<1> **アート**「芸術」の意で会話や軽い文章に使われる新しい感じの外来語。〈モダンー〉 〈ポップー〉〈ーディレクター〉「芸術」に比べて軽く斬新な語感で用いられ、ベートーベン・ミケランジェロ・北斎などのクラシック作品とはイメージが合わない。文学は含まず、「現代―」の中に音楽も含まれない傾向が強い。↓芸術 **あい【愛】**相手をいとしく思い大切に慈しむ気持ちをさし、会話にも文章にも広く使われる基本的な漢語。〈母性——〉〈―を打ち明ける〉〈―の結晶〉〈親の―に飢える〉②井上靖の『猟銃』に「―というものは、太陽のように明るく、輝かしく、神にも人にも、永遠に祝福されるべきもの」とある。「恋」や「恋愛」が男女間に限られるのに対し、この語は色恋に限らず、親子の間の愛、兄弟愛、隣人愛、人類愛から、万物への博愛、郷土愛、愛国心、神の愛まで、さまざまな形の愛情を表すのに用いられている。恥じらいを知る日本人はこのようなあからさまな語を人前で発することを伝統的に照れてきた。Q恋・恋愛 **あいかた【相方】**二人で組んでやるときの相手をさし、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な和語。〈漫才のーをつとめる〉客の相手をする遊女をさす用法では古めかしい感じになる。→相手・Q相棒・パートナー **あいかわらず【相変わらず】**いつもと同じようにの意で、会 話やさほど硬くない文章に使われる和語表現。〈一独身だ〉〈一元気に飛びまわっている〉〈一安月給でこき使われている〉〈―みごとな腕前だ〉のいい意味でも悪い意味でも使うが、自然・当然な状態について「あなたは―お元気ですか」などと尋ねるのは日本語として不自然。乃依然 **あいかん【哀感】**もの悲しい気分をさし、主に文章中に用いられる漢語。〈―が漂う〉 〈―を催す〉 〈―をそそる〉②松本清張は『或る「小倉日記」伝』で、かぼそく消える鈴の音が「子供心に甘い―を誘った」と書いている。DQ哀愁・悲哀・物悲しい・憂愁 **あいぎ【合い着(間着)】**寒い冬と暑い夏との間の季節、春や秋に着る衣服の意で、会話にも文章にも使われる和語。〈温暖な日が続き、春物の―に替える〉和服も洋服も含まれる。まれに、上着と下着の間に着る衣類をさす場合もある。→合い服 **あいきょう【愛嬌(敬)】**顔つきやしぐさなどに自然な親しみやかわいらしさの感じられる場合に、会話にも文章にも使われる漢語。〈一者〉 〈―がある〉 〈ーがこぼれる〉〈―をふりまく〉②意識的な「愛想」に比べ、その人間に具わったものをさし、徳永直の『太陽のない街』に「道化師のようにーのある医師」とあるが、多く女性の態度について用いる傾向が強い。ただし、「男は度胸、女は―」という区別は感覚の古さを印象づける。ひあいそ・愛想 **あいくち【匕首】**つばのない短刀をさし、会話でも文章でも使う、やや古い連想のある和語。〈隠し持った―で切りつける〉の梶井基次郎の『冬の日』に「突然―のような悲しみが <2> 心に触れた」という比喩表現が出る。刀身の長さから俗に「九寸五分。」ともいう。「短刀」などに比べ、どこか犯罪の雰囲気がにおう。懐剣・こがたな・小刀・短剣・短刀・どす・ふところがたな・脇差 **あいくるしい【愛くるしい】**容姿やしぐさがあどけなくかわいい意で、やや改まった会話やさほど硬くない文章などで用いられる、やや古風なことば。〈ーしぐさ〉〈見るからに・―顔立ち〉水上勉の『越前竹人形』に「丸顔のぽっちゃりとした―顔だ」とある。類義の「愛らしい」よりも幼児性を強く感じさせ、赤ん坊か幼い子供について、特に性別を意識せずに使う傾向がある。JQ愛らしい・可愛い **あいこう【愛好】**物事を好き好む意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの漢語。〈印象派の絵画を―する〉〈クラシック音楽を―する〉「好き」や「好む」と違って、対象はもっぱら物事であり、通常、人や品物などには用いないから、いくら「愛し」ていて「好き」であっても、うっかり恋人にこの語を使ったら険悪な空気になりかねない。↓Q好む・好き **あいさつ【挨拶】**出会いや別れの際に互いに交わす社会的儀礼としての慣習的な動作や短いことばの意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な漢語。〈一状〉〈時候の―〉〈転勤の―〉 〈丁寧に―を交わす〉〈軽く手を上げて―する〉の夏目漱石の『坊っちゃん』に「義理一遍の―」とある。「季節の―を欠かさない」「お礼の―に伺う」のように、敬意や感謝の意を表す行為の意にも、「来賓の―」「結婚披露宴で―に立つ」のように、公的な場での儀礼上のスピーチの意にも用いる。小沼丹は『黒と白の猫』で「―無しに死ぬから困ります」と、妻の急死に慟哭する心を呆れるほどのんびりと描いてみせた。JQ会釈・お辞儀・敬礼・最敬礼・目礼・黙礼・礼② **あいじゃく【愛着(著)】**「あいちゃく」の古めかしい表現。〈深い―を覚える〉②もと仏教語で、世間の欲にとらわれて思いを断ち切れない意。「執着」と同様、「じゃく」と読むと相当の高齢者と思われやすい。→Qあいちゃく・しゅうじゃ **あいしゅう【哀愁】**わけもなく心にしみてくるうら寂しい感じをさし、改まった会話や文章に用いられる、いくぶん趣のある漢語。〈一抹の―〉〈―を帯びたメロディー〉 〈ーを帯びた節まわし〉 〈―を誘う情景〉川端康成の『名人』に「生きて眠るように閉じた瞼の線に、深い―がこもった」とある。JQ哀感・うら悲しい・憂い・愁い・寂しい・寂寞寂寥物悲しい・憂愁 **あいしょう【愛称】**親しみをこめた呼び名をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈―で親しまれている〉「新商品のーを募る」のように、人間以外にも用いる。軽蔑のニュアンスがあれば使わない。凸あざな・あだな・Qニックネーム **あいじょう【愛情】**特に親子や恋人・夫婦の間で相手をいとおしみ大切にしようと思う気持ちをさして、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈深い―〉 〈―を抱く〉〈ーを注ぐ〉〈―を寄せる〉 〈―にほだされる〉〈―のもつれ〉室生犀星の『杏っ子』に「女の人の心にはいつもピアノのような音色がある。(略)―だってピアノが鳴るようなもの」と <3> ある。「愛」ほど気障な響きは感じない。马情愛 **あいじん【愛人】**世間をはばかる恋愛関係の異性をさす形式的な婉曲。表現。社会の良識に反するとして非難の対象になる「情夫」「情婦」「情人」「いろ」といった露骨な表現を避け、上位概念に置き換えて関係をぼかすことで抽象化し、下品な感じを薄めた漢語。〈―関係にある〉〈―にする〉〈―を持つ〉ご井伏鱒二が『鯉」で「君の―の家では泉水が広いようだが、鯉をあずかってくれないかね?」「青木の―に手紙を送った」「青木の霊魂が彼の―を誤解してはいけない」というふうに「愛人」という語を単なる「恋人」という意味で用いているように、この語はもともと、恋愛関係にある異性一般をさしたが、現在では、陰湿でなくむしろ明るく健康的な語感を持つ「恋人」という語とは区別して使われる。太宰治の『斜陽』にある「私は将来、そのお方の―として暮すつもりだ」という箇所はそのような例である。現在は、正式の夫や妻以外にひそかに関係を持っている相手として、人前に出しにくい存在を連想させるが、そういう認識を示すだけで、それに対する軽蔑の気持ちまでは表明していない。いい人・Qいろ・恋人・情人・情夫・情婦 **あいず【合図】**あらかじめ約束した方法で一定の情報を知らせる意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常語。〈―を送る〉 〈目で―する〉 〈笛を―に始める〉サイン②・Qシグナル・信号 **あいする【愛する】**大切に思う相手に愛情を注ぐ意で、会話より文章に使われる表現。〈心から―〉 〈死ぬほど―〉〈―わが子の寝顔〉高橋和巳の『悲の器』に「無限の感情を以てわが娘を―・していた」とある。小説やドラマなどに「あたしのこと、今でも―・してる?」「ああ、・してるよ」といったやりとりが出てくるが、この語をくだけた会話で使うと気障で浮ついた感じに響く。また、「―犬」「わが―町」「音楽を―」のように人間以外の対象にも用いるが、その用法では気障な感じが目立たない。恋する・慕う・好く・惚れる **あいせき【愛惜】**大切に思い手放したくない気持ちをさし、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈―の品〉〈一の念〉②永井荷風の『日和下駄』に「―の情はおのずから人をしてこの堀に艸遇花の馥郁とした昔を思わしめる」とある。↓未練 **あいそ【愛想】**「あいそう」の意で会話や軽い文章に使われる漢語。〈一笑い〉〈―がない〉②日常会話では「あいそう」よりもよく使う。「―を尽かす」「―もこそも尽き果てる」の形で、呆れて見限る意を表す場合は特にこの形が一般的。主に「おーを言う」の形で「おせじ」を意味する用法もある。愛嬌・Qあいそう **あいそう【愛想】**相手に好感を与える表情・態度・応対などをさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈一笑い〉〈ーの悪い店員〉〈―を言う〉太宰治の『人間失格』に「皆に―がいいかわりに、「友情」というものを、いちども実感した事が無く」とある。自然に具わった感じの「愛嬌」に比べ、相手をいい気分にさせたり相手に取り入ったりするために意図的にとることが多い。「無愛想」と対立。DQ愛嬌・あいそ **あいだ【間】**二つの物体や時刻に挟まれている部分や、連続する対象に含まれる部分などをさし、くだけた会話から硬 <4> い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈男女の―〉〈留守の―〉〈物と物との―〉〈木の―から海が見える〉〈仕事をしている―〉 〈―に立つ〉 〈―を離す〉〈一をつなぐ〉〈休みの―〉②上林暁の『月魄い』に「私の家の便所と西隣の家の―に残っている雪」とある。漢字表記は「ま」と紛らわしい場合もある。JQ合間・間 **あいだがら【間柄】**人と人との関係をさし、会話にも文章にも使われるいくらか古風な感じのする和語。〈親子の―〉<師弟の―〉〈親密な―〉夏目漱石の『草枕』に「余と銀杏、返しの―」とある。関係・関連・続柄・Q続き柄 **あいちゃく【愛着(著)】**心を惹かれて思い切れない意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈この鞄には―がある〉〈この万年筆には人一倍―が強い〉「執着」ほど強いこだわりは感じさせない。乃あいじゃく・執着 **あいて【相手】**物事を一緒にする仲間や、行為の対象となり時には対抗する人間やその団体をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一役〉<——次第〉〈相談——〉〈結婚——〉〈対戦―〉 〈―をする〉〈ーになる〉〈一にしない〉 〈それは―が悪い〉の夏目漱石の『坊っちゃん』に「中学の先生なんて、どこへ行っても、こんなものを一にするなら気の毒なものだ」とある。「手ごわいーに当たる」「―をやっつける」のように張り合う相手の意では「対手」と書く例もある。相方・相棒・Q先方・対象・パートナー・向こう② **アイディア**頭に浮かんだ考えの意で、会話にも文章にも使われる外来語。〈―倒れ〉〈―が浮かぶ〉〈ちょっとした―だ〉「着想」「発想」ほどではないが、単なる「思いつき」よりも思考過程を連想させる。スケールの大きな深い考えをさす場合は日本語では軽く扱った感じになりやすい。「アイデア」と書くと少し古い感じが出る。DQ思い付き・着想・発想 **アイテム**項目、特に品目あるいは単品をさし、主に会話に使われる新しい感じの外来語。〈必須―をそろえる〉近年、小物のような具体物をさして不必要によく使われる。項目・事項 **あいにく【生憎】**都合の悪い場合や期待に反する時などに、会話にも文章にも広く使われる日常の和語。〈一の雨〉〈一時間がない〉〈―品切れだ〉 〈―旅行中で出席できない〉小沼丹の『エジプトの涙壺』に「リルケに「涙壷」って云う詩があるのを知らないかね?」「おーさまだな」「おーは淋しいね」というやりとりが出てくる。→折悪しく **あいのこ【合いの子(間の子)】**混血児の意で主に会話に使われる古風で俗っぽい和語。〈日本人とフランス人との一)「ラパはロバと馬とのーだ」などと人間以外にも使うが、人間の場合は「混血児」に近いマイナスイメージが付着し、差別意識が問題になるにつれて、この語も次第に使用を控えるようになってきている。→混血児・ハーフ **あいのり【相乗り】**一つの乗り物に連れでない複数の人間が一緒に乗る意で、会話にも文章にも使われる和語。〈タクシーに―する〉夏目漱石の『三四郎』に「女とは京都からの―」とある。通常は一人で乗る乗り物の場合に言うことが <5> 多い。Q同乗・乗り合わせる **あいびき【逢引/媾曳】**愛し合う男女がひそかに約束して人目を忍んで逢う意で、会話にも文章にも使われる古めかしい和語。〈―を重ねる〉 〈―が人に知れる〉島崎藤村の『新生』に「――する男女の客」とある。「逢瀬」が密会している時間に焦点が当たっているのに対し、逢う行動を中心に言及している感じがある。→逢瀬・忍び合い・デート・Q密会・ランデブー **あいふく【合い服(間服)】**寒い冬と暑い夏の間の季節、春や秋に着る洋服の意で、会話にも文章にも使われる日常語。〈秋になって―を取り出す〉和服も含む「合い着」より狭義。→合い着 **あいぼ【愛幕】**主に異性を愛し慕う意で、主として文章中に用いられる古風な漢語。〈―の情やみがたく〉 〈―の情が募る〉北杜夫の『幽霊』に「父は心の底でひそかな―をよせていたらしいこの世に別れを告げた」とある。懸想・思慕・Q恋慕 **あいぼう【相棒】**一緒に仕事などをする相手をさし、会話や軽い文章に使われるくだけた感じの表現。〈息の合う―〉大岡昇平の『俘虜記』に「比島脱出の―」とある。二人で駕籠を担ぐ相手の意から。JQ相方・相手・バートナー **あいま【合間】**物事の間をさし、会話にも文章にも使われる 文章にも和語。〈―を見て〉 〈一を縫って〉 〈仕事の―に連絡する〉②夏目漱石の『坊っちゃん』に「おれと山嵐は校長と教頭に時間の―を見計って、嘘のない所を一応説明した」とある。↓Q間間 **あいまい【曖昧】**明瞭でなく的確な理解を妨げる意で、会話にも文章にもよく使われる漢語。〈——模糊〉〈一な態度をとる〉〈返事がーでよくわからない〉の「―という語自体も―である」と言え、いくつかの意味合いに分かれる。曖昧さの諸相は、A不明確。「説明が――だ」「結果を―なままにしておく」のように、茫漠いとしていたり抽象的だったりして具体的な理解に到達しない場合。B多義的。「「二人の母」という言い方は―だ」のように、(1)二人の子供の母親、(10)ある人の実母と養母・義母、それぞれ子供のいる二人の女性といった複数の意味に対応する場合。C中間的。「金茶とも黄金色とも決めがたい―な色」のように、両者の中間に位置する場合。「「情熱に燃える」という表現はすでに慣用化しており、比喩表現であるかは―だ」のように比喩性の程度という連続的な関係の中に位置する場合も同様。JQ多義的,中間的,不明確,不明瞭 **あいよく【愛欲】**異性に対する欲望をさし、主として文章に用いられる漢語。〈―の日々〉〈ーにとらわれる〉芥川龍之介の『偸盗』に「女の眼は、侮蔑と―とに燃えて」とある。意味の共通部分をもつ「情欲」「色欲」「性欲」「淫欲」「肉欲」「獣欲」に比べると、語の意味というより、「欲」と組み合わさるもう一つの漢字のイメージの差で、この語は厭らしさが比較的少ない。J淫欲・色欲・獣欲・Q情欲・性欲・肉欲 **あいらしい【愛らしい】**かわいらしく好感がもてるようすをさし、やや改まった会話や文章で用いられる、いくらか古風な感じのすることば。〈一少女〉〈一目元〉の類義の「愛くるしい」に比べ、より年上の主として女の子に使う傾向が <6> 見られる。DQ愛くるしい・可愛い **アイロニー**伝達したい内容をその逆の意味になるようなことばを用いて遠まわしに述べる表現法をさして、会話にも文章にも使われる専門的な外来語。〈―は皮肉な響きがある〉卑劣な行為を「偉い」とか「立派」とかと評し、文脈や場面との違和感をとおして相手に感づかせる類。→反語 **アイロン**熱と蒸気で衣類の皺を伸ばす道具をさし、会話にも文章にも使われる外来語。〈洗ったシャツにーをかける〉こて **あう【会う】**ある場所で誰かといっしょになる、何かに出会うといった意味合いで、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の最も基本的な和語。〈三時に人に―〉〈今度の日曜にみんなで―〉 〈―は別れの始め〉の夏目漱石の『坊っちゃん』に「少々憎らしかったから、昨夕はあえなくなる 【敢え無くなる】「死ぬ」意の和語による間接表現。二返―・いましたねと云ったら」とある。「忍びあう」という意味合いの場合に「愛人とひそかに逢う」、「ぶつかる」という意味合いの場合に「交通事故に遭う」、「偶然あう」という意味合いの場合に「街角でばったり遇う」、「巡りあう」という意味合いの場合に「思いがけない土地で、別れた妻に邂(逅)う」のように、ニュアンスを漢字で表現し分けることもある。出会う **あう【合う】**物や事が一つになったり矛盾なく一致したり調和したりする意味で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈寸法が―〉〈計算が―〉〈目が―〉〈ピントがー〉 〈答えが―〉 〈話が―〉〈ネクタイがジャケットに―〉 〈酒のさかなに―〉 〈希望に―〉谷崎潤一郎の『細雪」に「もともと雪子ちゃんという人が、東京の水に―・わん人や」とある。→一致・合致・Qなじむ **アウト**駄目になる意で、主としてくだけた会話で使う俗っぽい外来語。〈せっかくの計画が―になる〉〈期限切れで完全に―〉の球技、特に野球の用語の拡大用法として、「権利や資格を失う」「駄目になる」といった意味合いで広く使われる。比喻性は薄い。「セーフ」と対立。駄目・ばつ **あえて【敢えて】**困難を承知で、無理にでもの意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの和語。〈一断行する〉〈一忠告しておく〉 〈一難関に挑む〉〈一買い換えることはない〉井伏鱒二の『荻窪風土記』に「不況と左翼運動とで犇き合う混乱の世界に―突入する」とある。→故意・Q強いて・わざと・わざわざ **あえなくなる【敢え無くなる】**「死ぬ」意の和語による間接表現。死を忌む気持ちから、それを露骨に表現することを控え、「敢え無い」すなわち、あっけなく気力を喪失した状態への変化ととらえ直すことで衝撃をやわらげる婉曲。表現。上がる②・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる・夢くなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 **あおい【青い】**三原色の一つで、海や晴れた秋空のような色をしている意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈秋晴れの―空〉〈眼下に <7> 広がる―海〉宮本輝の『道頓堀川』に「座敷には表通りからのネオンの灯と、石油ストーブの炎の―ゆらめきだけが、ぼっと薄く靄のようにけぶっているだけだった」とある。青白い色の場合に「顔色が蒼い」、緑がかっている場合に「目の碧い人」のように、ニュアンスを漢字で表現し分けることもある。伝統的に、日本語の「青」は晴れた空のようなブルーの意にも、若葉のようなグリーンの意にも、青信号や海のような緑がかった青の意にも使われ、また、青と緑との総称ともなるが、現代人特に若い世代は「緑」だけをさす用法を避ける傾向が強い。 **あおじゃしん【青写真】**未来に関するおおよその案の意で、会話や硬くない文章に使われる比喩的な表現。〈将来の―を描く〉〈再開発の―ができあがる〉〈まだ―の段階だ〉本来、青地に図面や文字が白く浮き出すように仕上げる写真の一種をさし、それが設計図などに用いられたところから、計画の意に転じた。→企画・計画・構想・Qプラン **あおすじ【青筋】**皮膚の表面に青く透けて見える静脈をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈―を立てる〉嘉村議多の『秋立つまで』に「蜂谷にむくむくと幾条もの―を這わして」とある。静脈 **あおぞら【青(蒼)空】**よく晴れた青い空をさし、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈雲ひとつない―が広がる〉〈澄み切った抜けるような―〉 〈雲の切れ間からーがのぞく〉永井龍男の『風ふたたび』に「ひさしぶりのーが見える。夜中の豪雨が、重苦しい梅雨空を、どうやら切り放したらしい」とある。→青天井・Q碧空 **あおてんじょう【青天井】**「青空」の意で文章に用いられる古風な表現。〈―が広がる〉上方に広がる大空を天井に見立てた詩的な表現。Q青空・碧空 **あおば【青葉】**初夏に青々と生い茂ったみずみずしい木の葉をさし、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈ーのころ〉〈―が茂る〉 〈一が目にしみる〉「若葉」に続き盛んに茂り始める季節で、「目には―山郭公初松魚」という山口素堂の句が有名。新緑・若葉 **あおもの【青物】**緑色の野菜または野菜一般を意味するやや古風な和語。〈―市場〉 〈―を商う〉→野菜 **あおる【岬る】**一気に飲む意で会話や文章に用いられる、いくぶん古風な和語。〈酒をコップに注いで―〉〈立て続けに―〉徳田秋声の『縮図』に「本来そう好きでもない酒を―・って」とある。飲みきる意の「飲み干す」に対し、仰向いて勢いよく飲むところに重点がある。→飲み干す **あおる【煽る】**おだててその気にさせる意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈購買心を―〉 〈人気を―〉〈競争心を―〉「ドアが風に―・られて音を立てる」「風に―・られて燃え広がる」のように、風が物や火などを揺り動かす意からの比喩的な拡大用法。「そそのかす」のような犯罪行為の連想はなく、「けしかける」「たきつける」と違って必ずしも悪事とは限らない。けしかける・指嗾・扇動・そそのかす・たきつける **あか【赤】**三原色の一つである血や火のような色をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な日常語。〈―と黄色〉〈白地に―で丸を描く〉高樹のぶ子の <8> 『遠すぎる友』に「ひとを憎んだり妬む気持が、血の―を少しずつ濁らせている」とある。広義には赤系統として茶色まで含む。漢字に「紅」をあてると「べに」か「くれない」と読まれやすく、「朱」をあてると「しゅ」と読まれやすい。「―旗」「―の広場」などから共産主義の連想も起こりやすい。 **あかい【赤い】**燃える火や熟した柿のような色をしている意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生の基本的な和語。〈一花〉〈一帽子〉 〈顔が―・くなる〉円地文子の『女坂』に「血はいくつもいくつも小さい―花のように畳廊下に滴っていた」とある。純粋の赤であることを特にはっきりさせたい場合に「紅い唇」、濃い鮮やかな赤の場合に「緋い毛氈な」、やや黄色みを帯びた赤の場合に「朱い柿」、茶色がかった赤の場合に「赭い顔」などと、漢字でニュアンスを書き分けることもある。 **あかぎれ【骸(輝)】**ひどい「ひび」の意で、会話や文章に使われる和語。〈―だらけの手〉内部が赤く見えるほどに深く切れた割れ目という意味のことば。♪ひび **あがく【足掻く】**危機を脱しようと手脚をばたばたさせて抵抗する意で、会話や改まらない文章に使われる和語。〈何とか逃れようと―〉 〈最後まで無駄に―〉椎名麟三の『美しい女』に「思いをつくし、力をつくして、蟻のようにいらいてやるつもり」とある。「最後のあがき」「無駄なあがき」というように、ほとんど逃れられない状況でしばしば使われる。「どう―・いてみても、もうおしまいだ」のような形で、比喩的に、肉体的以外の抵抗についても用いる。ひじばたする・Qもがく **あかご【赤子(児)】**生まれて間もない子供の意で、会話にも文章にも使われる古風な和語。〈―の泣き声〉〈一の世話に明け暮れる〉志賀直哉の『暗夜行路』に「―は指でも触れたら、一緒に皮がむけて来そうな唇を一種の鋭敏さをもって動かして居た」とある。→赤ちゃん・赤ん坊・嬰児・みどりら **あかし【証】**確かな拠りどころの意で、改まった会話や文章に用いられる古風でいくぶん詩的な和語。〈身の一を立てる〉〈愛の―となる〉〈この世に生きた―〉 Q証拠・証左 **あかちゃん【赤ちゃん】**生まれて間もない子供の意で、会話や改まらない文章によく使われる日常の和語。〈ーが生まれる〉〈―を抱く〉 〈―をおんぶする〉「―ができる」「おなかの―」のように、胎児など生まれる前の状態をさす用法もあり、「赤ん坊」より例が多い。かわいいと思う気持ちが「赤ん坊」より前面に出ている。→赤子・赤ん坊・嬰児・みどりご **あかつき【暁】**「夜明け前」の意。雅語に近い古風な和風文章語。〈一闇〉〈一近くに〉太宰治の『富嶽百景』に「―、小用に立って、アパートの便所の金網張られた四角い窓から、富士が見えた」とある。「成功の―には」のように、何かが実現した時をさす比喩的用法もある。乃明け方・曙・朝ぼらけ・Q朝まだき・しののめ・払暁・未明・夜明け・黎明 **あかてん【赤点】**「落第点」の古い俗称。〈―だけは取らないように〉目立つように赤い色で記したところから。若い世代には通じにくくなりつつある。→落第点 <9> **あかぬけた【垢抜けた】**容姿や行いが都会的に洗練されている意で、会話にも文章にも使われる和語表現。〈一服装〉〈一身のこなし〉〈気品があって―文章〉〈―都会的なセンス〉→洗練 **あかぬけない【垢抜けない】**都会的に洗練されておらず粋という感じからほど遠い場合に用い、会話でも文章でも使われる表現。〈一身なり〉 〈化粧がどことなく―〉「野暮」とは違って、男女間のことについて感覚が鈍いといった意味合いでは使わない。田舎じみる・ださい・泥臭い・野暮・Q野暮ったい **あかはだか【赤裸】**「全裸」の意の古めかしい和語。〈身ぐるみ剣がされーにされる〉「赤」は肌の色でなく強調の役目。素っ裸・素裸・全裸・裸・真っ裸・真裸・丸裸 **あがめる【崇める】**尊いものとして敬う意で、会話にも文章にも使われるやや古風な和語。〈神仏を―〉 〈先祖を一〉佐藤春夫の『田園の憂鬱』に「未開の人たちが神と―・めたその燃える火」とある。「敬う」より尊敬の度合いが大きい。→敬う・崇敬・崇拝・尊敬・たっとぶ・とうとぶ **あかり【灯[燈]/明かり】**照明用の光をさして、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈街の―〉〈―がともる〉 〈家の―が点っく〉 〈―がもれる〉②「灯」の表記は「ひ」との区別が困難。永井龍男の『風ふたたび』に仕掛け花火の白煙の描写があり、「対岸のビルの灯も、川を渡る総武線の灯も、その中に見えがくれした」という一節が出てくる。前者を「ひ」、後者を「あかり」と読みたくなるが、いろいろな読みが可能だろう。凸照明・灯火・ともし火・Q灯・ライト **あがり【上がり】**鮨屋でなどで食事の後に出されるお茶をさし、主に会話に使う和語。〈店員に―を頼む〉②もと遊郭や料亭などで入れたての煎茶をさした「上がり花」の略。JQお茶・玉露・煎茶・茶・日本茶・番茶・碾き茶・焙じ茶・抹茶・緑茶 **あがる【上がる/挙がる/揚がる】**低い所から高い所に移るという基本的な意味をもち、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる基本的な日常生活の和語。〈幕が上がる〉〈座敷に上がる〉〈屋根に上がる〉〈地位が上がる〉〈給料が上がる〉〈成績が上がる〉〈風呂から上がる〉〈子供が学校に上がる〉〈雨が上がる〉〈候補に名が挙がる〉〈凧が揚がる〉の夏目漱石の『坊っちゃん』に「やな女が声を揃えて御―・りなさいと云うので、―のがいやになった」とある。「のぼる」が「日がのぼる」「木にのぼる」「梯子電をのぼる」のように少しずつ高くなって行くその経過が意識されるのに対して、「あがる」の場合は一気に上に行くか、今は前より上にあるというふうに結果の状態に重点があるとされる。したがって、「山にのぼる」の場合は登山の過程に表現の重点があり、「山に―」の場合は、ロープウェーでもヘリコプターでも手段は問わず、山頂にいるという状態を中心に表現している、といった違いが感じられる。ひのぼる②【上がる】魚などが「死ぬ」意の和風間接表現。死を忌む気持ちから、直接それと明言せず、その結果として体が水面に浮くという形態に着目してイメージを置換することで衝撃をやわらげる婉曲表現。乃敢え無くなる・あの世に行く・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永 <10> 眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・Q死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・天に召される・亡くなる・儚くなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死,臨終 **あかるい【明るい】**光の量が十分で物がよく見える状態をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一部屋〉 〈月が―〉〈外はまだ―〉 〈―光が差し込む〉井上靖の『小磐梯』に「戸外は真昼のようにー月夜で、庭先きの南天の木の葉の裏表まで一枚一枚はっきり見える程でした」とある。「―性格」「―・くふるまう」「見通しが―」「経済に―」のように比喩的にも広い意味で使う。「暗い」と対立。乃まばゆい・Qまぶしい **あかん**「だめだ」の意の関西方言。〈こりゃ、 **あかんぼう【赤ん坊】**生まれて間もない子供の意で、た会話から硬い文章まで幅広く使われる日常語。〈―をあやす〉〈一を寝かしつける〉〈一に泣かれて、昨夜はろくに眠っていない〉「赤ちゃん」ほどは感情がこもらず少し客観的なとらえ方。「あかんぼ」とも言い、山本有三の『波』にも「赤んぼは(略)火にあぶったスルメのように、ふんぞり返って」とある。赤子・Q赤ちゃん・嬰児・みどりご **あき【秋】**夏と冬の間にあり、穀物や果実が実り落葉樹が紅葉・黄葉する涼しい季節をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一日和〉〈実りの―〉〈行楽の―〉〈読書の―〉〈芸術の―〉 〈―を思わせる涼しい風〉〈天高く馬肥ゆる―〉 〈―の暮れ〉〈―が深まる〉②収穫の秋で気温の点でもよい季節ながら、厳しい冬に向かうためもあり、淋しい感じが伴う。永井荷風の『雨瀟瀟』に「立つーの俄に肌寒く覚える夕」とある。→オータム **あきあきする【飽(厭)き飽(厭)きする】**すっかり飽きてしまい厭になる意で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈毎日芋を食わされて―〉 〈だらだら長いだけで―〉 丹羽文雄の『脈がらせの年齢』に「生きてたって、何の役にも立たず、当人ももう生きることに―・しているんですけどね」とある。→Q飽きる・倦む・うんざり・倦怠 **あきらか【明らか】**はっきりしていて疑う余地のない意で、会話にも文章にも使われる和語。〈―な間違い〉〈火を見るよりーだ〉〈―に損だ〉〈真相を―にする〉大岡昇平の『俘虜記』に「自分が他人を殺すと想像して感じる嫌悪と、他人が他人を殺すと想像して感じる嫌悪が、ひとしいのを見てもーである」とある。石川淳の『紫苑物語』に「月―な夜、空には光がみち、谷は闇にとざされるころ」とあるように本来の「明るい」意に用いる用法は古風な感じになる。心はっきり・明快・明確・Q明白・明瞭 **あきらめ【諦め】**仕方がないと思いを断ち切る意で、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈―がつく〉〈一が早い〉〈人間―が肝腎だ〉Q断念・諦念 **あきらめる【諦める】**実現を期待した事柄について望みを捨てる意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈潔く―〉〈家庭の事情で進学を―〉〈夢が―・めきれない〉図「これも運命と―」「済んだことは元 <11> に戻せないと―」のように、不本意な事態を仕方なく受け入れる意にも使う。断念・諦念 **あきる【飽(厭)きる】**もう十分だとうんざりする意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈毎日同じ料理が続いていいかげん―〉〈読書に―〉〈熱中してもすぐ―〉大岡昇平の『野火』に「私は既に昨日から二度往復してその道に―・きていた」とある。飽き飽きする・Q飽く・倦、む・うんざり・倦怠 **あく【開く】**閉じた状態から開いた状態に変わる意で、くだけた会話でも文章でも幅広く使われる、日常生活の基本的な和語。〈扉が――〉 〈蓋が――〉〈眠くてなかなか目が―・かない〉の水上龍太郎の『大阪の宿』に「今にも涎のたれそうな口を―・いて、げらげら笑った」とある。漢字表記は「ひらく」と区別がつきにくい。空間を閉じている物が移動して外部または内部と通じるようになる現象をさし、「ひらく」と違って、移動の方向は特に問題にならない。「幕が―」だと幕が上に上がってもよいが、「幕がひらく」の場合は幕の中央から左右に分かれて移動するイメージが強い。Jひらく **あく【飽く】**「飽きる」意で会話にも文章にも使われる古めかしい和語。〈―ことを知らない〉②「あくまで」の「飽く」で、今でも関西や九州の方面でよく聞かれる語形という。その場合は特に古い響きはないと思われる。J飽きる・倦む **あくい【悪意】**他人に対して抱く意地悪な気持ちの意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈人に―を持つ〉〈―に満ちた仕打ち〉「相手の言をーにとる」のように、悪い意味という意味でも使われる。法的な専門語としては、道徳的な善悪とは関係なく、「―の占有」のように、その事実を当人が認識している意に用いるという。「善意」と対立。→悪気 **あくえいきょう【悪影響】**結果として生じる悪い影響をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈周囲に―を及ぼす〉〈健康に―をもたらす〉皺寄せ・そばづえ・とばっちり・巻き添え **あくぎょう【悪行】**悪い行いを意味して、会話にも文章にも使われる古めかしい漢語。〈ーの数々〉〈―の報い〉〈一の限りを尽くす〉Q悪事・凶行 **あくじ【悪事】**法律や人の道に外れた悪い行為の意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈―の数々〉〈―を働く〉〈―に荷担する〉〈―が露見する〉「悪さ」より悪意が強く、「凶行」などまでを含む広い概念。JQ悪行・凶行 **あくしつ【悪質】**たちの悪い意で、いくぶん改まった会話や文章に用いられる漢語。〈―ないたずら〉〈―な犯罪行為〉JQ悪辣・悪い **あくしゅう【悪臭】**不快な臭いをさし、やや改まった会話や文章に用いられる漢語。〈―を放つ〉 〈―が鼻をつく〉〈一が立ちこめる〉②「臭気」に比べ不快感を表に出した感じが強い。宮本輝の『道頓堀川』に「客たちが食べ残して捨てていった汁のかすが、―をはなつ大きなぬかるみ」とある。ごみの臭いや食品の腐敗臭など、物質の変化に伴って生ずるにおいを連想させやすい。JQ異臭・臭気 **あくじょ【悪女】**主として器量の悪い女をさし、いる古風で硬い感じの漢語。〈ーの深情け〉不器量な女の意のほか、他の類語と違い、性格の悪い女にも用いる。ひお <12> かちめんこ・しこめ・醜女・Q醜婦・すべた・ぶす・不美人 **あくせく【齷訳】**心に余裕がなくせかせか行動する意で、改まった会話や文章に用いられる古風な漢語。〈―働いて金を貯める〉〈人生そんなにーすることはない〉田山花袋の『田舎教師』に「名誉を逐って一生を―暮す」とある。DQ営々・汲々・こつこつと・せっせと **アクセサリー**服装につける装飾品の意で、会話にも文章にも使われる外来語。〈―に凝る〉 〈気の利いた―〉の会話では漢語の「装身具」よりよく使う。凸装身具 **あくた【茶】**ごみとして捨ててある切れ端や壊れた物などをさし、もっと細かい「塵。」と一緒に古風な文章などに用いられる和語。〈座―〉単独ではあまり使わない。屑Qごみ・塵・埃 **あくだま【悪玉】**いつもきまって悪いことをする側の中心人物をさし、主にくだけた会話で使われる俗っぽい和語。〈一に仕立てる〉〈ーをやっつける痛快な場面〉『江戸時代の勧善懲悪を説く草双紙の挿絵で、丸く輪郭を示した人の顔に「悪」と書いて悪事を働く役柄を象徴的に表したところから出た語。それと対立するのが「善玉」。→悪党・Q悪人・悪漢・悪悪者 **あくとう【悪党】**悪事を働く人間の意で、主に改まらない会話などに使われる少し古風な漢語。〈名代の―〉〈ーぶりを遺憾なく発揮する〉〈―がはびこる〉井伏鱒二の『山椒魚』に「誤ってすべり落ちれば、そこには山椒魚の―が待っている」とある。「党」とあるように、本来は支配者が禁圧の対象とした武装集団の意で、その後も悪事を働く集団をさしてきたが、現代では個人をさすのが普通。→悪玉・Q悪人・悪漢・悪・悪者 **あくにん【悪人】**さまざまな局面で背徳的な行為や悪事を働く人の意で、会話にも文章にも広く使われる漢語。〈天下を騒がす大―〉〈ーがのさばる〉 〈―を退治する〉〈―を懲らしめる〉「善人」と対立する語。「生まれついての―は居ない」という見方もあるが、この語には、その時その時の立場や局面に限らず一人の人間として総合評価される感じが伴う。→悪玉・悪党・悪漢・悪・悪者 **あくぶん【悪文】**用字・用語・語順・文構成・文章構造などが不適切で、文意が通らなかったり誤解を招いたり情報が曖昧になったりする下手な文章をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈―家として知られる〉 〈何回読んでも意味の通じない―〉文章に限らず、一つ一つの文の評価に使うこともある。なお、表現技術の低劣なためでなく、作家の個性や表現対象の性格などにより必然的に生じた、リズム感とスマートさの欠如した晦渋いな文章をさすこともある。瀧井孝作などはあくの強い独特の文章として知られ、その場合は粗削りの表現が独特の文学効果を果たすため、むしろ特殊な名文として位置づけられる。その点で「駄文」と決定的に違う。駄文 **あくま【悪魔】**人間に災いを与え、あるいは悪の道に誘う魔物をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈ーのしわざ〉〈―の誘惑〉〈―を祓う〉井上靖の『猟銃』に「その一行の文字だけがーのように息づいて、今にも跳びかからんばかりに、こちらを怖ろしい顔をして窺っている」とある。乃 <13> 魔・Q魔物 **あくやく【悪役】**映画や演劇での悪人の役柄をさし、会話にも文章にも使われる漢語。〈―を引き受ける〉 〈―専門の俳優〉一作品に何人も出ることがある。敵役 **あくらつ【悪辣】**たちが悪くあくどい意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈一なやり口〉〈ーな違反〉「悪質」以上にひどい感じがある。→Q悪質・邪悪・悪い **あくるひ【明くる日】**「翌日」の意で、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風でやわらかい感じの和語。〈休みの一〉〈一の朝早く〉芥川龍之介の『鼻』に「一晩寝て―早く眼がさめると」とある。日常語としては「次の日」のほうが一般的な表現。一夜明けた次の日の意から。ひあした・あす・みょうにち・翌日 **あけがた【明け方】**夜が明けかかる時刻をさし、会話でも文章でも使う最もふつうの語。〈ゆうべは―近くまで起きていた〉志賀直哉の『焚火』に「寝込んで了うと、―は随分寒いでしょうよ」とある。♪暁・曙・Q朝ぼらけ・朝まだき・しののめ・払暁・未明・夜明け・黎明 **あけしめ【開け閉め】**「開閉」の意で、会話にも文章にも使われる比較的新しい感じの和語。〈ドアの―〉〈箪笥たんの―〉〈ふたの―〉戸や襖・障子などの建具については「開けたて」のほうが伝統的。JQ開けたて・開閉 **あけすけ【明け透け】**包み隠さず遠慮なく露骨な意で、主に会話に使われる和語。〈―に物を言う〉→有り体・ありのまま・あるがまま・ざっくばらん・率直 **あけたて【開け閉て】**「開閉」の意で、会話にも文章にも使われる和語。〈障子の―〉〈雨戸を―する音〉②箱の蓋はや筆筒の引き出しなどについては使いにくい。建具については伝統的にこの語を用いてきたが、今は「開け閉め」のほうが一般的になりつつあるせいで、古風な響きを感じさせることもある。→Q開け閉め・開閉 **あけはなす【開(明)け放す】**いっぱいに開ける、しばらく開けたままにしておく意で、いくぶん改まった会話や文章に用いられる和語。〈戸を―〉〈窓を一斉に―〉→開け放つ・開放 **あけはなつ【開(明)け放つ】**「開け放す」意で、改まった会話や文章に用いられる古風な和語。〈しばらく窓を―・って部屋の空気を入れ換える〉の夏目漱石の『硝子戸の中』に「硝子戸を―・って、静かな春の光に包まれながら、恍惚と比稿を書き終る」とある。丹開け放す・開放 **あけぼの【曙】**「暁」の終わりごろで、「朝ぼらけ」の前にあたる時間帯をさす古風な和風文章語。〈―の空〉〈―の光〉②詩的な感じもある。「明け仄」の意から。JQ暁・明け方・朝ぼらけ・朝まだき・しののめ・払暁・未明・夜明け・黎明 **あける【開ける】**閉じた状態を開いた状態に変える意で、会話やさほど硬くない文章に広く使われる、日常生活の基本的な和語。同じ日常語の「開く」より、くだけた会話でよく使われる。〈戸を―〉 〈箱を―〉 〈朝早く店を―〉〈口を―〉ご閉じた状態を開放状態に移行させることに注目した表現で、手段や方向はあまり意識されない。安岡章太郎の『ガラスの靴』に「毀れた人形みたいに両眼をポッカリー・けて」とある。ひひらく **あげる【上げる】**下から上へ移動させる意で、くだけた会話 <14> から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈顔を―〉〈友達に―〉 〈給料を―〉・〈棚に―〉の伊藤整の『鳴海仙吉』に「うるんだ、放心したような眼を―・げて私を見た」とある。「君にいい物を―・げよう」のように「与える」意に使う場合は、「遣る②」に比べて謙遜の気持ちが含まれる。「やる」より丁寧な表現。近年、「やる」のぞんざいな感じを嫌って「子供にお年玉を―」「犬にえさを―」「花に水を―」のような用法が広がり問題になっている。そのほか「声を―」「安く―」「効果を―」「スピードをー」など多様な意味合いで使う。「手を―」「例を―」「式を―」「犯人を―」などでは「挙げる」、「凧を―」「花火を―」「てんぷらを―」などでは「揚げる」と書くことが多い。基本的な用法では「下げる」「下ろす」と対立。乃与える・呉れる・差し上げる・授ける・引き上げる・施す・やる② **あご【顎(顔・領)】**口を囲む上下の硬い部分をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈―をなでる〉〈一を出す〉 〈人を―で使う〉②上あごと下あごの総称だが、「ロひげ」と「―ひげ」に分けるように、通常は下あごをさす。夏目漱石の『道草』に「猫のように―の詰った姉」とある。→おとがい **あこがれ【憧憬)れ】**ぜひ自分もと心惹かれる意で、会話にも文章にも使われる和語。〈ーのエーゲ海の旅〉〈一の的〉〈一の先輩〉〈―を抱く〉の望みがかなうあてがないときによく使うブラスイメージの語。憧憬 **あさ【朝】**日の出から正午までの時間、特にその前半をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈―の爽やかな空気〉〈すがすがしい―を迎え る〉〈一早く目を覚ます〉 〈一早くから騒がしい〉岡本かの子の『やがて五月に』に「晩春の花の夢をまだつけている新果のような五月のある―であった」とある。「昼」「晩」と対立する場合と、「夕」または「晩」と対立する場合とがある。JQ朝方・朝っぱら・朝のうち **あさい【浅い】**周囲・表面・入り口から奥や底までの距離が短い意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる基本的な和語。〈一川〉〈底が―〉 〈一鍋〉 〈帽子を―・くかぶる〉夏目漱石の『坊っちゃん』に「川の流れは―けれども早いから」とある。「傷が―」「歴史が―」「眠りが―」「経験が―」「考えがー」のように、程度が軽い意にも使う。「―緑」のように「薄い」意に使う用法は古風。「日が―」「春もまだー」のような時間的な用法はいくぶん文学的。「深い」と対立。淡い・Q薄い **あさがた【朝方】**朝の早いうちをさし、会話やさほど硬くない文章に使われる、いくぶん古風な和語。〈―に雨がぱらつく〉具体的には日の出から二、三時間程度を連想しやすい。「夕方」と対立。JQ朝・朝っぱら・朝のうち **あさからぬ【浅からぬ】**「深い」に近い意味合いで、いくぶん優雅な感じの慣用的な文語的表現。〈——縁〉→深い **あざける【嘲る】**相手をせせら笑うように小ばかにする意で、会話にも文章にも使われる和語。〈人の失敗を―〉の態度や口調の形容に使う例も多い。JQあざわらう・せせら笑う・嘲笑・嘲弄・冷笑 **あさごはん【朝御飯】**朝の食事の意で、会話や軽い文章に使 <15> われる、少し丁寧な日常語。〈――を簡単に済ませる〉「御飯」とあるが、パン食にも使う。→朝はん・朝めし・朝食 **あさって【明後日】**明日の次の日の意で、会話やさほど硬くない文章に使われる日常の和語。〈―まで待つ〉〈―までには着くだろう〉「―の方を向く」のように、まるで見当違いの方角をさす古くて俗な用法もある。「おととい」と対立。漢字表記は「みょうごにち」と読まれやすい。乃明後日 **あさっぱら【朝っぱら】**朝早くの意で、主として会話に使われる、やや俗っぽい和語。〈こんな―から仕事が舞い込む〉〈―から電話が鳴りっぱなしだ〉②こんな早朝にはふさわしくないという意外感が伴う。「朝腹」の転。→朝・朝方・朝のうち **あざな【字】**昔、文人や学者などが実名以外につけた別名をさし、会話にも文章にも使われる古めかしい和語。〈孔子は「名を丘、―を仲尼誌という〉中国で男が成人後につけた習慣をまねたものという。愛称・Qあだな・ニックネーム **あさのうち【朝の内】**午前中の比較的早いほうをさし、会話やさほど硬くない文章に用いられる和語。〈―雲が多いが次第に晴れてくる〉具体的には日の出から三時間程度を連想しやすい。→Q朝・朝方・朝っぱら **あさはか【浅はか】**思慮の足りない意で、会話やさほど硬くない文章に使われる和語。〈―な考え〉 〈―にもうまく話に乗せられる〉福原麟太郎の『四十歳の歌』に「―な人生観を赤いネクタイに結びつけて」とある。軽はずみ・軽率・Q軽薄・浮薄 **あさはん【朝飯】**朝の食事の意で、くだけた会話に使われる比較的新しい俗っぽい表現。〈ーもまだだ〉②バン食をも含む。Q朝御飯・朝めし・朝食 **あさぼらけ【朝ぼらけ】**夜明けの雲が薄赤くなりかける時刻をさす、古めかしくやや詩的な和風表現。〈―の雲〉→暁・Q明け方・曙・朝まだき・しののめ・払暁・未明・夜明け、黎明體 **あさましい【浅ましい】**品性が下劣でみじめで情けない意で、会話にも文章にも使われる、いくぶん古風な和語。〈―姿〉〈一態度〉〈考え〉〈―遺産相続争い〉②呆れ果てたような響きを伴いやすい。→意地汚い・卑しい・Qさもしい **あさまだき【朝まだき】**夜が明けきらずまだ薄暗い時刻をさす、古語的な和風表現。②国木田独歩の『武蔵野』に「―霧の晴れぬ間に家を出で野を歩み林を訪う」とある。暁・Q明け方・曙・朝ぼらけ・しののめ・払暁・未明・夜明け・黎明 **あざむく【欺く】**相手の期待や信頼を裏切ってだます意で、改まった会話や文章に用いられる硬い感じの和語。〈人を―行為〉〈敵を―手段〉◎夏目漱石の『こころ』に「自分が―・かれた返報に、残酷な復讐をするようになる」とある。「昼を―」「雪を―」のように、思い違いさせるほど似ている意にも使う。↓いつわる・かたる・担ぐ・ごまかす・たぶらかす・だまくらかす・Qだます・ちょろまかす **あさめし【朝飯】**朝の食事の意で、主にくだけた会話や軽い文章に主として男性の使う、ぞんざいでくつろいだ感じの日常の和語。〈―に納豆を食う〉 〈―前に一仕事済ませる〉②古くは今よりぞんざいな感じが薄かった。高田保の『ホテル』に「起き出してから喰うのがーだと信じている私は、―を喰うために起き出すという気持には仲々なれない」と <16> あり、いつもホテルで朝食を取りそこなう背景を語っている。→朝御飯・朝はん・朝食 **あざやか【鮮やか】**形や色などがはっきりしている意で、会話にも文章にも使われる和語。〈―な色〉〈一に写っている〉大仏次郎の『帰郷』に「(スコールの後の町は)洗い出されたように目に―な色彩を一面に燃立たせていた」とある。「―な身のこなし」「手並みが―だ」「―にやってのける」のように、きわめてみごとの意でも使う。ひくっきり・Q鮮明 **あざわらう【嘲笑う/嘲う】**あざけって笑う意で、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈他人の失態を―〉「わらう」に「噬」の字をあてて、この意味を出すこともある。→Qせせら笑う・嘲笑・冷笑 **あし【足】**股から足の指まで、または、足首から下の部分をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈一の裏〉〈大きな―〉〈―が速い〉〈―には自信がある〉 〈―が弱る〉 〈―の向くまま〉〈 〈―が弱る〉〈―の向くまま〉 〈―を運ぶ〉〈―が棒になる〉の永井龍男の『往来』に「靴下も足袋も履かず、汚れた―をしていた」とある。尾崎一雄の『まぼろしの記』に「私の―は、ふくらはぎは勿論、太腿も、膝の骨より細くなっていた」とあるように、足首から先の部分でなく、脚部全体をさすことを明確にするために「脚が太い」「すらりと長い脚」「テーブルの脚」と書き、人間以外の哺乳類の場合に特に「肢」と書く場合もある。→あんよ **あし【葦/芦】**水辺に群生する、すすきに似たイネ科の多年草をさし、会話でも文章でも幅広く使われる和語。〈水辺の―が風にそよぐ〉②長塚節の『土』に「彼らは沼辺の―のように集まれば互いにただざわざわと騒ぐ」という比喩表現が出る。かつては、生え始めから生育段階に応じて順に「葭」「蘆(芦)」「葦」という漢字を使い分けたという。「アシ」の音が「悪し」に通じるため、逆の「よし」と言い換える例もある。ひよし **あじ【味】**飲み物や食べ物が舌に与える味覚上の特徴の意で、くだけた会話から硬い文章まで広く使える日常の基本的な和語。〈―が濃い〉 〈―をつける〉〈―を見る〉 〈なかなか―がある〉中谷宇吉郎は『立春の卵』を「立春の卵の話は、人類の盲点の存在を示す一例と考えると、なかなか―のある話である」として結ぶ。このように、比喩的に面白み・趣の意を表す抽象的な用法もある。JQ味わい・風味 **アしきしゅうきゅう【ア式蹴球】**「サッカー」の別称。主として文章中に用いられ、会話ではほとんど使わない。②「7」はアソシエーションの略。JQサッカー・蹴球・フットボール **あした【明日】**「あす」の意。「あす」より口頭語的で、くだけた日常会話でよく用いられる和語。硬い文章にはふさわしくない。〈一になればわかるさ〉 〈一が待ち遠しいな〉〈一天気になあれ〉『夏目漱石の『坊っちゃん』に「―勝つ。―勝てなければ、あさって勝つ」とある。漢字表記は、多く「みょうにち」と読まれ、さもなければ「あす」と読まれるため、「あした」と読ませたい場合は振り仮名が必要で、仮名書きが無難。古語では「朝」「翌朝」をさす。JQあす・みょうにち **あしだ【足駄】**高い歯を入れた下駄をさし、会話にも文章に <17> も使われる古風な感じの日常語。〈雨の中を―で急ぐ〉〈腰手拭に―履きのバンカラ学生〉幸田文の『おとうと』に「歯のへった歩きにくい―で、駆けるように砂利道を行く」とある。→下駄 **あじみ【味見】**調理中に味加減を調べるためにごく少量口に含むことをさして、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈料理の―〉JQ試食・試し食い **あじわい【味わい】**プラスイメージの風味や趣に対して用いる、やや文章語寄りの日常的な和語。〈深い―〉〈何ともいえない―〉林芙美子の『茶色の目』に「まるで煮出昆布のようにーがあった」とある。芸術作品など食品の味以外の趣をさす例が多い。Q味・風味 **あす【明日】**「きょう」の次の日をさす。「みょうにち」ほどは改まらず、会話的な「あした」よりは少し改まった感じの語。〈―の空模様〉〈きょう―に迫る〉 〈―までには必ず仕上げます〉②ごく親しい間柄でのうちとけた会話で使うと、若干取り澄ました感じに響くこともある。夏目漱石の『坊っちゃん』に「今日見て、一移って、あさってから学校へ行けば極りがいい」とある。「―はわが身」「―の日本をしょって立つ」のように抽象的な意味合いで用いる場合もある。そのような例では「みょうにち」は不適切で、近年時折見られる「あした」も伝統的にぴったりしない。漢字表記は「みょうにち」と読まれやすく、確実に「あす」と読ませたい場合は仮名書きが無難。JQあした・みょうにち **あずける【預ける】**他人に保管してもらう意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈荷物を―〉〈銀行に金を―〉 〈託児所に子供を―〉「壁に上体を―」のように、もたせかける意にも、「委員長に判断を―」のように、任せるの意にも使う。↓託する **あすこ**「あそこ」の意で、くだけた会話に使われる俗っぽい語形。〈ーが怪しい〉 〈―は駄目だ〉→あそこ・かしこ **あせだく【汗だく】**汗でひどく濡れる意で、会話にも文章にも使われる和語。〈弁解に追われーになる)大量の汗で濡れた人体に注目した表現。「汗だくだく」の略。汗まみれ・汗みずく・汗みどろ **あせまみれ【汗塗れ】**多くの汗で汚れた状態をさし、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈―の顔〉〈―の下着〉②身につけている衣類までも汗でひどく濡れる不快感に注目していうこともある。汗だく・Q汗みずく・汗みどろ **あせみずく【汗水漬く】**水に浸ったように汗びっしょりになる意で、主に文章に用いられる、やや古風な和語。〈―になって奮闘する〉→汗だく・Q汗まみれ・汗みどろ **あせみどろ【汗みどろ】**汗みずくと同義で、主に文章に用いられる古風な和語。〈真夏の重労働に―になる〉の通常、衣類については用いない。汗だく・Q汗まみれ・汗みずく **あせり【焦り】**心が先走って平静さを失う意で、会話にも文章にも使われる和語。〈試合の終盤で―が出る〉〈締切が近づいて―の色が見える〉室生犀星の『舌を噛み切った女』に「手綱を取っている手の平の汗までわかるようなー」とある。焦慮 **あせる【焦る】**思いどおりに事が運ばずに落ち着きを失いいらつく意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われ <18> る日常の基本的な和語。〈気ばかり―〉 〈勝ちを―〉 〈功を―〉〈相手が意外に手ごわくて―〉 〈いい手が見つからず―〉〈―・って間違える〉②石原慎太郎の『行為と死』に「自分の行方のつかめぬまま、彼はただ自分に向って!っていた」とある。「急なく」に比べ、時間に追われる感じは薄く、うまく行かないためにいらいらする感じが強い。→急く **あせる【褪せる】**時間が経って色が薄くなる意で、会話でも文章でも幅広く使われる和語。〈日向に干すと色が―〉〈長く着ているので少し柄が―・せてきた〉完全に「褪める」と言えるまでの途中の段階に着目した褪色いしの表現。何らかの事情で急に「褪める」こともありそうだが、「褪せる」にはかなりの時間の経過が必要な感じがある。小沼丹の『マロニエの葉』に「日が経つにつれて緑色は次第に色―・せて」とある。乃褪める **あぜん【唖然】**驚き呆れてものも言えない意で、改まった会話や文章に用いられる漢語。〈あまりのことに一同―とする〉〈―として顔を見合わす〉「呆然び」より瞬間的な感じがある。JQ呆然,茫然 **あそこ【彼処(所)】**自分や相手から遠い場所、または、話し手も聞き手も知っている場所を漠然とさし、会話や硬くない文章に使われる日常の基本的な和語。〈―にある〉〈―はまだ行ったことがない〉「正直―までやれるとは思わなかった」のように評価できる段階・程度をさす抽象的な用法もある。また、人前で口にしたくない刑務所・売春宿・陰部などの婉曲表現ともなる。JQあすこ・かしこ **あそびにん【遊び人】**仕事も持たずにぶらぶら遊んでいる人をさす古風な用語。〈一見―風の男〉「ブレーボーイ」に比べ、定職を持たない点が強調される。→プレーボーイ **あそぶ【遊ぶ】**自分のしたいことをして楽しむ意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈仲良く―〉〈子供と―〉 〈金が欲しい〉大人が「―・びに来いよ」と言うときは、単に仕事や用事を離れてのんびりする意味合いが強い。渋谷実監督の映画『好人好日』で笠智衆の扮する文化勲章を受賞する数学者が、訪問客として娘の恋人が「―・びに来ました」と挨拶するのに「何して―?」と応じる場面は、大学者の世間音痴ぶりで笑いを誘う。「卒業しても家でぶらぶら―・んでいる」「―・んで暮らす」のように、仕事も勉強もしないで無駄に時間を費やす意にも使う。「紅灯の巷に―」のように、特に酒色にふける意に使う用法は古風。「オックスフォードにー」のように「留学する」意、「バリにー」のように「観光する」意に用いる用法は主に文章に用い、古風で改まった感じでいくぶん雅語的に響く。「働く」と対立。DQ娯楽・趣味・たわむれる・道楽 **あたい【価】**値段の意で、主に丁寧な会話に使われる古風な和語。〈商品に―をつける〉 〈適正なーで取引する〉 〈一はいかほどでしょう〉②「一読の―がある」のように価値の意で使う場合や、数学で条件に当てはまる数値を意味する場合は「値」と書く。値・価格・価額・値・Q値段 **あたい【値】**値打ちや数値の意味で、改まった会話や文章に用いる和語。〈一読の―がある名著〉〈Xの―を求めよ〉「春宵一刻——千金」の場合は本来「直」と書く。Q価価 <19> 値・値打ち **あたえる【与える】**その所有権を相手に移す意で、いくぶん改まった会話や文章に用いられる硬い感じの和語。ヘペットにえさを―〉〈子供に小遣いを―〉〈必要な資金を―〉〈権利を―〉②日常生活では、上位者から下位者に渡す感じがあるが、上下関係の配慮を含む「差し上げる」「上げる」「やる」に対し、所有権の移転自体を客観的に表す場合にも使うため、「仕事を―」「利益を―」「損害を―」「ショックを―」「機会を―」のように抽象的な対象に用いることもできる。「授ける」より個人的な感じが薄く、中立的な総称ともなる。そのため、「市町村に損害を―」「業界に不安を―」のように、結果としてある状態を招く意にも使う。马上げる・呉れる・差し上げる・Q授ける・施す・やる② **あたかも【恰(宛)も】**まさにそっくりの意で主として文章に用いられる古めかしい和語。〈一夢の如し〉 〈町は―死に絶えたように森閑としている〉三島由紀夫の『金閣寺』に「叡山の頂きは突兀っとしていたが、その裾のひろがりは限りなく、―一つの主題の余韻が、いつまでも鳴りひびいていたようであった」とある。「時―春」のように、ちょうどその時という意味でも用い、その場合はさらに古い感じに響く。明治期には「あだかも」とも。Qさながら・丁度・まるで **あたくし**上品な女性が「わたくし」をやわらかくちょっと崩した感じに発音する和語の語形。〈一何も存じません〉〈ーでおよろしかったら〉小津安二郎監督の映画『お早よう』に、三宅邦子の演ずる林民子がこの語を使うのを、上品ぶっていると近所の主婦連中が批判する場面がある。井伏鱒二の『珍品堂主人』にも、茶の師匠で顧問格として料亭に入った蘭々女というしたたかな女性が、上品ぶって「―が悪・うございました」と心にもなく頭を下げる場面が出る。繊細な言語感覚の名文家として定評のある永井龍男は、都会人の甘えと教養をやわらかくしたようなこの語が東京の女性の会話から消えかかっているのを惜しんだ。そんな場合に「わたくし」で代用するとやぼったくなり都会的な感じが失われるのだという。乃あたし・おいら・俺・僕・わし・Qわたくし・わたし **あたし**くだけた会話で、女の「わたし」の代わりに用いられる和語。一部の芸人などを除き、一般に男は用いない。〈ねえ、―、わかる?〉〈一って、ばかね〉臼井伏鱒二の『貸間あり』に「―いろいろ考えたんですけれど」とある。乃あたくし・おいら・俺・僕・わし・わたくし・Qわたし **あたたかい【温かい】**冷たくも熱くもない心地よい物の温度の感じをさし、会話でも文章でも広く使われる日常生活の基本的な和語。〈ースープ〉 〈一肌〉 〈一言葉〉〈一もてなし〉〈一心〉有吉佐和子の『水と宝石』に「ジャーの飯が―のを確かめると、掌を叮寧に洗って塩をつけた」とある。くだけた会話では「あったかい」となることが多い。「冷たい」の反対の意味合いで主に食べ物や気持ちについて使われる。JQ暖かい・温暖 **あたたかい【暖かい】**寒くも暑くもない快適な気温の感じをさし、会話でも文章でも広く使われる日常生活の基本的な和語。〈一部屋〉 〈一気候〉〈日ざしがぽかぽかと―〉〈!! <20> くして寝る〉〈一色〉②阿川佐和子の『走って、ころんで、さあ大変」に「南風が肌にやさしく日射しは―・く、街中ではTシャツ姿の人をたくさん見かけた」とある。くだけた会話では「あったかい」となることが多い。「寒い」の反対の意味合いで気温などによく使われる。JQ温かい・温暖 **あたたかさ【暖かさ】**気温などが暖かく感じられることをさして、会話にも文章にも使われる日常の和語。〈連日の―に蕾がふくらむ〉 〈しばらく―が続く〉実際の温度についての感じを言う例が多い。JQ温かみ・ぬくもり **あたたかみ【温かみ】**心地よい温かさ、人をほのぼのと幸せな気分に誘う思いやりをさし、会話でも文章でも使う日常の和語。〈冷め切らずほんのりと―を残している〉「どことなく―の感じられる町」「―のある人柄」「家庭の―が恋しい」のように、心の和むような好ましさや懐かしさをさす比喩的拡大用法の例も多い。「温かさ」以上にしっとりとした感じがある。→Q暖かさ・ぬくもり **アタック**攻撃・挑戦の意で、主に会話に使われる外来語。〈敵に―をかける〉〈再度の―で登頂に成功する〉〈あえて難関に―を試みる〉「すごい美人に―する」など、目標に猛烈に働きかける意の俗な用法もある。Jチャレンジ・挑戦 **あだっぽい【仇(婀娜)っぽい】**女の姿や物腰やしぐさなどが色っぽくなまめかしい意で、会話にも文章にも使われる、古めかしく少し俗っぽい和語。〈―着物姿〉〈―・くしなだれかかる〉井伏鱒二の『珍品堂主人』に「色けに欠けている。ことに後姿に仇っぽさが乏しくなる」とある。それ相当の年齢が必要で、ごく若い女には使わない。→婀娜な・色っぽい・Q艶っぽい・なまめかしい・妖艶 **あだな【婀娜な】**「あだっぽい」の意で、会話にも文章にも使われるいかにも古めかしい表現。〈——姿〉〈——年増〉→あだっぽい・Q色っぽい・艶っぽい・なまめかしい・妖艶 **あだな【渾(綽・仇)名】**本名とは別に、その人の姓名を簡略化したり特徴をとらえたりしてつけた名前。〈―をつける〉〈―で呼ぶ〉②親しみまたは軽蔑の感情が伴いやすい。夏目漱石の『坊っちゃん』に「みんなに―をつけてやった。校長は狸、教頭は赤シャツ、英語の教師はうらなり、数学は山嵐、画学はのだいこ」とあり、軽蔑の響きが目立つ。愛称・あざな・Qニックネーム **あたふた**あわてふためく意で、主として改まらない会話に使われる和語。〈突然の来客に―する〉〈―と駆けつける〉せかせか・そそくさ・そわそわ **あたま【頭】**人間や動物の頭により先の部分をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一のてっぺん〉 〈一が大きい〉臼井伏鱒二の『さざなみ軍記』に「―の髪のあるべき部分がつるつるに禿げ、ねじり鉢巻をしていたと見える跡だけ皮膚が正常に残って」とあり、檀一雄の『花筐』に「畸形のように巨きなー」とある。頭部 脳の活動をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈ーがいい〉〈―がよくまわる〉〈ぼうっとして―が働かない〉寺田寅彦は『科学者とあたま』で「科学者は―が悪くなければいけない」と主張した。→Q頭脳・脳・脳髄・脳味噌・脳裏 **あたまかず【頭数】**何かをするための人数の意で、会話や軽 <21> い文章に使われる和語。〈―をそろえる〉 〈―が不足だ〉野球やマージャンなど一定の人数が必要な場面でよく用い、学生数や乗客数のような一般的な人数については使わない。马人数 **あたまきん【頭金】**高額にわたる売買契約の際に分割払いの初回分として支払う代金の意で、会話にも文章にも使われる表現。〈これを―として新築の家を購入する〉JQ内金・手金・手付け・手付金 **あたまごなし【頭ごなし】**相手の考えや気持ちへの配慮がなく上から一方的に押さえつけるような態度の意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈―にどなりつける〉 〈ーに決め付ける〉→横柄・Q高圧的,尊大・高飛車 **あたらしい【新しい】**できてから時間が経っていない、今までと違う、といった意味合いで、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の最も基本的な和語。〈一服〉〈一品物〉〈一家〉〈―・く始める〉 〈考え方が―〉 〈―感覚〉〈記憶に―〉小津安二郎監督は映画『宗方姉妹に』で田中絹代の扮する節子の口を借りて「ほんとにーことは、いつまでたっても古くならないこと」という持論を展開した。「新た」に比べ、具体物にも抽象概念にも広く使える。「古い」と対立。→新た・斬新 **あたり【辺り】**その付近やそこにいる人々をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈あの―〉〈―を見まわす〉〈――が寝静まる〉 〈―に気兼ねをする〉〈一の様子をうかがう〉高樹のぶ子の『その細道』に「―の音をすべて持ち去られたように静かになった」とあ、る。周囲・周辺 **あたりまえ【当たり前】**道理的に当然そうすべきだの意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈迷惑をかけたら謝罪するのが―だ〉〈ーのことをしたまでだ〉〈冬は寒いのが―だ〉の夏目漱石の『坊っちゃん』に「東京はよい所で御座いましょうと云ったから―だと答えてやった」とある。「―の服装」のようにごくありふれたの意にも、「―の結果になろ」のように当然予想されたとおりの意にも使われる。「当然」を誤って「当前」と書いたのを訓読みしてできた俗っぽい語形という。当然 **あたる【当たる】**対象と一瞬接触する、「対する」意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の生活和語。〈―を幸いなぎ倒す〉〈雨に―〉〈焚き〈ポールが背中に―〉火に―〉〈つらく―) ②他の物体との接触に伴う衝撃の強い「ぶつかる」に比べ、この語は衝撃の大小より接触の有無に重点を置いた表現。志賀直哉の『城の崎にて』の中に、蝶螈いを驚かして水に入れようと思い、まったく狙わずに小石を投げる場面があり、「自分はそれが―事などは全く考えなかった」とある。それが偶然に当たって蠑螈は死んでしまうのだが、ここにもし「ぶつかる」という語を用いたら、自分と関係なくどこかから飛んで来た石による偶然の事故のような感じに変わるだろう。ぶつかる **あちこち【彼方此方】**「あちらこちら」の意で、主にくだけた会話に使われる和語。〈―うろつく〉 〈一探し回る〉JQあちらこちら・ここかしこ・そこかしこ **あちら【彼方】**●話し手・聞き手から離れた場所をさし、会話 <22> や硬くない文章に使われる和語。〈一の席〉〈―からお出で、になる〉〈―に見えますのは〉「―の生活に慣れている」の形でそれとなく外国をにおわせる用法もある。「こちら」と対立。あっち・Q向こう ②相手方の意で、会話や硬くない文章に使われる和語。〈―のお気持ちもあるからすぐには決められない〉②「向こう」より少し丁寧な感じがある。「こちら」と対立。→あっち・Q先方・向こう② **あちらこちら【彼方此方】**いろいろな場所の意で、会話にも文章にも使われる和語。〈―歩き回る〉 〈一問い合わせる〉◎類語の中で最も標準的。JQあちこち・ここかしこ・そこかしこ **あつあつ【熱熱】**飲食物などがきわめて高温である意で、主に会話に使われる和語。〈―のうどんをかき込む〉→熱い **あつい【暑い】**不快なほど気温が高い意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈―・くて眠れない〉 〈焼け付くように―真夏の日ざし〉庄野潤三の『秋風と二人の男』に「家を出る時には、空に太陽が照っていた。そうして、確かに―・かった」とある。「寒い」と対立。熱い・暑さ・蒸し暑い **あつい【厚い】**厚みがある、心がこもっているといった意味合いで、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一本〉〈―雲に覆われる〉〈層が―〉〈パンを―・く切る〉 〈信仰心が―〉 〈人情が―〉〈―・く御礼申し上げます〉島木健作の『生活の探求』に「はだけた胸はおどろくほど―・くがっしりしてはいる」とある。心情などが深く細やかである意で用いる場合、その点を特に強める意図で「篤い」と書くこともある。ひ篤い **あつい【篤い】**心のこもったの意で、主として改まった文章に用いる和語。〈―もてなし〉 〈―志〉「厚い」とも書くが、この表記のほうが心のこもった感じが強い。「―病の床に臥す」のように病気が重いという意味の場合はもっぱらこの漢字を用いる。厚い **あつい【熱い】**物の温度が通常より著しく高い意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈一湯に入る〉 〈一番茶をすする〉〈額が―〉〈目頭が―・くなる〉阿部昭の『海の子』に「―砂に首まで埋まっていると、しまいにはなんだかうつらうつらしてくる」とある。一般に「暑い」より高温。「冷たい」と対立。Ja熱々・暑い **あつかう【扱う】**物事を担当・操作・処理・対応する意で、会話にも文章にも広く使われる和語。〈危険物を―〉〈もっぱら衣料品を―〉〈年金関係の書類を―〉 〈丁寧に―〉「取り扱う」とほぼ同義であるが、「一人前の大人として―」のように待遇する意では「取り扱う」は使いにくい。→取り扱う **あつかましい【厚かましい】**恥じらいを忘れ相手の迷惑も顧みず遠慮のない意で、くだけた会話から文章まで広く使われる日常の和語。〈態度が―〉 〈―お願いですが〉〈―・くそのまま居座る〉川端康成の『雪国』に「男の厚かましさをさらけ出しているだけなのに」とある。JQ厚顔無恥・図々しい・鉄面皮・恥曝し・恥知らず・破廉恥 **あっかん【悪漢】**悪事を働く乱暴な男の意で、主として文章中に使われる古風な漢語。〈―と格闘する〉〈―に立ち向か <23> う〉梶井基次郎の『檸檬』に「黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛て来た奇怪な―」とある。「悪人」や「悪者」がそのような人間一般をさすのとは対照的に、この語は特定の個人を問題にする。ピカレスクロマンが「―小説」と訳されるように、この語は結婚詐欺や不倫を繰り返すタイプの悪い男のイメージからは遠く、札付きのならず者などを連想させやすい。悪玉・Q悪党・悪人・悪・悪者 **あっき【悪鬼】**人間に害悪を及ぼす鬼の意で、主として文章に用いられる漢語。〈ーのしわざ〉の石川淳の『紫苑物語』に「―はぬっと首を突き出して、四方のけしきを見わたしていた」とある。乃鬼 **あっけない【呆気無い】**予想や期待より意外に短かったり手応えがなかったり簡単だったりして、張り合いのない様子をさし、会話や硬くない文章に使われる和語。〈―結果に終わる〉〈一幕切れ〉 〈―・くけりがつく〉 りがつく〉②庄野潤三の『秋風と二人の男』に「(こわれた入れ歯が)どこかへ消えて無くなってしまうのかと思ったら、何だか―・くて」とある。「はかない」に比べ、現象よりものごとによく使う傾向がある。♪はかない・物足りない **あっけらかん**開けっ広げでものにこだわらない意で、もっぱらくだけた会話に使われる俗語。〈もともと―とした性格だ〉〈当人はーとしている〉②「ただ―と眺めているだけ」のように、口を開けてぼんやりしている意にも使う。↓けろり **あっこう【悪口】**「わるくち」の意で改まった会話や文章に用いられる古風で硬い漢語。〈聞き捨てならない―雑言〉を吐く〉〈―を浴びせる〉 J陰口・Qわるくち **あつさ【厚さ】**物体の一つの面から反対の面までの直線距離をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈壁の―を測る〉〈十センチに近い―の辞典〉〈大根を―三センチ程度に切る〉「厚み」に比べ、数字で計測できる客観的な存在としてとらえた感じがあり、「人間としてのー」といった比喩的用法には適さない。厚み **あつさ【暑さ】**気温の高い不快な感じをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈真夏の焼けるような―〉 壺井栄の『母のない子と子のない母と』に「じりじり照りつける八月の―は、前夜の大雨にもかかわらず、焼けた炎のあつさもくわわって、からだじゅう、汗がしたたりました」とある。「寒さ」と対立。暑い・蒸し暑い **あっさり**淡泊な意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈一した態度〉〈一諦める〉 〈一断られる〉②ごてごてした、濃厚な状態の反対。「―した料理」は鮑の刺身や白身の焼き魚など、「―した化粧」は口紅や白粉試を厚く塗りたくっていない軽い化粧、「―した性格の人」は熱中するほど対象に深く入り込まず、物に対するこだわりの少ない人物を連想させる。ひさっぱり **あっせん【斡旋】**両者の間に立って紹介したりよい関係をつくったりするために尽力する意で、会話にも文章にも使われる漢語。〈仕事を―する〉〈就職先の―を依頼する〉物や人の紹介の際に使うことが多いが、労働争議の解決に際して調停のような意味合いで使うこともある。→周旋。 <24> **あっち**「あちら」のぞんざいな形で、くだけた会話に使われる。〈一からやって来る〉〈一にちっちゃく見える〉〈ーがどう思おうとかまやしない〉→あちら・先方・向こう **あっというま【あっと言う間】**「アッ」と叫ぶのに要するほどのごく短い時間をさし、会話や軽い文章に使われる日常の表現。〈一の出来事〉 〈―に終わる〉所要時間の短さを強調するための慣用的な誇張表現で、「―に短編を書き上げる」のように、実際にはある程度長い時間に相当する例もある。一瞬・瞬間・瞬時・Q瞬く間 **あつぼったい【厚ぼったい】**「厚い」に近い意の和語。「厚い」より重さと不快感が強く、会話的。〈——唇〉→厚い **あつまる【集まる】**生きものや物体や抽象体がある場所に集中する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈客が大勢―〉〈資金が―〉〈寄付が―〉〈情報が―〉 〈世間の注目が―〉「散らばる」「散ずる」と対立。→集合・たかる・Qつどう・群がる・群れる **あつみ【厚み】**厚さを感じさせる意で、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈かなりーのある本〉〈一のあるしっかりした板〉「板の―」にしろ「胸の―」にしろ、客観的な感じの「厚さ」に比べ、計測された数値だけでなく、その厚いものが与える頑丈さ・頼もしさ・信頼感といった感触や雰囲気を含めてとらえた主観性の強い語。「人間としての―を増す」のように、味わいのある重厚さを意味する用法が生まれるのもそのためである。↓厚さ **あつらえむき【誂え向き】**ぴったり合っている意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈―の仕事が舞い込む〉〈―の相手が見つかる〉〈出発には―の風だ〉②まるで注文して作らせたように偶然希望どおりになっている意から。しばしば「おー」の形で使う。ふうってつけ **あつらえる【誂える】**注文して作らせる意で、会話にも文章にも使われる、やや古風な和語。〈春の訪問着を―〉〈特別料理を―〉永井荷風の『ひかげの花』に「天どんを―・えて昼飯をすます」とある。「注文」や「オーダー」に比べ、特別なものというニュアンスが強い。注文 **あつれき【軋轢】**互いの仲が悪くなる意で、改まった会話や文章に用いられる硬い漢語。〈嫁と姑の―〉〈両者の間に―が生ずる〉②原義は、車輪のきしる意。→仲違い・Q反目・不仲・不和 **あてこすり【当て擦り】**悪口や非難を露骨に表現せず、他の何かにかこつけてそれとなく感じ取らせる意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈―を言う〉〈―としか聞こえない〉「あてつけ」よりさらに婉曲』で皮肉っぽい感じがある。あてつけ・Q皮肉 **あてこむ【当て込む】**好ましい結果を期待し、それを当てにする意で、会話やさほど改まらない文章に使われる和語。〈多額の収入を―〉 〈劇場の帰り客を―・んでタクシーが並ぶ〉「見込む」よりも楽観的。見込む **あてつけ【当て付け】**はっきりと相手を非難したり不満をぶつけたりする代わりに、他のことにかこつけて間接的にそういう気持ちを示す意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈ーがましい〉〈痛烈な―〉 〈上司への―〉「あてこすり」 <25> と違い、言語表現だけでなく態度や行為で示す場合も含まれる。ことばの場合は「あてこすり」ほど遠まわしではない感じがある。JQあてこすり・皮肉 **あてはまる【当て嵌まる】**物事がある条件に適合する意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる和語。〈ちょうどこれに―〉〈まさにその形容がー〉〈批評がびったり―〉〈まさにこのケースに―〉該当・はまる **あてる【当てる】**ねらったものにぶつける、予想などを的中させるの意で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈日に―〉 〈手を―〉〈クイズで答えを―〉〈生徒に―〉〈事業を興して一発―〉夏目漱石の『草枕』に「股引の膝頭に継布を―」とある。弓で矢を的に命中させるという意味では特に「中てる」と書くこともある。「宛てる」「充てる」の代わりを含め、広い意味で使われる。→Q充てる・宛てる **あてる【宛てる】**「あてはめる」に近い意味で、主として改まった会話や文章に用いる和語。〈コーヒーに珈琲という漢字を―〉〈帰省先に―・てて手紙を出す〉この漢字が改定前の常用漢字表になかったため、「当てる」で代用していたが、今後は書き分ける例が増えるはずである。JQ当てる・充てる **あてる【充てる】**「割り当てる」に近い意味で、会話でも文章でも使われる和語。〈余暇を趣味の時間に――〉〈銀行から融資を受けて運転資金に―〉 〈余剰人員を警備要員に―〉「当てる」と書くと意味が広いため、「充てる」のほうが的確に伝わりやすい。Q当てる・宛てる **あと【後】**「後ろ」「のち」に近い意味で、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の最も基本的な和語。〈―でやる〉〈―で面倒なことになる〉 〈―を引き受ける〉〈故郷を―にする〉 〈ここまで来たら―へは引けない〉四小沼丹の『喧嘩』に「女の子は素早く親分のバンドを拾い上げて、親分の一を追って行った」とある。「―を追う」の場合、単にある人を追いかけるという意味であればこの「後」を用い、そこを通った証拠などを探しながら経路をたどるような意味合いでは「跡」を用いる。「うしろ」や「のち」と紛らわしい場合は仮名書きが無難。「戦いのー」のように「跡」と紛らわしい場合は漢字表記のほうが明確。Q跡・痕 **あと【痕】**物事の「痕跡」の意で、会話でも文章でも使われる和語。〈弾の―〉〈血の―〉〈墨の―〉の広範囲にわたり、また輪郭が必ずしも明確でない「跡」に対し、具体的な痕跡の場合に用いられる。「弾痕」「血痕」「墨痕」という漢語が背景となって、いかにも適切な用字という印象を与えやすい。後・跡・痕跡 **あと【跡(迹)】**過去に何かがあったことを示すヒントとなるしるしをさし、くだけた会話から文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈城の本丸の―〉 〈焼けた―が残る〉〈タイヤの―が残る〉〈努力の―が見られる〉 〈―をくらます〉〈一をつける〉具体的には、足跡のほか土台石や焦げたり掘ったりした痕跡など。入水した太宰治を偲ぶ井伏鱒二の『点滴』に、「その死場所を見ると、彼の下駄で土を深くえぐりとったーが二条のこっていて、いよいよのとき彼が死ぬまいと抵抗したのを偲ぶことが出来る」とある。 <26> 「―を継ぐ」の場合、家督を継ぐ、跡目相続の意ではこの「跡」を用いるが、単なる後継者の意では「後」でよい。「城のー」のように昔、建物などが存在した場所をさす場合は特に「址」と書いて「城址」という語を背景にして雰囲気を出すこともある。↓後・痕・Q形跡・痕跡 **あとがき【後書き】**書物や学術論文などで本文の後に付ける、執筆事情や謝辞などを記す挨拶の文章をさし、会話にも文章にも使われる和語。〈―に謝辞を述べる〉『現代では最も普通に使われる用語。→Q後記・跋・跋文 **あとがま【後釜】**「後任」、会話や軽い文章に使われる、やや俗っぽい和語。〈現社長の――をめぐる話題〉〈息子を―に据える〉後任 **あどけない**いかにも幼い感じでかわいい様子をさし、会話でも文章でも使われる和語。〈―寝顔〉〈一笑顔〉 〈―しぐさ〉〈どことなくあどけなさが残る〉『大人の目にかわいく見えるようす。JQいじらしい・いたいけ・いとけない **あとで【後で】**その時より後の時刻や遠くない日にの意で、会話や軽い文章に使われる和語。〈また―会おう〉〈―また連絡する〉〈―片づける〉「後ほど」の意の会話的な表現で、同じ日とは限らないが、近くまた接触する機会が予定されている場合に使う。丹後刻・Qのちほど **アトラクション**主要な催しのほかに、客寄せをねらって添える出し物をさし、会話にも文章にも使われる外来語。〈会食後の―〉「座興」や「余興」が素人の隠し芸を連想させるのに対し、この語は俳優の挨拶や寸芸などブロに近い人が行う場合が多い。→座興・余興 **あな【穴(孔)】**深くえぐれたくぼみや、物を突き抜けている空間をさして、くだけた会話から硬い文章に至るまで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈地面に―があく〉〈ーを埋める〉〈ズボンの―を繕う〉 〈ーに入り込む〉「帳簿の―」「舞台に―があく」のような比喩的な「空き」の意でも用い、また、「この論文は―だらけだ」のように、足りないところや欠点の意で使うこともある。乃穴ぼこ **アナ**「アナウンサー」の短縮形として、改まらない会話や字数制限の厳しい文章などで使われる略式の語形。〈志村——の名調子〉〈ベテランの―でも時にはトチることもある〉〈女子ーがタレント化する〉のもとの「アナウンサー」の場合より軽い感じで、時に同音の「穴」を連想しやすく滑稽に響くこともある。丹アナウンサー **あなうま【穴馬】**「ダークホース」の訳語。競馬用語で、「ダークホース」のような比喩的拡大用法はない。↓ダークホース **アナウンサー**テレビやラジオなどで口頭での報道を担当し番組の司会なども務める職務の人をさし、会話でも文章でも普通に使われる外来語。〈―がニュースを読む〉 〈スポーツ担当の―〉の略語「アナ」との対照から、略されず満足な姿で残っている正式のことばという表現価値が生ずる。アナ **あながち【強ち】**「必ずしも」の意で、改まった会話や文章に用いられる、いくらか古風で硬い和語。〈―悪いとばかりは言いきれない〉夏目漱石の『吾輩は猫である』に「―主人が好きという訳ではないが」とある。JQ一概に・必ずしも・ <27> まんざら **あなた【貴方(貴男/貴女)】**同等以下の相手を呼ぶ丁寧な感じの二人称で、会話にも文章にも使われる和語。〈一任せ〉〈―とわたし〉〈一からどうぞ〉 〈ーにだけ知らせる〉〈―こそ偉いわ〉男性が男性に対して使うとより丁寧な感じが伴う。夏目漱石の『坊っちゃん』で校長の狸が主人公に「―が希望通り出来ないのはよく知っているから心配しなくていい」と言う。二人称としては最も丁重な形でも、明らかな目上に対して用いると面と向かって相手を指差す感じがあるため、さらに「様」をつけて丁重にしても、やはり完全な目上の個人には使いにくく、「先生」「社長」「お客様」といった役職や立場をさす名詞に置き換えたり、「そちら」(この語も語源的には同様)のように方向を指示して間接的に相手をさしたりするケースが多い。ただし、「―の一票が・国を変えます」「さあ、そんなとき、―ならどうなさいますか」というふうに、不特定多数のうちの一人ひとりに呼びかける場合には、その中に上位者が含まれていても違和感なく用いられる。学生が学長や教授に向かって、あるいは組合員が社長に対して、あえて「あなたは」と言う例もあるが、対等な立場で交渉のテーブルに着くために意識的にこの語を用いるのだと考えられる。『坊っちゃん』で坊っちゃんが教頭の赤シャツに向かって「―の云う事は本当かも知れないですが――とにかく増給は御免蒙ります」と反発するのも類例。表現者も相手も男女を問わず用いるが、男性の話し手の場合は「君」「お前」などとの使い分けがあってかなり丁寧な響きがあり、女性のほうが気軽に広く用い、使用頻度も高い。「ねえ、―、お風呂になさる? それとも御飯?」というふうに妻が夫に呼びかける際に使う例は、今では古めかしく響く。なお、相手の性別に応じて「貴君」「貴男」「貴女」などと書き分けるのは古風な表記。「わたし」と対立。もと、「あちら」という方角の意。♪あなた様・Qあんた・おまえ・貴様・君・てめえ **あなたさま【貴方(貴男/貴女)様】**「あなた」の丁寧な表現として、会話にも文章にも使われる和語。〈―のお越しを心よりお待ち申し上げております〉の商店やサービス業などで、「お客様」より個人的に話しかける感じを出すために用いる。→あなた・あんた・お前・貴様・君・てめえ **あなどる【侮る】**相手の力を低いと考えてあまくみる意で、会話にも文章にも使われる和語。〈対戦相手を弱いと見て―〉〈・りがたい相手だ〉→軽蔑・さげすむ・なめる②・見下す・Qみくびる・見下げる **あなぼこ【穴ぼこ】**地面などの穴の意で、くだけた会話に使われる幼稚な感じの俗語。〈―だらけ〉 〈道に―ができる〉〈―に落ちる〉「穴」と違い、空間的なへこみについてのみ用いる。马穴 **あに【兄】**同じ親から自分より先に生まれた男をさし、やや改まった会話や文章にも使われる和語。〈―夫婦〉〈一番上の―〉〈医者をしている―〉②夏目漱石の『坊っちゃん』に「なまじい保護を受ければこそ、こんなーに頭を下げなければならない」とある。配偶者の兄や姉の夫を含むこともある。「姉」または「弟」と対立。Q兄貴・実兄 **あにき【兄貴】**兄を親しみをこめて呼ぶ語で、会話や軽い文 <28> 章に使われるくだけた表現。〈―に教わる〉 〈一の世話になる〉②通常は実兄をさす。やくざ仲間などの年長者・上位者をさす拡大用法もある。→Q兄・実兄 **あにはからんや【豈図らんや】**「実に意外なことに」という意味の文語的な言いまわし。〈―、それがとんでもない事態へと発展する〉〈―、当人が自分で言いふらしていたとは〉意外・思いの外・存外 **アニメ**「アニメーション」の略で、会話や軽い文章によく使われる。アニメーション・Q劇画・動画 **アニメーション**動きの少しずつ異なる絵を連続撮影して画面上に動きを感じさせる技法やその作品をさし、会話にも文章にも使われる専門的な外来語。〈―映画〉〈立体―〉一般には「アニメ」という省略形が使われる。アニメ・劇画・動画 **あね【姉】**同じ親から自分より先に生まれた女をさし、やや改まった会話や文章に用いられる和語。〈――の嫁ぎ先〉〈一に面倒を見てもらう〉の幸田文の『おとうと』に「なまじっかーになど優しくしてもらいたくないのだ」とある。配偶者の姉や兄の妻を含むこともある。「妹」または「兄」と対立。実姉 **あの【彼の】**話し手からも聞き手からも遠い場所にある、また、両者が共通して知っているものをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の基本的な和語。〈―山の向こうに海がある〉〈一人、どっかで見たことある〉〈一歌、知ってる〉〈一話題でもちきりだ〉の仮名書きが普通。ふかの **あのよにいく【あの世に行く】**「死ぬ」意の古めかしい日常の和風間接表現。死を忌む気持ちから、それをストレートに表現せず、この世からあの世へ、現世から来世への移行という点に中心をずらした婉曲表現。敢え無くなる・上がる②・息が切れる・息が絶える・息を引き取る・往く・いけなくなる・永眠・往生・お隠れになる・落ちる②・おめでたくなる・帰らぬ人となる・くたばる・死去・死ぬ・死亡・昇天・逝去・斃れる・他界・長逝・露と消える・Q天に召される・亡くなる・儚くなる・不帰の客となる・不幸がある・崩御・没する・仏になる・身罷る・脈が上がる・空しくなる・藻屑となる・逝く・臨死・臨終 **アパート**内部がいくつかの独立した居住部分に分かれた賃貸用の建物をさし、会話でも文章でも使われる外来語の略形。〈一暮らし〉 〈―を経営する〉「アパートメントハウス」の略。丹羽文雄の『顔』に「―群の配置は、製図のように美しい」とある。当初はハイカラな語感があったはずだが、現代では古くて安っぽい感じの木造モルタルの二階建てを連想しやすい。マンション **アバウト**「大体のところ」「おおざっぱ」「いいかげん」といった意味合いで、近年くだけた会話に使われるようになった俗語。〈やり方が―だ〉 〈―な考え方〉 〈もっとーでいい〉英語の前置詞・副詞を日本語の形容動詞のように使った和製語。Qおおざっぱ・おおまか **あばく【暴(爆)く】**悪事や秘密、それまで知られていなかったことなどを探り出して明るみに出す意で、会話にも文章にも使われる和語。〈不正を―〉〈秘密を―〉 〈陰謀を―〉〈論理の矛盾を―〉 夏目漱石の『坊っちゃん』に「山嵐の <29> 卑劣を―・いて」とある。「墓を―」のように、土を掘って中のものを外に出す意でも使い、その用法では「発く」と書くこともある。凸すっぱ抜く・暴露・Qばらす **アフターサービス**商品の購入後に店や製造元が責任を持って行うサービスをさす和製英語。〈ーがしっかりしている〉〈一が万全だから安心して買える〉ご近年は、治癒した患者の社会復帰へ向けての世話の意でも使われる「アフターケ7」という外来語をこの意味でも用いるケースが増えている。一般に和製英語を乱発すると、和製英語だと気がつかない人には気障に聞こえ、和製英語とわかる人には教養が疑われやすい。ただし、「コンセント」「シュークリーム」「ハンドル」「フライパン」といった長い伝統のある語で、それに相当する適切な日本語の見当たらない場合は、そのような特別の語感は働きにくい。 **あぶない【危ない】**心配ではらはらする感じをさし、会話でも文章でも広く使われる日常の和語。〈命が―〉〈経営状態が―〉〈―ところを助けられる〉 〈―橋を渡る〉牧野信一の『ゼーロン』に「懸命にゼーロン(馬)を操りながら綱渡りでもしているような―心地で」とある。「危うい」より具体的な危険について用いる例が多い。Q危うい・危険 **あぶなっかしい【危なっかしい】**見るからに危ない感じだという意味で、会話や軽い文章に使われる俗っぽい和語。〈―歩き方〉〈こわれかかった―椅子〉〈——運営〉→覚束ない **あぶら【油】**石油や植物油など液体の脂肪をさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常生活の基本的な和語。〈菜種から―を搾り取る〉〈機械に―を差す〉〈ーで揚げる〉〈水と―〉永井荷風の『澤東綺譚』に「―の匂で結ったばかりと知られる大きな潰島田い。」とある。本来は常温で液体のものをさすが、「脂」や「膏」の意を含む一般的な表記として用いられることもある。JQ脂・膏 **あぶら【脂】**動物などの固体の脂肪をさし、会話でも文章でも使われる和語。〈一身〉〈豚の―〉 〈―の乗った魚〉常温で固体のものをさす。幸田文は『流れる』で「つめたいコロッケは―臭く葱臭くざっかけない味がする」とこの字を用いている。油・膏 **あぶら【膏】**肉の脂肪をさし、会話でも文章でも使われる和語。〈——薬〉〈蝦蟇の―〉②もともと肉のあぶらをさすが用法は狭く、この漢字が常用漢字表にないこともあって用例は少ない。「油」や「脂」で代用することもある。JQ油脂 **あぶる【炙(焙)る】**火に当てて乾かしたり温めたり軽く焼いたりする意で、会話にも文章にも使われる和語。〈海苔を―〉〈するめをさっと―〉〈火鉢で手を―〉梶井基次郎の『冬の日』に「肉を―香ばしい匂」とある。火にかざして湿り気を除く意では「焙る」、薄く色が着く程度にこんがりと焦がす意では「炙る」と書き分けることもある。凸焚く・Q焼く **あぶれる**仕事にありつけない意味で改まらない会話で使われる俗っぽい口頭語。〈仕事に―〉 **あべこべ**くだけた会話で「逆」「反対」の意に使われる、いくらか古い感じになりかけている口頭語。〈それじゃあ、順番が―だ〉〈やっつけるつもりが、―にやられた〉夏目漱 <30> 石の『坊っちゃん』に「生意気におれを遣り込めた。(略)一に遣り込めてやったら」とある。→逆・逆さ・逆様・反対 **アベック**「カップル」を意味する戦後一時期の呼称。〈公園を散歩中の―〉の木山捷平の『遅刻結婚』に「(口)を吸ったり吸われたりしているうちに、やっと一人前の―になれたような気がした」とある。現代では廃語に近い。「・・・とともに」の意のフランス語の前置詞から。JQカップル・二人連れ **あほ**関西地方の会話で「愚か」の意で使われる俗っぽいことば。〈ほんまに、―やなあ〉〈――どついたろか〉「あほう」の短縮形。「あほう」より多用される。「ばか」より軽い感じという。JQあほう・たわけ・とんま・ばか・まぬけ **アポ**「アポイントメント」の略として、くだけた会話などに使われる俗っぽい感じの新しい語。〈―無しで会う〉〈ーを入れる〉→アポイントメント・予約 **アポイントメント**面会や会合などの約束をさし、会話や軽い文章に使われる新しい外来語。〈―を取る〉→アポ・予約 **あほう【阿呆】**主として関西地方の会話に「愚か」の意で使われる俗っぽいことば。〈―を言う〉 〈ーづらして、ぼうっと立っている〉〈踊る―に、見る―〉「ばか」ほどきつく響かないとされるが、接辞をつけて「どー」と語頭を濁音にすると、意味が強調されるだけでなく響きもきつくなる。ちなみに、芥川龍之介の『侏儒の言葉』に「―はいつも彼以外の人々を悉く―と考えている」とある。乃あほ・たわけ・Qばか・まぬけ **あま【阿魔】**女性を卑しめて言う古い俗語。特に若い女性に対して用いることが多い。〈このー、何しやがる〉〈あのー、とんだ食わせ者だ〉芥川龍之介の『アグニの神』に「この―め」とある。男性版の「野郎」と違って、親しみをこめて用いる例はほとんど見られない。海にもぐる「海女」ではなく、仏に仕える「尼」の系統の語というが、読経をするような殊勝な女とは無縁なので、「阿魔」という漢字をあてて区別する例が多かった。もはや婦人に対しておおっぴらに言える時世ではないので、近年はめったに使われない。女 **アマ**「アマチュア」の簡略形で、主に改まらない会話に使われる。〈―とは思えない腕前〉「アマチュア」より会話的。DQアマチュア・素人・とうしろう・ノンプロ **あまい【甘い】**砂糖や蜜のような味や匂いをさし、くだけた会話から硬い文章まで幅広く使われる日常の和語。〈―味〉〈一蜂蜜〉〈柿が―・く熟す〉〈花の一匂い〉四小川国夫の『役者たち』に「口の中に、キャラメルの―汁が味わわれずに滞っているのに気づき、それを味わった」とある。「―塩鮭」のように塩気が足りない意にも使う。「―ことばに乗る」「ねじがー」「評価が―」「考えが―」のように、きつくない・厳しくない意の比喩的・派生的な用法も多い。「からい」と対立。甘ったるい **あまいもの【甘い物】**甘い菓子などを漠然とさし、改まらない会話や軽い文章で使う日常の言いまわし。〈好物の―〉〈何か―がほしい〉&スイーツ **あまえる【甘える】**相手の好意を期待して必要以上に頼ったり任せたりする意で、会話にも文章にも幅広く使われる日常の基本的な和語。〈親に―〉〈先輩に―〉 〈―・えた声を出す〉「甘ったれる」と違い、「お言葉に―」「ご好意に―」