを走らせる=庄野)。樹々の葉が夕風に爽やかな音を立てて鳴る=遠藤。 **よこかぜ【横風】** 横風に(あおられる。流される。ハンドルを取られる)。真横からの風。 **りょうふう【涼風】** 一陣の涼風が吹きこむ。折節涼風が吹き過ぎる。地獄で涼風にあったようなすがすがしさを覚える=中島河。ひと吹きの涼風を得たような爽快さ竹西。涼風のような楽観した言い方=木庄。涼しい風が(吹き抜ける。水の面を滑る。川の面を吹き過ぎてゆく)。清風が(胸中に吹き入る。吹き過ぎて行く)。爽やかな消風が立ちそめる。 <957> # ふ **おなか【お腹】** お腹が(痛くなるほど笑う。破れるほど食べる=太宰)。おなかが(張って苦しい。水でだぶだぶになる=灰谷)。ぎゅっと錐きりでもむようにお腹が痛む=有島。おなかに(力を入れる。虫が湧く)。おなかの(具合が悪い。底からびっくりする)。海鳴りがおなかの底に響く。おかしさがお腹の底からこみ上げてくる=阿木。お腹の皮がばんばんに張る荻野。おなかを(痛めた子供。ぼんぼんと叩く。かかえて苦しそうに笑いころげる=灰谷)。何の屈託もなくおなかいっぱい食べる。 **きたい【気体】** 気体と(液体を混ぜる。液体が分離する)。体の中にガスがたまっているような不快感"乃南。重い冷たい潮霧がぇが野火の煙のように深々65と走る=有段。▼ガスが溜まる(タンク内に。腹に)。腰の折れた瓦斯”ぇのような声を立てる=室生。闇が重い不思議な瓦斯のように力強くすべての物を押しひしゃげる=有良。放射性ガスが環境中に放出される。メタンガスがぶくぶくと泡立つ=日野。寝返りを打つ音や発音のわからない寝言が泥沼に出るメタンガスのようにブツブツ起こる=小林多。挫折感が胸の底で無念のメタンガスを吐いている荻野。 **したはら【下腹】** 統ぬめのような美しい下腹-柴田剣。下腹が(ごろごろと鳴る。蛙砂流のようにふくれ上がる=野坂)。錐きりでもみこまれたみたいに下腹が痛む水上。下腹に(贅肉にいがつく。痛みがつき上げてくる。ぐいと力を入れる)。下腹のふくらみが目につく娘落合。刺しこむような下腹の痛みが襲う。水上。下腹部に激痛が走る。臍下丹田せいふたに力を込める。魂を臍下丹田に落ち着ける落語。丹田に気合をこめる。意識を丹田に集中する。気を丹田に集める。 **しぼむ【萎む】** しぼむ(心の風船が。華やいでいた考えが。夢がたちまちのうちに柴田翔)。針で風船を突いたように気持ちが小さく現実へと姿にしにむ連城。陰茎が小さくしぼむ。塩をかけられたなめくじのように小さく羨む谷村。▼しぼんでいく(幸せな気分が。膨らんだ期待が高村慈)。活力が風船から空気が抜けて行くように萎んで行く=円地。根を絶たれた徒花妹のように萎んでゆく隆。 **シャボンだま【シャボン玉】** シャボン玉が七色に輝く。七彩以法に変わる石鹸玉ジが球の色のように倏忽しっに気持ちが変わる=梶井。風船よりは薄くて弱いけどシャボン玉よりは厚いみたいな粘り気のある膜"景山。記憶が深い沼の底からしゃぼん玉のように頭をもたげてくる=島尾。束の間でしゃぼんだまみたいな幸福な思い=森環。しゃぼん玉みたいに次の瞬間には消し飛んでしまう喜び森玩。 **なえる【萎える】** ▼萎える(怒りが急激に。一歩ことに気持ちが。恐ろしくて勇気が。敵愾心にぱがいちときに。膨脹がうちしていた陰茎が"池田。足の力が風船のガスが抜けるように『高井)。体じゅうから力が姿えてゆく。身も心も萎えはてる。 **はら【腹】** ▼腹(太鼓を張ったようにすべすべとふくれた泉鏡。福々しく膨らんだ=平野。古い太鼓の皮のように光沢の消えた=横光)。腹が(煮え返る思い。痛くなるほど笑う。獣を入れた袋のように波打つ=横光)。最近腹が出てくる。しくしくと腹が痛む。虫のよい腹が見える。脂肪だらけの腹がここりのように頭ふるえる岸田。母豚の巨大な腹が嵐の海のように波打つ飯田。同じ腹から生まれた兄弟。口と腹とは違う。腹に(響く爆発音。水がたまる。当て身を叩きこむ。パンチを食らう。据えかねたように毒づく=井伏。たまっていたことを大声に喋ん『り立てる=本庄。溜めずに言いたいことを言い合える!高杉。響くようなにぶくはじける音=泉俊。物をためておかれぬ男坂口)。怒りを腹に抱え込む。太鼓の音が腹にこたえる。フックが腹にめりこむ。ベルトが腹に食い込む。思うことを腹にためずに口に出す=高橋治。鉄の棒が下からお腹へ飛び込むように車の揺れが腹に響く=川端。感情を腹に収める。長年腹に収めてきた思い。腹の(据わった男。うちを見透かされる。足しにならない。皮がよじれるほどおかしい=高橋和)。ぼりぼり腹のまわりを掻きむしる=宮本颅。腹も身の内。腹を(痛めた我が子。えぐられるような不気味な音"長崎)。作法通りに腹を切る。渋る腹を押さえる。上司の腹をいささか侍たのむ。食べ過ぎで腹をこわす。たのむ。食べ過ぎで腹をこわす。カンガルーのように腹を膨らす人谷崎。様のような腹を揺すぶる=川端。寝台の上で腹を波のようにうねらせる=横光。▼腹を抱えて笑う(げらげらと。笑って笑って狂ってしまうと思われるほど=小池)。短刀の刃先が魚の腹のように光る=本庄。小腹が減る。三段腹のくびれがくっきりと浮き出てたこ糸で巻いた豚肉みたいに見える=小池。太鼓腹を突き出す。校腹を揺すって笑いこける。土手っ腹に風穴をあける。土手っ腹をぶち抜く。腹具合が(おかしい。心配。悪い)。腹八分に医者いらず。 **はらのそこ【腹の底】** 腹の底を(吐き出す。見抜く)。腹の底から(怒りの声を絞り出す熊仓。唸、うなるように謡う今来。こみあげるような喜び!本庄。絞りだすようにうめく=佐藤多。出る陰にこもった太い声=椎名時。湧いてくる味気なさに圧倒される荻野。湧き起こるような豪快な笑い!内海)。怒りが腹の底からふつふつと沸く=辺見。みなぎるような勇気が腹の底から湧いてくる=本庄。腹の底が読めない人。腹の底でいらだちが渦を巻く。腹の底にしみるような悲しいよろこび=川端。感動が腹の底に落ち着く=本庄。 <958> # ふ **はらのなか【腹の中】** 腹の中を(見抜く。打ち明けて言う)。腹の中に(怒りを隠す。笑う虫を飼う。ある不平不満をしゃべりちらす)。腹の中で(舌を出す。せせら笑う。毒づく)。腹の中が(うすうす読める。煮えくりかえるほど憎悪を燃やす宮尾)。さてこそと腹の中でニヤリと笑う幸田逐。 **はらむ【孕む】** 「はらむ(風が雨気を。結末の予感を。一触即発の気を。風を帆いっぱいに)。怒りをはらんだ屈辱感。大動乱をはらんだ不気味なた気。怒気をはらんだ声で呼ぶ。雪をはらんだ空。道が草の影をはらんで黒い=大岡。世間が風雲をはらんでくる。 **ふうせん【風船】** 風船が(バチンと割れるように短い笑い声が起こる=島田。ゆらゆらと空中に舞い上がる=美濃部)。殺意が風船がしぼむようにどこかへ消え去る=景山。腹の中に明るい風船がいっぱい群がって心臓を軽くする=川端。張りつめた風船が割れるように娘が声をあげて泣き出す“高樹。バワーが風船がしほむようになくなる。宗田。風船から空気が抜けるようなしゃべり方荻野。張りつめていた気持ちが風船でもしぼむみたいに力がぬける=水上。風船に針で穴をあけたように体中の空気が抜けてゆく!向田。萎えていた風船に新しい空気が注入されてゆくように若々しい表情が漲る―辻井。涙が風船の姿しはんだような体からぶつんと切れる=連城。大きくふくらんだ風船をバチンと割ってしまったような失望向田。風船のようなお腹をボンと叩く“干刈。風船のように思いがふくらむ=円地。奈落へ突き落とされるような淋しさと焦燥とで心が風船のように萎む=阿川弘。無気味な静寂がいまにも破裂しそうな気配をはらんで風船のようにふくれ上がる=宇野利。袖が風をはらみ風船みたいに膨らむ三浦し。見るからに重たげな瓶子ひぃを紙風船のように軽々と掘っかみ上げる=獅子。ゴム風船が割れたように張り合いが抜けて気落ちする"萩原楽。気の抜けた風船玉のような返事獅子。風船玉のように風のまにまに漂う。石坂。 **ふくぶ【腹部】** 腹部が(膨満する。ゆったり呼吸をするように波打つ=島尾)。背骨から腹部に激痛が走る。刃物が腹部に突き刺さる。でっぶりした腹部を揺する。 **ふくらませる【膨らませる】** ▼膨らませる(期待に鼻孔を。紙幣で懐を。顔を無邪気に。腹を一杯に。帆を肌に。心を明るく。嬉しげに鼻の穴を。期待に満ちた希望を。不満そうに畑を。埒らちもない想像を。煩を可愛らしく。頬を風船のように"辺見)。自慢で鼻の穴をふくらませる=戸板。▼蕾を膨らませる(梅が。桜が)。ぷっと頬を膨らます。 **ふくらむ【膨らむ】** ▼膨らむ(下腹が異様に。蕾いが日増しに。頬が豊かに。腹がぽってり。釣り銭で財布が。憎しみが存分に。頬がぷっくりと。妄想が頭の中で。耳の先っぽが空気でも注入したように三浦哲)。▼ふくらむ(ボケットが無細工に=山田太。金銭がすくすくと雪だるまのように=林だ。煙草入れが募蛙がの腹のように=梅本。咽喉のどが雨蛙誌がが鳴くときのように徳水)。小鼻がせわしげに膨らみ縮む。分厚く膨らんだ紙封筒。想像が点のようなかたちから大きくふくらんでいく"村松。疑心が次第に膨らんでいく。口唇くらが輪郭を失うほど赤く地皿れしてふくらんでいる=黒井。嬉しさが刻々膨らんでくる。音色に滴るような弾力があり恨ふくらみがある=横光。下腹の膨らみが目立つ。蕾が膨らみを持つ。 **ふくれあがる【膨れ上がる】** ▼膨れ上がる(異常なまでに。食費が倍に。想念が次第に。顔がぶくっと。期待が心で。唸住ぶが涙で。瞬く間に人致が。目に大粒の涙が。好奇心がにわかに。事件が政治問題に。難民の数があっという間に。腹がばんばんに。悔恨の念がみるみる。水面がもこっと。頭部が蜂に刺されたように"大岡)。仁王の足のようにふくれ上がる=檀。腹が太鼓のように膨れあがる"之項。みるみる膨れ上がる不吉な予感。目の下がふくれ上がるほど腫れる=中沢。怒張する(陰茎が。血管が。ペニスが)。 ふくれる【膨れる】▼膨れる(腹がぽってり。着物を何枚も重ねて着てもこもこ。腹がぶっくりと。帆が満足そうに遠藤)。▼ふくれる(小犬のようにむくむく小松太。黒子祖くのようにぼっつり~小島。頬っぺたがおたふく風邪のように『辻井)。ぶっと膨れて出て行く。ころころに着膨れる。夢が心の中で膨れ育って行く。▼膨満感(胃の。腹部の)。もこもこした感触の毛 **ふっくら** 顔がふっくらしている。ふっくらと(太った女。頬の肉付きがよい)。ふっくらした(愛嬌のある顔。薔薇色35の頰。・娘の肌の感触)。顔に似合ったふっくらした声。性格にふっくらしたところがある。頬のふっくらした顔立ち。ふっくり炊き上がったご飯。胸がふっくり盛り上がる。雪のようなふっくりした饅頭味礼じ=獅子。ふっくりと二重にくくれた顎"山本周。豊潤な(体。音色)。ふくよかな(下膨れの顔。夢に彩られる。顔に笑みを絶やさない。母の胸を思い浮かべる)。ぽっちゃりとしたふくよかな体に魅せられる小池。ふくよかよりやや重量級の女性"有川。 **ふやける** ▼ふやける(足指が。心が。脳味噌が。豆が)。ふやけた生き方を潔しとしない。ふやけて白くなった垢ぁか。水に浸けてふやかす。ほとびる(手が。指が。干した貝が水に)。 **ぼうちょう【膨張】** 膨張と収縮を繰り返す。▼膨張する(赤字が。陰茎が。ガスが。空気が。商業資本が。組織が。不安が。風船が。急激に)。 **みずぶくれ【水膨れ】** ▼水ぶくれができる(唇に。皮膚に。日焼けで。やけどで)。からだが水ぶくれになっているようにふやける石川。青白く水膨れのように肥、ふとる安岡。水ぶくれみたいなおでぶさん"林美。 <959> # ふ **みぞおち【鳩尾】** 鳩尾が(きりきりと痛くなる。しくしくと痛む。氷のように冷たくなる=有吉)。フックを鳩尾に浴びせる。 **むね【胸】** ▼胸(男の腕に抱きしめられれば砕けてしまいそうなほど華奢にな=千刈。石のように空虚で冷たくなった=山本周)。胸が(すうっと晴れる。あぶられるような焦燥感"小林久。今恋文を渡したばかりのように波打つ=中村貞。うつろになるような味気ない思い=石坂。押しつぶされるように苦しい=長与。せまって涙がさっとまぶたにたまる=中。展ひらいていくように嬉しくなる=佐多。ふつふつ滾たきるほど熱くなる=杉本。誇りで破れそうになる=塩野。やくざなふいこのようにぜいぜいあえぐ=梶井。はりさける苦しみに襲われる=坂口。張り裂けるほど悲しい長崎)。かすかに胸が騒ぐのを感じる。感慨無量で胸がつまる。嫉妬で胸がかきむしられる。想像するだに胸が悪くなる。怪しい快感で胸が頭、ふるえる=川端。押さえようもなく胸が高鳴って息苦しいほど=船山。枯れ芝が燃えだすときのように胸がバチバチとはじける=石森。叩くと胸が軽い張り子のような音を立てる=横光。懐かしさに胸が温かくなる=伊坂。物哀しいような気持ちで胸が塞ふさがれる"干刈。やわらかい豊かな匂やかな胸が波をうつ=山本周。胸をえぐるような苦痛な言葉萩原爽。▼胸がつぶれる思い(責任の苦しさに=坂口。この世の地獄を見て灰谷)。胸がどきときする(うれしくて。心配で)。胸に(勲章を吊るす。ナプキンをかける。ハンカチを覗のぞかせる。肋骨3つが浮き出す。わだかまりを持ち続ける。穴をあけられたような寂しい気持ち=石坂)。赤ん坊を胸に抱きしめる。ぐ借を胸にしまう。感慨が胸に湧きあふれる。希望が胸に生じる。疑問が胸に残る。自信が胸に芽生える。嫉妬が胸にうずく。刃先が胸に突き立つ。ひそかな夢を胸にいだく。一言一言が胸に突き刺さる。不安が胸に渦巻く。本を胸に抱える。喜びが胸にきざす。甘い照れくささが胸にこみあげる=阿刀田。甘酸っぱい笑いを胸に溜める=円地。怒りが胸にむらむらと燃え上がる=宇野利。得体の知れない不安が胸にひろがる藤沢。激しい悲しみが胸におしよせる"林真。胸の(埋、うずみ火をかき立てる。つかえが下りる。芯に火傷跡のようにひりつくものがある=高樹)。かがむと胸の谷間がくっきり見える奥田。狂おしいほどに胸の炎が燃え上がる夢枕。胸まで水に浸かる。胸も塞がるような記事で満たされた毎日の新聞島崎。豊かな胸も肩も匂うばかりに弾む=山手。胸を(叩いて階け合う。打って吠えたいくらい嬉しい今來。かきむしられるような女々しい気持ち=中島敦。掻かきむしりたいほど後悔する=有吉。ゴリラのようにとんどんと叩く“開高。突き刺す言葉に耐える=高橋和。突くような石段をのぼる=池波。弓のように張る"川端)。愛が胸を射る。息苦しさに胸を押さえる。感激に胸をおののかせる。期待に胸を弾ませる。後悔が胸を蝕딴しむ。絶望に胸をさいなまれる。爽快さに胸を洗われる。不吉な考えが胸を押しつぶす。憐憫の情が胸を突き上げる。悪い想像が胸をかすめる。懐旧の情が胸を騒がせる"有島。甘美な想い出が胸を感傷的に満たす藤枝。言葉の短刀が胸を快く突き刺す"中村良。祖国を裏切ったという悔いに胸を焼かれてすごす=塩野。波が寄せてくるような工合いぁに胸をうねらせる谷崎。喪失感が胸をえぐる。太陽にさえ突っかかっていきそうなようすで反抗的に胸を反らす幸田文。得意そうに胸を張る。自分の胸一つに納めておく。切り裂くように胸が痛む"海音寺。胸に釘を刺すような痛み=高樹。ずっしりとした痛みが胸の中心を貫く三田。胸が(急に痛むような苦しげな顔"宮本百。キュンと痛くなるような思い高橋三。刺されたように痛む=北原。鈍器で打たれでもしたかのように痛む森環。熱火で灼かれるように痛む=海音寺。引き裂かれるほどの痛み 高橋三)。胸がいっぱいになる(愛しさで。悲しさで。後悔で)。胸が一杯になって(物が言えない。涙があふれそうになる=北)。空気を胸いっぱいに吸い込む。胸がいっぱいでどんなこちそうも喉に通りそうにない=住井。胸が膨らむ。胸の中で灰色の空気が膨らむ。不安が胸の中で膨らむ。呼吸するのも苦しいくらい胸が一杯にふくらむ"山口。胸がいつもふくらんでいるような期待に満ちた日々を送る=石坂。喜びに胸が膨れ上がる。胸を夢でいっぱいに膨らませる=池井戸。溢れ出る幸福感が胸をふくらませる=福永。溢れるような幸福感が胸をいっぱいにふくらませる=福永。ふくらみがまろやかな重みとなって胸に実る黒井。▼胸を締めつける(哀れみの気持ちが。疑いが八方から。呼吸の苦しくなるような不安が福永)。屈辱の想いが胸を激しく締めつける=福氷。胸がキューンと切ない想いに締めつけられる"高見明。胸が緊しめつけられるような懐かしさを覚える=源氏。胸が締めつけられるように苦しい!泉優。 **むねのおく【胸の奥】** 胸の奥が(疼ぅずく。きゅんと痛む。ざわざわする。ちくりと痛む。じんとしびれる。涼しくなるような清々しさ=林真)。胸の奥で怒りが煮えたぎる。胸の奥に(嫌悪の情が湧き上がる。冷たい流れを覚える!高樹)。思いが胸の奥に宿る。ぬくもりが胸の奥まで届く。胸の奥深く言葉が突き刺さる。望みを胸の奥深く大事にかきいだく。 **わきばら【脇腹】** 痛々しく痩せた脇腹!武田炎。脇腹が引きつるように痛む。脇腹に(竹刀を突き入れる。銃口を押し当てる)。丘が紺碧に氷の空に女の脇腹のような線をひとしおくっきりと浮き出させる=佐藤泰。横腹が痛む。横腹を(蹴飛ばす。槍ゃりが貫く)。ナイフで横腹をえぐる。 <960> # ふ **あんや【暗夜】** 暗夜(月も星もない。星一つ見えない)。暗夜に灯火を得た思い=坂口。暗夜の灯火に吒と頼む芥川。暗夜を翔がける木枯らしの叫び=福永。 **いちや【一夜】** 一夜(悪夢のような。危機感に押しつぶされるような戦慄吐の=舟橋)。一夜の(雨露をしのぐ。宿りを求める。夢として終わる)。山々が一夜のうちに雪に覆われる。美しい月を愛でながらの一夜の余興篠田。一夜のうちに城下の隅々まで知れ渡る=本庄。一夜を(共に過ごす。泣き明かす。待ち明かす)。団樂於心の一夜を送る。▼一夜を明かす(眠れぬ。悶々もんの。まんじりともしないで)。▼一夜を過ごす(不安な。嫉妬と苦悩の。歌と踊りでにぎやかに池澤)。一夜にして(髪が白くなる。有名人となる)。一夜限りの関係を拾って歩く光原。一夜漬けの試験勉強。 **しんや【深夜】** 作業が深夜に及ぶ。深夜の(電話を遠慮する。冷気を胸いっぱいに吸い込む奥田)。遠慮がちの深夜のノック。扉窓は氷とした深夜の気配がしみる=梶井。深夜まで(勤務が及ぶ。仕事に追われる。車の流れが途切れない高村感。どんちゃん騒ぎをする=篠田)。早朝から深夜まで働く、深夜のようにひっそりした風景木山。 **てつや【徹夜】** 徹夜で(踊り明かす。書き上げる。協議を重ねる。作業する)。徹夜の張り込みを続ける。徹夜明けの興奮と別れの感傷が入り乱れる=氷室。徹夜続きでへばる。 **ばん【晩】** ▼晩(風が肌に寒く焚たき火の焰皿のが妙に懐かしいような"外村。木枯らしのきつい冬の"向田。星空の冴える寒い三浦苔。星のきれいな風の涼しい"谷崎)。晩のおかずを決める。最後の晩を過ごす。 **ひとばん【一晩】** 一晩(そのままにしておく。たつと忘れてしまう)。家を一晩留守にする。嫌なことを一晩寝て忘れる。着物をひと晩で縫い上げる=高橋冶。一晩を限らずに明かす。一晩じゅうまんじりともしないで考える。風が一晩じゅう吹き荒れる。宵越しの(金は持たない。ビールはまずい)。 **ふける【更ける】** ▼更ける(秋が。次第に夜が。春が。夜がとっぷり)。夜が更けるまで雑談を楽しむ。秋の夜が深々と更けていく。 **ほしぞら【星空】** 両側から黒い山なみの稜線切 に狭められた星空がちかちかと瞬く砂金の川のように見える三浦哲。なだれるような星空が広がる人問。しんしんと冷える冬の夜道が豪華な星空にいろどられる吉本。慣れない豪華な星空に目がまわってくる三浦し。山々が厚さがありそうないぶした黒で星空の裾に重みを垂れる=川端。降るような星空が頭上に広がる=北村。降るような星空を仰ぎながら悠々と歩く人今日。仰ぎ見る圏の中に無数の銀の穴が散る=阿刀田。夥結ぶしい数の光を浮かべた空高樹。降るごとく一面に星の現れた空"長与。▼星が散らばる(大空に無数の。空に薄ぼんやりした久米)。 **まいばん【毎晩】** 毎晩(遅くまで働く。いさかいをする声が聞こえる。夜遅く帰ってくる)。心配で毎晩夢に見るぐらい。毎晩のように(顔を見せる。電話をかけてくる。酔っ払って帰る)。連夜の(逆転勝ち。飲み会。パーティー)。 **まよなか「真夜中】** 真夜中(深沈たる。人も寝静まった)。真夜中に叩き起こす。木枯らしが真夜中の街路に紙屑いねを巻き上げる=原田康。朝から真夜中まで駆けずり回る。真夜中を過ぎて日付が変わる。草木も眠る丑三衿しつ時。自分たちの使う風呂の湯の音がことさら耳につくような時間!水井岚。時計の針が午前零時を指す。人々が寝静まったころ。星の動いていく音が耳の奥に聞こえてきそうなくらいにしんとしている=吉本。街が眠りの時刻の底に沈む=原田康。夜半の一時を少し回る。夜遅い時間。夜の更けた気配が囲む。あたりが真夜中のように暗く沈む=長野。月のない墨を流したような深更柴田錬。深更に及んでも会議が終わらない。話が深更まで続く。 **やき【夜気】** どんな微細な物音でも遠くまで伝えそうな晴れた十二月の夜気"原田晓。夜気が(殊更涼しくなる。しっとりと漂う。ひんやりと冷たい)。汗ばんだ肌に夜気が快い。部屋の夜気がしんと冷たい。厳冬の冷たい夜気が車内に流れ込む!浅川。深沈とした夜気が全身の毛穴から染みこんでくる"高樹。生暖かい夜気が顔に触れる=笹沢。弾けば高く鳴るような凛りんとした夜気があたりに漂う辻井。肌寒いほどの夜気が酔った肌を快く刺戟しげする藤沢。水の如き夜気が身に沁しみて肌の坐ぞぞろに寒きを覚える二葉亭。夜気に(雨が残る。湿った草原。ぬくもりがまじっている。若葉が重く匂う)。花の香が夜気に漂う。森の冷たい夜気の青い香りを吸いこむ!朗高。夜気を裂く単車の音。夜気迫る闇の底。夜の気配が押し寄せてくる。 **やけい【夜景】** 夜景(さみしいけど美しい=志茂田。凄絶な美しさに満ちた=原田康。灯火がいっぱいにきらめいた"石川。涙が溜まっている目で眺めているような笹沢。一面の雪の凍りつく音が地の底深く鳴っているような厳しい=川端)。夜景がちらちらと瞬く。湖水に色とりどりの夜景が映る。マンションから見た夜景が脳袋に刻まれる=篠田。ロマンチックな夜景が売り物のレストラン荻野。雨に洗われた街の夜景に見入る=石坂。夜景の綺麗なスカイレストラン=海堂。夜景をバックにシルエットが浮かび上がる=位沢。港の夜景を見下ろす。塔のようなマンションのベランダから都心の夜景を眺め渡すぃ日野。満艦飾の灯が水に映えて豪華な夜景を展開する=笹沢。車窓に流れる夜景を眺める。 <961> # ふ **やみよ 【闇夜】** 闇夜(漆黒の。月のない。星一つない)。風の強い闇夜に一本の竿さぉでバランスをとりながら綱渡りをしているよう~三浦朵。闇夜の(中で見る獣のような目の光公谷村。発光文字のごとくに必要な途ぇちだけがハッキリ浮かび上がる=中島敦)。空も地平も黝くぅく迫る壁のよう。加賀。 **よい【宵】** 晩秋の冷たい需もゃが地に低く淀んで空は紺青に礼しに澄んだ美しい宵"円地。源い宵が地を低く掩ぉぉう長塚。宵の空に月がかかる。暮れ鈍る夏の宵の光が景物をほの黒く浮かせる"川端。心地よい春の宵の風に当たる=梅本。むっとするようにこもった宵の空気=梶井。物静かな宵を過ごす。さらさらという夕の肌寒い風が障子の穴から忍び込む=長与。たそがれが夜に移る間。 **よいやみ【宵闇】** にじむように昏くれだした宵やみ本庄。晩秋の宵やみが深い水色となって四周を冷たく浸す=本庄。あたりに宵闇が迫る。まぶたに膜がかぶさってくるように宵闇が重なりつつある=島尾。家々が宵闇の中に遊黒く沈む。 **よごと【夜毎】** 夜ごとにぎやかな音楽や歌声が聞こえる"池澤。夜毎客に口説かれる。六本木界隈に夜毎出没する。夜毎に(枕を交わす。耳だつ虫の音。恋人のところに忍んで行く)。毎夜のように(顔を出す。姿を見せる。飲む)。毎夜遅くまで仕事に没頭する。地獄の様相が毎夜繰り返される大岡。 **よぞら【夜空】** 夜空(雲一つない。天空のキャンバスに藍色の油絵の具をほたりと落とし薄く塗り伸ばしたような=池井戸。深さを測ることのできない=高樹。紫のビロードをはりつめた=城山。夕陽の名残がほんの少しだけ溶けている=重松。瑠璃色2010にうるんだ夏の"円地)。夜空が(高々と冴える。妖しい薄明かりにぼうと光る“日野。溶け落ちるように雨が凄まじい響きを立てている芥川)。夜空で花火が弾ける。夜空に(月が輝く。星くずがきらめいている。向けて照明弾を射ち上げる。数系の花火が打ち上げられる"吉村)。鐘の音が夜空にしんしんと響き渡る。飛行機が夜空に吸いこまれる。晴れ切った夜空に冬の名残に響くばかり冴えた星斗が落ちて散らばる人米。夜空にはこぼれんばかりの満天の星「池井戸。夜空の下底光りする夜空の深さ。夜空をで篝火》をたく。底光りする夜空の深さ。・(なめる巨大な炎。こがすように焚たき火が燃え上がる=新田)。桜が夜空を両ませる。流星が夜空を横切る。紺青にんとの夜空を天の川が白くにじんで二つに割くきる=本庄。星が一面に輝き始めた夜空を仰ぐ八谷崎。さえざえとした星が澄んだ空にあらわれる梶井。無窮に晴れ広がった夜の空。空が(星で賑やかになる。夜の色を深める)。天の川が空に横たわる。月影が空にはりつく。空は満天の星。星一つない鉛色の緞帳とんちを張り巡らせたような空が広がる『篠田。星ひとつ見えない真っ暗な空三田。頭上に星々が瞬く。満天の星が光を放つ。 **よどおし 【夜通し】** 夜通し(起きている。看病する。酒を飲む。捜索を続ける。寝ずの番をしている)。」通し降り続く(雨が。雪が)。終夜(雨が降り続く。業を許される)。長夜の宴。徹宵にこしして(考えぬく。友と語り合う)。寝もやらず縫い物をする。飲み明かす(酒を。朝まで。仲間と。一晩)。▼待ち明かす(来ぬ人を。一晩中。晩まで寝ないで)。夜明かししてセーターを編み上げる。夜明かしする(読書で。麻雀で)。仕事で夜なべする。夜なべで(仕上げる。内職する)。夜の目も寝ずに(看病する。縫い物をする。働く)。夜もすがら(語り明かす。飲み明かす。虫の音を聞く)。夜を徹して(議論を交わす。祝杯を挙げる。飲み明かす。思いの丈を語り合う。激論をたたかわせる)。夜っぴて(遊び歩く。起きている。語り明かす。咳せ、をし続ける。泣き通す。悩み明かす。松籟しい、うが耳につく。どんちゃん騒ぎをする)。雨が夜っびて降る。 **よなか【夜中】** 夜中に(目を覚ます。こそっと忍んで行く。こっそり起き出す。ふと目が覚める。息苦しそうに寝返りを打つ"石坂)。雨が夜中になって激しくなる。夜の夜中に足音をぬすんで家の陰から陰へ伝す池澤。夜中じゅう車をとばす。天に花、地に夜露を含むころ落語。更関にうける。夜半に目を覚ます。しんしんと冷えてきた夜半の鬱気もん=本庄。夜遅くまで(宴会が続く。歓談する。酷使する。話しこむ。勉強する)。遅くまで起きている。 **よなが【夜長】** 秋の夜長が更ける。秋の夜がしんしんと更けてゆく。長い夜を(退屈がる。二人きりで過ごす)。寝つかれない長の夜を明かす。 **よなよな 【夜な夜な】** 夜な夜な(現れる亡霊。化け物が出る。海に出て網を引く。秘密の会合に出かける。ナイトゲームのテレビ中継にかじりついている=赤瀬川。人の生き血を欲しがる=宮部)。恨み声が夜な夜な聞こえる。夢魔に夜な夜な悩まされる。 **よふかし 【夜更かし】** 夜更かしが災いして寝過ごしてしまう。夜更かしの(癖がつく。習性が抜けない)。夜更かしは美容に悪い。夜更かしを叱られる。 **よふけ【夜更け】** 夜更けに目が覚める。夜更けの(街に濡もゃが漂う。来訪を詫びる)。夜更けまで(飲んで歩く。話しこむ)。夜更けて雨が降り出す。風に紙屑似の舞っているのが冬の夜更けのよう獅子。 **よみち【夜道】** 夜道に静寂が漂う松岡。夜道を(とぼとぼ歩く。走って帰る。一人で帰る)。見覚えのある夜道を車が静かに滑っていく若存。 **よる【夜】** ▼夜(死んだように静かな“加賀。得体の知れない恐怖がある森の"高田。大きな掌750のような福い歩く藤沢。夜中の十二時にこっそりと家を抜け出す。いよいよ更ける。夜のとばりが降りる=北原。夜の帷が周囲を覆う。あたりが夜の色に染まる。 <962> # ふ 永。北国の吹雪につつまれた長い=加藤。空気が淀んだように暑い藤沢。雲のある所がようやく知れるくらい思いきって暗い有局。すさみにすさむ野分を聞きまんじりともしない芝木。すれ違う人の姿もかすかにしか見分けられないような坂口。梅雨に入ったのかと思えるような鬱陶しい雨の降る―連城。露の置くさえ見えるような“伊藤左。遠くの森や家の形を黒ぐろと際立たせる。高井。永い絵巻のような梶井。夏の盛りがもう一度巡ってきたような"村上春。星の降るような人束。雪もよいのひとく底冷えのする=日野)。安心して夜出歩ける。飲みほうけて夜遅く帰る。夜が(深々と更ける。寒く寂しく更けて行く。とっぷりと更ける。重たげにのしかかってくる=栗本。心の空洞にしみこんでくる吉木。死人のように静まりかえる志賀。遠い林のあたりから静かに音もなく湧いてくるよう石川)。前方に夜が広がる。寝苦しい夜が続く。眠られぬ夜が幾日も続く。不安に満ちた夜が過ぎる。本格的な酒場の夜が始まる。炸裂音ではに夜がぴりっと震える=船戸。寒い夜があたり一面をおおう~野用。更けた夜が肌に冷え冷えと触れる=本庄。窓の外に静かな夜が舞い降りる小川。雪が樹から落ちるたびに夜が深くなっていくように原田康。ゆっくり冷たい夜が降りてくる=吉本。窓の外に夜が忍び寄る。夜に(なるのが待ちきれない。遊ぶ場所もなくて暗くなったら寝るしかない三浦し)。窓の向こうが夜に染まる。悶々もんと眠れぬ夜に耐える。山々が黒い影と化し夜に吸い込まれる藤田。夜の(街を歩く。空気が硬く冷える。静けさが迫ってくる。匂いが立ち昇る。海が油を刷はいたように鈍く光り黒い板に似ている"吉行)。都会の夜の華やかな灯影怛か。ロマンチックな夜の散歩。朝の風が夜の淀んだ空気を騒がし始める"島尾。漁火いの瞬く夜の海を眺める=重松。森閑と更けわたる夜のしじま=山本周。じんとしびれるような淋しい夜の中にひとり置き去りにされる=吉本。不安が胸を黒ぐろとした夜の波のように冷たく噛む=小林久。茫漠らとした夜の広がりの中に消え去る=黒井。町が夜の深みに沈んで行く藤沢。真っ黒い喪服のスカートが階段の暗がりで夜の波のように光る"石川。満天の星を抱いた夜の美しさに圧倒される鈴木光。玲瓏はふと澄み渡る夜の大気菊池。夜の街に(遊びに行く。霧が動く)。夜は時として黒い懐の中に明日の期待を秘める=阿刀田。腹がグーと鳴る音が部屋じゅうに響いたと思うほど山の夜は静か=山本有。夜も(ろくに寝ていない。ろくろく眠れない)。夜もおちおち寝られない。夜も眠れない(おちおち。考え始めると。気苦労で。心配で)。雨が夜を叩く。せっかくの夜を台なしにする。土曜の夜をたっぷり楽しむ。光が夜を切り裂く。車の列が光の河になって夜を流れる吉本。夜を過ごす(甘い。楽しい。まんじりともしない)。夜が明けるまで(寝つけない。まんじりともしない)。まだ夜の明けないうちに起きだす。夜を明かす(ロビーで。まんじりともしないで)。悲憤慷慨辺が以こに夜を徹する。頭上には満天の星。外がすっかり暗くなる。時の鐘が初更を告げる。窓の外に夜景が広がる。夕焼けが色を失う。ぶらりぶらりと夜風に吹かれる。あたりが夜のように暗くなる=平岩。夜間に(行軍する。行動する)。夜間の外出を禁じる。夜の気配が(濃くなる。忍び寄る)。足元から夜の気配が立ちこめてくる=原田糸。あたりが夜の気配を増していく。無限に厚ぼったい海のような夜の底"加賀。雪が夜の底に吸い込まれていく。音がひそやかに夜の底を漂う小川。夜が谷の底のようになる泉鏡。急速に拡がる夜のとばり、渡辺。夜のとばり、がすっかり拭い去られる。町並みの上に夜の帳忙ぃが下りる=福永。夜の惟ばに厳ぉぉい娶っっまれる=徳田。 **よるのいろ【夜の色】** 頭の上に拡がる青黒い夜の色"高井。夜の色が海面に落ちてくる。仄暗150い夜の色が縹渺りとした水の上に道はいひろがる徳田。水のような蒼ぁぉい夜の色が木立際に這い拡がる=徳田。外が夜の色に染まる。空が夜の色を濃くする藤田。絶え間なく降る雨が空にいつもより深く夜の色を残す連城。ずいと湧きあがってきた黒い夜"本庄。黒い夜が(深々と続く。汽車とともに走る=野上)。街が赤や青の灯をちりばめる=小沼。海も陸も黒一色に塗りつぶされる。あたりが紺色に包まれる=高樹。空が濃紺になる頃=岡田。夜が(インキをぶちまけたように黒く染まる=宇野利。黒々とうずくまっている=阿刀田)。黒いブラシで地を掃くように夜が忍び寄る=宇野利。夜の漆黒が深さを増す“北村。青みがかった夜の始まりの空気"大江。冷えて水色に見える夜の空気が沈む辻井。夜を彩るライトアップ。空と海とが一色の黒い夜を迎える=阿刀田。辺りが夜色に包まれる=藤田。 **よるのやみ【夜の闇】** 暗い海のように拡がる夜の闇"柴田翔。夜の闇が(深くなる。あまりにも深くて少し怖くなる三浦し。附近いちめんに密集して垂れ下がって来ているような静けさ=横光)。夜の闇に(沈む。つつまれる。塗り込められる=重松。話しかけるように言う小川)。姿が夜の闇に消える。夕闇が夜の闇に変わりつつある。風景が薄墨に溶け夜の闇に消えてゆく向田。夜の闇の中に消える。夜の闇を恐れる。森の梢がざわざわと夜の闇をかき回す。闇の夜に紛れて会う。闇が夜を支配する。暗闇が地上のものを重い力で押さえつける高樹。外は一面の闇。闇が足元までおしよせる=飯田。真っ黒な闇が溜まっている。窓の外に闇が広がる。すでにあたりが闇に覆われる=永井路。谷間の村が闇に沈む―熊合。地上が厚い闇に閉ざされる笹沢。夜(粘りつくように闇の濃い藤沢。闇の中を泳ぐような暗い藤沢)。 <963> # ふ **かばう【庇う」** かばう(骨折した足を。悪い歯を。頭を両腕で。身をもって。おなかの子供を。罪のない人々を。何事によらず母を。小意地の悪い姑しいから妻を=北原)。庇うような姉のような気持ち。高見題。我が子へのかばい立てが過ぎる。かわいそうだといってかばい立てする。かばい立てするとためにならない。下手にかばい立てするとよけい疑われる瀬戸内。かばい立ては無用。お互いにかばい合う。庇かばいつくさねばやまぬ愛憐いを覚える芝木。 **きをつける【気をつける】** ▼気をつける(扱いに。一挙一動に。言動に。盗難に。戸締まりに。日頃の行いに。火の元に。見過ごしに。身なりに。身の回りに)。 **けいかい 【警戒】** 警戒が厳重を極める。警戒で心を引き締める。津波の警戒に当たる。警戒の(網をくぐる。構えを解く。念をむき出しにする。表情を浮かべる)。表情に警戒の色が浮かぶ。心がハリネズミのように警戒の棘とげを張る=阿刀田。目に警戒の色がある。警戒の目を(くらます。光らせる。向ける)。警戒を強めていた矢先に殺される=多岐川。夜となく昼となく警戒を怠らない。▼警戒する(事故の勃発を。周囲の耳を。周辺空域を。身辺を。太り過ぎを。連鎖反応を。厳重に。見くびられるのではないかと)。簡単には気を許さない。警戒するような険しい眼"大庭。警戒感が(後退する。強い。広がる。露骨に現れる)。警戒心丸出しで尋ねる。警戒心が(頭をもたげる。殊の外強い。働く。芽生える)。ウサギは警戒心が強くてすばしっこい三浦し。胸の警戒信号が半鐘よりも高く鳴り響く宇野利。親しみのない警戒心をこめた目でじっと見つめる=清水俊。水位が警戒線に達する。警戒線を(敷く。張る。破る)。昼夜を分かたず警戒態勢が敷かれる=有川。厳重な逸戒態勢をとる。厳重な警戒網に囲まれる。警戒網を(敷く。解く。張る。破る)。非常警戒にひっかかる。厳戒態勢を炊く。非常線にひっかかる。非常線を突破する。一帯に非常親を張る。 **けいび【警備】** 整備が(厳重を極める。手薄)。警備に(あたる。つく)。警備の(任を尽くす。盲点をつく)。厳重な警備を固める。▼警備する(ビルを。要所要所をガードマンが)。警備態勢を敷く。小銃を手にした警備兵。守術(学校の。ビルの)。 **ごえい 【護衛】** 護術の任に就く。武装した護術をつける。護術する(興こしを。子供を。将軍を)。ボディーガードをつける。ボディガードのようにビッタリと後について追う“景山。▼エスコートする(女性を。母親を)。警護の任に当たる。身辺の警護を引き受ける。討ち入りに備えて警護を厳重にする=火坂。▼警護する(首相を。大統領を。要人を)。 **ししゅ【死守】** ▼死守する(一点差を。牙城を。ゴールを。城を。陣地を。古い価値観を。本塁を。ここを先途と)。孤塁を守る。 **しろ【城】** ▼城(森林と湖沼に囲まれた静謐どでな=津しろ本。一大決心をして手に入れた自分の"篠田)。城が(陥落の直前にある。霧の中に幻のように浮かぶ=山本周。残っている古い町"大佛)。城に(立てこもる。火をかける)。城の(修復が完成する。本丸が焼失する)。城を(密かに抜け出す。包囲してひと揉もみとばかり攻め立てる=山本周。枕に討ち死にする=舟橋)。蝸牛跡於っが城を明け渡したようで手足のあがきがつかない"泉鏡。お城のような眩まぶしい輝きのある部屋"落合。湖畔に緑を背負って立つおとぎの城のようなホテル=中村明。中世の城のような賑やかな重層感をもってどくびえ立つ建造物三島。ちょっとした小さな城のような旅館「島尾。ヨーロッパの城のような邸宅に住む小林久。城のように(石垣を築く。整然と頭にある計画"大佛)。庭こしらえが城のように豪華な料理屋"室生。造船所の強力な灯が城のように光る=佐多。城中がひっくり返るような騒ぎになる!舟橋。城中の評定が終わる。泰然自若として城中へ罷まかり出る=舟橋。城中を隈くほぇなく捜す。小さいながらも一城の主=本庄。女の城のような職場連城。城郭のように古い堅手な艶光りのする木造家屋島尾。城下でも評判の美人。城下の外れを通る。城下町のしっとりした美しさ。城下町を彷彿沼っとさせる。まやかしの崩れやすい家庭という名の砂の城「瀬戸内。天守閣が焼け落ちる。絶えて人の気配のない西洋の古城のよう城山。ウィッチがたくさん棲んでいそうな中世の古城のようなホテル=原田康。たっぷりと水気を含んだ古城のように重く座っている建物。高樹。館が往時の古城のように深い木立の中にある=阿刀田。 **じん【陣】** 陣が二つに割れる。陣に参じる。陣の最前列に立つ。鶴翼に陣を張る。応急の陣こしらえをする。陣地を(奪う。築く)。▼昨取る(円形に。高地に)。 **しんちょう【慎重】** ▼慎重(薄い氷を踏むように歩みが"黒井。手つきが宝物を扱うように有吉)。慎重な監視を続ける。あたりに慎重な目を配る。慎重に(車を運転する。事を運ぶ。探りを入れる。調べを進める。推移を見守る。捜査を続ける。狙いを定める。歩を進める。一歩一歩地面を踏む。考えた末の言葉。距離を保ってついていく。ならざるを得ない。なるに越したことはない=佐野)。あらかじめ慎重に練りあげた作飛行動・椎名誠。ことさらに構えて慎重にすぎる三好達。言葉を選びながら慎重に喋る“小川。慎重になる(口の利き方が。規制強化に)。慎重の上にも慎重を期する。石橋を叩いて渡るようぃ曽野。大事の前の小事。不用意な発言を控える。用心するに越したことはない。何をやるにも慎重さが先に立つ。急進派と慎重派。 <964> # ふ **重派の板挟みになる火坂。** 慎重論が優位を占める。 **注意深い心の持ち主。** 注意深く(言葉を選んでしゃべる。話に耳を傾ける。利害得失を計算する)。今後の推移を注意深く見守る。昆わなを恐れるかのように注意深く見る=堀。真意を探るような用心深い眼差し”開高。馬鹿丁寧なくらい用心深い手口="新田。用心深く(忍び足になる。周囲を見まわす。そろりそろりと歩く。細めにドアを押す)。水雪の道を用心深く辿る。猜疑諮ぃにみちて用心深く言う=大江。 **たて【盾】** 決まりを盾に横車を押し通す。契約内容を盾に履行を迫る。仕事を盾に関係を迫られる。病身を盾にわがままをする。身を沈めて盾に隠れる。盾に取る(岩角を。子供を。上意を)。先公の遺命を楯に取る=舟橋。愛情を盾に取って別れまいとする。 **ちゅうい【注意】** 一挙一動に注意を向ける。一挙手一投足に注意を集める。おさおさ注意を怠るな。顔色に絶えず注意を配る。簡単な注意を受ける。前方に注意を集中する。今後の行動についてこまごまと注意を与える=北。不断の注意を自然の観察に振り向ける"寺田。指先で軽く円卓を叩き注意をうながす三浦し。▼注意を払う(意識の変化に。外部の声に。できる限りその場の物に手を触れないよう最大級の高見浩)。▼注意する(折に触れて。口を酸っぱくして安部。小うるさく小言幸兵衛のごとく=北。表情のどんな微細な動きも見逃すまいと=石坂)。正面きって注意する者がいない。軽挙妄動を戒める。万一の粗相がないようにする。肘で脇腹をつつく。注意事項を説明する。文末に注意事項を付記する。こまごまとした注意事項をまくしたてる=椎名滅。注意処分を受ける。注意力が(散漫になる。弛緩する。一点に集中する)。周囲への注意力が鈍る。留意する(健康に。発言内容に)。 **とりで【砦】** 砦に立てこもる。砦の一角が崩れる。砦を(築く。攻撃する。守る)。砦のように堅固な石の塀をめぐらす辺見。病院の古風な赤煉瓦倫妙丸の建物が中世の城砦というか牢獄のように冷え冷えと孤独に立っている=加賀。城塞を(築く。堅固に修築する)。峠を防壁にする。保亞ぷいに拠はって敵を防ぐ。堅固な防塁を築く。天然の要害。要害の地を占める。要害無双の地。塁壁を築く。▼要塞(金城湯池の。難攻不落の)。要塞が陥落する。要恋を(思わせる建物。築く。攻め落とす)。硝子びらの壁に反射した夕陽を火を吹く要塞を見る思いで眺める=高橋三。巨大な要塞のような屋敷!東野。▼バトロールする(警官が。団地内を。街パトロールを。森を)。見回りが火を見つける。見回りに(来る。出かける)。夜警(ビルの。ホテルの)。夜回りに出かける。夜回りの(記者。拍子木が聞こえる)。巡視する(海上を。校内を。地方を)。巡視船が就役する。 **ふくし【福祉】** 人類の福祉に貢献する。予算を福祉に振り向ける。福祉の(向上を図る。削減を不安視する)。福祉事業に寄付する。国民の福利を増進する。従業員の福利を図る。社会保障が(充実する。暮らしを支える)。社会保障を(向上させる。後退させる。振り崩す。要求する)。 **ふせぐ【防ぐ】** ▼防ぐ(足腰の衰えを。被害の拡大を。不慮の事故を。無駄な失敗を。無用の騒ぎが起こるのを。我が身に振りかかる災難を。分け前の目減りを)。▼侵入を防ぐ(雨の。敵の)。▼未然に防ぐ(海への転落を。重大災害を。ショックを。トラブルを。不測の事態を)。いかにしても防ぐことができない。防ぐ術すべがない。防具を(つける。脱ぐ)。防災意識が(高い。低い)。住民による防災を進める。▼防水する(建物を。目地を)。防弾チョッキを着込む。防火に努める。消防の備えをする。防火扉を設置する。▼防御(盤石の。無防備こそが最大の"伊坂)。防御が手薄になる。防御に(かたい要害。徹する)。防御の(構えを取る。橋頭堡いを築く。態勢を取る)。防御より攻撃を優先する。攻撃から身を防御する。防御本能を働かせる。防護する(機器を。システムを。データを。放射線から)。防護マスクを着ける。 **べんご【弁護】** 弁護に当たる。弁護の余地はない。弁護を引き受ける。弁護する(改革を。失敗を。怠惰を。罪を。オーソリティーを)。自己弁護にやっきになる。言い分が自己弁護に聞こえる。空しい自己弁護を試みる。弁護する(自堕落を。自分を)。 **ぼうえい【防衛】** 感情の暴発に対する無意識的な防衛筒井。防衛する(後門を。国土を。生活を。世界タイトルを。聖墓を異教徒の攻撃から=塩野)。不利を承知で専守防衛を貫く。有川。タイトル防衛に成功する。防衛システムを整える。厳重な防衛施勢をとる。獣のように原始的な防衛本能"思考。防衛力を強化する。自衛手段を講じる。自衛の戦いに立ち上がる。正当防衛に当たる行為。身を守るための正当な行為。 **ぼうし【防止】** ▼防止する(危険を。再発を。犯罪を)。自殺防止のため保護室に入れる。防止策を講じる。】防ぎ止める(恐慌を。猛火を)。 **ぼうび【防備】** 防備が(堅い。手海)。鉄壁の防備に固められる。防備の隊形を整える。防備を厳重にする。備えを固める(隙もなく。防戦の)。無防備な(体。急所を衝く。表情)。無防備に(心を覗のぞかせる。眠る)。人前で無防備に涙を流し続ける=さだ。 **ほご【保護】** 保護が行き届く。保護の手を差し伸べる。保護を受ける(法的な。手厚い)。保護を求める(警察に。大使館に)。▼保護する(財産を。私的所有を)。保護主義が広がる。保護主義に対抗する。▼庇護ひごする(厚く。優しく)。肉親の庇護の下にある。保全を図る(地位の。領地の)。▼保全する(環境を。湿地を。証拠を。森林を。領土を)。 **ほしょう【保障】** ▼保障する(安全を。命を。活動を。 <965> 権利を。人権を。生活を)。国家の安全保障。安全保障の(システム。礎石)。 **ほしん【保身】** 保身に(生きる。駆られる)。根は小心で保身に汲々行とする=小林久。保身のためなら何でもする。保身のために(食言する。へいこらする)。保身を図る。自分の身の安泰を考える。保身術に長ける。保身術を(心得る。身につける)。 **マスコット** マスコットの(小動物。人形)。マスコットをぶら下げる。守り本尊を(捧げ持つ。大切にする。取り出す)。 **まもりぬく【守り抜く】** ▼守り抜く(家族を。権益を。最後まで城を。純潔を。組織を。伝統を。労働の場を)。▼守りきる(完全に秘密を。虎の子の一点を)。▶守り通す(大学の自治を。秘密を。先祖の初一念を今日まで=有吉)。▼坚守する(職掌を。城を。陣地を)。▶固守する(自矜比徒の孤高を。自陣を。古い規則を)。非転向を(貫く。通す)。思守する(伝統を。旧来のしきたりを)。旧法の墨守に恋々とする。 **まもる【守る】** 守る(家庭の幸福を。頑固に約束を。国民の生活を。先祖の造訓を。空の安全を。トップの座を。夫婦の絆を。命を賭して。港を荒海から。遺臣としての節を。観光開発から遺跡を。洪水の被害から国土を。自分のベースを。暴挙から自分を。規定をまじめに。建て前を頑固に。ちいさな幸せを必死に。一命に賭けても。きまりを暗黙の了解として。最後の一線を固く。秘密をあくまでも)。大切な森を守るためにいまこそ立ち上がらなければならない“松谷。みずからを守る牙を磨く真継。▼自由を守る(言論の。信教の)。▼忠実に守る(教えを。父親の言葉を。命令を)。▶沈黙を守る(かたくなに。終始。むっつりと)。身を守る(炎暑から。外敵から。暴力から。穴に潜りこんで)。名誉を守る(家の。命をかけても。客の)。未だに沈族を守っている。時代遅れとなったやくざ仁義の如きものを純情一途に守り続ける萩原则。背後を山に守られる。守り(堅固な。固い。金城鉄壁の。二重の。牢固たる)。守りが(固まる。手渉になる)。守りにつく。体を張って守りに行く。守りの意識が働く。攻めと守りを使い分ける。神仏の加護がある。一加護する(商運を。旅を)。▼厳守する(規則を。時間を。秘密を。門限を)。守勢に(立つ。回る)。遵奉する(戒律を。主義を)。▼体する(師の教えを。理想を一身に)。意を体する(社長の。父の)。▼擁護する(学問の自由を。大学の自治を)。利益擁護に傾く。用心棒を(護術につける。雇う)。▼援護(物質的な。友軍の)。友人の援護に回る。▼援護する(活動を。計画を側面から)。ガードが(甘い。固い)。ガードを固める。両腕で顔面をガードする。部族を守護する神霊。守護に当たる。守護する(企業を。国を。最後尾を。宝物を)。▶守備(浅めの。二段構えの)。守備に(あたる。つく)。鉄壁の守備に攻めあぐむ。守備範囲を拡大する。越える。明確にする)。▼順守する(規則を。義務を。国際法を。法令を。モラルを。ルールを)。 **ゆだん【油断】** 心に油断が生じる。油断する(ちょっと。ついつい)。油断すると(吹き飛ばされる。ついつけこまれてしまう。丹羽)。月夜に釜を抜かれる。「月夜に釜を抜かれる。危機意識が薄れる。エアポケットに入りこんだように気持ちが弛緩しかする=西木。警戒心が(薄らぐ。消える)。警戒せずにのこのこ出てくる。警戒を怠る。一願の注意も払わない。▼気がゆるむ(張りつめていた。もう一息というところで=山手)。気がゆるんでつい口を滑らせる。虚を衝っかれて一瞬ぽかんと口を開く"貫井。虚を突かれたように(鼻白む。うろたえた声を出す)。虚を衝かれたようにひどく慌てる=獅子。戸締まりをしないと不用心。不用心な(家。人)。油断につけ入る。油断につけ込む。虚に乗じて巧みに難関を切り抜ける永井荷。 **ゆだんしない【油断しない】** 片時の油断もない。勝って兜以“の緒を締めよ。一憐たりとも気をゆるめない。細心の注意を怠らない。油断なく(身構える。目を光らせる。様子を見守る。周囲に気を配る。難関を通り抜ける)。油断は(禁物。大敵)。ゆめ油断はならない。寸分の油断もしない。一瞬も油断をしない。 **ゆだんできない【油断できない】** 絶対に油断できない。少しの油断もできない。油断も隙も(ない世の中。あったものじゃない有川)。一刻も(気がゆるめられない。油断がならない)。猫に鰹節跡いぉ。一瞬たりとも気が抜けない。食えない(男。感じの女。爺じいさん)。油断のできない相手。油断のならない(男。親父。敵。世の中)。生き馬の目を抜くような(競争。社会。取材合戦)。隅に置けない(眼力。利巧な女)。顔に似合わず隅に置けない!高杉。一癖ある竹刀さばき。一癖ありげな(男。風貌)。一癖も二癖もある(海の荒くれ者、変人)。 **ようじん【用心」** 用心に用心を重ねる。不断の用心を怠らない。▼用心する(火災に。盗聴に。念のために。災難に懲りて。万一に備えて)。用心するにしくははない。用心をする(万一の時の。用心の上にも)。用心しいしい(足を運ぶ。話す)。一段ずつ用心して降りる。用心しながら近づく。転ばぬ先の杖。心して(かかる。聞く)。十分心しておく。肩からさげたショルダーバッグの紐をまるで命綱であるかのようにきつく握り締めて歩く宮部。命綱に頼る。命綱をつける。▼予防する(風邪を。食中毒を。不祥事よぼう【予防】を。虫歯を。もめ事を事前に)。予防接種を受ける。予防線を張る。ワクチンを接種する。投与する)。 **るすばん【留守番】** 留守番を(頼む。務める)。一人で留守番をする。店の番をする。店番を頼む。留守番電話にメッセージが入っている。留守番電話を再生する。留守電にメッセージを吹き込む。 <966> # ぶつかる・外れる **あたらない【当たらない】** ▼当たらない(思ったほど。さほど驚くには。心配してくれても罰は)。狙った的に当たったためしがない!大庭。臆測が及ばない。勘が狂う。正偶ごいを(誤る。失う)。▼外れる(推測が。推理が)。ヒットから遠ざかる。ヒット商品に恵まれない。的を外す。目算が(狂う。外れる)。闇夜の鉄砲。すかを(食う。引く)。▼狙い損じる(コースを。射撃を)。はずれを引く。標的に一発も命中しない。 **あたりはずれ【当たり外れ】** 当たり外れが(多い。大きい。少ない。小さい)。当否が判明する。事の当否はともかく。 **あてがう【宛てがう】** ▼あてがう(頭の下に枕を。唇に茶碗を。両手を頭に。ノズルを給油口に。右手を左の胸に)。▼口にあてがう(片手を。拳を)。 **あてる【当てる】** ▼当てる(アイロンを。顎に指を。「顎に指を。一等を。馬に鞭もちを。大穴を。大きな山を。親指に刃を。数を。肩に軽く手を。剃刀初以を。髪に怖くしを。髪にパーマを。漢字に訓を。饅ここを。視線を。定規を。焦点を。肌に唇を。闇に光を。和語に漢字を。受話器を耳に。ボールを壁に。一発。株で一山。口元に手の甲を。こめかみに銃口を。涙に濡れた目に袖を。額にハンカチを。目頭にハンカチーフを。片手をそっと頬に。ハンカチを目に。人差し指を唇に。爪先を床にとんとん)。▼手を当てる(おでこに。腰に。膝に)。耳に当てる(イヤホンを。携帯電話を。両手を。レシーバーを)。▼腰に当てる(片手を。両手を)。▼胸に当てる(組んだ両手を。聴診器を)。▼顔に当てる(蒸しタオルを。両手を)。額に当てる(水袋を。手を)。額に手を当てて(うつむく。考えこむ。思案する)。当たりを引く。真実を噛み当てる。香りの正体を探し当てる。探り当てる(正体を。身元を)。▼引き当てる(当たりくじを。いい亭主を。宝くじを。貧乏くじを。同じ番号の玉を)。振り当てる(宿舎を。役割を)。豊かな鉱脈を掘り当てる。仕事を割り当てる。 **いぬく【射抜く】** 射抜く(肩を。心臓を。ハートを。的を。胸板を)。暗示にかかった信徒みたいに主人の肉体から出てくる光に射抜かれる=横光。射抜くような(視線を投げる。眼をして見詰める有吉)。目には依然として射抜くような凄けこみを残す!高樹。 **うちあてる【打ち当てる】** ▼打ち当てる(壁にボールを。体を。右の拳を左の掌に=村松)。固い石を打ち当てたような声=室生。▼ぶち当てる(肩を。車を。球を。脇腹を)。 **うちつける【打ちつける】** ▼打ちつける(壁に背中を。枕に額を。石を発止と。ばらばらと雨が。羽目板に後頭部を。よろめいて壁に頭を。煙管ぶせを煙管盆の縁に。煙草を苛立心。たしげに。窓を土砂降りの雨粒が"海堂)。藍色の海中に鮮やかな白波の打ちつける奇岩が点在する=斎藤栄。 **おおあたり【大当たり】** 大当たり間違いなしとおだてられる。大当たりになる(芝居が。リサイタルが)。企画が大当たりする。▼馬鹿当たり(今までにない。三振前の)。馬鹿当たりに当たる。ヒットへの道を駆けのぼる。▼ヒットする(映画が。宣伝が)。ヒット商品を放つ。 **おしあてる【押し当てる】** 押し当てる(うなじに唇を。双眼鏡に目を。枕に頬を。眉間に拳を。胸に耳を。受話器を耳に。險ぼぶの上から指を。ハンカチを顔に)。枕に顔を押しつけて笑い続ける。顔を押しつけて泣く(腕に。枕に)。振する(銃を、のどに刀の切っ先を)。 **かたすかし【肩透かし】** 肩透かしを食う(目算が。ずされたような感じ=壺井。 **しょうとつ【衝突】** 意見の衝突を繰り返す。間一髪祈突を免れる。▼衝突する(意見が。車が。二つの利害が。あからさまに。しばしば。ときどき。激しく。真正面から。昔気質処分乳の姿父と度々。命令と真っ向から。両軍の兵が剣と槍をひらめかして濁流のあい寄るように=山本周)。軽自動車がダンプと正面衝突する藤田。正面衝突を起こす。後へは引けぬ角突き合い=村上元。ぶつかり合う(氷が。国益が。言葉が。がたがたと物が。力と力が真っ向から)。 **そむける【背ける】** ▼背ける(反射的に顔を。反射的に目を)。▼顔を背ける(鬱陶しそうに。気まずそうに。ぷいと。苛立心ったしそうに。正視できないので。狼狙いしたように)。見ていられないというふうに顔をそむける=小林多。▼目を背ける(現実から。事実から。失敗から。社会から)。目をそばめる。 **そらす【逸らす】** ▼逸らす(すっと目を。注意を。話を横道に。話を百八十度。切っ先から身を。手際よく相手の矛先を。よこしまな道へ一生を。話題を当たり障りのない世間話に=開高)。▼視線を逸らす(ついと。ぶいと)。▼目を逸らす(気まずそうに。慌てて。思わず。画面から。汚いものから。現実から。黙ったまま無表情に。重苦しい影から)。▼話題を逸らす(巧みに。冗談で)。目を逸らさずに(答える。直視する)。両面から顔を逸らせる。いけ図々しい話題の逸らせ方。一瞬も目を逸らさない。人を逸らさぬ愛嬌。絶対に目を逸らすな。逃がす(眼差しを横に。手を小刻みに左右〈古井)。肩透かしを食わす。勢いを逸らされる。 **つきあたる【突き当たる】** ▼突き当たる(頭がガラスに。壁にどしんと。実践しようとするとたちまち大きな壁に"灰谷)。自分のみじめさに突き当たったまま空しい逡巡しんを重ねる=堀。廊下の突き当たりの部屋。 **てきちゅう【的中】** ▼的中する(勘が。政治的観測が。想像が。不安が。びたりと。百バーセント。読みがずばり。順位予想がほぼ完全に。狙いがまんまと。悪い予感が不幸にして、推理がみじんの狂いもなく=柴田側)。▼的中させる(馬券を。レースを)。▼見事に的中する(戦略が。予感が。予測が)。▼物の見事に的中する(作成が。予言が)。あながち見当外れではない。的中率が高い。▼当たる(占いが。推測が。想像が。予言が。予想が。読みが。悪い勘が。推察がびったり。黙って座ればぴたりと。山をかけたのが偶然。悪い想像がしばしば)。▼予感が当たる(嫌な。悪い)。▼当たっている(おおむね。十中八九)。的を射た言葉。当たらずといえども遠からず=舟橋。十中八九まで見当は外れていない。まんざら的外れでもない。▼言い当てる(真実を。胸の内を。特質を的確に。ずばりと正解を。弱点を意地悪く)。内心の疑問をずばりと言い当てられてますます肩が超む"有川。奇策が図星に当たる。図星を(祈っかれる。さされてどぎまぎする)。指摘が見事に図星を衝いている=有川。見事に図星をさされる。 **はずれる【外れる】** ▼外れる(当てが。安全装置が。鍵が。勘が。心のたがが。心の鎧はぅが。調子が。人形の腕が。狙いが。ビントが。窓のサッシが。予想が。予測が。読みが。話が脇道に。人の道に。指名業者から。歯車が一つ。本筋から。世の常識から。ルールから。ドアのロックが。見当がことごとく。出世コースから。通常のコースから。美人の条件から。ビンディングが靴から。みんなの輪から。忌まわしい想像が"谷崎。スカートのホックがバチンと=阿木)。首に巻きついている腕がはずれる=船戸。▼見事に外れる(目論見が。予報が。思惑がものの)。▼あぶれる(仕事に。腕に)。▼逸脱する(趣旨を。常識を。範囲を。本来の目的を。論理を)。▼脱線する(電車が。話が。列一が。車の)。見きわめが甘かったために適材適所の原則を踏みはずしてしまう“三浦し。▼踏み外す(人倫の道を。民主主義の原理を)。▼ずれる(位置が。ビントが。横に。実感と。話がとんでもない方向に)。一拍ずれたユーモアを発信する=田辺。▼それる(銃弾が体を。道を。話が横道に。脇道に。本題から。ボールが大きく。木来の目的から)。 **ひく【除く】** ▼嶸く(子供を。人を)。▼轢かれる(オートバイに。車に。電車に)。▼轢き潰される(車に。電車に。トラックに)。車にはねられて死ぬ。ひき逃げ(悪質な。非道な)。▼轢き殺す(犬を。猫を。人を)。燥き潰す(蛙砂えを。ぺちゃんこに)。 **ぶつかる** (潮の流れが。暖流と寒流が。葉ぶつかるに雨が。欲と欲が。利害関係が。幾多の困難に。声が背中に。捜査が壁に。出合い頭に。波濤沁とが岩に。音を立てて。歯ががちがち。真正面から。勢い余って近くの立木に。思いがけない壁に。車がガードレールに。信じがたい光景に。激しい怒りの言葉に。体がシートにドスンと。大粒の雨がばらばらと土に"小松太。ごく幼稚な疑問に"丹羽。しょっぱなから難関に新田。世間のあらゆる困難がじかに肌に"石川。初めて納得できるような相手に"曽野。容赦のないびかりと光るような目に佐多。岸壁に波がチャブチャブ石坂。バカ正直とも愚直ともいえるまともさで真っ向から=瀬戸内。二人の視線が激しく=森瑙)。二つの波がドッとぶつかって白い波濤済となる阿刀田。▼ぶつかっていく(体当たりで。身を挺てぃして。勢いにまかせて。鉄砲玉みたいに頭から=長崎。はね起きるや火の玉のように飯田)。硝子越しに八月の陽差しが背中や首筋を刺すようにぶつかってくる=伊集院。目から(火が出る。火花が散る。星が出る)。目の前に星が飛ぶ。視線がかち合う。▼当たる(顔に潮風が。直接に光が。外の空気に。陽がまともに。ボールが塀に。ひっきりなしに雨粒が。頬に冷たい風が。風が顔にもろに)。世間の(風に当たる。風が冷たく当たる)。▼頬に当たる(風が。生温い風が。小石が飛んできて)。激突する(車が。電柱に。フェンスに。ガードレールに)。現実論と理想論の大激突"有川。前の車に追突する。後ろから追突される。追突事故を起こす。▼ぶち当たる(どんと波が。多くの困難に。壁に。岩壁に。電柱に。人に。体全体で)。災難が出迎えにきたら笑ってぶち当たってやる=城山。▼よけそこなう(障害物を。太刀を。電柱を。バンチを)。よけそこねる(車を。打球を。トラックを)。 **ぶつける** ぶつける(がつんと頭を。壁に後頭部を。鴨居吵。に頭を。他者に感情を。扉に肩を。車を塀に。顔をしたたか。遠慮のない言葉を。こつんと膝頭を。やりきれない気持ちを。頭をこんこん床に。頭をテーブルに。くるぶしを机の角に。成管をそのまま。すべてを洗いざらい)。体をぶつける(壁に。どんと)。▼質問をぶつける(次々に。意地悪い)。▼ぶつけ合う(意見を。体を。むきだしの人間性を。与野党が主張を)。塀に車を激突させる。頭突きを得意とするレスラー。顔面に頭突きを食らわせる。 **めいちゅう【命中】** ▼命中する(直撃弾が。矢が。弾が心臓に。的の真ん中に。物の見事に。矢がことごとく)。・命中させる(標的に砲弾を。一発で心臓に)。食らう(弾丸を。直撃弾を)。正しく的を貫く。ぴたりと的を射る。命中精度が(上がる。下がる)。命中精度を高める。▼当たって死ぬ(弾丸に。流れ弾に)。▼当たる(弾が頭に。弾丸が体に。弾丸が的に)。ヘタな鉄砲も数射ちゃあたる田辺。▼射落とす(扇の的を。弓で鳥を)。被弾する(機体が。戦車が。船舶が。足に)。空飛ぶ鳥を狙ってさえ百発百中という狙撃の名人=舟橋。百発百中の(腕前。勘。弓。予想)。 <967> # ぶつかる・外れる **てきちゅう【的中】** 的中する勘が。政治的観測が。想像が。不安が。びたりと。百バーセント。読みがずり。順位予想がほぼ完全に。狙いがまんまと。悪い予感が不幸にして、推理がみじんの狂いもなく=柴田側。的中させる馬券を。レースを。見事に的中する戦略が。予感が。予測が。物の見事に的中する作成が。予言が。あながち見当外れではない。的中率が高い。当たる占いが。推測が。想像が。予言が。予想が。読みが。悪い勘が。推察がびったり。黙って座ればぴたりと。山をかけたのが偶然。悪い想像がしばしば。予感が当たる嫌な。悪い。当たっているおおむね。十中八九。的を射た言葉。当たらずといえども遠からず=舟橋。十中八九まで見当は外れていない。まんざら的外れでもない。言い当てる真実を。胸の内を。特質を的確に。ずばりと正解を。弱点を意地悪く。内心の疑問をずばりと言い当てられてますます肩が超む"有川。奇策が図星に当たる。図星を祈っかれる。さされてどぎまぎする。指摘が見事に図星を衝いている=有川。見事に図星をさされる。 **はずれる【外れる】** 外れる当てが。安全装置が。鍵が。勘が。心のたがが。心の鎧はぅが。調子が。人形の腕が。狙いが。ビントが。窓のサッシが。予想が。予測が。読みが。話が脇道に。人の道に。指名業者から。歯車が一つ。本筋から。世の常識から。ルールから。ドアのロックが。見当がことごとく。出世コースから。通常のコースから。美人の条件から。ビンディングが靴から。みんなの輪から。忌まわしい想像が"谷崎。スカートのホックがバチンと=阿木。首に巻きついている腕がはずれる=船戸。見事に外れる目論見が。予報が。思惑がものの。あぶれる仕事に。腕に。逸脱する趣旨を。常識を。範囲を。本来の目的を。論理を。脱線する電車が。話が。列部屋。行き当たる硬い岩に。壁に。川に。深刻な問題に。曲がり角に。本来の目的を。論理を。脱線する電車が。話が。列車が。 **ひく【除く】** 嶸く子供を。人を。轢かれるオートバイに。車に。電車に。轢き潰される車に。電車に。トラックに。車にはねられて死ぬ。ひき逃げ悪質な。非道な。轢き殺す犬を。猫を。人を。燥き潰す蛙砂えを。ぺちゃんこに。 **ぶつかる** 潮の流れが。暖流と寒流が。葉ぶつかるに雨が。欲と欲が。利害関係が。幾多の困難に。声が背中に。捜査が壁に。出合い頭に。波濤沁とが岩に。音を立てて。歯ががちがち。真正面から。勢い余って近くの立木に。思いがけない壁に。車がガードレールに。信じがたい光景に。激しい怒りの言葉に。体がシートにドスンと。大粒の雨がばらばらと土に"小松太。ごく幼稚な疑問に"丹羽。しょっぱなから難関に新田。世間のあらゆる困難がじかに肌に"石川。初めて納得できるような相手に"曽野。容赦のないびかりと光るような目に佐多。岸壁に波がチャブチャブ石坂。バカ正直とも愚直ともいえるまともさで真っ向から=瀬戸内。二人の視線が激しく=森瑙。二つの波がドッとぶつかって白い波濤済となる阿刀田。ぶつかっていく体当たりで。身を挺てぃして。勢いにまかせて。鉄砲玉みたいに頭から=長崎。はね起きるや火の玉のように飯田。硝子越しに八月の陽差しが背中や首筋を刺すようにぶつかってくる=伊集院。目から火が出る。火花が散る。星が出る。目の前に星が飛ぶ。視線がかち合う。当たる顔に潮風が。直接に光が。外の空気に。陽がまともに。ボールが塀に。ひっくり返る。見きわめが甘かったために適材適所の原則を踏みはずしてしまう“三浦し。踏み外す人倫の道を。民主主義の原理を。ずれる位置が。ビントが。横に。実感と。話がとんでもない方向に。一拍ずれたユーモアを発信する=田辺。それる銃弾が体を。道を。話が横道に。脇道に。本題から。ボールが大きく。木来の目的から。外の空気に。陽がまともに。ボールが塀に。ひっ外の空気に。陽がまともに。ボールが塀に。ひっ来の目的を。論理を。脱線する電車が。話が。列車が。外の空気に。陽がまともに。ボールが塀に。ひっそとなく雨粒が。頬に冷たい風が。風が顔にもろに。世間の風に当たる。風が冷たく当たる。頬に当たる風が。生温い風が。小石が飛んできて。激突する車が。電柱に。フェンスに。ガードレールに。現実論と理想論の大激突"有川。前の車に追突する。後ろから追突される。追突事故を起こす。ぶち当たるどんと波が。多くの困難に。壁に。岩壁に。電柱に。人に。体全体で。災難が出迎えにきたら笑ってぶち当たってやる=城山。よけそこなう障害物を。太刀を。電柱を。バンチを。よけそこねる車を。打球を。トラックを。 **ぶつける** ぶつけるがつんと頭を。壁に後頭部を。鴨居吵。に頭を。他者に感情を。扉に肩を。車を塀に。顔をしたたか。遠慮のない言葉を。こつんと膝頭を。やりきれない気持ちを。頭をこんこん床に。頭をテーブルに。くるぶしを机の角に。成管をそのまま。すべてを洗いざらい。体をぶつける壁に。どんと。質問をぶつける次々に。意地悪い。ぶつけ合う意見を。体を。むきだしの人間性を。与野党が主張を。塀に車を激突させる。頭突きを得意とするレスラー。顔面に頭突きを食わせる。 **めいちゅう【命中】** 命中する直撃弾が。矢が。弾が心臓に。的の真ん中に。物の見事に。矢がことごとく。命中させる標的に砲弾を。一発で心臓に。食らう弾丸を。直撃弾を。正しく的を貫く。ぴたりと的を射る。命中精度が上がる。下がる。命中精度を高める。当たって死ぬ弾丸に。流れ弾に。当たる弾が頭に。弾丸が体に。弾丸が的に。ヘタな鉄砲も数射ちゃあたる田辺。射落とす扇の的を。弓で鳥を。被弾する機体が。戦車が。船舶が。足に。空飛ぶ鳥を狙ってさえ百発百中という狙撃の名人=舟橋。百発百中の腕前。勘。弓。予想。 <968> # 太る・痩せる **からだ【体】** 体固い感じのごつごつした井上靖。深海魚のようにぬめぬめと青白い"五木。短距離走者のようにひきしまった=飯田。すべすべとやわらかく温かい母の=日野。身体石の塊を投げ出したような堅い=長塚。撥ね返るように弾力のある若い女の=黒石。体の芯が熱くなる。奥にほてりが残る。奥が内側から熾火咲きに炙ぁぶられるように熱くなる夢枕。体が言うことをきかない。じっとりと汗ばむ。法悦に打ち震える。もんどりうって床に倒れ落ちる。熱くなるほど腹が立つ=向田。波に揺られるように何度か上下する=村上春。激しい運動の後のように熱っぽい=渡辺。身体がどっしりとした疲労感に浸される谷村。はじかれたように舞い上がる=西村。二つあっても足りないくらい忙しい永井荷。ほてるように熱を持つ八谷村。からだがすくむほどの恐ろしさ=筒井。水ぶくれになっているようにふやける=石川。軀炒らが棒を呑んだように硬ばる=大佛。めっきり体が衰える。身体が冷水を浴びたようになってすくんでくる=国木田。熱に病んだように体が火照る=中上。はずかしさに体がぞっと立ち竦ずくむよう徳田。柔らかい草の茎のような体がその上に支えた美しい顔を一層花のように感じさせる=川端。悪事を谷とがめられたように妹炒らをこわばらせる=内海、体に精気が満ちる。電気がかかったように一瞬間くねくねとする=中河。体の節々が痛む。冷気が体の芯までしみこむ。体をくの字に曲げる。しゃんと伸ばす。棒のようにコチンコチンにさせる=胡桃沢。体を包む暖かい空気が。疲労感が。からだをブルブルッと犬みたいに揺さぶる"玉村。鹿がからだを波のようにうねらせる宮沢。背に食いついている虻ぁぶを追い払う馬のように身体をヤケに振る=小林多。頭の中がからっぽになるまで体を酷使し汗をしぼり出す飯田。髪が解けてしまうほど体を振り廻す=川端。畳にめりこむほど体を低くする=獅子。突き放すように体を離す"原田戚。波間をつきすすむドルフィンのように体を反らせる"五木。いすくめられたように身体をこちんと固くする=本庄。ハッと息をのんだように身体を固くする=小池。ドキッとしたように体を堅くする三浦米。体を揺するリズムに合わせて。寒気を振り払うように=伊坂。起き上がりこぼしのように左右に身体をゆする宫部。左右に細かく身体を揺する藤枝。軀が棒のように固い。安岡。体いっぱいに怒りが満ちる。力があふれる。体質改善を目指す。体調を整える。崩して入院する。二十歳ぶたの処女姉との生身が匂い立つ=池波。生身の人間。体が大きい。身体が熊が立ち上がったほどに大きく見える高橋三。人目をひくほど大きくなる"横光。大きなからだが巨大な岩のようにのしかかる=南条。大きな恰幅跡いの持ち主。恰幅のいい女。中年男。背が高くがっしりした体つき。頑健岩のごとき恰幅谷崎。図体が大きい。体が逞於〈しい。体骨組みのたくましい見事な=山本周。あら鉄がぁみたいな黒いたくましい吉川。からだガッシリした柔道家のような"小島。筋骨たくましい赤銅色の"真継。肩から肘にかけて気味のわるい大小様々の力瘤;砂らが隆起する精悍她灬な体軀たい=高橋和。歳かぁのようにたくましい体軀の持ち主池波。仁王のような遅くしい肉体!有局。体が小さい。雄鶏ぶんのようにのけぞったちいさな体!遠藤。小さな体に似合わない度胸の持ち主。小柄だががっちりした体つき=勝目。体中が寝汗でべとべとになる。びしょ濡れになる。燃えるようにかっかとほてる窓沢。体じゅうほっと熱くなったほど感情を動かされる=宮本百。怒りが体中に渦巻く。三。白湯を飲んだあとのように身体中があたたかくなる。 **からだつき【体付き】** 贅肉にごのない均斉のとれた体つき=五木。身体つき風邪などひきそうもない頑丈な藤沢。女の子のようにくねくねした=島尾。肩の盛り上がったいかつい藤沢。軍人のような身体つきの人!高井。頑丈な引き締まった体つき。願もちのようにしなやかな体躯にぃ"山田風。体型が崩れる。体型に合った服。筋骨引き締まった。隆々たる。弾力のある鋼鉄によく様なぁした革を張ったように滑らかで美しい=柴田剣。筋骨たくましい男。筋骨隆々の男。 **きゃしゃ【華奢】** 骨組みがほっそりと華奢。華奢な女のような指。可憐はれな姿。ウェファースのようなきゃしゃなケース=宇野利。細い華奢な指。女らしい華奢な手。男の腕に抱きしめられれば砕けてしまいそうなほど華奢な胸"干刈。腰がひとまわり華奢になる。細作りの男。女。娘。細身の体。娘。鞭もぅのような体つき。ぴっちりとまとわりつく細身のズボン=玉村。骨細ですらっとしている。 **こたい【五体】** 五体から力がほとばしり出る。喜びがあふれ出る。五体にみなぎる力があふれ出る=真継。 **しんしん【心身】** 仕事から心身ともに解放される。心身に異常を来たす。鬱積していた緊張をときほぐす。エネルギーが心身にあふれている。コンプレックスが心身にまつわっている。心身の健康を損なう。疲労で倒れる。バランスを崩す。 **すらりと** すらりと背が高い。長い足。均整のとれた長身。背がすらりと伸びる。すらりとした長身の体。すらりと腰の刀を抜き放つ。一読したところではすらりと意味がとりがたいほど晦冥炒三好達。すんなりした脚が伸びる。白い指先。 **ぜんしん【全身】** 全身膾たまの如くに切り刻まれて死体じゅうほっと熱くなったほど感情を動かされる=宮本百。怒りが体中に渦巻く。てる=石坂。身体中が針で刺されたように痛い高橋 <969> # 太る・痩せる-314 ぬ中島。全身が(ずぶ濡れになる。泥まみれになる。ぽっぽと湯気を立てる。わなわなと震える。ぐにゃりとしてきそうなほど嬉しい!鷺沢。凍り付くほどの寒気を感じる=京野)。息が詰まりそうなほど全身がこわばる三田。呼吸が止まるかのように全身がくすぐったい=山田詠。羞恥礼がのために全身が熱くなる=山本周。全身から(汗が噴き出す。かぐわしい匂いが立つ。血の気が引くのを感じる)。全身に(痛みが走る。悪寒が走る。痙攣山心が走る。戦慄が走る。力がみなぎる。怒りがみなぎる。歓喜がみなぎる。闘志がみなぎる。気拠にはがこもる。倦怠け以を覚える。酒がまわる。鳥肌が立つ。冷水を浴びる。熱気をたぎらせる。日差しを浴びる。びっしょりと汗をかく)。全身の(緊張をほどく。毛が逆立つ。力を振り絞る)。へなへなと全身の力が抜ける。全身を(弓なりに曲げる。憤怒の火にする吉川。耳にして聴き入る"有吉。焼かれるような恥ずかしい思い!南条)。倦怠の色が全身を包む。喜びが全身を駆けめぐる。ローブで全身を縛る。愛に全身を投げ出す高村光。怒りの形相で全身をわななかせる=干刈。羞恥で全身を赧ぁかく染める=吉行、全身を襲う(苦痛が。絶望が。疲れが)。怒りに全身を震わせる。電気ショックをうけたように全身を瞬間震わせる=泉優。躍動感のある健康的交全身像"干刈。頭の先から足の褻まで。上から下まで黒ずくめの恰好い=宮部。体全体から気品が匂い立つ。頭から爪先まで(雨に濡れる。舐める視線を這わせる=藤本)。頭から(尻尾までさらす。足の先までじろり一瞥ふぅする=新田)。頭の天辺にいから足の先までねめ回す=平野。身内が震えるほどの興奮を覚える。喜悦が身内からふきこぼれる。勇気が身内から湧き上がってくる。幸福感が身内にあふれる。 **たいかく【体格】** ▼体格(堂々たる。がっしりとした骨太な。背丈の高い立派な。肩幅の広いがっちりした。胸幅の広い男性的企円地)。体格が(いい。大きい。向上する。肥えている。悪い)。体格に秀でる。体格のがっしりした強そうな男。逞訟くしい体格の青年。立派な体格の持ち主。▼体格の男(屈強な。がっちりした)。体格を利して反撃に出る。柄も立派なら容貌も立派。体位の向上を図る。 **にくたい【肉体】** ▼精神と肉体が(アンバランス。調和する)。女の肉体から妖艶な雰囲気が月暈がいのよう にほのめき出る=岡本。肉体の喜びにおぼれる。▼肉体を持て余す(成熟した。若い)。 **にくづき【肉付き】** ▼肉付き(丁度頃合いな締まりのいい!永井荷。見惚ぇとれるようにたっぷりとした林美)。ところどころの関節にえくぼの出来ているまろやかな肉づき谷崎。丸ぼちゃの肉づきが白い桃のように美しい=円地。ぽっちゃりと肉付きがいい。日一日と元の肉付きに戻る。ぽってりした肉付きの体。むっちりと肉付きのいい体。小柄だがぽちゃぽちゃと肉附きのいい女"里見。肉付き豊かな二の腕。むっちり盛り上がった胸元。むっちりと白い二の腕。 **はりがね【針金】** ▼一条の針金が縦しらのように閃いく三島。針金でぐるぐる巻きにする。ベンチで針金を曲げる。針金のような(髭のげが一、二ミリ生え出す"松浦。火をちらりと持った落ち葉の一片一片が煙とともに軽く勝ぁがる=長塚)。痩せ細った針金のような手=遠藤。針金のように痩せた少女。高橋治。朝顔の変っるの名残が針金のようにからみつく=阿久。腕が針金のように細くなる=遠藤。男が針金細工のようにふらふらと頼りなく奥へ消える"加賀。大気が細いピアノ線のようにはじけ鳴る=光瀬。 **ふでぶと【筆太】** ▼筆太に書く(愚黒々と。力強く)。肉太の(書体。文字)。一点一画もおろそかにしない肉太の字向田。 **ふとい【太い】** ▼太い(頑丈な木。溜め息をつく。吐息を漏らす。張りのある声。無骨な腕)。太い(肝が。神経が。胴体が。眉が)。肉の太い字。頑健そうな太い首。精力的な太い眉。節くれ立った太い指。大人の腕ほどもある太い尻尾の犬向田。片手では指のまわらぬくらい太い蛇=今日。▼太い声(塩さびのした。しゃがれた。艶っぽい。コントラバスのような=徳水)。線が太い(小説。性格)。太く短く生きる。静脈が太く浮き出す。神経を太くもつ。腕ぐらいの太さの木。太めの(子供。女性。ズボン)。野太い破れ鐘仲畑のような声志茂田。貨物列車の野太い汽笛が響く。あたりかまわぬ野太い高笑いをひびかせる=真継。▼野太い声(腹に響く。細身のわりには)。男のような野太い声を出すずんぐりと肥った女"伊藤整。野太く部屋中に響き渡る声。 **ふとる【太る】** ▼太る(福々しく。ぶくぶく。顎が二重に見えるほど"高樹)。▼肥ふとる(青白く水膨れのように安岡。可愛い雷鳥みたいに=田島。童女のようにまるく=高村光)。太った体を揺すって歩く。丸く太った煩。溶けかけたバターの塊のように太った体開高。やたら騒々しい太った女"小池。肥った体に似合わずきびきびした動作"五木。ぶるぶると肥ったオムレッ武田瓦。▼太っている(豚のように。ぽっちゃりと。むっちり)。色が白くてゴム人形のように丸々肥っている『永井荷。ずいぶん太めになる。大柄な太り気味の休。太り肉ししで白い肌。太り過ぎを気にする。幾らか持てあまし気味の堂々とした体蠣に、本庄。おなかの脂肪がたるむ。腰のあたりの肉に段がついている。三段腹のくびれがくっきりと浮き出てたこ糸で巻いた豚肉みたいに見える=小池。横にも縦にも大きくなる。でっぷりと肥って縦より横の方が広く見える軀分。"安岡。余分な肉がつく。樽のような胴体=吉行。堂々たる恰幅跡の女。ふわふわふくらんだ大柄な婦人"円地。みっしりと肉がついた体驅池 <970> # ふ 太っているくせに軽くはずむ胸まりのような身体=円地。固太りの(赤ん坊。子供)。肉付きのいい固太りの軀「水上。体つきがぽってりしている。体にふっくらと肉がつく。ころころ肥えた娘。色白でぷっくりと肥えた青年・井上ひ。小山のように肥えた体三浦条。体格がずっしりと肥えている。願ぁこが二重になるほど肥える=高橋和。▼だぶつく(肉が。腹が)。肥満した体。肥満体を揺すってがははと笑う“辺見。便々たる太鼓腹落頭。小太りの(中年女性。艶々した体つき)。背の低い小太りの男。折り曲げて立てた膝が苦しいのではないかと思うほどの小太り=高橋治。小太りで丸顔のずんぐりむっくりした身体つき藤沢。体がずんぐりと遅くしい。ずんぐりした(男。体格大魚。でっぷり太ってすっかり貫禄をつける=野間。でっぷりと(肥えた男。太った巨体)。赤ら顔のでっぷりと太った人。でっぷりした腹部を揺する。大柄なでっぷりした女。豊満な(白い乳房。胸の女性。初夏の風が吹き抜ける=村上孫)。自分の身体が輝くかと思うばかりに豊満な心持ち菊池。ほどけば夕立雲のように一杯にひろがる豊満な髪、谷崎。胸元から豊満な谷間が覗のぞく谷川。豊満な肉体(女盛りの。成熟した)。 **ほそい【細い】** ▼細い(甲高い声。切れ長の目。声で呟やぶく。線でつながる。路地を入る。体をくねらせて踊る。水の流れが走る。目をさらに細くする。やや腫れぼったい目)。細い(体の線が。食が。神経が。手首が今にも折れそうに=貫井。脚が竹のように"小局。腕もふくらはぎも痛々しいように=山田太。首が鶴のように"有栖川。手首が棒のように=伊坂。ぼきりと折れそうなほど近藤)。華奢にいな細い指。線が細い男。病人の細い息。くねくねと曲がる細い道。神経質そうな細い顔立ち。しんなりと細い指。いたいたしいほど細い娘の首に海音寺。カマキリのように細い腕"長崎。象のような細い目三田。電柱のように細い人=石田衣。針のような細い痛み!連城。蚊の鳴くような細い声坂口。消え入るような細い声で泣く=林美。細く(かすかな響き。華奢な手。くびれた胴。すすり泣く声。尖った声)。カーテンがすっと切られたほどに細く開く加賀。眉を細く描く。口笛を細く吹く。煙が細くあがる。鼻筋が細く尖とがる。細くなる(雨脚が次第に。声が急に。車のすれちがいもできないほど道が宗田。感情の紋が蜘蛛くもの糸ほどに幸田露。目が糸のように=東野)。目を細くして(眺める。喜ぶ)。細い糸のような眼水上。糸のように細い葉「小松太。細めに開ける(障子を。ドアを。戸を。襖黙すを。ブラインドを)。▼細めに開く(戸が。扉が。襖が。窓が)。極細の(毛糸。ストライブ。ボールペン)。可憐ふぇなスレンダーな姿態。煙が縷々ぇると一筋に立ち昇る。香煙が縷々と立つ。か細い(声で呟く。笛の響き)。病身なか細い女。▼か細く震える(肩が。声が)。細々と(煙が立つ。清流が流れる。光が外に漏れる)。 **ほそめる【細める】** ▼細める(片目を。声を。まぶしげに目を。眼鏡の奥の目を。糸のように眼を=水上)。肢まぶしさに目を細める(照り返しの。沈みゆく夕陽の=篠田)。目を細めて(凝視する。眺める。微笑む。笑う)。▶細くする(明かりを。音を。目を)。目をすがめて見る。すぼまる(唇が。先が。裾が。輪が)。 **ボディーライン** ▼ボディーラインが(美しい。くっきり出る)。体の線が(浮き出る。崩れる)。 **ほねぶと【骨太】** ▼骨太で(遅くしい体。いかつい体つき。がっしりした体格泉俊)。小柄ではあるが骨太で手も足もたくましい=加賀。骨太の(構想。メッセージ。論争。猛獣のような腕や胸、安岡)。骨太の字。骨太の小説。男の骨太い腕。 **まんしん【満身】** ▼満身に(月光を浴びる。どっと汗が噴き出す)。疼痛とりが満身にしみわたる。光が満身に照りかかる。満身の力を振り絞る。総身から血が引く。総身に(力を入れる。神経が回らない)。大男総身に知恵が回りかね"貫井。満腔注认の(誠意を尽くす。不平を抱きながら大言壮語する今東)。 **み【身】** ▼前途を失った行き場のない身萩原窮。身が(きゅっと締まる。危険にさらされているような寒さ=古井)。恐ろしさに身がすくむ。みっしり商売に身が入る。身が引き締まるよう(うれしさに。感動に。責任に)。ぶるぶると身が震える。身に(しみるように風が寒い。つまされるような話。内田康)。災難が身に降りかかる。能力を身に備える。空気が冷え冷えと身に沁しむような日谷崎。寒さが身にこたえるような年齢"里見。いかに危険かを身にしみて感じ取る。恐ろしさを身にしみて知る。身の(証はかを立てる。去就に迷う。不幸を嘆く。始末は自分でつける。自由が利かない。処し方を考える。振り方を考える。すくむような寂寞=本庄。破滅ともなりかねないスリル 瀬戸内。ひきしまるような冷たい雪の山上の風に吹かれる=中河)。脱兎だっのような身の速さで逃げる=横光。のっぴきならないことが起こって身の破滅になる=田山。恥ずかしさに身も縮む。身を(清らかに保つ。うちこんで仕事にかかる。かがめて中へ入る。翻して走り去る。もんで恥ずかしがる。こがす激しい熱情!中河。自然の生々流転のままにゆだねる=阿川弘。縮めるようにして生きる=高橋三。揉もまれて歩かなければならないほどの雑路高井。焼くように烈はげしい恋菊池。よじるようにして笑う“宗田。切られるように不快獅子。切られるより辛い=有吉)。かたわらに身をよける。危険に身をさらす。苦行に身を挺ていする。木陰に身を避ける。快い疲れに身を浸す。ごそごそと身を動かす。敗残の身をアルコールにまぎらす。ひょいと身をかがめる。宝石で身を飾る。あたりの気配をうかがうように身を動かさないㄓ村。未だ <971> # 太る・痩せる に身を固めようともせずに一人で働く=壺井。おれに任しておいてくれといったふうに身を乗り出す藤本。主人の怒りにおびえきった猫のように身を固くする=泉後。何気なく洩もらす言葉に身を刺される思い=野坂。飛燕いぇの如く身を躍らせて飛びかかる=菊池。療養地の身を悩むような孤独"梶井。▼身を沈める(悲しみに。官能に。湯に)。▼身を反らす(黙ぃり子が生きているかのように=伊集院。弓弦のみを張られたように吉川)。▼身を縮める(窮屈そうに。恐怖に)。全身の苦痛で腹這いになりエビの如くに身をちちめる=坂口。猫のように身をちぢめて息を殺しながら容子を窺っかう芥川。身を委ねる(射精の快感に。情熱のおもむくままに。生々流転のままに)。静けさに身を委ねるように黙りこくる内館。▼身を寄せる(弟の家に。壁に。隅っこに。手すりに。電柱の陰に。扉に。柱に)。身を切るような(悔恨。寒さ)。 **やせおとろえる【痩せ衰える】** ▼痩せ衰える(体が。みじめに。飢えて。見る影もなく。枯れ木のように"渡辺。永い喪に服した人のように佐藤春)。幽鬼のようにやせおとろえる=白洲。棒切れのようにやせ衰えた手脚後藤。痩せ衰えて骨と皮ばかりになる。痩せ衰えた姿が幽鬼のように見える=渡辺。 **やせている【痩せている】** ▼痩せている(土地が。がりがりに。可哀相なほど。釘のように。ひょろりと。鶴みたいな感じに笹沢。一日餌を食べないと死んでしまう十姉妹じゃうのように=大庭。肋骨ごつが浮いて見えるほど=大藪)。蛇郎跡のように溶ゃせている水上。蚊とんぼのよう。鶴のように緊しまった身体=本庄。華奢な体つき。ひからびて黒ずんだ枯れ木のような肉体=坂口。枯れ木みたいな人!佐藤愛。鳥のガラみたいな体、高橋治。棒のような胴体。痩せ犬のように骨ばった肉体=武田炎。痩せ型の(男。女)。痩せた体青年)。やせてはいるが芯の強そうな体つき=石坂。瘦せの大食い。痩軀にう(華奢な。鶴のごとき)。瘦軀の(女性。老爺~~)。長身瘦軀の男。▼瘦身(肋骨の浮いた。陰気な狐を思い出させる=藤本)。眼光鋭い痩身の男小松左。細身だが鉄線を何糸もより合わせたような体軀たい池波。細身ではあるが、ダンサーだけにバネのありそうな身体つき=西村。姿がほっそり柳愕。骨組みがほっそり華奢。少女のようにほっそりとした体つき=大庭。ほっそりした小柄な体。ほっそりして繊細な男性。 **やせほそる【痩せ細る】** やせ細り糸のようになって死ぬ=中上。いたいたしいほど痩せ細り長く思う日がつづく"辻井。▼痩せ細る(餓鬼のように。心痛で。悩みで。幽鬼のように。幾月も食事をとらなかった病人のように『遠藤。かさかさに乾いた皮膚が骨へじかに張りついているとしか見えないほど体も顔も=山本周)。▼やせ細る(磨沙らのように。冬の蠅の腹が紙経こょりのように=梶井)。痩せ細るまで苦しんで考え込む。鴉のように痩せ細った軀炒。水上。痩せ細って(肋骨3つが浮き出る。毛並みが悪くなった野良猫のような男に小池)。痩せこけた変草にこのような女"高橋和。痩せこけて発育が悪い体。▼痩せこける(骨と皮だけに。見る影もなく。骨ばかりのように"木山)。 **やせる【痩せる】** ▼痩せる(がりがりに。げっそりと。針金のように。骨と皮ばかりに。病み衰えた人のように。円く張った滑らかな足と手が竹のように=横光。手足が枯れ木のように真継。咽喉のとの状骨の上下動が透けて見えるほど"高橋和)。恋情に痩せる思いをする。心が一筋の糸のごとくに痩せるばかり。坂口。痩せた(貧相な子。骨細の体つき。神経質そうな子供。土地に絶望する。ひょろ長い体つき)。すらりと痩せた腰。貧相に痩せた細い首。ほっそりと痩せた体。蛇鄭詠みたいな痩せた男星吉川。鳥のように痩せた首"東野。棒切れみたいに痩せた脚"重松。幽鬼のように痩せた顔・藤沢。削ったような痩せた顔"長塚。痩せて(尖った肩先。頬が落ちる。ひとまわりも小さくなる)。旅のような痩せ方をしている老人=林美。痩せぎすなすらりとした娘。我の強そうな顔立ちをした痩せきすの女筒井。あばらの浮いた胸。而長に頬の肉が箆へらで役いだように薄い顔「円地。山線に乏しい体。バッタのようになった手=田山。ボキボキとどこからでも崩れ折れそうな手足"石川。頬のあたりが痩せ落ちる。枯れ木のごとく痩せた手脚鷺沢。スリムな体つき。体重が減る。病に身が細る。身が細る思いで待ちあぐねる。身が細るほど心配する。 **やつれる【塗れる】** ▼やつれる(顔が。頬が。見る影もなく。頬骨がたつほど“山崎)。目立ってやつれた顔。別人のようにやつれた姿"海音寺。▼やつれていく(日に日に。目に見えて)。骨が浮き出すほどに疲れている池波。▼やつれが目立つ(顔に。目のまわりや頬に)。頬が渉くそげる。頬が竹べらで削ぞいだように尖る落合。頬の肉がそげ落ちる。心労にやつれぎる。▼やつれ果てる(労苦に。緊張と疲労とで。骨と皮ばかりに=坂口。昔のおもかげもないほど=林美)。病気で面やつれする。こけ落ちる(肉が。頬が)。頬が削げたようにこける=渡辺。心なしか(やつれた感じ。面やつれがしている)。げっそり(疲れた顔。痩せて病人のようになる=椎名麟)。頬の肉がげっそり落ちる。・ちてげっそりと肩がこける=長塚。げっそりとした後ろ姿。頬がげっそりと(こける。やつれる)。病気になった雌猫のように女がげっそりする=徳永。顔に憔悴丸いうの色が濃い。憔悴する(心が。神経が。痛々しいばかりに。正面から限を当てるのも気の毒なほど=井上荊)。死んでしまうのではないかと思えるほど憔悴しきる内田康。陰気な憔悴した顔。ひどく憔悴して半に似合わない太いため息荻野。痩せっぽちの(小娘。」 病人になる=瀬戸内。見るも哀れなほど憔悴している。 <972> # 踏む・蹴る **あし【足】** 足徳利のような。象牙細工のような華奢は~で端正な=倉橋。冷たい水のような木山。モデルになってもいいほどの長い高橋三。脚鹿のような。大根のような。すらりと伸びた長い。赤松の幹のような=森岡。棒切れみたいに痩せた"重松。身軽な生きもののように踊る=川端。足が二三歩流れる。ふいに止まる。がくがく震える。すくんで身動きできない。貧乏揺すりを始める。ひんやりと冷たい。むくんで歩くのがだるい。あんまり痛くてバリバリ白く燃えているよう宮沢。枯れ枝のように細くなる=山田脉。凍りついたように止まる=火坂。電撃的にビクンと引っ込む=尾辻。飛ぶように早い=木山。鳥の肢ぁしのように筋張る=大江。姿ぇえたようにその場に立ち止まる=福永。客の足が寄りつかない。恐怖で足が震え出す。次第に足がしびれて来る。知らず知らず足が向く。馴染なじみ客の足が遠のく。あらわな足が白鳳氷の天女の足のようにむくむ"大岡。重荷に堪えるためのように足が平べったく大きい!壺井。誰にもおとらないほど足が達者=新田。疲れ切って足が棒のようになる藤沢。柔らかい靄もゃの中に足がローソクのように浮かぶ小林多。足がすくむ未知の恐れに。途方もない差はずかしさで=原田店。足でリズムを取る。上から足で押さえつける。自分の足で立つ。よろける足で店を出る。足にまかせて歩く。まめができる。靴が足になじむ。踏み出す足に力をみなぎらせる。足の爪を切る。大股な足の運び。足を左右へ広げる。一歩部屋の中に踏み入れる。肩幅に広げて立つ。滑らせて転倒する。大の字に広げる。爪立てるようにして来る。払われて転倒する。ビシャビシャと叩く。真っ直ぐ伸ばす。草の根に引っかけて転びそうになる=栗本。脚をくの字に折る。長い足を組む。現実にしっかり足をつけている。潮が足を洗いはじめる。進まぬ足をとぼとぼと運ぶ。清流に足を浸す。外恰好とに足を交わす。高く足を上げる。地から足を雌さない。地に足を着ける。黒い罠もなの仕掛けに足をさらわれる萩原葉。苔こけむした石に足をとられて滑る=高樹。駄々っ子のように足をばたばたさせる"小松左。不器用な熊の仔のように足をばたばたやる"大江。足をかけるあぶみに。脚立に。ステップに。梯子はしに。足を止める入り口の前で。歩きかけてふと。途方に暮れたように足をとめる遠藤。足を引きずる不自由な。負傷した。足を踏み出す一歩前に。広い世界へ。自覚的に足を一歩踏み出す三浦綾。足を踏み鳴らすはたぼた。地団駄を踏むように忙しく三浦哲。足を踏ん張る必死に。一生懸命。足を棒にして探し回る。しらみつぶしに頼み歩く水上。脚線美を咬まぶしげに眺める=和久。足を投げ出す草の上に。芝生に。床に。長々と。伸び伸びと。ゆったりと。足を投げ出して座る。足をのびのびと投げ出す。ハの字に投げ出す。ぶさまに投げ出す。足を踏み入れる欲楽街に。現場に。小道に。砂漠に。土間に。ビルに。部屋に。店に。老年に。口ビーに。一歩。寝室へ。対決の場へ。ためらいがちに。一途にがむしゃらに道のない積雪の中に有島。現実とは違った世界に=阿刀田。立ち入り禁止区域内に"東野。領域に足を踏み入れる魔の山の。未踏の。着々と山仕事の道に足を踏み入れつつある三浦し。生皮をペロリと剣いで赤い肉がむき出たような感じの犬や猫の足裏!遠藤。足の裏が擦り切れるほど馳がけずり廻る=井上ひ。足の裏をくすぐる。足先に痛みが走る。足の先がにょっきりと外に出る。凍ったように冷たい=山本昌。足の先からしんしんと冷えてくる。 **あしくび【足首】** 足首がきゅっと締まっている。くにゃりと曲がる。足首に鎖を巻きつける。足首を縛る。捻挫する。ひねる。雪にくるぶしまで埋まる。くるぶしを机の角にぶつける。 **きびす【踵】** 踵が象の足のようにむくみ上がる=槌。踵かかとでぐるっと振り向く。床をこつこつと叩く。ハイヒールの題で床を打つ。踵の高い靴。ぺちゃんこな靴。靴の踵の外側だけが癖の悪い人に使われた恐のように斜めに減る=小林多。題を帅にして回る。鳴らして去る。いやというほどくじく。合わせてきちっと敬礼する=胡桃沢。ヒールを鳴らして立ち去る。 **かたあし【片足】** 片足で立つ。とんとんと石段を片足かたあしで跳びおりる=高橋和。片足を(とんと踏み鳴らす。ドアと柱の隙間に差し入れる=梶山)。画面がスキッブする。スキップを踏む。 **がにまた【がに股】** がに股で歩く。全身筋肉痛でがに股でしか歩けない三浦し。がに股に開いた足。がに股のように膝を開いてゆっくり自転車のペダルを踏む三浦哲。 **けたてる【蹴立てる】** 蹴立てる落ち葉を。コートの裾を。砂煙を。波を。飛沫ひまを。ばしゃばしゃと水面を。ばしゃばしゃ水を。水を蹴立てて進む船。雪を蹴立てて滑り降りる。 **けとばす【蹴飛ばす】** 蹴飛ばす石ころを。椅子を。小石を。尻を。思いきり。屈辱的解決条項を。いまいましそうに。身分差を苦もなく。蹴り飛ばす戸を。猫を。 **けりあげる【蹴り上げる】** 蹴り上げる下腹部を。股間を。尻を。上げる砂磨しを。砂を。宙を。腹を。膝頭を。 **ける【蹴る】** 蹴る足が空を。靴先で※丸に心を。徹の麺切かで床を。爪先で畳を。提案を言下に。尻を軽く。一度決まった就職先を。苛立心。たしそうに雪を。靴で。 <973> # 踏む・蹴る-315 の爪先で地面を。サッカーボールを。ぽつんと小石を。申し出をあっさりと。途方に暮れて足元の砂を"若竹)。(椅子を蹴って立ち上がる。砂を蹴って走る。席を蹴って帰り去る。馬腹を蹴って走りだす。▼蹴りを入れる(お尻に。向こうずねに。一発)。▼蹴返す(膳を。ボールを)。▶蹴倒す(椅子を。桶ぉぃを。ボリバケツを)。蹴り込む(ベッドの下に。満に。ボールをゴールに)。▼蹴りつける(石を。地面を。屏風10を。胸を。靴の踵で。一蹴り)。戸を蹴り倒す。キックを虚空に放つ。ボールをシュートする。シュートを見事に決める。▼足蹴しにする(女を。枕を。機腹を。倒れている男を)。容赦のない足蹴りが襲う。 **すね【歴】** ▼すねがすらりと伸びている。すねに(傷もつ身。黒々と毛を生やす)。びしょびしょの裾がすねにまといつく。すねを物差しでびしりと打つ。長いすねを剣もき出しにする。脛の白さが感を刺激する=村上元。毛脛が裾から剝き出しになる!水井能。向こうずねを蹴り上げる。 **つまさき【爪先】** ▼爪先(真珠のように白く塗られた"山田詠。不安を与える真っ白い生きものの耳のような白足袋礼吗の宮本百)。つまさきが痛くなるくらいの急な下りの道高田。爪先が砂に食いこむ。硬ばった足の爪先が痛くなるほど冷たい=長塚。握りこんだ爪先が手のひらに食いこむ=安部。爪先で(くるっと回る。子供っぽく床を蹴る"原田明。探るようにして用心深く歩く=本庄)。靴の爪先で待ちどおしそうに敷き石を叩く有局。ジーンというしびれが脳天からつま先へ突き抜ける=飯田。爪先をとんとん床に鳴らす。石に爪先を取られる。さらさらと爪先をするような跫音=宮本百。虫でも踏み殺すように荒々しく爪先をくじらす=中村真。土いじりをした後のように爪の先が真っ黒=原田家。靴先をこつこつと鳴らす。 **はだし【裸足】** ▼裸足で(土問に降りる。ぺたぺた歩く)。裸足になって歩く。ぺたぺたと裸足の足音が聞こえる。裸足のまま三和土誌へ走り出る。足袋はだしのまま外へ飛び出す。棒のように痩せてよごれた素足遠藤。素足が(寒々と見える。ガラスのように冷えて透き通る"小川)。素足で歩く。素足に下駄をはく。 **ふくらはぎ【脹ら歴】** ▼ふくらはぎ(石のような。鳕子に。みたいに膨らんだ奥泉)。ふくらはぎが(痙心する。丸太ん棒のように太い=中村白)。脹脛ぶらが石のように凝る=山本周。ふくらはぎの肉が引き裂かれるように痛む三浦灯。腕もふくらはぎも痛々しいように細い=山田太。こむらが痙攣する。こむら返りを起こす。 **ふみちがえる【踏み違える】** ▼踏み違える(ベダルを。アクセルとブレーキを)。足を踏み外して階段から落ちる。階段から足を踏み外す。 **ふみつける【踏み付ける】** ▼踏みつける(足で煙草を。腹を土足で。足でぎりぎりと。絨毯にいうを荒々しく)。無残に踏みつけにされる。▼踏みつけにする(気持ちを。貧乏人を。労働者を)。にじり付ける(腕を。葉を)。踏んづける(足を。紙屑を。靴の甲を)。 **ふみつぶされる【踏み潰される】** ▼踏みつぶされる(牛に。馬に。象に)。▼蹂踊らされる(侵略者に。戦火に。泥土に)。 **ふむ【踏む】** ▼踏む(お百度を。外国の地を。枯れ草を。四股を。修学の道を。初舞台を。無駄足を。確率が高いと。体を所嫌わず。数々のポストを。探ぉぉされていたたたらを。事件事故の場数を。どたんどたんと足を。ばさばさと凍った雪を。ステップを軽やかに。アクセルを力一杯。小笹をかさかさと。霜柱をざくざく。ぬかるみをばしゃっと。ブレーキをゆっくり。錯落とした松の影を"梶井)。▼ステップを踏む(軽やかな。軽快に。足取りも軽く。ダンスの。右へ左へと)。七を踏む(郷里の。甲子園の。二十年ぶりに故国の)。▼手順を踏む(面倒な。然るべき)。厳にっを踏む(先祖の。前の)。▼ブレーキを踏む(早めに。慌てて)。▼踏んでいく(慎重に一歩一歩を。一つずつ段階を)。嫌というほど足を踏まれる。力強く足を踏み下ろす。足を踏みかえる。踏み込む(アクセルを強く。アクセルを目一杯。アクセルを用心深く)。▼踏みしめていく(道を。廊下を)。きしきしと濡れた砂を踏みしめる。▼踏み抜く(釘を。床板を。床を)。竹垣を踏み破る。 **ペダル** ▼ペダルに足をかける。自転車のベダルを踏む。リズミカルにベダルを踏み続ける。▼ペダルを漕ぐ(自転車の。力を込めて)。▼ペダルを踏む(汗みずくで。一生懸命。力いっぱい。ゆっくり)。 **もも【腿】** ▼腿(遅紋(しく肉のついた=大江。茹『だったような赤い長塚)。よく日にやけた稔りのよい腿が琥珀色に殆くの光沢を放つ三島。片手が腿の内側を道はいのぼる=船山。腿を(ぴたびた叩く。行儀よく閉じる。したたかに抓っっる=胡桃沢)。両腿いいうを(左右に開く。びったり合わせる。ぴったりと閉じる)。白妙のような内股が摩擦につれて美しい紅葉もみの色に染まっていく極。大腿部ばぶたの筋肉が躍動する。大腿部をあらわにする。大腿ぃにが(ばんばんに張る。むき出しになる)。両の太腿があらわになる。太腿を(きつく合わせる。開いて性器を露わにする=熊谷)。最近とみにハリを失ってぶよぶよの太腿荻野。女の太股の付け根を覗のぞく=桐野。 **りょうあし【両足】** ▼両足(女が物を跨またぐときのりょうあしはにかみながらくすりと笑っている=川端。丸太みたいな太い=石森)。磁石で吸い付けられたように両足が固く重くなって動けない!有鳥。両足でばちゃばちゃ流れをける。両足を(広げて踏ん張る。棒のように投げ出す=小池)。びょんと両足を揃えて立ち止まる。床の上に小熊のように両足を前に出す人谷村。 <974> # 降る・雨が降る あまあし【雨足】▼激しい雨足が水の面をたたくような騒音!光瀬。雨脚が強まり路面に白い花が咲いたように見える藤田。雨足にたたかれて海の上一面が菊石になる=島尾。太く白い雨脚。 **あまおと【雨音】** ▼雨音が(大きく耳を打つ。闇の中にこもる)。バリバリと油紙を破くような激しい雨音長野。襲いかかるように雨の音が起こる=大佛。極といを伝う雨音が激しくなる。屋根を打つ雨音が去る。雨が雑木林に砂のような音を立てる遠藤。さあっと音を立てて雨が落ちてくる=小沼。雨が道路を殴りつける音が入り口のガラス戸を突き破るほど連城。気のめいるような雨の音=堀。雨の音が(空虚な心をいっぱいに埋めつくす!幸田露。しんみりと耳の奥にしみ込む=小川)。木々の茂みを洗う雨の音が聞こえる=船山。笹を打つ雨の音が冷たく身にしみる―藤田。耳の中にまで雨水が流れこんだ気がするほど雨の音が大きくなる=中沢。屋根を叩く雨の音が耳朶じだを揺する藤田。雨の音が歌声みたいに聞こえる=高橋三。傘をうつ雨の音が遠くの地鳴りのよう。宮本師。雨の音に耳を澄ます。閥が雨の音に満たされる。傘を打つ激しい雨の音に包まれる!宮部。雨の音を心に沁しみ入るように開く。大佛。ずっと昔に聞いた雨の音のように彼の不器用に誇張された一挙一動がしっくりと僕の体になじむ村上拳。雨が板屋根に単調でもの憂げな音を立てる=遠藤。雨の降る音に似たせせらぎの音が涼しい風とともに頬に当たる=伊集院。 **あまぐ【雨具】** ▼雨具をかぶる。雨合羽にゴム長を履く。殺ぃのが雨に濡れそぼつ。蓑に雪が降りかかる。 **あまだれ【雨垂れ】** ▼雨だれが(規則正しく打つ。はらはらと乱れ落ちる。ぼたりぼたりと打ち続ける。柔らかに枕に響く朝山本有)。極とぃからびしょびしょ雨だれが落ちる。すだれのように雨垂れが打っている"吉川。梢から雨滴悠はがボタボタ落ちて墓石が泣くように見える"田山。樋から雨滴が滝のように落ちる田山。本堂の傍らの高い梧桐話から雨滴が泣くように落ちる=田山。ピタピタといつまでもつづく雨垂れのようなリズム=尾辻。目尻から溢れ出た涙が耳たぶからボタボタと雨だれのように落ちる=加賀。 **あまみず【雨水】** ▼雨水が(ざあっと流れ込む。窓ガラスを流れ下る)。極とぃからあふれた雨水が虫から見れば大津波のように音たててこぼれ落ちる=宮本輝。板廂ごいびから雨水がしどろに流れ落ちる=幸田露。帽子の縁にたまった雨水が滝のような音で落ちる=川端。庭石の苔にぃの間を流れる雨の細流=横光。 **あまもよい【雨催い】** ▼雨催いで風の冷ややかな宵山本周。雨もよいの(風がひゅうひゅうと松を鳴らす"中。空が墨を流したように真っ暗"高木。闇がたちこめている=池波)。空が一面にかき曇り今にも雨になりそう佐山。風に雨のにおいがまじる=佐藤多。雨をふくんだ薄墨色の空武田泰。どんどん黒い雲が増えていく空高橋三。風が雨気をはらむ。窓の外はいつの間にか雨模様。雨模様の肌寒い日。空合い(一雨来そうな。雨催いの)。空が(黒い雨雲で覆われる。日暮れのように暗くなる藤沢)。雨ずった空がぼうっと渉退になる=幸田露。空模様(一雨来そうな。いつ降り出すか分からない。いまにも雨が降り出しそうな=宮本部。今にも泣きだしそうな"田中)。空模様があやしくなる。 **あめ【雨】** ▼雨(綿のように柔らかな"村上春。雷をともなった叩きつけるような激しい落合。心の中は曇り後灰谷。罪人を打ちすえることく体の芯まで冷やす"大原。長い白髪のような=高橋和。納豆の糸のような小林多。針のように細い“村上春。細い櫛くしの歯のように規則正しい倉橋)。雨が(街路樹を洗う。終日やまない。窓を濡らす。途中からみぞれになる。激しく降りしぶく。アスファルトの路面にぶつかって膝近くまで跳ね返る!高樹。一日じゅうしとしと降りつづく=田中。街灯で銀色に光り輝く=池井戸。問歇的に小止みになる=堀。霧のようにけむる=池波。白い糸となって対岸の景色を消す=中沢。すだれのようにたれこめる鳥尾。寸分の隙間もなく天地を閉じ込める谷崎。葉の表にばさばさと砕ける=本庄。ビシャビシャとムチのように顔を殴りつける=大原)。三日ぶりに雨があがる。大きなトタンの屋根を風に乗った雨が動物的な早さでうわーっと走っていく椎名誠。風のある日には糸のような雨が下から上へ降る=田山。絹糸の涙のような雨が頬を濡らす池田。紅葉を静かに雨が叩いている"小林久。静かな雨が野面を丘を樹を仄白10120く煙らせる佐藤券。冷たい雨が頬を刺す谷村。縫い針のような雨が降り落ちる"宮部。激しい雨が肌と共に襲って来る平岩。葉にぽつりぽつりと雨が当たる三浦絵。細引きみたいな雨が激しく降る"加太。窓を叩きつける雨が滝のようにガラスを洗?篠田。闇のなかを斜交州すいに雨が糸をひく=中村真。・雨が落ちてくる(ばらばらと。ぼつぼつと。地を搏,つように太い=有吉)。雨で足跡が流される。雨で足元がぬかるむ。明かりが雨ににじむ。一日が雨に暮れる。島が雨にかすんで遠く幻のようにぼんやり見える三浦綾。野も丘も雨に煙る。外が濃い雨に鎖とざされる夏目。雨の銀糸が黒い幕面にかすれる=岡本。海が天からのびっしりした雨の矢に叩かれる=島尾。か細い糸のような雨のしずくが窓を伝う小川。冷たい雨の糸がさらさらと降り続く小松太。無数の雨の線が足元のアスファルトで怒ったようにはじけている=北村。暴風雨めいた狂った雨のしぶき=円地。地面から <975> # 降る・雨が降る **あめ【雨】** 雨のしずくのように落ちる汗。雨の音。雨の匂い。雨が降る。雨のしずくが頬を伝って流れ落ちる。水玉のように雨のしずくが光る。地面を叩く雨の音。雨だれが軒を伝い落ちる=長塚。雨だれが激しく軒を打つ。雨脚が白く見える。雨脚が(強い。弱まる)。雨脚をすかして見る。雨脚がぱったり止む。雨脚が(遠のく。強まる)。雨の脚はすらすらと光の矢のようであった=中河。まっすぐに伸びる雨の脚。銀の針のような雨の脚。雨の筋が斜めに走る。斜めに降る雨の筋。雨のカーテン。雨の糸。雨の煙。雨の中を走る。雨を冒して出かける。雨に打たれる。雨に煙る。雨に濡れて透ける。雨に濡れそぼって歩く。雨に濡れそぼった姿=佐多。雨が降ると濡れる。しとしとと降る雨に濡れる。雨の中を歩く。雨の中を走る。横殴りの雨。沛然として天地を覆う雨。天の底が抜けたように降る雨=西木。空から銀の櫛を投げるような雨=船山。車軸を流すような激しい雨。滝のように降る雨。篠を突くような雨。空が裂けたかと思うほどの滝のような雨。鞭のような雨。銀の矢のような雨。空を貫く銀の矢のような雨=船山。篠突く雨の中を突き進む。天から水をぶちまけたように降る雨。ガラス棒のような雨。空を斜めに走る無数の光る矢のよう=小松左。弾丸のように降りそそぐ雨=大岡。空から無数の銀の針が突き刺さるような雨=有栖川。驟雨のように降り注ぐ銃弾。雨のように矢が降りそそぐ。銃弾が雨のように飛んでくる。弾丸が雨あられのように降る。雨のごとく降り注ぐ火の粉。地面が白く浮き上がったように雨のしぶきが低い成層を作る"新田。草原いっぱいにハーブの糸のような雨の幕がひろがってゆく遠藤。あたりいちめん白い雨の幕に閉ざされる=池波。雨の膜のむこうのぼんやりした風景鷺沢。雨は風にそよぎつつ万物を洗いきよめる水のヴェール=小松太。銃弾の雨をたくみにかいくぐる=大原。雨のごとくに弾の降ってくる戦場。安岡。寵愛いうを雨のように降り注ぐ。奥平。背後から視線が冷たい陰気な雨のように背筋を撫でる=小林久。廂いきから雪解けの滴りが雨のように流れ下る=横光。虫の声が雨のように聞こえる=田山。貼り紙が雨露に打たれて変色する。ガレージで雨露をしのぐ。お湿りが来る。降る。酸性雨が降る。雨に濡れる。雨に濡れてしょげたように背を丸める!佐多。姿みのが濡れそほれる=高井。裾野にひろがる緑が雨に濡れて冴え冴えとした色を見せる=吉村。銀の糸を張ったように落ちてくる大粒の雨"山本周。大粒の雨がばらばらと土にぶつかる!小松太。天空から大粒の雨がぼつりぼつりと落ちてくる藤田。雨雲が大粒の雨を落とす。 **あめあがり【雨上がり】** 雨上がりの澄んだ空気。じゅくじゅくした芝生。すがすがしい朝。雑木林に湿った落ち葉の匂いが漂う村上巻。粒だったような冷気が肌にしみる"五木。雨去る空。はるかな西の碧ぁぁい野原が今泣きやんだようにまぶしく笑う宮沢。雨間を見て出かける。雨後のしずくのように汗がしたたり落ちる=飯田。芝生の緑が鮮やか!阿川弘。黒眼勝ちに澄んだ双眸民らが濡れた雨後の日光のような輝きをほとばしらせる女性人米。 **あめあられ【雨霰】** こんにゃくステーキに七味を雨あられと振りかける荻野。砲弾が雨あられと降りそそぐ筒井。銃弾が雨あられと降り注ぐ。有川。背中に杖が雨欲と飛ぶ!奥平。矢が雨霰と降って来る=隆。れのように降る弾幕の間をかいくぐる高橋和。 **あめがふる【雨が降る】** 雨が突然降り出す。一向に降りやまない。小止みなく降り続く。ざあっと降り出す。数日の間降り続く。どうっと激しく降る。激しい音を立てて降り始める。ぽつりぽつりと降り出す。一日降り暮らす島崎。姻けもるように降る夏目。シャワーのように機械的に連続して降る大岡。絶え間なく町を包むように降る=高井。降り方も平均してきてどっしり腰を据えて降っている感じ=阿部。雨が降る静かに。忍びやかに。しめやかに。ぶっ続けに。さあざあ。しとしと。じめじめと。しんみりと。はらはらと。びしゃびしゃ。小止みなく。煙るように。小粒の。しおしおと。しっとり。じとじと。蕭々しいうと。絶え間なく。ばらばら。細い。まとまった。しょほしょぼと。太古から尽未来際に私以らまで大きな河の流れが流れ通しているように幸田露。雨が沛然数と降ってくる。雨がひそやかに降りけむる=池波。降り込む骤雨礼が。雨がさんさん。窓から雨が降り込んでくる。斜めに雨が降りしきる。降り注ぐ火の雨が。雨が音もなく。雨が間断なく。湖水に降る雨の音のように魂に道行く人々の足音が=川端。降りそそぐ落ち葉の雨がしきりに=井伏。銀肌松のような大粒の雨が青々とした若葉に=徳田。雨が降り出す音もなく。ばらばらと。ぼつぼつ。林を閉ざして硝子絵に水が伝うように静かに"大岡。ぶちまけるような勢いで宮部。降り続く雨が閤も一緒に包み込んで小川。何もかもを濡らすまで雨がいつまでも"村上卷。昼も小暗い雨がしとしとと『鈴木三)。雨が降り続く断続的に。じめじめと。終日。ひねもす。昼も夜も。夜通し。連日。来る日も来る日も。激しくしぶきをあげて。びしゃびしゃと。世をあげて太陽のためのお通夜をしているような陰気な=宮部。じとじとと鬱陶しい=船山。降り続いていた雨が糸の切れととふっと止む=長野。雨の降り方家の中にしじまを閉じこめるような重苦しい“有吉。パラッと降って来たと思うとやみ、またバラッと降るというような、貧乏くさい"椎名麟。銀色の雨が朝から降っている=曽野。焼夷弾いたらが雨のように火の尾を曳いて降りそそぐ=阿川弘。矢が黒い弧を画ぇがいて雨のように降りそそぐ=半村。雨のように降ってくるコンクリートの壁に砕けた波しぶきが"加賀。天井のしっくいが赤川。葉がばらばらと雨のように降る=連城。雨を降らす血の。花びらの。雨を降らせる石の。接吻涎の。爆弾の。砲弾の。艦砲射撃と爆撃で鉄の"阿川弘。くさくさするような雨降りの日=徳田。雨天で試合が流れる。雨天の場合は順延とする。空が激しく泣く熊谷。夜が泣いている笹沢。 **あらし【嵐】** 嵐アパートが吹っ飛ぶんじゃないかあらしと思うような芝木。思いがけない感情の柴田翔。虚空の隅々からあるだけの風を集めてたたきつけるようなものすごい=向川弘。嵐がいよいよ激しくなる。去るのをじっと待つ。巻き起こることは目に見えている宮部。首をすくめて嵐が過ぎるのを待つ。ここを先途と嵐が荒れまくる。すさまじい嵐が吹き抜ける。欲情の嵐が収まる。革命の嵐が国じゅうを吹きまくる"石田栽。悲しみと絶望の嵐が吹き抜けていく=内館。休漁を強いるほどの嵐が鳥を襲う三島。心を野分のように襲った嵐が終わる=中村貞。誘惑と愛情とおせっかいと誤解との嵐が四方から襲いかかる=石川。嵐が吹き荒れるリストラの。レッドバージの。嵐が吹きすさぶ迫害と拷問にいの。魔女狩りの。胸のうちにすさまじい!宇野利。嵐で船が伝授する。悲憤の嵐に我を忘れる。満開の桜が春の嵐に散る。物凄もつい嵐に出くわす。屋根板が嵐に吹きちぎられる。全世界を驚愕だいの嵐に巻き込む=黒田。嵐の前の静けさ。いつの間にか去って微かすかに遠雷のように雨あられと飛んでくる銃弾が。雪つぶてが。雨あら <976> # ふ 聞こえる嵐の音=長与。天の怒り、天の恨みを吹きつけたような旅の日の荒々しい雲「竹西。嵐をついて出発する。嵐のような(断末魔の叫び。喝采が鳴り響く久米)。黒い嵐のような意識と本能の動き=野問。心の中で嵐のような罵倒を続ける=筒井。嵐のように(暴れ廻る。荒々しく息を吐く=光瀬)。軍勢が嵐のように敵陣に殺到する=菊池。疫病が嵐のように猛威をふるう“大江。喝采の声が嵐のように起こる=田山。黒い潤いのある瞳が嵐のように渦を巻く高橋三。騒ぐ声が嵐のように聞こえる=田山。死が兇暴な力をふるいながら嵐のように通り去る=野間。事件が嵐のように過ぎる永井路。ゆるやかだった回転音がにわかに嵐のように高まる=光瀬。花嵐が吹き荒れる。悪天候に見舞われる。悪天候をついて出かける。荒天のなかを救助に向かう梶井。 **うてき【雨滴】** ▼ガラスに点々と付着した雨滴"日野。雨滴が(車窓に貼りついて視界が濁る。葉末に美しい玉をなして光っている。窓ガラスを流れ落ちる)。密の視線の雨滴が首筋に冷たく感触される=武田泰。ぽつりぽつりと雨滴の音が聞こえる。ぼつぼつと雨の滴が落ちてくる。先端の尖とがった大きな雨滴のような白い建物宗田。雨粒が(傘を叩く。雲の内部で成長する)。どんよりとした空から雨粒が落ち始める"横山。ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を落とすぃ梅本。額の雨粒を拭く。 **おおあめ【大雨】** ▼大雨(局地的な。沛然搬いたる。滝を覆すような泉鏡。たたきつけるような=飯田)。それまでの大雨が蛇口を締めたようにびたりと止まる"東野。大雨で(川が増水する。孤立した山奥の村)。大雨のたびに決まってあふれる川。昼も薄暗いような大雨の日笙野。大雨のような拍手を送る=大原。 **きりさめ【霧雨】** ▼霧雨が(絶え間なく空気を湿す。何日も上がらない。いらだちやすい風波をしずめる=武田奈。ぼけ靡なびいて竹林に絶こもっている=横光。本格的な雨に変わる=森瑙)。思い出したように霧雨が通り過ぎる=島尾。▼霧雨が降る(しとしとと。絶え間なく)。朝の光が霧雨に包まれる。停泊灯が霧雨ににじむ。雑木林が霧雨につつまれ模糊としている遠藤。ぼーっと煙った霧雨のかなたさえ見通せそうに目がはっきりする有局。▼雨(雨音もしない細かく霧のような泉受。白い煙のような森系)。霧のような細かな雨"小林久。降るというよりは煙るというほうが当たっている細かい霧のような雨"石坂。霧のように降るともなく降る雨有局。 **ごうう【豪雨】** ▼豪雨(篠つく。沛然ふたる)。豪雨が(さあっと降る。通り過ぎるのを待つ。軒端に吹きつける)。篠つくような豪雨がザーッと降る=小松太。橋が豪雨で流される。豪雨の音が耳を聾ぅぅする。豪雨のため川があふれる。豪雨を冒して行軍を続ける。雨脚が竹藪ぶにしぶくような寂しいざんざ降りの音を立てる芥川。山も覆りそうなほどのすさまじい雨"村上元。雨が(叩きつけるように降る。小屋をつつみこんで宙へ押し上げるような勢いで降る=古井)。猛烈な雨が叩きつけてくる。雨がさあさあガラス窓へ打ちつける谷崎。雨がすべてを押し流すほどすさまじく降りそそぐ光瀬。水門の水を一時に切って落としたように雨が吹きつける=山本有。憤っているような凄まじい雨の降り方"円地。声を消すほどに雨音が激しい=飯田。車帅を流すように激しく雨が降る。殴りつけるような雨"山本周。沛然と窓を打つ雨の響き=阿刀田。蒸し暑さが一挙に霧散するような豪快な雨三浦綾。夜空が溶け落ちるように雨が凄まじい響きを立てている芥川。車のワイバーも効かないほどの降り飯田。局地的な集中豪雨。集中豪雨に(襲われる。見舞われる)。猛烈なスコール。▼猛雨(局地的な。台風のような。数メートル先も見えぬ)。 **こさめ【小雨】** ▼小雨(糠ぬかのような。蜘蛛くもの糸のような鈴木三)。小雨が(ばらつく。絶え間なく降りしきる。ぼつぼつ落ちてくる。忍びやかに降る。しょぼしょぼ降る。ばらばらと降る。私語するように降る"国木田)。▼小雨が降る(霧のような。しとしとと)。篠つく降りがやがて小雨に変わる。そぼ降る小雨の中に立ちつくす=高見湾。小雨まじりの霧が立ちこめる。あくびが出るような雨"村上春。軽い雨が来る。濡れるほどの雨ではない川端。葉のしげりをバックにしないと見えないような雨"川端。時々止んでしまったのかしらと錯覚するほどひそやかな降り方小川。▼降る(春らしい雨がちらちらと。雨が未練がましくしょぼしょぼと"阿久。包みこむような雨が音もなく細かく降りかかる。くもの巣のように覆いかぶさってくる=小川)。細かい雨に(煙る桑畑。じっとりと濡れる)。目に見えぬほどの細かな雨"村上巻。細かな雨が服に染みるように降る=高井。細雨がしとしとと降る。納豆の糸のような細雨が降る=井上ひ。 **じう【慈雨】** ▼慈雨(干天の。天恵の)。大地が甘露の慈雨に満ち溢れている=山田詠。細かい雨が音もなく降りかかる。 <977> # 降る・雨が降る **しぐれ【時雨】** 時雨そぼ降る晩秋の哀感。時雨がばらばらと顔にかかる。屋根の上をバラバラと通って行く八谷崎。ひっそりと時雨が降る。暗澹たる光に包まれて時雨がざあと来る=長塚。時雨にそぼ濡れた芒討ずの原=福永。サッと淋しい時雨に打たれたような思いがけぬ寂寥地法』が来る"檀。時雨の降り込める庭を見つめる。しのびやかに通りゆく時雨の音"国木田。時雨空のような笑いをふと笑う、川端。 **つゆ【梅雨】** 梅雨すべての表面も根も腐らせてしまうほど陰湿な=遠藤。ほとんど青空をのぞかせることのないえらく律儀な=阿久。いつになく梅雨が長い。梅雨の晴れ間の日。雨がじっとりと降り注ぐ。谷間の奇跡のように晴れ上がった空の輝き『倉橋。晴れ間をさいわいに人出も多い池波。からりと明るい梅雨の晴れ間のような気持ち。宮尾。毎日じとじとと雨が降る=林京。肌に苔こぃが生えてきそうな梅雨寒の午後"倉橋。梅雨らしい蒸し暑い日が照りわたる=徳田。梅雨前線が活発化する。停滞する。梅雨明けを宣言する。梅雨が明ける。終わりいよいよ本格的な夏を迎える=連城。送り梅雨の激しい雷伊集院。雷鳴を伴う送り梅雨の襲来!倉橋。梅雨入りを迎える。例年より早く梅雨が来る。梅雨に入ったのかと思えるような鬱陶しい雨の降る夜"連城。入ってじめじめと涨鼠色らいわずに煙る日が続く=永井路。梅雨の走りのような雨=椎名誠。じめじめした入梅の季節。 **てんきあめ【天気雨】** お天気雨のように大粒の涙をこぼす向田。狐の嫁入り。 **どしゃぶり【土砂降り】** 土砂降り局地的な。猛烈な。天界にある湖の底が抜けたような"西木。庭が一面水しぶきで白っぽく見えるほどの=小川。土砂降りの雨にさらされる。土砂降りの雨がしぶいている。窓を荒々しく打つ。雨が殴るように降りつける。庇いきを礫しょで打つような音を立てる。一寸先が見えないほどの大粒の雨が滝のように降る=福永。大粒の雨が車のフロントガラスを叩く。茹ゅだった雨が屋根瓦を強く叩く高橋三。気を呑まれたように前の道に叩きつける大粒の雨を見ている=半村。地面が歪ゆがむほどの勢いで大粒の雨が隙間なく降り落ちる"奥泉。滝のような雨が沛然鋭いと徳道にぶつかり大地が大声でため息をつく小松太。える=田山。疫病が激しい勢いで谷間を骤雨のようにおおいつくす大江。銃弾を驟雨のように頭上へ浴びせかける!柴田剣。 **ながあめ【長雨】** 長雨が続く。雨が永遠に降り続くかのよう村上奈。秋の長雨。じめじめと降り続く秋雨。細く強い秋雨がしとしとと蕎麦そばの花を洗う~長塚。木の葉を黄ばませるより先に腐らせるかと見えるほど九月の雨が降り続く=堀。秋霖しいを思わせるような陰気な降り方の雨新田。春の長雨。卯の花を腐くたすほどの長雨。雨が卯の花を廃した後すぐ梅雨に続きそのまま惰性のように降り続ける有吉。五月雨だら悩が降る。木の芽流しの長雨が降りつづく=高田。菌のように骨へからみついてくる霖雨かん!開高。霖雨がびしょびしょと降りやまない。油虫も滅亡してしまうほどの霖雨があきもしないで降り続く=長塚。水田が霖雨に煙る。 **にわかあめ【俄雨】** にわかあめがあがるのを待つ。ザザッと俄にゃか雨でも落ちるように朽ちた木の実が屋根を打つ=阿刀田。さっと降って通る雨。夕方になってしぐれる。通り雨が来そうな気配。ばらばらとかかる。秋の村雨託が降りしきる。すさまじいばかりの驟雨込。春らしい驟雨が通り過ぎる。蟬せんが驟雨の落ちるようにしげく啼なく=原田康。驟雨のような昂奮が通りすぎるのを待つ=本庄。驟雨のように断続して降りだした空本庄。幾つもの電灯が驟雨のように浴びせかける絢爛けん梶井。糸を繰る座繰りの音が驟雨のようにあちらこちらからにぎやかに聞こえ **ぬかあめ【糠雨】** 梅雨に入りかけの糠雨。糠雨が裸木を貧寒と黒光りさせる=加賀。三四日緋雨が降り続く。薄日の中に銀の粉を撒きくような糠雨が散っている=船山。細い悲雨が霧のように降る=檀。全市が一枚の濡れた外套唸出がのように宮本直。糠のような雨が窓硝子まだ”を曇らす=徳田。糠のように細かい雨があたりにたちこめている=高樹。雨が祧ほどより降っていない佐藤春。小ぬか雨が庭木の幹をぬらす三浦液。 **ひさめ【氷雨】** 氷雨凍てつくような=徳永。霧のように煙る=山崎。骨を刺すような"子母沢。冷たい雨が降る。手繰られた縄が滑車をとおるときに氷雨のような繁吹しぶをあたりに散らす三島。みぞれまじりの冷雨。湖が冷雨に煙る。 **ふうう【風雨】** 風雨が荒れ狂う。いよいよ激しくなる。肌を打ちまくる。強い風雨が吹き荒れる。風雨をついて出かける。村人たちの絶叫や悲鳴が風雨を縫って交錯する=杉本。雨風に打たれる。さらされる。叩かれる。 **ぼうふうう【暴風雨】** 時化しけで休漁を余儀なくされる。操業を中断する。切り抜き文字を貼った糊のせいで紙が大時化は柱のときの海面のように高く低くうねっている=井上ひ。船が暴風雨で沈む。船が暴風雨に吹き流される。暴風雨が荒れ狂う。過ぎ去る。暴風雨に遭う。見舞われる。怒りが暴風雨のように吹きまくる"円地。暴風雨をついて出かける。 **ゆうだち【夕立】** 夕立が激しく降る。山里を洗う。清々しく気持ちよい。沛然柑いと降ってくる。いまにも夕立が来そうな先合い。夕立でも来そうな。夕立にあって濡れ鼠姑ずになる。 <978> # 降る・積もる **あられ【霰】** 役が降る。瓦をばらばら打つ。屋根を激しく叩く。窓から作物を守る。古いバンを歌に刻む。雲がばらばらと家を撒ぇく。あられのような銃弾がさっと街頭を払うに美濃部。莢きゃから弾ぜた実が緊雪梽らのように落ちて来る=佐藤春。水晶の念珠が真ん中から二つに切れ珠が寝のように戛然と四方へ飛び散る芥川。歌まじりの雪。 **あわゆき【淡雪】** 淡雪がうっすらと積もる。先ほど来の淡雪が雨に変わる=さだ。さらさらと淡雪をふり落とす松の梢長与。春の淡雪のようにすぐに消える。恐怖が淡雪のように溶けて行く=中村真。館が怒濤氷との襲来に消える淡雪のようにおちる=海音寺。 **おおゆき【大雪】** 大雪記録的な。時ならぬ。早春を告げ知らせるような=梶井。かつてない大雪が降る。二三日来の大雪で汽車が止まる=開高。大雪のため鉄道が運休になる。豪雪に襲われる。丈余の積雪に降りこめられる今項。 **こなゆき【粉雪】** 粉雪がサラサラと乾ききった音をたてる=石森。雨戸に粉雪がさらさらと吹き当たる"石坂。しんしんと粉雪が音もなく降り続ける=日野。灰のような細かな粉雪が乱れ降る=海音寺。粉雪が降る静かに。音もなく。ちらちら。垢ぁかが粉雪でも降ったように散らばる=田中。雲が出て暗い中で粉雪でも醸しているように日の目を密封する夏目。粉雪を吹きつける風が肩を裁きるよう山本周。風が粉雪を含む。自然が粉雪を煽りたてて処きらわずたたきつけながらのたうち廻って叩ぅ。き叫ぶ有局。こまかい粉末のように踏めばきしきし鳴るような雪大佛。樹枝に積もっている雪が粉のように散る=立原。花にたわむれる蝶は粉雪のように軽い!白洲。細かい雪が舞う。ちらちら落ちてくる。塩のように花いた細かい雪がビュウビュウ吹きつのる=小林多。 **こぶり【小降り】** 小降りだが切れ目のない雨が降る"小林久。小降りになる雪が。雨がいつの間にか。さしもの大雨もやや。前夜来の雨が少し。 **こゆき【小雪】** 小雪がちらつく。舞い散る。舞う。絶え間なく舞い落ちる。風に小雪が混じる。細雪峙さめが罪々ぃぃとして降りしきる。風花が飛ぶ。流れる。チラチラ空を郷う。永井面。 **ざんせつ【残雪】** 残雪が日光に反照する。縞しまをつくる枯れ野真継。固い残雪が地に張りつく。残雪に足をとられながら山道を歩く=辺見。残雪の肌に新緑の萌える山。溶け残った雪が水たまりのようにところどころに白く光る=村上孫。残りの雪がうす紫のビニールをかぶせたようになる=石森。木々の足元に残り雪が丸まっている。山に残んの雪がまだらに見える=白洲。雪のむら消えた砂浜。雪が悪汚く残る。はだらに消え残る。まだらに消え残る。そこかしこに薄く真綿を敷いたように雪が残っている志茂田。 **せきせつ【積雪】** 積雪が白い壁のように立ちはだかる"加賀。ニメートル以上の積雪がある。竹が雪の重みで曲がる。柳に雪折れなし。杉が雪折れで倒れる。木が雪折れの被害に遭う。 **せっけい【雪渓】** 黒い岩の山体に鋭いメスを入れて切り開いたような白い肉の雪渓=新田。雪渓が白布を流したよう~新田。雪渓に一歩をしるす。雪渓の上を滑り降りる。雪渓を滑落する。横切る。 **せつげん【雪原】** 雪原欧雪の。白橙々がの。白い布が雪原か氷原のよ?~川端。雪原の動物が影絵のように淡く明滅する=加賀。まばゆい雪原を抜ける。凍てつく白銀の荒野"村上春。真っ白な照り返しが戸外にあふれる=熊谷。雪の原野清冽な。渺茫っとした。雪の原野が巨大な一枚の水盤と化す"本庄。雪原のように輝く雲海の眺望三浦綾。 **せっぺん【雪片】** 割合に粒の大きい軽やかな雪片=有島。雪片が空中に舞う。顔に乗っては溶ける。花びらのように漂う三好京。羽毛のように無数の雪片が漂う大佛。風とともに雪片が舞い狂いながら降りこむ=日野。白い軽やかな雪片が天から絶えず舞い落ちて地上を埋めていく=石坂。灰色の空から無数の雪片がゆっくりと舞い降りてくる=有栖川。雪の欠片分けがひらひらと通りすぎる=鷺沢。 **つもる【積もる】** 積もる不満が心に。落ち葉が厚く。灰が分厚く。山のように。うっすらと埃归こが。雪がずっしりと固く。腰に重い疲労が=黒井。雪が白くうっすらと車の屋根に吉本。雪が積もる枝に。路地に。山肌に積もった雪。枯れ葉が積もった地面はふかふかだ三浦し。それほど雪が積もらない。 **ねゆき【根雪】** かんかん音がするくらい堅く凍りついた根雪海音寺。根雪が氷のように磐ぃゃになる=有鳥。山裾の襲々いだにむら消えの根雪が見える=水上。根雪が例年より遅い。早い。降り積もった雪が根雪となる。雪に覆われる。坚雪を踏みしめて歩く。 **はつゆき【初雪】** 初雪がちらつく。山が初雪で薄化粧する。紅葉の绣色にびで日毎に暗くなっていた山が初雪であざやかに生きかえる=川端。 **ひょう【雹】** 雹が庭一面に跳ね上がる。バチバチ音をたてて飛びこんでくる"小松太。ビー玉ほどもある電が降る。光が徭の欠片分けのように壁を斜めに走る=藤本。天から氷の粒が撒かれる=北村。米粒をばらまくような音が屋根に響く。藤田。黒い影の群れが軒庇細にぃをたばしる雹のように石塀の頂辺からはじけ飛ぶ!徳永。 **ふきぶり【吹き降り】** 傘などさしていられない吹き降り。吹き降りが一向やみそうにない。屋根を激しく <979> # 降る・積もる-317 く叩く)。吹き降りになる(雨が。外が激しい)。吹き降りの激しい町の中に出る。 **ふったりやんだりする【降ったり止んだりする」** ▼降ったりやんだりする(雨が。雪が)。一日中しぐれている。時雨らしく照ったり降ったりしている雨の脚"有島。雨降りみ降らずみ=国木田。降りみ降らずみの定まらない天気。一日中降りみ降らずみの陰鬱な天気が続くに永井路。 **ふぶき【吹雪】** ▼吹雪が(白い渦を巻く。暴威をふるう。びゅうびゅう吹き荒れる。息つく間もないほどなぐり込む!室生。うなりを上げて襲いかかる三浦愛)。逆巻く吹雪が衰えるふうもない三浦絵。つきものが落ちたように吹雪がおさまる三浦綾。波の泡まじりの吹雪が吹きすさぶ日本海の浜辺"西木。吹雪で(道が見えない。視界がきかない)。走っていく後ろ姿が筆でぬりこめるように吹雪でかき消される=石森。言葉が吹雪に吹き消されそう。横なぐりの吹雪になる。空があやしく灰一色に垂れ下がってきて吹雪に覆われる=島尾。吹雪の(日が続く。音が潮験しゅのように聞こえる=本庄)。棒の先でつつくような吹雪の尖とがりが襲う室生。身も心も凍てつかせて吹きすさぶ吹雪の悲鳴が耳を引き裂く=真継。吹雪を(ついて出かける。ものともせずやって来る)。ひとしきり猛烈にふぶく。雪がふぶく寒い日。飛雪が白い炎を吹き上げる=新田。吹雪のように花弁が散る=津本。飛雪が吹雪のように舞う~加賀。紙吹雪が舞う。紙吹雪を撒きく。出鼻をくじくように猛吹雪がやって来る=鳥尾。雪嵐が吹き荒れる。雪風で(遭難する。道に迷う)。雪煙が上がる。雪煙を吹き上げる。 **ふりかかる【降りかかる】** ▼降りかかる(家族に災厄が。困難な事態が。突然災難が。災難が身に。しぶきが顔に。苛立松らった罵声が。災いがじわじわと。谷とがめるような視線が“なかにし)。降りかかる火の粉を払いのける。石坂。身に降りかかる不幸な境遇。 **ふりそそぐ【降り注ぐ】** ▼降り注ぐ(流の如く水が。咬まぶしい光が。切れ目もなく。太陽が明るく。明るい陽射しが。午後の光がまろやかに=石田衣。火の粉が雨のように落ち葉に三浦し。午後の日差しが柔らかく〃小池。蟬せみの声が滝に負けないぐらい三浦し。早春の陽光がさんさんとして=源氏。思いのり合う声と音楽とが森とくように"高井)。▼降りそそぐ(雨雲を割って陽光が"連城。蝉の声が腹にしみいるようなはげしさで"阿久。砲弾が雨あられと"筒井)。日の光が投げつけるように枯木に等しい薔薇ばらの枝に降りそそぐ」佐藤春。音が降り注ぐように聞こえてくる辻仁。▼さんさんと降り注ぐ(白熱の太陽が。春の日差しが)。 **ふりつもる【降り積もる】** ▼降り積もる(火山灰が。新雪が。雪が音もなく。雪が休みなく。雪がうっすらと。雪がしんしんと。雪が絶え間なく。静けさが重さに変わって背中に=重松)。▼静かに降り積もる(埃にが。雪が)。風が山を吹き渡り森のどこかで葉の降り積もる音がする三浦し。 **ふる【降る】** ▼降る(こんこんと雪が。はらはらと松葉が。明るい光がしんしんと音立てながら=本庄)。星が降る晩。雨と降る火山弾。窓の外に降る雪。縁談が降るほどある=中。▼さんさんと降る(陽が。陽光が)。雨が(乾いた路上を濡らし始める。見る見るうちに舗道を濡らす)。ちらちらと雪が降り始める。どんよりとした空から雨粒が落ち始める=横山。屋根を掃くような雨の音が起こる=池波。急に降り出した雨。今にも降り出しそうな(暗い空。天気)。▼降ってくる(天から不幸が。沛然社ふと夕立が。頭上から蝉の声が。空から火山灰が。天井から照明が。葉が空からばらついて)。今にも降りそうな穂様。雪が絶え間なく(降りしきる。降り続く)。▼降り続く(雪が朝まで。雪が一日中。雨が小止みもなしに)。▼降りきる(雪が頭上から。雪がしんしんと)。しんしんと雪が降り続ける。▼降られる(帰りを雨に。にわか雨に)。降るような虫の声=山口。降るような星空が広がる=篠田。雪は一片も降っていない。雪がさらさらと降りこぼれる。降り込む(風とともに雪片が。飛沫7ょがざざっと)。窓の外に降りそぼつ雨。大降りに遭う。大降りの(雨。雪)。本格的な降りになる。▼本降りになる(雨が。雪が)。 **ほこり【埃】** ▼ゆらゆらと乳白色のほこりが舞い上がる"畑。埃が一面にきらめいて渦巻く=日野。汗と埃が一緒くたになる。細かい埃がきらきら輝く。畳の上に埃が積もる。部屋の隅に埃が溜まる。道に埃が巻いている。カーテンから洩もれた陽に埃が渦になって立ち舞うぃ松本。黴菌いみたいな形の長い尻尾を生やした黒い埃がフワフワとそこらに飛び立つ=高見町。微細な埃がゆっくりと渦を巻く=池井戸。激しく舞い上がった埃が次第に沈んでいくように気持ちが鎮まる=森玲。歩くたびに郷い立った埃が流れもせずにそのまま元の地面におちつくほど風がない=山本周。埃が土煙のように舞い上がる=高橋こ。ばっと埃が舞い上がる。斜光のなかを埃が煙のように郷いあがる=里見。埃で床がざらつく。排気ガスと埃に車が霞む。埃にまみれる(脚絆はいが。垢ぁぁと。頭から)。いくら調べても身辺に埃のホの字も立たない=北。叩けば埃の出そうな人物=横山。陽ざしの中で埃の微粒子が虹色に舞い立つ三島。ほこりをはらうように立ちあがる"岡田。いつもほこりをかぶっているかのようにすすけて見える顔色"野間。ずっとたまっていたほこりをぽろりと払うように言葉を吐く谷村。書類綴っっりの埃を払い落とす。背広の埃を丹念に払う。羽刷毛ゆで注意深く埃を払う。泥のパイをつくれるほどの埃をまともにかぶる清水俊。埃をかぶる(店の隅で。書物がひもとかれぬまま机の上に高橋和)。生徒 <980> # 降る・積もる **ほこり【埃】** 埃が(舞い上がる。うっすらと積もる。部屋の隅にたまる)。ほこりの積もった室内。埃を(叩き出す。払う)。埃だらけになる。部屋の掃除をする。埃の(かたまりが風の前のほこりのようにばっと飛び散る=山本有。糸の縫い目に白い埃のように虱礼。たちがじっとかくれている=遠藤。白っぽい綿くずが埃のように積もる=野間。日の光が細かな埃のように音もなく大気の中を降る=村上春巻。埃くさいにおい。布団。埃っぽい盛り場。道。乱雑な廊下。何となく埃っぽい応接間。地面から焦げたような埃っぽい熱気が立ちのほる藤沢。埃一つ落ちていない。埃まみれになる。綿ぼこりが舞う。衣服に付着する。部屋の隅にたまる。 **ぼたんゆき【牡丹雪】** 牡丹雪が音もなく降る。大きい牡丹雪がほうっと浮かび流れてくる=川端。綿を指先でちぎったほどの大きさの雪中沢。早春の匂いのひそんでいそうな大きくて柔らかな雪が降る=原田悲。八重桜のごとき大房雪がほとほとと降る=綱淵。 **みぞれ【霙】** 水びたしの綿をぼたぼたと千切り落とすような災=子母沢。寒々とした灰色の空から異が落ちかかる=中島敦。指にちくちくと異が降っているような痛みを感じる=岸田。雨が渓に変わる。雪が異に変わりやがて冷たい雨になる=沢木。朝からびしゃびしゃびしゃびしゃ奨の降る寒い日=子母沢。雪が雨混じりに降る。みぞれのように冷たい雨が降る=石坂。哭まじりの雨が降る。風。みぞれまじりの冷たい雨が忍び足で通り過ぎる=小松太。 **ゆき【雪】** 雪脱脂綿のように柔らかく目に暖かな"大佛。昆虫の薄い羽根のような=原田康。繭の中の蚕のように人を包む"辻井。水気を含んだ重たい。原田康。雪が小止みになる。街を飲み込む。窓枠にたまる。風に運ばれてくる。着物の隙間からひやひやと体に入る。日の光に照り輝く。日をまぶしく照り返す。夜の底に吸い込まれていく。眼を刺すようなまばゆい光り方をみせる永井路。粉のように舞いあがる=宮沢。すべての音を吸い込んで静まりかえる=篠田。光り輝くシャワーとなる=常盤。いつもより雪が遅い。下駄の歯に雪が挟まる。枝から雪が滑って煙のように散る犬佛。街灯の周りに雪がぐるぐる廻るように落ちる=佐多。ガラスの細かいカケラのように雪が顔や手に突き刺さる=小林多。砂感じのように雪が人気とないホームに何重もの髪となって流れている巡城。灰色の雪が畑ぉぉれる情念のように渦を巻いてうねる=檀。窓の外を雪が斜めに流れるように過ぎる三浦蔵。屋根の雪がどおっと谷じゅうに響きわたるような音を立てながら雪崩れ落ちる=堀。柔らかに雪がひらひらと落ちる=原田康。横風と一緒に目も開けられないくらいの雪が吹きつけてくる=小川。雪が闇に溶ける篠田。雑念の汚れた雪が溶けていく荻野。夕方から降り出した雪がしんしんと深くなる=佐多。風に乱されて無数の雪が空中に舞う。石田衣。背中が汗のような融とけた雪でびっしょり=室生。雪でも来そうな寒さ。兄妹が雪と炭ほど性質が違う獅子。雪に足いるよう をとられて転ぶ。雪にもめげず人が集まる。雪の訪れが早い。季節を過ごす。重みにひしゃげた若木を起こす。色が仄ほのかに背く煙る芥川。匂いを含んだ冷たい大気=熊合。シュブールを描いて雪の斜面を滑り降りる。きらきらと細かに輝く雪のおもて=石飛。つめたい針のような雪の粉=宮沢。滲ドじみ出るように雪の粉が次から次へと下界へ急ぐ=福水。日光と雲との明暗に彩られた雪の重なり=有局。みだれた雪の肌理さぁが微かすかに光る=大佛。嶺ふぁに雪のひだが畳まれる=本庄。雪の上に寒そうに立つ。腹溢出らいになる。点々と血をしたたらせる=飯田。体がどさりと雪の上に落ちる。雪の上を転げまわる。降り積んだ雪の中を漕こぐように進む=真継。雪を冒してやって来る。蹴立てて滑り降りる。踏むとキュッキュッとでんぷんを袋ごと押すような乾いた音をたてる石森。雪がかんかんに凍った道。肩の雪を払い落とす。体中の雪をはたき落とす。深い雪を掻き分けて歩く。遠ざかる一点が雪の粒のようにもろく溶ける=小川。桜の花びらが足もとに散り敷いて雪のよう干刈。かたまった雪のような石鹸せんの泡"野坂。雪のように肌の綺麗な赤ちゃん"太宰。太陽光を反射して雪のように輝いている未舗装の道-西木。萩の花片が散りこぼれて波の上に斑雪はだのように流れる=福永。足跡が新雪に埋もれる。新雪を踏んで歩く。晴れては曇る雪時雨。雪が白い。木の芽頃の疎林にすいて見える山々の巽ひだにはあざやかに雪の斑』が白い荒。雪がうっすらと白く敷かれる。純白に敷きつめられる。風が雪を舞い上げて白煙をあげる。真っ白な雪が紺青にんじの山肌にきわやか三浦綫。無数の白刃を振り回すように雪が飛ぶ”加賀。連山の頂に白銀の鎖のような雪が走る=国木田。山やまが見渡すかぎり白雪のような桜の花にうずもれる=白洲。肌が白雪のように艶を見せて光っている=水上。雪のような白い花=塩野。微風が吹いてくると白い花がいっせいに散って雪のよう~開高。肌が雪のように白い小池。白い毛が雪のように散る=本多隊。白い葉裏が雪のように空を覆う樫かしの木三浦し。 **ゆきあかり【雪明かり】** 雪明かりが壁に映る。障子に映る。夢の中にでもいるように雪明かりが物の形を蹴らにげに浮かび上がらせる=福永。地面が雪明かりでぼうっと浅葱色以活きに蛍光をおびる=石森。雪明かりにうっすらと明るむ。日の出前のあえかにほの白い雪明かりの世界「飯田。 **ゆきおろし【雪下ろし】** 雪下ろしする屋根を。シヤベルで。スコップで。屋根の雪を下ろす。 **ゆきがつもる【雪が積もる】** 定規で計ったように雪が積もる=小川。蠅はぇが黒い雪のように降り積もる=大江。雪が固く積もる。うずたかく積もる。降りつもって地肌をおおいつくし樹木にまるっこい獣の肩 <981> # ふ のようなふくらみをあたえる=大江)。枝に梢に雪が咲く=泉鏡。枝に積もった雪がどさどさっと落ちる=石森。壁を立てたように雪が視野を塞ふさぐ=大佛。降り積もった雪が陽光を跳ね返す篠田。雪の華をいただいた庭木が風に震える藤田。薄く雪の積もった山肌はどこもかしこも杉の木で覆いつくされている三浦し。固められた雪の中央が硬質のセルロイドのような色に凍りつく=大江。積もっている雪の肌が怪石のようにざらつく“石森。日当たりの雪の壁が雲母のように薄い氷になって重なる"石森。遠くに雪をかぶった山々が見える。峰々が頂に雪をのせる。蒜ょのの肩に積もった雪を払う。山がうっすらと雪をかぶる。道が雪でうっすらと白くなる。雪に(閉ざされた街。もれた小さな家々)。哇ぁぜが雪に隠れる。すっぽり雪に埋まる。深い雪に覆われる。道が雪に埋もれる。森が雪に閉ざされる。山々が一夜のうちにすっかり真綿のような雪におおわれる=水上。 **ゆきがふる【雪が降る】** ▼奥山に熊が人立ちして針を噴くような雪泉鏡。さらさらと音を立てて妥協らまじりの"有局。雪の降る寒い日。さらさらと雪が降りしきる。黒い毒液をこねまわしたような海に雪が白い睡眠薬のように降り注ぐ=加賀。垂直の雪が白い無数の紐ぃものように降る"加賀。空間という空間を埋めつくすかのように一瞬の休みもなく降りかかる雪の大軍=飯田。どかどかとなだれ落ちてくるように雪の小塊が降りかかる=日野。雪ばかり降ってうんざりする。小止みなく降る雪を綿帽子のようにかぶる=加賀。信天翁唄うが雪が降ったように集まっている"菊池。大地がうっすらと粉をかぶった程度にしか雪が降らない"なかにし。▼雪が降り続く(一日中。絶え間なく。夜通し。来る日も来る日も。魔法にかけられたように=小川)。雪が(しんしんと降る。激しい勢いで降る。音もなく降り続ける。ひっきりなしに降り続ける。降ったり止んだりの天候。三日三晩降り続ける。葵みのに降りかかる。斜めに舞い降りる。ひとひら舞い落ちる。飛白ゆす模様に見える程度に降る三浦朵。視界を純白に埋めつくす光瀬。花びらのようにゆっくり降る八谷村。罪々ひぃとしてこやみなく降る"井上峭。綿のように降る=子母沢。羽の毛になってふわりふわりと落ちる"石森。空から地上に流れ落ちているように無数の線となって降る三浦綾)。煙のような雪が風に舞っている=なかにし。深い闇に雪が白く流れる連城。ゆっくりと雪が舞い落ちる。あとからあとから休むことなく雪が舞い下りる=小川。本格的な雪になる。窓の外の雪に目をやる。雪の(群れが矢よりも早く飛び過ぎる=有局。白いすだれが幾重にも垂れ下がって視界を鎖とです"加賀)。冷たい雪の粒が頬を打つ。白い花びらをむしって撒きまき散らしたような雪の大群人倉橋。部屋の灯りを吸って雪の流れが光のような眩まぶしい白さに変わっていく=連城。街灯の下に白い粉に飾られた明るい円錐形以以けができる"加賀。真っ白な闇に閉ざされる=連城。空が暗い灰色の幕に覆われ白いものが舞い下りてくる=池波。空からひらひらと白いものが舞い降りる=井上ひ。 **ゆきぐに【雪国】** ▼違い雪国の湖のように冷え冷えと澄んだ深い悲しみの色をたたえた大きな目=日野。雪害の多い地域。雪深い土地。 **ゆきげしき【雪景色】** ▼ガラス越しに庭の雪景色が広がる。「お日様ニコニコ」の絵のように白い屋根屋根の上に日がかがやく安岡。銀世界が広がる。白さと冷たさのせいで目頭が痛いくらいにまぶしい"小川。▶世界(一面の白い。一面白銀の。森閑とした白一色の永井路)。天はあくまで碧色以法で地は涯しない白さ本庄。野も川も白一色に塗りこめられる=海音寺。蕭々しい行とした冬景色。平原が薄く雪をかぶる。平野が白一色に埋もれる。街が白一色に塗りつぶされる=阿木。街が夜にもうひと重ね雪の厚い白衣を織まとう連城。見渡す限りの雪また雪。雪が(田畑をのっぺり覆う。何もかもを白く覆う。降り続き森も林も白い布をかぶせたよう長崎)。空から雪が舞い散り、雪がいたずらのようにあたりを白くする=永井路。雪が緑を白く塗りこめる=倉橋。 **ゆきぞら【雪空】** ▼雪空(今にも降りそうな。どんよりとした)。今にも雪になりそうなどんより重いグレ1の空吉本。空が雪でも来そうに重たい=壺井。雪が近いことを思わせる重い空。雪でも来そうと頑様。雪にでもなりそうな重苦しい空。空がどんよりとして雪になりそう。霧のように灰色に立ちこめた雪の空天佛。雪をたっぷり含んだ空示有鳥。雪催いに重たく曇っている空。雪もよいのひどく底冷えのする夜"日野。雪催いの空が低く垂れ込める=福永。 **ゆきみち【雪道】** ▼溝泥だぶを捏にね返したような雪道有房。卵色の雪道に影法師が銀ねず色になってちらちらと動く石森。雪道を冒して行く。足場のわるい雪道をすすむように会見にはつらいものがふくまれている藤沢。雪泥の道を拾って歩く=山本周。▼雪の道(白々と続く。月に光る)。 **ゆきやけ【雪焼け】** ▼雪焼けがむらになる。雪焼けを防ぐ。雪焼けする(冬山で。スキーに行って)。小麦色に雪焼けした顔。 **ゆきやま【雪山】** ▼暮色蒼然長らとした寂しい雪山の景色が眼にちらつく=中河。澄み切った冬空に雪を頂いた尾根が屹立つしている=篠田。かんじきを装着して雪深い山中へ踏み入る―熊全。 **よこぶり【横降り】** ▼縦しょになって機降りに降りしきる雪。横降りになる(雨が。雪が)。大粒の雨が横なぐりに面伐もを打つ=福永。横なぐりの(雨が襲ってくる。雨で限も開けていられないくらい=田辺。雪がぼたぼたと吹きつける吉川)。 <982> # 振る・揺する うちわ【団扇】▼帯に団扇を挟む。ゆるく団扇を動かす。▼あおぐ(団扇で襟を。団扇をばたばた。渋団扇で森の火を"加賀)。左うちわで暮らせる。 **おうぎ【扇】** ▼床しい香りが蒸たきしめられている扇"福水。扇が(手から滑り落ちる。ひらひらと舞い落ちる)。髪を扇に広げる。扇を(あおぎたてる。ぱっと開く。ぱちっと鳴らす。廻すように風景が移って行く大岡)。はたはたと扇を鳴らす。乾いた空気に扇を一振りしたような笑いが紛れ込む"松浦。扇のような葉を持ったシュロ=小松太。扇のように(末広がり。広がる黒髪)。足指が扇のようにひろがる=中河。煙が真っ直ぐにのぼり末は扇のようにひろがって空にまぎれ込む"大岡。眼が感覚を扇のように拡げる=川端。流れ出た澄石流が山麓で扇状にひろがる=高田。榆扇を取って舞う。扇子せんの音を鳴らす。扇子を(気取って動かす。ばたばたあおぐ。持った手が膝の上で神経的に震える=山本周)。片手で扇子をあおぐ。渓谷の扇子をひろげたような空に上弦の月がのぼる=水上。白扇を(広げる。帯際から抜き出す)。 **からぶり【空振り】** ▼空振りに終わる(一撃が。捜査が。狐が)。空振りする(真ん中の絶好球を。天井のすす払いをするような格好で"阿久)。ボールを打ち損なう。空を切る(バットが。バンチが虚しく)。突き出した拳が虚もなしく宙を切る荻野。 **がんくび【雁首】** ▼全員が雁首揃えて集まる。雁首に煙草を詰める=長与。 **くび【首】** ▼何かを一心に打ち消すふうに左右へわなわなと振れる細い首=古井。首が鶴のように細い!有栖川。借金で首が回らなくなる。署長の首が飛ぶ。人形の首がすっぽ抜ける。寝違えて首が痛い。細い首がすっと伸びる。白い首が日をはじくように光る藤沢。首から(胸に吊るしたカメラ。胸へ汗が幾筋も落ちる)。首から下げる(双眼鏡を。ナプキンを。メガホンを)。波が首でもすくめているように揺れる=椎名崎。首に(組をつけても連れ帰る。ネッカチーフを結ぶ)。首に巻く(襟巻を。スカーフを。ネクタイを。ネッカチーフを無造作に藤本)。首の(骨をへし折る。付け根まで真っ赤に染める。根を絞め上げる)。こぶしで首の後ろを叩く。首の骨が(へし折れる。ぼきぼきと鳴る)。▼首までつかる(温泉に。事件に)。▼首まで浸る(湯船に。世間のしきたりに)。首を(襟にうずめる。絞めて殺す。吊って死ぬ。振り動かす。枕に投げ出す。横に向ける。がくっと落とす。ぐるぐる動かす。高くもたげて歩く。ひねって考える。亀みたいに出したり引っ込めたりする=ねじめ)。あえなく首を打ち落とされる。一瞬不審そうに首を傾ける。馬の首を立て直す。がくりと後ろへ首をもたせる。一太刀で首を刎はねる。真綿で首を絞めるようなやり方。むっくりと首をあげる。思い出すのも恐ろしいみたいに首を埋めて言う“阿刀田。亀のように首を長く伸ばして顔を向ける=高橋元。躊躇いぅしているように首を傾かしげる=大佛。疲れ切ったように首を肩にあずける=藤本。トカゲのように首をつん伸ばす。室生。張り子の虎のように首を突き出す=獅子。夢から醒めたように首を起こす=福永。▼首を動かす(こくこくと。鶏のように。あやつり人形のように=野間)。▼首をうなだれる(がっくり。重い罪を責められている者のように=福永)。▼首をかしげる(苦笑交じりに。能力に。一読して。さあと。腑に落ちぬというふうに=村松。少女が燕のはのように=川端。はにかんだみたいに可愛らしく=田辺)。首をすくめて(嵐が過ぎるのを待つ。こそこそ逃げる)。首をすくめる(大仰に。恐ろしそうに。寒そうに。もう処置なしといったふうに=阿刀田。飽き飽きだというように=加賀)。首を出す(ぬっと。蒲団から亀のように高見服)。▼首を突っ込む(面白半分に。事件に。私事に。政治に。何にでも)。家鳴ぃのように首を伸ばす伊集院。鶴みたいに首を伸ばして見上げる連城。亀の子のようにちょこんと首を引っこめる=山本有。あわてて首を引っ込める。首をひねる(怪訝쌌げそうに。思案顔で)。▼首をもたげる(疑いが。故国への思慕が)。手拭いを首に(かける。巻く)。マフラーを首に(ぐるぐる巻く。巻きつける)。首っ玉にしがみつく。首っ玉をへし折る。犯人の首根っこを押さえる=辻真。素っ首を叩き落とす。手で頸部砂いを圧迫する。首級を(あげる。頂戴さに、うする。狙い損じる)。▼首を振る(慢味に。かすかに。悲しげに。気弱げに。左右に。静かに。拗ねたように。素知らぬ顔で。黙って。小さく。にべもなく。無言で。笑って。感に堪えぬかのように。神経質にぴりびりと。ぶるんぶるんと。さもさもいまいましそうに中。分からないと云ぃうふうに庄野。わかりませんといったふうに藤本。悪夢でも払うように高見町。虚脱したように力なく笹沢。信じられないとでもいうように浅川)。▼首を横に振る(激しく。はっきりと。ゆっくりと。大げさなくらい大仰に"西木。これ以上話はしたくないというふうに=梅本)。渋々と首を縦に振る。首を(大きく振る。小さく振る。弱々しく振る。こくりと縦に振る)。いやいやをするように静かに首を左右に振る=勝目。うなだれた首を力なく振る"志賀。がくがくと首を左右に振り動かす言行。虫を追うようなゆっくりした首の振り方“村上春。 **しっぽ【尻尾】** ▼しっぽが(箒組ぅのような犬。ばねのように強い!長崎)。尻尾がふさふさしている。尻尾に火がついたように馬が駆けだす!奥平。大人の腕ほどもある太い尻尾の犬=向田。尻尾を(股間に巻き込む。だ <983> # 振る・揺する **しっぽ【尻尾】** 尻尾が(犬のようにくるんと巻く。猫のようにぴんと立つ。ぶんぶん振り回す。だらりと下げる)。滅多に出さないシッボを掘っかまえのは楽しい=有川。馬が尻尾を振り振り走る。裏切り者が尻尾を出す。尻尾をつかまれる浮気の。下手に動いて。尻尾をびんと立てる。はね上げる。尻尾を振ってご機嫌を取る。付いてくる。尻尾を巻いて逃げ帰る。逃げ出す。すごすこ尻尾を巻いて引き返す=安部。尻尾を巻く恐れをなして。障病威風に吹かれて=飯田。なかなか尻尾がつかめない。なかなか尻尾を出さない。鶏の尻尾のような生え揃わぬ頭の毛"野間。瀬がしっぽのように細くなって下流の闇のなかへ消えてゆく梶井。担いだ竹が尻尾のように葉音を鳴らしながらついて来る=伊集院。 **ばたつく** ばたつくテントが風で。旅行の準備で。ばたつかせる風が戸を。宙で足を。闇雲に手足を。両手両足を。死に物狂いに羽を。引っくり返された亀のように四肢を=大阪。 **びんぼうゆすり【貧乏揺すり】** 机の上に置いた灰皿がかたかた音を立てるほど貧乏揺すりが激しくなる=原田宗。切なそうに貧乏ゆすりなんかして待つ古井。足が貧乏揺すりを始める。いらいらして貧乏探すりする。立てた膝を貧乏臭くゆする=大佛。 **ふりうごかす【振り動かす】** 振り動かす頭を。腕を。袂にもを。手首を。両手を。あおぐ顎の下を。体を。こんろを。炭火を。はだけた胸を。あおる潮が舟を。七輪の下をばたばた。風にあおられるカーテンが。煙が。炎が。裳裾もすが。強い北風にあおられる。風が雪片をあおり立てる。 **ふりきる【振り切る】** 振り切るすがる声を。制止を。逡巡しゅんする思いを。まといついてくる切迫した限をふりきる=大江。針が振り切れる計器の。リミッターの。振りちぎる後続を。視線を。手を振りはなす。振りほどく腕を乱暴に。つかまれた手を。 **ふりまわす【振り回す】** 振り回す鼻先で手を。頑固に正義感を。びゅんびゅんバットを。ぶんぶんと棍棒に礼を。めちゃくちゃに剣を。めったやたらに刀を。腕をぐるりぐるりと。鞭もちをひゅうひゅうと。両手を羽ばたくように振りまわす安岡。振り廻すふた言目には江戸っ子を"里見。手をハンマーのように"林京。振り回される誤った情報に。性の衝動に。世円の常識に。追い込みの作業に。 **ふりみだす【振り乱す】** 振り乱すたてがみを。長い黒髪を。髪を振り乱して狂乱する。走る。働く。髪振り乱して刃物三味に及ぶ。 **ふる【振る】** 振る改革の旗を。財布の底を。びゅっと竿さぁを。一生を棒に。手を乱暴に。尻尾をさっと。指を立てて。なよなよと腰を。ばたばたと手足を。らぶらと足を。頭を激しく横に。体をふらふらと。足をばたばたと。手をひらひらと。考えを振るい落とそうとするかのごとく激しく頭を左右に人米。犬が尾をぴんぴん=原田康。両腕を振り子のように岸田。頭を振る強く。激しく。ぶるぶる。打ち消すように。かぶりを振る悲しげに。静かに。黙って。ゆつくりと。手を振る優雅に。煩わしそうに。大きく。軽く。小さく。バイバイと。激しく。顔の前でひらひらと。犬を追い返すように=伊坂。渋い顔で追い払うように"有川。蠅はえを追い払うように=束野。小旗を振りちぎるほど振る。手を振って手招きする。別れる。急いで頭を振ってごまかす。うんうんと頭を振ってうなずく。振って歩く大手を。腰を。いつまでも手を振り続ける。脇目も振らずに食べる。突き進む。働く。いきなり話を振られる。バットを大振りする。打ち振る手にした書状を。手に手に小旅を。髪を振り乱すように。素振りするバットを。ラケットを。一振りする扇を。クラブを。バットを。ぶるんと顔を。力強い腕で。振り合う手を。ハンカチを。振り立てる頭を。尻を。フックをスイングする。 **ゆさぶる【揺さぶる】** 揺さぶる風が雑木林を。苦痛が全身を。爆音が鼓膜を。腰を上下に。風ががたがたと戸口を。読む者の心を激しく。体をぐらぐらと踊るように左右に=椎名誠。肩をつかんではげしく=灰谷。からだをブルブルッと犬みたいに=玉村。魂を揺さぶる音楽。心を揺さぶる衝撃が。憐憫れんの思いが。胸を揺さぶる思いが。ゆさゆさと。揺さぶられる予感に体を。存在が根底から。本能が荒々しく。心揺さぶられる快楽。揺さぶりをかける。 **ゆすりあげる【揺すり上げる】** 揺すり上げる肩を。腰を。背中の荷物を。ゆさゆさ。体を揺すり上げて笑う。揺り上げる肩を。喚声を。 **ゆする【揺する】** 揺する体を前後に。上体を左右に。足をぶらぶら。肩を軽く。肩を激しく。体をゆさ風がざわざわと草を。体を大儀そうに。指揮棒を小刻みに。腕をぶらぶらと。金網をがたがたと。力いっぱいぐいぐい。野太い声が早朝の空気を=辺見。屋根を叩く雨の音が耳朵じだを藤田。窓の鉄格子を両手で掴っかんで鈴木光。体を揺する嫌々と。寒気を振り払うように=伊坂。おかしそうに肩を揺すって笑う。体を重そうに揺すって歩く。惨腹を揺すって笑いこける。揺すぶられるいやな予感に。体が感動で。混沌にんとした思いに。揺すぶる爆音が空気を。体を荒々しく。扉をがたがた。がたつかせる義歯を。床儿礼を。 **ゆらす【揺らす】** 揺らす風が木の葉を。風が花を。風に髪を。木々が枝を。体を左右に。風がスカートを。風が窓ガラスを。ぐらぐらと頭を。こみ上げる笑いに体を。コートの裾をバサバサと総沢。 **ラケット** ラケット卓球の。テニスの。バドミントンの。ラケットの振り具合を試す。 <984> # 震える・揺れる **うちふるえる【打ち震える】** ▼打ち震える(体が。神経が。怒りに。緊張に。心が感動に。法悦に。喜びに。身も世もあらぬ嘆きに=高橋和)。 **おののく【戦く】** ▼おののく(生命の脅威に。絶望に。罪の深さに。不吉な予感に。木の葉が微風に。心の中が期待で。おのれの罪業に=山岡)。▼不安におののく(生活が。精神が)。▼おののかせる(秘密に心を。風が植え込みの茂みを)。感激に胸を恨かせる=石坂。▼ののき(体を刺し貫くような三浦湾。全身の肉が暗い炎をたててふるえぐにゃりと背骨が切断されるような=野間)。全身に荒々しいおののきが走る=小林久。壁を覆う意ったの葉が雨脚に打ち震える戦きがざわざわと暗く鳴りひろがる"日野、おののきと期待が交錯する。これから秘密めいた場所にふみこんでいくのだという哦きに似た感情に捉えられる=黒井。心の戦くような愉たのしさ=原田爽。 **ぐらぐら** 湯がぐらぐら煮立つ。ぐらぐらと(頭を揺らす。眩暈灬きを感じる)。▼ぐらぐらする(岩が。体が。気持ちが。心が。歯が)。足がぐらぐらして倒れる。▼ぐらつく(家の屋台骨が。決意が。自信が。前提が)。体がぐらりと(かしぐ。後ろへ倒れそうになる)。▶ぐらりと傾く(体が。心が)。 **こいのぼり【鯉幟】** 鯉のぼりが五月の空に泳ぐ。鯉幟がばさばさと闘ってはぐだりとなる=長塚。鯉幟のようにぐらぐら体を泳がせる=川端。干した布が吹き流しのように翻る=高井。吹き流しを風になびかせる。 **さやさや** さやさやと(そよぐ草。軽い寝息をたててまどろむ"阿刀田)。風がさやさやと吹く。肩へ髪の毛がさやさやと触れる。前髪がさやさやと吹く風に揺れる。葉がさやさやと梢で音を立てる宮尾。真竹の厳ゃぶがさやさやと鳴る=宮本瓦。麦の穂がさやさやと微かすかな響きを立てて動く=長塚。▼さやぐ(波が。木の葉が風に)。 **じしん【地震】** 地震が(あっても目が覚めない。おきる前のネズミみたいにいなくなる=田中)。地震で(家鳴りがする。家屋が甚大な被害を受ける)。地震に(襲われる。見舞われる)。大きな地震に遭遇する。地震にでも見舞われたみたいに足が震える=飯田。フックエンドを不意にはずした書籍のように家々が倒れる=獅子。家が時化しけにあった漁船の帆柱みたいに揺れる『里見。雷のとどろきが地震のようにはげしく家を揺るがせる=山木有。大地震が(日本列島を襲う。起きたときの事態を想定する=柳田)。激震に見舞われる。震源を特定する。耐震性を(高める。チェックする)。▼耐震補強する(家を。校舎を)。恋人が事故で死んでつらい夜が揺り返しのようにやって来る=吉本。余震が頻繁に襲ってくる。大地震のあとに起こる無数の小さな余震のように頭痛や神経痛や歯痛がつぎつぎに起こる=堀。さながら地震の揺り戻しのように新しい不安が込み上げてくる=阿刀田。 **しんどう【震動】** 大地を震動が走る。触れた指先から微かな震えと震動が伝わってくる=長野。▼震動する(空気が。大地が。電車が。窓枠が。跳ね上がるように竿先さ話が!奥泉)。轟音に心が大気を震動させる。音の反響がモオタアの震動のように絶えず耳につく"伊藤整。天地を震撼れんさせる。大気を震撼させる森音=綾辻。 **ぞくぞく** ぞくぞくと(体が冷える。身震いする)。■ぞくぞくする(胸が。期待に。楽しみで)。考えただけでもぞくぞ-くするほど楽しい=小池。ぞくっと(寒気を覚える。鳥肌が立つ)。▶ぞくっとする(背筋が。怖さに)。ぞくっとするほどの色気"源氏。ぞくぞくするような(美しさ。うれしさ。緊張感。刺激)。 **そよぐ【戦ぐ】** ▼そよぐ(街路樹が。髪が。木々の梢が。草が。花が。若葉が。柳子ゃしの葉がざわざわと。ざわざわと木の葉が=泉鏡。青紫色の菖蒲々の花が風に伊集院。薄緑色のボブラの若葉が可憐ふぇに微風に太宰。さわやかな風が心に"飯田。柳の枝が微風に“岩坂。周囲の人間が草木のように「山田詠)。風にそよぐ(稲田が。稲が。木立が。竹藪饮ぶが)。 **たてゆれ【縦揺れ】** 縦に揺れる。乱気流で機体がピッチングする。船が不安定なビッチングに躍る=藤本。 **たぷたぷ** たぷたぷと(汁が鳴る。水気を含んだ重い袋北村)。金魚の袋がたぷたぷと涼しい音を立てる=三浦し。夏みかんの鮮やかな黄色が青い波間にたぷたぶと揺れている=村山。ボートの舳先、ことに蹴立てられた波が岸に届きたぷたぶと音を立てる=池澤。▼たぷたぶする(歩くと腹が。容器の水が)。歩くと腹がた **とりはだ【鳥肌】** 体中に鳥肌が広がる。額に大粒の汗を浮かべながら蒼ぁぁざめた腕に鳥肌をたたせる―進城。人の首筋に鳥肌立たせるような文句"井伏。全身がぞっと鳥肌立つ。肌に栗ぁもが立つほど怖い=清水巻肌に粟粒が(ぞわっと立つ。湧き出るのではないかと悪寒を覚えて身震いする有吉)。▼肌に栗を生じる(想像するさえ。髪の毛の根をしめつけられるように感じて全身の森心)。▼粟立つ(危うさに肌が。体じゅうが。肌がぞわぞわっと)。肌が栗立つほどの興奮を覚える=原田家。ぞっと全身が鳥肌立つ。▼全身に鳥肌が立つ(寒さで。自己嫌悪感で)。鳥肌が立つ思い。ぞっと鳥肌が立ったよなこわさ恐ろしさ=宇野千。鳥肌が立つ(腕に。体じゅうに。ぞうっと。思い出すだけで飯田)。鳥肌だつほど気味が悪い!有吉。 **はためく** はためく(ひらひらと白い紙きれが。ひらひらと旗が。ぼろぼろの袖が寒風に。幟が風に。 <985> ばたばた。体が洗濯物のように"山崎。吊るされた洗濯物が万国旗のように=小林久。のれんが風にせわしなく西木)。風にはためく(旗がはたはたと。旗がひらひらと)。風に袴拑かの裾をはためかせる。はたはた(団扇を動かす。裾が跳ね上がる)。帆を胡瓜にはたはたなびかせる。はたはたと(扇を鳴らす。舞いよってきた小さな蛾が"山本周)。電車の中吊り広告がはたはたと揺れる。 **ふらつく** 足元がふらつく(眩暈がして。酔っ払って)。ふらつく(体を支える。足取りで歩き続ける)。▼ふらつく(足腰が。音程が。気持ちが。あてもないままにあたりを藤枝)。足元がふらつくほど酔う“瀬戸内。一瞬ふらつくほどのショックを受ける=赤川。ふらふらした足取りで歩く。腰がふらふらになる。体が前後左右に揺れる=小池。 **ぶらんこ** ぶらんこがきいきい鳴る。ぶらんこを思いきり揺する。風がぶらんこを揺らす。ゆらゆらぶらんこを漕ぐ。 **ふるえ【震え】** 震えが(全身に広がる。全身を走る)。体の奥から震えが湧いてくる。体の震えが止まる。足場の悪さと高度に震えがくる三浦し。小刻みな震えが全身を貫く三浦し。頭ふぇえが波のように襲ってくる藤本。震えが来る(がくがくと体に。首から背中にかけて軽い)。ふるえが来るほどの衝撃を受ける"阿久。慄ふるえが来るような感動で立ちすくむ"高橋治。▼震えが止まらない(悪寒がきて。がたがたと。どうしても。指先の)。▼震えが走る(体に。胸に嫌悪の。背中に電流に触れたような=高橋三)。心なし平静を失いそうにふるえをおぼえる=水上。声が震えを帯びる。声の震えを抑える。震えを覚えるばかりに激昂げっした神経有房。震えぶりがひどいのを見答悩とどめられる。歯の根も合わぬほどの顔えよう福永。 **ふるえあがる【震え上がる】** ▼震え上がる(脅しに。恐怖に。冷たい夜風に。ぞうっと。ぞっとして。ぶるるっと。一同ことごとく)。恐ろしさに寒気立つ。順が寒さにそそけ立つ。▼震え上がらせる(官僚を。議員を。子供を。小動物を。世界を)。寒からしめる(魂を。読む者の心胆を=貫井)。 **ふるえる【震える】** ▼震える(怒りで唇が。かすかに肩が。不覚にも声が。肩が嗚咽。ぇに。体が激しく。体がわずかに。唇が緊張感に。声が期待に。心が不気味に。頬が細かに。肩がぶるっと。肩を抱えて。唇が小さく。声がか細く。声が心なしか。眉がびりりと。関節という関節が。興奮に身の内が。受話器を持つ手が。ひくひくとまぶたが。水たまりに灯影犯がが。背や肩が切なそうに。怯ぉぃえた目をして。風に窓枠ががたがたと。肩先がびくりと。唇が引きつるように。唇と頬がびくびく。唇の色を失って。歯がかちかちと。ぶるんぶるんと音を立てて。窓ガラスがびりびり。眉が緊張でびくびくと。とんでもない発見に胸のあたりが!永倉。計器の針がひっくり返りそうに五木。心が新しい希望に向かってそぞろに=田山。扇子せんを持った手が膝の上で神経的に"山本周。毛布を染み透ってくる寒気に=加賀。生きた心地がしないといったように=長崎。腕の中で少女のように遠藤。体じゅうが癒坊このように=船山。緊張と期待で幼児のように光涵。炸裂音々に夜がびりっと"船戸。大地に遥はいつくばって=海音寺。乳房が大地震のときの豆腐屋の店先のコンニャクのように井上ひ。手足がバネ仕掛けのように林美。手が症療心したように遠藤。窓ガラスが悲鳴のようにガタガタ=田辺。無情さに体がぎしぎし"山崎。胸が凍りついたまま蜜蜂の羽のようにいつまでも"小川。目が怯えた犬のようにおどおどと=山本間)。身の毛がよだつように全身が寒くなってふるえる=深沢。▼頭ふるえる(脂肪だらけの腹がここりのように岸田。指先が痙孿するように=筒井)。▼慄ふるえる(身体が電気でもかかったように神経的に"円地。身体が瘡にかかったようにぶるぶる井上ひ)。▼怒りに震える(唇が。声が)。▼がくがくと震える(全身が。両膝が)。▼かすかに震える(声が。語尾が。手が。眉が。指先が)。▼小刻みに震える(体の芯が。全身が。手が。指が)。▼細かく震える(肩が。口元が。睫毛だっが)。▼寒さに震える(声が。飢えと)。▼ひくひくと震える(喉が。頬の筋肉が。臉娃ぶが)。▼びくりと震える(体が。心臓が)。▼びりびりと震える(空気が。床が振動で)。▼ぶるぶる震える(肩が。体が。唇が。全身が。怒りに。寒そうに)。▼身が震える(感激に。屈辱感のためにはげしく=山本周)。胸が震える(懐かしさに。嬉しさで)。▼喜びに震える(体が。心が)。手が木枯らしの中の落ち葉のように頭えやまない極。 **ふるわせる【震わせる】** ▼震わせる(怒りに声を。風が木立を。期待に胸を。体をがたがた。体をびくりと。体をびくんと。体をぶるっと。唇をびりびりっと。唇をわなわなと。眉をびりびりと。瘾必こに襲われたようにブルブルと五体を獅子。じりじりと電気の音が空気を伊坂。押し殺した声が夜をかすかに=船戸。頭から肩へかけてのなよやかな線を風の前のてっせんの蔓っっのように有島。巨体をぶるんぶるんと=隆)。▼ふるわせる(暴れだすように身体を深沢。解剖台の上の蛙砂ぇのようにびくびくと股を高橋和。高熱患者のように全身を=勝目。自分の秘密を無理強いに奪い取られたもののように羞恥礼がに身体を"野間。徐々に高まって繰り返し押し寄せる恐怖の波を浴びて五体を"真継。すすり泣きが暗い空気を"大江。電気に触れたようにビクンと足を"大原)。▼肩を震わせる(びくりと。びくんと。小刻みな嗚咽ぇに)。体を震わせる(怒りに。恐怖に。小刻みに。敗北感に。がたがたと。ざくっとして、びくっと。ひくひくと。びりびりと。ぶるっと。ぶるぶると。引きつるように=井 <986> 上靖)。ひきつるように唇を震わす=海音寺。悔しそうに唇を震わせる。▼小刻みに震わせる(唇を。膝頭を)。・全身を震わせる(がくがく。電流を通じたようにビリビリと=有吉)。電気ショックをうけたように全身を瞬間震わせる=泉優。▼びくっと震わせる(肩を。網にすくいとられた魚のように全身を"小林久)。ひくひく震わせる(肩を。唇を)。▼びくびく震わせる(筋肉を。唇を)。ぶるぶる震わせる(唇を。興奮して体を。手を。両手を)。身を震わせる(恐ろしそうに。快感に。感動に。激しい嗚咽に。びくりと。ぶるっと)。体を震わせて(怒る。すすり泣く)。夕陽がすすり泣くように身を震わせて沈んでいく=高橋三。肩を震わせてわっと泣き出す火坂。小刻みに肩を震わせて泣く熊谷。▼震わせて笑う(肩を。語尾を。鶴のように細い体を三浦し)。視線を背中に感じてむずむずするように体をふるわす長与。全身を頭ふるわせるような名状しがたき叫び声を挙げる=菊池。 **ふれる【振れる】** ▼振れる(左右に。針が大きく)。針が振れる(磁石の。メーターの)。振幅が(大きい。小さい)。 **ほなみ【穂波】** さしあげた手が風に吹かれる穂波のよう本店。青々と豊かな穂波を打っている麦畑"加賀。風に吹かれて波のような模様を描いている稲田中沢。黄金色の稲穂の波大野形。 **みぶるい【身震い】** 屈辱と恍惚のどちらにも振れる激しい身震い=桐野。身震いが(全身に広がる。出るほど嫌で嫌でたまらない=丹羽。細い螺旋形肪せんの針金にでも突き刺されるように肩から首筋を刺す岡本)。電気に打たれるような身ぶるいが全身を通り過ぎる=島崎。思わず身震いが出る。痣注こにかかったように悪寒で身震いがする=佐山。身震いの出るような恐ろしさ=隊。寒さにひきしまった皮膚に身震いの波を走らせる=大江。不潔で醜悪なものに触れたような身震いの反応瀬戸内。▼身震いする(ぶるんと一つ。思わぞくっと。思い出しても不愉快だというように宮部。体の芯から冷えたように=中上。みすぼらしく狭い肩を寄せあって犬のようにいくたびも大江)。襟元に凍った針を刺されるようにぞくぞくと身ぶるいする=有局。身震いするほど悔しい!梅本。思い出しても身震いするほど嫌い人東。体を神経質に身震いさせる。話を聞いただけでも身震いするような事件。高橋克。胴震いが治まる。体じゅうに胴震いが来る。腹の底から胴震いが込み上げる。 **むしゃぶるい【武者震い】** 武者震いが体の芯から湧き立つ。ぶるっと武者震いが来る。武者ぶるいみたいな畏怖を覚える=阿刀田。小さく武者震いをする。ついにチャンス到来と武者震いする=篠田。体の奥に武者ぶるいのような戦慄が電流のように駆け抜ける"五木。 **ゆさゆさ** 車両がゆさゆさ揺れる。肩に垂れた髪をゆさゆさ揺すぶる。体をゆさゆさ揺する。頭をゆさゆさと動かす。ゆさゆさと胸を揺さぶる。馬の鬣がゆさゆさと揺れる佐多。 **ゆらぐ【揺らぐ】** ▼揺らぐ(歴史の解釈が。篝火が風に。姿が陽炎砂羽に。穂が静かに。目が不審に。自信が大きく。システムへの信頼感が。香の煙がおぼろに。心が深い感動に。安全が根底から。月が海の上を滑りながら潮風に=伊集院)。灯明が風にはたはたとゆらぐ=山手。灯影性かにゆらぐ暗溶込んとした顔!本庄。風のような揺らぎが胸を吹きすぎる"夏樹。描らぎから宇宙が生まれる!佐藤勝。▼揺るぐ(牙城が。根本が。体がびりびりと。心がぐらぐらと)。ガラス戸ががたつく。バスが小揺るぎして動きだす。小揺るぎに揺り動かす。 **ゆらめく【揺らめく】** ▼揺らめく(藻がゆらゆらと。重力の重みに耐えかねて若竹。風景がゆらゆら辺見。船の灯りが海に映り“なかにし)。▼ゆらめく(燭台の火が。ろうそくの炎が風に。目に操惑にゃの炎が=山田風。草地から跳ね返る日ざしがかすかに陽炎砂羽のように=日野。タバコの煙がゆらゆらと萩原爽。目の光が濃くなって=古井)。なまめかしいほどの暗く濃い感情のゆらめき=日野、炎が燃えつきる前の不安定なゆらめきを繰り返す塩野。目のまわりに酔いのゆらめきが残る=高樹。短い夏が九月始めの不確かな大気の揺らめきに吸い込まれるように消える=村上春。目の奥に半ば不安そうな揺らめきを見せる=乃南。 **ゆらゆら** 風にゆらゆら揺れている花。ゆらゆらと(波間に漂う。風船が空を漂う。ぶらんこをこぐ。空中に浮かぶ蜃気楼儿认、倉橋。人魂がもが飛び立つ=白井)。影が壁にゆらゆらと映る。煙草の煙がゆらゆらと立ちのぼる。宙にゆらゆらと浮く。右手をゆらゆらと動かす。水がゆらゆらと流れ去る。川から湯煙がゆらゆらと立ち昇る藤田。船影がゆらゆらと遠く映って過ぎる三島。雪洞眼肌の灯りがゆらゆらと流れ落ちる=鈴木三。落下傘がゆらゆらと風に流される=かんべ。ゆらゆらと動く(手が。炎が)。▼ゆらゆらと揺れる(空気が。ろうそくの炎が。大きな枝が人を招くように内田瓦。体が水底のかほそい一本の藻のように小林久)。魔術師のように笑顔がゆらゆら揺れる"阿刀田。噴水のような哄笑にしの衝動で体がゆらゆらする開高。▼ゆらゆらさせる(片手を。長い袖を)。ゆらりと(頭を揺する。空を振り仰ぐ。椅子から立ち上がる。ベッドから立ち上がる)。上体がゆらりと崩れる。細い煙がゆらりと立ち上る。魚がゆらりゆらりと泳ぐ。上体がゆらりゆらりと緩慢に動く。 **ゆりかご【揺り籠】** 揺りかごで眠る赤ん坊。揺りかごに赤ん坊を入れて揺する。水際以ぎで砕ける波の音が揺り籠のようにやさしい落合。両腕を揺り籠のように静かに揺すぶる=石坂。文明の揺籃はらの地。▼招籃 <987> 期(近代工業の。文明の)。 **ゆるがす【揺るがす」** ▼揺るがす(風が梢を。風が葉むらを。根幹を。衝撃が胸を。爆音が大地を。屋台骨を。騒音が渓谷全体を。かつてない不祥事が組織を"横山)。どよめきの波があたりをゆるがす栗本。政界を揺るがす事件。建物を揺るがすにぎやかな笑い声。天地を揺るがす喚声。▼場内を揺るがす(拍手が。爆笑が)。あたりを揺るがして爆発音が響く辻井。感情が大きく揺り動かされる。組織の未来を揺るがすような大問題に発展する=海堂。 **ゆれ【揺れ】** ▼揺れ(感情の激しい。想定を超えた。しっかり奥歯をかみしめていないと舌をちょんぎるほどの=飯田)。揺れが(おさまる。緩慢になる。続く。止まる。やむ)。心の揺れが収まりそうにない。地盤の揺れが激しい。鉄の棒が下からお腹へ飛び込むように車の揺れが腹に響く=川端。車の揺れに身を任せる。激しい揺れに身を揉もまれる。情念の揺れをうかがい取る。 **ゆれうごく【揺れ動く】** ▼揺れ動く(不思議に心が。ゲージの針がゼロの近くを。二人の女の間を。苛立松。ちと不安に。木漏れ日がちらちらと。視線がぐらぐらと。世の中が大きく。心の奥底がかすかに=源氏。気持ちが二転三転と大きく=熊谷。地上の星のように松明がちらちらと栗本。人の波が沖合を流れる潮目のように阿久。船が外海の波浪に弄ばれて木の葉のように井上靖)。うす暗い灯影抱かの下で人が影のように揺れうごく=本庄。▼水が揺れ動く(たぶたぷと。たぼたぼと)。▼鳴動する(家が。空が)。火山が鳴動を始める。振動が(体に伝わる。なかなか止まらない)。空気の振動が伝わる。▼振動する(エンジンが。声帯が。がたがたと。びりびりと)。柱がきしみ家鳴りする。家鳴りするほどの雷鳴が屋根の上を駆け抜けて行く藤沢。 **ゆれる【揺れる】** 揺れる(ぴくっと肩が。順に炎の影が。ランプの光が。体が前後に。声が迷いに。瞳が不安に。枝が激しく。肩がびくんと。体がゆらりと。直がぶるんと。風が来て提灯ちに、うが。風を受けて萩が。カンテラの灯が。水勢に煽ぁぁられて舟が。木々が寒そうに。ぐらぐらと大きく横に。天下が大揺れに。人垣が前後左右に。目が不安そうに。明かりがちらちらと。体がふらふらと。枯れ草がさわさわと。木の枝ががさがさと。上体がぐらりと。スカートがひらひら。青春の日々が浮かんでは。変っっがぶらんぶらんと。テントがばさばさ。馬車が札、しみながら。頬の肉がぷるんと。水に映った街灯が白く。胸があえぐように。床が波打つように。揺れるともなく。五月の風に緑の葉が北村。ぼんやりとした蝋燭の火影!»が=中局み。天蓋於以がはたはたと風に=篠田。二つの気持ちの間で中途半端に連城。・堀に映る星の光が水に藤沢。苦笑と憫笑ぶんしの間で荻野。白い尻が夜道を照らす提灯のように井上ひ。光が水に反射して顔がきらきら波のように=椎名銭。水がタブタブと音をたてて=中上。夜風に月影が湖面で"船戸)。赤い焰旧のが水に浮かんだようにゆれる=内田百。▼大きく揺れる(感情の波が。神明與以にが。横波を受けて船が)。風に揺れる(稲穂が。木々の枝が。木々の葉が。草の穂先が。梢が。芒討すの穂が。竹が。楽の茂みが。葉が細かく)。▼ぐらぐらと揺れる(地面が。信条が)。ぐらぐら揺れる(家が。画面が。山が。頼りなげに)。▼ぐらっと揺れる(頭が。体が。腰が。舟が)。左右に揺れる(頭が。肩が。体が覚束なく)。▼さらさらと揺れる(髪が。鎖が)。▼ざわざわと揺れる(木々が風に。あたりの人影が=福永)。▼水面に浮かび揺れる(木切れが。薬もらしべが)。▼微妙に揺れる(心が。表情が)。▼ふわふわと揺れる(後れ毛が。髪の毛が)。▼揺れに揺れる(会社が。船が。心の中が不安のために)。葉が揺れて光の斑点が地に滴る=高橋知。▼揺れている(海の上で篝火が遠く近く=山本周。月が川面に映り辺見。ファイアーストームの炎が透明な赤い不思議な生き物のように佐藤多)。少女たちの姿が葡萄ぶとの房のようにゆらゆらと揺れながら見える=堀。月が水平線を離れて銀色の光がちらちら揺れながら海を照らしている=村山。ろうそくがかすかに揺れながら燃えている=江戸川。▼揺られる(船が潮に。柳の枝が風に。甘美な音の波に=中村貞)。飛行機が気流の悪いところにさしかかる。▼ためらうように揺れる(ドアが。棒の先が。一条の細い煙が朝の微風になぶられて大岡)。振り子のように揺れる(心が。車掌の首から下げた黒袍くらかが"伊集院。車体が右に左に=篠田)。妖しいように蒼もぉい燐光がうごめき揺れる=福永。一揺れする(地震が。大地が)。▼揺れ騒ぐ(空気が。心が。笹がざわざわと)。松林がどっと響きを立てて不吉な交合図のように揺れざわめく=福永。暖かい空気が揺曳いする。 **よこゆれ【横揺れ】** ▼横揺れ(車の。地震の。船の)。ゆらりゆらりと横揺れする。機体のローリングが続く。車体を大きくローリングさせて走る。▼ローリングする(船が。車が左右に。船が激しく)。 **わななく** わななく(休が。唇が。手が。夢見心地に。エクスタシーに。取り殺されでもするような恐怖に徳田)。わななく声で叫ぶ。▼わななかせる(愛の思いに胸を。恐ろしげに身を。全身を小刻みに)。 **わなわな** わなわなと(唇を震わせる。怒りに震える。おののく。体を震わせる)。▼わなわなと震える(体が。唇が。語尾が。全身が。立ちすくんだ膝が。膝に置いた姿が)。わなわな震える(足が。腕が。手が。膝が。寒さに)。口もきけずにわなわな震えている。顔面蒼白咲いとなりわなわなとふるえ出す―池波。悪寒に襲われたようにわなわな慄ふるえ出す大佛。 <988> # 振る舞う **いっきょいちどう【一挙一動】** 日常のごくさりげない一挙一動。一挙一動が(気になる。憎悪と悪念に満ちる佐藤谷)。一挙一動に(気をつける。注意を向ける)。一挙手一投足に(心を配る。注意を集める)。元気を一挙手一投足にみなぎらせる。一挙手一投足を熱心に追う。注意深く一挙手一投足を見守る。 **かつどう【活動】** 活動が(休眠する。盛んになる。終了する。本格化する。一段と活発になる)。活動から(引退する。手を引く)。活動に支障をきたす。 ・活動に支障をきたす。地道な活動を続ける。▼活動する(活発に。献身的に。合法的に。精力的に。世界的に。大々的に。地下に潜って。エネルギッシュに)。活動記録を調べる。活動実態がない。活動報告を聞く。救護活動に従事する。精力的な研究活動を開始する。消火活動に当たる。創作活動に専念する。文学活動に意欲を燃やす。 **きょどう【挙動】** ▼挙動(曖昧な。不可解な。怪しい)。挙動が落ち着かない。相手の挙動に(注意を払う。引きずられる)。挙動不審の人物。常に変わらぬ举止。挙止進退が礼にかなう。 **げんどう【言動】** ▼言動(天衣無縫な。一貫性を欠く。奇癖に満ちた。常軌を逸した。これ見よがしの珍妙な。複雑にして怪奇な。目に余る傍若無人の)。言動が(活発になる。心に残る。波紋を広げる。物議を醸す。矛盾する。芝居がかっている)。言動に目を奪われる。言動に気を(配る。つける)。言行が一致しない。言行を一致させる。言行一致で進める。言行一致を貫く。 **こうどう【行動】** ▼行動(自信に満ちた。あまりにも思慮のない。颯爽ごうとしたかっこいい。正義漢にふさわしい)。行動が風采としっくりあてはまる三浦失。こちらの行動が相手に筒抜けになる。行動に(一貫性がない。責任を持つ。監視の目を光らせる。機動性を持たせる)。次の行動に移る。▼行動に移す(思ったらすぐ。勇気を振り絞って三浦し)。▼行動に出る(手荒な。思いがけない。突拍子もない)。▼行動に走る(過激な。衝動的な)。沈着で大胆な行動の数々=高橋源。行動の自由を(失う。奪われる。保つ)。間一髪のところで行動を思い止まる=小鳥。行動する(隠密に。果敢に。積極的に。私利私欲で。単独で。夜陰に乗じて。用心深く、細心の注意を払って。自分の頭で考えて。自分の責任において。常識の範囲内で。信念にもとづいて。目標に向かって。モラルをもって。利害を度外視して)。▼従って行動する(時間表に。そのときどきの気分に)。勝手な行動はやめてもらおう景山。くれぐれも自重して行動してください。内田明。意志的で行動的な人間。行動範囲が(狭い。広い)。単独行動を避ける。▼別行動する(斑ことに。コースに分かれて)。アクションを起こす。▼挙に出る(破天荒な。造反の。反撃の)。行動力に満ちた活発な性格。憧れるひとの家まで出かけて行く勇気と行動力=高樹。実行力に(欠ける。乏しい)。いざとなると愕砧とくべき実行力を発揮する=瀬戸内。行動を起こすなら今のうち。▼行動を起こす(統一的な。一斉に。即座に)。敢然とフェミニズムの狼火のろをあげる=瀬戸内。啟痰认倒幕の烽火いっをあげる=船山。 **しぐさ【仕草】** ▼仕草(男心をそそる。いかにも物慣れた。ひどく子供じみた)。何年も前からこうしているといった身についたしぐさ=向田。仕草が(乱暴になる。優しさに満ちる)。舞のようにしぐさが美しい有吉。優美なしぐさで一礼する=高千穂。おどけた仕。優雅な仕草で立ち上がる。釣られ草で肩をすくめる。優雅な仕草で立ち上がる。て同じ仕草を返す。手で追い払う仕草をする。手をひらひらと振って追い払うような仕種しくをする=森瑞。 **じざい【自在】** 自在に(形を変える。小舟を操る)。指先が自在に然粉として動く人間。自由自在な表現を試みる。自由自在に(動く。つかいこなす。飛ぶ。巨大な機械を操る)。 **じゆうほんぼう【自由奔放】** 自由奔放な(生き方。歌風。生活。想像)。自由奔放に(生きる。振る舞う)。才能を自由奔放に発揮する。天馬空を(行く。翔がけるがごとく戦場を馳駆らくする柴田錬)。八方破れのバイタリティー。不胸、、、奔放な想像力。奔放な念想にふける。開達は20奔放な人物。コケティッシュで奔放な女瀬戸内。冷静にして奔放な開拓者精神祁"開高。奔放に伸びた枝。 **しんたい【進退】** 緩慢な進退。進退が(注目される。礼にかなう)。進退の(自由が利かない。自由を留保しておく)。▼進退する(堂々と。危機に際して立派に=美濃部)。進退きわまった声を出す。進退問題に発展する。去就が注目される。去就を決める。身の去就を明らかにする。出処進退を(誤る。わきまえる)。貴婦人として遜色ない鮮やかな出処進退有吉。出処進退が問われる。▼身の振り方(現実的な。今後の。退職後の)。身の振り方が決まる。身の振り方を(考える。決める。心配する。相談する)。身の始末に追われる。身の始末は自分でつける。身の始末をつける。自分の身の始末をする。 **そぶり【素振り】** 「素振り(怒ったような。自信のなさそうな。恩着せがましい。歯牙にもかけない)。素振りが(怪しい。おかしい。急に変わる)。問いたげな素振りがありありと窺らがえる"貫井。故意に無視した素振りで押し通す。ふてくされた素振りで出ていく。素振りに変わったところはない。素振りにも(現さない。出さない)。所在ない素振りを示す。大変な素振りを露ほども見せない。何でもないような素振りを見せる。嫉妬を気ぶりにも出さない。 <989> ふぼん分の振る舞いを反省する。出すぎた振る舞いを悟る。手前勝手な振る舞いを慎む。傍若無人な振る舞いを見過ごす。無謀な振る舞いを目にする。思いきり狂暴な振る舞いをやってのける『柴田剣。日増しに快活に振る舞うようになる。人のふり見て我がふり直せ。▼立ちまわる(機敏に。器用に。小器用に。如才なく。抜け目なく)。▼立ち回り(巧妙な。小利口な。老翁がらな)。立ち回りがうまい。 **たいど【態度】** ▼態度(都会化されきれない粗野な="円地。未来を望んで過去を顧みない果敢な=加藤)。態度が(尊大になる。軟化する。一貫して変わらない。とことなくおかしい。日に日に悪くなる。目に見えて冷たくなる)。折衷的な態度が破綻する。▼態度が変わる(がらりと。手のひらを返すように戸川)。感情が態度から読み取れない。落ち着き払った態度で答える。気持ちを態度で伝える。強硬な態度で臨む。中途半端な態度で聞く。態度に(気をつける。隙がない。落ち着きがない。重々しさが加わる)。気持ちが態度に反映する。煮えきらない態度に業を煮やす。冷ややかな態度に出る。態度の(裏に棘とげを包む。急変に気がつく)。好意的な態度を見せる。何かと反抗的な態度を示す。何気ない態度を装う。面従腹背の態度をとる。凛りんとした態度を崩さない。だらけた生活態度が改まる。生活態度を反省する。態度表明を避ける。 **たちいふるまい【立ち居振る舞い】** ▼立ち居振る舞い(エレガントな。穏やかな。敬虔州心な。静かな。上品な。楚々そそとした)。立ち居振る舞いが(投げやり。品に乏しい。堂に入っている)。優雅な立ち居振る舞いがよく似合う女。立ち居振る舞いのすべてに神経がゆきとどく=有吉。立ち居振る舞いをしおらしくする。▼立ち居(さわやかな。静かな。しとやかな。柔らかい)。立ち居が(不自由になる。きびきびしている)。立ち居にしっかり節目をつける。▼裾さばき(鮮やかな。優雅な)。裾さばきのいい布。▼举措(気品の高い。折り目正しい紳士の。きびきびとした。幽鬼のように力のない=貫井)。荒っぽい举措に顔をしかめる。 **てきばき** てぎばきと(事を運ぶ。指示を与える。水枕をかえる。各所に連絡する。締めくくりをつける。手続きを済ませる。役割分担を決める。仕事をかたづけていくので見ていて気持ちがいい=つか)。 **どうさ【動作】** ▼動作(機敏な。素早い。淀みのない一連の。一瞬たりとも気をゆるめていない峻厳扎心,優しさな=宮本机。自己自身を虐待する捨て鉢な=高橋知。んやりしていると見逃してしまいそうなくらい一瞬の小川)。動作が(活発になる。緩慢になる。ぎくし々くと人形のように不自然"日野)。立ち居の動作がじれったいほどのろい=山本周。少女のような身軽な動作で手をひらひらさせながら机の前を離れる=辻井。動作で立ち上がる(敏捷びんしな。のろのろとした)。動作に(無駄がない。一分の隙もない)。ゆっくりと投球の動作に入る。滑稽な動作に噴飯する=獅子。些細な動作に艶が現れる!大岡。動作の端々に小心な性格が現れている=陳。次の動作を待つ。頭脳が正確に動作する。基本動作をおろそかにする。 **ふるまう【振る舞う】** ▼振る舞う(勝手気ままに。自信ありげに。自由に。慎重に。大胆に。努めて陽気に。天真爛漫に从もんに。傍若無人に。無無邪気に。磊落45いに。我が物顔に。静かな物腰で。努めて明るく。情熱のおもむくままに。なにやかやと親切に。わがまま一杯に。指図通りにおとなしく。自然にのびのびと。べたべたと図々しく。羊のように温和に豊田。重石が取れたように伸び伸びと小林久。誰も怖いものはないように図太く=黒岩)。何事もなかったように自然にふるまう三田。野放図に陽気にふるまってみせる=曽野。はしたない振る舞いを(咎とがめだてる。恥じる)。振る舞い(恩知らずな。厚顔無恥な。極悪非道な。自信満々な。卑怯いな。あさましい。言語道断の。道に外れた。野盗に等しい。紳士に不似合いな。思いやりを欠いた。差し出がましい。小姑にじ。みたいな勝手な=古井。義務めいたどこか白々しい=松本)。振る舞いがそわそわして見苦しい。奇矯な振る舞いが目立つようになる。信じがたい振る舞いに及ぶ。自分の振る舞いを反省する。出すぎた振る舞いを悟る。手前勝手な振る舞いを慎む。傍若無人な振る舞いを見過ごす。無謀な振る舞いを目にする。思いきり狂暴な振る舞いをやってのける『柴田剣。日増しに快活に振る舞うようになる。人のふり見て我がふり直せ。▼立ちまわる(機敏に。器用に。小器用に。如才なく。抜け目なく)。▼立ち回り(巧妙な。小利口な。老翁がらな)。立ち回りがうまい。 **マイペース** マイペースで(走る。働く。勉強する)。思うとおりに生きる。自分の(ベースを守る。道を行く)。我が道を行く。 **みぶり【身振り】** 踊っているような大げさな身ぶり~石森。身振りが派手になる。音楽に合わせて踊るような身ぶりで歩く庄野。曖昧な身振りで頭を下げる。身振りに気をつける。陶酔感が身振りにみなぎる。大仰な身ぶりで(しゃべる。体をのけぞらす)。はでな身振り手振りで陽気に笑う~山本周。身振り手振りに色気がにじみ出る。身振り手振りの多い軽やかな話し方。身振り手振りもおかしく踊る。身振り手振りを(入れる。交えながら説明する)。手振りを交えて話す。手まねで(合図する。知らせる)。▼ジェスチャー(大げさな。オーバーな。可憐ふぇな。求愛の)。ジェスチャーで意思を伝達する。ジェスチャーたっぷりの弁士。しなの決まった舞いぶり~氷室。甘ったれるようなしなをして坐ずゃる=志賀。▼しなをつくる(棚にびるような。芝居がかった。片手を頭の後ろにあてて=林真)。女の子のように首をかしげて科しょを作る『黒井。 **ものごし【物腰】** ▼物腰(悠揚迫らぬ落ち着いた。穏やかで丁重な奥平。思慮深い貴女のような「有島)。物腰物言いが坊主くさい。物腰が柔らかい。高飛車な物腰で応じる。丁重な物腰で言う。物腰に品がある。落ち着いた物腰の婦人。 <990> # 触れる・ざらつく **かんしょく【感触】** ▼感触(血のぬらぬらした『真継。ヌルヌルとしたゼラチンのような=景山)。手にざらりとした感触が伝わってくる若竹。物音も人の姿も夢のなかのように感触が薄い=中沢。▼感触が残る(指先に。手に蛇をつまんで投げ捨てたようないやな藤沢)。高級な感触に仕上がる。驚くほど柔らかな感触の唇"鎌田。おっぱいの感触を楽しむ。ほぼ決まりの感触を得る。一歩ずつ大地の感触を確かめるといったふうな歩き方三好敵。水をふくんだクローバーが足にこころよいふんわりとした感触を伝えて来る"阿川弘。裸体の感触を生々しく思い出す熊谷。▼触覚(唇の。指先の)。触覚が麻痺まぃする。触覚に頼って歩く。触感(ざらざらした。冷たい)。やんわりとした髪の毛の撫で心地。微妙な風合が生まれ出る。風合のいい着物。絹の風合を持つ布。 **キス** 濃厚なキスが続く。キスの雨を降らせる=篠田。キスを電気のように痺しびれて受ける=檀。子猫のように体をくねらせてキスを投げる=岡田。▼キスをする(頬に。額にお休みの。若い男女が抱き合って。熱い果実のような唇にディーブな"五木)。▼キスする(帰りぎわに。首筋に。恋人同士のように抱きあって=常盤)。唇と唇を触れ合わせる。唇を奪うとゼラチン質を思わせる柔らかい肉が吸盤のように吸いついてくる荻野。熱い口づけを交わす。接吻総の雨を降らせる谷崎。蓮の花が開くときにするのに似た大きな接吻の音=阿部。唇から接吻を盗む=中村真。接吻をする(額に冗談のように軽い=中村典。ほっぺたに芋版を押すように=阿久)。▼接吻する(髪に。手に。額に。眼がくらむほど切なく激しく八谷崎)。 **きめ【肌理】** サービスのきめが細かい。みだれた雪の肌理が微かすかに光る=大佛。芸者ふうな肌理に月光が貝殻じみたつやを出す頬"川端。きめの(粗い肌。荒れたうなじ。細かいアドバイス。こまかい肌を誇るような薄化粧!半村)。肌理の細かいすべらかな肌隆。 **ざらつく** 積もっている雪の肌が軽石のようにざらつく石森。靖さびでざらついた支柱。▼ざらついている(雪の表面がざらめのように石森。手ざわりが蒟蒻にんにより~井伏)。低くざらざらした声。サメの皮のようにざらざらしている木のはだ=山本有。髯ひげがざらざらする。ざらざらと(砂礫されがこぼれ落ちる。豆が床に流れる)。吹きつける砂がざらざらと音を立てる=光瀬。節くれだった荒れた指に触れられて白い布がザラザラと音を立てる!瀧沢。ざらざらと崩れ落ちる(足元が。壁土が)。痰たんの絡んだようなざらざらの声谷村。胸を紙ヤスリで撫でられたようなザラつきを覚える=高橋二。心の中を怪石で引っ掻いたようなかすかなひっかかりがある鷹沢。 **さわる【触る】** ▼触る(じゃりじゃりと砂が歯に。むき出しの乳房に。濁った音が耳にざらりと。粗い毛のようなものがごわごわ煩に円地)。触ると(壊れそう。芯があってびっくりするほど硬い髪「連城。手のひらにひんやりとした感触が伝わる=飯田)。腫れ物に触るように恐る恐る扱う菊池。腫れ物にでも触るようにおじおじする=永井荷。指一本触らせない。 **じはだ【地肌】** 地肌が(露出する。むき出しになる)。髪が薄く地肌が透けて見える。田が黒々と地肌を見せる。色黒の地肌をさらけ出す荻野。 **しょっかく【触角】** 触角を伸び縮みさせる。蛾が槍皮色いだの小さい羽毛のような触角を突き出す川端。娘の触角のような眉が高い額に迫っている=岡本。触角のようにアンテナが伸びている=伊坂。もやしのように蒼白はらい触手梶井。触手を(引っ込める。震える=伊坂。更けた夜が肌に冷え冷えと触れる=本 **すはだ【素肌】** 透けるような白い素肌。シャツを素肌に着る。濡れた着物が素肌にくっつく。 **てざわり【手触り】** 思い出の懐かしい手ざわり=連城。甦込ってくる記憶の手触りがある=高樹。上質のカシミヤのような手触りの猫村上琛。 **はだ【肌】** ▼肌(染み一つない。前夜の疲れなど微塵ふじも残していない艶やかな=乃南。明るくそのくせ硬そうな白っぽいコンクリートの=原田康。岩陰に佇たたんでいる青味を帯びた魚の肌を想わせる=大庭。薄桃色で瑞々しくはりきった女の瀬戸内。幼い子の白桃のような=高井。白粉らいに疲れた鉛色の=真継。琥珀にはを焦がしたような"田辺。こんがりと陽にやいた小麦色の飯田。しなびたきめの粗い=真継。姿しぼんだように黒ずんだ癒沢。シルクのように光った褐色の林京。瀬戸物のように冷たい感じの永井徴。大理石のように硬質な印象の"池澤。大理石のように透明感にあふれている小池。艶やかなミルクココア色の落合。熱帯植物の果実のようにねっとりした"円地。ミルクみたいな色の=田辺。みるも無残に真っ赤に焼けただれた"大庭。若布の肌のように艶やかなうるおいを帯びた安部。笑っても眼じりに破しゃのよらない若い黒岩)。肌が(艶を失う。薔薇色135に輝く。張りを失う。つるつるになる。削り節のように黒く光る=伊集院。すべすべとして油になじんだ鹿皮のような柔らかさ=林美。ひと皮むいたように光沢を帯びる藤沢。みるみる輝きを失って飴色に変じる=日野)。日差しに肌がじりじり灼ゃかれる。きめの細かい張りのある肌が内側から明かりがともったように温かく輝く=落合。さっぱりと肌が快く引き綮しまる芝木。白い月明かりに透き通るような肌がほのかに浮かぶ!伊集院。電気が走ったかのようにびりっと肌が <991> 庄。湯上がりのように肌がすべすべしている=山口。豊かな肌が瑕きずのない玉のよう森殿。▼肌が汗ばむ(うっすらと。じっとりと)。肌がかさかさに(荒れる。乾く)。恐ろしさを肌で感じる。大自然の営みに肌で触れる。肌に(楽ぁぁが生じる。白粉がのらない。細目が食い込む。水ぶくれができる。しみる寒さに頭ふるえる=徳田)。薄黒のように脂垢紡がらの取れた肌にほのかな血の色がのぼる=川端。すべすべになった肌に湯を弾きとばすような勢いがある=山口。湯上がりのほてった肌に風が快い。肌の色が使い古した紙のようにおよびのように色白"山口。白いなめし革のような肌といったように黄色く濁る=高井。香水や汗ばんだ女の肌の匂いで頭がくらくらする=阿部。女の肌のすべすべと蠟石奶封のように弱々しい感覚檀。吸いつくような肌の魔力"日野。土蔵の側面の壁が褪色して汚れた年寄りの肌のように後藤。湯ぼてりの残っている肌の香平岩。女の肌を知る。男に肌を見せる。みだりに肌をさらさない。お互いの肌を暖め合う戸川。馴れ合った男女の感じで肌を寄せる"古井。風雨が肌を無残に打ちまくる=石川。宝石のような肌を持った女黒岩。粉雪を吹きつける風が膚を裁きるよう=山本周。肌を刺す(一月の風が。熱気が。陽射しが。冷気が。針で)。▶膚はだ(粗製ゴムのような死んだ色の=小林多。フロンズのような=干刈)。濡れた女の肌みたいなブローチ―大庭。美肌(健やかな。絹のような)。美肌を保つ。むっちりしたもち肌。もち肌を(自慢する。誇る)。柔肌に触れる。若い女の柔肌のような汚れを知らぬ生き生きとした生気=柴田剣。白い肌が(陶器のように鮮やかに映える三浦綾。青緑の竹の林を背景にして抜け出てきたように見える=水上。みずみずしい樹木のよう倉橋)。白い肌(花のように。太り肉じしで。三角の豆餅のしんなりした武田癸。静脈が透けるほど=高橋和)。巨大な流木が白い肌をさらす=木庄。肌が(魚の腹のように青白い藤沢。新鮮な匂いのように白くて滑らか=川端。透きとおるように白い真継。雪のように白い=小池。白魚のように透きとおる=中島戦。白雪のように艶を見せて光っている=水上。美しく白磁のように引き締まる"有吉)。白かった肌が白布が日ごとに黄ばんでいくように少しずつ飴色に濁っていく連城。白く透き通った美しい肌が真冬の渓流のように冷たく輝く高橋三。白磁のような生硬さだった肌の白さに柔らかさが出る=連城。雪を欺く肌の白さ=大野透。家事に追われて一歩も外へ出ていないが凄絶なほどしなやか黒岩。抜けるように白い餅肌。肌(雪白の。天使のような純白な谷崎。蠍ぅぅのように色白で艶やかな=有吉)。真っ白な匂うばかりの柔肌中野关。肌が匂う。裸の肌が果物のように匂う。林美。少女のみずみずしい肌の匂い=福永。温かな肌の匂いが立ちのぼる=黒井。肩が溶けてしまいそうなほど匂やかに艶つやしい=山本周。 **はだあれ【肌荒れ】** 肌荒れで悩む。肌荒れを治す。冬場の肌荒れを防ぐ。 **はだざわり【肌触り】** 手の柔らかさが木の葉の新芽のような肌触り谷崎。肌触りのいいシルクのガウン。気持ちのよい肌触りの夜具。しゃりしゃりした肌触りの生地。二月半ばとは信じられないほどの肌触りの柔らかなた気が流れ入ってくる=高井。蝉籠她以の小さな編み目の感触が母の肌ざわりのよう伊集院。 **はだみ【肌身】** 掲っきたての併のような女の肌身池波。肌身から離したことはない。肌身に寒さが加わる。風の冷たさが肌身にしみる。肌身の温もりをしっかり感じ合う本庄。肌身離さず持っている。 **ひとはだ【人肌】** 人肌にあたたまった金物。人肌にあたためる(牛乳を。ミルクを)。人肌の懐かしい温もり辻仁。霧に白粉はいを包んだようなにおやかな人肌の気がすっと肩にまつわって項にょを撫でる泉鏡。人肌のように陽射しにぬめるすらりとした細い幹"真継。人肌程度に湯を冷ます。 **ふれる【触れる】** ▼触れる(指先が。性器に指を。神の怒りに。唇に。警察の目に。経歴に簡単に。心の温かさに。心の糸に。心の琴線に。事の真相に。重要な問題に。出生の秘密に。深奥な哲学に。青春の息吹に。男女の機微に。冷たい外気に。何の気なしに。肌に。話が細部に。話が要点に。人目に。法律に。頬に。問題の核心に。指先に。話題に。生きた社会の気に。家族のあたたかみに。大自然の営みに。短編小説の神髄に。びたびたと扉に。さわると壊れるものを扱っようにそっと手を=消水俊。薄い皮をゆっくり剥いでいくように男が女の軀。に直行。無遠慮に女の腰に"篠田。紙一重の隙もなくじかに血肉へ=山本周。裸の肩へ髪の毛がさやさやと=中沢)。核心に触れる質問。琴線に触れる美談。手を触れる(体に。実物に)。触れてもらいたくない傷口。折に触れて口にする。大地に触れて生きる野外の生活。直接肌に触れて感じる。痛い腹に触れられる。心の触れ合いが芽生える。人間の肌の触れ合いがあたたかい。▼触れ合う(肩と肩とが。肌と肌が。頬と頬が)。▼触れ合う音(じゃらじゃらと硬貨が。食器のかちゃかちゃ)。向き合った客の膝と膝がふれあうほど窮屈!佐多。触れたように(先に。すでに)。指一本触れることができない。▼触れ合わせる(グラスを。心の奨ぃだを)。肩を接する。▼接点(国民との。理想と現実の)。接触の機会が少ない。接触する(頻繁に。ガードレールに。不断に異民族と)。接触不良を起こす。▼触れない(一言半句も。一言も。爾来心。記憶に封印して人倉橋)。一度も手を触れたことがない。触さぁらぬ神に祟たたりなし。自分の悪いことは棚に上げる。指一本触れさせない。真相に少しも触れていない。触れてはいけない秘密。 <992> # ぼやける・眩む **いしきもうろう【意識朦朧】** 意識が(霧の中にある。混濁を続ける。鈍り朦朧とする。霧がかかったように澄のいていく=辻井。朦厳となるばかりに酔いしれる。意識に薄い窓もゃがかかる。体じゅうの血が甘くしびれたようにうっとり意識がかすんでくる"山手。夢まぼろしの中をさまよっているような気持ち=石川。前後不覚に(なるほど酔う。なって眠りに落ちる=小林久)。 **うすぼんやり【薄ぼんやり】** 薄ぼんやり(覚えている。見える。行灯はんのともった座敷)。提灯らいの光が薄ぼんやりと明るい。部屋が薄ぼんやりと暗い。空に薄ぼんやりとした星が散らばる。窓から薄ぼんやりとした光が差す。ランプの源ぼんやりした明かり。 **おぼろ【麗】** おぼろな(意識。記憶を辿たとる。月明かり)。夕弱い粉のおぼろな田。おぼろに(射し込む月光。話の中心点が掘っかめる伊藤整)。風景がおぼろに見える。容貌がおぼろに浮かぶ。愛しているのか憎んでいるのか境界線がおぼろになる=池井戸。 **おぼろげ【朧気】** おぼろげな(記憶。誇りを感じる)。おぼろげながら(覚えている。知っている。理解できる。様子がのみこめる)。消息がおぼろげながら知られる=田山。おぼろげに(見当がつく。察しがつく。知っている。記憶に残っている)。頭のなかに一つの景色がおぼろげに浮かびあがる=梅本。音のあいまいな霧がひろがるように遠い汽笛がおぼろげに伝わってくる三島。遠い汽笛がおぼろげに伝わる三高。輪郭をおぼろげに照らし出す=船戸。夢の中にでもいるように雪明かりが物の形を朧げに浮かび上がらせる=福永。おぼろげにしか(覚えていない。分からない)。遠い昔の記憶のように朧げにしかわからない芥川。 **かげろう【陽炎】** ▼陽炎(地上の花を暖かい夢につつんでとろとろとほほえましめる銀色の=中。日差しに暖められて立ちのぼる=柴田翔)。かげろうが立って遼い山が波打って見える=林京。野に陽炎が立つ。うらうらと陽炎が燃える=山手。河原一面の緑の草から陽炎がのぼって何だか限がくるめくように太宰。アスファルトが陽炎に歪がむ=横山。葉長條きらめく濃緑の森が陽炎に揺れる奥泉。人生は短いかげろうのようなもの井上ひ。淡い陽炎のような予感”夏樹。眼に陽炎のような希望の色が燃える=福永。たち並ぶビル群がかげろうのようにゆらゆらと歪んで見える猛暑中島み。目には見えない先生や友達の好意がかげろうのように周囲に燃えたっている=石森。陽炎のように光が立ち昇る=高千穂。剣が陽炎のようにひらめく海音寺。シルエットが陽炎のように目に映る=泉後。雪にぬれた家々の翌妙。から陽炎のように水蒸気がゆらゆらと長閑に立ち上る=長与。若やいだ円味と潤いと生々しさが陽炎のように立ち騰のほる=岡本。陽炎みたいにモヤモヤした空気が体に満ちる=島田。後ろ姿が陽炎みたいに揺れて見える=角田。 **くらむ【眩む】** 目もくらむ明るさ。▼目がくらむ(愛情に。食べ物の話に。光に。美貌に。愛に惑溺して怒りで。強烈な快感で。くらくらと)。▼目をくらませる(恐怖に。絶望に)。くらくらとめまいを感じる。限のくらむような大島崎。目もくらむような絶壁。目も眩むような栄光沢木。▼目がくれる(金に。欲に)。 **げんえい【幻影】** 無限大から無限小へ一足飛びに伸縮する幻影」佐藤巻。幻影が(ふっと消える。執拗にまつわりつく。脳裏にはりついている。青白い炎になる=畑)。幸福の幻影が消えない。幻影かと目を疑う。愛の幻影から覚める。幻影に(縛られて生きる。骨の髄までとらわれる)。消えかかる過去は夢同様に価の乏しい幻影に過ぎない!夏目。一日を幸福の幻影の輝きで充たす=柴田翔。まやかしの幸福の幻影の中に身を閉じこめる=瀬戸内。幻影を(追い払う。追って右往左往する"網淵)。想像力が幻影をこしらえる。燦然だんたる光芒の落ちた海上はるかな沖合を幻影のように一艘ごつの巨船がゆっくりと進む=柴田剣。電灯が幻影のように黄色い光を放つ=高橋和。 **げんかく【幻覚】** 幻覚が(現れる。おさまる。襲う。消える。瞼炷ぶの裏に現れる=中局多)。甘美な肉体の幻覚が心の中にうずくように波立つ極。幻覚かと目をこする。幻覚に(とらわれる。悩まされる)。自分を捕らえた猛々しい幻覚にわれながらおびえている=円地。幻覚を見る。幻覚症状が現れる。空耳が聞こえる。頼みを空耳に聞き流す。 **げんそう【幻想】** 結婚はそもそも欺隣だまを孕はらんだ幻想"玉村。幻想が無残に壊される。古い幻想が剣げ落ちる。幻想と現実が交錯する。理想は幻想に過ぎない。幻想の(幸福に酔う。世界を作り上げる)。大観音が淡い月光を反射して幻想のなかの光景のように浮かびあがる=志茂田。遠い幻想の国から一足飛びに現実に取って返す。有房。幻想を(夢見て桃源郷を望。容赦なく引っ剣がす―佐高)。過度の幻想を抱く。未来に余計な幻想を抱かない"井上ひ。理想の姿を幻想する。幻想的な(花明かり。夢)。こんな幻想的な光景にまさか現実でお目にかかれるとは思ってなかった三浦し。墨絵の中の幻想的な風景"藤田。虚像に惑わされる。白昼夢に襲われる。白昼夢を見る。 **しんきろう【蜃気楼】** ▼蜃気楼(熱い夢想の裡うちに翘望にいぅしていた遥かの"中村真。ゆらゆらと空中に浮かぶ倉橋)。頭にある計画が蜃気楼か古い版画のように迫力の薄い他愛ないものに見える=大佛。蜃気楼が(現れる。立つ)。忽然心として蜃気楼の如く出現する倉橋。蜃気楼を見るように目を見張る=佐藤 <993> 秦。姿がゆらゆらと蜃気楼のように現れては消える"久間。田圃畎んのど真ん中にまるで蜃気楼のように出現したマンモス団地の後藤。変電所の鉄塔群が蜃気楼のように見える=尾辻。青春の日々が不知火のように浮かんでは揺れる=飯田。前方のアスファルトの上に逃げ水が浮かぶ。とらえようとすると逃げ水のごとく遠のく村松。 **ぶれる** ぶれる(映像が。カメラが。供述が。発言が。ハンドルが。方針が。目標が)。手ぶれしている写真。 **ほうしん【放心】** 虐待された子供のように頼りなげな顔になって放心する=高橋和。放心した(視線を投げかける。目を宙に向ける)。いまにも目尻のほうから流れ落ちてしまいそうな目で放心したように見詰める=三浦苔。放心して床に座りこむ。なかば放心して視線をとめる。放心したように(日を過ごす。天井に目を向けている=陳。窓の外を眺める=沢木。焼け跡を見つめる=吉村)。悲心したように立ちつくす壺井。災心状態になる(悲報に接し。あまりの衝撃の強さに。事故を目のあたりにして)。▼放心状態(緊張の後に来る。非現実的なものに乗って時間や距離の思いも消え虚しく体を運ばれていくような=川端)。しばらくぼんやりと壁の一点を見つめている=遠藤。放心状態で車道に飛び出す。放心状態といっていいほどの疲労を感じる阿久。放心状態に陥る。 **ぼうっと** ぼうっとおぼろに光る。あたりがぼうっと明からむ。臉娃ょの奥がほうっと熱くなる。目がぼうっと曇る。油煙がぼうっと立つ。ランブの光がぼうっと照らす。霧が前の家の灯りをぼうっとにじませる"山手。頭の中がぼうっとする。熱でぼうっとした頭。遠くへ自分の心を放ったようにぼうっとする=長塚。 **ぼかす【愛す】** ほかす(曖昧に返事を。半ば照れたように答えを=曽野。まだ黄昏にになりきれない影があたたかい霧のように低く地面を"野上。太陽の明るさが霧を乳色に=新田。時折切れ切れの霧が窓をかすめて沿線風景を器絵のように内田康)。凍ったような層の厚い儒もゃが行く手の道路を蚴くぅずんだ灰色に暈す“野上。入れ墨のほかし。ほかしが入る。雲がばら色のほかし模様になる。ぼかしを入れる。わざとぼやかした返事をする。▼ほやかす(贈り主の名を。論点を)。 **ぼける【惚ける】** ▼ぼける(頭が。話の焦点が)。ピントがぼけた写真。最近とみにぼけてくる。ほけが(来る。進む)。ほうけた(声でつぶやく。笑いで応じる。鈍い目を浮かす)。魔術に打たれたように呆ぃぅけている=檀。呆けたように(キョトンと口を半開きにする=小林多。ふらふらと階段を昇る宮本が)。ほうけたように座っている。 **ぼやける** ほやける(頭が。記憶が。涙で視界が。愉郭が。白っぽく。景色が涙のなかに)。ぼやけた(印象しか残らない。対岸に灯影帆かがちらつく=本庄)。起き抜けのぼやけた顔。ぼやけていく(おぼろげに。急速に。霧の中に。だんだん)。あやふやで隴月夜店部以のようにぼやけている=阿木。▼かすれる(インクが。光が)。 **ぼんやり** 話がピンぼけ。ピンぼけの写真。ぼんやりぼんやり(外を眺める。立ちつくす。宙を見つめる。話を聞く。突っ立っている)。いつもぼんやり何か考えている。焼け跡にぼんやり立つ。呆気忱。にとられたようにぼんやり立ちすくむ芥川。今までてきばき動いていた人間が急に人形に変わったようにぼんやり突っ立っている=黒。夢から醒めたようにぼんやり眺める=円地。ぼんやりと(煙が空を覆う。空を見上げる。話に聞き入る。春霞がかかる。明かりが点いている。意識の端に浮かぶ。川の流れを眺める。記憶がよみがえる。視線を遊ばせる。人影が浮かび上がる。物思いにふける)。あたりが間接照明にぼんやりと包まれる。月がぼんやりと浮かぶ。目の前がぼんやりと霞む。うつけたようにぼんやりと目を見開く掘。遠くを流れる雲を眺めている時のようにひどくぼんやりとする=村上春。日がな一日ぼんやりと時を過ごす「加賀。幽霊のようにぼんやりと見える丸谷。ほんやりと浮かび上がる(輪郭が。街路灯の明かりが藤田)。ぼんやりする(頭が。意識が。記憶が。視界が。筋道が。手を休めて。物足りぬ思いに。頭の中が靄もゃがかかったように"日野。釘づけにされたように=武者小路)。ぼんやりした(印象の少女。春特有の空。目で眺める。注意のとどかない男“石川)。雨の膜のむこうのぼんやりした風景」鷺沢。硫黄のほのおのようなくらいぼんやりしたあかり“宫沢。疲れを帯びたようなほぼんやりした目つき=掘。ぼんやりしたまま百メートル以上歩く。狐につままれたようにほんやりしている=住井。寝不足の頭のようにぼんやりしている早朝の空気"安岡。霧のかかったような顔"黒井。夢見ては目覚め、目覚めては夢見る、だまし絵のような時間を過ごす人間。うすうす気がついている。事情がうすうす分かる。事情をうすうす察する。腹の中がうすうす読める。声がうっそりと陰気に響く。月明かりの中にうっそりと立つ廃屋。混濁した頭。意識が混濁して気絶する。座敷に一人でつくねんとしている。膝を抱えてつくねんと遠い山を見る。ぼけっと突っ立っている。ぼさっとして財布をすられる。ぼさぼさしていると(取り残される。乗り遅れる)。ぼやっとした綴。無感動な目を向ける。模糊と隠見する緑の山々。模糊とした(意識。歳月。伝説)。夢ともうつつとも知れない音楽的な錯覚に陥る=有島。夢とも現っっつともわからぬ恐怖におびえて眼を覚ます」曽野。夢とも現っっともつかない世界を彷徨いらしているような気持ちで過ごす“新田。夢とも現実ともつかぬ異常な風景の光瀬。不鮮明で見にくい。不鮮明な印刷。暗い不鮮明な写真。▼不鮮明になる(映像が。視 <994> 界が)。発音が不明瞭でほとんど聞き取れない=加賀。意味が不明瞭な言葉。不明瞭に答える。薄いベールを通して見るような光景"かんべ。ぼやぼやしていると(乗り遅れる。置いてきぼりにされる)。ほやほやしてはいられない。 **まぼろし【幻】** 幻が(現れる。消える。目に浮かぶ。頭上に重くのしかかる。まなつらによみがえる=津本)。幻から現づっへ覚める。幻でも見ているような錯覚に囚とらえられる=中局。ありもしない幻におびえる。夢にも現ぅっつにも幻に焼けこがされる=坂口。幻の(手が働く。中に逃げ込む)。幻を見たようなあやしい気分が胸をかすめる=藤沢。往来の人や車が幻影のように現れては幻影のように霧のうちに消える=国木田。白昼の幻のような光景"石坂。人気忙とのない白い幻のような校舎"阿部。姿がまぼろしのように夕闇のうちに消える=国木田。幻のように現れるか現れないかわからない結婚相手を待って自分の人生をそのままやり過ごす干刈、霧をこめて腕にな電気灯の光が斜めに射し大男の影を幻のように映す=国木田。暗く沈んだ鏡面に幻のように自分の影が映る島尾。鳥が雨にかすんで遠く幻のようにぼんやり見える三浦裟。城が霧の中に幻のように浮かぶ=山本周。山々が遠く幻のようにかすむ光瀬。風が吹けば桶屋徳けが備もうかる式にイリュージョンをつないでいく宮本鋼。幻像がたわいもなく消える。幻像を払いのける。丘の夢幻的な緑を形づくる雑草=大岡。何事も夢まぼろしと思い知る。夢まぼろしの世の中。夢まぼろしの如き人生。夢まぼろしのような話"佐藤系。夢幻のよっにすっっと消える=梅本。 **めまい【眩暈】** ▼めまい(不気味で甘美な"日野。自分を支える現実がゆらぐような「山田太)。高い所から見下ろすときの眩暈=梶井。眩暈がするほどの興奮=岡本。もうと白い湯煙を噴き上げる=有吉。▶濠々と立ちのぼる(砂埃けに日が。白煙が)。湯気が濠々と(立ちのぼる。立つ)。▶濛々とする(人々のいきれが。風呂場が湯気で)。 **もうろう【朦朧】** 朦朧たる霧に包まれる。朦朧と(淀んだ酔限。目の中まで霞んでいる疲労」瀬戸内)。すべてが朦朧と濃い霧に隠される。▼朦朧とした状態(寝起きの時の。疲れと酔いでなかば=西木)。睡眠不足のために朦朧としている頭"大庭。朦朧の海に漂う藤本。朦朧とする(頭が。視界が。声低く濃霧のかなたでせせら笑われているように"開高。古めかしい画像のように谷崎)。記憶が朦朧となる。 **もやもや** もやもヤ迷った心残りがはけ口を見つけた風に元気づく=川端。火を付けたらこころよく燃えそうに乱れ立ったモヤモヤ頭の幸田露。頭の中のもやもやが晴れる。胸にもやもやが広がる。胸の中のもやもやが消えない。心の中のもやもやがきれいに吹き飛ばされる=庄野。もやもやと(霧がかかる。迷った心残り。湯気が立ち上る。暖かい春の夜の雨=檀)。胸中にあるもやもやと鬱積した思い。頭の中が何だかもやもやと曇ってくる谷崎。胸のもやもやを発散する。もやもやっとした胸の固まりがすっっとする=石森。もやもやした思いを抱え込む。四月の末のもやもやした季節の感触。はけ口のないもやもやした気持ち。自分がはかない影のようなもやもやしたものになってしまい文字通り無になって行く。小局。 **ゆめうつつ【夢現】** 戦場での出来事が夢現に浮かび上がる奥泉。▼夢現に聞く(声を。言葉を。物音を)。夢現の(境を漂う。波間を漂う)。声が夢うつつの耳にとびこんでくる=杉本。深い沼の底に引き入れられるように夢うつつの境に沈んでいく!白洲。夢現のごとくあれこれと思い描く横光。夢現のような疲れた心"徳田。夢現のように弱々しい声を出す芥川。 <995> # 曲がる・折る **おりかえす【折り返す】** 折り返す(ズボンの裾を。袖口を。ページの隅を)。▼折り返し(袖の。文字列の)。折り返し返事がある。五十歳を折り返し点として別な人生を生き始める。人生の折り返し点まで来る。折り返し点を(通過する。迎える)。掛け布団の緑を折り込む。 **おりまげる【折り曲げる】** ▼折り曲げる(足を。腕を。腰を。膝を。指を。上体をくの字に。長身の体を心持ち。頭が膝につくほど体を"辺見。海老えびのように身を=綾辻)。折り曲げて立てた膝が苦しいのではないかと思うほどの小太り“高橋治。前かがみに(体を丸める。背を曲げる。せかせかと歩く)。森の中を前かがみになって前進する。前かがみの(姿勢で歩く。せかせかした足取り)。 **おる【折る】** ▼折る(足を。腕を。折り紙を。紙で兜けぶを。首の骨を。高慢の鼻を。上体を。千代紙を。直角に体を。直角に腰を。歯を。ぼきんと棒を。無駄骨を。割り箸を。体をくの字に。窮屈そうに。枝をぼきき。がっくりと膝を。ばったりと筆を)。▼腰を折る(相手の話の。決断の。深々と)。▼二つに折る(腰を。棒を。身を、ぼっきり)。粗朵だを折ってくべる。膝を折ってしゃがみこむ。指を折って数える。腰を折って深々とお辞儀する=辺見。筋目をつける。十分に折り目のついたズボン。身体を二つに折って最敬礼する『萩原葉。びしりと語尾を折るような喋心『り方五木。折り取る(枝を。草花を)。▼手折る(枝を。小枝を。花を)。▶叩き折る(瓶の口を。棒を。骨を)。 **おれまがる【折れ曲がる】** ▼折れ曲がる(廊下を。ジグザグに。直角に。道がくねくねと)。波の屈曲が月の光に似た小島)。めまいが(して足元がふらつく。しそうな甘美な世界。京野)。貧血でめまいがする。じっと見続けているとめまいがしそうなほど深く清らかな黒色=小川。善意の氾濫はんに目まいがしそうになる小鳥。めまいがしそう(くらくらと。まぶしくて。気持ちが悪くなって)。眩暈がしそうな暑さ=大阪。精神的眩暈から立ち直る=高見町。怪いめまいに襲われる。新しい生涯にすべり落ちる時のめまいに似た不安梗。目まいに似た戦慄が身内を走る=船山。しめつけられるような眩暈に総毛立つ=安部。めまいを(起こして倒れる。誘い出すような疲労感"伊藤整)。流れる水にめまいを起こす。眩暈を感ずるほどに上気する=有島。ちょっと覗のぞいただけでたちまち眩暈を感じるほどの高さ=中島敦。▼眩暈を覚える(頭に血が上って"貫井。休が吸い込まれるような=貫井。立っているのが苦しいほどの"阿刀田)。周囲がぐるぐると回転しで地面が沈みこんで行くよう。赤川。東西南北が一つの鉢の中ですり混ぜたように混沌とする有局。眩暈のような(恍惚感に妙に。陶酔)。急に立ちくらみが来る。目の眩がるくような急流。幸田露。目が回るほど忙しい。慣れない豪華な星空に目がまわってくる三浦し。眼がまわって星が乱れとぶ=開高。動悸がして目がまわりそう“中。眼が回りそうになるほど壮絶この上ない速力に身をゆだねる=中河。天井がぐるぐる回る。めくるめく日の光。恨くるめくような官能の欲び!柴田刑。目くるめくような傍若無人の明るさ=武田飛。 **もうもう【漆漆】** 渋々たる土煙が舞い上がる=なかにし。濛々と(渦巻く砂煙。立ちのぼる黒煙。吹きつける土煙)。煙突から濛々と煙を出す。霧が漂々と立ちこめる。煙が濛々とこもる。煙を濠々と吐き出す。噴煙が濛々と上がる。湯気が浴室に濛々とみなぎる。トラックが濛々と土煙をあげて走る"伊藤整。湯がもう **カーブ** カーブにさしかかる。カーブを曲がりそこねる。オートバイが技を競うようにゆるいS字状のカーブを曲がる“干刈。線路がカーブを描いて走っている=江戸川。カーブを描く(なだらかな。ゆるく大きな。ゆるやかな。道がU字型の)。コンバスで描いた弧。道がくねくねとカーブする。急カーブで(漁獲量が減る。減少する)。知名度が急カーブを描いて上昇する=五木。きれいな放物線を描く。鮮やかな直線と曲線で区画された田畑が延々と続く風景は一幅の名画さながら=奥泉。雄渾ぶ心な曲線の屋根をのせた仏殿高橋治。底がたわんで曲線を描く。優美な女性的山線萩原朔。弧を描いて飛ぶ。二羽の鳶とぃが弧を描く。落ち葉が弧を描いて落ちてくる。ゆるく弧を描いている道。▼弧を描く(渚が白く。眉がやさしく。空が抜けるように高く果てしない=石坂)。湾曲した海岸線に沿って並ぶ外灯と街明かりがコンパスで描いた弧のように数キロも連なる=泉優。大きく弧線を描いて海上の空にあらわれた虹島崎。 **かがめる【屈める】** ▼かがめる(恐懃んに腰を。体を。小腰を。背を。上体をくの字に。手足を缨かにのように=山本円)。身をかがめる(窮屈に。ぴくっと。猿ぼしのように)。▼ここめる(小腰を。腰を。身を)。▼折り屈める(体を。腰を。長身を)。 **かんせつ【関節】** 関節が(錆びたようにぎこちなくきしむ=加賀。ばらばらにはずれていってしまいそうな頼りなさい。ぼきばきと音を立てる=京野)。あちこちの関節が痛い。体じゅうの関節が悲鳴をあげる。肩の関節がコキコキ音を立てる=岡田。熱っぽい関節に油が切れたような妙な気分安部。寒さに泌しみる関節の疼痛2=徳永。やおら腰をのばすとギギーッという関節の悲鳴が聞こえそう~飯田。首を左右に倒して関節を鳴らす。外れた関節を元に戻す。体中の関節をきしませるように小さくなって木戸をくぐる有吉。指の関節が折れ砕けるほど強く握りしめる"光澈。指の関節をぼきほき折り鳴らす。▼脱臼する(顎を。肩を。膝を。肘を)。体の節々が(痛む。しびれる)。骸骨のように節々が鳴る"永井龍。骨っ節が痛い。 **くねる** ▼くねる(草いるが。波が。道が。にょろにょろと)。国道が山を割るようにくねってついている中上。▼くねくねさせる(体を。手足を)。▼くねらせる(肩を。腰を。体を左右に。ぐにゃぐにゃと身を。なまめかしく体を。ヒッブを小刻みに)。裏道をくねくねと器用に通り抜ける。体をくねくねと動かす。道路が磯沿いにくねくねと走る。芋虫のようにクネクネと進む"北。くねくねした(体つき。狭い道)。 **こっせつ【骨折】** ▼骨折する(足首を。足を。腕を。頭蓋こっせつ骨を。手首を。膝を)。骨折した足をかばう。折る(足の骨を。あばら骨を。背骨を)。 **さお【竿】** 竿がしなう。竿にてぐすを結ぶ。竿を(肩に担ぐ。巧みに操る。斜めに構える。収めて引き揚げる)。砂浜に竿を立てる。ぴゅっと竿を振るう。舟が竿を弓のように張って流れを遡って行く=田山。鹿が驚いて一度に竿のように立ちあがる"宮沢。跳ね上がるように竿先が震動する!奥泉。竿先で魚が躍る。 <996> ジグザグ 右に左にジグザグ運動をする。ジグザグな線を描く。ジグザグに(コースをとる。空中を舞い飛ぶ。人の波をかきわける=荻野)。うねりがジグザグになる。稲妻が雲をジグザグに引き裂く=堀。木々の間をジグザグに縫うようにロープが伸びる=池澤。路地から路地をジグザグに縫って走る=宫本邮。ジグザグの小道を登る。ぎざぎざした細かい切れ込み。ぎざぎざな(岩礁。刃)。 **しなう【撓う】** 「しなう(竿さぁが猛烈に。樫かしの並樹誌が鋼鉄のような弾性で=梶井。白い両掌いりにの指が組み合わされゴム製器具のように「武田泰)。杉の木が雪の重みに耐えかね大きく谷側にしなってしまう三浦し。▼しなる(木々の枝が。竿の先が。全身がばねのように)。▼しなわせる(体を力いっぱい。体を洋弓のように小林久)。 **しなやか** 若者の体が獣のようにしなやか!丸谷。しなやかで芯が強い女性。体内に鋼のようにしなやかで強欲にに、うなものが張りつめるのを感じる小林久。弓のようにしなやかで勁っょい子落合。しなやかな(脚の線。身のこなしで歩み寄る)。革のしなやかな鞭もう長くしなやかな指。優雅でしなやかな歩き方。背中から腰にかけての鞭のような強級でしなやかな線森環。娘のようにしなやかな体つき「安部。鞭のようにしなやかな体猟にぃ"山田風。牝鹿やじのようにしなやかな少女の身体菊池。しなやかな手(白い。細い)。しなやかに(手足を動かす。手が往き来する)。枝がしなやかに伸びる。髪がしなやかに垂れる。木々の枝がしなやかに広がる。体がしなやかに晴れ晴れと動く=日野。視線がしなやかに受け止められてから濃く絡みつく=日野。しなやかさに(欠ける。富む)。嫋々じょうたる(媚態た。柳の枝)。しんなりと細い指。たおやかな女の肩。黒くたおやかな髪。たおやかに(身を構える。柳がしなう)。 **そらす【反らす】** ▼反らす(ぐいっと背を。唇を。昂然むらと項い”を。背を。身を。体を弓なりに。頭を後方へぐいっと)。後ろに反らす(頭を。体を。腰を)。胸を反らす(自信満々に。得意そうに。傲然と)。 **そる【反る】** 反る(後ろに。弓なりに。上半身を後ろ側に。細い指がしなやかに。背筋が弓のように=勝目。手や足が引き締められるように後ろへ長塚)。伸のるか反るかの土壇場!舟橋。昂然だらと首を反らす。反り返って歩く。▼反り返る(尾がびんと上方に。身を退くように"本庄)。 **だこう【蛇行】** ▼蛇行する(道が山裾を。流れが植物群の凹を。川が市街の中心を"高樹。峡谷の底を流れる川が一条の光る糸となって=新田)。海沿いに蛇行する道。ゆるやかに蛇行する川の流れがきらきらと輝く三浦紋。道が緩やかに蛇行している。蛇行しながら進む(松明封かの火が。右に左に。小さく)。男の指先が爬虫類の蛇行のように肌の上を這う“丹羽。蛇のように曲がりくねる!有鳥。 **たたむ【畳む】** ▼たたむ(傘を。着物を。暮らしを。洗濯物を。店を。厚誼ごうを胸に。新聞を丁寧に。てきばきと布団を。広げていた新聞を。疑いを胸一つに。新聞紙を手荒く。スカートを折目正しく。縫い物をきちんと)。▼小さくたたむ(紙片を。手紙を)。石でたたんだ満。テントをたたんで引き揚げる。折りたたむ(洗濯物を。ばさばさと新聞を。紙を大事そうに。ハンカチを丁寧に)。地図をたたみ込む。 **たわむ【撓む】** ▼たわむ(板が。枝が。竿さぁが。竹が。電線が。マストが。道が。ローブが)。木々が苦しげに風に挖たぁむ=田辺。小枝がたわんでびしっと体を打つ=日野。体が弓のようにしないたわむ=瀬戸内。▼たわめる(枝を。竹を。茎をじわじわと)。 **のけぞる** のけぞる(仰向けに。後ろに。弓なりに。ガンと殴られて痙攣がいても起こしたようにぐっと"加賀。平手うちでも食ったかのように大きく=小林久)。のけぞるほど驚く。殴られでもしたようにのけぞりながら一歩退く荻野。▼のけぞらせる(顎を。頭を。上体を。背を。反射的に体を。身を)。のけざまに(倒れる。飛ぶ)。 **ひざ【膝】** 膝が(がくがく震える。脱力したようにがくがくする"五木。ソーセージのように弾力のある膝、永井龍。つきあうほど用近にちょこんとすわる=中)。立ちすくんだ膝がわなわなと震える。がくんと膝が折れるほどの疲労を覚える芝木。服の膝が濡れ透るほど泣く=里見。膝から(崩れ落ちる。力が抜ける。床に崩れる。すっっと上に撫なで上げる)。膝で(いざり寄る。にじり寄る)。膝に(すがって泣く。力が入らない。手を置く。疼痛とりが起こる。目を落とす。両手を突っ張る。触らんばかりの崩れた態度"司馬)。拳を膝に置く。猫を膝に抱く。ナブキンを膝に敷く。猫がのっそりと膝に上る。毛布を膝に掛ける。膝に手をついて(お辞儀をする。立ち上がる)。▼膝に乗せる(子供を。ハンドバッグを)。膝の(屈伸をする。出たズボン。震えが収まる。上でぐっとこぶしを握る。故障で引退を余儀なくされる)。赤ん坊を膝の上に乗せる。心地よいお母さんの膝の上。視線を膝の上に落とす。地図を膝の上に広げる。両手を膝の上に揃えて置く。糸が切れたあやつり人形のように膝の力がぬける=西木。膝まで雪に没する。ズボンを膝まで下ろす。膝を(ぼんと叩く。枕にする。きっちりと合わせる。ぎゅっとつかむ。乗り出して聞き入る。叩いて大喜びする。ついてお辞儀をする。伸ばして大股に歩く。交えて清談を楽しむ。抱えこむほど窮屈な場所長野。かかえるように丸くなって軽い寝息をたてている=安部。叩かぬばかりの怒り方:山本用。つきつけるように近よる= <997> 本庄。割るように坐すゃる=円地)。男に膝を貸す。痛む膝をさする。思わず膝を乗り出す。軽く膝を曲げて挨拶をする。きちんと膝を揃えて座る。ぐらっと膝をつきかける。ここぞとばかり膝を進める。そわそわと膝を動かす。つんつんと膝をつつく。ばたばたと膝を払う。母の膝を枕に眠る。一人つくねんと膝を抱いている。床に膝を落として泣く。横座りに膝を崩す。おずおずと土の上に驢馬ぁばのように膝を曲げる=遠藤。膝を打つ(しめたと。ボーンと)。▼膝を折る(窮屈そうに。がくっと)。▼膝を叩く(拳で力任せに。そうかと。はったと。ぼんと)。▼膝をつく(地べたに。地面に。がくりと。力なく。へなへなと。がっくりと床に。部屋の敷居際に。のめりこむようにして。体力のつきた馬のように両足をふにゃふにゃと折って"野間)。ボロ船のウインチが脚気かっの膝のようにギクシャクとしている=小林多。小隊を(打つ。進める。叩く)。膝丈まで草が茂る。 **ひざこぞう【膝小僧】** 膝小僧が震えるほど感激する"有吉。部屋の隅っこでひざこぞうを抱えて寝る=灰谷。フットボールを二つ並べたほどの膝頭=安岡。膝頭が(細かく震える。がくがくと震える。小刻みに震える)。円い膝頭が指環》びの蛋白石けんのよう“川端。膝頭まで水につかる。膝頭を揃えてかしこまる。震える膝頭を両手で押さえつける=高杉。 **ふたつおり【二つ折り】** 二つ折りにする(体を。原稿用紙を。座布団を。布団を。ボール紙を)。きっちり四つに折る。▼四つ折りにする(紙を。布を。ハンカチを。毛布を)。 **へしおる【へし折る】** へし折る(足を。腕の骨を。腕を。枝を。首っ玉を。首を。煙草を。鼻っ柱を。鼻を。前歯を。心を無残に)。腕の一二本もへし折ってやる=乃南、へし折れる(腕が。体が。首の骨が。棒が)。 **まがりかど【曲がり角】** 曲がり角に(さしかかる。ばっと影がよぎる)。暗がりの中で突然曲がり角に行き当たったようにぎくりとする。安部。▼曲がり角に立つ(人生の。文明史の新たな。安部)。車が曲がり角のガードレールに鼻面を突き立てる=松浦。曲がり角を(左に折れる。曲がる)。いくつかの曲がり角を抜ける。角を(左に曲がる。右に折れる。右に曲がる)。一行が角を曲がる。無理なスピードでコーナーに突っ込む"泉受。きついコーナーを回る。最終コーナーを曲がる。 **まがりくねる【曲がりくねる】** ▼曲がりくねる(樹の幹が奇怪な模様に"真継。一筋の道がミミズみたいに=辺見。道が迷路のように=島尾)。曲がりくねった(山道を歩く。模様がびっしりと刻みこまれた青銅の界幼な=日野)。アップダウンのある曲がりくねった道篠田。▼幾曲がりかする(川が。道が。町筋を。路地を複雑怪奇に)。根性がひん曲がっている。鼻がひん曲がりそう。 **まがる【山がる】** ▼曲がる(腰が。交差点を。辻を。街角を。道を。緩いカーブを。横丁を。四つ角を。廊下を。路地を。鉤かぎなりに。直角に。角を二つほど。ぐにゃっと。道が大きく。一行がぞろぞろと角を。足首がくにゃりと。煙が上で折れ釘のように=大岡。腰が海老えびのように=梶尾)。稲妻型に曲がるいくつもの横町岡本。山裾に沿って曲がる道「清水義。左に曲がる(突き当たりを。通りを)。曲がった(ことが大嫌い。根に足をとられて転げる)。くねくねと曲がった道。くの字に曲がった土手の小道。口がへの字に曲がっている。▼口が曲がりそう(しょっぱくて。苦くて)。悪臭で鼻が曲がりそう。路地の角を曲がりかける。竜の落とし子さながらに大きく反り曲がる=井上靖。根性がねじ曲がった人間。▼ねじ曲がる(感情が。心が。かがむ(体が。腰が)。鉤の手に曲がっている道。 **まげる【曲げる】** ▼曲げる(骢馬ろはが膝を。ぐにゃりと。馬が首を弓なりに。白い首を愛らしく。汗臭いシャツの匂いに鼻を"伊集院。海老流ぃのように体を!柴田剣。腕を花瓶の把っ手に。のような恰好跡に!佐藤奏。身体をエビのことくに=坂口。体を蝦、えびのように島尾。背中を老人のように丸く椎名約)。指先を鉤形に曲げる。「くの字に曲げる(腕を。体を)。窮屈に膝を曲げて座る。口を曲げてののしる。▼曲げて笑う(唇を。口をへの字に)。節を曲げないで正義を貫く。ねじ曲げる(解釈を。首を。心を。上半身を)。体をねじ曲げる(窮屈そうに。おかしな格好に)。事実をひん曲げて伝える。苦痛に顔をひん曲げる。へし曲げる(腕を。鼻っ柱を。不快そうに唇を)。▼屈する(節を。膝を。身を)。竹を矯める。 **ゆみなり【弓形】** 弓なりに(たわんだ背中。連なる断崖。半円を描く。高い石垣が築かれる=島尾)。体を弓なりに反らせる。砂浜が弓なりに続く。台地を弓なりにくりぬく。消防ボンブが斜めに弓形の水を立てる=川端。壁は白い漆喰いで高めの天井は流麗なアーチ形三浦し。▼湾曲する(海岸線が。背中が。ゆるやかに。大きく)。岸に沿って湾曲した防波堤。弓のように湾曲した浜遠藤。 **りょうひざ【両膝】** 両膝ががくがくと震える。両膝に顔をうずめる。両膝を(抱いて座る。ぎゅっと締め合わせる。しっかりと抱きかかえる。手で叩いて立ち上がる)。その場にくずれ落ちるようにして床に両膝を突く勝目。 <998> # 巻く・絡まる **おび【带】** 闇の底を焦がして燃え盛る火の帯=真縦。の帯がくっきりと闇を掃く三島。青い水の帯が走る=井上靖。懐剣を帯に挟む。天の川が白い帯になって光っている=辺見。煙草入れを帯に納めるッ永井街。だらりの帯の舞妓ぶい。▼帯を締める(お太鼓に。胸高に。山が霞の。金魚の尻尾みたいにふわふわした三浦し)。息がつけないくらい帯をきゅっと締める=永井術。博多の帯を小粋に締める=柴田錬。帯の解かれるときの蛇の威嚇のような鋭い音三島。帯を貝の口に結ぶ。メビウスの帯の如く終わりのない関係!桐野。帯のように一筋の道を挟んで左右に家が並ぶ"山本周。黒い血が死体から帯のように流れる遠藤。額に細かい汗が帯のようにひろがる=小林久。めまいがするほどに永い、手繰りきれない白い帯のように永い年月"三島。山にせまられて帯のように細い領地=海音寺。京都の舞子の帯のようにだらりと結んだ赤い半幅帯川端。しゅうしゅうと泣くように鳴る博多帯をきゅっと結ぶり宮尾。しこきを(締める。襟むけにする)。 **からまる【絡まる】** ▼絡まる(ロープが。蔓っるが木に。匂いがねっとりと。二人の視線が細のように捻ねじれて=獅子)。もつれた糸のようにからまる=佐藤多。円柱に昼顔の変が絡まっている。▼絡まり合う(気持ちが。視線が。紐ぃもが)。喉許のとに瘀たんがからまったような声=有吉。絡まるような粘るような甘い調子の声=中村真。▼絡まり付く(ローブが。紐が袖に)。▼裕まりつく(暗い陰影のようなものが身体のどこかに松本。溺もゃが足に冷たく=原田康)。 **からむ【絡む】** ▼絡む(足に草が。相続の問題が。喉に痰たんが。事情が複雑に。毛髪が櫛くしに。酔いに任せて。さまざまな事件が。言葉尻を捕まえて。酔うと誰彼なく。二人の視線が甘く=内館)。喉に絡む声を押し出す。ふと絡みたくなる。性に絡んだ暴力。人情に絡んだ犯罪。ねちねちと絡むように言う落合。絡みついて離れない(体に。記憶に)。絡みつく(蜘蛛くもの糸が。糸が手首に。蔓草いるが足に。十重二十重に)。▶からみつく(歌声が赐々にいうと心に=島尾。朝顔の変の名残が針金のように“阿久)。絡みつくような(視線。質問)。ねちねちと絡みつくような執拗さ=船山。絡みつける(体を。指を。両足を)。 **からめる【絡める】** ▼絡める(腕を。酢味噌を。蔦ったを。細を。祉ぃもを、指に糸を)。▼絡ませる(腕を。変っるを。指を。マカロニにソースを。ボールをビンに)。熱い息を耳たぶにからませる=大江。▼絡ませ合う(小指を。視線を)。体を絡み合わせる。 **しぼる【絞る】** 絞る(相手を一人に。神経を一点に。タオルを固く。最小限の仕事に。目的をひとつに)。あえぎあえぎしゃがれ声をしぼる=杉本。乳を搾る。ない知恵を絞って考える。脳味噌を絞って考え抜く氷室。領民の膏血にうをしぼりあげる=柴田泌。▼絞りつくす(力を。涙を)。▼引き絞る(馬の手綱を。山の閑寂が心を。弓を満月の如くに)。 **しめる【締める】** ▼締める(きりりと紐ひもを。帯をお太設に。帯を胸高に。きちんとネクタイを。ネクタイをだらしなく。歯で元結をきゅっと)。▼固く締める(財布の紐を。ベルトを)。▼締め込む(袖を。釣り糸を。まわしを)。▼締め直す(帯を。史跡”の緒を。ネクタイを。ねじを。ふんどしを。ベルトを。ゆるい風呂敷包みをきつく三島)。胸にひしと抱きしめる。▼つかみ締める(太刀を。袴玆ゃを)。膝に置いた手を握り締める悲合。きりっと表情を引き締める。 **たすき【欅】** 水筒と雑蛮をたすきがけにする。たすきで袖口をたくし上げる。絶妙ばを首からたすきにぶら下げる。たすきにかける(胞を。水筒を)。たすきを(斜めにかける。十文字にかける。回して着物の袖を絞る=熊谷)。甲斐甲斐紛いしくたすきをかける。次の走者にたすきを渡す。 **ねじる【捩る】** 肩を心持ち斜めにねじる。一筋縄では元に戻せないような複雑なねじくれ具合!藤田。言い方がいやにねじれている。幸田文。関係が奇妙にねじれる。腹がねじれるほど笑う。身がねじれるほど辛い森現。ねじれるような胃の痛み三田。赤子の手をねじるようにひねりつぶす富岡。ねじ上げる(腕を。手を後ろに)。ねじ向ける(体を。首を。上半身を)。ねじり上げる(腕を。手を)。 **はちまき【鉢巻き】** 鉢巻きをきりりと締める。手拭はちまいを鉢巻きにする。ねじり鉢巻きで(太鼓を叩く。勉強する)。ねじり鉢巻きをしたいなせな若衆。 **ひねる【捻る】** ひねる(しきりに髭ぃげを。水道の栓を。はてと小首を。ひょいと身を。水道の蛇口をきゅっと)。赤子の手をひねるよりたやすい玉村。頭をひねる(対策に。難問に)。▼首をひねる(訝かぶしげに。自信なさげに)。▼腰をひねる(軽く。きゅうっと)。ひねくった表現。もう一ひねりが必要。首を一ひねりする。火にかざしたするめのように床の上へひねくりかえる=小林多。ひねくりまわす(杯を。知恵の輪を)。愛びんをひねくる。▼ひねりまわす(扇を。ひげを)。 **ベルト** ベルトで座席に固定する。手足をベルトで拘束する。拳銃をベルトに差し込む。ベルトのバックルをしごく。ベルトをきっちりと締める。腰にベルトを巻きつける。ベルトコンベアで運ぶ。ベルトコンベアに戚せる。バンドを(きつく締める。巻く。ゆるめる)。 **ほうたい【包帯】** 包帯が痛々しい。包帯でぐるぐる巻きにする。包帯を団子のように巻き直す藤枝。頭に痛々しいほど白く包帯を巻かれる=乃南。▼包帯を巻く(足に。頭に。大げさに。小指に)。ぼろ布で包帯のようにぐるぐると巻く萩原葉。ガーゼを(取り替える。傷口にあてがう)。▼テーピングする(肘に。太ももに)。バンデージを(外す。巻きつける)。 <999> でぐるぐる巻きにされたような拘束感が残る加賀。▼コイル(電線を巻いた。モーターの)。コイルに(電流が流れる。電流を流す)。鉄片がコイルに吸い着く。コイルを巻く。 **まつわりつく【纏わり付く】** ▼まつわりつく(幼い娘が。蜘蛛くもの巣が。屈託が全身に。青白い明かりに娘がが。悩ましい気分が。冷たさが肌に執拗に。メロディが耳もとに囲々にいうと島尾)。逐ょわれても主人のあとを慕う小犬のようにまつわりついて離れない武田拳。子どもが小犬のようにまつわりついて遊ぶ石川。側にはを片時も離れない。執拗にまといついて離れない。下半身に痺しびれたような熱い感覚がまとわりついて離れない=黒井。▼まといつく(襟が肌に。べっとりと暗さが。落ち葉の音が足元に)。体にまとわりつく(気が。熱気が)。▼まとわりつく(鼻腔びこに異臭が。猫が足元に。髪の毛が額に。冷気が肌に。電話の声が耳に。むっとした熱気が顔に"乃南)。 **まつわる【纏わる】** 金のモールが徽章の上下にのびやかに繋索拙いのようにまつわっている三鳥。▼まつわる(髪が。暗い影が。煙が。袖が。蔓草もが。音が耳に。肌に)。山頂にまつわる絶雲。女性関係にまつわる噂。▼まつわって離れない(頭に。体に)。 **よじる【捩る】** ▼よじる(体を左右に。芋虫のごとく身を!若竹)。▼身をよじる(苦痛に。嫉妬に)。身をよじって(絶叫する。泣きくずれる。笑い転げる)。お腹をよじって笑う。屈辱に身をよじらせる。下着が柿の皮をむいたようによじれて吊りさがっている=林天。よれよれによじれた襟元。▼よじれる(密かな笑いに口角が。大木がめりめりと)。蛇口から水がよれて垂れる。着物が布海苔ふのみたいに縦はれる=吉川。 **より【縒り】** よりの強い糸。昔の妻とよりを戻す。縒りを戻す究竟以”』の時節到来!舟橋。よりをかける(糸に。毛糸に。紐ぃもに)。腕によりをかけて(工夫する。料理をつくる)。 **よりあわせる【縒り合わせる】** より合わせる(糸を。ケーブルを。繊維を。鉄線を)。・憎しみと復讐心ふいん。を縒り合わせた繊維のような血の通わない指一本で結婚にぶら下がる!高樹。▼あざなう(糸を。繩を。紐ぃもを)。 **よる【縫る】** ▼縒る(糸を。手拭いを。藤の皮を。石油ランブの芯を)。何本かの糸を縫って紐いもを作る。絢ない込む(紙を。布切れを。わらを)。わら組を絶う。冬の長い夜な夜なを縄を絢うたり草鞋を編んだりして夜を更かす。佐藤春。絢うように二本の指先を重ねる=里見。冬の蠅の腹が紙縒こぶりのようにやせ細る=梶井。紙捻にはを植えたような桑畑長塚。 **らせん【螺旋】** 傾斜の急な螺旋階段。螺旋形ちんを描いて次第に中心に近づく=日野。螺旋状に(ぐるぐると巡っている。ぐるぐる巻きになる)。裸の電灯が細長い螺旋棒をきりきり限の中へ刺し込んで来る梶井。 **わだかまる【蟠る】** ▼わだかまる(意識の底にコンプレックスが。不愉快な思いが胸の裡ぅぅに。もやもやしたものが胸に。沖のかなたに真っ向から西日を受けたままばゆい積雲が三島。二人の西に沈黙が"小林冬恐怖が心の底に固い塊のように藤枝)。▼胸の底に蟠る(刺すような疑惑が=加賀。友人の死が強迫観念のように=福永)。気持ちのわだかまりが一気に噴き出す“三田。胸の中のわだかまりが拭い取られる"笹沢。胸の中に重苦しいわだかまりのようなものができる三田。不良じみた少年たちがとぐろをまく"黒井。▼とぐろを巻く(自己嫌悪が。蛇が。悪意が胸の内に。わびしい思いが胸の底辺に=原田病。酔いが胃の底で重い=古井)。とぐろを巻いた青大将。真黒い煙がとぐろを捲まいて旋回する=徳永。谷底に滝壷時が深そうな青い色でとぐろを巻いている太宰。 <1000> # 真面目・素直 **おろそかにしない** ゆめゆめおろそかにしてはならない。一句もおろそかに読み捨てることができない"横光。▼おろそかにしない(家業を。使命を。一言半句も。一点一画も)。あだやおろそかには(暮らせない。生きては行けない。返事ができない)。おろそかには扱えない難物。一字一句をかりそめにしない。絶対に手を抜かない。おいそれと手を抜けない。▼ゆるがせにしない(一点一画を。鍛錬を。片言隻語も)。一字一句もゆるがせにしないで慎重に書く今来。一字一句もゆるがせにせずに写す。井上靖。 **かたぎ【堅気】** 堅気が聞いてあきれる。堅気な(家庭。商売。人。生活にかじりつく)。堅気に暮らす。堅気には見えない風体奥田。足を洗って堅気の暮らしをする。やくざ者が堅気の娘に惚れる。 **かたぶつ【堅物】** ▼堅物(面白みのない。融通の利かない。この世の者とも思えぬ『中村明。一見歌など歌いそうもないような=宮尾)。堅物で通っている。頭が石の「浮いた呼一つ立たない=北原。融通の利かないがちがちの男。真面目一方でまるで融通がきかない。時間や規則にやかましい四角四面な人間!向田。性格にも考え方にも製図でも引くような四角四面な所がある=連城。 **きちょうめん【几帳面】** ▼几帳面(活字のように。時間に対して)。官吏の判で押したように几帳面で平穏な生活有吉。几帳面な(足取りで歩く。性格。文字)。几帳面に(仕事をこなす。勤めに出る。後片付けをする。毎朝体温を計る。耕された段々畑=扇尾)。美しく几帳面に大書された名久米。教えられたとおりの道順を几帳面にたどる=古井。訪問者の用件と氏名を几帳面に筆記する。高橋和。几帳面すぎると思えるほど細部にまで心を配る=高橋糸。二人の間に真面目な性交の几帳面さだけが枉げることのできない法律のように横たわる=室生。 **じっちょく【実直】** 日頃実直な勤務ぶりを見せる。実直にこつこつとよく働く。川を泳いで渡るよりはずっと遠まわりして橋を探すというふうな実直さ=石川。温厚実直な人物。実直そうな(運転手。商人。若者)。実体たいな人物。実体に働く。 **しょうじき【正直】** 正直な(感想を漏らす。素朴な人間。者の頭にうには神が宿る!白洲)。飾りのない正直な書きぶり。自分の心に正直な生活をする。真面目で正直な男。近所でも評判の真面目で正直な男"池波。根性骨の強い正直な人たち"有島。正直に(感想を言う。ありのままを書く。思いを吐き出す。なんでもしゃべる)。考えを正直に述べる。気持ちに正直になる。三度目の正直に賭ける。自分の間違いを正直に認める。悩みを正直に打ち明ける。聞かれるままにぽつりぽつりと正直に答える!古井。自分の心境を正直に物語る=源氏。何もかも正直に(言う。白状する)。権謀術数を超えた正直さ。正直一途に頼みこむ。正直そうな大きな目。真正直な若者。一筋に熱中しているような真正直な性格。石川。真正直に(生きる。取り組む)。愚直なほど命令に忠実。愚直に技術を磨く。原則を思直に守る。真率な(態度。人柄。口調で告白する)。真率の喜びを見せる。朴直な(言葉。返事)。扉直な人柄。廉直の士。馬鹿正直に(生きる。答える)。正直の上に馬鹿がつく。バカ正直とも愚直ともいえるまともさで真っ向からぶつかる瀬戸内。馬鹿正直な人。 **しんけん【真剣】** 真剣(怖いくらい。いじらしいほど=山本周)。真剣な(怒りに燃える。顔でうなずく。目で見据える。面持ちで頭を下げる。顔をして話に聞き入る。口振りで力説する。眼差しで見つめる。顔つきがほどけない古井)。いつにない真剣な眼差しに気づく。運命と取り組むような真剣な顔つき有段。九回の裏に逆転されそうな形勢になった野球の監督といった程度に真剣な面持ち笹沢。呪にらみつけるほと真剣な目!連城。真剣な表情で(考え込む。尋ねる)。真剣な表情を崩さない。真剣に(結婚を考える。取り組む。悩む。話を聞く。勧告を受け止める。研究に立ち向かう。病気と向き合う。訴えかけるような目つき宮部。対策を講じなければならない!篠田)。訴えに真剣に耳を傾ける。舞台を真剣に務める。いい加減さなど微塵ふじも感じられない。冗談は抜きにする。顔から笑いが消える。真剣さが伝わってくる。云わさないでは置かないぞといったような真剣さが顔に現れるり有局。真剣さでは人後に落ちない。声に真剣味が加わる。真剣味に乏しい。 **しんし【真撃】** 真摯な(態度。努力。人柄。眼差しを向ける)。事故防止への真勢な願い。問いに真摯な気が満ちる。前向きで真摯な生き方。発する言葉から真祭な姿勢が窺粉がわれる"阿川佐。友情にあふれた真摯な耳打ち“大庭。真塾に(訴える。思いつめる。議論する。話し合う。反省する。職務に打ち込む)。ぎりぎりの線まで真摯に粘り抜く。自分の生のぎりぎりのところまで行って自分の夢の限界を突き止めてこようとしているような真摯さ=堀。 **すなお【素直】** 頼りないほど素直"三浦哲。素直で(いい子に育つ。飾らない性格の持ち主松岡)。素直な(感情の吐露。口調で謝る。好意をいだく。気持ちが口をついて出る。好奇心を表情に現す。熱心さに心を打たれる。人柄を見込まれる。喜びをまる出しにする)。飾らない素直な感想。しおらしく素直な態度。憂いのない素直な微笑み藤田。女らしい意地悪さや嫉妬心の殆凪とどない素直な気質=円地。糅なぁされた素直な家畜のように素直な娘!岡本。素直な心を <1001> (失わず生きる。育てる)。素直に(頭を下げる。尋問に答える。忠告をきく。非を認める。言うことを聞く。自分の運命に従う。同感の意を表する。犯行を自供する。ごめんなさいと謝る=畑村)。相手の言葉を素直に受け止める。思ったことを素直に口にする。感情を素直に表す。現実を素直に受け入れる。人の好意を素直に受ける。やんちゃぶりを素直に発揮する。自分の気持ちに素直になる=藤田。反対意見に素直に耳を傾ける=白井。竹を割ったような性格。とっても素直そうないい娘。虚心坦懐に話し合う。虚心に命令を受け入れる。知らせを虚心に聞く。目が虚心に見開かれる。純朴な(性格。人柄。雰囲気を残す)。どことなく純朴な感じが漂う。純朴の気風を失う。抵抗なく(受け入れる。理解する)。 **せいじつ【誠実】** 誠実で(剛直な人物。良心的な学者)。自己に誠実に生きる。責務を減実に果たす。表裏のない誠実さ。誠実さを大切にする。誠実そうな男。誠実そうに振る舞う。実意を示す。篤実な(実務家。性格。人柄)。良心的な(研究者。職人。店)。 **ぜんりょう【善良】** 善良な(心の持ち主。市民。気質がじかに現れる。教養のある人妻。暮らしを重ねる)。根は善良な男。この上もない善良な人々。あふるる日光のうちに伸び伸びと育つ若木のようなまっすぐな善良さ長与。いかにも善良そうな女。善良そのものといった人物。順良な(市民。社会人)。悪心を転じて善心となす。善心に立ちかえる。 **ちゅうぎ【忠義】** 忠義な(犬。家来)。頑固なまでに忠義な郎党。忠義の臣。主人に忠義を尽くす。妙な忠義立ては禁物"山岡。営々として忠勤を励む。忠順な(家来。部下)。慷慨に忠節の士。忠節を(暦う。全うする)。忠ならんとすれば孝ならず。主君に忠を励む。企業に忠誠を誓う。犬馬の忠誠をする。忠誠心が強い。 **ちゅうじつ【忠実】** 忠実な(部下。召し使い)。息に大忠実な生き方。職務に忠実な刑事。忠実に(仕える。番人を務める。義務を遂行する。記憶を辿たどりながらあの夜の事を話す。高井)。与えられた職務を忠実にこなす。言いつけを忠実に守る。命令に忠実に従う。役どころを忠実に演じる。役割を忠実に果たす。 **ふまじめ【不真面目】** 態度は相変わらず不真面目。不真面目な(生活。態度。人)。真剣さのかけらも感じられない。戯れの(恋。約束)。遊び半分で手を出す。遊び半分に試みる。 **ほんき【本気】** 本気で(腹を立てる。信じるには余りに馬鹿馬鹿しい話"長与。心配して涙ながらに叱る=飯田)。正真正銘の本気でつくづく眺める。冗談を本気で受け取る。年甲斐舵いもなく本気で惚れる。腹の底から本気になる。もう一つ本気になれない。伊達だてや酔狂ではない。よもや本気ではないでしょうね。その気になる(すっかり。つい。ふと)。一瞬その気になりかける。▼本腰を入れる(受験勉強に。地域活性化に。世直しに。地球温暖化対策に。無駄遣いのチェックに)。本腰を入れて(議論する。検討する。取り組む。練習する)。冗談とも本気ともつかぬ(甘えた口振り。ことを言う)。本気か冗談かの区別がつきかねる。半ば冗談、半ば本気で言う。 **まがお【真顔】** 酔いの底から真顔が覗のぞく。真顔で(言う。答える)。軽口に真顔で応じる。真顔に(目を据える。戻る)。笑いかけていた顔を真顔に直す。笑みを引っ込めて真顔になる。真顔になって話す。生真面目な顔つき。真面目な顔つきに戻る。 **まじめ【真面目】** くそ真面目すぎるくらい真面目=椎名域。真面目一点張り。真面目か冗談かわからぬ口調で話す。真面目が取り柄。真面目で(温和な人柄。身持ちが堅い夫。誠実に生きてきた賜物"小林信)。真面目な(いい青年。声で答える。仕事につく。秀才型の学生。表情でうなずく。表情を崩さない。眼差しで間いつめる)。至極まじめな性格で浮いた噂はない=山口。ばかみたいにまじめな顔「吉本。いつになく真面目な口調になる。おとなしい真面目な男。真面目に(講義を聞く。心からつくす。相談に乗る。話を聞く。勉強に励む。毎日を過ごす。耳を傾ける。受け答えをする。怒る気が失せる。仕事に取り組む。議論するのもばかばかしい=篠田)。まじめに(心を入れかえて仕事をする=中上。こつこつと反復練習をする=飯田)。至極真面目に勤務する。冗談を真面目に受ける。融通が利かないと蔭口を利かれるほど真面目に勤める"源氏。まじめに聞く(話を。親の言うことを)。真面目を絵に描いたような人佐高。真面目一方に働き通す。真面目くさった(目をする。顔で冗談を言う。学校の先生みたいな顔連城)。「変に真面目くさった顔つき。真面目くさって(答える。説明する)。謹厳実直な先生。謨直な(人物。礼をする)。譚直にかしこまる。質実剛健な(学庾。気風)。質実剛健の社風にもとるような贅沢だい浅川。質実剛健を旨とする軍人。シリアスな(口調。テーマ。ドラマ)。目に真剣な色を浮かべる。悔俊灬しして真人間にかえる=野間。真人間に(なる(足を洗って。前非を悔いて)。大真面目な(希望。信念)。大真面目に(言う。主張する。反論する。論じる)。生真面目な(口調で答える。表情。口調で異議を挟む"有川)。少女らしい生真面目な感じ。武骨な生真面目な男。生真面目に(責任を果たす。努力を重ねる)。自分の言ったことが咎とがめられたかのように生真面目に問い返す黒井。くそ真面目な(意見。表情)。馬鹿がつくほどくそ真面目。悲真面目に好きというほど堅くはない半村。 **りちぎ【律儀】** 律儀な(職人。性格)。昔気質が乳の律儀な父親。律儀に(挨拶する。頭を下げる。働く。勉強する)。半袖シャツの第一ボタンまで律儀に止める。見かけによらず律儀者。物堅い(男。口湖)。 <1002> # 貧しい・恵まれる **いちもんなし【一文無し】** 相手が一文なしになるまでむしる=佐野。▼一文なしになる(賭け事で。自己破産して。だまされて。何もかも失って)。一文の金もない。株の暴落で丸裸になる。▼無一物になる(破産して。焼け出されて。すべてをなげうって)。文無しになる(財産を使い果たして。放蕩いうを尽くした挙げ句)。すってんてんに(負ける。なって寒空に泣く)。すってんてんになる(賭け事で。博打ぶくで。商売に失敗して)。さながら乞食記し坊主のように無一文舟橋。財産のことごとくを取り上げられ無一文となる"夢枕。無一文のままで生涯を終える。 **おかねがある【お金がある】** お金を山ほど持っている宮部。何年か遊んで暮らせる金=横山。土蔵に金がうなっている=柴田練。空っぽな財布が俄にゃかに重くなる水井荷。懐にちょいと小金がある。財布に金がつまっている。左団扇10がりで暮らせる。懐が暖かになる。メシのタネに困らない『和久。悠々と上流階級の暮らしができるほどのお金胡桃沢。▼余裕がある(財布に。懐に)。金を持っている(ふんだんに。うなるほど)。腐るほど持っている(金を。銭なら)。 **おかねがない【お金がない】** 一文もない。お金に縁がない。お金のない惨めさが応える。お金を借りても返すあてがない。金が(ないことを見透かされる。ないのはお互いさま)。金が底をはたく多岐川。いかんせん金がない。金に(不自由する。困って泣きつく)。当座の暮らしの金に事欠く。金の工面がつかない。金を借りねばならない事情に差し迫られる=横光。商売の資金が窮屈になる。口が干上がる。▼困る(明日のメシに。遊ぶ金に。食べていけなくなるくらいお金に"笹沢)。財布がすぐ貧しくなる。財布の(金が底をつく。中身がだいぶ怪しい=石坂)。先立つものがない。三度の飯にもありつけない。懐がしけている。借金で首が回らない。収入がぱったり絶える。収入はゼロに等しい。すっからかんになる(財布が。懐が)。逆さに振っても血も出ない=坂口。貯金が底を尽きかける。治療代にも困る。手元が(苦しくなる。詰まる)。手元に現金がない。手元不如意になる。愛中のうちが(心細くなる。乏しい)。財布逆立ちしても鼻血も出ない落語。懐が(秋の暮れ。お寒い限り。窮屈。窮する。苦しい。寂しくなる。火の車。冷ややか。げっそりと減る)。懐に窮屈を感じる=長塚。懐中を逆さに振っても車代にさえ足りない!永井荷。▼持ち合わせがない(あいにく。折悪しくお金の)。持ち金が心許ににっなくなる。食うや食わずの(境遇。生活。貧農の身。貧乏暮らし。貧乏人。貧しい暮らし)。 **かねまわり【金回り】** 金回りが(順調になる。よくなる。悪い)。ばかに金回りがいい。懐具合が(あたたかい。厳しい)。 **かねもち【金持ち】** 金持ち(金使わず。喧嘩妙んせず)。金持ちの(どら息子。我がままな青年。女のつばめに納まる=横山)。この辺りでは有数のお金持ちあさの。一生金に困らない。内福の噂が高い。瞬くうちに大金持ちになる。大金持ちを(優遇する。夢見る)。当時知らぬ者のない有徳の町人。大家の(箱入り娘。若旦那)。欲の皮の突っ張った土地成金。富貴栄達が意の如くなる。富貴な家に生まれる。かなりの物持ち。リッチな(生活。世界に憧れる)。良家で育ったお嬢さん。良家の子女を誘拐する。富豪と結婚する。富豪の(令嬢。令息)。富豪を夢見る。見る見るうちに大富豪となる。富裕な(階層。家庭。暮らし向き。実業家。商人。町家の娘)。 **こくりょく【国力】** 国力が興隆する。国力の差はいかんともしがたい。国力を(つける。養う)。国威を(輝かす。発揚する)。 **さいさん【財産】** 財産(かけがえのない貴重な。貧乏だったことが親の遺してくれた唯一最大の内橋)。財産とは無縁な生活。財産の分与を受ける。財産を(平等に分ける。親族が相続する。全部投げ出しても惜しくない意気込み=江戸川)。賭け事で財産を失う。人並み以上の財産を持つ。親から相続した財産を食い潰す鈴木光。綺麗に財産を半分分けにして別れる"徳田。海外に莫大な隠し財産を持っている=船戸。財産目当ての(結婚とそしられる。結婚をもくろむ)。家産が傾く。家産を蕩尽ににする。巨財を(築く。残す)。酒代で財を潰っぷす。私財を(つきこむ。投じる。なげうつ)。身代が(できる。太る)。博打で身代を損なう。一代で財産を築く。かまどを起こす。一代で財を成す。身上し认しをおこす好機が到来する=海音寺。無一文から身代を築き上げる。資産が目減りする。あれほどあったはずの資産が消えてしまう。資産に余裕がある。資産を現金に変える。かなりの資産を持っている。資産価値が上がる。身上が(つぶれる。できる)。身上持ちが(よい。悪い)。 **ざいりょく【财力】** 並大抵の財力ではない。財力に(欠ける。恵まれる。ものを言わせる)。金力と権力に物をいわせる。金力の前に頭を屈する。資力が(尽きる。続かない)。資力を投じる。 **そのひぐらし【その日暮らし】** その日暮らしの貧乏世帯。相変わらずその日暮らしの世過ぎを続ける=阿刀田。細々とその日暮らしをするのが関の山熊谷。最底辺の生活のなかで生きのびる。その日その日の暮らしを立てていく"江戸川。その日その日を食いつなぐ。細々とその日の口をぬらす宇野干。 **とみ【富】** 富の(偏在を防ぐ。蓄積に熱中する。配分が平等になる)。富を手に入れる。巨万の富を得る。天 <1003> 下の富を一身に集める。巨富を(築く。なす)。 **とむ【富む】** ▼富む(進取の気性に。人柄が魅力に。性格が残忍性に。新聞や雑誌の記事以上に情報に=常盤)。ウィットに富む女の子。彫琢合いに富む文章。人情味に富む物語。古風な雅致に富む酒器『獅子。起伏に富む(生活が。地形が)。含蓄に富んだ逸話の数々。スリルに富んだ人生。波瀾心らに富んだ生涯。家を富ます。▼肥やす(私腹を。懐を)。太らせる(資本を。・ ▼太らせる(資本を。身代を)。 **ひんこん【貧困】** 修像ぶたる思想的貧困。貧困が犯罪へ駆り立てる。貧困から抜け出す。貧困で腐敗した政治。貧困に(あえぐ。耐える)。ヴォキャブラリーの貧困にわれながら呆ぁされる"阳高。貧困の(度を加える。解消には遠く及ばない)。貧困層が拡大する。差し迫って動きもならぬほどの貧窮!室生。貧窮の心労で衰えてゆく両親阿部。貧苦から脱出する。貧苦に(あえぐ。耐える)。生活に困窮の色が濃くなる。▼困窮する(金銭粗食に。経済が極度に。経済的に)。 **びんぼう【貧乏】** 貧乏(この上なし。暇なし)。どん底の貧乏生活。つくづく貧乏がいやになる。働いても働いても貧乏から抜け出せぬ毎日"飯田。貧乏と縁を切る。稼ぐに追いつく貧乏なし"北原。貧乏に(耐える。めげない。慣れっこになる)。じりじりと貧乏になる。貧乏のどん底まで落ちる。貧乏は人間の器を小さくする=貫井。貧乏を苦にしない。明日食う米を思案する。生活費に事欠くありさま。窮厄な家計。窮する(暮らしの金に。朝夕の炊かしぎの代に=山本周)。 暮らし(かつかつの。食費に事欠くような。その日の米代にも事欠く船山)。暮らし向きが逼迫めいする。 米塩にも事欠く生活。▼困る生活(明日食べる飯に。明日の日食うにも)。米や味噌が底をつく池波。その日その日を辛うじて生きている。小さな灯りを守るように暮らす落合。日々の暮らしにも差し支えるような身の上芥川。日ど夜の分かちなく稼いでも足りない"山本周。貧富の差が拡大する。ろくろく三度の飯にありつけない。貧乏神に取りつかれる。神様のような夫が貧乏神に転じる=篠田。貧乏神を追っ払う。貧乏臭い(商売。生活)。バラッと降って来たと思うとやみ、またバラッと降るというような、貧乏くさい雨の降り方椎名崎。貧乏臭く膝を揺する。立てた膝を貧乏臭くゆする=大佛。夫にかじりついているほかは楽しみがないという貧乏暮らし"石坂。赤貧洗うがことしというような貧乏世帯"住井。卑屈で臆病な貧乏人根性徳水。胸のすくような貧乏ぶり“外村。かつかつ食っている。口に糊のぅするだけの生活。極貧にあえぐ。極貧の生活。生活保護を受ける。もらう)。清貧に(甘んじる。安んずる)。のんびりと清貧をたのしむ"池波。赤貧の(暮らし。生活)。粗衣粗食に甘んじる 。ないないづくしの耐乏生活。国民生活が疲弊する。日本全土を疲弊のどん底へ落とす=坂口。家族を路頭に迷わす。ワーキングプアが広がる。ワーキングプアの根絶に取り組む。窮乏のどん底に落ちる。暮らしが窮乏を極める。窮乏する(家計が。国民が)。経済的窮乏にあえぐ。生活苦が国民を襲う。生活苦に拍車がかかる。生活苦を泣訴する。 **びんぼうにん【貧乏人】** 貧乏人(無一文の。すっかびんぼうにんらかんの。その日暮らしの)。貧乏人の稼ぎを食いものにする。貧乏人を踏みつけにする。貧者の一灯。富者と貧者の甚だしい懸隔、貧者を困難に陥れる。 **まずしい【貧しい】** 貧しい(家に生まれる。裏店住まい。暮らしを装う。身なりの男。生活を強いられる)。極端に貧しい暮らし。いかにもみじめな貧しい心志賀。丘の蔭に押しひしがれたようにかたまっている小屋のような貧しい人家"日野。一目で内容が分かってしまうような心の貧しい女"高見町。貧しいながらに裕福らしい人。に安穏な満ち足りた生活を送る三島。やりかたを貧しく真似まねる=大庭。財布が貧しくなる。貧しげな身なりの老人。▼貧しさ(話にならない。何という人間的な石坂)。貧しさから抜け出す。貧しさに(耐える。負ける)。貧しさを運命論で片づける"大庭。明日の米もないような日。糊口にこを変しのぐ。毎日の生活に追われる。その日のバンに追われるような境遇"江戸川。さして裕福ではない。貧に(染まる。堪える。慣れる)。 **みひとつ【身一つ】** 身一つで(渡米する。逃げる)。麗辛ちっを身一つに集める。批判を我が身一つに受け止める。着の身着のままで(家を抜け出す。逃げのびる。避難する)。着のみ着のままで路上に放り出される=司馬。裸一貫から(財を成す。叩き上げる)。裸一貫で(生き抜く。のし上がる。独力で築き上げる)。 **めぐまれない【恵まれない】** 幼少期から家庭的爱情に恵まれずに育つ=網滑。恵まれない(愛情に。男巡に。家庭的に。経済的に。世冏的に。語り合う機会に。ついぞヒット曲に)。▼うだつが上がらない(一生。いつまでたっても)。見るからにうだつの上がらない中年男内田泰。 **めぐまれる【恵まれる】** ▼恵まれる(いい嫁に。海の幸に。運に。面白い話材に。外交的能力に。広大な沃土に。鉱物資源に。絶好の機会に。相談相手に。地の利に。特殊な天分に。人間関係に。名所旧跡に。山の幸に。うららかな日和に。思いがけない幸運に。奇跡的に機会に。すばらしい天気に。天才的な美意識に。王者たる資格に!舟橋)。幼いときから学才にめぐまれる=山本周。恵まれた(健康の持ち主。身分を捨てる)。生まれながらに恵まれた人生を約束される=阿刀田。 **ゆうふく【裕福】** 裕福な(家で育つ。家庭の娘。生活。趣味の中で育つ)。優雅で裕郤そうな女性。見るからに裕福らしい人。ゆりかごに(揺られる。見守られる)。揺り籠から墓場まで面倒を見る。 <1004> # 混ぜる・混雑する **いりまじる【入り交じる】** ▼入り交じる(現実と虚構が。声に興奮が。憧憬と侮蔑が。いくつかの要素が。声に驚きと同情が。恥じらいといらだちが)。各地の言葉が入り交じる。不安と期待の入り交じった表情。嫌悪のいりまじった恐怖に襲われる水上。恐怖と恐慌の入り混じった目に射すくめられる=高見沢。混信する(無線が。ラジオが)。混線する(電話が。話が)。順序が錯雑して分からなくなる。錯雑している事件。交流の輪を広げる。▼交流する(愛情が。人事も)。ごっちゃにする(ありとあらゆる味を。現実とフィクションを=合川)。夢と現実がごっちゃになる。▶錯綜する(丘と谷が。情報が。人間関係が。何人もの足跡が)。事件が錯綜纏綿にする。 **おしあいへしあい【押し合いへし合い】** 人々が押しあいへしあい売場に殺到する=宮本輝。押し合いへし合いで身動きが取れない。押し合いへし合いの(こった返し。大混雑)。群衆が押し合いへし合いする。押すな押すなと大変な参詣人=落語。押すな押すなの(混みよう。混雑。大盛況。にぎわい)。 **かきまわす【掻き回す】** ▼かきまわす(髪の毛を指で。じゃぶじゃぶと水を。スプーンでくるくる。バッグの中をがさがさと。水を手でばちゃばちゃ。扇風機が部屋の中の暑い空気をぐるぐると=村上春)。箱の中をがらがらとひっかきまわす=内田康夫。スプーンでコーヒーをかきまぜる。攪拌する(卵を。溶液を)。 **こうさく【交錯】** ▼交錯する(愛憎が。疑いと恐れが。虚構と事実が。縦軸と横軸が。光と影が。不安と安心が。不安と期待が。感情が複雑に。胸中に複数の思いが。二つの相反する感情が。言葉の断片が耳の奥で。様々な思いが頭の中で。成功への確信と破滅への漠然とした不安が=篠田。無数の驚きとも歓喜ともつかない声が=篠田。青と赤の照明弾が花火のように中空に=大岡。さまざまな音や響きが遠く近くに=光瀬)。現実が交錯する(幻想と。夢と)。優越感と劣等感を交錯させる。おののきと期待が交錯したような奇妙なときめきが胸を押しつつむ=三田。 **ごったがえす【ごった返す】** ごった返す(大勢の人々で。ホームが乗降客で。足の踏み場もないくらい人で=藤田。足元の土も見えないほど参詣人で=村上元)。夜の盛り場が車の音と人の声でごったがえす=鎌田。船に乗ろうとする人たちでごった返す港町=伊集院。▼人でごった返す(店内が。遊園地が)。駅前広場が人でごった返している。店はごった返しの混みよう。 **こみあう【込み合う】** ▼混み合う(押されながらにやっと歩くほど=人米。人いきれで汗ばむほど=向田)。▶客で込み合う(店内が。大勢の)。芋の子を洗うみたいに混む=井上ひ。生憎ひどく混んでいる。熱鬧のした花火の晩。熱鬧を極める。満場立錐いの余地がない。立錐の余地もない超満員=阿久。 **こんざつ【混雑】** 混雑(戦場の如き。身動き一つできない。どこもかしこも押し合うような=水井荷。満員の浴場のような=田辺)。夕飯時の混雑が一区切りつく。ラッシュアワーの混雑に身もまれる。混雑の(中に放り込まれる。ピークを過ぎる)。町じゅうの人間が全部街頭にあふれ出てきたみたいな混雑の絶頂=宇野。混雑する(駐車場が。道路が。ロビーが。車内に入れないほど列車が=高橋和。肌と肌が触れあうほど=島崎)。時分どきに混雑する大衆的な店=灰谷。大勢の入場者で会場がこたつく。人々が電車から吐き出される。ラッシュで道路が込む。混雑ぶりにうんざりする。 **こんどう【混同】** ▼混同する(渋味と地味を。二つの慣用句を。二つのタイプを)。しばしば混同して用いられる。▼現実を混同する(作品と。小説の話と。夢と)。多くの事故では原因の究明と責任の追及とが混同されている=畑村。 **こんとん【混沌】** 何もかも混沌として固まってはいない=井上。▼混沌とする(考えが。事態が。行方が)。混沌の中に秩序をもたらす。行方知れぬ混沌の情熱が開花する=開高。 **すきまない【隙間ない】** 隙間なく(本が並ぶ。ぎっしりと生える)。びっしりと隙間なくスケジュールを埋める=赤川。隙間もない(飾りの道に這い出る。蟻の潜りこむ。一分の。寸分の)。氷が川幅いっぱいに隙間もなく張りつめる=本庄。過密な(スケジュール。ダイヤ)。不安の潜み入る隙間さえないような幸福=大佛。目の詰まった(織物。芝生)。目の詰んだ(芝生。布)。水も漏らさぬ(構造。捜査陣)。 **すしづめ【鮨詰め】** すし詰めに積み込む。五人も乗ったらすし詰めになる狭いエレベーター=中島み。三畳ほどの空間に十数人がすし詰めになる=辺見。すし詰めの(クラス。電車)。羽毛をぎゅう詰めにする。ぎゅう詰めの電車。 **たてこむ【立て込む】** ▼立て込む(急ぎの仕事が。ひっきりなしに客が)。煉瓦とコンクリートの落莫たる建築がたてこむ=田島。家並みが立て込んでいる。客がひとしきり立て込んでくる。仕事が押せ押せになる。 **ないまぜ【綯い交ぜ】** ▼ないまぜにする(甘えと期待を。嘘とまことを。虚実を。反発と憎悪を。陰陽両面の顔を)。▼ないまぜになる(期待と不安が。惑いと驚愕が。恐怖心と羞恥心がいんが。二つの気持ちが)。怒りと虚脱感とがない交ぜになる=さだ。同情と軽蔑がない交ぜになった表情=江國。▼憎しみがないまぜになる(愛と。いとしさと)。捜査員たちの期待と好奇心と不安がないまぜになった異様な雰囲気=内田康夫。 <1005> # 混ぜる・混雑する―327 **ないまざる** ▼綯い交ざる(惑いと驚愕が。小心と剛胆が一人格のなかに複雑に=司馬)。 **ひしめく【犇く】** ひしめく(有能な人物が。所狭しと。わめき叫ぶ声が。土産物屋が参道の両側に。群集がなだれを打って=川端)。見渡すかぎり家々がひしめいている。ひしめき合う(小さな家が。頭の中で様々な考えが。大勢の野次馬が)。▼ひしめきあう(見物人の群れが。たくさんの人間が。身動きできぬばかりに)。うごうごむぐむぐ犇めき合う=武田。人波がひしめきあって流れる。何とまあ沢山の人間がひしめき合っているのだろう=大庭。 **へいこう【平行】** 段丘が平行に走る。太い帯になった横流れの西日が殆ど路面と平行に射す=谷崎。浜に平行して走る道路。線路と平行して県道が南北に走る=西木。永遠に交わらざる平行線=九鬼。両方の議論が平行線のまま。話し合いが平行線をたどる=松岡。 **まぎらす【紛らす】** ▼紛らす(寂しさを。退屈を。女が裏切られたはかなさを。気まりの悪さを笑いに。泣き出しそうな顔を微笑に。落魄の身をアルコールに。苦々しさを苦笑と酒で)。冗談で気を紛らわせる。▶紛らわす(性欲の衝動を。退屈な時間を。酔って胸の思いを。自分の大人気なさを苦笑に。ショックを酒で)。内心の狼狽いを笑いでまぎらわす=高見浩。苦々しさを笑い紛らす。 **まぎれこむ【紛れ込む】** ▼紛れ込む(道が原野に。暗闇の中へ。子羊の群れに狼が。ひどく場違いな所に。不案内な場所に。蛍の光が星影に。乾いた空気に扇を一振りしたような笑いが=松浦。掻き消すように闇の中に=福永)。お伽草子の中のお話の世界にまぎれこむ=清水義。 **まぎれる【紛れる】** ▼紛れる(船が青空に。山が役に。働いていたほうが気が。姿が人の流れの中に。ほの暗い黄昏に。電車のとどろきが地平へ。微かな歩く気配が風の音に=小川)。雨に紛れて見えなくなる。多忙に紛れてしばらく会っていない。人の波に紛れて去っていく。夜陰に紛れて訪れる。日頃の商売の忙しさに取り紛れてしまう=谷崎。忙しさに取り紛れて約束を忘れる。どさくさまぎれに商売っ気を出す。どさくさまぎれを狙った言い訳。どさくさに紛れて金儲けをする。火事場泥棒的な行為。 **まじえる【交える】** 交える(漢字と仮名を。気さくに話を。軽妙な語りを。嫌悪の色を。敵と太刀を。官憲たちと一戦)。手振りを交えて話す。独断を交えて自由に書く。膝を交えて清談を楽しむ。交えない(口調に感情を。一言も言葉を)。 **まじりあう【混じり合う】** ▼混じり合う(光と闇が。笑みと戸惑いが。さまざまな音が。さまざまの臭気が。いい匂いと嫌な臭いが=桐野)。不快な恐怖と快楽的な記憶とが混じり合って通風の悪い部屋の中の煙草の煙のように渦を巻く=中村真。▼混合する(数種類を。二つを。両者を。ありとあらゆる雑多なものが)。欲望と行動との伸びやかな混和。 **まじる【混じる】** ▼混じる(怒りに自嘲が。風に小雪が。口調に笑いが。声に苛立ちが。声に喜色が。声に失望が。便に血が。語尾に唾をすする音が。喜びに面映ゆさが。甘い香りが夜気に。冬の名残が夜風に。風に雨のにおいが=佐藤多)。表情に一抹の苦笑がまじる=丹羽。結びに白いものが交じる=熊谷。不安と怯えの混じった目で見る=東野。好意と悪意がまざる。事実と虚構が混在した小説。混在する(さまざまな考え方が。何もかもがごちゃごちゃと)。 **まぜる【混ぜる】** ▼混ぜる(漢字と仮名を。口調に方言を。米と麦を。セメントに砂を。文章に横文字を。ごちゃごちゃに)。▼混ぜ合わせる(絵の具を。各種の粉を。ありとあらゆる味を。哀れみと軽蔑を。皮肉な瞳に軽蔑を=泉優)。▼ごた混ぜになる(愛と憎しみが。嘘と現実が)。嘘もまこともごちゃまぜた人びとの噂話=中。あることないことごちゃ混ぜて書く=竹西。虚実取り混ぜた話。平仮名と漢字を取り混ぜて書く。取り混ぜる(洋風と和風を。あることないことを)。▼まぜこぜにする(驚きと戸惑いを。使ったものと未使用のものとを)。▼和える(胡麻で。酢味噌で、マヨネーズで。ドレッシングで)。混入する(異物が。不純物が。酒に水を。遊物を)。堆肥を根元に鋤きこむ。調合する(処方の薬を。薬品を)。スリルも行き過ぎるとたががゆるんでいろんな感情がブレンドされるらしい=三浦し。建前と本音を絶妙にブレンドする=姫野。いくつかの果物をミックスする。胡麻で芹を汚す。石灰に和する。英語と日本語をチャンポンで話す。警戒心と社交術をチャンポンにする。ドイツ語や英語をチャンポンに使う。 **みつ【密】** 布を密に織る。葉が密に繁る。苗を密に植える。密にする(情報交換を。結びつきを。連絡を)。人口が稠密。稠密な鉄道網が張りめぐらされる。 **みっしゅう【密集】** 密集する(住宅が。人口が。建物が。びっしりと。家が軒を接するようにして)。▼蝟集する(貝が。大軍が。難民が)。 **よちがない【余地がない】** ▼余地がない(疑いを挟む。介入の。口出しする。情状酌量の。選択の。反論の。弁解の。異議をさしはさむ。大きく発展する。他人の入り込む)。もはや考慮の余地はない。 **るつぼ【坩堝】** 排気ガスと騒音の坩堝=小林信。夫婦のことばでの争いが底知れぬ憎悪の坩堝で責め苛み合う=筒井。あたりが殺気の坩堝に変わる=山岡。坩堝にたたき込む=円地。生身の興奮というるつぼの中に身を投じる=阿久。坩堝の中の白金のように溶けがたいせつない懺悔がのこる=中。人種の坩堝の国。喧騒の坩堝の底にいる=横山。情痴の坩堝さながら乱れに乱れる=海音寺。 <1006> # 間違いない・明白 **あきらか【明らか】** ▼明らか(誰の目にも。夜目にも。この一例を以てしても。火を見るよりも=和久)。明らかな(誤りを犯す。とまどいが生じる)。明らかに(区別がある。腹を立てている)。▼見せる(明らかな反感を。明らかに怯えを)。瞭然たる映像を残す=獅子。 **いちもくりょうぜん【一目瞭然】** 一目瞭然(実力の差は。真偽のほどは。誰の目にも。どこに問題があるのかは)。一目瞭然に分かる。 **かくじつ【確実】** ▼確実(十中八九。当選はほぼ)。確実な(あてがある。証拠をつかむ。資料に基づく。筋から得た情報)。勝利を確実なものにする。確実に(存在する。手に入る。チャンスを物にする)。一歩一歩確実に努力を積み重ねる。疑う余地はない。百パーセント(確実な根拠。保証する。決まったわけではない)。勘が百パーセント的中する。百パーセントの効果を挙げる。 **かならず【必ず】** 必ず(手に入れる。見返りがある。報いを受ける。一悶着あるに違いない)。うまい話には必ず裏がある。遅かれ早かれ必ず起こる。遅くなっても必ず帰る。毎日必ず顔を出す。縮んだばねは必ず元に戻ろうとする=内橋。必ずと言ってよいほど見ることができる。必ずやお気に召すはず。地を這ってでも生きて戻る=多岐川。雨が降ろうが槍が降ろうが。断じて約束を守る。何を置いても駆けつける。何としても(救いだす。逃れ戻す)。万障お繰り合わせの上ご出席ください。万難を排して(出席する。輸送する。核戦争を回避する)。 **きっと** きっと(気に入るに違いない。参考になるだろう。立ち直れるはず。戻ってくると思う)。てっきり(やめると思って心配する。看破されたと胸をときめかせる=田山)。 **きっぱり** きっぱりと(拒絶する。話をつける。否定する。別れを告げる)。確信をこめてきっぱりと言う。切り口上にきっぱりと答える。きっぱりした口調で答える。断固たる(処置を取る。命令口調)。断固とした調子で否定する。断然と(言い放つ。抗議する。断る)。 **けっして【決して】** 決して(誰にも言うな。オーバーな表現ではない。叶えられることのない望み。口を割ろうとしない。楽な生活ではない)。かりそめにも(弱みを見せてはならない。考えに浮かんだことはない=本庄)。絶対(言うことをきかない。許すことのできない人物)。断固認めるわけにはいかない。断固として節を曲げない。断じて(許さない。気を許してはならない)。万々遺漏のないようにする。心配は万々ない。夢寐にも(忘れなかった郷里。忘れられない事件)。ゆめ(偽りではない。承知をすまい。油断はならない)。夢にも(疑わない。想像できない。思わなかった話)。ゆめゆめ(忘れるな。疑うなかれ。勘違いしてはならない)。 **けんじつ【堅実】** 堅実で信頼が置ける。堅実な生活を営む。一歩一歩堅実な商売の基礎を築く=山崎。堅実に元手を増やす。堅実地道な技術第一主義の会社=浅川。質素堅実を学ぶ。平凡堅実な男。手堅い(経営に徹する。商売をする)。手堅く危なげない書き方。 **こんりんざい【金輪際】** 金輪際(行かない。口を利かない。許さない。御免こうむりたい。雇ってやるものか。相手にならぬと決心する=二葉亭)。 **じじつ【事実】** 業界では誰知らぬ者もない事実=かんべ。事実が(明るみに出る。蜘蛛の糸のごとく絡み合っている=村松)。事実から目を背ける。事実に反する記事。事実は小説より奇なり。事実を(事実として受け入れる。そのままに述べる)。ありのままの事実を告げる。単なる噂ではない。まんざら根のない話でもない。事実上尻抜けの規定。事実上の野放し状態になる。事実無根の中傷。 **しっかり** 気持ちをしっかり持つ。この耳でしっかり聞く。しっかりと(根を下ろす。自分の目で捕らえる)。勘所をしっかりとつかむ。手をしっかりとつなぐ。しっかりする(足元が。土台が。足ごしらえを。準備を)。しっかりした(足取りで歩く。後ろ盾がある)。しっかりしている(足腰が。考え方が。コンセプトが。出所が。造りが)。しっかと(抱き合う。握り締める。見届ける)。がっちりと(態勢を整える。骨組みのできた話)。金をがっちりと握る。ひしと胸にこたえる。胸にひしと抱きしめる。 **じっちゅうはっく【十中八九】** 十中八九(合鍵を持っていると思う。間違いあるまい。うろに熊が入っていると思う=熊谷)。十中八九は間違いなさそう。十中八九まで見当は外れていない。 **しんじつ【真実】** 真実(事件の陰に潜む。目のあたりに見た飾りのない=芥川。歴史に埋もれた=大野透)。真実かどうか疑わしい。嘘か真実か区別がつかない。一面の真実が含まれる。真実に目をつぶる。事件の真実に迫る。言葉に含まれている真実の量を計る=小林久。真実を(ありのままに告げる。国民の目から隠す。見抜く曇りのない目=石坂)。一脈の真実を伝える。断片的な真実をうまく組み合わせきちっと整合させる=小林久。嘘偽りのない。嘘から出た誠。嘘もまこともごちゃまぜた人びとの噂話=中。 **しんそう【真相】** 真相が(明らかになる。闇に封じ込められる)。真相の一端を発見する。真相は藪の中。真相を知るのが怖い。意外な真相をつきとめる。事件の真相を探る。事の真相がわかる。 **ぜったいに【絶対に】** 絶対に(目をそらすな。言わない。邪魔してやる。譲れぬ条件。仲良くなりたくない)。 <1007> # 間違いない・明白-328 もう絶対に悪いことはしない。 **たしか【確か】** ▼確か(見る目は。宝石の目利きが)。確かな(裏付けがある。証拠をつかむ。存在感がある。バランスを保つ)。腕の確かな医者。分類上の確かな位置を決める。確かに見覚えがある。独楽のような重心の確かさ=永井。記憶の確かさを競う。確たる(根拠もない。説明を求める)。しかと(覚悟ができる。承知している。返答を聞きたい)。確固たる意志を持つ。名声を確固たるものにする。確固とした(信念。方針)。揺らぎのない確固としたもの。明確な(目標を持つ。理由を示す)。明確に一線を引く。概念を明確に定義する。▼明確にする(基準を。守備範囲を。ルールを)。傾向が明確になる。 **ちがいない【違いない】** ▼違いない(必ず現れるに。やはり本物に。よほど痛いに。さぞかし喜ぶに。さぞ気を悪くしたに。相当の事情があるに。遠からず崩壊するに。無変調高価なものに。きっと何かの間違いに=なかにし)。 **ちゃくじつ【着実】** 着実な(成果をあげる。一歩を踏みだす)。着実に(足場を固める。歩を進める。業績を積み重ねる。地歩を築いていく。やるのが結局は早道。死に向かって歩いている=高橋治)。しっかりと地に足をつけて生きていく=火坂。粛々と事に当たる。 **てきかく【的確】** 文章の刻みが的確で強い=岩橋。的確な(指示を与える。判断を下す)。勘所を的確に押さえる。状況を的確につかむ。変化を的確にとらえる。一連の処置を的確におこなう=軍司。的を射た質問。 **どうしても** どうしても(思い出せない。見てみたい。問題が残る。我慢ができない。納得がいかない)。 **いやでも** 嫌でも(知らないわけにはいかない。目に入ってくる)。 **たとえ** たとえ(雨が降ろうが風が吹こうが。どのような形であれ)。 **なにがなんでも** 何が何でも(すがって離れない。成功させなくてはならない。立派に育て上げる)。何と言っても(自分の意見を曲げない。夏はビールが一番だ)。何としても(釈然としない。承知しない。成功させたい。不安でたまらない)。いっかな(承知をしない。相手になろうとしない。出て行こうとしない。手放そうとしない)。愁眉がいっかな晴れない。 **ひつぜん【必然】** 必然の(運命。帰結)。必然を自由と見なす。必然的な(産物。成り行き。変化)。必至(今や倒産は。遅かれ早かれ会うのは。このままでは落選は。反発を買うのは)。▼必定(将来困るのは。血を見るのは。大目玉を食うことは)。 **ほぼ** ほぼ(相似た手法。疑いがない。見当がつく。事情がわかる。絶滅に近い。全員揃う。意見の一致を見る。中間にあたる地点。間違いない事実)。優勝はほぼ確実。九分九厘合格するだろう。九分通り(完成する。話が決まる。出来上がった製品)。八分通り(出来上がる。腹を満たす。火を通す)。 **まちがいない【間違いない】** 間違いない(絶対に。おおむね。九分九厘。合格はまず。本人にほぼ。九十九パーセント)。間違いないという確信を得る。間違いなく(黒字になる。成功する。すらすらと答える)。成功間違いなし。私の男を見る目は運命の神様のように間違いがない=川端。石橋を叩いて渡るような間違いのなさ=三好達。疑いの余地を挟まない。疑うべき根拠がない。裏が取れる。疑惑の入る余地なし。二言はない。余地がない(少しも疑う。疑いを差し挟む)。問題を誤りなく処理する。看板に偽りなし。嘘偽りない真実の言葉。決定的に(異なる。不足している)。▼決定的になる(怒りが。亀裂が)。純然たる(失敗。フィクション)。▼相違ない(事実に。成功するに。さぞかし笑い者になっているに=阿部)。定めて本望に相違はあるまい。まがいもない(事実。当の本人)。まがいもなく目の前に立っている。まごう方なき天才児。まごう方なく区別される。まごうことない中年の男。無謬の神話を持つ指導者。老齢化による弱体は争えない=沢木。争いがたい事実。争うべくもない若さが盛り上がる。まぎれもな(現実。事実。中年男の顔。当の本人)。 **めいかい【明快】** 単純明快に答える。声は清明に澄んで明快。明快な判断を下す。簡潔で明快な言葉。機敏で明快な判断。独自の史観を明快な形で打ち出す。明快に(答えを出す。始末をつける。論を進める)。問われるままに明快に答える。単純明快な話。 **めいはく【明白】** ▼明白(疑いもなく。手に取るように)。罪状が明白となる。明白な(事実。証拠がない。つながりを持つ)。明白に賛否が分かれる。問題を明白に認識する。▼明白になる(欠陥が。事態が。いっそう。ますます)。▼明白にする(真相を。態度を。役割を)。結果はすでに明々白々である。言わずもがなの明々白々の事実を指摘する。自明の理。証拠をあげるまでもない。▼余地がない(曖昧さが入る。疑問の。議論の)。嘘も隠しもない事実。むきになっているのはだだ漏れ=有川。勝算歴々たるものがある。不満な様子が歴々としている。 **めいりょう【明瞭】** ▼明瞭(一見して。極めて簡単)。明瞭な(映像を結ぶ。画像イメージが浮かぶ)。明瞭に(性質を表す。外から見透かせる)。指紋が明瞭に浮き出す。出処進退を明瞭にする。特色が明瞭に刻印された文章。透徹した(議論。洞察力。目で見据える。論理)。知性の透徹を欠く。明晰な(思考能力。頭脳の持ち主)。物事に明晰な判断を下す=津本。 **れきぜん【歴然】** 歴然たる差を見せつけられる=飯田。進歩の跡歴然たるものがある。技術の差が歴然と現れる。性能差が歴然と出る。年齢というものの力を歴然と見せる=山田太。▼歴然としている(意志が。区別が。差が。違いが)。立ち遅れが歴然となる。 <1008> # 間違う **あやまち【過ち】** ▼過ち(若気の。取り返しのつかない。夢魔に襲われたような=瀬戸内)。過去の過ちに目をつむる。多少の過ちは許される。新たな過ちを重ねる。同じ過ちを二度と繰り返してはならない=貫井。過ちを犯す(大きな。愚かな)。▼過ちを繰り返す(同じ轍を踏む。一度ならず二度までも=貫井)。戦争を背景にした過誤。▼過誤がある(明白な。資料の選択に。法律上の)。▼轍を踏む(前車の。先祖の。前の)。相手の非をなじる。あっさりと非を認める。過失(悪意のない。取り返しのつかない)。過失による事故という判断に達する=若竹。重大な過失を犯す。 **あやまり【誤り】** 弘法にも筆のあやまり。何もかも一緒くたにして論じるのは誤り=後藤。誤りが一般化する。文章に誤りが散見する。▼誤りがある(根本的に。見方に。診立てに)。誤りがない(記憶に。推理に。大体において)。推定に誤りはない。誤りを(棚に上げる。具体的に指摘する)。台詞の誤りを指摘する。人間とは誤りを犯しやすい動物=柳田。▼誤りを犯す(明らかな。金銭的な。知らず知らず。平然と)。正誤を判定する。手違いがあっては困る。謬見に満ちる。謬見を正す。未熟な目にはありがちな誤謬=佐藤春。狂熱の誤謬に似た生涯=中河。 **あやまる【誤る】** とかく人はひとつの視点に固執して判断を誤り物事の本質を見損なう=竹西。▼誤る(事故の処理を。出処進退を。身を。国の未来への道筋を。現実の正確な認識を。香水の選び方を)。誤った(考え方を助長する。情報に振りまわされる。前提から出発する)。誤った考えを(諭す。是正する)。誤って転落死する。▼誤らせる(一生を。人を)。特に誤りやすい例。読み誤る(漢字を。原稿を。潮目の変化を)。誤判する(他殺を病死と。他殺を事故死と)。 **いいまちがい【言い間違い】** どうでもいい細かい言い間違い=高樹。言い間違いを(指摘する。訂正する)。言い誤る(駅名を。肩書を。名前を。椅子を机と)。▶言いそこなう(挨拶の言葉を。肝心なことを。台詞を。礼を。褒めようとして)。▼言い違い(いい加減な。面白い)。言い違いを(正す。訂正する。直す)。 **おちど【落ち度】** 何も落ち度がない。落ち度を大目に見る。底意地悪く落ち度を探す。自らの落ち度を悔いる。することなすこと悉く落ち度ばかり=芥川。 **かんがえちがい【考え違い】** ▼考え違い(とんだ。とんでもない)。▼考え違いする(意味を。神秘を)。▼思い違える(態度を。物音を。曜日を)。思い違いに気づく。▼履き違える(自由と放縦を。話の深みを。目的性を。目的と手段を)。 **ききちがえる【聞き違える】** ▼聞き違える(数を。言葉を。時間を。名を。話を)。耳鳴りと聞き違えるばかりに蟬が鳴く=高樹。 **けんとうちがい【見当違い】** とんだ見当違い。見当違いなむかっ腹を立てる。見当違いの(怒りを向ける。受け取り方をする)。見当違いもはなはだしい。見当違いを(たしなめる。とがめる)。途方もない見当違いを犯す。遺恨を別の事件で晴らす=有川。江戸の仇を長崎で討つ。見当外れな質問。見当外れの(応援を送る。誤解)。▼筋違い(相談を持ちかけるのは。感謝こそすれ文句を言うのは=藤沢)。▼お門違い(恨むのは。とんだ)。お門違いの(提案。発言)。お門違いも甚だしい。的外れな質問をする。あながち的外れな推測ではないような気がする=横山。的外れのところを堂々めぐりする。藪にらみの評論。藪にらみの当てずっぽうにも程がある=長与。 **ごかい【誤解】** 言うのも阿呆らしいくらいとんでもない誤解=高見。誤解が(渦を巻く。胸を傷つける)。誤解に(誤解が重なる。等しい考え)。誤解の(原因が読める。種を蒔く。迷路に陥る。渦に押し流される。ないように断っておく)。思春期に誤解はつきもの=佐野。誤解を恐れず率直に言う。あらぬ誤解を受ける。誤解する(快楽追求を愛と。自分に都合の良いように=石川。ただの若さを情熱と=連城)。とんでもない誤解をする。誤解されては(業腹。つらい。元も子もない)。瓜田に履を納れず。李下に冠を正さず。とんでもない思い違い。思い違いも甚だしい。まるで思い違いをしている。曲解する(言葉づかいを。親しさを。発言を)。いわれなき中傷や曲解を受けて迷惑する=飯田。▼心得違い(とんでもない。甚だしい)。少々勘違いをしているようだ。▼勘違いする(好意を。時間を。習慣を。強さを。日取りを)。勘違いしては困る。ゆめゆめ勘違いしてはならない。 **ごさん【誤算】** ▼誤算(嬉しい。弱点をつかんだと思ったのは完全な=開高)。誤算を引き起こす。読みに計算違いがある。とんだ見込み違い。束の間の糠喜び。せっかくの命拾いもぬか喜びになりかねない=佐山。 **ごじ【誤字】** 相当誤字がある。誤字の多い文章。誤字を(指摘する。訂正する。減らすよう努力する=星)。誤記の多い文章。誤記を訂正する。誤植が散見する。誤植に赤字を入れる。誤植を(指摘する。訂正する)。 **ごほう【誤報】** マスメディアによる誤報が混乱に拍車をかける=柳田。誤報に(躍らされる。気づく。限って回転速度が速い=柳田)。誤報を訂正する。虚報が流れる。 **さっかく【錯覚】** ▼錯覚(目の。新しいことが本物のような=白井。動いて変わって行くことがそれだけで何か値打ちのあることのような=白井。フィルムが断ち切れて逆に回転するような=島尾)。錯覚が徐々に引いて行く。幻でも見ているような錯覚に囚えられる。 <1009> # 問違う-329 る=中島敦。▼錯覚に陥る(夢ともうつつとも知れない音楽的な=有房。待ち合わせの約束をすっぽかされたような=原田宗)。目の前の風景がすっっと陥没していくような錯覚にとらわれる=小林久。場末の飲み屋にいるような錯覚に囚われる=海堂。世界が自分を中心に廻っているような錯覚の中に住む=高橋。知り合いのような錯覚を起こす。▼錯覚する(欲情を愛と。枯れ尾花を幽霊と。性欲の自然を恋と=富岡)。 **ておち【手落ち】** ▼手落ち(うかつな。些細な。警備の)。手落ちを(蹴る。とがめる。認める)。自分の手落ちのように頭を下げる=山崎。一方だけを責めるのは片手落ちだ。片手落ちの処分に不満が出る。 **とりちがえる【取り違える】** ▼取り違える(意味を。原因と結果を。順逆を。上下を。右と左を。夜と昼を。愛想を愛と。早合点して)。 **はやとちり【早とちり】** 早とちりな人。早とちりに気をつける。ちょっと早とちりをする。早とちりして失敗する。早合点に歯止めをかける。早合点を恥じる。早合点して(失敗する。意味を取り違える)。 **ふしまつ【不始末】** 不始末が内密のままに済む。火の不始末が原因で出火する=三浦し。部下の不始末に気づく。取り返しのつかない不始末を起こす。 **ふせいかく【不正確】** 不正確な(答え。推論。数字)。正確から程遠い。正確さを欠く。正確には(知らない。分からない)。 **まかりまちがう【まかり間違う】** まかり間違えば(命取りになる。刑務所に入ることをする。大変なことになる。討ち死にしていた=舟橋。殺人事件の参考人として追及されかねない=内田康夫。死を賜うようなことになるかもしれない=中島氷)。まかり間違っても彼女が犯人であるわけがない。 **まちがい【間違い】** ▼間違い(大きな。とんでもない。何かの。あまりにひどい。空想したのがそもそも=宮本亘)。間違いがないか確かめる。方法論に間違いがある。間違いに(気づく。頓着しない。間違いを重ねる。気づかなかったのは迂闊=立原)。きっと何かの間違いに違いない=なかにし。間違いのないところを見極める。そう思ったのが間違いの元。▼間違いはない(私の勘に。万に一つも)。間違いを(明るみに出す。しぶしぶ認める)。▼間違いを犯す(根本的な。大変な。思いがけない)。必ずしも正しいとは言えない。意味を逆に覚え込む。正しい認識を欠く。しばしば計算間違いをする。錯誤に(陥る。気づく)。錯誤を考え直す。▶錯誤を犯す(観念的な。根本的に大きな=吉村)。 **まちがう【間違う】** ▼間違う(順序を。出口を。やり方を)。間違った(答えを出す。伝説をあばく。判断が危険を招く)。▼間違っている(根本的に。期待するほうが。見積もりの数字が)。間違っても(賭け事に手を出してはいけない。人の物をとったりしない)。無謬ではない(官僚は。検察は。市場は)。誤りやすい例。システムに誤作動が生じる。▼誤作動する(機器が。コンビューターが)。▼誤認する(事実を。敵を味方と)。▼誤用(漢字の。言葉の)。智者にも千慮の一失。 **まちがえる【間違える】** ▼間違える(打つ手を。人生の軌道を。乗る列車を。渡す相手を。桁を一つ。落としどころを。力の発揮の仕方を)。使い方を一つ間違えるのとんでもないことになる=海堂。一歩間違えば(人命が奪われていた。身の破滅にもなりかねない=火坂)。一歩まちがえば元も子も失う危険にとり巻かれる=阿佐田。一つ間違えば(何もかも失う。選手生命を奪っていたかもしれない=近藤)。▼掛け違える(電話を。ボタンを)。差し違える(行司が。大一番で。結びの一番で)。違える(見当を。方法を。道を)。▼踏み違える(ペダルを。アクセルとブレーキを)。アクセルとブレーキを踏み間違える。読み違える(漢字を。崩し字を)。読み間違える(原稿を。名前を)。どぎまぎして言い間違える。 **みあやまる【見誤る】** ▼見誤る(距離を。主因を。情勢を。信号を。標識を)。尾花を幽霊と見る。眼鏡が狂う。見損なう(正体を。本質を)。本物の船と見まがう大きな汽船の看板。見間違いの可能性がある。時計の針を見間違える。 **ミス** 計算のミスが目立つ。仕事上のミスが多い。ミスでもしたら取り返しがつかない。職場では小さなミスでも大惨事に発展する=海堂。ミスに目をつぶる。ミスの数々を列記する。上司にミスの尻拭いをしてもらう=重松。ミスはケシ粒ほどもない=志茂田。少しのミスも許されない。ミスをして減点される。些細なミスをあげつらう。仕事でミスをしてしゅんとする。自分のミスを認める。小さなミスを立て続けに犯す。とんでもないミスをしでかす。舌の根も乾かぬうちにまたミスを繰り返す=海堂。▼ミスを犯す(初歩的な。とてつもない。取り返しのつかない)。重大な判断ミスを次々に犯していく=柳田。凡ミスに泣く。凡ミスを犯す。なくす。連発する)。ミスった個所の発見に狂奔する=内橋。 **みすごす【見過ごす】** 見過ごす(肝心な所を。冷ややかに。うっかり。黙って。何気なく。気のせいとして)。見過ごしに(気をつける。注意する)。見落とす(印を。危険を。誤植を。ほころびを。うっかり。注意しないと。ランプの表示を)。 **みちがえる【見違える】** ▼見違える(明かりを。数字を)。見違えるくらい(元気になる。きれいに片づく)。見違えるほど(美しくなる。大きくなる。元気になる。事態が好転する)。見違えるような生き生きとした顔になる。見違えるように(立派になる。美しく改装する。痩せて幽鬼のように=辻井)。以前とは見違えるように快活になる。病気が見違えるようによくなる。 <1010> # 待つ・準備する **あしがため【足固め】** ▼足固め(計画の。攻勢の。事業の。成功への)。足固めが出来上がる。だから一歩ずつ足固めをしていく=中村亮。しっかりした足ごしらえをして出かける。▼地固め(研究の。商売の)。 **あまやどり【雨宿り】** 神社の神楽殿で雨宿りをする。雨宿りする(道端のお堂に。軒先で)。 **おぜんだて【お膳立て】** お膳立てが(そろう。できすぎている)。見事にお膳立てが整う。長話にふさわしいお膳立てがだんだんに調ってくる=高井。パーティーのお膳立てをする。▼お膳立てする(交渉を。デートを)。 **かねて【予て】** かねて(覚悟の上。噂に聞いている。支度がしてある。話していた通りに行う。話に聞いている。見知り越しの男)。かねてから(心に決めている。敵意を持っている。望んでいた仕事)。かねての(願望が叶う。打ち合わせのとおり事を運ぶ)。かねがね(言って聞かせている。期待をかけている)。 **かまえる【構える】** ▼構える(一等地に家を。小さな道場を。手に手に槍を。東京に拠点を。剣を正眼に。銃を油断なく。へっぴり腰で。槍をぴたりと。たおやかに身を。山裾近くに居を。てこでも動くものかと。獲物を狙う猫のような顔をして=阿久)。何があろうと平然と構えている。隙さえあれば侵略の手を伸ばそうと虎視眈々たる構え=山本周。和戦両様の構えで行く。構えに隙がない。長期戦の構えを取る。バントの構えをする。肩を斜に構える。斜に構えた(笑み。ポーズ)。斜に構えたような笑み。斜に構えて言う。 **こうほ【候補】** 候補が当落線上にいる。新人賞の候補に残る。候補を(絞り込む。推薦する)。自主的な候補を立てる。第一候補に挙げられる。候補者の筆頭に数えられる。候補者を(決める。絞る)。ノーベル賞候補に上げられる。有力候補と目される。 **こころがける【心掛ける】** ▼心がける(借金の返却を。安全を第一と。血の通った運用を。手抜かりのない応対を。できるだけ簡素にと)。▼心がけ(奇特な。殊勝な)。心がけがいい。普段の心がけが悪い。日頃に似合わない心がけと感心する。▼期する(正確な射撃を。選考の公平を。的確な描写を。慎重の上にも慎重を)。 **したく【支度】** 支度が(手間取る。あっという間に整う)。結婚の支度が着々と運ぶ。夕食の支度が整う。ようやく支度ができる。支度に暇取る。酒の支度に台所へ去る。出陣の支度に追われる。夕飯の支度に忙しい。いそいそと外出の支度にかかる=高杉。善は急げとばかり支度にとりかかる=平岩。お昼の支度をして待つ。帰る支度を始める。酒肴の支度を言いつける。手早く支度を済ませる。食事の支度を手際よくきりきりと調える=芝木。▼支度する(あわてて。そそくさと)。支度金をたっぷりもらう。 **しゅうとう【周到】** 周到な(工夫を凝らす。注意を払う。配慮を怠らない細心さ)。周到に(準備を重ねる。張り巡らされた糸にたぐり寄せられる=沢木)。周到綿密な配慮。周到綿密に準備する。周密な叙述。周密に計画を練る。用意周到に準備する。念の入った(悪戯。仕事)。 **じゅんび【準備】** 準備が(完了する。順調に進む。着々と整う。整う。無駄に終わる。ほどなく終わる)。開店の準備で大わらわ。山の動物が冬ごもりの準備で忙しく走りまわる=三浦し。準備に(時間がかかる。心血を注ぐ。数年を費やす。抜かりはない。骨を折る。余念がない。夜も日も足らぬ有りさま)。明日の準備に追われる。出発の準備に取りかかる。食事の準備にかかる。葬儀の準備に忙殺される。直ちに実験の準備に入る。迎え撃つ準備に大わらわ。通夜と葬儀の準備にてんてこ舞い=三浦し。準備を慌ただしく進める。学園祭の準備を買って出る。極秘裡に準備を進める。料理の準備を始める。準備する(有力な反論を。慎重に。入念に。あらかじめ。着々と。手際よく。必要な小道具を。いつもより多めに)。下準備を(終える。済ませる)。かなりの準備時間をかける。準備段階が終了に近づく。準備万端整える。新しい話題を仕込む。▼地ならし(交渉の。増税の)。▼初期化する(パソコンを。ハードディスクを)。▼セットする(カメラを。テープを。目覚まし時計を午前六時に)。▼備える(最終決戦に。食物の欠如に。不意の襲撃に。不測の事態に。不慮の変に。万一の危険に。有事の日に。来たるべき飛翔に。一眠りして徹夜に)。攻撃に備える姿勢をとる。戦闘に備える訓練。▼時に備える(いざという。一事ある。万が一の。もしもの。景気が変わった)。馬を控えて待つ。保険をかける。臨戦態勢に入る。臨戦態勢を整える。万一の時の心備え。心備えが整う。心備えを持つ。▼下ごしらえ(料理の。論文の)。あらかたの下ごしらえは済んでいる。せっせと夕食の下ごしらえをする。備えが十分ではない。後の憂いがないだけの備えがある。老後の備えに励む。火災に対する備えを万全にする。備えあれば憂いなし。▼二段構え(一次と二次の。基本給と営業手当の)。和戦二段構えの備え。根まわしがうまくいかない。▼根回しする(関係者に。主だったメンバーに。関連する部署に)。常日頃根回ししておく=浅川。 **たいき【待機】** 自宅待機を命じる。▼待機する(カメラを手に。紛争に備えて。腕をさすりながら。すぐにも出発できるように)。 **てはい【手配】** 葬儀の手配を済ませる。▼手配する(切符を。トラックを。部屋を。道案内を。宿を。重要参考人として全国に。漏れのないように)。諸事に手配りが遅い。手を回して人を集める。▼手を回す(八方へ。ほうぼうへ)。手はずが(狂う。巧みに整う。つく)。▶手はずになっている(会う。落ち合う)。▼手はずを整える(落ち延びる。しかるべく)。かねての手はず通り実行する。手回しがよすぎる。▼手回しがいい(いつになく。何事にも)。手回しよく話をまとめる。 <1011> # 待つ・準備する-330 **ぬかりなく【抜かりなく】** 抜かりなく(観察する。手を打つ。見張る)。▼抜かりがない(客の接待に。万事)。抜かりのない(尋問。段取り)。手抜かりなく(丁寧に描く。虫干しする)。準備に手抜かりはない。調査に遺漏がある。情報管理に遺漏がない。万々遺漏なきように。遺漏なきを期する。遺漏なくプログラム通り運ばれる。万遺漏なく(準備をする。手を打つ)。そつなく(答える。仕事をこなす。その場を切り抜ける)。そつなくこなす(何をやらせても。重臣たちへの応対を=北原)。 **はりこむ【張り込む】** ▼張り込む(刑事が。私服が)。記者を張り込ませる。警察の張り込みに気づく。メディアの張り込みに悩まされる。徹夜の張り込みを続ける。 **ばんぜん【万全】** 万全の(策を講じる。準備が整う。準備で臨む。備えを固める。対応をとる。態勢で臨む。態勢を敷く)。万全を期する(監視に。対策に)。万全を尽くす(管理運営に。秘密保持に)。▼おさおさ怠りない(準備は。用意は)。準備万端怠りなし。十全なる理解を得る。一日を十全に生ききる。青春を能う限り十全に生きる。美徳を十全に発揮させる=宮本輝。十全の(働きを見せる。責任をもって世に問う)。 **ふせき【布石】** 布石(将来への。連携強化への。次の攻勢のための)。なるべく横槍が入らないように布石も打ってきた=三浦し。用意周到な伏線。伏線を(敷く。張る)。 **またせる【待たせる】** ▼待たせる(観客を。タクシーを。さんざっぱら)。待たせるに忍びない。長らくお待たせいたしました。▼待たされる(しばらく。長いこと。うんざりするほど)。そういつまでも待たせておけない。たっぷり待たせてようやく現れる。 **まちあいしつ【待合室】** ▼待合室(駅の。病院の)。待合室で診察を待つ。待合室に客が屯する。控え室を(用意する。出たり入ったりする)。二百人の客を優に収容できる広さのラウンジ=高橋三。 **まちあわせる【待ち合わせる】** ▼待ち合わせる(駅で。喫茶店で。ロビーで)。待ち合わせて食事に行く。待ち合わせに(遅れる。絶好の店)。待ち合わせ場所を決める。場所と時間を決めて落ち合う。落ち合う日時と場所を指定する。 **まちうける【待ち受ける】** ▼待ち受ける(過酷な運命が。夫の帰りを。次の言葉を。ひたすら愛を。今か今かと。今や遅しと。校門で下校してくる生徒を。先に到着して相手を。鉄壁のシフトを敷いて。安寧に満ちた死が=奥泉)。待ち設ける(今か今かと。知らず知らず。実現される日を)。妥協のない心構え。 **まちかねる【待ち兼ねる】** ▼待ち兼ねる(出発の時を。新作の映画を。話がひと区切りつくのを。今日か明日かと)。待ち兼ねたように手を取って迎え入れる。夜になるのが待ちきれない。 **まちかまえる【待ち構える】** ▼待ち構える(賞賛の言葉を。息を殺して。今か今かと。今や遅しと。舌なめずりして。火蓋を切らんと。身をかたくして)。待ちかまえたように襲いかかる=司馬。待ち構えていたように立ち上がる。▼舌なめずりする(猫が獲物を前に。楽な相手だと内心)。腕を撫して待ち構える。一発当ててやろうと腕を撫している=なかにし。文句をつけてやろうと手ぐすねを引いている=横山。手ぐすね引いて(待ち構える。待つ)。満を持して(発表した小説。法廷に臨む)。チャンスを満を持して待つ。 **まちくたびれる【待ちくたびれる】** ▼待ちくたびれる(運命の日を。待ちに待って。いくらたってもこない恋人を=椎名誠)。待ちくたびれて(あくびをする。眠ってしまう)。身が細る思いで待ちあぐねる。待ちあぐむ(合格発表を。採用通知を。業を煮やすほど)。待ちぼうけを(食う。食わされる)。とうとうしびれを切らす。しびれを切らして帰ってしまう。 **まちこがれる【待ち焦がれる】** ▼待ちこがれる(会える日を。春の訪れをひたすら=白洲)。待ちに待った(好機が訪れる。返事が届く。祭りの日が来る)。長いこと待ちに待った日がやって来る。待つ(今や遅しと。今日か明日かと首を長くして=柴田錬)。 **まちつづける【待ち続ける】** ▼待ち続ける(息を凝らして。ひたすら。まんじりともしないで)。待ち暮らす(便りを。あだに十日あまりを)。 **まちどおしい【待ち遠しい】** ▼待ち遠しい(食事の時間が。春の到来が。明日になるのが。その日の来るのが)。夏になるのが待ちどおしい=森。じりじりするほどの待ち遠しさ=小松。靴の爪先で待ちどおしそうに敷き石を叩く=有吉。一日千秋の思いで待つ=久米。一刻千秋の思い。▼心待ちにする(決行を。来訪を)。心待ちの便りを手にする。▼日を心待ちにする(出所の。訪ねて来る)。週に一度の逢瀬を心待ちにする=鈴木光。 **まちのぞむ【待ち望む】** ▼待ち望む(帰れる日を。収穫期を。万一の幸いを。心ひそかに。子どものように騒いで=志茂田)。▶待望する(作品を。政府の打倒を)。待望の新人が現れる。 **まちぶせる【待ち伏せる】** ▼待ち伏せる(帰りを。敵を。暗がりで)。待ち伏せが無駄に終わる。待ち伏せをかける。思わぬ伏兵が現れる。思わぬ伏兵にひるむ。伏兵に襲われる。要撃する(馬車を。敵を山中で=菊池。佐々木小次郎のように先に到着して=富岡。切なそうに貧乏ゆすりなんかして=古井。爪を研ぎすました野獣のように機会を根気よく=石坂。花嫁を迎える日を指折り数えて=後藤。骨の一片を抜き取るような思いで=山田風。厄介な時間が一刻も早く過ぎてくれることを半分呪いたくなるほどの熱心さで=安岡)。こうなったら一時間でも二時間でも待つ覚悟=源氏。待つよりほかに術がない。ひたすら待つ(連絡を。儀式が終わるのを=辺見)。いつまで待っても電車が来る気配がない。待っていた甲斐がある。待っていたと(言うように頭から一喝する。言わんばかりに喜んで引き受ける=里見)。▼待っている(新しい仕事が。一発逆転が。闘いの場が。番狂わせが。最後に恐ろしい結末が。暗い深淵が口を開けて。手ぐすね引いて)。便々と待っていることはできない。待ってましたとばかりに(飛んでいく。往来へ駆け出していく=内海)。果報は寝て待て。待てど暮らせど(現れない。送ってこない。音沙汰がない)。待てば海路の日和あり。待ち時間が一時間ある。待ち時間を有益に使う。待ったがついに来たらず。待っていたかのように(承諾する。立ち上がる)。歳月人を待たず。▼俟たない(言を。論を)。理想が長い雌伏の後に実現する。雌伏を余儀なくされる。列車を待避させる。待避線を設ける。控えている(担当者が。おとなしく)。人待ち顔に(酒を飲む。たたずむ)。 **まちわびる【待ち侘びる】** ▼待ちわびる(姿を。今か今かと。帰郷を心から。帰るかどうか分からない人を。妻が夫の帰りを。見つかったという報を。指折り数えて式の当日を=里見。砂が水を求めるような思いで=船山)。 **まつ【待つ】** 待つ(身のつらさ。間がじれったい)。待つ(衰亡の道が。悲惨な運命が。身の破滅が。帰る日を。学問の発展を。風が止むのを。干天に雨を。後日の沙汰を。座して死を。時機の到来を。事態の進展を。状況の変化を。救いの手を。次の機会を。舞台への出を。迎えの船を。冷静な議論を。今後の研究に。読者の評価に。ぎりぎりまで。首を洗って。辛抱強く。立ちつ居つ。手をつかねて。手をこして。列を作って。嵐が過ぎるのを。命の尽きる一瞬を。豪雨が通り過ぎるを。根気よく自分の順番を。時機の熟するのを。静かに次の言葉を。時節が来るのを。自然に目覚めるのを。雌伏してチャンスを。乗車口でドアが開くのを。信号が変わるのを。泰然として吉報を。チャンスが訪れるのを。にわか雨があがるのを。吹雪の去るのを。ホームで電車を。火照った体が冷めるのを。まんじりともせず朝を。皆の寝静まるのを。リストの完成を。一晩じゅう寝ずに。息を殺してじっと。祈るような気持ちで。今か今かと身構えて。思いきり悪くうじうじして。期待に震えながら。今日か明日かと。腰を落ち着けて。じりじりしながら。その日が来るのを首を長くして。そわそわしながら。はらはらしながら。まだかまだかと。道端にたたずんで。やきもきしながら。埋もれ木のように朽ち果てるのを=津本。厳かな儀式を見守るように次の動作を=小川。虎視眈々に欲と復讐の時を=宮本。熟柿が落ちて来るのを=山岡。時の過ぎ行くままに過ぎ行くのを=久米。犬みたいにじっと=大庭。攻撃の令の下るのを今や遅しと <1012> # 待つ **みがまえる【身構える】** ▼身構える(刀を抜いて。隙もなく。油断なく。用心深く。後退りするような姿勢で=日野。獣のように猛々しく=伊藤整。両腕を軽く垂らして=三好徹)。窮鼠が猫に飛びかかるように身がまえる=黒岩。身構えて待つ。さあ来いといわぬばかりの素早い身構え=佐藤春。スワといえば戸外へ飛び出せるように身構えをしながら立っている=谷崎。かろうじて態勢を立て直す。 **みじたく【身支度】** とどこおりなく身支度が済む=林。手早く身仕度に取りかかる=山岡。身支度にかかる。そそくさと身支度を始める。かいがいしく身支度をした女=本庄。襟をかけ髪に姉さまかぶりに手拭いをかけて甲斐甲斐しく身支度をする=萩原葉。身支度を整える(あわただしく。外出の。手早く)。身支度する(さっさと。のそのそ)。きりっと出来あがった身こしらえが気持ちに反映する。身こしらえを(済ます。整える)。きちんと身じまいをする。手早く身じまいを済ませる。追い立てられるように身繕いを始める=黒井。▼身繕いする(あわてて。そそくさと)。 **ようい【用意】** ほろを出さないだけの周到な用意=立原。かねて用意がしてある。残念ながら用意がない。出発の用意が終わる。食事の用意が整う。なかなか用意が整わない。▼用意がある(話し合う。万一の)。食後のコーヒーの用意に取りかかる=船戸。用意の良さに感心する。旅立ちの用意を整える。手早く食事の用意を済ませる。▼用意する(献上の品物を。逃走手段を。手際よく料理を。風呂上がりに下着を。あっと驚くような結末を=常盤。不安を収めるための器を心の中に=重松)。▼用意をする(酒と肴の。いそいそとお茶の)。前もって用意しておく。用意してきた原稿を読み上げる。用意万端整える。常備する(コンドームを。非常食を)。資金の手当てがつく。交通費を手当てする。 **よび【予備】** 予備の(食糧。タイヤ。電池。燃料)。予備を用意しておく。予備知識を(仕入れる。持つ)。予備費に(算入する。手をつける)。予備費を取り崩す。替え(下着の。シャツの)。替えを(持って行く。用意する)。▼スペア(タイヤの。ボタンの)。スペアを用意しておく。控えの選手。控えをとる。 <1013> # 纏める・助け合う **あに【兄】** 兄が(妹に言うような親身の情があふれる=杉本。妹を誘うように有無を言わさぬ呼び出し方=高樹)。兄に(折れて出る。盾突く)。兄の(目を恐れる。反対など歯牙にもかけない)。実の兄も同然と考える。兄のように慕う=永井路。きっぷのいい兄貴。兄貴にはかなわない。兄貴を(安心させる。裏切る)。お兄さんのように気安い人=志茂田。お兄さんを(好きになる。敬する)。 **あね【姉】** しっかり者の出来のいい姉。▼姐御(勇み肌の。きっぷのいい)。母か姉のような愛情で可愛がる=瀬戸内。姉のように(慕う。優しい気持ちになる)。姉御肌で後輩の面倒見がいい=氷室。昔から姉さんみたいに頼りにしている従姉=連城。お姉さんぶった物腰。気の強い姐さん。 **いちがん【一丸】** 一丸となって(事に当たる。目的へ向かう)。▼一丸となる(村民が。チームが。打って)。人民一丸となって決起する。官民一体となって実現に努力する。クラスが一体となる。挙国一致して国難を克服する。挙国一致の(態勢で臨む。内閣)。 **いもうと【妹】** 妹が年頃になる。幼い妹が小袋のようにからみつく=宮本百。妹にあたる女性。妹の面倒を見る。妹をお人形のように可愛がる=内田。妹分らしく下手に出る。 **おとうと【弟】** 天にも地にも掛けがえのない弟=向田。弟に(追いつかれる。対する思いやり。童話を読んで聞かせる)。家督を弟に譲る。服を弟にさげる。年少の弟にでも説き聞かせるように話す=塩野。弟の兄に対するような親しみをこめる=長与。弟を(おんぶする。大学に入れる。さとすような口ぶり=西木)。 **おや【親】** ▼親(生みの。育ての。子が子であれば親も親)。親が(年老いる。死んでも貸休み)。親から(勘当される。独り立ちする。遺伝子を受け継ぐ。遠ざかってゆく)。元手を親から分けてもらう。親から子に(遺伝する。語り伝えられる)。親と(死に別れる。生き別れになる)。親とのスキンシップに飢えている。親に(恩返しをする。苦労をかける。心配をかける。助けてもらう。手を焼かせる。恥をかかせる。隠れて酒を飲む。かまってもらえない。がんじがらめにされた人生。死なれて泣き明かす。やいやい言われる。対する漠然としたレジスタンス=石坂)。一児の親になる。恋人を親に紹介する。子を見ること親にしかず。親の(介護をする。顔を立てる。心子知らず。そばで暮らす。血を引く。恥は子の恥。面倒を見る。足手まといになる。言いつけに背く。言いつけを聴く。言うことをまじめに聞く。因果が子に報ゆ。顔が見てみたい。仇にめぐり合う。死に目に会えない。資力を当てにする。しつけがなっていない=貫井。臨終に駆けつけるように気色ばむ=山崎)。親はなくても子は育つ。親を(大事にする。選ぶことはできない。親とも思わない。引き合いに出す)。かりそめにも親を恨むな。物心ついたときから親を知らない。遠くから親のような兄のようなゆたかな心で包み見守る=石川。師匠を実の親のように慕う=中。賢しらに親代わりを買って出る。子を思う親心。片親で育つ。親権をめぐる争い。保護者と懇談する。保護者の務めを果たす。 **かぞく【家族】** 笑いの絶えない幸せな家族=かんべ。家族が(ささやかに祝う。食べるには困らない。ばらばらになって働く。別れ別れになる。寄り添って愉しく暮らす=原田康)。子供連れの家族が大勢遊ぶ。久しぶりで家族が笑っている顔を見た=さだ。家族からうとんじられる。家族で(夕食を囲む。遊ぶには絶好の浜)。家族と離れて暮らす不自由。家族と一緒に(新年を迎える。夕食を食べる)。家族に(危険が及ぶ。迷惑をかける。連絡を取る。愛想を尽かされる。災厄が降りかかる。不審を持たれる)。家族の(愛情に飢える。顔が揃う。幸せを壊す。死に目に会う。もとに帰る。了解を取る。ために身を捧げる。一員と言っていいくらいなんの気兼ねも要らない=里見)。温かい家族の団欒=島崎。そこかしこに家族の温もりが漂っている=集合。久しぶりに家族の顔を見てほっとする=山本。家族を(残して死ぬ。相手に愚痴をこぼす)。家族に準じる扱い。家族のようにお互いに思っている。秋の日ざしを楽しんでいる家族のようにゆったりとした足取りで歩く=三浦。家族運に恵まれる。家族ぐるみで(つき合う。仲が良い)。家族サービスがおろそかになる。家族サービスに努める。家族連れで(楽しむ。賑わう)。家族的な雰囲気の社風。家族同様に(扱う。つき合う。かわいがっている犬=阿刀田)。家の人が応対する。一家が破産の状態に直面する。一家に不吉な影を落とす。一家の(主柱を失う。災いを除く)。一家を挙げて村を出ていく。家人と四方山話をする。家人に伝言を頼む。家人の口を糊する。家内安全を(祈る。願う)。係累が(多い。少ない)。遺骨の小箱を持った遺族が歩いてゆく。遺族から話を聞く。死亡診断書を遺族に交付する。遺族の悲しみを考慮する。骨肉を分け合った親兄弟。親兄弟から見放される。親兄弟に(死に別れる。世話になる。迷惑をかける)。親兄弟の(顔をつぶす。面倒を見る)。親兄弟を呼び寄せる。妻子が帰りを待ちわびる。妻子を(置いて出て行く。連れて町に出る)。事業に熱中して妻子を忘れる。妻子を伴って(帰郷する。上京する)。妻子眷属をたくさん抱える。 **きょうかん【共感】** 共感が(生まれる。広がる。湧く)。共感を呼ぶ。こめてうなずく。もって迎えられる)。▶共感する(意見に。思想的に。反体制運動に。主人公の挫折感に心情的に=五木)。 <1014> # ま 感情移入が深くなって声が少し上ずる=辻井。感情移入する(作中人物に。素直に)。感情移入の激しい体質。切実なシンパシーをいだく。意見に同感する。同感の意を表する。深い同感の色が動く。 **きょうだい【兄弟】** ▼兄弟(うり二つの。血肉を分けた。仲のよい。腹違いの。同じ腹から生まれた。血のつながった)。兄弟が(仲よく暮らす。生き別れになる。内輪もめをする。ばらばらに散る)。兄弟は他人の始まり。兄弟も及ばぬと言われるほどに仲がよい友達=海音寺。兄弟のように仲がよい=久米。実の兄弟のように親しく行き来する=火坂。姉妹が全員集まり桜の花が咲いたような賑わいを呈する=萩原。姉妹(腹違いの。天にも地にもかけがえのない=向田)。姉妹のように気が合う=佐藤愛。▼末っ子(甘えん坊の。三人きょうだいの)。末っ子を(可愛がる。偏愛する)。 **きょうちょう【協調】** 各国に協調を促す。▼協調する(国際社会と。他国と)。協調性に欠ける。協調性のない人間。何よりも和が大事。東洋的な和の精神。和をもって貴しとなす。 **きょうどう【共同】** 共同(地域的な。官と民の)。共同して製品を開発する。友人と共同して仕事をする。夫婦よりも緊密な共同生活=中村。共同体の中で暮らす。共同歩調をとる。▼合従連衡(政党の。派閥次元の)。合従連衡が活発化する。連合して敵にあたる。 **きょうめい【共鳴】** 共鳴する(音が。意見に。革命思想に。計画に。思想的に)。二人の胸にひたと共鳴する不思議な響きが潜む=有島。二人の魂が奥深いところで二つの楽器のように共鳴し微妙な諧音を響かせ合う=福永。深い共振を呼び起こす作品。 **きょうりょく【協力】** 全面的な協力を惜しまない。協力する(及ばずながら。寝食を忘れて。できる限り。いやな顔一つせずに)。二人が息を合わせて漕ぐ。二人して力を合わせて今日まで築き上げてきた=福水。二人で心を合わせる。▼協賛する(イベントに。キャンペーンに)。協同して事に当たる。住民が協同する。国民と苦楽を共にする。新聞社と企業とがタイアップする。二人三脚で事業を拡大する。運動会の二人三脚に出る。▼連携する(関係省庁が。さまざまな機関が)。チームワークが(とれている。よい)。チームワークのよさは話に聞いている。チームワークを乱す。有力商社との提携に活路を見出す=内橋。▼提携する(業務を。同業者と)。 **くみあい【組合】** 組合に加わる。組合の突き上げを食らう。経営を組合の自主管理にゆだねる=加賀。組合を(結成する。設立する。脱退する)。組合運動に挺身にする。組合活動に積極的に参加する。組合結成に踏みきる。同業組合の会合に出席する。 **けつごう【結合】** ▼結合(同志的な。有機的な。夫婦の)。結合する(漢字を。経営を。分子を。両者を。職人の技が生産技術と=吉田)。▼ドッキングさせる(人工衛星を。二つの意見を。二つの団体を)。 **しゅうとめ【姑】** 姑が嫁をいびる。嫁と姑との板挟み。八十を過ぎて物識り顔した姑。姑との折り合いが悪い。姑に小言を言われる。姑の(言葉に逆らう。仕打ちに泣く。機嫌が立つ。臨終に侍する)。姑を介護する。 **じんよう【陣容】** 陣容を(固める。立て直す。整える)。チームの陣容をつくる。陣営に加わる。陣営を(形成する。立て直す)。陣立てを敷く。敵の布陣を打ち破る。 **スタッフ** スタッフが(そろう。一斉にどっと笑う)。前作のスタッフが再結集する。スタッフに(加わる。責任を被せる。発破をかける)。気合がスタッフに感染する。スタッフの指示に従って行動する。スタッフを(入れ替える。増員する。増強する)。 **係員** 係員に(尋ねる。チップを握らせる)。係員の指示に従う。要員を(連れてくる。雇い入れる)。 **たすけあう【助け合う】** ▼助け合う(住民同士が。お互いに)。助け合いともたれ合いは別物。助け合いの精神。▼相身互い(武士は。困っているときは)。ギブアンドテークの関係。共済に加入する。共済を勧める。至極円満に持ちつ持たれつする。持ちつ持たれつの協力関係。 **だんけつ【団結】** 測り知れない団結の力を発揮する=臼井。▼団結する(勤労者が。労働者が。組織的に)。一致団結させる(労働者を。プロレタリアートを)。団結して(組合をつくる。行動する)。心を一つにして戦う。地元住民が一致団結する。▼大同団結する(各党が。各派が)。大同団結へと歩み始める。大同団結を(図る。呼びかける)。 **ちち【父】** 父と息子の血の濃さを思う=鈴木光。父の(跡を相続する。遺志を継ぐ。仕事を手伝う。死に臨む。名を襲う。死に目に会えない。死をいたく悲しむ。姿が目の奥に浮かぶ。血をひいている。名代で出席する)。亡き父の罪滅ぼしをする=池波。花嫁の父の悲哀をしみじみ感じる=内田康。父を誇りに思う。寝たきりの父を抱える。どんな事態に直面しても冷静な父を尊敬する=常盤。父のような感情をいだく=丸谷。 **ちちおや【父親】** 父親(子煩悩な。話のわかる)。父親に(生き写し。負ぶさる。せがんで連れて行ってもらう。手を引かれて歩く)。女房の父親に頭が上がらない。父親の(顔をつぶす。肩に乗る。期待を裏切る。気分を味わう。幻影を追う。薫陶を継ぐ。心中を慮る。世話をする。血をひく。真似事に興ずる。孤独を痛感する。言葉を忠実に守る。再婚に賛成する。性向を受け継ぐ。背中を見て育つ。ない子供を産み落とす。任地が変わるのについて歩く。亡霊が前に立ち塞がる)。我知らず父親の腕にすがりつく。偉大な父親の存在を越える=吉野。父親をないがしろにする。物分かりのいい父親を演じる。父親を亡くす(事故で。戦争で)。 <1015> # 総める・助け合う―331 父親のような年齢の男と結婚する=連城。頼もしい父親のような男=三浦。子煩悩な父親のように目を細くして眺める=三浦。娘を見合いに連れだした父親のようにそわそわと落ちつかない=畑。父親代わりを務める。父親譲りの性格。父親らしい威厳。男親というものは娘のちょっとした心遣いにぐらりとする=さだ。親父の(あとを譲り受ける。意見をてんで聞こうともしない)。死んだ親父の口癖。舅が嫁を思いやる。舅を介護する。絵に描いたようなマイホームパパ=重松。お父さんに甘える。お父さんの(働く姿を見る。胸にしがみつく)。お父さんのようにあたたかい人=志茂田。 **とういつ【統一】** ▼統一する(天下を。理論と実践を。自分の好きな色調で)。グレーで統一された品のいい店=連城。統一国家を築く。統一的な行動を起こす。止揚する(正と否を。矛盾を)。対立と止揚という弁証法的なロジック=池澤。▼統合する(行動を。二つの会社を。民族を。ヨーロッパ全体を)。 **とういつせんせん【統一戦線】** 統一戦線が成立する。統一戦線を(唱道する。展開する)。共同戦線を張る。人民戦線の結成に成功する。 **どうし【同志】** 同志を(集める。率いて決起する)。同志たちが次々と櫛の歯を引くように死んでゆく=網淵。志を同じくする盟友。有志を募る。 **どうちょう【同調】** ▼同調する(相手の考えに。相手の気持ちに)。同調する声が随所で起こる。同調者が(現れる。広がらない。増える)。▼付和雷同する(民意が。扇動に。適当に面白がって)。 **どうめい【同盟】** 同盟の(契りを結ぶ。一角が崩壊する。健在ぶりを天下世界に示す=荒巻)。労働者と農民の同盟を基礎にする=森。攻守同盟を(密約する。結ぶ)。同盟関係を(築き上げる。持続する)。 **とじる【綴じる】** ▼綴じる(原稿を。新聞を。半紙を。バインダーに。ファイルに。本を糸で)。綴じ込みを(一枚ずつ繰る。閉じる。広げる)。地元紙の綴じ込みを調べる。▼綴じ合わせる(原稿用紙を。書類を)。綴じ込む(帳簿に。ファイルに)。手元の綴りに目を落とす。書類の綴りを取り出す。新聞の綴りをテーブルに広げる。ファイルに目を通す。ファイルをめくる。鞄からファイルを取り出す。ホチキスで(書類を留める。綴じ合わせる)。 **なかま【仲間】** ▼仲間(気の合った。一つ釜の飯を食った。秘密を共有する)。仲間が続々と集まってくる。切実に仲間が欲しいと思う。久しぶりに仲間が集まる。仲間から声がかかる。昔の仲間とばったり会う。仲間とつるんで(悪事を重ねる。飲みに行く)。仲間に迷惑がかかる。盗賊の仲間になる。仲間の(受けがいい。温情にすがる。危機を救う。誘いを断る。死を悲しむ。力を借りる。身を案じる)。仲間を(敵にまわす。呼びに走る。売るような真似ができるか=椎名。捨てて警察に寝返る=高村)。隣の集落に仲間を引き連れて殴りこむ=藤田。共に旅する仲間たち。仕事仲間から好意を持って迎えられる=熊谷。仲間意識が(育つ。足りない。強い。弱い)。仲間同士で内輪もめをする。内輪を自派で固める。徒党を(組む。結ぶ)。同じ釜の飯を(食った仲。食べた仲)。仲間内で(集まる。わいわい騒ぐ)。仲間内に知れ渡る。メールが仲間内を飛びまわる。内々で解決する。内輪の(会議を開く。話で盛り上がる)。身内を(かばう。ひいきする)。 **なかまいり【仲間入り】** 何の気がねもなしに仲間入りができる。仲間入りをする(大人の社会に。一躍スターの。一等国の。作家の。話の)。仲間に入る。伍する(先進国に。世界の列強と。零落者の群れに=川崎)。こんな手合いと歯するのを恥とする=中。 **ねんぴょう【年表】** 年表にまとめる。いろいろな年表を見比べる。年譜(作家の。自筆の)。年譜を作成する。 **はは【母】** 抱かれる(母なる森に。母の懐に)。▼母(常に控えめな優しい。年老いて愚痴っぽくなった)。母が(父を捨てる。突然上京してくる。女手一つで一家を支える=三島)。母から子へ伝承する。母と(仲良く暮らす。子の立場が逆になる)。母なる大地。母に(抱かれて寝る。すがって泣きじゃくる。なった喜びは何物をも征服した勝利感に似ている=有吉)。母の(顔に生き写し。苦労に報いる。座を明け渡す。目をごまかす。言葉に耳を傾ける。支配から脱け出す。胎内からこの世に生まれ出る。名を呼び続ける。温もりに包まれて育つ。膝に欲すがって泣く。もとを飛び出す。優しさが鬱陶しい)。聖なる母のイメージ。亡き母の思い出にひたる。ふくよかな母の胸を思い浮かべる。故郷の母の姿を目に浮かべる。在りし日の母の俤を偲ぶ=谷崎。すべすべとやわらかく温かい母の肌=日野。背中の小さな編み目の感触が母の肌ざわりのよう=伊集院。太陽がある間つい忘れていた暁の明星のような光で遠くから照らしている母の愛=武者小路。母への思慕に身を焦がす。亡き母を思慕する。子をあやす母のような所作=あさの。世故慣れた母らしい落ち着きの声=長与。 **ははおや【母親】** 母親(教育に熱心な。品のいい。理解のある。無口で控え目な。父に先立った薄幸の。乳飲み子を抱えた。息子にざっくばらんな姉弟のような態度でいてもらいたいと考えている=安岡。前世紀の遺物のような=内田康)。母親が(鬼に見える。急に老けこむ)。母親から(影響を受ける。自由になる)。子供が母親から離れる。母親と(名乗れない事情がある。なる日を意識する)。母親に(甘える。似た働き者)。母親の(期待に背く。乳を恋しがる。胸に抱かれる。後ろに回ってもじもじする。背丈を追い越す。羽の下から巣立つ。ない身の上は大海に漂う一葉舟にもひとしい=福永。見果てぬ夢を娘に果たさせる=石坂)。温かい母親の情にふれる。 <1016> # ま 子供が母親の腰にまつわりつく。死んだ母親の追憶に浸る。母親を早くに亡くす。狂乱した母親をなだめる。何かの弾みで母親を殴ってしまう。無責任な母親を誹謗する。遥かな地平線を見るような眼で母親を眺める=干刈。母親のように慕う。子を亡くした母親のようにさめざめと泣く=奥平。母親みたいに甲斐甲斐しくおむつを取り替える=阿刀田。母親思いの優しい子。おふくろの味。女親のような細やかな配慮=三浦。マザーコンプレックスのかたまりのような子=丹羽。老母の顔が脳裏に浮かぶ。老母を看取る。子供みたいにかわいらしいところがあるお母さん=壺井。お母さんが(病気で倒れる。笑うとばっと子らの心に花が咲く=住井)。お母さんの手料理。心地よいお母さんの膝の上。 **はばつ【派閥】** 派閥が弱体化する。派閥に(色分けする。属する)。派閥の(大立て者。領袖)。分裂した各派が再結集する。各派の指導的人物を漏れなく集める。宗派に分かれる。宗派の本山。派を(立てる。唱える)。別派を(興す。立てる)。▼一派(学問の。芸術の。宗教の)。一派を(形成する。従える。成す)。権威の地下茎とも言うべき学閥=高橋和。学閥の弊害。学閥を(形成する。作る。利用する)。 **ひとまとめ【一纏め】** 手早く一まとめに束ねる。脱ぎ捨てた服を一まとめに抱える。一まとめにする(初心者を。伝票類を)。▼概括する(調査結果を。論文を)。▼引っくるめる(五種を。両方を。全部)。一口に言えば。▼包括する(音域を。全社会を)。包括的な(対策。平和)。包括的に取り決める。 **ふうふ【夫婦】** 夫婦(助けあって世を渡る。水入らずの生活。蜜月の交情を楽しむ=舟橋)。夫婦(屈託のない幸せな若い。苦楽を共にした。長年連れ添った。奇妙奇天烈な色に染まっている=飯田。歳月のしもで渋くなってしまったような一組の=高尾。人も羨むような円満な似合いの=人更)。夫婦が(連れ添う。同衾する。円満な夫婦生活。夫婦生活がスムーズにいく。夫婦生活を大事にする。止まり木に並んで止まった生気のない二羽の鳥みたいに見える老夫婦=高井。年老いた夫婦のように肩を寄せ合って過ごす=村上春。老いてなお夫婦相和す=飯田)。 **ふうふなか【夫婦仲】** 夫婦仲が(至って円満。芳しくない。和やかにいく。まずくなる。陸もつましい。悪い。ぎくしゃくする。しっくり行かない)。いたって夫婦仲がよい。夫婦仲に(隙間風が吹く。不安な影がさす)。夫婦の仲が(いい。冷め切る。氷のように冷える=村上元)。夫婦の仲の良さを見せつけられる。夫婦(仲睦まじい。形影一如の仲のいい。おしどりのように仲のよい=宮尾)。夫婦の間が琴瑟相和す。琴瑟の交わり。夫との仲が冷却する。夫妻の仲が悪い。 **へんしゅう【編集】** 教科書の編集に従事する。雑誌の編集に携わる。▼編集する(教科書を。雑誌を。テープを。本を)。特集記事を連載する。▼編集者(新米の。即戦力になる。フリーの)。編集者に原稿を渡す。編集長を務める。監修する(教科書を。辞書を。百科事典を)。老人問題を特集する。特集を(企画する。組む)。・編纂する(辞書を。日本史を)。大きな辞書を新たに編纂するときは大小さまざまの蹉跌があるものです=三浦し。新しい辞書の編纂に着手する。 **ほうし【奉仕】** 奉仕(献身的な。内助の妻的な。無償の。至れり尽くせりの)。▼奉仕する(国民に。人民に。大企業に。読者の際限のない要求に=鮎川)。 **ぼせい【母性】** 母性の意識が薄い。母性的な寛大さ。母性本能が目覚める。母性本能を(くすぐる。発揮する)。 **ボランティア** (草の根の。無報酬の。有給の)。ボランティアが増える。ボランティアとして働く。ボランティア活動をする。 **まとまらない【纏まらない】** ▼まとまらない(思考が一向に。原稿がうまく。まとまる話も。混乱して考えが。いろいろのことがこんがらかって考えが=清水俊)。 <1017> # 纏める・助け合う-331 どうせまとまらないに決まっている。職場の一体感が崩れる。甲論乙駁して(収拾がつかない。まとまりがつかない)。甲論乙駁の議論が続く。言葉がまとまりを欠く。船頭多くして船山に上る。統制が乱れる。からきし統制がとれない。統制のとれぬ烏合の衆の域を出ない。▼不統一(形式が。表記が。文体が)。前後不統一な(話。文章)。散漫で雑然とした構成。散漫に印象を述べる。とりとめのない記憶が散漫に流れる=安岡。注意が散漫になる。支離滅裂な(意見。考え。施策。説明)。組織が支離滅裂になる。 **まとまる【纏まる】** まとまる(意見が。考えが。計画が。相談が。労使交渉が。コンパクトに。縁組みが無事に。頭の中に詰まっていた疲労の砂が一箇所に=倉橋。話がとんとん拍子に=野坂)。うそのようにすらすら総まる=小林多。まとまる話も流れてしまう。気持ちがまとまる(国民の。皆の)。まとまりのいい家族。不思議な一体感を味わう。心を一にする。▼収斂する(思考が。思いが一点に)。▼妥結する(交渉が。話し合いが)。束になって(当たる。襲ってくる)。一つの単位に還元される。一丸の(結束を誇る。団結を誇る。結束にひびが入る=隆)。 **まとめやく【纏め役】** スタッフのまとめ役。まとめ役を(買って出る。務める)。改革の旗振り役。幹事を(務める。回り持ちにする)。▼幹事(会の。忘年会の)。宴会の幹事役を務める。 **まとめる【纏める】** ▼まとめる(条約の草案を。諸侯の意見を。調査報告を。意見を一本に。髪をきれいに。商談を有利に。半ば命令的に縁談を。来春までに報告を。驚くほど立派に。髪の毛をボニーテールに。髪のほつれを耳の後ろに。簡単な理論的形式に。人々の心を一つに。要点をカードに。髪をすっきりとアップに=三浦。質問の意図を的確に言葉に=有川)。▼話をまとめる(仲人が。強引に。首尾よく)。調査結果のまとめが完成する。まとめ方が堂に入っている。取りまとめに(失敗する。成功する。努力する)。▼取りまとめる(意見を。具体策を。建議を。政策を。調査結果を)。▼まとめ上げる(改革案を。研究報告を。構想を。歴史を。長い髪をスカーフで=絞辻)。まとまらない印象を無理にまとめあげる=佐藤春。きれいに話をまとめすぎる。物事を一括して処理する。▼一本化する(窓口を。両案を。いくつかの意見を)。集成する(研究を。古典文学を。史料を)。集大成する(研究を。史料を。説話を。日本の詩歌を)。▼収攬する(人心を。乱世を)。▼総括する(教訓を。経験を。成果を。分析を)。▶総合する(諸意見を。観察した結果を。さまざまな手段を)。▼組織化する(新たな体系に。未組織の労働者をあらたに)。▼統括する(事業を。人事を。本部を)。総合的な(施策。分析)。総合的に取り組む。▼束ねる(髪をポニーテールに。総髪を後ろで無造作に。切り割った薪を集めて。長い髪を後ろで)。髪を束ねて背後に流す。 **メンバー** ▼メンバー(主要な。優秀な。有力な。最強の。錚々たる。粒選りの。バンドの。寄せ集めの。レギュラーの)。メンバーが(集まる。欠ける。揃う。足りない。ばらける。若返る)。主だったメンバーに根回しする。班のメンバーに認めてもらえたみたいでうれしい=三浦し。メンバーの一致した意見。組合員非組合員を問わず。組合員を組織する。隊員百五十人余に及ぶ。▼団員(応援団の。サーカスの。オーケストラの)。会員(主だった。正規の)。会員に(準じる。なる)。会員を(勧誘する。除名する。募る)。▼成員(家族の。共同体の。社会の。集団の。組織の。団体の)。部員(クラブの。サークルの。入り立ての)。歴代の部員に語り継がれる。 **ゆう【結う】** ▼結う(髷を。髪をお団子に。髪を島田に。髪を茶筅に。髪を丸髷に。髪を桃割れに。髪をひっつめて)。▼結い上げる(日本髪を。前髪を。丸髷を。髪をアップに。髪を高く。一本の後れ毛もないように髪を=津本。髪を一筋の乱れもなく=藤沢)。 **ようやく【要約】** 要約する(新聞の記事を。話の中身を。物語の骨子を。ほんの一言に。簡潔に力強く。簡単な理論的表現に=服部)。ごくあっさりと要約して書く。会談の概要を発表する。計画の概要を説明する。事件の概要を聞く。話の大意を飲みこむ。論文の大意をつかむ。▼大要(計画の。話の)。▼要旨(講演の。論文の)。かいつまんで事情を説明する。聞いた話をかいつまんで紹介する。話をかいつまんで伝える。かいつまんで話す(いきさつを。事情を。一連の出来事を)。 **りょうしん【両親】** 遠い故郷に暮らす年老いた両親=重松。両親が(健在。離婚する。相次いで他界する)。両親と(喧嘩して家を出る。一つ家で暮らす)。両親に(心配をかける。早く死に別れる)。両親には内緒。両親の(もとを離れる。老後を養う。関心を一身に集める。心配はいかばかりか)。兄嫁と両親の折り合いがあまりよくない=石坂。両親を(一度に失う。恋しく思う。旅行に連れていく)。相次いで両親を亡くす。夫の両親を看取る。二親に免じてご勘弁願う=落語。二親を早くに亡くす。養父母に(感謝する。育てられる)。父母が(離婚する。相次いで世を去る)。父母に(甘える。孝行する)。父母の(墓参りに行く。墳墓の地。愛を一身に集める)。父母を安心させる。 **れんたい【連帯】** 連帯の挨拶をする。▼連帯する(各国が。労働者が)。連帯して行動する。連帯意識を持つ。連帯感が芽生える。連帯責任を負う。 **ろうどうくみあい【労働組合】** 労働組合に加入する。労働組合を(結成する。組織する。つくる)。ユニオンに加入する。ユニオンを結成する。 <1018> # 丸める・角張る **えん【円】** 陽がくっきりと食紅色の円になる=三島。空に円を描いて鳶が舞う。▼円を描く(図面の上に。両手で宙に)。円周をめぐるような平安な生活=開高。冬の曇空の下の海がどこまでも広がる鉛色の円盤のように=北村。赤熱した円盤のように輪郭のはっきりした太陽が照る=石坂。弓なりに半円を描く。 **かさ【暈】** 月に暈がかかる。眼のまわりの暈が不気味なほど濃くて死苦に悩んでいる女の顔のように=中村真。目のまわりにうす黒く暈のようなものが輪もどる=芥川。闇に光の輪が生じる。街灯が光の輪を路地に落とす=武田。 **かど【角】** 角が(削れ丸くなる。摩滅した石)。目に角が立つ。こつこつと角が張る。しゃべり方に角がある。角のある物言い。角を滑らかに取り去る。石の角を砕く。目に角立てて怒る。強情で主角いが多い人物。岩角を(盾に取る。通る。曲がる。よじ登る)。 **かどばる【角張る】** 角張った(いかつい顔。字を書く。無骨な指)。ぎくぎくと角張った字。外套の肩が大きく怒っている。こつこつ骨ばった(四肢。指)。浅黒い骨ばった顔。▼角立つ(海面が。さざ波が)。後々角が立つ。連山。反骨稜々たる人物。四角張った(命令書。文字)。四角張って(端座する。膝を正す)。 **ガラスだま【ガラス玉】** 灯の消えた街灯の硝子珠が剥きだしの白い果肉のように身をすくめて立つ=長野。ガラス玉のような大きな瞳に怒りをあらわす=永倉。ナナカマドの赤い実が安っぽいガラス玉のように光る=加賀。夕陽がうるんだ赤い硝子玉のように海に沈んでいく=遠藤。ビー玉のような青い眼=阿部。目がビー玉のように輝く=尾辻。 **こうし【格子】** 竹竿を格子に組む。路地が格子模様に通っている=灰谷。市松模様に面取りガラスをはめ込んだドア=宮部。黒と白の市松模様の壁。チェックの(シャツ。スカート。服)。道路が碁盤の目のように走る=高村。碁盤の目のように(きれいに区画された町=宮尾。整然と道が走っている=なかにし)。道がきちんと碁盤の目のように張りめぐらされている=真紅の珠を連ねる=菊池。額に玉の汗が(光る。噴き出す)。うなじに汗の玉が浮かんでいる。肌にうっすらと汗の玉がにじむ。額に玉のような汗がじっとりと湧く=佐藤。鼻に汗の玉を光らせる。玉のような二の腕=泉鏡。妻が玉のような男の子を産む=菊池。玉のように白く輝く顔の=獅子。糸が切れて離れた首飾りの玉のように涙が散らばる=大佛。水晶の念珠が真ん中から二つに切れ、珠がばらばらのように戛然と四方へ飛び散る=芥川。ビーズが光る。ビーズの縁飾り。 **さんかく【三角】** 油揚げを三角に切る。目が三角に吊っている。目を三角にして食ってかかる。▼三角にゆがめる(顔を。口を)。三角形にゆがんだ目。波が三角形に騒ぎ立つ。屋根を三角形にする。 **しかく【四角】** 肩から足まで衝立のように四角で頑丈な体軀=山崎。手拭いを四角にたたむ。四角い(窓。下駄のような顔=灰谷)。エラが張った四角い顔=向田。ドミノの駒のように並んだ灰色の四角い建物群=干刈。四角く区切る。しゃべり方が四角く強張る=村山。窓枠に四角く切り取られた空=落合。顔つきも身体つきも四角ばって頑固そう=石坂。トランクのような固い矩形の建物=吉行。賽の目なりに筋を引く。賽の目に刻む。方形に区画する。方形の土地。文字が升目からはみだす。原稿用紙の枡目に文字を埋めていく=奥泉。 **すみ【隅】** 部屋の隅で小さくなっている。視界の隅に人の姿を捉える。こそこそと隅のほうに行く。考えが頭の隅をかすめる。隅っこに(座る。ひっこんでいる)。▼四隅(画像の。写真の。部屋の)。コーナーに追い詰める。 **たま【玉】** 玉が(ことんと落ちる。ばらばらと落ちる)。露の玉が輝く。目に涙の玉が膨らみ始める=夢枕。湯玉が上ってくるように笑いの玉が込み上げてくる=向田。はんだが玉になって散る。玉の(肌を抱く。屑を散らしたように煌く=国木田)。姫が玉の鎖がばらばらになって飛び散ったように倒れる=井上靖。豊かな肌が瑕のない玉のように=森。玉の緒を(百千に砕いたような=谷川。渡るような声で雲雀が囀る=辻井)。玉を(解いて流したように美しい=谷川。砕くような鋭い音=菊池。転がすような嬌声=舟橋)。同じ番号の玉をひき当てる。農家の軒に柿が珠を連ねる=菊池。鼠取り器を碁盤目のように配置する=吉村。 **だるま【達磨】** だるまとにらめっこする。一見人のよさそうな達磨のように丸い顔=藤沢。毎日来て面壁の達磨のように見つめる=松本。 **ちきゅう【地球】** 地球が太陽の周囲を運行する。地球の(温暖化がじわじわと進む。片隅でひっそり生まれる。資源が涸渇する。丸さを実感する)。命は地球より重い。宇宙船で地球を発たつ。▼地球を回る(人工衛星が。月が)。 **ねこぜ【猫背】** こたつで猫背になる。猫背になって歩く。貧相な猫背の男。猫背を前かがみにする。猫のように肩を丸める=連城。背中が(丸くなる。丸まる)。 **ぽっちゃり** と(肉付きがいい。太った女。太った子)。ぽっちゃりした頬っぺた。色白のぽっちゃりした顔つき。丸顔のぽっちゃりした愛くるしい顔=水上。 **まり【鞠】** 歌に合わせて鞠をつく。太刀が身に食い入るたびにまりをたたくようなまるくこもった音が立つ=司馬。 <1019> # 丸める・角張る-332 体が毬のように(縮む。丸くなる)。身体が毬のように転がる=徳永。太っているくせに軽くはずむ鞠のような身体=円地。鞠のように(転がる猫。くらんだ上体を軽く揺すぶりながら歌う=円地)。からだをマリのように縮める=小林多。毬のように花をつけた桜のひと枝=山本周。福寿草があちこちに黄色い毬のように群がって咲く=原田康。牡丹桜が鞠のように咲き集まった花房をいくつとなく重ねる=円地。薄黄色の小さな花を鞠みたいに枝先に咲かせている木=三浦し。蝶が小さいゴムマリをはずますように嬉しそうにまた無心にせっかちに飛び廻る=志賀。ふがふがと空気の抜けたゴム毬をつぶすみたいな声=大庭。ゴムまりのように(心が跳ねる。弾力と丸みのある体=高杉)。大きなからだがゴムまりのようにふっ飛ぶ=灰谷。体がゴム鞠のように弾む=藤本。ジョークがゴム毬のように飛び跳ねる=阿木。二の腕のゴムまりのようなはずみ=島尾。ゴム鞠のような尻の円み=永井荷。心がゴムまりのように弾む=壺井。手毬が小石に当たって跳ね返る=北原。手毬の大きさの鞠を指で拵える=高橋克。手まりをつく。手まり歌を歌う。 **まるい【丸い】** 丸い(可愛い目。尻を突き出す。はちきれそうな頬や顎。人の渦ができる)。落ちかかる日輪が肉桃色の盆のように空虚に丸い=岡本。兎の丸い糞。笑顔の似合う丸い顔だち。ほどよく肉のついた丸い体。女の弾力ある丸い肩=藤枝。ふわふわ動くまるい火の玉=松谷。満月みたいに丸い顔=角田。子供のように丸く唇を開く=小川。体を丸く縮める。さざ波が丸く広がる。四方八方が丸く収まる。背を丸く曲げる。世の中が丸く行く。▼丸く盛り上がる(水滴が。乳房が。こんもりと)。丸っこい(肩。字。顔。目)。番号を丸で囲む。丸まっちい(顔。体)。丸まっちく人差し指と親指で丸を作る。鳥がうたうようなまるみのある声=司馬。丸みのある(バリトン。ソプラノを張り上げる)。椰子の実が梢に小児の頭のような円みを並べる=大岡。丸みを帯びる(心が。表情が。目が。稜線が。ふっくらと)。円形に(陣取る。座る)。シャツの脇の下に円形の汗染みが広がっている=桐野。角のない物のわかった人=永井荷。楕円形の(コース。ボール)。目がつぶらで愛くるしい。つぶらな大きな瞳。まどかな月。丸々と(よく育つ。はち切れそうに太る。太った中年の女)。森の空気がまろやか。主角いをなくしたまろやかな地図の輪郭=横光。腕がまろやかに白い。午後の光がまろやかに降り注ぐ=石田衣。 **まるくする【丸くする】** ▼丸くする(肩を。背中を。先端を。四隅を。羨望と好奇で目を。びっくりしたように眼を=筒井)。顔を真ん丸くして笑う。 **まるくなる【丸くなる】** 丸くなる(角張った木が。芋虫のように。年をとって。犬ころのように=徳永。獲物を狙う猫のように=伊集院。ぼろっきれのかたまりのように=徳永)。両腕で頭をかかえて真ん丸くなる。角がとれる。圭角が(取れる。なくなる)。 **まるめる【丸める】** 丸める(前屈みに体を。紙を細く。ぐしゃぐしゃ無造作に。無造作にぐしゃぐしゃ。体を海老のように=川上)。▼まるめる(猫のように背中を=阿部。糸屑を毛毬のように=室生)。くしゃくしゃに丸める(紙を。下着を。メモを)。▼背を丸める(しょんぼりと。もっさり)。▼筒状に丸める(新聞を。ポスターを)。丸めた紙を広げる。海老のように(体を丸める。背中を丸める)。▼丸め込む(ガムを。スカートを。背を)。背がもっさり丸まる。 **まんまる【真ん丸】** 驚いたようなまん丸な眼=高橋治。頭のてっぺんがコンパスを回したようにまんまるに禿げてしまった親父=椎名誠。夕月がまん丸に淡く出る=鈴木三。真ん丸く目を見開く。 **ゆきだるま【雪達磨】** 雪だるま式に倍加する高利=山崎。お金が雪だるま式にふえる=立原。金銭がすくすくと雪だるまのようにふくらむ=林美。雪ダルマのように苦しみを身体に背負いこむ=小林多。 **わ【輪】** 燦然たる光の輪。ローブの輪がひゅるひゅると飛ぶ。小さな波の輪が薄白い池の面に拡がる=内田。袋の口の紐を引いたように輪がすぼまる=長塚。目の縁に輪が立って甚だ不機嫌な様子=内田百。▼輪が崩れる(人の。包囲の)。▼輪が広がる(私語の。笑いの)。見物の輪から出て行く。人の輪から抜け出す。▼輪から外れる(話の。みんなの)。疲労した眼に灯の色が二重三重の輪に滲んで見える=円地。一輪に加わる(踊りの。雑談の。話の。論談の)。丸く輪になる。ぐるぐる輪になって回る。輪の(外に出る。真ん中に入る)。遊びの輪の中に入る。話の輪の中に収まる。遊びの輪を抜け出す。くるくると輪を描く。煙の輪を吐き出す。交流の輪を結ぶ。鳶がゆっくり輪を描いて舞う。もの憂い沈黙が輪をえがいてひろがって行く=大江。じりじりと包囲の輪を縮める=藤沢。輪を作る(二重の。ローブで)。▼輪を広げる(支援の。友好の)。話の輪に(融け込む。入る)。みんなの話の輪に入って行けない。人の輪が(さっと崩れる。できる)。▼輪にする(針金を。ローブの両端を結んで)。関東平野を環のように眺めた山々の眺め=田山。種々雑多な思いが頭の中を環のようにめぐる=国木田。澱みに広がる水の輪のように緩慢で怠惰な時間が過ぎる=長野。自分の足が輪っかにでもなってしまったようにトットトットと足が動く=高橋三。円環をはめる。円陣の(中に入り込む。真ん中に進み出る)。円陣を(組む。作る)。▼たが(桶の。樽の)。乳の(羽織の。紐の)。新芽のふくらみの先に乳のように露を宿す=梅本。▼リング(宝石の。これみよがしなダイヤの)。リングを指にはめる。 <1020> # 回る・渦巻く **いっしゅう【一周】** 一周する(島を。地球を。遊覧船で湖を。四百メートルのトラックを)。▼一回りする(客の間を。家の周囲をぐるりと)。▼ひとめぐりする(巨樹を。島を。葬列が町を)。▼一巡する(工場を。店内を。島内を。町を)。 **うしろで【後ろ手】** 後ろ手で襖を閉める。後ろ手に(縛り上げる。ドアを閉じる。扉を閉める。組目を打つ。ひねって腕に手早く手錠をかける=有川)。縄で後ろ手に緊縛する。 **うず【渦】** 興奮と熱狂の渦。音の渦が流れこむ=城山。疑心の渦がひたひたと拡がる=本庄。炎の渦が視界を覆う=光瀬。抗議の渦に包まれる。▼渦になる(怒りが胸の中で。教室じゅうが爆笑の=飯田)。▼渦に巻き込まれる(争いの。不安の。錯綜する利害の)。人々を熱狂の渦に巻き込む。大きな異変の渦の中にいる。熱狂の渦の核になる。笑いの渦の中心にいる。前夜の出来事が頭の中にグルグルと渦の如くとめどなく廻転する=長与。香りのわずかな渦を残して立ち去る。話が幾つもの小さな渦を作りつつ尾が消えていく=千刈。火の粉が渦をなして巻き上がる=山本周。色々の考案が頭脳の中に渦のように描かれる=徳田。枝々に桜の花が白い渦のように咲き溢れる=円地。地下鉄の階段口から人の塊が水の渦のようにもくもくと吐き出される=岡本。大渦が船を呑み込む。 **うずまく【渦巻く】** ▼渦巻く(館内に怒声が。胸に動揺が。ぐるぐると。渓流が激しく。雪が音もなく。頭の中で疑問が。苛立たしい感情が。心の中に憎しみが。胸の内に怒りが。不快な空気があたりに。圧縮されたような熱気が=五木。心にさまざまな情念が=真継。怨恨と憎悪とが胸中に=里見。烈しい嫉妬がムラムラと心に=菊池。土壇場でしくじった者の数多の古来の教訓が頭の中に=安岡。いろいろな感情が鳴門の渦潮のように=阿久。川の水が絶壁に吸い寄せられたように慕い寄って濃緑の色を湛えて=菊池。後悔と期待とが半々に胸の中で=夢枕。断片的な思考が頭の中で=梶尾。炎が出口を求めて上へ下へ=光瀬)。騒々と渦巻く砂煙。広場に渦巻く自動車の奔流=野上。炎が渦巻く(ごうごうと。焚き口の中で)。胸に渦巻く(怒りと焦燥が。敵意が)。言葉が耳の奥で渦巻いている。▼頭の中で渦を巻く(恐怖が。雑多な言葉が)。突風が渦を巻いて通り抜ける=半村。煙がゆっくりと渦を巻いている。▼渦を巻く(霧が谷間に。頭が混乱の。吹雪が白い。愛情のもつれが。羨望と嫉妬とが。割り切れないものが胸の中で。いかすかな苛立ちに似た思いが腹の底の方で=鷺沢。黒い潤いのある瞳が嵐のように=高橋三)。人間が渦を巻く大都会=石坂。歴史の渦巻に巻き込まれて運命が変わる=清原。渦巻くような霧の中を帰る=原田康。頭の芯が渦巻くように痛む=高樹。人波が渦を巻いたように多く激しい=深沢。霧が谷に満ち大きく渦を巻くように動く=高井。喝采の渦巻が起こる。胸の渦巻が鎮まる。突如として感情の大渦巻きが声を立てて流れはじめる=菊池。帰ってくるとたちまち皆に渦巻きのように取り巻かれる=小林多。 **うん【運】** 運が強い。思わぬ運が向いてこないとも限らない。たまたま運が良かっただけ。▼運がいい(本当に。ずいぶんと)。運に(身を任せる。恵まれる)。事の成否は運にかかっている。めきめき運に乗る。望外の運をつかむ。のるか反るか最後の運を試す=徳田。運を天に(任せる。ゆだねる)。▼時の運(合戦の勝敗は。勝負は)。人の運は(計り知れない。一度傾けば事毎につまずきが起こってくる=舟橋)。運勢がよいほうに向く。巡勢を(占う。見てもらう)。男運が(いい。悪い)。男運に恵まれる。強運の持ち主。金運が(いい。強い。悪い)。金運に見放される。時運に(乗る。まかせる。恵まれる)。武運(つたなく討ち死にする=火坂。めでたく討ち死にする=山本周)。武運に恵まれる。武運長久を祈る。家運が(好転する。隆盛に向かう。開ける)。次第に家運が傾く。年回りが(いい。悪い)。星回りが(いい。悪い)。▼めぐり合わせ(皮肉な。不思議な。前世からの)。 **うんめい【運命】** ▼運命(この上なく苛酷な=阿刀田。あしたに生まれて夕べに死んで行く儚い=長与。気味の悪い不吉な重苦しい=三好達)。運命が見せる悪意の数々を数える=石田。悲しい運命が恋人たちをひきさく=大庭。紙一枚の差で運命が逆転したり好転したりする=人。城の運命が風前の灯になる=童門。救いのない愛の運命が展開する=熊坂。不思議な運命から自分を解放する=有吉。運命と(意地の張り合いをしているような姿=中島。取り組むような真剣な顔つき=有島)。何事も運命とあきらめる。運命としか言いようのない出会い。一生を不運な運命に左右される。過酷な運命に苦悩する。皮肉な運命にとまどう。不当な運命に押しひしがれる。目前の運命に服従する。勇敢に運命に耐える。▼運命に従う(深く。素直に自分の)。運命の(邂逅を遂げる。摂理に任せる。不思議な皮肉。罠に陥る。いたずらが過ぎる。上にあぐらをかく。神様に見離される。決めた流れに逆らう。束縛から逃げる。女神がほほえむ。糸車が回転する=清原。糸をみごとにさばく=星。鍵をそっくり渡してしまう=大佛。神は悪戯が好き=海音寺)。ついに運命の日がやってきた。渦巻く運命の潮が寄せてくる=獅子。恐ろしい運命の淵に臨む=有房。人生というものは運命の織りなす不思議な模様=佐山。内臓に溜まった排泄物よりも汚い運命の腐肉=黒岩。 <1021> # 回る・渦巻く-333 平凡な出来事を重大に変化させる運命の力=夏目。運命は風中の灯火に=舟橋。艦と運命を共にする。偶然が運命を大きく変える。数奇な運命をたどる。あやうく滅亡の運命をまぬがれる=司馬。荒々しい足取りで自分の運命を呪うように歩き回る=加賀。うすい磁器のようにこわれやすい運命を背負う=司馬。偶然の悪戯が人々の運命を百八十度変えてしまう=藤本。自らの運命を積極的に切り拓いていく=清原。運命的な出会い。結びつきが運命的なものになる。命運が(尽きる。風前の灯火)。命運にかかわる危機。一族の命運を賭けた重大事=山田。不幸せな命数を不憫に思う。▼定め(因果応報の。はかない浮き世の)。栄枯盛衰の定めを目のあたり見る心地=白洲。宿命に足をすくわれる。宿命のライバル。宿命を甘んじて受ける。呪われた宿命を背負う。宿命的な出逢い。いかにいとわしくとも最後まで関係を絶つことの許されない人間同士のような宿命的な因縁=中島敦。 **かいてん【回転】** 資金の回転が苦しくなる。舌の回転が鈍る。商品の回転が鈍い。頭脳の回転が速い。▼廻転する(頭が暴風のように=谷崎。黄色い長い秒針が電灯の光を反射させながら無気味な生き物のように=中島敦)。▼回転する(不安の渦巻が。すべてが順調に。ドアのノブが静かに。砂浜をころころと。体が蝶のようにくるくると=遠藤)。▼回転させる(フルにエンジンを。頭をめまぐるしく。椅子をくるりと。腰をなまめかしく)。一回転する(畳の上を。宙を。くるっと)。回転数を(調べる。間違える)。誤報に限って回転速度が速い=柳田。回転速度を(遅くする。調整する。速くする)。テープの回転速度を間違えたような間のびした声=赤川。ベッドの回転率が高い。滑車を操作する。ドライブがかかる。打球がドライブする。轆轤で(花瓶を作る。こけしを作る)。轆轤にかける。 **こま【独楽】** 身体がコマの如くに宙にクルクルと廻ってフッ飛ばされる=坂口。独楽のような重心の確かさ=永井。独楽のように(速く廻転する。いつも全速力で廻っていなければ倒れてしまう=中島敦。くるくるまわる=芥川)。靴の短いを中心としてクルクルと独楽のように体をまわす=佐藤春。速度のゆるんできた独楽のように頭を動かす=野間。 **しゃりん【車輪】** 車輪が(外れる。パンクする。雪にめりこむ)。車輪に歯止めをかませる。車輪の跡が二本のリボンのようによじれきれいな曲線を描く=大原。車輪のように大きい真紅や雪白の蓮華が蕊々と生える=菊池。足回りが(弱い。悪い。しっかりしている)。後輪が脱輪する。後輪に荷重をかける。スポークが銀色にきらめく。道端の雑草が車輪のスポークに触れてさらさらと鳴る=黒井。スポークの錆びた自転車。輪のような光を放つ=有栖川。 **しゅうき【周期】** 周期が(一定。長い。短い)。周期を(変える。調節する)。周期性をもって発生する。サイクルが(長い。短い)。一つのサイクルが終わる。百年単位でサイクルする林業=三浦し。 **じゅんかい【巡回】** 拍子木を叩いて火の用心の巡回をする=沢木。▼巡回する(各地を。館内を。校舎を。車内を。定期的に)。 **じゅんかん【循環】** 血の循環が悪い。際限のない問いと答えの循環をもたらす=斎藤環。循環する(血液が。資金が)。風呂の中で湯が対流する。血のめぐりが悪い。頭の血の巡りがいい。 **すいしゃ【水車】** 水車がことごとと音を立てながら廻る=堀。大きな水車がしぶきの息を吹き、しずくの汗をたらしてがらがらがらと恐ろしくまわる=中。水車の音がコットンコットンと響く=佐藤春。ことんごとんというだるい水車の音が物悲しげに聞こえる=徳田。水車のように長刀を回す=落語。ぐるぐる水車のように廻る=八谷崎。 **せんかい【旋回】** 面舵一杯の旋回を指示する。飛行機が旋回して向きを変える。▼旋回する(上空を鳶が。飛行機が上空を。船が島の周囲を。残していった言葉がくるくると光の渦のように=山本)。 **せんぷうき【扇風機】** 扇風機が(苦しく廻る。首を振る)。扇風機に吹かれるように寒気が襲ってくる=小林多。扇風機のファンを止める。昆虫の羽音のように鈍い扇風機の音=大佛。熱と元気とを疲れた体内に扇風機のように吹きかける=徳永。換気扇を(止める。回す)。ファンが(回転する。回る)。 **そうまとう【走馬灯】** 走馬灯が回る。言葉が走馬灯のごとく頭を駆けめぐる=村松。早足で見ているので陳列された絵の数々が走馬灯のごとく半ば霞んで走り去る=北。走馬灯のように人生を思い出す=角田。頭の中に子供の時分からのさまざまの出来事が走馬灯のようにめまぐるしく現れては消えていく=江戸川。嘘の数々が走馬灯のように記憶の中を巡っている=荻野。まわり灯籠のようにいくつかの思索ばかり堂々めぐりして果てがない=円地。 **タイヤ** タイヤが(すり減る。パンクする。けたたましい悲鳴を上げる。鋭い軋み音を立てる=小池。道路にすすり泣きのような音をたてる=清水)。キキイッとタイヤが鳴る=鷺沢。自動車のタイヤが吸いつくように跡をひいた音=大佛。タイヤに空気を入れる。タイヤの(空気が抜ける。音が鋪道との間でひたひたと鳴る=石川)。 **たつまき【竜巻】** 地平線の彼方で竜巻が細く黒い線を描きながら動いている=船戸。火の粉の竜巻が舞い上がる=山田風。火焰の竜巻をここかしこに吹き上げる=辻井。ヘリコプターのローターが巻き起こす風が周囲の砂を竜巻のように吹き上げる=景山。 **ふうしゃ【風車】** 風車が(カラカラと乾いた音を立てる=塩野。軽快な音をたてながら回る=塩野。塔の上で羽根を休める=横光)。 <1022> # ま 風車がくるくると回る。薙刀を風車のように打ちふる=加太。 **フルかいてん【フル回転】** 工場がフル回転の状態になる。▼フル回転させる(エンジンを。理性を)。大車輪で(活動する。働く)。大車輪の活躍。 **まわす【回す】** ▼回す(電に目を。玄関に車を。借金のつけを。時計の針を。印刷所へ原稿を。くるっと椅子を。ぐるっと築地塀の心を。凝りを感じて首を。親類じゅうに触れ太鼓を。熟達した人々を相手に。世間の常識を敵に。世間を向こうに。履き物を裏口に。ハンドルを左に。帽子のつばを後ろに。回転椅子をぐるりと。ノブをゆっくり)。蜻蛉のように首を廻す=吉川。▼気を回す(余計な。周りが勝手に)。くるくると回す(パラソルを。モデルガンを指先で)。ぐるぐる回す(腕を。肩を。首を)。▼差し込んで回す(鍵を。キーをイグニッションに)。▼手を回す(腰に。背中に)。▼回される(暇な部署に。機械関係の仕事に)。屏風を立て回す。塀を収り回す。視線の通過した痕が残りそうなほどネチネチと時間をかけて全身をながめ回す=宮部。周囲をにらみ回す。幕を引き回す。 **まわらない【回らない】** ▼回らない(周囲に気が。総身に神経が。口がうまく。人のことまで手が。ほかのことに頭が)。舌のよく回らない口調。知恵の回らない女。首が回らないほど借金する=藤沢。回転がばったり止まる。回転に不調をきたす。 **まわる【回る】** ▼回る(釜全体に火が。だいぶお酒が。時の車が。よく頭が。血液が体内を。島から島を。周回コースを。月が地球を。転々と全国を。方々の町を。岬の突端を。村から村を。山の麓を。家の裏手に。後手後手に。歯車が順調に。被害者の側に。日が西に。友人の援護に。酔いが徐々に。体がくるりと。岸をぐるりと。くるりと軌跡で。声をかけて。写真を見せて。古本屋を数軒。他の店へ。本屋を何軒か。村々を説いて。恒星のまわりを惑星が。きついコーナーを。決められた場所を。船が浦から浦を。車がゆるやかに。自転車を取りに。捜査員が聞き込みに。毒が体じゅうに。もっぱら聞き役に。あちこちに吹聴して。一軒一軒訊いて。ウインチがガラガラ。怖ず怖ず後ろへ。お得意様に頭を下げて。片っ端から壊して。近所一帯に挨拶をして。くるっと爪先で。小まめにあちこち指図して。酒の酔いが程よく。隅から隅まで調査して。日本中を旅行して。ゆっくりと時間をかけて。よからぬ噂がついて。塀に沿って敷地の周囲を=高村。糸巻き車が軽やかな音を立てて=藤田)。蛾が明かりのまわりを物狂わしくくるくると廻る=堀。気の回る性質。目が回るほど忙しくなる=有島。▼ぐるぐると回る(頭の中で様々な思いが。言葉が頭の中で=村松)。▼くるくる回る(スプリンクラーが。ミラーボールが。風にもてあそばれる木の葉のように=多岐川)。ぐるぐる回る(目が。同じ軌道を。輪になって。頭の中で言葉が)。▼よく回る(知恵が。悪知恵が)。グルグル廻りの状態に置かれて感じれる=谷崎。岬の鼻をぐるっと向こう側に回って行く。▼回ってくる(お鉢が。回覧板が。幹事役が。出番が。発言の機会が)。流れからはぐれた木の葉が同じところを回り続ける=重松。急がば回れ。回り回って元の持ち主に戻る。陰口が回り回って本人の耳に入る。小回りの(利く車。利かないベンツを持て余す)。▼回り込む(外周を。小山を。苑を。道が北に)。話を持って回る。▼周回する(コースを。地球を。ぐるぐると)。半周する(池の周りを。コースを)。プロペラが回転する。プロペラの音が鳴り響く。胆ももをゆすぶるようなプロペラの轟音=阿川弘。 **みぎまわり【右回り】** 緩い右回りの上り。時計回りに(半回転する。山々を指さしていく)。 **みまわる【見回る】** ▼見回る(市中を。田畑を。仕事の後を念入りに)。▼見て回る(工場の中を。端から端まで。一つひとつ。一通り)。▼巡見する(警備地を。市中を)。 **めぐらせる【巡らせる】** ▼めぐらせる(権謀術数を。様々に考えを。周囲に視線を。深謀遠慮を。腹黒い策を。あれこれ思案を。電話の向こうに思いを)。想像をめぐらせる(勝手な。卑猥な)。めぐらす(生け垣を。紅白の幕を。鉄条網を。馬首を。塀を。将軍の死を奇貨とし陰謀を=司馬)。 **めぐりあるく【巡り歩く】** ▼めぐり歩く(あちこちを。景勝地を。諸方を。知人の家を。広場を)。▼回って歩く(席の間を。地方を。得意先を。隣近所を)。巡り歩く(家々を。田舎を。学校を。客席を。知人の家を)。▼巡演する(各地を。全国を。地方を)。▼巡業する(劇団が。相撲が。地方を)。▼巡歴する(古戦場を。諸国を。聖地を。村々を)。▼跋渉する(山野を。諸国を)。諸国跋渉の旅に赴く。欧米五か国を歴巡する。歴訪する(各国を。諸国を)。▼歴遊する(各地を。各国を。諸国を)。托鉢の行脚に出かける。長途の行脚に疲れる。▼行脚する(諸国を。全国を。講演で)。▼経めぐる(島々を。諸国を。全国各地を。旅から旅を。男から男へと。女から女へと。知らない土地を)。▼遍歴する(各地を。諸国を。聖地を。さまざまな職業を)。華麗な女性遍歴。華麗な男性遍歴。 **めぐる【巡る】** ▼めぐる(丘陵地帯を。血が体内を。酔いが体を。あちこちの国を)。螺旋状にぐるぐるとめぐっている。めぐってくる(運が。機会が。幸運が。春が。絶好のチャンスが)。▼回遊する(鰹が。鯨が。鮭が)。 **モーター** パワフルなモーター。モーターが(始動する。回る)。音の反響がモオタアの震動のように絶えず耳につく=伊藤整。モーターの音が耳をつんざくばかりに姦しい=者吉。 <1023> # 満足する・足りる **あきたりない【飽き足りない】** ▼飽き足りない(今の地位に。結果に)。飽き足りない思いをいだく。宋儒の陋見に飽き足りなくなる=舟橋。八つ裂きにしても飽き足りないほど憎い。 **いちおう【一応】** 一応(こねてみせる。聞いてみただけ。それなりの知識を持っている。耳に入れておいたほうがいい。使える水準に達している=有川)。一応の(小康を得る。筋が通っている)。 **いまひとつ【今一つ】** 今一つ(決め手を欠く。腑に落ちない。意味がわからない。新鮮味に欠ける。成績がふるわない)。視界がいま一つハッキリとしない=辻仁。いまいち(力が入らない。ぴんとこない)。もう一つ(感心できない。本気になれない)。 **いらない【要らない】** 金の心配は要らない。何の苦労もいらない結構な身分=野間。お役目御免になる=丹羽。▼必要はない(いささかも。も。なんら。百万言を費やす)。不要な(個所を読み飛ばす。部分を切りはなす)。不用な家屋を整理する。不用品を譲り合う。なんらの説明も要しない。用済みとなる。くだくだしく述べる要はない。用もないのに電話する。 **かかす【欠かす】** ▼欠かす(義理を。配慮を。礼儀を)。▶欠く(義理人情を。罪の意識を)。責任を欠く言動。適切を欠く表現。年賀状を欠かさずやり取りしている。毎朝掃除を欠かさない。 **かける【欠ける】** 欠ける(著しく礼に。気力に。しなやかさに。説得力に。盛り上がりに。リーダーシップに。女としての優しみに=谷崎。短気で喧嘩っ早い性格は指導者の資格に=常盤。みじめなほど政治的能力に=石田)。月が満ちたり欠けたりする。人員がぽつりぽつりと欠けていく。 **かんぜん【完全】** 完全な(敗北を喫する。姿を求めて改良を加えていく=内橋)。妻として完全な女性。百点満点の完全な人間はいない=佐高。完全に(圧倒される。打ちのめされる。覚めきらない頭で考える)。記憶を完全に失う。機能が完全にストップする。行動を完全に把握する。視界から完全に消え去る。思考が完全に停止する。敵を完全に包囲する。ほぼ完全に推測できる。役者たちを監督が完全に掌握する=池澤。全知全能の神。パーフェクトな出来。パーフェクトに仕上げる。全き父性愛。全きを得る。期する)。 **かんぺき【完璧】** 完璧な(アリバイ。環境が整う。態勢で臨む。美を追求する。プロポーションを保つ)。終わるのがこわいくらい完璧な一日=吉本。完璧に近い解答。ほぼ完璧に思い出すことができる。計画を細部に至るまで完璧に組み立てる=綾辻。人間のやることに完璧はない。完璧を期する。初めから完璧を望むことなどそもそも無理な相談=内橋。言うことなし。一点の非も見つけることができない。非難の余地がない。間然するところのない(緊密な構成。できばえ。臨機応変ぶり)。非の打ちどころがない(見たところ。一見紳士ぶりに)。非の打ちどころのない(出来栄え。理論)。非の打ちどころがないほど端麗な顔。 **くいたりない【食い足りない】** 食い足りない(演技。小説。論文)。食い足りない(今一つ。少し食べたくらいでは)。 **くじょう【苦情】** 苦情が日に日に増える。近所から苦情が来る。苦情の矢面に立つ。苦情を(言う。持ち込む)。物言いがつく。営業妨害だというクレームがつく。納品先からクレームがくる。クレームの電話が鳴り響く。クレームをつける。 **けっかん【欠陥】** 切りなく欠陥が発見される。システムに欠陥が生じる。▼欠陥がある(致命的な。管理体制に。人間的に。処理能力に重大な)。欠陥を(ぐさりと刺す。指摘する。巧みにつく。仮借なくあばく)。思いもよらぬ欠陥をさらけ出す。身体的欠陥をあげつらう。不具合(品の。ソフトウエアの)。不具合が(見つかる。目立つ)。不具合を(起こす。直す)。 **けつぼう【欠乏】** 欠乏に耐える。▼欠乏する(空想力が。決断の力が。酸素が。資金が。食糧が。ビタミンが。野菜が)。 **こうふく【幸福】** お湯から上がってきて襦袢此一枚で縁側に横になるようなこの上ない=小林多。このまま死んでもいいと思われるほど=源氏。ささやかなつましい=石坂。不安の潜み入る隙間さえないような=大佛)。幸福が(訪れる。舞い降りる。じかに感じられる。水に油を落としたように一面にひろがる=大佛)。不幸のあとには幸福が来る=壺井。幸福で心を満たす。幸福な(生涯を送る。人生を歩む。日々を過ごす。喜びにひたる。運命が展開する。家庭を築き上げる。感覚が心に押し寄せる)。この上もなく幸福な人。永遠に幸福な生活を獲得する=藤枝。生涯で最も幸福な瞬間に酔う=沢木。凡俗な幸福な女=芝木。指の端まで幸福な吸流が伝わって行く=大佛。夢としか思えないような酔ったような幸福な瞬間=中村。夢のように幸福な夏休み=阿久。世にも幸福な人妻と羨まれる=瀬戸内。幸福に(水をさす。かげりが見える)。日々を幸福に暮らす。溺れるように幸福に感じる=大佛。生活が温室じみた幸福に暖められる=円地。幸福になる(世界が。誰も彼も。頭から足の先まで=堀)。幸福に酔う(至上の。痺れるような)。幸福の(残像を壊す。絶頂にいる。光に輝く)。、幸福の幻影に酔う。 <1024> # ま が(浮かぶ。消えない)。考えない者の幸福は船酔いを 知らぬ豚のようなもの=中島必。幸福を(手に入れる。絵に描いたよう。願ってやまない。ひとりじめにする。自らの手でつかむ)。現世の幸福を追う。心から幸福を祈る。万民の幸福を願う。他人の幸福をやっかむ。無上の幸福を得る。女の幸福をしみじみと味わう=新田。幸福にする(社会を。人間を)。酔い痴れるような幸福感"宮尾。幸福感が(一杯に膨れ上がる。体の中に充満する)。溢れるような幸福感が胸をいっぱいにふくらませる=福永。幸福感に(全身が浮き上がっているよう南条。満ちあふれた笑顔東野)。うっとりするほどの幸福感に満たされる=山本虑。苦痛がふしぎな幸福感に転化する=三島。幸福そうに(目を輝かせる。にこにこ微笑む)。禍福吉凶の予測しがたい人生"綱淵。禍福はあざなえる縄の如し。至福の(時用を過ごす。生涯を送る。時を味わう)。多幸な人生。御多幸を祈る。万福を(祈る。招く)。洗われたような浄福が残る=福水。恍惚にうたる浄福の瞬間。清らかな幸福感。優しい小鳥に触っているような浄福感中村真。 **こころゆくまで【心行くまで】** 心行くまで(時間をかける。堪能する。話を聞く。おくつろぎ下さい。亡き母の思い出に浸る)。 **ことかかない【事欠かない】** ▼事欠かない(衣食住に。娯楽に。攻め手に。話題に)。食べるに事欠かない生活。日常の会話に事を欠かない。 **しあわせ【幸せ】** 幸せ(望外の。普通の人々が味わえるようなささやかな西木。思いがけず会えるという通り魔みたいな「田辺。不愉快なことから免れていられるだけの脆もろい!高橋和。降り注いだ幾多の不幸をすべて帳消しにする。宮本邸)。幸せがもろくも崩れる。幸せで(体じゅうに灯がともったような思い"船山。笑いが絶えない家族=池井戸)。幸せと不幸せは背中合わせ。幸せな(家庭を築く。・気分に浸る。思いを噛み締める。結婚生活を送る。幼年時代を過ごす)。一生でいちばん幸せな時。幸せに(至る道。頬がゆるむ)。末長く幸せに暮らす。平凡な幸せに憧れる。誰だって幸せになりたいに決まっている=横山。何も持っていない幸せに気づく落合。幸せのすぐうしろには不幸が歩調を合わせてついてくる"加太。民の幸せのために財を使うあさの。幸せを虫のくうように知らぬまにだいなしにしてしまう中。人並みの幸せを夢見る。器量に見合ったささやかな幸せを手に入れる=篠田。幸せそうな顔で眠っている。いかにも幸せそうに微笑する。はた目には幸せそうに見える。青い鳥を手に入れる=高樹。身に余る果報。果報は寝て待て。幸甚に存じます(お引き受けいただければ。御承諾いただければ)。幸(多かれと祈る。あれかしと祈る)。ハッピーな(気分。毎日)。ハッビーに暮らす。残り物には福がある。禍加に転じて福となす。福の神が舞い込む。福は内、鬼は外。命をとりとめたことは不幸中の幸い。端で見るほど不幸ではない。取り立てて不幸でもない。僥倖ぶふぅが身の上に降りかかる。あまりの僥倖に驚嘆せずにはいられない今來。僥倖を最大限に活用する。万一の焼倖を待ち望む。 **じきゅう【自給】** ▼自給する(殺物を。米を。食料を。飼料を。パンを)。いざとなれば自給自足が可能。自給自足で暮らす。自給率が下がる。自給率を引き上げる。 **じゅうじつ【充実】** ▼充実する(気力が。社会保隊が。生活が。設備が。体力が。内容が)。▼充実させる(サービスを。サポートを。福祉を。ネットワークを)。充実した(時間を過ごす。毎日を送る)。脂の乗りきった充実した仕事ぶり。しみじみと充実した生き甲斐がぃを感じる。生の充実感が体の奥から湧き上がってくる=南木。拡充する(支援を。努力を。セーフティーネットを)。肉付けする(原案に。細部を具体的に)。 **じゅうぶん【十分】** 十分(気をつける。承知している。効果があがらない。美人として通用する。満足のいく成果。休んで体調を整える)。今の仕事に十分満足している。期待に十分応える。事前に十分論議する。体調が十分でない。収容人員に十分な余裕がある。十分に勘定が合う。毎日を十分に生ききる。まだ十分に回復していない。十分にある(責任を問われる恐れが。逃げおおせるチャンスは)。飽きるほど(聞かされる。見る)。さまざまな芸を遺憾なく見せる。成り上がり者根性を遺憾なくあらわす。存分に(酒を飲む。客を楽しませてくれる。養分を吸い上げる)。ばっちり(稼ぐ。決まる。手に入る)。万々承知している。みっちり(頭に入れる。仕事をする)。修行をみっちりと積む。もうたくさん(議論は。一口飲めば。これだけ見れば)。優に(一週間はもつ。一万人を超えている)。一時間半は優にかかる。二十人は優に乗れそうなボート。二百人の客を優に収容できる広さのラウンジ=高橋全機能をフルに動かす。想像力をフルに働かせる。フルに活用する(時間を。制度を)。▼フルに発揮する(資質を。能力を)。 **じゅよう【需要】** 需要が(頭打ちになる。大幅に伸びる。がた落ちになる。少しずつ回復しつつある=篠田)。供給と需要が均衡する。需要に供給が追いつかない。需要の変化に気づく。内需拡大を図る。内需に冷水を浴びせる。内需の(回復を図る。要をなす家計)。民需の促進を図る。 **じょうけん【条件】** ▼条件(有利な。計画が成立する重要な松本)。いろいろな条件が重なる。ぴったり糸件が合う。良い条件が揃っている。条件に(難色を示す。ことごとく適合する。一つとして当てはまらない)。外的条件に支配される。破格の条件を出す。諸々の条件を考え合わせる。好条件に恵まれる。好条件の勤め口を見つけ出す。条件付きで(合意する。賛成する)。 <1025> # ま 満足する・足りる-334 る)。同じ土俵で(考える。対応する)。結婚を前提としたまじめなお付き合い荻野。ひも付きの援助。要件をすべて満たしている。飲む打つ買うの三拍子そろった男=池波。攻走守の三拍子揃った選手。器量と声と人柄と三拍子揃った美人有吉。 **たりない【足りない】** 足りない分を補う。師とするに足りない人物。願みるにも足りない木のくずのよう有降。人手が足りないほど忙しい。命がいくつあっても足りないような危険な修行"清水義。予算が足を出。画竜点隋びりむいを欠く。▼足しにもならない(何の。腹の)。▼足らず(恐るるに。頼むに)。▼足らない(頭数が。思慮が。配慮が。問題とするに)。不自由する(遊ぶ金に。衣食住に。小遣いに)。 **たりる【足りる】** ▼足りる(金が。睡眠が。手が。用が)。以もって瞑ぁぃするに足る。疑念をいだくに足る事実。信じるに足る根拠。信頼するに足る人。瞠目するに足る美しさ。友とするに足る男。朗々と音読するに足る名文。足るを知る。▼事足りる(一人二千円で。これくらいの技があれば)。▼不自由しない(遊ぶ金に。小遣いに。飲む金に)。衣食に不自由なく暮らす。金に不自由のない人間。差し当たっての生活に不自由はしない。何不自由ない(生活。身の上)。何不目由なく育つ。 **とうぶん【当分】** 当分(目を離せない。終わりそうにない。帰らないつもり。小遣いに不自由しない)。当分の間は無理と判断する。当分は何をしないでも食べていけるだけの蓄えが残る=なかにし。 **とうめん【当面】** 当面(静観する。棚上げにする。変わりそうにない)。当面の穴埋め的な措置。当面は(待つしかない。容認する構え)。当面する(困った事態に。財政雌に。難局に)。当座の(問に合わせ。金に困ることはない)。 **とにかく** とにかく(試験的に出してみる。平和であることに変わりない。もう一遍会いたい。分かる所まで戻ってみるしかない)。とにもかくにも(一件落着した。完走した)。何はさておいても。いずれにしても五十歩百歩。一にも二にも(自分を大事にする。スビードが肝心)。何しろ(大変な騒ぎ。思いがけない話)。何はさておき(駆けつける。金が必要だ)。何によらず勉強が肝腎!永井荷。何に寄らずあるべき所にちゃんとあるのが一番自然"小沼。 **とりあえず【取り敢えず】** 取りあえず(空腹を満たす。一人で行く。予算をつける。疑問を口に出す。原稿を一二枚書く。この町から離れたい)。取るものも取りあえずという慌しい様子=福永。一時を糊塗する。さしずめ第一の目標。取り急ぎ(結末だけを述べる。用件だけを伝える)。何はなくともまず一献。まず手当てが必要。突然な訪問をまず詫びる。敵を欺くにはまず味方を欺かねばならぬ=塩野。差し当たり(生活の不安はない。ゆっくり養生する)。差し当たって(暮らしに心配はない。困ることはない。することがない)。ひとまず(故郷に帰る。様子を見る。質問の矛先を変える。先刻の会話から離れる。胸をなで下ろす)。要求をひとまず撤回する。 **なすべき** なすべきことが山ほどある。何を置いてもなすべき緊急事。行かなければならない訳合いがある。しどころ(我慢の。ここが辛抱の)。理が非でもしなければならない。しなければならない羽目に陥る。やらなければならないことが山ほどある。石にかじりついてもやらなければならない徳永。 **ばんのう【万能】** 辞書は必ずしも万能ではない。スポーツに万能な人。万能の霊薬。コンピューター万能の時代。 **ひっす【必須】** 必須の(科目。作業。条件)。必修の(科目。教科。単位)。家庭の必需品。生活必害品を手に入れる。七つ道具(お化粧の。大工の。弁慶の)。 **ひつよう【必要】** ▼必要(細心の注意が。十分な配慮が。適当な休息が。当座の資金が。発想の転換が。かなりまとまった額の金が。全会一致の承認が。とてつもない力と努力が。何物にもまして。一刻も早く泣いて詫びることが三島。何でも受け入れる心の広さが奥田)。変更の必要が生じる。▼必要がある(疑ってかかる。何らかの手を打つ。是が非でもわからせてやる三島)。必要な(条件に欠ける。データをそろえる。点をきちんとおさえる)。会社にとって必要な人材。手短に必要な用件を話す。必要に迫られて質問をする。必要になる(緊急に。時として)。必要は発明の母。必要とする(絶対安静を。複雑な操作を。二十年の歳月を)。さしせまった必要事。必要事項を記入する。情報公開の必要性が叫ばれて久しい。必要性の高い案件。▼入り用になる(急に現金が。助力が)。先立つものは金。所要時間を割り出す。所要の(経費、手縦き。日数)。なくてはかなわぬ存在。なくてはならない存在。まとまったお金が入用になる。▼要る(口にするには勇気が。途方もない根気が。べらぼうな金が。まとまった元手が)。根気の要る仕事。 **ふかけつ【不可欠】** 不可欠(新しい視点が。協力が。原則の確立が。早めの対処が。絶対。必要。水は私たちの生活に)。理解に不可欠な知識。空気のような存在。必要欠くべからざるもの。欠かせない(地道な努力が。報道には十分な裏付け取材が。ロボット技術は宇宙開発に)。仕事に欠かせない道具。トップに欠かせない要件。 **ふじゅうぶん【不十分】** 不十分な(ところを補う。結果しか得られない)。十分でない(備えが。知識が。受け入れ態勢が)。寸足らずの説明。▼手氷になる(監視が。警備が。指導が。守りが)。不完全燃焼のまま終わる。不備が目立つ。機構の不備に乗じた不正。文章の不備を直す。曲がりなりにも(書き終える。これまで)。 <1026> # ま やってくる。授業が軌道に乗る。できるようになる)。 **ふそく【不足】** 不足が日々深刻になる。労働力の不足が生じる。不足な(婿。嫁)。技量の不足に起因する事故。説明の不足を補うように言い足す。▼不足する(絶対数が。労働力が。決定的な何かが)。▼不足している(基礎学力が。認識が。力量が。情報が決定的に)。品不足に拍車がかかる。品不足の高値が生じる。睡眠不足が続く。手不足のため注文に応じきれない。人手不足が深刻。慢性的な人手不足の状態。人手不足を労働強化で補う。不足分を補充する。商品が品薄になる。奥さん一人で手がない。▼事欠く(小遣い銭に。生活費に。釘をすら買うべき小銭に徳田)。相手にこと欠いてあんな三下を情夫にしないでもよさそうなものだ円地。 **ふひつよう【不必要】** 不必要と思われるものまでどんどん買いこむ三田。通常なら不必要な行為。不必要なまでに言葉のサービスにつとめる=梗。不必要に(騒ぎ立てる。問題がこじれる)。釈迦礼。に説法。月夜に提灯らいう。必要以上に(臆病になる。緊張する。誇大に伝える。敵を作る。明るい声を出す。重い荷を背負わされる=火坂。周囲の思惑を気にする高樹)。必要以上の防御姿勢をとる。何ら解説を必要としない。多くを語る必要はない。今更隠し立てする必要もない。いらぬ(お節介。お世話。算段をする。刺激を与える。腹を探られる。差し出口をする)。 **ふふく【不服】** 不服が爆発する。妬みがましく不服に思う。沈黙で不服をあらわす。猛然と不服を申し立てる。不服そうな顔。不服そうに(唇を尖とがらせる。頰を膨らませる)。物言いたげな(顔。眼差し)。 **ふへい【不平】** 不平がましく言う。火薬よりも強い不平と不満が心の中に詰まっている=小林多。不平の徒を語らう。不平も言わずに働きつづける。ぶつぶつ不平を漏らす。ぶつぶつと泡のように不平を紡ぐ!森境。腔注认の不平を抱きながら大言壮語する今東。不平たらたらで生きる。ニキビ面の不平不満のかたまりのような少年少女水倉。不平不満を(愚痴っぽく言う。しゃべりちらす。持つ人々をなだめる)。 **ふまん【不満】** 宝物を引き出しに仕舞いこまれ目の前ふまんで閉じられたような不満=高樹。不満が(高まる。ありありとうかがえる。心の中に詰まっている。常に胸の中をもやもやと漂う佐野)。片手落ちの処分に不満が出る。ほのかな不満が心に残る。むくむくと不満が頭をもたげる。わだかまっていた不満が爆発する。感謝と不満が胸の中で両立している=丹羽。心の底におし潜ませた不満が化石になる=本庄。不満が心に(積もる。わだかまる)。漠然たる不満と反感を抱く。不満な様子が歴々としている。露骨に不満な表情を見せる。不満に火がつく。不満の(意を表明する。声がささやかれる。表情をみじんも見せない。持って行き場がない)。顔に不満の色が浮かび出る。不満を(心にしまい込む。露骨に口にする。すぐ口に出してしまう笹沢)。現状に不満を覚える。いとぐちさえあれば忽然心んと噴きだしてくる火のような不満を抱く=本庄。腹いっぱいの不満をぶちまける=本庄。不満を言う(陰で。面と向かって)。▼不満をいだく(おぼろげに。仕事ぶりに)。▼不満を持つ(謝礼の額に。やり方に)。心の中でぶつぶつ言う。不満げに(口を歪ゅがめる。頬を膨らませる)。不満そうな声をあげる。不満そうに(口を尖とがらせる。下唇を突き出す)。始終不満そうに眉を繋しかめている=佐多。鬱憤がおさまらない。鬱憤を胸に抑え込む。腹の底から鬱憤を吐き出す。快々拭うとしてたのしまない日々を送る。つべこべ(口出しする。逆らう。詮議する。しゃべり立てる。文句ばかり言う)。余償を吐き捨てる。ブーインが(起こる。百万のイナゴの大群の羽ばたきのように森ひとく宮部)。ブーイングして判定に抗議する。文句を言う(たらたら。ぶうぶうと。ぶつくさ。小鼻を膨らませて)。感謝こそすれ文句を言うのは筋遂い藤沢。文句を言うとばちが当たる。文句を言えた義理ではない。文句をつける(何のかんのと。一々人のやることに)。文句をつける筋合いではない。文句をつけてやろうと手ぐすねを引いている=横山。どこからこんなにも不満が出るのかと思うほど文句を並べる=伊集院。胸の引き出しが勝手に開いたように不満を並べる=伊集院。 **ふまんぞく【不満足】** 不満足な(回答。結果に終わる。仕上がり)。声に満足感が感じられない。満足な(栄養もとらない。答えが得られない。車両は一両もない。食事をとっていない。返事をよこさない)。満足に生きてきたように思えない。給料を満足にもらえない。口も満足に利けない。食事も満足に食べていない。煙草も満足に吸えない。満足の行くような返事がない。 **ぼやく** 乗り物のラッシュをぼやく。ぼやきながら仕事をする。ぼやきが口から漏れる。▼かこつ(孤独な生活を。人生のはかなさを。時の移ることの遅きを。空しく老いた身をぶつぶつと=本庄)。 **まにあう【間に合う】** ▼岡に合う(最終バスに。約束の時間に。いまならまだ。間一髪で。滑り込みで。原稿が締め切りに。これだけあれば。終電にぎりぎりセーフで)。もしかしたら間に合うかもしれない。間に合うかどうかを心配する。仕事が間に合うかどうかおぼつかない。正に滑り込みセーフというタイミングッ赤川。いつも大概すれすれの滑りこみ。滑り込みでレポートを提出する。 **まにあわせる【間に合わせる】** ▼間に合わせる(仕事を。締め切りに。出発に)。間に合わせの(処置。措置)。間に合わせを言う。当座の口しのぎ。便宜的に付けた仮名。一時的な便法。一時の便法にすぎない。 <1027> # ま 満足する・足りる-334 応急の陣こしらえをする。手際よぐ応急の手当てをする。応急処置を(済ませる。施す)。応急措置を受ける。応急手当てを受ける。便宜的な(処置。分類)。 **まんきつ【満喫】** ▼満喫する(自由を。素晴らしさを。本来の味を。レジャーを。ささやかな巣作りの楽しさを"曽野)。▼堪能する(女の体を。快さを。露天風呂を。料理に)。 **まんぞく【満足】** 仕事をしてそれが円満に成就した時の安らかな得意と満足芥川。満足が心のすみずみにまで拡がる=中河。満足と憂いを織り混ぜた顔"大庭。猟師が獲物を捕まえたときのような満足と喜び高見町。満足な自意識に酔う。満足の(行く成果。意を表する。微笑が浮かぶ)。胸中に満足の思いが湧き起こる。表情に満足の色が浮かぶ。深々と満足のため息をもらす。満足を表情に湛たたえる。現在の生活に満足を感じる。少なからぬ満足を与える。精神的満足を得る。予感の的中した苦い満足をなめる=開高。観客の反応に満足する。満足させる(女の虚栄心を。自尊心を。性的欲求を。知的好奇心を)。定めし満足されるであろう。十分満足すべき結末。意を得たように笑笑強脱っに入る。このまま死んでもいい。何も言うことはない。何の不足もない毎日。▼不足はない(相手にとって。敵に迎えても。何一つ)。ついぞ不足らしい肌も見せない=伊藤左。不足を訴えるべき余地を見出さない"夏目。不満のあろうはずがない。我ながらよくできた。満足顔でうなずく。一つの仕事をし終えた後のような満足感"飯田。満足感が心を満たす。胸に満足感が広がる。横顔に満足感が浮かぶ。心が満足感で満たされる。恍惚に、うとしたような満足感にひたる"阿久。全身の毛穴が開き快い満足感を覚える=山崎。満足げな笑いを浮かべる。満足げに(大きくうなずく。仕事の成果を眺める。何度もうなずく。部屋の中を眺めまわす)。満足そうな(笑みを浮かべる。顔で帰っていく)。いかにも満足そうな清々しい表情。満足そうに(目を閉じる。小さな笑い声を立てる=高井)。顔が満足そうに緩む。帆が満足そうに膨れる=遠藤会心の(笑みがこみ上げてくる。笑みを浮かべる。逆転ホームラン)。作者にとって会心のタイトル。密かに会心の笑みを洩らす舟橋。大満悦の体てぃ。多とする(協力を。努力を。働きを。労を)。不満はない(特に。別段)。自己満足に(陥る。浸る。酔う)。自分の思いつきに酔う。偉大な作品の難解さを克服するのに似た自己満足三浦朱。 **みたない【満たない】** ▼満たない(定数に。定足数に。半数に。一割にも。十人にも)。意に満たない結果。句日に満たないうちに。七歳未満は入場無料。二十歳未満は二十歳を含まない。百円未満は切り捨て。 **みちたりる【満ち足りる】** ▼満ち足りる(物心両面で。物質的に十分に。辛っらい仕事の合間に枯れ芝の日だまりに腰を下ろす逞しい女労働者のように三島)。満ち足りた(思いで暮らす。静かな心。微笑を交わす)。天上のような満ち足りた一日=檀。バーゲンセールを覗のぞかなくてもいいような満ち足りた暮らし小池。貧しいながらに安穏な満ち足りた生活を送る三島。すごく満ち足りた気分。とろけるような満ち足りた眠り飯田。身も心も満ち足りている。生に飽満して暮らす。相談相手ができたような充足感萩原爽。充足感に浸る。生活の自信と充足感を全身に漲ひょらせ顔をぴかぴかに光らせる!鷺沢。 **むよう【無用】** ▼無用(かばい立ては。手出しは。気兼ねや遠慮は。もうこれ以上の詮索は)。他言は無用と釘をさす三浦失。長居は無用とさっさと引き揚げる"奥平。無用な(混乱を避ける。面倒を起こす)。無用の(長物と化す。ブレッシャーを与える)。 **もうしぶんない【申し分ない】** ▼申し分ない(服装の趣味が。力量は。香り風味ともに)。申し分ない臨場感を出す。何から何まで申し分のない優等生。結構な(収入をあげる。話。宿を世話する。口が鼻の先にぶら下がっている=二葉亭)。 **ものたりない【物足りない】** ▼物足りない(内容的に。いま一つ。品がよすぎて。ちとお話として。即物的に過ぎて=姫野)。物足りない日を暮らす。亭主にするには物足りない男"山手。物足りなさを覚える。相手にとって不足。役不足(助手では。補佐役では)。口寂しい(禁煙すると。一人前の料理では)。口寂しくてガムを噛む。 **やすんじる【安んじる】** ▼安んじる(心を。小成に。清貧に)。安んじて(暮らす。死ぬ)。小さな自分に胡座ふくをかく竹西。安定政権に安座する。安住の地を探し求める。現状に安住する。みじめさに安住して生きる。地位に安住する(与えられた。公務員という安定した"鈴木光)。 **ようする【要する】** ▼要する(一日の大半を。高度な技術を。事は急を。再検討を。事態は緊急を。説明を。全治十日を。注意を。莫大燈以な出費を。かなりの時間を。かなりの勇気を。三か年の歳月を。処理に三ヵ月を。多大の時間と労力を。注意力の集中を。約半月の日数を)。検討を要する問題。乗り換えに要する時間。 **ようそ【要素】** いくつかの要素が入りまじる。賭けの要素が大きすぎる。偶然の要素が強い。メロドラマ的要素が強い作品。娯楽の要素に乏しい街。物語的な要素に欠けるうらみがある。外来の要素を排除する。官能的な要素を色濃く投影する。自伝的要素を多分に含んだ作品。 **よっきゅうふまん【欲求不満】** 成熟した女の欲求不満。欲求不満が声に現れる。欲求不満を(解消する。ぶちまける。絵に描いたよう)。フラストレーションが溜まる。フラストレーションを(解消する。全部食欲に転化して食べる荻野)。 <1028> # み 見上げる・見下ろす **あおぎみる【仰ぎ見る】** ▼仰ぎ見る(空を。月を。天井を。馬上の人々を。ぼかんと口を開いて)。打ち仰ぐ(相手の顔を。空を)。▼天を仰ぐ(仰々しく。突然のニュースに)。振り仰ぐ(枝の先を。真理の高みを)。振り仰ぐように空を見る。仰ぐ(ぼんやり空を。悄然れいぅとして月を。船縁ふゆを背に青空を)。上を向く。 **あおむけ【仰向け】** 仰向けに(押し倒す。ひっくり返る。ばったりと倒れる)。草むらに仰向けになって寝る。ごろりと仰向けに寝転ぶ。上半身を仰向けにする。砂浜に仰向けに寝そべる。畳の上に仰向けに寝る。体が仰向けに吹っ飛んでいく船戸。ごろりと畳に仰向けになる三島。仰向いて見上げる。仰向きに(倒れる。寝る)。仰向けざまに(転がる。突き倒される)。仰向ける(顔を。上体を)。大の字に手足を広げる。鼻先を天に向ける。ベッドに仰臥れする。仰臥の姿勢をとる。 **うつむく【俯く】** ▼俯らっく(答えない代わりに唇を噛んで有川。眼のやり場に困ったように半刈)。▼うつむく(物も言えずに。面目なさそうに。悲しそうに肩をすぼめて、額に手を当てて。真っ赤になって。まともに見るのが恥ずかしくて"原田奈)。うつむいてはにかみ笑いをする。うつむき加減に(肩をつほめる。入って行く)。うつむきがちに(足を運ぶ。通り過ぎる)。顔をうつむける。足元に目をやる。目を膝に落とす。▶下を向く(自信なげに。言いよどんで。どぎまぎと。むっつりと。恥ずかしそうに笑って=小沼)。床に落とす(視線を。目を)。▼視線を落とす(足元に。腕時計に。盃に。地面に。畳に。手元に。膝に。メモに)。視線が床に落ちる。▼目を落とす(原稿に。地面に。絨毯じゅうに。書類に。本に)。▼目を伏せる(悲しげに。恥ずかしそうに。考え込むように。恐縮したように佐藤愛)。眼を伏せる(凄惨な感じに打たれて思わず有島。都合の悪いところでも見られたように=高橋治)。 **うなだれる【項垂れる】** ▼うなだれる(言葉もなく。力なく。恥ずかしそうに。言葉に詰まって。青い顔で罪人のように=源氏。顎が胸につくほど"原田宗。ショックが鳩尾怒於に入ってがくりと"有川。それ以上うつむけないほど井伏。敗残者のように高橋和)。いかにも申し訳なさそうに項垂れる=加賀。うなじを垂れる。▼首に、を垂れる(稲の穂が。神妙に。愁として。しょんぼり。力なく。低く。しゅんとなって。がくりと折れたように山本周)。 **うわめづかい【上目遣い】** 少しはにかんだような上目づかい=林真。気配を窺らかうような上眼づかい藤沢。疑わしげに訴えるような上目づかいをやめようとしない=安部。上目づかいに(ちらっと見る。児にらみつける。ほほえむ。顔色をうかがう。バックミラーを覗のぞく)。記憶をたどるように上眼づかいになる"山本川。上眼使いの甘えているような表情"円地。上目で(うかがう。眺める。兄る)。上目に見る。 **おおぞら【大空】** 今にも頭を包みそうに近く逼ぜぇっている鋼色の沈黙した大空有島。大空いっぱいに立った壮麗な虹"河盛。無限大の大空に広がる。大空へ向かって羽ばたく。 **がんか【眼下】** 眼下に(滑走路が迫る。水田が広がる。湖が横たわる。黒々とした湖水が見える=池井戸)。海が眼下に広がる。景色が眼下に沈んで見える。町が限下に見渡せる。眼下の(光景を見下ろす。街の灯が きらめいて美しい=田辺)。 **じょうくう【上空】** 上空から振る。上空に(煙が立ち昇る。黒い雲が渦巻く。敵の飛行機が群がる)。上空を鳶とびが旋回する。サーチライトで上空を照らす。遥か上空を飛ぶ。 **ずじょう【頭上】** 頭上で雷がとどろく。災難が頭上に降ってくる。雲が頭上を覆い始める。鳥影が頭上をかすめる。太陽が頭上高くにある。 **そら【空】** 空(午後の暑さに白く濁り出した古井。梢の黒い影に囲まれた水のような三島。寒さをかすかな光にしたような雲のない有局。芝居の書き割りのような乾いた"大岡。墨のような重い=長与。何度も洗い晒くらしたGパンの膝のような薄い色の干刈。鋏似きで切り抜いたような小川。広々と力強く大地を吸い込むような半球の=加賀)。空が(どんより曇る。赤くおぼろげに燃える三島。晴れ上がって洗われた後のように澄む=小林多。雲一つなく冴え渡る=山崎。地面の近くで淡い紫色に煙る=日野。抜けるように高く果てしない弧を描く=石坂。光をいっぱいに含む!島尾。初冬の朝の拭き清めたような輝きに満ちる佐多)。曇った空がうっとうしい。晴れていた空がにわかに曇りだす。雲の割れ目から単色はふぇの空がちらりと見える=堀。青磁色が濃くなって来て空が美しい| 瀬戸物の肌のよう~川端。ビルの林の間の空が血の気を失った女の顔のよう倉橋。まっ黒な松や楢ならの林を越えるとにわかにがらんと空がひらける"宫沢。山々が浮き上がったかと思われるくらい空が美しい有局。空から(鳥の鳴き声が聞こえる。雪が舞い降りる)。寒々とした灰色の空から異以、が落ちかかる=中鳥致。空で太陽が笑う。灰谷。空に(広がった花火。星がまたたく。うっすらと雲がかかる。雲がぼっかりと浮かぶ。月が浮かんでいる)。煙が空に立ちのぼる。手を空に向かって軽く突き出す。虹が空にかかる。束の空に紅紫の色が兆す三島。光の粉を掃いた空に雲雀ひばが暗く福永。空の(光が部屋の中に水のような光線を充たす三島。深さが空への思いを煽ぁぉる"竹西)。絵の具を流したような空の色"石坂。天に梢を差し伸べた樹々によって区切られた静かな空のひろがり=有島。 <1029> # み 見上げる・見下ろす-335 雲ひとつなく晴れわたった!柴田鍊)。 **そらたかく【空高く】** 凧たこが空高く舞い上がる。一面の星が空高く昇る。太陽が高く輝く。鉄塔が空高く突き抜ける。上空高く舞い上がる。天高く(雲雀ばが鳴く。遥かに仰ぎ見る)。 **ていくう【低空】** 低空を(飛び続ける。飛行する)。雲が幕のように空低く懸かる有島。 **てん【天】** 真っ黒な天が磐石の重さで押しつけている"中島返。雨が天から落ちてくる。熱熱気が天から地上に押し付けられてくる=北村。天に(雷鳴が走る。向かって咆哮日行する)。思いが天に通じる。切っ先を天に向ける。日月が天に削く。竜になって天に昇る。両腕を天に突き上げる。石柱が天に向かって屹立つする"梶尾。至誠が天に届く。天に届く火柱。天にも届くようなマッターホルンの頂上=幸田露。天の摂理に従う。遥かに天の一角を呪にらむ。天まで響けと読みあげる。天も焦げるような大火を焚たく"子母沢。天を(摩してそびえる杉の美林。祈っくような大女池澤)。稲妻が天を裂く。火炎が噴き上がって天を焦がす。仰々しく天を仰いでみせる。入道雲が天を突く。この世も終わりだと言わんばかりに天を仰ぎ地に睡する=森現。天を仰いで(神に感謝する。嗟嘆にたする。溜め息をつく。涙にくれる)。一天(からりと晴れ上がる。くまなく冴えわたる。雲なき陽射しを浴びる。にわかにかき曇る。ぬぐうが如き小春日和)。見上げる天頂の雲が黒む。天知る、地知る、我知る、人知る。▼天空(頭上高く白黄色を帯びた無限の人米。まぶしいほどよく晴れた深い=石森)。天空が急に開けたような愉快さを覚える=多岐川。太陽が天空でぎらつく。城楼を天空にそびえさせる。天心に十六夜ぶさの月がかかる。太陽が天心にある。月が天心に至る。天道非なりと悲憤する。夕焼けがほの赤く天末を染める。 **ふしめがち【伏し目がち】** 伏し目がちに(答える。尋ねる。一人笑いする。言葉を選んで話す。まわりをうかがう)。伏せる(視線を。長い睫性っを)。 **みあげる【見上げる】** ▼見上げる(壁の時計を。五階の窓を。梢を。坂の上を。上空を。天井の一角を。天井を。二階を。屋根を。山の頂を。恨めしそうに。目づかいに。青空を茫然柑らと。窺粉ゅうように。る恐る。怯ぉびえたように。顔を下から。眩まぶしげな目で。見るともなく。きょとんとしてあらぬ方を。豪華なシャンデリアを。五十階の威容を。晴れ渡った空を。目の前にそびえ立つマンションを。あきれたように。哀れっぽい目つきで。凍りついた顔で。すがリつくように。切ない目でちらと。問いかけるように。肝の下にしゃがんで。不思議そうな表情で。茫然と口を開いて。眼鏡越しにじろりと。頭上高く繁る薬を"三浦し)。娘が男を火のついたような眼で見あげる=山本周。見上げるばかりの大男。あっと口を開けて見上げたまま。上を見る。天井に(顔を向ける。目をやる)。目を天に転じる。▼目を上げる(うっとりと。恐る恐る)。見上げるような(高い石垣。巨軀心に圧倒される=木庄)。▼眺め上げる(石段道を。空を。ビルを。マンションを)。眼のぞき上げる(天井を。屋根を)。 **みおろす【見下ろす】** ▼見下ろす(靴の先を。空から地上を。谷底の川を。地上の風景を。橋から下を。窓から中庭を。港の夜景を。高みから。梯子ぶしの上から。眼下に広がる街並みを。展望台から街を。土手から。眼下に広がる街並みを。ら河原を。街を一望のうちに。星がちらちら空から)。湖を見下ろす小高い丘。海を見下ろす景勝の地"火坂。木の間がくれに下の道が見下ろせる=井伏。五階のベランダから下を眺める。けだるい目を窓の下に落とす=高樹。鳥瞰する(人生を。地上を)。物語全局を鳥瞰的に眺める。全身をじろじろと眺め下ろす。▼俯瞰ふぉする(四方を。全体を)。 <1030> # み 見える・ちらつく **あざ【痣】** ▼痣(胥い。赤い。黒い)。痣ができる。痣を隠す特殊な化粧。目の周りに青痣誌…ができる=熊合。青痣のような強いブルーのアイシャドー池田。 **いっけん【一見】** 一見(穏やかな人柄。ごく普通の人。人がよさそう。愛想のよい笑い話。意外な取り合わせ。簡単そうに思える。気ままに見える生活。幸福そうな団梁伏ん。さわやかな秀才タイプ。突飛なようで案外確実性のある企画。とらえどころがない。似てはいるが本質的には違う。無謀に思える計画。優しそうな印象を与える。弱々しそうに見える男。英国紳士風の無口な男“五木。どこかの企業の重役といったタイプ戸板)。百聞は一見に如しかず。一見の価値がある。▼一見する(行事を。資料を)。一見しただけではよく分からない。一見して(識別できる。近づきがたい。職人だとわかる)。一目いい荒涼たる眺め。一目して局面を見抜く。違いが一目20とで分かる。町が一目で見渡せる。ひと目で見渡せてしまえるワンフロアオフィス内田成。一目見て病気と分かる。 **きっちょう【吉兆】** 吉兆が重なるとたいてい凶に返る。茶柱が立つ。幸先が(悪い。よいと心が弾む)。嘘のような幸先のよさ熊谷。幸先よい(兆し。スタート)。瑞祥げぶし(一円栄達の。世にも珍しい)。合戦に終わりを告げる瑞兆げふぁ。瑞兆が現れる。いっこうに瑞兆を見せてくれない=開高。 **きんし【近視】** 眼鏡なしでは鼻の頭も見ることができない近視の目をしばたたく宮部。近視のように目を細くして二つの写真を見比べる=堀。近視眼的な(考え。判断)。近視眼のように鋭く細めた眼"松本。 **しかい【視界】** 視界が(眼前に開ける。届く範囲。涙に潤む。不鮮明になる。よく利く。白一色に変わる。闇に閉ざされる。黒々と塗りつぶされていくような不安小林久)。うっすらと視界がかすむ。雨滴が車窓に貼りついて視界が濁る。霧で視界が悪い。雲が出てきて視界が閉ざされる。涙で視界がぼやける。閉ざした暗い視界が瞼にょの中で糊状切りじの闇を形づくる”野間。視界から島影が消える。卒然と視界から消え去る。一人残らず視界から消え失せる。ツバメが鮮やかに反転し視界から消える“あさの。全貌が視界に入る。視界の(端に映る。限りに漂う煙霧。中に濃い緑の色合いが広がっていく谷村)。動きを視界の隅にとらえる。見る見る視界の彼方に消えていく。視界の隅に(入る。人の姿を捉える)。視界は申し分なし。視界を(巡るように楓砂ぇの老樹が燃える緋色を中空に散らしている"高橋治。真紅に染め淼々ごろと音たてて燃えさかる炎"阿久)。雨に打たれて視界を奪われる。濃い霧が視界を限る。ガラスで跳ね返った陽射しが視界をふさぐ=小川。炎の渦が視界を覆う光瀬。雪が視界を純白に埋めつくす光瀬。視界を遮る(黒い影が。半透明の白い壁のように見える雨が"長野)。 **しかく【死角】** 死角に入る。死角を(つかれる。なくす)。制度の死角を金に結びつける。▼盲点(終備の。捜査の。法の)。盲点をつく。 **しや【視野】** 視野が(開ける。広い。黒くせばまって見えるほど腹を立てる=安部)。視野から消える。見る見る視野から遠ざかる。地球の運命に思いをはせるほどに大きな視野と豊かな想像力を持つ"飯田。視野に(浮かぶ。収める)。まざまざと想像の視野に現れ出てくる=有局。▼視野に入れる(可能性を。姿を)。視野に立つ(グローバルな。大局的な)。視野の端に入る。天才的な視野の広さ。視野の片隅に(入れる。映る)。視野の隅を(意識する。黒い影がよぎる)。視野を(斜めに横切る。広く確保する。遮らんとすることく前に立ちはだかる=柴田翔)。全体への視野を欠く。幅広い視野を持つ。壁を立てたように雪が視野を塞ふさぐ"大佛。視野いっぱいに広がる。カメラのフレームにおさまる。目路を(覆う。巡る)。眼界が(狭い。開ける。広い)。狭い限界から自説を主張する。眼界を遮る。 **すけてみえる【透けて見える】** 透けて見える(あばら骨が。意図が。思惑が。事件の骨格が。下着が。静脈が。狙いが。まざまざと。ネグリジェを通して裸身が笹沢。皮膚の下からほのかに血の色が"小林久)。地肌が透けて見える後頭部"高杉。 **ちかちか** ちかちか輝く薄緑のレースで飾られる美しい春の森松谷。バケツの水がミシン針になって手の甲をちかちか刺す“石森。空にちかちかと星が光る。目がちかちかと痛い。家々の灯りがちかちかと揺れて見える=小池。カラマツの落ち葉の雨がちかちかと陽をはじきながら降る三浦哲。思索の壁が屈辱というちかちかと寒く光る色でいちめんに塗りつぶされる=有局。まぶしさに目がちかちかする。 **ちらつく** ちらつく(小雪が。羽虫が目先を。顔が脳裏に。言葉つきに倣岸さが。周囲に男の影が)。「負け」という字がチラつく=向田。▼目の前にちらつく(顔が。姿が)。▼ちらつかせる(餌を。ナイフを)。ちらちらと(噂を聞く。姿を見せる。時計を見る。西陽が射す。脳裏に浮かぶ。横目で眺める。明かりが見える。視線を走らせる。雪が降り始める)。風花が空をちらちらと郷う。日がちらちらと顔に降りかかる。光がちらちらと(踊る。漏れる)。湯気がちらちらと白く立つ。▼ちらちらと降る(粉雪が。春らしい雨が)。▼ちらちらする(木漏れ日が。人影が。窓から射しこむ波の反射が)。顔をちらちら見る。編み針をちらちらさせる。目に妖しい光がちらちらして色っぽい。つぽい。 **てんめつ【点滅】** 光の点滅が顔に陰影を与える。赤いシグナルがちかちかと激しく点滅を始める"辻仁。頭の奥のほの暗い部分で文字が鮮やかなネオンのように点滅を繰り返す=小林久。 <1031> # み 見える・ちらつく-336 ▼点滅する(危険信号が。クリスマスのイルミネーションが=千刈。行き交う車のヘッドライトが瑪瑙色20ぅに池田。色とりどりのネオンが華やかに=柴田湖。頭のなかで赤信号に似た光が激しく小林久。連想が頭の中で内田康)。パイロットランプが鬼火のように点滅している=小松左。豪華な温泉街の灯が点滅するように輝く高橋和。一明滅する(雪原の動物が影絵のように淡く=加賀、火が燐の燃えるように怪しい光を放って=国木田。影が薄氷の張った田圃欧んの水に映りちらちらと=福永。胸に男の顔が遠い稲光のように=光瀬)。 **ながしめ【流し目】** 流し目にちらりと見る。凄艶な流し目を送る。燃ゆるような流瞥いがを送る菊池。▼色目を使う(上役に。男に。人妻に)。女性から秋波を送られる。美人が秋波を送る。 **はため【傍目】** はた目に見ても疲れているのが分かる。はた目には(異常に見える。滑稽に映る。幸せそうに見える)。はた目にもわかるほど動揺する三好微。はた目を気にする。よそ目には愚かに見える。 **ひとめ【人目】** 人目に(つかない場所。さらされてつらい思いをする。立たぬ隅に身をひそめる。立たぬように処分する除。つかずに話をするには恰好の店小林久)。人限につくほど悋気りんに窭ゃっれる藤沢。だらしない姿を人目にさらす。働きが人目に立つ。人目にも陸しっまじい生活。人目の(有無など気にしない。届かない遠いところ)。人目もかまわず(むさぼり食う。声を上げて泣き出す。しなだれかかる)。人目を(避けて帰ってくる。忍んで会いに来る。はばかるような話。魅くほどと愛らしい=大庭。ひくような綺麗な顔「小林多)。身体が人目をひくほど大きくなる。横光。真鯛が人目をひかずにはおかない見事な色合いと形のよさ=竹西。夜陰に乗じ人目を避けて乗船する。人の目がうとましい。人の目に立つ。人の目を(恐れる。気にする)。人の眼を逃れて生きるということの厳しさ=永井路。 **ほのみえる【仄見える】** ▼ほの見える(決意が。自信が。前兆が。無限にひろがる荒野の心が=坂口)。憂鬱な奥行きがほの見えかけて漠となる=古井。底に青白い炎が仄見えるような情念を視覚化する=貫井。ほのめく(卯の花が白く。薄明かりの中に笑顔が)。 **またたく【瞬く】** 瞬く(満天の星がちかちかと=小池。眼が灯りのように=円地)。▼またたく(夜空に星が。吹きすさぶ用にげに明滅することく漁ぃさり火が微かすかに=長与。蠟燭こらの炎がちらちらと=中)。星みたいにまたたく目=田中。町々にちらほら灯りが瞬きはじめる=長与。呟ょぶしそうに目をまたたかせる。泣く一歩手前のような何だか哀願するような気弱いまたたき=佐多。小さな島が打ちまくられて地上に墜ち哀しく羽ばたきしているような瞬き=高見町。空がすっかり暗くぬりつぶされて三つばかりの星がまたたきをはじめる=石森。まぶしげにまたたきを繰り返す!水井路。神経質そうに瞬きを繰り返す=川上。またたきも忘れたように見つめる=光瀬。目をぱちぱちとまばたかせる。▼まばたく(星が。目が)。困ったように眼をしばしばさせる=山本周。▼しばたたく(寝ぼけまなこを。違い風景を望み見るように眼を阿刀田)。▼目をしばたたく(気弱そうに。せわしげに。不安そうに。ばちばち。まぶしい。怪訝げそうな面持ちで=内海)。戸惑ったように眼をしばたたいて笑う原田康。感極まったように眼をしばたせる=浅川。 **まつげ【睫毛】** 柔らかい細い影のような小さい睫毛"野間。愛らしい小鹿の眼みたいに魔だっが長い!犬庭。睫毛が野鳥の胸毛のように震える高橋三。睫毛から涙がキラリと滑り落ちる=檀。長い睫で埋まってしまいそうな雪の中のふかい泉みたいな眼"大庭。涙で娘の長いうるんだような黒い眼"海音寺。長い睫毛の蔭に涙が宿る=大佛。くまどったように黒く長いまつ毛を伏せる=逆井。睫毛をカールさせる。悲しそうに眺毛を伏せる谷川。けむるような睫毛を瞳に冠かぶせる=岡本。の瞳と睫毛とが黒曜石のように結する=岡本。睫毛が春の連想が瞼に浮かぶ=林美。瞼の奥がじんわりと熱くなる=重松。 **まばたき【瞬き】** 涙を流すときのようなはかないまばたき=小川。ほんのまばたきほどの短いつきあい=飯田。眠そうに瞬きを繰り返す。▼まばたきする(ばちばちと眩まぶしげに。夢の続きを見ようとするかのように何度も"小川)。不安らしく忙しく瞬きする=円地。まつげをか細く震わせながらゆっくりまばたきをする=小川。目先を霞ませるものを取るかのように強く瞬きをする=本庄。小鳩のような両眼をしきりに瞬きさせる=池波。瞬きを続ける(ばちばちと音のしそうな=川端。信じられないというように忙しく笹沢)。、瞬きしない。まばたき一つしないで見つめる。まばたきもしないでじっと耳を傾ける。まばたきもせずにじっと眺め続ける。瞬きもせずに凝視する。まじろぎもせずに凝視する。睫毛性,一本動かさない。 **まぶた【臉】** 貝のように明るい色をしている瞼"大佛。蜂にでも敷だされたみたいな腫れぼったい眼蓋だぶ"高見順。▼目蓋住』(カキの貝殻のように段々のついたたるんだ=小林多。鈍いような垂れ下がった=福永。浮腫もくんだような厚ぼったい=篠田)。まぶたがとろんと重くなる。びくびくとまぶたが震える。目脂ゃで険が張りつく=横山。じっとしていると目蓋が重くなるような日和=山本周。瞼が乾いた石のように感じられる=勝目。泣いたあとのように瞼が腫れぼったい求上。まぶたに(涙がにじむ。ものもらいができる)。姿がまぶたに浮かぶ。瞼に鮮やかに甦沁みる=平岩。風に吹き消されて燭し」が消えてゆくような最後の青い光の残像が脳裏に貼りついている=有島。 <1032> # み まぶたを(きつくつぶる。ぴくぴく動かす)。神経質にまぶたを上下する。はにかむように験を伏せる=小川。びっくりしたように験を大きく見開く和久。まぶたを閉じる(固く。考えるように)。除が花弁のように閉じる=大岡。瞼を閉じれば映像が浮かんでくる人項。一重瞼幻花伝の兎行きのような目=佐多。両瞼もだがぼうっと桃色に染まる=水上。 **まるみえ【丸見え】** ▼丸見え(家の中が。意図が。個人情報が。乳首が。中身が。パンツが。外から)。 **みうしなう【見失う】** ▼見失う(あるべき姿を。先を行く車を。全体の動きを。話の継ぎ穂を。自分の帰っていく場所を。テーマのありかを。うっかりすると肝心なところを臼井。局部の現象に気をとられて大筋を三好後。執着が昂こうじて自分を=高橋和)。自分で自分を見失いそうになる。見失った自分を再び取り戻す瞬間の苦い自己嫌恐落合。 **みえがくれ【見え隠れ】** 見え隠れについて来る。見え隠れする(時折人影が。炎の舌が。月が袋問に。光がちらちら。松の木越しに海が。川が林の向こう側に)。▶隠見する(林を透かして湖水が。川の流れが飛び飛びに。山肌が霧の間に。灌木みんに覆われた山のところどころに建物が=石坂。姿が川霧の中に=井上靖)。一隠れたりする(覗のぞいたり。ちらちらと見えたり)。 **みえない【見えない】** ▼見えない(客らしい客が。将来の展望が。とんと姿が。話の方向が。反省の色が。陰になって。影も形も。先がまるで。視界に人一人。島影一つ。人っ子一人。道が吹雪で。一進一退で光が。勝ち目があるようには。観光客らしい姿は絶えて。さして感銘を受けたようには。数メートル先も。小さい字がよく。とても老人には。年齢相応にしか。妖怪以外の何物にも。どこまで馬鹿にしているのか底が横光。湖に靄もゃがたちこめていて対岸が"立原。道路の果てが熱気にかすんで阿部。人には他者の心は高橋和。ぼんやりとかすんでいて定かには=平岩。若い時は馬車馬みたいなもので四囲のことは何も林美)。見えない焦燥に足元をはらわれる。底の見えない深さ。目に見えない巨大な力。見えない糸に(操られる。引かれたように後をつける=小林久)。▼隠れて見えない(石垣が草に。山が雲に。圏に)。▼遮られて見えない(木の枝に。塀に)。テレビが映らない。視界がほとんど利かない。吹雪で視界が利かない。視覚を失う。視力を失う。前方の見通しが利かない。▼見にくい(陰になって。不鮮明で。画面がちらちらして。文字が小さくて)。▼見られない(気の毒で顔が。具体的進展が。症状に変化が。努力の跡が。反省の様子が。病状の改善が。今どき滅多に。二目と。微座ふじも。下げ止まる気配が)。時世の大局を見る明がない。明を(失う。失する)。目が(衰える。遠い。不自由。悪い)。姿が目に入らない。目にも止まらない。誰の目にも触れない。闇で覆面する。 **みえなくなる【見えなくなる】** 「見えなくなる(後ろ姿が。いつの間にか。蔡総ぁに消えて。闇に紛れて。思いつめると他の物が。ちょっと目を離した隙に姿が三浦し。一つの感情にとらわれると他のことが"黒岩。姿がかき消すように“福永。砂嵐にまきこまれたようにかすんで=日野。沼に沈むようにゆっくり"小川)。気がつくと前後が見えなくなっている。眼界から消える。視界が(暗くなる。ゼロになる。閉ざされる)。視界から消え去る。失明する(右目が。事故で。病気で)。失明する危険がある。両目の明を失う。闇の中に吸い込まれる。 **みえる【見える】** ▼見える(希望の光が。ちらっと顔が。遥かに町が。崩壊の兆しが。虫のよい腹が。姿が遠くに。星が近くに。全くの別人に。海に点々と漁り火が。顔に不審の色が。ガラス戸越しに姿が。唇もとに微笑みが。ちらほら人家が。遠くに明かりが。道の両側にぼつぼつ家が。案外幸福そうに。一段と鮮やかに。一見豪放磊落65いに。一見して穏やかに。いつもよりずっと大人に。今までと違った様相に。獲物が目と鼻の間に。黒い水流が星明かりに。健康を取り戻したかに。自分より遥かに年長に。順調にスタートしたかに。すべてが平板に。ちょっと見にはよその人に。とてつもなく美味うまそうに。青空が高く遠く。明かりがぼんやりと。家がぽつんぽつんと。いかにも色っぽく。いつになく沈んで。意図がありありと。思いなしか頬がこけて。体がひと回り小さくなったように。川がきらきら光って。心なしか青ざめて。心なしか若やいで。細部まではっきりと。ずいぶんと古びて。前途が広まぶしく輝いて。年よりもふけて。はっきりと手に取るように。ひどく年寄りくさく。町が箱庭のように。文字がかすんで。横顔が面やつれして。よっぽど気に入ったと。自分がひどくみじめに隆。別人のように華やかに『向田。木の葉が裏返って白っほく=寺田。柔らかい星の影が春めいて=徳田)。見えるか見えないくらいに頷かなく井伏。浮いて見える(あばら骨が。山々が。くっきりと。皮膚の下に静脈が青く)。▼にじんで見える(街の明かりが。ぼんやりと。あたりがぼうっと)。▼目に見えている(苦労が。大混乱が。失敗することが。黙殺されることは。嵐が巻き起こることは『宮部)。先が見えている。▼見えてくる(どんづまりが。ほのかな明るみが。目の前にありありと)。すっっと眼の前の霧が霽はれて行くように何もかもがはっきりと眼に見えて来る=井上靖。姿が眼底に焼きつく。文字が眼底に鮮やか。姿が視界に入る。視野に入る。瞳に映る。▼目に映る(姿が。はっきりと)。少女の顔が目の端に入る『東野。目の端に人の姿が映る=北原。目を遮るものがない。網膜の中へ入ってくる。見えるよう(心の中が。仏頂面が。喜ぶ顔が。姿がありありと)。▼目に見えるよう(驚く顔が。情景が。行く末が)。 <1033> # み 見える・ちらつく-336 ▼垣間見える(地獄が。本性が。本音が。ふとした拍子に)。あちこちに散見される。誤植が散見する。視覚的な(イメージ。文章)。視覚に訴える。視力が(落ちる。急速に衰える。めっきり弱る)。おのが視力の乏しさに切歯する=柴田剣。▼目に飛び込んでくる(写真が。表情が。緑の芝生が。文字が)。姿が目の中に飛び込んでくる。▼覗のぞく(顔に自信が。霧の切れ間から青い空が。口元から白い歯並みが。中年の男の表情が。ちらちらと敵意が)。正面に雲を頂いた山が望める。▼目に浮かぶ(光景が。今もありありと)。記述が目にとまる。見出しが目を射る。目視できる距離。まざまざと(見えてくる。目に見えるよう)。まざまざと目に(浮かぶ。映る)。▼目に入る(記事が。写真が。建物が。時計が。鳥居の横木が。不審な男が。文字が。否応訟沁なく。家族連れの姿が)。横腹を見せた貨物船が二本の指でつまみ取れるほど小さく眼に入っている=吉行。 **みかける【見掛ける】** ▼見かける(姿を。偶然。たびたび。ちょいちょい。時折。通りがかりにちらりと)。そんじょそこらに見かけないほど美しい藤沢。▼見受ける(あちこちに。随所に。往々。多々)。 **みかねる【見兼ねる】** ▼見かねる(苦しい家計を。取り乱した格好を)。見かねて(助け船を出す。手を貸す)。困っているのを見かねて声をかける。様子を見かねて手伝う。見るに見かねて(口を挟む。仲裁する)。非道を見るに見かねて投書する=美濃部。座視するに忍びない。正視できない気恥ずかしさ。正視に堪えざる醜悪さ=坂口。黙っているわけに行かない。このまま黙って帰れない。黙って放っておく手はない。黙って見逃すわけにはいかない。気の毒で見ていられない。痛々しい姿を見るに忍びない。黙って見ているに忍びない。見るに忍びないように目を逸らせる。凄惨見るに堪えざるものがある=坂口。見るに堪えない下手機いな出来具合=高見町。目に余る(いやがらせ。怠け方。迷走ぶり。行きすぎが多すぎる)。わがままが目に余る。目も当てられない(哀れさ。気の毒な様子)。目を覆うばかりの(荒廃の地。迷走)。目をおおうような畑の荒れよう飯田。あまりの惨状に目を覆いたくなるようなありさま=内田賊。目を覆わんばかリの派手作り若竹。▼目をそむける(いたたまれず。うるさいものでも払い除けるように=有島)。目を(そむけたいくらい険しい道吉本。そむけたいような思いが黒い泡になって充溢にうする=高樹)。 **みごたえ【見応え】** 見ごたえのある(一戦。好試合。ドラマ)。見るに値する。ちょっとした見もの。さぞかし見ものに違いない。見る値打ちがある。紅葉が見頃となる。ちょうど見頃の位置。桜が見頃を迎える。 **みられない【見られない】** 顔がまともに見られない。雨夜の(月。星)。あれほどの素材はめったにお目にかかれない=船戸。思わず顔をそむける。見られた(ざまではない。図ではない)。普段は滅多に見ることができない。目のやり場に困る。まともに見るのが恥ずかしい。現実から目をそらして遠い記憶を語り合うへ落合。▼目をそらす(本能的に。恐ろしいものを見たように=高樹)。▼目をそらせる(少しじれたふうに三田。しどろもどろになって=宮本部)。眼をそらせる(じっと見ていられないような気持ちでたびたび=梶井。主人に叱られた犬のように遠藤。見てはならないものを見たような想いで=高見順)。 **みられる【見られる】** ▼見られる(努力の跡が。足元を。一段低く。世界中至るところに)。▼目で見られる(胡散臭いさんい。同情の。非難がましい)。衆人の環視を浴びる。きびしく注がれている眼を鞭もちのようにびしびしと感じる高見期。背中に視線が張り付いている。視線に晒さらされる。誰にも知られたくない惨めがねを覗のぞかれる!奥田。周囲の目が一斉に注がれる=丹羽。監視の目が注がれる。目が一挙手一投足に注がれる=高橋三。目が粘りつくように注がれる"宮本輝。目が注がれる(嫌忌の。好奇の)。 **みるからに【見るからに】** 見るからに(初々しい娘。元気がない。高価な花束。高級な料亭。強そうな男。偏屈な印象。裕福らしい人。がっかりした様子。上等な仕立てのジャケット。海千山千の風貌を備えた老人=原田宗)。 **めがね【眼鏡】** ▼眼鏡(度の合わない。度の強い。分厚いレンズのついた。牛乳瓶の底のような=篠田。ビンの底のような分厚い西木)。眼鏡が(曇る。鼻の先にずり落ちる。それ自体発光体のようにきらめく森瑙)。眼鏡に狂いはない。髪を眼鏡に結う。眼鏡の(度が合わない。奥の瞳が笑っている。つるを指で押さえる。レンズに光が反射する)。眼鏡を外す。ずり落ちた眼鏡を鼻のつけ根に押し戻す三浦し。化け物みたいな眼鏡をかける白井。雪があまりまばゆくて限がすっかり紫の眼鏡をかけたよう。宮沢。老眼鏡が鼻からずり落ちそうになる。眼鏡越しに(じろりと見上げる。不審げな目を向ける)。限帯を(かける。外す)。コンタクトレンズを(外す。はめる)。▼サングラス(真っ黒な。野暮ったい)。サングラスで顔を隠す。サングラスを(頭に載せる。かける。外す)。 **よめ【夜目】** 夜目が利く。欅の枝や葉が夜目に判然と浮かぶ=高井。夜目にも(隴ぶ『げには人の顔が見分けられるほどの月夜芥川。白く裸身が浮かび上がる"笹沢)。夜眼にも匂うような若い女の熱い顔「室生。しぶきをあげる水滴が夜目にも白い。 **レンズ** レンズが曇る。レンズで覗のぞいたように細部まではっきりと見える=尾辻。レンズの焦点を合わせる。三十キロもむこうの山の斜面がレンズを通して見るように近くに見える=阿部。絞りを開け放したレンズのように黒い目を嶝みはる=大佛。 <1034> # み 惨め・素っ気ない **じゃけん【邪険】** 邪険な(言葉を返す。短い返事)。目が邪険な輝きを見せる。邪険に(肩を押し戻す。電話を切る)。じゃれつく小犬を邪険に払いのける。差し出した手を邪険に払いのける=熊谷。・塩でも撒かれかねないほど邪険にされる=貫井。野良犬でも追い払うように邪険にする=高橋三。 **そっけない【素っ気ない】** 素っ気ない(挨拶。口調。対・応。反応を示す。返事が返ってくる)。最初から最後までそっけない態度を取り続ける"重松。味も素っ気もない(言い方。ビル)。路傍の人のようにむっっとそつけなく澄ましこむ谷崎。素っ気なく答える。岩が呟くようにそっけなく言う=武田炎。わざと素っ気なく言う。愛想のない返事。愛想もなく断る。愛想も何もあったものではない=かんべ。▼可愛げがない(物言いに。およそ。全く)。可愛げと言ったら小魚の骨ほどもない三好京。可愛げのない女の子。役所の窓口のような情のない口振り貫井。すげない(答え。返事)。すげなく(答える。断る)。夢がすげなく見る見る去っていく=高見明。つれない(顔をする。ことを言う。仕打ち。返事。目に遭わされる)。つれなく去っていった男。にべもない(取材拒否。一言で要求を却下する。口調で断定する=丸谷。というコトバはこういうときに使うのです、というサンブルのような言い方=田辺)。にべもなく(言い捨てる。打ち消す。援助をはねつける。提案を却下する。谷とがめるように言う)。興味なさそうににべもなく答える森瑞。 **てひどい【手酷い】** 手ひどい(拒絶にあう。言葉でやりこめる。目に遭う。喪失感を噛みしめる)。あまり甘く見ると時に手酷にぃいしっぺ返しをくう森現。手ひどい打撃を(受ける。加える)。手ひどく(報復を受ける。自分の立場が戯画化される=局尾)。こっぴどい(批評。目に遭う)。こっぴどく(叱られる。叱責する。だまされる。とっちめる。笑われる)。哀れみや同情をこっぴどくはね返す。 **なさけない【情けない】** 情けない(思いを味わう。気持ちになる。負け犬根性。奴だと哀れむみたいな目つき=田中)。情けない(いざ交渉となるとからきし駄目なんだから=貫井。羽をむしりとられた鳥のように=長野)。何とも情けない話。まことに情けない代物。世にも情けない格好。いまにも泣きだしそうな情けない表情!高橋三。死のうか生きようか思案にくれているといったような情けない姿"山手。自分で自分を軽蔑したような情けない腹立たしさ=山手。橋の上から親子ともに投身したいような情けない気持ち小島。横綱の胸を借りる幕下力士みたいな情けない恰好み?三浦し。情けないくらい単純な話!後藤。情けないのを通り越しておかしくなる。情けないほど子供じみた言い方。子供が大事な玩具を取りあげられそうになったように情けなく悲しくなる=原田歳。底から情けなく思う。つくづく情けなく感じる。情けなくて笑い話にもならない。自分が情けなくて涙が出る。ほとほと自分が情けなくなる。情けなくも震えながら言う。腹も立てられないような情けなさ=強井。情けなさそうに溜め息をつく。いかにも情けなさそうに言って嘆息する=二葉亭。情けなさでいっぱいになる。自分の情けなさを恥じる。地面に頭をこすりつけて謝っている罪人のように高樹。商品を客に不当に値切られた商人のような声=椎名織。そのまま畳の中へ沈み込んでしまいそうな顔「吉川。溝とぶの中に落ちこんだような気分"小局。嘆かわしい(世の中。事件が続発する)。我ながら嘆かわしい。嘆かわしいにも程がある。 **はいぼくかん【敗北感】** 敗北感が(胸を満たす。日増しに募るばかり。身体の内部から不安に重苦しく押し揺すぶる=円地)。胸の中が敗北感でいっぱいになる。敗北感に体を震わせる。言いようもない惨めな敗「北感にたたきのめされる=石坂。期待が大きかった分敗北感も大きい。苦い敗北感のような気分をあじわう五木。 **はくじょう【薄情】** 遊情な(男女。父親。母親。息子。娘。友人を憎む)。悲情にも見舞いにさえ行かない。いたわりがかけらほどもない。情が薄い。自分の深情けぶりと相手の薄情ぶりをはかりにかける=瀬戸内。▼薄情者(冷酷な。あきれ返った。情け知らずの)。不情な(心。人)。人に不人情に当たる。無情な(仕打ち。世間の迫害に耐える=石川)。身辺に無情の秋風が立つ荻野。 **ひさん【悲惨】** 滑稽を通り越して悲惨=舟橋。悲惨このひさん上もない。悲惨と隣り合わせに住む"沢木。悲惨な(憂き目を見る。境遇に陥る。結果を招く。死を遂げる。姿が胸を刺す。生活を送る。気配を漂わせる。現状をもたらした元凶荒巻。生活の苦しさがじんと伝わってくる遠藤)。業病の悲惨なありさま。いたずらに過去の悲惨に嘆息する太宰。末路は悲惨の一語に尽きる=綱淵。 **ひどい【酷い】** ひどい(悪態をつく。扱いを受ける。境退に苦しむ。目に遭う。言葉が頻繁に飛び出す。仕打ちを受ける。待遇に甘んじる。戦争の波をくぐり抜ける=林炎)。ひどい(いきなり零点の答案をつきつけられるより安岡。住宅事情が話にならないくらい=大庭。説明がつかないくらい!水倉)。煮え湯を飲ませるようなひどいことをする=山本有。我ながらひどい人間だと思う。川上。いくら何でもこれはひどすぎる貫井。余りと言えば余り“円地。殺人的な(暑さ。混雑。スケジュール)。さんざんな(客の入り。失敗に終わる。批判を加える。あしらいを受ける)。 <1035> # み 惨め・素っ気ない-337 さんざんに(打ちのめす。なぐりつける。やっつける。お目玉を頂戴さいぅする)。悶もだえに悶えてさんざんに泣く。煮え湯を(浴びせる。かける。飲まされる)。心ない(いたずら電話。仕打ち。中傷。非難。言葉を謝罪する。春雨が散らした花びら)。 **ぶあいそう【無愛想】** 無愛想この上ない。無愛想な(一驚心を投げる。応対。おじいさん。言葉つき。 『言葉つき。視線を向ける。返事)。寝不足の女のように無愛想な顔高樹。無愛想に(言ってのける。応じる。口を閉ざす。断る。短く答える。空返事を与える)。怖いくらい無愛想に言う。灰谷。無愛想の所々に句読点のように小さく挟む優しさ=連城。けんもほろろに(言う。 。けんもほろろに(言う。断る)。木で鼻をくくるようなものの言い方=西木。木で鼻をくくったような返事若竹。 **ふしんせつ【不親切】** 第三者にとっては不親切きわまる話し方=丹羽。不親切な(応対。態度)。つっけんどんな(態度。返事)。つっけんどんに(言う。答える。命令する)。言葉つきがつっけんどんになる。よそ者をつっけんどんに扱う。 **ぶっきらぼう** ぶっきらぼうな(言い方。口調で訊く。言葉づかい。態度。店員。返事)。文章を読んでいるようなぶっきらぼうな言葉つき=勝目。ぶっきらぼうに(応じる。口を挑む。言葉を返す。断る。しゃべる。尋ねる)。少し怒ったようにぶっきらぼうに言う。緊張して小学生の返答のようにぶっきらぼうに答える=椎名誠。鼻先で戸を閉たてるような悪く叮寧がいな態度を執る=高井。 **ふんだりけったり【踏んだり蹴ったり】** 踏んだり蹴ったりの散々な目にあう高見照。財布は失くすし道には迷うで踏んだり蹴ったりの一日。泣きっ面に蜂。不運が重なる。不幸が(重なる。一度に押し寄せる)。弱り目に崇たたり目。 **みじめ【惨め】** 泥だらけのスカートのように心がみじめ内館。みじめで不様誌だな人生小林信。惨めな(結果に終わる。最期をとげる。姿をさらす。敗北を喫する。虜囚の身の上。男になり下がる。気持ちに沈んでいく。生活に区切りをつける。状態を控え目に話す=大岡)。いかにもみじめな貧しい心志賀。この上なく惨めな存在。居候のような惨めな気持ち=河野。泣きたいようなみじめな思い曽野。野良犬のようなみじめなかっこう長崎。負け犬のように惨めな生活"岩坂。自分がひどくみじめに見える=隆。情熱が惨めに崩れる。情けなさを通り越して惨めになる。惨めさが(心にこたえる。全身ににじみ出る)。みじめさに安住して生きる。自分のみじめさに突き当たったまま空しい逡巡しゅんを重ねる=堀。この世の敗残者でもあるようなみじめさを感じる=椎名麟。負けた場合のみじめさを胆きもに銘じる=源氏。惨めさを隠すために努めて陽気に振る舞う島田。惨めったらしい(格好。声をあげる)。罪をあばかれて曳。かれて行く人に似た姿川端。みじめなほど政治的能力に欠ける"石田制。惨愧だんたる(失敗に終わる。状況を呈する。日々をたえ忍ぶ=中島敦)。キャンペーンが惨憺たる結果に終わる。火が消えたような惨擦たるありさま。惨熔さは筆紙に尽くしがたい子母沢。 **よそよそしい【余所余所しい】** よそよそしい生活に耐える。どことなくよそよそしい口調でしゃべる。他人のようによそよそしい態度をとる士村。よそよそしくがらんと明るい町"日野。システムキッチンのショールームのようによそよそしく味気ないキッチン〃小川。街が自分を拒んでいるようによそよそしく見える=連城。よそよそしさ(借金取りと借り手が話し合いでもしているような冷やかな赤川。憎み合うことさえない=山本周)。初めて入った家のようなよそよそしさが常につきまとう中沢。路傍の人に対するようなよそよそしさを装う有局。 **れいぐう【冷遇】** 冷遇を受ける。▼冷過する(客を。制裁的に)。▼扱われる(出て行けがしに。早く死ねよがしに)。犬畜生にひとしいあしらい=真継。ひどい待遇を受ける。冷や飯を食わされる。禽厭味礼じのように酷退する=山田美。粗末な扱われ方に眉をひそめる。 **れいこく【冷酷】** 氷より冷酷で無悩応だな気持ち=子母沢。冷酷な(鬼の目をもつ。視線を投げる。手口で殺す。目を向ける。笑いを浮かべる)。石を投げうつよりも冷酷な仕打ち三浦。永久に成功しないことでも祈るような冷酷な眼で眺める芥川。氷のように冷酷な目=宇野利。骨のこまで冷酷な性情の持ち主柴田鈍。冷酷に(追放する。突き放す。光る目に射すくめられる)。現実を冷酷に見つめる。歴史的事実が冷酷に証明する藤枝。冷静を冷酷にまで煮詰める藤本。残忍冷酷な処刑手段。酷派な(仕打ち。表情。笑い)。気持ちが酷渉になっていく。情け知らずの(悪党。悪人。仕打ち)。▼冷血漠(非情な。一片のモラルをも所持しない萩原朔)。冷血の(集団。所業)。血も涙もない(男。女人でなし。冷血漢)。 **れいたん【冷淡】** 冷淡な(口調。仕打ち。突き放すような態度"山本岛)。わざと冷淡な返事をする。冷淡に(扱う。言い放つ)。手のひらを返すように冷淡になる=赤瀬川。生きている間に打ち解けた交際は出来ないほど冷淡の日を重ねる夏目。優しさのかけらも持ち合わせがない。若さを見せびらかしているような冷淡さ=林炎。うとうとしい態度。うとうとしく取りなす。▼水臭い(隠すなんて。お礼を言うのはかえって)。水臭いことを言う。 <1036> # み 見せる・示す **あんじ【暗示】** 暗示が(色濃く漂う。脳裏をかすめる)。暗示の光を投げかける=寺田。平凡な日常の人生に暗示の花びらを撒きちらす岸田。▼暗示する(運命を。可能性を。重要な事実を。人生の終末を)。暗示性に・暗示的な(書き出し。結果)。暗々裡ふぁに(脅かされる。事を運ぶ。指導する)。▼におわせる(引退を。親密な関係を。暗に。言外に。不満を軽く)。ほのめかす(暗に。言外に。それとなく。警察と暴力団との癒着を。自殺の可能性を。遠回しに不満を)。仄ほのめかす意味を正確に把握する=貫井。 **おもかげ【面影】** ▼面影(心の隙にぽっかり浮かび出る妻子の=今日。生死を超越した哲人の"胡桃沢)。面影が(險ぼぶに浮かぶ。鮮明に一つの像を結ぶ。脱法日げに幾つも重なり合う。福氷。心の中に髪舘ぶうと思い浮かぶ=遠藤。塩を焼く煙のようにゆらゆらと消えずに立つ=島尾。溶けるように消えて行く=福水)。心に面影がよみがえる。子供らしい面影が失せない。脳裏をちらりと面影がよぎる。風流人の面影が深い。昔の面影が少しもない。脳裡20うに宿った俤さんが日を経るにつれて鮮やかになりこそすれ少しも薄れようとしない=柴田剣。▼面影が残っている(昔の。若い頃の)。▼面影が残る(原始の。白皙邨氷の青年の)。▼面影が焼きつく(心に。脳裏に)。見えつ隠れつする面影に思いがいやまさる。白洲。無意識で追っているおもかげの花竹西。面影を心から追い出す。顔に少女の面影を宿す。古武士の面影を見る思い。亡き夫の面影を偲しのぶ。若い頃の面影をとどめる。黒板塀の武家屋敷が江戸の面影をそのままに残して建ち並んでいる"高橋克。少女のような面影を残す顔藤沢。▼面影をとどめない(往時の。もはや昔日の)。▼面影を残す(子供の頃の。少年の。昔のままの)。▼面影はない(往年の。すでに昔年の。昔日の。当時の)。 **かおいろ【顏色】** 顔色(秋雨の後の日射しを思わせるいきいきとした"大佛。いつもほこりをかぶっているかのようにすすけて見える"野間。艶を失ったボール紙のような=高井。白紙と形容してもいいほどの高橋治。悲劇をひとりで背負ったような深く沈んだ"石川。酔ってへどを吐いた後の興ざめしたようなやつれた後藤)。顔色が(紫色に変わる。さっと青ざめる。爽やかに上気する。沈んだ感じになる。血の気を帯びる。日増しに悪くなる。青ざめきって病人のように岩板。壁のように蒼褪ふぉめる=獅子。紙のように白くなる=江戸川。なえた草の葉のように色褪ごっめる"光輝。鈴のように悪い=藤原)。緊張で顔色が青白く変わる。急に歳をとってしまったかのように顔色がひどく濁る=黒井。▼顏色になる(毒液でも注射されたように見る見る陰気な=椎名観。火が出るような大佛。水をそそがれた植木のように生き生きとした=獅子)。顔色の悪さを気遣う。顔色一つ変えずに言い放つ。顔色も動かさずに報告を聞く=多岐川。顏色を(変えずに言う。いささかも変えない)。途端に顔色を変えて飛び出していく。悪いことでもしたように顔色を変えて恐縮する=山崎。▼顔色をうかがう(上目遣いに。それとなく。真意を計りかねているようにドギマギと=阿刀田)。顏色に落ち着きがない。人の顔色を(読む。窺らゅうような卑しい態度"辻井)。病人の顔色のように空が暗くにこっている=山本有。顔色を変えて(怒る。逃げ出す。走ってくる)。顔色を変える(思わず。ぎくりとして。さっと。一目見るなり)。血相を変えて(怒る。食ってかかる。怒鳴り込んでくる)。 **かかげる【掲げる】** ▼掲げる(看板を。共通の目標を。グラスを。戦争批判を。大義名分を。不偏不党を。手を高々と。麗々しく。新聞が激情的な記事を)。▼高く掲げる(旗を。理相を)。墨も黒々と筆太に書いた高札"山本周。高札を(掲げる。立てる)。立て札があちこちに立つ。立ち入り禁止の立て札を立てる。▼掲示する(合格者を。公告を。ポスターを)。発着案内の電光掲示板。電光掲示板が明日の天気予報を流している=重松。 **かんばん【看板】** ▼看板(縦長の。横長の。大安売りと大書した)。看板が(通りを彩る。軒にかかる)。文化国家の看板が泣く。木製の看板がぶら下がる。看板に(明かりが入る。傷がつく。ふさわしい番組)。乗り場案内の看板に目をやる。看板の(明かりが落ちる。明かりを点っける)。古風な看板のかかった温泉宿。軒並みに看板を連ねる。▼看板を掲げる(派手な。金文字の。小料理屋の)。▼看板にする(堅実経営を。親日家を)。理髪店の店先に出された赤と白のねじり棒「宮本輝。立て看板が風に揺れている。立て看板の間を抜ける。 **きごう【記号】** 記号であらわす。記号を(書き込む。入力する。読み取る)。二つの記号を結ぶ。符号を書き入れる。見下げられたという感情が勃然と起こり、つい符号のような返事をする=島尾。 **きりくち【切り口】** 物語の切り口がユニーク。切り口からおびただしい血を噴出する。いろいろな切り口から分析する。新しい切り口で論じる。切り口の鮮やかさに舌を巻く。切り口を(空気にさらす。雨ざらしにする)。ばっくりと切り口を見せる。断面が露出する。人生の一断面を鮮やかにえぐってみせる=浅川。 **けいさい【掲載】** 掲載に不適な写真。▼掲載する(雑誌に写真を。官報に。順不同に。無許可で)。書評が新聞に掲載される。紙面を割く。 **けいじ【啓示】** 神の啓示にあったような新鮮な感動瀬戸内。胸に天来の啓示のごとく考えが関10らく=海音寺。神々の登示を無批判に受け入れる=光瀬。▼啓示する(恩寵出认ちを。考えを。知恵を。秘密を)。稲妻のように天啓が頭に閃く長与。 <1037> # み 見せる・示す-338 天啓のごとき言葉が一胸に蘇る!高橋三。天啓のごとくずる賢い智慧ちぇが浮かぶ=北。作品の構想が天啓の如く冈く〃小松左。 **さししめす【指し示す】** ▼指し示す(能力の限界を。未来を。行く手を。テーブルの向こうを)。時計の針が正午をさす。指さした方向を見やる。指さす(蛇口の方を。空の一点を。遠くの灯台を。離れた場所を。向かいの山を。闇の一角を。道の遥か前方を)。 **しさ【示唆】** 示唆に富んだ短評。▼示唆する(可能性を。考えを。関係を。弾圧を。要点を)。犯行を示唆する書き込み。▼ヒントにする(記事を。事件を)。▼サジェスチョン(貴重な。有益な)。サジェスチョンを(与える。得る)。 **してき【指摘】** ▼指摘(いちいちもっともな。重箱の隅をつつくような。正当さを欠いた)。指摘が的を射ている。▼指摘する(欠陥を。財政の欠乏を。人口の減少を。人民の怨嗟試んを。内的な連関を。間違いを。問題点を。事実を淡々と。具体的に欠点を。不透明な一面を。乱れた女関係を。誤りを具体的に。弱点をずばりと。容赦のない言葉で。口がだるくなるほど=松本)。事実を指摘するにとどめる。互いの欠点を指摘しあう。 **しひょう【指標】** 指標から(判断する。読み取る)。指数が(上昇する。高い。低下する。低い)。偏差値が(上がる。下がる。高い。低い)。 **しめい【指名】** ▼指名(思いがけない。社長じきじきの)。ボーイが指名を聞きに来る!佐野。指名する(教授を。研究者を。首相を。特定の人物を。後継に)。重要参考人として全国に指名手配する。指名される(首相に。大統領候補に)。先生に当てられる。▼ノミネートされる(最優秀賞に。新人賞に。アカデミー賞に)。名指しで(非難する。批判する)。▼名指しする(担当者を。特定の党派を。犯人を)。 **しめす【示す】** ▼示す(露ぁらわな反感を。企画に興味を。強引な連帯を。動揺を。親愛の情を。対照の妙を。正しい位置を。長足の進歩を。時計が二時を。抜群の腕を。抜群の働きを。非常な努力を。法令の威を。迷う気色を。顔面が冷酷な色を。剣士としての天葉氏んを。細かな気遣いを。事態が急展開を。しぶしぶ面従を。情勢判断に的確さを。積極的に引き止める素振りを。人前で政治的野心を。瞳が若々しい姚こびを。ほどよい釣り合いを。見事な出来栄えを。予想した通りの反応を。露骨に不快な顔を。具体的に事例をもって。先取りする形で。同盟の健在ぶりを天下世界に荒巻)。一端を示す(覚悟の。自信の)。▼示さない(一片の憐情印礼じも。何の反応も。微塵ふじも応じる気色対しを。関心をほとんど。全く妥協の余地を=光瀬)。宣揚する(愛国心を。国威を。武威を)。▼明示する(会員証を。時期を。典拠を)。日時の指定を受ける。▼指定する(受け取り先を。場所を。次回公判期日を)。パスポートの提示を求める。▼提示する(具体系を。条件を。身分証明書を。抜本的な解決策を)。表示が(消える。出る)。表示に従う。▼表示する(原産地を。行き先を。原寸大で)。店構えの立派さがかつての繁栄を物語る『池井戸。▼雄弁に物語る(小さな写真が事実を。沈黙が心の中の騒乱を。表情が胸にあるものを)。 **ショーウインドー** ピカピカに磨き上げられたショウウィンドウ!安岡。煌々こうと電灯をつけたショーウィンドー。ショーウインドーが通りに並ぶ。ショーウィインドーを見て歩く。陳列に工夫を凝らした飾り窓"大佛。明かりが店々の飾り窓に光る。精一杯華やかに飾りたてられたショーウィンドウ=森瑙。ショーケースに(陳列する。並べる)。ショールームを(訪れる。開設する)。常設の展示場。 **だい【題】** ▼題(劇の。作品の。小説の。本の)。▼演題(演説の。講演の)。表題(講演の。文章の)。書物の表題が目に映る。表題に掲げる。▼副題(本の。論文の)。邦題(原題に忠実な。洋画の)。論題を(掲げる。決める)。▼タイトル(一風変わった。論文の。作者にとって会心の)。タイトルが目の奥によみがえる。本のタイトルが見える。曲のタイトルをメモする。 **ちんれつ【陳列】** ▼陳列する(収集品を。商品を店頭に。整然と)。古式な黒塗りの陳列台。▼展示する(絵を。作品を。ポスターを)。展示して即売する。ケースに収まっている小さな展示品。 **ていする【呈する】** ▼呈する(活況を。活気を。閑散な眺めを。女性が媚態たを。一種異様な趣を。惨憺たる状況を。白砂青松の美景を。物置小屋のような観を。物々しい雰囲気を)。▼様相を呈する(大型疑獄の。打撃戦の。長期戦の。作業甲板が戦場の鈴木光)。 **テーマ** テーマ(作品全体に流れる。参加者に課せられた重要な椎名誠)。テーマに沿って書く。テーマのありかを見失う。テーマを通俗的に分かりやすくする。社会的なテーマを扱う。▼テーマにする(怨念を。子育てを。市井風俗を。生活を。青春を。セックスを。人間を。友情を)。主題が雪をいただいた山脈のように高く連なる=中村真。▼主題にする(恋を。戦争を。謎を)。 **てほん【手本】** 手本(習字の。見習うべき)。他国の手本となる。手本となる人物。手本を真似まねる。立派な手本を示す。手本通りに書く。▼鑑砂が(男の。女の。日本人の。武士の)。世にかくれもない武士の鑑として末代までも賞賛される=白洲。自ら俺を垂れる。▼規範(倫理的な。行動の。社会の。文章の)。規範が人間を縛りつける。規範に抵触する。模範とすべき人。模範的な(運転。演技。父親。秘書)。 **デモ** デモに参加する。数万のデモ隊が国会を包囲する=井上ひ。示威運動を行う。勢力を示威する。シュプレヒコールの叫びが渦巻く。シュプレヒコールを声高々と響かせる。ブラカードを掲げて行進する。 <1038> # み **てんらんかい【展覧会】** 展覧会で特選になる。展覧会に(足を運ぶ。出品する)。展覧会を(覗のぞく。開く)。個展に絵を出す。個展を開く。博覧会に出展する。博覧会を開催する。物産展を開く。 **ないじ【内示】** ▼内示がある(係長昇進の。昇任の)。内示を受ける(異動の。転勤の)。▼内示する(原案を。人事異動を)。▼内定する(婚約が。就職が。昇進が)。 **なふだ【名札】** ▼名札の裏に書き込む(アドレスを。電話番弓を)。名札を(下げる。ドアに貼る。貼る。胸につける)。ネームプレートを胸につける。 **ねふだ【値札】** 値札を(下げる。つける。外す)。タクを(つける。外す)。 **のぞかせる【覗かせる】** ▼覗かせる(深淵んが闇を。一瞬訝しげな表情を。暮らしぶりの一端を。雲の切れ目から青空を。ドアの隙間から頭を。緑の間から土の肌を。胸にハンカチを。悪戯介於っぽく舌先をちろりと。唇の隙間からちらりと舌先を熊合。かつての神童の片鱗いんをちらと=陳)。顔を覗かせる(暗黒が。絵心が。夢魔が。悪戯心がふと)。南の山の秘線やいうの奥から神去山の頂上が黒々と顔を覗かせている三浦し。 **はたじるし【旗印】** 戦いの旗印。旗印に掲げる。旗印を(掲げる。翻す)。義旗を(挙げる。翻す)。▼標榜20うする(学問の自由を。民主主義を)。 **バッジ** バッジを(留める。胸につける)。襟章をつける。帽子の徽章礼。徽章を(つける。外す)。 **はん【判】** 判を押捺する。うかうかと判を押してしまう。判を押す(決裁書類に。離婚届に。受領の)。▼判をつく(委任状に。誓約書に)。判で押したように一定している=阿部。官吏の判で押したように几帳面詰めんで平穏な生活有吉。判で捺ぉしたように同じことを繰り返す。内田康。書類にはんこを押す。印鑑を(押捺する。登録する)。契約書に印鑑を押す。印章を(押す。彫る)。印を押す。▼押印する(印鑑欄に。契約書に。記名して)。花押を記す。封筒に押された消印。印紙に消印をする。三文判を(押す。つく)。実印を(押捺する。押す)。証印を押す。宣誓書に署名捺印する。スタンプを捺す。バスボートにスタンプをもらう。爪印を捺す。▼捺印以心する(落款を。出勤簿に。記名して)。拇印にぃを押す。 **ひょうさつ【表札】** 門柱に埋めこまれたタイルの表札落合。表札をかける。円札を(掲げる。確かめて呼び鈴を押す)。 **ひろう【披露】** ▼披露する(話を。模範演武を。面白おかしく。座興に隠し芸を。とっておきの微笑を。技術を次から次へとためらうふうもなく=高橋三)。 **ほんだい【本題】** 本題から(それる。外れる)。話を本題に戻す。それはさておき本題に戻る=和久。挨拶もそこそこに話の本題に入る=西木。 **みせつける【見せ付ける】** ▼見せつける(人気の魔力を。濃厚な場面を。歴然たる差を。仲のいいところを。人間のいやな部分を。立派になった姿を。これ見よがしに。これでもかというほど。落差をはっきりと。背中で精いっぱい怒りを逃城)。差を見せつける(実力の。年齢の)。侍どもを見返してやりたい一心船山。馬鹿にした連中を見返す。▼見せつけられる(人間の深い闇を。夫婦の仲の良さを。命のあまりのはかなさを南木。人間生活の無気味な断面を三浦穹。人の心の宿痾礼。くを辺見。まざまざと痛ましい悲劇を徳永。力の差をまざまざと=近藤)。当てられる(アベックに。新婚夫婦に)。 **みせない【見せない】** ▼見せない(一向に進展を。つけ入る隙を。滅多に笑顔を。露ほども。友達にしか。涙一つ。何のそぶりも。いっかな終わる様子を。なかなか明るい面を。ついぞ不足らしい風も伊藤左)。ろくに医者にも診せない。顔を見せない(しばらく。いっこうに物欲しそうな半村)。▼姿を見せない(表舞台に。めったに。いくら待っても食卓に熊谷)。素振りを見せない(抗悩もう。反省の)。▼みじんも見せない(心細さを。恥じらいを。不満の表情を)。いまだに見せたことがない。▼見せなくなる(ぴたりと顔を。ふっつりと姿を)。他見を(はばかる。許さない)。 **みせる【見せる】** 見せる(意外な展開を。後ろ姿を。改悛灬しの情を。顔に血の気を。心に虹を。才能の開花を。自慢の品を。長足の進歩を。不穏な動きを。不覚にも涙を。見事な手腕を。悠々と余裕を。病人を医者に。笑いを口元に。あからさまに当惑した表情を。新たな意気込みを。言い渋りがちにためらいを。いちじるしい対照を。異様なほどの賑わいを。思いもよらない広がりを。屈託のない笑顔を。公式の席に姿を。親しげな態度を。社交的手腕が働きを。信じがたいような崩れを。地方ごとの特色を。真っ赤な顔で怒りを。見っともない格好を。目に異様な輝きを。優しい心遣いを。やるぞという気迫を。豊かな頬にえくぼを。怒りの色を顔に。好奇心をあらわに。自信のほどを表情に。紳士風に立派に。新社長としての貫禄を十分に。襟脚をすっきりと。安心したような笑みを=島崎。少女のようなはにかみを"大佛。粒の揃った白い歯を"石坂。飛び上がるほどの驚きを"司馬。日本語の習得に意欲を"船山。猫のような体のしなりを伊坂。夕凪の海のような静かな微笑を絞辻)。顔を見せる(久しぶりに。しばしば)。▼素振りを見せる(話に乗り気な。怪しい。何でもないような)。時々顔を見せに行く。たっぷり拝ませる。歯の間から舌の先をほの見せる。得々として人ごとに見せ回る。▼うかがわせる(心意気を。才気を。天才の片鱗いんを)。▼お目にかける(実験を。実例を。写真を)。自慢の一物を開陳に及ぶ西木。供する(御高覧に。秘技を天覧に)。▼供覧する(秘宝を。名簿を)。作品を供覧に付す。 <1039> # み 見せる・示す―-338 ごらんに入れる(踊りを。芸当を)。たちどころに揃えてごらんにいれる=宮部。将軍の上覧を受ける。▼人前にさらす(一物を。姿を。涙を。裸を)。 **みだし【見出し】** 見出しが目に入る。扇情的な見出しがつく。大きな活字の見出しが躍る=奥田。さっと見出しに目を通す。大見出しが一面に載る。三段抜きの大見出しが瞳に映る。 **みほん【見本】** 見本(馬鹿の。一つの)。見本を(送る。示す。見比べる)。試供品を(配る。頒布する。もらう)。▼雛型拠は(アンケートの。契約書の。文書の)。サンプルを(採取する。示す)。幾つかのサンブルを作る。▶剣製(猪いいの。熊の。鹿の。狸の)。剣製を(飾る。作る)。標本が完成する。標本を(作製する。作る。採る。無作為に抽出する)。 **むなもと【胸元】** むっちりと盛り上がった胸元。胸元が(透き通るように白い。しめつけられるように苦しい!有烏)。胸元から豊満な谷間が覗のぞく谷川。胸元に(折り炮ばを抱える。悲しみがこみあげる。銀のネックレスが揺れる。コサージュをつける。聴診器をあてる。問いを突きつける。ひらひらと飾りのついたネグリジェ)。胸もとにつきあげてくるような愛しさ"水上。怒りが胸元に噴き上げてくる。大刀を胸元に突きつける。返球が胸元に来る。哀がをしみが切なく胸元にこみあげる=本庄。胸元へつい目がいってしまう=原田家。胸元を(ぐいっと押し広げる。ちらちら盗み見る)。着物の胸元をかき合わせる。胸郭いっぱいに息を吸いこむ。胸郭の広い厚い胸。バストが大きい。胸板が厚い。胸倉をつかんで荒々しく揺すぶる。胸先がぬらぬらする心地悪さ。吐き気が胸先につかえる。不快な気持ちが胸先にこみ上げて来る。 **めじるし【目印】** 明かりを目印に歩いていく。▼目印にする(看板を。灯台を)。▼印をつける(カレンダーに。心覚えに。チョークで)。重要な徴表を欠く。落款のある(絵。書)。腕章を腕につける。袖に腕章を巻く。 **めつき【目付き】** ▼目付き(少々の憧憬と少々の侮蔑が入りまじった複雑な"阿久。辺りを慣加ばるような"機。心の底まで見抜くような=高橋和。怖い怪物でも見るような=井上ひ)。▼目つき(きりっとした。呪うような不穏な=浅田。いどみかかるような強い=山手。鋭利なたえず詰問するような三局。怒ったようないかつい=北。おどおどと怯ぉびえたような小川。男を値踏みでもするような=小林へ。カモをつれてきたわよと「遠い記憶を探るような佐野。とがいうような大原。遠い記憶を探るような=佐野。めるようなきびしい=堀。はるかな過去を見据えるような西木。犯罪者が辺りを窺らかうようなさだ。人を射るような鋭い=五木。不可解な強い感情のこもった=日野。べったりとしたいやらしい=筒井。夢見るようなトロリとした人間。路地の気配を窺う猫のような古井)。▼限付き(青春の夢をうっとりと追っているような=菊池。長い間母に別れていた幼児が久しぶりに恋しい母を見つけたような菊池)。眼つき(恋人を迎えるようななつかしげな"武田飛。あわれみを乞うようなすがりつくような安岡。重大な秘密を探るような野間。じりじりと迫るような石川。仙女のような澄んだ「大庭。追及するような脅迫の森。半ば呆ぁきれたような半ば驚だげむような谷崎。ひややかな敵意のある森琛。保護者が子供を見守るような"野間。理解しがたい物の正体をつきとめようとでもするような好奇心とおどろきの入りまじった=山本周)。汚いものを見るような眼附き=室生。目つきが(空ろになる。鋭さを増す。遠いともし火のように冷たい"川端)。相手の腹を読むような眼つきで児にらめっくらをする谷崎。蛇のような限つきでわめく感連隊=黒岩。われ知らずむさぼるような目つきで見入る=堀。疑わしげな目つきで眺める。うらめしげな目つきで凝視する。かすかな嘲笑を含んだ目つきで見る。しつこい目つきで監視する。すごい目つきでにらみつける。とろんとした目つきで見返す。変な目つきで笑う。胡散臭いさんい目つきでじろじろ見る=佐藤多。▼目つきで見つめる(幾分悲しげな。信じられないといった)。目つきに(張りが出る。ねばりつく妖しさがある)。煤すすのようにくらいものを目つきに漂わす室生。思いのほか厳しい目つきになる。眼つきの異常さが狂犬のよう。黒岩。暗いところでのように大きな根つきをする"伊藤整。肩幅をいつもの半分くらいにせばめて哀願するような目つきをする"五木。目顔で(挨拶する。合図を送る)。 **めのいろ【目の色】** ▼目の色(はっとするような暗い=三浦欲。見えないものを見つめているような深い=志茂田)。▼限の色(試すような。キラキラと輝きがつのってゆくふうな檀。落ちつきすぎるほど静かに澄んだ円地。征服の歓びに燃える=石坂)。眼の色にとうていかなえられぬおのれの慕情がやどっている池波。探るような目の色になる=大佛。目の色を変えて(怒る。騒ぐ。付け狙う。欲しがる。落ち着きを失う)。色恋沙汰に目の色を変える。野良犬のように眼の色を変えていがみあう阿川弘。 **もんしょう【紋章】** ▼紋章(王侯の。国家の。天皇の)。家紋を染め抜く。定紋付きの長持。定紋を染め出す。墓石に定紋を彫り込む。ワッペンを(つける。縫いつける)。この紋所が目に入らぬか。 **やきいん【焼き印】** 焼き印を(あてる。入れる。押す。つける)。憎しみを焼き印のようにおしつける=野間。印象が焼き金をあてたように鮮烈に灼『きつく光瀬。焼き饅ごてをあてられるような熱い疼ぅずくものが全身を駈けめぐる=中局多。 <1040> # み 乱れる・整う **あとしまつ【後始末】** イベント中止の後始末で駆けずりまわる=重松。後始末に右往左往する。手慣れた手つきで後始末する。▼取り片付ける(家財道具を。座敷を。戸棚の上を)。後片付けもそこそこに外に出る。さっと後片付けを済ます。何でもやりっぱなしで後片付けをしない。借金の尻ぬぐいが終わる。失敗の尻ぬぐいにあくせくする。混乱の尻ぬぐいを押しつけられる。上司にミスの尻ぬぐいをしてもらう。 **いちだんらく【一段落】** 仕事に一段落つける。研究が一段落を告げる。一段落する(買い物が。作業が。話が。問題が。昼時の忙しさが)。一山越す。一段落つく(一件が。始末が。話が)。▼一区切りつく(研究が。撮影が。説明が。夕飯時の混雑が)。▼一区切りつける(研究に。仕事に)。 **かきみだす【掻き乱す】** ▼かき乱す(夜明けの夢を。心をすっかり。車の音が真昼の空気を)。ざわざわと木の葉をかき乱しているふうな長ったらしい言葉”伊藤銘。かき乱される(魂が。秩序が。静寂な心持ちが不意の侵入者によって=菊池)。平和をこれ以上かき乱したくない三浦惑。▼攪乱跡にする(空気を。後方を。敵の主力を。市場価格を一時的に)。 **きそくただしい【規則正しい】** 規則正しい(間隔をおく。リズムで日々が流れる)。早寝早起きの規則正しい生活。毎日規則正しい日課を遂行する。規則正しく(並ぶ。食事をとる習慣。空に伸びた杉林=伊集院)。毎朝規則正しく散歩する。規則的な(生活。配列)。メトロノームが規則的なリズムを刻む!辻に。 **きちんときちんと** (居住まいを正す。けじめをつける)。最後まできちんと物事をやり通す。算盤で弾き出すようにきちんと計画を立てる=大佛。きちんとした(扱いを受ける。説明。身なり。究明がなされない)。身なりがきちんとしている。毎月の保険料をきちんと支払う。ちゃんとする(服装を。部屋の中を)。きちっと(敬礼する。調べる)。シャツのボタンを首まできちっとかける。おざなりではない熱心な読み方。かっちりした権力の体制。鍵がかっちりとかかる。戸がかっちりとしまる。ちゃんと(話を聞く。意志が通じ合う。原稿通りしゃべる)。 **こんらん【混乱】** ▼混乱(旧に倍する。言語を絶した。処置の出来ない。整理のつかない不安な=大佛)。混乱が(極限に達する。いまだに続いている。全国的に広がる)。戦後の混乱がおさまる。頭の中に大きな混乱が巻き起こる=源氏。道義を無視した混乱が尾を曳いている=山岡。突風が捲まき上がったような混乱が起こる=松本。混乱から(救われる。抜け出す)。混乱に乗じて逃亡を企てる。激しい混乱に襲われる。 。激しい混乱に襲われる。混乱の(極に達する。霧を払う。雲が渦巻く。度が深まる。収拾がつかない)。感情が収拾のつかぬほど混乱する菊池。わざと議論を混乱させる。混乱した(頭をどうにかなだめすかす=小池。声が事態を雄弁に物語っている=貫井)。本当の自分が剥き出しになってしまったような混乱した気持ち=日野。混乱して考えがまとまらない。頭が混乱してわけが分からない。微妙に混乱して言葉が巧ぅまく出てこない=有川。混乱している(叙述の視点が。敵の陣営が蜂の巣をつついたように=井上端。理由もなく頬をぶたれた子供のように首をかしげ一瞬原田宗)。見ていて呆ぁきれるばかりの混乱ぶりに畑村。踏みつけられた嬢ぁりんこの巣のような大混乱"飯田。てんやわんやの(大騒ぎ。大騒動)。社会的生産の無政府状態が消滅する。内戦で無政府状態が続く。無政府状態に陥る。 **さくらん【錯乱】** 錯乱に近い激しい怒りを覚える。宮部。心の錯乱を鎮める。精神に錯乱をきたす。錯乱する(心神が。精神が)。ともすれば錯乱しそうになる自分を正常に保つ=真継。錯乱状態に陥る。 **せいり【整理】** 隅々まできちんと整理が行き届いている。身の回りの整理がつく。読者の役に立つように整理が行き届いた文章=平岩石。整理に困るほど人が多すぎる=新田。遺品の整理に手をつける。書類の整理に取りかかる。駐車場の整理にあたる。原稿の整理を終わる。伝票の整理を始める。店の整理を手伝う。▼整理する(遺稿を。思考の枝葉を。情報を。書類を。資料を。身辺を。机の上を。荷物を。話す順番を。身のまわりを。殺到する市民を。引き出しの中を。自分が知っていることを頭の中で。類に従い用に従って"古井)。リアルに事態を整理してみる。▼整頓する(家の中を。食卓の上を。机のまわりを。室内をきれいに)。 **たんせい【端正】** 端正で(分かりやすい文章。静かな森たんせいの中の遊歩道"五木)。美の象徴のごとき端整な富士山村松。端正な身だしなみのよさを見せつける。象牙細工のような華奢で端正な足"倉橋。塑像のように端正な姿勢"司馬。鶴ヶ城の美しく端正なたたずまい"内田康。苦み走った端正な風貌の持ち主"西木。洋服の宣伝に出てきそうな端正な顔立ちの優男“三田。細いベンで端整に書かれた宛名"乃南。 **ちつじょ【秩序】** 生活の秩序が根底から破壊される。整然と秩序がつく。思考の秩序がボロボロ剥げ落ちる=島田。舞い上がった座ちらが静かに落ちてきて積もるように秩序が戻る=森焉。秩序の(回復を図る。側に立つ。たがが外される)。秩序を維持する。失われた秩序を取り戻す。暮らしの秩序をつくる。名誉と秩序を重んじる。安寧秩序を(保つ。妨害する)。古い社会秩序が崩れ落ちる。新しい社会秩序をたたかいとる。綱紀が(乱れる。ゆるむ)。綱紀を(粛正する。正す)。長幼の序が乱れる。長幼の序を乱す。 <1041> # み 乱れる・整う-339 長幼の序にやかましい花柳界。 **ちょうし【調子】** ぐんぐん調子が上がる。調子を外して歌う。がらりと調子を変える。急に声の調子を落とす。尻上がりに調子を上げる。段々調子を取り戻す。やや卑猥にもな調子をこめた声=高見町。▼調子を整える(言葉の。喉の)。▼調子が悪い(休の。車の)。加減が悪い。体の加減がよくない。▼具合が悪い(胃の。お腹の。体の)。具合が悪くて動けない。 **ちょうせい【調整】** 意見の調整がつく。調整に予想外の時間がかかる=内橋。両者の主張の調整に苦心する=船山。ぎりぎりの調整を続ける。難しい調整を迫られる。調整する(エンジンを。出荷を。欲情を適当に。スケジュールを。全国民の利害得失を)。調整役を(務める。担う)。微調整する(位置を。計画を。設定を)。アダプターを(装着する。取りつける。取り外す)。▶調節する(温度を。音量を。ルームミラーの角度を。気分に応じて優しさの量を三浦し)。▼調律する(ギターを。ピアノを)。 **ととのう【整う】** ▼整う(お膳立てが。近代的設備が。社会の秩序が。書類の形式が。朝食の準備が。夕食の支度が。婚約が正式に。準備がすべて。準備が着々と。準備万端。受け入れ態勢が。手はずが巧みに)。ファッショナブルな街としての体裁がととのう~西木。首尾の整った見事な作品。条理が整った文章。顔が人並み優れて整っている。▼整わない(感情が昂たかぶつて言葉が。なかなか用意が)。端然と(威儀を正す。礼をする)。椅子に端然と座っている。整然たる関係を保持する。整然と(指揮をとる。論理が通る)。会議が憋笑ど進行する。デスクが整然と並ぶ。碁盤の目のように悠然と道が走っているなかにし。整然としている(町の景色が。理路が。論理的に)。 **ととのえる【整える】** ▼整える(外出の服装を。崩れた体勢を。乱れた衣服を。乱れた髪を。物事の筋道を。髪を指先で。受け入れ態勢を。落ち延びる手はずを。スカートの裾を。防衛システムを)。お茶漬けを塩辛と干物で調える芝木。▼息を整える(荒い。乱れた)。▶呼吸を整える(乱れた。胸に手を置いて=有栖川)。万端整える(準備。用意)。▼身支度を整える(きちんと。手早く)。▼加減する(数を。時間を。火を。量を)。写真を修整する。髪を美しくセットする。整備が(遅れる。進む)。▼整備する(エンジンを。街道を。組織を。丹念に)。 **ふきそく【不規則】** 不規則な(間隔。起伏。リズム)。昼と夜が完全に逆転した不規則な生活が毎日続く=辻仁。不規則に(並べる。歪ゅがむ)。流氷が不規則に重なり合いびっしりと沖のほうまでつづいている"三浦彩。不規則極まりない生活。変則的な(関係。手法。生活環境)。イレギュラーなローテーション。イレギュラーに対応する。バウンドがイレギュラーする。顺不同で並べる。順不同に(掲載する。配列する)。無秩序が生まれる。無秩序に(並べる。騒ぎが拡大する)。 **ふんきゅう【紛糾】** 紛糾する(会議が。家庭が。事態が。議論が分かれ)。紛糾した物事を見事に処理する。軍議が蜂の巣をつついたようになる=坂口。 **みせいり【未整理】** 未整理の(写真。情報。資料。感情が胸中に渦を巻く=細淵)。整理が一向につかない。心の整理がまだついていない。棚の整理が悪い。ちっとも整理されない感動や経験が心の中にごたごた湧きかえる宮本百。 **みだす【乱す】** ▼乱す(足並みを。安寧秩序を。気持ちを。嫉妬が内心を。襦袢此心の裾を。醇瓜美俗んぶを。平和を。歩調を。チームワークを)。▼運びを乱す(足の。筆の)。女に心を乱される。▼壊乱する(社会通念を。秩序を。風俗を)。▼紊乱する(風紀を。風俗を)。治安を紊乱する危険思想。 **みだれない【乱れない】** 泰然として乱れない。一糸も乱れない見事な率直さでその場を押し切る=三島。一糸乱れぬ(合奏。行進。統制ぶり。群舞のような動きなかにし)。字に乱れがない。一筋の乱れもない髪。黒煙が一筋の乱れも見せずに空に昇る=林京。酔いの乱れを微塵ふじも見せない!武田飛。 **みだれる【乱れる】** ▼乱れる(一座の空気が。帰宅の足が。声の調子が。祝賀会の席が。電車の運行が。水の絵ぁゃが。心が千々に。麻のごとく。髪が茫々ぼうと。チームワークが。パーティの座が。呼吸がかすかに。心のうちがさまざまの思いに。感謝と怨恨んの間で心が!白洲。情痴の坩堝っさながら乱れに!海音寺。かんざしの房がはらはらと=中。小魚たちが水流にまきこまれて木の葉を散らすように=光瀬)。乱れた毛布をかけ直す。三和土於たに履き物が乱れている。気に兎ぅの毛の先で突いたほどの乱れが出る=山本周。乱れがおさまる。乱れが生じる(言葉遣いに。心電図に)。心の乱れをあざ笑う。裾の乱れを直す。天下の乱れを招く。風紀の乱れを正す。▼入り乱れる(幾つもの声が。さまざまな感情が)。▼心乱れる(悲しみに。恥ずかしさに)。▼咲き乱れる(庭に薔薇ばらが。花が一面に)。心が痛ましく裂け乱れる。花が咲き乱れる(野山の。満開の)。戦闘で兵力が壊乱する。立ち昇る煙がしとろに右へ左へなびく。板廂ごにぃから雨水がしどろに流れ落ちる=幸田露。▼乱調子になる(回転が。脈拍が。リズムが)。乱調な発言をあげつらう。乱脈な(経営。経理。男女関係)。性的に乱脈な生活を送る。女性関係が乱脈を極める。 **らんせ【乱世】** 殺伐暗黒の乱世。乱世に秩序を打ち立てる。乱世の(凶々詰しい星の下に生まれる。いばら道を歩いてゆく=山岡)。戦国乱世の荒々しい気風。戦国時代の下剋上山に氷の波に乗る。戦国の殺伐な気風。厳しい戦国の世に生き残る。食うか食われるかの戦国の世=井上靖。 <1042> # み 導く・促す **あおる【煽る】** ▼煽る(騒ぎを煽りに。空の深さが空への思いを=竹西)。▼あおる(風が火勢を。危機感を。時買欲を。功名心を。焦燥感を。投機を。憎しみを。感を。不安を。前景気を。満都の人気を。民衆の怒りを。やきもちを。欲情を。闘志がむらむらと血を。ライバル意識を)。周囲の状況にあおられる。▼あおり立てる(好奇心を。情熱の炎を。敵意を。ブームを)。暑い日射しが怒りをよけいに煽り立てる=藤沢。▼アジる(学生を。群衆を。民衆を。労働者を)。扇情的な(ボーズ。見出しがつく。盛り場のネオン)。扇動に付和雷同する。▼扇動する(群衆を。反逆を)。内なる差別意識に煽動に认される=島田。魅力的で力のある言葉を扇動家は利用する=伊坂。 **あんない【案内】** 入り口で案内を伝う。▼案内する(一渡り館内を。夜の街を。家の中に。奥の座敷に。客を部屋に。テーブルに。窓際の席に。先に立って。通訳を兼ねて東京を、手を取るようにして)。迂闊っかな場所には案内できない=源氏。▼案内状(結婚式の。バーティーの)。案内状が届く。道案内のために先頭に立つ。道案内を買って出る。客引き(キャバレーの。タクシーの。宿屋の)。客引きの(男。番頭)。道行く容の袖を引く武田奈 **うながす【促す】** ▼促す(火急に督促を。覚悟を。国民の関心を。答えを。新陳代謝を。注意を。同意を。反省を。奮起を。返事を。翻意を)。▼うながす(顎をしゃくって立ち去ることを"大江。指先で軽く円卓を叩き注意を三浦し)。▼先を促す(言葉の。無言で話の)。反省を促す。尻を叩く。やめろと言うとうに脇腹をこづく=泉受。一促進する(社会復帰を。消費意欲を。復旧活動を)。背中を押される(世論に。欲求に。家族や友達の助言に=阿川佐)。 **おだてる【煽てる】** 「おだてる(遠まわしに。夫をうまく。お世辞を言って)。おだてて人を使う。おだてられる(体よく。大当たり間違いなしと)。おだてに乗る。まわりが持ち上げる。 **おわれる【追われる】** ▼追われる(中央政界を。明日の準備に。救助活動に。警察に。締め切りに。出陣の支度に。対応に。日々の雑事に。孫の子守りに。利子の払いに。様々な手続きに。秒刻みのスケジュールに。劇に。膨大な情報の処理に。犬を追うように=中上)。務に追われる一日を過ごす。▼応対に追われる(電話の。来客の)。▼生活に追われる(忙しい。仕事と。日々の。毎日の)。仕事に追われて寧日がない。借金に追われて夜逃げする。絶えず何かに追い立てられている。▼追いまわされる(家事に。雑用に。仕事に。朝令暮改の政策に)。▼追い立てられる(時間に。尻に火がついているみたいに藤原)。 **ガイド** ガイドが付き添う。ガイドを務める。旅行のガイドをする。ガイド付きで(觀光する。登山する)。ガイド役を買って出る。案内人に従う。案内人を(依頼する。雇う)。案内役を(務める。引き受ける)。山登りの先達を務める。ガイドブックを(買う。読む)。ガイドブックに載る。案内書を読む。初学者のための入門書。 **かきたてる【掻き立てる】** 「かき立てる(あらぬ妄想を。命の火を。埋うずみ火を。好奇心を。情熱を。燭台にくの灯を。欲望を。長火鉢の炭火を、読む者の興味を。ロマンチックな想像を)。胸をかき立てる(不安が。不安と怖れが)。かき立たせる(愛憐いを。興味を。好奇心を。想像力を。未練を)。かき立てられる(母性愛が。不愉快な想像を)。かきたてられる(むらむらと闘志が"飯田。苦しいほどに官能を"島尾)。 **かんとく【監督】** 監督が(行き届く。鶏冠を立てた牡鶏は肌のように工場を見廻る=小林多)。監督に就任する。監督にまで手が回らない。監督の(不行き届き。ボストを狙う。首をすげ替える)。▼監督する(工場を。仕事を)。監督失格という烙印を押される。 **けしかける** けしかける(犬を。子供を。集団逃走を)。はねっ返りの女房にけしかけられる=なかにし。 **そそのかす【唆す】** ▼そそのかす(周りの者が。子供を。息子を。野心を)。遠回しに焚たきつける。教唆する(殺人を。証拠隠滅を。犯罪を)。ボスの差し金で動く。若さを使嗾しくしてあおりたてる。凶徒を使嗾する。▼仕向ける(やめるように。あきらめるように。決断するように)。 **さいそく【催促】** 債権者の執拗な催促。足しげく金の催促に来る吉川。矢のように催促の電話がかかってくる=高橋涼。貸した金の催促をする。▼催促する(話の続きを。威圧的に。うるさく。三日にあげず。いらだたしげに。まだかまだかと。やいのやいのと)。催促するとかえって藪蛇~になる。言いたくて唇がひくひくと催促している=ねじめ。ある時払いの催促なし。催促がましいことを(言わない。口にする)。催促がましく言い添える。督促が日毎に激しくなる。督促する(支払いを。税金を)。 **しき【指揮】** 指揮が挑劣を極める。▼指揮をとる(現場の。陣頭で。全軍の。先頭に立って。凛々しく。ここを先途と懸命の=筒井)。▼指揮する(作戦を。チームを。オーケストラを)。指揮下に(置く。入る)。指揮系統を元化する。鮮やかな指揮ぶり。指揮棒を振る。タクトを(取る。振る)。采配が功を奏する。戦の采配に長たける。▼采配を振る(見事に。捜査の)。運命の神が采配する。 **しげき【刺激】** 刺激が(少ない。強すぎる。神経を駆けめぐる)。電気的な刺激が走る。ぞくぞくとするほどの刺激が欲しい=乃南。刺激に(対して敏感。乏しい。無感覚になる)。機械的に刺激に反応する。外からの刺激に敏捷いんしに反応する藤原。刺激の強い毎日。新鮮な刺激を受ける。性的な刺激を貪る。無用な刺激を避ける。刺激を与える(音楽的な。神経に。いらぬ。岡断なく)。神経の末端が焼かれるような刺戦記!吉行。 **しじ【指示】** 適切な指示がある。スタッフの指示に従って行動する。唐突な指示に呆然とする。指示を的確に伝える。きびきびと指示を飛ばす。▼指示を仰ぐ(一々。本庁の)。▼指示を与える(職員に。あれこれ)。▼指示を出す(矢継ぎ早に。淡々と)。上司の指示に従う。上司の指示を受ける。▼指示する(針路を。内密の処理を。場所を。方向を。行く先を。具体的に)。指示通りに(行動する。柔順に働く)。指示標を目にする。親の言い付けに逆らう。主人の言い付けに背く。言い付けを(守る。おろそかに聞く)。 **しゅどうけん【主導権】** 主導権を(争う。奪われる。握って離さない)。闘争の主導権を一挙に奪取する。話の主導権を握る。主導権争いを展開する。イニシアチブを(とる。握る。発揮する)。 **せきたてる【急き立てる】** ▼急き立てる(苛立ならつた声で。やかましく。早く早くとせっかちに三浦哲)。▶急き立てられる(気持ちが。心が。不安に)。急き立てられているような速さで仕事をする=永井龍。何かにせきたてられるかのように立ち上がる=柴田翔。急き立てられるような思いで走るぃねじめ。急がせる(足を。車を。やいのやいのと)。▼せかされる(仕事を。やいやいと)。 **せかす** 足を。奥さんを。母親を。しきりにせっつく。 **つゆはらい【露払い】** 露払いに歌う。露払いを(演じる。務める)。前座の落語。前座を務める。▼先兵(改革の。侵略の)。先兵を(務める。担う)。 **つれあるく【連れ歩く】** ▼逃れ歩く(女を。腰巾着を。ベットを。腕をひっぱるようにしてあちらこちらに"柴田翔)。お嫁さんを連れて挨拶に来る。連れて来る(客を。友達を)。あっちこっち引き回す。さんざん引っぱりまわす。 **とうそつ【統率】** 統率が取れていない烏合行にの衆。統率に欠ける寄り合い所帯。▼統率する(信徒を。下を。狐の全体を)。▼統帥する(軍隊を。軍を)。 **どうにゅう【導入】** 導入が暗礁に乗り上げる。システムの導入を見送る。導入する(新しい制度を。外資を。最新の技術を。最新の技法を。新技術を。コンピューターシステムを)。▼導き入れる(キリスト教を。空気を。読者を。先に立って家の中に)。 **ひきいる【率いる】** ▼率いる(一隊を。艦隊を。軍団を。全軍を。大軍を。部下を。部隊を。兵三千を。若い衆を)。援軍を率いて戻ってくる。五百の手勢をひきいて出陣する=真継。▼引率する(小学生を。生徒を。奉公人を)。大軍を擁する。 **ひきつれる【引き連れる】** ▼引き連れる(一族郎党を。チーム全員を。仲間を。部下を。門弟を。若い衆を。一騎当千の武士を)。やくざを引き連れて乗り込んでくる。引き従える(一団を。家来を)。▼召し連れる(近侍を。捕り方を。武士を)。侍女を左右に従える。 **みちしるべ【道しるべ】** 道しるべを頼りに歩く。一里塚(財政健全化の。成功への。腐敗への。門松は冥土へ行く=林美。暗いファシズムへの道の人四)。矢印に沿って進む。矢印をかたどった標識。 **みちびく【導く】** 導く(神仏が衆生し、じを。観衆を熱狂に。交渉を成功に。事件を解決に。勝利の栄光に。勝利の確信に。戦争を勝利に。正しい道に。話を次の段階に。人間性の迷宮の入り口に=中野美)。▼繁栄に導く(会社を。日本経済を)。▼有利に導く(商談を。戦局を)。▼導き(神の。天の)。音頭をとる。導火線に(点火する。火をつける)。導火線の役を果たす。▼主導する(クーデターを。政策を。談合を)。主導的な(立場に立つ。役割を果たす)。▼唱導する(改革運動を。平和運動を)。 **ゆうどう【誘導】** 誘導のためのローブを張る。強引な誘導をきっばりとはねつける=松浦。▼誘導する(観客を。単をバスを。金利をゼロに)。いつの間にかとんでもないところに誘導されている=伊坂。巧みに誘導して暗示にかける。誘導尋問で本音を吐かせる。▼舵取りじりにあたる(会社の。経営の。市政の)。厳しい舵取りを迫られる。舵取りをする(経済の。政治の)。▼リードする(踊りを。会話を。核軍縮を。議論を。時代を。冷静な判断によって全体を=柳田)。先導する(車が。パトカーが。見学者を)。 **れんこう【連行】** ▼巡行する(警察に。無理やり。警官が容疑者を。警官が大人気なく学生を"大佛)。引致される。法廷に引致する。警察にしょっぴかれる。しょっぴく(犯人を。容疑者を、有無を言わさず)。不審な人物を警察に同行する。警察に任意同行を求められる。刑場へ引かれていく。組をかけて引き立てる。引っ立てる(現行犯を。泥棒を。犯人を。被疑者を。容疑者を)。 <1043> # 導く・促す―340 を避ける。刺激を与える(音楽的な。神経に。いらぬ。やいやいと)。せかす(足を。奥さんを。母親を)。しきりにせっつく。 **そそのかす【唆す】** ▼そそのかす(周りの者が。子供を。息子を。野心を)。遠回しに焚たきつける。教唆する(殺人を。証拠隠滅を。犯罪を)。ボスの差し金で動く。若さを使嗾しくしてあおりたてる。凶徒を使嗾する。▼仕向ける(やめるように。あきらめるように。決断するように)。 **つゆはらい【露払い】** ▼露払いに歌う。露払いを(演じる。務める)。前座の落語。前座を務める。▼先兵(改革の。侵略の)。先兵を(務める。担う)。 **つれあるく【連れ歩く】** ▼逃れ歩く(女を。腰巾着を。ベットを。腕をひっぱるようにしてあちらこちらに"柴田翔)。お嫁さんを連れて挨拶に来る。連れて来る(客を。友達を)。あっちこっち引き回す。さんざん引っぱりまわす。 **とうそつ【統率】** ▼統率が取れていない烏合行にの衆。統率に欠ける寄り合い所帯。▼統率する(信徒を。下を。狐の全体を)。▼統帥する(軍隊を。軍を)。 **どうにゅう【導入】** ▼導入が暗礁に乗り上げる。システムの導入を見送る。導入する(新しい制度を。外資を。最新の技術を。最新の技法を。新技術を。コンピューターシステムを)。▼導き入れる(キリスト教を。空気を。読者を。先に立って家の中に)。 **ひきいる【率いる】** ▼率いる(一隊を。艦隊を。軍団を。全軍を。大軍を。部下を。部隊を。兵三千を。若い衆を)。援軍を率いて戻ってくる。五百の手勢をひきいて出陣する=真継。▼引率する(小学生を。生徒を。奉公人を)。大軍を擁する。 **ひきつれる【引き連れる】** ▼引き連れる(一族郎党を。チーム全員を。仲間を。部下を。門弟を。若い衆を。一騎当千の武士を)。やくざを引き連れて乗り込んでくる。引き従える(一団を。家来を)。▼召し連れる(近侍を。捕り方を。武士を)。侍女を左右に従える。 **みちしるべ【道しるべ】** ▼道しるべを頼りに歩く。一里塚(財政健全化の。成功への。腐敗への。門松は冥土へ行く=林美。暗いファシズムへの道の人四)。矢印に沿って進む。矢印をかたどった標識。 **みちびく【導く】** ▼導く(神仏が衆生し、じを。観衆を熱狂に。交渉を成功に。事件を解決に。勝利の栄光に。勝利の確信に。戦争を勝利に。正しい道に。話を次の段階に。人間性の迷宮の入り口に=中野美)。▼繁栄に導く(会社を。日本経済を)。▼有利に導く(商談を。戦局を)。▼導き(神の。天の)。音頭をとる。導火線に(点火する。火をつける)。導火線の役を果たす。▼主導する(クーデターを。政策を。談合を)。主導的な(立場に立つ。役割を果たす)。▼唱導する(改革運動を。平和運動を)。 **ゆうどう【誘導】** ▼誘導のためのローブを張る。強引な誘導をきっばりとはねつける=松浦。▼誘導する(観客を。単をバスを。金利をゼロに)。いつの間にかとんでもないところに誘導されている=伊坂。巧みに誘導して暗示にかける。誘導尋問で本音を吐かせる。▼舵取幼じりにあたる(会社の。経営の。市政の)。厳しい舵取りを迫られる。舵取りをする(経済の。政治の)。▼リードする(踊りを。会話を。核軍縮を。議論を。時代を。冷静な判断によって全体を=柳田)。先導する(車が。パトカーが。見学者を)。 **れんこう【連行】** ▼巡行する(警察に。無理やり。警官が容疑者を。警官が大人気なく学生を"大佛)。引致される。法廷に引致する。警察にしょっぴかれる。しょっぴく(犯人を。容疑者を、有無を言わさず)。不審な人物を警察に同行する。警察に任意同行を求められる。刑場へ引かれていく。組をかけて引き立てる。引っ立てる(現行犯を。泥棒を。犯人を。被疑者を。容疑者を)。 <1044> # 満ちる・溢れる **あふれでる【溢れ出る】** 溢れ出る(幸福感が胸をふくらませる=福永。涙を指先で押さえる「笹沢)。あふれ出る(どっと血が。奔放な気持ちが。涙が後から後から。喜びが五体から。熱い涙がほろほろと=有鳥)。助脈から間歇的な血が溢れ出る鈴木光。涙があふれ出る(嗚咽、えとともに。どっと。訳もなく。両目から大粒の)。淋漓りんたる(墨痕。意気を発揮する。思いをこめて書く)。淋漓とほとばしる鮮血。 **あふれる【溢れる】** ▼あふれる(口に唾が。どくどく血が。街に失業者が。街に女性が。胸に恥辱感が。目に愛が。思いが言外に。想像が毒に。偽物が世間に。・ 『偽物が世間に。光が空に。血がどっと。涙が両目から。体じゅうに優しさが。豪雨のため川が。少女らしい初々しい感情が。スピーカーから音が。底抜けの楽天精神が。中年の女の色香が。明かりが部屋に。一種異様な活気に。悲しさが胸のうちに。香気が口中いっぱいに。根拠のない自信に。溜め息が教室に。晴れやかな声が屋敷中に。大粒の涙が止めどなく。寺の境内が弔問客で。吐瀉物縦し、が口から。涙が堰せきを切って。水がタンクから。鳴り止まない拍手が会場に=海堂)。光がいっぱいに花園に溢れる三浦線。生命力のあふれる野。全編にあふれるユーモア。リズム感にあふれる文章。あふれるばかりの好奇心。花瓶にあふれるばかりの薔薇ばらの花。心にあふれる(憎悪と涙が。無力感が。毒々しい情念が真継)。涙があふれる(とめどもなく。瞳に大粒の。目から)。▼光があふれる(目に潤んだ。戸外にまぶしい)。▼人があふれる(廊下に。路上に)。水があふれる(川の。側溝から。堀の)。▼胸にあふれる(安堵感从とが。言いたいことが)。才気にあふれたスピーディーな応酬。掘り割りにあふれた雨後の水。▼あふれている(顔に精気が。市場に物が。通りに人が。瞳が闘志に。顔に誠意の色が。体中にエネルギーが。キャンバスに学生が。口振りに喜びが。ベランダに陽射しが。まぶしいほど光が。エネルギーが心身に。午後の陽射しが庭先に。言葉が芝居気に。自信が顔と体全体に。日本婴品が市場に。見るからに若さに)。あふれてくる(拭いても拭いても涙が。甘美な感情が胸いっぱいに。堪こらえていた涙がどっと)。春の訪れを告げる雪解けの水が湿原や川に溢れてくる"加賀。▼涙をあふれさせる(滾々にふと。他愛もなくぽろぽろと)。溢れるような情熱の男"獅子。頬に滂沱湿っと涙があふれ落ちる。▼あふれかえる(野山に緑が。部屋に光が。ホームに人が。庭じゅうが花で)。一あふれ出す(記憶が頭の中に。目の縁にせき止めていた涙が=中沢)。 **こうずい【洪水】** ▼洪水(強烈な光の。車の。雑多な音の。情報の。本の)。洪水が(起こる。迫る。町を総なめにする)。洪水で(家が流失する。橋が流される)。洪水に(襲われる。見舞われる)。不平と愚痴の洪水に堪えきれない=徳永。洪水の被害から国土を守る。激戦地の跡もかくやと思わせるほど巨大な根株や丸太が散乱している洪水の跡"太宰。情報の洪水の中に埋没する=柳田。疑問の洪水を投げかける=吉本。言葉の洪水をやり過ごす三輪。川の水が(堤防を越える。土手を越える)。町じゅうが泥水につかる。洪水のような少女の群れ=常盤。洪水のように疲れが躰炒らの中に流れこむ大江。大勢の人が洪水のように部屋の中に入ってくる=新田。思いつく限りの罵詈讒謗的だが洪水のように頭の中を流れて行く飯田。雑誌が洪水のように出る=丸谷。新緑を透した日の光が洪水のように一室に涨みたり渡る=田山。道路に自動車の群れが洪水のようにあふれている=石坂。暴れ水がごみの山を庭に残す=山本一。川の堤るっが切れて大水が出る。川が氾濫して町全体に出水する。出水の後の泥のような平らな原。水害で(家を失う。田畑を失う)。水害に(遭う。見舞われる)。乱伐が水害を招く。 **こぼす【零す】** ▼こぼす(悔し涙を。慌ててコーヒーを。嬉し涙をほろほろ。砂を指の間からさらさらと。そこここに散っている桜の花が点々と白い色を芥川。我と我が身の浅間誌きしさに独り口惜くゃし涙を永井荷)。▼涙をこぼす(花が露の。ほろほろと熱い。顔をくしゃくしゃにして古井。ボトボト大粒の"つか)。こぼした酒を拭く。 **こぼれる【零れる】** ▼こぼれる(家の明かりが。唇から言葉が。桜の花びらが。頬から笑いが。ろ。水があふれて。受話器から声が。だれからともなく笑い声が。目から悔し涙が。両の目から大粒の涙が。涙がぼろぼろと。どんよりと曇った空から逃陽が池波。雪柳の小さな花弁がひらひらと綾辻。豊かな乳房が弾けるように谷村)。バケツ一杯にこぼれるくらい魚を貰う阿部。笑みがこぼれる(自然に。思わず。心の底から)。涙がこぼれそうになる。▼こぼれ落ちる(玻璃はりのように光る涙がぃ永井路。光が梢の葉に当たり地面に次々と=中上)。肩に黒髪がこぼれかかる。▼こぼれ散る(微笑がきらきらと。ベンの先から思いが溢れて三浦絵)。思わず本音がこぼれ出る。笑いと明るさと賑やかさが湧くようにこぼれるようにふりまかれる=海音寺。ヴェランダから陽気な笑い声が重なり合って降り零れる『福永。 **じゅうまん【充満】** ▼充満する(煙草の煙が。血の匂いが。胸に熱気が。悪臭が家中に。疑問が体に。臭いが車内に。強烈な異臭が闇の中に。コーヒーの匂いがキッチンに。消毒薬のにおいが病室に。部屋の中に日光と色彩が=開高。胸の中に灰色の空気が奥田)。▼部屋に充満する(香りが。臭いが)。 <1045> # 満ちる・溢れる-341 **たたえる【湛える】** ▼湛える(完璧な美を。目が媚こびを。目に笑いを。豊かな水量を。妖艶な魅力を。横顔が気品を。感動を胸に。涙を目に。海が最後の残光を。顔が必死の色を。目が怒りの炎を。銀色の腕時計が上品な輝きを内海。目に鋭い金属質の光を高砂、眼に熱病患者に見るような直ぐにも火が点っきそうな恋すさまじい色を菊池。ものがなしげな秋の日が朝だというのにまるで暮れ方のような住ぁょしい光を"山本陽。愛嬌のある微笑を口許しもに=田山。微笑を眼のほとりに久米)。たたえる(あふれるような微笑を石坂。沼が死んだように蒼ぁぁい水を=佐多)。エンジンの音が静謐どを湛える林間を縫って聞こえてくる池井戸。▼笑みを湛える(にっと片頬に。満面に)。▼涙を湛える(目が。睫毛性っに)。▼光を湛える(目に老翁がいな。瞳に強い。目が妖しい)。微笑を滅える(穏やかな。温厚な)。▼表情を湛える(複雑な。澄んだ。淫らなほど疲れた眼が黒く怒っているように険悪な!有吉)。水を湛える(湖が満々と。大きい溜池物が蒼々そう満々と太宰)。 **はんらん【氾濫】** ▼氾濫(宝石を砕いてばらまいたような多彩な色と光の光瀬。無意味な妄念の檀。無制限に駆使されたおびただしい語彙にぃの=瀬戸内)。生活の氾濫におぼれる。善意の氾濫に目まいがしそうになる=小島。▼氾濫する(夏の光が。兵士が街に。川がしばしば。失業者が驟雨儿10を喰らった河水のように都市に農村に徳永。季節が緑と花の洪水になって=伊藤整)。ネット上に氾濫する画像"平野。戦争が集団的な狂気を氾濫させる=大江。 **ふきこぼれる【吹きこぼれる】** ▼吹きこぼれる(怒りが。悔し涙が。鍋が。涙が。やかんが。湯が)。光のような充溢した喜悦が身裡ふぅからふきこぼれる=檀。気持ちが燃え上がり吹きこぼれそう壺井。目から熱いものが吹きこぼれそうになる人阿。煮こぼれる(鍋が。煮汁が。沸騰して)。 **まんいん【満員】** カウンターの前に八人並べば満員まんいんという小ぢんまりした店内海。満員になって出入り口が塞、ふさがっている電車みたいに云いたいことが出てこない幸田文。満員になる(劇場が。スタジアムが。電車が)。満員の公会堂が震えるような拍手が起こる=向田。バスが満員の乗客を詰め込んで発車する=石坂。大入り袋が出る。二階席まで真っ黒に埋まる=獅子。連日の大入り満員でほくほくする。大入り満貝に気をよくする。会場が大入り満員になる。大人り満員の盛況。▼大盛況(立ち見も出る。満員札止めの)。▼超満員(ごった返しの。電車が鈴なりの。ぎゅうぎゅう詰めの"内橋。立錐切いの余地もない=阿久)。札止めの満員御礼。満員御礼の(札がかかる。垂れ幕が下がる)。満員電車で揉もみくちゃにされる。満員電車の中で味わう傍若無人な孤独感荻野。▼ふさがる(座席が谷で。席が全部。席が一つ残らず。テーブルがあらかた)。▼満室になる(ホテルが。旅館が)。▼満席になる(劇場が。ホールが)。 **まんすい【満水】** ▼満水になる(ダムが。ため池が。タンクが。貯水池が。湖が)。▼満タンにする(ガソリンを。石油を。タンクを。燃料を)。 **まんぷく【満腹】** 満腹になる。満腹の胃袋を抱える。▶満腹する(日ごろになく。身動き出来ぬくらい今日)。満腹すると睡ゃもりが疲れとまじりあってひろがる大江。満腹した猫のような目つき=大原。胃が(重くなる。はちきれそうになるくらい食べる)。胃の酢が(ふくらむ。満足する)。おなかがいっぱいになる。お腹の皮がばんばんに張る荻野。腹が(はち切れそう。破れるほど食い溜める)。腹鼓を打つ。腹を(満たす。いっぱいにする)。たらふく飯を食う。▼くちする(おなかを。腹を)。くちくなる(おなかが。腹が)。腹いっぱい(飯を食う。ご馳走访、を詰めこむ)。うまい物を腹いっぱい食べる。うまいものを腹いっぱい詰めこむ=長崎。飯を腹いっぱいに詰め込む。腹持ちのいい食べ物。なかなかおなかが空かない。 **まんまん【満満】** 満々たる(湖水。誇負。自信。野心をいだく)。稚気満々たる行状。満々と(弓をひきしぼる。水を湛たたえた泉水"有吉。張詠なった河口の水が一面にきらめく=日野)。自信満々の面持ち。野心満々の人岡。 **みずびたし【水浸し】** 大雨のたびにきまって溢れてあたりを水浸しにする暴れ川三浦哲。水浸しになる(田んぼが。地下室が。部屋の中が。床が)。水びたしの都をぼたぼたと千切り落とすような異=子母沢。冠水する(家財道具が。作物が。田畑が。道路が)。浸水する(船が。家が床上まで)。▼浸入する(建物に水が。船に海水が)。 **みたす【満たす】** ▼満たす(梅の香が闇を。霧が渓谷を。空腹を。グラスに酒を。好奇心を。心の飢えを。杯に熱删姉を。条件を。隙間を。沈黙が室内を。手桶にぉに水を。肉体の渇きを。羊水が子宮を。水をバケツに。心を安らぎで。闇がすっかり。湯飲みを茶で。エクスタシーが肉体を。タンクに海水を。なみなみと液を。抜け目なく私欲を。バスタブにお湯を。二つの相反する要求を。ビールをコップに。あたりを血と死臭で。星が降るがごとくに夜空を=なかにし)。心をたす(安息が。感慨が。成功の確信が。満足感が。安らぎが。空想に。晴れやかな気分が。洗われたような清々対がしさが=隆)。▼部屋を満たす(香りで。重苦しい空気が)。街を満たす(酔漠が。愛を語り合う男女が)。胸を満たす(懐かしさが。敗北感が。鬱陶しい気分が)。 <1046> 欲望を満たす(個人的な。薄汚い)。要件をすべて満たしている。▼思いに満たされる(感謝の。心が感激の)。▼満足感で満たされる(胸中が。心が)。▼満たされる(心が潤いに。心が穏やかに。不安と恐怖に。深い安堵もんに。闇が雨の音に。憂鬱な感傷に。心が喜びで。この上なく。ある程度気持ちが。気持ちの空虚が)。いっぱいにする(笑いで顔を。煮えたぎる思いで体を)。▼クリアする(条件を。法律を)。なみなみと水を湛たたえたブール。憂愁を湛えた眼差し。頬が凛々しさを湛えている。客がびっしりと本堂に詰める。満たされない(思い。渇き。夢を追う)。満ち足りない思いが胸の底に淀む。 **みちあふれる【満ち溢れる】** ▼満ち溢れる(知的生命体が銀河系に佐藤勝。名状しがたい力が限りなく"島崎)。▼満ちあふれる(香りが家中に。心が詩情に。自信に。喜びが心に。地球上に人間が。高原の冷たい空気がひたひたと押し寄せるように=小池)。▼充ち溢れる(女の輝きがすみずみまで立原。肉感の欲びが感覚の流れに乗って柴田翔)。幸福感に満ちあふれた笑顔"東野。彼の様子はまるで梅雨時の小雨のように湿気に満ち溢れている"山田詠。全身に悲しみを満ち溢れさせて大泣きする=海堂。胸いっぱいに温かい湯が満ちあふれるようなあまやかな思いに包まれる"山本周。気力が充溢にうする。 **みちみちる【満ち満ちる】** ▼満ち満ちる(敵対心が。生命力に。悲嘆の声に。胸中に清らかな精気が。生きている実感に。たちまちにして香気が城内に井上靖)。▼満ち満ちている(五体に覇気が。態度が自信に)。再び気合が満ち満ちてくる。 **みちる【満ちる】** ▼満ちる(月が。愛が心に。思い出が胸に。喜色が顔に。群衆が会堂に。精気が体に。食欲な衝動に。目が敵意に。目が憎しみに。愛色が全村に。あたりに妖気が。部屋にコーヒーの匂いが。穏やかな陽射しに。好意がわざとらしさに。心の中が悲しみと憤りに。爽やかな感動に。スリルとサスペンスに。ヒロイックな悲愴感心に、うに。腹蔵ない善意に。暴力のイメージに。無邪気な好奇心に。安らぎと静けさに。若々しい精力に。一挙一动が憎悪と悪念に佐藤春。筋肉の一筋一筋が弾けそうなほどの力に=原田宗。殺気立った気配が部屋の中に=貫井。冷気が重味を加えて夜空に=野間。静けさが淀んだ水のように=小川。都を落ちるという実感が胸にひえびえと"司馬。酔いが身体の隅ずみにまで=高井)。心が恋と嫉妬に充ちる"大岡。▼気分に満ちる(意地の悪い。くつろぎの)。空気が満ちる(和やかな。冷たく静謐みいな高原の有栖川)。室内に満ちる(叫びが。すすり泣きが。笑い声が)。光が満ちる(谷いっぱいに。早春の。キッチンに朝の)。▼部屋に満ちる(匂いが。重苦しい雰囲気が)。愛情に満ちた身振り。愛の思い出に満ちた部屋。あきらめに満ちた心。悪意に満ちた嘲笑。鮮やかな緑に満ちた景色。安寧に満ちた死。威厳に満ちた態度。潤いに満ちた生活。憂いに満ちた瞳。奢ぉこりに満ちた満足感。確信に満ちた言い方。危険に満ちた水域。期待に満ちた眼差し。苦渋に満ちた顔。屈辱に満ちた取り調べ。苦難に満ちた人生。決意に満ちた声。好奇心に満ちた目。誇張に満ちたでたらめ。残虐に満ちた兵隊の生活。自信に満ちた答え。親しみに満ちた微笑。信頼に満ちた表情。善意に満ちた人々。憎悪に満ちた抗争。打算に満ちた社会。卓見に満ちた論文。珍行奇癖に満ちた言動。独断に満ちた考え。慰めに満ちた詩句。悲観に満ちた報告。品位に満ちた身こなし。侮淡に満ちた目つき。偏見に満ちた文章。誇りに満ちた生き方。優しさに満ちた言葉。ユーモアに満ちた一文。乎和と愛とに満ちた結婚生活"石川。▼満ちている(話に悪意が。異様な迫力に。声が自信に。声が親しみに。秋の陽が部屋に。感動の押しつけに。声が冷たい響きに。生活全体が伝統に。世界はワンダーに若竹。空は見渡す限りのまったくの青に村上春)。▼満ちてくる(力が五体に。憤怒が静かに。漠然とした不安な予感が水のように松本)。▼潮が満ちてくる(体の奥に熱い。ひたひたと)。▼満ち渡る(活気が。心持ちが。咆哮山うが)。沈黙が天と地とに漲玖なり満ちる有島、胸をいっぱいにする(不安が。詩的な言葉で)。胸がいっぱいになる(愛しさで。悲しみで。感激で。喜びで)。▼いっぱいになる(心が喜びで。道路が人で。店内が関係者で。怒りと諦めで頭の中が内田卷)。心が物悲しさで一杯になる吉行。 **みなぎる【漲る】** ▼みなぎる(異様な熱気が。顔に喜びが。希望の念が。水田に水が。全身に殺気が。全身に闘志が。表情に緊張が。光が室内に。砲煙が野に。勇気が四肢に。西日が赤々と。いたって自由な空気が。顔に期待の色が。顔に生気と愛情が。体の隅々まで精気が。艶やかな情感が。のっぴきならない迫力が。部屋に笑い声が。世の中に活気が。香りが部屋じゅうに。煙が濛々もうと車内に。存在感が全身に。陶酔感が身ぶりに。躰つきに健康な女の若さが「池波。部屋の中に早春の陽射しが=開高)。胸中にみなぎる憤懣ん。四肢にみなぎる勇気。全編にみなぎるスピード感。眉宇にみなぎる決意。身内にみなぎる熱っぽいものに足が弾む。あたりにみなぎる夜の静寂=石坂。力がみなぎる(下半身に。声に。全身に)。▼漲らす(四肢に力を。利口そうな目に笑いを)。闘志をみなぎらせる(精力的な体に。横顔に)。▼みなぎらせる(怠惰な気分を。踏み出す足に力を。感謝の気持ちを瞳に。川が濁流を滔々とらと。にたにた笑いを顔一杯に『江戸川)。みなぎり渡る(朝の光が。哀愁が胸に。不屈な空気が村に)。強観にいうな精神力の横溢"中局敦。横溢ゅうする(活気が。気力が。生命力が。若さが。先行きの見えない不安が)。 <1047> # 見つめる・睨む **かんきゃく【観客】** 観客が(総立ちになる。やんやの大喝采を送る。舞台の荒っぽい昂奮に捲きこまれ喚声をあげる=円地)。劇場に観客がびっちりつまる=円地。観客で(こった返す。超満員)。スタンドが観客で埋まる。どこから現れたかと思うほどの観客でごった返している=五木。観客に大いに受ける。観客の(悲鳴が渦巻く。胸を打つ。入りがよくない。声援が湧き上がる。注目を一身に浴びる。反応に満足する)。観衆が総立ちになる。観米を熱狂に導く。ギャラリーが(集まる。大勢いる)。見る者の(心を捕らえる。胸を打つ。目を奪う。笑いを誘う)。見る者を揺さぶる写真。大向こうから声がかかる。大向こうに喝采される。大向こうをうならせる。大向こう受けを狙う。 **かんさつ【観察】** 観察が細かくて鋭い。不断の注意を自然の観察に振り向ける=寺田。四方に観察の目を注ぐ。猛獣が遠くから匂いを嗅ぎあっているような観察のしかた林美。観察する(相手の反応を。細部を丹念に。じっくり。それとなく。注意深く。冷静な目で。いかなる人物かを。さり気なく相手の様子を。頭から爪先までじろじろと。ためつすがめつ。文学趣味のある女秘書のような目で後藤)。めずらしい虫を観察するときに似た視線を浴びせられる三浦し。のつけから一人一人をじろじろ観察するのは遠慮する"松浦。「観察した結果を記録する。観察されている気配が蜘蛛くもの巣状に顔に張りつく=島田。観察眼を曇らせる。観察力(鋭利な。冷徹な)。 **かんし【監視】** 監視が(手薄。行き届く。ゆるむ)。監視に万全を期す。監視の(目が厳しい。網をかいくぐる)。何気ない様子で監視をする。▼監視する(動きを。執拗に。ひそかに。厳しく。行動を逐一。それとなく。油断なく。一挙手一投足を。行動をくまなく。空からヘリコプターで。行政の態度を厳しい目で"畑村)。何事につけて監視し合う。監視員を配置する。警察の監視下に置かれる。監視役に当たる。モニターに任命する。モニターを募る。監視される(公安当局に。四六時中厳重に。昔のお女郎みたいに十重二十重さはに今日)。周囲に目が光る。▼目を光らせる(警察が。便乗値上げに。教師が監視の。隅々まで)。 **かんそく【観測】** 政治的観測が的中する。理論と観測が一致する。理論が観測と矛盾する。希望的観測を口にする。観測する(地震を。天体を。日食を。星を)。観測衛星を打ち上げる。観測気球を上げる。観測網を密に張り渡す。 **ぎょうし【凝視】** 端然として凝視を続ける。強い凝視を白刃を合わせたように見つめ返す円地。凝視する(あらぬ方を。進捗しんも状況を。天の一角を。瞬きもせずに。穴のあくほど。息をのみ。しげしげと。じっと。情熱的な目で。目を細めて。自己の心の内を。まじろぎもせずに。身じろぎもせずに。うらめしげな目つきで。ためつすがめつ。表情を変えないで。まんじりともせず)。限が虚空の一点を凝視する。衆目に凝視される。食い入るように目を離さない。一挙手一投足を食い入るように眺める=阿佐田。砂浜にいる何組かのカップルに食い入るように眼を据えつける"阿部、眼を喰いつくように注ぐ=松本。打ち守る(顔を。挙動を。振る舞いを。様子を)。じっと見つめる(学者が珍獣の巣穴でも窺らかっているように北村。決意でも促すように=椎名誘。最後の瞬間を網膜に焼きつけるように貫井。耳を疑ったように戸板。見ることが自分に課した罰ででもあるかのように野間。目の中に姿をしまって十万億土まで持ってゆこうとするかのように=中)。穴のあくほどじっと見詰める"永井荷。▼熟視する(挙措を。恥部を。裸体を。くまなく)。じっと探るように顔を見詰める。有局。▼目を凝らす(暗がりに。水平線に。闇に。夕焼け空に。指の動きに。じっと。穿、がつがことき鋭い=山田美。珍しい物を見るように=小川)。目を凝らして見つめる。 **ぎろりと** ぎろりと(目玉をむく。目を剥く)。目がぎろりと据わっている。目玉をぎろりとさせる。ぎょろぎょろと目を動かす。ぎろりと眼鏡こしに見る。目がぎろりと光る。 **せいし【正視】** ▼正視する(死体を。流れる血を。ためらわずに。まともに。ぶしつけなまでに)。真正面から見る。まともに見やる。正視できないので顔を背ける。顔を正視できぬ気恥ずかしさ"今日。直視できずに視線をそらせる。▼直視する(過酷な現実を。ありのままに。たじろがず。目をそらさずに)。 **ちゅうし【注視】** 注視が一身に集まる。鋭い注視の目を向ける。注視を一身に浴びる。▼注視する(一挙手一投足を。食い入るような眼差しで=和久)。 **ちゅうもく【注目】** 注目が集まる。注目に値する。学界の注目の的。世界の注目の的となる。▼注目を集める(学界の。関係者の。社会の。人々の)。▼注目を浴びる(一身に。学校じゅうの。世界の。満座の。満都の)。世間の注目を一身に浴びる篠田。注目する(多くの人が。世界が。早い段階から。一挙手一投足に)。▼注目される(去就が。言動が。進退が。周りの人たちに)。取り立てて注目すべき点がない。脚光が当たる。すべての目がこちらを向いている。刮目幼いして見るべし。刮目に値する。視線が集まる(好奇の。周囲の。皆の)。▼視線を浴びる(疑惑の。群衆の。全員の)。みんなの視線を全身に浴びる=山岡。衆目にさらされる。衆目を(一身に浴びる。引く)。風景に瞩目する。嘱目の的。▼脚光を浴びる(改革派が。一躍。観光地として。にわかに世の。晴れ舞台で)。▼耳目を集める(世界の。世間の。天下の)。 <1048> 世間の耳目が集まる。 **にらまれる【睨まれる】** ▼にらまれる(右翼団体に。課長に。軍部に。警察に。先生に。上司から。職制から)。蛇ににらまれた蛙砂だ。▼目をつける(いいところに。保険金に。怪しいと。非凡な太刀筋に)。先生に目をつけられる。 **にらみつける【睨み付ける】** ▼形相で睨みつける(決死の。今にも飛びかからんばかりの森聡)。睨みつける(黙って天井を。挑戦的に。穴のあくほど。恐ろしい顔で。きっと。険悪な表情で。じっと。じろりと。目を剣もいて。ぶざまな様子を。いまいましげに。さも憎らしげに。一同をはったと。形相すさまじく。すごい目つきで。どうだといわんばかりに高橋三。怒りに燃えるような目で鋭く=山本周。恐ろしいものでも見るように連城。鬼のような眼をして伊集院。強い叱責のまなざしで=江戸川。ならず者みたいな暗い限で=阿部。間近に敵でも発見したかのように武田祭)。▼目で睨みつける(ぎらぎらした。すさまじい。激しい。噛みつきそうな。張り裂けるような)。ねめつける(厳しく。じろりと。仇敵ぃいうの住む町を)。▼睥睨吹灬する(あたりを。一世を。全国を。天下を。町全体を)。首都圏を呼睨するような高層ビルル佐伯。 **にらむ【睨む】** ▼睨む(下唇を噛んで。拗ねたように。激しい形相で。眉根を寄せて。遥かに天の一角を。真正面から相手の目を。一層むきになって。恐ろしい顔をして。かたくなに口を結んで。きっと眉をあげて。共犯ではないかと。ちらりと横目で。ぬっと顔をあげて。ものすごい眼差しで。わけありの仲と。相手の目を射返すように『村松。鬼のような顔で若竹。汚らしいというように眼の隅で=伊藤整。こんなに大きく開くのかと驚かれるほど大きく眼をむいてギョロりと長与。詮議だてをするように村松。たしなめるように=山本有)。▼目で睨む(きっとした。怖い。刺すような。酔った。憎しみのこもった。噛みつきそうな=山本円)。▼限で睨む(恨みを蒼ぁぉく放つ=横光。三白限の物凄丸い!奥泉)。両目が戦いを挑むように呪んでいる=高橋三。▼にらみが利く(政界に。生徒に)。楽街一帯に睨みをきかせる佐々木。限を(つける。飛ばす)。▼睨み返す(負けずに。じろりと。涙のたまった目で。目を吊り上げて)。▼睨みすえる(相手の目を。一点を。宙を。きっと。はったと。迫力のある眼光で。たたきつけるように=山手。針で突き刺すように=高橋和)。▼目で睨みすえる(怒りの。鋭い)。 **ねめまわす【睨め回す】** ▼睨め回す(何かまだ文句があるかという剣幕で=加賀。値踏みする目で=辺見)。▶ねめまわす(あたりの人を。眼光鋭く。じろじろ。顔を舐めるように)。頭の天辺にいから足の先までねめ回す平野。芝居っ気たっぷりに一同を睨ぉめまわす=村松。尖とがった目で周囲を見回す横山。にらみ回す(周囲を。じろじろと。怒ったような表情で。体の上から下まで)。 **のぞきこむ【覗き込む】** ▼覗き込む(食い入るように鏡を。人の見せたがらないところばかりを意地悪く萩原朔)。▼覗きこむ(屑かごの中を。車の下を。地獄の釜を。下から顔を。バケツの中を。ボットの底を。店の奥を。後ろから肩越しに。顔を心配そうに)。覗き窓から顔を確認する。▼覗く(鍵穴から中を。断崖から下を。そっと陰から。ガラス越しに室内を。橋の上から川を。ブラインド越しに窓の外を。障子の破れ目から。鏡をきまり悪そうにおずおず芥川。窓を細目にあけて外をこわごわ=高田)。覗いてみる(池の中を。何の気なしに中を)。 **マーク** 厳しいマークにさらされる。▼マークする(警察の動きを。容疑者を。関係のありそうな人物を。真犯人と思われる男の行動を密かに=池井戸)。 **みいる【見入る】** ▼見入る(興味深げに。新聞の紙面に。鉄道模型に。固睡みたをのんで。探るように。しげしげと。ほれぼれと。まじまじど。一心にテレビに。うっとりと流れに。またたきもせずに。感服したように。口をあんぐりと開いて。雛飾りに陶然となって。放心したように。身を乗り出して。むさぼるように。覗のぞき込むようにじろりじろりと顔を授与。感に堪えたようにして石森。愚っかれたもののように水上。遠い山脈の姿をみんな暗記してしまうくらい、じっと目に力を入れて見入る堀。ほかのことを忘れたようにじっと島崎。魅せられたように恍惚こうと"大佛。われ知らずむさぼるような目つきで=堀)。思わず足を止めて見入るほどの美しさ=隆。▼景色に見入る(窓外の。食い入るように車窓の篠田)。 **みかえす【見返す】** ▼見返す(相手の顔を。相手の目を。恥じらわずに。憐ぁゃれむように。きっとなって。挑戦するように。とろんとした目つきで)。▼目で見返す(疑い深そうな。皮肉な。からかうような。突き刺すような小林久)。 **みすえる【見据える】** ▼見据える(近未来を。十年先を。恨めしそうに。冷ややかに。厳しく。険しく。しっかりと。鋭い眼光で。強い眼差しで。にらむように。はったと。まじまじと。真正面から。じっと一つ所を。前方のゲートを。顔を真っ直いぐに。狙いをつけるように一直線に谷崎。燃えるばかりに人米。反応を推しはかるような瞳で=原田宗。耳だけでなく眼からも音律の美しい流れを吸い込もうとするかのように野上。林中の虎のようにじっと久米)。瞳の奥を網膜まで見とおすほどぎゅっと見えてる=有島。一点を見据える(脅えたように。宙の)。▼目で見据える(真剣な。怒りに燃えた。きつい。冷たい。透徹した。物怖民のじしない。ひんやりとした)。相手の眼を刺し通すような眼で見据える=大庭。未来を見据えた賢慮。 **みつめる【見つめる】** ▼見つめる(心の荒涼を。自然の変化を。 <1049> 生と死を。前方の信号を。ぼんやり宙を。目八分の所を。一心に。けげんそうに。現実を冷酷に。憎々しげに。熱心に。冷ややかに。無遠慮に。不思議そうに。瞬きもせずに。まっすぐに。目を離さずに。相手をひたと。息を凝らして。息をつめて。うっとりと。顔をつくづく。固唾粉たをのんで。正面から。瞬き一つせず。縁側に座って長いこと雨を。凝然と遠い闇を。食い入るように画面を。時雨の降り込める庭を。にやにやと成り行きを。真っ直ぐに正面を。目玉がぎょろりとこちらを。目を細めて枝の先を。筋肉一つ動かさずに。目の前の状況を冷静に。呆気がっに取られて。思い詰めたような表情で。顔を食い入るように。顔をまじまじと。口を半開きにして。赤裸々になった心で。努めて表情を変えないで。なすこともなく。睨にらみつけるように。熱に潤んだ瞳で。はっとしたように。万感の思いをこめて。表情を探るように。茫乎うとした表情をして。身じろぎもせず。横顔を用心深く。焦点の合わないまなざしで虚空を=重松。放心したように焼け跡を吉村。眼を皿のようにして楽譜を。宮沢。網膜の裏に鮮やかな残像として貼りついた姿を"小林久。一瞬でも眼を離すのが惜しいというふうに永井路。相手がまごつくほど鋭いまじろぎもしない眼で=海音寺。後ろ姿を仇ぁだかたきでもあるかのように鋭く有局。食い入るような目つきで=掘。口をあんぐり開けたまま"つか。品定めをするように上から下まで=伊集院。ショックでも感じたように呆然都心と=椎名战。昼寝の最中に声をかけられた女みたいにどんより~古井。茫然邶んとフナのような口をあけて=坂口。またたきも忘れたように光瀬。めずらしい動物を見るような顔をして宮部)。見つめる瞳が熱してくる。▼見詰める(射抜くような眼をして有吉。身体を突き透すほどに鋭く=菊池。泥酔した人のように限を据えて志賀)。一点を見つめる(何かに憑っかれたようにぼんやりした表情で空間の井上靖。遠い昔がそこに見えているとでもいうように部屋の藤沢)。▼思いで見つめる(息をのむ。信じられない。目の覚めるような=白井)。値踏みするような目つきでしげしげと見つめる=つか。▼眼差しで見つめる(悲しげな。深い愛情のこもった三好徹)。▼で見つめる(祈るような。怒ったような。咎とがめるような。好奇心のこもった。鋭い老刑事のような藤田。不思議なものを見るような内海)。きょとんとして見つめ返す。▼見つめ直す(自分自身を。冷静に失敗を)。物事を底の底まで見つめようとする水井路。・視線を前方に貼りつける=泉優。反射的に視線を釘づけにする=姫野。一斉に視線を注ぐ。遠くの方を見つめるような目つき=福永。▼目を据える(凝然と壁に。面に。前方に。宙に。テレビ画面に。一つ所に)。むように眼を据える!水井荷。消えてなくなりでもするかのように少しも目を離さない=中。 **みとれる【見とれる】** ▼見とれる(川の流れに。声も出さずに。刻々の変化に。外の景色に。舞台の役者に。若葉の葉群はもに。うっとりと。恍惚ごうと。しばし。陶然と。茫然郎らと。ぼんやり。我を忘れて。赤ん坊の仕ぐさに。鮮やかな景観に。上品な美しさに。美しさに思わず。思わず身を乗り出して。女の整った顔立ちに高橋二)。威容に目を持って行かれる。▼目を奪われる(美観に。風景に。強力な顔触れに。すらりとした脚に)。宝玉殿の壮麗さに眼を奪われる井上靖。 **みはり【見張り】** 見張りに(立つ。つく)。見張りの任に当たる。屋敷の内から見張りの限が四方へ光っている=池波。見張りを始めてからすでに四日が過ぎている=池波。辛抱強く見張りを続ける。入り口に番人を置く。忠実に番人を務める。番兵を(置く。つける)。歩哨が誰何がぃする。歩哨に立つ。歩哨を(置く。交代する)。半役人に手を回す。刑務所の看守。看守の目をすり抜ける。看守を呼ぶ。不寝番につく。不寝番の見張りをつける。不寝言番を務める。 **みはる【見張る】** 見張る(注意深く。油断なく。心深く)。一挙手一投足をじっと見張っている。計器を看視する。看視を怠る。ビケを(突破する。張る)。 **よくみる【よく見る】** ▼よく見る(後学のために。近くで。壁に顔を近づけて)。じっと臓を凝らす。凝らして見る(瞳を。目を)。穴のあくほど見る戸板。男子三日会わざれば刮目して見るべし久米。じっと見る(炯々がいたる目で。観察するように。一瞬ストブモーションにでもかかったように"小沢。大きな目を夢のように見開いて"有島)。店の奥をためつすがめつ覗のぞきこむ。手のひらに載せてためつすがめつ眺める。と見こう見する(手のひらに載せて。撫でまわすような目で=山本周)。喩を据える。一挙手一投足を逃すことなく見定める=石川。波紋の行方を正確に見澄ます=本多秋。▼見る(上から下まで。手に取って。身を入れて。目に寄せて。目をすがめて。意味ありげにじっと目を。一つひとつを丹念に。まじろぎもせずに。さまざまな角度から。しっかり目を据えて。全身を目にして。そこらじゅうを限くまなく。近くでつぶさに。端から舐めるように。まじまじと大きな目をみはうて。目をこすりこすり。物珍しくつくづくと)。▼じろじろと見る(胡散臭いさんそうに。詮索げな目で)。じろじろ見る(無遠慮に。さも疑わしそうに。小さな狡ずぇそうな眼で岸田)。▼目をさらす(書類に。万巻の書に。広げたページに)。目を皿にして(見開く。よくよく観る)。目を皿のようにみはる"三浦賀。眼をさらのようにして人気のない町なみのあちこちを探る"真継。目を皿のようにして付近一帯を探索する=和久。うっかりしたら見過ごしてしまいそうなものを目を皿のようにして探す度がないかと目を皿のようにしている=井上ひ。大庭。何か落ち <1050> # 見通す・思いがけない **あて【当て】** 当てが(見事に外れる。外れてがっかりする)。資金繰りの当てがある。まとまった収人の当てがつく。当てがない(落ち着く。借金を返す)。どこにも行く当てはない。当てもなく歩きまわる。当てのない彷徨うを続ける。 **あてにする【当てにする】** ▼当てにする(親の資力を。子の稼ぎを。他人の懐を)。上司の腹をいささか侍たのむ。 **あてにならない【当てにならない】** 当てにならない(答え。言葉を繰り返す)。▼当てにならない(言うことが。一寸先も。ちっとも。てんで)。紺屋の明後日。空頼みに(終わる。万一を願う)。人の愛情は頼み難い。朝令暮改の(発言が目立つ。政策に追いまわされる。そしりを免れない)。 **あらぬ** あらぬ(誤解を受ける。風聞が飛ぶ。疑いをかけられる。噂を立てられる。濡れ衣さぁを着せられる。方角に目を向ける)。心があらぬ方に飛ぶ。思考があらぬ方に散乱する。腕をあらぬ方に遊ばせる。目をあらぬ方に投げる。うっとりとあらぬ方を見つめる。きょとんとしてあらぬ方を見上げる。 **あんがい【案外】** 案外(気が小さい。条件が良い。役に立つ。あっけなく逃げ出す。すんなりと行く。ばかにならない稼ぎ。評判がいいらしい。物分かりがいい)。儲もうけが案外少ない。案外な冗談を言う。案外に(古風な女。早く話がまとまる)。処分が案外に軽い。案外の態度に落胆する。案に反しておとなしすぎる。思いのほか(手数がかかる。回復に時間がかかる。風当たりが荒い。道路がすいている。荷造りがはかどらない)。弔問客が思いのほか多い。存外神経の細かい山男。存外に(あっさりと申し出を了解する。素直に受け入れる。早く終わると思う)。 **いがい【意外】** 意外(意外といえば。意外や。自分の耳を疑うくらい=深沢)。意外と(簡単に済む。素直に答える。核心を突いている)。意外な(展開を見せる。面持ちで迎える。事実が浮かび上がる。返事が返ってくる)。自分でも意外なほど冷静な声=原田糸。天地がひっくり返るほど意外な話"火坂。傷が意外に深い。意外の(感に打たれる。問いに狼狽的心する)。あまりの意外さに(驚く。言葉が出てこない。二の句がつげない壺井。理不尽な仕方で騙だまし討ちにあったような気に陥る=浅川)。豈ぁにはからんや。案に相違する。瓢箪いいから駒が出る。泥棒を捕らえてみればわが子なり野問。優勝候補を破る。意外なほどあっさりと承諾する宮本輝。終局で二転三転する軽妙な意外性三輪。意外そうな表情。意想外の(からくり。事態。出来事。展開)。済んだと思いきやまだ仕事が残っていた。逃げおおせたと思いきや、敵が背後に迫っていた。思いもよらない(地位につく。言葉を聞かされる)。会うなど思いもよらぬ雲上人=村松。人の意表に出る。意表を(ついた一階に気圧けぉされる=三田。突かれたような表情和久)。意表を祈っく(行動に出る。展開になる)。▼番狂わせ(横綱が敗れる。小兵が大物を食う)。とんだ番狂わせが起こる。ひょんなことから(結婚する。災難に遭う)。皆目わからなかった行方がひょんなことから判明する内海。ひょんなことで(商売が当たる。知り合いになる)。 **おもいがけない【思いがけない】** 思いがけない(感情の嵐。行動に出る。事態が起こる。心境の変化。反論に驚く。大きな反響がある。利益をもたらす。幸福な出会いにわが目を疑う三島。質問だったのですぐには答えが返せない三田。提案にあっけにとられたように沈黙したまま"五木。不意打ちを食らわせる=高樹)。びっくりするほど思いがけない。貴賓の思いがけない来訪に困こうじ果てる。たまたま思いがけない凶事が二つ続く。顔に思いがけないことを聞かされた驚きが端的に現れる=黒写。事態が思いがけない方向に発展する=小林久。自分でも思いがけない言葉が喉の奥から洩もれ出る小林久。父の死という思いがけない不幸が起こる"山崎。思いがけず(案が浮かぶ。きっぱりした声)。思いがけなく(覚えた不安。話が速く運ぶ。早く仕事が片付く。街角で旧友に会う)。記憶が思いがけなくよみがえる。思い設けぬ緊張した声=校。思いもかけず会長になる。思いもかけない(人からの電話。素晴らしい景観)。思いも寄らぬ(結果。事態。速さ)。時ならぬ(電話のベルで起こされる。フィーバーを巻き起こす。村雨が降りだす。話題に店内がわく)。図らずも(功を奏する。窮境を聞くことになる。自らの不明を世間に喧伝する結果になる高橋克)。生来の我慢のなさを図らずも露呈する。ひょっこり(顔を出す。姿を現す。記憶がよみがえる)。何かの折にひょっと口にする。ひょっとしたことから目にとまる。不時の(客。災厄。出費)。素人商法がまぐれ当たりをする。まぐれで(満点をとる。ホームランを打つ)。不慮の(変に備える。災害をこうむる。事故で亡くなる)。事故で不慮の死を遂げる若竹。 **おもわぬ【思わぬ】** 思わぬ(憂き目を見る。邪魔が入る。敵に出くわす。恥をかく。反応を示す。伏兵が現れる。獲物にありつく。落とし穴に落ち込む。事態に仰天する。反撃にたじろぐ。方向に話が転じる。余得にあずかる)。 **およそ** およそ察しがつく。およその(様子が分かる。当たりをつける)。おおよそ(合点が行く。想像がつく)。おおよその見当がつく。概数で(あらわす。示す)。かれこれ(二年近く住む。一時間近くもさまよう。五年が過ぎた)。 <1051> 六十坪ほどの広さ。二週間前のこと)。女房を亡くしてからかれこれ十五年になる=藤田。ざっと(小一時間かかる。七千人の受験者)。参加人貝は十人そこそこ。十年そこそこの歴史しかない。 **かのうせい【可能性】** ▼可能性(いちばんありそうな。磨けば光るという。もう一つ考えられる)。可能性が(極めて少ない。充分にある。翼を広げる)。実現の可能性が薄い。一つの可能性が浮かび上がる。無駄足の可能性が高い。人生は可能性がいっぱい!なかにし。一可能性がある(さまざまな。一発逆転の。実現の。捏造弥の。人違いの。取りっぱぐれる)。可能性にはなはだ乏しい。万に一つの可能性にすがる。わずかな可能性に賭ける。可能性は(大いにある。五分五分。なきにしもあらず)。可能性を計算に入れる。あらゆる可能性を考える。おびただしい可能性を秘める。自殺の可能性をほのめかす。将来的に伸びる可能性を持っている。人間の可能性を試す。表現の可能性を広げる。無限の可能性を信じる。全面的に否定はできない。脈がある。▼かもしれない(いささか極論。味方にできる。事によったら来ない。むしろ遅過ぎたぐらい。もう助からない。親父が家から叩きだされる日も近い三浦し)。 **かん【勘】** ▼勘(百発百中の。経験に裏打ちされた)。勘が(的中する。鈍い。ぞっとするほど冴える=吉本)。妙な勘が働く。悪い勘が当たる。勘と経験による作業。動物的な勘に頼る。私の勘に問違いはない。勘の鋭い女。生得の勘の鋭さ。勘のいい(女。子供)。女性の勘はあなどれない。勘を働かせる。勘のようなものが不穏なサインを送ってくる落合。第六感が働く。第六感にぴんと来る。 **ぐうぜん【偶然】** 偶然(手にした幸運。その場に居合わせる)。偶然が運命を大きく変える。全くの偶然と言うほかはない。偶然とは言え妙な暗合。偶然にしては出来過ぎている。決定的な瞬間が偶然に訪れる=中村真。めったに起こらない偶然に災いされる=和久。偶然の(めぐりあわせを期待する。交通事故を装って殺す=勝目)。神がしつらえたような偶然の機会畑。気まぐれな偶然の悪戯か父!寺田。下手な作り話のような偶然の連続安部。些細な偶然をジンクスと受け取る。単なる偶然とは思えない。単なる偶然の一致。必然性がまるでない。偶然のようにひょいと結婚する佐多。思いがけない偶然に目を丸くする。折よく(居合わせる。タクシーが来る。手があいている)。期せずして現実のものとなる。二人が期せずして同時に声を発する。女たちの願い事が期せずして一致する佐藤係。たまたま(通りかかる。運が良かっただけ。顔を合わせただけの間柄「和久)。予言がたまたま的中する。一件に端なくも関係する。機会が端なくも到来する。誓願が端なくも成就する。戦争が偶発する。思いがけない偶発事。偶発的な(事件。出来事)。ゆくりなくも(思い出す。めぐり合う。旧友に再会する)。 **こころづもり【心積もり】** 謝礼の心積もりをしておく。次の仕事の心積もりをする。心積もりする(出費を。密かに)。腹構えを固める。▼腹積もり(家を建てる。補正予算を組む)。腹積もりができている。 **じこくひょう【時刻表】** 時刻表を(チェックする。開く)。▼ダイヤ(過密な。電車の。列車の)。ダイヤが(混乱する。平常に戻る。乱れる)。乱れたダイヤが復旧する。ダイヤはめちゃめちゃながら動くことは動いている=椎名賊。 **すいり【推理】** 推理が(冴える。成り立つ。見事に当たる。みじんの狂いもなく的中する柴田錬)。推理に誤りがない。自分の推理に満足する。推理の(輪を広げる。域を出ていない)。推理の糸がほどける。推理の糸を(たぐる。紡ぐ)。推理を(組み立てる。展開する。順序立てて説明する)。常識的な推理を働かせる。推理する(可能性を。謎を。犯人を。記憶を寄せ集めて)。鋭い推理力を働かす。▼推論(鮮やかな。妥当性のある)。推論がもろくも崩れ去る。推論の域を出ない。 **スケジュール** スケジュールが(狂う。たてこむ)。スケジュールに(余裕がある。さしつかえが出る)。秒刻みのスケジュールに追われる。スケジュールの空きを探す。スケジュールをあわただしくこなす。いったん決めたスケジュールを崩す。綿密なスケジュール表を作成する。時間割を(考え直す。決める。発表する)。日割りを書き込む。日程が決まる。日程を(決める。組む。調整する)。詰まった日程を縫って温泉に行く。日程をこなす(一日の。予定通りの)。▼日取りが決まる(結婚式の。出発の。結納の)。祝言の日取りを決める。 **そうじて【総じて】** 売り上げは総じて低調。決算は総じて好調。相場は総じて(堅調。不透明感が強い)。一体に(酒気がない。若く見える。皮膚が光沢を失う)。全般的な繁栄。全般的に不振。総体的な枠組み。総体的に順調。トータルな(認識。見方)。トータルにとらえる。 **どうさつ【洞察】** 人間への鋭い心理的洞察"中局。洞察に富む評。▼洞察する(影の部分を。国民の動向を)。洞察力に(舌を巻く。富んだ目)。天稟んの洞察力を持たぬ凡人=江戸川。 **どっちみち** どっちみち(間に合わない。心配することはない)。関係のあるなしにかかわらず。程度の違いはあっても。どう転んだところで。いずれ(ぼろが出る。耳に入ること。子供は離れて行く)。人はいずれ死ぬもの。多かれ少なかれ(何かしら利得を得る。皆そんなようなもの)。大なり小なり(誰でも悩みを持っている。共通するものを裡うちに抱えている=貰井)。どのみち(勝ち目はない。大したことではない)。 **みこむ【見込む】** ▼見込む(腕を。才能を。作業に半日を。 <1052> 商才を。税収減を。増益を。さらなる悪化を)。友達と見込んで頼む。ブロと見込んで頼みがある。▼見込まれる(素直な人柄を。槍ゃりの腕を。悪魔に。蛇に)。見込みを立てる。▼見込める(拡大が。高収益が。省力化が。利潤が。女性票の取り込みが)。 **みすかす【見透かす】** ▼見透かす(気持ちを。心の動きを。心の中を。ほのかな闇を。底の底まで。木立の向こうを。先の先のほうまで)。暁闇ぶいうの中をけんめいに見透かして姿を探す三島。みんな見透かしているぞというような意地の悪いまなざし!佐多。見事に見透かされていたことに尻の座りが悪くなる!有川。底意が完全に見透かされている。心の隅々まで見透かされてしまう。すぐに見透かされてしまう底の浅さ=里見。▼見透かされる(腹の裡ぅちを。金がないことを)。明瞭に外から見透かせる。心を見透かすような目村松。 **みつもる【見積もる】** ▼見積もる(内愉に。過大に。ざっと。少なく)。見積書を提出する。▼胸算用する(月末の払いを。効果を)。距離を目算する。目算通りに事が運ぶ。予算に(大鉈岱誌を振るう。見あう活動)。潤沢な予算に恵まれる。予算をばっさりと削る。取りあえず予算をつける。 **みとおす【見通す】** ▼見通す(五十年先を。今後の展開を。腹の底を。未来を冷徹に。先の先まで。はるかな一点を。人間の真実の全体を底まで"玉村)。水平線の彼方までくっきりと見通せる=西木。前途に対する落ち着いた見通しを胸に抱く藤枝。あらかた見通しをつける。科学的な見通しを立てる。▼見越す(一歩先を。欠勤者が出ることを)。先の先を読む。何という恐るべき千里眼"小局。先を見越して先手を打つ。渋滞を見越して早めに出発する。去年以来の四隣の争いに目鼻をつける。読みが(浅い。当たる。甘い。的中する)。読みが深い。見事に正鵠ご心を射る)。読み違いに計算違いがある。 **みとおせない【見通せない】** ▼見通せない(先行きが。一寸先も)。見通しが(大幅に狂う。思わしくない。暗い。立たない。悪い)。先々の見通しが利かない。森が深くて見通しがあまり利かない三浦し。お先真っ哨。見当が(狂う。つきかねる。ことごとく外れる)。見当がつかない(どうなるか。海のものとも山のものとも。どのくらい広いのか。道がどこに続いているのか)。見当を違える。先が見えない。先はどうなるか分からない。つかない(交渉の目鼻が。解決の見通しが。まるきり見当が)。まるきり見当が立たない。急角度に曲がっている見通しの悪いホール=高橋三。 **みとおせる【見通せる】** 先が見通せる。行きつく先が見える。先が見えている。先の見込みがつく。見通しが(明るい。当たる。利く。立つ。つく)。先の見通しがいい。遠からず返済できる見通しがある。遠くまで見通しの利く街路。目先の利く(男。女)。目鼻がつく(交渉の。再開の)。先見の明がある。先見の明を(発揮する。誇る)。 **みなす【見なす】** ▼見なす(家族同然に。必然を自由と。終わったものと。世間を遠い存在と)。可愛くない部下と見なされる。▼擬せられる(次期会長に。重要容疑者に)。 **もくされる【目される】** ▼目される(アキレス腱と。後任候補と。最有力と。次期社長と。次期総理と。対抗馬と。登竜門と。反動分子と。優勝候補と。二十世紀の古典に。将来は社のホーブと)。 **ゆうりょく【有力】** 有力な(競争者が現れる。手がかりをつかむ。武器としてもてはやされる)。反対意見が大勢を占める。▼本命(競馬の。総裁候補の)。本命の大学に合格する。金メダルの最有力候補。チームの最有力選手。▼最右翼(優勝候補の。首位打者争いの)。 **よかれあしかれ【善かれ悪しかれ】** よかれ悪しかれ(気になってならない。決行するしかない。今日で試験が終わりだと思うと何となく気が浮き立つ=久米)。かかわらず(事の善悪に。好むと否とに。望むと望まざるとに)。幸か不幸か(酒に逃れる。一度もばれたことがない)。事の是非はさておいて。好むと好まざるとにかかわらず勝負の決着をつけなければならぬ=池波。▼問わず(事の正邪善悪を。ことの理非曲直を。好むと好まざるとを)。良きにつけ悪しきにつけ若竹。理非もなくただいちずに随順する。 **よてい【予定】** 予定が(変わる。立たない。立つ。二三日延びる。入る。キャンセルになる。狂って大いに困惑する=北)。三人の予定が合う。すっかり予定が狂う。当初の予定が変更される。予定より一日短い。会議が予定より早く終わる。予定を(一日延長する。遥かに超える。キャンセルする)。がっちり予定を組む。行動の予定を決める。スケジュール表に予定を書き込む。予定を変更する(あっさりと。やむなく)。▼予定する(出展を。上場を。発売を)。年内に開通が予定される。選挙に出馬を予定している。今日の行動予定を組み立てる。予定時間より早く終了する。予定通り(順調に運ぶ。実地踏査を済ませて帰る)。計画が予定通り進行する。予定通りに金が入ってこない。計画が予定通りに運ぶ。予定日が(周近に迫る。とっくに過ぎている)。予定外の出来事。番外の(特別出演。余興)。連続ドラマの番外編。 **よもや** よもや(忘れはしない。聞こえたとは思わない。想像もしていない。抜かりはあるまい。本気ではないでしょうね。迷うことはないだろう)。よもやと我が目を疑う。まさか(彼が犯人とは誰も思わない。妊娠しているとは思わない。一つもないはずはあるまい。浮気をすることはあるまい谷崎)。まさかにたやすく自白することはあるまい=子母沢。まさかの(落球。坂が越えられない落語)。 <1053> # 見守る **おまもり【お守り】** ▼お守り(安産の。開運の。魔除まよけの)。お守りをバッグに忍ばせる。貯金通帳をお守りにする。一陽来復のお札。悪疫除けのお札を売る。護符を(かざす。配る)。悪魔除けの護符を突きつける。死者を守る魔除け。魔除けの(お札。印)。 **かいご【介護】** 介護を支える人材。親の介護をする。仕事と介護を両立させる。▼介護する(姑しゅうを。男礼いを。身障者を。病人を。老人を)。▼ケアする(こまめに。こまやかに)。ケアマネージャーに相談する。介助する(移動を。衣服の着脱を。高齢者を。障害者を。食事を。入浴を。排泄を。病人を)。 **かんご【看護】** 怪我人の看護に精を出す。寝食を忘れて看護に明け暮れる。手厚い看護に礼を言う。病人の看護に没頭する。寝食を忘れてひたすら看護の手を尽くす=平写。つききりで看護をしつづける。▼看護する(患者を。病人を。枕頭と氷に詰めて)。病人に薬を飲ませる。病人の(世話を焼く。夜伽ごとをする)。終日病人のそばを離れない。誠心誠意病人のために尽くす。患者に献身的な看護師。▼介抱する(怪我人を。病人を。酔ったお客を。手をつくして。まんじりともせずに。側そばにつきっきりで)。 **かんびょう【看病】** 必死の看病もむなしく世を去る"火坂。懸命の看病を続ける。▼看病する(患者を。病人を。親身になって。つききりで。夜の目も寝ずに=中)。 **きくばり【気配り】** 気配りが(きく。働く)。気配りの(適切さに感心する。ない単細胞人間"内田康)。気配りを(怠る。見せる)。細かな気配りを忘れない。上品な気配りを怠らない。気を細かく配って世話を焼く=伊状況に気を配る人問。心配りが(行き届く。足りない)。心を配る(四方に。几帳面治らいすぎると思えるほど細部にまで=高橋治)。▼気を配る(あたりに。追っ手に。言動に。左右に。四方に。周囲に。滑る足元に。服装に。会話に細かい。細かく。隅々にまで。油断なく。何くれとなく。ヘアスタイルに。社員の健康管理に。抜け目なくあたりに。眠りを妨げぬようにと)。藤整。至れり尽くせりの気の配り方。油断なく周囲の一般教育に意を用いる。 **きづかう【気遣う】** ▼気遣う(安否を。顔色の悪さを。体の具合を。健康を。容態を。事の成り行きを。病み上がりの体を)。ぽっと出の子供の身の上を気づかう"中。気遣いが(嬉しい。身に沁しみる)。物言いに気遣いが欠ける。気遣いに感謝する。気遣いの優しい子。▼気を遣う(まわりが。おしゃれに。周囲に。他人に。表現に。服装に。細かく。目立たぬように)。痒かゆいところへ手がとどくように気を使う徳田。 **こころづかい【心遣い】** ▼心遣い(こまやかな。親切な。暖かい。ちょっとした。妻の細かい。優しい。至れり尽くせりの。この上なく細心な深い野間)。母親の心づかいが胸にしみこむ三田。心遣いがうれしい。つつましさの中に優しい心遣いが滲にじむように現れる!大佛。こまかい総もゃのように相手の優しい心遣いが私を包む大佛。心遣いと優しさが身に浸しみみる!有吉。心遣いを見せる(痒かゆいところに手が届くほどの"有吉。こまごまと優しい=氷室)。実の娘も及ばないほどの心の遣いよう。外交折衝に心を遣う。慮眩んる(士気の沮喪を。心中を。世間体を。立場を。人の迷惑を。万一の場合を)。手厚い心尽くし。心尽くしに感謝する。心尽くしの(プレゼント。もてなし。料理を並べる)。目配りが(行き届く。きく)。目配りを怠る。▼目配りする(他店の様子に。部下の健康に。子供たちに細かく)。老婆心から口を出す。老婆心で忠告する。老婆心ながら(助言する。申し上げる)。 **じぜん【慈善】** 慈善を施す。慈善(事業に寄付する。団体に寄付する)。柄にない慈善心を起こす。篤志家の(寄付。献金)。篤志家を募る。 **はいりょ【配慮】** ▼配慮(女親のような細やかな三浦裟。他人に読まれることを慮誌桃んったうえでの小林久)。配慮が(欠かせない。足りない。無に帰する。行き届く)。細かい配慮がにじむ。配慮を欠いた発言。周到な配慮を怠らない細心さ。プライバシーへの配慮を欠く。男たちの運転に配慮を期待するほど楽観的にはなれない=有川。▼配慮する(安全に。環境に。景観に。ブライバシーに)。 **みとる【看取る】** ▼看取る(夫の両親を。患者の死を。父の最期を。母を。臨終を。老母を)。誰にも看取られずに(息を引き取る。独り死んで行く)。▼見届ける(最期を。死を)。 **みまもる【見守る】** 見守る(一連の作業を。一挙一動を。事態の進行を。レース結果を。興味深そうに。草葉の陰から。注意深く一挙手一投足を。遠くから子供たちを。まじまじと顔を。あきれたように。胃痙戀いけぃを起こしそうな顔で。ぎょっとしたように。気を揉みながら。食いつくように。今後の推移を注意深く。成長をあたたかく。魂を奪われたように。どうなることかと息をのんで。はらはらしながら。深い関心を持って。放心したように。身動きもしないでまじまじと。むさぼるように。遠くから親のような兄のようなゆたかな心で包み"石川。なにも聞かなかった人のように黙って=山本周。惹きつけられるような限で長い間=山本虎。夢見るような気持ちで=山本旧)。▼動きを見守る(息を殺して。固唾かたをのんで)。成り行きを見守る(黙って。啞然ふぇとしてことの安岡)。▼目で見守る(物問いたげな。好意の。慈悲の。冷徹した。好奇心に満ちた)。家族に見守られて息を引き取る。▼黙視する(介在を。行動を。乱行を)。 <1054> # 見る **いちべつ【一瞥】** 路傍の花に対するような淡々たる一瞥菊池。状況を一瞥でつかむ。最初の一瞥で漠然と人を不安にし胸騒ぎを覚えさせるような種類の人間=森環。一瞥のうちに瞳へ刻みつける佐藤春。鋭い一瞥を走らせる。冷ややかな一瞥を与える。ぎろりとにらむように鋭い一瞥をくれる=山手。▼一瞥を投げかける(なじるような。左右にすばやい三輪)。一階を投げる(敵意に満ちた。光のない弱々しい森境。不貞腐はそれたような=中島敦)。▼一瞥する(手元の書類を。ちらりと。頭から足の先までじろり“新田。刺すような視線で=泉後)。▼目で一瞥する(冷たい。うんざりしたような)。ぱっと見は可愛い印象「笙野。不正な事実を見がにする。目の一掃きで見て取る。目をやる(あたりにちらりと。横顔にちらっと)。ちょっと見では見分けがつかない。ちょっと見には(美しく見える。しゃれた感じの外装。神経質に見える。信頼できそうなタイブの男)。ちょっと見はすこぶる悪い。一目で(首ったけになる。やくざ者と分かる男たち)。せめて一目なりとも会いたい。一目見て気に入る。一目見るなりぴんと来る。 **うすめ【薄目】** 薄目で見る。薄目をぼんやり開く。うっすらと減目をあける。細目で見る。細目を開く。半眼に(開いた目。なってバイブをくゆらせる)。まぶたを半眼に開く。目を半限につぶる。目を半眼に閉じうっすらと半眼を閉じる。 **きれなが【切れ長】** 切れ長のやや釣り上がった限黒岩。目尻の切れが深い。切れの長い目。切れ込みの深い鋭い目。 **けんぶつ【見物】** 大勢の人々が見物に集まってくる。▼見物する(行列を。祭りのように押し合いながら遠藤)。地図を頼りにぼつぼつ要所を見物して歩く=岡本。作法に従って観賞する。熱心に絵を鑑賞する。観覧する(演劇を。試合を)。見学する(学校を。工場を。授業を。お父さんの職場を)。▼参観する(工場を。授業を)。視察する(欧米諸国を。現地を。工場を。被害状況を。お忍びで)。拝観する(大仏を。仏像を。文化財を。本殿を)。▼拝見する(お手並みを。顔を。手紙を)。観戦に夢中になる。観戦する(競技会を。試合を。将棋を。スタンドで)。テレビでスポーツ観戦をする。野球観戦を楽しむ。▼見物人(遠来の。近在からの)。見物人が(大勢集まる。人山を築く。そろそろとくっついてくる。我も我もと寄ってくる。柘榴ぶくの実を割ったようにいっぱいに詰まる=内田百)。見物人を(あっと言わせる。かき分けて前に進む)。沿道の見物が物見高く集まる=舟橋。見物客の数が増す。外の騒ぎが祭りに興じる見物人たちのどよめきのように聞こえる藤本。 **しせん【視線】** ▼視線(堪えがたいものに触れるといったような冷酷な野問。風景や建物を柔らかく包みこむような素朴な連城。無造作に杭を打ちこむような乱暴な=長野。暗中に卒然として白刃を見る思いがする=夏目。意地の悪そうなひんやりとした森瑶。遠慮のない値踏みするような=原田宗。好奇の色を浮かべた細い=石坂。粘性の糸でからめ取るような=中沢)。視線が(一斉に注がれる。落ち着きなく左右に動く。周囲を一掃きする。絞ぁゃをなして乱れ飛ぶ"有局。一点に釘づけになる高橋和。しなやかに受け止められてから濃く絡みつく=日野。吸いつけられたようにビタッと止まる=宇野利。熟豆のごとく後ろ姿に向かって糸を引く荻野。なめるように全身を道ょう佐野。面上にびしりと極もちのようにおちる=本庄。矢のように体中に刺さる=向田)。満座の視線が集中する。胸の谷間に視線が向かう。曖昧な焦点の定まらない視線が宙に浮く=小池。射るように視線が集まる=井上靖。お互いの視線が凍ったように止まる=泉優。軽蔑の視線が執念深い鏃じを無数に突き刺す武田爽。男の視線がむさくるしい蠅はぇのように女のまわりをぶんぶん飛びまわる"阿部。流れ星のように視線が通り過ぎる=小川。背後から視線が冷たい陰気な雨のように背筋を撫でる=小林久。二人の視線が縄のように捻じれて絡まる=獅子。気づまりな視線から逃れる。身を固くして視線から身体を守る=中沢。下半身を粘っこい視線で紙ぇめまわす梶尾。不透明な膜をとおしたような視線でぼんやりと見る=村上糸。視線に(丸みが出てくる。かすかに揶揄ゃゅするような色合いが混じる宮部。棘とげをてんこ盛りにする=村山。激しい敵意の火花が散る=黒岩)。乾いた鋭い視線に気圧けぉされる=小林久。刺してくるような冷たい視緑に耐える!永倉。周囲からの鋭い視線に包囲されたような錯覚に襲われる=小林久。見返した視線にかすかな狼狽的いが揺れる=高橋涼。無視に近い視線に出くわす大庭。▼視線にさらされる(無遠慮な。淫らな)。視線の棘に気がつく=辻真。遠からず意地悪い女の視線の餌食になる=高橋札。秘密の視線の雨滴が首筋に冷たく感触される=武田奈。待ち設けるような視線の中を歩く=大岡。見交わす視線の稲妻三為。視線を(ぼんやりと遊ばせる。まともに受け止める。涙の光で研いで突き刺してくる=連城)。非難の視線をもろともしない。怒りのような強い視線を打ちこんでくる=連城。居心地悪そうに視線を足許はしにさまよわせる=貫井。こちらに注がれる多くの視線を背中に痛いほど感じる=遠藤。彫刻でも見るかのように視線を据える宮部。動揺を隠し切れずに視線をうろうろさせる=原田病。花でも眺めているかのように気楽な様子で視線を巡らせる=原田宗。まともに視線を合わせることを避ける=庄野。 <1055> 目に視線を吸い込んでしまうような力がある=北原。視線を送る(食い入るように鋭い柴田剣。引きつけられるように=有島)。視線を足元に落とす。ぼんやりと宙に視線を泳がせる。当てとのない視線をぼんやり注ぐ=野上。救いを求めるような視線を注ぐ=高橋和。▼視線をそらす(まぶしさに。気まずく)。視線をはね返す(周囲の冷たい。背中で)。▼視線を這わせる(便箋に。頭から爪先まで舐める藤本)。▼満ちた視線(意地悪い好奇心に庄野。固い刺すような敵意に=森瑙。焼き殺すような憎悪に小林多)。▼視線を投げる(物問いたげな。一刀をびたりと青限につけたという具合に手丈夫な!幸田露。いぶかるような=安部。畳針のように鋭い宮部。途方に暮れた倦怠がいの=有局)。内臓の奥まで強烈な視線を投げ入れる=武田癸。放心したような視線を投げかける=永倉。ジロリと厭味ふやな視線をなげかける谷・視線を向ける(疑わしそうな。無愛想な。刃物に似た。火のような)。泣きそうな視線をすがりつくように向ける=武田爽。 **しちょう【視聴】** 世間の視聴を(集める。聳動するというする)。▼視聴する(テレビを。ビデオを)。視聴者の目を画面に引きつける。低い視聴率に甘んじる。高い視聴率を誇る。視聴率至上主義に毒されたテレビ局"篠田。 **しろめ【白目】** 白目が黄色く濁る。白目を剥しいて(息絶える。苦しがる。失神する)。凶暴な三白眼で呪にらむ。 **しんがん【心眼】** 心眼に(浮かぶ。ありありと映る)。心限を開いて見る。心の目が開かれる。 **すかしみる【透かし見る】** ▼透かし見る(吹雪の中を。窓の外の闇を。創先だから波の上を)。透かして見る(ベールを。濡もぐの中を。明かりに。電灯に。日の光に。薄暗い土間の奥を)。透視絵のように透けて浮かぶ!内橋。透視する(腹の中を。部屋を)。 **どんぐりまなこ【団栗眼】** 動物的な生気を放ってくろぐろと輝くドングリ眼石坂。どんぐり眼に真剣そうな色をたたえる=長崎。 **にくがん【肉眼】** かろうじて肉眼で見える。肉眼では見えない。肉眼にまざまざと見えてきそうな風景開高。▼見る(実際に目で。直接)。▼実見する(奇観を。現場を。事件を)。視認する(標識を。帆影を。近くから。遠くから)。目視で確認する。目視により(チェックする。内容を判断する)。 **のぞきみる【覗き見る】** ▼覗き見る(心の奥底を。他人の生活を。人の不幸を。隙間から。節穴から)。自分の体を隠してそっと人の動きを覗き見しているような悪い趣味(水井館。底の知れない深い穴を覗き見るような思い三好欲。覗き見趣味的な読み物。▼垣円見る(人生の深淵辻从を。人生の奥行きを。洗練された世界を)。盗み見る(他人の私信を。乳房のあたりを。胸元をちらちら。物陰からそっと。横顔をちらっと。見てはならぬものを見るように=富岡)。 **ひとみ【瞳】** 瞳(星の如く澄んで微座ふじの濁りも見えぬ子供のそれのような綺麗な"長与。射竦いずめるような=獅子。底に怨念はんを秘めたような高橋和。童女のように澄みきった単純なそれでいてみつめられたものをまどわせるような永井路。遠いところを見つめているようなうるんだ=本庄。燃えるような美しい=中島敦)。▼陣と(どことも知れぬ闇の奥を見つめる内田康。悧巧10にそうな小さく円ぼっくバッチリとした谷崎)。瞳が(悪意に燃える。怒りに燃える。異常な興奮で燃える。くるくるとよく動く。緩やかに中央から右へ流れるように動く=高井。言葉にならない淋しさを浮かべている=中局み。猫の眼のようにすぼまって動かない!大岡。刃のように澄みきる菊池)。相手の瞳が小渦を巻いて私の目の底を射る=内田百。子牛の瞳が深い湖の色をたたえて青紫の水晶のよう=飯田。喷を稲妻のように移す=有局。瞳から光が失せる。濁った光のない瞳でとろんと見上げる=森環。反応を推しはかるような瞳で見据える=原田完。火のような瞳で見る菊池。瞳に(敵意が宿る。哀愁の色が浮く。大粒の涙があふれる。孤独の色を浮かべる。邪悪な影がない。安堵さんの色をにじませる"永井路。暗い炎がきらめく=黒石)。三段抜きの大見出しが瞳に映る。憎悪を喩に焚たく“吉川。昨に刺すような鋭さがある=杉本。ぞっとするほど謎めいた酢の色=半村。瞳から怒りの色が消える。瞳の奥にちらりと気弱な陰が宿る"乃南。仔猫をねらわれた雌猫のような烈はげしい瞳のきらめき=円地。脳を地面に投げる。冴えた瞳をぱっと明るくする谷崎。泥に片栗粉でとろみを付けたような瞳を宙に浮かせる荻野。目の白い部分に朝の光があたり瞳を少年のような潤いのあるものに見せる『高橋二。蒼ぁぉい猶疑の昨恥とをあげてじっと見つめる"石川。黒々とした見出しが瞳孔を射る。▼明眸渺小(さわやかな。深い)。黒目の勝った大きな瞳。ガラス玉のような大きな瞳に怒りをあらわすい水倉。勝ち気そうな大きな瞳が印象的"高木。つぶらな汚れのない大きな眸子と=山本周。▼黒い瞳(ばっちりした大きな。浄福ともいうべき静けさを満たたえた永井路。長い睫毛だっの森の蔭に湖のように湛えられた=福永。圏の夜のように=清水俊)。黒い瞳が夢見るように大きく見開かれる=中島敦。深く澄んだ黒い瞳にどこか人を誘い込むようなやさしさがある=村松。黒い瞳の奥で星が瞬く荒巻。黒目がちな眼の大きい可愛い子供志賀。黒目がちの瞳を大きく見はる=宮部。瞳(黒く濡れた大粒な。黒くて大きく底も見えぬほど深い=本庄)。瞳が(大きくて濡れたように黒い=大佛。黒ぶどうのように濡れている=山田詠)。鳶色にびの目の中に黒曜石のような瞳が輝く内田康。瞳が(妖しく輝く。美しく輝く。輝きを増す。情熱的に輝く。爛々65號と輝く)。 <1056> 歓びのあるときは静かな澄んだ瞳の奥が夜の宝石のように輝く=中島敦。少年のように瞳を輝かせる=軍司。瞳を輝かせて話す。どんな心の野かげりまでも映しとらずにはおかないような澄んだ輝きをもった瞳!永井路。生き生きした輝きを瞳に浮かべる。切れ長の瞳の深い輝き=吉本。瞳が光る。瞳に(怪しい虹色の光がちらついて射るように見る=円地。子供っぽい茶目な光が浮かぶ=福永)。瞳が(異様な光を帯びる。椎しぃの実のように褐色の鋭い光をおびる“大江。虹を呼ぶようにきらきら光っている=瀬戸内)。沈黙の底から淡く光り出すような瞳"高橋和。瞳が黒く人なつこく光る=菊池。澄んだ瞳がこちらの胸底を見通すように光る=綱淵。瞳孔に光が宿る。 **まなざし【眼差し】** 眼差し(何か見据えているようなくせに何も見てはいないらしい空虚な堀。深い湖のような憂いに満ちた静かな三浦絵。深い欲いっびを満たたえた穏やかな"中島災。悪戯かな孫をなだめるような遠藤。いたわりをこめた愛情の=筒井。おっとりとした柔らかい=山本周。思い募ってゆくふうのキラキラ光る=植。疳かんのビリビリしているような"小林多。気づかれぬように心を配った=原田康。好意のあふれているといったようなあたたかい=山手。親友を発見したような人なつっこい林美。底に鋭さのひそんでいそうな探るような=原田脈)。▼まなざし(思わずたじろぐほど強い光を持つ澄んだ=光瀬。澄んだ水のような=高樹。にこやかな微笑を包んだような"本庄)。眼差しが慈愛に満ちた光を帯びる三好後。憂愁を湛えた清らかな眼差しが細く輝きを帯びる=横光。賛嘆の眼差しで見とれる。真面目な眼差しで問いつめる。物憂げな眼差しであたりを眺める。射るような眼差しで見る芝木。食い入るような眼差しで注視する和久。掬すくいあげるような眼差しで詰め寄る"藤本。眼差しで見つめる(深い愛情のこもった三好微。焼けつくような人間)。焦点の合わないまなざしで虚空を見つめる=重松。眼差しに(とげがある。哀愁の影が宿る谷崎。深い悲しみが宿る藤本)。まなざしにこすっからい閃必らきが走る=開高。夢見る如きまなざしをして眺める=国木田。きらりと怒ったような眼ざしを投げる=伊藤整。・すがりつくような眼差しを振り切る。羨望の眼差しを浴びる。気味悪そうなまなざしを投げかける瀬戸内。悲しみをひそめたようなはげしい眼差しをそそぐ=原田康。見つめるともなく鈍いまなざしを注ぐ=古井。 **みかた【見方】** ▼見方(意地の悪い。穿ぅがった)。見方に誤りがある。一面的な見方にすぎない。▼物の見方(客観的な。生ぬるい。古臭い)。物の見方が(がらりと変わる。みみっちくなる)。物の見方のコベルニクス的転回"中野孝。いろいろな観点から研究を進める。▶見地(科学的な。教育的な。人道的な。道徳的な)。別の視角から見る。見ようによって異なる評価。 **みたい【見たい】** ▼見たい(親の顔が。折あらば一度。一目なりとも。死ぬまでにもう一度)。見たがる(怖いものを。テレビを)。二度と顔を見たくない。 **みている【見ている】** 見ている(一部始終を。細大漏らさず。懐手をして。指をくわえて。一心不乱に鏡を。ぼんやりと外を。事態の推移を冷静に。息を詰めてじ「口をぽかんと開けて。身じろぎもしないで。うっとわの空で目があさっての方を"宮部。目を慣らそうとでもしているようにぼんやり部屋の中を=辻井)。ていて(じれったい。歯がゆい。気持ちがいいほどの手際の良さ=阿川佐)。 **みてしまう【見てしまう】** 見てはならぬ姿を見てしまう。行きつく先を視てしまったよう!立原。胸元へつい目がいってしまう=原田宗。 **みてとる【見て取る】** ▼見て取る(素早く。事態の重大さを。敏感に人となりを。全容をつまびらかに)。見て取る(怨を晴らすチャンスと。所詮かなわぬと。目敏く息學の変調を貫井。服装を眼の一掃きで=岡本)。ただならぬ妖気が見て取れる。▼看取する(情勢を。先方の意向を。一瞬のうちに。ただならぬ気配を)。 **みない【見ない】** 見ない(木を見て森を。他国に比を。他に類を。容易に一致を。顔をろくに。古今東西に例を)。まだ見ぬ(山水に憧れる。風俗に憧れる)。日光を見ずして結構と言うなかれ。後も見ずに歩き始める。後ろも見ずに逃げる。見ていない(以後進展を。まだ定説を)。かつて一度も見たことがない。これまでついぞ見たこともない。ついぞ見たためしがない。一心方もくれない。活字の上を視線が素通りする。未見の(土地。文書)。▼見損なう(評判の映画を。見たかった芝居を)。▼目もくれない(女に。男性などには。かたくなに仕事の他には)。 **みる【見る】** ▼見る(意見の一致を。客の足元を。社会の現実を。素敵な夢を。顔をまともに。疑い深い目で。事物に即して。別の角度から。世の中を甘く。濁らない目で物を。一通りの完成を。落第の憂き目を。ルームミラーで後部座席を。今でも時々夢に。二人の顔を交互に。物事を立体的に。青ざめた表情で。上から覗のっき込むように。探るような目つきで。自分の姿を鏡で。書類をひっくり返して。前方をまっすぐ。何度も繰り返し。密かな勝利感をもって。人垣の間から背伸びして。陽の光にかざして。面倒を何くれとなく。自宅でこっそり。心配そうな目でそっと。自由に泳がせてしばらく様子を高木。放心したように一点を"五木。ゲップが出るほど高橋源)。▼観る(映画を。芝居を。手相を。サッカーの試合を)。きょろきょろ見回す(物欲しげに。いぶかしそうにあたりを杉本)。透かすように見る(波開を。暗い中で)。▼見て来る(現場を。実物を。嫌になるほど。世の中の仕組みを)。小さい時から地獄を見てくる=渡辺。▼見に行く(面白い芝居を。 <1057> 応援かたがた。恐る恐る)。▼目を落とす(手紙に。床に)。見てきたような(言いぐさ。文章を書く)。・一覧する(編成を。目録を)。▼うかがう(戸の隙問から。観察するように横から=松本)。原稿を問する。刻々の動きを眼底に写し取る。御高覧に供する。老女に視線を張りつける。会場の下見をする。姿を視野に入れる。視野の中にとどめる。隅から隅まで目を通す鈴木光。遺影を拝する。話の種に見ておく。見るともなく(見る。目に収める)。姿を目に入れる。 **め【目】** ▼目(人間を眺めあきたような気だるげな「有島。青い炎が燃えているような=内館。うっすら赤味を帯びる陶器のような高樹。心もとないほどに澄んだ古井。魚の腐ったような=宮本观。柔和な象のような=加賀。まばたきすると涙がこぼれそうなうるんだ『向田。眼鏡の奥の米粒のような=岡田)。▼限(鼠和ずのように小さな!遠藤。紫陽花話にほど碧ぁぁい野上。暗い怯ぉぃえをふくんだような=勝目。暗い二つの穴のような森玲。暗い不断の苦しみがもれ出ているような野間。子供みたいにぼかんとした室生。猜疑終いを宿しているような暗い藤沢。ただれたような赤い=宮沢。冷たいほどの美しさをたたえた新田。食慾な小さなブタのような=開高。猫のように輝いた青い=伊藤整。藻の重なる中心だけを黒く残して表面を白く反射させる深い沼を想わせる=武田泰)。目が(活字の上を滑る。真っ赤に充血する。相手の心まで見抜くようにじっと動かない=梅本。まわるように忙しい西木)。限が(象のように細くてやさしい『島尾。泣いているように潤む=福永)。本棚に目が行く。狐憑は?きみたいに眼が据わる=石川。酔っぱらった人のように目がすわっている灰谷。目から涙がこぼれ落ちる。目で(合図を送る。制する)。▼目で追う(後ろ姿を。活字を。字幕を)。目と目が合う。目に(怒りがこもる。涙を溜める。憎しみがこもる)。▼目に収める(姿を。全景を)。▼目にしみる(煙が。柳の新緑がはっとするほど明るく映えて"加賀)。▼目にする(惨状を。たまたま。初めて。まざまざと)。走り書きを目にとめる。限の単さんが綺麗に咲く=堀。目のつぶれそうに高価な土産物を持参する"阿久。汚らしいというように眼の隅で院にらむ=伊藤彩。目の隅でちらりちらりと見やる。人影が目の隅に入る。眼のふちが紅くなるほど泣く島崎。限の縁に限脂が溜まる谷崎。目の縁に輪が立って甚だ不機嫌な様子内田百。ハンカチをそっと目の縁に押し当てる。眼を洗われて蘇生にせする思い松本。やり場のなくなった眼をキョトキョトさせる=安岡。居並ぶ人々に炎のような目を当てる=光瀬。正面から眼を当てるのも気の毒なほど憔悴れい,する井上靖。酔いのまわった潤んだような目を泳がせる高樹。途方にくれたような目を宙に泳がせる"小林久。左右に目をくれる。▼目を注ぐ(じっと。ぼんやり)。隅ずみまで点検するような眼を注ぐ=高井。目をとめる(記事に。宙に)。前方に迫りつつある島へと目を馳せる。▼目を伏せる(悲しげに。考え込むように)。▼うつろな目(どこを見ているのか解らない"中沢。熱に犯されたような“三島)。陶酔したようにうつろな目をする=大原。▼鋭い眼(警戒するような原田康。経験と体力を秤にゃにかけるような新田)。非難するような鋭い目=山田太。百舌鳥もずのような眼で見る=獅子。夢からさめたようにぽっかり目を開ける=畑。心の目がだんだん開かれる=壺井。▼吸い寄せられる(一枚の写真に目が「永倉。目が新聞の記事に"人間)。絵に眼を吸われる=円地。目もくらむような(暑い暑い夏の真昼=中島み。絶壁にへばりつく加賀)。眼もくらむような安堵はんが身内に広がる森環。目もくらむほどに遠い道藤沢。目のさめるような(素敵な女の子。鮮明な海の青)。ぎょろりと黒目を動かす。深く落ち窪くばんだ眼窩がん。▼大きな目(くりくりした。黒目がちの)。▼大きな眼(潤んだような。空色の愛くるしい=中島敦)。細い目(狐に似て尖とがった口と=日野。笑うとあかぎれが口をあいたようになる=向田)。怒ると細い目が剃刀劫になる―連城。眼が腫れたように細い藤枝。おふくろの手にできていたあかぎれみたいな目向田。細い限(すすきで切ったような新田。眠っているような=円地)。大きな眼を糸ほども細くしてじっと敵陣のほうを見守る=山本周。眼を築がょのように細くする"大岡。酔ったように眼を細くして叫ぶ=中島敦。目を細めて笑う。▼眼を細める(思い出でもさぐるふうに感。日がまぶしくてかなわないというように=中上。昼の女猫のように"黒岩)。獲物を見つけた猫のような丸い目で見る=横山。あどけない丸い目を大きく隙って見る佐藤愛。丸い眼(達磨球ものように。子供っぽいくりくりした太宰)。張必っみたいな丸っこい眼吉川。幼児のように眼をまるくする=大江。丸い眼が黒い隈くまの中で狸の眼を想わせる=大庭。目が輝く。目が(生き生きと輝く。ぎらぎらと輝く。濡れたように輝く落合。炎のように郁く光瀬)。消えかけた燠ぉきがばっと炎をあげた時のように眼が輝く大庭。見開く目が燃えるばかりに輝く“山田美。お祭りでも来たように眼を輝かせる=椎名り。きれいな目を星のように輝かせる=山手。眼(炊きを底に秘めている=高橋治。黒曜石のように輝いた新田。すぐりの実のように暗褐色にかがやく大江。澄みきって冷たい水晶のように耀く=福永)。戦いを挑んでひけはとらないぞというようなきらきらした目=幸田文。目が光る。眼が射るように光る=横光。眼が猫のように気味悪く光る=高見町。濡れたように光る目で見つめる=阿久。眠たそうな目が時折刃物のように鋭く光る=小林久。物の怪物に恐っかれなたように眼を光らす徳永。猛禽ものように眼を光らせる有吉。金属のような光沢をもった目多岐川。 <1058> 猛にうな肉食獣の燃えるような精悍せ心な光が眼から放たれる吉村。目に真剣な光が宿る。目が(磁器のように光る=海音寺。びいどろのようにきらきらと光る=梅本。蛇みたいな光を帯びる宮本舗)。▼眼(蛇のように底光りする藤沢。真っ黒で微熱でもあるみたいに光っている=原田爽)。▼目を光らせる(炯々サいと。追いつめられた小動物のように三島。びいどろの玉のような=梅本)。西瓜村ぃの種子みたいに小さいが黒光りする目=向田。眼に(挑むような鋭い光が走る遠藤。鳶とびのような光が走る=水上)。光のない弱々しい眼"石川。眼がとろんとして光を失う水上。両眼が朦朧として光を失う菊池。▼目を閉じる(眠るように。暗闇にひきずり込まれるように『村上巻。めまいに堪えるかのように柴田翔)。▼眼を閉じる(観念したように=新田。急に光の襲い込んだ窓をあわてて鎖とだそうとするかのように野上。力尽きたようにそっと渡辺。疲れ果てたように『森聡)。花がしほむように眼が閉じられる“石坂。▼目をつぶる(死んで行く人のように=大佛。夢の続きを見ているのだと自分自身に言ってきかせるかのように再び=堀)。つぶる(高僧のように眼を"小局。人の世を遠ざけるように眼を堅く=夏目)。安心したように目をつむる三浦哲。▼目を走らせる(書類に。新聞に。きょろきょろ。さっと。ちらっと)。触覚が視覚に転移したといわぬばかりに女の体のあちこちに視線を走らせる"中村庭。目を見開く。▼見開く(目をかっと。眼球が飛び出すほど眼を有吉。瞳が張り裂けるほどに目を"阿久。放心したように両目を一杯に"日野。目をこぼれんばかりに=小池。はじかれたように目を大きく“内田康。二つの目を暗い洞窟のように小川。眼を放心したように安岡)。物に憑かれた者のように大きく目をみひらく"大佛。あら、という表情で眼を大きく見開いて見る=黒井。鳥のように大きく見ひらいた目"堀。目が通常の三倍の大きさに見開かれる荻野。もっとも大きな目がさらに大きくコーヒーの受け皿のように見開かれる=井上ひ。目を鈴のように大きく張る=有鳥。大きく開く(雷に打たれたように目を村上側。眼をもうこれ以上は開けないというほど=渡辺)。▼目を向ける(探るような。意味をとりかねたようにけげんな浅川。定規のようなしっかりした=連城)。眼を向ける(驚いたような。とがめるような=新田)。▼目をやる(腕時計に。写真に。外の光景に。天井に。遠い青空に。ボスターに。向かいの家に。注意深く。ほんやりと。見るともなしに。冷徹な歴史の変遷に)。 **めじり【目尻】** 目尻が(下がってくるほどうれしい!壺井。井。ちょっと上がって引きしまった顔立ち川端。きちぎれるように痛いほど目が吊り上がる=阿久)。目尻から涙が一筋すっと流れる=灰谷。目尻に(笑い皺じゃを刻む。ハンカチをあてがう。笑いを浮かべる。縮緬じわが寄る=ねじめ。見える烏からの足跡"伊集院)。目尻を下げて喜ぶ。表情を崩して目尻を下げる。まなじりが切れ上がったまぶた。まなじりを吊り上げる。つりあがった阰はにが凶相を帯びる!斎藤栄。 **めせん【目線】** ▼目線(上からの。軽蔑したような。値踏みするような)。子供の目線で見る。意味ありげな目線を送ってくる。カメラに目線を送る。値踏みするような目線を向ける。背後に目線を感じる。気弱に目線を泳がせながら話す八谷村。 **めだま【目玉】** 目玉が(きょろきょろ動く。飛び出しそうに高いレストラン=江國)。目玉を(ぎょろりと例もく。ぐるりと一回転させる)。くりくり目玉を動かす。鍾馗儿社のごとく目玉をひき剥く柴田泌。目玉のようにギラギラした大きな指環人谷崎。死んだ鯖さはの目玉のように澱ょとんだ頭の中=中沢。眼球が飛び出してしまうほど怖れ戦味のく萩原葉。貝の身のように中からそっと覗のぞいているむっくりとした眼の玉谷崎。目の玉がでんぐり返るほどの会費=胡桃沢。目の玉の飛び出るような料金を請求される=氷室。 **めもと【目元】** 目元に(小皺にしが寄る。笑みを浮かべる。かげりが横切る。爽やかさが漂う。知的な輝きがある。涙をにじませる。ほほえみの余韻を残す)。目許もに面映はもゆそうな微笑が漂う外村。まつ毛の長いすずやかな限もと=林关。 **よこめ【横目】** 横目で(そっとうかがう。ちらちらと眺める)。行列を横目で児にらむ。肉屋を横目でにらんで魚屋に入る=向田。▶横目で見る(胡散臭さんそうに。気味悪そうに)。横目に見ながら通り過ぎる。ちらちら横目をくれる。年老いた道楽者のように横目を使う清水食。横目づかいににらむ。 **りょうめ【両目】** 傷つきやすい魂が傷つききって両目に露出しているような目=日野。両目が(炯々サいと光り輝く。弾かれたように開く=高橋三)。両限が(磁石で吸いつけたように寄る=阿久。針のように細くするとい光を放っている=池波)。両目から涙があふれ出る。両眼に青白い殺気が浮いて出る=池波。両目に涙をためる。両目の下に隈ができる。毀こぉれた人形みたいに両眼をボッカリあける"安岡。二つの眼が蛇のように動かず見つめる=長与。目が皴しゃくちゃな顔の中に澱んだ二つの水たまりのよう=中沢。双眸(生き生きと輝く。迫った眉の下に燃ゃしのように光る=中村真)。双眸が(ネオンサインのようにびかびか輝きだす井上ひ。不安に負けまいとする励みで輝く=佐多。炎のように燃える=光瀬)。二重瞼払総様の双眸が理知的な輝きを持つ=新田。双峰から涙があふれる。双眸に妖しい情熱の光がちらちらと燐りんのように燃えている=山本周。 **わきみ【脇見】** 脇見している間に勝負がつく。よそ見わきみをして石につまずく。ぎこちなくよそ見をする=岡本。 <1059> # 向かう・振り返る **いっぽう【一方】** ▼一方(成績が下がる。景気がますます悪くなる。年を追うごとに数が増える)。一方が(他方を制約する。他を押しのける)。一方に(偏る。首を動かす)。おとなしい一方の娘。一方を青く他方を赤く塗る。片端を(つまむ。結びつける)。乱暴だが他方優しいところもある。うれしい反面寂しくもある。 **かたほう【片方】** ▼片方(下駄の。草履の)。夫婦の片方が亡くなる。▼片一方(靴下の。下駄の。手袋の。夫婦茶碗の坊にちの)。片側一車線の道路。片側が低い。片側を走る。 **きた【北】** 北に(向かって走る。山を控える)。▼北にとる(航路を。進路を)。北へ北へと進む。南から北へ渡る。一路北へと向かう。北を(向く。目指して進む)。磁針が北を指す。北方に位置する。▼北上する(桜前線が。川沿いに。海岸に沿って。黒潮に乗って。日本海を一直線に。満開の桜を追って)。街道を北進する道すがら目にとめる。 **きたぐに【北国】** 北国の(蒼々しいいとした冬景色。春は爆発的にやってくる=畑。吹雪につつまれた長い夜=加藤)。低い屋並みが北国らしくじっと地に伏したよう川端。北の国の海を見るような暗い表情大佛。 **さゆう【左右】** 左右が入れ換わる。左右から挟撃する。崖に左右から挟み込まれる。商店が道の左右からせめぎあう。左右に(目を走らせる。首を振り動かす。視線を泳がせる。テールを滑らす。手のひらを打ち振る。ぴんと跳ね上がった髪!高樹)。体を左右に揺らしながら歩く。駄々っ子のように体を左右に揺する=阿川佐。迷うように黒目を左右に動かす=束野。左右の(長さが不揃い。平衡を保つ。釣り合いがとれる)。左右を注意深く見る。きょろきょろと左右を見回す。道の左右を眺めやる。左から右へ移動する。姿が左から右へと視界をよぎる。体重が右足から左足に移る。右から左へ(貸してやれる。視線を動かす)。右と左を取り違える。右に左に(舵がじを切る。逃げ惑う。ゆらゆらと揺れる)。話が右の耳から左の耳へと通り抜ける蔻沢。右も左もわからない新人。分かれる(右と左に。道が左右二手に=氷室)。左右一対の神経系。左右対称に配置する。右左を(間違える。よく見て道路を渡る)。右左に別れる。 **しほう【四方】** 四方から攻撃を開始する。四方に(伎を張る。手を伸ばす。業を広げる。火が燃え広がる)。心を四方に配る。さっと四方に散らばる。悲鳴が四方に響き渡る。四方へ兵を送る。四方を建物に囲まれた中庭。四方の(海。山々。大観をほしいままにする)。三方丸く収まる。三方に目を配る。三方を山に囲まれる。▼四通八達する(鉄道が。陸路が)。四通八達の坑道を抓りめぐらす。百方(手を尽くす。なだめる)。四方八方から(取り巻かれる。質問の矢を放つ。敵が押し寄せてくる。怒声が飛んでくる)。足音が四方八方から近づく。四方八方かき分けて盗人を追う。破片が四方八方に飛び散る。火の粉が風にあおられ四方八方に飛ぶ=中上。四方八方の山から霧が押し寄せる"三浦し。蟬せぃたちが四方八方へ声を散らす眉村。八方(丸くおさまる。手詰まりになる。手をつくして探す)。八方から(手が伸びる。敵が押し寄せる)。疑いが八方から胸をしめつけて来る石川。八方に(目を光らせる。声をかけておく)。声が八方に漏れる。 **しょうめん【正面】** 正面から(質問に答える。撮った写真。いじめに立ち向かう。死に向かい合う)。風を正面から受ける。自己何責砂しに正面から向き合う。視線を正面から受け止める。堂々と正面からセールスする。顔をひたと正面に向けて話す。視線を正面に戻す。食卓を挟んで正面に座る。ビルの正面に出る。山が正面にそびえる。正面の(壇上に座る。敵に当たる)。正面を向いて腰かける。真っ直ぐに正面を見つめる。正面玄関を入る。▼正面衝突する(自動車が。利害関係が)。正面衝突を起こす。 **ぜんご【前後】** 前後が逆転する。前後から挟撃する。前後に(体を揺する。比類のない功績)。ふらふらと休が前後に揺れる。両手を前後に振るう。前後の(分別を失う。考えもなく逃げ出す。つながりがおかしい。見境もなく承知する。わきまえもなく承諾してしまう)。前後を(考える余裕がない。知らず深い眠りに落ちる。深く考えもせずに放言する。失うほど激昂ぶ”する=村上元)。恍惚にっと前後を忘れる。話が前後する。相前後して(出て行く。入ってくる)。相前後する(情報が。説明が)。前後左右に揺さぶる。前後不觉に(なって眠る。なるほど酔っ払う宮部)。百位前後をうろつく。狭い道を一人ずつ前後ろになって歩く。後先考えず走り回る。濁らせ逃げてしまう泥鰌汇野郎室生)。順序が後先無茶苦茶になる。順番が後先になる。あとさきも見えぬほどのぼせ上がる=海音寺。後先も考えずに家を飛び出す。うれしくて後先も分からぬようになる。後先を考えずに口を滑らす。 **ぜんぽう【前方】** 前方に(丘が迫る。霞む山脈。視線を向ける。注意を払う。車の尾灯が見える)。前方の(信号を見つめる。見通しが利かない)。真っ直ぐに前方を向く。道の遥か前方を指差す。微動だにせず前方を見つめる=貫井。 **ぜんめん【前面】** 舞台の前面に登場する。国旗を前面に立てて公然と抗戦する=塩野。▼前面に押し出す(恐怖を。冒険を。恋愛を。若さを)。▼前面に出す(成情を。危機感を)。攻撃の矢面に立たされる=篠田。▶矢面に立つ(苦情の。抗争の。非難の。批判の)。 <1060> # 向かう・振り返る **そくめん【側面】** 違う側面が浮かび上がる。負の側面が明らかになる。日を背にした山の側面が煙ったように紫色をしている=志賀。側面から(援護する。攻撃する。支える)。敵の側面を祈っく。過程の全側面を考慮する。一面がある(ユーモラスな。隠された。人なつこい)。気弱な一面を見せる。 **なんごく【南国】** 南国の(情緒豊かな町。ぎらぎらした太陽を浴びる。情緒にあふれる。強い太陽がさんさんと降る=宮尾。光の充溢;を自己のうちに吸い込んで明るく輝く柑橘類みん柴田翔)。太陽がにょっきり顔を出し南国の強烈な真昼がうずうずして起き上がる=島尾。目鼻立ちのはっきりした南国の花を偲しのばせる面差し=阿刀田。南海に散らばっている数多くの島。南海の孤島。遥かな南方の土地。南涙必以に散った戦友。南浜の海の彼方に消える。まぶしい南洋の陽光を受ける。遥かな南の島。どことなく南の国の春の暖かい夜を思わせるぬくもり“伊藤悠。 **なんぼく【南北】** 南北に(長い島。分割する。分断される。道が走る)。市内を南北に縦貫する。線路が街を南北に割っている=なかにし。縦貫する(日本を。本州を)。縦断する(中央を。日本を。本州を)。 **にし【西】** 国道を西に向かう。進路を西に取る。四つ辻を西に折れる。西の空が少しずつ紫色から灰色へ変化する=島尾。暮れ残った西の空。西へ東へ歩きまわる。一路西をめざす。西も東も(他人ばかり。わからない田舎者後藤。分からない年頃=島尾)。 **ひがし【東】** 山を東から巻く。束に(位置する。丘陵が続く)。進路を束に取る。進路を東に向ける。道が東に向かって延びる。東の空がしらじらと明ける。黎明幼心が東の空から湧く。束を向く。東方を遥拝する。 **ひだり【左】** 舵かじを左に切る。頭を左にかしげる。川の左にそびえる山。進路を左に取る。ハンドルを左に回す。左に折れる(通りを。曲がり角を。街角を。廊下を。路地を)。▼左に曲がる(交差点を。通りを)。右手を左の胸にあてがう。左を(ガードする。向く。フエイントする)。信号を左に入る。左側車線を走行する。左側の車線に移る。左側を歩く。左手に(道をとる。海を見ながら走る)。中庭を左手に折れる。道の左手に海が広がる。 **ふりかえる【振り返る】** ▼振り返る(過去の生活を。後部座席を。声のした方を。来し方を。子供の時を。この二十年を。淡々と過去を。人の気配に。門を出しなに。足を止めて。立ち止まって。心静かにその日を。今日に至った軌跡を。楽しかった日を。長かった旅路を。何の気もなく後ろを。玄関を出がけに。自己を客観的に。何か言いたそうに。反射的に声のした方向に。肩越しにそっと。背後の建物をちらりと。半生をしみじみ。道行く人々が驚いて。名残でも惜しむように家を壺井。後ろ髪を引かれるように=福永。過ぎた戦いの日々をひとつひとつ半村。そうっと息を殺して=さだ。隣に足でも踏みこんだときのように眉根を寄せて=徳永。道行く人が好奇心をむきだしにして"北原。物音にびくっとした様子で柴田翔)。振り返る勇気がない。▼日々を振り返る(遠い。娘と過ごした)。▼振り返って見る(周囲の者が。道行く人が。後ろを。たびたび)。振り返りもせずに歩いて行く。決して後ろを振り返らない。▼眺め返す(生涯を。事の成り行きを)。未練そうに後ろを見返る。 **ふりむく【振り向く】** ▼振り向く(来た方角を。背後のドアを。驚いたように。距跡がでぐるっと。声のしたほうを)。▼後ろを振り向く(くるりと。はじかれたように藤沢)。振り向きざまにどなる。 **ほうがく【方角】** 鬼門にあたる方角。水桶扱げの中へ顔を突っ込んだときみたいに皆目方角がわからない岸田。とんでもない方角に行く。よし西と東と方角は違っても。どちらへ歩いていいのだか方角もたたきょろきょろと見回す。駅の方角を指さす。方位が(よい。悪い)。星で方位が分かる。 **ほうこう【方向】** 矢印の示す方向。方向が逆になる。思い思いの方向に散って行く。とんでもない方向にそれる。矢印の方向に向かう。考えてみたこともない方向に思いが走る!高橋治。今来た方向へ引き返す。思い思いの方向へ走る。文化が一方的な方向へ流れる。あらぬ方向を眺める。くるりと方向を変える。多様化の方向をたどる。てんでんばらばらな方向を向く。方向感覚が狂う。方向感覚を養う。方向性を(明らかにする。打ち出す)。方向転換を急ぐ。風の向きが変わる。向きを元に戻す。くるっと向きを変えて走り去る。 **みぎ【右】** 車を右に寄せる。突き当たりを右に曲がる。村の中心部を右に逸れる。右に折れる(信号を。通りを)。右に切る(舵かじを。ハンドルを)。右の(道に入る。巻を左の欲7060に打ち当てる=村松)。右へ(机をずらす。ならえ)。進路を右に(変える。取る)。右而の車線に移る。右側を歩く。右手に(視線を移動させる。神社の森を望む)。 **みなみ【南】** 南からやって来る。進路を南に取る。南の方角を指さす。南へ向かう(北から。真っ直ぐ)。南を目指して進む。日当たりのよい南面。南下する(親潮が。寒流が。紅葉前線が。街道を。海岸線に沿いながら)。沿って南下する(海に。川に)。線路沿いを南に下る。 **むかう【向かう】** ▼向かう(足早に家に。暗雲が解消に。安全な水域に。季節が寒さに。合流地点に。事態が収束に。遭難現場に。真っ直ぐ天に。峠を下へ。思い出の場所に。救急車が病院に。軽快な足取りで駅に。事態が最悪の方向に。どやどやと入り口に。とりつくろった顔でカメラに。走り書きを残して死に。パソコンの画面に。ブームが下火に。船を仕立てて鳥に。 <1061> 厄介な問題が一挙に解決に。一丸となって目的へ。斜面を巻いて山頂へ)。徐々に快方に向かいつつある。今来た方向と反対側に向かって歩く。海に向かって開いた奥深い谷。大空に向かって羽ばたく。それが親に向かって言2言葉か。机に向かって終日を暮らす。天に向かって感謝したい思い。都心に向かって車を走らせる。面と向かって嫌味を言われる。目的に向かって邁進はいする。肩でつっかかるように向かって行く=小林多。一直線にこちらに向かってくる。金融危機を収束に向かわせる。▼立ち向かう(強大な敵に。苦難の人生に)。 **むく【向く】** ▼向く(自然に足が。駅の方角を。同じ方向を。正面を。ひょいと上を。ぶぶと後ろを。まっすぐ前を。心が他に。くるりと向こうを。恥ずかしそうに下を。ぷいとそっぽを。不快そうに脇を。巡勢がよいほうに。ベクトルが同じ方向に)。足の向くままに歩きまわる。気の向くままに出かけて行く。いい巡が向いてくる。くるりとこちら側に向き直る。事業家に向かない(会社に。まとめ役に)。▼向きを変える(ぐるっと体の。船がゆるゆる。飛行機が翼を傾けて。小魚の群れが一斉に=池澤。野兎約のようにぴょんと跳びあがって熊熊谷)。 **むける【向ける】** ▼向ける(計画に心を。険しい表情を。しきりに水を。攻め口に兵を。満面の笑みを。関心を過去に。車首を出口に。話をほかに。砲門を陸地に。指を空に。ライトを天に。新しい方向に事業を。甘ったるい笑顔を。いたわりの眼差しを。遠慮がちな瞳を。くるりと背中を。窓の外に視線を。向けるともなく足を。カメラを前方に。視線をそっぽに。手をくるりと内側に。船が針路を西南に。放心した目を宙に。眼差しをぼんやりと遠くに。顔をあらぬほうへ。長槍の穂先をぴたりと。すがるような目を夫に"東野)。背を向ける(海に。怒ったように)。真っ直ぐに視線を向けてくる。世間に顔を向けられない。目も向けられないほど輝く有段。ねじ向ける(体を。首を)。指向性の(アンテナ。マイク)。 **むこう【向こう】** 襖ぃす一枚隔てた向こう。向こう十年くらいは耐えられる。海の向こうで戦火が燃える。丘の向こうに雲がまぶしく光る。川の向こうに茜色冷砂もの夕景が広がる。木立の向こうに明かりが漏れる。西日が家並みの向こうに落ちる。向こうの出方次第。壁の向こうの声。はるか向こうの島。ガラスの向こうを見る。巴御前にも似の向こうを張る。ふてくされたように向こうを向く。 **やりば【道り場】** ▼やり場がない(憤りの。鬱憤の。激情の。目の。重苦しい気持ちの)。視線のやり場に窮する。目のやり場に困ってあわてる。▼やり場に困る(精力の。振りあげた拳の)。やり場のなくなった眼をキョトキョトさせる安岡。やり場のない(憤懣んを覚える。怒りがこみあげる。苛立心らちが収まらない。悲哀と憎しみがこみあげる)。やり場を失った怒りのこもった声。目のやり場を失っておろおろする"原田家。 **よこ【横】** 横から(口を挟む。助け船を出す。手を伸ばす。覗のぞき込む。話を奪う。甲高い声が飛んでくる。話に割って入る)。観察するように横から窺らかう松本。横からの突風。横に(座る。並ぶ。広がって歩く。ぴったり寝そべる)。刀を横に払う。口を横に結ぶ。火が横に這ょう。頭を激しく横に振る。板を横にずらす。枝が大きく横に広がる。カーテンを横に引く。顔をつと横にそらす。首を横に傾ける。ぐらぐらと大きく横に揺れる。煙が横に流れる。ごろりと横に転がる。竹の棒を横に通す。つつと横に流される。手を横に振ってぴたりと横に張りつく。船がかすかに横にかしぐ。村を横に突っ切る。蟹かにのように横に歩く=大藪。▼横に向ける(顔を。体を。視線を)。横にも縦にも大きくなる。でっぷりと肥って縦より横の方が広く見えそうな軀炒。安岡。絵を横へのける。ひょいと横へいざる。横向きに(倒れる。寝る)。体を横向きにする。くるっと横向きになる。素早く横をすりぬける。広場の横を左に折れる。黙殺するように横を通り過ぎる。▼横を向く(冷ややかに。すねたように。つんと。ぷいと。むっとして。ふてくされたように=黒井)。▼首を横に振る(言下に。いいやと。はっきりと。弱々しく。どう泣きつかれても)。横一列に並ぶ。横ざまに(倒れる。抱きかかえる)。風が雪片を横さまに郷い飛ばす。肌身を横ざまに倒しかける。一陣の風が松明封での火を横ざまに吹き流す"福永。横滑りの人事。帽子が横っちょにずれる。帽子を横っちょにかぶる。横っちょを向く。横手を(追い抜く。駆け抜ける)。 **よこあい【横合い】** 横合いから(手を出す。殴りかか。覗のぞく。ひょいと取りあげられる。もう一人が応じる。出てちょろりと横取りする"有吉)。横合いから口を(出す。挟む)。横合いの道から飛び出してくる。 **よこがお【横顔】** ▼横顔(眼をみはるようにさわやかな石坂。相手の感情も存在も吹殺しているような冷たい=大佛。白い木蓮の花のように白い佐藤春。天女のように美しい若竹。風雪を経た男のきびしさとやさしさがあるような平岩。醜さを恬然としてさらけ出しているような=高見順)。横顔が(面やつれして見える。冷たく引き締まる)。うつむいた横顔が嗚咽ぇしているように哀かなしげに見える=小川。太陽が雲問に入ったように横顔が曇る=森境。ひきしまった横顔がとても魅力的"五木。横顔に(寂しげな影が生じる。ぼっと紅が浮かぶ。満足感が浮かぶ)。横顔をちらっと盗み見る。こぶしを横っ面に叩きつける。横っ面を(なぐりつける。ひっぱたく)。札束で横っ面をはたく。 <1062> # 迎える・見送る **うしろすがた【後ろ姿】** ▼後ろ姿(白い紙片が風に吹かれて路上を転がって行くような黒岩。まるで影のような高見順)。後ろ姿が(印象的。小さくなる。遠ざかる。目の底に残る。寂しそうに見える。視界から消える。寂寥せりの影に満ちる。どんどん小さくなる。人の波の中に消える。ぽつんと見える。まぶたの裏に浮かぶ。目に鮮やかに残っている。闇の中に消える。陽炎分がみたいに揺れて見える=角田。暗い山の底に吸われて行くように川端。残像のごとく残っている"村松)。肩を落とし背を丸めた後ろ姿がまるで見えない荷物を背負っているように見える落合。後ろ姿に(哀感が漂う。頭を下げる。声をかける。向かって叫ぶ)。遠ざかってゆく後ろ姿に叫びかける。後ろ姿を玄関から見送る。立ち去っていく後ろ姿を凝視する。後ろ影に苦悶々もがにじみ出る。 **おうせつま【応接間】** ▼応接間(重々しく飾りつけた。趣味のよくない)。応接間に案内する。応接室に通す。膳を客室に運ぶ。客問に通す。 **おくりだす【送り出す】** 送り出す(最後の客を。子供を願に。画集を世の中に。立派な生徒を世に。裏門からそっと。切り火を打って)。壮行会を催す。声涙ともにくだる壮行の辞。壮行を祝する。 **おくりむかえ【送り迎え】** ▼送り迎え(学校の。保育園の)。送り迎えする(朝夕愛児を。車で、心静かな日々を)。送り迎える(歳月を。四季を。同じような日々を。多忙きわまりない日常を)。高齢者を送迎する。送迎用の車。 **かんげい【歓迎】** 歓迎の(意を表する。言葉を述べる。辞を述べる)。全身を歓迎の微笑で包む"中村真。月並みだがあたたかい歓迎の言葉"塩野。歌と踊りの歓迎を受ける。歓迎する(双手もっをあげて。両腕を広げて。渡りに舟と。町じゅう総出で。喜びの声をあげて=網淵)。欲迎会がなごやかに進む。喜びを隠しきれないといった歓迎ぶり~安部。▼大歓迎(国をあげての。古今未曽有の。初心者)。下へもおかず一番上等な座蒲団を出して迎える!梅本。 **きゃく【客】** 客(長っ尻で話題のない退屈な今来。小きゃく石のようにゴタゴタ打ち並んだ菊池。年来ご最屓いぃの手堅い=永井荷。部屋に溢れるばかりの"中村真)。客が(あらかた帰る。吸扉』をくぐる。入れ替わり立ち替わり訪れる。大勢やって来る。金を落としていく。店頭にあふれる。とっと押し寄せる。ひとしきり立てこんでくる。ぼちぼち顔を見せ始める。ぽつりぽつりと入り始める)。あふれるほど客がいる。折よく客が来る。飛び込みの客が入る。客がつく(馴染なじみの。へたなホステスより多いくらいかなりの数の半村)。客が流れるように続々と入ってくる=石坂。客と親しげに言葉を交わす。店の者と客との姿が絵ぁゃを縦る=有局。客に(愛想を言う。酌をして回る。座布団をすすめる。商品を値切られる。不快な思いをさせない。メニューを渡す)。他の客に迷惑を及ぼす。どんな遣り繰り算段をしてでも欲しがっているお客にお応えするのが商売ってもの内海。客の(足が遠のく。信用を失う。姿がまばら。注文に応じる。反応を見る。目をごまかす。笑いを誘う。冗談に声をあげて笑う。愚痴や打ち明け話を他には決して洩もらさない『落合)。いそいそと客の相手をする。みっともなくて客の前に出られない。鼻高々として客の習辞を期待する萩原朔。客の出足が(早い。悪い)。客へのサービスに努める。きりきりした客への応対。客を(手玉に取る。いちいち値然みする。一人一人紹介する。マイクロバスに乗せる)。新たな客を開拓する。大勢の客を相手にする。気の早い客を出迎える。ひいきの客を仲間にとられる。追い立てるように客を船に乗り込ませる=小松左。数えるほどしかいない客を乗せたバス宮尾。酔ったお客を介抱する。通夜の客のようにしんみりしている=篠田。一筋縄で行く客ではない。若いに似ず客あしらいのうまい男半村。客人をもてなす。容筋が少しずつ遠のいてゆく。客筋のいい店。いい客筋をつかむ。昔からの客筋を大切にする。先客がある。不意の来客。事務所に来客がある。テレビにゲスト出演する。新規顧客を獲得する。国賓として来日する。国賓を夕食会に招待する。上客を得る。見よう見真似以まで接客技術を覚える。愛想よく接客する。団体客を誘致する。隠意なく珍客の扱いをする三鳥。珍客を(欲待する。もてなす)。賓客を饗応する。来資が参列する。来賓の挨拶を聞く。 **きゃくがない【客がない】** 客が(急激に減る。ばたりと絶える。ばったり来なくなる。はなはだ少ない。目に見えて減る=村上春)。客らしい客が見えない。一人でも二人でも客がくれば見つけもの"北原。さんざんな客の入り。全くお客がつかない。入りの薄い観客席。客足が(一段と落ちる。薄くなる。少ない。遠のく。途切れる。・途絶える。鈍る。ばたりと止まる)。夏枯れで客足が減る。大型店に客足を奪われた商店街"。ぽつりぽつりと客が入る。開店休業の状態。閑横山。ぽつりぽつりと客が入る。閑古鳥が鳴く。 **ごちそうする【御馳走する】** ▼御馳走する(酒を。日本料理を。客に。おいしいものを)。▼御馳走になる(お茶を。お昼を。寿司を。たらふく。しゃぶしゃぶを)。▼おごる(映画を。酒を。食事を。ビールを。夕食を)。▼饗する(遠来の客を。午餐にきを。昼餉を)。振る舞う(客に酒食を。お茶を無料で)。呼ばれる(お茶を。お昼を。酒を)。饗応拾いうの準備に忙しい。息をを。お昼を。酒を)。つぐ間もない饗応の連続。饗応を受けたことも一再 <1063> にとどまらない藤沢。饗応する(客を。友人を)。 **サービス** サービス(きめ細かい。至れり尽くせりの)。客の求める物と提供しようとするサービスとのギャッブ=篠田。サービスに(これ努める。いちだんと磨きがかかる=源氏)。不必要なまでに言葉のサービスにつとめる=檀。そうそういつまでもサービスをしていられない三好微。▼サービスする(真心をこめて。身一つが頼りという感じで必死に干刈)。サービス精神が旺盛。サービス精神を発揮する。 **しょうたい【招待】** 招待に(応じる。一度も応じない)。招待を受ける。辞退する)。招待する(容を。家に。食事に。晩餐試んに。取引先を船遊びに)。招待状が届く。招待状を出す。▼お呼ばれする(誕生祝いに。バーティーに)。 **せったい【接待】** 認可官庁への露骨な接待"西村。接待に料理屋を使う。大げさな接待を辞退する。接待する(客を。ゲストを。社長を。夜な夜な社外重役を=横山)。丁重な接待ぶり。 **てまねき【手招き】** 手招きでそばへ呼ぶ。▼手招きする(夫を。声を潜めて。手を振って。ウエートレスを)。枝が風に翻弄され手招きするように揺れている=池井戸。 **でむかえる【出迎える】** ▼出迎える(一行を。客を。花婿を。花嫁を。玄関に)。空港まで出迎えに行く。出迎えの人が群がる。出迎えを受ける。 **とくいさき【得意先】** ▼得意先(大口の。長年の)。得意先が(多い。少ない。増える。目に見えて減っていく)。得意先を(開拓する。しくじる)。大事な得意先を失う。お得意が(広がって行く。増える)。 **まねきよせる【招き寄せる】** ▼招き寄せる(旧臣を。神意の発現を。仲間を。福を。災いを)。誘致に成功する。誘致する(一般客を。観光客を。工場を)。 **まねく【招く】** ▼招く(威信の低下を。金融危機を。自宅に客を。天下の乱れを。不幸な結果を。身の破滅を。憂うべき事態を。町の有力者たちを。秋の風を部屋に。隣に席を作って。追いつめられた心境が焦燥感を笹沢)。招きが引きも切らない。招きに応じる。差し招く(新時代を。手を上げて。ウエートレスを)。招じ入れる(家の中に。応接間に。店内に)。米客を招じる。▼招き入れる(客間に。座敷に)。▼招請する(委員を。講師を)。オリンピックを招致する。招聘しいうする(技師を。有識者を。三顧の礼をつくして)。聡〈いする(講師を。専門家を)。▼招かれる(結婚披露宴に。御前に)。▼かかる(お座敷が。お呼びが)。招きを受ける。▼呼ばれる(宴会に。婚礼に)。▼呼び寄せる(親兄弟を。家族を。自分のそばに)。運命に呼び寄せられる。▼呼ぶ(遺族の怒りを。疑いが疑いを。賛否両論を。謎が謎を。賑やかに客を。万人の感動を。誘爆が誘爆を。友達を家に。バーティーに。手を叩いて。いやましに人気を。幸せな結婚生活を。手を上げてボーイを)。呼びに走る(医者を。仲間を)。呼んで来る(家の人を。医者を)。 **むかえる【迎える】** ▼迎える(新しい段階を。新しい一年を。完成の時を。現地で終戦を。最悪の事態を。世 界が終末を。大会前夜を。第二の人生を。花が満開を。満願の日を。山桜が見頃を。一家総出で。欲呼の声で。歓声をあげて。余裕の表情で。新たなステップを。作業が最終段階を。四十二歳の厄年を。創業四十周年を。そろそろ思春期を。判決言い渡しの日を。疲労がビークを。息子が複雑な年頃を。小さな命をこの世に。座布団を出して。待ち兼ねた顔で。街が賑やかに正午を=林京。夜が白々と暁を"辻井。襟を正して悲しく森町。事ごとに冷たい眼と冷たい言葉で=山本周)。朝を迎える(まんじりともせずに。切れ切れの眠りにまみれて=曽野)。▼客を迎える(旧知の。にこやかな一礼とともに笹沢)。▼結末を迎える(悲痛な。然るべき)。仕事仲間から好意を持って迎えられる熊谷。玄関に迎えに立つ。わざわざ迎えに来る。▼迎えに行く(駅まで。自動車で)。▼迎えに出る(一家そろって。途中まで)。▼お迎えする(講師を。先生を)。恋しい人を見迎える。迎え入れる(客を。春の風を。養子を。嫁を。待ちかねていたように手を取って有吉)。 **もてなす** ▼もてなす(遠来の姿を。ねんごろに。心をこめて。酒肴しを出して。手厚く。手料理で。浮き浮きした顔で)。もてなし顔に言う。▼もてなしを受ける(盛んな。下へも置かぬ。第一級の。茶の)。▼歓待する(国賓として。礼儀正しく)。一家をあげての歓待。大変な欲待を受ける。最善を尽くして歓待する。至れり尽くせりの歓待ぶり。 **みおくる【見送る】** ▼見送る(人の最後を。息をのんで。門口に立って。指をくわえて。子供たちの下校を。去ってゆく男の姿を。全員が立ち去るのを。不安な而持ちで。息つくひまもなく歳月を=瀬戸内。手を乗っかねたまま空しく我が子の死を宮尾。呆然邨いと後ろ姿を三浦綫。呆気は。に取られたように=椎名観。あんぐりと口を開けて飯田。後ろ影を小さくなるまで"森陽。きょとんとした目で=小池。塑像のように堅くなって本庄。つまらなそうな顔で"石川。未練がましくいつまでも=椎名感)。見送るために玄関前に立つ。息をひそめて葬列を見送る人々の影"山崎。玄関まで見送りに出る。わざわざ見送りに来る。パスする(試験を。夕食を)。目送する(自動車を。非列を)。 **よびこむ【呼び込む】** ▼呼び込む(風を。盛んに客を。勝利を。睡魔を)。▼呼び込み(キャバレーの。店の)。呼び込みで鍛えた声。声をからして客の呼び込みをする安部。呼び入れる(男を。記者団を)。 **らいきゃく【来客】** 来客の(耳を意識する。応対に追われる)。来客を(部屋に通す。告げるチャイムが聞こえる)。千客万来の(大盛況。にぎわい)。 <1064> # 30 向き合う **いったいいち【一対一】** 一対一で(勝負する。対座する。対峙する。話す。向かい合う)。さしで話をする。さしの勝負を望む。▼一騎討ち(対抗馬との。大将同士の。両候補の)。一騎討ちで争う。一騎討ちの勝負。マンツーマンで(教える。守る)。マンツーマン方式の教育。 **おもなが【面長】** 面長で眼が細く地味に整った平均的日本人の風貌=松浦。色の小白い面長な優男いじゃ=徳田。背が高く顔も面長な美少年・石坂。而長に頬の肉が箆へらで殺いだように浮い顔「円地。面長の(上品な顔立ち。端正な顔貌)。 **おももち【面持ち】** ▼面持ち(沈痛悲壮な。神妙な反省の。嬉しくてたまらないような内海。信じられないといった=乃南。全く耳にしない者の名を耳にしたといった=井上靖)。緊張の面持ちがゆるむ。不安な面持ちが消えない。緊張した面持ちで待つ。心残りな面持ちで帰る。真剣な面持ちで頭を下げる。不安な面持ちで見送る。不審の面持ちで見る。憮然ぶぜたる面持ちで眺める。冷静な面持ちで答える。きょとんとした面持ちで見つめる人間。 **かお【顔】** ▼顔(願ぁこが三重にも見えるほど肥ふとったっ安岡。油を引いたように光っている三浦。洗い立ての陶器のような"高井。一抹の哀愁をまじえた"佐多。美しさが燃えているような=中河。思いがけぬボーナスをもらった新入社員のような"五木。重荷を下ろしたように冴え冴えとした=山本周。きつく眉を寄せた興福寺の少年阿修羅峙しのような円地。肌理きめの荒い一つ一つの毛穴に油が溜まっているような志賀。心当たりのないところから矢が飛んできたという干刈。三途だんの川の上で宙づりになった亡者みたいな=柴田翔。太陽と友達にでもなったように晴れ晴れとした徳永。陶器のような固い感じの"高見度。額に深い皺しもを寄せた暗い萩原発。ひどい窭ゃっれようで死人のような=高見町。剽軽にうな羅淡のような"夏目。太って顎と咽喉のととの区別がつかないむくんだような=椎名踐。目を伏せてかすかな笑みを湛たたえている仏像のような倉橋。夜光の球のように辺りを圧する菊池。夜眼にも匂うような若い女の熱い=室生)。彫刻家がノミで丹精に刻んだような美しい貌がぉ森塚。顔が(恐怖のためにひきつる飯田。暗い電灯の下で黄色い果物のように見える"野間。こわばってうまく笑顔が作れない=三浦な。つやつやとゼラチンの膜を張ったかのごとく光沢を帯びる谷崎。水をかけられたようにきゅっとしまる=宮部。燃えるように痛い=原田宗。湯上がりのようにつるつる光っている=阿部)。走り雲の落としてゆく影のように顔が瞬間暗くなる=小林多。金だらいの底を向けたような顔で訳まく高橋三。顔に(えくぼを刻む。柔和な笑みをたたえる。物愛い表情が広がる。怒りの色があらわれる=池波。かなりの重さの老いがしみついている=高橋治)。▼顔にあらわす(一大決心を。不機嫌さを)。顔にあらわれる(心中の苦悶心もが。激しい怒りが)。顔に浮かぶ(安堵はんの色が。おびえた影が)。顔に浮かべる(苦渋の色を。笑いを)。顔に出す(悲しみを。欲びを)。嬉しいような悲しいような、それが複雑に化合してまるで仙人のような顔になる尾辻。顔の彫りが深い。顔を(洗って出直す。酔いに染める。岩のように腫れあがらせる=阿川弘)。照れくさそうに顔を伏せる。ドアの隙間から顔を覗のぞかせる。恥ずかしそうに顔を隠す。毎日のように顔を見せる。頭から水をかけられたように急に顔をこわばらせる=長崎。ざまあ見ろというように小づらにくい顔をして遠くから見る=野間。バスの窓に子供たちが鈴なりに顔を並べる三浦匹。顔を見るのも胸が悪い。髪が触れ合いそうになるほど顔を寄せる"黒井。人前で素顔をさらす。顔が青白い。顔が(藍塾かを覗いたように青くなる!有吉。一瞬赤くなってすぐに蒼白咲けになる=篠田。透きとおるように青ざめる藤沢。土気色を呈している=井上ひ。羊皮紙さながらに青ざめる=宇野利。蝦ろうのように青白い=阿部)。血の気が去って顔が土気色になる=光瀬。▼▶顔(血色の悪い。蒼白沾くむくんだ生気のない藤枝。青瓢箪はのよな冴えない=壺井。垢ぁかが浮いて見えるような蒼白い=伊藤整。一時に血行が止まったように真っ青になった=山本有。死人のように青ざめた=庄野)。青ざめて石膏どうのような顔は別人のよう深沢。紙のように(蒼ぁぁざめた顔。光のない顔)。顔が赤い。顔が(蝦えびのように真っ赤に充血する=島尾。首のつけ根まで朱を注いだように真っ赤になる=山本有。猿のように赤くなる藤沢。ぽっと桜色に染まる=西木。燃えるような血の色をのぼせている=池波)。▼顔(血色のいい。心もち上気したような白い煙に撮ぁぁみをのぼせた=水上)。寒さに腐蝕いしされたように赤い顔をする夏目。酸漿作話のように顔を赤くする=獅子。顔を赤らめる(年がいもなく。恥ずかしそうに。更衣室を覗かれた少年のようにかすかに=小池)。顔がお面のようにこわばる小鳥。般若面以小のように顔が鋭くとがる=高橋和。表情のない顔が能面のように冷たく感じられる=笹沢。顔(青く湿った能面のような『黒墨号。蒼白い仮面のような=山本足。人形の面にように表情のない=遠藤。眼を閉じると狐面に似かよい眼をひらくと般若面を想わせる=武田泰)。 <1065> # むきあう 348 **かお【顔】** ▼顔(トウガラシを食べたサルのような灰谷。苦い薬を飲んだような=灰谷)。▼顔をしかめる(心配そうに。馬鹿馬鹿しさに。厭ぃゃで豚でたまらないというふうに丸谷。目の前にこまかい虫でもうるさくちらちらしているように=大佛)。顔をそむける(舌打ちして。いらだたしそうに。見ていられないというふうに小林多)。顔が黒い。▼顔(干し柿のようにしなびて黒い面長な=藤沢。朝に顔も洗わなかったようなすず黒い=高橋和。漆を塗ったような黒い=福水。鞣ゃぁしたように黒光りしている藤沢。眉のあたりに元気を深く蔵した浅黒い人米)。顔がスキーに行った人のように黒い=大岡。一日中光らしい光にあたらぬため蒼黒は泣くむくんだ顔が意志のない人形のように遠藤。顔が四角い。顔(エラが張った四角い=向田。ゲゲゲの鬼太郎に出てくる石白のお化けそっくりの荻野。将棋の駒のような角ばった福永)。いかつい顔(意地のかたまりのような角ばった=椎名綱。おそろしく頬骨の張った=山本周)。顔が白い。顔が(白い粉でも吹きそうに乾いている=黒井。抜けるように白い戸板)。▼顔(白い磁器のように美しい淑しとやかさに占められている=円地。白く凍結したような=新田。玉のように白く輝く獅子。ほの暗い車内に窓を穿っがったように白くなった三島)。白い顔が涼しげに薄胸の中に泛うかぶ三島。仄暗い中に白い顔が幻のように浮かぶ福永。顔を紙のように白くする=川端。顔が動物のよう。▼顔(怯ぉぃえた鼠ゆずのように小さな遠藤。草食動物のような穏やかな落合。羊のような柔和な=長与。美味そうな獲物の死屍ししを前にしたハイエナのような"森村。亀の子のように怯えた=坂口。額や頬の筋肉が徴かにの甲羅のような"尾辻。鷲ゃしのような肉食鳥のタイプの萩原朔)。ニスを塗ったナマコのように顔がてらてらと光る=小池。きれいな顔がゆがんでなんともいえないいやな表情になる=灰谷。顔が(痛みを耐える子供のように頼りなく歪がむ黒井。苦痛でまるで別人のようにゆがむ光瀬。絶望と恐怖のためにみにくくひき歪む=柴田錬)。いかにも痛そうに顔をゆがめる宗田。苦悶するように顔を歪める=和久。眉の太い威厳のある顔をケゲンそうにゆがめてジロリと見る安岡。口惜しそうに顔をゆがめて泣きだす内眉目秀麗な青年。 **かおだち【顔立ち】** 顔立ち(色が白く面高の。下膨れのふっくらとした。色白の上品そうな=宮本虾。彫りの深い彫刻的な=小林久。目の大きい派手な=船山。目鼻立ちのはっきりとしたきれいなつか。目も鼻も小さな三浦綾。憂いの影が消え残っていると云ったような淋しい菊池。ちんまりまとまった円地。つまんでみたいようなくくれ顎の愛くるしい=山本局。人形を見るように品よく整った=大佛。目尻がちょっと上がって引きしまった=川端。眼のばっちりした美貌といえる=安岡。眼の円い頬の垂れ下がった福々しい"永井荷。老成した品のいい=石坂)。目のきれいに澄んだ透きとおるような顔だち木山。顔立ちがほっそり整っている。顔立ちに昔の面影が残っている。可愛らしい顔立ちに生まれつく。美しい顔立ちの少女。端正な顔立ちの青年。人形のような顔立ちの女篠田。整った顔立ちがみるみる歪ゃがんでいく=横山。女の整った顔立ちに見とれる=高橋三。顔の造作が(整う。不細工)。顔の道具立てが整っている。真剣な面差しで打ち明ける。▼面立ち(端正な。柔和な。気品のある)。顔形(貧相な。ふくよかな。平面的な)。器量が(十人並み。ぱっとしない。よい。悪い)。どこといって目立つ器量ではない=山手。道具の揃わない随分と容貌のよくない女=永井荷。下膨れの福相を備える。ふくよかな下膨れの顔。端正で彫りの深い顔。眉目(冷たく冴えた。女好きのしそうな)。眉目が整っている女。男のような顔立ち)。人門製造に厭ぁき豚きした造物主が居眠りながら附けたような目録"川端。目鼻立ち(色白な品のいい。小ちんまりと整った。不思議に悲しそうな表情が似あう高橋三)。▼目鼻だち(頑丈で意思の強そうな=加賀。見映えのしない平べったい!向田)。彫りの深い目鼻立ちのはっきりした顔萩原業。目鼻立ちの整った(美しい少女。美人。きれいな顔立ち)。色はやや浅黒いが眼鼻立ちのととのった女藤沢。貧しげな面相。 **かおつき【顔付き】** 顔付き(かつがれているのに喜びすぎるのは損だと思っているような木山。情けなくなるほど間のぬけたしまりのない=永井路)。顔つき(快活な少女のように晴れやかな有島。深い思いを抱いているのだといわんばかりの真剣そうな=椎名映。不機嫌なような陰気な円地。圧搾した元気を底に湛たたえたような久米。穴ぐらの中で酒盛りをしている山賊みたいにたけだけしい"大庭。酸いも甘いも噛みわけたような"里見。どうも腑に落ちないという笹沢。何とも言いようのないほどまごついた"安岡。眠っているところを叩き起こされたような=高井。はっと目をみはるほど神々しいような堀。人を食ったようなふてぶてしい=井上峭。笑うとエクボのできる愛敬のある永倉)。鼻も口も一つに寄ったようなせせこましい貌站二葉亭。顔付きが石に彫ったように冷たく美しく見える=大佛。ものわかりのいい老人のような顔つきで大きくうなずく三田。キョトンと鳩のような顔つきになる=永倉。精悍な顔つきの男。顔付きはまんまるで田舎道のお地蔵さんに眉墨をひき口紅をつけさせたよう井上ひ。判決でも待つような心細げな顔つき“三田。師の温顔に接する。別人かと思うほどに面変わりする=藤沢。自信満々たる面魂。面付き(反抗的な。けろりとした)。 <1066> # むすぶ **かおつき【顔付き】** 人相が変わるほど殴られる。面貌に断末魔の相を刻む柴田銀。面貌の柔和な少年。怒りの形相で全身をわななかす。恐ろしい形相で殴りかかる。激しい形相で呪にもむ。物すごい形相でにらみつける。怒髪天を衝っくという形相で言う船山。腹に据えかねたといった形相でどなる!清水俊。別人のような形相に変貌する=阿久。形相の凄すさまじさに息を呑む。 **がんめん【顔面】** 顔面が(蒼白にらになる。涙でぐしょ濡れ)。顔面に(かげりが走る。憂鬱が漂う。喜色をみなぎらせる)。顔面の筋肉が強ばる。顔面を(強打する。紅潮させる)。札で面を張る。不景気な面をする。面上に(軽い失望の色が通り過ぎる。血の色がたぎる)。視線が面上に落ちる。面体以を里頭巾に包む。 **こめかみ** こめかみが緊張して板のようになっている=佐藤愛。こめかみから(額に蚯蚓ねぇのような青筋をみなぎらす=吉川。頬にかけて火花のような痛みが走る=姫野)。汗がこめかみから頬を伝わって流れる"村山。こめかみに(血管が浮く。青い疳筋かいを走らせる=向田。当て身を入れてとどめを刺す藤沢。浸み徹るほどの酸味-檀。びりびりと癇癪筋はれし、が立つ中)。こめかみの(あたりに静脈が筋立って膨らむ城山。痛くなるような不安が人々の顔にみなぎる=本庄)。今にもこめかみの血管が破裂するのではないかと思われるほど興奮する"大原。哀愁がこめかみをちかちかと痛める=有島。虚ろな目つきで中年女みたいにこめかみを揉む宮木虾。 **たいじ【対峙】** ▼対峙する(自然と。宿命と。正眼と八たいじ双で。挑戦者と。敵の努力と。海千山千の犯罪者と。扉一枚を隔てて。両者が院にらみ合ったまま鈴木四)。川の流れを挟んで両軍が向かい合う豊田。 **たがい【互い】** 互いに(助け合う。身を寄せ合う。愛を確かめ合う。恨みを言い合う。影響を及ぼし合う。顔を見合わせる。気心が知れている。口を利こうともしない。呼応して行動する。心を通わせあう。別々の部屋にいる)。供給と需要が互いに均衡する。互いに手を(重ね誓い合う。取って無事を喜ぶ)。互いの(欠点を補い合う。個性を尊重し合う)。お互いに(顔を知らない。肩を叩き合う。干渉しない。都合がいい。気持ちを通じ合わせる。抜きつ抜かれつのライバル。身動きが取れない)。お互いの(愛を確かめ合う。家を行き来する。性格に隔たりがある。ていたらくを笑い合う。目を見つめ合う)。相互の猶疑終ぃと不信が横行する=高橋和。相互理解が深まる。 **たちあう【立ち会う】** ▼立ち会う(現場検証に。臨終に。歴史の瞬間に。最初から最後まで)。▼立ち会い(工事の。市場の。出産の。調査の)。立会人を(お願いする。務める)。仇討汤だちの立ち会いを頼まれる。 **たちむかう【立ち向かう】** ▼立ち向かう(新しい恋に。強大な敵に。苦難の人生に。真剣に研究に。世間の目に。不合理に。先頭に立って。徒手空拳で。へっぴり腰で。真っ向から。一心こめて死に。毅然とした態度で。秘術を尽くして)。立ち向かう勇気がない。かかっていく(がむしゃらに。しゃにむに)。 **たいがん【対岸】** 川を挟んだ対岸。対岸に(目を転じる。灯影怕かがちらつく)。ひょいと対岸に飛び移る。対岸の岬を一望する。沢の対岸へ飛び石伝いに渡る。▶隔てた対岸(川を。湾を)。河の向こう岸のように目に見えていても決して手が届かない=光瀬。第一次大磯を向こう河岸の火事と眺めながら思う存分肥やした懐中で日本の経済界はほくほくの上機嫌"里見。向こう岸が沈んだ霧のなかに浮かぶ藤枝。 **ちょくめん【直面】** ▼直面する(新たな課題に。行き詰まりに。大きな変化に。困難な事態に。異なる価値観に。人生の重大事に)。▼危機に直面する(重大な。創設以来最大の)。奇品に面した眼福を喜ぶ!幸田露。 **にらみあう【睨み合う】** ▼睨み合う(固唾かたをのんで。険悪な形相で。二人が至近で。火花を散らしたままで。敵同士のように=森環。獣のように激しく"小林久。喧嘩州んでも始めそうな顔で=新田)。長い児み合いが続く。児睨み合いに根負けして目を逸らす=長野。空中にバチバチッと火花が飛ぶ!鷺沢。冷戦状態に入る。 **のぞむ【臨む】** ▼臨む(終末の世界に。厳しい姿勢で。新たな気持ちで授業に。人生の最後の一日に。毅然だる態度で。強硬な態度をもって。挙国一致の態勢で。ぶっつけ本番で。用意周到なやり方で。会場に展示されている品物を見ずにせりに"高橋治)。川に臨んだ丘陵。谷川に臨んだ急な斜面。死に臨んで思い起こすべき何物も持っていない=柴田翔。 **ひたい【額】** ▼額(脂がぎらぎらと浮いた"日野。死者の生なましく白く草のような=大江。静脈の透くような青白い=襖。流れに磨かれた玉石のような=石田衣。プラスチック人形を連想させる=横山。願頂部品はまではげ上がった徳永)。額が(死人のように冷えきる=有局。ずきずきと鳴り息が苦しいほど品井)。生え際の富士形になった額が狭い徳田。額から汗が滴り落ちる。額に(汗して働く。渡しゃが刻まれる。髪がへばりつく。小手をかざして見る。じっとり脂汗がにじむ。たんこぶができる。八の字を寄せる。向こう傷を受ける。思いをこらして一心に考えつめる=真継)。癇瘡筋はれし『を額にあらわす。十字架を額に押しいただく。玉の汗を額ににじませる。氷褒01、を額に当てる。ぼさぼさの髪が額に垂れかかる。額の生えぎわが薄茶色に霞んで見える三浦哲。 <1067> # 向き合う 348 **ひたい【額】** 額を(畳へすりつけて詫びる。平手でぺんぺん叩く。寄せて相談する。地面に擦こぅりつけんばかりに謝る=京野。寄せ合ってひそひそと語り合う~光瀬)。柘榴ぶくのように額を割られる=火坂。一輪の白い花のように額を秀でさせる=川端。テラテラと額を郷かせる安岡。太い眉が気むずかしい額を鋭く区切る"武田泰。物差しで額をぴしゃりと叩く横山。揃えた指先で軽く額を叩く。猫の額のような狭い土地"畑。おでこに手を当てる。おでこをぼんと叩く。 **まっこう【真っ向】** 真っ向から(斬りつける。否定する)。風を真っ向から受ける。力と力が真っ向からぶつかり合う。波を真っ向からかぶる。与野党が真っ向から対決する。希望を真っ向から叩きつぶされる"川端。銀燭ょんしの光を真っ向に浴びる菊池。正面切って(試合を挑む。反対を示す。注意する者がいない)。真正面から(ぶつかる。見据える。攻撃をしかける)。真正面から受け止める(視線を。失敗を)。 **まともに** まともに(顔を見られない。聞く者がいない。答える気がない。取り合ってくれない)。影響をまともに受ける。言葉をまともに受け取る。目をまともに開けていられない=城山。もろに(影響を受ける。失態をさらす)。風がもろに吹きこんでくる。 **まるがお【丸顔】** ▼丸顔(狸のような。達磨のような。あどけなさと小生意気なところが混じった佐藤愛。小麦色の皮膚がびーんと張った"山崎)。丸顔の(ぽっちゃりした愛くるしい顔水上。坊ちゃん坊ちゃんした可愛い顔「田山。眼のばっちりした眉の切れの好い十八九の娘=田山)。小太りで丸顔のずんぐりむっくりした身体つき藤沢。ビンクの大きな丸盆のような顔・田辺。笑顔の似合う丸い顔だち。満月のように円く白い顔獅子。丸ぼちゃの女の子。ずんぐりむっくりした体の上にあんパンみたいな顔が載っている"宮本邮。お多福の顔をいっそう福々しく崩して笑う田辺。太った福々しい顔。 **まんめん【満面】** 満面血を吹かんばかりに赤面する"まんめん山田町。満面がほくそ笑みに歪ゅがむ。満面に(媚こびを含んだ顔。笑顔を浮かべる。喜色をたたえる。朱を注いでどなる。怒気を浮かべる)。喜びを満面にあらわす。満面のうれしさで跳び上がる。得意満面で答える。顔中が喜びにあふれる。涙で顔中がぐしょ濡れ。顔中に(生き生きとした笑いを広げる。笑みを浮かべる)。顔じゅうを(皴しもだらけにして笑う。口にして罵声を放つ=獅子)。顔全体が脂でぎらぎらする。顔全体に微笑が広がる。焦燥感が顔全体に漂う。 **みつめあう【見つめ合う】** ▼見つめ合う(二人が。お互いの顔を。互いの目を。長い生命をたまゆらの時間にこめてしまおうとするかのように強くきびしく"海音寺。二人の瞳が吸いつくように深々と=半村)。瞳と瞳が合う。顔を見合う。▼見合わせる(目と目を。探り合いの顔を互いに)。▼顔を見合わせる(意味ありげに。思わず。ぎょっとして。はっと)。互いに目と目を見交わす。 **むかい【向かい】** 向かいの(家に目をやる。山を指差す)。谷を隔てた向かいの峰。ちょうど向かいの位置。路地を隔てた向かいの家。筋向かいの(家。人)。斜向ずかいに座る。斜向かいの家。道を挟んだ真向かいにある建物。道を隔てた真向かいに建つ。谷を挟んだ向かい側。山一つ隔てた反対側。道の反対側から大きな声が届く。▼向こう側(道一つ隔てた。通り一つ挟んだ)。岬の鼻をぐるっと向こう側に回って行く。湾の向こう側に漁ぃさり火が点々とする福水。 **むかいあう【向かい合う】** ▼向かい合う(正面切って。対等な気分で。無言のまま。庭を隔てて道と。平静な心持ちで。空から降り立った人を迎えるように"高樹。たくさんの店が狭い道路を問にして宮本輝)。友達のように平静な心持ちで気安く向かいあう大佛。いざ向かい合うと口にできない。挟んで向かい合う(テーブルを。道路を)。向かい合って酒を飲む。テーブルに向かい合って座る。向かい合いで食事をする。向かい合わせに(座る。並ぶ)。差し向かいで話をする。女性と差し向かいで食事をする。差し向かいに座る。▼正対する(苦しみに。目標に)。▼対座する(机を挟んで。取調室で。無言のまま)。反対意見を対置する。膝を突き合わせて(語り合う。酒を酌み交わす)。▼突き合わせて話す(顔を。膝を)。▼突き合わせる(鼻面を。鼻を。額を。法廷で顔を)。 **むかいかぜ【向かい風】** 向かい風に逆らう。向かい風の中を泳ぐように走る三好京。向かい風をものともしない。風が真向かいに吹きつける。逆風が(吹き付ける。吹き募る)。逆風で帆走する。逆風に(さらされる。めげない)。逆風をついて走る。 **むきあう【向き合う】** ▼向き合う(厳しい現実と。心を開いて。テーブル越しに。現実と真正面から。何食わない顔で。先生と対決するような意気込みで幸田文)。挟んで向き合う(碁盤を。デスクを)。対面する(生みの親と。幻の父と)。膝詰め談判に来る。膝詰めで(問いただす。酒のいろはを叩き込みたい。有川)。面と向かって(言いにくい。いがみ合う。対決する。非難する。不満を言う。嫌味を言われる)。二つの相対する考え。難問に相対する。相対で話し合う。相対の勝負を望む。両雄相対してにらみ合う。海に面した高台。奥の間に面した庭。街路に面した店舗。校庭に面した窓。日本海に面した小さな町。庭に面した座敷。 **りょうがわ【両側】** 両側から(迫る山肌。藪ゃぶが覆いかぶさった道)。道の両側に家々が並ぶ。物心両面から援助する。右から左から声が飛んでくる。向こう三忏両隣に聞こえるような大声"篠田。両脇から(押さえつける。木の枝がかぶさるような登山道=篠田)。 <1068> # 30 惨たらしい **あくむ【悪夢】** ▼悪夢(死に連なる。現実は動かしがたい辻仁)。悪夢が(消えたような消々対がしさ=川端。醒めたような心持ちで逃げ帰る菊池)。悪夢から(覚める。解き放たれる)。悪夢でも払うように首を振る=高見町。悪夢としか言いようのない展開。悪夢に(うなされる。悩まされる。襲われた人間のようにしたくもない人殺しを無理に勧める芥川)。夜ごと悪夢にさいなまれる。悪夢の(中にさまよい込む。真っ只中にいるかのように観続けたくないのに眼を逸らすことが出来ない=松浦)。悪夢の再来を決して許さない有川。悪い夢から覚めて立ち直る。悪い夢でも見ているように信じられない=森村。楽しいドライブ気分が一転して悪い夢の続きを見ているような気がしてきた内田康。余りに現実的すぎてかえって悪い夢のようぃ日野。カフカの小説を香港で映画化したような現実"小林信。鏡の中でまた鏡を見るような奥へ奥へ引っぱられる重苦しい夢のような気持ち安岡。▶夢を見てうなされる(恐ろしい。怖い)。悪夢のような(一夜。日々が始まる)。麻痺まぃした心に悪夢のような恐怖がふくれ上がる=光瀬。悪夢のように(忌まわしい恐怖=福永。私の口をついて言葉が次々と現れてくる=小鳥。ワッと落下する=大原)。死なせてしまった赤ん坊のことが悪夢のように胸苦しく責めてくる萩原葉。すぐ二三日来の出来事が悪夢のように帰ってくる菊池。注文伝票が悪夢のように捌さばいても捌いてもあとからあとから増える“干刈。 **いきじごく【生き地獄】** 生き地獄さながらの事故現場。生き地獄の光景を呈する。この世の(地獄図絵と化す。地獄に等しい所。地獄のような凄惨さ。地獄を見る思い)。この世ながらの地獄を味わう山田風。 **かくへいき【核兵器】** 核兵器の(拡散を抑止する。使用は非人道的行為の最たるもの。廃絶を高唱する)。核兵器は人類の敵。核兵器を(廃棄する。保有する。根絶やしにする)。核弾頭を(小型化する。配備する。保有する)。原爆が落ちたときの光は桃色のかすみ網のような閃光巡礼林京。核実験に反対の立場をとる。核実験を(繰り返す。非難する)。原爆の(惨禍を受ける。悲惨を体験する)。広島において原爆のため没する。日本に原爆を投下する。原子爆弾を落とす。忌まわしい原爆投下。被爆する(長崎で。広島で)。被爆後遺症の不安にさらされる。被爆者が後遺症に苦しむ。 **ざんぎゃく【残虐】** 残虐な(拷問にい。殺し方。弾圧。暴君)。普通の神経では考えつかないような残虐な遊び=森村。残虐の限りを尽くす。残虐行為(恐るべき。血なまぐさい。非道の)。残虐行為を平然と行う。残虐性が身内に湧き起こる。勝者と敗者の姿を見せつける残虐性を好む。丹羽。残虐無道の限りを尽くす。 **ざんこく【残酷】** 残酷な(快感を味わう。ことを平気で口にする。事実に打ちのめされる。質問を浴びせかける。加害者の恍惚感に約に藤本)。死という残酷な事実。ひそかに残酷な喜びを覚える。むらむらと残酷な意志が動く。黙々と残酷な刑に耐える。不意に心に立った波に押し切られるように残酷なことを残酷な口調で訊きく落合。目的のない仕事をやらされるくらい人用にとって残酷なことはない"大佛。閻魔封んのような鬼のような残酷な人物"網淵。夢を残酷に前す。残酷に打ち砕く(希望を。夢見がちな心を"中村真)。残酷きわまりない事件に進展する=山岡。残酷極まる(運命に復讐いしする=武者小路。労働で搾り抜かれる=小林多)。女らしく行き届いた残酷さで細かいあらまで云う。宮本百。自然の残酷さをしかと受けとめる=畑。あからさまな残酷無残な行為。 **ざんにん【残忍】** 残忍な(悪事を犯す。思想弾圧事件。死をもたらす。犯罪を犯す。燃性を発揮する。笑いを頬に走らせる)。けだものじみた残忍な行為。どんな残忍なことも平気でやってのける。卑劣で残忍な犯罪。戦争と闘争を好む残忍な気質"辺見。悪逆残忍な行為。残忍きわまる(拷問にん。手段で殺す)。残忍性が怒りとともに昂進にらする=横光。凶悪な殺人犯。いかにも凶悪な面構え。この世ならぬ凶悪な事件。 **じごく【地獄】** ▼地獄(行くも地獄、とどまるも。聞いて極楽、見て。抜けられない愛欲の"石川)。板子一枚下に地獄がかいま見える"五木。きっと地獄から抜けだせる芥川。地獄で涼風にあったようなすがすがしさを覚える=中島河。地獄と極楽の境目。▼地獄に落ちる(阿鼻叫喚法が心はの。欲情の)。地獄の(責め苦に遭う。夜が訪れる。一歩手前から生還する。釜の蓋を開ける。苦しみに堪える。絵を月夜に映したような怪しの姿泉鏡。釜のように湯気がもうもうと昇る=川端。針の山を歩くように足が竦ずくむ"川端)。さまざまな地獄の責め苦に疲れはてる=芥川。船酔いで地獄の思いを味わうぃ篠田。地獄の底から洩もれるような叩き声菊池。地獄の底でさまようような息苦しい眠り。地獄の底へ落ちるような心地。地獄の底を抜け泉後。地獄の底へ落ちるような心地。てきたような気がする=伊藤路。地獄への(円を開く。旅から生還した幽鬼のような顔沢木)。小さい時から地獄を見てくる=渡辺。閻魔大王以以往だの前に出る。板子一枚下は地獄のような境界に身を投げ出す"有房。交通地獄が緩和する。名状しがたい地獄絵。地獄絵図を目にする。生きながらの地獄図絵が展開される。世にもむごたらしい焦熱地獄の数々を現出する舟橋。八寒地獄を経験する。身も心もぼろぼろにしてしまう業火だ。街を焼き尽くす業火に巻き込まれる=伊坂。地獄の火の中に投げ込まれる=椎名綱。地獄の業火に焼かれる。ヘッドライトが地獄の業火のように目の前で燃えさかる"小池。 <1069> # 惨たらしい 349 **じごく【地獄】** 陰鬱な地獄の火のように輝いている眼の峻けゃしさ=久米。 **しゅらば【修羅場】** ▼修羅場(政治の生臭い。二人があからさまに浮かょうような"高井。生きるか死ぬか、食うか食われるかという“戸板。喊声切以と銃声の渦巻く=柴田鍵。哄笑にうしとヤジの飛び交う~飯田)。修羅場が(展開する。繰り広げられる)。修羅場と化す(団欒んが。灼熱しいくの)。ありとあるものが沸騰し揉。み返すまさに修羅場ともいうべき決戦のさなか"山本周。死闘の修羅場になる。修羅場の(様相を呈する。職場を生き延びる)。幾多の修羅場をくぐり抜けてくる。事件の修羅場を取材する。私や妻の怒号子供たちの悲鳴や泣き声が飛び交う修羅場のごとき夕食のテーブル=阿部、修羅場みたいに傍若無人に殴り合うぃ横光。激戦地の跡もかくやと思わせるほど巨大な根株や丸太が散乱している洪水の跡!太宰。激戦の地へ赴く。血なまぐさい修羅の巷いま。修羅の巻と化す。修羅の巷を脱出する。 **ちなまぐさい【血腥い】** 血なまぐさい(争い。殺人事件。惨劇。風が吹き荒れる。非道の残虐行為)。海の向こうで戦火が燃え血腥い殺戮いが繰り広げられているのが信じられないほど静かな夜!連城。人体を生け贄に汁として偶像に供えるような血呪い野蛮な儀式=佐山。修羅道の苦患にげから救われる。 **ひじょう【非情】** 非情な(処置。犯行)。徹底的に非情な仕事ぶり。非情の掟は。因業ごんな(金貸し。借金取り)。因業を言い張る。けんもほろろに(追い返す。拒絶する)。情け容赦をしない。 **ひどう【非道】** 非道な(残虐行為。所業を犯す)。厚顔無恥な非道な生活。醤約を非道にも踏みにじる。非道を見るに見かねて投書する=美濃部。人の道に外れ・極悪非道な(残虐さ。犯罪者。振る舞い)。極悪非道な(仕打ち。処置)。子供を没義道に取り扱う有局。不義非道な色事。無頼非道の振る舞い。非人道的な(核兵器。殺戮行為。無差別殺戮。兵器を違法とする)。暴戻らな君王。領主の暴戾な取り締まり。悪逆無道の謀反人ににん。 **ひにんげんてき【非人間的】** 非人間的な(戦争。搾取に堪えかねる。研修を社員に押しつける=佐高)。傲慢不遜な非人間的な男"黒写。およそ人権思想の片鱗いんもない。 **むごい【酷い】** むこい(境遇に耐える。拷問にけにかけ る。殺され方。運命。目に遭う)。人間はむごい生き物。無軌道でむこい心の女。勝ち誇った酷いように美しい顔古井。むごさ(原爆の。切腹の光景の)。▼酷だ(それ以上働かせるのは。そんなに責めるのは)。酷な(仕打ち。質問。批評。目に遭う)。 **むごたらしい【惨たらしい】** むごたらしい(拷問にらむごたらしいを加える。殺され方。叫び声。処刑。犯行。目に遭う)。無意味なむごたらしい殺人。酒にでも酔ってでなければ話せないほどむごたらしい出来事"有吉。むごたらしく切りさいなむ。陰惨な(手段で復讐しする。政争に巻き込まれる)。酸鼻祓慄の状を聞く。酸鼻な(光景。状況が繰り広げられる)。酸録の地獄絵。惨烈な悲劇。戦闘が惨烈を極める。阿鼻叫喚法が」とは無緑のさわやかな風が吹く=なかにし。阿鼻叫喚の(うめき声。地獄が出現する)。事故現場が阿鼻叫喚の巷と化す。▼惨事(未曽有の。流血の。降って湧いたような)。惨事に直面する。惨事を目のあたりに見る。一歩間違えば大惨事。▼惨状(語るにしのびない。筆紙に尽くしがたい)。予期以上の惨状に驚く。事故直後の惨状を目の当たりにする。街の惨状を心で聞く。凄惨見るに堪えざるものがある=坂口。凄惨な(地獄と化す。光景に思わず目を覆う。シーンを目のあたりに見る。修羅場が繰り広げられる)。世にも凄惨な顔。顔も腕も腫れ上がって二目と見られない。二目と見られないみっともない姿。二目と見られぬ恐ろしい顔。二目と見られないほど顔が腫れ上がる藤沢。 **むざん【無残】** 見るにぶざま、聞くに無残。無残な(最期を遂げる。姿をさらす。敗北に終わる。思い出だけが残る。爪痕をとどめる)。柱は歪のがみ壁は落ち床も框切まも朽ち腐ったようなむざんなありさまの家"山本周。無惨な死体が目に飛び込んでくる。しわと数えきれぬほどの戦闘による傷跡でほとんど見るかげもない無惨な顔"光瀬。満身創痍に、うの無残な姿。無残なまでにみすぼらしい。無残に(屍めばをさらす。踏みつけにされる)。家が無残に壊れる。思い出が無残に砕け去る。城が無残に荒らされる。害虫のように無残に殺される=大沢。▼無残に打ち砕かれる(願いが。夢が)。かくも無残に(卵に汚れる。逃げ惑う)。見るもむどんな輪禍に遭う“阿部。見るも無残な負けっぷり。みるも無残に真っ赤に焼けただれた肌"大庭。見るも無残に傷つく。心が無残なほど冷える。凶悪無残な犯行。放埒、無残な生活を送る。無残苛烈な処刑。 **むじひ【無慈悲】** 無慈悲な(闘いの場が待っている。連中の目にさらす。人々によって逢瀬うを振ぜかれているような気がする"有吉)。無慈悲に捨てる。言ってはならないことを無蒸悲に口に出す「野上。 **むま【夢魔】** 夢魔が顔をのぞかせる。夢魔から解放される。夢魔に(脅かされる。夜な夜な悩まされる。襲われたような過ち“瀬戸内。憑っかれたようにして奇怪な手記を書く=中村真)。夢魔の手にあやつられたようにひたすら前へ前へと進んでゆく=北。夢魔を(追い払う。退治する)。この世のものならぬ夢魔を見る思い=山田及。夢魔のように野卑な笑い声をあげる=筒井。開け放した窓からしばしば汽笛が夢魔のように入ってくる三島。超高層ビルが悪魔的に響きがえて夢魔のように不気味=斎藤栄。 <1070> # 350 無視する・断る **あいてにされない【相手にされない】** ▼相手にされない(人に。頭から。てんで。家中の誰からも)。友達に愛想尽かしをされる。家族に愛想を尽かされる。うとんじられる(人に。朋輩跟心に。家族から)。 **あいてにしない【相手にしない】** ▼相手にしない(まともに。頭から。笑って)。平然と笑殺する。突き放した言い方。突き放すように答える。引っかけない(唾も。淡はなも)。▼愛想を尽かす(交際下手に。いい加減)。ほとほと愛想が尽きる。愛想尽かしにあう。愛想尽かしを言う。愛想もこそも尽きはてる。 **うけいれない【受け入れない】** ▼受け入れない(かたくなに。頑として)。云ぃうことをそのままに承け入れない志賀。受け入れる余地がない。感覚的に受け入れることができない。受け入れを(断る。拒む)。とうてい受け入れがたい。聞き入れない(頑として。どうしても。何を言っても)。▼寄せつけない(求婚を。歳月の腐蝕ぶしを)。心の中に柵を設けて真実を寄せつけまいとする=高見浩。 **うけつけない【受けつけない】** ▼受けつけない(頭が。胃が。頑として話を。ふりの客を。絶対に。容易に。頭から。てこでも)。どんな皮肉も受けつけないような強靭にいうさ=福永。 **きょぜつ【拒絶】** 辺りの光をすべて拒絶でもするようなこわばった表情檀。手ひどい拒絶にあう。拒絶の意思を示す。書面で拒絶の意を表す。声にとりつくしまもないような拒絶の響きがある=森境。拒絶そのものが一種の政治的な磁性を帯びはじめる=司馬。拒絶する(オファーを。申し込みを。申し出を。あからさまに。頑強に。頑固に。頑として。きっぱりと。厳として。最暴だとして、強く。はっきり。他人との関係を。けんもほろろに。懇願を荒々しく。適当な理由をつけて。要求を断固として)。拒絶したい気持ちが湧く。拒絶される公算が大きい!舟橋。視線を拒絶するようにうつむく篠田。移植臓器の拒絶反応。拒絶反応を(起こす。示す)。▼ボイコットする(外国製品を。議長を。講義を。卒業式を)。▼応じない(絶対に。呼び出しに。一切。固く辞して。頑として。厳として。招待に一度も。なかなか)。 **きょひ【拒否】** かたくなな拒否に会う。刑事の言葉つきが表面は丁窓だが拒否を許さない強い響きを持つ佐野。拒否する(申し出を。厳かに。かたくなに。頑強に。強情に。無言のうちに。一切。頑として。断固。はっきり。自分を取り巻く現実を。ふやけた人生を。我にもあらず強い口調で=辻井)。相撲の稽古がいっさいの感傷を拒否するすがすがしさに満ちている"飯田。検閲がこれから先も断固として拒否される世の中であることを祈る=有川。顔が淋しく横に動く"野間。頑として首を縦に振らない=船山。首を左右に振る。左右に首を振る。受諾に反対する。みだりに承諾するわけにはいかない。横に振る(頭を。首を)。同情を拒否するような厳しく悲しげな顔辻井。少女時代の潔癖心が高じて異性を拒否するようになる"丹羽。静電気が走ったように自分を打った拒否感高低治。拒否権を行使する。発動する。持つ)。拒否反応が起きる。無意識に拒否反応が出る。拒否反応を起こす。▼がえんじない(降伏を。退却を。転向を)。▼お断り(そんな話は。断じて)。お断りを(食う。申し上げる)。一先ずお付き合いをお断りする"宮本瓦。 **ことわられる【断られる】** ▼断られる(ものの見事に。あっさり。休よく。にべもなく。しょっぱなから)。何を言っても聞き入れてもらえない。拒否される(嘲笑的に。届け出が窓口で)。手厳しく退けられる。女の子にすげなくつっぱねられる=柴田翔。 **ことわる【断る】** ▼断る(気の巻だが。援助を。縁談を。休日出勤を。言下に提案を。就槻の話を。付き合いを。恋恋いんに。婉曲にんきに。穏やかに。即座に。丁重に。丁寧に。きっぱり。険しい顔で。その場で。二回に一回は。にべもなく。依頼を電話口で。いろいろ理由を並べて。先約があるので。適当な用事をでっちあげて。手を横に振って。てんからぴしゃりと。何やかや理由をつけて。なんだかんだと言って。申し出をことごとく。切り口上で面会を=中村真。事を荒立てないように太宰。二次会の誘いをやんわりと篠田。はっきりと感情をおもてにあらわして"司馬。不景気にことよせて体よく=山崎。薬ぁらをも掴っかみたいような頼みをすげなく後藤)。▼誘いを断る(かたくなに。逢い引きの。食事の。仲間の)。▼断り(婉曲な。丁重な)。態にぃのいい断り文句有川。いかにもばかにしたような断り方有局。断りの電話を入れる。やんわりと断りの言葉を重ねる。断りを(言う。述べる)。御免を蒙に、うる。要望に添いかねる。関係を否む。簡単に肯妨げうわけにはいかない。ゆめ承知をすまい。▼願い下げ(くそ生意気ながきは。結婚生活は金輪際。そんな注文はこっちから)。言葉で謝絶の絞ぁゃをつづる!高橋和。謝絶する(誘いを。縦覧を)。▼断れない(無下に誘いを。簡単に。断るに。行きがかり上。いざとなると)。断る適当な口実がない。仕事を断る気はさらさらない。すげなく断るわけにもいかない。むげに断ることはできない。断れば角が立つ。むげに拒否するわけに行かない。来る仕事は拒まない。上司の頼みを拒むことができない。辞退する気は毛頭ない。むげに退けられない。 **こばむ【拒む】** 拒む(上からの力を。体の関係を。問題解決を。要求を。頑強に。固く。きっぱりと。首を振って。大変な見幕で。強く。意地にかかって。申し出をはっきりと。かたくなにまわりのものをぃ水井除。出世を目的とする生き方を"中島敦。小児病とも言える頑けにさで理解を"高橋和。 <1071> # 無視する・断る 350 **こばむ【拒む】** 隙なく行動することを山田太。予定調和の物語を=あさの。思いやりや好意を故意に大佛)。固もとより拒むだけの勇気はない夏目。申し出を頑強に拒み続ける。街が自分を拒んでいるようによそよそしく見える=連城。▼承知しない(いっかな。なかなか)。▼承服しかねる(意見に。社会の常套というに)。絶対に承服できない。 **じたい【辞退】** 両手を畑にえでも逐ぉうように動かして辞退の意を示す芥川。辞退する(丁寧に。一応も二応も。再三再四。大げさな接待を。敷んに頭を下げて倉橋)。悪辞退をしないで床の間の席に着く源氏。固辞する(誘いを。就任を。申し出を)。 **しりぞける【退ける】** ▼退ける(敵の手勢を。反対意見を。不安な思いを。誘惑の言葉を。一言の下に。頑固に。事もなげに。三者凡退に。むげに。一喝して。きっぱりと。にべもなく。冷然と。政府関係者の介入を頑けはに=鈴木四。不快なものを反射的に"開高)。毒蜜のような誘惑の言葉をしりぞける=石坂。▼斥礼ける(降るように来る縁談を!菊池。後世の史家が妄説として!丹橋)。棄却する(意見を。原告の請求を。控訴を。上告を。上訴を。提案を)。 **しりめ【尻目】** 客を尻目に出て行く。泣いている女を尻目に部屋を出る。▼尻目にかける(敵勢を。吠え面を。あらゆる運動を。気負い立つのを)。▼尻目にその場を去る(騒ぎを。事故を)。 **そっぽをむく【そっぽを向く】** ▼そっぽを向く(憎々しげに。不機嫌に。拗ねたように。つんと。ふてくされて。むっと唇を結んで。我関せずやれ込んと=加賀)。そっぽを向いてすれ違う。▼そっぼに向ける(顔を。視線を。目を)。あさっての方を向く。あらぬ方向を児にらむ。よそのほうを見る。 **だめ【駄目】** 何をやっても駄目な時は駄目"阿部。だめが出る。だめでもともと。駄目な二代目に甘んじる"=立原。みすみす自分をなし崩しに駄目にしていく=丹羽。だめを(承知で頼む。押すように言う)。だめにする(社会を。職場を。人生を。日本を。店を)。男を駄目にする性悪女"西木。脈がない。いけない子。箸にも棒にもかからない。資金不足で計画がほしゃる。 **つっぱねる【突っぱねる】** 突っぱねる(頑強に。強情に。無遠慮に。むっとして。わざと。引き渡しに応じられないと=船山)。突っぱねるように(言う。答える)。 **どがいし【度外視】** ▼度外視する(かけひきを。採算を。自分の利益を。損得を)。儲もうけを度外視して請け負う。一身の利害を度外視して行動する勇ましさ"円地。 **とりあわない【取り合わない】** ▼取り合わない(まともに。一向。何を今更と。のっけから。笑って。仏頂面をつくって)。 **ばかにならない【馬鹿にならない】** 馬鹿にならない(稼ぎ。金がかかる)。▼馬鹿にならない(餌代が。経費培が。あながち。案外。コーヒー代といえども)。馬鹿にできない儲もっけ。死に物狂いだけに婆さんの力もばかにはできない芥川。 **はねつける【撥ね付ける】** ▼はねつける(主張を。要求を。一言の下に。一方的に。無下に。こっぴどく。手ひどく。にべもなく。一つ残らず。強引な誘導をきっぱりと松浦)。▼はね返される(一も二もなく。たわいもなく。岩にぶつかることく=坂口)。▼はね返す(周囲の冷たい視線を。哀れみや同情をこっぴどく)。▼一蹴する(意見を。抗議を。要請を。頭から。問題はないと)。肘打ちを(食らわす。くれる)。肘鉄を食わす。 **むげに【無下に】** 無下に(反対はしない。拒否するわけにはいかない。断ることもできない。反発する気にはなれない。非難することはできない。要求をはねつける。切り捨てることもできない=貫井)。客を無下に追い帰す。▼無下に退ける(訴えを。贈り物を)。 **むしする【無視する】** ▼無視する(赤信号を。意向を。個人の感情を。古来の知恵を。指示を。時代の感覚を。質問を。周囲の目を。上司の命令を。制止を。退去要求を。人間の存在を。古い道徳を。本人の希望を。完完全に。事もなげに。冷ややかに。煩わしそうに。頭から。一切。平然と。全く。わざと。駐車禁止の標識を。論理的な手続きを。嘘に気づいていながら。業界の声をあえて。平気で締め切りを"東野。あからさまに谷とがめる視線を気がつかなかったように"有川。小石を見るよりももっと遠藤。発言を地面に落ちて行く汚れた羽毛のように清水俊。振り返る人を石ころのように=高橋知。路傍の襤褸らんのように辻井)。まるきり限中においていない。耳を貸そうともしない。枠の外に置く。われ関せず。担当者の頭越しに交渉する。当事者の頭越しに話を持っていく。聞こえない振りをして行き過ぎる。▼袖にする(一流企業を。主人を)。▼ないがしろにする(安全を。夫を。国民生活を)。▼没却する(生死を。精神を。理性を)。▼目をつぶる(違和感に。後ろめたさに。過去に。真実に。被害に。ミスに)。無視できない。捨てがたい味わい。なかなか捨てがたい説。捨てたものではない(なかなか。まんざら)。この論文を抜きにしては語れない。手を束ねて見ているわけに行かない。 **もくさつ【黙殺】** ▼黙殺する(最後通牒いうちを。存在を。判決を。目撃者を。問題を。要求を。論理を)。相手の感情も存在も黙殺しているような冷たい横顔!大佛。文壇から黙殺される。 **もんどうむよう【問答無用】** 問答無用で追い返す。問答無用と言わんばかりに電話を切る=浅川。論には及ばない。一談に及ばず(斬って捨てる。斥礼』ける)。問答抜きで斬りかかる。 <1072> # 351 結ぶ・綻びる **かせ【枷】** かせを(外す。はめる)。自分自身の身体の重みが枷のように歩みに抗妨らう“三田。景気回復の足かせとなる。足かせを解き放つ。重い鉛の足枷れをつけられたように一歩一歩歩いていく遠藤。手かせをはめる。 **がんじがらめ【雁字搦め】** がんじがらめに(組み伏せる。縄をかける)。親にがんじがらめにされた人生。義理の縄でがんじがらめにする。がんじがらめの規制を受ける。がんじがらめになる(常識に。借金で。肉親への執着で)。 **けっそく【結束】** 結束が(固い。ゆるむ)。血判を押して結束を誓い合う。精神的結束を強める。結束する(業界が。国民が)。 **こうそく【拘束】** 拘束を(嫌う。解く)。▼拘束する(精神を。身柄を。義務で。手足をベルトで)。親子の絆に拘束される。拘束具で身動きが取れない。協定が拘束力を失う。法的な拘束力を持つ。 **しばられる【縛られる】** ▼縛られる(縄で手足を。後ろ手に。厳しい掟ぶきに。固定観念に。過去の悲しみに。慣習にがんじがらめに。既成の学術的概念に。現実の生活に身動きできないほど。古い因習に身動きならぬほど=川端。両手を背中の後ろで大藪)。時間に縛られる仕事。契約に縛られているしがない身“泉低。▼縛りつけられる(緊張感に全身を。生まれた国に一生)。生まれ出た土地に縛りつけられて生涯を過ごす真継。なじみのない人の前にかしこまっているつらさは目に見えない縄で縛りつけられているよう~中。規則に繋縛めいされる。▼束縛される(時間に。仕事に。法律に)。因習に縛せられる。 **しばりつける【縛り付ける】** ▼縛りつける(規範が人間を。柱に体を。ローブの一端を)。▼くくりつける(胞けばを荷台に。ぼろきれを竹竿掛に)。 **しばる【縛る】** ▼縛る(手を後ろ手に。純で厳重に。ロープで全身を。髪の毛を後ろで。手足をロープで。やかましい規則で)。▼縛り上げる(純で。ロープで。がんじがらめに)。▼男結びにする(縄を。紐ぃもを。草鞋らの緒を)。▼からげる(行李に、うを。荷を。純で十文字に)。純で賊をからめる。古き概絆にから脱する。緊縛がゆるむ。▼緊縛する(荷物を。縄で後ろ手に)。 **くくる【括る】** 髪の根を。真ん中をきゅっと)。緊縛いを解く。縛する(城を。手を。犯人を)。荷物を引っくくる。▼結わく(首っ玉を。腰を。純で。紐で)。 **そくばく【束縛】** 束縛から解放される。運命の束縛から逃げる。束縛を(受ける。解く)。理不尽な束縛を脱する。束縛する(感情を。決まりが人を。行動を。自由を)。束縛される(種々の伝統に。身動きもできないほど行動が=美濃部)。自由を奪う。世の櫚絆はを忘れて一夜を自由に遊ぶ=田山。▼桎梏しいとなる(家庭が。制度が)。 **つな【綱】** 生命を与えられた蛇のようにきびきび動く網新田。網がぶつんと切れる。張りきった綱が切れたように突如として笑い出す=横光。網の端を鞭もちのように鳴らす三浦町。細を榉くいに結びつける。藤のつるが虜とりを捕らえた綱のように松の粋をぐるぐる巻きに巻く佐藤巻。引き綱を(巻きつける。結ぶ。ゆるめる)。ケーブルを(つなぐ。敷設する。埋設する)。鉄索が頭上高く張られる。ワイヤがゆるむ。ワイヤを引っかける。ザイルにつながれた三人のパーティー。ザイルを肩がらみに確保する。カラビナにザイルを通す。ナイロンザイルが白い蛇の肌のように薄気味悪く光る=新田。 **ときほぐす【解きほぐす】** ▼解きほぐす(糸のもつれを。凝った筋肉を。しこりを。冗談で場を。もつれた糸を。硬直しきった心を。こんがらかった関係を。絡んだ毛糸を一本一本=平野)。緊張を解きほぐすように微笑してみせる藤沢。 **なわ【縄】** 純が(びんと張る。手首に食い込む。生き物のように揺れながら谷底へ垂れる=伊集院)。手繰られた縄が滑車をとおるときに氷雨のような紫吹しぶをあたりに散らす三島。組でぐるぐる巻きにする。組をかけて引きずる。ぐいっと細を引く。じりっじりっと縄を手繰り寄せる。投網ぁを打つように縄を投げる=藤沢。無理矢理首に縄をつけるようにして引っ張り出す!有吉。▼あざなえる縄の如し(禍福は。吉凶は)。礼のようにからみついた指=武田泰。頭髪を縄のように巻きつける=横光。肉に食いこむほどくくりつけてある荒縄"長与。麻布と荒縄でしっかりと梱包に认する。巡目が肌に食い込む。厳重に薬剤515で縛り上げる。細引きをがんじがらめにかける。細引きみたいな雨が激しく降る=加太。 **ネクタイ** ネクタイが肌に翻る。ネクタイの結び目を(直す。緩める)。ネクタイを(首に巻く。首から引き抜く。ソファーに放り投げる)。きちんとネクタイを締める。背広にネクタイを合わせる。蝶ネクタイを(つける。結ぶ)。 **ひも【紐】** 紐が(肩に食い込む。だらりと垂れ下がる)。ひもぶつんと紐が切れる。咽喉のとに黒い紐が毒蛇のように深く食い込む"斎藤栄。甲斐甲斐炒灬しそうに赤い紐でたすきがけをする=椎名賊。月が紐で繋ったがれたように太陽の後を追って沈む=大岡。紐によりをかける。細い紐ほどの幅の線吉行。紐を(きつく結ぶ。長めに切る。ぴんと張る。ゆるめに結ぶ。ぐるぐる巻きつける)。笠の紐を解く。巾着の紐を緩めない。靴の紐を締める。首に紐をかけて連れてくる。蛍光灯の紐を引く。羽織の紐を外す。帽子に紐をつける。財布の紐をしっかり結んでおく=源氏。 <1073> # 結ぶ・綻びる 351 **ひも【紐】** 枯れた草が紐のように垂れ下がる=黒井。声が紐のように絡み合う遠藤。垂直の雪が白い無数の紐のように降る=加賀。車が細い紐のようにするすると走っていく村山。顎紐を(かける。結ぶ)。飾り紐で絞ぁゃを取る。肩紐を(締める。結ぶ)。スリッブの肩紐を落とす。 **ほぐれる** ほぐれる(肩の凝りが。部屋の空気が。胸のつかえが。ばらばらに。気がばっと。堅苦しい気持ちが。強張った四肢が)。口が自然にほぐれていく。わだかまりが解きほぐれる。 **ほころびる【綻びる】** ▼ほころびる(笑顔が。袖口が。蕾いにが。縫い目が。にこにこと表情が)。貰い笑いの頬が綻びる=里見。▼ほころびかける(梅が。桜が。花びらが)。笑うまいとしてもほころびてくる笑顔"壺井。ちらほらと桜の花がほころび始める夢枕。ほころびが(明らかになる。顕在化する。露呈する)。説明にほころびが目立つ。びりびりと着物のほころびが切れる。小さな綻びが目立つくらいに大きくなる"堀。▼ほころびが広がる(徐々に。縫い目の)。袖口のほころびを繕う。ほころぶ(自ずと顔が。最初の一輪が。唇がわずかに。口元がかすかに)。▼ほころばせる(静かに口元を。童顔を。頬を。にんまり小さな口もとを水上。笑いで顔をくしゃくしゃに"船戸)。 **ほつれる** ほつれる(金欄会从の糸が。袖口が。紐ひもが。愛びんの髪が。ちらほら白髪が額に=岡本)。ほつれ(髪の。袖口の。布の切り口の。髪の)。ほつれ髪をかき上げる。ほつれ毛がまとわりつく。 **ほどく【解く】** ▼解く(糸のもつれを。腕組みを。髪の元結を。髪を。絡んだ視線を。靴の紐ぃもを。するりと帯を。装備を。綱を。祀を。荷物を。舟のもやいを。風呂敷包みを。郁いいを。旅装を。腰紐にしをするすると)。ほどく(帯を。髪を。つないだ手を。礼を。ネクタイを。風呂敷包みを。三つ編みを。結び目を。浴衣の紐を。かたくなな心を。杭に結びつけたローブを。組んでいた腕を。古いセーターを)。糸をほどく(絡まった。ほつれた)。ぽつりぽつりと荷を解きにかかる。帯を引きほどく。 **ほどける【解ける】** ▼ほどける(心の垣根が。縫い目が。紐ぃもが。固くなった空気が。からまった糸が。こらえていた感情が。強ばった表情が。張り詰めていた気分が。結んでいた紐が。パラパラと寄せ木のように手が槌)。気持ちがさらさらとほどけて崩れる=鳥尾。▼ほどけない(もつれた糸が。考えがもつれて)。 **むすびあわせる【結び合わせる】** ▼結び合わせるむすびあわせる(一対を。髪を。心を。生活を。縄を。端を。紐ひもを。二つのものを。二人を。両端を。自然の諸過程を)。蛇が自分の尾を噛むようなかたちで最初と終わりが結び合わさる。 **むすびつく【結び付く】** ▼結びつく(緊密に。効果的に。不可分に。密接に。良い結果に。意識が現実と。固く。官界と金で。深い因縁で。分かちがたく。二つのイメージが。都市と農村とが有機的に荒巻)。金に結びつく縁起物。芸に結びつく話。実用に結びつくデザイン。排出削減に結びつく仕組み。結びつきが運命的なものになる。紐帯結ゅうで結ばれる。夫婦は一心同体。一心同体の如く深い関係。子母沢。 **むすびつける【結び付ける】** ▼結びつける(男と女を。二点を。紐ひもを。二つの観念を。棒くいに網を。お互いの感情を)。▼事件を結びつける(小説と。特定の人物と)。結果を原因と関係づける。釣り糸を結わえ付ける。 **むすびめ【結び目】** 結び目が(解ける。ひとりでにほどける三浦哲)。三尺帯の結び目が蝶々のように華やか=木山。二本の糸を結び目がわからないくらい小さなコフで接っぐ機結ぶたびという結び方“干刈。結び目を固く締める。ネクタイの結び目をいじりまわす。大待宵草ははにわが結び目をほどくように黄色の花を淡く咲かせた夕暮れ時落合。荒縄をぐっとしごき片足を荷物にかけてくっくっと結び目を固める=山崎。 **むすぶ【結ぶ】** ▼結ぶ(縁戚関係を。考えが実を。空港と都心を。攻守同盟を。交流の輪を。紳士協定を。性的な関係を。力強く言葉を。帯をお太鼓に。口をへの字に。条約を有利に。布を装飾的に。髪を元結で。唇をきつく。いくつかの地点を。一夜だけの契りを。面影が鮮明に像を。過去現在未来を。空想がはっきりと形を。山の麓に草庵於らを。髪をひっつめに。恨みが深く根を=坂口。ボニーテールの髪をリボンで=大藪)。島を結ぶ連絡船。▼一文字に結ぶ(唇を固く。口をきりっと)。固く口を結ぶ。強い信頼関係で結ばれている。結ばれる(宿縁に。肉体的に。一本の糸で。絆で。利害で。唇が真一文字に)。▼結び直す(縁を。紐ぃもを。リボンを)。▼取り結ぶ(契約を。取引を)。▼唇を引き結ぶ(きつく。ぎゅっと)。▼引き結ぶ(口もとを。解きかねる疑問に口を)。▼結わえる(荒縄で。紐で)。 **ローブ** ローブが(一直線に張る。たわむ。するするとロープ手繰り寄せられる。ぶつりと切れる。海蛇のようにたぐり寄せられる"小林多。鉄棒のようにびんと張る=尾辻。猛獣使いの便もちのように鳴る=丸谷)。ローブでぐるぐる巻きにする。ボートをローブでつなぐ。ボートが別のボートを目に見えない長いロープで曳航以沁でもされているかのように追送する=景山。張り渡したローブにおしめのようにブラ下がる!小林多。ローブの(端をベルトに結びつける。両端を結んで輸にする)。鰻詞なのようにローブの先がのびる"小林多。ローブを(きつく結ぶ。伝って降りる。肩がらみにする。杭に巻きつける。たぐって前へ進む。たすきにかける)。ぴんと張ったローブを握りしめる。 <1074> # 352 空しい・儚い **あだばな【徒花】** あだ花に終わる。単なるあだ花に過ぎない。結局実を結ばない。根を絶たれた徒花のように姿しょんでゆく=隆。 **あぶく** 泥沼に浮かぶあぶく。炎に熱せられた新からあぶくが出る。洗剤のあぶくのかたまりが流氷のようにひしめき流れてくる三浦哲。所詮あぶくのような人生小池。あぶくのように実体がない平野。金をあぶくのように使う~梅本。口ぐせのように呟く言葉が体の底からあぶくのように浮き上がってくる"野問。ほのかに割れるあぶくのように繰り返しつぶやく野間。夢があぶくのように消え去る=石坂。 **あわ【泡】** ▼泡(ぶくぶく音をたてる。かたまった雪のような石鹸せんの=野坂。クリームのようなビールの"開高)。泡が(口にたまる。水面に浮かんでくる。水銀のように光る=宮沢。喷水のように噴き出すぃ田島)。細かな泡が立ちのぼる。ぶくぶくと泡が立つ。ぶくぶくと泡が出る。ビールの泡が山をなしてあふれかかる=田山。泡の弾けるような淡い音"小川。泡を唇の端に膨らませる。口角泡を飛ばしてしゃべる。口角に泡『カニがブクブク泡をふく=開高。蟹かにのように泡を吹いている生まれたばかりの赤ん坊"丸谷。波が真っ白な泡を噛んで石垣の下まで打ち寄せる"阿部。口から泡を(飛ばしながら話す。吹くようにして喋ん、る=有吉)。泡のような白波が立つ!白洲。頭の中で沸き返った凄すごい泡のようなものがようやく静まる=夏目。泡のように浮かび出てくる過去の思い出=高橋和。怨うらみが泡のように頭から消え去る菊池。語尾がぶつぶつと泡のように溶けていく海堂。水面へ浮かび上がった泡のようにすぐ消えて平静になる微笑=横光。ぶつぶつと泡のように不平を紡ぐ=森瑶。生あくびが泡みたいに胃の奥から上ってくる"大庭。さわさわさわさわと波がしらのあわつぶが美しい音楽を残して消えていく灰谷。無数のソーダの泡粒のようなものが全身の皮膚を逆撫にゃでに走り抜け戦慄させる藤枝。胸に苦い気泡が浮かぶ。ぶつぶつと気泡を上げる。不快な想念が次々と水泡込、のように意識の上にのぼってくる遠藤。白い水泡。 **うつろ【空ろ】** 目が木のうろのようにうつろ宮部。うつろな(うわずった声。声を立てて笑う。視線を宙に漂わせる。まなざしを投げる。目をさまよわせる)。言葉がうつろな響きを残す。上の空といった虚;っろな状態"森瑜。捕らえられた人にありがちなうつろな眼"灰谷。夢遊病者のようにうつろな瞳"辻仁。虚ろな目で家の中を眺めまわすなかにし。何かに魂を奪われたように虚ろな目=梅本。靴の音がやけに空ろに響き渡る=森瑞。うつろになる(頭が。心が。胸が。目が)。真空のなかにおかれたようなうつろさ本庄。うつけけた様子で立ちつくす。うつけたような(声。目つき)。うつけたようにぼんやりとしている。 **きょむ【虚無】** 虚無の(穴みたいな階くらいポッカリあいた穴を胸に感じる=田辺。かげりを身につける=阿久)。虚無感(心情的な。東洋的な。やりきれない)。仄暗に60い虚無感が鏡の上の雲のように意識に影を落とす福永。虚無的な(気分。思想。疲れ。瞳を投げる。目つき。揶揄ゃゅ)。ニヒルな(顔。青年。かげのある笑い)。語調にニヒルな響きがある。ニヒルに笑みを浮かべる。 **くうきょ【空虚】** ▼空虚(癒しがたい淋しさの菊池。心の中が見物が帰って行ったあとの劇場のように"梶井。胸のあばら骨が一本抜き取られてしまったような頼りない=檀)。気持ちの空虚が満たされる。空虚な(生を自覚する。伦ゃびしさがこみあげる。解放感につきまとわれる=城山)。白々しい空虚な時間。明るさを装った空虚な冗談筒井。暮らしのどこかに空虚な穴があく梅本。空虚な言葉(愛についての。索漠とした)。▼空虚な眼差し(とうに死んでいる友人と話し合っているといったような堀。何か見据えているようなくせに何も見てはいないらしい=堀)。がらんと空虚に消沈しがちな心"宮本瓦。空虚のような静寂が拡がる=宮本百。荒廃した砂漠のごとき空虚感"中村真。耐えがたい空虚感が心に巣食う。砂漠の中にぽつんと立たされたような心細さと空虚感が心を襲う遠藤。空虛感に(とりつかれる。見舞われる)。賑やかに動き廻ったあとの身の置き場のないような空虚感に噴錢ぃまれる=高井。生きることが物愛くなるという風な力が抜けてしまっような空虚さ=阿川弘。 **そのほかぎり【その場限り】** その場限りの(対策。出来心。なぐさめ。思いつきを口にする)。一時の(まぐれ当たり。気の迷いにすぎない。衝動に駆られる。出来心にすぎない。ブームに終わる)。かりそめにした約束。かりそめの(恋。情事)。時にとっての気休めになる=石坂。▼気休めに過ぎない(しょせん。単なる)。口から出まかせの気休めを言う。見え透いた気休めを云いって子供を脈すかすような風にあやなす谷崎。気休めのような合の手を入れる=山田太。 **とろう【徒労】** 一切が徒労にすぎない。試みが徒労に帰する。徒労に終わる(企てが。骨折りが)。荒磯に打ち寄せる波と同じに無意味な繰り返し菊池。縁の下の郷。終わる(努力が失敗に。無駄足に。無駄骨に。骨折りが無駄に)。砂漠に水を撒きくように村上拳。ざるで水をすくうような遣り口=林京。死を前にしてそれと抗争している人のような努力人米。砂浜で煤すずの粒を探すような作業"中局み。無駄な苦労を積む。波にほえる犬のよう~山本有。舞い落ちてくる花びらか雪のかけらを一つ一つ数えようとするようなもの阿部。 <1075> # 空しい・儚い 352 **とろう【徒労】** 実ることのない努力と工夫を繰り返す開高。言っても無駄だと承知で言う力ない言葉"光瀬。無駄な手数をつくす。夜の目もろくろく眠らずにした労力が何の役にも立たない=横光。白旗を揚げるに等しい徒労感"貫井。甲斐がぃのない(手助け。努力を続ける)。机上の議論を戦わせる。▼くたびれもうけ(骨折り損の。欲張り損の)。絶望的な論議を重ねる。▼努力(空しい。悲しくはかない)。努力がふいになる。無駄足を(運ぶ。踏む)。さんざん無駄骨を折る。労多くして得るところの少ない作業"村上春。建設計画が画餅と化す。画餅に帰する。画ぇに描いた餅のような代物"夏目。絵に描いた餅に終わる。暗溶似たる日々を賽さぃの河原の石積みのように積み重ねる=島田。賽の河原にとぼとぼと石を積む!中。 **はかなむ【儚む】** 肉体の衰えをはかなむ。不治の病をはかなんで死ぬ。世をはかなんで(自殺する。出家する)。つくづく運のつたないことがはかなまれる。 **はかない【儚い】** はかない(幻想に終わる。望みを持つ。夢と消える。泡沫がけのような身!白洲)。▼はかない(何顔の花が一日にしてしぼむように白洲。大洪水の前には木の葉のように弱く=辺見。攫っかんだと思う烟叶もが手を開けると何時ぃっの間にか無くなっているように夏目)。万に一つのはかない望み。朝露の消えるようなはかない臨終"山本周。趣味の前には百万両だって煙草の煙よりはかないものにしか思えぬ=幸田露。沼に消える鬼火のようにいたってはかない存在=瀬戸内。夢よりもはかない目論見,36从"有島。はかないもの(人の命は。道端に生えたぺんぺん草の実ほどもない=宇野千)。一瞬の間にはかなく消えてしまう。恋がはかなく破れる。世の中がはかなくなる。この世は電光石火のようにはかなく消えるかりそめの世界!白洲。花火が夢のようにはかなく一瞬の花を開いて空の中に消えてゆく=中河。深い息の底に吸い込まれてしまうのではないかと心配になるくらいはかなげな声=小川。はかなげに(打ちしおれる。うなだれる。ほほえむ)。情熱がはかなげに揺れ動く。はかなさ(あるかなきかの精妙な"竹西。人の世の離合の"辻井。柳の細枝を伝う春雨の雫しょのような=竹西)。泡のように生じてはすぐ消えて行く儚さ=長与。人の世のうつろいは飛花落葉のはかなさにひとしい"辻井。人生のはかなさをかこつ。命のあまりのはかなさを見せつけられる南木。砂の上に建てた楼閣にすぎない"なかにし。一場の空恋と化す久間。空しい一場の夢高橋和。一場の夢と消える。結婚がはかない一場の夢に終わる=今東。邯鄲さんの(枕。夢)。槿花岭ん(一日の栄。一朝の夢)。露の(命。世)。 **バブル** バブルで膨らんだ過剰な消費。バブル景気に浮かれる。バブル経済が(弾ける。崩壊する)。 **ほうまつ【泡沫】** 泡沫のようなはかない世の中白洲。幾つもの理由が思い浮かんでは泡沫のように消える"福永。都会に巣食う泡沫のような人間今日。淀みに浮かぶうたかた。うたかたの(夢と消える。夢を見る)。 **みずのあわ【水の泡】** せっかくの苦心の策が水の泡と消える=北。これまでの粒々辛苦も水の泡に帰する。水の泡になる(計画が。実績が。今までの苦労が。これまでの辛抱が。せっかくの苦心が。努力が一瞬にして=宮尾)。百日の説法屁、一つ戸板。水泡に帰す(画策が。建策が。今までの努力のすべてが=高橋和)。誤解されては元も子もない。▼元も子もなくなる(遭難すれば。今ここでばれてしまえば)。 **むじょう【無常】** 人生の無常が身にしみる。無常の瓜は時を嫌わず。世の無常を説く。諸行無常の理を示す。別れは会者定離の習いとあきらめる。会者定離は世の習い。生者必滅の道を説き聞かせる。生者必滅は世の習い。有為転変常なき様相。栄枯常なし。常ならぬ世の習い。人の世の常ならぬありさま。 **むなしい【空しい】** 空しい(哀感に浸る。思いを味わう。結果に終わる。逡巡しんを重ねる。努力を重ねる。夢に終わる。期待が胸に苦しくよみがえる。ゲームに嫌気がさす。試みを繰り返す。切なさにさらされる。水かけ論にはまりこむ。疑問ばかりが残る=福永)。瞞だまされたような虚しい気持ち”石川。いたずらな空しいだけの反発。空しく(海の藻屑も(となる。過ぎ去った日々を悔やむ。手をこまねいている。冷えきっていく感情。引き返すほかない。身を犠牲にする。失われた青春への郷愁"中村兴。老いた身をぶつぶつとかこつ=本庄)。声がむなしく浜風に吹きさらされる=本庄。エネルギーが虚むなしく宙にさまよい出る=沢木。音が室内に空しく反響する。時間を空しく費やす。善成空しく敗退する。チャンスを空しく逸する。抵抗も空しく落城する。手が空しく空をつかむ。呼び出し音が空しく鳴り続ける。突き出した拳が虚しく宙を切る荻野。夢と同じように空しく消える=福永。空しゅうする(古いぶを。己れを。心を。臓を)。空しさ(興奮の去った後の。ぽかんと虚脱された心の"石坂。無力な人間が思わず発した馬鹿笑いのような"外村)。虚しさ(風の過ぎたあとを見るような寒い=松本。空漠としたとらえどころのない萩原業。自分の持ち物を無体に取り上げられたような=高井)。培ってきた技術が一瞬にして霧散したようなむなしさ浅川。空しさが(心をよぎる。全身を包む。胸に巣食う。体の中を走り抜ける)。虚しさが(澱ぉぅのように胸の底にわだかまっている"貰井。黒い孔ぁなを開けているように胸の中にある柴田鋏)。胸にがらんとした空しさが空洞のように拡がる萩原来。寂しさと空しさが同居しているような表情=京野。空しさに(襲われる。耐える。取りつかれる。うちのめされる)。山彦と会話しているようなむなしさを感じる谷川。体の中を風のようなものが吹き過ぎる=日野。 <1076> # 553 命令する・押し付ける **いいつかる【言いつかる】** ▼言いつかる(社命を。用事を)。仰せつかる(重い役目を。御用を。資料の作成を。大役を)。 **いっぽうてき【一方的】** 一方的な(解釈。感じを受ける。考祭に過ぎない)。一方的に(電話を切る。話をまとめる。暴力を振るう)。好みを一方的に押しつける。頭ごなしに(決めつける。どなりつける。怒声が飛んでくる)。意見を頭ごなしに否定する。 **いやおうなし【否応なし】** 否応なしに(重荷が押しつけられる。ぐんぐん押しつける。死地へ追いやる。周囲の視線にさらされる。迫ってくる入学試験。隣の話が聞こえてくる。荷を背負わされる。湧き上がってくる好奇心)。否応なしの強引な勧誘、安岡。否応なく(拘留される。承諾させる。認めさせる。目に入る。渦に巻き込まれる。知るはめになる。引き寄せられる。耳に入ってくる)。戦闘が否応なく始まる。否が応でも従わねばならない。生は否が応でも死を孕はらんでいる。否でも応でも(連れて行く。この話を進めるつもりだ)。好むと好まざるとにかかわらず。問わず(意識無意識を。成功不成功を。事の理非曲直を)。▶いかんを問わず(事情の。理由の)。 **おし【押し】** 黒を白と言う強引な押し“井上靖。押しが強くなくては生きていけない。押し気味に(試合を進める。戦いを進める)。強引に押しの一手でくる。見るからに押しの強そうな男。漬物に押しをする。 **おしきせ【お仕着せ】** お仕着せの(価値観。規則。敬礼をする)。出来合いの(サイズ。食品。服)。想像力を必要としないチープな出来合いの物語"有栖川。 **おしつけがましい【押しつけがましい】** 押しつけがましい(甘えに満ちる。自惚れ。図々しさ。説明口調。やり方。話を終しまいまで忍耐づよく聴く有吉)。押しつけがましく(自己主張する。銚子をさし向ける三浦談)。妙に押しつけがましく末梢神経を刺戟記げしてくるようなデザイン=高井。声音にふてぶてしいまでの押しつけがましさが含まれる"小林久。 **おしつけがましくない【押しつけがましくない】** 押しつけがましくない(思いやり。さりげない心遣い)。押しつけがましくない(謙虚で。控え目で)。押しつけがましい(ことを言わない。ところが一切ない)。 **おしつける【押し付ける】** ▼責任を押しつける(艦長一人に。現場に。下の人円に。他人に)。▼押しつける(自分の意見を。受話器に耳を。頬に唇を。厄介な役目を。銃口を額に。一目を。小指を印肉に。舌先を歯裏に。銃口を額に。法律のやり方を。ときめきが胸を。窓ガラスに顔を。耳の脇に指先を。厄介な付き合いを。親指をこめかみに。仕事をむやみに。自分の解釈を人に。壁に額をぴったりと。力まかせに肩をぐいぐい。不安が心を重苦しく。自分の責めを誰かに=貫井)。上から押しつける高飛車の態度に出る=村上元。煙草を灰皿に押しつけて消す。窓ガラスにそっと額を押しつけて外を眺める三浦し。体重に任せて押しつけてくる。押し付けられた定型の枠を食い破って生きる不櫚ふきの魂"あさの。▼押しつけられる(危険を。尻ぬぐいを。損な役回りを。厄介な仕事を。壁ぎわに)。押しつけを(拒否する。はねのける)。肌に押しつけてくるような粘っこい話石坂。押しつけ合う(供出を。責任を)。 **ぎむ【義務】** 義務で縛る。立派に義務を果たす。誇りと義務を心にいれて行動する=長崎。義務感で動く。義務感にとらわれる。義務的に祈りをつぶやく。仕事を義務的に済ます。責務を(負う。全うする)。誠実に責務を果たす。義務つける(監査を。参加を。情報公開を。提出を。届け出を)。義務づけを(決める。見直す。やめる)。 **ごういん【強引】** 強引な(捜査方法。態度に出る。やり方で手に入れる)。少々強引な手を使う。商売人の強引な論理。俺についてこい式の強引な男"干刈。強引に(話をまとめる。物事を進める。相手をねじ伏せようとする。休を割り込ませる。ベッドに押し倒す)。▼強引さ(なりふり構わぬ。相手に有無を言わせない=辻仁)。強引さに(腹が立つ。ほだされる。眉を寄せる)。やり方の強引さにあきれる。荒技で押し切る。 **ごうれい【号令】** 講堂中が張り裂けんばかりの大きな号令木山。きびきびと号令が飛ぶ。号令に現場の空気がビリッとひきしまる=つか。人々に号令をかける権力者の一面三浦絵。▼号令をかける(人々に。決然として)。号令する(軍隊的に。天下に。声を大にして)。号令一下突進する。王政復古の大号令を発布する=網淵。 **さしず【指図】** 指図が細かすぎる。悪魔の指図に従う高橋和。おとなしい家畜の群れのように人の指図にしたがって生きる=石坂。指図のままに傀儡くくのごとく動く菊池。やかましい指図を受ける。あかの他人からとやかく指図をされる理由はない=阿刀田。指図する(身の処し方を。いちいち。てきばきと。差し出がましく。重箱の隅をつつくように口うるさく=宮本杯)。小まめにあちこち指図して回る。横から指図がましい口を挟まれる。指図通りに(おとなしく振る舞う。木偶でくのようにおとなしく動く!柴田練)。 **しいる【強いる】** ▼強いる(過酷な労働を。仕事の中断を。絶対的服従を。長時間労働を。人に負担を。無理難題を。一方的に。規則正しい生活を。極度に神経の緊張を)。生活を強いられる(不愉快極まる。なかば奴隷的な三好後)。強いられる(慰安所生活を。苦しい喰いを。難民生活を。緊張をつねに。かつかつの暮らしを。 <1077> # 命令する・押し付ける 353 **しいる【強いる】** 根本的な転換を。不安定な働き方を。無残な生き方を。理不尽なことを)。相手に名乗る隙を与えず一方的にまくし立てる!有川。旅柄ずくで実行を迫る。 **ちからずく【力ずく】** 力ずくで(強要する。賞をもぎとる。席に座らせる。捕虜を奪い返す)。部屋から力ずくで引きずり出す。力ずくでも我意を通そうとする=船山。力ずくに首筋をおさえつける=中。力でしゃにむに征服する。何事も軍事力で解決しようとする。 **ちょうはつ【徴発】** ▼徴発する(食料を。トラックを。物資を)。▼徵集する(金品を。人員を。物資を)。▼徴用する(トラックを。船を。労働者を)。 **ちょうへい【徴兵】** 徴兵に(応じる。取られる)。徴兵を逃れる。赤紙が来る。兵員を徴集する。兵役に服する。兵役を(終える。認する。済ます)。 **にんじる【任じる】** ▼任じる(会長に。士官に。将軍に)。▼補する(課長に。技師に。局長に。判事に。部長に)。 **みつめい【密命】** 密命を(受ける。帯びる。下す。遂行する)。内命が下る。内命を(受ける。帯びる)。秘命を(帯びる。達する)。 **むりじい【無理強い】** 無理強いに(奪い取る。結婚させられる)。▼無理強いする(不当な交易を。他人に)。嫌なことを他人に無理強いされる。横車を押す。一方的に強制する。強制する(移住を。ただ働きを。力ずくで)。本国に強制送還する。強制的な情愛の押し売り遠藤。強制的に(電源を切る。同行を求める。仕事につかせる)。強要する(愛情を。自白を。署名を。ダイエットを。転向を。面会を)。 **むりやり【無理矢理】** 無理やり(口を封じる。口を割らせる。手ごめにする。お辞儀をさせる)。腕を取って無理やり座らせる。尻込みする連中を無理矢理仲間へ引き入れる=安岡。咽喉のともとまで出かかっていた続きのことばを無理矢理呑みこむ鷺沢。無理やりに部屋の中へひきずり込まれる。頬に無理矢理に微笑をつくってみせる=遠藤。否やは言わさぬ。道理のないところへ道理をつけて逃げを打つ谷崎。嫌とは言わせない。強行突破する(敵中を。非常線を)。強行突破を(敢行する。断行する)。強いて(言うなら。平気を装う。言葉をかけない。止めようとしない)。しゃにむに(首を突っ込む。突撃路を開く。圧倒しようとかかる。手をこじ入れようとする。刃物を振りまわす)。遮二無二の突破を下知する=柴田錬。生木を裂くように二人の仲を切り裂く“小林久。曲げて御承知頂きたい。無体な振る舞い。一にも二にも無理押しで納得させる"山崎。無理算段して(お金を用意する。欲しかったものを買う。レストランを開店する)。無理に(笑顔を作る。お世辞を言う。無理を重ねる。こじつけて考える。つじつまを合わせる。歩調を合わせる)。理が非でもいうとおりにしなければならない"山田美。有無も言わさずに連れ出す。有無を言わさず(押しきる。押しつける。縛り上げる。しょっぴく。逃していく。一刀両断にする)。有無を言わさぬ強引さ。有無を言わせぬ口調。表情に有無を言わせぬものがある。 **めいじる【命じる】** ▼命じる(解散を。書き直しを。謹僕を。自宅待機を。切腹を。調査を。停車を。部下に。落ち着いた声で。事務的な口調で)。命じられるままに(動く。従う)。用事を言いつける(部下に。あれこれと)。言いつける(仕事を。高飛車に)。仰せつける(お相伴を。指南役を。切腹を。年責を。閉門を)。▶厳命する(経蛩節約を。徹底的弾圧を。犯人の捕縛を)。申し付ける(禁足を。警護を。追放を。閉門を)。▼任命する(委員を。長官を。教授に。後継者に。署長に。大臣に。理事長に)。 **めいれい【命令】** 命令というよりは要請に近い=半村。出撃の命令が下る。命令に唯々として服従する=美濃部。どんな苛酷な命令にも従える無気力な人間林京。命令に従う(忠実に。心ならずも。泣く泣く。唯々諾々として)。命令の撤回を求める。命令を忠実に守る。虚心に命令を受け入れる。上司の命令を無視する。無茶交令を出す。▼命令を下す(きびきびと。びしびしと)。命令する(収用を。中止を。割り当てを。居丈高に。高飛車に。厳然として。上官口調で。鋭い口調で)。声で命令する(福落65いな。押し殺した鋭い)。命令了するように言い放つ。どうしても遂行しなければいけない至上命令=田辺。秩序なるものの維持を至上命令と心得る権力側の思い入れ"玉村。避難命令が出る。断固たる命令口調。命令的な(言い方。態度)。攻撃の令が下る。令を(下す。発する。布告する)。遺命(親の。父の)。遺命に従う。遺命を遂行する。仰せに(従う。背く)。その筋のお達しにより。恩命が下る。思命に(接する。浴する)。追って下命がある。下命を(賜わる。拝する)。官命が下る。官命に背く。軍令に(従う。背く)。軍令を犯す。攻撃を下知する。唯々諾々と下知に従う。泣く泣く上意に従う。上意を盾に取る。詔勅が下る。終戦の詔勅を聞く。裁判所から逮捕令状が下りる。大命が下る。大命を拝受する。特命が下る。特命を受ける。▼発令する(気象警報を。警戒警報を。非常事態宣言を)。家宅捜索令状をかざして見せる高村慈。令する(戦いを。天下に)。指令が飛ぶ。▼指令する(闘争の展開を。サボタージュを)。指令通りに行動する。命ぃぃに(従う。背く)。命を(受ける。下す)。退却の命が下る。命のままに動く。 **よぎない【余儀ない】** 後退の余儀なきに至る。余儀なく(欠席する。心中しなければならない羽目になる=徳永)。余儀なくされる(苦しい戦いを。経営破綻を。計画の変更を。戦線離脱を。操業停止を。入院生活を。亡命生活を。無人島生活を。連載の中止を。睡魔との闘いを。ないないづくしの生活を。道路工事のために立ち退きを=金井)。 <1078> # 354 珍しい **かつてない【曽てない】** かつてない危機にさらされる。かつてないほど憤りを感じる。かつてなかったほどの大勝ぶり。関係改善の動きがかつてなく強まる。かつて覚えぬほど待ち侘びる。かつて一度も(前例がない。通ったことのない道)。古今(無双の英雄。無類の驍将)。▼ない(いまだかつて見たことが宮尾。未だ曽かって耳にしたことが=夏目)。ついぞ(行ったためしがない。機会に恵まれない。見せたことのない固い顔。大賑わいに賑わったことがない=庄野)。 **きせき【奇跡】** 奇跡が(起こる。ぼたもちのように訪ねてくる=吉本)。人生は奇跡に満ちている佐藤愛。奇跡のように(簡潔な答えがばっと出てくる=小川。よく効く治療法。宮部)。奇跡的な復活を遂げる。奇跡的に(命拾いする。救助される。病状が回復する)。 **ぜんだいみもん【前代未聞】** 前代未聞の(事件。スキャンダル。出来事)。破天荒な(挙に出る。計画。出来事。方法を思いつく)。 **ちんじ【珍事】** 降って湧いた珍事。珍事が(起こる。出来しいっする。突発する)。椿事はんが随所に突発する。思いもかけない椿事に驚く=芥川。思いがけない出来事が起こる。思いがけない出来事に呆然畑らとする。全く不意の出来事。不意の出来事に驚く。 **ちんぽん【珍本】** 珍本(入手困難な。門外不出の)。珍本を探し出す。我が国に二冊とはない稀観書にに、う。実物を見たこともない稀観本時にう。 **まれ【稀】** ▼稀(古今の世界歴史に類例を見ないほど"萩原朔。四つ葉のクローバーのように=池澤)。極めて稀な病気。夜は人通りも稀な区域。ひなには稀なきれいな娘!坂口。種類稀なる鳥。稀にしか行かない。訪ねる人も稀になる。稀に見る(硬骨の士。好試合。名演技)。史上まれに見る扇動的政治家美濃部。世にも稀に見る可憐な少年!島崎。一生のうちに一度あるかないか。世界にあまり例がない。世間に例がない。そうそうお目にかかれるものではない。何年に一人という大型新人。百に一つ。めったに見ることができない。例はほとんどない。希少な(価値。品)。希代の(英雄。怪盗。天才。天分に恵まれる)。希有ぃぅな(完成度。機会。才能。存在)。希有の英雄。千載一遇の(チャンスを逃さない。機会にめぐり合う山岡)。めったにない(幸運。災難)。類い稀な(美しさ。才筆の持ち主。資質。武術の達人)。分明な自分の影を見失わなかったとでもいうような類い稀な安堵で一杯=檀。 **みぞう【未曽有】** 未曽有の(異常気象。好景気に沸く。混乱を呈する。大成功)。餓死者が未曽有の多きに達する。古今未曾有の出来事。前古未曽有の大成功を収める=幸田露。 **むるい【無類】** 無類と言っていいくらい美しい藤枝。無類の酒好き。的確な言葉でとらえる無類の表現力。古今無類の物笑いの種谷崎。類ない(美しさ。価値)。天下に冠たる剣の達人。天下無双の(豪傑。才人)。▼並ぶ者がない(権勢に。満天下に)。筆をとっては並ぶものがない人今日。古今に類を絶した着想"中島河。世界に類を絶する。史上他に類のない年。▼類のない傑作(世界に。世間に)。今までに類のないほどの接戦。 **めずらしい【珍しい】** 見る物ことごとく珍しい。珍しい生き物を見ているように眺めやる=丹羽。世にも珍しい装飾品。あんまり珍しいから雪でも降るんじゃないか小沼。なにか珍しいものでも見るような眼差しで見守る=山本周。万人に一人という珍しい体質"杉本。見るもの聞くもの珍しいものばかり。宮尾。今どき珍しい女の鑑砂が連城。今時珍しい苦学生に感動する“南木。珍しく(よく晴れた日。和服を着る。ゆったりした気分になる)。新奇な風俗を珍しがる。めずらしそうに店の中をきょろきょろ見る=灰谷。事実は小説より奇なり。古今東西に例を見ない。世間にざら にある話ではない。そうざらに使われない。そんじょそこらに(ない品物。あるものではない)。物珍しい風習、物珍しくつくづくと見る。物珍しげにあたりを見回す。物珍しそうにじろじろ見る。巷問だらに遣聞がある舟橋。外国の珍奇な品物を取り寄せる。はなはだ高価な珍奇な料理"中野美。珍奇の品を献上する。珍説がまことしやかに伝えられる。珍無類の(おかしさ。隠し芸。話)。物珍しそうにじろじろ眺める。類例のないやり方。▼掘り出し物(意外な。思いがけない)。掘り出し物を探す。▼珍品(めったに手に入らない。世に二つとない舶載の杉本)。 **めったに【滅多に】** めったに(現れない逸材。外出しない。笑顔を見せない。顔を合わせない)。感情をめったに顔に出さない。普段はめったに見ることができない。めったにない(取り合わせ。チャンスを確実にものにする)。 **れいがい【例外】** 例外として認める。少数の例外を除く。例外中の例外。例外的な措置。例外的に認める。別枠で(許可する。採用する。処理する)。特例として認める。特例は一切認めない。特例的な措置。 **れいがない【例がない】** 例がない(今までに。過去に。史上に。世界に。あまり。近年。歴史上)。▼ケース(希少な。稀ぼれな)。▼前例がない(一度も。古今東西を通じての有栖川)。▼類例がない(世界に。全国にもあまり)。異例中の異例に属する。異例の(展開を見せる。抜探せを受ける)。先例がない。▼ためしがない(ついて写してやった。土産など持って帰った。他人との議論で負けた=加賀)。▼ためしはない(他に例のあった。まず円満に折り合った。死ぬ死ぬっていう人に死んだ=佐藤愛。術を弄して成功した=安部)。 <1079> # 目立つ 355 **あざやか【鮮やか】** ▼鮮やか(大空の星が数も読めるばかりに=国木田。赤土の斜面が朝陽を浴びて燃えるように=五木。雨に洗われたあとの芝がふりそそぐ秋の日ざしの中で目がさめるように=五木)。軍の引き方が見ていても小憎らしいほどあざやか井上靖。鮮やかな(芝生の緑。手並み。ブルーの海。身のこなし。コントラストをつくる。指揮ぶりを見せる)。血のように鮮やかな朱色。おしどりの鮮やかな極彩色"宮尾。手が届きそうに鮮やかな月泉鏡。眼が痛くなるような鮮やかな海と空"今日。目が染まるほど鮮やかな真紅の口紅-辿城。鮮やかに(裾をさばく。血の色がさす。効き目をあらわす)。今でも鮮やかに覚えている。血色が鮮やかに浮き出す。現実を鮮やかに切り取る。情景を鮮やかに思い出す。剃くり跡が鮮やかに青い。人間の心理を鮮やかに描く。花の色を鮮やかに輝かす。星が鮮やかに浮き出る。水煙が鮮やかに上る。若葉の緑が艶々と鮮やかに輝く。人生の一断面を鮮やかにえぐってみせる=浅川。鮮やかに浮かぶ(光景が目に。姿がまぶたにふ。▼鮮やかによみがえる(記憶が脳裏に。声が耳に)。遠い日のことが鮮やかに甦る=内海。▼記憶に鮮やか(世人の。昨日のことのように"大佛)。沖を青錆色ぶの水を切って走る朱の三角帆の鮮やかさ=中島敦。手腕の鮮やかさに驚く。光鮮やかに月が照る。墨痕鮮やかに書く。▼色鮮やか(ひときわ。目のさめるように)。色鮮やかな(景色。蝶。虹)。技巧の冴えに驚嘆する。▼冴えを見せる(絶妙の。天性の。包丁の)。鮮麗な赤色光。色あせない鮮麗な色彩。明澄な(鐘の音。心境)。さやかな光の射す山深い渓流のほとり。さやかな夜(月影。星影)。さやかに(風が吹く。月が照る。星が光る。月影の照らす町。冬日が射しこむ)。鮮烈な(幼時体験。喜びに震える)。忘れようとしても忘れられない鮮烈な記憶・船山。鮮烈に印象が焼きつく。記憶が鮮烈によみがえる。 **きらびやか** きらびやかな(昭明。装身具)。夜目にもきらびやかな鎧いっをまとった武将白洲。きらびやかに灯をともす町藤沢。明かりがきらびやかにともる。灯りのともったきらびやかに胶味ばいホテル北。目も欲ぁゃな(衣装。景観。色彩)。 **きわだたせる【際立たせる】** ▼際立たせる(白さを。静寂を。輪郭を。坂を少し下ると水のにおいが強くなり川音が静けさをいっそう三浦し)。▼際立てる(静かさを。月影を。若々しさを)。傍線を(引く。施す)。傍点を(打つ。つける。振る)。▼浮き彫りにする(意図を。課題を。特性を。狙いを。矛盾を)。浮き彫りになる(異質さが。実態が。争点が。違いが。必要性が。問題点が。弱さが)。▼隈取とまる(顔を。影を。首筋を。題名を)。しわがいっそう深くなって無数の濃い隈取りのようになる“日野。くまどったように黒く良いまつ毛を伏せる壺井。 **きわだつ【際立つ】** ▼際立つ(異常さが。対応の遅れが。独裁ぶりが。細さが。無責任ぶりが。若さが。くっきりと。ことさら)。際立った個性を持つ。何一つ際立った功績がない。毎日が際立った変化もなく過ぎる。際立って(美しい少女。可憐ふぇな姿。高い山。くっきり目立つ)。男振りが際立って見える。叫び声が際立って耳に響く。ヌルデや漆が際立って紅葉する。歯が際立って白く見える。料理の豪華さが際立っている。優れて(感覚的な言葉。まれなケース)。みめかたちのすぐれて美しい生まれつき=山本周。▼対照をなす(著しい。絶好の)。圧倒的な(多数を占める。力を持つ。強さを誇る。速さを見せる。人気を獲得する。高得点で選出される=高橋派)。水際立った(演技。手腕。都会的な姿。華やかさ。震いつきたいような女芥川。ブレーを見せる=眉村)。水際立って(美しい。功を奏する。進歩する。背が高い)。▼水際立っている(着こなしが。変身ぶりが)。 **くっきり** 壁にくっきり影が映る。光の帯がくっきり闇を掃く。ボディーラインがくっきり出る。明暗がくっきり分かれる。くっきりと(青空が見える。險信ぶに焼きつく。赤いルージュをひく。浮き出して見える。心に刻み込まれる。そびえたつ富士山)。顔の輪郭がくっきりと照らされる。影をくっきりと落とす。観念をくっきりと植えつける。光景がくっきりと目に浮かぶ。姿をくっきりと現す。背骨がくっきりと浮き上がる。登場人物をくっきりと描き分ける。模様がくっきりと浮き出す。輪郭をくっきりと見せる。顔に心労の色がくっきりと刻まれている=小林久。くっきりと残っている(傷跡が。記憶に)。▼くっきり見える(山の姿が青い空に。かがむと胸の谷間が!奥田)。くっきりした輪郭を持つ。目鼻立ちがくっきりした美人。くっきりしている(形が。ひときわ)。 **けんらん【絢爛】** 絢爛たる夢の世界。絢爛な(調度。装い)。月が花の色を微かすかに映してこの世のものとは思えぬ底光りのするような絢爛さ=曽野。絢爛艶美んらんな彫琢さい、う。絢爛豪華な(衣装。舞台)。王朝絵巻さながらの絢爛豪華な船遊び=和久。豪華絢爛な花嫁姿。 **ごうか【豪華】** クラシックな造りと家具調度品が王宮の一室のように豪華-笹沢。豪華で派手なカーペット。豪華な(気分に浸る。施設。食事。ドレスをお召しになる=あさの)。革張りの豪華なソファー。上品で豪華なムードが漂う。庭こしらえが城のように豪華な料理屋"室生。入れ物を豪華に飾り立てる。豪華きわまる壮観。豪華絢爛けんな(衣装。顔ぶれ)。王宮の一室のような豪華さ=笹沢。豪華燦然ぜんとしたイブニングドレス。 <1080> # 目立つ **ごうか【豪華】** 豪華燦爛んたる文化"九鬼。一見豪華そうな中華料理店。気品の高い豪奢にうな趣を添える。▼豪奢な生活(大名も及ばぬ。手も届かぬような"林美)。生活が優雅と豪奢に彩られる。豪奢を極めた大邸宅。寄せ棟造りの豪壮な屋败。ゴージャスな(気分を味わう。毛皮をはおった婦人)。 **こせい【個性】** 野性味とたくましさにあふれ命のみなぎった個性の強い男の顔"飯田。▼個性の持ち主(強烈な。強い)。互いの個性を尊重し合う。個性的な(いい作品。演技。キャラクター。人物。常神。発想。表现)。個性豊かな(男。評者)。八方美人で没個性。没個性に陥る。非個性的な画一的な人間。 **さえざえ【冴え冴え】** 冴え冴えと気分を浮き立たせる。笑顔が冴え冴えと明るい。冴え冴えとした(美しさ。顔)。自信に輝いて冴え冴えとした気分。月が冴え冴えとした光を注ぐ=辻井。 **さえない【冴えない】** ▼冴えない(気分が。どこか顔色が。返事が心なしか)。見てくれの冴えない男。どこ といって冴えたところがない。▼優れない(顔色が。気分が。健康が。空機様が。体調が)。 **さえる【冴える】** 空の蒼ぉぉさが一段と冴えて冷たさを増す水井路。▼冴える(中秋の月が。意識が妙に。芸がいよいよ。沢音が甲高く。双眸ぼうが鋭く。撥ばちの音が強く。自分が磨かれた刃物のように思われるほど頭が"伊藤妾。秋かと思われるほど月が冴えに国木田。寒気が星を磨き出すように=川端)。雨の中で一際冴える(花々が。緑の木々が)。冴えた(演技。筆致。余韻。腕前に驚嘆する。喩をばっと明るくする"谷崎)。霜の冴えた庭。月が冴えた晩。初秋の冴えた夜気。寝もやらぬ冴えた目。人間を見抜く目が冴えている。冴え返る(風が。寒さが。神経が。頭が変に。月光に。夕暮れのなかで花の白さが=石田衣)。冴え渡った(青空。音色)。▼冴え渡る(美しい顔が。鐘の音が。心が。一天くまなく。雲一つなく空が)。耿々こうと月が冴えわたる=里見。玲瓏幼沙とした(声。調べ)。 **しばいがかる【芝居がかる】** 芝居がかったしなを作る。めりはりのある芝居がかった口調=円地。▼芝居がかっている(言動が。台詞謎』が)。芝居じみた(行動。声。所作。真似まぁをする)。言葉が芝居気にあふれている。芝居気の(多い女。強い男)。朴念仁に見えてけっこう芝居っ気がある=池波。いやみったらしく気隊きざったらしい芝居気たっぷりの思い上がった言葉"太宰。芝居気たっぷりにねめまわす。 **じみ【地味】** 服装が至って地味。地味で(清楚でぃな装い。くすんだ色の着物。めだたない無器用な娘"西木)。地味な(柄の着物。基礎研究。身なりの女性。娘を嫁に迎える。背広をしっくり着る=円地)。至って地味な芸風。想像していたより地味な人。全然場所をとらない地味な子供"林美。地味に(生きる。着こなす。暮らす。装う)。地味は粋の通り過ぎ=幸田文。 **じみち【地道】** 地道な(研究を続ける。取材を続ける。捜索を続ける。努力を積み重ねる。聞きこみ捜査に重点を置く=勝目。仕事を蔑視してはいけない=畑村)。日々の地道な研鑽却从と努力。スタンドブレーを嫌う地道な社風=浅川。身を堅めて地道に暮らす。俺のような地道にアピールする作戦を実行中三浦し。 **せんめい【鮮明】** 鮮明(記憶が今もって。風景の輪郭がくっきりと"原田宗)。鮮明な(印象を残す。画像を得る。記憶がよみがえる)。目のさめるような鮮明な海の青"島尾。鮮明に目に焼きついている。くっきりと鮮明な写真。▼鮮明にする(争点を。対決姿勢を。立場を。コントラストを)。▼鮮明になる(景気後退が。構図が。対決色が。態度が。対立軸が。輪郭が)。 **どくじ【独自】** 独自な(道を歩く。候補者を立てる)。どくじに研究を続ける。独自の(工夫を凝らす。道を模索する。ビジョンを持つ)。独自性が高まる。独自性を有する。アイデンティティー(会社の。組織の。民族の。日本人としての)。アイデンティティーを(確立する。喪失する)。 **とくしょく【特色】** ▼特色(独自な。ユニークな。著しとくしょくい)。地方的な特色に富んでいる民家建築萩原朔。特色を(上手に活ぃかす。遺憾なく発揮する)。地方ことの特色を見せる。▼特色付ける(風貌を。文化を)。異色の(顔ぶれ。組み合わせ。存在。取り合わせ)。異色中の異色作品。 **どくそう【独創】** 独創性が芽吹く。独創性の欠如を暴露する。独創性を(確立する。発揮する)。独創的な(アイデア。考え。芸術家。研究。仕事。着眼点。方法を考えだす)。オリジナリティーに(欠ける。乏しい作品。富む作品)。 **とくちょう【特徴】** 特徴が(一致する。出る。はっきりする)。特徴がない(これという。目立った)。特徴を(的確に捉える。いちいち説明して聞かせる)。詩的な特徴を検討する"景山。▼特徴づける(過程を。仕事を。立場を。日本人を。文学を)。 **どくとく【独特】** 独特な(嗅覚が働く。匂いがこもる)。独特の(味わいのある作品。面白さを発揮する)。一種独特の(明るさが漂う。存在感)。彼一流のやり方。ユニークな(アイデア。色彩のある雰沮気。世界を繰り広げる)。楽天的でユーモラスな人情味に富んだユニークな性格瀬戸内。 **とくに【特に】** 特に(関心を示す。弁明する必要もない)。あえて(異を唱えない。気づかぬふりをする)。あえてそれ以上(言わない。聞かない)。折り入って頼みがある。格別(いやな顔もしない。恐れる様子もない)。事新しく(取り上げる必要もない。述べるまでもない)。殊に(悲しい。秀逸)。特段忙しくもない。とりたてて困ることもない。とりわけ(愛着が深い。重要な役割をもつ)。 <1081> # 目立つ 355 **とくに【特に】** なかんずく(気に入る。爽快な気分)。別段(印象に残るような話もない。不満に思わない)。別に(汚いとは感じない。深い意味はない)。ことさら(格別な味わい。騒ぎ立てたりしない)。ことさらに(興味があるわけではない。自慢するほどのものはない)。 **とくべつ【特別】** 特別(驚きもしない。不思議なことではない)。特別な(意味を持つ。感情をいだく。力が働く。努力を払う。関係に発展する。才能に恵まれる。情報を手に入れる。値打ちは何もない)。特別に(肩を入れる。使者を立てる)。特別の注意を払う。言うに言われぬ事情。一種特別な価値を持つ。▼特別視する(印象を。存在を)。殊の外(気分が悪い。心を打たれる。重要な用事)。環境問題に特化して議論する。特化する(専門分野に。物づくりに。商品を東南アジア向けに)。破格の(好条件。昇進をする。待遇を受ける。取り扱い)。別格の扱いを受ける。▼格別(今日の暑さは。喜びもまた)。格別な愛情を注ぐ。格別に(警戒が厳しい。仲がよい)。格別の(関心を持つ。便宜を図る)。特殊な(感情を持つ。能力が備わる。色合いを帯びる。仕事に従事する)。特殊性を(強調する。無視する)。 **とくゆう【特有】** 子供に特有な真面目腐った顔。青春の時期に特有な生の不安。若い女に特有なけたたましい笑い声夏目。金属特有の鈍い光沢。少年特有の夢見るような態度や言葉。春特有の強い風が吹き荒れる。若い娘特有の透明な声堀。 **はっきり** はっきり(ものを言。意見を口に出す。決まりをつける。自分の考えを述べる)。空想がはっきり形を結ぶ。白と黒とはっきり分かれる。少し離れてもはっきり見分けがつく。霧が晴れるようにはっきり姿を見せる=野坂。写真のビントがぐっと合ってくるようにはっきり見えてくる=阿川弘。はっきりと(答える。手に取るように見える)。顔をはっきりと見る。面と向かってはっきりと尋ねる。痛いほどはっきりと感じる=堀。昨日のことのようにはっきりと覚えている藤沢。靴の中の小石のようにはっきりと感じ取れる=村上春。自分の掌にひごを見るようにはっきりと分かる=本庄。姿が一枚の写真のようにはっきりと浮かんでくる=原田宗。覚悟を決めたという風にハッキリと云ぃう谷崎。はっきりと見える(鏡に映して見るように"大佛。レンズで覗のぞいたように細部まで"尾辻)。はっきりする(事件の全貌が。双方の旗色が。被害者の身元が。ぼーっと煙った霧雨のかなたさえ見通せそうに目が!有島)。▼はっきりさせる(けじめを。黒日を。事実関係を。正邪曲直を。責任の所在を。寝不足の頭を)。はっきりした(理由を言う。愉郭を持つ)。はっきりしている(意識が。好き嫌いが。目鼻立ちが。カレンダーの数字のように誰の記憶にも徳永)。うれしさをかっきりと心に彫り込む。太陽がかっきりと照らす。言葉が耳の底にかっきりと残る宮尾。きっかりと首を振る。乾期と雨期が截然せいと分かれる今日。直裁もくに(描く。表現する)。態度が判然と悪化する。欅の枝や葉が夜目に判然と浮かぶ"高井。音の高低を判然と聴き分ける=九鬼。一見して判然とする。明晰な頭脳。目に見えて(活発化する。減少する。丈夫になる。やつれてゆく。悪くなる)。家の中が目に見えて荒れてくる。事の善悪は瞭然としている。曇りのない目で見る。鮮やかな曇りのない元気。真実を見抜く曇りのない目"石坂。一点の曇りもない大きな窓ガラス"内前。クリアな頭脳。思考がクリアになる。頭をクリアにする。 **はで【派手】** 派手な(浮き名を流す。動きを控える。官能的な詩風。看板を掲げる。手柄を立てる。喧嘩州。が絶えない。色彩が氾濫从する。趣向を思いつく。装飾のついた器。笑い声を立てる。都会暮らしを捨てる藤田)。女たちの派手な嬌声。極彩色の派手な建物。場違いな派手な服装。ばっとした派手な印象。きゃらきゃらと派手な声をあげる=光原。打撃戦のような派手な様相を帯びる=赤瀬川。道化師のように派手な服装の男"石坂。漠然と派手な生活にあこがれる=石坂。目の大きい派手な顔立ち"船山。派手に(広告を打つ。金を使いまくる。メディアが取り上げる。やきもちを焼く)。名前を派手に染め抜いたのぼり。身なりを派手に飾る。一家の暮らしぶりが派手になる。かなり派手(生活が。服装が)。派手好きな女。目を覆わんばかりの派手作り若竹。派手派手しい(色彩が。服装が)。派手派手しく装う。派手やかな(趣向を凝らす。存在。表情)。店全体が派手やかに明るんでいる。けれんを(演じる。やる)。景気よく(熊手を飾る。手拍子を打つ。爆竹を鳴らす。わっと飲む。酒を持って来る)。言葉が景気よく飛び跳ねる。大口あけて景気よく笑う荻野。大漁の旗を景気よくへんぽんとひるがえす佐藤巻。けばけばしい(原色の看板。装飾の店。衣裳を身に着ける=円地。虎の皮の外套がふを着たアメリカ女"岡本)。ネオンのけばけばしい盛り場からほど遠からぬ道端・松浦。 **はなやか【華やか】** ひときわ華やかで美しい。華やはなやかな(衣装をまとう。人気に乏しい。身のこなし。スポットライトを浴びる。雰囲気に包まれる。雰囲気を漂わせる)。バタ臭く華やかな顔。あたりにいた人々がはっと注目するほど華やかな美貌の女平岩。いとも華やかな観兵式の光景今坂。女の子たちの華やかな笑い声公村。華やかに(着飾る。論じ立てる)。桜が華やかに咲き誇る。色とりどりのネオンが華やかに点滅する柴田現。女たちがカナリアのように華やかにさえずり交わす=中局み。華やかさ(百花斉放の。熱帯の海で泳ぐ魚の群れが万華鏡のような=中島。目のさめるような=網淵。竜宮城に迷い込んだような熊谷)。華やかさが身辺に漂う。声に少女のような華やかさが張ひたる=有吉。華美な(刺繍の礼を施す。軍装に身を固める)。 <1082> # 目立つ **はなやか【華やか】** 華美に過ぎる服装。生活がいくらか華美になる。旅美濃艶をてらう。華麗な(色彩を施す。男性遍歴。技の数々を演じる)。騎馬武者の華麗なたたずまい。女の命を燃やし尽くした華麗さ=渡辺。喪服の黒が俄にゃかに華やぐ=有吉。華やいだ(声で笑う。雰囲気に包まれる。装いが目に咬まぶしい)。色彩感のある風が吹きつけたような華やいだ気分!小林久。娘のような華やいだ声向田。水に帰った金魚のようにいよいよ華やぎ若やぐ=有吉。 **ひきたてる【引き立てる】** 引き立てる(弾まない空気を。ともすれば湿っぽくなる気持ちを"林美)。ともすれば滅入りそうな自分の心を引き立てようとする=堀。引き立つ(味が。美しさが。絵が。踊りが。気分が)。一層引き立って見える。▼引き立たせる(関心を。気を。人気を。若さを。沈んだ客の気分を=半村)。恩顧にあずかる。思願を(受ける。こうむる)。 **ふうがわり【風変わり】** 風変わりな(衣装。行動。趣味の持ち主)。ほら吹きの風変わりな老人。エキセントリックな歪ゅがんだ精神状態をもてあます小池。型破りの(衣装。作品)。よくよくの変わり種。奇行が全校に知れ渡る。奇行の持ち主。奇骨の持ち主。奇態な(格好。首動。振る舞い)。奇癖に満ちた言動。奇癖の持ち主。珍妙な(いでたち。格好)。変人扱いをされる。変人どころの騒ぎではない奥田。一風変わった(考え。経験。スタイル。性格。青年。存在。タイトル。人)。奇を衒てらう鼻持ちならぬ恰好跡”小沼。多少奇をてらった気取ったやり方森環。 **まざまざ** まざまざと(思い出す。悲劇を見せつけられる。目に見えるよう)。威圧感をまざまざと感じる。險結ぶの裏にまざまざと浮かび上がってくる。まざまざとした妄想が湧いてくる。激動の状況が躍如としている絵。性格が躍如としている文章。ありありと(眼前に見えるよう。耳に残っている声)。顔に驚きの色がありありと浮かぶ。別れがたい気持ちがありありと見える。今でもありありと思い浮かべることができる=岡本。間いたげな素振りがありありと窺らがえる貫井。 **めざましい【目覚ましい】** 目覚ましい(効果をあげる。出世をする。手腕を示す。成功を収める。働きをする)。▼目覚ましい(回復ぶりが。進歩が。水準の向上が)。野菜が目覚ましい生長を見せる。目覚ましく水際立って見える。勃興する時代精神の目覚ましさ槌。 **めだたない【目立たない】** 目立たない(努力家。おとなしい男の子。程度に化粧する)。▼目立たない(あまり。陰に隠れて)。おとなしくて目立たない存在感の薄い子供倉橋。空空気みたいに目立たない存在。赤瀬川。目立たぬ隅に身を置く。居るか居ないか分からぬほど目立たぬ人=本庄。派手な話を聞かない。そっと目立たぬように立ち上がる"堀。くすんだ存在。見栄えのしないぞ。これという目立った特徴がない。幽霊のように影が薄い=伊坂。影が薄く存在感に乏しい。どことなく影の薄い娘。自分の影に漂白剤をかけて、ただでさえ薄い印象をさらに薄めようと努力しているような男=荻野。遂に今日まで鳴かず飛ばず「里見。鳴りを静めて鳴かず飛ばずの状態を続ける=美濃部。ぱっとしない(雑文。存在。出来)。ぱっとしない(器量が。成績が。風采が。まるで雨に濡れた古下駄のように)。あまりに芸がなさすぎる。 **めだつ【目立つ】** ▼目立つ(異常気象が。威勢のよさが。価格上昇が。対立ばかりが。判断ミスが。頬の傷が。目尻に絞しゃが。遠くからでも。一人だけ。粗暴な振る舞いが。体力と気力の衰えが。臉住ょの下のたるみが。目のまわりや頬にやつれが。不自然さがやけに。コントラストがひときわ。ひときわくっきりと。あらゆる点で時代遅れが西木。初々しいというより幼さが半村。髪に白いものが=内海。才能のある者にありがちの独断が辻井。日頃から乱暴な運転が光原。だだっぴろい舞台にひとりだけ立っているように宇野利)。目立つ所に飾っておく。どこにいても明らかで目立つタイプ。ひときわ目立つ大柄の美人。ほっそりして目立つ美人。破れの目立つ板塀。色白の頬にえくぼが目立つ笑顔戸板。目立った(動きがない。動きを見せる。進展がない。違いがない)。目立って口数が少なくなる。腹部が目立って大きくなる。目立って多くなる(空席が。皺が)。▼目に立つ(際だって。ひと きわ。旧に倍して人の)。目に立つ存在。▼目につく(真っ先に。いやでも)。振り返って見ない者はいない。▶躍り出る(一躍首位に。表舞台に。最右翼に。歴史の主役に)。表立った(変化はない。事件にはならない)。万緑叢中认りの紅一点。出る(杭は打たれる。釘は打たれる)。▼突出する(防衛費が。自殺率が先進国の中で)。山野につつじの紅が映える=津本。喪服が映える女。今風に見栄えがする。異彩を放つ(小説家。存在)。▼異彩を放つ(才能が。若手の中で)。自己顕示欲が(強い。はなはだしい。露骨な物言い)。自己返示欲に駆られる。▼頭角を現す(有為の人材が。社会に。コーチとして。めきめき)。一歩ずつ頭角を現していく。めっきり(美しさを増す。数が減る。健康が衰える。無口になる。足腰が弱くなる。髪の薄くなった頭。白髪が多くなる。人が来なくなる)。声望がめっきり落ちる。近頃めっきりと名を高めてくる=高橋克。めぼしい(選手がいない。装飾品が姿を消す。手がかりがつかめない。ものに唾をつけておく。ものは何も残っていない)。これというめぼしい(俄果がない。名産がない)。めぼしいものを(売りつくす。探す)。 **ようどうさくせん【陽動作戦】** 陽動作戦が成功する。陽動作戚に出る。陽動作戦を(起こす。展開する)。敵は本能寺に在り。目立った行動で相手をひきつける。本当の目的は別のところにある。 <1083> # 燃える・焼く 356 **あぶる【炙る】** ▼あぶる(太陽が土を。肉を。併を。両手を。ぱりっと海苔の』を)。強い陽射しに炙られる"桐野。焙じうじる(胡麻こまを。茶葉を)。 **おおかじ【大火事】** 大火事に(遭う。見舞われる)。大火事を起こす。夕焼けが大火事のよ?~三島。江戸の火事といえば明暦の大火にとどめを刺す細淵。 **かえん【火炎】** 火炎が建物を真っ赤に染める。火炎に包まれる。獄が火焰けぇに包まれる“福永。火焰の竜巻をここかしこに吹き上げる"辻井。口から火焰を吐くという凄すさまじい勢い二葉亭。水蒸気が火焰のように立つ大岡。 **かがりび【篝火】** 落火が(風に揺らぐ。赤々と燃え盛る。橙色以心状に空を焦がす。山の端はの空をかすかに赤く染める=真継)。一帯を万灯会认とのように盛大な篝火が埋める=真継。海の上で落火が遠く近く揺れている=山本周。魚舟の薬火が右に左に動く壺井。漁船の放つ慾火が一面に海上を彩る"吉村。何十もの篝火が湖水に映ってこの世のものとも思われぬ異様な情景"井上死。何カ所かに焚たかれた篝火が人々の笑い声を照らしだす三浦し。繇火の(火屑が川面に散る=舟橋。炎に赤々と顔を染める吉村)。天を焦がす篝火の海真継。夜空の下で篝火を焚く。 **かさい【火災】** 火災(失火による。落雷による。漏電が原因の)。店が火災に遭う。火災を(知らせるベル。素早く消しとめる)。火災報知器が鳴る。火災保険に加入する。 **かじ【火事】** 火事が(鎮火する。町を総なめにする。ほんの狂言のようにすぐ鎖まる=徳永)。火事で家を焼く。火事の(半鐘が鳴る。広がりを防ぐ。炎が暗い夜空を様の血の色に焦がし煙と火の粉が渦を巻きながら奔騰する=海音寺)。熾烈しぇなネオンの光を受け火事の余焰は、えを浴びているよう岡本。火事を素早く消しとめる。半鐘で火事を知らせる。赤い焰掘。の舌が天を焦がし渦を巻く藤本。煙に巻かれる。すさまじい炎の音が聞こえそうな恐ろしさが伝わる=川端。半鐘がジャンと鳴る。火が出る。炎の津波に呑まれる=川端。窓から悪戯に父をしているように赤い舌が覗いたり隠れたりする=辻井。夾好きじい唸ったりを立てて町全体が燃える=辻井。失火で家が燃える。半焼する(家屋が。建物が)。ぼや程度で済む。ぼや騒ぎが起きる。ぼやで消し止める。猛火が(荒れ狂う。燃え狂う)。猛火に(包まれる。焼けただれる)。焼け出されて無一物になる。火事が近いことを知らせる。半鐘が揺り半時心を打ち始める。半鐘を続けざまに打ち鳴らす。 **かじば【火事場】** 火事場で発揮するバカ力のような気力で越え難いものを何の苦もなく越える=安岡。野次馬が火事場に集まる。火事場の馬鹿力。火事場を見つけたように金切り声を上げる。安岡。 **かせい【火勢】** 火勢が(落ちる。衰える。高まる。強い。弱い。いよいよ強まる。衰えを見せない)。風が火勢をあおる。次第に火勢を増す。頬に痛いくらい強い火気外村。 **ぐれん【紅蓮】** 紅蓮の(炎に包まれる。炎がベランダを吹きぬける=高千穂)。あたり一面が紅蓮の炎と化す落語。風が新の中から紅蓮の舌を煽ぁぉり出す柴田錬。峰を焦がさんばかりに燃え立つ紅蓮の炎"住井。火が紅連を咲かせる=三島。 **こがす【焦がす】** ▼焦がす(炎が夜空を。煙草の吸い殻が床を。夏の陽が背中を。夕映えが空と雲を。赤や青のネオンの渦が鮮やかに夜を=船戸)。▼炎に身を焦がす(大望野心の。めくるめく恋の=阿刀田)。胸を焦がす(嫉妬の炎が。嫉妬に。絶望的な思いが。沸騰するような怒りがさだ)。身を焦がすような嫉妬が胸に押し寄せてくる=池井戸。身を焦がすような激しい恋"火坂。 **こげる【焦げる】** ▼焦げる(紙が。魚が。真っ黒に。のように)。狐色につゃに焦げ目のついた(トースト。餅)。鍋が焦げ臭い。焦げ臭いにおいが鼻をつく。焦げるような香りのする髪藤枝。鍋が黒焦げになる。黒焦げの死体が転がっている。焼け焦げができる(カーベットに。シャツに。畳に)。焦げつく(貸し金が。鍋底が。煮物が。ローンが)。焦げつくような異臭が鼻を突く=山本有。 **しゅっか【出火】** 出火の原因を調べる。出火する(電池が。バッテリーが。部屋から。コンセントから。火の不始末が原因で三浦し)。 **すみび【炭火】** 炭火が(赤々とおこる。かんかんおこる)。火桶にぉに炭火がおこっている。炭火を灰に埋ける。長火鉢の炭火を掻ききたてる。火持ちのいい炭。炭が真っ赤におこる。炭を(炭俵に詰める。かますに入れる)。焼きあがった炭を山から下ろす。かんかんと(堅炭をおこす。炭をおこす)。検ぉきのような感情が海のように騒ぐ落合。体の奥が内側から熾火吐きに炙ぁぶられるように熱くなる夢枕。興奮がもやもやと娘ぉき火のように燃え続ける高村篤。怒りの煥火砂きを掻き立てる=奥泉。心の娘火を消し去る藤田。 **たいまつ【松明】** たいまつがオニ火のように続く=本多勝。松明が炎の獅子のように狂奔して振り回される三島。地上の星のように松明がちらちらと揺れ動く栗本。炬火が炎と煤ずすとで赤くただれ凶悪な形相をした生き物のようにのたうちまわる=本庄。言葉が胸に巨大なたいまつとなって燃える=光瀬。松明の炭が対岸の火事として見過ごす。火事に(遭う。見舞われる。弱い江戸の町)。失火で火事になる。 <1084> # も **火**が蛇行しながら進む=吉村。一陣の風が松明の火を横さまに吹き流す=福永。手に手に掲げた松明の焔が風に靡なびく=福水。松明を持って歩く。手に手に松明をかざす。 # たきび【焚き火】 **焚き火**が(点々と高原を彩る=獅子。柔和な音を立てて燃える=大江。はぜたように笑う=飯田)。夜空をこがすように焚き火が燃え上がる=新田。焚き火に手をかざす。夜明けの闇が冷たく漂いちょろちょろと燃え上がる焚き火吹きの焰担のもはかなげ=本庄。焚き火を囲む。ほだが燃える。ほだを焚く。 # たく【焚く」 **▼焚く**(落ち葉を。葬火炒味を。窯を。香を。石炭を。線香を。風呂を。迎え火を。ストーブをがんがん=氷室)。空焚きする(鍋を。風呂を。やかんを)。空焚炒。きを防ぐ。 **▼焚き口**(かまどの。風呂の)。薪を焚たき口に押しこむ。 **▼焚きつける**(かまどに火を。釜の下を。ストーブを。吸炉を。風呂を。薪を。湿った落ち葉をむりやり)。 **▼くべる**(かまどに薪を。炉に木を。石炭を炉に。粗朵そだを折って。薪をストーブに)。火にくべる(新聞紙を。枝を折って)。 # てんか【点火】 **点火する**(エンジンに。ガスに。火薬に。発破に。そうそくに)。 **▼火を入れる**(行灯もんに。提灯訪に、うに。ボイラーに。ランプに。炉に)。火をつける(枯れ枝に。好奇心に。導火線に。闘志に。マッチに。胸に)。おもむろに煙草に火を点っける連城。 **▶火を点じる**(情熱に。精神に。天分に)。火をともす(キャンドルに。心に。燭しょに。灯籠に。蠟燭に)。灯台に火がともされる。 **▼口火をつける**(湯沸かし器の。論難の)。両手で火口を覆う。火付きが(遅い。早い。よい。悪い)。 **▼火をつける**(技術家魂に。ストーブに。闘争本能に。ブームに。ライターに。恋情に。ガスバーナーに。ガソリンを扱ぇいて)。る三島。焚きつけに火をつける。焚きつけを燃やす。 **▼ガスにかける**(フライパンを。やかんを)。ガスのメーターを検針する。ガスの出が(よい。悪い)。ガスの火を(消す。つける。弱める)。ガス栓をひねる。石炭を燃やす。石炭のように身体を硬くする徳永。濡れた岩が石炭のように黒い=北村。石油のほとんどを輸入に頼る。石油を流したような光彩が一面に浮かんでいる=梶井。重油を(燃料にする。ドラム缶に入れる)。灯油を(燃やす。かけて火を点っける)。原油価格が高騰する。重油が海面に広がる。 # のび【野火】 **野火**が(焰掘のの舌を見せて盛んに立ち騰のぼる"大岡。闇を薄くオレンジ色に焦がす辺見)。点々と野火でも燃えているように赤いまんじゅしゃげの花が咲いている=椎名誠。野火の(煙が揺れる。煙が海草のように揺れながらどこまでもどこまでも無限に高く延びる=大岡。煙が出発する旧式の機関車が吹き出す蒸気のようにボッポと断続して惨ぁがる!大岡)。重い冷たい湖霧がぇが野火の煙のように濛々もうと走る=有息。枯れ草を(燃やす。焼く)。風を喰らった野火のように燃え拡がる=徳永。ニュースが野火のようにひろがる=高見浩。 **▼野火のように広がる**(騒ぎが。評判が。倒産が全国に)。を振るって押し寄せる三浦し。闇を裂くように上がる=中上)。赤い火が走る。赤々と火が娘ぉこる。一面に火が広がる。提灯の火がゆらゆらと揺れる。ばちばちと火がはぜる。フライパンの底から火があふれる。炉の火が顔を赤く照らす。竈跡まの火が勢いよく赤く立つ=長塚。暗い闇の中に白と赤の二つの火が夜鳥の眼のようにぎらりと光っている=有房。闇の中に小さな火がぽつんと浮かび上がる=小林久。長い間腹の底に積み重ねていた憤激に火がつく=本庄。額から頬のあたりが火でもついたように熱くなる=山本周。めらめらと蛇の舌のような火が出てくる=飯田。胸がどきどきして顔が火の出るように上気する=中。顔から火が出るように恥ずかしい菊池。眼から火が出る叱言にこを喰う今日。家を火がべろべろと聳ためる=長塚。火でも発しそうな目"大佛。 # はっか【発火】 **胸に怒りの発火**がある横山。欲望が発火する"小林信。内部で発火するものが何もない開高。発火させる(雷管を。押さえつけていた怒りを"墨岩)。火打ち石で(切り火をする。火花を起こす)。鋼に火打ち石を打ちつける。発火しそうなほど激しく手ぬぐいで体をこする三浦し。 # ひ【火】 **火**(赤い真綿のような芥川。空を焦がすような山本周)。火が(あっという間に広がってしまう。畳をなめる。天井をなめる。室内を舐めつくす。あかあかと清流に反射する=獅子。静かな湖面を赤くただ上する"大江。火の勢いが(衰える。強くなる)。胸に火の塊のようなものがこみ上げる=宮本瓦。火の気に注意する。火の気のない部屋。火を(ろうそくに移す。吐き出すように逃すきまじく言う大佛。見るよりも明らか=和久)。ガスの火を調節する。城に火をかける。長火鉢の火をかき起こす。八分どおり火を通す。からだが火を発したかのようにはげしく動いて飛びかかれさせる=井上酒。めらめらと天井に昇る=黒井。猛威。火に(勢いを与える。あぶったスルメのようにふんぞり返る=山本有。水を注いだようにシュンとなる戸板)。瞋恚しんの火に心を焦がす。手を火にかざす。冥途から来た仏が火に宿る。炉端で火にあたる。懺悔だんの火に心をただらせる=菊池。二人の気質が火に水といった対照『山本周。火にかける(釜を。フライパンを。やかんを)。火の(糸を散らす。そばを離れる。近くに寄る。波が流れ込む。番をする。回りが早い。恐ろしさを目の当たりにする。影がちょろちょろ見える。始末をきちんとする。用心を徹底する。瀑布ぶくがたばしり流れる"山田風)。家計が火の車。小さな土蔵が高い火の塔となって炎 # ねんりょう【燃料】 **燃料**が海中に流れ出す。タンクに燃料が充分に残っている。石炭みたいに真っ黒になる <1085> # 燃える・焼く-356 る=海音寺。渋団扇しぶぅで薪の火をあおぐ加賀。眼の奥がちろり火をともしたようにきらめく黒岩。拳銃が火を吐く。全身が火になるような羞恥しいを覚える=有吉。心の呪いの火があかあかともえさかる火葬場の火のように筒井。火のような(熱い息を吐く。酒で喉を焼く。視線を向ける。熱弁をふるう。瞳で見る。野性の情熱。聖』とい矢が魂に向かって放たれる=中島敦。情炎を肌のあぶらに焚だいている女=吉川。はげしい憎悪と悪意に満ちる=光瀬)。資本家に対する火のような反抗が起こる=小林多。火のように激しいかんしゃくを起こす=光原。顔が火のように赤い=田山。工事が枯れ葉を焼く火のように進む菊池。羞恥と怒りで火のようになる三島。熱のため火のように熱くなっている体=井上靖。評判がたちまち火のように広まる=永井荷。二人の気持ちが水と火のように懸けはなれる=本庄。火のないところに煙は立たない。火が消える(暖炉の。提灯の)。命の火がほどなく消える。蛍のように小さな火が浮かんでは消える=連城。煙草の火を(踏み消す。灰皿で揉もみ消す)。消火器で火を消し止める。火の(消えたように静かな裏通り~田山。消えるように死ぬ=今日)。火が消えたように淋しくなる=二葉亭。ぱったり火が消えたように関ぃまになる"徳田。日に日に火の消えたようになって行く町 佐藤巻。なかなか火が消えない。火がつく(建物に。導火線に。闘志に。不満に。欲望に。ぽっと。忘れかけていた昔の思いに若竹)。火のついている内輪もめに油をそそぐようなもの"高橋和。火がついたように(喋る。笑い出す)。赤ん坊が火がついたように泣き出す徳永。色白な男が火がついたように真っ赤になる"加賀。子供たちがいっせいに火がついたように叫ぶ=阿部。火のついたように怒り出すぃ内田卷。火が燃える。火(極度に張りつめたものがこぼれくずれながら燃えるような畑。胸の奥に若々しく燃えさかる情熱の=畑)。火が(暖かい光を放って水飴のように軟らかく撓いながら燃える=有島。岡もだえるように燃えつづける=本庄)。ボッポと熱い恋の火を燃やす=阿刀田。足もとから火が燃え立っているように急大佛。雨に抗紛らうように火が赤あかと燃え立つ高井。髪が燃えているような髪宮沢。身体中に火が燃えているような居たたまれない気持ち“円地。火が燃えるように激しく夢中で愛しあう~大佛。闇の底を焦がして燃え盛る火の帯=真継。火が燃え上がる(激しく。ばっと。めらめらと)。火のような憎悪に燃え焼きかる" "光瀬。眼付きが火のように燃えてくる菊池。火を噴く(銃が。大砲が。燃料タンクが。羞恥が顔で)。火を(噴くような憤り~源氏。吹くような三塁ゴロ阿久)。言葉に憎悪が火を吹くように現れる=黒岩。 # ひだね【火種】 **▼火種**(争いの。噂の。対立の。紛争の。スキャンダルに繋っながる!浅川)。噂の火種を作る。信仰の火種を絶やさない。ともすれば冷静に沈んでいきがちなハートに油をぬたくって火種を探す気分になる荻野。種火を(つける。残す)。 # ひだるま【火達磨】 **全身火だるま**になって死ぬ。ヘりひだるまコプターが火だるまになって墜落する。全身を業火に焼かれる。炎が全身を包む。 # ひのあめ【火の雨】 **火の雨**が(降りかかる。降り注ぐ。降る。乱舞する)。火の雨の下に立つ。火の粉が雨のように落ち葉に降り注ぐ三浦し。 # ひのうみ【火の海】 **▼火の海**(天を焦がす。いつ果てるとも知れない広大な=山崎)。爆撃を受けて街が火の海となる。火の海に(囲まれる。包まれる)。都市を火の海にする。火の海の中を逃げ惑う。かすかな明暗のさざ波をたてる火の池真継。荒れ狂う炎の海光瀬。森を炎の海に包む。部屋が火の海になる。 # ひのこ【火の粉】 **火の粉**が(飛んでくる。降り注ぐ。舞い上がる。激しく落ちてくる。雨のように降ってくる"飯田。渦をなして巻き上がる=山本周。風にあおられ四方八方に飛ぶ=中上。はじけるように散る=あさの)。火山が噴火でもしているように火の粉がふき上がる当局。紙の火の粉が少しの風にくるくると上にあがる富岡。夏の盛りの火の粉がはぜるような日差しが高村恋。ばりばりと旋風にあおられて火の粉が飛ぶ=山崎。火の粉の(中をくぐり抜ける。竜巻が舞い上がる『山田展)。ふりかかった火の粉は払わねばならない本庄。火が黄金の火の粉を噴火のようにまき散らす"光瀬。夜空に火の粉をまき散らして屋敷が崩れ落ちる=小松左。 # ひのて【火の手】 **火の手**が(勢いを強める。盛んになる。押し寄せてくる。みるみる広がる)。排撃の火の手が容易に消えない。自らに火の手が及ぶのを避ける佐高。火の手が上がる(四方八方から。方々で)。 # ひのなか【火の中】 **たとえ火の中、水の中**。命を賭けて火の中に飛び込む"有栖川。地獄の火の中に投げ込まれる=椎名縁。火のなかへまっしぐらに飛び込む三島。屋台骨が火の中へ紙細工のようにヒラヒラと呑まれて消える=山崎。火中に(飛び込む。身を投じる)。火中へ身を躍らせる。 # ひのもと【火の元】 **火の元**に気をつける。火の元を(確認する。確かめる)。就寝前に火の元を点検する。火元(噂の。火事の)。火元に(近い。注意する)。胸の奥に潜んでいる発作の火元をなだめるようにゆるやかな口調で話す=小川。 # ほうか【放火】 **放火**で亡失した寺。放火の(憂き目に遭う。容疑で逮捕される)。 **▼放火する**(アパートに。家に。復讐しのために。店に)。家に火をつけて逃げる。家屋に火を放つ。 # ほのお【炎】 **炎**(灯心のか細い。バーナーが上げる青白い。すずしげな目に浮いた怒りの粒のような小さな=高橋三。火柱のような赤い=山本有)。炎が(壁をなめる。天井をなめる。徐々に小さくなる。高々と立ち昇る。人々を包み込む。瞬く間に建物全体を包む。めらめらと立ちのぼる。生きているように黄金色に光りながら家をのむ=中上。突っ立ち夜の空が朱と金に染まる=中上。夜空を薄紅色に染める=なかにし)。 <1086> # も **まき**【新】新が(赤々と燃える。ばちぼちと燃える。真まっ赤な娘おきの山になる)。炎の中で薪が崩れ落ちる。炎に熱せられた薪からあぶくが出る。薪で風呂を焚たく。薪に(火を点っける。なる木々を集める)。団扇がちで薪の火をあおぐ。力強い感激のように頼もしい薪の炎佐藤春。薪を(積み上げる。割る。ひょいひょいと投げつける。森から拾ってくる)。切り割った薪を集めて束ねる。 **マッチ** マッチの(軸が折れる。火を囲う。火をつける。柚木をぶちまける。炎をふっと吹き消す。燃えかすがうず高く積まれる。オレンジ色の炎が横顔を照らす=落合。火みたいに一瞬で尽きてしまう連城)。マッチを(しゅっとこすって火をつける。すって火を灯す。すれば燃え出しそうに乾ききった空気"石坂)。ボケットからマッチを取り出す。店の小さなマッチを手にとってオモチャにする=田辺。床に捨てたマッチを乱暴に踏みにじる=原田康。マッチ箱のように小さい電車阿刀田。トロッコがガスの圧力で眼の前を空のマッチ箱よりも軽くふっ飛んで行く小林多。マッチ箱みたいな貧民窟いんみ開高。マッチ箱を(積み上げたようなアバート向田。細長くしたような空間にカウンターが奥まで延びている店荻野)。マッチ棒のような細い棒"吉村。 **もえあがる**【燃え上がる】▼燃え上がる(反対の声が。怒りが胸に。心が一気に。松明が炎々と。激しい勢いで。火がほっと。ひらひら。ぼうぼうと。炎が赤々と。炎が威勢よく。ライバル意識が。憎悪が身の内に。悔しさがぽつぽつと。静かな愛情が恋にまです。舌のような焰"川端。炎がめらめらと舌を出す。牛が舌を出して鼻を紙なめずっているような焰がべろべろと立つ=長塚。蛇の舌の如くべろべろと焰が吐き出される=長塚。大蛇が炎のような舌を吐く芥川。 **もえる** ぼ地に芥火がまだ焰掘のの舌を吐いている芥川。悪魔のめる。天井をなめる。徐々に小さくなる。高々と立ち昇る。人々を包み込む。瞬く間に建物全体を包む。めらめらと立ちのぼる。生きているように黄金色に光りながら家をのむ=中上。突っ立ち夜の空が朱と金に染まる=中上。夜空を薄紅色に染める=なかにし)。面の上を炎が這ょう。焚たき口の中で炎が渦巻く。っと音を立てて炎が広がる。赤黒い炎が誘もゃの中で生き物のように動く=遠藤。薄青い焰加のが舐めるように紙の上を這うぃ黒井。嫉妬の炎が常軌を逸している鈴木光。真紅の炎があとからあとから寄せる波のように押し寄せる=光瀬。閃光过礼と炎が渦巻き立ち上る=光瀬。瞳に暗い炎がきらめく=黒岩。水っぽい目に青い炎が映る=古井。目に蠱惑にゃの炎がゆらめ<=山田風。真っ赤な焰が水面を茜色は幼ゃに染める"山崎。炎が風に(あおられる。なびく)。狂信的な確信の焰でひとみをぎらぎらさせる局尾。炎にまかれてこけつまろびつ苦しむ=白洲。かじかんだ手を炎にかざす。柔らかな炎に照らし出された顔。夜空を焦がす炎に包まれる。陰気なくすぶりが小さな焰になって閃心。く三島。炎の(勢いが衰える。尾が伸びる。出が悪くなる。中に身を投じて死ぬ。無数の切れ端が火の鳥のように郷い狂う光瀬)。情熱が炎の輝きを失う。一面灰色の焰の屋根瓦"岡本。市街が炎の絨毯じゅうを敷きつめたように光瀬。屏風にを立てたような炎の暮林美。耳を毀ぅうするような炎の叫び=山本周。音を立てて追ってくる巨大な炎の壁飯田。ごうという波濤氷とのような焰の音が壁のように迫ってくる=曽野。粗朶くだの火が炎を立てる。池が炎を映して朱色に染まる。埋うずみ火が炎を上げ始める。灯明に炎を移す。厭ぃゃな想像の焰を消す―武田炎。黒い炎をあげて突っ走って行くような激しい流れ=野間。自分の奥底にひそむ黒い炎を憎悪する"墨岩。閉ざした二つの瞼様ょが心の内の炎を外に洩らし出すかのように紅に染まる=野間。真っ赤な花が炎を投げ散らしたように咲き連なる=内田瓦。▼炎を吹き上げる(飛雪が白い。どうしようもなく感情が燃えてなまなましい"石坂)。真っ黒い油煙をあげる毒々しいほどの赤い焰"本庄。目が怒りの炎を洪たたえる。目に突き刺さってくる朱いろのゆらめき=杉本。炎のような(息をつく。髪を振り立てて踊り狂う~白洲)。あらゆる痛苦と汚坂口。辱を忍んで胸の純潔を守りぬく焰のような魂居並ぶ人々に炎のような目を当てる=光瀬澈。暗い焰のような男と女"宮本百。コブシが白い炎のように無数の花をつけている三浦し。日々炎のようにめらめらする暗い憎悪のなかで生きてゆく=宮尾。炎が燃える。炎が(あかあかと燃える。ちろちろと燃える)。ほのぼのとした子どもっぽい感情のほのおが燃える"石森。嫉妬の炎が目に燃える。アルコールランブの青い炎が静止したように燃える“干刈。視界を真紅に染め轟々ごうと音たてて燃えさかる炎"阿久。生命の焰が恐ろしい力で燃え尽きて行く島崎。・炎が夜を裂いて燃え上がる=綾辻。情熱の焰が力強く燃え上がる"瀬戸内。目に燐光シルのような青い炎が燃え上がる"西木。炎を(上げて燃える。立てて燃える)。噛みつきたいほどの憎悪の焰を眼に燃やす=海音寺。殺意の炎を双降時うに燃やす柴田架。不当な仕打ちに対する怒りが炎のごとく燃える菊池。コスモスが燃え立つ炎のように揺れる=石川。やり場のない憤りが心に焰のように燃えさかる=福水。炎が揺れる。炎が大きく揺れる。ランプの炎がぼっぽと小止みなく揺れる。赤い焰が水に浮かんだようにゆれる=内田百。頬に炎の影が揺れる。ファイアーストームの炎が透明な赤い不思議な生き物のように揺れている佐藤多。 **ほのおのした**【炎の舌】炎の舌が(道はう。見え隠れする。ゆらめく)。赤い炎の舌が長く立つ。真っ赤なブラウスのカラーが炎の舌を吐く獅子。焚き捨てた」 <1087> # 燃える・焼く―-356 で。生命全体が炎になって。焚たき火がちょろちょろと。火がめらめらと。ぼっと炎が立って。火のような憤怒が"有局。油を注がれた火のように=横光。ガスの火をつけるみたいに欲望の青い火がボッと=田辺。窓ひまの火がべろべろと長塚。目が火を噴くように高木)。燃えあがる(嫉妬の炎が。はぜる音をはげしく立てて火が=真継)。 **▼むらむらと燃え上がる**(敵愾心そばが。憎しみが)。 **▼炎が燃え上がる**(音を立てて。狂おしいほどに胸の夢枕)。燃え上がらせる(怒りに体を。愛の炎をめらめらと連城)。炎々たる理想が燃える。炎々と燃えるすさまじい猛火。 **▼炎上する**(城が。建物が。飛行機が)。 # もえうつる【燃え移る」 **▼燃え移る**(火が小枝に。隣家に。羽目板から屋根の庇いきへ火が。ストーブの火がカーテンに。煙草の火がシーツに。隣接する建物に)。ストーブの火が着物に燃えつく。 **▼引火する**(ガスに。ガソリンに。燃料タンクに)。隣家に延焼する。辛うじて延焼を免れる。あちこちに飛び火する炎をひとつひとつ水で塗り消していく三浦し。飛び火する(革命が。火事が。事件が。世界中に。全国各地に。あっちこっちに)。飛び火して隣家が焼ける。類焼の災難に退う。類焼を免れる。隣室への類焼を食い止める。類焼する(付近一帯が。火事で)。隣の家に火が移る=伊坂。 # もえさかる【燃え盛る】 **燃えさかる**(愛の炎。家に放水する。炎に呑みこまれる=光瀬)。 **▼燃えさかる**(ガスの炎が。憤りが心に。目が怒りに。勢いよく。ごうごうと。良心が胸奥で。女性への思いが。まばゆいばかりに)。潑剰はったる官能が燃え盛る=里見。炉のように燃えさかる感情三島。火が燃えさかる(あかあかと。命の。呪いの)。 **▼燃え狂う**(火が。激怒が盛んに。情欲に)。 **▼燃えたぎる**(心が。情熱が。太陽が。欲求が)。っと燃えるように感じる=山本周。燃えるような眼で見つめる=長与。荒涼たる荒野が燃えるような瑞々ずしい夕映えに包まれる=曽野。カッカッと全身の血が燃え上がる=源氏。部屋じゅうに充満していた好奇心というガスに火がついたみたいにわっと笑い声がはじける=飯田。純粋な生命の燃焼をとげる。火が入る(窯に。ボイラーに)。火の付きが(いい。悪い)。思うように燃えない炎。一向に燃えない。潘れたぞうきんのようにちっとも燃え上がらない=山本有。ふところの淋しい恋愛というものは出来の悪いマッチを擦るようなものだ、いつまでたっても燃え出すことがない"庄野。少しも燃え立つことのない性格"石川。なかなか思うように燃えてくれない。 # もえたつ【燃え立】 **▼燃え立つ**(嫉妬の焰加のが。悩悪が胸に。目が怒りに。めらめらと。むらむらと反抗的な意志が。心が思いがけない成功に。土饅頭に味礼の上で鬼火が=なかにし)。激しく燃え立つ瞳。燃え立たせる(眼に燐火炒んを。カッと全身の血を"阿刀田)。 # もえひろがる【燃え広がる】 **▼燃え広がる**(山火事が。火が見る問に。火が天井を伝って)。燃え拡がる(火が折からの列嵐にみるみる=山本周。火が風を食らった野火のように=徳水。火が四方へ大きく井上靖)。 # もえる【燃える】 **▼燃える**(勢いよく火が。暖炉で薪が。とろとろ火が。目に怒りが。新たな覚悟に。慷慨がらの気に。心が熾烈しゃに。言葉が胸に。青雲の志に。瞳が悪意に。復讐しの念に。未来の希望に。民族意識に。胸が義憤に。目が怨みに。決意が火と。を立てて。全身が気炎で。火が勢いよく。盛が冷たく。薪がちろちろ。薪がばちばち。生き生きと好奇心に。社会改革の理念に。チャレンジ精神に。不退転の精神が心の内に。ライバル意識に。赤い火がちらちら。ごうごう音を立てて。火がちょろちょろと。瞳が爛々65んとして。丸太がぶすぶすと。うらうらと陽炎が=山手。障子が赤く色づくほど庭で火が水上。とほとほと狐火が梅本。ぱちぱちと快活な音を立てて小枝が=堀。小屋が太い火束となって盛んに犬岡。乾いた紙がぱりぱりと『福永。魚油が豆をはじくような音を立てて=遠藤。小屋が折からの風に吹かれてめらめらとなかにし)。憎悪に燃える目で睨にらみ上げる。嫉妬に燃える女の顔、倉橋。火が燃える(胸に。バチパチと)。炎が燃える(怒りの。情欲の。妄想の)。怒りに燃えて突き進む"池波。いやまさる娘心の思慕の情が泣きぬれた目いっぱいに火のように燃えている=山手。山々が赤や黄色に染めあげられ全山が燃えているかのよう西木。燃え出す(焼けぼっくいが。くすぶりかえっていた木がまた)。 **▼燃え続ける**(火事が長いこと。女の執念が沸々として=石川)。煙の間から赤い舌がちょろちょろと顔を出す=福水。都市の大半を炎が舐めつくす。発火点に達する。部屋が炎に包まれる。ボイラーがうなりを上げる。全身の血が味見 # もやす【燃やす】 **▼燃やす**(愛の炎を。命の火を。映画に熱意を。仕事に意欲を。静かな闘志を。情熱に身を。情熱を。敵対意識を。ファイトを。憤怒の情を。薪を。考えを胸に。火をどんどん。心の奥底に野心を。激しい敵愾心にいがを。ひたむきな野望を。人一倍激しい情欲を。ライバル意識を。憎悪の炎を目に。火をちょろちょろと)。執念を燃やす(仇討法だちに。犯人逮捕に)。燃やし立てる(かまどを。火を)。 **▼燃す**(竈ゆまの下を。ごみを。焚たきつけを。火を。薪を)。火吹き竹でふうふうと吹く。読んだら火中すること。紙暦を火中に投じる。ストーブを燃やし立てる。燃焼させる(才能を。生涯を。情熱を。感情生活を惜しみなく福水)。粗朶くだを一くべ突っ込む。薪を一くべする。火を放つ(城に。屋敷に)。 # やかれる【焼かれる】 **焼かれる**(家を。家が兵火に。も <1088> # も **炎熱**に。業火に。地獄の炎に。情熱に。戦火に。熱火で)。灼ゃかれる(恋の炎に。情欲に体の芯が瀬戸内。夏の日にじりじりと"阿部)。 **▼胸を焼かれる**(悔いに。恥辱に)。すっかり焼き払われる。 # やきあがる【焼き上がる】 **▼焼き上がる**(ケーキが。トーストが。ふっくらとバンが)。パンがほっこりと。うまそうに焼きあがる=辺見。 **▼焼き上げる**(花瓶を。バンを)。 # やきはらう【焼き払う】 **▼焼き払う**(家を。灌木胁いを。バラックを。火をつけて)。太陽が一日中大地を灼ゃき尽くす=城山。街を焼き尽くす業火だうに巻き込まれる=伊坂。 **▼焼尽する**(家が。中心街が)。丸焼けになる(家が。会社が。小屋が。火事で)。身を焼き滅ぼす。 # やく「焼く」 **▼焼く**(うなぎを。死体を。太陽が首筋を。パンを。憤惑んが胸を。こんがりと肉を。こんがりとパンを。なにくれとなく世話を。ばりっと餃子祥物を。不心得者に手を。薄く焦げるくらいに。家財道具をことごとく。大きな鉄板で盛大に肉を"田辺。太陽の光が背中をじりじりとあさの。手紙を火鉢にくべて=村上元。皮膚をヒリヒリと屈辱感で=潮洲。やきもちを派手にねちっこく"石坂。陽光が皮膚をちりちりと=高樹)。胸を灼ゃく悲しみ"中島救。夜空を焼く火事。焼き餅を焼く気なんてさらさらない"阿川佐。煮るなと焼くなと好きなようにしておくんなはれ宮本輝。流し込んだウイスキーが焰掘のになって体内を焼くのを感じる南条。 **▼お節介を焼く**(余計な。やたらに)。 **▼世話を焼く**(小まめに。あれこれ。親身になって)。手を焼く(事態収拾に。難題に。ほとほと)。身を焼く(恋に。ひとり嫉妬に)。 **▼焼かせる**(親に手を。余計な世話を)。都市が空襲で焼かれる。焼き色がつく。肉に軽く焼き色をつける。灼くような激痛が襲う=獅子。身を灼くような恋有吉。固焼きの(クッキー。せんべい。バン)。瓦を焼く窯。窓から煙がたちのぼる。生焼けの(魚。肉)。生焼けを気にする。丸焼き(烏賊ぃかの。鳥の。豚の)。丸焼きを食べ # やけあと【焼け跡】 **▼焼け跡**(影一つない。荒涼とした。見渡す限りの)。焼け跡から不死鳥のように立ち上がる=隆。焼け跡で死体を見つける。焼け跡に(瓦礫びれが散乱する。バラックが立ち並ぶ)。焼け跡の始末が片付く。焼け跡を放心したように見つめる。焼け残りの(柱がぶすぶすいぶる。木材がくすぶる)。焼け残った(家。土蔵)。かろうじて焼け残る。 **▼焦土と化す**(国土が。大空襲で東京が大半を芝木)。焦土に緑が芽生える。焦土の町の荒涼感。見渡す限りの焼け野原。焼け野原になる(一帯が。あたりがすっかり船山)。 # やけおちる【焼け落ちる】 **焼け落ちる**(家が。寺が。天守閣が。橋が。屋根が)。何もかもきれいに焼けてしまう。焼失する(塔が。自宅を。積み荷を。跡形もなく。雷火で)。 **▼全焼する**(家屋が。校舎が。住家二棟が。火事で)。 **▼燃え落ちる**(家が。建物が)。 # やける【焼ける】 **▼焼ける**(火事で家が。空襲で店が。じりじり魚が。世話が。こんがりと併が。肉がじゅうじゅう)。顔が小麦色に灼ゃける夏樹。焼けた栗がはじける。赤黒く焼けた鼻。胸が焼けるように痛い多岐川。焼けつく(胃が。エンジンが。のどが)。焼けつくような(盛夏の街。日差しが体の芯にまで達する"横山。眼差しで見つめる人間)。灼けつくような苦痛が身体の中を駆けめぐる萩原來。焼き立てのパン。焼き立てを(食べる。ほおばる)。 # やまかじ【山火事】 **つらなる山々**のすべてをのみつくすほどの山火事=光瀬。山火事が(猛威を振るう。一帯の村々を襲う)。山火事をいち早く察知した野鼠知のように退避する谷川。枝から枝へとどんどん火が燃え広がる三浦し。木々の合間に赤い舌のような炎がうねるのが見える三浦し。炎が山林を道はいのぼる。炎が稜線もいうから降りてくる=篠田。めりめりと音を立てて生木を裂きながら火が迫ってくる=三浦し。森が炎の海に包まれる。 # ライター **使い捨て**のライター。ライターが足下に転がり落ちる。ライターで煙草に火をつける。ライターの火を(消す。差し出す)。ライターを(点火する。カチッと鳴らす。取り出しバチンと火をつける=半村)。 # ろうそく【蠟燭】 **蠟涙**を垂らして燃える蠟燭"大ろうそく佛。蠟燭の(火が隙間風に揺らめく=棺。火がとどかぬほど奥が広い宇野利。黄色い焰が光の亡骸泌のようにゆるぎもせずにともる=有島。ゆらゆらゆれる炎の明かり“野岡)。ろうそくの(炎を吹き消す。炎がゆらゆらと揺れる)。消える前のろうそくの炎のように人間として正しく美しい生活をして終わる=石森。たんぼぼ色のろうそくの光に顔がうっすらと染まる=北村。ちろちろと瞬くろうそくの焰銀のに照らし出される=江戸川。ぼんやりとした蠟燭の火影怕かが揺れる=中局み。かすかな快感が蠟燭の火のように点ともる=池澤。自分たちの間に危ういながら燃えていた蠟燭の灯がフッと吹き消されたような寂しい心持ち宮本直。人生に対する焦燥が蠟燭の炎のようにじりじりと生命をむしり取る"野間。懐かしさが蠟燭の炎のように揺らめく=黒井。蠟燭の火が(消えるときのように情熱がはかなげに揺れ動く=瀬戸内。消えるように寂しく死んで行く=有吉)。ろうそくの炎が揺らめくのに似た翳かげりが居間をよぎる=黒井。蠟燭の炎がちらちらとまたたく=中。ローソクのような白い顔萩原飛。血の気を失くして一本のローソクのように佇炊たむ高橋三。柔らかい靄もゃの中に足がローソクのように浮かぶ小林多。灯明が風にはたはたとゆらぐ=山手。灯明とうぁを上げる(位牌に。神棚に。仏壇に)。岘涙が垂れる。 <1089> # 持つ・含む **ありがね**【有り金】有り金を(はたいて買う。奪って逃げ去る。かき集めチケットを買う)。気前よく有り金をはたく。財布の底をはたくようにして買った土産の叩古井。所持金を(なくす。はたく)。持ち金が(心もとない。なくなる)。 **いじ**【維持】▼維持する(一定の体重を。高貴な態度を。高い支持率を。当面の安全を。価格を低く。辛うじて収入を。基本的なバターンを。十番以内の成績を。長期にわたって人気を。良好な関係性を。ほぼ現状のまま)。 **おびる**【帯びる】帯びる(会話が活気を。唇が艶を。声が鋭さを。声が怒気を。声が震えを。声に怒りを。腰に脇差を。肌が湿りを。目が凶相を。目が笑いを。大刀を腰に。赤らんだ頬が知きを。池の水が青みを。顔色が血の気を。声が強い調子を。視線が粘り気を。即興の色合いを。破綻が現実味を。皮膚が黄色味を。皮膚が薔薇色1145を。目の縁が赤みを。夜気が湿り気を。打撃戦のような派手な様相を赤瀬川)。▼熱を帯びる(体全体が。言葉が)。▼光を帯びる(目が異様な。雲が日の)。▼丸みを帯びる(顔が。心が)。胸苦しいほどの輝きを帯びた世界三浦し。にわかに活気を帯び始める。似にく(刀を。軍刀を。太刀を)。 **きょうゆう**【共有】共有の財産、▼共有する(価値観を。時間を。失敗の教訓を。他者の痛みを。秘密を。同じイメージを。一つのフロアを)。二人きりの秘密を共有しているような喜びに胸が頭、ふるえる=中村真。▼持ち分(株式の。共有の。不動産の)。 **けんじ**【堅持】▼堅持する(規律を。従来の姿勢を。生活信条を。伝統を。非核三原則を。方針を。原則的な立場を)。固持する(確信を。自説を。主義主張を。伝統を。方針を)。 **けんり**【権利】権利が(生まれる。失効する。消滅する。担保される)。契約上の権利が有効に存在する。権利の保護を優先する。正当な権利の行使。権利を(手に入れる。正当に行使する。ないがしろにする)。他人の権利を侵害する。当然の権利を主張する。店の権利を譲る。権利金を(積む。払う)。権利書を(預かる。作成する)。私権を(享有する。行使する。制限する)。物権を(取得する。設定する。抵当に入れる)。人権(蹂こうで訴える。感覚が確立する)。人権を(傷つける。蹂躙する。侵害する。尊重する。守る。擁護する。澄みだりに侵すことはできない=舟橋)。特権を(与える。享受する。主張する。振りかざす。乱用する)。特権意識が強い。 **ささげもつ**【捧げ持つ」「捧げ持つ(お膳を。祈飚書比うを。松明封加を。拝領の差添を。守り本尊を。大事に。うやうやしく。高々と。供物を入れた籠を)。 **じする**【持する】▼持する(見識を。清節を。態度を。平和を。誇りを)。満を持して待つ。高く持して枉まげぬ強い気性=山本周。 **しめる**【占める】▼占める(圧倒的な数を。大きな比重を。大臣の椅子を。沈黙が広間を。一つの領域を。思い思いの座を。懐旧の念が心を。考えが胸の奥を。慎重論が優位を。ベストセラーの上位を)。▼地位を占める(最高の。揺るぎない)。▼地を占める(景勝の。要害の)。▼利を占める(漁夫の。地の)。▼買い占める(米を。土地を)。 **しょじ**【所持】▼所持する(拳銃を。写真を。珍器財宝を。ビザを。身分証明書を。モラルを)。所持品を(改める。検査する)。 **しょゆう**【所有】発見者の所有に帰する。▼所有する(広大な土地を。著作権を)。所有権を(移譲する。独占する)。所有地のほとんどを売り払う。私有する(巨万の富を。土地を)。経営権を専有する。▼所蔵する(古画を。史料を。茶碗を。壺っにを。土器を。仏像を。本を)。 **せんゆう**【占有】▼占有する(空間を。土地を。場所を)。▼前に陣取る(クーラーの。テレビの)。最前列の席に陣取る。シェアが(大きい。高い。小さい。低い。数バーセントにまで落ち込む)。全世界のシェアの三割を占める。シェアを(奪う。伸ばす)。▼シェアを誇る(世界最大の。高い)。 **せんりょう**【占領】占領の危機に直面する。▼占領する(頭を。家の一角を。椅子を。島を。閥が空問を。部屋をそっくり。たぎるような思いが心を=落合)。占領される(一人の女性に心を"沢木。上書きされない記憶に=桐野)。占拠する(空港を。工場を。テーブルを。不法に。劣等感が心の大きな部分を=舟橋)。▼領する(悲しみが心を。広大な敷地を。不安が胸を)。 **たずさえる**【携える】▼携える(暮らしの糧を。鉄砲を。手に手を。武器を。槍ゃ』を)。相携えて(難局を乗り切る。無窮の天に帰る)。友人と相携えて事業を進める。携行する(拳銃を。双眼鏡を)。肌身離さず(持ち歩く。身につけている)。必携の(弯。本)。懐にする(金を。詩集を。辞表を)。携帯に不便な代物。▼携帯する(ナイフを。武器を。弁当を)。 **たもつ**【保つ】▼保つ(一定の間隔を。一定の距離を。行動の自由を。心の平安を。思考が整序を。正常な姿を。精神の均衡を。隊長の威厳を。大名の地位を。根強い人気を。平穏な態度を。密接な連繁忙以を。優良な素質を。体を清潔に。体温を一定に。適度な温度に。志を高く。いつまでも美しさを。辛うじて調和を。辛うじて面目を。適正な空気圧を。ほどよいバランスを。見事な釣り合いを。若々しい外見を。関係をいい状態に。気持ちを冷静に。からくも上司としての体面を" <1090> # も **冑跡**っちを。サーベルを。ビストルを)。サーベルを佩用以示する。 **▼身に帯びる**(該博な知識を。武器を)。忍 # ふくむ【含む】 **▼含む**(風が粉雪を。貴重な示唆を。草が夜露を。田が潤いを。頬に笑みを。眉が険しさを。目が怒気を。極めて重大な問題を。口元に柔らかな微笑を。空気が湿気をたっぷり。空が光をいっぱいに"島尾)。雲が強い光の気配をふくむ=古井。含んでいる(目に恨みを。風が潮の香りを)。 **▼含ませる**(意味を言外に。謎めいた微笑を目に)。 **▼含める**(利害関係を。員数に。グルーブに。リストに。対象に技術者を)。権利を含意する。論争が含意するもの。含意の深い文章。含意を(汲くみ取る。読み込む)。反代思想を寓ぐうした小説。寓する(意図を、思想を。教訓を意話に)。現象を包含する。 **▼含有する**(アルコールを。脂肪を)。含有率が(高い。低い)。含有量が(多い。少ない)。 # ほじ【保持】 **保持**が困難になる。 **▼保持する**(中立的態度を。古い文化を。整然たる関係を。チャンビオンの座を。トップに近い成績を)。機密保持が行き届く。 **▼保持者**(学位の。世界記録の。世界タイトルの)。 **▼保有する**(核兵器を。株を。権利を。資産を。著作権を。武器を)。 # まるごし【丸腰】 **丸腰**で(戦う。俄地に取り残される。敵地に乗り込む)。身に寸鉄も帯びていない=山岡。空手で敵に向かう。素手で(商売を始める。立ち向かう。闘うことの無謀さを思い知らされる柴田塾)。徒手空拳で(仕事を始める。敵に立ち向かう。動乱のなかに跳びこむ"本庄)。 # みにつける【身につける】 **▼身につける**(技術を。教養を。孤独な影を。術すくを。早春の匂いを。知識を。武器を。華やかな雰囲気を。辞書に対する異様なまでのこだわりをさりげなく受け流す術を三浦し。鋭い腰の切れを司馬)。腰に美容師が身につけるような薄べったい道具入れのバッグが巻いてある三浦し。従という気質が身にしみつく。 **▼身に付く**(悪癖が。教養が。怪薄さが。権柄ずくが。作法が。習慣が)。身に付いた(学問を生かす。幸福をはぎ取る)。悪銭身につかず。修得する(技術を。芸を。必要単位を)。 **▼帯する**(甲穏な思惑が仕込まれている宮本郎。横山。できるだけ姿勢を低く=有川)。状態を保つ(理想的な。最良の)。 **▼保ち続ける**(トッブの地位を。呆あきれ返るほどの頑健さを"里見)。豊満な肉体が未だに瑞々しさを保っている=隆。最大級の根性を振り絞って意識を保とうとする三浦し。バランスが見事に保たれる。 # てにとる【手に取る】 **▼手に取る**(上着を。鏡を。花瓶を。グラスを。棍棒に礼を。杯を。写真を。受話器を。書類を。新聞を。注文書を。猪口“を。伝票を。封書を。封筒を。ブリントを。ボールペンを。ボールを。本を)。 **▼手にする**(懐中電灯を。カメラを。銃を。大金を。杖を。武器を)。 # どくせん【独占】 **自由競争**が独占に転化する=石田税。独占を打ち破る。独占する(加工と販売を。権力を。交易の利を。市場を。表彰台を)。独占契約を結ぶ。独占资本の支配に反対する。独占欲が雲のごとく湧いてくる=田辺。独占欲を(起こす。見せつける)。 **▼襲断**怒らする(市場を。政治経済を)。一手買い取りを申し入れる。権限を一手に学握する。権力を一手につかさどる。貿易を一手に占める。 **▼一手に引き受ける**(交渉を。製品の販売を。慰め役を)。全部独り占めにしたい。独り占めにする(愛情を。栄耀栄華いうを。幸福を。テーブルを。手柄を)。 # ながもち【長持ち】 **丈夫**で長持ちする。 **▼長持ちさせる**(防水を。メーキャップを)。日持ちのする(菓子。食品)。造花のようにもちがいい=獅子。持ちのよい(衣剣。食べ物)。 **▼長持ちしない**(靴下が。意外に。あまり)。 **▼持たない**(三日と。麻酔が二時間と)。 # ふくまれる【含まれる】 **▼含まれる**(風に潮の匂いが。眼差しに怒りが)。言葉に含まれる棘とげに気がつく。言葉に含まれた真実。 **▼含まれている**(声と口調に戸惑いが。言葉に皮肉な響きが。声音に押しつけがましさが。口ぶりに当てつけが"山本周)。誘いの中に不 # もたない【持たない】 **▼持たない**(帰るべき家を。聞く耳を。定喩を。一面識も。一文も。何の疑念も。宵越しの銭は。言うべき言葉を。屈辱を晴らす術すべを。心にやましいところを。いささかの疑いも)。空手で(引き上げる。訪問する)。手ぶらで帰ってくる。手ぶらでは帰れない。 # もちじかん【持ち時間】 **▼持ち時間**(囲碁の。将棋の)。持ち時間が(切れる。少なくなる。足りない。なくなる)。持ち時間を(決める。使い果たす)。制限時間を(延長する。縮める)。制限時間内に収まる。 # もちぬし【持ち主】 **▼持ち主**(いい度胸の。恐るべき力の。旧式な心情の。驚異的能力の。強烈な性格の。謹厳な風貌の。柔軟な考えの。柔軟な精神の。白い雪肌の。鋭い頭の。鋭い感受性の。繊細な神経の。善良な心の。強い個性の。特別な才能の。複雑な経験の。明晰な頭脳の。明阼階歯かにうの。噂どおりの技術の。穏やかな慈顔の。変わった人格の。合理的な思考の。健やかな心根の。堂々たる体軀にぃの。都会的な美貌の。並外れた精神力の。反軍的な思想の。人をそらさぬ話術の。比類ない感覚の。風変わりな趣味の。立派な演技力の。若々しい思考力の)。持ち主に(返す。ぴたりと馴染なじむ)。落とし物が持ち主に返る。持ち主の(心情を想像する。名を突きとめる)。車のナンバーから持ち主を調べる。 **▼オーナー**(アバートの。球団の。店の)。オーナーのどら息子。 # もつ【持つ】 **▼根に持つ**(昔のことを。小言を言われたのを三浦哲)。 **▼持つ**(一縷いちの望みを。大きな意味 <1091> # 持つ・含む―357 を。体の交わりを。傷が熱を。共通の課題を。暗い秘密を。希有けうの幸運を。声が甘美さを。仕事に不満を。仕事に誇りを。自分の意見を。社会的地位を。重要な意義を。潤沢な資金を。将来に不安を。進取の気性を。人生に憂愁を、鋭い観察力を。全国に支店を。双峰ぼうが輝きを。尊敬の念を。確かな展望を。正しい知識を。強い意志を。手に職を。手に風船を。手に棒を。特殊な感情を。特殊な能力を。長い伝統を。似た経歴を。人間的な幅を。根強い執着を。腹に一物を。広い見識を。広い視野を。不思議な力を。古い歴史を。目が険しさを。豊かな才能を。若い精神を。気を楽に。財布を片手に。期待を漠然と。気を強く。手に隠して。優に一週間は。落ち着いた雰囲気を。かなりの兵力を。個人的な恨みを。様々な味わいを。自分の言葉に責任を。ずいぶんと肩を。生殺与奪の権を。第一義的な効果を。つぼみが膨らみを。天下一品の腕前を。特殊なルートを。並々ならぬ関心を。並々ならぬ知識と教養を。はっきりした輪郭を。批判的に見る目を。複数の選択肢を。密接な関わりを。世渡りの仕事を。ライバル意識を。冷静な判断力を。素質を先天的に。翻訳的な匂いを多分に。気持ちをしっかり。コッブを両手で。尊敬をひとしお深く。自分の生き方に疑問を"丹羽。透き通るように白い肌を"大敵。政府に対して隠然たる影響力を"なかにし。年増殺しの仇名姉だを佐野。反射的に怨ぅぅみか悪意を=曽野。人を惹ぃきつける魅力を=高木)。自分の能力に疑いをもつ=司馬。 **▼関係を持つ**(別性と。こっそり。男女の)。興味を持つ(科学に。建築物に。事件に。政治に。セックスに。風景画に。料理に)。 **▼自信を持つ**(将来に一応の。地球よりも大きい=笹沢)。 **▼手に持つ**(コートを。徳利を。バッグを。マグカップを)。 **▼持ち続ける**(異常な執着を。過去の怨念を。野党精神を。良心を。意識を強く。心を清く。問いを心の内深く)。 **▼持たせる**(注 文の品を。法的拘束力を。行動に機動性を。店の近くに手頃な家を。紹介状を書いて)。含みを持たせる言い方。 **▼持たれる**(好感を。同僚によい感情を)。持ち方を(教わる。覚える)。手に手に(松明封かを持つ。提灯ぢいうを持つ。武器を持つ)。 **▼抱え持つ**(鞄かばを。ハンドバッグを)。 **▼隠し持つ**(嫉妬を。羨望に礼を。憎悪を。へそくりを。ナイフを長靴に。身分不相応な銭を=高橋克)。 **▼備え持つ**(実力を。能力を)。 **▼分かち持つ**(責任を。秘密を)。 **▼分け持つ**(荷物を。喜びを)。心に期待を蔵する。死の恐怖を内蔵する。肌身につけている。専門的な知識を持ち合わせる。持ち物に贅ぜいをこらす。持ち物を(調べる。点検する。光り食いして暮らす)。物持ちがいい。物持ちのいい人。有する(関係を。歴史を)。 **▼拠する**(巨万の富を。高い地位を)。手持ちの(金がわずか。駒。データ。ストックを売り払う。フィルムが底をつく)。持ち点から減点する。持ち点に加点する。持ち点を(決める。増やす)。 # もっていない【持っていない】 **▼持っていない**(たいて金を。悪い印象を。一片も。毛ほども。毫こうも。爪の垢ぁかほども。何一つ。さしたる不安を。さして強い期待を)。何も持っていない幸せに気づく。落合。一片のモラルをも所持しない冷血漢萩原朔。持ち合わせが代金に足りない。 **▼持ち合わせがない**(折悪しく。現金の。言葉の。優しさのかけらも)。 **▼持ち合わせていない**(かける言葉を。何らの方策をも)。 # もっている【持っている】 **▼持っている**(意味を。腐るほど金を。隠すねに傷を。先輩の風格を。部屋の合鍵を。悪い病気を。後生大事に。あり余るほど。お金を山ほど。肌身離さず。万事に一家言。かなりの資産を。不思議な魅力を。金をふんだんに。おもしろい話をたくさん。銭なら腐るほど。海外に莫大な隠し財産を"船戸)。 **▼自信を持っている**(仕上がりに。自分の目に)。 # もてる【持てる】 **持てる**(力を振り絞る。知識を総動員して問いかけに応えようとする三浦し)。持てる(希望が。仕草に好感が。自分の時間が。責任が。手に。気持ちに潤いが)。期待が持てる(将来に。この分なら)。 **▼持てない**(確信が。興味が。問が。未来に期待を)。好感の持てない口つき。手に持てないほど熱い!高樹。 # やどす【宿す】 **▼宿す**(少女の面影を。腹に赤ん坊を。薄い唇に残忍な笑みを。驚きの色を両目に。目に恐怖を深く。目に苦悶。の影を"江戸川。目に絶望的な感情を高橋和。笑いに痛烈な孤独を光瀬)。 **▼光を宿す**(瞳が知的な。目に異様な。目が粘っこい)。宿している(山が深い緑を。顔に昔の面影を。瞳が知的な光を。憎々しげな光を目に)。 # やどる【宿る】 **▼宿る**(口元に微笑が。言葉に言霊が。瞳に敵意が。胸に絶望が。目に憎しみが。怯ぉびえの目に安堵とんが。瞳に深い知性が。目に期待の色が。目に少年の輝きが。目に真剣な光が。思いが胸の奥に。寂しげな影が目に。眼差しに深い悲しみが藤本。目の奥に危険な炎がり火坂。神経の繊細さが身体の隅々に藤本。少女の祈りのごとき幼い心が今なお=坂口)。けわしい限に消えがたい猜疑惑いの念がやどる=真継。 **▼宿っている**(顔に輝きが。目の色に慕情が)。心の底に宿っている決意。 # りょうど【領土】 **敵の領土**に攻め入る。領土の帰属をめぐって対立する。失った領土を回復する。四海を掌讼こに収める=舟橋。独立国家から植民地に転落する。所領の大半を家臣に蚕食される"山岡。国の版図に組み込む。確実に版図を広げる。領海侵入に抗議する。領海を侵犯する。領空権を主張する。領空を侵犯する。領地の(安堵、んを得る。保全を図る)。他国の領内から撤退する。 ****▼領有する**(国土を。島を)。領有旅を(争う。主張する)。 # も <1092> # 30 縺れる・入り組む # あらすじ【粗筋】 **▼粗筋**(映画の。小説の。ドラマの。物語の)。粗筋を紹介する。大まかなストーリー。梗概にい(学説の。戯曲の。小説の。論文の)。梗概を解説する。 # いちがいに【一概に】 **一概に**(叱れもしない。決めてかかるのは問題。そうとも言えない。否定するわけにはいかない)。一概には言えない。責められない)。一律には論じられない。一口に語りつくせない。一口には言えない。よりけり(気分に。時に。肉親をかばうのも事に)。 # いりくむ【入り組む】 **▼入り組む**(海岸線が。人開係が。道が複雑に。急な丘が錯綜し谷が迷路のように"大岡。路地が迷路のように=重松)。入り組んだ気持ちを説明する。浅瀬と深みが複雑に入り組んだ水域。凹凸の入り組んだ地形。川と入り江が入り組んだ土地。 **▼入り組んでいる**(細い道が。所狭しと松の枝が。めちゃくちゃな部分と、だれかが紡っもいだみたい整然とした部分が複雑に三浦し)。 **▼迷路のように入り組んでいる**(責任の所在が。道が)。いろいろと込み入ったわけがある。家庭の込み入った事情を話す。 # いりみだれる【入り乱れる】 **▼入り乱れる**(幾つもの声が。様々な人種が。敵味方が。人間関係が。人と馬が。さまざまな成情が。徹夜明けの興奮と別れの感傷が"氷室。さまざまな思いが頭の中で=三田)。さまざまなぶが入り乱れて聞こえる=宮部。彼我入り乱れて見分けのつかない状態"井上靖。紛々たる落花の風情。 **▼紛々とする**(意見が。飛雪が)。 **▼乱れ飛ぶ**(会話に各種の外国語が。興奮した罵声が。さまざまな唸りが。さまざまな見解が)。 # うよきょくせつ【紆余曲折】 **紆余曲折**の弥縫びを尽くすに山田美。紆余曲折の末(態度をやっと決定する筒井。ようやくたどり着く吉野)。紆余曲折はあっても着実に進む。紆余曲折を経て(今に至る。二年後に日の目を見た)。 # からみあう【絡み合う】 **▼絡み合う**(さまざまな理由が。三者三様の思惑が。いろいろな要因が複雑に。ありとあらゆる雑多なものが生島。いくつかの要因が連鎖的に=柳田。男の手と女の腕とが互いに"田山。絞収はゃりの糸のように"阿木。声がまるで紐ぃものように遠慮。二人の視線が宙で激しく小林久)。 **▼からみあう**(愛慾の唐草模様を織るように感情が"石川。二人の小指が無邪気に=徳井。腕と腕が頭文字のように=堀)。二人の視線が絶望的にからみ合う“光瀬。もつれた糸のように複雑に絡みあう枝"長野。蜘蛛くもの糸のようにお互いに絡み合った世界"大佛。人間的な絡み合いに厚みが出る。絡み合いを演じる(醜悪な。感倍の)。 # かんけつ【簡潔】 **簡潔**で(節度ある文体。的を射た表現)。簡潔な(言い回し。表現。淡々とした文章)。状況を簡潔な筆致でしたためる。志賀直哉ばりの簡潔なリアリズムの描写"石坂。贅肉にいを払ったような簡潔な美しさ”山田太。簡潔に(解説する。書く。語る。答える。伝える。表現する。まとめる。要約する)。経総を簡潔に話す。決意を簡潔に述べる。簡にして要を得た(しゃべり方。説明。注)。 # かんそ【簡素】 **簡素**な(暮らし。食事。住まい。生活。手続き。結婚式をあげる)。いっさいの装飾を省いた簡素な造り“高田。できるだけ簡素にと心掛ける。密査を簡素化する。 # かんりゃく【簡略】 **簡略**な内容にとどまる。前略に・簡略化する(手続きを。やり方を)。インフォーマルな(会話。パーティー。服装)。略式の(裁判。手続き。礼装)。 # ごちゃごちゃ **裏通り**にごちゃごちゃ並ぶ店=原田示。家がごちゃごちゃと固まって建つ。何もかもがごちゃごちゃと混在する。ごちゃごちゃにかきまぜる。本をごちゃごちゃに積み上げる。 **▼ごちゃごちゃになる**(嘘と本当が。敵も味方も)。ごちゃごちゃした(街並み。迷路)。 # ごみごみ **ごみごみ**と(喧噪汁礼な町。狭苦しく建てこむ)。ごみごみした(歓楽の町。街の裏通り。とりとめもないうすら寒い気持ちの場所佐藤春)。ちょっとごみごみした界限妙心。昔ながらのごみごみした通り松浦。 # こんがらかる **▼こんがらかる**(頭が。糸が。関係が。こんがらかる気持ちが。事件が。話が。胸が。いたましい想いと腹立たしい想いが"高見町。いろんなものが頭に=吉川。この世の煩わしさがいよいよ古井)。こんがらかっもどかしさ。複雑にこんがらかった配線。憎しみといとしさがこんがらかって心の中で渦巻く有局 # ざつぜん【雑然】 **雑然**たるデスクの間を抜ける。雑然と道具が散らばる。がらくたが雑然と積み重なる。書類が雑然と積んである。色とりどりに目まぐるしいほど雑然とした新宿の街"壺井。自分の中に雑然と畳まっている怒りや悲しみや希望円地。雑然としている(家の中が。配置が)。おもちゃ箱を引っ繰り返し雑然さ=島尾。雑駁いな(声。読書。認識)。 # ざった【雑多】 **雑多**な(音の洪水。樹々を寄せ集めた森。資料やデータの山。言葉が頭の中で渦を巻く=佐野)。ありとあらゆる雑多なものが混合する。ロビーを雑多な人間が行き来する。ネオンサインが明るく雑多に光る=庄野。 # さんらん【散乱】 **▼散乱する**(杯盤が。破片が。そこらじゅうに物が。煙草の吸い殻が)。散乱するがらくた <1093> # 縺れる・入り組む-358 の山。部屋に散乱したこみ。床に散乱したガラスの破片。丸太の散乱したさまがマッチの箱から畑木をぶちまけたよう井伏。 **▼散乱している**(衣類や書類などが。脱いだ服が足の踏み場もないくらい=乃南)。 # たんじゅん【単純】 **単純**すぎるほど単純な言葉。単純な(作業に熱中する。事実に気づかされる。頭を呪いたくなる=山本周。力強い構成を持った風景の梶井)。根が単純な男。愛すべき単純な若者。幼稚で単純な知識。割合単純な仕事。子供のように単純な役人が言い負かされると単純に激怒する!遠藤。人生を単純な公式で割り切る=阿刀田。情けないくらい単純な話後藤。論理がいささか単純にすぎる。事情はそう単純には割り切れない。単純化する(機構を。理論を)。単純きわまる図式。単純明快な(結論。話)。単純明快に答える。シンプルな(外観。形。スタイル。デザイン)。単細胞的な思考。単細胞の生物。 # てみじか【手短】 **手短に**(結論だけを述べる。事の次第を物語る。事情を説明する。用事を済ませる)。経緯を手短に言う。事の始終を手短に報告する。電話で手短に用件を伝える。必要と思われるいくつかのエピソードを手短に書きしるす=飯田。 **▼手短に述べる**(来意を)。 **▼手短に話す**(いきさつを。家族構成を)。 # はぶく【省く】 **▼省く**(詳しい説明を。作業を。手数を。手間を。労を。徹底的に無駄を。説明すると長くなるので)。省ける(手が。手数が。無駄が。余計な手間が。面倒な手続きが)。省力化が(進む。見込める)。一省力化する(作業を。事務を)。省力化を図る。手抜き工事に走る。お世辞っ気を抜きにする。時代の背景を抜きにしては考えられない。感情を抜きにして事実だけを率直に見る=大佛。 **▼はしょる**(話を。筆を。はしょれるだけ)。前置きを略して本論に入る。略す(敬称を。説明を)。思いきった省略を施す。省略する(押印を。工程の一部を。主語を。手続きを。プロセスを)。 # ひだ【愛】 **心の襞**に隠した嘆き。髪がめくれる。ふと起こされた水の髪が静かに岸に行き着いて消えるように眼を閉じる=高井。部屋の中に寒気と媛気とのゆるやかにもつれ合う襞がある三島。頭の中の襞にメモする。情景を脳の髪にしまい込む。作品の襞のこまやかさ。袴証がの袋を叩く。. さ。袴がの髪を叩く。心の内面的な袋を微妙に描き出す。心の襞を触れ合わせる。幾重にも横に刷毛で掃いたような薄雲の袋を夕陽が赤く燗ただれさせる"福永。鼻の奥の襞を鳴らしながら急き込んでしゃべる=黒井。ギャザーを(入れる。つける。寄せる)。櫛まちが(大きい。小さい。広い)。裕を(入れる。つける)。 # ふくざつ【複雑】 **複雑**な(過去を背負う。経歴の持ち主。様相を呈する。感情が胸中に湧き立つ。計算に没頭する。込み入った感情。人生を経験する。ステップを踏む。人間関係を明快にさばく。背景を持った事件。微笑を浮かべる。表情で語尾を濁す。ブロットをこしらえる)。顔に複雑な表情をたたえる。こみいった複雑な感情。事件が複雑な広がりを見せる。表情に複雑な色が動く。このうえなく複雑な問題"石田焼。不安と期待がミックスジュースみたいに溶けあった複雑な心境飯田。喜びと自己嫌悪の混じった複雑な気持ち高橋ラ **▼複雑になる**(合意形成が。話が。流通機桜が)。複雑にする(事件を。問題を)。感情が複雑怪奇にねじ曲がる=松浦。複雑化する(関係が。犯罪が)。複雑多岐にわたる問題。複雑微妙な心境。手の込んだ(いたずら。細工)。 # もつれる【縺れる】 **▼もつれる**(足が。怒りで口が。糸が。髪がくしゃくしゃに。関係がもつれに。惜しげもなくぱっと緋ぃの裳裾が散って=山手。心が麻糸のように乱れ"円地)。油分の乏しい毛が団子のように継もっれる=高樹。もつれる舌で苦しげに訴える=石川。ともすればもつれる足の運び。 **▼もつれ**(お互いに消えることのないほど根深い感情の壺井。手に負えぬ人間関係の"円地)。もつれを(解きほぐす。解く。ほどく)。 **▼もつれ合う**(鎖が複雑に。ゆるやかに。声が風の中で。髪が櫛くしの歯も通らないほどに萩原來)。上になり下になりもつれ合って泳ぐ。もつれ合っていた影がばっと二つに別れる=南条。 **▼もつれ込む**(延長哦に。内戦に。優勝の帰超すが最終戦まで。離婚が裁判まで)。心理的な葛藤。政治的葛藤が続く。葛藤に決着をつける。段々気がもめてくる。 # ややこしい **(関係**が生じる。議論を始める。折衝を重ねる。ことに巻き込まれる)。ごちゃごちゃとややこしい。話をややこしくする。問題がややこしくなる。 # らんざつ【乱雑】 **一見乱雑**でいて案外整理されている室内森现。埃にっぽい乱雑な廊下。足の踏み場もないほど乱雑な部屋"今更。巨人が激怒に任せて投げつけたような乱雑な庭!佐藤春。乱雑に散らかった部屋。単行本や雑誌が乱雑に置いてある。荷物を乱雑に積み上げる。履き物を乱雑に脱ぎ捨てる。文字を乱雑に書く。秋が林を乱雑にする=堀。机の上に乱雑に散らぱったメモやノート人問。乱雑きわまりない眺め。乱雑きわまる状態。乱雑さに顔をしかめる。はなはだ理路必族としない思い出話。猥雑とかな町の喧騒计认。所狭しと並ぶ店の猥雑な活気。 # りゃくご【略語】 **略語**を使う。略号を(書く。使う)。名前の頭文字を書く。略称(大学の。団体の。法令の)。イニシャルを(書く。縫いつける)。イニシャル入りのハンカチ。 # りゃっき【略記】 **略記する**(大学名を。要点を。論文の内容を)。略言する(アイデアを。要点を)。 **▼略述する**(経絆を。諸段階を。作り方を)。略画で表す。略両を(描く。作図する)。略図を書く。 # も <1094> # 基づく・根差す # いんが【因果】 **親の因果**が子に報ゆ。因果な(稼業。商売。性分)。何と因果な生まれつき。因果の糸を手繰る=阿刀田。因果応報の(定め。目に遭う)。善因善果の因果応報を説く。因果関係の論証が不明確。因果関係を明らかにする。 # いんねん【因縁】 **▼因縁**(浅からぬ。奇くしき。前世からの。いかにいとわしくとも最後まで関係を絶つことの許されない人間同士のような宿命的な中島敦)。因縁浅からぬ寺。深い因縁で結びつく、不思議な因縁で結ばれる。因縁の(糸。妙)。いわく因縁のある品。因縁めいたものを感じる。宿縁(前世の。何とも不思議な)。 **▼他生の縁**(袖振り合うも。袖触れ合うも)。 # いんよう【引用】 **引用する**(ことわざを。詩を。適切な文句を。物語の一節を。思想家の言葉を)。援用する(先行の論文を。古臭い知識を)。 **▼転載する**(記事を。論文を)。図の転載を許可する。論文の引例をそのまま孫引きする。 # きそ【基礎】 **新政府の基礎**が日毎に固まる=本庄。基礎の上に据える。基礎を(確立する。固める)。学問の基礎を積む。基礎にする(科学を。経験を。理論を)。基礎工事を終える。基礎知識を徹底的に教えこむ。基礎づける(権力を。説を)。基礎的な(研鑽を積む。知識。勉強)。 **▼基底**(考え方の。行動の)。基盤となる(共通の。発展の)。下地が(十分にある。備わる)。犯罪を生み出す素地。礎石を据える。基を築く。作る)。 **▼基にする**(観察を。記録を。体験を。データを)。国の礎となる。揺るがぬ礎の上に国を立て直す。礎を築く。商売の礎を造る。 **▼ベースにする**(前回のを。報告書を)。 **▼ベースになる**(考え方の。議論の)。 # きほん【基本】 **基本**中の基本。基本から始める。所作を基本から叩き込まれる。基本を(軽視する。学ぶ。全にマスターする)。一から基本をおさらいする。基本的人権を(奪う。守る)。基本的な(知識。問題。ルール)。基本動作をおろそかにする。基本方針をまとめる。国の大木。大本から(崩れる。正す)。国政の本を正す。正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する。 **▼基調にする**(白を。緑色を。写実的な描法を"松本)。生活の基調を働くことに置く。原点からかけ離れる。原点に戻る。改革の原点に立つ。捜査の原点に立ち返って地を追ょうような捜査を行う志茂田。 # きょてん【拠点】 **▼拠点**を構える(地方に。東京に)。基地を守る。山小屋を根拠地にする。敵の根拠地を叩く。敵の牙城に乗り込んでいく。敵の牙城を強襲する。ホームグラウンドで試合をする。城の本拠を突きとめる。 # げんいん【原因】 **原因**が(思い当たらない。分からなくて右往左往する)。事故の原因が分かる。全く原因が分からない。原因と結果が連鎖する。原因に心当たりがない。失敗の原因を究明する。事故原因が判明する。事故原因を解明する。一から事故原因を洗い直す。一因(家庭不和の。挫折の。離婚の)。因(勝利の。腐敗の)。因を他に嫁する。 **▼遠因**(危機の。事件の。戦争の)。遠因から説き起こす。飲酒運転に起因する交通事故。品切れに起因するロス。不注意に起因する事故。主因を(解析する。見誤る)。真因を(解明する。究明する。探る)。 **▼素因**(災害の。喘息ぞんの)。個人的素因に左右される。暗殺が動因となり暴動が起こる。よって来たる(ところ。所以灬ぇ)。文学と思想のよってきたる根瀬戸内。不純な動機。動機の説明がつかない。動機づけが不十分。 **▼誘因**(怒りの。事件の。情報漏洩そらの)。ミスを引き起こした誘因を分析する=柳田。 # げんそく【原則】 **▼原則**(公海自由の。法益権衡の。ギブアンドテークの)。原則から外れる。原則に(当てはまる。従う。沿う。反する)。原則は状況によって左右されるべきではない=有川。原則を貫く。原則論で(合意する。対立する)。原則論の域を出ない。 # こうしき【公式】 **公式**に(謝罪する。招待する。訪問する。認める)。公式の(席に姿を見せる。場でお披露目ゆっする)。非公式な(会談。協力要請)。非公式に訪問する。 # こんきょ【根拠】 **▼根拠**(百パーセント確実な。確信を裏付ける)。根拠が(曖昧。薄い。崩れる)。 **▼根拠**がある(十分。信じるに足る)。根拠とする事柄。根拠になるデータ。全く根拠のないことではない。根拠ははなはだ薄弱。反論の根拠を与えない。法的な根拠を与える。大義名分が立つ。大義名分にかなう。大義名分を掲げる。錦の御旗。 # こんてい【根底】 **根底**から信用がぐらつく。自信を根底から覆す。思想が根底から変わる。常識を根底から打ち砕く。信頼が根底から覆る。生活の秩序が根底から破壊される。生活を根底から脅かす。体制を根底から揺り動かす。名誉を根底から崩す。理想が根底から覆される。根底に熱い思いが流れている。 # こんぽん【根本】 **根本**から見直す好機。考え方を根本から改める。根本的な(修正を加える。見直しが必要)。根本的に(誤りがある。間違っている)。抜本策を講じる。抜本的な対応策。抜本的に(改める。見直す)。根幹が揺らぐ。思想の根幹を表白する。民主主義の根幹をなす。唯物史観の根幹を展開させる。 # さんこう【参考】 **大いに参考**になる。ちっとも参考にならない。参考にする(意見を。体験記を。データを。先人たちの生を)。参考人として事情聴取される。殺人事件の参考人として追及される。 **▼参照する**(一次资料を。各種の版を。原典を。注を)。 # じごうじとく【自業自得】 **自業自得**と言えばそれ <1095> # 基づく・根差す―359 まで。いまさら泣きついても自業自得と笑われるだけ。自分で蒔まいた種。身から出た錆さび。自ら墓穴を掘る。 # しりょう【資料】 **この上ない貴重**な資料。資料が(散逸する。残存する)。正確な資料が手もとに揃っていない皆川。間接の資料から想像する他はない=加藤。資料に目を通す。資料を(丹念に読む。使って説明する)。文献が(散逸する。残される)。様々な文献を読み漁ぁさる。 # しんり【真理】 **真理**(千古不易の。万人の認める)。真理を探求する。自然界を支配する真理を理解する"佐藤勝。人生の妙諦を知る。禅剣一致の妙諦を悟る=子母沢。 # そくする【即する】 **現実**に即した(対処法。身近な問題)。事実に即した謙虚さ。今の時代に即して説く。実際に即して考える。日常の生活に即して説明する。地位に準じた働き。収入に準じて税金を払う。 # ていしき【定式】 **▼定式化する**(事例を。モデルを。問題を)。定石通りのやり方。定石を(踏む。外したやり方を嫌う)。 # データ **データ**が(すべて揃う。一人歩きを始める)。データに照らして考える。データの分析を行う。具体的なデータを突きつける。膨大なデータをコンビューターで解析する。 # てがかり【手掛かり】 **▼手がかり**(判断の有力な。犯人に結びつくような森村)。手がかりがある(何らかの。れっきとした)。わずかな材料を手がかりにする。重要な手がかりを発見する。 **▼手がかりをつかむ**(有力な。交渉の)。多くの遺品が残される。犯行現場に遺品を残す。浮き世を渡るよすが。亡き母を想うよすがの場所。今となっては知るよすがもない。 # てがかりがない【手掛かりがない】 **何一つ手がかり**がない。手がかりのない頼りなさ。これという手がかりもない。霧を吸い込むみたいに手がかりがなくてあやふや=小川。杳ょぅとして手がかり一つ掘っかめない=船山。真犯人の手がかりが消える。目ぼしい手がかりがつかめない。折角她いつかんだ手掛かりの糸がぶつんと切れてしまう隆。手がかりはゼロに等しい。何の手がかりもつかめない。何一つ遺留品がない。往時の壮観を偲しのぶよすがはない。 # でどころ【出所】 **結局は税金**が出所になる。出所を明らかにする。質問する。突き止める。あれこれ詮索する)。出所が(信頼できる。しっかりしている折紙つき=田山)。情報の出所は不明。出典が不明。出典を(明らかにする。示す。注記する)。 # ねざす【根差す】 **▼根ざす**(罪の意識に。人間の深い心情に)。嫉妬に根ざした密告。人間性に根ざした疑問。 **▼胚胎がする**(悪の芽が。憎悪が。萌芽を)。 # のっとる【則る】 **▼則る**(規定に。規約に。古式に。作法に。書式に。伝統に。法の条文に。ルールに)。法規に準じて遺産を分配する。権利に則した対応。法に則して判断する。 **▼則する**(法律に。ルールに)。 # ほうそく【法則】 **世界を支配**する法則。法則があてはまる。法則に(かなう。従う。支配される。反する)。法則の普遍性を再確認する。法則を(応用する。発見する)。自然界の法則を五感でとらえる鈴木光。合法則性を実証する。法則性を(逸脱する。踏まえる)。鉄則を(踏まえる。守る)。自然の理法。理法に(かなう。反する。もとる)。 **▼原理**(普遍的な。明快な。民主主義の)。原理に(則る。反する)。 **▼摂理**(運命の。神の。自然の。天の)。摂理に(かなう。従う。反する)。 # みなもと【源】 **源にさかのぼる**。発想の源を外国から吸収する。事の起こりの張本人。起源が異なる。淵源悅(教育の。哲学の。文明の)。風習の起源は非常に古い。起源をめぐる議論。 **▼源泉**(感受性の。力の。知識の。文化の。感傷の底にある苦さの三好徹)。源流(文化の。文明の)。本源的な(結合。能力)。川の本源を探る。ルーツを(探る。たどる)。 **▼温床**(裏金づくりの。テロの。犯罪の。腐敗の。暴力の)。 **▼根源**(恐怖の。諸悪の。万物の)。人間の悩みの根源に目を向ける瀬戸内。根源的な(原因。テーマ。間い。謎)。 # もと【元】 **元**(風邪は万病の。そう思ったのが間違いの。生兵法は怪我の)。元を(ただせば。辿たとる。取る。減らす)。大学を母体とする高校。 # もとづく【基づく】 **▼基づく**(理論に。天地自然の理に)。確実な資料に基づく議論。仮定に基づく推測。遠謀深慮に基づいた人事配置。実話に基づいた小説。事実に基づいて詳細に実証する。自分の判断に基づいて行動する。依拠する(先例に。法律に。理論に)。 **▼準拠する**(教科書に。史実に。法令に)。引用文の典拠。信頼すべき典拠による。典拠を示す。 **▼踏まえる**(この一年を。ニーズの変化を。歴史的な経過を)。 **▼立脚する**(感情に。事実に。理論に)。民主主義に立脚した政治。立脚点(政策の。理念の)。 # ゆいしょ【由緒】 **由緒**ありげな古い家。由緒ある(家柄。家系。血筋の奥様。町名を保存する。旧家のたたずまい皆川)。古い由緒あるホテル。由緒正しい家柄。由緒深い品物。寺の縁起。愛情に由来する親近感。名前の由来を説明する。来歴が分からない。来歴をつまびらかにする。土地の来歴を調べる。 # よういん【要因】 **▼要因**(後天的な。内在的な。物語を動かす。絶滅につながる)。幾つかの要因が重なる。いろいろな要因が複雑に絡み合う。いざというときにとんでもないマイナス要因になる=柳田。別なファクターがある。ファクターを(調べる。突き止める)。 # よりどころ【拠り所】 **▼拠り所**にする(氏素姓を。科学の発達を。家族を)。心の拠り所を失う。最後の拠り所を求める。決め手(最後の。勝負の)。決め手になる証拠。今一つ決め手を欠く。 # い # も <1096> # も # 30 求める・欲しい # いよく【意欲】 **仕事**をする意欲が著しく減退する三浦し。最後の大仕事を成し遂げるべく意欲に満ちて会社に戻る=三浦し。出馬に意欲を示す。日本語の習得に意欲を見せる=船山。意欲を燃やす(創作に。文学活動に)。意欲的に(作品を発表する。仕事に取り組む)。勤労意欲に燃える。全部独り占めにしたい。 # かつぼう【渴望】 **▼渴望**(平和への。燃えあがるような=高橋知)。旅行に出たい渇望が募る。憧れに似た渇望を押さえられない=辻井。 **▼渇望する**(援助の手を。自由を。名声を。夜の恐怖は太陽の輝きを=中野美)。り健全な人間への想望に。翘望する(太平を。才能のある新人を)。粗望に翘望を重ねる。 **▼切望する**(健康を。健闘を。支援を。心から。衷心より)。 # しんせい【申請】 **旅券**の申請をする。 **▼申請する**(生活保護を。特許を。入港を。ビザを。保釈を。補助金を。道路の使用許可を警察に)。申請書を提出する。 # せいきゅう【請求】 **請求**に応じる。請求をはねつける。 **▶請求する**(慰謝料を。財産分与を。損害賠償を。代金を。逮捕状を。費用を。料金を。裁判所に公判を。名義書き換えを)。請求書を(受け取る。突きつける)。勘定書きに(サインする。目を落とす)。 # ちゅうもん【注文】 **▼注文**(虫のいい。頭の痛い無理な高橋三)。注文が(どんどん来る。ぼつぼつ入る。引きも切らずある。びたりと止まる。ふっつりと途絶える)。やたらと注文がむずかしい。手前勝手な急ぎの注文が舞い込む=山崎。フル稼働でも注文に追いつけない内橋。注文の電話でてんてこ舞いになる。ウエートレスが注文を取りに来る。快く注文を受け入れる。細かな注文を出す。料理の注文をてきぱきとすよ自る。注文をつける(あれこれと。うるさく)。客の注文に応じる。 **▼注文する**(お代わりを。紅茶を。コーヒーを。料理を選んで)。注文して作らせたように帽子がぴったり合う今日。 **▼訛っえる**(スーツを。調度品を)。オーダーする(食事を。背広を。飲み物を)。 **▼御用命**ください(我が社に。当店へ)。御用命の品をお届けする。 **▼発注する**(機械を。工事を。商品を)。受注がスムーズに運ぶ。受注に生産が追いつかない。受注する(競争入札で。公共工事を地元企業が)。 # どんよく【貪欲】 **貪欲**が吝喬りんしに転じる。顔に貪欲な傲慢にらの色があらわれる!遠藤。あらゆる物を貪欲なまでに買い漁ぁさる=今東。貪欲なまでの食欲渴欲有島。を満たす。食欲に(金を貯める。多くのものを運び去そうとする。自由を享楽する。前に進もうとする。利潤を追求する)。知識を吸収することに貪欲になる。甘いものを見た子供のように貪欲になり前後を忘れる=有島。節操もなくガツガツと貪欲に取り込む鳥田。貪欲さが露わになる。我ながらいささかあさましくなる食貪婪ふさ=開高。貪婪な舌を満足させる。風俗作家の食焚な目。目が貪婪に輝く。 # ねだる **ねだる**(小遣いを。話を。もう少しもう少しと。鼻声で甘えて物を"石坂。まつわりついてきそうな調子で恵みを=徳田)。哀れっぽい声で鳴いて食べ物をねだる猫!森村。何かをねだる子どものような目=落合。醒”めぎわの夢をもう少しもう少しとねだるような眠り方(水井飛。 **▼せがむ**(話の続きを。話を。しつこく指導を。愛してほしいと)。 # ほしい【欲しい】 **欲しい**(遊ぶ金が。時間的余裕が。主役の座が。一人でも客が。是が非でも。涎にだが出るほど。生きていく支えが。理解し合える友達が。そくぞくとするほどの刺激が=乃南。咽喉のとが焼けつくようにただ銭が=山崎。喉から手の出るほど藤本)。まわりを怯ぉぃえさせるぐらいの迫力がほしい=内海。欲しい物は必ず手に入れる。身ぐるみ脱いでも欲しい女梅本。欲しいとなると見境がない。今さら欲しいとは思わない。あたしが欲しいのはそんなのじゃないと駄々を捏ねる有川。話し相手が欲しい(寂しくて。焼けつくような飢えで=萩原薬)。乳が欲しくて泣き叫ぶ。欲しくてたまらない(子供が。それがなければもう一日も生きていられないほど=小松太)。よだれを流さんばかりの目つきぃ大原。もの欲しげな(顔つき。さもしい眼つき=大庭)。物欲しげにきょろきょろと見回す。物欲しそうな態度に出る。物欲しそうに待つ。一度生き血の味をしめた虎の子のような渇欲有島。垂涎叶心の(的。魅力ある言葉)。心の底から垂涎する。 # ほっする【欲する】 **欲する**(ものを与える。通りに行動する)。欲する(渇くように。是が非でも。所有の上にも所有を=中野孝)。食指が動く。ちょいと食指を動かす。欲しがる(子供を。水を。何やかやと)。 # むよく【無欲】 **無欲**で恬淡さんとした女。木つつきのように何処へでも穴を開けてそこへものを置きっぱなしでいく無密な放浪の女心"林美。無欲の勝利。捨てる(欲心を。欲を)。金銭に恬淡無欲"中野考。気前のいい男。物欲がない。欲が微座ふじもない。まるで欲気がない。一切の欲念を去る。さっぱりした欲のない人。 # もとめる【求める】 **求める**(新しい人材を。新たな天地を。安住の地を。一夜の宿りを。渇して水を。現世の名利を。執拗に交際を。平等な処遇を。慰めを手近に。会社側に説明を。災害救助法の発動を。最後の拠はり所を。更に詳しい情報を。送金の上乗せを。単刀直入に性的な関係を。手を上げて発言を。伸びやかな人間らしさを。華やかな人生を。無邪気に批評を。別れしなに握手を。生活の糧を海に。優秀な少壮学者を天下に)。真実を求める気持ちに根ざす。救いを求める声が聞こえる。 **▼値を求める**(平方根の。未知数の)。救いを求める(心の。小説に慰めと。切羽詰まった表情で鈴木光)。 **▼助けを求める**(親に。周囲に)。 **▼はけ口を求める**(性欲の。精力の)。 **▼道を求める**(仕官の。生死超脱の)。食を求めて行列する。夢を求めて集う。常に未来の曙光これを求めて進む=熊坂。突破口を求めて試行錯誤が繰り返される内橋。求めよさらば与えられん。 **▼求められる**(公正無私の姿勢が。秒刻みの対応が。事情聴取のために任意同行を)。あけすけな求めに応じる。助けを求めに走る。同意を求めるような口ぶり。 **▼追い求める**(快楽を。成功を)。 **▼買い求める**(原書を。土産を)。 **▼探し求める**(あわてふためいて。鶏の目鷹たかの目で)。 **▼求め歩く**(幸せを。食料を)。 **▼呼び求める**(自然を。主を)。 ****▼希求する**(愛の永続を。平和を)。雄々しい求道者いとうの決意。人生の真理を求道する。一筋に求道に努める。意見を徴する。 **▶仰ぐ**(外国に原料を。寄付を。将軍の臨席を。上司の判断を。同僚の協力を。民意の審判を。有権者の信を。当直医の指示を。費用の一部をカンバに)。 # ようきゅう【要求】 **要求**が(過激になる。エスカレートする)。要求とは程遠い水準。要求に(対する防波堤になる。てきぱきと応じる)。過度の要求に疲れ果てる。読者の際限のない要求に奉仕する=鮎川。要求に応える(時代の。社会の)。要求を断固として拒絶する。是が非でも要求を受け入れさせる。途方もない要求を突きつける。にべもない一言で要求を却下する。二つの相反する要求を満たす。眉一つ動かさずに要求を呑む"山本一。身を挺てぃして無理な要求をさえぎる=山岡。理不尽な要求を受けるわけにはいかない"火坂。要求する(口止め料を。即時解放を。委員会の招集を。がつがつと食べ物を。徹底的な変革を。はっきりした返事を。ベースアップを。非合法な情報の提供を"有川。要求すべきことは容赦なく笹沢)。要求される(高い信頼性が。多少なりとも演技を)。要求水準に応える。アンコールにこたえる。アンコールの <1097> # 求める・欲しい-360 (声がかかる。拍手が鳴り響く)。ないものねだりばかりしている。ないものねだりを(しても無駄。続ける)。ニーズが(高まる。多様化する)。ニーズの変化を踏まえる。ニーズを的確にとらえる。リクエストに応える。ラジオ番組にリクエストを出す。 **▼リクエストする**(歌を。曲を)。 # ようせい【要請】 **正式**に出動要請がある。時代の要請に従う。命令というよりは要請に近い=半村。要請を呑まざるを得ない。身柄引き渡しを要請する。陳情にかけずりまわる。 **▼陳情する**(市長に。政府に)。 # よく【欲】 **欲**が(頭をもたげる。強い。出る。深い)。色と欲との二筋道。意地と慾との二筋道をかける=石川。欲と欲がぶつかる。欲に(目がくらむ。巧みにつけ入る)。欲の(深い女。道をたどる)。欲を(言えばきりがない。一人前に持っている)。我欲が(とりつく。深い)。我欲に動かされる。私欲に走る。私利私欲に駆られる。抜け目なく私欲を満たす。欲気を出す。欲心が湧く。欲心を起こす。利欲一点張りの男。利欲に目がくらむ。一身の利欲を事とする。所有欲から発した行"中野孝。所有欲に凝り固まる。所有欲を満足させる。所有の欲望にはきりがない=中野孝。物欲に(とらわれる。惑わされる)。物欲が強い。物欲の権化。 # よくばる【欲張る】 **欲張った**ことを言う。欲張って(食べ過ぎる。ケーキを全部食べる)。あまり欲張ってはいけない。欲張りが過ぎる。欲張り損のくたびれ儲もうけ。欲一筋の男。欲が張っている。欲に駆られて大損する。欲の皮が張る。欲の皮を突っ張らせる=井上ひ。強欲そうな顔。強欲な(男。金貸し。けち)。銭儲けしか頭にない。大欲非道の行為。胴欲な(高利貸し。人物)。欲はけして(大損をする。こわいもの知らずになる)。欲ぼけにぺてん師がつけこむ。欲ぼけの我利我利亡者。 # よくぼう【欲望】 **欲望**(心の奥深く眠っている=中村。生温かい霧のような野間)。欲望が(あらわに動く。人一倍強い。心の中に粘りつく。ちりちりに四散する。むくむくと頭をもたげる。むらむらと起こる。体の奥底から突きあがってくる=あさの。体の奥底から突如湧き上がってくる藤本。思考を破壊する=平野。火柱となって噴き上げる=笹沢)。新たな欲望が生まれる。止ゃみがたい欲望が続く。現金な欲望が臆面もなく漲扱っている=城山。底の浅い欲望がうごめく=高橋和。欲望と(行動との伸びやかな融和。屈辱とに我が身がずぶ濡れになる=黒井)。欲望に(火がつく。つき動かされる)。内なる欲望にもみたてられる。下半身が欲望にほてる。官能的欲望に誘いこむ。どうにもならない欲望にひきずられる=高橋和。肉の欲望に渇いている。欲望の(支配する現世。虜とになる。奴隷になる。火が燃える。赴くままに導かれる)。春画に欲望のはけ口を求める。足の辺りにまだ捨て犬のようにうごめいている欲望の切れはし"野間。ガスの火をつけるみたいに欲望の青い火がボッと燃え上がる=田辺。欲望のままに身をまかせる。欲望は人間の業。欲望をふつふつと感じる。男の欲望をそそる。自分の欲望を客観視する。たぎる欲望を水で薄めた欲のぬるま湯が家庭かもしれない荻野。噴き上げてくる欲望を手なずけておとなしく眠らせる落合。 # よっきゅう【欲求】 **▼欲求**(生まれて初めて感じる抵抗しがたい=山本周。手綱を引き締めてもはね出す奔馬のように押さえようがない!佐多。身内に絶えず湧き流れ燃えふすぶっている混沌にふとした"门地)。欲求が(桁外れに強い。燃えくすぶる。燃えたぎる)。心に激しい欲求が破裂する=光瀬。偶然と欲求とが相半ばする一夜の転び寝"里見。欲求に背中を押される。切ない欲求に背中を押されて階段を昇る=原田宗。性的な欲求を発散させる=平野。 # も <1098> # 50 戻る・取り戻す # あともどりできない【後戻りできない】 **事態**が後戻りできなくなる。もはや後戻りは利かない。決定的な一線を踏み越える。姿だいは投げられた。 # うばいかえす【奪い返す】 **▼奪い返す**(主導権を。天下を。力ずくで)。奪回する(首位を。陣地を。政権を。タイトルを)。 **▼奪還する**(失地を。政権を。人質を。名人位を)。座を奪還する(世界一の。チャンピオンの)。 # かいふく【回復】 **体力**の回復に努める。健康が回復に向かう。病が薄紙を剣ぐように恢復跡いに向かう柴田鍵。回復への処方箋。 **▼回復する**(意識が。著しく元気を。名誉を。体力が徐々に。天候が徐々に。意外に早く。消耗した体力を。病気が日増しに。健康がめきめきと。精神的痛手から)。今日明日にも意識を回復するだろう。回復ぶりが目覚ましい。景気の回復期。需要が少しずつ回復しつつある篠田。秩序の回復に努める。失地回復の好機。内需の回復を図る。取り直す(元気を。勇気を)。 **▼気を取り直す**(しゃんと。はっと)。復権する(破産者が。古き良きものが)。人間の復権を意図する。 **▼リフレッシュする**(頭を。気持ちを。心身を。脳を)。再興を(期する。企てる。図る。果たす)。 **▼再興する**(家を。家名を。国を。町を)。復旧に手間取る。復旧の(見込みがない。めどが立たない)。乱れたダイヤが復旧する。復旧工事に取りかかる。 # かえりざく【返り咲く】 **▼返り咲く**(王座に。大関に。主役の座に。政界に。舞台に。また首相に)。初冬に返り咲きの桜が咲く。返り咲きを(狙う。めざす)。返り花を咲かせる。カムバックの日を夢見る。やむにやまれず奇跡のカムバックを果たす荻野。 # かけもどる【駆け戻る】 **▼駆け戻る**(今来た道を。後ろも見ずに。息せき切って。ほうほうの体で自室に。恐ろしい速さで。道をあたふたと)。 # きする【帰する】 **帰する**(企てが徒労に。策が失敗に。実在を偶然に。責めを自分に。罪を他人に。敵方の手に。本戦が勝利に。責めを担任の先生に。発見者の所有に)。水泡に帰する(計画が。願いが)。結局当人の問題に帰結する。国家の帰越追ずを決める。帰着する(金の問題に。平均水準に)。 # ぎゃくもどり【逆戻り】 **▼逆戻りする**(赤ちゃんに。冬に。昔に)。 **▼逆戻りさせる**(時計の針を。プロセスを)。 # さいけん【再建】 **再建**が(おぼつかない。遠のく)。組合の再建に協力する。再建の道が閉ざされる。 **▼再建する**(会社を。学生運動を。暮らしを)。経済再建が思うにまかせず進まない。財政再建が(急務となる。棚上げになる)。財政再建に取り組む。 # さかのぼる【遡る】 **▼さかのぼる**(流れを。記憶が過去に。起源に。最初の日に。古い時代に。満ち潮に乗って河口を。大学時代の思い出に。三百年昔にまで)。 **▶川をさかのぼる**(時の。ボートに乗って)。川をさかのぼって水源に達する。源流を目指して遡っていく"態合。 **▼さかのぼらせる**(心を過去に。二十数年前に話)。没年から逆算して生年を推定する。前年の四月を)。没年から逆算して生年を推定する。まで遡及して適用する。 **▼遡行沢にする**(時間の河を。船で川を)。鮭だけが川を遡上する。 # しゅうふく【修復】 **修復**が遅々として進まない。修復に(全力を注ぐ。日を費やす)。修復する(家を。関係を。城を。寺を。壁画を)。関係修復の糸口を掘っかめない=横山。国交を修する。 # しゅうり【修理】 **車**を修理に出す。修理の腕を遊ばせる。修理する(エンジンを。自動車を。屋根を。破損した部分を)。修繕も思うにまかせない。修繕する(エンジンを。壊れたドアを。村人が総出で道を)。法外な修繕費を吹っかける。 **▼補修する**(傷んだ部分を。道を。アスファルトを)。改修する(河川を。港湾を。設備を。船体を。道路を。橋を)。 # たいか【退化】 **退化**する(器官が。技術が。機能が。文明が。色を見分ける力が。筋肉は使わなければ山本昌)。幼児的なレベルにまで退行する。退歩する(学力が。技量が)。 # たちなおる【立ち直る】 **▼立ち直る**(自分の力で。衝撃から。非行から。崩れかかっていた気持ちが。きりりとした気持ちに。異様な恐怖と苛立心。ちから。思いを新たにして。心身の痛手から。精神的ショックから。バブルの後遺症から。悪い夢から覚めて)。立ち直るきっかけを(与えない。得る)。 **▼死から立ち直る**(夫の。妻の)。倒産寸前の会社を立ち直らせる。きっと立ち直れるはず。悪の道から(足を洗う。更生する。抜け出す)。更生して社会復帰する。身を固めて更生する。再起を(期する。図る)。再起の夢を抱く。不屈の闘志で再起する。再起不能の致命傷を負う笹沢。復調の兆しが見える。復調する(経済が。スランプから)。 # たちもどる【立ち戻る】 **▼立ち戻る**(喧噪汁ルの世界に。原点に。人間らしい生活に。まっとうな道に)。過去の生活が一気に立ちもどる=宇野利。 **▼立ち返る**(原点に。出発点に。初心に。初めの問題に。真人間に。本当の姿へと)。 # たてなおす【立て直す】 **▼立て直す**(馬の首を。駒の頭分しを。しゃんと身を。何とか体勢を。店を立派に。危うく踏みとどまって構えを。行き詰まった政治を。辛うじて姿勢を。空転した思考を。崩れかかった陣形を。揺るがぬ礎の上に)。経営の立て直しが進む。立て直しに取り組む。財政立て直しに努力する。 # つれもどす【連れ戻す】 **▼逃れ戻す**(家に。無理やりに。一刻も早く。腕ずくで。悪い仲間から。里子に出 <1099> # 戻る・取り戻す―361 してあった子供を。なんとしてでも)。 **▼連れ戻される**(夢から現実に。途中でつかまって)。 **▼連れ帰る**(捕虜を。娘を。なだめすかして)。 **▶辿れて帰る**(家に。一刻も早く。見つかり次第。首に組をつけてでも=北原)。 # とりかえす【取り返す】 **▼取り返す**(金を。失敗を。人間性を。是が非でも。心がほのぼのとした明るさを=福永)。 # とりなおす【取り直す】 **▼取り直す**(気分を。気持ちを。心を)。 # とりもどす【取り戻す】 **▼取り戻す**(幾分気力を。以前の地位を。失った金を。遅れた仕事を。顔に生色を。貸した木を。声に明るさを。心が平静を。心の余裕を。子供の夢を。静かな朝を。徐々に記憶を。正常な嗅覚を。表情が生気を、平素の口調を。本来の力を。耳が聴力を。昔の姿を。目が輝きを。元の機能を。娘を手元に。生きるエネルギーを。いつもの調子を。いつもの平静さを。失われた過去を。失われた時間を。往年の賑わいを。かつての勢いを。かつての威信を。すっかり元気を。地に落ちた信頼を。人間らしい生活を。ノーマルな生活感覚を。平常な気持ちを。ほっとくつろぎを。ぼんやりと意識を。見違えるほどに健康を。昔のように賑やかさを。ようやく人心地を。資金を倍にして。輝いていた頃の自分を=鈴木光。わだかまりのない磊落5いさを"有。いかなる手段をもってしても=山田風)。落ち着きを取り戻すのに時間はかからない。一挙に取り戻す(失っていた自信を。これまでの損失を)。明るさを取り戻した顔。 **▼回収する**(回答用紙を。貸した金を。空のカップを。古紙を。債権を。投資した額を。未収金を)。 # なおす【直す】 **▼直す**(糸のよじれを。髪の寝癖を。機嫌を。根本的欠陥を。自分の欠点を。自分の弱点を。悪い癖を。尺をセンチに。ドルを円に。鏡に向かって化粧を。ネクタイの緩みを。片仮名を漢字に。臨時工を本工に。台風で傷んだ物置の屋根を篠田)。位置を直す(ストラッブの。枕の)。 **▼髪を直す**(手で。乱れた)。乱れを直す(髪の。着衣の)。 **▼矯め直す**(悪戯かけ分を。おしゃべりを。性格を)。放恣いうな性情を矯める。 **▼繕う**(網の破れ目を。破れた穴を。袖口のほころびを。破れたシャツを。障子の破れを器用に)。 **▼補正する**(誤差を。予算を)。補正予算を組む。手を入れる(ゲラに。原稿に)。空き家に手を入れて住めるようにする三浦し。 # なかなおり【仲直り】 **喧嘩**好んと仲直りを繰り返す。 **▼仲直りする**(穏やかに。あっさり。けろりと)。かつての恋人とよりを戻す。和を講じる。手打ちの儀式をする。和議が(整う。成る)。和談を(結ぶ。いさぎよしとしない)。抗争と和談を繰り返す。和陸が成る。睦を図る。和解が(成立する。不成立に終わる)。和解による決着が望ましい。対立が和解に向かう。和解の(席を設ける。道を探る)。喧嘩と和解を繰り返す。和解する(なしくずしに。あっけなく。さりげなく)。 **▶和解させる**(諸階級を。対立を。両者を)。和解工作に応じる。和平が進展する。和平に向けての歩み寄り。和平を(成す。結ぶ)。和平協定に調印する。 # はらいもどす【払い戻す】 **▼払い戻す**(出資金を。全額を。入場料を)。払い戻し(切符の。チケットの)。払い戻しを(受ける。請求する)。 # ばんかい【挽回】 **損なわれた名声**の挽回に努力する。 **▶挽回する**(哀勢を。敗労を。名誉を。劣勢を。頹勢を一気に)。回瀾分公を既倒に反かぇす。家の危うきを既倒に廻し止めた女丈夫"岡本。狂瀾いうを既倒に廻めぐらす。失地挽回を考える。名誉挽回のいいチャンス。 # はんどう【反動】 **反動**が(柄を伝う。恐ろしい勢いでやってくる=黒井)。極端な政策には反動が伴う。手にしたたかな反動が返ってくる。行き過ぎには反動が生じる。反動をつけて体を起こす。全身を一本のばねのように反動をつける=玉村。子供のころ旅行に行けなかった反動のように夫とよく旅行をする内海。反作用を(起こす。引き起こす)。 # ひきかえす【引き返す】 **▼引き返す**(今来た道を。壮図むなしく。勇を設して。すごすご尻尾を巻いて=安部。虫がはうようにそろそろと藤沢)。空しく引き返す他はない。 **▼取って返す**(今来た道を。弔い合戦に。我が家へ。離れから母屋に)。もと来た方へ歩を返す。 **▼踵たびを返す**(おもむろに。頭を下げて。一礼して。くるりと。素早く。そそくさと。黙って。促すような咳払いを汐しゃに=内海。さよならも言わずに新田)。踵を返して(歩き出す。立ち去る)。くるっと踵を返して走り去る。師をめぐらす。くるりと回れ右をして出て行く。思いきったように廻れ右をして急き足で歩き始める=野問。回れ右して(戻って行く。デスクから離れる)。引き返せない(もう絶対に。今さら)。今さら引き返すわけにもいかない。すぐには引き返すことができない。引き返すこともかなわぬほど進んだ頃。ルビコン川を渡る。 # ふっかつ【復活】 **復活**の気運が出てくる。奇跡的な復活を遂げる。復活する(過去の権威を。昔の行事を。禁止されていたものが。崩れかけた自信が。遠い歴史がテレビのドラマで一挙に現代に藤本。何かのきっかけで再び=佐野)。家名を復活する日を待ちかねる=池波。復刊する(雑誌を。新聞を)。敗者復活を遂げる。敗者復活戦に臨む。リターンマッチに応じる。 # ふっき【復帰】 **復帰**が可能になる。復帰する(沖縄が本土に。仕事に。社会に。戦列に。本隊に。ラインアップに)。社会復帰への道が閉ざされる。 # ふっこう【復興】 **復興**が軌道に乗る。戦後の復興が一応の段階に達する。復興に(協力する。取り組む)。復興の(槌音比も高く再建される。一途をたどる)。復 # も <1100> # も 興は道半ば。復興する(工業が。村が。老舗を。暖簾切れを。本丸を)。ルネサンスの(巨匠。芸術)。ルネサンスを迎える。 # もどす【戻す】 **▼戻す**(株が値を。時計の針を。寒天を水に。視線を正面に。話を初めに。話を本筋に。話を本題に。便箋を封筒に。本然の姿に。本を棚に。カッブを受け皿に。原子炉を正常な状態に。受話器をフックに。鍋をガスコンロに。葉書を状差しに。漏れた水をタンクに。アクセルをゆっくり。若布を水に入れて)。振り出しに戻す(捜査を。話を)。 **▼目を戻す**(書類に。窓の外に)。 **▼よりを戻す**(昔の妻と。別れた亭主と)。掘った穴を埋め戻す。出かかった言葉を喉の奥に押し戻す。買い戻す(売った商品を。人手に渡った土地を)。 **▼差し戻す**(申請書を。法案を委員会に)。 **▶現実に引き戻される**(一挙に。不承不承)。 **▼引き戻される**(元の生活に。体が荒々しく。眠りから)。き戻す(脱落者を。現実に。ぐいと。むりやり)。ビデオテープを巻き戻す。割り戻す(立て替えた分を。利用金額の一部を)。圧縮ファイルを解凍する。 # もどってくる【戻って来る】 **▼戻ってくる**(懐かしい日が。十年ぶりに。一足先に。船が島に。さっきの気分が。ほどなく部屋に。浄化された過去が辻井。ーメランのように投げたものが自分に=中野孝。風のようにふらっと石森。間もなく走るようにして=山本周)。家に戻ってくる(無事に。伝書鳩のようにきちっと=遠藤)。 **▼回帰**(故国への。従来型への)。鮭ざけが生まれた川に回帰する。 # もとどおり【元通り】 **元通り**に回復する。体がすっかり元通りになる。元通りの(体に戻る。生活に戻る)。白紙の状態に戻す。 **▼元に戻る**(意識が。生活が。乱流が。回り回って)。再び元の(位置に戻る。静寂に返る)。元の(面影を残す。形に戻る。関係に返る。状態に戻す。地点に戻る。古巣へ帰る。ボストに戻す。木阿弥みん。飼い主が現れる。暮らしが戻ってくる。静けさを取り戻す。職場に復帰する。店を復活させる)。椅子を元の位置に戻す。会話を元の軌道に乗せる。依然として元の場所に踏みとどまる。文章を元のままにする。来た道を元へ引き返す。問題の出発点に戻る。いつもの(習慣に戻る。日常に戻る)。一つの単位に還元される。 **▼還元する**(白紙状態に。一つの表現に。利益を社会に。価値を労働時間に)。 **▼直る**(機嫌が。胸のつかえが)。話が白紙に戻る。復元する(古音を。自然環境を。埴輪加にを。壁画を)。復する(常態に。食欲が元に。生活が旧に。元の位置に。元の家格に)。 **▼白紙に戻す**(計画を。契約を。話を)。元に戻す(軌道を。立った腹を。外れた関節を。話を。ブレーカーを。話題を)。何食わぬ顔で元に戻しておく。 # もどらない【戻らない】 **▼戻らない**(容易には元に。二度と)。 **▼出かけたきり戻らない**(朝。一人で)。今日に至るまで戻っていない。今さら元に戻すわけにもいかない。 **▼返ってこない**(色よい返事が。呼べど叫べど)。もう決して取り返すことのできない確実な喪失感"井上靖。今さらすでに出た言葉を取り返すことはできない森嶋。元の機能を取り戻せない。覆水盆に返らず。覆水は盆に返らない=高千穂。戻ってくる気配はない。再び戻ってくることはなかった。進化は逆戻りができない=日高。 ****▼戻れそうもない**(永久に。しばらく)。生きて戻れない。 # もどる【戻る】 **▼戻る**(顔に明るさが。顔に笑みが。顔に生色が。顔に血の気が。記憶が。声に張りが。心に余裕が。平穏な生活が。目に光が。呼吸が平常に。自分の部屋に。当時の気分に。土地の言葉に。走って自宅に。はっと現実に。一足先に。ふと真顔に。平静な声に。町が静謐みかに。脈が正常に。昔の商売に。大手を振って。声に落ち着きが。頬にうっすらと赤みが。いったん故郷に。会社から自宅にまっすぐに。徐々にいつもの明るさに。そそくさと自席に。そそくさと定位置に。針がゼロの位置に。ひとまずホテルに。普段のペースに。古来のチームに。まともな顔つきに。湖を一巡した船が桟橋に。やおら仕事の話に。忘れ物を取りに。来た時と同じ経路で。モノクロームの部屋に色彩が落合。それはさておき本題に=和久)。戻る日を待ちかねる。戻るか先に進むか途方に暮れる。家に戻る(機嫌よく。真っ直ぐ)。 **▼仕事に戻る**(前の)。 **▼喰場に戻る**(古果の。かつかつ十二時に)。 **▼生活に戻る**(平静な。二人きりの。普段の)。 **▼生気が戻る**(顔に。目に)。 **▼席に戻る**(最前の。何気ない足取りで)。道を戻る(今来た。先刻歩いてきた)。若い時分に戻ったよう。 **▼戻っていく**(気ぜわしそうに。いずれ遠からずもう一度)。 **▼後戻りする**(景気が。病状が。道路を)。目をつぶっていても戻れる。馬首をめぐらす。とにかく分かる所まで戻ってみるしかない。逃げ戻る(自分の部屋に。ほうほうの体で)。真冬に舞い戻ったような寒い日『高樹。 **▼舞い戻る**(家に。故郷に。店に)。 **▼戻り**(寒の。梅雨の)。戻りが(遅い。早い)。戻りの便を利用する。 ****▼還流する**(資金が。人の波が)。 **▼ターンする**(折り返し点を。十字路を)。跳ね返ってくる(軽蔑が。冷たい言葉が。音が壁に当たって)。復縁を迫る。復職する(元の職場に。病気が全快し)。職場が正常に復する。車をUターンさせる。道をUターンする。問題が振り出しに戻る。振りだしに戻って新しく出発し直す。石森。 # もりかえす【盛り返す】 **▼盛り返す**(寒風が勢いを。努力を。俄況を。力を。人気を。不入りを。劣勢を。一時的に)。 # よびもどす【呼び戻す】 **▼呼び戻す**(過去の記憶を。死者の霊を。足の遠のいた客を)。 **▼呼び戻される**(現実に。大学を卒業して故郷に=篠田)。 **▼召還する**(大使を。任国から本国に)。出た者を呼び返す。 <1101> # 貰う・得る-362 # 362 # 貰う・得る # あぶくぜに【あぶく銭】 **あぶく銭**が入る。あぶく銭を湯水のように使う=坂口。労せずに金を得る。悪銭身につかず。 # いっせきにちょう【一石二鳥】 **趣味と実益**を兼ね備えてまさに一石二鳥。一石二鳥の(アイデア。効果がある。名条)。一挙両得を狙う。実益と快楽を一挙に両得する。趣味と実益を兼ねた道楽。 # うけとる【受け取る】 **▼受け取る**(賞品の包みを。宅配便を。優勝カップを。言葉を率直に。字句通りに。冗談を本気で。手刀を切って。ビールのジョッキを。フロントから鍵を。言うことをまともに。気持ちだけありがたく。忽然だんとして死去の報知を"久米。抱き止めるように本を=原田康)。 **▼受取人**(遺産の。小切手の。保険金の)。びた一文受け取らない。受け取りを拒否する。 **▼受け取れない**(そんな金は。言葉を額面通りに)。 **▼受領する**(下賜金を。給付金を)。 **▼接受する**(公文書を。親書を)。 **▼拝受する**(玉稿を。聖体を)。お手紙落学いたしました。 **▼領収する**(会費を。代金を。料金を)。受理する(願書を。舎品を。辞表を。訴状を。届け出を)。驚くほどすんなりと受理される。 # えられない【得られない】 **▼得られない**(協力が。満足な答えが。目撃証言が。了解が。大した収穫も。誠意ある回答が。不十分な結果しか)。なんら得るところがない。労多くして得るところの少ない作業村上脊。入手が困難。情報が満足に入手できない。入手にひと苦労する。材料が高価で手に入らない。 # える【得る】 **得る**(新しい知識を。一抹の慰めを。空想が翼を。心の安らぎを。再読の機会を。人心の理解を。生活の安定を。成功に力を。絶大な信用を。相当の名声を。高い評価を。地の利を。尽きぬ喜びを。破格の待遇を。一つの結論を。仏の加護を。無上の幸福を。安らかな心を。有力な心証を。承認を正式に。暗黙裡はんもの了解を。生きている実感を。確度の高い情報を。かろうじて事なきを。経済的に利益を。実験でデータを。柔剛そのよろしきを。動物の描写に妙を。耳寄りな聞き込みを。矢継ぎ早に三児を。知識を専門書から)。極めて得るところが大きい。得ている(指示が当を。話が要領を。判断が正鴿ごいを)。得られる(いいアドバイスが。観測から証拠が)。博する(江湖の賞賛を。世界的名声を)。報奨金を懐に入れる。 # おおもうけ【大儲け】 **大企業**が大儲誌はけを続ける。ギャンブルで大儲けする。九掛けなんてしみったれた儲もうけとわけが違う獅子。賭け事で荒稼ぎする。競馬で大穴を当てる。巨利を(得る。むさぼる)。大利を得る。軍需景気に便乗して一山当てる。ほろい(稼ぎ口。商売)。 **▶ぼろ儲けをする**(大企業が。土地転がしで)。儲け(空前の。ぼろい)。儲けが大きい。一援千金やんけんの(機会が転がっている。夢を持つ山師的気質の持ち主"西木)。一攫千金を夢見る。濡れ手で粟ぁゃの大儲け。濡れ手に栗をつかむようにボロ儲けする山崎。 # おかげ【お陰】 **勝てた**のもひとえに仲間のお陰。お陰を(いただく。こうむる)。 **▼賜物**(天の与えた。努力の。平和の。練習してきた。労働の。ひとえに諸氏の協力の。真面目で誠実に生きてきた小林信)。 # かくとく【獲得】 **▼獲得する**(新しい市場を。生きる知恵を。自由を。信者を。読者を。多くのファンを。チャンピオンの座を。臨機応変の能力を。永遠に幸福な生活を藤枝。組織内における大きな発言力を横山)。躍起となって生徒の大量獲得を急ぐ井伏。 # かせぐ【稼ぐ】 **▼稼ぐ**(勝ち星を。距離を。食い扶持を。原稿料を。小遣いを。視聴率を。生活費を。点数を。汗水垂らして。一円でも多く。がっぽりと。しこたま。身を粉にして。できるだけ時間を。稼げるうち稼げるだけ。体を売って身銭を獲合。坐ずゃる暇もないほど=小島)。稼ぐに追いつく貧乏なし=北原。金を稼ぐ(非合法な手段で。身すぎ世すぎのために=中野孝)。今の稼ぎでは食えない。一月分の売り上げを三日間で稼ぎ出す=ねじめ。稼ぎまくる(がんがん。夜昼間わず)。 # かちとる【勝ち取る】 **▼勝ち取る**(栄冠を。幸福を。勝利を。白星を。タイトルを。ベースアップを。目覚ましい成果を)。やっと無罪を勝ち取れる=和久。闘い取る(解放を。国家旅力を。政治支配を。独立を。平和を。要求を。新しい社会秩序を)。民主化を自分たちの手で闘いとる=五木。 # かねづる【金蔓】 **有力な交愛**。金蔓を(つかむ。見つける)。金の卵を産む鷄城山。金の生る木。 # かねもうけ【金儲け】 **濡れ手**で栗ぁぁの金儲け。金儲け以外に関心がない。金儲けが(うまい。上手。達者)。金儲けに(忙しい。いそしむ。縁がない。汲々きゅうとする。専念する。耽溺れする)。金儲けの(才がある。好きな人物)。いい儲け口がある。儲け口を確保する。利殖に励む。利殖活をもちかける。マネーゲームがエスカレートする。マネーゲームに(浮かれる。狂奔する)。 # きゅうりょう【給料】 **給料**から天引きする。給料の(増減に一喜一憂する。大半をつぎこむ)。給料を(計画的に使う。人並みにもらう。満足にもらえない)。奉公人に給金を払う北原。給与が伸び悩む。給与を(現金で支払う。銀行振り込みにする。物価にスライドさせる)。高給で釣る。サラリーを(稼ぐ。もらう)。定期的に昇給する。人件費が(高くつく。馬鹿にならない)。労働の強度の増大に見合うだけの賃金の引き上げ=服部。手当を支給する。日給で働く。日給を払 # も <1102> # も う。日当を(稼ぐ。払う。もらう)。扶持ふちに離れた浪人。扶持をもらう。俸給をもらう。俸禄の好餌に釣られる。役料を(いただく。賜わる)。有給の(インターン。休暇。ボランティア)。労賃が(上昇する。低下する)。労賃を支払う。禄を(いただく。賜わる)。月給が(上がる。低い)。月給をもらう。労働に見合う賃金。賃金が(それほど上がらない。物価上昇で目減りする)。賃金を(支払う。前借に及ぶ。日割りで計算する)。賃金格差が広がる。年功序列的な賃金体系。 # げんこうりょう【原稿料】 **原稿料**を(催促する。支払う。もらう)。稿料を(稼ぐ。支払う。もらう)。 # ごりやく【御利益】 **あらたか**な御利益がある。御利益にあずかる。御利益を受ける。金の御利益を知りすきている=武者小路。霊験あらたかな(観音様。神社。古いお宮やお寺=鳥尾)。 # さずかる【授かる】 **▼授かる**(子玉を。才能を。初めての子を。非凡な能力を。山の神様から獲物を旅合)。二人の子供をもうける。観音様の申し子。 # じつり【実利】 **実利**を(重んじる。目的とする)。名誉より実利をとる。花より団子。有意義な実利的効果。実利的に考える。 # しゅうえき【収益】 **収益**を期待する。収益性を(重視する。高める)。収益力を(強化する。高める)。純益が増える。純益をあげる。 # しゅうにゅう【収入】 **収入**が出費を上回る。忙しい割に収入が少ない。まずまずの収入がある。不意の収入で潤う。収入と支出が均衡する。収入にふさわしい生活。一定の収人に達する。辛うじて収入を維持する。家作の上がりで暮らす。一日の上がりの一割を上納金としておさめる=隆。日銭が入る。日銭を(得る。稼ぐ)。所得が内需に向かう。所得に応じて負担する。所得を貯蓄に回す。実入りが(多い。少ない)。それなりの実入りのある職=宮部。実入りのいい(仕事。商売)。 # しゅちゅう【手中】 **▼手中に集める**(財力を。武力を)。 **▼手中に収める**(獲物を。金を。主人公の座を。勝利を。天下を)。賞を手中にする。網にかかった魚も同然阿佐田。将軍職を掌中に握る。天下を掌中に収める。政治の実権を掌中に帰する"山岡。強大な権力を掌中にする。 # しり【私利】 **私利**にとらわれる。私利をむさぼる。私利私欲で行動する。私利私欲に(駆られる。走る。よる売名行為)。私曲をむさぼる。私腹を肥やす。利己一点張りになる。他人を利用する。他人びとの(懐を当てにする。ふんどしで相撲をとる。ふんどしをあてにする)。 # せびる **せびる**(金を。小遣いを。酒を。政治献金を。飲み代を)。 **▼せびり取る**(金を。小遣いを)。 **▼無心する**(金を。揉もみ手をしながら)。無心に行く。無心の手紙を書く。 # そんとくぬき【損得抜き】 **利害**を離れて考える。一身の利害を度外視して行動する。損得抜きで付き合う。損得勘定を考えずに突っ走る。 # てにいれる【手に入れる】 **▼手に入れる**(家を。切符を。巨万の富を。権力を。幸福を。重要な情報を。証拠を。大金を。土地を。特権を。武器を。苦労して。安く。穏やかな暮らしを)。ぜひとも手に入れたい。収める(この手に。我が手に)。懐に転がり込む。お金がこっそりと懐に入る。 **▼射落とす**(金的を。ハートを。社長のボストを)。 **▼射止める**(委員長の座を。金的を。金星を。本命を)。せしめる(金を、小遣いを。見郷金を)。 **▼ものにする**(女を。美人を。娘を)。支配権をわがものとする。軍資金をわがものにする。勝ち得る(栄冠を。信頼を。成功を。原敬を。名誉を)。 **▼取得する**(学位を。権利を。単位を。土地を。博士号を。免許を。ライセンスを)。 **▼手に入る**(切符が。資料が。宅地が。武器が。本物が。未知の情報が。偶然に。楽に。ただで。たやすく。難なく。安く)。入手が叶う。情報を早く正確に入手する。入手先を(洗う。聞き出す)。 # とく【得】 **得**こそすれ損はない。得な(役回り。性分と生まれつく)。早起きは三文の得。歩がいい。損して得取れ。うまみのある(仕事。取引)。率のいいバイト。割のいい(アルバイト。仕事。商売。取引)。 # とくてん【得点】 **だめ押し**の得点。 **▶得点する**(小刻みに。大量に。着実に)。圧倒的な高得点で選出される高橋源。押し出しの一点。シュートを決める。なかなか点が入らない。 # にゅうしょう【入賞】 **入賞**を果たす。 **▼入賞する**(出品作が。佳作に。競技会で。コンテストで。特選で。次々に脱落していくマシーンを尻目に三位に=大藪)。必ずしも入賞するとは限らない。賞を獲得する。県大会で上位入賞する。一等賞を(取る。もらう)。メダルに(挑む。こだわる。手が届かない)。メダルを(獲得する。手にする)。 # ほうしゅう【報酬】 **報酬**が(上がる。出る。減る)。巨額な報酬はのどから手が出るほど魅力的"塩野。報酬を受け取る。払う)。高額な報酬を要求する。きつい労働と引き換えに報酬を手にする"内橋。対価として法外な額。商品に正当な対価を払う。ギャラの支払いが滞る。ギャラを(支払う。はずむ。もらう)。 # ぼうり【暴利】 **とんでもない暴利**。暴利を巻き上げる。業九層倍。ぼられる(金を。料金を。観光地で。たちの悪いバーで)。 # ボーナス **ボーナス**(夏の。年末の)。ボーナスが出る。ボーナスの査定に一喜一憂する。ボーナスを(支給する。本代に向ける。もらう。預金に回す。借金の返済に当てる)。社員にボーナスを払う。賞与を(支給する。もらう)。一時金が出る。一時金を(受給する。もらう)。 # むさぼる【貪る】 **むさぼる**(安逸な生を。一日の享楽 <1103> # 貰う・得る-362 を。快い眠りを。性的な刺激を。太平の夢を。しなやかな肉体を。ひたすらに甘い味を)。幸せな惰眠をむさぼり続ける若竹。新聞をむさぼるように読む。握り飯をむさぼるように食う。 # めぐみ【恵み】 **天と地**の恵みに感謝する。山の恵みに寄りかかる。恵みの時が到来する=熊熊谷。恵みを天に祈る。季節の恵みを味わう。自然が豊かな恵みを与える。先人の遺沢に浴する。思沢に浴する。高度経済成長の思沢に与る=高井。神の恩寵。恵沢(祖先の。文明の)。恵沢に浴する。天恵に(あやかる。浴する)。天恵の慈雨。余沢にあずかる。 # もうかる【儲かる】 **▼儲かる**(面白いように。がっぽりと。たんまり。びっくりするほど)。風が吹けば桶屋饯けが儲もうかる式にイリュージョンをつないでいく=宮本輝。高収益が見込める。低収益に甘んじる。低収益を余儀なくされる。 # もうけ【儲け】 **棚ぼた式**の儲け。儲けが(案外少ない。じり貧になる。半減する)。少し儲けがあるとばっぱっと派手にお金を使ってしまう。灰谷。儲けの(上前をはねる。皮算用をする)。 # もうける【儲ける】 **▼儲ける**(大金を。労せずに。あくどく。がっぽりと。為差益で。しこたま。たんまり。不動産の売買で金を。めちゃくちゃに)。あくどい儲け方をする。 **▼一儲けする**(株で。土地を転がして高橋源)。うまい言葉で一儲けを誘う。 **▼一山当てる**(株で、競馬で)。 **▼儲け物**(命があるだけ。思いがけぬ。合格すれば。望外の。半分残っただけでも)。いい拾い物をしたと思い込む。思わぬ拾い物をする。 # もらう【貰う】 **▼もらう**(餌を。休暇を。薬を。勲章を。合格点を。小遣いを。サインを。酒を。仕事を。写真を。奨学金を。賞品を。手紙を。電話を。ビールを。暇を。返事を。法外の謝礼を。褒美の品を。嫁を。茶を一服。明日への勇気を。会社から給料を。業者から金品を。久しぶりに休みを。病院から連絡を。山のようなブリントを。支度金をたっぷり。まったく異常なしというお墨付きを=宮部)。もらい手が見つかる。もらい手がいない(子犬の。子猫の)。もらい手を捜す。もらい受ける(お嬢さんを。装具一式を。ネクタイを谷川。礼金をたっぷりと池波)。押しいただく(金包みを。十字架を。額に。うやうやしく)。お褒めの言葉を賜わる。 **▼拝領する**(刀を。杯を。屋敷を。主君から。主人から)。 **▼食はむ**(高給を。高禄を。扶持ふちを。俸禄を。禄を)。朝廷の意向を奉戴する。申し受ける(寄付を。実費を。別途送料を)。頂戴いぅする(おこぼれを。お流れを。褒美を。ありがたく。遠慮なく。お褒めの言葉を。成功報酬をたっぷりと)。金をもらった見返りに国会で質問する。事業受注の見返りに賄賂を渡す。見返りを求める。期待して献金する)。 **▼もらい下げる**(国から土地を。会社から不用品を。警察から身柄を。補導された生徒を)。もらい下げに(行く。出向く)。もらい下げを受ける。お預けをくった犬のようにいつもでももらえない萩原棄。色よい返事を貰えない平野。慌てる乞食は貰いが少ない=北。 ****▼もらいそこねる**(切符を。賞品を。駄賃を。土産の品を。無料券を)。分け前が一文も入らない。 # よとく【余得】 **余得**が(多い。転がり込む)。余得がある(意外な。思わぬ)。余得にあずかる。余得の多い商売。袖の下の役得がある。役得のある仕事。思いがけぬ余禄にあずかる。余禄のある仕事。 # りえき【利益】 **自分の小さい利益**にかじりつく。利益は高が知れている。利益を(公平に分配する。最大限に追求する)。円高差益で利益を出す。確実に利益を生む。共同の利益を認め合う。国の利益を最優先する。効率よく利益を上げる。国民の利益を代表する議会。自分の利益を度外視する。組織に利益をもたらす。溜め込んだ利益を吐き出す。利に(聡きとい商人。走って暮らす)。日々目前の利を争う。貿易上の利を得る。営利を目的にする。海老えびで鯛たいを釣る。漁夫の利を(得る。占める)。職務に付随する権益。権益擁護に走る。受益者が納める負担金。受益者に負担を求める。小利に目がくらむ。小利を貪って大利を失う。マージンの多い商売。利ざやを(稼ぐ。取る)。利潤が見込める。わずかな利潤を広く薄く分配する。禄を利する。利得しか念頭にない。利得に目が利く。多かれ少なかれ何かしら利得を得る。利用価値が(ある。大きい。なくなる)。薄利で商売する。利が薄い。商品を薄利多売する。マージンの少ない商売。値引きをすれば儲もうけが減る。たいした儲けにならない。 # りがい【利害】 **利害**が複雑に絡み合う。二つの利害が衝突する。 **▼利害が一致する**(互いの。両者の)。利害で密接に結ばれる。利害に(よって離合集散する政治的党派。関しては商人以上の狡猾に、うさ=黒墨石)。利害の対立が生じる。損得の利害をわきまえる。利害関係が正面衝突する。利害関係に引きずられる。利害得失のバランスを計算する=五木。 # りけん【利権】 **公共事業**にからむ利権。利権でつながった集団。利権に批判的な人間。利権を(手中にする。めぐって競合する)。既得権を(侵す。主張する。守る。擁護する)。既得権益を失う。 # りょうしゅうしょ【領収書】 **領収書**をもらう。領収証にサインする。受け取りにサインする。受け取りをもらう。レシートを(受け取る。もらう)。 # わけまえ【分け前】 **分け前**にあずかる。分け前の(目減りを防ぐ。ことで仲間割れをする)。分け前をたんまりいただく。利益の分け前を受ける。取り分を(期待する。手にする)。割り前をもらう。配当を(据え置く。手にする)。 **▼配当する**(株主に。投資者に)。株の配当金。恩賞にあずかる。いただく(受賞した旨の連絡を)。 <1104> # も **いくえにも**【幾重にも】幾重にも(お詫びする。花を重ねる)。丘陵が幾重にも連なる。ぐるりを幾重にも取り巻く。仲介業者を幾重にも通じる。目の下が幾重にもたるむ三浦湾。十重二十重に監視される。屋敷の周りを十重二十重だえはに取り囲む"火坂。十重二十重の人の山。 **いしがき**【石垣】石垣(見上げるような高い=阿部。両翼を張った城壁のような=横光)。石垣が鼠ゆずの恰好跡っな巣と化す。吉村。弓なりに高い石垣が築かれる=島尾。石垣で周囲を積み固める=佐藤系。海水が石垣の荒い肌をくすぐるように嘗めては引き返す武田炎。波が石垣を打つ。苔こぃむす石垣を這って枯れ残った小さな為った=泉鏡。城のように石垣を築く=中上。袋ぼしのようにするすると石垣を登る=福永。 **うずたかい**【堆い】うずたかい書類の山。こんもりとうずたかい塚。うずたかく(積まれた荷物。積もった瓦礫も。盛り上がる。吸い殻のたまった灰皿)。瓦の山がうずたかく積まれる。雑誌類がうずたかく積み上げてある。掘り上げられた土がうずたかく積み重なる。雪がうずたかく積もる。夥さびしい経巻の束が世俗の世界から遮断する壁のようにきちんと整頓されて札の周辺に堆く積み上げてある=井上靖。 **おりかさなる**【折り重なる】▼折り重なる(山と山が。幾重にも。十重二十重と。痛恨と怒りと希望が"高村慈。何千という将兵の死骸が!舟橋)。将棋倒しに折り重なって倒れる。海上に大小の汽船が折り重なって浮かぶ=石坂。折り重ねる(紙を。布を。服を。濾紙っしを)。 **かさなりあう**【重なり合う」 ▼重なり合う(点と線が。複雑に。雑然と。ぴったり。心象風景が現実と。悲鳴が反響して。而影が蹴らにげに幾つも=福永)。隙間なく重なりあう山のシルエットが闇に沈む三浦し。フィクションが現実とオーバーラップブする=柳田。 **かさねる**【重ねる】▼重ねる(新たな過ちを。幾度も失敗を。嘘に嘘を。改良に改良を。数々の苦労を。我慢に我慢を。着物に羽織を。自然に齢としを。借金に借金を。数日の旅路を。徹夜で協議を。何回も乾杯を。密かに精進を。平明な言葉を。過去を現在に。現在を過去に。塗装を何度も。あれこれ試行錯誤を。いたずらに日を。裏切りの上に裏切りを。窮屈で重苦しい時用を。狂喜に近い興奮を。何度かデートを。努力を人知れず。シラっとした顔で同じ質問を内田康。絢うように二本の指先を=里見)。罪の上にも罪を重ねる心地白洲。思案を重ねる(思案に。幾日も)。質問を重ねる(更に。幾つもの。同じ)。努力を重ねる(生真面目に。いろいろ)。重ねて尋ねる。更に言葉を重ねて言う。無理に無理を重ねてとった行動。論理の上に論理を重ねていく。▼重ね合わせる(若い日の自分の姿を。他人の不幸を自分の身の上に"阿川佐。登場人物を知っている誰かと"小川)。シャツにセーターを重ね着する。着物を何枚も重ねて着る。さらに一枚着重ねる。▼塗り重ねる(絵の具を。ペンキを)。 **こやま**【小山】▼小山(こんもり茂った。庭伝いにほんの一足上がればよいほどの宮尾。ぽつんと盛り上がった=高樹)。小山のような巨人隊。小山のように肥えた体三浦集。流氷が小山のように盛り上がっている三浦穹。 **さんせき**【山積】 ▼山積する(課題が。雑用が。仕事が。宿題が。前途に問題が。難題が。難問が。気にかかることが。未処理の事件が)。気にかかることが山積している。難題が山積みにされる。▼山積みにする(チップを。箱を)。 **だんきゅう**【段丘】逃亘讯认した段丘。段丘が平行に走る。地形が起伏に富み段丘が波のように畳なわっている森村。ぬっと胸を突きだしたような段丘を越える=本庄。沿岸に河岸段丘が発達する。 **つまれる**【積まれる】▼積まれる(野菜が山と。書類が山のように。荷物がうずたかく。累々たる石塊いしの山が=中局救)。雑然と積まれた書類。山と積まれた荷物。積まれてある(段ボール箱が山と。花し草が山のように)。日ごとに累積されていく。 **つみあげる**【積み上げる】▼積み上げる(無造作に。うずたかく。瓦を重ねて。小山のように。整然と。箱を高々と。本を数多く。いくつもの層を。現金の束をテーブルの上に。手当たり次第に。山のように荷物を"。 **つみかさなる**【積み重なる】積み重なる(重苦しい日が。緑が幾重にも。掘り上げられた土が。がらくたが雑然と。日を追うごとに疑問が堆らがく=貫井)。・集積する(意識が。回路を。生産手段を)。▼堆積する(過去が。諸事情が。土砂が。泥が)。累積する(赤字が。債務が。疲労が)。 **つみかさねる**【積み重ねる】積み重ねる(基礎実験を。本を。一歩一歩。こつこつと。山のように)。努力を積み重ねる(地道な。日々の)。性的な体験を積み重ねていく。短いシークエンスの積み重ね。実証の積み重ねが空疎。脱いだ服をつくねる。 **つむ**【積む】▼積む(学問の基礎を。巨額の金を。年の功を。雑多に。規則正しく。山ほど。割った木を井桁に。修行をみっちりと。薪を山のように=長塚)。積み上がる(在庫が。宿題が。書類が。本が)。箱を積み替える。 **つもりつもった**【積もり積もった】積もり積もった(怒りが爆発する。鬱屈を一挙に吹き払う。感情が一気に噴き出す。反感が噴出する)。つもりつもったご慣を一時に晴らす想い=武田爽。積もりに積もった恨みの数々。 **にじゅう**【二重】二重にくびれた顎。情報を二重に売り込む。顎が二重に見えるほど太る=高樹。方解石のようなものを通して見たかのようにぼんやり二重になって見える=堀。二重の(恥をさらす。保険をかける。輪を作る。基準を統一する)。二重三重に取り囲む。疲労した眼に灯の色が二重三重の輪に滲にじんで見える=円地。かえって二重手間になる。 **ねんねん**【年年】年々(数が増えていく。禿げあがってゆく頭。冬がつらくなる)。年々歳々(花相似たり歳々年々人同じからず。陽春には桜花に包まれる=太率)。年々歳々の果てもない日々。年ごとに(記憶が薄れていく。きれいになっていく)。歴年の(実績。推移。足跡)。 **のしかかる**【仰し掛かる】▼のしかかる(過去の重みが。重苦しい疲労が。精神的な重圧感が)。▼重くのしかかる(肩にずしりと。死という事実が心に)。のしかかってくる(夜が重たげに。頭の上から)。乗りかかる(肩口に。背中に)。 **むくむく** 空にむくむく雲が広がっていく。むくむくと(煙突から煙を出す。煙幕が盛り上がる。わだかまった根っこ)。心の中でむくむくと情念が育つ。噴煙がむくむくと立ち昇る。▼むくむくと頭をもたげる(不満が。欲望が)。不安がむくむくと(頭をもたげる。胸に広がる)。入道雲のむくむくした塊。見た眼にむくむくした山肌!島尾。 **もたせかける**【凭せ掛ける】▼体をもたせかける(椅子の背に。フェンスに)。▼もたせかける(上体を壁に。背中を扉に)。▼背をもたせかける(岩に。壁に。大樹の幹に。柱に)。頭を椅子の背にもたせる。寄せかける(体を。背を。体重を)。寄りかける(体を。背を)。 **もたれる**【凭れる】 ▼もたれる(椅子の背に。ソファ1に。力なく壁に。手すりに。橋の欄干に)。脇息いうにもたれて座る。柵にもたれてひと休みする。しなだれかかる(体に。膝に。胸に。酔うにつれて人目かまわず)。 **もりあがる**【盛り上がる】▼盛り上がる(むっくり土砂のように松本。積乱雲が地上から生えたように=阿人)。むっくりと盛り上がった肩。▼盛り上がっている(胸の筋肉が隆々と。浅間山がすぐ目の前に気味悪いくらい大きい感じでくっきりと=堀)。▼盛り上がってくる(涙が目の縁に。腹の底から元気が。高ぶりが体の奥から波のように“あさの)。土がむくむくと持ち上がる。ビールの泡が山をなしてあふれる。▼隆起する(島が。力こぶが。土地が。根元が)。 **もりあげる**【盛り上げる】▼盛り上げる(一段高く土を。気分を。座を。話の興趣を。雰囲気を。ムードを。山盛りに)。メシを山のようにこんもりと盛りあげる高見町。景気付けに一杯やる。景気をつける。▼高める(気勢を。雰囲気を)。 **もりつける**【盛り付ける】▼盛りつける(料理を皿に。魚を躍るように梅本)。ご飯を大盛りにする。一盛り合わせる(肉と野菜を。料理を)。料理を一人前すつ小皿に盛り分ける。▼盛る(ご飯を茶碗に。盛り塩を高く。皿にフルーツを)。よそう(ご飯を茶碗に。肉を皿に。味噌汁をお椀に)。 **よりかかる**【寄りかかる】▼寄りかかる(山の恵みに。ぐったりと壁に。ソファーの背もたれに)。寄りかかる支えを失いたくない。役所と業者のもたれ合い。もたれ合いの構図を明らかにする。助け合いともたれ合いは別物。▼もたれかかる(椅子の背に。壁に。脇息さにうに。肩にぐったり。よろよろと。相手の気持ちに)。 **れんが**【煉瓦】煉瓦を(積み上げる。焼く)。外壁に煉瓦を張る。レンガ造りの瀟洒しうな建物高橋克。こちんまりした煉瓦造りの建物=高田。古い煉瓦造りのアパートメント=船戸。ブロックを積み重ねる。古風な煉瓦塀やんがが刑務所のように広い敷地にめぐらされる高橋知。 <1105> # 約束する・誓う **いやく【違約】** 心ならずも違約する。違約の責任を問う。約束が空手形に(終わる。なる)。空手形を切る。空約束はらいに終わる。約束が空証文兴らんになる。 **うけあう【請け合う】** ▼請け合う(災難封じを。身元を。頼もしそうに。二つ返事で。胸を叩いて。賭けてもいいと。絶対に面白いと)。面白い映画であること請け合い。成功すること請け合いの計画。▼保する(安全を。権利を。財産を。自由を。信用を)。 **キャンセル** キャンセルになる(仕事が。約束が。予定が)。▼キャンセルする(先約を。ホテルを。予約を。泊まりの予定を)。キャンセル待ちの客。▼解約する(銀行口座を。契約を。預金を。中途で)。 **けいやく【契約】** 契約が(失効する。成立する。本決まりになる)。契約に(違反する。こぎつける。縛られる。付随して定める約談)。契約を(交わす。更新する。・更新する。白紙に戻す。結ぶ)。新規に契約する。契約した期間が終わる。契約更改を済ませる。正式な契約書を交わす。月きめで(貸す。新聞を購読する)。月ぎめの駐車場。特約を(つける。付加する。結ぶ)。 **げんち【言質】** 言質を(与える。取る)。相手に言質を取られない。下手な言質を取られる。言葉を質にとる。口頭で約束する。単なる口約束にすぎない。 **じょうやく【条約】** 条約が(空文化する。失効する。成立する。発効する)。条約に(加盟する。署至する。調印する)。国際社会の良識が条約に結実する。条約の(草案をまとめる。内容を検討する)。条約を(採択する。盾にとる。締結する。批准する。有利に結ぶ。一方的に破楽する)。条約調印に漕ぎつける。 **すっぽかす** すっぽかす(会社を。仕事を。授業を。デートを。約束を。会議を平気で)。責任感がきれいにすっぽかされる=石坂。 **ちかい【誓い】** ▼誓い(永遠の。固い。神への。平和の)。誓いに偽りはない。誓いの言葉。誓いを(新たにする。守る。破る)。▼誓いを立てる(厳粛な。密かな)。城下の盟屿。誓言を(反古良こにする。交わす。守る)。和平の誓紙。誓紙を(書く。交換する)。 **ちかう【誓う】** ▼誓う(永遠の愛を。会社に忠誠を。服従を。名誉にかけて。死生をともにすると)。心に響う(復讐しを。密かに。固く)。あの世までもと誓った男。二世にゃを誓った夫婦仲落語。誓って潔白。神に誓って答える。天地神明に習って嘘は申しません。固めの盃をくみ交わす。▼誓い合う(愛情を。偕老同穴かいうを。未来を。友情を。血判を押して結束を。互いに手を重ね)。厳粛な誓約を非道にも踏みにじる=服部。▼詈約する(合意を。非核を)。深約書に(サインする。判を押す)。宣誓の声が場内に響く。直撃する(神の前で。法廷で。胸に右手を当てて)。 **とりきめる【取り決める】** ▼取り決める(会場を。密約を。金銭の授受を。条件を。日取りを。約束を。枠組みを)。取り決めを交わす。細かな取り決めを果たす。▼締結する(協定を。契約を)。▼取り結ぶ(機嫌を。契約を。条約を。取引を)。 **ほしょう【保証】** 保証が焦げ付きになる。支払われるかどうかは保証の限りではない=高見浩。保証を(与える。受ける)。▼保証する(衣食住を。一日の裾を。学冏の自由を。生活を。身の安全を。百バーセント。安定した支配を)。鑑定書を付ける。保証書を手に取る。保証人になる。保証人を立てる。▼担保する(権利を。中立性を。文民統制を)。陳述を裏書きする証拠。▼裏書きする(噂。確信を。鑑定を。小切手に。評言を。事実で)。役所のお墨付き。本部長のお墨付きが出る。まったく異常なしというお墨付きをもらう宫部。華規折り紙つき(成績優秀の。当代随一の。身持ちの堅いことは井上ひ)。折り紙をつける。太鼓判を押す(大丈夫と。独り立ちできると)。 **やくそく【約束】** 守るにも及ばない戯れの約束=佐藤巻。約束が(違う。不履行になる。延び延びになる)。果たして約束が守られるかどうか。人に会う約束がある。約束に(信用を置く。背を向ける)。約束の(言葉を番っがえる。日が来る)。約束の時間に(遅れる。間に合う)。約束を(反古にごにする。忠実に履行する。破ったら承知しない。いまさら破るわけにいかない池波。盾に圧力をかける=高樹)。相手の約束を取りつける。祝言の約束を解消する。デートの約束をすっぽかす。なかなか約束を果たせない。お約束の展開。▼約束する(幸福な眠りを。全面支援を。平明な幸福を。礼の上乗せを。秘密裏に)。生まれながらに恵まれた人生を約束される=阿刀田。唾をつけておく。約束事に縛られる。アポイントを取る。女房に一札取られる。一札を入れる。誓いの一札を取る。確約する(応じる旨を。協力を)。協約を(締結する。結ぶ)。公約を(実行に移す。守る)。紳士協定を結ぶ。内約を(受ける。取り消す)。密約する(核持ち込みを。攻守同盟を)。密約を(交わす。結ぶ)。盟約を(締結する。結ぶ)。申し合わせに従う。申し合わせを守る。約定済みの品。決死の思いで約定する。▼約す(協力を。後日を。再会を)。約を(履む。守る)。契る(逢瀬結うを。偕老同穴跡からを。将来を。二世を。行く末を。来世を)。契りを結ぶ(一夜だけの。同盟の)。 **よやく【予約】** 予約が(かち合う。入っている。満足に取れない)。ずいぶん先まで予約で埋まる。予約の電話を入れる。帰りの飛行機の予約をする。じかにホテルに予約を入れる。予約する(席を。部屋を。ホテルを。店を。旅館を。レストランを。電話で)。予約名跡で名前を確認する=重松。 <1106> # や **いやく**【違約】心ならずも違約する。違約の責任を問う。約束が空手形に(終わる。なる)。空手形を切る 。空約束はらいに終わる。約束が空証文兴らんになる。 **うけあう**【請け合う】▼請け合う(災難封じを。身元を。頼もしそうに。二つ返事で。胸を叩いて。賭けてもいいと。絶対に面白いと)。面白い映画であること請け合い。成功すること請け合いの計画。▼保する(安全を。権利を。財産を。自由を。信用を)。 **キャンセル** キャンセルになる(仕事が。約束が。予定が)。▼キャンセルする(先約を。ホテルを。予約を。泊まりの予定を)。キャンセル待ちの客。▼解約する(銀行口座を。契約を。預金を。中途で)。 **けいやく**【契約】契約が(失効する。成立する。本決まりになる)。契約に(違反する。こぎつける。縛られる。付随して定める約談)。契約を(交わす。更新する。 ・更新する。白紙に戻す。結ぶ)。新規に契約する。契約した期間が終わる。契約更改を済ませる。正式な契約書を交わす。月きめで(貸す。新聞を購読する)。月ぎめの駐車場。特約を(つける。付加する。結ぶ)。 **げんち**【言質】言質を(与える。取る)。相手に言質を取られない。下手な言質を取られる。言葉を質にとる。口頭で約束する。単なる口約束にすぎない。 **じょうやく**【条約】条約が(空文化する。失効する。成立する。発効する)。条約に(加盟する。署至する。印する)。国際社会の良識が条約に結実する。条約の(草案をまとめる。内容を検討する)。条約を(採択する。盾にとる。締結する。批准する。有利に結ぶ。一方的に破楽する)。条約調印に漕ぎつける。 **すっぽかす** すっぽかす(会社を。仕事を。授業を。デートを。約束を。会議を平気で)。責任感がきれいにすっぽかされる=石坂。 **ちかい**【誓い】▼誓い(永遠の。固い。神への。平和の)。誓いに偽りはない。誓いの言葉。誓いを(新たにする。守る。破る)。▼誓いを立てる(厳粛な。密かな)。城下の盟屿。誓言を(反古良こにする。交わす。守る)。和平の誓紙。誓紙を(書く。交換する)。 **ちかう**【誓う】▼誓う(永遠の愛を。会社に忠誠を。服従を。名誉にかけて。死生をともにすると)。心に響う(復讐しを。密かに。固く)。あの世までもと誓った男。二世にゃを誓った夫婦仲落語。誓って潔白。神に誓って答える。天地神明に習って嘘は申しません。固めの盃をくみ交わす。▼誓い合う(愛情を。偕老同穴かいうを。未来を。友情を。血判を押して結束を。互いに手を重ね)。厳粛な誓約を非道にも踏みにじる=服部。▼詈約する(合意を。非核を)。深約書に(サインする。判を押す)。宣誓の声が場内に響く。直撃する(神の前で。法廷で。胸に右手を当てて)。 **とりきめる**【取り決める】▼取り決める(会場を。約を。金銭の授受を。条件を。日取りを。約束を。枠組みを)。取り決めを交わす。細かな取り決めを果たす。▼締結する(協定を。契約を)。▼取り結ぶ(機嫌を。契約を。条約を。取引を)。 **ほしょう**【保証】保証が焦げ付きになる。支払われるかどうかは保証の限りではない=高見浩。保証を(与える。受ける)。▼保証する(衣食住を。一日の裾を。学冏の自由を。生活を。身の安全を。百バーセント。安定した支配を)。鑑定書を付ける。保証書を手に取る。保証人になる。保証人を立てる。▼担保する(権利を。中立性を。文民統制を)。陳述を裏書きする証拠。▼裏書きする(噂。確信を。鑑定を。小切手に。評言を事実で)。役所のお墨付き。本部長のお墨付きが出る。まったく異常なしというお墨付きをもらう宫部。折り紙つき(成績優秀の。当代随一の。身持ちの堅いことは井上ひ)。折り紙をつける。太鼓判を押す(大丈夫と。独り立ちできると)。 **やくそく**【約束】守るにも及ばない戯れの約束=佐藤巻。約束が(違う。不履行になる。延び延びになる)。果たして約束が守られるかどうか。人に会う約束がある。約束に(信用を置く。背を向ける)。約束の(言葉を番っがえる。日が来る)。約束の時間に(遅れる。間に合う)。約束を(反古にごにする。忠実に履行する。破ったら承知しない。いまさら破るわけにいかない池波。盾に圧力をかける=高樹)。相手の約束を取りつける。祝言の約束を解消する。デートの約束をすっぽかす。なかなか約束を果たせない。お約束の展開。▼約束する(幸福な眠りを。全面支援を。平明な幸福を。礼の上乗せを。秘密裏に)。生まれながらに恵まれた人生を約束される=阿刀田。唾をつけておく。約束事に縛られる。アポイントを取る。女房に一札取られる。一札を入れる。誓いの一札を取る。確約する(応じる旨を。協力を)。協約を(締結する。結ぶ)。公約を(実行に移す。守る)。紳士協定を結ぶ。内約を(受ける。取り消す)。密約する(核持ち込みを。攻守同盟を)。密約を(交わす。結ぶ)。盟約を(締結する。結ぶ)。申し合わせに従う。申し合わせを守る。約定済みの品。決死の思いで約定する。▼約す(協力を。後日を。再会を)。約を(履む。守る)。契る(逢瀬結うを。偕老同穴跡からを。将来を。二世を。行く末を。来世を)。契りを結ぶ(一夜だけの。同盟の)。 **よやく**【予約】予約が(かち合う。入っている。満足に取れない)。ずいぶん先まで予約で埋まる。予約の電話を入れる。帰りの飛行機の予約をする。じかにホテルに予約を入れる。予約する(席を。部屋を。ホテルを。店を。旅館を。レストランを。電話で)。予約名跡で名前を確認する=重松。 <1107> # 役立つ・役に立たない **いぬじに**【犬死に】失敗すれば犬死にになる。みすみす犬死にをする。無駄な死。無駄に命を捨てる。 **かいがない**【甲斐がない】「甲斐がない(悔やんでも。詮索しても。今日まで生きた。せっかく早く上京した)。甲斐なき命を長らえる。手術の甲斐もなく亡くなる。報われることなく追われてゆく敗北者。労多くして(益少なし。功少なし)。 **かち**【価値】▼価値(普遍的な。比類なき。労働が生みだす。国家に超越する=加藤)。▼価値がある(一読の。一考の。調べてみる。やってみる。一見するだけの)。価値に相応する平均価格。試みる価値のある賭け=豊田。商品の価値はそれらの生産に用いられる労働時間に正比例する=服部。一元的な価値を引っくり返す。史的価値を持つ古典。埋めぐさ程度のニュース価値はある=西木。わが身に箔がつく。金箔つきの婿。威厳を保つことが医者の箔はくと考える=黒岩。名に箔をつける。箔をつける一扉がとの洋行徳田。 **かちがない**【価値がない】惜しむに足るほどの価値はない=佐藤春。▼価値もない(社会的に何の。何ほどの。まさに荒唐無稽、子どもの寝言ほどの笹沢)。値しない(教育者の名に。努力を払うに。見るに。読むに。一瞥ぐぅにも。肌をさした一匹の蚤のみほどの記憶にも"獅子)。驚くに値しない事実。河原の石のごとき存在"半村。三文の値打ちもないように自分の身を軽く取り扱う水井荷。二束三文の値打ち。値打ちはゼロ。特別な値打ちは何もない。▼値打ちもない(一文の。一順の。たいした)。見るべき(政策がない。文物がない)。 **きく**【利く】利く(小才が。小回りが。目先が。目端が。融通が。夜目が)。よく利く扉で嗅ぎまわる。疲れ目に効く目薬。▼効く(脅しが。薬が。演出がうまく。大学教授の肩書が。ほどよくクーラーが)。顔が利く(あちこちに。金融筋に。警察に)。冷房が効いている。ボディブローのように後からじわっと効いてくる。隠し味に塩を効かせる。 **きちょう**【貴重】▼貴重(世界に例を見ないほど。またとないほど)。貴重な(戦力を失う。知識源としてもてはやされる。データを揃える)。情報提供者として貴重な存在。コツコツ積み上げてきた貴重な過去"鳥田。何物にも替えがたい貴重なもの"松本。何ヘクタールのお花畠の花からやっと一滴の香水を抽出したというような貴重なひと言"田辺。貴重な時間を(割く。つぶしたくない)。貴重品のような扱いを受けながら暮らす=椎名战。貴重品を書留で送る。得がたい(逸材。機会。経験。才能)。 **こうか**【効果】有意義な実利的効果。効果がすぐに現れる。じわっと効果が出てくる。相当な効果が期待できる。とっぴな効果が笑いをさそう。▼効果がある(一石二鳥の。言葉の節々に鋭いメスで腐った肉を抉えぐり取るような谷崎)。効果に(期待する。疑問がある)。効果は(醜面が心。満点)。こけおどしの効果は十分にある=篠田。効果を計算に入れる。試みが効果を収める。支出と効果を比較する。▼効果を上げる(目覚ましい。予想外の)。▼効果を発揮する(仕組みが。絶大な。期待以上の。最大限の。測り知れない)。効果的な学習法。最も効果的なタイミングを見計らう。効果的に(使う。伝わる)。さまざまな効用がある。効用を謳う。修法の効を吹聴いいちする。特効薬の開発に全力をあげる。薬効が現れる。薬効を宣伝する。霊験あらたかな(お寺。宝物)。効験あらたかな(薬。妙薬)。あらたかな御利益に。効き目が(現れる。著しい)。薬の効き目が早い。▼効き目がある(相当な。案外)。効き目はあらたか。相乗効果を(あげる。狙う。発揮する)。合併による相乗効果。相乗効果が期待できる。即効性が高い。即効性に乏しい。即効性の毒物、物を言う(金が。経験が。実績が。政治力が。数の上の優勢が井上靖。若い体力が最後に=福水)。効果がない。効果が期待渉になる。効果が上がらない(さっぱり。十分)。効果は限定的。マイナスの効果をもたらす。薬がよく効かない。▼効き目がない(一向。さっぱり。とんと。全く。どんなまじないも薬も池澤)。見るべき効用がない。思うように効を奏しない。豆腐に鉄かけ。糠ぬかに釘を打つような空しい努力の連続氷室。融資が焼け石に水となる。 **こうけん**【貢献】▼貢献する(安全性向上に。経営改善に。社会に。勝利に。人類の福祉に。日本の発展に。人助けに。平和に)。▼寄与する(解決に。国際交流に。文明に。町の振興に。地球温暖化防止に)。 **じこう**【実効】実効ある(措置。対策。方策)。島を実効支配する。実効支配を勝ち取る。実効性が(上がる。弱まる)。実効性に(乏しい。疑問が付きまとう)。実効性のある(処方箋。対策)。効力が十全に発揮される。法的に効力が発する。▼発効する(協定が。協約が。条約が。法律が)。 **しろもの**【代物】▼代物(愚にもつかぬ。退屈きわまる。とかくの心のある。何の役にも立たない。箸にも棒にもかからない。場所ふさぎになるばかりの)。インチキまがいの代物を売りつける=井上ひ。 **しんか**【真価】真価が問われる。真価を(占う試金石。発揮する)。真骨頂を(示す。発揮する。見せる)。真面目しいを(伝える。発揮する)。 **じんざい**【人材】人材(有能な。求心力のある。研究を担う。在野の。優れた。頼もしい。交渉に欠くことのできない。実戦に役に立つ。世の中が求めている)。人材が育つ。人材が集まる(優秀な。やる気のある)。人材を惜しみなく提供する。新しい人材を求める。これと思う人材を抜擢で記する。最も適した人材を登用する。優秀な人材を投入する。▼材(有為の。有用の)。 **せいかがない**【成果がない】▼成果がない(はかばかしい。見るべき)。▼上がらない(これという成果が。万分の一の成果しか芝木)。成果を上げられず苦戦する。実りが(薄い。少ない)。 **そうこう**【奏効】▼奏効する(施策が。思うとおりに)。▼奏功する(作晩が。戦術が)。▼功を奏する(駆け引きが。先制攻撃が。はからずも。水際立って)。▼効を奏する(降旋協んが。懐柔策が。呪文が。声援が)。 **たからもの**【宝物】お家代々の宝物。赤ん坊を宝物を守るようにしっかりと膝の上に載せる=阿刀田。掌中の珠たき。宝物のように(大事にする。大切にする)。家宝(一子相伝の。先祖伝来の。門外不出の)。金銀珠玉をちりばめる。蔵にうなるほど金銀が眠っている"火坂。金銀五彩の織物。金銀を人々に分かち与える。国宝的な存在。国宝に指定する。財貨を蓄える。財宝を惜しげもなくばらまく水井路。珍器財宝を所持する。▼至宝(オペラ界の。画壇の。人類の)。大学の自治は何物にも換えがたい大切な宝美濃部。心中に万の宝を持つ大野学。秘宝を特別公開する。 **だめになる**【駄目になる】だめになる(目に見えて。商売がばったりと)。このままではこの国は駄目になる=伊坂。▼いかれる(頭が。エンジンが。キャブレターが)。わやになる。幸せを虫のくうように知らぬまにだいなしにしてしま?中。▼台なしにする (戦争が一生を。せっかくの話を)。無関心が世界を台無しにする=伊坂。▼台なしになる(苦心が。政治的生命が。せっかくのパーティーが)。干した蒲団が夕立で台無しになる=伊坂。 **ねうち**【値打ち】値打ちが下がる。▼値打ちがある(一見の。書く。千金の)。かなり値打ちのある品物。死ぬまで考える値打ちのある問題!白井。値打ちを(十分に知っている。半分以下に引き下げる)。世の中の人間の多くはうわべだけで人の値打ちをはかってしまう池波。 **のうがき**【能書き】▼能書き(薬の。化粧品の)。能書きを(垂れる。並べる)。気除ききな能書きを言う向田。効能書きを(垂れる。並べる)。 **ふじゆう**【不自由】▼不自由(家族と離れて暮らす。体全体が泥の中に押しこめられているように=高橋和)。不自由な(足を引きずる。考え方。暮らし。世の中。状態を我慢する)。▼不自由になる(立ち居が。右半身が。肉体的に)。体の不自由を心で補う。体の自由が利かない。両足の自由が利かなくなる。不自由がちな生活に耐える。雪を食った高下駄を穿いて歩くような不自由さ=川端。籠の鳥同様逃げられないような気になる=綱淵。籠の鳥の身になる。 **ふべん**【不便】交通が不便。目先だけの判断で不便と決めつける。不便な(思いをする。制約をものともしない)。携帯には不便な代物。わざわざ不便な田舎へ引っ込む"夏目。帰省の足が不便になる。外国生活の不便はかねて覚悟して行く島崎。日常の出し入れに不便するほどぎっしり物が並ぶ戸棚"河野。足の便が悪い。利便性が低下する。 **べんり**【便利】▼便利(携帯に。持ち運びに。手軽で。万事につけ)。便利な(手段。生活になじむ。乗り物)。この上ない便利な口実。前より便利になる。便利の陰に潜む危うさ。足の便がよい。利便性とリスクは背中合わせ。利便性を高める。交通利便の地。観光に至便のホテル。通勤に至便の住宅地。文明の利器。冬に重宝するコート。男にとって重宝な女。言葉は重宝なかくれみの永井路。重宝にできた器具。 **ほうこ**【宝庫】▼宝庫(記憶の。資源の。神秘の。知識の一の)。死んだ夫の潜斎を神聖な記憶の宝庫として大切にまもる=石川。魅力的な玉の山。宝の山を(みずから食い潰っぷす。見るような気分)。 **ほねぬき**【骨抜き】骨抜きにされてぐにゃぐにゃになる。改革が骨抜きになる。内容を骨抜きにする。形骸化する(組織が。民主主義が。ルールが)。骨なしで頼りにならない。 **むえき**【無益】無益な(晩をする。殺生を重ねる。執着に一日一日を見送る。人殺しはしたくない)。無益にあたら将兵を殺す。取り越し苦労は益がない。何の益にもならない。害あって益なし。月夜に提灯訪い。百害あって一利なし。不毛な(争い。対立。努力。論争。やり取りを打ち切る)。不毛の日々を送る。 **むこう**【無効】当選を無効とする。投票が無効となる。切符が無効になる。法律上の効力がない。失効する(契約が。条約が。免許が。期限切れで)。 **むだ**【無駄】▼無駄(期待するだけ。何を言っても。いつまで待っても)。時間の無駄以外の何物でもない"横山。無駄が(多い。省ける)。無駄な(汗をかく。議論をやめる。試みに終わる。失敗を防ぐ。出費をなくす。損害を省く。操作が多すぎる。部分を切り捨てる。流血を回避する)。勝つべくもない無駄な争い。無駄に(年をとる。力を使い果たす。使う時間はない)。日々が無駄に過ぎて行く。労力が無駄に費やされる。今日もまた無駄に費やしたという平凡な悔恨!佐藤脊。一無駄にできない(一日も。一秒たりとも)。無駄の洗い出しを進める。無駄といってこれほどひどい無駄はない灭。終わってしまったことをとやかく言ってもはじまらない"立原。一銭の足しにもならない。得にもならない(一文の。一銭の)。可惜ふた理詰めの千言万語も空に消える=二葉亭。不経済な(買い物。生活)。燃料を不経済に使う。いたずらな感慨にふける。若いエネルギーのいたずらな発散。いたずらに(事が長引くばかり。混乱を招くだけ。堂々めぐりをする)。 <1108> # や にまもる=石川。魅力的な玉の山。宝の山を(みずから食い潰っぷす。見るような気分)。 **ほねぬき【骨抜き】** 骨抜きにされてぐにゃぐにゃになる。改革が骨抜きになる。内容を骨抜きにする。形骸化する(組織が。民主主義が。ルールが)。骨なしで頼りにならない。 **むえき【無益】** 無益な(晩をする。殺生を重ねる。執着に一日一日を見送る。人殺しはしたくない)。無益にあたら将兵を殺す。取り越し苦労は益がない。何の益にもならない。害あって益なし。月夜に提灯訪い。百害あって一利なし。不毛な(争い。対立。努力。論争。やり取りを打ち切る)。不毛の日々を送る。 **むこう【無効】** 当選を無効とする。投票が無効となる。切符が無効になる。法律上の効力がない。失効する(契約が。条約が。免許が。期限切れで)。 **むだ【無駄】** ▼無駄(期待するだけ。何を言っても。いつまで待っても)。時間の無駄以外の何物でもない"横山。無駄が(多い。省ける)。無駄な(汗をかく。議論をやめる。試みに終わる。失敗を防ぐ。出費をなくす。損害を省く。操作が多すぎる。部分を切り捨てる。流血を回避する)。勝つべくもない無駄な争い。無駄に(年をとる。力を使い果たす。使う時間はない)。日々が無駄に過ぎて行く。労力が無駄に費やされる。今日もまた無駄に費やしたという平凡な悔恨!佐藤脊。一無駄にできない(一日も。一秒たりとも)。無駄の洗い出しを進める。無駄といってこれほどひどい無駄はない灭。終わってしまったことをとやかく言ってもはじまらない"立原。一銭の足しにもならない。得にもならない(一文の。一銭の)。可惜ふた理詰めの千言万語も空に消える=二葉亭。不経済な(買い物。生活)。燃料を不経済に使う。いたずらな感慨にふける。若いエネルギーのいたずらな発散。いたずらに(事が長引くばかり。混乱を招くだけ。堂々めぐりをする)。人材を惜しみなく提供する。新しい人材を求める。これと思う人材を抜擢で記する。最も適した人材を登用する。優秀な人材を投入する。▼材(有為の。有用の)。 **せいかがない【成果がない】** ▼成果がない(はかばかしい。見るべき)。▼上がらない(これという成果が。万分の一の成果しか芝木)。成果を上げられず苦戦する。実りが(薄い。少ない)。 **そうこう【奏効】** ▼奏効する(施策が。思うとおりに)。▼奏功する(作晩が。戦術が)。▼功を奏する(駆け引きが。先制攻撃が。はからずも。水際立って)。▼効を奏する(降旋協んが。懐柔策が。呪文が。声援が)。 **たからもの【宝物】** お家代々の宝物。赤ん坊を宝物を守るようにしっかりと膝の上に載せる=阿刀田。掌中の珠たき。宝物のように(大事にする。大切にする)。家宝(一子相伝の。先祖伝来の。門外不出の)。金銀珠玉をちりばめる。蔵にうなるほど金銀が眠っている"火坂。金銀五彩の織物。金銀を人々に分かち与える。国宝的な存在。国宝に指定する。財貨を蓄える。財宝を惜しげもなくばらまく水井路。珍器財宝を所持する。▼至宝(オペラ界の。画壇の。人類の)。大学の自治は何物にも換えがたい大切な宝美濃部。心中に万の宝を持つ大野学。秘宝を特別公開する。 **だめになる【駄目になる】** だめになる(目に見えて。商売がばったりと)。このままではこの国は駄目になる=伊坂。▼いかれる(頭が。エンジンが。キャブレターが)。わやになる。幸せを虫のくうように知らぬまにだいなしにしてしま?中。▼台なしにする (戦争が一生を。せっかくの話を)。無関心が世界を台無しにする=伊坂。▼台なしになる(苦心が。政治的生命が。せっかくのパーティーが)。干した蒲団が夕立で台無しになる=伊坂。 **ねうち【値打ち】** 値打ちが下がる。▼値打ちがある(一見の。書く。千金の)。かなり値打ちのある品物。死ぬまで考える値打ちのある問題!白井。値打ちを(十分に知っている。半分以下に引き下げる)。世の中の人間の多くはうわべだけで人の値打ちをはかってしまう池波。 **のうがき【能書き】** ▼能書き(薬の。化粧品の)。能書きを(垂れる。並べる)。気除ききな能書きを言う向田。効能書きを(垂れる。並べる)。 **ふじゆう【不自由】** ▼不自由(家族と離れて暮らす。体全体が泥の中に押しこめられているように=高橋和)。不自由な(足を引きずる。考え方。暮らし。世の中。状態を我慢する)。▼不自由になる(立ち居が。右半身が。肉体的に)。体の不自由を心で補う。体の自由が利かない。両足の自由が利かなくなる。不自由がちな生活に耐える。雪を食った高下駄を穿いて歩くような不自由さ=川端。籠の鳥同様逃げられないような気になる=綱淵。籠の鳥の身になる。 **ふべん【不便】** 交通が不便。目先だけの判断で不便と決めつける。不便な(思いをする。制約をものともしない)。携帯には不便な代物。わざわざ不便な田舎へ引っ込む"夏目。帰省の足が不便になる。外国生活の不便はかねて覚悟して行く島崎。日常の出し入れに不便するほどぎっしり物が並ぶ戸棚"河野。足の便が悪い。利便性が低下する。 **べんり【便利】** ▼便利(携帯に。持ち運びに。手軽で。万事につけ)。便利な(手段。生活になじむ。乗り物)。この上ない便利な口実。前より便利になる。便利の陰に潜む危うさ。足の便がよい。利便性とリスクは背中合わせ。利便性を高める。交通利便の地。観光に至便のホテル。通勤に至便の住宅地。文明の利器。冬に重宝するコート。男にとって重宝な女。言葉は重宝なかくくれみの永井路。重宝にできた器具。 **ほうこ【宝庫】** ▼宝庫(記憶の。資源の。神秘の。知識の一の)。死んだ夫の潜斎を神聖な記憶の宝庫として大切 <1109> # 役立つ・役に立たない **むだがない**【無駄がない】▼無駄がない(話の運びに。文章に)。無駄のない(機能美。機敏な動き。仕事ぶり。的確な描写)。力を抜いたむだのない動き=飯田。無駄が(少ない。一つもない)。無駄な(金を使わない。詮索はしない。おしゃべりが少しもない。肉は一片もなく痩せぎすにひき緊まった筋骨!柴田線)。一文たりとも無駄な費用を出さない=柴田剣。▼無駄にしない(時間を。髪の毛一本)。 **むだにする**【無駄にする】▼無駄にする(好意を。弾丸を。忠義を。労力を。気遣いを結局。まるまる一週間を)。▼時間を無駄にする(貴重な。店を探して)。ふいにする(高価な切符を。せっかくのチャンスを。儲もうけをみすみす)。▼棒に振る(一生を。功織を。社長の椅子を。人生を。百万円を。あたら三年間を。やっとつかんだ役を。せっかくの一日を岸田)。▼無にする(苦労を。好意を。親切を。努力を)。 **むだになる**【無駄になる】▼無駄になる(貴重な時間が。すべての努力が。せっかくの休息が)。努力が無駄になる(これまでの。長年の)。▼無駄に終わる(準備が。探索が。抵抗が)。徒ぁだな情けをかける。力が徒に働く。徒になる(好意が。親切が。せっかくの施策が。よかれと思ってしたことが)。徒卵とじに終わる。溝に捨てたも同じ。二度手間になる。▼ふいになる(計画が。せっかくの休みが)。▼無に帰する(好策劫んが。企みを。何もかも。今までの努力が隆)。▼無になる(一切が。好意が)。 **やくだつ**【役立つ】役立つ(家庭の乎和に。再発防止に。治安の改善に。知識が図らずも)。お役に立てて嬉しい。まんざら捨てたものでもない。使い物になる。つぶしが利く。闇夜の提灯らいう。まんざら役に立たないわけでもない。世の中のために役に立ちたい。役に立つ(経験が。稽古が。助言が。分析が。人様のために。急場の。結構。ずいぶんと。治療の。何かと。何かの。いざというとき。急場愛しのぎの円滑剤ぐらいには=大岡)。人のために役に立つ仕事。どれだけ役に立ったか測り知れない火坂。益する(人々を。世を。公共に)。益するところ大。高度な実用性を具でぇえる。実用的な(手土産。話。ブレゼント。本)。社会に裨益ぇする事業。国家の裨益を図る。有用な(機械。人材。微生物)。即戦力として期待する。即戦力になる(人材。投手。編集者)。他山の石で宝を磨く武田奈。人の失敗を他山の石にする。まんざら無駄ではない。無無駄な手は一つも打っていない。人生に無駄なことは一つもない。この十年は徒爾とじではなかった。決して徒爾ならざるものと信じる。有為な人材がつぶされる。有為の人材が頭角を現す津本。前途有為の(人材。青年)。有為多感な青年。有為多望な青年。 **やくだてる**【役立てる】▼役立てる(知恵を。能力を。活動に。再発防止に。地球規模の課題に科学技術を)。供する(一身を犠牲に。酒席の話題に)。▼資する(研究に。公益に。国民の利益に。福祉に。平和促進に)。血の通った運用を心がける。▼運用する(資金を。資産を。制度を。機械的に。弾力的に)。 **やくにたたない**【役に立たない】役に立たない(食わせ物。ものは弊履いいのように捨てる=山岡)。役に立たない(経験が。知識が。費用の割に。からきし。ちっとも。何一つ。反古はこのように。ほとんど。まるで。見かけ倒しで。ものの。いざというとき)。役にも立たない(渋くその。耳くそほどの)。何の役にも立たぬ無用の長物"高橋知。余人が手に入れても何の役にも立たぬ代物"隆。役立たずの(がらくた。酔っ払い)。情報の数は増したが役立つものは皆無といっていい"高見浩。机上論に終わる。貢献度はゼロに等しい。帯に短し襷に長し=壺井。畳の上の水練。つぶしが利かない。十日の菊でしかない何年も前のカレンダー=竹西。猫に小判。十が一をも果たしえない。豚に真珠。あんなもの、屁、にもならんね=木山。屁の突っ張りにもならない。ろくでなし(親子そろって。どうしようもない=小池)。腕っぷしが強いのだけがとりえのウドの大木=高見浩。天下の愚策と悪評しきり。思策を(めぐらす。弄する)。ソファに木偶でくのようにぶっ倒れる=高見浩。下種の後知恵にすぎない。下司の知恵は後から出る。仕事の甲斐性ぃぶしがない。甲斐性なしの旦那に泣かされる。机上の空論をもてあそぶ。空理論に(過ぎない。走る。日を暮らす)。空理論をもてあそぶ。▼空論家(頭でっかちの。景気のいい)。子供の使い同然にすごすごと帰ってくる"藤沢。子供の使いみたいに何の役にも立たない"宮本輝。役に立たないただの木偶でくになる"村上元。木偶の坊呼ばわりされる。木偶のごとく(立ったまま決然と見続ける=高井。命令を待つ兵隊=奥泉)。木偶のように黙念と聴きいる真継。指図通りに木偶のようにおとなしく動く!柴田築。周囲の人が腑抜ふぬけな木偶のように甲斐がぃなく思われる有降。床にべったり尻をついて木偶みたいに腑抜けてしまう。古井。益体もない(話。妄想。ことを羨ましそうに話す二葉亭)。益体もないことを(書き連ねる。考える)。 **ゆうえき**【有益】有益な(情報。助言)。老化を有益なものと思いこむ=筒井。▼有益に使う(休暇を。待ち時間を)。必ずしも無益とはいえない。 **ゆうこう**【有効】有効な(解決案を出す。対応策。治療を施す。使い道。手を打つ。安全対策を導き出す)。有効に(生かす。活用する。利用する)。有効に過ごす(暇な時間を。短い時間を最大限に)。▼有効に使う(休暇を。時間を。できるかぎり。限られた資源を)。有効性を(疑う。強調する)。 <1110> # や **あいきょう**【愛嬌】愛嬌がこぼれるような笑顔戸板。笑うと目に愛敬がある連城。愛嬌などは微鹿もない。愛嬌に富んだ顔。顔に愛嬌の連結が浮く=獅子。愛嬌のある(笑い顔。ふっくらした顔)。勝ち気な愛嬌のある女。どことなく愛嬌のある顔つき。道化師のように愛嬌のある医師=徳永。こぼれるばかりの愛嬌をふりまく今乗。愛嬌たっぷりにウインクする=佐藤愛。 **あいそ**【愛想】誰にでも愛想がいい。舞台の上の魔術師のように愛想がいい!大原。愛想のいい笑顔を浮かべる。預金するときの銀行の窓口の係のような愛想のいい口調。赤川。客に愛想を言う。こぼれるような愛想をたたえる=南条。お愛想が口からすらすら出る。馬鹿に股熟きんでお愛想がいい萩原则。 **あいそよく**【愛想よく】愛想よく(挨拶する。応じる。客をもてなす。声をかける。答える。迎える。笑う)。愛嬌よく(挨拶する。にっこりする。笑う)。 **おおらか**【大らか】おおらかな気持ちになる。布団の対角線上を泳いでいるような格好でおおらかに眠っている=中局み。貧しいけれどたくましくおおらかに生きる=飯田。大様に(うなずく。構える)。鷹揚なものの言い方。安心しきったような鷹揚地うな態度。どこの殿様かと疑われる鷹揚な言葉つき芥川。鷹揚に(一同を見まわす。目を細めて挨拶を受ける"武田泰)。 **おもいやる**【思い遣る】▼思いやる(気持ちを。現しいが嫁を。父が娘を。身の上を。胸のうちを。弱い立場を)。相手を思いやる心。▼思いやり(周囲への。せめてもの。他人に対する。押しつけがましい)。思いやりが(ありがたい。足りない)。他者への思いやりが深い。師匠の温かい思い遣りが痛いほどありがたく胸にしみる=山本周。思いやりの(ある措置。かけらもない。ない物言い。深い人。色が顔に浮かぶ)。思いやりを(欠いた振る舞い。たっぷり含んだ抑揚で声をかける筒井)。慈しみと紙一重の憎患"長野。慈しみの(眼差し。言葉を口にする。笑みを宿した顔辻井)。 **おやこうこう**【親孝行】無類の献身的な親孝行。存分に親孝行する。親思いの優しい子。孝行する(親に。父母に)。父母に孝養を尽くす。孝を尽くす。 **かんだい**【寛大】寛大な(裁き。処置。態度。計らい。話のわかる父親)。思をもって怨うらみに報いる寛大な心持ち森岡。すべてのものを許し得るような無限に寛大な気分にひたる!高橋旬。寛大に(扱う。受け入れる。取り扱う)。弱者に対して寛容。寛容な(笑顔。態度。人。眼差し)。寛容の精神。寛容さを身につける。 **じひぶかい**【慈悲深い】慈悲深い(口調。心)。世慣れた人に特有の慈悲深くなだめるような口調"太宰。仁慈に厚い。仁慈の心。情け深い(裁判官。処置。態度)。仏心を(起こす。出す)。 **しんしゃく**【斟酌】▼斟酌する(感情を。希望を。気持ちを。都合を。目的を)。▼参的する(事情を。前後の意味から)。 **しんせつ**【親切】親切が(あだになる。身にしみて嬉しい)。ほとんど親切といってもいいほどの冷静なやさしさ三島。親切な(心づかい。心の持ち主。言葉に甘える。態度。注意を与える。忠告。配慮。物分かりのよい人。ことは人後に落ちない舟橋)。親切に(感謝する。世話をする。見舞いに来る。面倒を見る。ノートを貸してくれる。優しく言って聞かせる)。親切の限りを尽くす。親切を素直に受ける。控えめに親切を示す。人の親切が身に染みる。人の親切を仇ぁだで返す。鈴をそっとハンカチに包むような親切さ吉本。陰に陽に助ける。厚誼にうを胸にたたむ。御厚情にあずかる。日頃の御厚情に感謝いたします。何くれとなく(世話を焼く。相談に乗る)。 **しんみ**【親身】親身な(温かい気持ち。協力。指導。情があふれる。助言。世話をする)。言葉に親身な響きがある。親身に(世話をする。相談に答える。あれこれといたわる)。親身になって(考えてやる。看病する。心配する。世話を焼く。話を聞く。面倒を見る)。 **せいい**【誠意】誠意が(通じる。伝わる)。誠意にあふれた声音。顔に誠意の色があふれている。誠意を(披瀝する。込めて事情を説明する。具体的な証拠で見せる荒巻)。満控持认の誠意を尽くす=山田美。誠意をもって(交渉を進める。要求に応えようと努める=竹内)。誠意ある(青年。返事。回答が得られない)。誠心誠意(解決に努める。子供に向き合って生きる。病人のために尽くす。優しく振る舞う)。 **てあつい**【手厚い】手厚い(保護を受ける。もてなしを受ける)。手厚く礼を述べる。懇篤な(指導。説明。勧告を無にする)。ねんごろに(健康を尋ねる。菩提心だを弔う。別れの言葉を述べる)。端から端までねんごろに見て回る。神の優渥妙な加護。優渥なるお言葉を賜わる。 **てかげん**【手加減】手加減の細かな気づかい。手加減を(加える。する)。お手柔らかに(頼む。願いたい)。上司のさじ加減一つで決まる。予算配分をさじ加減する。▼手心を加える(取り締まりに。金や権力に屈して吟味に船山)。 **てぬるい**【手緩い】手ぬるい(処罰。やり方)。▼手ぬるい(求刑が。指導が。追及が)。旧式きわまる手ぬるい方法武田祭。生ぬるい処置。生ぬるく妥協する。闘争方針が微温化する。微温的態度がはがゆい。微温的な老人臭い愛情。微温な折衷案。 **なさけ**【情け】情けが身にしみる。男同士の武士の情けで夫人の目に触れないようにそっと処理する=宮尾部。情けに(背く。報いる)。情けは人のためならず。情けを(売る。かける)。人の情けを心に刻みつける。お情けで(卒業する。雇う。試験にバスする)。人の情けに(甘えて暮らす。すがる)。悄じょに(篤い人。すがって生きる)。温情ある(措置。判決)。温情が(あだと <1111> # 優しい-366 しい声で(答える。尋ねる。話しかける)。優しい人(心根の。蠅はぇ一匹殺せぬほど気立ての=奥平)。優しく(肩に手をかける。寛大にうなずく)。やさしく慰めるように話しかける=常盤。頭を優しく撫でる。肩を優しく抱く。髪がんを優しくかき上げる。物静かに優しく言う。声が優しく耳に残る萩原葉。光が髪の上で優しく戯れる=中村真。優しくする(年寄りに。猫可愛がりに)。血を分けた者も及ばぬほどやさしくする森馬。▼優しくなる(物言いが。にわかに。ますます)。優しげな(女の微笑み。視線をそそぐ。ちょび髭ひげ)。順もしくも優しげな夫の声。優しそうな母親。一見優しそうな印象を与える。親身な人の温かい気持ち“石川。兄のような暖かさを感じさせる人萩原業。心優しい(弯。人間)。包容力の(ある人。大きな人柄)。人間的に懐が深い。 **やさしさ【優しさ】** 優しさ(むせかえるようなおしつけがましい利己心的な瀬戸内。相手の孤独を汲み取るゆとりのある=瀬戸内。菓子のように包みくるめた=松本。犯人の家族のことまで心配する"西村。無愛想の所々に句読点のように小さく挟む連城)。気の抜けたような不思議なやさしさ驚沢。やさしさが(ユーモアの裏ににじみ出る。ひしひしと胸に迫る=川端)。深く澄んだ黒い瞳にどこか人を誘い込むようなやさしさがある=村松。優しさが心を揺さぶる。口ぶりに優しさがこもる。心遣いと優しさが身に浸みる!有吉。相手の言葉の優しさが胸に痛いほど染みる遠藤。優しさと楽々♪♪しさを両立させる。優しさに(甘える。心打たれる。触れる。身をゆだねる。勝る武器はない"阿木)。仕草が優しさに満ちる。身もとろけるようなやさしさの虜とりになる=三島。優しさのあふれた口調で尋ねる。気分に応じて優しさの量を調節する三浦し。クールでありながら優しさも持ち合わせている突。強さと優しさを併せ持つ。や **ふとっぱら【太っ腹】** 万事大まかで太っ腹!永井路。太っ腹な人。小さなことにこだわらない性格。気宇が広大になる。豪快な気宇が町全体を包む。気宇壮大な計画。知勇兼備の豪傑。豪傑を絵に描いたような侍村上元。豪傑肌の磊落65いな人物"美濃部。豪放な(性格。人。笑い方。男らしさに改めて惚れ直す内海)。豪放に振る舞う。豪放磊落な(考え方。性格)。 **まごころ【真心】** 真心が(厚い。通じる)。見せかけだけで真心が薄い。真心に(負ける。報いる。免じて許す)。真心のこもった(挨拶。贈り物。看病。親切な忠告。料理)。真心を(かけて愛する。第一と考える)。真心をこめて(祈る。客をもてなす。サービスする)。人踏みにじる)。至情(愛国の。殉国の)。至情を(尽くす。吐露する)。至誠一微の愛国者。至誠が天に届く。至減至純の魂。実のある男。実のこもった(声。目でみつめる)。心肝に徹する。真情が厚い人。真情を(吐露する。浮き彫りにする。尽くして応対する=氷室)。赤心を吐露する。どんな人間にも赤心をもって対する。衷情を(訴える。披瀝する)。誠を(込める。捧げる。尽くす。貫く)。 **やさしい【優しい】** 優しい(口調で話す。心に打たれる。琴のような声。言葉をかける。いたわりの眼差し。素振りをして近寄ってくる。眼差しで見つめる。温かい血を承け継ぐ=田山)。優しい(気が。夫が妻に。男は意外に。いつになく。いつにも増して)。女のように優しい声。気立ての優しい女。口元に優しい笑いを浮かべる。小市民的な優しい生活。常に控えめな優しい母。根は優しい心の持ち主。意地悪さを優しい声に包む=原田康。心にしみいるような優しい笑顔!三浦线。心持ち垂れ気味な優しい目=光原。こまごまと優しい心遣いを見せる=氷室。溶けるように優しい口湖"中村真。物語風の優しい想い出"中村真。優しい口調で言う(努めて。できるだけ)。気遣いの優しい子。優部。情けに(背く。報いる)。情けは人のためならず。情けを(売る。かける)。人の情けを心に刻みつける。お情けで(卒業する。雇う。試験にバスする)。人の情けに(甘えて暮らす。すがる)。悄じょに(篤い人。すがって生きる)。温情ある(措置。判決)。温情が(あだとなる。こもる)。仲間の温情にすがる。温情に満ちた(笑顔。声)。慈悲が光のように十方を照らす真継。慈悲に(あふれる。すがる)。みすぼらしい男に慈悲をかける=泉優。菩薩きのような慈悲円満の相=白洲。 **にんげんせい【人間性】** ▼人間性(豪快な。奥深い。粘り強い)。人間性を(豊かにする。余すところなく描く)。相手の人間性を見抜く。ヒューマニズムに(溢れた行為。目覚める)。ヒューマニズムを(信じる。もてあそぶ)。 **にんげんてき【人間的】** 人間的な(成長を促す。あたたかさに包まれる。心の触れ合いが芽生える。親しみを感じる。幅の広さを持つ。肌触りや温かみにかける小林久)。人間的に(欠陥がある。懐が狭い)。人間らしい(暮らし。心。人間でありたい。喜びのある生活)。人間らしく(生きる。働きたい)。伸びやかな人間らしさを求める。人道主義に徹する。 **にんげんみ【人間味】** 人間味の(ある人。かけらもない男。溢れるしみじみとした可笑ぉしみ!中村明)。人間臭い(絵。話。官能や叡智纭いが顕現する=円地)。体験談に滲にじんでいる庶民性の強い人問臭さ=円地。 **にんじょう【人情】** 人情が(そこはかとなくにじみ出る。ひしひしと伝わってくる)。人情に(篤い。薄い)。人情の機微がわかる人。人情の機微に(うとい。通じている。触れる)。庶民の人情をたくみに描写する。とめどない市井の人償を強いられる=棺。人情味に富む物語。傍証汇江にあつい。情誼を欠く。情味が(薄い。こもる)。情味のこもった応対。情味のある(女性。判決)。太っ腹な(性格。態度。ところを見せる)。物借しみがな <1114> # や に。経済的に。財布に。スペースに。懐に。収容人員に十分な。スケジュールに。苦もなくこなして。笑って聞き流すだけの西木)。▼余裕ができる(気持ちに。時尚的に。生活費に多少の)。余裕のあるハンドルさばき。悠々と余裕を見せる。人生の先輩のような余裕を感じさせる高樹。むだな出費に堪えられる。余裕綽々しくの(口ぶり。戦いぶり)。余裕たっぷりの笑顔を見せる。束になってかかってこいという余裕たっぷりの感じ=田辺。まだまだ体力にストックがある。余力が(ある。生じる)。 **らくえん【楽園】** ▼楽園(地上の。野鳥の。愉悦に満ちた)。この世に楽園が訪れる。極楽のように毎日が楽になる吉本。恍惚にらの仙境にいざなう。まさに天国にいる心地。幻想を夢見て桃源郷を望む。ユートピアを現出させる。 **らくてんてき【楽天的】** 底が抜けたように楽天的"倉橋。楽天的でユーモラスな人情味に富んだユニークな性格瀬戸内。楽天的な(明日への信頼。夢を見る。イメージを描く。想像を飛翔させる。明るさをもって生きる=加太)。明るく楽天的な女。のんびりと楽天的な母連城。 **らくになる【楽になる】** ▼楽になる(家計が。体が。気分が。暮らしが。呼吸が。身も心も。すっっと気持ちが。憑きものが落ちたように体が高樹。しこり固まっていた全身がもみほぐされたように"石森。動悸の激しかった心臓が波がひくように干刈)。気を楽に持つ。楽にする(気分を。気を。呼吸を。姿勢を。生活を。膝を)。 **らっかん【楽観】** 悲観から楽観に傾く。楽観は禁物。悲観と楽観は背中合わせ。▼楽観を許さない(病状が。事態は)。▼楽観視する(事態を。根拠もなく)。楽観的な(言い方。推测。見通し。空気が生まれる)。楽観的に考える。楽観論に終始する。 **ゆうゆうじてき【悠悠自適】** 悠々自適して閑日月を楽しむ佐藤春。悠々自適の(暮らし。ご身分。生活を楽しむ。晩年を過ごす。老後を送る)。晴耕雨読の(生活。日々)。 **ゆったり** ・襟元をゆったり着る。風呂にゆったり身を沈める。ゆったりと(会話を続ける。落ち着いた気分。髪の毛を背中に垂らす。設計された部屋。ソファーに座る)。ガウンをゆったりと身にまとう。川の水がゆったりと流れる。手足を湯の中でゆったりと伸ばす。三日間をゆったりと過ごす。海原が青くゆったりとふくらんでいる阿川弘。邂逅跡心の淵にでも立たされたようなゆったりとした時間の蛇行の中にいる"辻仁。桜の花びらがゆったりと風に揺れている夢枕。時間の存在そのものさえ忘れてしまうようなゆったりとした時間=落合。▼ゆったりさせる(髪の毛を。体を。気持ちを)。ゆったりした抑揚をつけて言う。ゆったりしている(建物と建物の間隔が。人の心が川の流れのように=加太)。忙中閑日月あり。閑日月を楽しむ。悠々たる閑日月を弄ぶ!舟橋。浩然の気を(漏らす。養う)。まったりと過ごす。 **よか【余暇】** 余暇を(活ぃかす。犠牲にする。楽しむ。慰める)。片手間にできる仕事。仕事の片手間に庭いじりをする。 **よゆう【余裕】** 夕焼けをじっと見るような気持ちの余裕遠藤。考える余裕が生まれる。口調に余裕が感じられる。時間的余裕が欲しい。▼余裕がある(金銭的 ・手を休める(作業の。仕事の。疲れた。針を持つ)。▶休める(旅の疲れを。疲れた体を)。 **やすむ【休む】** 休む(休める時に。横になって。嘘をついて学校を。のっぴきならない用で。ベンチに座って)。休む口実がない。休み休み山を登る。休んだ分を取り返す。ずるずるべったりに休んだり出たりする。そうそう休んでもいられない。仕事を休みたい旨を伝える。休み休みでないと歩けない。▼やすらい(和やかな。心の)。木陰にやすらう。▼運休する(大雪のため。事故のため)。英気を(貯える。養う)。休会する(会議を。議会を。国会を)。休会を宣言する。休学する(大学を。海外で活動するために)。大学に休学届けを出す。新聞の休刊日。▼休業する(明日。しばらく。本日)。学校が臨時休校になる。▼休止する(運動が。運転を。作業を。いったん進撃を)。休止符を打つ。▼休職する(会社を。学校を。役所を。怪我で。病気で)。休養する(数日。のんびりと。ゆっくり)。自宅で休養を取る。無断欠勤する(会社を。店を。役所を)。風邪を理由に欠勤する。無断欠勤を詫びる。一病欠する(会社を。学校を。保育園を。熱があるので)。連休で温泉町が込み合う夏樹、連休を利用して旅行する。安息が心を満たす。安息の(場所を見出す。密びを味わう)。心の安息を得る。安息日を祝う。欠航する(定期便が。飛行機が。連絡船が)。欠航便が出る。▶定休日(お店の。スーパーの。デバートの)。日曜日を定休日とする。温泉に骨休めに行く。骨休めの気ままな一人旅。一日ゆっくりと骨休みをする。 **ゆうぜん【悠然】** 富士山が悠然たる佇忱たまいを見せる=村松。悠然と(大杯を傾ける。あたりを眺めまわす。ソファーで足を組む。煙草をくゆらす。ほほえみを浮かべる)。古木が悠然と枝を伸ばす。女王様のように悠然ど現れる源氏。 **ゆうゆう【悠悠】** 悠々閑雅に歌う。悠々たる(老後を楽しむ。態度で店内を見回す)。悠々と(寝坊をする。罠もなを逃れる。遊んでいる暇もない。大股に前進する。危機を乗り越える。微笑を浮かべる。部屋を出て行く)。牛が悠々と草を食む。窓とびが悠々と愉を描く。目的を遂げ悠々と退散する。大股に悠々とした足どりで通り過ぎる。悠々閑々と(日を送る。老後を暮らす)。 <1115> # 病む・治る む「清水義)。医者から薬をもらう。虫除けの薬を塗る。薬局で薬を買う。苦い薬を飲んだような顔「灰谷。ピルケースから薬を取り出す篠田。▼薬を飲む(山ほど。湯冷ましで)。漢方薬をのむ。救急箱を持ってくる。薬箱を風呂敷に包んで背負う。むせっぽい粉薬。粉薬をオブラートに包んで飲む。痔の座薬。座薬を(肛門にに入れる。使う)。漢方の生薬。生薬を(採取する。処方する。配合する)。新薬を(開発する。承認する。試す。発売する)。水薬がちゃぽちゃぽ揺れる。水薬を(垂らす。飲む)。疲れ目に効く目薬。目薬が効く目薬をさす。薬液につける。薬液を(使用する。吸い上げる。塗布する。塗る)。薬品の臭いが(漂漂う。鼻をつく)。薬物で死亡する。薬物の知識に精進する。薬物反応が出る。アンブルを(折る。振る)。抗生物質と耐性菌のいたちごっこ。抗生物質に対する耐性。抗生物質を注入する。ドーピング検査を受ける。副作用が(生まれる。おさまる)。服薬が効く。服薬によって死ぬ。▼服用する(熱冷ましを。食後に。食前に。食間に)。 **くるう【狂う】** ▼狂う(指先の感覚が。ギターのチューニングが。心のバランスが。すっかり予定が。ふらふらと足元が。世の中の歯車が。見通しが大幅に)。世の中が徐々に狂ってくる。▼狂わせる(頭を。人生を)。運命に微妙な狂いが起こる。▼狂いが生じる(計画に。作戦に)。▼狂いっぱなし(あてが。計算が。調子が)。資金計画に狂いを来たす。頭の線が一本切れる=阿部。狂いそうなほどの緊張にとらわれる=杉本。狂するがことき熱心をもって人民に受け取られる"山田美。狂するばかりに煩悶はんする。我を忘れて狂するばかりになる。発狂したように叫ぶ。乱心の一歩手前。 **げり【下痢】** 下痢で終日苦しむ。しぶとい下痢に悩まされる=池波。下痢を思う。下す(おなかを。腹を)。 **さいきん【細菌】** 病原菌が巣食う。未知の病原菌が発見される。薬鼻吸 **かさぶた【瘡蓋】** かさぶたが(傷口を覆う。できる。とれる)。傷がかさぶたになる。かさぶたを剥がす時に似た苛立ったしい快感"黒井。厭ぃゃな言葉が瘡蓋のようにこびりついて離れない=高井。 **かぜ【風邪】** 風邪が(抜けない。いつまでも体のあちこちにへばりついてぬけようとしない=開高)。悪い風邪が流行る。風邪から(肺炎を併発する。余病を併発する)。ひどい風邪にやられる。風邪は万病の元。風邪もひいた覚えがないほど丈夫"有吉。風邪を(ひいて寝込む。ひいたけちな小動物みたいにぜいぜい喉を鳴らす安部)。風邪気味で臥せっている。風邪薬を口に放り込む。鼻風邪がなかなか治らない。鼻風邪をこじらせる。インフルエンザが(猖獗れを極める。暴威を振るう。猛威を振るう。流行する)。インフルエンザで学級閉鎖になる。▼感冒(悪性の。流行性の)。流感が(猖獗を極める。はやる)。 **がん【癒】** ▼癌(社会の。組織の)。脳が(浸潤する。巣食う。肺に転移する。体じゅうに広がる)。ガンが手術不能なほど全身に転移する=西木。体に癌が取りつく。夫を癌で亡くす。空腹はガンと同じくらいこわい敵北。末期的な癌に冒される。癌の(浸潤を抑える。疑いが濃厚な患者。進みは体力に比例する)。ガンを宣告されたみたいに沈みこむ宗田。癌細胞を(切除する。摘出する)。 **かんじゃ【患者】** 患者が(診察を受ける。あふれるほど押しかける。死の影に怯ぉびえる。診察室を出て行く。引きも切らない。病院に殺到する)。“追い追いに患者が増える。ベッドに患者が横たわる。患者に(急変がある。献身的な看護師)。患者の(命を預かる。訴えを聞く。死を看取ぁとる。生命を預かる。便を検査する。最期の日が近づく。状態を把握する。心理につけ込む。診療に没頭する。ベッドを見て回る。容態が急変する)。思いがけぬ患者の急変に狼狽も、いする=佐藤春。患者を(看病する。たらい回しにする)。死期の間近い患者を目の前にする=笹沢。病名を確かめたいくせに、はっきりと診断を下されることを恐れる患者のようにぐずぐずと時間を稼ぐ落合。 **きとく【危篤】** 危篤の報に接する。病勢が革はらまる。容易ならぬ病状。かなり容態の悪い病人。患者が危篤状態に陥る。▼重る(病気が。病が)。▼重体(瀕死いんの。面会謝絶の。命にかかわるほどの)。 **きゅう【灸】** 灸の施術。灸をすえる。艾もくを(据える。焚たく)。首筋にお灸みたいな熱い息を吐く=田辺。 **きゅうびょう【急病】** 急病で倒れる。急病にかかり明日をも知れぬ重態に陥る=舟橋。急病の患者が出る。急病人を診察する。救急車で急病人を病院に運ぶ。救急車で急患が運び込まれる。急性の(疾患。症状。中毒)。急な病人が出る。 **きょうき【狂気】** 狂気が頭の中に湧き上がってくる。目に狂気が忍び寄る。狂気から覚める。狂気に(歪ゅがんだ目。似た衝動と戦う奥田)。熱狂というよりは狂気に近い=森線。狂気の(世界に浸る。なせる業。傾向を色濃く内蔵する。実態を書き立てる。沙汰と笑わば笑え=子母沢)。頭の中が狂気の洪水になる。倉橋。戦争が集団的な狂気を氾濫処させる=大江。精神に歪みが生じる。ご乱心(社長の。殿の)。 **くすり【薬】** 薬(食問に飲む。万病に効く。発作時に服用する。年月が心の最良の若竹)。薬が不思議に効く。ウイスキーを薬でも飲むように舌の先で少しずつ愕なめる=小林多。薬に(したくもない。頼る。手を出す。頼らざるを得ない)。非合法な薬におぼれる。薬の(効き目が早い。効能。効用。能書き。飲みすぎ。副作用。服用を控える。カプセルを胃に流しこむ)。薬も分量を誤れば毒になる寺田。薬らしい薬ものますに死に急ぐ=梶井。薬を(与える。常用する。煎じる。届ける。飲ませる。言われた通りにきちんきちんとのや **いしゃ【医者】** 近所のかかりつけの医者。腹八分に医者いらず。医者が(入院を勧める。患者を治療する。容態を説明する)。医者から余命を告げられる。医者に(連れて行く。泣きつく。診てもらう。見放される)。症状を医者に伝える。ろくに医者にかからない。医者の不養生。医者も手を焼く始末。医者を(迎えにやる。呼びに行く)。医を業とする。内科医院を開業する。旧医者に(行く。かかる)。▼医師(近所で開業している。聴診器を首にかけた)。医師に安静を命じられる。医師の診察を受ける。折紙付きの名医。名医という噂が高い。名医として(知られる。名高い)。 **いやす【癒す】** 心の痛みが癒される。▼癒す(飢えを。傷ついた体を。心の傷を。荒ずきんだ精神を。旅の疲れを。疲れた心身を。喉の渇きを。病気を)。音楽に癒しを求める。▼医する(疲労を。病を)。治す(難病を。病気を。くよくよしている心持ちを戸板)。 **うむ【膿む】** ▼膿む(おできが。傷が。傷口が。できものが)。膿んでじくじく痛む。おできから膿っふがほとばしり出るように言わずにいられない"曽野。体内の膿でも出たように事件が連続して起こる=遠藤。膿を切開して出す。膿のような(目やに。鼻汁はなをたらす)。憎悪や猜疑いが膿のように流れ出る=真継。一化膿する(傷が。腫れ物が)。 **かかる【罹る】** かかる(脚気に。子供が難病に。リュューマチに。稲がいもち病に。挙げ句の果てに重い病気に=藤田)。病気にかかる(厄介な。たちの悪い)。病にかかる(重い。ふさぎの)。▼おかされる(高熱に。細菌に)。▼発症する(病気が。病気を)。結核を発病する。発病の恐怖に怯ぉびえながら過ごす。 <1116> # 病む・治る-368 状に変化が見られない。症状を詳しく説明する。炎症を起こす。 **しょくちゅうどく【食中毒】** 食中毒で死ぬ。食中毒にかかる。夏場の食中毒を防ぐ。毒に当たって死ぬ。河豚ふぐに中る。食あたりを起こす。 **しんさつ【診察】** 医師の診察が終わる。診察の(結果がかんばしくない。順番を待つ患者たち)。何回か診察を重ねる。待合室で診察を待つ。▼診察する(患者を。患部を。病人を)。胸に聴診器を当てる。▼診る(病気を。病状を。病棟の患者を。病人を)。急患を診する。医者の往診を受ける。▼回診する(患者を。病室を)。病院で受診する。来診をお願いする。 **しんぞうびょう【心臓病】** 心臓病が悪化する(持病の。宿病しいの)。心臓に爆弾をかかえているようなもの。心臓発作に(襲われる。見舞われる)。心臓発作を起こす。心臓麻痺まひで(急逝する。ぽっくり死ぬ)。ぼっくり心臓麻痺で死ぬ。心臓麻痺を起こして死ぬ。狭心症の発作で倒れる。心電図に(乱れが生じる。異常が見つかる)。 **しんだん【診断】** 医師の診断を受ける。自信を持って診断を下せない。正確な診断を下す。▼診断する(経営状態を。病気を)。長期の安静が必要と診断される。見立ての確かな医者。 **たいいん【退院】** 退院の(許可を求める。目処ぁとが立たない)。近々退院の運びとなるだろう。▼退院する(思者が。無事に。是が非でも。めでたく)。 **ただれる【爛れる】** ▼ただれる(傷口が。心が。皮膚が。目が)。雑木の森に植はぜが赤く爛ただれる菊池。目の縁がただれ唇のめくれ上がったような風采の上がらない小男佐多。ただれた(女関係。生活)。爛れた関係を清算する小林久。火が静かな湖面を赤くただれさせる=井上靖。幾重にも横に刷毛はけで掃いたや **しっぷ【湿布】** 頬にシップをあてたように迫ってくる露粉もい=高橋和。打ち身に湿布をあてる。のどに湿布をする。▼湿布する(患部を。傷のところを。氷で)。布に薬剤を染み込ませる。湿布薬をぺたぺたと張りつける=内田巻。 **じゅうびょう【重病】** 重病にかかっているのではないかと思われるほど弱々しい子=武田百。重病の(患者。床に就く)。▼重病人(瀕死にんの。虫の息の。身動きのできないほどの。全く枕から頭の上がらない有吉)。重病人のようにベッドでぐったりとする"小川。医者も匙だじを投げる重症。病気が重症になる。枕も上がらぬ(重病人。大病)。命にかかわる大病。立つこともできないような大病にかかる“新田。 **しゅじゅつ【手術】** ▼手術(一か八かの。緊急の。輸血を伴う)。手術が(失敗に終わる。成功する。無事に終わる)。癌細胞を手術で取り除く。手術に望みを持つ。早急に手術にかかる。手術の(結果を案じる。かいもなく亡くなる)。手術を(受ける。施す)。手術する(胃を。子宮を。のどを)。メスを執る。沈黙と緊張とが手術室いっぱいに漲泌なる佐藤巻。整形手術を受ける。切開する(患部を。歯茎を。腹を。膝を)。麻酔が(かかる。切れる。効き目をあらわす。かかったように眠る=向田)。麻酔から覚める。麻酔を(かける。注射する)。 **しゅよう【腫瘍】** ▼腫瘍(悪性の。良性の)。腫瘍が浸潤する。胃に腫瘍ができる。腫瘍を(摘出する。患う)。 **じょうざい【錠剤】** 糖衣に包まれた錠剤。錠剤を(飲じょうざいむ。服用する。手のひらに受ける)。錠剤を口に(入れ飲み下す。放りこむ)。一錠を口に入れる。言葉を丸薬のごとくごくりと一気に呑み込む=村松。丸薬のように言葉を呑み込む徳永。別れるときの辛さを毎日丸薬みたいに一粒ずつ服。んでいる感じ=田辺。 **しょうじょう【症状】** 症状が(悪化する。軽い。好転を見せる。急速に悪化する)。いろいろの症状が出る。症 <1117> # や **柔らかい**土。足音を立てない柔らかい歩き方=中局み。ビロードのように柔らかいいい声森现。軟らかい愛撫で女の肉体に話しかける=円地。ふわりとしたやわらかな土。やわらかに(波打つ黒髪。頬をなでる甘い匂い=住井)。腰がやわらかにくねくね動く。雪がひらひらとやわらかに落ちる。やわらかく(抵抗をかわす。盛り上がった唇)。髪を風がやわらかくなぶる。言葉をやわらかく受け止める。上体がやわらかくしなう。乳房をやわらかくつかむ。土を掘り返してやわらかく砕く。ドレスがやわらかく光る。床が靴音をやわらかく吸い込む。気持ちを柔らかく包みこむ連城。初冬の午後の陽光がやわらかく照る井上ひ。湯気がやわらかく顔をつつむ野問。柔らかく澄んだ音叉さんの音色藤枝。午後の日差しが柔らかく降り注ぐ小池。強張っていた筋肉がじわじわと柔らかくなる=加賀。柔らか(言葉が猫の手のように野間。手が幼児のように=光瀬)。音のやわらかさが伝わってくる。春の柔らかさが風景をすべて包む"小川。やわらかそうな泡のかたまり。軽く縮れたやわらかそうな髪。肉付きのやわらかそうな体つき。女の体が若草のように軟らかで暖かい“新田。骨のない軟骨だけのからだのようにグニャグニャと揺れる=坂口。しなしなした(女。体)。しんなりした野菜。ソフトな(タッチ。ムード)。人当たりがソフトな人。態度に軟化の兆しが見える=陳。軟弱な(地盤。路盤)。ぶよぶよと肉がつく。古綿を打ち返す。▼打ち直す(布団を。綿を)。ぐにゃぐにゃと腰が定まらない。躰炒らを軟体動物のようにぐにゃぐにゃにする=大江。骨抜きにされてぐにゃぐにゃになる。気力も精魂も尽き果ててもう心棒がないくらいグニャグニャする=坂口。ふにゃふにゃと(しまらない。やわらかい)。ふにゃふにゃした(男。精神)。やんわり(探りを入れる。忠告を受ける。なだめにかかる)。やんわりと断りの言葉を重ねる。やんわりした髪の毛の撫で心地にこ。 **綿【綿】**絶が(はみ出す。たっぷり入っている布団)。頭にいっぱい綿が詰まったような感じ=田中。綿で包んだような音がかすかにする=梶井。喉へ綿でもつめられたように立ちすくむ"小林多。会社での自分は終わりだという思いが綿に沁しみていく水のように身内にひろがる。山田太。綿のかたまりのような雲がぽっかりと浮かぶ藤沢。綿を(ちぎる。詰める。吹くように木々が若葉をつける=藤沢。雪のごとくにちぎれちぎれに四辺った一面にほうりつける=子母沢。指先でちぎったほどの大きさの雪"中沢)。座布団の綿をつつき出す。寝巻きに綿を入れる。黒ずんだ土の上に驚きさが綿を一つまみ投げたよう森岡。濃い朱色の雲が朱肉を滲にじませた綿をキャンバスに叩きつけたような形で散らばっている吉行。古綿のような雲がおおいかぶさる=堀。汚れた古綿のような闇菊池。体全体がふわりとして綿のよう谷崎。綿のような(乳房の手応え。やわらかい雪)。綿のように(疲れはてる。容人る。柔らかな雨)。煙が綿のようにちぎれて飛んでいく―大岡。ぬれた綿のように重くぐったりとした妹炒。長野。腹立ちを柔らかい綿のように包む連城。焼け残った綿のようにくすぶっている興奮高樹。雪が綿のように降る=子母沢。白っぽい綿くずが埃児にのようにつもる=野間。綿くずのような(徴かび。種)。総屑は炊のようにころがる死骸"阿部。脱脂綿を(押し込む。ちぎる)。真綿で首を(締めつけられるような息苦しさ"小林久。しめるようにやんわりと相手の息の根をとめる=木山)。真綿で針を包んだ言葉つき=村上元。赤い真綿のような火芥川。山々が一夜のうちにすっかり真綿のような雪におおわれる=水上。温かい声が真綿のように耳をつつむ=水上。真綿を薄く引き延ばしたような雲高井。そこかしこに薄く真綿を敷いたように雪が残っている志茂田。 大きな鉄の錨がいのように硬い心三島。トランクが鉄の塊でも下げているように重い=井上ひ。痩せた腕が鉄のごとく屈しない菊池。鉄は熱いうちに打て。鉄のような旅冷な態度!幸田派。鉄のように勁烈な掟=山田風。筋骨と度胸とを鉄のように鍛え上げる=有島。背中が汗で鉄のように光る=遠藤。手が鉄のように重い=堀。磁石に鉄のように引きつける荻野。神経が磁石に吸い寄せられた砂鉄のように一つの幻像の上に集注する有局。鉄材が真っ赤に錆びる。鉄分が不足する。鉄分を摂取する。金臭さが鼻につく。金気がなを(嫌う。去る)。金物臭さが口いっぱいに広がる"重松。鉄骨が雨にさらされる。赤黒い鉄骨が剣もき出しにそびえ立つ=日野。 **鉛【鈴】**頭が鉛でも詰まったように重い=小池。手足がだるく立ち停まればすぐにも鉛になってしまいそうな重さ=長野。鉛の(板のような疲労感が肩にのしかかる=五木。入ったような重い手をやむを得ず挙げる=阿川弘)。足が鉛の靴を履いているよう萩原突。重い鉛の足枷炳れをつけられたように一歩一歩歩いていく=遠藤。鉛のような(絶望が胸を圧ぉす"国木田。闇が一条の白い細い道に切断されている=加賀)。とすぐろい鉛のような重い気持ち芝木。鉛のように重い限り。長野。頭が溶けた鉛のように重く苦しくドロドロしている志賀。顔色が鉛のように悪い藤原。首筋から肩のあたりに鉛のように重い疲労感を覚える=小林久。鉛を(呑みこんだような重い気分小林久。張ったような曇り空岡本。胸にも足にも抱いたような重い心=黒岩)。心の底が鉛を呑んだように重いさだ。 **柔らかい【柔らかい】**やわらかい(タッチで書く。光が広がる。皮肉を言う。なめし革のソファー。髪の毛をふさふさ伸ばす=島尾)。空気の肌触りがやわらかい。手が絹ハンカチのように頼りないほど柔らかい=林。キャンドルのやわらかい光。ふかふかのやわらかい土。 <1118> # や ひめにを。目を真っ赤に。首筋を赤く)。腫れが(痛む。ひどい。なかなか引かない)。口唇火が輪郭を失うほど赤く地腫れしてふくらんでいる=黒井。▼腫れぼったい(顔が。目が。泣いたあとのように瞼が=水上)。腫れぼったい目に不服そうな影をたたえる三好徹。起き抜けの腫れぼったい瞼。寝不足気味な感じの腫れぼったい上まぶた=西木。寝不足のはれぼったいぽんやりした顔「小林多。不機嫌そうな腫れぼったい顔。一腫れぼったい目(眠そうな。寝不足で。細いやや)。哑れぼったくむくむ。みみず腫れができるくらい掻かく=林关。みみず腫れになるくらい強くぶつ=島田。煩っぺたがみみず腫れになる。みみず腫れのような盛り上がった一本の筋"梅本。頬に上から下へ三筋の蚯蚓ねんが這う井上ひ。 **びょういん【病院】** かかりつけの病院。病院から(連絡をもらう。医師を引き揚げる。駅へ向かうバス=重松)。病院で息を引き取る。病院に(通う。入院する。患署が殺到する)。救急車で病院に運ぶ。父を病院に入れる。定期的に病院に行く。よその病院に移る。人事不省になって病院に担ぎこまれる=椎名战。▼病院に駆けつける(仕事先から。取るものも取りあえず)。病院に向かう(救急車が。早歩きで)。病院の(ベッドが空く。古風な赤煉瓦は紛れの建物が中世の城砦にうか牢獄のように冷え冷えと孤独に立っている=加賀)。店と病院の往復を繰り返す。病院へ担ぎ込まれた時にはもう虫の息高木。病院を(退院する。たらい回しにされる)。他の病院を当たってみる。よろず屋のような安っぽい印象しかない総合病院"原田彩。医院を開業する。院内を(歩きまわる。案内する)。▼通院する(根気よく。病気で)。通院を怠る。病棟の回診に付いて回る。病棟を預かる責任者。療養所に入る。山の療養所の肌をしめつけるような冷たさ=掘。 **びょうき【病気】** 病気が(悪化する。重い。宿病しいびょうき **ぬりぐすり【塗り薬】** どろどろした油状の塗り薬。塗り薬を(患部につける。すり込む)。軟膏ぶんをすり込む。傷口に軟膏を塗る。膏薬にいを(塗る。はがす。貼りつける。もらって早速貼る)。石膏とうの型でも作るようにべたべた足いっぱいに膏薬を塗りこむ宮本頁。なかなか剣がれない膏薬のように面影が気持ちから剝がれない!連城。 **ねつさまし【熱冷まし】** 熱冷ましの座薬。熱冷ましを(口に含む。飲む)。解熱剤が効く。解熱剤を(投与する。飲む)。 **ねつびょう【熱病】** 熱熱病が(伝染する。はやる。流行する)。熱病にかかったように(体が熱い。目を光らせる)。熱を病む人のようにけだるさが全身にひろがる『庄野。熱病患者のように(ほてった煩。濁りきった頭を持て余す。有島)。重症の熱病患者のように身を慄ふるわせて唸っなる三島。熱病のように(蔓延した俗信。彼女を忘れていることができない。伊藤整)。解放的なものの考え方が熱病のように世円を風靡ぃぅする=石坂。眼に熱病患者に見るような直ぐにも火が点っきそうな凄すさまじい色を湛たたえる=菊池。熱病やみのように興奮する谷崎。癒こが(落ちたみたいにさっぱりした顔。取れたように一時に肩が軽くなる谷崎)。癒に(かかる。襲われたようにブルブルと五体を震わせる=獅子)。おこりのようなひきつけを起こす=渡辺。体じゅうが瘧のように震える船山。顔面蒼白咲ぐになって癒のように全身を頭ふるわせる"柴田練。癌病みのように身内が震える森。 **ノイローゼ** ノイローゼが高じる。ノイローゼに(陥る。かかる。なった挙げ句自殺してしまう)。ノイローゼを治す。神経衰弱にかかる。強度の神経衰弱に陥る。 **ばいきん【徴菌】** 培地に細菌を塗りつける。新しいビルが細菌のように繁殖する=鷺沢。細菌感染によって命を落とす。ウイルスが猛威を振るう。黴菌が繁殖する。ゴミが黴菌のようにごちゃごちゃと集団をなす!高見明。黴菌みたいな形の長い尻尾を生やした黒い埃児にがフワフワとそこらに飛び立つ高見町。黴菌みたいにうじゃうじゃいる落合。病菌に汚染される。 **はつねつ【発熱】** 四十度近い発熱が続く。発熱で床に就く。発熱に苦しむ。発熱を押して執筆する。額の夕オルがじきにお湯で絞ったように熱くなる=三浦哲。熱が(出て寝こむ。嘘のように下がる)。体に少し熱がある。突発的に熱が出る。容易に熱が下がらない。もちのような熱に絡みつかれる夏目。熱のせいで家中がシュールにゆがんで見える=吉本。風邪で熱を出す。身体がほてるように熱を持つ公村。微熱が(続く。とれない)。高熱が続く。高熱にあえぐ。高熱を(患う。おして試験を受ける)。夜中に高熱熱を出す。 **はれあがる【腫れ上がる】** ▼腫れ上がる(顔が紫色に。唇が赤黒く。瞼はぶが赤く。二目と見られないほど顔が藤沢。口が金魚のように瀬戸内。淋巴腺もんがが瘤こぶのように=高井)。顔が腫れ上がるくらい泣き通す瀬戸内。耳が願れあがるほど殴られる=中上。顔を岩のように腫れあがらせる=阿川弘。患部全体が瘤のように腫れあがる=井伏。 **はれもの【腫れ物】** 恶性の隠れ物。出物腫れ物所嫌わず。皿れ物ができる。腫れ物に(触るような態度!奥田。触るように取り扱う宗田)。家老達は腫れ物に触るように恐る恐る御前にまかり出でる菊池。腫れ物は膿ぅみを出さねば治らない柴田剣。願れ物を扱うように大事にする。立原。悪性の腫れ物のように触れることをはばかって頭から鵜呑ぅのみにする=中。おでき(お尻の。顔の)。おできができる。おできを治す。瘡かさができる。瘡をかく。首にぐりぐりができる。できものができる。できものを(切除する。治す)。 **はれる【腫れる】** ▼腫れる(顔が。瞼はょが。目が赤く。目の下がふくれ上がるほど=中沢)。▼腫らす(扁桃腺 <1119> # 病む・治る―368 になる。徐々に進む。手遅れになる。峠を越える。かなり進行している。非常な勢いで蔓延する。常に海に浮かんだ海藻のように波打っている=小川)。いまさら養生したところで快方に向かえないほど病気が進んでいる=渡辺。世にも不思議な病気が取りつく"江戸川。病気で(倒れる。気が弱くなっている)。奥さんを病気で亡くす。一生懸命に病気と戦う。真剣に病気と向き合う。病気に(苦しむ。かかって薬に親しむ身となる。有島)。忌まわしい病気に罹かかる。重い病気に取りつかれる。心痛のあまり病気になる。病気の(悪化を抑える。後遺症。蔓延を防ぐ。流行を抑える。本態を明らかにする)。病気への抵抗力を弱める。病気を(秘密にする。うっちゃっておく。押して帰国する。抱えて呻吟乳心する。口実に会社を休む。そっちのけにする。悲観して自殺する。よそにして出歩く)。父の病気を案じる。長い病気を気にする。寝ていたい口実に病気を装う。悪い病気を持っている。昔の病気がぶりかえす。悪い病気が(頭をもたげる。はやる)。病気再発に至る。かよわく病気がちな女鳥崎。病気療養に努める。鬼の霍乱。腎臓のあたりがしくしく痛む。臓器が機能不全に陥る。体調が思わしくない。中毒を起こす。入退院を繰り返す。寝たり起きたりの状態。臥せりがちの日々が続く。日夜枕から頭が上がらぬ有様=福永。枕も上がらぬようになる=長塚。寝込む(体をこわして。病気になって。無理がたたって)。悪疫が(はやる。蔓延する。流行する)。悪疾に悩む。黄疸ならが日増しに強くなる。慢性の疾患。持病が頭をもたげる。持病の(腰痛が悪化する。平癒を仏に祈る=長塚)。中風を(病む。患う)。闘病生活を送る。闘病を余儀なくされる。脳溢血で倒れる。脳梗塞にで(倒れる。寝たきりになる)。脳波に異常が発生する。▼発疹はい(赤い。粒状の)。発疹が出る。発疹をかゆがる。人々を病苦から解放する。病苦と闘う。病苦に(苦しめられる。さいなまれる)。病巣が(根深い。広がる)。病巣を(切除する。剔抉につする。取り除く)。病毒に冒される。病理(感染症の。癌がんの。社会の)。病歴を(調べる。尋ねる)。既往の病歴を調べる。腹水が溜まる。腹水を抜く。▼併発する(嘔吐感とと頭痛を。盲腸炎から腹膜炎を)。リューマチを(治す。思う)。アレルギーに悩まされる。アレルギーを起こす。アレルギー的症状を呈する。喘息ざんの発作で激しく咳きき込む。喘息患者のように咳きこむ=大藪。喘息患者の息づかいのような電気ストーブの小さな音丸谷。喘息の発作のような苦しげな息づかい=日野。 **びょうご【病後】** ▼病後の(衰えた体。回復期)。手術後の経過が不良。手術後の経過は良好。術後の経過が悪い。病み上がりで(体調はまだ万全ではない。まだ体が弱っている)。病み上がりの体を気遣う。病気の予後。予後が(良好。はかばかしくない)。手術の予後が思わしくない。予後の容態が悪化する。予後を養生する。 **びょうしつ【病室】** ▼病室が満室になる。病室から忍び泣きの声が漏れてくる三好微。病室に(顔を出す。見舞いに行く。足を踏み入れる。面会謝絶の札がかけられている三好旅)。家族が病室に集まる。消游薬のにおいが病室に充満する。取るものも取りあえず病室に駆けつける。ほとんど毎日病室に詰めている。病室の回診に行く。みんなが一度にどっと見郷いにやってきたので病室は豆が爆はぜたようなあんばいになる=灰谷。医師が病室を回診する。静かに病室を出て行く。忍び足で病室を出る。 **びょうしょう【病床】** ▼発熱の汗にまみれた病床。病床に(伏す。身を横たえる)。長年病床にある。危篤状態の母親の病床に駆けつける=高村茂。宿病しかのために病床に就く掘。病床を見舞う。死の床で書き綴っる。末期ぼっの床で遺言する。重病の床にある。病の床につく。病臥する(高熱を発して。長らく)。病臥の状態が続く。かねて病臥のまま。病臥を余儀なくされる。 **びょうじょう【病状】** ▼病状が(急変する。険悪に陥る。好転する。悪化の一路をたどる。一進一退を繰り返す。にわかに革さらまる。予想以上に悪化する。楽観を許さない)。病状が悪化する(急に。にわかに。刻一刻)。病状の改善が見られない。病状は予断を許さない。病状を(気にかける。かいつまんで語る。患者の目の前で喋しょってしまうなんて言語道断"海堂)。殆とど座に堪えぬほどの病勢"子母沢。病勢が(悪化の一途をたどる。一進一退の状況。急速に悪化する。次第に高進する。機関車のように総進にする=高村光)。髪の生え際に汗をためているのが病勢が進んでいる兆候のようで不安今日。 **びょうにん【病人】** ▼万一病人が出たときには心強い。病人にとりついている死霊。病人の(細い息。息が小刻みになる)。顔色が青ざめきって病人のよう戸板。枯れ木のような病人の顔「水上。瀕死いんの鳥のような病人の異様な目つき=堀。病人を(医者に診せる。背負って運ぶ)。まだ健康が回復しないぼろ布のような身体萩原葉。病人のような弱々しい声=池井戸。病人のように元気がない八谷崎。幾月も食事をとらなかった病人のように痩せ細る=遠藤。高熱の発作に苦しむ病人のように皮膚に汗を浮かべ青ざめる=大江。病軀びいに鞭打沁ちって朝鮮に渡る=山岡。病者の(苦痛。悩み)。病身な(か細い女。妻を抱える)。病身を(いたわる。使する。たてにずいぶんわがままをする=中)。 **ひょうのう【氷嚢】** ▼水涎を(取り替える。額に当てる)。額に水褒を乗せる。水袋を額に当てる。氷枕を取り替える。頭を動かすたびに水枕の立てるブカンプカンという音がふなべりを叩く波のように鼓膜に伝わってくる=向田。日向臭い水枕のゴムの匂い向 <1120> # や 朽ちていく。恋の病に落ちる。心の病に迷いこむ。▼病に冒される(重い。精神の)。▼病に陥る(精神的な。瀕死いんの)。▼病に倒れる(妻が。働き手が。母が。突然に樹木が倒れるように辻井)。病は気から。病や苦難に耐えかねる。病を押して出かける。原因不明の病を抱える。恐怖に由来する仮病。仮病を見抜く。 **やむ【病む】** ▼病む(胃を。脚気を。心を。神経を。精神を。胸を。乱暴な生活のために肺を"大岡)。病める(現代文明。心)。病める(後腹が。歯が)。体に変調をきたす。心身に障害をきたす。精神に錯乱をきたす。 **ようじょう【養生】** 養生に(専念する。努める)。養生する(病気の予後を。気長に。ゆっくり。ゆるゆると)。傷養生をする。日頃の摂生がものをいう。医師の注意を守って摂生する。▼養う(傷を。病を。悪い身体を温泉地に島崎)。▼身を養う(病気の。病後の)。 **ようだい【容態】** 谷態が(落ち着く。重くなる。思わしようだいくない。気になる。急に悪化する。急に変わる。あまりよくない。はかばかしくない。日に日に悪くなる)。病人の容態が急変する。容態が急変したという知らせが病院から入る三好成。容態の急変を伝えられる。容態を(回復する。尋ねる)。患者の容態を把握する。病態が(変化する。はかばかしくない)。 **りょうよう【療養】** 療養に(専念する。努める)。予後の療養に出かける。療養の床にある。▼療養する(落ち着いて。自宅で気ままに)。療養生活を続ける。療養地の身を噛むような孤独"梶井。屋根を泌のように拡げたサナトリウムの建物"堀。 **わずらう【患う】** ▼患う(悪疾を。胃潰瘍を。眼病を。四百四病を。心臓を。精神を。熱病を。脳を。肺を。胸を。目を。肋膜拓くを)。いたいたしいほど痩せ細り長く思う日がつづく辻井。長患いの(妻を抱える。病人)。▼中ぁたる(暑さに。気に。毒に。毒気に)。気がある(肝臓病の。糖尿の)。 **びょうま【病魔】** 病魔が(襲いかかる。全身を駆け巡る)。病魔と戦う。病魔に(冒される。襲われる。取りつかれる)。病魔を克服する。 **ひんけつ【貧血】** 貧血で(倒れる。めまいがする)。貧血を起こした人のように相手の胸に倒れかかる=勝目。貧血を起こして(卒倒する。倒れる)。顔から急激に血が引く=松浦。貧血気味の青白い顔。 **ふきでもの【吹き出物】** 取るにたらないちっぽけな吹き出物=森環。吹き出物ができる。あせもができる。じんましんが(できる。出る)。じんましんをかゆがる。体じゅうに赤いぶつぶつが吹き出す。ぼつぼつが顔にできる。 **ふけんこう【不健康】** 不健康な(青白い顔。遊び。食品。肉体)。日頃不健康な書斎生活に終始する今日。健康が(思わしくない。勝れない。日一日と損なわれていく。目に見えて芳しくなくなる)。めっきり健康が衰える。不健全な(体。思想)。青少年に不健全な影響を与える。 **ふせっせい【不摂生】** 長年の不摂生がたたって肝硬変になる。不摂生な生活。不摂生によって病気になる。不摂生を感じさせる顔。暴飲暴食がたたる。暴飲暴食で体を壊す。暴飲暴食を慎む。 **ほっさ【発作】** 胸骨のきしみが聞こえてきそうなひどい発作人間。発作が(数分続く。穏やかに治まる)。脳溢血20げいの発作で倒れる。狂的に近い発作にとらわれる。咳せきの発作に見舞われる。▼発作に襲われる(怒りの。悪寒の。笑いの)。発作の(嵐が去る。波がひく)。胸の奥に潜んでいる発作の火元をなだめるようにゆるやかな口調で話す〃小川。▼発作を起こす(頻繁に。病気の)。発作のような号泣がおさまる=高見明。 **まめ【肉刺】** 足にまめができる。手のひらにまめをこしらえる。手のひらのまめをそぐ。血豆ができる(手に。指に)。血豆を針でつぶす。足にたこができる。耳にたこができるほど何回も言われる笹沢。魚ぅぉの目が日増しに固くなる。魚の目の痛みが旅にみる"高村茂。 **みょうやく【妙薬】** ▼妙薬(浮気封じの。秘伝の。不老不死の。効験あらたかな)。妙薬を(味わう。見出す)。▼秘薬(不老長寿の。若返りの)。秘薬を(手に入れる。飲む)。良薬は口に苦し。▼霊薬(家伝の。万能の。不老不死の)。 **むくむ【浮腫む】** ▼むくむ(顔が不健康に。顔が青黒く。顔が青白く。蜂に刺されたように顔が=新田。あらわな足が白風の天女の足のように"大岡)。むくみが(引く。日に日にひどくなる)。全身にむくみが現れる。むくみが来る(足に。まぶたに)。 **むしば【虫歯】** 虫歯が(疼ぅずく。ずきずきする)。虫歯を(こらえるような顔人合川。冷やすように口をひん曲げて音たてて息を吸う梅本)。虫歯のようにズキンズキン痛む=梶井。頭のシンが虫歯のように痛い三田。 **むしばむ【蝕む】** ▼蝕む(老いが体を。後悔が心を。病魔が胸を。風景を潮風の中の塩分のようなひりひりする悲哀が三島)。現実にむしばまれて行く歳月林美。▼蝕まれる(心が。人間性が。悪しき霊に。体が病気に。癌がんに。つらい思いに)。▼毒される(俗悪な文化に。都会の生活に。流行の思想に)。 **やくそう【薬草】** 薬草を(陰干しする。こまかに刻む。煎じる)。傷口に薬草を張り付ける。煎じ薬を(煮出す。飲む)。煎薬を(注ぐ。飲む)。薬湯を(煎じる。飲む。湯呑みに注ぐ)。 **やまい【病】** 心に巣くった癌がんのような精神の病加賀。病膏肓こうに入る。病が(相当に進む。持ち直す)。一夜にして病が蔓延过从する。胸に病が巣食う。病と闘う。病に(身が細る。蝕むしまれた体)。飢餓と病に田。水枕を取り替える。 <1121> # 柔らかい・固い **ぎん【銀】** 銀の(糸を張ったように落ちてくる大粒の雨"山本別。鈴を鳴らすような接吻洲小松太)。笑い声が銀の弓弦のみが鳴るように胸を震わせる=光瀬。朝日を受けて銀を流したように光る海大佛。池が銀を焼き溶かして満たたえたように光る=川端。銀のような白い髯ひげ=田山。曇った銀のような薄白い明るみが拡がる=芥川。湖水が銀のように空を映して光る=石川。降り積んだ雪が日を受けた所は銀のように雲の蔭になった所は鉛のように妙に険しい輪郭を描く有島。帆かけ舟の帆が銀のようにかがやく=中。水に浸されて銀のように光っている岸の草長塚。銀帆がのような大粒の雨が青々とした若葉に降りそそぐ"徳田。薄討すの穂が銀のように日影に光る=田山。川が細い銀線みたいにキラキラ光って見える太宰。毒と文化を銀粉のようにまき散らす“阿久。銀粉を(ぶちまけたような明るい青空海音寺。撒いたような陰影=国木田)。 **きんぞく【金属】** 金具がゆるむ。金具を締める。金属が(腐食する。ぶつかる鈍い音)。金属の冷たさが手に伝わってくる。金属のような光沢をもった目多岐川。海が冷えて重々しい金属のような波に揺れ動く"加賀。海が脂の付いた灰色の金属のようにぼっと光る=笙野。落日の光が金属のように色が冷たい!大佛。貴金属を(質に入れる。身につける)。耳障りな金属質の声。目に鋭い金属質の光を湛たたえる!高橋三。金属疲労が発生する。口金を(閉じる。開く)。真鍮礼ちをかき鳴らすような声大庭。アルミニウムをぼあんぼあんとしなわせるような声に大庭。アルミの鍋蓋を重ねるような雑音!永井能。泡が水銀のように光る宮沢。七月の太陽が融とけた水銀のように輝く=安部。飛行機の翼に塗った銀の色が水銀のようにこぼれそうに鮮やかだ=大佛。海が波一つ立たず錫すずの板を貼り詰めたように鎮まっている=高井。こまかい錫の破片を浮かべたように日にきらめく爆撃機の機影阿部。油煙を塗った錫箔はげのようにべっとりと暗さがまといつく=安部。銅を磨いたような朝日が遠くの模試のの大樹を染めている獅子。日に焼けて赤銅れぶくのように光っている煩!菊池。 **きんぞくおん【金属音】** ▼金属音(耳を覆いたくなる。耳の奥にいきなり突き刺さってくるような日野)。シャリシャリッと軽い金属音が走る谷村。金属的な冷たい残響を耳の奥底に火「く=光瀬。かちりと金属の音がしてドアが開く。鍵束をちゃりんと鳴らす。刀の切っ先がちゃりんとぶつかる。硬貨がちゃりんと音を立てる。貯金箱に小銭をちゃりんと入れる。 **けんご【堅固】** 堅固な(城砦いうを築く。造りの門。陣跡地を構築する)。金属製の堅固なトランク。どうしても動かすことのできぬほど堅固な決心森喝。城塞を堅固に修築する。堅固不抜の世界を築く。道心堅固なクリスチャン。金城鉄壁の守り。金城湯池の要塞。金剛不壞んにの(信仰心。精神)。 **こうてつ【鋼鉄】** 弾力のある鋼鉄によく鞣なめした革を張ったように滑らかで美しい筋骨。柴田錬。川が一糸の鋼鉄の線をなして横たわる=大岡。白い鋼鉄の固さで空に突き出ている岩峰=新田。鋼鉄を水で溶かしたような海面が角立った波を挙げて岸を目がけて終日攻めよせる=有局。樫かしの並樹にぃが鋼鉄のような弾性でしなう~梶井。鋼鉄のように(黒々と磨きあげられたビルの表面"日野。寒く硬い山の姿有局。びかびか光る舗装道路"谷崎)。心が鋼鉄のように鍛えられる=小林多。水が鋼鉄のように冷たく重い=光瀬。鋼材を(加工する。削る)。鉄鋼を生産する。焼きを入れた鋼。風がすっかり冷え切って鋼の空には冬の予感がある=加賀。鋼のような硬い澄んだ音=光瓶。はがねのようにきびしい眼がゆるんで微笑が頬を明るくする=海音寺。枝が発条はぁぉのきいた鋼のようにしなう長野。体内に鋼のようにしなやかで強観には、うなものが張りつめるのを感じる"小林久。冷ややかな鉄の扉・村上春。芯に冷たい鉄の棒みたいに硬わりした髪の毛の撫で心地にこ。 **こうぶつ【鉱物】** 光線の当て方によって次々に色彩を変えていく多面体の鉱石のようにつかみどころがない=小林久。硫黄の唆もせるような濃い匂いが漂う原田爽。山の麓に雲みたいに白く拡がる硫黄の煙"高井。鉱石から金属を取り出す。夕日を受けると少し冷たい鉱石のように鈍く光る山=川端。月の光が鉱物質の硬さで樹木や敷石へ降りそそぐ=大江。 **じゅうなん【柔軟】** 柔軟で粘り強い性格。柔軟な(考えの持ち主。対応が必要。身のこなし。良識に富む文化)。柔軟に闘争を指揮する。視点を柔軟に変える。溶けだしたゼリーのような柔軟さ=長野。柔軟性に富むゴム管。図書隊の人貝運用はよく言えばフレキシブル、悪く言えばいい加減さが特色"有川。物柔らかなしゃべり方。 **てつ【鉄】** 鉄の(意志の男。胃の持ち主。鎖を断ち切る)。頭に鉄の輪をはめられたような痛さがずっと続く"新田。艦砲射撃と爆撃で鉄の雨を降らせる=阿川弘。黒い鉄の脚が黒い水のように光る=中島み。氷のように冷ややかな鉄の扉・村上春。芯に冷たい鉄の棒みたいな意志を埋める=本庄。大きな鉄の錨がいのように硬い心三島。トランクが鉄の塊でも下げているように重い=井上ひ。痩せた腕が鉄のごとく屈しない菊池。鉄は熱いうちに打て。鉄のような旅冷な態度!幸田派。鉄のように勁烈な掟=山田風。筋骨と度胸とを鉄のように鍛え上げる=有島。背中が汗で鉄のように光る=遠藤。手が鉄のように重い=堀。磁石に鉄のように引きつける荻野。神経が磁石に吸い寄せられた砂鉄のように一つの幻像の上に集注する有局。鉄材が真っ赤に錆びる。鉄分が不足する。鉄分を摂取する。金臭さが鼻につく。金気がなを(嫌う。去る)。金物臭さが口いっぱいに広がる"重松。鉄骨が雨にさらされる。赤黒い鉄骨が剣もき出しにそびえ立つ=日野。 <1122> # や に冷ややかな鉄の扉・村上春。芯に冷たい鉄の棒みたいな意志を埋める=本庄。大きな鉄の錨がいのように硬い心三島。トランクが鉄の塊でも下げているように重い=井上ひ。痩せた腕が鉄のごとく屈しない菊池。鉄は熱いうちに打て。鉄のような旅冷な態度!幸田派。鉄のように勁烈な掟=山田風。筋骨と度胸とを鉄のように鍛え上げる=有島。背中が汗で鉄のように光る=遠藤。手が鉄のように重い=堀。磁石に鉄のように引きつける荻野。神経が磁石に吸い寄せられた砂鉄のように一つの幻像の上に集注する有局。鉄材が真っ赤に錆びる。鉄分が不足する。鉄分を摂取する。金臭さが鼻につく。金気がなを(嫌う。去る)。金物臭さが口いっぱいに広がる"重松。鉄骨が雨にさらされる。赤黒い鉄骨が剣もき出しにそびえ立つ=日野。 **こうてつ【鋼鉄】** 弾力のある鋼鉄によく鞣なめした革を張ったように滑らかで美しい筋骨。柴田錬。川が一本の鋼鉄の線をなして横たわる=大岡。白い鋼鉄の固さで空に突き出ている岩峰=新田。鋼鉄を水で溶かしたような海面が角立った波を挙げて岸を目がけて終日攻めよせる=有局。樫かしの並樹にぃが鋼鉄のような弾性でしなう~梶井。鋼鉄のように(黒々と磨きあげられたビルの表面"日野。寒く硬い山の姿有局。びかぴか光る舗装道路"谷崎)。心が鋼鉄のように鍛えられる=小林多。水が鋼鉄のように冷たく重い=光瀬。鋼材を(加工する。削る)。鉄鋼を生産する。焼きを入れた鋼。風がすっかり冷え切って鋼の空には冬の予感がある=加賀。鋼のような硬い澄んだ音=光瓶。はがねのようにきびしい眼がゆるんで微笑が頬を明るくする=海音寺。枝が発条はぁぉのきいた鋼のようにしなう長野。体内に鋼のようにしなやかで強観には、うなものが張りつめるのを感じる"小林久。 **こうぶつ【鉱物】** 光線の当て方によって次々に色彩を変えていく多面体の鉱石のようにつかみどころがない=小林久。硫黄の唆もせるような濃い匂いが漂う原田爽。山の麓に雲みたいに白く拡がる硫黄の煙"高井。鉱石から金属を取り出す。夕日を受けると少し冷たい鉱石のように鈍く光る山=川端。月の光が鉱物質の硬さで樹木や敷石へ降りそそぐ=大江。 **じゅうなん【柔軟】** 柔軟で粘り強い性格。柔軟な(考えの持ち主。対応が必要。身のこなし。良識に富む文化)。柔軟に闘争を指揮する。視点を柔軟に変える。溶けだしたゼリーのような柔軟さ=長野。柔軟性に富むゴム管。図書隊の人貝運用はよく言えばフレキシブル、悪く言えばいい加減さが特色"有川。物柔らかいなしゃべり方。 **てつ【鉄】** 鉄の(意志の男。胃の持ち主。鎖を断ち切る)。頭に鉄の輪をはめられたような痛さがずっと続く"新田。艦砲射撃と爆撃で鉄の雨を降らせる=阿川弘。黒い鉄の脚が黒い水のように光る=中島み。氷のように冷たい鉄の棒みた 輪に金を着せる。夏の朝の日光がいちめんに板金のように打ち延ばされて郷く三局。金塊に取りつかれた男たち。金鉱が相次いで発見される。金箔を貼る。金粉を散らす。巨大な娘が金粉をまきちらした後のように見える街"村上春。竹の芽からふき出たような露が黄金より奇麗に光る=梅本。大枚の黄金を貰う。砂金を溶かし込んだように海が輝く“村山。両側から黒い山なみの稜線也もに、うに狭められた星空がちかちかと瞬く砂金の川のように見える三浦哲。砂金のように濃こまかく汗の玉が吹き出る=岡本。二人だけの記憶の時間がお互いの胸の底にきらめいて砂金のように鮮やかに翻る!大佛。 **ぎん【銀】** 銀の(糸を張ったように落ちてくる大粒の雨"山本別。鈴を鳴らすような接吻洲小松太)。笑い声が銀の弓弦のみが鳴るように胸を震わせる=光瀬。朝日を受けて銀を流したように光る海大佛。池が銀を焼き溶かして満たたえたように光る=川端。銀のような白い髯ひげ=田山。曇った銀のような薄白い明るみが拡がる=芥川。湖水が銀のように空を映して光る=石川。降り積んだ雪が日を受けた所は銀のように雲の蔭になった所は鉛のように妙に険しい輪郭を描く有島。帆かけ舟の帆が銀のようにかがやく=中。水に浸されて銀のように光っている岸の草長塚。銀帆がのような大粒の雨が青々とした若葉に降りそそぐ"徳田。薄討すの穂が銀のように日影に光る=田山。川が細い銀線みたいにキラキラ光って見える太宰。毒と文化を銀粉のようにまき散らす“阿久。銀粉を(ぶちまけたような明るい青空海音寺。撒いたような陰影=国木田)。 **きんぞく【金属】** 金具がゆるむ。金具を締める。金属が(腐食する。ぶつかる鈍い音)。金属の冷たさが手に伝わってくる。金属のような光沢をもった目多岐加賀。海が脂の付いた灰色の金属のようにぼっと光る=笙野。落日の光が金属のように色が冷たい!大佛。貴金属を(質に入れる。身につける)。耳障りな金属質の声。目に鋭い金属質の光を湛たたえる!高橋三。金属疲労が発生する。口金を(閉じる。開く)。真鍮礼ちをかき鳴らすような声大庭。アルミニウムをぼあんぼあんとしなわせるような声に大庭。アルミの鍋蓋を重ねるような雑音!永井能。泡が水銀のように光る宮沢。七月の太陽が融とけた水銀のように輝く=安部。飛行機の翼に塗った銀の色が水銀のようにこぼれそうに光る=大佛。海が波一つ立たず錫すずの板を貼り詰めたように鎮まっている=高井。こまかい錫の破片を浮かべたように日にきらめく爆撃機の機影阿部。油煙を塗った錫箔はげのようにべっとりと暗さがまといつく=安部。銅を磨いたような朝日が遠くの模試のの大樹を染めている獅子。日に焼けて赤銅れぶくのように光っている煩!菊池。 **きんぞくおん【金属音】** ▼金属音(耳を覆いたくなる。耳の奥にいきなり突き刺さってくるような日野)。シャリシャリッと軽い金属音が走る谷村。金属的な冷たい残響を耳の奥底に火「く=光瀬。かちりと金属の音がしてドアが開く。鍵束をちゃりんと鳴らす。刀の切っ先がちゃりんとぶつかる。硬貨がちゃりんと音を立てる。貯金箱に小銭をちゃりんと入れる。 **けんご【堅固】** 堅固な(城砦いうを築く。造りの門。陣跡地を構築する)。金属製の堅固なトランク。どうしても動かすことのできぬほど堅固な決心森喝。城塞を堅固に修築する。堅固不抜の世界を築く。道心堅固なクリスチャン。金城鉄壁の守り。金城湯池の要塞。金剛不壞んにの(信仰心。精神)。 <1123> # 柔らかい・固い-369 らかい土。足音を立てない柔らかい歩き方=中局み。ビロードのように柔らかいいい声森现。軟らかい愛撫で女の肉体に話しかける=円地。ふわりとしたやわらかな土。やわらかに(波打つ黒髪。頬をなでる甘い匂い=住井)。腰がやわらかにくねくね動く。雪がひらひらとやわらかに落ちる。やわらかく(抵抗をかわす。盛り上がった唇)。髪を風がやわらかくなぶる。言葉をやわらかく受け止める。上体がやわらかくしなう。乳房をやわらかくつかむ。土を掘り返してやわらかく砕く。ドレスがやわらかく光る。床が靴音をやわらかく吸い込む。気持ちを柔らかく包みこむ連城。初冬の午後の陽光がやわらかく照る井上ひ。湯気がやわらかく顔をつつむ野問。柔らかく澄んだ音叉さんの音色藤枝。午後の日差しが柔らかく降り注ぐ小池。強張っていた筋肉がじわじわと柔らかくなる=加賀。柔らか(言葉が猫の手のように野間。手が幼児のように=光瀬)。音のやわらかさが伝わってくる。春の柔らかさが風景をすべて包む"小川。やわらかそうな泡のかたまり。軽く縮れたやわらかそうな髪。肉付きのやわらかそうな体つき。女の体が若草のように軟らかで暖かい“新田。骨のない軟骨だけのからだのようにグニャグニャと揺れる=坂口。しなしなした(女。体)。しんなりした野菜。ソフトな(タッチ。ムード)。人当たりがソフトな人。態度に軟化の兆しが見える=陳。軟弱な(地盤。路盤)。ぶよぶよと肉がつく。古綿を打ち返す。▼打ち直す(布団を。綿を)。ぐにゃぐにゃと腰が定まらない。躰炒らを軟体動物のようにぐにゃぐにゃにする=大江。骨抜きにされてぐにゃぐにゃになる。気力も精魂も尽き果ててもう心棒がないくらいグニャグニャする=坂口。ふにゃふにゃと(しまらない。やわらかい)。ふにゃふにゃした(男。精神)。やんわり(探りを入れる。忠告を受ける。なだめにかかる)。やんわりと断りの言葉を重ねる。やんわりした髪の毛の撫で心地にこ。 **わた【綿】** 絶が(はみ出す。たっぷり入っている布団)。頭にいっぱい綿が詰まったような感じ=田中。綿で包んだような音がかすかにする=梶井。喉へ綿でもつめられたように立ちすくむ"小林多。会社での自分は終わりだという思いが綿に沁しみていく水のように身内にひろがる。山田太。綿のかたまりのような雲がぽっかりと浮かぶ藤沢。綿を(ちぎる。詰める。吹くように木々が若葉をつける=藤沢。雪のごとくにちぎれちぎれに四辺った一面にほうりつける=子母沢。指先でちぎったほどの大きさの雪"中沢)。座布団の綿をつつき出す。寝巻きに綿を入れる。黒ずんだ土の上に驚きさが綿を一つまみ投げたよう森岡。濃い朱色の雲が朱肉を滲にじませた綿をキャンバスに叩きつけたような形で散らばっている吉行。古綿のような雲がおおいかぶさる=堀。汚れた古綿のような闇菊池。体全体がふわりとして綿のよう谷崎。綿のような(乳房の手応え。やわらかい雪)。綿のように(疲れはてる。容人る。柔らかな雨)。煙が綿のようにちぎれて飛んでいく―大岡。ぬれた綿のように重くぐったりとした妹炒。長野。腹立ちを柔らかい綿のように包む連城。焼け残った綿のようにくすぶっている興奮高樹。雪が綿のように降る=子母沢。白っぽい綿くずが埃児にのようにつもる=野間。綿くずのような(徴かび。種)。総屑は炊のようにころがる死骸"阿部。脱脂綿を(押し込む。ちぎる)。真綿で首を(締めつけられるような息苦しさ"小林久。しめるようにやんわりと相手の息の根をとめる=木山)。真綿で針を包んだ言葉つき=村上元。赤い真綿のような火芥川。山々が一夜のうちにすっかり真綿のような雪におおわれる=水上。温かい声が真綿のように耳をつつむ=水上。真綿を薄く引き延ばしたような雲高井。そこかしこに薄く真綿を敷いたように雪が残っている志茂田。や **なまり【鈴】** 頭が鉛でも詰まったように重い=小池。手足がだるく立ち停まればすぐにも鉛になってしまいそうな重さ=長野。鉛の(板のような疲労感が肩にのしかかる=五木。入ったような重い手をやむを得ず挙げる=阿川弘)。足が鉛の靴を履いているよう萩原突。重い鉛の足枷炳れをつけられたように一歩一歩歩いていく=遠藤。鉛のような(絶望が胸を圧ぉす"国木田。闇が一条の白い細い道に切断されている=加賀)。とすぐろい鉛のような重い気持ち芝木。鉛のように重い限り。長野。頭が溶けた鉛のように重く苦しくドロドロしている志賀。顔色が鉛のように悪い藤原。首筋から肩のあたりに鉛のように重い疲労感を覚える=小林久。鉛を(呑みこんだような重い気分小林久。張ったような曇り空岡本。胸にも足にも抱いたような重い心=黒岩)。心の底が鉛を呑んだように重いさだ。 **やわらかい【柔らかい】** やわらかい(タッチで書く。光が広がる。皮肉を言う。なめし革のソファー。髪の毛をふさふさ伸ばす=島尾)。空気の肌触りがやわらかい。手が絹ハンカチのように頼りないほど柔らかい=林。キャンドルのやわらかい光。ふかふかのやわ <1124> **ゆめ【夢】** 夢(落ち着きの悪い不安な高尾。恐ろしい魔の支配する夏目。雲の行方みたいにふわふわさらわれてゆく芝木。子供じみたたわいもない=高井。ふわふわした綿飴のような佐藤隆)。夢が(現実になる。心の中で膨れ育って行く。容易に実現しそうにない。たちまちのうちにしぼむ柴田翔。ぼんやりと巡暮の中に溶ける山の風景のように曖昧になる=中上)。長の夢が結実する。回想と夢が分かち難く混じり合いながら絵巻物のように繰りひろげられる多岐川。大それた夢が恐ろしいほどにひろがる=水井路。長年の夢がかなう。夢が果てしなく膨らむ。夢から現実に返る。夢で吉凶を占う。胸を夢でいっぱいに膨らませる池井戸。夢と(うつつの境目がよくわからない=吉本。同じように空しく消える=福水)。一夜の夢と終わる。束の間の夢と消える。夢と現実が(交錯する。ごっちゃになる)。夢と現実との寸法が合ってくる=中村長。夢と現実のギャップ。恋としか思えない。夢とも現っっとも知れない錯覚。夢ならでは起こり得ない不合理さに満ちる=獅子。夢に(生涯を賭ける。母が浮かぶ。似た一夜を過ごす藤沢)。恐ろしい夢にうなされる。若者の夢に横槍ににを入れる。軽微な疲労から誘われる淡い清らな夢に入る=幸田露。根も葉もない海外雄飛の夢に憧れる三島。夢の(域を出ない。海を流れる。通い路を飛ぶ。河を渡る。また夢。繰り返しのような気がしてこころもとない=中沢。名残の甘い感覚が残る=大佛。破片をかき集める=連城。坩堝っにたたき込む=円地)。古い夢の墓場。兵どもの夢の跡。痺しびれる夢の水が体中にさーっと掛かったようにそのまま朝まで寝ている笙野。過ぎ去った昔の夢の跡をたどる=森殿。ファンタスティックな夢の宮殿萩原明。夢のある(悪戯か汰。話)。夢の世界に(遊ぶような陶酔!白洲。思いきり空想の羽をのばす連城)。夢の世界をさまよう。夢よもう一度。夢を(食って生きる。大事に育てる。未だに捨てない。一つひとつ実現していく。こわしたくないという切実な思い=戸板)。夜の夢を紡ぐ。科学の可能性に夢を託す。子供の将来に夢を賭ける。自分の夢を叶える。将来の夢を語り合う。問わず語りに自分の夢を話す。自分一人で勝手な夢を織る=円地。桃源平和の夢を楽しむ萩原朔。夢を一途に追い続ける。一夜にして莫大な富を得る必を心のどこかで追いつづける=飯田。青春の夢をうっとりと追っているような眼付き菊池。昔の夢につながる道楽。夢よりも淡い過去林美。糸を引くがことき連峰が夢よりも淡い=国木田。夢ではないかと疑う。「夢のない言い方。「夢も希望もない。夢破れて巻きに転落する。夢のような漠然とした印象志賀。人生は夢のようなもの辻井。とりとめもない夢のような話後藤。文字通り夢のような楽しい時間を過ごす"石川。夢のように半世紀を生きる=北村。青白い月光が夢のようにその辺の風物を包む"志賀。甘く優しい匂いが夢のように立ちのぼる=小川。安逸な生を食傷するほど貪って一生を夢のように送る=有局。いつかの夢のように遠いかすかな記憶"本庄。今までの生活が夢のように淡く薄れる菊池。電車や群衆の影が夢のように動く徳田。遠い日の夢のように印象が淡くなる=石坂。愛が儚い夢のように微かな匂いを残しただけで消えて行く=中村真。真夏の夜の夢のように無事に済む今日。夜気にうなだれた八重桜が夢のように仄白く咲く=海音寺。山も川もおぼろに霞んでひとつにとけ合っている風景が夢のように美しい!白洲。あられもない夢から醒める=日野。はっと夢からさめたように気がつく=江戸川。深い夢からさめたようにゆっくり目覚める=胡桃沢。迷いの夢から醒めたような思い=源氏。春夢からさめやらぬていで酸言ごとのように呟く柴田錬。夢から醒めたように(首を起こす。しばらくボンヤリそこに立っている=中河。ぼんやり眺める=円地)。夢からさめたように(周囲を見渡す。ぽっかり目を開ける=畑)。 **たいし【大志】** 大志をいだく。少年よ大志をいだけ。青雲の志に燃える。青雲の志を(いだく。得る)。 **たかねのはな【高嶺の花】** ▼高嶺の花(手の届かない。遠くから眺めているだけの"舟橋)。高嶺の花を望みすぎる。高嶺の花のような女篠田。 **むそう【夢想】** 童話的ファンタジーの夢想萩原朔。夢想が(現実になる。急速に色褪からせる=東野。砂を混ぜたか細い流れのように水たまりの形で止まり澱ょとむ=岸田)。甘い夢想が破綻する。夢想だにしない。あれこれと夢想にふける。夢想の花が開く=山田風。夢想を自分から振り払おうとでもするように荒々しく立ち上がる=堀。夢想する(永遠の愛を。英雄の出現を)。生活を夢想する(甘い。隠近いんの)。 **やしん【野心】** 野心が(頭をもたげる。日一日と露わになる。胸の中に芽生える)。野心がある(政界に。天下に)。野心に拍車をかける。野心の持って行き場がない。政治的野心を語る。大それた野心を抱く。胸の中に芽生えかけている野心を見抜く=村上元。やり方に売名を計算した野心家の匂いがある=開高。野心的な(企画。目標)。野心満々の人間。大望が重すぎてよろめいているのが僕の現在のこの姿だ太宰。大望に燃える。叶わぬ非無理やり非望を遂げる。天下を取るという野望。野望に胸を膨らませる。 **あこがれる【憧れる】** ▼憧れる(海の彼方に。まだ見ぬ恋に。清らかな生き方に。上品な暮らしに。リッチな世界に)。漠然と派手な生活にあこがれる=石坂。幼児のようにあどけないあこがれ=川端。子供の頃からの憧れ。憧れが堰せきを切ったように溢れる=半村。憧れに満ちた表情。憧れの眼差しを注ぐ。魂の記憶に刻まれた遠いあこがれのように愛しい吉本。漠然とした憧れを呼び起こす。密かな憧れを抱く。少年のように憧れを燃やす開高。恋の実現を憧憬する。 **くうそう【空想】** 空想(泰山を動かすような=梶井。夢のような楽しい=山手)。空想が頭に住みつく。埒もない空想が空に浮かぶ白い雲のように去来する=福永。空想と期待が膨らむ。奇妙な想に身をまかせる。現実離れのした空想に過ぎない。望みを空想に終わらせない。漠然とした空想にふける。豊饒けしな空想に孤独な心を満たす円地。空想の(世界に遊ぶ。翼を広げる。虜とになる。羽を伸ばす。虹に背を向ける岸田)。現実と空想の区別がつかない。心の赴くままに空想の羽根を広げる。天下の幸福を二人で背負って立つような空想の夢話"二葉亭。途方もない空想の世界をどんどんひろげる藤本。空想を(心に描く。育んで大きくする)。▼空想する(新しい社会を。恋の面白さを。金持ちの暮らしを)。突飛でお先走りな空想家開高。空想癖がつく。ファンタスティックで荒唐無稽のお伽話とばは萩原则。ファンタスティックな童話。雲をつかむような夢物語"杉木。夢物語を吹聴ふふちして熱っぽく語る=人用。 **しょし【初志】** あくまでも野ゃに在って初志を貫く"多岐川。初心忘るべからず。初一念を(貫く。翻さな)。先祖の初一念を今日まで守り通す。有吉。素志を貫く。 ゆ # 夢見る・憧れる-370 <1125> **ゆめごこち【夢心地】** 夢心地から我に返る。夢ごこちに泳ぐような手つきをしながらひと言ずつきれぎれ。何とはなしに夢心地になって歩く。夢を見ているような心地三浦絵。夢心地のようなとろけた長い声核。夢を見るような(目になる。トロリとした眼中局收)。夢路を歩む心地で古い記憶の端々を辿たどる=国木田。夢見心地(神韻縹渺し认以10とした捕捉しがたい谷崎。花びらの薫りの中にすっかり埋まってしまったような谷崎)。夢見心地で飛び跳ねながら帰る=内田稔。夢見心地の日々が過ぎる。 **ゆめのなか【夢の中】** 夢のなかからいきなり現実に放り出される=立原。夢の中から人を見るようにうっとりと見やる=有島。快い夢の中からただの現実的な日常の中に連れ戻される=高橋治。夢の中にしばしば現れる。重く苦しい夢の中にいる。半分夢の中にいるような状態。嫌な夢の中に吸い込まれているように止めることができない=外村。夢の中の(情景が頭にこびりつく。情感に似た放恣に、うで甘美な思い=日野)。なにもかもが夢の中の一齣ごまのように意識が希薄になる=阿刀田。夢の中を泳ぐ。 **ゆめみる【夢見る】** 夢見る(心地。頃を過ぎる)。夢見る(甘い未来を。栄光の生活を。大陸雄飛を。広い天地を。意識の底で。甘い結婚生活を。かつての光景の復活を。カムバックの日を。自己の立身の可能性を。自分流の世界を。過ぎし日の夢を。玉の輿こしに乗るのを。天上の浄土世界を。とこしえの天を)。ぼんやりして夢見る心地。だれも一度は夢見る晴れ舞台飯田。▼夢に見る(故郷の家を。何度となく)。夢を見る(切れ切れに。途方もない。うつらうつらと。うとうとしながら)。その日その日の夢を見て暮らす。夢を見て寝言を言う。夢路をたどる。夢にまで(見た好機。見てなつかしさに涙ぐんだ母国=平岩)。夢を(見ているのではないかというようにきょろきょろあたりを見廻す=曽野。見るように黙りこむ三田)。同じ夢をしばしば見る。苦しい夢を見ているような心持ち=徳田。母親の見果てぬ夢を娘に果たさせる=石坂。自らの描く遠い夢をうっとりと見やるような表情"村松。夢でも(見ているような頓狂な声椎名残るロマンティックな雰囲気大庭。域。見ているように茫然邨らとする=芥川)。夢見るような(心持ち。眼差し。気持ちで見守る=山本虎。トロリとした目つき人問)。うっとりと夢見るように眺める。黒い瞳が夢見るように大きく見開かれる"中島。見たばかりの夢の後味が濃厚に残る=松浦。夢の続きを(見ているのだと自分自身に言ってきかせるかのように再び目をつぶる=堀。見ようとするかのように何度もまばたきする=小川)。夢見がよい。昨夜は夢見が悪かった。 **りそう【理想】** 人間の手の届かぬ高みの理想加賀。胸中には炎々たる政治の理想が燃える=獅子。理想からは遥かに遠い。理想と(現実の接点。夢に殉じる。現実が乖離分ぃする)。社会革命の理想に燃え立つ=円地。理想の相手を見つける。夢に見た理想の食事。理想は幻想に過ぎない。理想を高く掲げる。一途な理想を抱いて生きる。現実が理想を裏切る=高田。▼理想化する(相手が持ちもしない美点をあれやこれやと数え上げて祭壇に祭り上げるというふうに相手を"野問。女を夢みたいに"干刈)。理想的な(父親を演じる。社会を想定する)。一人娘の結婚相手としては理想的な条件"吉村。現実論と理相論の大激突有川。 **ロマンチック** ロマンチックな(噂が絶えない。恋愛をする。想像をかきたてる。人間離れをした恋菊池。夜景が売り物のレストラン荻野)。若い女性のロマンチックな夢。月夜の海辺の岩によりかかって笛を吹きたいようなロマンティックな気分大庭。とほうもなくロマンチックな妄想安部。ロマンチックな夢のような話『野間。青年らしいロマンチシズムに燃える=美濃部。夢多き(乙女。青年。年頃)。夢見がちな(乙女。少女。少年時代。年頃。心を残酷に打ち砕く=中村)。ロマンティシズムが溢れるような言葉が並んでいる文章有吉。霞たなびく天の橋立のごとくロマンティックな虹色に輝く武田楽。なんとなく心に ゆ # 読む-372 <1126> # 予想する・推し量る **あてずっぽう【当てずっぽう】**当てずっぽうがずばり的中する。当てずっぽうな見積もりを立てる。当てずっぽうに(答える。探して歩く)。厳院にぶみの当てずっぽうにも程がある=長与。当て推量で言う。臆断を下す。 **うらなう【占う】**▼占う(相性を。運勢を。吉凶を。将来を。豊凶を。おみくじで。絞竹従いを使って。夢で)。物凄くよく当たる占い。トランプ占いに精を出す。占いを信じる。黙って座ればぴたりと当たる。当たるも八卦、当たらぬも八卦。易を立てる。どうか吉が出てくれますようにと神に念じる"江戸川。吉凶は(あざなえる縄の如し。人によりて日によらず)。吉凶を判断する。水晶玉に手をかざす。水品球の中に未来が見える。損な卦けを取りたくない!舟橋。手相を観る。八卦を見る。作物の豊凶を予測する。▼トばくする(今後の動向を。将来を)。 **おおかた【大方】**大方見当がつく。大方の(賛成を得る。予想がつく。予想を裏切る。支持するところ)。ざっと(家の中を片付ける。見たところ異常はない)。十中八九(当たっている。絶望的。成功するだろう)。十中八九まで間違いはない。いつも大概すれすれの滑りこみ。大概が大学生のアルバイト。大抵(いつも負けている。読んだ覚えのあるものばかり)。大抵の(女から嫌われる。悪口雑言に免疫性がある今項)。若い血気に任せて大抵のことはする"夏目。 **おくそく【臆測】**口から出まかせの勝手な臆測!強井。臆測が(乱れ飛ぶ。取り沙汰される)。様々な臆測が流れる。いろいろ勝手な憶測が行われるの井上靖。臆測で物を言う。無駄な臆測で神経を疲れさせる=安部。臆測の域を出ない。勝手な臆測を働せる。噂測する(原因を。理由を)。揣摩臆測しゅにふける。揣摩臆測を控える。 **おしはかる【推し量る】**▼推し量る(気持ちを。心奥を。当時の環境を。悲しみの深さを。人間の外見や行動からその人となりを=桐野)。一事が万事(あの調子だ。こんな具合。このていたらく)。この一事を以もってしても知ることができる=舟橋。事によると(来ないかもしれない。中止になるかもしれない)。推知する(価値判断を。心情を)。存在を推定する。危険の深浅を推量する。▼忖度だいする(相手の考えを。心中を。政治家の意向を)。山勘が当たる。山勘で答える。部分から全体を類推する。類推に基づく議論。馬締〈人名〉の意を汲〈み、西岡は悪代官のように笑った三浦し。▼汲み取る(意を。真意を)。実意を汲む。推察がびったり当たる。おぼろげにも推察がつかない。推察する(胸中を。事の成り行きを。女心の微妙な傷を大岡)。 **おそらく【恐らく】**おそらく(口を割るまい。勝ち目がないだろう。当選するのではないか。初めてだと思う)。けだし(名言である。想像するにかたくない。当然のことである)。たぶん(来ないと思う。成功しない。うまく行くだろう)。まず(心配はない。間違いない)。 **かんぐる【勘繰る】**いろいろと勘繰る。よほどの弱みを握られているのかと勘繰られる=佐高。下種の勘繰り。変な勘繰りをされないよう遠まわしに訊たずねる筒井。勘繰りすぎて妄想を起こす。▼邪推する(いろいろに。勝手に)。疑惑が邪推ではないことを確信す る。 **さぞかし**さぞかし(ショックも大きかっただろう。辛かったに違いない。愉快なことに相違なかろう)。若い頃はさぞかし美男だっただろう。さぞ(恐ろしい気がするだろう。がっかりしたに違いない。心苦しかったと思う)。さぞや(得意満面だろう。ひもじいことだろう)。苦労がさぞやとしのばれる。さだめし(軽蔑していることだろう。つらかったに違いない)。 **さっする【察する】**▼察する(時勢の動きを。電話の内容を。一言で万事を。人となりを。異常な事態の伏在を。意のあるところを。おぼろげに事情を。ただならぬ気配を。気持ちの動きを敏感に。気持ちを素早く)。・察するに余りある(遺族の無念は。驚愕しぶりは。屈辱は。子供を失った両親の心中は)。空気を察する(気まずい。まわりの)。察しが(いい。早い)。察しがつく(容易に。あらかた。うすっす。開かずとも)。▼嗅ぎ取る(気配を。懐かしさを。犯罪の匂いを。血のつながりを。微妙な亀裂を敏感に)。 **すいそく【推測】**▼推測(楽観的な。漠然とした。仮定に基づいた)。推測が(当たる。的中する)。推測で物を言う。推測と事実を峻別する。単なる推測に過ぎない。推測の妥当性を検討する。ほとんど推測の域を出ない。推測を重ねることに虚しさを覚える。推測する(あれこれ。手の内を様々に)。文脈から言葉の意味を推測しやすい三浦し。推測できる(ほぼ完全に。手に取るように)。独断に満ちた臆説。臆説が飛び交う。結果は推して知るべし。▼揣学しまする(いい加減に。先方の気持ちを)。 **よかん【予感】**▼予感(恋物語に発展しそうな。胸を弾ませる愉たのしい=中村真。余命いくばくぞというような死の子母沢)。予感が(脳裏をよぎる。胸に湧く。見事に的中する)。胸に予感が走る。予感が頭を(かすめる。もたげる)。唐突な予感に襲われる。稲妻のような予感にはっとする=壺井。予感の逃げ水を追って歩き続ける=山田太。迫りくる死を予感する。予感めいた胸騒ぎ。嫌な予感が(頭をかすめる。当たる。胸をかすめる。胸に込み上げてくる)。ふと嫌な予感がする。嫌な予感に襲われる。不吉な悪魔の仕業ででもあるような嫌な予感にゆすぶられる=檀。嫌な予感をいだく。暗い予感に襲われる。不吉な予感が(胸中に広がる。的中する)。不吉な予感に(打たれる。襲われる。緊張する)。不吉な予感を覚える。不気味な予感をいだく。悪い予感が(当たる。的中する。心に影を落とす。稲妻のように走る=内橋。のっぴきならない明瞭な形になる=丹羽)。悪い予感に脅える。嫌なことが起きそうな予感。暗い予感が頭をかすめる。何事かあるなという予感に緊張する今日。不安な予感が隙間風のように吹きこんでくる=日野。虫が知らせる。虫の知らせか何か気になる井上靖。身の終わりを予覚する。不幸にして悪い予想が当たってしまう。 <1127> **よげん【予言】**忘れようと努めても忘れることができない予言!今死。予言が(見事に当たる。ことごとく的中する。意表外の現実によって裏切られる内橋。的中したぞといわんばかりに胸を張る藤本)。予言の名に値する。▼予言する(死を。戦争の終結を。崩壊を。未来の凶禍を。日食や月食の起こる時刻を。恐ろしい未来を=阿久。暗い終末を確定的に"島尾)。預言者の言葉を引き合いに出す。未来の仕事に対して識しんをなしているかのごとく見える=本多秋。予言者のように(崇拝される。確信にみちて物語る=高橋和)。予言者(偉大な。神に匹敵する。ちょっとした)。予言めいたことを口に出す。 **よそう【予想】**各紙の予想が出揃う。不吉な予想が淡つも重なり合う。▼予想する(苦難の道を。未来を)。素早く先を読む。先を読んで働く。▼当たりをつける(およその。軽く。それとなく)。▼見当をつける(おおよその。大体の)。あらかじめ見当をつけておく。予期する(異変を。結末を。効果を。罪の発覚を)。予期したよりも遥かに元気。予期していた答えが返ってくる。予見の正しさが証明される。▼予見する(可能性を。危険を。時代の到来を。破局を。未来を)。予測の域を出ない。▼予測する(近未来を。前途の困難を。台風の進路を。次の行動を。豊凶を。落下地点を。起こり得べき事態を明確に)。▼予知する(運命を。危険を。凶変を。死期を。地震を)。予知能力が身につく。 **よそういじょう【予想以上】**予想以上に(困難な仕事。手間どる。病状が悪化する)。予想以上の(時間を食う。成功を収める。善凧をする)。事態は予想したよりも重大。申し込みが予想より遥かに多い。予想を遥かに(超える。上回る素晴らしさ)。想像以上で驚く。想像以上に(美しい。手ごわい敵)。力が想像以上に強い。予期以上の惨状に驚く。聞きしに勝る(頭の固さ。厳しさ。荒涼たる風景。絶景。美人。変貌ぶり。見事さ。行き届いた人。氷やかな美しさ)。 **よそうがい【予想外】**予想外に(多い。大きい。少ない。狭い。小さい。てこずる。長引く。早い帰還。広い)。危機は予想外に早くやってくる。予想外の(苦労を味わう。効果を上げる。事態に直面する。展開に愕然とする)。騒ぎが予想外の広がりを見せる。調整に予想外の時間がかかる!内橋。予想がことごとく褒切られる。外れる(予想が。予測が)。予想したほどに売れない。予想とかけ離れた事実。結果は予想と正反対。答えが予想と違う。事前の予想とは違う。予想に反して企画が通る=東野。予想を(裏切る。ことごとく覆す)。予測に反する。茶に相違した成り行き。案に相違の(仏頂面。人気に出くわす。抵抗にぶつかる人今東)。想定外を連発する。水物(試験は。勝負は。選挙は)。▼ハプニング(ちょっとした。とんだ)。ハブニングが起こる。不測の(アクシデントに見舞われる。死が待ち受ける)。不測の事態が起こらぬともかぎらない"司馬。不測の事態に備える。 **よそうできない【予想できない】**人生一寸先は闇。一寸先も(読めない。分からない。あてにならない)。起こらぬとも限らない(いかなる不測の事態が。いついかなる場合)。吉と出るか凶と出るか畑村。予期し得ない結果を招く。予想が(つかない。難しい)。予想だに(しないやり方。しなかった事故が続出する)。今日の今日まで予想だにしなかった。誰が予想できただろうか。予想もしていない事態に直面する。予測が(及ばない。困難。立たない。全くつかない。難しい)。勝負の帰趨ずは予測を許さない=今日。夢にも予期しない。全く予期しない反応。予期せぬ(抵抗に遭う。出来事。方向に進む。事態に対応できない。展開に混乱する)。突如として予期せぬ天異が起こる=阿刀田。予期に反して失敗する。 **よそうできる【予想できる】**ほぼ確実に予想できる。▼予想される(苦戦が。混乱が。最悪の場合が。前途の多雛が。強い反対が。難航が)。叔母に見つかったらこき使われるのが目に見えている藤沢。目鼻がはっきりつく。容易に予想がつく。▼見当がつく(あらましの。およその。犯人の。大体どのあたりか)。予測が(立つ。つく)。▼予測される(混乱が。本格的な攻勢が)。 **よそうどおり【予想通り】**予想通り(失敗する。成功する)。予想通りの(結果になる。強さを見せる。威力を発揮する)。ほぼ予想通りの答え。予想が(当たる。的中する)。予想と寸分違わない。予想にぴったりはまっている。予測が(当たる。見事に的中する)。案に違わず。果たして(恐れていた事態が生じる。ノートは見当たらなかった。その日のうちに参加申し込みがあった=篠田)。果たせるかな(一本もゴロが捕れない。注文が殺到した。パーティーは大成功だった)。はたせるかななんの連絡もなかった『永井路。案の定(落ちてしまう。おいでなすったな。受けつけてくれない。遅れてやってくる。議論は深まらなかった。不首尾に終わる)。▼図に当たる(計略が。作戦が。予想が。目論見が見事に=山本一)。 <1128> # 読む **エッセイ**エッセイを(書く。読む。連載する)。くだらないエッセイを書き散らす桐野。絶妙な紀行文を書き上げる。コラムを連載する。▼随筆(こくのある。珠玉の)。 **おんどく【音読】**▼音読する(四書五経を。詩を。本を)。朗々と音読するに足る名文。素読を(さらう。習う)。四書五経の素読を受ける。直読する(英文を。漢文を。原文を)。声を出してテキストを読む。 **かつじ【活字】**大きな活字の見出しが躍る=奥田。活字が(頭を素通りする。ぎっしり詰まる)。大きな活字が眼の中へ飛び込んでくる=山崎。細かな活字が眼に辛い=丸谷。活字に(目が止まる。飢えた思いを経験する。疲れた目をこする。対する飢餓状態が続く!泉優)。書いたものが活字になる。目がさっぱり活字に馴染なししまない。活字の(上を目が素通りする。海に眩暈を感じる"谷川)。広大な活字の世界に人をいざなう。目が活字の上を滑る。活字を並べてそれを一個ずつ区切るような言い方藤本。▼活字にする(言葉を。問答を)。活字のように(几帳面込めん。整った文字がぎっしり詰まった便箋"有吉)。 **かな【仮名】**仮名を漢字に直す。送り仮名を(つける。省く)。外来語にカタカナを当てる。仮名遣いを現代風に改める。ひらがなと漢字を取り混ぜて書く。ひらがなの多い文章。ひらがなを漢字に変換する。振り仮名を(つける。振る)。読み仮名を(つける。振る)。濁点をつける。ルビを(つける。振る)。 **かんじ【漢字】**▼当てる(漢字に訓を。和語に漢字を)。漢字ひとつにいたるまで細心の注意を払って作る"三浦し。漢字の(音を借りる。わずらわしい使用を避ける)。漢字を習い覚える。むやみに漢字を使う。漢文的表現をまぜる。漢語交じりの硬い文章。 **きゃくほん【脚本】**脚本(映画の。テレビの)。芝居の脚本を書く。小説を戯曲化する。戯曲を(上演する。初演する)。▼脚色する(小説を。翻訳を。テレビ用に。舞台用に)。事実を潤色して発表する。小説的潤色を施す。シナリオが狂う。頭の中にシナリオができている!宗田。シナリオに(修正を施す。沿って進む)。シナリオを(書く。考える)。シナリオ通りに運ぶ。▼スクリプト(映画の。テレビドラマの)。スクリプトを練り上げる。台本(劇の。ドラマの)。台本を書く。素読みする。手にして忙しく舞台の前を歩きまわる=円地)。目が血走るほど台本を読んで考える=有吉。 **げんしょ【原書】**原書で読む。原書の一部を訳出する。原書を(講読する。取り寄せる。読む)。原典にあたる。原典を(参照する。縫いもく)。テキストの異同を調べる。 **ごかん【語感】**言葉の持つ語感。語感に敏感な詩人。語感を大切にする。 **ざっし【雑誌】**▼雑誌(怪しげな。通俗的な。強面で鳴る。おふざけ企画で売る『篠田。地味で堅い内容の椎名誠)。雑誌が(山のように積まれる。乱雑に積んである)。新聞や雑誌に目を通す。雑誌のグラビアを切り抜く。恐らく雑誌の記事をそのまま暗誦したに違いない!獅子。雑誌を立ち読みする。手あたり次第に雑誌を読み散らかす。見当違いの雑誌を買ってしまう貫井。スノッブな女性雑誌『五木。同人雑誌に寄稿する=円地。婦人雑誌か何かで読んだらしい知識を持ち出す結城。月刊誌を(創刊する。編集する)。▼女性週刊誌(どぎつい謳うたい文句を表紙に縦横に印刷した高井。名の通っている後藤)。事あれかしと八方に目を配っている週刊誌"戸板。週刊誌を読む。 **し【詩】**詩(韻を踏んだ。恥ずかしくて目をそむけたしくなるような幼稚な西木。理に堕ちて散文的な三好送。生きていることを確かめられるような力に溢れた=山本島。線香花火のようにしきりに火花を飛ばす趣のある三好達。全体的に優れた品位の高い調子を保った三好達)。詩が(後世に残る。説明的に堕する)。寝ていて書けるような生易しい詩なんかない=福永。喜びを詩に残す。心境を詩に託して語る=三好微。詩の(一行を読むような澄んだ意識小川。国に足を踏み入れる=佐藤春)。詩を朗読する。すらすらと暗誦场认しする。プロパガンダに用いる)。抑揚をつけて詩を読む。古今東西の美しい詩をそらんじる=曽野。詩を書く(下手くそな。余技に)。関係が純然たる過去となって詩のように心に残る志賀。己れの詩業に半ば絶手する=中局救。・詩興を(誘う。呼び起こす)。詩句を口ずさむ。詩語の一つ一つが蝶の翼を彩る鱗粉んのように配列されている三好達。詩魂にあふれた作品。詩集を(愛読する。綴む。自費出版する。懐にする)。詩趣に富む。詩趣を満たたえる。作品にみなぎる清冽せな詩情!田辺。詩情ゆたかな魅力あふれる作品熊坂。心が詩情に満ちあふれる=大庭。詩情をそそる。日常の雑務を詩的世界に採り入れる三好達。詩的な(思いにふける。情緒的文章。言葉で胸をいっぱいにする)。甘い詩的な結婚生活=瀬戸内。幽かすかなさわやかな詩美といったような味覚が漂う梶井。派手な官能的な詩風"三好達。▶詩文(豊麗な。後世に残る優れた)。詩文の断片が耳に響いてくる柄。壮大な叙事詩。叙事詩的な語りくち。歌詞がまるでお子様ランチのように中局み。メロディーに歌詞をのせる。 **しいか【詩歌】**詩歌に心情を託す。血のにじむような苦吟。苦吟する(前衛的な曲を。いたずらに)。腰折れを書き流す。挽歌がん(哀れの深い。心にしみいる)。挽歌を詠む。現代人の感情の流露である短歌。感情を短歌に詠じる。折にふれて短歌や俳句を作る。短歌を詠む。和歌を詠む。朗詠する)。一首したためる。一首を詠む。俳句を(思書する。詠む)。季語になる折々の花。季語を俳句に詠み込む。句集を自費出版する。俳諧に深い造詣を持つ。俳句入りの紀行文。俳風を(受け継ぐ。旅立する)。 <1129> **しめん【紙面】**紙面がマンネリに陥る。紙面に活躍のさまが現れる。活躍のさまが手にとるように紙面に現れる=横光。贈賄容疑でこの間うちから紙面に名前を載せている=向田。紙面を食い入るように見つめる。原発事故の記事で紙面を埋める。数々の悲話がこまごまと紙面を飾る=阿川弘。昨日の紙面を忘れてしまう神経の図太さ=原田康。紙上を借りてお詫びする。 **じゅくどく【熟読】**▼熟読する(資料を。名作を)。じつくり読む。読む(丁寧に。報告を丹念に)。▼熟統玩味する(作品を。小説を。戦陣訓を。繰り返し)。新聞を精読する。読み巧者の精読に耐えうる作品真継。毎朝新聞の精読を欠かさない=東野。▼味読する(経典を。典籍を。名吧早説を)。論文を読み込む。 **しょうせつ【小説】**▼小説(自叙伝風な。而白い。史実に基づく。線が太い。スケールの大きな。海を舞台にした。渋くて思絵のような。自分の文学観を具現した。新鮮な魅力にあふれる。誰にもわかりやすい。満を持して発表した。ユーモアあふれる。生活とは無縁のような=瀬戸内)。小説が(ハッピーエンドで終わる。江湖の賞賛を博する=今東)。小説と事件を結びつける。小説に(綾ぁゃをつける。手を染める。挿し絵を入れる。託した寓意いうと謎。慰めと救いを求める)。無茶苦茶なねたを小説に組み込む葵。小説の(構想を練る。幅を広げる。筆を絶つ。執筆を依頼する。中のようなドラマチックな出会い森村。ネタに困って悩む。現実と小説の区別がつかない。ともすると逃げていきそうになる小説の主題"堀。事実と小説は別物。小説を(雑誌に発表する。引き合いに出す。なめるんじゃない=奥田)。新聞に小説を連載する。一小説を書く(ペンネームで。こつこつと売れもしない今更)。小説のように波瀾はらに富む。現実では小説のように話がうまく運ばない=本多秋。日常に潜む恐怖がテーマのサスペンス小説。三文小説的なブラットホームの別れ"原田康。小説作りのうまさには定評がある。小説的な契機に富んだ歴史の一こま。手っ取り早く金になる大衆小説束。甘ったるい通俗小説"高見町。骨太な冒険小説。血が逆流して肉が痙攣炒を起こすほど大冒険小説の魅力を感じさせる計画”獅子。ジュニアものに毛が生えた程度の恋愛小説!奥田。読み物(娯楽的な。低劣な。子供向きの)。連載小説を単行本にする。推理小説にのめり込む。家庭の崩壊を推理小説に仕上げる=常盤。推理小説のように事件が二転三転する!遠藤。ミステリーを(書く。読む)。▼短編(珠玉の。優れた。片々たる)。短編を(発表する。一つ書き上げる)。謎も思い入れも奥行きも感じられないつるんつるんの短編小説若竹。短編小説を(組み立てる。読む)。▼長編(地味な。秀逸な。重厚な)。長編が完結する。長編の(結構を備える。プロットを綿密に考える)。傑作の名にふさわしい長編小説斎藤美。長編小説を(書き上げる。構想する。読む)。 **しょてん【書店】**会社の帰りに書店に寄る。本になっしょてんて書店に並ぶ。小さな書店を開く。書籍売り場に足を運ぶ。本が店頭に(並ぶ。平積みになる)。街中の本屋が消えていく。本屋を何軒か回る。 **しょもつ【書物】**▼書物(大判のずっしりと手応えのある=黒井。日頃の心の棚とするような=島崎)。書物が(歴面を埋める。ひもとかれぬまま机の上に埃児にをかぶる=高橋和)。蒼古ごうとした書物が百年の齢にゃを持つ生き物のように黙って坐っている=有吉。恐るべき書物に触れるような恰好跡”で本棚を調べる=野間。書物の(海を泳ぐ。山に分け入る。表題が目に映る)。民話が書物の地層に化石化する!奥泉。書物を(通じての知識。恭しく卓上に置く夏目)。気の向くままに不可思議な古い書物を翻訳する"村上巻。読みさしの書物をばたんと閉じる=有島。文集に(載せる。減る)。文集を(編む。作る。まとめる)。 **しんぶん【新聞】**新聞か何かで読んだことがある。新聞が(事件を報じる。激情的な記事を掲げる。巨大な娥のごとく宙を舞う=横山)。すべての新聞がこぞって書き立てる。新聞から目を離す。新聞で大きく報道される。新聞に(さっと目を通す。ロ 新聞に(さっと目を通す。目が吸いつけられる)。醜聞を新聞にすっぱ抜かれる=永井荷。新聞にでかでかと(載る。書き立てられる)。▼新聞に載る(写真が。談話が)。新聞の(号外が出る。紙面に見入る。三面記事に小さく戒る。紙面を大きく飾る。社説で取り上げる)。新聞を(筒状に丸める。手に取る)。丹念に新聞を読む。ばさばさと新聞を折りたたむ。広げていた新聞をたたむ。ろくに新聞を読まない。一段組みの簡単な見出し。一面トップを張る。一面のトップに巨大な見出しが躍る=西木。一面の割り付けが決まる。壁新聞を掲示板に張り出す。新聞記事を読む。事件を報じる新聞記事を詳細にわたって検討する藤本。新開沙汰を起こす。新聞紙上を賑わした事件。新聞社に圧力をかける。新聞紙をちり紙交換に出す。号外で大事件を知らせる。社会面をにぎわす。朝刊を読者に届ける。ばさばさと音を立てて朝刊を広げる。 **たいさく【大作】**▼大作(超弩級結ょうどの。畢生めいの。読み進むのにちょっと骨の折れる=常盤)。大部の(書物。著作)。労作(十年を費やした。作者の画期的な飛躍を示す=白井)。 **でんき【伝記】**伝記に筆を染める。伝記を(書く。読む)。史伝を(書く。執筆する。読む)。立志伝中の人物。▼評伝(画家の。詩人の。政治家の)。評伝を編集する。 **どうわ【童話】**童話に出てくる都市のように美しい町=遠藤。童話の挿画のような傲慢にらと無邪気開高。ずっと昔に通りすぎてきた童話のように楽しい時代岩川。童話的ファンタジーの夢想萩原明。嬉々きさとして絵本作りにいそしむ"飯田。子供に絵本を読んでやる。傑作のメルヘンのように柔らかな心のなか〈深く沁しみ入る佐藤系。彼女の上手な話はメルヘンのように美しい=佐藤糸。ファンタスティックで荒唐無稽のお伽話せばば『萩原湖。お伽噺とじょに出てくる(王子様のように輝く金髪"中局み。魔の城のような煉瓦州んの建物=徳永)。御伽噺はじの時代に生きてきたような老夫妻=石坂。お伽噺みたいな雰囲気にひたってみるのも一興"太宰。冷酷すぎるお伽話をねだるような陰湿な子供の顔「藤本。 <1130> **どくご【読後】**読後に感動を与える。読後の興奮がしばし収まりそうもない=船戸。読後感(夕立が上がった夏の宵のような爽やかな佐藤隆。ひとりでに口もとがほころびるような"中村明)。強烈烈な読後感をもたらす。重厚な読後感を抱く。 **どくしゃ【読者】**読者に(衝撃を与える。話しかけるように書く)。以前からの読者にそっぽを向かれる。新聞を読者に送る。多くの読者に巡り合うことのできた幸せな作品『黒井。読者の(期待に応える。心に迫る。支持を得る。評価に待つ。胸を打つ)。読者の心を(つかむ。強く引きつける。捕らえて離さない)。読者を(念頭に置く。あっと言わせる=中島河)。事件が錆綜懇綿に似峠らして縺れながら読者をぐいぐい引き込んでいく"夏目。読者をぐいぐいとラストまで引っぱっていく。不可避的進行で無理やりに読者を引っ張っていく=キーン。広く一般読者に愛される。書き手の思いが読み手に伝わる。読む人の心に届く。読む者に期待を与える。読む者の(胸に強く響く。興味をかきたてる。心を激しく揺さぶる。等しく感じるところ)。読む者の心に(迫る。ぬくもりを与える)。 **どくしょ【読書】**読書に(精を出す。身が入らない。小一時間を費やす)。余った時間を読書に当てる。読書の自由を享受する=有川。秋の夜長を読書して過ごす。文庫本を読む。本を(読破する。読了する。読み散らす。読み始める)。悠々と本を読みふける。暇に任せていろんな本を読み漁ぁきる=倉橋。読書三味に(過ごす。ふける)。読書熱が高まる。読書離れに歯止めがかからない東野。本を読む(いろんな。一心に。系統的に。一人静かに。木陰で。じっくり。とりとめなく。夢中で。もっぱら。山ほど。手当たり次第に。めちゃくちゃに)。 **としょかん【図書館】**図書館が(開館する。閉館する)。本を図書館で借りる。朝から晩まで図書館で過ごす村山。図書館に本を返却する。図書館の利用者数が年を追って増加する=有川。図書が所狭しと書架をうずめている。図書を貸し出す。図書館みたいに徹かびくさい紙のにおい三浦し。せっせと図書館通いをする。 **パンフレット**パンフレットに紙を挟む。パンフレットを(手に取る。読む)。考えこむようにパンフレットを覗のぞきこむ「伊集院。冊子にまとめる。冊子を通読する。小冊子を(配る。作る)。 **ひもとく【繙く】**▼ひもとく(記録を。研究書を。書物を。地図を。著書を。日記帳を。古びた本を。文学史を。歴史を)。 **ビラ**ビラが無数にばらまかれる。ビラを(受け取る。手渡す。まく。読む)。街頭でビラを配る。折り込みのちらし。郵便受けにちらしが入っている。ちらしを(受け取る。配る。挟む。新聞に折り込む。丸めてごみ箱に捨てる)。 **ひろいよみ【拾い読み】**▼拾い読みする(新聞を。日記を。ばらばらと。ガイドブックを。ところどころを。パンフレットを)。豆粒を拾うようにボツリボツリ読小林多。走り読みで目を通す。走り読みする(書き置きを。ニュースを。メモを)。 **ふるほん【古本】**探していた古本を見つける。古い書物。神田の古本屋街へ足を運ぶ三浦背。古本屋の店先に一冊百円均一の店晒終公しが山と積んである荻野。古本屋を(あさる。数軒回る)。古書を(売りに出す。虫干しする)。古文書を解説する。写本が散逸する。写本を復刻する。 **ぶんがく【文学】**文学に(造詣が深い。憂き身をやつす)。文学への憧れが堰せきをきってあふれる=瀬戸内。文学作品を(鑑賞する。味読する)。文学書が本棚に並ぶ。いっぱしの文学青年をきとる。多分に文学的な比喩ひゅ。人に阿呆法は呼ばわりされながら文学一筋の道を歩く今東。文芸を耽読たんする。 **ほん【本】**時間という廊大な批評家に合格したすぐれた本=白井。本が(一冊も売れない。がたっと売れなくなる。読みたくてたまらない)。書棚に本がぎっしりと詰まっている。ばさりと本が床に落ちる。目ぼしい本がない。二冊の本が相次いで発禁になる=高橋克。本から顔を上げる。ゆっくり本から目を上げる。本に(かじりついてくそ勉強をする。対する敬意が微塵ふじも感じられない=有川)。共同研究の結果を本にする。本の(出版を思い立つ。世界に没入する。見返しに凡例を載せる)。ばらばらと木のページをめくる。本ばかり読んで暮らす。本を(本棚に並べる。一心不乱に繰る。数冊重ねて置く。そっとポケットに忍ばせる。たくさん買いこむ。店たなざらしにする。机の上に広げる。ばたんと閉じる。無造作に積み上げる。勢いよく音を立てて閉じる=結城。爆弾でも持つようにそっと手に取る=加賀)。所在なさそうに本をめくっている。胸に本をかかえる。目指す本を発見する。市民が本を自由に入手することが困難になる"有川。抱き止めるように本を受け取る=原田虎。マニアックに本を読む倉橋。読みたい本を取り上げられる痛みを知っている=有川。本を取り出す(一冊の。本棚から)。インクと紙とカビとがまじった本独特の匂いがただよう内海。しゃれた装丁の変刑末。献本(出版社からの。著者からの)。図書館へ献本する。押し花でしおりを作る。頭の疲れる難読の書。新刊書の棚を見る。インキも匂い立つような新刊本=田辺。図鑑で調べる。典籍を渉猟する。版を改める。名著と評されて現在でも版を重ねている=高橋克。表紙に題字が並ぶ。表紙をめくる。単行本として刊行された作品を文庫化する=高千穂。胞はから文庫本を出す。洋書を取り寄せる。落丁に気づく。乱丁を見つける。類書と比較する。本が多い。家のなかが本であふれかえっている。本棚が様々な本で埋まる。足の踏み場もないほど本の積みあげられた部屋中村真。一万冊の蔵書が詰まった書庫。壁を埋め尽くした膨大な書籍のコレクション=加賀。書籍の山にうずもれる。薄暗い部屋を囲むようにしてきちんと並べられている夥感しい数の書物。宮本輝。蔵書の数に富む。汗牛充棟の(書斎。蔵書)。浩瀚於心な(蔵書。著述)。万巻の書が積まれる。 <1131> をなぞる。肉細の書体。点字を読む。人文字を書く。 **まんが【漫画】** 手の平に乗るような小さな漫画内田巻。漫画に夢中になる。漫画の(キャラクター。世界に遊ぶ。吹き出しのように天井に浮かんだ白い煙。村上巻)。漫画を(描く。読む)。 **めいぶん【名文】** 名文(感動的な。一二を争う。達意の。ほれぼれする。音読するに足る)。彫琢さい、ぅに富む文章。彫琢を極めた文章。美文調で書く。美文調を含んだ詠嘆。美文を連ねる。 **もじ【文字】** 文字(几帳面信坊にな。素人目にも風格のある立派な佐野。墨痕あざやかにのびのびと書かれた=本庄)。文字が(頭に浮かぶ。目に入る。かすんで見える。瞳に突き刺さる。升目からはみだす。眼の前にちかちかと飛び廻る=海音寺)。細かい文字がびっしりと並ぶ。物騒な文字が跳梁はうする。平和という文字が目にしみる=林京。文字で記録する。文字に(老いが感じられる。目が吸い寄せられる)。印刷された文字に見入る。時の流れを文字に刻み上げる。文字の読み書きができる。▼字(あちこちに隙間があるような均整を欠いた乱暴な"黒井。絵のように遊んでいる黒井。おなかが減ったみたいなひょろひょろの"長崎。天道虫にいいのように丸々した頭も尻尾もない田辺。ひょろひょろと頼りない=田辺。丸味のある幅の広い=黒井)。字が(黒々と浮かび上がる。ひどく読みづらい)。サインペンで書かれた大きめの字が定規で計ったようにきれいに並んでいる=小川。細かい字で書く。字に乱れがない。子を真ん中に親子が川の字に眠る=平石。ちまちまと図案のような字を書く=内田卷。エジプトの古代神殿に彫られているような象形文字三浦し。一字一字に恨みの気持ちがにじむ遠藤。名前の一字を貰う。崩し字を(書く。判読する)。字間を(空ける。詰める)。字句を訂正する。異なる字体の混在を許す。字体を(変える。統一する)。字面から受ける印象。字面だけでは判断できない。目で字面ローマ字で(書く。サインをする。綴っっる)。 **ものがたり【物語】** ほとんど演劇的とも言えるほどの様式性を備えた物語"池澤。物語が(錯綜に氷を極める。ハッピーエンドで終わる)。幸福の物語に相応がきしいような結末・堀。淡々とした物語に物悲しい陰影にを与える=掘。他人の物語の中で人は生きられない=あさの。波瀾万丈似以従の物語を展開する=高見順。予定調和の物語を拒む"あさの。物語風の優しい想い出!中村兵。語り部が記憶している説話。名僧の説活に聴き入る。 **よみあげる【読み上げる】** ▼読み上げる(誓いの言葉を。帳簿の数字を。文章の一節を。声に出して。天まで響けと。さり気なく名前を。リストにある名を。かねて用意してきた原稿を美濃部)。 **よみあさる【読み漁る】** ▼読み漁る(古典を。様々な文献を。文学書を。秩序なく。暇に任せて)。本を(片端から読む。山ほど読む。乱読する)。▼読む(手当たり次第。いろんな本をめちゃくちゃに)。▼渉猟する(古今の典籍を。部厚い書籍を。文献を。厖大な史料を)。 **よみおえる【読み終える】** ▼読み終える(一冊を。全編を。手紙を。文面を。新聞を一通り。あっという間に。丸一日をかけて)。読了する(小説を。全巻を)。長編を読み切る。 **よみおとす【読み落とす】** 原稿の一部を読み落とす。読み過ごす(大事な記事を。何気なく。気にもとめずに)。読み飛ばす(一行。原稿の一部分を)。 **よみかえす【読み返す】** ▼読み返す(新聞を。何度も丹念に。暗記するまで。何度となく。二度三度と手紙を。気を落ち着けて。手ずれがするまで)。新聞記事を繰り返し読む。全編を再読する。再読の機会を得る。読み直す(記事を。原稿を。手紙を。初めから。よ)。 本を読む倉橋。読みたい本を取り上げられる痛みを知っている=有川。本を取り出す(一冊の。本棚から)。インクと紙とカビとがまじった本独特の匂いがただよう内海。しゃれた装丁の変刑末。献本(出版社からの。著者からの)。図書館へ献本する。押し花でしおりを作る。頭の疲れる難読の書。新刊書の棚を見る。インキも匂い立つような新刊本=田辺。図鑑で調べる。典籍を渉猟する。版を改める。名著と評されて現在でも版を重ねている=高橋克。表紙に題字が並ぶ。表紙をめくる。単行本として刊行された作品を文庫化する=高千穂。胞はから文庫本を出す。洋書を取り寄せる。落丁に気づく。乱丁を見つける。類書と比較する。本が多い。家のなかが本であふれかえっている。本棚が様々な本で埋まる。足の踏み場もないほど本の積みあげられた部屋中村真。一万冊の蔵書が詰まった書庫。壁を埋め尽くした膨大な書籍のコレクション=加賀。書籍の山にうずもれる。薄暗い部屋を囲むようにしてきちんと並べられている夥感しい数の書物。宮本輝。蔵書の数に富む。汗牛充棟の(書斎。蔵書)。浩瀚於心な(蔵書。著述)。万巻の書が積まれる。 **ほんずき【本好き】** 本好きが高じて(図書館に勤務する。本屋の店員になる)。よほどの本好きの仕業に遼いないと呪にらむ=高橋克。▼愛読する(小説を。詩を)。学究肌で書物の虫筒井。無類の勉強家で本の虫。 **まきもの【巻物】** 巻物を(開く。広げる。巻く。うやうやしく取り出す)。絵巻物にでもあるような池泉が床から平坦地一面にかけて掘りめぐらされ鯉が遊弋にする=今日。絵巻(華麗な。古風な)。昔の絵巻から抜け出してきたようにみやびやかな風俗芥川。永い絵巻のような夜"梶井。燦然ぜんと絵巻のように景色が展開する宮尾。思い出が絵巻物のように繰り拡げられる=梶井。回想と夢が分かち難く混じり合いながら絵巻物のように繰りひろげられる!多岐川。 <1132> **よみかき 【読み書き】** 読み書きを(教わる。習う)。ろくすっぽ字が読めない。目に一丁字もない。読み書きができない。一文不知心為弱の愚鈍の身。一文不通沁沁んの者。全くの無筆。 **よみきかせる【読み聞かせる】** ▼読み聞かせる(絵本を。法令を)。読んで聞かせる(弟に童話を。新聞を。草稿を。本を。しみじみと。出来事のあらましを)。▼朗読する(七言絶句を。送辞を。弔辞を。答辞を。決理由を)。震えながら判決文朗読を待つ被告=横山。 **よみごたえ【読み応え】** 読みごたえのある(小説。本)。読みごたえを感じさせる。読みでのある(厚い本。論文)。 **よみちがえる【読み違える】** ▼読み違える(漢字を。崩し字を。世論を。名前を)。▼読み誤る(漢字を。原稿を。潮目の変化を。情勢を)。読み間違いに気づく。▼読み間違える(漢字を。原稿を。名前を)。誤読する(漢字を。名前を)。 **よみつぐ【読み継ぐ】** ▼読み継ぐ(記事を。物語を)。▼読み継がれる(現代に至るまで。世代から世代へと。ロングセラーとして)。続きを読む。 **よみとおす【読み通す】** ▼読み通す(小説を。詩を。根気よく。一睡もしないで。難解な文学を辛抱して三浦米)。▼通談する(一冊を。全集を。テキストを)。読破する(一冊を。全集を。内外の作家を。片っ端から。膨大な報告書を)。 **よみとる【読み取る】** ▼読み取る(関心の深さを。さっと文面を。場の空気を。文章を正しく。言葉に現れないものを。表情から本音を。表情に逡巡しの心の色を。胸の内を冷静に。意を尽くさぬ文章の紙背までを=高橋礼。表情の微妙な変化を藤本。量的変化から質的変化を=畑村。車のナンバーを自動的に高村慈)。動きを読み取る(心の。表情の)。▼読み取れる(関わりの深さが。言動の端々に侮惑が。表情に気持ちがありありと=内田康)。あらゆる変化を読み切る。読み出す(データを。ファイルを)。▼▶読む(質問の意図を。その場の空気を。物事を裏の裏まで)。感情が態度から読み取れない。古文書を判読する。記事を深読みする。深い意味を読み取る。眼光紙背に(徹する。透る)。言葉の真意を深読みする。▼読み取る(言葉の裏を。言葉の真意を。文章の紙背を)。行間を読む。 **よみながす【読み流す】** ▼読み流す(手紙を。本を)。古文書を読み流すことができる。読み飛ばす(不要な個所を。さっと)。卒読する(駆け足で。一通り)。 **よみふける【読み耽る】** ▼読みふける(週刊誌を。小説を。一心に。戯曲に。小説に。新聞に。報告に。漫画の本に。本を朝まで。夢中になって。黙然と。殺気の漲扱ぇる中で悠々と本を"今東)。我を忘れるほど熱然心に読み耽る=田山。熱心に新聞を読む。▼耽読だんする(小説を。文学書を)。 **よむ【読む】** ▼読む(相手の腹を。技術の流れを。時代の風を。人の顔色を。人の心を。表情を敏感に。興味をもって。隅から隅まで。一通り。世の動きの一歩先を。遺書を涙とともに。相手の考えをすばやく。一字一句見逃すまいとして。関連本を何冊か。記事を最後まで。辞書と首っぴきで。社会面をくまなく。眉に唾をつけて。蚕が桑を食うようにめちゃくちゃに本を"臼井。消新な趣味に渇した人のように熱心に=田山。名優のように上手に=大庭。顔を吸いつけるようにして=松本。その場の呼吸を肌で夢枕。祝詞を悠長に声を張り上げて=長塚。本を隅から隅まで暗記するほど内田泰)。最初の数行を読み出す。あらかた読んでしきっ。活字の世界に浸る=佐野。もどかしくベージを繰る。眼が梢上には行の小鳥のように活字と活字の間を飛ぶ=徳永。▼読まない(およそ本を。ろくに新聞も)。立ち読みする(あとがきを。漫画本を)。▼読み下す(条文を。判決文を)。▼読み進む(一話一話を。小説を。手紙を。日記を。一編一編)。論文を読み進める。読みなれる(推理小説を。文章を)。▼関説する(資料を。文献を)。既読の(メール。メッセージ)。代読する(祝辞を。メッセージを)。必読の(書。本)。回し読みする(週刊誌を。本を。漫画を)。▼目で追う(活字を。文面を)。▼目を通す(書類に。文面に。レボートに)。一心不乱に文字を追う。一読に値する。一読の価値がある。▼一読する(年譜を。メニューを)。一読しただけでは分からない。一読してうなずける。閲覧する(書き込みを。台帳を。図書を。秘宝を。ウェブサイトを)。盗み読む(新聞を。蔵書を。肩越しに)。こっそり読む。未読の(本。メール。メッセージ)。未読を(既読に変える。チェックする)。未読と既読を区別する。むさぼり読む(雑誌を。小説を。新聞を。文献を。名文を。小説の中に大人の感情を探るように"佐多)。マルクスやレーニンの著作を貪るように読む辻井。雑誌を読み散らす。▼黙読する(姓名を。手配書を。本を)。黙って本を読む。読みかけの(雑誌。本。漫画)。読みさしの(雑誌。小説。本にしおりを挟む)。 **よめない【読めない】** ▼読めない(先行きが。場の空気が。腹が。表情が。全く先が。気が散って。展開がまるで。最後まで結末が)。腹の底が読めない人。堪えない文章(再読に。下手くそで読むに)。涕涙…はなはだしきがために読み続けるに堪えられない=司馬。不能の文字(解読。判読)。読むに(値するものではない。耐えない空疎なもの=浅川)。判読が難しい。読みにくい(文章。文字)。読みにくい(サインが。一寸見もなっには)。 **よめる 【読める】** ▼読める(楽譜が。考えが。誤解の原因が。魂胆が。下心が。話の先が。腹の中が。大体の筋書きが)。読みやすいサイン。きれいな読みやすい字。読みやすくする(文章を。訳文を)。 よ <1133> # 論じる **いぎ【意義】**人生本来の意義にかなう。意義のある仕事。意義を高く評価する。積極的な意義をアピールする。重要な意義を持つ。有意義な学生生活を送る。 **いけん【意見】**意見(己憚にたのない。どちらともつかぬ曖昧な)。意見が(鋭く対立する。二つに割れる。和談に傾く。二分したまま決着しない)。ことごとく意見が合わない。自由に意見が出る。全員の意見が一致する。長老の意見が一座を制する。複数の意見がある。腹蔵のない意見が聞きたい。三人の意見がまちまちで結論が出ない=加賀。意見に異論を唱える。自分の意見に固執する。社長の意見に逆らう。手厳しい意見に思わず首をすくめる束野。意見に耳を(かさない。傾ける)。意見の(一致を見る。衝突を繰り返す)。事ことに意見の食い違いを生じる。どの意見も五十歩百歩。どの派の意見哀公平に聞く。意見を(一本にまとめる。挟むタイミングを失する。はっきり口に出す)。親父の意見を聞こうともしない。簡単には意見を変えない。忌憚なく意見を交わす。自分の意見を押しつける。同僚から意見を集める。反対の意見を正面から打ち出す。人の意見をよく聞く。広く国民の意見を求める。前向きな意見を提示する。眉をひそめて意見をする。無責任に意見を翻す。会議で意見をはっきり主張する=三浦し。現場の責任者の意見を支持する"海堂。▼意見を言う(率直に。真っ直ぐに。ずばずばと)。面と向かって反対の意見を述べる=赤瀬川。意見を吐く(断定的な。乱暴な。真っ向から)。意見する(思い余って。それとなく)。意見する気が失せる。意見がましいことを言う。率直に意見交換する。 **いちづける【位置付ける】**▼位置づける(重要課題として。重要なパートナーと)。正しい位置づけを与える。価値付ける(事象を。生活を)。 **いみ【意味】**別の意味が言外に込められている。ある意味で正しい。建設的な意味を込めて言う。正確な意味を説明する。死に際に残した言葉の意味を悟る!宮部。重大な意味を束っかの間取り損ねる=森村。両者の符合に特別な意味を見出す綾辻。戦略上大きな意味を持つ。真の意味を理解する。言葉の意味が理解できない。言葉の意味を(汲くみ取る。取り違える。測りかねる)。質問の意味が(のみこめない。分からない)。まんざら意味のないことではない。言外に漂っている意味合い。意味合いが違う。意味ある一歩。意味内容を(同じくする。異にする。把握する)。意味不明の理屈をでっち上げる。狭義の概念。広義の概念。語義を(明らかにする。調べる。探究する)。▼語釈(回りくどい。分かりやすい)。語釈をつける。文意が(通らない。通る。不明)。本義を(とらえる。把握する)。 **いみづける【意味付ける】**意味づける(現在を。自分の弱さを)。意味を持たせる。▼理由づける(行動を。主張を。請求を)。 **えんぜつ【演説】**▼演説(聞き応えのある。美辞麗句を並べた雄弁な=美濃部。牧師が説教しているような"西木)。演説に(拍手を送る。鋭く演説をして歩く三島)。長々と演説をする。▼演説する(激烈な調子で。夢中になって)。一席ぶつ。一席を弁じる。演壇に(立つ。上る)。演説のように一所懸命な言いかた=深沢。演説口調で長々としゃべる。何かというと演舌口調で弁じ立てる!永井荷。各地を遊説して回る。▼講演(面目躍如たる。羊頭狗肉いいとうの)。ことわざで講演を結ぶ。下書きなしで勝演する。講演依頼が舞いこむ。▼スピーチ(諧謔ゅいょに富んだ。紋切り型の)。結婚式でスピーチを述べる。ぶっつけ本番でスビーチをする。 **かせつ【仮説】**一つの仮説に過ぎない。仮説の(域を出ない。上に立つ)。仮説を(立てる。要約する)。試論にすぎない。試論を提出する。 **ぎいん【議員】**特定の企業におもねる議具=伊坂。議員に立候補する。議員を(改選する。辞職する。リコールする)。代議員に選ばれる。 **ぎかい【議会】**議会が(成立する。不成立になる。流会する)。議案を議会に提出する。法案が議会を通過する。議席を(失う。得る。増やす。減らす)。 **ぎゃくせつ【逆説】**逆説的な(言い方。発想)。アキレスと亀のパラドックス。 **ぎろん【議論】**▼議論(侃々諤々紛い紛いの。人間を中心に据えた=柳田)。議論が(混迷を深める。下火になる。沸騰する。思うように進まない。次第に盛り上がる。ふっつり途切れる。分かれ紛糾する。器々に行として喧噪祈礼する萩原朔)。青臭い議論が鼻につく。議論に(火をつける。水をさす)。議論の余地のない事実。両方の議論は平行線。百の議論より一つの実行。議論を(有利に進める。堂々と開練する)。熱い議論を交わす。観念的な議論をもてあそぶ。国民全体を巻き込んだ議論を起こす。堂々と議論を喰わす。幅広い議論を巻き起こす。ややこしい議論を始める。喧嘩がんのような議論を闘わせる=鎌田。好戦的な態度で誰にでも議論を吹きかける=乃南。抽象的な議論を舞踊でもするように続ける=伊藤整。▼議論する(腰を据えて。力瘤ち紗らを入れて)。いまさら議論する気になれない。▼議論をする(滔々にうと。口角泡を飛ばして"北村)。いつまで議論しても堂々巡り。総論から各論に進む。総論發成、各論反対。数時間にわたって激論を交わす。所論を熱心に説く。熱く政治論を語る。政論を闘わせる。教育山題を談義する。料理談義に花を咲かせる。談論風発を楽しむ。紛議を(醸す。調停する)。全く筋の通らない暴論。暴論を承知で言い立てる。前置きを略して本論に入る。名吧早説が続出した会議。立論(しっかりした。論理が破綻した)。立論の根拠を示す。論客として名を知られている。各界から論客を募る。論説を(書く。読む)。論敵に一矢報いる。論敵を(言い負かす。完膚なきまでに説破する=中島敦)。正論だがわざとのように辛辣な物言いにやみくもに反発する=有川。正論でぐいぐい押す。正論は正しい、だが正論を武器にする奴は正しくない”有川。まっとうな正論を吐く。とんだ物議の種。▼物議を醸す(コメントが。発言が。常軌を逸した言動が)。 <1134> **げんろん【言論】**言論の自由を守る。言論を(圧迫する。姿稲させる。統制する。封じる。もって暴力に立ち向かう)。 **こっかい【国会】**文民統制の主体である国会。国会が機能不全に陥る。国会で(議論をたたかわす。苦しい答弁を余儀なくされる)。数万のデモ隊が国会を包囲する=井上ひ。立法の府。通常国会を召集する。 **しんぎ【審議】**▼審議(おざなりな。徹底的な)。審議が(空転する。ストップする。滞る。難航する。本格化する。暗礁に乗り上げる。大政翼賛会的になる=佐高)。審議に多くの時日を要する=津本。審議を(尽くす。引き延ばす。ないがしろにする。見切り発車する)。審談する(案件を。議題を。法案を。予算案を。慎重に)。審議会に(諮問する。諮る)。審議未了で廃案になる。 **すじみち【筋道】**筋道が明確になる。一本の筋道が成り立つ。考えの筋道が明らかになる。筋道の通った話。物事の筋道を整える。問題を頭の中で理論的に筋道をつけて考える=小林多。筋道を立てて(説明する。否定する)。理屈の筋道を(立てる。通す)。筋道立てて考える。事を分けて話す。情理が兼ね備わる。切々と情理を尽くす。情理を尽くして(頼む。提案を受け入れてもらう)。事理を(明らかにする。よくわきまえる)。課題解決への脈絡を考える。文脈から(切り離された発言。単語の意味を知る。言葉の意味を推測しゃすい三浦し)。文脈に応じて読み分ける。文脈を(異にする。持つ)。話を本筋に戻す。本筋を見失って迷走する。ほぼ本筋をつかむ。 **せろん【世論】**世論が(二つに分かれる。真っ二つに割れる。一時的な感情に沸騰する=安部)。世論から(乖離かぃする。非難される)。世論に(背を向ける。相当の影響力をおよぼす五木)。世論の(支持を得る。批判を浴びる。動向を気にする。反応を見る観測気球。方向を察知する)。世論を(敵にまわす。味方につける)。国民世論を味方にする。国論の統一を図る。国論を二分する問題。衆目の一致する結論。衆論が(一致する。賛否二派に分裂する。澎湃旧いと沸き起こる)。時代の奥論はろに従う。 **はんろん【反論】**答えと反論とを頭の中で戦わせる"はんろん丸谷。思いがけない反論に驚く。反論の(隙を与えない。余地がない。言葉が頭に浮かぶ)。具体的な反論の材料が手許にもにない=貫井。反論する(相手の言説に。即座に。批判に。まともに。怖ぉめず臆せず。気色ばんで。正面切って。手厳しく。堂々と。むきになって。猛然と。冷静な口調で。声を張り上げて)。反論する言葉を持ち合わせていない。反論することすらできずに立ちつくす。新しい説を駁ばくする。駁論ぶんを(試みる。たたかわせる)。反証(たしかな。有力な)。反証を挙げる。▼論駁以する(批判を。偏見を。相手の意見に)。反対意見が(多い。少ない。大勢を占める)。反対意見に(くらがえする。耳を傾ける)。反対意見を述べる。抹殺する)。反対論が根強い。反対論を(展開する。唱える)。実地に現状を見せて反対論を沈黙させる=山本同。もはや反駁んする気力もなくし溜め息混じりで肩を落とす有川。反駁の(言薬を探す。根拠を持たない)。反駁する(命令に。言下に強く。むきになって。習慣的な生き方に)。 **みんい【民意】**民意が付和雷同する。民意から遊離する。民意の審判を仰ぐ。民意を味方につける。選挙で民意を問う。民心が(乖離吵ぃする。離反する)。民心の安定を図る。 **みんしゅしゅぎ【民主主義】**民主主義が(確立する。形骸化する。根付く。根を下ろす)。民主主義に(対する暴挙。立脚した政治)。日本の民主主義なんてパイの皮みたいなもの=小林信。民主化を自分たちの手で闘いとる『五木。民主例の国家。民主的に協議する。国政を民主的に改革する。組織を民主的に運営する。独立民主の日本を打ち立てる。共和制の国。共和制を(布く。めざす)。デモクラシーを(圧迫する。繁栄に導く)。 **りくつ【理屈】**▼理屈(子供にでも分かる。自分に都合の良い。世問に通用する)。理屈が通らない。それなりに理屈が通る。とんと理屈が分からない。理屈で秩序立てた考え。難しい理屈で人をやっつける藤枝。理屈で相手を(言い負かす。ぺしゃんこにする=伊坂)。理屈ではとてもかなわない。理屈としては分かるが感情がついていかない=浅川。理屈に合わないことを言う。理屈の筋が通っている。つまらぬ理屈のこじつけ合い。感情に理屈の枠を張る=夏目。理屈は百も知っている。いろいろな理屈を並べる。しちむずかしい理屈をこねる。なんやかんやと理屈をつける。変な理屈を言う。真正面から理屈の木刀を抑ふるって先方の害毒の真剣と切り結ぶような不利なことをする=幸田露。身勝手な理屈を冷えた心のなかで織る=中村兵。酔うと理屈をねじ上げ人に食ってかかる=司馬。理屈っぽい人。なかなか理屈通りにいかない。 <1135> **りろん【理論】**実験より約三十年も先んじた理論。理論が観測によって裏付けられる。科学的な理論で武装する。理論と(実際を比べる。実践の統一)。理論に(依拠する。適う。拘泥する。凝り固まる。基づく。立脚する)。理論を(基礎にする。展開する)。理論的な誤り。理論的に(考える。整理する。分析する)。 **ろんぎ【論議】**論議(侃々諤々サいサいの。喧々囂々けんけんたる)。論議が(本格化する。上滑りに終わる。現実から遊離する。堂々めぐりする)。論談に終止符が打たれる。論議の輪に加わる。▼論議する(活発に。自由闊達がに。にぎやかに。やかましく)。 **ろんじる【論じる】**▼論じる(事故の背景を。時事問題を。人生を。戦争責任を。存在の是非を。哲学を。盗作か否かを。大真面目に。一章を設けて。別な方向から。天下国家の趨勢好いを。弁舌もさわやかに)。何もかも一緒くたにして論じるのは誤り“後藤。論じ合う(問題を。何事か熱心に。口角泡を飛ばして時局を=多岐川)。▼論じ立てる(人の道を。事々しく。熱弁で)。論及する(諸問題に。提案の不備な点に。私生活の面まで)。▼論述する(意見を。研究成果を)。争点が浮き彫りになる。争点に浮上する。争点を(鮮明にする。明確にする)。論拠が(薄弱。不明。揺らぐ。弱い。しっかりしている)。論拠を(覆す。示す)。論点が模糊としている。巧妙な論点のはぐらかし。 **ろんせん【論戦】**論戦(攻勢的な。がっぷり四つに組んだ)。論戦が(スタートする。展開される。本格化する)。論戦の口火を切る。論戦を繰り広げる。華々しい論戦を展開する。 **ろんそう【論争】**▼論争(不毛な。華々しい。かんかんがくがくの=内田康)。論争が痛み分けに終わる。論争に(加わる。黒白をつける。発展する)。論争の(足かせとなる。仕方を心得る)。論争を(挑む。展開する。打ち止めにする)。骨太の論争を期待する。舌戦で火花を散らす。舌喰を繰り広げる。筆陣を(構える。張る)。論陣を張る。 **ろんぶん【論文】**論文が尻切れとんぼになる。論文の作成に手間取る。論文を(書く。仕上げる。読む。雑誌に発表する)。難解な論文を読みこなす。学位論文が審査を通る。 **ろんり【論理】**▼論理(商売人の強引な。分析性に富んだ。見事に練り上げられた)。論理が(判然としない。矛盾に満ちる。いささか単純にすぎる)。整然と論理が通る。論理に(明るい頭脳。説得力がある。短絡がある)。資本の論理に操られる。論理の(飛躍が多い。一貫性に欠ける。上に論理を重ねていく)。論理を追って説得する。箱庭細工のようにこぢんまりと整理のゆきとどいた論理をつくる=開高。理詰めに説得する。論理性が高い文章。論理性に乏しい。論理立てて(考える。結論を出す。説明する)。論理的な(笑屈。弁論が苦手)。息苦しくなるほど論理的な思考=斎藤栄。論理的に(証明する。説明する。正しい。つきつめる。でたらめ。成り立たない。話す。分析する。矛盾がない。立証する)。言葉を論理的に並べる。理詰めで説き伏せる。理詰めの議論。理路に感情を注ぎこむ。演繹的ひまに体系を理論づける。条理が(立っている話。整っている文章)。条理に適う。条理を(正す。尽くした議論)。理路整然たる話しぶり。理路整然と議論する。理路整然とした(筋立て。話)。話すことが理路整然としている。対立と止揚という弁証法的なロジック=池澤。ロジックが矛盾する。ロジックを(逸脱する。整合させる)。▼論旨(矛盾に満ちた。歯車が二つばかり抜けたような獅子)。ご旨が明快。主張する旨が明確。旨を曲げる。 **わだい【話題】**話題(気に染まぬ。無難な共通の。この上なく月並みな)。話題が(多岐にわたる。種切れになる。豊富。本筋に入る。あちこちに飛ぶ。広範な分野にわたる。そろそろ尽きかける。旋風のように捲き起こる=松本)。すぐに話題が尽きる。ともすれば話題が途切れがちになる。話題に(触れる。することを避ける)。一度も話題にしない。酒席の話題に供する。たびたび話題に上る。時ならぬ話題に店内がわく。無邪気な話題に事欠かない。余計な話題に首を突っ込む。▶話題になる(しばしば。何かと。ひとしきり。いっとき人々の)。話題の中心に祭り上げられる。豊富な話題の持ち主。空いたスペースに観葉植物を置くような単なる話題の提供にすぎない三浦し。話題を(先に進める。次々と出す。耳に挟む。元に戻す。ひっさげて登場する。別のところに持っていく)。おもむろに話題を転じる。如才なく話題をつなげる。騒然とした話題を巻き起こす。はしたない話題をもてあそぶ。終わってしまっていた話題を蒸し返す~鎌田。消えかけた焚き火に紙屑をさしいれるように話題を作り出す三浦朵。女性が喜ぶような楽しい話題を出す=清水義。話題を逸らす(巧みに。冗談で)。▼話題を持ち出す(次々に新しい。古い)。共通の話題が見いだせない。共通の話題を見つける。▼話題にする(時候のよさを。女性関係を。やかましく)。話のつまにされる。▼クローズアップされる(非正規雇用をめぐる問題が。公害が社会問題として)。仲間たちの格好の肴かにされる=有川。▼トビック(時事的な。今週の)。トピックを追いかける。持ち切りになる(噂で。事件のことで。墜落した飛行機のことで)。話頭が小説に及ぶ。巧妙に話頭を転じる。センセーショナルな(噂。見出し。論文。出来事が起こる。記事を売り物にする夕刊紙"かんべ)。日本中をセンセショナルな渦の中に巻き込む。話題を変える(唐突に。あわてて。がらりと。さらりと。何気なく。思いついたように。・計な追及が始まらない前に急いで内田康)。いきなり別の話を始める。 <1136> # 若い・初初しい **あどけない**あどけない(安らかな微笑。顔つきの女子高生)。小さな口元が童やらのことくあどけない=池波。子供のようなあどけない仕種しく=黒井。仔羊のようなあどけない目つき三島。▼あどけない顔(子鳩のような。少女らしさの残る)。あどけなく寝息を立てる。子供のようにあどけなく笑う谷崎。赤い頬にあどけなさが残る女藤本。まだあどけなさの残る少年=綾辻。あどけなさを残した声が耳に心地よい藤田。大きな黒い瞳が何かとてつもない大きなことでも夢見ているようなあどけなさを持っている娘!井上靖。いたいけな(子供。少女)。三四歳ぐらいのいたいけな女の子。幼いとけない(少女。感じの新郎新婦)。 **いなかむすめ【田舎娘】**暢気な若い田舎娘。田舎娘のような愛らしさのある言い方=佐多。田舎娘のようにきょろきょろ眺める黒岩。 **ういういしい【初初しい」**初々しい(恥じらいのあふれる姿。頬を紅潮させる)。イタリアの古壁画の少女をでも見るように初い初いしい検。生毛粉ぶのある頬のあたりが若い白桃のようにういういしい娘山本周。少女らしい初々しい感情があふれる。桃のつぼみが今にも咲きかけているような感じの少女=武者小路。うら若い(乙女。青年。娘)。 **うぶ【初心】**初心で傷つきやすい女。初ぅぶと言われ耳たぶが熱くなる三浦し。初心な(恋の告白。少年のように喜ぶ)。楚々そそとした黒い瞳の初心な箱入り娘常盤。マスターベーションの現場を発見された少年のような初心な表情"山田詠。初心に顔を染める。見合いをする娘のように初心らしく上気する芥川。無垢もくな重心の発露。ナイーブな(感受性。心。文章)。無垢な(清浄な幸福感。情熱に身を浸らせる=藤田)。 **おとこのこ【男の子】**▼男の子 (ぎゅっと抱きしめたいくらいあどけない=田辺。女性のように甘い顔をした泉俊)。月満ちて男の子を産む。妻が玉のような男の子を産む菊池。亡夫が残した幾許ぬくかの田地を耕しながら男の子を育てる=池波。まだ声変わりしていない高域の声=辺見。真っ直ぐな男の子のようにすっきりとした脚谷崎。男児の出生を祈願する。坊やを(あやす。授かる)。 **おとめ【乙女】**花も恥じらう乙女。咲き誇る花のように美しい二十の処女姉と=海音寺。ボーイズラブに胸ときめかせる乙女たち。二十歳ぶたの処女の生身が匂い立つ池波。乙女心を(傷つける。くすぐる)。聖女(純潔な。清浄な)。番茶も出花(鬼も十八。娘十八)。芳紀まさに十八歳。 **おんなのこ【女の子】**▼女の子(ままごとに熱中している。口数の少ない陰気な「加賀。いかにもお嬢様という雰囲気のあさの。いささか病的に思えるほど痩せた若竹。未だ凿る『だとしか思えない十七八の=武者小路。色白でぽっちゃりと太っていてよく笑う飯田。美しい菓子のように育てられている小さい=川端。可愛い部類に入る人間。小寂にしに障るこましゃくれた小鬼のような=大庭。小学校に上がったばかりの東野。二十歳そこそこの乃南。妙にひねこびた"豊田。無邪気そうに見える水仙のような=開高。目のくりっとした重松。安いお雛様ごむみたいな顔した向田。栗鼠みたいに跳ねまわる=中)。女の子が小さな女王のようにちやほやされる=円地。よちよち歩きの女の子がまつわりつく。好きな女の子と喜びを分かち合う貫井。女の子の(尻を追う。華やかな笑い声)。甲高い女の子の叫び。女の子を横抱きにする。写真を手がかりに女の子を探す。二人の女の子を両脇に侍らせる=貫井。店の女の子を遠ざけて飲む=かんべ。人形のように可愛い女の子梅本。女の子のように(くねくねした身体つき=島尾。首をかしげて科しょを作る=黒井)。女児を産む。 **きむすめ【生娘】**傷つきやすい桃のような生娘。生娘のように(頬を染める。技巧を取り払った顔つき=岡本)。見合いに連れられて行った生娘のように顔を上げることができない!水井荷。 **こうせいねん【好青年】**▼好青年(さわやかな。知勇兼備の。エネルギッシュな。人一倍正義感の強い=山岡)。 **こむすめ【小娘】**▼小娘(生意気盛りの。鼻持ちならなこむすめい。甘い砂糖菓子に釣られる愚かな藤本。したたかでくそ生意気な!宮本輝。小柄でがりがりに痩せたタイプの中の=筒井)。未だ二十歳にもならない小娘が片限をしかめてみせたりするのを小説でも読むような気持ちで観察する"今日。小娘になぶられているような不快感"小林久。小娘の息のようなふわふわした小さな虫佐藤春。小娘を横抱きにする。小娘のような(甘えた鼻声。元気が肩にも腰にも躍る=円地)。十二三の小娘のような甘えた口のきき方“堀。少年が小娘のような親しさで笑う川端。小娘のように(世間知らず。顔を両手で隠す堀。たわいもなく泣きつづける=有島)。剛情な小娘のように黙っている=川端。 **ししゅんき【思春期】**思春期に誤解はつきもの佐野。思春期の(危なげな精神。難しい時期。少女のようなみずみずしい感じのする街"五木)。十九歳は男を識しればすぐにも男に糸を掴まれそうな危なっかしい年齢逃城。恋への憧れに満ちていた頃=鈴木光。笹の葉が動いても可笑ぉぉしい十八の娘「徳永。はしが転げるのもおかしい年頃"石坂。十九歳は少女と女との谷間の空に風船のように浮かんでいる年齢=迹城。年頃(夢見がちな。性に目覚める。花も恥じらう。一番感じやすい。箸が転げてもおかしがる。花ならほころびかけた筈はの=杉本。ラッキョが転がってもおかしい飯田)。傷つきやすい年頃の娘赤川。 <1137> **じゅんじょう【純情】**純情な世間知らず。恋愛に純情を捧げる。純情可憐な娘。 **じゅんしん【純真】**純真な(傷つきやすい娘。子供らしい気持ち。田舎娘のように笑うぃ泉優)。汚れを知らぬ少女のように純真な心情の持ち主石坂。 **しょうじょ【少女】**▼少女(いつも踊まりのように弾みきっている十四の=海音寺。肩上げの似合いそうな撫で肩にでお下げ髪の落合。ごく普通の目立たないタイブの=鈴木光。純粋培養の花のような危うさのある=中村真。すでに咲きかけた花のようなところがある=武者小路。張りつめた弦のように震える光原。はんやりした印象の=桐野。まさに開かんとする牡丹似たの花のような森殿。まだ乳房も固い舟橋。胸が震えるほど可愛い=山田太。笑うと頬に深い笑くぼのできる優しい顔立ちの三浦殺)。少女が(うなだれて鶏のようにびくびくする=大江。向日葵切味のように立っている=堀)。少女の(あどけない肖。悲しげな表情に心を奪われる=なかにし。どこか危なげのある爽やかな声“半刈)。言葉巧みに少女の心をつかむ。洪水のような少女の群れ=常盤。バァッと少女の顔に花が咲く大原。牝鹿紛じのようにしなやかな少女の身体菊池。修学旅行の少女たちが白い花びらのように群れる=原田爽。少女っぽく振る舞う。少女めいた感情の甘さ。少女らしい(豊かな煩。率直さで尋ねる。硬い線を持った細い首筋"光瀬)。陽光にきらめく少女らしいうぶ毛"筒井。少女らしく目を輝かせる。少女のような(面影を残す顔。あどけないほほえみを浮かべる=浅川。感傷に襲われる=司馬)。鮮やかな服を着て跳び回る少女のような明るさと新鮮さがあるホテル高橋三。甘やかされた愛らしい少女のような引っかかりのない美しさ=佐多。少女のように(影が豊かな顔の輪郭!大佛。感受性の強い人三浦窓。くすぐったそうに期待に声をはずませる=新田。はかなげにほほえむ内館。ほっそりとした体つき=大庭)。悪戯かを見つけられた少女のように顔を赧くする堀。快活な少女のように晴れやかな顔つき有局。素朴な少女のようにはにかんで見せる=加賀。眼に少女のように未知の湖に対するあこがれがかすかに浮かぶ=原田康。少女時代の潔癖心が高じて異性を拒否するようになる=丹羽。 **しょうねん【少年】**少年(可憐れな紅顔の。目のくりくりした、いたずらそうな"長崎。嬋娟せんたる女のような姿態の中野美。痩せてひねこびた旅のような"中局致)。少年の(日を懐かしむ。面影を彷彿ぶっとさせる。日の思い出がよみがえる。頃から秀才の名を謳われる=津本。ころの澄明な成傷がよみがえる=司馬)。少年らしい瑞々しさが消えた皮膚、人間。少年のような(明るい微笑。柔和な湿った喩"円地。伸びやかなはにかみ落合。無邪気なほほえみ方!永井路)。都会育ちの初恋の少年のような傷つきやすい神経「三島。好奇心でいっぱいになった少年のような表情をして質問する=五木。手と脚が奇妙なほど長いアンバランスな体つきに少年のような哀感が漂う小林久。瞳の中に少年のような悪戯か欲っぽい微笑が浮かぶ!森環。変声期前の少年のような甘くて優しい声"松浦。少年のように(憧れを燃やす。心が躍る。瞳を輝かせる。痩せた樹々。活気に溢れた老人"本庄)。更衣室を覗のぞかれた少年のようにかすかに顔を赤らめる=小池。寝顔が少年のように安らか森瑶。目が少年のようにきらきらと輝く“火坂。私はもう少年のように女性の美質に対して盲目的に惹かれる年齢ではない=中村。少年時代の思い出につながる叩陳。美少年(紅顔の。女にまがうほどの佐藤春。細面の頬紅胡林くつんと鼻筋の通った里見)。 **しょじょ【処女】**処女の噂とを見開いたような野薔しょじょ微60は島崎。透きとおった硝子がぅのような鋭い美しい処女の感情"石川。何者も触れたことのない処女のような心有島。処女のようにすまして走る=椎名織。物慣れない処女のようにはにかむ有段。雄なしで処女生殖を繰り返す。バージンを守る。 **せいしゅん【青春】**青春が(幕を閉じる。立ち枯れになる)。青春という深い森の中に潜むセックスという化け物"飯田。青春に反逆している老年の消息を伝える。心が青春に満ちる。青春の(活気に満ちる。盛りの年齢。夢を追う。潔癖さを浮かび上がらせる。血がよみがえる。力が様々に開花する。はけ口を求める。喜びを謳歌ゅぅする。残りかすみたいなにきびの跡"辻真。日々のことが鼻の奥に淡い揮発性の匂いを残してかすめ去って行く。吉行。夢が残酷な幻滅を用意する=中村真)。風に吹き消されて燭しょが消えてゆくような最後の青春の連想が瞼はぶに浮かぶ林美。女性への憧れが変形した青春の世界「吉行。青春はほろ苦い味がする=宗田。青春を(懸命に生きる。能ぁたう限り十全に生きる。悔いなく過ごす。かけた仕事の挫折を悼む三好後)。たまゆらの青春を苦しみや悩みを蹴飛ばしながら大らかに生きぬく=飯田。青春時代を存分に生きる。青春多感の年月。 **せいねん【青年】**青年(いかにも育ちのよさそうょ。いかにも闘志のかたまりといった日焼けした精悍な=加賀。オーデコロンの匂う軽薄な"五木。へんに老成ぶってなまいきな=田辺。見るからに精悍她心そうな中島乳。青瓢箪法はび~のような顔をしている=田山。面長な眉の秀でた三浦湾。唇の色が女のようにあざやかな美しい=川端。眉目秀でた長身の『柴田錬。細面の手足の伸びた"五木。見たところは依然として子供のような童顔の=長与。目つきに知的な陰翳が感じられる"五木。限を疑うような好"石川。やせっぽちのひょろひょろした=野間)。青年が口にするのを器踏らうするようなことを平然と言う今日。文学青年というイメージからは一番遠いタイプの人間半村。手足の長い優雅な青年に成長する=森環。青年の(感傷的な懐疑。強烈な精神が日々に光を放つ=野問)。田舎でははっきり青年のクズと言われるに違いないようなへらへらしたトッポイ野郎"永倉。生命の苦悩に悶もだえる青年の心情を理解する=有吉。少年から青年への鮮やかな変わり目が訪れる=平岩。青年らしい(精気。闘志。激情に満ちた求愛の華やかな文章=石川。ロマンチシズムに燃える=美濃部)。サッバリとしたこだわりのない青年らしい肌合谷崎。事実を故意に犬儒的ひしに眺めたりするような青年らしい焦燥感"中村真。少年期から青年期になったばかりの男の手のように生き生きした手=河野。青年期の(心細くて淋しい身軽さ=山田太。なつかしい感情にひたる=山田太)。青年時代のきらびやかな美しさが艶消しとなって艦褸屑にわのように泥水の中に投げ捨てる今東)。女を知らぬ身。▼知らない(女の肌身を。まだ女を)。おろしの手ほどきを受ける。 <1138> **びしょうじょ【美少女】**▼美少女(神々も息を呑むような"大原。清楚な感じがする=大変。ちょっと目を引く程度の貫井)。いずれ劣らぬ美少女ばかり。美少女と呼ぶにふさわしい女の子。 **びしょうねん【美少年】**▼美少年(清楚な服装の。玉のごとき=山田美。背が高く顔も面長な=石坂)。 **ぼっちゃん【坊ちゃん】**▼坊ちゃん(お行儀のいい。世間知らずの)。育ちのよいお坊っちゃん。無邪気な坊ちゃん坊ちゃんした清純な生涯三好達。令息(大家の。富豪の)。 **むじゃき【無邪気】**無邪気で心立てのよい女永井路。無邪気としか言いようのない挙動。無邪気な(明るい声。可憐れな恋。好奇心に満ちる。声でさらりと言う。子供たちの遊び。残酷さを漂わせる。笑顔にしてやられる=さだ。子供のようにじゃれつく連城。はっとするほど子供っぽい笑顔三田)。子供みたいに無邪気な人。少女のような無邪気な素直な心有島。少女のように興奮した無邪気な声"中村真。女子高生みたいに無邪気な話"中島み。子供のように無邪気な目「無邪気に(感嘆の声をあげる。長閑で物を見る=加賀。とな話を続ける。目を輝かして笑う)。うまくいって無邪気に喜ぶ。軽く無邪気に言う。子供のように無邪気に笑う泉優。ぴょんぴょんとウサギのように無邪気にはねる=椎名飛。少年らしい無邪気の喜色に溢れる幸田露。少しも子供らしい無邪気さがない。思慮深さと無邪気さを適切に使い分ける小川。何食わぬ無邪気さを装う林京。無邪気そうに(見える女の子。笑う)。頑是ない(笑顔。驚きの目。子供)。邪気のない(子供。我がままさ)。赤ん坊のように邪気のない男外村。この上もなく邪気のない笑顔「佐藤春。何の邪心もない笑顔連城。一点の邪心もない。稚気に満ちる。稚気のある笑い顔。稚気満々たる行状。稚気を含んだ愛敬のある顔。罪のない(疇。軽い悪戯か。剽軽うな男。笑い方。冗談を飛ばし合う)。穏やかな罪のない眠り。目を閉じて心を無にする。悪気のない口ぶり。これっぽっちも悪気はない。無心で物に見入る。無心な顔をつくって聞き流す城山。無心に(遊ぶ。努力を続ける。快楽に没入する多岐川)。無心を絵に描いたような男。 **むすめ【娘】**娘(体も顔立ちも大柄な。きゃぴきゃぴと喋ん『りつづける。ころころと肥えた。自分の血を分けた。嫁入り前の大事な体の。地味でめだたない不器用な西木。熟しかけた果実のように新鮮な=南条。性格のおとなしそうな無口な=阿刀田。精神と肉体の容易に和解しない頑い絵な円地。妖精のように目まぐるしく生き生きとして魅力的な三浦米。秋の花のような"戸板。田舎っぽい丸顔の背の低い水上。色白で眼鼻立ちの整った徳永。おとなしいけど芯のしっかりした連城。心が柔らかく物にも感じやすい若い島崎。どこへ出しても恥ずかしくない=丹羽。梨の花を見るような寂しげなうちにも気品のある=海音寺。熱帯の花のような強烈な印象の石坂。睡ねむいような目をして口もとが小さい丸顔の藤沢。潑刺はつとした若さに輝く美しい=高見町。美人ではないが美人を十人集めたなかでも可愛いと思わせる類の=山本周。美人というよりは仔犬か栗鼠りすのような感じの原田成。向日葵10味のような明るい獅子。百万ドルを小さな小包一つにしたみたいにびちびちした魅力にあふれる=田中。丸顔の眼のばっちりした眉の切れの好い十八九の=田山。見るからに愛くるしくすがすがしい=山本周。弱々しくきゃしゃな限付きの愛らしい!高崎)。娘が(親を詠いさめる。嫁に行く。すくすくと育つ)。未成年の娘が警察沙汰になる。娘と過ごした日々を振り返る。裕福な家庭の娘として育つ。娘に(甘い父親。話せる筋合いのものではない)。変貌した娘に戸惑う。娘の(身を案じる。行動が気になる。頃の美しい輝き。品定めに熱中する。将来が思いやられる。行く末を案じる。将来に大きな希望をかける豊田。涙に女の虚栄心を見る=大岡)。亡き娘の忘れ形見。ひたすら娘の幸せを願う。いたいたしいほど細い娘の首=海音寺。涼しく刺すような娘の美しさ"川端。娘を(大手に育てる。外へ引っ張り出す。妻の実家に預ける。手元に取り戻す。立派に育て上げる。憐ぁぁれむ心が进酢にるように湧き出る=福永。置き去りにして姿を消す柴田錬)。幼い娘を抱えて結婚する。弟の娘を養女にする。五人の娘を抱えて途方にくれる。自分の娘を信用する。小さな娘を抱っこする。父が娘を思いやる。身元の知れない娘を預かるる。娘達が栗毛の駿馬しのように街を歩く=川端。若い娘と(恋に落ちる。見くびる)。若い娘を(たぶらかす。うっとりと見つめる)。娘らしい優しさ。体もろとも投げ出すような娘らしい声を出して笑い転げる島崎。若い娘らしい弾けるような笑い声=火坂。▼娘に手を出す(未婚の。若い)。娘のような(華やいだ声。突飛な声を出す=椎名綱)。連れ込み宿に連れこまれた娘のようなぎごちなさ=中村真。娘のように(顔を赤らめる。若やぐ。しなやかな体つき「安部。細くてきれいな響きをもつた声=山本周)。かみさんを娘のように可愛がる=高橋治。しとやかな娘のようにはにかんだ微笑=佐多。十三の娘のように他愛なくなく眠ってしまう野上。計のようになる=阿部。まだ娘のように若い先生=柴田翔。娘のように若い妻"有吉。萌えいでる若い命は抑えることができない=山本周。若い頃の(面影が残っている。苦労話を繰り返す重松)。若いに似合わず老成した物言いをする内田康。あたら若い(芽をつぶしてしまう。身を獄舎で朽ちさせるには当たらない=福永)。若かりし(日を思い返す。日々への感傷を呼び醒ます三好徹)。若き新鋭が出てくる。老いも若きも黒鯛釣以ろだりに熱中する=火坂。若く旺盛な生命力。年齢より若く見える。肉体が若く艶冶悦んに輝いている舟橋。若さ(輝くような。色欲を失った透明な有吉。胶味ばいばかりの無造作な"有吉。生命力にみちみちた=瀬戸内。どこからどう見ても嘘のような"里見。ふっくらと匂うような=川端)。争うべくもない若さが盛り上がる。年相応の若さが顔を出す。清楚な若さが匂うように美しい=瀬戸内。若さだけが取り柄。若さではちきれそう。若さとバカさは紙一重=飯田。自分をとり巻く若さという硝子ブッのようなもの伊藤整。健やかな若さに輝く。見るからに若さにあふれている。伸び伸びと若さを息づかせる。過ぎ去った若さを懐かしむ三好後。無器用な若さを懐かしく思う落合。高校生に毛の生えたくらいの年齢後蔭。春秋に富む。年端が行かない。二十歳そこそこ。まだ老け込むには早い。人間としては刻みかけたばかりの彫像のように未完成でそぼくな存在"石坂。妙齢の女性。若さを見せびらかしているような冷淡さ=林美。年若くして血気の多い巡中。 <1139> **わかい【若い】**若い(うちが花。精神を持つ。キャビキキャビした女の子。成熟していない体。世代に煙たがられる。力を存分に発揮する。女のきんきん声に苛立つ=鈴木光。女性ファンが黄色い声を上げる篠田)。輝くように若い姿。国土が若い力に満ちる=山本周。みずみずしい若い雌が古色蒼然だしもんたる柱時わかて【若手】新進の若手作家。若手の(成長株。中で異彩を放つ。お披露目100%にはうってつけの芝居=高橋克)。少壮気鋭の研究者。少壮の学者。 **わかもの【若者】**若者(ひ弱な感じのする。四肢がのびやかに発達したりりしい感じの志茂田。鼻すじの通った目もとの涼しいきりっとした男前の=杉本)。見どころのある立派な若者と見受ける=福永。若者の(心をつかむ。力を生かす。挑戦を妨害する。体が獣のようにしなやか丸谷)。大きな夢を見るのは若者の特権。生気に欠け目に光のない若者たち=永倉。颯爽とした若者ぶりに目をみはる=なかにし。若者らしい健康な眠り。▼青少年(次代を担う。未来を担う)。若い男(いちばん下っ端とおぼしい=篠田。皮肉で薄情で蚯蚓ねぃみたいに冷たい=田辺)。前途に変化を望む若い男の心理。佐多。村の典型的な若い衆。威勢のいい若い衆の声。若い者に(嫉妬する。負けない仕事をする)。まだまだ若い者には引けを取らない高橋克。血気盛んな若い連中。いなせな若衆。若向きの(デザイン。店。洋服)。次代を担う若人。 **わかがえる【若返る】**▼若返る(気持ちが。チームが。メンバーが)。若返りの秘薬。 **わかづくり【若作り】**年よりも遥かに着づくり。若作りな(男。女性)。見かけよりずっと年をとっている。見た目は若い。年より若く見える。年齢より若やいで見える=野上。若ぶった(衣装。髪型)。 **わかやぐ【若やぐ】**若やいだ(気持ち。嬌声)。顔に若やいだ興奮がにじみ出る。心なしか若やいで見える。見違えるほど若やいで美しくなる。 **わかわかしい【若若しい】**若々しい(血が流れる。活力があふれている。企業活力を保つ。機智に溢れた話しぶり!辻井。生気が日焼けした眉宇に漂う。加賀。肉体が割られた果実のように新鮮=横光)。雑木が若々しい楽を伸ばす。幸田文。小柄だがいかにも精悍せいな若わかしい体軀たい池波。若々しい顔(自信に満ちた。まだどこか幼顔の残っている=福永)。若々しい生命の力に(満ちる。悩まされているとさえ見える妹有島)。若々しく目を娜かせて言う。奥深くしっとりと輝いている皮膚の若々しさ=大佛。青年の若々しさを保つ。 <1140> # 我が儘・拗ねる **エゴイズム**エゴイズムの謳歌さらには感情的に同調しえない=高橋知。エゴイズムを白日の下にさらす。エゴイスティックな計算が働く。許しがたいエゴイスティックな行為!志賀。エゴイスト振りを俄然発揮する。エゴが強い。エゴの固まり。自分のことしか考えないエゴイスト。 **かって【勝手】**勝手な(考えにふける。気炎をあげる。口を叩く。節をつける。真似まぁをする。夢想を抱く。臆測を働かせる。想念をもてあそぶ。方向に歩き出す。行動はやめてもらおう。景山)。口々に勝手なことを言う。自分だけの勝手な理屈。別々に勝手なことを考える。勝手に(体が反応する。口が動く。研究を始める。席を立つ。熱をあげる。約束を破る。理屈をつける。つくりあげた幻影。外すわけにはいかない)。思い思いのことを勝手にしゃべる。各自の道を勝手に進む。空想が勝手に育つ。言葉が勝手に飛び出す。人の家に勝手に上がる。人の名前を勝手に使う。周りが勝手に気を回す。人問が勝手に創り出した倫理円地。勝手放題に荒れ狂う。得手勝手な(男の繰り言。考え。行動。振る舞い)。相手の得手勝手が縦しょに障る。 **きまま【気盛】**約束ごとに縛られない奔放気まま=松本。気ままな毎日を送る。仲間どうしの気ままなやり取り。放胆で気ままな男。気ままに(声をかける。散歩する。旅行を楽しむ。世界をまわって歩く)。勝手気ままな(行動。生活をする)。勝手気ままに(生きる。浮かれ騒ぐ。出歩く。好きなことができる)。気まま三味の日を送る。気持ちの赴くままに生きる。勝手な(思い込み。想像を巡らせる。真似まねは許さない)。てんでに勝手な真似をする。飄然いっと(姿を消す。旅に出る)。忘れた頃に飄然と現れる。飄然とした(男。口調で言う)。放逸な(生活態度。振る舞い)。放逸に流れる。傍若無人のやりたい放題。放縦な(生涯を悔いる。生活)。傲慢で放縦な振る舞い。自由と放縦を履き違える=黒井。男から男へ渡ってゆく放縦さ=舟橋。 **きむずかしい【気難しい】**気難しい(学者。軍人。雰囲気)。律義で気むずかしい初老のサラリーマン風の男倉橋。思わず外套以示の襟を立てて肩をすくめるような気難しい風が荒々しく吹きまくる宮本百。自啟心の強そうな気難しい老人井上靖。狷介以な性格。人と和しがたい須介な性質,佐藤春。狷介に生きる。 **じぶんかって【自分勝手】**自分勝手が服を着て歩いているような人用=佐藤多。自分勝手な(空想をえがく。弁解ばかり並べて逃げる)。非常識で自分勝手な人間。自分の立場を棚に上げる。我が田に水を引く。お手盛りで自分の賞与を決める。お手盛りの予算。我田引水の(解説。言動)。欲ぼけの我利我利亡者。名誉欲で我利我利亡者になる。 **すきかって【好き勝手】**好き勝手な(振る舞い。ごたくを並べる。ことばかり言う)。好き勝手にいじくりまわす。ルールを好き勝手に変える。 **すてばち【捨て鉢】**捨て鉢な(空想にふける。悪たれ女になり下がる。宮本百)。針でブスブス自分を突き刺して楽しんでいるようなすてばちなにおいの感じられる言い方=石坂。自己自身を虐待する捨て鉢な動作高橋和。流れるままに流れようというような捨て鉢な素振り川端。投げ出したような捨て鉢な調子で言う徳田。▼捨て鉢な気分(どうなってもかまわないという半ば三田。もうどうにでもなれという東野)。 **すねる【拗ねる】**世をすねる。すねた子供のような口調=佐藤多。幼児がいやいやをする。イヤイヤをするように上体を振る=原田家。▼曲げる(つむじを。へそを)。甘えたようなすねたような話し方水倉。拗ねたように(顔をそむける。そっぽを向く。決して視線を上げない佐多)。すねたように(背を向けて寝る=三浦繆。一言も口をきかない三田。ぷいと横を向く=山手)。▼駄々をこねる(手前勝手な。一度ならず。子供のように。子供みたいに。死ぬの生きるのと)。この仕事よりあの仕事がよかったと駄々を捏ねる=有川。子供が駄々をこねるように体を揺する=奥田。 **つむじまがり【旋毛山がり】**憎たらしい旋毛曲がり里見。自分が満児金淡でなくもないことを証明したい旋毛曲がりな欲望高見町。誇るに足りない無価値のものばかりをツムジ曲がりに喝米する萩原朔。つむじ曲がりの意見を申し立てる=井上靖。右と言えば左。へそ曲がりなひねくれ者。嬉しいと思?心と裏腹に紙を返すようにして天の邪鬼い住のが頭をもたげる=荻野。天の邪鬼な(男。女)。しかし、と天の邪鬼は考える=池澤。 **てまえがって【手前勝手】**手前勝手な(言い分。解釈。振る舞い。やり方。理屈。急ぎの注文が舞い込む=山崎)。あまりと云いえば手前勝手な心なしのやり方谷崎。苦しいときの神頼み。神仏に組すがりつきたい気持ち。党利党略が過ぎる。党利党略で動きがちな政治。党利党略と受け取られかねない施策。党利党略に走る。党利党略を離れる。 **なげやり【投げやり】**投げやりで傲慢な言葉づかい。一見投げやりで自虐的な姿勢。投げやりな(口調で応じる。調子で言う)。なにげない物言いや仕草の中に投げ遣りな自嘲の匂いを嗅ぎ分ける落合。自分を突き放すような投げやりな口調“干刈。どうにかなるさといった投げやりな調子鈴木光。もうどうにでもなれという投げやりな気分=貫井。投げやりに放り出す。投げやりになる(態度が。生きることに。困惑が高じて。どうでもいいやと)。少しすねた投げやりの態度。 <1141> **ひがむ【僻む】**選ばれなくてひがむ。コンプレックスを遠慮なしに突かれて僻む=有川。僻んだ子供のような自分の言い草が忌々しい!有川。こわばった笑いの隙間からひび割れた僻み根性がのぞく高树。僻み根性もいい加減にしろ横山。ひがみっぽい気持ちが萌す。ひがまないでしっかり生きる。いじいじと答える。いじけて育つ。うじうじといじける。 **ひねくれる**ひねくれる(気持ちが。捨て鉢に。根性が心から)。ひねくれた(性格。根性を叩き直す)。がままなひねくれた女。女らしいひねくれた妬ったみやひがみ!有房。ともすればひねくれた物言いをする=永井路。ひねくれて意地が悪い。根性が(悪い。ひねくれている)。心のねじけた人間。▼ねじけている(根性が。性格が)。 **ふてくされる【不貞腐れる】**ふてくされた(声で答える。ものの言い方)。とにかくどうでもしろと一種不貞腐れた動作今日。ふてくされてそっぽを向く。不貞寝込にする(叱られて。すねて。やる気をなくして)。気を腐らせる。不貞腐れたような冷笑を浮かべる=外村。ふてくされたように横を向く=黒井。不貞腐れたように立ち上がる内海。 **へんくつ【偏屈】**同室の患者たちとも口をきかない偏屈そうな老人=内海。気むずかしい偏屈な男"村上発相当に偏屈な釜じゃさん=胡桃沢。自己の主観的な好悪に偏執する。偏激的な街学者以修の博識の誇示。狂態に近い偏執ぶり!山岡。 **みがって【身勝手】**身勝手が過ぎる。身勝手な(父親を恨む。本の借り方。理屈。自己本位の態度。振る舞いに出る。振る舞いを憎む。夢を押しつける。理想を醜女儿にの深情けにたとえる=遠藤)。あまりに身勝手な解釈。本末転倒の身勝手な対応。身勝手にもほどがある。身勝手は許されない。男の身勝手さに慣れる。 **むきょか【無許可】**無許可で(営業する。掲載する)。無許可を黙認する。もぐりで商売をしている。・た我もぐりの(医者。業者)。 **むだん「無断】**無断で(家を明ける。人の家に侵入する。約束をすっぽかす)。無断で遅くまで外出する。母親に無断で外出する。無断欠勤を(続ける。詫びる)。断りなしにいただく。一言の断りもない。断りもなしに家の中へ入ってくる。断りを言いそびれる。無届けで(会社を休む。欠席する)。 **やけ【自棄】**やけな気分を募らせる。やけになって(言う。どなる)。自棄になって酒をラッバ飲みする=高橋和。やけになる(失恋して。試験に失敗して)。やけのやん八。なるようになれと自楽の気持ちを抱く=萩原葉。やけ酒を(あおる。飲んでへべれけになる)。やけつばちな台詞を吐く。やけになったように怒鳴る柴田翔。やけくそで大声を発する。腹立たしげにやけくそに言う。幸田文。やけくそになって(叫ぶ。どなる)。やけくその勇気を絞り出す。やけくそのような言葉を叩きつける。やけくそのように大あくびをする=井伏。行くところまで行くより仕方がないという一揆主義的な気分高橋利。つつましい幸せなんかクソ食らえ大庭。投げ捨てるような自棄的な言い方。デスペレートな(享楽心。行動)。もうどうにでもなれといった心境谷村。殴るなり蹴るなり勝手にしろ。勝手にしやがれ。どうでも勝手にしてくれ。もうどうでもいい。煮るなり焼くなり先方の随意。自自暴自棄に(荒々しく叫ぶ。陥る)。将来に絶望して自暴自棄になる。自暴自棄で大酒を飲む=井伏。自添自棄のような香りを休炒。から発散する=泉俊。 **やぶれかぶれ【破れかぶれ】**破れかぶれで生きる。ゆきつくところまで押し進みたい破れかぶれな気持ち芝木。破れかぶれになって乱暴を始める=大江。ふられて破れかぶれになる。破れかぶれの(悪事に走る。胴問声。乱痴気騒ぎ)。八方破れの態度。 **りこてき【利己的】**利己的な(考え方を憎む。行動に走る)。功利的に考える。自己中心的な考え方。自己中心の身勝手な態度。自分に都合よく考える。なにもかもが自分を中心に廻っていると決めているような人高橋治。功利的な(考え方。政治意識。目論見)。自分本位のわがままな態度。私心で同志を瞞着にんちする=獅子。私心を(捨てる。たくましゅうする)。私心が長じてくる。全く私心というもののない滑らかな人子母沢。 **わがまま【我が儘】**わがままが足を生やして動きまわっているような女西木。わがままが利く(ある程度。多少の)。わがままで自分の主張が通らないとすぐ腹を立てる"西村。勝ち気でわがままな男。金持ちのわがままな青年。根がわがままな人。短気で我が儘な坊ちゃん気質の小心者人束。何のかんのとわがままばかり言う。わがままを(通す。言っているようで心苦しい)。自分のわがままを人に押しつける。我が儘を自由という言葉にすり替える=連城。わがままいっぱいに生きる。親を親とも思わず我が盛一杯に育つ"永井荷。邪気のない我がままさ。親の心子知らず。わがまま勝手な人間に育つ。食べ物の選り好みが激しい。仕事を選り好みする。聞き分けのない(子。年頃)。法律を恣意的に解釈する。戦場で権力の恣意にさらされる。娘の駄々を聞いている父親。放埒淫蕩けもちつを尽くす。放埒明、うが度重なる。放埒に流れる。気随に(稼ぐ。暮らす)。気随気ままが募る。気随気ままな暮らし。気随気ままに振る舞う。駄々っ子のように(足をばたばたさせる=小松左。体を左右に揺する=阿川佐。現実離れのしたことばかり言う萩原楽)。だだっ子をあやすように優しく微笑する"石坂。だだっ児のような可愛らしい口調合崎。駄々っ児のように頸くびを振る永井荷。無軌道でむごい心の女。無軌道な(愚か者。女性関係。生活)。無航道に屈託もなく遊ぶ。 <1142> # 別れる・分かれる **えだわかれ【枝分かれ】**▼枝分かれする(四方に。三つに。無数に。幾つにも。道が迷路のように=藤沢)。枝分かれした流派。先が二本に枝分かれしたバイブ=谷村。一本道が分岐にさしかかる。分岐する(進路が。鉄道が。道路が。幹線道路から)。 **かいきゅう【階級】**階級が(上がる。分裂する)。同じ階級に属する。階級の利益を代表する。持って生まれた階級意識は拭うべくもない=村上元。階級支配を(廃止する。めざす)。武力を背景とした階級社会吉田。階級対立を(廃絶する。抑制する)。武家階級が台頭する。階層(富裕な。幅広い)。階層を異にする。 **こかん【股問】**股問に(手を道はわせる。一物がぶら下がる。熱い棒でも突き込まれたような違和感がある"渡辺。隆々たる突起物がそそり立つ=井上ひ)。大きな波の上から舟が波底に落ち下るときのように股間に空虚な感覚がある=外村。尻尾を股間に巻き込み必死に逃げまわる=真継。股間の茂みをこする。股間を蹴り上げる。股座に父が膨れ上がる。帽子を股座に挟む。股座を(くぐり抜ける。蹴る)。 **しにわかれる【死に別れる】**▼死に別れる(夫に。最愛の夫人に。父に。母親に。幼い頃に両親と。旦那さんと早くに“あさの。つれあいに早く=武田百)。永訣を(悼む。悲しむ)。先立たれる(夫に。子に。親しい人に。連れ合いに。女房に)。親に先立つ不孝者。大切な人に死なれる。▼死別する(夫に。両親に。家族と。妻と)。幽明(境を異にする。遥けく隔つ)。幽明を隔てる。 **しぶ【支部】**支部を(設立する。代表する)。支社に(転出する。転属されてからすでに二年が経過する!若竹)。支店に異動する。支店を出す。出先の機関。出先を再編する。 **そうべつかい【送別会】**送別会に出席する。送別会を(開く。催す)。宴を張る(別離の。別れに臨んで)。別れの席を設ける。送別の(歌。言葉。辞)。 **だんかい【段階】**▼段階(かなり早い。まだ思いつきの。早い段階から注目する。試案の段階にすぎない。実行の段階になる。本格的な段階に入る。新しい段階を迎える。一つずつ段階を踏んでいく。段階を追って(考える。進む)。もはや逡巡しんしている段階ではない西木。第一段階を終わる。段階的に(実施する。進める)。次のステップに進む。新たなステップを迎える。成功へのステップを確実に上昇する=鷺沢。段になる(一件落着という。いよいよ仕上げという)。 **とうきゅう【等級】**等級が(上がる。格上げになる。格下げになる。下がる)。級が上がる。段位が上がる。格が(一段上がる。上。落ちる。下。違う。低い)。数等格が高い。人間の格が桁違い。 **ふたすじみち【二筋道】**▼二筋道(色と野心の。義理と人情の。戦争か妥協かの)。自分自身の力を信じていいのか疑わねばならぬのかの二筋道に迷いぬく有島。▼欲との二筋道(意地と。色と)。 **ふたまた【二股】**根元が二股に分かれる。蛇の舌が二股に割れている。二股をかける。二股膏薬状性の信用できない人。岩に激する清冽せつな流れが二筋に分かれる=獅子。両天秤りぬけてにかける。 **ぶんか【分化】**▼分化する(階層が。学問が。機能が。専門が)。ある文化から派生したもう一つの文化。派生する(亜流が。意味が)。 **ぶんかい【分解】**勉強はとんとできないくせに不思議と機械の分解が好き「加賀。分解する(ばらばらに。文章を単語に。酵素がアルコールを。たんぱく質をアミノ酸に)。空中分解を余儀なくされる。解体する(車を。財閥を。建物を。ばらばらに)。 **ぶんぱ【分派】**分派(宗教の。政党の)。分派が派生する。分派に属する。分派行動を取る。セクトが対立する。セクト主義に陥る。各省がセクト主義になりがち荒巻。 **べつべつ【別別】**別々な道を通って帰る。別々に勝手なことを考える。身体と心とが別々になったような心持ち『長塚。家と仕事場を別々にする。別々の(行動を取る。部屋に寝る。道を歩む)。てんでに別々の方向をむく。別個に(処理する。取り扱う)。それぞれ別個の道を行く。 **ぼうりゅう【傍流】**傍流から(社長を出す。養子をとる)。ついに本流とはなりえずに終わる=内橋、本流から外れる。傍系の(会社。親族)。社会の中でマージナルな存在。 **また【股】**股の(間が熱くなる。下をかいくぐる)。陰毛が繁った股の間。股を(覗のぞきこむ。広げる)。男と見ればすぐ股を開くような女"あさの。盛大に股をおっぴろげる=多岐川。 **りこん【離婚】**離婚が裁判までもつれ込む。正式に雌婚が成立する。結婚と離婚とが背中合わせに貼りついている連城。離婚について話し合う。離婚の(意思がない。訴えを起こす。決意が固まる。手続きを取る。話を持ち出す。調停を申し立てる)。離婚まであと一歩というところまで来る=笹沢。離婚を(思いとどまる。決める。強引に承諾させる)。なんだかんだと言って離婚を遅らせる=丹羽。▼離婚する(両親が。夫と。妻と。不倫が原因で。帰国してまもなく陳。姑しっ、との折り合いがうまく行かずに井上ひ)。離婚した中年って蟻もりがたかる砂糖みたい干刈。酔いにまかせて離婚した事情を話す佐野。離婚して日が浅い。・結婚に終止符を打つ。妻に去られる。夫のもとを去る。夫婦関係を解消する。離婚届に署名捺印する。離婚話が(こじれる。持ち上がる)。結婚生活が終わりを告げる。出戻りの(小姑にし。娘)。▼離縁する(かみさんを。妻女を。妻を。連れ合いを。婿を)。▼離別する(夫婦が。細君を。妻を。相対ずくで)。破鏡という事態に直面する=佐高。婚礼が破鏡の嘆きを見る舟橋。去り状を三行半ばに書く。三行半を(書く。突きつける)。離縁状を突きつける。 **りょうきょく【両極】**両極に立つ意見。大巧は大拙に似て物の両極は相通ず萩原朔。▼両極を具になえる(性の。成熟と未成熟の)。両極端に位置する。評価が両極端に分かれる。二極分解に向かう。 **わかれ【別れ】**▼別れ(三文小説的なブラットホームの(愉たのしいほど期待に充ちた=堀)。今生の永いお別れ。別れの(杯を交わす。挨拶を言上する。挨拶もそこそこに列車に飛び乗る=阿部。言葉ひとつ述べられなかったという後悔=福永)。会うは別れの始め。口々に別れの言葉をかわす壺井。徹夜明けの興奮と別れの感傷が入り乱れる=氷室。歓びの思い出と別れの悲哀を孕はらんだ美しい帆布のような女三島。別れの言葉に出来る限りの明るさをこめる=高橋泡。ねんごろに別れの言葉を述べる。別れは会者定離の習いとあきらめる。▼別れを惜しむ(最後の。いつまでも手を振って=福永)。しばしの別れを惜しむ恋人のように甘やかな悲しいような幸せな気持ち壺井。▶別れを告げる(家に。一同に。言葉少なに。友達に。涙ながらに。最後の。断腸の思いで。夫によりかかっていた生活に"石川。自分を彼女から引き剥がすようにして=伊藤整。ちょっと手をあげて=曽野)。お別れを言う。▼生き別れになる(兄弟が。夫婦が。子供と。両親と)。別れ方(乱暴な。味気ない。あっけない。心ない。淡々たる。つっけんどんな)。別れ際に(声をかける。ぽつんと言う)。別れ際をきれいにする。一別以来(月日が経つ。歳月が過ぎ去る。久しく会わない)。声涙ともに下る壮行の辞。辞去の言葉を述べる。別盃を(交わす。酌み交わす。酌む)。別離に臨んで謎のような言葉を餞別~~にする=山本周。別離の涙を流す。後朝の別れを済ませる。後初の別れを惜しむ。別れ話を(切り出す。持ち出す)。 <1143> **わかれさせる【別れさせる】**▼別れさせる(夫婦を。二人を。にべもなく)。解散を命じる。生木を裂くように(別れさせる。二人の仲を切り裂く=小林久)。生木を割かれたような感じが胸の奥の方にくすぶっている谷崎。 **わかれる【別れる】**▼別れる(さんざ泣いて。泣きの涙で。涙をふるって。再会を約束して。惜別の情をもって。どちらからともなく。綺脱に財産を半分分けにして=徳田。妻子谷屑砂んと泣きの涙で水盃をして今日)。別れる潮時。きっぱりと別れる決心をする。結局別れることに話が決まる。消化不良のような言い合いで別れることになってしまう鎌田。情が移って別れるのが辛くなる=内海。別れがたい思いで胸を締めつけられる=船山。別れた(男に対する恨みつらみ。亭主とよりを戻す。女房のために一肌脱ぐ藤沢)。たった今別れたばかり。後の寝覚めの好いようにして別れたい!二葉亭。一旦別れたが最後またとめぐりあわない有鳥。同棲を解消して別れて生活する=鈴木光。とにかく別れてくれの一点張り落合。飛びわかれる(二吸に。さっと)。暇乞いといをする。早々にいとまを告げる。おさらばを告げる。さよならを(言う。告げる)。目でさよならをする。さよならも言わずに踵たびを返す=新田。別れ際がすっきりしないと感情的なしこりを引きずる=泉後。解散に(踏み切る。持ち込む)。解散する(グルーブが。群衆が。衆議院が。捜査本部が。一座を。会社を。五月雨式に以談に)。会が散じる。▼決別する(思想的に。激越な論理と。馴れ合い体質と)。▼訣別する(父と母が。びしゃりと過去と)。深く決別を告げる。二人が袂にもを分かち別々の道を歩きだす=舟橋。袂を分かって残留する。手切れ金を払って別れる。もらう)。幾ばくかの手切れ金を渡して関係を清算する=池井戸。▼手を切る(悪い仲間ときっぱり。過去の暮らしと藤沢)。恋人と手を切ることができない=丹羽。別れない。別れる(気は毛頭ない。きっかけがつかない。気などこれっぽっちもない)。そう簡単に別れるわけにはいかない。意地でも別れてやらない!柴田浅。 **わかれみち【分かれ道】**▼分かれ道(運命の。人生の。成功と失敗の。生き抜けるか否かの。家族の幸不幸の)。分かれ道に立って迷う。一生の分かれ道に立たされる。分かれ道を(左に行く。右に行く)。分かれる(道が二つに。道が二岐も絵に。道が左右二手に=氷室)。話が枝道に入る。枝道を(歩く。入る)。 **わかれめ【分かれ目】**分かれ目(運の。勝敗の。勝負の。人生の。起訴と不起訴の。強例と信頼のきわどい)。▼関頭に立つ(生死の。完成させるか放棄するかの)。興亡の岐路に立たされる。▼岐路に立つ(運命の。死生の。人生の)。天下分け目の戦い。▼分岐点(人生の。鉄道の。道路の)。分岐点で左に進む。 **わかれる【分かれる】**分かれる(意見が。解釈が。見解が。上と下に。紅白に。左右に。賛否が明白に。世論が二つに。大学で専門に。敵味方に。東西に。二つの流れに。二つの流派に。右と左に。道が二筋に。幾つかのグルーブに。独立した区域に。好悪がはっきりと。白と黒とはっきり。乾期と雨期が截然ぜんと今日。人の群れが二つにさっと=三輪)。二手に分かれて攻め込む。門人が分かれて派を唱える=池波。小川を挟んで東山と西山に分かれている熊谷。分家する(三男が。次男が)。分立する(グループが。権力が。小党が。別会社として)。▼分極化する(意見が。好みが。左右に)。分極化傾向が顕在化する。分裂する(細胞が。衆論が。組織が。二派に。社会が諸階級に)。 <1144> # 湧く・漏れる **あくび【欠伸】**挙がった歓声の全部を呑みこむほど大きな欠伸が出る。▼欠伸が移る(人から人へ)。欠伸を連発する。大欠伸が出る。大欠伸をする。大声で欠伸をする。大きな欠伸が湧くように出る=宮沢。腹の底に欠伸の素が粉にでもなってふわふわと舞っているように生暖かな欠伸が出て止まらない谷村。あくびの出る貧打哦!赤瀬川。可愛いあくびを漏らす。何とも廻りくどい表現に内心欠伸を噛み殺さざるを得ない小沼。あくびまじりに言う。▼あくびをする(続けざまに。つられるように宗田。待ちくたびれたように!還有。両手を上にぐっと伸ばして=松谷)。じらすようにわざと欠伸をする遠藤。やけくそのように大あくびをする=井伏。生あくびが泡みたいに胃の奥から上ってくる=大庭。生あくびを(暇み殺す。連発する)。歪ゅがんだ顔が欠伸のように伝染する"大岡。 **あまもり【雨漏り】**雨漏りがひどい。娘の気持ちが暗くなると家の中には雨洩はまりがするときに似た陰湿なものが漂いはじめる=有吉。▼雨漏りする(屋根が。天井から)。茅屋ぶらはふるやのもりの騒ぎ=飯田。 **いずみ【泉】**汲くめどもつきぬ泉岸田。体の奥に春の泉が湧いてくる=舟橋。創作の泉が枯れる=瀬戸内。溜まりに溜まっていた熱い泉が堅い地を破って一時に进点にって来たように涙を流す島崎。▼泉が湧く(清冽せいな。滾々にんと)。泉の水が猫が溺れるほどもない岸田。口もとに微笑が日にかがやいている出水孙ずのように湧き上がる=佐藤春。感情が心の層のずっと奥深いところから泉のように湧いて来る=大佛。涼しい音色が湧き上がりひと度水脈から噴き出した泉のようにとどまることを知らない=福水。尽きない泉のように悦いっびが湧き上がってくる=大佛。鳥が唄を歌っているのが湧き出る泉のように聞こえてくる=遠藤。新しい勇気が泉のように湧き動く=海音寺。静寂が泉のように胸の中に溢れで来る=福水。恋々たる感情が泉のようにあふれてくる=山手。清泉が(流れる。ほとばしり出る)。湧き水を(汲む。飲む)。 **おなら**おならが出る。おならを(こく。放つ)。出物腫れ物所嫌わず。所構わず豪快に放屁味うする。屁、が(臭い。出る)。屁を(こく。放つ。ひる)。気合が出そこなった屁のようなのどかで平和でしまりのないか細く愛らしい声=飯田。 **げっぷ**ゲップが出るほどごちそうになる=飯田。ジュースをゲップが出るまで飲む。ゲップと大きなおくびが出る。げっぷを(こらえる。漏らす)。しきりと胸から喉へ突き上げてくる不快な暖気くに有吉。厭ぃゃな予感が苦い暖気のように口に広がる森場。 **こもれび【木漏れ日】**陽の光が微細な粒になってほろほろと散ってくるような木洩こもれ陽=曽野。木漏れ日が(斑はだに落ちる。水玉模様を描く“西木)。木洩れ日が地肌を約沁はの皮のように美しくする=堀。蟬せみの啼なく森の中に明るい木洩れ日が縮しまのように落ちる=原田康。ちらちらと木洩れ日が緑色に踊る"柴田湖。木漏れ陽が点々と彩る庭"立原。木漏れ日の斑な模様が静かで優しい=丸谷。天井の明かり取りから落ちてくる淡い木漏れ日のような琥珀色に沿くの光森環。若かりし日がちらちらと木漏れ日のように老人の顔に降りかかる"有吉。緑色がかった薬洩はもれ日が頬を複雑に染める=高橋和。 **じゃぐち【蛇口】**蛇口から(水滴が滴る。流れ落ちる水。水が細く経はれて垂れる=古井)。おっぱいにむしゃぶりつくみたいに蛇口に吸いつく=阿部。蛇口を(固く締める。いっぱいに開く)。水道の蛇口をぎゅつとひねる鷺沢。 **ためいき【溜め息】**▼ため息(シャボン玉をふわりと宙に浮かべたような軽い"重松。多少の自嘲を含んだためいき【溜め息】▼ため息(シャボン玉をふわりと落合。魂が抜け落ちていくような=あさの。痩せた体に似合わない太い荻野)。溜め息が白く長く尾を引くに永井成。年寄りじみた溜め息が漏れる。▼出る(ほっと安堵比んの。我知らず深い。アフンと口から=武田百)。泣くに泣けぬ溜め息が嗚咽功ぇのように胸から进出にり出る=中河。胸の中が空っぽになるような深い溜め息が口からほとばしり出る柴田翔。語尾が溜め息になる。溜め息を鼻から吐き出す。「ふゥ」といい気持ちの溜め息を鯨のように吹き上げる=獅子。周囲に聞こえないような小さな溜め息をひとつつく=小池。肺の底に残しておいたような溜め息をする=岡本。▼溜め息をつく(満足そうに。諦めたように。天を仰いで。途方に暮れて。感にたえたように大きな星。うんざりしたように三浦質。喫茶店で出されたおしぼりで顔を拭った後のようにほっと=小池)。悲鳴のようなため息をつく安部。▼溜め息を漏らす(幸福な。思案の。羨望民认の。ほっと安堵の。我知らず)。消え入るような深い溜め息をもらす木山。胸の底から吐き出すように溜め息を洩もらす遠藤。切ない溜め息のような微笑み=小川。溜め息まじりに(うなずく。つぶやく)。嘆息が漏れる。思わず嘆息が出る。▼嘆息を漏らす(覚えず。深い)。▼嘆息する(大げさに。天を仰いで。気絶しそうな弱々しさで)。 **はなみず【鼻水】**鼻水が出る。鼻水を手のひらでぬぐう。頭の奥の十五年も前の記憶が暑さのために溶けはじめてだらしなく鼻汁のように流れ出て来る=中村真。ぼたぼた滅はなを垂らす。ぐすりと淡をすすりあげて涙ぐむ=熊合。▼洟をかむ(威勢よく。ちんと)。水っ淡はたが(垂れる。出る)。水っ淡を(垂らす。なめる)。だらしなく水浅ぬ付をたらす。 **ふんすい【噴水】**噴水から水が勢いよく飛び出す。噴水の(傍らに腰を下ろす。水しぶきがまぶしく輝く小川)。焦げ茶色の噴水のような描き眉=獅子。波の加減で噴水のようにしぶきをあげる流水"加賀。夕霧心の中に男女の声が噴水のように立ち上り消えていく遠藤。スプリンクラーが(くるくる回る。水を撒まく)。スプリンクラーから水が噴き出る。 <1145> **みずもれ【水漏れ】**▼水漏れ(蛇口の。トイレの。バイブの)。水漏れを(修理する。チェックする)。水道管から漏水する。 **もらす【漏らす】**▼漏らす(安培はんの息を。思わず苦笑を。苦しい立場を。小便を。素直な感想を。小さな嘆声を。一言不満を。髀肉ににの啖を。秘密を人に。穏やかな微笑を。口のほとりに微笑組『みを。苦痛のうめきを。さめざめとした声で嗚咽。えを。耐えきれずに呻ぅぁき声を。小さく叫び声を。憎々しい笑い声を。一言二言鋭い批判を。ほっとして吐息を)。▼洩もらす(にやりと気味の悪い笑いを福永。密かに会心の笑みを=舟橋。問わず語りに余計なことまで=小林久)。天網恢々がら疎にして漏らさず。▼漏らさない(一言半句も。おくびにも。誰にも。一言も自分の考えを外に)。重要な部分を書き落とす。▼書き漏らす(名前を。日付を)。うっかり聞き落とす。▼聞き漏らす(名前を。話を)。▼ちびる(小便を。大便を)。 **もれでる【漏れ出る】**▼漏れ出る(明かりが。煙が。言葉が喉の奥から。ぎりぎりという歯軋にぎりの音が "熊谷)。漏出する(ガスが。情報が。調書が)。 **もれる【漏れる】**▼漏れる(嗚咽冷えが。賛嘆の言葉が。試験の問題が。人事の噂が。外に音が。方々で失笑が。声が八方に。悲鳴が廊下に。恩賞から。唇からささやきが。雲円から薄陽が。継ぎ目から水が。どこからか空気が。戸の隙間から電灯の光が。悲鳴に近い叫びが。短い驚きの声が。入試問題が事前に。朝の光がカーテンの隙間から。ガスがバイブの穴から。自嘲の言葉が唇から。力のない笑いが思わず=東野)。▼明かりが漏れる(テントから。ドアの隙間から)。笑みが漏れる(頬に。口元から)。▼外部に漏れる(情報が。放射性物質が)。口から漏れる(呟きが。ぼやきが)。情報が漏れる(他社に。マスコミに)。▼外に漏れる(話が。光が)。吐息が漏れる(思わず安堵はんの。ほっと深い)。漏る(雨が。水が。屋根が)。漏れ落ちる(言葉が。光が。まばらに)。軍事情報の漏洩に神経質になる。漏洩する(機密を。秘密を。外部に)。 **わきあがる【湧き上がる】**湧き上がる(興奮を抑えきれない。喜びに身をまかせる=武者小路)。湧き上がる(サイレンが四方八方から。笑い声が絶え間なく。聞きたいことが雲のごとく=田辺)。▼湧き上がってくる(いよいよの思いが胸に。妄想が次から次へと。欲望が体の奥底から)。▼底から湧き上がってくる(怒りが腹の。荒々しい悲しみが心の"中島敦)。水の底から湧き上がってくるような声高井。 **わきおこる【湧き起こる】**▼湧き起こる(反対の声が。望郷の念が。喜びが油然ど。大きな拍手と歓声が。胸中に満足の思いが。華やかな笑い声が。胸の内に疑念が。慚愧さんの念が忽焉にんとして=中局救)。わき起こる(きゃあという嬌声が=山口。わっという叫び声が=山口)。油然と(現れる色彩の波。懐かしさが胸にあふれる)。 **わきたつ【湧き立つ】**▼湧き立つ(油蟬ちぶらの声が。狂暴な心が。むらむらと反抗心が。武者震いが体の芯から。意味のつかめぬ緊迫感で身体中が"山田太)。乱軍のような跫音話しが沸き立つ=本庄。身体中の血潮が悉ことく湧き立つような情熱下菊池。 **わきでる【湧き出る】**▼湧き出る(泉が。温泉が。滾々こんと水が。千万無量の感が。涙が次から次へと。娘を隣ぁぁれむ心が进酢にるように=福永)。▼湧いて出る(何愧さんの思いが。次から次にいろんな問題が。思いつきが頭の片隅に)。▼湧出する(温泉が。石油が)。 **わく【湧く】**▼湧く(生きる勇気が。川面から霧が。口に唾が。船上に歓声が。空に黒雲が。ふと疑問が。頰に微笑が。宿命観が心に。泉が滾々にんと。悪辣さに怒りが。言い知れない恐怖が。岩の隙間から清水が。体じゅうに冷や汗が。体の奥から震えが。自分でも予期しない反発心が。ためらいの気持ちが。むくむくと人生の希望が。胸に愛借の情が。もくもくと黒い煙が。いじましい思いが心の中に。漠とした悲しみが胸に。予感が胸の奥に。愛情がほのぼのと。アイデアが続々と。憎悪の心がむらむらと。伏流水がじくじくと。彼女を失いたくないという切ない願いが=中河。すっぽかされたような淋しさが佐多。半島の随所に温泉が"石坂。崖の下の一つの穴から吹き出すように水が大岡。ほとんど怒りといってもいいほどの苛立ちが若竹。一面に水が這い出るように大岡。疑問が雲のように=獅子)。男後家には蛆うじがわく=富岡。尽きることなく滾々と湧く泉。むらむらと湧いてくる(怒りが。負けん気が)。▼湧いてくる(生きる意欲が。感動が滾々と。心配が次々と。話の続きに興味が。不思議にいい考えが。ほのぼの期待が。恐怖と味が。不思議にいい考えが。嬉しさが交々こに。喜びがふつふつと胸に。闘志がもりもり。深い悲哀感が後から後から。黎明が東の空から。愉たのしさがひたひたと心の裡ぅぅに=原田感。想念が雲のように佐藤愛。濁った哀かなしみがふつふつと胸の底から荻野。日暮れが低いところから=本庄)。昼夜をわかたず尽きることなく滾々と湧き出ている湯阿川弘。▼湧き出す(不安が胸に。懐かしさが心の底から)。くやし涙がまたとめどもなくわきだす=中。降って湧いたような(アクシデント。珍事)。地から湧くことく出現した黒装束の一団柴田錬。湧くような蛙炒ゃの声。▼湧かない(未だ実感が。原稿を読む意欲が=横山)。一向に興の湧かない顔つき。哀かなしみの湧出を妨げないように声を低める!大江。 <1146> # 分ける・異なる **いたん【異端】** 異端の説。▼異端視する(新たな学説を。他国の宗教を)。聖地を異教徒から守る戦い。異教徒を迫害する。異見を(唱える。許さない)。異説を(唱える。排除する)。 **エキゾチック** エキゾチックで人目を引く顔立ち“三浦し。エキゾチックな(赤煉瓦は姉もの庁舎。景観。美人。風貌。雰囲気)。異国情緒のある町。異国情緒を漂わせる。異国風な面影。 **かいがい【海外】** 海外から(外国資本が流入する。引き合いがある)。海外に(遊びに行く。名がとどろく。莫大畑な隠し財産を持っている=船戸)。原料を海外に依存する。自国の文化を海外に宣伝する。海外の事情に明るい。長年にわたる海外生活。海外駐在を長年務める。海外雄飛の夢。時差を考慮に入れる。 **がいこく【外国】** 外国から(渡来の品。取り寄せる)。外国と(国交を開く。貿易を行う)。外国に(移住する。原料を仰ぐ。高飛びする。亡命する。負けない製品。留学する)。外国の(援助を受ける。力が土足で入りこむ=有吉)。外国暮らしが長い。外国軍部隊が全面撤退する。異郷の空の下。異境の果ての心細さ。知る人も少ない異境の旅。骨を異境の土に埋める。外資が国内市場に参入する。外資系の企業。外地から引き揚げる。外地に渡る。国外から投資マネーが流れ込む。国外に(脱出する。追放する。亡命する)。他郷に遊ぶ。他郷の空を志す。はるばる遠い国から来る。遠い国を夢見る。異国で暮らす。異国の地にたどり着く。他国の(後感にらを拝する。手本となる。軍隊が駐留する。内政への不干渉)。伝統の異なる他国の文化。隣国(海を挟んだ。地続きの)。隣国に越境する。 **がいこくじん【外国人】** 外国人と日本人が雑居する。外国人排斥せいを阻む。周辺に外夷》ぃが迫る。外人(つんとすまして人を小馬鹿にしたようなスマートな『中島み。見上げるような背の大きな=曽野)。捕らえられた珍しい獣のような異邦人=大江。異邦人のような淋しい心持ち有局。紅毛碧眼にお祝いの異国人=長与。 **かくづけ【格付け】** 格付けが(上がる。下がる)。レストランを格付けする。格付けされる(最上位に。最高級と)。ランクが(上がる。下がる)。▼ランクされる(第一位に。筆頭に。ずっと下の位置に)。人気投票で上位にランクインする。 **がんりき【眼力】** 本質を見抜く眼力。鋭い眼力がものを言う。眼力に恐れをなす。眼力の鋭さに驚嘆する。眼識が高い。物事を見る眼識が備わる。炯眼心人を射る。炯眼に恐れ入る。慧眼妙心の士。慧眼をほめたたえる。 **きめつける【決め付ける】** ▼決めつける(頭ごなしに。一方的に。高飛車に。目先だけの判断で。親が子供を叱りつけるように壺井)。調べもしないで嘘と決め付ける高橋克。決めてかかる(一概に。頭から。独身でいると。初めから。犯人が男と)。落伍者の判を押される。▼呼ばわりされる(木偶でくの坊。売国奴)。人を泥棒呼ばわりする。▼烙印を押される(悪女の。裏切り者の。記者失格の。二流の。密告者の。ふしだらな女の)。▼烙印を捺ぉされる(豊臣の残党という柴田錬。人門性の欠落した人間という藤本)。▼レッテルを貼られる(悪女の。前科者の。専務派の。流行作家という石坂)。 **くべつ【区別】** ▼区別(好悪の。公事と私事の)。簡単に区別がつく。はっきり区別ができる。▼区別する(音韻と音声を。現象と木質を。湖水と川を。事実と観念を。好きと嫌いを。政府と民衆を。敵味方を。道楽と仕事を。沼と池を。農村と都会を。未読と既読を。英雄と裏切り者を。堅気とやくざを。部屋着と外出着を)。二派に色分けされる。▼色分けする(グルーブを。政治家を派閥に)。書き分けに迷う。書き分けを一覧表にする。微妙な書き分けを行う。画然たるイメージが湧く。画然と(二分される。離脱する。分かれる)。商品を差別化する。差別化を図る。▼峻別へんする(公私を。自他を。推測と事実を。一人一人を。本質と虚偽を)。弁じる(色を。黒白を。事理を。よしあしを)。容易に見分けがつく。 **くべつできない【区別できない】** ▼区別がつかない(現実と空想の。誰彼の。はっきりした)。本気か冗談かの区別がつきかねる。右も左も識別できない。見分けがつかない(素人には。誰が誰やら。ほとんど。ちょっと見では。どれがどれだか)。見分けが難しい。かわたれ時の顔の見分けはつきにくい三島。 **くべつなく【区別なく】** 誰彼の区別なく(尻尾を振る犬。友達になる)。男女の差別なく。無差別に殺戮にを繰り返す。時を分かたず。工事が夜も日も分かたず続けられる。貴賤샨せの分かちなく死は訪れる。昼夜の分かちなく働く。貧富の分かちなく木綿の服を着る。日と夜の分かちなく稼いでも足りない=山本周。 **こうはん【後半】** 後半で巻き返す。後半のステージに入る。後半を(飛ばす。乗り切る。迎える)。後半戦に突入する。後期がスタートする。後期に入る。後期の(試験。授業)。 **こうもく【項目】** 項目が並ぶ。項目に分ける。項目を(数え立てる。調べる。立てる)。項に分ける。細目を(仕上げる。詰める)。 **ことなる【異なる】** 時と場合によって異なる。常とは異なる服装。なんら異なるものではない。異なった(生活に接する。方向に赴く)。水と油みたいなもの。異業種分野に参入する。異種の(生物。文化)。異種を交配する。異文化が共存する。異文化を体験する。異 <1147> # 分ける・異なる-378 分子が紛れ込む。調和した空気に処分子が乱入する。異分子の潜入を防ぐ。▼わけが違う(おのずから。てんで。ただの商売人とは)。一枚ごとに色を違える。常になく(かしこまっている。難しい顔をする)。特異な(位置を占める。能力を備える。数値を検出する)。魔王にふさわしい特異な能力"大原。異質な(言語。存在。文化を同化する。ものを取り込む)。異質のものを排除する。異物が(混入する。混じる)。目に異物が入る。体内の異物を無毒化する。▼異にする(意見を。いささか趣を。意味を。次元を。時代を。種類を。性質を。内容を。発生年代を。用いる語を。様相を。一夜にして明暗を)。 **しきべつ【識別】** ▼識別する(意味を。色を。賢と不才を。正邪を。仲間を)。種類をあらかた識別できる。鑑別する(真偽を。ひよこの雌雄を)。▼嗅ぎ分ける(危険を。違いを。同類を。匂いを)。 **すいへいせん【水平線】** 水平線(紫紺の。青磁色の。巡い海の彼方の)。水平線が(風景を両断する。ほんのりと橙色心がに染まる。闇の彼方に溶け込んでいる。ちりちりと小刻みに揺れる=重松。長い秤にかのように左右にかしぐ=阿部。灰色の空に溶ける=高樹。水のヴォリュームを押し上げるように正しい円を画えがいて取り巻く=大岡)。水平線から雲が湧き上がる。朝日が水平線からのぼる。水平線に(現れた帆影。雲がよどむ。たたずむ写。春後がたなびく)。夕陽が水平線に沈む。海の水平線に近いところがサファイアブルーに変わる=小林何。水平線のあたりに白い雲がむくむくと連なる=池澤。水平線を望み見る。夕明かりが水平線を朱色に染める。夜がすみのほうから白くなって水平線がほんのりと橙色に染まりかける平岩。青焰燃ゆる大円盤の彼方"中島义。空と海とが霞むように溶け合う一線が何ひとつ巡るもののないゆるやかな弧!竹西。海と空の境目。 **せいよう【西洋】** 西洋の文物を輸入する。西洋思想に通院する。西洋思想の受け売り。万事につけて西洋流を真似ょぉする。西欧文明を取り入れる。バタ臭いイメージ。バタ臭く華やかな顔。洋品を(商う。販売する)。洋風に(改装する。しつらえる)。欧米の水準に追いつく。欧米諸国に伍にする。欧米列強を敵に回す。はるばるヨーロッパからやってくる。ヨーロッパの古めかしい街並み"北村。 **ぜんはん【前半】** 前半を(埋める。引き締める)。リーグ戦の前半を終える。前半戦を終える。前期の試験。 **だんてい【断定】** 断定を(避ける。差し控える)。断定する(即座に。直ちに。明確に。はっきりと。にべもない口調で丸谷)。 **ちくいせん【地平線】** 入道雲のむくむくした塊に覆われている地平線"堀。地平線に近い。太陽が地平線に現れる。▼地平線に沈む(太陽が。夕日が)。地平線の(彼方にぼんやり目を向ける。彼方まで巡るものがない。上へ指の尖さきを並べたようなアルブス連山岡本)。草原が遥か彼方の地平線まで広がる!なかにし。遥かな地平線を見るような眼で母親を眺める=干刈。地平が見晴らせる。遠い地平に落ちてゆく入り日。地平の果てまで追っていく。空と陸地の境目を見渡す。 **とうぶん【等分】** 等分に(金を分ける。割る。二人を見比べる)。▼等分する(利益を。二つに。三つに)。均分に相続する。▼均分する(遺産を。エネルギーを。富を。利益を)。 **とうよう【東洋】** 東洋と西洋を対立させる。東洋的な(諦観。ベーソス)。むっちりとうるんだような亜熱帯アジアの青い空開高。アジア諸国には澎湃唄うとして民族主義の波がある=加藤。 **とくてい【特定】** 特定の(人物と事件を結びつける。人と物を指名する)。身元の特定を急ぐ。▼特定する(裏金の使途を。原因を。種類を。場所を。容疑者を)。 **とりわける【取り分ける】** ▼取り分ける(クッキーを。刺身を。自分の分を。スーブを。肉を。平等の分量を。小皿に。小鉢に)。▼皿に取り分ける(ちらし寿司を。料理を)。取り分けて銘々に食べる。大皿から小皿に料理を取る。皿に移す。 **なにやかや【何やかや】** 何やかやと(身辺が忙しい。問題が生じる。家事に追われる)。何やかやの事情が重なる。なんやかやと(御託を並べる。理屈をつける)。何かと(噂の的。口を出す。世話になる)。 **にぶん【二分】** 二分する(国論が。組織が。勢力を。風景を。一本の線によって)。二分割する(均等に。左右に。上下に)。衆論が賛否二派に分裂する。二つに分かれる(意見が。川が。世論が。人の群れが)。賛否両論で村が二つに割れる=高橋和。兵を二手に分ける。二手に分かれて捜索する。 **ニュアンス** ▼ニュアンス(言葉の。文章の細かい)。ニュアンスが言外にこめられている。ニュアンスに(乏しい。富む)。微妙なニュアンスを見逃す。 **はんだん【判断】** ▼判断(機敏で明快な。断片的な情報を基にした。冷静さを欠いた。専門家もちょっと舌を巻くほどの冷静な=阿刀田。先生が生徒に言いつけるような一方的新田。透徹して仮借ない鋭い=有吉)。判断が(甘い。遅れる。鈍る。びたりと当たる)。▼判断が働く(無意識のうちに。時期尚早だという)。判断に(狂いがない。自信がある)。己の判断に固執する。出席者の判断に一任する。過失による事故という判断に達する若竹。冷静な判断によって全体をリードする=柳田。判断に委ねる(裁判官の。読者の)。判断を(相手に任せる。後回しにする)。ぎりぎりの判断を託される。功名心が判断を狂わせる。自分なりの判断を生み出す。責任者に判断を一任する。▼判断を下す(現実的な。正確な。政治的な。明快な。物事に明晰いな。てきぱきした。経験に裏打ちされた適切な!佐 <1148> # 野)。判断を迫られる(とっさの。難しい)。判断する(故障の有無を。事の是非を。公平に。合理的に。 。合理的に。自主的に。瞬時に。正確に。総合的に。的確に。自分の頭で。勝負あったと。モデルの善し悪しを。よいか悪いかを。実際に目で見て。前後の状況から。対応が難しいと。大所高所に立って。当分の間は無理と。得策ではないと。世間は外見で人を"乃南)。現実の状況を判断する能力。確固とした政治判断。判断材料を(示す。提供する)。優れた判断力と勇気に頭を下げる畑村。合理的な判断力を備える。状況判断力を買われる。正常な判断力を持つ常識人。冷静な判断力を送う。 。冷静な判断力を送う。自由な裁量する。自由裁量を認める。事実を速断する。速断に過ぎる。速断を避ける。道義的な断案。断案を下す。当世の風を浮渉と断じる。見どころのある立派な若者と見受ける=福水。頃を見計らう。神の如き明断。事の是非を明断する。明断を下す。論断する(正当に。明快に)。 **はんぶん【半分】** 半分(上の空で言う。あきれたような顔。意識を失った状態。残っただけでも儲もうけもの。やけになったような口調。夢の中にいるような状態。笑いながらたしなめる)。顔を半分視のぞかせる。半分に(切る。割る)。上半分を(塗る。覗せる)。下半分を(隠す。見せる)。冗談半分に(脅す。受験してみる)。冗談半分のでたらめ。半分以下にとどまる。値打ちを半分以下に引き下げる。まだ半分以上も残っている。客の入りが半分程度。一半の責任がある。責任の一半を背負う。客は五分の入り。▼折半する(勘定を。費用を。負担を。利益を。双方の主張額を)。半ば(上の空で聞く。ありがたく、半ば迷惑。嘘で、半ば本当。海中に没している。冗談、半ば本気で言う。開き直った気分。命令口調で言う。照れたように答えをぼかす"曽野)。恐怖に半ば気を失う。愛格半ばした思い。 **ばい【倍】** を過ぎる(秋が。月の)。二等分する(円を。胡瓜を。りんごを)。半欠けの茶碗。半期ごとの決算。半期に一度の大売り出し。時計の針を半世紀以上戻す。半世紀余を経た今。夢のように半世紀を生きる北村。半月ばかりがいたずらに経過する。半月を(経る。同じ家で暮らす)。半年近くずれ込む。かれこれ半年近くなる。夢の間に半年ばかり過ぎ去ってしまう"江戸川。半年ぶりに会う。わいわい言いながら半日働く。ほぼ半日が経つ。半面の真理。▼半額になる(値段が。料金が)。とうとう言い値の半分までまけさせる火坂。市価の半値で叩き売る。半値に切り下げる。半数に満たない。半数を(改選する。占める。残す)。 **ぶんるい【分類】** 分類する(業態を。大ざっぱに。便宜的に)。▼区分けする(土地を。郵便物を)。▼仕分ける(小銭を。書類を。郵便を)。セクションに分ける。▼類別する(作品を。資料を。標本を)。 **べっせかい【別世界】** 別世界に(住んでいるような人!曽野。踏み込んだような気分!星)。どこか別世界の出来事のように近藤。別世界のように静か“石坂。部屋の中が別世界のように吸かい吉本。異次元の世界に入りこむ。別次元の世界に迷い込む。 **べつもの【別物】** ▼別物(事実と小説は。説得と交渉は。よく似ているが)。別物として扱う。別種に属する。別種の(生き物。問題)。 **みるめ【見る目】** 見る目が(変わる。鋭い。育つ)。男を見る目を鍛える。人を見る目が(ある。鍛えられる)。作品の鑑賞眼が透徹している。鑑賞眼に自信がある。審美眼にかなう。審美眼を持つ。人を見る目がない。男を見抜く目がない。時代の流れを見る目が欠けている=内田康。明を曇らせる。 **みわけられない【見分けられない】** ▼見分けられない(かすかにしか。すぐには。どれがどれだか)。閤夜に鳥から。雪に白鷺礼。識別が(困滩。うまくできない)。判別が不可能。ほとんど判別がつかない。話の真偽を判別する術すべがない。▼判別できない(顔が。形が)。 **みわける【見分ける】** ▼見分ける(雄と雌を。偽か本物かを。本当か嘘かを。本物と偽物を。鮮度を的確に。本音と建て前を。名人とへっぽこを)。簡単に見分ける方法。ペーバーテストの結果のみで人を判別するというおぞましい風潮にとっぷりとつかる=飯田。見分け方を(習う。学ぶ。身につける)。▼見分けられる(おぼろげに。明瞭に。山の木が一本一本)。肥えている(口が。舌が。耳が)。鑑定する(薬を。人骨を。筆跡を)。判別がつく。判別する(顔色を。雌雄を。是非を。雪質を)。 **みんぞく【民族】** 血で血を洗う民族紛争。民族に固有な文化。民族の(安寧を保全する。存亡をかけて戦いぬく)。不断に異民族と接触する。異民族の(支配を受ける。支配に抵抗する。侵略にさらされる)。少数民族を圧迫する。民族意識に燃える。民族主義的な自我が醸成される豊田。民族的な(情操。伝統)。民族排外主義が高まる。種族維持の本能が働く。種族が繁栄する。稀ぼれな種族に属する。種族を(維持する。保存する)。様々な人種が入り乱れる。世界じゅうのあらゆる人種が集まる。人種差別を一掃する。部族紛争を <1149> # 調停する。部族間の争い。部族の(分裂を防ぐ。危急存亡のとき)。部族を守護する神霊。 **めきき【目利き】** 宝石の目利き。目利きが(上手。確か。達者)。絵の良し悪しを見抜く目を持っている=北原。▼見巧者いに♪(試合の。芝居の)。多年の女道楽で目が肥える。芸を見る眼が肥えている=深沢。女に目が肥えている。 **よそ【余所】** よそからの客をあてこむ。よそで稼ぐ。よそに(預ける。引っ越す。女をこしらえる)。心配をよそに。内容がよそに漏れる。よその(病院に移る。町に行く。家の火事を見るよう。家を転々と渡り歩く)。矢がそっぽに飛ぶ。他家から(婿養子に入る。養子を迎える)。他家に(嫁する。嫁ぐ。養子に出る)。 **よそもの【余所者】** この世から弾き出された余所者加賀。よそ者が生きていくには何かと苦労が多い飯田。よそ者の(無責任な意見。感じが拭えない)。よそ者を(爪弾きにする。はじき出す。つっけんどんに扱う)。よそ者とした顔つきで行楽客の中にまぎれこむ"阿部。他国者が大勢なだれこんでくる。 **りせい【理性】** 理性が(働く。麻痺まぃする。揺らぐ。ぶつりと切れる。音を立てて崩れる=筒井)。少々激しかけた感情を理性でしずめる=阿久。理性と感性を総動員する。理性に(訴える。導かれる)。理性の手綱を締める三浦し。理性を超越した憎悪豊田。疑心が理性を凌駕する。一時的に理性を喪失させる勃然たる憤怒がこみ上げてくる!南条。感情が理性を脳の奥に押し込む!泉優。祖母が批難するに決まっている話題を自分から言ってしまうほど理性を失う萩原爽。理性的な(口ぶりで話す。行為)。理性的に(考える。心が働く)。理知の(光。瞳)。冷静な理知の目。理知を(投げ捨てる。働かせる)。 **りょうしき【良識】** 体制に飼いならされた良識に身を委ねる=中野炎。良識の柔毛にこを逆撫にかでする"中野美。良識ある(処置。判断)。何事についても一見識ある。人並み以上の見識がある。広い見識を持つ。識見の高い人物。識見を高く評価する。 **わかちがたい【分かち難い】** いずれとも分かちがたい感情。言語と文化との分かちがたい結びつき。▼分かちがたく結びつく(今と昔が。権力と富が)。密接不可分。不可分に結びつく。 **わけあう【分け合う】** 分け合う(痛みを。金を。同点で首位を。バンを。一つ傘を。利益を)。骨肉を分け合った親兄弟。山分けにする(金を。賞金を。儲もうけを)。分け取りする(獲れた魚を。獲物をみんなで)。ワークシェアリングが根付く。ワークシェアリングに消極的。ワークシェアリングを(実施する。導入する)。分かち合う(悲しみを。至福の時を。バンを。好きな女の子と喜びを=貫井)。 **わける【分ける】** 分ける(食べ物を。人間と狼を。暖簾を。明暗を。理科と文科を。髪を左右に。髪を七三に。財産を平等に。二つに。ブロックに。三人で等しく。みんなに幸運を。幾つかの部分に。状況と対策を明確に。文をいくつかの章に。問題を五つのカテゴリーに内橋)。自分の血を分けた(息子。処)。血を分けた(親子。兄弟)。気前よく分けてやる。分けて言う(事を。理を)。雄と雌を産み分ける。登場人物を描き分ける。頂き物をお裾分けする。お裾分けにあずかる。顔を使い分ける(表の顔と裏の。二つの)。人波をかき分けて進む。人をかき分けて前へ出る。▼書き分ける(スタイルを。明暗を)。慎重に相手の言葉を噛み分ける。▼切り分ける(肉を。野菜を)。紅白に染め分ける。▼踏み分ける(アクセルとブレーキを。二つのペダルを)。▼ふるい分ける(粉を。米を)。料理を一人前ずつ小皿に盛り分ける。▼選り分ける(こみと魚を。一級品と二級品を)。分かつ(以前と以後を。生と死を。外と市場を。花と根を。资本家から労働者を)。幾つかに区分する。▼一部を割く(兵力の。俸給の。労力の)。自分の時間を割く。▼大別する(小説を。方言を)。範疇んちからはみ出す。従来の範疇におさまりきれない作品。二つに大別する。▼分骨する(郷里の墓地に。本山に)。▼分祀ぃんする(御神体を。祭神を)。分筆して(相綻する。登記する)。土地を分筆する。分別する(こみを。ごみと資源に。燃えるごみと燃えないごみに)。別にする(宿舎を。寝室を。部屋を。家庭と仕事場を)。小分けにした薬。ケーキを小分けする。土地を小分けして売る。荷物を小分けして運ぶ。▼細分する(事項別に。ばらばらに)。▼細分化する(業務を。研究を。土地を)。▼分割する(土地を。部屋を。均等に。東西に。南北に。ばらばらに。平等に。二つに)。文系の(学部。学科。大学。発想)。文科系に進む。文科系の(学生。学部)。理系の(学部、学科。大学。発想)。理科系に進む。理科系の(学生。学部)。 **わふう【和風】** 和風の(食事。料理。小ざっぱりとした家)。こざっぱりした和風の建物。洋風と和風を取り混ぜる。日本的な(顔立ち。考え方。叙情、見えすいた人心収攬術しい三浦朱)。和装の(髪型。小物、婚礼衣装。魔人)。 **わりふる【割り振る】** ▼割り振る(仕事を。資本を。役を。公平に)。時間の割り振りがうまい。割り振りする(時間を。日当を)。手伝いの割り振りを話し合う。振り当てる(宿舎を。役割を)。振り分ける(商品を。大衆品を。等級ごとに。部下たちに仕事を)。上手に割り付けたポスター。原稿をページに割り付ける。按分似する(経費を。持ち分を。利益を)。▼応じて按分する(時間に。出資額に。人数に。面積に)。配役(映画の。劇の。テレビドラマの)。配役を(決める。新人で固める)。割り当てる(各戸に寄付を。仕事を)。野暮な役割を割り当てられる。割り当てが(増える。減る)。割当量を(増やす。減らす)。 <1150> # 忘れる・記憶する **あんき【暗記】** ▼暗記する(一字一句を。答えを。詩を。数字を。台詞を。単語を。手順を。電話亏を。隅から隅まで)。遠い山脈の姿をみんな暗記してしまうくらい、じっと目に力を入れて見入る=堀。空で(言う。覚えている)。年号を棒暗記する。そらんじる(経文を。メロディーを。すらすらと)。古今東西のありとあらゆるギャグを譜そらんじる=井上ひ。ことごとくそらんじて余さない。掌に泣こを指すように謐んじている三島。 **あんしょう【暗誦】** ▼暗誦する(詩の一節を。祈禱書いとうを。経文を。台詞紗」を。宣言の文句を。文章を。詩をすらすらと)。暗誦していたかのように(一気にしゃべる。早口にしゃべる)。 **いいわすれる【言い忘れる】** ▼言い忘れる(肝心なことを。大事なことを。用件を。うっかり)。▼言い落とす(肝心なことを。大事なことを)。▼言いそびれる(挨拶を。肝心なことを。断りを。礼を。褒めようとして)。▶言い漏らす(肝心なことを。大事なことを)。 **おぼえ【覚え】** ▼覚えがある(誰しも身に。開いた。痛い目に遭った。どこかで読んだ)。耳に覚えのある音。うろ覚えに知っている。聞いたことをうろ覚えにしゃべる。うろ覚えの知識。心覚えの(ある品物。道筋をたどる)。ずば抜けて物覚えがよい。 **おぼえこむ【覚え込む】** ▼覚え込む(仕事の急所を。作法のいろはを。やり方をいつとはなしに)。頭に入れる(公式を。データを。要点を)。頭の一角にとめておく。目に永遠に焼きつける。覚えたての(歌。技術。台詞総♪)。言葉を覚えたての頃。見覚える(顔を。仕事を)。▼覚える(現地の言葉を。誰より早く。すぐに顔と名前を。見よう見真似ふまで脈の取り方を)。乾いた砂が水を吸うように阿蘭陀語分ランをおぼえた平岩。覚えて日が浅い。覚えておいて損はしない。歌が海綿に吸われるように皆に覚えられてしまう~小林多。 **おぼえていない【覚えていない】** ▼覚えていない(詳しいやりとりまでは。ぼんやりとしか。おぼろげにしか=武田泰)。▼覚えがない(行った。口にした。露ほども)。憶ぁぼえがないほど小さい頃"高井。合意した覚えはない。幸か不幸か心覚えがない。かすかな記憶が残っているにすぎない!内橋。記憶がさだかでない。記憶がない(少しも。はっきりと。まるで。微座ふじも)。記憶に定かではない。全く記憶にない。 **おぼえている【覚えている】** ▼覚えている(名前を。今でも鮮明に。かなり正確に。克明に。ずっと後まで。まざまざと。昨日の出来事のように三好徹)。いま目の前にあるようにおぼえている三浦紗。▼はっきりと覚えている(今でも。昨日のことのように藤沢)。▼頭に残る(はっきりと。ぽんやりと)。頭の隅にこびりつく。一日として忘れることはできない。いつまでも頭から去らない。顔を目に刻む。身体の奥に昨日の記憶の火照りが残る"黒井。眼底に面影をとどめる。光の残像が眼底に焼き付く。今見たように記憶に鮮やか檀。いまだ世人の記憶に新しい=舟橋。▼記憶に残る(ありありと。かろうじて。消えがたく)。記憶の中に落ち着く。きっちりと網膜に焼きつく=飯田。心の奥に大切にとっておく=山田詠。心の襞ひだの中に縫いこんでおく瀬戸内。▼とどめる(味を記憶に。言葉を心に)。脳裡10、から消えない。残っている(声が耳の底に。目の奥に。いまだにはっきり眼底に=中島敦教。記憶に鮮やかに=重松。記憶が目ぶたの裏に焼きつくように遠藤。記憶の底にしつこく=高樹)。残る(眼底に鮮明に。記憶の片隅に。文字が目に)。不快な記憶が胸の底に重く沈澱する=加賀。まぶたの裏に顔が浮かんで消える。後ろ姿がまぶたの裏に浮かぶ。幻影がまぶたの裏にまつわりつく。幻覚が瞼の裏に現れる=中局。まぶたを閉じるとすぐ絵になるほど=中上。顔に見覚えがある。耳にとめておく。言葉が耳の奥で聞こえるよう~梅本。声が今でも耳の奥に響いている=阿刀田。山中で開いたさびしい松風の音が今も耳許込んで鳴っている=竹西。十年間の出来事が胸に去来する。女の白い手が網膜に痛いほど焼きつけられる=福永。焼きついている(光景が目に。目の中に。叫び声が今でも耳に連城)。心に深く焼きついて離れない『永井路。▼脳袋に焼きつく(面影が。光景が)。印象がなまなましく脳裡に焼きつく筒井。▼耳に残っている(声が。メロディーが)。▼耳に残る(うつろな声が。声の甲高さが。絶叫が。怒声が。声が優しく)。 **おもいおこす【思い起こす】** ▼思い起こす(幼い頃を。記憶を。少年時代を。苦い経験を。二十年前の今日を)。想起する(作品の冒頭を。過去の出来事を。光景をまなうらに)。 **おもいかえす【思い返す】** ▼思い返す(過去の仕事を。聖書の言葉を。若かりし日を。折あることに。感傷的に。今しがたのやり取りを。順番にゆっくり)。 **おもいだす【思い出す】** ▼思い出す(子供時代を。最初の目的を。大切な用事を。古い歌を。店の名を。耳にした話を。有名な言葉を。朝に晩に。何かの拍子に。久しぶりに。折に触れて。順を追って。次から次へと。冈206くように。ぼんやりと。まざまざと。おぞましい記憶を。十年以上も前のことを、数日前に読んだ記事を。楽しかった夜を。亡き妻の口癖を。不意に昔のことを。故郷の山や川を。ぼうっと過去のことを。気味が悪いほど鮮やかに。出来事を細かに。と見こう見しているうちに。幼い日を懐かしく。何の脈絡もなく。走馬灯のように人生を"角田。今となってはお互い照れくさくて言うことも開くこともできない台詞 <1151> # 忘れる・記憶する-379 をふと有川。郷愁のような思いで=円地。遠い夢のように=川端)。思い出すたびに泣き出したくなる。思い出すさえ忌まわしい。思い出すだけで吐き気が出る。悲しみを思い出すのが辛い。思い出すのに時間がかかる。世の移り変わりを思い出すままに筆にする=綱淵。断片的に思い出す(フラッシュバックのように大原。ぽつりぽつりと=中島み)。思い出した時分に訪ねてくる。ふと思い出した話を口にする。過去を思い出して感傷にひたる。▼思い出そうとする(必死に。一生懸命。なんとかして)。頭の奥にしまわれていた古風な華麗な絵巻が突如として躍り出る円地。頭の中でめまぐるしく様々な絵が次々に浮かんでは消える=さだ。網膜に浮かぶ。思い出を辿たどる。記憶の(扉を開ける。引き出しを開ける斎藤美)。記憶の糸がほぐれる=綾辻。記憶の蔵からなつかしいものにハタキをかけて取り出してくるときの顔荻野。記憶の底から引っ張り出す=貫井。遠い記憶を呼び覚ます。姿が脳裏に浮かぶ(幼い日の。昔の)。つい昨日の出来事のよう。遠くを見る目をして語る=内海。少し遠くを見るような目になる!驚沢。脳裏によみがえる(感激が。光景が)。薄明の彼方にひとつの情景が見えてくる"立原。死に顔が目に浮かぶ。▼甦込る(喩ぶに鮮やかに。職場で耳にした知識が脳裡120ぅに!笹沢)。蘇心込る(声が耳の奥に。今まですっかり忘れていた小さな出来事が昨日のことのように鮮明な絵で=連城)。▼よみがえる(記憶が。叫びが耳に。瞳の底に。耳の底に言葉が。忘れかけていた出来事が)。忘れていた記憶が呼び覚まされる若竹。もう二度と思い出したくない=乃南。 **おもいだせない【思い出せない】** ▼思い出せない(どうしても。何一つ。焦るとますます。思い出せそうで)。思い出せないからじれったい。▼思い出したことがない(一度も。ついぞ)。思い出すことすら困難。▼思い出すことができない(涙なしには。笑いなしには)。喉のところまで出かかってきている!安部。 **おもいだせる【思い出せる】** 今でもたやすく思い出せる。▼思い出される(後日に及んで。身につまされて。昨日のことのようにありありと三浦穹。昨日見たばかりのように=木山)。ほぼ完璧に思い出すことができる。 **おもいで【思い出】** ▼思い出(どうということもない。泡のように浮かび出てくる過去の高橋和。一生を通じて忘れられない=柴田残。お互いに触れることを避けている=遠藤。悔恨の情が深く刻まれた吉野。結晶する塩分のように純粋な成分ばかりがきらめく三局。心にふかぶかと焼きついた=司馬。言葉に尽くしがたいほど苦い=沢木。過ぎ去った日々のとりとめのない堀)。セビア色の想い出森玩。思い出が(胸に満ちる。淡くよみがえる。脳裏によみがえる。絵巻物のように繰り拡げられる=梶井。記憶の中に深く刻みこまれる!遠藤。快い音楽のように魂の中に鳴りひびく福永。心臓をしめつけるくらいにいっぱいに溢れる堀。透きとおった清らかな氷のかけらのように胸の底に沈んでいる=石坂。ナイフの刃のように鋭く甦れ込る『遠藤。はしけに打ち寄せる波のようにやって来ては去っていく=村上巻。湯気のようにしっとりと胸を温める壺井)。触れることを避けている思い出が焼き饅てを当てられたような痛みを心に与える"遠藤。甘美な思い出が一瞬にして無残に砕け去る=庄野。甘美な想い出が胸を感傷的に満たす藤枝。思い出が心に(浮かび上がる。よみがえる)。とりとめもなく思い出が心に浮かぶ。刻下の労苦がどこかに押しやられ濾過ぅかされた花のような思い出だけが浮かぶ本庄。思い出でもさぐるふうに眼を細める=煎。一片の思い出と化す。愛の思い出に満ちた部屋。一生思い出に残る。しばし思い出にふける。大学時代の思い出に遡峠跡る。苦しかった若い日の数々のできごとが今となっては楽しい思い出に転化している壺井。少年時代の思い出につながる品叩陳。想い出になれば苦しい旅ほどなつかしく面白いもの=平岩。切々と一身の思い出にひたる=真継。美しい思い出に浸る。思い出の(糸をたぐる。場所を訪ねる。懐かしい手ざわり連城。楽園で記憶を思う存分たわめて遊ぶ荻野)。生前の思い出の数々。思い出を(美しく彩る。胸にしまう。いっぱい心に溜める。美しいものに変える。記憶の底からあぶり出す。心に閉じこめておく。心によみがえらせる。幸福なもののように心に抱き温める=石川)。数々の思い出を振り返る。遠い思い出を運ぶ香り。牛のように胃袋から思い出をもどして思い出の一つ一つをにちゃにちゃと悩んでいるのが愉たのしみ、林美。さっき泣いた成傷を消さないようにそっと昔の思い出をたぐりよせる=林美。宝石のような思い出を記憶の中から拾い上げる=山田詠。胸の中の小さな砂粒が真珠の粒になるように年月は古い思い出を似ても似つかない美しいものに変えてしまう大庭。愛の女神が身体に泡を散らしているように遠い日の吸かい空気が揺曳むらする=中村真。思い出話が(延々と続く。忘れていた悲しみをひきめくる=平岩)。会話に思い出話が増える。思い出話に(興じる。花を咲かせる。ふける)。 **かいそう【回想】** 死人に口なしみたいな故人の回想"丸谷。回想にふける。津波のような回想にあえぎ苦しむ本庄。回想の(形式で書く。中へと沈み込む。センチメンタリズムに酔う島田)。果てしもなく回想の迷路を辿たとって歩く=有鳥。回想を影のごとく脳裡20うに引く今日。回想する(過去を。子供の頃を。青年時代を。当時を。半生を。目を細めて)。▼回顧する(過去を。少年時代を。過ぎた春を。青春を)。 **かきもらす【書き漏らす】** ▼書き漏らす(名前を。 <1152> # 日付を)。書き落とす(重要な部分を。郵便番号を。うっかりして)。名前を書き忘れる。 **きおく【記憶】** 記憶(夢のようにかすかな石坂。幻灯のなかの光景のようなぼんやりした辻井。耐えがたいほど暗い=福永。魂の奥深くにたたみ込まれた"久問。遠い先祖の代から連綿と意識下を伝わってきたような池澤。古い時代の色褪かっせた高村慈)。記憶が(やや曖昧。浮かんですぐに消える。現実と符合する。少しも衰えない。生々しく呼び覚まされる。胸を往き来する。群れをなして襲ってくる。あぶり出しの絵のように浸み出てくる=中村真。ぎっしりと頭の中に詰まっている=村上祥。水彩絵の具のように滑らかに混じり合う。小川。灯火の消える時のように束の間生き生きと燃え上がる=川端)。鮮やかに記憶が掘り起こされる藤本。多くの記憶が瓶の栓を抜いたように快いテンボで流れ出て来る=中村真。とりとめのない記憶が散漫に流れる"安岡。泥水のように記憶が流れてくる=伊坂。記憶がある(一度ならず見た。ポスターか何かで見た)。記憶だけを大切に守って生きていく。記憶に(強く刻まれる。窓もゃがかかる。障害が見られる。まざまざと浮かんでくる。引っ掛かりを覚える=伊坂)。しっかりと記憶に刻み込む。遠い日の記憶に辿たどりつく。上書きされない記憶に占領される=桐野。昨日のことのように記憶に鮮やか大佛。八年前のことが昨日のことのように記憶になまかしい=源氏。▼記憶にとどめる(テーマ音楽を。名を。話を。風貌を。長く)。記憶の(容量を超える。洗い直しに努める。糸をたぐり寄せる。つじつまが合わない。香煙が立ちのぼる=開高。ページを無意識にめくる"高橋三)。暗い記憶の洞窟の中を右左によろめきながら奥深くたどって行く=有島。こんがらかった記憶の糸玉を抱える=浅田。真珠のように小さい記憶の粒"小川。つかみどころなくぼやけてゆく記憶の頼りなさ=川端。虹色の光の糸を集め記憶の遂絹を織る!大庭。夢路を歩む心地で古い記憶の端々を辿る=国木田。古い記憶の中からぼんやりと浮かび上がる=柴田翔。記憶の中で(永遠に生きる。印象が漠として煙っている)。記憶を(正確になぞる。頼りに家を探し当てる。闇の中に閉じこめる。くすぐる匂いが漂ってくる藤田。心から綺麗に拭い取る=有陽。歳月という風雪が埋めつくす=瀬戸内。たどるようにしてぽつりぽつりと答える=宮部)。幼い頃の記憶を語る。過去の記憶を呼び戻す。徐々に記憶を取り戻す。正確な記憶をたぐりだす。遠い日の記憶を思い起こす。不快な記憶を圧殺する。埋もれていた古い記憶を呼び出す川端。恐ろしい記憶を意識下に閉じこめる=田中。すさまじい飢えの記憶を持つ=辺見。遠い記憶を探るような目つき!佐野。ひとつひとつ記憶を手繰る宮尾。日めくりをとばすように記憶を走らせる"高樹。遠い記憶(琥珀にはの中に閉じこめられた=森環。古びてしまった錦絵のように淡くくすんだ艶の失せた=石川)。記憶する(臭いを鼻が。無意識のうちに)。今でも鮮やかに記憶している。そっと頭のボケットにしまいこむ黒井。雲の隙間に過去の記憶のように星がまたたいては消える=加賀。遠い昔の記憶のように魔法はげにしかわならない=芥川。フラッシュバックが頭の中に浮かんでは消える佐藤多。記憶が残る。記憶が(はっきり残る。うっすらと残る。鮮明に残っている。苦い不快を伴って後あとまで造る=高井)。記憶の中に鮮烈に残っている。▼記憶に残る(言葉が。鮮明に。長く後世の。生々しく。はっきりと。人々の)。▼記憶がよみがえる(不意に。見た途端に。忌々しい。十五年前の。ひょっこり。ぼんやりと)。記憶の闇のなかから死んだ友達の若々しい声が甦込ってくる=中村貞。二十年前の知識が記憶の箱の中から静かに甦る藤本。甦ってくる記憶の手触りがある=高樹。記憶を生々しくよみがえらせる。記憶が(一度によみがえる。切れ切れによみがえる。まざまざと心によみがえる)。記憶の底から(浮かび上がる。呼び醒ます。思い出をあぶり出す)。二人だけの記憶の時間がお互いの胸の底にきらめいて砂金のように沈んでいる瀬戸内。楽しかった時間の輝く結晶が記憶の底の深い眠りから突然覚める吉本。記憶の底を探る。心の奥底に沈殿している記憶=光瀬。記憶が(闇の底に沈みこむ。深い沼の底からしゃぼん玉のように頭をもたげてくる=島尾)。記憶の断片が脳裡20)を駆けすぎる=高橋利。脳裏に記憶の断片がよみがえる。少年時代の記憶の断片が一斉に押し寄せる=吉行。断片的な記憶をたどる。 **きおくりょく【記憶力】** 最近とみに記憶力が衰える。記憶力の衰えが気になる。記憶力を誇示するように言う。抜群の記憶力を発揮する。 **きざみつける【刻み付ける】** 刻みつける(顔を胸に。数字を頭に。瞼ょに。嫌というほど心魂に。名を胸にしっかりと井上ひ)。心に刻みつける(印象を。覚悟を。名前を。人の情けを。無念さを)。▼▶刻みつけられる(印象が。人生に。脳裏に)。暴力小説の刻印がくっきりと刻まれる=権田。刻印される(特色が。名残が。脳裏に)。 **きしかん【既視感】** まったく同じことをした経験があるような時間が二重写しになったような既視感がわいてくる宮部。不意に既視感に襲われる。ふっと現れては消える既視感に似た悲響"辻に。いつか遠い以前に何かで一度見たことがあるよう佐藤春。どこかで(見たような顔。見た風景)。見覚えがある(かすかに。風景に)。 **きねん【記念】** 記念する(一周年を。開港五十年を。完工を。業績を。工事の着手を。再会を。死後百年を。友情を)。記念写真を撮る。記念日を(祝う。迎える)。 **きょうしゅう【郷愁】** 古き良き日々への郷愁。郷愁が <1153> # 忘れる・記憶する-379 頭をもたげる。祖国への郷愁が湧き上がる。郷愁に似た哀感"大岡。郷愁の念に駆られる。郷愁を感じさせるほど平和な深夜の景観・笹沢。悲しみに近い郷愁を漂わせる=日野。春先の夕暮れ時特特有の郷愁をはらんだざわめき=森瑙。ふと奥山に棄てられたように里心がつく=泉鏡。昔懐かしい風景へのノスタルジー。ホームシックにかかる。望郷の思いに(駆られる。耐えか「望郷の思いやみがたく。望郷の念が(募る。湧く)。望郷の念に駆られる。 **しのぶ【偲ぶ】** ▼偲ぶ(往時の壮観を。故人の遺徳を。古人の風を。当時の盛況を。亡き父親を。在りし日の母の俤姉もを谷崎)。▼偲ばせる(往時を。面影を。芸風を。昔の美貌を。当時のにぎわいを)。 **ついおく【追憶】** ▼追憶(少年時代の苦い。感傷の気分で染めあげた嘘八百の美しい=阿部。怒濤ごとの響きの中に何か灯りがともるように願ふるえながら胸の上にボッカリと浮かんでくる=植)。心に追憶が浮かぶ。過去の愛の追憶が総もゃの中に沈めこまれる=瀬戸内。追憶と空想を織りまぜる。死んだ母親の追憶に浸る。とめどなく追憶にふける。夢のように腕ぶにな昔の追憶の筒いる。追憶を心の奥で育む。青年期を追憶する。過ぎ去った学生時代を追憶するような遠い目をする有吉。懐旧談にふける。懐旧の情が胸を騒がせる=有局。過去に対する懐旧の念が心を占める=中村真。単なる懐古趣味を超えている。よき時代を懐古する。旧懐の情が湧く。▼追懐する(うれしさを。楽しさを。当時を)。▼追想する(過去を。歴史を)。 **なつかしい【懐かしい】** 懐かしい(感情が湧く。夢を見る。思いが胸に込み上げる。日が戻ってくる。心の風景がよみがえる=中村明)。▼懐かしい(あの頃が今さらのように=荒巻。胸が締めつけられそうなくらい=井上ひ。胸が震えるほど=瀬戸内)。耳の下がじいんとするほどなつかしい=林炎。失われた懐かしい世界。かつての懐かしい日々。おーいと呼んでみたいような懐かしいふるさとの山住井。何となく懐かしい感じのする名名前"五木。逝った人を懐かしく思い出す。記憶を懐かしく思い描く。声が懐かしく耳に響く。懐かしくて涙がこぼれるよう。懐かしげな微笑を浮かべる。懐かしそうに(顔を縦にばせる。思い出話をする)。幼い頃の遠い夢を辿たとるような気がする谷崎。ゆかしい影となった遠い日々。床しい香りが蒸たきしめられている扇=福永。 **なつかしさ【懐かしさ】** ▼懐かしさ(田舎の親戚のことをふと思い出すような荻野。幼かった子供のころに見たことがあったような"日野。思いがけなく街角で旧友に会ったような「藤本。故郷の庭で遊ぶ古い友を偲しのぶような大岡。涙が出てきそうなほどの"飯田。二十年ぶりに旧友と再会したような=飯田。昔愛した旋律を耳にしたときに感じるような"中村真)。なつかしさ(ずっと昔捨て去った薄汚れた縫いぐるみの玩具をみるような=大庭。遠い旅先から久し振りで自分の家へ帰ってきたような=永井荷。長く別れていた血縁の人に逢ったような瀬戸内)。懐かしさが(胸を満たす。心の底から湧き出す。蠟燭らの炎のように揺らめく=黒井)。眼がおだやかに深く相手の心をすっぽりとつつむようななつかしさがある=大庭。人のなつかしさが身に沁しむような心持ち=内田百。かえって懐かしさが増すばかり。懐かしさと心細さがどっと襲う。幸田文。なつかしさに胸が張り裂けるよう坂口。懐かしさに思わず涙ぐむ=柴田剣。懐かしさを覚える(他国で図らず同郷のものに出遇でぁったような永井荷。胸が緊しめつけられるような源氏)。 **なつかしむ【懐かしむ】** ▼懐かしむ(思い出を。故郷の山河を。亡き人を。失われた青春を。古い歌のメロディーを。失われゆく山の幸の本物の味を"辺見。過ぎ去った若さを三好徹)。▼昔を懐かしむ(過ぎた。遠い)。懐かしがる(父を。母を。昔を。いつになく)。少年の日を懐かしむように眼を細める=松浦。幼なじみを懐かしむような気持ち柴田剣。 **ふうか【風化】** 事故の風化に歯止めをかける=横山。▼風化する(岩が。教訓が。事件が。体験が。発足当初の崇高な精神が。風景が時の髪ひだに吸い込まれて=島尾)。あらゆる風化作用から逃れて昔からそっくりそのままに残っているかに見えるどっしりと落ち着いた岩堀。 **ぼうきゃく【忘却】** 死のごとき忘却=福水。忘却の(雲に包まれる。冷たい眠りを眠る=中村真)。一切を忘却の川へ流し捨てる=長与。平板な忘却の地ならしにかかる=島尾。心に忘却を強いる。▼忘却する(原点を。すべてを。跡形もなく)。 **もうまく【網膜】** 網膜に(異常をきたす。焼きついて消えない)。残像が網膜に焼きつく。まざまざと網膜に残っている。網膜に焼きつける(イメージを。港の灯を。鮮明に)。 **よびおこす【呼び起こす】** ▼呼び起こす(屈辱が怒りを。自責の念を。苦い記憶を。胸に感激を。未来への希望を。当時の記憶を一々頭から=伊藤左)。▼喚起する(イメージを。記憶を。想像力を。注意を)。喚起力が備わった文章。 **よびさます【呼び覚ます】** ▼呼び覚ます(悲しい記憶を。不審の念を。負けず嫌いな気持ちを。胸に溜まった思いを)。若かりし日々への感傷を呼び醒ます!三好徹。新たな怒りが呼び覚まされる。 **わすれない【忘れない】** ▼忘れない(恨みを。恩を。いまだに。一生。片時も。決して。終生。生涯。心中深く。二度と。常に感謝の念を。寝ても覚めても)。ひ忘れないで頂きたい。雀けず百まで踊り忘れず。時を忘れずに開く花。ご恩は一生忘れません。今でも覚 <1154> # えている。眼底に焼きつける。記憶を胸奥に永くとどめる徳永。心に(刻む。銘記する。焼きつける。強烈な刻印を残す―池波)。約束を心にかける。心の底に根を張る。言葉が(頭にこびりつく。耳にこびりつく)。名を胸に刻みつける。▼根に持つ(受けた軽度を。恨みを。昔のことを)。念頭に置く。脳裏を去らない。口惜しさを骨に刻む=山岡。瞼ぶにこびりつく。耳から離れない。耳の底から消えない。▼銘じる(しかと心に。肝深く)。目に焼きつく。忘れたためしがない。忘れたことはない(一日も。片時といえども)。忘れてはならない(一刻も。ゆめ)。よもや忘れはしない。危うく忘れるところだった。一生忘れることはない。▶銘記する(教訓を。先生の言葉を。モットーを)。▼肝に銘じる(恐ろしさを。教訓を。職務絶対を。善意と友情を。復讐しを。しっかりと。科学の効用と限界を。立場が逆転したことを。油断できないと)。負けた場合のみじめさを胆きもに銘じる=源氏。肝に銘じて(覚えている。忘れない)。感涙肝に銘ず。心に留める(愛らしさを。美しさを。固く。深く)。夢寐しびにも忘れられない事件。夢寐にも忘れたことはない"福永。夢寐にも忘れない(教訓。郷里)。夢寐の間も天下万民の幸せを忘れずひたすら泰平を祈る=山岡。夢にも忘れられない。 **わすれはてる【忘れ果てる】** ▼忘れ果てる(女の慎みを。過去を。恥を。古い恋を。昔を。いつしか。何もかも。さしもの退屈をすっかり“江戸川)。忘れるともなく忘れ捨てておく。▼忘れ捨てる(思い出を。夢を)。▼忘れ去る(思い出を。苦しみを。不安の念を。跡形もなく。何もかも。念頭から。その寸前まで興味を持っていた事柄を手にしていた風船を離して空へ置き去りにするように忽むちち三島。古い出来事のように遠く島尾)。 **わすれられない【忘れられない】** ▼忘れられない(母国が。いまだに。そう簡単に。不思議に。一度聞いたら。夢にも現づにも。忘れようにも。目の先にちらついて)。忘れようとしても忘れられない鮮烈な記憶"船山。胸に残る言葉。映像がまぶたの裏にやきついて離れない=高見浩。焼きついている(顔が脳裏に。叫び声が耳に。姿が強く目に。情景がまぶたに)。忘れがたい(記憶。光景。好試合)。耳に残って忘れがたい言葉。どうにも忘れ兼ねる。熱病のように彼女を忘れていることができない=伊藤整。忘れることができない(永久に。一度見たら。今もって。終生。生涯。とうてい。何年も。死に追いつめられた一夜の恐怖を"坂口。寝てもさめても武者小路)。一生忘れることのできない恩人=中村貞。一度聞いたら心に縫い込まれでもするように忘れることの出来ない救いを求める声=小林多。心に残る(絵。言葉。ワンシーン)。心に残る(印象が。笑みが。疑惑が。不満が)。 **わすれる【忘れる】** ▼忘れる(感謝の念を。肝心な問題を。心の豊かさを。使者の口上を。大事な日を。年齢の差を。世の概絆にはを。右から左に。言った端から。言やっとした言葉を。浮き世の憂さを。きれいさっぱり。忘れるともなく。流れる涙を拭うこともなかにし。咽喉のともと過ぎれば熱さ=山岡。呆然ῇとして外套がいを脱ぐことすら=獅子。焼き捨てたように有島)。痛みを忘れるほど驚く=小局。経つのを忘れる(時の。楽しくて時別の=畑)。▼我を忘れる(怒りに。快楽に。悲しさに)。忘れかけていた昔の思いに火がつく若竹。忘れた(ふりを装う。時分に訪ねてくる)。恨みを忘れた浅ましい声。一刻も早く忘れたい。時間が経つのも忘れて眺め続ける=松岡。忘れていた(ことを思い出す。習慣がよみがえる。甘酸っばい感情が甦る三浦綾。不安が心に帰ってくる芥川)。忘れている(とうの昔に。とっくに。今の今まで。長い間)。つらい悲しい話は一日も早く忘れてしまいたい灰谷。忘れてしまう(とっくの昔に。いつの日にか。いつの間にか。聞くそばから。すっかり。何もかも。一晩たつと。存在をほとんど。ついさっきのことも。投げ上げた石が落下してくるような速さで=飯田。一つことに熱中したら最後他のことは=矢作)。我を忘れて働く。忘れっぽくて困る。▼忘れっぽくなる(最近とみに。日ごとに)。思い出の一切を封じ込める。記憶が(欠落する。時々白くなる。白紙になる。切れ切れになる。ぶつんと切れている。薄荷のような後味を残して消える=吉行)。まるっきり過去の記憶がない。砂が両手からこぼれ落ちていくかのように記憶が少しずつ失われる"小池。記憶から(消し去る。遠のく。抜け落ちる)。記憶の(空白。・奥底に追いやる。底深く埋もれていた名前藤沢。フィルムがとぎれる浅田。淵に戻ってこない=内橋)。記憶の彼方に(押しやられる。沈む)。記憶をすっかり失う。去る者は日々に疎し。炭屋の二階で暮らした二三年は足場を失った建物さながらに空白高橋治。年のせいか(物忘れがひどい。忘れっぽくなる)。しばし念頭を離れてしまう。ど忘れがひどくなる。▼ど忘れする(名前を。番号を)。物忘れが激しい。時々物忘れする。▼入れ忘れる(肝心のものを。宿題をランドセルに)。心をどこかに置き忘れてくる=藤田。▼置き忘れる(傘を仕事場に。荷物を網棚に。過去を忘却の彼方に=壺井)。▼買い忘れる(うっかり。買うつもりでいた品を)。錠をかけ忘れる。予定表を見忘れる。失念する(電話哲弓を。名前を。うっかり)。▼忘失する(記憶を。書類を。任務を)。▼忘れられる(世間から。みんなから)。誰に記憶されることもなく時の中に消えてしまう~村上巻。ぽつんと忘れ去られたような建物。宮本。時代の流れのなかで忘れ去られていく。二三年も経てば急速に忘れ去られてしまう。なまじ神格化されたために人間としての側面が忘れ去られる豊田。 <1155> # 渡る・通る―380 **渡る・通る** **あくまで【飽くまで】** あくまで(知らん顔をする。無実だと言い張る。野に在って初志を貫く。パワーゲームに固執する泉俊)。あくまでも(推測の域を出ない。話し合いで進める)。飽くなき(知識欲。努力をする。野心)。頑として(聞き入れない。口を閉ざす。自説をまげない。話を受け付けない)。どこまでも(食いさがる。しらを切る。強情を押し通す)。行くと決めたらどこまでも行く。やれるだけやってみる。 **うらぐち【裏口】** 裏口から(学校を出る。入ってくる。こっそり逃げ出す。小走りに出て行く)。裏門からそっと送り出す。背戸を抜ける。 **えんがわ【縁側】** 前栽純以に面した縁側。縁側から(庭〈下りる。入ってくる)。小箱の口のように一方に開いた縁側から西日がさしこんでくる。宮本百。縁側で日なたぼっこする。縁側に腰をかける。縁側の障子に薄く灯影がが残る=永井荷。四角い光を切り取って据えたような縁側の明るさ=高樹。緑先に(腰を下ろす。立って庭を眺める)。濡れ縁に腰をかける。 **おいこす【追い越す】** ▼追い越す(平を。母親の背丈を。次々に。ぐんぐん)。先進諸国のレベルに追いつき追い越せ=浅川。▼追い抜く(父を。たちまちのうちに。猛烈なスピードで)。ゴール直前で三人をごぼう抜きにする。 **おしとおす【押し通す】** ▼押し通す(自分の流儀を。無二無二に。横紙破りに自分の主張を。最後の最後まで。どんな詭弁にくを使っても。無視した素振りで。知らぬ存ぜぬで舟橋。すみませんの一点張りで=ねじめ)。周囲の反対を押しきって会社を辞める。親の反対を押し切って図書隊に入る=有川。相手に押しきられる。押しきる(荒技で。数の力で)。強行する(解雇を。核実験を。配置転換を)。▼断行する(改革を。ストを)。ごり押しで議案を通す。親会社の都合をごり押しする。こり押しして承知させる。 **かすめる【掠める】** ▼かすめる(頭上を鳥影が。声が耳を。銃弾が肩を。すれすれに。横をすっと。頭を様々な想念が。心を暗い疑惑が。消臭剤の匂いが鼻先を。白いちぎれ雲が空を。黒い影がさっと)。▼頭の恥をかすめる(考えが。疑問が)。▼頭をかすめる(不吉な想像が。殴られるかという思いが=高橋治)。心をかすめる(予感が。思いがすっと。考えがちらと)。ちらりと頭をかすめる(考えが。言葉が)。▼脳裏をかすめる(思いが。情景が。忌まわしいイメージが)。表情がかすめる(顔に不安な。目を狼狽的、いの)。▼胸をかすめる(疑いが。軽い後悔が。怪訝けげな思いが。不安がちらと)。▼目をかすめる(警察の。賊の)。▼予感が頭をかすめる(嫌な。暗い)。▼予感が胸をかすめる(嫌な。不吉な)。声が耳朵じだをかすめ去る。矢が肩をかすめ過ぎる。▼かする(球がグラブを。矢が肩先を。飛行機が松林の上を)。 **かぜとおし【風通し】** 風通しが(いい。悪い)。風通しをよくする。通気性が悪い。通気性を高める。通風が悪い。通風のよい部屋。床下の通風をよくする。 **きりぬける【切り抜ける】** ▼切り抜ける(金融危機を。苦しい境込を。难局を。面倒な事件を。奥の手で。試験をうまく。危ないところを。そつなくその場を。石にかじりついても)。死中に活を(つかむ。求める)。 **くぐりぬける【潜り抜ける】** ▼くぐり抜ける(岩の割れ目を。お上の目を。ガードの下を。するりと腕を。戦乱の巷さまを。弾圧の網を。火の粉の中を。幕末維新の風雲を。押し合いへしあいで)。 **くぐる【潜る】** ▼くぐる(アーチを。維新の風雲を。ガードを。カウンターを。蚊帳かゃの裾を。校門を。山門を。城門を。神社の鳥居を。トンネルを。不幸な経験を。法の網を。円を。かがんでシャッターを。ビルの正面ドアを。砲煙弾雨の中を)。下をくぐる(枝の。橋の)。梢をくぐってくる光。水に野菜をくぐらせる。くぐり戸まで見送りに出る"ねじめ。潜り戸を(開ける。閉める。抜ける)。潜りを(開ける。抜ける)。▼かいくぐる(銃弾の下を。世間の波を。弾幕の間を。の下を)。▼網をかいくぐる(監視の。取り締まりの)。くぐり出る(穴を。幕を)。 **くだ【管】** 管を(伝わる。通り抜ける)。ガス管を(敷設する。埋設する)。▼ゴム管(柔軟性に富む。強観にいうな腸のような=武田祭)。長老たちがふがふがとゴム管をつぶすような声で喋る=大庭。配管がむき出しになる。▼配管する(壁の中に。天井に)。ストローで飲む。ストローをくわえる。鼻に酸素吸入のチューブを抑す。筒の中を上ったり下りたりする。水が土管に吸い込まれる。土管を埋める。▼本管(ガスの。水道の)。パイプが(通じる。詰まる)。スチームのバイブが瀕死いんの気管のように不規則に喘ぁえぐ=日野。バイブに水を流す。縦横に鉄パイプの足場を組む=千刈。 **ことう【孤島】** ▼孤島(陸の。本土から飛び雌れている)。絶海の孤島の天涯孤独の生活『佐山。離れ小島の薬暦もくとなっていたずらに朽ち果てる=白洲。離れ島に(流される。流れ着く。漂着する。渡る)。離島に生きる。離局の振興を図る。 **さしかかる【差しかかる】** ▼差しかかる(車が悪路に。人生の秋に。橋のたもとに。バスが坂道に。道が丘陵に。爛熟。いじの頂点に。合流点の手前に)。妥協的な手を打つべき時機にさしかかる=高橋和。人生の下り坂に差し掛かる"阿刀田。事故現場にたまたま通り合わせる。通りかかる(偶然車が。近くを船が。客を乗せた馬が。たまたま部屋の前を)。 **しま【島】** ▼島(沖合に浮かぶ。遥かな南の。蜂の巣を <1156> # 伏せたようなこんもりとした小さな"大庭。砂州の突端にある山田。四方を断崖絶壁で囲まれた綾辻。南北に長く木の実を海上に浮かべたような=塩野。白砂の岸に囲まれた緑の荒巻。バターナイフでてっぺんを平たく切り取ったような若竹。ほんの目と鼻の先にある若竹。湾の入り口に散在する=遠藤)。島が(眼前に迫る。黒々と水平線を隠す。煙と爆音で覆われる。今にも波に呑まれそうに浮いている=加賀。霧の海に浮かぶ檀。潮路の果てにかすかに見える=鈴木三)。海上に点々と島が見える。海原の向こうに鳥が横たわる=火坂。難破船のような黒い島が波にもまれる=加賀。島から島を回る。島で(一二を争うお喋心、り。三本の指に入る実力者夢枕)。島と本土を行き来する。島に(来て日が浅い。上陸する。住む)。船で島に渡る。自分の島に戻る。遠い島に流される。難破して島に流れ着く。あくまでも島にしがみついて生きようとする上昇。島の(習慣に親しむ。地理に明るい。周囲を旋回する。南端を迂回いかする。風物を子細に記録する。そこかしこがさまざまな花で彩られる=三鳥。眺めに只ならぬ風情がある三島)。故郷の島の暮らしをそのまま続ける=池澤。高く低く積まれた本の間を泳ぐ“干刈。前方に迫りつつある鳥へと目を馳はせる。島を(実効支配する。めがけて観光客が押し寄せる。例年のように襲之風)。言語の島を形作る"岩淵。珊瑚礁にんにがぐるりと局を取り巻く池澤。島々がまるで霞の奥に浮いているように見える=国木田。名も知らぬ島々が其処此処にこに浮かんでいる"志賀。島々に霞がたなびく。島々を縫うようにやってくる定期船・吉村。船が島に(漂着する。向けて出発する=池澤)。河原のところどころに島のように点在する高み=大岡。見晴るかす平原の中に島のように一つ取り残されている丘陵"井上靖。野面にはそこここに低い木立が島のように影をはらんで屯於もしている=大岡。一人ぽつんと島のように離れている=小林多。防風林の梢が高く遠く海に浮く島のように見える"高井。屋根屋根の上にぽっかり島のように浮かんだ山安岡。後影一つ見えない。島影が(黒々と浮かび上がる。おぼろに揺れて消える=辺見)。視界から島影が消える。島絵に舟を隠す。夕日が房陰に沈みかかる。島伝いに舟を漕いでいく。クルーザーで鳥めぐりをする。空気まで冷え冷えとざらつくような人工島の夕暮れ=日野。鬼界ヶ島の流人のように尖とがった神経でひたすら夫を待つ=川端。▼離島する(就職のために。一家で)。列島を(横断する。縦断する)。取りつく島のないような返事。大佛。▼小島(海に点在する。砂州でつながる豊田)。・藤の花房のように小島が連なる"白洲。雲海に浮かぶ山々の山頂が小島のように思ぐろと見える=飯田。無人島に流れ着く。漂着する)。湾に無人島が浮かぶ。無人島生活を余儀なくされる。 **しまぐに【島国】** 海に囲まれた島国。狭い島国を抜け出す。島国根性丸出しの生き方。島国的潔癖な武士道精神萩原明。 **しまじゅう【島じゅう】** 島じゅうを(歩きまわる。駆けまわる。探しまわる)。島全体がすっぽりと濃い緑に包まれる阿久。全島が青草に覆われる。報告が全島に伝播する。島内を(歩きまわる。一巡する)。 **つうか【通過】** 通過を(許可する。禁止する)。通過する(折り返し点を。議案が議会を。砲弾が頭上を。予選を。列車が駅を。切れ目なしに。影のように。国の予算が国会を。亡父の死の年齢を。制限速度びったりで。おっかなびっくり足音をしのばせて死骸のかたわらを杉本)。▼経由する(流通機構を。いろいろな国を)。バり経由でロンドンへ行く。 **つうじあう【通じ合う】** ▼通じ合う(お互いの心が。互いの意思が)。お互いに気持ちを通じ合わせる。つうかあの仲。ツーと言えばカー=石坂。阿吽の呼吸で決まった人事。死者と生者が交感しあう。以心伝心で互いの気持ちが分かる。以心伝心的連繫以ブレ1。以心伝心的に了解する。▼通い合う(気持ちが。心が)。心の底に通い合うつながり。互いの体温を通い合わせる。 **つうじない【通じない】** ▼通じない(冗談が。皮肉が。さっぱり。話がまるで。まるっきり。電話が話し中で。何遍言い直しても。遠まわしに言っても=奥田)。言葉が通じないもどかしさ。言葉が通じず四苦八苦する。両者の問に言葉の齟齬そこがある=北。▼通用しない(常識が。小手先の対策は)。 **つうじる【通じる】** ▼通じる(気持ちが。心が。言葉が。電話が。願いが。話が。必死の気迫が。感熱いんを。男と情を。時代を。刺を。ルートを。至誠天に。諸事万端に。親戚の動静に。一脈。短い言葉で。過去現在未来を。あらゆる言語に。一本の廊下が各部屋に。すべての学問に)。常識が通じる相手ではない。通じている(内外の事情に。風習やしきたりに)。高校大学を通じての友人。書物を通じての知識。一人に極まれば万人に通ずる=高村光。外国のしきたりに通じていない。 **つうよう【通用】** ▼通用する(言葉が。呪文が。やり方が。一般に。国際的に。実社会に。十分に。世界に。世の中に。立派に。ブロで。普遍的な図式が。ある程度までは。いっぱしの外科医として。今のままで十分)。現代に通用する発想。世間に通用する理屈。 **つらぬきとおす【貫き通す】** ▼貫き通す(初志を。一つの事を)。応報の正義が貫徹される。初志を貫徹する。終始する(安易な議論に。ご機嫌とりに。水かけ論に。あなたまかせに。消極的な態度に)。 **つらぬく【貫く】** 貫く(体を痺しびれが。悲しみが心を。感動が背筋を。既定方針を。激痛が体を。叫び声が闇を。銃弾が車体を。初一念を。弾が眉間を。白刃が胸を。道が林を。あくまで自説を。献身的な姿勢を。高速道路が町を。終始反対の立場を。川面から照り返る朝日が目を"高村蓋)。体が愉やりに貫かれる。徹する(風流の生活に。平和主義に。ひたすら聞き役に。傍観者の立場に。寂しみが骨の髄まで)。▼骨髄に徹する(ありがたさが。恨みが)。憎しみが骨身に徹している。 <1157> # 渡る・通る―380 **つりばし【吊り橋】** ▼吊り橋(谷にかかる。踏み板が歯がかけたように抜けた=新田)。吊り橋の上に立ち止まる。吊り橋を(恐る恐る渡る。渓流に架ける)。歩くたびに橋板がゆらゆらと揺れる。 **でいりぐち【出入り口】** 出入り口から顔を出す。出入り口を(あける。閉め切る。ふさぐ)。門口に立つ。松の枝が門口にかぶさりかかる。ゲートの前に立つ。ゲートを抜ける。通用口から(ぞろぞろ人が出てくる。中へ入って行く)。通用門を(出入りする。通り抜ける)。戸口から一歩入る。顔を戸口から覗のぞかせる。のっそりと戸口に立つ。風ががたがたと戸口を揺さぶる。ハッチが口を開く。ハッチを(開ける。閉める)。門戸を固く閉ざす。▼門戸を開く(諸外国に。広く)。▼入り口(黄泉ょんの世界への。屈ががんで出入りするほど狭い=山田美)。入り口で(足踏みする。案内を乞う)。入り口に(近い席。向かって叫ぶ)。参道の入り口に立つ。土間の入り口に突っ立っている。入り口の(施錠を確かめる。戸を固く閉ざす)。きっと入り口の方を院にらむ。入り口がカモフラージュされている。入り口を塞ふさぐような形で立ちつくす=原田宗。一分の隙もないように入り口をぴったりふさぐ芥川。青春期の戸口で挫折に遭遇する。夏の取っつき。取っつきの部屋。想像のとば口で思いをかき消す。廊下のとば口に立つ。出口が(閉ざされる。見える。なかなか見えない)。出口のない(悪循環。嫉妬。不安。迷路にさまよいこむ"小林久)。どこにも出口がない。出口に向かう。頭が出口につかえる。出口の見えない悩み。我勝ちに出口のほうへ駆け出していく。出口への経路が分からない。出口を探す。行き場のなかった感情が出口を見つける。ガスを排気口から放出する。蒸気が排気口から大気中に出ていく。 **てってい【徹底】** ▼徹底する(取り締まりを。品質管理を。文民統制を。法令遵守を。一つの道に)。徹底した沈黙をもって応える。 **とうげ【峠】** 強烈な群青色の空をのぞかせる峠!永井路。峠が突き挙げた挙固いげんのように肩を張って構えている=伊集院。何物をも燃やさずにはおかないような夏の光線を全身に浴びながら峠が炎のようにゆらめく=堀。雪深い峠で難儀する。峠の向こう側からやっと何はい上がってきたように見える濃霧が峠の上方一面にかぶさる=堀。列車が峠の勾配にさしかかる。峠を上りきると大きな景観がひらける=舟橋。目指す峠を征服する。馬の背のような峠をかけ上る三浦朵。・峠を越える(暑さが。忙しさが。革命が大きな。五十歳の。徒歩で)。▼峠を越す(危機が。険しい)。杉や棺むのが空をつくようにそびえる峠道"伊集院。ひた押しに峠道を登っていく。▼山(この二三日が。危篤状態に陥っており今夜が"つか)。 **とおす【通す】** ▼通す(穴に紐いもを。髪に櫛くしを。きつい牌ィを。コートに手を。針に糸を。来客を部屋に。三枚目の線で。悲しさが骨身を。カラビナにザイルを。作業着に両袖を。自分の主義主張を。見て見ぬふりを。山にトンネルを。切符を改札機に。主張を断乎ぶんとして。生涯を遊び嫌いで。知らないの一点張りで。知らぬ存ぜぬで。ずっと優等生で。しぶしぶ学校の言い分を三局)。腕を通す(シャツの袖に。スーツに)。▼筋を通す(きちんと。通すべき)。▼目を通す(記録に。朝刊に。連絡事項に)。ずっと独身を通している。奥の部屋に通される。力ずくでも我意を通そうとする=船山。一人たりとも通さない。針を布に刺し通す。板壁を突き通す。 **とおりがかり【通りがかり】** 通りがかりに(立ち寄る。耳に挟む。ちらりと見かける。ふと足を止める)。通りがかりの人に道を聞く。見も知らない通りがりの男。通りすがりに(声をかける。懐かしい家に立ち寄る―連城)。通りすがりの(景色に見入る。人に尋ねる)。ふりに入った飲み屋。ふりの客を受けつけない。行きずりに街ですれ違う。行きずりの(女。人間用。計画性のない犯行)。 **とおりすぎる【通り過ぎる】** ▼通り過ぎる(時折車が。建物の脇を。部屋の前を。顔を背けて。行列が粛々と。知らぬ顔で。右から左へ。顔に不快の影が。春らしい骤雨儿”が。胸を冷たいものが。乾いた風が頬のあたりを。轟音にらが頭の上を。言葉が頭の片隅を。身震いが全身を。黙殺するように横を。痕跡を残さずに。ものを言わずに。脇目もふらずに。恐ろしい速さで。風が頬を撫でて。かなりのスピードで。考えが頭にちらと。排気音が勢いよく。見て見ぬふりをして。悠々たる足どりで。横目に見ながら。思い出したように霧雨が!島尾。森然だらたる地響きを立てて蒸気機関車が"小沼。泥色の雪を跳ね飛ばしてドラックが"篠田。機関車が嵐のように迅はゃく久米。を蟻ぁりの如く築がにの如くになりながら幸田露。息もつかずに大急ぎで"堀。巨大な黒い影が矢のように光瀬)。雪の欠片分けがひらひらと通りすぎる=鷺沢。心を風のように通り過ぎるものがある!光瀬。▼目の前を通り過ぎる(車が。観光客の一団が)。男に目もくれずに脇を通り過ぎていく=高橋克。▼駆け過ぎる(魔の影が。目の前を。三人が鞍くらを並べて)。▼通り越す(活発の域を。最悪の状態を)。旅館街を通り過ごす。走り過ぎる(竜巻が空を。思いが頭の中を。オートバイが脇を。次から次へと灯影ががが暗闇の中を=福永)。一過性のブームに終わる。素通りする(繁華街 <1158> # を。部屋の前を。活字の上を目が。話の内容が耳を)。通辞の饒舌が無意味な言葉のように耳を素通りしていく遠藤。 **とっぱ【突破】** 既成概念の突破を試みる。突破する(厳重な警戒を。鉄壁の備えを。遮二無二に)。難関を突破する(合格率三割の。最大の)。▼関門を突破する(最初の。第一の)。敵陣を中央突破する。突破口を求めて試行錯誤が繰り返される内橋。 **とおりぬける【通り抜ける】** ▼通り抜ける(狭い個所を。狭い通路を。トンネルを。人込みの中を。いともたやすく。右の耳から左の耳へと。やっとの思いで。悪寒に似た気持ちが身内を!佐藤巻)。▼すり抜ける(声が耳を。素早く横を。狭い空間を。脇を小走りに。危ういところを)。松林を抜けきる。▼抜けていく(風が谷間を。人込みの中を。爽やかな風が川原を)。▶透過する(光が。放射線が)。 **とおる【通る】** ▼通る(すぐそばを。水が喉を。声がりんと。鼻筋がすっと。荷を積んだ馬が。たまたま近くを。一本の神経がびんと。ぞろぞろとひやかしの人々が"田山)。肌膚はだに寒冷の気がしみじみと透る=長塚。蟻ぁりの通る隙問もない。スリットを通る光。よく通る声で叫ぶ。かすめて通る(鼻先を。町の上を)。▼ひっきりなしに通る(自動車が。トラックが)。道を通る(寂しい。違う)。櫛目がしの通った髪。名の通ったブロ。まっすぐに通った鼻。木目がまっすぐに通った板。時雨が屋根の上をバラバラと通って行く谷崎。通っている(鼻筋が。一本ぴんと芯が。それなりに筋が)。すうっと通っている細い鼻筋。偽物が本物として通ってしまう=高橋克。人ひとりがやっと通れる幅の通路。▼駆け通る(煙の中を。目の前を)。風が吹き通る(部屋に。すすうすう)。その場を避けて通る。思い出が矢のように早く頭の中をひらめき通る=有▶開通する(高速道路が。地下鉄が。トンネルが)。▼通らない(そんな強弁は。猫の子一匹。せっかくのご馳走沆ゃがのどを。なまじっかなことでは試験は)。筋の通らない説明。元来めったに人の通らない路みち=梶井。今まで一度も通ったことがない。理屈として筋が通っていない=石坂。 **とこう【渡航】** ▼渡航する(海外に。飛行機で。船で)。日本を出る。身一つで渡米する。出国の手続きをする。▼出国する(飛行機で。船で)。 **なんしょ【難所】** 難所にさしかかる。難所を(越える。なんしょ通る)。急峻な岩場が迫る。切り削ったような急峻いいな山井上靖。険阻な山道。道もない険阻な山。険難な山道。切所を危うくくぐり抜ける。難路に挑む。難路を避ける。峠の胸突き八丁にさしかかる"深沢。 **ぬける【抜ける】** ▼抜ける(灌木みんの茂みを。車が都心を。するりと手を。発音が鼻に。店先から裏庭へ風が。まばゆい雪原を。暗い道を小走りで。人影もまばらな町を急ぎ足に藤沢)。▼問を抜ける(木立の。雑然たるデスクの)。力がへなへなと抜けていく。肝心な部分がすっぽり抜けている。頭のてっぺんに抜けるような声を出す。うまく言い抜ける。脱兎びっの勢いで駆け抜ける。向こう側まで突き抜ける。▼抜け落ちる(髪が。すっぽり。ふっと頭から)。▼走り抜ける(木立の間を。遠くの空を稲妻が斜めに落合)。木枯らしが吹き過ぎる。▼吹き抜ける(涼しい風が部屋の中を。朝の涼しい木の間風が野上)。脱退する(会を。組合を。連盟から)。 **のりきる【乗り切る】** ▼乗り切る(異常事態を。一時的困難を。円高不況を。過渡期を。株式総会を。困難な時代を。最悪の時を。長丁場を。夏場を。強気一辺倒で。目の前の危機を)。乗り切りに成功する。この分ならどうにか乗り切れる。 **のりこえる【乗り越える】** ▼乗り越える(幾多の恐怖を。有為転変を。臆病な心を。過酷な現実を。艱難辛苦を。専門の枠を。千里の波濤沿とを。多大な困難を。手すりを。仲間の屍乩泌を。波が防波堤を。フェンスを。塀を。身軽に門を。あらゆる障害を。忌まわしい過去を。山猿のような身軽さで塀を池波)。▼超脱する(葛藤を。生死を。世俗を。俗事から)。 **のりこす【乗り越す】** ▼乗り越す(柵を。波が甲板を。塀を)。乗り越し料金を精算する。乗り過ごす(駅を危うく。一駅。読書に夢中になって)。 **はし【橋】** 橋(運河にかかる。川にかかる。絶え間なく自動車が往き交う。生き物のように瞬いずって動かない藤沢)。橋が血なまぐさい地獄の焰掘のに焼かれた刑罰の鉄板のごとくおびやかすに武田楽。板張りの橋がみしみし鳴る。大水で橋が流される。洪水で橋が流失する。虹のような橋がかかる=島崎。春の明るい外光を反射して橋が銀蛇さんのように光る=獅子。橋の(下をの闇に入る。下を覗のぞき込む。欄干から身を躍らせる。両側から挟撃する)。危険な橋は渡りたくない。板で橋を渡す。川に橋を架け渡す。濁流が橋を呑み込む。流されかかっている危険な橋を注意深く渡る=大江。橋を渡る(急いで。注意深く。ぶらぶらと。やばい。ゆっくりと)。橋げたを渡す。線路をまたぐ陸橋。石橋を叩いて渡るような間違いのなさ三好溪。鉄橋の下をくぐり抜ける。鉄橋を渡る。風が鉄橋をヒユウンヒュウンと面白そうに鳴らす椎名崎。陸橋の下を走り抜ける。陸橋を渡る。▼架け橋(愛の。虹の。友好の。子供から大人への)。両国間の架け橋となる。雲に梯めいの及ばぬ恋路みたようなもの!幸田露。二つの世代のかけ橋のような立場瀬戸内。 **ふつう【不通】** ▼不通になる(音信が。電車が。電話が。ふつう列車が)。道路が不通になる(崖崩れで。土砂崩れで)。まだ開通していない。落石で道がふさがる。 **まかりとおる【まかり通る】** ▼まかり通る(大ほらが。過剰な警備が。理不尽が。世の中に。金の威光と利害打算が。偽装ビジネスが。要領のいい人間が)。一 <1159> # 渡る・通る-380 横行する(悪徳政治家が。嫌な言葉が。不払い残業が。無頼の徒が。強請けや詐欺が。暴力的な支配が。よからぬ考えが)。▼跋扈ぶっする(素人の芸人が。魑魅魍魎が。浪人が巷さまに)。社内に跋扈しているゴシップ。▼跳梁跋扈法に、う~する(悪党が。悪徳商法が。拝金主義の徒が)。 **またぐ【跨ぐ】** ▼またぐ(土問の敷居を。水溜まりをひょいと。巨大な怪獣が山を=高樹)。国をまたぐ犯罪。▶一またぎする(小川を。湾頭を)。一またぎで跳び越える。 **もん【門】** 洞窟のように暗い口をあけている円!森瑙。門が(観音開きに開かれる。びたりと閉ざされる。横にスライドする)。封建時代の遺物らしい城深めいた真っ黒い門がおどかすようにのしかかる徳水。門の陰から走り出てくる。こそこそと門の外に出る。円を(左右に開ける。厳重に鎖とざして静まり返る森岡)。高校の門をくぐる。とんとんと門を叩く。ひっそりと門を閉ざす。円のように迫った谷の両側の丘大岡。威圧的なまでに立派な門構え"貫井。立派な門構えの家。門柱に表札をかける。門扉の問をすり抜ける。門扉を(開ける。閉める)。裏木戸から逃げるように帰って行く=渡辺。木戸がばたんと開く。木戸を(押し開ける。出る)。校門を出る。城門を(閉ざす。開く。背にして必死に防戦する=船山)。正門を(閉じる。封鎖する)。 **ゆきすぎる【行き過ぎる】** ▼行き過ぎる(寺の門前を。足早に。人が早足に。駅を一つ。知らぬふりで。流しのタクシーが。通りを急ぎ足に。聞こえないふりをして。しゃなりしゃなりと。素早い一瞥心を投げて。見て見ぬふりをして)。 **よぎる【過る】** ▼よぎる(顔に逡巡しゅんが。頭に嫌な予感が。心に鈍い痛みが。視野の隅を黒い影が。脳裏をちらりと面影が。祈りの色が障を。申し訳なさが胸の片隅を。雪が庭園灯を斜めに)。目の前を颯爽とツバメが過ぎる=伊坂。▼頭をよぎる(過去の光景が。不安が。亡霊の声が。映画のシーンが。悲観的な考えが)。心をよぎる(疑念が。不快さが。空しさが。後悔の気持ちが)。▼脳裏をよぎる(言葉が。シーンが。かすかな疑いが)。▼胸をよぎる(疑問が。予兆が。かすかな不安が。さもしい期待が)。 **よこぎる【横切る】** 横切る(鹿の群れが。焦燥の表情が。足早に庭を。考えが脳裏を。車の前後を。交差点を。光の帯の中を。船で湾を。胸の奥に悲痛な思いが。足早にホールを。疑惑が不意に心を。つかつかと街路を。我が物顔に颯爽ごうとロビーを。表情に後悔の翳かげりが三好微。対角線をなぞるように部屋を"小川。雑木林を抜ける小径に♪の上を烏が走るように村上)。▼斜めに横切る(川が野を。急流を。道を)。川が原っぱを一直線に横切って来て小高い丘のかげに消えている井伏。ツバメがさっと横切っていく"鈴木光。突っ切る(公園を。車道を。人の流れを。小走りに四つ角を)。▼横断する(道路を。本州を。様々なジャンルを。交差点を斜めに)。横断的な人事異動を断行する。横断歩道を渡る。 **ろうか【廊下】** ▼廊下(ひっそりした海底のように暗ろうか鬱な=松本。黒ニスを塗った扉がものものしく並ぶ三田。ざわざわ人の往き来している=永井荷。普段でも冷え冷えと薄暗い日の当たらぬ=日野。岡があちらこちらに溜まっている=開高)。内部の廊下が迷路のよう~小林信。薄ら寒い廊下で身をすくませる。廊下に(人があふれる。煙が立ち込める)。一人廊下に取り残される。見せしめとして廊下に立たせる。廊下の突き当たりの部屋。のそのそと廊下へ出て行く。廊下を(ずんずん進む。一番奥まで進む。そろそろ道はって行く。どんどん踏み鳴らす。挟んで両側に部屋がある。まっすぐに進む。ばたばたと足音が駆け抜ける=三好微)。ぞろぞろとつながって廊下を歩く。歩くたびに廊下が(ぎしぎしと鳴る。みしみしきしむ)。 **わたりどり【渡り鳥】** ▼渡り局(旅から旅の。シベリアからの)。渡り鳥がやって来る季節。例年の通り渡り鳥がやって来る。渡りをする鳥。 **わたる【渡る】** 渡る(玉を雲が。風が草を。風が梢を。風が湖面を。風が田の面を。風が野を。第三者の手に。川を泳いで。島へ船で。山々の上を日射しが。浅瀬を見つけて川を。こだまが谷間を。冷たい風が川面を。羽振りよく世を。ふらふらと交差点を。安らかに世の中を。野鳥の群れが木立を。家屋敷が人手に。単身ニューヨークに。一旗揚げようと大陸に。川をじゃぶじゃぶ。小鳥がちょんちょんと。読者の手から手へと。信号待ちの車の間を縫って道路をねじめ。溺もゃが煙のごとくに水を鈴木三。病軀がに鞭打沿っって朝鮮に=山岡)。▼わたる(足かけ二年に。社会の万般に。生活全般に。千年の長きに。滞在が数日に。報告が細部に。あらゆる領域に。十数年という長期に。職務が複雑多岐に。すべての分野に)。渡る世間に鬼はない。葦ぁしの葉に渡る風。浮き世を渡るよすが。庭を渡る踏み石。再三にわたって命令を出す。詳細にわたって語る。長い歳月にわたって読み継がれる。▼微風が渡る(葉に。あるかないかの)。風が渡っていく(雑木林を。田んぼを。麦畑を)。雨脚が軒を渡っていく。たっぷりと鼻薬がわたっている佐々木。渡ってくる(シベリアから白鳥の大群が。いい加減に世の中を)。多岐にわたる(執筆範囲が。話題が)。▼渡りかける(横断歩道を。交差点を。道路を。橋を。踏切を)。横断歩道を渡り終える。渡りきる(交差点を。橋を)。▼押し渡る(海原を。川を。世間を。空を)。石の上を身軽にとび渡る。風が空を吹き渡る。渡河点を下流に移す。渡渉する(浅瀬を。川を)。 <1160> # 笑う・微笑む **あいそわらい【愛想笑い】** 顔に愛想笑いが浮かぶ。顔の造作が愛想笑いでばらばらになる=有吉。呉服屋の番頭のように見え透いた愛想笑いで揉もみ手をする=里見。愛想笑いの(あとのけわしい目古井。表情をすっっと元に戻す=壺井)。愛想笑いを目もとに漂わす。ちらと愛想笑いを見せる。卑屈な愛想笑いを浮かべる。非の打ちどころのない愛想笑いをつくって一礼する=松浦。とって付けたようなぎこちない愛嬌笑いを振りまく=山崎。 **うすわらい【薄笑い】** 顔に軽蔑の薄笑いが広がる。口元に薄笑いが漂う。薄笑いで唇をゆがめる。狡猾たった笑いをたたえた目。挑むような浅笑いを頬に浮かべる遠藤。顔から血の気が引いて白い源笑いを貼りつけたようになる=坂口。当惑した薄笑いを唇いっぱいにうかべる=大江。薄笑いを浮かべる(唇に。痙攣心のような。あざけるような城山)。にやりと品の悪い笑いを浮かべる=西木。ふてぶてしく薄ら笑いを浮かべる=南条。顔に薄笑いじみた翳かげがにじむ=永井路。▼やにさがる(女から甘い言葉を言われて。まんまと乗せられて)。▼ほくそ笑む(思う壺っと。腹の中で。ライバルの失敗に。してやったりと)。報復の快味にほくそえむ=杉本。薄気味の悪いほくそ笑み。ほくそ笑みを口辺に刷はく=柴田錬。 **えがお【笑顔】** ▼笑顔(媚こびるような。いかにも人のよさそうな=重松。花が咲いたような華やかな=乃南。眼尻に笑いじわがたくさん出来る柔和な"西木。愛嬌がこぼれるような戸板。赤ん坊のように頼りない"中村貞。色白の頬にえくぼが目立つ=戸板。恨むようなさびしい=中。困惑と得意と媚びの入り交じった荻野。静かな湖に逃結ぶが拡がって行くような宮本百。十年来の友達にしか見せないような屈託のない小池。全身で笑っているような落合。透明な感じのする=小池。とほほという感じの総沢。ぱっと灯りがともったような=瀬戸内。ぱっと音立てて朝開く花の割れ咲くような=横光。光が散るような淋しくて明るい"吉本。皮膚が輝き出すような柔らかい大佛。無邪気なはっとするほど子供っぽい三田。笑うまいとしてもほころびてくる=壺井)。笑顔があどけなくて可愛らしい。いつも静かに笑顔で応じる。好意に満ちた笑顔で話しかける。嫌な座敷にも笑顔で出なければならない=高橋克。一瞬面喰らったような顔をすぐに笑顔に飲みこむ連城。硬ばった表情を崩しとろけそうなほど甘い笑顔になる=鷺沢。笑顔の(美しい女性。似合う顔だち。奥の苦い渋い色を見抜く=有島)。スタンドが笑顔の花壇となる=奥田。笑顔を(満開にする。隠すことができない=江戸川)。陽気に笑顔を撒き散らす。脊なだめるような笑顔を向ける=内田康。人のよさそうな笑顔を浮かべる。笑顔を満面に(浮かべる。たたえる)。笑顔を見せる(赤ん坊のように頼りない"中村貞。涙を頬にへばりつかせたまま白熱灯のような鷺沢)。優しい笑顔(心にしみいるような三浦綾。子供を宥めるような=連城)。笑い顔(愛嬌のある。悪意のこもった。嘆願しているような)。 **えみ【笑み】** ▼笑み(白い花弁がそよ風に揺らいだよえみこぼれるような=石坂)。▼目を細める(うれしそうに。うな控え目な=高橋三元。子供にクリスマスプレゼントを贈るサンタ小父さんのような満面の“五木。老猫が媚にびを呈するかのような"司馬)。笑みが(顔中に広がる。顔中を覆う。口元に漂う。心に残る。顔に張りついている)。会心の笑みがこみ上げてくる。顔に満足げな笑みが弾ける。口元から笑みが漏れる。顔に笑みが射す藤田。死に顔には開きかかった薔薇ばらのような笑みが唇の上に開きかかっている佐藤春。頰に冷え冷えとした笑みが滲にじみ出る船戸。笑みが浮かぶ(口元に皮肉な。頬に謎めいた。口元に穏やかな)。▼笑みがこぼれる(自然に。心の底から)。顔一杯の笑みで挨拶する。含番が礼しの笑みで悪評に抗悩ろう。宮本蚱。恥ずかしさと不安をかすかな笑みで薄める"小林信。目の色に笑みと戸惑いが混じりあう連城。顔が神々しいまでの笑みに彩られる谷川。笑みの溢れそうな甘たるい目二葉亭。笑みをちらと覗のぞかせる。意地悪な笑みを含んだ目つき。薄い唇に残忍な笑みを宿す。かすかな笑みを瞳の中ににじませる。こぼれる笑みを隠しきれない。ばつの悪そうな笑みを返す。ふくよかな顔に笑みを絶やさない。ふっと笑みを漏らす。頬に微かな笑みを含む。満面の笑みを向ける。慈しみの笑みを宿した顔辻井。自虐的な笑みを口許ちに泛うかべる人間。冗談っぽく蹴しかめた顔の目に薄い笑みを含ませる連城。笑みを浮かべる(顔いっぱいに。満面に。目元に。得意満面の。匂うような。にんまり。唇の端に野卑な。何やら意味ありげな。唇にうっすらと。片頬に氷りついた!佐藤巻。口許に仏のような平岩。しめたとばかりに会心の和久。ひきつったような「小池)。柔和な笑みを顔に浮かべる。笑みを見せる(安心したような島崎。角々しい目に申しわけほどの"有島)。満面に喜びの笑みを湛たたえる=辻井。笑みをたたえる(目元に。 **おおわらい【大笑い】** ▼大笑いする(腹の底から。腹をかかえて)。大声で笑う(げらげら。くすくす笑いを忍びあえず)。阿々かかと笑う。腹の底から湧き起こるような豪快な笑い内海。豪傑笑いする(腹を突き出して。恰幅砂仁のいい軀分らを揺すぶって=大佛)。▼大笑する(何々。歯茎を見せて)。あまりのおかしさに抱腹絶倒する。抱腹絶倒するほど面白い。満座の者が <1161> # 笑う・微笑む-381 笑い崩れる。笑いこける(苦しそうに。体をくの字にして。冗談口にいちいちたわいもなく。馬鹿な冗談を言って。枕に顔をうずめてくっくと)。三々五々笑いさざめきながら集まる。笑いさざめく(若い男と女が。きゃっきゃっと)。晴れ晴れしく笑い立てる。涙が出るほど笑いのめす。哄笑にいらしが(渦巻く。部屋の中に反響する)。わっと哄笑が湧く。海の湧くような哄笑を起こす佐藤谷。▼哄笑する(腹を抱えて。口を三角形にゆがめ背伸びをするように"小林多)。 **くしょう【苦笑】** 苦笑が頬に浮かぶ。思わず苦笑が漏れる。興味を失ったような苦笑が湧く吉村。表情に一抹の苦笑がまじる=丹羽。苦笑で唇を歪ゅがめる。苦笑と憫笑びんしの円で揺れる荻野。自分の大人気なさを苦笑に紛らわす。悲しげに苦笑を漏らす。きまり悪げな苦笑を浮かべる。からかうような苦笑を片頰に溜める=円地。照れたようなうら哀がなしいような苦笑を洩もらす源氏。苦笑する(肩をすくめて。 ▶苦笑する(肩をすくめて。仕方なさそうに。照れくさそうに。老人の耄碌らぶりこ。口を三角にして。胸の中で思わず)。意を迎えるように苦笑してみせる藤枝。苦笑まじりに言う。苦笑いが顔じゅうに広がる。苦笑いする(とんまな質問に。恥ずかしそうに。いかにも迷惑そうに永井荷)。苦笑いを胸の底に飲み下す。ふっと苦笑いを漏らす。微苦笑が口元に浮かぶ。 **くすくす** くすくす思い出し笑いをする=内橋。くすくすと笑い声がする。若い娘のようにくすくすと笑う高橋三。くすくす笑う(軽蔑して。いかにもおかしそうに)。くすっと笑いを漏らす。いたずらっぽくくすりと笑う。鼻先でくすんと笑う笹沢。くすくす笑いが広がる。 **しっしょう【失笑】** 失笑が起こる。方々で失笑が漏れる。堪えかねたように失笑する=田辺。智恵のなさに失笑させられる=開高。失笑されるほどあわれな出だし=加賀。堪こらえきれずにうっかりと漏らしてしまったというような息をひそめた笑い方=長野。笑いをこらえきれずにウッキッキッと息を洩もらす鷺沢。 **しのびわらい【忍び笑い】** くくという小鳩のようなしのび笑い"大庭。くっくっと忍び笑いを始める。のどで忍び笑いをする。くすくすと忍び笑いを漏らす高橋三。コトコトと女官のような忍び笑いを鳴らす!阿刀田。 **たかわらい【高笑い】** あたりかまわぬ高笑い。高笑いが慟哭ごらのように響く=森環。空虚な高笑いが絶え間なく響く。高井。愉快そうに高笑いをする。空疎な高笑いを繰り返す=高橋和。▼高笑いする(からからと。上機嫌で。卑猥にゃなことを言ってい舟橋)。 **つくりわらい【作り笑い】** 警戒心とつくりわらいの同居した顔・藤本。嫌みに思えるほどきらきらした作り笑いの声をあげる=岡本。作り笑いを浮かべる。取ってつけたような高笑いしてみせる。持ってきて押っ付けたような笑い方二葉亭。無理につくったような笑い顔。笑う(おつき合いに少し。わざと声を立てて。笑わなければいけないというようにぎこちなく"原田康)。 **にこにこ** 幸福そうににこにこ微笑む。頬の筋肉が硬ばるほどにこにこ笑う―大庭。にこにこと(笑顔を見せる。えびす顔になる。微笑をたたえる。表情がほころびる。目尻に嬢しゃを見せた微笑を浮かべる"綱淵)。うれしそうににこにこする。菩薩顔が終っでいつもにこにこしている=高橋和。にこにこしながら面白そうに見る。にこにこ顔ではしゃいでいる。にこやかな微笑で武装する。にこやかに(相槌を打つ。お辞儀をする。声をかける)。努めてにこやかに答える。 **にっこり** にっこり(笑顔を見せる。笑って死ぬ。ほほえみが浮かぶ)。鏡に向かってにっこり笑ってみる。にっこりと(職業的な笑顔を浮かべる。微笑を浮かべる)。控え目ににっこりとする。上目づかいににっこりと微笑む鈴木光。叱られると思いの外にっこりとする=舟橋。にっこりする(うれしそうに。満足そうに。愛想よく。きまり悪そうに)。莞爾いんとほほえむ。莞爾とした円満な顔。莞爾として(死地に赴く。激戦の地へ赴く)。破顔一笑して立ち上がる。 **にやにや** にやにや(成り行きを見つめる。ように笑う横光)。嘲焼きるようににやにや笑う芥川。えげつない顔でにやにやと笑う“乃南。▼にやにやする(意味ありげに。照れくさそうに。神妙に相槌を打って。八の字眉を極限まで下げて荻野)。にやにやしながら肩をすくめる。にやにや笑いを抑えるのに苦労する=かんべ。 **ばくしょう【爆笑】** 爆笑が会場をゆるがす=飯田。教室じゅうが爆笑の渦になる=飯田。満場が爆笑の渦に包まれる佐高。座中みな爆笑する。 **びしょう【微笑】** ▼微笑(自分自身を笑うような皮肉な中村以。少女の寝顔のごとき乎和な=中村真。人生の中で最も貴重な装飾だと思わずにはいられない見事な横光。心理を見抜いたような狡猾にな福永。恥じらうような繊細な=高橋和。ひとの怒りをとろかすような不思議な=本庄。詫びるような気弱な=佐多。悪戯れをして見つけられそうになった子供が年長者に向かってするような芥川。崩れるような弱々しい=高橋和。雲間から再び太陽が顔を出したような感じで晴ればれと温かく屈託のない森玲。心の底から思わず零こぼれ出たようなあどけない“外村。さざなみのように起こっては消える=梶井。しとやかな娘のようにはにかんだ佐多。少年のような明るい=泉優。水面へ浮かび上がった泡のようにすぐ消えて平静になる=横光。無踏会にでも行くときのような=堀。胸に沁しみ入るような淋しい三浦減。もの柔らかくくるむような大佛。豊かな愛に息づいた少女たちの優 <1162> # しい福水)。微笑がやさしげに輝く。顔にかすかな微笑が漂う。口もとに微笑が日にかがやいている出水。ひずのように湧き上がる佐藤春。はがねのようにきびしい眼がゆるんで微笑が頬を明るくする"海音寺。微笑で返答をごまかす。とっさに微笑でつくろう。ほのかな微笑で客に接する。静かな微笑で勝利の満足をあらわす野上。全身を欲迎の微笑で包む=中村真。微笑に妖しげな気品が漂う。立原。目が好意を込めた微笑にひたされる。静かだが喋りんとした気品のこもった微笑に気圧される=永井路。鋭い眼差しを微笑のなかに隠す=小林久。微笑を(唇に漂わせる。含んだ瞳。口元ににじませる。目尻の髪でだにたたみこむ=宮本百)。顔に微笑を絶やさない。和やかに微笑を含んだ顔。朝の光が微笑を彩る―連城。勝ち誇ったような微笑をつくる=遠藤。精一杯チャーミングな微笑をご披露する"五木。にこやかな微笑を包んだようなまなざし 本庄。頬に無理矢理に微笑をつくってみせる遠藤。夕凪砂の海のような静かな微笑を見せる綾辻。微笑を湛たたえる(穏やかな。温厚な)。微笑を限のほとりに湛える=人米。愛嬌のある微笑を口許もに湛える=田山。微笑を頬にみなぎらせる。微笑を漏らす(穏やかな。悪賢そうな。何ということなしに)。薄日が差すような微笑を洩もらす倉橋。いたずらを楽しむ子供のようにこっそり微笑し合う石坂。微笑する(満足げに。いかにも幸せそうに。相手の笑いに誘われたように口許を歪ゅがめ泉俊。子供をあやすように=加賀。だだっ子をあやすように優しく石坂。頬に刻みをつけて=幸田文。もの怖じした子供のように=堀)。▼微笑が浮かぶ(屈託のない。嘘の中に少年のような悪戯っぽい=森超)。明るい微笑が口紅の色をいっそう鮮やかに浮かびあがらせる=連城。微笑を浮かべて目礼する。口のあたりに意地の悪い微笑を彫りつけたように浮かべる=久米。痙できるような微笑を片頬に浮かばせる―藤本。野卑な微笑を口角に浮かべる=水上。微笑を浮かべる(皮肉な。うっすらと。憎悪を思いきり鋭く舌の先に繰り上げて奇怪な=南条。影のように暗い=石川。からかうような中村真。少女のようにはにかみのある永井照。波紋のような音のない=本庄)。微笑を目元に浮かべる。馬鹿にしたような微笑を唇の端に浮かべる=巡城。童女のようなあどけない微笑を浮かべる老女=阿部。 **ふくみわらい【含み笑い】** ▼含み笑い(意味ありげな。空き缶の中で石を転がすような空虚な=山本岛)。頬に含み笑いを浮かべる。心躍る想像の世界で遊ぶかのごとく含み笑いをつづける=村松。言葉の裏に含み笑いを感じ取る=阿川佐。含み笑いをする(くくと。くすくすと。くっくっと)。 **ほほえみ【微笑み】** 微笑み(相手の心をひんやり握りしめるような印象的な小川。憂いのない素直な藤田。切ない溜め息のような小川。小さな花が風で揺らいだような弱々しい高橋三。夜の闇に千の星が郷いたような=大原)。光り輝くようなほほえみ=田辺。微笑みが(自然に浮かぶ。瞳に宿る)。唇もとに微笑みが見える。表情が止まった空白の上をさざ波のように微笑みが広がる荻野。微笑みの余韻を目元に残す。周囲に微笑みの波紋が広がる。微笑みを浮かべる(口元に。艶然と。精一杯自制した)。少年のような無邪気なほほえみ方!永井路。鏡に向かって何度も練習を積んだような微笑み方村上奈。 **ほほえむ【微笑む】** ▼微笑む(幸運の女神が。無骨な顔が。目を細めて。口元が緩やかに。うつむき加減にそっと。顔を明るくして。今ぽっとこの世に生まれたかのように美しく『川端。悦に入ったように"村松。おどおどした小犬のように=田辺。唇の端をきゅっと持ち上げて"海堂。白い歯を見せて、八谷川。細面の眉尻と唇の端とを少しつりあげ猛々しい鳥のように=川端。わが意を得たりとばかり。加賀)。ほほえむ(少女のようにはかなげに内館。花が咲いたように=有島)。誰もが微笑みたくなるくらい気持ちのいい午後小川。唇の端が羽根毛のようにふわりと浮き自分でも知らないうちに微笑んでいる=北村。頬が(ほころぶ。緩む)。ほほえみ返す(うれしそうに。にこやかに。優しく)。ほほえみかける(穏やかな声で。優しく)。赤ん坊をあやすように微笑悲にみかける=古井。 **わらい【笑い】** ▼笑い(べそをかくような。子供のような無邪気な高見明。微笑がきらきらと零こはれ散るような綺麗な外村。まぶしいほど爽やかな坂口。回転数を狂わせてあるダンスミュージックのような滑稽な哀調のある=大庭。仮面のような薄い=石田衣。化粧を落としている顔に襲いだを刻んで拡がって行くのが判るような=高井。年寄りじみた暗い「武田炎。ぬらぬらしたような中島敦。野放図に明るい北海道の夏の空のような内田康。ひひという猿のような大庭。百日の日照りの石だたみよりなお花いた=光瀬。魔に憑かれたような薄気味の悪い=堀)。笑いが(尾を引く。顔じゅうに広がる。こぼれるようにふりまかれる。いつも同じで笑いの面が顔に貼りついたみたい"高井。折れるように中断する"高橋和。とまらないといわんばかりに上機嫌"浅川。止まらないほどの稼ぎを得る=小池。鳥の啼き声のように窓の外の夕暮れに突き刺さる柴田翔。咽喉のとを駆け上がってくる=井上ひ。波紋のようにひろがる=池波。破裂するように起こる=角田。再び咽喉に弾ける=野上)。あちこちから笑いが起こる。おかしくて笑いが止まらない。顔に笑いが戻る。口元に笑いがこびりつく。口元に笑いを漂わせる。口調に笑いが混じる。ひとりでに笑いが込み上げてくる。しっとりとした笑いがほのぼのとした味わいを醸し出す中村明。知らず知らず口許が笑いがこみあげてくる=高橋克。力のない笑いが思わ <1163> # 笑う・微笑む-381 ず漏れる=東野。面上にあるかなきかの笑いが流れる=山岡。柔らかい優しい笑いが暖かい液体のように流れ出る=野間。不思議の国のアリスのチェシャ猫のように笑いだけが心に残る=村上春。こみあげる笑いで腹をひくひくさせる=開高。邪気のない笑いで顔を錠こばせる=小林信。柔和な笑いで武装する=野間。喜びの笑いで顔を一杯にする=泉優。笑いになまめいた感じがある。顔が笑いに崩れる。こみ上げる笑いに体を揺らす。お腹の底からこみ上げてくるものが笑いになって弾ける荻野。笑いの輪が広がる。会場がどっと笑いの渦に包まれる。窓ガラスを揺るがせるほどの笑いの波が襲う山本有。湯玉が上ってくるように笑いの玉が込み上げてくる=向田。笑いを(目に湛たたえる。咬かみ殺した苦しそうな表情"井上液。小さい気泡のように濡れた唇からふき出す大江)。顔中に生き生きとした笑いを広げる。人の笑いを誘う。皮肉な笑いを浴びせかける。不敵な笑いを頬に刻む。曖昧な笑いを顔に貼りつかせる鷺沢。いささか棘とげを含んだ笑いを口の端に泛うかべる=高井。嬉しくてたまらない悪戯小僧いけらのように笑いを殺す宮本瓦。溜め息のような笑いを闇に吐く=松浦。ニヤリと気味の悪い笑いを投げる高見明。弾けるような甲高い笑いを撒き散らす=船戸。はにかんだような笑いを見せる=生島。ひきつった笑いを頬に貼りつける"落合。ぞっとするような嗤ゃらいを口許ににじませる=永井路。笑いを漏らす(くすりと。くっくっと)。腹の底がひきつるような笑いを洩らす泉優。こみ上げてくる笑いを噛み殺す。何という明るい笑いだ=中村真。思い出し笑いで顎が緩む。にたにた笑いを顔一杯にみなぎらせる=江戸川。伏し目がちに一人笑いする。一人笑いを漏らす。笑気ガスのようなものがお腹の底から湧いてくる荻野。笑いを浮かべる(口の端な遠藤。ひきつったような"小池)。口角を歪ゅがめて奇妙な笑いをうかべる水上。こわばった笑いを口もとに浮かべる後藤。仏像のような笑いを頬に浮かべる=高橋和。頬に皮肉な笑いが泛ぶ=人周。 **わらいかた【笑い方】** ▼笑い方(人の悪そうな。気持ちが悪い。声をたてず喉の奥だけで笑う妙な安岡。異性がぞくりとする=乃南。顔中の皺しゃを鼻の周りに集めるような=高井。顔の半分が口になってしまっような鷺沢。壁が崩れるような=獅子。からかうような軽い水井路。癖のある投げたような"大佛。小さい口元の可愛く開く"佐多。トマトを輪切りにしたような大口をあける=獅子。日陰者の暗い霧を吹き飛ばすような獅子)。 **わらいごえ【笑い声】** ▼笑い声(長く尾をひく。いかにも屈託のなさそうな三浦线。一点非の打ちどころのない晴れやかな=高橋利。異様に無成勤な=原田康。男たちの卑猥にゃな伊集院。女の子たちの華やかな谷村。親しく見せながら決して打ち解けない女同士の上っ調子な川端。建物を揺るがすほどのにぎやかな長崎。あたりの人が振り返って見るほど突拍子もない室生。息のもれるような中上。かすかな哀かなしみがにじんでいるような=原田晓。かすかにひび割れるようなかすれを含んだ甲高い=日野。体からもみ出すような=永井施。聞いているとこちらがくすぐったくなってくるような=宮部。上等のお客に媚びる商人の佐藤春。空気をひっかくような甲高くかすれた日野。しゃくり上げるような―藤沢。魂というギターでアルペジオを奏でているような宮部。玉を転がすような井上靖。天使の吹き鳴らす喇叭っのような=井上ひ。天井が震えるような=高樹。トラクターのエンジンがかかったような満水俊。・咽のどの奥に仕掛けられた猫ぃぃでも押すような締まりのない=里見。鼻から抜けるような笹沢。人の心を宽くっがせるような響きのある落合。細い引きつまるような=野間。ものを押し潰っすような気持ちの悪い高見取。若い娘らしい弾けるような=火坂)。笑い声が(大きく響く。鼓膜を刺す。さざ波のよう。室内に満ちる。耳をくすぐる。絶え間なく湧き上がる。まばらに聞こえる。銀の弓弦かひが鳴るように胸を震わせる=光瀬)。きゃっきゃっと笑い声が聞こえる。けたたましい女の笑い声が響き渡る。どっと笑い声が起きる。賑やかな笑い声が耳に飛び込んでくる。喉の奥から笑い声が漏れる。華やかな笑い声が湧き起こる。わっと笑い声が弾ける。凱歌がいをあげるような笑い声が廊下を遠ざかって行く=中村真。子どもたちの笑い声が咲く=石田衣。大歓喜の笑い声が火山から炎の迷いるように自然と湧いてくる芥川。弾けるような笑い声が湧く=原田宗。部屋じゅうに充満していた好奇心というガスに火がついたみたいにわっと笑い声がはじける飯田。まだ滴りの残る薬陰を乾かすように笑い声が雑木林に響く伊集院。明るい笑い声が上がる。笑い声が起こる(和やかな。風船がバチンと割れるように短い島田)。笑い声が耳に残る。お互いの胸の中を笑い声でごまかすように声を揃えて笑う」佐多。力ない笑い声で長い身の上話を結ぶ=江戸川。くくっと笑い声を漏らす。明るい勝ち誇ったような笑い声をふりまく柴田湖。笑い声を上げる(愉快そうに。あははと。甲走った。屈託ない。けらけらと。引きつった)。笑い声を立てる(少し下品な。にぎやかに。陽気に。げらげら。どっと。ふふと小さく。満足そうに小さな高井。麦の穂のように健康な徳永。クックッと鳥が鳴くような"五木)。肥満した体を弾ませるように笑い声をたてる=五木。闊達が2に笑い声を立てて労働する。けたたましい笑い声(若い女に特有な夏目。ひきつるような"小島)。笑い声のような短く高い叫び=中島敦。風の音が笑い声のようにたえまなく鳴る= <1164> # 高橋知。笑声もいうが高まる。 **わらいころげる【笑い転げる】** ▼笑い転げる(けらけらと。机を叩き。手を打って。涙を流して。腹を抱えて。身をよじって。体もろとも投げ出すような娘らしい声を出して=島崎)。▼笑いころげる(おなかをかかえて苦しそうに"灰谷。息ができないほど=飯田。胃痙蒙いけいを起こしそうなほど体をよじり畳を叩いて"安部。泪様ぁを流さんばかりにして丸谷)。からだをいっぱいにくねらして笑いこける=小林多。 **わらいだす【笑い出す】** ▼笑い出す(おかしさに耐えられず。やにわに腹を抱えて。胃の底から笑いを含んだ呼気がくしゃみのように飛び出し大声で=島田。弾かれたように驚沢。張りきった綱が切れたように突如として=横光。火がついたように=川端)。▼笑いだす(こらえきれなくなって。おかしくてたまらないというように“干刈)。笑いだしたい衝動に駆られる=なかにし。 **わらいとばす【笑い飛ばす】** ▼笑い飛ばす(杞憂這ゅを。ばかげた話を。荒唐無稽と。鼻先で。根も葉もないことと。ばかばかしいと)。笑い事で済ます。冗談と笑ってすませる。背負った時代の傷を笑い飛ばすようなしたたかさ=阿久。▼一笑に付す(危惧を。心配を。迷妄を。頭から。馬鹿馬鹿しいと)。一笑に付して顧みない。 **わらう【笑う】** ▼笑う(目くそ鼻くそを。からからと気持ちよさそうに。心底から愉快そうに。後ろ指をさして。おかしそうに肩を揺すって。お腹が痛くなるほど。思わず転がりそうになるほど。肩をすくめて小さく。くしゃっと顔を崩して。首をすくめてくすっと。最後に笑う者がよく。スタッフが一斉にどっと。釣られて思わず。歯茎を剣じき出して。右手を口に当てて。世の中を茶化して。時雨空のような笑いをふと=川端。呪縛から解けたように頬を崩し恥ずかしそうに"原田宗。少女のようにくすぐったそうに高橋三。相好を崩して豪快に=原田宗。何の屈託もないようにのびのびと自由に=福永。においたつようにあでやかに"槇野太い声でからからとあたりはばからずに何部。ばっとひまわりの花でも咲いたような感じで明るく清潔に=椎名誠。はでな身振り手振りで陽気に=山本周。ふにゃっと恥ずかしそうに=野問。云い過ぎをつくろうように薄く藤枝。いたずらっ子のような目つきになって戸板。稲の穂が重そうな首を止まず動かしてはさらさらと寂しく=長塚。浮き浮きと転げるように声を立てて極。海赤い喉の筋肉がのぞかれるほど大きく口を開いて"石坂。押し殺すような声でくっくっと=原田宗。貝がらをこすり合わせるような奇妙な声で=五木。顔を赤くバクハツさせるようにして"椎名誠。小判の壺っはを掘り当てた欲ボケ婆さんのように味気なく荻野。これ以上おかしいことはないというふうに目に涙を浮かべて!宮本部。ころころと喉を転がすように谷村。こわれた吸い上げボンブのような声で"阿久。嗄れ『れ声を打ち上げるように高樹。世界一幸せみたいな顔で=鷺沢。焚き火がはぜたように飯田。誰かがわきの下をくすぐっているのではないかと思われるほど小島。突っかい棒を外されたように倉橋。つぼみがほころぶように=光原。照れくさそうに鼻の下をこすって鷺沢。毒きのこでも食ベたみたいにしまりなく大庭。涙で相手の顔がにじむほど=開高。20ワットの白熱熱灯のような顔で驚沢。喉をのけぞらせて吠えるように『森瑶。馬鹿にしたように鼻先で=泉俊。はぐらかすようにフワと半刈。上ッヒッヒッと喉の奥でいやらしく“阿久。人目も気にせず道の真ん中で声を上げて"阿木。肥満体を揺すってがははと"辺見。腹話術の人形のように=中上。平家盛かいぃのような人の好い顔つきで壺井。べそをかくように=中上。ほほをまっ赤に染めてクルンと飯田。真っ白い歯を見せて高橋三。眉をへの字にして"曽野。湖が鼻をかんでるみたいにして=林美。身をよじるようにして『宗田。目尻に数えきれぬほどの絞しゃを浮かべて=渡辺。笑って笑って狂ってしまうと思われるほど腹を抱えて"小池)。笑う門には福来たる。大口を開けて笑う(遠慮もなく。がははと)。笑った顔が神仏みたいに輝く。吉本。笑っている(眼鏡の奥の瞳が。目がからかうように=宮部)。冗談を言って笑わせる。袖に口を隠して下を向く=福永。黒い顔に白い歯の亀裂が走る=加賀。笑いまじりに(答える。話す)。お互いのていたらくを笑い合う。笑い返す(さわやかに。無邪気に)。苦々しさを笑い紛らす。顔を見合わせてぷっと吹き出す。▼漩、こばせる(懐かしそうに顔を落合。謹厳な口許とを僅ぁずかに"外村)。泣きはらした顔がにっとほころぶ=長崎。 **わらえない【笑えない】** 薄笑いがにわかに凍りついたように頬っぺたの上で動かなくなる八谷崎。無理やり貼りつけていた笑顔の仮面がはがれかかる池井戸。笑みがすっと失せる。笑みを引っ込めて真顔になる。顔がこわばってうまく笑顔が作れない三浦哲。▼消えてる(顔からすっと笑いが。表情から笑みが)。笑いが(ぴたりと止む。頬で強張る。途切れてしいんとなる)。 **わらわない【笑わない】** ▼笑わない(めったに。ぜんぜん。ちらとも)。笑い出すのを懸命にこらえる。歯を食いしばって笑いを必死で抑える=井上ひ。にこりともせずに(言う。うなずく)。顔から微笑が消える。感謝するように笑いかけたが微笑が途中で凍ってしまう福水。 **わらわれる【笑われる】** ▼笑われる(世間に。人様に。甘いと)。鼻で笑われるのが落ち。会場の笑いを買う。何をオーバーなと一笑に付される。一笑を買う。今更悔いてみてもお笑いぐさ=高井。失笑を買う。 <1165> # 悪い・良い-382 **悪い・良い** **あく【悪】** 悪が(のさばる。はびこる)。人心の自由を強いて禁じようとするときに悪が起こる=舟橋。悪と対決する。悪に(挑戦する。報いるに悪をもってする。気づいて見ぬふりをするような男は信用できないさだ)。悪の(限りを尽くす。化身。権化。巣窟。道に迷い込む)。悪の芽を摘み取る。悪を(懲らしめる。断じる。憎む。根絶やしにする)。 **あくい【悪意】** 悪意が(見え見え。胸の内にとぐろを巻く)。話に悪意が満ちている。やり方に悪意が感じられる。世の中には理由もない悪意が山とある村上巻。断じて悪意から出たことではない。悪意に満ちた罵声。善意が悪意にとられる。他人の悪意にさらされる。無責任な悪意に満ちた嗲"山本周。悪意の(こもっない過失を犯す)。悪意のある(解釈。連想が働く)。悪意を(感じ取る。感じさせる言葉)。人に悪意を持つ。悪心が起こる。悪心を(起こす。転じて善心となす)。胸に悪念がきさす。心に邪気がある。邪気を払う。邪心が(多い。宿る)。邪念が(浮かぶ。きざす)。邪念に足元をすくわれる。邪念を追い払う。 **あくしつ【悪質】** 悪質な(いたずら。嫌がらせ。選挙逾反。デマを流す。万引常習者。詐欺に引っかかる)。悪性の(インフレ。腫瘍。感冒が流行する)。たちのよくない(高利貸し。腹いせ。男にかどわかされる藤沢)。たちの悪い(いたずら電話。からかい方。考え。冗談。無頼者)。性悪な(男。人)。どことなしに性悪な臭いがする美人=源氏。男を駄目にする性悪女"西木。 **あくとう【悪党】** ▼悪党(凶悪な。折紙付きの。救い難い。情け知らずの。根っからの。札付きの。世に仇ぁだなす。煮ても焼いても食えない。一筋縄でいかない。見かけによらない)。悪党の本性を剣もき出しにする。悪党を(ひねりつぶす。一網打尽にする)。血も涙もない人でなし。人でなしとののしる。人でなしを相手にしない。 **あくにん【悪人】** 悄け知らずの悪人。少なくとも悪人ではなさそう。悪人の巣窟。悪人を(突き出す。罰する。引っくくる。刑務所にぶちこむ。ばったばったとなぎ倒す=氷室)。馬締(人名)の意を汲み、西岡は悪代官のように笑った三浦し。奸かんを誅。する。悪者(途方もない。とんでもない)。悪者に仕立て上げる。悪者を(退治する。ひねりつぶす)。 **あくらつ【悪辣】** 陰へまわっては悪辣なまねをする。雲助のように悪辣な商人"山崎。意趣返しが日に日に悪辣になる。悪辣の限りを尽くす。悪辣さに怒りが湧く。あくどい(手を使う。儲もうけ方をする。まねを決してしない)。毒牙に(かける。必殺の磨きをかける"石坂)。やり方があまりにあこぎ。あこぎな(高利貸し。手を使う。真似まね。商売をしたことを後悔する)。あこぎに(搾取する。袖の下をとる)。 **あっか【悪化】** 景気の悪化が表面化する。悪化の道をたどる。▼悪化の一途をたどる(事態が。病状が)。▼恋化する(容態が。事態がさらに。情勢が急速に。にわかに病状が。経済状態が急激に。症状がぬきさしならないところまで)。医師が「急坂を転がるように」と言ったように心臓は肥大し悪化した"千刈。戦況が坂道を転がり落ちるように悪化し続ける=西木。火に油を注ぐよう。▼革ふらまる(病状が。病勢が)。▼暗転する(運命が。景気が。事態が)。経済の暗転に見舞われる。憲法を改悪する。身体全体が一度に機能を失ったようにがたがたになる=新田。風邪をこじらせる。こじれる(三角関係が。二人の間が。話がうるさく)。景気が底割れする。年来の疲弊が積もり積もって逼迫の頂点に達する=山本周。▼疲弊する(財政が。産業が。地域経済が。地方が。農村が)。 **あなば【穴場】** 穴場中の穴場。穴場を(教える。探す。見つける)。秘密の居場所。お誂法っえ向きの隠れ場所。▼場所(逢い引きに手頃な。男女が語らうに好適な。撮影にうってつけの場所。眺めの最も美しい)。 **あるまじき【有るまじき】** 大人の男にあるまじき退行願望。教師にあるまじき質問。武士としてあるまじき振る舞い。文明国にあるまじきこと。大名にあるまじき不身持=村上元。決してあってはならない。 **いい【良い】** いい(買い手がつく。風が入る。考えが浮かぶ。口実ができる。面の皮。度胸。値で売れる。勉強になる。知恵が浮かばない)。いい(相性が。愛想が。頭が。威勢が。腕が。運が。風通しが。恰幅跡が。金回りが。機嫌が。気前が。景気が。毛並みが。交通の便が。効率が。仕事の筋が。体格が。手際が。寝つきが。羽振りが。評判が。目の付け所が。要領が。立地条件が。早ければ早い方が。磨き上げられた鋼鍋のように肌艶が藤田)。結構いい線いっている。そのうちいいことがある。肉付きのいい女。便りのないのはよい便り。子供のためによかれと思えばこそ。その子によかれと親切にする。よかれと思ってしたことが(仇ぁだになる。裏目になる)。よき道連れを得る。自己の将来によき収穫をもたらす阿川弘。終わりよければすべてよし。よしとする(生きていれば。平凡で)。やめておいたほうがよさそう。いい加減に悟ってもよさそうなもの。気立てのよさそうな娘。座り心地のよさそうな場所。育ちのよさそうなおっとりした感じ。ものわかりのよさそうな人物を演じる=松浦。生きのよさで売る。居心地のよさに甘える。勘のよさに感謝する。記憶のよさに感嘆する。陽気のよさに誘われる。人のよさにつけ込んで甘える=松浦。居心地のよさを楽しむ。品がよすぎて物足りない。よすぎる(タイミングが。手回しが。虫が)。指導よろし <1166> の予後が。産後の肥立ちが)。▼うまく行かない(締めが。人間関係が。根まわしが。なかなか)。 #**かいぜん**【改善】 改善の(余地がある。兆しが見られない)。改善する(生活環境を。流通機構を。労働条件を。ほんのわずかばかり)。より良くする(演出効果を。労働条件を)。改正する(会則を。規定を。法律を)。改正案を提出する。 #**かいてい**【改訂】 改訂の筆を加える。▼改訂する(教科書を。誤字脱字を。辞書を)。ソフトウエアがバージョンアップする。バージョンをアップする。 #**かいりょう**【改良】 改良に改良を重ねる。完全な姿を求めて改良を加えていく内橋。改良する(機械を。スタイルを。設備を。品種を。近代的装備に)。 #**かんしんできない**【感心できない】 もう一つ感心できない。あの態度はいただけない。いただけない言動。あまり感心しない。ぞっとしない(服装。やり方)。あまりぞっとしない一幕。そのやり方は得策ではない。褒めた話ではない。ほめられない取り口。ほめられる話でもない。 #**かんほしくない**【芳しくない】 ▼芳しくない(結果が。答えが。精神状態が。成績が。世評が。戦局が。反応が。病状が。評判があまり)。芳しくない噂。けしからん(噂が聞こえる。野心をいだく。罠ぉぉをしかける)。二枚舌を使うけしからん奴。はかばかしい返答がない。はかばかしくない(馬の歩みが。反応が。病状が。返事が。容態が)。 #**きちじつ**【吉日】 思い立ったが吉日。吉日を選んで婚儀を執り行う。菊花薫る佳日。佳日を選んで式を挙げる。縁起のよい日。日柄がよい。 #**きっぽう**【吉報】 吉報が(届く。舞い込む。狂するばかりに島民を喜ばせる=山田美)。吉報に少なからず興奮する。吉報を今か今かと待っている。▼吉報を待つ #**うらめ**【裏目】 ▼裏目に出る(賭けが。積極策が。善意が。積極的な投資が。良かれと思ってしたことが。することなすこと。早すぎる決断は往々にして=柳田)。姿だぃの目が裏へ裏へと転がるようになる!高橋点。鳴かずば撃たれまい(雉子ミしも。鳥も)。予想に反して悪い結果になる。強硬手段は逆効果。逆効果を(生む。招く)。 #**うわむく**【上向く】 ▼上向く(売れ行きが。巡が。会社の業績が。景気が)。価格が上向きになる。▼上げ潮に乗る(運動が。経営が。事業が)。堅調に推移する。 #**おひとよし**【お人好し】 ほんとにあのお人好し、今に痛い目にあうよ="鷺沢。お人好しにもほどがある。眉も目尻も下がったいかにもお人好しの感じ富岡。人間がお目出度くできている。頼まれれば嫌と言えない性格。▼お人好しではない(おめおめ追い出されるほど"中上。義兄の体面を守るために自分の娘が受けた誘拐の被害に眼をつぶるほど=勝目)。お人好しぶって安請け合いする。面倒見のいい好人物。所在なげに好人物そうな温和な微笑を浮かべている連城。悪党も徹底すると虫も殺さぬ好人物に見える=柴田剣バカがつくほど人が良い"西村。一見愚鈍に見えるような人のよさ=井上靖。いい人(この上もなく。根っからの。腹蔵のない)。いい人と知り合う。 #**おめい**【汚名】 噬病者の汚名が末代まで消えずに残る"海音寺。汚名の冠をかぶる=山本周。嘘つきの汚名を免れる。朝敵という汚名を受ける。結果的にしろ主婦売春という汚名を着てしまう。向田。万引きの汚名を着てまで本を守ろうとする=有川。▼汚名を着せられる(裏切り者の。殺人犯の)。▼汚名をこうむる(死後に。二重スパイの)。 #**おもわしくない**【思わしくない】 ▼思わしくない(会社の業績が。体の調子が。結果が。健康が。手術の予後が。産後の肥立ちが)。 ねじけている。きを得て泳げるようになる。柔剛そのよろしきを得る。より良い(状態が訪れる。結果をもたらす)。何より(命が助かって。丈夫で。無事で。無病息災で)。▶上々(客の評判は。首尾は。調子は)。上々の(売れ行き。滑り出し。出来栄え。天気)。▼まし(家へ帰ったほうが。いっそ死んでしまったほうが。今の状態よりはずっと。何もしないよりは)。手術後の経過は良好。良好な(関係を築く。成績をあげる)。 #**いじわるい**【意地悪い】 意地悪い(質問をぶつける。好奇心に満ちた視線!庄野)。露骨な意地悪い言葉を浴びせる。ジリジリするほど意地悪くなる志賀。い方や返事の受け方に意地悪な響きがある=有吉。の深い意地悪な言葉。あなたにもそのうちわかると言いたげな意地悪な笑みを含んだ目つき連城。り口上で意地悪な響きのある声=原田康。意地悪く(返事を渋る。相手の言葉にかかずらう。弱点を言い当てる)。▼意地が悪い(極端に。ひねくれて)。意地の悪い(性格。誘導的な訊問いん。言葉を口にする)。口のあたりに意地の悪い微笑を彫りつけたように浮かべる“久米。ひどく意地の悪い鬼のような女谷崎。触れれば人の肌膚ぶだに血を見せるほどの硬い意地の悪い葉を持った芒討す=長塚。みんな見透かしているぞというような意地の悪いまなざし=佐多。運命の女神は意地悪=塩野。意地悪さを(むき出しにする。優しい声に包む=原田康)。▼意地悪する(あからさまに。婉曲以んきに)。顔が意地悪そうに歪ゅがむ。最後の最後まで意地悪のし通し=重松。無性に意地悪をしてみたい気持ちをそそられる=石坂。小意地の悪い眼を光らせる=山崎。底意地の悪い(脅し。仕返し。質問。目つき)。底意地の悪さが隠されている言葉"小林久。針を真綿でくるんでちくちく突くような仕打ち=村上元。底意地悪く落ち度を探す。やり口が実に陰険。陰険な(手段を弄する。口調で詰問する)。蛇とキツネをミックスしたように陰険なところがある母娘"志茂田。心が <1167> #**じゃあく**【邪悪】 心の底に邪悪な気持ちが潜む。目がじゃあく邪悪な光に輝く。考えること自体がおぞましい邪悪なアイデア=京野。邪悪に立ち向かう。邪悪の化身のような姿、谷崎。背後に潜む邪悪をえぐり出す。瞳に邪悪な影が(ある。ない)。邪恶淫靡かんの所行。邪說を(唱導する。撲滅する)。邪道に落ちる。魔道に(落ちる。迷い込む。魅入られる)。よこしまな(関係を持つ。期待を抱く。道へ一生を逸くらせる。行いをとがめる=野坂)。医業をよこしまに用いる。正は必ずよこしまに勝つ。 #**じょうしつ**【上質】 上質な背広を隙なく着こなす。渋い上質の和服。質が(高い。よい)。純良な(食品。質。素材)。良質な娯楽作品。良質の(水を確保する。食粗をふんだんに摂取する当月)。 #**スキャンダル** 世間に知られては命取りになるような重大なスキャンダル=勝目。スキャンダルが(表沙汰になる。致命傷となる)。女関係のスキャンダルが山ほどある。スキャンダルに(繋っながる火種。巻きこまれる)。スキャンダルの渦中に巻き込まれる。大臣のスキャンダルのもみ消しに奔走する=篠田。スキャンダルを(スクーブする。雑誌にすっぱ抜かれる)。醜名を死後に残す。世間に醜聞が伝わる。醜聞の(種をまく。噂話を消してまわる=開高)。滑稽な醜聞の持ち主。醜聞を新聞にすっぱ抜かれる=永井荷。 #**すてき**【素敵】 息を飲むほど素敵落合。素敵な(女性に出会う。邸宅を建てる。夢を見る)。身も心もとろけさす素敵な女永倉。目のさめるような素敵な女の子永倉。素敵に(うまい酒。優しい紳士)。 #**すばらしい**【素晴らしい】 素晴らしい(勘が働く。成果を挙げる。考えが頭に閃いらく。出来栄えに酔う)。うわあっと叫び出したくなるほどすばらしい灰谷。 #**ごうりてき**【合理的】 合理的な(思考の持ち主。説明。理由)。合理的に(解釈する。判断する)。証拠により合理的に推理する。物事を合理的に考える。▼合理化する(家事を。経営を。製造工程を)。合理性に褒打ちされる。合理性を重んじる。合理的精神が発達する。 #**こしたことはない**【越したことはない】 ▼越したことはない(金はあるに。気をつけるに。注意するに。仲よくするに。早いに。歯が丈夫であるに。人間慎重であることに獅子。念を押しておくに=大庭)。三十六計逃げるにしかず。▼しくはない(用心するに。黙って受け取るに)。 #**このましい**【好ましい】 事が好ましい形に進展する。かねがね好ましく思っている。嫌味のない(態度。こざっぱりした身なり)。色よい返事をくれる。活気のあふれた好もしい青年。好もしそうに眺める。願わしい(全員参加が。早期帰国が)。願わしい結果となる。望ましい(家が見つかる。対処法を考える)。耳寄りな(話を聞き込む。噂が伝わってくる。聞き込みを得る。報告がもたらされる)。 #**さいあく**【最悪】 最悪の(結果を恐れる。事態に陥る。状態を脱する。部類に入る。結末だけは免れる。条件を逆手に取る。場合を心配する)。多事多難な最悪の年。最悪の事態を(回避する。覚悟する。心配する。想定する。ひとまず防ぐ。免れる)。最悪よりはましな次善の選択=高橋知。過去最悪のペースで被害が増え続ける。 #**さいじょう**【最上】 最上の(品。手段。喜びに燃える。コンディション)。圧巻(映画の。シリーズの。全編の。物語の)。特上の(果物。酒。肉。ワイン)。 #**さいぜん**【最善】 最善の(策。処置をとる。努力を尽くす。道を探る。方法を見いだす)。▼最善を尽くす(再発防止に。被害者救済に)。ベストな道を見つける。与えられた仕事にベストを尽くす“重松。 (泰然として。はらはらしながら)。吉左右を待つ。天来の福音をむざむざ逃す。 #**けんあく**【険悪】 険悪な(用柄。顔つき。空気が流れる。雲行き。情势。対立関係。雰囲気。焦燥が駆け過ぎる)。事態が険悪な谷間に向かって転落し始める"柳田。淫らなほど疲れた眼が黒く怒っているように険悪な表情を満たたえる=有吉。顔が険悪に歪ゅがむ。病状が険悪に陥る。▼険悪になる(一座の空気が。関係が。雲行きが。状況が。表情が。二人の仲が。ムードが)。敵こうのように憎悪し合うほどの険悪きわまる仲=海音寺。表情から険悪さが消える。 #**こうきゅう**【高級】 高級な感触に仕上がる。客筋の高級な店。見るからに高級な料亭。高級の部類に入る。高級品を手広く扱う。一等地に家を構える。天下の逸品。極上の(家具。料理。ワイン)。目のつんだ上等な布。とびきり上等の(美人。料理。旅館)。上物の(親。ワイン)。絶品の料理。古今の絶品を一堂に集める。名品(折紙付きの。不朽の)。名品の名に恥じない。 #**こうけっか**【好結果】 好結果が期待できる。好結果をもたらす。いい結果に結びつく。いい結果を(期待する。もたらす)。 #**こうじょう**【向上】 技術の向上に積極的に努める。生活が向上の一途をたどる。▼向上する(生活レベルが。地位が。操作性が飛躍的に。生活水準が目に見えて)。▶向上させる(国民生活を。自給率を。社会保障を。バフォーマンスを。生産性を飛躍的に)。百尺竿頭いやんしに一歩を進む。安全性向上に貢献する。向上心が弱い。向上心に富む。▼アップグレードする(機能を。最新バージョンに。古いバージョンから)。グレードアッブを図る。グレードが上がる。 #**こうてん**【好転】 症状が好転を見せる。▼好転する(一挙に事情が。景気が。雇用情勢が。戦局が。病状が。旗色が俄然。見違えるほど事態が。見る見る形勢が)。紙一枚の差で運命が逆転したり好転したりする今束。せいぜい情況を好転させるように努力する"里見。 <1168> #**ふおん**【不穏】 物情が不穏である。不穏な(動きを見せる。噂が立つ。思いを抱く。気配が漂う。情報が流れる。空気を醸成する。気配を察知する)。声に不穏な響きを感じる。心臓が不穏な動悸を打ち始める=夏樹。呪うような不穏な目つき=浅田。ただならぬ事態に山の空気が不穏に揺れる三浦し。嵐の前の静けさ。心穏やかではいられない。心中が穏やかではない。穏やかな状況でないのは一目瞭然。穏やかならぬ(気配。発言。日々を過ごす。やり方)。穏やかならぬものがある(心中。内心)。物情が騒然とする。物情騒然たる(有様。世の中)。 #**ふごうり**【不合理】 社会が許容している不合理。不合理な(圧迫を受ける。仕組み。制度。要求)。現実社会の不合理に反発する。毅然として不合理に立ち向かう墨写。合理性に欠ける。紫の朱を奪う。夢ならでは起こり得ない不合理さに満ちる=獅子。非合理な制度。非合理を祈っく。 #**ふこころえ**【不心得】 言葉を尽くして不心得を諭す。ふこころえ不逞いての言辞を弄する。不届き千万な話。不届きを(働く。詫びる)。怒髪天をつくに足る不埒ら。極まりない行為=北。不均千万的はせな返事。不埒な(考えを起こす。恋に落ちる)。もっての外の不心得者。不心得者に手を焼く。悪事をたくらむ不逞の輩分か。を働く不起の徒。天に唾する不逞の男隆。親の顔に泥を塗った不届き者。不届き者には罰金を科す。料簡が狭い。後先見ずの不了見。不逞な料筒を持つ。 #**ふしょうじ**【不祥事】 不祥事(前例のない。政治資金がらみの。町始まって以来の)。不祥事が(相次ぐ。明るみに出る)。かつてない不祥事が組織を揺るがす=横山。不祥事で処分する。不祥事を(お詫びする。猛省する。予防する。表沙汰にしない)。女性がらみの不祥事を起こす。 #**ふせいじつ**【不誠実】 不誠実な(対応。人)。不誠実の #**ちょうどいい** ちょうどいい(機会。サイズ。湯加減)。▼ちょうどいい(ほどほどで。話半分くらいに聞いて貫井)。暑くもなく寒くもない。それ以上でも以下でもない。近からず遠からずの距離。過不足なく(書きこむ。分配する)。適当な(相手を見つけて結婚する。買い手があれば売りたい。レストランを紹介する)。近くに適当な遊び場がない。馴れれば結句これ幸い里見。これ幸いと(利用する。飛んで行ってしまう)。 #**つみつくり**【罪作り】 罪作りな(まねをするな。ことをする。話。人)。弱い者いじめをするのは罪作りなこと。他人を情事ごとに深入りさせてしまっ粋な仕掛け人竹西。罪な(話。人)。 #**とりえ**【取り柄】 ▼取り柄(正直が。小心で実直が)。とりえは堅実なだけが取り柄の男。たった一つの取り柄(元気だけが。若さだけが)。▼身上とする(時間厳守を。誠実さを。勝つことだけを)。捨てたものではない(私の腕も。ひとり暮らしも落合)。歳をとるのは捨てたものでもない。▼取り柄もない(これといった。何の)。美貌以外たいして取り柄のなさそうな人物井上靖。 #**のぞましくない**【望ましくない】 望ましくない結果。望ましからざる人物。好ましくない習性。好ましくない訪問客。▼手はない(黙って放っておく。青二才をむざむざ威張らせる=本庄)。▼法はない(黙って忍ぶ。あのままにしておく。見送りに来ないって)。 #**はんめんきょうし**【反面教師】 人間こんな風に年をとってはいけないという反面教師小林信。反面教師的な役割を果たす。 #**びとく**【美徳】 ▼美徳(謙譲の。中庸の。明朗ということは大いなる三浦綾)。貞淑の美徳の冠をかぶった妻瀬戸内。美徳を十全に発揮させる=宮本紙。謙譲の美徳を発揮する=網淵。▼美徳とする(克己を。誠実を。勇気を)。日本的な美風。勤儉質素の美風を守る!永井醇風美俗を(損なう。乱す)。美質に(惹かれる。恵まれる)。 人生の素晴らしい経験。宝石の素晴らしい輝き。心のおどるような素晴らしい世界臼井。痺しびれるほど素晴らしい夢小林信。渋皮の剣もけた素晴らしい美人人束。突然春がやってきたような素晴らしい日和"大庭。何もかもが永遠に姿を留めるように思える素晴らしい一週間=村上巻。素晴らしく(腕が立つ。大きな建造物。血色がいい。晴れた春の海)。異性を愛するということのすばらしさに有頂天になる=つか。妙なる(楽の音。琴の音。笛の音)。バイオリンの妙なる調べ。 #**ぜんあく**【善悪】 善悪の(彼岸に遊ぶ。見定めがつかない)。事の善悪をはっきりさせる。黒白を(明らかにする。つける。はっきりさせなければ気の済まない性格=辻井)。白黒を(つける。判定する)。正邪曲直をはっきりさせる。正邪善悪を批判する知性。事の正邪善悪を問う。正邪を(判断する。こと改めて論議する)。清濁を区別する。正否を(問う。判断する。見極める。見定める)。是非善悪を超越する。事の是非を判断する。存在の是非を論じる。内容の是非を吟味する。理非曲直が明らかになる。理非曲直をはっきりさせる。理非を(弁別する。わきまえる)。 #**ぜんこう**【善行】 善行により表彰される。善行を(積む。表彰する。施す)。善を(なす。施す)。陰徳を(積む。施す)。功徳を(積む。施す)。慈悲善根を施す。ひたすら善根を積むことに腐心する。 #**ぜんにん**【善人】 善人(底抜けの。根っからの。仏のような)。小心な善人に困られる=曽野。善男善女の信仰を集める。善男善女を遠慮なく餌食にする―藤原。 #**ちょうしょ**【長所】 ▼長所(輝かしい。かけがえのない)。長所と短所を裏返しに見る。長所を(さらに伸ばす。十分に生かしきる)。▼利点(明らかな。最大の)。利点が数多い。メリットが(多い。大きい。少ない。小さい)。メリットを最大限に利用する。 <1169> #**ふり**【不利】 状況は予想していたよりも遥かに不利。「やぶへび【藪蛇】敷蛇に(終わる。ならないようにというう逃げ腰の姿勢"大野透)。うっかり騒ぎ立てると厳蛇になる恐れ舟橋。かえって藪蛇になる(催促すると。うっかり手を出せば)。厳をつついて大蛇を出すようなもの。 #**ゆうり**【有利】 有利な(機会を窺りゅう。結果を得る。条件に導く。立場に立つ。ポジションを占める)。売り手に有利なシステム。少しでも有利な条件を引き出そうとする。発注者に有利な内容。有利に(解決がつく。戦いを進める)。交渉を有利に導く。事態を有利に運ぶ。商談を有利にまとめる。取引の条件が有利になる。天下の形勢が倒幕派に有利に展開する=船山。こちらに利のある戦い。分がいい。地の利に恵まれる。地の利を生かした人海戦術"横山。商店街の中心に近い地の利を得る=奥泉。ここは謝っておいたほうが得策・東野。答えるのが得策かどうか検討する=伊坂。得策ではないと判断する。 #**よくない**【良くない】 よくない(ことが起こる。冗談を飛ばす。噂を立てられる。結果を引き起こす)。▼よくない(あまり語呂が。あまり仲が。顔色が。体の加減が。体の具合が。観客の入りが。交通の便が。人相が。評判が。無理は体に。容態があまり。あんまり気持ちが。見た目は必ずしも)。後味のよくない事件。気色のよくない話。人相のよくない男。風態のよくない連中=山本周。よからぬ(噂を流される。考えを起こす。結果になる。振る舞いに及ぶ)。評判は概ねよろしいとは言えない。色よい返事が(得られない。返ってこない。もらえない)。▼始末(医者も手を焼く。しまには泣きだす。目も当てられぬ)。相当に始末の悪い作品。能ではない(言うことを聞くだけが。徒やたらに悲しむばかりが徳永)。小人閑居して不善をなす。弊に陥る。▼不良(作柄が。性行ともに。手術後の経過が)。考え物だ(いま発表するのは。その株を買うのは。その計画に乗るのは。安ければいいというのは)。 #**ぼうりょくだん**【暴力団】 警察が暴力団とつるむ。暴力団に因縁をつけられる。暴力団の(色に染まる。餌食になる)。暴力団を一網打尽にする。暴力団同士の抗争事件。お面みたいに顔を変えないギャング刈。ギャングの(抗争事件。隠れ家を急襲する)。悪名高いギャングの大親分。マフィアの息のかかった店。 #**ほどよい**【程好い】 ほどよい(距離を保つ。調和を保つ。長さに切る。ところで切り上げる。張りとやわらかみを持った紙"小川)。冷房がほどよく効く。 #**ほほえましい**【微笑ましい】 ほほえましい(休日の風景。思いに駆られる)。ほほえましそうに目を細めて聞く。思わず口もとが緩む=氷室。 #**マイナス** いざというときにとんでもないマイナス要因になる=柳田。マイナスに(作用する。転じる)。一見マイナスに見える条件。マイナスの効果をもたらす。マイナスをプラスに変える。・マイナス思考に陥る。マイナス成長に転落する。負の(遺産。イメージ。感情が消え失せる)。負を正に変える。 #**もりあがらない**【盛り上がらない】 盛り上がりが一瞬にしてしらける。今一つ盛り上がりに欠ける。低調(売れ行きが。取り組みが)。低調な(会議。競技会)。低調になる(デモが。闘争が)。 上に不誠実を重ねる=松浦。信義に背く。信義を破る。爪の垢ぁぁほども誠意がない。誠意のひとかけらもない。八方美人で誠実味に欠ける。節義にもとる。不忠実のそしりを免れない。不実な(夫。男。妻。娘)。不実を(なじる。働く。詫びる)。男の不実を知る。 #**ふてきかく**【不適格】 不適格な(教師。政治家)。不適格者をふるい落とす。不適任(委員に。裁判官に。・ 「裁判官に。大臣に)。 #**ふどうとく**【不道徳】 不道徳な(行い。男。女。言動。行為)。公徳心に欠ける。仁義に(欠ける。外れる。もとる)。人道に(欠ける。反する)。人倫乱れて戦禍の絶える暇とが無い萩原朔。人倫の道を踏み外す。人倫の道に(外れる。もとる所業)。▼反する(道義に。道徳に)。醜行を(演じる。こらえ忍ぶ)。不義の子を産む。不義を(犯す。働く)。天に代わりて不義を討つ。※ 。天に代わりて不義を討つ。道ならぬ(愛。行状。恋に落ちる)。放恣いう乱倫のふるまい。性的乱倫を嫌う。背徳を(犯す。感じる。懺悔だんする。自責する)。背徳性を非難する。不貞な(奥さん。女。斐。まね)。不貞を(あばく。受け入れる。嗅ぎつける。責める。難じる。働く。見すごす。許す)。不徳が災いする。不徳な(行為。生活。者)。不徳のなすところ。不徳を(働く。やってのける)。 #**ふむき**【不向き】 適応性に欠ける。適応力を欠く。仕事に適性がない。適性に欠ける。砲撃におよそ似つかわしくない風景・辺見。贈り物に不向きな食べ物。外交には不向きな性格。教師に不向きな学生。面接に不向きなスーツ。労働には不向きな腰つき。▼向いていない(事業家に。やくざに。営業という仕事に)。 #**プラス** ブラスに評価する。▼ブラスに転じる(思考を。マイナスを)。仕事にブラスになる。ブラスの(効果をあげる。方向に転じる)。ブラス面を最大限に生かす。▼ブラスとマイナス(磁石の。電気の)。 #**ふり**【不利】 不利な(扱いを受ける。状況に陥る。事態が持ち上がる。立場に追い込まれる。立場を有利に転換する)。先々不利な扱いを受けるだろう。状況が不利に働く。不利になる(戦況が。戦局が日増しに)。圧倒的な不利を悟る。形勢が不利に(傾く。なる)。あまりにも分が悪い。さほど有利とは言えない。形勢不利と見て逐電する。不利益を(受ける。被る。承知で引き受ける)。ハンディキャップを(克服する。背負う。ものともしない)。悪条件が重なる。悪条件を(おかして事業を成功させる。ものともしない)。 <1170> #**わるくない**【悪くない】 悪くない(アイデア。稼ぎ)。わるくない▼悪くない(人生も満更。こういう終わり方も=伊坂)。それほど悪い話でもない。悪い思いつきではない。根は悪い人間ではない。褒められるのは悪い気がしない"松岡。悪いことでもない(あながち。それほど)。さほど悪いとも思われない。たいした悪ではない。根は大した悪者でもない。 #**わるさ**【悪さ】 気分の悪さが治まる。気分の悪さに耐える。後味の悪さが残る。口の悪さがすっかり影を潜める。運の悪さに泣きたいくらい=源氏。問の悪さに苛立からつ。運の悪さには自信がある三浦し。居心地の悪さを覚える。きまりの悪さを笑いに紛らす。決断の悪さを悔む。サービスの悪さを詰問される。ばつの悪さをごまかす。 #**わるそう**【悪そう】 機嫌の悪そうな声で答える。根性の悪そうな顔。たちの悪そうな訪問販売員。問の悪そうな笑い。意地の悪そうなひんやりとした視線!森混。居心地が悪そうに尻をもじもじさせる。ばつが悪そうに目を逸らせる。 #**わるぢえ**【悪知恵】 悪知恵が(働く。よく回る)。悪知恵では引けを取らない。悪知恵に長けている。悪知恵を(しぼる。働かせる)。悪才にたけた男。悪才を働かせる。奸智幼んにたける。奸智の限りを尽くす。狡猾たらな知恵を働かす。▼狡智に(狐狸こりのような。時の利にしたがう事大主義の萩原曲)。 #**わるぶる**【悪ぶる】 ▼悪ぶる(わざと。感傷的な雰囲気を破るために無理に=森旨)。▼気取る(やくざを。いっぱしの悪党を。すれっからしを)。悪ぶらずにまっすぐに育つ。悪ぶらないで自分に正直になる。 #**わるがしこい**【悪賢い】 悪賢い(女。人)。世間ずれして悪賢い男。▼すれる(性格が。世の中に)。年の割に世間ずれした少年。腹黒い(奸計が以を考える。策をめぐらす。意図を粉砕する)。人ずれした(女。猿。鳩)。悪擦れした(男。子供)。やり口が悪擦れしている。手の込んだ悪巧み。狼の悪だくみにのった小羊のようにおとなしい存在"石坂。老瘡、いな(詭弁。爺じぃさん。話術)。目に老獪な光を満たたえる。老翁きわまりない政治家。 #**よくなる**【良くなる】 ▼よくなる(頭が。顔色が。金回りが。気分が。景気が。血色が。段々調子が。血の巡りが。愛想が急に。目に見えて。会社の中の風通しが。にわかに羽振りが。見違えるほど毛艶が。職場全体のムードが格段に。しまいにはどうでも)。どんどんよくなる法華归。の太鼓。▼よくする(頭の働きを。風通しを。風の通りを。心証を。滑りを。待遇を)。雨降って地固まる。長年の弊害が改まる。▼修まる(素行が。品行が。身持ちが)。状況が一向によくならない。改善されない(少しも。なかなか。何も)。食糧難が依然として好転しない。 #**わるい**【悪い】 悪い(遊びを覚える。印象を与える。男に胴だまされる。くじを引く。結果を招く。習慣が直る。知恵を働かす。友達ができる。歯をかばう。評判が立つ。風習を改める。虫がつく。夢から覚める。冗談としか思えない。奴ほどよく眠る。時には悪いことが重なるもの伊集院)。▼悪い(お腹の具合が。お湯の出が。会社の業績が。風の通りが。客の出足が。化粧の乗りが。術後の経過が。尻の据わりが。多少居心地が。皮膚の色艶が。虫の居所が。子供の教育に。継父と折り合いが。普段の心がけが。楽しみを邪魔しては。ちょっと見はすこぶる。今さら逃げだすのはばつが"三田。立開きは喧嘩よりも行儀が落合。もとはと言えば自分が。南条)。縁起の悪い夢。女癖の悪い男。口の悪い男。後味の悪い終わり方。かなり容態の悪い病人。機嫌の悪い声で叱りつける。たちの悪い酔っ払いにからまれる。建て付けの悪い雨戸。都合の悪いことを隠す。出来の悪い子ほど可愛い。歯切れの悪い弁明。人聞きの悪い言い方。評判の悪い遊び人。不幸にして悪い予想が当たってしまう。目つきの悪い男。最も始末の悪い欠点。物分かりの悪い人。肝が高くなり低くなり調子の悪い笛のよう遠藤。恐懃無礼をきわめ、感じが悪い態度"美濃部。うかつに口出しすればかえって悪い結果になる「萩原爽。運の悪い成り行きから逃れる=野上。落ち着きの悪い不安な夢島尾。趣味の悪い好奇心は怪我のもと"原田康。想像が悪い方向へと転がる若竹。どれほど親しい間柄でも言っていいことと悪いことがある山本周。にやりと品の悪い笑いを浮かべる"西木。ひどく岡の悪い数秒間が過ぎる三田。病人かと思われる血色の悪い顔色"大佛。再び悪い病気が頭をもたげてくる"森村。平均台の上でも歩いているようなバランスの悪い感覚辻仁。見てくれの悪い展望台=原田宗。・無理やり中断したようなおさまりの悪い空気が残る=山田太。ものごとを悪い方へ悪い方へと考える=灰谷。要領の悪い話しぶりにいらいらする=高橋和。よしんば勝ったにしてもひどく後口の悪い論争本庄。「悪いけどもう帰るわ」そんな台詞をさらりと口にする"谷村。臆することなく悪いことは悪いと言う。▼悪いものはない(増長した女くらい始末の"源氏。羊の皮をかぶった奴等の謙遜な傲慢さくらい胸炎の長与)。悪く(言えば朴念仁以。言う者は一人もいない)。話を悪く取る。悪くなる(仲が急激に。事態が一層。次第に居心地が。見ているだけで胸が。顔色が日増しに。形勢が日に日に。状況がますます)。悪癖からいまだに抜け出せない。悪癖にふける。昔からの悪い癖。今後に悪例を残す。悪しき(印象が残る。習慣を改める。前例となる)。目が凶相を帯びる=山田风。▼示しがつかない(下の者に。部下に。偉い人がわがままを言ったら“海堂)。俗悪さの中にどっぷりつかる。俗悪な文化に毒される。劣悪な(生活環境。労働条件を押し付けられる)。